春香「おもいでの向こう側」(59)

春香「ふぅ~、今日のお仕事終わりっと…」

765プロで事務員として働いてます!天海春香、23歳です!

あの時…765プロニューイヤーライブがあって、みんなでお花見をした後、何事もなく活動していた私たちですが

突然、世代交代をすることになったんです。あの時のメンバーは誰一人として残らず、解散しちゃいました。

私は、765プロを離れたくなかったので、こうして事務員として働くことになったんです!

今、765プロは[Thank You!]というユニットを中心に活躍しています。かつての私たちと同じように輝いています。


春香「さて、今日も寄っていこうかな~」

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カランコロン

??「いらっしゃいませ~♪あ、春香ちゃん」

??「あ、春香!仕事は、もう終わったんだ?」

春香「うん!今日は少し早かったから、真と会える時間帯だね♪雪歩、いつものやつちょうだい」

雪歩「は~い」

真「この時間は人が少ないからさ、お気に入りなんだよね」

春香「そっかー、今度あずささんも呼んであげなよ」

真「呼んでるんだけどなぁ…」

春香「ついてきてあげないと…来れないんじゃないかな?」

真「そうかなぁ…」

雪歩「春香ちゃん、おまたせ」

春香「ありがと雪歩」

雪歩「真ちゃんももう一杯どう?」

真「今日はもういいかな?ありがとね、雪歩」

春香「やっぱりこのお店いいよねぇ…」

ここは、雪歩が経営する喫茶店【スノウ・ステップ】。

解散後、みんなが集まれる場所を設けたいと言って喫茶店を開いたらしく、一人で経営してる。

ちなみにお客さんは、平日の昼間と、休日の午前中に多いみたい。

雪歩はアイドルをやってた時と同じくらいイキイキしてる。

雪歩「ありがとう、そう言ってもらえるとすごく嬉しいよ」

真「このBGMも懐かしいよね」

真は、かつて私たちが汗を流してきたレッスンスタジオでダンスのレッスンをしている。

自分が芸能界をやめても、まだ芸能界に関わっていたい気持ちは私と同じみたい。

それにしても…髪が長くなったり、色っぽくなったりして…すごく女の子っぽくなったなぁ…

春香「そういえば、この前の響ちゃんの番組、見た?」

真「もちろん!響…また逃がしちゃって…」

雪歩「私まだ見れてないからネタばらしはやめてよー」

真「おっと…ごめんごめん」

響ちゃんは、解散後もタレントとして芸能界に生き残ってるみたい。

動物番組の司会とか…バラエティ番組に出て活躍しています。

前みたいに、そう忙しくはないらしく、真のダンスレッスンを度々手伝いに行ってるみたい。

春香「雪歩、お店の方はどうなの?繁盛してる?」

雪歩「うん、それなりにって感じかな?」

真「『元アイドルの萩原雪歩が経営してます』って言えばもっとお客さんも来るのに…」

【スノウ・ステップ】では、雪歩はアイドル時代のことを公表していない。

雪歩は『単にお茶を楽しみたい人に来てもらいたいから』という理由で、そういう商法はしない。

なんだかもったいないような気もするけど、雪歩の言うことにも一理ある。

時々、雪歩のことに気付くお客さんもいるらしいけど、お客さん達は黙っていてくれるらしい。

真「春香の方は?仕事、どうなの?」

雪歩「[Thank You!]の新曲、また1位取ってたよね」

春香「そうなんだ~♪新しい765プロももうイケイケって感じなんだ♪」

真「イケイケだって…古いよ春香ぁ

春香「あはは、ごめ~ん」

こんな感じで、私たちは談笑する。

昔みたいに…


春香「みんなに、会いたいなぁ…」

真「春香…それはボクたちも一緒だけど…やっぱり無理だよ」

春香「そうだよね…みんな自分の進みたい道を進んだんだもん。引き返せないよね」

かつての765プロのメンバーは、みんなそれぞれの道へと進んだ。

例えば千早ちゃん、千早ちゃんはまだ歌が歌いたいと言って海外で歌手活動をしている。

何故海外なのかと言うと、海外からオファーがきたからだった。

プロデューサーはなんと、国際音楽祭の時、船で会ったあの男の子だ。

彼は、当時7歳で、7年経った今では14歳。14歳にしてすっかり一流のプロデューサーだ。

海外と言えば、美希も海外で活動していた。
2年間海外でモデルをやっていたらしい。

その頃までは連絡を取り合っていたのだけど今ではすっかり音沙汰無しだ。

他にも、何があったのかは分からないけど、伊織はあんなに嫌がってた家を継ぐことにしたらしい。

そのおかげで伊織はとても忙しくなり、メイドさんを数名雇ったらしい。

その一人がやよい。やよいも伊織の下で働くことをとても嬉しそうにしていた。

亜美と真美の家庭も大変なようだ。なんでもお父さんが医療ミスをおかしてしまったらしい。

そのせいで両親が別居することになり、亜美と真美が離ればなれになっちゃったらしい。

貴音さんは相変わらずどごで何をしているか分からない。

律子さんは、876プロでプロデューサーをしている。

876プロとは交流が深いので、律子さんとはよく会って話す。

小鳥さんも、事務業の先輩だ。しかも765プロの。

『困ったことがあったらいつでも聞いてちょうだい』って

私が765プロの事務をやると言ったとき、私にだけ連絡先を教えてくれた。

さっき話に出てきたあずささんは、真と同じようにボイストレーナーとしてアイドルを育てている。

会おうと思えばあずささんとも会えるから、近いうちに会うつもり。

春香「私たちは今…思い出の延長線上にいるのかな?」

真「どういうこと?」

春香「だって…アイドルだった時のことを語って、また集まりたいだなんて」

雪歩「違うよ…春香ちゃん。延長線なんかじゃない」

春香「雪歩?」

雪歩「私たちは今思い出を飛び越えたんだよ。また新しい思い出を作ろうとしてるんだよ」

真「それじゃあ今は…思い出の向こう側…かな?」

春香「思い出の…向こう側…」

私たちは、本当に思い出を飛び越えたのかなぁ?まだ踏み込めないでいるみたい。

そんな気がしてた。


1章 春香「おもいでの向こう側」 完

2章 響「コーヒーの水面、ふと思う」

響『うがー!H村さん、その顔やめてほしいぞー』
>アハハハ

響「はぁ…今日も疲れたぞ…」

缶ビールを一口飲み、自分が出演している番組を見ながら溜め息混じりに呟く。

響「自分も変わったなぁ…」

あの時は、【完璧】【完璧】って、冗談のつもりだった。

なのに今では、【日本一完璧な芸能人】っていうランキングで一番を取ってしまうほどだ。

涙や弱味はみせない。まるで、昔961プロに居たときみたいに。完璧でなくちゃいけない。

響「そろそろ…夜になるなぁ…行くか…」

自分の日課。そう、それは月夜に外に出てある人物を捜すことだ。

今どこで何をして、何を思っているか分からないが…月夜になれば会えそうな気がした。

響「貴音…どこにいるんだ…出てきてくれ…」

自分は完璧でなくてはならない。しかし、この時だけ弱味を見せてしまう。

月夜は貴音が呼んでいる気がする。そんな期待を胸に秘めながら、捜す。

貴音「呼びましたか?」

背後から声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。安心できる声だ。貴音の…声だ!

響「貴音ぇ!!」

勢いよく振り向くと、そこには微かに7年前の面影が残っている貴音の姿があった。

貴音「久しぶりですね…響…」

響「貴音…貴音!どうしてたんだ!?」

貴音「響を捜しておりました…」

響「じ、自分だって7年間ずっと…でも……」

響「会えてよかった…!」

貴音「響、涙を拭いてください」

自分は知らぬ間に泣いてた。自分は全然完璧なアイドルじゃない。

あんなアンケート全部白紙だ!自分は…完璧なんかじゃないんだ!

響「貴音!よかったら今から家に来てよ!何か作るからさ!」

貴音「……なりません…」

響「えっ…ど、どうして?」

貴音「戻らなくては…」

響「ま、待って!じゃあ…これ!自分の住所と電話番号!いつでも連絡して!」

貴音「はい…それでは…」

そう言って貴音は去っていった。

それにしても、お互い7年間も捜し合ってたのに一度も会えなかったなんて可笑しすぎる話だぞ。

響「よかったなぁ!貴音に会えて…真に連絡しよっと!」

ー翌朝ー

響「う~ん、もう朝か…今日はオフだっけ…?」

響「自分は完璧だから休みなんていらないって…プロデューサーには言ったのにな」

響「でも…それも昨日で終わったんだっけ…?」

響「今まで、休みの日の計画なんて立ててなかったからなぁ…」

響「久しぶりに、765プロに行こうかな…」

響「ごめんくださ~い!誰かいませんか~!」

今の765プロは、自分達がいた頃とは全く違う。

場所も色も形も大きさも違ければ、一階が定食屋なんてこともない。

響「う~ん、いないのかなぁ…仕方ないなぁ出直すか…」

春香「あの…何かご用……あっ…!響ちゃん…!?」

響「あれ…?その声は…春香!?春香か!?」

春香「突然、どうしたの響ちゃん!あ、入って入って!」

響「ありがとう春香!……リボンはどうしたんだ…?」

春香「もしかして…響ちゃんもリボンが無いと私って分からない…?」

響「い、いや!そんなことないぞ!」

春香「ま、いっか~♪こっちこっち!」

嬉しい。かつての仲間に会えた。貴音に続いて春香にまで会えた。

響「それにしても…春香がここで事務員やってたなんてなぁ…」

春香「あれ?響ちゃん、知らなかったっけ?」

響「自分忙しかったからなぁ…皆と話してる暇がなかったんだ…」

春香「そっかぁ…それじゃあ、今度またお仕事がお休みの時は…」

春香「はい!ここに来てね!」

響「ん?名刺?『喫茶 [スノウ・ステップ] オーナー 萩原雪…』雪歩!?」

春香「私や真はほぼ毎晩いるから、暇ができたらおいで!」

響「ありがとう春香!そうだ!自分昨日貴音に会ったんだ!貴音にも教えてあげよ~っと!」

春香「え…?貴音さんが…?」

響「どうしたんだ春香…?」

春香は貴音の何かを知っているようだった。

自分が7年間捜し続けても見つからなかったのに

7年間捜し続けてた自分だってようやく昨日会えたのに…

響「春香、貴音がどうかしたのか…?」

春香「何でもないよ!ただ、全然連絡着かなかった貴音さんが急に出てくるなんてな~って…」

響「そうだよね!自分あんなに心配してたのに…」

春香「あはは…はは……あ、そうだ!響ちゃんは皆の憧れなんだよ!」

響「自分が…?どうして?」

春香「だって765プロの先輩だもん!」

響「あー…そっか、そういうことか!」

春香「うん、今もアイドル続けてるのは響ちゃんだけだから…」

響「なんか…ちょっと照れくさいな…」

春香「私もいつもテレビ見てるよ!応援してるからね!」

響「うん!ありがとうね!……あ、しょっと長く居すぎたかな…?」

春香「ううん!もっと居ていいんだよ!」

響「いや~、自分もそろそろ帰ろうかなーって…」

春香「そっかぁ…じゃあ、お店で待ってるからね!」

響「うん!またね!」

どうも…貴音のことが気掛かりだ。

春香はああ言っていたけど…何か隠しているに違いない…。


春香「(貴音さんって…確か……)」

響「とは言ったものの…実はこの後も予定ないんだよね…」

響「戻ろうかなぁ…」

響「あ、病院かぁ…亜美と真美を思い出すなぁ…」

そういえば、あの二人だけじゃないけど、皆はどうしているんだろう?

響「最近は真としか喋ってないしなぁ…」

響「真なら何か知ってるかもしれないし…今度聞いてみよう」

響「ん…?貴音……?」

どういうこと?何で?何で貴音が病院から出てくるの?

<春香「え…?貴音さんが…?」>

嫌な予感が脳裏に浮かぶ。そんなはずない…!

響「貴音!」

貴音「おや、響…奇遇ですね…」

響「どういうこと?何で貴音が病院なんか…」

響「貴音はいつも元気だったから…病気なんかかからなかったし…」

貴音「見られてしまいましたか…」

貴音「私は…今、病にかかっています…」

響「う、うそ…だ…!ち、治療とかは?受けられないの?」

貴音「手術なら一度しましたが…失敗してしまいました…」

貴音「一命はとりとめ、一時的には治まったものの…最近になってまた症状が悪化したと言ったところでしょうか…」

響「もう一回治療受ければいいでしょ!?」

貴音「それは…出来かねます…」

響「どうして…!」

貴音「私には…もう一度治療を受ける覚悟がないのです…」

ーーーーーーーー

ーーーーー

春香「そっか…貴音さんのこと…知っちゃったんだ…」

響「うん…どうして、隠してたんだ?」

春香「貴音さんからのお願いだったんだ。響ちゃんにだけは…知らせないでって…」

響「どうして自分だけ!」

春香「心配かけたくなかったんだよ!」

響「……それを聞いて、心配するのは自分だけなのか…?」

春香「私だって心配だよ」

雪歩「四条さんは…響ちゃんに特別な思い入れがあったんじゃないかな?」

雪歩「絶対に、響ちゃんにだけは心配かけたくない!って…」

響「そう…かなぁ…?」

雪歩「ところで…春香ちゃんは…四条さんのことどこで知ったの?」

春香「私も最近知ったばっかりで…あずささんから聞いたんだけど…」

雪歩「あずささんが…?」

響「……」

もっと…何か違う理由があったんだと思う…。

貴音が、そこまで自分に伝わることを拒んだ理由…。

コーヒーの水面を見つめながら…悪い予感を感じていた。

自分はそれを振り払うようにブラックのコーヒーを一気に飲み干した。

苦い何かが広がっていく。喫茶店のBGMは…【コーヒー1杯のイマージュ】だった。


2章 響「コーヒーの水面、ふと思う」 完

3章 伊織「大嫌いな私の家」

あの頃までは…私は私の家が嫌いだった。

兄たちと比べられ、何も出来ない私を兄たちは見下す。

父とはほとんど会わない。家の家計はみんなみんな家が大事だ。

そんなにお金が好きなの?だったら中途半端な愛情なんて注がないで一生仕事に生きてなさいよ!

そう思ってた。

それなのに………

伊織「高槻、今日のスケジュールは?」

??「今日は、○○社との取引と△△社の社長と面会が」

伊織「そ。ご苦労様。メイドに朝ごはんはいらないと伝えておいて」

??「はい。御嬢様…」

伊織「アンタ…昔みたいに[伊織さん]って読んでくれてもいいのよ…?」

??「そ、そのようなことは出来かねます」

伊織「まったく…アンタのお姉さんは昔と変わらないって言うのに…」

伊織「ま、いいわ。伝えておいてね。アンタのお姉さんに…!」

??「……はい」

??「高槻さん、高槻さん!」

やよい「あ!長介!どうしたの?」

長介「[高槻さん]か[執事さん]と呼んでいただけますか高槻さん」

やよい「長介…そういうよそよそしいの止めようよー」

長介「御嬢様が朝食を召し上がらないそうです。それでは…」

やよい「うぅ……」

やよい「長介…伊織ちゃん…どうして変わっちゃったの…?」

長介「伝えて参りました」

伊織「そう、ご苦労様。入りなさい…」

長介「しかし…」

伊織「いいから、早く」

長介「失礼致します」

伊織「長介…アンタ…気遣わなくていいのよ?」

長介「しかし、御嬢様様にお助けいただいたこの命ですから…少しでも御嬢様のお役にと…」

伊織「じゃあ昔みたいに[伊織さん]と呼びなさいよ」

長介「それは…」

伊織「高槻…いいえ、長介。今、私が一大プロジェクトを計画しているのは…」

長介「もちろん、承知しております」

伊織「これが…成功しても失敗に終わっても、あなたに話があるわ」

長介「はい…」

伊織「それじゃあね……車出しておいて」

やよい「あ、伊織ちゃん!これからお仕事?」

伊織「まあね…」

やよい「あ!そうだ!伊織ちゃん、どうして朝ご飯食べないの?」

伊織「摂ってる時間が無いわ」

やよい「でもダメだよ!ほら…忘れちゃったの…?【おはよう!朝ご飯】」

もちろん覚えている。やよいのデビューシングルだ。

しかし今のは言い訳ではなく本当に摂ってる時間がないのだ。

やよい「ほら…食べなよ…!」

伊織「ごめんなさいやよい。長介…待たせてあるわ…」

やよい「そっか…」

伊織「その代わり今晩は美味しい物期待してるわね!」

やよい「うん!行ってらっしゃい!」

一日の仕事が終わり、家に着く。玄関には満遍の笑みを浮かべたやよいが立っていた。

やよい「おかえりなさいませ伊織ちゃん!ご飯出来てるよ!」

ああ、そうだった。今日は朝食を抜いた分、腕によりをかけた夕飯を作ってくれるんだった。

伊織「ありがと。先に部屋に戻るわ」

そう言って私は部屋へと向かった。

長介「高槻さん、御嬢様に対して…なんて口の聞き方を…」

長介が怒鳴る声が聞こえたが、無視して部屋に向かった。

部屋に入り、着替えが終わるとダイニングに向かい席に着く。

料理が運ばれ、一口口に入れ、ゆっくり噛み飲み込む。やはりやよいの作る料理は美味しい。

伊織「はぁ…」

ため息をつくと、やよいが慌てて聞いてくる。

やよい「どうしたの伊織ちゃん!?美味しくなかった…?」

伊織「いいえ、違うの。もちろん料理は美味しいわ。いつもありがとう」

伊織「ただ…悩みというか…」

やよい「悩み?」

伊織「ええ。私…何で家を継いだんだっけ…?」

伊織「ねぇやよい…」

やよい「ごめんね伊織ちゃん…私にも分からない」

伊織「そっか…そうよね…ごめんなさい」

やよい「ううん、伊織ちゃんが謝ることじゃないよ!私も…役に立てなかったし…」

伊織「いいの。やよいだって…私が家を継ぐこと決めてからだもの。ここに来たの」

やよい「……そういえば…伊織ちゃんは…あの時、長介を助けてくれたよね」

伊織「ああ…あの時ね…。あの時の私、カッコつけたかっただけだから」

やよい「ううん、伊織ちゃんには感謝してる」

やよい「あのまま…長介とケンカしたままだったら、私…」

伊織「やよい……ごめんなさい。私にはアンタを受け止めきれないわ…」

伊織「私がここで引き取るまで…過酷な生活をしていたものね…」

伊織「私には分からないの。アンタたち姉弟が…ごめんなさい」

やよい「食事…冷めちゃうよ…」

伊織「そうね…」

会話が途切れると、私はスープを掬い一口口に入れた。

そのスープは、私の心の様な味だった。冷めていて、何の味もない。空っぽのスープだった。

部屋に戻ると、パジャマが綺麗に畳んで置いてあった。

私は携帯電話を取り出すと、あれほど毛嫌いしていた兄に電話をかけた。

伊織「もしもし、お兄様?」

伊織兄『伊織か、これから仕事だ。用件は何だ?すぐに済ませろ』

伊織「私、もう限界です。耐えきれません…」

伊織兄「どういうことだ?」

伊織「何かを決断して、私も起業して、家を継ぐことを決意しましたが…」

伊織兄『用件はそれだけか?一つだけ言っておく。甘えるな。誰にもな』

電話が一方的に切られる。彼に電話するんじゃなかったと後悔すると、急に寂しくなってきた。

伊織「高…長介、居る?居るなら入ってきて…」

長介「はい…いかがなさいましたか?」

伊織「長介…私この家を出ていきたい」

長介「御嬢様がどう決断されようと私はそれに従うのみでございます」

伊織「ならいいわ。長介、私と結婚しなさい」

突然の言葉に長介は驚いていた。まあ無理もないだろう。

自分が仕えている御嬢様からこんなことを言われれば、こうもなるだろう。

伊織「お願いします。私をお嫁さんにしてください」

長介「それは…困ります」

伊織「そうよね…ごめんなさい…。私、どうかしてるわ…」

長介「……失礼致しました」

長介が部屋から出ていくと、私は何も考えずに眠ることにした。

ー翌朝ー

明朝。4時頃だろうか。ふと目が覚めた。

私は部屋の中をフラフラ歩く。すると一枚の写真が目に入った。

ああ…事務所対抗の運動会の時の写真か…。

あの時も私は[水瀬]っていう肩書きを使って……弱いな…。

皆の顔を見ると、懐かしくなり瞳が滲む。

皆に会おう。そう決断した。


やよい「おはよう!伊織ちゃん!よく眠れた?今日は、ご飯食べていくよね?」

伊織「ええ…いただくわ。それより…」

伊織「やよい、765プロのメンバーと…連絡とか取ってないかしら?」

やよい「うーん…えーっと…雪歩さんだけ…」

伊織「十分だわ。今夜、空いてれば会えるように連絡してちょうだい」

やよい「はーい!」

私は決断した。何かが…何かが分かるかもしれない。

かつての仲間に会えば、何かが変わるかもしれない。

そう思っていた。

ー同日 夜ー

やよい「こんばんは!雪歩さん!」

雪歩「あ、やよいちゃん!いらっしゃい」

伊織「雪歩……」

雪歩「あ、あれ?もしかして…伊織ちゃん…?だよね?」

伊織「そうよ。久しぶりじゃない雪歩。アンタ店なんて構えてたのね」

やよい「そうだよ!ここに春香さんとか真さんも来てるみたいなんだけど…」

雪歩「時間帯が合わなくて会えないんだよね」

やよい「そうなんだよ…あ、雪歩さん!いつものお願いしまーす!」

雪歩「はーい」

伊織「いつものって…アンタ常連!?知ってたんなら教えなさいよ!」

やよい「ごめんね…伊織ちゃんはお仕事忙しそうだったから…」

雪歩「伊織ちゃんにヒマができたら教えてあげるんだって、いつも言ってたよ」

伊織「明らかにメイドの方が忙しいと思うんだけど……」

雪歩「それにしても伊織ちゃん、随分大人っぽくなったね」

伊織「何よ!昔の私が子どもだったって言うの!?」

雪歩「あ、やっぱり変わってないかも…」

伊織「な、何ですって!?」

やっぱりこうやって昔の仲間と会えるって嬉しいものね。同窓会みたい。

こうやって話していると、昔の記憶が蘇る。

伊織「そっか…思い出したわ」

雪歩「どうしたの?伊織ちゃん」

伊織「私、やよい達を助けたかったのよ」

やよい「……」

雪歩「あっ…」

伊織「アンタ達をあの地獄から救い出してあげたかったんだわ」

やよい「うん、本当は…覚えてたよ。ありがとう伊織ちゃん」

伊織「私は別に恩を着せたかったわけじゃないのよ」

伊織「お礼なんていいって言ったのに、アンタ達がお礼したいって言うから」

伊織「無理にメイド兼シェフのやよいと執事の長介を雇ったのよね」

やよい「うん!…でも伊織ちゃんもあの時…辛かったでしょ?」

伊織「ええ。新堂は…長介に全てを託して言ったわ。新堂もいい歳だったし」

伊織「でもねやよい。もうすぐこの生活も終わるかもしれないわ」

やよい「え?」

伊織「私、決めたの」

伊織「集めるわ…」

やよい「え?」

やよいがきょとんとした顔を浮かべているが、雪歩が理解したらしく、ニッコリと笑顔を向けてくれた。

雪歩「そっか…私も協力する」

やよい「あの…えっと…」

伊織「765プロの仲間を集める!いろんな手を尽くしてね」

やよい「!」

伊織「そうと決まれば……そうね。雪歩、春香や真が通ってるって話だけど」

雪歩「今日も来てたよ。二人とも…8時30分頃に」

伊織「明日もその時間に来るように連絡してくれる?二人共ね」

雪歩「うん!じゃあ伊織ちゃん達も明日来るんだよね!カップ綺麗に磨いとかないと」

伊織「これから…私達の新しい伝説を作るのよ!」

昔を振り替えっていた私にピッタリだった【フタリの記憶】は、何かを決断した私にピッタリなBGMに変わっていた。

【THE IDOL M@STER】、これが私達の原点。

作り上げる、もう一度。新しい765プロを…


3章 伊織「大嫌いな私の家」 完

伊織「集めるわ…」

やよい「え?」

やよいがきょとんとした顔を浮かべているが、雪歩が理解したらしく、ニッコリと笑顔を向けてくれた。

雪歩「そっか…私も協力する」

やよい「あの…えっと…」

伊織「765プロの仲間を集める!いろんな手を尽くしてね」

やよい「!」

伊織「そうと決まれば……そうね。雪歩、春香や真が通ってるって話だけど」

雪歩「今日も来てたよ。二人とも…8時30分頃に」

伊織「明日もその時間に来るように連絡してくれる?二人共ね」

雪歩「うん!じゃあ伊織ちゃん達も明日来るんだよね!カップ綺麗に磨いとかないと」

伊織「これから…私達の新しい伝説を作るのよ!」

昔を振り替えっていた私にピッタリだった【フタリの記憶】は、何かを決断した私にピッタリなBGMに変わっていた。

【THE IDOL M@STER】、これが私達の原点。

作り上げる、もう一度。新しい765プロを…


3章 伊織「大嫌いな私の家」 完

4章 あずさ「悩みがあるの…」

真ちゃんに連れられてやって来た喫茶店。そこは雪歩ちゃんの経営するお店だった。

真「あずささん、注文何にします?ボクのオススメは…」

真ちゃんが何か言っているようだけど…全然耳に入って来ない。

原因は、一昨日急に訪ねてきた亜美ちゃんからの相談にある。

「真美に会いたい…」

この言葉だけがどうしても頭から離れなかった。

どうにかして力になってあげたいのだけど、私には何もできない。

真美ちゃんの手掛かりが何かしら見つかればいいのだけれど…

私達の解散後すぐ、亜美ちゃん達のお父さんは医療ミスを犯してしまったらしい。

それが原因で夫婦関係は荒れ、別居。亜美ちゃんと真美ちゃんまでもが離れて暮らすことになったらしい。

初めのうちは連絡を取り合っていた二人だけど、ある日を境に真美ちゃんからの連絡が無くなったらしい。

真「あずささん…あの…聞こえてます?」

あずさ「あ、あら!ごめんなさい!ボーッとしてたわ!」

真「具合でも悪いんですか?」

あずさ「ううん、そんなことないのよ」

あずさ「ねえ真ちゃん、今日私をここに呼んだのって…」

真「会わせたい人がいるからです!そろそろ来ると思うんですけど…」

カランコロン

春香「ごめん真!途中で伊織達に会って、話してたら遅れちゃって…」

真「伊織も…来れたんだ!」

伊織「あら久しぶりじゃない!あずさに…まこ…と?」

真「伊織!久しぶりだね!」

伊織「え、ええ…」

やよい「うわー!真さん、髪の毛長くなって可愛いですー!」

真「ありがとうやよい!やよいも、久しぶりだね!」

やよい「はい!お久しぶりです!真さん、あずささん!」

真「やよいも伊織も大きくなって~、あの頃のボクぐらいあるんじやない?」

やよい「ありがとうございますー!」

カランコロン

響「お、盛り上がってるな!」

伊織「響!?」

やよい「響さん!お久しぶりですー!」

響「おぉー!二人共、久しぶりだぞ!」

あずさ「響ちゃん、久しぶりね~」

響「あずささんも居たんだ!久しぶり!」

春香「本当は…律子さんも来れればよかったんだけど…」

伊織「ま、忙しいなら仕方ないんじゃない?」

雪歩「そうだね。でも律子さんにも会いたいなぁ…」

春香「私は会ってるけどね」

伊織「それで、今連絡が着く人ってどのくらい居るのかしら?」

春香「えっと…私は、律子さんと小鳥さんかな?あ、後876プロの子達」

やよい「私は居ないかも…」

雪歩「私もここにいる人達だけかなぁ」

真「ボクも…」

伊織「そうね…私もだわ。響とあずさは?」

響「自分は…貴音から連絡が来れば連絡できるようになるけど…望みは薄いな」

あずさ「私は……亜美ちゃんと…」

伊織「亜美と?いつから?」

あずさ「連絡は大分前から取ってたんだけど…一昨日、亜美ちゃんから相談を受けたわ」

真「どんな相談だったんですか?」

緊張感が空気を凍らせる。私はゆっくりと口を開く。

あずさ「真美ちゃんに会いたいんですって…」

一同があっという顔をした。言葉の意味を理解したようだった。

伊織「詳しく聞いてみる必要がありそうね。近いうちに、亜美を呼べるなら呼んでおいて」

あずさ「ええ…」

ー数日後ー

伊織「そう…それで……」

あずさ「私は少しでも亜美ちゃんの支えになれたらって…」

亜美「私…もう真美に会えないなんて絶対イヤだよ…」

私は話した。数年前から亜美ちゃんと連絡を取り合うようになり、数日前から亜美ちゃんのケアをしていたこと。

伊織「それにしても…久しぶりじゃない?こうして3人が集まるのも」

あずさ「あら、そういえばそうね」

全然意識してなかったのに、不思議と集まったのは竜宮小町のメンバーだった。

伊織「あの時は…美希の言葉を借りれば、キラキラしてた」

亜美「何が言いたいの?」

伊織「別に。何が言いたいってわけじゃないわよ」

伊織「ただ、折角こうやって集まったんだし、思い出に浸るのも悪くないじゃない?」

亜美「思い出…かぁ…真美との思い出は…」

あずさ「産まれる前から一緒だったのにね…」

伊織「正直、私にも兄弟はいるけど仲は悪いし、アンタたちみたいな双子じゃないから気持ちは分からないわ」

伊織「けどね、アンタがいつまでもそんな顔してたら真美は戻って来てくれない」

伊織「アンタたちは、二人で笑ってるのが一番似合ってるんだから」

亜美「いおりん……」

あずさ「あらあら~、伊織ちゃんかっこいいわ~」

伊織「な、何よ!茶化さないでよ!」

少しだけ亜美ちゃんに笑顔が戻ったと思うと、亜美ちゃんはまたすぐに険しい顔になった。

亜美「私…今医者を目指してるんだ。パパと同じ」

亜美「ママはパパの医療ミスから医者を信用できなくなって」

亜美「そんなママに私が引き取られたんだけど」

亜美「私が医者を目指してるって聞いたら、考え直してくれるんじゃないかって」

亜美「まだ離婚はしてないし、また一緒に住めるようになったら真美にも会えるから…」

伊織「なるほど…」

亜美「でもね、最近知ったんだけど…真美、パパのところに居ないんだって…」

あずさ「えっ…?」

伊織「どういうことよ!」

それは私も初めて聞くことだった。どういう意味か亜美ちゃんに確認をする。

亜美「行方不明だよ…」

伊織「何よ…何よそれ…」

伊織「どれだけ…どれだけ亜美を苦しめるのよ!」

伊織「真美のことなら任せて。家の力を使って捜しだすわ」

亜美「ありがとう…いおりん。でも…それだけじゃない」

あずさ「まだ何かあるの…?」

伊織「言ってみなさい。できることならなんとかするわ」

亜美「無理だよ…もう…」

亜美「私のパパは医療ミスを犯したって言ったでしょ?」

伊織「それが原因でいろいろな苦労が重なってるのよね」

亜美「その…患者さん…」

亜美「貴音さんなんだ…」

衝撃を受けた。神様が居るとしたら、理不尽な程にこの子に残酷な運命を与えていると感じた。

まだ二十歳に満たないこの少女は…あまりに抱えているものが大きく、多すぎる……。

私はこの時、一度も口を開かなかった雪歩ちゃんが少しだけ憎くなった。

そして、図ったかの様に【隣に…】のサビが流れる。一つの不安が胸をよぎる。

真美ちゃんは…

そんな不安を振り払う様に首を横に振ったが、不安が消えることはなかった。


4章 あずさ「悩みがあるの…」 完

5章 雪歩「何度も言うよ」

2人の客が帰った。先程まで深刻な話を3人で話していた。

1人はまだ帰らない。ただボーッとして宙を見ている。

雪歩「亜美ちゃん、コーヒー、もう一杯飲む?」

亜美「ありがと雪ぴょん…」

休日の夕暮れ時。いつもなら、今はちょうどお客さんが少ないどころか、全くいない時間帯だ。

雪歩「はい、どうぞ」

亜美ちゃんにコーヒーを差し出し、カウンターの裏に戻る。

カップを拭こうとした瞬間、店の扉が開いた。

カランコロン

いらっしゃいませ。とは言えなかった。そのやってきた人物があまりに衝撃的な人物だったからだ。

雪歩「四条さん…」

貴音「久しぶりですね…雪歩」

亜美「貴音さん…」

貴音「おや?あなたは…亜美ですか?」

貴音「お久しぶりです」

亜美ちゃんが四条さんとあまり顔を合わせようとしない。

先程の会話を思い出す。きっとどういう接し方をしたらいいのか分からないのだろう。

雪歩「四条さん…どうしてここを?」

貴音「先日偶然耳にしたものですから…」

雪歩「そうでしたか。町でも噂になってるんですね。嬉しいです」

雪歩「ご注文は?」

貴音「それでは…えすぷれっそを」

雪歩「はい」

コーヒーを淹れながら、2人が会話を始めるのを待った。

いつまでも会話が始まらないので、自分で切り出すことにした。

雪歩「はい、どうぞ」

コーヒーを置き、そのままその場に居座り、話を始めた。

雪歩「あの、四条さんはもう一度手術受けないんですか?」

雪歩「響ちゃんから聞きました。四条さん…覚悟が足りないからできないって言ったって…」

雪歩「私は昔四条さんに同じことを言われています」

雪歩「四条さんは自分の言葉に責任を持っていないんですか?」

雪歩「説明していただけないと…納得できません…」

貴音「雪歩…分かりました。全てを話しましょう」

四条さんの状態は、想像していたものよりもずっと過酷なものだった。

そんな重い話を振り払うことなんて私にはできなかったし、何より

それを亜美ちゃんの前で話したのだ。

ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさい

まるで念仏でも唱えるかのように亜美ちゃんがそう呟いている。

貴音「亜美…あなたが気にすることではありませんよ」

亜美「でも…貴音さん…すごく辛そうだから…」

貴音「いいのです…私が弱かったというだけのことですから」

亜美「貴音さん…」

亜美ちゃんは、蚊の鳴くような潰れた声で話していた。

雪歩「私には…何ができるのかなぁ」

貴音「雪歩?」

私はハッとした。思わず声に出していたようだ。

貴音「もしや、気を遣っているのですか?」

亜美「やめてよ…」

雪歩「ごめんね亜美ちゃん…でも」

雪歩「私、二人がこんな関係になっているところなんて見てられない」

雪歩「私にできることなら…手伝わせてほしいな…」

亜美「雪ぴょん…」

雪歩「それに…亜美ちゃんが四条さんのことを『貴音さん』だなんて、違和感があるしね」

貴音「ふふっ、それもそうですね」

亜美「か、からかわないで…ください」

雪歩「無理して敬語?」

私が追い打ちをかけると、亜美ちゃんの顔は真っ赤になっていて可愛かった。

やっぱり、二人には笑顔でいてほしい。

亜美ちゃんが四条さんのことをまた、『お姫ちん』って呼べるようにしたい。

亜美「雪ぴょん、何か変わったね」

雪歩「そうだね。変わろうって、意識してたんだ。そしたら変われた」

亜美「そっか、羨ましいな」

雪歩「亜美ちゃんだって変わったよ」

亜美「そうかな?」

雪歩「うん、大人っぽくなった。イタズラもしないし」

亜美「それは…たまにするけど…」

雪歩「するんだ…」

貴音「変わらぬこともまた…良きことなのですよ…」

私は変わった。あの歌。【何度も言えるよ】

泣き虫と弱気と……私は、もう泣かない。弱音も吐かない。

強くなるんだ…もっと…もっと…

何度も言える…765プロのみんなが大好きだって。

だから…絶対に二人をこのままにしない。

雪歩「何度だって…言います…。四条さん…治療を受けて下さい」


5章 雪歩「何度も言うよ」 完

6章 美希「Good-bye memories」

美希「あふぅ…ねぇ船長さん…あとどのくらい?」

船長「あと…2日はかかりますよ…ゆっくりお休みください」

美希「えぇ…そんなにあるの…?」

??「どこに向かってるの?えっと…みきみきちゃん」

美希「もう!だから「ちゃん」は止めてほしいの!」

??「……ごめんね…」

美希「あれから7年ずっと一緒なんだからいい加減覚えてほしいな!」

美希「真美…亜美のこととか…事務所のみんなのこととか…アイドルの時のこととか」

真美「覚えてなーい」

美希「…」

今ミキが真美と一緒にいるのは、実はこんなことがあったからなの

美希「ミキ、海外でモデルのお仕事のオファーが来たから…876プロには行けないの」

律子「そう。なら、海外でも頑張ってくるのよ…」

美希「ありがとなの律子…さん」

ーーーーーーーーーーーーーーー

って話を律子とした後…家で荷物を詰めてたの。そしたら…その夜…

真美「あの…ミキミキいる?」

美希「あれ?真美?どうしたのこんな夜に」

真美「ミキミキ、お願いがあるの」

美希「ん?何?」

真美「ミキミキ、明日外国行くんでしょ?」

美希「うん、そうだよ」

真美「真美も連れてって!」

美希「別にいいけど…なんで?ミキ、別に旅行に行くわけじゃないよ?」

真美「分かってる、あのね…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー

美希「そっか…お家には戻らないの?」

真美「戻れるわけないよ…亜美のいない家になんて…」

美希「真美がそれでいいならいいけど…」

真美「お願い…」

美希「じゃ、用意するもの用意してきて」

真美「家出だからなるべく荷物は少ない方がいいかなーって思って…」

真美「パスポートとお金だけ…」

美希「ミキがOKしなかったらどうするつもりだったの…?」

美希「とりあえず今日は泊まっていって」

真美「ミキミキ!起きて!バス遅れちゃうよ!」

美希「あれ?もうそんな時間…?」

真美「早く早く!!」

ーーーーーーーー

ーーーーー

美希「着いたの!すごいの!」

真美「ここがニューヨーク…」

美希「えーっと…ここの住所は…」

真美「何これ?」

美希「ああ。律子に用意してもらったの。ミキの住むとこ」

真美「へぇ…律っちゃんが…」

真美「ミキミキ!起きて!バス遅れちゃうよ!」

美希「あれ?もうそんな時間…?」

真美「早く早く!!」

ーーーーーーーー

ーーーーー

美希「着いたの!すごいの!」

真美「ここがニューヨーク…」

美希「えーっと…ここの住所は…」

真美「何これ?」

美希「ああ。律子に用意してもらったの。ミキの住むとこ」

真美「へぇ…律っちゃんが…」

美希「ここがミキの家かぁ」

真美「なんか普通のマンションだね」

美希「あっ、あれが事務所かな?近くてよかったの!」

真美「真美もなんかお仕事しよっかなぁ…」

美希「真美のお仕事はミキのセンゾクシュフだっておもうな!」

真美「えぇ!お料理とか?全部?」

美希「うん、どうせヒマでしょ?」

真美「それはそうだけど…」

美希「それじゃ明後日からよろしくなのー」

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