現在進行形の別れをSSっぽくしてみた (35)

「一緒に飲もうよ」
「今仕事中なんで…すいません。」

彼との出会いは、私が働いていた居酒屋。彼の友人が常連客(仮名 譲司)で、私や店長、他のスタッフとも仲良しだった。そんな友人に連れられて来店した彼。
譲司はどんちゃん騒ぎするのが好きなタイプ。
その横で淡々とお酒を飲み、ニコニコ笑っている彼。
対象的な2人に、私や他のスタッフも興味があった。

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その日、私は長らく働いたこの居酒屋を辞めることになっていた。
それを聞いた常連客である譲司が彼を連れて駆けつけてくれたのだ。

その日は土曜で店も混んでいた。
なんとか人の波が落ち着いたところで、与えられた五分休憩。
店の外でタバコを咥える私。
街をゆく人をぼーっと見つめながら
長らく働いたこの店のことを思いふける。
すると後ろから声がした。
タバコを吸いに外に出てきた彼と譲司だった。

「今日は何時まで?」
「今日は22時でおわりです。」
「飲もうぜ!最後だし!」
「いいですけど、仕事終わった後で!笑。」

この譲司という男、仕事中の私たちを捕まえては一緒に飲まそうとするのである。笑

「えー…まあいいや、智行も飲みたいよな!」

え?あぁ。と譲司の一歩後ろにいた彼が私を見てにっこり笑う。
ああ、なんて優しい笑顔なんだろう。
疲れた私の心を確かに掴んだ瞬間だった。

そして22時…

「お疲れ様です、お先に上がります。長らくお世話になりました。」

仕事が終わり、お店の人に挨拶をする。
店長や、他のスタッフに労いの言葉をいただき、少しさみしくなった。

まかないを食べ、そのまま帰ろうとしたがそうもいかなかった。
入り口のすぐそばの席に座っていた譲司と智行に捕まり、一緒に飲むことにした。

正直、その日はとても疲れていて飲む気分でもなかったが、私の最後を見送りに来たというもんだから、断るわけにもいかない。

お酒も進み、私がタバコを吸いに外に出ると、また後ろから声がした。

「疲れてる?大丈夫?」

聞きなれない声、けど振り返るとあの笑顔があった。

「あ…智行さん。」
「ごめんね、譲司がいつも騒いで(笑)」
「大丈夫ですよ、慣れましたから(笑)」

彼の笑顔に私も自然と笑みが出た。
タバコを吸っている五分間くらいだったが、私たちはお互いの事を話した。
彼は近くの大学に通う、大学院生。
故郷を離れて、もうこの地には8年暮らしているのだという

そしてタバコも吸い終わり、そろそろ戻ろうかという時だった。

「Facebook教えて?友達になろ!」

彼からのお誘いに私も快く引き受けた。
彼の携帯を使って、自分を検索し友達申請を送る。

「ありがとう、またメッセージ送るね。」

と言って、彼はまた私に微笑みかけた。

そして結局閉店時間まで飲み明かした私たち。
譲司は他のスタッフの女の子(通称 天使)にメロメロ。
それを見て笑う私たち。
疲れていたが、とても楽しい時間が流れて行った。

2日くらい経っただろうか。
私はFacebookの友達の写真やタイムランを見ていた。
しかし操作を間違え、メッセージ画面に飛んでしまった。
すると未読メッセージに見慣れない名前が。智行からだった。

-日曜02:30-
「今日はありがとう、また会おうね。」

-13:25-
「今週いつ暇かな?」

-月曜 09:30-
「おーいっ!笑」

普段メッセージを通知しないように設定しているため、全く気づかなかった彼からのメッセージ。
時計に目をやるとすでに23時をすぎていた。
時間も遅いので返そうか迷ったが、これ以上無視するのも酷だと思い、文章を打ち込む。

「ごめんなさい、普段メッセージを通知オフにしているので気付きませんでした。
今週は水曜が空いてますよ。」

ハタチを過ぎてから、友人と遊んだり、大学の研究が忙しかったりと恋愛そっちのけの生活を送って来た私。
何度か合コンというものにも参加したが、目の前のお酒と料理に夢中で二次会のカラオケなどには興味もなく参加したことがなかった。
何よりも俗に言うオタクの質があるため、三次元の人に興味がなかった。

そんな私が男性からのお誘いを受ける。
心なしか、少しソワソワした気分になった。

もし2人で会うってなったら服装はどうしようか。
化粧はどうしようか。
そんな事を考えていた矢先、メッセージの通知をオンにした携帯が部屋に鳴り響く。

「おー!返事来た!水曜か!夜なら俺も会いてるから、よかったら会わない?
ってかLINEのID教えてやー!」

メッセージを見ると、あの優しい笑顔も同時に浮かび、少しにやける私。

「はい、大丈夫ですよ。
IDは@@@です。」

なんて淡白な文章なんだろう…と送り返したメールを見てすこし後悔した。

「あー、どうしよ。考えても無駄だもう寝よう…」

その日、私は夢を見た。
今でも鮮明に覚えている。
高校時代に付き合っていた人の夢だった。
お互い制服を着て、放課後の教室で話していた夢。
なんだか懐かしくて少しほっこりした、温かい夢だった。

翌朝。
眠気なまこをこすり、LINEに新着メッセージがあることに気づく。
相手は友人、親、そして智行からだった。

友人「お疲れ!三時ごろから近くのカフェいかない?」

この友人(仮名 みか)は、私の親友だ。
丁度いい、智行のことを話そうと思い、了解。とだけメールした。

親からはいつ実家に帰ってくるの?という内容。二週間後、とだけ返事をする。

そして

「おはよう!智行だよ!これから学校だー!行ってきます!聡美ちゃん(私)も1日楽しんでね!」

大学院生ってどんな感じなんだろう。
私も1年前、大学を卒業したばっかりで、友人の何人かは院に進んだ。
Facebookを見る限り、レポートやら実験地獄らしいけど。

返事に戸惑っていると、時計は2時半ごろを指していた。

「やば、みかと会うんだった。」

携帯を閉じ、そのまま急いで顔を洗って化粧をし、家を出た。

カフェまで急ぎ足で向かうと、みかはもう座ってコーヒーを飲んでいた。

「ごめん、待った?」
「全然!いつものでしょ?」

いつものとは、私がいつもここで飲む、アイスコーヒーのこと。

「あ、うん。よろしく。」

すいませーん!と店員さんを呼び、
注文をするみか。
その間、返してなかったLINEを返すため、携帯とにらめっこする私。

「誰誰ー?珍しいね、携帯に夢中なの。」
「あ、ごめん。」
「いいよ!んで誰よ?」

ニヤニヤしながらこっちを見るみか。
何だか見通されてる様で恥ずかしかった。

「男?男でしょ!」

答えを渋っていたらスバリ言い当てるみか。

「あはは、そんなとこ。」
「なになに?!誰よ!」

興味津々なのか、身を乗り出してくるみか。

「いや…近い(笑)」

ごめんごめん、と笑い座り直すみか。
みかには相談しようと思っていたところだ、丁度いい。全てを話した。

「へぇー!よかったね!遂に!」
「んー…けどね…すぐバイバイだし」

すぐバイバイ。
この言葉がこんなに寂しいものなのかと実感したのは大学の卒業以来だ。

実はここ、日本ではないのです。
オーストラリア。私は大学を卒業した後すぐ、この国に留学にきていた。
1年の留学。そして帰国は再来週。
すでに日本に帰国することが決まっていたのだ。

「んー…けど最後くらい花咲せようよ!(笑)」
「それもありなのかな?(笑)」
「とりあえず明日だね!よしっ!服買いに行くよ!」

コーヒーも飲み終えたところで、私たちは服を買いに、街へと出かけた。

コーヒーも飲み終えたところで、私たちは服を買いに、街へと出かけた。

季節は夏が終わり秋がやってきていた。
服装なんて特に気にしたことがなかった私なので、みかに全てを託す。

巡りに巡って購入した服は、黒のサルエルパンツに近いものと、シンプルなニットだった。
なにやら、ゆるカジというらしい。

「明日、それ着て楽しんでね!また連絡する!」

みかと別れ、家路へと着く私。
途中、携帯を見ると智行からLINEがきていた。

「既読スルーかい!(笑)明日何時にする?」

あ、やば。また返事忘れてた…。
今度は急いで文章を作る。

街ゆくカップルの中には、情熱的なカップルもいれば、ただニコニコしながら歩いているカップルもいる。
普段は気にも留めないが、この日ばかりはカップルの行動がやたらと目に入ってきた。

家に着き、シャワーから上がると、
タイミングよく返事が来た。

「ごめん!今学校終わったー!じゃあちょっと遅いんだけど、9時でもいい?行きたいとこある?」

時計はすでに21時を指していた。
こんな遅くまで学校大変だな、と思う。
行きたいとこか…そういえば二駅先に夜景の綺麗なところがあったっけ。
帰国する前に行っておこう。

「遅くまでお疲れ様です。9時ですね、大丈夫ですよ。
あの、帰国する前に@@に行きたいです。私まだいったことないので。」

「おっけ!じゃあ、9時に@@駅で!」

遂に明日かぁー…大丈夫かな。
不安になりながら、今日買った服を見つめ、その日はそのまま眠ってしまった。

翌朝。
携帯に目をやると、再びLINEに新着メッセージがあった。
送り主は昨日と同じ。

みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

こうしてみると、現実とその狭間にいる気分になった。
日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。

そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

みかに決めてもらった服に袖を通す。
自分で言うのもあれだが、なんとなくいつもと雰囲気が違う。
そしていつもより丁寧に化粧をし、最後に誕生日にみかから貰った香水をかける。

あまりにも私が気合い入れてるもんだから、フラットメイトたちも、なんだなんだ?と私をからかった。

余談だがここ、オーストラリアの留学では、シェアハウスが当たり前で、私の家にも私を含め10人の様々な国籍の人間が住んでいる。

翌朝。
携帯に目をやると、再びLINEに新着メッセージがあった。
送り主は昨日と同じ。

みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

こうしてみると、現実とその狭間にいる気分になった。
日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。

そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

みかに決めてもらった服に袖を通す。
自分で言うのもあれだが、なんとなくいつもと雰囲気が違う。
そしていつもより丁寧に化粧をし、最後に誕生日にみかから貰った香水をかける。

あまりにも私が気合い入れてるもんだから、フラットメイトたちも、なんだなんだ?と私をからかった。

余談だがここ、オーストラリアの留学では、シェアハウスが当たり前で、私の家にも私を含め10人の様々な国籍の人間が住んでいる。

翌朝。
携帯に目をやると、再びLINEに新着メッセージがあった。
送り主は昨日と同じ。

みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

こうしてみると、現実とその狭間にいる気分になった。
日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。

そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

みかに決めてもらった服に袖を通す。
自分で言うのもあれだが、なんとなくいつもと雰囲気が違う。
そしていつもより丁寧に化粧をし、最後に誕生日にみかから貰った香水をかける。

あまりにも私が気合い入れてるもんだから、フラットメイトたちも、なんだなんだ?と私をからかった。

余談だがここ、オーストラリアの留学では、シェアハウスが当たり前で、私の家にも私を含め10人の様々な国籍の人間が住んでいる。

翌朝。
携帯に目をやると、再びLINEに新着メッセージがあった。
送り主は昨日と同じ。

みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

こうしてみると、現実とその狭間にいる気分になった。
日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。

そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

みかに決めてもらった服に袖を通す。
自分で言うのもあれだが、なんとなくいつもと雰囲気が違う。
そしていつもより丁寧に化粧をし、最後に誕生日にみかから貰った香水をかける。

あまりにも私が気合い入れてるもんだから、フラットメイトたちも、なんだなんだ?と私をからかった。

余談だがここ、オーストラリアの留学では、シェアハウスが当たり前で、私の家にも私を含め10人の様々な国籍の人間が住んでいる。

翌朝。
携帯に目をやると、再びLINEに新着メッセージがあった。
送り主は昨日と同じ。

みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

こうしてみると、現実とその狭間にいる気分になった。
日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。


翌朝。
携帯に目をやると、再びLINEに新着メッセージがあった。
送り主は昨日と同じ。

みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

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日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。

そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

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自分で言うのもあれだが、なんとなくいつもと雰囲気が違う。
そしていつもより丁寧に化粧をし、最後に誕生日にみかから貰った香水をかける。

あまりにも私が気合い入れてるもんだから、フラットメイトたちも、なんだなんだ?と私をからかった。

余談だがここ、オーストラリアの留学では、シェアハウスが当たり前で、私の家にも私を含め10人の様々な国籍の人間が住んでいる。

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そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

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その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
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そして夜7時。

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翌朝。
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親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

こうしてみると、現実とその狭間にいる気分になった。
日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。

そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

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翌朝。
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送り主は昨日と同じ。

みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

こうしてみると、現実とその狭間にいる気分になった。
日本への帰国まであと10日の日だった。

その日は、確か朝からとにかく落ち着かなかった気がする。
何をしててもソワソワしてしまい、
緊張のあまりか、腹痛も襲って来た。

そして夜7時。

「そろそろ準備はじめよう…。」

みかに決めてもらった服に袖を通す。
自分で言うのもあれだが、なんとなくいつもと雰囲気が違う。
そしていつもより丁寧に化粧をし、最後に誕生日にみかから貰った香水をかける。

あまりにも私が気合い入れてるもんだから、フラットメイトたちも、なんだなんだ?と私をからかった。

余談だがここ、オーストラリアの留学では、シェアハウスが当たり前で、私の家にも私を含め10人の様々な国籍の人間が住んでいる。

翌朝。
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みか「今日頑張れ!なんかあったら連絡してね!」

親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

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翌朝。
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送り主は昨日と同じ。

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親「何時の飛行機?」

智行「おはよー!」

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あまりにも私が気合い入れてるもんだから、フラットメイトたちも、なんだなんだ?と私をからかった。

余談だがここ、オーストラリアの留学では、シェアハウスが当たり前で、私の家にも私を含め10人の様々な国籍の人間が住んでいる。

うわ!
ごめんなさい、何故か同じものが
連続で投稿されてる…

そうこうしているうちに、そろそろ家を出る時間だ。
最寄の駅までの道のり、智行とLINEをする。

あと30分もすれば、直接話ができる。あの笑顔に会える。
そう思うと、足取りが軽くなり、自然と笑みがこぼれた。

9時。
先に駅に着いたのは私だった。
駅出てすぐのベンチに座り、一服。
すると智行からLINE。

「ごめん!コンビニ寄ってたから5分くらい遅れます!本当ごめんなさい!」

「いいですよ、ゆっくりきて下さい。
駅出て左側のベンチにいます。」

「本当ごめん!」

「謝らないで下さい(笑)待つの好きなんで大丈夫です!」

たかが、5分くらいの遅刻なんて、遅刻のうちに入らない。
それなのにこんなに謝ってくる…
なんて真面目な人なんだろう。
焦っているであろう、智行の顔を想像して、なんだか少し笑ってしまった。

そして5分後、改札から人がパラパラと出てくる。
その中に…

「聡美ちゃんっ!」

大きく手を振り、こちらへ駆け寄ってくる智行。

「こんばんは!」

「ごめんねー!」

「大丈夫ですよっ!行きましょう!」

夜景スポットへと歩く私たち。
緊張のせいか、少しぎこちない、
だけど嫌な感じではない、そんな空気が流れる。

「今日はなにしてたんですか?」
「休みの日はなにをしているんですか?」

聞きたいことはたくさんあったはずなのに、上手く伝えられない。
無言の壁を破ったのは智行だった。

「聡美ちゃん、本当に帰っちゃうの?」

なんとなく意外な質問だった。
彼の表情はニコッとしていたが、
どこか切なそうなそんな顔をしていた。

「そう…ですね…。」

戸惑いながらも返答をする私。

「そっかー。寂しいなあ!(笑)」
「えー?本当ですか?(笑)」

本当だよー!と焦りながら言う彼の姿をみて、笑みがこぼれた。
だってその姿がなんだか可愛らしかったから。

「さあ、着いたよ!」

彼の合図とともに、彼の顔から視点をずらす。

「わあ…素敵…。」

視点の先には、小さな港の向こう側に、宝石をちりばめた様な街の夜景が広がっていた。
その中に、私や彼の家もある。
普段、あの宝石の中に住んでいると思うと、不思議な感覚だった。

「こっち、おいで。」

手招きする彼の方へ向かい、どうぞ、と言われベンチに座る。

「聡美ちゃん、写真撮る?」
「あ!そうですね!せっかく来たから撮ろーっと!」

おもむろにiPhoneのカメラを取り出し、何枚もその風景を撮る。
チラッと横を見ると、彼も写真に夢中だった。
子供のような顔をしている彼をみて思わず、ふふっと笑ってしまった。

「え?なになに?」
「いえ、子供みたいでかわいいな、って思って(笑)」
「可愛いは嬉しくねーよ!(笑)」

あはは、と笑い合う私達。
とても温かな時間だった。

「少し、歩こうか?」

こくんと俯き、並んで歩く私達。
小さな港をぐるっと半周し、
またベンチに座り、タバコを咥える。

「聡美ちゃん、将来の夢って何?」

思いがけない質問だった。
えっとした顔で、智行を見ると、
ん?とまた微笑みかけられる。

「恥ずかしながら…教師を目指しています。」
「へえ!小学校?中学校?高校?」
「免許は中高どちらもあるので、どっちでもいいなって。なれればいいです。」
「英語?」
「はは、それが理科なんです。」
「えー!どうして留学しにきたの?」
「こっちに来るのって今しかないなって。それに、人とは違う人生を歩いてみたかったんです。」
「うん、聡美ちゃんなら大丈夫。きっといい先生になれるよ。」

この地にきた理由が、馬鹿げてると言われるかと思っていた私は、智行のその言葉がとても嬉しかった。

「どうしてそう思うんですか?」
「んー、あの居酒屋で働いてる聡美ちゃん、とってもイキイキしてたし、お客さんとも楽しそうに話すし、若い子達の面倒もみてるの分かったから。」

びっくりした。
1度しか私が働いてるのを見てないはずなのに、ここまで見てくれてたなんて思わなかった。
少し照れた私は、目の前の港に目をやる。
何隻もの船が、波に揺られ、ギーッと音を立てていた。
その音が、こんなにも心地よいのは、きっと彼のおかげだろう。

「さあ、そろそろ戻ろうか。」

時間を見るともう12時近くを回っていた。
楽しい時間はあっという間という言葉を改めて痛感した。

戻る道のり、近くには小さな遊園地がある。
とてもとても歴史のある遊園地だ。
彼はもうここに住んで長い。
一つ一つ、遊園地の歴史、この土地の歴史を話してくれた。

そして夜景が1番綺麗に見えるところまで戻ってきた。

「最後に目に焼き付けてもいい…え?」

私の言葉は彼の唇に塞がれた。
ほんの数秒の出来事だったと思う。
けれどそれは、甘く、深い、そんな時間だった。

彼の唇が離れ、彼はまたニコッと微笑む。
私もつられて微笑む。

そして何度も何度も、唇を重ねた。
途中、彼に抱きかかえられ、またキスをした。
こんなドラマのような事が自分に起こるなんて、夢にも思ってなかった。

そしてその宝石のような夜景を目に焼き付け、帰路へと着く。
さっきよりもその宝石は輝かしく思えた。

私達はここに来るまで、電車で港の向こう側からこちら側へと渡ってきた。
しかしよくみるとその橋は、歩いてでも渡れるようだ。

「もう少し、歩ける?」

これ以上ないくらい、嬉しい質問だった。
もう少しこの時間は長引きそうだ。

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