QB「僕と契約してポケモン図鑑所有者になってよ!」2(515)

このスレは
QB「僕と契約してポケモン図鑑所有者になってよ!」
の続編です

ポケモン(ポケスペ)とまどか☆マギカとのクロスです


※重要事項
この物語はフィクションです
実在する人物・地名・団体等と一切関係ありません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1361005343

手持ちまとめ

まどか
ピクシー(ピピっち)『メロメロボディ』「がんばりや/好奇心が強い」♀
バシャーモ(チャモっち)『もうか』「ようき/暴れることが好き」♂
マラカッチ(カチっち)『ようりょくそ』「のうてんき/ちょっと怒りっぽい」♀
トゲピー(トゲっち)『てんのめぐみ』「むじゃき/好奇心が強い」♀
ミカルゲ(ミカっち)『プレッシャー』「きまぐれ/少しお調子者」

さやか
リオル(リオすけ)『せいしんりょく』「やんちゃ/イタズラが好き」♂
ダイケンキ(ミジュか)『げきりゅう』「れいせい/体が丈夫」♀
ナックラー(フラすけ)『かいりきばさみ』「なまいき/ちょっと怒りっぽい」♂
マイナン(マイか)『マイナス』「しんちょう/粘り強い」♀

マミ
マリルリ(マリーレ)『ちからもち』「おっとり/ちょっぴり見栄っ張り」♀☆
カメール(カメーレ)『げきりゅう』「しんちょう/駆けっこが好き」♀
マダツボミ(ツボーレ)『ようりょくそ』「おだやか/喧嘩をするのが好き」♀
フワライド(フワーレ)『かるわざ』「ようき/考え事が多い」♂
ミルタンク(ミルーレ)『きもったま』「ゆうかん/食べるのが大好き」♀
モココ(メリーレ)『せいでんき』「きまぐれ/イタズラが好き」♀

杏子
ムクホーク(ムク)『いかく』「いじっぱり/負けず嫌い」♀
ゴウカザル(ザル)『もうか』「おだやか/物音に敏感」♂
キュウコン(コン)『もらいび』「おとなしい/居眠りが多い」♀
シュバルゴ(バル)『シェルアーマー』「わんぱく/辛抱強い」♂
プラスル(プラ)『プラス』「ずぶとい/昼寝をよくする」♂
ユキメノコ(ユキ)『ゆきがくれ』「むじゃき/逃げるのが早い」♀

ほむら
アブソル(そるそる)『プレッシャー』「さみしがり/抜け目がない」♀
チコリータ(めがめが)『しんりょく』「のうてんき/負けん気が強い」♀
シャンデラ(らんらん)『ほのおのからだ』「ひかえめ/おっちょこちょい」♀
ウォーグル(ぐるぐる)『ちからずく』「なまいき/血の気が多い」♂
ギギアル(ぎあぎあ)『プラス』「てれや/物音に敏感」

グンマー地方タウンマップ

      ユウマ=====トネ川=====┐
 湖2  川         ∥         ∥
      ∥         ∥         ∥  湖3
┌===クサツ====マエバシ=====アスナロ===アカギ

∥     ∥         ∥        ∥
∥     ∥         ∥        森
∥     ∥         ∥        ∥
タカサキ=ヒメナ=川===イツサト=ミタキハラ=カザミノ=┐

∥              ∥             ∥
∥    湖1        砂             山
∥              ∥      山山山   ∥
└トキサダメ川==砂==ポケセン   山 セキエイ 山 └ニビ


湖1:つばなの湖
湖2:みなかみの湖
湖3:こほねの湖

ズレてませんように…

ちょっとだけ投下しておきます

―さやかside―

まどか達が図書館で調べ物をしていた頃、さやかはどうにか部屋から脱出できないかと足掻いていた。
たった一つの窓は抜けて出るには小さく、そもそもかなり高い位置にある。
扉は頑丈でとても開けることは出来ない。
部屋には簡単なベッドとトイレがある程度で脱出に使えそうではない。

そもそも脱出できたところでそのことを知られたらさやかのポケモン達が危ない。

しかし何かせずにはいられなかった。

一日に二度運ばれてくる食事には最初は手を付けるつもりなどなかったが、やはり空腹には勝てなかった。

団員「ほら、食器を下げに来たぞ。って、まだ食ってなかったのかよ」

さやか「……ほっといてよ!」

そんなことを言われながら一日が終わってしまった。

そして翌日――

その日の昼ごろ、急に廊下の向こう側が騒がしくなった。
聞き耳を立てると、どうやら誰かが帰ってきたらしい。

………………鍵…………貰い…………………気絶させ…………ムド…飛んで……………すいません……

聞こえてきたのは断片的な情報だったが、捕まっていた誰かが脱走してきたそうだ。
ついでにそのことで誰かが謝罪をしていた声も聞き取れた。

さやか(誰が逃げて来たんだろ……っていうか、いつ捕まったのかな)

当然さやかはゲルトルート達が捕まっていたことなど知らない。

もっとも、それが分かったところでさやかにはどうすることも出来ないのだが。

ちなみに、謝っていたのは二人を置いていかざるを得なかったポンペである。

それから一時間ほどしたころ、事態は急転する。

さやかが昼食を食べ終え、ぐるぐると考え事をしながら天井を見ていた時、突然の爆発音と共に施設全体が大きく揺れた。

すぐに警報器代わりのバクオングの大声が響き渡り、建物がまた揺れた。

さやか「何……なんなの…?」

そう呟いた瞬間、部屋の壁が紫の光に包まれると、矢のような閃光が壁を貫き、反対の壁にも大きな穴を開けた。

さやか「うわっ!もう、なんだってのよー!」

???「その声……さやか…!?」

さやか「――!誰!?」

光が放たれた先は暗かったが、紫の炎が五つ浮かんでいる。

さやかが目を凝らそうとした瞬間、「"フラッシュ"!」という声と同時に部屋が紫の光に包まれた。

誰かが部屋に入って来た音がして、さやかは目が見えないながらもすかさず身構える。

さやか「……?」

しかし敵意はないのか何も起こらない。
さやかはゆっくりと目を開けた。

ほむら「どうしてあなたがこんなところにいるのよ」

さやか「え…………ほむら!?」

実にニビシティ以来、十七日ぶりである。

たった2レスですが

今月末に来れたらいいな

現在の手持ちミスってた

まどか
ピクシー(ピピっち)『メロメロボディ』「がんばりや/好奇心が強い」♀
バシャーモ(チャモっち)『もうか』「ようき/暴れることが好き」♂
マラカッチ(カチっち)『ようりょくそ』「のうてんき/ちょっと怒りっぽい」♀
トゲピー(トゲっち)『てんのめぐみ』「むじゃき/好奇心が強い」♀
ミカルゲ(ミカっち)『プレッシャー』「きまぐれ/少しお調子者」

さやか
リオル(リオすけ)『せいしんりょく』「やんちゃ/イタズラが好き」♂
ダイケンキ(ミジュか)『げきりゅう』「れいせい/体が丈夫」♀
ナックラー(フラすけ)『かいりきばさみ』「なまいき/ちょっと怒りっぽい」♂
マイナン(マイか)『マイナス』「しんちょう/粘り強い」♀

マミ
マリルリ(マリーレ)『ちからもち』「おっとり/ちょっぴり見栄っ張り」♀☆
カメックス(カメーレ)『げきりゅう』「しんちょう/駆けっこが好き」♀
ウツボット(ツボーレ)『ようりょくそ』「おだやか/喧嘩をするのが好き」♀
フワライド(フワーレ)『かるわざ』「ようき/考え事が多い」♂
ミルタンク(ミルーレ)『きもったま』「ゆうかん/食べるのが大好き」♀
デンリュウ(メリーレ)『せいでんき』「きまぐれ/イタズラが好き」♀

杏子
ムクホーク(ムク)『いかく』「いじっぱり/負けず嫌い」♀
ゴウカザル(ザル)『もうか』「おだやか/物音に敏感」♂
キュウコン(コン)『もらいび』「おとなしい/居眠りが多い」♀
シュバルゴ(バル)『シェルアーマー』「わんぱく/辛抱強い」♂
プラスル(プラ)『プラス』「ずぶとい/昼寝をよくする」♂
ユキメノコ(ユキ)『ゆきがくれ』「むじゃき/逃げるのが早い」♀

ほむら
アブソル(そるそる)『プレッシャー』「さみしがり/抜け目がない」♀
メガニウム(めがめが)『しんりょく』「のうてんき/負けん気が強い」♀
シャンデラ(らんらん)『ほのおのからだ』「ひかえめ/おっちょこちょい」♀
ウォーグル(ぐるぐる)『ちからずく』「なまいき/血の気が多い」♂
ギギアル(ぎあぎあ)『プラス』「てれや/物音に敏感」

まどかは「戦う者」なのか、それとも「孵す者」なのか。
杏子は「育てる者」だと思うけど。

パールは技を出す前に何の技か分かるんだっけ。
二人は・・・

前スレ>>1000
残念ながらラティ兄妹の採用は…何かの機会があればね

>>15
そういうの考えてたけどあんまり生かせてない現状…
まどか:戦いがうまい
さやか:性格を見抜く
マミ:すぐ仲良くなれる
杏子:育てるのがうまい
ほむら:多彩な技
とかだった気がする

>>18
ダイヤはほら、ポフィンを作るのがうまい
プラチナは…知識がある


投下します

さやか「そっ、それはこっちの台詞だよ!なんであんたがここにいるわけ!?」

ほむら「……私の質問の方が先よ。答えて……まあ、ポケモンも持ってないし体はボロボロだし、なんとなく察しはつくけれど」

さやか「まあ、その、なんというか……捕まっちゃって……」

ほむら「ならまどかの隣にいたのはまさか……」

さやか「ん?なんでまどかのことが出てくんの…?」

ほむら「いえ、なんでもないわ」

さやか「今度はこっちの質問に答えてよ!なんでここにいるわけ!」

ほむら「しっ!」

さやか「ッ!」

ほむら「場所を移すわ。すぐに誰か来るはず…行くわよらんらん、壁を溶かして」

シャンデラ「ふぉぁ~」

シャンデラが紫色の炎で扉を燃やし、部屋を抜けたほむらの後に続いてさやかも駆けだした。
結局話さないのかよと少し憤慨しつつも、先程の光の謎をさやかは理解した。

さやか(そっか、さっきの穴開けたりしてた紫の光は全部シャンデラの炎だったんだ……)

ほむら「こっちよ!」

さやか「ちょっ、待ってって!」

今度は扉を普通に開け、二人とシャンデラは部屋に飛び込んだ。
中は真っ暗だったが、二人はこの部屋がどういう部屋であるのかをすぐに理解した。

そこにいたのは数十匹を超えるポケモン達だったのだ。
シャンデラの灯りで確認出来る限りでも、ジュゴンやデスマス、ゴニョニョにルージュラなど様々である。

しかし声を挙げるわけにはいかず、ただポケモン達が騒がないことを祈っていた。

やがて廊下を数人が駆け抜けていく音がしてしばらく経つと、ようやく静かになった。

思わずほむら達の口からため息が漏れる。

さやか「このポケモン達は、ウィッチ団のポケモンじゃないのかな」

ほむら「恐らく奴らの言うところの厳選をする為のポケモン達じゃないかしら…きっとここはポケモン達の牢屋のようなものね」

さやか「……」

ほむら「とりあえず声を挙げられなくて助かったわ」

ほむらの睨んだ通り、ここは『ハコ』である。

ウィッチ団が強い才能を持ったポケモンを厳選、選別する為に野生のポケモン達を入れておくための部屋だ。
以前のアジトにたくさんあった部屋も、アジトを移動するにあたって部屋を多くして一部屋に集約するようにしているのだ。

さやか「あれ?」

その時、さやかは部屋の隅で丸くなっているジュゴンに気が付いた。
どこかで見覚えがある背中をしている。

さやか「ねえ、あんた大丈夫?」

ジュゴン「ッ!キュゥー!!」ガバッ

さやか「わぁっ!いきなり何!?」

ジュゴン「ゴーンゴーン!」スリスリ

さやか「ん…?あんたもしかして……つばなの湖にいた!?」

ジュゴン「ン!」コクコク

さやか「やっぱりあの時のジュゴン!あはは、良かった無事だったんだね!……いや、ここに捕まってるってことは全然良くないか……」

ほむら「あなたのポケモン?」

さやか「いんや、ちょっと前に苦しそうだったからポケモンセンターに連れてったの。海に帰ってくれてたらよかったんだけど」

ほむら「帰る途中で捕まってしまったのね」

さやか「こんな隅っこにいるんだもん、最初全然気付かなかったよ!あんた結構臆病なんだね」

ひとしきり撫でまわしたところで、さやかは先程の疑問をぶつけた。

さやか「それで、あんたはなんでここにいるわけ?」

ほむら「私はウィッチ団のアジトがここだと分かったから、ワルプルギスを倒しに来たのよ」

さやか「はぁ!?なんであんたが!?」

ほむら「大きな声を出さないで」

さやか「っ!」バッ

ほむら「……私はあいつに因縁がある。あいつも私に因縁がある…それだけよ」

さやか「意味分かんないんだけど」

ほむら「とにかく、これは私の戦い。あなたはここから逃げなさい」

さやか「そんな、あんた一人を置いていくなんて――」

ほむら「ポケモンも持ってないあなたがここにいても邪魔なだけよ。危険な目に遭いたくなかったら逃げなさい。道なら作ってあげるから」

さやか「ムッ……そんなのやってみなきゃ分かんないじゃん!」

ほむら「分かるでしょ!私は急いでるの…さあ、壁に穴を開けるから早く――」クルッ

デスカーン「ゲヒヒ」バァー

ほむら「きゃぁぁっ!!!」

突然の悪戯好きなデスカーンの脅かしで、一瞬とはいえ声が外まで響いた。

すぐに多くの足音がこちらに向かってくる音が聞こえてきた。

さやか「やばっ、誰か来るよ!何やってんのこの悪戯っ娘は!」

ほむら「しまった……仕方ないわね。らんらん、"フラきゃっ!」

さやか「わわっ!」

デスカーンの体から四つの影のような腕が伸び、さやかとほむらを捕まえる。
棺桶のような体が開き、そのまま二人を中に閉じ込めてしまった。

流石に二人も入ると中は相当に狭い。

さやか「ちょっ、きついってこれ!」

ほむら「息が……」ゴソゴソ

さやか「ちょっ、どこ触ってんのよ!いきなり動かないでよね!」

ほむら「図鑑を探してたのよ……なるほど、デスカーンは本物の棺桶と間違えて近寄って来た墓泥棒を体の中に閉じ込めることがあるみたいね」

さやか「あたしら別に泥棒じゃないっての……でも、これなら見つからないかも……あたしらを庇ってくれてるんだ」

団員1「さっき声が聞こえてきたのはこの辺ですね」

ポンペ「なっ、なるほど……『ハコ』の中、探してみようか……」

ほむらはデスカーンの中から無理矢理手を出して、シャンデラをボールに戻す。

手を戻した瞬間、扉が開きウィッチ団が入って来た。

デスカーンの中からでも、僅かに外の様子は確認出来た。

団員1「誰かいますか?」

ポンペ「えっ、えっと……見たところポケモンだけのようですね」

団員2「暗いですね…奥の方にもいませんか?」

ポンペ「どっ、どうかな…?サニーゴ見てきて」 サニーゴ「サニャ」

さやか(こっちにくる……)

ほむら(いざとなったら、やるしか……)

サニーゴがピョンピョン跳ねながら近付き、辺りを見回す。
部屋の中にいるポケモン達は黙って俯き、さやか達のことを教える様子はない。

さやか(さっきもそうだったけど、ここにいるポケモン達はやっぱりウィッチ団のことよく思ってないんだろうな
    だからあたし達を庇ってくれてるんだ)

ポンペ「うーん……いっ、一応"とげキャノン"を撃ってみて」

部屋の隠れていそうな場所にとげを連発し牽制を試みる。
しかし当然何の反応もない。

ポンぺ「いっ、いないみたいだね……他の部屋もを探そう」

ここには誰もいないと判断し、ポンペ達は部屋を出て別の場所へと向かって行った。

ポケモン達からも安堵の息が漏れる。

ほむら「助かったわね……」

さやか「うん……ね、ねえ」

ほむら「……何」

さやか「いい加減出たくない?」

ほむら「デスカーン、そろそろ開けてくれない?」

デスカーン「デヒヒヒ」ケラケラ

さやか「ちょっ、開けなさいっての!腕白小娘っぷりにも限度があるってば!!」

しばらくしてから、ようやく二人はデスカーンから解放された。

ほむら「はぁ…はぁ……なんとかバレずに済んだみたいね」

さやか「ちょっとやり過ぎだったけど、サンキューデスカーン!」

ほむら「さて、さっきの続きだけど、あなたはここから逃げなさい」

そう言ってほむらが壁際に立ちシャンデラに命令すると、強力なフラッシュで部屋全体が包まれた後、外に通じる穴が出来ており、今度は太陽の光が部屋を照らした。
さやかはやはり穴の開く瞬間は見れなかったが、あのシャンデラの発光に何かあるのではないかと考えていた。

ほむら「あなた達もついでに逃げなさい。こんなところにいても奴らに利用されて捨てられるだけよ」

ポケモン達は目を輝かせながら、次々と穴を通って逃げて行った。

やがて部屋に残ったのは二人とシャンデラ――

さやか「……あんたらは逃げないの?」

と、湖で出会ったジュゴンと先程二人を助けたデスカーンであった。

ジュゴン「ッ!」グッ

デスカーン「~~~!」ケタケタ

さやか「……どうしたの?」

二匹ともさやかにすり寄ってやる気に満ちた表情を見せる。
その眼差しからさやかは二匹の意志を察した。

さやか「もしかして、一緒に戦いたいの…?」

二匹「ッ!!」コクコク

さやか「……そっか、あんたらもウィッチ団にひと泡吹かせてやりたいんだね。よっしゃ!一緒にギャフンと言わせてやろう!!
    名前はそうだなあ……あんたは♂だからゴンすけ、あんたは♀だからデスかだね!よろしく!」

ほむら「待って……本当についてくる気なの?」

さやか「当然!このままやられっぱなしでたまるかっての!!」

ほむら「はぁ……いいわ、好きにしなさい。そろそろここで油を売ってるわけにもいかないし」

さやか「ねえねえ、さっきから気になってたんだけど、シャンデラに何やらせたら壁にこんな穴が開く様な攻撃になるわけ?」

ほむら「……」

さやか「?」

ほむら「私のシャンデラの"フラッシュ"は炎の温度を上げて発光させてるの。その炎を"オーバーヒート"で一気に解放するのよ
    それも、攻撃範囲を絞ってね……らんらん!」

ほむらの言う通り、シャンデラの体は発光し、すぐに炎を矢のように絞って斜め上に発射させた。
高エネルギーの炎は壁を溶かしながら貫き、アジトに穴を開けた。

暗かった部屋に太陽の光が差し込んでくる。

ほむら「らんらん、これを」スッ

さやか「それは?」

ほむら「白いハーブよ。自分の能力が下がった時にあれを口にすれば、元の状態に戻れるの」

さやか「へぇ、そんなアイテムがあるんだ……にしても、凄い威力だね。これならナハトさんも倒せるんじゃないの?」

ほむら「この程度で伝説のポケモンが倒せるとは思えないわね」

さやか「伝説のポケモン…?ドユコト?」

ほむら「いいからもう行くわよ……この先にきっと、ワルプルギスの部屋があるはず」

さやか「おう!やったろうじゃん!!」

ほむらはウォーグルに乗って、さやかはふらふらと浮くデスカーンに乗って(ジュゴンはデスカーンが掴んでいた)、穴を通り様々な部屋をスルーし一番上の部屋に辿り着いた。

二人が降り立つと、正面には幹部のエルザマリアが戦闘態勢を取っていた。

さやか「マリアさん…!」

マリア「やれやれ、接客中だったというのに……なるほど、侵入者がいたとは聞いていましたが、あなただったのですね
    まさか、そこの美樹さやかを助ける為に乗りこんできたのですか?」

ほむら「違うわ。彼女を助けたのはたまたまよ」

マリア「でしょうね」

さやか「ちょっと!?」

ほむら「ワルプルギスはどこ?」

マリア「ナハト様は外出中です。ナハト様と戦いに来たのでしょうが、残念でしたね」

さやか「無視するなー!あなたに負けた恨み、ほむらと一緒に晴らさせてもらうから!!」

ほむら「いないの……ならいいわ。今日のところは引かせてもらう」

さやか「おう!いっけーほむ……へ?」

ほむら「ワルプルギスがいないのなら余計な戦いはしないわ。私の狙いはあくまで奴よ」

さやか「いやいやいや!ここは二人で戦う場面じゃん!?せっかくジュゴンもデスカーンもやる気なのにさ!」

マリア「このまま帰すとお思いですか…?外まで穴を開けたのは失敗でしたね、太陽の光が降り注いでいますよ……"ソーラービーム"」

強力な光線がドダイトスとソルロックから発射された。

通常ならばチャージの必要なソーラービームも、日差しが強い場合にはノーリスクで撃つことが出来るのだ。

直撃したかに思われたが、マリアは戦闘態勢を崩さない。

この程度でナハトと渡り合ったほむらがやられるとは、当然考えていないからだ。

さやか「……っ!」ゴクリ

メガニウム「……」

マリア「"ひかりのかべ"ですか。流石ですね」

ほむら「ワルプルギスがいないのならここに用はない。勿論あなたにもね」

???「いいじゃねーか、帰してやれよ」

そこに割って入ってきたのは、さっきからずっと黙っていたマリアの客だった。

陰に入っているためかさやかには誰だか分からなかったが、若い少年のようだった。

マリア「あなたに口出しされる覚えはありません。黙っていてください」

???「そう固いことを言うなっての」

ほむら「……そこにいるのは、まさか……」

マリア「はて、お知り合いでしたか」

???「いんや、会うのは初めてだぜ。でも、どんな奴かはナハトに聞いてるから知ってるぜ」

マリア「ナハト様が……?」

さやか「ちょっと待ってよ!誰なのよあんた!!」

???「さやかか。話だけは聞いてるな、図鑑所有者なんだろ?」

さやか「――っ!なんであたしのことを…?」

???「さあてなんでかな」

ヘヘっと笑って明るい場所に出てきたのは、年端もいかない黒髪の少年。
傍らにはジヘッドとキングドラが佇んでいる。

さやか「あんた、誰…?」

ほむら「……ミタキハラシティのジムリーダー、ジュゥべえ」

さやか「ジムリーダー!?ミタキハラの!?」

JB「チャオ! ご紹介に預かった通り、ジムリーダーやってたジュゥべえだぜ」

さやか「ミタキハラジムは今休業中って……まさかずっとウィッチ団に協力してたの!?」

JB「それはちょっと違うぜ。おいらはおいらで色々とやることがあって忙しかっただけさ」

さやか「どっちでもいいよ!今は敵なんでしょ!!」

JB「まあ、そういうことになるかな」

マリア「協力と言うほどのことはまだされていませんけどね」

さやか「ようするに敵なんでしょ…!ゴンすけ"こごえるかぜ"!デスか"あやしいかぜ"!」

ダブルの風がヘラヘラと笑うジュゥべえに襲いかかる。

しかしキングドラがミニサイズの竜巻を作ると、あっさりとかき消されてしまった。

流石のさやかも、それだけで相当の手練れであることを察する。

JB「まあまあってとこだな。なかなかいい筋してると思うぜ」

ほむら「あなたがジムを休んでいたから何かしてるとは思っていたけど……やはりウィッチ団に付くのね」

JB「さてな、おいらは一年間遊んでたわけじゃないんだけどな……」

マリア「もういいです、茶番は結構」

ほむら「そうね、もうすぐ他の人もここに来るでしょうし、あなた達に付き合っている暇は――」

マリア「いつまでJBの役を演じているつもりですか」

ほむさや「っ!?」

JB「……」

ヘラヘラとしていたジュゥべえが突然大人しくなり、ニヤリと笑みを浮かべる。

そして彼の眼から生気が失われた途端、その場に崩れ去ってしまった。

ほむら「なっ…!?」

さやか「なに!?なんなの!?」

マリア「おや、てっきりこちらとも知り合い立ったのかと思っていましたが……その反応からして、どうやら知らなかったようですね
    ――――JBがロボットだったということに」

ほむら「――ッ!?」

マリア「これなら茶番を続けていてもよかったかもしれませんね」

???「クフフ、本物のJBより動きが硬いバージョンだったからバレバレだと思ってたけど、元々JBの正体は知らなかったのか
    私は何でも知ってますって顔して何にも知らないんじゃ、笑わせてくれるね」

さやか「……嘘……その声って」

物陰から現れたのは、本当の来客。

さやかはその声を聞いてすぐにピンと来た。
しかし信じたくはなかったその人は――

さやか「ニコ……さん……?」

ジムリーダーの神那ニコに間違いなかった。

と、さやかは思ったのだが、

ニコ?「残念、外れだよさやか……私をあんな奴と一緒にしないでよね」

すぐに訂正を求められた。

黒いドレスに黒い帽子を身につけている以外は、誰がどう見ても神那ニコ本人である。

カンナ「私は聖カンナだ。金輪際あいつの名前を呼ぶな」

ほむら「……聖、カンナ……?」

カンナ「改めまして、チャオほむら。お前がナハトと知り合いだっていうからJBの正体が私だって知ってるのかと思ってたよ
    そうかそうか……私は今までの世界では正体を明かさなかったんだ」

ほむら「――っ!」

さやか「世界…?」

カンナ「なんだい、やっぱり秘密にしてるんだね……ま、誰も信じられる話じゃないか」

さやか「どういう意味よ……ほむら!」

ほむら「……ぎあぎあ」ボンッ

ギギギアル「グギギ」

ほむら「らんらん、"ねっぷう"」

シャンデラの攻撃がマリアとカンナに向かうが、キングドラの水の波動によるベールで全く効いていなかった。
その間にギギギアルはエネルギーを充電する。

ほむら「捕まりなさいさやか」

さやか「ちょっちょっと!」

ほむら「"テレポート"」

そしてアジトから二人は消えた。

マリア「はぁ……結局逃がしてしまいましたか」

カンナ「気にするなよマリア。どうせ奴らには何も出来やしない……計画が発動すればね」

マリア「ナハト様がおかえりになるまであと三日……本当にあなたに任せて大丈夫なのでしょうね」

カンナ「心配御無用。『宝玉』は揃ったし、ギラティナは制御下にある……『赤い鎖』ももうすぐ完成するんだろう?」

マリア「そのはずです」

カンナ「ま、ナハトがどうやって湖のポケモンなしでアレを持ってたのかは不明だけどさ、私の役目はハッキリしている」

カンナは懐から16枚のプレートを取り出した。
それぞれ色は違い、裏には何か文字が書かれている。

カンナ「全部見つけるのは苦労したけど、このプレートを使って創世の神を降臨させる……
    その時こそナハトや私の最終目標、『ヒュアデスの暁』計画が始まる…!」

マリア「……」

マリア(ナハト様の仰られた『ヒュアデスの暁』計画……初めて聞いた時はなんて無謀…それでいて素敵なのだと震えましたね
    シンオウの伝説をどこまでも利用するとは……改めて恐ろしい人だと認めるしかありません
    障害は今のところ無い。四天王は油断しているのか全く関与してこないし、ジムリーダーどもは端から相手にならない)

マリア「唯一障害になりそうだったのは暁美ほむらだったのですが……」

カンナ「問題ないさ……」

カンナは笑い、帽子を深く被り直す。

その目に浮かべるのは、ただ一つの野望。

カンナ「そう、何も問題はない」

ここまで
三月はちょっと忙しいけどできるだけ早めに投下します
次はいよいよあの四人が登場するかも
懲りもせず登場人物が増えて行くけれど気にしないでください

なんとかアジトから脱出したさやかは、自らの力の無さを悟り修業を始める。

一方ユウリと一緒にいるのが嫌になった杏子は一人修行すると言って離脱。

そんな二人の前に、伝説のポケモンが彼女たちを助ける為に現れた!

さやか「あたしの言葉が分かるなんて…あんた一体なんなの…!?」

???「しゅわーん!」

杏子「なっ……お前も幻術とか使えんのかよ…!?」

???「ひゅああん!」

そして二人はほむらから謎のアイテムを受け取る……

ほむら「あなた達にこれを託すわ」

さやか「これは?」

ほむら「心の雫≪ソウルジェム≫よ!」

杏子「なに!?」

伝説の力を手にした二人はウィッチ団に乗りこむことを決意するが―――!!


次回!
vsラティアス&ラティオス

っていうお話ではありませんがお楽しみに

ちょっと忙しかったので更新したいとこまでの半分くらいしか書けてない…あまりにも酷い
はたして収集はつくのだろうか
頑張ります

群馬のマスコットキャラにぐんまちゃんってのがいるじゃん
あいつ昔はゆうまちゃんって名前だったんだよね
その時の記憶しかなかったんだ、という言い訳

―ユウマタウン―

大きな牧場があるユウマタウンは、周りを自然に囲まれた土地である。
昔から別荘地として栄えており、著名人が夏には避暑をしに来たり、冬にはウィンターポケモンスポーツを楽しめる町だ。

そんな町の小高い丘に、ほむらとさやかは降り立った。

さやか「おっとっと……これが"テレポート"か……」

ほむら「ユウマタウンよ。来たことは?」

さやか「ないけど……」

ほむら「あなたとはここでお別れよ。助け出してあげたのだから、文句はないわね」

さやか「あるわ!助けてもらったことには感謝してるけど、それはそれ!これはこれ!
    あんたに聞きたいことが山ほどあるんだけど!!」

ほむら「……」ジッ

さやか「っ……聞かれたくないって?」

ほむら「話が早いわね。今日は疲れたでしょうから、ポケモンセンターで休んで明日出発しなさい
    南に歩けばクサツタウン、西に歩けばトネシティがあるわ。どこかでまどか達と合流すればいい」

さやか「なんでここじゃ駄目なの?」

ほむら「私がここにいることを知られたくないからよ。勿論あなたも口外しないこと」

さやか「……そんなのあたしが守る保証ないじゃん。まさか、助けてあげたから言うなって?」

ほむら「そういうこ――」

さやか「嫌だ」

ほむら「なっ…!?あなたねえ!」

さやか「大体なんでまどか達に知られたくないわけ?会いたくない理由でもあるの?」

ほむら「……私はまどかにワルプルギスを協力して倒すように頼まれたの。でも私にその気はない
    変に話し合いをしようなどと言われたくないからよ……別にこの町でもいいけど、私のことは絶対に言わないで」

さやか「じゃああたしはどうやって脱出したことにするわけ?」

ほむら「そこのジュゴンとデスカーンに手伝ってもらったことにすればいいじゃない。そうすれば問題ないはずよ
    まあ、他に言い訳が思い付いたらポケモンセンターで電話でも何でもすればいいわ」

さやかは納得できなかった。
ほむらが頑なにまどか達を拒む理由が分からないからだ。

しかし問い詰めても絶対にほむらは話さないだろう。

詳しい状況は分からないが、ほむらのことを話すべきか悩んだ結果、さやかは何も言わないことにした。

ほむらへの恩を感じていたのはもちろんだが、彼女のどこか必死の思いを汲んでやりたくなったのだ。

結局言い訳はジュゴンとデスカーンに助けてもらったことにし、さやかはポケモンセンターを目指す。

ほむら「……」クルッ

さやか「あれ、どこ行くの?」

ほむら「どこって家に……」

さやか「家?家ってあんた、ミタキハラに帰るの?」

ほむら「……っ!」

さやか「何よその『しまった』って顔は……あんたまさか、この町に家持ってんの!?」

ほむら「さあ、なんのことかしら」ファサッ

さやか「今更誤魔化すんじゃない!」

ほむら「ぐるぐる!」バッ ウォーグル「ピェー!」バサッ

さやか「こら逃げるな!!」

ジュゴン「ゴーン!」ズリズリ デスカーン「ヒヒヒ」ノソッ

さやか「……そういえばあたしボール持ってないんだった……二人とも歩くのあんまし得意そうじゃないんだよねぇ」

結局ほむらを見失ってしまったさやかは追跡を諦め、ポケモンセンターを目指すことにした。

丘を下りて少し歩けば、それはすぐに見えてきた。

―ポケモンセンター―

ジョーイ「それではお預かりしますね」

さやか「お願いしま―す」

自然の多い町のせいか人は少なく、ポケモンセンター内も然りである。
エントランスにあるテレビからの音以外特別騒がしくもないが、耳を澄ますとどこかから小言が聞こえてきた。

男「ブツブツ……あそこでの演出は……ブツブツ……」 クロバット「……」

ベンチに座っている男は、隣のクロバットに見守られながら何やら呟いている。
もっさりした髪、髭、少し寄れたスーツ。

表情はやつれているようにも見える。

さやか(ビジネスマン……かな?)

ジョーイ「はい、お待たせしました。ボール、サービスしておくわね」

さやか「ありがとうございます。あの、ついでに電話とか貸してくれます?」

ジョーイ「いいですよ」

さやか「全くほむらのやつどこ行ったんだか」

男「ほむら!?」ガタッ

さやか「ッ!?」ビクッ

男「君ほむらの友達なんですか!?」

クロバットを連れた男は、駆け寄ってくるなりさやかの方を揺さぶり問いただし始めた。

男「どうなんです!?」

さやか「ちょっちょちょっと!なんなんですかいきなり!あんた誰!?」

ジョーイ「あら、あなたアキユキさんを知らないの?」

さやか「アキユキ?」

男「おっと、いきなり失礼でしたね。僕はこういうものです」スッ

さやか「名刺?えぇっと、『四天王 アキユキ』……四天王ッ!?あなたが!?」

アキユキ「見ての通りですとも」

見てのとおりと言われたが、先程の疲れた様子もあってか、やはりビジネスマンにしか見えなかった。

さやか(この人が四天王…?全然オーラが感じられないけど……)

アキユキ「君はあのほむらの知り合いなんですよね?」

さやか「まあ一応……その四天王さんがあいつに何の用なんですか?」

アキユキ「いやなに、今の僕は彼女に色々と指導している立場でしてね。見返りに面白い話を聞かせてくれるからこっちとしても教えがいがありますよ
     それで今日は姿が見えないからどこに行ったんだろうと思ってたんですが、彼女に会ったんですよね?」

さやか「さっきまで一緒にいましたけど……それより、教えてるって何を?」

アキユキ「勿論バトルのコツとかですよ。飲み込みも早いし自分なりの戦い方も見つけられるし、なかなか素質ありますね」

さやか「そうだったんだ……確かに強いなとは思ってたけど、まさか四天王の人に教えてもらってたなんて、そりゃ強いわけだ」

アキユキ「そうか、ほむらはもう帰って来たんですね。ちょっと寄ってみますか…クロバット、行こう」 クロバット「ッ!」コクコク

さやか「ちょっとあの!」

アキユキ「うん?どうかしました?」

さやか「あたしもほむらに会いたいけどどこにいるか知らないし、一緒についていってもいいですか?」

アキユキ「うーん、彼女が会いたがるかどうか……まあどうぞ、ご自由に。誰かに電話するんですかね?
     外にいるんで、準備が出来たら話しかけて下さい。そういえば、君名前は?」

さやか「ありがとうございます!あたし美樹さやか!!」

礼を言って、ジョーイさんからポケモンを受け取り、さやかは電話をかけることにした。
言いたいことはたくさんあるが、まずは自分が無事であることを報告したかった。

さやか「……」

待つこと一分。

電話は一向に繋がらなかった。

もしかしたらウィッチ団にやられて怪我をしているのではないか。
まさか私とは別の場所に捕まっていたのではないか。

様々な憶測を巡らせていたが、すぐに頭を振って嫌な予感を吹き飛ばした。

さやか(まどかなら大丈夫、あたしみたいにへまするはずない。マミさんだって付いてるんだし
    きっとあれだ、いつもみたいにマナーモードとかにしてるに違いない!うん、きっとそうだ)

さやか「すいません、出ないみたいなんで返事が来たらあとで掛け直すって伝えといてくれませんか?」

ジョーイ「分かったわ」

さやか「お願いしますね!」タタッ

ジョーイ「ちょっと、名前は!?」

声をかけた時にはすでに素早く走り出した後であり、さやかは名前を告げることなく出て行ってしまった。

ジョーイ「まったくもう……まあ、その内帰ってくるかしら」

さやか「お待たせしました」

アキユキ「おっ、ポケモン達も回復したんだね。ところで、さやかは陸と空どっちが好きです?」

さやか「え?うーん、どっちかっていうと陸かなぁ」

アキユキ「なるほど。ドラピオン!」ボンッ ドラピオン「ギャッ」

さやか「おぉ!初めて見た」

アキユキ「じゃ、さやかはこっちね」

さやか「こっち?」

アキユキ「僕はクロバットに乗っていくから」

さやか「いや、そんな急いで行かなくても――」

アキユキ「いやいや時間は大切にするべきですよ!特にほむらはすぐにどこかにいなくなってしまうんですから!」

さやか「うっ……分かった分かりましたよ!よろしくねドラピオン」

アキユキ「さあ行きますよ!」 クロバット「シャッ!」

さやか「うわっはやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

音も聞こえないほどの速度で飛び出したクロバットを、ドラピオンが高速移動で駆けだし後を追う。
さやかは、振り落とされないように首にしがみついていることしかできなかった。

最初こそ風を感じることしかできなかったが、少し速度に慣れた頃にゆっくり目を開ければ、先に広がる景色は雄大で、どこまでも続く山や川は圧巻だった。
牧場で走り回るギャロップやポニータを横目に、どんどん丘を登っていく。
鳥ポケモン達が飛び、森に住むポケモン達の鳴き声も聞こえ、水に住むポケモン達が時々跳ねて飛沫を輝かせる。

遠くには見えた湖では、太陽が反射しているのか、キラキラと青く光っている様子はとても綺麗で――

さやか「……ん?何で青色?普通あんな色に光ることなんてのわぁっ!」

ドラピオンの急な方向転換により、さやかが態勢を立て直した時には、湖はもう見えなくなっていた。

上空を行くアキユキ達は尚もスピードを上げ丘を登っていく。

いきなり、目の前には緑。

さやか「ドラピオン前!前!!」

さやかの命令は無視され、そのまま青々しい木々の立ちはだかる林に向かって突っ込んでいった。

ドラピオンは顔についている爪を振り回し木を薙ぎ倒しながら、速度を緩めず走り続ける。

ひいいいと甲高い雄叫びが響く中、顔にかかる葉っぱをわしゃわしゃと取り除き振り落とされないよう必死に手を回す。

アキユキ「ストップ!」

さやか「おわっ!」

その結果急ブレーキでドラピオンの首に顔をぶつけることになった。

さやか「痛つつ……なんですか一体」

アキユキ「ごめんごめん、ちょっと一緒に連れて行きたい人がいましてね」

さやか「一緒に?」

アキユキ「ここには彼女の仕事場があるんです」

さやか「仕事場って――っ!」

辺りを見回してさやかは絶句した。

トランセルの群れが木に張り付いてこちらを睨んでいたのだ。
明らかに林を破壊しながら進んできたさやか達を警戒している。

アキユキ「ウメ先生!いませんか?」

そんなトランセル達を無視して、アキユキは小さな小屋の扉を叩きウメと言う人を呼びだしている。

アキユキ「……いないのか」

ウメ「あ~さ~?」ガチャッ

アキユキ「もうすぐ夕方です」

彼女を見て、さやかはまず子供が出て来たのだと思った。

隣に並ぶアキユキと比べて、遠目からでも明らかにまどかと同じくらい背は低いし、顔立ちも幼く見えたからだ。

ウメ「そっかー……」

アキユキ「もしかしてお昼寝中でしたか?」

ウメ「んー、ちょっとね……あれ、そっちの子は?」

さやか「えっと、美樹さやかです……あの、どちらさまで?」

ウメ「ウメでーす。四天王のウメ」

さやか「四天王!?あなたが!?え、だって、こど……えっ?」

ウメ「どうも~」

アキユキ「そうそう、ほむらが帰って来たらしいですよ」

ウメ「おー!それは凄そう!私も行きますねー」

さやか「えぇ!?ひょっとしてあいつ四天王の人達に気に入られてんの!?」

ウメ「勿論だよ~、だってほむらちゃんはみら――」

アキユキ「ウメ先生、それ禁句です」

ウメ「あはは、ごめんなさい。じゃあ、作業は後回しで飛んでいこう!」

さやか「作業?そういえば、何でこんな森の中に?」

ウメ「ここが私の仕事場なのだ!」

アキユキ「先生は漫画家ですからね」

さやか「漫画家さん!?ほえー、漫画家で四天王なんてすご……」

アキユキ「あとの二人は家まで行くのが遠いし後でいいでしょう」

ウメ「レッツゴ~!」ボンッ バタフリー「フリ~」

アキユキ「行きますよさやか」スッ クロバット「バッ」

さやか「ちょっと待ってくださいって!」

すでに二人は空高く飛び上がって見えなくなりそうだった。
慌ててドラピオンの背中に乗り、再び木々をなぎ倒しながら抜けて行った。

ほどなくして、ウメの居たものとほぼ変わらない大きさの小屋が見えてきた。

ドラピオンもスピードを緩め、二人も降りて来た。

きっとここにほむらがいるのだろう。

さやか(あいつがあたしを遠ざけるのは、きっと誰にも知られたくない秘密があるからに違いない
    だからここにあたしが来て良かったのか分かんないけど……でも、このままほむらのこと何にも知らないままってのは嫌だ!)

さやか「ほむらー、いるんでしょ?あたしだよ、さやかだよ!アキユキさんにここ教えてもらったの!
    ウメ先生もいるよ!ねえてば!!」

ガチャッ

ほむら「……」

さやか「ほむ……ら?」

出てきた少女を見た時、初めは誰なのだろうと思った。

艶やかに染まる黒髪はほむらのようだが、髪型は今まで見たことないような三つ編み。
赤縁の眼鏡をかけていて、どこか表情が怯え気味であり、背中も少し丸まり気味、肩も委縮しているように縮こまっている。

しかしよく見ると、顔立ちはほむらそっくり……いや、ほむらそのものである。

いつもの凛とした表情のほむらとは全くの正反対なほむらが出て来たのかと思った。

さやか「えっ、あの……ほむら……だよね」

ウメ「あっその子ひょっとして」

さやか「へ――」

ほむら「ッ!」バキッ

さやか「ぐぇっ!」

後ろを振り返った瞬間、見事な腹部へのパンチが決まった。
完全な不意打ちである。

さやか「あがっ……な、なにすんのよこらぁーー!!」

ほむら?「……キシシ」

さやか「!?」

ほむら「やめなさい、彼女は私の知り合いよ」

さやかは本日何度目かの絶句をした。

同じ顔をした人物が同時に現れたら、誰だってそうなるだろう。

さやか「あれ、ほむら……?え、じゃあ、こっちのは……双子?」

ウメ「双子じゃないけどほむらちゃんは特べ――」

ほむら「それは秘密にと言ったはずよ」

ウメ「おっと、ごめんごめん」

アキユキ「彼女は双子ではないよ……ね?」

ほむら?「きゅおーーん」ボフン

さやか「――ッ!ポケモン!?」

アキユキ「このポケモンはゾロア……化けることで自分の身を守るポケモンですね」

ゾロア「キュァー」

さやか「それがなんでほむらに……まさかほむらのポケモンなの?」

ほむら「まあ、一応ね」

さやか「一応って、あんたね……」

アキユキ「さて、久しぶりですねほむら」

ウメ「おひさし~」

ほむら「どうも。なんですか二人揃って」

さやか「あたしもいるっての!!」

ほむら「ちゃんとまどかに連絡出来たんでしょうね?私のこと、話したりしてないわよね…?」

さやか「残念!」

ほむら「ッ!まさか!!」

さやか「電話繋がらなかったんだよね…後でまた掛け直すよ」

ほむら「……」

さやか「何よその目は……あんたに言われた通りなんも言ってないよ、まだね」

アキユキ「それで、今日はまたどうして帰って来たんです?ナハトさんに負けたんですか?」

さやか「ッ!?」

ほむら「ワルプルギスはいなかったわ。そのついでに連れて帰ったのがさやかよ」

ウメ「そっか~、残念だったね」

さやか「そうだよ、ナハトさんを止めるなら相当な実力が必要……それこそ四天王クラスの……
    なんで二人ともこんなところでのんびりしてるんですか!?ひょっとして、今ナハトさんが何やってるか知らないんですか!?」

アキユキ「知ってますよ。才気溢れるポケモンのみ残し、バトルで賑わう世界にする。娯楽や芸術は全て排除するとも聞いてますね」

さやか「分かってるならなんで――」

ウメ「やだなあさやかちゃん、芸術が無くなるわけないじゃん」

さやか「え…?」

アキユキ「娯楽もそうだけど、世の中に人とポケモンがいる限り、芸術はなくならないよ
     想像力は無限大で、インスピレーションは常にどこにでも溢れている。僕達はそれをどう形にするか各々の好きなことで考えた結果、
     ウメ先生は漫画、僕は監督、ナハトさんはバトルだったというだけです」

さやか「……」

アキユキ「音楽も小説も映画も漫画も、ポケモンバトルさえ、全ては人とポケモンの生み出す想像の産物なんです
     正直言って、ナハトさんの望む世界には少し興味があります。彼女の言いたいことは、彼女にしか分からない
     だったら一度そういう世界にしてしまうのもありなんじゃないかとさえ思います」

さやか「そんなの、駄目に決まってるじゃないですか!」

アキユキ「さっきも言いましたが、僕達のやりたいことが消えることは決してあり得ませんからね
     人とポケモンを切り離しでもしない限り…いえ、例え切り離されようとも新しい創造が得られるなら、僕はナハトさんを全力で止めることはできません」

さやか「それでも……それでもあたしは、あの人のやろうとしてることが正しいとは思いません」

ほむら「その通りよ。私にだって碌なことじゃないことくらい分かるわ」

アキユキ「だから僕は傍観者になることに決めたんです。正確には僕達、ですけど」

さやか「まさか、他の四天王の人も?」

ウメ「うん。ごめんね~」

ほむら「こういう人たちなのよ四天王は……まあ、多少は私の肩を持ってくれたりもしてるんだけど」

さやか「そういえばそうだよ、なんであんた四天王と知り合いなわけ?」

ほむら「言われなかった?色々教えてもらっていたのよ」

さやか「だから、何でそういう関係になったか聞いてんの!」

ほむら「それは……」

アキユキ「まだ言わない方がいいですよね?あなたのこと誰にも言ってないんでしょう?」

ほむら「……そうね」

さやか「……なによ、同級生のあたしらよりナハトさんを黙って見てる四天王さんを信用してるわけ?」

ウメ「余計なことを言って心配させたくないだけだよきっと」

ほむら「……」

さやか「…………あぁそう、分かったわよ!あんたがなんでここにいるのかとか、なんでそんなにまどか達に会いたくないのかとか……
    色々聞きたかったけど、ほむらがあたしらを信用してないっていうんなら、あたしもあんたを信用しない!
    元々そんなに話したりしたこともなかったし、その方が気楽でいいし、もう勝手にしろ!!」スタスタ

ほむら「どこに行くの?」

さやか「あんたには言わない!」

ウメ「あーあ、行っちゃったよ?」

アキユキ「ドラピオンに乗ってきたから結構遠いと思いますけどね」

ほむら「……まあいいわ。さやかがいない方が都合がいいもの」

アキユキ「それもそうかもしれませんね。さ、もう出てきてもいいんじゃないですか」

ウメ「ゾロアの図鑑説明、もう少し詳しく教えてあげたら面白かったかも」

ほむら「相手の姿に化けてみせて驚かせる。無口な子供に化けていることが多いらしい……無口じゃないわ、少し大人しいだけよ」

ゾロア「きゅふぉ」

???「……もういいんですか?」

ほむら「えぇ、さやかはもういないわ」

???「そっか……ノックされた時出た方がいいかなって思ったんだけど、やっぱりまだ会っちゃ駄目なのかな」

ほむら「もう少しだけ待って……ごめん……こんなところに閉じ込めてしまって」

???「大丈夫だよ、私は平気…それにほら、こういう空気の美味しいところで療養するのも悪くないんじゃないかな」

この小屋の本当の主が小さな声で会話をする。
ゾロアの毛よりもずっと深い黒をした髪は丁寧に三つ編みにされており、赤縁の眼鏡の向こうではどこか怯えているような眼をしている。

顔も背丈も全く同じ、先程ゾロアが化けていたもう一人のほむらがそこにいた。

さやかはジュゴンとデスカーンを従え、来た道をまっすぐ歩いていた。。

さやか「なんなんだよ全く……ムカつく!!」

ドラピオンの通った道には爪の跡と押し潰された草木が残っていたから、通るべき道はすぐに分かった。

しかしさやかの想像以上にというべきか、アキユキの想像通りと言うべきか。
下り坂になっているとはいえ、ポケモンセンターへの道のりは長かった。

さやか「あーあ、こんなペースじゃ日が暮れちゃうよ……」

男「なあもし、そこの君」

さやか「はい?」

声をかけてきたのは、オールバックで黒いポロシャツにジーンズの中年男性だった。
少し顔が厳ついことや傍らにズルズキンがいたもあって、暴走族の類なのではないかと一瞬身構えた。

彼の横にはラプラスに乗った、暖かい季節だというのに、黒いコートとマフラーを着込む栗色の髪を靡かせる女性が笑みを向けている。

男「君あれだ、さやかでしょ」

さやか「――ッ!なんであたしの名前を!?」

男「あぁ、そんな身構えなくていいって。アキユキさんにさっき電話貰ったんだよ」

さやか「!……まさかあなた、四天王とか言うんじゃないでしょうね…?」

男「おう!まさしく俺は四天王、ゲン!」 ズルズキン「ズキュ」

さやか「しっしっ!」

ゲン「あれ?何その反応……」

さやか「残念ですけど、あたしはナハトさんを放っておくような人達とは話したくありませんから」

女「クスッ、ゲンさんの顔が怖いからじゃない?」

さやか「……なんとなくですけど、やっぱりあなたも?」

女「私はユキ、四天王を務めてます。四人揃ってマギカカルテット、よろしくね」 ラプラス「ファ~」

さやか「フンだ!」プイッ

ユキ「あら、やっぱり四天王ってだけで駄目か」

さやか「で、その四天王さんが何か用ですか」

ゲン「いやまあ、ポケセンまで遠いだろうから手伝ってやってくれって言われてさ」

さやか「余計なお世話で……って、なんであたしがポケセンに行くって知ってんの!」

ユキ「やっぱり他に行くとこが無いからじゃない?来たばっかりなんでしょ?」

さやか「ぐっ……」

ゲン「図星ってわけだ。俺のドンカラスで送ってってやってもいいが、どうする?」

さやか「結構です!歩けますから!!」

ゲン「へぇーそう……ちなみにさやかはどんなポケモン持ってんの?」

さやか「…?今はジュゴンとデスカーンだけだけど」

ユキ「なんだ、ジュゴンいるんじゃん!だったら楽勝だね」

ゲン「まあ確かに」

さやか「はぁ?」

ゲン「ちょっと出してみなよ」

さやか「なによ、勝負でもしようっての?」

ゲン「ん、それでもいいぞ。ナハトを止めたいってんならどんだけ強いか見てやろう」

さやか「ッ!」

ユキ「ちょっとゲンさん、そういうのは可哀相だよ」

さやか「――ッ!そっちこそ、本当は弱いから怖気づいてんじゃないの!?ゴンすけ!!デスか!!」ボボンッ

ユキ「ほら、ノってきちゃったよ」

ゲン「いってこいズルズキン」

さやか(一匹だけ…!?自信があるのか、それとも……あたしが舐められてるのか…!)

さやか「ゴンすけ"ずつき"!」

ジュゴンはズルズキンに向かって飛び上がった。

しかし水中で暮らしてきたジュゴンにとって、陸上でのまともな戦闘は初めてである。
どれほどの力で跳ねればいいのか、どう着地すればいいのか、ほとんど考えずに思い切り飛び上がったのだ。

さやかは「しまった」と思った。

今まで一緒に戦ってきたポケモン達は陸上での戦闘に慣れたポケモン達であり、当然
走って向かって行くものだと思っていたのだ。

流石のさやかでも、相手が止まっていてくれるほど呑気ではないことは分かる。

案の定簡単に見切られ、ジュゴンは地面に頭から突っ込んでしまった。

ゲン「……もしかして、"ずつき"を使わせたのは初めてか?」

さやか「そ、そりゃ捕まえたばっかりだし……だったらデスか"シャドーボール"!!」

ドォーン

さやか「やった!これなら――」

ズルズキン「……」ボケー

さやか「効いてない!?」

ゲン「タイプ相性は良くないし、"ドわすれ"で特殊攻撃に強くなっていたからな。当たり前よ」

さやか「っ……ゴンすけ!"れいとう――」

ゲン「"とびひざげり"」

埋めた顔を上げた途端、攻撃の前に強烈な蹴り技が炸裂し、ジュゴンの重い身体がボールでも蹴ったように飛んだ。

さやか「ゴンすけ!」

ゲン「"しっぺがえし"」

さやか「――ッ!」

ジュゴンに気を取られた一瞬で、ズルズキンは力を溜め即座に次の攻撃を決めた。

結局双方一撃でノックアウトされてしまった。

ゲン「ズルズキンは悪・格闘タイプ……氷タイプを持つジュゴンとゴーストタイプのデスカーンには強いってわけ」

ユキ「まあ、普通にレベルと経験の差があったみたいだね。二匹ともあんまり育ってないみたい」

さやか「……そりゃ捕まえたばっかりだったし……今まで一緒に戦ってたポケモンがいなかったし!」

ゲン「まあ言い訳は何でもいいけどさ、そんなんでなにが出来るんだい」

さやか「それは……」

ゲン「君の信念だとか、意志だとか、そういうものに従って行動したいという気持ちは理解できる
   でもね、それに伴う実力がないのに何かをやりたいってのは無理なんだよ。ただ空回りするだけさ」

さやか「……」

ユキ「まあまあいいじゃないのそういうのは!ほら、きずぐすりで回復してあげるから」

さやか「……ポケモンを戦う道具としか見ないのって、おかしいと思う」

ユキ「うん」

さやか「強かったら良くて、弱かったら駄目なんて、それじゃあ弱い方のポケモンはどうなるの
    せっかく生まれてきたのに、才能ないから「はいさようなら」って捨てられて……それでその子たちは納得できるの」

ユキ「そうだね」

さやか「弱くたってなんだって、生きてるんだよ!それなのに存在を否定するようなこと許していいの!?
    そんなの悪いことに決まってんじゃん!!なんであんた達は動こうとしないの!?」

ゲン「そうだな……結局のところ、俺も弱い人間なんだ」

さやか「弱い…?」

ユキ「うん。私も四天王なんて言われてるけど、結局のところ曲作ってるだけの人間なんだよ」

ゲン「言っとくけど、うちのポケモン達は強い。でも、俺は駄目だ……ナハトのやることを止められるほど立派じゃない
   なんというか……あの人の言うことも一理あると思ってしまう自分がいるんだ」

ユキ「私も一瞬だけなるほどって思っちゃった……そういう考え方も、ひょっとしたらアリなのかもしれないって」

さやか「そんなの……そんなのおかしいよ!!」

ゲン「そう思うのは自由だ……さやかは旅をしてたんだったかな」

さやか「……それ、誰から?」

ゲン「ほむらだ」

さやか「あいつ一体何話してんのよ……」

ゲン「一緒に旅をしてる友達がいたらしいが、その子と比べてさやかはどうだ?」

さやか「どうって?」

ゲン「ポケモンバトルが強いか弱いか、って意味」

さやか「……」

ゲン「まあそれ自体はどっちでもいいんだけど、ポケモントレーナーを名乗る以上、強くなることを求めるのは誰だって経験する
   その方法としてナハトのやり方は一つの方法として間違ってはいないんだよ……ま、人としてどうかってのはあるかもしれないけどな」

さやか「あたしは……」

強くなりたいと思った。

ウィッチ団を倒せるくらい強くなりたいと。

しかし実際は手も足も出なかった。

それどころか敵に捕まってしまい、大事なポケモン達を利用されてしまった。

ほむらが来なければなにも出来ず、暗い部屋の中で膝を抱えているしかなかったのだ。

強くならなければならない。

旅をする中でジムリーダーとバトルもしたし、まどかや杏子達と一緒に修行もした。

だがそれだけでは足りないのだ。

さやか「強くなる……強くなりたい…!でもウィッチ団の考え方は間違ってると思うから、あいつらとは違うやり方で強くなる!」

ポケモンの才能などではなく、努力と作戦で勝つしかないのだ。

ゲン「違うやり方ねぇ……まあ、俺は直接何かをするつもりはないが、協力ならしてもいい」

さやか「はぁ?」

ユキ「はい、これで回復終了!」

さやか「ありがとうございます……そういえば、結局この子らでなにがしたかったの?」

ゲン「あぁそうだ、すっかり忘れてた」

ユキ「ようするに、ポケモンとの付き合い方がなってないねって話」

さやか「な、なにをー!?」

ユキ「お手本を見せてあげよっか。ラプラス!」

ラプラスのオーロラビームや吹雪によって一面氷景色になったかと思うと、ユキが素早くラプラスの背中に乗り颯爽と氷の坂を滑っていった。
さらに続く道を冷凍ビームで作り続けどんどん丘を下っていく。

さやか「早っ……」

ゲン「説明なしで行っちゃったよ……まあ、ああいうことだよ。早く行ける方法があるのに歩かせるなんて、ポケモンも疲れるだけだろ」

さやか「なっなるほど」

ゲン「慣れないうちはデスカーンに"サイコキネシス"とかさせれば安定するかもしれんが、習うより慣れろだな」

さやか「むぅ……なんか気に食わないけど、確かにその手があったかって感じ」

ゲン「気に食わないって……人から物を教わるのは嫌いか?」

さやか「教えてくれる人による」

ゲン「ハハッ、正直だな。せっかくだからユキの作った方は壊しとくか」

さやか「なんでもいいよ。ゴンすけ、"れいとうビーム"!!」

ラプラスほどではないが白い氷の世界が作られる。

さやか「よしっ、今度はあたしがあだっ!」ゴンッ

ジュゴンの体毛で見事にお尻からすっ転んだ。

イメージではユキのように完璧な乗り込みだったが、現実は甘くなかった。

さやか「気を取り直して……」

ジュゴンの背中に腰を下ろし、ゆっくりと前進させる。
既にゲンの姿はなく、氷を砕きながら坂を下っているようだった。
割れた氷と抉れた土が進行方向に立ちふさがる。

さやか「構うもんか!行くよゴンすけ!!」

デスカーンはボールに戻しておき、ジェットコースターがトップから落ちるように発信した。

さやか「おおぉぉぉぉおぉおおぉぉぉ!!!!」

コントロールは完全にジュゴンに任せ、さやかは落ちないように必死にしがみついていた。
来た時と違いスピードは上がり続け、おまけに不安定な路面ということもあり、全く景色を見る余裕などなかったのだ。

さやか「わわっ!?」

勢いは止まらず岩に乗り空中に舞い上がる。

さやか「"れ、れいとうビーム"!」

すかさず着地に氷の道を形成し、振り落とされそうになりながら尚も丘を下る。
次第に町並みが見え始め、ポケモンセンターの屋根も見えてきた。

本当にあっという間に辿りつけたことに、少し複雑ながら二人に心の中でお礼を言った――

さやか「……あれ」

のはほんの一瞬で、止まる時の事を教えてもらってないことに気が付いた。

さやか「どどどどうすんのおおぉぉぉぉぉ~~~~~!!!!!」

ドッジャァーンと派手な音を立て、さやかとジュゴンはポケモンセンターの壁に激突した。

体が浮いた瞬間、少し離れたところに季節外れの雪で出来た色い壁が見えた。

そしてさやかは理解した。

さやか(あぁそっか、ゴンすけに"ふぶき"で雪のクッション作らせればよかったの――)

ズシャァッ

ユキ「大丈夫?」 ラプラス「ラ~?」

視界はぐらぐらと歪み、ユキが話しているのかラプラスが話しているのか分からなかったが、どうにか「ふぁい」とだけ返事はできた。

ゲン「ハハハ、早かったなぁ。最後はなかなかの止まりっぷりだったけどな」 ドンカラス「カァ!」

いつの間に抜いていたのか、ドンカラスに乗ったゲンも後から降り立った。

ユキ「ごめんね?つい先に行っちゃって……無事ポケセンについて良かったね!」

さやか「全然無事じゃないって……ゴンすけ大丈夫?」

ジュゴン「ンゴゴ……」

ゲン「ところで、ポケセンに帰ってきて何するつもりだったわけ?」

さやか「何って……そうだ電話!もう来てるかも!!」シュパン

ユキ「元気だねー」

ゲン「若いってのはいいことだな」

ポケモンセンターには相変わらず人気が無く、ジョーイさんが退屈そうにしていた。
勿論さやかが入ってきたのを見てすぐに笑顔になったのは、彼女が仕事熱心だからであろう。

ジョーイ「ポケモンセンターへようこそ!あら、あなたさっきの」

さやか「すいません電話来てないですか!?」

ジョーイ「ちょっと前に掛かってきたのよ。でもあなた名前言わなかったでしょ?
     だからあなたの特徴伝えておこうと思ったんだけど忙しかったみたいで先に切られちゃって」

さやか「掛かってきてたんだ……良かった」

とりあえずまどかの無事が確認出来ただけで既に泣きそうになっていたが、頬を叩いて気を引き締めて再び電話を掛けた。

まどか『もしもし?』

その声を聞いた瞬間、さやかは頬が濡れたのを感じた。
今までのモヤモヤも先程までのムカムカも綺麗さっぱりなくなり、心から安心した。

さやか「まどか!よかった、無事だったんだね!!」

まどか『えっ?……その声、さやかちゃん!?』

さやか「そうだよ!あたし美樹さやか!!」

まどか『なんで!?だって、捕まってたんじゃ――』

杏子『さやかだと!?おいどういうことだ説明しろ!!』

マミ『聞こえてるの美樹さん!?今どこにいるの!?』

さやか「良かった、マミさんも無事だ……それになんで杏子がいるんだか」

何やら電話の向こうでは騒がしいことになっているようだが、ほっと胸をなでおろした。
杏子がいることには驚いたが、一緒に旅をしてきた友人達が無事であることに安堵したのだ。

恭介『さやか!?聞こえるかい!?』

さやか「……え?」

だからというべきか、幼馴染の声が聞こえたのは完全に不意打ちだった。

恭介『電話してこれてるってことは無事なんだよね!?さやか!?』

さやか「あの、えっと、ちょっと待ってほしいんだけ――」

恭介『もしもし!?僕だよ、上条恭介だよ!』

まどか『みんな落ち着いて!さやかちゃん聞こえてる?さっきのジョーイさんが言ってたけど、今ユウマタウンにいるの?』

さやか「あ、うん……そうなんだけど……あの、聞いてもいいかな?」

まどか『なに?』

さやか「なんで恭介がいるの?みんな今どこにいるわけ?」

まどか『今ね、みんなでトネシティに来てるんだよ。そこでいろいろあって上条君と会ったりして』

さやか「トネシティ……あぁ、ポケ団のやつか……」

予想外な恭介の登場で、涙は一瞬で吹き飛んでしまった。
今日はつくづくいろいろある日だと、今度は笑いそうになる。

まどか『いろいろっていうのがホント大変だったんだけど……さやかちゃん、無事でよかった』グスッ

さやか「こっちこそごめん、心配かけたね」

タヴィア『すごいねあんた、どうやって逃げ出したの?』

さやか「それはちょっと秘密で……あんた誰!?」

タヴィア『さーて誰でしょう――あっ』

まどか『もう!タヴィアちゃんいきなりポケータイ取らないでよ』

さやか「タヴィア…?どっかで聞いたような……あっ」

思い出した瞬間笑顔が一気に引きつった。

苦しむ自分を見てにやにやしていた自分自身が、確かにタヴィアと名乗っていた。

さやか「なっなんでそいつがそこにいるの!?そいつウィッチ団でしょ!?」

まどか『だからいろいろあったんだってば……いろいろ話したいことあるんだけど、さやかちゃんこっちに来れる?
    あっ、でももうすぐ夜だしポケモン持ってないから無理かな?』

さやか「そこは大丈夫!こっちもいろいろあって新しいポケモン捕まえたとこなんだから!」

まどか『そうなの!?やったねさやかちゃん!実は私も新しい子が増えたんだよ!!』

ゲン「使い方はまだまだだけどな」

さやか「ちょっと!後ろから突っ込まないでくれる?」

ゲン「おっと悪い悪い」

まどか『今の誰…?』

さやか「あぁなんでもないよ……そっか、まどかもポケモン捕まえたんだ。場所も分かったしいろいろ聞きたいし、今からトネシティ行くね」

杏子『いや待て、お前はそこにいろ』

まどか『杏子ちゃん?』

杏子『あたしがムクで行って連れて帰った方が早い。ついでにさやかのポケモンも持ってってやるよ』

さやか「ありがと杏子。すぐ戻るからみんな待っててね」

まどか『うん、待ってる。確かにちょっと急いだ方がいいみたいだし……』

さやか「え?なんで?」

まどか『えっとその……やっぱり帰ってきてからにするね!』

さやか「…?うん」

タヴィアが恭介に惚れたということは内緒にした方がいいだろうと、まどかはそう判断した。
すぐに大騒ぎになるだろうが、悶々とさせたままにするのは忍びないと思ってのことだ。

まどか『じゃあさやかちゃん、またあとでね』

さやか「うん!マミさんにもよろしく」

恭介『あぁ待って鹿目さん!』

まどか『上条君?』

さやか「恭介?な、なんか用?」

恭介『本当に無事で良かった……鹿目さん達はウィッチ団と戦う気満々だし、やっぱりさやかも戦うつもりなのかい?』

さやか「うん……当たり前じゃん!」

恭介『また捕まったりするかもしれないんだよ?それでも?』

さやか「それでも、だよ。あたしは一度決めたことを簡単に投げ出したくないから」

恭介『……分かった……怪我には気を付けてね』

さやか「分かってるって!そういうのは後でちゃんと聞いたげるからさ!だから、えっと……またね」

気恥かしさから素早く電話を切った途端、みんなに会えるという安心感から体中の力が抜けてへたり込んでしまった。

捕まっていたと思ったらほむらに再会し、ジュゴンとデスカーンに出会って仲間にし、
ウィッチ団から逃げ出したら四天王に出会い、まどか達と連絡を取ると恭介がいて……

さやか「はぁ……とりあえず、みんな無事で良かった」

ユキ「良かったねさやかちゃん、お友達が来てくれるんだ」

さやか「まあ、そういう感じ」

ゲン「青春だねぇ。俺も若いころはいろいろ歩いて回ったっけか」

さやか「さてと、杏子が来るまで待つとしますか!そういえば、ほむらと杏子ってあったことないんだっけ……
    図鑑所有者同士面識くらいあった方がいいよね、やっぱり。でも内緒にしてくれって言ってたしなあ」

ゲン「しまった!すっかり忘れてた!!」

ユキ「ほむらちゃん来てたんだっけ…久しぶりに会いに行かなきゃ」

さやか「あの二人もだったけど、四天王ってなんでそんなほむらに入れ込んでんの?」

ゲン「そりゃほむらが……っと、なんでもないなんでもない」

さやか「……なーんか隠してるよね。あいつにどんな秘密があるってのよ」

ゲン「ヒ・ミ・ツ」

さやか「……」

ユキ「早く行こうゲンさん。さやかちゃんが疑心暗鬼の冷たい目をしてる」

ゲン「バイビー!」

さやか「ちょっ待ちなさいよ!」

二人はドンカラスに乗ってほむらのいた小屋に向かって飛んで行った。

追いかけたい気持ちでいっぱいだったが、すぐに杏子が来る事を思い出し、その場で待つことにした。

その代わり、杏子が来たら二人でほむらの秘密を暴きに行こうと、密かに決心もした。

お待たせしてごめんなさい
杏子と合流まで書きたかったんだけど仕方ない
四天王が遂にそのベールを脱ぎましたが、あまり出しゃばることはないはずです
オリキャラだし…
本来のカルテットと四人目が違うのは仕様、会社擬人化とか勘弁

いい加減くどいくらい意志意志言ってるからピンと来てる人もいるでしょう

GWにどこまで書けるか分かりませんが頑張ります

復ッ活ッ!俺復ッ活ッ!復ッ活ッ!

一カ月以上開いたけど投下しまする

再び時は少し戻り、まどか達へ。

ユウリが電話を切ってからしばらく沈黙が支配していた。

ジムリーダーの最後の一人がいない……

それどころか、彼がロボットであったという事実が、否が応でもウィッチ団との関係を連想させる。

一体いつから、どこまで手を回していたのか。

誰もが空恐ろしくなっていた。

タヴィア「い、いやぁー、まさかジムリーダーがロボットだったとはねー!衝撃の事実ですなー」 トドグラー「アウアウ!」

ユウリ「……その分だとお前も知らなかったのか……くそっ、どこまでアタシらをコケにすれば気が済むんだ!!」

アイリ「かずみちゃん達には一回帰ってきてもらうとして、あとは海香達の情報に期待するしかないね」

杏子「どうだかな……そんな情報があったらナハトはとっくに潰してそうなもんだが」

ユウリ「そうね、あまり期待は出来ないか」

アイリ(ユウリが杏子に同意した……それだけちょっと参ってるってことかな)

タヴィア「あー、ゴホン……その情報に関してなんだけど、ちょっといい?」

まどか「タヴィアちゃん?」

タヴィア「実はヒントになりそうな本があったりして」

閉館した図書館をジムリーダーの特権で無理矢理開けてもらい、まどか達は本を探していた。

タヴィアが読んだ本に書いてあった内容を皆で確認するためである。

恭介「うわぁ、こんなにたくさん本を読んでたんだね」

タヴィア「にしても、よくタイトル覚えてたね。あたしですら忘れてたのに」

まどか「うん。あの時からさやかちゃんじゃないって思ってたから、タヴィアちゃんの読んだ本のタイトルはメモしてたの」

タヴィア「ほほう……やりおる」

マミ「ナイス機転よ鹿目さん。トレーナーとして成長した結果かしらね」

まどか「そ、そんなことないですよ!……ほら、見つけました!!『グンマー地方伝承記Ⅶ』」

杏子「で、どんな話だったんだ」

タヴィア「まあ、読めば分かるって」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

その昔、グンマーは人もポケモンも住み着けない荒れ果てた土地だった。

やがてそこに一匹のポケモンが現れた。

巨大な影のポケモンは、大地を荒らしてまわった。

そこから草が芽吹き、炎が灯り、水が湧いた。

三つの湖からポケモンが現れた。

三つのポケモンが祈り、「心」が広がった。

ある者は感情を以って皆の気持ちを一つにした。

ある者は意志を以って皆と行動を起こした。

ある者は知識を以って皆を支えた。

三つのポケモンと人が祈り、影のポケモンは影の世界に帰って行った。

やがてグンマーは豊かになり、人やポケモンが住み始めた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

マミ「また湖の話ね……この絵に描かれてるのはギラティナかしら?私達が見たのと少し違うようだけど」

ナハトのギラティナには太い脚があったが、描かれているのは蛇のような長い身体から骨のような羽が生えているだけだった。

杏子「全く違うって感じでもねーけどな。とにかく、湖にいるポケモンがギラティナを押さえられるかもしれないってわけだ」

まどか「私達は湖を調べに行こう!そのポケモンに会えるかとか分かんないけど、とにかく行こう!」

恭介「えっと、僕は……」

杏子「無理すんなよ。さやかが心配なのは分かってるけど、今のあんたに何か出来るわけじゃないだろ」

恭介「それは!……そう、だけど」

タヴィア「じゃあじゃあ、上条君は私と一緒にデー――」

恭介「とりあえず、明日一回家に帰らなきゃならないから、それからまた考えるよ。さやかの両親にも、伝えた方がいいだろうし」

タヴィア「ちぇっ」

まどか「あっ……やっぱり、言った方がいい、かな…?」

マミ「あんまり心配かけたくないけど、言うべきでしょうね。私も事件に関わってることは言ってないから、言わないと駄目なんでしょうけど
   言ったら『危ないことはやめなさい』って言われないかがちょっと不安ね」

杏子「まどかはどうなんだ?そういえば連絡してないよな?」

まどか「う、うん……色々あって言う機会もなかったし、私も余計な心配掛けたくなかったし……」

杏子「ま、その話は後にするか。とりあえず今日はもう遅いからポケセンに帰ろうぜ」

マミ「そうね。明日また出掛けることにしましょう」

まどか「そうだね、ママなんて言うかな……あれ?」

電話を掛けるべきか、一応携帯を見て考えようとポケットから取り出すと、着信履歴が残っていた。

まどかの知らない番号からである。

まどか「誰だろ?」

アイリ「おーい、もういいかなー?」

マミ「えぇ、今出るわ」

図書館を後にして、アイリとユウリはマエバシシティに向かうと言った。

アイリ「そこでみんなと合流することにしてるからね。じゃあね、バイバーイ」

ユウリ「フーディン"テレポート"」

それから名残惜しそうなタヴィアを余所に、五人は恭介のホテルに向かっていた。

まどか「そういえばさっき電話来てたんだけど誰からだったんだろ」

マミ「知らない番号なの?」

まどか「これなんですけど」

マミ「……!これ、多分ポケモンセンターからよ。場所は分からないけど」

まどか「ポケモンセンター?」

マミ「ポケモンセンターの電話番号って、ここのところが0から始まるの」

タヴィア「おぉ、豆知識!」

マミ「掛け直してみたらどうかしら?」

まどか「そうですね」

ジョーイ『はい、こちらユウマタウンポケモンセンターです』

まどか「ユウマ…タウン?」

ジョーイ『どういったご用件でしょうか?』

まどか「あの、私少し前に電話貰った鹿目まどかと言いますけど」

ジョーイ『あら、お電話ありがとうございます。でもごめんなさいね、あなたに電話掛けた子、今いないのよ』

まどか「そうなんですか?」

ジョーイ『しかも名前聞く前に飛び出して行ってしまって』

まどか「そうなんですか……」

ジョーイ『そうだわ、あの子の見た目とか教えるから――』

杏子「おいまどか、坊やのホテルに着いたぞ」

まどか「うん、分かった。すいません、あとでまた掛けます」

ジョーイ『え、ちょっと!』

ジョーイが何か言おうとしていたことに気付かず、まどかは電話を切り四人に駆け寄っていった。

もっとも、まどか達が恭介に別れをしているその最中に再び呼び鈴が響いたのだが。

それから後のことは先に述べた通り。

さやかからの電話を受け取り、杏子がムクホークに乗ってユウマタウンに向かった。

恭介はようやく安心したのか肩を撫でおろし、ホテルに入っていった。

ポケセンに向かうのは、残った三人だけである。

まどか「なんだかいろんなことがありましたね」

マミ「本当にそうね」

タヴィア「あたしもまさかウィッチ団やめることになってるとは思わなかったよ」

まどか「あはは、それもそうだね」

辺りはすっかり暗くなっていた。
今日はポケモンセンターに泊まり、明日になったらさやかと再会。

それからみんなで湖に向かう。

そうまどかは思っていた。

???「へぇ、本当にこの街にいたんだな」

まどか「――っ!?」

マミ「な、あなた誰ですか!」

まどか「嘘、なんで……」

ポケモンセンターが見える大きさまで近付いたところで、まどかは背後から呼び止められた。
バリヤードとトゲキッスを傍らに佇むスーツ姿の彼女は、じっとまどかを見つめていた。

タヴィア「ちょっとなんなのあんた。なんか用でもあるわけ?」

???「さやかちゃんが見当たらねーな。そっちのがマミちゃんだっけ。あんた名前は?」

タヴィア「オクタヴィアだけど、あんたこそ何者なわけ?」

???「あたし?あたしはね――」

まどか「ママ……なんで?」

タヴィア「ママ!?」

マミ「ってことは、鹿目さんのお母様!?」

詢子「鹿目詢子だよ。まどかがいつも世話になってるみたいでありがとね」

マミ「こ、こちらこそ!」

まどか「どうしてここにいるの!?だって、お仕事あるはずなのに……」

詢子「終わったさ。ちょっと古い知り合いにまどかがここにいるって聞いてね。他にもいろいろ話したけど
   あ、シャリーは母さんに頼んで送ってもらったのさ」

まどか「知り合い…?」

詢子「ナハトだよ」

まどか「――ッ!?」

タヴィア「どういうこと!?なんでナハト様がまどかのお母さんに!?」

詢子「大した仲じゃないよ。昔戦ったことがあるってだけさ」

マミ「でも、それだけの理由で?」

詢子「んー、なんだか昔はあたしのこと気に入ってくれてたみたいなんだよね。今はトレーナーやめちゃったし、そうでもないみたいだけど
   実際のところ、まどかのことも気になってるんだってさ」

まどか「私を?ナハトさんが?」

詢子「こないだのマエバシシティでの事件の時、幹部を倒したらしいじゃないか。それでまどかなら少しは面白そうな勝負をしてくれるって
   なんだかまどかに強くなってもらって、バトルするのを望んでるみたいなんだよね」

まどか「私がナハトさんと、バトル?」

詢子「なんだい、ウィッチ団と戦うつもりだったんじゃなかったのか?」

まどか「それは……」

ジムリーダーでもない自分に何が出来るのか、まどかは考えていた。

幹部は無理でも、他の団員の足を止めるくらいなら出来るだろう。
ナハトを止める為の手助けも出来るだろう。

しかしバトルだなんてとんでもない。

自分がナハトと戦えるようなトレーナーだとは、とても思えていなかった。

詢子「戦うつもりはないってか?」

まどか「私なんかじゃ足手まといになっちゃうよ。ミチルちゃん達の手助けなら出来ると思うけど、バトルなんて……」

詢子「……そうか」

マミ「あの、確かに危険なことだと思いますけど、鹿目さんは何度かウィッチ団と戦ってきたんです。最後まで戦わせてあげて下さい!」

詢子「その説得は、あたしがまどかを止めると思ったからか?」

マミ「え?違うんですか…?」

詢子「まどかが自分で旅に出たいと言って、弱音も吐かず頑張ってきたんだ。辛かったら帰って来いって言っても、旅の報告に一度寄っただけ
   ポケモン図鑑のことも投げ出すなって言ったら、ちゃんとやると言ったし実際頑張ってるようだ。そういうまどかのことは誇りに思ってる
   まどかがやりたいっていうんなら、それでいい。戦いたいなら止めたりはしないさ」

マミ「じゃあ、旅をやめろとかウィッチ団と戦うな、なんて言ったりは……」

詢子「言うわけないだろ。まどかがやる気ならとことん突っ走るしかないんだからさ」

まどか「良かった……ありがとうママ」

詢子「って、さっきまでは思ってたんだけどな……」

まどマミ「えっ?」

詢子「なんだまどか、久々に会ったら気合いが足んないんじゃねーのか」

まどか「私は、私に出来ることがみんなの手伝いぐらいだからと思って――」

詢子「分かったもういい。そこまで言うんなら……まどか、帰るぞ」

まどか「そ、そんな!」

マミ「待って下さい!どうしてですか!?」

詢子「マミちゃん、あたしはまどかがウィッチ団と、ナハトと戦いたいと思ってるもんだと思って発破かけに来たんだ
   ところがどうやらナハトとバトルする気が無いっていうじゃないか。そんな意気地無しがいたって邪魔になるだけだ」

まどか「確かに私は必要ないかもしれないけど、私だってウィッチ団は許せないんだよ!私もみんなと一緒に戦いたいの!!」

詢子「だったらナハトとバトルすればいいだろ。なんで拒むんだ」

まどか「それは……私がまだ強くなくて、戦ってもすぐ負けちゃうだろうし、そうなったら他の人の助けだって出来なくなるかもしれないし
    ナハトさんと戦っても意味ないよ!」

詢子「ビビってるのか、ナハトが強すぎるから」

まどか「ママも昔戦ったことあるんだよね?だったら分かるはずだよ……ナハトさんの強さが本物だって」

詢子「あぁ、知ってるともさ」

まどか「だったら――」

詢子「強い相手と戦えるなんて光栄なことだとは思えないのか」

まどか「っ!」

詢子「チャンピオンがなんだ、最強がなんだ。ナハトがわざわざまどかを御指名してくれてるってのに、尻尾巻いて逃げるのか」

まどか「……」

詢子「まどかが旅立つ前に言った旅の心得、覚えてるか」

まどか「……バトルは正々堂々、ポケモンを信じて戦うこと」

詢子「急がば回れ、ポケモンを気遣って旅すること」

まどか「辛かったら無理しない」

詢子「怪しい人には気を付ける」

まどか「ただし」

詢子「売られた喧嘩は」

まどか詢子「買うっきゃない!」

詢子「売られてんだぞ、まどか。グンマーの未来を決めるかもしれない大喧嘩だけどさ」

まどか「……」

詢子「買わないってんなら力ずくでも連れて帰る。中途半端は余計危険なんだよ」

まどか「……」

どうして忘れていたんだろう、とまどかは思った。

今まで旅をしてきた中で、何度もバトルをしてきた。
勝負を挑まれたらバトルをしてきた。

元来、まどかは喧嘩や勝負が好きな性格ではない。
どちらかといえば大人しいし、そういったものは好まない方だ。

だがイツ砂漠の事件があったその日から、強くなりたいと思ったまどかは積極的に戦うようになった。

ポケモンのことを学べば、もっとポケモンのことを好きになれた。

ポケモンと修行をすれば、もっとポケモンと強くなりたくなった。

ポケモンが怪我をすれば、もっとポケモンを大事にしたくなった。

いつしか、ポケモンと一緒にいるだけで楽しかった日々に、ポケモンバトルをする楽しみが加わった。

ポケモンバトルは楽しかった。

勝つことも負けることも楽しかった。

相手が誰であろうと。

まどか(そっか、そうだったんだ)

そしてまどかはふと思った。

ひょっとしてナハトは負けたいのではないか、と。

強くなりすぎたナハトは誰にも負けない。

でも、勝つばかりのバトルなんて、きっと飽きてしまうのだ。

勝つばかりで嬉しかったのは最初だけだったのではないか。

結果の分かっているバトルほどつまらないものはない。

だから誰もが強いポケモンを手にし、自分を負かしてくれるような人が現れる世界を作ろうとしたのではないか。

まどか「私でも、ナハトさんに勝てるかな」

詢子「そいつはやってみねーと分かんねーな。それともなんだ、負けると分かってるから戦わないってか」

まどか「そうだね。どんな人が相手でも、売られたケンカは買わなきゃだよね」

詢子「……さっきよりはマシな目になったかな」

まどか「私と戦ってくれるんなら、願ってもないよ。それが、私にできることなら…!」

マミ「……鹿目さん、昔ミタキハラ公園で言ってたわよね。チャンピオンにリーグを勝ち抜いて挑戦したいって
   私の方が早いと思ってたんだけどな……でも、選ばれたからには絶対勝ってきてよね」

まどか「マミさん……はい、私頑張ります!」

タヴィア(盛り上がってるけどナハト様の強さはマジで桁違いなんだよね……どうやって勝つつもりなんだろ)

詢子「よし、じゃあ帰るぞまどか」

まどマミ「えっ」

詢子「旅は一旦中止。うちに帰るぞ」

まどか「そんなっ!だってさっきナハトさんと勝負して来いって……」

詢子「言ったろ。まどかに強くなってもらってからバトルしたいんだとさ。どうやって強くなるつもりなんだい」

まどか「それは……みんなと一緒に修行するよ!」

詢子「それも良い手段だと思うが、今回は時間がねーからな。短時間で強くなるなら同じような強さの相手とやるより、
   それなりに強い相手とした方が効率いいんだよ」

まどか「……昔ママが強かったって聞いたことはあるけど、本当なの?」

詢子「疑ってんのか?」

まどか「そ、そういうわけじゃないけど」

詢子「二人も、そういうわけだから後のことはよろしくな」

マミ「はい……あの、こんなこと言うのも不躾ですけど、鹿目さんのこと、お願いします」

詢子「任せろ!生半可な鍛え方はしてやらねーからな、覚悟しとけよ」

まどか「うん、分かった!でもそんなに時間あるの?」

詢子「準備期間は一週間だ。ナハトがそう言ってた」

マミ「準備?一体何の――」

その時、静かな街にあの声が響き渡った。

ナハト『ご機嫌麗しゅうグンマー地方の皆さま!ウィッチ団団長ナハト・ワルプルギスでございます!』

四人「!?」

ナハト『なお、この放送は各町に秘密裏に取りつけられたスピーカーによってグンマー全域に聞こえてるはずですのでご心配なく』

詢子「やれやれ、相変わらず派手好きだねえ」

ナハト『わたくしどもウィッチ団は、これより一週間準備期間のため活動を一時休止いたします!良かったですねー
    その代わり、一週間後にはグンマーは完全にウィッチ団の物となりますのでよろしくお願いいたします!』

タヴィア「うっわぁ、ナハト様過激だなぁ」

ナハト『ジムリーダーの皆さーん、どうしても相手してほしいんならいつでも呼んでねー!暇つぶしにはなるだろうしね
    そうだなあ、アカギ山のクロマツシティにあるリーグに来てねー!勿論ジムリーダー以外でも挑戦したい人がいたらいつでもウェルカム
    マギカカルテットの皆さんはいかがですか?また四人で何か作ってるのかな…たまにはバトルもお待ちしてますからね
    そうそう、もし万が一にも私に勝てたら今準備してる計画破棄しちゃってもいいかもね!それでは一旦幕引きを』

ブツンとスイッチか何かが切断された音と共に、再び静寂に戻った。

詢子はやれやれといった顔で溜息を吐き、タヴィアは僅かにニヤけており、まどかとマミは呆然としていた。

詢子「まあ、ああいうわけだ。さっさと帰って修行すんぞ」

まどか「うん……マミさん、さやかちゃんと杏子ちゃんに伝えておいてくれますか。しばらく会えないけどよろしくって」

マミ「分かったわ。一週間あるなら、私達もやれるだけのことはやるつもりよ」

まどか「ありがとうございます。タヴィアちゃん、さやかちゃんとも仲良くね。上条君に変なことしちゃ駄目だよ」

タヴィア「しないしない。なんだよ変なことって……」

詢子「空飛べるポケモンはいるのか?」

まどか「あ、私持ってない……」

詢子「んじゃ、一緒に帰るか。今度こそじゃあな二人とも、あたしが言うのもなんだけど無理はすんなよ」

まどか「帰ろう、ママ……それじゃあ、一週間後にまた会いましょう!」

二人を乗せたトゲキッスを見送りながら、マミは一つため息を吐いた。

タヴィア「やれやれ、急に寂しくなっちゃったね」

マミ「そうね……」

タヴィア「んでどうすんの?とりあえず、二人が帰ってくるの待つわけ?あたし美樹さやかと会うの嫌だなぁ、ライバルだし」

マミ「……」

タヴィア「なに、考え事?」

マミ「ナハトさんは、誰の挑戦でも受けるって言ってたわよね」

タヴィア「あぁいう人だからね……まさか、戦うつもり?」

マミ「これでもジムバッジは8つ持ってるのよ。リーグに挑戦する資格はあるわ」

タヴィア「いやいや、あんたシャルちゃんにも負けたんでしょ?そんなんでナハト様に勝てるわけないじゃん」

マミ「それは……」

タヴィア「大体ギラティナだっているのに普通のトレーナーがどうやって勝てるのさ。ジムリーダーどころか四天王だって無理でしょ
     これでも一応ウィッチ団として、間近でナハト様の強さを見て来たあたしにはよく分かるよ」

マミ「……」

マミの考え事を遮るように、鞄のポケータイが震えだした。
表示されている名前は、杏子からだ。

マミ「もしもし?どうかしたの?」

杏子『ようマミ。まどかもいるか?』

マミ「……何かあったの?」

杏子『……あー、単刀直入に言うぞ。お前らこっち来れねーか?』

マミ「ユウマタウンに?」

杏子『実はさ、マギカカルテットの奴らが全員揃ってんだよ』

マミ「全員!?四天王が!?」

杏子『で、さやかが知り合ってたらしくて色々話してたんだけど、さっきの放送聞いたろ?』

マミ「えぇ、勿論」

杏子『そっからまた少し話してたんだけど、用するに修行つけてくれるっていうんだよ』

マミ「――っ!」

杏子『これも何かの因果さ。四天王に会えて、しかも鍛えてくれるっていうんだ。いい機会だと思わねえか?』

マミ「……」

さやか『もしもしマミさん?まどかの携帯に繋がらなくって…一緒にウィッチ団の奴らぶっ飛ばしましょう!』

マミは悩んでいた。

先程の詢子の話を聞いて、確かに自分よりレベルの高い相手に鍛えてもらうのは効率がいい。
杏子やさやかも一緒なのだから、心強いというものだ。

しかしマミは少しだけ自分のことを理解していた。

まどか達と合流してからそんなにバトルをしたわけではないが、勝てていないのだ。

一人で各地を旅している時でも勿論負けることはあった。

その度に一人で作戦を考え、鍛え直し、艱難辛苦乗り越えてきた。

クサツタウンで杏子とバトルした時も、マエバシでシャルロッテとバトルした時も。
さらにマエバシでの事件の翌日、マミは杏子に頼みまどかに内緒で早朝からバトルをしていた。
強くなりたいと思ってのことだった。

しかしやはり勝つことは出来なかった。

そして先程のタヴィアとのいざこざの時も、マミは自分が役に立てなかったと思っていた。

普通ならこういうこともあるからと、前を向くことが出来たかもしれない。

しかし今はグンマー地方の非常事態であり、時間が無い。

マミはどうして勝てないのか考えた時、一つの可能性に辿り着いた。

すなわち、仲間がいるから。

一人の時は、なんでも自分の力で乗り越えなければならなかった。

だが今は仲間がいる。
頼りたい時に頼ることが出来る。

そこに油断が生じているのではないかと、マミは考えた。

だから、仲間である杏子やさやかと一緒に修行をするのは本当に自分のためになるのか考えていた。

マミ「……実は、鹿目さんは鹿目さんのお母様に連れられて家に帰ったわ」

さやか『まどかが!?なんで!?』

マミ「話せば長くなるけど、鹿目さんのお母様に鍛えてもらうつもりらしいわ」

さやか『何それ、せっかく会えると思ってたのに……でもま、まどかもまどかなりにやる気満々ってことですね!』

まどかは自分で強くなる方法を選んだ。

マミもマミなりに強くなるべきなのではないだろうかと考える。

マミ「とりあえず、今日はもう遅いから明日にしましょう。行くことにしたら連絡するから」

さやか『了解っす。あ、杏子に替わりますね』

杏子『……明日、来るのか?』

マミ「……ちょっと、考えさせて」

杏子『まあ、あの日からマミが何か悩んでたのは知ってるからさ。吹っ切れたらいつでも来なよ』

マミ「ふふっ、ありがとう佐倉さん。もう切るわね」

ポケ―タイを切ってまた深く溜息を吐く。

空は完全に暗くなっていた。
夏が近づいてきたとはいえ、この季節の夜はまだ肌寒い。

マミ「タヴィアさんはどうするの」

タヴィア「正直あたしはもうウィッチ団にあんまり関わりたくないかな。一応裏切り者だし、あの人たちに適うわけでもないし
     ま、乗ってた船は下りて別の船に乗っちゃったわけだし、手伝えることがあったら手伝ってあげてもいいかなって感じ」

マミ「そう、分かったわ。なら、一旦ここでお別れね」ボンッ フワライド「フワワー」

タヴィア「ユウマタウンに行くの?まさか、今からアカギ山まで行く気じゃないよね?」

マミ「違うわよ。ちょっと気持ちの整理を付けてくるだけ」

そう言い残し、遂にマミもこの街を離れていった。
タヴィアは置いてけぼりを喰らってしまったが、自分も身の振り方を考えるのにちょうどいいかと思っていた。

冷たい夜風に任せて、フワライドとマミは少しずつ目的地へ向かう。

マミ「鹿目さん達には流石に追い付けそうにないわね」

両親の待つミタキハラシティへ。

20レスも書けてないだと…?
別にポケモンばかりやってるわけじゃないんですよ、一応
確かにタヴィアの馴染みっぷりがさやか並だけど、それも今回までっすかね

次からは修業編
杏さや→マミ→まどか→ほむらの順番で書きたいなあ
あんまり量は書かずに済む…はず

その次はいよいよ決戦
ここまでくればラストスパートなんだけど、果たしてどうなるか

完結が少し見えてきた予感

フェアリータイプ追加に期待しつつ投下

―さやか&杏子side―

二人はポケモンセンターの前に佇んでいた。
そこに四天王が雁首を揃えて現れたのは、さやかがポケモン達と感動の再会を果たしている最中だった。

自己紹介を聞いて、杏子は「どうしてこいつらがこんなところにいるんだ」と絶句し、さやかがほむらとの関係を説明したのを聞いてさらに驚嘆した。

杏子「あたしはまだ会った事ねえけど、ほむらって奴のどこにそんな惹きつける力があるってんだよ」

さやか「そこんとこ何があったのか全然教えてくんないんだよね!絶対調べてやるんだから!」

ウメ「だってさ~」

ゲン「んー、無理だろうな。ほむらは隙がないから」

ユキ「私達が口を滑らせるの待ってるんじゃない?」

アキユキ「それも無理でしょうね」

さやか「じゃあ、あたしらが勝ったら教えてよ!今度は本気だかんね!!」

杏子「あたし"ら"って、あたしもやんのか!?」

さやか「当然!」

ゲン「ほう……でも、自分のポケモンの技を使いこなせない奴に負けるとは思えんがね」

杏子「おい、それより帰るんじゃなかったのかよ」

さやか「だってなんか悔しいんだもん!」

ウメ「じゃあ私達が強くしてあげよっか?」

さや杏「え?」

ユキ「ほむらちゃんミタキハラに帰っちゃったからね。少しだけ余裕が出来たし、私はいいよ」

さやか「は?あいつもういなくなったの!?」

アキユキ「僕は新作を作る予定が……いえ、まあ、息抜きには良いかもしれませんね」

杏子「強くしてって……つまり、どういうことだ?」

ゲン「鍛えてやるってことさ。ほむらもいなくなったし、どの道このままじゃこの世界は終わるからな」

杏子「終わるって…随分物騒な考えだな」

ゲン「それはどうかな……」

ウメ「どうする?決めるのはさやかちゃん達だよ」

杏子「まあ、あんたらの実力をこの目で見たわけじゃないけど、四天王が鍛えてくれるってんならそりゃ心強いけどさ……」

さやか「……」

杏子「さやかはどうなんだ?」

さやか「正直、この人たちにはあんま教わりたくないってのがあたしの気持ちかな。ナハトさんを止められるかもしれないのに、
    ここから動こうとせずにいる人達なんだし」

杏子「それもそうだな……ま、あたしはどっちにしたってさやかに付いてくけどな」

さやか「なんでよ」

杏子「話でしか聞いたことない連中に物を教わるほど、あたしも切羽詰まってるわけじゃない。やるからには色々自分で考えるさ
   でも、お前は危なっかしいからな。絶対一人じゃ失敗するだろうし、あたしが見といてやるって言ってんだよ」

さやか「ぐぬぬ」

アキユキ「まあ別に僕達はどちらでも構いませんけど」

さやか「あたしは……」

そしてナハトのあの放送が響き渡った。

終わった頃には四天王は全員苦笑いを浮かべていた。

叩きつけられた挑戦状に答えるつもりが全く無いからだろう。

ならばそれを拾うのは誰であるべきか。

さやか(そんなの考えるまでもない)

さやか「本当にあたしは強くなれるの…?ウィッチ団に勝てるようになるの?」

ゲン「見くびるなよ。これでもあの女王様を支える四天王だったんだぜ」

ユキ「期待してくれてオッケーだよ」

さやか「……分かった。こうなったら何が何でも強くなってあいつらの鼻を明かしてやる!特にあのマリアさん!
    人を散々バカにして失礼しちゃうわよ全く!!!」

杏子「そういうことならあたしもついでにやらせてもらうか。あたしもシズルを一度ボッコボコにしてやらねえと気が済まねえと思ってたからな
   ナハト達に思うところが無いわけじゃねえけど、今はまずあいつだ!」

ウメ「決まりだね~。頑張っちゃうよ私達」

アキユキ「さてと、ではお友達はどうします?」

杏子「あぁそっか、まどかやマミんとこ帰らねえと」

ウメ「いっそみんなで来ちゃえばいいのにね」

さやか「いいの?」

ゲン「んー、まあ俺は構わんよ。何人増えようが同じことだ」

杏子「どれ、じゃあ一つ電話してやるか。決めるのはマミ達だし」

しかしまどかは既にミタキハラに帰っており、マミも考えると言って来なかったので、仕方なく二人で修業を始めることになったのだった。

アキユキ「といっても、今日はもう遅いですし明日からですかね」

さやか「そんなのんびりでいいの!?一週間しかないんだよ!」

ユキ「正確には六日かな。今日入れて一週間だと思うし」

さやか「だったら尚更でしょ!」

ゲン「まあそう焦るなって。とりあえず今日は疲れてるだろうから、明日からに備えて体力温存しとけって話」

杏子「確かに今日だけでくたびれちまったな。行こうぜさやか」

さやか「むぅ……分かったよ」

ゲン「おっと、帰るのはポケセンにじゃないぜ」

さや杏「?」

二人が連れて来られたのはほむらが隠れていた丘の上にある小屋だった。
周りにも中にも、誰の気配も感じられない。

ウメ「ほむらちゃん帰っちゃったからね~。せっかくだから使っていいよ」

杏子「マジかよ、一応ほむらのなんだろ?」

ユキ「管理は私達がやってるから問題ないよ。遠慮なく使ってね」

さやか「ふーん……じゃあ遠慮なく」ガチャッ

アキユキ「それでは僕達はこの辺で。明日朝6時にこの小屋の前で準備しておいて下さいね」

杏子「あぁ、サンキューな」

ウメ「体ほぐしておいた方がいいと思うよ~。ばいば~い!」

四人はそれぞれ各々のポケモン達に乗ってバラバラの方向へ飛んでいった。

小屋の中は簡素な造りで、リビングとキッチンがあるだけだ。
木製の丸机が椅子とソファに挟まれて中央に設置され、奥にはベッド、箪笥が一つ、窓は南と西に一つずつで朝は少し暗いと思われる。
風呂はなく、シャワーが備え付けられているだけ、しかもトイレ、洗面台と一緒である。

どうにか普通に生活は出来る程度のものだ。

小屋に入ると、なにやら詮索しているさやかとポケモン達を見て、杏子は一つ安堵の息をもらす。

杏子「全く、心配させた割に元気そうだな」

さやか「まどかに見せてやれなかったのがちょっと残念だけどね」

杏子「まさかまどかのお袋が出てくるなんてな」

さやか「あたしも詳しくは知らないけど、昔トレーナーやっててそこそこ強かったらしいよ」

杏子「へぇ、そりゃすげえな……つーか、さっきから何やってんだ?」

さやか「ふっふっふ、ここがほむらの住んでた場所なら、あいつの正体を暴く何か重要なものが見つかるんじゃないかと思ってね!
    リオすけ、なんか面白そうなもん見つかった?」

リオル「リオー」フルフル

さやか「チチィ、流石に片付けていったかな」

リオル「ルー!」ドンドン

さやか「コラー机で跳ねるな!壊れるでしょうが!!」

杏子「……」

早々に捜索を諦め、さやかはベッドに飛び込んだ。
すかさず上からリオルがのしかかり、変な声が漏れた。

それでもさやかの顔はどこかさっぱりとしている。

さやか「あんたにも迷惑掛けちゃったよね……ごめん」

杏子「なんだよ珍しい…らしくないじゃん」

さやか「みんなもごめんね。ウィッチ団なんかの言うこと聞かされて、辛かったよね……」

杏子「あー、そういやそのことなんだが……」

さやか「何?」

杏子「このタイミングで言うことじゃねえと思うんだけど、あの上条の坊ちゃんに会いに行ったりしねえのか?」

さやか「ふぁぁ!?」ズドダーン

杏子「焦りすぎだろ」

さやか「痛た……な、何言ってんのよ!今恭介は関係ないでしょ!」

杏子「そうなんだけどさ……お前幼馴染なんだろ?ぶっちゃけどう思ってんだよ」

さやか「どど、どうって、別にただの幼馴染だし!それ以外ないし!」

杏子「ほー、じゃあ誰かに告白されたりしてそれを受けても良いわけか」

さやか「告白!?どこのどいつよそんなことするのは!いや、別に誰がどう思ってようと自由だけどさ……幼馴染として知っとくべきかなとね!!」

杏子(こいつ、本人がいないとこですら正直にならねえ……)

杏子「冗談だよ冗談。例えばそうなったらお前はどうするんだって話」

さやか「あたしは……恭介がどうしてもその相手をす……好きになったんなら何にも言わないけど……」

杏子(駄目だこりゃ……そういや、今トネシティにはマミもまどかもいないから坊ちゃんとタヴィア二人しか残ってないわけか……)

杏子「お前、早めに決着付けといた方がスッキリするんじゃないのか。マジに誰かに取られるぞ」

さやか「決着とか意味分かんないし、スッキリとか関係ないし、取られるとか意味分かんないし、今は強くなる方が先だし、ホント意味分かんないし」ブツブツ

杏子とポケモン達が呆れ顔で溜息を吐いた。
事情を知らなかったにも拘らず、この会話だけでなんとなく察したジュゴンとデスカーンまで。

さやか「もう良いから今日は早く寝よ!明日早いんだからさ!」

杏子「それもそうだな。とりあえず、なんか食ってシャワー浴びて寝るか」

さやか「じゃあ杏子よろしく!」

杏子「……何を?」

さやか「何って、晩御飯」

杏子「勝手に決めんなよ!」

さやか「いいじゃん、あたし料理作ったことないんだもん」

杏子「あたしだってまともなもん作れねえよ。なんか置いてないのか?」

冷蔵庫には調味料のみ、戸棚にはポケモンフードがいくつかと缶詰が二つ残っていた。

一週間どころか今夜の食事すらままならない状態だった。

さやか「どうすんのよこれ……」

杏子「いや、明日町で買ってくればいいだろ」

さやか「だからって今夜我慢できるの?」

杏子「仕方ねえ、どんだけ残ってたかな……」

杏子は自分のバッグから、木の実プランターと、ついでに残っている木の実も全て取り出した。

杏子「これで多少腹も膨れるだろ」

さやか「おぉ!そういえばすっかり忘れてた。あんた木の実いっぱい持ってたもんね」

杏子「その代わりこれが最後なんだからな。味わって食えよ!お前らも、ポケモンフードだけで足りなくなったら食えよな」

いささか物足りない食事を終え、さやか、杏子の順番でシャワーを浴びる。
杏子が出ると、そこにさやかの姿がなかった。

しかし、耳を澄まさなくても外から声は聞こえてくる

さやか「……うん、そう……大丈夫だよ―――えっ……うん―――そう……」

杏子(電話か……やっと素直になったってとこっかな)

ポケモン達の体を拭いてあげてる間にさやかが戻ってきたが、幾分か顔は嬉しそうだった。

~二十一日目~

鳥ポケモン達の鳴き声で街の住人達が活動を始める頃。
四天王が小屋の前に降り立った。

すでに二人ともポケモン達を出し、準備運動をしている最中だった。

ウメ「みんなおはよう」

ゲン「ちゃんと準備してるようだな」

さやか「うん、いつでも始められるよ」

杏子「さっさとしてもらおうか」

アキユキ「その前にまず確認しておきますが、まずあなた達は誰と戦いたいのですか?」

杏子「昨日も言ったろ。まずはシズルってウィッチ団の幹部をぶっ飛ばす」

さやか「あたしも幹部のマリアさん。リベンジしないと気が済まない!」

アキユキ「なるほど……ではあなた達とその人たちの使用ポケモンを教えて下さい」

さや杏「?」

言われるがままつらつらと述べていき、それをアキユキがメモしていく。

アキユキ「ふむ、分かりました。さやかはリオルとナックラーがいますね。なぜ進化していないのですか?」

さやか「なんでって、レベルが足りてないからじゃないの?」

アキユキ「ナックラーに関してはそれも一つありますが、リオルは違いますよね」

さやか「……そうなの?」

杏子「お前、自分のポケモンのことも知らないのか?」

さやか「あははは、まあその、なんというか……」

アキユキ「リオルは懐き進化ですよ。そのリオル、まださやかに懐いてないようですね」

さやか「え……ええええぇぇぇえぇぇええぇええええぇえぇ!?」

杏子「んで、坊ちゃんとどこまで話したんだ」

さやか「ななっ、なんでそれを!?」

杏子「大体分かるだろ」

さやか「だ、だからその……またしばらく会えないけど頑張ってねって……」

杏子「そんだけ?」

さやか「そんだけよ!あ、四天王に鍛えてもらうって言ったらユキさんのサインお願いされた」

杏子「サイン?」

さやか「あの人作曲家だし、ポケ団にもだ携わってるし、業界では有名なんだよ」

杏子「ふーん……そんだけ?」

さやか「だからそんだけだって!」

杏子「はぁー……」

ポケモン達「ハァー……」

さやか「どういう意味よ!あんたらまで一緒になって!!」

残り少ない体力を使って騒ぎまわった後、今度こそ本当に疲れ切った二人とポケモン達はようやく寝ることにした。

さやか「じゃ、電気消す――」

杏子「待て!勝手にベッド占領してんじゃねえ!」

さやか「良いでしょ杏子は昨日もベッドだったんだから!あたしは昨日から硬い床の上だったの!」

杏子「ぐぬっ……」

さやか「それともなに、一緒に寝る?」

杏子「分かったよ、ソファで寝りゃいいんだろ。その代わり、明日は交代してもらうからな」

さやか「サンキュー!」

しばらく二人で話をしていたが、どちらからともなくすぐに眠りに就いた。

~二十一日目~

鳥ポケモン達の鳴き声で街の住人達が活動を始める頃。
四天王が小屋の前に降り立った。

すでに二人ともポケモン達を出し、準備運動をしている最中だった。

ウメ「みんなおはよう」

ゲン「ちゃんと準備してるようだな」

さやか「うん、いつでも始められるよ」

杏子「さっさとしてもらおうか」

アキユキ「その前にまず確認しておきますが、まずあなた達は誰と戦いたいのですか?」

杏子「昨日も言ったろ。まずはシズルってウィッチ団の幹部をぶっ飛ばす」

さやか「あたしも幹部のマリアさん。リベンジしないと気が済まない!」

アキユキ「なるほど……ではあなた達とその人たちの使用ポケモンを教えて下さい」

さや杏「?」

言われるがままつらつらと述べていき、それをアキユキがメモしていく。

アキユキ「ふむ、分かりました。さやかはリオルとナックラーがいますね。なぜ進化していないのですか?」

さやか「なんでって、レベルが足りてないからじゃないの?」

アキユキ「ナックラーに関してはそれも一つありますが、リオルは違いますよね」

さやか「……そうなの?」

杏子「お前、自分のポケモンのことも知らないのか?」

さやか「あははは、まあその、なんというか……」

アキユキ「リオルは懐き進化ですよ。そのリオル、まださやかに懐いてないようですね」

さやか「え……ええええぇぇぇえぇぇええぇええええぇえぇ!?」

さやか「リオすけなんで!?あたしらまだ出会って一年くらいしか経ってないけど今までずっと仲良くしてきたよね!?」ユサユサ

杏子「あんま揺らしてやんなよ。そんなんだから懐いて貰えないんじゃねえのか」

さやか「わぁーごめん!」サッ

アキユキ「一年ですか。もう十分進化してもおかしくないとは思いますが、何かリオルに、あるいはさやかに問題があるのでしょう」

さやか「問題って……」

アキユキ「それを見極めるのはさやかですよ。ポケモンの言いたい事柄はポケモンにしか分からない……リオルともう一度向き合った方がいいでしょうね」

さやか「……」

杏子「で、相手のポケモンを聞いてどうすんだ」

ゲン「勝つためにはまず敵を知らなきゃだろ。それに、一番大事なのは己を知ることだけどな」

杏子「己を、ね……」

ユキ「そう、己のポケモンを知ること。特性、タイプ、素早いか力が強いか打たれ強いか……一番は技だね」

ウメ「何が出来るのかを知って、やりたいこと決めて、何をやらせるか。考えなきゃならないのはまずそこだよ」

ゲン「足りない分は俺達が補うがな」

さやか「補う?」

アキユキ「ほむらの戦いやポケモンを見て、何か気付きませんでしたか?」

杏子「あたしはまだ見たことないんだ」

さやか「なんか変なとこあったかな……あいつの戦ってるとこ見たの随分前だしなぁ」

アキユキ「なら教えてしまいましょう。ズバリ、普通なら使えるはずのない技を使っていたのですよ」

杏子「なんだと!?」

アキユキ「例えばギギギアルの"でんげきは"や"テレポート"、ウォーグルの"ゴッドバード"などですね」

さやか「あ、思い出した!確かにあいつ使ってた!!」

杏子「確かに普通なら使えねえ技だ……ったく、なんてチート野郎だ」

アキユキ「他のポケモンにも覚えさせましたが、まあそういうことです。私達が鍛えれば新しい技を仕込むことも可能ですよ」

さや杏「――ッ!!」

ゲン「それをどう組み合わせて使うかはお前ら次第だけどな」

ウメ「そういえばもう一人来るっていってなかった?」

杏子「あぁ、マミか。マミなら今日朝早くメールが来たよ、来れないってさ」

ユキ「そっか。まあ、自分でやりたいようにやるのもいいことだよ」

アキユキ「ではそろそろ修行に入りましょうか。とりあえず二人にはあそこに見えるみなかみの湖までポケモン達と一緒に走って行ってもらいます」

杏子「フン、そんくらい余裕だな」

さやか「バトルしながら山だって登ったことあるし!」

ユキ「うんうん、トレーナーの基本はまず体力からだね。私はもうないけど」

ウメ「あ、私もなーい」

さや杏「……」

ゲン「んじゃま早速、位置についてヨーイドン!」

山の空気は澄み切っており、肺に入ってくる空気が体中に染み込んでいくようである。
気温は低すぎず高すぎず、朝の陽射しも実に心地いい。
ランニングにはうってつけのコンディションだった。

さやか達が湖に着いた頃、四天王達はのんびりと朝食を摂っていた。

ゲン「んぐっ……じゃ、早速始めるか」

さやか「はぁ…ちょっと待って……休憩は……?」

ゲン「何言ってんだ、それだと何の為に走ったか分かんないだろ」

ウメ「体は酷使した方が鍛えられるもんね~。私はもう無理だけど」

ユキ「あ、私も」

さや杏「……」

アキユキ「まず二人のポケモンが使える技を全て使わせて下さい。攻撃対象は何でもいいです」

さやか「全て?まだ使えない技はどうすんの?」

ウメ「そういうのもあるけど、やらせてみることが大事なの」

ユキ「何が使えるか使えないかを知らないってことは絶対駄目。しっかり自分のポケモンの使える技を把握すること」

さやか「……ポケモン図鑑使ってもいい?」

ゲン「……最初だけな」

杏子「よし、ザル!"ひっかく"だ!」

さやか「ミジュか、"たいあたり"!」

初期技からレベルアップで覚えられる強力な技まで、習得可能な全ての技を試していった。

一匹だけで20分以上、全員を終わらせるのに二時間以上かかった。

アキユキ「ふむ、どうでしたか」

杏子「ふぅ……こっちは大体分かった。プラが"なかまづくり"を使えないくらいで後は問題ない」

さやか「はぁ…はぁ……あ、あたしはまだ全員使えない技が多すぎてなんとも……」

ゲン「よし、じゃあ次は全部の技のPPがなくなるまで使わせろ」

さやか「全部!?どんだけ時間掛かると思ってんの!」

ゲン「いいからやるべし。杏子よりさやかの方がよっぽど早く終わるというのに」

さやか「ぐっ……ミジュか、ひたすら"たいあたり"!」

杏子「……よし!ザル"ひっかく"!」

こうして先程の一連の流れを今度は倍以上の時間を掛けて行った。

6匹一斉にやっても全員分の技が枯れるまでに約3時間。

技を出したポケモン達も、それを見守り命令していたさやか達も疲労は既にピークに達していた。

アキユキ「ここらで少し休憩しましょうか。昼食は各自摂ってください」

ウメ「ユキちゃんご飯食べに行こ~」

ユキ「勿論!」

ゲン「おう、行ってら」

さやか「ふあぁぁぁ……やり切った感」

杏子「これ……何の意味があんのかそろそろ教えてくれねえのか」

アキユキ「何度も言ったように、まず使える技の確認。今のは技の精度の確認」

ゲン「ほれ。ヒメリの実だ。大量にあるからポケモン達に食べさせといてやれ。昼からももう一度さっきのやるからな」

さやか「もう一回か……よしっ!気合い入れるよ!」

アキユキ「さやか、あなたのポケモンの中で最も攻撃力のあるポケモンは誰ですか」

さやか「え?やっぱりミジュかじゃないかな」

アキユキ「でも、"ハイドロポンプ"は使えないんですよね。ダイケンキ最大威力の技ですが」

さやか「まあね……もうちょっとレベル上げないとだねミジュか」

アキユキ「どうします?二人とも御三家を持っていますし……」

ゲン「"アレ"……持ってきちゃう?」

杏子「"アレ"って……なんだよ?」

ゲン「それは使ってみてのお楽しみだな。それに、使うのは多分三日後くらいだ」

さやか「何よぉ、そんなに勿体ぶるほどのもんなの?」

アキユキ「十分必殺級の技ですよ。使い所を間違えなければですが」

さやか「……ま、期待しとくよ」

昼食の後も再び同じことを繰り返し、大方各々の技を把握したところで次の課題に移ることになった。

ゲン「ズバリ、相手の裏をかくことだ。レベルと実力で負けてるなら奇策で挑むしかない!」

ユキ「相手が使ってくるポケモンは分かってるから、対策は少し簡単でしょ」

さやか「奇策かぁ……あたしそういうの考えるの苦手なんだよね」

杏子「……つまり、さっきまでのは全部奇策を考えさせるためだったのか」

さやか「え?」

ウメ「うん。使える技を把握して、実際に使ってみて、技の使い方や性質も見えてきたでしょ?後は組み合わせ次第だよ」

ユキ「さやかちゃんも氷の坂を下ったでしょ?要するにああいうことをやればいいの」

さやか「技の使い方ってそういうこと……」

ユキ「せっかくだから実戦しながら覚えていった方がいいんじゃない?さやかちゃんはレベル上げにもなるし」

ウメ「そうだね~。えっと、ウィッチ団が使ってきたポケモンは……」

ゲン「マリアはサザンドラとヤミラミの使い手だったな。んじゃ、俺のポケモンが相手してやる」ボボンッ

サザンドラ「ガァーッ」 ヤミラミ「ニヒヒ」

さやか「ゲンさんか。相手にとって不足無しだね」

ダイケンキ「グオーッ」 リオル「オー」

アキユキ「シズルという人はドククラゲにドクロッグですか。では、私がお相手しましょう」ボボンッ

ドククラゲ「ギギッ」 ドクロッグ「フィヒヒ」

杏子「アキユキね……いいさ、四天王の実力とやら見せてもらおうじゃん」

ゴウカザル「キャァッ」 ムクホーク「ピィーッ」

ユキ「……暇になっちゃったね」

ウメ「うん……仕事しよっか」

それから何度となくバトルを行い、敗北を繰り返しながらさやかと杏子は作戦を考え、立ち回りを学び挑戦していった。
次第に二人相手にも戦えるようになり、杏子の実力は拮抗するレベルにまで達した。
さやかもダイケンキがハイドロポンプを習得するなど、着実なレベルアップを見せていた。

日が沈んだところでこの日の修業は終わりとなった。

二人は街で食糧を買い漁り、料理もどうにかこなしつつ寝床に着いた。

~二十二日目~

この日も早朝から湖まで走りこみ、技を一通り使わせて休憩した後今度はさやかがユキと、杏子がウメと実戦を始める。
昨日とは全く違うタイプとの相手で最初こそやりづらそうにしていたが、やはり終わりごろにはある程度対抗できるようになっていた。

さやか「そこで"ハイドロポンプ"!」 ダイケンキ「グァッ!」

ユキ「"ミラーコート"」 グレイシア「フィー」

受けたダメージを倍にして返す壁にダイケンキは倒れてしまう。
残ったのはデスカーンだけだが、ユキにはまだグレイシアとパルシェンが残っていた。

もっとも、6対4から始まったのだが。

さやか「ミジュか!でも、今ので相当ダメージ与えたはず――!?」

さやかが驚いたのは、グレイシアの回りに氷の結晶がいくつも浮かんでいたからだ。

ユキ「"つららばり"よ」 パルシェン「パルー!」

パルシェンから発射された氷柱と氷の結晶が襲いかかりデスカーンもダウンし、これでさやかの8連敗となった。

さやか「デスか……お疲れ」

ユキ「さっきよりはだいぶ動きが良くなったね。グレイシアに水技はちょっと悪手だったかもしれないけど」

さやか「えっと、グレイシアは体温をコントロールすることで周囲の空気を凍らせてダイヤモンドダストを降らせる……
    弾けた水を利用されちゃった感じかぁ」

ユキ「デスカーンはああ見えて防御力高いから私のパルシェンでも普通じゃ倒せないと思ったの
    だから氷の結晶使って二倍ダメージを与えさせてもらったってこと」

さやか「くっそー!回復したらもう一回お願いします!」

ウメ「"バレットパンチ"に"かげうち"」 ハッサム「ハッ!」 ヌケニン「プーン」

杏子「バル"ファストガード"!」 シュバルゴ「ゴーン」

ウメ「あちゃ~」

杏子「"ねっぷう"で一網打尽だ!」 キュウコン「コーン!」

高速で繰り出されたハッサムとヌケニンの一撃も、鉄壁の防御力を誇るシュバルゴが先制技を防ぎキュウコンを守り、返しの熱風で両者は戦闘不能になった。
ハンデ戦であったとはいえ、杏子はようやく四天王相手に初勝利を収めることが出来た。

ウメ「おめでとう杏子ちゃん、今の"ファストガード"は上手かったよ~」

杏子「バルじゃハッサムも『ふしぎなまもり』を持つヌケニンも突破できそうになかったからな
   絶対コンの方狙うって分かってたし、それなら先制技でくるしかないことも読めたさ」

ウメ「うんうん、よく出来ました。いや~、もうちょっと試合運びはよく出来そうだけど十分及第点だね」

杏子「そりゃどうも……さ、回復したらもう一戦頼むよ」

さやかも杏子も、今はひたすら戦闘を繰り返し、技の使い方と戦い方を覚えていく。

時間の出来たアキユキとゲンは仕事をしながら、二人の様子を眺めていた。

ゲン「正直どう思う?あの二人」

アキユキ「そうですね……杏子はバトル慣れしてることもあってか、いい戦い方をしていますね
     今まではどうやらとにかく攻めるスタイル、攻撃技を多く使うようでしたが、今回から補助技も使い始めましたね
     絡め手を交えることで戦術の幅が広がり、勝てそうな試合が増えているみたいです」

ゲン「確かに昨日は俺も危なかったな」

アキユキ「それから、元々ポケモンに言うことを聞かせるのが上手いですね。杏子が言ったことをポケモン達がすぐに覚えます
     だからすぐにどんどん強くなっていく……今まではレベルが高くても実力が追い付いていない状態でしたが、
     もはや実力も折り紙つきですね」

ゲン「あぁ、ありゃこのままいけばジムリーダーくらいすぐなれるだろうさ。確かジムリーダーの娘なんだよな」

アキユキ「えぇ……さやかは真っ直ぐで一度決めたら突き進むタイプ、中々臨機応変に対応できない面があり、
     我武者羅にダメージを負いながらも敵を倒すスタイルですね。あまりいい戦法とは思えませんが
     ただ、ポケモンの性格をすぐ見抜きますね。バトルしている時でさえ、些細な動きからなんとなくでしょうが察しているみたいです
     今のところそれがバトルに生きてはいませんが、本人の発想と努力次第でしょうか」

ゲン「なるほどね。確かに俺のドンカラスがちょいとばかり意地っ張りなこと見抜いたっけ…ま、勝ったけど」

アキユキ「ただ問題があるとすれば――」

こうしてその日の修業も終わった。

二人とも少しずつではあるが強くなってきた実感を持っていた。

さやかも負けは続いているものの、差は縮まっていると思っていた。

アキユキ「さやか、昨日私が言ったことは覚えていますか?」

さやか「昨日…?」

アキユキ「ポケモンの言いたい事柄はポケモンにしか分からない……ですが、トレーナーも分かろうとする努力は出来ます」

さやか「……分かってる。リオすけともう一度向き合うよ」

アキユキ「分かっているなら結構です。ナックラーもですけど、進化すれば単純に強くなりますからね」

そう言い残し四天王達は各々の方向へ飛び立っていった。
日は山に沈み、湖の周りは既に夜である。

杏子「さてと、あたしらも帰るか」

さやか「……」

杏子「さやか?」

さやか「うん、分かってる」

就寝前、さやかとリオルは正座してベッドの上にいた。

座るならソファを使ってくれと杏子は思ったが、黙っておいた。

さやか「リオすけ、あんたはあたしの嫁みたいなもんだよ」

杏子「ぶはっ」

さやか「笑うなあ!」

杏子「ご、ごめっ……だっていきなりそんなこと言うとは思わなかったからさ……くくっ」

さやか「オホン……まあ、ようするに家族みたいってこと!あたしの初めてのポケモンで、一番長くあたしと一緒にいてくれてるんだよ」

リオル「……」コクリ

さやか「寝るなー!あたしは真剣なの!!」

リオル「?」

さやか「はぁ……いい?あたしはあんたと向き合おうと思ってこうして――」

リオル「ヒャッヒャー!」ピョイーン

さやか「ベッドで跳ねるな!壊れるでしょ!」

リオル「リオー!」ダッ

さやか「こらぁ!狭いんだから走り回るな!!」

杏子「お前らうるせえ!寝ないんならベッドよこせ!!」

さやか「もう、あんたはすぐそうやって動き回るんだから!」

リオル「……」プイッ

さやか「……はぁ……分かったよ、今日はもう寝るよ」

リオル「リー!」バンッ

さやか「こらあんたどこ行くの!待ちなさーい!!」

杏子「静かにしろって言ってんだろ!!」

さやかは小屋を飛び出したリオルを追いかける。

急に立ち止まったかと思えばスルリとさやかをかわして逆戻り。

かと思えばすぐにまた走りだす。

おまけに騒ぎながら街中走り回るものだから、住人の怒号があちこちで飛び交っていた。

ようやくさやかが追いついたところは、夜の静かなみなかみの湖だった。

さやか「はぁ…はぁ……この、バカたれ~……街の…人にまで……迷惑、かけるんじゃない!」

しかしリオルは心底楽しそうにケラケラと笑っていた。
動き回るのが、悪戯をするのが本当に好きなのだ。

さやか「はぁ……もういいや、ちょっと休憩してから帰ろう」

夜でも明るい都会のミタキハラと違い、山の中にあるここは本当に暗い。
だからこそ上を見上げれば、星の海のような夜空を見ることが出来る。

さやかには、なんだか大きい星と小さい星が強いポケモンと弱いポケモンに見えた。

輝き方に差異はあれど、どの星も懸命に光っている一つの星なのだ。

そこに人の価値観を押し付け、差別し、切り捨てる必要がどこにあるのだろうか。

そんなことをすれば、きっと空は今よりずっと暗くなってしまうに違いない。

さやか(あたし、ちゃんとウィッチ団止められるのかな……止めたいなぁ……)

遊び足りなかったのか、リオルが寝そべるさやかに寄ると、静かに寝息を立てていた。

遊び相手がいなくなったリオルは、なんとなく湖面に映った自分を見ていた。

ぼーっと眺めていると突然、逆さになった別のポケモンが水面下から覗きこんでいた。

リオル「――ッ!?」ビクッ

湖から青い光を放ちながら、その顔のポケモンが飛び出して、ゆっくりとリオルに近付く。

差し出された手をそっと掴むと、そのまま凄まじい勢いで湖に引きずり込まれた。

息を止め、しかしすぐに限界が来たリオルは口を開けた。
だが肺に水が入ってくることはなく、新鮮な空気を思いっきり吸い込むことが出来た。

ゆっくりと目を開けると、そこは湖の中ではなく、洞窟のような場所だった。
床は水浸しで、それほど高い天井があるわけでもない。
どうして呼吸が出来ているのか、それは誰にも分からない。

???「きゅううん!」

青い三角頭に二本の尻尾を持つ小さなこの謎のポケモンは、ふわふわと洞窟を漂っている。

この場所は、『心の空洞』と呼ばれている。

イッシュ地方では、シンオウ地方にある3つの湖にある洞窟に繋がると言われている。

しかし湖底深くに存在しているため誰にも確認されていないが、実はこのグンマー地方にも繋がっていたのだった。

ひょっとしたら、まだ知られていないだけで、他の地方にも存在しているのかもしれないが……

とにかくここは、この謎のポケモンが眠っていた場所である。

では、なぜ起きているのだろうか。

???「きゅうん?」

それは、このポケモンが意志を感じ取ったからだ。

リオルの、そしてさやかの意志を。

謎のポケモンは、リオルに問う。

何がしたいのか?、と。

リオル「――ッ!!」

次の瞬間辺りは光に包まれ、リオルは再び湖の淵に立っていた。

今見たのは夢だったのか考えたが、それはリオルには分からない。

さやか「ぎゃあああああああああああああああ!!!!」

リオル「ッ!」

暗い世界にさやかの悲鳴がこだました。

デルビル達「グルル……」

さやか「来るなああああ!!あっち行けシッシッ!」

リオルが駆け付けると、10匹ほどの野生のデルビルにさやかが回り囲まれていた。

さやか「リオすけ!お願い助けて!!」

リオルは決してさやかに懐いていないわけではない。
さやかのために体を張れるし、戦える。
タヴィアの脅しにもグッと我慢をして、さやかが傷つかないことを選んだ。

しかしたった一つだけ、不満があるのだ。

さやか「"しんくうは"!」 リオル「シャッ!」

デルビル達が完全に逃げていったのを見て、ようやくさやかはへたりこんだ。
リオルを撫でながら、心底安堵する。

さやか「サンキューリオすけ、助かったよ」

リオル「……」

さやか「……まあさ、一緒に頑張ろうよ。あんたはそのままでも十分だから」

リオルは先程の謎のポケモンに出会い、自分の意志を伝えた。

自分が何をしたいのかを理解してもらいたい。

今こそさやかにも伝えるべきだろうと、そう決意した。

リオル「リオー!」

さやか「ん?何?」

リオルは身振り手振りで必死に自分のやりたいことをさやかに伝えようとする。

五分ほどああでもないこうでもないと動き回り、疲れ知らずのリオルが少し息を荒げ始めたところで、さやかは遂に気が付いた。

さやか「あんたもしかして……悪戯したいの?」

リオル「ッ!」コクコク

さやか「はぁ!?なんじゃそりゃ~!!」

リオル「ヒャッホー!」ダッ

さやか「……そういえば、リオすけが何かしようとしたらいっつも怒って止めてたっけ……それが不満だったってことなのかな」

例えばマミの家に訪れた時。
電車に乗った時。
博物館に行った時。

さやかは騒ぐリオルを何度も止めていた。

やれやれといいながら、腰を上げ準備運動をする。
一日の疲れは残っているが、やるからには本気でやる。

さやか「幸い夜で誰もいないし、あたしもちょっと昔を思い出して遊んでみますか……さあ、あたしに存分に悪戯しちゃいなさい!」

リオル「リー」スルッ

さやか「へ?」

高速移動からのズボン下げ、そして膝カックンが炸裂し、さやかは涼しくなった下半身を曝け出しながら倒れ込んだ。

今が夜で本当に良かったと、心から思った。

それからはリオルが悪戯を仕掛け、さやかが受け、我慢できなくなっては鬼ごっこに発展するといった流れの繰り返しだった。

その内騒ぎを聞き付け寝付けないポケモン達が集まってきたが、そのポケモン達にさえ悪戯をする始末だった。

そんな馬鹿騒ぎを数時間行い、さやかもリオルも完全にぐったりとしていた。

もうすぐ日が昇る時間帯である。

さやか「あぁぁぁもう動けない……リオすけ、これで満足した?」

リオル「ッ!」コクコク

さやか「ははっ、なら良かった……ねえ、何でリオすけって名付けたかちゃんと知ってる?」

リオル「……?」

さやか「一昨日恭介と電話しててね、ニックネームのこと言われたんだ。恭介と昔から決めてたの
    オスなら恭介の名前にある『すけ』を使う、メスならあたしの名前の『か』を使おうって
    恭介は小学生になったらコロかと一緒だったけど、あたしは中学までずっと我慢してたんだよ
    初めてあんたと一緒になれて、本当に嬉しかったんだからね」

そして太陽がさやかとリオルを照らし始めた。

リオル「――ッ!」ブルブル

さやか「リオすけ…?」

カッ

ルカリオ「アオーーン!」

さやか「リオすけ、あんた…!進化してくれたんだね!!ありがとう!」ダキッ

リオルは太陽の昇っている時間帯にしか進化をしないと言われている。
夜の内に完全に懐いたリオルは、見事日の出と同時に進化した。

数時間後、心配になった杏子とポケモン達が湖に来ると、木陰で眠るさやかとルカリオの姿を発見したのだった。

それからはリオルが悪戯を仕掛け、さやかが受け、我慢できなくなっては鬼ごっこに発展するといった流れの繰り返しだった。

その内騒ぎを聞き付け寝付けないポケモン達が集まってきたが、そのポケモン達にさえ悪戯をする始末だった。

そんな馬鹿騒ぎを数時間行い、さやかもリオルも完全にぐったりとしていた。

もうすぐ日が昇る時間帯である。

さやか「あぁぁぁもう動けない……リオすけ、これで満足した?」

リオル「ッ!」コクコク

さやか「ははっ、なら良かった……ねえ、何でリオすけって名付けたかちゃんと知ってる?」

リオル「……?」

さやか「一昨日恭介と電話しててね、ニックネームのこと言われたんだ。恭介と昔から決めてたの
    オスなら恭介の名前にある『すけ』を使う、メスならあたしの名前の『か』を使おうって
    恭介は小学生になったらコロかと一緒だったけど、あたしは中学までずっと我慢してたんだよ
    初めてあんたと一緒になれて、本当に嬉しかったんだからね」

そして太陽がさやかとリオルを照らし始めた。

リオル「――ッ!」ブルブル

さやか「リオすけ…?」

カッ

ルカリオ「アオーーン!」

さやか「リオすけ、あんた…!進化してくれたんだね!!ありがとう!」ダキッ

リオルは太陽の昇っている時間帯にしか進化をしないと言われている。
夜の内に完全に懐いたリオルは、見事日の出と同時に進化した。

数時間後、心配になった杏子とポケモン達が湖に来ると、木陰で眠るさやかとルカリオの姿を発見したのだった。

杏子が駆け寄ると二人は既に事切れていた……


























っていう話ではない
今回投下ミス多すぎでごめんなさい

>あんまり量は書かずに済む…はず
とは一体何だったのか

さや杏編今月中にイケるかも(フラグ)

ポケスペアニメ化してほしいな
今のポケモンさすがに飽きてきた…
ポケスペなら楽しめるしワクワクするしてアニメ化したらアニメで興味持ってポケスペ読む人増えるよ
とかポケスペ動画みて思った
ポケスペ動画は図鑑所有者(ダイヤモンドパールプラチナまで)で千本桜替え歌が好きだが一番はレッドさんで千本桜がカッケェ
興味ある人はようつべ(YouTube)で探して聴いてみるとテンション上がるよ

>>176

スペ千本桜いいよね

ポケスペアニメ化は…青銀姉弟の過去が重いし

スオウ島の姉さんの腕真っ二つ事件あるしなぁ…(メタちゃんだったけど)

だがアニメ化したら嬉しいな。アニメロケット団ショボすぎるし

学習能力0の主人公はちょっとなぁ…

アニメロケット団「」

サトシ「」

アーボック真っ二つと腐敗コダックを小さい子に見せてはいけない…(震え声)

だからアニポケとは別で作ってくれると…それはとっても嬉しいなって

約二ヶ月ぶりという驚愕の事実…

~二十三日目~

修行も三日目になり、今日も二人と四天王は湖に集まっていた。

ただし、ユキとアキユキの姿はなかった。

さやか「なんで二人しかいないの?」

ゲン「まあ手っ取り早く言うと、ちょいと仕事にね」

杏子「仕事?こんなグンマー中が騒がしい時にか?」

ナハトの放送以来、グンマーでは挑戦者たちがアカギ山に集っていた。

チャンピオンロードはトレーナー達で溢れ返り、ナハトはクロマツシティに辿り着いたトレーナー全員を律儀にも相手していた。
初日こそ100を超える試合をしていたが、すぐに圧倒的な力量の差に挫折し、挑戦者は既に一日に10人来るか来ないかという程度である。

ようやく落ち着いてきた頃合いであるこの日からジムリーダー達が挑戦するということで、グンマーはその話題で持ちきりだった。

一方トレーナー以外の人間は、自分のポケモンと別れなくなるかもしれないとあって、戦々恐々としていた。

ナハトが作りたい世界のことは噂として既にグンマー中に広がっていた。
数日後にはトレーナーだらけになりバトルしかできない生活になるかもしれないのだ。
誰かにナハトやウィッチ団を倒してもらわなければならないのだが、現状ジムリーダーだけでは厳しいのではないかという話が広がっていた。
頼りの四天王は誰一人戦おうとしていないのだから、当然である。

そんな中、四天王にどんな仕事があるというのだろうか。

杏子「まさか、ナハトに挑みに行ったんじゃねえだろうな」

ウメ「そんなに私達暇じゃないよ~」

さやか(ここであたしら鍛えてる人が言うことかな?)

ゲン「まあそれは決戦日のお楽しみってことだ。お前らにもこれをやろう」

さや杏「――ッ!?」

黒い影が背後から抜けたと思った瞬間、気が付けば二人の中指には指輪が嵌められていた。

そして音もなく着地したのは、ゲンのポケモンのレパルダスである。

さやか「な、何よこれ!」ググッ

杏子「流石、気配を殺して背後に忍び寄るのが得意な猫みたいなポケモン……なんだよこれ取れねえぞ!」

ゲン「それを取りたきゃダイケンキとゴウカザルに技を覚えさせるしかないぞ」

さやか「技?」

ウメ「凄い威力の技だよ~。撃った後は反動で動けなくなっちゃうけど、十分な必殺技になるからね」

杏子「なるほど、こないだ言ってた"アレ"ってやつか……」

ゲン「いわゆる御三家と呼ばれるポケモン達にしか使うことの出来ないすっげーヤツだからな。厳しい修行になるが、覚悟しろよ」

さやか「いいよ、どんな修行でも掛かって来いってね!」

ウメ「でも私達もそれがどんな技なのか見せられないんだよね~」

ゲン「俺ら御三家のポケモン持ってないからな」

杏子「別にそんくらい大丈夫だろ。あたしらは何すりゃいいんだ?」

ゲン「イメージだ」

ウメ「その指輪に封印されてるのはトレーナーとポケモン、一心同体で放つ技。さやかには水の究極技、杏子には炎の究極技を覚えてもらう」

ゲン「心・技・体、全てを一つにしなければ修得することは出来ない」

ウメ「昨日までの修業で技と体はクリア。残る心がこれ」

ゲン「一心同体となりポケモンの持つ最高の力を放つイメージを掴むべし。これが最後の修業だ」

ウメ「要するに、一緒に戦って技を使ってるイメージを浮かべて、それを形にするってこと」

杏子「ちょ、ちょっと待て!イメージって言ったって、どんな技か知らないんだぞ!?どうすりゃいいんだよ!」

ゲン「だから言ったろ、厳しい修行になるって」

さやか「厳しいってそういう……」

杏子「つまり、どんな技か分からないがザルに使わせるイメージをしろ、と」

ウメ「うん。そして実際使わせてみよっか」

杏子「なんだよそれ!そんなんで出来るのかよ!!」

ゲン「いいか杏子。その指輪に封印されてると言ったが、正確にはポケモンの深層心理にある技の使い方を思い出させてやるものだ
   杏子のイメージとポケモンの心がガッツリ噛み合った時、お前のゴウカザルは使い方を"思い出す"んだ」

杏子「……」

さやか「平気平気!あたしとミジュかの絆舐めんなっての!そんなのすぐに使えるようにして見せるんだから」

杏子「分かったよ、あたしだってやってやるさ!」

ゲン「よし、それじゃあ早速――」

ナックラー「ギャァス!」バンバン

ウメ「どうしたの?」

杏子「そういや、他の奴らは何してりゃいいんだ?」

ゲン「基本的に今からやるのは二人と二匹で間に合ってるからな……まあ、自主練?」

ナックラー「フニャァ!」ガブリ

ゲン「痛ってーーー!!!!」

さやか「いや、そりゃ怒るよ。せっかくなんだから技教えてくれればいいじゃん」

ウメ「トレーナーが付いてなくて大丈夫かなあ……流石に二人でみんなに教えていくのはしんどいよね~」

ゲン「いいから放せ!お前はまだ進化してないからとっておきの技も教えられねえんだよ!!」

ナックラー「――!」パッ

ゲン「フーフー……この怒りがあれば技の習得はなんとかなりそうだが……とりあえず、何か簡単な技を仕込ませるか。二人が帰って来てからだけどな」

さやか「それで、あたしらはどうするの?」

ウメ「それは簡単。二人でバトルしてもらうよ」

杏子「なんだよ、結局バトルになるのか」

ゲン「条件は二つ。お互い御三家のポケモンを戦わせること。使える技は三つまでだ」

さやか「三つ?なんか中途半端だなあ」

ウメ「そんなの、四つ目は究極技だからに決まってるでしょ」

さやか「な、なるほど」

杏子「おい、まだ技の名前を聞いてないぞ」

ウメ「水の究極技はバシャッとはじく激流の力……"ハイドロカノン"!」

ゲン「炎の究極技はゴゴッとうなる業火の力……"ブラストバーン"!」

さやか「ハイドロカノン……」

杏子「ブラストバーン……」

他のポケモン達は四天王に任せ、二人はポケモン達と相談し技を絞ることになった。
先の修業でお互いどんな技を持っているのかは概ね把握している。

相性面ではさやかの方が有利だが、水技一辺倒では思わぬ反撃を喰らう可能性を念頭に置かなければならない。

さやか「ガンガン水技で攻めるよ!」

しかしさやかにはあまり関係のない話であった。

さやか「大体、水の究極技なんだからそれ以外のタイプの技使ってたら意味ないって!相手は炎なんだから、気にせず攻めるよ!
    でもま、流石に一つくらいは搦め手考えとかないといつかの二の舞だもんね」

ダイケンキ「……」

さやかが即断即決した一方、杏子は考えものである。
初めから不利な条件であることが分かっているので、それなりに対策を練らなければならない。
だが杏子は一つ懸念していることがあった。

杏子「炎の究極技か……炎タイプの技、使った方が思い出しやすそうだよなあやっぱり」

ゴウカザル「……」

さやかと同じく、究極技を修得する為には炎タイプの技を使うべきだと考え、どの技を選ぶのがベストなのか決めあぐねていた。

悩み抜いた末、杏子も準備が整った。

さやか「あんたと戦うの、いつ以来か覚えてる?」

杏子「つばなの湖だろ。あの時も確かこいつらで戦ったよな…相性がいいからって油断してんじゃねーぞ!」

さやか「そりゃもう、十分学んでるからね…!」

ライバルの 杏子が 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=0dvjo07A91I&feature=related

さやか「ミジュか"シェルブレード"!」

杏子「接近戦を挑んでくるとはいい度胸だな!"フレアドライブ"!」

正面から振られたアシガタナを白刃取りで綺麗に受け止め、炎を纏った強烈な攻撃を叩きこむ。
そしてすぐに距離を取り、次の攻撃に備える。

以前戦った時と同じく、身軽なゴウカザルだからこそ可能なヒットアンドアウェイ戦法である。
もっとも、以前はインファイトで果敢に攻めていたが、今回は炎タイプを意識している。

さやか「だったら"ハイドロポンプ"!!」

杏子「"かえんほうしゃ"だ!」

ぶつかり合った攻撃は相殺され爆発する。
二匹は互いに近付いては離れてを繰り返し、攻撃をやめない。

手数を生かし反撃を許さないゴウカザルだが、繰り返すフレアドライブと回避のため消耗は激しい。
ダイケンキもダメージを受けているが、成長したことでまだまだ体力に余裕はあるようだ。

どちらも三つ目の技はまだ見せない。

先に仕掛けたのは杏子だった。

杏子「ザル"かみなりパンチ"!」

さやか「ミジュか!!」

拳がダイケンキの腹部に撃ち込まれ、勝負は決まった。

さやか「ここだぁ"リベンジ"ぃ!!!」

敢えて相手の攻撃を受けることにより威力が倍増する、カウンターのような一撃がゴウカザルにヒットし戦闘不能となった。

さやか「やったぁー!!文字通りリベンジしてやったよー!!!ナイスミジュか!」

杏子「くっ……やるじゃねえか、一応成長してんだな」

さやか「当たり前じゃん!」

杏子「で、究極技はどうだ?」

さやか「そういえば……どう二人とも?」

ダイケンキ&ゴウカザル「……」フルフル

さやか「駄目かぁ。よし杏子、もっかいやろ!」

杏子「待て待て、回復してからだろ!」

二人は回復させてはバトルを繰り返し、修行を続けた。
いつの間にか四天王は全員揃っており、ポケモン達に技を教えてくれているようだった。

結局日が沈むまで続けても、二人はまだ修得することはできなかった。

ユキ「どうだった?」

さやか「27勝13敗であたしの勝ち越し!」

ウメ「いやいや、究極技のこと聞いたんだけど」

アキユキ「そもそも水タイプのダイケンキでどうしてそんなに負けているのですか」

さやか「いやぁ、杏子って普通に攻撃してくるようで結構テクニカルだから……」

杏子「でもまだまだだ。さやか相手に後れを取るなんて不覚だよ」

さやか「聞き捨てならん!いい加減あたしの成長を認めてもいいんじゃないの!?」

ゲン「ま、初日ならこんなもんだろ」

さやか「明日こそ修得するよミジュか!」 ダイケンキ「グォー!」

杏子「ザル、頑張ろうぜ」 ゴウカザル「……ウキャ」

杏子「ところで、他のみんなはどうなんだ?何か技覚えたりしたか?」

アキユキ「焦り過ぎです。こちらもそう簡単に修得できるものではありませんので」

ユキ「ただ、その……さやかちゃんのナックラーがね……」

さやか「?」

聞くと、どうやら一人どこかへ歩き出し帰って来なかったらしい。

四天王達が帰った後、仕方なく二人で湖の周りを探していると、それはすぐに見つかった。

巨大なすり鉢状の巣穴、所謂アリ地獄である。

なぜこんな場所まで来て修行もせず巣を作ったのか、理由はさっぱり分からない。

さやか「おーいフラすけー!いるんでしょー?もう夕飯の時間だよー」

杏子「つーかこんなでかいもん作ってどうすんだ……おい、気をつけねーと落ちる――」

さやか「あ」ズルッ

杏子「ぞ」

さやか「あぁぁあああああぁぁぁああぁあああああ」

杏子「何やってんだ馬鹿、埋まるぞ!!」

さやか「ちょ、これホント無理!滑るって!!」

杏子「ったくしょうがねーな、ムク助けて――」

???「ブリャー!」ズボッ

さやか「うわっ!」

突然アリ地獄の中から現れた影が、さやかの服を掴み上へと持ち上げる。

何が起こったのか誰も分からないまま、とりあえずさやかは助けてくれたであろうポケモンにお礼を言おうと振り返る。

さやか「ありがと、助かった、よ……」

ビブラーバ「ビビー」

杏子「ビブラーバじゃねえか……」

さやか「へぇー、てっきりフラすけの作った穴かと思ってたのに」

杏子「いやお前、ビブラーバっていや……」

さやか「へ?」

慌てて図鑑を確認すると、ナックラーの次に記載されているのはビブラーバである。
まさかとは思っているが、名前を呼ぶまで断言はできない。

さやか「……フラすけ?」

ビブラーバ「ブニャッ」ガブリ

さやか「……」

ビブラーバ「……」グリグリ

さやか「にぃぃぃやぁぁああぁあああああぁぁあああ!!!!」

杏子「おい大丈夫か!?」

さやか「この噛みつきっぷり……間違いなくフラすけ…!」

ビブラーバ「……」コクコク

さやか「なんで!?なんでいきなり進化してんの!?」

杏子「一人でいなくなってたのはこれか……進化できるまで修行してたとかじゃねえか?」

さやか「そんなこと……でも、確かにゲンさんに言われてたもんね、『進化してないからとっておきの技が教えられない』って
    意外と進化するとこ見られたくなかっただけとか…?」

ビブラーバは何も言わず飛び回っている。

ポケモンの言葉でも分からない限り、本当の理由も分からないだろう。

杏子「ともあれ、これで技も教えてもらえるんじゃねえか?そうすりゃウィッチ団なんか目じゃねえだろ」

さやか「そうだね!明日から頑張れよフラすけ!!」

~二十四日目~

アキユキ「なるほど、それで進化しているわけですか」

さやか「リオすけもフラすけもやる気十分なんでガンガン鍛えてよね!」

ウメ「それはさやかちゃん達が言われる方だよね~」

さやか「うっ……さあ今日も頑張るよミジュか!」

杏子「さ、あたしらも行くかザル」

ゲン「ちゃんと心通わせろよー」

この日も昨日と同じことの繰り返しになった。
ひたすら二人でバトルをし、究極技が使えないか試し、落胆する。

使う技にも変化を持たせ、戦い方も様々なパターンで行ったが、それでもまだ切っ掛けを掴めないでいた。

さやか「はぁー、こんなにやっても駄目かー!」

杏子「こんなに炎技使ってるのに、何にも思い出せないか」

さやか「一心同体ねえ……ミジュかは何考えてるの?」

ダイケンキ「……」

さやか「応えてくれるわけないか……」

杏子「……そうだな、休憩がてらちょっと昔話でもするか」

さやか「何よいきなり」

杏子「あたしとマミが先輩後輩だってのは言ったよな。そっからの話さ」

杏子「知ってると思うけど、マミのやつ技を使う時に変な掛け声あるだろ?」

さやか「あぁ、あれね……まどかは気に入ってたよ、あたしはまだちゃんと言ったことないけど」

杏子「まあ、悪くないアイディアだと思ったんだよ。普通トレーナーが命令する時はその技を言うのに、別の言葉で命令するなんて思い付かなかったし
   しかもマミとポケモン達が息ぴったりだったから、なおさらな」

さやか「確かに凄いよね。あれこそまさに一心同体って感じ」

杏子「で、ある時つい口走っちまったんだよ、『そういうの良いかもな』って……そん時のマミの目の輝きったらなかったぜ……」

さやか「なんか目に浮かぶよ……」

杏子「一日中一緒になって考えさせられて、何個か考えてもらったんだけど結局恥ずかしくてさ
   そこでマミに披露して以来ずっと使って来なかったんだよな」

さやか「確かに人前でいきなり使うのは恥ずかしいかもね……でも、なんで急にその話を?」

杏子「さっき自分でも言ってただろ、一心同体って感じだって」

さやか「……ま、まさか…?言っちゃうの!?必殺技を!?」

杏子「あたしもちょっと恥ずかしいけど……やるぞザル、やってやろうじゃねーか!!」

さやか「顔真っ赤にしてまで……そこまで本気なら、あたしも一緒にやるよ!!」

杏子「よし、早速バトルすっか!」

さやか「あ、待って、あたしどの名前でどんな技使うか決めてない」

杏子「おい!?」

さやか「ちょっと考える時間頂戴!」

結局技の名前を考えるのに一時間かかってしまったのは、さやかの拘りとマミへの相談が長引いたせいであろう。

そんなこんなで再びバトルを始める二人。
どちらも少し緊張しているのは、相手が相手とはいえ人前で自分達で考えた技名を叫ばなければならないからだ。
普段からバトルで口にするのは、誰もが当たり前に使っている技だから恥ずかしさはないのであり、少々勝手が違う。

さやか「んじゃ、張り切っていくよ杏子!」

杏子「一丁派手にやるかさやか!」

まずはお互いに様子見を兼ねての技を用いない肉弾戦で攻める。

隙はいくらでもある。

だが一瞬の躊躇いでそのチャンスを取り逃してしまい、中々攻めるに攻められない。

あるいは攻め時を見逃さない練習にもなっているようであった。

そして先手を打ったのは杏子である。

杏子「ろ…ロッソ・ファンタズマぁぁぁぁ!!」

ゴウカザルの影分身がダイケンキを取り囲み、すかさず次の攻撃に移ろうとする。

相手が攻める瞬間は、防御を行っていないということ。
すなわちそれは、さやかの攻め時となる。

さやか「いっけー!スクワルタトーレぇぇぇぇ!!!」

分身を打ち消すための、連続切りとエアスラッシュを組み合わせた多方向への滅多切り!

しかし背後には手が回らず、本体も既にそこにいた。

杏子「"インファイト"!」

さやか「"メガホーン"!」

しなる手足が迫る角をいなし打撃を撃ち込む。
互いに距離を取り、バトルは再び振り出しに戻った。

さやか「スクワルタトーレ!」

杏子「ロッソ・ファンタズマ!」

初めは恥ずかしがっていた二人だが、二度目は声に緊張感が無い。

得てしてこういうものは、慣れてしまえばいいだけの話なのである。

ゴウカザル「ッ!」ガシッ ダイケンキ「――ッ!」

さやか「しまった!」

杏子「ジャッジメント…フィアンマ…!」

文字通りその身を焦がす炎が溢れだし、至近距離から全力全開のオーバーヒートが爆発した。

巻き上がる爆煙で戦況は分からない。

杏子(……?妙だ、煙の量が多すぎ――ッ!まさか!!)

杏子「逃げろザル!」

煙から抜け出したゴウカザル。
しかし同時にダイケンキも飛び出し、ぴったりくっついて離れない。

構えたアシガタナからは水蒸気が溢れだしていた。

消えない爆煙は、アシガタナに纏った水流がオーバーヒートの熱によって気化していたものだったのだ。

さやか「スパーク……」

さやかの命令が分かっていたかのように、ダイケンキは既に攻撃態勢に移行していた。

さやか「エッジ!!」

シェルブレードがゴウカザルに炸裂しそのまま戦闘不能となった。

さやか「いっえーす!ナイスミジュか!!」

杏子「……お疲れ、ザル」

さやか「特に最後のは良かったよー!ほとんど同時で――ッ!?な、なにこれ!?」

杏子「どうした!?」

さやか「ゆ、指輪がすっごい光ってる……こ、これってもしかしたら…!」

杏子「まさか、ついに…?」

狙いは巨大な岩。

呼吸を落ち着け、的を捉え、イメージするのは究極の技……!

さやか「"ハイドロカノン"!!」

ダイケンキから発射される、ハイドロポンプをも上回る圧倒的水流と水圧の水大砲。

全てを飲み込む激流の力。

そのあまりの威力に思わずダイケンキも後ずさってしまい、岩には命中せず掠らせることしかできなかった。

それでも掠った部分は綺麗に削り取られるほどだ。

さやか「……これが、究極技……」

杏子「なんつー威力だ……」

さやか「ミジュか、もっかい……あれ?」

ダイケンキ「……」ゼェゼェ

杏子「続けて撃つのは難しいみたいだな。一発限りの必殺技ってわけだ」

さやか「いよっしゃー!やったねミジュか!!!あとは練習あるのみだね!」

杏子「まさかほんとにできちまうとは……やるじゃねえか」

さやか「杏子はどう?」

杏子「いや、指輪が全然光ってねえ……駄目だな」

さやか「大丈夫だよ!あたしとミジュかだって出来るようになったんだし、杏子もすぐだよ!」

杏子「……だといいがな」

さやか「にしても、ほんとに必殺技叫ぶと究極技使えるようになるなんて……マミさんに感謝だね」

杏子「あたしも割と冗談だったんだけどな……」

それから日が暮れるまで二人は修行を続けたが、結局その日のうちに杏子が究極技を習得することは出来なかった。

アキユキ「なるほど、遂に究極技を習得できたのですね」

さやか「おうとも!あとは命中精度とか上げてくだけ!」

ユキ「杏子ちゃんも焦らなくても大丈夫だよ。ポケモンとちゃんと繋がってるって自信持っていいよ」

杏子「まあ、分かってるさ」

ゲン「それにしてもさやか、お前のビブラーバすげえな。まさかたった一日で技を覚えちまうとは」

さやか「マジで!?フラすけやるじゃん!」

ウメ「しかもとびっきりのやつだからね~。よっぽど怒りが溜まってたんだね」

ゲン「ちょうどいい、ちょっと見せてやれ」

ビブラーバ「ブリャァ!!」ググッ

さや杏「……おっ…………えっ…………う、うわあああああああああぁぁぁああぁぁ!?!?」

ビブラーバの修得したとびっきりの技を目の当たりにし、究極技の修得も相まってこれからの戦いにさやかは自信を付けまくっていた。

さやか(大丈夫、きっと勝てる……もう絶対に、へましたり負けたりしない…!)

二人は四天王と別れ、小屋に戻って食事などを済ませて灯りを消した。

気持ち良さそうに寝息を立てるさやかとは違い、杏子は硬いソファの上でボーっと天井を見上げていた。

なぜさやかには出来たのか。

なぜ自分には出来ないのか。

パートナーと一緒に過ごした時間ならばさやかよりも確実に多い。
必殺技の練習だってずっと昔に一緒にやった。

心を通わせることなら出来ているはずなのに――

杏子「いや、ここ数日は通わせようとしてなかったかもな」

ゴウカザル「……」

杏子「どうなんだザル?どうすればいいと思う?」

ゴウカザルは身振り手振りで自分のやりたいことを伝えようとする。

そして杏子はすぐに理解した。

もっとも、それは杏子も同じことを思っていたからだろう。

杏子「そうだよな……戦うからには、やっぱ勝ちてーよな…!」

ゴウカザル「ッ!」コクコク

杏子「ザルが負けず嫌いなのは知ってるさ。炎の究極技を修得したいからって、炎タイプばかりに拘って負けてたら世話ねーさ
   だったらそんな技いらない……相手が苦手なタイプだってんなら、そいつに負けない戦い方を考えるまでだ!」

それから朝まで作戦を考え、さやかが目を覚ます頃にようやく一眠りした。

~二十五日目~

さやか「任せてよ!とことん付き合ったげるからさ」

杏子「なに、悪いなんて思う必要はねえぞ。今日はひたすらボコボコにしてやっからな」

さやか「なにおー!?」

杏子「いくぞザル、今日は変に炎タイプなんかに拘ったりしねえ。勝つことだけ考える…!」

ライバルの さやかが 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=_LECpoKdXlA

さやか「ミジュか"メガホーン"!」

杏子「ロッソ・ファンタズマ」

さやか「見切る必要は……ない!スクワルタトーレ!!」

アシガタナによる斬撃と旋風で分身が次々と消えていく。

最後の一体をアシガタナが切り裂きダメージを与える――

さやか「分身!?」

しかしダイケンキの周りにいたのは全てゴウカザルの分身。

本物は離れたところで目を瞑り、静かに力を蓄えていたのだ。

さやか「くっ、ミジュか"ハイドロポンプ"!」

杏子「"めいそう"し終わったな……"きあいだま"だ!」

瞑想を重ねることで威力の上昇した気合い玉は、強力なハイドロポンプをあっさりと打ち破りダイケンキにヒットした。

ダイケンキはそのまま一撃でノックダウンされてしまった。

さやか「嘘……そんなあっさり……」

杏子「ナイスだザル。次は接近戦で決めるぞ」

さやか「ごめんミジュか、勝負を焦り過ぎたみたいだね。でも、次は負けないから!」

それからの試合は、一方的ではないにしろ杏子とゴウカザルの勝利が続いた。

さやか達も喰らいついているのだが、せっかく見に付けた究極技も素早いゴウカザルに当てることが出来ず、器用に立ち回る二人に苦戦を強いられていた。

さやか「"きあいだめ"!」

杏子「ザル、"アンコール"だ」

さやか「あぁっ!ミジュか!!」

杏子「"きあいパンチ"!」

渾身の一撃がダイケンキに撃ち込まれそのまま戦闘不能となった。
これでこの日の勝敗は杏子の12勝5敗となった。

さやか「んもう!昨日までと全然違うじゃん!!」

杏子「昨日までのあたしは技を習得させるために戦ってた。だが、今は勝つためだ。本気でやるぞ」

さやか「どうしちゃったのよマジで……それに、今日は全然炎タイプの技使って来ないし」

杏子「んなもん、相性で不利だって分かってるのにわざわざ使う必要はねえだろ。手段は選んでられねえ」

さやか「でも、使わないと究極技思い出せないんじゃ……」

杏子「だから、今はそんなことどうでもいいんだよ!技一つに拘って負けるくらいなら、初めからそんな力望まないし、要らないし、必要ない
   それに、究極技なんかなくても勝てるって分かってきたしな」

さやか「なっ!あたしらはまだ練習不足なだけで……ちゃんと使いこなせればもっと強くなるって!」

杏子「どうだか…まず当てられなきゃどうってことないしな。大技だから見切りやすいのが一番の難点だろうな」

さやか「確かに、今日はまだ一回も当てられてない……そっか、だったらそういう作戦を考えれば……」

杏子「さあ、続きといこうぜ!!」

杏子「"アクロバット"!」

さやか「"れいとうビーム"!」

あちこち飛び回り翻弄するゴウカザルに、ダイケンキは攻撃を当てられない。
近付いてきた頃合いを見てシェルブレードで応戦するが、これも上手く防がれてしまう。

しかし辺りに氷の山ができていくにつれ、動きが制限されていることに杏子は気付いた。

杏子(こいつ、炎技使わないと聞いて氷でザルの逃げ道を限定してる……まさか…!)

さやか「これで、逃げ道がないでしょ」

ゴウカザルの両側には氷の壁が出来上がり、簡単に跳びこえることは出来ない。

技をかわすことも、できない。

さやか「"ハイドロカノン"!」

杏子「くっ…こうなったら――ッ!?指輪が…!!」

ハイドロカノンは既にゴウカザルの眼前に迫っている。
もはや考える猶予はない。

杏子「いいさ、やってやろうじゃん……"ブラスト…バーン"ッ!!」

ゴウカザルから発射される、オーバーヒートをも上回る圧倒的爆炎と獄炎の火柱。

全てを焼き尽す業火の力。

二つの究極技はぶつかり合い、周囲に水蒸気を撒き散らしながら暴発した。

さやか「何にも見えない……でも、道は一つしかなかった!ミジュか、そのまま"アクアジェット"だあああ!!!」

反動で痺れていた体が戻り、ダイケンキが突進する!

ダイケンキ「ッ!?」

さやか「いない!?」

杏子「ばーか、あれだけの炎を使って氷が溶けないわけないだろ」

さやか「まさか、横!?」

杏子「"かみなりパンチ"!」

氷の穴からゴウカザルが飛び出し、電撃を纏った拳をダイケンキに撃ち込む。

そのまま戦闘不能となり、杏子の13回目の勝利となった。

さやか「んもう!いけると思ったのに!!って、それより杏子やったじゃん!ついに究極技を覚えられたんだね!」

杏子「あぁ、おかげさまでな!」

さやか「これで後は練習して自分達のものにするだけだね!」

杏子「今頃他の奴らも技覚えてるかもしれねえな。どうやらあたしら、強くなりすぎちまったかもな」

さやか「……」

杏子「な、なんだよ」

さやか「いやいや、なんかそんな風に自分を褒めるなんて珍しいなと思ってさ」

杏子「んなことねーだろ別に!ほら、休憩したら合流してみようぜ!」

四天王達と合流すると、どうやら大方技を教え終えたとこらしかった。

つまり、明日からは自分たちで技を磨き、作戦を考え、ものにしていかなければならない。

アキユキ「なるほど、二人は同じ条件で修行していたのに修得のために意識したことは、『タイプを意識すること』と『タイプを意識しないこと』
     なかなかに興味深いですね。真逆の意識でも最終的に究極技を習得できるとは」

ウメ「そうだ!もう指輪外れるようになってるよ」

杏子「ほんとだ……」

ユキ「じゃあいよいよ私達が教えられることはないかな」

ゲン「あぁ。あとはお前達次第だ」

さやか「……あの……あ、ありがとう、ございました…!」

杏子「あたしからも、ありがとうな」

ウメ「まだお礼を言われるのは早いよ。ウィッチ団と戦って、しっかり勝ってこなきゃ」

ユキ「ふふっ、期待してるよ!」

~二十六日目~

前日のうちに四天王にどんな技を教えてもらったのかは把握していたので、二人は朝からひたすら練習を始めた。

究極技は勿論、他の技と組み合わせどのように戦えばいいかを考えながらのシミュレーション。

策が通じないなら、奇策で挑めばいいのだ。

さやか達が強くなったと言っても、それがウィッチ団に通じるかはまだ分からない。

それでも自分達に出来ることをやるしかないのだ。

そして太陽が湖に沈み一日が終わる。

この夕焼けを見るのも今日が最後になるであろう。

さやか「一週間、あっという間だったね」

杏子「そうだな……明日はいよいよ決戦か」

さやか「あたし、勝てるかな……またみんなの足引っ張ったりしないかな……」

杏子「心配すんなよさやか。お前がどれだけ頑張ってきたかあたしは知ってる。幹部くらい楽勝だろ」

さやか「……うん、そうだよね!あたしがやる気出さなきゃ戦えないもんね!」

杏子「あぁ!その意気だ!」

さやか「よっしゃあああーーーーー!!!!やるぞおおおーーーーー!!!!」

ザバァーーーン

???「きゅううん!」

さや杏「…………うん?」

さやかの気合いの入った叫びに呼応するかのように湖から飛び出したのは、青い光を灯した小さなポケモン。

青い三角頭に、三本の尻尾を持つそのポケモンは、ゆっくりとさやか達に近付いてくる。

ルカリオ「リオ!」

さやか「どうしたのリオすけ?」

???「きゅん!」

ビブラーバ「ビビ!」

さやか「フラすけも!?」

さやか「なんなのこいつ?こんなポケモン見たことない……」

杏子「いや、あたしはある……」

さやか「マジで!?」

杏子「トネの図書館でギラティナの傍に小さく描かれてたやつだ……名前は分かんねえけど」

さやか「?」

杏子「三つの湖から現れる三匹のポケモン。それと人間達が祈ってギラティナは影の世界とやらに帰って行ったらしい」

さやか「帰って……もしかして、追い出せたりするんじゃない!?」

杏子「ナハトからギラティナがいなくなりゃ戦力はガタ落ち……一気にこっちが有利になれる!」

さやか「じゃ、じゃあ早く捕まえなきゃ……あれ?」

謎のポケモンは二人のポケモン達と仲良く遊んでいるように見える。

少なくとも敵意はなく、逃げるつもりもなく、さやか達を怖がっている様子もない。

さやか「なんなんだろう、一体何がしたいの…?」

???「きゅううううん!!」

さやか「何?なんて言ってるの?」

杏子「……まさか、あたしらと一緒に戦ってくれる……とか?」

???「きゅうん」コクコク

さやか「そ、そんなのあり!?」

杏子「こうは考えられねえか?ナハトがどうやったか知らねえがギラティナを呼び寄せた。だから、それを元の世界に返すために"協力"してくれる」

さやか「協力……」

さやか「本当に一緒に来てくれるの?戦ってくれるの?」

???「きゅううん」

さやか「……どうする?」

杏子「どうするもこうするも、一緒に来てくれるってんなら願ってもねえ話だ」

さやか「だよね……よし、一緒に行こう!」

???「きゅううん!!」

さやか「で、なんて名前なの?」

杏子「流石に図鑑には書いて……あるのか」

さやか「さすがポケモン図鑑……アグノム、だね」

アグノム「きゅん」コクコク

杏子「意志の神、ねえ……案外さやかの意志に反応してきただけだったりしてな」

さやか「あたしの!?それだったら杏子もでしょ!二人の絶対勝つって思いが伝わったんだねきっと!!」

杏子「とにかく、今日はもう休んで、明日の朝一で出発するから付いてくるんなら寝坊すんなよ」

アグノム「?」

さやか「そういえば、どこに行くの?」

杏子「決まってんだろ!ナハトのいるクロマツシティだ…!」

アグノムは二人とポケモン達についてきて小屋の中に泊まった。

特にルカリオとビブラーバとは仲が良く、「あの怒りっぽいフラすけがなんで……」とさやかは不思議がっていた。

やがて全員寝静まり、朝を迎えた。


最終決戦が、始まる――!

注)始まりません

次はマミ編ですね
XYまでに終わらせるとは何だったのか…
頑張ります

初代ポケモンがアニメとして蘇るらしいぞ
人気ゲーム『ポケットモンスター』シリーズの第1作目となる『ポケットモンスター赤・緑』が、オリジナルアニメとなり今秋にテレビ東京系列で特番で放送されることが17日、わかった。東京ビックサイトで開催中の『Pokemon GAME SHOW』(18日まで)で発表された。

1996年にゲームボーイ用ソフトとして発売された『赤・緑』を原作としたオリジナルアニメ『ポケットモンスター ジ・オリジン』。主人公は、これまでのアニメシリーズでお馴染みのサトシではなく、レッドという男の子で、ポケモン図鑑完成を目標に旅に出る。

 ゲーム『赤・緑』同様、最初のパートナーにはフシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲから、1匹を選択。レッドはヒトカゲとともに大きな夢を追いかけることになる。
オリジナルアニメとして蘇る初代ポケモン。同作は、10月2日(水)午後7時より放送。
どうせならポケスペがよかったが今のポケモンアニメよりは楽しめそうだ

~閑話休題・ほむらside~

ナハトがジムリーダーに喧嘩を売った翌日。
ほむらは見滝原にある自分の部屋で目を覚ました。

隣にはもう一つ布団が敷いてあるが姿はなく、聞こえる音から察するに、既に起きて朝食を準備しているらしかった。

少々狭い台所に立っているのは三つ編み姿の少女。

ほむら「おはよう。今日の当番は私だったはずだけど」

???「おはよう。だって、チャンピオンと戦いに行くんでしょ?」

それは眼鏡をかけたほむらそのものだった。

髪をほどいて眼鏡を外すか、あるいは髪を結って眼鏡をかければ二人の姿は全く同じになる。

敢えて言うならば、眼鏡をかけているほむらの方がやや目つきが穏やかであろうか。

めがほむ「……今回は大丈夫そう?」

ほむら「なんとかしてみせるわ。めがめがもいるから、かなり戦いやすくなったし」

めがほむ「気を付けてね。また"昔"みたいに怪我なんかしたら……」

ほむら「それは大丈夫だって言ったでしょう」

めがほむ「でも!この間もへん――」

ほむら「平気よ。今度こそ、決着を付ける…!」

めがほむ「……ご飯、食べよう」

ほむら「……そうね。いただきましょう」

二人とポケモン達の静かな朝食が終わり、後片付けはほむらが行っていた。

ほむら「今日から学校だったわよね?私の都合で随分休ませてしまったわね」

めがほむ「うん。でも、志筑さんに聞いた話なんだけど、学校を休む人が多くてあんまりいく意味がないかもしれないって」

ほむら「ワルプルギスのせいね……大丈夫よ、私が勝てば無意味にはならないわ」

めがほむ「ふふっ、そうだね。私も、頑張ってくるね!」

二人とも身支度を丁寧に済ませ、一人はそのままゾロアを連れて学校へ。

一人はウォーグルに乗ってクロマツシティへ飛び立っていった。

眼鏡をかけたほむらは、その姿が点になるまで少し寂しそうに見つめていた。

ミタキハラシティから僅かに20分程度で、ほむらはクロマツシティのあるアカギ山に到着した。

ほむら「……なによこれは」

そして驚愕した。

朝早く来たつもりだったが、ポケモンリーグの前にはすでに大量の人間達がひしめき合っていた。
チャンピオンロードを抜けてきた、いずれも猛者たちである。

その様子をほむらは物陰から見つめる。

「俺にもバトルさせてくれー!」「ウィッチ団の横暴を許すなー!!」「私達も戦いたいのよ!」「ナハト出てこーい!」

海香「静かにして!まずはジムリーダーが……って、話を聞きなさい!」

カオル「もういい加減にしろよお前ら!!」

リーグに押し掛けるトレーナー達を、プレイアデス星団が必死に押さえていた。
しかし人の波は止まず、次々と押し寄せてくる。

「ジムリーダーに任せて本当にいいのか!?」「私だってバッジ持ってるわー!」「マエバシみたいな失態を繰り返すのか!!」

みらい「勝手ばっかり言って……お前ら相手に本気出してると思ってんのかー!!」

「なんだとこのチビ!!」「いいからそこどけお前ら!!」\ワーワーギャーギャー/

みらい「ちちち、チビとはなんだー!!」

里美「うわーん!もう私達だけじゃ抑えられないよー!」

かずみ「……」スッ

カオル「かずみ…?」

かずみ「静かにぃぃいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!」

かずみの咆哮が街中に響き渡り人々を一瞬で鎮める。

心も体も幼いが、最年長の佐倉神父がジムリーダーのまとめ役を任せているのは、かずみがバトルの実力と人をまとめる力に長けているからなのだ。

かずみ「みんなの気持ちはすっごくわかるよ。マエバシのことも本当にごめん……でも今は時間がないの!
    ナハトさんが一週間と言ったからには、この一週間で決着を付けるしかない……
    確かに私たちじゃ勝てないかもしれない!ナハトさんはすごく強いし、それは私もよく知ってるよ
    でも少なくとも私は、ここにいる誰よりも強い自信がある!だからみんなにバトルしてもらうより可能性はあると思うの!!」

エリートトレーナー「なんだとぉ!俺はバッジ八個持ってんだぞ!!ジムリーダーより強いに決まってんだろ!!」

かずみ「……」

サキ「面白い…叩き潰して来るか」

ニコ「ナンセンスだよサキ。どっち向いて戦うつもり?」

かずみ「言いたいことは分かったよ……でも聞いて!私達は――」

ナハト「全くみんな朝から五月蠅いよー。おかげで目が覚めちゃったじゃないの」

一同「――!!」

リーグの奥からナハトがゆっくりと歩いてきた。
寝起きと言いつつ、身なりはきっちり整えられている。

かずみよりずっと小さな声で、しかし出てくるだけで皆を黙らせることができるのは、そのカリスマ性にあるのだろう。

ナハト「話は聞こえてたよ。要するに誰から戦おうかで喧嘩してたわけだ」

かずみ「ナハトさん……」

ナハト「いいよ、先ずはジムリーダーから戦おうじゃないか。それから挑戦者の諸君、君たちの挑戦を受けて立つよ」

\ザワザワ/ \エーマジカヨー/ \ガヤガヤ/

文句を言うトレーナー達に有無を言わせないこの迫力こそ、チャンピオンの貫録というものである。

佐倉父「ナハト君……君はどうしてこんなことを……」

ナハト「フフフ、単なる暇潰し……そう、いわば計画が成就されるまでのお遊び」

アイリ「言ってくれる……遊びで終わらせられると思ってんの…?」

ナハト「アハハハハハハ!私をその気にさせられたらね、ア・イ・リ・ちゃん!」

アイリ「……っ」ギリッ

ユウリ「アイリ落ち着いて……」

ナハト(それに……楽しみは最後に取っておいた方がいいしね)ジッ

ほむら「っ!」

ほむら(こっちを見た……?)

アブソル「グルル……」

ほむら「そるそる?――ッ!!」

カンナ「Shit、もう気付かれたかい」

ほむら「聖カンナ…!」

カンナ「そう怖い顔で睨むなよ。別に今は戦うつもりはないんでね」

ほむら「何の用?」

カンナ「用という用はないね。強いて言えば見かけたから声を掛けただけさ」

ほむら「……」

カンナ「君はずっとナハトについて来てるらしいじゃないか。ナハトの目的も知ってるんだろう。なのになぜ賛同できないのか、私には分からないね」

ほむら「……そうね。どうしても、あいつの目的を阻止したいの。簡単に言えば、私の手で一度でもいいからあいつを倒したいのよ」

カンナ「はぁ?」

ほむら「私に出来なかったことを、今度こそ……」グッ

カンナ「まあ別にいいけどさ……この時間で阻止しないと本格的に世界が変わるよ」

ほむら「…どういう意味?」

カンナ「もう過去には戻らない。君の知らない方法でナハトはこの世界を導くつもりさ」

ほむら「――っ!私の知らない方法ですって…?」

カンナ「君のことはよく知らないけど、君が知らないということは知っている。本気でナハトを止めたいならもう無駄さ」

ほむら「そんなことやってみなくちゃ分からないわ!」

カンナ「あぁ、そうだね。ナハトはきっとバトルで負けたら本当に計画を中止するだろう。ナハトはそういう奴だ
    まあでも、ジムリーダーがどこまでできるか見物してからにすればいいさ。あいつらが無様に負けて行く様を見るのは面白いと思わないかい?」

ほむら「面白いとは思わないけど、あいつはまだ私と戦うつもりはないみたいだから、今行ってもまともに戦えないでしょうね
    それにジムリーダーと顔を合わせるのも面倒だし……で、わざわざそれを忠告しに来たのかしら」

カンナ「さて、どうだろうね……チャオ、ほむら。またどこかで会えるといいね……」スタスタ

ほむら「聖カンナ……一体何者なのかしら……とにかく今は、しばらくあいつの戦いを見せてもらいましょうか」

とんでもない嘘吐きですね
多分マミ編終わったらまた挟むと思う

今更>>3訂正
ミカルゲ(ミカっち)『プレッシャー』「きまぐれ/少しお調子者」♀
ウォーグル(ぐるぐる)『ちからずく』「ゆうかん/とても几帳面」♂


しかしめがほむ一回出してたのに反応がなかったのは、分かりにくかったからなのかみんな予想してたからなのか……
なんにしろ再登場


全然関係ない話だけど、こないだの大会で改造してたの1500人以上だったらしいね…ざまぁ
私はなんとか1700代キープできますた
伝説解禁戦は定期的にやってほしい

しばらくポケモンは話題に事欠かないですね

次は多分九月中旬になるかもですが、頑張ります

おりマギ外伝を読んで以来キリカのポケモンのNN変えたくて仕方がない

―マミside―

~二十一日目~―ミタキハラシティ―

自分でも驚くほどすっきり目を覚ましたマミは、すぐにポケ―タイを取り出してメールを開いた。

文は寝る前に考えていたもので、あとは心を落ちつけ、何度も確認をして、杏子に「一緒に修行はできない」旨を伝えるだけだった。

マミ(ごめん二人とも……)

送信ボタンは簡単に押せた。

そっとリビングに向かうとすでに母親が朝食の準備をしていた。

マミ「おはよう」

マミ母「おはようマミ。よく眠れた?」

マミ「うん……顔洗ってくる」

昨夜遅くに帰ってきて、何も言わないマミを両親は問いただしはしなかった。

それほどまでに暗く、草臥れている様子だった。

マミ本人としても、まどか達と旅をしたいと言って出てきたのに、一週間としないうちに帰ってくることになるとは思ってもいなかった。

マミが悩んでいたのは、これから杏子達に合流すべきかということと、両親に今までのことを話すかということだった。

修行に関しては今まで通りのやり方を貫こうと決意したが、こちらに関してはまだ決めあぐねていた。

まどか親子のように寛容ならばあまり迷うこともないのだが、マミの両親がそうだとは思えなかったのだ。

再びリビングに戻ると父親も起床してテレビを眺めていた。

画面にはナハトと戦おうとするトレーナー達が集まっている様子が映し出されている。
よく聞こえないが、どうやらジムリーダーより先に戦わせろというものらしい。

マミ父「やれやれ凄い人だかりだな」

マミ母「休む子が多くて学校もしっちゃかめっちゃかよ」

マミ父「またマエバシみたいなことになれば危険だというのに……」

マミ「……」

お父さんお母さん、私はマエバシシティで危険に巻き込まれていました。
今から強くなってこの人達と同じようにまた危ない所へ戦いに行きます。

そんなことを言いたい衝動をぐっと堪える。

言えば反対されるに決まっている。

心配する両親をどうやって振りきればいいか、考えてもいい案は浮かばない。

そのまま朝食を食べ始め、何気ない会話が続いていた。

こうして三人で食事をするのは久しぶりで、もしかしたらそれも出来なくなるかもしれない……。

マミ父「次はいつ旅立つんだい?」

ぐるぐると考えていると、父親が天気でも訪ねるようにマミに訊いてきた。

マミ母「お父さん…!」

マミ父「お友達とグンマーを旅してリーグに挑戦すると言ったから、もうしばらく会えないかと思ってたよ」

マミ「それは……」

マミ父「……何か、あったんじゃないのか?」

マミ「……実は――」

両親の優しさ、あるいはプレッシャーに観念したマミは、やがて静かに口を開いた。

全ての事情を聞いた両親は、しばらく何か考え込んで黙っていた。

その間ずっと、マミは二人の制止をどうやって振りきるべきか再び思考し始めていた。

マミ父「どうしてもマミが戦わなきゃ駄目なのかい」

マミ「……私でなきゃダメな理由は多分ないけど、私がやりたい理由はあるわ」

マミ母「そりゃ、旅に出るからには危険なことに巻き込まれるかもしれないとは思ってたけど……
    悪人だって分かってる人達の根城に飛び込むなんてどうかしてるわ」

マミ「でも私……戦いたいの!」

マミ父「……マミ。マミは昔から頭のいい子だった。私達にポケモントレーナーになりたいと言った時もきちんと計画を立ててきたし、
    実際旅と勉学の両立をしっかりこなしていた。そのマミが考えに考えた上で、危険だと承知で戦いたいというなら、何か策があるんだね」

マミ「……私の役割はきっと、鹿目さんや他のみんなをサポートすること。だから、幹部の子と戦うことになるでしょうね
   私もリベンジしたい子がいるし、その戦いに向けて修業をすれば多分間に合うと思うの」

マミ父「そうか……」

両親は黙って何かを考えている様子で、マミもじっと次の言葉を待つ。

マミ父「いいよ。行きなさい」

マミ母「お父さん!」

マミ父「昔マミが旅立つ時も行ったじゃないか。可愛い子には旅をさせろ、だよ」

マミ母「でも――」

マミ父「私はマミの事を全て理解できてるわけじゃないが、グンマーがこのままだと大変なことになることは分かっている
    今はきっとマミの力が必要な時なんだ。だったら私達に出来るのは『いってらっしゃい』と見送ることなんだよ」

マミ「お父さん……ありがとう!」

マミ母「もしかして、この間うちに来た子達も戦うの?一緒に修業したりするのかしら?」

マミ「あ、修業は一人でやるつもりなの……ほら、今までもそうだったし、一人でやった方が多分効率いいし……」

マミ父「一人って……杏子ちゃんとも一緒じゃないのか?」

マミ「うん……だって、今まで通り一人の方が……一人じゃなきゃ……」

マミ母「一人一人って言うけれど、今までだって一人じゃなかったでしょ」

マミ「え?」

マミ母「ずっとポケモンと一緒だったのに、一人ぼっちなんて言えるもんですか」

マミ「あ――」

マミ母「マミは一人じゃないわよ。マミの傍にはいつだってマリーレ達がいてくれたじゃない
    本当の一人っていうのは、ポケモン達もいなくなって、友達だっていなくて……私達もいないような、そういう状況のことよ」

言われて初めて、マミは想像する。

孤独とは、誰もいない闇の中に佇んでいるようなもの。

両親がもしも死んでいたら?

杏子達に出会えなかったら?

ポケモン達もいなかったら?

少し考えただけで背筋が寒くなる。

何の為に戦うのかすら見失ってしまうだろう。

マミ(そっか、そうなんだよね……どうして忘れてたんだろう。この子達はずっと一緒にいてくれたのに
   家にお父さんとお母さんがいるって思えたから頑張れたのに……私は、一人ぼっちなんかじゃない…!)

食事を素早く済ませ、身支度を整え、荷物を揃え、最後に髪をセットして準備は完了。

マミ母「ちょっと待ってマミ」

マミ「?」

両親がそれぞれ手にしていたのは、水色をしたお香と小さな貝殻の鈴である。

マミ父「ポケモン達に持たせてやりなさい。私達にはこれくらいしか出来ないが……早く帰ってきなさい」

マミ母「怪我と病気には気をつけなさいね」

マミ「お父さん、お母さん……」

目が熱くなるのをぐっと堪えて扉を開く。

そうだ、なにも死にに行くわけじゃない。

必ずまたここへ帰ってくるために、眩しいくらいの笑顔で――

マミ「いってきます!」

マミ父母「いってらっしゃい」

マミ「フワーレ!まずは修業できる場所を探すわよ!」ボンッ

フワライド「フワワ~」

今は、目の前のことに集中するしかない。

一人じゃないことに気が付けた今、少しだけ杏子達と一緒に修行すれば良かったかもと思い残しもしたが、今更無理なことである。

風任せに飛び回り、やがて修行にうってつけの場所を見つけた。

マミ「ここなら近くにポケモンセンターもあるし、集中して出来るかも」

そうして降り立ったのは、つばなの湖である。

いつもならたくさんのトレーナー達で賑わっているここも、今は誰一人いなかった。

~つばなの湖~

荷物を降ろし、ボールから皆を出すと軽く準備運動をする。

風もなく、波打つ音も聞こえない静かなほとりに、六匹と一人の呼吸する音が微かに広がる。

マミ「さあ、まずはいつも通り組み手から行くわよ!」

かつてマミが実家から各地へ飛び回っていた頃、たまにジム戦前にはこうして特訓を行っていた。

組み手に始まり、各ポケモンの長所を伸ばせるよう個別の特訓メニューをこなし、作戦会議を入念に行ってから実戦を想定した立ち回りを練習する。

最も時間を使っていたのがこの作戦会議であり、これこそマミの身に付けてきた知識がいかんなく発揮される場だった。

この日はいつもより組み手と個別メニューにたっぷり時間を使い、昼食を取ってからじっくり作戦会議を始めた。

マミ「私はきっと、幹部の子と戦うことになるわ。できれば、シャルちゃんにリベンジをしたいと思ってるけど……
   一応他の幹部達相手にも戦えるような戦い方を考えましょう」

マミはまず、自分の戦い方を決める。
どんな技を使えば勝てる道筋を作れるか、そこから勝つにはどうすればよいか。
様々な勝ちへのパターンを考え、それから反撃を想定する。
一番されたくないことは何か、何が負けに繋がるのか。
例えばジム戦であれば、苦手なタイプを対策する術は必ずあるはずなのだから、それらも想定しなければならない。

勝利と敗北の思考を繰り返し、実際に戦ってみて改善をし、ひたすら煮詰めていく。

日が暮れるまで何度もシャルロッテを想定し戦い、どうすれば勝てるのかを考える。

しかしどうにも良いイメージが湧いてこなかった。

マミ(今度の戦いはジム戦みたいなルールがあるバトルじゃない……事実、シャルちゃんはミルホッグに忍ばせてた薬を使って回復してたわけだし
   普通に戦ってるだけならきっと勝てない気がする……もっと何か、上手なやり方がある気が……)

その時ふと沈んでいく太陽が目に入った。

煌々とした輝きはすでに燻り始め、湖面に映る黄金色の光も徐々にその色を失って――

マミ(あら?よく考えれば周りはもうすっかり影なのに、なんで湖が光ってるのかしら…?)

そう思った直後には、暗い湖があるだけだった。

何かが発光していたのは間違いないと思ったが、それが何なのかマミには分からない。

マミ「まあきっと、湖に住むポケモンよね。みんな、今日はこのくらいにして帰りましょうか」

ポケモンセンターにはマミとジョーイさんしかいなかった。

聞くところによれば、こんなに暇なのはここに勤めて以来初めてらしい。

お互い一人で食事をするのも寂しくなり、二人とポケモン達で食事を摂っていた。

そこに自動ドアの開く音がして、客が二人現れる。

ジョーイ「いらっしゃいませー」

一人は気品溢れる白いドレスを纏い、仕草の一つ一つにも上流階級を思わせる雅な少女。

???「失礼します。こちらに巴マミという方がおられますわね。呼んでいただけるかしら」

ジョーイ「巴さんなら、あちらに」

???「いるいる!あのピョンピョンヘッド見覚えあるある!」

一人はバトラーのような燕尾服とミニスカート(なぜかスパッツを履いている)で、右目に眼帯を付けた子供のようにはしゃぐ少女。

マミはその二人組に見覚えがあった。

???「こらキリカ、はしたないわよ」

キリカ「ごめんごめん織莉子、ついトレーナーとしての血が騒いでね」

織莉子「さあ、まずは挨拶からよ」

織莉子「お食事中に失礼しますね」

マミ「あなた達確か……イツサトタウンの占い師さんとそのお友達の……」

織莉子「あら、覚えていてくださるなんて光栄です。お久しぶりですね、巴マミさん。美国織莉子です」

キリカ「いやいや懐かしいねえ、うん。呉キリカだよ」

マミ「勿論覚えてるわ、今後の旅について占ってもらったんだもの。ところで呉さん…その眼帯は……」

キリカ「……チッ」

マミ「あ、ごめんなさい!失礼だったわね」

キリカ「あんの腐れメイドと庭師絶対許さない……殺して解して並べて揃えて晒してやりたい……」ギリッ

織莉子「ごめんなさい、ちょっとこの子傷のせいで今は常時バトルモードなのよ」

キリカ「ああぁぁっぁあぁああああ!!右目が疼くぅうぅううう!!!!」

マミ「は、はぁ……」

マミ(バトルモード…?どういう意味かしら?)

キリカ「そうだピョンピョン!私とバトルしろ!そうだそれがいいそうしろ!」
 
マミ「今から!?」

織莉子「落ち着きなさい」ペシッ

キリカ「織莉子ぉ……」

織莉子「明日たっぷりとできるから今は我慢の時よ」

キリカ「ちぇっ……」

マミ「それで、私に何か用なのかしら?」

織莉子「えぇそう、そのことなのです。実はキリカの右目とも深く関わっていて――」

キリカ「くっそぅまさかあの庭師まで私と同じ……」ブツブツ

織莉子「キリカ、ちょっとでいいから静かに出来ないの?」ペシッ

マミ(呉さんって、前に見た時はこんな感じじゃなかったわよね……まさか別人…なんてことはないわよね)

残念(?)なことに、マミはキリカが豹変する瞬間を見たことが無かった。
以前見かけた時は、元の気弱で大人しいキリカだったから、今のキリカが違う人間に見えていても無理はない。

織莉子「この子の右目を傷付けたのも、私を襲ったのも、うちでメイドと庭師に化けていたウィッチ団だったのです」

マミ「なんですって…!?」

織莉子「彼女達の目的は、私の抑制。未来を視ることができるなんて、普通なら信じないし放っておくのでしょうけど、
    何せ彼女達のボスがああいう人ですから……私に何かされる前に手を打っていたのでしょう」

マミ「なるほどね……でもちょっと待って、襲われたって……大丈夫なの?」

キリカ「フフフ、大丈夫?大丈夫かって?これが大丈夫に見えたらポケモンセンターは経営破綻だよ」

織莉子「私も服で隠してはいますが……」スッ

マミ「っ!」

ドレスの袖を捲ると、まだ傷が完治していないらしく、いくつもの包帯が巻かれていた。

それだけでどれほどの戦いがあったのかは想像に難くない。

織莉子「正直に言いますと、まだ安静にしていなさいと言われていたのですが、なにせ昨日あのような放送をされたものですから
    いてもたってもいられなくなってお父様に黙って飛び出してきたというわけなのです」

マミ「副理事長でしたっけ?心配してるんじゃ……」

織莉子「えぇ勿論です。私はお父様を裏切るようなことだけはいたしません」

マミ「え、でも――」

織莉子「ですが、それと同じように親友と自らの尊厳を馬鹿にされて黙っているようなことも、同じくらいできません!」

キリカ「そうとも!あいつら織莉子を馬鹿だとかゴミだとかいけしゃあしゃあと……ブッバラしてやる…!」

織莉子「とにかく、私達の目的も、つまるところあなた達と同じというわけなのですよ」

マミ「あなた、達?」

織莉子「鹿目まどかさん達も一緒に戦うのでしょう?知っていますよ」

マミ「もしかして、占いで…?」

織莉子「えぇ、分かっています。ただ、この戦いで誰が、あるいはどちらが勝つのかは全く視えなくて……分からないというのが正直なところです」

マミ「やっぱり、なんでも分かるわけでもないんですね」

織莉子「ただ一つ分かっていることがあるとすれば……」

マミ「?」

織莉子「巴マミさん」

一拍置いて、そっと口を開く。

織莉子「あなたはこの戦いで命を落とします」

~二十二日目~―つばなの湖―

キリカ「起きろピョンピョン!今日こそ私とバトルしてもらうんだから!!」

マミ「ん……もうそんな時間…?」

キリカ「くくっ、どうやって料理、もとい調理してあげようかな」

その違いはよく分からなかったが、マミはベッドから立ち上がりぐっと伸びをする。

まだ六時を少し過ぎた頃だったが、トレーナーの朝は早い。

昨夜はあまり眠れなかった。

もちろん、織莉子が言ったあの一言が原因である」

マミ(本当に私死んじゃうのかしら……信じられないけど、織莉子さんの占い結構当たるから少し怖いわね)

考えても仕方ないことだが、モヤモヤを消すことも出来ずゆっくりと朝食を摂り、身支度を整え湖に向かうと、頂点を突き抜けるほど苛立ちの募ったキリカがいた。

キリカ「遅い……君はヤドンとナマケロの娘か何かかい?」

マミ「その二匹じゃ卵産めないわよ……」

織莉子「おはようございます。この調子なので、早速で悪いのだけどバトルしてあげてくれるかしら?
    そうすれば昨日のことも、もう少し詳しくお話しできるはずですし」

マミ「そうね、昨日はちゃんと聞けなかったし……それに、やっぱり誰かと戦うのが一番の修業よね!」

キリカと戦うのは初めてなので作戦を練ることなどは出来なかったが、得てしてポケモンバトルとはそういうものである。

戦い方はキリカの好きな二対二のダブルバトル。

使用ポケモンは四匹なので少し悩み、マミも使うポケモンを決めて準備は整った。

織莉子「バトル開始!」

トレーナーの 呉キリカが 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=cWfP71MQusI&feature=related

マミ「フワーレ!マリーレ!」ボボン

フワライド「フワワー」 マリルリ「ルリリ!」

キリカ「くち~ん!あぼ~ん!」ボボン

クチート「クチャァ」クワッ アーボック「シャァー」キッ

フワライド&マリルリ「ッ!」ビクッ

マミ「ダブル『威嚇』!いきなり攻撃を下げに来るなんて……マリーレ、一旦引いて!」スッ

キリカ「"おいうち"だぁ!」

ボールに戻る寸前、アーボックの長い尻尾がマリルリの腹部を捉えた。
何もせずしてダメージを受けてしまったのは、かなりの痛手である。

マミ「くっ…ミルーレ!"じしん"よ!」ボンッ

味方も巻き込みフィールド全体を攻撃する技だが、隣にいるフワライドは飛行タイプを持っているためノーダメージ。
おまけにキリカのポケモン達には効果は抜群だ。

その隙にとフワライドのシャドーボールがクチートを襲う。

キリカ「いい技を持ってるね。だがしかぁし!そういう技ならこっちも使えるのさ!!"ヘドロウェーブ"!!」

文字通りのヘドロの波がフィールド全てを覆い尽くし敵味方を巻き込む猛攻撃となって襲いかかる。
しかし鋼タイプを持っているクチートには全く効果が無いのだ。

マミ「なるほど、なかなかやるわね」

キリカ「ピョンピョンもね!やっぱりバトルは楽しまなきゃさ!!」

二人の攻防は続き、アーボック、フワライド、クチート、ミルタンクと次々にダウンしていき、
残るはマミのカメックスとマリルリ、キリカのマニューラとグラエナだけとなった。

マミ(呉さんはダブルバトルならではのコンボを上手く使ってくるわね……きっとウィッチ団と戦う時も乱戦になるでしょうから、
   ここで複数対複数の戦い方を勉強できるのは好都合ね)

キリカ「余所見とは余裕だねピョンピョン!えな~ん"かみくだく"!」

マミ「そのピョンピョンって呼ぶのやめてくれるかしら!?カメーレ"だくりゅう"よ!」

攻撃してきたグラエナに加え、後方で次の手を待っていたマニューラにも濁った水が襲いかかり、二体に大ダメージを与える。

飲み込まれそうになったキリカが慌てて横に走って再び目を移した時、そこには三匹しかポケモンがいなかった。

キリカ「むっ…マリルリはどこに……ッ!まずい!!」

マミ「マリーレ"バブルこうせん"!」

濁流の中からマリルリが飛び出し、背後からのバブル光線でマニューラは倒れた。
ただのバブル光線ではなく、大きな泡の中に小さな泡が内包されており、割れた拍子に中身が弾け飛ぶ炸裂弾のようなものだった。

キリカ「お疲れまにゅ~ん」シュパン

マミ「昨日の特訓で考えた技よ。マリルリは空気の風船を作ることが出来るから、それ自体に攻撃力を持たせてみたの」

キリカ「チィ…"とっしん"!」

マミ「ティロ!」 カメックス「ッ!」ジャキッ

キリカ「なっ!?」 グラエナ「!?」

マミ「フィナーレ!!」 カメックス「――ッ!!」ドーン

渾身のハイドロポンプで決着がついた。

戦いには勝ったマミだが、学ぶものは多かった。
今までずっとポケモンを一対一で戦わせるシングルスばかりやってきたマミにとって、ダブルバトルは一味も二味も違った。

連携や作戦を練り直す必要が見えてきた。

キリカ「参った。なんだい最後の技は……ただの"ハイドロポンプ"じゃないか」

マミ「でも初めて聞くと戸惑うでしょう?それが狙いよ」

織莉子「なるほど…しかし二度目なら避けられる可能性もあるわね」

マミ「そうね、そう考えるときっとシャルちゃんには通用しないわね……それで織莉子さん、昨日の話なんだけど」

織莉子「えぇ、それじゃあ話しましょうか――」

彼女の視たものは、一部はっきりしないことはあるものの丁寧に語られ、話を聞いてマミは考え込んだ。

シチュエーションとしては考えられなくもなく、確かに自分ならそうしてしまうかもしれないというものだった。

回避することも出来るが、それは……

マミ「鹿目さんが代わりに死ぬかもしれない、わね」

織莉子「そういうことです。あなたの性格から言って、彼女を放っておくことなんて出来ないでしょう?」

マミ「当たり前よ!」

キリカ「でも自分が死んだら元も子もないだろうに」

マミ「それは……」

織莉子「まあ、私達が来たのはそうならないようにするためなのだけど」

マミ「――っ!私はどうすればいいの!?」

キリカ「簡単さ、強くなればいい。そうすれば君は死なない」

マミ「……それだけ?いえ、勿論簡単なことじゃないと思うけど、ちょっと拍子抜けというか……」

織莉子「十分よ。ただし、一つ勘違いしないで貰いたいのは、あなたの死が回避されたからと言ってあなたの勝利が確定しているというわけではないわ」

マミ「ッ!」

織莉子「巴さんはこう思ったでしょう?あの場面で死ぬのならウィッチ団の幹部は突破できているはず、と
    あなたが勝利をしようが敗北をしようが、過程に関係なく、『巴さんが死ぬ』という結末は変わらないわ
    特に、あなたは油断しやすいんじゃないかしら?」

マミ「それは……」

織莉子「私の話を聞いて、もしかしたら勝てるかもと思う。それは驕りに繋がる。驕りは油断を生む。油断は死を招く……勝負に絶対はないわ
    あなたに必要なのは、強くなったことで芽生える意識を持つこと…強者としての"プライド"」

マミ「プライド…?」

織莉子「プライドを持つことは悪いことではないわ。チャンピオンがいい例よ。彼女はどんなバトルでも決して油断しないし手を抜かない
    それはチャンピオンとしてのプライドがあるから。慢心は負けに繋がるということを、彼女は知っているの」

マミ(油断……私から油断が無くなれば……)

キリカ「要するに道は六つだ……一つ目は鹿目まどかを見殺す」

マミ「それは絶対駄目よ!」

キリカ「だろうね。だから実質五つだ。このままの状態で挑んで君は幹部に負けた上に死ぬ。仮に突破できても死ぬ
    残りの日数を使って修行したが結局幹部に負けて死ぬ。幹部に勝っても死ぬ。あるいは幹部に勝った上で生き残る」

マミ「……最後以外あり得ないわね」

シチュエーションから考えればマミ自信が強くなることに関係性はあまりない様な気もしたが、コイキングが跳ねれば竜巻が起きるという諺もある。

バタフリーエフェクトの如く何が起こるか分からないし、強くなって損をすることはないと思った。

織莉子「そういうこと。さあ、お話はここまでにして、そろそろ次のバトルを始めましょうか」

マミ「えぇ、みんなも休憩し終わったみたいだし。次は美国さんがお相手してくれるのかしら?」

織莉子「いいえ、次はキリカと私。トリプルバトルといきましょうか」

マミ「トリプルバトル……今までに数回しかしたことないのよね」

キリカ「三つ巴の三対三……三角関係のもつれを動かすのは楽しいよぉ?あ、でも織莉子に手を出したら刻むから」

マミ「いいわ。今はたくさんのバトル経験を積んでみましょう」

マミ(そういえば、結局三人で修行することになっちゃったわね……今更言っても仕方ないけど、佐倉さん達うまくやれてるかしら)

織莉子「使用ポケモンは六体。フィールドに出せるのは三体まで。さあ、始めましょうか」

トレーナーの 呉キリカと 占い師の 美国織莉子が 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=cWfP71MQusI&feature=related

マミ「ツボーレ!カメーレ!メリーレ!」ボボボンッ

キリカ「まにゅ~ん!」ボンッ

織莉子「ダイアナ、ドロレス」ボボンッ

トリプルバトルは文字通り三対三で行うバトル形式。

状況を見て一度に全てのポケモンに命令を出さなければならず、ダブルバトル以上にトレーナーの即座の状況判断力と適応力が求められる。

一体か二体で済むキリカと織莉子と違い、全てのポケモンに目を配らなければならないマミの負担はかなり大きい。

織莉子「"リフレクター"、"ひかりのかべ"」 サーナイト&ネイティオ「ッ!」キラーン

マミ「そっちが防御重視ならこっちも…メリーレ"コットンガード"!」 デンリュウ「デデーン」グッ

キリカ「そいつを奪え!」 マニューラ「ニャッ!」

マミ「しまった!"よこどり"が使えたのね!」

織莉子「よそ見をしていては駄目よ」

カメックス「ガメェ…」ドシーン

マミ「カメーレ!?いつの間に攻撃を……」シュパン

織莉子「あなたが目を離した隙に、よ」

マミ「くっ……ミルーレ!"でんじは"よ!」ボンッ

サーナイト「ッ!」ビクンッ ミルタンク「ッ!?」ビクンッ

マミ「そんな!どうしてミルーレまで麻痺を!?」

織莉子「焦っているわね巴さん。ダイアナの特性は『シンクロ』、自分の状態異常を相手にも移すことが出来るわ
    ただし、私はそんなのごめんですけど…ドロレス"サイコシフト"で自分を麻痺に。そしてウツボットへ」

ネイティオ「トゥートゥー」カッ

マミ「なら、メリーレ"パワージェム"!」

キリカ「遅いッ!そっちがのんびりしてる間に綺麗に"つめとぎ"させてもらったからね!!"きりさく"!」

マミ(この二人本当に強い……もともとハンデがあると言っても、手も足も出ないなんて……いいわ、やってやるわよ)

マミ「絶対に二人のコンビネーションを打ち破れるくらい、強くなってあげるんだから!!」

そうして夕方までひたすらバトルを繰り返し、三人はポケモンセンターに帰ってきた。

日が暮れる頃にはマミもかなり慣れてきて、二人も楽勝とはいかなくなったが、まだまだ勝利するには厳しい。

織莉子「流石巴さんね、元々知識が豊富なようですから経験が合わさればずっと手強くなりますね」

キリカ「フン、まだまだ甘いよ。砂糖十個分くらい甘いね」

マミ「そうね……でも、どんな風に戦えばいいのかとか、どんな技を使えばいいのかとか結構勉強になるわ。本当にありがとう」

織莉子「私達も強くならなければならないのだから、ウィンウィンの関係ですわ」

キリカ「そうとも。持ちつ持たれつ、だよ」

マミ「それにしても、二人も十分強いのに大怪我を負わせるなんて、ウィッチ団幹部はやっぱり強敵ね」

キリカ「途中までは完全にペース握ってたのになぁ!あいつがあんな風に変身するなんて……」

マミ「変身?」

織莉子「あれはなんというか……キリカのような二重人格とも少し違う、まさに変身……一人の人間が外見も中身も変わってしまったわ」

マミ「どういう、こと?」

織莉子「詳しいことは分かりませんが、なんだか三人を相手にしている気分でした。彼女にあんな顔があったなんて……」

マミ「勝算はあるの?」

キリカ「あいつら絶対に赦さない」

織莉子「つまりそういうことですわ」

マミ「ふふっ、なるほどね。勝てる勝てないじゃない……みんなで勝たないとね!」

次回マミ編の後編
XYと叛逆までにどこまでいけるかなー

~二十三日目~

朝食を終えた三人は、今日も今日とて湖のほとりに集まっていた。

が、そこには既に先客がおり、くたびれたサラリーマンのような彼は暇そうに遠くの山を眺めていた。

なんとなく声をかけるのもはばかられたが、彼は振り向くなり、いきなりつかつかと歩み寄ってくる。

その顔を近くで見てようやくマミは、その人物が何者であるか気が付いた。

マミ「し、四天王のアキユキさん!?」

アキユキ「その通り。名前を知っていただけてるとは光栄ですね。あなたが巴マミさんですか?」

マミ「えぇ、そうですけど……どうしてこんなところに?何で私の名前を!?まさか、佐倉さん達が!?」

アキユキ「ふむ、何から説明しましょうか……まずは――」

キリカ「ねえ君、四天王ってことは強いんでしょ?私とバトルしてくれないかい!?」

織莉子「こらキリカ」

キリカ「だってこんなチャンスないんだよ!?こんな楽しそうなバトル見逃せって言うの!?」

アキユキ「僕は届け物を届けに来ただけなんですけどね」

マミ「届け物?」フワッ

アキユキ「えぇ。もう渡してますけど」

マミ「ッ!?」

風が通り過ぎたと思った瞬間、マミの中指には指輪が嵌められていた。

アキユキの隣にはクロバットが静かに滞空している。

キリカ「速っ!?なんだいなんだい今のクロバットの動き……」

マミ「より静かに速く飛べるようになったポケモンとは聞いてたけど……いくらなんでも速すぎるわ」

織莉子「何より気配を殺したまま指輪を嵌めるという精密な動きが出来るなんて……」

アキユキ「褒めて頂き光栄です。ですが、問題なのはその指輪なのでは?」

マミ「えっ?やだ嘘、とれない!?」

キリカ「ももも、もしかして求婚!?」

マミ「はぃ!?」

織莉子「キリカ、婚約指輪は薬指よ」

アキユキ「違います、全然違います」

マミ「で、ですよね!」

キリカ「ぬっふふー、顔がクリムガンだよピョンヘ」

マミ「誰だっていきなりそんなこと言われたらびっくりするわよ!!」

アキユキ「……本題に入りますよ」

マミ「あ、すいません……」

アキユキ「その指輪には所謂御三家と呼ばれるポケモン達が扱うことのできる究極技が封印されています
     封印されてるのはトレーナーとポケモン、一心同体で放つ技。反動は大きいですが、その分威力も絶大です」

マミ「究極技…?」

アキユキ「あなたのポケモンはカメックス。水の究極技は激流の力、"ハイドロカノン"」

マミ「"ハイドロカノン"……」

アキユキ「その指輪は、正確にはポケモンの深層心理にある技の使い方を思い出させるものです
     あなたとポケモンの心が一つになった時、あなたのポケモンは究極技を使いこなせるでしょう」

マミ「心が一つになった時?」

アキユキ「あなたのイメージとポケモンのそれを使いこなすことが出来るようになれば、ウィッチ団との戦闘も多少は楽になるでしょう」

キリカ「ちょっと待ちなよ……さっきから好き勝手喋ってるけど、なんでピョンヘにその指輪を渡したわけ?
    それに、ウィッチ団のことも知ってるってどういうことかな?」

織莉子「……あなた方は、チャンピオンと戦わないのですね」

アキユキ「それは僕達四天王が決めたことです。私達は直接手を出さずに世界の成り行きを見守ろうと」

織莉子「それがどうして巴さんに指輪を渡すことに?」

アキユキ「佐倉杏子と美樹さやか。彼女達はあなたの友人ですね」

マミ「はい……二人に一緒に修行しないかと誘われたんですけど、いろいろあって……」

アキユキ「まあ、それはいいです。僕としても負担が少ない方がいいですし。ただ、あなた達に指輪を渡すのはほむらの頼みです」

マミ「暁美さん…!?どうして暁美さんの名前が出てくるの?」

アキユキ「何から説明したものか……」

アキユキはほむらと知り合いだということ、ほむらを鍛えていたのは四天王だということ、ほむらが一人でナハトと戦いに行ったこと、そして指輪を持っていったこと。

それがアキユキの話した全てだった。

マミ「暁美さんがそんなことを……」

アキユキ「残った炎と水の指輪二つずつは、あなた達に渡して下さいとのことで」

マミ「……アキユキさんがここに来たということは、佐倉さんと美樹さんには当然として、鹿目さんにも指輪を?」

アキユキ「他の四天王が渡しに行ってますよ」

キリカ「ふーん……ピョンヘはさー、そのほむらとかいうヤツ知ってるのかい?」

マミ「直接会ったのは数週間前でそれっきりだけど……」

キリカ「そんなヤツの頼みとか言って渡された指輪、受けとるのかい?」

アキユキ「技を習得するまでは、もう外れませんけどね」

マミ「……」

確かにマミにとって、ほむらは面識のほとんどない人物だ。

彼女の素性など何も知らない。

ただ、彼女の強さは一度戦っただけとはいえ十分に理解している。

ほむらがマミにこの指輪を託したということは、何か意味があるはずだ。

マミ「分かりました。究極技とやら、ありがたく頂きます」

アキユキ「どうぞご自由に。では、私はもう帰りますので」

キリカ「って、私とバトルは!?」

アキユキ「生憎忙しい身なので、それでは」

そうしてクロバットに掴まり、アキユキは山を越えて行った。

マミはじっと指輪を眺めて、これからどうすればいいかを考える。

織莉子「とりあえず、究極技の習得を優先するのか、私達とバトルするのか考えないといけませんね」

キリカ「まさか、私達との雌雄を放棄するって言うんじゃないよね?私はあいつのせいでバトルしたい症候群発症してるんだ」

マミ「……分かったわ、午前中は昨日と同じように戦いましょう。でも、この指輪も気になるから、お昼からは究極技の練習してみるわね」

キリカ「そうこなくっちゃだよ!」

この日はトリプルバトルに始まり、マミvsキリカvs織莉子の三つ巴のバトルロワイヤル形式をダブルバトルで行うという忙しいバトルを繰り返した。

流石に織莉子達も初めての試みだったためかぎこちなかったが、腹の虫が泣く頃には三人ともどうバトルを展開するかに慣れていた。

そうして昼食を摂り、物足りなそうなキリカを尻目に予定通り究極技の習得を始めることにした。

マミ「……って、何から始めればいいのかしら」

イメージするにしても、マミは名前しか知らないのだからそこから考えるしかない。

マミ「"ハイドロカノン"……カノンというからには、"ハイドロポンプ"以上の砲撃みたいな技のはずよね
   カメーレ、まずは"ハイドロポンプ"から始めて、それから少しずつ威力を上げていく練習をしましょう
   他のみんなは自主練をしててね」

湖に向かってひたすら甲羅の砲台から水を噴射する。

少しずつ威力を上げていき、限界を超える為に、ひたすら放つ…!

だが目に見えてこれといった成果は得られなかった。

マミ「少し休憩しましょうか……調子はどう?」

カメックス「……」フルフル

マミ「まあ、そう簡単にはいかないわよね。みんなも少し休みましょう」

木陰で一息ついているところに、織莉子とキリカがテーブルセットをポケモン達に運ばせながら寄ってくる。

束の間のティータイムだ。

織莉子「究極技とやらは上手く習得できそうなの?」

マミ「正直、全然手応えが無いわね……正直言って、究極技のイメージか上手く掴めてないのが理由かもしれないけど」

キリカ「なんだいなんだい、究極技とやらも大したことないんじゃないか」

マミ「今やってるのは同じような技のはずの"ハイドロポンプ"の威力を上げる練習をやってるんだけど、それでいいのかどうか……」

キリカ「技の威力を上げるんならさー、もっと手っ取り早い方法があるじゃん。特性なり技を使うなり道具を使うなりなりね」

マミ「自力の方が鍛えられてる感じがしていいと思ったんだけど……そうね、他の方法も試してみるわ」

織莉子「道具、ね……」

マミ「あ、思い出した!」

バッグをごそごそと探して取り出したのは、布に包まれた手の平サイズの物体。

微かに海の香りが三人の鼻孔をくすぐる。

マミ「お父さんが持たせてくれたこれ、確か"うしおのお香"っていって水タイプの技の威力を上げるものだったはずなの
   これを持たせて威力を上げてみようかしら」

キリカ「なぁんだい、あるんならもっとちゃっちゃか使えばいいのに」

マミ「だからね、こういうのは自分たちで強くなったって言う実感を得るために――」

キリカ「はいはい、御託はいいって。せっかく織莉子が淹れてくれた紅茶が冷める」

マミ「もう……はぁ……そうね、今はこの時間を楽しみましょう」

しばらくしてマミは再び特訓を開始した。

今度はお香をカメックスに持たせて、技の威力を底上げしていこうという物。

威力が上がった感覚を掴めれば、究極技へのきっかけになるかもしれないと思ったからだ。

マミ「"ハイドロポンプ"!」

威力の違いはすぐに分かった。

目に見えて噴出される速度も湖面を弾いた水飛沫の高さも、明らかの上昇していた。

マミ「ここまで露骨に変わるなんて……"ハイドロカノン"はきっとこれ以上の……」ゴクッ

カメックス「……」ゴクリ

マミ「無事に全部終わったら、お父さんにお礼言っとかなきゃね…続けていきましょうカメーレ、その感覚を自分のものにするのよ!」

何度も何度も繰り返し、ひたすら試行する。

忍ばせているお香の匂いがカメックスの力を引き出しているのか、少しずつだが何かを掴んできたらしい。
次第に特訓を始めた頃より強力なハイドロポンプを放てるようになっていた。

元よりカメールから進化したことで、口から発射していたハイドロポンプを砲台から発射しなければならなくなっていたため、
今までとのギャップを感じていたカメックスのハイドロポンプは完全ではなかった。

それが時間が経ち、こうして何度も練習することで、自分の物とすることが出来たのだ。

しかし、それでもハイドロカノンを修得することは出来なかった。

マミ「ダメかぁ……結構凄くなったのにね」

カメックス「……」

マミ「なら、あの方法を試してみましょうか。あんまりやりたくはなかったけど……みんな、ちょっと集まってくれる?」

マミの指示で、カメックスと他のポケモン達で対峙する陣形を取らせる。

マミ「一応相手に囲まれた時の対策も兼ねて、カメーレは周りを見回しながら闘ってもらうわよ
   他のみんなは普通に攻撃していいわ。カメーレには悪いけど、あなたの特性を利用してみようと思うの」

つまり、HPが少なくなると水タイプの技の威力が上昇するカメックスの特性『激流』を発動させてハイドロポンプ以上の感覚を身につけようというものだ。

そうすればハイドロカノンに近付けると信じて……

マミ「メリーレ"10まんボルト"!レガーレ・ヴァスタアリア!!カメーレ"なみのり"!!!」

ポケモン達はある程度各自好きに動いているが、マミは全てに目を配り命令を出さなければならない。
トレーナーである以上、マミは状況を見極め、的確な指示を出す必要があるのだ。

流石に多勢に無勢ではカメックスの健闘も虚しく、数分と経たずダウン寸前に追い込まれた。

だがこれでいいのだ。

マミ「ストーーーップ!これ以上は戦えなくなっちゃうわ。カメーレ、ちょっとしんどいと思うけど、練習するわよ!!」

カメックス「カメェ……」ゼェハァ

マミ「"ハイドロポンプ"ッ!」

カメックス「――ッ!!」

砲台から放たれたハイドロポンプは地面を抉り、湖面を裂き水の壁を作りだした。

マミが今まで見てきた中でも最高威力のハイドロポンプだった。

マミ「凄い……カメーレにこんな力が……」

鍛えた力に加え、道具と特性の力が加わったカメックスのパワーは凄まじいものだった。

キリカ「ちょっとなんなのさ、今の噴水!石油でも掘り出したってのかい!?」

これだけでも十分ウィッチ団と渡り合えると思えるほどだ。

マミ「……カメーレ、"ハイドロカノン"!」

カメックス「ッ!!!」

キリカ「お、おぉついに――!?」

だが、究極技の習得とはまた別問題だ。

カメックス「……」

キリカ「なんだいなんだい、ハッタリかい」

マミ「……やっぱり駄目ね」

キリカ「っていうかさあ、究極技は究極技であって"ハイドロポンプ"とは別物なんだろう?」

マミ「それは、そうだけど……」

キリカ「だったら"ハイドロポンプ"の練習ばっかしてたって意味ないんじゃないの?」

マミ「でも、感覚は似てると思――」

キリカ「だからさあ、それもピョンヘの思い込みだし」

マミ「――ッ!」

言われてハッとする。

マミのイメージには常にハイドロポンプが付きまとい、ハイドロカノン自体へのイメージが追い付いていなかったのだ。

それでは引き出せる物も引き出せない。

キリカ「まあやり方はフリーダムだし、好きにすればいいじゃないか。それより、織莉子が帰ってくるまで退屈だからバトルでもしようじゃないか」

マミ「美国さん、どこかに出掛けてるの?」

キリカ「あぁ、なんでも家に帰って持ってきたい物があるとか……ほらほら、どうするんだい」

マミ「……いいわ、やりましょう」

その後日が暮れて織莉子がポケモンセンターに帰ってくるまで、二人は互いのポケモンを戦わせあった。

織莉子「ただいま」

キリカ「おっかえりー織莉子ー!!今日は私勝ちまくったよおぉーー!!!」

織莉子「あらあら、それは良かったわね」

マミ「おかえりなさい。家に帰ったって聞いてたけど大丈夫だったの?確かお父さんと喧嘩したって……」

織莉子「見つからずに出てきたわよ。こっそり部屋から入ったし、ばれてないと思うわ」

マミ「でも、あなたのカップちゃんが何か持ってるわよ?」

織莉子「え?」

バネブーの真珠と身体の間には大事そうに抱えている白い物が目に入った。

それは、ポケモンに持たせられるメールだった。

織莉子「メールなんて……カップ、どこでこれを?」

バネブー「ブー!ブブー!」

織莉子「部屋にあったの?でも、誰が……」

キリカ「とりあえず読んでみようよ!」

織莉子「えぇ……――っ!お父様!?」

マミキリ「えっ?」

手紙に何が書いてあったのか二人は知らない。

だが織莉子が読み始めた途中から泣き始めたことで、全てを察した。

結局どこにいても、親というものは子供のことを見ているということなのである。

それから織莉子が泣き止むまで二人で背中を摩りあっていた。

織莉子「ありがとう……もう、大丈夫よ」

キリカ「よかったぁ、織莉子の水分が完全に蒸発しちゃうかと思った」

マミ「それで、どうして家に帰ったの?」

織莉子「そうそう、これを取りに帰っていたの」

マミ「これは……宝石!?」

織莉子「これはジュエルというものよ……たくさんあるから使えるだけ使っていいわ」

キリカ「ジュエル?」

マミ「聞いたことがあるけど、実物を見るのは始めてね」

織莉子「綺麗だけど、宝石的な価値はほとんどないわ。これは戦闘中に使える道具なのよ」

キリカ「なんだって!?」

織莉子「実際に使って見せた方が早いわね。プリンセス」ボンッ チラチーノ「チィ」

キリカ「一体何が始まるんだい?」

織莉子「巴さんのカメーレが"うしおのお香"で技の威力を上げたように、このジュエルにもそういう力があるのよ
    まずは普通に"スイープビンタ"」

標的にした太い木にチラチーノの尻尾が何度も撃ちつけられる。

このままでも十分な威力だが、織莉子は白色のジュエルをチラチーノに渡し、再び命令をする。

織莉子「"スイープビンタ"」

ジュエルが淡い光を放り、尻尾から一発撃ち込まれる度に鈍い音が響き、根元から破壊されてしまった。

ジュエルを持つ前より明らかに威力が上がっている。

キリカ「す、凄いよ織莉子!こんなのがあるならあいつらぐらい簡単に散らせるよッ!」

織莉子「それはどうかしらね」

マミ「――!ジュエルが…!」

ジュエルは光を失い、ボロボロとその形を崩していき、風に流れて消えてしまった。

織莉子「ジュエルにはエネルギーが蓄えられていて、各タイプに対応したジュエルを持っていると、
    そのタイプの技を使った時にエネルギーが解放され技の威力を上げるのよ。エネルギーを使い切ると朽ちてしまうけれどね」

マミ「一回限りの大技を使えるってわけね」

キリカ「でも、こんなにあるんならやっぱり使い放題じゃないか!」

織莉子「そうね。他にも使えそうな物をいくつか持ってきたから、巴さんもどうぞ」

マミ「いいの?」

織莉子「当然じゃない。好きなだけ持っていって。ジュエルも欲しいだけ持っていっていいわ。ただし、数はここにあるだけだから無駄遣いには気を付けてね」

マミ「ありがとう美国さん!」

キリカ「お、おお織莉子!わた、私にはくれないのかい!?」ガタガタ

織莉子「くすっ、勿論キリカも使ってくれて構わないわ」

キリカ「ほっ……危うくピョンヘを散り刻まなきゃならないところだったよ」

マミ「なんで!?」

それから三人で使いたい道具を分配し、明日からの修業をイメージしつつ寝床に着いた。

これでさらに戦略の幅が広がり、益々戦いが有利になったと言える。
道具をどのように使うかは、使う本人の知識次第だ。

~二十四日目~

この日も朝から三人はバトルを始め、あらゆる戦い方を繰り広げた。
昨日と同じく、昼食後にマミは究極技の修業を始めた。
キリカに言われた通り、マミはハイドロポンプに引っ張られ過ぎていたのだ。
一度も見たことのない技だからこそ、今までのイメージに囚われないことが必要になってくる。

しかし、マミは自ら学んだ知識を生かして戦略を練り、戦うスタイルであり、0から考えることには慣れていなかった。

例えばマミが技に名前を付ける時もそうで、技のイメージと似合いそうな言葉を結びつけて決める。

新しく考えることは難しく、それをカメックスのイメージと重ねることはなお難しい。

マミ「ん~……"ハイドロカノン"か……」

???「きょううん?」

マミ「そうねぇ、確かにカノンって部分が引っ掛か……」

???「きょうん?」

マミ「あなた誰!?」ビクッ

いつからいたのか、そのポケモンは丸い黄色い頭と二本の尻尾を持ち、ふわふわと浮かんでいる。

閉じた瞳で何かを観察するようにマミの周りを漂っていた。

マミ「ぽ、ポケモン?初めて見るような……でも、私はこのポケモンを、知ってる気がする……」

眉を顰めるマミの眉間に、そのポケモンはそっと手を置く。

その瞬間、頭の中に過去の記憶がフラッシュバックする。

かつてマミがシンオウの伝説についての本を読んだときの、三つの湖と三匹のポケモンの伝説―――…

知識の神。

遥か昔、人々に知識を与えたそのポケモンの名前は……

マミ「ユクシー……あなたが、ユクシーなの…?」

ユクシー「きょううん!」

マミ「本当にいたのね、伝説の湖のポケモン…シンオウ地方のポケモンがどうしてここにいるのかは分からないけど」

ユクシーはポケモン達の上をぐるぐると回りながら、時折考え事をしているように腕を組み、そして頷く。

その行為に意味があるのか、マミには分からない。

それよりも気になっていることは、先程ユクシーがマミに触れた時のことだ。

マミ「ねえ、今のはあなたがやってくれたのよね?私がユクシーのことを思い出せたのは、あなたのおかげなのよね?」

ユクシー「……」

ユクシーは何も答えず、再びマミのおでこに手を置く。

その瞬間脳内を駆け巡った映像は、カメックスがハイドロポンプ以上の技を発射している光景だった。

それが何を意味しているのか、マミは理解した。

いや、この場合は理解してしまったと言うべきである。

マミ「あれが、"ハイドロカノン"……私に教えてくれたってこと?」

ユクシー「きょん!」

ユクシーは少しだけ嬉しそうに鳴いて、その手をカメックスに向ける。

マミ「待って!!」

しかしマミはそれを止めた。

マミ「ユクシーがしてくれたことはとてもありがたいし、多分、悩んでる私達を見かねてわざわざ姿を現してくれたのよね
   ユクシーがカメーレに触れれば、私みたいに"ハイドロカノン"の使い方を思い出せるんでしょうね……
   でも、私はこの指輪を受け取った時、カメーレと心が一つになった時に修得できるって言われたの!
   こんな風にしてくれたのは嬉しいけど、私達の力だけで究極技を身に付けたいのよ」

ユクシーは黙ってマミを見て、カメックスに目をやった。

カメックスの目にはマミと同じく、闘志と意欲が現れている。

ユクシー「……きょううん!」

しばらくしてマミ達のやる気に納得したのか、ユクシーはマミの前に浮かびゆっくりと目を開いた。

マミ「何を――」

話している途中で、いきなりマミの目は虚ろになり、口は開きっぱなしで動きが止まってしまった。

慌てたポケモン達も同じようにユクシーに目を見せられると、とり憑かれたようにボーっと虚空を見つめながら動きを止めた。

そしてユクシーは湖の中に波一つ起こさず消えていった。

時間にして10分ほどで、マミは目を覚ました。

ポケモン達は先に意識を取り戻していたらしく、心配そうにマミを囲んでいた。

マミ「……えっと……私、どうして寝てたんだったかしら?」

ユクシーの目を見た者は、一瞬にして記憶が無くなるという伝説があり、事実マミ達はユクシーを見たという記憶をきれいさっぱり消去されていた。

マミ「確か"ハイドロカノン"について考えてたと思うんだけど……まあいいわ。もっと"ハイドロカノン"を意識するなら、やっぱり実践しながらの方がいいかしらね」

考えるのは一旦やめにして、水を発射することに専念させる。

ハイドロポンプではなく、ただ水を撃つ動作に集中させることでカメックス自身に感覚を思い出させようというものだ。

しかしどれだけ練習してもただ水を発射しているだけで、究極技には一向に辿り着けなかった。

織莉子「調子はどうですか?」

キリカ「湖で呑気に水浴びでもさせてるのかい?」

マミ「お疲れ様。もうちょっとで何か掴めそうなんだけど、でも駄目ね」

織莉子「ティータイムといきませんか?ずっと修行ばかりしていてわ疲れるだけよ」

マミ「ありがとう…カメーレ、少し休憩にしましょう」

バトル時には激しい三人も、この時ばかりは穏やかな時間を過ごす。
特にキリカはバトル時のギャップが激しく、借りてきたエネコの如く織莉子に甘える。
元の大人しいキリカならば逆に恥ずかしがって中々見られない、ある意味貴重なシーンと言えるだろう。

キリカ「やっぱりさあ、バトルだよバトル!激しいバトルの中でこそ、人もポケモンも成長の階段を二段飛ばしで駆け昇って行くと思うんだよね」

織莉子「キリカの言うことも一理あるわね。地道に力をつけていくのは構わないけれど、私達には時間が無いもの」

マミ「そうかな……もうちょっと考えてからにするわ」

キリカ「なんだい、随分怖気付いてるんだね」

織莉子「あるいは慎重というべきかしら……どちらが効率的かは分からない以上、出来るところまでやっておきたいということ?」

マミ「そうね、バトルは最悪ウィッチ団とでできるけど、こうやって努力できるのは今だけだから」

織莉子「なるほど……あ、そうだわ!私アレをやってみたかったのよ」

マミ「あれ?」

織莉子「必殺技に名前をつけるやつ」

キリカ「織莉子!?どうしたんだいいきなり!気でも狂ったのかい!?」

マミ「……え、もしかして私、今馬鹿にされた?」

織莉子「いいじゃない。バトルで使えるテクニックの一つとして興味深いし、そう言うの面白そうだって思ってたの」

キリカ「え、えぇぇぇぇ……」

織莉子「どうやって名前考えてるのか教えてくれるかしら?」

マミ「そう言われても、大したことはしてなくて、使いたい技のイメージに合いそうな言葉をインスピレーションでつけるぐらいよ」

織莉子「なるほど……どうせなら威力の高い技に名前付けたいわね」

マミ「別に一つの技に絞らなくても、色々技を組み合わせて独自の技にしちゃうのもありだと思うわ」

織莉子「それいいわね!私のポケモン達、威力の高い技が無いから考えてみようかしら」

キリカ「うぬぬぬぬぬ……じゃあ私も一緒に考える!ピョンヘに出来るなら私にも出来る!!」

織莉子「じゃあ二人で考えっこしましょうか」

マミ「いい機会だから私も究極技に何か考えてみようかな……」

本を積んで三人であーでもないこーでもないと言いながら、たまにポケモンにも実践させつつティータイムを楽しんだ。

一時間ほどしてマミは一足先に修行に戻ることにした。

織莉子達が話しあっている間に、マミはハイドロカノンを使う時の名前は既に考えていた。

マミ「まあでも、どうせ始めて見る人ばかりだろうから"ハイドロカノン"って言えば十分な奇襲になるんだけど……でも意気込みは大事よね!」

カメックス「……」

マミ「"ハイドロカノン"……結局のところ、『砲撃』というのがこの技の特徴のはずなのよね」

順番としては本来と逆なのだが、今回は究極技ということもあり大まかなビジョンがあった。
そして、そのビジョンをカメックスに伝える手段として、敢えて名前を付けた。

それをどう受け止めるかはカメックス次第となる……

マミ「敵を殲滅する最終射撃≪ティロ・フィナーレ≫のさらに上……全てを凪ぐ激流を穿て――ッ!」

甲羅の砲台を湖に向け、マミの言葉を待つ。

ゼニガメの頃からずっと一緒に戦ってきて、マミの考えていることも理解しているつもりだった。

いつの間にか、言葉を聞けば、どのようなものか想像できるようになっていたのだ。

マミ「ボンバルダメントッ!!!」

その瞬間マミの指輪が光り出す。

カメックスの砲台から発射される水の究極技は、湖を裂き、飛沫を巻き上げ、対岸に辿り着いても尚威力を衰えさせず地面を抉った。

マミ「……は、"ハイドロカノン"…?」

まさかいきなり撃てると思いもよらず、一同ポカーンとしていたが、すぐに皆で抱き合い喜びを噛みしめた。

織莉子「ちょっと目を話した隙にとうとう修得したみたいね」

キリカ「ふうん、これでもう少しバトルが楽しくなりそうだね」

マミ「二人ともありがとう」

織莉子「あら、別に私達はお礼を言われるようなことなんてしてないわよ」

マミ「そんなことないわよ。私、初めは一人で修行するつもりだったんだけど、そんなことしてたら今頃究極技に四苦八苦してたでしょうし、
   バトルだって今より全然強くなんて慣れてなかったと思うわ」

キリカ「随分自信満々だけど、今だってそんなに強いと言えるのかなぁ~?私達と互角じゃないか」

マミ「二人のアドバイスのおかげで私は成長できたと思うの。だからありがとう」

織莉子「どういたしまして、と言っておきます。ですが、強くなったのも究極技を習得できたのも、ポケモン達が努力したからに他ならないわ」

マミ「勿論それも分かってるわ。ありがとうみんな、これからもっと辛いことになると思うけど……最後まで一緒に戦ってほしいの!」

ポケモン達は黙って頷く。

あとは戦略を練り、道具の使い方を考え、ハイドロカノンを使いこなすだけである。

勿論簡単なことなど何一つないのだが。

キリカ「ねえ織莉子、ピョンヘが究極技とやらを手に入れたみたいだし、久々に二人でダブルバトルしようよ」

織莉子「どれほどの威力があるのか、見せてもらいましょうか」

マミ「受けて立つわ……みんな、いくわよ!!」

~二十五日目~

ハイドロカノンの調整にも慣れてきた頃、マミは道具をいかに使うかに頭を悩ませていた。

マミ「どうしましょうか……"うしおのお香"はマリーレ、あなたが持ってて。"貝殻の鈴"は攻撃の機会が多くなると思うカメーレに
   後のみんなには織莉子さんから貰えそうなものを使ってもらいたいけど……」

ユクシー「きょううん?」

マミ「そうねえ、フワーレは道具が無くなったら身体が軽くなる『かるわざ』だから、ジュエルとの相性は……」

ユクシー「きょうん?」

マミ「あなた誰!?」ビクッ

実際にマミがユクシーを見たのは二度目なのだが、その時の記憶は失われている。

そこにユクシーが再び手をかざし、マミ達は自分達が一度ユクシーにあったことを思い出さされた。

マミ「ユクシー……どうして忘れてたのかしら……それにしてもまた出てきてくれるなんて、何か言いたいことがあるの?
   そもそもシンオウにいるはずのあなたがどうしてここに?」

ユクシー「……」

ユクシーは答えない。

だがマミが何をしているのかは気になっているようで、ジロジロと閉じた目で睨みこんでくる。

マミ「えっと、私は今道具をどんな風に使えばいいか悩んでて、他のみんなは一応トレーニング中なんだけど」

ユクシー「?」

マミ「どう言えばいいのかしら……ユクシーのこと、私何にも知らないのよね。あなたが何をしたいのか知っていれば、してあげられるかもしれないけど」

ユクシー「!」スッ

マミ「なにを――」

ユクシーの手が触れた瞬間、マミの脳内に情報が舞い込んでくる。

それは先程マミが知らないと言った、ユクシーが何をしたいのかという事。
どうしてシンオウからここまで来れたのかということ。
ユクシーがどんなポケモンなのかということ。

マミ「…………湖の底にそんな空洞が……それに、人々に知識を与えてた飛び回ってたっていうけど、こんな風に個人的に教えてくれることもあったのね
   それに、シンオウ地方ではギラティナや他の伝説のドラゴン達を鎮めていたのね。ナハトさんがギラティナを呼び出し、
   そして恐らく、パルキアとディアルガも呼び出そうとしている……だからここに来てくれたのね。争いを止める為に」

ユクシーはコクリと頷き、手を差し出す。

恐る恐るその手を取り、マミは全てを理解した。

マミ「一緒に戦ってくれるのね…?」

ユクシー「きょううううん!!」

マミ「ありがとう!あなた達が来てくれるなら心強いわ!それに、ちょっとさっきので色々思いついちゃったみたいだから、そのお礼もね」

マミが知りたがっていたのは、ユクシーのことだけではなく、そのほんの少し前に道具の上手な使い方を知りたがっていた。

それに関する知識も、副作用として流れ込んできたらしい。

マミ「凄いわ…こんなに、いろんな作戦が思い付いてくるなんて…!みんな、今すぐ特訓を始めるわよ!!」

その日はとにかく思い付いた作戦や組み合わせ、コンビネーションを試し続け、そうしてそのいくつかをものにすることが出来たのだった。

~二十六日目~

いよいよ翌日に最終決戦を迎えたその日、マミと織莉子達はダブルバトルをしていた。

バトルは中盤。

マミはウツボットとデンリュウ、織莉子はチラチーノ、キリカはマニューラを繰り出している。
ウツボットは前線に出て二匹の相手をし、デンリュウは後ろでサポートをする形を取っており、体力に余裕がある。

マミ「"ギガドレイン"!」

織莉子「そう何度も同じ技は喰らわないわ。"スイープビンタ"」

キリカ「"つじぎり"ぃ!!ほらほらぁ!そろそろ体力が尽きる頃じゃないのかい!?」

マミ「ツボーレ下がって!!」

織莉子(距離を取られた……それにしても、明らかに手数は私達の方が上なのに、巴さんのあの余裕は何?正直不気味だわ……)

キリカ(何か考えてるなら、考えられる前に断つッ!)

織莉子「"スピードスター"!」

キリカ「"こおりのつぶて"ッ!!」

マミ「そう、そういう技でくるしかないのよね…トッカ・スピラーレ!」

キリカ「なっ――!?」

パワーウィップで強化したウツボットの蔓を螺旋状に束ね、バネのようにすることでデンリュウの体を勢いよく飛ばし、攻撃を回避しつつ懐に潜り込む。

マミ「"ほうでん"!」

デンリュウ「ぱるぅぅ!!!」カッ

キリカ「"電気のジュエル"!?隠し持ってたのかっ!!」

放射状の電撃波を放出し、敵味方関係なく全てのポケモンにダメージが及び、近距離で攻撃を受けた二匹はダウン寸前に追い込まれた。

遠距離への攻撃をした際、必ず近距離での攻撃に反応がワンテンポ遅れてしまう。

かつてマミがシャルロッテにそうされたように……

織莉子「しかしダメージを受けたのは私達だけじゃないはずよ」

マミ「それはどうかしら」

ウツボットは今までの戦闘でダメージを受けていたが、しかし放電のダメージが蓄積されたようには見えなかった。
そもそも、今まで受けた攻撃を考えれば、既に戦闘不能になっていても不思議ではない。

キリカ「なんなんだよ、あいつそんなにタフだったっけ?」

織莉子「"ほうでん"のダメージが無いというのも……まさか――っ!」

マミ「気付いたようだけど遅いわ。メリーレ"ほのおのパンチ"!!」

マニューラは追撃によりダウンし、反撃を始めたチラチーノも体力のあるデンリュウに押し負けてしまった。

織莉子「そんなことが本当に出来るというの……」シュパン

キリカ「どういうことだい織莉子?」シュパン

織莉子「巴さんのツボーレの持ち物、"大きなねっこ"ね」

マミ「そうよ。これのおかげでいつもより体力を多めに吸うことが出来たから、ツボーレは生き残ったの」

織莉子「さらにねっこをアース代わりに使うことで電流を地面に受け流した……合ってるかしら?」

マミ「その通りよ。上手くいって良かったわ」

キリカ「……よく分かんないけど、昨日と随分変わったね。なんていうか、雰囲気がさ……」

マミ「ふふっ、ちょっとね……さあ、実戦で試したいことはまだまだあるの!続きをやりましょう!

その後もバトルを続けた三人もほどほどにして切り上げ、休息を取った。


全ては明日の最終決戦にぶつける為に―――!

あんまり推敲できてないけど投下
また必殺技に頼ってしまった…

次はほむら編ちょっと入れてまどか編へ


XYやってくるぜー
ネタバレは色々考慮してやめたげてね

久々の1です

どうやら一月末までは忙しくてまともに書く時間が取れそうにないことが判明
苦し紛れに>>197の訂正したものと小ネタでも投下しておきます
本当に申し訳ない…

>>197訂正

~二十三日目~

修行も三日目になり、今日も二人と四天王は湖に集まっていた。

ただし、ユキとアキユキの姿はなかった。

さやか「なんで二人しかいないの?」

ゲン「まあ手っ取り早く言うと、ちょいと仕事にね」

杏子「仕事?こんなグンマー中が騒がしい時にか?」

ナハトの放送以来、グンマーでは挑戦者たちがアカギ山に集っていた。

チャンピオンロードはトレーナー達で溢れ返り、ナハトはクロマツシティに辿り着いたトレーナー全員を律儀にも相手していた。
ジムリーダー達は初日、真っ先にバトルを挑んでいたが、全員返り討ちにあってしまった。
その姿を見て意欲を無くした者がいたのも初日のみで、次の日からは我先にとナハトに勝負を挑んでいき、そして敗北していった。

負けたままでは終われないジムリーダー達が、そろそろ再挑戦するのではないかと噂をする人もいる。

トレーナー以外の人間は、自分のポケモンと別れなくなるかもしれないとあって、彼らに託すしかなかったのだ。

ナハトが作りたい世界のことは噂として既にグンマー中に広がっていた。
数日後にはトレーナーだらけになりバトルしかできない生活になるかもしれないのだ。
誰かにナハトやウィッチ団を倒してもらわなければならないのだが、現状ジムリーダーだけでは厳しいのではないかという話が広がっていた。
頼りの四天王は誰一人戦おうとしていないのだから、当然である。

そんな中、四天王にどんな仕事があるというのだろうか。

杏子「まさか、ナハトに挑みに行ったんじゃねえだろうな」

ウメ「そんなに私達暇じゃないよ~」

さやか(ここであたしら鍛えてる人が言うことかな?)

ゲン「まあそれは決戦日のお楽しみってことだ。お前らにもこれをやろう」

さや杏「――ッ!?」

黒い影が背後から抜けたと思った瞬間、気が付けば二人の中指には指輪が嵌められていた。

そして音もなく着地したのは、ゲンのポケモンのレパルダスである。

次は、過去に安価で1レスに投下した小ネタになります
あの頃はまだ育成中でした(遠い目)

ほむら「これがワルプルギスの資料よ」

杏子「おう……ん?」

~巴マミパーティ~

カメックス@カメックスナイト
控えめ H244 C252 残りS 雨受け皿(メガランチャー)
水の波動/欠伸/ミラーコート/波導弾

デンリュウ@デンリュウナイト
控えめ H252 B52 C16 S56 残りD 静電気(かたやぶり)
10まんボルト/龍の波動/めざめるパワー(炎)/寝言

フワライド@弱点保険
穏やか H12 B220 S52 残りD 軽業
小さくなる/蓄える/バトンタッチ/身代わり

ミルタンク@ゴツゴツメット
慎重 H252 D116 残りB 肝っ玉
のしかかり/地球投げ/眠る/寝言

マダツボミ@締めつけバンド
臆病 H220 S252 残りB 葉緑素
眠り粉/アンコール/まとわりつく/身代わり

★マリルリ@オボンの実
意地っ張り H228 A238 S44 力持ち
アクアジェット/じゃれつく/馬鹿力/腹太鼓

杏子「……なんだこれ」

ほむら「あらごめんなさい、ポケモンXYのパーティ構成メモが挟まってたみたいね」

杏子「巴マミパーティって……コンセプトがあいつってこと?」

ほむら「巴マミといえばティロ・フィナーレ。ティロ・フィナーレといえば砲台。砲台といえばカメックスじゃない。今のところ雑にHC振りよ」

杏子「いや聞いてないけど」

ほむら「メガデンリュウはあの羽が巴マミの帽子の羽っぽいでしょう?黄色いし電磁砲も使えるようになったらしいからピッタリよね」

ほむら「Sはメガ進化後に無振り50族抜きよ。マリルリを確1にできるCを確保してBD調整ね」

杏子「なんか急に語りだした」

ほむら「フワライドは何度か見た巴マミの魔女をイメージしたのよ。まあ、色がちょっと違うけど、小さくなるとかそれっぽいと思わない?色違い粘るのはちょっと面倒になったのよ」

ほむら「見ての通りバトンしていく型よ。珠ゲッコウガの冷ビ、蓄える込みでA170バンギの追い打ち2回乱数(?)耐え、Sは無振りFCロトム抜き調整ね」

杏子「知らねえよ」

ほむら「そして巴マミといえばおっぱい。これはもうミルタンクしかないわよね。本当は金髪おっぱいのルージュラかポケスタでおっぱい揺らしてたニドクインと悩んだんだけど」

ほむら「肝っ玉でジワジワ攻める耐久型よ。ゲンガーのヘドロばくだんが確3に成るように調整して残りはB」

杏子「……何でマダツボミなんだ?進化させりゃいいじゃ――」

ほむら「あなたそれ本気で言ってるの!?進化したらウツボットよ!?マダツボミは略してマミだけどウツボットならそうはいかないのよ!?」

ほむら「最速で準速ラッキーが抜けないのは残念だけど、遅い耐久を潰していきたいのよね。Hは4n+1で身代わり4回張れるわ」

杏子「なんだその拘り……で、マリルリに星が付いてるのはなんだ?」

ほむら「色違いよ」

杏子「ふーん」

ほむら「ちなみに腹太鼓とアクアジェットは遺伝技」

杏子「……え」

ほむら「彼女が生まれるまで一週間弱かかったわ。オスは二匹生まれたし、最初に生まれたメスはAが0という悲しい事件が続いたけど」

杏子「その努力を別の方向に行かせよ!!」

ほむら「心底そう思うわ」

杏子「で、強いのか?」

ほむら「シーズン1にこのパーティでレート戦を40戦やったわ。勝率は24勝16敗でなんとか勝ち越しよ。まあ、あの頃はまだ環境が整ってなかったから運が良かったのもあるわね」

ほむら「カメックスは意外な耐久を見せてくれたりミラーコートで奇襲で来て中々良かったわ。でも、欠伸は悪の波動か冷凍ビームでもいいわね、せっかくのC振りが勿体なく感じたわ」

ほむら「デンリュウは一番活躍してくれたんじゃないかしら。特に素早さの遅い子が多い私のパーティで寝言は重宝したわ。ドーブルキノガッサフシギバナ対面で即決寝言が決まった時はガッツポーズよ
    ただ、この子達を同時選出できないのが地味に辛かったわね。水と電気はそこそこ相性がいいもの」

ほむら「フワライドは陰の主役ね。とにかく小さくなるバトンが強くて、負けそうな試合も勝てたことがあったわ。せっかく保険を持ってるのだから攻撃技入れてもよかったかもしれないけど」

ほむら「ミルタンクも頑張ってくれたわ。のしかかりの麻痺が強力なのよ、かなり運頼みだけど。ミルク飲みと眠るはどっちもどっちね。異常状態にもなりやすかったし、毎ターン回復したいこともあったわ」

ほむら「マダツボミは……ほぼ出落ち要因ね。眠りターンが少なくてすぐやられるばかりだったし、この子より遅い子がそもそも少なかったのよね。でも、メガクチートを倒したこともあるのよ」

ほむら「マリルリはうちのエースね。バトンで繋ぐことが多かったし、腹太鼓が決まらなくても強かったわ。メガデンリュウと中々相性がいいから普通のパーティでもこのコンビは使えると思うの」

ほむら「辛かったのはゲンガーやナットレイ、ギルガルドやヌメルゴン、俗に言う受けループ、飛行タイプ、毒タイプ、その他諸々ね」

杏子「なんでマミのパーティなんだ?」

ほむら「すk……シーズン1の頃に全員育成できるのが彼女のポケモン達だけだったのよ」

杏子「あぁ、なるほどな」

ほむら「総評は……楽しかったわ!」

杏子「……なんつーか、やることやってからやれよって感じなんだが」

ほむら「心底反省しています……」

それでは今更ながら明けましておめでとうございました

生存報告
二月が思ったより忙しそうでした
なかなか本題に入れないけど、閑話休題だけ更新します

~閑話休題・ほむらside~

ポケモンリーグのスタジアムで、ポケモン達が動く度に観衆が湧きあがる。
ここにいるのは皆、ナハトと戦うためにグンマー中から集まった猛者たちである。

ナハトの指定した条件によりジムリーダー達からバトルを始めたが、結果は案の定誰一人勝つことは出来なかった。
今試合をしているのは、最後のジムリーダーかずみである。

ナハト「ドンファン"もろはのずつき"」

かずみ「ムウマージ!!」

マリア「ムウマージ戦闘不能。勝者、ナハト様」

これでジムリーダーは全員敗北したことになる。

ナハト「うんうん、惜しかったよかずみちゃん。流石ジムリーダー最強だけあって、一番楽しかったよ」

かずみ「楽しかった、ねえ……私達なんか本気で相手にしてない癖に」

ナハト「キャッハハハハ!かずみちゃんは何か勘違いしてないかい……サーカスにいたポケモン達は全部私が育てたポケモンだよ
    みんな強いに決まってるじゃん。本気も本気、どのポケモンで戦おうと、私は常に本気だよ」

かずみ「……残念だなあ。その強さをどうしてバトルにしか傾けられなかったの?」

ナハト「何を仰る。ちゃんとサーカス芸も仕込んでたよ……さて、これでジムリーダーの皆さんは全滅。ここからはどんな人のバトルでも受け入れるよ
    これから一週間、楽しく過ごしていこうじゃない!アハハハハハキャハハハハハ!!!」

ジムリーダー達が無惨に負けたのを観て、一部のトレーナー以外は絶望としていた。
しかし、それでもあえて勝負を挑む者も少なくはなかった。

ほむらは彼女達の試合を静かに眺めていた。

今まで幾度となく見てきた光景だ。

ほむら(やはりこうなってしまうわよね。ジムリーダーでは所詮、ワルプルギスに勝つことは不可能なのよ
    ただ、何匹か今まで使ったことのないポケモンを使ってたわね……何度も繰り返してきた結果なのかしら)

しばらく一般人達の試合を眺めていたが、とても参考になるようなものではないと判断し、ほむらは会場を後にした。

ほむら「今は騒がしくてとても戦いにいけないわね。なら、究極技とやらの習得でもしましょうか」

薬指に嵌められた指輪をそっと撫でる。
四天王から受けとった究極技の封印された指輪である。

ほむら「草の究極技、新緑の力"ハードプラント"……めがめが、残念だけど時間が無いわ。一日で習得するわよ」

メガニウム「ガァ!」

特訓はイメージの共有に専念し、二人で瞑想の真似事をしてみたり口や絵で説明してみたり、とにかく意思の疎通を図った。

その甲斐あってか、数時間後にはほとんど形になっていた。

ほむら「"ハードプラント"」

メガニウム「ウガァァ!!」ドゴォッ

ほむら「うん、いい感じね。もう一回行くわよ」

ザッ

ほむら「ッ!」

かずみ「ちゃお、ほむら」

ほむら「……和沙ミチル」

かずみ「そんなに警戒しないで。私一人だよ」

ほむら「ジムリーダーが私に何の用?ワルプルギスの相手なら明日するわ……今度こそ、必ず仕留めてやる…!」

かずみ「用ってほどでもないけど、見かけたからね。お腹空いてない?おにぎりならあるけど」

ほむら「いいえ、結こ――」グゥー

かずみ「……古典的だね」

ほむら「いらないったら!」

アカギシティの街灯が灯り、戦いに来たトレーナー達が今日の宿を探して徘徊していた。
スタジアムでは、未だナハトとトレーナー達が試合を繰り返している。
一日中バトルを続けても、ナハトはとうとう一度も負けなかった。

ベンチに腰を降ろすと、かずみはタッパーからこぶし大のおにぎりを取り出して頬張り始めた。

かずみ「用はないなんて言ったけど、気になってることはあるよ……例えば、なんでナハトさんのこと"ワルプルギス"って呼ぶのか、とか」

ほむら「……意味なんてないわ。その方が呼び慣れているだけ」

かずみ「そう?ねえ、ほむらってひょっとして、マエバシでの事件が起こる前からナハトさんのこと倒そうとしてた?」

ほむら「そうよ。それがどうかしたの?」

かずみ「へぇ……過去に何があったの?」

ほむら「……」

かずみ「ま、言いたくないよね。おにぎり食べないの?」

ほむら「……」

差し出されたおにぎりを無言で手に取る。
しかし口はつけない。

かずみ「ほむらはさ、ナハトさんを倒してグンマーを救って、その後はどうするの?」

ほむら「その後?」

かずみ「あ、学校行ってるんだっけ?進学するんなら勉強しなきゃだね。それともポケモンマスターでも目指す?
    ナハトさんを倒せたら、実質グンマー地方のチャンピオンみたいなものだけど」

ほむら「……そうね。暁美ほむらなら、まずは勉強からでしょうね」

そう言っておにぎりを口に運ぶ。

かずみ「ちょっと待った!」

が、かずみはそれを遮る。

ほむら「何よ、あなたが食べろと言ったんでしょう」

かずみ「その前に質問させて……ほむらは、まどかに戦ってほしくないの?」

ほむら「……」

かずみ「ほむらはまどかのことが心配なんでしょ?まどかをナハトさんと戦わせたくないんだよね」

ほむら「あなたに何が分かるというの!」

かずみ「分かんないよ。ほむらは何にも話さないからね。人に教えないように立ち回っといて、分かってくれなんて虫が良すぎだよ」

ほむら「……どうせ誰にも分からないわ」

かずみ「ほらそれ!その決め付けが良くない!もっとこう、自分を見せていこうよ!!そうすればほむらについて来てくれる人は、きっと見つかるから」

ほむら「お説教のつもり?」

かずみ「あはは、ごめんごめん。そんなつもりはなかったんだけど……そうだ、これあげる」

その手に持っていたのは、キラキラと輝くジムバッジだった。

かずみ「リーグに挑戦するんなら、必要だと思って」

しかしほむらはゆっくりと首を振り、鞄から全く同じジムバッジを見せ付けた。
かずみは「えー!?」っとすっ頓狂に立ち上がり、マジマジと眺める。
正真正銘、間違いなく本物のアスナロジムを勝ち抜いた証、ヴィオラバッジだった。

かずみ「ほむらって……もしかして泥棒だったりする?」

ほむら「そうかもね。きっと時間でも止めて盗みに入ったんじゃないかしら」

かずみ「……まあいいけどさ」

お預けを喰らっていたが、一問答終わったところで、ほむらは再びおにぎりに口を近づける。

かずみ「あ、ちなみにそのおにぎり『ウソ』味だから」

ほむら「は?」

パクリと一口。

かずみ「嘘を吐くのって、結構辛いことなんだよ。他人だけじゃなくて、自分も騙すことになっちゃうし」

ほむら「何を――っ!?」

二口食べたところで眉を顰め口を窄め、眉間に皺を作って頭を垂らしてフルフルと震え始めた。

かずみ「だから、『ウソ』味のおにぎり食べたら、嫌な変な顔になっちゃうのも仕方ないことなんだよね」

差し出されたお茶入りのペットボトルを受け取り、メガニウムの蔓に背中を叩かれながら一気に胃に流し込む。
はぁはぁと呼吸を乱し、口にした言葉は、

ほむら「す……酸っぱすぎよ!!!」

だった。

かずみ「あれ?そんなにきつかった?入れ過ぎたかなぁ」

ほむら「何が『ウソ』味よ……ただの『シソ』じゃない!ダジャレのつもり!?」

かずみ「ピンポーン!」

ほむら「ふざけないで!」

かずみ「でも、嘘吐いてたら辛いってのは間違ってないと思うよ」

ほむら「……」

かずみ「なんて、またお説教になっちゃいそうだからおしまい!じゃ、私はもう行くよ」

ボールからゴルーグを繰り出し、その背中に飛び乗る。
ロボットのようにエネルギーを噴出して浮遊するゴルーグの上から、かずみは別れを告げた。
どうやら本当に見かけたから声をかけただけのようだ。

かずみ「残りのおにぎりは食べていいから!ナハトさん、頑張って倒してね!」

ほむら「……あなたはどうするつもり?」

かずみ「私はよく知らないほむらのことを信用できないから、よく知ってる人を鍛えることにするよ
    ナハトさんと一緒で、私もあの子には期待できると思ってるからさ」

ほむら「何を言って――っ!?まさか、まどかを!?」

かずみ「ちゃお!」

ゴルーグは飛び立ち、辺りには静寂とタッパーだけが残った。

ほむら「勝手なことを……いいえ、気にすることはないわ。私がワルプルギスを倒せばいいだけのこと
    もう二度と、まどかをワルプルギスと戦わせたりしない…!まどかを……死なせたりしない……!」

指輪に込めた思いが輝きを放ち、メガニウムと共鳴する。
ほむらの思いが、その気持ちに応えたいと思ったメガニウムにも伝わったのだ。

ほむら「まさか……めがめが、"ハードプラント"!」

地面から現れた樹木は津波の如く襲いかかる。
凄まじい爆音と共にうねりを挙げ、周囲の木々一切を薙ぎ倒した。

ほむら「これが草の究極技……この力さえあれば、今度こそ……!」

ほむらにできる全ての準備は整った。

残すはナハトとの対決のみ。

今度こそ全てを終わらせることを誓い、静かな夜を過ごしていく……。

はい

前回の更新から4ヶ月くらい経ってるという衝撃の事実
ごめんなさい頑張ります

まどか編 はっじまーるよー

―まどかside―

~二十日目~―こほねの湖―

まどか「ここがこほねの湖……」

詢子「静かでいいとこだろ。ここで修行すると気持ちいいぞ~」

アスナロシティとアカギシティの中間に位置する、グンマー地方三つ目の湖がこほねの湖だ。
チャンピオンロード手前という環境から、腕の立つエリートトレーナー達が腕試しに立ち寄ることから、リーグ挑戦への登竜門とも呼ばれている。
例によってほとんどのトレーナーは我先にとアカギシティに赴いており、今はがらんとしている。

まどか「うん、私頑張るね!頑張る、けど……」チラッ

タツヤ「きょーはおとまりー?きゃんぷなのー?」

知久「そうだぞ、今日からみんなでキャンプだ!」

タツヤ「あーい!」 マネネ「マーネ!」

まどか「なんでパパとタツヤも付いてくるの!?」

せっせと荷物を降ろすバリヤードとチャーレム、タツヤの相手をする知久。
そしてタツヤの真似をするマネネまでいる。
てっきり二人で修行するものだと思っていたのだが、鹿目一家勢揃いとなりまどかは混乱していたのだった。

知久「そりゃまどかのことが心配だからね。鹿目家総出で手を貸すよ」

まどか「だからって、タツヤまで……これじゃあみんなで遊びに来たみたいだよ」

詢子「そこはきっちりするから安心しろって!明日からビシバシ叩きこむから気合い入れな!」

まどか「う、うん!よろしくお願いします!」

タツヤ「ねーちゃがんばれー!」

マネネ「マネマネー!」

こうしてまどかの修業はかなり賑やかに始まったのだった。

~二十一日目~

知久特製、スタミナ満点の朝食を食べた後、まずはまどかと詢子がバトルすることになった。
話に聞いていただけで、実際に詢子がポケモンバトルをする姿を見たことが無かったまどかは、内心かなりワクワクしていた。

それと同時に、今まで旅の中で学んできたことを見られると思うと、緊張もしていた。

今までのジムバトルやさやか達とのバトルにはない、家族に見られるという気恥かしさと怖さが、体を固くさせる。
緊張はポケモンにも伝わり、鹿目家を知っているピクシーを含め、ポケモン達も強張った顔をしていた。

詢子「そう緊張すんなって。まどかの実力が知りたいんだから、いつも通りやってくんなきゃ困るだろ」

まどか「うん……よ、よし!頑張ろうみんな!」

深呼吸をして相手を見つめる。

母親だろうが関係ないのだと、自分に言い聞かせる。

知久「シングルバトル3vs3、開始!」

母親の 詢子が 勝負を仕掛けてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=qioLsPJSqzk

詢子「キャリー!」 バリヤード「ババリバリッシュ!」

まどか「ピピっち!」 ピクシー「ピピィ!」

開幕早々、目には見えない念波がぶつかり合い、激しく砂塵が舞う。
お互いに一歩も譲らない。

詢子「やるなあ。エスパータイプでもないのにそこまでできるなら十分だ」

まどか「ずっとキャリーが"ねんりき"使ってるところ見てきたんだもん。キャリーのおかげだよ」

詢子「だが本物に勝てるか!"サイコウェーブ"!」

ピクシー「ピッ!」ドカッ

まどか「っ!すごい威力……」

詢子「ブランクがあるからって手加減するなよな」

まどか「しないよ!ピピっち"おうふくビンタ"!」

詢子「"バリアー"だ!」

ピクシー渾身の一振りは見えない壁によって防がれる。
すかさずバリヤードのサイコウェーブが襲い掛かり、距離は再び開いてしまった。
頑丈なバリアーで直接攻撃を凌ぎ、遠距離特殊攻撃で攻めていくのが詢子とバリヤードのバトルスタイルだ。

まどか(前から攻撃してもあの"バリアー"を突破するのはきっと無理……それなら――!)

まどか「ピピっち!」

まどかの合図でピクシーは飛び上がりバリヤードの真上をとる。

詢子「悪くないけど、後ろに下がれば――」

まどか「"じゅうりょく"!」

避ける間を与えず、重力の勢いを利用した急降下で、バリアーの上からコメットパンチを叩き込む。
どうにか防いだかに見えたが、亀裂が入りバリヤードに冷汗が滲む。
さらにもう一発拳を振り上げたところで、詢子がバリヤードをボールに戻し空振りに終わった。

詢子「今のはびっくりしたよ。あのままだと危なかったな」

まどかもピクシーを下げさせ、次のポケモンを用意する。
フィールドには強力な磁場が残っており、並のポケモンでは動きが制限されてしまうだろう。

詢子「あたしのシャリーもこんな状態じゃ飛べないな。ここは、頼むよリリー!」ボンッ ガルーラ「ガルル!」

まどか「チャモっち!」ボンッ バシャーモ「ッシャ!」

詢子「格闘タイプか。重力があっても素早く動けるポケモンだね」

まどか「ママこそ、パワーのあるリリーでくると思ったよ。チャモっち"でんこうせっか"!」

重力などかかっていないような速度でガルーラに接近する。
手足から溢れ出す炎がブースターの役割をしているのだ。

詢子「"れんぞくパンチ"!」

重い一撃の打ち合いが続き、次第に重力が軽くなり素早い応酬へと変化していく。

ガルーラ「メガァッ!」バキィッ バシャーモ「――ッ!」

まどか「チャモっち!」

詢子「連続パンチが得意なリリーだ。簡単に殴り合いで勝てると思うなよ」

まどか「チャモっち頑張って!リリーのパワーに勝てるのはチャモっちだけなんだから…!」

詢子「お、そいつはいいこと聞いたな。全力で勝てよリリー!!」

まどか「"はじけるほのお"!」 バシャーモ「シャッ!」

詢子「おい!?」

地面に放った炎が弾け飛び、ガルーラを狙う。
一瞬目を閉じた隙を見逃さず、すかさず強力なスカイアッパーが炸裂したかに思えた。

ガルーラ「……」ニヤリ バシャーモ「…!」グラッ

しかし格闘タイプの技を使うため接近してくることはわかっていた。
来るであろう方向に向かって放った、ガルーラのカウンターがバシャーモを捉えていた。
二体同時にノックダウンである。

詢子「相打ちか。お疲れリリー」シュパン

まどか「ありがとうチャモっち。頑張ったね」シュゥゥン

詢子「てっきりパワーのぶつかり合いで仕掛けてくると思ったのに…猪口才な」

まどか「えへへ、力だけじゃないんだよ!カウンターは決められちゃったけど……トゲっち!」ボンッ トゲピー「ピー!」

詢子「シャリー!」ボンッ トゲキッス「モフィーン」

知久「ママとまどか、シャリーとトゲっちの親子対決だね」

詢子「こいつは負けられねえな。シャリー"しんそく"!」

光速を思わせるスピードで縦横無尽飛び回り、トゲピーの死角から攻撃を仕掛けてくる。
今のトゲピーではその速度に追いつくことができない。
しかし僅かに攻撃が当たらない瞬間があるのを、まどかは見逃さなかった。

まどか「トゲっち"あまえる"!」

攻撃が外れた瞬間、すかさず抱き付き甘えまくる。
実は昨夜のうちにひたすら親子の時間を満喫していたのだが、それとこれとは別である。
油断させて攻撃力を落とす作戦だ。

詢子「気合い入れろシャリー!"じこあんじ"だ!」

トゲキッス「キッ!」 トゲピー「!?」ビクッ

詢子「"つばめがえし"!」

落ちた攻撃力もトゲピーと同じ状態になり元通り。
鋭い一撃が襲い掛かる。
再び神速攻撃が始まり、目で追うのが精いっぱいのまどか達は攻めあぐねていた。

詢子「どうした?このままただやられるだけか?」

まどか(速くてトゲっちじゃ攻撃できない……でも、あの技なら!)

詢子「そろそろ決めるぞシャリー!」

まどか「"オウムがえし"だよ!」

詢子「まずい…!気を付けろ!」

ゴチンという鈍い音が響く。
かなりの速度でぶつかったため、どちらも足取りがおぼつかない。

ダメージが蓄積していた分トゲピーが先にダウンすることになったが、トゲキッスも重いダメージを負った。

まどか「お疲れ様トゲっち」シュパン

詢子「ナイスだシャリー!あたしらもまだまだ捨てたもんじゃないねえ」

まどか「もう一回お願いピピっち!」 ピクシー「シー!」

詢子「どうする?もう一発"じゅうりょく"でも使うか?」

まどか「確かにシャリーの動きは止められるかもしれないけど、それだとせっかくシャリーが『はりきり』すぎて外れる攻撃が当たっちゃうかもしれないから使わないよ」

詢子「じゃあどうするんだ?"しんそく"だ!」

トゲキッスは再び光速の攻撃を始め繰り出そうと、ピクシーの周りを飛び回る。
そして接近した瞬間、

まどか「そこ!」

トゲキッスの体がふわりと浮き上がった。

詢子「"テレキネシス"か!?」

まどか「"コメットパンチ"!」

動き辛くなったトゲキッスは躱すことができず、ピクシーの拳を急所に受け戦闘不能となった。

詢子「よくやったよシャリー」シュパン

まどか「これで一対一…!」

詢子「そんじゃあ今度こそ決めるぞキャリー!」ボンッ バリヤード「バリバリィ!」

まどか「ピピっち、"テレキネシス"でいくよ」

詢子「"サイコウェーブ"!」

まどか「"おうふくビンタ"で弾いて!!」

詢子「なっ!?」

まどか「今だよ!」

予想外の行動で距離を詰められたバリヤードは、とっさに反応することができず、もろに往復ビンタの餌食となってしまった。
ふらついてしまったところに、とどめのコメットパンチを受け、バリヤードも戦闘不能となった。

知久「そこまで!まどかの勝ち!」

まどか「はぁ~……やっっっったぁぁぁ!!!みんなありがとう!!」

詢子「お疲れキャリー……」シュパン

まどか「ママすごいね。ブランクとか全然感じなかったよ」

詢子「いやいや、全盛期のあたしはこんなもんじゃ……ま、負けちまったもんは仕方ねえな。最後のあれ、どうやったんだ?」

まどか「"テレキネシス"を手に纏わせて、"サイコウェーブ"を弾いてみたの。形のある念波ならなんとかできるんじゃないかと思って
    ピピっちがやってくれてよかったぁ……」

詢子「なるほど……まどかはあたしよりパパに似てるな」

まどか「ふぇ?どうしたのいきなり?」

詢子「せっかくだから、パパとも戦ってみたらどうだ?あたしの敵じゃないけど、まどかは苦戦するかもな」

知久「傷つくな~……でも確かに、ママには手の内知られちゃってるからね」

まどか「えっと、じゃあ、やってみようかな」

詢子「そういや、まどかはまだ6匹目ゲットしてないのか?図鑑は結構埋めてるんだろ?」

まどか「うん……いろんな子を捕まえてみたんだけど、なんだかしっくりこなくて」

詢子「そっか。ま、そのうち『コイツだ!』って奴が見つかるさ」

まどか「うん!」

知久「他の子は疲れてるし、2vs2のシングルでいいかい?」

まどか「いいよ!頑張ろうね、カチっち!ミカっち!」

詢子「バトルスタート!」

父親の 知久が 勝負を仕掛けてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=E6DhCwE9AYM

まどか「ミカっち!」ボンッ ミカルゲ「んみょーん」

知久「マスシィ」ボンッ マスキッパ「キシシシ」

まどか(マスキッパ……戦ったことないポケモンだけど、草タイプだから弱点は点けないかな……それなら!)

まどか「"かげうち"!」

知久「マスシィ!」

影からの攻撃を受けながら、マスキッパの触手がミカルゲの要石を捉える。
伸縮を利用して一気に距離を縮め、口から甘い香りが放たれる。

知久「そこ!」

その匂いに誘われ思わず大きく体を伸ばしてしまい、巨大な顎で思い切り噛み砕かれてしまった。

まどか「ミカっち回復して!」

実体を持たない事が幸いし、どうにかまだ戦える状態のミカルゲは、すかさずマスキッパと痛み分けをし、傷を癒した。

知久「"きゅうけつ"だマスシィ!」

再びマスキッパが大口を開ける。
明らかに攻撃をしてくる体勢だ。

まどか「"ふいうち"!」

だから不意の一撃を与えるつもりだった。

マスキッパ「スパパ」ポイッ ミカルゲ「ッ!」

が、不発。

まどか「"やどりぎのたね"!?」

知久「"パワーウィップ"」

触手が集まり、一本の巨大な鞭となってミカルゲを襲う。
とどめに体力を奪われて、ミカルゲは戦闘不能となった。

不意を討たれたのは、どうやらまどか達のようだ。

まどか「ミカっち……」シュパン

知久「うん、いい感じだねマスシィ」

まどか「カチっち!」ボンッ マラカッチ「カチャァ!」

知久「交代だよマスシィ」シュパン

知久「ダル!」ボンッ チャーレム「……」

まどか「"ニードルア――」

知久「右!」

棘の拳を、氷を纏った拳で受け止める。

まどか「カチっち!」

知久「左!」

続けて炎を纏った拳がマラカッチに炸裂する。
まどかの掛け声で後退しようとしていなければ、かなりのダメージになっていただろう。

詢子「相手に合わせて電気、氷、炎のパンチを使い分けるのがパパとダルの戦い方なんだよな」

まどか(それを右と左だけの命令で使い分けられるなんて……ダルがどのパンチにすればいいか分かってるんだ)

知久「ダル"ヨガのポーズ"」

まどか「カチっち"はなびらのまい"!」

片足を上げ両手を合わせる精神統一のポーズをしたチャーレムの周りに、くるくるとサボテンの花が舞い、花の陰からマラカッチが襲い掛かる。
それをぐにゃりと体を曲げて華麗に躱し、蹴りを放つ。

負けじと踊りながら蹴りを躱し、互いにダンスのような優雅な動きで攻撃し合う。

チャーレム「――ッ!」ツルッ

一瞬。

積もった花びらに足を取られ体勢を崩し、片手をついてしまった。

その隙にマラカッチのニードルアームがチャーレムを捉えた。

マラカッチ「カ~」スカッ

まどか「カチっち!?」

知久「混乱してるみたいだね。ダル!」

片手を軸に回転力も加えたローキックが炸裂し、マラカッチも戦闘不能となった。

結果、知久の圧勝で幕を閉じたのだった。

まどか「お疲れ様……」シュゥゥン

タツヤ「パパすごーい!」

詢子「二人ともお疲れ!どうだまどか、パパは強いだろ」

まどか「なんていうか……ママより戦いにくかったかも」

知久「うん、なかなか良かったよまどか。確かに僕に似てるかもね」

まどか「それってどういう意味なの?」

詢子「なんていうかな……まどかはポケモンたちと心で繋がってるんだよな」

まどか「……どういう意味?」

詢子「別に他のトレーナーが繋がってないとかって意味じゃないぞ。まどかはその傾向が特に強いってだけ」

知久「ポケモン達にまどかの気持ちが伝わってるってこと」

詢子「そうそれ!」

知久「出したい技とか、どう動いて欲しいとか、全部を命令しなくてもポケモン達は分かってくれる。まどかもそういう経験ないかい?」

まどか「そう、だったかな…?」

ニコとのバトルでマラカッチが不眠の種と宿り木の種を打ち分けたこと。
サキとのバトルでバシャーモが炎に電気を纏わせる作戦を実行したこと。
詢子とのバトルでポケモン達がまどかの意思に合わせてバトルしたこと。

その他にも、合図や掛け声で意図した動きをしてくれたことは何度かあった。

詢子「パパは本当に以心伝心できてるみたいでさ。何度それにやられたことか……」

まどか「でもママの方が強いんだ?」

詢子「そりゃ夫婦だからな。長いこと一緒にいたら、何考えてるか大体分かっちまうよ」

まどか「さ、流石……」

知久「僕達にだけ分かる命令とかも作ってるけどね。マスシィは"きゅうけつ"なんて使えないけど、使えそうな見た目してるだろう?
   さっきみたいに、攻撃してくると勘違いした相手に"やどりぎのたね"を仕掛ける時には、ああ言ってるんだ」

まどか「あ、それなら似たようなこと私もやってる!さっきは使ってなかったけど」

詢子「そうなのか?ますますパパに似てるな」

まどか「つまり、マミさんがいなくても同じようなことしてたかもしれないってことかな……」

詢子「しかし、こうなってくるとあたしよりパパが教えた方がいいんじゃないの?」

知久「うーん…でも、まどかはもう僕と同じくらい意志疎通できてると思うよ。さっきのは、僕みたいなトレーナーに慣れてなかったってだけじゃないかな」

詢子「ナハトはどっちだったかなあ……まあいいさ、時間はまだあるんだし。まずはあたしが鍛えてやる」

まどか「うん!お願いします!」

初日は詢子による指導の下、基礎から鍛えなおされた。

まどかに課せられたのは、バトルスタイルの確立だ。
所謂勝ちのパターンを作り、そこにもっていかせるためだ。

相手に合わせて柔軟に戦うことを忘れず、いかに自分の勝ち筋に引き込むかが勝負を決める。

決め手はもちろん必殺技だ。

詢子「チャモっちの必殺技はなんだ?」

まどか「ふぃ……フィニ…ト…………」ゴニョニョ

詢子「聞こえん!」

まどか「フィニトラフレティア!!!」

詢子「んー、まあまあかなあ」

まどか「そんなぁ!一生懸命考えたのに!!」

色々な意味で精神をすり減らしながらも、どうにかまどかは自分の勝ちパターンというものを身に付けたのだった。

その後は知久と交代し、もっと戦闘中に意思疎通をするにはどうすればいいかを考えた。

知久「必殺技を共有するのはとてもいいと思うよ。チャモっちの必殺技は――」

まどか「もうやめて!」

そんなこんなでまどかの修行一日目が終了しようとしていた

一方タツヤは、いつも遊んでくれる知久やマネネ以外のポケモン達がみんなまどかを手伝っているため、暇になっていた。

仕方なく、マネネと一緒に湖の近くをうろうろし始めたのだった。

タツヤ「まーねねー!」 マネネ「マーネネー!」

タツヤ「あれぇ?」 マネネ「マネェ?」

アカギ山から流れる川の近くに、二人は洞窟があるのを発見した。
好奇心から中を除いてみたが、暗がりが続き奥の方は全く見えず、ズバットの羽ばたき音が聞こえるのみだった。

タツヤ「だえかいるー?」

声が幾重にも木霊し、より静けさを実感させる。

タツヤ「……つまんなあい」 マネネ「マアネー」

何もないことにがっかりし振り返った瞬間。

ドスッ

タツヤ「…?」

何かが歩いてこちらに向かっていることに気が付いた。

ギザギザとした鱗で覆われた青い体と怒っているのかと思うほど真っ赤な顔。
翼をゆっくりと動かして現れたのは、タツヤの倍はあろうかという大きさのクリムガンだった。

そして、実際に怒っているらしかった。

クリムガン「ゴガァァァ!!!」

タツヤ「ひっ!」ビクッ マネネ「マネッ!」ビクゥッ

いつも家や近所の公園で遊び、山や森に滅多に行かないタツヤにとって、野生のポケモンに出会うのはこれが初めてであった。
よりによって、エサを探しに洞窟に入ったものの何も見つけられず、空腹で気が立っているクリムガンとはついてない。

タツヤ「あ、ご、ごめんなしゃい……」 マネネ「マネネ……」

クリムガン「グルルル……」ジリッ

タツヤ「う……うああーん!! マネネ「ネ……」

その鋭い腕を振り下ろそうとした瞬間、突然タツヤとマネネの体がピンクの光に包まれその場から姿を消した。

何が起こったのか分からないが、怒りをぶつける先がなくなったクリムガンは、しぶしぶ冷えた体を温めに近くの岩場に登って行った。

一方タツヤとマネネは、恐怖のあまり身を丸めてひたすら「ごめんなさい」と言いながら泣き散らしていた。

しばらく目を閉じ泣いていたものの、何かがおかしいことに気が付き始めた。

なかなか襲ってくる気配のない様子を不思議に思い、ゆっくりと目を開くと、クリムガンの姿はなく、一先ず胸を撫で下ろした。
そして次にあたりを見回し、自分たちが何もない空間にいることを悟った。

タツヤ「ここどこー?」 マネネ「マネー?」

???「きゃううん!」

声のした方を見上げると、桃色の小さな体と二本の尻尾を持つポケモンが二人をじっと見つめていた。

ふわふわと飛び回り、害はなさそうだと判断したのかゆっくりと近づいてくる。

タツヤ「あう」パシッ

???「きゃう!?」

そう思った(実際このポケモンがどう思っていたのかはわからないが)矢先、尻尾を掴まれた。
浮かび上がろうとしても手を放そうとしない。

先程クリムガンから二人をこの『心の空洞』にワープさせ、助けたのはこのポケモンなのであるが、そんなことを知らないタツヤはいい遊び相手が見つかったと思っていた。

マネネ「マネ」パシッ

???「ううん!?」

そして二本目もマネネによって掴まれ、いよいよ逃げることができなくなった。

タツヤ「きみだえ?なんてなまえ?」 マネネ「マネネ?」

???「きゃぅ……」

タツヤ「さんにんであそぼー!」ブンブン マネネ「マネネー!」ブンブン

???「きゃ、きゃうううん!!!」カッ

身の危険を感じたのか、再び二人の体が光に包まれると、タツヤ達は湖のほとりに戻っていた。

当然その手には何も掴まれていない。

ただ、二人の目には全く生気がなく、ぼーっとその場に座り込んでしまった。
目の前でコイキングが跳ねようとも、頭の上でポッポが休もうとも、近くを先程のクリムガンが通りかかろうとも、ひたすら湖の方を眺めていた。

やがてアカギ山が紅に染まる頃、タツヤとマネネを呼ぶまどかの声が響いた。

その声を聴いて、二人はようやく目を覚ましたらしく、まどかの方に駆け寄っていった。

まどか「タツヤ!マネネ!二人ともどこいってたの?みんな心配してたんだよ?」

タツヤ「えっとね……ピンクのポケモンと……あそんでた…?」 マネネ「マ…ネ?」

まどか「ピンクのポケモン?なんだろう?」

タツヤ「そいでね……えっと……」

まどか「とりあえず、ママもパパも心配してるからテントに戻ろっか」

タツヤ「あい!」 マネネ「マネ!」

その夜。

タツヤが必死に昼に起こったことを話したのだが、結局半分も伝わらなかった。

特に謎のポケモンと遊んだあたりからの記憶が曖昧なのだ。

まさかそのポケモンに触れてしまったがために、感情がしばらくの間失われていたことなど、この時は誰一人として理解できていなかった。

そうして修行一日目が終わっていった。

~二十二日目~

その日の修行中、突然の来訪者が現れた。

???「ようやく見つけたわよ鹿目まどか!」

まどか「え…?」

堂々と仁王立ちをしているのは、黒いワンピースを着た少女だ。
鮮やかな桃色の髪の毛は肩まで届くツインテールにされ、黄色いリボンで結われている。
まどかと同じく童顔だが背が高いためか、幼さはあまり感じない。
もう一つ年上に見えるの原因は、ワンピースの上からでも分かるほど弾けそうな胸囲のせいかもしれない。

???「ここで会ったが百年目!ウィッチ団の名の下に、あなたを倒す!」

まどか「ウィッチ団!?」

???「自己紹介がまだだったわね。ワタシの名前はクリームヒルト・グレートヒェン!気軽にクリームとでも呼んで頂戴。以後お見知りおきをば」

敵に対して気軽も何もないものだが、呼びやすいためまどかもクリームさんと呼ぶことにした。

実は同年齢なのだが、なぜか『さん』付けなのは、雰囲気に少し負けてしまったからだろう。

まどか「クリームさんは、どうして私を?」

クリーム「よくぞ聞いてくれたわね……あの時あなたがウィッチ団に捕まっていれば、こんなことには……」

詢子「あの時?」

クリーム「ワタシ達がマエバシシティを襲った時よ!あの時シズルちゃんは美樹さやかと鹿目まどか!二人を連れて帰るつもりだったのよ!!」

まどか「あっ……そういえばそんなこと、言ってた……かも……?」

クリーム「言ってたの!そして、ワタシはあんたの代わりに"鹿目まどか"としてロボットを演じるはずだったのよ!」

まどか「……それで、どうして私のところに?もう関係ないんじゃ?」

クリーム「あんたのせいで……あんたが捕まらなかったから……ワタシはシズルちゃんにイジメられたの!」

まどか「いじめ…?」

クリーム「お前のせいでまどかを逃がしたとか、お前のせいでマリアに叱られたとか言われて叩かれて……」

まどか「それ八つ当たりだよ!」

クリーム「だからお前を倒してワタシを褒めてもらうことにしたの!さあ倒されなさい!」

まどか「それも八つ当たりだよ!」

詢子「よく分かんねえけど、相手してやんなよ」

まどか「うん。いきなりだけど、昨日言われたこと試してみるね」

クリーム「あんまり舐めないでよね……今はまだしたっ……平団員だけど、いつか幹部になってやるんだから!ブルンゲル!」ボンッ ブルンゲル「ブルルル」

まどか「チャモっち!」ボンッ バシャーモ「シャッ!」

クリーム「ぐぬぬ…わざわざブルンゲルに相性の悪いポケモンを……本当に舐めるなあああああ!!!"ハイドロポンプ"!」

まどか「来るよ!」

怒りに任せた強烈なハイドロポンプをどうにか躱し、すれ違い様に鋭い爪でブルンゲルの体を切り裂いた。

知久「"つじぎり"だ…しかも急所を捉えたね」

バシャーモ「ッ!?」ガクン

しかし次の瞬間、右腕から噴き出していた炎が消え、全く力が入らなくなりダランと垂れてしまった。

まどか「チャモっち!?」

クリーム「『のろわれボディ』よ。金縛りでもう"つじぎり"は使えないでしょ!」

まどか「早くとどめを――」

クリーム「"じこさいせい"」

傷ついた体がみるみる回復していき、ついでに湖の水も吸収し、完全に復活してしまった。
こちらは右腕を封じられ、先手を取ったつもりが不覚を取られたようだ。

クリーム「弱点を点けなくなって計算外ってとこね。"しおふき"!」

先程吸収した水が一気に吹き出し、空からバシャーモに降り注ぐ。

クリーム(さあ避けてみろ鹿目まどか…!もっとも、どこに逃げようとブルンゲルのベールみたいな腕で捕まえて"しぼりとる"を決めてあげるわ!)

まどか「上だよ!」

だがバシャーモは、あえて水に向かって高く飛び上がった!

その姿はまさにロケットの如く!

クリーム「――っ!?何の真似!?」

潮吹き攻撃の威力が最も高くなるのが地面に降り注ぐ瞬間だと悟ったまどかは、潮吹きの水より高い場所に逃げようと考えたのだ。
足から噴き出した炎の爆発力で一瞬で飛び上がり、水の膜を潜り抜けるためにフレアドライブで炎を纏い、さらにダメージを軽減した。

結果、ほとんどダメージを受けることなく、潮吹きを逃れることに成功した。

クリーム「馬鹿な…!」

まどか「チャモっち"ブレイブバード"!」

高度を利用した垂直落下のブレイブバードを、攻撃の直後で対処が遅れたブルンゲルは脳天から叩きつけられ、今度こそ一撃でダウンした。

クリーム「そ、そんなぁ……」

まどか「ありがとうチャモっち!私の思った通りだったよ!」

詢子「一日でここまで成長するとはな……流石あたしらの娘だ」

知久「昔はぽやぽやした子だと思ってたけど、旅をしたおかげかな」

まどか「さあ、次のポケモンは?」

クリーム「うっ……」

まどか「?」

クリーム「も……もういない……平団員は一匹しか支給されないのよ!」

タヴィア「だから言ったじゃん、闇討ちでもしとけばって」

まどか「あれ、タヴィアちゃん!?」

これまた突然の来訪だった。
しかし口ぶりから察するに、どうやらクリームのことは知っていてどこかで見ていたらしかった。

タヴィア「お久しぶりだねまどか。あ、クリームちゃんはあたしのウィッチ団時代の友達なんだよね」

クリーム「フン!裏切り者なんかもう友達じゃないから!」プイッ

タヴィア「つれないなあクリームちゃんは」

詢子「あんた、確かまどかと一緒にいた奴だよな」

まどか「どうしてここにいるの?」

タヴィア「いやぁ、一人でどうしようかなって考えてるところにクリームちゃんに会ってね
     話聞いたらまどか探してるっていうから、昔のよしみで家に帰ったって教えたげたの」

まどか「……タヴィアちゃん、ウィッチ団辞めたんだよね?」

タヴィア「辞めたよ?いやいや、友達の頼みなら聞かないわけにはいかないでしょ」

まどか「えぇー……」

あっけなく裏切られたような気分になり少々複雑だが、話を最後まで聞くことにする。

タヴィア「それから二人でミタキハラとか探し回って、いないって聞いたから探し回ってたら偶然見つけたってわけ」

クリーム「闇討ちなんて趣がないわ……せめて慈悲をくれてやろうと思ったのよ」

タヴィア「知ってるって。クリームちゃんなら絶対そう言うと思ったからあえてそう言ったの」

クリーム「なっ…!馬鹿にしないでよね!」

まどか「もう……ウィッチ団の他の人に知られたら嫌なんだけどなあ」

クリーム「マリアさん達はともかく、ナハト様なら絶対邪魔しないように言うでしょうけどね」

タヴィア「まだ言わせてないから安心して!」

まどか「これから言う予定なの!?」

クリーム「心配しなくても言わないわ。なんて、ワタシが言っても信用できないでしょうけど」

タヴィア「そりゃそうだ」

クリーム「けど、本当に言わないわよ。ワタシはここに来たのは、あんたがどんな奴なのか見たかったの。
     ナハト様に一瞬でも認められたって聞いて、どれだけすごい奴なのか気になったのよ。まあ……このワタシに勝つくらいだし、強さはなかなかね」

タヴィア(強がってる)プププ

クリーム「ただし、どんなに頑張ってもナハト様には勝てないわ。そしてワタシはナハト様の目指す世界を本当に願ってる」

まどか「……」

クリーム「今日のことは貸しにしといてあげるわ!さようなら!!」ダッ

タヴィア「あ、待ってよクリームちゃん!じゃあねまどか、修行がんばれ!」ダッ

まどか「う、うん」

そう言い残して二人ともどこかへ駆けて行った。

まさに嵐のような出来事だった。

詢子「何しに来たんだ、あいつら」

まどか「さあ……でも、やっぱりナハトさんの考え方に賛同する人もいるんだなって実感しちゃった」

詢子「ビビったか?」

まどか「ううん、そうじゃないけど……頑張ろうって思った」

知久「それじゃあもうひと踏ん張り、やろうか」

まどか「うん!」

それからは再び自分のスタイルを確立するため、考えたり実践したり、時には必殺技を考えたり……

そうして二日目が終了していった。

~二十三日目~

まどか「カチっち!」

知久「まずい…!キョウマ!!」

マラカッチのソーラービームが直撃し、ベトベターがダウンした。

もはやまどかの実力は二人に並んでいる。

いや、それ以上と言ってもいい。

できればバトルをしながら修行させたいと思っていた詢子には、想定外だった。

詢子「こんなに伸びるのが早いとは思わなかったなあ……どうすっかな」

知久「バトルスタイルも少しずつ固まってきたしね」

まどか「そんなこと、ないよ!まだ二人にいっぱい教えてほしいことあるよ!」

詢子「気を使うなって。まあ、まだ教えられてねえことも確かにあるけど、このままだと伸び悩みそうだし……」

頭を悩ませていたところに、またも来訪者が現れた。

デリバードに掴まりゆっくりと舞い降りたのは、四天王の一人、ユキだった。

ユキ「どうもはじめまして。私はユキ、四天王を務めてます」

まどか「し…四天王!?なななんでここに!?」

知久「これはどうもご丁寧に。鹿目知久です」

詢子「詢子です。こちらは娘のまどかと息子のタツヤ」

ユキ「あなたが鹿目まどかちゃんね。はいコレ、"プレゼント"」

デリバードの袋状になっている尻尾から白い塊が落とされる。
地に落ちた瞬間ボフンという小粋な音とともに爆発し、一帯に白煙を撒き散らした。

まどか「ゴホッゴホッ……なんなんですかいきなり!」

ようやく晴れたところで、まどかは自分の中指に指輪が嵌め込まれているのに気が付いた。

まどか「な、何これ!?取れない…!?」

ユキ「そう、取れないでしょ?究極技を習得するまでそのまんまだから、頑張って習得してね!」

まどか「え、えっ?究極技って何ですか!?」

ユキ「よくぞ聞いてくれたね!それでは説明しましょう!!その指輪が何なのか――」

他の四天王がそうしてきたように、究極技と指輪について一通り丁寧に説明する。
まどかに渡されたのは、炎の究極技ブラストバーンのための指輪だ。

ユキ「――というわけで、分かった?」

まどか「私とチャモっちの心が通えば使えるようになるんですね?」

ユキ「そゆこと!さやかちゃん達も頑張ってるし、まどかちゃんも頑張ってね!」

詢子「でも、もう十分できてるよな?」

知久「確かに」

ユキ「本当に?せっかくだから、ちょっとやってみせてよ!」

まどか「うまくできるかな……」

バシャーモを湖に向かせ、二人して心を集中する。
いつもバトルをするように、イメージを伝える感覚を研ぎ澄ましていく。

全てを浄化する天壌の劫火の如く!

まどか「チャモっち、"ブラストバーン"!!」

指輪が煌々と光り、バシャーモから燃え盛る火炎が噴き出す。

炎は湖の中央で、天まで届きそうな水柱を立ち上げ爆発した。

ユキ「おぉ!本当にできちゃった!」パチパチ

詢子「マジ…?」

知久「こんな威力の技があるなんてね……」

タツヤ「みずがたったー!」 マネネ「マッネー!」

まどか「すごい……すごいよチャモっち!チャモっちにこんな力があったなんて!!」

無邪気に抱き合って笑いあってるまどか達を見て、内心ユキは高揚していた。

どんなトレーナーでも一日はかかる究極技の習得を、一瞬で終えてしまったのだ。
ここまでポケモンと意志疎通できる者はそうそういない。

これならもしかするとナハトと渡り合えるのではないか……

そんな期待を抱かせた。

ユキ「バシャーモもすごいけど、本当にすごいのはまどかちゃん、君だよ」

まどか「そんな……私はなんにも」

ユキ「ウィッチ団との戦い、頑張ってね。ナハトさんのこと、頼んだよ」

まどか「……はい!指輪、ありがとうございました!」

デリバードに乗って帰るユキを見送りながら、まどかは考える。
自分だけでなく他の皆も頑張っている。

何より、いつの間にか自分の背中には様々な期待が乗っていることを知った。

中途半端な覚悟ではなく、本物の覚悟が必要なのだ。

グンマー地方を救うという、覚悟が。

詢子「どれどれ、じゃあ究極技を使ってバトルでもしてみっか」

まどか「いきなりだね…でも、"ブラストバーン"って撃った後反動があるみたいだから、連発はできないみたい
    だから今のうちに慣れておかなきゃだね!」

知久「使い所に要注意だね。"はかいこうせん"なんかも強力だけど、一歩間違えると相手の反撃を許すかもしれないし」

詢子「ドリー!」ボンッ プクリン「プックー!」

まどか「チャモっち、いくよ!」 バシャーモ「シャッ!」

それから、ブラストバーンの威力や精度を実戦を交えながら高める修行を行ったのだった。
まだまだまどかには負けられないと、俄然詢子も張り切っていた。

使い慣れていないため、発動までに時間がかかったり、すんなり避けられて返り討ちにされたり。

課題も見つかり、克服するための修行を続けた。

そしてまたブラストバーンを使うときの必殺技名も考えたりしつつ……

三日目の日が暮れた。

クリームさんがかませな話が読めるのはここだけ!


修行で一年使ってるって一体どういうことなんですかね…ごめんなさい
DBでもそんなかからんって話ですよね
できたら今月中にまどか編完結させたいけど流石に厳しいかなあ

これから来訪者はさらに増えます
ダレガクルカナー

そういえば最終巻まだ読んでないけど語呂が好きで使ってしまった >天壌の劫火

4月からポケモンする暇すらないかもしれないけど頑張りたいです
それでは

>>1



シャナ読んでるの?

知久「まずい…!キョウマ!!」

知久「まずい…!凶真!!」
で再生されたww

シャナアニメ全部みたけどラストがナンダカナーと感じたのは覚えてる

>>377
俺のラノベ処女はシャナでした…ってどうでもいいな
本読むの好きだし読んでみたいと思う本もあるんだが、いかんせんポケモンが強くて

なぎさ「なぎさだってこのSSに出てみたいのです!」

シャル「さっさと帰れ」

なぎさ「なっ!酷いのです偽物のくせに!」

シャル「偽物じゃないし。私は私でここにあるって設定なんだからさぁ」

なぎさ「設定とか言っちゃダメなのです」

シャル「どうしても私の立場を奪いたいんなら、当然ポケモンバトルでしょ!」ボボボンッ

なぎさ「ゴンベにミルホッグ、ハブネークにハンテール……」

シャル「さあ、あんたも出しなよ」

なぎさ「みんないくのですっ!」ボボボンッ

シャル「へぇ、ハクリューにエーフィ、ジュペッタかぁ」

なぎさ「そしてこの子!」ボンッ

シャル「――ッ!?なにそのポケモン!?」

なぎさ「あわがえるポケモンのケロマツなのです」

シャル「知らない……そんなの知らない!なんなのそのポケモン!!」

なぎさ「体から泡を出せるケロマツはまさにシャボン玉を使うなぎさにぴったりなのです!いくよみんな!」

ヒューンポコポコポコニャー

シャル「うわ弱っ。あたしらじゃれついてたようなもんなんだけど」

なぎさ「こんなはずでは……」

シャル「てなわけで、あんたの出番はなし」

なぎさ「うわーん!!」


ハクリュー→恵方巻イメージ。耳に羽もある
ジュペッタ→ベベイメージ。人形だから
エーフィ→色のイメージ。あと猫耳?っぽい感じとか
ケロマツ→シャボン玉のイメージ。シャワーズも考えたけどブイズ被るしせっかくなので六世代から

なぎさ≒このSSのシャル

なぎさにはベベ(恵方巻含む)のイメージと魔法少女としてのなぎさ自身のイメージを考えてこのポケモンにしてみた
シャルには魔女時代のイメージしかないから使い魔(ミルホッグ)のイメージも加えてる
同じポケモンでもいいんだけどそれじゃちょっと味気ないと思って
分かりにくくてすまぬ

ゲン「ナハトに勝つには……メガ進化しかないッ!」

ウメ「ポケモンとの絆で君たちのポケモンはさらに強くなれるよ!」

ユキ「さあ、メガリングを…!」

アキユキ「そしてメガストーンをポケモンに……!」

杏子「え、あたし貰ってな――」

まどか「いくよチャモっち!」ギュゥゥゥゥゥ

メガバシャーモ「ッッッシャァッ!」めがっ

さやか「リオすけ!」ギュゥゥゥゥゥ

メガルカリオ「ルォォォォッ!!」めがっ

杏子「どういうことだおい!」

マミ「カメーレ!メリーレ!」ギュゥゥゥゥゥ

メガカメックス「ガァァメッ!」めがっ

メガデンリュウ「ウリュゥッ!」めがっ

杏子「二匹メガ進化とかありかよ!?」 ※なしです

ほむら「そるそる…!」ギュゥゥゥゥゥ

メガアブソル「ブルァァァァッッ!」めがっ

杏子「お、お前ら誰かメガ進化できないのか!?」

六匹「…………」フルフル

織莉子「ダイアナ、いくわよ」ギュゥゥゥゥゥ

メガサーナイト「サァァァ!」めがっ

キリカ「愛の力だクチ~ん!」ギュゥゥゥゥゥ

メガクチート「ックッチャ!」めがっ

杏子「お前らもかよ!」

かずみ「ジュペッタ!」ギュゥゥゥゥゥ

メガジュペッタ「キケケケケ!!」めがっ

詢子「負けてらんねえな」ギュゥゥゥゥゥ

知久「そのようだね」ギュゥゥゥゥゥ

メガガルーラ「ガルルルラァァッ!」めがっ

メガチャーレム「ルェェェムッ!」めがっ

杏子「そんな、馬鹿な……なんであたしだけメガ進化できねえんだよ!増田ァ!」

ナハト「キャハハハハ!そうこなくっちゃね!」ギュゥゥゥゥゥ

メガバンギラス「ゴガァァァァッッッ!!!」めがっ

杏子「もういい加減にしろー!!!」


一番可能性ありそうなメガゴウカザルはよ

本当に少しだけ投下

~二十四日目~

なんとも来訪者の多いことだと、流石に鹿目家全員驚いていた。

なにより、なぜこの場所で修業していることが知られているのかということだ。

先日のユキ曰く、

ユキ「私はたまたま見つけただけだよ。さやかちゃん達が湖でやってるし、手始めに湖から探してみただけ」

そして本日の来訪者曰く、

かずみ「霊能力者だからね!」

だそうだ。

そんなわけで、ジムリーダーのかずみこと和沙ミチルが現れたのだった。

まどか「どうして私のところに?ジムリーダーは確かナハトさんとバトルしてるって……」

かずみ「うん、それ抜けてきちゃった。まどかを鍛えてあげようと思って」

まどか「私を…?」

かずみ「ナハトさんの折り紙付きなんでしょ?ほむらには止められたけど、私もまどかに期待してるしね」

まどか「ほむらちゃんに会ったの!?」

かずみ「ちょっと話しただけ。あの子面白いね!結構本気でまどかに戦ってほしくないみたい
    まあ、危険な目にあってほしくないってのは、友達なら当然の反応だけど……ただ、ほむらのはなんか違う気がする」

まどか「違うって?」

かずみ「なんて言えばいいのかな……必死さが違うんだよね。まどかは、死ぬつもりないでしょ?」

まどか「あ、当たり前だよ!」

かずみ「ほむらは、まどかがナハトと戦ったら本気で死ぬと思ってる。嫌な予感とかじゃなくて、知ってるんだと思う」

まどか「知ってるって……まさか、ほむらちゃんも織莉子さんみたいに予知できるとか?」

かずみ「それもなんか違うと思う。私もはっきりとそう感じたわけじゃないんだけど」

詢子「え、かずみちゃんてホントに霊能力者なわけ…?」

かずみ「それは、ひ・み・つ!です」

詢子「……」

かずみ「コホン……とにかく!まどかには強くなってほしいって私も思ってるの!一緒に修行させてもらっていいですか?」

知久「僕は構わないけど」

詢子「あたしも賛成だな。偉そうに言ったけど、正直あたしらじゃまどかに負けてばかりだし、ジムリーダーが来てくれるなら心強いよ」

まどか「ママ……」

詢子「誇っていいんだぞまどか。お前はもう立派なトレーナーなんだからな!いつかは親を超えていくもんさ」

かずみ「それじゃあ改めて、和沙ミチルです!アスナロシティのジムリーダーをやらせてもらってます!
    かずみって呼んでくださいね。言っとくけど、ビシバシいっくからねー!!」

まどか「こちらこそよろしくね!」

こうして新たにかずみが加わり、まどかの修行が再開した。

今のまどかの課題は、究極技を使いこなせるようになることと、バトルスタイルをものにすること。

ところで、まどかはどのような形に落ち着いたのかというと――

かずみ「必殺技…?」

まどか「色々悩んだんだけど、必殺技で決めるのって格好いいかなって」

かずみ「分かる!超分かるよ!!私も最近必殺技に凝ってるの!」

まどか「そうなの?」

かずみ「やっぱりロマンあるよねぇ」

まどか「ロマンだよねぇ…かずみちゃんはもうバッチリ使いこなせるの?」

かずみ「フフン、当然!ジムリーダーですから」

まどか「流石だね!私達も頑張らなきゃ!」

かずみ「そうだ!私とバトルしない?」

まどか「今から!?」

かずみ「私に勝てたらジムバッジあげるよ!チャンピオンに挑戦するなら必須だもんね」

まどか「いいの?」

かずみ「いいのいいの!いつかはあげることになるだろうし、その方が少しは気合入るかなと思って
    さてと……それじゃあシングルバトル3vs3、張り切っていってみよう!」

ジムリーダーの かずみが 勝負を仕掛けてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=T-v9tXrGRfY&feature=related

かずみ「ジュペッタ!」ボンッ ジュペッタ「ケケケ」

まどか「カチっち!」ボンッ マラカッチ「クルッポン」

かずみ「まずは"シャドーボール"!」

まどか「"エナジーボール"だよ!」

お互いに様子見といった感じの攻撃で、どちらも下手には動き出さない。
先に動いたのはまどかだ。

まどか「いくよカチっち!マジカル!!」

かずみ(いきなり…!?それなら――)

まどか「スコール!!」

かずみ「"ふいうち"!」

腕を上に向け攻撃しようとしたマラカッチにジュペッタが殴りかかってくる。
姿勢を崩すも、ここで攻撃をやめるわけにはいかないと、ミサイル針を上に発射する。

すぐさまジュペッタを引き離し、ミサイル針の射程圏内に入れる。
動きを制限し、攻撃を当てるためだ。

まどか「ここで"エナジー――」

かずみ「"かみなり"だ!」

しかし上に放ったがために針は全て焼かれてしまい、むしろ特大のエナジーボールを準備していたマラカッチに隙が生じてしまった。

かずみ「思いっきり"ふいうち"っ!」

素早いジュペッタの攻撃に成す術はなく、そのまま戦闘不能となってしまった。

まどか「カチっちお疲れ……」シュパン

かずみ「焦りすぎだよまどか。リラックスリラックス!」

まどか「よしっ、今度こそいくよ!トゲっち!」ボンッ トゲピー「ピッ!」

かずみ「ん?まだトゲピーなの?」

まどか「まだ、って?」

かずみ「トゲピーって確かトレーナーになついてたら進化するんじゃなかったっけ?」

詢子「そういやそうだったなあ」

まどか「あれ、トゲっち…?もしかして……な、なついてないの……?」

トゲピー「……!」ブルッ

まどかの言葉に反応してトゲピーの体が震え出し、眩い閃光とともにトゲチックへと進化した。

かずみ「……え、このタイミングで!?」

トゲピーがまどかになついていないということはなく、実はいつでも進化できる状態であった。
ただそれを自覚できていなかっただけで、改めて言葉にされたことがきっかけとなったのだった。

まどか「トゲチックに進化しちゃった……凄いよトゲっち!空が飛べるようになったんだね!!」

トゲチック「チチィ!」

かずみ「おめでたいところ悪いけど、バトル中だよ!飛行タイプになったんならこの技はどう!ジュペッタ"かみなり"!!」

まどか「トゲっち"オウムがえし"!」

雷は僅かに逸れ、反撃の雷がジュペッタを襲った。

かずみ「あちゃー、やられちゃったかな」シュパン

まどか「あ、必殺技使えなかった……」

かずみ「……んー、そこ気にしてる場合?ゴルーグっ!」ボンッ ゴルーグ「ウゴゴゴ」

まどか「ゴルーグは確か地面・ゴーストタイプ……ノーマル・飛行タイプのトゲっちに出してきたのはどうして……」

かずみ「タイプだけじゃないでしょ、ポケモンは!」パチン

かずみの合図でゴルーグの上半身と下半身が分離し、飛行形態にチェンジした。
謎のエネルギーを噴射しながら空中でホバリングをしている。

かずみ「空中戦、やってみる?」

まどか「よ、よーし!頑張ってトゲっち!」

ジェット噴射を利用して勢いよく飛び込んでくるゴルーグ。

対して羽をほとんど動かさず、まさしく浮いているだけの状態のトゲチックは、思うように動けない。

そんなことはお構いなしに、ゴルーグの気合いパンチが炸裂し、地面に叩きつけられた。

かずみ「流石にまだ慣れてないみたいだね」

まどか「うっ…戻ってトゲっち!」シュパン

かずみ「張り合うのはまだ無理って判断だね。それ正解」

まどか「チャモっち!」ボンッ バシャーモ「バシャッ!」

かずみ「格闘は効かないし、炎タイプは地面攻撃に弱い。おまけに今のゴルーグは空にいる……何か策があるね」

まどか「"きあいだめ"!」

かずみ「あちゃつめたい!」

まどか「っ!?」

高エネルギーの光線を喰らった瞬間、一瞬にしてバシャーモの足は氷漬けにされてしまった。
原理の分からないエネルギーは、冷凍ビームとして放出することも可能なのだ。
炎を吹きだせばすぐに溶けるだろうが、その一瞬の隙さえあればかずみには十分である。

かずみ「"マグニチュード"だよ!」

分裂していた下半身と合体し、その太い足で大地を揺らした。
躱す間もなく攻撃をもろに受け、大ダメージを負ってしまった。

まどか「でも、これで氷も壊れたよ!えっと……シュ――」

かずみ「遅いよ!"きあいパンチ"!!」

まどか「シューティングスター!」

バシャーモのフレアドライブがヒットする前に、拳が叩き込まれた。

ぐらりと膝をつき、バシャーモは立ち上がることなく戦闘不能となってしまった。
一手の遅れで勝敗は決した。

まどか「あぁ……ごめんねチャモっち……」シュパン

かずみ「トゲっちで相手する?」

まどか「ううん、降参だよかずみちゃん。私、まだまだだったみたい」

かずみ「うん、全然だめだね」

まどか「うぅっ……自分でも分かってるんだけど、言い損ねちゃうと躱されたり攻撃されたりで……」

かずみ「そうだね、必殺技に拘りすぎ。言うのが遅れたら攻撃してくださいって言ってるようなものなんだから、まだ慣れてないなら今回は止めた方がよかったかもね
    あと相性不利なのに必殺技で押そうって考えたのもちょいマイナスかな……って、まだ練習中なのにバトルを申し込んだのは私なんだけど」

まどか「ううん、いい勉強になったと思うよ。どうすればかずみちゃんやマミさんみたいに綺麗に決められるのかな」

かずみ「やっぱり慣れだと思うんだけどなあ……でも、筋はいいと思うよ!私が徹底的に叩き込んであげる」

まどか「改めてよろしくね!ところで、あちゃつめたい、ってなに?」

かずみ「え?必殺技だけど」

まどか「全然必殺技っぽくないよ!そんなの使ったらマミさんに怒られちゃう!」

かずみ「えぇ!?だって言いやすかったし、実際ゴルーグのエネルギーは高温だけど"れいとうビーム"は冷たいから……」

まどか「はぁ……」

かずみ(あれ、呆れられた?なんで?)

まどか「とにかくよろしくね!」

かずみ「う、うん!任せなさい!それじゃあまずは――」クゥー

まどか「……」

かずみ「……お腹空いたからごはんにしよっか」

まどか「あ、あはは……」

軽く間食をしてからまどかの修行が始まった。
やることは至ってシンプルで、迷いを断ち切りつつ必殺技に慣れることだ。
実際に技を使わせたり、ポケモン達と向き合ってみたり、湖に向かって叫んでみたり……

そうして日が暮れていった。

今日の投下は終わりです
まどかの修行が終わるまではエタらせません
そのあとについては濁しておきます

短くてごめんなさい…がんばります

投下します
が、あまり推敲できてないので不備があったらごめんなさい
すでに自分の中でごっちゃになってる部分があったんですけどね…

~二十五日目~

流石に四日連続はないだろうと油断していたまどか達は、昼過ぎに訪れたその来訪者にやはり驚くしかなかった。

アイリ「かずみはいる?」

ユウリ「いることは分かってる、出して」

まどか「えっと……お、お久しぶり…?」

トネシティのジムリーダー杏里アイリと飛鳥ユウリだった。

かずみ「あれれ、どったの二人とも?」

ユウリ「どったの、じゃない!あんたがナハトと戦わずに何してんのかと思えば……まさか、この子を鍛えてるっていうの?」

かずみ「うん、そう。まどかならナハトさんを何とかしてくれる気がしたから」

アイリ「まどかが、ねぇ……」

まどか「頑張ってるよ!頑張ってるけど、まだかずみちゃんにも勝ててなかったり……」

ユウリ「かずみ、本気でまどかにグンマーの命運を賭けようっての?不本意だけどジムリーダー最強のあんたが認めるっていうの?」

かずみ「うん、認めてる。絶対なんとかしてくれる」

ユウリ「へぇ……そこまで言うなら試してみようか。まどか、バトルするよ。ダブルバトルでね」

まどか「ダブルバトル!?」

アイリ「私もいるんだから当然でしょ。私達に勝てたらジムバッジあげてもいいよ」

かずみ「チャンスだよまどか!確かローザバッジは持ってなかったよね?」

ユウリ「本気でいくからな……私達に勝てないようなら、所詮そこまでってことだしね」

まどか「ダブルはあんまりしたことないけど……わかった、やるよ!」

アイリ「いい返事だね。ルールは4vs4、ポケモン交換あり、回復道具の使用禁止、持ち物はあり、使える技は4つまで」

ユウリ「準備が出来たらいつでもいいよ。かかってきな」

それから10分後、二人とまどかが対峙した。
即席だが考えた作戦をぶつけるつもりだ。
考えてみると、本格的なダブルバトルを一人で行うのは初めての経験だった。

普通ならば勝てるはずもないが、まどかの顔にはどこか余裕が垣間見えた。
ちなみにどのタイプのエキスパートなのかは二人が教えてくれた。

アイリとユウリのエキスパートタイプは――

知久「バトル開始!」

ジムリーダーの アイリとユウリが 勝負を仕掛けてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=nimknmrG-Cw&feature=related

まどか「トゲっち、ミカっち!」ボボンッ

トゲチック「チチィ!」 ミカルゲ「んみょ~ん」

アイリ「メタモン!」ボンッ メタモン「モンモン」

ユウリ「ハピナス!」ボンッ ハピナス「ハピハッピー」

詢子「なるほど、二人のエキスパートはノーマルタイプか。チャモっちがいれば有利に進められそうだな」

かずみ「ふふ、そう簡単にはいきませんよ」

まどか「ミカっちのゴースト技が効かないけど、まずは攻めるよ!トゲっち、ハピナスに"すてみタックル"!」

アイリ「"なげつけて"!」

まどか「――!?」

正面から突っ込んだトゲチックに、ハピナスが隠し持っていた赤い球が投げつけられた。
その球によりトゲチックの皮膚に真っ赤な火傷跡が残る。

詢子「おいおいなんだ今の……」

かずみ「持ってたのは『火炎玉』っていうアイテムだね。投げつけると相手を火傷状態にできるんだよ」

詢子「そっちじゃないよ。あたしらが驚いてるのは、命令したのがあっちのショートカットちゃんだってことだよ!
   ハピナスはツインテールちゃんのポケモンだろ!?」

かずみ「名前覚えてあげてください……ショートカットがアイリ、ツインテールがユウリです」

ユウリ「私達は二人で一人。お互いのポケモンはお互いの言うことを聞く。さらにっ!」

メタモンが変身し、ハピナスと全く同じ姿になった。
そしてぐるぐると回れば、もはやどちらがメタモンだったのか判断が付かない。

ユウリ「ハピナスが二匹。どちらのハピナスが攻撃してくるか、まどかにはわからないでしょう?
    ようこそ、『イーブルキッチン』へ……あなたはどこまで私たちの攻撃に耐えられる!?ハピナス、"たまごばくだん"!」

攻撃を放ったのは右のハピナスのみ。
隠し持っていたたまごが大爆発を起こし、トゲチックに大ダメージを与える。
先程の投げつける攻撃といい、投擲には自信があるようで、飛んでいる相手にも正確に命中させている。

まどか「ミカっち、"いたみわけ"だよ!」

すぐさまトゲチックと体力を共有する。
無傷だったミカルゲにもダメージが入る。

アイリ「私達のことを知ってるなら、ミカルゲは大切にしといた方がいいんじゃない?ハピナス、"シャドーボール"!」

次は二匹同時にミカルゲに攻撃が集中する。
動きの遅いミカルゲでは躱し切れない――

アイユウ「!?」

しかし、二つのボールは綺麗に弧を描きながらミカルゲから逸れ、トゲチックに引き寄せられる。
まるでトゲチックの周りに空気の渦が出来ているかのようだ。

ゴーストタイプの技であるシャドーボールは、ノーマルタイプのトゲチックに効かずかき消されてしまった。

まどか「"このゆびとまれ"、だよ…!」

ユウリ「なるほど、少しはダブルバトルってものを知ってるみたいだな」

アイリ「そういうことなら、ハピナス"たまごばくだん"!」

まどか(……?なんだか今の言い方……)

今度は二匹による卵爆弾がトゲチックを襲う。
飛び慣れていないトゲチックでは全てを躱せずいくつか攻撃を受けてしまった。

まどか「戻ってトゲっち!」シュパン

アイリ「集中攻撃はきついでしょ?次はだれで来るの?」

まどか「チャモっち!」ボンッ バシャーモ「バシャー!」

ユウリ「ノーマルタイプに有利な格闘タイプか。確かに怖いけど、そう簡単に勝てると思わないでよね」

まどか「ミカっち"さいみんじゅつ"!」

ミカルゲの模様をじっと見つめさせ、ハピナスの一体が眠りにつく。
その隙を見てすかさずバシャーモが攻撃に向かう。

アイリ「させないよ!ハピナス、"シャドーボール"!」

まどか(……もしかして、命令するとき……でも、今は目の前のことに集中しなきゃ!)

まどか「チャモっち!」

何も言わずともしっかりフレアドライブで攻撃を相殺し、スカイアッパーを眠っているハピナスに決める。
威力は絶大で瀕死寸前まで追い込んだ。

ユウリ「ハピナス、そのまま"たまごばくだん"を撃ち続けるんだ!」

追撃を許さない爆弾攻撃が降りかかる。
それをどうにか払いのけ、残りのハピナスを追い詰めた。

まどか「逃げてチャモっち!」

バシャーモ「ッ!?」ドゴォッ

背後から、シャドーボールを諸に受けてしまった。
そして目の前のハピナスからも卵爆弾を喰らい、一気にダメージを負ってしまった。

すぐさま飛び上がって距離を取る。

先程眠っておりダメージを受けていたはずのハピナスが、ピンピンした状態で復活していた。

詢子「さっきの爆弾攻撃の途中、何かしたな」

かずみ「たぶん、"いやしのはどう"をこっそり浴びせてたんだろうね。どちらかがダメージを受けても、お互いで回復できるようにしてるんだよ」

詢子「なるほど、ジムリーダーは伊達じゃないってな……まどかのやつ、大丈夫か?」

ユウリ「手負いの状態でミカルゲを守りきることはできないよね。ミカルゲは厄介なポケモンだからね、今のうちに片付ける!」

アイリ「ハピナス、"シャドーボール"と"たまごばくだん"!!」

二つの攻撃がミカルゲに襲い掛かる。

詢子「うまい!普通なら"たまごばくだん"は効果がないが、もしまどかがトゲっちに交換してきたときにダメージが入る
   逆に交換してこなければそのままシャドーボールの餌食だ!チャモっちは動けそうにないし、これは防げない!」

まどか「チャモっち耳を塞いで!」

アイリ「…?何を――」

まどか「"バークアウト"!」

108の魂から発せられるけたたましい叫びが空気を震わせ、ハピナス達に襲い掛かる。
今まで怨霊の声だっただけのものが、修行のおかげで技にまで昇華することができた。
この技は相手のポケモン全てにダメージを負わすことができ、おまけに特攻もダウンしてしまう。

そのおかげで、シャドーボールのダメージは比較的軽めで済んだ。

アイリ「なんのまだまだ!ハピナス、"たま――」

まどか「左のハピナスにフィニトラフレティアっ!」

アイユウ「!?」

右のハピナスが技を出す前に、バシャーモの起死回生攻撃が左のハピナスに炸裂!
先程のダメージのおかげで威力が増した攻撃に、たまらずハピナスはダウンした。

まどか「メタモンじゃなかったんだ…それならあっちがメタモンだね!」

ユウリ「まさか……気付いてたようだね、どちらが技を出すのか……」シュパン

アイリ「それより今の技、"きしかいせい"だよね?変な名前付けてたからわからなかったけど」

ユウリ「ちょっとびっくりしたけど、次は見切っていこう」

アイリ「そうだね。フーディン!」ボンッ フーディン「フ~……」

詢子「なっ!?エスパータイプのポケモンだと!?てっきりノーマルタイプ専門なのかと……」

かずみ「そう!二人はノーマル&エスパーのエキスパートタイプなんです!ノーマルタイプの弱点である格闘タイプを牽制するエスパー!!
    エスパータイプの弱点であるゴーストタイプを牽制するノーマル!!この相性抜群の組み合わせと、
    二人の息ぴったりなバトルスタイルはまさにゴールデンペア!!トネの『ゴールドスプーン シルバースプーン』とは二人のこと!!」

ユウリ「そこうるさい!」

まどか「チャモっち戻って!」シュパン

アイリ「エスパータイプを見てすかさずバック。悪くないね」

まどか「トゲっち!」ボンッ トゲチック「トチィ!」

ユウリ「手負いのトゲチックか、少々厄介だけどなんとかなりそうだね」

アイリ「問題はミカルゲだね。どう攻めようか」

ユウリ「集中攻撃で一気に潰すよ。そろそろダメージが蓄積してくるはずだ」

まどか「ミカっち"いたみわけ"!」

ミカルゲ「――ッ!?」

まどか「ミカっち!?」

ユウリ「悪いが先に"ちょうはつ"させてもらった。ミカルゲの補助技は厄介だからね」

アイリ「ハピナス"シャドーボール"!」

まどか「トゲっち!」

シャドーボールはやはり、この指とまれを使ったトゲチックに向って軌道が逸れてしまう。
しかしそれは二人にとって問題にならなくなった。

アイリ「"ちょうはつ"!」

トゲチック「ッ!」キッ

まどか「あぁっ、そんなっ!」

ユウリ「これで攻撃を引き寄せられないでしょ!フーディン"エナジーボール"!!」

まどか「それならミカっち、"あくのはどう"だよ!!」

二つのエネルギーがぶつかり合い、激しく弾ける。
力量はお互い互角だが、フーディンにはまだまだ余力があるのか不敵な笑みを浮かべている。

まどか「だったら威力を下げちゃえばいいんだよ…"バークアウト"!」

アイリ「"たまごばくだん"で音を掻き消して!!」

音波が届く前に卵を爆発させ、耳を塞ぐ代わりにしてダメージを軽減させた。
そして爆煙の中からフーディンの反撃が的確にミカルゲを捉え、大ダメージを負わせる。
既に瀕死寸前だ。

まどか「ミカっちしっかりして!」

ユウリ「よそ見してる暇はないんじゃないかい?トゲチックがそろそろダウンするよ」

まどか「っ!」

序盤にハピナスから受けた火傷のダメージが蓄積し、同じく瀕死寸前の状態だ。
もはや残された余力はほとんどない。

まどか「でも、トゲっちはまだ諦めてない…!」

マジカルリーフがメタモン扮するハピナスのあたり一面に降りかかる。
しかし大した痛手は与えられず、トゲチックは火傷のダメージに倒れることとなった。

まどか「お疲れ様トゲっち……」シュパン

アイリ「ハピナスは特防が高いからね、最後の一撃もそんなに痛くないよ」

ユウリ「どうする、バシャーモを出すか?もっとも、あと一撃でダウンするだろうけどね。となると必然――」

まどか「ピピっち!」ボンッ ピクシー「ピィッ!」

ユウリ「最後の一匹がお目見えするわけだ」

アイリ「ピクシーなら、やっぱり"このゆびとまれ"に注意しないとね」

まどか(ハピナス…じゃなくてメタモンとフーディン、どっちも辛いけど、フーディンを倒せたらユウリさんの手持ちポケモンは0
    一気に2vs1の有利な展開に持っていける……はず!)

まどか「スターライトアロー!」

ピクシーの目覚めるパワーが矢のように鋭くなり射出される。
修行の成果により、技のスピードが上がり、それに伴って威力も僅かに上昇している。

流石のフーディンもこれは躱すことができない。

普通ならば。

ハピナス「ハピィッ!」ドゴォッ

まどか「!?あれ、なんでメタモンが!?」

ユウリ「相方との位置を入れ替える技、"サイドチェンジ"だよ!ナイス判断フーディン!!」

アイリ「ハピナス"シャドーボール"!」

技を出す前にミカルゲに命中し、ミカルゲもついに戦闘不能となった。

これでまどかの残りポケモンはピクシーとダメージを負ったバシャーモのみ。
一方アイリとユウリはメタモンとほぼ無傷のフーディン、そしてまだ見ぬ最後の一匹だ。

まどか「チャモっち!」ボンッ バシャーモ「……シャッ!」

アイリ「ハピナス"たまごばくだん"!」

ユウリ「フーディン"サイコカッター"!」

まどか「ピピっちお願い!チャモっち!」

まどかの合図でピクシーが攻撃を引きつけ、その隙にバシャーモがフーディンを狙う。

ユウリ「させないよ!」

しかしまたもサイドチェンジによりメタモンとの位置が入れ替わり、メタモンが攻撃を受ける。
メタモンはこれで戦闘不能となったが、アイリ達はまだ無傷のポケモンが二体残っている。
おまけに先程の攻撃でピクシーも痛手を負ってしまい、ますます不利なことに変わりはない。

アイリ「お疲れ様メタモン……」シュパン

ユウリ「さて、かなり追い詰められてるようだけど、私達は最後まで手加減しないからね」

まどか「うん、望むところだよ!」

詢子「まどかは全力でやってる……それ以上にあの二人の戦略とコンビネーションが凄まじいな」

かずみ「でも、まだ逆転の目は残ってますよ」

詢子「ほんとか!?」

かずみ「それをできるかどうかは、まどか次第だけど……」

アイリ「フーディン!」 フーディン「ディーン……」

詢子「ラスト一匹もフーディンか!なかなか厄介だな」

まどか「あれ?スプーンの色が違う…?」

ユウリ「そう、気付いたみたいね。フーディンの持ってるスプーンは自分の超能力で生み出したと言われてる」

アイリ「このスプーンは私達のことをイメージをして作ってもらったのよ」

ユウリ「金のスプーンと銀のスプーン」

アイリ「私達の夢色のお守り」

ユウリ「ポケモン達とより強く繋がった証」

アイリ「私達の絆、破れるものなら破ってみてよ!」

まどか「……うん、わかった。いくよ二人とも!」

ユウリ「まだ諦めてないって感じだね。何か隠し持ってるっていうの…?そんな状態で何ができるの?」

まどか「できるよ!私もチャモっちたちも、まだ諦めてない!」

アイリ「それなら、私達の切り札も見せてあげるよ……フーディン!」

フーディンたちがスプーンの先端を合わせ大きな三角形を作ると、そこに強力な念波が形となって現れる。
強力なエネルギー波がピクシーに襲い掛かった。
まどかが指示を出す間もなく、その攻撃の前に倒れ伏した。

まどか「ピピっち!」

ユウリ「これぞ"サイケこうせん"と"サイコキネシス"の合体技、イル・トリアンゴロ!」

アイリ「強力なサイコエネルギーを"サイコキネシス"で制御して命中させる。どんな相手だろうとこの一撃に耐えられないよ」

まどか「……なら、当たらなければいいんだよね」

ユウリ「今のを避けられる、と?」

まどか「正面突破だよ!チャモっち!!」

手足から炎を噴き出し体に纏わせる。
ブラストバーンで真っ向から対抗するつもりなのだ。

アイリ「フーディン!!」

アイユウ「イル・トリアンゴロっ!!!」

まどか「ティロ・フィレッツィアっ!!!」

ブラストバーンとサイコエネルギーが激しくぶつかり合い、周囲に衝撃波を撒き散らす。
威力は互角でどちらも一歩も引かない。

かずみ「フーディンたちのイル・トリアンゴロは二匹分のエネルギーだけど、バシャーモはそれに負けてない!
    体力が減ってるからこそ、特性の『猛火』が発動して威力が上がってるんだ!」

詢子「だけどその体力のせいで押し負けちまう……がんばれチャモっち!まどか!!」

ユウリ「そのままいっけええ!!!」

フーディン「――ッ!?」ガクンッ

アイリ「なっ!?」

その時、アイリのフーディンが突然バランスを崩した。
それと同時に三角形が崩れ、サイコエネルギーは制御できなくなってしまった。

まどか「今だよ!!」

ブラストバーンがサイコエネルギーを押し出し、巨大な火柱を上げて二匹のフーディンたちを同時に焼き尽くした。

その高火力に耐えられるはずもなく、二匹のフーディンは同時にダウンした。

ユウリ「そ、そんな……」

アイリ「……」

知久「ふ、フーディン戦闘不能!まどかの勝ち!!」

まどか「はぁ…はぁ……勝てた…………勝ったよチャモっち!!やったやったぁー!!!」

詢子「よくやったまどか!それでこそあたしらの娘だ!!」

バシャーモに駆け寄り、抱き合って喜びを分かち合うまどか達。
その様子をアイリたちは、今はただ呆然と見つめるしかなかった。

ユウリ「どうしたんだフーディン……どうして、あそこで……」

かずみ「足元、よく見てみたら?もうほとんど燃えちゃってるけど」

ユウリ「足元だと?……これは、葉っぱ…?」

アイリ「もしかして、トゲチックが最後に撃った"マジカルリーフ"……?」

かずみ「そうだね。それがさっきの衝撃波で飛んできてフーディンの足をかすめたみたい」

ユウリ「そんなことが……そんなことでっ!」

かずみ「勝負は時の運っていうしね。でも、実際強かったでしょ?まどかは」

アイリ「そうだね。私たちがハピナスを呼ぶときにイントネーションを変えて区別してたこと、気付いてたみたいだし」

ユウリ「……フン」

まどか「みんなお疲れ様!よく頑張ってくれて、ほんとにありがとう!」

アイリ「おーい、ちょっといい?」

まどか「あ、二人とも…バトルしてくれて、ありがとうございました!」

ユウリ「確かにかずみの言う通り、見込みはありそうだ……でもまだまだ甘い!私達と互角に戦ってるようじゃ、ナハトに勝とうなんて無理のムリムリよ!」

まどか「う、うん……がんばります……」

かずみ「それよりほら、あれ」

ユウリ「分かってる……私達に勝った証、ローザバッジ。あげるよ」

まどか「ありがとうございます!」

まどかはローザバッジを手に入れた!
まどかのバッジケースに七つ目の輝きが灯った。

かずみ「これであとは私のヴィオラバッジだけだね」

まどか「うん!絶対手に入れて見せるから!」グゥー

かずみ「あら」

まどか「あっ」

詢子「試合の後はやっぱりお腹が空くもんだな」

アイリ「それじゃあグンマー地方のジムリーダーとして、なにか御馳走でも作ってあげよっか」

まどか「ほんと!?」

ユウリ「仕方ない……今回だけだからね!」

二人が振舞ってくれたのは、すぐに作れる甘いデザートたちだ。
試合後の疲れた体と脳には嬉しいご褒美だ。
アイリ達の話を聞くところによると、ジムリーダーや一般のトレーナーに混ざってほむらも戦っているらしい。

アイリ「一般トレーナーの中でも抜群に強いよ。ジムリーダーとも肩を並べられてると思う」

ユウリ「どこで予習してきたのか、ナハトの弱いところを的確に狙ってるんだ。まあ、それでもすぐに形成をひっくり返されてるわけで」

アイリ「何度も挑んでるけど、今のところ全部負けてる……しかも、ナハトさんはギラティナっていう最終兵器まで残してる」

ユウリ「本当に、どうやったら勝てるんだあんな人に……」

まどか「ほむらちゃん……」

アイリ「そういえば、ほむらの六匹目って誰も見たことないよね?」

かずみ「六匹目?」

ユウリ「あぁ。どういうわけか、頑なに六匹目を見せようとしないんだ。ボールがあることは確認してるんだが、必ず五匹やられた時点で降参する」

まどか「見せたくない理由でもあるのかな…?」

アイリ「試合後は誰とも口を聞かずにどこか行っちゃうから、わからないままなんだよね」

かずみ「その最後のポケモンが、ほむらにとってのとっておきの切り札なのかも……ただ、とっておき過ぎて使えない」

ユウリ「意味不明だな……まあ、元々そんな訳のわからない人間に頼るつもりもないけどね」

かずみ「お茶が終わったら修行再開、だね!」

ユウリ「それなんだけど、私達も参加させてもらうよ」

まどか「えぇっ!?」

アイリ「練習相手は多い方がいいでしょ?」

詢子「構わないけど、どんどん賑やかになってくなぁ」

知久「いいこと、だよね?」

タツヤ「にぎやー!」 マネネ「マネネー!」

まどか「うん、よろしくね二人とも!」

そうして新たにアイリとユウリが加わり、まどかの修行が続いた。

いかん、1レス飛ばしてたけど問題ないから次に回そう

またも一日分しか進んでないけどなんとかします、はい
自分の中でアイリとユウリがごっちゃになっててどうしようもなくて申し訳ない

ORASにはメガトロピウスを希望してるんだけどはてさて…
それでは次も頑張ります

マミ「出ない……出ない……」ブツブツ

杏子「おい、マミのやつなんか3DS持ってぼやいてんだけど何があったんだ?」

まどか「色違いのフワンテが出ないんだって」

杏子「なんだポケモンやってんのか」

マミ「濁る……ソウルジェムが……」ブツブツ

杏子「なんでまたフワンテ?」

ほむら「今週末から大会があるらしいわ。『ピカチュウ大会チュウ』っていうピカチュウを必ず入れないといけないトリプルバトル」

さやか「使用できるのは未進化ポケモンのみで、ガルーラとかも禁止なんだって」

なぎさ「それに進化の輝石も使っちゃダメなのです」

杏子「いやルール言われてもわからん」

マミ「黄色いフワンテ……お願いだから……」ブツブツ

まどか「マミさんもマミさんパーティで出たいらしくて頑張ってるみたい」

杏子「……なんだっけ、昔ほむらがやってた感じか」

ほむら「今回は未進化ならではのパーティにするみたいよ」

さやか「えっと、まずピカチュウは必須だからね」

なぎさ「黄色いからマミっぽいと言えばぽいのです」

さやか「次がテッポウオ」

ほむら「マスケット銃のイメージね」

さやか「次がテッシード」

まどか「弾丸イメージらしいよ」

杏子「分かりにくっ!」

なぎさ「さっき言ってたフワンテは魔女のイメージらしいのです」

杏子「そこは触れていいのか!?いいのか!?」

さやか「それから、マリルでしょ」

杏子「また名前ネタじゃねえか!」

なぎさ「最後にマダツボミ」

杏子「またかよっ!」

マミ「オスなら出たのよ……4Vだったのよ……でもメスがいいのよ……」ブツブツ

杏子「このまま自分が色違いフワンテになりそうな勢いだからそろそろソウルジェム浄化してやろうぜ……」

1なんですがとりあえずわけあって酉つけてみました

というわけで大会終わるまで次の更新待ってください!
小ネタ置いておくんで!
あと短編集スレ落としてごめんなさい

夕食後、ホットココアを飲みながらまどかとかずみは談笑していたが、やがて話はほむらのことへと移っていった。

まどか「ほむらちゃん、一人で大丈夫かな……」

かずみ「やっぱりナハトさんは強いね。さっき電話で聞いたんだけど、今日はほむらが一方的に負けちゃってたみたい」

まどか「そんな!アイリさん達は、負けはしてたけど善戦してたって言ってたのに……」

かずみ「どうやらナハトさんは、今まで使ったことないポケモンで挑んだみたい。ほむらも対処できずに翻弄されてたらしいよ」

まどか「は、早くほむらちゃんを助けてあげなきゃ!のんきに休んでる場合じゃ――」

かずみ「落ち着きなよまどか。あと一日あるんだし、焦ったって急に強くなれるわけじゃないよ」

まどか「で、でも!」

かずみ「焦りはよくないよ。トレーナーの心にポケモン達も左右されちゃうんだし、もっとどっしり構えとかないと」

まどか「……うん……でもね、なんだか変な気分なんだよね」

かずみ「なにが?」

まどか「ナハトさんはトレーナーばかりで溢れる世界にするために、強いポケモンを育ててみんなを強いトレーナーにしたがってる
    私たちはそれを止めるために今ポケモン達と修行してる……強くなりたいってことは同じな気がするのに、目的は全然違ってて……
    強くなるってどういうことなのか、ときどき分からなくなるんだ」

かずみ「それは本質が違うから気にすることないんじゃない?」

まどか「本質?」

かずみ「大体ね、才能のある強いポケモンを捕まえたからってトレーナーの腕は変わらないよ。トレーナーの強さを決めるのは、
    戦術、育て方、ポケモンとの信頼関係、その他いろいろ……ポケモンの強さもトレーナーの強さも十人十色
    ナハトさんはポケモンが強くなればトレーナーの実力も底上げされるって考えてるのかもしれないよね
    全否定するつもりはないけど、ポケモンの強さだけに頼るトレーナーは二流だよ。その強さを引き出すのは私達なんだからさ!
    今私たちがやることは、この子たちの全力を引き出してぶつけること。だから修行してるんだよ?」

まどか「そうだよね……うん、私頑張るよ!」

かずみ「まっかせてよ!さ、そろそろ寝よっか、明日も朝から頑張らないとね!」

まどか「うん、おやすみなさい」

まどか(かずみちゃんはこう言ってくれてるけど、やっぱり私は不安だよ……)

―――――
―――
――


まどか(体が重い……なんでだろう…手も足も動かせない……)

まどか(それになんだか体も冷たいし、氷の上で寝てるみたい……)

まどか(あれ……?でもわたし、テントで寝てたような……)

目を開けた先には星空が広がっている。
月夜なのか、妙に明るく感じられた。
僅かに周りを見渡すと、どうやら遠くに砂の山があるのが見て取れた。

まどか(イツ砂漠、かな……どうして私、こんなところに――)

その時、空の扉が開いた。

何を言っているのか分からないかもしれないが、光でできた扉が音もなく開き、星達が道を作って地上へと伸びてきたのだ。

その道の上を、淡い桃色の光に包まれた誰かが降りてくる。

まどか(そっか、これって夢なんだ)

ようやくそのことに気付くと、ふわりと体が軽くなった気がした。

光っている誰かはすぐ近くまで迫っている。

しかしあまりにも小さい姿をしていた。

まどか(もしかしてポケモンかな?)

???「きゃううん!」

手を差し伸べられたので、まどかも応じるがままに手を取った。

タ ス ケ テ

まどか「――っ!!!」

その瞬間、まどかの中を声が駆け抜けた。

このポケモンの想いが直接頭の中に伝わってきたようだった。

~二十六日目~

まどか「待ってっ!!」

勢いよく飛び起きたまどかの第一声はそれだった。

体中汗だらけで呼吸も荒い。

まどか「あれ……私、どうして泣いて……」

かずみ「どうしたのまどか、大丈夫?」

まどか「ううん、なんでもないよ」ゴシゴシ

かずみ「そう?ならいいけど……」

まどか(『助けて』って、確かにそう聞こえた……あのポケモン、どこかで助けを求めてるのかな……)

かずみ「朝御飯できてるよー!かずみっくすモーニングバージョン!」

まどか「うん、すぐ行くー」

いよいよ修行ができるのもこの日で最後となる。

しかしまどかはもやもやとした気分のままパンをかじっていた。

かなり眠いということもあるが、主な原因は二つある。

一つは明日、グンマー地方、あるいは世界の運命を決める決戦が行われようとしているのに、まどかには未だ戦いのビジョンが見えていないこと。

圧倒的な強さのナハトに勝つイメージが全く見えてこないのだ。

まどか(私なんかが、どうにかできるのかな……)

そもそも対峙する状況すら、ナハトを思い浮かべると霞んでしまう。

かずみとの決着がまだついていないこともさらに拍車を掛けていた。

時間もないのに、焦りだけが募っていく。

どうしようもない不安に押しつぶされそうだった。

もう一つは朝見た夢のことである。

謎のポケモンが助けを求めていた。

まどかには、なぜかあれが夢とは思えなかった。

光景自体は夢かもしれないが、あの時の「助けて」という気持ちだけは、嘘である気がしなかったのだ。

それはまさに直感のようなもの。

まどか(なんて、秋山さんじゃないんだし、そんなことあるわけ―――)

『たすけて』

まどか「!?」ガタッ

詢子「どうした急に?」

まどか「今、誰か助けてって言わなかった…?」

知久「…?聞こえなかったけど」

アイリ「同じく」

ユウリ「まだ夢でも見てるんじゃないの?」

まどか「でも確かに―――」

『たすけて―――!』

まどか「やっぱり!聞こえる!!」ダッ

かずみ「ちょ、待ってよまどか!」

詢子「おいどこ行くんだ!」

かずみ「ご飯残して行っちゃダメー!」

ユウリ「いやそこじゃない」

完全に目が覚めたまどかは、どこへともなく走り出した。

湖の周りを闇雲に走り、怪我をしたポケモンや襲われているようなポケモンがいないか探し回った。

『たすけて』

まどか「また聞こえた……ねえどこ!?どこにいるのー!!」

返事はなく、湖を半周ほどしたところで足を止めた。

『たすけて』

まどか「っ!さっきより声が大きい…!」

入り込んだのは近くの森の中。
羽ばたいて逃げていくポッポたちを気にせず、草をかき分けて声の主を探す。

まどか「こっちの方だと思ったんだけど……」

ドサッ

まどか「――っ!」

近くの木の上から何かの影が落ちてきた。

それは全身傷だらけのイーブイだった。

そっと抱きかかえるが、既に瀕死状態に近く呼吸も荒い。

まどか「酷い傷…早く手当しなきゃ!」

走り出そうとした瞬間、目の前に大量のスピアーたちが現れた。

羽根を鳴らし鋭い三本の針を向け、ジワリと距離を詰める様子はどう見ても臨戦態勢である。

まどか「まさか、あなたたちがこの子を…!?」

慌ててまどかもポケモンを出そうとするのだが―――

まどか「ってみんなご飯食べてたから置いてきちゃったんだ!」

スピアー「ブーン!」

まどか「こ、こないでっ!」

スピアー「ッ!?」

思わず目を伏せていたまどかに、しかしスピアーたちは襲ってこなかった。

そっと目を開けると、スピードスターに強襲され、スピアーたちが退散しているところだった。

まどか「……あれ?」

???「きゃううううん!」

技を出したのは夢に出てきた、あのポケモンだった。

まどか「た、助かった……あなた、助けてくれたんだね」

そしてなんとなく、まどかは思った。

まどか「もしかして、あなたがこの子の気持ちを私に教えてくれたの?」

???「……」コクリ

まどか「どうして私に……とりあえず、この子をポケモンセンターに連れていくよ。教えてくれてありがとう!あなたも来る?」

???「……」フルフル

まどか「え、でもお友達なんじゃ……」

???「……」ジー

まどか「わ、分かった、すぐ行くから!」

みんなの元に戻ったまどかは軽く事情を説明してすぐにジョーイさんにイーブイを預けた。
傷は深いが、半日もすれば元気になるそうだ。

かずみ「――つまり、そのピンクのポケモンがまどかにイーブイのことを教えてくれたと」

まどか「信じられないよね……」

ユウリ「全くな」

タツヤ「……」

知久「どうしたんだいタツヤ?」

タツヤ「ぼくそれしってるー」

知久「知ってる?」

タツヤ「みたことあるー」

まどか「ほんと!?」

詢子「もしかしてこの間迷子になってたときか?」

まどか「あ、ピンクのポケモンってあの子のことなの!?」

アイリ「なにその話?」

まどか「えっと、この間タツヤが迷子になったことがあったんだけど、その時ピンクのポケモンと遊んでたって言ってたの
    どんなポケモンなのか覚えてなかったみたいなんだけど、あの子なのかも」

かずみ「……」

ユウリ「で、今度はかずみが難しい顔してるわけだけど」

かずみ「ちょっと待ってて、海香に連絡してみる」

それから数分後。

かずみ「そのポケモンの正体が分かったよー!」

まどか「ほんと!?」

かずみ「たぶん、エムリットだね」

まどか「エムリット…?」

かずみ「シンオウの湖を守ってる三匹のポケモンのうちの一匹だよ。海香たちがシンオウで調べものしてた時に、その三匹について話してた気がしたんだよね」

まどか「湖の……じゃあ、トネ図書館で読んだ三つのポケモンって、そのエムリットのことなんだ」

かずみ「他の湖にもいるのかもね、エムリットみたいなのが」

ユウリ「正体が分かったのはいいけど、それがなんだっていうわけ?アタシ達には関係ないでしょ」

かずみ「私はエムリットがまどかにコンタクトしてきた、その意味を考えたい。絶対何か言いたいことがあるんだと思う」

アイリ「何かって言われてもね……」

ユウリ「今はそれより大事なことがあるんじゃないの。今日で最後なんだよ?」

まどか「最後……かずみちゃん、私ともう一度バトルしてくれる?」

かずみ「オッケー、受けて立つよ」

ユウリ「かずみに勝てないでナハトに挑戦しようってんじゃ片腹痛いからな」

アイリ「頑張ってね」

まどか「……うん。絶対に勝つよ!」

詢子「じゃ、入れ替えありのシングルバトル3vs3いっちょ張り切ってやってみようか!」

ジムリーダーの かずみが 勝負を仕掛けてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=X8id7RnDA1g

かずみ「ゴルーグ!」ボンッ ゴルーグ「ヴォォォ」

まどか「トゲっち!」ボンッ トゲチック「チチチ」

かずみ「トゲチックもかなり空中には慣れてきたみたいだね」

まどか「今なら空中でも負けないよ!」

かずみ「ゴルーグ受けてたつよ!"そらをとぶ"!!」

ゴルーグの上半身と下半身が分裂し、謎のエネルギーで宙に浮かぶ。

トゲチックは小さな羽をぱたぱたと動かし、自在に空を飛べるようになった。

まどか「トゲっち、"げんしのちから"!」

原子のパワーが形となってゴルーグに襲い掛かる。
しかし岩タイプの技ゆえ、大したダメージを与えられない。

かずみ「……結構な博打に出るつもりだね。その前に叩き潰すよ!」

ジェット噴射によってスピードを増しトゲチックに襲い掛かる。
トゲチックより圧倒的に速いが、細かい制御ができないことは前回の戦闘でまどか達は知っている。
ギリギリまで引きつけかわすことに専念すれば、対処は可能なのだ。

そしてすぐさま原子の力をぶつけて攻撃していく。

勿論、かずみも対策されたことにはすぐに気が付いた。

そこで次の手だ。

かずみ「あちゃつめたい!」

突進しながらの冷凍ビーム!

これにより動きを制限され、強力な一撃がトゲチックに浴びせられた。

かずみ「"きあいパンチ"!」

すかさずの気合いパンチで、トゲチックはまたも地面に叩きつけられる羽目になった。

かずみ「特性『てつのこぶし』で強化されてるから、かなり痛いでしょ。もう一撃、"きあいパンチ"だあ!」

まどか「"まもって"!」

振り下ろされた拳は、咄嗟のガードによって弾かれてしまった。

かずみ「なんのまだまだ!」

ゴルーグの拳が再びトゲチックを捉えた。

今度は真正面からだ。

まどか「トゲっち!」

しかし、あろうことかトゲチックはこの一撃を受け止めた。

かずみ「――ッ!?そんな、どこにそんなパワーが!?」

まどか「"バトンタッチ"っ!」

かずみ「まさか、もう全能力が上がっちゃってた!?」

まどか「カチっち!」ボンッ マラカッチ「カララン」

かずみ「"げんしのちから"は僅かな確率で全部の能力が上昇する技……でも、トゲチックの特性『てんのめぐみ』で確率が上がってるんだよね」

まどか「うまく能力が上がってくれてよかった……カチっち、前回のリベンジだよ!」

かずみ「戻ってゴルーグ」シュパン

かずみ「ジュペッタお願い!」ボンッ ジュペッタ「ケケケケ」

まどか「今度は負けないよ!"エナジーボール"!」

かずみ「"シャドーボール"!」

二つのエネルギーがぶつかり合い、しかしエナジーボールがあっさりそれを突破してジュペッタにヒットする。

元が互角のパワーでも、能力を変化させれば優位に立てるのだ。

まどか「マジカルスコール!」

かずみ(まずい、さっきのダメージが思ったより大きかったみたい…これじゃかわせないし、それなら――)

かずみ「ジュペッタ"みちづれ"!」

まどか「っ!?」

マラカッチのミサイル針が全弾ヒットし、ジュペッタは戦闘不能となった。

しかしそのせいでマラカッチも道連れに戦闘不能となってしまった。

かずみ「せっかく頑張ったところ悪いけど、これも戦略だよ」シュパン

まどか「ごめんカチっち、急ぎすぎちゃったみたい」シュパン

かずみ「さあて、仕切り直しだよ!」ボンッ ゴルーグ「ゴオオ!」

まどか「チャモっち!」ボンッ バシャーモ「シャアア!」

かずみ「ホントにリベンジするつもりできたんだね。ゴルーグ、空中戦に持ち込むよ!」

まどか「空なら……飛べるんだよ!」

クリームヒルト戦で見せたような大ジャンプを使い、ゴルーグよりも高く跳ぶ。

かずみ「なんのそれしき!かわせないとでも思った!?」

まどか「スターライト!」

かずみ「なっ!?それって確かピクシーの必殺技じゃ――」

まどか「アロー!」

まどかの合図で弾ける炎が降り注ぐ。
全てをかわすことはできず一発が被弾。
破裂した炎弾は連鎖してさらに弾けゴルーグに襲い掛かった。

それはさながら花火のような光景である。

バシャーモが地面に着地し、ノックダウンしたゴルーグが地響きとともに落下した。

かずみ「びっくりしたー、スターライトアローはピクシーが使ってたはずなのになんでバシャーモまで……」シュパン

まどか「こっそり練習しといたんだよ。同じ名前でもポケモンごとに使う技が違ったら面白いかなって」

かずみ「やられちゃったかな……じゃ、いよいよ最後のポケモンってわけだね。ムウマージ!」ボンッ ムウマージ「マァァァ」

まどか「戻ってチャモっち」シュパン

まどか「トゲっち!」ボンッ トゲチック「チチィ」

かずみ「ゴースト技を使えなくしに来たんだね。だけど、当然ノーマルタイプは対策済みだよ」

まどか「やることは一緒だよ、トゲっち!」

かずみ「また"げんしのちから"?さっきは運が良かったけど、今度もそううまくいくかな?」

まどか「……それでも、やる!」

トゲチックは再び原子の力で攻撃を始める。

ムウマージはひらひらとかわしながら攻撃のタイミングを伺っているようだった。

かずみ「まどか、楽しんでる?」

まどか「え?」

かずみ「怖い顔してるよ、もっと楽しんでいこう!」

まどか「……無理だよ」

かずみ「?」

まどか「かずみちゃんはいいよね、もうナハトさんと戦う気なんてないんだから……」

かずみ「……」

まどか「私はね、怖いんだよ……今こうやって頑張ってるけど、全然ナハトさんに勝てる気がしないの
    それなのに、焦らなくてもいいよだなんて……無理に決まってるでしょ!」

かずみ「ポケモンバトルするのが怖い?」

まどか「私なんか普通のトレーナーなんだよ!?いきなりチャンピオンに挑戦なんて、しかも勝てだなんて言われて……
    私より強い人なんて、たくさんいるのに、その人たちでさえ勝てないのに……私が戦って何になるの!?」

かずみ「……"サイコウェーブ"!」

ムウマージの念波により、ダメージを負っていたトゲチックはこれで戦闘不能となった。

いよいよお互いに最後の一体による対決である。

かずみ「心を乱しちゃだめだよ。言ったでしょ、トレーナーの心はポケモン達に伝わっちゃうんだって
    トゲチック、まどかの方ばかり気にして攻撃に集中できてなかったよ?」

まどか「……ごめんトゲっち」シュパン

かずみ「ごめんごめん、まどかは誇っていいくらいいい腕持ってるから、ちょっと期待かけすぎちゃったかな?
    あんまり気負わずにやってほしかったんだけど、無理もないか……」

まどか「かずみちゃんは、ナハトさんと戦うとき怖くなかったの?」

かずみ「全然?」

まどか「どうして!?」

かずみ「だって、ポケモンバトルって楽しいじゃん!」

まどか「――っ!」

かずみ「ああでもないこうでもないって考えてポケモン達と一緒になって戦うのって、私は好きだよ。負け続けると結構きついけど、
    それでも私はこの子たちと一緒に戦いたいの。だって楽しいからね!」

まどか「……」

かずみ「まどかは、楽しくない?」

ボールの中のバシャーモが不安そうにまどかを見つめる。

だからまどかは、笑い返してあげた。

まどか「ううん、楽しいよ!」ボンッ バシャーモ「シャッ!」

かずみ「ふふっ、そうそう、ポケモンバトルは楽しくやるのが一番だよ!」

まどか「"きあいだめ"だよ!」

かずみ「残念、その技はもうすぐ無意味になるよ」

まどか「…?何か聞こえる?」

ムウマージの口からブツブツと呪文のような声が響きいており、次第に体に光が灯り始めた。

かずみ「"おまじない"の効果が出始めたみたいだね。これで急所攻撃は効かないよ。それに――」

バシャーモ「ッ!?」ガクッ

まどか「景色が……歪んでる…?」

かずみ「ムウマージの呪文を聞いた相手は幻覚に苦しめられるんだよ。単純なパワーやスピードでは勝てなくても、搦め手はいくらでも使えるからね」

その言葉通り、目の前に巨大なお菓子が出現したり薔薇の花が咲き乱れたり太陽のオブジェクトが建ったり木製の車輪が空を飛んでいたり……

絶対にありえないような現象が次々に目の前で起こり始めた。

詢子「すごいなこれ……あたしらにまで見えるなんてすごい幻覚じゃないか」

ユウリ「これがかずみの得意技だからね……簡単に破れるものじゃないよ」

まどか「これは幻覚……だからチャモっち、気にしちゃだめ!」

バシャーモ「……」オロオロ

かずみ「"シャドーボール"!」

うかつに動けないバシャーモに容赦ないムウマージの猛攻が始まる。
どうにか防御に回っているが、攻めに転ずることができない。

まどか「しっかりして!シューティングスター!!」

どうにかバシャーモもフレアドライブで攻めようとするが、いまいち思い切りに欠けたため微妙なダメージしか与えられず、強烈な反撃を喰らってしまった。

かずみ「ふふふ、それじゃあそろそろ……ムウマージ、いってみようか」

かずみの姿がぐにゃりと歪み、霧のように溶けていく。

靄は形となり、やがてそこにいるはずのない人物の影が浮かび上がらせる。

まどか「な、ナハトさん!?」

かずみ「キャハハハ!終わらせるよムウマージ」

まどか「……」

かずみ「リーミティ・エステールニ!!」

ムウマージから放たれる最高威力の破壊光線がバシャーモに襲い掛かる。

幻覚に捉われたバシャーモではもはや対抗することはできそうにない――

まどか「ティロ――」

はずだった。

まどか「フィレッツィア!!!!」

ブラストバーンが放たれ、破壊光線とぶつかり合う。

アイリ・ユウリ戦の時のような大技勝負だ。

かずみ「へえ、あの状態からよく持ちこたえたね!でも、私達は負けないよ!」

まどか「かずみちゃん」

かずみ「?」

まどか「ありがとう」

かずみ「……いえいえ、どういたしまして」

まどかず「いっけえええええええええええ!!!!」

ブラストバーンが破壊光線を打ち破り、ムウマージを襲う。

直撃を受けたムウマージはそのまま戦闘不能となった。

詢子「ムウマージ戦闘不能!まどかの勝ち!」

かずみ「あらら……お疲れムウマージ」シュパン

詢子「やったなまどか!よくあそこから逆転できたなぁ」

まどか「うん……だって、かずみちゃんが教えてくれたから」

詢子「?」

まどか(きっとわざとだよね、ナハトさんの幻を見せたのは。私にやる気を出させるために、戦う相手を教えてくれるために……)

かずみ「おめでとうまどか!これで遂に全部のバッジを手に入れたことになるんだよね」

まどか「全部……私が……」

アイリ「やるねえ、もしかして最短記録じゃない?」

ユウリ「どうだろ?でもま、確かに速いね。もう立派なポケモントレーナーだよ」

かずみ「さ、手を出して」

まどか「……はい」

まどかはヴィオラバッジを手に入れた!
まどかのバッジケースに八つ目の輝きが灯った。

かずみ「これで一応、形的にもナハトさんに挑戦する権利が得られたわけだね」

ユウリ「現状じゃ、あってないようなものだけどな」

まどか「ねえ、今ナハトさんたちがどうなってるか分かる?」

かずみ「気になる?ナハトさんのこと」

まどか「それもあるけど、ほむらちゃん大丈夫かなと思って」

かずみ「そうだねえ、流石にナハトさんが倒されてたら連絡あると思うから、たぶんまだ……」

まどか「……」

念のためかずみに電話してもらったが、案の定芳しくないらしい。
ほむらの他にもジムリーダーだったりエリートトレーナーだったりと、挑んでみたもののやはり勝つことはできていないようだった。

その間にプレイアデスはウィッチ団の基地への潜入を試みていたようだったが、幹部たちに阻まれて達成はできていないようだ。

かずみ「残念ながら進展はほとんどなし。いよいよ明日がグンマーの最後になるかもね」

まどか「させないよ……私、がんばるから!」

かずみ「サポートならお任せあれ!ウィッチ団の雑魚とかに、余計なことさせないように見張っとくからさ」

詢子「ま、難しい話は後にしてとりあえず休憩しようや。かずみちゃんが何かおいしいもの作ってくれるんだろ?」

かずみ「そうだった!何でも作るよー、和風洋風中華にデザート何でもござれ!」

まどか「じゃあ、いちごリゾットとか食べてみたいなぁ」

かずみ「おお、それをリクエストしてくれるなんて感激だよ!さっそく準備に取り掛かりますか!」

知久「何かお手伝いすることはあるかい?」

かずみ「いえいえ、みんなのんびりしててくださいねー」

ということで昼食はかずみ特製のいちごリゾットをご馳走になったのだった。

さらにポケモン達にはポロックやポフィン、ポフレといったデザートが振舞われた。

そうして昼からは何をしようかというところで、ジョーイさんがイーブイが完治したことを教えてくれた。

まどか「わぁ、すっかり元気になったね!」

タツヤ「もふもふー!」 マネネ「マネマネー!」

人懐っこいイーブイのようで、すぐにまどかや達也たちと仲良くなれたようだ。

近くの森に返そうとしたのだが、まどかにべったりとくっついたまま離れようとしない。

詢子「まどかは命の恩人だもんなぁ。そりゃ感謝してるだろうよ」

知久「ひょっとして、まどかと一緒にいたいんじゃないかい?」

まどか「……一緒に来たいの?」

イーブイ「ブイー!」コクコク

かずみ「おお!ついにまどかの最後のポケモンだね!」

まどか「でも、明日は大変な日になるし、今じゃなくても……」

アイリ「でもまどか、六匹目のポケモンいないんでしょ?」

まどか「いないけど、いきなりこの子に戦わせるなんて無理だよ!」

知久「まあ、戦わせるのは難しいだろうけど、明日からどうなるか分からないんだから、一緒に連れて行ってあげたらいいと思うよ」

まどか「パパまで……」

イーブイ「……」ジー

まどか「……うん、そうだね。じゃあ、君は今日からブイっちだよ!よろしくね!」

知久にもらった最後のボール、フレンドボールにイーブイを入れることにした。

決戦を前に、ついにまどかのパーティが出来上がったのであった。

ユウリ「で、昼からはどうする?」

アイリ「最後の仕上げに大乱闘でもやってみる?」

かずみ「そんな激しいのやるの!?もっと精神統一みたいなのやってみたらどうかな!?」

ユウリ「それ誰が教えられるんだ」

かずみ「もち、パパさん!」

知久「まさかの無茶振り!?」

あーでもないこーでもないと言い合いながら、何をするか決まらないまま時間だけが流れていく。

詢子「こうなったらまどかに決めてもらおうじゃないの!」

かずみ「確かに本人が決めるのが一番いいよね!」

ユウリ「どうなのまどか!?」

まどか「ポフレ食べる?」

イーブイ「イー!」ムシャムシャ

まどか「よしよし……あ、何か言った?」

アイリ「まどか……」

ユウリ「なんて気の抜けた表情を……」

かずみ「……うん、いいんじゃない?午後はもう遊んじゃおうよ」

ユウリ「おい!?」

かずみ「教えられることは全部教えたつもりだし、今までずっと根詰めてやってきたから、最後くらい休まないとね」

知久「確かに、無理して体調を崩しても大変だからね」

詢子「そうだな。最後くらい羽を休めるか!」

アイリ「……ま、好きにしなよ」

ユウリ「ほんとに大丈夫なのか?」

かずみ「焦ったり緊張してるよりはよっぽどいいと思うよ。パパさんの言う通り、無理はよくないからね」

まどか「ほら、取ってこーい!」

ガーディと慣れ合うかのごとく棒切れを投げるまどかを見て、かずみは少し安心したようだった。
不安に飲まれて実力が出せないよりは、リラックスして試合に臨んだ方がいいに決まっている。

他のポケモン達も新しい仲間を歓迎しているようで、一緒になって遊んでいた。

ユウリ「じゃ、私達は先に戻ってるよ」

かずみ「うん、ありがとね!」

アイリ「私達も戻ったら一勝負挑んでみよっか?」

ユウリ「このままやられっぱなしじゃ腹の虫が収まらないしな。やってやるか!」

アイリとユウリは軽く挨拶をして、ナハトの待ち受けるアカギ山へと手レポートした。

午後からは本当にバトルに関する一切のことはせず、ひたすら遊んだりおやつを食べたり作ったり昼寝をしたりと、のんびりと過ごした。

そうこうしてるうちに日は傾いてくる。

まどかはポケモン達の湖のほとりにいた。

まどか「楽しかったねー、久しぶりにこんなに遊んだ気がするよ」

この一週間は特に余裕がなかったからか、一緒に遊んでいるだけで不思議と疲れが取れるようだった。

緊張しっぱなしだったのか、肩も軽くなった気がする。

そう思っていたのだが、どうにも違和感がある。

まどか「……あれ、遊びすぎたのかな……ちょっと重いような……」

いや、これは確実に誰かが肩に体重をかけている感覚だった。

しかし右を見ても左を見ても、まどかのポケモン達は揃っている。

まどか「かずみちゃん?」

エムリット「きゃうん?」

まどか「わっ!?え、エムリット…?」

いつの間にか現れたエムリットはコクリと頷き、まどか達の周りを飛び回る。

何やら伝えたいことがあるようにも見えるが、まどかにポケモンの言葉は分からない。

エムリットは見かねたのか、そっと手を差し出した。

まどか「そういえば夢の中でもこうしてたような……これでいいの?」スッ

その瞬間、やはり夢と同じようにまどかの中に感情が流れ込んできた。

それがグンマー中のポケモン達の願いなのだと、まどかはすぐに分かった。

どのポケモン達も、考えてることは皆同じだった。

まどか「『たすけて』……そう、言ってるんだね?」

エムリットは黙って頷く。

既にグンマー地方ではウィッチ団の放流したポケモン達が元板ポケモン達を追い出し、生態系を壊してしまった場所もある。
逆に住む場所を見つけられずにいるポケモン達もおり、その被害は大きくなる一方だ。

もしも明日ナハトが計画を実行すれば、それらはより顕著になってくるだろう。

エムリットはなおもまどかを見つめる。

まどか「もしかして、一緒についてきてくれるの?戦ってくれるの?」

エムリット「きゃううううん!!」

まどか「ありがとう!あなたが来てくれるなら、心強いよ!みんなで頑張ろうね!!」

心強い仲間と共にまどかは最後の日を過ごした。


明日の最終決戦に思いを馳せて―――!

ようやく修行篇が終わりました
あとはウィッチ団をバーンでボーンするだけ…

杏子「トリックオアトリート!」

さやか「徳利と鳥取が何だって?」

杏子「ユキ、"こごえるかぜ"」

さやか「タンマ!最近ホントに寒くなってきたんだからタンマ!」

マミ「お菓子ならあげるから落ち着きなさい」

まどか「みんなにはポフレもあるよー」

なぎさ「チーズもあるのですよー」

さやか「そういえばもうすぐハロウィンだっけ」

ほむら「巷ではゴーストポケモン限定の大会が行われてるみたいね」

まどか「あっ……」

なぎさ「案の定出てるらしいのです……」

杏子「ということはあれか、色フワンテで――」

マミ「フワーレ!佐倉さんのお菓子没収するのよ!!!」

杏子「やめろ!!!つーかまだ生まれてねえのかよ!」

まどか「へえ、パンプジンていうポケモンを絶対選出しないといけないんだね」

さやか「ゴーストタイプっていえばさ、うちらみんなゴーストタイプのポケモン持ってるよね?」

まどか「言われてみればそうだね」

杏子「偶然だな」

マミ「すごい偶然もあるものね」

なぎさ「知らなかったのです」

ほむら「……」

QB「暁美ほむら、君は知っているようだね。どうして彼女たちがゴーストポケモンを所持しているのかを……」

さやか「あ、最近出番なくて扱いに困ってるキュゥべえ博士だ」

QB「……まあそれはいいとして。なぜ君たち全員がゴーストポケモンを所持しているかというと」

ほむら「魔法少女だからよ」

四人「……?」

ほむら「まあ、そういう反応になるわよね」

QB「つまり君たちは既にたま――」

ほむら「シャンシャン、燃やしなさい」

まどか「博士ーーー!!!」

ほむら「ちなみにもう少し遅かったらさやかのデスカーンはギルガルドになっていたでしょうね」

さやか「コラー!うちのデスかが泣いてるでしょう!」

なぎさ「結局意味が分からないままなのですよ」

まどか「ただの偶然じゃないかな?」

ということですいませんまだですまたです
ポケモンだけにかまけてたわけじゃないんです
次の投下は未定…11月以内には必ず

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