魔女「世界は君が作る」(15)

男「だれだ」

魔女「私は魔女」

男「俺に何の用だ」

魔女「私は告げに来た」

男「なにを」

魔女「君は選ばれていた」

男「?」

魔女「世界は君が作っているの」


男「世界って?」

魔女「文字通りの意味。君が存在しているこの世界」

男「生憎自覚はないな」

魔女「あなたが何かを思えばこの世界はその影響を受ける」

男「そんなのは皆に言えることだろ」

魔女「違う。他の人間はどんな事を思おうが感じようが世界への影響はない」

男「俺もそうだ」

魔女「あなたは、違うの」

男「じゃあ俺が戦争がなくなればいいのにとか思うとするよな」

魔女「ええ」

男「そうすると戦争はなくなるのか?」

魔女「そうよ」

男「俺は常日頃からそう思ってるが戦争はなくなってないじゃないか」

魔女「それはあなたが心の奥底で、戦争は必要と感じているから」

男「そんなことねぇよ」

魔女「あなたは自分が被害にあわなければ戦争はどんどんするべき、そう考えてる」

男「……そんなことねぇって」

魔女「だから戦争はなくならない」

男「人が傷つくのは見たくないんだ」

魔女「うそ、あなたは人を従えたくてうずうずしている。
    他人よりも自分が上であればと常に考えている。
    そして他人が死ぬのが大好き。自分の関係ないところでならば」


魔女「どんなひどい死に方をしてもいいと思っている」


男「…………」


男「突然現れて何喚き始めたかと思ったら」

魔女「ただ、あなたはこう思っているはず」

男「なんだよ」

魔女「この女の話が真実だとして、何故俺は核戦争が起こっている世界にいないんだ」

男「思ってない」

魔女「その疑問に答えるわ」

男「思ってないって言ってるだろ!」

魔女「核戦争は起こさせない、そう願う勢力がいるからよ」

男「なんだと?」

魔女「あなたの世界への負の影響力は計り知れない。だから私はここへ来た」

男「え」

魔女「無自覚なあなたに真実を伝え、考えを改めさせるために」

男「……」

魔女「この世界はあなたが生まれたから出来たもの。

   でも、だからといってあなたの考えに賛同できない人間も生まれた」

男「それがお前ってか?」

魔女「そうよ」

男「なんで俺が世界を作ってるって前提上お前みたいなのが存在するんだ?」

魔女「私はあなた自身の良心の部分から生まれたの」

男「はぁ?」

魔女「あなたはすべてが悪ではない。4割ほどは善の部分がある」

魔女「その善のあなたが私みたいな存在がいつかこういう事ばかり考えている
    自分を止めてくれればいいのに、と願った」

男「冗談だろ、笑えねぇよ」

魔女「その証拠にあなた好みの容姿をしているでしょう?」

男「ぜんぜん」

魔女「うそは言わなくていいわ」

男「うそじゃない」

魔女「さて、そして……私は、あなたの善の部分の最終手段でもある」

男「えっ……がっ!!? かはっ……」

魔女「善のあなたはこう思った。あまりにも負の俺がこの世界を破壊するような事を
    考えたら、まずいよなぁ……」

男「……ぐふっ……」

魔女「だったら自殺でもするか」

男「!?」

魔女「それとも俺好みの女の子に殺されるか」

男「は!?ぐあっ!!!」

魔女「そして自殺する勇気のないあなたは私をこの世に存在させた」

男「ま、待て待て。俺はそんなこと思ってない」

魔女「もう遅い。あなたは私が終わらせにきたの」

男「お、俺が死んだらこの世界はなくなるんだろう?お前も困るだろ」

魔女「私は困らない、別の人の世界へ行く。そこでは普通の人間として暮らすの」

男「……」

魔女「なに?私は出来るわ。魔女だもの」

男「いや」

魔女「?」

男「話が本当だとしたら、やっぱ善の部分の俺とやらも俺だなと思ってな」

魔女「え?」

男「要はお前は俺を殺してこの世界を壊して」


男「この世界の他の人間たちは見殺し、だろ?」

魔女「!!」

男「俺の根っこはやっぱそうなんだなと思ってな」

魔女「違うわ!私はあなたを殺して核戦争など無い世界へ移動して」

男「この核戦争が起こりそうだった世界はぶっ壊してこの世界の人間は全員殺して」

魔女「違う違う違う!!!!」

男「違わない」

魔女「……私は……」

男「そんな発想が浮かばなかったって顔だな、なんでだろうな?」

魔女「……」

男「善の部分の俺は……俺よりはいいかもしれないが、所詮偽善ってことだ」

魔女「……」

男「俺に善の部分なんてありゃしないのさ」

魔女「殺す」 ジャキッ

男「その長いナイフでか?痛そうだな」

魔女「殺す殺す殺す!!」

男「てっきり俺を拘束したりしてるこの魔法っぽいので殴り殺すのかと思ったぜ」

魔女「うわあああああ!!!!」

男「すごい顔だ。自分の存在意義を全否定されたみたいな」

魔女「だまれええええ!!!!!」


男「やれやれ」

男「残念だな。お前は俺を殺せない」

魔女「!? ぐ……あ……」

男「儀善に殺されてたまるか、くそ女」

魔女(なん…………で……)


バタッ


男「ふー……」

「儀の善。善を形作っているモノ、そんなものに殺されてたくはないものね」

男「そのとおりだ」



魔女「ふふっ」


男「さっきので壊れるようなただのモノはいらない。

  俺が欲しいのは偽善を突きつけられて平然としていられるお前みたいな魔女だ」

魔女「ありがとう」

男「しかし本当に似てるな」

魔女「欠陥品の癖に顔だけは似てるからやっかいなのよね」

男「はははっ」

魔女「そういえば、次はどうする?」

男「節目節目でやばい事を俺が思いそうになると現れるんだったな」

魔女「ええ。とりあえず、何か思ってみればいいんじゃない?」

男「まだ耐えられるかねぇこの世界は」

魔女「まだいけるでしょ♪ふかーく心の底から思うのがコツよ」

男「そうかそうか」




男「はぁ……俺のいないところで戦争起きねぇかな……」




おわり

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