比企谷「ぼっち過ぎて暇だからSAOやる」 (1000)

慣れないことはするもんじゃない。 
 
 
高校の入学式に向かう俺の前に、突如車に轢かれそうな犬が現れる!

 
 
俺は反射的に、何処かの物語の主人公のようなヒロイックな行動をとった。つまり、犬を助けるべく車の前に飛び込んだのだ。

 
 
しかし、現実は甘くない。俺の中にいる何かが目覚めるわけでも、奇跡の力で助けられるわけでもなく、ドンという鈍い音を立てながら、俺は車に撥ねられた。

  
 
まあ、犬は無事だったそうだし、俺も死ななかっただけ運が良かったのかもしれない。ただ、全治3週間と言う長い期間が、微分子レベルで存在していた”友達をつくれる可能性”を潰してしまったようだ。

 
 
中学時代のボッチライフを繰り返さないために、わざわざ同じ中学のやつらがいかない高校にしたが、無駄になってしまった。いや、そもそも事故にあわなくたって友達ができなかった可能性もあるけどな! 実際できない気がする。あれ、もしかしてたいして変わらないんじゃね?

 
 
そう考えたら、友達を作る努力をはじめからあきらめることで、無駄な努力をせずに済んだのかもしれない。おお、俺って超ポジティブじゃん。

 

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ともあれ、ぼっちは暇である。部活もしてないし、勉強以外することがないから成績がどんどん上がっている。数学? 知らない子ですね……。そんな時、いや具体的には高校1年生の11月6日に、妹の小町がとあるゲームをもってきたのだ。

 
 
そのゲームの名前は、「ソードアート・オンライン」である。

 
 
俺自身ゲームはそれなりにやってきたが、このゲームは今までのものとは全く異質なものらしい。なんでも、なーぶぎあ?なーヴぎあ?と呼ばれるヘルメット型ハードを通して意識ごとゲームに入り込めるという何とも未来的なものなのだ。

  
 
ゲームの中に入り込めるなんて誰でも一度はやってみたいと思うだろうが、このゲームは価格にして10数万円であり、とても俺が買える代物ではなかった。だが、小町が親父におねだりしたところあっさりと買ってもらえたらしい。親父、マジで小町に甘すぎだろ……。

 
 
まだ小町はやったこと無いらしいが、年中暇な俺のために使わせてくれることになったのだ。やっぱ妹ってマジ天使。

天使さん憐みの目でこっちを見ないでください。
 
ベータテストが終わり、今日が正式稼働日である。ソフトがどういった経緯で発売日当日に手にできたかは知らないが、親父の小町愛による努力だと考えると、どうでもいいことだ。どうせ発売日からできるならラッキーだと思ってやるだけさ。割と楽しみだしな。

 
 
よし、どうでもいい前置きはその辺にして、俺はゲームを始めることにしよう。ハンドルネームは……ヒキガエル?ヒキコモリ?ヒッキー?なんでこんな悲しいものばかり浮かんでくるんだ……まあ、あまり気取ったものや痛々しいものにすると黒歴史になっちまうし、無難に「hiki」でいいか。

 
 
中学の頃アンケートの名前の記入で「ブラック・ナイト」と書いたのがクラス全員にばれたのは今となってはいいトラウマです。

 
  



比企谷「……リンクスタート」

 
 
 
 
 
いやなことを思い出していたからなのか、自分でもびっくりするくらいの低い声が出た。暗すぎだろ、俺。これから楽しいゲームをやるんだ、テンション上げていこうぜ!

 
 
 

まずはアバター作成か。

  
 

「アバター」とは、ゲーム内における自分の姿である。アバターは自由に設定でき、高身長であったり、イケメンであったり、美人、虚乳、色黒、赤髪、澄んだ眼、鋭い眼、腐ってない目などと自由に設定できる。現実でいくら腐った眼をしていようが、ゲーム内では腐ってないことにできるのだ。

 
 
こうして澄んだ眼をしたイケメンアバターが誕生した。小町にバレたら軽蔑されたりしてな……いや憐みの目で見られる気がする。むしろ現実逃避する俺を見て泣かれるまである。

 
 
ソードアート・オンライン、略して「SAO」。

基本的に武器は接近戦用武器のみで、魔法なしのMMORPGである。
澄んだ目でゲーム内を見渡せば、そこは現実と言われても不思議じゃないほど美しいグラフィックの世界が広がっていた。いや、たぶん現実よりも美しい風景かもしれない。よくもここまで作り出せたもんだ。

 
 
景色を楽しむのもいいが、とりあえず町に入ってみるか。ああ、歩いていても本当に現実と変わらないな。もうここが現実でいいんじゃないかな。目が腐ってないし。町の中もRPGゲーのような町並みがしっかりと作られているみたいだ。

 
  

………………

 
 
しばらくは、黙々と街中を探索した。

 
 
このゲームを少しやってみてわかった事がある。それは情報の有用性とその格差だ。戦闘をする前に始まりの町をぶらついて情報を集めようと思っていたが、NPC以外に、特定のプレイヤーが多くの情報を持っていることがわかった。

 
 
それはβ版テスター。奴らはサービス前からSAOをプレイしているから、一般プレイヤーよりも多くの情報を持っている。もしかしたらβ特典の装備なんかもあるかもしれない。まあそれはネットゲームにはよくあることだし、とくに不思議にも思わない。それに、こんな大型MMOなら、差なんてすぐに埋まるはずだ。

 
 
だから、俺はまず情報集めに専念することにした。βテスターだったり、ガイドブックだったり、NPCからも多くの情報を仕入れる。これが一番ゲームを進めるのに効率がいい気がする。ボッチパーティーならこんな地味な作業が許されちまうんだぜ! ボッチ最強!

 
 
 
 
 
「また聞きたいことがあったら、いつでも呼んでくれ」

比企谷「ああ、サンキューな」

  
  
 
 
 
  
思い立って情報集めすること4時間、俺の持つ情報処理能力(笑)が火を噴いた。まあ、実際結構な量の情報が集まったわけだが、”支えな豆知識”から”討伐・攻略方法”までと幅広い情報である。

この調子で集めていけば情報屋でも開けるかもしれないな……。

 
 
とりあえず情報集めはこんなもんにして装備をそろえるべく、武器屋に入った。いや、入ったはずだったが、俺は武器屋ではなく、広場にいた。 
 
 
……バグか? 
 
 

と、思ったがそうじゃないらしい。広場には俺の他に、たくさんの数のプレイヤーがいた。うわぁ、人がゴミのようだ。どうやらSAOの管理者によって集められたらしいな。だが、みんな口々に「ログアウト」と言う言葉を発しているのが気になった。……ログアウトバグでも発見されたのか? 
 
 
あれ? メニューにログアウト自体なくね? さっき見たときはあったはずだぞ。

 
 
ははあ、この不具合についての説明があるわけだな。SAO管理者もついてないな、初日からこんなバグが出ちまうなんて。 
 
いや、俺が暇人でよかったよ。現実でも別に約束も用事もない。なんならこれから3週間はないからな!なんか泣きたくなってきた。

 
 
そうこうしていると、上のほうから”warning"と書かれた無数のウィンドウが現れた。

 
 

うわ、空、赤!エフェクトが気持ち悪い感じになってんぞ。恐怖を助長してどうするんだよ、つーか怖いんでやめてください。これじゃプレイヤーを逆なでしちまうんじゃねえか?全然謝罪のふいんき(なぜか変換できない)じゃねえんだけど!

 
 
 
 
 
 
               ・ ・ ・

???「プレイヤーの諸君、わたしの世界へようこそ」

  
 
 
  
 
 
 
  
怖!なんだこの演出!上空にでっけえアバターが浮いてんだけど!……ん?”わたしの世界”?

 
 


 
 
???「私の名前は茅場晶彦。今この世界をコントロールできる唯一の人間だ」

  
  
 
 
 
なんでそんなに偉そうなんだよ! 不具合の謝罪しろよ! ってあれ?茅場ってあれか?このゲームの……ええっとあれだ、開発者だ。

……なんだか嫌な予感がする。

俺の危険回避センサーがさっきからずっと振りきっている。周囲もざわついていて、「イベントか?」とかいってる連中もいた。こんな現実に支障をきたすイベントがあってたまるかよ。 
  
 
 
 
  
茅場「プレイヤーの諸君は、メインメニューからログアウトボタンが消滅していることにすでに気付いていると思う。しかし、これはゲームの不具合ではない。SAO本来の仕様である」

 
比企谷「…………」 
 
 

つまり、どういうこと? ログアウトできなくしたってことか? 
集団催眠による監禁かなんかか? 俺の親、身代金払ってくれるだろうか……。いや、落ちつけ俺。とりあえず最後まで聞こう。
 

 
 
 
  
 
茅場「諸君はゲームから自発的にログアウトすることはできない」

  
 
 
 
  
周囲のざわつきが一層大きくなった。

やはり、ネットワーク監禁みたいなものか。新しい技術が生まれるたびに犯罪の方法が増えるんじゃ人類の発展は難しいな。

  
 
だが、まてよ。自発的じゃなくて外発的ならいいんだろ?

一人暮らしだと無理かも知れんが、現実で誰かがヘルメットはずしてくれりゃログアウトできるじゃねえか。はっはっは、甘いな茅場、お前の監禁方法には穴があるぜ! 

 
 
 
茅場「また、外部の人間の手によるナーヴギアの停止、あるいは解除もあり得ない」

  
茅場「もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」

  
  
 
 
穴無くなったわ。……え?ちょっと待てそんなんじゃ外部の人間が無理やりはずしたら死ぬってことだろ? こんなに数がいりゃ絶対何人か死んじまうんじゃねえか?

  
 
周囲のざわめきがうるさくてろくに考えられない。頭をフル回転させて現状理解しようとするが、茅場は間を空けることなく淡々と話を続けた。




 
 
 
  
茅場「残念ながら、現時点でプレイヤーの家族・友人などが警告を無視し、ナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、 その結果、213名のプレイヤーが、 アインクラッドおよび現実世界からも永久退場している」 
 
 
 
比企谷「……は?」

  
 
ちょっとまて。いや、何を言ってるんだこいつは。永久退場って、死んだってことか?

……ふざけんなよ。なに人のせいみたいなこと言ってんだよ。どう考えても殺したのはお前じゃねえか。ここまでの間の213人はまるっきり無駄死にじゃねえのか。誘拐かなんかは知らねえが人質を取るにしてももっと安全なやり方はなかったのかよ。 
  

 
 
茅場の周りに数個のウィンドウが浮き出した。ニュース画面のようだ。

 

 

茅場「御覧の通り、多数の死者が出たことを含め、この状況をあらゆるメディアが報道している。よって、すでにナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっているといってよかろう。諸君らは、安心してゲーム攻略に励んでほしい」

 
 
 
 
人が無意味に死んでるのに、何が安心できるっていうんだよ。いや待て、今こいつは何と言った? ゲーム攻略? こんな状況でゲームやるわけねえだろ。何を言ってんだ? 
  
 
 
 
茅場「しかし、十分に留意してもらいたい。今後一切ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HPが0になった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に、諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される」

  
 
 
 
だから、何いってんのこいつ。ゲームなんてしねえって…………いや、もしかしてこいつ…… 
 
 

  
 
 
 

 
 
 
茅場「諸君らが解放される方法はただ一つ、このゲームをクリアすればよい」

 
  
 
 
 
 
 
……なんてこった。

  
  

  
こいつの目的は監禁して身代金をとる事じゃなく、人間を使った本格的RPGをさせるためって事か。人を殺すのに躊躇ない分、誘拐犯よりもたちが悪いじゃねえか! 俺たちは、こいつの快楽に命がけで付き合わされるということか?ふざけんじゃねえぞ。

  
 
無理やり人を捕まえずに、遊び相手くらい自分で探しやがれ。俺はボッチだが、遊び相手がいなかったからと言って無理やり付き合わせたことはねえぞ。

 
 
周囲から「ふざけんな!」とか「いい加減にしろ!」といった声が聞こえてくる。もっともだ。しかしそんな言葉が届くとは思えない。こんなことをやってのける人間の頭が正常なはずがないからな。

 
 
そして周囲から「アイテム?」「プレゼント?」という声も聞こえてくる。やべえ話聞いてなかった、何の話?

 
 
そう思った瞬間、周囲が光に包まれた! って、俺もかよ……!

 
 

…………
数秒後、光が収まり、周りを見渡せるようになった。
いったい何が起こったんだ? と、考える間もなく、周りが騒ぎだした。

 
 
 
 
「なんで?俺の顔がアバターじゃなくなってる!?」

「お前男だったのかよ!」
「17って嘘かよぉ!?」
「お前キリトか!?」
「お前はクライン!?」
「俺の美貌を返して!!」

  
  
 
 
つまり、アバターが現実の姿に変えられたということか。プレイヤー間による公開処刑。

俺はここで初めて、ボッチでよかったと思った。鏡を見るまでもなく、俺の目は腐っていることだろう
…………ギャップを知る人間は俺の周りにいない。


だが、何のためにだ?ゲーム鑑賞したいならアバターは現実世界のものじゃ意味なくねえのか?いや、現実的にさせるためにそうした、と考えるのが妥当か。
 

 
 
 
 
 
茅場「私の目的はすでに達せられている。この世界を作り出し、観賞するためのみ、私はSAOを作った」

茅場「そして今、すべては達成せしめられた」

  
 
 
 
  
おい待てよ、好き勝手言いやがって! 手前の目的なんか知るか! 俺は部屋に戻るぞ!

 
 
何を考えても口から言葉になることはなかった。むしろ、まったく動けなかった。

 
 
 
茅場「以上でSAOのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る」

  
 
 
 
 

  
 
 
 
 
茅場のアバターは煙とともに消えた。俺を含めて周りのプレイヤーは、そのまま虚空を見上げて呆然としていた。

  
  
……いったいどうしてこんなことに、なってしまったんだ。

小町のやつが心配しちまうかもしれないな……外部にメッセージ送る方法はないんだろうか……。

  
 
周りは徐々に絶望の声をあげ、騒ぎ始めていたが、俺はその場から動くことができなかった。

 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 

 

とりあえずここまで

騒動から約1時間が経過し、俺はようやく動き始めた。茅場が言っていたことが本当だと確信したからだ。

 
 
本来なら夕食の時間であり、たとえゲームをやっていても小町に無理やり起こされるはずだ。しかし、俺は未だゲームの中にいる。つまり、現実世界でナーヴギアをはずして死んだ人が、本当にいるということだ。

1時間という長い時間のおかげで、なんとか自分の陥っている状況を理解することができた。
  

いや、理解せざるを負えなくなったというのが正しいか。
   

 
とりあえず俺は……何をするんだ?
今わかっていることは誰かがゲームをクリアすれば現実に戻れるってことくらいか。
なら、俺はどうしたらいい?

 
 
とにかく、何かしてないと落ち着かない。

いつまでもここで突っ立って時間を無駄にするよりは、再び街を見回ってみる方がいいだろう。

俺は歩きながら、自分の情報処理能力をフルで使い、やるべきことを絞り出すことにした。

 
 
 
 
一つ目。

誰かがゲームをクリアするまで、もしくは現実で何らかの対処がとられるまで、
できる限り安全な状態で待つ。

 
 
俺的には、最善の策かもしれない。

 

 
 

 
二つ目。
自分でゲームをクリアする。

 
死ぬリスクを犯してか? 



 
 
 
三つ目。

諦めて死ぬ。論外だ。三つ目はなし。

簡単に言い換えると、自分でやるか人任せにするかの問題だ。

 
なら、当然人任せにする。俺よりゲームが上手いやつなんて腐るほどいるだろうし、そいつらに任せた方がいいだろう。
餅は餅屋だ。

 













…………いや、なにか大事なことを忘れていないか?

 
 
 
 
 
 
 
 
そうだ。小町の事だ……。

あいつは俺が暇でかわいそうだから、とかいう理由で俺にSAOをやらせてくれた。
今考えたら、こんな危険な目に会うのが小町じゃなくてよかった。

 
 
だが、小町はそう思っていないだろう。そういう奴だ。

俺以上にしっかり者で優しいやつだからこそ、俺にゲームを貸したことを後悔してるだろう。
あいつが悪いわけじゃないのに、あいつは自分を責めちまう。

 
 
 
 
…………だったら俺は、小町が心配しないようにしないといけない。 





俺は改めて、自分の状況を整理した。”現実世界も含めた、自分の状況”を、だ。



そして、自分のこれからの行動を決めた。


 
 
 
 
 
 

俺は、ゲームをクリアして現実に帰る。

 
 
 
 
 
   
 
 
 
 
どれくらいの期間でクリアできるかなんて見当もつかないが、早く帰らなくてはいけない。

 
 
小町にいつまでも心配させるわけにはいかない。

 
 
早く帰って、あいつを安心させるまで、俺は全力でゲームクリアに専念する。 
 
 
……他人任せになんてしていたら、いつクリアできるかわかったもんじゃないしな。




……………………




ゲームクリアを目指すなら、俺はどう行動すべきだろうか。
 

 
何時間か前にβテスターに聞いた情報だと、ここら一帯の”刈り場”には限りがあるらしい。刈り場がなくなる前にさっさと次の町へ行ったほうが良いはずだし、安全に進むルートも聞いている。……だが、いくら道を知っていてもこの混沌とした状況で無事に次の町へ行けるのか、と言うと、まったく自信がない。ないもんは、ない。

  
 
だから、今無理に進むよりも”これから”のためにもっと情報を集めるべきだ。

 
 
 

 

 


街にはまだ呆然と立ちすくむ人々が多くいた。 
  
 
だが、こうして見渡してみると、この町に残っているプレイヤーの3割くらいは、しっかりと目的をもって行動しているように見える。こんな状況でよく、自分を保っていられるもんだな。まあ、それ以外の連中はいまだに何をしていいかわからない様でその場にたたずんだり、行き場もなくうろうろしているようだが……。

  



 



 

情報をある程度集めたとき、俺は自分のステータスを見直した。

 
 
武器は短剣。

軽いし動きやすいから逃げるのに適してそう、という理由でこれにした。防具はまだ初期装備のままだ。初期で買える防具なんて限られているし、金を使うなら武器やアイテムの方がいいだろう。
そして今俺が手にしたいスキルがいくつかある。隠蔽、索敵、生存能力系統だ。
前者2つは、情報収集と安全確保のために取っておきたいスキルだ。生存能力は回復スキルなので、ボッチプレイヤーなら必須になるだろう。

  
  
こんな状況ならパーティーやギルドを組んだほうが正解だろうが、あいにく俺は足を引っ張るのが好きじゃないし、命を任せられるほどの責任を背負う覚悟もない。なら、予定通りボッチでいいだろ?

  
  
命がかかってるゲームじゃ、いつどんな状況で危険が襲ってくるかなんてわからない。最大の敵はモンスターじゃなくて人だった、なんてこともあり得るしな。人間は極限状態に陥った時、そのほとんどが自分を優先させる。さっき情報収集していた時気付いたが、βテスターが広場の騒動以降、まるっ切り見かけなくなってしまった。……まあ、当然と言っちゃ当然だ。効率のいい刈り場を求めて次の町へ向かったんだろう。

 

 
 
こういう時こそβテスターは一般プレイヤーを助けるべきなんじゃないか? という奴もいるかもしれない。もちろん、それは正しい意見だ。右も左もわからない世界でどう行動するかを正しく教えられる人がいれば、無駄に死ぬ人が格段に減るはずだからな。

  
  
だが、俺がβテスターだったとしてもおそらく他のやつを助けてる余裕はないだろう。実際、今俺は他の一般プレイヤーよりは多くの情報を持っているかもしれないが、この状況じゃ自分がどうするかを考えるので精いっぱいだ。まあ、恨まれても文句は言えないけどな。

 
 
???「なあ、アンタ! もしかしてβテスターか?」

 
 
そろそろ切り上げてモンスター討伐でも試してみるべきだろうか……。回復アイテムはそれなりにあるし、死ぬことはないだろう。

 
 
???「なあ! おい! アンタだよアンタ! 聞こえてるか!?」

 
 
比企谷「え? 俺?」

 
振り向くと、赤髪の男が立っていた。

別のだれかを呼んでるのかと思ったぜ。間違えて返事したら恥ずかしいから、確信するまで返事しないようにしてるんだよな。まあ、呼ばれる機会なんてほとんどないし。

 
 
???「ああ、そうだよ! もしもβテスターだったら俺たちにいろいろとレクチャーしてくれないか? 無理にとは言わないが、頼む!」

 
 
比企谷「悪いが、俺は一般プレイヤーだ」

 
 
???「あ、そうだったのか……迷いない足取りだったからついな……」

 
 
なんでガッカリされなきゃなんねえんだよ。なんか俺が悪いみたいになっちまったじゃねえか。まあ、状況が状況だから、頼れる人間がほしい気持ちはわかる。

 
 
 
比企谷「それなりに情報は集めているから、そう見えただけだろ。まあ、聞きたいことがあるなら教えてやるぞ? 知ってるかどうかはわかんねえけどな」

 
 
???「マジで!? マジで!? サンキュー!! ありがとう!!」

 
 
 
いや、俺はあくまで一般プレイヤーだからね?

 
 

 
 
???「俺はクラインって言うんだ。よろしくな!」

  
  
あれ?ちょっと質問に答えるくらいのノリだったのに、なんかこれから一緒に行動するみたいな挨拶が始まったぞ? 何? 友達になってくれんの?

  
  
比企谷「俺は比企っ……ヒキ、という。よろしく」

  
  
空気が悪くなるといけないので一応挨拶を返した。思いっきり噛んだ。

 
 
 

 
 
………………




 
今、俺は猛烈に後悔している……。確かにクラインは”俺たちに”と言っていた。
でもまさか6人もいるなんて思ってなかったんだ。
助けて……。

 
 
クライン「こいつらは俺のリアルな知り合いでな、このゲームでも一緒に行動することにしたんだ!」

  
「よろしくー」
「うーっす」
 
しかもリアルで知り合いとかもう俺入り込む余地ないじゃん。
完成されてるじゃん。
つーか6人で囲わないでください、かつあげでもされてる気分だ。金なら払うんで帰っていいですか?

 
  

 
  
クライン「もしかして疲れてるのか? 目がひどいことになってんぞ。まああんなことがあったあとじゃ無理ねえか」

 
 
いや目がひどいのはデフォルトなんで。

 
 
比企谷「いや、大丈夫だ。それより、何が聞きたいんだ?」

 
 
クライン「……そうだなぁ……あっそうだ! 戦闘の仕方を教えてくれないか? 俺は茅場が現れる前に、βテスターのやつに一通り教わったんだけどな」

 
 
クラインは周りを一瞥すると、頭をかきながら言葉をつづけた。

 
 
クライン「こんな状況だから、こいつらも戦闘方法を知っておいた方がいいと思うんだ。こう言っちゃなんだが、俺はあんまり人にものを教えるのが上手くなくてよ」

 
 

 
 
なるほど、こいつらはこんな状況でも、落ち着いて先を見据えているようだ。この世界で生き抜くため、いやゲームをクリアするために動いている。そういうことなら協力してやりたいが……。

 
 
比企谷「情報だけでいいなら戦闘のコツとかは知ってるが、戦闘自体はまだやったことないぞ。むしろ今から試しに行くところだ」

 
 
力になれなくて悪いな、と続けるつもりだった。

  
  
クライン「それなら丁度いいじゃねえか! 一緒に行こうぜ! ヒキ!」

 
  
比企谷「…………あ、ああ」

 
 
恐るべしリア充。

こんな自然に人を誘える奴に、俺はあったことがない。
いや、そもそも俺は人に誘われることがないから比較対象がほとんどいないんだけどね。
  






ここまで
感想サンクス


俺ガイル勢はヒッキー以外出ないのかな

>>64
出さないよ
一応設定では1年生の11月だから、比企谷の知り合いで出せるのは
材木座くらいになっちゃうしね
材木座もこの時点で知り合いかどうかは知らんけど

ヒッキーって一応年上には敬語使ってた気がする

八幡NPCはまだしもよくβテスターに話しかけられたな
声かけるのすらためらいそうな感じだけど

面白そうで期待してるよ

乙、一生のお願いだから完結させてくれよ…

>>67
ネットゲーだと年齢とか後悔しないし、そんなに話し言葉を使い分ける必要ないと思って
こういう感じにしました。比企谷がそうするってソースはないけど、クライン相手に敬語なないかな、と。

>>73
ネット弁慶という言葉があって、現実世界でいくらコミュ障でもネットでは
割と饒舌になる奴が多いんだよ。ソースは俺。

>>74
 こ こ で 使 う な

ちょっとしたら投下

補足
>>67
見るからに年上とか、老人とか敬語を使うべき相手には敬語って感じにするよ
あと全く興味のない相手や、仲良くできなさそうな相手には敬語。

クライン「ヒッキーよお、お前本当に戦闘初めてなのか?」



開始から4時間。
もうあたりは暗くなっていたが、俺(ぼっち)とクライン(リア充チーム)はまだ戦闘練習を続けていた。
練習相手はスライムレベルの雑魚モンスター、豚野郎”フレンジーボア”だ。
クラインは経験者とあって教えるまでもなかったが、ほかの5人もゲーム自体に慣れているようだったから、呑み込みが早かった。

 
 
比企谷「ああ、この戦闘システムだとソードスキルの出し方さえ知ってればなんとかなるみたいだ」

 
 
ソードスキルとは、一言でいえば、技である。出し方はかめはめ波と同じで、ポーズをとってハア!っとやれば勝手に発動する。

 
 
クライン「でもよお、さっきからおめえ、直撃ばっかじゃねえか。俺なんか敵に攻撃を当てるだけで精一杯だぜ?」

 
 
比企谷「それは、俺の武器が短剣だからだ。短剣は早い上に直撃になりやすい。その分攻撃力が低いから、お前の武器よりも手数が必要なんだよ」

 
 
それに、敵に何かを当てるという動きは一人テニスを極めた俺にとって割と慣れたもんだからな。




クライン「さっきからヒッキーの方が敵に与えてるダメージが多いんだよなぁ……。俺も短剣にしようかあ?」

 
 
比企谷「無理に変える必要なんてないだろ。自分にできるやり方で、自分の好きな武器を使ったほうが……」

 
 
言いかけて、途中でやめた。

俺が指摘してそれが間違いだったとしたら、こいつを危険な目にあわすことになっちまう。
だが、クラインはそこまで聞いて満足したのか、
 
クライン「そうだよな、まだ始めたばっかだし、俺は俺なりで行くぜ!」
 

と言って、素振りを始めた。



だが、俺には一つだけ気になることがあった。
こればっかりは訪ねておかなければならない。





 



 
比企谷「クライン、さっきから俺のこと何て呼んでる?」
 




 
クライン「あ? ヒッキー?」

 
 




いや疑問形にされても。
 

 
 
クライン「だってヒキって呼びにくいじゃねえか! ヒッキーの方がゴロいいしわかりやすいだろ?」

 
 
こいつに悪気はないんだろう。

だが、呼ばれるたびに馬鹿にされてる気がしてならない。このもやもやした何かは何処にぶつければいいんだ? 教えてくれ豚野郎!
まあ、中学のころもっとひどいあだ名とかあったしまだマシな方か……。
 




どうせ今日だけのパーティーだし、気にしなくてもいいか。またいつか、どこかで会うこともあるかもしれないが。









……………………





そろそろ戦闘練習も終わった方がいいだろう。こいつらも肉体的はともかく、精神的疲労は回復しておいた方がいいだ

ろうしな。

 
 
比企谷「そろそろ終わりにしようぜ。もう疲れちまった」

 
 
クライン「お、そうだな。じゃあ今日はもう休むか! おいお前ら、宿に戻ろうぜ!」


「おー!」
「疲れたー」
「ヒッキーサンキュウな!」
 
ヒッキー呼びがデフォルトになってやがる……。
そういえば、宿とか取ってなかったな。まあ俺はどうせ緊張で寝れないし、適当に街を歩いて時間をつぶすか……。

 
 
クライン「ヒッキーはどうするんだ? もう宿とか決まってんのか?」

 
 
こっちの心配までしてくれるとか、マジで素晴らしいコミュ力だな。

 
 

 
 
比企谷「俺はまだやることがあるから、宿にはいかない。つまり、ここでお別れだ」 
 
 
クライン「そっか、じゃあフレンド登録しようぜ!」

 
 
比企谷「え?」

 
 








……フレンドって日本語でなんて言うんだっけ? 聞きなれない言葉過ぎて思い出せねえ。
 

クライン「だってまた会う時に連絡とれなくちゃ困るだろ? ほら、送ったぜ!」

 
 




……また、があるらしい。
次の機会があるなんて考えてもみなかった。





俺は”フレンド登録しますか”という問いに対して、

 
 





比企谷「あ、ああ」 
 
 







YES、と答えた。








あいつにとってはただの連絡手段かもしれないが、目に見える形で”友達”という関係が取られたのは、こいつが初めてかもしれない。

 
 


 
 


クライン「じゃあまたなあ! ヒッキー! 今日は本当にありがとな!」









俺は街に戻っていくクライン達を眺めながら、今日の出来事を振り返っていた。


良くも悪くも初めてのことばかりで、戸惑うばかりだ。


だが、このSAOにあるのは”絶望”だけじゃないのかもしれない。と、俺は勝手に思うのだった。


 
 

ここまで
コメントは励みになります。

こんな時間に読んでる人がいると思わんかったからビビった
どうせだしおまけ(1レス)も投下するよー

その日の夜

……………………………………………………………………………………………………………………
                             
                             from;クライン   00:13────────────
                             |                                 
                             | 今日はありがとな、助かったぜ!ヒッキー!

                             |                               
                             |                              
                               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

from;ヒッキー   00:18────────
                         |
   もう昨日だけどな            |
                         |

                         |    
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    
                              
                             from;クライン   00:20────────────

                             |
                             | 細かいことはいいんだって!
                             | そういえばよ、SAOって刀とか使えんのか?
                             | 使いたいんだけど!
                             |
                               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
from;ヒッキー   00:23────────
                         |
  よくそんなこと考える余裕があるな  |
                         |

                         |    
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    
            
                             from;クライン   00:26────────────

                             |
                             | こういう時だからこそ楽しいこと考えたほうが
                             | いいじゃん?
                             | 俺、刀とか結構憧れあるんだよな!
                             | ヒッキーだって自分の好きな武器使えって言ったしよ、
                             | 俺はサムライを目指すぜ!
                             |
                               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
from;ヒッキー   00:33────────
                         |
現段階では                  |
刀のソードスキルは見つかってないぞ  |
                         |
                         |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄             
                               from;クライン   00:37────────────
                              |                                 
                              | ………………まじかよ

                              |                               
                              |                              
                                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

……………………………………………………………………………………………………………………

比企谷「…………楽しい話題って難しいな」


……………………………………………………………………………………………………………………
                           
from;ヒッキー   00:45────────
                         |
あくまで現段階では、な           |
聞いた話だが、β時代に刀の存在は   |
確認されていたらしい。           |
だから、そのうち刀のソードスキルも   |
見つかると思うぞ               |
                         |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                                     
                               from;クライン   00:47────────────
                              |                                 
                              | マジで!?

                              |                               
                              |                              
                                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



……………………………………………………………………………………………………………………
end

寝る!

今さらだが俺はSS初心者です
変な表現があったら遠慮なく言ってくれ
全力で言い訳する

ちょっとしたら投下

俺は夜の町を徘徊しながら、広場での出来事を考えていた。


……どうしてもわからないことがある。


ゲームとは関係のない、外部の人間による強制ログアウトでの、213人の死者。

この犠牲は本当に防げないものだったのか? 
 
茅場ってやつはテレビとかで天才と囃したてられているから、それなりに知っていた。

このSAOでも使われている、ゲームの中に入り込むという”フルダイブシステム”の開発者らしい。
それほどの天才が、”213人もの死者”という被害を防げなかったとは思えない。
マスコミを通して危機感を煽るにしても、もっとほかのやり方はあっただろう。

 
 
この213人は、ゲームの中でゲームオーバーとなって死んだ訳じゃない。

こんな形で死ぬ人間が、茅場の目的に必要だったとは思えない。
茅場はこの無意味な死を、一言「残念ながら」だけで終わらせやがった。




他にもある。

 
 
1万人のプレイヤーを強制的に参加させる意味あったのか?

俺が言うのもなんだが、日本って国は奇特な奴が多いから、たとえデスゲームでも自分から参加するやつは腐るほどいるだろう。俺はしないけど。

 
 
これがもう一つの現実と言い張るなら、賛同する奴だけ参加させればいいんだ。



 
 
 
何もかも中途半端にしか思えない。こんなもの、いくら考えても理解できない。

茅場晶彦という人間が国語のテストの文章問題にでも出てきたら、正答率0%だろう。国語が得意な俺が言うんだから間違いない。学年3位だけど。
 





 






 
……結論。考えてわかるもんじゃない、諦めよう。

 
 
 
 
じゃあ、次に考えるべきことだ。

明日、いやもう今日だが、どう行動するか。
情報集めをするにも、ゲームクリアを目指すにも、そろそろ始まりの街から動き始めたほうがいいだろう。
いつまでもここで情報を待っていても、先に進めない。
  






 
ならいっそ、今すぐ出発してもいいかもしれない。


決心がついた今なら、一人でも次の街へとたどり着けるだろう。
だが、さすがに精神的に疲れてきた……。出発は明け方にするか。

 
 
俺は街中のベンチに腰かけ、仮眠をとった。

 
 

 
……………………
 




 
明け方5時、俺は出発の準備を始めた。
とはいっても、必要なアイテムは揃ってるから特に準備も必要はない。一つだけ気がかりなのは、クラインたちのことだ。

 
 
昨日会ったばかりとはいえ、フレンド登録した仲だ。出発する旨のメールくらい送っておくのが礼儀だろう。

俺は簡潔に、「次の町に進む。」とだけ打って送った。

 
 
比企谷「よし、出発するか」

 
 
っと言った瞬間、クラインからメールが届いた。返信早すぎだろ。

 



 
”待て、一人で行くのか?”



 
 
こんな時まで心配してくれると、なんだか本当に友達でもできた気分だ。

まあ、嘘をつく理由もない。俺は根っからのボッチプレイヤーだ。
 


 
”ああ”


 
 
2文字で返した。

今度こそ行くか、と考えるまでもなく、次の返信が来た。
 



 
”俺達も一緒に行く、今どこにいる?”

 
 



……なんだって?

 


 
何度読み返しても「一緒に行く」と書いてある。
どういうことだ? 昨日会ったばかりの奴に、義理も糞もないだろ?

 
 
純粋に意味がわからなかったから、質問を質問で返した。






”なぜ?”




 
今度はじっと、返信を待った。
すると5分ほどで、次の返信が返ってきた。
 




”直接会って話す。今どこにいる?”




 
 
 
ドラクエかよ。いや、YES・NOで答える形式じゃないからちょっと違うか……。

このままじゃ埒が明かないので、俺の居場所を教えることにした。

 

 

ここまで
比企谷安価スレとかSAO安価スレとかいろいろあって楽しいけど、
自分のせいでバッドエンドになったらいやだから安価とるの怖い
とるけど

いや勘違いさせて悪いがここではとらないよ
俺が見てるスレの話ね

1時くらいにもっかい投下

投下


クライン「ようヒッキー、待たせたな」 
 
 
比企谷「……ああ」 



10分後、クラインは俺の待つ広場に現れた。
人のことを言えたもんじゃないが、ろくに寝てないはずだ。


それなのに、俺についていくと言った。

 
 
比企谷「クライン、お前一人か?」

 
 
クライン「他の連中には、出発の準備をしてもらってる。ヒッキー、水臭いじゃねえか。何も一人で行くこたぁないだろ?」



こんなに直接的な優しさを、俺は身内以外で貰ったことがない。
本当にいいやつだよ、お前は。





……だが俺は、この優しさを受け取るつもりはない。








比企谷「なんでだ? 言っちゃ悪いがそこまでの義理はないだろ。俺はもともとソロプレイヤーなんだよ」

 
 
クライン「そっちになくても、こっちにはあんだよ! 俺達は、お前に義理がある。だから、お前の力になりたいんだよ。どんなゲームでも、レベルを上げるのは人数がいたほうが効率がいいんだぜ?」




ボッチプレイヤーには限界があるってことくらい、俺にだってわかっている。



比企谷「人の命がかかった状況で一緒に行動するってのは、そいつの命を預かるってことだ。俺にそんな責任は重すぎる。だから俺は、一人でいい」


クライン「ヒッキー……」

 
 
それでも、一人は慣れているからな。

 
 
クラインは、まっすぐな目でこっちを見ていた。

やめてくんねえかな、そんな真面目な目を向けられ慣れてないんだよ。自然と目をそらしちまう。

 
 





俺は黙ったまま、次の言葉を待った。

クラインはしばらく黙っていたが、やがて決心したかのようにこう言った。 
 



クライン「ヒッキー、実は俺さ」 


クライン「初日に一人、見捨てちまったやつがいるんだよ」

 
 
比企谷「……え?」

 
 
見捨てた? ……こいつが? 全く想像できないんだけど。

 
 

 
 
クライン「俺に戦闘を教えてくれたβテスターなんだけどな。茅場が現れた後、一緒に来ないかって誘われたんだ」

 

クライン「だけど俺は今の仲間を探さないといけなかったから、断ったんだ。結局あいつは、一人で次の町に向かっていった。俺は、あいつを一人で行かせちまったんだ」

 
 
比企谷「それは、全然見捨てたって言わねえよ。そいつは一人でも十分いけると思ってたから、一人で行っただけだろ」 








クライン「…………でも、この状況(デスゲーム)で1人は怖いだろ?」










比企谷「……………………」




















……怖ええよ。


怖くないはずがねえだろ。
正直言って頭ん中はまだ混乱しまくってるし、いまだに気持ちの整理すらできてねえよ。
だが、怖がってる暇なんかねえから、強がって前に進むしかないんだよ。



比企谷「…………」



どうした? 怖くないって言えよこのボッチ野郎! クラピカじゃねえだから、沈黙は正解じゃねえんだぞ!




クライン「なあヒッキー、一緒に行こうぜ! こう見えて俺は前のゲームじゃギルドの頭張ってたんだ、絶対に足手まといになんか、ならねえ!」



畳み掛けんじゃねえ! ちょっと待て、俺は……




「おーい! 必要なアイテムと装備、そろえてきたぞー!」
「ヒッキー! 俺たちも一緒に行くぞお!」
「ちょっと情報通だからって俺達をなめんじゃねえぞ!」


比企谷「っ…………!」











なぜか俺は、言葉を発する事が出来なかった。
クラインの仲間も来て、準備完了といった目で、こっちを見てくる。



クライン「そうだ! どうせなら俺達でギルドを組もうぜ! こういうのは序盤にやっとくと何かと便利なんだよ」


比企谷「おい、ちょっと」


クライン「団長はヒッキー、頼むな!」


比企谷「はあ!? ろくに知らない連中をまとめられるわけねえだろ!」

 
 
クライン「しょうがねえなぁ、じゃあ俺が団長やる。異論あるか?」



「ないぞー」
「仕方ねえな、やらせてやるよ」


クライン「っという訳だ。ヒッキー、これからよろしくな!」


いやちょっと待て、いろいろとまて、待ってください!



比企谷「俺は組むとは一言も……」


クライン「さあ、いざ行かん! 俺達の戦いは始まったばかりだあ!」

「おおおおおおおーーーー!!!!」


俺に決定権はないのか!

























…………ないなら、しょうがないな。











クライン「あれ? ヒッキー、次の町ってどう行ったらいいんだ?」
 

比企谷「…………しかたねえな、案内してやるよ」


クライン「……! ああ、頼んだぜ!」













正直、他の誰かと命を預けあう仲間になるのも、怖い。


だが、俺はこいつらと一緒に行くことにした。




現実だと共通の話題がないから話すら続かないような連中と、俺はゲームを通して仲間になった。
感極まって涙目になっていたのが、バレて無ければいいが。
ばれてないよな……?





ここまで
毎回感想サンクス

ゆきのんを出せ

他のクロスでもない珍しい展開だね!

面倒見の良い兄貴に誘い受けされるヒキタニくん。
ぐふ腐腐。

>>143
雪ノ下を含めたSAOSSを早く書くんだ、絶対読みに行くから
>>149
お帰りください

8時に投下

アクセルワールドの主人公の絵とキャラが受け付けなくて読んだことないんだよね
しかも俺ガイルは全巻揃ってるけどSAOはアニメと昨日買ったプログレッシブ1しか知らないにわかだし
たぶん書かないと思うよ

では投下


疾きこと風のごとく、


徐可なること林の如くし、


侵略すること火の如く、


動かざること山の如し。




風林火山。それがクライン率いる、俺たちのギルドの名前だ。


当然この名前を決めたのは団長であるクラインだが、俺はこの名前を気に入っていた。軍の進退に関するもので、戦略の心得をつづったものだ。甲斐の戦国大名、武田信玄の言葉で有名な文章だが、実にSAOの世界観にあった名前だと思う。


……と、珍しく感心したが、クライン曰く、


クライン「なんかかっこよくね!」


らしい。うん、これ以上何も語るまい。









風林火山を結成してから3週間が経とうとしていたが、俺達は一人も欠けることなくゲームを進めている。


俺たちの作戦は”いのちだいじに”。当然だ。このゲームでは一度でも命を落としたら、それで終わりになるからな。


実際この3週間で、早くも2000人近い死者が出ているのだ。……いや、いくらなんでも多すぎるだろ。なんでこんなに死んでんだよ、おかしいだろ。


このゲームに餓死はない。だから町から一歩も出ずに待ってる、ということも可能なのだ。実際町に残っている人の死者はほぼいない。つまり、死者のほとんどがゲーム攻略の最中に死んでいるということだ。







正直、これは情報が少なかったとか、装備が甘かったという問題ではないだろう。一番の問題は、”認識の甘さ”だ。




死んだら、終わり。これが本当の意味で分かっているのなら、細心の注意を払いながら、できるだけ多くの情報を集めてゲーム攻略に臨むだろう。だが、ソードスキルの使い方を知らずに死んだとか、βテスト時の情報を鵜呑みにして死んだとか、俺からしてみりゃありえない理由ばかりで死んでいる。


どんなにゲームが得意だろうが、βテスターだろうが、石橋を叩いて渡りやがれ。


……と言っても、冷静さを失った状態でそこまで考えられるやつがいなかったのかもしれない。だが、最近情報を集めていると、死者が出ているのはβテスターが情報やアイテムを独占しているからだ、という噂をよく耳にするようになった。いくらなんでも冷静さを失いすぎじゃねえか?


βテスターが真っ先に町を離れて行ったのは本当だ。だが、情報を独占なんてしていないし、それどころかとある情報屋が無償で攻略本を配布していたりもする。アイテムに関しては、そもそも簡単に独占できるもんじゃないだろう。


つまり、ただ先走って死んだ奴が多いってだけだ。


……………………






俺達のギルドは、順調にレベルを上げていた。
とくに団長であるクラインは、俺の情報を最大限活用してゲームに臨み、トッププレイヤーと名乗っても決して過言ではないほどの実力者になっていた。


俺も情報を集めながらそれなりにレベルを上げていったから、俺もそう言えるかもしれない。


俺は、ギルドに所属しながらも空いた時間に情報を集め続けた。ある時は情報を売ったり、ある時は交換したりしていったおかげで、情報不足に陥ることはなかった。


今、俺たちは新しい街で見つけた格安の宿に泊まっている。
SAOでの金の単位は円ではなく、コル。
この宿はなんと一晩20コル。泊まれるだけの部屋だが、相場は50コルなので恐ろしく安い。そして恐ろしくぼろい。
ここをクライン達に見せた時、全員が文句を言ってきた気がするがたぶん気のせいだろう。





クライン「……ヒッキー、お前最近寝てるか?」




俺が自分で作成した攻略情報ノートを眺めていると、心配そうな顔したクラインが、そう訪ねてきた。



比企谷「ああ、寝てるぜ」



2時間くらいな。正直、俺が睡眠時間を削って情報集めしなかったら、ここまでのレベルアップは不可能だったろう。




クライン「でもお前、いつもに増して目が腐ってるぜ?」




はっはっはクラインよ、俺とお前も軽口が叩けるくらいまで友好を深めることができてうれしいぞ。だが、目の話は止めてもらおうか。






比企谷「心配すんな、無理はしてない。それより、面白い情報が入ったぞ」


クライン「……面白い情報?」




腑に落ちない顔をしながらも、俺の情報が気になるだった。


比企谷「ああ」


俺はニヤリと暗黒微笑しながら返事をした。おい、引くんじゃない。いい加減慣れろ。




比企谷「1週間後、ボス攻略会議が開かれるそうだ」


俺がそう言った途端、目を見開いてこの話題に食いついた。


クライン「なんだって!?」




無理もない。SAOが始まって3週間も経つのに、ゲームの一層すらクリアされてないからだ。SAOのステージ”アインクラッド”は全部で100層、この調子ではクリアに何年かかるかわからない。だからこそ、”ボス攻略会議”という情報は、SAOクリアにつながる一つの希望となることだろう。




比企谷「確かな情報だ。俺はその会議に……」


クライン「その会議に、風林火山で乗り込むんだな!?」





いや、そうじゃないんだ。俺は途切れた言葉を続けるように、言い直した。




比企谷「俺はその会議についていって、ボス攻略に参加する」







クライン「……まさかとは思うが、一人で行くつもりか?」


笑いを含んだ表情から、一気に凄みのある表情に変化した。怖い。

だが、俺は怯むことなく、ハッキリと答えた。




比企谷「ああ、そうだ」






クライン「……! なんでだよ! 俺たちも行くに決まってんだろ!? お前だけに行かせるわけねえ!!」


この反応は予想できた。だから、あらかじめ答えも用意していた。





比企谷「ボス攻略で、6人もカバーできない。お前らは足手まといだ」


クライン「っ……!」





俺はこういうところでオブラートに包んだ台詞を言わない。命にかかわることだ、はっきり言わなくてはならない。
風林火山のレベルが上がったといっても、全員がレベルアップしたわけじゃない。俺とクラインが抜きんでているだけで、他のメンバーは並よりちょっと上くらいだ。クラインも口には出さないが、俺についていけるよう、結構な努力をしている。
  




クライン「なら、俺だけでもついていく。俺なら足手まといにならねえだろ?」









……この反応は予想してなかった。
だめに決まってんだろ……


比企谷「……いいか、言っておくぞ? 俺は細心の注意を払うが、ボス攻略が成功するなんて保証はない。それどころか、全滅の可能性だってある。クライン、お前は風林火山の団長だろうが。ここで死んだら、他の5人はどうなる?」




クライン「…………でも、死ぬ危険があるところに、お前だけをいかせれねえよ」


比企谷「だが、俺がここで参加しないなんてありえない。俺がソロプレイヤーのままでも、参加していたはずだ」


クライン「…………」




この言葉も嘘じゃない。俺はもともとぼっちだが、今はこのリア充チームに入れてもらっている。
ボッチならボッチらしく、何も言わずに行こうとも考えたこともある。


だが、何も言わずに居なくなるよりは、説明してから行きたかった。ギルドに入ったからには筋は通したいからな。



反論がないから、俺は勝手に”納得した”と解釈した。
……だが、






「俺たちのことなら、心配しなくていいぜ? 団長、ヒッキーについて行ってやれ!」






思わぬ第三者が現れた。いや、振り向くと風林火山メンバーの残り全員がそこにいた。



比企谷「……何を・・・・・・・?」







「俺たちが足手まといになるのは、そのレベル差が物語ってるから無理についていったりはしない。でも、団長がヒッキーのことを心配する気持ちが分からない訳じゃねえ」







クライン「お前ら……!」


「俺たちは団長やヒッキーが思ってるほど柔じゃないぜ! 安心していって来い!」
「ああ。でも、必ず生きて帰ってこいよ!」


お前ら、勝手に何を言ってるんだ。








…………いや、勝手なのは俺か。


こいつらは、俺が本気でゲームクリアを目指していることを知っている。だから、俺を止めたりしないんだ。
そして、クラインが俺のことを本当に心配している、ということを、俺は知っている。


だから、俺もクラインを止めたりできない。






クライン「ああ、必ず生きて帰る。約束するぜ! ヒッキー、そういう訳だ。やっぱり俺も行くぜ?」



……俺は、本当に”いいやつら”に恵まれちまった。






だが、この優しさは不思議と嫌じゃなかった。





比企谷「…………わかった。だが、危なくなったら逃げるからな」




クライン「あたぼうよ! 命あってのものだねだからな!」











こうして、俺とクラインはボス攻略会議に参加することになった。


小町、待ってろ。俺は絶対に帰ってみせる。フラグじゃないぞ?



ここまで
さすがに疲れたから休憩
感想ありがとう

6時に一回更新するよ
もっと感想書いてもいいのよ?
ボッチネタって書いてて尽きることない不思議
なぜなら

リロード完了してなかった
感想超書いてあるじゃん……

お前ら暇なら、ボッチあるあるでも書いてけよ!
俺? 暇だよ。ボッチだからな!
投下

SAOは何も、戦闘がすべてじゃない。
ところどころに遊び心や童心をくすぐるイベントが散りばめられている。まあ、茅場がすべてを創ったわけじゃないに決まっているし、そういう要素をわざわざ避けて通ったりしない。


それに、そういう遊び心に癒しを求めるプレイヤーも多いのだ。というか、俺もだ。戦闘ばかりじゃ疲れちまうしな。
だが、そういう情報を持っているプレイヤーは意外と少ない。こんな状況じゃ、ゆっくり探索する余裕はないのだろう。だから、あえて俺はそういう情報を集めて、有効活用していた。



あの格安の宿を離れてから一週間後、つまりSAO開始から一カ月がたった今、俺とクラインはトールバーナと言う街の、噴水広場に来ていた。ボス攻略会議の集合場所である。


今の時刻は午後3時。集合時間は午後4時だから、一時間も前だ。
なぜ、こんな早くに来たかと言うと、曲がりなりにもボス攻略に参加する連中と情報交換をしておきたかったからだ。
正直、俺からほかの連中に話しかけるのは今でも抵抗がある。だが、今の俺には伝家の宝刀、”クライン”が付いている。


クライン「よう、アンタたちもボス攻略に来たのか?」


「ああ、って事はお前らもだな」


クライン連れてきてよかったぜ! ここまで円滑に情報収集が進んだことはない! 
だが、俺とクラインのコミュ力の差がここまであると思ってなかった。……別に悔しくねえよ? あ、また別のやつに声かけてる。すごいなー。












だが、俺の狙いはこれだけじゃないんだぜ? 






俺はほどほどに情報収集した後、クラインにパンとクリームを渡した。


パンは1コルで買える、どこにでも売ってある普通のパンだ。
しかし、クリームはどこにも売ってない。これは、とあるクエストのクリア報酬なのだ。俺はクリームを、この1週間のうちに大量に手に入れておいた。


……すべては今日のためだ。








クライン「お、サンキューヒッキー! ちょうど腹減ってたんだ!」


比企谷「おう、食え食え。これから忙しくなるんだ、体力つけないとな!」





別に食ったからと言って空腹感が紛れるだけで、体力ゲージが上がるわけじゃない。
だが、俺はできるだけわざとらしく、大きな声でそう言った。





比企谷「やっぱクリーム付けて食うと全然違うなぁ! 味気ないパンが嘘のようだぜ!」


クライン「……? ああ、そうだな」





俺がそういうと、周りからゴクリ、という音がした。







「な、なあ。そのクリームってどこで売ってるんだ?」





釣れた!! 





比企谷「どこにも売ってないぞ。クエスト報酬だからな」


「そんなクエストがあったのか……」


比企谷「ああ。だが、今俺は結構な量を持ち合わせていてな、タダであげてもいいぜ?」


「なんだって!? 本当か!?」


比企谷「ああ、遠慮なくもってけ!」


「ありがとう、恩にきる!」





俺がクリームを渡すと、そいつは仲間のほうへ駆けて行った。

この会話を隣で聞いていたクラインは、思いっきり首をかしげていた。……言いたいことがあるなら言ったらどうだ?





クライン「ヒッキーがただで物をあげるなんて、信じらんねえ……俺は夢でも見てんのか?」





そこまで言うか。





クライン「熱でもあるんじゃないのか? ヒッキーらしくないぞ!」





一回親切を見せただけでこの反応かよ。……まあ、お前も俺をなかなか理解しているようで安心したぜ。
そこまで聞いて、俺はタネあかしすることにした。





比企谷「クライン、お前はこのクリームを使い始めてから、普通の状態のパンを食べる気になったことがあるか?」




クライン「え? いや、そういえば必ず使ってるな。それがどういう……っ。ああ、なるほど……」




比企谷「理解が早くて助かるぜ」





このクリームを使ったやつは今後パンを食べる時、必ずこの味を思い出すだろう。そして思うはずだ。”またあのクリームを使いたい!”とな。そして今晩あたりに俺を訪ねてくるはずだ。「クエストの情報を教えてくれ」と。


俺が金を取るのはそこ、つまりクエスト情報だ。あいつらはこの味を知ってる分、金を出し惜しむことはないだろう。しかも、俺は一度ただでクリームを渡している。情報を金で売っても文句は言えないはずだ。クリームを金で売るより、はるかに多くの金を稼げるだろう。ふふふふふふふふ。



俺が引き笑いしていると、クラインは呆れたのか安心したのかわからない表情で、こう言った。





クライン「お前らしいよ、ヒッキー」


比企谷「だろ?」


「なあ、俺たちにもそれ、分けてくれないか?」


餌が餌を呼んだ。これは爆釣の予感がするぜ!


比企谷「ああ、いいぞ。ほらもってけ!」


「サンキュー!」




ふふふふふ、こい、どんどんこい! 俺の親切に寄ってくるがいい、有象無象ども!





俺がこの場で情報を売らない理由は、二つある。
一つは、ここにそのクエストの情報を持っている奴がいた時、情報が売れなくなるからだ。
もう一つは、あいつらから俺を訪ねさせることにより、個別に情報を売ることができるからだ。


俺はこのSAOでの情報の扱い方を、この1カ月でほぼ理解した。
命にかかわるような情報や、必須情報は無料で渡す。そして、俺を信用した連中相手に、こういう豆知識的な情報を割と高めに売る。これが一番効率のいい稼ぎ方だ。








……ん?俺をじっと見ている奴がいるな。
あいつもクリームがほしいのか? まあ、俺から声はかけないけどな。


広場の反対側の高い塀に、ちょこんと腰かけている小柄な奴が、さっきから俺のほうを見ている気がする。
しかし、俺が視線を向けるとすぐに目をそらした。…………そんなに俺と目を合わせるのが嫌か。






そうこうしていると、唐突に後ろでクラインが叫んだ。






クライン「キリト! お前、キリトじゃないか! お前もボス攻略に参加すんのか!?」


???「……え?クライン?」




クラインが声をかけたそいつは、キリトと言うらしい。
呼ばれた男は、「なんで?」といった風に、驚いた表情をしていた。


キリト……どっかで聞いたことがあるような名前だな。……どこで聞いたんだっけ。




ここまで
感想書いてくれる人マジ天使
モチベーションがぐんぐん上がっていくよ


クラインとヒッキーのコンビが予想以上にいい


ぼっちネタか……
某人気オンラインゲームを一人で攻略しようとして挫折したことかね……

>>205
わかる
俺がやった最初で最後のネトゲはマビノギ
ストーリー進行中に「仲間二人連れてこい」とか言われて
即効アンインストールした

さて、寝る!


八幡とキリトじゃ同じソロ専思考でも水と油にならないか心配

>>206
パーティ組む気が無いボッチがネトゲのRPGをやるなら
MMOをやるべきじゃないやるならMOだ

俺がボッチあるあるを求めたんだすまんな
感想を言ってくれてもいいのよ?

荒れる流れになるのやだし、関係ない話しすぎて脱線するのも
いかんかもわからんし、こんなもんでいいや

いろいろ聞けて面白かったよ

お前らあれだろ
ゲームボーイポケットとカラーを一台ずつ買って一人で通信交換とかやってたんだろ
俺もそうやってポケモン図鑑埋めてたわ

>>211
ツイッターで似たような事要求されたわ…

キリトと八幡って、根暗なのは同じはずなのに、それでも性格にはしっかりと違いがあるよな。
その辺が、どうストーリーに影響してくる事やら…

>>207
パーティ組む気が無いボッチ→孤高ボッチ
パーティ組む気があるボッチ→ボッチ
あとはわかるな?

>>218
小さい頃、ゲームボーイ買ってもらえなくてゲーム仲間に入れなかったよ
まあ、買ってもらっても多分やる相手いなかったけどな

>>219
知らない奴をフォローする度胸がなくて、開始30分で放置アカとなるんですねわかります

>>221
キリトは理系的な考え方をして、比企谷は文系的な考え方をしているイメージ
でも、根本的な部分はめっちゃ似てる気がする


2時から更新


俺は、キリトと呼ばれた男の方を向いた。
そこには、やや幼さが残る顔立ちの少年がたっていた。……イケメンである。




比企谷「知り合いか?」




俺はクラインにだけ聞こえるように、小声で尋ねた。




クライン「ああ! 俺が初日に戦闘方法を教わったやつだ!」




なるほど、じゃあこいつはβテスターって訳か。なら、ボス攻略会議に来てもおかしくないな。


キリトは、未だに驚いた顔のままクラインの方を向いていた。まあ、驚いている理由は想像つくけどな。



表情を察したのか、クラインは聞かれる前にこう言った。




クライン「俺がボス攻略に参加するなんて、思ってなかっただろ?」


キリト「あ、ああ。こんなところで顔を合わすなんて思ってもみなかったよ」




つまり、こういうことだ。”一般プレイヤーであり、しかも戦闘の仕方も分からなかったようなやつが、一層の攻略に参加できるほどの実力をつけられるとは思っていなかった”。実際、俺が無茶してなかったら来なかっただろうしな。




クライン「全部こいつのおかげなんだよ! なあヒッキー?」



ここで俺に振るんじゃない! しかも答えづらい問いかけしやがって!


比企谷「う、うす」


こんな返事しかできない自分をぶん殴ってやりたい。いやだれか殴ってくれ……。

…………




キリトとクラインは積る話もあるだろうし、俺は少し離れて周りを見渡すことにした。広場にはすでに結構な人数が集まっていて、中には途中で見た顔もちらほらいた。俺はふと、塀の上に座っている小柄な奴に目をやったが、あいつはキリトとクラインの方を見ていた。……さっき見てたのは俺じゃなくてクラインだったのかもしれないな。


そして時刻は午後4時。聞き取りやすい大きな声が響いた。




???「はーい!それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!」




あいつが、俺たちに呼びかけた張本人、ディアベルである。
俺は一週間前、情報集めの途中でこのディアベルに会い、直接ボス攻略会議についての話を聞いた。確かな情報ってのはそれが理由だ。なにより、こいつが本気で攻略を目指していることが分かっていたので、俺も今日ここに来たのだ。







ディアベル「今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう! 俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」




ああ、そうだ。こいつは俺のもっとも苦手とする人種である。誰にでも人当たりがよく、くだらないギャグでみんなを笑わせることができ、そして、俺のような日蔭者の気持ちは分からない。まあ、こんなやつが一番頼りになるんだけどな。人の上で指揮をするにはもってこいの人材だろう。


ディアベルは噴水の一行の反応を見つつ、話を続けた。本題に入るようだ。




ディアベル「今日、俺たちのパーティーが、あの塔の最上階でボスの部屋を発見した!」



そう言った時、周囲からおお、と歓声がわいた。


……すごいな。そこまで攻略が進んでいたのか。





ディアベル「俺たちはボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームも、いつかきっとクリアできるってことを! 始まりの街で待っているみんなに伝えなくちゃならない!」


ディアベル「それが、今ここにいる俺たちの義務なんだ! そうだろ? みんな!」




義務、という言葉を聞いたとたん、俺のやる気が急激に減っていった。……俺って義務とかいう風に強制されるの、好きじゃないんだよな……。いやいや、こんなことでやる気を失っていたらきりがない。聞き流そう。


周りの連中は納得しているようで、各々頷いたりして肯定の意を表した。そして、ディアベルに対して称賛の拍手を送るのだった。おい、口笛はやめろ、マジでムカつくから!




ディアベル「おっけー! それじゃあさっそくだけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは、6人のパーティーを組んでみてくれ!」















…………は? え? そういうことすんの?


俺は今、中学高校での体育の過ごし方を思い出していた。
たとえばテニスの相手を組むのに、「2人組つくってー」とか言われるだろ? その時の俺の相手は、壁だ。
つまり、はやく壁を探さないと……。




クライン「ヒッキー! こっち来いよ! キリト! お前もな!」





クライイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!! 連れてきてよかったあああああああああああああああああ!!!







クライン「よし、あと3人か。後は適当に呼びかけるか……?」


キリト「…………」


キリトは何か躊躇しているようだったが、クラインの誘いに乗った。


クライン「でもなぁ、できるだけ知ってる中で組んだ方が連携も取りやすいと思うんだよな……キリト、お前ここに知り合いはいるか?」


キリト「え!? あ、いやここにはいないみたいだな!」






……気のせいかもしれないが、キリトから俺と同じボッチの匂いがする。






キリト「あ、あそこに一人あぶれてる奴がいるぞ、ちょっと声掛けてくる!」



前言撤回。あいつは俺と違ってコミュ力があるようだ。

 



数分後、キリトはフードをかぶった奴を連れてきた。だが、これでもあと二人足りない。




比企谷「いいんじゃないか? 4人で。 今ここにいるのは46人。6人チームを作ったら4人余るしな」




正直、これ以上知らない人と組むのはめんどくさい。4人もいりゃ充分だろ。




フードの奴「……」



クライン「そうだな! じゃあリーダーはヒッ……」


比企谷「キリト! 頼んだぜ!」


キリト「え? 俺!?」


比企谷「見た感じ一番慣れてそうだからな。頼んだぞ!」


クライン「……ヒッキー、そんなに嫌かあ?」




当り前だろうが! 面倒なことに面倒なことを掛けたらめんどさ2乗じゃねえか!




キリト「まあいいけど……じゃあ、招待メール送るぞ?」




キリトから”パーティーを組みますか?”というメッセージを受け取り、YESを押した。
つーか、さっきからフードの奴は一言も喋ってねえんだけど。こいつもコミュ障か?



全員がYESを押したとき、フードの奴の名前が表示された。
ア、ス、ナ……? もしかして、女性プレイヤーだったのか。なら、喋らず目立たないようにしている理由はわかる。まあ、あえて説明することもないだろう。そして、喋らないのならこちらから話す必要もない。


俺はふと、さっき塀に座ってた奴はどこに入ったのかと思い、あたりを見回したが、どこにもいなかった。なんだ、あいつは会議に来たわけじゃなかったんだな。






ディアベル「よし、そろそろ組み終わったかな? じゃあ……」


ディアベルが次の説明をしようとしたとき、別の声がそれを遮った。









???「ちょお、待ってんか!」







何だ? あのもやっとボール頭は……。




ここまで
いつも感想ありがとう

『予想しても構わないよ
僕はは予想されてもその通りにか書けないからね
でも、誰かが書いた予想通りの展開で読者が覚めたとしても、僕は悪くない』

感想が多くてうれしいよ!
うれしくてまた更新分書き終わったよ!8時に投下するぜ

憎むべきは茅場!
クラインにしろエギルにしろいい男がいるなら無理に女を出さなくても有りだと思っている
命懸けの環境で仲間や友情について見つめ直すみたいな感じの

展開予想についてだけど、他の人に突っ込まれない(やりすぎじゃない)レベルなら全然いいと思うよ
あれもこれもダメっていうと、感想もらえなくなっちゃうしね

ちょっと早いけど投下


もやっとボールなのか金平糖なのかわからない頭をしたやつが、階段を駆け下りながら噴水広場の中央に向かって行った。


何をする気だ?




???「ワイはキバオウってモンや! ボスと戦う前に、言わせてもらいたいことがある!」





金平糖頭は、関西弁で話し始めた。初心表明でもする気か?





キバオウ「こんなかに、今まで死んでいった2000人に詫び入れなあかんやつがおる筈や!」


ビシッ!とでも効果音がつきそうな勢いで、集まった連中を指差した。
……なんかめんどくさそうな話になりそうだな。




ディアベル「キバオウさん、君の言う”奴ら”とはつまり、元βテスターの人たちのこと、かな?」




キバオウ「決まってるやないか! β上がりどもは、このクソゲームが始まったその時に、初心者(ビギナー)を見捨てて消えよった! 奴らはうまい狩り場やら、ぼろいクエストを独り占めして、自分らだけポンポンつよなって、その後もずうっと知らんぷりや。こんなかにもおる筈やで! β上がりの奴らが!」








なるほどな。こいつもβテスターが初心者を見捨てたせいで大勢死んだ、とか思ってる口か。まあ、全部が間違ってるわけでもないし、わざわざそれを否定するつもりもない。




キバオウ「そいつらに土下座さして、ため込んだ金やアイテムを吐き出して貰わな、パーティーメンバーとして、命は預けられんし、預かれん!」






……は?


何いってんのこいつ。
今から攻略始めるってのにβテスターの戦力落としてどうすんだよ。
俺はクリアを目指してんだ。こんなところで足踏みしてるわけにはいかねえんだよ!








……黙ってみてようと思ったが、ここはこいつに現実を見させる必要がありそうだな。





周りがざわついたり、押し黙ったりする中、俺は控えめに手を挙げた。


クライン「……ヒッキー?」





比企谷「おい、アンタ。ちょっと言わせてもらっていいか?」


キバオウ「ああん?」




怖! いきなり噛みついてくんなよ! 俺が黙り込んじゃったらどうするんだ!



比企谷「……俺は一般プレイヤーだが、情報屋をやってる者だ」



俺は立ちあがって、キバオウの前まで出た。
実際には情報売買をおこなってるだけで、情報屋ではない。だが、こう名乗ったほうが説得力があるだろう。





比企谷「俺はさっき、ここに集まったプレイヤーの数人に、この”クリーム”を渡した。だが、ここにいるプレイヤーのほとんどが、クリームの存在すら知らなかった。俺が言いたいこと、わかるか?」


キバオウ「……どういう意味や」




比企谷「一般プレイヤー同士でも、情報格差は存在すんだよ。逆にいえば、俺は一般プレイヤーなのに、多くの情報を持っているということだ。情報を集めれば、死ぬ危険も回避できる。言っちゃ悪いが、今まで死んだ奴らは情報収集を怠っただけなんじゃないか?」


キバオウ「ぐっ……」




ここまで言うと、キバオウは少し勢いを落とした。
そして周りの奴らも、俺が言ったことを考えるかのように押し黙った。





キバオウ「い、いや、βテスターが情報を教えていれば、被害が出んかった事に変わりはあらへん! 初心者が情報を集めるのにも、βテスターの協力が必要なはずや!」


比企谷「ほう、まあ百歩譲ってそれが正しいとしよう。それで、情報を集められなかった連中は、なんでゲーム攻略に向かったんだ?」


キバオウ「ッ……!」



比企谷「死んだら終わりってことがわかってるなら、情報不足の時にわざわざ危険を犯す必要なんてない。全員、目指してるのはゲームクリアだろ? 同じ目的なら、クリアするのはβテスターだろうが、情報を集めた初心者だろうが、誰でもいいじゃねえか」


キバオウ「ぐう……!」


比企谷「こんなところでβテスターから身ぐるみ剥いで、何になる? クリアが遅れるだけじゃねえか。誰得だよ」






キバオウはこの時点で、反論の余地をなくしている。他の攻略会議の連中も、口を出すようすはなさそうだ。俺はここらで話をやめてもいいが、こいつ相手ならトドメを刺してもいい気がした。




比企谷「情報屋として、特別に情報を教えてやるよ」


キバオウ「……?」


比企谷「一般プレイヤーの死亡率より、βテスターの死亡率のほうが、圧倒的に高いそうだ」


キバオウ「!?…………な、なんや、と……」






この情報はいくつかの情報屋を介した物だから、確実なものではない。だが、ここで言う分にはどうでもいい。




比企谷「βテスターだろうが、一般プレイヤーだろうが、石橋を叩いて渡らなかった奴は死ぬんだよ。生半可な知識でゲーム攻略に行く時点で、俺からしてみりゃ自殺行為だ」


キバオウ「うっ……………………」






どうやらクリティカルヒットした様だ。




ディアベル「…………あ。お、おいおい君、もうこのくらいでいいだろ? キバオウさんも、今は会議を続けようじゃないか! 彼が言ったように、ゲームクリアを目指すのに異論はないだろ?」




ディアベルは思い出したかのように、止めに入った。ちょっと遅かったな、キバオウのライフはもう0だ。


キバオウは、ディアベルに言われるがまま、すごすごと元の位置にもどって行った。




俺も元の場所に戻ると、ディアベルは仕切りなおすかのように話を戻し、攻略会議の続きを始めた。
……くそ、周りから異様に視線を感じやがる。目立つようなことはするもんじゃねえな。


クラインやキリトすら、俺を奇異の目で見ていた。……言いたいことがあるなら、言ったらどうだ。






クライン「い、いやあ、ヒッキーがあんな事を大勢の前で言うなんて思っても見なくてよ……」


比企谷「俺はさっさと会議を始めたかっただけだ。こんなつまんねえことで、いちいち時間を無駄にしてらんねえよ」


クライン「なるほど……。これはこれでヒッキーらしいっちゃらしいのか……?」


比企谷「俺に聞くな。今は話を聞こうぜ」




俺が促すと、クラインは頷いてディアベルの方を向いた。他の連中も、もう俺の方を見ていないようだ。大丈夫、いつもなら多少目立つことをしても、すぐに忘れられるしな。

…………





ディアベル「……モンスターの情報と、みんなの役割については、以上だ。最後に金とアイテムの分配についてだが、金は全員で自動均等割り。アイテムはゲットした人のものとする。異存はあるかな?」


誰も異議を唱えない。ディアベルはそれを肯定と判断して、ひとつ頷いた。


ディアベル「よし、明日は朝10時に出発する。では、解散!」


その言葉を区切りにして、攻略会議は終わった。


他の連中が帰ろうとしている中、キリトは俺の方をじっと見ているようだった。俺の顔になんかついてんのか?
見られ続けんのも嫌だったから、俺は「なんだ?」という顔をしてキリトの方に向き直った。


キリト「い、いやなんでもない」


……俺はβテスターを庇ったわけじゃねえぞ。ただ一般論を述べただけだ。さて、俺も帰るか。





「ねえ、ちょっと」




突然、聞いたことない声が聞こえた。誰?




アスナ「さっきの会議で、わからない単語がいっぱい出てきたんだけど……」





やっと口を開いたと思ったら、こいつ初心者かよ! なんで攻略会議に来たんだ!


話を聞くと、アスナはずっとソロプレイヤーだったようで、パーティーを組んだことがなかったらしい。……じゃあ、誰かがレクチャーしないとな。



比企谷「クライン、お前この後……」


クライン「わりい! 俺いっぺんギルドの連中のところに戻るわ!」


比企谷「はあ!?」


クライン「報告も兼ねて、装備をとってくる! 明日の10時には間に合うようにするからよお!」


比企谷「お、おい!」


クラインは会議が終わったとたん、さっさと行ってしまった。





キリト「…………」


アスナ「…………」


比企谷「…………」













……気まず過ぎるだろ! 実質知らない奴二人じゃねえか! ……よし、逃げよう。






比企谷「キリト、アスナの指導は任せる。ただ教えるだけなら2人もいらねえだろ?」


キリト「え? あ、ああわかった」



キリトなら大丈夫だろ! うん。だいたい、こいつが連れてきたんだ。面倒をみるのは当然だろ?
俺は早々に立ち去るべく街中に行こうと思ったが、後ろから呼び止められた。




アスナ「ちょっと、なんで私の名前知ってるの!?」



……こいつ、天然キャラかなんかか?




比企谷「キリト、それも含めて、十分にレクチャーしてやれ」


キリト「ああ、わかったよ」




キリトは笑いをこらえながら、そう答えた。







ここまで
更新速度は感想に比例するよ(嘘)
感想は励みになってます

>>269
悪いが、BL趣味はない

よく考えたら俺、3日で10回も更新してた
引かれても文句言えねえぞこれ……今日はもう休む!

更新が多くて喜ぶ人はたくさんいるけど引く人はいないから大丈夫
休むことは大事だけどね
乙です

どうするか迷ったけど、おまけだけ置いていくことにするよ
書いちゃったしね(1レス)

その日の夕方
………………………………………………………………………………………………………………
                            
from;ヒッキー   17:12────────
                          |
 おい、なんであんなに急に戻ったんだよ |
 俺があの後どんな気まずい目にあったと|

 思ってるんだ                 |
                          |    
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    

                             from;クライン   17:16────────────
                             |
                             |悪い悪い!
                             |ま、明日のお楽しみってな! 
                             |それよりヒッキー、もっと対人スキル磨いた方が
                             |いいんじゃね?
                             |
                               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
from;ヒッキー   17:20───────
                         |
 ……どうやって?              |
                         |

                         |    
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    

                             from;クライン   17:24────────────
                             |
                             | 今日あたり、2人とよく話し合ってみたら
                             | いいじゃねえか!
                             |
                               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄











                             from;クライン   17:40────────────
                             |
                             | あれ?ヒッキー?
                             | おーい
                             |
                               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
………………………………………………………………………………………………………………
end

いい夢を!

これは素晴らしいSS

ゆっくりでもいいけど完結させてね?(脅迫)

よーっすこんな時間じゃ誰もいないだろうな!
ボッチはボッチらしくさびしく更新することにするぜ!


12時から投下


>>318
俺って強制されるとやる気なくすんだよね……ほら、かーちゃんに勉強しなさい、って言われるとやる気なくすあれだよ

>>304
ヒヒヒ、俺の更新速度についてこられるか!? いや、これから忙しくなったらさすがに止まるけどね


俺は自分のSSを5回読み直し、感想を15回読み直してるぜ!

この更新速度wwww

失速した時の住人の荒れ具合がどうなることやら。

>>323
安心しろ、俺はB級バックラーだ

失速したくらいで荒れるようなら、俺は即効ばっくれる用意があるぜ
投下








ふは、はははははは、あっはっはっはっはっは!!
笑いが止まんねえぜ!
  







その日の夕方、俺の狙い通り、「クリームの情報」を求めて、何人か俺のところへ訪ねてきた。
相場より少し高めの金額を提示しているが、奴らは快く払っていった。


しかも、それだけじゃない。




さっきの会議で俺が情報屋だと言ったおかげか、情報を求めてくる”客”まで、何人か来たのだ。当然、教えられる情報は売り、それなりの金額を得ることができた。


クリームの金と合わせて、全部で18000コル。クエスト報酬の武器が余裕で買える値段だ。ありがとうキバオウ、ありがとうディアベル。お前らのおかげで大儲けだ!


大体の情報をさばき終わった頃、俺は街の商店に繰り出した。そろそろ短剣も買いかえたいしな。なんなら防具だって買えるだろう。クラインたちの物は買い換えたばかりだから、俺が使っても問題ないはずだ。フフフ、自然と顔がにやけちまうぜ!


ひき笑いをしながら街を歩いていると、周りの奴らが変な顔で俺を見てくる。いや、変な顔になってるのは俺か。





…………





うーん。やっぱりやめた方がいいか? いや、でも明日ボス攻略するんだし、新調したいし……いやでも、慣れた武器の方が扱いやすいはずだし、いや、うーん……。





俺は、店の前で買い物の無限ループ回路にドはまりしていた。あたりはもう暗くなっていて、店はところどころ、ライトアップされていた。悩むくらいなら、やめた方がいい気がするな。いや、やらずに後悔よりやって後悔しろという言葉もあるし……後悔しちゃだめだろ。


そんな風に無駄に悩んでいると、商店街でついさっき見た顔を見つけた。


あれは、キリトか?






キリト「……! ええっと、ヒキ、でいいのか?」




キリトは俺に気付くと、そう確認した。




比企谷「ああ、それであってる。お前はアスナの指導は終わったのか?」


キリト「ええっと、終わったというか途中というか……」





なんだか要領を得ない回答だな。まあ、こいつに任せてあるんだし俺は気にしないことにしよう。でも、こんなところで何してんだ?

俺がそんなことを考えていると、キリトは察したようにこう答えた。




キリト「実は、アンタを探してたんだ」





……何とも意外な答えだった。


俺を? なんで? と聞くまでもなく、キリトは言葉をつづけた。









キリト「クラインのこと、助けてくれてありがとう」
















……なるほど。そういえばこいつは、初日にクラインと会っていたんだな。






比企谷「別に助けようとしてそうなった訳じゃないさ。クラインに誘われなかったら、俺は多分一人だったしな」



キリト「それでも、俺に出来なかったことをした事に、変わりはないよ。さっきパラメータを見て驚いた。アンタもクラインも、俺とそんなにレベルが違わなかったから」



比企谷「……まあ、結構無理させちまったかもしれねえな」







俺は、こいつのイメージを改めなければならないようだ。初めに聞いたとき、クラインの仲間をほっといてどっかに消えたβテスター、くらいのイメージだった。だが、こいつはちゃんとゲーム攻略をしている。しかも、最前線で、だ。他の誰も、こいつを責める権利を持っていないだろう。





比企谷「キリト、お前はクライン達と一緒に行かないのか?」




俺は率直に、思っていた疑問を投げかけた。




キリト「俺は、いいよ。俺には………」





何か言いたくないことでもあるのだろうか。
まあ、俺は無理に誘ったりしない。こいつがいい、と言ってるならいいのだろう。
だから俺は、





比企谷「……そうか」




とだけ答えた。












……それにしても、”キリト”という名前にはずっと引っかかるものがある。どこかで聞いたはずなんだ。どこで聞いたんだ……?いや、まさかどこかで会っていたか?


気になるな。いっそ聞いてみるか。




比企谷「なあキリト、お前は俺と会ったことがあるか?」



キリト「俺も丁度そう思ってたんだ……! ヒキって名前に見覚えがあるんだよ」




こいつもか……!
じゃあどこかで会ってるのは間違いないはず……。ん?”βテスターのキリト”……?


βてすたー……キリト……、情報……?













「「……あ!」」
 











俺たちは、ほぼ同時に思い出した。





俺たちはSAO初日、始まりの街で会っていた。









”また聞きたいことがあったら、いつでも呼んでくれ”
”ああ、サンキューな”










初心者と、それに情報を与えるβテスターとして、会っていたんだ。




……なるほど、思い出せないわけだ。あの時はアバターも違ったし、何よりあの後茅場によってひどい混乱が起きちまったからな。あの時のことなんか碌に覚えてなかったぜ。




比企谷「まさか、あいつがキリトだったとはな……。 アバターが俺より見た目年上だったから全然気付かなかったぜ」



キリト「俺もだ。あの時のヒキも、アバターが全然違ったからな。特に、目が……」


比企谷「……!?」




あかん、だめだ、こいつは俺のギャップを知っている! ボッチだったから安心していたが、こいつは俺の澄んだ眼を知っている! やべえ! こんなときにあの時の黒歴史がばれるなんて思わなかった!!



キリトは何か考えるしぐさをした後、口を開いた。




キリト「……あのさ」


比企谷「何も言うな! そして、クライン達にも言うんじゃないぞ!!!」


キリト「…………」





お、おい。


なにニヤニヤした目で見てやがる! ……え? ばらさないよね? なんなら土下座するよ?






キリト「どうしようかなあ?」





こいつ……! 




俺は今、このSAO最大のピンチに立たされている。かつてない恐怖、べジータもふるえあがるレベルだ。
助けてくれ悟空!



……いや、俺の手には今、取引できるだけの金がある! これで何とか黙って貰おう。








比企谷「キリト、今お前にコルを送った。これで黙っててもらおうか」



キリト「……え? いや、そこまでしなくても……うええ!? 2万!? そんなにばれたくないのか!?」



比企谷「今の俺の手持ち全部だ。返金は受け付けない、いいな?」



キリト「いやさすがに」



比企谷「いいな?」



キリト「お、おう」




……よかった、世界は救われた。












あれから少し話した後、俺たちは別れた。
キリトはまた、アスナのところへ戻るそうだ。俺から何かをアドバイスすることもあるまい。


俺は一瞬、キリトが俺と似ていると思った。


だが、今思えばばかばかしい想像にすぎない。俺は俺。あいつはあいつだ。

ここまで
感想くれるから頑張れます

たぶんこの更新スピードが保てるのは今日が最後だ!
って訳で、今日中にもう一回更新する


はあ、ずっと家にいたい

時間を言ってなかった
8時に更新



このヒッキーとキリトがそれぞれの妹について語る所が見てみたいw

そして二人ともキャラ崩壊起こす程ヒートアップする所とか見たいww

ペース落ちるんか?
1日に1回は投下してほしい
1レスでいいから

>>353
義理の妹と実の妹の違いがあるからなぁ……
>>354
小ネタとか?
それとも本編?
恐ろしく中途半端な感じになる気がするが……
1日1回できない日もあると思うけど
更新を待ってくれる人がたくさんいるなら、できるだけ早く更新したいと思ってるよ

毎日更新とかしなくていいんやで
纏めて不定期にドカンと投下があった方が読み応えあるから個人的には嬉しい
勿論毎日投下があったらそれは嬉しいことだが本編1レスとかはがっかりするんやよ(KONAMI

長文失礼

>>356
ありがとう

じゃあ更新行くぜ!



クライン「じゃーーん!! お前らに、プレゼントだ!」





比企谷「……はあ?」





俺たち、つまり俺、クライン、キリト、アスナは、噴水広場に再び集合した。時刻は朝9時。クラインはついさっき戻ってきたが、突然俺たちに何かを掲げて見せた。




比企谷「何だ? その趣味の悪い柄の布は?」


クライン「……え? 全然趣味悪くないだろ! 俺の頭にも同じバンダナがあるだろ!?」





そういえば、そうみたいだな。クラインは赤髪に趣味の悪いバンダナを巻いたスタイルがデフォルトだ。……まさかとは思うが、お前……。




比企谷「その趣味の悪い布3つ、どうする気だ?」


クライン「だから! 趣味悪くねえって! キリトもそう思うだろ!?」




俺がそういうと、クラインはキリトに助け船を求めた。





キリト「…………」




……助けて船なんてなかった。




クライン「……そんなに悪いかあ?」


比企谷「いいから本題に入れ、お前の趣味の悪さを相談しに来たんじゃねえんだろ?」


クライン「ヒッキー、さっきから冷たくね? なんか怒ってる?」






……怒ってねえよ。昨日俺をあの気まずい空気に置き去りにしたことなんか全然怒ってねえよ。







クライン「まあとにかく、このバンダナをお前らにつけてもらおうと思ってな!」





…………なんとなく予想はついてた。この予想は当たらなくてよかったのに。




比企谷「まさかとは思うが、勧誘の一環か?」



クライン「その通り! キリトとアスナも俺たちのギルド、”風林火山”に入ってもらおうと思ってな!」





……キリトだけならともかく、昨日会ったばかりのアスナも自然に誘える当たりに、コミュ力の強さが垣間見られるようだ。まあ俺だったら知ってる仲でも誘わないけどな。




比企谷「断る。俺はそういう内輪ノリが大っ嫌いなんだよ」




俺は、自分が内輪の中にいようが、そうじゃなかろうが、そういうノリは好きじゃない。このバンダナがある限り俺たちは仲間ってか? どこの海賊団だよ。




キリト「俺も、遠慮しとくよ。いや、別に趣味が悪いとか言ってるんじゃないぞ?」




それ、フォローになってねえよ。
ま、キリトが断る理由は別にあるだろうけどな。




クライン「ヒッキーにキリトまで……。せっかく急いで取りに戻ったのによお……」



それを取りに行ってたのかよ!? ……くだらないことに力を入れる奴だ。
クラインは当てが外れたかのように、落ち込み始めた。おいおい大丈夫か? 今からボス戦だぞ?







アスナ「……それ、頂くわ」



比企谷「え?」




さっきまで黙っていたアスナが、急にそんなこと言いだすから、思わず聞き返しちまった。そして、キリトも意外そうな顔でアスナを見た。いや、実際意外だ。こういうことは嫌いそうに見えたんだがな。




クライン「マジで!? いやあさすが! 話がわかるじゃねえか嬢ちゃん!」





クラインはさっきまでの落ち込みが嘘のように、テンションアップしていた。おい、そのドヤ顔をやめろ。殴りたくなるだろ。




アスナ「別に、ギルドに入りたい訳じゃない。ただ、同じパーティーの目印にはなるから」



比企谷「ああ、なるほど。バンダナつけてりゃわざわざ見分ける必要もないしな」




合点がいったぜ。
そういうことなら付けてもいいかもしれん。有象無象の中からバンダナを目印にできるなら、戦闘中も見失わずに済みそうだ。




クライン「いや、同じパーティーの顔くらい覚えてくれよ!」



いいだろ、付けるんだから。アスナは、そのバンダナを腕に括りつけた。俺はどうしようかと迷ったが、やはり俺も腕に巻きつけることにした。


……キリトは、まだ迷っているようだ。







比企谷「……付けないのか?」




こういうことを言うのは俺らしくないし、余計なお世話かもしれない。……だが、昨日こいつと話した限り、口を出してもいい気がした。





比企谷「別に、付けてもギルドに入るわけじゃない。単純に、パーティーの目印ってことでいいんじゃねえか?」




キリト「…………そうだな。クライン、俺も付けるよ」



クライン「……! ああ! 頼む!」




クラインは、それでもいいみたいだ。まあ、こういう時しかこういう事しないだろうしな。ボス戦前のイベントみたいなもんだろう。……フラグにならなきゃいいけどな。





キリトは、「結構大きいな」と言いながら、スカーフのようにして首に巻いた。これで、疑似パーティー”簡易風林火山”の完成ってとこか?



………………




そうこうしていると、攻略会議の連中が集まってきた。いや、もう会議じゃないから、攻略組ってところか?あ、ディアベルとええっと誰だっけ。モヤットボールでいいか。あいつら2人が、割と仲良さそうに話しながら広場に来た。……どうやら今日は、おかしなもめ事の心配はなさそうだな。





キリト「今日の俺たちの役割について、確認しておこうか」




キリトはパーティーリーダーらしく、チームの作戦確認を始めた。





キリト「俺たちの役目は、他の6人7パーティーのフォロー。つまり、”ボスの取り巻き(ザコ)処理”の取りこぼしやミスを補う係りだ」


まあ、簡単に言えば雑用だな。数の少ない4人パーティーだし、妥当な役割だろう。





アスナ「……それだと、ボスに攻撃を当てられないじゃない」





……いいじゃねえか。わざわざ強い奴と戦いたいのか? こいつは戦闘狂かなんかなのか。



比企谷「一番おいしい役割だろ。安全で楽にアイテムと経験値が貰えるんだからな。ボスのアイテムなんか狙って取れるもんじゃねえし、それでいいじゃねえか。ええっと、フードの人?」




俺がわざと名前を呼ばずにそういうと、アスナはむっとした顔でこちらを見た。
どうやらキリトからしっかりレクチャーは受けたようだな。




アスナ「別に、名前でいいわよ」




比企谷「……そうかい」



ま、そうそう呼ばないと思うけどな。






キリト「4人もいれば取りこぼすことはないと思うぜ。順調に倒していけばボスを狙えるチャンスも来るかもしれないしな」




こいつも戦闘狂かなんかなのか!? ……俺とキリト達の考えは、やはり根本的に違う気がう気がした。うん、違う。そんなことを言っていると、クラインは突然声をあげた。




クライン「ふっふー燃えるぜ! とうとうボス戦なんだな……!」




比企谷「……」


アスナ「……」


キリト「…………ああ!」





俺たちは、少なからず緊張しているらしい。


いや、この攻略組全員が、そうだろう。俺たちは今日、SAO第一層のボスを倒しに行く。倒せると決まったわけじゃないが、できれば誰も死なずに倒せればそれが一番いい。




そして時刻は10時。出発の時間だ。噴水広場には、昨日とまったく同じメンツが揃っていた。ディアベルは顔と人数を確認すると、大きく合図を出した。






ディアベル「みんな揃ったみたいだな! では出発!」




「おおおおおおおおおおお!!!!!!」




攻略組は、呼応するように咆哮した。




ここまで
見てくれてありがとう
感想の数だけ強くなれるよ
そして、感想ありがとう

このかまってちゃんな感じ、お前材木座だな(褒め言葉)

今日はこの一回だけ!

>>373
大体あってる


俺たちは今、総勢46人の攻略組として、第一層フロアボスのところへ向かっている。
こうして大勢でゲーム攻略に向かうのは初めてだが、どこか小学校での遠足を彷彿させる光景だ。


ちなみに、その時も今も、俺のポジショニングは最後尾である。
ボッチだからなのかわからないが、映画館でも後ろのほうが好きだ。


まあ、今は”簡易風林火山”の連中と一緒だからボッチではないけどな。


クライン、キリト、アスナは、俺の数歩前を歩いていた。アスナはほとんど喋らないが、クラインはしきりに2人に話しかけていた。……おそらく、どうしても正式に風林火山に入ってほしいのだろう。


俺は、その会話の邪魔をしない(巻き込まれない)ように、少し離れたところを歩いている。せいぜい頑張ってくれ、クラインよ。


こうして歩いていると、いまだにここがゲームの中とは思えないほどの景色が広がっているのがよくわかる。この風も、温度も、木の匂いも、すべて擬似的なものなのだ。まったくもって、技術の発達は恐ろしいな。


  






そんなことを考えながら歩いていると、前のほうから大きな斧を背負った男が後ろのほうへ歩いてきているのが見えた。当たり前だが、攻略会議で見覚えのある奴だ。



……あれ?後ろのほうっていうか、俺のほうじゃね?







???「よう! 調子はどうだ?」






その男は、誰かに話しかけた。……いや、どう見ても俺に話しかけている。だって周りに俺以外誰もいねえし。







比企谷「ええっと、調子いいです……」





男の威圧感に押され、つい敬語で答えてしまった。怖い。





???「おっとすまん、自己紹介がまだだったな。俺はエギルという。よろしく!」



比企谷「え? あ、はい。俺はヒキって言います」



エギル「おいおい、ここはゲームの中なんだ、ため口で構わないぜ!」






しょうがないだろ、怖いんだから! でも、溜め口でいいって言ってるのにわざわざ敬語を続ける度胸は俺にはない。





比企谷「お、おう。よろしく」



エギル「ああ! ヒキ、昨日の演説、素晴らしかったぜ! 俺もキバオウの奴に一言言ってやろうと思ったが、あれほど説得力のある言葉は用意できなかった」





……わざわざそんなことを言いに来たってことは、βテスターか?


いや、そんなこと言えばバレることくらいわかるはずだし、一般プレイヤーだろうか。ずいぶんと情に熱い奴もいたもんだ。いや、それを言ったらクラインもそうか。





比企谷「演説なんて大層なもんじゃないぞ。ただの一般論だ」



エギル「それでも、あの場で言えることに大きな意味があるのさ! きっと君に感謝しているのは一人や二人じゃないはずだぜ!」





まあ、そういうことならそう受け取ってもらっても別に問題はないか。わざわざ否定するのも面倒だしな。






エギル「今日はお互い、がんばろうな!」




エギルはそういうと、握手を求めてきた。ここはアメリカか?




比企谷「お、おーけー」




吃驚して英語で答えちまった。



俺が握手すると、エギルは満足したのか「またな!」と言って早歩きで元の場所へ戻って行った。
ああ、怖かった……。

……………






しばらくした後、今度は別の奴が後ろのほうへ来た。……というか、俺のほうへ来ていた。流行ってんのか?
今度は誰だ?


あいつは……! 






……駄目だ、モヤットボールで覚えたせいで名前が出てこねえ! 






モヤットボール「おい、情報屋! あんさんに言いたいことがある!」





その前に、名前を教えてくれませんかね。




いや、言いたいことってなんだ? またβテスターが気に食わないとか言い出す気じゃないだろうな。





モヤットボール「ワイは、ワレが気に食わん!」





って俺かよ! 一体何がだ? と尋ねるまでもなく、言葉をつづけた。





モヤットボール「あんさんは情報屋なんやろ? なら、なんで昨日ワイに言った事を、広めんかったんや! あそこまで考えがおよんどるなら、それを皆に伝えたらよかったやないかい!」








………なるほど、そういうことか。






それは……確かに間違ってねえよ。


俺はアンタを、ただの先走ったバカとしか思ってなかったが、違ったみたいだ。俺の考えを認めた上でそう言えるなら、なかなか理解のある人間だよ。


俺は、2000人近い犠牲者が出たことは1週間前から知っていたし、その時すでにあの考えはあった。







……そして俺は、注意を呼び掛けるなんてことをしなかった。





いくら情報通でも、俺1人の意見が8000人に通じると思えないし、そもそも考えもしなかった。


……いや、広める努力をしなかった時点で、俺には言い訳する権利はないな。人の命がかかってるんだ、めんどくさいなんて言って逃げれる問題じゃない。





俺が黙っていると、奴は返事を待たずにこう言った。




モヤットボール「あんさんだけを攻め取るわけやない。やけど、命にかかわる情報はできるだけ皆に伝わるべきやとおもっとる。いくら自分が情報屋やゆうても、全部の情報を金で売るなんてことは、このキバオウが黙ってへんで!」




自己紹介ありがとう。


キバオウは言いたいことを言って満足したのか、前の方へ走って行った。









俺は極力、命にかかわる情報は開示しているし、タダで渡している。だが、自分の考えまでもは明かしたりしない。それをするのは、ディアベルや、それこそキバオウのような人間が適任じゃないだろうか。



俺はボッチ根性が染みついているから、人の命がかかわるような場面で自分の意見を通す勇気が、ないんだ。






俺はキバオウの言っていたことを、しばらくずっと考えていた。もしかしたら、俺がもっと早くアイツに会っていたら、2000人の死者という被害を、減らせたのかもしれない。まあ、全く気が合わないだろうから、一緒に行動したりしないだろうけどな。






クライン「おーいヒッキー! 早く来いよ! そろそろ着くらしいぜ!」


比企谷「あ、ああ」






……いつの間にか、ボスの部屋の近くまで来ていたようだ。





俺は、人との情報のやり取りを甘く見ていたのかもしれない。


俺は…………。





………………








数分後、俺たち攻略組はボス部屋の前に来ていた。


先頭に立つディアベルは、扉の前にいる。




ディアベル「みんな、俺から言うことはたった一つだ!」


ディアベル「勝とうぜ!!」




……本当に、皆をまとめるのが上手いやつだ。
俺、クライン、キリト、アスナの四人は、陣営の後ろについている。全員、覚悟を決めた表情で立っていた。


ディアベル「……行くぞ」


ディアベルはそういうと、ボス部屋の扉を開いた。




ここまd!

キリト「俺をそこらへんのβテスターと一緒に云々」

八幡「嫌われるのは俺だけでいいのになんであんなことしたんだ!」

みたいな八幡がキリトの自己犠牲を批判する「お前が言うな」展開なら面白そう

これってギルド結成済みってことでいいの?

>>1はプログレッシブ1巻しか持ってないみたいだから知らないのかもしれないけどギルド結成できるようになるのは3層まで進んでから発生するクエストクリアしてからだよ
まぁSSで結成しましたっていう明言が無いから仮結成っていうことなのかもしれないけど一応

SS自体は面白いから期待してるよ

>>428
仮結成って認識で間違ってない
設定に関しては調べてたから知ってたけど、読む側としては特に必要な情報じゃないと思ったから説明はしなかっただけよ

いつもながら感想サンキュー

10分後に投下

あと、2巻買ったよまだ読んでないけど
4月中に俺ガイル9巻とSAOゲームが出る楽しみ

一応気をつけるけど、設定ミス云々はあると思うからその時は目をつむってくれ

SAO第一層のボスの名は、”イルファング・ザ・コボルドロード”。
身の丈2メートル、武器は骨斧を使う。HPバーが4つあり、3つ以上削ると武器を湾刀(タルワール)に変える。


そして、ボスの取り巻きの名は、”ルインコボルド・センチネル”。
身の丈は人と変わらず、斧槍を使う。初めは3匹しかいないが、ボスのHPバーが一本減るたびに3匹増える。


これが、俺たちの知っている情報だ。この情報は”鼠のアルゴ”と呼ばれる情報屋が出した、ガイドブックに載っていた。……ご丁寧に、”この情報はβテスト時のものです。”とまで書いてあったので、おそらくあの情報屋はβテスターだろう。よくも恨まれるかも知れないのに、そんなこと書いたもんだ。









……しかし、いくら情報で知っていても実際見ると全く印象が違う。


ディアベルが扉を開いたときに見えたボスの印象は、


比企谷「でけえ……」


だった。




軽く2メートルを超えるその巨体は、今まで戦ってきたどのモンスターよりも大きい。だが、その姿を見て萎縮している奴は少ないみたいだ。すでに全員、臨戦態勢に入っている。……俺もビビってる場合じゃねえな。



ボスの取り巻きは情報通り、3匹待機している。


そいつらは俺たちの姿を発見すると、獣の雄叫びをあげてにこちらへ突っ込んできた。





キリト「……行こう!」



クライン「ああ!」




その応答に対し、俺とアスナは頷いて答える。



「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


先行部隊が取り巻きに向かっていき、ギーンと響くような音を上げて剣を交わした。


……俺達の出番だ。












………………………









……あれ? ボスの取り巻き処理ってこんなに簡単なのか?







俺がそう思ったのは、2匹目の雑魚を倒し終わったときである。
かかった時間は、約1分。……マジかよ。


作戦がよかったとか、そう問題じゃない。……キリトとアスナが強すぎるんだ。
雑魚といっても、特殊な鎧のおかげで首以外狙うところがない。だが、あの2人は狭い的に対してすべて直撃させている。しかも、使っている武器は片手剣や細剣で、俺のような直撃が出やすい短剣じゃない。


こいつら、俺が思っていた3倍は強いんじゃないか?

特にアスナなんか、初心者同然だと思っていたのに、



アスナ「……!」



……速い。剣筋が見えないほどのスピードで敵を貫いている。
こんなに速いスピードでソードスキルを出す奴を、俺は見たことがない。



俺とクラインが敵の武器をはじき、キリトとアスナが喉に直撃させる。……という動きだけで、あっという間に3匹倒してしまった。取りこぼしやミスのフォロー? 何の事だっけ?





キリトチームがすべての雑魚を倒し終わった時、他の雑魚処理担当は唖然としていた。……というか、目の前で一緒に戦っている俺ですら唖然としている。





キリト「よし、まだ1本目のHPバーは残ってる。援護しに行くぞ!」


アスナ「了解!」


クライン「おうよ!」


……マジかよ。




いや、俺とクラインも確実に敵の攻撃を弾くことに成功しているし、足手まといになっているわけじゃない。だが、あの二人のゲームセンスは次元が違う。何だこいつら!






ディアベル「……強い」




ディアベルは見方に指示を出しながら、そう呟いた。
この言葉がボスに向けられた言葉じゃないことくらい、俺にもわかる。




キバオウ「なんなんやあいつら! ……強すぎるやろ」




いや、強すぎるのはあの二人だけだよ!



俺達が援護しに行くと、すぐに1本目のHPゲージがなくなった。……これ、思った以上に早く終わりそうだな。


再び3匹の雑魚が出現し、俺達はそいつらに標準を合わせる。
俺が短剣で突っ込み敵の槍斧を上に弾くと、




キリト「いけっ……!」




即座に喉を貫いた。怖! 俺まだ隣にいるんですけど! ってかさっきより速くなってね!?






クライン「もういっちょ弾くぞお!」




キリトの次に、クラインが飛び出し、ギンという音を立てて剣を弾く。すると、敵の斧槍は宙を舞い、丸腰になった。……ほんとにボスの取り巻きかよこいつら。不甲斐なさすぎるだろ……。


クラインはそのまま続けて首を切りつけ、とどめを刺した。





クライン「よっしゃあああ! 初撃破あ!!」


キリト「グッジョブ!」


比企谷「……」


キリト「ヒキも、ナイスアシストだ! こんなに上手いなんて思わなかったぜ!」




いや、それ完全に俺のセリフですから。
というかお前、テンション高くね? さっきからノリノリじゃねえか。


なんというか、いや、言葉にできねえ。






アスナ「はあっ……!」





アスナも、当たり前のように敵の武器を弾く。
俺は、”アスナは百戦錬磨の武将かなんかなのか!?” なんて思いながら、敵の首を切りつけた。 





………………





しばらくして、ボスのHPゲージが最後の一本になった。ここまでは怖いくらいに順調である。むしろ余裕だ。俺は、再び沸いた雑魚3匹の相手をしながら、状況を確認した。


ボスのHPは残り一本。雑魚は3匹。いや、今2匹になった。
攻略組の死者は、一人も出ていない。……当然だ。雑魚処理をキリトチームだけで終わらせるもんだから、必然的にボスへの対処が簡単になる。つまり、ボスへの攻撃が通りやすいということだ。






……これは、余裕だな。

おそらく、俺たちが雑魚を倒し終わる頃には、ボスも倒されていることだろう。
俺たちは雑魚処理に集中していれば問題なさそうだ。





俺がそう、確信した時だった。ボスの最後のHPバーが残り3分の1を迎え、武器を湾刀に切り替えた。





……あれが、湾刀か? 想像していたものと違うな。
するとディアベルはなぜか、見方を後退させた。……なぜ?













キリト「……! 駄目だ、行くな! 全力で後ろに跳べ!!!」








ディアベルがボスに突っ込んでいくと、キリトが突然叫んだ。おい、前から雑魚が来てるぞ!
俺はキリトの前に出て、敵の攻撃を剣で受けた。



比企谷「キリト! 前見ろ!」


キリト「……!!」




俺が間一髪でフォローに入ったおかげで、なんとか最悪の事態は防げたようだ。
アスナが即効とどめを刺し、最後の雑魚は消えた。







……だが、最悪の事態は、防げていなかった。






俺がもう一度振り向くと、ディアベルはボスに正面から切りつけられて、宙を舞っていた。



ボスの動きは、どう見ても湾刀のモーションではない。……一体、何が?






キリトは、即座にディアベルの元へ走って行ったが、






ダメージ回復は間に合わなかった。












…………ディアベルはキリトに何かをつぶやいた後、光とともに消えた。









ここまで

今日は2回更新できそう


8時に投下

いくよ

もし、あの場面でディアベルが、1人でとどめを刺しに行かなかったら、





キバオウ「……嘘、やろ……」





もし、俺達が自分たちの強さを把握し、チームの作戦をボス撃破に変更していたら、





クライン「なんでだ……?」





もし、キリトが、ディアベルと一緒に戦って入れば、






キリト「…………っ」






ディアベルは、死ぬことはなかっただろう。








俺は、ディアベルが消えた瞬間から、全く動くことができなかった。
ディアベルを殺したボスは、勝ち誇ったように咆哮している。


やつが持っている武器は、湾刀ではなかった。カタナのような形状をしたそれは、俺が今までで一度も見たことがないものだ。……情報が間違っていたのか? いや、違う。情報は、”βテスト時のものです”とあった。




つまり、β時代と武器を変えた……?




β版から正式版にする際の、”仕様変更”。それが、ボス戦闘にすら存在したのか?





そんな事、予想できるわけないだろ……。



いや、予想できなかったとしても、知らない武器相手に突っ込むべきではなかった。
だが、あの場面で武器の形状に気付かなかったとしても、不思議じゃない。奴は情報通り武器を持ちかえた。だから、情報通りの武器に持ち替えたと錯覚してもおかしくないんだ。



おそらくディアベルは、湾刀のモーションを網羅していたはずだ。だからこそ、あの場面で1人で突っ込んだのだろう。
だが、実際敵が出したモーションは、ディアベルの知らないものだった。さっきまでディアベル、いや、もしかしたら攻略組全員が、勝利を確信していたに違いない。




茅場、お前は一体、どれだけ俺たちを絶望させれば気が済むんだ?






俺が茫然と立ちすくむように、他の連中も未だに唖然としていた。ボスから逃げるので精いっぱいのようだ。







これ以上は、限界かもしれない。










………………撤退、だな。








この状況じゃいくらボスのHPが少なくても、さらに多くの犠牲者を出しかねない。今でも、ボスの動きに翻弄され、多くの見方がダメージを受けている。かくいう俺も、衝撃が大きすぎて戦えそうにない。







しかし、俺がそう考えた瞬間。






キリト「援護、頼む!」





キリトがボスに向かって走り出した。




アスナ「了解」



クライン「……応!」



そして、アスナとクラインも、それに続いたのだ。





……ウソだろ?


なんでお前らはそんなに簡単に進むことができるんだ……?




こんなに多くのやつが戦意喪失してるんだ、今は諦めて…………。









いや……違う。





あいつらは、ここで諦めることがどういう意味かを分かっているんだ。


俺たちは今、SAOで生き残った人間、全員の期待を背負っている。ここで負けて帰ったら、二度と立ち上がることができないだろう。それが、あいつらには分かっているんだ。






どんな時でも希望を捨てずに、諦めない。



俺には絶対にできないことだ。



……俺が、しないことだ。





俺には、あの3人が眩しすぎた。






…………だが。







比企谷「おいお前らああああ! いつまでもぼーっとしてんじゃねえ! さっさと援護しろ!」







諦めないやつがいるのなら、俺は全力でフォローしようじゃないか。


エギル「……おお!」


キバオウ「……!」



俺は、さっきまでの自分を棚に上げて、立ちすくむ見方を煽った。ただ立っているだけだと、敵の標的になりかねないし、邪魔だからだ。そして、戦えるのならば是非もない。



敵の動きが予想できないなら、ターゲットを分散させるべきだ。正面から援護させて、敵の攻撃をバラけさせる。


「おおおおおおおおおお!!」


戦意を失っていた連中は、俺の言葉が届いたのかわからないが、意識を取り戻したかのように雄たけびを上げた。




そして俺は、



全力で走った。











キリト「はああああっ!!!」






ギイインと響くような音を立てて、キリトがボスの武器を弾いた。それに続くように、アスナとクラインが攻撃を与える。だが、ボスの反応速度も速いため、とても3人じゃ攻撃が間に合わない。




エギル「おおお!!」




しかし、その心配はないみたいだ。先ほど立ち上がった見方は、すでに援護体制に入っている。




キリト「敵の背後まで囲むと、全体攻撃が来るぞ! 前方だけで対応するんだ!」





キリトは、見方に指示を出しながらボスの攻撃を受け流した。





だが俺は、奴の後ろに回り込んでいた。


……キリト、それは奴が気づいていればの話だろ?





奴は、俺の存在に気づいていない。別に、俺の影が薄いからってわけじゃないぜ? 隠蔽スキルを使っているだけだ。安全確保のために上げておいたスキルだが、当然戦闘にだって使える。





俺は短剣を構えて、後ろから突撃した。






その攻撃は、ボスの首元に直撃した。奴は大きなうめき声をあげながら、こちらを向く。
おそらくボスには大したダメージは与えらていないだろう。しかし、ターゲットをこちらに移すことはできた。







比企谷「……トドメを、させ!」







俺の声はおそらくキリトまで届いていない。しかしキリトは、俺が言いたいことがわかったかのように、







キリト「……任せろ!」






一気に敵を切り裂いた。








……………………






空中に浮かぶ、”congratulation!”の文字。

それが浮かび上がった瞬間、フロア中から歓声が鳴り響いた。



どうやら、俺たちは勝ったらしい。




……だが、俺は素直に喜ぶことができなかった。




ここまで


八幡らしい目立たない戦いだな
あと見方じゃなくて味方な
誤字脱字がほとんどないから逆に気になっちゃう

>>500
すまねえ……なんか違和感あると思ったら……
脳内編集で保管しといてくれ

書けるうちに書いたほうが投げる確率が減ると思う
だから俺は書くぜ!

いつもながら感想サンクス
全部読んで励みにしてます

1時に投下





俺達は、第一層のフロアボスを倒した。


SAO開始1カ月にして、とうとう最初の階が突破されたのだ。






ボスを撃破した瞬間から、攻略組は大歓声を上げていた。それほどに、この勝利は大きいのだ。この勝利は、SAOの世界に閉じ込められた全員にとっての希望となるだろう。そして、この強力な敵を倒したことにより、大きな自信をつけることができたはずだ。




攻略組はこう思うはずだ。”いつか絶対にこのゲームをクリアしてやる!”と。




SAOの生き残りは思うはずだ。”いつか現実に戻れるかもしれない!”と。




だから、俺もこの勝利を喜ぶべきなんだ。














…………喜べるわけ、ねえだろ。






今まで俺達攻略組を引っ張ってきた、ディアベルは死んだ。




あいつは、今までずっとこの攻略組をまとめてきたんだ。なんで、あいつが死ななければいけなかったんだよ。


ディアベルは、人々の希望となるための攻略を初めて本格的にやった英雄だ。なんで、こんなやつが死ぬんだよ。ディアベル、お前はもっと人の希望となるべきだろ? お前は、そういう奴じゃないのかよ。俺がいくら努力しようが全くかなわない、俺が持っていないようなものをたくさん持っているやつだったじゃねえか。




ディアベルは、なぜ1人で先を急いだんだ。







そういえば、キリトはディアベルが死ぬ直前、何か叫んでいた。ええっと確か、





”駄目だ、全力で後ろに跳べ”





…………。



もしかして、キリトはボスがなんの武器を使っているか知っていた?




……知ってて、言わなかったのか?








いや、冷静に考えろよ俺。
あの状況で叫んだってことは、予想できなかったからだろうが。使っている武器がなんだったかを知っていただけで、ボスがそれを使うとは予想していなかったのだろう。


それに結局、ディアベルが死んじまった事実は変わらないんだ。




……だが、なんでお前らは、そんなに喜べるんだ? お前らを今まで引っ張ってきたのは、誰だと思ってんだよ。







アスナ「お疲れ様」





……ビックリした。いつの間に後ろにいたんだ。



アスナは、同じチームの3人に声をかけた。まだ、俺を含めて3人とも疲れきった顔で座り込んでいる。





エギル「見事な連携だった。コングラチュレイション! この勝利は、あんた達のものだ!」




続けて、エギルもそう言った。……その”あんた達”の中に、ディアベルは含まれていないようだった。





クライン「ああ、お疲れ!」


クラインは、笑って答えた。




それを聞いていたのか、周りにいた連中が拍手をしだした。俺達の活躍を称えているらしい。


お前らも、なんでこんなに笑えるんだよ。……いや、俺が卑屈なだけか? 


まあ、わざわざクリア後に蒸し返すことが良いことなわけないしな……。











「…………なんでや!」







俺が無理に納得しようとした瞬間、誰かがそう叫んだ。……キバオウだ。







キバオウ「なんでディアベルはんは、死ななあかんかったんや!」







キバオウは、俺が思っていたことを、代弁した。
いや、そう思っていた奴はもっと多いかもしれない。今思えば、この勝利に水を差さないように、あえて口に出さなかっただけかもしれない……。






キバオウ「なんで、自分、ディアベルはんを見殺しにしたんや……」





キバオウは、キリトに向かってそう言った。……さっきのキリトのセリフを、こいつも聞いていたらしい。





キリト「見殺し……?」


キバオウ「そうやろが!! 自分はボスの使う技知っとったやないか! 最初っからあの情報伝え取ったら、ディアベルはんは死なずにすんだんや!」





キバオウは涙ながらに、そう叫んだ。



いや、それは違うぞキバオウ。


俺は、さっき自分が考え直したことを、説明しようとした。



だが、その時。








「きっとあいつ、元βテスターだ! だからボスの攻撃パターンも全部知ってたんだ! 知ってて隠してたんだ!」





フロアにいる一人が、そう言った。





「他にもいるんだろ!? βテスター共、出てこいよ!!」




攻略組全体が、ざわつき始めた。
そして、その言葉を聞いた奴の数人が、同じようにβテスターを責めはじめたのだ。





「あのβテスターの情報屋も、わざと偽情報を流していたんだ!」



……そんなことして何の意味があるんだよ。



「βテスターが全部情報を明け渡していれば、今までだって死なずに済んだ人は大勢いる!」



……お前、昨日の俺の話聞いてたのか? 


いや、もしかしたら俺の話をまじめに聞いてたやつなんて、キバオウとエギルくらいかもしれない。昨日のも、ただ仲裁に入った程度の認識しかなかったんだろうか。







やっぱり、俺が何を言ったところで、聞く奴なんかほとんどいないじゃないか。











そいつらはもはや、キリトだけでなく”βテスター全員”を責めていた。




だがそれは、ディアベルの死を認められない奴がいるということだ。



こいつらは、何かを責めずにはいられないんだろう。……そしてそれは、俺が何を言っても無駄なんだ。こいつらは、責める相手を求めているんだ。





キリトの方を見ると、拳をギュッと握りしめているようだった。


クラインは、困惑した表情で黙っている。








俺が口八丁で説明すれば、きっと騒ぎは収まるだろう。


……だが、それに何の意味がある?





この先、SAOクリアにはβテスターとの協力は不可欠だ。しかし、この調子ではいつ再び内部崩壊が起こってもおかしくない。それは、俺がここで庇ったとしても、だ。


こいつらはこのデスゲームの元凶である茅場という、目に見えない敵でなく、目に見える奴らを責めている。こいつらの中から、”βテスターが悪者”という認識は、消えないかもしれない。






βテスターと、一般プレイヤーに違いはない。


両者とも、無理やり茅場に集められた被害者なんだ。


だからこそ、全員で協力しなきゃ駄目なんだよ。








キリト、お前のような奴がゲーム攻略に必要だ。





……俺は、それをこいつらにわからせなきゃならない。













「はは、あっはははははははははは!」






俺は、フロア全体に聞こえるように、高笑いした。


聞いた全員が、一発で不快になるような笑い方をした。








ここまで

俺の飲みかけの栄養ドリンクあげるから
はよ続き書いてくれ

>>522
せめて新しいのください


12時に投下


中学の頃の話だ。


俺のクラスに、仲の悪い同士の二人がいた。俺の話じゃないぜ? 俺の場合、そもそも”仲”すらないからな。


その二人はいつも反発していて、いつだったかとうとう殴り合いの喧嘩にまで発展したのだ。そいつらは職員室に呼び出され、教師からきつく説教を受けたらしい。するとどういうことか、そいつらの仲は悪くなくなった。


それは決して、教師の説教が効いたとか、改心したとかいう理由ではない。


そいつらが教室に戻ってきたとき、2人とも自分たちを説教した教師の悪口を言っていたのだ。悪口という共通の話題と理念は、今までの不仲を解消するかのように、2人の仲を良くさせた。





結論。




仲の悪い者同士を協力させるにはどうしたらいいか?




それは、共通の敵をつくればいい。










俺はフロア全体に聞こえるように笑い声をあげた。


それはまるで、フロア中にいる奴全員を嘲笑っているように見えたことだろう。


俺はひとしきり笑うと、困惑する連中に対し、こう言い放った。







比企谷「フフ、まったくてめえらは、どこに行ってもマヌケばかりだな」







……突然の言葉に誰も答えない。

だから俺は、わかりやすいようにこう続けた。






比企谷「てめえらのマヌケさ加減には、流石の俺でも笑っちまうレベルだよ」



キバオウ「……どういう意味や?」






俺の言葉に、キバオウが反応した。そう、お前なら乗ってくれると思ってたぜ。
俺は今からお前らの共通の敵になる。キバオウ、お前がその主軸になるんだ。






比企谷「わかんねえのか? てめえらが雑魚だから、こんなに手間取ったって言ってんだよ。このボス相手に普通、死者が出るか? 情報不足? 馬鹿じゃねえの?」



比企谷「単純に、てめえらが雑魚だったから死んだだけだろうが」



キバオウ「な、なんやと!?」








俺がそういうと、周りが一気にざわついた。まだ、俺が何を言ってるのか測りかねている奴がいるらしい。俺はそいつら全員まとめて敵にすべく、最悪の一言を言うことにした。






比企谷「その通りだろ。死んじまったディアベルも、ただ雑魚だったから死んだって言ってんだよ」


比企谷「情報云々なんか以前の問題だ。あの攻撃すらかわせないお前らが、情報が足りなかったとか言うのを見ると反吐が出るぜ」



キバオウ「……! よくも、キバオウはんの事を……!!!」





いいぞ、その調子だ。言っている俺ですらこんなにムカついてるんだ。お前らも、もっとなんか言ったらどうだ?







比企谷「しかしディアベルのやつも馬鹿だよなぁ……。なんでこんな連中と一緒にやって敵が倒せると思ったんだ? ボスの攻撃パターンが違ったくらいで怖気づくようなやつらなのによ!」




「…………!」
「………………くそっ」




俺の言葉に、誰も言い返せない。実際は俺も怖気づいてたが、こいつらにとってはたんなる事実でしかない。人は、図星を突かれることに対しどうしても嫌悪するんだ。






キバオウ「自分、何が言いたいんや…………!」


比企谷「簡単なことさ。てめえらじゃ、一生かかってもこのデスゲームをクリアすることなんかできないって言ってんだよ」





俺は、高笑いしながらそう言った。

すると、とうとう周りにいたやつらも口々に言い返し始めた。





「何だと……」


「ふざけんじゃねえ! お前に何がわかるってんだ!」


「いい加減なこと言ってんじゃねえよ!」





比企谷「いい加減なこと言ってんのははたしてどっちかな? ボスの武器が情報と違うものだってことくらい、一般プレイヤーの俺にだって一目で気づいたんだ。敵の攻撃が情報と違った?」


比企谷「バーカ、武器が違うなら攻撃も違うにきまってんだろ。そんなこともわからない雑魚共が、どうやってゲームをクリアすんだよ!」




「くっ………!」


キバオウ「な、なん………」



キリト「…………」



ここでキリトも俺に何か言ってくれたら完璧なんだがな。まあ、そんなこと考えなくても俺のイメージはもう最悪か。人と仲良くなるのはあんなに難しいのに、嫌われるのはなんでこんなに簡単なんだろうな……。







キバオウ「自分、ちょお黙りや! ワイらは、絶対にこのクソゲームをクリアしたる! あんさんの言うとおりにはならん!」



比企谷「フフ、そうかよ。せいぜい頑張って無駄死にでもしてろよ。俺は一層に戻ることにするぜ」




そう言うと俺は、転移門の方を向いた。



比企谷「情報屋らしく、てめえらのマヌケさ加減を”みんな”に伝えなきゃなんねえからなぁ! このゲームをクリアすることが、どんなに無理なことかをしっかりと伝えに行ってやるよ!」





キバオウ「なんやと……!」




比企谷「あばよ、雑魚共。面白いもんが見れて楽しかったぜ」






俺はそう捨て台詞を吐いて、ドアの方へ歩き出した。










…………完璧だ。


これで、俺は攻略組とっての共通の敵になることができたはずだ。絶望を煽り死者すら冒涜する最悪の情報屋と、その絶望に立ち向かう攻略組。


あいつらは、きっと今まで以上に攻略に力を入れることだろう。それこそ、βテスターと協力しても、だ。とくに、キバオウがみんなを煽ってくれるはずだ。あいつが、言われたまま終わるはずがないことは、ここに来るまでに知っているからな。



俺はこれ以上何もいうことなく、ボス部屋の奥の出口から出ようとした。







だが、あいつが俺を呼び止めた。











クライン「ちょっと、ちょっと待ってくれよヒッキー!!!」






……ああ、お前は来ると思ってたよ、クライン。お前がここで来ないわけないもんな。俺はお前という人物を、この一カ月で良く知ったと思ってるぜ。








だから、俺は最後の仕上げをしなけりゃならないんだ。












比企谷「……ついてくるな。もうお前らとつるむ気はない」







そう言いながら俺は、腕に巻きつけたバンダナを剥ぎ取った。この趣味の悪いバンダナは、クラインからもらった”風林火山の証”だ。そして、俺たちの”仲間の証”だ。こんな物をつけてたら、クライン達も俺の仲間だと思われちまうからな。


俺は、手に取ったバンダナを、全員に見えるように床に捨てた。






クライン「な……!?」




クラインは、驚いた顔でこちらを見た。それに対し俺は、以前出会った時に言った言葉を、少し変えてもう一度言う。






比企谷「つまり、ここでサヨナラだ」



クライン「…………!」








クライン、お前なら俺がこうしている意味がわかるだろう? お前は今までずっと俺の事を心配して、理解してくれた。理解しようとしてくれた。


だから、今俺がこうしている意味を、お前もわかってるはずなんだ。そうだろ、クライン?



俺が目指しているのはいつだってSAOクリアだ。だからこそ、俺はここでこうするんだよ。







……だからクライン、俺をそんな目で見るのを、やめてくれ……。









クライン「ヒッキー、俺は、俺はよお…………!」


比企谷「…………」




クラインは、言葉を続けることができないようだった。



俺は、クラインの言葉を待たずに扉から出て行った。






キバオウ「……! よくも、キバオウはんの事を……!!!」

ワロタw

ここまで

>>558
ひどい誤字だ
寝不足のせいかな……ディアベルに保管しといてくれ

クライン「ヒッキー、やっはろー」
ヒッキー「お、おう・・・」

キリト「やっはろー」
ヒッキー「!!?」

エギル「おうヒッキー、やっはろー」
ヒッキー「」

これみたいにSAOクロス増えればいいのに
誰かはがないとSAOのクロスはよ

>>588
誰か・・・・・・・・・ということは・・・・・・・・・
”誰でもいい”ということ・・・・・・・・・・・・・・・!!!!
つまり・・・お前が書いてもいいということだ・・・・・・・・・・・・!!!
かけ・・・・・・かくんだ・・・・・・今からでも遅くはない・・・・・・・・・!!!



10時過ぎに投下

よく見たら感想めっちゃ多いありがとう
誤字に関してはすまんかった。今後は極力注意する


投下


SAOには、転移門という大きなゲートが存在する。


転移門とは全部で100層あるアインクラッドの、層を行き来するためのワープホールのようなものだ。だが、このワープホールは初めから使えるわけではない。各階層にある転移門を有効化(アクティベート)することで初めて、その階層にワープが可能なのである。


俺は第二層に入って転移門を有効化する、なんてことはしなかった。わざわざ有効化しに行かなくても、ボスが倒されてから二時間後に自動的に開くシステムになっているからだ。本来なら俺は、”最悪の情報屋として一層に悪報を流す”ことになっているが、そんなことしなくても俺の悪名はすぐに広まるだろうから必要ない。


”悪事千里を駆ける”と言い、悪い噂は何もしなくても勝手に広がっていくもんだ。ソースは俺。




……今は、とにかく誰にも会いたくなかった。




だから、まだ誰もいない二層で、1人でずっと走っている。


こんな早い段階で誰かに追われるとは思っていない。でも、”追う”ことはなくても”会おう”とする奴ならいる気がした。









…………………






第二層は、転移門がある街以外はずっと自然が広がっていた。一見して”遊牧エリア”ってとこか? 一層ごとに違うテーマでステージが造られているらしいが、ここよりももっと美しい景色もあったりするんだろうか。


そんなことをぼんやりと考えながら走っていると、前方に森が見えた。ひとまず、あの一帯で休むことにしよう。もう、20分ほど走り続けて疲れちまった。……いや、どんだけ人に会いたくないんだよ俺。走りすぎだろ。




比企谷「ふう……」




俺は森の中へ入ると、ひとつため息をついた。……何というか、本当に孤独だな。実際的な意味でも、この層には俺しかいないから孤独だ。だが、俺が言っている意味はそうじゃない。SAO全体での意味だ。




これほど嫌われることは人生で初めてだろうな。
俺は小学、中学、高校1年とずっと友達がいなかった。だが、それは嫌われていたというよりも無関心だったという方が正しいだろう。だから、今回のように全員から嫌われるようになるのは初めてかもしれない。


俺がやったことだから後悔はしてない。 だが、純粋に寂しさを感じ始めていた。ボッチに慣れてるはずの俺がこう思っちまうようになったのも、全部クラインのせいだ。……あいつがいたから、孤独を感じずにすんでいたんだ。




比企谷「はあ……」




さっきからため息ばっかり出やがる。ため息ばかり出していると幸せが逃げていくって誰かが言ってたぞ。……もう遅いか。




……さて、俺はこれからどうしようか。

正直、何も考えずに飛び出したもんだからこれからはノープランだ。いや、自由って言い方した方がいいな。そうしよう。俺は自由だ!



…………。


……情報屋らしく、情報でも集めるとするか。転移門が開くまでの2時間で、できるだけ情報を集めておいた方がいろいろと都合が好さそうだ。



俺はそう思い立って、どこかの町へ向かおうとした。



だがその瞬間、突然後ろから声をかけられた。





「ずいぶんと、探したよ」



比企谷「…………!?」




キリトだった。






あれ? 俺さっきまでずっと走ってたよね? なんで追いつけんの? しかも隠蔽スキル使ってたのになんでみつかんの?





キリト「どうやら、俺の索敵スキルの方が上だったみたいだな」





………マジかよ。俺は一層にしては結構上げたと思っていたんだが……。
いや、そんなことよりこいつは何しに来たんだ? 正直、お前が追ってくるなんて思わなかったぜ。




比企谷「……何の用だ?」




俺はできるだけ、そっけなく答えた。もしかしたらこいつも、俺の事を”悪く”見ているかもしれないからな。だったら、そのイメージを崩さないようにすべきだろう。









キリト「…………アンタに、謝らなきゃいけないと思ったんだ」





どうやら、杞憂だったようだ。キリトは俺の芝居を見抜いてるらしい。
だから、俺は普通に喋ることにした。






比企谷「さっきのことなら、何も謝る必要はないさ。俺が勝手にやったことだしな」




キリト「…………それでも、すまなかった」





……こいつも義理堅い奴だな。
ほんとに俺はクリアの事しか考えてないってのに。








比企谷「言っておくが、俺はβテスターを庇ったわけじゃないぜ? あれは、SAOクリアという目標のために、必要だと思ったからやっただけだ。お前が思ってるほど、俺は他人の事なんか考えてねえよ」





俺は、正直にそう言った。覚えのない好意ほど、気味の悪いものはないしな。





キリト「でも、なにもヒキがそれをしなくてもよかったんだ……」





キリトは、拳に力を入れてそう言った。こいつにも、何か考えるところでもあったんだろうか?
でも、こいつがそんなに思い悩む必要はない。合理的で、簡潔に済む問題だったんだ。あれが、一番確実だった。







比企谷「……そうだな。あの役目は、俺がしなくてもよかった。むしろ、誰でも良かったんだ。……誰でもいい役目を、俺がやった。ただそれだけの話なんだよ」



キリト「それでも……!」



比企谷「キリト、お前はこのSAOクリアに必要な人材だ。俺なんか、比較にならないくらいに、な」



キリト「……!」






ディアベルが死んだ時、一番初めに敵に立ち向かったのはキリトだった。俺は、その場にのまれて動くことができなかった。それが、俺とキリトの差だ。……絶対に埋まることのない、決定的な差だ。


キリトのようなプレイヤーが攻略組の中心で活躍すれば、きっと皆の希望になるだろう。だって、俺の希望にすら成り得たんだ。そうそうないぜ? 俺が希望を頼りにするなんてよ。





俺がそう言うと、キリトは黙り込んだ。


……沈黙は金というが、気まずい雰囲気はやめてくんない? ああ、そうだ。俺はこいつに聞きたいことがあったんだ。いっそ、今聞いちまうか。




比企谷「キリト、ひとつ聞いていいか?」


キリト「……え? あ、ああ」


比企谷「ディアベルは、なんであの場面で一人でボスを倒しに行ったか、わかるか?」


キリト「……!」




これは、さっきからずっと考えていたことの一つでもある。

あそこの、あの場面でディアベルが一人で突っ込まなければ、だれも死なずに済んでいたのかもしれないんだ。だから、俺はどうしても理由が知りたかった。





キリト「…………」




キリトは、答えを言うのを渋っているようだ。だが、知っているのは間違いなさそうだな。
俺は、キリトが口を開くまで黙った。




キリト「ディアベルは、フロアボスの”ラストアタック・ボーナス”を取りに行ったんだ」




少し待って聞いた答えは、そんなものだった。


……ラストアタック・ボーナスってあれか? 最後に敵にダメージを与えるとドロップするレアアイテム。ああ、なるほど、そうだったのか。


俺は、その可能性を完全に抜かして考えていた。ボスのアイテムなんか狙って取れるもんじゃないと思っていたし、命をかけて取るほどの物でもないと思っていたからだ。だが、それはただの先入観で、思い込みに過ぎなかったようだ。



もしかしたらディアベルは、皆の象徴になるものが欲しかったのかもしれない。攻略組を、これから引っ張って行くための象徴となるものが。




比企谷「…………そう、か」




俺は、力なく答えた。




キリト「ディアベルは、どうしてもラストアタック・ボーナスを取りたかったらしい」


キリト「もし、初めからアイテムをディアベルが貰うことになっていたら、あいつは死なずに済んだかもしれない」




……そうだな。



口には出さなかった。後からならいくらでも後悔できちまう。そんなこと、今さら考えたって無駄なことは、俺にだってわかっている。……わかっているはずなのに、




比企谷「あいつには、ボスのアイテムを貰う権利はあったかもな。……少なくとも俺は、文句は言わねえよ」




こんなことを口走ってしまった。







………………






あれから再び、しばらく沈黙が続いた。


俺もキリトとも、結構長いこと考え事をしていたらしい。いつまでもそうしてる訳にはいかないから、俺から声をかけた。





比企谷「俺、もう行くわ。気が向いたら、情報でも買いに来いよ」





安くはしねえけどな。


そう言って俺は、後ろを向いて歩きだした。








キリト「…………ヒキ!」


比企谷「……?」




キリト「…………死ぬなよ」





俺は、振り向かずに答える。






比企谷「当然だ。俺は石橋を叩いて渡る男だからな。適度に適当に、頑張りすぎないように頑張るさ」






もう、俺でも何言ってんのかわかんねえな。









キリトから見えなくなるくらいまで歩いた後、俺は再び走り出した。さっき別れたばかりのキリトにまた会っちまったら気まずいからな。


……くそ、キリトのせいで余計に走る破目になっちまったじゃねえか。




俺は、気が済むまで走り続けた。長時間走って精神的に疲れていたが、さっきより少しだけ、心が軽くなっていた。







ここまで


ここまでで一応一段落です。
もうちょっとだけ続くんじゃ

乙です。俺ガイルのキャラはヒッキーしか出んのですかね?

>>613
上でも言ってるけど、この比企谷は1年だからね
出せないし出さないよ

休日は一人で過ごす日

6時に投下

おっはろー

>>636
やっはろー
まさか土曜日の朝に起きてる人がいるとは


感想を読んでたらまた違うSSを書きたくなったりしてつらい
書ききりたい



投下





つけられてる…………?




俺がそう感じたのは、第一層が突破されてから3日後のことだった。俺は今、”最悪で災厄の情報屋”として、ソロ活動している。な

んじゃそりゃ。


この”最悪で災厄の情報屋”とかいう長ったらしい蔑称は、俺が名乗っているものではない。3日前から徐々に広がっていった呼ば

れ方なのだ。俺は今、時の人となりつつある。


俺の噂を流したのは、おそらくあの場にいた攻略組の誰かだろう。そして、噂が噂を呼び、”情報屋が攻略組を全滅させようとした”

だとか、”情報屋がアイテムを独占していた”とか、酷い噂があふれている。まあ、それも想定済みだけどな……。


それと、その噂と一緒にとある警告も広まっていた。”情報不足のプレイヤーは、情報が集まるまで攻略に参加しないこと”。


……どこのモヤットボールだか知らねえが、やるじゃねえか。





それにしても、”最悪で災厄”って語呂はいいけど呼びにくいな。もっと他になかったのかよ。




俺がその異名で呼ばれ始めてから、今まで三人の奴が俺に会いに来た。1人目は、俺がどんな奴かを興味本位で見に来ただけだったので適当に巻いた。二人目は、俺から情報を買いに来た。どうやら、悪名と同時に情報屋としても名が広がっていたようで、俺はレア情報を多く持っていると思われていたらしい。まあ、適当に情報を売って終わりだ。


問題は三人目だ。そいつは、俺のことを殺しに来た。そいつ曰く、”悪を断つべく参上した!”らしい。正義の味方を気取るなら、攻略組に入ってろよ……。まあ、全力で逃げたんですけどね。今頃あいつは、悪を追い詰めた! とかほざいて武勇伝にしていることだろう。


だから、今俺が”つけられている”と感じているのは、決して自意識過剰ではない。
誰が俺のことを追っていてもおかしくないからだ。





俺は俺で、一応索敵スキルを上げている。


だが、俺を付けている奴の隠蔽スキルも高いせいか、”つけられている気がする”レベルでしか判別できない。くそ、さっきから気になってるんだけどな……。


ちなみに、俺は一応正体を隠すために、覆面を付けている。まあ、覆面といっても眼から下を覆ってるだけだけどな。想像しづらい奴は、”カカシ先生”でググればいい。正直、この覆面が役に立ったことはない。







……ダメ元で、カマをかけることにした。




比企谷「そこにいるのは分かっている。さっきからこそこそしてないで、出てきたらどうだ?」




………………どうだ?

………………どうだ?


すると、以外にもあっけなく、後ろの草陰からその女は姿を現した。


あれ? お前は、一層での攻略会議で見覚えがあるな。たしか、会議に来ただけで参加はしてなかった奴だ。塀に座ってた小柄な奴。





???「よく気づいたナ。さすがは噂通りの情報力ってカ?」





そいつは、特徴的な話し方で俺の様子を伺った。


そいつの顔には、両頬に三本のひげがペイントされている。


俺はそいつを知っていた。





比企谷「”鼠のアルゴ”、か?」







情報屋だ。しかも、俺とは比較にならないレベルの本物の情報屋である。ボス攻略情報を出したのも、こいつらしい。俺も、直接話したことはないとはいえ、こいつの情報を大いに活用している。


というか、女だったのか。勝手な想像だが、鼠って言われるくらいだから男だと思ってたぜ。


こいつが、いったい俺に何の用だ……?






比企谷「こそこそつけてたって事は、俺に用があるんだろ? さっさと言え。聞くだけなら聞いてやる」





俺も、この3日で悪人が板についてきた気がする。まあ、このキャラのほうが相手が威圧されてくれるから便利なんだけどな。



だが、こいつは全く威圧された様子はないようで、平然と答えた。






アルゴ「何もないサ。ただ、悪名高い”最悪で災厄の情報屋”がどんな奴か見ておこうと思ったダケダ」





ああ、はいはいパターン”1人目”ね。安心したぜ。こいつレベルのプレイヤーに殺されそうになったら、逃げ切れるか怪しいしな。




比企谷「もう、十分見たろ? いい加減、つけまわしてほしくないんだが」



アルゴ「……そうはいかないヨ」


比企谷「……?」





なにがだよ。


こいつは、俺が黙っても何も言おうとしない。めんどくせえな。無視して進むか?









あれ?
……そういえば、こいつの”ひげ”見覚えがあると思ったら”エクストラスキル”の奴じゃねえか。







”エクストラスキル”とは、通常の方法では取得することのできない、特殊なスキルである。



俺は、3日前に走っているときに道に迷い、偶然そのスキルを所得できる場所を見つけた。とあるNPCのおっさんが、”体術スキル”を教えてくれるというのだ。剣の世界で対術とは珍しい。


だが、勢い余ってスキル取得に乗り出したら、そのおっさんは俺の顔に”参加証明”という名の落書きをしやがった。


この落書きは、スキルを取得するまで消せないらしい。ふざけんな。しかも、スキルの獲得難易度は恐ろしく高く、今の俺に到底できる代物ではなかった。……ふざけんな。



と、いうわけで、俺はバックレた。俺の顔には、今も落書きが残っている。カカシ覆面スタイルは、この落書きを隠すためのものでもあるんだ。



俺がアルゴのヒゲをまじまじと見ていると、アルゴはその視線に気づいたようで、






アルゴ「このヒゲの秘密を知りたいナラ、10万コル払えば教えてやらないこともないヨ」





と言った。






比企谷「エクストラスキルの情報としては、高すぎるんじゃないか? 俺はあの情報を一人3万で売ったぞ」



アルゴ「……! ……さすが、知っていたのカ」






偶然だけどな。

ちなみに、俺が売った相手は忍者みたいな姿をした奴だった。俺に会いに来た2人目でもある。そいつは、もう一人の仲間と一緒にそのスキルをとりたがっていたようなので、1人3万、計6万コルで売った。


……同じ仲間なのに別料金なのかって? いいんだよ、そいつは快く払っていったんだから。



俺は、アルゴに顔の落書きを見せることにした。こいつと同じ落書きを見せれば、説明不要だろう。まさか、笑われることもあるまい。



比企谷「ほら、こういうことだよ」




俺は覆面を取って、顔に書かれたひげを見せた。
……だが、



アルゴ「ぷっ……」



ぷ?



アルゴ「にゃハハハハハハハッハアッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」





そいつは盛大に笑い飛ばしやがった。








ここまで!

アルゴ出てくるのってゲーム?
プログレッシブ?

>>657
アニメの3話で出てくるよ
赤鼻のトナカイってやつ

寝なければ12時に投下ー

寝たらごめん

俺が覆面をはずして見せた瞬間から、アルゴはずっと笑い続けていた。こいつが笑い続けているせいで、話が全然進まない。


……俺、泣いていいかな?




比企谷「いい加減にしろ……。つーか、そろそろ俺の質問に答えてくれ」


アルゴ「ヒーッヒーッ……ッにゃっハハハハハハハハハハ!!!!」





まだ笑い足りないというのかこいつは。いい加減にしないと本当に泣くぞ? マジで泣くぞ? つーか泣きたい。






アルゴ「その目と相まっテッ……まるでやさぐれたネコダナッ……フフフフッ……」



比企谷「お前だって顔に同じものがあるだろうが。あのスキル習得投げてきたんだろ? 俺ばっか笑ってないで鏡でも見てろよ」



アルゴ「俺っちのはただのペイントだヨ。そーカ、”最悪で災厄の情報屋”は途中で諦めたんだナ」





…………畜生、無駄に情報を与えちまった。いや、ほとんど自爆だけど。
それより、俺の呼び方はその長い蔑称で固定なのか? 別にいいけどよ。





比企谷「そんなことはいいから、早く教えてくんねえかな。なんで俺をつけまわしてんだ?」


アルゴ「俺っちに情報を聞きたいナラ、カネを出しナ」





……こいつ、俺以上にがめついぞ。いや、別に俺ががめついって訳じゃないぞ?




比企谷「そんなことに金を使うほど、俺に余裕はない。だが、これ以上ついてこさせる気もないぜ」




俺はそう言って、その場から全力で走りだした。もちろん、覆面はちゃんとつけなおした。
俺のバックレスキルを舐めんじゃねえぞ。中学の頃、文化祭準備を途中で抜けても誰も気づかなかったレベルだ。うん、誰も気にもしなかったよ……。



……だが、



アルゴ「…………」



何こいつ、超早い。こいつ俊敏上げすぎだろ……?

あかん、全然振り切れる気がしない。隠蔽スキルで隠れようにも、この情報屋の索敵能力から逃げられる気がしない。あれ? 詰んでね?


10分ほど走り続けたが、全く差が広がることはなかった。むしろ、俺の後ろを余裕でキープしてくる。







……無理。諦めて金払ったほうが早い。


俺は走るのをやめて、アルゴの方に向き直った。


いつの間にか街のほうまで来ていたようで、かすかにざわめきが聞こえる。


アルゴは、走るのは終わりか? というような顔をして立っていた。……マジで余裕だなこいつ。
早めに諦めてよかったぜ。



……”ついてこさせる気はないぜ”なんて言うんじゃなかった。すっげえ恥ずかしい。






比企谷「……いくらだ?」


アルゴ「追いかけまわしてる理由ナラ、1000コル」


比企谷「……追いかけないようにするのはいくらだ?」


アルゴ「さあナ? 交渉次第じゃないカ?」




足元見やがって……。



アルゴ「儲かってんダロ、素直に払えヨ」


なんでこんなに偉そうなの? というかなんでかつ上げ気味に言ってくるんだよこいつは。





仕方ねえ、とりあえずつけまわしてる理由を聞いてみるか……。




比企谷「ほら、1000コル。早く言え」


アルゴ「……よし、いいダロ」



俺が金を渡すと、アルゴは答えを言った。





アルゴ「とある人物が、お前さんを定期的に見張ってほしいと頼んできたのサ。それも、結構な金額でネ」


比企谷「……誰だ? そんな物好きなマネする奴は」


アルゴ「別料金だヨ」





貴様……!!!






……あれ? ”定期的に見張る”? ただ定期的に見張るだけなら追いかけまわす必要無くないか?

こいつ、俺に金出させるためにワザと追ってきやがったのか……!



いいだろう、ここまできたなら払ってやる。払えばいいんだろ? 払うよ!




アルゴ「いくら出す?」




固定金額じゃなかった。




比企谷「ご、500コル」


アルゴ「……ケチなヤツ……。まあ、これで教えると決まった訳じゃないけどナ」




俺は、”どういうことだ?”と言おうと思ったが、また金を取られそうなのでやめた。
だが、アルゴは俺が聞くまでもなく説明し始めた。






アルゴ「お前さんが提示した金額を、俺っちの依頼主に教えた後、依頼主がそれ以上の金額を出せば教えナイ」




……なるほど。それじゃ500コル程度じゃ聞き出せるわけないか……。どうする? 今手持ちは7万そこそこだ。おそらく、こちらから値段を釣りあげれば余裕で情報をつかめるだろう。余計な出費はしたくないが、正体さえ掴んじまえばなんとでもなるしな。


アルゴは、メールを送っているようだ。もちろん依頼主当てだろう。


俺はメールが帰ってくるまでの間、こいつから情報を引き出そうとした。




比企谷「”鼠のアルゴ”よ、お前はなんで第一層攻略に参加しなかったんだ?」




俺がそう聞くと、アルゴは少し顔を曇らせてからこう答えた。




アルゴ「情報屋としての仕事は果たしたはずダヨ……オイラが参加しなきゃいけない理由はナイ」




……そう言いながらも、少し後悔しているようだった。

こいつが言っている情報とは、”ボス攻略ガイドブック”のことで間違いないだろう。あのアルゴがつくったであろうガイドブックは、NPCの店に委託し無料で売っている。だから、こいつの言い分は正しい。


まあ、後悔している理由もわかる。”この情報はβ時のものです”という注意書きがあったとはいえ、情報が違ったせいで一人死んじまったんだ。罪悪感を感じないわけがない。


俺はそれ以上その話題には触れず、別のことを聞き出すことにした。





比企谷「お前ってさ、キリトの身近な知り合いか?」


アルゴ「……!? いや……」





今度は、別料金とも言わない。ほとんど答えだな。


俺がキリトとこいつが知り合いかもしれないと思ったのは、第一層攻略会議での事が理由だ。アルゴは、キリトとクラインをずっと眺めていた。クラインはアルゴと知り合いじゃなかったはずだから、アルゴが見ていたのはキリトということになる。キリトはソロプレイヤーだし、この情報屋と交友関係を持っていてもおかしくない。


そして、なぜこいつが言い渋っているか。


それは、こいつが情報屋だからだ。俺ほどじゃなくても、情報屋は怒りを買うことが多々ある。まあ、大半が理不尽な理由だけどな。その情報屋と身近な知り合いであると知られれば、もしかしたら怒りがそいつに飛び火するかもしれない。たとえ金を貰っても、言えないだろう。


俺が、そうだからだ。



我ながら、いやらしい質問をしたもんだ。








アルゴ「メ、メールが返ってきたヨ!」




アルゴはホッとしたようにそう言った。この話題を変えられると思ったんだろう。
だが、アルゴはメールを見た瞬間、首を横に傾けた。




比企谷「……どうした?」


アルゴ「……教えてもいいそうダ」




なんと。500コル程度で済むとは思わなかったぜ。……ずいぶん太っ腹な依頼主だな……?







比企谷「で、誰なんだ? 俺をつけ回すように言った依頼主の名前は?」




仕返しに、別の情報屋を雇ってつけ回させてやる。そう思った俺は、アルゴに答えを促した。だが、アルゴが言った人物は、俺のよく知っている奴だった。






アルゴ「”クライン”という名前ダ」







ここまで

感想サんくす

次の投下の後は時系列が結構進むよ

1時に投下

じゃあ実際は12時45分くらいだね

>>705
読まれていただと……?

投下

SAO第一層をクリアしたその日、俺はクラインたちと別れた。


その後すぐにクラインから何通ものメッセージが来ていたが、俺は、




”次の攻略会議で会おう”





とだけ返して、後のメッセージはすべて無視した。




もし、クラインと俺の間でやり取りがあるとばれてしまったら、クラインまで標的になりかねない。だから、無暗にメッセージを返すわけにはいかなかったのだ。



そう、その結果がこれなんだ。




クラインは俺の安否を知りたいがために、わざわざ情報屋を雇い、安否確認させた。しかもアルゴが言うには、相当の金額を払ったらしい。それしか、俺の安否を確認する方法がなかったんだ。





……いや、ちょっと違うか?


いくらなんでもクラインがそんなことを思いつくとは思えんな。じゃあ、他に考えられることと言えば……。


ああ、キリトか。


キリトはアルゴと知り合いっぽいしな。クラインがキリトに相談し、キリトがアルゴを使うことを提案した。そんなところだろう。プロデュースバイ、キリト。余計なことをしてくれたもんだ。





アルゴは、雇い主の名前を言った後、俺にたずねた。





アルゴ「で、どうするんダ? 俺っちに後をつけられたくないナラ、依頼人より多く払って交渉するしかないゾ」



比企谷「いや……もう、いい」





俺は、その提案を断った。


俺が値段を上げれば、きっとクラインはそれ以上の値段を提示するだろう。そんな手間掛けることないさ。
……それに、アルゴが唯一の連絡手段になるかもしれないからな。







俺は、少し考えた後アルゴに確認した。





比企谷「お前の仕事は、俺の安否を定期的に確かめることだな?」



アルゴ「ああ、その通りダヨ」



比企谷「じゃあ、今日はもういいだろ? お前の目的は達せられたはずだ」





そういうとアルゴは、少し考えるそぶりを見せた後、こう言った。





アルゴ「まあナ。お前さんがどんな奴かもだいたいわかったし、今日のところは帰るサ」




正直、もう来なくていいんだけどな。一応、ダメ元で交渉してみることにした。






比企谷「なあ、俺がお前にメッセージを送るだけじゃダメなのか? 安否確認ならそれで充分だろ?」



アルゴ「駄目ダ。お前さんとメッセージのやり取りなんかしたくナイ」





なんてことを言うんだ。


そんなこと言われたの、中学校以来だぞ……。
俺が、とある女子にメール交換を頼んだ時に”えー、今携帯持ってないんだよねー”と思いっきり断られた。ちなみに、その女子は次の瞬間に隣のやつとアドレス交換していた。はあ、なんで当時の俺は交換できると思ったんだよ……。





アルゴ「それに依頼料が発生してるカラ、中途半端な仕事はできナイ」





まあ、それもそうか。

……俺は、その依頼料を建て替えようかと思った。だが、そんなことすればその情報がアルゴにとってのネタになりかねない。これ以上、俺に出来ることはないだろう。


アルゴは、もと来た道を戻りながらこう言った。





アルゴ「じゃあナ。やさぐれ猫男」





……あれ? もしかして俺の顔の落書きも情報ネタになるの?







…………………






あの後、結局俺のヒゲの口止め料まで払う破目になった。……畜生、あいつと会ったのは一回だけなのに、なんで三回も情報料取られるんだよ……。さっさとスキル獲得しときゃよかった……いや、すぐ獲得しに行こう。



アルゴ、お前は俺の”絶対に許さないリスト”に入れておいてやる。いつかし返してやるぜ……。



フフフ、とひき笑いしながら、俺は街に入った。












俺は今、大して攻略に参加できていない。俺は、”隠れたβテスター”とより多くの情報を交換することに専念していた。正直、見つけるだけでも一苦労だ。


そうやって集めた攻略に必要な情報は、さまざまな情報屋を介して一般プレイヤーにも伝わることになっている。だから、もしかしたらアルゴも、俺が芝居を打ってることに気が付いてるかもしれない。



まあ、十中八九気が付いてるだろう。



だが、アイツがそれをばらす事はないはずだ。アイツもβテスターだから、俺が全員の標的となってる方が都合がいいしな。






一方、攻略組メンバーは、着々と攻略を進めている。


キリトは相変わらずソロらしいが、アスナはクラインのギルドにいるらしい。……風の噂だと、キリトはアスナを風林火山に押しつけて逃げたとか。あいつも、根っからのボッチプレイヤーなのか?


そしてキバオウは、攻略組のまとめ役になっているらしい。……アイツが、まとめ役? 面白い冗談だ。




まあ、だいたいそんな感じだ。俺は、俺に出来ることをやる。


それこそ、俺に出来ることなんざたいしてないけどな。





俺たちは、前に進み続けるしかないんだ。


そして、前に進みさえすれば、いつかゴールできる。






”努力すれば夢はきっと叶う”とか、”頑張った分だけ力になる”とかいう大層な奇麗事は嫌いだが、信じないわけじゃない。


俺たちは、絶対にこのデスゲームを終わらせるんだ。







この後、俺が情報を売った忍者に髭の事で逆恨みされることになるが、それは”別のお話”といったところだ。









ここまで


今日まで毎日更新してきたけど
本格的に忙しくなるかもしれんから次からはスローペースで待機しててくれ


1週間以上あくようなら生存報告します

俺の小学校の時のお年玉は500円だったから出さない……

もしSAOにいたら材木座は始まりの街で原稿執筆してるんじゃないかな

今日はとりあえず書けたから5時に投下

一区切りで休憩しようと思ったけどなんか書いちゃった感がやばい
感想もやばい
投下

ソードアート・オンライン、略してSAO。


このゲームが娯楽からデスゲームに成り果てて、随分と時間がたった。


俺たちは今、28層を突破したところにいる。





正直、攻略組がここまでの階層に来るのは、もっと時間がかかるかと思っていた。だが、予想をはるかに上回る速度で、攻略を進めている。そのおかげで情報屋も情報収集に力を入れやすくなり、活動しやすいらしい。



攻略組を引っ張るキバオウ、少数精鋭の風林火山、そしてソロプレイヤーのキリトが中心となって、犠牲者も出さずに進めている。もちろん他にも大型ギルドが参戦しているが、あくまで引っ張っているのは前者だ。









……俺?


もちろん参加してるさ。攻略会議にも出てるし、迷宮の攻略もしてる。むしろ、全部のボス攻略に参加してる。”最悪で災厄の情報屋”としてな。



俺のポジションは、ちょいちょい攻略組にちょっかいを出しつつ、



比企谷「ハッハッハ、てめえらまだこんな所を攻略してんのかよ。この先のマッピングはもう俺が終わらせてんだよ、さっさと帰れ雑魚」



とかいう感じである。





……正直、最近皮肉のバリエーションが尽きてきてつらい。






前まで時折、俺の所に暗殺者が来ていたことがある。そいつらは俺の情報を狙ったり、単純に”悪い奴を殺しに来た”とかだったりさまざまな理由で来ている。俺ってマジ人気者じゃん?


まあ、今では俺を見つける事が出来るプレイヤー自体が少ないから、その心配はない。攻略情報と一緒に、嘘の俺の場所情報を流しているおかげで、居場所を特定されたことはない。


…………こいつ以外はな。





アルゴ「なーにブツブツ言ってんのサ。オネーサンが会いに来てやったってのニ」





なんで会いに来れるんだよ。俺の隠蔽スキル、仕事してる?






比企谷「毎日毎日、どうやって俺の場所を特定してるのか教えてくれませんかね?」


アルゴ「その情報は2000コルだヨ」




……はいはいどうせ金とるって知ってたよ。それに、どうせ払っても碌なこと聞けないって知ってるよ。





比企谷「クラインとは毎回攻略会議で会ってんだから、もういいだろ? お前も自分の仕事があるんだからそろそろその依頼断ったらどうだ?」


アルゴ「依頼が無くなるまで辞めるつもりはないヨ。それに、大した労力払ってないしナ」


比企谷「俺を見つけるのは大した労力にならないのかよ」


アルゴ「ヒッキーを見つけるのが大した労力? 何の冗談ダ?」





言ってくれるじゃねえか……。


でも正直、お前に見つからないようにするのは無理な気がしてきた。俺の情報屋としてのプライドが粉々になるレベル。むしろ、情報屋って名乗るのが恥ずかしくなるまである。


ちなみに、アルゴを”ヒッキー”と呼び始めたのは、もうだいぶ前からだ。どうせクラインの差し金だろう……。俺は深く突っ込まない。




比企谷「まあいい、今日も交換するんだろ?」


アルゴ「ああ、そのつもりだヨ」




交換、とはもちろん情報交換のことである。前までは金で売っていたが、どうせお互い情報を扱っているのでお互いの情報を交換することになったのだ。まあ、アルゴはまださっきみたいに下らない情報を売ろうとしてくるけどな。


そして、交換する情報はそれぞれの情報に相応しい物と決めている。初めに聞いた方が、後で見合った情報を与える。それがルールだ。そして、情報を与える順番を決めるのは、交代式でもランダムでもない。


俺は情報交換の後手を取るため、精神統一した。自分の精神を加速させ、相手の手の内を見抜く。そして精神状態が最高潮に達した時、俺は構えながらこう叫んだ。








比企谷「じゃーんけーん!」


アルゴ「ホイ」




俺の手はパー。……アルゴはチョキだった。


畜生、これで4勝32敗だ……。なんでこいつこんなにジャンケン強いんだよ。つーか俺が弱いのか?





比企谷「ジャンケンスキルとかあるんだったら、早めに言っとけよ? それじゃあ不公平になるからな」


アルゴ「そんなものあるわけないダロ! お前さんが弱すぎるだけダヨ!」




やっぱり俺が弱いのか……。



まあいいさ、俺にはとっておきの情報がある。この情報なら先手でも十分有利なはずだ。




その情報とは、”死者蘇生アイテムの存在”である。


茅場は、このSAO内部での死者蘇生アイテムは機能しないと言った。だが、このアイテムの情報はNPCから直接聞いたものだ。本当にこのアイテムが存在するなら、SAO唯一の蘇生アイテムとなるだろう。


俺は、自信満々にその情報をアルゴに教えた。……だが、







アルゴ「その情報、もう知ってるからノーカウントだヨ」




……なんてこった。




アルゴ「ついでに、そのアイテムが手に入るクエストと日時も知ってるヨ」




………………あれ? どうしよう俺より詳しい。




アルゴ「ってことはまた一つ貸しだネ。もう6回分貸しがあるケド、いつ返してくれるんダァ?」




比企谷「…………もう少し待ってください」




俺は、できる限り綺麗に土下座した。




………………






現在SAOでは、攻略に参加するグループと、参加しないグループで綺麗に分かれている。攻略に参加するなら出来る限り情報を与え、参加しないならば危険なクエストを取らない、といった具合だ。


来るものは拒まず、去る者は追わず。それが攻略組の理念となっている。



もちろん、足手まといになるような連中はレベルが安定するまで攻略に参加させない。俺が知ってる中では、”月夜の黒猫団”とかいうギルドが、育成組だったはずだ。キリトが命を救った連中らしいが、”命が危険になるような事をしてる時点で野良にしとくのは危ない”という理由で攻略組に入れたらしい。



このスタンスがずっと続いてるおかげで、攻略スピードも速く、SAO全体の犠牲者も少ない。



……だが、だからと言って”死者蘇生アイテム”が必要とされない訳じゃない。





”情報不足の奴は無理なクエストをとるな”といくら言っても、やるやつは結構いる。その流れで、当然犠牲者が出る事はある。それに、SAOが始まってからの総合的な犠牲者でいえばとてつもない数であることに変わりはない。




情報によれば、蘇生アイテムは1つ。




そして、生き返せる人数も1人だ。





だから、俺はその蘇生アイテムを取りに行く。


このクエストの存在が広まれば、他のプレイヤーを殺してでも取ろうとするやつが出てもおかしくない。だから、俺がアイテムをゲットして使う。そうすれば、恨みを買うのは俺だけで済むはずだ。







アルゴ「……何を考えてるんダ? ヒッキー?」


比企谷「……さあな」




とんでもなく、最悪なことさ。




クエスト出現時間まであと数日ある。それまでに、もっと攻略が進むだろう。


……その時まで、絶対に死者が出ないようにしないとな。






ここまで


投下した後に誤字に気付いたすまん
できればスルーしてくれ

お前らもちつけ
感想はありがたいしレスはうれしいけど
荒れる流れはいろいろと不味い
あともうちょっと気長に待ってくれさい

やめろよ騙された俺が恥ずかしい奴みたいになっちゃうだろうが!!!
やめろよ!!!

11時11分に更新!たぶん

ゲーム内の設定かどうかは知らないが、相当寒くなってきた。


俺が寒いと感じる要因は温度のせいもあるが、温度以外にもっと大きな原因がある。それは、この街の景観だ。





…………クリスマス仕様なんか、糞くらえ。


攻略が順調なおかげで、人々はこのゲームのイベントを楽しむ余裕ができたんだろうか。クリスマス仕様に彩られたこの街を楽しむカップルが、たくさん、それはもうたくさんいるのだ。……リア充爆発しろ。


いや、別に嫉妬なんかしてないぜ? こんな風に楽しめる奴なんかどうせ攻略に参加してない一般プレイヤーだろうし、俺は攻略組だから楽しむ余裕がないだけだし、そもそもこんなゲームの中で偽りのイベントを楽しむ気なんて更々ないだけだし……。






お前ら、ゲームの中でどうやって恋人を作ったんだよ。出会い厨か? 出会い厨なのか? 


俺は健全なプレイヤーだからそんなことしねえよ? お前らもっとオンラインゲームのマナーをわきまえろよ。それに、いつか現実に戻ったらどうせ疎遠になっちまうんだ。今こんなことしたって全部無駄なんだよ無駄無駄無駄ァ! そうだ、こいつらに現実を見させるために早くこのSAOをクリアするべきだ、そうすべきなんだ……。





アルゴ「なァ、いつもに増して目が腐ってないカ? 目薬と同じ効果のアイテム、売ってやってもいいゾ?」





俺がベンチに座ってリア充に呪いをかけていると、突然誰かが声を掛けてきた。というかこの口調は間違いなくアルゴだ。いつの間に後ろにいたんだ?







比企谷「うるせえ、俺の目はこれがデフォルトなんだよ」



アルゴ「なんダ、いつも通りの腐り具合だったカァ……」



比企谷「なんでこんな日まで馬鹿にされなきゃなんないの? 俺のライフはとっくにゼロなんだよ。オーバーキルはMPが勿体ないだろうが」



アルゴ「魅せプレイのためのオーバーキルなら、多少のMP消費は構わないダロ?」



……誰に魅せるんだよ。



比企谷「それより、何しに来たんだ? 今日の情報交換はもうやったはずだぞ」



アルゴ「今日のクエストの事で、ちょっとネ」



比企谷「…………ああ」








今日は数日前から分かっていた、”蘇生アイテム”が報酬となるクエストがある。
運のいい事に、数日前から今日まで攻略組で死者は出ていない。本当に、大した奴らだよ。


だから、俺は今日あのアイテムを手に入れる。そして俺が使い、すべての妬み恨みを”災厄の情報屋”に向けるんだ。





アルゴ「まさかとは思うケド、1人で行く気じゃないだろうナ?」






……それを聞きに来たのか? お前も心配性な奴だな。いや、こいつが俺の事を心配するはずないし、興味本位ってところかもしれんな。





比企谷「んな訳ねえだろ。……周囲を索敵してみろよ。俺をつけてる奴が10人以上いるから」


アルゴ「……そうみたいだナァ。ワザとつけさせたのかヨ?」


比企谷「ワザとじゃなくてつけてこられるのはお前しかいねえよ」





マジで、なんでつけてこられるんですかね……。



蘇生アイテムが報酬のクエストが、1人でクリアできる難易度だとは思ってない。だから、このクエストを嗅ぎつけた奴らを釣って協力させることにした。それにどうやら、クエストの場所と日時を把握してるのは俺とアルゴだけらしい。


俺をつけてる連中は、”最悪で災厄の情報屋”なら知ってると思っているようだ。だから俺は昨日から、自分の場所を隠していない。……このためにな。


こいつらにクエストを協力させて、ラストアタック・ボーナスだけ俺が頂く。それがシナリオだ。










いつかの、ディアベルのように。








アルゴ「それにしても、ヒッキーに生き返らせたい奴なんているのカァ? 一層以来、知り合いで死者は出てないんダロ?」


比企谷「ああ、出てない」




一層以来、な。





アルゴ「……もしかして、お前さんの生き返したい奴は……」



比企谷「さて、そろそろ時間だな」





俺は、その質問に答えずに立ち上がった。答える気は、ない。







アルゴ「……オレっちも手伝ってやろうカ? もちろん、報酬はコルでもらうけどナ」





……こいつがこんなこと言うとは珍しい。というか、俺が知る中では初めてなんじゃないか?
ま、断るけどな。





比企谷「いらん、余計な出費はしない主義なんだよ」



アルゴ「オイラに無駄に口止め料払いまくってるヒッキーが言っていいセリフじゃないナァ」



比企谷「俺の個人情報を売り物にするお前が悪いんだろうが……」




それに、アルゴにはすでに頼みごとをしてあるしな。”風林火山には俺がこのクエストに挑戦する事を言わない”という、無理な口止めを頼んである。本来の情報屋アルゴなら、金さえ出せばどんな情報でも売る。だが、この情報だけは漏らさないと約束してくれた。それだけで、十分だ。


俺の私用で風林火山を危険に合わす気はない。それに、風林火山メンバーはだれも死んでないし、必要ないはずだ。クラインならきっと危険を顧みず俺に協力してくれるだろう。だが、再び俺が恨まれるような所を見せるのは忍びない。




俺は周りを見回して、聞き取りやすい大きな声で出発の意を発した。





比企谷「それじゃあ、いっちょいってくるかあ!」




アルゴ「…………」








……………………







数分後俺は、大きなモミの木の前についた。クリスマスの飾りつけがしてあるから、クリスマスツリーと呼んだ方がいいもしれない。




ここが、目的の場所だ。


そう、ここで蘇生アイテムが手に入るんだ。




俺は大きく深呼吸した後、大声で言った。




比企谷「いつまでも大勢で隠れてんじゃねえよ、雑魚共が! 昨日からずっとバレバレなんだよ。そのお粗末な隠蔽止めて出てきやがれ!」




…………こんなもんだろ。






すると俺の後ろの木陰から、出るわ出るわで15人。よくもこんなについてきたもんだな。
そして誰かはわからないが、こうつぶやいた。


「気づいてたのかよ……」



当たり前だ。逆に、なんで気づかれないと思ったんだよ。


そいつらは仲間に合図を送っていたようで、後からまた20人ほど増えた。……合計35人か。






比企谷「どいつもこいつも、攻略で見る顔ばかりだな。てめえら揃いも揃ってクエストの場所さえ掴めなかったのかよ」





俺がそう言うと、全員ばつの悪そうな顔をして俯いた。よし、この調子なら俺の想定通りに動かせるかもしれん。

全員、攻略組だった。それぞれ、いろんなギルドから来ているようだ。







「あなたについていければ、場所が分かると想定していたんですよ。だから、私たちは場所を探す必要がなかった」




そんな生意気な事を言ったのは、攻略組のギルドの1つ、青龍連合の団員だ。なかなか言うじゃねえか。まあ、もし俺がついてこさせなかったらどうしたのか、という疑問は置いといてな。





比企谷「ふん、てめえらも例の報酬目的できてんだろ? ならここで争って死人を出すことの無意味さも、当然わかってんだろうな?」



青龍団員「ええ、もちろんです」



比企谷「だったら、とりあえず全員でクエストに挑んで、アイテムは取ったもん勝ちでいいだろ?」



青龍団員「……それで構いませんよ。我々が一番恐れているのは、”最悪で災厄”と呼ばれる貴方に、抜け駆けされることですからね」








随分と、俺のことを評価してるじゃねえか。まあ、そのおかげて予定通り事を運べそうだ。


そんなやり取りをしていると、モミの木の上から鈴の音が聞こえてきた。








……どうやら、お出ましのようだぜ。







ここまで

待っててくれる人が多くてうれしいよ


聖竜なんじゃ…


アニメしか見てないけどサチの話は泣いた
クリスマスイベでサチ蘇生かと思ってたら無理でしたっていう……
ヒッキーはディアベルを蘇生したいっぽいけど無理だって知ったらどうなるのやら
希望が裏切られたときの絶望って結構こたえるから心配だ

誤字報告
青竜→聖竜

乙!次も楽しみにしてる。

>>829
>>840
おk、次から書き直します

>>839
わかる
3話目で視聴続けるかどうかを迷ったレベルで落ち込んだ

関係ないけど、俺ガイルSS読み漁ってたらこのSSがまとめられててビビった
タイトル一本釣りかな?
後半も乗せるなら大きな誤字だけ直してくんねえかなぁ……



8時から投下

やっぱ7時

モミの木の上から、鈴の音を鳴らしながら舞い降りたそれは、





比企谷「おい、てめえら。クリスマス中止のお知らせだ。……なんせ、主役がいなくなるんだからな」





どう見てもサンタクロースだった。






サンタクロースといっても5、60のおっさんではなく、目の焦点が合ってない化け物じみた大男だ。だが、この赤服、鈴、帽子。どれをとってみてもサンタクロースだろう。



よろしい、ならば戦争だ。









この戦いは、もはやただのクエストではない。クリスマス中止をかけた命がけの戦争なんだ。毎年毎年よくも絶望を届けてくれたな、サンタクロースよ。やっと引導を渡す時が来たんだ、俺はうれしいぜ……!


お前の赤服を、さらに真っ赤に染め上げてやろうじゃないか。







そいつが現れた瞬間、ほぼ全員が息をのんだ。そのサンタクロースのHPが、フロアボスのように4段階表示になったからだ。


まず、1人では絶対に無理だっただろう。


だが、ここには攻略組の前線部隊が35人もいる。余裕のはずだ。
……さあ、誰がこいつらを指揮するんだ?


俺がラストアタックボーナスを横取りするにしても、まずはHPを削らなきゃ話にならんぞ。









聖竜団員「とりあえずは、我々が主体でよろしいですか?」





全員が様子を窺っていると、聖竜連合の奴がこう提案してきた。
まあ、それで構わないさ。俺に指揮を丸投げされるかも知れんと思ったが、その心配はなかったようだ。こいつらからしてみても、俺に出し抜かれたくないなら自分で指揮を執るのが一番だろう。


俺以外のやつらも、そいつの言葉に異議を唱えない。






聖竜団員「では、行きましょう」





その掛け声とともに、血みどろの聖戦が幕を開けた。






……………………







……過程? そんなものは、ばっさりカットだ。


生憎、俺はキリトみたいな魅せプレイが得意じゃないんでな。






あのサンタクロースのHPバーは残り1本。ここまでの犠牲者は、当然ゼロ。


俺達は、フロアボスと戦うときのように慎重になって攻撃した。よくいえばヒットアンドアウェイの頭脳戦法。悪く言えば芋プレイだ。実に、地味である。


HPバーこそ4本あったが、このサンタクロースはフロアボスほどの強さはないようだ。このクエストを作ったやつも、こんな大勢で攻略にかかると思ってなかったんだろうな。









さて、そろそろ俺は動き出そうじゃないか。”最悪で災厄な情報屋”として。





ラストアタック・ボーナスを取りにな。






俺の作戦は、第一層でやった時とほぼ同じだ。
隠蔽スキルで後ろに回り込み、気づかれないように突撃する。あの時と違うのは、とどめをさすのがキリトじゃなくて俺って所だな。


……そう思って前に出ようとした瞬間、聖竜連合の連中が6人ほど、俺を取り囲んだ。






聖竜団員「抜け駆けは、させませんよ?」


比企谷「…………」








おいおい、いくらアイテムを手に入れたいからって、そんなにあからさまに止めに来ちゃだめだろうが……。一応ルールを守った上で取らねえと、蟠りは無くならねえぞ? まあ、俺相手なら問題ないって事だろうけどよ。


ま、こうなるとは予想してなかった訳じゃない。こいつらも馬鹿じゃないからな。聖竜連合が指揮をとると言ったのも、俺の動きを制限するためだろう。







……でも、予想よりも随分と甘いんじゃないか?



6人程度で俺を見張れると思ったのかよ。俺の影の薄さを舐めたことが、てめえらの敗因だ。





俺を囲んで安心したのか、他のプレイヤーはラストスパートをかけに行った。


だが、









「……!? あれ? 消えた!?」


「な、さっきまで確かにそこにいたのに!?」



聖竜団員「!? な、何をしているんですか! ……情報屋はどこに!?」








……残念、情報屋はもう赤服のおっさんの後ろです。









もちろん消えたわけじゃない。
俺へのターゲットを無理やりはずしただけだ。あいつらからみれば、ターゲットが急にいなくなったように見えるだろう。


これは、隠蔽スキルを上げるとできるようになるヘイト避けの小技みたいなもんだ。俺が誰かを巻くときはだいたいこれを使って逃げてんのさ。これで見失わない奴はどっかのネズミくらいなもんだな。






比企谷「言ったろ? お前らの隠蔽はお粗末だってな」







俺ほど隠蔽に特化してるやつは、そうそういない。





「ま、まて!」





誰かが叫んだ制止の声を無視して、俺は瀕死になったサンタクロースの背中に走りこんだ。




それは第一層でやった攻撃と同じ、首筋への直撃。
そいつは呻き声を上げながら此方を向いたが、俺は短剣を刺し続けた。





その攻撃でピッタリそいつのHPはゼロとなったらしい。



サンタクロースはまぶしい光のエフェクトを発しながら、消滅した。







……どうやら、今年のクリスマスは無事に中止となったようだ。





…………………………







”You got a last attack bonus!”






俺の目の前に、このメッセージが表示された。
俺は、やり遂げることができたんだ……。


手に入れたアイテムは、片手サイズの大きさの球体だった。
見れば、まさにレアアイテムといった外形をしている。






……これで、ディアベルを生き返すことができるんだな。






周りが結構騒がしいが、今の俺の耳には全く入ってこない。
俺は急いで、入手したアイテムの使用方法を確認した。






…………あれ? なんだ?


疲れすぎて、目が悪くなっちまったのか……?


アルゴから目薬買っときゃよかったかもな。





俺は目をこすり、もう一度説明文を見た。


しかしその説明文は、さっき見た文章と全く変わらなかった。















”対象が死亡してから、10秒以内に使用”











ここまで

よーし次いくぜ1時に更新








10秒、以内?



10秒以内ってどういう意味だ?




ディアベルが死んでから、何秒たったと思ってんだよ……?















このゲームが始まった時、萱場は言った。



”今後一切ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない”




俺はこのアイテム情報を見つけた時こう思った。



”なんだ、あのセリフはただの脅しだったのか”






だが、実際はそうじゃなかった。






このアイテム自体が、”完全な蘇生アイテム”を否定する絶望だったんだ。


このアイテムが、このSAOでの唯一最高の蘇生アイテム。そして、これ以上のものは存在しないのだろう。


このアイテムは、あのセリフを裏付けるものだったんだ。





……10秒以内で、誰を生き返せって言うんだよ。






「……さん、情報屋さん!」






誰かに、呼ばれた気がした。






聖竜団員「情報屋さん! 聞いていますか!?」





なんだお前かよ。今忙しいんだ、後にしてくれ。
つーか”情報屋さん”って呼び方何とかなんねえのかよ。






聖竜団員「情報屋さん、そのアイテム使わないのなら、どうかお譲りして頂けないでしょうか。 お願いします! 自分たちに払える代償なら、払います!」






さっきまで俺をハブにしてくれた癖に、ひどい手のひら返しじゃねえか。

使わないんじゃなくて、使えないんだよタコ野郎。










聖竜団員「どうしても、生き返したい人がいるんです! どうか、お願いします!」






おいおい、土下座は俺の十八番だろうが。勝手にやってんじゃねえよ。
こんなアイテム、要らねえからくれてやる。







比企谷「…………! いや、駄目だ」









……あれ、今俺は何て言った?









こんなもん使えないんだからくれてやればいいじゃねえか。









聖竜「ならば、なぜ使わないんですか!?」








…………あ、そうか。







こいつらはこの絶望にまだ気づいちゃいないんだ。
まだ、このSAOに蘇生アイテムが存在するという希望を捨ててない。


そりゃそうか、このアイテムがそのもののはずだしな。












・・・・・・じゃあ、このアイテムが10秒しか使えないものと知ったら、こいつらはどう思うんだろうか。




俺のように、絶望するんじゃないか?


生き返す可能性があると信じていたのに、それをあっさりと否定される。そうなればやがて、このSAOに蘇生アイテムなんか存在しないってことに気がついちまうだろう。




こいつらは攻略組だ。こんなところで絶望されちゃ困る。







……そうか、俺がこう言えばいいんだよ。





”このアイテムを譲れだって? 馬鹿かお前ら。このレアアイテムは俺のもんだ、使わねえけどお前らになんかやらねえよ。最大まで値段が釣り上がるまで俺が持っておくさ”





これでいい。


これでこいつらはこのアイテムの効果を知ることができないから、絶望しなくて済む。俺が使わずに持っている限り、あいつらはこれが完璧な蘇生アイテムと思い込むはずだ。


そうすりゃ、蘇生アイテムへの希望を捨てずに済むかもしれない。
ここ以外でも、また蘇生アイテムが出現するかもしれないという希望を。





こんなことを言えば今度こそ、俺の命を奪いに来るかもしれない。だが、ここで絶望させるよりはそのほうがずっといいんじゃないか?




問題の解決にはなってないが、問題の引き延ばしにはなる。
俺が生きてる限りのな。




どうせ”最悪で災厄”と呼ばれてるんだ。いまさら更に嫌われようが、問題ないじゃないか。




嫌われるならいっそ、とことん最悪でいようじゃないか。








俺は、意を決して口を開いた。






比企谷「このアイテムは……」










「”対象のプレイヤーがゲームオーバーになった時(10秒以内)、このアイテムを使用する”」







比企谷「……!?」









俺のすぐ後ろで、誰かが大きな声でそう言った。


というかこの声は、





アルゴ「……だってサァ。お前さん達、10秒以内に生き返したい奴なんているのカァ?」






アルゴだった。








ここまで

ステータスウィンドウって開示しなくてものぞけるんだっけ?
そもそも開示できたか覚えがないけど

リア充のソシャゲー率は異常

やっぱ常時ケータイ触ってる人はそういうのに関心が行くんだろうか



>>916
アニメ3話目でキリトのステータスウィンドウをのぞいてた描写があったから可能だと思う




11時に投下



なぜそんな事を言った?


いや、なんでお前がここに?





俺が今から言おうとした事を、突然現れたアルゴが台無しにした。


こいつは、アイテムの内容を全部喋っちまった。こんなスタンドプレイ、お前のキャラじゃないだろ?


……これじゃあ、希望もくそもないじゃねえか。





俺はアルゴに文句を言うべく、後ろを向いた。



って顔ちけえ! あ、そうかアイテムの説明文読んでたんだから当たり前か。




アルゴ「…………」




…………なにか、言えよ。


アルゴは俺の目をじっと見続けるだけで、何も言わない。
やめてくれ、そんなに真っすぐ見られんのは得意じゃないんだ。俺の目が余計腐ったらどうする。








聖竜団員「10秒、以内……?」





少し間が空いたが、アルゴのセリフにやっと反応を示した。


そいつの言葉に呼応して、周りの参加者もどよめき始める。……これで、こいつらも絶望の仲間入りってわけか。




アルゴ、お前は何しに来たんだ。


わざわざそんな事を言うために来たってのか?


一体、なんで……?





比企谷「……なんで、お前がそれを言うんだ?」








アルゴは、まっすぐな目で此方を見続けている。





アルゴ「そりゃ、ヒッキーが言わないと思ったからだヨ」







…………なんでそんなことわかるんだよ。




いくら情報屋でも、俺の行動パターンまで把握してんのはおかしいだろうが。何お前、ストーカーなの? 俺の趣向全部知ってんの?


つーか、知ってたなら尚更なんで言ったんだよ。












アルゴ「お前さんが全部背負い込まなきゃダメなホド、攻略組はヤワじゃないサ」




アルゴ「ヒッキーが一層でやったことは必要だったのかもしれないケド、なんでもかんでも面倒なきゃいけない理由はどこにもないんダ」






アルゴは、凛としてそう言い放った。












……お前、やっぱり俺が一層でやったことの意味、知ってたんだな。


知ってて、俺がまたやらかさない様に見に来たのか? ずいぶん暇な奴だな……。もしかしたら同じ情報屋だからこそ、俺のやろうとした事がわかったのかもしれない。




……だが、俺は少し自分を安売りし過ぎたのかな。
実際安いけどよ。



売り時は、今じゃなかったらしい。






アルゴ「……もしこれ以上何かを背負い込みたいのナラ、もっと別のことにしてくれないカ?」




比企谷「別のことって、なんだよ……?」




そんなものがあるのか?




アルゴ「さあナァ。ま、もっと自分の周りに目を向けるがいいサ」





アルゴは、教えてくれなかった。










……………………







聖竜団員「……我々は、お先に失礼させていただきます。そのアイテム、無駄にしないでくださいね?」







しばらくした後、聖竜連合含む攻略組は順に帰って行った。


やはり、全員蘇生アイテムの有無について、完全に見切りをつけたのだろう。一人一人の顔に、絶望の2文字が張り付いていた。


だが、その中の一人が去り際にこう言ったんだ。





「また、攻略会議で会おう」、と。








……強いな。


アルゴ、お前の言う通りだったよ。こいつ等はヤワじゃない。
やっぱり、俺がやってる事なんかたいして重要なことじゃないんだな。



ずいぶんと頼りになるじゃないか。






攻略組が去った後、クリスマスツリーの下に俺とアルゴだけが残された。もし現実なら、俺と小町2人だったかもしれんな。いや、小町は友達とクリスマス会とかありそうだし、やっぱ俺ボッチか? うん、そっちのほうが現実的だ。





アルゴ「こんな形で、クリスマスを迎えるとは思いもよらなかったヨ」




俺がぼーっとツリーを眺めていると、隣でアルゴがそんなことをつぶやいた。








比企谷「ネットゲーマーなら本望なんじゃないのか?」



アルゴ「ま、そうかもしれないナァ……」





アルゴは、クスクスと笑いながらそう答えた。なんだか、今までずっと肩を張ってた俺が馬鹿みたいだぜ。俺は、少しだけ心を休めていいのかもしれんな。





もうすぐ日付が変わる。


ああいっそ、渡しちまってもいいかもしれない。
日が、変わる前にな。








比企谷「……アルゴ、このアイテムお前にやるよ」





俺は、手に持った即席蘇生アイテムを差し出しす。





比企谷「俺が持ってても、イザという時までとっといちまうかもしれないからな。目の前で人が死んでも使わないかもしれん」




正直、俺にこれを使う勇気はない。”あの時使わなければ……”とか後悔したくないからな。









アルゴ「……それで6回分の貸しを帳消しにしようってのカァ?」



比企谷「そうしてくれるならそれでもいいぞ」



アルゴ「……タダなのかヨ?」



比企谷「……」





俺は、沈黙で答える。答えは沈黙。





アルゴ「なら、貰えるもんは貰っとくサ。貸しは別で返してもらうって事でいいんだナ?」



比企谷「ああ、それでいいさ」






お前になら、一回くらい気まぐれで掛け値なしの善意を見せても、誰にもバレないだろうしな。









俺がそう言った辺りで、日付変更を伝える鐘が鳴った。

ゴーンと響く除夜の鐘のような音色は、なんだか空気を落ち着かせるような、そんな感じがする。



鈴の音もサンタクロースもいないが、こんなクリスマスも悪くないのかもしれない。





比企谷「……さっさとクリアして現実の空気を吸いたいもんだ。こんなに現実じみたゲームに長居しちまうと、戻った時の感動が薄くなっちまうかもしれん」



アルゴ「ヒヒ、まったくだナ」




俺は、久々に世間話をした。











ここまで

投下しようと思ったけど次スレ立ててからにします
次スレはそのうち立てます

比企谷「ぼっち過ぎて暇だからSAOやる」2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397547804/)
比企谷「ぼっち過ぎて暇だからSAOやる」2

立てました
ついでに投下しました

ここは適当に埋めます
まさか1スレで足りないとは……

次スレでも終わらないんじゃねー

>>1000なら八幡は最強のソードスキルを手に入れる

>>973
そんな気がしてきた

1000なら剣豪将軍がみんなのピンチに颯爽と現れる

>>974
比企谷にとっての最強って厄介事に巻き込まれないスキルかな?

>>1000なら働く

>>977
あいつならどっかで元気にゴルディオンハンマー振り回してるよきっと

>>979
働いたら負け

埋め

埋め

埋め

>>1000ならクラインとヒッキーが突き合う

>>986
絶対にとらせない

埋め

埋め

>>1000なら今ごろ小町が寝たきりの八幡の体でむふふしてる

埋め

>>992
割とありそう

1000

1000なら比企谷はぼっち

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月03日 (木) 17:35:47   ID: yUTnGbE3

続きはよ

2 :  SS好きの774さん   2014年04月04日 (金) 23:38:00   ID: EcdbAGQ_

続き待ってます!

3 :  SS好きの774さん   2014年04月13日 (日) 01:46:12   ID: bo6yazZu

wktk

4 :  SS好きの774さん   2014年04月29日 (火) 12:07:01   ID: Aod95nJe

ふんいきな…勉強しろ…

5 :  SS好きの774さん   2014年08月04日 (月) 01:09:33   ID: JGU_zRnu

↑こいつ最高にアホ
ネタがわからないのにドヤ顔かよ

6 :  SS好きの774さん   2015年10月19日 (月) 15:10:53   ID: Y_YbZGnO

うんこぉっっっ!

7 :  SS好きの774さん   2018年12月28日 (金) 01:39:04   ID: BEwztW-3

文字の大きさ統一してくれ

8 :  SS好きの774さん   2019年03月21日 (木) 23:06:26   ID: UegnojoF

たまに出てくる小さくて読みずらい文字は何なの?

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