男「いい加減うざ」女「くない。愛してる。……照れるわ」(66)


男「言ってねえから! なんなんだよお前は本当に」

女「かわいいなあ。……照れるわ」

男「おい、人の話を最後まで」

女「聞く女ちゃんはお利口だなあ。……そんなに褒めないでよ」


男「はあ……」

女「どうしたの? 恋煩い? 私が解決してあげるわ」

男「お前が」

女「好きだ。……私もよ」

男「言ってねえよ」


男「お前なんかあい」

女「してる。……ポッ」

男「……会いたくな」

女「ったらいつでも来い。……ええ、遠慮なく」

男「会話する気はあるのか?」


女「今日学校でね、文化祭の出し物を決めたわ」

男「……」

女「メイド喫茶とお化け屋敷どちらかになるみたい」

男「……」

女「私のメイド姿見たい?」


女「あなたこそ、会話する気がない気がするけど」

男「……」

女「一つ覚えていて。私はあなたが好きよ」

男「……」

女「あなたにどう思われようとそれは変わらない。どんな感情のはけ口にでもなるわ」


回想

『あのね、今日調理実習でクッキー作ったよ』

『お、まじで? 俺にもくれよ』

『もちろん! あ、こっちがサッカー部の分で、こっちが男の分』

『サンキュー! じゃ、今日は張り切ってゴール決めてくっから見とけよぉー?』

『……』


『……見てたか!?』

『……うん! ほ、本当にかっこ良かったよ』

『クッキー食べたよ。美味しかった、点が取れたのもあれのおかげかもな』

『あ、ありがと……それでね、言いたいことがあるんだけど……好きですっ! 付き合ってくださいっ!』

『……』


男「……」

女「寡黙なあなたもかっこいいわ」

男「……」

女「クールで素敵よ。でも、その熱っぽい視線にくらくらしちゃう」


男「……」

女「いいのよ。言葉が無くても私たちは通じ合える」

男「…………」

女「ああ、そんな大胆なこと! でもあなたなら構わないわ」


男「黙るか消えるか」

女「キスするか……そんなの決まってるじゃない」ンー

男「近寄るな」

女「俺に触れると火傷するぜ。……ハードボイルドね」


男「お前本当に何がしたいんだよ」

女「……………………」

男「……なんだよ」

女「押してダメなら引いてみたの。どう?」

男「いや別に」


女「ねえ、私がここに来てるの、どう思ってる?」

男「…………正直うざい」

女「それならそれでいいわ。嫌なら早く元気になりなさい」

女「じゃないと1ヶ月だけじゃなくて何ヶ月も何年も来るからね」


回想

『お見舞いに来たわ』

『……』

『……梨、向いてあげる』

『……』

『苦しい時は泣いていいの』

『……』


『男君、泣いても……ひっく、いいの、よ』

『なんでお前が泣くんだよ』

『ごめんね、ごめん、止まらな……うぁぁぁ』

『……悪かった。失言だった』

『なんで、あなたは……ぐすっ、泣かないの?』

『…………』


男「そろそろ」

女「結婚しよう。……涙が止まらないわ」グスン

男「外出るから」

女「留守を頼む。……嫁としてここで待つわ」

男「帰れ」


女「おかえりなさい」ニコッ

男「いやなんでお前いんだよ」

女「ご飯にする? お風呂にする? いや、わ・た・し」

男「せめて選ばせろ」

ありがとうございます

>>13
『……梨、向いてあげる』

『……梨、剥いてあげる』です
誤字ごめんなさい


男「お前学校は?」

女「もう夕方よ。とっくに終わったわ」

男「部活は?」

女「マネージャーだって休みくらいもらうわ」

男「サッカー部はどうだ?」

女「……自分で確かめなさい」


男「魔法でも使えたらな」

女「……今のあなたに必要なのはそんなものじゃなく、勇気よ」

女「最初の一歩が怖いのは分かるわ」

女「でも、お願い。そこだけはあなたの力じゃないといけないの。後は私でも友達でも支えるから」

男「勇気があれば事故の前に戻れるのか?」

女「……」


男「毎日俺の家にきて、他に行くとこないのか?」

女「ちゃんと用事は済ませてから来てるから安心して」

女「あなたこそ、行くべきところがあるんじゃない?」

男「…….行けないからここにいるんだよ」

女「それもそうね、ごめんなさい」


男「……うっ」グスッ

男「……くそっ、どうして……こんなことに……」グスッ

女「……」コソッ

女「もう、3ヶ月かぁ……」

女「はやく、元気になってね……」


男「お前さ」

女「わってもいいか? ……胸?」

男「いやさ」

女「わりたいのはお尻だ。……好きにしてね……」

男「好き放題してんのはお前だ」


男「あのなあ、男に胸とか」

女「触らすんじゃないぞ。俺のものだからな。……もちろんよ」キリッ

男「俺のもの」

女「だから、今から揉みしだく。……優しくして」

男「ひっぱたくぞ」

女「乱暴にされるのもやぶさかではないわ」

男「黙れ」


男「毎日毎日よく飽きないな」

女「一途だから」テレ

男「自分の好きなことしろよ」

女「してるわ。愛情のままに行動してる」

男「やめろよ」

女「友情もあるわ」

男「……そうか」


男「俺にかま」

女「って欲しいなら服を脱げ。……肉食系ね。ドキドキするわ」

男「……用がないなら帰れ」

女「今日はあるわ」


女「怪我はとっくに完治してるのよ。後はあなたの気持ちだけ」

男「黙れよ。……今日はもう帰れ」


男「……そろそろ半年も過ぎちまう」

女「それでいいの?」

女「あなたの惚れた女は今のあなたを見たくなかったでしょうね」

男「誰のこと言ってんだよ」

女「もちろんあなたの幼馴染のことよ。私の……親友のこと」


回想

『男と恋人になれるなんて本当にしあわせっ。へへ~明日デートしようよ』

『俺も幸せだよ。映画でも見に行くか』

『ふふっ。なんか今までと変わらないね』

『そうか? 変わるかもしれないぞ。手、貸して』

『……うん、どうぞ』

『映画行く時も繋ごうな』

『もちろんっ!』


女「あなたと一緒に映画を見た帰りだったそうね」

男「…….」

女「タクシーに引かれて、あなたは全治一ヶ月の軽傷。幼ちゃんは……亡くなったのね」

男「……」


女「あなたの怪我はもう治った。でもまだ心の傷は癒えていないわ」

女「私が先に、泣いてしまったから……あなたは泣けないのね」

男「……考えすぎだ」

女「私が言ってはいけないことだと分かってる。でも、他の誰も言わないから、言うわ」

女「その結果、私を憎んでも構わないわ」


女「あなたはいつまで立ち止まってるつもり?」

男「何年の付き合いだと思ってる。忘れるなんて出来るか」

女「忘れる?」

男「……」

女「誰も忘れろなんて言ってないわ。まずは受け入れなさい。そして、ちゃんと悲しむのよ」

女「悲しみを吐き出したら死ぬ気で前を向きなさい。時間は傷を癒してくれるけど、決して優しくはないわ」


男「……」

男「……幼」

女「私に怒りをぶつけてもいい、悲しみを吐き出してもいいわ」

女「あなたに振られた時に約束したはずよ。こんないい女振るんだから幸せになりなさいと」グスッ

女「……」グスン


男「……女。手、握らせてくれ」

女「……うん。どうぞ」グスン

男「あぁ、あったかいな」

男「あいつも、あったかかったんだよ」

男「手握っただけですげー幸せでさ」

男「幼も喜んでて」

男「幸せに逝けたのかな……」


男「目、腫れてんぞ」

女「お互い様よ」

男「最近学校はどうだ?」

女「あなたが居なくて寂しいわ」

男「お前の気持ちじゃなくて」

女「みんなの気持ちよ」


男「文化祭の準備は進んでるか?」

女「あなたのメイド姿がみたいわ」

男「お前の気持ちじゃなくて」

女「みんなの気持ちよ」

男「嘘つけ」


男「なあ、お前幼といつからの付き合いだっけ?」

女「中学からよ、同じ部活だったから」

男「そっか。俺は小学校からなんだよ」

女「負けたわ」

男「勝ち負けじゃねえよ」

男「たまに羨ましかったんだ」

男「幼と仲良いお前が。嫉妬してたかもな」

女「なにそれ」クス


学校

男「おはよ」

友「! よっす。久しぶりだな」

男「……何も聞かないのか?」

友「あー、大体分かるからな。言いたきゃ自分から言えよ」

男「そうだな、ありがとう」

友「ただ……まあ、おかえり」

男「ただいま」


男「文化祭の準備も途中参加で本当にごめん! 雑用でも何でもするから」

「雑用? いや、それもしてもらうけど」

「男は喫茶店だよ」

「サイズ合うかな? ちょっと着てみて」

男「おい、それメイド服だぞ」

「男のメイド服萌え~」

女「マジ萌え~」


男「なんで、俺がメイド服なんだ……」

女「なんでかしらね」

友「ああ、これのせいだろ」ピラッ

男「なんだこれ、俺のメイド服の写真? こんなの撮った覚えないぞ」

女「パソコン得意な子に頼んだコラ画像だからね」

男「お前のせいか」


男「ああ、幼が交通事故で死んでから、もうすぐ一年か」

男「悲しみを吐き出して前を向く、か」

男「そろそろ行かなくちゃな」


女「おかえりなさい」

男「どっから入ってきた」ビクッ

女「玄関からよ」

男「鍵はどうした」

女「植木鉢の下の合鍵よ。今更ね」

男「ああ、幼から聞いてたのか」

女「昔、笑顔で教えてくれたわ」


女「嫁として必要だから鍵持って帰ってもいい?」

男「嫁じゃないからだめだ」

女「好きよ。今すぐ結婚して」

男「悪いな。恋人として好きなのは幼だけだ。友達としては……」

男「……(逆に好きだって言ったらどうなるんだ?)」

男「好き」

女「焼き食べたい」

男「……なん、だと」


男「あいし」

女「ぃるど21!」ダッ

男「うん、無理があるな」

女「ごめんなさい」


男「そういえば、学校でさ」

女「俺の嫁って紹介したいんだけど。……構わないわ」

男「俺の嫁って紹介したいんだけど」

女「……!? かか、構わにゃいわ!」

男「いや、冗談だ」


男「そういや」

女「らしいことがしたい。……キスからお願い」ンー

男「変なとこで切るな。お前って料理出来るっけ?」

女「まあ人並みには。あんまり期待しないでね」ンー

男「そうか。お前もキス期待すんのやめろ」


男「まあ、料理が出来るのっていいよな」

女「なるほど、結婚しましょう」

男「一人暮らしだと」

女「寂しいから一緒に暮らそう。……もう、甘えんぼね」

男「ビンタしていいか?」


男「今日親いないから」

女「えっ、待って。ちょっと着替えてくる」

男「待てや」

女「……優しくしてね」

男「料理教えてくれ。出来れば無駄口叩かず」


女「ねえ」

男「……なんだよ」

女「裸エプロンってどう思う?」

男「絶対にやるなよ」


女「何作るの?」

男「腐らないものかな。クッキーとかでいいか」

女「料理じゃなくない?」

男「いいんだよ」


女「元気になったね」

男「誰かさんが突っ込みばっかさせるからだろ」

女「やん、突っ込みなんて……」

男「こんな風にな」

女「あ、ちょっと挿れすぎ」

男「ん、砂糖多かったか?

↑」つけ忘れました

男「クッキーって意外と簡単に出来るんだな」

女「シンプルなレシピだからね。結構時間かかるのもあるわ」

男「……」モグモグ

女「どう? 自分で作ったクッキーは?」

男「まずい」


女「え、うそ。……普通じゃない」モグモグ

男「ああ、前に食ったのがうまかったってことか」

女「私のあげよっか?」

男「いや、食うのはこれだけだ」

女「……あ、そっか。分かったわ。それなら防腐剤ないと」


女「着いていった方がいい?」

男「どっちでも大丈夫だよ。お前が会いたいなら会いに行こう」

女「そうね。私も会いに行くわ。あなたを元気にしたんだから。今度は胸を張って幼ちゃんに報告できるわ」

男「クッキー忘れるなよ」

女「持ったわ」


墓地

男「……」

女「……」

幼。会いにきたよ。一年も待たせてごめんな。

俺、お前がいなくなってから泣けなくてさ。薄情な自分に腹が立ったよ。

でも、違ったんだ。幼の死を実感した時、本当に本当に悲しくなったんだ。

もうお前と話せない。お前に触れられない。お前に会えない。

それが、悔しくて悲しくて一晩中泣いたよ。

心配かけたと思うけどもう大丈夫だ。

ちゃんと前向いて頑張るから。

だから最後にこれだけは言わせてくれ。

お前のこと誰よりも愛してる。



終わりです

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