千早「暇だぞ」響「そんなこと言われても困るぞ…」(57)


千早「……はぁ」

響「どうしたんだ千早、ため息なんかついちゃって」

千早「我那覇さん、私ね、今とっても悩んでいるのよ」

響「そうなのか」

千早「我那覇さん、もしよかったら私の相談に乗ってくれないかしら?」

響「相談か…?まぁ、別にいいけど」

千早「我那覇さん…実は私ね」

響「うん」

千早「私、とっても暇なのよ」

響「ふーん、そっか暇なのかぁ…えっ?」


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千早「我那覇さん、私は今、とても暇なのよ」

響「そっかぁー、でも残念ながら自分にはどうすることも出来そうにないなー」

千早「……どうして?」

響「どうしてって言われても」

千早「なぜに?Why?」

響「何で中途半端に英語混ぜてきたの?」

千早「あっ、ゴメンなさい…我那覇さんは英語が苦手だったのよね、失敬失敬」

響「分かるよ!幾ら自分でもそのくらいの英語は理解出来るよ!」

千早「Do you understand?」

響「なんでちょっとドヤ顔で言うんだよ!千早は自分のことをバカにしているのか!?」


千早「それはそうと、我那覇さんは完璧なのよね?」

響「うん、自分、完璧だぞ!」

千早「そして完璧超人なのでしょう?」

響「えっ?」

千早「だから、我那覇さんは完璧超人なのよね?」

響「それは違うぞ」

千早「……」

響「……」

千早「…えっ、違うの?」

響「うん」


千早「あら、それでは我那覇さんは完璧ではないというの?」

響「いや、自分は完璧だぞ」

千早「ではやはり、完璧超人な我那覇さんなら」

響「だからそれは違うってば」

千早「……?……えっ?」

響「何だよそのキョトンとした顔は!」

千早「…えっと、我那覇さんは完璧、なのよね?」

響「自分は完璧だけど、今明らかにおかしな単語が混じっていたよね」

千早「ちょっと我那覇さんが何を言っているのか分からないわ」

響「えぇぇぇ…」


千早「それで、完璧超人の我那覇さん」

響「だからそれだよ、それっ!」

千早「それ、とは一体何のことかしら?」

響「だからさっきから超人、超人って千早が何を言っているのか自分にはサッパリだぞ!」

千早「……」

響「……」

千早「超人って…ふふっ」

響「あれ、どうして自分は今笑われたんだ?」

千早「超人だなんて、我那覇さんってば…今どき小学生でもそんな台詞言わないわよ?」

響「あれ、何この感じ?何で自分がおかしなこと言ってるみたいな空気になってるの?おかしくない?」


千早「まぁそんなことはさて置き、我那覇さん」

響「ん?」

千早「とどのつまり、私はとっても暇をしているのよ」

響「うん、それで?」

千早「完璧な我那覇さんなら私の悩みくらい簡単に解決してくれると思ったのだけれど」

響「そうしてあげたいのは山々なんだけど…その前に千早」

千早「何かしら?」

響「とりあえず今の状況を整理してみようか」

千早「今の状況…私と我那覇さんが喫茶店にいるというこの状況が何か?」

響「どうして自分たちは今こんな所にいるんだろう」


千早「どうして、って…神のお導きでしょうね」

響「スケールでかいな!神様出てきちゃったよ!」

千早「唯一無二の絶対神、我らが高槻やよい様のお導きよ」

響「千早の中でのやよいの位置づけって一体!?」

千早「至高にして究極、完全無欠の存在よ!」

響「それはすごいな…」

千早「あぁ、高槻さん…いえ、やよい様!素晴らしいわやよい様!」

響「うん、千早分かったから、店内で叫ばないでお願いだから」

千早「やよい様!やよい様ぁぁぁっ!やっよいさまーっ!」

響「千早お願いだから静かにして…あぁ、ほらもう店員さん変な目でこっち見てるじゃないかー!」


千早「話が逸れてしまったわね、それで、一体何の話だったかしら?」

響「だから、どうして自分たちは今喫茶店なんかに来ているんだろうなって」

千早「どうしてって、またおかしな事を聞くのね、我那覇さんは」

響「おかしくも何ともないと思うんだけどなー…とりえあず時間を遡って思い出してみよっか?」

千早「我那覇さん…とても言いにくいことなのだけれど」

響「うん、何だ?」

千早「私、過去は振り返らない主義なのよ」

響「わぁー…ムダにカッコイイな」

千早「私の目には、未来のことしか映っていないわ、過ぎ去ってしまった事には興味がないのよ」

響「そっかー、さっさと思い出してくれないかな?」


千早「でも分かったわ、我那覇さんがそこまで言うのなら、自身の主義を曲げて思い出してみましょう」

響「何で自分がワガママ言ったみたいな空気なんだ…おかしいぞ」

千早「あれは遡ること…今から十数年前」

響「いや、遡りすぎだから」

千早「如月千早、現世に光臨」

響「光臨って何!?光臨って!」

千早「後に奇跡の歌姫と呼ばれる偉大な存在になろうとは、この時はまだ知る由も無かった」

響「何か変なナレーションまで入ってきちゃったぞ」

千早「そして時は再び十数年後の今朝」

響「飛びすぎだーっ!今度は一気に飛びすぎだぞーっ!」


千早「そんなこんなで私は今日、オフだったのよ」

響「そうだな、どうしてその一言を言うまでにあんなに無駄に時間を食ったんだろうな」

千早「それで、いざオフを貰ったものの何もやる事が無かったので私は街をブラついていたのよ」

響「うん」

千早「やはり芸能人という職業柄、急な休みを貰っても遊ぶ相手がいないというのも困りのもよね」

響「確かになー、休みになったからってあんまり気軽に声は掛けられないもんなー」

千早「ちなみに私もあまり友達が多いタイプではないのだけれど……我那覇さんと同じく」

響「今なんかもの凄く失礼なことを言われた気がするぞ」

千早「我那覇さんと同じくっ!」

響「なんで二回言ったの?わざわざ強調しなくていいからね?」


千早「我那覇さん、オフを一人で過ごす事に負い目を感じる必要なんて無いのよ?気にしてはいけないわ」

響「うん、殴っていいかな?」

千早「我那覇さん、暴力は何も生まないわ…ちーちゃんとっても恐い」

響「千早はアレか、自分のことが嫌いなのか?」

千早「何を言っているの我那覇さん、大好きに決まっているじゃない」

響「うえっ!?そ、そんな風に面と向かって言われると照れるぞ……」

千早「我那覇さんってば照れちゃって…かわいいわ」

響「もぉー千早ぁー!からかわないでよぉー!」

千早「我那覇さんかわいいわ、我那覇さん!我那覇さん!がっなはさーん!」

響「……うん、やよいの気持ちが少しだけ分かった気がするよ」


千早「それにしても、念入りに変装したとは言え全く声を掛けられないのも考えものね」

響「確かに、それはそれで複雑な気分だなー」

千早「やはりハゲ頭のカツラに鼻メガネのコンボは大したものだわ」

響「えっ」

千早「おかげで全く私だってバレなかったわ」

響「それはバレるバレない以前の問題だと思うぞ」

千早「時折視線を感じはしたけれど…やはりオーラだけは隠せないようね、困ったものだわ」

響「その視線は多分不審者に対して向けられた視線だと思うぞ」

千早「不審者だなんて…イヤだわ、物騒な世の中になったものね」

響「うん、そうだな」


千早「それでまぁ、私は街をブラついていたわけなのだけれど」

響「ハゲ頭のカツラに鼻メガネで?」

千早「我那覇さん、何を言っているの…?それではまるで不審者じゃない」

響「さっき自分で言ってたよね」

千早「我那覇さん、さっきも言ったけれど私は過去を振り返らない人間なのよ」

響「そこはむしろ振り返れ」

千早「我那覇さん、あんな見え見えな冗談を真に受けてはいけないわよ?」

響「……千早ってこんなに面倒くさかったっけ」

千早「そ、そんな…あまり褒めないでちょうだい、照れるわ」

響「褒めてねーよっ!」


千早「まあ、そんなこんなで私が街をブラついていると…」

響「うん」

千早「その時…っ!」

響「その時?」

千早「歴史が動いたわ」

響「動かないから」

千早「同じく偶然オフだった我那覇さんと街で出くわしたのよ」

響「そうだな、偶然出くわしちゃったな」

千早「これはそう…きっと運命に違いないわ」

響「大げさすぎるぞ」


千早「でれれーん、我那覇響が現れた」

響「さっきからちょいちょい無駄な演出挟むな、千早は」

千早「如月千早の攻撃」

響「こらーっ!攻撃すんなー!」

千早「我那覇響を倒した」

響「うわーん、自分倒されちゃったぞー」

千早「我那覇響は仲間になりたそうにこちらを舐め回すように見ている」

響「舐め回すって…表現が最悪だな」

千早「仲間にしますか?……いいえ」

響「ひどいな!何でサラリと断ってるんだよ!」


千早「しかし我那覇響は尚も仲間になりたそうにこちらを見ている」

響「……」

千早「やはり仲間にしますか?……だが断る!」

響「こらーっ!二回も断るんじゃなーいっ!」

千早「一人ぼっちの我那覇さんはとても寂しそうにこちらを見ている」

響「誰が一人ぼっちだー!」

千早「仕方がないので我那覇響を仲間にすることにしたちーちゃんなのであった…めでたしめでたし」

響「めでたくもなんともないよ」

千早「そして現在に至る、というわけね」

響「もうどこからツッコんでいいか分からないよ」


千早「我那覇さん、私の説明に何か不服があるというのかしら?」

響「不服も何もおかしい所だらけだから」

千早「……我那覇さん」

響「ん、何だ?」

千早「なんくるないさー」

響「なんくるあるよ!ありまくりだよっ!」

千早「まあ、なんでも、いいですけど」

響「よくないよ」

千早「それはそうと、なんくるないさーとヤンバルクイナってちょっと似ていると思わない?」

響「確かにちょっと似ているけど、それより何より全然意味が分からないよ」


千早「まあそんな感じで私たちは街中で偶然会ってしまったわけのだけれど」

響「うん、そうだな」

千早「我那覇さんが暇だってしつこいので私が渋々付き合ってあげることに」

響「はいちょっと待った千早ストップおかしい」

千早「あら我那覇さん、何がおかしいというのかしら?」

響「むしろ暇だ暇だって付きまとってきたのは千早の方じゃないか!」

千早「確かにそうだった気もするけれど、そんなことどうだっていいじゃない」

響「よくないよ」

千早「過程や、方法など……どうでもいいのよっ!」

響「だからよくないってば」


千早「我那覇さん、さっきから否定的な意見ばかり言っているようだけれど」

響「だって千早が全然まともなこと言ってくれないんだもん」

千早「ひょっとして、私のこと迷惑だなんて思っているのかしら?」

響「……へっ?」

千早「そうよね、確かにちょっと強引だったかもしれないわね」

響「急にどうしちゃったんだ千早?」

千早「そうよね、折角のオフを無理やり連れ回されては迷惑に決まっているわよね……ごめんなさい」

響「いや、千早…自分は別に迷惑だとは一言も」

千早「ごめんなさいホントごめんなさい…我那覇さんごめんなさい、許してちょうだお願いよ我那覇さん…」

響「話を聞けーっ!いきなりネガティブになりすぎだぞーっ!」


千早「オフの日に偶然我那覇さんと出会えてついテンションが上がってしまったのよ」

響「いや、それは自分もだぞ…千早とバッタリ出くわしてテンション上がっちゃったし」

千早「…本当に?」

響「うん、ホントだぞ…だから自分、別に迷惑だなんて思ってないから」

千早「本当に?」

響「だからホントだってば」

千早「really?」

響「だから何で中途半端に英語混ぜてくんの!?」

千早「いいのね?本当に信じていいのね?千早さん信じちゃうわよ?」

響「っていうかしつこいよ!あんまりしつこいといい加減怒るぞ?」


千早「よかったわ我那覇さんが迷惑に思ってないようで…」

響「まったく、千早は心配性さー」

千早「むしろ運命を感じてしまう程にときめいていただなんて」

響「うん、そこまでは言ってないから」

千早「やはり私と我那覇さんは、運命の赤い糸で結ばれていたのだわ」

響「無いよ、そんなものどこにも無いよ」

千早「で、でもダメよ我那覇さん…私には高槻さんがいるもの!やはり私たちは結ばれない運命なのだわ」

響「おーい、何一人で盛り上がってるんだー?」

千早「何はともあれ、これで何の遠慮なく我那覇さんをからかえるわね」

響「うん、その点に関しては迷惑極まりないぞ」


千早「そんなわけで、私たちはこの場末の寂れた喫茶店でお茶をすることになったわけなのだけれど」

響「寂れてないから!普通にオシャレなお店だから!」

千早「まるでチンピラの溜まり場ね」

響「失礼にも程があるだろーっ!冗談でもそんなこと言うもんじゃないぞーっ!」

千早「失礼…それにしても時代を感じる内装ね、いかにも昭和って感じの、私たちが生まれる以前の」

響「全然フォローになってないよ!」

千早「って我那覇さんが言っていたわ」

響「うえっ!?じ、自分そんなこと言ってないぞっ!」

千早「慌てて否定する辺り怪しいわね、心の中で思っていたのではないのかしら?」

響「ち、千早ぁー!店員さんに聞かれたらエライことになるから!変なこと言わないでよぉーっ!」


千早「冗談はさて置き」

響「とてつもなくタチの悪い冗談はやめて欲しいぞ…」

千早「さすがに喫茶店に来て水だけで粘るというものどうかと思うのよ」

響「さっきから店員さんの『注文まだかよ』って視線が痛いぞ」

千早「イタいのは我那覇さんのキャラだけで十分よね」

響「自分、帰っていいかな?」

千早「冗談よ…ところで我那覇さん」

響「んー?」

千早「誰の胸が板ですって!?」

響「いきなり何!?自分、そんなこと一言も言ってないぞ!濡れ衣もいいとこだぞ!」


千早「それはそうとそろそろ何か注文した方が良さそうね」

響「そうだな、千早がムダに話を脱線させまくるから注文するタイミングを完全に逃しちゃってたぞ」

千早「我那覇さん、人のせいにするのは良くないと思うのよ」

響「人のせいも何も、紛れもない事実じゃないか」

千早「悪いのは私じゃないわ、世の中よ」

響「いや、千早だから」

千早「注文も言えないこんな世の中じゃ、ポイズン」

響「…さぁて、自分は何を注文しようかなー」

千早「我那覇さん、人がせっかくボケたのだから、無視はよくないと思うのよ」

響「さっきからいちいちボケが絡み辛いんだよ!ツッコむのも疲れるよっ!」


千早「さて、やはり喫茶店に来た以上コーヒーを飲むのが礼儀だと思うのよ」

響「じゃあ自分もコーヒー飲もうかな」

千早「あら、お子様な我那覇さんにコーヒーなんて飲めるのかしら?」

響「むっ、失礼だな…自分だって別にコーヒーくらい飲めるぞっ!」

千早「分かったわ、それでは我那覇さんはこの特製青汁を注文するのね」

響「いや、だから自分もコーヒ」

千早「それにしても我那覇さん、喫茶店に来てまで青汁だなんて」

響「いや、千早…だから自分も」

千早「我那覇さんってば、健康に気を使っているのね…私も見習わないといけないわね」

響「話を聞けーっ!大体なんだよ青汁って、何でよりにもよってそんなチョイスするんだ!?」


千早「ほら、我那覇さんと言えば青汁っていうのが世間一般のイメージだと思うのよ」

響「そんなイメージ初耳だよ」

千早「おかしいわね…この間プロデューサーがそんなことを言っていたのだけれど」

響「うえっ!?ほ、本当にプロデューサーがそんなこと言っていたのか!?」

千早「えぇ、本当よ」

響「ううぅっ…プロデューサーひどいさー…自分のこと、そんな風に思っていたなんて」

千早「……」

響「なんだよ青汁って…じ、自分…プロデューサーの中ではそんなイメージだったのか…」

千早「あの、我那覇さん」

響「ショックだぞ…こんな事実知りたくなかったぞ…」


千早「あの、だから我那覇さん」

響「なんだ千早、下手な慰めならいらないぞ…こんな青汁娘のことなんか放っておいてくれ」

千早「えっと、我那覇さん?」

響「さっきからなんだ千早、言いたい事があるならはっきり言ってよ!」

千早「ウソだから」

響「……へっ?」

千早「普通に考えたらウソだって分かると思うのだけれど、まさかこんなにあっさり引っかかるだなんて」

響「ち、千早は自分を騙したのか…?」

千早「騙したというか、こんなに簡単に信じるだなんて思っていなかったのよ」

響「うわーん!ち、千早のバカーっ!人を騙すなんて最低だぞーっ!」


千早「ごめんなさい、さっきも言ったけれど、まさかこんなに簡単に信じるとは思わなかったのよ」

響「ゆ、許さないぞっ!千早のバーカバーカ!謝っても許してやんないからなーっ!」

千早「……っ!」

響「バーカバーカ!……ん、どうしたんだ急に黙って?」

千早「ふくれっ面で罵詈雑言を浴びせる我那覇さん、かわいいわ!」

響「こらーっ!自分は怒っているんだぞー!反省しろーっ!」

千早「ちっちゃな身体で精一杯怒っているアピールする我那覇さん、かわいいわ!」

響「ちっちゃいとか言うなー!っていうか反省しろ千早ぁーっ!」

千早「我那覇さんかわいいわ…!怒っている我那覇さんとってもかわいいわ!」

響「…もういいよ、なんか怒る気力も失せてきたよ」


千早「よかったわ、我那覇さんが許してくれたみたいで」

響「別に許したつもりはないんだけど…もうダメだぞ、あんなウソついちゃ」

千早「分かったわ、それでは我那覇さんは結局のところ青汁は飲まないのね?」

響「飲まないよ…って千早、特製青汁なんてメニューに書いてないけど」

千早「当然よ、だってそんなメニュー無いもの」

響「……」

千早「まぁ、そこはアレよ、我那覇さんのリクエストということで」

響「何で自分がそんなものリクエストしなきゃいけないんだ」

千早「トップアイドル我那覇響のリクエストとあらば、お店も承諾せざるを得ないでしょう」

響「そんな権限振りかざしてまで青汁なんか飲みたくないよ!」


千早「結局二人ともコーヒーを注文することになってしまったわね、残念だわ」

響「なんでそんなに不服そうなんだよ…」

千早「はい我那覇さん、お砂糖とミルクよ」

響「ありがと…あれ、千早は砂糖もミルクも入れないのか?」

千早「えぇ、私はブラックで飲もうかと」

響「へぇー、千早ってばオトナだなぁー」

千早「当然よ、私は我那覇さんみたいなお子様とは違うもの」

響「体型は千早の方が子供のくせになー」

千早「我那覇さん、コーヒー豆みたいに挽くわよ?」

響「どういうこと!?ちょっと千早、目が恐いよ!じ、自分が悪かった!謝るからぁー!」


千早「まあ我那覇さんは気にせずたっぷり砂糖とミルクを入れるといいわ」

響「な、なんだかバカにされている気がするぞ…」

千早「別にバカにしているつもりは……あるけれど」

響「あるのかよっ!」

千早「バーカ、バーカ」

響「んなっ!?バ、バカって言った方がバカなんだぞ!」

千早「やーい我那覇さんのバーカ、バーカ」

響「う、うるさーい!バカとか言うなーっ!千早のバーカっ!」

千早「…不毛な争いはこの辺にしておきましょう、コーヒーが冷めてしまうわ」

響「確かに正論だけど吹っかけてきたのはそっちの方じゃん…」


千早「ともかく、我那覇さんは無理せず、甘ったるいコーヒーにしておきなさい」

響「な、何かムカツク…よーしっ、自分もブラックで飲んでやるぞ!」

千早「我那覇さん、無理はしない方がいいわよ?」

響「無理なんかしてないぞ!自分、完璧だからコーヒーくらいブラックで飲んでみせるさー!」

千早「我那覇さん、無茶と無謀は違うのよ?」

響「そこまで言う!?ブラックコーヒーってそんなに敷居高いのか!?」

千早「我那覇さん、本当にやめておいた方がいいと思うわよ?」

響「いーやこうなったら何が何でも飲んでやるぞ!突発響チャレンジだ!」

千早「この我那覇響の無謀な挑戦が、後に起こる悲劇の引き金になろうとは、まだ知る由も無かった」

響「何でコーヒー一杯でそんな大事になるわけ!?」


千早「……まぁ、そこまで言うのなら止めはしないけど」

響「そ、それじゃあ飲むぞ……んぐっ」

千早「……」

響「うえぇぇ、に、苦いよぉ…」

千早「ほら、言わんこっちゃない」

響「へ、へっちゃらだぞ…自分、これくらいの苦さなら、なんくるないさー…うぇっ」

千早「…ふふっ」

響「あっ…!ち、千早今笑ったなぁーっ!?」

千早「全然飲めないくせに頑張って飲もうとするけどやっぱり無理だった我那覇さん、かわいいわっ!」

響「やよいはしょっちゅうこんな風に迫られてるのかー…大変だなぁ」


千早「結局飲みきれずに砂糖とミルクを足すハメになってしまったわね」

響「うぅぅ…ふ、不甲斐ないぞ、響チャレンジ失敗だぞ…」

千早「ところで我那覇さん、やはりコーヒーだけでは物足りない気もするのよ」

響「ん、確かに言われてみればその通りだけど…」

千早「せっかくだから何か食べていきましょう」

響「そうだなー…あっ、自分このパフェが食べたいぞ!」

千早「あら、中々いいチョイスね…なら私はこの高槻家特製もやし入りパフェを」

響「千早、自分がお店の人にリクエストするから是非とも食べて欲しいぞ」

千早「冗談よ、我那覇さんお願いだからそれだけはやめておいた方がいいわ、後悔するわよ?お願いやめて!」

響「必死すぎだーっ!」


千早「そんなわけで私は抹茶パフェを頼んだわ」

響「自分はチョコレートパフェを頼んだぞ」

千早「それでは早速食べましょう」

響「そうだな!いただきまーす!……んーっ、おいしいなぁ千早ぁ!」

千早「パフェを食べて子供みたいに無邪気な笑顔を見せる我那覇さんかわいいわ」

響「いや、もうそれいいから…それよりも千早のパフェも美味しそうだなー!」

千早「よかったら少し食べる?」

響「いいのっ!?」

千早「えぇ、いいわよ…はい、あーん」

響「えっ」


千早「何をしているの我那覇さん、あーんってば」

響「いや、千早…さすがにそういうのはちょっと恥ずかしいっていうか、あの…」

千早「あら、我那覇さんは私の差し出すパフェが食べられないというのかしら?」

響「いや、そうは言ってないけど…でも誰かに見られたりしたら…」

千早「食べないのなら引っ込めるわよ?このパフェ、とっても美味しいのに残念だわ」

響「うぅぅー…わ、分かったよ!食べるよ!……はむっ」

千早「どう、美味しいかしら?」

響「う、うん…美味しいけど…は、恥ずかしいぞ」

千早「たかだかあーんされたくらいで照れる我那覇さん、とてつもなくかわいいわ!」

響「うん、もう分かったから」


千早「ところで我那覇さんのパフェも中々美味しそうね」

響「うん、美味しいぞっ!よかったら食べるか?」

千早「いいのかしら?」

響「うん、いいぞ!はい、あーん」

千早「えっ」

響「だから千早も、あーんってば」

千早「いえ、あの……我那覇さん、さすがにそれは」

響「何で?さっき千早も自分にやったじゃん!だったら自分もお返しだぞ」

千早「我那覇さんと私ではさすがにキャラが違いすぎるというか…私はそういう事をするキャラでは」

響「千早は自分に食べさせてもらうの、イヤなのか…?」


千早「いえ、別にそういうわけでは」

響「だったらあーんして!ほら、千早も!自分もされたんだから千早もされるべきだぞ!」

千早「分かったわ…分かったからそんなに迫らないで」

響「ほらほら早く食べるさー」

千早「分かったわ、食べるわよ……はむっ」

響「どう?美味しい?」

千早「……美味しいわ、とても」

響「あーっ、千早ひょっとして照れてるのかー?千早も案外かわいいところあるなぁー!」

千早「別に照れてへんし!」

響「何で関西弁!?」


千早「さて、パフェも食べ終わったことだし、どうしましょう」

響「そうだなぁー…あっ、もうこんな時間じゃないか!」

千早「そうね、もう結構な時間だわ…それがどうかしたの?」

響「千早ゴメン!自分、家族たちのご飯作りに帰らなきゃ」

千早「家族って…あぁ、あの非常食たちのことね」

響「非常食!?こらーっ!人の家族に向かってなんてこと言うんだーっ!」

千早「失礼…でも我那覇さんの飼っている動物って、大体食べられるわよね」

響「やめろーっ!自分の家族をそんな風に見るなーっ!」

千早「時に我那覇さん、私も我那覇さんのお家にお邪魔してもいいかしら?」

響「あんな発言のあとにオッケーするとでも思っているのか!?」


千早「大丈夫よ、食べたりなんてしないから」

響「当たり前だよ」

千早「私が食べたいのは我那覇さんだけ……おっとげふんげふん」

響「えぇぇ…その発言にはさすがの自分もドン引きさー」

千早「さて、それでは改めて私も我那覇さんのお家にお邪魔してもいいかしら?」

響「あんな発言しておいてよくもまぁ、そんな台詞がサラっと吐けるな!」

千早「あんな台詞、とは何のことかしら?」

響「うえっ!?え、えっと…その、自分を食べるとか何とか…あぅ」

千早「照れて真っ赤になっている我那覇さん、とてつもなくかわいいわ!」

響「よし帰ろう、自分今日はもう帰るぞ」


千早「我那覇さん冷たいわ、もう少し構ってくれてもいいのでは?」

響「いや、そうしたいのは山々だけどホントに家族の皆がお腹空かせて待ってるから」

千早「そう、残念だわ」

響「で、どうするんだ?千早は結局うちに来るのか?来るなら別に来てもいいけど」

千早「ごめんなさい、実は今日は家で少しやることがあるから結局行けそうにないよの」

響「そっか、分かった、来たければ別にいつ来てもいいからなー?」

千早「本当に?なら近いうちに必ず行かせててもらうわ……じゅるり」

響「えっ」

千早「ハッケン!おいしそうな我那覇さん…じゅるるん」

響「やっぱ来るなーっ!絶対来るなーっ!」


千早「ひどい言い草ね…とても傷つくわ」

響「今の千早に対しては全然ひどくないと思うぞ」

千早「まぁ、今日のところは我慢しておきましょう」

響「むしろ一生我慢してて欲しいぞ…さてと、それじゃあ自分、もう帰るから」

千早「待たれよ!」

響「うぎゃー!今度は何なのさもぉーっ!」

千早「支払いは私に任せなさい!」

響「あっ、そういえば忘れてた…うん、ありがとう」

千早「こうして我那覇響は店をあとにする、内心は如月千早が家に来る事に期待を募らせるのであった」

響「してないよ!全然してないから!もう帰るっ!自分もう帰るぞーっ!」


――――
―――

千早「ふぅ、ただいま……あら電話だわ、もしもし?」

春香『やっほー!千早ちゃーん?』

千早「あら、春香じゃない、どうしたの?」

春香『どうしたの、ってつれないなぁー…お仕事終わったから電話しただけだよっ!』

千早「そうだったの」

春香『ねぇねぇ千早ちゃんは今日オフだったんだよね?』

千早「えぇ、そうよ」

春香『いいなぁー、私もオフ欲しいよー』

千早「春香だって普通にオフは貰っているじゃない」

春香『千早ちゃんと同じ日にオフが欲しいってことだよ、わざわざ言わせないでよー!』


春香『最近千早ちゃんとオフ重なってないよねー』

千早「そういえばそうね」

春香『うぅー…最近全然千早ちゃんと遊びに行けてないね』

千早「そうね、次にオフが重なったら必ず遊びに行きましょう」

春香『うん、絶対だよ!』

千早「さて、それにしても今日くらいは別パターンで締められると思っていたけど、やはりこうなってしまうのね…」

春香『あれ、千早ちゃん今日も恒例のひとり言?電話越しだと何だかすっごく変な感じだね…』

千早「我那覇さんは水瀬さんと同じくツッコミタイプだけれど勢いがある分、また違った面白さがあったわ」

春香『うん、春香さん分かってた、何を言った所で千早ちゃんのひとり言が中断出来ないことくらい分かってたよ!』

千早「さて、お次は誰のところに暇つぶしに伺おうかしら…今からとても楽しみだわ」




おわり

はい、そんな感じで今宵も暇つぶしさせていただきました

ありがとうございました

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