春香「風邪」 (31)

地の文ありですがよろしければどうぞ

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世間は三連休の初日、私たちアイドルにはあんまり関係無いけど、それでもカレンダーの休みの日ってわ

くわくするよね。
私、天海春香はと言うと…、風邪をひいて寝込んでいます…。よりによってお父さんとお母さんが旅行に行ってる日にひくなんて…。
喋るのも辛いですが、お仕事を休む事はちゃんと伝えないといけません。
ベッド脇の携帯を操作して、事務所に連絡します。
2コールの後、電話が繋がりました。

小鳥「お電話ありがとうございます、765プロです。」

春香「小鳥さんですか…?天海、春香です…っ。」

小鳥「あら、春香ちゃん、どうしたの?」

春香「風邪ひいちゃったので、今日はお休みさせてください…。」

小鳥「ええっ!?春香ちゃん、熱は計った?お薬飲んでゆっくり休むのよ?」

春香「小鳥さん…ありがとうございます…、熱、さっき計ったときは38℃くらいでした。」

小鳥「38℃…高いわね。今お家に誰かいる?」

春香「実は、お父さんお母さん、昨日の夜から旅行で居なくて、けほっ…今、私一人です。」

小鳥「そうなの…。その熱じゃ動くのも辛いわよね。誰かお見舞いに行けるか、聞いてみるわ!」

春香「うう…お願いしてもいいですか?」

小鳥「ええ、私も仕事が一段落したら行くから、安静にしているのよ?」

春香「はい…ありがとうございます…ごほっ。」

電話を切って、そのまま目を瞑ります。喉が渇いたので、重い身体を頑張って起こして台所に。
コップに水道水を入れて一気に飲み干し、またベッドに戻ります。

春香「うぅぅ…つらいよ…けほっけほっ。」

カチ、コチ、カチ、コチ。
時計の秒針の音と、自分のうめき声が大きく聞こえて、それが風邪の辛さを更に実感させていくような気

がします。
とにかく、寝れば、少し楽になるはず…だよね。







ピンポーン、と。玄関のチャイムが鳴る音が聞こえて、まどろんでいた意識を現実に引き戻します。
また重い身体を引きずるように、ベッドから出てマスクを付け、リビングのモニターで来客を確認すると

…。

春香「えっ…、しゃ、社長…?は、はい、げほっ、今、あけます。」

玄関のドアを開けると、高木社長がニコニコしながら立っていました

高木「おお、天海君。わざわざ開けてもらって申し訳ないね、体調はどうだい?」

春香「あんまり…良くない、です…。」

高木「ふむ、そうか…ここの所、天海君は忙しかったからねえ。体調を崩してしまうのも無理はない。」

高木「おお、そうだ。天海君、見舞いの品を持ってきたから、食べ物は食べられそうな時に食べてくれた

まえ。」

春香「社長……、ありがとうございます…わざわざ来て頂いて…。」

高木「はっはっは。実は午前中の会議がこの近くであったのでね。」

春香「なるほど…ごほっ、本当に、ありがとうございます。」

高木「おお、玄関で長話をしては身体にさわってしまうね。私はこれで帰るが、もう少ししたら如月君が

来てくれるそうだよ。」

春香「千早ちゃん…。うう、とっても、ありがたいです。独りだと、心細くて…。」

高木「うむ。後は如月君に任せて、私は失礼するよ。お大事に、ね。」

春香「はい…っ、社長、ありがとうございました。」

予想外のお見舞いで、少し嬉しくなります。渡されたビニール袋から取りだした冷却シートをおでこに張って、
救急箱の風邪薬を取り出します。朝、食べるのも辛くて飲めなかったし、今なら飲めるよね…。

ビニール袋の中には、他にも、お水、飲むゼリーが数個、栄養ドリンク、インスタントのおかゆ、
そして、千早ちゃんがよく食べてた黄色い箱の食品も入っていました。
冷やしておくものを取りだして、冷蔵庫に栄養ドリンクと冷却シートとゼリーを入れておきます。
黄色い箱とインスタントのおかゆは台所に置いておけば…と取り出すと、一枚の紙が入っている事に気がつきます。
目を通してみると、そこには高木社長の字で、

『風邪で辛いと思うが、ゆっくり休んでほしい。また事務所で天海君の元気な姿を見れる事を心待ちにしているよ。』

綺麗な字で、そう書かれていました。社長の気遣いに嬉しくて、ちょっとだけ泣いちゃいました。
紙を折りたたんで仕舞った後ゼリーとお薬を飲んだので、後はゆっくり寝ようかな、って思ったら、また玄関のチャイムが鳴りました。
リビングのモニターで確認すると、今度は千早ちゃんが立っていました。

春香「千早ちゃん…っ、鍵、開いてるから入っていいよ。」

顔を廊下に向けると、千早ちゃんがドアを開けて入ってきてくれました。

千早「お邪魔します。春香、大丈夫…?」

春香「今、薬飲んだから、きっとこれから良くなってくるよ…ありがと、千早ちゃん。」

千早「みかんを買ってきたから、後で食べましょう。台所に置いておくわね。」

春香「わぁ、嬉しいな…。うん、それじゃ私、寝ちゃうね。」

千早「そうね、ゆっくり休んでちょうだい。」

部屋に戻って、ベッドに横になります。千早ちゃんは、ベッドの横に居てくれています。
誰かが傍にいてくれる、って言うのはとっても安心するね。安心したら気が抜けてきた…。







春香「んん…。…、今、何時だろう…?」

目覚まし時計を確認すると、時刻はもう夜の8時。沢山寝ました。身体も朝に比べたら楽になっています。
冷却シートを剥がすと、ぱりぱりになっていました。寝間着が汗でちょっと気持ち悪いです。
ゴミ箱に冷却シートを捨てて、そう言えば千早ちゃんが居ない事に気がつきました。
時間も時間だし、もう帰っちゃったのかな…。

なんて思っていると、部屋の扉が開いて、千早ちゃんが入ってきました。

千早「春香、起きたのね。ご飯は食べられそう?」

春香「うん、大丈夫だよ。それより、千早ちゃん、お家帰らなくていいの?」

千早「うーん…病人の春香を放って帰るのは忍びないから、春香さえ良ければ泊めてもらえると嬉しいのだけど。」

春香「ええっ、う、嬉しいけど、千早ちゃんに移しちゃうよぉ…。」

千早「大丈夫よ、明日のお仕事は別の日にずらせるものだったから。」

春香「それなら…なるべく移さないようにするね。」

千早「ふふっ、気を遣わなくても平気よ。自己管理は徹底しているわ。」

春香「やっぱ千早ちゃんはスゴイや…。」

その後千早ちゃんは、自分の晩ご飯や替えの下着を買いに出かけていきました。
私のためにアイスを買ってきてくれるそうです。嬉しいな。







千早「お待たせ、春香。熱いから気を付けるのよ。」

春香「えへへ、ありがと。」

インスタントのおかゆでも千早ちゃんが温めてくれた、っていうだけで何となく美味しい感じがします。
そう言えば、千早ちゃんが言うには、私が寝ている間に小鳥さんが来てくれたそうです。
皮をむいたりんごが冷蔵庫にある、と言うので千早ちゃんと一緒にりんごも食べました。

千早「りんごは久しぶりに食べるわね。」

春香「千早ちゃん、りんご、あんまり食べないんだ?」

千早「恥ずかしながら、皮をむくのが苦手で…、嫌いな訳じゃないんだけれど。」

春香「そっかぁ…じゃあ、今度皮むき教えてあげるね。」

食事も終わったので、部屋に戻ってきました。私はベッドに腰掛けます。

春香「千早ちゃんに甲斐甲斐しく看病してもらえるなんて、私は幸せ者だよぉ。」

千早「は、春香…恥ずかしい事言うのはやめてちょうだい。」

春香「えへへ…。んっ、お薬飲んだよ。えっと…確か、和室の押し入れにお布団が入ってたと思うから、それ使っていいよ。」

千早「分かったわ。暖かくして寝るのよ?」

春香「うん。それじゃ、おやすみなさい。」

千早「おやすみ、春香。」

朝はとっても寂しかったけど、今は千早ちゃんが居てくれるから平気です。
明日には、良くなってるといいな。おやすみなさい、ありがとう、千早ちゃん。

おわり

一人暮らし組が風邪引くSSは見るけど実家組が…って言うのはなかなか見ないので書いてみました
まじはるちは正義。

一応これで二作目だけどSS書くのって難しいね、頑張ります
次はきっと響で書きたい

読んでくれてサンキュー

あ、申請出してきます

ところで、感想を求めるのって無粋だったりする?
普通に書くのは実質初めてだからどうなのかフアン・マタ

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