男「発情期のエルフやべぇ・・・」(390)

男「発情期?エルフのですか」

長老「あぁ、そうじゃ」

男「一般的にエルフには性欲がない、というのが通説ですが」

長老「ああ、普段はの。じゃが、150年に1度、エルフには発情期が訪れるという」

男「はぁ・・・」

長老「そしてその性欲は凄まじく、言い伝えによれば一晩で村が無くなったという」

男「えっ!?性欲で村が無くなるとかどういうことですか!?」

長老「ちと語弊があったの・・・なんでも、エルフの隠れ里からほど近く似合った村の男たちは老若構わず全て襲われ、精力を搾り取られたという」

男「ヒエッ・・・まるでサキュバスですね」

長老「そうじゃ。一説によるとサキュバスというのはこの発情期のエルフのことを指しているとも言われている」

男「・・・しかしまぁ、エルフという種族は大抵見目麗しいと聞きますから、その者らに襲われるというのもある意味男の本望とも言えますね」

長老「侮ってはいかんぞ。何せ150年に1度のことじゃ。一度発情期に入るとその後1年間はその状態が続くという」

男「個体差はないんですか?」

長老「あの者らは我々ヒトと異なるところも多いのでな」

男「そういうものなのですか・・・」

長老「そもそも襲われて生き残った者がおらんだけに実態は謎のままじゃ」

男「・・・ん?でも、襲われるのは男だけなんですよね。村にいたそれ以外の女たちは・・・」

長老「うむ・・・それが、誰一人として村が襲われたことを覚えている者はいないという」

男「ショックによる記憶喪失、ですかね・・・?」

長老「もともとエルフは魔術に長けておるからの。忘却魔法などをかけられたのやもしれん」

男「ふーむ・・・」

長老「そして、今年が丁度前回の発情期から150年目と言われておる」

男「げっ、マジですか」

長老「この記録が確かならばな・・・よいか、くれぐれもエルフの里があるという北の森には近づいてはならんぞ」

男「はい・・・・あ、ですが、今やっている研究のためにあの森に生えている薬草がどうしても必要で・・・」

長老「バカ者、余計なフラグは立てんでよろしい。研究は生きていればいつでもできる。1年くらい待たんか」

男「は、はぁ・・・」

長老「いいか、間違っても『若いから大丈夫』などと勇んで森に足を踏み入れるようなことはするな。骨の髄までしゃぶりつくされるぞマジで」

男「・・・わかりました」

長老「うむ、よろしい」

・・・

男(長老様にはああ答えたものの・・・研究というのは日々切磋琢磨の世界だ)

男(一年も研究が滞ればすぐに他の者に追い抜かれる・・・それに、コンスタントに成果を出さなければ研究費用もままならない)

男(それならばいっそ虚偽の報告を・・・いや、そんなことをすれば自分の首を絞めるだけだ!!)

男(となると・・・)

男「やはり行くしかない、よな・・・」

-北の森-

男(よし、目的の薬草を採集したら日が落ちる前に帰ろう)

男(・・・それにしても、鬱蒼とした森だ。今にも魔物が飛び出してきそうな・・・)

<ガサガサッ!!

男「・・・っ!!」ビクッ

動物「キーキー!!」

男「なんだ・・・ネズミジカか。脅かすない・・・」

男「ん、待てよ?確か例の薬草はネズミジカの糞の周りに群生するんだったな・・・」

男「ひょっとしたらこの辺に・・・あ、あった!よし、これを採集して・・・」

?「おい、兄ちゃん」

男「ひっ!?」ビクッ

?「ほほう、そのなりは学者さんかい。金目の物、全部置いてってもらおうか」

男(や、野盗・・・!)

野盗「おらっ、死にたくなかったらさっさとしろ!!」

男「ぐっ・・・わ、わかった」

・・・

野盗「へへへ・・・ありがとよっ」ゲシッ

男「うぐっ!!」ドサッ

野盗「運が良けりゃ誰かが助けてくれるだろうよ!!フハハハハ!!」

男(くっ・・・手足が縛られて動けない)モゾモゾ

野盗「あばよ!!」

男(うう・・・まさかこんなことになるとは)

男はそのまま近くにあった岩場まで這いずり、手首を縛っている縄を岩にこすり付け始めた。

男(これで擦切るしかないか・・・時間がかかりそうだな)

その縄が切れた頃には、辺りはすっかり暗くなり始めていた。

男「やれやれ助かった・・・まずいな、もう日が暮れ始めている。早く森を出よう」

男が立ちあがり森を出ようとしたその時。

<ウワアアアアアアアアア

男「さっきの野盗の声!?」

男はその声を聞いて森の外へ向かって駆け出した。

男(まずい・・・何が起きたかは分からないが、あの悲鳴はただ事ではない!)

男(早く森を出なくては・・・!!)

しばらく森の中を走り続けた男だったが、ふと足元を見たときにあることに気が付く。

男「こ、これは・・・さっき切った縄!?まさか同じ場所に戻ってきちまったのか!?」

狼狽える男の耳に、再び叫び声が届く。

<ウワアアアアアアア!モウヤメテクレエエエエエエエエエエエ!!

<・・・・!!・・・・ッ!!

<アッー!!モ、モウムリィィィィ!!ヒギイイィィィィィィ!!!

男「ま、まさか・・・」

男は恐る恐る声のする方向へ向かう。

野盗「や、やめろ・・・!もう出ねぇよぉ・・・」ゼェハァ

エルフA「タネ・・・コダネ・・・」

エルフB「モット・・・モットホシイ・・・」

野盗「ぐ、ううぅ・・・!ちくしょぉ!」ビュッビュルッ

男が見たものは、複数のエルフに蹂躙される野盗の姿だった。

野盗「ひっ・・・あ、が・・・」コヒューッコヒューッ

エルフC「・・・モット・・・モット・・・」

見ると、エルフたちは野盗になにやら呪文のようなものを唱えている。

野盗「う・・・ぐ、ぐあっぁぁあああ!!」ビュルビュル

すると、野盗の竿先から信じられない量の白濁液が溢れ出した。

野盗「ひっ・・・あ、が・・・」コヒューッコヒューッ

エルフC「・・・モット・・・モット・・・」

見ると、エルフたちは野盗になにやら呪文のようなものを唱えている。

野盗「う・・・ぐ、ぐあっぁぁあああ!!」ビュルビュル

すると、野盗の竿先から信じられない量の白濁液が溢れ出した。

>>18-19
ごめんかぶっちゃった


男(まさか・・・呪文であの男の精液を搾り取っているのか・・・)

男は息を呑む。その間にも野盗はエルフに蹂躙され続け、その肉体は目に見えて干からびていく。

野盗「ひ・・・・っ・・・ぅ・・・」

その様子に恐れをなした男が逃げだそうと後ずさったとき、彼の足の下にあった小枝がパキリと音を立てた。

エルフA「・・・オトコ!!」

エルフB「コダネ!!」

その音に気が付いたエルフたちが、今度は男の方へ向かってくる。

男「う、うわああああああああ!!」

男は悲鳴を上げその場を逃げ出した。

男「あ、あの話は本当だったのか!!」

エルフA「カガワ!!」

エルフB「エンドウ!!」

男「くそっ、謎の言葉を発しながら追いかけてくる!!」ハァハァ

すると、その言葉に反応したように辺りの茂みから新しいエルフが飛び出してくる。

エルフD「ナガトモ!!」

エルフE「ホンダ!!」

男「ふ、増えた!?くそっ、仲間を呼んでいたのか!!」

男はなおも走り続ける。

エルフH「カワシマァ!!」

・・・

どれくらい走っただろうか。

やっとのことでエルフたちを振り切ると、男は草むらに倒れ込んだ。

男「はあっ、はぁ・・・!な、なんとか逃げ切ったか・・・?」

辺りにエルフの気配はない。

男(とりあえずここで夜明けを待つしかないか・・・)

男はそのまま草むらで一晩を過ごすことにした・・・。

翌日。

男「・・・おかしい、やはりどうやっても元の場所に戻ってきてしまう」

男はマーキングを施しながら慎重に森からの脱出を試みたが、やはり昨日と同じく気が付くと元の場所に戻ってきてしまう。

男「もしかしてこれは・・・エルフの張った結界か何かなのだろうか・・・」

男が途方に暮れていると、急に背後に気配を感じる。

おいエルフのセリフ

エルフ「あの・・・」

男「うわっ!!」ビクッ

エルフ「ひっ!?」ビクッ

男「あ、わ・・・エ、エルフだああああああ!!」

男は逃げ出そうとしたが、草の蔓に足をとられ思い切り転んでしまった。

男「あぐっ!!」バターン

エルフ「はぅ・・・あ、あの・・・大丈夫ですか・・・?」

そのエルフはゆっくりとこっちによって来る。

男「ひっ・・・・く、来るな!来ないでくれ!!」

エルフ「な、なんでここに人間が・・・?」

>>26
分からない 小麦粉か何かだ


ところが、そのエルフには昨晩のあのエルフたちのように襲い掛かってくる気配は感じられない。それどころか、自分がここにいることを不思議がっている。

男「あ、あぁ・・・どうやら君は、襲い掛かってはこないようだな・・・」

エルフ「そ、そんなことしたら人間に仕返しされるかもしれませんし・・・」オドオド

そのエルフは恐る恐る答える。

男「ああ・・・いや、ちょっと薬草を獲りに森に入ったら、ここから出られなくなってね」

エルフ「森から、出られなく・・・?」

男「そうなんだ・・・どんなに歩いても元の場所に戻ってきてしまって・・・これは、エルフの結界か何かじゃないのか?」

エルフ「わ、私達はそんなことしませんよぉ・・・」

当ての外れた男は、がっくりと肩を落とし事情を説明する。

男「・・・ともかく、君たちに危害を与えるつもりはないんだ。すまないが、森の外まで案内してくれないか?」

エルフ「そ、それは構いませんけど・・・」

そう言いつつも彼女はちらちらと男の様子をうかがっている。どうやら、人間のことが怖いらしい。

男「あぁ、その・・・わかった。俺のことが怖いなら、すこし離れて歩くから案内をお願いできないかな」

エルフ「わかりました・・・」

そう言って男は彼女の後についていく。

男「それにしても、深い森だ・・・君たちはこの森のことを全て知っているのか?」

エルフ「は、はい・・・ここは私達の森ですから・・・」

男「すごいな・・・こりゃ一人じゃ迷うわけだ。うーん、見たこともない草が沢山あるぞ」

エルフ「あ・・・それはさわっちゃダメです。触れると皮膚が爛れてひどく傷みますよ」

男「なるほど・・・エルフというのは魔術に長けているばかりと思っていたが、植物にも詳しいんだ」

エルフ「草木は私たちの糧であり生活の一部ですから・・・あなたも、人間にしてはずいぶん詳しいようですね」

男「ん?あぁ、俺は薬草学の研究をしててね。さっきいった薬草も、今やってる研究に必要で採集しにきたんだ」

エルフ「あれはエレノールの草といって、すり潰してから焔竜水を加えると血行を良くして、身体能力を一時的に増幅させる効果があるんです・・・」

男「焔竜水?」

エルフ「あ、焔竜水っていうのは・・・木の実を蕩かしたものを火にかけて、その蒸気を集めてつくる水のことです・・・」

男(なるほど、おそらく蒸留酒のようなものだな・・・まさかこの草にそんな薬効があったとは)

男「・・・興味深いなぁ。もし許されるのなら、もっとエルフの話を聞いてみたいよ」

エルフ「ですが・・・私達はあまり人間と接することを好みませんので・・・」

彼女の言うとおり、だからこそエルフはこのような深い森の中に隠れ里を作って暮らしているのだ。

男「はぁ、残念だよ・・・それにしても、まだ森の外には出られないのかな?」

エルフ「もう少しです」

まるで猫のように軽々と森の中を進んでいく彼女に必死でついていく男。どうやら、いつの間にか相当森の奥深くまで入りこんでいたらしい。

だが、気が付くと再び辺りは暗くなり始めていた。

男「ね、ねぇ・・・もう随分歩いたけど・・・」

エルフ「・・・」

男「これ以上進むようなら、今日はもう・・・」

エルフ「・・・ダ」

男「・・・・へっ?」

エルフ「・・・ヨシ、ダ」

振り返った彼女の瞳は、赤い光を湛えていた。

エルフ「オカザキ!!」ドンッ

男「うわっ、急に何を・・・!」

エルフ「タ、タネェ・・・」

男「うっ!」

彼女の様子は、昨日野盗を襲っていたエルフたちそのものだった。

男「うわ・・・く、くるな!!」

エルフ「イナモト!」

とびかかってくるエルフを間一髪躱し、男はその場を走り出す。

男「はあっ!はあ、くそっ、なんだってんだ!!」

エルフ「ふしゅるるるるる・・・・」

エルフはまるで獣のように涎を垂らしながらとびかかってくる。

エルフ「キヨタケ!!」

男「うわっ!!」

今度は躱しきれず、その場に押し倒される男。

エルフ「ハッ・・・ハァ・・・ホシイ、ホシイヨォ・・・」

もはや焦点の合っていない目でエルフは顔を近づけてくる。

エルフ「んむっ!!」

男「!!!」

エルフ「ちゅっ・・・ちゅぷっ、ぬちゅ・・・」

エルフの舌が、男の口の中を蹂躙する。歩き通しで渇ききった男の口の中を、エルフの唾液が潤していく。

男(くっ・・・やば、い・・・襲われてるってのに・・・)

マウントをとられ身動きが出来ない男の下半身に、エルフの手が伸びてゆく。

男「っう!」ビクッ

エルフ「ホシイ・・・タネホシイ・・・」

すると、男の股間にじわりと液体が広がるような感覚が広がった。

男(え・・・あれ?もう出ちゃった!?マジで!?まだ触られただけなのに!?)

男は慌てて下半身を確認しようとするがどうも様子がおかしい。濡れた部分だけが異様に熱くなるのを感じる。

男(あれ・・・そういえばさっき押し倒された時、ポケットの中で何か割れたような・・・)

エルフ「スゴイ・・・オオキイヨォ・・・」クンクン

男(たしかあの中に入ってたのは・・・)

エルフ『あれはエレノールの草といって、すり潰してから焔竜水を加えると血行を良くする効果があるんです』

男(そうだ!あのときポケットに入っていたのは・・・)

男「あの薬草と・・・消毒用アルコール・・・」

昼にエルフが言った通り、薬草とアルコールの付着した部分だけ血行が良くなっているように感じる。

現に、男の下半身はかつてないほどに屹立している。

エルフ「アハッ・・・モウガマンデキナイヨォ・・・」

それを見たエルフは、服の上から男の性器を咥え込む。

男「はぁうっ!!」ビュクッ

そのわずかな刺激に、男はたまらず絶頂を迎える。だが、それが収まる様子はない。

エルフ「スゴイヨォ・・・マダビクビクシテルヨォ・・・」ウットリ

エルフ「モット・・・モットホシイ・・・」

エルフは恍惚とした表情で男のズボンに手をかける。だが、手に力が入らないのかなかなか脱がすことができないようだ。

男はその一瞬の隙をつき、覆いかぶさるエルフを跳ね除け自らの上着で彼女の手を固く縛った。

エルフ「ウッ・・・ホドケ!ハナセェ!!」

男「すまん!だが俺はこんなところで死にたくないんだ!!」

そう言って男がその場から逃げ出そうとした、その時!!

エルフ「ベギラマ!!」

エルフの呪文らしき言葉と共に、辺り一面に閃熱の壁が現れた。

男「うおっ!こっ、これがエルフの魔術!?」

エルフ「ホドイテ・・・ホドイテ・・・ナラサキィ!!」

男「一体何だってんだ・・・」

その後、エルフの魔術に辺りを阻まれ男はその場から逃げる事はできなかった。

だが、幸いなことにこの壁により他のエルフが近づくことは阻止された。

男は白目を剥きながら謎の言葉を発するエルフを眺めながら、そこで夜を明かした。

・・・

エルフ「・・・はっ」

男「う・・・うぐ・・・」

エルフが気が付くと腕は固く縛られ、傍らには寒さにうずくまる男の姿があった。

エルフ「えっ!?あ、あの・・・」

男「しまった!寝ちまっ・・・は、あれ・・・元に、戻ってる・・・?」

エルフの様子をみた男は、襲われる心配はないと判断し、彼女の腕に括られた服を解いた。

エルフ「あの・・・い、一体何が・・・?」

男「な・・・覚えて、ないのか・・・?」

男は俯きながら解いた服を再び着込む。

男「・・・昨夜、俺は君に襲われたんだよ」

エルフ「えっ!?そ、そんなまさか・・・」

男「悪いけど、身の危険を感じたんで手を縛らせてもらったよ・・・」

顔をしかめながら男は自分の腕を抱いている。森の夜は、人間にとって裸で過ごせるような気温ではなかっただろう。

エルフ「よく・・・その格好で生きていましたね」

男「はは・・・こいつのおかげかな」

男が手にしていたのは、濡れてしおれたエレノールの草だった。

男「たまたま君が襲いかかってきたときに、ポケットに入っていたコイツがアルコールと反応した・・・んだと思う、多分」

エルフ「あ、エレノールの草・・・確かにそれを使えば・・・」

男「さすがに効き目の切れ始めた明け方はキツかったけどね」

エルフ「し、しかし、あの・・・私が襲った、とは・・・?」

男「・・・そうか、覚えていないんだもんな。じゃあ説明するよ・・」

そして男は、長老から聞いたエルフの発情期のこと、先日襲われていた野盗のこと、そして昨晩の彼女の豹変ぶりを淡々と説明した。

エルフ「あ・・・そ、そんなことになってたなんて・・・///」カアッ

男「君は知らなかったのかい?その・・・発情期、の話」

エルフ「150年前といえばまだ私も産まれたばかりですので・・・それに、周りの仲間たちもそんなことは・・・」

男「なるほど・・・そもそもあの状態になっているときの記憶がないから、誰もそれを伝えることができなかったわけか・・・」

エルフ「で、ですが・・・別段体に普段と変わったところは無いように思うのですが・・・」

男「今はね・・・もしかしたら、日の沈んでいる間だけそういう状態になるのかもしれない」

男の説明を聞いたエルフは困ったように視線を落とす。

エルフ「そんな・・・どうしよう、私・・・」

男「・・・なに、夜になる前に別れれば大丈夫だろう。それよりも、昨日の案内の続きをお願いできるかな。森を出れば万事解決だ」

エルフ「・・・その事なんですけど、おかしいんです」

男「えっ?」

エルフ「昨日歩いたあの道・・・本当なら、もうとっくに森の外に出ているはずなのに」

男「」

男「マ、マジか・・・」

今度は男がうなだれる番だった。

男「おいおいマジかよ・・・あの言い伝えが本当で、もしここから出られないとしたら・・・あと1年も・・・おぉ、もう・・・」ガックシ

エルフ「あの・・・」

男「いや、いいんだ・・・元はと言えば掟を破って勝手に森に入った俺の落ち度だし・・・」

男はそのままエルフに語りかける。

男「・・・ここまでの案内ありがとう。とりあえず、もう別れよう・・・このまま夜になったら、どうなるかわからないし」

エルフ「は・・・はい・・」

そう言って男はエルフと別れる。

男「森に入って3日目・・・こりゃ何とかしないと、本当に死んじまうかもな、俺」

男はとりあえず身を隠す場所を探し、近くの沢で水を確保しそこに朝まで潜伏することにした。

夜。

男(あぁ寒ぃ・・・火を焚きたいが、そんなことしたらエルフにバレちまうかもしれない・・・)ブルブル

男(それに森に入ってから何も食ってない・・・このままじゃ栄養不足でどの道お陀仏だ・・・)ぐぅー

男(消毒用のアルコールも昨日使い切っちまったし、エレノール草はもう使えない・・・こりゃ、夜が明けたら身体の動くうちに食料を確保しておかないとダメだな)

寒さに震えながら今後の方針を考えていた男だったが、これまでの疲れのせいかいつの間にかその意識は途絶えがちになっていた。

・・・

<パキッ…

男「・・・」

<タ…ミツケタァ…

男「ん・・・寝ちまった、か・・・って」

<アハ、ウフハハハハ!

男「こ、この声は・・・」

エルフ「ミツケタァ・・・」

男「うわあああああああああああ!!」

男の前に現れたのは、昼間のエルフだった。

エルフ「ホシイノオオ!タネガホシイノオオオ!!」

男「や、やめっ・・・!」

少しでも身を隠しやすいよう木の洞に隠れていたことが災いし、エルフに入口を塞がれてしまい男は身動きをとることができない。

エルフ「アァァ・・・コレハワタシノモノ・・・ワタシノォ・・・」ハァハァ

男「はぁはぁ、くそっ!なんでこの場所が分かったんだ!?」

男の脳裏に、昔長老様から聞いた言葉が過る。

・・・

男『つばをつける・・・ですか?』

長老『そうじゃ。あれはもともと、魔族の行動様式がその語源になっていると言われている』

男『へぇ、そうなんですか』

長老『魔族というのは自らの身体の一部、もちろん唾液などの体液も含まれるが、これを対象に付着させることでその場所をいつでも特定できるという』

男『なるほど、犬や猫があちこちに尿をかけて臭いをつけるのに近いですね』

長老『ああ。じゃが、恐るべくは魔族の場合、縄張りを示すだけでなく獲物の追跡にもそれを使うという点じゃな』

男『なるほど・・・』

長老『一度魔族に目をつけられれば、二度とそれから逃れることはできないという・・・これが、つばをつけるの語源になった、というわけじゃな』

・・・

男(・・・ってことは、いつだ?いつマーキングを・・・はっ!もしかして昨夜の!?)

男は昨晩エルフに襲われた時の事を思い出す。あの時確かに、エルフは自らの唾液を自分の口の中に残していった。

男(あれかぁーーーーっ!!)

エルフ「アハッ、ハナサナイ・・・モウハナサナイ・・・」

エルフは男の身体に強く抱き着いてくる。

男「あ・・・あぐ・・・」

野盗の最期を目撃した男にとって、それは恐怖以外の何物でもなかったが、疲れ冷え切った身体にエルフの温もりが心地よいのもまた事実だった。

男(もう・・・いいかな・・・)

男の心が折れかけたその時。

?「おや・・・まだ生きていましたか」

男「!?」

?「ふむ・・・今回は森に入ってきた人間の数も少ないですし、利用させていただきますかね」

男「アンタは・・・」

?「さて、その前に・・・」

エルフ「アッ・・・フウッ!?」ドサッ

突如現れた正体不明の男がエルフに触れた途端、彼女は急に動かなくなった。

?「あ・・・申し遅れました、私こういう物です」メイシ

男「あ、これはご丁寧に・・・ですが、生憎こちらは名刺の持ち合わせがなくて・・・」

?「いいですよ。たかが人間の名刺など、貰ったところでクソの役にも立ちませんから」

男「・・・」イラッ

男が受け取った名刺には、『魔王国魔王付補佐官』という肩書きが書かれていた。

側近「私、魔王様の側近をさせていただいている者です。単刀直入に申し上げましょう。私は貴方を、この森から解放してもいいと考えています」

男「!!」

予想外の言葉に男は驚愕する。

側近「貴方がこの森から出られないのは、我々の結界魔法の力によるものです」

男「やはり結界だったのか・・・だ、だがなぜそんなことを?」

側近「すでにご存じのとおり、ここに住むエルフたちには発情期がありましてね・・・その度に、個体数を維持するために一定数の人間を森に入れ、エルフの種の保存に努めているのです」

男「・・・どういうことだ?」

側近「エルフというのは元来、繁殖のために必要なオスが存在しないため、発情期が訪れると森の動物や他の種族のオスの精子を得る必要があるのです」

男「そうなのか・・・」

側近「ですが、そういった『天然モノ』では、産まれてくるエルフの性能に限界がありましてね」

男「・・・性能?」

側近「貴方がた人間もご存じのとおり、エルフというのは魔術に長けた種族です。ですが、長年の研究の結果、特に魔力が高くなるのはエルフと人間のハイブリッドであることが分かりました」

男「!!」

側近「ですから我々は、強力な魔法兵力となるエルフを定量確保するために、発情期になる度に人間をこの森に入れエルフと交配させるのです」

男「ふざけるな!」

側近「別にふざけてはいないでしょう。貴方がた人間だって、馬や犬を自分の都合のいいように交配し続けているではありませんか」

男「!!」

側近「あえて言おう、それはエゴであると!!」クワッ

男「いやちょっと待て二人分くらい混ざってるぞそれ」

側近「貴方がた人間には分からないでしょうが、馬や犬にも感情があり、我々は実際にコミュニケーションをとる事も可能なのです・・・見た目が自分たちに近いからといって、エルフだけひいきするのはよくありませんね」

男「だが・・・お前らはそうやって作ったエルフたちを引き連れて、人間に戦争を仕掛けようとしているんだろ!?」

側近「は?人間と一緒にしないでください」(半ギレ

男「えっ」

側近「そもそもですね、軍備というのは持つことそのものが抑止力になるんですよ。手にした力を使いたがるのは人間の悪い癖です」プンスカ

男「」

側近「それに、貴方がたには分からないでしょうが、人間など我々の敵ではない・・・というか我々の真の敵は神なのでその辺勘違いっていうかあんまり自惚れないでくださいね?」

男「あ、はい・・・」

側近「だいたい貴方がたね、神達に何を言われたのか、まぁ想像はつきますけど魔族のことを悪だと頭ごなしに決めつけすぎなんですよ」

男「あの」

側近「黙って聞きなさい。いいですか、所業だけでみたら神のほうがよっぽど悪ですよ、死神だってアレ神ですからね。なんのつもりか知りませんがなまじ悪魔っぽい格好してるのムカツク!!」

側近「大体ですね、貴方がたに伝わってる勇者の伝説だってあれ御伽噺ですからね」

側近「ただちょっと頭の残念な神が人間のふりして魔族倒してそれを武勇伝風に語っただけの言ってみれば黒歴史ノートみたいなもんです」

男「」

側近「そんなことやりたがるのは下っ端ばかりで、基本的には全て外交で解決させてますからね。まぁそのためのバックボーンとしてお互い軍備だけはしてますけど」

男「」

側近「・・・あぁすみません、つい白熱してしまいました。ちょっと色々ストレスが溜まっていたもので」

男「そ、そうですか・・・」

側近「で・・・貴方をこの森から解放する、という話ですが」

男「は、はぁ・・・」

側近「貴方をここから出すその見返りとして、人間のオスを20人ほど連れてきてください」

男「何ッ!?」

側近「あぁ、別に貴方の知っている者を差し出せというわけでは無いのですよ。これを渡しておきましょう」

そういうと側近は麻の袋を男の前に放り投げた。中身を確認すると、目もくらむばかりの大量の金貨が入っている。

男「・・・っ!」ゴクリ

側近「これだけあれば、20人程度の奴隷は難なく購入できるはずです」

男「奴隷・・・?」

側近「ええ。まぁさすがに私も貴方の感情くらいは理解しているつもりですので・・・身近な人間を差し出すのは心苦しいだろうと思いまして」

男「・・・この金で奴隷を買って、差し出せというのか」

側近「そうです。我々魔族が直々に赴くわけにはいきませんから、ここは人間の貴方にお願いしようかと。無論、余った分は報酬として受け取っていただいて結構です。悪い条件じゃないでしょう」

男「・・・お前はさっき、俺の感情を理解していると言ったな」

側近「まぁ、ある程度は、ですが」

男「ふざけるな!お前は何も分かっちゃいない!人間はなぁ、簡単に仲間を売ったりしないんだよ!!」

側近「いやそれ個体差の問題ですよ。現に過去何度も同じ方法で奴隷を買わせていますし」

男「な・・・!」

側近「そもそも仲間を売らないのならなぜ奴隷市場が存在するのですか。しかも売買契約が成立するのは飽く迄人間の間だけで、ですよ」

男「う、ぐ・・・」

側近「まぁ確かに、そういう個体差を含めたあなたの感情までは理解していなかった、というのは間違いではありませんね。私はどちらでも構いませんよ?また150年待てばいいだけの話ですし」

男「お・・・れは・・・」

側近「あ、ちなみに約束も果たさずに金だけ持って逃げようなどと思わないことです。さすがにそれは殺しますよ」

男「う、うぅ・・・」

側近「自分の命か人の命か・・・こんなことで悩むなんて人間は愚かですねぇ」

側近「命その物が大事なら犠牲が最小になるよう自分だけ死ねばいい。『自分の』命が大事なら他の犠牲を払えばいい。あなたが悩むのは、本当に自分が大切なものを分かっていないからですよ」

男「・・・俺は」

側近「おや、答えは決まりましたか?」

男「俺は・・・この森に、残る」

側近「そうですか。まぁ、1年経てば出られますしね。それまで生きていれば、の話ですが」

側近はあっさりと言い放つと、踵を返しそのまま空へ飛び立ってしまった。

・・・

エルフ「ん・・・あ、えっ?」

男「Zzz…」

エルフ「な、なんでまたこの人に・・・?あの、も、もしもし・・・」ユサユサ

男「っ!」ビクッ

エルフ「あの・・・大丈夫ですか」

男「っ・・・よかった、夜まもう明けてたか」フゥ

エルフ「あの、もしかして私、またあなたの事を・・・」オロオロ

男「・・・まぁね」

エルフ「・・・」

男の答えを聞いたエルフは、悲しそうに顔を落とす。

エルフ「うっ・・・ひっく、私っ・・・そんなことしたくないのに・・・」ポロポロ

男「あぁ、泣かなくても大丈夫だよ・・・」

男はエルフの背中を優しく撫でる。

男(あぁ・・・柔らかくて、暖かいな・・・)

その行動に、男の心の中には僅かに暖かい感情が芽生えた。

しばらく背中をさすり続けていると、エルフは泣き止んだ。

男「まぁ・・・きっとまた昨夜のことは覚えてないんだろうけど、いろいろあってね」

エルフ「い、いろいろ・・・?」

男「あぁ、よく分かったよ。どうやら俺はこの森から出られないらしい・・・少なくとも、あと1年は」

エルフ「えっ・・・?」

男は昨日現れた魔王の側近の話をし、自分は自らの判断でこの森に残ることを決めたと伝えた。

エルフ「・・・」

男「まぁ、何とかなるだろう。死んだらその時だと思ってあきらめるさ」

口ではそう言いつつも、男は心の中で自らの運命は自らで決める覚悟を固めていた。

男「あ・・・そうだ」

エルフ「・・・・はい?」

男「なんか、すごい今更だけど、名前を聞いておいていいかな」

エルフ「えっ?」

男「俺の名前は、男。エルフにも名前はあるんだろ?日中はこうして会話もできるわけだし、教えてもらいたいな・・・」

エルフ「ですが・・・あの・・・」

男「あ・・・嫌なら別にいいんだ」

名前を聞かれたエルフは、なにやらそわそわと落ち着かない様子だ。

男(ま・・・俺の名前が伝えられただけいいか。何せ、俺が最後に会話をした相手だからな)

そう考えて、男は小さく笑った。

エルフ「・・・イン」

男「ん?」

エルフ「私の名前は・・・・セルレイン、です」

男「セルレインか・・・いい名前だ」

男はにこりと笑い、彼女の顔を見る。

男「さて、セルレイン・・・度々で悪いが、今日もお願いがあるんだ」

セル「・・・なんですか?」

男「どこかこの森に・・・エルフもあまり行かないような、人目につかないところはあるだろうか」

セル「えっ・・・?」

男「あぁ、いや・・・ちょっと一人になりたいんだ。今後の事を考えないと・・・」

そう言って歩き出そうとする男の腕を、セルレインは俯きながら掴んだ。

男「ん?」

セル「あの・・・死ぬ、つもりですね・・・」

男「えっ」

セル「ちょっとだけ・・・心を読ませてもらいました・・・ダメです・・・」

男「・・・自分の運命は、自分で決めたいんだ」

しかし、彼女は男の手を放さない。

セル「ダメです・・・ダメ・・・」グググ

男「えっ、ちょっと・・・」

男は予想外の抵抗に動揺する。

男(おかしい!まだ日中なのに・・・このままじゃまた夜みたいに・・・?)

セル「お願いです・・・死なないでください・・・」ポロポロ

男「わっ、分かったから!一回手を放し・・・な、泣いてる?」

セル「・・・手を放しても、逃げませんか?」

男「う、うん。逃げないよ・・・それより、なんでまた泣いて・・・」

セル「あの・・・名前・・・」

男「な、名前?」

セル「私達がエルフ以外に名前を教えるということは・・・その人と契を結ぶということなんです・・・」

男「契・・・」

男「」

男「えっ」

男「あの・・・契ってどういう・・・」

セル「せ、せっかく契を結んだのに・・・私の前から、居なくならないでください・・・」グスッ

男「」

その瞬間、男は全てを理解した。

男(よーし、これ詰んだな!)ニッコリ

ただ、正直悪い気がしないのもまた揺るがしがたい事実だった。

言い伝えの通りエルフは美しい顔立ちだし、日中話している様などは村にいる女性たちよりよっぽどいじらしく見える。

ただ問題なのは、夜になるとこの可愛い娘は自分の精力を死ぬまで絞りつくそうとする恐ろしい魔物になるということだ。

男「・・・はは、こりゃ。まいったな」

男は笑いながら頭を掻き毟る。

男「どうすりゃいいのか分からなくなっちまったよ・・・」グゥー

セル「あ・・・」

男「はぁ・・・もう4日目か。水だけじゃなく、そろそろ何か食わないと、本当に死んじまうな」

セル「あ・・・そ、それなら私についてきてください!」

そういうと彼女は立ち上がり、森の中を歩きだした。

・・・

セル「ここです!」

セルレインに案内されてきた場所には、たくさんのキノコが生えていた。

男「おぉー、こりゃすごい!穴場だなぁ」

セル「えへへ・・・秘密の場所なんです」

そう言いながらセルレインはキノコを採り始めた。

男「・・・そういえばさ、セルレイン」

セル「は、はい?」ビク

男「さっき、エルフが名前を教えるのは契を結ぶことだ、っていってたけど」

セル「は、はい・・・」

男「なんつーか、その、あんな簡単に俺に名前教えちまって良かったのか?」

男の言葉を聞いた彼女の手が一瞬止まる。

セル「・・・ええ。お話を聞く限り、男さんは悪そうな人間じゃなさそうですから・・・」

男「そうかね・・・」

セル「他の人間を犠牲にしないために、自分が森に残ったんですよね。・・・その話を聞いて、この人となら契を交わしてもいいかな、って・・・///」

男「・・・」

男(なにこの娘かわいい)キュン

セル「私・・・人間ってもっと恐くて乱暴だと思ってたから・・・」

男(あぁ、でもなぁ・・・夜になると淫乱サキュバスに早変わりしちゃうんだよなぁ・・・ギャップ萌えとかそういうレベルを遥かに超越して・・・)

セル「そ、それに・・・初めて会った時から私のこと、気遣ってくれましたし・・・///」モジモジ

男(ぐぅー、でもなんかこの娘にだったら命とられちゃってもいい気がしてきた!)

セル「男さんこそ・・・ごめんなさい。毎晩、あんなことをしてしまったというのに・・・」

男「へっ!?あ、あぁ・・・い、いいんだよ・・・いや、よくないけど・・・正直悪い気はしないっつーか・・・でも死ぬまでやられるのもなぁ・・・」(葛藤

セル「うぅ・・・」

彼女はその言葉に悲しそうな表情を見せる。

男「・・・ま!2晩なんとかなったんだからこれからもなんとかなるさ!!」

男は明るい表情を見せる。

男(しかし・・・セルレインだけならともかく、他のエルフにまで狙われるとなると厄介だな。あいつら、仲間を呼ぶみたいだし・・・)

セル「・・・あ、男さん、そのキノコは」

男「ん・・・おぉう、なんだこの禍々しい形のキノコは!?」

セル「それは、マギカ茸といって食べれません・・・薬には、なりますが」

男「そうなんだ・・・」

セル「はい・・・すり潰したものを眉間に塗ると、眠くなるという作用があります」

男「ほほぉー、薬草学を専攻する身としては大変興味深い」

セル「あと、あっちのキノコは食べるとすごく美味しいんですよ!」

男「へぇ、じゃああれも採ろうか」

セル「ただ、食べるとよだれが止まらなくなっちゃうんですけどね」エヘヘ

男「何それ典型的な毒キノコじゃん」

・・・

男「はぁ・・・久しぶりに人心地ついたな」モグモグ

セル「お、お口に合いますか?」

男「はは、人間にはちょっと薄味かも・・・でも、腹が減ってるから美味いよ」

セル「よかった・・・」ホッ

男「ところで、今後の身の振り方を考えようと思う」

セル「!」

男「セルレインの言うとおり、俺は自分の命を絶つようなことはもうしない。できる限り、この森で生き延びてみようと思う」

男の言葉を聞いたセルレインは、心底ほっとした表情で胸をなでおろしている。

男「まず問題なのは、夜の身の安全を確保することだ・・・申し訳ないが、セルレイン。特に君への対処を先に考えないといけない」

セル「はい・・・そうですね」

男「君は、その・・・君の唾液を俺に注入したことで、どこにいても俺の居場所がわかるようだから」

セル「・・・///」

男「ごほん・・・まぁ、夜の間は離れていて日中合流してもいいんだが・・・夜になるとあの状態になることを考えると、やはり対処しやすいように最初から近くにいた方がいいと思う」

セル「ち、近くに・・・ですか」ドキドキ

男「あ・・・た、他意はないよ?」ドキドキ

男「とりあえず確実なのは、日中のうちに君を拘束しておく、という方法だが・・・」

セル「・・・」

男「・・・」

男(正直、虐めてるみたいで気が進まないなぁ・・・)ゲンナリ

セル「あの・・・私、大丈夫ですから・・・」

男「セルレイン・・・」

セル「迷惑、かけたくないですから・・・お、思いっきり固く縛っちゃってくださいね」エヘヘ

男(ええ娘や・・・)ホロリ

男「うん・・・でも、なるべくならもっと穏便に済むような他の方法も考えてみるよ・・・」

セル「・・・ありがとうございます」

男「あとは、他のエルフの目につかないようなところで夜を明かすのが絶対条件だと思う」

セル「ですが・・・我々エルフは、森の中を広範囲に行動していますし・・・」

男「そこはこまめに場所を変えるしかないな・・・偶発的に出会ってしまったとしたら、逃げる以外に方法はない・・・そういえば、セルレイン」

セル「はい?」

男「君は覚えていないだろうが、君に初めて襲われた2日目の夜に、君は何か呪文のようなものを唱えて俺の周りに閃熱の壁を作ったんだ」

セル「わ、私がですか?」

男「あぁ・・・そのおかげで、他のエルフたちに襲われずに済んだんだが・・・あれを日中のうちに周りに張っておいて、朝まで維持することは不可能だろうか?」

セル「・・・ご、ごめんなさいぃ・・・無理です・・・そもそも私、そんな魔法、知らないんです・・・」

男「」

セル「ううっ・・・」

男「・・・だ、大丈夫だ、とりあえず現状は分かった、オーケー落ち着け俺。まだ慌てる時間じゃない」

セル「ううっ・・・」

男「となると・・・気は進まないが、襲われた時には逃げる以外に戦う準備もしなくちゃならない、ってことか」

セル「っ!」

男「・・・あぁ、なるべく君の仲間には傷をつけないようにするよ・・・というか、相手は魔法の達人だし通常の攻撃が通用するとも思えない」

男はしばし考える。

男「・・・あ、そうだ!セルレイン」

セル「はい?」

男「さっきのキノコ・・・マギカ茸、だったか。あれには、催眠効果があるって言ってたな?」

セル「え、えぇ・・・」

男「例えばそれを使って、眠り薬のようなものを作って、エルフに投げつければ・・・」

セル「む、難しいと思います・・・マギカ茸の効果はそんなに早く現れませんし・・・」

男「む・・・そうか」

結局、いい考えは浮かばずにその日も太陽が沈もうとしていた。

・・・

男「・・・じゃあセルレイン、縛るぞ」

セル「・・・はい」

草の蔓を寄って作った縄で、セルレインの身体を縛る。

夜になっても解けないように、固く、きつく。

セル「・・・っ!」

縄の食いこむ感触に、セルレインが僅かに呻き声をあげる。

男「・・・ごめんな。痛いよな。これじゃまるで、拷問じゃねぇか」

セル「平気です、大丈夫・・・日が暮れる前に・・・」

そして、辺りは完全に暗くなる。

セル「フッ!フーーーーッ!!」ジタバタ

口に結ばれた轡の隙間から、獣のような吐息が漏れている。

日中、あれほど可憐な姿を見せていたエルフの少女は、今や凶暴な淫魔にその姿を変えていた。

セル「グァッ!!フーッ、フーッ!!」ジタバタ

縛られた彼女が暴れる度に、その衣服がはだけていく。

男(何やってんだ俺は・・・ていうか、なんだこの状況・・・)

男はセルレインから目を逸らすことなく、辺りを警戒している。

男(俺が勝手に森にはいったばかりに・・・彼女にこんな思いを・・・)

いたたまれない気持ちで男が彼女を見つめていると、暴れた拍子に白い素肌の先端にある、桃色の突起が見えた。

男「・・・・っ!」ムラッ

セル「フウッ!!ウウーーーーッ!!」

男(こんな時だってのに、何考えてんだ俺は・・・馬鹿じゃねぇのか!!)

だが、昼間のいじらしい彼女が絶対に見せることのないその痴態に、男は少なからぬ劣情を抱き始めていた。

手足を完全に拘束され、轡まで噛まされて抵抗する術を失った彼女の姿が、その想いを増幅させているのかもしれない。

無視か

男「セル、レイン・・・」ゴクリ

男はほんの僅か、彼女に近づく。

セル「ウウッ!!ウウーーーーッ!!」

相変わらず彼女は狂犬のように暴れまわり、服の裾からはその陰部まで見え隠れしている。

男(あれ・・・待てよ?)

男(考えてみれば、セルレインは今や完全に拘束されている。つまり、抵抗できないわけだ)

男(あの野盗は、エルフたちに主導権を握られて干からびるまで精力を搾り取られていたが、この状況だったら?)

男(・・・ひょっとして、彼女が無抵抗な今だったら、普通にやれちゃうんじゃないのか!?)

セル『この人となら契を交わしてもいいかな、って・・・』

男「うおおおおおおおお!!それじゃただのレイプ犯じゃねーか!!しっかりしろ俺ェ!!」

男の悶々とした夜は続く・・・。

翌朝・・・

セル「・・・ふっ、ふぅっ・・・んぅ」

男「あ・・・終わった、かな・・・?」

男はゆっくりとセルレインに近づく。

男「俺の言葉、分かるか?」

セル「・・・・」コクリ

彼女が反応したことを確認し、男は縄をほどく。

セル「はっ、はぁ・・・はぁ・・・大丈夫でしたか?男さん・・・」

男「それはこっちのセリフだよ・・・縛られたところは?痛まない?」

セル「はい、大丈夫です」エヘヘ

あぁ、よかった。いつものセルレインだ。

男「はぁ・・・昨日はいろいろと、目の毒だったよ」ゲッソリ

セル「?」

男「あ、いや記憶がないならその方がいいんだ、俺的にはね・・・」

セル「あの・・・」

そう言うと彼女は、自分の膝をポンポンと叩いている。

男「?」

セル「少し、寝たほうがいいと思います・・・木や石よりは、いいかなって・・・」

ありがたい、膝枕か。

男「はは、ありがとう。セルレイン」

セル「はい」

男「今日もいろいろと対策をしておきたい。日が高くなる前には、起こしてくれ」

セル「ふふ、分かりました」

・・・

ああ、いい気分だな・・・

こんな気持ち、久しぶりだ・・・

俺、この森から出られたら、どうするんだろう・・・

研究を続けて・・・・そうだ、エルフの話も、もっと聞いてみたいな・・・

あとは・・・セルレインと・・・

・・・

続きはまた今度やでぇ・・・

>>122
ID見るまで気づかなかったごめんねチュッチュ
彼女以外は没個性的にしたかったんや

名前のことは気に食わんかったら適宜脳内変換してくれればええんやで(ニッコリ
ただちょっとヴェルターズオリジナル感出したかっただけなんや

男「・・・はっ!」ガバッ

セ「あっ、痛いっ!」ゴチン

男「痛てッ!あ、あぁごめん、急に飛び起きて・・・」ヒリヒリ

セ「あ、あうぅ~、大丈夫です・・・ちょ、ちょうどそろそろ起こそうかなって・・・」ヒリヒリ

辺りはすっかり日が昇り、暖かくなり始めている。

男「・・・よし、昨日の続きだな」

男は立ち上がり、昨日キノコを獲った場所へ向かう。

セ「・・・マギカ茸ですか?」

男「ああ。俺にはどうしても、こいつが役に立つように思えてならない」

セ「はぁ・・・」

男「人間の薬学にはね、複数の薬草を調合してその効果を増幅させる手法があるんだ」

セ「そうなんですか?」

男「あぁ・・・君が教えてくれた、エレノール草と焔竜草の組み合わせみたいな感じさ」

エルフ「なるほど・・・あっ!」

男「ん?」

セ「あります!心当たりが!!」

男「えっ?」

セ「私達が薬を長期保存するときに使うアミラの実という木の実があるんですが」

男「アミラの実?」

セ「はい!それ自体は毒があって使えないんですが、薬を長く保存するときにはそれを一緒に混ぜるんです」

男「毒が・・・?」

セ「ええ。それを混ぜると、どんな薬も毒になってしまうんです。たとえば、熱を下げる薬に混ぜれば身体は凍りつき、痛みを止める薬に混ぜれば全ての感覚を奪ってしまう・・・」

男「なるほどね・・・つまりそのアミラの実とやらには、薬の効果を増幅させる力があるわけか」

セ「多分、そうだと思います。アミラの実を混ぜる量によって、使う時期を調整するんです」

男「一時的に効果が増幅された薬を、時間経過によりちょうどいい頃合に劣化してきた時に使う・・・話を聞く限りじゃ、こんなところかな」

セ「はい!」

男「だけど、どれだけの量を調合すればいいのか、どんな反応を起こして薬効が現れるのかが分からないと使いどころが難しいな・・・」

セ「あぅ・・・」

男「いや、でもいい情報だったよ。とりあえず、そのアミラの実が手に入ったら、このマギカ茸と調合してみよう」

セ「あ、アミラの実だったら里に戻れば・・・」

男「ん・・・そうか、エルフの隠れ里、か」

そういえばこの2日間、彼女は里には戻っていないはずだ。

男「その・・・大丈夫なのか?俺と会ってから、戻ったりして」

セ「?」

男「いやだから・・・なんていうかその、人間のニオイ?とかそういうのでバレたりなんかは・・・」

セ「あはは、それはさすがに無理ですよぉ。動物たちじゃあるまいし」

そんなもんなのか。

セ「あ・・・でも、男さんが里に入るのはまずいかも・・・人間ですし」

男「ああ、そうだろうな。それに、俺も万が一のことを考えると、今は君以外のエルフには会いたくない」

セ「///」

男「あ、他意はないからね?」

男「じゃあ、一度君は里に戻るといい・・・移動したとしても俺の居場所は、分かるだろう?」

セ「はい、大丈夫です」

男「俺はこのまま、今夜隠れる場所を見つけるよ・・・すまないが、日が暮れる前には合流したい」

セ「わかりました!!」

そういって男はセルレインと別れた。

・・・

日が暮れてしばらく経ったが、彼女は未だ男の元へは現れなかった。

男は暗い森の中を一人で動き回る。

男(・・・セルレインのやつ、何かあったのか?)

どれだけ逃げたとしても、彼女には男の居場所が正確に分かる。

男(くっ、夜になったらアイツは魔物になる・・・もし仲間でも引き連れてきたら・・・)

結末を想像し男は青ざめる。

初日こそなんとか逃げ切ることができたが、森に入ってから既に5日目。消耗しきった体力では、次は逃げ切ることはできないだろう。

男(訳も分からず森の中を走り回ってどうにかなるとも思えないし・・・こりゃ、肚を括るしかないか)

男は、出来る限りの準備をすることにした。

男(ひとまず、投石に使えそうな石と・・・あとは木の棒の先端に、ナイフを括り付けて・・・)

男(・・・だが、相手は魔術に長けたエルフだ・・・向こうが本気になれば、こんな原始的な武器で勝てるわけ・・・)

男がそう考えた時、前方の茂みからガサゴソと音が聞こえてきた。

男「っ!?・・・セルレイン、か?」

男は石の礫と手製の槍を持ち身構える。

ドワーフA「・・・」

男「ん?あれはエルフ・・・じゃないな」

ドワーフA「マシソン」

男「?」

男の前に現れたのは、がっしりとした体つきにヒゲを蓄えた小人だった。

ドワーフA「ドミンゴォ」

男「うっ・・・こっちに来るな!!」

よくみるとその小人は木でできた棍棒のようなものを持ちながらこちらに近づいてくる。

男(どうする・・・逃げるか?)

男はじりじりとその場を後ずさる。が、その時!!

エルフA「ナカタァ!!」

男「うわあああっ!!」

急に後ろの木陰からエルフが飛び出してきた。

ドワーフA「ナカタ!!ショウナカタ!?」

エルフA「ヒデトーシ!ヒデトシナカータ!!」

ドワーフA「サカブタハシネ!!」

その2匹は何やら得体の知れない言葉の応酬をしたかと思うと、急に仲間を呼び始めた。

男「な、なんだってんだ、一体・・・」

ドワーフA「クワタ!!」

ドワーフB「フルタ!?」

男「ふ、増えた!?」

エルフA「ゴンダァ!!」

エルフB「オオツ!!」

エルフF「オウギハーラ!!」

辺りにはみるみるうちにエルフとドワーフが集まり始める。

そしてその中に、彼女の姿もあった。

男「・・・っ、セルレイン!!」

男は叫ぶ。だが、夜の彼女の耳にその声は届かない。

男(だめだ、もう正気を失ってる!!)

対峙する2つの種族は、そのまま戦闘を始めてしまう。

ドワーフC「ジュラコンプ!!」ブォン

筋骨隆々の小人の振った棍棒が、華奢なエルフの身体にめり込む。

エルフC「クギャ!!」

まるで動物のような悲鳴をあげ、吹き飛ばされるエルフ。

男「なっ・・・」

言葉を失い立ち尽くす男の前で、同様の事が繰り返される。

その度に、殴られたエルフは吹き飛んでいく。

理性を失い、痛みを感じないのか殴られてなお立ち上がる者もいるが、その手足はあり得ない方向に曲がり、頭部からは大量の血を流している。

男「あ・・・あぁ・・・」

そのあまりに凄惨な光景に足が竦んでいた男の目にあるものが映る。

セ「・・・・」

男「・・・セルレイン!!」

男のよく知る彼女・・・とはいえ今は恐ろしい夜の姿だが、今度は彼女がドワーフたちの標的にされている。

男は持っていた石を彼女の近くにいたドワーフに投げつける。が、それはいとも容易く棍棒で撃ち返されてしまう。

男「やめろおおおおおッ!!」

男は後先を考えず、彼女の前に飛び出した。

ドワーフD「ビヨンドマックス!!」ヒュッ

ドワーフの丸太のような腕から振り下ろされた棍棒が頭に直撃しようかというその刹那、男がかばったエルフの口元が小さく動く。

セ「…イオナズン」

そのかすかな声を聞いたと思った次の瞬間、男の意識は途絶えた。

・・・

気が付くと、辺りはすっかり日が昇っていた。

男は自分の頭に手を当て確認する。どうやら怪我はしていないようだ。

身体を起こしてみると、辺りは凄まじい様相となっていた。

木々は倒れ、土は抉られ、その周囲にはドワーフやエルフの身体が散らばっている。

男「・・・ぅぷ」

それを見た男は、堪らず嘔吐する。

男「うぐっ、ゲホゲホッ!!・・・そ、そうだ・・・セ、セルレインは・・・?」

男は昨日かばった彼女のことを思い出し、よろよろと辺りを探しはじめる。

男「・・・い、た・・・」

少し離れた茂みの中に、彼女はいた。

見た目にはそれほど外傷はないように見えるが、声をかけても反応はない。

男「・・・まだ息はあるみたいだな」

男は意識を失った彼女を背負い、その場から離れる。

セ「・・・う・・・く」

男「あ・・・気が付いたか」

セ「男・・・さん・・・私、また・・・」

男「いや、大丈夫だ・・・」

セ「ごめんなさい・・・私、里に戻って・・・それで・・・」

すると、ハッと思い出したようにセルレインは目を見開く。

セ「そうだ、里が・・・里に戻らなくちゃ・・・!」

男「なんだ?里がどうした!?」

セ「里に戻ったら・・・仲間がいなくなってたんです!!}

男「!!」

セ「でも、私の他にも何人かはまだ里に残っていて、集まって皆を探していたんですが、そのまま夜になって・・・」

男(・・・ということは、昨日現れたエルフたちはその仲間・・・か)

セ「・・・そういえば、あの子たちは・・・」

セルレインは立ち上がり、辺りを見渡す。

男「あ、待てセルレイン!!」

セ「えっ・・・何・・・これ・・・」

彼女が見たのは、変わり果てた仲間の姿だった。

男「セルレイン!!」

セ「え・・・嘘・・・もしかして、これ・・・私が・・・?」

セルレインはふらふらとその場に座り込む。

セ「・・・・・・」

男「・・・セルレイン、大丈夫だ。あれは君じゃない」

セ「・・・・・え?」

男「ほら、あそこにエルフじゃない奴がいるだろ・・・昨夜アイツらがいきなり襲いかかってきてな」

セ「あれは・・・ドワーフ・・・」

男「しばらく言い争ってたみたいなんだが、君に襲いかかろうとしたヤツをみて君の仲間が呪文を唱えたんだ・・」

セ「・・・」

男「だから、その・・・・」

セ「男さん・・・優しいですね・・・」

男「え・・・」

セ「前にも言いましたけど、私は男さんの心が読めますから・・・私のことを気遣って、ウソをついてくれたんですね・・・」

男「・・・ごめん」

セ「・・・うっ・・・・ひっく・・・」ポロポロ

泣いている彼女の背中を、男は黙ってさすり続けることしかできなかった。

セ「・・・男さん、お願いがあります」

男「・・・何?」

セ「これから、夜が来る前に、毎日私の事を、動けないように縛ってください」

男「・・・」

セ「それで・・・もし私がおかしなことをしそうになったら・・・そのナイフで・・・」

男「待って、とりあえず落ち着こう。まだ他に方法が無いわけでは無いし」

セル「で、でも」

男「うん、縛るのは、まぁ分かった。でも俺、多分セルレインのこと殺せないよ・・」

セ「・・・」

男「・・・それに本当は、縛るのも嫌なんだ・・・夜になって、あんな姿の君を見るのは・・・だからなるべく早く、別の方法を探そう」

男の言葉に、セルレインは静かに頷く。

男「・・・とりあえず、彼らの墓を作ってやりたいけど・・・残念ながら、俺の体力もそろそろ限界だ・・・」

セ「・・・大丈夫、ですか?」

男「昨日キノコ食べて以来何も食べてないからな・・・もともと菌類には大して栄養もないし・・・おまけにそれもさっき吐いちまった」

男はその場に座り込む。

男「人間の身体ってのは不便なもんでさ・・・セルレインたちみたいに草や木の実だけじゃ、生きていけないようになってるんだよ」

セ「・・・そういえば、人間は生き物の肉を食べると・・・」

ほんの僅かに表情を顰めながら、彼女は言う。

男「まぁ、君たちから見たら異常に見えるのかもな・・・はぁ・・・」

男はその場で溜め息をつく。

男「とりあえず、栄養のある食い物を見つけないと、そろそろ燃料切れだ・・・」

セ「・・・あの」

男「ん?」

セルレインは恐る恐る仲間の死体を指さす。

セ「あ・・・あれ・・・」プルプル

男「いや食べないから!!」

セ「よかった・・・」ホッ

男「ちょっと休めばまだ少しは動けると思うけど・・・はぁ、クルミや栗でもあればなぁ・・・」

セ「クルミ?栗?」

男「あぁ・・・クルミっていうのは、なんかこうシワのついたような硬い木の実で、栗っていうのは・・・トゲトゲの殻が付いたやつ・・・どっちも森の中によく落ちてるんだけど」

セ「・・・あれ?それなら多分、ありますよ」

男「え、本当!?」

セ「はい!ここからならそんなに遠く無いところに!」

男「やった、助かった・・・とりあえず、それがあればしばらくは動けそうだ・・・」

セ「じゃあ私、採ってきますね!」

そういうと彼女は、森の中に消えて行った。

・・・

セ「男さん、これですか!?」コロコロ

男「おぉ、クルミだ!!」

セ「こ、こんな硬い木の実を食べるんですか・・・?」

男「いや、仁っていってこれを割って中身を食べるんだ・・・よし、割れた」

男は黙々と取り出したクルミの実を食べる。

セ「この木の実、食べられたんですねぇ・・・」ホヘー

男「エルフは食べないんだ?」モグモグ

セ「え、えぇ・・・あ、リスが食べているところは見たことがありますが・・・」

男「ははは、そうか・・・」

その日男はその場を動かず、体力回復に努めることにした。

・・・

セ「ウウッ!!フゥーーーーッ!!」ジタバタ

男(はぁ・・・何だかんだでもう一週間か。なんか、そろそろ慣れてきたかな、この光景にも)

男の傍らでは拘束されたセルレインが暴れている。

男(・・・もし森に俺が入ってこなかったとしても、エルフたちは発情期になってたんだよな)

男(そして、夜は獣になりあの野盗のように森に入った人間を襲う・・・)

セ「ウアアアーーーーッ!!ガフッ、ウグーーーッ!!」ジタバタ

男(・・・そういえば、セルレインは里から他のエルフが消えたと言っていたな)

男(考えたくはないが、もし全てのエルフが人間を狩るために森中を彷徨っているとしたら・・・)

男(いや、でもそれならもっと他のエルフたちに遭遇しているはずだ・・・)

セ「ハッ・・・ハッ・・・!」ビクビク

男(とにかくあと1年・・・1年か・・・あと50回もこんな日々を繰り返さなくちゃならないのか・・・)

セ「・・・・・」ビクッ

男(まずは、食料もそうだが生活していくための準備を整えないと・・・って、なんか静かになったな)

セ「・・・」シーン

男「え?あれ、おい!セルレイン!!」ユッサユッサ

?「おー、ここにいましたか」

男「お前は・・・」

側近「あぁ、まだ生きてますね。重畳重畳」

男「何をしに来た!」

側近「いや、ちょっと事情が変わりましてね。こちらで貴方を『保護』させて頂こうかと」

男「保護・・・だと?」

側近「まぁ、詳しくは現地でお話ししますよ・・・」

男「何を・・・うわっ!?」シュンッ

次の瞬間、男は見知らぬ場所に飛ばされていた。目の前には大きな扉があり、扉の奥からは不気味な呻き声のようなものが漏れている。

男「こ、ここは・・・」

側近「発情期のエルフたちを収監する施設ですよ・・・まぁ、ここを開けるのは750年ぶりですがね」

男「750年・・・」

側近「今から5世代前にあたりますかね・・・その時も森の外で疫病が流行ったらしく、人間の数が激減しましてね」

側近「そういった事態を想定して、この施設は作られました。人間がいなくても、効率的にエルフの繁殖が行えるようにね」

男(そうか・・・それで里からエルフがいなくなっていたのか・・・)

側近「ここでは元々、人間のかわりにドワーフを使ってエルフとの交配を行っています・・・人間の次に、魔力が高くなる配合なんですよ」

男「な・・・」

側近「ですが、本来この2種族はあまり気性が合わないので・・・貴方も見たでしょう?昨夜ここから逃げ出したドワーフと、エルフたちが争っているのを」

男「!」

側近「そこで、ここではその2つの種族の交配を効率よく行えるように、両種族を拘束し性器のみを結合させるようにしているわけです。そのほうが、お互いに傷つけあうこともありませんしね」

男「ふざ・・・」

側近「だからふざけてなどいないと前にも言ったでしょう?」ハァ

側近「大体、貴方がた人間だって家畜と呼ばれる飼い殺しの動物たちにほとんど同じことをしているでしょうが」

男「ぐっ・・・」

側近「ていうか、最終的には殺してその肉を食べるわけですよね。どんだけ猟奇的なんですか、ぶっちゃけ引きます」

男「・・・こんなことをしてるお前たちに言われたくはない!」

側近「いや、我々はエルフの個体数さえ維持できればそれ以上のことは特にしませんよ・・・現に、両者が怪我をしないように配慮しているじゃないですか。まぁ、神と戦争にでもなれば話は別ですが、それを回避する為に我々も日々身を粉にして外交を行っているわけですし」

男「ぐ・・・ぅ・・・」

側近「まぁ、この件に関して貴方がた人間にどうこういわれる筋合いはありませんよ」

男は歯噛みする。悔しいが、この魔物の言うとおりだ。

側近「で、ここ数世代の間は人間達も潤沢に確保できていたので、この施設を使う必要なかったんですよ・・・人間とエルフは相性がいいですからね。こうして無理に拘束する必要もありませんし。産まれてくるエルフたちも高い魔法力を持ったいわゆる黄金世代だったんですがねぇ・・・」

男「そのために、お前たちは何人の人間を・・・」

側近「おや、もう忘れたんですか?我々に人間を提供してくれたのは他ならぬ貴方がた人間達ですよ」

男「っ!」

側近「金さえ渡せば彼らは喜んで奴隷を差し出しましたよ。別にこちらとしては魔族の所有物でない人間がいくら死のうが気にも留めないんですが、よくまぁ平気で同族を差し出せるもんだなぁ、と」

男「違う・・・人間は、そんな奴ばかりじゃない・・・」

側近「えぇそれは分かってますよ。個体差だと言ったでしょう。現にあなたはそれを拒否したわけですからね」

男「・・・」

側近「あー、話が脱線しましたね。そろそろ本題に入っていいですか?」

側近「さっき言った事情が変わった、って件ですがね。この度、我々はある薬を開発しましてね」

男「薬、だと・・・」

側近「それで、貴方にはその実験台になっていただこうかと」

男「実験台!?」ゾクッ

側近「あぁ、そう心配しなくても大丈夫です。きちんと動物実験は済ませていますし、何より我々の調剤技術は貴方がた人間より遥かに優れていますから」

男「な、何の薬だ・・・」

側近「簡単に言えば精力増強剤のようなものですかね」

男「!」

側近「ご存じのとおり、生身の人間では複数回に及ぶエルフとの交配に耐えることができません。ですが、この薬を使えばそんなエルフとの交配にも耐えることができるようになります」

男「うっ・・・」

側近「この実験が成功すれば我々としても手間が省けますしね・・・何せ、いままでは数十人単位で必要だった人間がたった一人で済むようになるのですから」

そういうとその魔物は、懐から薄紫色の液体を取り出した。

側近「それに、貴方には随分配慮したつもりですよ?これなら貴方自身も生き延びることができるし、他の犠牲も出さない・・・悪い提案じゃないでしょう」

男「よ、よせ・・・やめろ・・・」

側近「いいじゃないですか。基本的に、人間のオスはエルフの容姿を好むのでしょう?それに、その射精には快感が伴う・・・先ほど話した奴隷たちも、最初のうちはそれはもう喜んでいましたよ」

男「い、嫌だ!よせ、やめてくれっ!!」

抵抗もむなしく男は無理やりその薬を投与される。

男「~~~ッ!!」

ドクン・・・

男「っ、ぅぐ!はぁうっ・・・・・・!!」

身体が熱い。心臓が高鳴る。頭が痺れる。

側近「よし、じゃあ早速始めましょうか」

そう言うと魔物は目の前にあった扉を開ける。中からはむせ返るような匂いが溢れてくる。

男「はあっ・・・はあっ・・・」

側近「よし、まずは交配の済んでいない第3区画のエルフの拘束を解いて様子を見てみましょう」

側近がそう命じると、部下と思しき魔物たちが奥にある柵を開ける。

すると中からは、一糸纏わぬ姿のエルフたちが溢れ出してくる。

エルフ達「タネエエエエエェェェェェ!!」

男「う、うわ・・・」

男は逃げようとするが、身体が言うことを聞かない。

瞬く間にエルフ達に囲まれ、乱暴に服を引っ張られ身動きが取れなくなる。

男「や、やめ・・・!」

エルフJ「タネ!タネホシイ!!」

エルフG「ハヤク・・・ハヤク・・・!!」

エルフ「Y「オス・・!オスダヨォ・・・」

男「うわあああああああっ!!!」

側近「よしよし、果たしてどうなるか楽しみですね・・・おや?」

側近の視線の先には、拘束されたままのセルレインの姿があった。

側近「あぁ、そういえば彼女もいましたね・・・誰か、そこにいるエルフの拘束も解きなさい」

側近の命令で、セルレインの縄が解かれ轡が外されたその時。

セ「バシルーラ!!」

男に群がっていたエルフ達は、そのまま遠くへ飛ばされてしまった。

男「!!」

セ「ワタシノ・・・コレ、ワタシノォ・・・」

セルレインは狂気を湛えた顔をしながら、男の前に立ちはだかる。

エルフJ「ヨコセェ・・・オスヨコセェ・・・!!」

男「セ、セルレイン・・?・」

セ「コレワタシノォ・・・ワタシノオス・・・ワタシノ・・・」

エルフJ「ハーフナァァァァ!!」

そのエルフがセルレインに飛び掛かろうとした、その時。

セ「メラゾーマ!!」

エルフJ「ア、ガアアアアアアア!!」

巨大な火柱が現れ、そのエルフは瞬く間に消し炭になってしまった。

側近「おやおや、困りましたねぇ・・・これは少し、計算外です」

なおも男ににじり寄ろうとするエルフ達の前に、セルレインは初めて会ったあの夜と同じように閃熱の壁を作る。

セ「ベギラゴン!!」

側近「あーあー、施設の中でそんなことしないでくださいよ、まったく・・・」

側近は面倒そうに二人に近づく。

側近「とりあえずこの2人は私が隔離しておきます。その間にエルフ達を再び拘束しておきなさい」

そういうと側近は、ここに来た時と同じように転移魔法で二人を別の場所に飛ばした。

・・・

男「うわっ!」ドサッ

セ「ウグッ・・・」ドタッ

側近「やれやれ、まさかあんな形で攻撃性が出るとは・・・ヒューマンハイブリッドはこれだから扱いが難しい」

男「・・・何?」

側近「・・・まだ気づいていないんですか?エルフ達のあの夜の姿は、人間から受け継いだ攻撃性が前面に出ている状態なんですよ」

男「!!」

側近「発情期自体は元からエルフにあったものですが、昔はあそこまで凶暴にはならなかったんですがね」

男「な・・・」

側近「あれは、人間と掛け合わせたことで出る攻撃的な本能、言ってみれば副作用みたいなもんです」

側近は淡々と説明を続ける。

側近「まぁ、それ自体はいざ戦闘となれば役に立ちますし、魔力の向上にも一役かっているのですが・・・」

セ「ウゥ・・・グギギ・・・」

側近「如何せん、こうなってしまっては魔獣と大差ありませんからね」ハァ

男「お前・・・自分たちが勝手に『それ』を作り出しておきながら、そんなことを」

側近「だからこそ先ほどのような管理施設を作ったのです。それに、普段は別にこのような攻撃的な面は出てきませんし、発情期の時だけ我々がコントロールすれば済むことです」

男「ふざけるな!!俺達やエルフをまるでモノのように扱いやがって!!」

側近「またそれですか・・何度も言うように、それは人間とて同じでしょう」

男の拳はやり場のない怒りに震える。たしかにこの魔物の言い分は正しい。だが、当事者となった今、男のこの憤りはどこにぶつければいいのか。

側近「まぁ気持ちは分かりますよ。貴方も普段は意識していなかったでしょうが、こうして当事者になって初めて支配される側の気持ちを理解した、というところですか」

側近「私だったら、そんな状況に置かれること自体我慢ならないでしょうね」

その一言に、男は我を忘れ殴りかかろうとする。

男「うおおおおおおおっ!!」

側近「いや無理ですよ。たかが人間ごときに私が倒せるわけないでしょう」

男の拳は側近の身体をすり抜け、そのままの勢いで彼はその場に倒れ込んだ。

男「ぐ、うぅっ!!」ドサァッ

側近「結局のところ、弱いものは強いものに支配されるしかないんですよ。そうでなければ、利用価値がなく見向きもされないだけです」

淡々と放たれる彼の言葉が、男の胸に突き刺さる。

側近「・・・あぁ、なるほど。こういう人間に都合の悪い事実をありのままに指摘するところが、人間が魔族を嫌う理由なのかもしれませんね」

男「くそったれ・・・」ギリッ

側近「たしかに神は口だけは上手いですからね。自分たちにとって口当たりの良いことだけ聞かされていれば、人間達は神の事を有難がるわけです」

合点がいった、というような表情を彼は見せる。

側近「まぁ、耳が痛いでしょうが聞き分けなさい、事実なのですから。・・・とはいえ、この実験の成果は私も是非知りたいので・・・」

側近が軽く手を叩くと、それまで大人しかったセルレインが飛び掛かってきた。

セ「ガァッ!!フッッ、カヒュッ!!」ガバッ

男「あ、うわ!!」ドサッ

側近「どうやら貴方はそのエルフに気に入られてるようですからね・・・こちらとしては、先ほどの薬にエルフとの交配に耐えうるだけの効果が確認できれば、まぁよしとしますよ」

そう言っている間にも、セルレインは男の衣服を剥ぎ取ろうとしてくる。

男「あ、ああぁぁ・・・」

側近「それに、別に貴方としても満更ではないのでしょう?相思相愛、結構なことじゃないですか」

男「違う、これは・・・」

セ「オ、オトコ・・・タネェ・・・タネホシイィ・・・」

男「セルレイン・・・」

側近「ここ数日で何があったのかは知りませんが、まぁせいぜい二人で仲良くすることです」

こうして側近は、夜の闇に姿を消した。

夜の森の中で、二人は産まれたままの姿で絡み合う。

木々から漏れる月明かりに照らされる彼女の身体は神秘的で、少なからず男の中のリビドーを掻き立てた。

夜の森の中に、エルフの艶かしい声がこだまする・・・。

・・・

翌日、彼女は目を覚ます。かなり長い間眠っていたらしく、既に日は傾きかけている。

その傍らでは、男が憔悴し切った表情で自分のことを見つめていた。

セ「あ・・・」

男「ふふ、起きちゃったのか・・・」

男は僅かに微笑み、語りかける。

男「ごめんな・・・」

セ「え・・・」

見ると、男の胸部には深々とナイフが刺さっている。

セ「ひっ・・・!?」

セ「あ・・・な、なんで・・・」ガクガク

男「はは・・・昨日の夜、いろいろあってな・・・」

セ「ま、まさか・・・」

男「心配するな、君のせいじゃない・・・自分でやったんだよ・・・・」

セ「あ・・・あ・・・」

男「はぁっ・・・心を読まれるんじゃ、嘘ついても意味ないからな・・・なんだか、自分のことが・・・許せなくなって・・・」

セ「喋らないで、傷が・・・」

男「・・・あいつの話を、聞いて思ったんだ・・・俺達は愚かで・・・自分勝手だ・・・」

セ「だめ・・・」

男「・・・前にも、言ったけど・・・せめて自分のことは・・・自分でけりをつけたい・・・はは、最後まで自分勝手だよな・・・」

男「は、・・・正直に言うとさ、俺、セルレインのこと好きだよ・・・昨夜も、本当・・・最高に、嬉しかっ、た」

男の言葉を聞き、自身が衣服を纏っていないことに気付いたセルレインも、昨晩二人の間に何があったのかを悟った。

セ「す、すぐに手当を・・・」

男「・・・頼む・・・やめてくれ、このまま、死なせてっ、くれ・・・」

セ「え・・・い、嫌・・・嫌ぁ・・・」ポロポロ

男「はぁっ・・・昨夜の薬のせいかな・・・なかなか死ねなくてさ・・・でも、最後に普通の君と、話せてよかったよ・・・」

男「・・・・契の件は、ごめん・・・マジごめん・・・・」

男「でも・・・せめて・・・あの世まで持っていくよ・・・」

男「ありがとう・・・セルレイン・・・」

側近「はいザオリクー」

男「」

セ「!!」

側近「いや実験の結果知りたいって言ったじゃないですか。そのまま死ねると思わないでくださいよ」

男「こ、このやろっ・・・!」

セ「男さんっ!!よかった・・・ありがとう、ありがとうございますっ、側近さまっ!!」ポロポロ

側近「よきかなよきかな」

男「もう、もうやめてくれ・・・俺を弄ぶのは・・・」

側近「弄んでるつもりはないんですがねぇ・・・こちらは真面目に業務をこなしたいだけですし」

男「分かったんだよ・・・アンタの言ってることは全部正しいんだ・・・俺は、そんな人間でいることに、もう我慢ならないんだ・・・」

側近「お、出ましたね。人間の心の脆弱性ってやつが」

男「頼むから・・・俺が俺であることを、もうやめさせてくれ・・・」

側近「うーん、人間っていうのは何故そんな意味のないことに頭を悩ませるんでしょうねぇ」

男「っ・・・!」

側近「事実は事実として受け止めればいいじゃないですか、死ぬわけでもあるまいし。まぁ、貴方自分で死に掛けましたけど」

側近「別に貴方が悪いと思っていたことを自分がやっていたからと言って、何の問題があるんです?あなたが自分自身を許せないことなど、端から見れば至極どうでもいいことですよ」

男「・・・」

側近「悪いことなのは理解している、だけど自分が在るためには仕方がない・・・ただそれだけの話でしょう?」

男「・・・」

側近「いままでそれを何となく見過ごしてきて、いざそれに気付いたときに自分に落胆して自棄になってるだけじゃないですか」

側近「別に、それでこれまでの貴方と変わるわけでもないのに」

男「!」

側近「それにまぁ、実験が終わるまでは貴方を死なせるつもりはありませんし、そのへんは我慢してもらいますけど、そんな他愛もないことで死ぬなんてアホの極みですよ」

側近「ねぇ?」

セ「えっ?あ、あの・・・仰っている意味がよく分からな・・・」

側近「あなた、この人間に死なれたくないんでしょう?」

セ「はい」(即答

側近「ほら、別に貴方が自分のことを受け入れられなくても、そのエルフは貴方のことを受け入れてるでしょう」

男「あ・・・あぁ・・・」

セ「男さん・・・」ギュッ

側近「ま、この実験が終わったらあとはご自由にどうぞ。今度は別に関与しません。私はね」

セ「だめですよ・・・男さん、本当に、もうやめてください・・・」

男「・・・」

セ「もし今度同じことをしようとしたら・・・私、命がけで止めますからね」

男「セルレイン・・・」

側近「つまり、彼女にとって貴方はそれだけの価値があるってことですよ・・・まぁ、それでも拒否するというのなら、あとはお互い力で支配するしかないでしょうね」

側近「力こそパワーだ!!」クワッ

男「いやお前そのセリフ最高にアレだろ・・・」

側近(あぁ、なるほど・・・確かにこの人間に植え付けられた『罪』という概念は案外使い勝手がいいかもしれませんね・・・神もなかなかえげつないことをする)クックック

男「お前・・・何笑って・・・」

側近「いや、これは失礼。貴方と話すことで、いろいろと予想外の収穫があったもので」

男「・・・」

側近「じゃ、とりあえず実験だけは続けてもらいますよ。少なくともエルフの発情期が終わるまでは」

男「」

・・・

男「行っちまった・・・」

セ「・・・」ギュッ

男「・・・とりあえず、服を着よう」

セ「もう、このままでも・・・いいんじゃないですか・・・どうせ、夜になれば・・・」

男「う・・・」

男「・・・なぁ、セルレイン。ひとつ、聞かせてくれ」

セ「・・・はい?」

男「・・・俺達がこうしている間も、あの収容施設では君の仲間たちが拘束され、魔族の都合でドワーフと強制的に交配をさせられている・・・」

セ「・・・」

男「俺にはそれがどうしても唾棄すべき行為に思えて、でも、俺自身、今までそれと同じようなことを何の意識もせずに行ってきたことを理解した途端、自分が許せなくなった・・・」

男「君が前にも言った通り、人間は怖くて、残忍だ。そして俺は、その人間だ」

セ「違います・・・あ、いえ・・・前にも言いましたけど、男さんは他の人間の命を犠牲にしないために、この森に残ったんですよね・・・それは、うまく言えないけど、とても尊敬?できることだと、思います」

男「・・・」

セ「それに・・・人間であることに苦悩して、自らの命を絶とうとしたことも・・・ある種の清廉さのようなものを感じました・・・し」

セ「例え・・・今までそれに気付かなくて、男さんが人間の本能に従って生きてきたとしても・・・」

セ「そんなあなたの、近くにいたいと思うことは、それほどおかしなことでしょうか・・・?」

彼女の言葉に、男の目が潤む。

セ「仲間のことは・・・そうですね。確かに、あまり気持ちのいいことではありません・・・が」

セ「夜になって・・・また正気を失えば・・・仲間を・・・」

そう言いかけて、彼女は身震いし始める。

セ「仲間を・・・殺、してしまうかもしれませんし・・・」

セ「私・・・私も自分が怖い・・・正気を失って、仲間に手をかけるなんて・・・」

男はこの時初めて気づいた。彼女も、自分が持つエルフの本能を受容できずにいることを。

セ「だ、から・・・せめて・・・そばにいて・・・私を、制してください・・・私も、男さんのこと・・・見てますから・・・」

その言葉を聞いた男は、彼女を強く抱きしめる。

セ「だから・・・そ、そ・・・お、オト・・」

男「ん?」

セ「ウ・・・ウウゥ・・・スル・・・モウ、ガマンデキナイ・・・」

男「えっ、ちょっ」

話し込んでいるうちに、辺りは既に暗くなり始めていた。

セ「ハァッ・・・ツヅキ・・・キノウノツヅキ・・・」

男「ひっ・・・ゆ、昨夜あれだけやってまだ・・・?」

セ「タネ・・・タネホシイ・・・ズットイッショ・・・」

覆いかぶさってくる彼女の前に、男は為す術もなく押し倒される

セ「アハッ・・・ハイッテ、クルヨォ・・・」ニュプ・・・

男「お、おおぉぉぉ・・・」ビュル

セ「モット・・・モットホシイ・・・モットォ・・・」ニチャニチャ

男「うっ、ううっ!!」ビュルル・・・

セ「ハァァァァ・・・」ゾクゾク

今宵もまた、彼女は男の身体を貪り続ける。

男(・・・発情期のエルフ、まじやべぇ・・・)ドプッ・・・

1年後・・・。

側近「はぁ・・・結局、実験は失敗ですか」

久しぶりに現れたその魔物は、2人の前で呟く。

男「・・・」ゲッソリ

セ「あ、側近さま・・・ご無沙汰してます」ペコ

側近「やれやれ・・・身体が耐えられても、繁殖に成功しなければ意味がないでしょう・・・この薬にはもう少し改良が必要ですね」

結論からいうと、男の身体は度重なるエルフとの交配には耐えることはできた。

だが、肝心な精子については薬の効果が得られず、結果彼女が身籠ることはなかった。

側近「この種無し野郎が」ペッ

男「ひどい・・・」

セ「あの・・・側近さま、仲間たちは・・・」

側近「あぁ、他のエルフなら子供を産んだものから順次里へ戻っているはずです」

セ「そうですか・・・」

側近「今宵で貴方がたの発情期も終わりですね・・・ま、あと150年はドワーフハイブリッドで我慢することにしましょう。幸いなことに、貴方達ヒューマンハイブリッド世代も、あと300年は生き続けることでしょうし」

そう言うと側近は男に話かける。

側近「さぁ、約束です。もう貴方を束縛することはありません。森を出るなり、このエルフと添い遂げるなり、自殺するなり好きになさい」

男「はは・・・もうそんなことしないさ」

・・・

セ「・・・男さん、これからどうするんです?」

男「どうするって・・・とりあえず一旦村には戻らないと・・・って、下手したらもう墓でも建てられてるかな」ハハハ

セ「・・・じゃあ、もう会えないんですか?」

セルレインは少しだけ切なそうな表情を見せる。

男「いや、そんなことはないだろう・・・森に入れば、またいつでも会えるし。セルレインなら、俺の居場所も分かるんだから」

セ「・・・そうですね」ションボリ

男「・・・なんだかんだ言って、俺は人間で、君はエルフ。子供が出来なかったのは、かえって幸いかもしれない・・・何せ、俺なんか後50年もしたら死んじゃうんだしさ」ハハハ

側近「あ、そのことですけどね」

男「へっ?」

側近「もう1年も何もない森で生き延びのだから、薄々気づいてるかとは思ったんですが」

側近「あなた、あと数百年は死ねませんよ」

男「」

側近「あの薬の副作用みたいなもんです・・・あ、まぁ自分で命を絶ったりすればまた別の話ですが」

男「」

側近「本当のこといいますとね、一度薬を投与した個体のサンプルとして貴方のことを魔族で管理しておきたいんですが」

男「」

側近「まぁ、そこは前に自由にすると約束してしまいましたしね。それを破るつもりはありません」

男「・・・」プルプル

側近「それに、そのほうがあなたも嬉しいでしょう?」(ニッコリ

セ「あ、有難うございます、側近さま!!」パァァ

男「おいいいいいいいいいい!!!」

>>273
それと絵見て思ったんだけど、これなんか魚の話してた人っぽいな

>>275,285
前のも読んでくれてたんか うれC



番外編

その後・・・

人として暮らすことが出来なくなった男は、魔族と契約をしたうえで、森の中でエルフと二人、暮らすこととなった。

目下のところ男は150年後に控えた次の発情期のため、新薬を開発するためのサンプルとして時たま例の側近に呼ばれている。

側近「いや、ハッピーエンドですよねぇ。貴方も貴方が嫌いな人間じゃなくなったんですから」

男「結局魔族の良いようにされてるだけなんだがな・・・」

側近「この世界は力こそパワーですからね。力なき者は、力のあるものに支配されるほかないのです」

男「この辺は典型的な魔族思考なんだよなぁ・・・」

側近「前から思ってるんですけど、別にこちらは貴方にとって悪い提案をしたことはないはずなんですがねぇ」

男「・・・まぁ確かに、いくつか感謝してるところがないではない・・・けど」

側近「おや、急にデレましたね」

男「エルフって・・・発情期以外は本当に性欲無いんだなぁ・・・」

側近「おや・・・150年後が待ちきれませんか?」

男「いやあそこまで正気を失われたらさすがにちょっと・・・下手したら不全になるレベルだし」

側近「人間の感情はよく分かりませんねぇ・・・要するに貴方はあの一緒に暮らしているエルフといちゃらぶエッチしたいわけですか?」

男「お前本当に人間の感情よく分からないの?」

側近「誘ってみればいいじゃないですか、人間がそうするように」

男「いやそうは言ってもなぁ・・・セルレインは、そんな娘じゃないし・・・」

側近「あんだけヤリまくっといてなに今さら童貞みたいなこと言ってるんですか」

男「なぁお前本当は人間のことすげぇ分かってるよね?」

前のスレタイplz

・・・

男「はぁ、ただいま・・・」バタン

セ「あ、おかえりなさい・・・なんだか疲れてるみたいですね」ゴーリゴーリ

男「そりゃ、あれだけ続けざまに得体の知れない薬を投与されればね・・・って、何作ってるの?」

セ「あ、これですか?前に二人で採りに行ったマギカ茸をすり潰してるんですよ」ゴーリゴーリ

男「なんでまた?」

セ「あの・・・男さん、最近、夜眠れてないみたいだったから・・・」

男「あ・・・そっか、ありがとう・・・」

男(まぁ主に眠れない理由は俺の劣情によるものなんですがね)

セ「マギカ茸には眠りを誘うほかに、気持ちを落ち着ける効果もあるんですよ」

男「ふーん、鎮静作用があるわけか・・・」

セ「この際多めに作っておいて、いつでも使えるようにしておこうと思って」ポイッ

男「今入れたのは?」

セ「あ、これがアミラの実ですよ」ゴーリゴーリ

男「へぇ、これが・・・ていうかさ」

セ「?」

男「エルフの調剤方法って、すり潰す以外にないの?」

セ「・・・と、いいますと?」

男「いや人間の場合はさ、例えば乾燥させて煎じたり、臼で挽いて粉にしたりするんだけど・・・」

セ「そうなんですかぁ・・・あれ?でもそれって、どうやって使うんです?」

男「ん・・・そりゃ、煎じた汁や挽いた粉を飲んだり、炙ってその煙を吸ったり・・・かな」

セ「そうなんですかぁ・・・私たち、薬といえば身体に塗るか、そのまま刻んで飲むかくらいでしたから」ゴーリゴーリ

男「はは・・・エルフの知恵と人間の知恵を合わせれば、魔族のような調合技術を得られたりしないもんかな・・・」

セ「・・・よし、できました!」

男「ん、お疲れ様」

セ「じゃあ、食事にしましょう!」

>>291

★完結作をまとめるスレ★3 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1378711362/)
完結スレの以下を参照ください
>>82,175,215,377,391,424

・・・

男「うーん、これがマギカ茸のペーストか・・・本当に効くのか、これ・・・?」ヌリヌリ

セ「あ、男さん・・・こ、今夜は一緒に寝ましょう、か・・・」

男「へ!?」ドキッ

セ「あれ・・・さっき男さんの心を読んだら、私と一緒に寝たいみたいだったから・・・」

男「ちょ・・・いきなり心を読むのは・・・」

セ「あっ!ご、ごめんなさい・・・私、心配で・・・」シュン

男「あ・・・いや、いいんだ・・・ごめん、ありがとう」

男(ていうか、一緒に寝たいってそっちの意味じゃないんですけどね・・・)

セ「・・・一緒に寝ても、いいですか?」

男「う、うん・・・」

男(上目使いやべぇ・・・)ゴクリ

・・・

セ「明日も側近さまのところへ?」

男「あぁ、うん・・・いまちょうど、実験が試薬テストの段階に入ってね・・・」

セ「忙しいんですね・・・」

男「まぁ、送り迎えは転移魔法でやってくれるし、もし実験で何かあっても回復魔法はかけてくれるけど」

男「正直、モルモット気分だよ・・・」ハァ

セ「男さん・・・」

セ(・・・でも、私はそのおかげで、ずっと男さんと暮らせてうれしいです・・・)ギュッ

男「セルレイン・・・」

男「・・・」

男(あぁぁぁやべぇよぉ寝られねぇよぉぉぉお!!)ギンギン

・・・

セ「Zzz...」

男(やばい、一緒の布団に入ったのは失敗だったか)

男(正直隣で寝息を立てる彼女の姿に、俺の愚息は爆発寸前だ・・・)モンモン

男(寝てる間に悪戯したい・・・でも、そんなことしたら・・・)モンモン

セ「・・・」

男(・・・せ、せめて後ろから抱き着くだけなら・・・)ギュッ

セ「・・・ん」

男「・・・」

セ「・・・」

セ(お尻に何か、当たってる・・・)

・・・

側近「で、結局そのまま手も出せずに、外へ出て自らを慰めた、と」

男「みなまでいわんでくれ・・・」

側近「種無しのうえにチキンかよ」ペッ

男「お前なんでたまにそんな辛辣なこと言うの?」

側近「いいじゃないですか、胸や尻くらい好きなだけ弄れば。貴方たち、契を結んだんでしょう?」

男「馬鹿言うなよ・・・俺はこれでも彼女のことを愛してるんだ、そんな無理やり・・・」

側近「愛【あい】1 親子・兄弟などがいつくしみ合う気持ち。また、生あるものをかわいがり大事にする気持ち。『―を注ぐ』 2 異性をいとしいと思う心。男女間の、相手を慕う情。恋。『―が芽生える』」

側近「・・・別に何の問題もないように思われますが」

男「だからそういう単純なもんじゃないの!」

側近「そうだ、今の話を聞いて思ったんですけど」

男(うっ、嫌な予感・・・)

側近「せっかくなので、あなたの精液を頂けますか?」

男「ファッ!?」

側近「いや、もし人間の精子を完全に再現することができれば、そもそも人間などいなくても効率的にエルフを繁殖させることができますしね、よし、そうと決まれば早速」

男「おい、ちょっと待」

触手「キシャアアアアアアア」

男「」

側近「これを使えば手っ取り早く精液の採取ができますからね。さあ、一発抜いて差し上げなさい」

触手「キシャアアアアア」ニョロニョロニョロ

男「う、うわああああああああ!!」ニチャニチャニチャ

側近「あぁ大丈夫ですよ。彼女なら、人間の精液を効率的に採取できる術は心得ていますから」

男「彼女!?この触手、もしかして雌なの!?」

触手「ジュッポジュッポ」

男「はっ、はううぅ・・・だ、ダメだ・・・お、俺にはセルレインがぁぁ・・・」ビクンビクン

側近「貞操観念、という奴ですか。そんなの繁殖の妨げになるだけです。まぁどうせ、人間が増えすぎると面倒だと思った神が植え付けたんでしょうが・・・」

男「冷静に分析してんじゃn・・・アッーーー!」ドビュルルルルル

側近「ふむ・・・たくさん出ましたね」

男「殺して・・・いっそ殺して・・・」サメザメ

側近「すっきりしたでしょう?」

男「心のモヤモヤは残ったままだよ!!むしろ増えたわ!!」

側近「よろしい、では今日も、試薬を服用していただきましょう」

男「ねぇ話聞いてる?」

男「・・・ハァ」ゴックン

側近「最近は抵抗しなくなりましたね」

男「抵抗しても無駄だしな・・・それに、この契約を結んだのは俺の意思だし」

側近「何にせよ、素直なのは結構なことです」

男「というか、なんで俺は魔王の側近とこんな馴れ合いしてるんだろう・・・」

側近「前にも言ったと思いますが、我々の所有物でない人間には毛ほどの興味もありませんが、既に貴方は我々魔族の所有物ですから」

側近「今ではそれなりに貴方のことを気にかけているんですよ?」

男「あぁ、そりゃどうも・・・」

側近「それに貴方だって、エルフの食事だけじゃ身体を動かすのすらままならないでしょう?」

男「まぁ、それはな・・・だって彼女、こないだうっかり俺が・・・」

・・・

男『はぁ・・・』カチャ

セ『あ・・・お口に合いませんでしたか?』

男『あぁ、違うんだ。セルレインの料理はおいしいよ・・・最初は味が薄いと思ったけどね』アハハ

セ『・・・やっぱり、木の実や植物だけじゃ、ダメでしょうか・・・』

男『あ、そんなんじゃないんだよ!ただ・・・』

セ『・・・ただ?』

男『昔食べたことのあるものの記憶が消せないってのは、なかなか辛いなぁって』

男《肉・・・食いてぇなぁ・・・》

セ『・・・』ガタッ

男『ん?どうしたセルレイン・・・って!!』

セ『男さん・・・わ、私の、私の腕の肉でよければ・・・っ』プルプル

男『うわああぁ!待て、そんなことしないでやめて!!』

セ『で、でも・・・お肉・・・』

男『違うの!!ただちょっと思い出しただけなの!!木の実とかキノコ大好きだから大丈夫だからおねがい止めて包丁置いてぇぇぇ!!』

・・・

男「・・・ってな具合になってさ」

側近「ふーむ、エルフにありがちな自己犠牲の行動ですね」

男「前も森で逃げ回ってる時に仲間の遺体を指さして俺に勧めてきたし・・・」

側近「純愛ってやつですか。惚気ますねぇ」

男「あれが純愛だというのならエルフの愛は重すぎる・・・」ゲンナリ

男「ところで、なんで魔族は薬にこだわるんだ?」

側近「と、言いますと?」

男「いや、エルフの発情期になったら今の俺みたいに人間を捕まえたとして、死にそうになったら都度回復魔法を掛ければ済む話だろ?」

側近「150年に1回とはいえ、エルフの繁殖のためだけにそれほどの魔法要員を割くのは非効率ですからね。それに、精力増強剤であれば貴方がた人間に売って外貨獲得にも使えますし」

男「さいですか・・・でも、ここにいて実感したけど、魔族っていうのは魔法だけじゃなくて化学技術も随分進んでるんだよなぁ。人間とは比べものにならないくらいに」

側近「それは貴方がた人間が勝手に身内で戦争して文明を失っているからですよ。現に今から数千年前の人間のほうが、まだ今より優れた技術を持っていましたよ?」

男「はぁ・・・ますます人間ってバカだなぁ」

側近「あなたもだいぶ魔族色に染まってきましたね」

男「かもな」

側近「さて、今日のスケジュールは以上ですね。お疲れ様でした、次は3日後にお願いします」

男「あぁ・・・それじゃ、悪いがまた転送を頼むよ」

側近「・・・あぁ、そうそう。これをお持ちなさい」ガサゴソ

男「ん・・・これは?」

側近「この研究所で試作中の香です」ウズマキ

男「香・・・か」

側近「森の中は、この時期になると吸血虫が煩わしいでしょう。これを焚いた煙には、忌避効果があります」

男「なるほど、それは素直に有難い」

側近「まぁ、貴方は大事なサンプルですし、最近は実験にも協力的なので賞与のようなものだと思っていただければ。・・・あっ、べ、別にアンタのためじゃないんだからね!!」

男「なんで最後思い出したようにデレを詰め込んだ・・・ていうかアンタ、本当は相当人間のこと詳しいだろ」

側近「まぁ、貴方とこうして会話している内に多少興味が沸いたのは事実ですね」

男「・・・ありがとう、早速かえって焚いてみるよ。」

側近「ええ。それでは、ごきげんよう」

側近「・・・・・・ふふ、さてどんなデータがとれるか、楽しみですね」ニヤッ

・・・

男「ただいま」ガチャ

セ「あ、おかえりなさい!!えいっ!とりゃっ!!」ドタバタ

男「な、なにやってんの?」

セ「はいっ、それが、男さんの血を吸う虫がいっぱいいるんで、外にっ!追い出そうとっ!!」ドタバタ

男「そ、そうなんだ・・・てっきりなんかエルフの伝統的な踊りか何かかと思ったよ・・・」

セ「ううっ・・・全然出て行ってくれないです・・・」

男「ふふ、セルレイン。実は、今日いいものを貰ってきたんだ」

セ「ほぇ?」

男「・・・ほら、これ」

セ「なんです?これ」

男「これは『香』といって、火をつけて煙を出すものだよ」

セ「あ、この間教えてくれた薬の一種ですね!」

男「そうだね。でも、これは俺達用じゃないんだ」

セ「?」

男「この煙には、さっきセルレインが追い出そうとしていた虫たちの嫌う成分が入ってるんだ。・・・つまり、これを焚けば虫が寄ってこなくなる、って寸法さ」

セ「へぇ~、すごい・・・」

男「これを今日側近から帰り際に渡されたんだけど・・・早速使って見ようかと思って」

セ「わぁ、すごいすごい!どうやって使うんです!?」ワクワク

男「ん・・・こうやって火をつけて、少しずつ燃やすんだ。ほら、煙が出てきたでしょ?」

セ「わぁ、本当だ・・・それに、いい匂い・・・」クンクン

男「はは、そうか?俺にはあまり匂いを感じないけどな。ま、これで虫が寄ってこなくなるなら万々歳だ」

男「それにしても、今日はちょっと汗をかいたな。先に湯浴みしてこようかな」

セ「・・・」

男「・・・じゃ、ちょっと行ってくるよ」

セ「・・・はい」

男「・・・?」

・・・

男「ど~こ~までもぉ、どこ~までも~♪」ザバァ

男「は~しれはし~れ♪・・・って、そういやさっき、セルレインの元気がなかったような?」

男「あ・・・俺が返ってくるまでずっと虫を追い出してくれようとしてたんだっけか・・・そりゃ疲れるよな」

<ガサゴソ

男「・・・ん?」

セ「・・・」スーハースーハー

男(・・・あ、あれ?)

男(セルレインが俺の服に顔を埋めてる・・・?)

男「お、おーい・・・何してんの?セルレイン・・・」

セ「はっ・・・あっ、いぃえ・・・そのっ・・・///」

男「?」

セ「こ、これ・・・洗っておきますねっ!」タタタ

男「あぁ、うん頼むよ・・・あ、それと着替えを・・・って、行っちゃった」

男「・・・なんだぁ?」ザプン

・・・

セ「・・・ご、ごちそうさま」カタン

男「あれ・・・食べないのか?」

セ「あ・・・ちょっと、熱があるみたいで」

男「えっ・・・本当か?」

男は自分の手を彼女の額に当てる。

セ「・・・・・・っ!」ビクンッ

男「ん・・・たしかにちょっと熱があるみたいだ」

セ「はぁぅ・・・///」

男「どうしよう、エルフの熱って人間と同じで冷やせばいいのかな・・・と、とりあえずベッドへ」

セ「お、お願いします・・・」

男「よっ、と・・・大丈夫か?いま何か冷やすものを・・・」

男が振り返ろうとすると、彼女は服の裾を掴んだ。

男「ん?どうした?」

セ「だ・・・大丈夫ですから・・・ちょっと、傍にいてください・・・」ハァハァ

男「わ、分かった・・・」

男の彼女の傍らに腰かけるが、その顔は紅く火照り呼吸も苦しそうに見える。

男「セルレイン、やっぱりだめだ・・・!せめて冷やさないと」

セ「行かないでっ!!」ギュッ

今度は立ち上がろうとする男の腕を掴み、そのまま自らの元へ引き寄せるセルレイン。

男「あっ?うわっ!ととと・・・な、何!?」

セ「はあっ・・・男さんっ・・・わ、私・・・」

気のせいかその目はかすかに潤んでいるように見える。

セ「ん・・・」チュッ

男「!!」

男は驚愕する。何と、彼女自ら唇を重ねてきたのだ。

セ「ん・・・んちゅっ・・・」

男(!?・・・な、なんだ!?もう発情期は終わったはずなのに!!)

一旦顔を引いたかとと思うと、今度はより深く、男の口内に彼女の舌が入り込んできた。

二人の間からは、吐息と舌の絡まる水っぽい音が漏れてくる。

やがて唇を離した彼らの間を、細い橋が渡った。

男「セルレイン・・・まさか・・・」

男は彼女に語りかける。だが、以前のそれとはどうも様子が違うようだ。

セ「男さん・・・私、おかしくなっちゃったんでしょうか・・・」

そう言って彼女は自分の服を胸の辺りで握りしめる。その両脇にある丘の上には、小さな突起が自らを主張している。

その艶かしさに、男は思わず唾を飲んだ。

セ「男さん・・・男さぁん・・・・これ、どうすれば、収まるんですか・・・っ」

セ「身体が・・・熱いっ・・・頭が、ジンジン、するっ・・・」

彼女はなおも潤んだ瞳で語りかけてくる。

セ「男さんの顔をみると・・・胸が、苦しっ・・・」

男「セルレイン・・・・」

男はそのまま、彼女を抱きしめる。

セ「ん・・・ふうぅ・・・」

腕の中で、彼女が声を漏らす。呼吸をするたびに、背中が小さく動くのが分かる。

セ「さ・・・触って・・・触ってください・・・ここ・・・」

そう言って彼女は男の手を自らの胸元に誘導する。

男がその先端部に軽く触れると、彼女はビクンと跳ねあがった。

セ「ひぃんっ・・・!」ビクビク

男(・・・どうしたっていうんだ、セルレイン・・・こんな・・・)

男は彼女の変化に驚き、その顔を見つめる。

セ「あっ・・・も、もっと・・・もっと、して・・・」

だが、震えながら懇願する彼女の姿をみて、男の箍は、外れた。

男はそのまま彼女の胸を揉みしだく。その間にも、二人は再び唇を重ねる。

男の手が彼女の敏感な部分に触れる度に、口内の舌の動きは止まり、喉の奥から嬌声が漏れてくる。

そしてやがて、その手は下半身へと伸びていく。

セ「・・・ッ」

すでにそこは溢れた蜜でしとど濡れている。

セ「あっ・・・ひぐっ!!」

その濡れた東雲色の秘裂をなぞる度に、そのエルフは身体を仰け反らせる。

セ「ひあっ・・・・なああっ!!」ビクビク

男は彼女が怪我をしないよう、再びベッドの上に寝かせさらにその指を奥へと滑り込ませる。

セ「ああぁぁぁぁ・・・・」ブルブル

それに呼応するように、彼女は震えた声を上げる。

セ「あっ・・・ひぐっ!!」

その濡れた東雲色の秘裂をなぞる度に、そのエルフは身体を仰け反らせる。

セ「ひあっ・・・・なああっ!!」ビクビク

男は彼女が怪我をしないよう、再びベッドの上に寝かせさらにその指を奥へと滑り込ませる。

セ「ああぁぁぁぁ・・・・」ブルブル

それに呼応するように、彼女は震えた声を上げる。

男「はっ・・・はぁ、大丈夫?痛く、ないか・・・?」

セ「あっ!だ、だいじょうぶっ、ですっ、んんっ!!」ビクンビクン

その反応をみた男は指の動きを加速させる。

セ「~~~~~~~~~~~~ッ!!!」ビクビクビク

彼女は激しく身体を震わせながら、男の腕を掴んでいる。

セ「あっ、ぃやっ!だめっ、あっ、あうっ!!」ビクンビクン

それまで漏れていた嬌声が突如否定の言葉に代わり、男を掴む手に力が入る。

セ「ひっ!あああぁぁぁぁ・・・」チョロロ・・・

一瞬身体を強張らせたかと思うと、その身体はぐったりと男の上に覆いかぶさる。

男の手には、暖かい液体が伝う感触が広がっていく。

男「・・・・・」ハァハァ

男は無言で自らのそれを、彼女の顔の前に近づける。それを見て悟ったように彼女は目を瞑って口を開いた。

セ「・・・はむ・・・ん・・・」

男「っ・・・!!」ゾクゾク

先端部の、熱く柔らかい刺激。彼女はその小さな口を使って精一杯男のモノを咥えている。

そして彼もまた、先ほどまで自分が指でなぞっていた部分を、今度は自らの舌で舐りはじめる。

辺りに響くのは蜜壷を掻き混ぜるような湿性の音と、時折零れる艶かしい溜め息の音だけだ。

しばらくして二人は再びお互いの顔を合わせる。そして、もうこれ以上は何も言わなくてもいい、というように身体を重ねる。

森の中で過ごしたあの日々で、幾度となく行ったはずのその行為は、今宵の二人にとってはまるで未知のもののようにに感じられた。

二人はお互いを求め合い、陽光が部屋の中を満たすまでまで、何度も、何度も愛し合った・・・。

セ「男さん・・・好き・・・・大好き・・・!」

・・・

側近「・・・ふむ、思った通り、よい結果が得られたようですね」

魔物「ええ、多少の調整は必要ですが、これを使えばいつでもエルフの繁殖が可能になります」

側近「しかも良いことに発情時に現れる人間の凶暴性も抑えられているようですし・・・多少時間はかかっても、『資源』の再利用ができると言った点ではこちらのほうが優れていますね」

そう言った魔物の手には、あの香が握られている。

側近「さて・・・あとは無事に繁殖に成功してくれればいいのですが・・・」

・・・

男「じゃあ、行ってくるよ」

セ「行ってらっしゃい」

男「あんまり無理するなよ。もう、一人の身体じゃないんだから」

セ「ふふ・・・分かってますよ」

・・・

側近「どうです?いいものでしょう、あの香は」クスクス

男「くそー、邪知深いことしやがって・・・」

側近「それは心外ですね・・・私はただ、あなたの望みをかなえてあげようとしただけですよ」

男「望みって・・・」

側近「『エルフといちゃラブえっちしたいよぉ』・・・でしたか?」

男「やめてくれ・・・」ゲンナリ

側近「それはそうと、あのエルフの具合はいかがですか?」

男「ああ、順調だよ・・・早ければ来月には、産まれると思う」

側近「重畳重畳。喜ばしいことです・・・」

男「アンタが言うと悪意があるように思えてならない」

側近「そんなことありませんよ。まぁ確かに貴方がたは我々に支配されてはいますが、我々だって貴方がたには感謝しているんですよ?」

男「そうかい・・・」

側近「貴方のおかげでこの実験もかなり飛躍的な進歩が得られましたからね。それにしても・・・」

男「ん?」

側近「産まれてくる子供は、人間とエルフ、どちらなんですかね?」

男「や、やめろよ・・・そういうこと言うの・・・」

側近「まぁ別に貴方の子供をとって食おうなんて考えてませんよ。戦争にでもならない限りはね」

男「今だけは魔族の外交術に望みを託すばかりだ・・・」ハァ

側近「ご心配なく。人間の外交よりはよっぽどマシですよ」

男「かもな・・・」

側近「・・・ところで、どうでしたか?」

男「あん?」

側近「念願の、いちゃラブえっt」

男「うるせぇよ黙れよ」

側近「まぁ、あれが本来の発情期におけるエルフの姿なんですけどね」

男「えっ?」

側近「人間との交配を繰り返し、徐々に攻撃的な本能が強くなっていった結果、貴方も知っているあの姿になった、と」

男「ま、マジかよ・・・」

側近「まぁ、これが生まれてくるエルフの魔力にどう影響を与えるのかは今後の経過を見る以外にありませんが、正直我々も世代を経るごとに増加していく凶暴性をどう制御するかは一つの課題でしたので」

男「・・・」

セ『はあっ・・・男さんっ・・・わ、私・・・』

セ『あっ・・・も、もっと・・・もっと、して・・・』

セ『男さん・・・好き・・・・大好き・・・』

男(普段はおとなしいエルフが、夜はあんなふうになってしまう・・・か)

男(やっぱり発情期のエルフはやべぇな・・・)ゴクリ

https://i.imgur.com/iZUqmMo.jpg
おしまい

ちなみにセルレインってカエルの皮膚から採れる毒のことなんやで・・・

乙乙乙

>>325
エルフつながりってことに気付いて吹いた

>>340
ごめん差し替えるやで


男(これは・・・発情、なのか?だけど、あの時のように正気を失っている様子はない・・・)

セ「はっ・・・はぁっ・・・んっ・・・」プルプル

男(何があったのかは分からないが・・・正直俺も、こんなことされたらもう我慢の限界だ・・・)

そして男は、彼女の膣内で粘性を帯びた指を引き抜き、その中心にある小さな肉芽を撫で上げた。

セ「あっ!くうっ!!んんうっ!!」ビクンッ

今までにないほど大きく身体を仰け反らせるセルレイン。

>>355-358
読んでくれてありがとうチュッチュ

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