唯「脱出ゲーム?」(33)

唯「んん…うぅん…」

律「お、やっと起きたかー」

唯「あ、あれ? ここ、どこ?」

澪「私たちにもよく分からないんだ」

紬「目が覚めたら、皆ここに居たの」

梓「見た感じ、校内のどこかの教室なんですが…」

唯「そうなの? とりあえず早くここ出て帰ろうよ。憂に怒られちゃうよー」

律「いや、それがな」

唯「ん?」

梓「出られない、みたいなんです」

唯「え、どういうこと?」

紬「扉には鍵がかかっててね、窓も開かないようにされてるみたいなの」

澪「イタズラだとは思うけど、ちょっと度が過ぎてる」

紬「いったい、誰がこんなことしたのかしら…」

『軽音部の皆さん! おはよおおおございまああああああああす!!!』

澪「ひゃぁ!」

律「び、びっくりしたー!」

唯「なになに!?」

梓「心臓が止まるかと思いました!」

紬「もぉ…。本当にびっくりしたわ~」

『驚かせてしまったみたいで申し訳ありません!』

律「ったくよー。なぁ何のつもりか知らねーけど早く出してくれよー」

『出してあげます。ええ、出してあげますとも』

澪「意外にあっさりだな」

『ただし、ゲームをクリア出来たら、ですけどね』

唯「ゲーム?」

ウィーン

紬「あら? 何か箱が出てきたわ」

『ルールは簡単。その箱に入っている道具で、クリア条件を満たして下さい』

梓「いきなりすぎて何が何だか」

『説明は以上です。では、検討を祈ります』ブツッ

シーン

澪「…まさか」

律「ん?」

澪「殺し合いでも…させるつもりなのかな…」

唯「ええっ!?」

紬「そ、そんなこと!」

梓「と、とにかく箱を開けてみましょうよ」

律「そ、そうだな」

澪「開けたら爆発…とか、しないよな?」

律「げっ!?」

唯「ちょっと澪ちゃん! 怖いこと言わないでよー!」

紬「いいえ、十分に考えられることだわ」

唯「ムギちゃんまで!?」

紬「ここは多分、学校じゃないわ」

梓「え…?」

紬「学校を模した、どこか別のところだと思うのよ」

紬「だって、あの箱は床下から出てきたけど、うちの学校にそんな設備なかったじゃない?」

梓「た、確かに…」

紬「これだけの設備を整え、私たちを知らない間にここに運び込む」

紬「イタズラどころじゃないわ。これは誘拐…いえ、拉致監禁されたと考えて良いと思うのよ」

澪「拉致…監禁」

紬「だからね? 慎重にいきましょう?」

律「そうだな…」

梓「で、でもまずは、あの箱を調べない限り先に進まないと思います」

紬「そうね…」

唯「とんでもない事になっちゃったよ…憂…」

紬「…よしっ!」

律「ムギ?」

紬「皆、不安にさせちゃってごめんね。お詫びに、あの箱は私が開けるわ」

澪「そ、それじゃムギが危ないじゃないか!」

唯「そうだよ!」

紬「大丈夫! あれだけ脅かしておいて何だけど、爆発とかはないと思うし」

梓「そ、それでも、ムギ先輩が怪我をするかもしれないじゃないですか!」

紬「私、こう見えて打たれ強いから平気よ!」スタスタ

紬「じゃ、開けるわね」

律「ム、ムギぃ!」

紬「…」ドキドキ

紬「…えーい!」ガチャ

紬「…!」

律「ムギ、大丈夫か!?」

紬「え、ええ…」

澪「何も、起こらなかったな…」

唯「良かったよー」

紬「でも…、こんなのが入ってたわ」

梓「え…」

律「バ、バリカン…?」

澪「みたいだな…」

紬「それと、紙が入ってて…」

『クリア条件:誰か一人が坊主になること』

梓「な、なんですかこれ」

律「えっと…つまりこのバリカンで頭丸めろってことか?」

唯「え、ええー!」

澪「すごく嫌な条件だな」

梓「ちょっと拍子抜けしましたが、これはこれだ嫌ですね」

紬「女の子に頭を丸めろだなんて…」

律「で、誰がやるんだこれ」

澪「わ、私は嫌だぞ!」

律「私だってやだよ!」

梓「これはちょっと勘弁してほしいですね」

唯「私も嫌かな…」

紬「うーん…」

律「でもさすがにムギ以外の誰かがやらないとな」

澪「…そうだな。中身はこんなんだったがムギは危険を承知で箱を開けてくれたんだし」

梓「ですね…」

唯「…」

唯「…じゃ、じゃあ。私…やってみようかな」

梓「ゆ、唯先輩?」

律「良いのか?」

唯「うん…。私、いつも皆に迷惑かけてばっかだし、皆の役にたてるなら、やりたいな」

律「唯…」

紬「唯ちゃん…」

紬「…いいえ、唯ちゃんがやる必要はないわ」

唯「えっ?」

紬「…私が、やるわ」

梓「そ、そんな!」

律「ムギばっかりにやらせてちゃ悪いよ!」

紬「いいえ、良いのよ。開けたついでだと思えば」

澪「ほ、本当に良いのか?」

紬「ええ。それに私、一度ブリトニースピアーズみたいに坊主にしてみたいなって思ってたの~」ニコッ

唯「ムギちゃぁん…」

紬「それじゃ、いきます!」

唯「ごめんなさい…ムギちゃん」

紬「いいの! さ、一思いにいくわよー!」

チュイーン バリバリバリバリ

澪「あ、あわわ…」

律「ああ…ムギがぁ…」

梓「ムギ先輩の綺麗なブロンドヘアーが…消えていく…」

バリバリバリバリバリッ

紬「こんなものかしらねっ!」カチッ

唯「うわああああん! ムギちゃんごめんねええええありがとねええええええ!」

紬「どういたしまして~」

律「ホント…悪いな、ごめん」
紬「髪なんて、また伸ばせばいいのよ~」

梓「ううっ…」

澪「あ、梓どうした」

梓「ムギ先輩が良い人すぎて…、泣げでぎまじだ~」オロロ

紬「あらあら」

ビッ ピッ ピー カチャッ

紬「あら? 扉が開いた音かしら?」

澪「みたいだな」

唯「これで帰れるのかな!」

律「とりあえず、出てみようぜ」

梓「はいっ」

律「あ、あれ…?」

梓「また、部屋ですね…」

唯「え、ええー!」

紬「そんなぁ…」

澪「…」

唯「あ、あそこ…」

律「また…箱があるな…」

梓「またですか…」

紬「これが最後であってほしいわ…」

唯「次は私が開けるよ!」

律「い、良いのか唯。さっきは何もなかったけど、今度だって何もないとは限らないんだぞ?」

唯「ムギちゃんは開けて、そして私の代わりにもなってくれた!」

紬「あ、あのね唯ちゃん。あれは私がやりたかっただけでね…?」

唯「良いの! 私が開ける! 開けたいのっ!」

紬「唯ちゃん…!」

唯「ふんす!」ガチャ

律「ど、どうだ唯?」

唯「今度は…、爪きり?」

澪「…クリア条件は?」

唯「えとね、『クリア条件:誰か一人が深爪にすること』だって」

紬「なんか、さっきより…」

梓「随分甘くなりましたね…」

唯「じゃ、私がやりまーす!」

律「い、良いのか?」

唯「ギタリストにとって爪は邪魔なだけだよ!」

梓「深爪すると、指板押さえるとき痛かったりしますよ?」

唯「大丈夫っ! また生えてくるから!」

紬「ふふっ。それ、さっきの私の受け売りよね?」

唯「あ、バレたー?」

唯「ふぅー。こんなもんかなぁ?」

梓「随分深く切りましたね」

唯「どれくらいからが深爪か分かんなかったから」

紬「それぐらいまで切っちゃうと、拳握った時とか痛いんじゃない?」

唯「んー?」グッ

唯「あててっ」

律「だ、大丈夫かぁ?」

唯「へーきへーき!」

ビッ ピッ ピー カチャ

澪「開いた、みたいだな」

唯「よし、今度こそ帰れるよね!?」

梓「とりあえず行ってみましょう」

律「またか…」

紬「これ、いつまで続くのかしら…」

澪「…」

唯「いい加減、帰りたいよー」

梓「しかし私達を誘拐した犯人、暇なんですかね…」

律「ほんとだよな。こんだけのことしといて、やらせるのは嫌がらせレベルだ」

唯「りっちゃん! ムギちゃんのは嫌がらせで済まないレベルだよー!」

律「わ、悪い」

紬「大丈夫よ唯ちゃん。りっちゃんも、私気にしてないから~」

梓「…で、また箱がありますね」

律「ああ…」

澪「…」

律「どうした澪、さっきからだんまりだけど。もしかして気分でも悪いのか?」

澪「あ、ああ…すまない…」

唯「澪ちゃんは恐がり屋さんだから、仕方ないよ」

紬「大丈夫? 私が付いてるからね?」

澪「ありがとう、ムギ」

律「んじゃ次は…」

梓「私いきます!」

唯「あ、あずにゃん?」

梓「先輩方ばかりにやらせてちゃ、悪いです」

梓「いきます!」

律「ちょっ、行動はえーな!」

梓「やぁっ!」ガチャ

唯「ど、どう? あずにゃん」

梓「こ、これは…!」

律「なんかやべー物でも入ってたのか!?」

梓「い、いえ…。えと、クッキー、です」

律「は?」

梓「あと…、水と、湯沸かし器と、茶葉と、ティーカップと…」

紬「え、えーっと」

唯「お茶だ! お茶のセットだよ!」

律「それ以外、考えられないよな…?」

ピッ ピッ ピー カチャッ

梓「あ、開いた」

律「小休止、ってところか?」

紬「ど、どうなのかしら…?」

唯「とりあえずお茶にしようよ! 実はお腹空いてたんだよー」

紬「お待たせ~」

梓「ありがとうございます。ムギ先輩」

唯「なんだか、すごく久しぶりにお茶した気がするよー」

律「そうだなぁ」

澪「事実、結構な時間が経ってるだろうしな」

紬「…私ね、思ったんだけど」
唯「んー?」

紬「もしかして、これは何かの企画で、私達は撮られてるんじゃないかしら?」

律「どういうことだ?」

紬「ほら、たまにテレビでやってるじゃない。ドッキリ企画みたいなの」

梓「あー…」

紬「きっとどこかに隠しカメラがあって、撮られているのよ~」

唯「なるほど~!」

律「でも、何で私らなんだ?」

紬「…そこまでは分からないけど。でも多分、きっと、そうよ…」

澪「…そうであってほしいな」

律「…そうだな」

澪「私…少しトイレに…」

律「え、トイレなんかあったか?」

唯「なかったような…」

澪「…幸い、前の部屋には戻れるみたいだし。さすがにそういうとこは写さないだろ」

梓「えっ、澪先輩もしかして」

紬「梓ちゃんっ!」

梓「あっ、ごめんなさい!」

澪「いいさ。…覗くなよ?」

律「んなことしねーって」

唯「い、行ってらっしゃい澪ちゃん」

澪「…」

律「澪のやつ、おそいなー」

唯「ちょ、ちょっと遠くの部屋まで行ってるのかな?」

紬「き、きっとそうよ」

梓「そ、そうですよ!」

澪「ただいま」

律「あ、お帰り。遅かったな」

澪「…ああ。一番最初の部屋まで戻ってたからな」

唯「や、やっぱりかぁー!」

紬「そ、それじゃ先に進みましょう!」

紬「やっぱり、また部屋なのね」

律「そして、やっぱりまた箱があるんだな」

唯「この箱にも見慣れたね」

律「じゃ、次こそ私が…」

澪「いや、私が開けるよ」

梓「だ、大丈夫か?」

澪「ああ。怖がってばかりいられないからな」

澪「…」ガチャ

梓「こ、今度は何が入ってました?」

澪「………。今度はクリア条件が書かれた紙しか入ってないみたいだ」

律「な、なんて書いてあるんだ?」

澪「ああ。それはな…」ガシッ

梓「にゃっ!?」ビクッ

紬「澪ちゃんっ!?」

律「な、何やってんだ澪!?」

唯「え? え?」

梓「あ、あのー澪先輩…。首に何か当たってて痛いんですが…」

澪「すまないな、梓」

カチッ

梓「へっ?」

ヴィーーンヴィヴィヴィバリバリバリ

梓「えっ!? い、いたっ! いたい! え、ちょ澪先輩痛い痛いです痛いいたい痛い痛い痛い痛い痛い!!!」ジタバタ

紬「きゃあああああ!」

律「おいやめろ澪! 何やってんだ!!!」

唯「あ、ああああずにゃん!」

梓「痛い痛い痛い痛い!!!ホントに痛いんです澪先輩やめてやめてください離して離して離して痛い痛い痛い離して離して!!!! 離せえええええええええ!!!」ジタバタジタバタ

澪「…」

バリバリバリガリガリガリガリバリ

梓「いたいたいいいたいびぎあばばぶおえあくががかばぼ」ビクッビクッ

紬「お願いやめて澪ちゃん! 梓ちゃん死んじゃうわよ!?」

澪「…そりゃそうだ。殺すためにやってるんだから」

律「澪…!?」

梓「ぐええぶびぼっぼぼおおごぼぶぐべ…ぼご…おごぼ………」ビクビクビク

梓「」

カチッ…

澪「…ごめんな、梓」

唯「あ、あああ…」

唯「うああああああああああああああああ!!!!!」

唯「ああああああああああああああああ!!!!」

唯「あずにゃああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」

峯岸スレじゃなくてすみません。

今日は多分ここまでだと思います。

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