モバP「そういえば……」 (154)


※映画のネタバレを含むので注意

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モバP「765Pがハリウッド研修に行くみたいだ」

モバP「所属アイドルに伝えたら泣かれたとか引き留められたとか」

モバP「プロデューサー冥利につきるとか言ってたな……羨ましい!!」

モバP「アイドルに泣かれて引き留められるなんて最高のご褒美じゃないか!」

モバP「……」





モバP「!」ティン!









モバ「俺もハリウッド研修に行っちゃうということにしよう!!」


モバP「アイドルが泣くところを間近で見ることができる!」

モバP「……想像しただけで素晴らしい」

モバP「それじゃあ早速細かい設定を考えないとな。今は朝6時……流石にこの時間に来る人はいないはず」

モバP「ちひろさんもいつも7時半くらいだし――」

「おはようございます」ドアガチャ-




モバP「」


P (え?嘘でしょ早すぎじゃない?)

凛「どうしたの?そんなびっくり顔して」キョトン

P「い、いやなんでもない。朝だからボーっとしててな!」アセアセ

P「改めておはよう凛!今日はずいぶん早いんだな。撮影は9時からだぞ?」

凛「特に家でやることもないし……というかプロデューサーだって早いじゃん」

P「いや!俺は今日までに完成させなきゃいけない書類があってな!泊まったんだよ(本当は帰るのが面倒だっただけだけど……)」

凛「そんなことだろうと思った……」ジト-

凛「やっぱり早く来てよかったよ。はいこれ朝ごはん」サッ


P「いつも悪いな。朝早く起きて作ってるんだろ?大変じゃないか?」

P (凛は俺が泊まったときだけタイミングよくお弁当を持ってきてくれる)

P (前の日に泊まるなんて一言もいってないけど……わかるもんなのか?)

凛「別に大変じゃないよ。いつも5時くらいにはハナコの散歩に行ってるし」

凛「将来のためにもなるしね」

P「将来のためって?」

凛「そ、それはいいじゃんなんでも……」

凛「それより、さっきなんで泊まったかわかるんだろうって思ってたでしょ?」

P「!? お、おう……」

凛「プロデューサーそうやってすぐ顔にでるんだよ。昨日も夜ダルそうな顔してたから、なんとなく予想してた」

P「わ、すごい」


P「でも凛のお弁当は本当に美味しいから今日も中身が楽しみだな」

凛「そ、そんなことないよ……」テレ

P「いやいやあるって!早速いただこうかな」

凛「もう……じゃあ私お茶入れてくるね」

P「おう。よろしくな!凛はお茶も美味しいからな」

凛「そんな褒めないでよ……」テレテレ


テクテクテク……


P (行っちゃった)

P (照れる凛かわいい)



P (今のうちにワードで書類作っとくかな……)


---15分後---

ピーガララララ

P (よし、書類はできた)

P「うーん……そろそろかな」

凛「おまたせ、できたよ」テクテク

P「おっありがとうな。じゃあ早速食べていいかな?」

凛「うん。召し上がれ」

P「いただきまーす!」

凛「ふふっ」


---食後---

P「ご馳走さま。いや~本当に美味しかったよ。うん、料理番組もイケるな」

凛「そんな大勢に見せられる腕でもないけど……ていうか、朝御飯のときくらい仕事のこと、考えるのやめなよ」ジト-

P「ごめんごめん、確かにそうだな。ごはんのときくらいは……」

P 「」ティン!

P「でも、本当に美味しかった。そうか……もう食べられなくなるのか……」ボソ

凛「? なんか言ったプロデューサー?」

P「あぁ……凛。実は伝えないといけないことがあってな」



P「俺、ハリウッド研修に行くことになったんだ」









凛「」



凛「え?」


凛「な、え?」

P「黙っててごめんな。確定するまでは言いたくなかった」

凛「……」

P「凛?」

凛「……」

凛「そういうの、面白くないからやめた方がいいよ」

P「え?」

凛「からかってるんでしょ」プルプル

P (ずっと下向いてて表情が読めないな……)


P「いや嘘じゃな「だから!!!」」

P「!?」

凛「だから……そういうの面白くないって言ってるじゃん!!」グス

P「凛……」

P (あの凛が泣いてる……)


凛「Pさんはいつもそう!!」グス

凛「私達を面白半分にからかって!」

凛「反応を楽しんで!ごめん嘘って言ってくる!」

凛「もう……騙されないから」グス

P「……」

P (まだ信じてないのか?)

P (いや……信じたくないのか)

P (なら……)

P「凛……これを見てくれ」


「ハリウッド研修について」


P「社長から送られてきた書類だ」

P「凛。今までからかってきてごめんな」

P「でも今回は……今回だけは本当なんだ」ウツムク

凛「くっ……えぐっ……」ポロ……

凛「嘘……」ポロポロ

凛「ひぐっ……うぅ……本当、なの」

P「ああ……本当だ」

凛「うぇ……ぐすっ……うあ……」プルプル

凛「うあぁぁぁん……」


P「……凛」そっ

P「……」ギュッ

凛「! うぁ……」ギュッ

P「二度と会えなくなる訳じゃない」ナデ

P「研修が終わったらすぐ帰ってきて、またプロデュースする」

P「必ずだ。だから……」

凛「えぐっ……嫌……」ボソッ

P「え?」

凛「嫌……Pさんが居ないなら、私も活動休止する」ギュッ


P「凛……」

P「……」グッ

P「俺は――凛のこともう少し大人だと思ってたんだけどな」ナデ

凛「っ」ビクッ

P「自分一人のワガママが、通じる世界じゃないだろ?」

P「ファンの為にも、みんなで走り続けるって言ってたじゃないか」

P「それを自分の身勝手な理由で、投げ出していいのか?」ナデ

凛「だって……」グスッ


凛「みんなの中には……プロデューサーも入ってるもん……」グスッ

凛「プロデューサーが居ないと嫌だ……」ギュッ

P「……」ギュッ

P「凛は今が一番楽しくないのか?」

P「ここで立ち止まっちゃったら、先に進めないぞ」

凛「……」

P「成長しなきゃいけないんだ。凛も、俺も……」

P「ハリウッドでいっぱい学んで、お前をトップアイドルにしてやりたい」ナデ

P「けど、俺だけ成長したって駄目なんだ」

P「トップアイドルは俺と凛、二人で作り上げるものだから」ギュッ


凛「!」

P「だから」

P「凛はここで、精一杯頑張るんだ。俺がいなくても仲間はいっぱいいるだろ?」

P「な?」

凛「でも……でも私……」グスッ

P「さっきも言っただろ?二度と会えなくなる訳じゃない」

P「必ず戻ってくるから」ナデ

凛「……うん」ポロポロ

凛「わかった……私も、ここで頑張る」スッ

凛「やっぱり、私なりたいよ」グッ

凛「トップアイドルに」


凛「それがプロデューサーの夢でも、私の夢でもあるから!」

P「!」

P「凛……ありがとう」ナデ

凛「うん……さっきは取り乱してごめんね」ウツムク

P「いや、いいんだよ」

P「俺もごめんな?自分の意見ばっかり突き通して」ナデ

凛「ううん……いいよ」

凛「ねえ もうちょっと撫で続けてもらっていい?」

P「ああ……もちろん」ナデナデ

凛「ふふっ」







――――――――

凛「……ありがとう」スッ

P「おう」

凛「ねえ、研修っていつ行くの?」

P「え?」

P (考えてなかった……)


P「あ、あぁ……」アセ

P「えーと……」スッ

P「一ヶ月後」

凛「一ヶ月後……」

P「うん……」

凛「そうなんだ……このことってもう皆に言ったの?」

P「いや、まだ凛にだけだ」

凛「私にだけ?ちひろさんは?」

P「それもまだ。最初は凛にだけ、しっかり言っておきたかったんだ」

P「凛は俺がプロデュースした最初のアイドルだからな!」

凛「最初か……ふふっ、なんだか嬉しいよ」テレッ


凛「私、Pさんがプロデューサーで本当に良かったと思ってるよ」

P「凛……」

凛「Pさん……」

ちひろ「うんうん、仲良きことは善きかな。ですね!」

「!?」

P「ちひろさん!? いつ来てたんですか!」

凛「びっくりしたよ……」

ちひろ「残念ながら、今きたばかりですよーだ」

ちひろ「お二人が何をしてたか気になりますけど、聞くのは野暮そうなんで、やめときます」


凛「でもそれは……」

P (まずい! ここで終わらせたらなんか勿体ない!)

P「あれ?仲良きことは美しきかな。じゃありませんでしたっけ?」

ちひろ「あれ? そうでしたっけ……上手く決まったところだったのに失敗です」

P「老化が始まってるんじゃないですかー?」

ちひろ「ストレートに失礼ですね……同じようなタイトルの映画があって混ざっただけですー」

P「でもよくありますよねー俺も物忘れが激しくって……」

ちひろ「歳ですかね、わたしたち……」ズーン

P「まだ20代なのに今後が心配ですよね! 」

凛「どうでもいいことで盛り上がらないでよ……」


凛「まあいいや……私そろそろ撮影に行ってくるよ」

ちひろ「あら、じゃあプロデューサーさんも支度を」

凛「いや、いいよ撮影くらい。これからセルフプロデュースにも慣れないといけないしね」

凛「それじゃあ、いってきます」スッ

ちひろ「そう……いってらっしゃい」

P「凛、気を付けてな」

凛「うん」バタン……


ちひろ「……凛ちゃんになにか言いましたね?」

P「ええ」

P「すごく凛にとって刺激になったみたいで、良かったです」

ちひろ「そうですか……なにとは聞きませんけど。お二人だけの隠し事があって仲良しですねー」プクー

P「なに嫉妬してるんですか」ハァ

ちひろ「別にーただちょっと羨ましいなーって。二人の秘密」ツーン

P (かわいい)


P 「ふぅ」

P (凛は前から俺に依存しすぎなところがあったから、ためしに言ってよかったな)

P (二人でトップアイドルになりたいのは本当だし、凛はこれで少し成長できたと思う)

P (ただ……ちょっとオーバーに事を言い過ぎたかな)ビクッ

P (嘘っていったら、凛になんて言われるだろう……)ウーン

P (まあそれもそれで……イイ)ウンウン

ちひろ (一人でコロコロ表情変わるなこの人……)


P (次のターゲットは……)

ちひろ「?」

P「よし」ニッコリ


P (でも待てよ? ちひろさんは一筋縄じゃいかない気がする……)

P (まあ……多分大丈夫か)


ちひろ「さあ雑談もここまでにして、今日も頑張って仕事しますかねー」カタカタ

P「そうですね」ホワイトボードカキカキ

ちひろ「うーん……」カタカタ

P「……」

ちひろ「……」カタカタ

P「そういえばちひろさん」

ちひろ「はい?」カタカタ

P「昨日社長から書類が来まして、俺ハリウッドに研修に行くことになりました」


ちひろ「……」カタカタ

P「?」

ちひろ「……」カタ

P「あの……ちひろさん?」

ちひろ「そうですか。でも――」カタ

ちひろ「行かないですよね?」


P「え?」

ちひろ「強制ではないでしょうし」カタカタ

ちひろ「貴方は150人以上のアイドルを担当しているんですよ」カタカタ

ちひろ「小学生の子だっています。皆に負担をかけるつもりですか貴方は」カタカタ

ちひろ「 今引き受けるのは得策じゃないんですよ」カタカタ

ちひろ「そうですよね?プロデューサーさん」ニコ


P (なんか怒ってない……?)

P「いや……俺は……」ビク

P「……」

P「俺は行くつもりです。凛にもそう伝えました」


ちひろ「……」カタカタ

P「俺は、今よりももっと成長したいんです。それこそ150人以上担当しているからこそ」

P「みんなをトップに導くには、まだなにか足りない気がするんです」

ちひろ「……」カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ

P「だから……」

ちひろ「……」カタカ

バンッ!!!!!


P「!?」

ちひろ「……」スクッ

コツコツコツ……

ちひろ「いい加減にしてくださいっ!!」バチン!

P「っ! 」

ちひろ「貴方、自分がどれだけ勝手なことを言ってるかわかってます!?」ガッ

ちひろ「さっきも言いましたよね? 貴方は150人以上担当しているんです!」

ちひろ「プロデューサーは貴方一人しかいないんです!!」

ちひろ「そんなことされると、皆迷惑するんです!!」グッ


ドンッ
P (ネクタイ掴まれて、壁に追い詰められた……)

ちひろ「貴方一人に押し付けて、本当に申し訳ないと思っています」

ちひろ「でも貴方しかいないんです!!」

ちひろ「……社長には、私からも言っておきます」

ちひろ「わかりましたね。プロデューサーさん」グッ


P (こ、こええ……こんなちひろさん初めて見たぞ)

P (でも俺は)

P (ちひろさんを泣かせたい!!)

P (その為には、ちょっと頑張るしかないな!)


P「もう決めたんです……」

ちひろ「……」キッ

P「行くって決めたんです!」グッ

ちひろ「このっ! わからずや!」バッ

P「どうしてそこまで止めるんですか!」

ちひろ「会社にとって不利益になるからです!! たとえ社長が言ったことでもです!」

P「社長の考えだってあります! 俺がいなくなった後のことは、考えてるはずです!」

ちひろ「貴方以外にCGプロのプロデューサーは務まらないんですよ!!」


ちひろ「貴方だって知っているでしょう!? 」

ちひろ「貴方の負担を減らそうと思って、何人も新しいプロデューサーを雇った!」

ちひろ「でもみんな仕事が辛いだとか、荷が重いとか言ってすぐに辞めていった!」

P「それは……」

ちひろ「そんなことが何回も続いたら、誰だって貴方のことが心配になります!不安に思います!」

ちひろ「でも貴方は辞めなかった! それどころか、どんどんスカウトして!いつでも笑顔で仕事していた!」


ちひろ「アイドル達は貴方のことを信頼しています! 依存していると言える子だっています!」

ちひろ「その子達が、貴方がいなくなったらどうなると思います?」

P「……」

ちひろ「仕事を放り投げて、ハリウッドに追いかけにいく子だっているかもしれません。塞ぎ混んで、活動を停止しちゃう子だっているでしょう」

ちひろ「そうなった時、もうこのプロダクションはどうにもできない! 最悪潰れてしまうかもしれない!」

ちひろ「貴方一人のせいで!!」

ちひろ「はあ……はあっ……」

P「ちひろさん……」

ちひろ「なんですかっ!」

P「もっとアイドルのこと信用してください」


P「アイドル達に、そんなことする子はいません」

ちひろ「貴方はなにもわかってない! なにもわかってないくせに!」

P「わかってないのはちひろさんだ! 俺の育てたアイドルにそんな弱い子はいない!!」

ちひろ「っ!」

P「ちひろさんは誰のこと言ってるんです! 俺が直接その子に伝えます!必ずわかってくれるはずです!」

ちひろ「……」


ちひろ「……今日智絵里ちゃんがオフで寮にいます」

P「智絵里? 智絵里に伝えれば良いんですか?」

ちひろ「ええ……そこまで言うのなら行ってみてください」

ちひろ「どうなっても知りませんよ!!」

P「ええ! 智絵里はすぐわかってくれます! それでちひろさんにも許可を頂けるんですね!」

ちひろ「引き留められますよ! 絶対に!」

P「だから信用しろっての!行ってきます!」ガチャ!

バタンッ!!







ちひろ「ハア……ハア……」ヘタッ

ちひろ「私だって……私だって寂しいんですよっ……行ってほしくないんですよ?……」グッ

ちひろ「……っ……っ!……ぐすっ」


P「勢いで外にまで出てきてしまった……」

P「ちひろさん、泣かなかったなぁ~」

P「それどころか鬼みたいに怒ってたな……会社命! みたいな」

P「まぁチャンスはまだあるし、とりあえず智絵里のとこに行くかな」

P「はぁ~」トボトボ

P「智絵里か……」


P「智絵里に言うの嫌だなあ……」

P「すごい良心が痛みそうだし」

P「他の子で痛まない訳じゃないけど、智絵里は特になぁ」


――女子寮――

P「なんて考えてるうちに着いちまった……」

P「とりあえず管理人さんに挨拶に行って、来客用のゲート開けてもらおう」

P「おはようございます。Pですがー」ピー

「おはようP。なにか用かな」

P「少し智絵里と話すことがありまして
。オフだと思うんですが、居ますか?」


「ああおそらくいるだろう。寮を出た記録もないしな」

ガチャ ウィーン

「開けたぞ。入りなさい」

P「ありがとうございます」スッ

P「なんか様になってますね。ベテトレさん」

ベテトレ「あぁ。まさか寮の管理人を任せられるとは思わなかったが」スッ

ベテトレ「君にアイドルをさせられるよりは、充実しているよ」


P「ベテトレさんなら、充分アイドルとしてもやっていけると思うですけどね」

P「それより、わざわざ出てきて下さって、ありがとうございます」

ベテトレ「あぁ別に気にしなくていいよ」

ベテトレ「今日はレッスン担当じゃないし
、部屋に籠りっぱなしも疲れるからな」コキコキ

P「大変ですね」クスッ

P「というか」


ベテトレ「ん?」

P「普段着でもその柄なんですね。グレーで緑のラインが入ったやつ」

ベテトレ「い、いいだろう別に……キミが来るとは思わなかったし……」

P「そうですね。急にお邪魔して申し訳ないです」

ベテトレ「んん! 次に来るときはしっかりと連絡するように!」

P「はい」クスッ

P「それよりベテトレさん。ちょっと伝えたいことがありまして……」


ベテトレ「緒方にじゃなくて、私にか?」

P「はい。ちょうどいいというか、ベテトレさんにも言っておきたかったことなので」

ベテトレ「ああいいよ。なんだ?」


P「実は俺、ハリウッドに研修に行くことになりました」











ベテトレ「ほう」

P「え?」ポカーン

ベテトレ「期間は?」

P「え、えーと一年間くらいですかね……」

ベテトレ「一年間か! まあまあ鍛えられるんじゃないか? いい機会だ」ウンウン

ベテトレ「楽しんでこいよ」ポンッ


P「なっえっ? それだけですか?」アセ

ベテトレ「ああ。君にとって素晴らしい経験になるだろうから、是非行ってくるといい」

P「は、はい……」

ベテトレ「フフ……行かないでと泣いて引き留めたほうがよかったか?」

P「そ、そういう訳じゃないですけど」

ベテトレ「生憎、そういうのは苦手でな。私だって勿論寂しいさ」

ベテトレ「でも、君の為になることを、私が止めるわけにもいかないだろう?」


ベテトレ「人生には、避けては通れないことがあるものだよ。それに……」

ベテトレ「君には今よりもっと素晴らしいプロデューサーになってほしいからな」

P「ベテトレさん……」ジーン

ベテトレ「CGプロのことは私達に任せて、心置きなく行ってきなさい」

ベテトレ「さあ、もう行った。そのこと緒方にも伝えるんだろう?」

ベテトレ「彼女は君に少し依存しているところがあるが、まあ必ずわかってくれるさ」

P「はいっ! なんか俺、自信が湧いてきました! ありがとうございました!」


P「それじゃあまた!」スッ

ベテトレ「ああまたな」スッ

タッタッタ……

ベテトレ「……ふぅ」

ベテトレ「……っ私もまだまだ若いな……っ…別れなんて、何回も経験してるはずなのに」ポロ

ベテトレ「頑張れよ、P」ズズッ


P「ベテトレさんには激励の言葉を頂いてしまった……」

P「今さら嘘でした。なんて言えないような……」

P「ハリウッド研修……か」

P「……よしっ待ってろ智絵里! 」タッタッタ


――――

P「ピンポーン!」ピンポーン

「はーい」パタパタ

智絵里「どちらさまですか?」ガチャ

P「よう」ヌッ

智絵里「わっ! Pさん! どうしたんですか? 今日はわたし、オフですよね?もしかして、なにか予定がありましたか?」

P「どうどう落ち着け智絵里」ポン

智絵里「は、はいっ……」

P「ちょっと話があってきたんだ。重要な話。悪いけど、家にあげてもらえるか?」

智絵里「はい……お部屋片付けるんで、ちょっと待っててもらってもいいですか……?」

P「ああ。急で悪いな」

智絵里「いえ……だいじょうぶです」


智絵里「おまたせしました……」

P「お邪魔します」スッ

智絵里「はいっ」

P「おいしょっ」スワル

智絵里「いま、お飲み物もってきますね」タッ

P「なにからなにまで申し訳ないな」

智絵里「いえっわたしもPさんが来てくれて、うれしいですから……」


智絵里「どうぞ……お茶でよかったですか?」

P「うん。ありがとう」ゴク

P「うまいっ 」テレー

智絵里「ふふっ……」

智絵里「Pさんが来てくれるの、いつぶりですかね?」

P「うーん……去年の夏にライブイベントの打合せで来たきりかなぁ……」

P「でも前と変わらず、可愛い部屋だな」

智絵里「そっそんな……ありがとうございます……」テレ


P「で、だ。話ってのは……」

智絵里「あのっ」

P「ん?」

智絵里「前に京都で撮影があったとき、一緒に散策しましたよねっ」

P「あーあのときな! 智絵里が目を輝かせて観光してるから、俺もすごく楽しかったよ」

智絵里「は、はずかしいです……」

智絵里「でも、とっても楽しかったので、また行きたいですね……」

P「そうだな。機会があったらまた行こうな」


P「そう、伝えなきゃいけないことが」

智絵里「そういえばわたしっ」

P「」

P「ん?どうした?」

智絵里「また四葉のクローバー見つけたんです。栞にしたので、Pさんにあげますね」スッ

P「おーありがとうな。でも前にもらったやつも大事にとってあるぞ?」

智絵里「うれしいんですけど、どうせなら使ってほしいなって……Pさん本を読むときに別のやつ使ってるから……」

P「なんかもったいなくてなーそういうことなら是非使わせてもらうよ」

智絵里「はいっ……えへへ」


P「さて「あのっ」」

P「智絵里……さっきから様子が変だぞ?」

智絵里「す、すみません……」

P「いや、いいんだが……なんかあったのか? 」

智絵里「いえ……なんとなく、Pさん用件だけ話したら、すぐに帰ってしまう気がして……」

P「そりゃあ……」

智絵里「最近、Pさんにあまり会ってなかったのでいっぱい話しておきたくて……」

智絵里「お忙しいとはわかっているんですけど……」

P (可愛い」

智絵里「ふぇっ?うぅ…… 」カァ

P (いけね)


智絵里「でも、もうだいじょうぶです。用件は……?」

P「ああ、えっとだな……」

P「ハリウッドってわかるか?」

智絵里「は、はい……あの映画とかで有名なところですよね……?」

P「ああ」

P「そこに研修に行くことになったんだ。期間は一年間で、一ヶ月後に出発する予定だ」


智絵里「えっ……研修……ですか?」

P「ああ」

智絵里「……」

P「智絵里?」

智絵里「いやですっ……」フルフル

P「智絵里……」

智絵里「い……やです……っ……」グス

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