梓「軽音部ってここでいいんスか?」(185)

梓「クラスに男は俺一人とか」

梓「去年共学になったっつっても、やっぱ名門女子高のイメージあるからな。桜ヶ丘って」

梓「お陰で教室でのいたたまれなさ半端なくて俺の精神ゲージがガリガリけずれていきやがる」

梓「せっかくレベル高いとこ入れたのに、これから三年ずっとこの重い空気の中生きてくとか……ないわー」


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ワイワイガヤガヤ

ネードノブカツハイルノー?

アタシバレーブ

梓「(部活、ねぇ……)」ポツーン

梓「(そいやここ、ジャズ研とかあったっけ)」

梓「(一人で教室いるよりなんかやってた方が気が楽かもな)」パラリ

梓「(文化系の部活は放課後に講堂で紹介……か)」パラパラ

憂「(放課後はお姉ちゃんの演奏聞きにいかなきゃ)」ワクワク

講堂

ジャズケンノハッピョウデシター

ワイワイガヤガヤパチパチパチパチ

梓「……違う」

梓「なんかあそこ、スウィングとビッグバンドみたいなノリいいのだけを扱ってジャズって呼んでそうだな……」

梓「……絶対この話、オヤジが聞いたらキレそうだ」

梓「(っと、独り言喋りすぎた)」

ツギハ、ケイオンガクブノハッピョウデス
梓「軽音楽部?」

梓「そんな部活あったんか」

憂「あるんだよ」

梓「ってうわぁ!」ビクッ!

憂「中野くん、だよね。わたし同じクラスの平沢憂」
梓「あ、どうも宜しく(いきなり声かけられてビビったわ……)」バクバク

憂「中野くんは部活見に来たの?」

梓「あ……あ、うん」シドロモドロ

梓「(女の子と話すの慣れねぇー……)」バクバク

憂「わたしはお姉ちゃんの演奏を聞きにきたんだ」

憂「わたしのお姉ちゃん、軽音部のボーカルなの」

梓「へ、へぇー」シドロモドロ
梓「(頼むから俺に絡まないでください平沢さん)」

♪~

梓「(軽音部って聞いて、てっきり定番のバンプかラルクでも弾くんかと思ったら)」

梓「(まさかオリジ曲とは)」


梓「(しっかし、歌詞もボーカルの声も甘ったるすぎやしねーか?)」ダツリョク

梓「(茨城名物MAXコーヒー耳から流し込まれてる気分だ……)」ダツリョク

憂「お姉ちゃん頑張ってー!」

フワフワターイム!

梓「(まぁ)」

梓「(楽しそうではあるかもな)」

音楽室

律「で、新入部員はいまだ来ない。と」ズズー

澪「もう諦め時か?」ズズー

紬「部活見学期間はもう今日で終わるしね」コポコポ

唯「ムギちゃん?このお菓子のジャム何?」ムシャムシャ

紬「ハスカップよ♪」ニコ

唯「ハスカップかぁ……」
唯「で、ハスカップって何?」

律「」ハァ


梓「すいません、軽音部ってここでいいんスか?」ガチャ

律唯澪紬「!?」

律「キミ入部希望者!?何組!?っていうか男の子!?」ズザザァァッ

唯「名前なんていうの!?あとハスカップってなんだかわかる!?」ズザザァァッ

梓「うわぁぁぁっ!」ビクゥッ

澪「二人ともやめろ!驚いてるだろ!」

紬「(……今の驚き方、なんか可愛いかも)」



梓「てなわけで、1年3組、中野梓と申します。宜しく」

律「こちらこそ♪私は部長でドラムの田井中律ね」

梓「あ、どうも宜しくお願いします」

律「で、そこで座ってるのがベースの秋山澪」

梓「宜しくお願いします」

澪「……」ススッ

梓「(初っぱなから嫌われたか?俺)」

律「あ、澪のは只の人見知りだから気にしなくていいから」

梓「(よかった。嫌われてなくて)」

律「で、今中野くんのお茶注いでるのがキーボードの琴吹紬、通称ムギ」

紬「どうも~」コポポ

梓「宜しくお願いします(あのブロンド、地毛か?綺麗な人だなぁ)」ズズ

梓「あ、おいし」

律「そんでもってここでお菓子食ってんのがギターの平沢唯」

唯「よろしくぅ~」

梓「あ、どうも(ついに出たか甘甘ボイスの人……)」

梓「ん、平沢……?」

梓「ああ、平沢か」コクコク

律「なんだ!?中野くを既に唯の事を知ってたのか!?」

唯「わたし実は有名人!?どうしよ!サイン頼まれたら!」

律「ずるいぞぅ唯ばっかりぃ!」

梓「(……ノリいいなぁ、この人達)」ズズー

紬「ちなみになんで唯ちゃんのこと知ってたの?」

梓「あ、平沢先輩の妹さんとクラス同じで」

紬「成る程、憂ちゃんと同じクラスなのね」

梓「ですね」

一応男はあずにゃんだけです。

澪「ところで、中野くんは楽器の経験とかある?」

律「そうだよ!そこんとこ聞こうとしたんだよ!」ヒュバッ

唯「実際なんにも出来なくてもいいよ!わたしも去年まで、ギター弾いたこともなかったし!」フンスッ

澪「それは威張って言うことじゃ無いだろ」

梓「あ、一応ギターは多少なら弾けます」

紬「へえ。男の子ってやっぱりギターに憧れるのね」
梓「いや、オヤジがジャズギタリストやってて、結構付き添いでその手のクラブとか出入りしてて、その影響ですね」

梓「自前のギターも持ってますよ」ピッピッ

梓「はいこれ」

澪「フェンダー・ムスタングかぁ。小さくないか?」
梓「ですね。中一の時に貰ったんで、今はちょっと」

唯「あ、ここにステッカー貼ってある」

紬「アメリカ軍のマーク?」

梓「横須賀でオヤジと演ったときに、米軍の人から貰った奴なんですよ」

律「本物のバンドマンかよ……」

律「で、そんなバンドマンな梓の腕前はどのぐらいなのかね!」ズイッ

梓「(最早呼び捨てかよ。まあその方がいいけど)どのぐらい、と言われても……」タジッ

律「大丈夫!ギターならここにあるから!」シュバッ

唯「あぁん、私のギー太ぁぁ」

梓「(……ギー太?)レスポールっすか。慣れないギターなんで上手く出来るかわかりませんけど」スチャッ

梓「それじゃ行きますよ」チャキッ

梓「ポルノグラフィティで、『ヒトリノ夜』」

♪~

律「凄い……楽器がギターしかないのにこの迫力って」

澪「弾きやすく、迫力を出すために色々楽譜をアレンジしてるんだ。相当にこの曲弾いてるぞ」

紬「いえ、唯ちゃんの演奏よりも力強いのも確かよ」
紬「同じギー太でも弾き手次第ではこんなに違うのね……」

♪~

梓「だからロンリロンリーっせつなくてーっ!」ギュイイ

澪「あ、ノリ過ぎて歌い出した」

唯「歌はあんま上手くないね」

梓「さけぶヒトリノよーるっ!」ギュイイイイッ!!

梓「……」

梓「(やべ、ノリノリになりすぎて後半熱唱しちまった)」

唯紬澪律「………」

梓「(あちゃー……ドン引きじゃねーか)」

梓「あ、あの」

唯「す」

梓「は?」

唯「凄すぎるよっ!」ヒュバッ

梓「えっ!?」タジッ

律「唯の言う通りだ!梓!ぜひ入部してくれ!」ヒュバッ

梓「は、はぁ」タジタジッ

澪「詰め寄るな二人とも。中野くん困ってるだろ」

澪「でも私も入部お願いするよ。中野くんがいれば百人力だ」

紬「私からも、ね」ニコ

梓「あ、はい。みなさん宜しくお願いします……」ペコリ

梓「あと平沢先輩、ギー太……でしたっけ。返しますね」

唯「そんなかしこまらなくていいよー」

唯「唯で大丈夫だから」

梓「あ、はい。唯先輩………」ペコリ

翌日・学校

梓「(結局学校まで持ってきちまったなムスタング)」

梓「(元ネタにちなんでって米軍の国籍表ステッカー貼ってある俺のムスタング)」

梓「(そもそも元ネタって本当に戦闘機の方なのか?車の方じゃないのか?)」

憂「おはよー、梓くん」ニコ

梓「あ……平沢、さん」タジッ

憂「梓くん軽音部に入ったんだって?お姉ちゃんから聞いたよ」

梓「あ、うん。まぁ」

憂「それ、梓くんのギターだよね。見せて見せて?」

梓「(やべ、俺この子苦手かも)……わかったよ。今出すから」シュルル

憂「うわー……ギー太と大分違うね……」

梓「(そりゃ構造からして違うもん)」

純「あれ?それ中野くんのギター?」

梓「そ、そうだけど」

憂「あ、純ちゃん」

梓「(知り合いなのか……)」

純「かっこいいじゃん!そのステッカーとかイカすよ!」

梓「……ギターとか興味あるの?」

純「まあねー」

純「あたし鈴木純。よろしく!」

梓「あ、うん。よろしく」

放課後・音楽室

梓「こんにちはー」ガチャ

唯「あ、梓くんこんにちはー」

律「遅かったじゃん♪」

梓「(本当に毎日茶ァしばいてんのかよ。ここ何の部室なんだよ)」

さわ子「こんにちは~」

梓「あ、どうも」

梓「(って、誰だ?)」

唯「あ、紹介するね。顧問のさわちゃん」

梓「(あ、顧問のセンセね)中野梓です。よろしくお願いします」ペコリ

さわ子「聞いたわよ。昨日はこの子達驚かせるような演奏したんですって?」

梓「まあ、それほどでも無いですけど……」

さわ子「……」

さわ子「中野くん」

梓「は、はぁ」

さわ子「身長今何cm?」

梓「……っと、確か161cm……」

さわ子「……」ギュピーン

澪「(あ、良からぬ事企んでる目だ)」

さわ子「ちょっとみんな、中野くん借りるわね!?」スタスタスタガシッ

梓「ちょ、借りるって」ズリズリガチャッ

律「行っちゃったな」

紬「行っちゃったね」

澪「すまん梓……」

ズリズリズリガチャッ

さわ子「お待たせ!さあ入って入って!」

梓「………っ!」

スタスタ

澪「お、おぉ……」

律「まさかの女子制服に着替えた梓……」

紬「しかもツインテールのウィッグとネコミミ装備……」

紬「それが凄い似合ってるのがまた恐ろしいわ……」パシャパシャ

唯「あずにゃんだ……」

唯「あずにゃんだよこれ!」

さわ子「やっぱり私の眼に狂いは無かったわ」

さわ子「中野くん、女顔だから女装が似合いそうだと思ったのよね」ファサー

紬「流石ですさわ子先生!(女装男子!こういうのもアリね!)」パシャパシャ

梓「(今すぐ死にたい)」ドヨンド

梓自宅

アルヒソーラレイミズハソーラレイ

梓「ったく……酷い目に合った」

梓「会って三分の人間女装させるかっつの普通」

梓「あんなのが続くなら俺軽音部辞めるぞ畜生」

ブーブー

梓「ん?着信か?」

梓「画像添付メール、平沢憂……なんだ?」

---

梓くんの写真、お姉ちゃんに見せてもらったよ。
すごくかわいかった♪

(あずにゃん写真)



---

梓「ぁんの沢庵マユゲの仕業かああぁぁぁーっ!!」ズゴアアアアアアアッ!!

今日はここまでで。
ついでに俺は梓の外見は澪やムギくらいの身長で、ダークフレイムマスターみたいな髪形のあずにゃんを想像しています。

音楽室

唯「あーずにゃんっ♪」ギュッ

梓「だあぁ、離れてくださいっ!」グイ

唯「えー、どうして?」

梓「貞操的な問題です!」
梓「(唯先輩が抱きつく度に体が反応するんだよ……沈まれ、俺の息子よ)」

澪「(なんか梓が前屈みだ)」

律「(反応しちゃったんだな)」

梓「ってか練習しましょうよ練習」

梓「いくら何も無いとは言え、個人で練習した方がいいですよ」

澪「それもそうなんだけど、な……」チラッ

紬「今日はレモンチーズケーキよ~」ニコ

律「とりあえず、これ食べてからかな」

梓「……おいおい」

梓「っと」ジャラーン

唯「すごいすごーいっ!」
梓「いや、極めて普通の事しただけっスよ」

梓「ふわふわ時間はそれほどテクもいらないし、進行もあんまムズくないから練習さえすればこんなもんですって」

紬「初心者の唯ちゃんもいたし、クセの強い曲は難しいかなって思ってそうしてみたからね」

律「流石ムギ、そう言うとこまで気配りしてたなんてな」

紬「えっへん」フンス

梓「(玄人ぶって弾けもしないような進行ぶち込むような人じゃなくて本当に良かったぜ)」

梓「(そうだったら俺もついていけなくなりそうだからな)」

下校中・商店街
梓「ムスタングの弦そろそろ買い替えるかね……」

梓「ギー太の弦の張り替えも手伝わなきゃならないんだよな、そういや」

梓「……しーざらてぃけとぅなーぁ♪」

ピロリロピロリロ

憂「あ、梓くん」ヒョコッ

梓「……平沢。それ、夕飯の材料か?」

憂「うん。うち、両親が海外だから」

憂「ご飯は私の仕事なの♪」ニコ

梓「……唯先輩は?」

憂「んー、手伝わせたらそっちの方が怖いから、ゴロゴロしてもらってる」

梓「(なんて予想通りの答えだ)」

憂「梓くん、さっき何歌ってたの?」

梓「え?」

憂「ふーふふふふふふーん、って歌。さっき歌ってたよ」

梓「あー、知らないうちに歌ってたのか」

梓「涙の乗車券って曲だよ。ビートルズの」

憂「そうなんだ……」

憂「そうだ」ポン

憂「梓くん、今日ご飯どうするの?」

梓「今日は……オヤジも母さんも横浜でライブだからな」

梓「適当にインスタントラーメン作って食うつもりだわ」

憂「それならうちに来てご飯食べていきなよ!」

梓「え?」

憂「ちょっと多目に作るから多分梓くんの分も出来ると思うよ?」

梓「いや、そんな。平沢や唯先輩だって迷惑だろ」

梓「(それにあの人と部活以外で顔会わすのも疲れるし……平沢の前だと特に)」

憂「大丈夫だってば。ほらほら」グイグイ

梓「おい待てって……!俺はまだ了承してもいないって!」ズリズリ

平沢邸

唯「あずにゃぁーん♪」ゴロゴロ

梓「(断りきれずにつれてこられてしまった)」ムグムグ

梓「つか唯先輩、離れてください。飯食ってるとき行儀悪いでしょ」ムグムグ

唯「ちぇー」ションボリ

唯「ごちそーさまー」

唯「お風呂入ってくるねー♪」スック

憂「行ってらっしゃーい」ヒラヒラ

憂「冷蔵庫にアイスあるからお風呂上がりに食べてねー」

唯「わっほい♪アイスゥ♪」

梓「(やっぱアレが通常運転なのか)」

梓「食器片付けようか?」
憂「それは後でわたしがやるよ」

憂「その変わりに、ちょっと」

梓「え?」

憂「ギター、教えてくれるかな?」

梓「……どうしてまた」

憂「お姉ちゃんの見てて、凄い楽しそうだと思ったの」

梓「へぇ……」

憂「どう……かな?」

梓「……いいよ。俺でよければ」

憂「本当?」パアア

梓「(上目遣いでおねだりされたらそりゃ……ねぇ)」

今日はここまでです

梓「と、軽音部に入って3ヶ月が過ぎたわけで」

梓「相変わらず部活では大半は茶ァしばいて、たまに練習しての日々」

梓「むしろたまに平沢にギター教えてる時間の方がギター触れてる気がするのです」

梓「でもさすがに文化祭控えてそれはヤバイと澪先輩とムギ先輩が合宿を計画しました」

梓「この二人はマジで軽音部の良心ですね」

梓「んでもって迎えた合宿当日な訳ですが……」


梓「はぁぁ!?唯先輩遅れると!?」

憂『そうみたい。あと30分くらいかかりそうだから待っててあげて』

律「いつも通りだな」

澪「清々しいくらいにいつも通りだ」

紬「こんなこともあろうかと、ちょっと摘まめるお菓子も持ってきたの~♪」

梓「(……相当に訓練されてるな。この人たち)」

唯「み、みんな……ごめ……」ゼーハーゼーハー

律「だいたい予想してたから大したことないぞ、唯」

律「ほら梓、唯の肩持って」

梓「あ、はい……」ヒョイッ

唯「ありがと……あずにゃん……」ゼーハーゼーハー

梓「喋ったら体力減りますよ」

梓「(しかし、やっぱ柔らかいんだな。女の子って)」

律「よぉしっ、気を取り直して行くぞーっ!」

ザザーン ザザーン

梓「でけぇ別荘にプライベートビーチ……ムギ先輩って一体何者なんだよ」プルプル

紬「大したことないわよ」ニコ

ワハハハー アハハハー ウミダー

梓「そして例のごとく遊び出すか唯先輩と律先輩は」
梓「しかもそれを止めに行った澪先輩までいつの間にか加わってるし」

紬「夏の海の魔翌力よね~」ニコ

紬「ところで梓くんは加わらないの?」

梓「俺はパスです。あの中に男一人入られても困るでしょ」

梓「(それ以上に目のやり場に困りますし)」

澪「あはははー」プルンプルン

梓「(目の、やり場に、ね)」ジーー

紬「(あー、やっぱり澪ちゃん凝視してるわねー)」

梓「っは!」ブルブル

梓「まあ、そんなわけで別荘の屋上で体でも焼いてますよハハハハハ(煩悩退散煩悩退散煩悩退散)」スタスタ

紬「サンオイルは洗面所にあるわよー(なんか見てて面白いわね)」

唯「あずにゃん随分焼けたねー」

梓「そうですか?あはは……」

澪「焼けすぎてなんか海の人みたくなってるぞ」プクク

梓「海の人って……」

律「取り合えずそのサングラスとパーカーやめてくれ」プクク

律「物凄くおかしく見えるから」プクク

梓「なんスかそれっ!」

紬「なんか石原裕次郎みたい……」プクク

澪「あず大将……」ボソッ

唯律澪紬「ぶううぅぅぅぅっ!!」

梓「やめて下さいっ!!」

梓「ったく。下らないことしてないで練習しますよ」スチャッ

澪「そうだぞ。文化祭まで時間ないんだからな」スチャッ
唯「……」

唯「……ギターを持った、あず大将」ボソッ

唯律澪紬「ぶううぅぅぅぅっ!!」

梓「なんだよこれ」

梓「いいですか。メシ食ったら真面目に練習しますからね!」ムグムグ

梓「結局さっきはあず大将でまともに練習できなかったんですから!」ムグムグ

澪「本当にそろそろ練習しないと合宿の意味なくなりからな」

梓「澪先輩も正論言ってるみたいですけど、さっきあず大将で一番盛り上がってたのあんたですからね」

澪「う」

紬「焼きそば焼きそば~♪」

唯「ムギちゃん随分楽しそうだね」

紬「だって焼きそばですものー♪」

唯「そうなの?」

紬「ええ」ニコ

律「ムギ、焼きそばには紅しょうがを乗せるんだぞ!」

紬「そうなの!?りっちゃん!」

唯「青のりも忘れちゃだめだよ!」

梓「………」ムグムグ

梓「聞いちゃいねえ」

♪~

唯「こんな感じ!?」

澪「かもな」

紬「新曲の練習はここまでにして、そろそろ寝る?」
律「さんせー。もう1時じゃん……」

梓「あ、ムギ先輩。毛布と枕どこにありますか?」

紬「え?」

梓「流石に女の子と同じ部屋で寝れませんからね。俺は居間のソファーで寝ますよ」

唯「えー、あずにゃんと寝たかったのにぃ」シュン

梓「やめてください。これ以上はセクハラで訴えますよ」

唯「ちぇー」シュン

紬「梓くん、毛布と枕ならリネン庫にあるはずよ」

梓「了解っす」

唯「んむー……」ムクリ

唯「むー……」

紬「えっへへ……ゲル状がいいのー……ムニャムニャ」グッスリ

唯「おしっこ……」トテトテ

ジャアアア

唯「むー……」

唯「あれ?あの部屋明かりついてる?」


♪~

梓「ちげー……全くちげーな」ブツブツ

梓「メロディがエロ過ぎる。俺の曲ならともかくも軽音部のふわふわイメージじゃねえ」ブツブツ

梓「もっと快活なメロディで……」

唯「……あずにゃん?」

梓「うわぁぁっ!!」ビックウウッ

梓「って、唯センパイ?」

唯「驚きすぎだよお、あずにゃん」

梓「すんませんね。さっきまでラジオの心霊特集聞いてて」

唯「それで怖くなったんだ。あるよね、そう言うの」

唯「ところであずにゃんは何してたの?ギター持って」

梓「……ちょっとなんとなく曲とかギターソロとか考えてたんですよ」

唯「ぎたーそろ?」

梓「俺って元々ジャズ屋なんで。なんかソロパートとか欲しくなって……」

梓「みんなで合わせるのもいいけど、ソロパートでぎゃんぎゃん自分の個性出して弾きまくるのもいいんじゃないかなと」

梓「流石にあんまりおこがましいんで、やりませんけどね」

唯「……でもちょっと聞いてみたいかも。あずにゃんのソロ」

梓「それが、どうも上手く行かなくて」

梓「なんとなくメロディがエロくなったりちゃうんですよね……よく聞いてる音楽のせいなのか」

唯「エロいメロディって……ちょっと気になるかも。どんな感じなの?」ワクワク

梓「……だいたいこんな感じなんですよね」

♪~

ラジオ『時刻は午後0時を回りました』

梓「結局一睡もせずにギターソロ考えて、そのまま二人一緒に朝日を拝んでバタンキューとは……」

紬「梓くんも唯ちゃんも、夜更かしはめっ、よ!」

唯「でも色々面白かったよね。わたしも途中からギー太持ってきてギターソロ考えたし!」

梓「(技量はギターソロ以前の問題なんだけど、凄いメロディの直感はあるからなあ。この人)」

律「ソロパートかぁ……あたしのドラムソロとか間に入れて叩きまくるとかかっこいいかも……」

梓「(あんたも技量の問題でアウトだよ)」

澪「私は……別にいいかも」スッ

梓「(この人は途中で恥ずかしさのあまりにテンパッて自爆しそうだからなぁ……去年の縞々事件の話とか聞くに)」

紬「今ふわふわ時間の譜面に入れてみる?梓くんのソロパート」

梓「……え?いいんスか?」

紬「ちょうど間奏に入れられる箇所があるでしょ?短いけどそこに入れられるんじゃないかなって」

梓「……これだけあれば十分ッスよ。ありがとうございます!」

律「待て待て待てぃ!梓!お前にソロパートを弾ける資格があるのか、私が試してやろう!」スチャッ

梓「はい?」

律「『ふわふわ時間』でお前がソロパートを弾ききれるかっ!そしてそれがあたしが認められるものなのかっ!」

律「今ここで証明してみせろっ!」ビシイッ

唯「受けて立とうじゃあないかりっちゃん!さああずにゃん!行くよ!」スチャッ

紬「真剣勝負ね!」スチャッ

澪「全く……こうでもしないと練習できないのか……」スチャッ

梓「……だんだんこのノリに慣れてくる俺が怖いな」スチャッ

律「じゃあ行くぞ!」

律「ワンツースリーフォー!」

数日後・平沢家

憂「で、認められたの?梓くんは」ワクワク

梓「見事に認められましたとも」

梓「まあ、ソロパートつっても唯センパイのボーカルのツナギだから大したことはないけど」

憂「でもお姉ちゃんの歌に梓くんのギターソロもついて、なんか今年の文化祭余計楽しみになってきたかも」ワクワク

梓「そんな凄いもんじゃないから。唯センパイの歌のツマみたいなもんだから」

梓「で、その当の唯センパイは?」

憂「和ちゃんと出かけて夜まで帰ってこないって」

梓「なるほどね……平沢がギー太持ってるわけがわかったよ」

憂「……」

梓「じゃあ練習行くか?」スチャッ

憂「……」ムスッ

梓「どうしたんだ?ひらさ」

憂「うい」

梓「はい?」

憂「お姉ちゃんは名前で呼ぶのに、私だけ苗字で呼ぶのはなんかイヤ」ムスッ

梓「ああ……それはセンパイ達が下の名前で呼ぶようにって言うからさ、それで……」

憂「じゃあ私のことも憂って呼んで」

梓「……それは」

憂「ダメなの?なんで?」ムスッ

梓「……鈴木とかに冷やかされそうでさ」

憂「理由になってない」ムスッ

梓「男はそこんとこ色々あるんだよ……」

憂「じゃあ、二人だけの時は」

梓「それなら了解した。うい」

とりあえず今日はここまでです。

純「よっ、梓」ヒョコッ

梓「なんだよ鈴木」

純「お、憂は下の名前で呼ぶのにあたしは苗字かい」
梓「だっ……何でそれ知ってんだよっ!」

純「憂がノロケてきたもん」

梓「平沢ぁぁぁっ!」ゴアアアアア

純「それはいいんだけどさ、梓ってジャズ詳しいんだよね」

梓「……親父と母さんの後着いてジャズバーに出入するくらいにはな」

純「いやさ、文化祭までにウチのジャズ研の練習見てって、なんかコメント欲しくてさ」

梓「……別にそのくらいなら、ティータイムしてる時間割けるからいいけどさ」

純「いやったぁ!ジャズ屋呼んでくるって先輩に見栄切った甲斐があった!」グッグッ

梓「ただし」

純「へ?」

梓「150円よこせ。下の自販機で紅茶買ってくるから」

♪~

梓「(なんつーか、評価しがたいな)」

♪~

梓「(ビッグバンドやスウィングは俺でなく吹奏楽部の出る幕だろうに。)」

♪~

梓「(勢いとノリのあるビッグバンドやスウィングは確かにウケるけどなぁ……)」

ジャズ研部員「どうかしら、中野くん」

梓「あ、はい。個人的にはいいかなと」

梓「ただ曲が全てビッグバンドとスウィングなのが気になりますかね」

ジャズ研「うちは大所帯だし、文化祭だと物静かな曲は向かないからね。中野くんは不満?」

梓「あ、いや。そうでないんですが」

梓「なんか演奏がきちっとし過ぎてると言うか、プチ吹奏楽部みたくなってて」

梓「即興派の俺だと評価しにくいなーって」

ジャズ研「成る程ね」

梓「とは言え即興は技量に関わりますから、変に即興やるよりはビッグバンドで行くのもありだと思いますよ」

ジャズ研「中野くんって確か軽音部よね」

梓「っすね」

ジャズ研「放課後にいつも音楽室でお茶して、楽器の音は滅多に聞こえてこないってあの軽音部よね」

梓「っすね」

梓「(やべえ、的確すぎて言い返せねえ)」

ジャズ研「ねえ中野くん。それならうちに来ない?」

梓「へ?」

ジャズ研「あなたのギターの腕をお茶会集団で埋もれさせるのも残念じゃない?」

梓「そんな。俺、それほど上手くありませんって」

ジャズ研「鈴木さんから聞いてるわ、あなたの腕前は。横浜のジャズバーでギターソロもやったことがあるんですってね」

梓「それはたまたま親父が……」

ジャズ研「あなたの腕前があればギターは相当な戦力増強になるし、次のコンクールにはきっと今年以上の成績も夢じゃないわよ……」

梓「……」

梓「すんません。やっぱその誘いなかったことにしてください」

ジャズ研「え?」

梓「コンクールのためとか、勝つための音楽とか、そう言う体育会系の音楽って中学の時の吹奏楽部で懲りてて」

梓「だから、今の軽音部くらいのノリが俺にはちょうどいいんですよ」

梓「それじゃ。あと、演奏は文句なしに良かったですから、安心していいと思いますよ」ガチャ

純「はあぁ……」ポカーン


梓「(とかジャズ研の人には言ったけどさ)」

律「誰だよーハートの4止めてる奴ー」

唯「スペードの8もだよぉ……パス」

梓「なんで七並べやってんすか俺らは」

紬「いいじゃないいいじゃない」

梓「よかないっす。もうそろ真面目に練習しましょうよ」

梓「結局セッションしないことにはどうしようもならないんですから」

唯「ちぇー。あずにゃん固いんだからー」

梓「これ一回終わったら練習しますよ」ペラリ

梓「だから澪センパイ、止めてるカード素直に出してください」

澪「……何のことだ?梓?」ダラダラ

梓「さっきから明後日の方向向いたり、挙動不審だったりでバレバレですから」




梓「??♪」ギュイイ

梓「っと、こんなもんか」

憂「すごいすごーい!」パチパチパチ

梓「悪いな、うい。練習付き合わせられなくて」

憂「もうすぐで文化祭だもん。気にしてないよ」

憂「最近お姉ちゃんも家で気合入れて自主練しだしてるし」

梓「あのセンパイが?」

憂「うん。ギー太持って居間で遅い時間まで練習してたり」

梓「……奇跡が起きたのか?それともアルマゲドンの予兆か?明日は爆弾が降ってくるんじゃないだろうな」ワナワナ

憂「それは言い過ぎだってば」

梓「だってあの唯センパイだぞ?」

梓「常にいつも最後までぐだってる唯センパイだぞ?」

憂「やるときはやるよ。お姉ちゃん」

梓「そうなのかねぇ」

♪??

梓「(けっ)」

憂「どう?」

途中で投稿してしまいました。すいませんでした

梓「(結局憂の練習も付き合っちまうんだよな)」

梓「(まー、ギー太はセンパイが使ってるし、俺のマスタング使うしかないからな)」

♪??

梓「(そして練習曲はふわふわ時間と)」

ジャーン!!

憂「どう……かな?」

梓「……すげえ。唯センパイの代わりに弾いてくれないか」

憂「それは無理だってば……」

律「はあ、唯が風邪と」

梓「昨日の夜くらいから具合悪そうで、今朝にはバタンキューと。平沢の話いわく」

律「最近急に冷え込んでからな。あたしもこの前熱出したしさ」

澪「だな」

梓「あいつ世界の終わりみたいに心配してたんで、逆にこっちが心配になりましたよ」

紬「大丈夫かしら……唯ちゃん」

澪「帰りにお見舞い行くか?」

律「そうだな……」

紬「でも学祭三日前に風邪は痛いわ」

紬「この前にも律ちゃんが風邪やったし、合わせの練習は去年よりできてない」

澪「それよりも唯の風邪が長引いたら……」

梓「唯センパイが出られなくなる……」

梓「(全員出られなくなるのもあるが、リードギターが抜けたら大問題だ)」


梓「ムギセンパイ」

紬「どうしたの?梓くん」

梓「最悪、唯センパイが寝込んだままなら、俺が唯センパイのパートやりますわ」

梓「譜面はわかりますし、なんとかこの三日でモノにして……」

紬「梓くん」ズイ

梓「な、何すか?」

紬「余計なお世話」

梓「え?」

紬「私達は五人揃って軽音部なの」

紬「五人揃わなかったら、それは未完成品であって、そんなものを出すくらいなら辞退するわ」

梓「……」

紬「それに大丈夫よ。唯ちゃんは土壇場が強いんだから」

梓「……そう言うもんですかね」

紬「そう言うもんよ」ニコ

本編の梓と感性が違い過ぎてモニョる

>>62
リアル男子高校生の感性フィルターかけるとこうなっちゃうのですよね……アニメほどかわいらしくなると逆に違和感ありますし

平沢家

唯「へろ~……」ゴホゴホ

澪「……思ったより大変そうだな」

梓「(……俺は思ってたより大丈夫そうだった)」

梓「(憂の慌てっぷり見てたら40度超える熱出てるかと思ったからなあ……)」

紬「はい、これ。お見舞いのゼリー」

唯「ありがと……ムギちゃん」ゴホゴホ

律「はやく風邪治せよな、待ってるぞ♪」

唯「うん……そうしたい」ゴホゴホ

唯「迷惑かけてごめんね、みんな……」ゴホゴホ

梓「別にいいっスよ。風邪なんていつかかるかわからないし」


澪「じゃあそろそろ御暇するか?」

律「だな」

梓「それじゃセンパイ、できれば文化祭の日に」

唯「あ、あずにゃん……」ゴホゴホ

梓「……何スか?」

唯「ギー太……とって?」ゴホゴホ

梓「ちゃんと休まないとダメっスよ。体に悪いし」

唯「……添い寝するの~」ゴホゴホ

梓「あ……そうですか。はい」ヒョイッ

唯「ギー太ぁ~ひんやりしてて気持ちいよ~♪」ゴホゴホ

ガチャ

梓「ギター始めてもうそろ十年、いろんなミュージシャンを知ってきたつもりですが」

梓「ギターと添い寝する人は今日はじめて見ましたわ、俺」

紬「唯ちゃんの持ち味だからね♪かわいいよね♪」

梓「かわいいっちゃあ、かわいいですけど……」

律「じゃあ、唯にお大事にって」

憂「はい。伝えておきます」

梓「あ、俺少し残りますわ」

律「……どうしたんだぁ?梓ぁ?」

律「もしや憂ちゃんとラブラブタイムを演じるつもりで……」

梓「だあああああああああああああっっ!!違います違います違いますってばっ!!」ブンブンブン

律「(なんか否定が凄い必死だな)」

律「(聡もだけど、男って恋愛関係になるととたんに全力で否定するのかな?)」

澪「ラブラブ……タイム……」

澪「」プシュー

紬「(澪ちゃんが恥ずかしがり性でオーバーヒート起こしてるわね……)」

澪「」プシュー

紬律「じゃあ、お大事に」

ガチャ

憂「……お姉ちゃん大丈夫だった?」ウルウル

梓「大丈夫だよ。少なくともお前が心配するほどの病状でもねえから」

梓「ほんっと、お前は途端にセンパイの事になると大げさになるからな」

憂「……そうかなぁ?」

梓「そうだっての。お前二言目にはいっつもお姉ちゃん、お姉ちゃんだろ。お姉ちゃんかわいいよねとか」

憂「だって本当にかわいいもん。アイスおねだりしてるお姉ちゃんとか、よだれ垂らして幸せそうに寝てるお姉ちゃんとか……」

梓「確かにまあ、世間一般的には……かわいい部類なのかもしれないけどさ」

憂「だよね♪」ニッコリ

梓「(……そんな笑顔されてもさぁ)でもまあ。大げさになる程の事じゃないからさ」

憂「そう言えば、なんで梓くんはうちに残ったの?」

梓「この前代わりに買ったギー太用のポリッシュ渡しそびれたんだ」ヒョイッ

梓「ギー太ってよく脂でぐしゃぐしゃになってるから、ポリッシュ欠かせないんだよ。代金は後からでいいんだけど、文化祭に脂と汗まみれのギターで出られても困るし」

憂「あはは……お姉ちゃんよくギー太と添い寝とかしてるからね」

梓「その現場もさっき見てきたよ」

憂「それじゃあ今お姉ちゃんのお茶淹れるから、その時に一緒に行こうか?」

梓「だな。病人のいる部屋をあんまバタバタできないしな」


憂「っと」コポポ

梓「…………」

梓「なあ憂」

憂「なに?」

梓「生姜とおろし金あるか?」

憂「あるよ。今取るね」

憂「はい、梓くん」スッ

梓「サンキュ……っと」シュコシュコシュコ

梓「あとハチミツかなんかあるか?なけりゃ砂糖でもいいんだけどさ」

憂「それもあるよ」スッ

カポッ カチャカチャ

梓「……よし」

憂「あ、これって……生姜紅茶?」

梓「ムギセンパイが律センパイが風邪から復帰した後に、みんなの風邪予防って淹れてたの見てさ。風邪の時にはこれがいいかなって思ったんだよな」

憂「……」

梓「……あれ?まずかった?もしかして唯センパイ生姜苦手とか?でもこの前飲んでたし……」

憂「ありがとっ!」ニコ

梓「(すげー眩しい笑顔……)」

文化祭当日 音楽室

梓「結局、唯センパイは来なかった……か」

紬「憂ちゃんはなんて言ってた?」

梓「それが……朝から見てないんっスよ」

澪「……出番まであと一時間切ったぞ」

律「……今から和に辞退入れてくるか?それとも……」

梓「……限界まで待ちましょう」

紬「梓くん……」

梓「……どうせあの人の事だから、いつもみたいにギリギリに来ると思いますよ」

律「そうだな」

バタンッ

唯「ごめんっ!みんなっっ!」

澪「唯っ!?」

律「風邪治ったのかっ!?」

唯「うんっ!ごめんね!心配かけて!」

梓「(あれ?)」

律「よし!唯が揃ったし、最後の合わせ行くぞっ!」スチャッ

律「ワンツースリーフォー!」


ジャーーン!!!

律「凄い……今までと全く違うみたいだ……」

澪「確かに。なんて言うか新しい世界が見えてきたみたいだった!」

唯「ほんとだよ!凄いよ!」

紬「……その通りね」チラッ

梓「……ですね」チラッ

唯「え?どうして二人共こっち見てるの?」オロオロ

梓「もう芝居はいいぞ。憂」

唯?「えっ?な、何のこと!?」

紬「顔も声も唯ちゃんそっくりだけど、そのギター、唯ちゃんのギターの弾き方のクセと全く違うのよ」

紬「唯ちゃんは譜面にできるだけ沿って弾くけど、あなたの弾き方は違う。聞こえ方がいいように譜面をある程度アレンジして弾いてる」

紬「あなたのは梓くんの弾き方のクセそっくりなのよ」

梓「で、唯センパイに入れ替わることが出来て、俺と同じクセの出る弾き方する奴って言えば、俺がギターを教えてる憂しかいないってことだよ」

唯?「ちっ……違うよ梓くっ――」

梓「本物はあずにゃんって呼ぶぞ。常に」

憂「あっ……」

紬「(梓くん、調子に乗って色々喋っちゃってるわね)」

梓「ほら、わかったらとっとと髪直せ」

憂「うん……」

澪「憂ちゃん、本物の唯は?」

憂「家を出るときはまだちょっとだるそうに寝てて……枕元でたくあんがどうとか言ってましたけど……」

律「(たくあん?)」

梓「……しゃあねえな。この時間じゃもう辞退も無理か」

澪「だな。梓、リードギター頼む」

梓「……オーライっす」

紬「……仕方ないわね」

律「うん」コクリ

憂「……私じゃダメかな?」

梓「悪いけど、な」

憂「そう……」シュン


アムバッキナユーエスエスアー ユーアラキユアー

澪「……誰の携帯だ?」

梓「……すんません。俺っす」

澪「(ビートルズ好きなのか?梓は)」

律「学校ではマナー入れとけよ。見つかったら一週間は没収されるぞ」

梓「昨日Youtubeで海外のヒットチャート曲聞いてて……」カチカチ

梓「は?」

律「どうした?」

梓「唯センパイから俺ら宛のメールっス。『家出たよ!』って」

澪律紬「え?」

澪律紬「……」ゴソッ カチカチカチカチ

紬「本当だわ……」

澪「『生姜紅茶で風邪治ったよ!今行くから待ってて(`・ω・´)!』だって……」

律「唯の家からなら……今からならギリギリ時間に間に合うかもな!」

憂「お姉ちゃん……」ウルッ

律「よし!じゃあ講堂に行くぞ!」

澪紬梓「了解!」



ブーブーブーブー

澪「ん?」カチカチカチ

澪「……はぁ」カチャン

律「どうした?」

澪「『家の鍵締め忘れちゃった。遅れるかも……(`;ω;´)』だって……」

律「……間に合うのか?」

澪「ボーカルは私がやって、リードギターは何曲かさわ子先生にヘルプ頼むか……」

講堂

♪~~~

澪「ふでぺーんふっふー ふるえーるふっふー」

さわ子「♪~」ギュイーン

梓「(あの人、意外に上手いんだな。何の躊躇もなく完璧に弾いてる)」

梓「(で、それはいいとしてだ)」

梓「(なんで俺以外はさわ子先生の持ってきた振袖みたいなの着て弾いてるんだ?)」

さわ子「♪~」チラッ

さわ子「♪~」キラリーンッ

梓「(本当にようわからん。この部)」


澪「かなりほんきよーおー」

紬「(唯ちゃん、来るかしら……)」チラッ

律「(もうすぐで最後の曲だぞ……)」チラッ

梓「(これでまだ来ないなら……やるしかないっすね。あの作戦)」

澪「(梓……頼んだぞ)」

梓「(承知っス)」

憂「(お姉ちゃん……)」

ジャーーーン!!!

梓「(曲は終わった。しかし唯センパイは来ない)」

澪「……」

澪「……えー、では次の曲で最後の曲とさせて頂きます」

澪「ふわふわ時間、桜高祭ライブミックス!」

梓「……」スタスタスタ

梓「……」ペコッ

チャラリーン

梓「…………」ジャララララーン

律「(よし、行くかっ!)」スッタンスッタン

梓「……」ジャラララッ!

澪「(和にあらかじめ時間を貰って、即興のイントロで時間を引き伸ばして、唯が来るまで待つ作戦……)」ボボーン

さわ子「(ジャズに詳しい梓くんならではの作戦ね。ただ問題は……)」ジャララーン

梓「(唯先輩がタイムリミットまで来るかと、俺達の即興がどこまで通じるか……だな)」ギュイーン!

女生徒「ねえ、いつになったら歌始まるのかな?」

女生徒「そう言えばずーっとイントロだけねえ……」

女生徒「でもちょっとかっこいいかも。あのギター弾いてる男の子」

憂「梓くん……」

憂「やっぱ梓くんのギター、すごいね……」ホゥ

ジャズ研「凄い……息のあった即興弾き……」

純「……本当に凄いですね。みんなぴったり合わせていってる」

ジャズ研「……やっぱり、ああ言うのが中野くんの性分なんでしょうね」

さわ子「(残り5分……ホッチキスを削ったとは言え結構ギリギリね)」ギャギャギャ

律「(と言うかイントロで3分以上持たせるとか奇跡じゃない?)」スッタンスッタン

紬「(ジャズやプログレじゃ10分越えるのも結構普通よ)」ピロピロピロピロ

梓「(間に合え……!)」ギャイイーーン

バアアンッ

澪律紬梓さわ子「!?」

唯「はー……はー……」

憂「お姉ちゃんっ!」バッ

唯「お待たせっ!みんなっ!」

梓「真打ちは遅れて来るってか……」テケテケテケ

ザワザワザワ

ズダダダダダッ

さわ子「あとは任せたわ!」シュバッ

唯「ありがと、さわちゃんっ!」シュバッ

梓「(前座もここで終了っと。俺には過ぎた大役だったけどな)」

ギュイイイイーーーン!!

梓「あとは主役の出番っスよ!」

唯「がってん!」

デケデデケデケデッデン デッデンデッデン

唯「きみをみてるとっいつもはーとどきどきっ」

憂「お姉ちゃんっ!がんばれーーっ!」

梓「(できれば俺も応援して欲しかったなぁ……)」ギャギャギャ

憂「梓くんもがんばれーーーっ!!」

梓「」ズガッ

律「(あ、梓が音外した)」

紬「(憂ちゃんの応援で動揺してるわね。梓くん)」

澪「(なんて解りやすいんだ)」

♪~~

唯「ふわふわたーいむっ!」

澪「ふわふわたーいむ」

ジャーーン!!

唯「……?」ニコ

紬「……」コク

澪「……」コク

律「……ひひっ」ニコ

梓「……」グッ

テーテーテーテーテーテーテーテーテーテー

唯「!?」

スッタンスッタンスッタンスッタン

唯「……」

ボーーンボ-ボーン

唯「……」

ギュルギュルギュルギュルギュルギュルギャーーン

唯「……えへっ」

唯「もーいっかいっ!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!

♪~~


唯「なんか凄い盛り上がってなかった?」

澪「だな」

律「ヒーローは遅れてやってくるから盛り上がるんだろ?なあ、梓?」

梓「っすね。前座程度じゃどうしようもなかったっすスから」

梓「ただ今度からはちゃんと鍵かってきて欲しいもんです」

唯「そうでしたぁ……」テヘッ

律「和に止められなきゃもう一曲行くとこしてたからな。唯」

紬「お茶入ったわよー」カチャカチャ

唯「ありがとー、ムギちゃん」

ズズ

梓「(あれ……これって)」

澪「生姜紅茶?」

紬「まだ風邪流行ってるからね♪」

♪~~

唯「ふわふわたーいむっ!」

澪「ふわふわたーいむ」

ジャーーン!!

唯「……?」ニコ

紬「……」コク

澪「……」コク

律「……ひひっ」ニコ

梓「……」グッ

テーテーテーテーテーテーテーテーテーテー

唯「!?」

スッタンスッタンスッタンスッタン

唯「……」

ボーーンボ-ボーン

唯「……」

ギュルギュルギュルギュルギュルギュルギャーーン

唯「……えへっ」

唯「もーいっかいっ!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!

♪~~


唯「なんか凄い盛り上がってなかった?」

澪「だな」

律「ヒーローは遅れてやってくるから盛り上がるんだろ?なあ、梓?」

梓「っすね。前座程度じゃどうしようもなかったっすスから」

梓「ただ今度からはちゃんと鍵かってきて欲しいもんです」

唯「そうでしたぁ……」テヘッ

律「和に止められなきゃもう一曲行くとこしてたからな。唯」

紬「お茶入ったわよー」カチャカチャ

唯「ありがとー、ムギちゃん」

ズズ

梓「(あれ……これって)」

澪「生姜紅茶?」

紬「まだ風邪流行ってるからね♪」

12月・教室にて

純「梓ともどうだった?定期考査?」

梓「英語と日本史は80点台だった。物理と数学は平均点以下だったけど」

純「あたしも似たようなもんだわ。地学70台だけど英語と数学でボロボロ……」

梓「鈴木は地学選んだんだっけ。俺も物理選ばずにそっちにしときゃよかったわ」

純「あたしも日本史選んどけばよかったと思うよ。世界史ってカタカナ並んでわけわかんなくなったり、変な漢字出てきたりでさ」

憂「何してるの?二人とも」スタスタ

梓「定期考査の結果話し合ってたの」

純「憂はどんな感じだったの?」

憂「えっと、ちょっと待ってて」ゴソゴソ

憂「はい」スッ

純「……何これ」

梓「悪くて70点台、良くて90点台って……」

純「見て梓!物理89点!数学93点!」
梓「……できる子だぁ」

憂「……えーっと」


純「時に次の週末とか暇?」

梓「暇してる。MP3ウォークマン買ってどこも出掛ける金はないしな」

純「じゃあさ。ちょっとうちの猫預かってくんないかな?」

梓「猫ぉ?」

純「ちょい家で急な用事入っちゃってさ!週末だけでいいからさあ!」タノミコミッ

梓「……まあ、別にいいんだけどさ」

土曜日

猫「ニャー」

梓「……」ポロローン

猫「ニャー」

梓「……」ポロローン

梓「……あずにゃん二号」ボソッ

あずにゃん二号「にゃ?」

梓「……反応しちゃったよ」


あずにゃん二号「ニャー」トテトテ

梓「(こいつ見てるとなんか面白いな)」
あずにゃん二号「ニャー」シュタッ

梓「……」ポロローン

梓「こいつ見てたらいいフレーズが浮かびそうで浮かばないかも」


梓「……」ジャララーン

梓「なんかスピッツみたいかもな」

梓「あんま俺のイメージって感じじゃないかも」

梓「でも、とりあえずノートに書いとくか。後から澪センパイに見せて歌詞つけてもらうのもいいだろうし」

梓「黒猫なんちゃらって題名にされそうだけど」

あずにゃん二号「…………」

梓「ん? どーした?」

あずにゃん二号「…………ケホッケホッ」

梓「うわああああああああああっっ!!玉!?玉吐いた!?」

梓「どうすれば……そうだ!ネット!携帯!Yahoo検索!」カチカチカチ

スモーキンザウォーター

梓「誰だこんな時に電話してくる奴はあああああああああああ!!」

とりあえず今日はここまでです。スマホで打ってPCにメールしてコピペしているので半角が全角になってたりしてますが、そこは目をつぶって下さい……

梓「はい中野ですっ!」ピッ

憂『あ?梓くん?』

憂『今日のご飯、なんにしようか迷ってるんだけど。梓くんはマシュマロ豆乳鍋とチョコカレー鍋どっちがいいかな?』

梓「」ブチッ

憂『あれ?梓くん?』

梓「そんなことで電話かけてくるなあああああああああっっっ!!!」

ピッ!

梓「……こうしちゃられない!検索かけて何があったのか調べないと……」ピッピッ

梓「……え?」ピッピッ

あずにゃん二号「ニャー」トテトテ

梓「毛玉って、普通に吐くんだ……」


憂「……?」ブーブー

唯「どしたの?」

憂「電話みたい」

ピッ

憂「はい」

梓『憂?俺、梓だけどさ』

憂「あ、梓くん……」

梓『いや、さっきはごめん。急に怒鳴って……』

梓『ちょっと突然色々あって、なんかもうテンパっててわけわかんなくなっててさ、つい……』

憂「……よかった」

梓『え?』

憂「ひょっとしたらわたしのこと、嫌いになったのかもって、ちょっと心配してたの」

憂「でもそうじゃなくて良かったって」

梓『……うい』

憂「ところで梓くん、今日ご飯は?」

梓『え?今日は母さんもいるから普通に飯食う予定だけど……』

憂「もしよければ、晩御飯一緒に食べようよ」

梓『……わーったよ。唯センパイに見せたい物もあるしな』

憂「ありがと、梓くん」

ピッ

唯「あずにゃん?」

憂「うん。お夕飯一緒に食べてくれるって」

唯「そうなんだあ」


梓「母さん、出掛けてくる。今日飯いらねーから」

あずにゃん二号「ニャー」

梓「留守番もわるいからな……お前も一緒に連れてくか」

一月某休日

律「さぶっ」

澪「この時間になると冷え込んでくるな……」

律「もうコンビニ寄って肉まんとかホットコーヒー買わないか?」

澪「だな。あそこのコンビニ入ろ」

スタスタスタ

律「あ」ピタッ

澪「え?」ピタッ

律「澪、あれ梓じゃないか?」

澪「あ、本当だ……隣にいるの、外人かな?」

律「にしてもすっごいごついおっちゃんだな。来いよべネット!みたいな」

バタム ブロロロロロ

澪「車乗ってっちゃったな」

律「梓のヤツ、こんなとこで何やってたんだろ」

紬「ひょっとして……何か悪いことしてるんじゃ?」

澪「わっ!ムギ!?」ビクッ

律「なんでここに!?」ビクッ

紬「カップ焼きそばを買いにきたのよ
」ニコ

澪「あ、そう……」

紬「梓くん、洋楽アーティスト好きだし、洋楽にずっと慣れ親しんでるじゃない」

紬「だから手をだしてもおかしくないわ」

律「何を?」

紬「ミュージシャン、特に海外のミュージシャンに付き物のスキャンダル」

澪「まさか……」

紬「ええ」

紬「ドラッグよ」

休日明け 放課後

唯「そんなわけないよね!あずにゃんがお薬なんかやってないよね!ね!」ガシッ

澪「いや、わからないぞ……外人の車に乗ってどこかに行ったのは確かなんだ」

律「そいや、あの時の外人の車、変なナンバーだったよな?」

澪「え?」

律「いや、平仮名のところに『Y』って書いてあったんだよ」

紬「それって米軍ナンバーよ」

澪律唯「米軍っ!?」

紬「米軍なら麻酔用のモルヒネとか、戦闘時に使う覚醒剤とか、そういうのがあってもおかしくはないはずだし……覚醒剤中毒になった人だっているはずだし」

梓「ちわーす」ガチャ

唯澪律紬「!」

梓「ん?今日は珍しくお茶してないんスね」

唯「あずにゃん!」ガシッ

梓「え?」

唯「嘘だっていってよあずにゃんっ!」ボロボロ

梓「はぁ?」

律「そうだぞっ!梓!」

律「クスリなんかやめろっ!梓!」

梓「え?クスリ?なんの事?」

澪「とぼけるのか?見損なったぞ!」

梓「いや、マジで何のこと話してるのかわからないんすけど」

紬「全部知ってるのよ!昨日の夕方、梓くんが外人からクスリを買ってたこと!」

梓「……はぁ。こりゃ一から説明しなきゃな」

澪「つまりあの外人は梓のお父さんの知り合いのアメリカ海軍少佐で」

律「その人のジャズバンドのギタリストが基地の公開の演奏を前に急に本国に帰ったから、その埋め合わせに梓がギターを弾くことになって」

紬「それで昨日の夕方のは貸しスタジオに行く途中だったわけね」

唯「わたしは信じてたよあずにゃん!」ダキッ

梓「だから抱きつかないでください!いい加減セクハラですよ!」

梓「ったく。誰ですか最初に麻薬とか変なこと言い出したのは!」

梓「麻薬売りさばくアメリカ兵なんて今時居るわけがないでしょ!むかしのハードボイルドの観すぎです!」

紬「さあ、誰だったかしら?」

澪律「(お前だお前)」

梓「ま、説明する手間が省けましたけど」
唯「ほえ?何の?」

梓「例の海軍少佐に軽音部のこと話したら、次の厚木公開でぜひワンステージやれって……」

澪「え?それって」

律「初オファーってこと?」

紬「しかも相手はアメリカ人……」

唯「わたしたち国際デビュー!?」

梓「(……この様子だと、受けそうだな)」

梓「(センパイ達を内緒でダシに使うのは悪いけど、口軽いからな。特に唯センパイに知られたら一貫の終わりだしさしたい)

数週間後 厚木基地

律「おお……ここが……」

澪「厚木基地……」

外人「HAHAHAHAHA」

唯「凄い!外人だよ!」パタパタ

紬「見て!こんなにおっきなピザが売ってるわ!」シュバッ

梓「あんまはしゃがないで下さいよ……」

律「おい見ろ!戦闘機だぞ!」

梓「ああ、ゲートガードのF-14っすね……トップガンに出てたヤツっスよ」

紬「唯ちゃん!澪ちゃん!エリザベス持ってその前に立ってみて!写真撮るから!」スチャッ

澪「あ……うん」

澪「こう?」スチャッ

紬「いいわっ!凄いいい!」カシャカシャ

紬「澪ちゃんと戦闘機のコントラストがとてもいい!」

梓「(確かに……今日の澪センパイの服装はなんとなくF-14と合うかも……)」

外人「……?」スッ

外人「Oh,Cool!」

ワイワイガヤガヤ What? Very Coool!! Kawaii!!

澪「なっ……なんだぁ!?外人がいっぱい集まってきてるぞ!?」

梓「ジャパンクール的な何かと思われてるんでしょうね……」

律「カワイイって本当に世界共通語なんだ……」

唯「澪ちゃんすごいよ!国際デビューだよ!」

カシャカシャカシャカシャカシャカシャ

澪「ちょっと待ってぇぇぇ……」

少佐『ようアズサ』ポンポン

梓『こんちは、メイジャー』

少佐『あの子たちかい?期待のガールズバンドってのは?』

澪「そ、そろそろやめて下さいぃぃ」

カシャカシャカシャ

梓『ええ。F-14の前でポーズ付けたらいつの間にかああなってました』

梓『っつーか、あれ大半は米軍さんなんじゃないスか?』

少佐『みたいだな……全く』

梓『カワイイは相当知れ渡ってるみたいっすね。噂じゃアキハバラに繰り出す連中もいるらしいですし』

少佐『その通りみたいだな……』

梓『……ところで、アレは?』

少佐『大丈夫だ、きちんと用意してあるぜ』

少佐『帰りには渡せるさ』

梓『オーライ、サンキューですよ』

少佐『そのかわり演奏は頼むぜ、アズサ』


唯「あ、あずにゃ~ん!」

梓「!!」ビクッ

梓「……どうかしましたか?」

唯「今の人が少佐さん?何話してたの?」

梓「ちょっとリハの話っすよ」

梓「(……この人にだけは悟られないようにしないとな)」

ワーワーワーワーワー

澪「……凄い人だな」

律「軽く学祭の時と同じくらいはいるな」

唯「あ、歌詞日本語のままだけどわかるかな?」

梓「在日米軍っすから。日本語は多少はわかりますよ」

梓「それにわかんなくたって雰囲気で楽しめるでしょ」

律「あたしらが洋楽聞くのの逆か」

紬「そうなるわね」

ワーワーワーワーワー

梓「っと、そろそろ出番っすね」

律「おっし、みんないくぞぉーっ!」

全員「おーーっ!!」

ワーワーワーワーワー

唯「どうも、放課後ティータイムですっ!」

ヒューヒュー oh cool girl!! yeaaahhh!!

澪「凄い……人……外人……」

律「(まずい、澪が緊張しかかってるな)」

唯「えっと、わたしたちがここのステージに立ってるのは、あずにゃんが……あ、あずにゃんって言うのは」

梓「(唯センパイ!曲紹介行ってください!)」

唯「あ、えっと!それでは最初の曲行きます!」

唯「Go!Go!Maniac!」

律「終わってみたら、大盛況だったな」

澪「外人……盛り上がって……」ブルブル

律「盛り上がりすぎて澪が未だに震えてるけど」

紬「りっちゃーん。ピザ買ってきたわよー」

律「おお、サンキュ」

律「ってでかいなオイ!」

紬「アメリカンサイズだからね?」

唯「りっちゃんりっちゃん!こんなワッペン売ってたよ!」タタタッ

律「おー!フェリックスのワッペンじゃん!」

唯「ギー太のカバーに付けるんだー♪」

紬「あ、そろそろ梓くんのステージ始まったわよ」


♪?

澪「うん、なんと言うか」

紬「凄いわね」

律「これ本当にアマチュアなのか?」

唯「あのあずにゃんが付いていってるのに精一杯だよ……」

かえり!

梓「そんじゃ、皆さんお疲れさんでした」

律「おー!お疲れー!」

唯「あずにゃん!一緒にかえろ!」

梓「あ、俺少し野暮用がありますんで、先帰っててください」

澪「野暮用?」

梓「……大したことじゃないっすから。ほら、シャトルバス行っちゃいますってば!」

紬「怪しい……」

梓「怪しくないっすから!」アセッ

唯「あずにゃん!本当はやっぱりお薬とか」

梓「違いますってば!」

少佐『よう、賑やかだな。アズサ』

梓「げ、メイジャー」

少佐『ほら、今日の駄賃だぜ』ヒョイ

梓「あ、ああ。サンキュー」

少佐『じゃ、親父さんに宜しく言っといてくれよ。暫くしたらそっちにも顔出すってさ』

梓『わ、わかったよ』

スタスタスタ

澪「……これを隠したかったのか」

梓「……はい」

律「これなんだ?ギター?」

梓「……見ます?」

澪「いいのか?」

梓「どうせばれたようなもんですから」


シュルル

唯「あ、これって……」

梓「そうっすよ」

梓「レスポール・スタンダードの59年型ティーバースト。80年代に再生産された品っすけどね」

梓「早い話がギー太の兄弟機っス」

梓「あの少佐がこいつ売るって言うから、それなら俺がもらうって話しになって」

紬「でもなんでまた、梓くんはムスタングがあるのに」

梓「……来週、憂の誕生日ですから」

梓「ギター教えるとき、いつも俺のムスタングやギー太使うわけにもいかないし。それならギターをプレゼントしようかなって」

梓「それでどうしようかって思ったときにギター譲り受けるって話になったんですよ」

律「で、なんで秘密にしてたんだ?」

梓「一番秘密にしておいて欲しい唯センパイが、いっちばん口軽そうなんで」

澪「ああ」

紬「なるほどね」

律「それなら理解できるな」

梓「でしょ」

唯「ひどっ!」

ある土曜日

アイタカッタゾ ガンダムゥゥゥゥ!! フラッグ!?

梓「……そろそろ終わるな、この再放送も」

梓「またギターでもいじるかね……えっとウォークマンウォークマン……」ガサガサ

梓「あれ?ウォークマン無いな……」ガサガサ

ウチオトッセッナーイ

梓「部室に忘れてきたのかな……没収されるのもやだし、取りに行くか」


学校

梓「あれ?」

♪~

梓「誰かギター弾いてるな」

梓「ジャズ研の連中かねえ」トットットッ

♪~

梓「と思ったら、音の出処ウチの部室か」

ガチャ

唯「あれ?あずにゃん。どうしたの?」

梓「そりゃこっちのセリフですよ」

梓「なんで休日に一人で部室でギター弾いてるんですか?」

唯「あ、これ?」

唯「自主練自主練」ニヒヒ

唯「もしかしてこれ、あずにゃんの?」ヒョイッ

梓「あ、俺のウォークマン」

唯「そうか、じゃあこれを取りに来たんだね~」

梓「そうですよ……」

♪~

梓「しっかし、唯センパイもなんでここでわざわざ?」

唯「ん~、家だとやっぱりおっきな音出せないからね」ギャーン

唯「それにアンプはここにしか無いから、ここで練習するのが一番かなーって」ギャギャーン

唯「そろそろ先輩として頼られたいからね、わたしも!」フンス

梓「……」

梓「って言ってもあと一年しか無いでしょ」

唯「ああん、それ言っちゃダメだってばぁぁ……」

♪~

梓「(でも、まあ、凄い上達してってるよな。この人は)」

梓「(始めて二年目でここまで上手くなるのも凄いかもな)」

唯「ふひー……ちかれたぁ……」

梓「お茶淹れますか?」

唯「え?いいの?」

梓「いいっすよ。ムギセンパイほどの腕は期待しないほうがいいですけど」

始業式の日

憂「おはよ!純ちゃん、梓くん!」

梓「」ゲッソリ

純「」ゲッソリ

憂「二人ともどうしたの?」

梓「むっちゃ眠い……」

純「梓は昨日何してた?」

梓「全然寝れなくて、三時までワンセグ見てた……」

純「あたしも寝付けなくて昔のマンガ読み返してたわ……」

憂「二人とも春休み中に夜更かし癖つけるからだよっ!」メッ!


純「そいやさ、軽音部がアメリカ軍の基地でライブしたってホント?」

梓「本当だよ」

梓「最初はアメリカ人に伝わるように、演奏曲の歌詞全部英語にしようって話になったんだけどさ」

梓「訳が間に合わないのと、ボーカル二人の口が回らないので、日本語で演っちゃったんだよ。結局」

梓「それでも凄いウケてたからいいんだけど……」

憂「日本人が英語の歌聞くような感じなんだろうね」

梓「だろうな」

純「で、そこで貰ったギターを憂の誕生日プレゼントに送ったんでしょ?」

憂「うん!」

梓「おい鈴木っ!なんでそれをっ!」

純「憂経由で全部聞かせてもらいました♪」

梓「…………やっぱりか」

憂「ほら、これ!ギー子!」ピッピッ

純「唯センパイのヤツの兄弟機なんだっけ?」

梓「そうだけどさ。ってかそんな名前つけたのかよ……」

憂「付けたのはお姉ちゃんです!」フンス

梓「(安直すぎるネーミングだと思ったら、やっぱあの人の命名かよ)」

憂「でもギー子が来てから一人でも練習できるようになったし、お姉ちゃんとセッションもできるようになったんだよ!」

憂「ほんとにありがとう!梓くん!」

梓「」カアアアアア

純「(あ。梓がオーバーヒートしてる)」


ワーワーワー

純「クラス替えどうなってるのかな?」

憂「また三人一緒のクラスがいいよね」

梓「(どうだか。去年澪センパイだけ別のクラスだったなんてこともあったみたいだし)」

梓「(俺だけ別のクラスになってたりしてな)」

梓「(それだとホッとする反面、哀しいけどな……)」

純「あっ!2組、鈴木純、平沢憂、中野梓、全部揃ってるよ!」

憂「やったね!また一緒だよ梓くん!」ギュー

梓「いやそうだけど抱きつくな!抱きつくな!」カアアアアア

梓「(この姉妹の抱きつき癖はどうにかならんのかっ!)」

純「(面白そうだからもうちょっと見ていよう)」ニコニコ

♪~~

唯「…………スゥ」

ギャンギャンギャンギャンギャンーーーーーン!!

唯「…………」

唯「うん!」

ガチャ

和「ちょっとお邪魔していいかしら」

唯「あ!和ちゃん!」

和「今の演奏、唯の?」

唯「うん、そうだよ」

和「随分上手になったんじゃない?」

唯「そうかなぁ?あんまり実感わかないんだけど」

和「ところで、新歓の件で来たんだけど……他のみんなはどこ?」

唯「ムギちゃんは日直だよ、あとのみんなはあそこにいるんだけどね……」

律澪梓「」グー……

唯「みんなここ来てからあんな感じで寝ちゃってて」

和「……まさか休みボケが澪や梓くんにまで広がってるなんて、思ってもなかったわ」

梓「……新歓ライブ前の大事な時期だというのに」

律「十分かそこら軽く休むつもりが」

澪「まさか夕方まで寝てしまうとは……」

紬「普段は唯ちゃんが寝てるんだけど、今回は逆になっちゃったわね」

唯「だね」

澪「……仕方ないから、今からでも演るか?」

律「……だな」

梓「明日朝練しますか?」

紬「そうしましょう。みんなが起きられるなら」

梓「う」ザクッ

唯「それなら目覚ましセットしなおしとかなきゃ……」

律「じゃ、ホッチキスから行くぞー」

律「ワンツースリーフォー!」

新歓当日 講堂

ワーワーワーワー

唯「どうも!軽音部です!」

梓「毎度毎度思うんですが、律センパイ」

律「なんだ?梓」

梓「MCって本来部長がやるべきなんじゃないですかね?」

律「……あたし大勢の前で話すの苦手なんだよね。澪ほどじゃないけど」

梓「ああ、そうだったんですか」

唯「それじゃあ聞いてください!」

唯「私の恋はホッチキス!」

♪??

梓「(唯センパイのギター、俺が思ってたより随分上達してる……)」

梓「(ところどころで俺の即興に返してくれてるし……)」

梓「(澪センパイも、律センパイも、麦センパイも)」

梓「(俺の即興弾きしそうなところで待ってくれて、応えてくれてる)」

梓「(これって、俺が軽音部に馴染んだってことなのかな)」

「ららまたあしたー♪」

♪??

ワーワーワーワーワーワーワーワー


唯「あんだけ盛り上がったのに」

律「入部希望者こないなー」

澪「何か……いけなかったのかな?」

梓「さあ」

梓「(俺らの演奏の息が合いすぎてたのを遠慮したとか?)」

梓「(……んなわけないか)」

紬「お茶が入ったわよー」

唯「待ってました!」


澪「しかし、私たち卒業したら軽音部って梓一人になるんじゃないか?」

梓「っすね」ズズー

紬「大丈夫?」

梓「まあ、なんとかしますよ」

梓「センパイらだって、部員ゼロ人から始めたって言うじゃないスか」

澪「あれはかなり運が良かったからな……」

紬「そうね……最初から軽音部を目指してたのって、律ちゃんだけだったし」

律「澪は文芸部で、ムギは合唱部希望だったもんな」

梓「え?唯センパイは?」

律「ああ、唯はニートしてた」

唯「確かにそうだからってあんまりだよりっちゃん!!」

梓「(まあ、最悪憂を引っ張ってきて、一人埋めるという手もあるからな)」



梓「部室の片付け、っすか?」

律「そうなんだよ、梓ぁ」ゴソゴソ

澪「三年間も使ってるとどうしても物が溜まるからな」

澪「これを機に片付けろ。ってさわ子先生に言われて」ゴソゴソ

紬「梓くんも自分の私物があったら持ち帰ってね」ゴソゴソ

梓「いぇっさ」

梓「って、なんだかこの界隈に私物が集中してるような……」

唯「あずにゃああん、これ全部持って帰るとか無理だよおおお」ポロポロ

梓「……手伝いませんからね。俺は」


梓「……だんだん昔の部員の残したものが混じってきましたね」

律「見ろ!漱石落ちてたぞ漱石!」ヒラヒラ

澪「動物占いって、懐かしいなぁ……」パラパラ

唯「見て!扇風機置いてある!」バンバン

紬「賞味期限は平成14年8月22日……なんかすごい濁ってるわね。この午後ティー」ジイイイ

梓「カオスさを増すなぁ……」ゴソゴソ

梓「(ん?これって……)」ゴソゴソ

梓「(ポータブルのレコードプレイヤー?)」

梓「(……欲しいけど、これ誰のだかわからないからな……)」

唯「わ!ギター出てきた!」

梓「え?」

さわ子「あら?どうしたの?」

澪「先生、掃除中に古いギターが出てきて……」

さわ子「あら、懐かしいわね。これ私が使ってたやつよ」

梓「そうなんスか?元軽音部とは聞いてましたが」

梓「(ついでにデーモン閣下顔負けのデスメタルバンドの首魁とも聞いてましたが)」

さわ子「そうよ。こっちは貰い物で、あんまり使ってなかったけど」

澪「じゃあ、これ持って帰りますか?」

さわ子「ええ、それじゃ……」

さわ子「(と言っても使わないだろうし、あとで楽器屋に売りに出そうかしら……)」

梓「あ、すいません。他にも色々使えそうな昔のセンパイの私物出てきてるんですけど」

さわ子「ああ。全部処分するか持って帰るかしていいわよ」

梓「え?」

さわ子「どうせ誰のだかわからない上に、残した本人も忘れてるんだから、全部一緒に処分しちゃって構わないわ」

梓「はぁ……」


レーイラァー

梓「で、持って帰ってきちゃったんだよな。このポータブルレコードプレイヤー」

梓「音相当籠ってるけど、これはこれで味があってなかなか」

部室

ガチャ

律「おりょ、まだ誰も来てないのか?」

律「……いや、ムスタングと鞄があるから梓が来てたか。今はいないみたいだけど」

律「にしてもギター放り出したままどこ行ったんだろうなあ」チラッ

律「…………」

律「ちょっとくらい、いいかな?」


梓「ったく鈴木め。宿泊学習の予定決めてなかったとかふざけるなっつの」ブツブツ

梓「そりゃ気づかなかった俺も俺だけど」ブツブツ

ガチャ

律「あ」テンケテンケテンテンテンテンテンテンテン

梓「あ」

梓「……なんで俺のギターで禁じられた遊び弾いてるんですか」

律「つい、なんとなく?いっつもドラムばっかりだと飽きてくるし」

梓「はぁ……」

梓「てかギター弾けたんスね。律センパイ」

律「音楽の授業で習ってるからな」

律「実質これとスカボローフェアしか弾けないけど」

梓「なるほどです」

律「そいや、梓は好きなアーティスト誰だっけ」テンケテンケテンテンテンテンテンテンテン

梓「ポール・マッカートニーかジミー・ペイジっすね」

梓「あとウェザーリポートとか、邦楽だとポルノとヒロトとマーシーの二人とかも好きっす」

律「なるほどなー」

梓「そう言う律センパイは?」

律「あたしはキース・ムーンだわ」

梓「The Whoのですか」

律「そ」

律「中学の頃さ、澪とThe WhoのDVD見ながら、あたしら絶対あんなバンド組もうって言ったりしてさ」

律「それで今ホントにバンド組んじゃってるの」ニヒヒ

梓「そうだったんスか」

律「まあ、メンバーが若干多いんだけどな。ジミー・ペイジが一人分」

梓「いいじゃないスか。本物のジミーはキースとのセッション、気に入ってたらしいですし」


教室
梓「今日からセンパイ達は京都か……」

梓「俺一人部室にいてもしゃあないし、帰って自主連するか……」

純「そいや梓んとこ、センパイ達ごっそりいなくなったもんね」

梓「まーな」

純「ジャズ研もメインのセンパイ達いなくなって、今日からどうしよかってなってさー」

純「教師役のセンパイもいないし、あたし教えるの下手だしで、暇なら梓も手伝ってくれる?」

純「梓教えるの上手だし、それにこっちも都合つくからさ」

梓「オッケ。その代わり明日の昼飯、カツサンドとジンジャーエール奢れよ」

純「ほいきた」

純「で、さ」

梓「おう」

純「あそこで白くなってる子、どうにかしないとね」

憂「」

梓「お姉ちゃんラヴ病の末期症状だからなあ」

梓「唯センパイがたかが二日三日いなくなっただけでアレなら、一人立ちとかしたらどうするんだろ」

純「そこはあんたが色々慰めてあげるとか」

純「そう、色々と」

梓「冗談じゃなくてもぶっ飛ばすぞ」



憂「」ポロポロ

純「あ、あのさ!今日憂の家泊まりに行ってもいいかな!」

憂「え?」ピタッ

純「ほら!二人なら寂しくないでしょ!?」

憂「う、うん」

憂「ありがと、純ちゃん」

梓「(ナイス純)」

梓「(流石に俺じゃ、女の子と二人きりは無理だからなあ)」

純「うん、泊まりにいくよ!梓が!」

梓「って待てオイ!」

純「え?何?」

梓「なんで俺がなんだよ!」

純「なんでだろうねえ?」スットボケ

梓「無理あるだろ!女の子二人のいる家にヤロー放り込むとか、無防備にもほどがあるだろ!」

純「いや、ウチさ。結構そゆとこ厳しいから」

梓「じゃ最初っから言うなよ!」

憂「え?梓くん来てくれないの?」

梓「行けねえよ!どう考えても行ったら犯罪だよ!」

憂「うう……」ウルッ

梓「……」

梓「わあったよ!わあったから!寝るまでいるだけならいいから!」

平沢邸

憂「美味しいね、このナポリタン」

梓「そうだな」

梓「(てかウチの母さんのより全然美味いよ……)」

梓「(憂はぜったいいい嫁さんなれるな……)」

憂「ジャズ研の練習も面白かったよね」

梓「俺は疲れたけどな」

憂「ずっと教えっきりだったもんね」

梓「まーな。結構飲み込み良くて助かったけど」

梓「……ついでに秋山澪ファンクラブや中野梓ファンクラブなんてもんの存在も知ったわ」

憂「だってかっこいいもん、梓くん」

梓「そんな事ねえって。世の中にはもっといい男死ぬほどいるっての」

憂「……わたしは、かっこいいって思ってるよ」

梓「だから……」

憂「去年のソロギター弾いてる梓くん、すごいかっこよかった」

憂「ギター教えてくれる梓くんもすごいかっこいい」

梓「……」

憂「梓くん、自信持つべきだよ」

梓「そう、か?」


憂「じゃあおやすみ、梓くん」

梓「おー、また明日学校でな」


梓「(あんな真剣な憂の顔、初めて見たな)」

梓「(しかも、唯センパイの事でなく、俺の事でとか)」

梓「(……なんか調子狂うな)」

アイバッキンザユーエスエスアー

梓「ん?メール?」

梓「誰だよ、こんな時間に……律センパイか」

梓「しゃれこうべ…………って何なんだ?」

部室

唯「進路相談って、何て書けばいいのさぁ」ペンクルクル

律「だよなぁ……」ペンクルクル

梓「……まーた進路相談用紙突っ返されたんですか?」

澪「そうみたいだな」

紬「今度はなんて書いたの?」

唯「これ……」

澪紬梓「……」

第一希望:ミュージシャン

澪梓「これは突っ返されて当たり前だろ」

唯「ひどっ!」


紬「漠然とした大学でいいから書いてみたら?」

律「思い浮かばないってば、そんなの」

唯「漠然と……」カリカリ

梓「って言われて、適当に思い浮かんだ大学名をそのまま書いてもダメですからね」

唯「何故それを!?」

梓「身の丈合わない有名私立大の名前を書こうとしてるの見たら、誰だってわかりますよ」

紬「昔の将来の夢を思い出してみるとか」

唯「あ、それなら幼稚園の先生とか!」

唯「よし決めた!それにしよう!」

澪「それじゃあ、教育大とかどうだ?唯ならギリギリ入れるかもしれないぞ」

唯「そうしてみる!教育大……っと」カキカキ

律「そういや、梓は大学決めてるのか?」

梓「決めてますよ、XX大」

紬「そんな有名大狙ってるの?梓くん」

梓「入試に数学が無いし、英語の配点結構大きいらしいんで。進路指導のセンセに勧められて」

澪「なるほど……英語得意だもんな、梓」

梓「……ちなみに憂はさらに上の大学勧められたらしいですけどね」ヘッ

律「……それは、まあ、しゃーない」

平沢邸

ジャーーーン

梓「……」

憂「どうかな?」

梓「俺よりうまくなってないか?憂」

憂「そんなことないよぉ」

梓「(期末の試験勉強の前に、まさかギターの練習するなんてな……)」

梓「(期末の次の日、商店街のかくし芸大会で唯センパイと憂がギターやるなんて言われてもさぁ……)」

梓「(まー憂の学力なら期末はなんとかなるだろうけど、なんにせよ唐突すぎんだよな……)」

憂「でもよく見つけてくれたよね、この曲」

梓「商店街の年寄りに受けそうで、ギター二本で弾ける曲と言われたら、昔アレンジ譜面書いたこの曲ぐらいしか浮かばなかったからな」

梓「ほんっと、こいつはポール最高の曲だよ」

憂「ね」

梓「なんだ?」

憂「かくし芸大会、来てくれる……かな?」

梓「……もちろん行くに決まってんだろ」

かくし芸大会 会場

澪「唯と憂ちゃんが演奏するのか……なんか他人事ながら緊張するな」

紬「ところで、何を弾くの」

梓「『ヘイ・ジュード』っす」

律「なるほど、ポール=マッカートニーって事は梓の入れ知恵か」キラーン

梓「……余計なことを」チッ

パチパチパチパチパチ

唯「どうもこんにちわ、平沢唯と」

憂「平沢憂です」

憂「今日はみなさんに、わたしの大好きな人が好きな、懐かしいあの曲を送りたいと思います」

梓「」カアアアアアアッ

澪「(梓がオーバーヒートしてる……)」

憂「……」ジャラーン

唯「へーいじゅー……♪」ジャララーン

律「……発音やべえな」

紬「唯ちゃんの歌声は舌っ足らずっぽいのが魅力だから、むしろ発音はこのくらいがいいんんじゃないの?」

紬「ねえ、梓くん」

梓「」カアアアアアアッ

律「ああ、こりゃしばらく話せないかもな」

教室

梓「……」ペラペラ

梓「(……NYかぁ、行きてえなぁ)」

梓「(ぜひともライブハウス回りまくってみたいもんだわ)」

純「あずさぁ、何読んでるわけ?」ヒョイ

純「……地球の歩き方、ニューヨーク……またすごい本を」

梓「文化祭の模擬店の参考資料だよ……ホットドック屋の細かい内装任されちまったからな」

純「あ、そういやそうだったもんね」

梓「とりあえずあと二日で内装案上げないと進行状況やべーって急かされてるからな。俺も必死なの」

純「そーいや、結構準備遅れてるもんねー。うちの模擬店……」


憂「梓くん、純ちゃん、一緒にご飯食べよ?」ヒョイ

純「おぉ!もうそんな時間か」

梓「昼飯かぁ……」

梓「やべ、朝購買でパン買ってくんの忘れた」

純「あんた今日も購買?」

梓「うっせえ。弁当作れるほど料理スキルねえんだよ」

梓「二人共、今からダッシュでパン買ってくるからちょっと待っててな!」ダッ

ダダダダッ

梓「しっかし、改めて感じるが、どこのクラスも気合入ってんな……」

梓「2週間前なのにもうこんなに準備してるって、中学の時の学祭とは大違いだわ……」

梓「この気合の入れ方、ぜひ軽音部にも分けて欲しいとこだ……」ダダダッ

ガパンッ

梓「え?」

梓「バケツ……?」グラッ

ガゴゴゴゴゴゴドンガラガッシャアアアアアアンン!!!


ピーーポーーピーーポーー

病院

澪「しかし、災難だったな。梓も」

律「バケツに足引っ掻けて階段から転げ落ちて両足複雑骨折だっけ?」

梓「全くですよ。Anotherなら死んでましたわ」

紬「でも一ヶ月は入院なんでしょ?」

梓「すいません。本番前にこんな迷惑かけちゃって」

唯「偶然の事故なんだからあずにゃんは全然悪くないってば」

梓「今回、ひょっとしたらセンパイ達四人だけの演奏になるかもしれませんし……」

梓「肝心なとこで役たたなくてすいませんね」シュン

唯「あずにゃんはむしろ今まで頑張ってきたんだから、そんなこと言わないで」

律「そうだぞ、梓」

律「今回くらい、あたし達に良いとこ見させてくれよな♪」

梓「…………」クスッ

梓「じゃあ、お願いしますよ。センパイ」



紬「あ、そうだ。梓くん、なにか持ってきてほしいものある?」

梓「え?」

紬「暇潰しの道具ぐらいないと、そのうち病院にいるのが苦痛になってくるわよ」

梓「……それじゃ、俺の鞄とムスタング頼みます。どっちも教室なんで」

紬「了解したわ」ニコ

ワハハハハハハハ

梓「昼間の再放送バラエティなんて見ててもなぁ……しかもこれ前に憂の家で見たやつだし」

梓「ムギセンパイの言った通りだけど、やる事ねえんだよなあ……」

相部屋の患者「……」トントントン

梓「(隣のオッサンも結構辛抱足らねーみたいだな)」

梓「(あっちも右足の複雑骨折みてーだけど)」

ガララ

お見舞いの少女「お父さーん」

梓「(ん?)」

梓「(うさぎ山の制服……隣のオッサンの見舞い客か?)」

お見舞いの少女「どう?どんな感じ?」

相部屋の患者「どうもこうもあるか。体が鈍ってしょうがないに決まってるだろ」

相部屋の患者「それより店は?」

お見舞いの少女「おじーちゃんが切り盛りしてるし、もち蔵も手伝いに来てくれてるから大丈夫だよ♪」

相部屋の患者「なんだとぉ!!たまこ!そりゃどういう事だ!」ガバッ

梓「(おお……オッサンが立った……)」

たまこ「駄目だよ!安静にしてなきゃ!」

相部屋の患者「ぬうぅ……」

梓「(唯センパイに似てると思いきや、意外にしっかりしてるな。この人)」

たまこ「じゃあそろそろ帰るね。お父さん」

相部屋の患者「おう。気ィつけて帰れよ」

たまこ「あ。忘れてた」

たまこ「これ、お土産ね」ホイッ

相部屋の患者「おう」

たまこ「??♪」イソイソ

たまこ「……あ」

梓「……あ。どうも」

たまこ「お父さんの相部屋の人?」

梓「あ、はい。昨日から」

たまこ「そうなんだ。それじゃあお近づきの印に……」

たまこ「食べてってよ、つきたてのおもち」ニコ


梓「っと」シャッシャッシャッシャ

梓「内装案はこれで上がりかな?」

ガラララ

純「梓ぁ、生きてる?」

梓「当たり前だ。早々死んでたまるか」

梓「おら、内装案。今上がったとこだ」

純「オッケー、んじゃ明日にはクラスに届けるわ」

梓「……あれ?」

梓「おい鈴木、憂は?」

純「……ああ、それがね」

純「なんかタチ悪い風邪で休んでるんだって」

梓「タチ悪い風邪……」

純「……って言っても多分大したことないだろうから。それじゃね」

カラララ

梓「(……大丈夫か?)」

梓「(アイツ責任感強いし、唯センパイがアレだから、無理押して家事して倒れたりとか……)」

梓「……電話。いや、かえって迷惑か」ボソ

相部屋の患者「…………」

カラララ

澪「梓、会いに来たぞ」

梓「あ、どうも。センパイ達」

律「どうだ?退屈してるか?マンガ貸してやるぞ♪」

梓「ありがとうございます。あ、この前の返しますね」

梓「……あれ、唯センパイは?」

紬「ああ。唯ちゃんは……」

澪「…………憂ちゃんが倒れて、その看病にな」

梓「倒れたって……!」

律「昨日お見舞いに行ったら結構辛そうだったからな。だから大事とってってことで……」

梓「……何にも知らなかったのは、俺だけってことかよ」

澪「梓は学校にいなかったから、仕方ないよ」

梓「仕方なくなんか、無いっすよ」

梓「憂が一番辛いときに、俺は何やってるんだよ……!」

紬「梓くん……」

律「それじゃあな。梓」

カララララ

梓「……ったく、なんなんだよ。俺は」

梓「肝心なときに骨折なんて下らない理由で、何にもできないなんて……!」

梓「ちっくしょ…………!」ドン!

相部屋の患者「…………」

相部屋の患者「おい、隣のボウズ」

梓「え?」

相部屋の患者「こっちはお前の愚痴なんか聞きたくねえんだ。そんなに心配なら電話でもかけて来い」

梓「……迷惑なだけですよ。風邪ひいてる中で電話なんて」

相部屋の患者「バカかお前は」

相部屋の患者「お前らの話聞いてる限りじゃ、そいつはお前の電話を迷惑がったりしねえよ」

相部屋の患者「むしろ心のどっかで待ってると思うぞ。お前の声を」

梓「…………」

梓「ありがとうございます」コク

カチカチッ

看護師『はいナースステーション』

梓「すいません。電話かけたいんですけど……車イスお願いできますか?」

看護師『少々お待ちくださいね……』

梓「顔に似合わず結構詩人っすね、北白川さん」

北白川「余計なお世話だ」


病院ロビー
梓「携帯の充電……6%しかねえじゃん」

梓「生徒手帳にテレカ仕込んどいて本当によかったな……」

カラカラ

梓「そういや、公衆電話使うのなんて久しぶりだな」

カチカチカチ

PRRRRRRRRR

PRRRRRRRRR

憂『はい……平沢憂です……』ゴホゴホ

梓「憂、大丈夫か?」

憂『梓……くん……?』

梓「風邪引いてるって聞いたから心配なって電話したんだけど……」

憂『うん……』

憂『あんまり、大丈夫じゃないかも……』

梓「あんまり無茶なことするなよ?俺は何にもできないけど、少しは回りに甘えてもいいんだからな?」

梓「唯センパイだってああ見えてやるときはやるんだし……」

憂『……ふふっ』

梓「え?」

憂『梓くん、お姉ちゃんと同じこと言ってる』

梓「同じことって……」

憂『昨日お姉ちゃんを手伝おうとしたら……憂はもっとわたしの事頼りなさい。って、すごい怒られちゃった』

梓「あのなあ……」

梓「唯センパイが本気で怒るなんて相当なことだぞ?」

梓「俺も本気で怒ったの、1回しか見たこと無いんだから」

憂『うん……』

憂『梓くん……』

梓「なんだ?」

憂『梓くんと話したら、少し元気出てきたかも』

憂『だから、もちょっと元気もらっていいかな?』

梓「もちろんだ。テレカ持つまで元気やるよ」


たまこ「あれ?相部屋の子は?」キョロキョロ

北白川「ロビーに電話かけに行った」

たまこ「そうなんだ……」

北白川「~~♪」

たまこ「あ、またその歌歌ってるんだ」

北白川「どっかの誰かのお陰で、思い出しちまったんだ、よ」

病室

憂「あーずさくんっ!」ギュッ

梓「だから抱きつくなって!まだ完治してないんだって!」バサッ

澪「ホント嘘みたいに治っちゃったな。憂ちゃん」

憂「はい。皆さんのお陰で……」

律「で……こっちは……」チラッ

律「……退院予定日は来月28日」

唯「学祭は来月20日から21日……」

唯「はぁ……」

梓「一番ため息吐きたいのはこっちです」ハァ

梓「こんなアホな怪我のせいで学祭リタイアなんて……」


唯「あ、そうだ」

唯「これあずにゃんに」スッ

梓「何スか?これ」

紬「新曲のリズムギター譜面よ。どっちも唯ちゃん作詞、私作曲の」

唯「そうなんだよ!」フンス

梓「新曲……ですか」

紬「き、っ、と、覚えていても損は無いと思うわ」ニコ

梓「……」

梓「はい、そうしときます」ニヤ

憂「?」


梓「そうだ。皆にも」カチャ

唯「これ……大福?」

梓「お隣さんのお見舞いの人がいっつもくれるんですけど、ちょっと量多くて」

梓「それで食べきれない分冷蔵庫にしまってたヤツなんです」

梓「こっち来るんでお茶会できなかったと思うから、これで埋め合わせてください」


カララララ

北白川「あれ、たまこがお前にやった大福だぞ」

北白川「確かに量が多いのは認めるがな」

梓「いいじゃないでか。オレ一人で食うより、ずっといいでしょ」

病院・患者ホール

梓「さて、自習練習いきますか」スチャ

梓「もし文化祭間に合わなくても、いつか弾くことにはなるだろうしな……どれ」ペラ

梓「ごはんはおかず……どんな曲だよ……」ペラ

梓「……絶対作詞唯センパイだな。これ」

梓「それともう1曲か……U

文化祭当日・軽音部部室

唯「結局退院間に合わなかったね。あずにゃん」

澪「練習はしてくれてたみたいだけどな……」

律「去年の梓みたいにイントロで繋いでも来れないかもだからなぁ」

律「しゃあない、梓の分まであたしらが盛り上げるしかないか……」

ガチャ

紬「最後のアンプ運び終わったわよー」ニッコリ

唯「お疲れ様ー、ムギちゃん」

澪「遅かったな」

紬「少し電話してから来たからね」ニコ

数十分後 病院
梓「今ごろ軽音部のステージかあ……」ピロピロ

梓「ケガさえなけりゃなぁ、憂にかっこいいとこ見せられたのに」ピロピロ

梓「あ、ちくしょ!そこでフィバるか普通!
?」ピロピロ

看護師「中野さん?面会の方ですよ」

梓「はい」

梓「(誰だろ、面会なんて……母さんか?)」


ガララ

?「失礼します」

梓「(せ……セバスチャン……!?)」

斎藤「私、琴吹家使用人の斎藤と申します」

梓「は、はい。宜しく」

斎藤「紬お嬢様のお願いにより、失礼ながら中野様を学校までお連れさせて頂きます」

斎藤「下に車を用意しております。直ぐにでも出発できますので、支度願います」

梓「支度って……何を……」

斎藤「紬お嬢様はギター一本でよろしいと伺いました」

梓「ギター一本で……って……」

講堂
唯「えーと、こんにちわ。軽音楽部です」

唯「今日はちょっとした事故で一人来れなくなってしまいましたが」

唯「精一杯頑張りたいと思います!」

唯「それでは、『私の恋はホッチキス』!」

♪~~

純「……やっぱさ」

憂「……うん」

純「なんか、物足りないね」

憂「だね……」

憂「梓くん……」

ワーワーワーワー

澪(なんか……さっきの、物足りなかったな)

律(梓のギターがないとなあ、一味足りないというか)

律(だよな、ムギ……)

紬(大丈夫、なんとかなるわ♪)ニッコリ

唯「それじゃあ、次の曲。『ごはんはおかず』、いきます!」



「ちょぉーーっと待ったぁぁぁぁーーーーー!」バアアアンッッ



唯律澪純憂「!?」



律「あれ何だ!? リムジン!? キャデラック!?」

唯「それに……あれ!」

紬「……やっと来たわね」ニコ


憂「やっぱり、来てくれたんだ……」

純「いや、それでも登場が派手すぎだって……あれじゃ映画だよ」


梓「遅れてすんません! みなさん!」

ガラガラガラガラ

斎藤「紬お嬢様。梓様をお連れいたしました」

紬「でかしたわ。斎藤」


梓「本当にすいませんでした。遅れて」

律「当たり前だ! それに登場が派手すぎるんだよ! お前はヒーローか!」

梓「それに関してもすいません!」

梓「でも、ヒーローは遅れてくるもんでしょう?」

澪「……だな」

澪「それじゃあやるぞ、ヒーロー」

梓「はいさ」スチャ

唯「あずにゃん! 行くよ!」

梓「行きますか! 唯センパイ!」

ジャジャジャジャーン
唯「ごーはんーはすーごいーよー♪」

梓「(改めて歌で聴くとすげー歌詞だな……)」

梓「(カレーうどん愛を歌にしたマーシーじゃないんだから……)」

唯「わたしぜんせは! かんさいじんっ!」

澪律紬「どないやねん!」

梓「ど……どないやねんっ!」

律「(どーした?梓。突っ込みにキレがないぞ?)」

梓「(なんで演奏にツッコミ力要求されるんですか)」ジャジャジャーン

律「(お前、いつからうちが真っ当なバンドだと勘違いしていた?)」

梓「(ああ……)」

ジャーーーン

澪「(次で、最後か……)」

紬「(そうね……)」

唯「次の曲、行きます!」

唯「『U&I』!」

梓「(U&I……か)」

~~~~数週間前・病室

梓「新曲、U&I……ね」ペラリ

梓「唯センパイの作詞か……」ペラリ

梓「……これって」ペラリ

梓「この歌詞、憂のことじゃねえか……」ペラリ

梓「唯センパイらしいな」

スチャ

梓「っし、練習しなきゃな」

梓「オレがミスったら、そりゃ格好つかねえよな」

梓「ヘッドホンとシールド、持ってきてもらってよかったな」スチャ

ペンペンペペン

北白川「……」


たまこ「おとーさーん、来たよー」ガララ

北白川「別に毎日来なくてもいいって言ったろ……」

ペンペンペンペン

たまこ「お隣さんも、こんにちわ」

梓「……」ペンペンペンペン

たまこ「あれ?」

北白川「今は取り込み中だ、話しかけない方がいいぞ」

たまこ「本当だ、すごい真剣な顔……」

北白川「男にはな、一生に何度か、絶対に格好つけなきゃいけない時ってのがあるんだよ」

北白川「そこの坊主は今な、それの練習中だよ」

たまこ「ふーん……」

たまこ「それじゃあ、お腹減ったらこの草餅食べてね」スッ

律「ワンツースリーフォー!」

梓「(車椅子ってのがちょっと笑えるけど……)」

梓「(今までで一番カッコつけなきゃな!)」チャキッ

ジャジャーーーーン!!

唯「きーみーがいないとなんにーもできなーいよ♪」

澪「(凄い……梓飛ばしてるな)」

律「(和を乱してもないのに、凄い印象に残るメロディだな)」

紬「(梓くんだけ特別アドリブ多めの譜面にして上げてよかったわ)」ニコ

紬「(まさかここまでになるとは思わなかったけど……ね)」

梓「(……まだ、まだ!)」ジャジャッジャーン



唯「だからーきみにー!つたえーなくちゃー!(凄い……)」

唯「ありーがーとーうぉー!(あずにゃん、張り切ってる!)」

梓「(よし、やるぞ!)」チャキッ

ギュイィィーーン!!

澪「(と、とんでもない速弾きだ……)」

紬「(リードを殺さないで、こんな複雑なリズムギターの旋律を完成させるなんて)」

梓「(……ここ考える時間だけはアホみたいにあったからな)」ギャギャギャァ!!

梓「(唯センパイ、悪いッスけど)」

梓「(この23秒間だけは、オレに下さい!)」ギュアァァァ!!


純「うわ、梓張り切り過ぎだって……周りドン引きだよ」

憂「だね」アハハ

憂「でもやっぱり、凄いよね。梓くん」

純「確かに凄いっちゃあ凄いけどね。あんなの弾ける執念みたいのはさ」

唯「きみの むねに とどくーかなー」

梓「(最初にオレに声をかけた時、実はお前のことがちょっと怖かった)」

唯「いまは じしん ないけーれどー」

梓「(その後もどんどんオレと距離を縮めてくるのも、正直恥ずかしかった)」

唯「わらわなーいでー どうかきいてー」

梓「(でも、お前を通じてオレは軽音部に馴染めたし、クラスにも溶け込めた)」

唯「おもいをうたにこめたーかーらー!」

梓「(そんでもって……お前のことが頭から離れなくなった)」

唯「ありーったけのー! ありがーとうー!」

梓「(百万人のために歌われたラブソングは、いくらでも弾いてやる)」

唯「うたにーのせてー! とどけーたいー!」

梓「(でも、多分、一人に向けたラブソングはこれっきりだ)」

唯「このきーもちはー! ずっとーずっとー! わすーれーなーいーよ!」

梓「(多分通じない気はするけどさ、これがお前への気持ちだ……っ!)」

唯「おもーいーよー」
梓「(思いよ……)」

唯「とーどけー!」
梓「(届けっ!)」

ジャンジャンジャンンジャーン!!!

唯「あ、あずにゃん、凄かったね……」

梓「センパイ」

梓「マイク、借りていいっすか?」ニヤ

唯「あ、うん……」スッ

梓「ありがとうございます!」

梓「……」スゥッ


梓「ういーーーーーっ!!」ィィィーーーーンッッ!!


唯澪「!?」ビクッ
律「おやおや、ついにですか」
紬「ついにですね」


梓「すきだぁぁぁーーーーっっ!!」


純「……何言ってんの、あいつ?」

憂「……」


憂「わたしもぉぉーーーっ!!!」


梓「……」

梓「……ふぅっ」ガクッ

唯「あ、あずにゃん!?」ビクゥッ!

澪「……緊張が解けたのか?」

律「さんざんカッコつけといて、この終わり方かよ」

紬「でも、この方が軽音部らしくていいじゃない」ニコ

澪「だな」

梓「(結局、この文化祭ライブ告白事件はその後数ヶ月以上にわたって話題に上がり、そして伝説となった)」

梓「(自分でやったこととはいえ、マジで恥ずかしくて文化祭から一週間は学校行きたくなかった)」

梓「(まあ、憂から最高の返事が聞けただけで十分良かったのだが)」


梓「(そんでもって、文化祭ライブを最後にセンパイがたは引退した)」

梓「(引退と言っても、他の部活のようにスッパリ来なくなるわけでもなく、あの人達はその後もずるずる部室に入り浸っていたのだけど)」

梓「(それでもセンパイがたは受験勉強、オレは定期試験や進路関係で、同じ部室にいながら確実に距離は離れていった)」


梓「(そして受験勉強も終わった頃、突然センパイがたが卒業旅行に行くと言い出したりもした)」

梓「(四泊五日のロンドン旅行。唯センパイは俺も誘ってくれたけど、まあ、俺は断った)」

梓「(当然だ。それは四人の卒業旅行であって、オレは部外者なわけだ)」

梓「(連れションじゃあるまいし、オレが行ったってどうにかなるわけでもない)」

梓「(ただ、その代わりに卒業ライブと称した屋上でのゲリラライブには存分に加わらせていただいた)」

梓「(多分あれがあのメンバーでの最高の演奏だったんじゃないかとさえ思えるほど、いい演奏だった)」

梓「(まさか、サプライズでオレ宛てに一曲送られるなんて、思ってもいなかったけど)」


梓「(そいでもって今日は、新学期一日目)」

純「おはよー、憂、英雄」

憂「おはよ!純ちゃん!」

梓「おはよ。いい加減その呼び方やめろ」

純「はいはーい……あ、梓」

純「例のもの、用意できたよ。後で渡すから」

梓「あいあい」

憂「本当にいいの?純ちゃん。ジャズ研やめちゃって……」

純「別に心配される程のことじゃないってば」

純「そりゃ未練はあるけどさ。軽音部だって今年憂入るとはいえ、人いなくてピンチじゃん」

純「いくらなんでも困ってる親友夫婦を見捨てることはしないよ」

憂「純ちゃん……ありがとっ!」ギュッ

純「あっはは、憂、苦しいってば……」

梓「……鈴木、あんがとな」

純「貸しに今度マックかなんか奢りなよ?梓ぁ」

梓「おっけ。覚えとく」

~~音楽室

憂「ふわふわたーいむっ!」ジャーーン!!


憂「いい感じになってきたんじゃないかな?」

梓「そうだな。手応えは凄いある」

梓「ドラムとキーボードが抜けたのがやっぱりまだ気になるのはあるけどな……」

純「それはどーしようもないからねぇ」

憂「あとツインボーカルじゃないのもちょっと何か変かも……」

純「だよねぇ。二人で歌ってこそのあの曲ってカンジだもんね」

純「てなわけで、梓。やっぱ歌えば?」

梓「男が歌ってて楽しいと思うか?あの歌詞」ヘッ

憂「わたしはいいと思うよ?」ニコ

梓「……ちょっと考えとく」

純「(うわ、ちょっろ)」

カチャ

??「あの……軽音部ってここでいいんですか?」

END

1年も長くお付き合いありがとうございました。
なんとなく憂梓モノが書きたかったので書き始めたこのSSですが、色々な事情ややる気の問題でここまで伸びてしまったこと申し訳ありませんでした。

内容もアニメ版の放課後ティータイムよりももっとドライな関係にしようかなと思い、わざとHTTの名前を出さなかったり、ロンドン旅行辞退など色々シチュを変えてみました。
多分このあずにゃんは自分の卒業旅行にNY行ってると思います。

今後ですが、IS2期の完結を祝って、以前書いたISSSの2期Verを書いてみようと思います。
こちらはできるだけ早期に終わらせたいと思っております。

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