キョン「ここがチェルノブイリか……」(705)

ハルヒ×STALKERもの

以前VIPに立てたものですが、さるさん+スレの落ちが予想以上に速かったためVIPでは無理と判断
こちらに改めて投下させていただきます




俺は何かに向かって手を伸ばしていた。
埃や塵が舞っていて、何に手を伸ばしているのかがはっきりわからない。
頭が痛い……脳に直接何かが入ってくるような感じだ。記憶がかき回される。……いや、これも記憶の一部なのか。
目の前の景色が変わる。
銃を構えた男が見える。こちらを向いたと思えば、ビデオの逆再生がかかったように向こうを向いてしまった。
意識が持たないぞこんちくしょうめ、と思った時、目の前が急にはっきりと見えるようになった。



俺はひたすら手を伸ばしていた。瓦礫の中、光を輝く石柱―――『モノリス』に。








事の始まりはこうだった。

何でもない日の放課後、掃除当番を終えて部室へたどり着くと、珍しくハルヒがヘッドホンをしてパソコンに向かっていた。
どうやらゲームをしているらしい。古泉がそのゲームのパッケージを持ってきた。
箱には「S.T.A.L.K.E.R.」と書かれていた。

キョン「これ、なんて読むんだ?」

古泉「『ストーカー』ですよ」

キョン「ストーカー?好きな相手を一方的に付け回すっていう……」

古泉「大抵題名だけを聞くとそう思われる方がほとんどでしょうね。しかし、実際は本格的なFPSですよ」

FPS……ってシューティングゲームの一種だったな。
古泉が箱から説明書を出して俺に見せる。
うわっ!全部英語かよ。俺にはできないな。

古泉「ご安心ください。日本語表示にすることもできますから」

キョン「そうなのか。しかし、なぜハルヒはこんなのをやり始めたんだ?」

古泉「暇つぶしにでも、と僕が持ってきました。意外に受けが良かったようで安心しました」


んっふ、といつもの口癖を交えて続ける。

古泉「なかなか楽しいですよ?いくつか持ってきましたので、ひとついかがです?」

キョン「生憎だが、俺の部屋にはパソコンがないんでな」

それ以前に、俺はFPSというジャンルのゲームをしたことがない。
というか、なぜ同じものを持ってきているんだ。

みくる「すみませぇーん。遅れちゃいました~」

ノックと共に部室の戸が開き朝比奈さんが入ってきた。
そして入れ替わるように俺たち男子は外へ出る。

キョン「しかし、パッケージだけだと内容の想像がつかんな」

『S.T.A.L.K.E.R.』と書かれたそれには、荒廃したであろう地をバックに、動物の顔とも取れるような取れないようなモノと兵士が一人いる。
あれか?バイオハザード的なゲームか?


古泉「チェルノブイリ原発事故をご存知でしょうか?」

古泉がこのゲームのあらすじを話し始めた。

ソ連にあったチェルノブイリ原子力発電所が爆発を起こして数十年後、再びそこで謎の爆発が起き『ZONE』と呼ばれる地域ができた。
放射能で汚染されたその地域は封鎖されたが、『ストーカー』と呼ばれる人々は、様々な理由でZONEで暮らしていた。
主人公もそのストーカーの一人で、事故にあったところを助けられた後、失くした記憶を取り戻すため旅に出る――
ずいぶん端折ったが、そういうストーリーらしい。

そんな感じに扉の前で暇をつぶしていると

みくる「きやあああ!」

朝比奈さんの叫び声が聞こえてきた。
これは黙っちゃいられない!

キョン「朝比奈さん!何が……」

扉を開けるとメイド服に着替え終わった朝比奈さんが飛び込んできたっ。うれしいことこの上ないな。
胸で泣きじゃくる朝比奈さんを受けとめながらパソコンの方へ眼を向けると、ハルヒが愚痴を垂れてマウスをガチガチ動かしていた。
もう少し優しく扱え。壊れるぞ。


キョン「それより朝比奈さん。いったい何があったんです?」

みくる「ふぇえええすみませぇん……涼宮さんのやっているゲームが怖くてつい」

あああ大丈夫ですよ朝比奈さん。俺でよければいくらでも抱き着いていいです。
むしろ抱き着いてください。

ハルヒ「びっくりしたわね、この怪物!食らいなさい!」

画面をのぞいてみると、薄暗い下水道のようなところで銃をぶっ放していた。
そこには何とも言えない形をした死体が転がっている。エイリアンか?
さっきからマウスをガチャガチャしてたのはこいつを倒すためなのか。

キョン「ハルヒ、そんなに乱暴にすると壊れるぞ」

長門「……」



――――


パタン

長門が本を閉じる。部活終了の時間だ。
もうこんな時間か。

古泉「涼宮さん。お楽しみの最中申し訳ありませんが、終了の時間になりましたよ」

ハルヒ「え?……うーん、残念ね。古泉君、明日も借りていいかしら?」

古泉「ええ、どうぞ」

しかし今日も疲れたな。
家へ帰り、俺は速攻で寝た。


―――


古泉「お目覚めですか?」


その声と共に目を覚ますと、一面灰色の学校に俺はいた。お馴染みの閉鎖空間だ。
ただいつもと違い、古泉がすでに俺の横にいた。
そして顔が近い!なんでいつもお前はそう顔を近づけるんだ。


キョン「で、これは一体どういうことだ」

古泉「正直僕にもわかりかねます。この閉鎖空間には神人が存在しない」

長門「正確に言うとここは閉鎖空間ではない」

長門、いたのか。

長門「ここは涼宮ハルヒの夢の一部と閉鎖空間が重なったもの。特異な存在である私とあなたと古泉一樹、その他を除いてすべて涼宮ハルヒの想像」

古泉「つまり、閉鎖空間とは違い世界を塗り替えるようなことは起こらない、と?」

超能力者代表、古泉が聞いた。
後で俺にも説明してくれよな。



長門「この空間は通常の閉鎖空間と同様に拡大を続けている」

古泉「神人を倒せば消滅……というわけではないようですね。それを防ぐには?」

長門「涼宮ハルヒがこの世界において望んでいることを私たちが遂行する。いわばこの世界はゲームの世界」

古泉「ふむ。わかりました」

おいおい、俺を置いていくな。
俺はこれっぽちも理解できていない。

古泉「では、どのように閉じればよいのでしょう?」

長門「おそらく昨日遊んだゲームの影響を非常に強く受けている。」

長門「涼宮ハルヒはあのゲームの続きが気になってこの空間を生み出した。つまりこのゲームをクリアすれば閉じると思われる」

困ったもんだ。あいつは遠足前の子供か?
で、誰がクリアすればいいんだ?



長門「……恐らく、あなた」

長門が細い指で俺を指す。
俺だと?この手のゲームは全くやったことないんだぞ!?



長門「この世界は涼宮ハルヒの身近な存在が元となって構成されている。そして最も特別な存在であるあなたが主人公と考えるのが妥当」

古泉曰く、鍵だという俺。
ハルヒは俺に何を望んでいるんだ……
そんな風に愚痴を垂れていると、灰色の世界が虹色に変わり始めた。
うえ、気持ち悪い。

長門「もうすぐ世界がゲームの世界へと改変される」

高校だったはずのそこは徐々に姿を変え、広い草原へと変わっていった。

長門「私たちもそれぞれが別のところへ飛ばされるであろう。あなたともいずれ会う時が来るかもしれない」

長門「でも一つだけ覚えておいて。私たちのような特異な能力を持つ人間以外はすべて涼宮ハルヒの想像」


長門「迷ってはダメ」

その言葉の意味がよくわからないまま、長門は消えてしまった。


古泉「おっと……どうやら僕の方もお呼びのようですね」

古泉の体が下から光に変わっていった。

古泉「この世界、あなたに託しますよ。では、またどこかで」

わけのわからないまま世界を託され、古泉が消えていった。

そして俺もまた、気づかぬ間に光へと変わって――


――――――――――――


ザアアアアアア……
ブロロロロロロ……

激しい雨とエンジン音のうるさい音で、俺は目を覚ました。
頭が痛い。


キョン「ここ、どこだ……?」

エンジン音が雨音とともに夜の闇へと消えていく。
ガクガクと細かい揺れが体へ伝わってくる。
どういうわけか、俺は今トラックの荷台にいるらしい。

キョン「すいませーん!降ろしてくれませんか?」

運転席に通じるであろう窓を叩いてみるが、反応がない。
居眠り運転でもしてるんじゃないんだろうな?


ガクン!

大きめの段差があったのか、車両全体が大きく揺れる。
中途半端な膝立ち態勢だった俺は、その衝撃に成す術もなく荷台の端へ転がった。

キョン「いてえ!」

危ない危ない。もう少しで落っこちるところだった。
荷台にかけられた幌の隙間から外を見ると――――

ゴオッ!

雷が光る。稲光がこちらへ一直線に向かってくる!

キョン「やべえっ!」

逃げようと足を動かす間もなく、再び俺の意識は彼方へと飛ばされた。


―――――――――――



次に目が覚めたのは、やたらと狭いところだった。
豆電球がぶらりとぶら下げられ、淡い光を放っていた。
テーブルで寝かせられていたのか、腰が痛い。
俺はあの後どうなったんだ?





「名もなきストーカーに助けられたんだよ、君は」


懐かしい、聞き覚えのある声がした。
振り返ると、中学のころと変わらない佐々木がそこにいた。

佐々木「お目覚めのようだね、キョン。君は相変わらず面倒事に巻き込まれているようだが」

ああ、俺たちの団長様のせいでな。
少しは加減というのを考えてほしいね。

佐々木「くつくつ。ところで、君は自分が置かれている状況が理解できているのかい?」

キョン「ハルヒのせいでゲームの世界に飛ばされ、宇宙人と超能力者に変な話を聞かされ、雷に撃たれてここにいる、というとこか?」

佐々木「そうじゃない。この世界で君がどういう立場にいるか、を理解しているのかということだよ」


さぁ知らないね。
大体、こんな事態に巻き込まれて状況を理解できる奴がいるのか。


キョン「というか佐々木、お前は『現実の』佐々木なのか?」

佐々木「くつくつ。それは難しい質問だね、キョン。ここはあくまでも涼宮さんの世界だ。涼宮さんが作り出した世界。僕らはその世界の一部分にすぎないのさ」

佐々木「たしかに僕は君との思い出も覚えているし、つい先ほどまで自分の部屋で寝ていたのも覚えている」

佐々木「だがこの世界での自分の役割がすでに頭の中にあるように、この記憶もまた植えつけられたものなのかもしれない。さて、君はどう思う?」


キョン「宇宙人に連れ去られた人の証言みたいなことを言うな。」


宇宙人の長門なら難なくできそうだが……それより


キョン「ところで、俺はここでどうすればいいんだ?」

佐々木「そうだね、本題に入ろうじゃないか。もたもたしていると空間が拡大し続けてしまう。この拳銃を持ってキャンプにいるWolfという人物に会ってくれ。仕事がもらえるはずだ」

佐々木が拳銃を俺に渡す。マガジン数個と一緒に。
ほー、これが拳銃か。思ったよりも重い―――おいおいおいちょっと待て!
いきなり銃を渡されても扱い方なんて俺は知らないぞ!


佐々木「キョン、そう言いながらも君はすでに銃に弾を装填しているんだ。わからないのかい?」

手を見ると、無意識に拳銃を手慣れたように扱っている俺がいた。
気付かぬ間にかゆいところを掻くように、カチャカチャと。

キョン「どういうことだ?」

佐々木「僕にこの世界での記憶があるように、君にもこの世界での記憶や勝手というのが頭にあるんじゃないのかな?」

佐々木「涼宮さんの、この世界で都合のいいようにね」


さながらご都合主義ってところか。



キョン「とにかくWolfっていう人物に会えばいいんだな」

佐々木「気を付けて行ってくれよ、キョン。この世界では、セーブやロードなんてできやしないんだ」

どうせ再現するのなら、そこも再現してほしいんだがな。

キョン「じゃ、行ってくるよ」


佐々木に差し出されていた水を一気に飲み、後ろの思い思い扉を開ける。
地下だったのだろう、階段が上に続いていた。
そして佐々木が一言。


佐々木「くつくつ。グッドハンティング、ストーカー」


その佐々木の言葉が、俺はすでにこの世界の住人なんだということを自覚させたように思えた。


キョン「うおっまぶし!」


地下から急に出たらそりゃあ目が眩むだろうよ。
とりあえずWolfって人を探さなきゃな。

「おーい、あんたか?キョンって奴は?」

キャンプというより、たまり場といった方が正しいような感じだな。
焚き火の近くに、映画でよく見る軍隊の格好をした人がいた。

Wolf「佐々木から話は聞いている。俺たちの仲間を助けるのに協力してほしい」

なんだろう。俺の直感が反応している。
そう、今までハルヒの面倒事に巻き込まれてきた俺の勘が。

キョン「はぁ……。で、俺はどうすればいいと?」

Wolf「PDAをだせ」

PDA?なんだそりゃ?
と思いつつも俺の体は勝手に反応していた。ちくしょう、ご都合主義め。


Wolf「なんだ。お前何か作業してたのか?」


機械の画面を見ると、パソコンで言うメモ帳のような画面が開いていた。
そこには『KILL THE STRELOK』と書かれていた。


――ストレロクを殺せ?物騒だなおい……
とりあえず保存作業っぽいことをして、マップを開いた。

Wolf「えーと、ここだ。マークしている場所に行って、俺の仲間と合流してほしい」

どーせゲームなんだ。拒否権がないんだろ?
わかったって。



PDAというiPhoneより少し大きめの電子機器に導かれながら、俺は目的地へと向かっていた。
ここでいうスマートフォン的存在らしい。

さて周りを見渡すに、アスファルトはひび割れ、そこらにはちらほらと廃車やよくわからない錆びた部品が落ちてたりしている。
ちゃんと片付けなさい。俺の部屋でさえ、こんなに散らかってないぞ。

なぜこんな独り言を言っているのかというと、そうしなければ気が変になりそうだからだ。
現に、左前方には顔の崩れた犬の群れがワンワン鳴いていて、もう少し手前には人がうめきながら倒れていて―――



「パマギーチェ……(助けてくれ……)」

キョン「うおおおおお!?だいじょうぶですかー!?」

「さっきメクラ犬の野郎にかじられて……救急キットを……」

俺は佐々木に銃と一緒に渡されたバックを慌ててひっくり返す。何かないのか!?
―――あった。見慣れた十字マークの医療キットっぽいのが。



キョン「ほら、これでいいか?」


キットらしいものを手渡すと、その男は慣れた手つきで傷口に張っていった。
こんなことになるなら、俺もサバイバル技術の一つぐらい学んどきゃよかったな。


ストーカー「スパシーボ(ありがとう)兄弟!お前は俺の命の恩人だよ」

キョン「いえいえ、人として当然のことをしただけですよ」

ストーカー「……兄弟、もしかして、まだルーキーか?」


ルーキー?ああ、初心者って意味か。
ええそうですとも。さっきここに放り出されたばっかだ。


ストーカー「そうか。お前がこれからどこへ行くのかわからないが、役に立つ情報を教えておいてやろう」


思えば俺はここについてほとんど知らない。
勘みたいなのはあるらしいが、正直あてにしたくないもんだ。



ストーカー「まず南、お前が歩いていた方向と真逆の方だ。ずーっと行くと軍の前哨基地がある」

あー、たしかにキャンプ出るとき右見たら兵隊っぽいのが歩いてたな。あれが軍なのか。

ストーカー「あそこには近づくな。一瞬で蜂の巣にされる」

物騒な……。
話を聞いていくうちに、いろいろわかったことがあった。


一つ、軍はZONEで生活するストーカーたちと敵対している。
二つ、放射線の影響でいろいろな化け物が住み着いていたり、『アノマリー』と呼ばれる局地的な超常現象が多数あるということ。
三つ、これが最も重要なんだが……

生き残りたければ何でもしろ、と言われた。


ZONEでは全うな仕事などほとんどない。だが金を稼ぐためには仕事をしなければならないからな、常識的に。
物を届けろ、取って来いという仕事だけでは食ってはいけない。現実だって、そうだろ?
人を殺せ、嵌めて来い、半殺しにしろ―――そんな仕事も、時には受けなければならない。
仕事がないときは最悪、他人を殺してはぎ取るゲス野郎に成り下がらなければならない。逆も然りだ。


ストーカー「ここ、Cordon(コードン)はまだ穏やかな方だが、北のGarbage(ガーベッジ)や北東のDarkValley(ダークバレー)は気を付けた方がいい」

ストーカー「特にダークバレーはやめとけ。Bandits(盗賊)が城を作っているからな」


じゃあな兄弟、とそのストーカーは去って行った。
さて、俺も目的地へと行かなきゃな。



「おーい、こっちだ」


草木の中をとぼとぼと歩いていると、数人のストーカーに呼び止められた。
どうやらこの人たちがWolfの仲間らしい。
そいつは正面に見える小屋の方を指さしながら、マシンガンもびっくりの説明を始めた。

「早速で悪いが時間がない。手短に説明する」

「あの小屋に俺たちの仲間の一人、Nimbleって奴が捕まっている。それを今から助けに行くんだ。いいな?」

よほど時間がなかったのか、こちらの返事を待たずにほかのメンバーに指示を出し始めた。
どうやら俺は、初っ端から危ない仕事に首を突っ込んでいたらしい。
佐々木め――いや、これはゲームだから仕方のないことか……。



「よし行くぞ。スリー、ツー、ワン―――ファイア!」

気付けば周りの人たちが銃を撃ち始めていた。中には果敢に突撃する奴もいた。
しかし、銃声って思ったよりうるさいんだな。かなり耳が痛くなる。


「おいルーキー!お前も来たんだったらはよ行け!」


は、はよ行けって、俺が突入する係かよ!?
ハルヒの無茶な命令とどっこいどっこいじゃないか!
あ、この世界もハルヒが作ったのか。

拳銃を構えながら、草にまぎれて進む。

……体が勝手に動く。まるで、幾度も経験してきたように。


キョン「わわっ!」

震える足を、気合と根性で押さえながら突き進む。

キョン(おお、勢いで何とかなるもんだな―――) バヒュン!

耳の横を何かが通り過ぎた。なんだ? バヒュン?




―――銃弾だよオイィ!!


キョン「やべぇ!マジこええ!こういうのはもう一人の俺の役じゃないのか!?木刀持った奴!」

自分でも訳の分からない言葉をつぶやく俺。
どうにか声と体を震わせながら正門っぽいところの壁に身を隠すことにした。


「ンーマツォバショー!」

怒号と銃声が響くって、小説とかでは何度も見たことあるけど、実際に聞くと笑ってられねえよ。
てかなんだよ松尾芭蕉マツオバショウうるせぇ!
そんなお前は日本で古今和歌集でも読んでろ!……あれは違うか。


キョン「あーもう!やけだやけ!どうにでもなれ!」

ちょうど頭の上ぐらいにあった小窓に、手と銃だけを出して適当に撃つ。当たったかどうかもわからない。
手首に撃った衝撃が走る。案外来るもんなんだな。


そして撃ち続けているうちにあることを思い出す。
そうだ、これは一応現実に近い夢なんだ。ゲームみたいに、銃の中に弾が何発残っているなんて教えてはくれない。
ましてやそれを毎回覚えられるほど俺は賢くない。
おそらくこの銃の弾が切れるだろうということだけがわかる。


キョン「片手にマガジンもって、すぐに変えられるようにしておかなきゃな」


つまるところ、弾が切れる前にどうにかしなければならないわけだ。
長門も言っていた。この世界はハルヒの夢、現実じゃない。


キョン「迷ってはダメ、か。軽く言ってくれるぜ、長門よぉ……」

周りにいた味方が門から侵入する。
相手は建物の二階から撃っているようだ。

「トラックだ!トラックを壁にして打ちまくれ!」

とにかく俺は引き金を引いた。
すべてのマガジンを撃ち尽くすまで。







そうこうしているうちに戦いが終わった。
何発撃ったのか、何人殺したのかも覚えていない。
罪悪感も感じない。奇妙な感じだ。
目の前に倒れてる死体を漁る。これも、ここで生き残るためには仕方のないことだ。

キョン「9x18mm弾……なんでこんな銃弾の種類を知ってるんだろうか」

ふと、気配を感じて後ろを振り向くと、一人のストーカーが立っていた。

「あんたが佐々木から雇われたルーキーかい?助かったよ」

そうはいわれても、俺は銃を撃ってただけですがね。

話を聞いていくと、どうやらこの人がNimbleという人だったらしい。
どうも佐々木に大事なデータが入ったフラッシュメモリーを渡そうそしていたときに、Banditsに襲われたんだと。


Nimble「これがそのフラッシュメモリーだ。佐々木に渡してやっておいてくれ」


二言三言話を交えた後に、俺は佐々木の店がある方へと歩いて行った。

「おっ、新兵が帰ってきたぜ」

「お疲れさん。一杯どうだ?」

その声に反応して振り向くと、ウォッカ瓶を数本抱えた男たちが立っていた。
ちょっと立ち寄ってみると、意外にいい人達で、パンとかソーセージとかをくれた

ついつい乗せられて数口ウォッカを飲んでみる。




吐いた


他のストーカーたちに笑われ慰められながら、仕事を終えるために佐々木の地下へ向かう。
改めて見てみると、それは地下壕のようなところになっていて、正面には重たい扉がついていた。



佐々木「くつくつ。どうやら無事に生き延びれたようだね」

扉の向こうにいるのが俺とわかるや否や、変わらない口調で佐々木が話し始めた。

キョン「おかげさまでな。で、これを持ってくれば良かったわけか?」

佐々木「ああ、その通りだ。お礼と言ってはなんだが、いくらかの報酬を出そう」

よくよく考えてみれば、俺はこの世界の金を持っていない。Ruという単位だったか?

佐々木「ほら1500Ruだ。受け取ってくれ。弾とかご飯も買わなきゃいけないだろう」


佐々木「ちなみに日本円にすると4,537円だ。1Ruは約3円らしい」

キョン「ここの物価がわからないと、高いとも安いともいえんがな」

佐々木「僕の店でもいろいろ売っている。さぁ、買っていくといい」

キョン「そうだな、どれどれ……これをもらおうか」

佐々木「ふむ、それだけじゃあ物足りないだろう。これもどうだい?」


その日、佐々木の口車に乗せられ、報酬はすべて佐々木のもとへ帰って行ってしまうことになった。




二日目の朝。
妹のとび蹴りを食らうこともなく、穏やかな朝を迎えた。
いや、穏やかとは言い難い。昨日のウォッカのせいか少し頭が痛い。

昨夜、俺は佐々木の店で寝泊まりさせてもらい、早速次の仕事にかかることにした。

キョン「で、次の仕事はなんだ?」

佐々木「ふむ、君もこの世界に慣れてきたようだね。キョン」

キョン「おまえほどじゃねえさ」


少しばかり話した後、佐々木が本題を切り出した。


佐々木「さて、本題に入ろう。まずはこのPDAをみてくれ」

佐々木がPDAをだし、地図機能を呼び出した。
そして自分の位置から北西へそこそこ行ったところに緑の印がついていた。
下にはその位置の名称だろうか。


キョン「Agroprom(アグロプロム)研究所……?」

佐々木「そう。僕が依頼した別のストーカーたちが手に入れた情報によれば、軍の研究所に『北へ辿り着いた人間』の資料があると聞いたんだ」

佐々木「ただ、当然軍の研究所ゆえに警備は厳しい。でも、情報屋としてはその情報は何としてもほしいものなんだ」

佐々木「君も聞いたことがあるだろう?北へ行った、唯一の人物の話を――」


キョン「……ちょっと待ってくれ!軍の研究所に盗みに入れと?無茶な」

キョン「それにだ、俺はここの世界をよくわかっちゃいないんだ。説明してくれないか」

佐々木「おっとそれはすまない。さて、どこから説明しようか」


佐々木「ここ、ZONEの北に位置するチェルノブイリ原発……。あそこは『未開の地』なんだ。その名の通り、誰も入ったことがない」

キョン「原発事故跡っていうと、そりゃ放射能とかも濃いだろうしな」

佐々木「いや、放射能だけなら問題はないんだ。Yantar(ヤンター)にいる科学者の方々が着ている防護服は、完璧に放射能を防げる性能らしい」

キョン「それはそれは……。だったら、何が問題なんだ?」

佐々木「そこがわからない。実は北に行ったものはだれも帰ってきていないんだ。ある人物以外はね」

キョン「ある人物?」

佐々木「Strelokという奴さ。その人物率いる一派は北に達して帰ってきた――らしいんだ」



ストレロク……?どこかで聞いたことがあるような―――そうだ、あのPDA!


キョン「佐々木!そいつについて詳しく教えてくれ!」


自分のPDAを引っ張り出し、確かに佐々木の言った人物と同一であったことを確認した。

佐々木「キ…キョン?どうしたんだい、いきなり……」

つまり、そのストレロクとやらは、俺と関係があったはずだ。だから……

キョン「俺は、そいつを追わなければならない……」


PDAに書かれた『KILL THE Strelok』。本当に殺さなきゃいけない奴なのだろうか?


佐々木「分かった話そう……と言いたいが、正直なところ僕もそれぐらいしか知らない」

佐々木「ちょくちょくここに来る人から聞く、北に辿り着いた人間というくらいしかね……」

佐々木「ただ、僕の欲しがっている軍の資料に載っているかもしれないよ?北に辿り着いた人の情報だからね」

くつくつ、と佐々木が笑う。コイツ、逃げ道を塞ぎやがった。


キョン「分かった分かった。行けばいいんだろう」

佐々木「すまないね。本当は君一人じゃなくて僕も行きたいんだが、店番があるからね……」

キョン「気にしてないさ。で、資料を取ってくればいいんだな?」

佐々木「ああそうだ。資料を取ったら、ここではなくBar(バー)のトレーダーに持って行ってくれ」

キョン「バー?飲み屋のことか?」

佐々木「ここから北、Garbageをさらに北へ抜けるとDuty(デューティ)という派閥の本拠地がある。そこで一般向けのバーがあるんだ」

佐々木「悪いが僕のところでなくて、そこへ持って言って欲しい」


キョン「わかった。じゃ、行ってくるよ」

いつものハルヒの無理難題に慣れているせいか、気分でも気づかぬ間に承諾してしまった俺。
まぁ、あれだけいろいろ巻き込まれたらなあ……




佐々木「くつくつ、無事を祈るよ。グッドハンティングストーカー、キョン……」

見送りの代名詞らしい言葉を背中に受けて、俺は地下室を出た。


さて、Nimbleという奴を助けに行った道をまた北へ流離う。
目の前に現るるは崩壊した橋げた。その下には軍の兵隊たちが居座っていた。

キョン「たしか、アイツらは友好的じゃないんだよなぁ……」

さて、となるとどうすればいいのだろうか。

佐々木『やぁ、お困りのようだねキョン』

突然ポケットから佐々木の声がっ!
よくよく見ると、それはPDAからの無線通信だった。


佐々木(PDA)「おそらくその橋には軍が駐屯していて通り抜けられないと思う。その橋の線路に沿って東に行くといい。柵が切れているところがあるはずだ」

どれどれ……おお、流石は佐々木だ!確かに柵が切れていて乗り越えられる。
軍の人に見つからないようコッソリと渡り終えた俺に、佐々木司令官殿からまた指示が下る。

佐々木(PDA)「その先にFoxという、調査に向かったストーカーの救難信号をキャッチした。助けに行ってやってくれ」


救難信号、SOSか。
まさか、いつも聞いている身近な単語がこんな場面で聞くことになるとはね……。



指示された場所に行くと、犬の吠える声と銃声が混じり合うように鳴っていた。
一人のストーカーが懸命に犬を追い払っている。


キョン「大丈夫ですか!?」

Fox「頼む、手を貸してくれ!弾が切れちまう」

ショットガンを持ったその男はFoxと名乗り、どうやらこいつがSOSしていたらしい。

Fox「その犬どもをどうにかしてくれ。足をかまれて動けねえ!」

キョン「右をやります。左を!」

犬の吠え声が次第に近づいてくる。痩せ細った犬の声が。
さて、拳銃一丁でどれだけやれるだろうか。知ったこっちゃねえや。


Fox「来るぞ、構えろ」

キョン「言われなくても」

エサを見つけたように犬が走ってくる。
おれは動物が好きだ。正直撃ちたくない。
だが、向こうはこっちの命を狙っている。守るためには抵抗しなきゃいけないのが、世の中だ。

キョン「おらっ、おらっ!」

銃の上の部分の後ろと前に凹凸のポッチがあって、それを合わせて引き金を引く。
するとあら不思議、銃弾がそこに飛んでいくんだ。
銃口と照準の間には少しばかりのずれがあるのに、なぜこう当たるように作られてるんだろうな。

Fox「なかなかいい腕してるじゃねえか。おらっ!」

Foxのショットガンが火を噴く。かなりうるさいが、数匹の犬を一気に巻き込んだ。










残り数匹の犬に銃弾を撃ち込むと、犬の鳴き声がやんだ。
どうやら終わったらしい。
目の前には犬の死体が並んでいる。正直、目を当てたくない。

Fox「いや、すまない。おかげで助かった」

いえいえ、と数回の会話を繰り返す。

Fox「そうか、お前が佐々木の言ってた奴かぁ。見ての通り、俺は足をかまれ、キャンプに帰るのが精いっぱいだ。資料を頼む」

キョン「はい……ああそうだ。資料の在り処を見つけた人なんですよね?ストレロクって、一体誰なんです?」

Fox「ストレロク……ああ、アイツの事か。すまんが、俺は資料のありかを見つけただけでよく知らん」

Fox「Garbageにいる弟のSeriyがよく知っているはずだから、そいつに聞いてくれ。PDA……ここ、ここにいるはずだ」

男の指したところに緑色のマークがつく。ここか。


Fox「いい旅を!ストーカー」



細い一本道をずーっと登っていく。
まるで北高への道を歩いていくのを連想させるような、そんな坂道だった。
途中でイノシシやら豚やらに襲われはするが、慣れてしまったのか、ためらいもなく撃ち殺していく。
この残客な性格が、元の世界に残ってほしくないんだがな……


キョン「はぁ、やれやれだ」

元々検問所らしき建物を通過し、Garbage――『ゴミ捨て場』と呼ばれるところについた。


――Garbage―――


そして俺は今、ここGarbageが危険と言われてきたわけをよく理解した。
あっちではBanditsと、こっちではミュータントと戦い、ここに平穏という言葉は存在しないようだった。


キョン「くそっ……大量に買っておいた銃弾が尽きそうだ」

例によって、俺も何回も戦闘に巻き込まれた。
そしてたった今も、Banditsの野郎と撃ち合いをしたところだ。
殺した相手の背嚢を漁り、弾の補給を済ませる。

キョン「はぁ、いつになったら終わるんだ……」 ピーピー

ひとまず休みたい、という俺の願いをかき消すように無線機がけたましく鳴った。



『誰か、誰か救援を頼む!Garbageの車庫跡でBanditsから攻撃を受けている!くそっ!』パパパパパン!



少々走ると、無線の発信源を簡単に突き止めることができた。
なぜなら銃声が爆竹のように鳴り響いているからだ。わかりやすいことこの上ない。


銃声が聞こえてきたのは、どうやら元々電車の車庫だった倉庫のような場所で、数人のストーカーが他方の入り口から侵入してくるBanditsと争っているようだった。
車庫内ではすでに銃撃戦が熾烈を極めつつあり、銃弾の跳ね返る音がする。
そんな中、真っ先に目に付いたのは負傷している一人のストーカだった。

キョン「おい!だいじょうぶか!?」

ストーカー「頼む、メディキットを……」

数少ない医療キットを使って治療してやると、とりあえずここの指揮官らしい男の元へ向った。


Seriy「どこの誰だかわからんが、援軍に来てくれて感謝する」

キョン「しかし状況は芳しくないようだが?」

Seriy「むこうはAKまで使ってきている。手伝ってくれるか?」

キョン「あいよ。じゃ、俺右手の援護に行きます」

Seriy「頼んだぞ!」



戦況は芳しくない。
倉庫の向こうから次々にBanditsがやってくる。

Bandits1「敵が一人増えたぞ!」

Bandits2「なに、大したことない。このまま子の車庫を取り戻せ!」 ババババババン!

連続する銃声が何重にも響く。
盾にしていたコンクリートブロックがバコバコと聞いたことない音と共に崩れていく。


キョン「あっぶね!あれがAKってライフルか。厄介だなおい」

ストーカー1「気をつけろ。AKの弾は跳弾した弾に当たっても十分[ピーーー]る」

ストーカー2「おいバカ、話してる暇あったら撃て!」

拳銃で応戦するも、正直向こうまで届いているのかよくわからない。

……と、ストーカーの一人が叫び始めた。

ストーカー3「おい、グレネード来るぞ!避けろ!」


キョン「グレネード?……手榴弾か!?」  キン、コロコロ
映画で聞いたことある音がした。
ふとブロックの横を見ると、野球ボール大の黒い玉が転がって……


ストーカー1「おい若いの!早く逃げろ!」

キョン「ちょ…やば!」


ドオオオオン!
耳をえぐるような激しい爆発音が倉庫中に響く。

幸いその場から逃げ出すことはできた。
自分が盾にしていたコンクリートブロックが、粉々に砕け散る。

キョン「あぶねえ、もう少しで巻き込まれるとこだったぞ……」

ストーカー2「避け終わったら早く撃て。死ぬぞ貴様!」

キョン「は、はいはいっ!」パンパンパン!


キョン「なんやかんやで助かったわけだが……」

その後また援軍が来て、何とかBanditsを撃退することに成功した

Seriy「いや、本当にありがとう。君が来てくれたおかげで助かったよ」

キョン「そりゃよかった。で、少し聞きたいんだが、ストレロクって奴について教えてくれ」

Seriy「ああ、Foxから聞いたよ。ストレロクを探してるんだってな」

Seriy「この車庫をずっと進むとAgroprom研究所近くの廃ビル近くに出る。そこにMoleっていう俺のダチがいるはずだ」

Seriy「本当なら俺が行く予定だったんだが、ちょっとお尋ね者になってな、身を隠さなきゃなんねえ」

Seriy「代わりにお前に情報を渡すようMoleの奴に連絡しておく」

キョン「わかりました」



 ― Agroprom研究所近く ―

倉庫を出て、ひたすら西に向かう。

キョン「PDAによればあれが廃ビルらしいが……」

パパパン!
ドドン! パンパンパン!

キョン「軍に攻められてえらいことになっとる」


急がないとヤバいと思い走っていると、路上で同じく走っていたストーカ二人組に出会った。

ストーカー1「おーいそこのアンタ!Moleに会いたいんなら手を貸せ!」

ストーカー2「このままだと死体出会うことになるぞ! うわっ!」 パパパン!

銃弾が飛んできた。
流れ弾かはわからんが、とりあえず草木の間に身を隠すことに。

……と、銃声とはまた違う連続した音がした。空から―――?
こいつは――――


キョン「!? おいお前ら、早く逃げろ―――」 シャアアアアッ!

バアアン!



さっきの手榴弾とは比べ物にならないほどの爆発が起き、俺はもろに土埃をかぶった。
上空を、さっきのやかましい音が過ぎ去る。

ババババババババ……

キョン「あれは……ヘリからのミサイルか!?」

キョン「さっきそこにいた奴らは吹っ飛ばされたが、どうやら俺は気付かれていないようだ」

キョン「今のうちに行こう」

某蛇大佐のように木々に紛れながら、少しずつ進むことにした。



穴の開いた塀から廃ビルの敷地へ侵入っと……

キョン「どうやらざっと見たところ、軍の兵士がヘリから降りてきて大混乱、という状態らしいな」

キョン「味方の兵力がバラバラになってるわけか」バキッ

げ……



兵士「……!?ストーカーがいたぞ!出会え出会え!」



キョン「くそっ……枝が折れた音で気づくとか、どんだけ耳がいいんだあいつら!」ザッザッザ……

兵士「プリクローイ!」ババババン!

キョン「くそっ!あいつらもAKみたいな銃か。一人じゃ勝ち目ねえぞこれ」 ガッ!


アサルトライフルに拳銃は分が悪すぎる。
これは逃げの一手しかあるまい―――

と走っていると、何かに躓いた。


キョン「いてっ!なんだこりゃ……」 ゴソゴソ


キョン「……死んだ兵士が落としたAKか!これなら……」







兵士1「こっちはあらかた終わったぞ!」

兵士2「敵にはろくな装備をしている奴なんていないからな。こんなのらくsy ぐふぅ!」 ビシッ!

兵士1「……! 味方がやられた!撃て撃て!」バババン!


草むらから一発撃ってみたが、なんと一撃で葬れたぞ。
AK恐ろしい子!

キョン「なるほど。むこうの装備がゴツすぎて拳銃じゃ無理だったのか」

キョン「弾は腐るほど拾った!このまま逆転するぞ!」


谷口とゲーセンで似たような奴やったなぁ……と思いつつ、引き金を同じペースで引く。

キョン「ほら!よ!それ!」バン! バン! ババン!

キョン「すげえ!今までの拳銃が不良品に見違えるほど当たるぜ!」


自分の進路上にいる敵は排除。
他の銃声も聞こえない事から、終わったとみていいだろう。

キョン「さてさて、Moleって人はどこだろうか?」



建物の二階。
空薬莢がそこらじゅうに散らばっていて、足を動かすたび金属とコンクリートの擦れる音がする。

……半開きの扉。誰かいるのかー?

Mole「……誰だっ!?」

キョン「おっと、怪しいもんじゃない。Seriyから紹介されてきたんだが、あんたがMole?」

Mole「ああそうだ。Seriyに会う予定だったが軍の奴らに見つかっちまってこの様さ」

Mole「あんたストレロク追っているんだってな。ついてきな。隠れ家に案内してやる」

キョン「隠れ家? そんなのがここにあるのか」


詳しく聞こうと思ったが、話をさえぎるかのように、さっきと同じヘリのローター音が近づいてきた。

バババババ……

Mole「いかん、軍が増援をだしてきよったわ」

Mole「おい、残ってる奴ら全員で突っ切るぞ!不要な装備は捨てろ!」

ストーカー「おう!」

Mole「行こう。増援に出くわすと厄介だ」



廃ビルの錆びた階段を下り、できるだけビル陰に隠れるようにしながら進む。
着いたぞ、と言われた先は、入ったところとは反対の別の塀だった。

キョン「塀が崩れてるな」

Mole「あそこにマンホールが半開きの奴があるだろう?あそこが入口だ」

キョン「あ……あれが入口なのか……」

隠れ家というから見つけにくいと思ってたが、こんなところだったとは……

Mole「俺が誘導できるのはここまでだ。この下は地図もないし、軍が捜索に入っているやもしれん」

Mole「お前の無事を祈ってるぜ。ストーカー」

キョン「ああ、ありがとな」




――Agroprom地下――


キィキィキィ……
金属のきしむような音が繰り返す。


キョン「びっくりした……回転灯の音か」

周りを見てみると両脇にはパイプが通っており、上を見るも照明が少ない。

キョン「見た感じ下水道のまんまだな……ん?」

話し声が聞こえる。
……どうやらBanditsらしい。話し方が下品だ。

hahaha! ソレデヨー
 バカヤロウ ウォッカヨコセ

キョン「……こっちには気づいてないみたいだ」

脇にあったドラム缶。揺らしてみると中にガソリンらしい液体が入っている。
映画のようにうまくいくかはわからんが、これでどうだ!

キョン「……よっと!」ゴロゴロゴロ……

キョン「それ!」バン!


ドオオオオン!


ぎゃあ、という悲鳴も上げる間もなくBanditsが吹き飛ぶ。
少々焦げ臭い、髪を焼いてしまった匂いが鼻を突いた。



キョン「さて、無駄に弾を使わずに行けたわけだが……」

キョン「これだけ見ると、どうやらここはストレロクの隠れ家じゃないみたいだ」

恐らく、もっと奥にある。
階段を探さなきゃな。


カツコツカツコツ……

キョン「……全く音がしない。不気味すぎるなおい」


ギッ……ギッ……


下の階に降りるにつれ、明るさがなくなっていく。

キョン「照明が割れてる……ライト付けるか……」パッ


白い明かりがじんわりと小さな空間のみを照らす。

なんと心細い明かりだろう。
下の階に辿り着くと、もはや手元を確認するだけしかできない。

何気なく下を見ると、何かが転がっていた。

キョン「……ウニ?」

そうとしか形容の仕様がない何か。

PDAで調べてみよう。コイツ、百科事典もついているんだぜ。
……ああ、これが『アーティファクト』という奴か。
名前が分からないから効能もわからない。また装着はしないでおこう。

そのウニ(仮称)を拾い上げ、先へ進む。



………人の気配がしないな

キョン「……一人語りも寂しくなってきたぞおい」

キョン「お、左わきに通路か?明かりが漏れている。やった―――」


と、その時だった。

シャオオオオオオオオッ!



キョン「……!?なんだ?今の声」
声……というよりも叫び、動物の咆哮に近かった。
吠えている。何かがいる。


ヒタッ……ヒタッ……

足音が近づいてくる。人じゃない!
そして見えない。どこだ!?

キョン「右!?」 バッ……

ヒタッ……ヒタッヒタッ……
顔を右に向けると、左の耳が反応した。

キョン「違う!左だ!」 サッ!

近い……でも見えない!
ヒタッ……ヒタッ…ヒタッ…ヒタッヒタッヒタッヒタッ!

どこだ!?どこにい――――





「キシャアアアアッ!」 バアッ!

キョン「うわあああッ!」ババババババン!


その化け物は『突然』『俺の目の前に』『くっきりと』現れた。
そう。まるで今まで姿を消していたように。

バババババ ガチガチガチッ!

驚きのあまり引き金を引き続ける。
弾が切れても、それに気付かないまま引く。

「グルルルルル……」フッ

キョン「消えた?……っなんだあいつは!?」

キョン「いけねえ、マガジン……」 ガチャガチャ

マガジンを入れ替えよう……と手をポケットに伸ばした瞬間だった。



フッ

「グオオオオオッ!」バッ


キョン「うわっ!また出てきた!?」

間一髪のところで敵のひっかき攻撃を避ける。
マガジンの交換がまだ終わってない。撃てない!

キョン「糞っ!とにかくさっきの通路へ」


明かりに向かって進んでいると、声がし始めた。

「おい、銃声がしたぞ」

「曲者だ、出会え!」

キョン「……げ!軍の連中かよ!逃げなきゃ――」

「ゴオオオオッ」ヒトヒトヒトヒト……

化け物が本気を出したのか、姿を出したまま追いかけてきた!


キョン「挟み撃ちかよ」ガチャ……ガチン!

リロードは終わったが、この姿勢じゃろくに狙いがつけられない……

逃げ道のないと思われていた俺。
神様が助けてくれたのか、目の前にあるものが……

キョン「……待てよ?これは使える」



……通路わきに見えたのは、一部の留め具のとれて天井から落ちた排気口だった

キョン「これをつたって天井に避難すれば……」

急いで、死ぬ気で上に上る。
すると予想通りというか、あの化け物は上まで追ってこなかった。
いや、追わなかったのかもしれない

目の前に新しい犠牲者が来たのだから。





兵士「……うわっ!なんだこいつ撃て撃……がぼっ」 ブシャアアッ!

兵士「く……来るなああ がふぅ!」ボトボトッ

重武装をしていたはずの軍兵士二人がなす術もなく崩れ落ちる。

その化け物には毛が生えておらず、顔はまるでタコのように数本の触手がついていた


その触手でのどや急所を繰り返し突き刺し、血を吸っていた。
さながら吸血鬼のような奴だ。

キョン「……しかし、今ならいける!」

食事中だからかこちらへの注意は全くない。
ゆっくりとライフルの照準を合わせる。

キョン「おらっ!」バンッ!

銃弾が奴の頭部にめり込んで、一気に貫く。
こちらにきづいた時にはもう遅く、奴は力を失っているようだった。

キョン「ふぃー……死ぬかと思ったぞ」


で、慌てて駆け込んだからよく見ていなかったが、どうやらここの通路が正解らしい。
また他に化け物が来ないか警戒しながらゆっくり進んでいくと、脇に不自然な穴が見えた。
ご丁寧に木箱で隠すような形で。

キョン「……これだろうな」

木箱を踏み台にさせてもらい、腰を屈めて入ってみると、上に梯子が続いている。

キョン「よっ……こらせ」




登り終えるとそこには一つの部屋……と言っていいのだろうか、とにかく空間があった。

本日分はここまで
以上がすでにVIP投下した分+一部改訂ものです
現在続き書き溜め中。しかし次回投下は未定。
失礼しました

勢いに任せたら結構いけるもんだ
続き行きます



これがストレロクの隠れ家……か
乱雑に置かれたパイプ、机、よくわからない機材に……。

キョン「お、あれは」

AK……のような、ちょっと変わった感じのライフルがあった。
持ってみると少し軽く、何か改造が施してあるらしい。

キョン「これ軍のライフルより軽いな。こっちをもらって行こう。弾が同じみたいだ」

軍人から奪ったライフルを捨て、頂くことにした。
さて、隠れ家に来たはいいんだが肝心の情報が全くない。
……勝手に漁らせてもらうか。

キョン「なんかないかなー、っと。お、なんか見っけ」

フラッシュドライブというのだろうか。Nimbleに渡されたのと同じのがあった。
どうやら音声ファイルが入っているらしい。再生してみよう。




キョン「それポチッとな」

『ストレロク、残念な知らせがある。Fangが殺されてしまった。君に逢うことはかなわなかったみたいだ』
『お前は一人で中心部へ行ってしまったみたいだな。だったら俺も自分で行動する。お互い、どうすればいいか心得ているだろう? Ghostより』

GhostにFangか。どうやらストレロクの仲間みたいだ。
これで少しは手掛かりが増えたな。

キョン「Zoneの中心……原発の事か。グループで行ったんじゃなかったのか?」

とまあそんなどうでもいいことをつぶやき、再び部屋を漁る。


キョン「お、またいいもん見っけ。スーツか?」

道中であったいろいろなストーカーが来ていたスーツだ。
どうやらケブラー繊維の防弾仕様のようで、これなら拳銃弾を食らっても死にはしない。
ガスマスクがついている。これはこれでお得なのか。

キョン「……すげぇ、暗視ゴーグルってこんなんなのか」

ぶら下がっているマスクについていたスイッチを押すと、視界が緑色になる。
ライトを消しても随分と見える。これは便利だ。

キョン「こんなものか。悪いストレロク、これ頂いていくわ」

他にも銃弾や医療キットなどをくすねて、俺は部屋を出た。



と、後はゆっくり帰ろうかと思ってたらそうもいかない。
さっき派手に暴れたせいか、そこらへんに軍人さんがうろちょろし始めているわけだ。
幸いここには気づいていないのか、穴をのぞき見するだけで俺は見つからなかった。

キョン「これでもうほかに化け物がいないのはわかったが、こっちの方が案外厄介だったりなぁ」


糞マズイソーセージを齧りながら、数時間観察する。
どうせ今外に出ても夜だし、ここで夜を明かすのもよかった。


そして、巡回ペースを把握して夜明けを待ったところで行動を起こす。

キョン「よし、いまだ」

この十分間は誰もこの前を通らない。この間に一気に梯子を下り、通路をかけ抜ける。
通路を出て様子をうかがうと、こちらは歩哨が立っていた。これも厄介だ。

キョン「……これの腕慣らしに、一戦やるか」ガチャ



スーツの防弾性能を当てにして、一気にに突っ込むことに決めた。
そっと壁から銃口を出すが、向こうは全く気付いてない。

キョン「いまだ!」ドンッ!

兵士1「 ――がはっ!」バチッ!

兵士2「! 敵だ、攻撃を受けてるぞ!」

ワラワラ奥から出てくるが、一本道ゆえに簡単に狙い撃ちができる。ちょろいな。
これならゲーセンで谷口と対戦した方が簡単だ。


奥へ奥へ進むにつれ、下水道内の空気が外気と同じような感じになってくる。
それもそのはずで、俺の目の前には巨大な吹き抜けとその中央を突き抜ける螺旋階段があるからだ。
光が漏れて敵がいるのがよく見える。

キョン「くそ、どれだけ来ているんだ!?」ドドドン! ドン!

兵士「下だ!下から来てるぞ!」バババン!

兵士「撃て撃て!」ババババ

銃弾が螺旋階段にあたって跳弾する音が響く。
電球が割れ、破片を思いっきり踏んだりしながらも、ようやく螺旋階段を上り終えた。


キョン「梯子があって光が漏れてる……あれが地上行か」

気が抜けて疲れが出てきたのか、頭が痛くなる。
ここまで強い頭痛も久しぶりだ……

キョン「くそっ……睡眠取っておくべきだったか?」

こりゃ相当重症だな。
この任務が終わったら一眠りしよう。


……キィーン

キョン「……耳鳴り?」

巨大な音を聞いた後急に静かなときに聞こえるという耳鳴り。
……いや、これは違う!

キイイイイィィィィイイイ……!

これが頭痛の根源か!?

……くそっ半端じゃない痛みだなんだこれは頭がガンガンするいやこれはただの頭痛じゃない内側から小人が頭を叩いているかのような感じだ余裕で[ピーーー]るこの痛みはどうなっていやがる宇宙人の襲撃超能力者の攻撃かそれとも私なのか



ヒタッ…ヒタッ……

キョン「……足音?」

頭痛に悩まされながらも足音にきづいた俺は、眩暈と吐き気に襲われながらもフラフラしながら後ろを振り向く。

キョン「うぇっぷ……あいつが根源か……?」

上半身が裸のジーパン男……といえばいいのだろうか。
俯いたままこちらにゆっくり来る様はまさに変質者と言いたいが、コイツは変質者では済まない気がする。
何しろ頭痛の原因はこいつらしいからな……。


キョン「喰らえっ……!」バッ!

頭の痛みを振り切り、俺が銃を奴に向けた瞬間だった。


耳鳴りがよく聞こえるものとは比べ物にならないほど大音量になり、頭痛が頭痛のレベルを超えた痛みに変わる。
耐えられる耐えられないの話じゃない。

キョン「うああああああっ!!」ガガガガガガガガガン!

恐らく今まで一度も感じたことのない『恐怖』
それに対抗するかのように俺の本能は今まで一度も上げなかったであろう程の悲鳴と共にAKの引き金を引いた


ガガガガガガガ! ガチッ!

あっけない弾切れ。
だが、マガジンは取り替えない。


「ゴオオオオオッ!」



悲鳴か咆哮か。
生きているのか死んでいるのか。

そんなのは関係ない。
にげるには、頭痛の吹っ切れた今しかない!

梯子にしがみ付き、勢いで登る。
たぶんこれほど急いで梯子を上ることはなかっただろう。

光が増してくる。
そして俺は頭痛から解放されると共に、地上へと出た。



キョン「はあっ……はぁっ……」

人は死に直面した時の話を聞いたことがある。
だが、それは今自己の経験に上書きされる結果となった。

キョン「……くそっ。まだ頭がクラクラするぜ」

何とか頭痛を切り抜けながら、周りを見渡す。
どうやらそこは倉庫のようで、立派な建物が立っていた。

キョン「えーと、ここどこだ」

PDAを起動する。
さっきの廃ビルから南西へ行ったみたいだな。
じゃあ、この施設はなんなんだ?



キョン(……ここがAgroprom研究所かよ!)

おっといけねぇ。デカい声出しちゃばれちまう
通りで地下に兵隊がわんさかいるわけだ。敷地内に入口があるもんな。

キョン「こっそり、こっそり行こうな」パキッ!




……これがお約束って奴なのか?


兵士1「! 侵入者!侵入者だ!」

兵士2「出会え出会え!」

建物に侵入する前に見つかっちまったよ
しかし俺はこういう場合の教訓を得ている。



キョン「一気に駆け抜けるか!」

俺は今まで運というのはあまり信じてこなかったが、ここまでがむしゃらでやってこれた。
少しぐらい信じてもいいだろう―――というか、それしか方法がない。

キョン(極力発砲は避けよう。居場所がばれる)

足を動かし地を蹴ったところですかさず向こうから銃声が聞こえた。
流石は軍といったところだろうか?

近くの兵舎を通り抜けるついでに、いくらかの装備を拾って本ビルらしいところへ行く。
当然玄関前は開けているため兵隊たちが殺せ殺せと言わんばかりに撃ってくる。


キョン「やべやべ……」

俺は慌ててビルの中へと入った。
外より見晴しの効かない室内は、多勢が無勢に勝つのに最適なんだと。
ソースは自分の勘だ。

キョン「おら!この馬鹿やろう!」ダラララ!

時折後ろを警戒しながら、建物の3階へ向かう。
案内板によればそこに一番偉い奴の部屋があるらしい。

兵士1「この階に来るぞ!」

兵士2「守りを固めろ!」

兵隊がほかの階よりも多い。
ビンゴらしいな。


そこで、先ほど拾った装備の中にいいものがあったのを思い出す。


キョン「たしかこれを抜いたらいいんだよな……?」

野球ボール大の黒い玉。
ご存じ、手榴弾だ。

キョン「ほーらよっ!」ピン ポーン!


兵士1「……!グレネーd」


ドオオオオオオン!

おっと……
思ったよりも爆発が大きい。下手したら自分がまきこまれるぞこれは。

キョン「ゲホッゲホ!こいつは安易には使えねえな」

とりあえず、資料を奪おう。


司令官の机らしきところを制圧し、棚からケースに入った資料を手に入れる。

キョン「ほらほら兵隊さんー俺はこっちですよー!」ベロベロバー

正面側の窓から顔をだし、下にいる兵隊に挑発する。

兵士「いたぞー!あそこだいけいけー!」

どかどかと階段を上がってくる音がする。
だが悪いな兵隊さん。俺は裏手から逃げさせてもらうわ。
世の中には壁登り用のロープなんてあるんだなぁ

キョン「あばよぉ とっつあーん」

くぅ~っ!
一度言ってみたかったんだこのセリフ。
じゃあな!



それから先は一生懸命逃げた。そりゃもう一目散に。
PDAを確認する暇もなく、ひたすらGarbageの方へ走った俺であった。

前回よりめっちゃ少ないですが本日分は終了です
失礼しました

少量のを短期間の間隔でチビチビやるのと
長い間空けて大量に書き溜めしておくのとどっちがいいのだろうか
そして本日分




―――Garbage Duty検問所―――

Seriyと会った車庫をまた抜けひたすら北へ進むと、やったら黒いスーツを身にまとった集団がたむろしていた。

Duty「おいストーカー。ここからはDutyの縄張りだ。隊員の許可なしに発砲は厳禁だ。」

Duty?ああ、佐々木が言ってた組織か。

キョン「あのゲートの先にBarがあるのか?用があるから通してもらいたいんだが……」

Duty「ここから先は許可のない限り通せないことになっている。」

キョン「Cordonの佐々木って奴から頼まれてんだが……だめか?」

Duty「佐々木……ああ、連絡があったな。 おい!門を開けろ!」

3人ほど門の前にいたDutyの隊員がゲートを開く。
こうしてBarへの道は無事に開けたのであった。


――― Bar ――――

さて、またおれは少々長い道(今度は下り坂)を行くこと少し。
元々川……いや、塹壕があったらしい横長の溝に見える、突き刺された槍、ヤリ、やり。
この溝に飛び込めば必ずどれかには刺さるだろうという奴だ。

そして俺はこの槍が存在する理由を知ることになる。



「ガウガウガウ!」

キョン「……!?犬?」

BlindDog(メクラ犬)だ!しかもかなりの大群。
どこかに隠れていたのか一瞬で群れをなし、ワラワラとやってくる。

キョン「ちょ……マジかよ」ガチャ!

AKを構えようと思うがこの数を相手にできるとは到底思えない。
しかし逃げていても追いつかれてしまえば一気に噛み砕かれるだけ。
にげるか片付けるか……と悩んでた時だった



Duty「おいそこのストーカー!早く橋を渡ってこっち来い!」

キョン「……え?」

橋の向こうをよく見てみると小規模な土嚢陣地が見えた!
助けてくれるのか!

キョン「うおおおおおお!」 グワウワウワウ!

後ろから一生懸命追ってくる犬を振り切りながら橋を渡り終えると、とてつもない音が響く。

ギャリリリリリリリリリリ!


電動のこぎりを連想させる重機関銃と思われるその音は、土嚢の横にある半地下陣地から放たれたもので
俺の後ろを、つまり橋の上をご丁寧に一直線で渡ってくる犬をバッタバッタとなぎ倒していった。

いくつかの犬が危険を感じたのか、橋ではなく溝を跳び越そうとするが、乗り越えるには力が足りない!
溝の半ばで跳躍力が失せた犬はそのまま落下



そして地面に植えられた槍に、腹からブッスリと行くのであった。


キャインキャイン、と未だに力尽けず死ぬことのできていない犬の悲鳴を後ろに感じながら
俺はBarのDuty本拠地へとたどり着くことができた。

Duty1「若いの、大丈夫だったか?」

キョン「すみません。助かりました。ここがBarであってますよね?」

Duty1「ああそうだ。同時にDutyのテリトリーでもある。発砲は許可のない限り厳禁だからな」

キョン「はい」

そういって俺は奥の倉庫らしい入口から入って行った






元々はどんな施設だったのか?
倉庫群を連想させるその基地は進入路を限定していて、警備が容易にできるようにしているらしい。
と、上の方から声がかかる

Duty3「Get out of here, stalker.(出ていけ、ストーカー)」

え?入口ここじゃなかったのか?


キョン「あ、すんません。すぐ出ますんで」



Duty1「あれ?さっきの奴じゃないか。早く入っておけ。ここは危ないぞ」

キョン「え?……いや入っちゃダメって言われたんですけど」

Duty2「あー、それ気にしなくていいよ。アイツの仕事だからさ、無視してやってくれ」

キョン「え?仕事……?」

Duty2「お前たぶんゲタウトオブヒアストーカーって言われたんだろ?気にしなくていいんだ」


言われたとおりに無視したら別に撃たれたりもせずに通れたのだった。


Barと呼ばれるDutyの本拠地。
一つの塔(?)とそれに連なる建物を囲むような作りをしている。
ところどころ無理矢理壁を開けたようなところもあり、焚き火をたいてたむろしているストーカーもいる。
そして俺は本来の目的、佐々木の言っていた酒飲み場を探していた。

そしてそれは意外にあっさり見つかる。

倉庫を出て左手、やけにでかい矢印と共にでかでかとした英字が書かれたボードがあった。
そこに書かれていた文字は……

キョン「 『T.F.E.I. Bar』……? 」




俺は一目散に駆け出したね。
英語ができない俺でもこれは覚えてた。『TFEI端末』。

そう、古泉の『機関』が長門一族を呼ぶ呼び方だ。


案内板に沿っていくと地下へと通じる通路がみえ、見張りが数人いるというなんという物騒がしさ。
なんたってSF映画に出てきそうな鎧を着ているんだ。

なんだろう。
ほら、ガスマスクつけて西洋の全身鎧の上に、某野球アニメの少年がつけてたギプスをつけたような外見。


そのいかにも『鍛えてます』雰囲気を醸し出している通路内の見張りA君はこう言った。

見張りA「I said come in. Don't stand there.(そんなところで突っ立ってないで、はいれよ)」


あ、お邪魔します。


ここはどうやら立ち飲みバーのようで、そこそこの客がいた。
酒臭いにおいが立ち込める中、場違いなにおいがしてきたこの店。

日本茶、カレー……

これで誰がいるかが分かってしまったぞおい。



そしてその人物はすぐに見つかった
まずはカウンターで無表情で突っ立っている―――

キョン「長門おおおおおお!」

やっと会えた!佐々木以来だよ知ってる奴に出会えたのが!
これほどうれしいとは思わなかった。
人目を気にせず駆け寄った俺は、他の客には単なる変質者に見えたことだろう

長門「………お疲れ様」

長門から労いの言葉が聞けるとは驚きだった。
………気のせいか、長門からほっとした表情が見えた気がする。

そして次は日本茶の匂いの元……


カチャ、という日本ではなじみ深い音と共に、懐かしい声が再び聞こえた。

みくる「ふぇええ!キョンくううん!」

我らがエンジェル、朝比奈さんが飛び込んできた!
しかも部室と同じメイド服のまま。
よかったす無事で。長門と一緒ならどこでも守ってくれるでしょうから。

どうやら朝比奈さんはここの従業員のようで、他の人に呼ばれるとすぐに行ってしまった。
少し残念。


……と、仲間との再会を楽しんでいた中

「あら、キョン君じゃない。久しぶり

キョン「………っ!?」



この世で一番聞きたくなかった声が耳に届いた。
特徴のある蒼いロングヘア……アーミーナイフがよく似合う長門と同じ宇宙人。

キョン「朝倉……なんでお前がここに………!?」

俺を教室で殺そうとし、長門の改変した世界では本当に死にそうなところまで俺を追い詰めた奴。
朝倉涼子がそこにいた。


朝倉「長門さんに復活させられたのよ。こんな事態にはバックアップは必須でしょ?」

キョン「……長門、大丈夫なのか?」

長門「問題ない。むしろ、今の私には必要」

長門が朝倉を必要とする?それだけヤバい事態なのか?

長門「今私の情報操作能力はほぼ封じられている状態。小規模な者ならば可能だが、現実での行ったような大規模なものは不可能」

なるほど。
程度が分からないから何とも言えないがそれはきついな。

朝倉「私がこう言っちゃなんだけど、長門さんって本当はただのか弱い女の子でしょ?」

朝倉「だから私がついておかなきゃダメなの」


長門「あなたが朝倉涼子に恐怖感を覚えているのは重々承知しているが、どうか理解してほしい」

長門「力を最大限使って今度は私の制御下においてある。[ピーーー]ようなまねはさせない」

長門「だから、安心して」

まぁ、長門が言うならしょうがないか……
頼むぜ。俺はこいつに二回も殺されかけたんだ。

朝倉「というわけでよろしくね?キョン君」

キョン「………はぁ」

それでも、内心は少し頼もしいと思っている自分が嫌だった。



キョン「そういえば、佐々木にこれを渡してって頼まれたんだが………」

長門「……みせて」

トランクケースに入った紙。
長門に軍の研究所から奪った資料を見せる。

朝倉「へー……やっぱりあの研究所は偽物だったかぁ……」

長門「やはりあのストーカーからの情報は正しかった。すぐに行動に移るべき」

朝倉「でもあのカードキーが正しいという確証は?」

長門「正しくなければそれで終わり」


何やら話し込んでいるなぁ………。



何やら話し込んでいるなぁ………。

カウンターに腕をかけ、ボーっとしていると

みくる「お茶です」

という声と共にメイド服を着た朝比奈さんが出てきた。


キョン「……メイド服なんてあったんですか?」

みくる「長門さんが出してくれたんです。どうしてもって言われて……」

ただ、Zoneでは貴重な存在である女性、しかもコスプレというものは大変好評らしい。



客1「いいよーみくるちゃん。似合ってる似合ってる!」

客2「みくるちゃーん俺のところにウォッカ一杯お願いできる―?」

みくる「あ、はーい。長門さん、ウォッカ一杯です」

長門「……勝手に出して」

みくる「はい、あんまり飲みすぎはいけませんよ?」コトッ

客2「みくるちゃんに言われちゃしょうがないなぁ。俺の旅についてきてくれるなら考えてもいいな」

おいコラ朝比奈さんに手を出すとただじゃおかねえぞ
そう言おうとした時だった。





見張り2「おいお前ら。朝比奈様と長門様に手ぇ出すんじゃねえぞ?」ガシャン!

さっきと同じような装備をした怖いお兄さんが、銃の撃鉄を起こして今にも撃とうとしているところだった。


そんなうちに時は過ぎ、よい子は寝る時間をとうに過ぎたころ。
俺がここの美女達の知り合いだったせいか、他の客の質問攻めにあった俺。
一人だけ場違いなお茶を飲んでいると長門に呼ばれた。



長門「……話がある。奥へ」

見張り2のいた厨房へとつながる通路を通り、そのさらに奥の部屋へ行く。
そしてそこにはまたもやイレギュラーな存在が………

キョン「………情報ナントカ思念体のインターフェイス全員集合ってところか」

喜緑「どうもお久しぶりです」

名前の通り緑の髪の喜緑さんがおでましだ。
そして各自が大きなテーブルを囲むように席に着く。

長門「……状況を説明する」

こうして宇宙人によるミーティングタイムが始まった。

本日分はこれで終了です。
失礼しました。

また少々投下します



長門「まずZoneの『北』について説明しなければならない」

長門「北のCNPP(チェルノブイリ原子力発電所)に行けないというのは、もうあなたも聞いたことがあるはず」

キョン「ああ、佐々木から聞いた」

長門「そのたどり着けない原因として、Brain scorcher(ブレインスコッチャー)という装置がある」

キョン「……その、ぶれいん…なんとかってのはなんだ?」

長門「詳細は不明。Yanterに発信源があるとされる、いわば巨大な廃人製造電波発生装置」

廃人製造電波発生装置!?
つまりその装置の影響を受けると頭がいかれるっていうのか?



長門「死ぬことができればまだいい。大抵の場合は脳の中枢、大脳が破壊され、例えるなら映画の『ゾンビ』になる」

ゾンビ……
食うことだけに執着するっていうあれか。

長門「非常に強い影響を受ければそうなる」

長門「しかし軽度、例えば大脳の一部の損傷等で済めば、銃器を使用してくる個体もいる」

おいおい。そりゃ反則だろ……
昔っからな、銃器を使えるゾンビといえば中ボスレベルの奴なんだぞ?


長門「その装置せいでストーカーたちはみな北上できない。故に何があったのかを知ることもできない」

………ちょっと待てよ?
そんなおっかない装置があるなら、ストレロクはどうやって北へ行ったんだ?


キョン「なぁ長門。突然で悪いがストレロクという奴を知らないか?」

長門「……しらない。誰?」

キョン「このPDAをみてくれ」ピッ

『KILL THE STRELOK』のメッセージの浮かぶPDAを見せた。
すると長門がその画面を見るや

長門「……このファイルには画像が添付してある。未開封の模様」

なんと、それは気付かなかった。
あけてくれないか?

長門「承知した」

長門がPDAの画面を二、三度叩くと、ピッという音共に画像が現れる。
そこに映っていたのは………




キョン「………谷口!?」

同じクラスメイトで女子にランクをつけたがる奴、谷口の姿がそこにあった。

















キョン「……フェイクだな」

朝倉「フェイクね」

長門「……フェイク」

喜緑「フェイクではないかと」

キョン「ありえんだろ。ハルヒが谷口をこんな重要そうなキャラにするなんて」


こうして、俺の謎はさらに深いところへ沈んで行ってしまった。




キョン「………谷口!?」

同じクラスメイトで女子にランクをつけたがる奴、谷口の姿がそこにあった。

















キョン「……フェイクだな」

朝倉「フェイクね」

長門「……フェイク」

喜緑「フェイクではないかと」

キョン「ありえんだろ。ハルヒが谷口をこんな重要そうなキャラにするなんて」


こうして、俺の謎はさらに深いところへ沈んで行ってしまった。

二重投稿失礼しました



喜緑「では、状況を整理しなおしましょう」

長門「あなたがストレロクと呼ぶ者、それが谷口」

朝倉「そしてブレインスコッチャーを抜けることができたのも彼ってわけね」

キョン「……実は脳味噌焼かれた状態で戻ってきた、なんてことないよな」

長門「正直なところは不明。なぜなら北へたどり着いた人物のこと自体が噂だから」

長門「しかしそのストレロクの話が本当ならば、北へ向かっているうちに真実をつかめるはず」

キョン「だから協力しろってわけか」


朝倉「というか、ぶっちゃけキョン君にはそれしか道ないのよねー。涼宮さん的に考えて」

キョン「くそっ!なんて時代だ!」



長門「そういうわけだから協力してほしい」

長門がこちらを真っ直ぐ見つめる。
……これがハルヒじゃなくて長門の世界なら俺は喜んで走り回ってやれるんだがなぁ。

キョン「……別にいいんだが、ちょっと一睡させてくれないか?夜通しでやってきたからな」

朝倉「あら、ちゃんと睡眠はとらなきゃダメよ。睡眠不足は健康によくないわ」

長門「睡眠不足は基礎体力、判断能力を著しく低下させるため危険。この部屋で寝るといい」


長門「あと、これを渡しておく」スッ

長門がデカい袋らしいものを差し出してきた。
これは?

長門「携帯寝袋。敵に襲われないようなところでなら寝ることができる」

長門「今日のうちから慣れておくといい」

流石長門だ。気が利くぜ。


キョン「あ、寝る前にいくつか聞いていいか?」ゴソゴソ

キョン「このウニみたいなアーティファクト。なんていうんだ?」

ストレロクの隠れ家近くで拾ったあのウニを見せる。


※海外Wikiより
ttp://images.wikia.com/stalker/images/7/74/Urchin.jpg


長門「……Urchinと呼ばれるアーティファクト。装着すると放射能を取り除いてくれる」

ほう、それは便利だな。
これからおっかないところに挑むんだから、そういうのが欲しい。

長門「その代償として血圧が上昇。よって出血の可能性が急激に上昇する」


ふむ。出血を抑える包帯を買っておけばそれほど心配する要素でもなさそうだが……

朝倉「あんまり付けすぎると血がベットベトの体になっちゃうわよ。私としては大歓迎だけど」ジュルリ

前言撤回。危ない危険要素があった。


長門「……パーソナルネーム朝倉涼子の情報連結を―――」

朝倉「じょ…冗談よ長門さん……」

キョン「俺からしたら冗談に聞こえないんだがな。後よだれ拭け」

防弾性能がそれなりにあるスーツだし、このアーティファクトつけておくか。


キョン「そしてこの銃、改造がなされてるみたいだが……」

これまたストレロクの屋敷で拾ったAKらしき銃を長門に渡してみる。

長門「……AK74の連射能力に大幅な改良が加えられているモデル」

長門「当然その代わり弾の消費が早くなるから気を付けた方がいい」

キョン「それはいいな。さんきゅな」


喜緑「今回はこれぐらいにしておきましょう」

朝倉「そうね。じゃ、私たちはまだ店番があるから。おやすみなさい」

長門「……おやすみ」

長門からおやすみが聞けるとはな。
こりゃ貴重かもしれん。


キョン「ああ、また明日」

寝袋のファスナーを閉じ、頭だけを出して寝る。
そういえばハルヒも似たようなの使ってたっけ……

目を閉じると目の前は夢の世界。もう一瞬で寝ることができたね。
訳分からん敵に襲われいろいろなところを駆け巡った結果だ。
寝たくないわけがないんだ。







長門「……起きて」

俺の朝は、妹とは正反対の、ほっそりとした声に起こされた。

キョン「あ、長門か……今何時だ?」

長門「……あなたが睡眠状態に入って約十時間後の午前五時」

キョン「結構寝た気がする……というのは気のせいか」

長門「朝ごはんがある。表へ」

キョン「あいよ」



朝倉「あらキョン君。おはよう」

みくる「おはようございますー」

朝からこのバーは人が泊まっているんじゃないかっていうほど人がいた。
そして我らが異世界の少女たちは一生懸命料理に励んでいる……ん?

キョン「なぁ、ここって酒飲むところじゃなかったか?」

朝倉「細かいことは気にしたら負けよ。ここはDutyが直々に支援してくれているんだから」

へぇー。意外に金持ちなんだな、Dutyって。

朝倉「何ボーっと立ってんの?はやく、席について」

カウンターからは見えづらいかもしれんがな、ここ立ち飲みバーだって。


朝比奈さんが運んでくれたソーセージとパン(両方焼きたて)をいただく。

……すばらしい。
これを旅に持っていけたらどれだけ元気が出るだろうか。
他のストーカーと売買した食べ物とは大違いだ。


長門「……」モグモグ

客1「みくるちゃーん。ウオッカ一瓶」

みくる「朝からお酒はダメですよぉ……」

喜緑「私の分のご飯はまだですか?」

朝倉「ごめん、もうちょっと待ってて」






長門「……朝食ふぁ食べ終わった?」モグモグ

長門がフランスパンサイズのパンをかじりながら歩いてきた。

キョン「食べてる最中の奴に言われてもな……」

朝倉「こら長門さん、食べてる最中に喋ってはいけませんよ?」


喜緑「……代わりに私から話しておきしましょう」

キョン「昨日の続きですか?」

喜緑「ええ。そんなところです」


朝倉「まずキョン君、昨日のブレインスコッチャーの話は覚えてる?」

キョン「ああ、ゾンビを作り出す奴だっけか」

喜緑「私たちが入手した情報によれば、それを作る研究がAgroprom研究所で行われていたということだったんです」

キョン「……そんな感じは全くしながったが?」

あそこは普通の軍事基地だった気がするが……

朝倉「そう。あれはすべて嘘。あの研究所を隠れ蓑にしていたわけなのよ」

つまり、本当は別のところにあると。

朝倉「そういうこと。キョン君の資料によれば、どうやらDarkValleyにある工場の地下らしいのね」

DarkValleyっていうと、東の方の谷か。



長門「あなたにそこに行ってもらいたい」モニュモニュ

お、長門食べ終わったの……か?
食べ終わってないじゃないか。口の中ごっくんしなさい。

長門「………」ゴクン

キョン「よし、話していいぞ」

朝倉「なによ長門さん、キョン君の言うことなら聞くのね……涼子悲しい」シクシク

長門「……眉毛は放っておいて話を進める」


長門「まずはこれを受け取ってほしい」スッ

長門が何かを手渡してくる。
薄い、キャッシュカードみたいなものだ。

長門「それはカードキー。DarkValleyの地下にある『X18』と呼ばれる所に侵入するのに必要」

長門「しかしカードキーはもう一つ必要」

もう一つ?
カードキーは一つしかもらってないぞ?

長門「私の入手した情報が正しければ、もう一つはBorovというBanditsの一団のリーダーが持っている」


キョン「つまり俺の任務は、そのもう一つのカードキーを手に入れて、X18とやらで何があったかを調べて来いということか」

長門「可能ならば、研究所内に保管されている書類を回収してきてほしい。今の我々にはスコーチャーに関する情報がほとんどない」

キョン「ふむ……わかった」

長門「PDAを出してほしい。入手した情報から研究所が存在すると思われる位置にマークする」

PDAの地図上にマークが現れる。
どうやら何気ない廃工場のようだが……

キョン「何かを隠すにはもってこいってわけか」

そしてその工場より北西にBanditsのアジト……か。
目的地を確認して、俺は出発の準備を始めた。

以上本日分の投下でした。

もうちょっと分量を増やした方がいいかな

本日分投下





朝倉「ところでさ、キョン君。何か買って行かない?」

荷造りをしている俺に朝倉が声をかけてきた。

長門「ここでは品物の売買も行っている。先ほどの軍基地からの書類回収任務の報酬から必要なものがあれば買うといい」

長門が差し出したのは大きめの箱。
中にさまざまな武器弾薬や道具が入っていた

確かにAKの弾はお世辞にも十分とは言えないし、拳銃の弾はもうない。
医療キットも買っておかなきゃな……あ、包帯も。


キョン「うん、じゃあとりあえずこのAKと同じ弾もらおう他には……」

他の武器もほしいな、と言いたいところではあったが、生憎金がない。


キョン「お、缶詰があるじゃないか。これは安い。いくらだ?」

長門「……買ってもいいが、あまりお勧めしない」

キョン「……?なぜだ?」

長門「旧ソ連圏の軍用缶詰はかなりマズイという」

キョン「そ、そうなのか……」


キョン「他になんかないかなー……」

キョン「ん?この拳銃映画で見たことある奴だ」

まさに一般人が思い浮かべる拳銃といったところだろうか。
いや、俺の独断と偏見だがな。

長門「……ベレッタM92F。アメリカ軍や警察で数多く採用されているイタリアのベレッタ社製の拳銃」

長門「9x19弾を15発装填可能。また」モゴ

長門の口が止まらない。
このままでは日が暮れてしまうと判断した俺は長門の口をふさぐ。



長門「9x19弾も一般的。ZONEでは安価に手に入るためオススメ」

長門イチオシ武器というわけか。
ちょうど拳銃は弾ないから、今の拳銃を売ってこのベレッタとやらを買おう。
と、買う品物と拳銃を売っただけでは足りない金を長門に渡すと

長門「……まいどあり」


無表情でそうつぶやかれたときには、思わず吹き出しそうになった。







朝倉「な……長門さんが『まいどあり』……ぷくく……」

喜緑「朝倉さん、長門さんが見てます」

>>130>>131の間に一つ抜けてました


>>130

キョン「わかったわかった。もういい」

キョン「それより、これは素人でも扱えるか?」

長門「……使う分には普通の拳銃と変わらない」

長門「むしろあなたが今持っているマカロフPMよりも、一発あたりのダメージが大きいため、こちらの方がいいと判断する」

確かにこの武器は使いづらかった。
なかなか当たらない上に、威力も小さい。
利点は弾が簡単に手に入るくらいか。

>>131


そして少々早い昼飯を食った後、俺は『X18』と呼ばれる所へ行くことにした。

みくる「キョン君、気を付けてくださいね。 あ、これパンです。よかったら持って行ってください」

キョン「ありがとうございます」

朝比奈さんがパンをくれた。
これを食えば元気百倍になるだろう。大事に取っておくことにする。


喜緑「お気をつけて」

朝倉「がんばってねー。ほら、長門さんも」

長門「……」フリフリ

三人の宇宙人と一人の未来人の見送りを受け、俺は再びGarbageへと向かった。



―――Garbage――――


Duty1「お、若いの。元気にやってるか?」

昨日抜けた検問所へ着くと、同じ隊員が声をかけてきた。
お疲れ様です。

キョン「おかげさまで。ところで、DarkValleyへの道ってご存知ですか?」

Duty1「DarkValley?それならこの関所東の草原を抜けたところだ。オススメはしないがな」

少し暗い雰囲気が漂う。
で、オススメしないというと?



Duty2「朝、ウチの隊員が数人がミュータントの制圧に向かったんだがな、帰ってきてないんだ」

Duty3「ケモノにやられるほど軟には鍛えてないはずなんだがな……」

Duty1「午後から捜索隊を出す予定だが、PDAの反応がない今、見つかるだろうか」

Duty2「まぁ別に行く行かないはあんたの自由だが、気をつけとけよ」

そんな忠告を後ろに受け、俺はDarkValleyの方へと進んでいった。




―――DarkValley――――


流石谷というだけあって、岩がごつごつと転がっており歩きにくい。
時折豚のフンらしいものがあり、ミュータントの存在が確認できた。

キョン「はぁはぁ……まだ続くのかこの道は」

PDAの地図によれば現在俺はBanditsアジトの西側(といってもかなり離れているが)にいて
かすかにある獣道らしい道をたどっていた。

キョン「……水飲もう」ゴクッゴクッ

いい加減うんざりだ、少し休憩入れよう。
と思ったときだ






「ここにはもうあなたの味方はいません。さあ、吐いてください」

「頼む、やめてくれ!殺さないでくれ」

「いいでしょう、今は殺さないでおきます。ですが代わりに答えてください。僕の仲間の居場所はどこですか?」

「お…俺が知っているのは、アジトに閉じ込められているのと、一人を工場に移動するってことだけだ……」

「……次にその姿を見せたら、ただじゃおきませんよ?」



.


岩陰に隠れ、そっとその様子を垣間見る。

聞こえてきたのは、今まで聞いてきた男らしいドスの効いた声とは少々離れた声。
Banditsと言い争っている一人のDuty。
太陽の光が、その顔を照らす。

その人物は、俺がよく知っている超能力者!




キョン「……古泉!」

古泉「……! これはこれは……」






古泉「お久しぶりです。ご無事で何よりです」

うぅ、と呻くBanditsを尻目に、にこやかな顔で話しかけてくる古泉。

キョン「ああ、なんとかな」

キョン「しかし意外だな。おまえがDutyに入っているなんて」

Duty独特の黒、それに赤インクを混ぜたようなスーツは、このニヤケスマイルには合わない気がした。

古泉「少し違いますね。僕がこの世界に来てDutyに入ったわけではありません」


古泉「現実における我々『機関』、それがこの世界における『Duty』という組織のなった……」

古泉「涼宮さんの力の拡大を防ぐ……今でいうZONEの拡大を防ぐ、というのがその名残と言ってもいいでしょう」

古泉「たしかに機関のメンバーでない純粋なDuty隊員もいますが、大半は我々機関の同士です」

なるほど。
ようするに機関改めDutyに機関の皆さんは転職したわけか。

古泉「正式に就職しているわけではないので、少々違いますが似たようなものです」


ところで、さっき何か言い争っていたようだが……

古泉「ああ、それですが……今朝方、僕と多丸さん兄弟とここへミュータントの制圧に向かっていました」

多丸さんというと、お前の『機関』の人たちでもあったな。
それが失敗したのか?

古泉「まさか。神人倒しに比べたら、別に難しい仕事じゃありません」

古泉「ところが情けないことに、僕がトイレをしに離れていた間にbanditsに強襲をかけられ、二人がさらわれてしまったんです」

古泉「急いで援護に向かったのですが、時すでに遅く……」


だから居場所を吐けと言ってたわけか。
しかしBanditsといったな。

キョン「古泉、もしやそいつらはあそこの廃ビルを拠点にしている奴らか?」

古泉「ええ、そうです」

ならばちょうどいい。

キョン「俺もそこに用事がある。手伝ってやろう」

正直、敵の本拠地に一人で突っ込むのは気が引けたところだ。



草や木ばかりの道を抜けだし、やっと谷の真ん中を通る舗装道路に出た。

古泉「ここが聞き出した護送ルートです。待ち伏せはここでいいでしょう」

元々ゲートか何かがあったように、道の両側にレンガ造りの柱とも壁とも呼べるブロックの塊があった。

キョン「なるほど、ここはいいな」

古泉「両側で挟み撃ち、ですね。……来ますよ。構えてください」


……いた!久しぶりに出会った多丸 裕さんだ。
Banditsが裕さんを前後間に挟むようにして護送している。

手の合図で、古泉がAbakanというアサルトライフル(AKの全体的に黒いバージョン的な)を構える。
そして俺も、古泉の対岸側でAKを構えた。


古泉『3,2,1……今です!』ガガガガッ!

その間を通り過ぎようとした瞬間古泉が身を乗り出し、後ろの警護のBanditsを片付ける。

Bandits2「がふっ!」

Bandits1「コイツの仲間か!くそ!」スチャ!

襲撃を知った前方にいたBandits。
古泉にめがけ拳銃を突きつけるが―――


キョン「やらせねえよ!」ガガガッ!

古泉を見つけて撃とうとしたBandistを、俺が後ろから撃つ。

Bandits1「まだ後ろn ……ぐは!」ドサァ…


こうして挟み撃ち作戦は成功を期した。

多丸裕「助かったよ二人とも。もう少しで殺される所だった」

古泉「ところで、圭一さんは?」

多丸裕「それが、まだアジトの牢屋に閉じ込められてんだ。助けてやってくれ」

古泉「わかりました。ところで、武器は……」

多丸裕「大丈夫だ。この野郎が持っていたMP5サブマシンガンで十分さ」


ゴソゴソと死体を漁るその手には、これまたアメリカ映画で見たことのあるサブマシンガンがあった。
しかし、それだけではパワー不足だと思うのは俺だけか?

古泉「これでも我々は『機関』の一員です」

裕「先ほどはしてやられましたが、同じような過ちは繰り返しません」ガチャ!

『機関』が日常的にどのような訓練をしているのかは聞かないでおこう。
やけに銃の扱いが手馴れていたり、さっきの古泉の射撃も頭部にピンポイントだったことも。





ビル陰と草木に紛れながらアジト正面へと到着した俺達。
アジトの中からは何とも下品な笑い声が聞こえてくるあたり、単なるバカの集まりかと思う。
それゆえ、多少足音を立てても気づかれないのが助かった。

古泉「……圭一さん!ご無事でしたか」

古泉が声をかけたその先はビルの下。
格子の小窓が地下から半分のぞいていて、辛うじてお互いがみえているところだった。

圭一「……その声は古泉君か」

古泉「助けに来ました。大丈夫ですか?」


圭一「大丈夫は大丈夫だが……殺されるまでそうかからないかもしれん」

キョン「助けに行きますが、そこまでの道は?」

格子を壊すって手もありだが、どうにも人の手だけでは空かないようだ。
当然といえば当然だろうが……

裕「道ならバッチリ覚えているよ。僕が案内しよう」

古泉「一応、拳銃を渡しておきます」ゴソッ

古泉「ですが、弾はそれに入っている分だけですので、使うのはいざという時だけに……」




格子戸からさらに北へ進む。

どうやらこのアジトは面倒な構造になっているようで、北側の別棟から中を通って南の本棟には入れる構造らしい。
そしてその別棟の入り口は面倒な警護がいる……


古泉「……面倒ですね」

キョン「古泉、手榴弾はあるか?」

古泉「はい。あることにはありますが……」

キョン「あそこに向かって投げろ」

俺の言ったあそこというのは、ゴミ捨て場……とでもいうのだろうか。
砂とゴミ袋が積もりに積もった山だ。


古泉「では、行きますよ」

古泉『3,2,1 ファイアインザホール!』ピン!

俺が使っていたのとは違うタイプの手榴弾を、これまたジャストに投げる古泉。
ゴミ袋と砂にボスッと埋まった手榴弾は、誰にも気づかれることなく燃焼を続け……

ドゴオォンッ!

何が入っていたのかは知らないが、爆発で舞い上がった砂と粉じんであたりは一瞬に真っ白になる。

古泉「ガスマスクをすればなんとか行けますね」カポッ



キョン「よし、行くぞ!」

以上で本日分は終了です
ありがとうございました

間が空きましたが、本日分です



1m先も見えない中、Banditsの騒ぐ声が聞こえる。

Bandits1「賊が侵入したぞ!」

騒がしいおかげで位置を知らせてくれているお礼に一つ言っておこう。
世間上、賊っていうのはお前らなんだぜ。


裕「こっちだ、ここが入口だ」

元々大型車両の車庫だったらしいそこは、コンテナと木箱が無造作に積まれていた。
煙の間からかすかにBanditsの姿。

キョン「古泉!向こうに二階につながる階段がある。そこからBanditsが来るぞ!」

古泉「再度グレネード行きます!」ポイッ!

ドゴオオオン!



爆発音とともに二階から銃声が聞こえる。
こっちの位置を特定されたか。

古泉「先ほどの煙幕が薄くなりました。そろそろ限界です」

古泉「階段を確保しましょう。こちらへ!」ガガガガ!

古泉が先頭を切り、俺がそれの援護、裕さんが後ろをけん制する。

裕「急いでくれ。さっきスルーした奴らがどんどん集まってくる!弾もそんなにないんだ!」パパパパパ!

古泉「開きました!いきますよ!」


階段を制圧し、本棟につながる渡り廊下らしいところに入ったが
……これまた狭い。
時々向こうが使ってくる切り詰めショットガンが厄介だった。

キョン「装填している……いまだ!」ガガンッ! カチッ!

キョン「……っウソだろ!?今のでマガジン最後だったぞ!」

古泉「BanditsがAKの弾を持っているはずもありませんし……」

少々懐を漁ってみるが、それらしい物も、めぼしいものも出てこない


階段を制圧し、本棟につながる渡り廊下らしいところに入ったが
……これまた狭い。
時々向こうが使ってくる切り詰めショットガンが厄介だった。

キョン「装填している……いまだ!」ガガンッ! カチッ!

キョン「……っウソだろ!?今のでマガジン最後だったぞ!」

古泉「BanditsがAKの弾を持っているはずもありませんし……」

少々懐を漁ってみるが、それらしい物も、めぼしいものも出てこない


キョン「切り詰めショットガンはこいつら使い切ってるしな」

弾切れを狙って持久戦にしてた俺が言うセリフじゃないがな。

キョン「幸い、9mm弾はもっているようだし、すまんが拳銃で応戦する形だな」スッ…カチャ!

めったに使わないだろうと、降ろしていたベレッタの安全装置を解除して、スライドを引いて銃弾を装填する。

再びスライドを半分だけ開き弾が装填されたことを確認すると、AKを肩にかけ再び進んだ。


古泉「しかし、これでまた急がなければいけなくなりましたね」

足早に本棟へと足を進める。
最も、妨げられまくりでお世辞にも足早にとは言えないが。

キョン「で、ここが本棟か」パン!パンッ!

裕「ええ。この下に牢屋部屋があるようです。あ、9mm弾少しください」カチャ カチカチカチ……

古泉「まずはここと同じ階にいる相手の頭をつぶしましょう。彼の目的でもありますし」ガガガガ!

キョン「それは助かる。こっちも仕事なんでな」スルッ…カチン!ガチャ!


見張りが多い。
そして一つだけ厳重に閉められた扉……

キョン「ここだな」スッ

俺と裕さんが扉の両脇に構える。

古泉「行きますよ……はっ!」バコッ!ピン!

古泉が扉を蹴破り、けん制に最後の手榴弾を投げ込んだ。

ズガアアア!

爆炎に紛れて飛び込む俺達。
少数しかしない銃声。
悲鳴が上がるも、また銃声に消されていった。


そのすべてが鳴り終わったとき、Borovという認識名のPDAを持つ主は息絶えていた。


キョン「……お、あったあった」

長門にもらったカードキーと同じものがコイツの机の引き出しにあった。
そして同じく部屋を漁っていた古泉が、大量の弾薬ケースを抱えてきた。

古泉「あなたのAKと同じ口径の銃弾がありました」

指を差された先を見る。
そこにあるBorovのものと思われるロッカーの中には、大量の弾薬と医療品食料品が入っていた。
流石はBandits、たっぷり溜めてるな……。

キョン「よし、おれの用は済んだ。圭一さんを助けに行こう」


ほとんど倒したのか、そこまで敵の気配はなかった。
最下層の部屋を一つずつ確かめながら、地下室への部屋を探す。

キョン「敵がいないのは都合がいいがな」


古泉「あ、階段がありました」ガサッ

圭一「おおーい。こっちだ!」

地下室には牢屋が一つだけ。
元々は配管室だったのか、パイプがゴロゴロ転がっていてうっとしい。

圭一「そこのボタンを押してくれ。それが解錠するスイッチらしい」


赤色だったランプが緑に変わりガチャ、と鍵の音が開く音がする。

圭一「助かったよ。みんなありがとう」

圭一「このまま殺されてしまうんじゃないかと、内心ひやひやしたよ」

まぁ、こんなところに閉じ込められちゃあねぇ……


古泉「ご無事で何よりです……ん?」

ふと、何かの気配を感じる。
おそらく古泉と俺がその異変を感じたのは同時だった。


先ほどの格子戸から外見る。
する戸凄まじい音とともに、大量の足が見えた。

ほとんど倒したと思っていたBanditsが、外から続々と集まっている。
今まで見ないと思ったら、そういうことか!


古泉「……やられましたね。ここから出る道は一つです。待ち伏せをすれば簡単に包囲殲滅できる」

キョン「袋の鼠……って奴か?」


>>164
する戸→すると




兎にも角にも、こんなところでジッとしていては死ぬのを早めるだけだ。

キョン「とりあえず抗戦するならするで場所を確保する方がいいんじゃないか?」

古泉「そうですね……先ほど来る途中にあった部屋を城にしますか」

そして俺たちはあわただしく地下室から出て、その部屋へと入った。
ありがたいことに格子戸もついている。がっちりしめておこう。

中にあった木箱を通路に置き、バリケードとする。
籠城とは言い難いが、少しはもつはずだ。


そこは部屋というよりも倉庫で、いろいろなものが転がっていた。
なんつーか……もうちょっと整理しろよ。

キョン「ほんと盗賊と言われるだけあって、いろんなのがため込んであるな」

ありがたいことに俺のAKの弾と、古泉と共用できるタイプの弾が大量に転がっていた。
さらに手榴弾、爆発物、食料、医薬品……宝の山だなこりゃ。

頂けるだけ頂いておく。
特に爆発物は貴重だからな。


古泉「これ見てください。このウォッカの数を……」

古泉がさした先にはどれだけあるか数えきれないほどのウォッカがあった。
しかも未開封新品。

古泉「余裕があれば持って帰りたいのですがね」

生憎、俺の懐も武器弾薬や医療品でいっぱいだ。


さて、そうグダグダ話している間にBandits共の足音が聞こえてくる。

圭一「……そうだ。この爆発物を使えば一気に倒せるかもしれない」


圭一さんの意図はすぐわかった。
爆発物に、手榴弾をテープでぐるぐる巻きにする加工を手っ取り早く終わらせる。

圭一「あとはタイミングが大事だ」


Bandits1「敵はあそこを盾にしているようだ」

Bandits2「よし、そのまま潰せ!」

Bandits共の話し声が聞こえてきた。
そこそこ固まっているようだ。手榴弾で全滅というのを考えていないのか?


古泉「行きますよ!」ピン!ゴロゴロッ!

古泉がガスタンクに括り付けた手榴弾のピンを抜き、それを通路へと転がした。
あちこちから逃げ出す足音が聞こえてくる。


キュッボオオオン!

その爆音に、思わず顔と耳を両手、バッグで塞ぐ。

手榴弾とは比べ物にならない爆発とともに、通路の一部が文字通り消し飛んだ。
設置していた木箱も、ボロボロというより原形をとどめていない。


古泉「今です!脱出しますよ」

混乱に紛れて脱出を図る俺達。
それに気付いて発砲してくる奴もいるが、ほんの数名しか生き残っていない。

裕「こっちだ!こっちに裏口がある!」

どこまで把握していたのか、裕さんが先頭に立っていた。
階段を下り、出口を目指す。


ふと、窓の外を見る。

キョン「げ!」

本当にこの言葉しか出なかった。
廃工場の方から未だに続々と、Banditsが集まってきているのだから。

キョン「おい、やばいことになったぞ」

古泉「敵の援軍が来るのは想定済みでしたが、まさかここまで大きいとは……」

古泉が手に入れた手榴弾を投げようとしたとき……


Bandits1「新手の敵だ!Dutyがきたぞ!」ガガガ!

Bandits2「なんだ!?タダ者じゃない グハ!」バチェッ!

突然外の敵が騒ぎ出し、銃声、爆発音、銃声の連続。
どうやらBanditsが一方的に押されているようだ。

古泉「おっと……こっちも来たようですね」





古泉「森さんに、新川さんです」



森『古泉、無事?』ザザッ

森さんからの無線が、古泉のPDAを通して聞こえる。

古泉「ええなんとか。脱出するので援護をお願いします」

森『分かったわ!』ババババン!

下の階でBandistとは違うタイプの銃声が聞こえる。
もう侵入したのか。


古泉「僕らも行きましょう。今のうちです」


と、油断をしていると窓から誰かが入ってきた!
どうやら屋上からロープで降りてきたらしいが……

キョン「敵か!?」サッ!

悠々と降り立ったその姿はまさに軍人。それもプロの。
髪をバンダナでまとめており、これにタバコと眼帯があると似合いそうな―――


キョン「って新川さん!それキャラ違う!」

目の前にいたのは古泉と同じ『機関』の人。

新川「どうも、おひさしぶりです」







新川「大佐、隊員及びストーカー一名を救助、脱出完了した」

某ゲームの蛇主人公よろしく報告を終えた新川さんが一息をつく。
あの後森さんたちの援護を受けながら、俺たちは廃工場前まで撤退をした。

森「無事でよかったです」

普段じゃメイド服でお目にかかることの多い森さん。
今回は男性と同じDuty隊員の服装でお出ましだ。



新川「多丸さん方の護送は私たちが行いましょう」

森「古泉はそのまま任務を続行よ」

古泉「了解しました」

そんな会話を交わしながら、森さんたちと俺は別れた。


キョン「ってか、お前の任務ってなんだ?」

古泉「今までとあまり変わりません。あなたのサポートです」


古泉「別に必要がないようでしたら、このまま帰りますが……」

キョン「ふむ……」

よくよく考えてみたら、俺はこれから未知の場所に潜り込むわけだ。
しかもブレイン何とかというトンデモ研究をしていたらしい施設にな。

それに、先の通り古泉の戦闘力は頼もしい。


キョン「だったら、俺の用事につきあってもらえるか?」

古泉「お望みでしたら」

本日分はここまでです。
これから少しペースが落ちそうな気がしますが、よろしくお願いします。




『X18』と呼ばれる施設に侵入した俺と古泉。
そこに広がるのは、巨大な地下施設だった。
廃棄されたボロボロとなった地下研究所。

一体、何があったのか。

次回 「X18」

本日分です







古びた鉄門をくぐり、工場の中へ入る。
先ほどのBanditsの領内でもあったようで、ビール瓶やらタバコやらが散らばっていた。

キョン「長門は確か地下にあるといっていたが……」

よくわからない機械の間を通り抜け、何でもなさそうな部屋に地下への階段を見つけた。

古泉「ここですか?」

キョン「たぶん……な」



無機質なコンクリート階段を、下へとどんどん進んでいく。
人一人分の細い通路を進むと、ボロイ上の建物とは違えるようなカードリーダーがつけてある扉に当たった。

キョン「長門のカードキーと奪ったカードキーで……」ピーッ

ガコン、と重い音共にリーダーのランプが青に変わる。


キョン「……行くぞ?」

古泉「はい」

錆なのか、扉自体が重いのかわからない。
ゆっくりにしか開かない扉を動かして、俺は『X18』へと入って行った。


空気がつめたい。いや、生ぬるいというべきか。
とにかく外とは違う空気だ。

ボロボロになった階段から見て、廃棄されてから相当経ったと見える。
しかし……

キョン「……電気が通っている?」

古泉「不思議ですね……。あなたの情報が正しければ、通す必要がないでしょうに……」

にしても階段が長い
どこまで潜るつもりなんだ?



地下一階というべきか、地下二階というべきか。
長く続いた階段がひと段落し、フロアについた。

キョン「……っ。死体か」

目に飛び込んできたのは死体。
その腐臭がしない事と劣化具合から見て、結構な歳月が立っていると見た。

古泉「やはり、謎が絶えませんね」

キョン「ああ、慎重に行こうぜ」


その階を一回りもせずに、破壊された防火扉を見つけた。
その先にあったのは下への階段。

キョン「気をつけろ。湿気でカビが生えている。滑りやすい」

古泉「……若干ガイガーカウンターが反応しています。極端にものに近づくのはやめた方がいいでしょう」


古泉のガイガーカウンターの様子を見ながら、一段一段慎重に進む俺達。
階段が終わると、その階の照明はほとんど死にかけていた。

キョン「お前のスーツに暗視装置は?」キューン

古泉「古いものですが、使えるのがありますのでご心配なく」キュイーン


真っ暗だった視界が、緑っぽくなりながらも確保できた。
中央にはエレベーターのような柱があり、その部屋を中心として四方に通路が広がっているようだ。

木箱や書類らしいもの、バケツ、挙句の果てにはカビパンまでが散らかっている。
歩くたびに何かを踏み、何かの音が響く。とてつもなく気味が悪い。

キョン「うぁー…薄気味悪ぃ……」ジャリッ…パキッ

やべ、なんか気味悪いの踏んだ……

古泉「気を付けましょう。転んだらどうなるかわかりませんから……」バリッ…パサッ


ふと横を見ると、いつもと様子が違う古泉。

キョン「なぁ古泉、……お前実は怖いんじゃないのか?」

古泉「何をおっしゃるかと思えば……そんなことないですよ」

そういいながら若干いつもの笑顔が引きつっている古泉。
こんな姿は早々見られないな。

キョン「Barで聞いた一つ怖い話でもしてやろうか」

あれ?俺なんでこんなこと話し始めてんだ?


キョン「ある二人のストーカーが噂の心霊スポットに行ったんだ」

キョン「それは廃工場でな、いろいろ怪しい現象が起こることで有名だった」

キョン「二人は確かめるためにその工場に入った。別に何でもない工場だった。普通のな」

キョン「で、何も起きずに帰ろうとしたその時だった――――」








オオオオオオオォォォン!



キョ泉「「ぎゃあああああ!!」」


ほんとその時だった。
建物の奥からうめき声とも叫び声とも取れる声が部屋中に響き渡ったのだから。

キョン「……今の何だ?絶対人間じゃないよな―――」ムグッ!

古泉「やめましょう。シャレになりませんよ!」

キョン「ああ!すまん俺が悪かった!やめよう!」

お互いに背をつけ後方を監視し合いながら、俺たちは部屋を回った。
こんなやり方、おそらく現実じゃ起こることがないであろう光景だ。


気を取り直して、手がかりを探してみる。

キョン「まずは……正面のドアを見てみよう」

古泉「わかりました」

俺たちが入ってきた階段から見て、正面にあるエレベーターの裏手。
そこには入口で見たのと同じような認証番号式の扉があった。

古泉「銃や爆発物で壊せる……ほどヤワではないですね」ゴンゴン!

キョン「これ、電源入ってるな。四ケタの番号とな?」





キョン「……1234っと」ピッピッピッピ……ピ

……ビー



でたらめに押しても当たるはずがなく、不正解らしい音がなった。

古泉「ここの番号はご存じで?」

キョン「ご存じなはずなかろう。手がかりを探すしかあるまい」

古泉「機密がそう簡単に転がっているんでしょうか?」

キョン「このまま帰るか?この世界から出られないままだぞ」




キョン「それにな、こういうゲームには絶対ヒントを用意してくれてるんだ」

古泉「メタなことを言うのをやめてください」



キョン「というわけで別の通路を回ろう」

古泉「わかりました―――」

と、古泉が足を一歩踏み出した時だった。



バキバキメキャバキッ!

古泉「なんですか今の音は……」

鉄が軋むような……というより、割れているような音が響く。
しかも、断続的に数回続きながら……


キョン「お前、なんかまずいもん踏んだか?」

古泉「いえ……大体、それだけでこんな音はなりませんよ。姉○じゃあるまいし……」

キョン「この建物が老朽化して崩壊寸前……なんてシャレにならんぞ??」

古泉「それはないでしょう。電気も通っていますし、研究施設なら構造もしっかりしているはずです」

キョン「だったらいいんだがね……」



そんなことを話しながらぐるぐる回っていると、廊下の隅に空間が歪んでいるところがあった。
閉鎖空間の壁を触った時のようなエフェクトだ。
耳を澄ますと、ゴォンゴォンと低い変な音が聞こえる。


キョン「なんだこれ?」

古泉「……!触ってはいけません!アノマリーです!」ポイッ

古泉がそこらにあった石を投げると、空間に捕えられた石が一瞬にして圧縮、粉砕された。
微量ながらも破片が飛び散っている。人間が入ったら大惨事になること間違いなしだ。

キョン「これが、アノマリーか……」

古泉「気を付けてください。捕えられてしまえば、死ぬのは確実ですから……」


圧縮アノマリーを避け、ロッカーの沢山ある部屋へと入る。
しかし、ここは廊下以上に真っ暗だ。

キョン「暗視装置が役に立たんな……」

古いタイプの暗視装置だからか、全く光源がないと見えなくなってしまう。
少々目が眩むが、ライトと兼用することにする。


キョン「このロッカーに何かサプライズあったり……」ガチャ

適当に選んだロッカーから医療品が出てきた。
衛生状態が心配だが、一応もらっておく。


キョン「ん?これは……」

その隣には、ハンドガードの下にグレネードランチャーがついたAKが。

キョン「……くそう。これ俺の銃に付け替えることできねえかな」ガチャガチャ……


古泉「どうしました?」

キョン「古泉、このグレネードランチャーを、俺のに付け替えることできるか?」

古泉「少々時間をいただければできますよ。貸してください」ガチャガチャ

古泉が慣れた手つきで弄り始める。
ますます『機関』の仕事が怪しくなってきた。


古泉が弄っている間に俺は別のロッカーを探すか
そう思ってた時だった。



ガコオンッ!



キョン「なっ……何の音だっ!?」

古泉「今のは!?あ、AKの取り付け終わりました」スッ

ギイィィ……バタン
カランカラン……

これがいわゆる「ラップ音」という奴だろうか。

扉が閉まる音
何かが転がる音

あちこちから音が聞こえてくる。


古泉「何かいるのかもしれません……少し見てきます」

古泉が反対側の壁へ向かっていくと

ガシャアン!

今度は何かが割れる音がした。ビンあたりだろうか?
古泉がぶつかって落としたか?と思っていたが―――



古泉「なにをするんですか!?もう少しで当たるところでしたよ!」

キョン「落ち着け!何があった!」

古泉「何があったもなにも、あなたが瓶を投げたんでしょう!?」


なかなか見られない、キレ気味の古泉がライトで足元を照らすと、瓶が割れた後の破片が散らばっていた。

キョン「いやいや、おれがそんなことするはずないだろ!」

実際、俺は何にもしていない。

古泉「しかしあなた以外にここには誰も―――」ガチャン!



―――話している間に、またも古泉の横を瓶が通り過ぎ、壁にぶち当たった。


これで分かった。
俺も古泉もお互いを監視していたうえに、どちらも何もしていなかった。
犯人は俺でも、古泉の自作自演でもない。


つまり、何かがいる。


キョン「古泉、こっち来い。集団で行動するぞ」

古泉「ええ。各自で行動したところでロクなことはありませんね」

キョン「とりあえずこの部屋を出よう―――」

ドアを開き、部屋の外に出た時だった





オォォォオォオォン……


再びあの呻き声とも悲鳴とも取れる声が、空間中に響き渡った。

キョン「今の聞こえたか……?」ガチャッ!

古泉「ええ、何かが呻くような……」サッ!


ヒタ……ズルズルッ……

古泉「……何か来ます!」


照明が生きているところまで後退する俺達。
明かりに照らされたその『何か』―――

方角からして、先ほどの悲鳴はこいつのものだったようだ。
じんわりと明かりに照らされたそれは、四足で這いつくばった―――人間。
ガスマスクをかぶってはいるが、それはマスクの役目を果たしていないほどボロボロになっている。

キョン「な……なんだコイツは……」



ゴオオオオッ!



突如咆哮してこちらへと向かってくる。
どうやら友好関係になる気はサラサラないらしい。

キョン「うわぁっ!」ガガガガガ!

AKを撃つが――――当たらない!


這いつくばる人間は案外早くないと思うだろうが、コイツの場合は違う。
後ろ足で泳ぐ蛙のように地面を水平方向に蹴っている。

古泉「くっ!早いです!―――っ!?」ガガガガン!

照準が追えない!
犬の走り方とも違うその動きは、なかなか予想が難しい動きだった。



「グオウッ!」


相対距離が1mを切ったとき、ソイツは突如としてジャンプをした。
しかしその飛距離が尋常じゃない。
走り幅跳びで計測すれば、間違いなく世界金メダルだ。

爪を立て、人間のものとは思えない牙を立てて襲ってくる。


キョン「うあっ……!」ガリッ!

わき腹を思いっきり引っかかれる。

キョン「……んなバカな!?」


防弾素材のはずなのに、いとも簡単に破けて……!

古泉「大丈夫ですか!?――――今っ!」ガガガン!

古泉が、化け物が着地した瞬間を蜂の巣にする。
いくら早かろうと足が強かろうと、流石に空中二段ジャンプ並みの芸当はできなかったようだ。


キョン「ああ、大丈夫だ。幸い皮膚までには届いてない……」

キョン「先を急ごう。あの化け物が来たらたまったもんじゃない」

もう会いたくないね、と俺は先を急ぐ。




あの化け物に引っかかれたとき、脇を通り過ぎた奴の顔を、俺は見てしまった。
マスクの向こうにあったのは

―――ボロボロの人間の顔だった。

本日はこれにて終了です


化け物、超常現象、アノマリー
常識を逸する現象が俺たちに次々に襲い掛かってくる。
そんな矢先に見つけたのは、防護服を着た死体……

次回「アクセスコード」

遅くなりましたが本日分です




一本道になってきた通路を行く。
すると、壁や天井がボロボロになってる部分がちらほらと見えた。

キョン「こりゃあ、なんだ?」

古泉「……あれが原因でしょう」

古泉が指した先には、なにやらゆらゆらと空間がうごめいている。
……蜃気楼?だっけか。
夏のアスファルトでゆらゆらなるやつ……

古泉「それを言うならカゲロウでしょう」

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

下の奴びっくりした……






古泉「これはBurnerというアノマリーで、このように―――」ポイッ


ゴオオオオオォッ!


石を投げ込むと、地中から火山のごとく炎が吹き上げてきた。
ここからまぁまぁ離れているはずなのに、かなりの熱が来る。

古泉「どうやら物質に反応するようで、あまり近寄らないのが得策かと」

何度なのかはわからないが、おそらくキャンプファイヤーよりも強いに違いない。

キョン「さっきのよりは変化が見やすいからありがたいな」

古泉「靄があれば避ければいい話ですから」



自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中


と、その通路を抜けた先にトイレがあった。……いや、トイレだったというべきか。

元便所、現―――死体安置所。
そのトイレの個室に一つの死体があった。

キョン「しかしなんだこの死体?へんな宇宙服みたいなの着てるな」

古泉「おそらく科学者用の対放射性防護スーツでしょう。となると、ここの人員でしょうか?」

キョン「……一人さびしくここで息絶えたのか? 南無阿弥陀仏……」

手を合わせ、死体のスーツのポケットからPDAを取り出して中を見てみる。

キョン「お、これは……」

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中




『よくやった!ついにLevel2へのアクセスコードを手に入れることができた。

 君たちはようやく、この研究所で何が起きたのかを調べることができるのだ。

 アクセスコードは1243だ。
 
                   X18責任者 OOOOOO』


.自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中



アクセスコード……さっきの扉のことか。

古泉「でしょうね。どうやら研究員すらここの状態を把握できていなかったようです」

キョン「……なにがあったっていうんだ」

あの化け物と言い、アノマリーと言い、超常現象と言い……
ここはどうなってしまったんだ?

古泉「いわゆるバイオハザードという奴でしょうか?」

古泉「実験の失敗に伴った薬品の流出、研究所内の汚染に生物の突然変異……というのは?」
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中


キョン「それなら何とかあの化け物は説明できるが……あの超常現象はどうする?」

人間離れした化け物は薬品の汚染で説明はつくが、まさか幽霊を生み出す実験をしていたなんてないだろう。

古泉「どうでしょうね……。幽霊―――いわゆる霊魂の定義をどうするかで解釈は変わってきますが」

古泉「霊魂の存在の真偽を証明する研究が行われていたりするのもあるわけですし……」

キョン「それはそれ、これはこれだ。大体そんなのを研究するために放射能を扱うか?」ガリガリガリ……

見ろよここの数値。ドラム缶にガイガーカウンター当てたら半端ないぞ。
つまり、

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古泉「ここは何か別の研究をしていたと?」

キョン「別の、というよりブレインスコッチャーの研究だろ?幽霊は関係ないし」

と、二人で議論をしている間に例の扉へと着く。


キョン「しっかし惜しかったなぁ。俺が最初に押したの、1234なんだよ」

古泉「末尾二ケタが入れ替わっていれば正解でしたね」

まぁ、今さら愚痴っても仕方ないか。
1,2,4,3,Enter……と。

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ギャシャン!という重苦しい音と共にロックが外れる。
そして扉も重い。

キョン「俺が先に行くから、後ろ頼む」

古泉「了解です」

さらに俺たちは下の階へと続く階段を下りる。
ところどころ崩れかけており、注意しないと危ない。
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自分たちの足音と息遣いしか聞こえない。
静かな中、この二つの音はよく響き、不気味さを増す手助けをしていた。


キョン「……ここも照明が死んでるな」

古泉「さっきの階よりはいいでしょう。一部はついているようですし」

キョン「まあいい。ライトをつけていこう」パッ

ライトをつけると、心細くもあるが視界を確保できた。

ただ、この階は上階よりひどい有様だ。
モノの散らかり様が凄まじい。

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さっきの階同様、ガラス類から紙類まで何でもだ。

古泉「下手したら足を取られそうですね」ガラン

キョン「ああ、ちゃんと下も前も見ないとな」

ライトを前と足元に振りながら、安全を確認しながら進む。

キョン「……ん?」

……ライトを前に向けたとき、何かが見えた気がした。

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ここ最近は見かけなくなった心霊番組。
あれでよく、カメラの画面に白い球体が映ってギャーギャ騒ぐだろ?
まるで、あれを自分が見たような感じだ。


古泉「……どうかしました?」

キョン「いや、なんか見えた気がして――――」

気のせいか?
確かめるべくライトを正面に向けた瞬間だった。




ガッチャアアン!!


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古泉と俺の間を何かが通り過ぎる。
しかも、当たったら尋常じゃないスピードで。

瓶……いや、ガラスの板か!?
ロッカー室と同じように、モノがひとりでに飛んできやがった!

古泉「くっ……またですか!?」カチャ!

キョン「何かいるはずだ!下水道であった姿を消す奴か?」サッ!

古泉「……姿を消すことができるならそのまま殺せばいい話です。こんな面倒なことはしないはず……」

たしかに、下水道でのあいつは突然襲い掛かってきたな
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バリッ……パリパリッ

キョン「なんだ!?」

映画で電線が切れたり、ショートした時に聞くような音。
そんな音が聞こえた……。

古泉「どこかの電気配線がショートしているだけでは?」

キョン「いや、違う……」


……この音は移動している!

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発生源はあの通路か。
すかさず通路に照準を合わせ、構える。

キョン「………」

パリパリパリ

古泉「………」

バリパリバリ……

音がだんだんと近づき、気のせいか通路が明るくなった。

そしてその音の主は、とうとう俺たちの前に姿を現した―――自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中


話題は変わるが、雷を見たことがあるだろうか?
マンションの避雷針とかに落ちるアレだ。
大概の人は見たことあるだろう。
あれの根元をよく見ると、電気が集まっているのが見えたりする。



キョン「……んな!?」

俺たちの目の前にあったのは、その電気の集合体と言っていいだろう。
いわゆるプラズマという奴か?自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中


アニメにある電気エフェクトだけが宙に浮いている、と言えばいいのか?
びりびり言っているだけの電気というべきなのか?
そんなことはどうでもいい。

キョン「……このやろっ!」ガガガガ!

なぜかはわからないが、こいつが怪奇現象を起こしている犯人だと直感した。


――だってコイツの存在自体怪奇だもん。

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古泉「銃が効くんですか!?」ガガガガ!

キョン「わからんが、撃ってみるしかないだろ!」ガガガガ!

放っておいたらまた狙わねかねん!

しかし俺たちの銃弾を気に留めないように、その電気の塊は去っていく。

キョン「くそ!まてっ!」

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古泉「あまり深くに行かれては危険です!」ガガン!

キョン「……仕方ない!古泉、伏せろ!」ガチャコッ!

さっき拾ったばかりのとっておき、グレネードランチャーを使おう。

安全装置を外し、榴弾の有無を確認する。
そして狙いをつけて、引き金を引く!

キョン「距離と角度は――勘だ!」


ドウッ!!



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発射されたグレネードが弧を描いて、通路突き当りの壁に触れ、爆発する。
狭い通路内でグレネードを撃つっていうのも無茶だが、どうやらその無茶が効いたらしい。

ゴオオオオオオッ……!

唸り声のような悲鳴と共に、プラズマの中から何かが現れる。
その現れた物体はピクリともせぬまま、地面へと落ちる。


俺たちはそっと、その物体に近づいた。

古泉「……なんでしょう、これは?」ツンツン

古泉が銃口でつついても反応しない。

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中


キョン「死んだとみていいだろう」

一発しかないグレネードを使った甲斐があった。

キョン「……だが、これはなんだ?」

こう言っちゃなんだが、頭はまるでエジプトの王様の帽子をかぶったような感じ。
体は痩せ細ったような感じで、皮膚は人間そのもの。
ただし―――




下半身はなかった。




自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中



ちぎれたような、消えているような……
でも、元から存在していなかったというわけでもなさそうな感じだ。


古泉「気味が悪いですね」

キョン「これも、実験の産物なのか?」

古泉「わかりませんが……さすがに自然の生物ではないことは確かですね」

そりゃそうだ。
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

本日分はここまでです。
諸事情で、次回まで2,3週間ほど空くかもしれないのを先に宣言しておきます


次回予告

再び地下への階段を見つけた俺達。
そこには巨大な倉庫が広がっていた。
死体の肉片と骨が散乱している光景は、そこで何があったのかを教えるかのようだった。


次回『突然変異』

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

超お待たせしました
投下します



さて、よくわからない敵を倒した俺達。
一つの関門を抜け――――てはいなかった。






キョン「……迷った」

古泉「だから言ったでしょう?むやみに追いかけない方がいいと」

キョン「……悪かったよ」

だってよ、似たような風景ばっかなんだ。
案内板もない以上、迷路をさまよってるのと同じだぜ?



キョン「……お、下への階段だ」

ボロボロに割れたガラス戸の向こうに下への階段があった。
ここが下階への階段だろう。

キョン「古泉、そこで待っててくれ。俺がのぞいてくる」

古泉「了解です。お気をつけて」

淡い赤色灯が生きているこの階段は、今までが暗すぎたせいかやけにまぶしく感じる。
壁もなぜか茶色のレンガで作られており、余計にまぶしさが増していた。




……いや訂正。
作られているというよりも、白の塗装が剥げているようだ。




階段を降り切ると、そこはどうやら一つの倉庫になっているようで、左手には入口が二つ。
どちらも同じ部屋につながっているようだ。

―――が、その扉は尋常じゃない壊れ方をしていた。



キョン「……古泉、クリアだ。降りてきていいぞ」

足音と共に華麗に古泉が参上する。

古泉「お待たせしました。……何があったんでしょうか?この残骸は?」

片方は半開きのまま扉が大きくゆがんでおり、もう片方は扉が吹き飛ばされていた。
どちらもともに、扉という役目を果たせずに終わっている。


キョン「ひどい有様だ。爆発でも起きたのか?」




古泉「照明が完全に落ちてますね……」サッ

倉庫内の照明は完全に消えていた。
廊下からの明かりがぼんやりと入ってきて、それが唯一の光源だった


キョン「気を付けないとな。ここは魔物の巣窟だ」

温泉で見るようなボイラーとパイプがそこら中に張り巡らされている。
そして床には、積み重ねられていたであろう木箱が無残な姿で散らかっていた。



その間を、木箱をよけながら慎重に進んでいくと、目の前に先ほども見たものがあった。

キョン「古泉、こっち来てくれ!」


古泉「ここにも死体ですか」


上階にもあった科学者スーツの死体だ。
作業用の足場へ向かう階段によりかかるようにして、その死体は息絶えていた。
ただ奇妙なことに、このスーツの顔面部分、つまり透明な素材でできている部分が思いっきりヘコんでいるのだ。


キョン「……何かに殴られたのか?」

古泉「単なる人間には難しいでしょう。これは科学者の調査用のですから、かなり頑丈と聞いています」

コンコンと叩いてみると、なるほど確かに拳銃弾を受けても1,2発は大丈夫そうな強さだ。

このスーツ自体も、これまた強そうな素材でできている。


古泉が脇に落ちていたライフルを見つける。
ただ、それはAKのようなライフルではなく、マガジンがトリガーより後ろにある変な銃だった。

古泉「……これはL82ですね。ぷるばっぷ式のラフルです」

強いのか?

古泉「本当ならいい性能なのですが、ZONEで流通しているのはジャムが半端ないそうで……」

ならやめとくのがいいだろう。




キョン「まあいい。とりあえず仏さんのPDAを見せてもらおうか」ガサゴソ

先の死体同様、その死体からも同じようなPDAが見つかった。
適当に操作し、目的のファイルを探し当てる。

キョン「……ん?」

ひらがなカッコわり…………



古泉が脇に落ちていたライフルを見つける。
ただ、それはAKのようなライフルではなく、マガジンがトリガーより後ろにある変な銃だった。

古泉「……これはL82ですね。プルバップ式のラフルです」

強いのか?

古泉「本当ならいい性能なのですが、ZONEで流通しているのはジャムが半端ないそうで……」

ならやめとくのがいいだろう。




キョン「まあいい。とりあえず仏さんのPDAを見せてもらおうか」ガサゴソ

先の死体同様、その死体からも同じようなPDAが見つかった。
適当に操作し、目的のファイルを探し当てる。

キョン「……ん?」









『君たちにいくつか気を付けてもらいたい。
 例のコンテナは必ず二時間おきに検査しておくこと。 また、連絡はすべて私宛に直接するように頼む。

 中央研究室へのアクセスコードは 9524 だ。

                          X18責任者 OOOOOOOO』







.



古泉「やはり、この研究所に関係のあった人物のようです」

キョン「二時間おきに検査……か。中身はなんだ?」

古泉「この倉庫にあるもの……だったりするかもしれませんね」

得体のしれないものがこの倉庫に紛れ込んでいるってか。
別に極論でもあるまい。なんせここは研究所だ。

古泉「とにかくその『中央研究室』へ向かってみましょう。資料はそこにあるはずです」

賛成だ。
こんな得体のしれないものと一緒に長くいたくない。




――――しかし、早々と逃げようとした俺たちの前に、そいつは現れた。



「グオオオオオオオォッ!」


獣の声とともに鳴り響く床。
まるで地震のように揺れ、カタカタと吊り下げ式の電球の残骸が鳴る。

ズンズンズンズン!

確実にこちらへと近づくその音は、来訪者が人間でないことを告げる。


キョン「どこだ!?どっから来ている!?」

古泉「奥です!あの木箱の積み重なっている―――」



古泉が指差した先に、その主はいた。


おそらく『直径』二メートルは超えるであろう『肉塊』。
その下の方から出ている後ろ足はゾウを連想させ、脇から飛び出た小さな破片は、先が割れていることから元々前足であったと思われる。

その化け物が一歩踏み出すたび、この施設全体が揺れ、耐えきれない物は次々に重力に負けていく。




キョン「先手必勝!」ガガガガガガ!!

幸い距離が離れている。
このうちに倒してしまえ―――



この世界でも銃でなんとかなる。
そう思っていた俺の期待は軽々と裏切られることとなった。


ガキンガキキン!


まるでSF映画に出てくる鉄を弾くような効果音は、あの肉塊自身から発せられた音だった。
そして―――





古泉「うあっ!」

キョン「……古泉っ!?」

全く予期していなかったことが起きた。





古泉が、銃弾で負傷した。



キョン「古泉っ!……くそっ!」ガガガガガ!


その時の俺は何もわかっていなかった。
さっきの、鋼鉄を高速で石をぶつけたような音の正体を。

撃っても撃ってもあいつはひるむ様子がない。
一向にあの甲高い音がなるだけ。

古泉「いくら撃ってももダメです!やめてください!」




古泉が後ろで警告したその時
俺の腹に、何かとてつもない衝撃が走った。



キョン「がふっ!?」

腹にパンチを食らわされたというレベルじゃない。
まるで小さな車に衝突されたような感じだ。


何が起きたかわからない俺だったが、そばに落ちていたものを見てよくわかった。
それは、先がつぶれた鉛玉――――銃弾だった。


キョン「アイツの皮膚が固すぎて……銃弾が跳ねているのか?」

防弾性能のあるスーツのおかげで、なんとか死にはしなかったようだが……
こんな相手じゃ勝ち目があるはずがない。



古泉「こちらへ来てください!上なら奴も登ってこれないはずです」


声のもとをたどってみると、古泉が死体のあった階段の上を辿っていた。
なるほどあの狭さなら奴も登ってはこれまい。

カンカンカンカン……

壁に備え付けられた鉄の床と鉄の手すりという何とも頼りないところだが……



「グルウッ!ゴオオッ!」ドスドスドスドス!


やはり思ったとおり、奴の脳味噌はそこまでたっぷり詰まってはいないらしい。
俺たちが上に行ってしまって、下で地団太を踏むだけだった。



と、それで済むかと思うとむこうもそうじゃない。
突然右足を振り上げ―――そう、テレビで見る横綱の様に、その足を地面へと叩きつけた。


ズッダアアアアン!


先ほどの地響きとは比べ物にならない、まるで何かが爆発したかのような揺れ。
振り落とされそうになりながらも、手すりに必死にしがみつく俺と古泉。

キョン「くっ……なんて振動だ!?」

古泉「た……立っているのがやっとです……っ!」

地震の時にうまく動けないという理由がよくわかった気がする。
バランスが取れない。立っているだけでも精一杯なのだ。


ベキッ!

そんな金属が欠ける音がしたのは、俺たちの足元からだった。
続いて カラン! という落下音がし、下を見ると、俺たちの足場を支えていた一部と思われる部品が落ちていた。

古泉「このままではいずれここも崩落します!」

キョン「何か手はないのか!?」

あの戦車のような皮膚を破れる方法はないのか!?

古泉「それは……対戦車ライフルとかを使わないと無理でしょう……っ」



何かないのか……と下の階を見渡すと
―――あった!

キョン「古泉!おれが下に降りるから援護してくれ!」

古泉「な……何をする気ですか!?」

キョン「奴を倒す!隙を作ってくれ!」




古泉「……わかりました!合図したら飛び出してください!」ガチャ!

古泉「行きますよ。3,2,1―――今です!」ガガガガガ!



古泉が跳弾を考慮しながら肉塊に撃ち続ける。
ドスドスと音を立てて地面が揺れながらも、俺はこっそりと『それ』に辿り着いた。

キョン「確かこの辺に……」バキッ

何かを踏んだ。
足元には、白骨化した死体と









―――――映画でよく見るロケット砲『RPG-7』が転がっていた。

コイツだ。しかも装填されていて未使用と来た。
この死体が撃ち損ねたのかどうかはわからんが……



揺れる揺れる世界の中、しっかりと足と膝をつき、RPGを構える。
弾数は一発だけ。確実にしとめる!
後方確認―――誰もいるわけないが、念のため。







キョン「古泉っ!伏せろおっ!」ガチッ!

中心線にあの塊野郎を合わせ、手前にある引き金を引く。

引いた指のエネルギーが火薬に増幅され、俺の上半身を後ろへと追いやる。
後ろから出る噴射炎が熱い。しかしこれのおかげで俺はぶっ飛ばずにいられるからおかしなもんだ。

RPGの先から出たひし形の物体は航跡を引きながら一直線にあの肉へと向かっていく。
発射音に驚いたあいつがこっちへ振り向く。なんと都合がいい。




あいつが振り向いたのと、弾頭が顔面にヒットしたのはほぼ同時。

ズゴオオオオォォン!!!


凄まじい爆風とまき散らす粉塵に俺はとっさに木箱に隠れる。
同時に、向こう側でも古泉が何かを盾に隠れたのが見えた。

爆音が収まった後も吹き飛んでくる肉片や何かの破片。
それらが収まったあたりで顔をあげてみると、そこにはほとんど吹き飛び何もなくなっていた。




その中に、ただ一つあったもの。
表面が真っ黒になって転がっている肉塊がそこにあった。




キョン「やれやれ。また派手にやっちまったな」

古泉「ご無事でしたか。ナイス一撃です」

あそこにRPGが無かったらどうにもならんかったがな。
俺たちは運がいいよ、全く……




古泉「……おぞましい姿ですね。これは」

キョン「不釣り合いな手足に潰れた顔面か……」

……なんか、どこかで見たことあるな。



それより先を急ごう。
何度言ったかはわからんが、こんなのにはもう会いたくない。

古泉「んっふ。同感です」

とにかく、俺たちの任務は書類を回収して長門に届けること。
さっさとやっちまって、帰るだけだ。

キョン「さて、次は……」

この中央研究室とやらに行くしかないようだな。



俺たちは先ほどの階段を上り、一度元の場所まで引き返すことにした。

更新がスローすぎてヤバいです



次回予告

中央研究室なるところに辿り着いた俺達。
そこにはこの研究所の実験と内容が詰まった場所でもあった、
怪現象に化け物、これらの正体もあるというのだろうか?

そして俺たちは、そこで『禁忌』を目撃する。


次回『中央研究室』

スローすぎてヤバい
投下します


一旦階段があった場所へと戻り、再び扉を探す。
それは思ったよりも早く見つかった。 というのも―――

キョン「ここか……」

俺たちが不可思議現象の化け物を追いかけている間に通り過ぎた通路。そこに扉はあった。
こちらもナンバーロック式で、電源も生きている。

古泉「暗証番号は9524でしたね」

キョン「ああ。9,5,2,4っと……」ピッ!

ガコン!と重いロックが外れ、扉が開いた。


中央研究室と言われても、正直ほかの部屋と変わらない気がする。
少し広くて、あちこちに訳の分からない機材が置かれているくらいか。

だがやっと、ここで何が行われていたかを突き止めることができるわけだ。


キョン「よし、手分けして探そう。俺は二階を見てくる」

壁伝いに歩くと二回への階段がある。
そこに俺は目をつけ、探すことにした。









と、その階段に足をかけたときだった



ガコォン!


突然響いたその重低音には、聞き覚えがあった。
そう。あの重ったるい扉だ。

キョン「なんで扉が!?」

古泉の奴か?
わざわざこんなところで開けたドアを閉めなくてもよかろうに。
いつもの癖か、と思っていたが



古泉「違います!僕ではありません!」

となると、またあの幽霊野郎か?



予想は半分当たり、半分はずれた。




体のそばに熱を感じる。
ふと見ると、あの蜃気楼のようなモヤが立ってるではないか。

キョン「うおっ!」サッ!

ゴオオオオッ!

身の危険を感じかわすこと間一髪。
頭の上を、デカいガスバーナーで出したような炎が通り過ぎて行った。

しかもそのモヤはそこらかしこに現れ始める。
囲まれた!


キョン「くそっ! 古泉、一旦逃げるぞ!」

狭い通路で奴を迎え撃つ。
そうすれば、向こうは回避もできないし、すばしっこくても当てることができる。


だが、物事そう簡単にはうまく運ばない。
いや、非常識にうまく運ぶも運ばないもねぇか。

古泉「だめです!外に出られません!」

その古泉の言葉に驚く俺。

古泉の指差す先には、炎にまみれた扉。

何を言っているのかわからないと思うが、ようするに扉が火だるま状態で開けられないということだ。

キョン(くそっ!これではやられるぞ)



突然目の前が真っ赤になる。
吹き出す炎とは違う、また何か別の炎が目の前に現れた!
そしてそいつは、今まさに炎を噴きだそうとしている。


キョン「……っ!このおっ!」


一か八か。
俺はAKの銃口をそいつに向け、ありったけの弾を撃ち込んだ。





ガガガガガガガ


チャリチャリチャ……


次々に撃ち出されていく銃弾と、それに伴って吐き出される薬莢。
はたして目の前の奴に効いているかは分からない―――







バシャアッ!


ガチッ!という弾切れの音とともに、その火の玉も爆散した。
ただ、目の前ということもあって俺はその衝撃をまともに食らってしまう。



キョン「ぐあっ!」ドカッ!


本当に人一人が吹っ飛ぶほどの衝撃があったのだろうか?
それとも俺が単にバランスを崩しただけなのだろうか?

ともかく俺は倒れ、そのまま床に落ちている備品に頭を思いっきりぶつけた。

キョン「いってぇ―――」

と言う間もなく、頭をつたってくる衝撃は、俺の意識をどこかへと飛ばして行った……。


































―――これは夢なのだろうか?それにしてははっきりしている夢だ。

.


一面に広がる草原。風が草を揺らしている。


そして奥に見える巨大な建造物。
あれは……写真で見たことがある。

たしか――――チェルノブイリ原発。




視界左の一部に一人の人間の後ろ姿が目に入った。
フードジャケットを着ていて、しかも太陽がこちらを向いているため顔が見えない。
体格も、あのジャケットの前ではよくわからない。
男のような……女のような……。


そしてそいつは、一歩一歩原発に近づいていく。



と、急に草原がざわつき始めた。
草の揺れる音が、ぶつかり合う音にかわる。
その中から、何かの駆けてくる音。


―――ネズミだ。



そいつが銃を構えると同時に、草の間からネズミの大群が現れた。
キーキー喉を鳴らし、真っ直ぐと向かってくる。


パパパパパパ!

フードが銃を撃つ。
左右に銃を揺らして、一面に広がるネズミを追い払おうとしているのか。

しかし、ネズミは一向に減らない。



チチチチチチ! キキキキキキ!


もう少しで襲われるのかと思っていると、ネズミたちはそいつを避けて通り過ぎて行った。
まるでそこに道が無いように、綺麗に避けていく。



その一面を覆うほどのネズミは、次々に駆けていく。
ネズミの大群は止まることを知らない。次々にやってくる。
それでも、奴は銃を撃ち続ける。

パパパパパパ!


銃声が草原にこだましている。



銃声に混じり、一つの声が響いた。






    「 S t r e l o k ! 」






フードをかぶった奴が、その声に応じるかのように振り向く。
フードの中身が視界に入る。
だが、太陽が顔に影を作り顔が見えない!



太陽に雲が近づく。
そのままだ。そのまま光を隠してくれ!

Strelokと呼ばれた奴が完全にこちらを向いた。
その影に覆われた顔に、俺はどこか見覚えのあるような気がした。

俺はStrelokの正体を見ぬまま、再び闇の世界へ引き込まれた。


















.




「―――――!」


闇の間から光が差し込んでくる。
そして、聞きなれた声がする。

「き―――だ――い!」

ぼんやりとしていた頭にスイッチが入り、聴覚、視覚と共に体のすべてが活動を開始した。




「起きてください!」

聴覚が初めて聞いたのはこの声。
視覚が起動して初めて捕えたのは、目の前にある古泉の顔面だった。



キョン「うわぁっ!」ガバッ!

古泉「やっとお目覚めですか」



あいつが爆発した後、俺は短い間気絶していたらしい。

古泉「外傷も見当たらないようですし、問題はないと思います」

キョン「……あの火の玉は?」

古泉「あなたが倒した後、すべての炎が消えました。あれが本体だったのでしょう」

見れば、扉の炎も消えている。
全て、何もなかったかのように。


キョン「とりあえず、資料を見つけなきゃいかんな」

古泉「……資料、とまではいきませんが」

古泉が歯切れ悪く話し始める。




古泉「何の研究をしていたか、はわかりました。


古泉「正直、見たくはありませんが……見ますか?」

何だろうか?
好奇心が少し湧き上がるのと同時に、不安が出てくる。




おれは、肯定の返事をした。


古泉「こちらです」

古泉がわずかに目を逸らしながら、奥の壁を指さす。

五つのカプセルというか、縦長い水槽が立てかけられている。
内いくつかは割れてたり、倒れてたりしてたが……。



そして、その中身には驚かざるをえなかった。



キョン「……これは!?」

それは、見たことがあるようで、見たことがない。
見覚えがあるはずがない。


古泉「保険の教科書で見たことがあるでしょう?」

キョン「……俺が知っているのはこんなやつじゃなかったがな」

古泉「でしょうね。なぜなら―――」















古泉「脳をいじられた胎児なんて、誰も見たことないでしょう」


水槽に浮かんでいたのは、頭が異様に巨大化した胎児だった。
手足をうずめた胎児が、そこに浮かんでいた。

ただ、その頭部は大人大の大きさだ。

胴体と頭部の比が1:1といってもいいほどの大きさだ。
水槽の中でなければ生きてはいけないだろう。
胎児の背骨に、その大きな頭を支えるほどの頑丈さはない。


キョン「……これが、ここで研究していたものだったのか?」

古泉「そうでしょう。恐らく、出会った怪物たちも……」

実験の産物―――か。
人間の脳をいじる研究なんて、正気の沙汰じゃない。
ましてや、何人もの人間をもいけにえにするなんて……。


何のために?







ズドオォォン!!

人が考えて事をしている最中になんだ!?
爆発音が建物中に響く。


古泉「扉を爆破したのでしょう。誰かが入ってくる音がします」


―――軍か。


古泉「……やはり!」

古泉がPDAをいじる。
すると無線の音が聞こえてきた。




『Garbage方面の封鎖しました。Banditsの隠れ家をも制圧しました』

『第一班、地下区画へ突入します』

『ストーカーは見つけ次第殺害。いいな』

『了解!』


キョン「……まずいな」

古泉「あそこへの入り口は一つだけです。必ず敵対します」

キョン「軍とやりあうのは嫌なんだがな……」


ドゴオオオン!


再び扉が破られる音がした。
俺たちに残された時間は、だんだんと削られるばかりだった。

以上で本日分終了です
X18書ききれなかった……


次回予告

お構いなしに撃ってくる軍。
侵攻してくる軍と交戦しながら脱出を試みる俺達。
Garbageが封鎖され、Barには戻れない。なら俺はどこへ逃げればいい?


次回『Escape』

待ってくれてる人がいるのはありがたいです

投下します


軍の奴らは一刻一刻と迫ってくる。

とにかく、俺たちがすべきことは二つ。
まず、長門が必要としている研究書類を持ち出す。
そしてここから無事に脱出することだ。

ひとまず俺たちは暗視ゴーグルを使い、ゆっくりと上階へ向かった。
ところどころにある電灯がまぶしい。

古泉「もう一世代上の暗視ゴーグルでしたら、自動的に光量を調節してくれるのですが……」

キョン「ないものねだりだな」


研究室のあった地下三階から、地下二階へとあがる。
幸いここに敵はいないようだが……

キョン「この近くに敵がいるってことだな」

そう言い終わるや否や、地下一階へと通じる階段からの足音。
しかもかなりの数だ。

装備は……あの研究所と同じ奴ならAKか。
同レベルの装備ではあるが、物量と一人当たりの質は向こうの方が上だ。

キョン「さて、どうしたもんかな」


古泉「どうでしょう。ここは強行突破でいくのは」

キョン「それだとちとリスクが高くないか?」

相手は完全武装の軍人だぞ?

古泉「お言葉ですが、ここで立て籠もったとしても弾の無駄になるだけです」

古泉「さらに相手はその手のプロ。一気にやられてしまうでしょう」

確かに、古泉の言うことはもっともな気がする。
戦いに慣れていない俺達では、プロ相手じゃどうにもならない。



古泉「ですから、こちらから先に奇襲し、相手の戦力を少しでも削った後に離脱―――というわけです」

なるほどな。そういう理由があったのか。
それなら強行突破を提案したのもうなずける。

古泉「幸い、手榴弾が少々ありますから、それで一気に突入しましょう」

そういって懐からパイナップルを二個取り出した。

古泉「先ほど、研究所の戸棚から、資料と一緒に持ってきました」

そういう古泉は、他にも医療キットなども抱えていた。


そのうちの一つを、ピンを抜かずに俺に投げ渡した。
野球ボールを取る感覚で受け取ると、その重さに少々怯んでしまう。

タイルが剥がれ落ちてゴツゴツになっている壁に背をつける。
階段を下りてくる兵士の足が見えてきた。

古泉「では、いきます」ピン!

古泉の合図で手榴弾のピンを抜き、レバーを外して一秒ほど待ち、それを投げる。




ヒュ……ドガガアアアアン!




「ぐあああっ!」



カウントをずらし、すぐそこで爆発するように調節した手榴弾。
階段を下りかけていたMilitaryの連中は避けることもできずに直撃を食らったらしい。
ドサッ、と死体が一つ吹っ飛んできたが、特に気にすることもなくなってしまった。

古泉「今です!」

キョン「おう!」

足元には気絶したか、死亡した兵士が転がっている。
屍を乗り越えて、とはこのことか。


上階へと駆け上がると、流石に今の爆発音で敵は黙っててくれないようで、あわただしく動いていた。

「爆発音だ!」

「下の階に言った奴の連絡が途絶えた。敵だ!」

ドカドカとこちらの階段側へと集まってくる。
先ほどの死体から奪った手榴弾を、さっきと同じ要領で投げる。

古泉「手榴弾を!」ガガン! ガガガン!

キョン「わかった」


キョン「ほら、土産だ!」ポイッ!


「ぐ……グレネード!!」

「グレネード! 退避っ!」



ズドオオオン!

煙が目の前を覆う。
ガスマスクのおかげでせき込まずに済んだのが幸いだった。

古泉「少々近すぎましたね。こっちにまで煙が……」

キョン「今のうちに駆けた方がいいんじゃないのか?態勢が整う前に」

古泉「そうですね。行きましょう」


爆破された扉を抜け、また一つ上階へ、そして地上へと抜けた俺達。
だがすでに、地上の工場は完全に制圧されていた。


キョン「やばっ!こっちにもいやがった」ガガガン!

古泉「二階へ上がりましょう。一階はすでに制圧されています」

建物の奥、二階へ続く階段を上がる。
後ろから俺達を折ってくる足音がするが、今は相手している暇はない。

「上へ逃げたぞ!追え!」


二階は、どうやら何かの製作作業をする場所のようだった。

放置された工作機械や作業机が至る所にあり、進路の邪魔をしていた。


キョン「コイツでバリケードを作るか?」

古泉「いえ、それを作ったところで破られるのも時間の問題でしょう」

古泉「ですから、別の出口を探して逃げた方がいいかと……」

しかし逃げるといったところで、Garbageは封鎖されている。
どこに行くんだ?


そこに、少々場違いな電子音が鳴る。
俺のPDAの呼び出し音? 軍か?

キョン「……誰だ!?」










佐々木『くつくつ。どうやら軍との戦いに巻き込まれたようだね』



―――佐々木!?


佐々木『“君達”の任務は終わったんだろう?封鎖されているGarbageではなく、こちらへ戻ってくるといい』

待て、その口ぶりだとCordonへ通じる道があるのか!?

佐々木『ああ。そこからひたすら南に行けば、Cordonに出られる。急いだ方がいいよ』

流石は佐々木司令官のナビゲートだ。


しかしだな佐々木、と俺は疑問を投げかける


キョン「お前、どこで俺が古泉と合流したのを知った?何故戦いに巻き込まれたことが分かる?」

タイミングもピッタシ。まるで俺たちが隠れるのを待っていたようだ。
まさか、発信機や盗聴器をつけているんじゃないだろうな?
慌ててスーツやPDAを調べてみるが、そのような形跡はない。

佐々木『くつくつ。それは教えられないよ、キョン。最も、取引次第では考えようとは思うけどね』



……こいつは商売人に向いているな
つくづく、佐々木には一歩敵わないことを改めて感じた。


佐々木『とにかく、僕らの場所は君を受け入れる準備ができている。いつでも来るといい』

ピ、という短い電子音と共に佐々木との通信は切れた。



キョン「さて古泉。聞いた通りだが……どうする?」

古泉「その前に、この軍の包囲をどう抜けるかですね」

もう一つ上階へと上がり、こっそり工場正門側のベランダへと抜け、外の状況を見る。
どうやら警備が厳しいのは正門のみで、脇の方はあまり警戒していないようだ。

そしてもう一つ……


キョン「……うまく抜けられそうだな」

さっきのベランダを南へ、並んでいるガラクタを足場にしてわたる。
足場が不安定だったが、追手が追い付いていないのと見張りに気付かれなかったのが幸いだ。

資材倉庫らしいところの屋根に上り、塀を超える。
古泉もそれに続き、俺たちは人知れず工場を脱出した。






ここまではよかった。




バウ!ガルルルル……



塀を超えた正面。少々放射能に汚染されている湖のほとり。
ガイガーカウンターがなるのと同時に、犬たちが一斉に吠え出してきやがった!

「……!いたぞ!こっちだ!」

おかげで軍の奴らに気付かれちまったみたいだ。


キョン「くそっ!見つかった!」

古泉「ここで応戦しても仕方ありません。逃げます!」


犬も兵士も無視して、俺たちはひたすら道を走った。
時々草木に紛れ、銃弾を避けながら南へと進む。

しばらくして、鉄製のゲートが見えた。
錆のまわったトラックや装甲車の残骸でよく見えない。
鍵がかかっているかも、と口に出すと、古泉が拳銃を抜き出した。


古泉「はっ!」ダンダンダン!!


どこに当たったのかはわからないが、ゲートは口を開き、俺たちをCordonへと導いた


――― Cordon ―――

懐かしい草木を眺め、俺たちはようやく一息つくことができた。
道中、たき火を囲ってた奴らにウォッカを勧められたが、今度は断った。



佐々木の店がある初心者キャンプへと戻った俺たちは、ひとまず店に寄ることにした。

佐々木「やぁ、無事で何よりだよ」

所定の位置に座っていた佐々木が出迎えの言葉をくれた。

佐々木「そしてそちらの方は……古泉君、だったかな?」

古泉「お初にお目にかかります。古泉一樹です」


二人の挨拶が終わったあと、俺はX18で回収した書類を佐々木に渡し、隅にあった空き箱の上に腰を下ろす。
佐々木が差し入れてくれたドリンク(流石にウォッカは遠慮した)と、朝比奈さん特製パンを頬張る。うまい。



佐々木「へぇ……これはおもしろい資料だね。早く長門さんに見せた方がいいと思うよ」

キョン「そんなに重要なのか?」

佐々木「ああ、そりゃもう……。完全に理解したわけではないけどね」


横からちらり、と書類を覗き見た古泉も

古泉「んっふ」

と、両手をあげ降参していた。



さて、こんなところに引きこもっているのもなんなので、他のストーカーと談笑しにでも行くか。

古泉「僕はここにいますので、何かあったらこちらへ」

なぁに、ただ話をしに行くだけだよ。


前来た時と同じく、数人のストーカーが焚き火を囲って談笑の真っ最中だった。
俺はそのうちの一つに入れてもらい、話に混ざった。
酒のつまみに、先ほどの冒険劇を話してやる。

「若いの。お前軍に追われてきたって?愉快じゃない話だな」

「軍ならまだいいさ。近頃はここらへんにMercenary(マーセナリー)が入り込んでるって話だ」


マーセナリー?聞いたことないな。

「Mercs ―――雇われ兵の事さ。奴ら、デカイ組織が後ろにあるらしくて、その命令でZoneに入り込んでいる」

「つい最近、この平和なCordonでも複数のグループが襲われたって話だ」

「Banditsのようにごろついてる奴らならまだいいが、奴らはれっきとした軍人だからな。タチが悪い」

「ああ。下手なMilitaryよりもタチが悪い。奴らは奇襲が得意だかな」

「アイツら西側装備だったか?Freedomの連中といい、裏にあるのはどんな金持ち組織なんだろうか?」



……どうやら比較的安全らしかったここにも、暗雲が立ち込めているようだ。


「聞いた話だとな、奴ら、軍の前哨基地を狙ってるって話だ」

「何を馬鹿なことを。あそこを落としてどうする気だ?落とせる自信があるのか?」


と、そんなことを話しているうちに一人のストーカーがものすごい形相でキャンプへ走ってきた。
息を整えた後、なにやらリーダー格の男と話している。

「……どうします?」

「くそっ……Wolfがいない時にこれか!」

リーダー格の男が苦い表情を浮かべた。
そういや、あの時のWolfって奴がいない。



キョン「……どうかしたんですか?Wolfはどこへ?」

俺は思い切って尋ねた。

「ん? もしかして、お前がキョンか」

意外にもビックリ。
どうして初対面の奴が俺を知ってるんだ?

「Wolfから聞いているよ」


Fanatic「俺はFanatic。Wolfの相棒をしていた」

Fanatic「ところがアイツ、何を思ったかここを俺に任せてどっか行っちまってな」

それからぶつぶつとWolfに対する愚痴を言うFanatic。
そして思い出したかのように本題を話し始めた。


Fanatic「実は数日前、Mercsの奴らがこのキャンプへ向けて脅迫してきやがった」


Fanatic「今日までにここを去れ、さもなくば[ピーーー]、とな」

Fanatic「どうやら奴ら、ここを自分たちの陣地にしようとしているらしい」

胸糞悪い話だな。

Fanatic「そこで、お前にもキャンプの防衛を手伝ってもらいたい」

お……俺に傭兵の相手をしろと!?

Fanatic「Militaryとやりあったお前は一流の兵士だ」

saga忘れ


Fanatic「今日までにここを去れ、さもなくば[ピーーー]、とな」

Fanatic「どうやら奴ら、ここを自分たちの陣地にしようとしているらしい」

胸糞悪い話だな。

Fanatic「そこで、お前にもキャンプの防衛を手伝ってもらいたい」

お……俺に傭兵の相手をしろと!?

Fanatic「Militaryとやりあったお前は一流の兵士だ」

再訂正


Fanatic「今日までにここを去れ、さもなくば[ピーーー]、とな」

Fanatic「どうやら奴ら、ここを自分たちの陣地にしようとしているらしい」

胸糞悪い話だな。

Fanatic「そこで、お前にもキャンプの防衛を手伝ってもらいたい」

お……俺に傭兵の相手をしろと!?

Fanatic「Militaryとやりあったお前は一流の兵士だ」

なんでメル欄消えてんだよ




Fanatic「今日までにここを去れ、さもなくば殺す、とな」

Fanatic「どうやら奴ら、ここを自分たちの陣地にしようとしているらしい」

胸糞悪い話だな。

Fanatic「そこで、お前にもキャンプの防衛を手伝ってもらいたい」

お……俺に傭兵の相手をしろと!?

Fanatic「Militaryとやりあったお前は一流の兵士だ」


Fanatic「それに比べて、ここにいるのは新米のペーペーばかり、使えるのは数人だけ」

まぁ、そのためのこの場所だからな。
わかった。協力しよう。


Fanatic「奴らは廃列車を陣地に準備をしているらしい。その間にこちらも準備させてもらおう」

Fanatic「動きがあれば偵察兵が戻ってくるはずだ。それまでには準備を済ませておいてくれ」


わかった、とうなずく俺。
いつ来るかわからない敵の姿を思い浮かべながら、俺は佐々木の店へと走った。

本日分はこれで終わりです
ミス多く失礼しました


容赦なく強襲をかけてくるMercs。
熟練兵一人が率いる若年兵数人とともに、俺と古泉はキャンプの防衛に当たった。
そして決戦日の夜、一発の銃声がキャンプに鳴り響いた。

次回『Defenders』

この物語(キョン)での難易度は主人公補正が入っているので超イージーですw

今年最後の投下です


古泉「Mercsですって!?厄介なことになりましたね……」

古泉と佐々木に事のあらすじを説明する。
すぐに戦闘準備に入りたい。できるか?

古泉「わかりました。用意します」

そういうと古泉はありったけの金を使い、佐々木から銃弾などを買おうとしていた。
だが予想外のことに

佐々木「お金はいいよ。今回はここの窮地だからね。特別さ」

と、後ろの小部屋からたんまりと弾薬を持ってきた。
中には手榴弾、グレネードランチャー、散弾まで何でもござれだ。


佐々木「キョン、これを使うといい」

佐々木が投げてよこしたのは、俺のAK用のスコープと、グレネードランチャーの弾だった。
古泉に取り付けてもらい、生まれ変わったAKを眺める。

キョン「しかし、これだけゴタゴタつけると重いな」

古泉「グレネードランチャーとスコープ両方つけてますからね。当然でしょう」

マガジンに弾を込める古泉の笑みを久しぶりに見た気がした。
ライフルにマガジンを込め、スライドを引く。


佐々木「手榴弾は各員に二つずつ。使う時は気を付けたまえ」

パイナップルと野球ボール型の二種類の手榴弾がテーブルに置かれる。
それをポケットにしまう。

佐々木「そして更に特別だ。キョン、君は対放射線アーティファクトを持っているね?」

ああ、あのウニ見てえなやつがある。

佐々木「よろしい。じゃあこれをあげよう」


そう言って渡してきたのは、レンコンの断面図のようなアーティファクト。

※海外Wikiより

佐々木「Stone Flowerだ。放射線を発する代わりに、銃弾に対する耐久性を少し上げてくれる」

まさに撃たれる前提だな。

佐々木「キョン。今回は逃げられないんだ。なんとしても相手を倒さなきゃいけない」

佐々木「それも相手は一流だ。死ぬことも、視野に入れないとね」



ハルヒ、どうか俺を守ってくれよ……。




ジャキッ!
古泉が拳銃のマガジンを入れてスライドを引く。
そして俺も、『排莢口が左側にある』という不自然なAKの装填を終え、構える。

準備は、整った。



外に出ると、もう日が落ちていて、あたりはすっかり暗くなっていた。
他のストーカーたちはすでにたき火のところに集合しており、互いに話し合っている。
その輪の中には、あの時助けたNimbleもいた。

Nimble「よぉヒーロー。今日は頼むぜ」

Fanatic「この場所は何があろうとも渡してはいかん。いいな!?」


Fanatic「まず、まともに戦えない奴は地下壕に避難させる。下手すれば同士討ちにされかねん」

まぁ、賢明な判断だろう。
戦力のプラスにならない奴らは、そうしておいた方がいい。

Fanatic「戦闘要員は俺、Nimble、Wolfの部下五人。そしてキョンと、コイズミ……だったか?」

古泉「はい、よろしくお願いします」

しかし、総計九人か。
敵の戦力は?

Fanatic「分からん。偵察によれば十名程度らしいが……数も質もこっちが下なのは変わりない」


Fanatic「しかもこの闇だ。こっちに暗視装備は少ない……」

Fanatic「多勢が無勢に勝つには作戦が肝だ。戦闘員は全員、事前に知らせた所定の位置に着け」

ここの地理は俺たちの方が詳しいから、有利になる兆しがあるってことか。

Faniticの号令のもと、Wolfの部下たちがキャンプ中へと散らばりっていく。
そしてルーキーたちは、地面から斜めに突き出ている煙突のような地下室へ続く穴に入った。

Fanatic「キョンと古泉、そしてNimbleは前方で戦ってもらう。頼むぞ」




その時、斥候が走って帰ってきた。


「連中が進軍を開始しました。北の森に入るところまでを確認!」

Fanatic「よくやった。よし、お前も戦闘位置につけ」

斥候が銃を構え、そこを駆け出す












その瞬間だった。




バァン!!




キョン「!?」


一発の銃声と、二つの呻き声。
目の前で会話をしていた斥候の頭が、Fanaticの腹が、撃ち抜かれた。


Fanatic「―――ぐあうっ!」

斥候の方は頭を撃ち抜かれて声も出せず死に、Fanaticは必死に痛みに耐えていた。



バン!バァン!バアン!



再び銃声がした。今度は三発!

古泉「あぶないっ!!」

古泉が俺とFanaticを突き飛ばす。

一発がFanaticの肩をかすり、もう一発が俺の頬の横を通り過ぎ、残り一発がNimbleの隠れていた小屋で弾けた。
古泉が俺とFanaticの座標をずらしたおかげで、俺たちは助かったが……Nimbleは危なかったな。
どうやら、敵は真っ先に指揮官クラス、熟練者を狙っているらしい。

周りに隠れているストーカーたちの顔にも焦りの表情がみえる。


しかも運悪いことに、受けた銃弾のショックのせいか

Fanatic「ぅ……」

と呻くと、Fanaticが気を失ってしまった。
ここに放置するわけにもいかない。


状況をマズイと悟ったのか、Nimbleが慌てて指示をする。

Nimble「キョン、そいつを佐々木のところへ見せに行ってくれ!」

キョン「は、はい!」


俺がのぞいても銃弾は飛んでこないようだ

しっかりとFanaticをかついだ俺は、再び店の扉を開け、その中へと入る。


キョン「重患が一名だ!」

佐々木「もう戦闘が始まったのかい?」

キョン「狙撃手に指揮官をやられた。向こうが一枚上手だった」

完全に、出端も頭もくじかれた。
ああそうとも。してやられたよ。


佐々木「……わかっているとは思うが、彼はしばらく戦えない。治療は僕がしておこう」

キョン「ああ分かっている。俺はもう行くが、お前も用心しておけ」

佐々木「わかった。幸運を祈るよ」

そう言って佐々木は見送った。

キョン「その祈りは、何よりも頼もしいぜ。佐々木」

ハルヒに次ぐ願望実現能力の持ち主だ。頼むぜ。






佐々木「………」


地上へ上がると、意外にもまだ静かなままだった。連中はこちらの出方をうかがっているのだろうか?
攻撃がない今のうちに、Nimbleと古泉の元へと戻る。

古泉「敵は未だこちらの様子をうかがっているようです」

Nimble「どうやらこちらの待ち伏せを警戒しているみたいでな。厄介だ」

うかつに手は出せないが、向こうからは出し放題。
ウザったいな。

キョン「そういえば、さっきの狙撃手は見つけたのか?」


古泉「いえ……先ほども銃声が一発聞こえたのみで、発砲炎などは何も……」

また撃たれたのか。被害は?
木々に紛れて発砲したのか?

Nimble「落ち着け。幸いにも弾は外れた。奴らはこの動揺が狙いだ。下手に動くな!」

なるほどな。流石は手馴れてる傭兵なわけだ。
しかし、これじゃ互いに押して引かずの状態だ。

こんな緊張の糸を張りっぱなしじゃ、死ねるぜ。


さて、改めてここの様子を説明しようか。

この初心者キャンプは若干周りよりも低い位置、つまり軽い谷状になっているわけだ。
Cordonを南北に突っ切る道があって、北に橋、南にはMilitaryの前哨基地がある。
Military基地側よりの所を西へ下ると、キャンプがある。

そしてまたこのキャンプというのも簡素なもので、廃村跡を再利用している。
先ほどの南北道から西へ延びた道を軸に、北側と南側に朽ちた家などがあり、周りは森と簡単な木の柵で囲まれている。
ところどころに地下室と呼べるべき場所もあり、ルーキーたちを避難させたのもそこだ。

この西に延びる道が辿り着くのは佐々木の店。
あそこには鋼鉄製の重い扉があるから、よほどのことがない限りは大丈夫だろう。


Mercsがたむろしていたらしいところはキャンプ北側の森。
そして銃弾が撃たれた方向も、おそらくそこからの発砲だろう。

キョン「……待てよ?」

奴らの狙撃手は、明らかに指揮官と上級者を狙って撃った。つまり、俺たちの事をいくらか知っている?
ということは俺たちの行動を襲撃以前から監視していたというのか?
そうすれば、俺たちの作戦が待ち伏せだったことを、斥候を出していたのが気付かれたのも辻褄があう。


そう、奴らは初めから最後まで見ていたのだ。

俺達が襲撃の対策を企てているところも。どこに配置についているのかも。


しかし、それだとこっちの辻褄が合わない。
こっちの事を把握しているのならどうして、奴らはこっちが動くのを待っている?
まさか上から目線でハンデをくれているとか、そんな甘い奴らじゃないだろう。

だとしたら……?これも敵の作戦?
敵の位置を把握したうえで襲撃をかける作戦?
……いや、だからそれならもっと準備が整う前からすればいいじゃないか。
何もここまで警戒させて、戦闘位置につかせて動かないんだと、敵側からしてもやり辛いんじゃ――――






動かない?
……まさかっ!


キョン「お前ら定位置から離れろっ!」

思わず俺は叫んだ。
わかった、奴らの狙いが!

Nimble「キョン、何を言って―――っ!?」

Nimbleが目を凝らした方向で何かが動いた。
―――やはりっ!






ピン! ヒュヒュヒュッ!


Nimble「グレネードだ!全員散れーーーっ!!」



カンッ……

「う……わああっ!」

ころころころ……

「逃げろおおおお!」


ドドドオンッ!

複数の箇所で爆発の音が聞こえ、思わず俺はその場に伏せる。
幸い、俺の周りには朽ちかけのレンガが盾になってくれたようだ。





奴らはこれを狙っていたのか。
一か所にまとまるのはまずありえないから、ばらけた後の位置で固定させ、そこをまとめて叩く。
なんともまぁ、効率的なこって……。


Nimble「全員生きてるかっ!? 来るぞ構えろっ!」

Nimbleの号令に合わせ、全員が再び北側の森に対して合わせる。

ザッザッザザザ!

草木をかき分ける足音が聞こえる。
数は一、二、三……?

明らかに少ない―――





バババババッ!

突如響いたその銃声は正面ではなく、まったくノーマークであった東側であった。

古泉「東ですっ! 道の方から伏兵が!!」



……やられたっ!

そりゃそうだ。回り道して挟むことをやるくらい決まってる。
それを目の前の敵ばかりに気を取られ過ぎていたことで、あっけなく頭の隅っこに追いやってしまった。

当然か。
なんたってここには一般男子高校生一人、少々特殊な超能力者一人と、頼れる現地人が数人だけ。
『彼我兵力差』なんて言葉を使うのもバカバカしい。


銃撃を避けるため適当な場所へと滑り込み、仰向けに寝る体制になる。

前と右から銃撃を受け、交戦しようにも頭を出せない。
そもそもとっさに隠れた場所だ。身動きすらろくにできず、銃すら構えられない。


Nimble「敵に近い奴! グレネードを投げ返してやれ! 少しでも隙を作るんだ!」

Nimbleの指示に反応し、俺達とそばにいた数人が手榴弾を構える。
ピンを抜き、レバーを抑えてカウント。

「今だ!プレゼントしてやれっ!」

黒い手榴弾が数個、向こうの森の中へと入っていく。
多少、俺の手榴弾が坂道で跳ね返ったりしないか心配だったがどうやらうまくいったようだ。


念のため、俺は隠れて耳を塞いでおく



「グレネード パッツァンリー!」


向こうから多分警告であろう叫びが聞こえ、敵が一目散に散る。


ズドドドオン!

と数発の手榴弾の爆発とともに、味方が一斉に動き出す。
流石は現役で統率がとれているというか。


俺達も今よりもマシな隠れる場所のあるところへと避難する。
ここなら銃も普通に構えられるし、撃たれても防ぐことができる。


他の奴らも村の中央付近にばらけて陣を作る。
陣とはいっても、そこらのガラクタを盾にしただけだが。

「来るぞ!構えろ!」

俺は北の森に向けて銃を構えた。
木陰からちまちまと顔をだし、Mercsの奴らが撃ってくる。
佐々木からもらったスコープを覗くと、まだこちらに気付いていないMercを一人捕えた。

キョン「食らいやがれっ!」ババンッ!

「があっ!」

引き金をフルオートで二発撃つのと同時に、悲鳴が聞こえる。
華麗なるヘッドショットだ。


さらにその奥、一人。どうやらこちらに気付いたようだ。

キョン「だが遅い」バンッ!

ヘッドショットではなかったが、おそらく胸あたりに当たったんだろう。
少しよろめき、倒れた。

キョン「この調子ならいける……」

弾もある、仲間も倒れていない。
これなら、何とか守りきれるかもしれない。

味方の調子もいい。
どうやらさっきのグレネードが、敵の調子を崩したようだ。


また一人、また一人。
さながら映画の狙撃手の様に、俺はMercsを倒して行く。
時々仲間が歓声を上げ、敵を撃ち取った事を知らせている。
この時の俺達はかなり有頂天に立っていたのだろう。

だが、そんな偶然も長くは続かない。


「うわっ! グレネード―――」


ドオオオオン!

東側から手榴弾の爆発音が聞こえる。
木や砂の破片が埃のように舞い、俺たちにかぶさってきた。


……あっちには古泉が!


Nimble「おい!生きてるかっ!?」

爆発の煙でお互いがよく見えない、危険だ。

キョン「古泉っ!返事しろっ!」

……いた!手榴弾でふっとばされて壁にもたれている。
死んではいないと踏んでいたが、この状況だ。どうなっていても―――






気を取られた俺の真横で、突然銃声がなる。




ガガン!




鉛?鉄?
熱された数個の石ころが体の中をかき乱すかのように食い込む。
その口から、血が、体という穴の開いた袋から流れ出る。

キョン「……ぐぼっ!!」

防弾素材を突き抜けた銃弾は皮膚でとどまってくれたのか、一向に中に入ろうとはしない。
銃声のした方向を見ると、ひとりのMercが硝煙の立ち上がる銃口を向けていた。



俺は撃たれた。
左の脇腹を撃たれた。


後から襲ってくる激痛。
痛覚情報が神経の伝達回路の大半を占領し、そのほか体への命令が行き届かなくなる。
手がしびれて銃が落ち、足がくすんで俺は倒れた。

長門が改変した世界で朝倉に刺された時の記憶がフラッシュバックする。
たしか朝倉に刺されたのもここだ。そしてちょうどこんな状態だったな……。


……銃声が少なくなっている。血が少なくなって俺の耳が遠くなったのか?
いや、違う。
林の方からは盛んに銃声がする。
ということは味方がやられていっているのか……。


俺を撃ったMercが近づいてくる。
倒れた場所がヘコんでいてくれたおかげで向こうの射線には入っていないようだ。まだ止めはさされない。

キョン「ならこっちが先に……」ガチン!

引き金を引いちまえばこっちの勝ちだ、と期待して引き金を引いたAKは弾を吐き出さない。
 ジャム
弾づまりか?いや、弾切れか……。

キョン「……ハハッ、残弾確認せず調子に乗ったツケか」

キョン「拳銃は……?」

手探りでホルスターを探すが見つからない。


顔を横に向けると、ホルスターの中に入ったままの拳銃が落ちていた。
撃たれたときにベルトから千切れたようだ。

キョン「くっそ……」

手を伸ばしてもギリギリのところで届かない―――いや、手が伸びきらないというのが正しいのか。
血が止まらないせいで目がかすむ。

足音が近づいてくる。味方の銃声が遠くなる。
そのMercは完全に俺を射程圏内に入れ、拳銃を構える。
ゲームオーバー……?





今なら何を信じてもいい。
釈迦だろうがキリストだろうが―――ハルヒだろうが、誰だろうが……。



ドウン!


人生最後に聞くはずの音になったであろうその銃声は、聞こえてくるはずのMercの方向からではなく、その後ろから聞こえた。
それも、拳銃にしては大きな音。

―――狙撃手!
目の前にいたMercの手が撃ち抜かれ、拳銃が落とし、反射的にに後ろを向く。
そして俺も同期するように向いた。

俺と同じようなスーツを着ているが、その体にはなかなか合っているわけではなく、少々デカい気がする。
そしてまた彼女の構えている狙撃銃も、体格には合っていないのを無理して使っている感じだ。





キョン「……佐々木よ。最近いいとこどり過ぎやしないか?」

地下の店にいるはずの佐々木がそこにいた。


佐々木「キョン!今のうちに!」

短い髪を振り上げて佐々木が叫ぶ。
俺もそれに続かんと体を起こそうとするが、痛みで立てない。

キョン「くそっ!」

立てないなら這いずり回るまで!
ベレッタの方へと体が許容する最大限の痛みをこらえて俺は足をけり出した。

ベレッタが俺の手に届き、反射的に安全装置を外す。
ハンマーが起きているのを確認し、前後の照準を未だに佐々木の方を向いていたMercに合わせ、撃った。


バン!バン!バン!バン!

とにかく撃った。マガジンが一個尽きるまで。
胴体の防弾チョッキは貫かないだろうから、そこから出ている手足、頭を狙って。

バン!バン! ガチガチッ!

キョン「……はっ……はっ!」

そして音もなく倒れるMerc。
それでも、意識が朦朧とし壊れたラジコンのように動く手は、手が引き金を引くのをやめない。
やがて引き金を引くのをやめたとき、俺の体はいつの間にか地についていた。



視界のわきにあった俺のAKを誰かが拾い、グレネードランチャーを使っている。
……ああ、古泉か。死んだと思ってたぞ。心配かけさせやがって。


「しっかりするんだ!」

「おい、目を覚ませ!」パチパチ!

誰かが俺の頬を叩く。よく見えない。
この程度で気を失うとは……と、改めて自分がひ弱いことを実感した。



佐々木「キョン!」

佐々木がすっと俺の脇腹に触れる。
いや、触れたというより何かを当ててきたのか。

「すまない。僕がもう少し早く思い立っていれば……」

……泣いているのか?
佐々木が泣くなんて珍しいな。

その顔を見ようとしても見えない。
もう……ダメか……。


―――――――






キョン「はっ!?」

目を覚ましたのは、佐々木の店だった。
俺のほかにも数名の重傷者が俺と同じように寝ていた。

佐々木「キョン、気が付いたかい」

店主が店の奥から姿を現す。
しかしその服装は俺の見慣れていたものではなく、俺と同じStalker達とおなじスーツ姿だった。

さっき俺を助けてくれたのは他でもない。この佐々木なのだ。
しかし女性にしてはゴツ過ぎる服装だが、ふと『似合っているな』と思ったのはなぜだろうか?


佐々木「……あんまり見ないでくれ。自分でも似合ってないとは思っているんだ」

そうはいってもなぁ……。
うん、悪くはない。



佐々木「ともかく、今は休んでてくれ。君は患者なんだ」

その前に、ここは助かったのか?
古泉やNimble達は?

佐々木「彼なら無事さ。頭にこぶとかすり傷ができた程度」

佐々木「ただ、Nimbleは腹部に被弾、Wolfの部下は、ほぼ全滅してしまったよ……」


どうやら手榴弾を投げられた時に半数が、その後各個でやられたらしい。
と、いつの間にか隣にいた古泉が解説した。

古泉「危なかったです。あの時佐々木さんが加勢してくれなければ、我々は全滅だったでしょう」

佐々木「僕はたいそうなことはしてないさ。ただ、キョンを助けようとして中途半端になっただけだ」

古泉「こういう言い方は失礼でしょうが、あなたという突然の乱入者のおかげで敵が混乱し、その隙を突けました」

佐々木「お役にたてたのなら結構だ」

とにかく、二人が無事でよかったよ。


しかし、俺はあんなところを撃たれたのにそれほど酷い傷じゃないようだが……。

佐々木「StoneFlowerアーティファクトのおかげだろう。皮膚が固くなって軽傷で済んだようだ」

ま、超人になるほど固くはないみたいだったがな。
お前がくれたアーティファクトだったな。感謝するよ、佐々木。

そんな談笑をしながら、俺はカバンから取り出した朝比奈さんパンその二を食べる。
うん、うまい。


あいつ等は今でも元気だろうか?


やがて夜が明ける時間になった。
俺もBarへ行かなけりゃいけないし、行こうか―――。

佐々木「キョン、馬鹿を言うんじゃない。その状態で何ができるというんだい?」

佐々木「スーツはもはやスーツの意味をなしていないし、体力も限界だろう。少し休みたまえよ」

自分の体を見てみると、なるほど確かにスーツはボロボロであった。
替えのスーツなんてくれたり……しないよな。

佐々木「ふむ……」


佐々木「生憎だが、ここにあるスーツといえば僕の来ているこれしか在庫がない」

佐々木「そしてこれもまた売り物だったものだ。当然、代金は貰いたいところだ」

佐々木「僕が使った分を割引して、12000Ruだけど、どうする?」

PDAに入っている電子マネーの額には程遠いな。
どうにかもう一息、と商店街の主婦おばさんを見習っておくべきだった。

佐々木「そうだね……別にしてあげないほど、僕は悪魔じゃない」


佐々木「ここはひとつ、僕の依頼を受けるっていう形でどうだい?」

キョン「ほう、依頼か」

佐々木が商売人モードに入ったのが分かる。
こうなると、俺は従うしかない。

佐々木「さて、まずはこのPDAを見てほしい」

佐々木が差し出したPDAには、南にある軍前哨基地のマップ。
おい、何を考えているかわかってきたぞ。


キョン「まさかここにケンカ売って来いというんじゃないだろうな?」

佐々木「まさか。ただ奪われたものを返してほしいだけさ。窃盗は犯罪だろ?キミは警察さ」

佐々木「実はこの間、北方ギリギリのところまで旅立ったストーカーから貰った資料が軍に横取りされてしまってね……」

北に行った人間の資料か。
つまり、それを取り返してほしいと。

佐々木「そういうことさ。別にあそこを全滅させてもらいたいんじゃない。むしろ派手な動きはやめてほしい」

佐々木「軍にケンカを売るというのは、常識的な人間がやることじゃないよ」


この行為そのものが、すでにケンカを売っていることになるじゃないのか、と思うのは俺の感覚がずれてるのだろうか?

佐々木「実は、あそこの前哨は夜の警戒が非常に緩い。特に深夜は二人だけだ」

ほほう、それはまた有益な情報なこって。
しかし、いくら隠密にったって、万一戦闘になったら俺はすぐにジ・エンドなんだが……。

「それでは、僕が行きましょう」

ふと、声のした方向へ顔を向ける。






古泉「こういう任務は、我々『機関』の十八番ですので」

本日分はこれで終わりです
ありがとうございました



再び夜がCordonがつつむ。
Cordon南にある軍の前哨基地へ忍び込む古泉。
果たして俺は、佐々木の着たスーツを手に入れることができるのか。

次回『刺青』

本日分投下します


一体どれくらい待ち続けたことだろう?



夜風が静まり返った村の木々を揺らす。
僕、古泉一樹はブッシュの中で息をひそめていた。


「ルックアス!」

「「ハハハハハ!」」

下品な会話と笑い声が聞こえるここは、軍基地から反対のずっと北側にあるBanditsの溜まり場。
僕はただただ、チャンスを待ち続ける。

軍基地に盗みに入りなおかつ、跡を濁さないようにするのは、これしかない。



瓦礫の中から様子を見続ける。
焚き火を囲ったBanditsが警戒心もなしにはしゃぐ。

「ちょっと小便いってくらぁ」

「犬っころに食われんじゃねーぞ!」ハハハハハ!

来た。
警備もされていない朽ちた門から、悠々と。

「~♪」

鼻歌を歌いながら近づいてくる。警戒心はない……。



今!


古泉「貴方に恨みはありませんが……失礼します!」シャッ!



「―――――っ!?」


懐に忍ばせておいたナイフを右手に持ち、そっと相手の首元へ回しこむ。
相手の左首筋に立て、ナイフを引いて動脈を一気に斬った。

ブシャアアッ!

「あぅっ……!」グタッ…

たいそうな悲鳴を上げる間もなく血が吹き出し、痙攣を起こしながらBanditは倒れた。
返り血は最小限しか浴びていない。最も、浴びたというのも手首だけ。

古泉「……慣れたくは、ないものですね」

必要なものをはぎ取り、死体を犬がごろついていた場所へと投げておく。
後は自分のテリトリーへ隠すなり食い散らかすなりしてくれるでしょう。


そして僕は再び南へ。
軍基地の少々手前、数百メートルのところへやってきた。


古泉「ここに隠しておけばバレないとは思いますが……」

自分の潜入に必要のない荷物を隠しておく。
そして服―――先ほどのBanditsからはぎ取った服―――を着て、軍基地へと近づく。

基地から北東のところ。木々が生い茂っているところに、僕は双眼鏡で相手方を監視する。

古泉「……情報どおり、歩哨は二人のみですね」

しかし歩哨が二人とはいえ、闇にまぎれて正面から忍び込むというのは些か気が引ける。
いくら『機関』で隠密行動に慣れてるからといっても、見つかる可能性だってゼロじゃない。


古泉(さて、どうしましょうか……)

ふと軍基地正面を見ていた視線を左にそらす。
すると渡りに船といったところか、うまい具合に倒木がフェンスを潰している。
一番開けていて見つかりやすい場所ではあるが、この暗闇に紛れればそれをかわすのも難しくはない。


古泉(道中でミュータントの類に会わないことを願いましょう)

今着ているのは丈夫なDutyスーツではない。ただちょっと丈夫な他人のジャケットだ。
犬にかまれただけでも傷を負ってしまう。

古泉(それ以前に、犬の吠え声で警戒されることが一番心配なのですが……)

ZONEで危険なものその一、ミュータント。
当然Militaryだって、それを警戒する。


古泉「ふんもっふ」スタッ

草木に紛れ、音を立てないように木を乗り越えて塀の向こう側へ。
正面には兵舎らしい建物があり、すぐ右手にある建物は見張り台の一種のようだ。



古泉「では早速探しましょうか」

佐々木さんがつけていた発信機によれば、目的の品物は兵舎のなかだ。
そしてドアの鍵は開錠されたままの様子。

古泉(中から音はしないようですし、誰もいないのでしょうか?)

しかし正面から堂々と入る気はさらさらない。
『機関マル秘テクニック』がこう役に立つとは思わなかった。


窓をそっと開け、体を滑り込ませる。
Dutyスーツより軽いから動きやすい。この作戦で行ってよかったのかもしれない

どうやらここは寝室のようで、複数の二段ベッドに、いびきをかきながら寝ている兵士が何人かいた。
何人か、とはいっても、軽装備の今の僕を寝起きであっても倒してしまえそうな人数だ。

古泉(発信機によれば……)

PDAのスピーカーをふさぎ、操作音を出さないように発信源を見る。
それは戸棚の中。意外に簡単にみつかった。

古泉「これですか―――!?」ガタッ!

そのケースは予想以上に重かった。
危うく落としそうになったものの、ギリギリ体勢を立て直すことに成功する。

古泉「ふぅ……」


そしてそれをそっと持ち出し、僕は帰路へつく。


『行きはよいよい、帰りはこわい』とはいいますが、全く持ってその通り。
というのも、先程利用した木の道が使えなくなっていたから。

古泉(どうやら歩哨の巡回ルートに入っていたようですね)

二人だけの歩哨でどうやって広範囲を効率的に監視するのか。
いたって簡単。定点監視だけでなく、ただポイントを決めて移動すればいい。

そしてそのポイントの一つに、あの倒木の進入路が入っていた。

古泉(まぁ当然といえば当然ですか……)

ここに抜け道があります、ハイどうぞご自由にお使いください、なんてほどこの世は甘くない。

古泉(残る道は……)

ここは検問所を兼ねている。つまり、施設の中を道が一本縦断しているわけであって。
だとすれば……

古泉(警備が厳しくない、ZONEとは反対側出て行って回り込めば、何とかごまかせるでしょう)



―――――

夜が明け始めた。

古泉が軍基地へステルスミッションをしにいっている間、おれは佐々木の店でただひたすら寝込んでいた。
別にもう寝込む必要はないのだが、佐々木司令官からそう伝えられているのである。

キョン「しかし、古泉の奴は大丈夫だろうか?」

佐々木「PDAをみるに、回収を依頼した物の座標が慌てて移動しているから、何らかの動きがあったのは確かだ」

となると、成功したのか?

佐々木「この移動主が、彼だとしたらね」

そうか、軍基地の奴らが動かしているという可能性もあるか。
アイツのことだ。しくじる事はないと踏んでいるんだが……


それからしばらく他愛もない話をしていると、店の重たい扉が開き、古泉が顔を覗かせた。

古泉「どうも遅くなりました」

キョン「おっ、無事に帰ってきたか」

佐々木「その手荷物は、僕の頼んだものかな?」

古泉の右手にはライフルが、もう片方にはトランクケースがぶら下がっていた。

古泉「はい。少々苦労しましたがね」










古泉「うっかり見つかったときは、もうどうなることかと思いました」んっふ


……見つかった?

キョン「おいおい、それ大丈夫なのか?報復とかしにくるんじゃ……」

佐々木からは刺激しないようにって言われてただろう?
あいつらなら仕返しをしてくるだろうし……。

古泉「その点はご心配なく。ちゃんと対処してあります」

そうか、ならいいか。
ここがヘリのミサイルで焼け野原になってしまうのはかんべんだからな。


古泉「もっとも、この先を拠点にしているBanditsの方々は無事ではないでしょうが」

……どういうことだ?


古泉「僕はこのDutyスーツの格好で行ったわけではありませんよ」

古泉「途中でBanditsの服を剥ぎ取らせていただきました。仮に仕返しをするなら、Militaryは彼らを襲うでしょう」

よく考えたもんではあるな
だが、なんというか……

キョン「意外にえげつないな。おまえ」

古泉「ほめ言葉として受け取っておきましょう」

皮肉ともいえないがな。


佐々木「……さて、ブツを渡してもらおうか。確認しなきゃいけない」

今までどこにいたのか、佐々木が待ち構えていたように身を乗り出す。

古泉「ええ、どうぞ」ゴト

先程のトランクケースを佐々木に渡す。
置いたときの音からして、重いというのは想像できる。

佐々木「どれどれ……」ガチャリ

鍵を開けたトランクケースの中には書類とフラッシュドライブが数個。
重さの原因は中身を守るために増強された外殻らしい。

佐々木「まちがいないね。依頼したものだ」


よし、これで仕事は終わったな。
佐々木、報酬忘れてないだろうな?

佐々木「もちろん忘れるわけないさ」

佐々木「ほら、持って行くといい。中古品だが、そこは我慢してくれ」バサッ

佐々木がいつの間にか脱いでいたスーツを俺に渡す。
中古品だろうがなんだろうが、使えればそれでいいさ。

キョン「早速で悪いが、着替えさせてもらうか……」

佐々木「うん。そうするといい」





キョン「………」

佐々木「?」


いや、某淫獣のようなわけの分からないというジェスチャーをされても困るんだが。
すまんが佐々木、着替えている間奥で待っててくれないか?

佐々木「大丈夫だ、僕は気にしない」

佐々木「続けたまえ」

お前がよくても俺がダメなんだよ。

キョン「というわけで、頼むから向こうに行っててくれ」

佐々木「くつくつ。残念だね」

……たまに佐々木の発言が本気なのか冗談なのかわからなくなる。


佐々木が店の奥へ行ったのを確認して、俺は着ていたスーツを脱ぐ。
……銃創やらなにやらで全体がボロボロになっていて、使い物にならないのは一目瞭然だった。

キョン「しかし、風呂に入らないのは気持ち悪くなるもんだな」

この世界で何日経っただろうか?
それまでずっと風呂どころか体も洗っていない。汗臭くていやになる。

古泉「濡らしたタオルで体を拭くだけでも、ずいぶん違います。試されてみては?」

なるほど、そういうやり方もあったのか。


Barについたら水道を借りよう。
ここじゃ水道じゃなくて井戸水だからな。


キョン「よいしょっと……」ヌギヌギ

古泉「……? あなた、刺青なんてしていたんですか?」

おい何人の着替えをガン見してやがる。お前といい佐々木といい一体―――





キョン「刺青?」

そんなの入れた覚えはないぞ?
そもそも、俺は刺青なんて入れない。刺青なんて入れたら銭湯にいけなくなる。


古泉「今までスーツで隠れていたので見えなかったんですね。右腕に何か文字が……」

着かけのスーツから見える右腕に目線を落とす。
確かにそこにはくっきりと、黒く文字が彫られていた。




ただ 『S.T.A.L.K.E.R.』 と。




キョン「ストーカー……?」


キョン「……なんだか気味が悪いな」

気になる気になるといえども、この場で消すことはできないので放って置く事に。





―――――


キョン「よし古泉、準備はできたか?」

古泉「ええ、いつでも」

佐々木「もう出るのかい?もう少しここで休んで行ってもいいのだよ?」

そうしたいのは山々だが、一刻も早くゲームをクリアして、元の世界に戻らないといけないのでな。

佐々木「うん、それもそうだね。僕は引き止めはしないさ」


キョン「じゃあ、行くか」

古泉「わかりました。では、失礼します」

キョン「ありがとな、佐々木」

ライフルとバッグを持ち、重い扉を開ける。
振り返った時に見えた佐々木の目が寂しそうだったのは気のせいか?

そう思った顔はぱっと変わり、ただ一言



佐々木「グッドハンティング、ストーカー」



いつもの、佐々木の見送りだった。


鋼鉄の扉を開けると、すでに頭を出した太陽が地表を照らし始めていた。
しかしながら、うっすらと寒い。まだ完全に朝ではないらしい。
そんな時間でも、焚き火の周りには人がいた。

「おっ、ヒーロー。お出かけかい?」

キョン「ええ、そんなところです」



キョン「さて、Barへ向うか」

古泉「このまま北上すればGarbageですから、昼ごろにはつくでしょう」

そんなことを話しながらCordonを歩く。
比較的ミュータントなども少ないこのエリアは、のんびり歩いてリラックスをするのにちょうどいい。

鉄橋の橋げた――Militaryの部隊が屯していたところ――へついたが、何故か彼らは姿を消していた。
おかげで回り道をしなくてすむ。


――― Garbage・Bar間のDutyゲート ―――


戻ってきたはDutyの管理するゲート。
気のせいか、前きたときよりも少し警戒が厳しくなっているような。
これもあのMercsの影響なのだろうか?

キョン「よっ!お疲れさん」

DutyA「おお、あのときの若いの!DarkValleyに軍が向ったと聞いて死んだと思ってたぞ」

DutyB「コイズミさんも元気そうで何よりで。今門を開けます」

その隊員が手を上げるや否や、ゲート前の見張りが忙しく作業を進める。

そしてBarへの道を歩く。
道中にあるアノマリーや、犬の群れに気をつけながら。


―― 『T.F.E.I. Bar』 ――


アイセッカミン ドンスタンデア!


Barのなかにあるバー、それが『T.F.E.I. Bar』
俺はまた戻ってきたのだ。

相変わらず人の絶えないこのバーには、部室のような雰囲気が漂う。



朝倉「あらキョン君、無事に戻ってきたのね」

一番目の出迎えは朝倉だった。
少々気に食わなかったが、誰かが出迎えてくれることに悪くないと思った。

みくる「あっ、キョン君!おかりなさぁい」

二番手はメイド服朝比奈さん。
すばらしい。


そして三番手は相変わらず無表情な長門。

長門「無事なようで何より」

長門が数μ単位で表情を緩めた気がする。
まぁ、死にかけもしたが何とか生きているぜ。

長門「X18の資料は古泉一樹から受け取った。しばらく休んで」

その後古泉はどうしたのか?と聞くと、どうやら一旦Duty本部へ戻ったらしい。
それだけを口にした長門は、パンと缶詰の盛り合わせを置いて奥へ戻っていった。



だが長門よ。食事を置いていってくれるのはありがたいが、食べかけを置いていかれるのは困る。


「兄ちゃんや、DarkValleyの廃工場に入ったとかいったが、あれ本当かい?」

適当な席にひじを着いて飯を食っていると、隣のストーカーが話しかけてきた。

キョン「ええまぁ。不気味な研究所で、ろくなもんはありませんでしたが」

「おいおいマジかよ。あの噂は本当だったんだな」

噂?

「何だ兄ちゃん。噂を聞かずにあんなところへ入っていったのかい。一部のストーカーの間では有名な話さ」




「その噂ってのが『あの廃工場には地下室がある』っていう出だしから始まる」

「建前上は地下倉庫だが、設計図を見たあるストーカーが『それにしては大きすぎる』といってな」

「そもそも工場自体不気味だから近づかないってのに、そいつは地下室まで行きやがったんだ」

「そこにあったのは、厳重な電子ロックさ。カードキータイプだったらしいが、そのストーカーは針金を使った自慢のテクニックで破った」

「それから数日後、そのストーカーはボロボロの状態で帰ってきた」

「ただ一言『あそこは行くべき所じゃない。亡霊が住み着いている』とだけ言い残して、そいつはZONEを去ったらしい」


……なんだか胡散臭い話だな

ハハハそりゃそうだ、とストーカーが同意する。

「俺だって100%を信じちゃいないさ」

「そもそもよ、電子ロックを針金で破るってどんな超人だよ、って話さ」

確かに。
どうしてそんな腕のいいピッキンガーがここにいるのかと。


「だがな、全て否定できるわけじゃない。あんたも現に、あそこは研究所があったって言うじゃないか」

確かにそうだな。
カードキー式の電子ロックの話は完全に一致する。
亡霊の話だって、もしかしたらあのプラズマ野郎のことだとすれば、辻褄があう。


キョン「噂も馬鹿にできやしませんね」


そこで長門からお呼びがかかった。

長門「来て、話がある」


呼び出されたるは、あの奥の部屋。
そしてそこには長門と同じインターフェイス、喜緑さんがいた。

朝倉「お店、朝比奈さんに任せたけど大丈夫かしら?」

朝倉がやってくる。
これで全員そろったのか?


長門「では始める」

長門「……まずは、X18について」


長門「X18では、スコッチャーの原型、パーツを作っていた」

キョン「分かってはいたが、やはりスコッチャーは人造だったのか……」

まぁ装置という時点で人造だと思っていたが。
人を狂わせる装置を人が作るなんてな……

朝倉「そういうことね。そしてその完成品はある場所に運ばれていっている」

ある場所?



長門「それが、Yantar」


Yantarっていうと、あの発信源だといわれているアレか?

喜緑「そうです。詳しいことは分かっていませんが、恐らく今稼働中のものがX18で作られたものらしい、と」

朝倉「エゲツナイ実験も行ってたみたいよ?人体実験とか」

ああ、見たよ。
異様にでかい赤ん坊の頭をな。

長門「……放射能の細胞変質によるものだと推測される。その旨の実験もしていた模様」

……ああ、ヤダね全く。
最悪だよ。あんな研究所。


キョン「……どうしてそんなのを作るんだ?」


朝倉「北に行かせたくないから、じゃないの?」

そこだよそこ。
何で北に行かせたくないんだ?

喜緑「あなたは、願望機――『モノリス』の噂を聞いたことありますか?」

モノリス?
月にあるとかという、石柱のことか?

朝倉「キョン君SF映画の見すぎよ。月にはそんなものないわ」

宇宙人さん、俺の幼い頃からの夢を砕かないでほしいんだが。


朝倉「簡単に言えば、CNPPの石棺の中には願いを叶えてくれる石柱がある、って言う話よ」

願いを叶えてくれる石柱、ね。

キョン「この世界にムー大陸が存在する、って言うくらいこれまた胡散臭いんだが」

朝倉「それがバカにできないのよ。この怪しげな機械に、Monolih派閥なんてのもあるし……」

Monolith派閥?

長門「いわゆる狂信者団体のようなもの。彼らはただCNPPへ通じる道や異教徒とみなした者への攻撃を行っている」

長門「そのほかは一切不明な派閥」


話をもどそう。
つまり、その『モノリス』とやらを守るために、ストーカーたちを北へいかせていない。

キョン「そのための、スコッチャーか」

長門「そう。 そしてあなたの言っていたストレロク。彼のグループはその中心にたどり着いたという」

キョン「しかしどうやって……?」

長門「それは不明。いかにしてスコッチャーを抜けたのか」


喜緑「しかし情報はゼロではありません」

長門「彼らのグループの一員、Ghostという男がYantarで活動しているという情報を手にした」

長門「その人物と接触できれば、何か分かるかもしれない」

ストレロクの基地にあったフラッシュドライブの音声ファイルに出ていたな。
Yantarにいたのか。

長門「そこで、もう一つ依頼をしたい」

ん?仕事か。


長門「移設先であると想定されるYantarにある『X16』の調査を依頼したい」

また研究所か。
んで、詳細な位置は?

長門「不明。しかしながら、Yantarには科学者がキャンプを張っているから、情報には困らないはず」

朝倉「ついでにGhostのことも調べることもできて、一石二鳥でしょ?」

一石二鳥ねぇ。
二兎追うもの一兎も得ずにならないことを祈るぜ。


別にいくのはいいが、少し休ませてくれ。

長門「かまわない。ここはバー。ゆっくりしていくといい」

最近は撃ち撃たれの繰り返しだったからな。
まともに安心して寝てない。

キョン「あと、古泉を連れて行っていいか?俺一人じゃドンパチは荷が重過ぎる」

以前の戦闘でもよく分かった。
俺一人だったら、何度死んでいたことだろうか?

しかし―――


朝倉「残念だけど……」


長門「古泉一樹は同行不可能」

……!? なんだって?

朝倉「さっき呼ばれた理由、どうやらFreedomとひと悶着あったみたいでね、厳戒態勢にかりだされてるの」

Freedomっていうと、Dutyの敵対組織といってたか。
だから古泉も引きずり出された、と。

朝倉「だから、いくらキョン君でも古泉君を連れて行くことはできないと思う……」

キョン「そんな……」

俺一人でどうにかしろって言うのか?


朝倉「……なら、私がついていってあげようか?」

……は?
お前は何を言っているんだ?

朝倉「私が、あなたのガードマンになる。これでいいんじゃない?」

お前にできるのか?

朝倉「あら?こう見えても私は立派なヒューマノイド・インターフェイスよ。なめないでほしいわね」

朝倉「情報操作なんて使えなくても、十分戦えるわ」






朝倉「なんなら、銃持ったあなたと一戦交えてもいいわよ?」


朝倉が一瞬こちらに向けた視線がマジのような気がした。
そこで長門がとめに入る。


長門「朝倉涼子、今のあなたにはそのようなことは許可されていない」

朝倉「わかってるわよ長門さん。冗談冗談」

俺には冗談に聞こえないんだよコンチクショウメ

朝倉「怒らないでよ。ついていってあげるから」

……はぁ。


長門「……朝倉涼子を同行させるなら、万一のため私を同行させることも推奨する」

朝倉「なぁに、長門さん。私を信用してないの?」

長門「この世界では私の能力は半減している。自信がない」

長門が珍しく弱音を吐いている。
さて、どうするべきか。


1.朝倉と向う

2.長門と向う

3.朝倉と長門と向う

本日はこれで終了です
ためしに安価導入してみました。
>>430お願いします



X16という施設を探すためYantarへ向う俺たち。
その道中で、一機のヘリが墜落する。
混信するPDAの無線信号。
そこから発されたSOSに応えるため、俺たちは向った。

次回『Wolfhound』

3

2ヶ月経とうとしてる……

投下します


キョン「なら二人とも連れて行く。これでいいだろう?」

数は多いに越したことはない。
戦闘では長門が少々頼りない気もするが、朝倉がカバーしてくれるだろう。
だが情報関係のことも視野にいれれば、長門が一歩リードする。
いいじゃないか。

朝倉「ま、いいか。この退屈なところよりは楽しいわ」

こいつ、本当は戦闘用のインターフェイスじゃないのか?

キョン「まぁいいや。とにかく、今日はゆっくりさせてもらうよ」


とはいっても、飲み屋の中にずっといるのも気が引けるので外に出ることに。

前もいったかもしれないが、ここBarはDutyの拠点でもある。
あちらこちらを隊員がうろつき、下手に発砲しようものならすぐに撃ち返されるだろう。

俺が入ってきた入り口は南東にあり、そこからいくつかの倉庫を抜けて入る。
そして入ってすぐ右手にあるのが、長門の店だ。

Barをずっと西へ行くとDuty本部がある。
厳戒態勢が敷かれているせいか、門番の数が異常だ。
なにせ塔の上に狙撃手までいるのだから。


特に何も考えず、ただただ歩いていく。
時折貯水槽のようなものが見え、その間から吹く風が気持ちいい。

これで静かだったらいいんだが、時折聞こえる放送がうるさいのがたまにきずだ。

『Free stalkers, Join Duty! Protecting the world from the contagious Zone!』
(ストーカーよ、Dutyへ入隊せよ!広がりつつあるゾーンから世界を守るのだ!)

Dutyという組織はZoneをしているということだ。
古泉たち『機関』がここに入ったのも、多少うなずける。


しかし暇な事この上ない。
今までドンパチを繰り広げて命がけだったのが嘘のようだ。

ふと横を見ると『アリーナ』と書かれた看板。
話を聞いてみるに、ここは決闘場だそうだ。

施設の中は上階から下の広い部屋を見渡せるようになっており、観客が沸いていた。
金をかけてどちらが勝つのかを見る観客と、賞金を手にするため戦う参加者。
コロッセオを連想させるようなその光景は、見ていてあまりいいものではない。

覗いてみると、一人の挑戦者が複数の挑戦者を相手取っていた。
惜しいところまではいったが、やはり数には適わなかったのか、一人の挑戦者は銃弾に倒れた。

一試合見て、見る気が起きなくなった俺はアリーナを出る。
日も暮れてきたし、長門バーにでも戻るか……。


http://www.youtube.com/watch?v=WDCNlqMgnvo


“Dancing on the ashes of the world, I behold the stars...”
(灰にまみれた世界の上で踊ろう 星を見つめながら……)

長門のバーに戻ると、少し悲しげな洋楽がかかっていた。
何の曲だろう?


朝倉「いいと思わない?この世界にあってると思うんだけど」

悪いがおれは英語の成績があまり良くてだな、ほとんどわからん。

朝倉「死んだ世界の上で生きる人の姿を歌った歌、ってところかしらね」



長門「……ところで、今回の報酬」スッ

そう言えばすっかり忘れていた。
全く、あの研究所にしろキャンプ襲撃にしろボロボロになったからな。
スーツは佐々木のを貰ったといえ、銃弾その他は買っておかないと。

長門「そう……」

気のせいか長門の眼が冷たくなった気がする。
なんだろう、この感じは……。

そんなことを気にしながらも、とりあえずAK用の弾やら何やらを買いあさる。
報酬が毎回消えてしまうのは仕様なのか?

いや、それとも俺の金銭管理能力が劣っているだけなのか。


おっと、こっちも忘れるところだった。

キョン「なぁ長門、お前ここに出る化け物についてはわかるか?」

長門「すべてとは言えないが、多少ならば情報を得ている。聞かせて」

まずは下水道の透明になる化け物の事を話す。
ありゃ厄介だからな。ちゃんと知っておかないと……。

長門「提示された情報に基づいて検索した結果、おそらくそれはBloodSucker(ブラッドサッカー)と思われる」

キョン「ブラッドサッカー?」

長門「そう、BloodSucker(吸血鬼)」


長門「表面には体毛がなく、口には複数の触手がついており、それで獲物の体液を吸収する」

長門「また透明になることができるため、とても厄介な敵」

長門「ただし“姿が見えなくなるだけ”なので、呼吸音や足跡などに注意すればいい」

なるほどな。いいことを聞いた。






長門「ちなみに愛称は“さっちゃん”」

キョン「……は?」

長門「さっちゃん。ZONEのアイドル」


一瞬長門にエラーが起こったようだが気にしない。


キョン「まだあるんだが……」

下水道出口であったあの半裸ジーパン野郎の話をする。
思い出すだけで頭が痛くなってきたな……。

長門「おそらくController(コントローラー)」

コントローラー?ゲームの?

長門「control(操る・支配)という意味からきているのだと思われる」

長門「彼が発する念力波長に一定時間当てられると、そのものは正気を失って彼の支配下に入るという」

長門「大変危険な存在」

長門「一体その波長がなんなのか、いまだに不明のまま」


これも厄介だな。


そしてさらにさらに、X18であったガスマスク男とプラズマの事を話す。

長門「Snork(スノーク)と呼ばれる、ストーカーが野生化したものと推定されている生物」

キョン「や……野生化?」

長門「詳細なところは不明。足の筋力が異常に発達しており、ジャンプ力・キック力ともに人間の比でない」

長門「また異常な動物的行動から、縄張り意識も強い模様」

長門「その大半がガスマスクをつけているところから、もともと人間だったと推測される」

人間が、あんな化け物じみた奴になるってのか……。
一体ここはなんなんだよ。


それで長門、プラズマ野郎の事なんだが……。

長門「そのプラズマ上の発光体についてはよくわからない」

長門「噂には聞いたことあるものの、想像上の怪奇現象と一致する程度の情報しか保持していない」

それほどよくわかってないっていうわけか。

長門「いわゆるポルターガイスト(物質浮遊現象)。そう呼んでいるストーカーもいる」

長門「現在これに対する対処方法は特定されていない。あなたの言う発光体を攻撃すればよいものと推測する」

ああ、その通りだよ長門。

長門「確証が取れた。これをPDAのデータベースに追加する」


長門の話を聞いた後、相変わらず流れている曲を聴きながら、朝比奈さん特製の極太ホットドッグを口に含む。
……そこ、卑猥な想像をした奴でてこい。


キョン「……と、もうこんな時間か」

時計の針は十二時近くを指している。やけに時間の進みが早い。
店で働いている少女たちに就寝を告げ、俺は奥の部屋で寝袋を展開。
ぬれたタオルで体を拭いた後、俺は就寝モードへ移行した。

寝袋の中で、俺は明日の不安に暮れていた。
前回のことを思い出しても同様だが果たして無事に帰れるのだろうか?

明日はどうなるのだろうか?
朝倉に長門のインターフェイスコンビと、果たしてうまくやれるのか?



翌日、今度は自分で目を覚ます。
PDAの時間を見て、体内時計が狂っていないであろうことを確認したあと寝袋を片付ける。

と、ノックと共に部屋の扉が開かれる。

朝倉「キョン君、朝よ。……って、もう起きてたんだ」

制服エプロン姿で入ってくる朝倉。
残念だが、お前に起こされなくても勝手に起きてるぜ。

朝倉「意外ね、キョン君って起こされるタイプだと思ってたんだけどなぁ」

家ではな。
毎日妹が起こしてくれるよ。ドロップキック付きで。


朝倉から差し出された朝食を受け取り、食べる。
とはいっても昨日も食べたソーセージと缶詰の詰め合わせだが。
俺のテーブルに長門と朝倉も同席し、モグモグと食べている。

キョン「んで、今日はどういう予定で行くんだ?」

長門「朝食終了後、私たちは準備をする。その間あなたも用意をするといい」

わかった、そうさせてもらおう。
思えば俺のリュックの中身はゴチャゴチャになってるだろうからな。


うお、使わずじまいの手榴弾が入ってた。
んでこれは……腐ったソーセージか。
銃弾が散らばってら。もったいないから集めて使うか。


いらないものはこっち、いるものはそのままにと、ごみの分別よろしく整理していると

朝倉「お待たせキョン君。準備できた?」

そう言って出てきた朝倉の姿に、俺は思わず唾をのんだ。


北高の制服なのはいつもの通りだ。
注目すべきは、その上から着ている防弾チョッキやマガジンポーチなどの装備品で彩られ、
年相応に豊かな胸のふくらみが余計に感じ取れるように見えてしまう上半身。
そしてスカートの下に隠れる美脚から見えた数本のナイフは、危険な甘い香りを出している。
肩に通されたベルトで括られたライフルを構える姿は、何かと様になっているのが意外だ。

頭に着けたヘルメットは一見あの蒼い髪を邪魔していそうな感じもするが
意外や意外、ヘルメットの迷彩色がうまい具合に溶け合っている。
ヘルメット付属の、目元を保護するゴーグルをかけてみると、完全な軍装にも見えた。
ただし、これはあくまでも制服の上から着ているのであって、決して100%の軍装でない事を再び断っておく。


制服という現実的な衣装を着ていながら、あえてミスマッチしそうな軍装を、しかも女子高生が着ている。
なかなか、いいな。


後ろに長門が続く。
長門の軍装姿はどんなのだろうか、と期待していると

キョン「………?」

何と長門はいつも通りの制服ではないか。
せいぜい変わってるといえば、腰につけられたホルスターと、手に持っているAKの小さい版だ。

朝倉「長門さんって小柄だから、制服の下に防弾鉄板を入れて、小さなAKS74Uを持たせることにしたの」

確かにそうだな。
長門だと、朝倉の装備でふらついてしまってもおかしくない。

さながらセーラー服と機関銃だ。
その小さなAKを一般的に想像される機関銃と呼んでいいのかは別として。


朝倉「それじゃ、行きましょうか?」

朝倉がなかなか元気な声で出発を宣言する。
地下のバーの階段を上ると、長門と朝倉の別れを惜しむ客が数人いたように見えた。

みくる「いってらっしゃ~い」

朝比奈さんがこれまたおいしそうなパンやら何やらをセットにくれた。
ありがたいことこの上ないな。

長門「準備完了。いつでも行ける」


朝倉「じゃあ、行くわよ」

キョン「ああ、わかった」



Barを西へ向かうと、Rostok工業地帯というところに出た。

元々車両基地だったらしく、ゴロゴロと工事関係の部品が転がっている。
パイプやらコンクリートブロックやら、中には若干放射能汚染されているものもあった。

朝倉「やっぱり地上に空気はいいわね。おいしいわ」

空気の味が分かるのか?
ヒューマノイドインターフェイスとやらにも。

朝倉「なぁに?嫌味のつもり?」

若干な。

朝倉「ずいぶん冷たくなったのね、見ないうちに」

二度も殺されそうになった相手に満面の笑顔で接せるほど、俺の心は広くないんでね。


そんな風に朝倉と皮肉りあいながら進んでいく。
ちょうど道を塞ぐ廃墟に差し掛かったその時

長門「―――っ! 隠れて!」グイッ!

キョン「うおっ!」ドタッ

突然何を思ったか、長門が俺を瓦礫の陰に引きずり込んだ。
朝倉も長門の考えがわかったのか、すぐさま同じところに隠れた。

キョン「なんだなんだ?」

朝倉「静かに!」

朝倉が俺の口をふさぐ。


バババババババ……

空の上から聞こえてくるエンジン音。
ふと上を見上げると、その音源である巨大なヘリコプターが俺たちの上を通り過ぎて行った。

長門「Mi-24:ハインド。Military所有の戦闘ヘリの一つ」

瓦礫に隠れさせたのはこのためだったのか。

朝倉「軍にとって、ストーカーは殺害対象のはずよ」

マジかよオイ……。
頼むから気付かないでくれ……



バババババ……

朝倉「どうやら私たちには気づかなかったようね」

おかげで厄介なことにはならなさそうだ。



長門「微弱な通信電波を感知。付近でヘリとの通信が行われている模様」

長門「盗聴開始」ピピピ……

なんでもありだよな、と思いながら長門がPDAを弄るのを眺める。

<博士……あきらめたら……うだ?>


<ザッ……目標ポ…に対象発見ザッ……これより……>

<軍のヘリだザザッ……これで君達も……おわり……だ>


なんだなんだ?ヘリ以外の音声も交じってるぞ?
どこの通信だ?と聞こうとした時だった。



パシュウウウウウ――――


かつて聞いたことある推進音を伴った飛翔体は、引き込まれるようにヘリの方へと向かう。

<……RPG!>ガンッ!

PDAの通信音声から鈍い衝突音が聞こえると同時に、その物体はヘリのテールローターに直撃した。
そして―――

キュバアアアン!

テールローターが跡形もなく吹っ飛び、機体の安定を失ったヘリはそのまま回転し、瞬く間に下降していく。

<メーデー!メーデー……ぁああああっ!ブブブッ!>プッ!

黒煙を吐きながら廃墟の向こう側に消えていったヘリは、巨大な爆発音とともに四散した。


やがてPDAから残った人物同士のらしい通信が再開する。


<博士……データを―――渡せ……>

<断……る>


なにやら怪しい雰囲気だ。

朝倉「長門さん、もうちょっとノイズ補正できないかしら?」

長門「難しいが、やってみる」ブツブツブツ

お、懐かしい長門の呪文だ。
呟きが終わった後、みるみるうちにノイズがなくなっていく。





<……これ以上近づいてみろ!データをぶっ壊してやる!>

<ほう、なかなか勇気ある決断だ。だが自分の部下の犠牲に目を瞑ることはできるかな?>

<……教授!これ以上は無理でパパパパン! ―――っあああ!>

<……くそっ、回線開放、SOS発信!>


<近くにいるストーカー!聞こえていたら助けてくれ!>

<僕はYantarのKruglov教授だ!Mercsの一団に襲われて壊滅状態にある。救援を求む!>




おうおう、物騒なことになってきやがった。


朝倉「どうする?渡りかかってしまった橋だけども」

キョン「やるしかないと思うが……Mercsか……」

長門「識別信号の解析が終了。相手は『Wolfhound』と呼ばれる一団。かなりのエリートの模様」

正直な話、乗り気ではないというか、トラウマ気味ではある。
キャンプでボコボコにされたのも然り、人との銃撃戦で圧勝した覚えがないのも然り。

朝倉「あらあら、男の子なのに情けないのね」

うるせえ。
一般的な男子高校生は銃持ってドンパチしねえっての。

朝倉「ま、心配しないで。ガードマンとしての役割は果たすわよ」ジャコッ


長門「前方200m先、廃墟二階に狙撃手。その他は一階にいる模様」

双眼鏡を覗きこみながら長門が呟く。
しかし無言で双眼鏡を持つその姿、なんだかとてもシュールである。

朝倉「オーケー、私が行くわ。キョン君、援護お願い」

朝倉「長門さんは後衛を頼むわ。メインは私たちでやるから」

わかった。
しかしお前、やる気満々というか、やけに生き生きしてないか?

朝倉「そう?確かにお店ばっかりで体動かしてないから、そうかも」

おまえにとって戦いというのは、一般人のエクササイズの範疇なのか……。


朝倉「じゃ、いくわよ。用意はいい?」

キョン「ああ、いいぜ」ジャキ

愛銃(?)の薬室への装填を終え、構えなおす。

長門「私が制圧射撃をする。その隙に一階から突入、制圧を提案する」

長門の作戦ならなんだかうまくいきそうだ。
インターフェイスが味方に付くと、何とも頼もしい。

朝倉「わかったわ。じゃ、行くわよ!」バッ!

朝倉が飛び出すのに続いて、俺もAKを持って飛び出した。



<隊長、ネズミが二匹……ストーカーです>

<さっきのSOSを聞きつけたか……。どうするか、わかってるな?>

<Rog. 排除します>ザッ


以前盗聴したままのPDAから流れてくる通信。
それと同時に、二階ののぞき窓に人影らしいものが動いた。

朝倉「……来るわ!走って!」

狙撃手が銃を構えるのが見える。
完全にこちらをロックしたようだった。



長門「……させない」ババンッ!

突如後ろから聞こえたAKの短い銃声。長門の制圧射撃だ。
そう、制圧射撃のはずだった。



キョン「よくあれだけ離れてるのに撃ち落とせるな」

流石は長門といったところか。
すでに狙撃手の姿はなく、敵が使っていた銃だけが廃墟の目の前に転がっていた。
撃たれて落としてしまったのか。

朝倉「流石長門さん、ナイスアシストね」

ナイスどころか完璧すぎるアシストだな。


そのまま流れるように俺たちは廃墟へと入り込む。

「敵だ!さっきのストーカーだ!」

「何を手間取っている!さっさとやれ!」

朝倉「ふふっ。相手も慌ててるわね」

朝倉の笑みが増す。
コイツはこの状況を本気で楽しんでいるらしい。

朝倉「ぼやっとしてないでとっとと行くわよ」

キョン「おい、待てよ」

足早に進む朝倉を追いかけた。


長い廊下の向こうに人影が見えた。
銃―――敵か!?

「来たぞ!」タタタタ!

朝倉「おっとあぶない」ドン!

キョン「わっぷ!」ドサ!

銃声に反応した朝倉が俺を突っぱねた。
ちょいと俺の扱いが荒くないかい?

朝倉「あんまり前に出すぎでもダメよ?」

さっきは早くと急かし、その次はひっこめかい。

やれやれついていけるのかね?


朝倉「あなたは隠れてなさい」スチャ

何を言うかと思うと、朝倉は持っていた銃を俺に投げわたした。
そして数本のナイフを取り出す。

朝倉「やっぱり、私はこっちの方があってるわね」サッ!

ダン!と地面を蹴り出す朝倉は、さながら風のようだった。
目を瞬いた隙に敵の目の前へと躍り出る。

「―――!?」

相手はマスクをかぶっていたが、挙動からどんな顔をしていたかが容易に想像できた。

朝倉「じゃあ、死んで☆」

その一言を送ると、朝倉はマスクと防弾着の隙間にナイフの刃を滑り込ませた。


ビクッ!と体が痙攣する。
そして命令が送られなくなった体は、バランスを崩し、朝倉の目の前に倒れた。

キョン「………」

目の前の光景に、俺は茫然と立ち続ける。
余裕の笑みを伴って朝倉が振り向いた。

朝倉「なぁにぼんやりしているの?」

あんな鮮やかな光景を見た以上、ぼんやりする以外に選択肢がなくってね。

朝倉「さっさと助けに行くわよ?」

キョン「お、おう……」


ちょっと待てよと言わんばかりに、朝倉の銃をもって追いかける。


廃墟を出ると、そこはまさに地獄だった。

墜落したヘリの残骸が荒々しく残っており、あちこちで火の手が昇っている。
散らばっている薬莢の数も、地面に染みついた血の跡も、そこにあるすべてが惨状を物語っていた。

朝倉「長門さん、そろそろ前に出てきたら?」

長門「私は廃墟にて狙撃支援を行う」

短銃身のその銃で狙撃支援ですか。
化け物レベルの奴らばかりだな。

あ、宇宙人か。


出たところにちょうど壁になるようなコンテナがあったので、そこから様子をうかがう。

手前に見えているのがMercsか。
廃列車を盾にしながらじりじりと攻めているようだ。


キョン「そーっと照準を合わせて……」

やっと出番がきたぞ、俺のAK。
スコープの十字を敵の頭に合わせる。

キョン「そらっ!」ダン!

一発だけ発射した弾は見事に命中。


戦いは俺の奇襲に始まった。


朝倉「それじゃ、いくわよ!」

またもやナイフを取り出す。
またお前は銃を使わないのかと。

朝倉「いいじゃないの……よ!」ヒュカカカッ!

教室で襲われた時の様に、朝倉の複数同時ナイフ投げが炸裂する。
そしてそれは各々の首、背中、足に突き刺さっていった。


「あがっ!」

「はうっ!」


ナイスショット。
朝倉のナイフ投げは恐ろしいレベルだな。


「ぐあっ……後ろだあっ!」ダカカカ!

刺さり所が悪かったり、防弾装備で助かった奴らがこちらに気付く。

キョン「うおっ……一気に抵抗が激しくなったな」

朝倉「そろそろナイフは無理ね。キョン君、私の銃」

キョン「ほらよ、重かったんだぜ」

朝倉「マガジン一本くらいは無駄にしていいわよね?」パパパパパ!

そう言った朝倉は銃だけを出して応戦した。
後のことも考えてくれよ?

そう言いながらも、俺も命は惜しいので極力顔を出さずに撃った。



しばらくしていると銃声が止む。


長門「………」ダン!

長門「前方はクリア」カチャ

長門の支援射撃のおかげで一掃したらしい。
お疲れ様々だな。

朝倉「それじゃ、その教授とやらを助けに行きましょ」



長門「前方に科学者スーツを着た人物を発見」

その通りに進むと、奇妙な人物に出会った。
あの研究所で見た、全身スーツ+宇宙服のような科学者だ。
ただし、違うところをあげるとスーツが緑色だったことだろうか?


「いや、ありがとう。おかげで助かった」

朝倉「あなたがYantarの教授?」

Kruglov「そう、僕がYantarのKruglov教授だ。よろしく」

キョン「ああよろしく―――てえええ!?」

俺が驚いたのは、その人物の容姿だった。
名前こそは違えど、スーツのガラス越しに見えたその姿は―――







我らがSOS団と部室を隣にする、コンピュータ研の部長だった。


Kruglov「これからYantarへ帰るところだったんだが、彼らに襲われてしまってね」

Kruglov「おかげで部下を全員失ってしまった」

Kruglov「どうだろう?ついでと言ってはなんだが送ってくれないだろうか?」

Kruglov「もちろんそれ相応のお礼はする」

また途上であの傭兵とやりあうのか。
そう考えると気が引けたが、後々の事を考えるとどうだろう?
Yantarとの人物とコネクションを作っていた方がいいかもしれん。


長門「どうするかはあなた次第」

キョン「……いいんじゃないだろうか?」


Kruglov「そうか!ありがとう」

Kruglov「それじゃあさっそく―――」ヒュッ!


教授――部長が言い終えるその一瞬、なにかが頬のあたりを横切る。
銃弾だ!


Kruglov「うわあああっ!」ジタバタ

朝倉「ちょっと静かにしてちょうだい」グイ

よほど銃弾が怖いのか、暴れていた教授を取り押さえる朝倉。

どうやら狙撃手がいるらしい。


キョン「相手にするには……分が悪いな」

長門「ここは一気に駆け抜けることを提案する」

朝倉「私も賛成よ。この人いたらまともに戦えなさそうだし」

Kruglov「………」カタガタ

酷い言われようではあるが、同意だ。


キョン「今なら射撃が止んでいるな」

長門「これを使うといい」スッ

長門が差し出したのは筒状の手榴弾。



長門「スモークグレネード」

長門「一定時間、人体には無害な煙幕を放出する」

その煙に紛れて逃げるのか。

キョン「じゃ、これで行くか」ピン

キョン「そらよ!」ポイ


コロコロ……プシュウウウウウ


あたり一面が霧のようなものに包まれる。
前が見えないにも等しい。


朝倉「今よ、走って!」ダッ

これで俺たちの位置は相手には見えない。
よほど運が悪くない限り、当たらないはずだ。

ドタタタタタ

キョン「やみくもに撃ってきたな」

朝倉「大丈夫よ。多少なら何とか……」

全員が順調だと思った時だった。





Kruglov「うわあああああ!」バンバンバン!

キョン「!?」


突然教授が銃を撃ち始めたのだ。
しかも、棒立ちで。

お前発砲炎でせっかくの煙幕が台無しだぞと。

長門「恐らくあまりの恐怖に錯乱している模様」

朝倉「あーもう、何やっているのよ!」ガシ!

朝倉が乱暴にスーツをつかむと、引き剥かんとばかりに教授を引きずって行った。

長門「私たちも」

キョン「そうだな……」


やれやれ、俺はちゃんとたどり着けるのかね……?

本日分は以上です


暴走する教授を取り押さえながら、なんとかYantarに辿り着いた俺達。
そこに広がる湿地は、今やミュータントと廃人の巣と化していた。
そのわきにそびえ立つは、巨大な発電施設。
生きて入ることも、生きて出ることも許されない。
荒れ果てた地の中にあるその施設は一体何なのだろうか?

次回『Blowout』

いつの間にかマクミラン先生が潜伏しておられる

投下します





Kruglov「うわああああああああ!」バンバンバン!





.


まずはこの悲鳴で始まったことを深くお詫びしたい。
というのも、やはり教授にとって戦闘というのは荷が重すぎたようだ。
終始あのまま叫んでは撃っていたのだから。


かれこれ何とかMercsの追撃を逃れ、俺たちはYantarに通じる道を歩いていた。

朝倉「……橋の下に誰かいるわ」

キョン「なんだあれ?」

橋の下を潜り抜ける予定のだが、その途上にバーナーアノマリーのモヤを見つけた。
だが、俺が疑問に思ったのはそっちではない。
よくよく目を凝らすと、そのモヤの向こうに人がいるのだ。

ゆっくりした動きで、向こう側の入り口からこちらへ向かってくる。


双眼鏡で見てみると、そいつは両手をだらんとぶら下げていた。
そしてただひたすらこちらへと歩いてくる。

目の前にはバーナーアノマリー。
おいおい、もうすぐ突っ込んじまうぞ!?

Kruglov「いいんだ、彼らは放っておいていい」

平常心を取り戻した教授が俺を制する。

キョン「どういうことです?」

Kruglov「彼らは、人間じゃないからね……」

人間じゃないと?

Kruglov「見ておくといい」


長門「ゾンビストーカー……」

キョン「え?」

朝倉「ブレインスコーチャーの電波にやられた人間が廃人化した姿よ」

ああ、そういえばそんなことも言ってたか。
よく見れば、双眼鏡の先に移るその顔はかなりグロい感じになっている。

Kruglov「詳しいね。その通りさ」

Kruglov「今判明している段階で、それが一番有力な説とされているんだ」

そうしている間にも、ゾンビストーカーは歩みを進める。
……あ、バーナーに突っ込んだぞ。



ゴオオオオオッ!

一体何度なのか想像できないほどの火柱がアイツの体を包む。
しかしながら微動だにしない。
体中が火だるまに包まれているというのにか……?

Kruglov「頭が働いてないということは、神経系もマヒしているのだろうね」

炎を抱いたままゾンビストーカーが出てくる。

ゾンビストーカー「マシェー……」バンバン!

キョン「撃ってきやがった―――っれ?」

銃をこちらへ向けて撃ってきたはずだったが、被弾箇所はない。
代わりに、後ろの方で数回金属の弾ける音がした。

朝倉「発砲の反動で、思いっきり照準がずれてるわ」


キョン「ヘタっぴってレベルじゃないな……」

教授も動じていないところを見るに、どうやら大丈夫なようだ。
しかし放っておくのも危険だ。

キョン「ちとばかし練習の的にさせてもらいますか」ジャキ

Kruglov「気を付けた方がいい。彼らの耐久力はピカイチだ」

キョン「へぇ……」ドドン!

あえてわざとはずして、腕を狙ってみた。
別に俺が下手なわけじゃない。当てやすいのをあえて外しただけだ。

……おう、右手が吹っ飛んでいったぞ。
同時に持っていた銃も落ち、攻撃手段がなくなったゾンビストーカー。
ああ哀れだな。


しかし……。

ゾンビストーカー「あうぁー……?」

なんということか、撃たれた当の本人は気付いていないような感じである。
耐久力が並大抵でないとはこういうことか。

Kruglov「彼らにあまり構わない方がいいよ」

Kruglov「弾薬の消費も考えると、できることなら無視をした方がいい」

キョン「ふむ……」スタスタ

なるほど……。
それじゃあ横を通らせてもらいましょうか。
そういうことで俺は橋をくぐる―――。


長門「……危ない!」グイッ

キョン「ぐえっ!?」

長門「こっち側にはアノマリーがある」ポイ

ボオオオオオオ!

いきなり長門が引っ張ると思えば、ボルトを投げたそばからバーナーが噴出っ!
あっぶねぇ……。

キョン「そっか、こいつもあるんだな……」

朝倉「バーナーに気を付けながら、ゾンビにも気を付けていきましょう」

要求されることがいちいち多い。
そっと、そっとな……。



そして過ぎ去ること少し。
橋を抜けた後、さらに俺たちは山道を歩いていた。

Kruglov「……お、見えたぞ」

キョン「んあ?」


道が開けると、そこには大きく陥没した土地があった。
……いや、陥没ではなく干ばつした湖跡というところか。

そしてその奥には巨大な建物。それもかなり大きい。
今までの建物は結構損壊が多いにもかかわらず、あの建物はよく保っている。

Kruglov「あそこに小さな建物が見えるだろう」

そう言って指差したのは干上がった湖の中央。
小さなドーム状の建物があった。

Kruglov「あれが僕らの移動式研究所さ」


道中で数人のゾンビストーカーと会うも、意外に教授は動じない。
慣れてるのか?

Kruglov「ここらへんじゃ人間よりゾンビの方が多いからね」

Kruglov「こんなので一々驚いてたら体が持たないよ」

スーツ越しに笑い声をあげる教授殿。
しかしながら人間には弱いんですね教授殿。

Kruglov「最低限の訓練をしてるとはいえ、戦いなんてしたことないからね」

最低限の訓練……?
あの当たらなさに訓練の賜物は感じなかった……というのは黙っとこう。

朝倉「まぁ銃器の扱いを教えてもらった程度でしょうね……」

朝倉「戦闘じゃ役に立たないとみていいわ」

朝倉の酷評。ちと辛いな。


研究所の中は、率直に言おう、かなり狭い。
外見では結構デカかったのに、どうしてこう狭いのかと。

朝倉「研究所なだけに、研究資材とかにとられてるみたいね」

なるほど。
たしかに受付のようなところの奥を見るとガチャガチャとある。

Kruglov「やぁ、待たせて悪かったね」

Kruglov「ここまで連れてきてくれたお礼に、このスーツをプレゼントしよう」

そう言って差し出されたのは、教授が来ている科学者スーツの色違い。
教授のは緑色だが、こちらはオレンジだ。
後ろにはリュックがついており、積載容量も上がりそうだ。

Kruglov「君たちの装備じゃ、放射線に対する防護が不安だからね」


放射線に対する防護ねぇ。
このスーツじゃだめなのか?

長門「確かにそのスーツにも防御能力はあるが、このスーツにはかなり劣る」

Kruglov「他にも電気や炎系のアノマリーの耐性もあるからね」

長門「しかしながら銃弾耐性があまりよくない」

ふぅむ。それはキツイやもしれんな。

Kruglov「ここら辺で行動をするなら、僕はこのスーツを勧めるよ」

それもそうだな。
このスーツには後ろにでかいリュックがついてるし、これに佐々木のスーツは入れておこう。

どれ、更衣室もあることだし着てみるか。



着替え終了!と、空元気に更衣室から出てみる。

朝倉「あっはははははは!」

長門「ユニーク……」

キョン「………」

朝倉の爆笑と長門のつぶやきを前に、俺は渡されたスーツを着て立っていた。
まぁ朝倉が笑うわけもわかる。宇宙服だもんな、これ。


そうこう話していると、部屋の奥から大きな声が。

「しかし、もう君しかいないんじゃ」

Kruglov「もう勘弁してください!僕にはもう無理です!」

教授と……後誰かが話している。


ひょっこりと顔を出すと、教授がじいさん顔の人と何やら話し込んでいた。

キョン「どうかしました?」

Kruglov「Sakharov教授がさぁ、また計測に行けっていうんだ!」

そう嘆く教授の前には、Sakharovと呼ばれた人物がいた。

Sakharov「……おや?君たちがKruglovを連れてきてくれたという……」

キョン「あ、はい。どうも……」

頭の草原の寿命が感じられるそのお爺さんは、どうやらここで一番偉い教授らしい。
青い制服のようなものをつけていることから、余り外には出ないのか?

Sakharov「そうじゃな。私はもっぱらココにこもりきりだからな」


朝倉「それで、計測というのは?」

Sakharov「ああそうだった。その話じゃったな」

Sakharov「実は、この研究所ではPSY波を防ぐ機器を開発しているんだ」

キョン「PSY波?」

Kruglov「ブレインスコッチャーを知っているだろう?」

Kruglov「あれから発射される毒電波を『PSY波』と呼んでいるんです」

つまりは廃人製造電波の事か。
ん?つまりあれを防げるってことは……。

長門「スコッチャーを潜り抜け、北へ行くことも可能になる」


だが待て。
それが製作途中ということは、ストレロクもそれを持っていなかったわけで……
北へ行くのは無理だったんじゃ?

キョン「また謎が増えたな……」

朝倉「厄介ね」

そう悩んでいる俺達を気にせず、Sakharov教授はしゃべり続ける。

Sakharov「それの最終調整のために計測をしたいのだ」

Kruglov「あのゾンビの大群に突っ込めっていうのかよ……」

あれ?この人ゾンビ平気じゃなかったっけ?

Kruglov「あれは君たちがいてくれたからまだ何とかなったんだ……」

本当に小心者だなこの人は。


Kruglov「そうだ!」

落ち込んでると思ったらいきなり顔をあげたKruglov殿。

Kruglov「君たちについてきて貰えばいいんだよ!」

Kruglov「どうか計測の護衛をしてもらえないだろうか?頼む!」

溺れる者は藁をもつかむ……とは違うか。
水を得た魚の様に希望を得た教授は俺たちに懇願を始めた。

キョン「しかし護衛ねぇ……」

半分逃げる形とはいえ、さっきMercsとやりあったばっかなんだけどなぁ……。

Kruglov「もちろんただというわけではない」

Kruglov「それ相応の例もするし、君たちのすることに最大限協力しよう」


Sakharov「もし計測が成功すれば、最終調整が済み次第『PSYブロッカー』を人数分渡そうじゃないか」

おっ、そりゃいいな。
それがあれば北へ行って、ストレロクの手掛かりがつかめるかもしれない。

朝倉「ねぇねぇ私も同行していい?」

ここで血の気盛んな朝倉涼子が首を突っ込む。

朝倉「さっきの戦闘もまともにできなかったし、暇なのよ」

長門は?

長門「私はそもそも戦闘には向いていない」

長門「よって朝倉涼子の同行は有効な案だと思われる」

長門センセがいうなら、そうするのが一番いいか?

キョン(たしかに朝倉の戦闘能力は高いしな……)


Kruglov「よぉし、そうと決まったら行こうじゃないか!」

Kruglovがそそくさと用意を始める。
こっちも用意をしようか。


キョン「弾薬は……まぁ大丈夫か」

さっきの戦闘でも使ったのは少々だしなぁ。
一応弾薬を売ってくれるみたいだし、帰ってきたら買おうか。

朝倉「ねぇ教授さん、ここにナイフ売ってないかしら?あ、実験用メスでもいいのだけど?」

コイツはコイツで物騒なものを聞いてきやがる。
つーか実験用のメスって……。

朝倉「あら、たかが実験用のメスでも殺傷能力は十分よ?」

朝倉「人が切れれば、それだけで十分」フフフ

長門、朝倉が怖いんだが……。


長門「私は研究所に残って、『X16』の事を調べておく」

ああ、そういえばそれが目的で来たんだったな。
わかった、そっちは任せとこう。

長門「了解した」

Kruglov「こっちの準備はOKだ」

朝倉「私の準備もOKよ」

二人の準備は整ったみたいだな。
それじゃ、俺も行くか。

Sakharov「きぃつけてな」

Sakharov教授が実家から帰る子供を見送るかのような言葉をかけてきた。

キョン「それじゃ、行くか」



このドーム状の建物、移動研究所というのは背の高い柵に囲まれており、入口は限られている。
研究所のドアの正面の延長線上にその入り口はあった。

フェンスの端から外をうかがうと、あうあう言いながら廃人が徘徊していた。

キョン「フェンスの外に……ゾンビが数人いる」

Kruglov「だ……大丈夫だろうな?」

朝倉「あんな鈍いやつ、簡単でしょ?」

そうは言うがなぁ……。
ひとたび銃声を立てたらすぐ集まりそうなんだよ。

Kruglov「彼らは痛覚はないが、音に敏感だからね……」

ゾンビに詳しいKruglov教授殿の解説、ありがとうございました。


朝倉「あら、要は音を立てなければいいんでしょ?」


突然何を言いだす朝倉、と思うと、そいつはすでにゾンビの群れへ走り去っていった。

ゾンビ「マシェー……」

ゾンビらも気づきはしたものの、すぐに方向転換とはいかないらしい。
銃を構え、足を動かす速度が朝倉のそれと比べ物にならないほど遅い。

朝倉「のんびり屋さんね」スッ

懐から取り出したるは、いつしか見たアーミーナイフ。
すっ、と軽やかに取り出したそれを首元に当て引くと、血がバァッと出る。

ゾンビ「ウァ……?」

当の本人は何も理解してないうちに、体が倒れた。

朝倉「あはははっ!」

朝倉が血に酔い始める。
その姿はまるで舞を舞ってるかのようだ。

それでは引き続き、朝倉涼子選手の舞をご覧いただこう。


朝倉「次行くわよ」タッ!

一人目を倒して次の獲物に向かう朝倉。
やがて全員の視線が朝倉へと集まり、自分たちの敵を認識し始めた。

朝倉「よそ見はダメよ」シャッ!

次、そしてその次。
朝倉の速さはゾンビのそれと比べ物にならず、どうやっても追いつけない。

朝倉「あなたで最後?」

他全てのゾンビを倒した後、ひたひたと最後の一人に歩み寄る。

ゾンビ「マシェエエー……」ガチャ

朝倉「遅いわ!」パシン!

銃を構えるゾンビではあったが、なすこともなく朝倉に弾かれ

朝倉「それじゃ、死んで」チャ

ひときわ高度な蹂躙を楽しんだ後、朝倉は止めを刺した。


対して、物陰からそれを見るだけの俺達。

Kruglov「彼女に敵はないのかな?」

そう考えても間違えじゃないかもしれないですね。

朝倉「二人して何かくれてんの」

朝倉「さっさと計測に行かないと!」

なぜだか朝倉の顔が爽やかだ。
やはりあいつは戦闘で快楽を得ているのだろうかね?

Kruglov「いやはや、頼りになるね」

キョン(頼りになる以上に怖いんだが……)

いつか刺されるんじゃないかと思うよ。
冗談抜きで。


やがて湖跡の端に到達する。
隣の湖跡とつないでたらしい土管の中を通り抜け、早々と観測地点へ着いた。

しかしここは……

キョン「ゾンビが少しばかり多いな……」ジャキ

流石の朝倉がナイフでやれるほど近いわけではない。
これは銃を使わざるを得ない。

朝倉「私たちが援護している間にさっさと計測を終えてちょうだい」ドドドン!

朝倉が久方ぶりに銃を撃ち始め、ゾンビを正確に撃ち抜いていく。
やはり生き物ではあるようで、頭部なら一撃で殺せるらしい。

Kruglov「それでは計測を開始しよう」ピピピ

何やら箱型の機械を取り出し、振ったり叩いたりする教授。
壊れんじゃないのか?

Kruglov「ははは、キエフ防衛研究所製作の計測機は伊達じゃないさ」


朝倉「ちょっとキョン君、無駄話してないで手伝ってよ!」ダダダン!

いやすまん。
お前だけでも十分な気がしてさ。

朝倉「だったらあの大きい建物の方を見てちょうだい」

それはYantarに来るときにも目についた、あの大きな建物だ。

キョン「んあ……?」

顔を向けると、そこからはゾンビの大行列。
お前ら今まであの建物に隠れてたというのか!?

キョン「やっべえ……!」ダダダダン!

慌ててスコープの覗く先をゾンビの大群へと変えるが、この量じゃ俺達二人じゃ無理な気がするぞ。

朝倉「これはさっさと逃げた方が得ね」

俺もそれに一票入れるよ。


キョン「教授、計測はまだで!?」

Kruglov「もうちょっとだ……よし!」

よし来た、このまますたこらさっさだぜ!

Kruglov「いいぞ、引き上げよう――――」

と、言葉を濁らせる。
なんだ?



 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……



朝倉「な……なに!?」

キョン「地震か!?」

地面が唐突に揺れ始める。
しかもすごい揺れだ。


Kruglov「みんな急いでどこかに隠れるんだ!」

教授の表情がスーツ越しでも分かるくらいに歪む。
どうやらかなりマズイ事態らしいが……

Kruglov「はやく、そこのバスに!」

キョン「一体何が始まるんです!?」

この調子だと第三次大戦だと返されそうな言葉だったが、教授は普通に答えてくれた。




Kruglov「Blowoutだ!Blowoutが来るぞ!」



.


ブロウアウト……?

キョン「それは一体何なん―――」

それは尋ねずとも、向こうから教えてくれた。


ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


朝倉「凄い衝撃波と爆発が来るわよ!」

よくは見えない。
だが、爆発で吹き飛ばされたであろう粉塵や木々の破片が飛んでくる。

Kruglov「こんなに大規模なのは長らくなかったっていうのに……」

Kruglov「とにかくそこのバスへ!」

指差した先にはボロボロになった廃バスがぽつんと。
耐えられるのかどうかわからないが、隠れないよりはましだろう!


朝倉「キョン君、逃げるわよ!」ダッ

朝倉も駆け出した。
言われなくてもわかって―――


ガッ!

キョン「!?」

足が何かに引っかかった!?
体のバランスは崩れ、そのまま倒れこんでしまう俺。

朝倉「キョン君!」

バスに辿り着いた教授と朝倉が見える。
俺も早く行かなければ……。

Kruglov「何をしているんだ!早くしないと間に合わないぞ!」

え……?


とっさに後ろを向くと、もうブロウアウトはすぐそこまで来ていた。
様々なものを巻き込みながら、着実に。

俺の本能が告げている。この距離ではどうあがいても間に合わない。
バスまでわずか50mないとはいえ、ボルト選手並みの足でももう無理だ……。

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ……

キョン「もう無理か……?」

波はもう目の前に来ている。
あきらめて俺は目を瞑った。

波が体に当たる一瞬、目の前がさらに暗くなる。 
視神経でもやられたのか、あるいは……。


「―――――――!」



――――――――――――――――――


目の前が真っ暗だ。

……誰かが叫んでる?

「Fang、俺たちは置き去りになんかできない!」

聞いたことのある声……。

「嫌だ、Fang、俺はあいつを置いていかないぞ!」

Fang……?
ストレロクの仲間……?


「仕方が……なかったんだ……」

お前は……だれ……


―――――――――――――――――



「―――かり!しっかりするんだ!」


誰かが俺を呼んでいる。
……あの爆発で、俺は助かったのか?

キョン「ぐっ……」

体中がミシミシいう。
比喩ではなく、スーツがボロボロになったせいでなっている音だ。

Kruglov「よかった、気が付いたんだね」

周りを見渡すと、周囲にはまさかのゾンビの死骸。
……まさか教授が!?

Kruglov「まさか」

Kruglov「ブロウアウトが吹き飛ばしてくれただけさ」

ああ、なるほど……


キョン「あ……!」

そういえば朝倉は!?

Kruglov「そうだ!彼女を早く連れて帰らないと!」

Kruglov「はやく、彼女をかついで!」

担ぐ?
どういうことなのかと朝倉を探すと……

キョン「―――朝倉!?」

蒼い髪のヒューマノイドインターフェイス、朝倉涼子は俺の後ろで目を閉じていた。
しかも、彼女のスーツもこれまたないほどにボロボロだ。

Kruglov「彼女は君をブロウアウトから身を挺して守ったんだ」


俺を、守った?

Kruglov「とっさに手元にあった鉄板をもって、君に覆いかぶさってね」

Kruglov「彼女の判断力と行動力には驚かされたよ……」

呼吸は……大丈夫、まだ生きている!

Kruglov「それよりも急いだ方がいい」

Kruglov「ブロウアウトでいなくなったとはいえ、他のゾンビやクリーチャーが出てきてもおかしくないからね」

キョン「わかりました」

二人がかりで朝倉を抱え、俺たちは研究所へと戻る。
その間に敵に遭遇しなかったのは、不幸中の幸いとでもいうのだろうか?

キョン「よし、ついたぞ!」


二重扉の消毒を済ませ、俺たちは研究所内へと走る

Sakharov「ハロー、ハロー……どうしたんだね!?」

陽気な挨拶をしていた教授も、俺たちの姿を見て表情を変えた。
長門も奥から駆けつけてくる。

長門「状況を」

キョン「朝倉が、俺をブロウアウトから庇ったんだと……」

Sakharov「ブロウアウトからじゃと!?とんでもないことをするな!」

Sakharov「すぐに奥のベッドに寝かせなさい!放射能やPSY波の影響をチェックせねばならん!」

長門が朝倉を軽々と抱え、Sakharov教授の指示した部屋へと連れて行った。

Kruglov「私は計測データを解析しておこう」

Kruglov「君は休んでおきなさい。替えのスーツも用意しよう」


そうすすめられた俺は、粗末な二段ベッドに横になった。
体のあちこちがいまだに痛む。

キョン「ったくよ、きついなおい……」

一人口を垂れるが、聞いてくれる相手もいないと寂しい。

壊れかけのスーツを脱ぎ、身が軽くなった体で横になる。
今回はちゃんと一日たっただけなのに、こんなに快適な寝場所が恋しくなるとは。

正直、この二段ベッドは快適とは程遠い。
しかしあの寝袋よりはまだ寝やすいものではあるとおもう?

キョン「文明の利器って素晴らしいなあ……」

そんなことを考えながら、俺は眠りに落ちて行った。


――――――――

ゆさゆさ、ゆさゆさ。

ここにきてから俺の目覚めは優しいものになっており、ゆっくり起きられる。
ちょっとした幸せだ。

長門「起きて」

キョン「んあ、おはよう長門……」

朝倉「あら、私には挨拶なし?」

……こいつは驚いた。
昨日の今日で、もう回復したのか?

朝倉「あまりヒューマノイドインターフェイスをなめない方がいいわ」

宇宙人だからって……お前……。

朝倉「あら、心配してくれてるの?」

そりゃまぁ……一応恩人だしな。


長門「そろそろ話を写したい」ズイッ

いきなり割って入る長門。
おじさんビックリしちまったぞ。

長門「昨日Sakharov教授と話したことを伝える」

キョン「わかった、頼む」


長門「教授の話では、隣にあるデカい建物、それこそがX16だとのこと」

あの廃墟がか?

長門「スコッチャーの発信源と思われる装置があるとの報告がある」

長門「PSYブロッカーの調節は完了。準備でき次第探索に入れる」

ほう……。そりゃいい。

長門「可能ならばスコッチャーの稼働も停止させたい」

できたらな。


長門「また、ストレロク一味についての情報も得た」

それは?

長門「かつて一度、ストレロクを名乗る人物がここを訪れたらしい」

キョン「!?」

それは有用な手がかりじゃないか。
して、奴の行方は?

長門「以前、X16を抜けてRedforestという地域に出られるルートがあった」

長門「彼はそのルートを使用するために、『PSYブロッカーの』初期モデルを使い突破した」

初期モデル?

Sakharov「ああ、まだ机上での計算のみの、安全性が極端に低いモデルだ」

Sakharov「にもかかわらず、彼は潜り抜けたんだ。運が良かったのだろう」


そんなことがあったのか。

長門「そしてGhost」

キョン「ああ、確か仲間の一人だったよな」

長門「彼もまた、ここを訪れた」

やはりそいつも突破を図ろうと?

長門「目的については不明だが、どうやらX16の調査を行っているらしい」

行っている?進行形なのか?

長門「……約一週間前、X16に入ったきり連絡が取れないという」

長門「恐らくは……」

長門が珍しく言葉を濁らせた。
わかっているのだろう。Ghostの末路を。


どうやらX16の調査は一石何丁もの得がありそうだな。

長門「調査に同行したVasiliev教授のPDA反応が、この湖跡奥地にある」

長門「そちらから調査するのが賢明だと思われる」

長門センセの助言に従い、まずはそこを調査するとしようか。

朝倉「出発時刻は?」

キョン「準備でき次第、行こうとするか」

キョン「あまり時間が遅くなると怖いことこの上ない」

長門「了解した。それでは用意を整えておく」

朝倉「わかったわ」


X16……か。
一体何があるんだろうかね?

本日分は以上です
これから原作と分岐してくるかと

ブレインスコッチャーの発生源とされる『X16』
発電施設を隠れ蓑にしたその研究所は、異様な雰囲気を放っていた。
徘徊する廃人と、それが発する腐臭。
人を狂わせる機械を作る施設。研究していた施設。
そこを調査しに来た人間たちは、全て死ぬ。
果たして俺達も、同じ末路を辿るのか?

次回『Brain』

どうも長くなりそうなので、区切って投下します


移動研究所からほど遠く離れた、干からびた湖跡のほとりに墜ちた一機のヘリ。
俺はそのそばで、あるものを探していた。

キョン「こりゃすごいな……」

幸いなことに軟着陸ではあるらしく、原形はそのまま保たれていた。
最も、メインローターやテールローターなど、飛行に必要な部位は全て損壊。
もう再び飛び立つことはないだろう。

朝倉「どう?見つかった?」

キョン「いや……」

目的とするものは、そこにあるであろうVasiliev教授の死体。
Ghostと共にX16に入った研究員だ。


ヘリのコクピットに教授はいなかった。
となると、ヘリの後部座席部分に乗っていたのだろうか?

キョン「入口は……」

正面のコクピットから、後ろのドアまで回る。

キョン「お、ラッキーだ」

後ろのドアは開いていた。
歪んでしまったドアをわざわざ蹴飛ばす必要もない。少し楽になる。

キョン「どれ……」

ぐいっ、と隙間から中を覗き込んだ時だった。



「グオオオオオオン!」



キョン「ほあっ!?」ガチャ!



ズガガガガガガ!


キョン「ふぅ……」チャッ

スノークの野郎だ!
ビビったぞ。間近であの顔を向けられたらなぁ……。

朝倉「キョン君どうしたの!?」

何でもない。

キョン「ちょっとしたビックリ箱だっただけだ」

これを『ビックリ箱』と言えるだけ、俺の肝も太くなったものだと実感する。

キョン「さて、件のものを探さないと……」


後部座席はかなり荒れていた。
積載物が散乱しており、先ほど倒したスノークの死体の下に、また人間の死体。

キョン「科学者スーツを着ている……」

オレンジ色のスーツを着た死体は、弾切れを起こしたハンドガンを大事そうに抱えて息絶えていた。
脇には、PDAが一つ転がっていた。

ユーザー名は『Vasiliev』。ビンゴだ。

キョン「どれ……」

操作してみると、未終了のアプリケーションが起動していた。

キョン「なんかの録音ファイル……?」

再生してみよう。


ピー!ガガガッ!

『これからX16にむかう。我々――私VasilievとGhostは下水道を通ってX16に侵入する計画だ』

『比較的PSY波が弱いとされている。ここならブロッカーなしでも行けるはずだ』

『正面にも入り口はあるが、あそこはゾンビどもがうろちょろしている』

『Sakharovにもらった“昨年の一件”の資料で、大まかな研究所の構造は把握できている』

『仮に放射があっても、放射装置の電源室まで辿り着き、電源を切ればいい』


ピピッ!

軽い電子音と共に、録音その一が終わった。


そして同様の軽い電子音と共に二件目。

PDAに録音されたその声は、かなり小さい声であった。

『下水道には意外にもスノーク、ゾンビが多く住み着いていた。Ghostがいなかったら危ないところだった』

『あんなにスノークがいるなら、ブロッカーを完成させて正門から入ったほうがよかったのかもしれない』

『今、私は研究室で彼を待っているが、彼は電源室で放射器を止めるといったっきり帰ってこない』

『ゾンビが周りで呻いている。今は見つかってないが、それもいつまで持つことか……』

ピピッ!

二件目終了。


……録音、その三。

『くそっ!くそっ!』

さっきとはうって変わって、かなり焦っている声。
そして聞こえ始めるハンドガンの銃声。


『出口はどこだ!くそっ!』バンバン!

『やはり無理だったのか!?いや、そんなはずはない!』バン!バン!

『ゾンビ共が周りに群がってきている!もうだめだ!』

なんだなんだ!?
かなりピンチらしいが、Ghostはどうしたんだ!?




『何もかもおしまいだ!Ghostの野郎も狂っちまった!』


キョン「な……」

Ghostが狂った!?

『集めた書類もすべて捨ててしまった!一刻も早くヘリに戻らないと!』ドンドン!

ピピッ!

慌てた声色のまま、四件目は終わった。


そして録音その四が始まる。
……音質がひどい。録音者の呼吸音がかなり混じってしまっている。
いや、それだけではない。もはやPDA内臓のマイクが使い物になっているようだ。


『ぐっ……ヘリが落ちた……。恐らくPSY波に電子機器を狂わせる何かがあったんだ!』

『北へ行こうとしていたMilitaryのヘリが落ちた理由が分かったが……今は脱出しなければ……』

『移動研究所はどこだ?Sakharov!返事をしてくれ!操縦士!副操縦士!』ガオオオオオン!

『くそっ!スノークが!ゾンビが!弾がっ……!わあああっ!』バンバンバン!

ピーッ!


朝倉「思ったよりも壮絶な内容ね……」

いつの間にか覗いてきた朝倉が呟いた。

キョン「この地獄に入るってのかよ……」

長門「そう」

そう、ってなぁ……。

朝倉「“コレ”もあるし、大丈夫なんじゃない?」

コレ?
ああ、頭につけてるPSYブロッカーの事か。

長門「朝倉涼子、過信は禁物」

朝倉「わかってるわよぉ」


PSYブロッカーについて、少し思い返してみる。
一時間前の移動研究所でのことだ。


Sakharov「これがPSYブロッカーだ」

そう言われて渡されたのは、ヘッドホン型の装置が三つ。
ヘッドホンと違うのは、ケーブルがないのはもちろんの事、かなり軽いものだ。

Sakharov「これは、脳に直接PSY波を打ち消す音波を発する機器だ」

音を出すのか?
だとするといろいろ気が散りそうなんだが……。

Sakharov「それもそうだが、人間には聞こえない周波数だ。戦闘に支障はないじゃろう」

朝倉「それはよかったわ」

戦闘狂の朝倉らしい解答。


頭にハメてみるが、あまり違和感がない。
これはなかなかいい品物じゃなかろうか?

Sakharov「だが、いくつかの点において注意が必要じゃ」

まぁ予想はしていた。
いいものには意外な弱点や注意点があるものだからな。
そして教授が、そのしわだらけの顔をさらに寄せて警告する。

Sakharov「このPSYブロッカーは、常にPSY波を打ち消す脳波を、随時調節しながら送り込む」

Sakharov「しかし想定を超えた、強力な放射を検知すると、警告を鳴らすように設定しておいた」

教授がブロッカーの所々を指しながら解説する。

長門「警告とは?」


Kruglov「うん。強力な放射を打ち消すに当たって、当然ながら機器の発する脳波も大きくなる」

Kruglov教授がグラフの書かれた紙を回す。
そのほかいろいろなメモ書きやら図形が書かれていたものの、俺にはちんぷんかんぷんだった。
もっとも、横に並んでいる二人は一瞬で理解したようだったが。

Kruglov「しかしこの機器の性質上、長時間の放射には耐えられない」

教授がブロッカーの、ヘッドホンで言う耳のところをぽんぽんと叩いた。
ここ、ここ重要ってな感じに。

朝倉「製品強度の問題?」

Kruglov「その通りだ」

癖なのか、何度も何度も叩く。


Kruglov「この部分には小型のバッテリーが入っている」

さっきから叩いているところをさらに強調して叩く。
そんなに叩いて大丈夫か?

Kruglov「大丈夫さ」

ならいいけど。
それで、話の続きは何だっけか?

Sakharov「うむ」

Sakharov「強力な放射に対する干渉波を長時間流すと、バッテリーがすぐにあがってしまう」

Sakharov「それだけならいいんじゃが、その熱の影響で機器の一部が変形してしまう可能性がでてな」

Sakharov「強力な放射を感知して、一定時間経つと、シャットアウトの危険を警告するようになっている」

そこまで強くなるのか。


長門「改修は?」

Sakharov「別に不可能ではない」

Kruglov「でも、これ以上溶けにくい素材や冷却措置を施せば、かなりの重さ、大きさになる」

Kruglov「それに、ここの設備じゃいいものは期待できないからね」

最後だけいやみを含めた感じに言い放つKruglov教授。
その説明が終わった頃を見計らい、俺が尋ねる。

キョン「その制限時間は?」

Kruglov「多く見積もって、五分だ」

五本指を立てた教授の顔は、これができる全てだといわんばかりの苦い表情だった。




そして今、そのPSYブロッカーを受け取った俺たちはYantar西側、移動研究所の裏手の湖跡にいる。
Vasiliev教授の死体から情報を得るためだ。

朝倉「それで、PDAから何かめぼしいものは見つかった?」

ああ、長門に見せたらいろいろ見つかったよ。

長門「彼らがたどったX16の軌跡、そして何らかの方法で入手したスコッチャーの無効化の方法が見つかった」

朝倉「なかなかじゃない」

PDAとにらみっこする二人をよそに、俺は後ろを振り向いた。
遠くにぼんやりと、晴れ渡った空の下に佇む巨大な廃墟。

キョン「………」

朝倉「ほらキョン君、いくわよ」

俺は朝倉に呼びかけられるまで、それをずっと見ていた。


ゾンビとスノークの群れを抜けながら歩くこと約十分。
俺たちは例の巨大なビル、X16の正門にたどり着いた。

Vasilievの使ったルートではなく、正門から進入する手段に出た。

キョン「下水道からじゃなくていいのか?」

教授らから聞いた話では、この正門を潜ると、本格的なPSY波を受ける領域に入るらしい。
ブロッカーで防げる程度ではあるらしいが、些かいやな感じだ。

朝倉「スノークがいっぱいいるって言ってたでしょう?狭いところであんな奴と戦ってられないわ」

殺人狂が何を言うか。調子でも悪いのか?

朝倉「……失礼ね。ほら、いくわよ」

そういう朝倉に、俺と長門は続き、X16の敷地内に足を踏み入れた。


足が門の境界を越えた途端、体全体が妙な感覚に襲われた。

キョン「うっ……!」

軽い立ちくらみのような感じ。
それから軽い耳鳴りと、目の前にもやが現れた。

ぐわんぐわん……。

そんな感じの幻聴が聞こえながらも、しばらくするとすぐに収まった。
それでも、完全には取れていないようだが。

長門「PSYブロッカーが作動した。問題ない」

なるほど。
つまり、最初の方に感じたあれはPSY波をダイレクトに受けた感覚だったのか。
くわばらくわばら、なこって。


ふと横に目をやる。
そこでは珍しくも、朝倉が壁に寄りかかって、車酔いでもしたかのように口に手を当てていた。
長門が心配したのか、声をかける。

長門「朝倉涼子……?」

朝倉「ううん、大丈夫。ちょっとびっくりしただけ」

なんでもないわ、という風に立ち直る朝倉。
本調子じゃないのか?

朝倉「いくらインターフェイスとはいえ、完全に直るわけじゃないから」

そういえば、ブロウアウトをダイレクトに受けたんだっけか。
だったら研究所で休んでおくか?

朝倉「じっとしてるのはつまらないの」

そういえばお前はそういう奴だったな。
俺を刺した時だって似たようなこといってたし。


そうこう会話を交わしながら、俺たちはさらに敷地内を進む。

元は発電所関係の施設だったのか、電車の線路でよく見る、わっかが連なったようなアレもある。
ただし、全てはボロボロに朽ちており、死体が転がっていたりとひどい有様だった。

朝倉「……! しっ!」

進む俺と長門を両手で制し、物の陰に隠れる。
そしてそっと、朝倉は顔を出した。

キョン「なんかいるのか?」

朝倉「ええ、ゾンビとスノークが大多数、ね」

朝倉がぱっぱっぱ、と指を差した先。
両手をぶら下げたゾンビと、なにかを貪り食っているスノーク。


キョン「この距離なら、頭狙えるが?」ジャカ

スコープ付きのAKでゾンビを狙うと、ゾンビの崩れた顔がズームされる。
少し心臓に悪い。

ところが、朝倉が俺のAKを抑えた。

朝倉「いえ、迂回した方がいいわ」

朝倉にしては意外な回答だった。
いつもどおり強行突破をする勢いで行くかと思ったのだが。

朝倉「……無駄な戦闘は避けなきゃいけないもの」

朝倉らしくもないな。
まぁいいか。戦闘を回避できるってことは、それだけ少し楽って事だ。


―――と、思っていたのだが


朝倉「ちょっと、そこじゃ見えちゃうわ」グイッ

キョン「ぐえっ!」

などといきなり引っ張られたり

長門「……伏せて」ゴッ!

キョン「あがっ!」

とか超人負けの力に押さえ込まれたりする。
これがなかなか痛い、きつい。

キョン(ゾンビとドンパチしたほうがよかったかも分からんね)

加減なんて言葉が辞書になさそうな二人に扱われる、かわいそうな俺の体。
おお、いたいいたい……。


戦国時代の忍者といえば、それこそ目立たないよう闇夜に溶け込む黒い服装をしていたイメージがある。
ただ俺たちの場合は、二人はコンクリート背景には意味のない迷彩色の防弾チョッキ。しかも俺にいたってはオレンジ色の目立つ科学者スーツだ。

余談だが、本来なら朝倉や長門も着る予定だったのだが、ブロウアウトに襲われて二つをダメにしてしまったせいで足りなくなったそうだ。

忍を見習ってこっそり中央の建物に近づく。
Vasilievのメモを見る限り、どうやらここが入り口のようだ。
窓類は全て木の板でふさがれており、侵入はおろか中の状況すら確認できない。

というわけで、正面玄関から挨拶混じりに行くことにする。

朝倉「開けるわよ」ガチャ

ギイィ、と年をとり過ぎ朽ち始めている扉の軋みが俺たちを歓迎した。
朝倉、俺、長門の順で建物に入り、室内を見渡す。

キョン「誰もいないな」

長門「室内異常なし、クリア」チャ


こういうのをクリアリングって言うんだっけか?
呑気に入った俺とは対照的に、しっかりと構えて隅々を調べる二人。見ていて感心する。

朝倉「研究所への入り口は……地下にあるみたいね」ピッピッ

VasilievのPDAをいじりながら朝倉が呟く。
なにやら焦ってるみたいだが……?

朝倉「こんなところにいちゃ、いつ気付かれてもおかしくないわ」

朝倉「一番最悪なパターンなのが、研究所の入り口が見つからないまま、この建物で篭城になることよ」

朝倉「相手の総数は不明。いくらでも沸いてきそう」

なるほど。
確かに食料とかは最低限しかないもんな。


長門「地下への階段が見つかった。こっち」

部屋をうろうろしていた長門が隅の階段を指差した。
なんとまぁわかりやすい地下階段なことか。

そして先の通り朝倉が先行し、俺と長門が後に続く。
特殊部隊顔負けの進み方は、まるで映画の中に入っているようだった。

キョン「しっかし、かなり長い間放置されてるんだな」ゴン

壁の塗装はそれはもうベロベロに剥げており、この木の扉なんてちょっと突いたら……バキャッ!
この通り崩れ落ちてしまうわけで―――

キョン「あ……」




ゾンビ「………」

藪を突いて蛇を出す。

目、合っちまった。


数秒間のにらめっこ。
火蓋を切ったのはゾンビ野郎のほうだった。

ゾンビ「うああああ~」ダダダダ

キョン「うわっ!」ガガガッ!

勝負は一瞬でついた。
適当に弾をばら撒くゾンビの弾は当たらず、すかさずサイトを頭に合わせたAKの勝利だ。

だが大事なのはこっちではない。
ザッザッザ……と、上階から響く足音。

朝倉「キョン君……余計なことをしてくれたわね……」

朝倉の言葉が突き刺さる。

これでまたX16へ急がなきゃいけなくなったわけだ。


少々足を速めて地下へと進む。
下りきった先にあったのは、これはまた重そうな鉄製の扉。
X18のような電子ロックキーがあったが、ボロボロに朽ち、役目を果たしていない。
覚悟を決め、ノブに手をかける。

キョン「………」グッ

ギイィィ……

ロックはかかっていなかった。
上から来るゾンビを避けるためにはさっさと入ったほうがよさそうだ。

朝倉「入り口付近には何もないわね……」

長門「異常なし。侵入を開始する」


ゾンビが入ってこないようにドアを閉める。
すると辺りは一面の闇に包まれた。照明が全く生きていない

キョン「そういえばこれにも暗視装置が付いてたんだっけか?」カチ

キュイーン、という音と共に視界が青みを帯びる。どうやらこの暗視装置は青色らしい。
全く光源がないためくっきりとはしないが、ないよりはマシな程度にはなった。

長門「ここ一帯の電力供給をしている配電盤がショートしている」

長門がライトをつけ、守衛所みたいな部屋の中を照らした。
かつては受付でもしていたのだろうか?

ここからはライトと併用していくことにしよう。


部屋を直進すると、大型エレベーターが現れた。
長門のマンションよりも数倍広い。おそらく研究機材なんかを運ぶ用だったんだろう。

朝倉「これに乗って降りてみる?」

AKの銃口で入り口を指しながらいたずらっぽく尋ねる。

キョン「流石に乗る気は起きないな」

動いてる最中に閉じ込められるか、そこが抜けて転落死の二択だ。

長門「なら、点検用のはしごを使う」ギィ

長門がエレベータの脇にあったハッチを開けた。
見えるのははしごと、限りなく続いていそうな暗闇だけ。下の方から光が漏れている感じがするが、それもかなり遠い。

長門「先に行く」

今にも折れそうな錆びたはしごを降りていく長門。
俺と朝倉もそれに続く。



はしごを降り、最下層が見え始めたところ、その予感は当たってしまった。

よくよく見ると、はしごが中腹部分から折れてしまっているのだ
周りに代わりになるようなものはない。


朝倉「飛ぶしかなさそうね!」

キョン「冗談だろ!?」

長門「飛び降りる」バッ

躊躇なく飛び降りる長門。

いやいや待て待て!
ここから下まで三階位の高さがあるぞ!

朝倉「男の子なら覚悟を決めなさい」バッ

それに続いて朝倉も飛び降りる。

キョン「……ええい!ままよ!」バッ!


俺は意を決してはしごから手を離し、間違って何かにぶつからないよう少し蹴り上げた。

キョン「うおおおおおお!」

ドサッ!

着地した衝撃はあまり伝わらない……。
あんなに高く落ちたのにどうしてだ、と下を見る。

朝倉「いてて……運がよかったわね」

落ちた先にあったのは、なんと廃棄されたゴミの山。
硬いものは特になく、そのおかげで助かったようで、なんともついていた。
どうやら神様に守られてるのだろうか?

長門「異常は?」

朝倉「今のところは……なにもないわ」


互いの無事を確認しあった後、俺たちはさらに進む。
エレベーターの脇を潜り抜け、明かりの漏れているほうへと向う。

やけにただっ広いところに出る
ここから先は、照明がところどころ生きているようだ。

朝倉「暗いわね……」

朝倉、長門も暗視装置をつけてるらしいが、どうやら旧世代のでは見難いらしい。
どれ、俺が代わりに見てやろう。

キョン「……倉庫みたいだな」

ただ広いその部屋にはクレーンと思わしきものが設置されており、大きなコンテナが転がっていた。

長門「異常はない模様」

回転灯がまだ生きていて、部屋を一瞬、また一瞬と映し出す。
暗視装置を切って眺めてみると、まるでパラパラ漫画のような速度の世界になった。



ガタアアン!


俺たちが一歩進んだとき、何かの音がした。
発生源をたどろうにも、部屋全体に響いてしまっているために特定できない。

キョン「何かがいるのか?」

朝倉「ゾンビかしら……」

長門「音源は不明。全周囲を警戒した方がいい」

遊びで切っていた暗視装置を再び起動する。
青い視界の中で、左右通路の敵を探してみるが、みつからない。

気のせいだったか……?と思ったときだった。

キョン「……!」チャ


奥の天井を見たとき、確かに何かが動いた。
どっちに行った?右か?左か?

キョン「……どこだ?」

ライトを、天井を縦横無尽に走る鉄筋に向け、敵影を探す。
生み出された鉄筋の陰が壁に写り、いっそうこの部屋を不気味にする。

気のせいと判断したのか、朝倉は歩みを進めていた。

朝倉「キョン君、いくわよ」

そういってここを出ようとしたときだった。




キョン「朝倉!上だっ!」


まさにそれはイベントシーンだった。
バコッ!という音と共に天井から落ちてきた木箱が、先頭にいた朝倉を襲う。

朝倉「っつ……!!」

突然の出来事に反応する朝倉だったが、状況を把握できずにいない!

「グオオオオオ!」

そして木箱を落とした張本人、スノークが一匹、朝倉の目の前に飛び降りてきた。
朝倉の腕は木箱の破片を防ぐのに手一杯で、銃を発砲できる状態にはない。

長門「朝倉涼子、逃げて!」

長門が援護をしようとするも時既に遅し。
スノークの足が朝倉に向かって、目に追えない速さで蹴りだされる。


ドガアッ!

朝倉「かはっ……!!」バキッ!


頭部に向かうはずのスノークの足は、朝倉がギリで構えた銃により塞がれる。
しかし銃はへしゃげ、朝倉は轟音と共にコンテナへと叩きつけられた。

キョン「朝倉っ!」

長門「朝倉涼子っ!」ダダダダダ!

奴が間合いを取った一瞬のすきをついて長門が頭を吹き飛ばした。
血しぶき、破片が朝倉の顔にかかる。しかし振り払おうとはしなかった。

キョン「……大丈夫か?」

朝倉「負傷者にずいぶん冷たい態度をとるのね」

すまんな。

朝倉「まぁ私のミスだから……気にしないで」


ミス……ね。
たしかに接近戦で後れを取るとは朝倉らしくない。
かなり疲れているんだな。

朝倉「この銃は……使えないわね」ポイ

さっきスノークの蹴りを防ぐのに使った朝倉のAKは、見事にへしゃげてしまっている。
……まてよ?それほどの蹴りをまともに受けたとしたら

朝倉「内臓グチャグチャかも」

軽く言い放つな……。
しかし、丸腰で行く気か?

朝倉「まさか……。武器はまだあるわ」

腰から取り出したるはベレッタ。俺と同じやつ。


この時点で俺は気付くべきだったんだ。
そう、この異変に。


さらに奥へと進むと、狭い廊下への入り口がみえた。
薄暗い廊下に散らばるゴミや、過去に訪れたであろう探索者の死体。

キョン「南無……」

一応手を合わせておく。
ウクライナ……旧ソ連域って何教だろう?ロシア正教でいいのだろうか?

朝倉「一々弔ってたらキリないわよ?」

分かってるっての。
死体を見て立ち去ろうとした時だった。
朝倉が急に死体の前に座り込む。

朝倉「……あ、これは使えそうね」

死体の持っていた銃を手に取る。
見た感じショットガンか?


長門「ウィンチェスター M1300」

流石は長門先生。一目見るだけで分かったか。

長門「ポンプアクション式のショットガンで、12ゲージ弾を使用する」

そういえばショットガンは使ったことないな。

朝倉「弾は少しあるみたいだし、持っていく?」

そう言いながら朝倉が死体の懐を漁る。
時折腐った死体の一部が崩れたりするが、そこは朝倉動じない。

キョン「いや、血がべったりの銃は遠慮しとく」

朝倉「そう?じゃあちょうど拳銃しか持ってないから私がもらうわ」

どうぞ、ご自由にお使いください。
俺のものじゃないが。


そんなことを話しているうちに、軽いバリケードで塞がれたところへ出た。
バリケードとはいってもドラム缶や木の板が高く積まれただけで、普通に退かせそうなレベルだ。
いや、本気をだぜば乗り越えられる。

キョン「よっこいしょ……」

バリケードの頑丈そうなところに手をかけ、ゆっくり上る。
そろそろ向こう側が見えるかな……


ゾンビ「うあー……」

キョン「………」


神様や。こんなに目を合わせる機会をくれるとは。
あんたは俺とゾンビ野郎をくっつけたいのか?

ゾン×キョンなんて誰得。


ガガガガガ!

バリケードの向こう側にいたゾンビ野郎が発砲し、俺の横を銃弾が通る。

キョン「あっぶな!」

とっさに手を放した俺は尻餅をつくも、幸い怪我はない。
くっそ、やってくれたな。

長門「はやく離れて。来る」

まるでバリケードの向こうが見えるかのように長門が言う。
そして間もなく引っ掻く音、叩く音がし始めた。

ガリガリガリ!ガンガン!

キョン「壊す気か?」

朝倉「でしょうね」


メキャメキャ!

耐久力がゼロになったバリケードにヒビが入り始める。

バカァッ!

崩れ落ちたバリケードが床にたまっていた土埃を舞い上げ、その奥からゾンビが姿を現す。
その数は約十五……

キョン「待て待て待て!俺がのぞいた時はあんなにいなかったぞ!」

長門「恐らく隠れていた」

隠れていた?……いいや、違うな。
コイツラ住んでいたんだよ。ここを家代わりに。

朝倉「ゴタゴタいっても仕方ないわ。やるわよ」


朝倉はさっき拾ったショットガンを、長門は自前のAKSを構える。
そして俺も、ストレロクから奪った―――もとい拝借したAKで、ゾンビに狙いをつける。

ガガン!ガガガン!

ゾンビ「あ゙うあっ!?」ビチャ!

最初に引き金を引いたのは長門だった。
的確な射撃で、一人ひとりを的確に潰していく。
これは俺も負けていられない。

キョン「おらぁっ!」

ガガガガガ!

若干弾道が不安定であったものの、何とか目の前の敵に当たった。
この調子で行くぞ。


朝倉「隙あり!」ズバアン!

凄まじい銃声が、朝倉のショットガンから放たれた。
次の瞬間、目の前にいたゾンビは、見るも無残な肉片へと姿を変えていた。


キョン「っと!」

時折敵が放つ弾が肩や顔の横を掠める。
ここまでの近接戦闘なのにもかかわらず当たらないのは、敵がゾンビであるゆえだろう。
だが当たらないからといって、跳弾があるので油断は禁物だ。

朝倉「散弾じゃあまり効果はないわね」パンパン!

いつの間にか朝倉がベレッタに持ち替えていた。
その判断の仕方はまさに戦い慣れているというものだろうか。

長門「賢明な判断」


奥から次々に沸くゾンビを相手にしている。
それゆえ、俺たちの後ろはほぼ無警戒でもあった。

オオオオオオン!

この鳴き声は……スノーク!
通路に独特の鳴き声が響き、足音を消しているが……

キョン「――長門!後ろだ!」

長門「っ!」

長門が一瞬の不覚を取る。どうして彼女たちはこう奇襲に弱いのか。
長門がAKを構えなおして振り向くのとスノークが飛び掛るのはほぼ同時だった。


ズザザザザッ!

盛大に土埃を舞い上げ、長門がスノークに押し倒される。
ここはもちろん、捕食的な意味でだ。

長門「くっ……」

AKを盾にして耐える長門。
しかし銃身の短く、カバーできる範囲の狭いAKSではそう長く持たない。
だが、助けるなら今だ!

キョン「長門っ!」

AKのストックを下に持ち、ゴルフクラブを振る要領でスノークの頭部へめがけ振りかぶる!
一番アイアン!ぶっ飛ばせ!


ガゴッ!

何かが潰れたような、そんな鈍い音共にスノークが吹っ飛ぶ。
続いて壁にぶち当たる。どさり。
ホールインワンまでとは言わないが、かなりの距離を吹っ飛ばしたようだ。

キョン(本気出せば、人間限界を来れられるもんだな)

息を整えながらふと思う。
こんな力、普通じゃ出せねえぞ。


朝倉「二人ともしゃがんで、耳を塞いで!」

突然響いた朝倉の言葉に俺たちは反射的に反応する。
二人して隠れるようにしゃがみ、そしてうずくまるように耳を塞いだ。


刹那―――


ドオオオオオオン!

耳から入り、口から出る勢いで響き渡す爆発音。
朝倉め、何をしやがった!?

朝倉「弾の無駄だから、そこらにあったドラム缶を撃ってみたのよ」

朝倉「そしたらビンゴ。一掃ね」

焦げ臭い。肉が焦げたというか、生焼けの臭いか。
スーツの浄化装置を通しても臭ってくるその匂いが強く鼻を突く。

木箱の破片が燃えている。
あたりは一面肉片らしきもので塗りつぶされていた。

キョン「かなりえぐいな……」

血肉にまみれた部屋を通り過ぎ、さらに奥へ。


浄化装置を抜けてくるのは、その匂いだけではなかった。

キョン「あっつい……」

朝倉「確かにそうね……」パタパタ

雨の中を走って汗をかいた時の様に、スーツの中が蒸れ始めてくる。

長門「平均室温1.2度上昇」

少し歩いただけでそんなにもか!?
となると、近くに熱源があるということになるが……。

顎に手を当てたつもりで考えていると、足に何かが当たった。

キョン「……お?」


落ちていたのは赤く輝く石ころ。
これはもしかして……

※海外Wikiより
ttp://images.wikia.com/stalker/images/4/44/Fireball.jpg

長門「Fireball. 熱アノマリーで生成される」

キョン「効果は?」

長門「放射能を高レベルで取り除いてくれるが、持久力も半減する」

長門「だけども、もともとあなたの持っていたUrchinの放射線除去能力の方が高い」

だとしたら拾っても意味ないか?

朝倉「あら、あなたは他に放射線を出すNight starをつけてるでしょう?」

朝倉「それ以外にも、外からの放射線を吸収するためにつけていて損はないわ」

朝倉「それに、アーティファクトって高く売れるのよ?」

……意外に朝倉も、金儲けには興味があるらしい。




だけど持久力低下というのはなぁ……。
そう悩んでいるとなにやら缶が俺の前に差し出される。

長門「コーラ」

いや、それは見ればわかる。
……時に、ウクライナにもコカ・〇ーラは存在したのか?

長門「これを飲めば多少スタミナが回復し、維持できる優れもの」

すげえな炭酸飲料水。
とりあえず、今はスーツ着てて飲めないからバッグにしまっておこう。

そしてFireballと呼ばれたアーティファクトを手に取る。
それはまるで、図鑑に載っていた小さな太陽のようだった。
だが、手にとっても熱くない。

ベルトに装着したのを確認したのち、俺は足を進めた。


時折バーナーアノマリーが噴き出す通路を淡々と進む。
そんな折ふと、朝倉が独り言のようにつぶやいた。

朝倉「……何か聞こえない?」

声か?

朝倉「そう。なんか呼んでるような……」

珍しく朝倉が真剣に語りかけてくる。
しかし、声なんて……




「……ぇぇ」


キョン「!?」スチャ!


突然耳に響いた謎の声。
なんだ……今の?


「ぅ……ぇぇ……」


かすかに、すすり泣くような声。

……馬鹿な。こんなところに赤ん坊なんているはずがない。

キョン(そう、これは幻聴だ!)

『何かが聞こえる』と意識し過ぎることで、実際に何かが聞こえてるような感じがする。
ただそれだけのことだ。

キョン(落ち着け……落ち着け……)



ほどなくして、声は消え去った。


やがてまた広い所へ出る。
だがどうやら、ここは部屋ではなく通路のようだ。

わき目に何やら壁看板を見つけた。
風化しているせいで、なんて書いてあるかは読めない。

例のごとく朽ちたドアの向こうには、とてつもなくただ巨大な空間がぽっかり。

朝倉「うわ、広い……」

長門「………」

長門も朝倉も、ただただその部屋を呆然と眺めていた。
そしてその俺もまた、立ち尽くしていた。

キョン「なんだ、ここは……」


まず目に入ったのは、その天井の高さだ。
だいたいビル六階分はあるだろうか?暗さも相まって天井が見えないほど高い。
ちらほら照明のような光源もあることだし、暗視ゴーグルをつけてみるか。

キョン「………」カチ

キュイーン、という機械音とともに周りの光が増幅される。

キョン「うお……」

俺は、視界に広がったその光景に絶句した。


円柱状の中央にそびえる『何か』。
そしてそれを囲むようにしている輪っか。
それが、異様に不気味な存在だった。


簡単に説明しよう。
円形の部屋の中央を、これまた円形の何かが天井へ向かってそびえ立っている。
そしてその周りに、作業用であろう輪投げの輪のような円形の足場が一定の感覚で備え付けられており、それをつなぐラッタルもあった。

朝倉「……なによ、あれ」

朝倉が絶句するのもわかる。
問題なのはその巨大さだけではない。


ゾンビ「アウァァウアァァァ……」ブツブツブツ

足場には座り込んでいた大量のゾンビがいる。
それだけではない。まるでその像を何かの象徴のように崇め、称えていた。

朝倉「あれを崇拝してるみたい……」

全く同感。新興宗教の施設に迷い込んだみたいだ。


長門「座標の一致を確認。あれがブレインスコッチャーの元」

長門がPDAと崇拝対象を交互に見ながら確認する。
ちょっと待て。てぇと……

長門「付設されているであろう電力供給装置を切り、スコッチャーを完全に停止させる」

あの狂信者ゾンビの群れへ飛び込めってのか。

朝倉「でも、拝むのに夢中でまだこっちに気付いてないわ」

長門「ある程度近寄れば、グレネードと弾幕射撃で一掃可能」

なるほど。また奇襲か。

朝倉「一番効率がいいのよ」

長門「一気に接近するのは危険。ひとまずはあの筐体に隠れる」

長門が指差したのは何やらよくわからない機械。


薄っぺらいが、まぁ銃弾の盾にはなりそうだ。

キョン「よし、いくか」

朝倉「ちょっと待って。いたた……」

どうした?

朝倉「ちょっと頭痛がしたのよ。偏頭痛かしら」

朝倉「変な空気ばっかり吸ってるせいね。早く出たいわ」

朝倉が体調不良とは珍しい。だったらさっさと終わらせるか。
そう思い今一歩前へ進む。







『Attention! Critical emissions! Leave the area immediately!』






キョン「!?」

突然頭から発された機械音声。なんじゃこら?

長門「『警告。致命的な放射レベルを感知。即座に退去せよ』」

朝倉「どうやらPSYブロッカーの自動制御機能が働いたようね」

そういえば教授は言っていた。
強力な放射を防護できるのは、ごくわずかな時間だけだと。

キョン「つまりあと……」

『Protection will be disabled after 5 minutes.』

長門「五分でここを乗り切る」ジャコ

朝倉「わかったわ」

そして余裕の二人である。


だが状況は簡単に行かせてはくれない。
先ほどの音声案内のせいで、ゾンビ野郎が気付いたのだ。

ゾンビ「サウダサウダッ!」

教授……どうせヘッドホン型なら音声は漏れないようにしようぜ。


朝倉「行くわよっ!」

朝倉の掛け声とともに入口を飛び出す俺達。
上の段から撃ってくるゾンビ共の銃弾を、機器を盾にしながら丸い通路を走り抜ける。

キョン「っとお!」ガガガン!

昔の塹壕戦よろしく、立ち止まっては隠れて銃だけを出し撃つ。たまに顔を出して狙う。
これがなかなか勇気がいるもので、怖い。


一つ目のラッタルを上る。
適当に弾をばらまきながら上った先に、今までよりも大きめの機器があった。

キョン「なんつーか……わかりやすいな」

大きなレバーがいかにも『これですよ』と言わんばかりに目立っていた。
果たしてこれを下すか否か。

朝倉「私たちが防御するから、さっさと切って!」ドォン!

朝倉がまたゾンビの顔を吹き飛ばす。
オーケー、わかった!

キョン「おらっ!」


ゲーセンで引くレバー同様手前に勢いよく降ろす。
するとブゥーン、という低周波な音とともに、どこからともなく機械音声が発された。

『Unit C-23 locked. Power supply is decreasing. Unit C-17 has started.』

部屋全体にアナウンスが鳴り響く。
長門が装置へ駆け寄り、何かを調べ始めた。

朝倉「長門さん?」ガガガン!

長門「これは複数のうちの一つ。まだほかに装置がある模様」

電力供給が止まったかと思えば、どうやらそうではないようだ。
上を見ると、なるほど確かに似たような装置が。

キョン「つまりは上にあるやつも」

長門「全部停止させる」ダッ!

そういった長門は、いの一番に駆け出して行った。
援護のために俺も駆け出す。


鉄製の通路に銃弾が跳ねかえり、時折すぐわきを通り抜ける。

キョン「次はコイツだ!」

ガシャコン!

『Unit C-17 locked. Power supply is decreasing. Unit C-12 has started.』

朝倉「次行くわ!」

今度は朝倉が先導する。
少女二人、ラッタルを上る音が軽やかに響く。



ゾンビ「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

朝倉「!?」ブンッ!


なんということか。

ラッタルの出口の上で朝倉を後ろから襲おうとしたゾンビ。
彼は朝倉の回し蹴りによって中央の柱に叩きつけられ、奈落の底へと落ちた。

朝倉「危なかったわ」

ぐしゃ、というかすかな衝突音。
下を覗くと、よくもここまで高いところに来たなと思う。

さて、そんな一人語りもそろそろやめよう。

キョン「これで、最後だ」

がちゃ!

『Unit C-12 locked.』

『Warning. All power supplying systems has been downed. Emergency supplying system started.』


長門「あとは予備電源を切る」


ゾンビはもういない。

俺たちはゆっくりと、最上階にあるメイン制御室のようなところに辿り着いた。
朝倉と長門がコンソールを見つめる。

朝倉「これね」ピ、ピ、ピ

長門「セキュリティコードはすでに入力済みを確認」

長門「予備電源を停止する」ガコ

長門がレバーを下す。
それに呼応するかのように、施設すべての電源が落ち始めた。


『Warning. Warning. Power supply is decreasing.』


コンピューターや機械があちこちで動く中、中央の物体のみが照らされた。
暗くて見えなかった『何か』の正体が明らかになる。

中央の物体は、ガラスでできていた。
まるで巨大な試験管が天井から釣り下がっているような。

それだけではない。

朝倉「なによ……あれ……」

朝倉が目を点にする。

キョン「あ……あ……」

俺も思わず息を止めた。



試験管の中に入っていたもの。それは俺達もよく知っているものだった。


人間が生きる上で絶対的に必要であって、また人間はその発達によって大きな進歩を遂げてきたもの。


長門「……脳」



全長三メートルは優に超える。
そんな脳味噌が、液体に満たされた試験管の中に浮いていた。

キョン「馬鹿な……あんな巨大な脳が!?」」

朝倉「これはおそらく……」

長門「人為的に肥大化させられたもの」

人為的だって……?


『Cannot keep the specimen. Report to security officer』

俺が必死に悩んでる間にも、音声はなり続ける。
この何気ない機械音声が聞こえた瞬間だった。


とてつもない断末魔が、あたりに響き渡った。







「キ"ャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」






ひたすら続く断末魔。
長門も朝倉も、耳を塞ぎながら膝をついてしまっている。

キイイイィィィィィィン!

同時に耳鳴りが始まる。
そしてカチッ、という何かの切れる音。


『Attention! PSY-blocker battery was running out. Protection will be deactivated.』


耳鳴りが強くなる。意識がもうろうとしはじめる。

キョン(スコッチャーは止めたんじゃなかったのか……?)

ろくな考えも浮かばない中の疑問だけが、俺の意識を保たせた。
フラフラと姿勢を維持しながら目線を前に直した時、その理由が見つかった。


視線の先には先ほどの試験管。
大量の気泡を噴き出しながら、浮いていた巨大な脳が沈んでいく。



キョン(これは……アイツの悲鳴だったのか……)

自分自身を支えていた疑問が消えた瞬間、俺は床へと倒れこんだ。

本日分は以上です
英文正しいだろうか……

意識を失った俺は、ストレロクを夢に見る。
これは俺の記憶なのか、それともただ作り上げた想像の産物に過ぎないのか。
謎の脳の正体、ブレインスコッチャーの正体。
Ghostを見つけた俺たちは、さらなる混乱へと放り込まれることとなる。

次回『PSY』

どうも
久しぶりの投下です


―――――――――――――――――――


それは、とてもとても広い場所だった。
広い広い乾いた沼地に、二人が立っていた。
一人は猫連れ、もう一人はフードをかぶりリュックサックを背負っていた。


この猫、どこかシャミセンに似てる気がする。
そしてその飼い主の顔も、どこかで見たことある。……いや、よく知っている顔だ。
なのに……思い出せない。

一人がもう一人の後をゆっくり追っていたが、その足を止めた。
その手には一枚の、チェルノブイリ原発の写真。

「ねぇストレロク、そんなに大切なこと、何で何も言わずに出て行ったんだい?」

「それに、この写真はどこで……?」


ぐるん。
唐突に視界が暗転した。


今度は?
木でできた廊下と、その奥には古びた扉。


突然、一人の人が駆け込んできた。
そして妙なアーティファクトを取り出し、叫ぶ。

「あんたが知ってるなら、俺がそこで何を見るかを知ってるなら!」

……何を言ってるんだ、こいつは。


フッ―――と視界が跳躍する。

そして先ほどの写真を持ってた男が、ネコを撫でながら答える。

「ストレロク……いつまでそんなことをしている気だい?」

ストレロクは答えない。


「………」


「こんなことを続けていたら、君はいつかひどい死に方をしてしまう」

普段の顔に似合わない表情で警告する。


再び目の前がフラッシュバックする。
これはストレロクの記憶なのか?

また同じ廊下だ。また同じドアが目の前にある。
そしてまた、ストレロクが駆け込んでくる。

だがその姿は、おぞましいことに研究所で見たゾンビと同じ体であった。

「うぁ……」

どさっ。
そのまま倒れこむストレロク。


「だから僕は言ったんだ。君は酷い終わり方をしてしまうと」

ベッドに横にされるストレロク。
頭には包帯が巻かれ、男の手当てを受けている。


「だけど大丈夫。もうすこし辛抱するんだ」


景色は戻り、干からびた沼地。
ストレロクを見送る男の顔は、どこか不安げな顔であった。

「あんなことがあったというのに、今度はどこへ行くんだい?」

フードをかぶった顔がアップされる。
だがここでも再び逆光で遮られてしまった。ああ忌々しい。


しばし沈黙したのち、ストレロクは口を開く。
その目は

「北……」

まるで、決して手に入れられないなにかを

「北に行く……」

求め続けているかのように。


――――――――――――――――


耳に感覚が戻ってくる。
ゴウンゴウン、と研究所独特の重低音が聞こえる。

キョン「……ぃっつ」

いつの間にか這いつくばっていた体をゆっくり起こす。
前面のガラス部分が汚れて前が見えないので、とりあえず擦ってみるが

キョン「……んあ?」ゴシゴシ

取れない。
よくよくみるとこれは汚れではない。内側に着いた水蒸気だ。

スーツの換気装置が止まっている。
だから自分の息が溜まってしまったのか。


……換気装置が止まっている?


かつて怪しい研究をしていた施設。
ここには有害物質があふれててもおかしくない。

キョン「やばっ!?」

慌ててガイガーカウンターやその他検知器類をチェックする。

カウンターは音を発しなかった。
つまりは、ここは比較的安全だということ。

キョン「ふぅ……」

少しリラックスをするためにスーツの頭の部分だけを外す。
中に籠っていた空気が流れだし、あんまりおいしくはない冷たい外気が入ってきた。


ふと、目線を、あの巨大な空間へと戻す。


巨大な水槽に浮かんでいた脳は今や底に沈んでおり、生きているのではない事を示していた。
しかし、この脳は一体……


長門「おそらくは、ブレインスコッチャーの発信源」

長門、起きていたのか。
朝倉は?

長門「まだ意識が回復していない」

傷とかの回復だけでもさせないのか?

長門「思念体とのコネクションがない今、彼女の事は彼女自身で操作しなければならない」

長門「つまり、回復などの行為も彼女が回復した後自分でしなければならない」

そうか。なら仕方ない。
まぁ、やることもやったしゆっくりさせていいだろう。

長門「あなたも休んで」

キョン「そうさせてもらうよ」


そういうと長門は、先ほど操作した装置の下の方を漁る。
続々と出てきたの書類の山。それらを長門が黙々と読み始めた。

長門「………」

キョン「何か分かったか?」

長門「興味深い」

キョン「そうか」

長門「………」

ただ短い言葉で返す長門。
そういえば、こういう何げない会話も久しぶりだ。

あの教室、あの部室に戻れるのはいつなのだろうか?






長門「………」

どれくらい経ったのか、長門が顔をあげた。

キョン「読み終わったのか?」

長門「……おわり」

そうか。
何か分かったのか?

長門「ブレインスコッチャーについて、かなりの事がわかった」

長門「これから説明する」


長門「元々、このスコッチャーはコントロールが可能だった」

そりゃ、人間が作った以上はそうだろうな。
何がおかしいんだ?

長門「リミッター付き。一定以上の出力は出ないようにしていた」

長門「だが一年前ほど、何らかの拍子に制御装置、もしくはそれに準ずる系統が故障した」

長門「恐らくは冷却装置の破損による熱暴走」

一年前って……そんな少し前まで動いていたのか?
それに報告書もあるのなら従業員もいたということか?

長門「違う」


長門「ここに潜入する際、何者かが落とした個人記録を拾った」

そういえば、あの教授も言ってたな。
いつかだったか、この上は通り抜けられる道だって。

長門「恐らくはその潜入した人物のもの。信憑性は高い」


長門「ところで、そろそろ急いだ方がいい」

そういうと長門が俺に時計を差し出す。
時計の針は午後三時を指していた。みんな大好きおやつの時間。

キョン「あまりゆっくりしてると日が暮れる……か」

長門「夜のゾーンをうろつくのはお勧めしない。大変危険」

長門「それに今の私たちは手負いの状態」


そう言って長門が指を差したのは朝倉。
今まで無茶をしていたのか、呼吸はしてるものの全く起きる様子はない。

長門「軽い昏睡状態」

キョン「昏睡って……」

それ大丈夫なのかよ!?

長門「ヒューマノイドインターフェイスにとっては問題ない」

ちくしょう、とんだチート設定だぜそりゃ。

長門「それより、はやくGhostを探すのが先決」

おっと、忘れてたな。


長門「私が先行する」

気絶中の朝倉を背負い、長門先頭の元奥へと進んで行った。
先も述べたと思うが、このスーツにはリュックが標準でついており、少々朝倉を背負いにくい体制でもある。

キョン(……案外軽いもんだな)

何時だったか、朝比奈さんを背負った記憶が蘇る。
だがなぜ、あの時もこの時も、どうしてこんなピリピリした時間なのだろうか。

俺は朝倉を背負うのに手いっぱいで、AKをぶら下げるだけで精一杯。
敵は長門に任せるか……。

長門「………」

キョン「………」


カツコツカツコツ

場違いなローファーの音が通路に響く。
比較的きれいなその通路の一番奥に『電源室』という扉が見えた。

長門「ここ」ガチャ

躊躇なく開ける長門の背中についていく。

朝倉「う……」

意識が戻ったのか、朝倉のうめき声が時々聞こえる。
だが呼びかけても反応しないところから、完全ではないだろう。

キョン「正直、お前が先にくたばるとは思わなかったぜ」

あそこまで暴虐の限りを尽くしていたコイツも、こうしてりゃちょっとは可愛いもんだ。


長門「……っ!」

キョン「ん?」

突然、長門の足が止まる。

キョン(敵か?)

周りを警戒してみるが、無機質な電子機器、装置以外は見当たらない。
フェンスの向こうから排気熱が流れてくる。少し生温い。
その風に長門の短い髪が揺れる。

だが、長門は動かない。

キョン「長門……?」

長門「……ァヵ」




長門「ミカクニンモクヒョウヨリキョウリョクナカンショウハヲカクニンパーソナルネームフメイソウサカイシ」


キョン「長門!?」

突然長門があの早口言葉を話し始めた。つまり戦闘モード。
敵がいるのか!?

長門「そう」

とだけ返事を返すと、長門は改めて手持ちのAKの撃鉄を引いた。
弾頭がついたままの弾薬が落ちる。


ギィィィ……

長門が見つめる先のフェンス扉が開く。
照明がところどころ切れてるせいでよくは見えないが、何かが来ているのには間違いない。

長門「タイショウカクニンジョウホウレンケツノカイジョシンセイシネンタイトノセツゾクカクニンデキズ」

チャッ!

長門「ターミネートモードニセレクトトウガイタイショウヲカキノシヨウニテハイジョ」

長門の指が引き金にかかる。

長門「コウゲキカイシ」





だが、いくら待っても銃声はしなかった。


ガチャン!

代わりにしたのは、長門が銃を落とした音。

長門「モクヒョウヨリミカクニンノシンゴウヲジュシンパターンフメイ」

キョン「!?」

長門「ボウヘキカイトウギジエントリテンカイシンニュウケイロシュウフクカイシ」

キョン「お……おい長門……」

さっきとは比べ物にならないほどの長門語。
一体何が起きてやがる……。

長門「敵から……コウ域周波数によル……攻ゲキを受けてる」

長門「シネン体とのツながりが……イま、トダえてるイマ……」

長門「防ぐので……セイイっぱい……」

長門「……のセイギョも、ノウリョクのフソく……」

まるでノイズが走ったビデオの様にとぎれとぎれの言葉を発する。
そしてただ一言、はっきりといった。



長門「早く逃げて」


おれはしばらくその意味を理解するのに時間がかかった。

的確に状況を整理すると
まず長門は何者かによるスーパーパワーな攻撃を受けている。これは俺にはどうにもならん。
みえないということは、例え真ん前に出ても防げるものではないだろう。
ここまで約0.6秒。

だが明らかなのは、その敵というのはあの奥にいる奴だということだ。
……ならば俺が奴を撃って倒せば。
ここまで約0.2秒。

なら早速朝倉を降ろして……


長門『……ョも』

ちょっとまて、さっき長門は何と言った?


……のセイギョも

……の制御も

…リョウコの制御も

アサクラ涼子の制御も

そしてその前に、だ。

長門『彼女の事は彼女自身で操作しなければならない』


 朝 倉 涼 子 の 制 御 も
  能 力 の 不 足 に よ り カ バ ー で き な い 。


ここまで約1.5秒。

敵の攻撃を受けていながら、抵抗できない朝倉は―――






ド ス ッ !

柔らかい衝撃と共に、右のわき腹に冷たい感触がした。


キョン「かはっ……!!」

わき腹に生暖かい液体が流れてくる。
体の中に、冷たく硬いものが入っている。

そう、俺はこの感覚を知っている。
かつて長門が改変した世界で経験した、刃物で刺された感覚。


キョン「朝倉ぁっ……」

朝倉「ふふふ……」

振り向くと、何時かと同じ状態の朝倉。
彼女の持つとても鋭利なそのナイフは、俺のスーツの防弾板の間を正確に縫って突き刺さっていた。

キョン「ヤロ……」


朝倉「ここまで運んでくれてありがとう、キョン君」


今までと違い、この朝倉は容赦がなかった。
足を振り上げると、

バキッ!

キョン「がはっ!」

的確に刺した傷を狙って蹴り上げてきた。

キョン「ぐうううっ……」

我ながら情けない声を出す。
幸いスーツが防護してくれたのか、以前よりは傷が浅い……と思う。

朝倉「私ね、やっとわかったのよ」


朝倉「私の使命は、モノリス様を守ることなんだって」


キョン「は……?」

朝倉「モノリス様の聖域を汚すものは許さない」

なんだなんだ?訳の分からない事を言い出しやがった。
気でも狂ったのか―――

キョン(……目に光がない)

朝倉の目をよく見ると、まさに死んでいるかのような目だった。
今の朝倉はマリオネット……死に体を動かされているかのような、そんな感じだ。

キョン「目を覚ませ!朝倉っ!」

朝倉「むしろ目が覚めてないのはあなたの方よ、キョン君」

朝倉「……目が覚めてないのね。私が覚ましてあげる」

軽くそう言い放った朝倉は、俺に手の平を向け

朝倉「rdcctfgyhujipl;fegthiyko……」

キョン「ぐっ!?」


キイィィィィィィン!

それは、とてつもない頭痛。
頭を割る勢いで、朝倉の手の平から何かしらの電波が出ているかのようだった。

キョン(この感じ……こいつは……!!)

そう、俺はこの感覚を知っている。
かつてストレロクの基地から出ようとした時に出会ったあの……


「ウオオオオオオ!」


半裸にジーパン……やはり!
Barで長門と話した時の記憶がよみがえる。


長門『Controller(コントローラー)』

長門『control(操る・支配)という意味からきているのだと思われる』

長門『彼が発する念力波長に一定時間当てられると、そのものは正気を失って彼の支配下に入るという』


朝倉はアイツに操られているんだ。
そして今、俺をも洗脳しようとしている。

キョン「な……ながと……」

長門「………」

ダメだ。長門でさえも上の空。
いや、戦っているのか。本体の出す毒電波に。

朝倉「ねぇ、あきらめてよ」

朝倉「何をしたって無駄なんだからさ」

また聞いたことのあるセリフをじゃべりやがる……。

キョン「くそっ……」

俺はただじりじりと後ずさりをしているだけ。

……あと、もう少し。


朝倉との距離が少しばかり開く。
不思議なことに、朝倉は追ってこなかった。動ける範囲に限りがあるのか?
どちらにしろ都合がいい。

射線は確保できた―――


キョン「脇がガラ空きだ!」チャ!

背中に回していたAKを素早く取出し、あいまいではあるが狙いをつけて引き金を引く。
だが、絶対にはずさない距離。


ガガガガガガガ!

キョン「―――!?」


だが、あのジーパン野郎には当たらなかった。


代わりに赤い血が地面に滴る。
その血の落とし主は、ひっそりと笑みを浮かべた。


朝倉「む・だ・な・の」

朝倉が射線へと飛び出し、まさに守るかのようにすべての銃弾を自分に受けたのだ。
AKの5.45mm弾は朝倉の着ていた防弾チョッキを貫通し、体を貫いていた。幸い致命傷はなさそうだ……。

しかし、その顔に苦痛の表情はない。

朝倉「ね?もう八方塞」

おそらく奥にいるジーパンを倒せば何とかなる。
だがコイツの事だ。俺がまた撃てばとんでもない動きでカバーしてくるに違いない。

キョン(どうする……)

朝倉さえ、どうにかして動かなくできれば……。
殺さずに、動きだけを……。


キョン(――そうだ!)


我ながらえげつないことを考えると思う。

キョン「このっ!」ブンッ!

朝倉「!?」

俺が思い切って投げたのは手に持っていたAK。
そしてすかさずベレッタを引き抜く。


キョン「くらえっ!」

ドン!ドン!ドン!ドン!

朝倉「っ!」


避けるために退いたところへ、左右のひざ関節に二発ずつぶち込んだ。

朝倉もひざ当てをしていたが、それは地面に膝をついてもいい用のガードだ。
銃弾なんぞ防げるものではない。


朝倉「くぅ……」

まともに食らった朝倉はよろめき、かくっと崩れ落ちた。
膝で立つこともできていない。
9mmだから先のAKよりはましだと思うが……それよりも!

キョン「お前もだ!」

長門の方にかかりっきりだったのか、あのジーパン野郎は気付いていない。

ドン!ドン!ドン!ドン!

弾倉が空になるまでうち続ける。
向こうにはかわす気配がなかったのかどんどん当たる。

「オオオオオオオ!」

ほどなくして奇声を発し始める。
やがてそれは甲高い断末魔へと変わり、その場に崩れ落ちた。


長門「………」ドサッ!

同時に長門も崩れ落ちる。朝倉は倒れたままだ。

キョン「長門! しっかりしろ!」

長門「……問題ない。エラー情報を修復しているだけ」

長門「外的侵攻要素は排除した。朝倉涼子の方も無事」

キョン「そうか」

よくわからんが無事っぽいので安心した。

キョン「朝倉、大丈夫か?」

朝倉「銃弾で、膝関節をダメにした相手に……ずいぶんと冷たいのね」

キョン「……悪い」

いくら操られていたといっても、エグイことしたよ。
だがこっちだって刺されているんだ。お相子さ。


二人が少し休むというので、俺は敵の死体を見に行くことにした。
そこに転がっていたのは、先のジーパン野郎。

キョン(……人間だったのか?)

その面影は、若干おかしくもあるがどうみても人間であった。
少しばかり奇形化したその肉体はかなり不気味である。

地下水道で出会った奴も同じだったのだろうか?
まさか、ここまで俺を追ってきたんじゃないだろうな?

そんなことを考えていると、もう一つ死体があることに気付いた。
ただ、それはとても見覚えのある顔……




キョン「谷口!?」


標準的なストーカースーツを着た谷口の姿が、そこにあった。
だがそいつはピクリとも動かず、息すらしていなかった。

キョン「なん……」

長門「落ち着いて。彼はこの世界に造られた人物」

長門「現実の彼とは関係ない」

そういえば、そうだったか。

だがそう言われたところでケロッと安心できるわけではない。
見知った人が死んでいる姿というものはかなり堪えるものである。

そんな俺に構わず、長門は谷口の死体を漁り始めた。

長門「………」ゴソゴソ

長門「彼のPDA。確認してみて」


なんで俺に渡すんだ?と思いながらPDAを開いてみる。

『ユーザー:Ghost』

……ん?ちょっとまて。

キョン「これが正しいのなら、谷口はGhostということなのか?」

長門「そう」

キョン「じゃあコイツは一体何なんだ?」

俺は長門にPDAを見せてやる。
『KILL THE STRELOK』という文字と共に添付されていた谷口の顔写真。

俺の入手している情報も正しいとするなら
谷口=Ghost=ストレロク、という方程式が成り立ってしまう。


だがそれだと疑問が残る。

俺はストレロクの部屋でGhostの伝言メッセージを聴いている。宛先はストレロク。
自作自演?ありえないだろう。
それにSakhalov教授は一度ストレロクを見ている。これでGhost=ストレロク説は敗れるわけだが。

長門「恐らく彼=Ghostであると推測」

長門「あなたのPDAにある顔写真はミスもしくはフェイク」

キョン「振出しに戻る……か」

これでストレロクの手がかりはついえてしまったことになる、
谷口(Ghost)はストレロクの居場所を知らないようであるし、どうする……。

長門「……彼のPDAからX16について相当量の情報を手に入れた」

長門「ひとまずこれにて撤退することを推奨する」

それもそうだな。
グループ全員が満身創痍なこの状態じゃ、ゾンビにすら勝てるかどうか……。


キョン「朝倉、背中にのれ」

朝倉「ありがとう」

長門「そこの崩壊している床から脱出する」

恐らく通じているのは下水系の配管なのだろう。臭い。
だがそうも言ってられないのでゆっくりと降りていく。

スタッ。

キョン「っと」

朝倉を背負っているので重いと思いきや、そうでもなかった。

朝倉「あのね、キョン君。そういう言葉を女の子の前で言うのはどうかと思うのだけど」

なにやら朝倉様がお怒りのようだ。
重さでバランスが云々よりも、高さが増えたせいで頭が当たらないよう気を付けなければならない。


よくわからない匂いの充満する下水道。ガスマスクを着用して進む。

小柄な長門が先行し、時折現れるスノークを撃つ。
こんな怪我負い+人負い状態で戦力にならない俺はパイプやらなんやらの陰に隠れていた。


ドスン!


地面を何かが揺らした。

キョン「なんだ?」

最初はてっきり長門が手榴弾でも投げたのかと思ったが、爆発がない以上そういうことではない。
まるで地震のようなその揺れは、どんどん近づいてきた。

キョン「!!」

思い出した。
この揺れも、いつだったか経験したことがある。


揺れの発信源がどんどん近づく。
やがてそれが後ろの方へと姿を現す。

俺と古泉がかつてX18で出会ったあの肉塊がそこにいた。

とっさに隠れた俺達にはまだ気づいてないらしい。
だがその距離は徐々に縮まる。

朝倉「まるで肉塊ね……」

長門「……っ!」チャ!

キョン「待て!下手に撃つな!」

跳弾の危険性を初めに警告しておく。
出なければこの狭い下水道、跳弾の繰り返しで死んでもおかしくない。

朝倉「以前出会ったって時はどうやって倒したの?」

キョン「あの時はロケット砲があったからよかったが……」

今回はそんな武器もあるはずがなかった。


朝倉「……ねぇキョン君、手榴弾あるだけもらえない?」

キョン「別にかまわんが何をする気だ―――」

朝倉「ごめんね、キョン君」

ドゴッ!

リュックの中から勝手に手榴弾を抜いたついで、朝倉はまたもや俺を蹴り飛ばす。

ん?蹴り飛ばす?
俺が膝を砕いたはずじゃ……


朝倉「あーあ、結局こういう役割なのね」シュウウウ

朝倉「ごめんね、長門さん。後を頼むわ」

朝倉、お前何を……


キョン「長門、朝倉を……」

長門「………」グイッ

キョン「ぐあっ!」

長門の馬鹿力で連れていかれる俺。
ちくしょう。朝倉っ……。




朝倉「生命維持モードを破棄、負傷部分の修復完了、か」

朝倉「無茶って結構堪えるのね」


ドスンドスンドスンドスン!

朝倉「遅かったわね」


朝倉「ずっと、有機生命体の死の概念は理解できないものだと思ってたわ」

朝倉「こんな爆弾で『死ぬ』といっても、どうせまた元のバラバラな情報の破片に戻るだけなのに」

朝倉「だけど今なら少しわかる気がするわ」

朝倉「あなたはどうかしら?」

ドスドスドスドス!

朝倉「そっか、わからないか」


朝倉「それじゃあ、一緒に死んで?」ピンッ!ピンッ!ピンッ!

ドスドスドスドス――――



ドオオオンッ!


ズズズン……。

手榴弾の爆発音に続き、ちょっとした揺れが天井の砂を落とす。

長門「……朝倉涼子と未確認の生体反応の消失を確認」

キョン「朝倉……」

何回も殺されかけた相手とはいえ、こういう死なれ方をするのは気分もよくない……。

長門「………」

そんな俺を長門は構わず引っ張り続けていた。
何もしゃべらずに。

なぁ、長門。お前はこれでいいのか?

長門「………」

答えることはなかった。
だがその顔は、少しさみしそうでもあった。



やがて下水道を抜けた俺達。
地面を見下ろすと、なんということでしょう周りはまるで焼け野原な状態でした。

移動研究所に帰って事情を聴いてみるに

Kruglov「先ほどMilitaryに頼んで周囲のゾンビを掃討してもらったよ。ゆっくり帰るといい」

Kruglov「しかし君達。無事でよかったよ」

Kruglov「蒼い髪の子の事は残念だけど、君達だけでも無事で本当によかった」

それはもう本当に満面の笑みであった。

Kruglov「お礼にここの品物をサービス価格で売ってあげよう!替えのスーツだっていくらでもあげようじゃないか!」

なんという太っ腹か。
ここで弾丸を大量に買った俺たちは、Barへと戻ることにした。


Rostok工業地帯を通り抜け、もはや我が家に等しいBarへと還ってくる。

キョン「帰ったら、すこし寝るか……」

と思っていたところであったが、どうもこれが簡単にはいかないようだ。
なにやら『T.F.E.I. Bar』のあたりが騒がしい。

なんだなんだ?と店の中に入ってみると。









「いるのはわかってるのよ! でてきなさーい!」

とても懐かしい、声がした。


短めの髪に、黄色のリボンカチューシャ。
それでいて着ているストーカースーツが相当の場違い感を演出していた。

キョン「おい」

「!?」

俺の呼び声に振り向くそいつ。
その眼は光り輝いていた。さながら眼の中に小宇宙を持っているかのような輝き。

唯我独尊・傍若無人・猪突猛進かつ極端な負けず嫌いなヤツ。
それでいてとんでもない力を持っていて、主に俺達SOS団員を振り回しているヤツ。

コイツこそ我らが団長様。




ハルヒ「やっときたわね、キョン!」

涼宮ハルヒ。
この世界の創造主たる人物が、そこにいた。



TIPS:谷口(Ghost)のPDAの録音データ

ピーッ

『ったくよ、一体何処にいやがったんだ、ストレロク……』

『Doctorはどっかいってしまったし、Fangも死んじまった』

『とにかく今はこの仕事を終えることに集中するか』

『この仕事を終えた後、俺はストレロクを探してみるつもりだ』

『あいつさえ見つけることができれば、Doctorだってきっとまた俺たちに手を貸してくれるはずだ!』



ピーッ

『くそったれ!Vasilievの野郎! しくじったな!』

『アイツはメイン・ユニットのケーブルを切断してなかった!スコッチャーはまだ生きてる!』

『あの野郎、電源室の前でずっと隠れてるつもりか。いけすかねぇ』

『そういう俺も隠れてるってわけだが、ここにいられるのも時間の問題か』

『コントローラーが俺を探している。どうにかして、奴を……」



ピーッ

『うぅっ……』

『やはり、あんな『嘘つき犬』を信用するべきじゃなかった』

『ははっ、ストレロクならお得意の勘であんな奴ばっさり切り捨ててたのかね?』

『どちらにしろ、コントローラーに渾身の一撃を与えられなかった以上、俺はもうだめかもしれん』

『Vasilievの奴はもう逃げたのか? それすらもわからん……』

『唯一、メイン・ユニットの制御装置近くにある下水管に逃げることができれば、あるいは……』

ピーッ

本日分は以上です
結構分岐してきました

突然現れた涼宮ハルヒ。
薄暗いこの世界に放たれた花火は、この世界に何をもたらすのか。
一方谷口のPDAを探るうちに見えてくるストレロクの正体。
それを突き止めるため、俺たちは再びZONEを駆け回ることになる。

次回『Freedom』

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