ジャン「ミカサのビールじか飲みしたい」(56)

・死ネタ
・エレミカじゃない
・キャラ崩壊注意
・エロはない予定だけど高まったら入れる

納得出来る方だけ、読んでくれたら嬉しいです

「いた...」

手先に痛みを感じて、久しぶりに声をあげた。
ひび割れた指先を舐める。
唾液が染みて痛かった。

こんな小さな傷で苦しむなんて、あの頃は考えたこともなかった。



一日の大半を過ごすベッドは小さくて、寝苦しい。
ベットから3歩程の距離しかないところに、ほとんど入っていない小さな箪笥と使われない机。
私の世界はそれだけで、何もなかった。

そんな小さな世界の机の上にある、鍵のついた木箱。
鍵は捨てた。
そこに何が入っているか、私は知っている。
そこにあるだけで、拠り所になるもの。
でも、もう見たくなかった。
他の人にも見せたくなかった。

「よう」

そう言って、抱えていた袋を降ろした。
どすん、と音が鳴る。
それだけ重いものをここまで抱えて来た、ということ。

「適当に置いとくからな」

袋の中には、食べ物や生活用品が詰まっている。
それが箪笥やベットサイドに置かれていくのを見る。

「ほら」

手に持たされたのは焼き菓子だった。

「アルミンから手紙」

封筒を持たされる。
明日非番だから、また後でくる。
そう言って出ていった。

アルミン。
最初はアルミンだったのに、いつの間にか彼になっていた。

アルミンは兵団でも上の立場になったと聞いた。
アルミンはもともと凄く頭が良くて、強かった。
私は、何の力もない。
「 」の思い出から抜け出せない。
私はこうして、独りで死を迎えて、消え去る。

彼の背中を見送ってから、立ち上がって木箱に触れた。
ひび割れた指が痛かった。


×××××××××××××××××××

「お前も飲むか」

ジャンは、床に座ってお酒を飲んでいた。
いつもは何も言わないのに、珍しい。

「いらない」

返事をしたら、驚いたみたいだった。

「じっと見てただろ。気が変わるかもしれねえし、ほら」

少しだけ入ったグラスを持たされる。
ジャンが、「おつかれ」と言って、私のグラスに自分のグラスをぶつけた。
おつかれは違うと思う。
ジャンは今からまた疲れる。

ジャンは燻製肉を食べながらお酒を飲んでいた。
よく分からないことをずっと喋っていた。
時々、空いた自分のグラスに酒を注ぐ。

「ほら」

私のグラスにもお酒をいれてきた。
もういらない。
苦いし、もういい。

ジャンは笑っていた。
彼はこんなに、お人好しだっただろうか。
アルミンに会いたくなった。

かつての3人でいること。
どんなに望んでも、それは叶わない。
孤独だ。

アルミンは余りここに来なくなった。
アルミンは今、兵団にとってなくてはならない存在。
気軽にここには来れない。

そんなことに傷つくのは、彼の人格を否定することになる。

私にもっと力があれば。
守れるだけの力があれば、3人を続けることが、出来たのだろうか。

とりあえずここまで
出来ればまた明日くる

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