P「うちって961プロより黒くないか?」 (288)

律子「確かに社長は黒井社長にも負けないくらい色は黒いですね。」

P「いや、そこじゃない。それもそうなんだが……」

律子「何が言いたいんですか?」

P「ももクロのマネージャーの昨年冬のボーナス額知っているか?」

律子「スターダストの川上さんですか?1500万でしたっけ?」

P「東スポソースだから信憑性はアレだが……」

律子「ももクロの去年の売上、スターダストという大手事務所……」

P「あのマネージメントの実績を考えればありえなくはない。」

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律子「でも川上さん取締役ですし……」

P「モー娘。の和田マネージャーも、過去に年収一億とか言われてなかったか?」

律子「よそはよそ、噂は噂ですよ。」

P「ちょっと律子、ホワイトボード見てみろ。」

律子「予定表を?」

P「びっしりだな。」

律子「ありがたいことですね。」

P「最後に全員集まったのっていつだ?」

律子「……あれ?」

P「律子、ウチの昨年度今年度の売上わかるか?」

律子「全体のはっきりした数字はちょっと……」

ガチャ

小鳥「ただいま戻りましたー。」

律子「小鳥さん、ウチの売上把握していますか?」

小鳥「え?なんですか、藪からスティックに。」

P「ルー語はいいので。」

小鳥「与えられた予算は把握していますけど、売上や利益は社長が……」

P「給料の計算は?」

小鳥「売上と給料の計算だけは社長がやっているんです。」

P「律子、先月何日休んだ?」

律子「えーと、三日ですね。」

P「給料いくらだった?」

律子「な、なななな?」

P「俺は額面で13万ほどだ。残業代などの手当てはついたことないな。」

律子「わ、私は額面で15万円ほど……手当ては私もついたことないです。」

小鳥「どうしたんです?なんの話です?」

P「律子、俺の給料知って俺と結婚したいと思えるか?」

律子「ええええええええええ!?」

小鳥「キャー!それってまさか!」

P「そうじゃない!いや、そうでもあるんだが!」

小鳥「キャー!テンパりながら認めちゃってる!」

律子「あ、ああああああああの……」

P「いや、その女の人って結婚に現実的だろ?」

律子「ふぇ?……まあ、そう……ですかね?」

P「律子は俺の仕事の内容、拘束時間とか把握しているだろ。」

律子「ええ、まあ。働き過ぎなのも知っています。」

P「その上で月給13万円。結婚してやっていけると思うか?」

律子「……う、うーん。」

P「だ、だよな……」

小鳥(た、確かに……焦ってる私でもちょっと……)

P「ウチの稼ぎ頭はやよいだよな。」

律子「そうですね、冠番組持っていますからね。」

P「先月のやよい覚えているか?」

先月の事務所

やよい「うー……今月もピンチですー……」

―――

P「いくら弟妹が多いとはいえ……」

律子「やよい一人で養えるくらい稼いでいるはずですよね……」

「「「……」」」

春香「話は聞かせてもらいました!」ババーン!

P「わっ、春香!」

春香「プロデューサーさんは765プロがブラック企業だと言いたいんですね?」

P「いや、なんかおかしくないかなー……って思ってな。」

律子「でも、確かに言われてみれば……」

P「春香、その聞きにくい事なんだが……」

春香「私たちは年齢×五千円でお給料頂いてますよ?」

P「えっ!?なんだそれ!?」

春香「社長が未成年に大金を渡すと親御さんも心配するからって……」

P「親御さんもそれで納得したのか?」

春香「だって……こういうものなのかな?って両親も……」

律子「プロデューサー、ちょっと情報を集めませんか?」

P「情報を?」

律子「私もこの業界はこういうものなんじゃないか、と思い込んでいました。」

小鳥「私も他の業界というものは知りません。」

律子「周りの同じ立場の人たちから話を聞いてみないことには、まだなんとも……」

P「そうだな……」

小鳥「私、ちょっと概算になりますけどウチの売上計算してみます。」

律子「春香、悪いけど他の事務所のアイドルに話聞いてみてもらえるかしら?」

春香「下世話すぎて聞きにくいですけど……なんとかやってみます。」

P「よし、そうしよう。出来ればその後みんなが集まっているときに話したいな。」

律子「スケジュールをなんとかしましょう。場所は……社外の方がいいですね?」

P「ああ、日程が決まり次第手配しよう。よろしく頼む。」

―――某スタジオ

春香「……と、言うわけなんだけど。どう思う?」

冬馬「あ、ありえねえ……」

北斗「ちょっとそれは……」

翔太「ドン引きだね。」

春香「え?そんなに!?」

翔太「そもそも765プロって契約どうなっているの?」

春香「正社員……扱いって契約書を見直したら書いてあったよ?」

北斗「へー、珍しいね。」

冬馬「俺らもそうだけど、この業界は殆ど個人事業主として業務請負が多いだろ。」

春香「のワの?」

北斗「仕事を事務所から斡旋してもらって、その仕事をこなす。」

翔太「そしてその報酬を事務所から受け取る形だね。」

冬馬「961プロはマネージメント料としてギャラの2/3を取ってたな……」

翔太「今の315プロダクションは折半だね。」

北斗「その代り、仕事がないと報酬もゼロってことさ。」

春香「私たち、仕事が無い時も同じ計算で貰っていたけれど……」

冬馬「そこはいいところじゃねえか?」

北斗「正社員扱いのタレントも基本給が安くて……」

翔太「仕事をしたら歩合として支払われる形がほとんどだと思うよ。」

春香「う、うーん……」

冬馬「稼いだギャラの歩合は数か月後には計算されているぞ。」

春香「ううーん……」

―――某喫茶店

まなみ「え!?765プロさんって残業代もつかないんですか!?」

P「876プロではどうだったんですか?」

まなみ「普通に基本給の他に残業代、休日出勤代、交通費、住宅手当……」

P「じゅ、住宅手当!?」

まなみ「大企業だと貰える会社は業界関係なく多いですよ?」

P「……」

まなみ「876プロは福利厚生がしっかりしてますけど……」

P「けど?」

まなみ「その分、仕事こなさないと……私みたいにクビに……」

P「あ、なんかすいませんでした……」

―――都内某所

律子「正直、今まで待遇の面は気にしてこなかったわね……」

律子「あら、ここなにかしら?」

律子「連合なんでも労働相談室……?」

律子「なにか話が聞けるかしら……?」

ガチャ

律子「すいませーん。」

相談員「はい、どうぞ。今日はどのような内容ですか?」

律子「労働相談室って……」

相談員「本日はこういった場を設けさせていただいていますが……」

相談員「普段は電話やインターネットで労働問題についての相談を受け付けております。」

相談員「労働問題に関することでしたらなんでもお話し下さい。」

律子「えーと……なにからどう話していいか……」

………………

相談員「……えーと、何と言いますか。」

相談員「芸能事務所とは言え、労働基準法に基づいて給与や休暇は与えられなければなりません。」

相談員「タレントの方々は労働基準法では個人事業主にあたる働き方が多いですが。」

相談員「貴女の会社では正社員として所属させているようですね。」

相談員「それで貴女はプロデューサーと言うことですが、管理監督者にあたるのですか?」

律子「管理監督者?」

相談員「ポイントは4つあります。」

相談員「一つは経営者と一体的な立場で重要な職務にあること。」

律子「小さい会社だからそのようなそうでないような……」

相談員「二つ目は重要な責任と権限があること。」

律子「んー……」

相談員「自らの裁量で行使できる事が少なかったり、上司の決裁を仰がなくてはならなかったり。」

律子「社長の決裁は毎度貰っているわね……」

相談員「三つ目は勤務時間も自由裁量であること。」

律子「自由裁量……?仕事こなすために出ずっぱりなだけですね……」

相談員「四つ目は賃金は相応の待遇であること。」

相談員「給与やボーナスはもちろん、役員手当なども優遇されていなければなりません。」

律子「こ、これは……」

相談員「その他にはですね……」

―――

律子「ありがとうございました。」

相談員「電話でもメールでも相談は受け付けております。いつでも連絡ください。」

ガチャ

律子「こ、この私が頭がパンクしそうになるとは……」

律子「社会保険労務士についても教えてくれたけど……」

律子「……ちょっと自分でも色々調べてみましょう。」

―――都内某会議室

P「全員集まったな、今日みんなを呼んだのは他でもない。」

亜美「兄ちゃんに真面目な顔は似合わないYO→。」

P「悪かったな……で、話は事務所の待遇についてだ。」

伊織「……」

真美「鯛グー?鯛が美味しくてグー?」

貴音「真美、強引すぎますよ……お給料や労働時間などについてです。」

律子「今まで給料計算やその他総務関係は社長がやってきたのだけれど……」

小鳥「みんなの頑張りに対して、報酬が少なすぎるんじゃないか……って。」

美希「ミキはちゃんと社長からお小遣い貰ってるよ?」

雪歩「アイドルとしてレッスンやお仕事させていただいて……」

真「年齢×五千円もお小遣い貰えているんだから……」

やよい「ウチも助かってます!」

春香「あのー……みんな、その事なんだけど……」

―――

「「「ええええええええ!?」」」

響「ギャラは事務所と半分半分!?」

千早「なんか……少しおかしいのかな?とは思ったのだけれど……」

あずさ「小さな事務所だし、仕方ないのかなー?って。」

貴音「すいません、私こういう事に疎いもので……」

真美「お姫ちんは色々疎いのが多すぎなような……」

亜美「で、兄ちゃんはいくら貰ってんの→?」

P「……額面で月13万円だ。」

真「え?プロデューサー毎日のように夜遅くまで仕事して……」

雪歩「ちょっとそれは……」

美希「ミキ、ハニーとの結婚考え直すの。」

響「……美希がドン引きしてるってよっぽどだぞ。」

あずさ「あなたは運命の人じゃなかったようですね……」

千早「あずささん……こう見えてリアリストなんですね……」

春香「プ、プロデューサーさん!だ、大丈夫ですよ!」

貴音「あなた様……捨てる神あれば拾う神ありですよ。」

やよい「プロデューサー、泣かないでください……」イイコイイコ

律子「私も似たようなものだわ……」

響「でも沖縄じゃそんなものってにぃにから聞いたことあるぞ?」

雪歩「地方と東京じゃ物価が違うから……」

響「あー……確かにこっちは色々モノが高いさー……」

P「みんな、すまなかった。俺が無知で世間知らずなばかりに……」

律子「私も労働相談という形で話を聞いて、色々調べてわかったわ……」

春香「私も好きなアイドルやれてお小遣いまで貰っているって感覚で……」

貴音「それで、あなた様はこれからどうしたいのですか?」

P「そう、それで今後どうするかを相談したくてだな……」

伊織「あっきれた!ばっかじゃないの?」

律子「伊織……」

伊織「正直私は家と事務所の関係があるから……自分だけこの額なんだと思ってた。」

伊織「他人がいくら貰っているかなんて、下衆な勘繰りは趣味じゃないしね。」

伊織「でも……あんたら全員こんな待遇だと今初めて知ったわ。」

伊織「闘争よ!労使交渉で働きに見合った報酬を勝ち取るのよ!」

美希「でこちゃん怖いの……」

律子「労働組合についてと団体交渉について、少しは調べたんだけど……」

伊織「そうね、組合を作って代表者を立てて社長と交渉ね。」

雪歩「伊織ちゃんのところはどうなっているの?」

伊織「水瀬グループは企業内労組、全国一般に加盟しない労働組合があるわ。」

律子「全国一般……私が相談に行った連合等の事ね?」

伊織「通称だけど連合、全労連、全労協のみっつが大きいところね。」

伊織「その下に産業別の全国一般組織がある感じね。」

伊織「個人事業主が入る組織もあるわ。」

伊織「有名なところでは日本音楽家ユニオンがあるわね。」

千早「水瀬さん、それ興味あるわ。」

伊織「日本音楽家ユニオンは作曲家から街のバンドマンまで参加できるわ。」

伊織「テレビの出演料の取り決め等、音楽家の地位向上を目的としているの。」

千早「ハリウッドではそれが当たり前と聞いた事があるのだけれど。」

伊織「さすがね、ハリウッドでは出演者から監督までそれぞれの組合に入っているわね。」

伊織「まあ、日本の労働組合は海外とは違う特殊な方向に進んでいるのだけれど……」

伊織「それは置いておくわね。労組は経営陣にとっても悪いだけじゃないの。」

伊織「社員一人一人と労使関係について交渉なんてとても手間だわ。」

伊織「団体交渉と言うことでまとめて交渉した方が、色々と楽なのよ。」

伊織「労働者と経営者は対等である。労働者を大事にしない企業に発展はない、お祖父様の言葉で理念よ。」

やよい「伊織ちゃんのおじいちゃん……」

P「水瀬グループ最大の功労者……」

伊織「私も……父も兄もその言葉と意味をお祖父様に叩き込まれたわ。」

響「でもなんか労働組合ってなんにでも反対活動してるだけのイメージがあるぞ?」

伊織「連合や労連といった組織は、成り立ちの経緯から民主党社民党共産党との繋がりが深いから、そういう活動が目立つわね。」

伊織「とは言え、自民党系労組と呼ばれる保守系の労働組合も昔からあるわ。」

伊織「有名なところでは全日本教職員連盟がそうね。」

伊織「連合内部でもUAゼンセンや電力総連は保守系の立場を取っているわ。」

伊織「ま、経緯があるのはわかるけど、私はそういった活動には否定的ね。」

美希「なんだか眠くなってきちゃったの……あふぅ。」

真「それにしてもずいぶんと詳しんだね、伊織は。」

伊織「水瀬の帝王学の一環よ。人を使う立場にあるものとして、労使問題はついてまわるから。」

伊織「よその問題から学び取って、予め回避するよう先手を打った方が賢いわ。」

律子「無駄に会社のエネルギーを使う必要はない……と。」

伊織「水瀬の理念はね。」

P「しかし、ブラック企業のニュースばかり目に入る世の中だが……」

貴音「伊織の家の様な会社ばかりであればいいのでしょうが……」

伊織「十人十色、経営者も人それぞれ。私には人材の使い捨ては理解できないけど。」

伊織「さて、ずいぶんと話がずれたわね。」

伊織「待遇面で……私だけなら、なにも思わなかったわ。」

伊織「嫌味のようだけど、お金に困っているわけではないし。」

伊織「アイドルをしている経緯も……わ、わがままを通している負い目もあったから。」

伊織「でも、みんなが……やよいが苦しむのは許せない。」

やよい「伊織ちゃん……私は……」

千早「同感ね。」

やよい「千早さん……」

千早「私も歌が歌えればそれでよかった。でも高槻さんの頑張りが正当な評価を為されていなかったなんて……」

P「俺の仕事に対する評価がこれだというならそれは仕方ない。」

P「だが、お前たちの仕事の評価はそんなものではないと俺は思う。」

律子「でも私たちの仕事は楽曲などのプロデュースや仕事のマネージメントで、給与の算定など労働関係の計画や方針には触れることが出来なかったの。」

小鳥「そういう権限を持っているのは765プロでは社長のみなの。」

やよい「あのー……」

雪歩「やよいちゃん……」

やよい「私……よくわからないんですけど……」

亜美「大丈夫、やよいっち!亜美にもさっぱり!」

真美「ミキミキなんてもう寝てるもんね!」

美希 zzz

春香「やよい……本当はやよいはもっとお給料貰っていいはずなんだよ。」

伊織「やよい、私に任せて。」

やよい「伊織ちゃん……」

伊織「あなたの力で得られるはずだったものを、ちゃんと貰うだけよ。」

P「で、どうすればいいんだ?」

伊織「さっき言った通り、いわゆる上部団体の政治活動等は私は否定的だわ。」

伊織「この会社の、従業員で企業内組合を結成しましょう。」

律子「少し調べてきたんだけど……」

律子「特にどこかに提出する書類というのはないのね。」

伊織「そうね、法人格を得ないならね。結成したら会社に通達して交渉に入るのだけれど……」

伊織「これも机上で学んだ知識でしか知らないわ。」

律子「まずは仲間づくり、少人数から……とあったのだけれど……」

小鳥「全員……いますね……」

伊織「一応聞くわ、ここに居る人間で私たちの待遇の改善のために一緒に立ち上がってくれる人は?」

>>1は社労士なん?

千早「高槻さんのためになるなら私はやるわ。」ノ

春香「さすがに現実を知っちゃうと……ね。」ノ

貴音「響も家族の食事代等、色々かかるのでしょう?」ノ

響「そうだな、ハム蔵やいぬ美を養わなければならないからな。」ノ

真「ボク自身はいいんだけど……プロデューサーがちょっと……」ノ

雪歩「ウチの社員の人たちの仕事量とかと比べても……」ノ

亜美「なんだかわかんないけど→」ノ

真美「みんな乗るなら乗るしかないっしょ!」ノ

あずさ「わ、私も……あの……もう少し……その……」ノ

やよい「わ、私は伊織ちゃんの事信じます!」ノ

伊織「あとは……」

>>53
しがない中小企業の弱小労組の幹部です。
一応上部団体でも役付ですが、作中の伊織と同様政治活動には否定的です。

ちなみに当社は労使協調で社長が協力的なので揉める事やブラックな事はないです。

…今の会社は。

ムクリ

美希「んーzzzミキもでこちゃんは信じてるから、別にいいの……」パタッ

真美「ま、また寝ちゃったよ……」

伊織「っていうかでこちゃん言うな!」

P「全員……か」

律子「会社に気付かれる前……以前に全員が仲間になりましたね」

伊織「結成前に会社での不満や要求をまとめるんだけど……」

千早「そんなの決まっているわ!(高槻さんへの)不当な評価よ!」

真「正直仕事については……」

春香「内容に不満とかはないんだよねー」

千早「もう少し歌の仕事を……と言う気持ちはありますが」

あずさ「律子さんやプロデューサーが、時間等考えて仕事取ってくれていますから」

P「お前たちの労働時間に関しては、業界の慣例と言うか……」

律子「クライアント側でも、若年のタレントを深夜遅くまで拘束は嫌がりますからね」

P「映画等の撮影ロケーションが絡む時ぐらいだな……」

伊織「アイドルに関しての要求は、仕事に対する正当な対価……ね」

響「あとはプロデューサー達もだぞ」

あずさ「こんなに残業して頑張っているのですから……」

雪歩「ウチでも残業代はちゃんと出してますぅ……」

伊織「プロデューサー達の会社との契約内容がわからないとなんとも言えないわ」

P「すまん、本当に無頓着で……」

律子「やりたい仕事をさせてもらえるだけで舞い上がっていたから……」

伊織「じゃ、内容の確認と正常化ね」

伊織「その前に、会社役員などの立場だと労働組合法で組合員にはなれないのだけれど……」

労組法第2条

 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の1に該当するものは、この限りではない。

役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とにてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの

団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄付及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

共済事業その他福利事業のみを目的とするもの

主として政治運動又は社会運動を目的とするもの

伊織「話を聞いている限り、人事権は持ってないと判断できると思うわ」

小鳥「会社の決算などの情報も社長のみが知りえる立場よ」

伊織「このことからプロデューサーたちの組合加盟は認められると考えられるわ」

伊織「次は規約作りね」

律子「労組法第5条第2項に定める法廷記載事項9項目を盛り込んだ規約を作る……ね」

伊織「書面作成はあとからまとめてやりましょう」

律子「役員の選出……とあるけれど」

伊織「組合員の直接無記名投票で決定されなければならないわ」

P「ちょうど全員いるが……」

小鳥「紙や筆記具ならありますよ」

春香「役員って?何人?」

亜美「生徒会役員ってかっちょいいよね→」

真美「いおりんって学校で生徒会役員もやっているんでしょ?」

律子「えーっと、役員については……」

執行委員長、副執行委員長、書記長、会計、執行委員、会計監査

伊織「これだけしか人数がいないのよ、だから…」

執行委員長1名 副執行委員長1名 書記長1名 会計監査2名

伊織「三役と会計監査でいいんじゃないかしら?」

律子「立候補をとる?」

響「ここまできたら伊織しかいないと思うぞ」

真「そうだね……」

貴音「これがりぃだあというものなのでしょうか……」

春香「伊織と律子さんとプロデューサーさんじゃダメなの?」

雪歩「あ、あの……じゃあ……」

執行委員長 水瀬伊織

副執行委員長 P

書記長 秋月律子

会計監査 音無小鳥

真「会計監査二人?」

伊織「みんなから組合費を徴収して活動するのよ、不明な使途があったら困るわ。」

律子「だから監査役は複数人……ね」

やよい「伊織ちゃん達はそんな事しないよ!」

伊織「みんなのお金を預かるとはそういう事よ」

千早「あ、あの……私がやるわ」

春香「千早ちゃんが?」

千早「私も高槻さんやみんなの為になる事がしたいの」

千早「私が今歌えるのは……みんなのおかげだもの……」

あずさ「……じゃあ決をとりましょうか?これでいい人ー?」

ノノノノノノノノノ

あずさ「役員の人以外全員挙手で決定……でいいわね?」

伊織「あとは事務所の場所ね…新堂!」

新堂「はっ、こちらに」

P「うわぁ!ビックリした!」

伊織「事情は把握したわね?」

新堂「はい、皆様の組合の事務所として水瀬の持ちビルの一室を手配しております」

P「事務所?」

伊織「組合の活動は仕事とは別、活動する場所も基本的に別よ」

新堂「水瀬の労働組合は会社が提供と言う形で、ビルの一室を使っております」

律子「会社が最低限の場所を提供するのを妨げるものではない…だっけ?」

伊織「そうね、もちろん活動する時間も勤務外が基本よ」

新堂「水瀬グループでは申し出があった場合、許可しておりますが世間ではかなり特異なのです」

伊織「さて、何度も言うけど私はやよいが……みんなが正当な評価を受けていないことを許せないの」

伊織「別に765プロを潰そうとか対決姿勢をとるつもりはないわ」

伊織「ウチのように労使協調でお互い歩み寄ることが重要だと思っている」

伊織「……御用組合がどうのって批判もあるけれどね」

伊織「それは置いておいて、あんたたちの頑張りを無駄にはさせない」

伊織「全てを……任せて頂戴」

―――

伊織「それにしても……まさか労働者側の立場で知識が役に立つなんてね」

新堂「世の中わからないものですな」

伊織「今回はお祖父様とお父様に感謝しないとね」

新堂「車はどちらに回しましょうか?」

伊織「やれる準備はしておきたいわね……」

新堂「かしこまりました」

―――数日後

律子「さて、今日はなんとか私と伊織のスケジュールを空けたわけなんだけど……」

伊織「私とあんたで組合の結成通知……公然化を行うわ」

律子「えーと……社長に組合の役員名と当面の要求事項を伝えるのね?」

伊織「そうよ、状況次第だけどある程度話が出来ればいいわね」

律子「……じゃあ、行くわよ?」

コンコン

律子「社長、よろしいですか?」

高木「うむ、入りたまえ」

律子「失礼します」

高木「水瀬君も一緒か、どうしたんだね?改まって」

伊織「高木順二郎社長、私たちはここに765プロダクション労働組合の結成を宣言するわ」

高木「……!?な、なにぃ?」

律子「執行部体制と規約はこちらの書面の通りになります」

高木「ぜ、全員だと……!?」

律子「はい」

高木「こ、この恩知らずが!私が今まで面倒を見てきたというのを仇で返すか!」

伊織「社長……なにも私たちは会社を取り潰してやろうってわけじゃないわ」

伊織「ただ、みんなに正当な報酬を支払って欲しいだけよ」

高木(……よりによって水瀬君か、あいつのことだ……娘にも色々叩き込んでいるだろう)

高木「な、なんの事かね?」

伊織「時間があるなら交渉の場についていただきたいのだけれど?」

律子「社長の予定は私どもも把握していませんので」

高木(くっ……このままだといかんな)

高木「あいにく所用があってね……○月○日に改めて場を設けようではないか」

伊織「わかったわ」

律子「○曜日……こちらも都合がつきそうです」

高木「で、では後日、すまんが私は席を外すよ」

バタン

律子「これでいいの?」

伊織「多分どっかで準備なりするでしょうね、でもいいのよ」

―――

高木「石川社長はいるかい?」

石川「あら、高木社長。直接訪ねてくるなんて珍しいわね、何の用?」

高木「実はな……」

・・・・・・

石川「あなた、いくらなんでもそれは酷すぎるわ」

高木「そ、そうだろうか?」

石川「私から言えることはなにもないわ、帰って頂戴」

高木「あ、いやその……」

バタン

高木「……こうなったら」

―――

黒井「で、私のところに来たというわけか」

高木「う、うむ。お前に相談というのはなんなんだがな……」

黒井「私からも言えることはなにもない」

高木「く、黒井!」

黒井「私は事務所を大きくするために色々な手を使った」

高木「よく知っているよ」

黒井「だからこそ会社がひっくり返されることの無い様、最低限のラインは守ってきた」

高木「またまた御冗談を」

黒井「冗談で言うか!貴様、最低時給くらいは守らんでどうする!」

高木「いやーあのー……」

黒井「ウチでも所属アイドル以外の従業員は、最低時給に残業代深夜手当等は支払っている」

高木「ぐ、ぐぬぅ……」

黒井「……所属アイドルとは業務請負契約で、マネージメント料2/3を取っているが」

黒井「その分私が泥をかぶって仕事を取って回している」

黒井「……私がこのまま労基に垂れ込めば、さすがに悪質すぎて貴様は終わりだな」

高木「そ、そんな……」

黒井「それもまた一興だが……こんな仲でも縁は縁だ、聞かなかったことにしておいてやる」

高木「……」

黒井「765プロが潰れた暁には、ウチで奴らの面倒を見てやってもいいぞ?ハーハッハッハッ!」

黒井「とは言え……」

高木「!?」

黒井「悪縁も縁、このまま貴様が潰れてもつまらん」

黒井「多少くらいならアドバイスしてやらんでもない」

高木「ほ、本当か?」

黒井「ふん、まず交渉ではだな……」

―――団体交渉当日

律子「それでは……本日は交渉の場を設けてくださり、誠にありがとうございます」

高木「あ、ああ……」

伊織「さっそくだけど本題に入らせてもらうわ、まずは……」

律子(伊織はどう切り出すのかしら?)

雇用契約の確認

労基法違反状態の賃金について

労基法違反状態の労働時間について

伊織「アイドル含む各従業員の雇用契約の確認をさせてもらうわ」

高木「ああ、それなら……全員正社員雇用だ、素晴らしいだろう?」

伊織「それでは勤怠管理はどうなっているのかしら?」

高木「そ、それはフレックスタイムだよフレックス、ハハハ」

伊織「ふーん……じゃあフレックスタイムについての労使協定はなされているのかしら?」

高木「ハハ…は?」

伊織「それに満18歳未満はフレックスタイムを適用することは出来ないわ」

律子「勤務時間を割り振り出来るだけで、月の所定労働時間を超えた分の超過分未払いは違法ですね」

伊織「とりあえず確認だから次に行くわ、給与の算出方法は?」

高木「アイドルは基本給を抑えて、仕事に応じて歩合給をだな……」

伊織「ただの一度も貰ったことがないわね」

高木「だから仕事に応じてと言っているだろうが、君ィ……」

律子「私たちはどうなっているんです?」

高木「君たちにはちゃんと基本給を払っているだろう?」

律子「東京都の最低賃金は869円(H25/10/19現在)私は最低賃金をクリアしていますが……」

伊織「月の労働時間を160時間の法定労働時間で計算した場合……ね、つまり……」

律子「プロデューサーはアウトですね」

高木「ぐ、ぐぬぬ」

伊織「それに殆ど休みなし、家にも帰れないほど残業させているわね」

高木「残業を強制した覚えはないのだがね」

伊織「している事は把握しているのね……ま、次よ」

律子「先ほどアイドルについては仕事に応じて歩合……と仰られましたが?」

高木「そうだ!仕事を頑張ったらだな……」

律子「ここ、1年以上予定表は真っ黒に埋まっておりますが?」

伊織「これで稼ぎが悪いとか言われても頭に来るわね、財務諸表を見せてくれるかしら?」

高木「……!?」

伊織「会社が経営の危機ならば仕方ないもの、私たちも無理は言わないわ」

律子「決算等経営の部分は私も小鳥さんもノータッチですから」

高木(水瀬君と律子君にごまかしは効かんか……)スッ

伊織「どれどれ?」

律子「社長……今年度上半期でギャラ収入1億、ライブ収入5億、楽曲販売収入3億……」

伊織「ま、経費等もあるけど……それよりこの役員報酬4億ってなあに?」

律子「この会社に役員って社長のみですよね?」

高木「……」ダラダラ

伊織「これだけ売上を立てて、まだ私たちは歩合を頂ける稼ぎをしてないと言うのかしら?」

律子「それどころか最低賃金すら払われてないわね」

伊織「で、自分は年収4億円……税金を払うのも大変ねえ?よくわかるわよ?」

高木「……ら、来年度から反映しようと思ってたんだ、うん!」

律子「前年度も忙しかったはずですけど……?」

伊織「今年ほどじゃないとはいえ、まあそれなりにね」

律子「前年度も見せていただけますか?」

伊織「会社の債務を返済中とか、内部留保に回して運転資金の確保なら話は別だったけど……」

律子「まさか社長ともあろうお方が自分の懐にだけ入れているなんて……ねえ?」

伊織「法人税で納めた方が税金が安いんじゃないかしら?」

高木「……で、どうしたいのだね?」

伊織「言ったでしょ、正当な対価を支払ってくれればそれでいいわ」

伊織「私はともかく、やよいがどんな思いで頑張ってきたのか……」

伊織「それを踏みにじるような真似は許せないのよ!」

律子「私たちの労働時間についても見直させていただきます」

伊織「三六協定をまず結ばないとならないわね」

時間外労働に関する労使協定。労働基準法36条に基づき、会社は法定労働時間(主な場合、1日8時間、週40時間)を超える時間外労働を命じる場合、労組などと書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが義務づけられている。違反すれば6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金。

高木「……」

伊織「その後労働基準監督署に届け出もしないといけないけれどね」

高木(さて、どうしたものか……)

高木「では、こちらからも……事業外労働におけるみなし労働時間制の導入を提案する。」


労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を

算定し難いときは、原則として、所定労働時間労働したものとみなす(第38条の2第1項)。

ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす(第1項但書)。この場合において、当該業務に関し、労使協定があるときは、その協定で定める時間を当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする(第2項)。
労使協定には以下の事項を定めるとともに、使用者は、1の時間数が法定労働時間以下である場合を除き、当該協定を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届出なければならない(第3項)。

伊織(38条……誰かに入れ知恵された……?)

律子(伊織、どうすればいいの?)

みなし労働時間制の導入のポイント

1.事業場外(会社の外)で業務に従事

2.会社の指揮監督が及ばない

3.労働時間を算定することが難しい

「このSSの」765プロの場合

1.アイドルもPも外回りが多い

2.現場の状況に左右されるので、会社の指揮監督が及ばない

3.内勤外勤含め労働時間の算定が難しい

と、仮定してお話を進めます

ちなみに携帯電話が普及した今は、会社の指揮監督が簡単に及びますので、なかなか条件を実質的に満たしている会社は無いと思われます。

現状、本来の目的と違って、残業代を抑えたい会社が制度を利用しているのが殆どです。

伊織「……わかったわ、この会社のみなし労働時間は?」

高木「一日8時間だろう?」

伊織「それはないわね、10時間ね」

伊織(本来はもっと働いているはずだけど……落としどころを間違えるわけには……)

高木(一日当たり残業代2時間分か……)

伊織「もちろん三六協定上、休日・深夜割増は払ってもらうわ」

伊織「かなり会社側に有利な条件よ、まともに残業代つけるよりね」

高木「……ふむ」

高木(現状が明るみに出れば最悪逮捕もありうる……だったな)

高木(黒井によれば、みなし労働時間制を妥結して認められれば万々歳……)

高木「では、それで妥結しよう」

律子「では決まりと言うことで、書面は次までに作成してまいります」

伊織「外回りが殆どない小鳥は除くわよ」

高木(音無君か……彼女の勤務実態なら大丈夫か……)

補足―このSSの小鳥さんは、ちょっと残業が多め程度の月残業40時間くらい

高木「よし、いいだろう」

伊織「じゃ、アイドルの給与算定の話ね。」

高木(ここ……だったな、黒井……)

伊織「みなし労働時間で算出される、最低賃金分は基本給として請求するわ」

高木「わかった、それに加えて月末締めで一か月分のギャラや印税収入の30%を歩合で払おう」

伊織(……先手を打ってきた?)

律子(30%……けれど業務請負の50%払いと違って正社員待遇月給制だから……)

伊織(モバプログリプロにも聞いて回った結果、かなりいい条件に聞こえるわね……)

高木(このまま移籍されたとしても……)

伊織(万が一仕事が激減しても、基本給は残る……)

高木(稼げるうちに懐に入れられるだけ入れておくつもりだったが)

伊織(やよいには安定してある程度の収入を確保してあげたい……)

高木(駒は生かさず殺さず……だったな、黒井)

伊織(30%とはいえ歩合も支給される)

高木(よくある業務請負契約より手元に残る)

伊織(これなら……)

高木(組合所属の正社員となれば、好き嫌いでの仕事の拒否も出来まい)

伊織「わかったわ、それで妥結しましょう」

高木「うむ」

伊織「プロデューサーと律子、小鳥の基本給のベースアップも要求するわよ」

高木(基本給のベア要求……)

高木(諸手当だと難癖つけて減額しやすいからベースは低めに……だったな)

伊織「いくらなんでも最低賃金のみなんてことはないわよね?」

高木(……さて、どうでようか)

高木「賞与に反映させようではないか」

伊織「今まで利益の還元が社員に一切なされていないんじゃ、信用ならないわね」

高木(む、さすがに水瀬君だな……)

伊織「ベースで30万、これくらいの働きはしているはずよ」

伊織「諸手当抜きでこのラインは超えてもらわないと」

高木(ある程度の要求を飲んで、飴を与えていたほうがよい『駒』として使える……だったな、黒井)

高木「わかった、諸手当についてはあとで詰めようじゃないか」

律子「ありがとうございます」

伊織(スムーズすぎるわね……もう少し強気に出てもよかったかしら?)

高木「では、今日はこれで失礼するよ」

伊織「……わかったわ」

―――

千早「で、今月分から変わるのね?」

やよい「うー……これで長介達に我慢させないですみますー」

ワイノワイノ

伊織(とりあえずやよいが困らない程度に交渉できたとし喜ぶべきかしら?)

P「伊織、変な役回りをさせてすまなかった」

伊織「ホントよ、このスーパーな伊織ちゃんがいなかったらあんたなんて過労死してたわ」

P「言葉もないよ、俺がしっかりしていればやよいを始めみんなにこんな思いをさせないで済んでいたんだな……」

伊織「ま、これであんたも色々余裕出来たでしょ……律子と一緒に家庭を築けるくらいにはね」

P「なっ!お前なんでそれを……」

伊織「あっきれた、もうバレバレよ。気づいてなかったのは律子と小鳥くらいよ」

P「そ、そうなのか……」

伊織「律子もまんざらじゃなさそうよ……ま、がんばりなさい」

伊織(どうにもしてやられた感じが拭えないけど……)

伊織(とりあえずやよいが苦しまなくて済む目標はクリアできたから……よしとしますか)

―――

黒井「高木か……ああ、そうか……ウィ……それじゃ」ガチャン

黒井「ふん……馬鹿が、使い捨てすればそれでよいと思っている輩が多すぎる」

黒井「駒に足元をすくわれたりしたら元も子もないというのに……」

黒井「結果自分が一番利益を得るにはどうすればいいか……世の中それがわからない奴ばかりだ」

黒井「……ふん、それにしてもらしくない助け船を出してしまったな」

黒井「まあ、相手がいなくなってはつまらんからな」

黒井「私の手で奴ら全員叩き潰してやらないとな。ハーハッハッハ……」

と、言うわけで以上です。

結成時に組合費云々はバッサリとカットしたりしてます。

組合活動に必要な経費は組合員から毎月給料から組合費として徴収しますが……

当面の活動費はきっと伊織が「カンパ」として納入しているでしょう。

今回、ただただ高木社長にはクズな役回りをさせただけでした。

わかりやすくさせるためにありえないブラック企業にしてしまいましたが

…ここまでひどい社畜生活してる人はこの板にいないと願っています。

続きってか……
穴ってかは、あるんですねえ。
Pは人並みになった程度ですし。
労働時間に関する交渉の妄想はあるんですけど、これはまだ書いてないです。

次は過労・急病編だな

>>146
まんまそうだったり…

続き書くつもりだけどこのままスレに続けていいんかな?

このスレで続けて欲しいかな

>>148
ありがとうございます。

では二部が出来ましたら…

初の春闘から3か月後……5月

高木「多少人件費がかかるようになったが……」

高木「うん、まだまだ利益が出ているな」

高木「役員報酬の変更がされず、私の手元に残れば……」

この世界線の765プロは非上場、取締役会無し、監査役無し、会長の順一郎は既に退任です。

高木「ん?そういえば法人税の納付期限だな…」

高木「ん!?この額……んんんんん!?」

―――

高木「お前と飲むのも久しぶりだな…」

伊織父「そうだな、娘が世話になっている…改めて礼を言う良い機会だな」

高木「ああ、彼女には…」

………

伊織父「そうか、伊織が…」

高木「ああ、しかし今日呼び出したのは別件なんだ」

伊織父「ふむ、なんだ?」

高木「法人税の納付についてなんだが…」

………

伊織父「高木…お前今までどうやって経営してきたんだ…」

法人税は事業年度が終わってから2か月以内に申告納税しなくてはなりません。

決算して申告書を作成しないと納税額は確定できません。

この世界線の765プロは3月決算、今になって高木社長は決算処理を始めたようです。

高木「いや、ギリギリの赤字だったのが水瀬君始めこの一、二年で一気に売れてな?」

日本の法人税は繰越欠損金として、赤字を9年間繰り越して利益と相殺できます。

765プロは前年度は相殺できたようですが、今回は莫大な利益が出たようですね……

伊織父「顧問会計事務所とか契約していないのか?」

高木「つい数年前まで一郎ちゃんが自分でやっていたんだが……」

伊織父「お前、期中に役員報酬を変えただろう……」

定時株主総会間に役員報酬を増減すると、経費として認められなくなってしまいます。

それは、期間中に役員報酬を増減して会社の利益を調整するのを防ぐためです。

たとえば、決算近くになって会社に大きな利益が出ている場合には、役員報酬を増額し法人税の額を減らしたり……

逆に、会社が赤字なりそうな場合には、役員報酬を減額したりというような感じです。

高木「このままじゃ黒字なのに資金がショートしてしまう……」

伊織父「まあ融資は受けられる状態であろうが、役員貸付金としてお前から会社に出せばいいだろうな」

会社から役員へ、役員から会社への賃借が役員貸付金。

役員(個人)から会社(法人)へは無利子融資が可能(個人は利益を追求する存在ではない云々)

とはいえ、税金対策と取られる場合があるので運用は慎重に……

高木「な、なるほど……」

伊織父(こいつ、営業力はともかく経営能力も知識もゼロだな……)

―――

新堂「お嬢様、旦那様がお呼びですが」

伊織「お父様が?」

新堂「はい、食事の折にお話があると」

伊織「……そう、今行くわ」

―――

新堂「旦那様、伊織お嬢様をお連れしました」

伊織父「ああ、ご苦労。」

伊織「お父様、それで話ってなあに?私、アイドルは辞めないわよ」

伊織父「お前の芸事については……」

新堂「旦那様」

伊織父「ああ、ゲフン……聞いたぞ、自分の力で交渉し、事を為しえたそうだな」

伊織父「水瀬の理念の体現か?」

伊織「……誰に聞いたか知らないけど、私は私の仲間が正当な評価を得られるようにしただけよ」

伊織父「そうか、それはよかった」

伊織「……どういうこと?」

伊織父「使用者と労働者が対等であり、共に協力するから会社が発展する……」

伊織「耳にタコができているわ」

伊織父「あの程度でそれを達成したと思っているわけではないとわかったのでな」

伊織「!?」

伊織父「アイドル云々はおいておこう、水瀬の理念云々もおいておこう……」

伊織父「お前が心許せる場所と仲間が見つかったのならば、水瀬伊織として全力でその場を守ることだな」

伊織「言われなくてもそうするけど……話は終わり?食事も済んだし失礼するわ」

カッカッカッ

伊織父「……新堂、あれだ、あのー」

新堂「……かしこまりました」

伊織父「ふう……どうも娘には甘くなっていかんな」

伊織父(高木……これまでかもしれんな)

―――

千早「お疲れ様でした」

お疲れ様ー!お疲れっしたー!

凛「如月さん、お疲れ様でした」

千早「渋谷さん、お疲れ様」

モバP「凛、次の予定まで時間あるから着替えゆっくりでいいぞ」

凛「はい、わかりました」

千早「渋谷さんもすっかり売れっ子のアイドルね」

凛「いえ、私なんかまだまだ……あのところで……」

千早「ん?どうかしたかしら?」

凛「765プロさんって現場マネージャーとかいないんですか?」

千早「えっ?そうね……うちはプロデューサー二人体制でマネージャーとかいないわね」

凛「そうですか……いえ、みなさん活躍されているのに、マネージャーやプロデューサーの方を見ないな……と思って」

千早「モバプロは確かにみなさんそれぞれに誰かついているわね」

凛「そうですね……それでも忙しそうですけど」

モバP「あ、如月さん。765プロのプロデューサーさんにこれ差し入れてくれないかな?」

千早「あ、はい……これは?」

モバP「うちの事務のちひろさんが売ってくれる、スタドリエナドリ詰め合わせだ!」

千早「あ、ありがとうございます……(大丈夫なの?これ……)」

―――

麗華「伊織」

伊織「麗華じゃない、元気そうね」

麗華「伊織こそ……そして忙しそうね」

伊織「そんなこと言って魔王エンジェルこそ……ま、東豪寺の力もあるんだろうけど?」

麗華「私はやられた事をやり返しただけよ、それに……」

伊織「それに?」

麗華「りんとともみを守るためなら、自分が使える力は何でも使おうと思い直したのよ」

伊織「仲間のため……」

りん「麗華ー!」

麗華「おっと…またどっかの現場で会いましょう、じゃあね」

伊織「ええ、じゃあ……」

伊織「……」

―――

貴音「皆様、本日は有難う御座いました」

響「お疲れ様だぞー!」

お疲れ様ー!あしたー!

P「……」

貴音「あなた様?」

P「……」

貴音「あなた様!」

P「ん?ああ、すまん……少しぼーっとしてしまったようだ」

響「プロデューサー……疲れているんじゃないか?」

P「大丈夫大丈夫、伊織や皆のおかげで給料も上がったし、その分頑張らないとな!」

貴音「しかし……体を壊しては元も子も……」

P「いやあまだまだこれくらい……おや?」グラリ

響「プロデューサー!」

貴音「あなた様?あなた様!」


―――

あずさ「ええ……わかったわ……うん、それじゃ……」プツッ

亜美「お姫ちんなんだって?」

あずさ「プロデューサーが過労で倒れたそうよ……」

伊織「……!」

亜美「え!?兄ちゃんが倒れたって……」

あずさ「幸い深刻ではないみたい……今日は点滴を打って休むだけでいいだろうって……」

亜美「兄ちゃん……働きづめなのは変わってなかったしね……りっちゃんも……」

伊織(そうよ……やよいやみんなの収入のみに意識がいってた……)

伊織(労働時間や環境まで詰めるのをすっかり失念していたわ……)

あずさ「伊織ちゃん、律子さんは……」

伊織「律子は今ディレクターと打ち合わせ中よ……あずさ、悪いんだけど……」

あずさ「ええ……私が言ってくるわ、ちゃんと大丈夫な事も伝えるから」

伊織「ありがとう……あと亜美、ちょっと集められるメンバーだけでも集めてくれないかしら?」

亜美「いおりん?……うん、わかったYO!」

伊織(自分の使える力……自分の居場所を、仲間を……うん、あいつだって律子だって……)


―――

伊織「結構集まったわね」

亜美「これも亜美の甚六ってやつだね!」

真美「あー、伊佐坂先生のところの!」

春香「それを言うなら仁徳でしょ……」

響「プロデューサーには貴音がついているぞ」

真美「ゆきぴょんとまこちんは雑誌の取材が押してるって」

千早「音無さんは事務所で仕事ね」

伊織「律子は営業でやよいは家の都合っと……さて、みんな急に呼び出して悪かったわね」

千早「プロデューサー……モバプロの方の差し入れが間に合ったら……」

春香「千早ちゃん……それなに?」

千早「なんでもこれを飲めばすぐに体力が回復するとか……」

響「大丈夫なのか……それ……」

伊織「プロデューサーはとりあえずは大丈夫なのね?」

響「ああ、ただやっぱりかなり疲れが溜っているようだぞ……」

千早「今日、モバプロの渋谷さんに人手の少なさに驚かれたわ」

真美「ってゆーか、うちらお年頃のアイドルだけで現場入りするって他じゃないよね?」

亜美「んー、吉本の芸人の兄ちゃんたちもマネージャーついてない人たち多いよ?」

真美「アイドルと芸人を一緒にしちゃだめっしょ!」

春香「そうだね、亜美と真美は芸人だもんね」

亜美「はるるんには言われたくない!」

真美「今日一番のおま言うだYO!」

春香「それは春香さん聞き捨てならないなー……」

伊織「はいはい、茶番はいいから。で、まあ人手不足よね?確かに」

あずさ「律子さんもそうですけどプロデューサーは特に……」

千早「営業から企画、現場回りだって……」

響「今日も本当だったら自分たちの後、真と雪歩の現場に急行の予定だったぞ」

伊織「給与の算定や対外的な勤務体系を考えてみなし労働時間制にサインした私の落ち度よ」

伊織「勤務実態がどうあれ『この時間働いた』事とみなされる、基本的にはね」

千早「仕事量がパンクしているから……」

亜美「兄ちゃん……一緒に遊ぶどころじゃないもんね……」

春香「せめて私たちの現場について回らなくてもいいなら……」

響「少しは負担減るかもしれないぞ」

あずさ「私は一人で大丈夫だけれど……」

亜美「あずさお姉ちゃんが一番心配だYO!」

貴音「あずさだけは律子嬢か誰かがついていないと……」

あずさ「あら?……そんなことは……」

伊織「確かに現場マネージャーが何人か居れば負担は減ると思うわ」

千早「水瀬さん、社長に申し入れって出来ないのかしら?」

伊織「団体交渉の申し込みをして、人員の増員を申し入れるわ……けど」

真美「けど?」

伊織「人事採用権は社長にあるわ」

春香「社長なら……きっと」

亜美「ティン!と来た人じゃないと採用しないかもね」

響「でも、そんな事を言っている状況じゃないんじゃないか?」

千早「プロデューサーが倒れてしまっては……」

貴音「高木殿がどのように判断するかですね」

伊織「私たちがこの立場で出来ることは以上だわ……それで……」

春香「それで?」

伊織「ここからはこの労働組合の集まりの枠を超えた話になるわ」

伊織「みんなに負担を強いる事になるかもしれない」

亜美「いおりん水臭いぜー」

真美「いいなよ、いおりん!七輪卓上でしょ!」

貴音「一蓮托生ですよ……しかし亜美と真美の言うとおりです」

千早「水瀬さん、律子もプロデューサーもみんな私の大事な仲間だわ」

千早「前も言ったけど、みんながいなければ私は歌い続けることが出来たかどうか……」

春香「千早ちゃん……」

千早「なにかあるんでしょう?打てる手が」

伊織「あのね、よく聞いて……」


………

あずさ「うーん……」

千早「さすがにちょっと……」

真美「でもでもー……」

春香「そこでずーっと寝ている美希はどうなの?」

美希「……あふぅ、おはよ」

響「自由だなあ、美希は」

美希「んとね、美希はでこちゃんを信じてるって言ったの」

美希「だからやっぱりお任せするの……おやすみ」

伊織「あんたただ寝たいだけじゃないの!?」

亜美「まーうちらもよくわかんないから、いおりんに任せるよ」

貴音「その方がよろしいようですね」

千早「とりあえず様子見ながらなのね?」

春香「仕方ない……のかなあ?」

あずさ「じゃ、伊織ちゃん……」

響「手伝えることは手伝うさー」

伊織「……よろしくお願いするわ」


―――

コンコン

高木「開いているよ、入りたまえ」

伊織「失礼するわ」

高木「おお、水瀬君か……」

伊織「露骨に嫌な顔しないでくれる?」

高木「いや、そんな事はないぞ?うん、まあ座りたまえ」

伊織「今日も代表として団体交渉に来たわ」

高木「そ、そうかね……うん、場に着こうじゃないか。案件はなんだね?」

伊織「速やかな求人募集による人員の増員よ、特に現場マネージャーね」

高木「ああ……確かにここ最近人手不足なのは把握しているよ」

伊織「プロデューサーと律子の勤務実態はひどいままだわ」

高木「募集はかけよう、ティンとくる人材がいればいいんだがね」

高木(一度自分に入った金を、貸付とはいえ会社に戻して回しているんだ……)

高木(現場マネージャーを複数人雇うのは……)

伊織「さて、労働組合の委員長としての話は以上よ」

高木「そうか、いや善処するよ!うむ」

伊織「ここからは個人としての話なんだけど……」

高木「ほうほう、なにかね?」

伊織「お金、足りなくなったんでしょ?」

高木「うおっほん!……お父さんに聞いたのかね?」

伊織「お父様に?いいえ……この間見せてもらった財務諸表が全てを物語っているわ」

伊織(あんな無茶苦茶な役員報酬の上げ方したらどうなるか、すぐわかるじゃないの……)

高木「いやー……水瀬君はお見通しか……法人税がちょっとね」

高木「いや!大丈夫だ、融資受けるほどではない。役員貸付金でなんとかね……」

伊織(無駄に他から借りるほど馬鹿じゃないって事……?)

伊織「いずれにしたって運転資金はある程度残しておいたほうがいいわ」

高木(水瀬君のせいで人件費が増えているんだがな……)

伊織「そこで……社員持ち株会の結成を提案するわ」

高木「社員持ち株会……?」

伊織「そ、私たちが株主として引き受けるから新株を発行しなさいな」

高木「ふむ……」

伊織「私たちも結構な額を頂けるようになったし、会社になにも恩を返さないわけにはいかないわ」

高木(新株発行で資金が集まれば確かに余裕が出来るな……)

伊織「普通の会社なら定期積立として購入だろうけど、まとまった額を頂いたからね……」

伊織「私はある程度一度に引き受けるわよ」

高木(……)

伊織「社員持ち株会は一番安定した株主よ?会社にはメリットしかないわ」

高木(配当を配るのはもったいないような気がするが……)

伊織「議決制限付株だと配当が有利な優先株とセットが基本みたいなものだから……」

伊織「配当にこだわるわけじゃないから『普通株』でいいんじゃないかしら?」

伊織「従業員のモチベアップになるし……福利厚生の一環として取り入れている会社は多いわよ」

高木「うむ、良いかもしれないな……」

伊織「決まりね、これは参加自由購入口数自由を原則とさせてもらうわ」

高木「それではまとめてから報告願えるかな?」

伊織「ええ、もちろん!あ、株主になるんだし改めてウチの定款と株主名簿を確認させてもらうわね?」

高木「あ、ああ……これだ」

現在の株主比率

高木順一郎 0%

高木順二郎 100%

伊織「あら、会長は株主になっていないのね?」

高木「ああ、全て譲渡されたのだよ。会長職も既に退任している」

伊織「じゃあ株主総会といっても一人ね、第三者割当の手続きを司法書士にでもお願いしてね」

高木「では、私はさっそく動かせてもらうよ」

伊織「こちらの方は任せておいてね」

高木「いやいやなかなかどうして……ありがたいことだ、うんうん」バタン

伊織(……まずはこれからね)

765プロ社員持ち株会向け第三者割当増資の結果

高木順二郎 66%

水瀬伊織 10%

以下アイドル全員各2%づつ


―――

高木「いや、というわけでだね……お前の言うとおり駒は使い捨てじゃダメだと実感したよ」

黒井「……で、その駒に株式を与えたのか」

高木「飴を与えてもこうやって会社に戻るのであれば全く構わないな、ハッハッハ」

黒井(こいつ……自分が何をしでかしたかわかってないのか)

高木「ん?どうした、黒井?」

黒井「ふん……やはり貴様は私が叩き潰すまでもなく、自滅する運命にあるのだな」

高木「なんだ、羨ましいのか?うん?私の人徳が」

黒井「……餞別代りだ、ここの支払いくらい持っておく。じゃあな」サッ

高木「……変な奴だな?」

黒井(糸を引いているのは誰だ……?)

黒井(いずれ高木は私が叩き潰す程の器ではなかったか……買い被り過ぎたようだ……)

―――伊織株式保有から3ヶ月、8月

高木「うーん……売り上げは良いのにお金が回らないぞ?」

小鳥(掛売商売なんだもの、そりゃそうよね……)

高木「一郎ちゃんはどう回していたんだ?」

伊織「あら、社長……事務所で頭抱えていると、みんな不安になるわよ?」

高木「おお、水瀬君か……ちょっと社長室にいいかな?」

伊織「……いいわよ」

バタン

伊織「で、どうしたのかしら?」

高木「いや、ちょっとだな……給与の支払時期の相談なんだが……」

伊織「お金が回らないっていうの?」

高木「いや!赤字になっているとかではないんだ、ただそのー入金が遅れていてだね……」

伊織「私から提案があるわ」

高木「ほう、なんだね?」

伊織「上場よ、上場してIPOで資金を集めるのよ!」

高木「か、株式の上場……だと?」

伊織「そう、今の765プロは年の売上が億を超えているし、マザーズになら上場できると思うわ」

高木(うーん……)

伊織「アミューズや吉本、エイベックスなど大手は一部上場を果たしているでしょ?」

高木「言われてみれば確かに……」

伊織「株主特典として、株主総会時に765プロAll starsでファン感ライブとかやっちゃって……」

高木「ふむふむ……」

伊織「握手会やらもやったら投資家以外からも購入希望者出るわよ」

高木「しかし……」

伊織「(最初だけは)ご祝儀で株価は上がるだろうし、会社の資産価値が急上昇!」

高木「おお!」

伊織「この辺りは律子も詳しいだろうし、手伝えることは協力するわよ」

高木「ふむ、では手続きを手伝って貰えるかな!?」

伊織「ええ!」

伊織「……と、後はちゃんと増員の件は忘れたらだめよ?」

高木「あ、ああ……わかっているよ」

高木(人員増やしたらまた回らなくなるんじゃ……)

伊織「あいつが倒れてからもう三か月も経っているんだからね?」

高木「いや、取り組んでいるよ?うむ……」

伊織(やっぱりダメ……?)

―――1か月後の9月

P「ではただいまより765プロ労組の定期大会を始めます……」

律子「最初の議題は会計についてです」

律子「月々の組合費5000円の他、水瀬グループ労働組合様から100万円」

律子「新堂様個人から5000万円の闘争資金カンパ納入が5月にありました」

パチパチパチ

伊織(私個人名義でもよかったんだけど……)

小鳥(新堂さんって独身なのかしら?)

春香(小鳥さん……目が¥になってる……)

律子「闘争資金に繰り入れたカンパ金は、特別会計で社員持ち株会に出資といたしました」

千早「会計監査の如月です、以上の会計に差異は無かったことを確認いたしました」

律子「で、ここからの議題なんだけど……」

P「伊織……」

伊織「ここからは労組の範疇を超えた活動になります、しかし社長の出方次第です」

響「ぴよ子、まだ人が入らないのか?」

小鳥「応募の問い合わせや履歴書は届いているんだけど……」

真「早く人が増えないと……プロデューサーと律子が持たないですよね……」

P「お、俺は大丈夫だぞ!?」

春香「プロデューサーさん、顔が土気色です……」

千早「この場は大丈夫なので、プロデューサーと律子は仮眠してください……」

亜美「ほらほらミキミキ、ソファからどきなよー」

美希「……あふぅ」

真美「でも男の人が増えて、事務所に溢れたら今度はゆきぴょんが倒れちゃうんじゃない?」

雪歩「ひっ!」

あずさ「大丈夫よ、雪歩ちゃん。スタッフさん相手でも慣れてきたでしょう?」

伊織「……で、言った通りみんなにも協力してもらうわ」

真「まっかしといて!」

やよい「うー!がんばりまーす!」

貴音「この場の皆の想いは一様ですよ、伊織」

伊織「ありがとう、みんな……」

美希「やっぱり美希も眠いから一緒に眠るのzzz」ボフッ

律子「うー美希やめて……重い……」

―――Pの顔色がおかしいまま年の瀬12月

高木「株価の推移も上々……これ、持ち分売って手元に入れようか……」

コンコン

高木「おお、開いているぞ」

伊織「失礼するわ」

高木「水瀬君と秋月君か、用件は何かね?」

伊織「いえ、株主総会の準備はちゃんとやっているのかしらってね」

律子「定時株主総会は決算の後3ヶ月以内ですよ、社長」

高木「ハハハ、まだ半年もあるじゃないかね」

律子「株主総会を滞りなく進めるには半年ほど前からキチンと準備しなくてはなりません!」

高木「そ、そうなのかね?」

伊織「まあまあ律子、今までオーナー会社で非上場だったんだから知らなくても仕方ないわ」

律子「決算終了後に準備するのは……」

借対照表

損益計算書

株主資本等変動計算書・個別注記表

事業報告書ならびにそれらの付属書類

伊織「議案書としては……」

第一号議案 第○期 計算書類承認の件

第二号議案 剰余金の処分の件

第三号議案 定款変更の件

第四号議案 取締役改選の件

第五号議案 第○期役員賞与支給の件

高木(……なんだこれは、役員賞与支給の件って)

高木「ハ、ハハ……」

律子「私たちが手伝うことは出来ませんから、法律事務所会計事務所等にご相談されては?」

伊織「こういう案で進めたいって参考までにこの書面を持って行っていいわよ、それくらいは……ね」

高木「わ、わかった……」

律子「社長、それと提案が」

高木「なにかね?」

律子「株主総会に来てくれた株主様のためのライブと握手会サイン会開催についてです」

伊織「ほら、上場前に話したでしょ?」

高木「あ、ああアレね!うんうん」

律子「配当以外にも、株主特典が豪華な会社は安定株主が多くなる可能性があります」

伊織「エイベックス辺りがやっているわね」

律子「ゲーム会社だと、株主の子供が後ろでゲームできたりがありますね」

高木「しかし、いいのかね?スケジュール的にも……」

伊織「協力するって言ったでしょ?」

律子「みんなの人気で株価が上がったりするかもしれませんね」

高木(!?……ふむ)

高木「で、では私は準備を始めるとしよう、イベントの件は一任したよ」

伊織「求人もいい加減頼むわよー……行っちゃった」

伊織(……さて、と)


―――

三月決算終了後、春闘

765プロ労組側は従業員の増員を再度要求

これに対し会社側は「ティンとこない」との回答

善処するのみで継続審議となる

なお、Pと律子は小鳥さんやアイドルのフォローで過労死を免れていた

一方、モバPはジャンキーとなり、ちひろさんにいいようにされていた


―――765プロ定時株主総会

真「みんなー!今日はありがとー!」

響「自分たちのスペシャルシークレットライブ、楽しんでくれよなー!」

美希「この後の握手会もよろしくなのー!」

ワーワー!

やよい「はーい!高槻家のもやしスペシャルお振舞ですよー!」

春香「私の手作りスイーツですよー!」

ワーワー!

プレス陣「いやー豪華な株主総会だなー」

プレス陣「事務所の勢いそのままだな!」

高木(おお!凄い人だ)

高木(話題になって値上がりした手持ちの株を売って、思った以上に現金になったぞ)

現在の株式保有率

高木17%

伊織15%

他P含む765プロメンバー 各1% 計14%

大口含む、他一般株主54%

財務諸表見れる投資家は避けているようでほとんどファンの小口のようですね。

なので値上がりと言っても大したことないレベルのようなんですが……

高木(会社の資産をある程度自分に移動できたぞホクホク)


―――

小鳥「ただいまより株式会社765プロダクション、定時株主総会を開催いたします」

小鳥「本日進行を務めますのは、当社にて事務をさせていただいております、音無小鳥が務めさせていただきます」

\アレ?場内アナウンスの声の人じゃね?/

\そうだそうだ!/

小鳥「それでは定刻になりましたので議長、お願いいたします」

律子「本日議長を務めさせていただきます、秋月律子です」

律子「本来であれば当社社長であり代表取締役の高木が議長を務めるところではありますが……」

律子「当社定款にて社長である定めがないことにより、本日は私が務めさせていただきます」

株主総会の議長選出は大体が社長ですが、その会社の定款によります。

律子「なお、議事の秩序を保つため、株主様のご質問及びご発言につきましては、各議案の内容説明が終わりましてから、私の指示に従ってなされますようお願いいたします」

律子「それではまず計算書類承認の件について……」

高木(うむうむ……議案書作成を頼むだけで十分だったな)

高木(会計事務所に全部コンサルするより安く上がったからな、うん)

高木(何事もなく進んでいるじゃあないか、うむ)

律子「それでは続きまして、取締役の改選についてです」

律子「取締役高木順二郎に再任の要請ということでよろしいでしょうか?」

伊織「議長、発言の許可を願います」

律子「許可します」

伊織「高木順二郎取締役の解任動議を提出します」

高木「な!?」

ザワザワ

\伊織ちゃん何言っているの……?/

高木「どういうことかね?」

伊織「高木社長の今までの不法行為の証拠があります」

律子「提出を要求します」

高木「……不法行為だと?馬鹿な!ちゃんと要求にこたえて給料を上げてやったろう!」

伊織「みなし労働時間制を悪用し、当社プロデューサー二名の超過労働……」

伊織「月120時間を超える残業、確かにみなし労働時間以上の労働には残業代の支払いがなされました」

伊織「一年ほど前までは最低賃金すら払われていなかった事態に比べればいいように聞こえます」

\最低賃金以下ってさすがにひどくね?/

\俺もそうだぞ?/

\お前ニートじゃねえか!/

\ニートじゃねえよ!/

伊織「36協定は締結しておりますが、協定に定められた以上の労働をさせるのは法違反となります」

高木「残業の強要の覚えはないのだがね?」

伊織「それに、みなし労働時間制を届けていても、実態とかけ離れていれば違法となります」

\聡明ないおりんマジ天使!/

伊織「二人のプロデューサーの勤務実態がこちらになります」

伊織「この現状を続けるのは会社にも労働者にも良くないこと……」

伊織「そこで765プロ労働組合は勤務実態を届け出の内容と一致させるため……」

伊織「人員の増員の要請を再三会社側に要求してまいりました」

律子「異論はないですか?社長」

高木「そ、それは確かに話はあったが……」

伊織「しかし、一年以上にわたる要請に対し会社側は……」

亜美真美「「ティンとこない」」

伊織「と言う理由で採用をしないまま今日に至っております」

高木「善処すると言っておるだろう!」

伊織「……ここにいる彼がプロデューサーです」

\……顔色がゾンビだぞ/

\死にかけ人形ってあんな感じだったよな/

伊織「経営者には労務管理、労働者の健康に配慮する義務があります」

伊織「しかし、高木社長はそれを怠ってまいりました」

高木「なん……だと……?」

伊織「このまま彼に経営させるのは過労死……及び事務所のスキャンダルにつながります」

春香「……もう、これがスキャンダルそのものだけどね」

真「……さっきからマスコミの人たちが慌ただしいもんね」

伊織「みなさん!改めて聞いてください」

やよい「私たちのプロデューサーは……」

響「いつも自分たちの為に一生懸命で……」

亜美「それは竜宮小町のプロデューサーのりっちゃんも一緒で……」

真美「この業界はもちろん不規則な仕事で……」

千早「休日どころか睡眠時間もとれずに……」

雪歩「わ、私たちはとても見ていられなくて……」

真「せめて人が増えたら負担も減るだろうと思ったんだけど……」

貴音「協力出来る事は協力してきたと自負しております……」

あずさ「このまま改善されないなら……」

春香「……社長自体を変えてしまわないと改善しないと思いました!」

ザワザワ

律子「……役員の改選の議案を解任動議に修正して進めます」

高木「おい!こんなことが許されるのか!?」

律子「議決権は一株に付きひとつです」

(株主総会の決議)
第309条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、

出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。



七 第339条第1項の株主総会(第342条第3項から第5項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。)

(解任)

第339条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、

株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

律子「高木順二郎の取締役解任の議決をとります」

高木(『普通株』を発行させて上場させたのは、私の議決権を削り取るのが目的だったのか……!)

ワイノワイノ

律子「では決が出ましたので発表いたします」

高木(……)

解任賛成 83%

解任反対 17%

律子「以上をもちまして高木順二郎取締役の解任を決定いたします」

\ワーワー!/

高木「そ、そんな……」

伊織「……はあ、疲れたわ」

P「伊織……」

伊織「まだ終わりじゃないわよ」

P「……え?」

律子「では続きまして解任された高木順二郎に代わる取締役の選任動議に入ります」

春香「プロデューサーさんがいいと思います!」

P「いいっ!?」

伊織「大丈夫、私たちみんなちゃんとフォローするわよ」

伊織「あんたがちゃんとしてる限り……だけどね!」

プレス陣「おい!ニュースだぞこれ!」

プレス陣「急げ!朝刊に間に合わせろ!」

―――

765プロに起きたクーデター!

高木社長に労基法違反の捜査の手が?

黒井「高木……駒は飼い殺しの上、手なずけなければ……」

黒井「しかし、首謀者は水瀬伊織か……」

黒井「いずれにせよ765プロそのものを叩き潰すのは変わらん、待っていろよ……」


―――

高木「くっ……こうなっては株を保有していても復帰は望めまい……」

高木「話題になって乱高下している株をなんとか売り抜けた……」

高木「このまま海外で遊んで暮らしてやる!」

高木「おっと、海外に行くなら換金ロスが少ない『ビットコイン』に変えておこう」

高木「……いいな。よし、出発だ!」

半年程後の2014年初春に、高木社長が取引に使ったMt. Goxが取引停止の大騒ぎになるのは……

また別の話……

二部も終わりです。

色々穴がある高木社長でした。

まあフィクションだから……と言うことで。

そしてそのフィクションであるからに色々細かいところをはしょってあります。

本来は会社法も労基法も労組法もめんどうなくらい理解しづらいです。

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