夏海「みんな……大好きだよ。だから……」ニヤッ (86)

夏海「姉ちゃんが好きだ」

夏海「兄ちゃんが好きだ」

夏海「母ちゃんが好きだ」

夏海「れんちょんが好きだ」

夏海「かず姉が好きだ」

夏海「ひか姉が好きだ」

夏海「このみちゃんが好きだ」

夏海「駄菓子屋が好きだ」

夏海「みんな……大好きだよ。だから……」ニヤッ


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ウチの家にお巡りさんが来たん。
いつものちゅーざいさんと違って、刑事さんみたいだったのん。

何が起きたかわからないウチに、ねぇねぇが「このみちゃんが死んじゃったんだよ」って教えてくれたのん。

ウチ、大人だから、死んじゃった人とはもう会えないことぐらいわかってるん。

このみちゃんとはもう会えないん…

このみちゃん…



ーーー学校

このみちゃんのお葬式をした次の日、久しぶりの学校なん。
ウチは夜中まで泣いてて、寝坊をしちゃって、ねぇねぇに送って来てもらったん。

教室に入ると、いつもの3人と兄にぃがいて、少し安心したん。

蛍「……じゃあやっぱり、このみさんは……」

小鞠「うん、包丁で刺されてたみたい……」

夏海「夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん」


れんげ「みんな、なに話してるん?」

蛍「あ……れんちゃん……、先輩、この話はれんちゃんには……」

小鞠「うん、怖がらせちゃ可哀想だもん。」

夏海「悪くないもん悪くないもん悪くないもん悪くないもん悪くないもん悪くないもん悪くないもん悪く」

れんげ「隠し事は良くないん!ちゃんとウチにも教えるん!」

蛍「でも……」

れんげ「こまちゃん観察用カメラB-2」

蛍「……ッ!?……わかったよ、れんちゃん。ショック受けないでね?いいですよね、先輩?」

小鞠「う……うん。明らかに良くない部分があった気がするけど、ほたるんがそう言うなら……」

夏海「夏海ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん悪く悪く悪くないもん悪くないもん夏海ちゃんちゃん悪く悪くないもん夏海悪くないもん夏海ちゃん悪く悪く夏海t」


蛍「実はね、このみさんは誰かに殺されたんだ」

れんげ「やっぱりそうだったんな……お巡りさんがウチの家にも来たん」

小鞠「ウチの家にも来たよ。夏海なんか怖がっちゃって一歩も部屋から出ようとしなくって……」

夏海「ナツミチャンハワルクナイ……ワルクナイ……」

蛍「包丁で胸を刺されてたって……現場は血だらけで……しかも」

小鞠「その辺にしとこうよほたるん。これ以上はれんげが……」

れんげ「……………」

想像すると、怖くて仕方なかったのん。いつもねぇねぇと見るドラマとかでは何も思わないのに……

身近な人がそんな目にあったかと思うと、震えが止まらなかったん。


結局、その後はみんなほとんど話さないで放課後になったのん。
校門辺りで、沈黙に耐えられなくなったかのように、こまちゃんが口を開いたのん。

小鞠「ね……ねぇ!駄菓子屋いかない?私小腹空いちゃったよ!」

蛍「い……いいですね!久しぶりに駄菓子屋さんにも会いたいですし!」

れんげ「駄菓子屋!会いたいのん!」

夏海「ウチは……行かない。疲れちゃったよ……」

小鞠「えー!夏海も来なよ!奢ったげるから!」

夏海「行かないって言ってんじゃん!!!!!」ダッ

蛍「な、夏海先輩!!!」


ーーー駄菓子屋

結局、なっつんは先に帰っちゃったのん。
このみちゃんが死んじゃったのが本当にショックだったのんな……

れんげ「駄菓子屋ー!にゃんぱすー!」

………………

蛍「返事ありませんね……」

小鞠「寝てるのかな……?奥入っちゃおうよ。」

蛍「い……いいんですか?勝手に」

れんげ「大丈夫なのん!ウチはいつもあそこでグレートマン見てるのん!」

蛍「お、おじゃましまーす……」

ほたるんが襖を開ける直前、ウチは嫌な何かを感じたのん。

当たって欲しくなかったのん……

蛍「すいません……勝手に上がっちゃっ……てッーーーーー!?」

小鞠「嫌ァァァァァァァァァァ!!!」

れんげ「駄菓子……屋……?」

そこにあったのは、食べかけの饅頭を片手に、口から泡をふいて倒れてる駄菓子屋の姿だったのん……


れんげ「駄菓子屋!!!駄菓子屋!!!起きるのん!!!!!」

蛍「おかしい……おかしいですよ、こんなのっ!!!」

小鞠「駄菓子屋まで……どうしよう!とにかく大人に知らせなきゃ!」

蛍「そうだっ……電話!駄菓子屋さんの電話で警察に!」ピッピッピ

ガチャガチャッガチャガチャ

蛍「何でッ!?通じない!!!」

れんげ「帰ってねぇねぇに教えるん!」

小鞠「そうだね……大人に知らせるっていうのもそうだけど、各自の安全を考えても、早く家に帰った方がいいかも……」

蛍「そうですね……私もママとパパに会いたいです。」

れんげ「駄菓子屋……ごめんなのん……、すぐにこんな床じゃなくて、ちゃんとしたところに寝かせてあげるのんな」

蛍「れんちゃん……」

結局、ウチ達は急いで自分の家に帰って、大人を連れて学校に集合することにしたん。


ーーー越谷家

小鞠「ただいま!夏海!お母さん!駄菓子屋が!」

夏海「ね"え"ぢゃあ"あ"ん"!!!」

小鞠「夏海!?どうしたの!?血だらけじゃん!」

夏海「母ちゃんが……母ちゃんが!」

小鞠「お母さんがどうしたの……、まさかッ!?」

雪子「」

小鞠「お母さん!?お母さん!」

夏海「夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん夏海ちゃん悪くないもん」

小鞠「落ち着かなきゃ……私お姉ちゃんだもん……大人だもん」

小鞠「夏海、学校に行くよ!そこに蛍やれんちゃん、一姉もいるから!」

夏海「嫌……嫌ァァァ!夏海ちゃん悪くないもん……嫌ァァァァァァァァァァ!」ダッ

小鞠「夏海!!!」

ーーー 一条家

ガチャ!

蛍「ママ!パパ!大変なの!駄菓子屋さんが……!駄菓子屋さんが!」

…………………

蛍「ママ……?パパ……?いるんでしょ?返事してよ……」

ガチャッ

蛍「リビングにはいない……自分の部屋……?」

ガチャッ

蛍「いない……トイレかな……?」

ガチャッ

蛍「いない……。わかった……私の部屋にいるんだ!きっと……きっとそうだよ」

ガチャッ

蛍「いない……、後は……」

蛍「お風呂……なんているわけないよね。出掛けてるのかな?こんな時に……」

ガチャッ



蛍「……いるわけないよね。やっぱり出かけてるんだ」

蛍「あれ?お風呂の蓋がちゃんと閉まってないや……もう、ママったら……」

べちゃっ……

蛍「何……これ……赤い……まるで血みたい……な……」

ガラッ!!!

蛍「嘘……」

蛍母「」

蛍父「」

蛍「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


ーーー宮内家

れんげ「ただいまなのん……ねぇねぇ」

……………

れんげ「ねぇねぇ?」

……………

れんげ「まさかねぇねぇまで!ねぇねぇ!ねぇねぇ!!!」

バタンッ!

一穂「ん?……なんだいれんちょん…
…もう少し眠らせてよ?……」ゴロン

れんげ「ねぇねぇ!良かったのん……」ダキッ

一穂「どうした?れんちょん。珍しく甘えて」

れんげ「大変なのん!駄菓子屋が……駄菓子屋が……」

一穂「何だって……楓が……?」

ーーー学校

一穂「れんちょん、本当に約束したんかい?だーれも来ないけど……」

れんげ「約束したん!絶対……絶対皆来るん!」

一穂「もう外も暗くなって来たしねー、何かあったんじゃないといいけど」

れんげ「縁起でもないこと言わないで欲しいん……」

一穂「……ごめんねぇー、みんな大丈夫だよ。きっと」

ガラッ

小鞠「れん……げ、かず……ねぇ」

れんげ「こまちゃん!」

一穂「大丈夫かー、小鞠。何があった?」

小鞠「お母さんが……お母さんが!」

一穂「雪子さんが……辛かったねぇー」ダキッ

小鞠「ひぐっ……でも私……大人だから泣かないよ」

一穂「いいんだよー、こまちゃんは頑張った。頑張ったよ」ナデナデ


小鞠「ふ、ふぇ……えぇぇぇぇんお母さぁぁんお母さぁぁぁぁん!!!」

一穂「よしよし……、夏海はどうしたんだい?」

小鞠「夏海は……混乱して、どっか行っちゃった……探したけど……いなくて……」

一穂「……なるほどねぇ」ナデナデ

ガラッ

蛍「皆さん……いますか?」

れんげ「ほたるん!?それどうしたのん!?」

一穂「血だらけじゃない、どうしたんだい?」

蛍「パパとママが……」

一穂「……蛍も、辛かったねぇ」

小鞠「蛍……」ダキッ

蛍「先輩……」

小鞠「辛い時は泣いていいんだよ?私も一姉にこうしてもらったから……」

蛍「ぐへへ……じゃなくて……うぇぇぇぇぇん!」

小鞠「よしよし」


一穂「とりあえず、大勢で固まってた方が安全だからね……今日はここで夜を過ごそっか」

蛍「警察にはもう連絡したんですか?」

一穂「さっきしたよー、ただ駐在さんに連絡が通じないらしくて、街の方から来るから明日の朝になるみたい」

小鞠「そんなの待ってられないよ!車で早く逃げよう!」

一穂「それが、ガソリンがほとんどなくて、ここにたどり着いたのもギリギリだったんだよねー。それに夏海も探さないといけないしね」

れんげ「ねぇねぇ、なっつん探しにいっちゃうん?」

一穂「心配だからねー、校舎の入り口と教室には鍵もかけられるし食べ物もあるから大丈夫だよー」

小鞠「でも窓とか割って入って来たら!」

一穂「うーん、さすがに3人もいるからそんなことしないと思うけど……そうだ、これ預けとくよ」

蛍「携帯……?」

一穂「新しいのに替えたばっかりでねー、こっちの古いのもまだ使えるから何かあったらこれでウチにかけなー、そこまで遠くにはいかないから、駆けつけるからねー」

蛍「わかりました」

一穂「うん、蛍なら都会育ちだから携帯の使い方もわかるだろうしねー、頼んだよ」

蛍「はい!」

一穂「じゃあ、行って来るからねー、一時間ぐらいしたら一回様子見に来るからー」

れんげ「ねぇねぇ!」

一穂「ん?」

れんげ「気をつけるのんな!」ウルウル

一穂「わかってるよー、れんちょんを置いては死ねないよ」

ねぇねぇはそう言うとなっつんを探しに行っちゃったのん。

ーーー数分後

蛍「私、ちょっとトイレ行って来ますね……」

小鞠「え、でも1人じゃ危ないよ!」

蛍「大丈夫ですよ、先生が鍵かけてくれましたし!すぐ戻ってきます!」

ガラッ

小鞠「本当に大丈夫かな……」

れんげ「大丈夫なん!ほたるんなら何かあっても怪力でなんとかしちゃうん!」

小鞠「そうだといいけど……」

ガコン!!! ブチッ!!!

小鞠「うわぁ!?」

れんげ「停電なのん!?」

小鞠「どうしよう……何か灯り!」

れんげ「教卓の下に懐中電灯があったはずなん!」ゴソゴソ

小鞠「ほんと?暗くて怖いよ……」

れんげ「あったのん!」カチッ

小鞠「少しはマシになったけど……やっぱり怖いよっ」

れんげ「いざとなったらウチがこまちゃんを守るん!」

小鞠「うぅ……ありがと……ってそれじゃダメだっ!?私お姉さんなのに!」

れんげ「ほたるん大丈夫なのんか……」

小鞠「あ!そうだ蛍!」

れんげ「様子見に行くん!」

小鞠「そうだね……怖いけど蛍が心配だもん」

そうしてウチとこまちゃんは懐中電灯を持って、ほたるんのいるトイレに行くことにしたん。

小鞠「蛍ー?」

れんげ「こっちにもいないのん」

小鞠「すれ違いになっちゃったのかな?」

れんげ「教室に行くにはこの廊下しかないのん」

小鞠「だよね……じゃあまさか……」

キャーーーーーーー!!!

れんげ「ほたるんの声なのん!」

小鞠「昇降口の方からだ!行こう!」

ーーー昇降口

小鞠「蛍!大丈夫!?」

蛍「先生が……先生がッ!」

一穂「」

れんげ「ねぇねぇ!」

蛍「停電で……周りが見えなくなっちゃって……何時の間にかこっちまで来てて……そしたら扉の前に……先生が倒れてて!」

小鞠「この近くに落ちてる警棒で殴られたんだ……でもなんで警棒なんて」

れんげ「ねぇねぇ!しっかりするん!しっかりするんよ!」

一穂「」

れんげ「ねぇねぇ……」ジワッ

蛍「……私、もしかしたらこの事件の犯人がわかったかもしれないです、でもあの人がそんなこと!」

小鞠「誰!?誰なの蛍!」


蛍「推理も何もないんです……ただ消去法なんですけど、今残っているのは私に先輩、れんちゃんの3人に……」

れんげ「後、なっつんなのん」

蛍「そうなんです。行方不明の夏海先輩なんです……!」

小鞠「夏海がそんなこと!」

蛍「私だって信じたくないですよ!でも!他にないじゃないですか!」

れんげ「そういえばなっつん、最初にこのみちゃんが亡くなった時から様子が変だったのん。ずっと『夏海ちゃん悪くないもん』っていってたん……」

蛍「それに、駄菓子屋さんを殺せたのも先に帰るふりして先回りしてたのかもしれないし……その後、私のパパとママを殺して、自分の家に帰って、自分の母親を殺して被害者のふりをして小鞠先輩が帰って来るのを待ってたってことにしたら……辻褄があいませんか?」

小鞠「……確かに、でもっ!」

蛍「もしそうだとしたら、先手を打つしかありません」

小鞠「先手って……」

蛍「テレビか何かで見たことあります、守ってる側は必ず後手に回ることになるだからどんどん追い詰められるって……だから……」

れんげ「まさか……ほたるん!?」



蛍「殺しに行きましょう、夏海先輩を」




れんげ 小鞠 「!?」


れんげ「何言ってるのんほたるん!なっつんを……友達を殺すなんてどうかしてるん!」

蛍「そのどうかしてることを先にやって来たのは誰?」

れんげ「それは……」

蛍「れんちゃんはいいよね、先生が死んでも東京にひかりさんがいて。一段落ついたらそっち行くんでしょ?」

れんげ「そんな!一姉が死んでも大丈夫みたいなこと言わないで欲しいん!」

蛍「だってそうでしょ!!!私はママとパパ、両方死んじゃったんだよ!?どこにも!私の帰る場所はないんだよ!?」

小鞠「蛍!落ち着いて!」

蛍「先輩は」

小鞠「え……?」

蛍「先輩は反対なんですか?夏海先輩を殺すこと」

小鞠「それは……」

れんげ「反対なんな!ね!こまちゃん!」

小鞠「私と夏海は姉妹だもん……切ってもきれない関係……」

れんげ「そうなん!だから!」

小鞠「でも…ううん、だからこそやっぱり許せない。お母さんにこのみちゃんに一姉、駄菓子屋に蛍のお母さんとお父さんを殺しておいて平気でいられるなんて、そっちの方が間違ってるよ!」

蛍「先輩!」

れんげ「こまちゃん!?」

小鞠「だから私は……夏海を……殺す」

間違ってるん……こんなの間違ってるん……夢、夢に決まってるん!


蛍「先輩、夏海先輩がよく行きそうな場所ってわかりませんか?」

小鞠「私はよく街に行くけど……夏海は……、あ!」

蛍「思い当たる場所があるんですか!?」

小鞠「昔から、よくお母さんに叱られたりすると行ってた、秘密基地があるんだ!」

蛍「きっとそこです!行きましょう!」

小鞠「でも……何か持ってなくて大丈夫なのかな?」

蛍「え?」

小鞠「だって夏海は、包丁とか警棒とかでみんなを殺したんでしょ?だったら私達も何か持ってないと……」

蛍「そうですね!さすがです先輩!」

小鞠「えっへん、大人だからね!」

蛍「じゃあ野球の時に使うバットとか持って行きましょうか」

小鞠「あ、後確か、校舎裏に稲刈り用の鎌とか置いてあったと思うよ!」

蛍「じゃあそれも持って行きましょう!後……」

小鞠「後?」

蛍「えへへ…いいこと思いついちゃいました」



ーーー校庭・一穂の車の前


小鞠「車?まさかそれで轢くとか?」

蛍「違います。ちょっとこれ持っててくれますか?」

小鞠「水道のホースと空き瓶?こんなのどうするの?」

蛍「まず私が車の下に潜ります」ゴソゴソ

小鞠「ええっ!?」

蛍「ガソリンタンクの上の金具を外して……給油用のホースを取り出します。先輩!ホースこっちに渡して下さい!」

小鞠「う……うん」

蛍「そしてこのタンクから出てるホースと水道のホースを繋げます。そしたら車から出て……」ゴソゴソ

小鞠「わっ!ガソリンが流れて来た!?危ないよ!」

蛍「それでいいんです!そのガソリンを空き瓶の中に入れます。そしたらこの私の靴下でビンに蓋をすれば……」

小鞠「それって!」

蛍「そうです!火炎瓶の完成です!」

小鞠「すごいよ蛍!これで安心だね!」

蛍「えへへ?、前にテレビか何かで見たんですよ!(先輩に褒められたぁ?)」

小鞠「じゃあ…」

蛍「はい、行きましょうか。夏海先輩を殺しに」

狂ってるん……
確かにウチもねぇねぇを殺したなっつんは憎いん……でもこんなやり方……間違ってるん!

ーーー越谷姉妹の秘密基地

小鞠「ここだよ、蛍」

蛍「梯子を登らないと入れないんですね……これじゃ待ち構えられちゃう!」

夏海「来るなァァァ!これ以上来たら殺す!全員殺すからな!!!」

れんげ「な……なっつんの声がするん、怖いのん……」

蛍「大丈夫だからね、れんちゃん。私が必ず夏海先輩を殺すから」

れんげ「でも……殺すのは可哀想なん」

蛍「まだ言ってるの?れんちゃん。じゃあその鎌は持ってない方がいいね私が預かっとくよ」

れんげ「そうするん……」


夏海「あいつらを殺して何が悪い!いつもいつもウチをバカにして!お前らもそうだ!」

小鞠「夏海……そんな風に思ってたなんて」

蛍「とはいえ、これじゃ近づけませんね。……そうだ!」

小鞠「どうするの蛍?」

蛍「さっき作った火炎瓶を使いましょう。私達が梯子からしか上がれないってことは夏海先輩も梯子からしか降りられません……それなら火炎瓶で確実に殺せます!」

小鞠「蛍……頑張って!」

蛍「今まで殺して来た人達全員の苦しみを……テメェも味わえええええええ!!!」ビュンッ

れんげ「ほたるん…口調が変わってるん…」

パリーン!

ボォォォォォオオオ

夏海「うわァァァァァ!熱い!熱いよォオオオオ!助けて!姉ちゃん!母ちゃん!兄ちゃん!」

蛍「今更……」

小鞠「夏海……」

蛍「今更……遅すぎますよ、先輩」



火が収まって、焦げ臭い臭いだけが秘密基地に残ったのん

小鞠「やったね!蛍!夏海を!夏海を殺したよ!これでやっと!」

蛍「はははっ……そうです……やっと……やっと……」








蛍「邪魔者が消えましたね」










小鞠「えッーーー!?」

蛍「邪魔だよ、れんちゃん」ビュンッ

れんげ「!?」ドシャッ

れんげ「危ないのん!!!なんで鎌を振り回すん!ほたるん!あと少しで当たるとこだったん!」

蛍「あ?何で当たんねぇんだよ」

小鞠「ほた……る?」

蛍「大丈夫ですよ、先輩は怖がらなくて!先輩には何もしませんから!こいつ殺したら一緒に東京で暮らしましょう!そうしましょう!」

小鞠「何言ってるの……?れんげは何もしてないじゃん!なのになんで!」

蛍「え?そりゃあ何もしてないですよ?このみも駄菓子屋もママとパパも先輩のお母さんもも先生も夏海も、何もしてませんもん」

小鞠「どういうこと…?」


蛍「私、先輩と二人で暮らすのが夢なん
です」

れんげ「それがどうしたのん……」

蛍「あ?テメエは黙ってろよ。それがどうしたじゃねえよ、そのまんまだよ、だから邪魔なテメエ等を殺すっつってんだ。先輩以外全員……な」

れんげ「く……狂ってるん!」

小鞠「じゃあ……みんなを殺したのは、夏海じゃなくて蛍だったの?」

蛍「はい、そうですよ!」

小鞠「嫌だよ!こんな蛍と一緒にいたくないよ!」

蛍「もー……照れないで下さいよ先輩!待ってて下さいね!すぐ終わらせますから!」

れんげ「ほたるん……やめるん!考え直すん!」

蛍「はー?考え直す?いやいやねーから、テメぇが死ぬのは確定事項なの。DEADorDIE,OK?」

小鞠「やめ…て…やめ…て…蛍…」

蛍「じゃあ、れんちゃん!天国でみんなと仲良くにゃんぱすしてね!」

ドゴォッ!!!

れんげ「ぇ……ぁ………」


蛍「痛いィィィィィ!クソがァァァ!」

れんげ「な……何が起きたのん?」

???「おーい、れんちょん大丈夫か?」

小鞠「な……」


小鞠「夏海!!!」

れんげ「なっつん!!!」

蛍「何で……夏海先輩はっ!さっき……私が作った火炎瓶で焼け死んだはずじゃ……」

???「残念だったな、アレはうちの商品のマイクとスピーカーが繋がれた、ただのノートパソコンだよ」



れんげ「駄菓子屋!!!」

楓「れんげ、大丈夫か?怪我はないだろうな……?」

れんげ「大丈夫なのん!そんなことより駄菓子屋が生きてて良かったん!」

夏海「おいおーい、れんちょん。ウチの時と反応の差がないかーい」


蛍「何で!お前も私の毒入り饅頭を食べて死んだはずじゃ…」

楓「このみが死んだばっかりだってのに満面の笑顔で『おすそ分けです!』とか言って立派な饅頭持って来られて怪しまねぇわけねぇだろうが。
たまたま仕入れてた器具で成分を調べたら…ビンゴ、一口食べれば即死レベルの毒が入ってやがった。
そしたらちょうど良く、お前がれんげと小鞠を連れて店に来たから、饅頭を半分ちぎって捨てて、いかにも饅頭を食べて死んだふりをさせてもらったのさ。」

蛍「騙しましたね……」

楓「先に騙したのはお前だろ?」



れんげ「さすがなのん!駄菓子屋!」

楓「いや、たいしたことしてねぇって///」

夏海「いやいや!さすがだよ駄菓子屋!困った時は駄菓子屋が何か持ってたことにすれば大体解決するもんね!」

楓「夏海、お前は黙ってろ」

蛍「クソッ……通りで梯子の上から顔も出さなかったわけですね」

楓「そりゃそうだ。顔も何も動けねえんだからな」


蛍「まぁいいです……残り1人の予定が2人に増えただけですからね、ここで全員殺させてもらいます」

楓「おっと、それだけじゃないぞ。お前、雪子さんのことも包丁で刺し殺しただろ」

蛍「まさか……」

楓「その、まさかだ。思わなかったか?いくら冬っていったって家の中なのに厚着しすぎだって」

蛍「ちくしょぉおおおおおおお!」

楓「あれも、防刃チョッキと血糊で偽装されてただけだよ」

小鞠「てことは、お母さんは……」

楓「ああ、生きてる。今頃家で、疲れたお前等のために料理でも作ってるだろうよ」

小鞠「よ……良かったぁ」


楓「雪子さんに事情を話した時、このみが死んだショックでノイローゼになってる夏海と会ってな、そんで事情を話して慰めたりタニシを食わせようとしたら立ち直ってくれて、この作戦に協力してもらったんだ」

蛍「で、でも先生は……宮内一穂は死んだ!!!ざまぁないね、れんちゃん!」

れんげ「……」

楓「確かに、先輩が襲われるのは防げなかった。ずっと携帯にかけてたんだが繋がらなくてな」

蛍「そりゃそうですよ!あの人の昔の携帯は私が持ってたんですから!」

楓「あぁ、だけどな。お前、先輩をどうやって殺した?」

蛍「警棒で後頭部をゴツンとやってやりましたよ!」

楓「あぁ……良かった。先輩生きてるわそれ」

蛍「は!?」


楓「お前な……あの人、誰だと思ってんだよ。警棒程度で死ぬわけねぇだろ。チェーンソーでギリギリやれるかどうかぐらいだ」

蛍「でも……殴ったら無様に前のめりに倒れましたよ!」

楓「血、出てたか?」

蛍「それは……」

楓「緊張して疲れてたんだろうなー、あの人24時間中20時間は睡眠取らないとダメな人だし、気絶ついでに寝たんだろ」

蛍「じゃあ……私が殺せたのは!」

楓「最初のこのみとお前自身の両親だけだ」

蛍「くそっ!何でっ!全部順調にいってたのに!」

楓「そう思ってたのはお前だけだよ」


蛍「今からでも全員……全員殺してやる!!!そして先輩とっ!!!」

小鞠「ひぃっ……」

夏海「大丈夫だよ、姉ちゃん。ウチが守ったげるから」

小鞠「夏海……疑ってごめんね。しかも私……夏海を殺そうとしてた」

夏海「……許さない」

小鞠「ッ!?そうだよね……最低だよね、こんなお姉ちゃん」

夏海「うまい棒10本」

小鞠「え?」

夏海「奢ってね、全部たこやき味しか認めないから!」

小鞠「夏海…///」


蛍「なぁに、私の先輩とイチャイチャしてんだよ不人気野郎が!偉そうにしたって所詮丸腰だ!死ねェエエエ」ブォンッ

れんげ「なっつん危ないん!ほたるんはバットなん!」


ドギュゥゥゥン

カラン…カラン…カラン


れんげ「誰かが…ほたるんのバットを撃ったん?」



楓「ナーイス、狙撃だ卓」



卓「………」グッ!







蛍「くそっ!なにか……なにか武器は!」

楓「夏海、濡れ衣を着せられたんだ。決着、つけて来い」

夏海「よーし、夏海ちゃん張り切っちゃうよ!」

蛍「ーーーッ!?私だってやりたくなかったんです!命令されて!」

夏海「誰に?」

蛍「え……その……あの……自分の欲望?てへっ」

れんげ「こいつもうダメなのん」


夏海「ウチは……」

夏海「姉ちゃんが好きだ」

夏海「兄ちゃんが好きだ」

夏海「母ちゃんが好きだ」

夏海「れんちょんが好きだ」

夏海「かず姉が好きだ」

夏海「ひか姉が好きだ」

夏海「このみちゃんが好きだ」

夏海「駄菓子屋が好きだ」

夏海「みんな……大好きだよ。だから……」ニヤッ

夏海「あんたを許す訳には……いかないっ!!!」ドゴオッ

蛍「くっそォォォォォオオオオオオオ!」

ドシャァァァ



事件は犯人のほたるんが逮捕されるという形で幕を閉じたん。

結局、ねぇねぇは駄菓子屋の言う通り、ピンピンしていて、昇降口で気持ち良さそうにイビキをかいて寝てたのん。心配して損したん。

月日がたって、みんなの記憶からもあの事件は薄れて来てるん。

取り戻された日常、でも、そこにこのみちゃんとほたるんはいないん。

このみちゃんとはもう会えないけど、
ほたるんは、少しやり方を間違えてしまっただけだとウチは思うん。


また、4人で笑いあえる日が来ることを…ウチはいつまでも願ってるん。




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