揺杏「私なんかでいいんですか…?」 誓子「アナタだからいいんだよ」 (107)

そう。あれは、1年近く前の秋ごろ-



(タタタタタ…)


揺杏(うう…。もう休み時間終わってるなんて…。夢中になってたから気付かなかったよぅ…)

揺杏「ああ~。注意してくれる友達とかいたらなぁ~…。……ってそれが出来てれば、こんな苦労は…」

??「わわっ!」

揺杏「えっ!?」



(ドンッ!!)



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揺杏(あわわわわわわ人にぶつかってしまったどうしよう謝らなky)

揺杏「ごっ、ごめんなさい!あっ、あの、その、なんて言うか、えっと…」

??「だ、大丈夫…。お互いよそ見には気を付けようね…?」

揺杏「はっ…はいっ。すすす、すいませんでしたー!」



(ドヒューン!!)



??「えっ?君、ちょっと待っ……ん?」





誓子「これ、あの子が持ってた本だよね。名前はどっかに…なんて読むんだろ、コレ?」



揺杏(やっちゃったー!やっちゃったー!やっちゃったーーー!!ああもう私のバカバカバカ!)

揺杏(授業はぎりぎり間に合ったけどシスターには咎められたし、それでクラスの皆も10人…いや、絶対もっと多くの人が笑ってたよー!)

揺杏(ああでもあんな事なんて……ていうか、私程度の絡んだ事なんて、もう皆忘れてるよね。…はぁ。良いのか悪いのか…)

揺杏「……ま、心配しても仕方ないか。早く昨日の続きを…ん?」


(ゴソゴソ……ゴソッ)



揺杏「あれ……もしかして、失くしちゃった?」

揺杏(もおおおおーっ!またやってるよ私の大馬鹿ーっ!…てかなんで!?どこで失くしたんだろう!?)

揺杏「落ち着け私。私が遅れそうになってたのは『アレ』を進めてたからであって、つまり前の休み時間には本もあったはず…」

揺杏「で……うん。時間に気付いて教室出た時、私はすぐに手元の教科書とか持って出たから…うん。やっぱり、あの時だな」

揺杏「………………」





揺杏(ってどういうことよそれーっ!私、本一冊落としたのにも気付かないまま走ってったの!?鈍感すぎだよ!)

揺杏「えっ、ちょ、それだとあれ、ぶつかったあの人が拾った…のかな?どうしよう……」

揺杏「…………」

揺杏(時間は……まだ大丈夫そうだね…)

揺杏「しょうがない…。望み薄だけど、落し物で届けられてないか見に行…」



(ガラッ)



誓子「あっ、いたぁー!!アナタ、さっきの子でしょ!」



揺杏「ひぃぃっ!?」

誓子「えっ……私、アナタを驚かせるようなことした?」

揺杏「ちっ、違うんです!その、クセで、つい…」

誓子「ふーん…。…さっき、家庭科室の方に走ってたでしょ?私も去年ここのクラスだったから、もしかしてーって思ってここに…」

揺杏「あっ、あにょぉっ!!」

誓子「!?」

揺杏「…………」

誓子「……?」





揺杏(おっ……思いっきり噛んだ―っ!!)

揺杏「…………」

誓子「…ど、どうかしたの?」

揺杏「あ、いや…。あの、どうして本を届けてくれたんですか?」

誓子「さっき言ったでしょ?私も去年ここのクラスにいたから、2限で家庭科ある子ならこの教室に戻ってるかなー…って」

揺杏「えっ。洞察力高いですね……じゃなくて、その…」

揺杏「………………」

誓子「もう!さっきからアナタ、口ごもりすぎだよ!コミュニケーション苦手なのかもしんないけど、それなら余計頑張ろうよ!」

揺杏「あっ、ご、ごめんなさい!」

誓子「あ…。もうそろそろ時間アレだから、続きは…うん、お昼休みでね!アナタ、お昼ご飯はどこで食べてるの?」

揺杏「あ……ここで、一人で…です」

誓子「うん。それじゃ、お昼にまた来るね。ばいばーい」

揺杏「あ、はい…」



揺杏「………………」



揺杏(授業の連絡とか以外で他人と話すの、久しぶりだったな…)

いつからだったかな。私が引っ込み思案になったのは。小学生……や、もうちょい後だったかな…





揺杏(中1)「……!」

同級生A「あーっ。ユアン、何読んでんのー?」

揺杏(中1)「え?あ…ほら、これ見て!この服、すっごくカワイクない!?」

同級生B「えーっ?服じゃなくて、モデルの人がカワイイんだよ。ユアンはセンスないね(笑)」

揺杏(中1)「そ、そんなことないよ!両方ともカワイイじゃん!」

同級生A「やー、コレよくて『可もなく不可もなく』って感じじゃん?アンタさ、一人でだっせえの作ってるだけだからセンスないんだよ」

揺杏(中1)「な……そんなわけないでしょ!?私、皆よりずーっと前からこの雑誌読んで色々作ってるんだもん!」

同級生B「アー、アー、キコエナーイ(棒読み)」

同級生A「つかアンタ、センス以前に目が悪いんじゃね?これとか、代えろよ!」

揺杏(中1)「あっ…返して!返してよ!私のメガネなんだからー!」

同級生B「声でっか。ガキじゃないんだから、もうちょい大人しくしなよ」

同級生A「そそ。しょぼい服作ったりビミョーな雑誌読む前に、鏡でも見たらいんじゃね?」

同級生B「あはっ。それ言い過ぎだよAちゃん!私らがイジメてるみたいじゃん!」

A、B「「あははははっ!」」



揺杏(中1)「…………クスン」

揺杏(あー…。あれが今の私を形作ってんのかな…なんて)



(ガラッ)



誓子「こんにちはっ、岩館さん!さっきの話の続き、しよ?」

揺杏「……はい」

誓子「で…何の話だっけ?」

揺杏「あ……。せ、先輩が、なんでわざわざ本を届けてくれたのかなって話です…」

誓子「ん?さっきも言ってたけど、どこが気になるのかな?」

揺杏「だってほら…。あの時は完全に私からぶつかってたし、怒っても不思議じゃないっていうか……あと、わざわざここに寄らなくても、廊下に置きっぱなしにするとか、2年の教室に近い教員室に、落し物で届けるとかの方が普通っていうか…」

誓子「えーっと……アナタは、いつもそんな風に話すの?」

揺杏「あっ…す、すいません!私、人と話すの苦手っていうか、どちらかというと話術自体があれっていうか…」

誓子「そ、そういう意味じゃないよ!単に、もうちょっと力抜いて話して欲しいかなーって思っただけで!」

揺杏「そう……なんですか…」

誓子「…………」

誓子「…ねえ。私、『桧森誓子』っていうの。アナタは?」

揺杏「ゆ、ゆあん…。『岩館揺杏』…です」

誓子「へー!あれ『ゆあん』って読むんだ!外国人みたいな名前だねー」

揺杏「そうなんです…。覚えてもらいやすいんですけど、初見じゃアレなのと、からかわれやすいので……や、やっぱりなんでもないです」

誓子「ふーん…。…雑誌に、わざわざ名前を書いてあるのはどうして?」

揺杏「その…校内で失くした時とか、便利かなって…。変わった名前なんで、先生やシスターにはすぐ気付いてもらえるし、生徒が気付いたら、読みにくいんで多分そのまま教員室に届け……すいません!またこんなに長く…」

誓子「いやいや…」



誓子(ふむ……結構、計算出来たりするのかな?)

誓子「揺杏ちゃんは何?こういう雑誌見てファッションの参考にしたりするの?」

揺杏「は、はあ…。いちおう…」

誓子「やっぱり!揺杏ちゃん、背高いもんね!プロとかは流石にないだろうけど、モデルみたいな感じで写真撮ったりするの?」

揺杏「へえっ!?わ、私、参考にって言っても作る方で、その、着るのとかはそこまで…」

誓子「作ることも出来るの!?えっ、ちょっとそれ、今度見せてもらっていいかな!?」

揺杏「あ、あの、全然アレなんですけど、その……途中までのなら、ここにあるんです…」

誓子「それ見たい!見せて!」

揺杏「はっ、はいぃ!」



(ゴソゴソ…)

誓子「おおー…。これはこれは…!」

揺杏「あの…見せててなんですけど、気持ち悪いですよね。私みたいな地味女が、こんな…」

誓子「へー、意外と本格的な…」サワサワ

揺杏「ち、違うんです。それっぽくなるように見せてるだけで……こんなの、制服の改造とかと変わらないのに…」

誓子「いやいや、それでもこれは大したもんだよ…うん」

揺杏「うう…」



揺杏(他人から褒められるのって……嬉しいけど、やっぱ恥ずかしいよぉ…!)



誓子(なるほどなるほど…。手作業が嫌とか、そういうのは無いみたいだね…)

誓子「揺杏ちゃんって、部活とか入ってるの?」

揺杏「はっ…?」

誓子「いや、謙遜してるけど高1でここまでやるんだし、かなり一生懸命やってるのかなって」

揺杏「あっ、ありえません!私は一人で服作ったり見れたりしたらそれでいいし、こ、これだって、他に取り柄がないから上手くなったってだけです…!」

誓子「……ね、揺杏ちゃん。連絡先教えてもらっていいかな?」

揺杏「へ…?」

誓子「あっ。ヘンなことに使ったりしないよ!ただ、んと…」

揺杏(えっ。なにこれまさか、『アナタとお友達になりたいの』とかそういう…!?)

揺杏「どっ、どういう意味なんですかっ?」ズイッ

誓子(う…ここに来て押しの強い…。…はあ、言うしかないか…)

揺杏「…………!」ワクワク

誓子「あ…あのね…私は、アナタに、その…」

揺杏「はっ、はい!」




誓子「わ、私の部活に入ってほしいの…!」



揺杏「………………」





揺杏(ああー……まあ、下心込みですよね、フツー…)


揺杏(なんていうかこう…『優しい雰囲気の女の人が声をかける』って手は同性相手にも通じるんだなって感じ…?)



誓子「あの、こういう中途半端な時期だからこそ、見に来て欲しいの…。も、もちろん無理にとは言わないよ?私が先輩だからって気を遣わなくて……ってこういう言い方だと逆効果だよね…あはは」



揺杏(いや先輩、さっきの私みたいな喋り方になってますよ?…とか言ったら、もっと狼狽しそうだなぁ、この人は…)



誓子「あ…でもね!?ちょっと聞いて欲しいんだけど!」


揺杏「…………?」




誓子「私のこととは関係なしに、アナタのことは凄く気になったの!だから…アナタのこと教えてくれると、もっと嬉しいな!」



揺杏「……!!」


その時のことは、よく覚えてるけどやっぱりよく覚えてない

なんか本当の詐欺みたいだなとか、それでもこの人についていってみたいなとか、そんな感じの事がグルグル頭を回ってたけど…とりあえず……



揺杏『…………。………』

誓子『……!?…………!……』

揺杏『……。…………』

誓子『……!』



連絡先を教えるのは嫌だったので、私の方から部室に行くとだけ約束しておいた…してたハズ……うん

眠いんで寝ます。揺杏地味子説を閃かせてくれた某所の手書き絵師さんに、感謝

~麻雀部部室~



揺杏(桧森先輩ってここの部員だったんだ。ウチの麻雀部ってそんな強くなかった…よね?)

揺杏(麻雀か…。流行ってたから昔たま~にやってたけど、ルール難しいんだよなー…)

揺杏(んー、どうやって入ろう?打ってる音してないから入っても大丈夫そうだけど、人とかいたらヤダなぁ…)

??「…………?」

揺杏(待てよ、人がいない方がまずくない?一人で待つとかあれだし、初対面の人が入ってきたりしたらめっちゃ気まずい…!)

??「……あの」

揺杏(あーもう!こんなんだったら先輩と一緒に来るようにすべきだったぁー!なんで私こんな事も予想出来ないんだろーなぁ…)

??「あのー…もしもし?」

揺杏(わ、なんか聞こえるし。…あれ?よく考えたら、部室の前でぼーっと立ってるとか周りの人とかから絶対注目されるし!あー、ホントどうしよう…)




??「あの!!聞いてますか!!?」



揺杏「わひゃああっ!?ご、ごめんなさいっ!」


揺杏「あの…すいません。ちょっと考え事を…」

??「そうなんですか。…ウチの部に、何か用ですか?」

揺杏「(『ウチの』ってことは、この小っちゃい子が部員かな?)いや……そちらの桧森って人に誘われて、部活の見学に来たんですけど…」

??「あぁっ、ちかちゃんから聞いてます!どうぞ入ってください。他の人達が来る前に、色々お話ししましょう!」

揺杏「あっ、はい。失礼します」

成香「私、1年生の『本内成香』と言います。貴方は、私と同い年のいわだてゆあんさん…ですよね?」

揺杏「あっ、ども。えっと…学年一緒だし、さん付けじゃなくてもいいよ?」

成香「そうですか?それじゃあ…揺杏ちゃん、何か聞きたいこととかありません?」

揺杏「え…?んと……あー……この部活って、桧森先輩と本内さん以外に「『成香ちゃん』でいいですよ?」……え?」



成香「1年同士なんだから、『さん付けじゃなくてもいい』ですよ?」ニッコリ



揺杏「あ…!」

揺杏「ちゃ、ちゃん付けは流石にアレだし、呼び捨てにしよっかな!?なるか、なるか……な、成香はさ!」

成香「はい?」

揺杏「その…さっき『ちかちゃん』って言ってたけど、あれ……桧森先輩のことだよね?成香は先輩と仲良し…なの?」

成香「仲は良いと思いますけど…。中学から一緒だったので、その時のあだ名とかそのまま使ってる感じですかね?」

揺杏「へぇ…なんかいいね、そういうの。幼馴染ってやつ?」

成香「そ、そこまでじゃないです。学年の違う友達って感じで…。……あの、部活の事は聞かなくていいんですか?」

揺杏「!!ああっ、聞くよ、聞く!ちょっとあれ、勘違い(?)してただけ!うん!」

揺杏(わーっ!折角いい感じだったのにテンパるなよ私ーっ!!普通に話せばいいんだ普通に普通にー!)

揺杏「!!!」ワタワタワタ

成香(何か…面白そうな人ですね…)

?「こんちゃー。もう成香来てるかー……って、おや?」

成香「あっ。こんにちはです!」

揺杏(ひっ!新手!?)

?「あー、君が誓子の言ってた……あはは、でかいね!いくつくらいあんの?」

揺杏「ひゃ、168か9くらい…?……ってすいません!あ、挨拶遅れて…」

爽「いーよいーよ。こんにちは、岩館揺杏さん。私は2年の『獅子原爽』。ライオンの『しし』に、爽やかの『さわや』だよー」

揺杏「はあ…。…あの、桧森先輩は、まだなんですか?」

爽「ん?もうちょいすれば来るんじゃないかな。…成香!なんか話の続きとか、いーのかな?」

成香「そうでした!揺杏ちゃん、気になることあったらどんどん聞いてください!」

揺杏「あ…。そ、それじゃあ……」

爽「部員?私、誓子、成香…の3人だね。顧問の先生いない時はサンマやったり駄弁ってたりしてるんだ」

成香「どんな人か…ですか?先生は、その…結構な負けず嫌いなんですけど…」

爽「『勝ちにこだわる』っていうより、どちらかと言うと『楽しければいい』って感じの人だなー。『勝つのが一番楽しい』とは言うけどね」

成香「あっ、そう!団体戦には5人必要なんです!だから、揺杏ちゃんが入ってくれたら嬉しいな……とか」チラッ

爽「ま、秋の予選の出場登録には間に合わないがなー。個人では3人とも出るけどね」

成香「先生の名前ですか?『いしと…」



(ガラッ!!)


爽「!」

成香「!」

揺杏「!!!」

顧問「よっ。遊びに来たよ、3人さん……って、誓子じゃなくて違う奴がいる…」

揺杏「あのっ!け、見学に来ました、岩館揺杏ですっ!」

顧問「あー?…ああ、知ってる知ってる。『爽よりヘンな名前の子がいるー』って、教員やシスターの間で有名だよ、あんた」

揺杏「そ、そうですか…」

顧問「私の名前は……や、いいか。教師の名前なんて自然に覚えるしな。覚えるまでは『先生』でも『先公』でも好きな風に呼びな」

揺杏「は、はい……」

揺杏「あの…『遊びに』って…」

顧問「んー?私だって、本当はマジメにやりたいんだけどさー。人数いないとマジでどうしようもねーし」

成香「面目ないです…」

爽「あっはっは。すいません」

顧問「まっ、今すぐ入れなんて言わねーよ。とりあえず一局打たないかい?揺杏、あんたルール分かる?」

揺杏「あ…昔やってたんで、ちょっとくらいなら…」

顧問「んじゃやるかー!成香、爽、席つきな」

成香「はいっ」

爽「あいさー」

顧問「揺杏。思い出しながらでいいから、誓子が来るまでちょっと打ってみなよ。東風でさくっといってみよーか」

揺杏「は……はいぃっ!」

揺杏(うわぁ……麻雀とかホントに久しぶり…!打てるかな!?)

成香「あっ、揺杏ちゃん。サイコロ振ってくれます?」

揺杏「はん?…あっ、ああ!これね!」ピッ

爽「えっとー、いつものルールは『数えアリ』『喰いアリ』『赤ナシ』『カン・裏ナシ』と、『流し』含めた『ローカルナシ』と…」



揺杏(うわうわうわーっ!なんかめっちゃ久しぶりな言葉ばっか!前はどんな風に打ってたっけかなー?)



顧問「あ、ちと待った爽。『赤』と『裏は両方』アリでやろう。いつものは、全国大会のルールと一緒だったろ?」

爽「あ…?ああ、ルールが派手めに変わるんだったっけ。成香もそれでいい?」

成香「構いません」

爽「ん。じゃ、やろうか!」

~対局中~



揺杏(えっと…多分今三色の一向聴だから、ここ鳴いて…あれ、チーって上家からだけ…ん?ポンだっけ?いや…)

顧問「…………」

成香「長考してますね…」

爽「ゆっくりでいいからなー」

揺杏「はいっ!」

揺杏(いやいや、ポンはさっき先生が対面からしたから…やっぱチーが上家限定。なら上家の成香の捨て牌は…)

顧問「…………」



顧問(回転の速さは分からんけど、集中力はあるみたいだな…)

誓子「ごめーん、遅れちゃったー!揺杏ちゃんもう来てるかな?」

成香「あっ、ちかちゃん!」

爽「やー誓子。遅すぎるから東風一回終わっちゃったよ」

誓子「えっ!揺杏ちゃん打てるの!?どんな感じだった?」

揺杏「…………」スッ

誓子「え?……ああ、得点表示ね。…………えぇっ!?」

揺杏「…………」

顧問 19500 

爽 32000

成香 10000

揺杏 38500



誓子「すっ……すごーーいっ!何これっ、牌譜は!?」

爽「あっ、ごめん。とってないや」

誓子「え!?折角揺杏ちゃんのデビュー戦なのに……それはともかく、凄いよ揺杏ちゃん!いきなりでこれなんて、中々出来ることじゃないよ!!」

揺杏「あ……はい。ありがとうございます…」

揺杏「あー…でもこれ、皆が手加減してくれたからです……多分」

爽「いやいや。100%とは言わないけど、私はそれなりに打ったよ。うん」

成香「東風ですし、こういう事もたまには…」

揺杏「そうですか?…じゃあ、ラッキーです。…はい」

誓子「たまたまでも凄いよー!幾ら幸運でもこれは…」



顧問「いーや。ただの運だな」



誓子「!」

成香「!」

爽「!」

揺杏「…………」

顧問「譜が無いんで証明は出来ないけど、コイツの和了は全部自摸アガリだったし、私から出アガリもされた。つまり、観察力自体はそこまでじゃない」

爽「いやいや。ブランクあったんだからそんな冴えてるわけな…」

顧問「あと、二回あった和了は両方とも終盤でリーチかけてアガったもの。要するに、聴牌したのはともかく引いたのはたまたまだったってことだ」

成香「なんか無理やりな気がするんですけど…」

顧問「そしてー!こともあろうに裏が3つも乗りやがった!二度の和了で二度ともだ!マジありえねえし!」

顧問「もーほんっと分かりに分かってたけどよー!麻雀ってマジ運ゲーのクソゲーだわ!今日の私はプレイングで負けたんじゃねー、運で負けたんだ!分かってんなお前ら!?」



4人「「「「…………」」」」

顧問「つーわけで終わり!誓子も来たし、後は4人で適当にやってな。あばよ!」タッ

成香「せ、先生!もう帰っちゃうんですか!?」

顧問「うっせーな!仕事残ってんの思い出したんだよ!」



(ガラッ!!)



成香「…………」

誓子「…………」

爽「…な。負けず嫌いだろう?」

揺杏「……そうですね…」

誓子「じゃ、揺杏ちゃん。いつでも遊びに来ていいから。春までは入ってもそこまで意味無いし、今の段階で入部するかどうかまで考えなくていいよ」

揺杏「あ。はい…」

爽「まー、来るときは一応私たちの誰かに連絡してくれー。ささ、メアド交換しよう、交換」

揺杏「はい……!」

成香「あの、また明日…」

揺杏「う、うん。多分、来るよ…!」

誓子「おおっ。これは嬉しいね!」

爽「ああ。また明日、皆で成香を焼き鳥にしてやろうじゃないか」

成香「ひどいです…」

揺杏「…………!!」

この日は、色々な人に出会った。小っちゃくて可愛い同級生。変わった名前のお気楽そうな先輩。怒ると口調が変わる先生

楽しくないわけなかったし、居心地も思いの外良かったけど部活に入る入らないはまた別の話だよな…

……そういえば、複数人でああやってゲームしたの……それに、下の名前で呼び合える友達が出来たのも、高校入って初めてだ…





入るか入らないかはともかく、ヒマがあったら部室に行こう。…そう思えるくらいには、あの麻雀部は楽しそうだった……




揺杏「…いや、『楽しそう』じゃなくて『楽しかった』んだよな……うん。そうだった!」


お腹空いたので終わる。不定期でだらだらやりますけどそこまで長くはならなそうです

爽「やー、揺杏が入ってくれて助かるなぁ。今まで先生いないとまともに打てなかったしな」タッ

揺杏「ま、まだ入るって決めてませんよ…?」タッ

誓子「でもこうして遊びに来てくれてるんだし、期待はしてもいいんでしょ?」タッ

揺杏「え?あ、あー……。えと…」

成香「二人とも。揺杏ちゃんが困ってますよ。そう躍起にならなくても、私たちが仲良くなれば自然に…」タッ



爽、誓子「「それロン」」



成香「ひっ!?」

爽「大会だと同時ロンは上家取りだから、今のは私のだな」←1位

誓子「あー、まくれなかったかー」←2位

揺杏「げ、元気出して、成香…」←3位

成香「良いんです…。3人で打ってた頃でも、日常茶飯事でしたから…」←4位

揺杏(それはマズくない…?)

爽「成香は顔に出るから分かり易いんだよね。ちょっと試すと簡単に引っかかってくれるし」

誓子「ツいてる時は良い手がいっぱい入ってくるんだけどねー。分かり易いけど」

揺杏「そ、そんなに分かり易いんですか?」

爽「ああ。揺杏も狙ってみなよ。目指せ、トリプルロン!!」

成香「ひどいです…」

爽、誓子「「あははははは」」

揺杏「あ、あははは…」

揺杏「………………」





揺杏(す、凄い…。私、ちゃんと日常会話が出来てる…!)

成香「揺杏ちゃん?考え事ですか?」

揺杏「あ、いや…。私、ちょっと前まで友達とかいなかったから、なんか……。…ごめん、上手く言えないや」



爽「…………」

誓子「…………」

成香「…………」

揺杏「…………あれ?」



揺杏(や、やってしまったー!ぼっちアピールとか面白くないし誰も得しないのに、何やってんだ私…)

揺杏「す、すいません!誰もアレなのに、私のどうでもいい事情なんて「揺杏ちゃん!」……はっ、はい!?」

誓子「揺杏ちゃんは、こうやって4人で麻雀やってお話ししてっていうの…楽しくない?」



揺杏「そ、そんなことないですよ!先輩とか友達とかそういうの中学以来ですし、ここの人たち先生も含めて優しくて面白い人ばっかりで、だからそういう人たちと色々やるのってかなり楽しいっていうか、その……た、楽しくないわけないに決まってるじゃないですか!!」



誓子「…そう」

揺杏「(やば、緊張しすぎてまたテンションおかしくなったってーかこれここまで来て皆にドンびかれちゃうような悪い予感g)「ねえ、揺杏ちゃん!」……は、はいぃっ!」



誓子「私ね、揺杏ちゃんが来てくれて凄く嬉しかったし…。…今、こうやってお話し出来て、すっごく楽しいよ!!」



揺杏「………」

揺杏「…………」

揺杏「………………」





揺杏「……………………はわぁっ!!?」

揺杏「えっ、えっ、えっ、えっ、何、なン?えっ、あの、お世辞じゃなく!?」

誓子「うんっ」

揺杏「へあっ!?うあ、あー……!」

爽「楽しいかどうかは別にして、一緒にいて面白い奴ではあるな。…な、成香!」

成香「えっ?…ま、まあ、否定はしないですけど…」

揺杏「えええぇっっ!?ふた……獅子原先輩も、成香も、私といて、本当に楽しい!?本当に本当!?」

爽「ゆあーん。あんまりしつこいとぼっちに戻っちゃうぞー」

揺杏「えぇっ!?うあっ、あぐぅ…」

誓子「爽!」

爽「あははははっ!成香と同じかそれ以上にイジりがいのある奴だなー。これは何としても入部さs……いたたっ!よせ誓子、引っ張るのはマズい!」

誓子「もう…。…揺杏ちゃん、落ち着いた?私たちアナタのことを嫌だとか全然思ってないし、逆に、揺杏ちゃんが嫌なら無理に来なくてもいいんだよ?ねっ?」

揺杏「……っ!」

成香「わ、私個人としては……折角出来た新しいお友達が来なくなるのは、寂しいです…」

揺杏「……~っ!!」

揺杏「うう……うぅ~…!ひぅ~……!」ポロポロ

誓子「揺杏ちゃん!?」

爽「あーあ。成香、最後に声かけたのはお前だろう。謝って」

成香「意味が分からないのですけれど…」



揺杏「ぅ…あぁ~ん…!うぁ~~ん……!なんれ、なんれぇ~…!うぅぅ~……!!」ポロポロポロポロ

爽「よしよし。よしよし。落ち着くまで成香の胸で存分に泣きな」

成香(!?)

揺杏「グスッ……ヒグッ…。……いえ、もうだいじょぶです…」

成香(……ホッ)



爽「……まっ、そんだけ泣いたら落ち着いたろう。ちょい休んだら、また半チャン戦やろうな」

揺杏「はい…」

誓子「揺杏ちゃん、本当に平気?具合悪いとかじゃないよね?」

揺杏「はい。心配かけてすいませんでした…」

爽「…にしても何故泣く?そんなに私の優しさが胸に沁みたか?」

揺杏「はい」

爽「えっ。…どうしよう誓子、返しが分からない…」

誓子「(無視)『優しさが沁みた』ってどういうこと?さっきのやり取りのことかな?」

揺杏「はい」

誓子「……差支えなかったら、もうちょっと詳しく教えてくれる?」

揺杏「…はい」

爽「………………」





爽「成香、唐突だけどなんか面白いこと言ってくれ」

成香「この雰囲気だとスベった時が怖すぎます…」

揺杏「あの……私って、背は大きいくせにうじうじしてて見た目地味だし…。…取り柄もないし、話下手だし、本当の本当になんて言うか…」



誓子「…………」

成香「…………」

爽「…………」



揺杏「だからその、麻雀部の皆が一緒にいてくれて……。…3人みたいに、優しくって面白い人たちと一緒にいられるのが本当に楽しくってぇ…!」



揺杏「だから、エグッ、さっき、しゃんにんがぁ…わたひみたいのとぉっ、…ヒグッ、一緒にいりゃれて、楽しいって言ってぐれたのがぁ……グスッ」



揺杏「うぅ~…!ごべんなざ~い…!ほんどのほんとにぃ~!うえいかったんでずぅ~……!」



誓子「…………!!」

成香「……グスッ」

爽「……」

爽「…そこまで言ったら、あと一つ言う事があるんじゃないのか?」

揺杏「……はい」

成香「えっ?ちょっと、それどういういm「成香は黙ってて」……はい」

爽「よしっ、誓子!今は先生いないんだし、部長として聞・い・て・や・れ!」ズイッ

誓子「うぇぇっ!?ちょ、爽!?」

爽「いーから。揺杏の方を向いてやりな」

誓子「うっ、うんっ!」



揺杏「…………」

揺杏「……あの、最後にもう一度お聞きします。本当にこれが最後なんで、気遣いとかナシで答えてください」

誓子「…うん」

揺杏「桧森先輩は…いや、有珠山高校の麻雀部の皆は…」

誓子「……」






揺杏「…本当に、私なんかでいいんですか…?」









誓子「アナタだからいいんだよ。…ううん。アナタがいいのっ!」




揺杏「……分かりました!桧森先輩っ!獅子原先輩っ!それに成香!お願いがあります!」

誓子「うん!」

爽「おうっ!」

成香「はい!」




揺杏「私を麻雀部に…皆の仲間に、入れてくださいっ!!」



誓子「…うんっ!」

爽「分かった!」

成香「あのっ…改めて、よろしくお願いします!」

顧問「……なるほど、それで入部を決めたんだな。うん、青春なんじゃねーの?」

揺杏「はっ、はいっ。…あの、それで手続きとかは…」

顧問「春になったら入部届け出せばそれでいいよ。お前入っても一人足んねーから大会は出られんし……ま、練習試合でもバレねーだろ」

揺杏「練習試合?ウチは4人しか…」

顧問「人数足りない学校同士で組んで、合同で練習したりすんの。他のスポーツでもあるだろ?」

揺杏「あっ?…あー、そういえばあったような……」

顧問「ん。じゃあ、この話はこれで終わりだな。それじゃ私からだが…いいか揺杏、よく聞け」

揺杏「……はい」ゴク

顧問「とりあえずだな。何日か見た限り、お前はまずまず麻雀の見込みがありそうだ。天才には程遠いけどな」

揺杏「!!…は、はいっ!」

顧問「これから私は部室に行く回数増やすし、お前含めて部員全員鍛え直していこうと思う。夜遅くまでやったりはしないが、密度の方は……ま、それなりになるだろうな」

揺杏「……はい!」

顧問「いー返事だね。お前のことだし、尻込みするかと思ったんだけどな…」

揺杏「う…ちょ、ちょっとは怖いけど、平気です。だって…」




揺杏「だって私には……一緒にいてくれる、仲間が出来ましたから!!」



顧問「……そうか。それは良いことだ…」


そう言った先生は、なんだか遠くを見ていたような……或いは、今こうして昔を思い出している私と、似たような表情をしていたのではないだろうか

仲間。友達。いつからか忘れかけていたこの言葉の実感を、私はこうして取り戻すことが出来たのだった。今思うと、どうも運に左右された部分が多すぎる気もするが…

ただ、アイツとの出会いは運以外のものが大きかったと言えるだろう。強いて言えば、会えたこと自体が幸運……いや、こういうのは『巡り合わせ』とか言うべきなのだ。多分

アイツなら、あの出会いのことをなんて言うのだろう?いつかは聞いてみたいところである

本当に成香は可愛いですね。洗濯物を取り込むので終わります

揺杏「~~♪」パラパラ

爽「揺杏はまたその雑誌読んでるのか。最近どう?服とか作れてるかー?」

揺杏「いえ……。最近は麻雀がキツイんで、ちょっとさぼり気味です…」

爽「ちょい前からいきなりスパルタになったからなー。揺杏、お前先生からなんか聞いてない?」

揺杏「さあ?…私が入部するって言った時に、今までよりやる気出す的なことは言ってましたけど…」

成香「揺杏ちゃんが入部して、インハイ出場が一気に現実的になりましたからね。新入生が入ってすぐに予選は始まりますから、打てる仲間がこの時期に入ってくれたのは嬉しいです…!」

爽「新入生かー。あと半年…よりは少ないな。どんな奴が来るんだろうなぁ」

誓子「ほらほら、休憩終わりだよー。爽は来週に公式戦あるんだし、ちゃんと調整しないと!二人も夏に備えてレベルアップしないとね!」

爽「分かった分かった。ほら揺杏、読むのやめないと没収だぞー」

揺杏「す、すいません!今片付けます!」

私が入部を決めてからすぐ、秋の地区予選があった。個人・団体ともに県内上位の選手たちが地域予選に出て、そこから更に絞られて国麻に出る…らしい

ウチは個人の部で成香たちが出場し、獅子原先輩だけが地域予選へ進出することが出来たのであった。が…





爽「にしてもなんだ。前にも聞いたけど、揺杏は自分で自作服着ようとか思わないのか?」タン

揺杏「えっ。いや、それはその…」

誓子「爽!私語厳禁とまでは言わないけど、ちゃんと対局に集中しなよ。…揺杏ちゃん、気にしないで打って」

揺杏「は、はい」タンッ

成香「……」タッ

誓子「……」タンッ

爽「…んー、これは悩ましい。……ここかな?」タンッ 

揺杏「ロ、ロン。5200…です」

爽「あらら、そっちだったかー。…ほい、5200」ジャラ

揺杏「あ、はい」





揺杏(最近の獅子原先輩……なんか、調子悪いような…)

顧問「うーす、来たぞー!お前ら、ちょっと連絡する事あるからこっち向けー!」

成香「連絡事項?何なのでしょうか…」

爽「タイミング的に、私の出る道大会のことじゃないか?」

誓子「二人とも、しーっ」

揺杏(……その注意のしかたは子供っぽ過ぎなような…)



顧問「よし、聞く準備はいいな?来週にやる国麻予選の北海道大会についてだが…」



爽「聞いたか!予想てきちゅ「うるさいそこ!」……ゴメンナサイ」

顧問「会場が札幌の方になってるんだ。こっから片道で…ま、3時間もあれば着くだろうな」

揺杏「…それがどうかしたんですか?」

顧問「まあ聞け。普通なら日帰りで十分な距離とは言え……爽が勝ち残れば日もまたぐし、学校としても、生徒に大会に集中させてやりたいわけだ。そこで…」

誓子「……そこで?」

顧問「なんと!」

爽「なんと!?」




顧問「爽!お前が勝てば札幌で外泊の許可が出るぞ!しかも、麻雀部全員にだ!!」



爽「えっ」

誓子「へっ?」

成香「……!」

揺杏「うわ…」





4人「「「「うわーーーい!!やったぁーーーっ!」」」」

爽「そっかー。外泊かー…。……なんかこういうのって、普通に遊びに行くより倍は楽しみだなぁ」

誓子「ある意味遠足みたいなもんだもんね。遊びに行くわけじゃないけど…」

成香「あれ?そうすると、揺杏ちゃんはどうするんでしょう?」

爽「あっ。そういや、まだ部員じゃなかったんだっけ?」

揺杏「そ、そうでした…。……先生!わ、私も行っていいんですか!?」

顧問「んー?そっか。お前、すっかり馴染んでるけど入部してないもんな。ま、こういう場合は…」

揺杏「…………!」ドキドキ

顧問「…しゃーねえなあ!この私が、お前の分の部屋も予約して宿泊費も立て替えてやるよ!交通費くらいは自分で何とかしろよな!」

揺杏「はっ……はいっ!!」

誓子「やったぁ!良かったね揺杏ちゃん!」

揺杏「はいっ!す、凄く嬉しいです…」

成香「揺杏ちゃんも、もう立派な私たちの仲間ですからね。仲間外れはよくないです」フンスッ

爽「…おい成香。今、自分がいいこと言ったと思ってるだろ」

成香「お、思ってませんよ……?」

爽「…………」

成香「…………」

ナルカノクセニナマイキダーッ キャッ!チカチャン、タスケテクダサーイ!



顧問「…………ったく、手のかかる奴らだぜ」



ホントニホントニヨカッタネ、ユアンチャン! ハッ、ハイッ!



顧問(……これで、やる気になってくれりゃいんだけどなぁ…)

この日の私たちは、とにかくはしゃぎまくった。単に都会に遊びに行けるってだけじゃなくて、私を含めた部の皆で麻雀以外の何かをするのが初めてだったし、個人レベルとはいえ部の活動を認められたような嬉しさもあった

「『勝てば』の話だからな!はしゃぐ前にちゃんと練習しとけ!」

そんな先生の忠告すら、私たちには喜びのエッセンスとしか思えなかった。部活の後も盛り上がったままで、私は人生初のカラオケボックスも体験出来た(!)

まあこういう体験ってえてして『楽しかった』って印象が残るくらいで細かいことも覚えてないので、その後の記憶に思いを馳せよう



爽―つまり、この頃の私が『獅子原先輩』と呼んでいたところの少女は……




爽「ごめんな皆。日帰りになっちゃって…」



個人戦の初日で、あっさりと敗退した


なんか夕方あたりからPCの調子ずっと悪いんで切ります。今日はYG発売日。揺杏がトバないかどうか不安です

爽「……あの、なんて言ったらいいのか…」

成香「そんな!試合に出た本人が謝る必要なんてありませんよ!」

誓子「な、なるかの言う通りだよ。爽がいたからここまで来れたんだしさ。謝ることないよ」

揺杏「し、獅子原先輩。その…」

爽「ん?」

揺杏「あ、や、すいません。やっぱなんでもないです…」

爽「…そっか」

言葉を切ったのは、本当に何て言うべきか分からなかったからだ。先輩みたいに大舞台で戦ったことも、こういう競技に夢中になれたこともない私に何が言えたのだろうか

他の2人も似たような気持ちだったのだろう。獅子原先輩と一言二言言葉を交わしては、また押し黙るということが何度か続いた。正直、誰の目から見ても気まずい雰囲気だったと思う

そんな時だった



爽「あのさ…帰るにはまだ時間あるんだし、都会でちょっと遊んでいかないか?」



成香「えっ」

誓子「えっ」

揺杏「えっ」

顧問「はぁ?」



4人「「「「!!?」」」」

爽「先生…いつの間に」

顧問「お前らがうだうだ悩んでる間にだよ。私が部屋入ったのに気付かないくらい落ち込んでたっつーなら、まあ良い経験になったんじゃねーの?」

顧問「別に『遊ぼう』っつったことを責めたりなんかしないよ。お前なりにムード変えようとしたのも分かるし、女子高生だからそういう事考えんのも当たり前だしな」

顧問「とりあえず、私は爽の記録検討したりとか色々あるからここに残っけど、お前らはどうすんだ?」

誓子「どう…?あの、話が早すぎて追いつかない…「だーかーらぁ!!」…はいっ!?」




顧問「帰りの時間まで遊んできていいって言ってんの!私の気遣いが要らねーのかお前らは!?」


爽「や~、やっぱ都会はいい!この人混みがたまらないなー!」

成香「気持ちは分かりますけど、周りの視線が怖いです…」

誓子「成香の言う通りだよ。爽、声おっきすぎ!」

爽「よいではないか、よいではないかー。折角の機会なんだし、誓子たちもはしゃいでこーじゃないか!」

揺杏「あの……はしゃぐって、何するんです?」



爽「……」

誓子「……」

成香「……」

爽「移動は徒歩かバス使うとして……皆は、どのくらい手持ちあるんだ?ちなみに私は2万持ってきたぞ」

成香「1万円あるかないか…くらいです」

誓子「なるかよりちょっと多いくらいかな」

揺杏「えっ。なんで皆そんな持ってきてるんですか!?私そんな多くない…」



誓子「…だって、折角札幌までタダで来れるんだもん…」

爽「この日のために節約してきたからな。これでも足りないくらいさ」

成香「私は、皆で遊びに行けるのが楽しみで…」



揺杏(…そうだった。つい最近までぼっちだった私と、平均的女子高生一緒にしちゃいけないよね。うん)

誓子あのさ。折角来たんだし、いつもやってるのと違うことしたいよね。つまり、カラオケ行くとかじゃなく…」

爽「都会特有のアヤシイ店とか行ってみたかったんだけどなー。制服着てんだし、それやったらマズいよな…」

成香「発想が怖いです…」

揺杏「(…どうしよう。女子高生的な考え方が出来ない自分がいる…)「揺杏はさー」……ふあぃっ!?なにゃ、何ですか!?」

爽「(何故そこまで驚く?)いや、あのさ。揺杏はどっか行きたいとことか無いのか?今んとこなんも決まってないし、希望があるなら早いもの勝ちだぞ」

揺杏「えっ、あー、私…?私はー…あー……」





揺杏(やばいやばいやばいやばい!ここで気の利いた返しを自然に出来てこそ平均的女子高生(?)って気がする!!頑張れ私!もうあの頃の私とは決別するんだ!)

揺杏「……………………………………………………」



爽「ん~、揺杏も考え中みたいだな…。どうする?なんか適当なものでも食うか?」

誓子「そーだね。確か、ここから歩きで行けるとこにアイスかクレープか売ってたはず…」

成香「秋にアイスは嫌ですね…」

爽「ま、ここにいても仕方ないし歩いてみるか!誓子、案内して!」

誓子「どこだったかな?あのね、会場来る時に目に入ったんだけど…」

成香「なら、私たちが来た方向に戻れば行けるのでは?」

爽「それもそうだな。よーし、行くぞー!」ダッ

成香「い、いきなり走らないでください!」タッ

誓子「ちょっと待って2人ともー!…もう。しょうがないんだから……」チラッ



誓子「…………」

誓子「揺杏ちゃん!早く追っかけないと、置いてかれちゃうよ!」ポンッ

揺杏「ふわぁっ!!?すすす、すいません!」







爽「…で、なんかいい案思いついたの?」モグモグ

揺杏「い、いいかどうかは分かりませんけど、一応…」モグモグ

成香「むむむ……このお店はアタリですね、ちかちゃん!」モグモグ

誓子「なるかったら…。ほっぺにクリームついてるよ?」フキフキ

成香「ん…」

爽「ふぅ。いい味だった。……さて、その案とやら、聞かせてもらおうか」

揺杏「あの…オシャレするってわけじゃないですけど、服とか見て回るのはどうですか…?都会なら品揃えとか値段とか、地元より良いお店がいっぱいありそうですし…」

爽「ふむ、悪くないな。でも、1万2万じゃユニ○ロとかでないと一着買って終わりかなぁ」

成香「見るだけっていうのも嫌ですね…」

誓子「んー……そうだ!ほら、お金が無いなら皆でまとめて…」

爽「おお、その手があったか!」

成香「良いと思いますよ、ちかちゃん!」

誓子「そ、そうかな…?揺杏ちゃんはどう思う?」

揺杏「えっ、あの、私もそれでいいと思います、はい」

爽「よし、これで大まかなプランは決定だな!行くぞみんな!」

誓子、成香「「おー!!」」

揺杏「…………」





揺杏(……会話に置いてかれたから何が決まったか分からないなんて言えない……)

揺杏(そもそも、みんな話のスピードが速すぎるんだよな、うん。私みたいなぼっちというか、コミュ障にも分かりやす…………自分で言ってて
悲しくなってきた…)

揺杏「……はぁ。せっかく服買いに来たってのに、何考えてんだ私は…」

爽「あっ。なあ揺杏、見てあれ。あれなんて似合いそうじゃないか?」

揺杏「えっ?……どうでしょう。獅子原先輩が着るには、正直…「何言ってんだ?お前が着るんだよ」……なんですって?」

爽「や、だから、着る本人の意見を聞きたいんだけど…」

揺杏「…………」





揺杏(…ダメだ。状況が把握出来ない)

揺杏(落ち着け私。先輩が『行くぞー!』って言ってからこっち、私の服を買う的な相談は一切なかったはz」

爽「揺杏、本当にどうしたんだ…?お前の服を買うって話は、一番最初にしたじゃないか」

揺杏「えっ、なんですかそれ。一番最初って…いつ?」

爽「ほら、ユ○クロが云々…」

揺杏「ん?あ、ああ。なるほどなるほど…………って」



揺杏(ついてけなくても話くらいはちゃんと聞いてろよさっきの私のバカーー!!)

ちょい中途半端だけど飯時なので終わり。今週のヤンガンも揺杏は輝いてましたね。成香と並んでとても可愛いです

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