青ピ「僕の初恋の相手は君やで、百合子ちゃん」(262)




・初SSです

・青髪ピアス×鈴科百合子(一方通行)
・青ピと百合子は幼馴染設定
・時系列は無視してますが、一応22巻以降です
・文章が疎かったり誤字脱字があるかもしれませんが脳内変換お願いします



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366321315








――ノイズが、響く







ざざざざ、ざざ、と、耳障りで不愉快なノイズが 俺 を囲む

ざざざざ、ざざ、と…

まるで、これ以上は見てはいけないと、行く手を阻むように

ざざ……ざ…、

ノイズがかかりボヤけた視界が、少しずつクリアになっていく


ざざ、……

がん、と鉄パイプで後頭部を強く殴りつけられたような頭痛が襲いかかる。それはまるで、けたたましく音を奏でる警報のように感じた




――ノイズが、消える






その先に見えたものは、にたりと不適に見下す白衣の男と、

赤色に浮かぶ、少年の――





ジリリリリ!!! という、昔ながらの目覚ましの音で、少女は目を覚ました




元々病的なまでに白い肌は、さああ、と血の気が引き、更に青白くなっている

肌と同じく、一体化しそうなほどに白い髪は、じわりと全身に滲んだ汗のせいで首筋や頬にぺたりと張り付き、不快感を感じさせていた。

そして、ルビーを連想させる赤い瞳は限界まで見開き、不安定にきょろきょろと周りを見渡す


少女――鈴科百合子は、形が良く薄い唇を軽く開き、はっはっ、短いと息を連続して吐く

「はっ、ゥ…、なンで、いまさら、あンな」

百合子は、少し掠れたアルトボイスで途切れ途切れに言葉を発したあと、ふう、と大きく深呼吸した

先ほどからばくんばくんと騒がしい心臓の音を落ち着かせると、頬にぺたりと張り付いた髪を、細い指先で拭った



ジリリリ!!!

未だ部屋に響き渡る目覚ましの音で、意識を強制的に覚醒させられた百合子は、目覚ましを止めたあと、
ベッド脇に立てかけておいた現代的なデザインの杖を右手に持ち、それを軸にしながら、するりと滑るようにベッドから降りた

「今日から、学校だったな」

ふと同居人――というよりは百合子が居候をしているため家主と言った方が正しい――の教師の言葉を思い出す

ベッドから出たことで、外気がひやりと、その華奢な体を撫でた

急激に覚めていく体温を感じ、ぶるり、と身震いする

「…、シャワー入るか」

あァ、めンどくせェ…と、小さく愚痴を漏らした



――





「はいはーい!今日は皆さんにお知らせがありまーす!なんとですねー、転校生がきたのですよー!それも可愛い女の子! 喜べ野郎どもー!残念でした子猫ちゃんたちー!」

子供特有の、甘ったるく高い声が教室に響く。
ピンク色の髪を綺麗に切り揃え、愛らしい子供服を纏った彼女は、プリントと出席表を片手に、教壇へと立つ


どうみても小学生にしか見えない容姿をした彼女――月詠小萌は、これでも教鞭を振るう、れっきとした高校の先生である

そして、小萌先生が発した、 転校生 というワードに、クラスがざわざわと騒がしくなる

そんな中、1人の少年がガタリと席から立ち上がった

「また女の子の転校生やでぇ! し、か、も! こーんな中途半端な時期に! これは何か訳あり美少女に決定やわあ! 上やんだけでなく、そろそろ僕にも春が来てもええんとちゃいますかー?」

こてこての関西弁を話す少年。通称青髪ピアス、青ピ。
180を超える長身で、恐らく染めたであろう青い髪に、両耳にピアスを付けているという目立つ容姿から取られた、捻りのないあだ名である

「いつ上条さんに春がきたっていうんですか!? 上条さんはフラグも財布も、さらにいえば勉強もからっきしですー! て、なんで男性諸君の皆さんは俺を睨んでるんでせうか…? ああもう、不幸だー!」

黒く、そして特徴的なツンツン頭を両手で抱え上条と名乗る少年は、涙目で反論した

上条当麻、歩くフラグ建築士と言われるほどに女性へフラグをたてているにも関わらず、あまりに鈍感過ぎる為、全く回収をできていないという、ある意味可哀想な少年

そして、今も本人にとっては全く見に覚えのない恨みを、クラスメイトの男子からひしひしと浴びせられている

右手に、異能の力なら神様のシステムすら消せる力を宿しているが、こういう時には全く効果がないようだ




「上やんの鈍感っぷりは筋金入りだぜい。 まあ、俺には舞夏が居るから関係ないけどにゃー」

その隣で、なはは、と笑う少年は、通称シスコン軍曹こと、土御門元春

金髪にサングラス、そして何故かアロハシャツという、個性を圧縮したような存在だ

そして、義妹に手を出しているともっぱら噂の危険人物だ

この個性的な3人は、周りから『三馬鹿―デルタフォース―』と呼ばれている






「静かにしてくださーい! そろそろ転校生ちゃん呼んじゃってもいいですかー? ではどうぞー! お入りくださーい!」

小萌先生の一声で、ガラリと教室のドアが開く

あれ程ざわめいていた声がピタリと止んだ
かつ、かつ、と杖をつく音が教室に響きわたる

学校指定のセーラー服に身を包んだ少女が、器用に杖を操りながら教壇へと登る


「えー、今日からこのクラスの仲間になる鈴科ちゃんですー! 鈴科ちゃん、挨拶お願いなのですー」

「…。鈴科百合子だ、ヨロシク」

簡潔に自己紹介を済ませた百合子は、視線を足元から前へと向ける
そして視線の先に捉えた人物と目があった


「…、なンで」

そう、小さく呟いた声は、クラスメイトの拍手と歓声で掻き消えた――






「いやあ、まさかお前が転校生だとは思わなかったよ、ていうか女の子だったことに上条さんは驚きです」

ホームルームが終わり、クラスメイトからの怒涛の質問攻めを受けた百合子は、疲れ切った表情で、席についた
直後、上条が百合子へ声を掛けた

(仮にも、殺しあった仲なのにフレンドリー過ぎンだろ)
というもっともな意見を口の中で飲み込み

「うっせェな、性別なンざどっちだろうと変わりねェだろ」
と、素っ気なく返す

確かに中性的だし細いし綺麗な顔してるなあ、とは思ってたけどな。なんて呑気に話しかけてくる上条を無視し、土御門と何やら話している青髪ピアスへと視線を向ける

青髪ピアスは、百合子の視線にすぐ気付いたらしく、フ、と笑った

「ーーーッ!」

(間違いねェ…。コイツは…)

思わずガタリと席を立ち、かつかつと杖をつきながら、青髪ピアスへ近付く

「オマエ、ちょっと来い」

有無を言わせない表情で、青髪ピアスの腕を掴み教室を後にした





「いやあ、転校生のアルビノ美少女に屋上まで連れて来られるなんて、ついに僕にも春が来た!? やったで上やん! つっちー! 」
ウオオ、と雄叫びをあげそうな青髪ピアスを、百合子は一睨みする

「…、とぼけンな」

百合子の、ただならぬ雰囲気を感じ取り、青髪ピアスは胡散臭い笑みをやめ、真剣に百合子を見据え、ゆっくりと口を開く

「…、ああ、わかってるで」








「久しぶり、百合子ちゃん」





とりあえずここまで
>>1で書き忘れていましたが、ほのぼの、シリアス路線でいきたいと思ってます
週1更新ペースで頑張りたい


百合子可愛いよ百合子

乙!
期待!!

乙!
転校生百合子も青百合も大好物です

キモい。さっさとシネ


>>19
またお前か…

イヤッフウウウゥ!俺得スレ来たよコレ



青ピの妄想力ならなんらかの能力があってもおかしくはないと
思うのはおいらだけですか

乙!!!!
百合子ちゃんスレ来た!!!!!!!
しかも青百合とか超好物!!期待!!!

>>16
>>17
>>18
>>21
>>23
ありがとうございます! 青百合スレって中々ないですよね
>>22
個人的に青ピはレベル3くらいあってもおかしくはないよなあと思ってます
今回は話の都合上レベル0ですが

思ったより書き溜めが溜まっているので投下します




「へぇ。君、百合子ちゃん言うのかあ。いい名前やね、僕が一番好きな花の名前」

少年は、にこにこと人懐こい笑みを浮かべる

7、8歳といったところだろうか。

短パンにシャツという子供らしいシンプルな服装は、泥や草で少し汚れていた

そんな少年の目の前には白いワンピースを見に纏った華奢な少女が、小さく体を丸めている



「うン…、ありがと」
名前を褒められたことが嬉しかったらしく、少女は柔らかそうな頬を赤く染めながら、ふわりと微笑んだ…



――





結局その後、次の授業がもうすぐだから話はまた後日とはぐらかされ、二人は一度教室へと戻ることになった

なんとなく、もやもやしたものを抱えながら並んで歩く廊下は、今朝登校したときよりも長く感じた――






教室のドアを開けた途端、青髪ピアスは物凄いスピードで男子生徒に囲まれた

上条じゃなくお前までもフラグを建てるのか!? 信じてたのに! やら、 テメェもかああ!!などというクラスメイトの悲痛の叫びが響き渡る

そんな男子生徒を軽くあしらっている青髪ピアスを横目で見ながら、
くっだらね。と心の中で呟き、自分へ与えられた席へと座りつくえをぼんやりと眺める




「ええと、鈴科さんでいいのよね」

ふと、掛けられた声に反応し顔をあげる。
視線の先には学校指定のセーラー服と、百合子には無い、セーラー服を押し上げこれでもかと主張する大きな膨らみが2つ…


「あ、自己紹介をしていなかった。私は吹寄制理だ、よろしく」

「…、あ、あァ。どォも」

握手を求められ、差し出された手を握る
腕を少し動かすだけで、ぷるんと揺れるそれと、自分のそれを見比べ



…ほんの少しだけ敗北感を味わった





吹寄の用事は、どうやら転校してきたばかりの百合子に、放課後校内を一緒に回らないか、ということだった

一応、校内の大体の見取り図を頭に叩き込んでいるとはいえ、学校というものに殆ど通ったことがない百合子には、その申し出はありがたく、特に断る理由もないので吹寄と姫神と百合子の3人で放課後校内をまわり、案内してもらうということで話は決定した










――放課後

青髪ピアスはいつものメンバーと別れ、今日はバイト入ってない事を確認したあと、下宿先のパン屋で自分にあてがわれた部屋へと向かう

手に持っていたカバンをベッドへ投げ、自らも倒れるように横になる

仰向けに寝転がり、目を閉じる

まぶたの内側に見えるのは、今日再会したばかりの白い、少女。




…、昔とは、随分と変わってしまった

大きくてまんまるな瞳は、つり目で鋭い視線を放ち、にっこりとした笑顔の変わりに不機嫌そうな仏頂面。


――そして何よりも、色素がなくなり真っ白になってしまったこと



「…、でも、やっぱり危なっかしい雰囲気は変わらないんやね」

昔から、そうだったもんなあ、と、呟く

思い出せば思い出すほど、少女との記憶は暖かく心地よいものばかりで、
青髪ピアスは目を閉じその心地よさに身を委ねる

聞きたい事は山ほどあった、話したい事も沢山あった

「……、でも」

「あんな泣きそうな顔されたら…、話せへん、よなあ」

青髪ピアスは、白い天井へ向け、グッと腕を伸ばした

手を垂直に伸ばした事で、ワイシャツの袖がずり下がる

腕に残された、うっすらとした古傷を、そっと、撫でた。








■■



「ふふ。どうせ私は自己紹介のシーンすら省かれる」

「謎の転校生というキャラすらかぶってしまった」

「結局。ヒロインの器は。私にはないということ」

「でも。何だかんだ言って。皆私のこと好きだと知って……


ここまで
次は来週投下します



ちょwwww青ピがイケメンな予感

かまちーも青ピ覚醒させてくんないかな
対女性能力限定で
まじもったいない

かまちーはキャラが多いのに一応覚えているからな……
期待はそこそこ出来る

百合子争奪戦の相手はワーストあたりか?
さすがに本物の変態には負けるよな……

また新たな百合子スレが生まれたか
期待

こんばんは。
>>34
>>35
青ピは脇役で埋もれるには勿体無いキャラだと個人的に思っています。
百合子争奪線は、やるとしてもかなり後の方になると思います

>>36
ありがとうございます。百合子可愛いよ百合子

短いですが投下します



翌日

余裕を持ち、少し早めに家を出た百合子は、いつも通りの歩調で学校へ向かっていた

眉を潜め、むすっとした仏頂面で、ハァ、とため息をつく。

慣れないローファーで靴擦れをしないよう気にしながらも、百合子は昨日の青髪ピアスを思い出していた。




・・・
『被害者』である青髪ピアスが百合子を怖がり、憎むのなら納得が行く。
だが、あのときの表情は昔から変わらない、いつも通りの笑顔だった。

(それなのに。オマエが、はぐらかす理由はなンだ…?)

わからない…、
いくら考えようと百合子には、青髪ピアスの行動が全く理解できなかった



「おはよー! 百合子ちゃーん!」

突然後ろから声がかかり、びくりと肩を揺らす

その声の持ち主は、すぐに百合子の隣へ並んだ

「いやー、歩くの早いなー。さっきの信号あたりから追ってたのに、いまやっと追いつけたんやで?」

その人物は、今百合子が丁度考えていた 青髪ピアスだった
青髪ピアスは、もう小さくなった信号の位置を指差しながら百合子に話し掛ける



「で、おはよう、百合子ちゃん。百合子ちゃんは僕に挨拶してくれへんの?」



青髪ピアスは百合子の顔を覗き込むように、前かがみの姿勢でにこりと笑う



「…………、オハヨウ」

なんとなく感じた気恥ずかしさから、百合子は目を逸らした




――




「………」

――終始無言


二人の間には、コツコツとローファーが地面を叩き鳴らす音と、杖の音だけが虚しく響く

オマエから話しかけといて、なンもなしかよ、と内心ぼやきながらも、百合子は青髪ピアスの歩幅に合わせ、隣を歩く。

置いて行ってしまっても良かったのに、何故かそうする気分にはなれなかった

学校が見えた辺りで、青髪ピアスは、ふと口を開いた


「ゆっくりでええんやで? 百合子ちゃん」

それだけ言うと、青髪ピアスは上条と土御門を見つけ、そのまま行ってしまった

「わけわかンねェ…」

一人残された百合子は、ぼそりと呟く。


だが、少しだけ肩の力が抜けた気がした――



――






「鈴科さん今日の夜予定ある?」

教室に着き、ドアを開けると吹寄と姫神が真っ先に駆け寄り、話しかけてきた

「特に、ねェけど」

そう答えると、吹寄と姫神は顔を合わせ、一枚のプリントを百合子へ手渡した

「鈴科さんの。歓迎パーティ。焼肉」

プリントを受け取り、百合子はその内容に目を通す
手書きで、鈴科さん歓迎パーティ! と、プリントの3分の1のスペースを使いデカデカと書かれた紙には、 時間と。必要な金額。集合場所。そして、絶対参加の文字が、強調して書かれていた




「秋沙が転校して来たときもやったのよ。今回は鈴科さんが主役だから、鈴科さんだけは参加費用二割引きよ」

吹寄達とプリントを交互に眺める。
断ろうか考えていたとき、子供特有の高い声が足元から聞こえた

「おー、今回は焼肉ですかー! 先生張り切って食べちゃいますよー!」

その声に反応し、下を向くと、目をキラキラさせていつの間にか配られていたプリントを眺める、小萌先生がいた。

「そういうことだから。主役は絶対参加」

姫神に念を押され、百合子の参加が強制的に決定した――






ここまで、次は百合子歓迎パーティです。
次回は、青ピの変態っぷりを発揮させていきます。

…。姫神さんの出番がそれなりにあるのに。全く目立たない。

次の投下は、来週か、再来週あたりになります

青ピ好き

乙!
これはいい青百合スレ

まだ姫神はネタや出番があるだけでマシ


メンバー(ショチトルと馬場を除く)やブロックのやつらなんて……

ブロック?ああ、昨日食べたよ。マヨネーズつけると美味いよな

>>49
青ピはいいキャラしてますよね
>>50
ありがとうございます!
>>51
グループ、スクール、アイテムはよく見かけるんですけどね…。
>>52
それはブロッコリー。>>1はごまドレ派です。

もう超電磁砲Sが3話目ですが、布束さんがギョロ目ではなく、ただの美少女になってしまったことが若干ショックです…。
投下します。




集合先のセブンスミストに着くと、もう殆どの生徒が到着していた

かつん、と大きく杖をついた百合子に気付いたらしく、吹寄と姫神は手を降る

人を上手く交わしながら吹寄達の集団へと近付く

「遅れた、か?」

ちらりと周りを見渡しながら、百合子は、吹寄に尋ねる

「ぎりぎりセーフね」

吹寄は、腕時計を百合子に見せた。デジタル時計のようで、液晶には六時二十八分の文字が刻んであった。プリントには六時半集合と書いてあったため、ギリギリ間に合ったようだ



それよりも、と吹寄は口を開く

「私服、可愛いわね。凄く似合ってる。 男子には見せたくないわね」
「鈴科さんに。よく似合ってる」

二人はそれぞれ、百合子の服装を褒めた。
百合子の今の服装はというと、スラリとした足を覆い隠す黒のジーンズに、同じく黒のブーティ。そして白く、もこもことしたポンチョという、普段の服装とは全く違った格好をしていた。

「同居人に着せられたンだよ…」

帰宅後、歓迎会に行くから夕食はいらないと説明すると、黄泉川を始め、芳川桔梗、打ち止め、番外個体が途端に目の色を変えた。

そして、気付いたときには普段のシマシマ模様の服は番外個体によって全て押収され、今の女の子らしい格好に着替えさせられていた





「それにしても、あいつら本当遅いわね」

吹寄は、時計を見ながら、ちらちらと周りを伺う

「あの三人が遅れるのは。いつものこと」

三人、というのは上条と土御門と青髪ピアスのことだろうな、と百合子はぼんやり思う
転入してきて2日目だが、なんとなくクラスの役割というものを、百合子は感じていた


「悪い! 遅くなった!」

声の方を振り向くと、上条が息を切らしながらこちらに手を降っていた
その後ろに土御門、青髪ピアスと…

「とうま、焼肉食べ放題楽しみだね、って…、あー!いつかの白いひと!」


――そしていつかの、真っ白な修道服を着たシスター、インデックスが居た

ああ、そういえばコイツは上条の守るべき人物だったな、と百合子は思い出す


百合子とインデックスを交互に見ていた上条が、ええええ!!という、大げさ過ぎる程の叫び声をあげた

「鈴科とインデックスは知り合いだったんでせうか!?」

「うん。とうまを探していたとき、白いひとがね、ごはんおごってくれたんだよ?」

目をパチクリさせている上条に、インデックスは冷静に答える



インデックスのその言葉を聞いた途端、上条の顔が真っ青になった。

慌てて百合子の方を向くと、上条はいきなり頭を下げた

「鈴科! 悪い! こいつの分奢るってかなりの量だっただろ?」

ああ、そういえば何処に入ってるのか不思議なくらい食ってたな、と百合子は思い出す

「別に。コーヒー代のついでだ」

百合子は、いまだに顔を真っ青にしている上条に、簡潔に答えた。

「いや、コーヒー代のついでになる金額じゃないだろ! 今度なんかお礼を…」



そう言いながら一歩踏み出した上条の右足は、左足の解けかけたスニーカーの紐を踏んでいた






――次の瞬間、上条の体が、ぐらりと揺れた




上条は、…、へ?と、間の抜けた言葉をこぼす

「…、うおおおお!?」

雄叫びと共に、上条は前のめりに躓く

目の前には、杖で体を支えている百合子

「はァ!?」

突然のことに反応が遅れた百合子は、覆いかぶさって来る上条を避ける事が出来ず、どさりと倒れた

あまりに突然で一瞬の出来事に、周りはしん、と静まりかえった






「…、いててて。わ、悪い!大丈夫か? すず…」

上半身を起こそうと力をいれた瞬間、むにゅ、という柔らかい感触が手のひらに伝わる
上条は、即座に言葉をつぐんだ
その額には冷や汗がだらだらと流れている

――上条は、こういった『不幸』をよく知っている。


そして、この次に来るものも…、


「貴様は、本当にいつもいつも…」
「上やーん…?今、なにしたんかなあ?僕に説明してくれへん…?」
「……。魔法のステッキ。」
「……、とーうまー?」

どす黒いオーラをひしひしと背中で感じた上条は、恐る恐る後ろを振り向く


――そして、次の瞬間、上条の視界は黒く染まった。







ぎゃあああ!! と、上条の断末魔が響く

(まーた、上やんお得意のラッキースケベだにゃー)

いつも通りの光景を、土御門はため息をつきながら見つめる

そしてそのまま、上条を羽織い責めにしている青髪ピアスに目線を向ける

上条お得意のラッキースケベが発動したとき、青髪ピアスは、珍しく、ふ、と無表情になった

それはほんの一瞬の出来事だったが、土御門は見逃さなかった

(…これは面白いことになってきたぜよ)

土御門は、親友のいつもとは違う様子を思い出しながら、にやにやと胡散臭い笑みを浮かべた



――そうこうしているうちに、騒動は収まったようだ。

上条は、コンクリートに倒れたまま、不幸だ…、とぼそりと呟く

百合子は、特に気にしていない様子で立ち上がり、服に付着した砂をはらっていた

そして、吹寄が両手をパンパンと叩き、全員に呼びかける


「さて、上条への仕置きはこれくらいにして、行きましょうか」

吹寄の言葉と同時に、一同はようやく目的地へと向かいはじめた――




――





「もうー! 皆さん遅いのですよー! 先生お腹ぺこぺこです!」

焼肉屋へ着いた一同は、予め予約していた大広間へと案内された

すると、先にきていたであろう小萌先生が頬を膨らませながら出迎える

「って、なんで上条ちゃんはそんなにぼろぼろなんですかー!?」

「ちょっと色々とありまして…」

上条を見て驚く小萌先生に、上条は、…ははは。と乾いた笑みを浮かべた

「もうっ! あまり先生を心配させないで欲しいのですー! では、とりあえず皆座ってバンバン頼みましょう!」

小萌先生は、生徒たちに、にっこりと笑いかけた。



――




その後、注文したドリンクが全員に届いたことを確認すると、小萌先生はドリンクを片手にすくりと立ち上がった。

そして、軽く咳払いをし、ドリンクを前へ掲げる

「ではではー! 鈴科ちゃんの転入を記念してー…、かんぱーい!」

小萌先生に続き、生徒達のかんぱーい!という声が、大広間に響いた



――




「ごはん、おかわり!」

インデックスは、にっこりと笑いながら大盛り用のどんぶりを、店員へ差し出した

既に彼女の周りは、大量の空き皿で埋め尽くされており、巨大なタワーを作っている

あの体の何処にあンだけ入るンだ…、と内心思いながら、百合子はインデックスをまじまじと見つめた

「凄いわよね。あの子何処にあれだけ詰め込んでるのかしら」

そんな百合子をみて、吹寄は話しかける

「…、明らかにキャパ超えてンだろ」

そう答えると、今度は隣の席へと視線を動かした

その視線の先には、姫神がいた。
大量の白米と牛タン、カルビを口に放り込みながら、ヒロインになるには。大食いキャラか。などと、わけのわからないことをぶつぶつと呟いている。

(それにしても、カオスすぎンだろ)

表の住人にとっては、これが当たり前なのか?と、百合子は首を傾げた。



――



「そういえば、鈴科さんって都市伝説とか知ってる?」

突然話を切り出した吹寄に、百合子は一度箸を止める

「そういう都市伝説を集めたサイトがあるんだけど、それが中々面白いのよ。例えば、実は能力は最初から素質で決められているとか、実在しない第六位だとか、シャケと会話できる能力者とか、突然脱ぎ始める脱ぎ女だとか、白いカブトムシは不幸と幸福を呼ぶとか」

吹寄は肉を焼きながら、つらつらと例をあげていった

「…、なンつうか、メルヘンちっくなのが多いなァ」

百合子は、カルビを口に放り込みながら、そういえば第四位はシャケ中毒なンて噂があったなァと、何処かで聞いた噂を、ぼんやりと思い出していた




「そういえば。青髪ピアスとは。どんな関係なの?」

今までひたすら口に白米と肉を放り込んでいた姫神が、突然質問を百合子に投げかけた

「ああ、それ私も気になってたのよね。そういう役割は基本上条だから」

吹寄は、上条をじー、と睨みつける
それに対し上条は、へ、俺でせうか? と、素っ頓狂なら声をあげている

「…、別に。ただ、ガキの頃に少しあっただけだ」

それだけ答えると、百合子はもくもくと食事を再開した

姫神と吹寄は、それ以上、二人の関係について詮索をしてくることはなかった




(仲良い…?ンな訳ねェだろ)

――俺は、あいつを巻き込ンだ上、殺しかけたンだから




「ではではー! 皆さん気を付けて帰ってくださいねー! 」

小萌先生の一言で、生徒達は各自寮へ帰る為、解散した。

「じゃあ、おやすみなさい。また明日学校でね」

「おやすみなさい。また明日」

「ン…、オヤスミ」

百合子は、吹寄と姫神が手をふり帰って行くのを見届けた後、ハァ。とため息をついた

(慣れねェことは、するもンじゃねェな)

いまだ、表の世界に慣れきっていない百合子は、体にどっ、とのし掛かる疲れを感じた

「さて、俺も帰るか…」

百合子は、体を杖で支えながら、ゆっくりと歩み始める

「おー、百合子ちゃん! まだおったんやなあ! ちょうど良かったわあ。いっしょに帰らへん?」

そんな百合子に、後ろから声がかかる

軽くデジャヴを感じながら、百合子は振り向く。

そこには、案の定青髪ピアスがいて、百合子に向かって手をふっていた。

「またかよ…」

百合子は深いため息をついた後、小さくぼやいた



とりあえず、ここまで。
>>72>>73の間に空欄を入れるのを忘れてました
今回は色々と詰め込みすぎてちょっと話がごちゃごちゃしてしまいました
次の投下は、書き溜めが切れてしまったので出来次第です。

訂正
×「そういえば。青髪ピアスとは。どんな関係なの?」
○「そういえば。青髪ピアスとは。どんな関係なの?仲良いし」

おぉ!また張り付くスレができてしまった←
最近青ピも百合子スレも見てなかったから期待期待

>例えば、実は能力は最初から素質で決められているとか、実在しない第六位だとか、シャケと会話できる能力者とか、突然脱ぎ始める脱ぎ女だとか、白いカブトムシは不幸と幸福を呼ぶとか


百合子ちゃん、半分ぐらいはあなたの知り合いだよね……

はたして需要はあるのか

乙でーす

シャケwww

マダー

こんにちは。
>>76
>>79 ありがとうございます!
>>80 >>77 この百合子は、麦野沈利とは面識がありませんし、白いカブトムシさんの存在はまだ知りません。
>>78 青百合は需要がないのか全く見かけないのでスレ建てたまではいいのですが、このスレに需要があるかは微妙なところです。

ところで、全レス返したほうがいいのでしょうか?投下します





「……」
「……」

(……、だからなンで喋ンねェンだよ)
百合子は心の中でぼやく。
朝同様、二人の間には沈黙続き、重たい空気が流れる。
オマエは一体なにがしたい、と言いたげに睨んでも、青髪ピアスはにこにこと笑うだけだった。




あァ、もう!と、百合子は自分の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き回す

「だからオマエは、なンでついてくンだよ!」

そして、沈黙に耐えきれなくなった百合子は怒鳴りつけるように声を荒げた。

「そりゃあ、可憐なアルビノ美少女に何かあったら困るからやなあ」

対して、青髪ピアスはのほほんとした表情で答える。

「……。ハッ、なンだそりゃ。俺の能力がどンだけ化け物じみてるかなンざ、身を持って知ってンだろォが」

百合子は、少しだけ口をつぐんだあと、化け物という言葉を協調しながら自傷気味に言葉を吐き捨てる。
……、つきり。と一瞬だけ、左胸に針が刺さったような痛みが走った。




「いくら強くても、百合子ちゃんは女の子やからなあ。ほら、夜道のガードは男の子の役目やん?」

それでも青髪ピアスは、いつも通り百合子に笑いかける。
そしてなによりも、ずば抜けて大きな力を持った『怪物』を、何でもない顔で女の子だから、と言ったのだ。

「…、くっだらね」

百合子は地面を睨みつけながら呟く。
それでも青髪ピアスは、楽しそうににこにこと笑う――


「ん、ここまでやな」

青髪ピアスはぴたりと足を止める。
気付いたら、今朝の信号の前まで来ていた。

「…、それじゃ! また明日学校で、百合子ちゃん」

そして、青髪ピアスは信号を渡り、そそくさと帰ってしまった。

「……」

――百合子は、また明日の一言を言うことはできなかった。



――




「おかえりなさい!ってミサカはミサカはあなたをお出迎えしたり!」

玄関を開けた途端、打ち止めが百合子へ声をかけた

「ン…」

そんな打ち止めを軽くあしらいながら百合子は与えられた自室へと向かう。

慣れない事ばかりで疲れ切った身体を、一刻も早くベッドへと委ねたい。そんな気持ちでいっぱいだった。






部屋の前へと着くと、室内から何やら女の声がした。
なんて話しているかは聞き取れなかったが、恐らく番外個体あたりが悪戯でもし掛けているんだろう、と考え、がちゃり。とドアノブを捻った。

「………」
「………」

侵入者と目が合い、一瞬の沈黙。



「何してンだオマエ……」

「こんばんは百合子たん。今日は随分女の子らしいですね!? ハッ、もしやミサカに襲われる為におめかしをしたのですか! そうですね、そうに決まってます! もう百合子たんったら大胆なんだかrあばbbbbbbbbb!!」

百合子の部屋にいた侵入者、もとい変態は、百合子の下着を嗅ぎながら幸福そうな顔で打ち止めのお仕置きを受けていた。

――軍用クローン『妹達』ナンバー20000号

各自個性を持ち始めた妹達の中でも、ずば抜けて特徴的な個体である。






「……、ほンと疲れた」

百合子はそんな20000号を見下ろしながら、げっそりとした顔で、ぼそりと呟いた――



――



百合子が20000号と遭遇している頃、青髪ピアスは、丁度下宿先のパン屋へ到着した。


その直後、今放送中の萌えアニメのオープニング曲が、青髪ピアスのジーンズのポケットから響いた。

青髪ピアスは携帯をポケットから引っ張り出し、ディスプレイの文字を確認し、電話に出る。





「つっちーどないしたん?」

「…、」

電話の相手、土御門は、電話越しにも分かるほどに重たく、暗い空気を放ってる

こりゃ、ただごとじゃあらへんな…。と、青髪ピアスはごくりと唾を飲み込んだ。












「……、なあ、青髪ピアス。ミニスカメイド服って、どう思う?」

「そんなん。美味しいに決まっとるやん」





普段とは対象的に、珍しく真面目モードな土御門に、青髪ピアスは即答で返す。

青髪ピアスの守備範囲には、勿論ミニスカメイドも入っていた。

「だよにゃー! ミニスカメイド服のなにがいけないんだにゃー!メイド服はえろくてなんぼぜよ!」

先程の空気とは打って変わって、土御門は訴えるように喚く。
大方、義妹に何か言われたのだろう。

青髪ピアスは、そんな親友の言葉に、うんうんと相槌をうち、こう締めくくった。

「いやあ。でも、純正なメイド服も中々そそられると思わへん?」




今日は短いですがここまで。
>>48で青ピの変態っぷりを発揮させるといいながらすっかり忘れていたので、それぞれの日常を挟んでみました。

20000号は個人的に好きなキャラなので今回無理やり出演させましたが今後暫く登場する事はありません。

次の投下は、また来週あたりに投下出来たらなと思います。



青ピの変態っぷりはこれからって
ことですね わかります

おつおつ

全レスは丁寧だなとは思うけど、疲れそうだから
まとめてでもいいと思う

乙乙
このまま日常が続くのか、非日常に突入していくのかどっちにしても俺得です

青ピ好きのおれに嬉しいスレ

青百合は青春のにおいがします

>>96
>>99
>>100

青髪ピアスはいいキャラしてますよね。
変態っぷりはこれから盛り込んでいきます。

>>97
ありがとうございます。まとめて行こうと思います

>>98
どちらにせよ、ハッピーエンドにしたいです。

月曜日に投下するつもりが新約7巻読んだりその他諸々していたら水曜日に…。
今日中に投下します。





「お願いです!勉強教えてください!」

「…、はァ?」

朝、教室のドアをスライドし、最初に見たものは上条当麻の華麗な土下座であった。


・・・

「ふゥン。期末テストねェ」

ひとまず席に着いた百合子は、頬杖を付きながら目の前の上条の話に耳を傾ける。

百合子は、全く知らなかった(というよりは、話をきちんと聞いていなかった)のだが、この時期学生は期末テストのシーズンらしい。

「お前なら簡単に解けるだろ?今回の期末テストは、上条さんの進級がかかってるんです…」

上条は、遠くを見つめながら、そう語る、、
そこに、青髪ピアスが割り込む。

「僕も上やんほどじゃないけど、百合子ちゃんに教えて欲しいなあ」

心なしか息が荒く、女教師最高やん!やら、きつく叱られたいわあ!などと騒いでいる気がするが無視を決めこみ、再度上条へ目を向ける。




「お願いだ鈴科!この通り!」

上条は、手のひらをパンっとあわせ、再度頭を下げる
このテストの点数が悪ければ、下手すると進級できないかもしれない。正直、かなり必死なのだ。

「…チッ。その代わりスパルタだかンな?」

基本的に押しに弱い百合子は、顔を逸らし、舌打ちしつつもその話を承諾した。

「うひょおおお!! アルビノ美少女がスパルタ指導だなんて、興奮してきたでぇ!」

「………」

百合子は、コイツは一体なんなんだ、と言いたげな目線を青髪ピアスへと向ける。

(人が悩ンでるっつゥのに、呑気にハシャぎやがって)

心の中で、そう愚痴った――







――








「鈴科さん教えるの凄く上手。わかりやすいわ」

「くっ。これが。ヒロインとの。スペックの差…!」

「ヒロインは関係ないと思うけどにゃー?」

百合子の机を中心に、机を寄せ合い、それぞれノートを開く。
後から教室に入ってきた吹寄、姫神、土御門も加わり、勉強会が開始した。

百合子は、何故か青髪ピアスに渡された赤渕メガネを律儀にも装着し、分かりやすく内容を噛み砕きながらそれぞれに教えていく。





「だああ! もう! わかりませんのことよー!」

上条が頭を抱える。
勉強が全くできない、補修常連犯な上条にとっては、いくら説明が分かりやすくても出来ないものは出来ないのだ。
幼稚園児にいきなり数学を教えたところで半分も理解出来ないのと同じだ。

「上やんは今回も赤点かにゃー?」

「僕は小萌先生の補習だけは何が何でも受けるでー?」

それに対し、土御門はシャーペンをくるくる回しながら余裕の表情を浮かべる。

青髪ピアスは、一人だけ全く目的が違うようで、二人だけで補修、最高やん!と、ガッツポーズを取っている。

「オイ、そこの三馬鹿。喋ってねェで頭と手を動かせ」

百合子はそういうと、赤渕メガネを、くい、っと指で押し上げた。

……、一人鼻血を吹き出していたが、見なかった事にした。




――








――放課後も毎日勉強会を開き、いよいよテスト本番の日がやってきた。


回答用紙を前に、上条は息を飲む。


「はーい、皆さん! はじめ、なのですよー!」

小萌先生の甲高い声が、教室に響く。





カッ、と目を見開き、裏返された答案用紙をめくる。



上条は、問題に一通り目を通し驚愕した。

(こ、この問題…! 全部鈴科の予想テストで出てたやつじゃねえか…!)

先日、百合子は今までのパターンから全教科それぞれの予想テストを作り、平均点を超えるまで何度も問題を解かせた。

ようやく上条が全教科平均点を出せるようになったときには、とっくに日が暮れ最終下校時刻ギリギリだった。

その事を思い出し、もう一度心の中で百合子に感謝しながらも、回答用紙にシャーペンを走らせる。

いつもと違いスラスラと解けることに上条は感動し、確かな手応えを感じた。


――その頃、他のメンバーは、とっくに回答用紙をすべて埋め終えていた。





・・・



「終わったー!!!」

上条は、ぐーっと背伸びをする。

最後の科目が終わり、ようやく肩の力が抜ける。

「お疲れさん。そんで、どうやった? 僕は百合子ちゃんのおかげでバッチリやで」

「流石にあれだけやって赤点だったら笑えないぜよ? 上やん」

「ふっふっふ。聞いて驚け!全問埋めれたぜ!」

青髪ピアスと土御門の問いに対し、上条は腰に手を当て胸を張って答える。





「本当、ありがとうな鈴科!助かった」

その後、体制を崩し、上条は百合子の方を向き無駄にキメ顔を作る

「…、礼なら赤点回避してから言え」

百合子は、ふい。と顔をそらす。
真っ直ぐとみられる事が恥ずかしいのか、真っ白い肌が少しだけ赤く染まった。

それをみた青髪ピアスは、一瞬だけムッとした表情を浮かべた。





「ねえ」

何と無く気まずい空気をぶち壊すように、百合子の後ろから声がかかる。
その声に反応し、後ろを振り向くと、吹寄と姫神が立っていた。

「上条が赤点回避できたら皆で打ち上げしない?さっき秋沙と話してたの」

「俺は賛成だにゃー。カラオケは外せないぜい!」

「おお、いいな。って、上条さんの責任重くないでせうか?」

土御門と上条は行く気満々らしく、遊びに行くスポットを次々と上げて行く。

断る機会を無くした百合子は、助けを求めるように青髪ピアスへと視線を向けた。



「僕も賛成や。ただし、百合子ちゃんも行くって条件をつけさせてもらうで?」

そんな視線を知ってか知らずか、青髪ピアスは、百合子が行く事を条件付けた。

全員の視線が百合子に集まる。

百合子は、う、っとたじろぐ。

「一緒に行こ?百合子ちゃん」

「…、クソ。参加すればいいンだろ…」

青髪ピアスの一押しで、百合子は折れた。

(なンで断れないンだよ…。俺)

最近コイツに振り回されてばっかりな気がする。と、百合子は最近の出来事を思い出し、首を傾げる。




「じゃあ決定ね。後は貴様にかかってるから覚悟しなさい。上条当麻」

吹寄は、にっこりと貼り付けたような笑みを浮かべながら、上条へと多大なプレッシャーを加えた。

「…、不幸だ」

そのプレッシャーに耐えきれず、上条は小さく呟いた。





今日の投下はここまで。
次はまた来週に



さすが頼られると断れない
ことに定評のある第1位

乙~♪

百合子まじヒロイン

青ピ…だと…!?

一方通行もとい鈴科百合子と聞いて

なんだよなんだよなんですかぁぁぁァァァ
※ぶじゅっ ァァァ!? ってかんじでするのか

これは素敵な百合子スレ……!
続きを楽しみにしてます

20000号と百合子は俺もすきだ
青ピは二次創作ss内ではイケメンすぐる
原作でもかくせい

↑すまん 間違い途中カキコ

20000号と百合子は俺もすきだ
青ピは二次創作ss内ではイケメンすぐる
原作でもかくせいしてほしい


こんばんは。>>1です。
今週少しばたばたとしていて投下分が完成してないので来週、再来週に投下します。
もし、毎週見てくださっている方がいましたら、申し訳ありません。

舞ってます

待つよー

まってまーす。

まだ!?


お久しぶりです。

>>116
ここの百合子もかなり押しに弱いです。
>>124
青ピはやるときはやるキャラだと思ってます
>>118
>>119
>>120
>>121
>>122
>>117
>>126
>>127
>>128
まとめてしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます!励みになります

>>129
遅くなってしまい申し訳ありません、お待たせしました。


短いですが、投下します






「やってまいりましたセブンスミスト!実況は、ワタクシ上条当麻と、姫神秋沙がお送りします!」

「上条くんと。はじめての共同作業。頑張る」







「いや、なにしてンだよ。オマエら」

誰に説明しているのかわからないが、両手を広げながらリポートしている上条と姫神に、百合子は顔をしかめながらツッコミをいれた。

「ふっふっふ…。補修を無事回避した上条さんに怖いものなどありません!」

「それは鈴科さんのおかげでしょう。上条」

上条は、見るからにドヤ顔を作る。
それに対して、吹寄はため息をつきながら補足した。







――遡ること、数日前。

テスト返却日、上条は百合子の勉強会のおかげで何とか赤点を回避し(それでも平均よりは低いのだが)、嬉しさのあまり涙目になりながら歓喜した。

「上条ちゃんは、やればできる子だって先生わかってました!」

ついでに小萌先生も、可愛らしいハンカチで目元を覆っていた。

クラス全体が、補修常習犯の上条が、赤点を回避したという謎の感動に包まれているのを、百合子は自分の席から見つめていた。





――そして、青髪ピアスはというと、宣言通りに小萌先生の担当科目のみ赤点を取り、クラスで一人補修が決定した


(……ン?なンだ、このもやっとした気持ち)

補修が決まり、歓喜している青髪ピアスの姿をみて、百合子はモヤモヤとしたものを感じた。







――そして、話は現在に戻る。






「それにしても、遅いわね。あいつ」

「そろそろ来ると思うぜい?」

百合子らは今、セブンスミスト入口の広間で、青髪ピアスの補修が終わるのを待っていた。



「おーーい! 待たせてごめんな~」

5分後、青髪ピアスが姿を表し、こちら側へと駆け寄ってきた。


「随分時間かかったにゃー?」

「いやあ、小萌先生と二人きりの補修に興奮してたんやけどな? 気付いたときには結構な時間過ぎててなあ。でも、とても充実した一日やったでえ」

「……、お前は本当変わんねえな」

とても満足そうな顔で遅れた原因を話す青髪ピアスを、上条はジト目で見つめる



百合子はというと、テスト返却日と同じく、心にもやもやとしたものを感じていた。

(…、ったく。なンだってンだ)

百合子は、そのもやもやを誤魔化すために、大きくため息をはいた。






ここまで。今回はかなり長くなるので、一度区切りました。次の投下は早くて2、3日、遅くても来週までには投下します。

乙ー

ここの青ピは一応ただの学生?
能力とか決まっているのか?

乙。
まってるぜぃ



こんにちは。思ったよりも量が多くなってしまい時間がかかってしまいました。

>>140
ここの青髪ピアスは、話の都合上レベルは0です

では、続きを投下します。






「それじゃ、全員揃ったことだし。そろそろ、ここにとどまってないで動きましょう」

「鈴科さんは。見たいところある?」


吹寄の一言に反応し、姫神は首だけ動かし、百合子に質問を投げかけた。

百合子は、少し考え――

「ンー。冬物の服を何枚か」

まだ冬物の衣服を買っていないことを、百合子は思い出し、提案する

「それなら、2階のほうにいい店があるぜい?男女両方置いてるとこなんだにゃー」

土御門が、壁にかけられた店内の地図を指差しながら答えた。





土御門がオススメするという店というのは、男女両方の衣服を取り合っていて、パンクから落ち着いたものまで様々な種類の洋服を取り扱っているようで、奥行きがある広い店だ。

「なあなあ、百合子ちゃん」

そして、到着したと同時に青髪ピアスが百合子の肩を叩きこっそりと話しかける。


「これ、百合子ちゃんに似合うと思うんやけど」

青髪ピアスが手に持っていたのは、女王様セットと大きく書かれたコスプレグッズだった。

「鞭も付いているみたいやし、百合子ちゃんに絶対似合うと思…ぶべらっ!?」

カチリ、と首元のチョーカーのスイッチを切り替える。
そして、そのまま渾身の力で青髪ピアスの鳩尾を殴った。

「……、お、ふう。中々きいたでぇ……」

殴られたにも関わらず、幸せそうな顔をしながらサムズアップをする青髪ピアスに、百合子の顔が大きく引き攣った。


能力名を言わないっていうことは結構大事?
もしかしてベクトル操作レベル0とかじゃないよな……

「で、そこのお二人さんはいつまでいちゃついてるつもりかにゃー?」

「コレがイチャイチャしてるよォに見えンならオマエ、病院行った方がいいと思う」

ニヤニヤと胡散臭い笑みを浮かべる土御門に、百合子は眉間にしわを寄せながら答える。

「僕としては、百合子ちゃんみたいな美少女とそう見えるのは嬉しいでー?」

「俺は最悪の気分だ死ね」

青髪ピアスはさりげなく百合子の肩を抱く。

百合子の眉間に寄せられたしわが、さらに深くなり、吐き捨てるように答えた。


(素直じゃないにゃー。一方通行)

なんだかんだ言いながら、肩から手を払いのけない百合子を眺める

(それに、)

「……、まさか青ピがここまで独占欲強いとはにゃー」

土御門は、それは楽しそうに、ぼそりと呟いた――









「それじゃー、定番のファッションショー開催といこうぜい! ちなみに、お店側には許可とってあるんで安心していいにゃー」

「うちにある物は好きに使っていいわよ?」

店員らしき女性が、緩いウェーブがかかった髪を揺らしながら綺麗に微笑む。

「………、オイ。何やってンだ第四位」

彼女を知らない人物からすると、見惚れる程綺麗な微笑みを浮かべる第四位――麦野沈利に、百合子は警戒心を強くする。






「おいおい、別に争おうってわけじゃないわよ。ここは私達の店。ほら」

麦野が指差した看板には、『Item』と書かれていた。

「どっかの誰かさんが私達の仕事潰すから、上層部をちょーっと説得して開業したのよ」


ま、その誰かさんには感謝してるよ。と、軽い口調で付け足した。


「それにしても第一位が女だったとはねぇ。っつーか、いつまで肩抱いて仲良しこよししてるんだにゃーん?」

麦野の言葉にハッとして、百合子は青髪ピアスの手を叩き落とした







――


「不幸だ……」
『Item』から出たあと、その豊富な品揃えから目当てのものを見つけ出し上機嫌な周りと対象的に、上条はうなだれたままぼそりと呟く。

土御門が突然言い出したファッションショーとやらで、上条はお得意のラッキースケベを(一般客を含めて)計4回。

そのたびに吹寄の鉄拳を食らい、心身共にボロボロの状態だった。

「貴様の自業自得だ」

「……、返す言葉もございません」

当然、女子からの視線は射るように鋭利で冷たい。

「そォいや、俺ンとこには来なかったな。オマエ」

ふ、と百合子が疑問を口にする。

「ああ、鈴科は青ピと馬鹿騒ぎしてる声でわかったしな。上条さんはわざわざ地雷に近付きません!」

何故か胸をはって答える上条に百合子は、

(そォいや、あいつがやたらコスプレさせよォと煩かったな)

と、先程までの出来事を、ぼんやりと思い出していた――









その後、地下街に移動した百合子らはゲームセンターへと来ていた。

「まあ、遊びにくるといえばプリクラは妥当かもしれないわ……でも」

「…、なンでコスプレプリクラなンだよ」

土御門と青髪ピアスに、あれやこれやと言いくるめられた百合子と吹寄は頭を抱えた。

「私。カナミン」

「って、秋沙。着るの!? 」

そんな二人をよそに、姫神はカナミンのコスプレ衣装を手にし素早く着替えていく。

「ま、まあ。興味がなかったわけじゃないのよね……」

それにつられたのか、吹寄はゴクリと唾を飲み込み、ナース服に手をかけた。

「えェ………」

百合子は一人、呆然と突っ立っていた。





「……。お待たせ」

姫神は、カナミンの衣装を纏い、何処からか取り出した警棒片手に登場した。

「それって必要なの…?」

続いて登場した吹寄は、ナース服を纏っている。少し胸元がキツイようでボタンを2つほど外していた。

「ほう、これはなかなかですぜい…」
「…、上条さんは何処を見ていいんでしょうか」

続いて男性陣。
土御門は、白衣とビーカーなどの小物を持っマッドサイエンティスト。
上条は、警察官。
青髪ピアスは、吸血鬼の格好をしていた。
全員見事に世界観がバラバラだ。







「それで、百合子ちゃんは?」

青髪ピアスが、先程から見当たらない百合子の姿をきょろきょろと探す。

そのとき、物陰からビクッと動く白髪が見えた。

「ん? そんなとこでどないしたん?」

青髪ピアスが、百合子の手を掴み、ぐいっと引っ張る。

能力を除けば華奢な少女である百合子が踏ん張ったところで敵うわけがなく、あっさりと引っ張り出されてしまう。






「うひょおおおお!! アルビノ美少女がゴスロリやと!? し・か・も、第一ドール! ええ趣味してるやん!」

「当たり前。私が選んだ」

百合子の姿を見た途端、発狂する青ピに、姫神はドヤ顔をしながら答える。

「ちょっと乳酸菌とってるう?ってバカにした笑みを浮かべながら言ってみてくれへん?」

「はァ…?誰がンなこと」

「……ダメかな?百合子ちゃん」

青髪ピアスの意味不明な要求に眉を顰める。しかし、押しに弱い百合子は、結局断ることができなかった。







「にゅ…、乳酸菌とってるゥ?」

百合子は、引きつった顔でかろうじて口角をあげる。

「……、ふう。さて、プリ撮ろうか」

「オマ、今何か吐き出し…」

「ははっ、なにいってるん?百合子ちゃん」

百合子は、青髪ピアスが普段浮かべない爽やかな笑みを浮かべるのを見て、考えることをやめた。







「俺だけ半目だったり顔が途切れてたり……、不幸だ」

現像し、4等分に分けられたプリクラを見ながら、上条が肩を落とす。

「でもこれ。皆綺麗に写ってる」

姫神が、その中の1枚を指差す。

「確かに、これは上条もきちんと写ってるわね」

「思い出に。携帯の裏に貼っておく」

姫神は、その1枚を丁寧に切り取り、自分の携帯の裏に貼り付ける。

「まあ、ええんとちゃう?」

「そうだな。インデックスに何か言われそうだけど」

それぞれ、携帯や財布などにプリクラを貼り付ける。






「んじゃ、百合子ちゃんもな」

「はァ!? ちょ、」

青髪ピアスは百合子の携帯とプリクラを奪い取り、強引に貼り付ける。

「勝手になにしてンだよ」

「百合子ちゃん、しまい込みそうやん?」

てへっと可愛らしい仕草をする青髪ピアスに、百合子はげんなりとした表情を浮かべた――













その後、ぶらぶらと地下街を回った百合子らは、公園近くに止まっているクレープの移動販売者でクレープを注文していた。


「お前はクレープにまで肉要素を求めるんだにゃー」

「うめェだろ、照り焼きチキン」

百合子は、公園のベンチに座り、受け取る際手についたソースをぺろりと舐めながら答える。

「それにしても、よく太らないわね。羨ましいわ」

吹寄は、百合子の身体をまじまじと見つめる。

不健康なほど細く華奢な身体は、女性からみると、羨ましいものなのだ。

(その胸の塊のほうが羨ましいけどな)

百合子は、微かな膨らみがあるかすらわからない絶壁を見て、深いため息をついた。







――その頃、姫神は絶望の底へと突き落とされていた






「不覚!上条くんと。同じものを買ってしまった」

姫神は、チョコバナナクレープを握りしめわなわなわと震える。

「間接キスが…!くっ」

(まァ…、いつも通りだな)

本気で悔しがり、ベンチをガンガンと殴る姫神を見て百合子は心の中でつぶやく。そして、そういう『普通の高校生らしい日常』に馴染む自分に酷く違和感を感じた。

姫神が上条に好意を抱いているのは、誰が見ても明らかで、気付かないのは上条本人くらいだろう。







「おっ、姫神もチョコバナナクレープにしたのか」

姫神から常に発せられていたドス黒いオーラを無視し(というよりは気付いていない)上条は、話しかける。

その手に本来持ってあるハズのクレープはなく、濡れたハンカチと、Tシャツにべったりとこびりついたシミがあった。

「上条くん。そのシミ。どうしたの?」

「いやあ、はは…。子供とぶつかった時に落としちまって。もっとも貧乏な上条さんには買うお金もなくてですね…不幸だ」

上条は、深いため息をつく。





「なら。私のクレープ半分こ」

姫神は、チャンスとばかりに目を輝かせ、クレープを差し出す。

「いやいや、流石にそれは…。上条さん男の子ですからね?」

「いいから。私は。上条くんと半分こしたい」

姫神は、上条の反論を押しのけ隣に座らせ、再度クレープを差し出す。

「うう…、悪いな姫神」

押しに負けた上条は、姫神のクレープを渋々受け取る。

(ふふふ。上条くんとの間接キス。ゲット)

心の中で小さくガッツポーズを決めた姫神が、満足そうに微笑んだ――





「百合子ちゃーん。一口ちょーだい」

後ろから手をぐいっと引っ張られ、百合子はバッと振り返る。

その視線の先にいた青髪ピアスは、自分の口についた照り焼きソースをぺろりと舌で舐めとっていた

「オマエ…、一口がデカ過ぎンだろ」

4分の一ほど減ったクレープを見て、眉を顰める。

「美味しそうだったんでつい、堪忍なあ百合子ちゃん。変わりに僕のクレープ一口どーぞ。ツナマヨなんやけど」

青髪ピアスは満足そうににこにこと笑い、自分のクレープを差し出す。





「食う」

短く呟くと、青髪ピアスをぐっと引き寄せ、クレープに大きくかぶりつく。

「…、仕返しだ」

一口で半分平らげた百合子は、にやりと挑発的な笑みを浮かべた。





「まあでも、これで間接キスやね百合子ちゃん」

「はァ!?」

青髪ピアスのしたり顔を見て、百合子の顔が赤く染まる。

(っつゥか、なンで俺が照れなきゃいけないンだ?)

百合子は、小さな違和感に首をかしげた――


――



「どこもかしこもイチャイチャ!ここにはリア充しかいないのか!?」

土御門はいつものふざけた口調を忘れ、低い声で叫ぶ。

「いいじゃない、幸せそうで」

吹寄は、そんな2組を見ながら、小さく笑った――







――


「くく…、溜まったストレスを発散するにはカラオケしかないぜい…!」

土御門は、マイクを片手に持ち、ドス黒いオーラを醸し出しながらぶつぶつと呟く。

「アニソン縛りじゃあああああ!!!」

キーンという甲高い音が、部屋に響く。


「おっしゃ!任せときい!」

青髪ピアスが席をがたりと立ち上がりマイクを握りしめた。







「まずは、これや!」

ピピピ、と素早くリモコンを操作し、画面に文字が浮かび上がる。

【おジャ魔女カーニバル!!】




「………、ついていけねェ」

低い声で大熱唱する青髪ピアスを見つめながら、ぼそりと呟いた










カラオケから出たときにはもう日が暮れて、最終下校時刻になっていた。

「たまに、こうやって全員で遊びにいくのも悪くないわね」

ぐいーっと、伸びをしながら吹寄が呟いた。

「いつもは。上条くんが。入院してたりずっと補修だったりで放課後集まれないから」

「うっ」

姫神の言葉に、上条は目を泳がせる。

「それじゃ、次のテストの打ち上げも、また皆でやろうなあ」

青髪ピアスが、そう締めくくりその場は解散した。









そして、いつもと同じく、百合子は青髪ピアスと共に帰路につく。


「百合子ちゃん、今日は僕が隣にいても何も言わないんやね~」

青髪ピアスは、間延びした声で問いかける

「どォせ、なンかいったところでオマエは着いてくンだろ?」

「ははっ、その通りや」

ジト、とした目で見つめる百合子に、青髪ピアスは笑った。

「おっと、それじゃあまたな。百合子ちゃん」

いつもの交差点、信号前につくと、青髪ピアスはくるりと振り返り手を振った。








「……、」

その仕草に、百合子は少しだけ寂しさを感じる。

それを感じ取ったのか、青髪ピアスは、百合子の頭をぽん、と撫でた。

「また明日、学校で会おうな?」

「いいからさっさと帰れ、馬鹿」

百合子はその手をぱしん、と払う。

「おっ、と。嫌だったん? それならごめんな、じゃ!」

青髪ピアスは急ぎ足で信号を渡り帰っていった

(なンで…、嬉しいとか思っちまったンだ?)

ちくり、とした不愉快な痛みに、百合子は服の端を、ぎゅっと掴んだ――











「ねえねえ、キミ可愛いね。俺らと遊ばない?」

「足悪いの?危ないからさあ、帰りは俺らが送ってってやるよ」

「帰れたらの話だけどな」

青髪ピアスと別れて暫く歩いていると、百合子は鉄パイプを持ったスキルアウトであろう不良3人組に声をかけられた。

ゲヒャヒャ、という不愉快な笑い声が路地裏に響く。

その中の一人が、百合子の肩へと腕を回した。

百合子は大きく舌打ちをし、眉を顰める。

「汚ェ手で触ってンじゃねェよ。格下が」

睨みつけながら低い声でそう言うと、不良は顔を歪ませ激怒した

「俺らが優しくしてやってるからって調子乗ってんじゃねえぞ!!」



一度痛い目見せてやる、だのなんだのといった怒鳴声を全て無視し、百合子は静かにチョーカーのスイッチに手をかける。




――カチリ





その瞬間、百合子は学園都市最強の『一方通行』へと切り替わる。

次々と鉄パイプで襲いかかる不良を、そこに立っているだけで何事もないかのようになぎ倒していく絶対的な力――




「お、おい…。コイツってまさか…」

「アクセ、ラレータ…銃弾さえ跳ね返すっていうあの バケモノ じゃねえか…!」

どさっと尻餅をついた不良が、真っ青な顔で呟く。




「ハッ! バケモノねェ」

百合子は、チョーカーのスイッチを通常モードへと切り替え小さく呟くと、何事もないようにマンションへと帰っていった――




――





自宅へとついた百合子は、そのまま風呂場へと直行する。

スキルアウトに触られた肩が、酷く汚く感じたのだ。

ぬるめのシャワーを浴びながら、百合子が思い出していたのは青髪ピアスのことだった。


「そォか…、おれ、は……」

百合子は、気付いてしまった。
自分の感情に――青髪ピアスへの想いに。





青髪ピアスに触れられても、嫌じゃなかった。
それどころか、暖かく嬉しく感じた。
本来の百合子なら、他人に触れられることを酷く嫌がるのハズなのに――

だからこそ困惑した。

自分が、誰かを好きになっていいのかと。



――そんな権利が、あっていいのかと。







「………、クソッタレ」

――百合子は、忌々しく、そして全てを吐き捨てるように呟いた。


その呟きは、シャワーの音に掻き消され、流されていった――




















――薄暗い部屋の中に、ソレはいた。







その部屋は、白いものが部屋中に蔓延り。時折、まるで意思を持っているかのように、どくんと波打つ。



まるで部屋全体が生きているかのような異常な雰囲気を醸し出す部屋の中心部にある。

幾重にも張り巡らされた糸で出来た巨大な繭の中には、高校生くらいの少年が静かに眠っていた。

少年の睫毛が、ふるりと動く――


その少年が目を覚ますまでのタイムリミットは、あと僅かだろう













――どくん、と白い物体が、大きく波打った











ここまで。『Item』については完璧にオリジナル設定です。
…、ハワイと新入生は青髪ピアスの出番をいれれないのでなかったことに
次の投下は、長くなりそうなので未定。

>>145
単純に、青髪ピアスがレベル0のほうが都合がいいというだけだったり。

乙でした

おつやねん
思ってた以上の投下だった
うれしい

乙です



安定の豆腐メンタルですな

とりま青ピさんは爆発お願いします

大量投下乙です

大量投下ありがとうございます!ありがとうございます!

お久しぶりです。>>1です。
先週中には投下しようと思ってたのですが、風邪を拗らせてしまいまだ投下分が半分しか出来上がってない状態なので、来週あたりに投下して行きたいと思います。
動くむぎのんが美人過ぎて辛い

風邪直せよー

こんばんは、>>1です。
中々区切りがつかないので、とりあえず少しだけ投下します。

>>195 ありがとうございます。完治しました


投下






不愉快なノイズが鳴り響く。
電波が合わないブラウン管テレビのように鳴り響くノイズと視界いっぱいの砂嵐。

(またこの夢、か)

自分の足元さえ見えないほどの砂嵐に包まれている百合子は、冷静にそう判断した。

これ以上は見たくない。そう願っても、百合子は次にくるその光景が分かっていた…



ざざ、ざざ――

砂嵐に浮かぶ、ゆらりと揺れる人影。

ガンガンと頭を叩きつける頭痛を無視して、恐る恐る足を踏み出す。


踏み出してしまえば、この不愉快なノイズが消えると分かっているのだ。


ざざ、ざ――







――踏み出した先に見えた光景は、まだ。鈴科百合子という少女が、怪物に成り果てる前の優しい光景だった。






――ざざ、





――




爽やかに晴れ渡る青空の下、百合子はぼんやりと空を眺めていた。

学園都市に預けられてから早一年。

早いものだと、幼いながらに感じていた。


(じっけンは、いやだけど。でも、ここは、まえみたいな、じごくじゃない)

ぼんやりと学園都市に"捨てられる"前の日常を思い出し、百合子は小さく身震いした――







百合子は物心つく前から、一人の"女"と安いボロアパートの二階で暮らしていた。

築100年というその木造アパートは、歩くだけで床が軋み、ベランダの手すりは錆びつき、機能を果たせないような、そんなアパートだ。


もちろん、防音機能なんていうものは存在せず、何時でも、ヒステリックな女の叫び声と、子どもの鳴き声が響き渡っていた。

『あんたなんて、いなくなってしまえばいいのよ!』

『あんたを引き取れば、あの人を繋ぎとめられると思っていたのに!』


そう言って、何度も手を振りかざすその女は、百合子の父親の後妻だった。







百合子が、物心つく前に亡くなってしまった妻の変わりにと、男が見繕った、愛などない母親役。

それでも、最初のうちは百合子を実の子供のように可愛がっていた。
――前妻のかわりになれば、愛されると思っていたから

そして、それを薄々感じ取っていた百合子は、我儘も言わず手の掛からない子どもだった。

その後、百合子の父親はサインされた離婚届と、一枚の紙切れを残し失踪してしまった。

『誰よりも愛する女性ができた。身勝手で済まない。
百合子を、よろしく頼む』

簡潔に書かれたそれは、女を酷く傷付け歪ませた――


そして、男に唯一愛されることがなかった女がその憎悪を向けたのは、まだ年端もいかない百合子だった――






『あんたがいるからいけないんだ!』

そう言って叩かれる。 痛い

『あんたが私の人生を狂わせたんだ』

また叩かれた。 痛い

『あんたなんて、いなくなってしまえばいいのよ!』

(痛い、イタイ……)


叩かれた頬が痛い。蹴られた背中が熱い。息が、苦しい。

そして何よりも、その言葉の数々が、百合子の心を削り取っていく。






叩かれ、蹴られ、ドンドンと追い詰められていく百合子は、もう機能しない錆びた手すりまで追い詰められていく。


そして、女の手が振りかざされる――

(あァ…、ぜンぶ"跳ね返す"ことができたら、こンな痛み、知らなくてすンだのかな)

百合子は次の痛みを覚悟して目をつぶる。

頬を叩かれた反動で後方へ吹き飛ばされる。
錆び付いた手すりはなんの役にもたたなくて――


――重量に従い落ちていくその瞬間に見たものは、女の青ざめた顔だった。



「ン……っ」

目が覚めた百合子は、あたりを見渡す。
真っ白い部屋を仕切るいくつものカーテンに、白いパイプベッド、同じく白いシーツに腕から伸びる複数の管。

(びょう、いンだ)

百合子は、一通りあたりを見渡し、そう結論付けた。

(たしか、べらンだから落ちて、それから……)

次に記憶が蘇ってくる。
アパートの二階から落ちたというのに、体に予想してた激痛はなく、気だるさだけが全身を包み込んでいた。


「やあ、目が覚めたかね」

突然かけられた声に、百合子はびくりと肩を震わせた。
声の方向へと首を動かすと、ベッドごとに仕切っていたカーテンを少しだけ開け、白衣をきた医者が顔をのぞかせていた。



「……カエル、さン?」

カエルによく似た顔をした医者は、百合子の発言に軽く苦笑いをこぼした。






ここまで。
>>204
――重量に従い落ちていくその瞬間に見たものは、女の青ざめた顔だった。

――重力に従い落ちていくその瞬間に見たものは、女の青ざめた顔だった。

でした、申し訳ありません。
次回はロリショタのお話です。



青ピはガキの頃からまさか変態…

いやなんでもない

キターーーーーー

乙でした

乙です
夏風邪にも気を付けるべし

乙です
風邪治ってよかった

お久しぶりです、>>1です。
相変わらずの遅筆で未だに投下分が書ききれてませんが今月中には投下しにきます。 あと2、3回分の投下が終われば書き溜めしていた分に追いつくので暫しお待ちください!

ほほーい

全裸待機!!

キター

今日くるかなー


こんばんは、>>1です。
お待たせして申し訳ありません、今日の深夜に投下して行きます。







「ふむ。特に問題はなさそうだから、この分だと10日後には退院出来そうだ」

カエル顔をした医者――冥土返しは、傷の状態を確認しながら、見た目にそぐわずにテキパキと包帯を取り替えていった。

百合子は、されるがままの状態でぼんやりと思考を巡らせていた。

周りの状態からして病院だということは理解出来たが、それが、何処にあって何という病院なのかまでは検討がつかないのだ。



何よりも、あの女ははどこにいるのか、そもそも何故適切な治療を受けているのか――






女は、百合子がどれほどの高熱を出そうとも、病院に連れて行くのを酷く嫌がった。

理由は簡単、虐待が露見してしまうからだ――

だからこそ、百合子は今の状態が不思議でならなかった。


「あの…、ここは何処、なの?」

「……、『学園都市』の総合病院だね」

短い沈黙の後、そう答える冥土返しは、どこか気まずそうだった。









『学園都市』





それは、世間に疎い百合子ですら聞いたことのある名前だった。

外との技術が30年ほど差があり、超能力者を育成しているという教育機関だ。
最近では『置き去り』と言って、子供を学園都市に預けたまま親が蒸発してしまう現象が問題視されていることを百合子は知っていた。

そして、百合子は自分が捨てられたことを"正しく"理解した上で安堵した。

ようやく、あの地獄から解放されたのだと。












もう、地獄を体験しなくてもいいのだと――…
















「……、今日の開発は昼まで、かァ」

百合子はため息混じりに呟いて、厳重にロックされたドアをくぐっていった――




退院後すぐに『置き去り』の施設へと預けられ、他の学生同様に能力開発を受けた百合子は今、とある施設の前へと来ていた。

能力検査の結果、百合子レベルは【レベル5】

6段階評価の最高位にあたる。
そのため、百合子はほぼ毎日研究所へと通い精密な検査と開発を受けているのだ。





百合子の能力は、『ベクトルを操る力』
その特殊さと能力の応用性からレベル5 第二位の椅子に収まることになった。

更に担当の研究者いわく、これからの成長次第では第一位の座も夢ではないとのことだ。




そんな研究所の期待を背負い、普通なら憂鬱であろう状態でも百合子はうきうきとしていた。

(今日も終わったら会えるかなァ?)


施設と研究所を往復している百合子にも、一つ楽しみがあった。




――それは、研究所近くの公園でとある男の子に会うことだった。






ここで一区切りします。
次の投下は今日中には。


>>207
素質はあったんじゃないでしょうか。
>>208 >>209 >>210
ありがとうございます!
>>212 >>213 >>214 >>215
大変お待たせしました。今回は前回との更新との差が丸一ヶ月も空いてしまったので出来るだけ速度あげていこうおもっています。



これは重いわ…

乙ー
百合にゃんの過去が悲惨過ぎて辛い

乙でした

もう半月来てないな…

>>1です。またまた遅れてますが顔出しを。
私情で9月12日以降まで更新ができないかも知れません。
そして今の今まで投下してなかったことへの言い訳は、前回投下してからの期間中、次のシーンをうまく文章に出来ずに筆を置いていました。申し訳ありません。絶対にスレ落としたりはしませんので、どうか生暖かく見守っていただけると幸いです。

待つわー

わたし

いつまでも


まーつーわー


ということで、お久しぶりです、>>1です。大変お待たせしました、色々と落ち着いてきたのと、新巻読んで意欲出てきたので数日中に本編を投下しにきます。と、宣伝を。

はあく

支部の百合子絵はどれもかわいくって安らぐ

いぇい

期待

青ピかわいい

待ってるよー



大変お待たせ致しました。>>1です。
投下の目処がたったので、今日の夜か明日の朝あたりにまた来ます。

>>226 >>227

どうしてもごく普通の一般家庭に育ったビジョンが浮かばなくて…

>>228 >>229 >>230 >>232 >>233 >>234
>>236 >>238 >>239 >>241
まとめて申し訳ありません、ありがとうございます!そしてお待たせしました!

>>237
素敵なイラストばかりですよね。

>>240
これからイケメンに成長します。

少しだけ投下。









「百合子ちゃんこっちこっちー!」




研究所を後にし、公園へ向かうと、百合子のお目当ての少年はすぐに見つけられた。

少年に会えた嬉しさと、公園中に響く大きな叫び声に少しの気恥ずかしさを感じ、百合子の足は自然に駆け足になる。

「ごめン、待たせちゃったかなァ?」

少年の元まで駆け寄ると、百合子は少し申し訳なさそうに問いかけた。

「ううん、ちょっと今来たところやで」

そんな百合子に、その少年はまるで太陽のように、にかっと笑った。


よし全裸待機やで

青ピ乙

地味にシブに少し青ピ×百合子があって驚いた





────出会ったのは、本当に偶然だった。






その日の検診が終わった百合子は、まったりと施設へと向かっていた


(喉、乾いたァ)



検診が長引いたせいで、今日は飲み物を飲んでいなかったことを思い出し、最寄りの公園へと足を運ぶ。



その公園は、噴水や遊具などが充実していて、そこそこの広さを誇っているようで散歩コースにもなっていて、自販機にたどり着くまでに多くの人とすれ違った。








目当ての自販機を見つけ、百合子は150円を入れカフェオレのボタンを押す。

自販機の下からカフェオレを取り、そばにあるベンチに腰掛け、なんとなくその上で体育座りをしながら、プルタブへと手をかけた。

元々の力はあまりない方だが、彼女の能力によって、指先で少し弾くだけでプルタブは簡単に空いた。


「あれ、見ない顔」

突然後ろから、見知らぬ声に話しかけられ、百合子はびくりと肩を震わせた。

その衝撃で落としそうになったカフェオレを慌てて持ち直してから、勢い良く後ろを向く。




「だ、誰…?」

そこに立っていたのは7、8歳くらいの短パンを履いた少年だった。

「ああ、そんな捨てネコみたいに警戒しなくても大丈夫や。僕、── ─って言うんやけど。なんだがべっぴんさんがおったからつい話しかけちゃっただけやで?」


そう言うと、その少年は握手を求めるように片手を差し出した。





「なんだがナンパみたいやけど、君の名前も、教えてくれへん?」

「…ゆりこ。すずしな、ゆりこ」

その少年の勢いに押されながら、百合子は小さな声で呟く。




「へぇ。君、百合子ちゃん言うのかあ。いい名前やね、僕が一番好きな花の名前」

そう言って、少年は百合子に向けて人懐こい笑みを浮かべた。

「うン…、ありがと」

あまり人に褒められたり、同い年の子どもと話すことがない百合子は、なんだか照れ臭くなり、頬をほのかに染めながら、ふわりと微笑んだ──




この前の本日中に投下はなんだったのか。大変お待たせしました。

>>246
実は、pixivのとある方の作品で青百合にハマりました。

それと、突然のお願いなのですが、青ピの本名がなかなかしっくり来るものが思いつかなかったのですが、何か案があったら出して頂けると嬉しいです。

次の投下の目処はたっていませんが、スレを落とすことはないので、そこは安心してもらえると嬉しいです。早くかけるようになりたい…。



長い全裸待機だったぜい

しっかしガキの頃から
ナンパ師かぃ青ピめ

乙とある作品が気になるからタイトルだけでも……

>>255
青百合で検索すればでてくるんじゃないすかね

蒼神 陽亜好

お久しぶりです、>>1です。
次の投下予定ですが、少しバタバタとしているので8日以降になると思います。
もう少しお待ち下さい。

そして2週間が経過した

まだ落ちてなかったのかこれ

まだ1ヶ月ちょいだろ
最近の奴らは早漏過ぎんよ~

そして年が明けた

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