さんだい (23)

下三つで書きます

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三題確認しました

書くのは今からになります

それにしても、またもや書きづらそうなお題ですね……

コンクリート打ち放しの硬い廊下を歩く。

高らかに響く足音が癇に障るが、自分ではどうしようもない。

ここに来る前にかけられた、仲間達の言葉を思い出す。

――初めてなんだろ? しっかりやってこよ

――お前は違うってことを見せてみろ

――できないって言うなら俺が行っても良いんだぜ?

――男を見せろよ

――これ、持ってるか? 持ってないなら俺のをやるよ

手に握らされたそれを見ながら独りごちる。

「こんなの、普通持っているわけないだろ……」

溜め息なのか、緊張のあまり息が荒くなっているのか、もはや自分でもわからない。

落ち着け、大丈夫だ、と自分を鼓舞しながら廊下の角を曲がると、突き当たりにくすんだ緑色の扉が見えた。

一際大きく心臓が高鳴る。

あの扉の向こうに、彼女がいる。

僕の、最愛の恋人。

軽くノックをすると、少し時間をおいて、どうぞ、と声がかかった。

扉を開き中に入ると、ベッドに横たわる彼女が見えた。

「……やあ」

「いらっしゃい。ノックなんて良いのに」

「うん……」

「あなたらしいと言えば、あなたらしいけれど。それで、あなたがここに来たというのは、やっぱりそういうことなのかしら?」

いたずら気な視線を寄越す彼女にはなにも答えず、扉の側にあったパイプ椅子を掴むと、ベッドの近くに運び、腰をおろした。

お互いに手を伸ばせば、届く距離。

彼女をじっと見つめると、彼女もなにも言わずに僕を見つめ返してくる。

しばし見つめあったが、こういうときに根負けするのは、いつも僕の方だ。

「……そうだよ。多分、君の考えている通りだ」

僕の言葉に彼女は微笑む。

その眩しさに僕は視線をそらし、ふわふわとさまよわせたが、結局は観念した。

「これ、次来るときにって頼まれていたやつ」

上着のポケットをあさり、サンザシ飴を取り出す。

それを見たとたん彼女は左目を可愛らしくまるく見開いた。

「ねえ、あなた? 私はサンザシの花をお願いしたのだけれど?」

「花……、咲いてなかったんだ」

ぼそりと拗ねたように呟くと、彼女は堪り兼ねたように笑い出した。

憮然とした顔の僕をよそに、いつまでも笑っていた彼女は、咳き込むほどになってようやく笑い終えた。

「サンザシ飴、嬉しいわ。ありがとう」

「大笑いしたくせに。もっと手に入りやすそうなやつなら言ってくれれば今からでも――」

「ううん。良いのよ。あなたが持ってきてくれた、それが良いの」

その言葉に我ながら単純にも多少溜飲を下げて、渡そうと手を伸ばすが、彼女がそれに答える気配はない。

あっ、と気付いたがもう遅かった。

僕はよほどばつの悪そうな顔をしたのだろう、彼女は「ごめんね、今は食べられないの」と謝ってきた。

「いや、僕の方こそ……」

それから先は言葉にならない。

「見えるところに置いてくれる?」と言った後、押さえ込むかのように軽く咳き込んだ彼女。

どこに置こうか少し迷ったが、僕と彼女の間、ベッドの端に置くことにした。

咳き込みながらしばらくサンザシ飴を見つめていた彼女は、咳が収まるのを待って、おもむろに口を開いた。

「ねえ、少しお話しようか?」

僕は静かに首を横に振った。

もう時間だ。

僕はすべきことをしなければならない。

「去年、一緒に行ったスミレ畑、覚えている?」

やめてくれ、と首を振る。

「初デートの帰り道、二人で見上げた夜空は?」

それでも彼女は続ける。

「あなたが子供の頃に贈ってくれた指輪、
まだ大切にしまってあるのよ」

やめろ……。

「サンザシ飴、ありがとう。……ねえ、サンザシの花言葉、知ってる?」

「やめろ!」

椅子を蹴飛ばし、荒々しく立ち上がると、右手に持った銃を彼女の眉間に突き付けた。

ここに来る前に、仲間の一人に渡された銃だ。

「スミレ畑? もう行けないくせに!」

彼女の両足は、腱を深くえぐられている。

「星空だって見えやしない!」

彼女の右目は、えぐり抜かれ、殴られ過ぎた左目は充血してくすんでいる。

「指輪なんてあったって、嵌めることなんてできやしない!」

彼女の両手は、親指以外切り落とされている。

「サンザシの花言葉!? 知ったことか!」

彼女の口は、ほとんどの歯が砕けてしまっている。

怒りなのか、悲しみなのか、よくわからずも、その衝動に突き動かされ、叫ぶ。

「どうして仲間達を、――僕を裏切った!」

東欧のとある国の内紛に端を発した戦争は、瞬く間に世界を覆い、災禍を撒き散らした。

それはこの国でも例外ではなく、戦争が終わってからも災禍は燻り、やがて革命へと発展した。

貧困の格差に堪り兼ねた労働者達が、打倒資本主義を掲げたのだ。

僕と彼女は、親がそうであったように、プロレタリアの側に立って革命に身を投じた。

そうして、その革命成就の間際、彼女は裏切った。

「君の密告で、仲間が大勢死んだ」

「……知ってるわ」

「皆は、仲間達は理由を知りたがっている」

「理由なんて意味ないでしょう? 例えば金に目が眩んだとして、例えば家族を人質に取られていたとして、どちらにしろ私のせいで大勢が死んだことには変わりないわ」

「だからって、どうして君はそうなんだ? どうしてそんな、落ち着いているんだよ……」

「だって、こうなることはわかっていたもの」

堪えきれず、僕の目から涙がこぼれた。

彼女は、僕の顔をみて、僕に何が起こったのか察していたのだろう。

申し訳なさそうな顔で呟いた。

「ごめんなさい。私のせいで、あなたまで疑われたのね」

「そんなことはどうだって良いんだ。僕が泣くのはそんなことじゃない。……どうして、僕に話してくれなかったんだ。僕は――」

――君と一緒なら

その言葉は彼女に遮られた。

「あなたは嘘がつけないもの」

それを言ってしまったら僕がどうなるか、彼女にはわかっているのだろう。

「結果的に、あなたを裏切った形になったかもしれない。だけど、これだけは覚えていて。私はあなたが本当に好きだったわ」

その言葉を最後に彼女は目を瞑った。

携帯を取り出し電話を掛けると、ほとんど待たされずに繋がった。

「僕だ。うん、終わったよ。……いや、理由は最後まで言わなかった。うん、うん……、わかった。すぐ戻るよ」

決してベッドを振り返らないよう、歩を進めながら携帯をしまいながら、ふと彼女の言葉を思い出す。

「サンザシの……」

しまった携帯をもう一度取り出し、検索をかける。

「……花言葉」

検索結果を見て目を閉じる。

もう涙はでなかった。

「僕も、そうだったよ」

振り返ると、砕けたサンザシ飴が、ベッドを赤く彩っているのが見えた。







終わり

想像以上に本格派で驚いたわ
童貞喪失ってテレビ版攻殻2の意味とはw

お前一体何者なんだよwwww

>>16
修正前のを貼っちゃったので、こっちに補完しておいてください


携帯を取り出し電話を掛けると、ほとんど待たされずに繋がった。

「僕だ。うん、終わったよ。……いや、理由は最後まで言わなかった。うん、うん……、わかった。すぐ戻るよ」

携帯をしまい、扉へと向かう。

決してベッドを振り返らないよう、歩を進めながら、ふと彼女の言葉を思い出す。

「サンザシの……」

しまった携帯をもう一度取り出し、検索をかける。

「……花言葉」

検索結果を見て目を閉じる。

もう涙はでなかった。

「僕も、そうだったよ」

振り返ると、砕けたサンザシ飴が、ベッドを赤く彩っているのが見えた。







終わり

>>17
プロレタリアの字面的にそっちに引きずられてしまいました

>>18
たまに何か書きたくなるのですよ

先日はこれを書きました

三題
三題 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1394772460/)


では、またお題募集をしますので、見かけたらお願いします

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