春香「ハッピーエンドは終わらないから」 (25)

――春香・自宅の自室
――06:50

春香「う~、どうしよう…リボンが決まらないよぅ…」

それもこれも…はぁ…なんであの人は夢にも出てきて私を悩ますんだろ…。

春香「…」

春香「ばーか…」

春香「ごはん…トーストでいっか…」

急いで焼いたトーストは、ほんのり甘くて、苦かった。

あーあ…なのに…なんで、ときめいちゃうのかな。

―――
――


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――765プロ事務所
――11:30

―ガチャッ、バタン

春香「おはよーございまーす…」

小鳥「おはようございます。春香ちゃん」

春香「…」キョロキョロ

小鳥「ふふっ。誰を探してるんです?」クスクス

春香「ふぇっ!?だっ、誰も探してなんか…」

―ガチャッ

P「あぁ…何でウチの事務所の会議はこう長いんだ…」ハァ...

律子「仕方がないですよ。ライブも近いんですし、社長も張り切ってるんです。私たちも頑張らないと」

P「お前はアイドルなのに、いつも会議に付き合わせて悪いな。よし律子、お前そろそろプロデューサー業務、やってみるか?」

律子「あはは…何を言ってるんですか。私にはまだまだ早いですよ。今は、まだ」ニヤッ

P「今は、ねぇ…」

小鳥「お疲れさまです、プロデューサーさん、律子さん。お茶、入ってますよ」コトン

P「ありがとうございます」

春香「おっ、おはようございます!プロデューサーさん!」

P「おう。おはよう、春香」

律子「おはよう、春香」

春香「律子さんもおはようございます!」

律子「ふふっ。春香は朝から元気ね」

P「ん?あぁ、そうだなぁ。よし春香、その元気、俺に少し分けてくれ」ナデナデ、ナデナデ、

春香「ふぇっ!?ぷっ、ぷろでゅーさーさん!?」

P「充電だ充電。うん、春香の頭は撫でやすいな」ナデナデ、ナデナデ、

春香「あわあわあわ…///」カァァァァ///

小鳥「ふふっ。春香ちゃん、顔真っ赤にしちゃって。かわいいんだから」クスクス

律子「まったく…プロデューサーはデリカシーというものが無いんですか?」ハァ...

小鳥「ふふっ。律子さん?嫉妬ですか?」クスクス

律子「…まさか」クスッ

春香「うぅ~。髪の毛、くしゃくしゃになっちゃいますよぅ…」

P「はっはっは…うん?」

春香「…?どうかしました?」キョトン

P「春香、リボンの位置変えたか?」

…えっ?

春香「えっ?プロデューサーさん?」

P「いや、なんとなく…だけど、いつものリボンの位置と違う感じがしたから」

まったく…誰のせいだと思ってるんですか!

春香「…知りません」プイッ

小鳥「ふふっ」

律子「小鳥さん?どうかしました?」

小鳥「いえいえ。初々しくて可愛いなぁって」クスクス

律子「はい?」

春香「う~///」モジモジ

私の気持ちも知らないで…。

春香「…ばか」ボソッ

P「うん?何か言ったか?」

はぁ…これなんだから。

春香「いーえ!何でもありません!」プイッ

P「?」

小鳥「ふふっ。やっぱり可愛い」クスクス

律子「?」

―――
――

――春香・自宅の自室
――22:45

春香「はぁ…今日もプロデューサーさんはプロデューサーさんだったなぁ…」

春香「…」

春香「…やっぱり、これって、」

好き。

春香「って、ことなのかな…」

春香「…」

瞳を瞑ってみる。思い浮かぶのは、あの人の声。
あの人の姿。
あの人の…あの人の…。

春香「…」グスッ

春香「ばかみたい。なんで泣いてるんだろ」

好き。

歌うことが、好き。誰かを、元気にしてあげられる。そんな歌が。

だけど、

春香「好き」

これは、きっと、初めての、好き。

今までは、漠然とした中でしか想い描けなかった、アイドルとしての私。
それを、現実にしてくれた、あの人。

プロデューサーさん。

春香「だけど」

私を、アイドルにしてくれたから、好きになったの?

歌を、ファンの皆の前で歌わせてくれるから、好きになったの?

春香「難しいなぁ…」

好きって、難しい。

だけど、

春香「…」トクン

こうやって、あの人のコトを考えてると、暖かくなる。ぎゅって、抱き締められてるみたいに。

…抱き締められたことなんて、ないけど。

春香「…ばーか」コツン

でこぴんをした、写真立ての中のプロデューサーさんは、人の気持ちも知らないで、のんきに笑ってた。

春香「…」

何だか、ちょっぴりムカつく。

もう、寝よっと…。

―――
――

――765プロ事務所
――12:35

春香「おはようございまーす」

――ガチャッ、バタン

小鳥「あら、春香ちゃん。おはようございます。」

春香「おはようございます!小鳥さん」

春香「んー」キョロキョロ

小鳥「ふふっ。愛しのプロデューサーさんなら、今は営業に出てますよ?」クスクス

春香「こっ、小鳥さん!なっ、なにを言い出すんですか!?」

小鳥「これでも、年長者ですからね。分かっちゃいます」クスクス

春香「うー…」ポスン

小鳥「あらあら。ソファにごろんしたら、プロデューサーさんに恥ずかしいところ、見られちゃいますよー?」クスクス

春香「うぅ…///」モジモジ

小鳥「…」

小鳥「ねぇ、春香ちゃん?」

春香「…なんです?」ジトッ

小鳥「うっ…そんな目で見ないでくださいよ…」

春香「…知りません」プイッ

小鳥「…真面目な話、」

春香「…?」

小鳥「春香ちゃんは、本気なんです?」

春香「えっ?」ドキッ

小鳥「本気で、好きなんですか?」

春香「あの、小鳥さん?」

小鳥「ふふっ。女と女の、ひみつのお話」クスッ

春香「…」

春香「わかりません…」

小鳥「わからない?」

春香「はい…」

小鳥「それは、どうして?」

私を、アイドルにしてくれたから。

私の歌を、認めてくれたから。

歌を、歌わせてくれるから。

だから、好きって、

勘違い、しちゃってるのかなって。

小鳥「ふふっ」クスクス

春香「笑うなんて、ひどいですよぅ…」

小鳥「だって、可笑しいんですもん」

春香「むっ…」イラッ

小鳥「ほら、それが、春香ちゃんの答え」クスクス

春香「えっ?」

春香「…」

春香「…あ」

私、自分の気持ちを笑われて、イラッとした…。

小鳥「ねっ?」ニコッ

…。

大人って、すごい。

――ガチャッ、バタン

春香「!」

P「お疲れさまでーす…。はぁ…寒かった…」

小鳥「お帰りなさい、プロデューサーさん。今、温かいコーヒー淹れますね」

春香「おっ、おはようございます!プロデューサーさん!」

P「おっ、おぅ。おはよう、春香」

小鳥「ふふっ。プロデューサーさん?」トントン

P「はい?なんです?」

小鳥「眼を醒ました女の子は、怖いですよ?」クスクス

P「…はい?」

春香(…よし!)

春香「あ、あはは。さっきまで、この前やってたドラマのお話をしてたんですよ」

P「おっ、そんないいドラマだったのか?」

春香「はい!あのですね…?」

うん。今は、これでいいかな。この気持ち、ゆっくり、ゆっくり、育てていこう。

勘違いなんかじゃない。

自覚した、好き。

今は、目の前のこの人と、笑顔でいられるこの時間で、育てていこう。

だって、ハッピーエンドは終わらないから。

この恋のヒロインは、私なんだから。

はい。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました

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