淡「お酒美味しい!」 (35)

淡「っかぁーーーーーーーーーー!」

淡「お父さんのお酒を夜中に持ち出して飲んでみれば、うまいの何の」

淡「こんな美味しいものを独占してる大人ってずるいよねぇ」

淡「今度麻雀部のみんなにも……ってそれはまずいか」

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淡「さーて、今夜は柿の種も用意してみました」

淡「……う~ん、この辛味が絶妙にマッチしてたまらん!」

淡「帰宅して疲れた体を癒すため、夜中の静かな一人酒……これぞ大人のレディーの嗜みってやつね!」

淡「ま、あんまり飲みすぎるとバレそうだしこのくらいにしておくか」

数日後


淡父「なぁ、私の酒飲んだりしたか?」

淡(ぎくぅ!)

淡母「私は知りませんよ。なぜですか?」

淡父「いや……なんだか少し減っているような気がしたんだが……」

淡「き、気のせいじゃないかな~……あはは……」

淡父「ふむ……私の勘違いか」

淡「や、ヤバい……どうしよう……」

淡「これ以上は危険すぎるし、しかし止めるにはあまりに美味しすぎる」

淡「……………………」

淡「よし、コンビニで買うか!」

淡「問題は未成年とバレずに買えるかだけど、えーと、出来るだけ大人っぽい服をチョイスして……」

淡「もうちょっと身長ほしいよねぇ……お母さんのハイヒールと、あとサングラスも借りておくか」

淡「くっそぉー、こういう時は菫先輩がうらやましいわ」

「ありがとうございましたー!」



淡「身分証明書を要求されること二回、何とか三軒目で買えましたー!」

淡「今度からはあそこで買おうっと……しかし高いのね、お酒って。大事に飲もう」

淡「今日のお供はポテチ! う~ん、この塩気が素晴らしい!」

淡「冷蔵庫に置くと見つかっちゃうけど、自室に置いとけば大丈夫だよね」

淡「尭深がお茶を飲んでいる間、私は一足先に大人の階段のーぼるー♪」

翌日


淡「あかん……ぬるくなってる」

淡「っていうか冷蔵庫に置けない以上、こうなるの当然じゃん! 馬鹿か私!」

淡「これでも美味しくないわけじゃないけど、やっぱ冷えてる方がいいよねぇ」

淡「かといって冷蔵庫に置くと、親に見つかっちゃうし……困ったな」

淡「……まてよ? 部室の冷蔵庫には、みんなが勝手に持ち込んだ飲み物が沢山あるよね……」







菫「それじゃあ、暗くなる前にみんな帰るんだぞ」

淡「あ、戸締りは私がやっておきますよー」

菫「む、今日もやってくれるのか。最近すまないな」

淡「いえいえ、お安い御用ですって」



淡「さて……みんな帰ったところで、お酒タイムはじまりー!」

淡「部室の冷蔵庫に持ち込んで一週間、計画通り全くバレる気配なし!」

淡「まず、ラベルを剥がした空のペットボトルにお酒の中身を移す」

淡「そして、虫の体液が入ってるアピールをした偽造自作ラベルを貼る(この作成が結構大変だった)」

淡「どうせみんな飲む物は大体決まってるし、仮に目についてもそんなもの誰も飲みたがらない」

淡「こうしてみんなが帰った後、こっそりお酒を堪能できるってわけ!」

淡「さてと……くぅ~っ、キンキンに冷えてやがる……! 最高だぜっ……!」

淡「この一杯のために生きている、って感じかな! さすがに部活中は飲めないけど」

淡「しかし、もしバレたら……停学? 退学?」

淡「……………………」

淡「ま、すっとぼけてりゃ私だとまではバレないっしょ」

数日後


菫「……とまぁ、インハイも近いしレギュラーに選ばれた以上、今以上に精進してくれ」

淡「はーい、まぁ私に任せてくれれば大丈夫ですよ」

尭深「淡ちゃん、最近ずいぶん調子良さそうだよね」

淡「ふふふ、まぁ色々楽しみがありましてね」

誠子「あ、そういえば話は全く変わるんですけど」

菫「何だ?」

誠子「あの『黒すずめばち』ってジュース……かな? あれ誰が持ってきたんですか?」

淡「……!」

照「何それ?」

菫「黒すずめばち……蜂?」

誠子「いえ、冷蔵庫にあったんです。見たことない飲み物で、ちょっと気になっただけなんですが」

尭深「あぁ……あの蜂の体液が入ってるとか書いてあった……」

誠子「尭深、もしかして飲んだの!?」

尭深「さ、さすがに飲む気には……」

誠子「まぁ、そりゃそうだよな。淡は何か知らないか?」

淡「いや、そんなの存在すら知らなかったし……てか蜂の体液なんか、気持ち悪くて飲めたものじゃないですよ」

菫「私もごめんだな。誰だか知らんが、よっぽど変わった嗜好の部員がいるようだ」

淡(ふっ……まさに私の狙い通り……)



照「ちょっと飲んでみたい」

淡(……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)

照「えーと、黒すずめばち、黒すずめばち……これか」

菫「お、おい照、本気か!?」

淡「そ、そーだよ、虫だよ! やめなって!」

照「大丈夫、長野県民は虫食に抵抗ないから」ソソギソソギ

尭深「長野県民でも、人によると思いますけど……」

照「それじゃ、お味のほどは……」ゴクゴク

照「……………………」

照「……………………」

照「……………………」

照「え?」

誠子「……ど、どうですか?」

淡「あわわわわ……」

照「……菫、ちょっと来て」

菫「何だ? 私は絶対飲まないぞ」

照「いいから」

菫「分かったよ……ん? この匂いって……まさか……」

菫「…………ちょっと貰うぞ」ゴクゴク

菫「……………………」

菫(いや……洒落にならんだろコレは)

菫(顧問の先生? いや、それならわざわざ部室に置いておく理由はない)

淡「……………」ダラダラダラ

誠子「弘世先輩、どうしたんですか? そんな黙り込んで」

菫(まさか部活中に飲む馬鹿はいるまい……そうなると皆が来る前、もしくは帰った後……)

尭深「そんなに不味かったんですか……?」

菫「なぁ、これいつ頃からここにあったか覚えてるか?」

尭深「え? どうだったかな、先週くらいだったっけ?」

誠子「確かそのあたりだったような……んーと、時期的には……」

淡「じゃ、じゃあ私はそろそろ帰りまーす……」



誠子「淡が戸締りをやり始めた時と、同じくらいですかね」

淡「」

菫「淡、まさかとは思うが……」

淡「…………」

菫「これ、お前が持ち込んで、一人でこっそり飲んでたんじゃないだろうな?」

誠子「え、そうなの?」

尭深「……淡ちゃんが?」

淡「……うっ、うわあああああああああああああああん!」

淡「ひどい……みんな、ひどいよ! 私を疑うなんて!」

菫「あ、淡……!?」

淡「わ、私、そんなことしてないもん!」

尭深「ちょ、ちょっと淡ちゃん、落ち着いて……」

淡「戸締りだって部のためにって思って、善意で始めたものなのに……」

淡「それなのに、お酒を持ち込んで、飲んでた犯人にされるなんて!」

淡「どうして……どうして私を疑うの! ひどすぎるよ!」

淡(どう、この完璧な演技!)

淡(これでもう、私を疑うことなんて……)



尭深「え、それお酒だったの……?」

誠子「弘世先輩、そんなこと言ってましたっけ?」

淡「あ」

菫「……私はお酒だなんて、一言も言ってない」

尭深「淡ちゃん、何で知ってたの?」

淡「そ、その……じ、実は私も以前、ちょびっと味見したことあって……」

誠子「さっき『そんなの存在すら知らなかった』って言ってなかったか?」

淡「あ、あ……」

尭深「……検索してみたけど『黒すずめばち』なんて飲み物ありません。製造業者もデタラメ……」

誠子「よく見たら、ラベルの作りもかなりちゃちいな」

菫「淡……」

菫「お前が飲んでたんだな?」

淡「え、えーと……」

菫「何か言うことはあるか?」

淡「……………………」

尭深「……………………」

誠子「……………………」



淡「あ、淡ちゃん若いのに酒豪でしゅごーい! なんちゃって、てへぺろ☆」

菫「アホかあああああああああああああ!」

淡「す、すいませぇん! ほんの出来心なんですぅ!」

菫「お、お、お前、自分が何やらかしたのか分かってるのか!」

尭深「淡ちゃん……大問題だよ、これ」

誠子「照先輩も、何か言ってやって……」



照「……………………」ゴキュゴキュゴキュ ←黒すずめばち

照「……………………」ポリポリポリ ←お菓子

照「……………………」ゴキュゴキュゴキュ ←黒すずめばち

照「……………………」ポリポリポリ ←お菓子

照「うん、これはなかなか……」

菫「おい」

菫「……照」

照「……………………」ゴキュゴキュゴキュ ←黒すずめばち

菫「照」

照「……あ」



照「て……てへぺろ」

菫「」

その後、私とテルは鬼を見た。

菫先輩に怒られたのは初めてではないが、あそこまで恐怖を感じたのは初めてだった。

公になると停学のみならず、インハイ出場取り消しは必至ということもあり、この事件は黒すずめばちと共に闇に葬られた。

しかし私たちは怒号の説教の嵐を喰らい、その上グーで殴られた。とても痛かった。

今後、私もテルも成人するまで、お酒を口にすることはないだろう。

部に迷惑をかけてはいけないと反省もしたし、何よりあんな恐ろしい目にはもう二度と遭いたくないから。





淡「はちがつーは暑いかーら酒が飲めるぞー♪」

照「酒が飲める飲めるぞー酒が飲めるぞー♪」

菫「二十歳まで我慢な」

淡・照「はい…………」



END

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