澪「ん…?何だこれ」 (7)


立ったら書く

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立ってるよ

その日の朝も何の変哲もない、平穏な朝だった。
私はベースを背負うと、律との待ち合わせ場所に向かった。
田井中律--。私の幼馴染で、私の初恋の相手。
初めて律と話したのは、たぶん小学生の頃。内気で泣き虫だった私に明るく話しかけてくれて、私のすべてを変えてくれた。私に音楽を教えてくれたのも、律だ。いつも元気で、明るくて、何事にも突っ走って行く。いつも私を引っ張ってくれる、大切な存在。そんな友達に抱いた恋情に気付いてしまったのは、中学3年生の時だったと思う。あれから今まで、もう3年の年月が立ってしまったんだと思うと、信じられない。それくらい、律と、計音部のみんなと過ごしてきたこの3年間は、充実していたんだと思う。好きだ、そう伝えた時の律がどんな反応をするのか考えただけでも怖くて、切なくて。でも、みんなと笑い合っている律を見るたびに胸が締め付けられる。律の笑顔が、仕草が、匂いが、温もりが、私の胸を高鳴らせて、律を見るたびに苦しくって、いつだって私の頭の中は律の事ばかり。
この想いを伝えたい、という気持ちは無いわけじゃない。ただ、怖がりで恥ずかしがり屋な私に告白する勇気なんて無くて。
告白して、私が律に振られたら、私達はもう元には戻れない。それに、律を傷つけてしまうかもしれない。
今後も伝える事は無く、私と律はずっと友達のまま、それぞれの人生を歩んでいくんだと思ってた。
少なからず、まだ、この時は---。


>>2 立ってた 書きます


※鬱・エロ展開あり 閲覧注意※

律との待ち合わせ場所に着いても、律はまだ来ていないようだった。
澪「律のやつ…。また寝坊か?ったく…」
私は制服のポケットから携帯を取り出し、律にメールを送ると、小さく息を吐いた。
律…。早く来ないかな。律に早く会いたい。そんな事を考えていると、突然後ろからどんっと背中を押されて思わずよろける。
澪「うわっ…危な…って、律ぅ!?」
律「えっへへーごめんごめん。待った?なんちって」
誰かと思って振り向いてみたら、そこにはおどけて笑う律がいた。
澪「そこまで待ってないよ。そんなことより…驚かすな、バカ律」
律「いった~っ…あぁっ、待ってよ澪~」
何時ものように平静を装って律にゲンコツすると、律は楽しそうに笑った。
毎日、こうして律と2人で登校できる事が、私のひとつの楽しみだった。律と他愛も無い会話を交わしながら、2人で歩くこの時が。
律「でさー、聡がなー、」
楽しそうに話す律の話は全く耳に入ってこず、変わりに律の笑顔に見惚れながら、私は相槌を打った。
律「まじおもしろくないー?はははっ」
澪「…ッ!う、うん!そうだな」
律の笑顔に見惚れてぼうっとしていると、律が急に話題を振ってきて、私の意識は現実に引き戻された。
(何見惚れてるんだ…私の馬鹿。)
律「どうしたんだよ、みおっ。何か変だぞー」
澪「わっ…ちょ、律…!!」
頬を膨らませた律が私の顔を覗き込んできて、驚きに上ずった声がでてしまい、自分でも顔が赤くなるのがわかる。それに気付かれないように目を逸らしたそ私を見て、律は怪訝そうに首を傾げた。
律「…なーに、なんかあったの?」
澪「なっ…何もないよ!!」
律「怪しいぞ、澪!私たちに隠し事は無しだーっ!!」
澪「何もないってば!!」
(あ…っ)
恥ずかしくて、思わず怒鳴ってしまった。律の足が止まる。
律「そっか…悪かったな」
律はそう呟いて、ムスッとしたような顔をして俯いてしまった。
(どうしよう…今のは私が悪い。謝らなきゃ)
澪「あ、律…」
私が律に声を掛けようとした時、背後から聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
「おっはよー!!りっちゃーん、みおちゃーん」
律「おっ!おはよ、唯、ムギ」
声の主は、唯だった。唯と一緒に登校していたムギがひらひらと手を振りながらこちらに向かって走ってくる。
唯「おはようございますであります!りっちゃん隊員!!」
律「おいっす!!」
紬「おはよう~。澪ちゃんも、おはよう」
唯「おはよう、澪ちゃん」
澪「あっ、おっ、おはよう…」
唯「ねぇねぇ聞いてよりっちゃん~」
律「なんだなんだ~?」
唯とムギが合流すると、唯と律が話しを始めて、私の入る空きは無くなってしまった。
チクリ、と胸が痛む。私の目の前で唯と話す律は、先程とは打って変わった楽しそうな表情をしていた。
(……謝れなかった)
紬「澪ちゃん聞いて、あのね~」
澪「ん、何?」
ムギと話しながら、学校に向かう。ムギが話している間も、話を聞いている振りをして、目線は律を追っていた。
やっぱり言えるわけないだろ。律の事が、好きだなんて。

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