【安価】比企谷「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」由比ヶ浜「その3!」 (1000)

【やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】の安価SSです

原作7巻までのネタバレあり

話は基本安価で進める

主人公は総選挙で決定し、上位3名の各視点で物語は進行 

物語に一区切りがついたら主人公が切り替わります

総選挙については>>2を参照


前々スレ 【安価】そうして比企谷八幡は安価で行動を始める

【安価】そうして比企谷八幡は安価で行動を始める - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363329936/)


前スレ  【安価】比企谷「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」雪ノ下「その2ね」

【安価】比企谷「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」雪ノ下「その2ね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364852635/)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368280790




【第三回 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。真の主人公選抜総選挙】

 《候補者一覧》

・比企谷八幡 ・雪ノ下雪乃 ・由比ヶ浜結衣 ・戸塚彩加 ・材木座義輝 ・比企谷小町
・葉山隼人  ・三浦優美子 ・海老名姫菜  ・戸部翔  
・川崎沙希  ・相模南   ・城廻めぐり
・鶴見留美  ・川崎大志  ・雪ノ下陽乃  ・平塚静


 《ルールと投票上の注意点》

・この書き込みから↓10までが有効票となります
・有権者は総選挙で当選させたいキャラを3名まで選択し、下記のように書き込んでください

 1 比企谷八幡 2 雪ノ下雪乃 3 由比ヶ浜結衣

・上記は数字が小さい順にそれぞれ3ポイント獲得、2ポイント獲得、1ポイント獲得、という意味です
・その結果、総獲得ポイントが多い上位3名が順番に主人公となります
・同率一位(二位、三位)の場合はその同票者同士で再選挙となります(その際のルールは基本同じです)
・キャラ名無記入の場合は無効票となります
・個人の連続コメントは禁止です


《結果発表》


第1位 雪ノ下雪乃 16ポイント 【前々回 第1位 前回 第1位】

雪ノ下「私に勝てる人はいないのかしら」


第2位 比企谷八幡 13ポイント 【前々回 第3位(同票) 前回 第2位】

比企谷「……おいなんだこれ、選挙する意味あんのか?」


第3位 由比ヶ浜結衣 12ポイント 【前々回 ランク外 前回 第3位(同票)】

由比ヶ浜「ゆきのんってやっぱりすごいなぁ……」


第4位 雪ノ下陽乃 7ポイント 【前々回 ランク外 前回 第5位(同票)】

陽乃「流石は雪乃ちゃんだなぁ、三連覇なんてわたし惚れ惚れしちゃうよ♪」


第5位(同票) 川崎沙希 4ポイント 【前々回 ランク外 前回 第3位(同票)】

川崎「雪ノ下のやつ人気すぎじゃないの?」


第5位(同票) 鶴見留美 4ポイント 【前々回 ランク外 前回 ランク外】

鶴見「八幡、負けてばっかじゃん。かっこわる」


第5位(同票) 平塚静 4ポイント 【前々回 第4位 前回 第5位(同票)】

平塚「……せ、整形に手を出すときが来てしまったようだな……っ」



蓋を開ければゆきのん三連覇。……もうこれ選挙する意味なくね?

得票数が数え間違っていなければこれであってるはずです。

とりあえずルミルミのセリフが書けて私は満足。

というわけで3スレ目です。今後もよろしくお願い致します。


今日はもう夜遅いので、今回は主人公を選択して続きはまた朝にやりたいと思います。


誰を主人公にする? 以下より多数決


�雪ノ下雪乃

�比企谷八幡

�由比ヶ浜結衣


先に5票集まった選択肢で主人公を決定し、前スレの続きを始めます。

1

>>32さんは落ち着いて下さい あとなんで最後が変わってるんです?


とりあえず再開しますね。しばらくお待ち下さい。


雪ノ下「……っ」


握っていたシャーペンを机の上に転がし、私は軽く伸びをする。

結局目が覚めた後、私は現在まで勉強をしていた。

凝り固まった肩をほぐすように腕を回しながら、部屋のカーテンを開いて外の景色を眺める。

太陽は既に水平線から顔を出し、新都心のビル群を暁光が曙色に染め上げている。

そして視線を部屋の時計に移して時刻を確認すると、時計は6時10分を示していた。

……さて、何をしようかしら。


雪乃は何をする? 以下より多数決

�朝食を済ませる

�外の空気を吸いに行く


先に3票集まった選択肢で先に進みます


雪ノ下「(……少し、外の空気でも吸いに行こうかしら)」


私はパジャマを脱ぎ、クローゼットからスニーカーソックスにハーフパンツ、七分丈のTシャツを取り出しそれに着替える。

そして机の上に置いてあった携帯をポケットに仕舞い、マンションの鍵を掴んで玄関へと向かう。

シューズボックスからスニーカー取り出し、それを履いて家を出る。


雪ノ下「(マンションの周囲を散歩して、戻ってきたら朝食にしましょう)」


扉の鍵を閉じ、私はエレベーターを利用して地上15階から1階へ降り、エントランスを通ってマンションの外へ足を運んだ。


雪乃が散歩中に誰かと遭遇した? 以下より多数決

�雪ノ下陽乃 �葉山隼人 �平塚静 �城廻めぐり �遭遇しなかった

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


木々が整然と立ち並ぶ道を、枝葉の隙間から差し込む朝日を浴びながら歩く。

私は道なりに沿ってしばらく歩いていると、前方から歩み寄ってくる人影に見覚えがあった。


平塚「おや、雪ノ下じゃないか。おはよう」

雪ノ下「平塚先生、おはようございます」


その人影は奉仕部顧問の平塚先生だ。

平塚先生は普段のスーツ姿ではなく、黒のジャージ姿だった。

普段は何も手を加えていない長髪も、今日は後ろで一括りに纏め上げられている。

額に浮かぶ水滴から推測するに、どこかで身体を動かしてきたのだろうか。


平塚「……ふむ、雪ノ下。君はどうしたのかね、こんな早朝に」

雪ノ下「勉強の息抜きに散歩をしています」

平塚「勉強の息抜き……ということは、君はこんな朝早くから勉強をしているのか?」

雪ノ下「いえ、普段はそうではないです。今朝は偶然目が早く覚めてしまったので、その時間を有効に活用する為に勉強を選択しました」

平塚「ほう……、その意気やよし。だがあまり根を詰め過ぎると、先日の文化祭みたいに体調を崩す事になりかねん。あまり無理はするんじゃないぞ」

雪ノ下「……、はい」


雪乃はどうする? 以下より多数決

�平塚先生がなぜここにいるのかを訊ねる

�適当に挨拶をして自宅へ戻る

�平塚先生の背後に見慣れた人物を発見する(選択された際に再安価で人物を決定)

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


雪ノ下「……ところで、平塚先生は何故こんな時間帯にジャージ姿でいるのでしょうか?」

雪ノ下「もし差し支えなければ教えていただきたいのですが」

平塚「……っ、……う、うむ。実はだな……」


渋面を浮かべながら平塚先生は私へそっと耳打ちをする。

どうやらあまり人の耳には入れたくない話のようね。

……なんとなく予想はついてしまうのだけれど。


平塚「……昨日陽乃と飲んだあと、自宅に帰って風呂上りに体重計に乗ったらだな……。……その、…………た、体重が……ふ、……増え…………くぅっ!」

雪ノ下「……平塚先生、食生活は十分気をつけなければ、肥満化だけでなく生活習慣病などの症状を併発する恐れがあります」

雪ノ下「さらに酒飲は胃の粘膜を荒らす原因です。胃の粘膜は歳を重ねる度に萎縮していくので、胃癌に罹る可能性も高くなります」

雪ノ下「僭越な申し出になりますが、平塚先生は現在の食生活の改善に務めたほうがよろしいと思われます」

雪ノ下「先生の年齢を鑑みて、あまり無理を重ねるのは身体への負荷が大き過ぎると判断出来るのですが……」

平塚「がふっ!」

雪ノ下「ひ、平塚先生?」

平塚「…………ゆ、雪ノ下。……き、君は……もう少し、……お、オブラートに包むことを、覚えた方が、いいぞ……っ」

雪ノ下「は、はぁ……」



その後、平塚先生は覚束ない足取りで背中から哀愁を漂わせながら去って行った。

……啜り泣く声が聞こえたのは気のせいだと信じたいわね……。


このあと雪乃はどうする? 以下より多数決

�自宅に帰って朝食の準備をする

�散歩を続ける(誰かと遭遇する。人物は選択された際に再安価で決定)

すみません、>>61で記入洩れしてました。

先に3票集まった選択肢で先に進みます。

誰と遭遇した? 以下より多数決

�雪ノ下陽乃 �葉山隼人 �城廻めぐり �海老名姫菜

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


平塚先生の背中を見送りながら、私は携帯で時間を確認する。

時刻は6時35分。あともう少し歩いたら、自宅に戻って朝食と今日の昼食を作ろうかしらね。

今後の予定を頭の中で練りながら、私は再び歩を進める。

しばらく歩いてそろそろマンションへ戻ろうとした所で、不意に背後から声がかけられた。


陽乃「あれ〜? 雪乃ちゃんだ! おっはよー雪乃ちゃん♪」

雪ノ下「……、」


↓3 雪乃はどうする?


雪ノ下「あら、おはよう姉さん。……それで、なんの御用かしら?」

陽乃「おやおや? なんだか雪乃ちゃん不機嫌そうだねぇ。……もしかして、昨日あのあと比企谷くんと喧嘩でもしちゃったのかな?」

雪ノ下「見当違いもいい所ね……、姉さんの目は節穴なのかしら」

陽乃「むっ、雪乃ちゃんそんなこと言ったらダメでしょ? ちゃんとお姉ちゃんの目は付いてるし、この両眼は可愛い雪乃ちゃんのことをずっと見てるんだからね♪」

雪ノ下「やめて頂戴姉さん、たとえ冗談でも虫酸が走るわ」

陽乃「えー、冗談なんかじゃないってば。本当にわたしは雪乃ちゃんのことをずっと温かい目で見守ってきたんだよ?」

雪ノ下「そう、姉さんは嘘をつくのが上手ね。けれど、私はそんな嘘に騙されてあげるほどお人好しではないの」


雪ノ下「……私が不機嫌なのは目の前に姉さんがいるからよ。それ以外の理由なんてないわ」


↓3 雪乃はどうする? (陽乃でも可)


陽乃「そ、そんなつれないこと言わないでよ雪乃ちゃん。傷つくなぁ、もう」 

雪ノ下「……、」

陽乃「……あ、そうだ雪乃ちゃん、これから朝食食べに行こ! 雪乃ちゃんまだ朝食食べてないでしょ?」

雪ノ下「嫌よ。……仮に、私がまだ朝食を摂っていないとしても、なぜ姉さんと一緒に食事をしなければいけないのかしら」

雪ノ下「私が姉さんと食事をして、何かメリットがあるのなら考え直さないこともないけれど」

陽乃「うーん、メリットかぁ。……そうだね、わたしはほら交友関係はすごく広くて人生経験も豊富だから、いま雪乃ちゃんが抱えている悩みに対して的確なアドバイスが出来るよ♪」

雪ノ下「……っ、」


姉さんの口から飛び出した発言に、思わず息が詰まる。

目の前に立つ姉は、昔から容易く私の思考や心を見透かし見抜いてくる。

私が何かをやろうとすれば必ず姉さんはその前に立ち塞がり、勝手に先へ先へと進んでいく。

そんな私が唯一出来ることは、そんな姉さんの残した軌跡を辿るだけ。

姉の生み出した幻影を、ただ機械的に追い駆けるだけの単調な作業。

私のしていることは、完璧な姉の模倣だ。

いつしか私は、そうすることでしか自分の存在を確かめられなくなっていた。

母は私に関心を一切向ける事なく、期待もしていない。

父は私に期待をするものの、常に姉と比較してくる。

姉さんは私に期待や関心を向けているように感じるが、その確かな証拠は確認できていない。

ただ姉さんだけは、家族の中で私のことをよく見ていたと思う。

よく見ていなければ、私の考えを見透かすことなんて出来ないはずだから。

だから今までの私は姉さんの背中をずっと追い続けていた。

私の存在理由を示してくれる姉を、先の見えない世界を照らしてくれる姉の背中を、ただ無心で追い求めた。


……けれど、そんな私に彼は「そのままでいい」と言って、私の手を掴んで引き留めてくれた。


——家族以外で初めて私の存在を認めてくれた。


その時の幸福は筆舌に尽くし難く、ただただ嬉しかった。

そしてそれと同時に胸の奥底に芽生えた感情が、私の心を惑わし深く悩ませる。

おかげで彼の前では色々と小恥ずかしいことを口走ったものね。……特にここ数日は。


陽乃「……雪乃ちゃん?」


姉さんが心配そうに眉を顰めて首を横に傾げる。

けれど、その本心では何を考えているのかが私にはまったく読めない。

そんな人間に打ち明ける悩みなどありはしない。

実の妹に対しても、外面を付けたままの人間に話すことなどなにもない。


雪ノ下「……姉さん、そのお誘いは丁重にお断りさせてもらうわ。どうやら姉さんの提案は、私のメリットになりそうにないから」


私は踵を返して姉さんと決別するように背を向け、元来た道を引き返す。


陽乃「……そっか。残念だなぁ」


背後から姉さんの非常に珍しい弱々しい声音が聞こえたけれど、私は後ろを振り返ることなく帰路についた。


それからマンションへ戻った私は、私服から制服に着替えてキッチンへ向かった。

エプロンを付け、冷蔵庫の中から食材を取り出し朝食を作りながら昼食も同時に作る。

そして閑散とした室内で静かに朝食を食べ終え、食器を洗いソファに腰を掛けて一息つく。

ふと時計に視線を移すと時刻は7時20分だった。

……さて、どうしようかしら。


雪乃はどうする? 以下より多数決

�誰かにメールする(送信相手は再安価で決定)

�学校へ向かう

先に3票集まった選択肢で先に進みます。



雪ノ下「(このまま家の中で時間を無駄にするのも考え物だから、ひとまず学校へ向かうのがよさそうね)」


私は作ったお弁当を掴んで自室へと向かった。

お弁当を机の上に置いてあった勉強道具一式と共に鞄の中に仕舞い、物が飛び出さないようにファスナーを閉じる。

鞄の紐を右肩に引っ掛けて、ハンカチとティッシュをブレザーのポケットに収める。

携帯と自宅の鍵を掴んで部屋を出て、キッチンへ向かいガスの元栓が閉まっているかを確認したあと玄関へ。

ローファーを履いて家の外へ出て、「いってきます」と告げて玄関の鍵を閉じて私は最寄り駅へと足を運んだ。


学校へ向かう途中で誰かと遭遇した? 以下より多数決

�葉山隼人 �海老名姫菜 �城廻めぐり �遭遇しなかった

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


最寄り駅に着いたあと、私は改札を通ってタイミング良く停車していた電車へ乗り込んだ。

昨日ほど混雑していない電車の中でしばらく待っていると、電車は総武高校の最寄り駅に到着する。

それから改札を抜けて、私は総武高校へと向かって歩き出す。

通学路では知人ともクラスメイトとも遭遇することなくJ組の教室へ辿り着き、自分の席に鞄をそっと置いた。


雪ノ下「(朝のSHRまでまだ時間があるわね。……なにをしようかしら)」


雪乃はどうする? 以下より多数決

�誰かにメールする(送信相手は再安価で決定)

�2年F組の教室へ向かう

�読書に耽る

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


雪ノ下「(……読書、でいいかしらね)」


私は鞄の中から本を取り出し、大量の文字列を黙々と追った。

ページを繰る度に教室内の人が増えてくるが、私はそれを気にかけることなく読書を続ける。

そして次のページを捲ろうとした所で無機質なチャイムが鳴り響き、教室に担任が入ってくる。

教壇の上に立った担任は一日の連絡事項を伝え終わると、担任は早足で教室から出て行った。


雪ノ下「(1時限目は何の授業だったかしら。確か……、世界史?)」


壁に掲示されている時間割表を見ると、1時限目は『世界史』と書かれていた。

私は机の中から世界史の教科書と資料集、板書用のノートを取り出して授業の準備を整える。

そして私は午前中の授業に挑んだ。



——そして4時限目の授業の終了を告げるチャイムが鳴り、昼休みになった。


このあとはどうする? 以下より多数決


�奉仕部の部室へと向かう

�2年F組の教室へ向かう

�八幡に視点を切り替える

�結衣に視点を切り替える


先に4票集まった選択肢で先に進みます。

(※�と�を選択した場合、視点が切り替わると同時に時間が朝まで巻き戻ります)


私は勉強道具を机の中に仕舞って椅子から立ち上がり、廊下へ出て2年F組の教室へと向かった。

そして廊下まで響く賑やかな声が溢れる教室の中へ足を一歩踏み込むと、そこには——


雪乃が目にした光景は? 以下より選択

�席に着いている八幡を囲む結衣と川崎

�カースト上位陣と一緒にいる結衣 (八幡の姿はない)

�戸塚と会話をしている八幡 (結衣の姿はない)

�足を踏み込んだ直後、八幡or結衣とぶつかる (直下判定で変化)

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


すみません、今日の更新はここまでです。

再開は明日の20時以降になります。



教室後ろ側、その入口付近の机に座った比企谷くんと、彼の目の前に立つ戸塚くんが会話をしていた。


戸塚「八幡、これからぼくと一緒にお昼ごはん食べない?」

比企谷「あー、すまん戸塚。今日はちっと先約があってだな……」

戸塚「そ、そっか。それなら仕方ないね」

比企谷「悪いな戸塚、また今度誘ってくれ。次は必ず一緒に食べるからよ」

戸塚「うん、わかった」


比企谷くんは戸塚くんの誘いを断ると椅子から立ち上がり、こちら側に向かって歩いてくる。

↓3 雪乃はどうする?


猫背の状態で視線を床へ落としながら入口へと歩み寄ってくる比企谷くん。


雪ノ下「(……視線が落ちているせいか、どうやら私の存在にまだ気がついていないようね)」


私はそんな比企谷くんの進路を妨げるように立ち塞がると、彼は繰り出す足を止めてゆっくりと顔を上げた。

すると自然とお互いの視線が交錯し、数瞬の沈黙が流れる。


雪ノ下「……、こんにちは比企谷くん」

比企谷「……、おう」


普段なら心地よさすら感じる沈黙も、この周囲の喧騒の影響で幾らか息苦しく感じる。

私はそれを取り除こうと新鮮な空気を肺に吸い込んで、すぐに言葉と共に吐き出した。


雪ノ下「比企谷くん、今から私の為に少し時間を割いてもらえるかしら」

比企谷「あー、今からか。……すまん雪乃、それは無理。ちょっと先約があんだよ」

雪ノ下「先約……? 比企谷くん、それは一体どういうことかしら」

比企谷「先約は先約だ。相手が俺を来るのを待ってんだよ」

雪ノ下「……比企谷くん、その相手とは一体誰のことなのか、是非私に教えてもらえないかしら?」

比企谷「お、おう」

比企谷「(……なんか妙に殺気立ってるのは気のせいだよな……?)」


八幡を待っているのは誰? 以下より多数決

�由比ヶ浜結衣 �川崎沙希 �平塚静 �城廻めぐり

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


比企谷「俺を呼び出したのはめぐり先輩だよ」

雪ノ下「……、……めぐり先輩? ……へぇ、そう。比企谷くんはもう城廻先輩のことを名前で呼ぶようになるほど親交を深めていたのね」

比企谷「は? ……おい雪乃、なに勘違いっつーか早合点してるか知らねぇが、別に俺はめぐり先輩と交友なんて深めてねぇよ」

比企谷「俺が呼び出されたのはだな、この間の文化祭の報告書に不備があったみたいでそれのやり直しの為だっての。それ以外の理由なんてねぇよ」

雪ノ下「……、」

比企谷「……おい、なんだその訝しげな視線は」

雪ノ下「いえ、別になんでもないわ」

比企谷「絶対疑ってんだろお前……」

雪ノ下「……、」


↓3 雪乃はどうする?


雪ノ下「比企谷くん、しっかり仕事をしなさい。……それとも、サボらないように監視が必要かしら」

比企谷「おい、なんか俺それと似たようなこと文化祭の時にも言われたんだが……。……っていうか、俺ちゃんと文化祭の期間中は仕事やってただろ」

雪ノ下「ええ、そうね。確かに比企谷くんは馬車馬のごとくよく働いていたと思うわ。……まあ、私ほどではないけれどね」

比企谷「最後の一言が余計だ、それ言わなきゃ良かったのに……」

比企谷「あとそれに加えて妙に勝ち誇ったような顔すんな。んなことしなくてもわかってるから、お前が頑張ってたのは俺がよくわかってるから」

雪ノ下「っ、」


……ふ、不意打ちで褒めるのはやめて頂戴。


比企谷「……っておいおい、俺こんなことしてる場合じゃねぇよ。急がねぇと予定の時間に間に合わなくなっちまう」


比企谷くんはそう呟いて教室を出て行こうとするが、私は彼の袖を掴んでその動きを引き留める。


雪ノ下「待ちなさい比企谷くん」

比企谷「あん?」

雪ノ下「私もついていくわ。私は文化祭実行委員会の副委員長だったし、報告書の訂正を手伝えると思うから」

雪ノ下「(……それに、城廻先輩に相談したいこともあるから)」


私の突然の申し出に比企谷くんは逡巡するが、彼はすぐに決断を下したのか首を縦に小さく動かした。


比企谷「……、じゃあ頼むわ」

雪ノ下「ええ、任せなさい」


そうして私は比企谷くんと一緒に生徒会室へと向かった。

>>130の安価でのサキサキの不人気に思わず泣きそうになりました。

というか意外や意外、めぐめぐ結構人気キャラ? てっきり先生が選ばれるもんだと思ってました。


さて、今日はもう遅いんで(更新再開が遅くなったのが原因なんですが…)更新はここでストップです。

再開は昨日と同じ時間帯になりそうですね。

それと個人的な事情で申し訳ないんですが、来週に中間テストが控えているのでも更新量が少なくなります。ご了承下さい。


あと本編なんですが、このまま雪乃視点で続けてもいいのでしょうか? それとも八幡に引き継いだ方がいいのでしょうか?

その点に関してみなさんに意見を伺いたいです。いかがいたしましょうか?


比企谷「……変わらなくていいだろ。そのままで」


お久しぶりです。

昨日は鯖落ちしててびっくりしたんですが、今回はすぐ復活してくれてありがたいような、ありがたくないような……。

まあ中間テストは5教科なんで、去年の8教科に比べれば……まぁなんとかなるはずです。


さて、とりあえず視点はゆきのん希望が多いようなのでゆきのんのままでいきますね。

八幡さんは「俺ぼっち」の方で活躍されてるので、もしよければそちらで彼の勇姿(?)をご覧になってください。

ところでガハマさんはどこにいったんでしょうね(すっとぼけ)


ちょっと勉強してきます。再開は23時前後です。


生徒会室に向かう途中に会話はあった? 以下より多数決


�昨日借りたハンカチの件

�八幡がこの用事が済んだあとの予定について

�なかった

先に3票集まった選択肢で先に進みます。



私は比企谷くんの三歩後ろを歩きながら、ズボンのポケットに手を入れて前へ前へと進む彼の背中に声をかける。


雪ノ下「比企谷くん」

比企谷「ん?」

雪ノ下「比企谷くんはこの件が済んだあとはどうするつもりなのかしら?」

比企谷「このあと? ……このあとどうするもなにも、普通に昼メシ食ってそれから適当に時間つぶして、そんで5、6時限目に挑んで部活だろ」

雪ノ下「そう。ということは、今から行う報告書の訂正が終われば、比企谷くんの今後の予定は完全なる白紙なのね」

比企谷「おいそこ、人を暇人みたいに言うな。まぁ実際は暇人だけどよ……」

雪ノ下「……、」


↓4 雪乃はどうする?


雪ノ下「そうね。そういえばあなたの趣味は人間観察……いえ、ごめんなさい、趣味ではなく習性だったわね」

雪ノ下「比企谷くんの趣味は習性として分類されているから、実質的にあなたは無趣味ということになる」

雪ノ下「無趣味な人間が暇人であってもなにも不思議な話ではないわね」

雪ノ下「趣味を持たないということは、己の内に秘めた情熱を外部へ向けようとしないことだから」

雪ノ下「そんな人間は徐々に堕落していって、あなたみたいな暇人をこの世に産み落としてしまうのね」

雪ノ下「精神的向上心がない者は愚者よ。気をつけないと、己が堕落したことに絶望し自殺することになるわよ?」

比企谷「『こころ』かよ……。お前も結構夏目漱石好きなのな」






……え? ちょっとこれダメでした? 再安価しますか?

了解です。

えっと、それじゃあとりあえずルールを決めてしまいましょう。


とりあえず必要なルールは


・連続コメント禁止


……しか思い浮かばないんですが、みなさんはなにか必要に感じるルールはありますか?


・連続コメント禁止

・20分間レスがなければ連投許可

・『Aはどうする?』という安価にはちゃんと『AはBする』と書くこと

・連投違反していた場合は安価下


まだ必要ですかね?

20分を明確にしといた方がいいね

>>1のレスで
>>4の安価」

>>2のレスから20分たてば>>3>>4と連投で取ってもいいのか
>>3の自分のレスから20分後>>4を取ってもいいのか

個人的には大して変わらないから前者でいいと思うけどね

20分は結構妥当だと思うよ
余りに長くして寝落ちされても困る

>>192さん ではそれでいいですかね。 私個人も前者でいいと思います。


ではルールは


・連続コメント禁止

・安価が出てその直下のレスから20分間レスがなければ連投許可

・『Aはどうする?』という安価にはちゃんと『AはBする』と書くこと

・連投違反していた場合は安価下


ということにします。


今日はそろそろ眠いので落ちます。

その前に安価を出すので、続きはその安価からになります。


雪乃はどうする? 以下より多数決

�用が済んだあと、昼食に誘う

�八幡を煽る(>>177)も、軽く流されそのまま生徒会室へ

�廊下で誰かと遭遇(人物は再安価で決定)


先に3票集まった選択肢で先に進みます。


「俺ぼっち」をほんの少しだけ更新して寝ますね、それでは。

1です。念のために確認します、>>192の前者の案になったという認識でいいのかな?

>>196さん はい、そうです。そのn

>>199訂正 

>>196さん はい、そうです。その認識であっています。

>>162 の続きです。 >>177はなかったことになります。



雪ノ下「そう。なら比企谷くん、報告書の訂正が終わったあと、一緒に昼食を食べましょう」

雪ノ下「……少し、あなたと話をしたいから」

比企谷「……。……ん、わかった」


それから私と比企谷くんは散発な会話を繰り返しながら生徒会室前へ到着した。


比企谷「……、」


比企谷くんは扉を二回ノックして中から声がかかるのを待つ。

……比企谷くん、お手洗い以外で扉をノックをする時の回数は、三回以上にするのが礼儀なのだけれど……。


城廻「はーい、どうぞー」


数瞬の間があって、扉越しから城廻先輩の声が聞こえてくる。

それを確認すると、比企谷くんは扉を開いて室内に足を踏み入れた。


比企谷「失礼します」

雪ノ下「失礼致します」

城廻「うん、いらっしゃい。……ってあれ? 雪ノ下さん?」


生徒会室では城廻先輩と生徒会の面々が、それぞれに割り振られた座席で文化祭の書類整理をしていた。

室内の最奥、窓際の席に座る城廻先輩は私の突然の来訪に目を丸くするが、それも一瞬のこと。

城廻先輩は椅子から立ち上がると、私達の元へ歩み寄ってきた。


城廻「こんにちは」


彼女の内面をそのまま引き出したかのような柔らかな微笑みを浮かべて、城廻先輩は私達に挨拶をする。

比企谷くんは隣で「……こ、こんちわ」とボソボソと呟いていたけれど、私は無言のまま首を縦に動かし言葉を続ける。


雪ノ下「城廻先輩、先日の文化祭では大変お世話になりました」

城廻「え? あ、ううん。こちらこそ、大変お世話になりました」

城廻「今年は雪ノ下さんの尽力があったから、去年と同じかそれ以上に盛り上がることが出来たよ。高校生活最後の文化祭、とっても楽しかったなぁ」


つい先日行われたばかりなのに、寂寥感を漂わせながら過去を懐かしむように瞳を閉じる城廻先輩。

去年と同じかそれ以上……、ね。

姉さんが有志でバンドをした当時の文化祭との比較も気になるけれど、それはいま訊ねることではないわね。


そのあと城廻先輩の指示を受けて、比企谷くんは報告書の不備を訂正していく。

私は城廻先輩に報告書の訂正を手伝うと申し出たのだけれど、先日の文化祭での相模さんの一件を踏まえてか、それは許可されなかった。

割り振られた仕事はその仕事を割り振られた人間が最後まで責任を持って遂行しなければいけないらしい。

これは至極当然のことなのだけれど、そうなってしまうと今の私は手持ち無沙汰。何もすることがない。

なので私は室内の壁に背中を預け、比企谷くんの訂正作業を見守ることにした。



城廻「えっとね、ここが集客数の計算ミスがあって、そこがスケジュールの一部が記入洩れしてたの」

比企谷「げっ……、すみません。……なんでこんな単純なミスしてんだ俺……っ」

城廻「あ、あと議事録の一部に「進捗は別紙参照」って書いてあったんだけど、その参照にする別紙が見当たらないんだよね」

城廻「それでその誘導文を書いたのが誰か確認したら君だったんだ。その別紙はどこにあるのかな?」

比企谷「……っ、」

城廻「もしかして、自宅に間違って持って帰っちゃったのかな?」

比企谷「……え、えーっとですね。それは……」

城廻「うんうん、それは?」

比企谷「……、」

城廻「?」

比企谷「…………すみません、明日持ってきます」

城廻「そっか、うん、わかった。ちゃんと忘れずに持ってきてね」

比企谷「……うっす」


それから訂正作業が継続すること数十分。

昼休みが残り半分になった所で、比企谷くんはようやくその作業から解放された。


比企谷「終わった……っ」

城廻「はい、お疲れ様。それじゃあ明日、別紙をちゃんと忘れずに持ってきてね」

比企谷「……わかりました。それじゃあ失礼します」


城廻先輩の優しそうな微笑みに比企谷くんはそう小さく呟いて、バツが悪そうに後頭部を掻きながら生徒会室から出て行った。

私は城廻先輩に相談したいことがあったけれど、いま訊くのは業務の邪魔になりそうだからまた日を改めることにしましょう。

そう判断を下し、私は生徒会役員に会釈をして比企谷くんの背中を追った。


生徒会室を出て廊下の角を右折すると、そこで比企谷くんは壁に背中を預けて立っていた。

私が比企谷くんの前まで歩み寄ると、比企谷くんは壁から背中を離して私を先導するように歩き始めた。

その後ろ姿を、私は三歩ほど離れた位置から追従する。


比企谷「すまんな雪乃、なんか無駄足を踏ませちまったみたいで」

雪ノ下「別に、構わないわ」

雪ノ下「それより比企谷くん、あなたの訂正作業が思いのほか時間がかかって昼休みがあと半分しかないのよ。だからはやく昼食にしましょう」

比企谷「……は? おい嘘だろ、さっきの訂正作業ってそんなに時間かかってたのかよ」

雪ノ下「ええ、あなたが何度も計算ミスを繰り返すものだから、時間はいたずらに浪費されていったわ」

比企谷「ぐっ……、し、仕方ねぇだろ。俺は数学は得意じゃねぇんだよ」

雪ノ下「比企谷くん、三桁の足し算は数学には分類されないわ、それは算数よ。……まぁ広義的に解釈すれば算数も数学と称することも可能だけれど、それでも三桁の足し算は小学生が習う学習内容よ」

雪ノ下「それも満足に出来ないなんて、あなたの計算処理能力は小学生以下ということになるのだけれど?」

比企谷「……で、電卓があれば計算する必要なんてねぇし……(震え声)」

雪ノ下「その電卓が故障した場合はどうするの?」

比企谷「……か、紙に書けば三桁の足し算くら」

雪ノ下「紙も筆記用具もない場合は?」

比企谷「……、」

雪ノ下「……比企谷くん、あなたの進路希望である私立文系も最近は数学を受験科目にしている大学が多いわ。いつまでも弱点を放置していると、いつか手痛い目に遭うことになるわよ?」

比企谷「……はっ、残念だったな雪乃。俺は手痛い目に遭うのは昔からで慣れてるし、それに大学に合格しなくても俺の最終目標は専業主夫だ」

比企谷「専業主夫になるには特別な資格も必要ねぇし学歴も関係ねぇ、だから計算はしなくても問題ねぇんだよ」

雪ノ下「専業主夫なら家計簿をつける必要があるのではないのかしら」

比企谷「いや、そうでもねぇよ。家計簿ってのは一般的に収入以上の買い物をしないようにして、家計を健全に保つために用いられるからな」

比企谷「つまり家計簿をつける必要がないくらいの金持ちと結婚すれば、収入について日々頭を悩ませる必要がない! 金持ち万歳!」

雪ノ下「また腐った目でそんなことを……」


↓4 廊下で誰かと遭遇した? (『しなかった』でも可、人物は総武高校関係者のみ)


比企谷くんの妄言に相槌を打ちながら廊下を進んでいると、1人の女子生徒とすれ違った。


遥「あれー? もしかしなくても雪ノ下サンじゃん」


彼女はたしか……、相模さんと一緒に奉仕部へやって来た実行委員だったわね。

端から比企谷くんには関心がないのか、彼女は私の前にいる比企谷くんを無視して話しかけてきた。

……いえ、違うわね。彼女の無視は、意図的な無視。

時折瞳を横に移動させて、嘲り、侮り、蔑みを含んだ非常に不愉快な視線を彼に向けている。


雪ノ下「……、」


それを私は会釈をすることもなく、ただ無言で見返す。


遥「どうしたのこんなところで? なんか雪ノ下サンっていつも昼休みは1人でどこか行っちゃうらしいけど、今日は1人じゃないんだねー」


珍しい物事に好奇の目を輝かせ、厳然たる嘲笑を顔に貼り付けて彼女は会話を続ける。

その隣にいる比企谷くんは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて瞼を閉じていた。

まるで同じ過ちを繰り返してしまった事を悔いるかのように、彼の拳は固く握り締められている。


雪ノ下「……それがなにか? 私が昼休みを誰と一緒に過ごそうが、あなたには一切関係のないことだと思うのだけれど」


そんな彼の姿を見たからなのか、私の声音は普段より格段に冷めていた。

そのせいか、目の前の彼女は怯えるように全身を震わせると、突然両手を忙しなく動かし始めた。


遥「……っ、だ、だよねー、なんかごめんね雪ノ下サン」

遥「あ、そ、そういえばあたしバスケ部の先輩に呼ばれてたんだったー。そ、それじゃあね雪ノ下サン」


火を見るよりも明らかな嘘を残して、彼女はこの場から逃げるように去って行った。


このあとはどうする? 以下より多数決

�一度教室に戻り、弁当を持って八幡と共に奉仕部の部室へ

�「……すまん雪乃、やっぱ昼食はパスするわ」

�「あー! ヒッキーいた! ゆきのんも!」

�「フハハハ八幡! ここで会ったが千年目! さあ、我と共に無限の螺旋(インフィニティスパイラル)を駆け巡ろうではないかッ!」

�「……ちょっとあんた、勝手に教室からいなくならないでくんない?」


先に4票集まった選択肢で先に進みます。


安価は1で行きますね

ちなみに各セリフのキャラは

�は八幡 �は結衣 �は材木座 �は川崎です

�の川崎さんのこの態度……、一体昼休みまでの間になにがあったんでしょうね(すっとぼけ)


さて、今回の投下はここまでです。

昼寝(4時間)して寝過ごしてしまい、午後の予定が完全に狂ったんで更新しました。

続きは今日の昼過ぎあたりに出来れば……。けどテスト前の追い込み期間なんで少し厳しいかもしれません。

では今回はこの辺で失礼します、それでは。


それから私達は一度自分の教室に戻り、お弁当を持って再び合流して共に奉仕部の部室へと向かう。


比企谷「……、」

雪ノ下「……、」


部室までの道程は互いに無言だった。

背後から聞こえる喧騒もどこか遠々しく感じられ、周囲に流れる空気も重苦しい。

彼の小刻みに震える右拳を傍目に見ながら、私達は奉仕部の部室へと辿り着いた。


奉仕部の部室内に誰かいた? 以下より多数決

�平塚先生と由比ヶ浜 �誰もいない

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


安価は1でいきますね。


それで本編についてなんですけど、このまま話を進めても大丈夫ですか?

それとも前スレみたいな裏話を挟んでから先に進みますか?

もしくは視点を切り替えるなど……、皆さんの意見を伺いたいです。

ッエーイ☆

>>244 一方さんなにしてるンですか、このスレに幼女はいませン


このままでいいという意見が多いのでこのままでいきますね。

さて、テスト勉強は終わったので更新再開。

明日はテスト前日で更新出来ませんので今のうちに更新しときます。

しばらくお待ちください。


比企谷くんが扉を開くと、部室の中では平塚先生と由比ヶ浜さんが椅子に腰掛けて静坐していた。


平塚「来るのが遅いぞ比企谷、……たるんどる!」

比企谷「どこのテニスの皇帝ですか……。ってか、なんで先生がここにいるんですか」


比企谷くんはいつもの定位置に腰を落ち着けると、平塚先生を半目になって睨みつける。

私もそれに倣うように普段の席に座ると、そこで由比ヶ浜さんと目が遭った。

由比ヶ浜さんは普段と変わらない、明るく、眩しい笑顔を私に向けてにこやかに微笑む。

私はそれを無言の会釈で返した。


雪ノ下「(……おそらく由比ヶ浜さんは、今この場で話し合いをするつもりなのね)」


その考えに対する明確な根拠は無いが、私の直感はそうなるであることを静かに告げている。

なので私はヘタな動きをせずに、大人しく由比ヶ浜さんの出方を伺うことにした。


平塚「その点については由比ヶ浜から訊いてくれ。私はただ彼女からここに来るように頼まれただけだからな」

比企谷「さいですか。……んじゃ由比ヶ浜、なんで先生を呼んだんだ?」

由比ヶ浜「あ、うん、それはね。……やー、なんて言うの? 平塚先生には見送り人……じゃなくて、おくりびと? みたいな感じの役をやってもらいたくて」

比企谷「……ほうほう、それで死化粧されてあの世へ送られる人間は俺ですか。なにお前、そんなに俺のこと嫌いだったの?」

由比ヶ浜「はぁ? ヒッキーなに言ってんの? 超意味わかんないんですけど」

比企谷「奇遇だな、俺もお前の言ってることがさっぱり分からねぇ」

平塚「話が脱線しているぞ君達……」

雪ノ下「……、」


↓4 雪ノ下は彼らになんと言う?


雪ノ下「(……このまま口を挟まないでいると、昼休みが終わってしまうわね)」


私は小さく咳払いをして居住まいを正す。

そしてその音に反応して、三人は私に視線を向けた。


雪ノ下「比企谷くん、由比ヶ浜さん。少し落ち着きなさい」

雪ノ下「さっきまでの由比ヶ浜さんの話を元から推測するに、ここに平塚先生がいる理由はわかったわ」

雪ノ下「由比ヶ浜さん、あなたが言いたいのは『おくりびと』ではなく『見届け人』のことでしょう?」

由比ヶ浜「え? あ、うん。それだ……と思う」

比企谷「なんで自信なさげなんだよ……」

由比ヶ浜「だ、だってあたし難しい言葉とかよくわかんないし……」

比企谷「……お前、よくそんなんでウチに受かったな」

由比ヶ浜「るさいっ! こ、高校受験の時のあたしは1日7時間は勉強してたんだもん! だからここに受かったの! 合格したのがわかったらやんなくなっちゃったけど……」

比企谷「……なんでそこで勉強すんのあきらめたんだよ。そのまま継続してりゃ今のお前みたいな残念な子にはならなかったのかもしれねぇのに」

由比ヶ浜「むかっ、数学9点のヒッキーに言われたくないし」

比企谷「う、うっせ。他の教科はお前より上だからいいんだよ別に」

平塚「……もしも由比ヶ浜が勉強を続けていた場合、この学校に成績優秀な由比ヶ浜がいたかもしれないのか……」

平塚「……ふむ、こう言っては教師としてはあれだが、皆目想像がつかんな」

比企谷「ホントに教師としてどうかと思いますよその発言……」

雪ノ下「…………話、続けてもいいかしら」


閑話休題。


雪ノ下「……それで、【由比ヶ浜さんは昨日私と約束した話し合いを円滑に進める為に、中立的な判断を下せる『見届け人』——より正確に言うならば『立会人』の役割を平塚先生にお願いした】ということでいいのよね?」

由比ヶ浜「うん。一応ゆきのんと二人っきりで話し合いをしようって考えてはいたんだけど、それだとなんか変に緊張しちゃって上手く話せそうになくて……」

由比ヶ浜「だからその場に他の人がいれば、その緊張もほぐれてくれるかなぁ……なんて」

雪ノ下「……そう。それを由比ヶ浜さんが望むのであれば私は別に構わないわ」

由比ヶ浜「……そっか、ありがとゆきのん」

由比ヶ浜「え、えっと……、それじゃあそろそろ始める?」

雪ノ下「ええ、あまり時間も残されていないようだし、手短にいきましょう」

雪ノ下「でもその前に由比ヶ浜さん、1つ確認しておきたいことがあるの」

由比ヶ浜「?」

雪ノ下「由比ヶ浜さんがいて欲しいなら私は構わないのだけれど、私達の話し合いに比企谷くんが立ち会うのは……その……」

由比ヶ浜「え? あー、……そっか、そうだよね」

由比ヶ浜「で、でもこの話し合いはヒッキーに関係のあることだし、いずれヒッキーにも話さないといけないと思うから……」


由比ヶ浜「……だから、……その、…………あ、あたしはちゃんと、この場で全部聞いてもらいたい……かな」


雪ノ下「……、」

雪ノ下「……。そうね、由比ヶ浜さんの言う通りね」


私は由比ヶ浜さんの考えに同意を示すように小さく頷く。

もうすでに私は彼の前で色々と宣言をしているのだ、いまさら気後れをしてどうするというのか。

私は対角線上の位置に座る比企谷くんを視界に捉える。

彼は居心地が悪そうに、視線を上下左右に彷徨わせていた。


雪ノ下「(……ごめんなさい比企谷くん、私の身勝手な行動のせいであなたにまで心苦しい思いをさせてしまって)」


心の中で彼に謝罪をして、私は由比ヶ浜さんと向かい合った。


今回はここまでです。

再開は明日以降になります、それでは。


雪ノ下「それでは由比ヶ浜さん、そろそろ始めましょうか」

由比ヶ浜「うん」

雪ノ下「……まずはえっと、……昨日の夜、あなたの前から逃げ出してしまってごめんなさい」


口火を切るのは私の謝罪。

深々と頭を下げて、由比ヶ浜さんに昨日の非礼を詫びる。

他人との関係が希薄である私には、こういった場面ではどのような行動をするのが最良なのかが判断出来ない。

他人との干渉を拒み続けた代償が今こうして多額の負債となり、大きく渦を巻きながら押し寄せてきている。

けれど、その濁流にただ流されるだけではいけない。

なので私は自らの持つ僅かな手札の内で、唯一有効と思える昨日の件の謝罪を選択した。

逆説的に言えば、それしか切れる手札がないほどに追い込まれていた。

新たな手札は、この話し合いと並行しながら獲得していかなければならなかった。


由比ヶ浜「……ゆきのん、そんな頭下げるとかしなくていいよ。だから、顔をあげて?」

雪ノ下「……、けれど」

由比ヶ浜「あたしがいいって言ってるからいいの。……だから、顔をあげて」

雪ノ下「……。……本当に、ごめんなさい……」


由比ヶ浜さんに強く促され、私は小さな謝罪を呟きながら彼女へ再び向き直る。


由比ヶ浜「えっと、……うん、昨日のアレはびっくりしたなぁ」

由比ヶ浜「ゆきのんとヒッキーが私服姿で一緒にいたのもびっくりだし、そのあとのゆきのんの行動も」

由比ヶ浜「あまりにも突然のことで、あたし全然反応できなかったよ」

雪ノ下「……、」

由比ヶ浜「……でも、ゆきのんにも何か考えがあったんだよね?」

由比ヶ浜「だってゆきのんは、いつもなんの理由もなく行動なんてしないもん」

由比ヶ浜「だから昨日の行動も、なにか理由があったんだよね?」

雪ノ下「それは……、」


↓4 雪乃の昨日の行動の理由は? (流れに沿うようにお願いします)


雪ノ下「それは……、あなたに比企谷くんがとられてしまうと思って……」

由比ヶ浜「……、」

平塚「……、」

比企谷「……っ、」


部室内に沈黙が降り、誰かが固唾を呑む音が聞こえる。

私はその静寂を破るように、由比ヶ浜さんと視線を交錯させながら言葉を続ける。


雪ノ下「由比ヶ浜さんもご存知の通り、私は比企谷くんのことを…………その、異性として好意を抱いている……のよ」

雪ノ下「それで昨日の夜、あなた達と会話をしている比企谷くんの姿を見たら、こう、うまく説明が出来なくてもどかしいのだけれど……、胸の奥底が焦げるような痛みに襲われたの」

雪ノ下「そして気が付いたら、比企谷くんの手を引いてあなたから逃げていたわ」

雪ノ下「ごめんなさい、あなたの気持ちを知っていながらあんな行動をしてしまって……」


膝の上に乗せられた両手でスカートを固く握り締める。

視線もいつの間にか下がっていて、視界には皺の寄った布が映っている。


由比ヶ浜「……、ゆきのん」

雪ノ下「……なにかしら、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「……謝るの、禁止。ゆきのんが謝ったら、そこで会話が終わっちゃう」

雪ノ下「……、」

由比ヶ浜「……、」

由比ヶ浜「……ねぇゆきのん。ゆきのんは、いつからヒッキーの事が好きになったの?」

由比ヶ浜「あたしはね、ヒッキーがうちのサブレを助けてくれたあの時から、あたしはヒッキーの事が気になるようになったの」

由比ヶ浜「でもね、それはただヒッキーを知るきっかけに過ぎなくてさ、ヒッキーのことをちゃんと『好き』って自覚するようになったのはその後からなんだ」

由比ヶ浜「あたしはさ、ひとりぼっちになりたくないから、いつも周りに合わせてたんだ」

由比ヶ浜「たいして面白くもない話も笑顔を浮かべて聞いて、嫌いな人の話も心の中では聞きたくないと思ってても、話す人に合わせて『あー、あたしも嫌いー』とか言ってさ」

由比ヶ浜「それで家に帰っていざ1人になると、『あたしはなにやってんだろ』って考えるようになって。もう自分が何が好きで何が嫌いなのか、自分は何なのかがわかんなくなってた」

由比ヶ浜「でもその頃、ぐうぜん学校で1人でいるヒッキーを見かけたの」

由比ヶ浜「誰とも会話しないで、1人で黙って過ごしてるヒッキーを見たの」

由比ヶ浜「最初は事故のせいで新しい友達が出来なかったんだと思ったんだけど、ヒッキーはちがった」

由比ヶ浜「その事故を話すきっかけにしてヒッキーに話しかける人は何人かいた。けど、ヒッキーはそれをなんか適当な理由を言って断ってた」

由比ヶ浜「それがね、あたしにはなんだかすごくかっこ良く見えたの」

由比ヶ浜「それがなんでかは上手く言葉に出来ないけど、……とにかく、すごくかっこ良かった」

由比ヶ浜「それから、あたしはヒッキーのことを好きになったの」

由比ヶ浜「廊下とかでヒッキーとすれ違ったら、その姿を目で追ってた。声を掛けたかったけど、1年生の頃はさがみん達と一緒にいたから、そういうのはあんまし出来なかった」

由比ヶ浜「だから2年生になったらがんばろうって思って、平塚先生に相談してみたの。そしたら先生から奉仕部を勧められて、そこに行ったらゆきのんとヒッキーがいて……」

由比ヶ浜「それからは三人で一緒にクッキー作ったり、テニスやったり、テスト勉強一緒にしたり、川崎さんの説得しに行ったり、大富豪したり、誕生日祝ってもらったり、カラオケやゲーセンに行ったり、ボランティアで千葉村に行ったり、花火を見たり、文化祭やったり、その打ち上げやったり……たくさん、たくさん思い出が出来た」

由比ヶ浜「それでゆきのんとも親友になれたし、小町ちゃんやさいちゃんとか中二とか川崎さんとか平塚先生、優美子や姫菜、隼人くんにとべっち、大和くんに大岡くんとも仲良くなれた。…………そして、ヒッキーのことがもっともっと好きになった」

由比ヶ浜「あたしはヒッキーのことが好き。たぶんゆきのんが、ヒッキーのことを好きになるずっと前から」


由比ヶ浜「……だから、この気持ちは譲れないの。たとえゆきのんが相手でも、それは変わらない」


今日はここまでです。

では、失礼します。

えーっと、なんかガハマさんがヤンデレっぽい風潮が流れてますが、書いてる時に「……あれ? これちょっと病んでね?」とは思っていました

まぁでもこのガハマさんはあれです、7巻の前兆みたいなもんです

待たないでこっちから行くとこうなるんじゃないんですかね(適当)


さて、また昼寝して生活リズムが崩壊したんでちょっとだけ再開します

テスト勉強は……まあこの後にでもやろうと思います(遠い目)

しばらくお待ちください


由比ヶ浜さんがずっと胸の内に秘めていたであろう感情が私の耳を伝い、心の奥底に突き刺さる。


雪ノ下「……、」


由比ヶ浜さんは、比企谷くんのことが好き。

それも私が彼のことを好きになるずっと前から。

由比ヶ浜さんが初めて奉仕部へ訪れた時の依頼である「手作りクッキーを食べてもらいたい相手」とは、比企谷くんのことだったのね。


一年半前の入学式の朝、比企谷くんは身を挺してハイヤーに轢かれそうになった犬を助けた。

その犬の飼い主は由比ヶ浜さん。

そして私は折悪しく犬を轢きそうになったハイヤーに同乗していた。

その結果、比企谷くんは犬を庇って車と衝突して怪我を負い、入学早々全治三週間の入院。

退院後の彼は、周囲と馴染まず馴れ合わず、進級して奉仕部に入部するまでは私と同じように独りで過ごしてきたのだろう。


——比企谷くんと由比ヶ浜さんは、等しく被害者。


もし彼が事故に遭わなければ、彼は孤独にならずに済んだのかもしれない。

もし彼女が事故に巻き込まれなければ、彼女は彼と出会うことはなかったのかもしれない。

そして彼らが加害者である私とも、知り合うことはなかったのかもしれない。

けれど、事故は実際に過去に起きた事であり、その厳然たる事実を覆すことなど出来はしない。

過ぎ去った日々をいくら悔やんだとしても、あの日の出来事は不変を貫き続ける。

過去を変えることなど不可能で、変えることが可能なのは未来だけ。

それも自らの意志で心から変わりたいと願わなければ、変革は訪れない。


由比ヶ浜「……って、あわわっ!? ま、また夢中になって話してたし……」


その驚愕混じりの声に反応して顔を上げると、由比ヶ浜さんは顔を朱色に染めながらあわてふためいていた。

どうやら由比ヶ浜さんは無意識の内に言葉を並べ立てていたようね。

そして無意識ということは、先程の言葉はすべて嘘偽りない由比ヶ浜さんの本心。


ならば私も、嘘偽りのない飾らない言葉で返すのが礼儀というもの。




決意を固めた雪乃 その時——

�平塚静の鶴の一声

�比企谷八幡の苦悩の呟き

�特に何も起こらない


※ストーリの分岐点です

先に5票集まった選択肢で先に進みます。

そしてごめんなさい、今回はここまでです。

明日はテスト最終日なんで、明日からは通常通り再開しますね。

(けど俺ぼっちは書き溜めがないのでまだ当分先に……)

それでは失礼します。


そう私が決意を固めた矢先のことだった。

由比ヶ浜さんの隣の席に座っていた平塚先生が軽く咳払いをすると、先生は腕を組んで鷹揚に頷く。


平塚「……ふむ、『恋は盲目』とはよく言ったものだな」

平塚「人間は恋をすると大きく変わる存在であることを強く思い知らされる」


平塚先生はパイプ椅子から腰を上げると、私と由比ヶ浜さんの中間の位置へ移動する。

そして先生は艶然とした笑みを浮かべてこう告げた。


平塚「どうかね二人とも。ここは一つ、私の依頼を引き受けてくれないか?」


由比ヶ浜「ひ、平塚先生からの依頼……ですか?」

平塚「うむ、そうだ。……まぁ二人に依頼とは言っても、これは雪ノ下にはすでに依頼していることなのだがな」


平塚先生はそう言って年甲斐も無くウインクを私に飛ばしてくる。

私はそれを拒絶するように瞼を閉じて、先生の発言の意味を探る。

そしてそれを瞬時に理解した。

平塚先生の依頼とは、私と比企谷くんが初めて対面したあの日、まだ奉仕部に私しかいなかった時に受けた依頼のことだ。


『人との付き合い方を学ばせてやれば少しはまともになるだろう。こいつをおいてやってくれるか。彼の捻くれた孤独体質の更生が私の依頼だ』


雪ノ下「……、なるほど」

由比ヶ浜「え? 何がなるほどなのゆきのん?」

平塚「なに、簡単なことだよ由比ヶ浜。君は比企谷の孤独体質の更生をすればいいんだ」

由比ヶ浜「ヒッキーの孤独体質のこうせい……? えっと……?」

平塚「あー……うむ、つまりだな。簡単に言えば、比企谷に人付き合いの素晴らしさというものを教えてあげてくれ」

平塚「半年前に比べればだいぶ改善されてきてはいるが、それでもまだまだ更生の余地がたっぶりでな。今はようやく及第点といったところなんだ」


平塚先生の視線は、先生の正面に座る比企谷くんに向けられている。


比企谷「……っ、」


そして現在進行形で進む出来事に、彼は困惑混じりの渋面を浮かべていた。


このあとはどうする? 以下より多数決

�平塚先生にこの依頼の意図を訊ねる

�八幡が抗議の声をあげる

�昼休みを終えるチャイムが鳴り響く


先に3票集まった選択肢で先に進みます。


私はそんな彼に声を掛けようとしたが、その直前に設置されているスピーカーからチャイムが鳴り響いた。

どうやら昼休みが終わったようね。…………昼休みが終わった?

目前の机の上には、巾着袋に包まれたお弁当が置いてある。

それは奉仕部の部室で昼食を摂る為に教室から持ってきた物だ。

けれどここでは食事ではなく唐突に話し合いが開始されてしまったため、私は昼食を摂る暇などなかった。

なのでこのお弁当は一口も手につけていない。

そしてそれは比企谷くんも同じこと。

彼の目の前の机上にも、紙パックのコーヒー牛乳と焼きそばパンを隙間から覗くことが出来るレジ袋が置かれている。


比企谷「……」


彼は茫然と口を小さく開き、虚ろな目で虚空を眺めていた。


平塚「さて、続きはまた放課後だな。それでは私は授業があるので先に戻らせてもらうぞ」


白衣を翻しながら平塚先生はそう言い残して部室を後にした。


由比ヶ浜「あ、えっと……。それじゃあゆきのん、また放課後ね」

雪ノ下「……ええ。由比ヶ浜さん、またあとで」


そして由比ヶ浜さんもそれに倣うように部室から出て行った。

私も授業に遅れるわけにはいかないので、比企谷くんに声を掛けて教室へ戻ろうとする。


雪ノ下「比企谷くん、私達も戻りましょう」

比企谷「……、」

雪ノ下「……比企谷くん?」

比企谷「……ん? あ、ああ。そうだな」


歯切れの悪い返事と共に比企谷くんは椅子から立ち上がる。

どこか上の空の彼を気にかけながら、私達はそれぞれの教室へと戻った。

すみません、今回はあまり更新出来ませんでした。

それと本編なんですが、視点はこのままでいいんでしょうか?

それともヒロイン(?)八幡にした方がいいですか? もしくはヤンデレガールガハマさん?

皆さんの意見を伺いたいです。

携帯から失礼します

とりあえず安価を出しときますね


誰の視点で話を続ける? 以下より多数決

?雪ノ下雪乃

?比企谷八幡

?由比ヶ浜結衣

先に4票集まった選択肢で先に進みます

ぐあぁ……文字化けしてやがる……

上から1、2、3、です


逃げても逃げても追いかけてくるものなーんだ。


平塚「比企谷。部活の時間だ」


結婚願望の強いアラサー女教師。

あのあと空腹に耐えながら午後の授業をやり過ごし、無味乾燥なホームルームを終えて教室から出た俺を待ち構えていたのは平塚先生だった。


平塚「行くぞ」


先生は顎で部室のある方角を指し示すと、預けていた壁から背中を離して歩き始めた。

だが俺はその背中を見送るだけで足は動かさない。なんなら逆方向に歩き出すまである。

抜き足差し足忍び足。自慢のステルス性能を駆使して戦線離脱を図ろうとしたが、不意に背後からむんずと首根っこを押さえつけられた。


平塚「比企谷、部室はそっちではないぞ?」


ギリギリと万力の様に首元が締められ息苦しくなる。

それに降参の意志を示すために先生の手をタップをすると、一度キツく締められたのちに解放される。

なんでトドメ刺そうとしたんだよこの人……。

軽く咳き込みながら振り返れば奴がいる。

俺史上類を見ないレベルの残念無双っぷりを発揮する魅惑の大人の女性、平塚静。

……魅惑っつーより困惑の表現のほうがしっくりくるけどな。

そんなトラブルレディである先生に反論するために、俺は口を開いた。


比企谷はなんと言う? 以下より多数決

�「いや、実は両親がアレでして……」

�「数学の先生に呼び出されてるんで……」

�「俺まだ昼メシ食ってないんで今から食ってきたいんですけど……」

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


比企谷「俺まだ昼メシ食ってないんで今から食ってきたいんですけど……」


お腹を軽くさすりながら、俺は平塚先生に抗議の声をあげる。

昼休みが終わる直前に水道水をがぶ飲みして空腹は紛らわせたけど、流石にそれも限界。

それに水飲み過ぎてトイレ行きてぇし……。


平塚「食事なら部室でも出来るじゃないか」

比企谷「いや、部室は奉仕部が今から使いますし。それに今は1人で食べたい気分なんで」

平塚「む、そうか……」

比企谷「……、」

平塚「……ふむ、弱ったな……」


腕を組んで首を傾げる平塚先生。

おそらく先生がここにいるのは、俺が奉仕部から逃げ出すことを懸念しているのだろう。

なぜならつい先程の昼休み、先生は超弩級の爆弾を投下したからだ。


『簡単に言えば、比企谷に人付き合いの素晴らしさというものを教えてあげてくれ』


……由比ヶ浜のあの台詞のあとで人付き合いとか、それもう『彼氏彼女としての人付き合い』しか連想出来ねぇじゃん。


だがそもそも、俺はそんな浮ついた事を教わるためにわざわざご足労するような人間ではない。

むしろ過去の経験を最大限生かして全力で回避する人間だ。

そしてそんな考えがあるからこそ、先生はこうやって俺を部室へと連れて行こうとしているのだろう。

俺が逃げ出してしまわないように。


——けれど俺は、何があろうとも現状維持を望んだのだ。


誰かと付き合うつもりは毛頭ない。

雪乃や由比ヶ浜達からは逃げないし、俺自身も変わらない。

ぼっちで結構。孤独で上等。孤高であって何が悪い。


だからそんな気遣いやお節介は無用だ。

それに先生は他人の心配する前に自分のことを気にかけるべきだろ。


比企谷「……メシ食い終わったら部活にはちゃんと顔出すんで、少し時間ください」


俺はそう呟いて、平塚先生の返事も聞かずに奉仕部の部室とは逆方向へと歩き出した。


八幡はどこへ向かう? 以下より多数決

�屋上

�図書室

�男子トイレ

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

すみません、明日(というか今日)はPTA総会で学校なので今日はもう寝ます。

再開は昨日と同じ時間から再開予定です。

それでは失礼します。


【屋上】


つい先週駆け上った階段を、俺は肩からずり落ちてくる鞄の紐を掛け直しながら一段ずつ登っていく。

この前は文化祭の荷物置き場になっていて窮屈に感じた階段も、今は何も置かれておらず広々としていた。

そしてやがて終点、開けた踊り場に出た。

南京錠がぶら下がったサビの浮いた扉は少しだけ隙間が開いていて、どうやら屋上には先客がいるようだ。


比企谷「(……戻るのも面倒だし、別にいいか)」


俺は隙間に指を差し込んで扉を開く。

するとそこには——


屋上にいたのは誰? 以下より多数決

�川崎沙希

�相模南

�材木座義輝

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


するとそこには、川崎が立っていた。


川崎「……、」


俺が屋上に足を踏み入れると風が吹き抜け、川崎の長く背中まで垂れた青みがかった黒髪が靡く。

そしてそれと同時に、彼女のタータンチェック柄のスカートがめくれ上がる。

……が、吹いた風は微風だったせいか、スカートがふわっと浮かび上がる程度だった。

おい、バカ今の風なんでそこで諦めちゃうんだよ、もっと強く吹けよ!

どこぞの元プロテニスプレイヤーみたいな感じで風を叱咤するも、この程度で自然を自在に操作出来るはずもない。

むしろ声を荒げた途端に風が止むまである。俺にこんな特殊能力が秘められていたとは……。


そんな馬鹿丸出しの考えは木端微塵に粉砕して空気に溶かすことにした。

風を操るとか痛々しい厨二能力は材木座で間に合ってるしな。


川崎は転落防止用のフェンスに指先を掛けながら、地上をぼんやりと眺めていた。


八幡はどうする? 以下より多数決

�川崎に話し掛ける

�話しかけずに給水塔の側に移動

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


比企谷「(……川崎は見知った間柄だし、ここは軽く声でも掛けておくか)」


俺は川崎の隣まで歩み寄って、地上を見下ろしながら声を掛けた。


比企谷「よう」

川崎「……っ、どうも」


川崎は突然話しかけられたことに驚いたのか、一瞬息を詰まらせながらもいつもの気怠げな声で返事を返す。

横目で川崎の様子をちらと見ると、倦怠感の漂っていた声とは裏腹になんか妙にあたふたしていた。

そして心なしか、顔が赤い。

…………。

俺は視線を下方に戻し、グラウンドでバットを肩に担いで歩く野球部やコートラインを引くサッカー部の様子を眺める。


川崎「……、あんたがここに来るなんて珍しいね」

比企谷「そうだな。……お前はいつもここにいるのか?」

川崎「あたしは……まぁ、その日の気分次第。今日のあんたはどうしたの?」

比企谷「俺は静かにメシを食える場所を求めてここに来ただけだ。他に理由なんてねぇよ」

川崎「メシ……? まだ夕飯には早いと思うんだけど」

比企谷「夕飯じゃなくて昼飯だ。今日は諸事情で昼休みが潰れてメシ食う暇がなかったんだよ」

川崎「……ふぅん、あっそ」


川崎は気怠げにそう呟くと、踵を返して扉へと向かっていく。


比企谷「? どうした川崎」

川崎「静かに食事したいんだったら、あたしここにいない方がいいでしょ?」

比企谷「……、」


八幡はどう返す? 以下より多数決

�「……気を遣わせちまって悪いな」

�「別に構わねぇよ。俺は後から来た身だし、ゆっくりしてけばいいじゃねぇか」

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


比企谷「別に構わねぇよ。俺は後から来た身だし、ゆっくりしてけばいいじゃねぇか」

川崎「……、いいの?」

比企谷「なんで俺に許可求めてんだよ。……決めるのはお前だ、好きにしろよ」

川崎「……。……じゃ、じゃあ残る」


そう言って川崎は再び踵を返して俺の隣まで戻ってくる。

俺はそれを見ながら背中をフェンスに預けて、鞄からコーヒー牛乳と焼きそばパンを取り出す。

包装を破いて焼きそばパンに齧りつく。

ソースの香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。

冷めてても美味いけど、やっぱ焼きそばは熱いほうが好きだな。

そんな感想を胸中で洩らしながら焼きそばパンを半分ほど食べ終えた所で、紙パックのコーヒー牛乳の飲み口にストローを差し込み啜り上げる。

そんな俺を見て、川崎は怪訝そうな目を向けて話しかけてきた。


川崎「……あんた、それで昼食足りてんの?」

比企谷「いや、全然足りてねぇけど。でも昼食代って結構バカにならねぇから節約しねぇとダメなんだよ」

川崎「ふぅん、それなら自分で弁当作ってくれば? そっちのほうが安いと思うけど」

比企谷「はっ、貴重な睡眠時間を削ってまで弁当作る気とかさらさらねぇよ。『パンがなければ寝ればいいじゃない』ってのが俺の掲げる座右の銘だ」

川崎「食欲より睡眠欲の方が強いとかあんた……」


川崎は呆れたように深い溜め息をつく。

……仕方ねぇだろ、比企谷家の人間は寝るのが大好きなんだから。

睡眠こそ至高。休日の二度寝は至福。しかし叩き起こされると烈火の如く激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム。睡眠を妨げる者は死をもって償うべし。


比企谷「そう言うお前はどうなんだよ。コンビニ弁当か?」

川崎「違う。あたしは自分で作って持ってきてる」

比企谷「ふーん、すげぇな」

川崎「別に、たいしたことないから。中身だって前日の夕食の残りだし、足りない分は朝食の余り物を詰めるだけ」

川崎「中学までは給食だったから弁当を作る必要なんてなかったんだけどね。高校では給食なくなったから」

比企谷「給食のありがたみって高校に入ってから気が付くよな。約250円であれだけの量食えんだぜ? しかも毎日メニューが違うとか、うちなんか1週間に1回はカレーだぞ」

川崎「いいじゃんカレー、あたしは好きだよ。カレーって作るの楽だし、日持ちもいいから」

比企谷「なんか主婦みてぇなこと言うなお前……」

川崎「そう? ……言われてみればそうかもね。うち両親共働きで家に帰ってくるの遅いし、自宅の家事はほとんどあたしがやってるからかな」

比企谷「学校に家事のダブルワークとかだいぶハードだなおい」

川崎「案外そうでもないよ。バイトと違って気を張る必要もないから慣れれば平気」

川崎「それに最近は妹が家事を率先して手伝うようになってきたし、すごく助かってる」

川崎「でもまだ刃物とかは危ないから台所には立たせてないんだけどね」

比企谷「そうか」


俺はそう言って会話を打ち切り、残りの焼きそばパンを一気に貪り尽くした。

空になった包装を鞄の中に仕舞い、コーヒー牛乳で喉を潤して空を見上げる。

澄み切った蒼穹に一筋の飛行機雲が浮かび、彼方の空の彼方まで伸びている。

尾を引く彗星のように進む飛行機を、ただ茫然と眺める。


比企谷「……そんじゃ、俺そろそろ行くわ。邪魔したな」


背中をフェンスから離し、俺は扉に向かって歩を進める。


川崎「……ちょ、ちょっと待ってあんた」


扉に手を掛けたところで、背後から川崎に呼び止められる。

その声に反応して振り返ると、川崎が下手で円筒状の物体を投げてくる。

山なりの放物線を描いて飛来する物体を両手で受け取る。

それは山吹色と黒色のコントラストが鮮やかな甘美なる一品、俺が常日頃から愛してやまないMAXコーヒーだった。


川崎「…………そ、それ、……あげる」

比企谷「……。どーも」


俺は川崎にギリギリ聞こえるぐらいの声量で、MAXコーヒーを掴んだ片手をひらひらと挙げて礼を告げる。

そして俺は屋上を後にした。


八幡はこのあとどこへ向かう? 以下より多数決


�奉仕部の部室

�テニスコート

�男子トイレ

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


【テニスコート】

まだ奉仕部の部室に向かう気にはなれなかったので、俺は戸塚がいるであろうテニスコートへと向かった。

制服姿の男子がテニスコートを眺めるのは如何なものかと考えたのだが、野郎を見る分には問題ねぇよな。

テニスコートは全部で3面。1面を男子テニス部、残り2面は女子テニス部が練習をしていた。


戸塚「次、ストローク!」

「「「ハイッ!」」」


戸塚の号令で少人数のテニス部員が動き、コートの四隅に移動する。

戸塚がネットを挟んだ左斜めの位置にいるひょろ長い部員にサーブを打つと、そいつは正面の小柄な部員に迫り来るボールを打ち返す。

小柄な部員が今度は戸塚の正面の位置にいる短髪の部員に流し打つと、そいつは戸塚にボールを打ち出してボールは戸塚の元へと戻ってくる。

そしてその動きを何度か繰り返して15分くらい経過しただろうか、戸塚が部員に水分補給をするように促した。

戸塚もベンチ側に置いてある水筒に手を伸ばし、控えめに主張する喉仏を上下させながら水分を補給する。

そして水筒の飲み口から戸塚の口が離れる。

戸塚の小さな唇が濡れていて、なぜかイケナイ感情が胸の奥底からせり上がってくる。

……ごくりっ。


——思いがけず生唾を呑み込んだその直後、俺の背中に悪寒が走る。


俺は勢い良く振り返るとそこには


八幡が振り返った先にいたのは? 以下より多数決

�海老名姫菜

�誰もいない

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


俺は勢い良く振り返ると、そこには海老名さんがいた。

肩まで伸びた黒髪に赤いフレームの眼鏡を掛けた、どこか身体の随所が小さな印象を受ける三浦の取り巻きその2。ちなみにその1は由比ヶ浜な。


海老名「はろはろ〜。やぁやぁヒキタニくん、隣いいかな?」

比企谷「え、あ、……どうぞ」


にこやかに微笑む海老名さんに話しかけられ、軽くキョドった俺は思わず敬語で返事をしてしまう。

海老名さんはテニスコート付近に立ち並ぶ木々に寄り掛かっていた俺の隣に膝を屈んでちょこんと座る。

なんか距離が近い近い近い。え、俺いつの間に海老名さんとフラグ建てたっけ?

おかしいな、そういった類のフラグは全てへし折ってきたハズなんだが……。

唐突に降って湧いた疑問の解を探し出そうとしたが、それは隣からほのかに香る石鹸の匂いで妨害された。

……ねぇ、なんで女子ってこんないい匂いすんの? 歩く芳香剤なの? そのうち修造とCMで共演とかしちゃうの? それは消臭剤だろ、てへっ。

そんないつも通りのセルフノリツッコミを脳内で繰り広げていると、腰下辺りから海老名さんに声を掛けられた。


海老名「ヒキタニくんはこんな所でなにしてるの?」

比企谷「俺は……その、戸塚の部活動風景を眺めに」

海老名「ほうほう、球遊びに精を出す戸塚くんの姿が気になったと……」


神妙な声でうんうんと頷く海老名さん。

……なぜだろう、海老名さんがそういう言い回しをするともうソッチの意味でしか捉えられない。

中身腐りすぎだろこの人……。


ごめんなさい、突然ですが一度更新をストップします。

再開は今日の昼前辺りからです。

それでは失礼します。

そういえばこのスレに誘導貼るの忘れてました。

10日振りに更新したので、ついでに報告しておきます。


【やはり俺はどの学校でもぼっちである。】

やはり俺はどの学校でもぼっちである。 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367336241/)

すみません、急用が出来てしまったので更新が遅れます。

5時くらいには戻ってこれると思うのですが、それまで更新出来ません。申し訳ないです。

思いの外はやく用事が済みました。

そろそろ再開します。

しばらくお待ちください。


俺はあえて海老名さんの発言を指摘せずに疑問を投げ掛ける。


比企谷「……え、海老名さんはなんでここにいるんだ?」

海老名「私? 私は同人誌のネタを求めて放浪中。冬コミに向けて色々と準備してるの」

海老名「最近のBLはネタが豊富で取捨選択が大変でね? 今日もいま話題の男子バレー部とか男子バスケ部を見てきたんだけどあまりピンとこなくて……」

比企谷「へ、へぇ……」


あれか、バレーとかバスケってあれだろ。ジャンプで大きなお姉さんに大人気なあの二作品だよな?

ちなみに俺はその二作品で潔子さんとアレックスが好きだ。

それで潔子さんの「……が、がんばれ」のシーンは俺史の漫画ベストシーンの第3位にランクインしてる。なにあれ戸塚には劣るけどスゲー可愛かった。

実際にあんな人がいたら俺は入部して速攻告白して速攻振られてる。……振られちゃうのかよ、そのまま気まずくなって退部するまである。


海老名「やっぱり二次元を三次元に求めるのは酷なのかなぁ。影山×日向とか赤司×黒子みたいな関係ってやっぱり無理が……」


近くに落ちていた枝を握って地面にガリガリと文字を刻んでいく海老名さん。

その前の発言がなかったら後ろから優しく声を掛けている場面だが、生憎俺には腐った船に乗船するという酔狂な真似をするつもりは毛頭ない。


海老名「……でも、私的には近い将来に葉山×ヒキタニが絶対に来ると思ってるんだよね。最初から三次元ならまだ可能性が……ぐ腐腐」


というより、乗船する前に船は腐海へ沈没しかけてた。

おいもう救いようがねぇぞ海老名さん。あまりの腐力の強大さに俺まで引きずり込まれそうなんだが?


↓4 八幡はどうする?(海老名さんでも可)


比企谷「落ち着け海老名さん、そんな未来は永劫やってこねぇから……」

海老名「そんなことないよ! ヒキタニくんならきっと素晴らしい家庭が築けるはずだから! その他の追随を許さない圧倒的な受けオーラがあれば誰でもカモンゲイでしょ!?」

比企谷「俺にソッチの趣味はねぇよ……っ!」


もうやだ海老名さん、ただ一緒にいるだけなのに俺の精神がどんどん削られてく。

それに反比例するかのように海老名さんのテンションは跳ね上がっていくし、なにこの吸引力ダイソンなの? 海老名さんって実はロボット?


比企谷「はぁ……」


あまりの絶望に思わず深い溜め息が漏れてしまう。

このままでは腐海溜め息になりそうな勢い。なにそれスゴイ臭そう。

俺は木から背中を離して海老名さんから逃げるように校舎の方へと歩いて行く。

そんな俺に背後からさらなる追い打ちが飛んでくる。


海老名「あれ? ヒキタニくん、サッカー部の部室はそっちじゃないよ?」

比企谷「いやいやいや、俺さっきソッチの趣味は否定したばっかだよね? 海老名さん話聞いてた?」

海老名「……はっ! まさかヒキタニくんは隼人くんの脱いだ上履きを堪能しにいくつもりなの!? 脱ぎたてではないところを狙うとはなんて玄人な真似を……」

海老名「そんなヒキタニくんにはえっと…………あ、あった。私が昨日描き上げた葉山×ヒキタニのくんずほぐれつなラ腐画をあげる! 受け取って!?」

比企谷「断固拒否する!」


海老名さんの鞄の中から出現した悪魔の紙片を受け取ることなく、俺は全速力で校舎内へと逃げ帰った。

その途中で材木座とすれ違ったが、なんか表情が俺以上に絶望色に染め上がっていたので無視した。

……もうこんな学校嫌だ、早く家に帰りたい。


八幡はどこへ向かう? 以下より多数決

�奉仕部の部室

�図書室

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


俺は目尻に浮かんだ雫を袖口でそっと拭って奉仕部の部室へと向かう。

その途中で色々あって忘れてたトイレに行って用を足し、手を入念に洗ってトイレを後にする。

特別棟の階段を登り、喧騒から切り離された静寂へと足を踏み込む。

そして奉仕部の部室がある4階に到着して、俺は違和感に気が付く。


比企谷「(……なんか妙に静かだな……?)」


元々静かな場所ではあるが、それでもこの静けさは今までに体験したことがない。

話し声どころか物音ひとつしない完全なる無音。

まるで廃墟にでも紛れ込んでしまったかのような錯覚に陥る。

廊下を進み、奉仕部の部室前まで辿り着く。

扉に手を掛けて横に動かすとそこには——


八幡が見た光景は? 以下より多数決

�静かに寝息をたてて眠る雪ノ下

�机に突っ伏して眠る由比ヶ浜

�誰もいない

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


斜陽を背中に浴びて、いつもの席で静かに寝息をたてて眠る雪乃がいた。

部室の窓が少しだけ開いていて、そこから入り込んだ風が艶やかな黒髪を優しく撫でる。

閉じられた瞼から伸びる長い睫毛、雪の化身のような純白の肌、仄かに朱色に染まる頬、形のいい桜色の唇。

——不覚にも見惚れてしまった。

俺は呼吸をすることも忘れ、網膜にこの絵画じみた光景を焼き付ける。

あまりの美麗さに身動きが取れず茫然と入口で立ち尽くしていると、不意に雪乃の唇がわずかに動いた。


雪ノ下「……あら、随分と遅かったわね比企谷くん」

比企谷「……。すまん、遅くなった。由比ヶ浜と平塚先生は?」

雪ノ下「由比ヶ浜さんと平塚先生は近くのお店へ買い出しに行ったわ。私は奉仕部の部長だからお留守番よ」

比企谷「そうか」


俺はいつもの席に腰を落ち着かせて、肩に掛けていた鞄を床に置いた。


八幡はどうする? 以下より多数決

�昨日借りたハンカチを返す

�自分がいない間に何があったか訊ねる

�由比ヶ浜と平塚先生が戻ってくる

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


安価は1でいきますね。

それと今回はここまでです。

次回の更新は明日の20時以降です。

それでは失礼します。


海老名さんは書いてて楽しい(小並感

八幡のポエムはヤバイ(褒め言葉

結局材木座安価は採用なんだろうか
指定外キャラの行動安価は無しになったんじゃないの?

>>430さん 『八幡は材木座に見つかる』で解釈するとギリギリ採用出来なくもないんですよね……。

とりあえずそれを踏まえた上で材木座には喋らせず地の文で登場させました。

のちに安価の選択肢として出すので、修羅場が見たい場合は選択してください。

そろそろ再開します。

しばらくお待ちください。


比企谷「(……そういや、昨日雪乃から借りたハンカチまだ返してなかったな)」


椅子に座って一息ついたあと、俺は昨日借りたハンカチの存在を思い出した。

家に帰って速攻洗濯して干して、朝早く起きてアイロン掛けて鞄の中に仕舞ったんだっけか。

俺は鞄の外側のジッパーを開いて、綺麗に折りたたまれたハンカチを取り出す。

それを持って椅子から立ち上がり、雪乃が座っている側まで移動する。


比企谷「雪乃」

雪ノ下「なにかしら比企谷くん」

比企谷「これ。昨日借りたハンカチ、返すわ」


俺が目の前にハンカチを差し出すと、雪乃はそれを受け取ってしげしげと見つめる。

……んだよ、汗は拭いたが他には何も汚してなんかいねぇしちゃんと選択したぞ。

一通り見分をし終えた雪乃はそのハンカチをブレザーのポケットに仕舞うと、「はぁ……」というやや呆れた感じの溜め息をついた。


雪ノ下「わざわざアイロンまでかけたのね。別にそこまでしなくてもよかったのに」

比企谷「別にいいだろ。俺は物の貸し借りはキッチリ清算しねぇと気が済まねぇんだよ」

雪ノ下「……あなた、普段はとことんずぼらでものぐさだというのに、変な所で几帳面なのね」

比企谷「全部ずぼらでものぐさじゃないだけマシだろ。俺だってやる時はやる男だぞ」

雪ノ下「やる時にやらなければいつやるというのよ……」

比企谷「今でしょ!」

雪ノ下「……は?」

比企谷「……あ、や、…………な、なんでもねぇ」

雪ノ下「……、そう」


……いかんな、なんか変なテンションで寒いボケをかましてしまった。

さっきの滑った俺のギャグに対して向ける雪乃の冷めた瞳がすげぇ怖かったです、まる。


このあとはどうする? 以下より多数決

�自分がいない間に何があったか訊ねる

�由比ヶ浜と平塚先生が戻ってくる

�トントンと扉を叩く音が響く

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


嫌な雰囲気を変えるべく、俺は雪乃に自分がいない間に何があったのかを訊ねることにした。


比企谷「……えっと、なぁ雪乃。俺が部室に来るまでの間になにかあったか?」

雪ノ下「いえ、特になにも」

雪ノ下「話し合いはあなたがいなければ始まらないもの。だからあなたがここに来るまでの間、依頼人が来ることもなくこの部室では閑古鳥が鳴いていたわ」

比企谷「そうか……。由比ヶ浜と平塚先生が買い出しに行った理由は?」

雪ノ下「それは由比ヶ浜さんが『昼休みの話し合いはちょっと堅苦しかったから、放課後の話し合いは少し和やかにやりたいなぁ……。で、でも内容はもちろん真面目にやるから!』と、突然言い出したのよ」

雪ノ下「そしてその提案に平塚先生が賛同して、二人は買い出しに行ったわ。私は別にお菓子に必要性を感じなかったのだけれどね」

比企谷「……なんつーか、由比ヶ浜らしい提案と言えば由比ヶ浜らしいな」

雪ノ下「ええ、彼女なりに気を利かせたのでしょうね」

比企谷「……、」


このあとはどうする? 以下より多数決

�由比ヶ浜と平塚先生が戻ってくる

�トントンと扉を叩く音が響く

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


ひとまず状況を把握することが出来たので、俺は自分の定位置へと戻った。

開いたままの鞄のジッパーを閉じると、トントンと控えめに扉を叩く音が部室内に響く。


雪ノ下「どうぞ」


奉仕部の部長である雪乃がそのノックに返事を返すと、ゆっくりと扉が開かれる。

そこには——


そこにいたのは誰? 以下より多数決

�海老名姫菜

�材木座義輝

�川崎沙希

�雪ノ下陽乃&城廻めぐり

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


そこにはコートを羽織って指貫グローブを装着した材木座がいた。


材木座「頼もう」

比企谷「いや、別にお前に頼まれる筋合いとかねぇから。帰れ」


そんな俺の辛辣な言葉など聞く耳持たず。

材木座は部室に堂々を足を踏み入れると、室内をキョロキョロと見渡し始めた。


材木座「ふむ、平塚教諭はおらぬのか……。まぁよい」

比企谷「なにがいいんだよ。てか何しに来たんだお前、用がないならさっさと帰れ」


ちなみに雪乃は絶対零度に匹敵するレベルの冷徹な瞳で材木座を見ていた。

材木座はその視線を受けて額から脂汗が滝のように流れ出ている。

早く出てかねぇと凍え死ぬか脱水症状で死ぬぞお前……。


材木座「……は、八幡よ。貴様つい先刻、庭球場付近にて女子生徒と逢引をしておったであろう」

比企谷「……は? なに言ってんだお前。ついに症状が悪化して幻覚が見えるようになったのか?」


俺は逢引なんてしたことねぇよ。

そもそも人と待ち合わせた回数すら両手の指で足りるくらいの経験しかないというのに。

なにお前、馬鹿なの死ぬの?


材木座「否、我は至って正常だ。そして我の『地獄耳(ヘルイヤー)』が同時に貴様の言質を掌握している」

材木座「『そんなことないよ! ヒキタニくんならきっと素晴らしい家庭が築けるはずだから!(裏声)』——と、貴様は女子生徒から迫られていたはずだ!」

比企谷「裏声使って喋んな、キモい。あとキモい。そしてキモい」


てかその女子生徒って海老名さんじゃねぇか。

こいつあの現場見てやがったのかよ……。


材木座「何度キモいと言うのだ貴様は!? わ、我はちゃんとこの目で見たのだぞ!? よしてる、ウソ、つかない!」

比企谷「設定なぞってキャラ演じて、己を偽ってるお前がそれを言うか……」


↓4 八幡はどうする? (雪乃でも可)

ゆきのん、ゴゴゴゴみたいな効果音が聞こえてきそうな雰囲気で問い詰める。

安価は>>455でいきます。

それと今回はここまでです。

次回の更新は昨日と同じくらいの時間からです。

それでは失礼します。


修羅場ルートが着実に進行中……?


比企谷「はぁ……」


全身に怖気が走るほどキモい材木座に対して俺は深い溜め息をついた。

そしてどうやって部室から材木座を叩き出そうか頭を悩ませていると、突然雪乃が椅子から立ち上がり俺の方へ歩み寄ってくる。


雪ノ下「……、」ゴゴゴゴゴ……!


……いかんな、俺も材木座の病気が感染したのかどうかは知らんが、なんか雪乃の背後に『ゴゴゴゴ』みたいな効果音が見えるんだが。

彼我の距離を詰める雪乃が浮かべるは太陽の如く温かみのある優しい微笑み。

しかしその背後には万物を凍てつかせる勢いで猛烈な吹雪が吹き荒れている。


雪ノ下「比企谷くん。あなたが今日の放課後この部室に来るまでに起きたことを、全て包み隠さず可及的速やかに白状しなさい」


腕を組んで俺を見下ろしながら、にっこりと目の笑っていない笑顔を浮かべる雪乃。

俺はこの状況を生み出した材木座をせめて道連れにしようと、雪乃の矛先を向けさせる為に材木座を睨んだ。

……睨んだのだが、さっきまでいた場所に材木座の姿はすでになかった。

あんの野郎、逃げやがったな……っ!


雪ノ下「特にテニスコート付近での件は詳細に説明すること。ちなみにこれは部長命令であり、ただの部員であるあなたに拒否権はないわ」

雪ノ下「そしてこの命令に関しては異論反論抗議質問口応えは一切受け付けない……って、比企谷くん? ちゃんと私の話を聞いているのかしら?」

比企谷「……、聞いてるよ」

雪ノ下「そう。なら早く説明しなさい」


雪乃に急かされて、俺は再び大きな溜め息をついて今までの経緯を説明した。


そしてすべて説明し終えると、雪乃は簡潔に「そう」と呟いて自分の定位置へと戻っていった。


このあとはどうする? 以下より多数決

�由比ヶ浜と平塚先生が戻ってくる

�トントンと扉を叩く音が響く

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


そのあとしばらくして、由比ヶ浜と平塚先生が両手にレジ袋を掴んで部室へ戻ってきた。


由比ヶ浜「たっだいまー♪」

平塚「すまない、遅くなったな」


二人はレジ袋をテーブルの上に置くと、すぐに中身を取り出し始める。

きのこの山にたけのこの里を筆頭に、たべっ子どうぶつ、じゃがりこ、チョコパイ、メントス、サイダー、ピーチティ、紅茶、コーヒー……エトセトラエトセトラ。

そしてあっという間にテーブルの上はお菓子や飲み物の大群に占拠されてしまった。

パーティーでも始めるつもりかよ……。

空になったビニール袋を由比ヶ浜が小さく折りたたんでいると、由比ヶ浜が不意にこちらを向き、ようやく俺が部室にいることに気が付く。


由比ヶ浜「あ、ヒッキー来んの遅いし! 今までどこ行ってたの?」

比企谷「……ま、まぁ、色々とな」

雪ノ下「由比ヶ浜さん。比企谷くんは部室に来る前に川崎さんや海老名さんと密会をしていたのだそうよ」

比企谷「おいこらそこ、確かにそれは事実だが誤解を招くような言い方はすんな。そもそも二人がいたのはただの偶然だっての」

由比ヶ浜「ふーん、そっか。ヒッキーが川崎さんや姫菜と……ね」

比企谷「ゆ、由比ヶ浜……?」


いつになく落ち着いた由比ヶ浜の声音に、俺の背中を得も言われぬ寒気が駆け抜けていく。


由比ヶ浜「……ねぇ、ヒッキー」

比企谷「な、なんだ?」


由比ヶ浜「…………み、密会って、なに? 『ハチミツを舐め合う会』の略?」


訂正。いつものアホな子ガハマちゃんでした。

むしろなんでその考えに辿り着いたんだよ、逆にすげぇな。


平塚「……由比ヶ浜、密会というのは『男女がひそかに会うこと』という意味だ。『ハチミツを舐め合う会』という酔狂な集団を表現する言葉の略語ではないよ」


平塚先生はやれやれと行った具合に首を左右に振って、頭の中身がふわふわしている(抽象的表現)由比ヶ浜に言葉の意味を説明する。

それを聞いて由比ヶ浜は「ああ、なるほど」と柏手を打った。


由比ヶ浜「って、ヒッキーそんなことしてたの!?」

比企谷「うおっ!? きゅ、急に大きな声出すんじゃねぇよ……」

由比ヶ浜「あぅ、……ご、ごめん」

比企谷「……。……別に、俺から会いに行ったわけじゃねぇよ。ただ偶然同じ場所にいただけだっての」

由比ヶ浜「そ、そっか……」

比企谷「ああ、そうだ」


俺が真相を告げると、由比ヶ浜はほっと小さな息を洩らした。


↓4 このあとはどうする?


携帯から失礼します
すみません、寝落ちしました
続きは昨日と同じ時間からです
では失礼します


さがみん赤髪とか意外
アニメのさがみんの声優って誰なんでしょうか
個人的には伊藤かな恵さんで脳内再生されてます


それから由比ヶ浜はいつもの席に座ってピーチティに手を伸ばす。

ちなみに平塚先生はすでにパイプ椅子に足を組んで座り、サイダーを片手にスルメを貪っていた。おいまだ勤務中。


雪ノ下「……、」


雪乃は両手を膝の上に乗せてその光景を怪訝そうな目で眺めていた。

そして同じく先生達の行動を傍観していた俺と目が遭うと、雪乃はすぐさま視線を明後日の方向に逸らす。

どうやらご機嫌斜めのご様子である。怒りのランクで表すとおこ。けど激おこぷんぷん丸には程遠いな。

……だがそうも不機嫌顔でいられると、なんだかこっちまで嫌な気分になるからやめて頂きたい。

なので俺は椅子から立ち上がり、雪乃の近くまで移動する。


雪ノ下「……、なにかしら」


雪乃は隣に立った俺に下から鋭い眼差しを向けてくるが、残念ながら下からだと自然と視線は上目づかいになるのであまり迫力はない。

迫力が半減していることなど知る由もない雪乃の頭上に軽く手を置いて、優しく髪を撫でながら俺は応じる。


比企谷「いや、なんつーかお前が無愛想な顔してるのが気になって仕方ねぇから、やめてくれるとありがたいんだが」

雪ノ下「……っ、……な、ならあなたもその腐った目をするのをやめてもらえるかしら」

比企谷「はっ、残念だがそいつは無理な相談だな。俺だって好き好んでこんな目をしてるわけじゃねぇんだよ」

雪ノ下「そう、だったら私が直々にその目を矯正してあげてもいいのだけれど」

比企谷「あー無駄無駄、そんな簡単に改善出来たら苦労しねぇっての」

雪ノ下「あら、それはやってみなければ分からないじゃない」

比企谷「まぁそうだな。でも骨折り損のくたびれ儲けにしかならねぇと思うぜ?」

雪ノ下「そうかしら」

比企谷「そうだろ」

由比ヶ浜「むぅ……」


おっと、今度はガハマさんが不機嫌になりつつあるな。

なにこれ面倒くさい。もう俺がいなくなれば丸く解決じゃね?


八幡はどうする? 以下より多数決

�雪乃の髪を撫でるのをやめて自分の席に戻る

�由比ヶ浜にも同じことをする

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


そんな考えが頭をよぎったが、それを実行したところでなにも変わりはしない。

それはただの問題の先延ばしだ。問題は解決か解消のどちらかを選択して対処しなければならない。

なので俺は雪乃の髪から手を離して自分の席へと戻ることにした。

椅子に座って、目の前に広がるお菓子の山に手を伸ばす。


比企谷「なぁ由比ヶ浜、俺もこのお菓子食っていいのか?」

由比ヶ浜「うん、いいよ。あ、あとそのコーヒーはヒッキーのだから」

比企谷「そうか、サンキュな」

由比ヶ浜「え、えへへ。……ど、どういたしまして」


てれてれと気恥ずかしそうに頬を掻く由比ヶ浜。

ただ礼を言っただけなのに顔赤らめんなよ……。


平塚「ちなみにこれはほとんど私の奢りだ。だから君達は気にすることなく思う存分食べたまえ」

比企谷「……、やっぱり食べるのやめるか」

平塚「おや、どうしたのかね比企谷? 君は私のお菓子が食べられないとでも言うつもりか?」

比企谷「なんで酔っ払った職場の上司みたいな口振りなんですか……」

平塚「ええい、つべこべ言わずに食べろ!」

比企谷「ちょ、先生無理矢理はだ——むぐっ!」


椅子から勢いよく立ち上がった平塚先生にするめを口の中へ突っ込まれる。

てかそれお菓子じゃねぇし、つまみじゃねぇか。

……まぁ食うけど。するめ好きだから別にいいけど。


このあとはどうする? 以下より多数決

�そろそろ話し合いを始める

�まだまだ続く放課後ティータイム

�トントンと扉を叩く音が響く

先に4票集まった選択肢で話を進めます。


奥歯を使ってごりごりとスルメを噛み潰していると、再び扉が叩かれる音が部室内に反響する。


雪ノ下「……、」


雪乃が目で『どうすればいいのかしら?』と訴えてきたので、俺はそれを首を横に傾げて応じる。

奉仕部の部長はお前なんだからお前が判断しろよ。

そんな俺の思考を察したのか、雪乃は小さく溜め息をついて「どうぞ」と言って招き入れる。

さっきの材木座の件があるから警戒でもしてんのかね……。

扉が開かれるとそこには——


そこにいたのは誰? 以下より多数決

�海老名姫菜

�川崎沙希

�雪ノ下陽乃&城廻めぐり

�戸塚彩加

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


陽乃「やっはろー♪」

城廻「お邪魔します」


扉が開かれるとそこには陽乃さんとめぐり先輩が立っていた。

……って、は? なんで陽乃さんが学校にいんの?


雪ノ下「……、」

由比ヶ浜「は、陽乃さんと城廻先輩?」


無言で陽乃さんを睨みつける雪乃と、何の前触れもなく登場した二人に目を丸くする由比ヶ浜。


陽乃「やぁやぁ雪乃ちゃんにガハマちゃん、来ちゃった♪」


陽乃さんはにこにこと人当たりの良い笑みを浮かべて可愛らしく舌を出す。うわぁ、あざとい。


平塚「……『来ちゃった♪』、じゃないだろう。何故ここに来た陽乃」


威圧する様に低い声音で平塚先生が陽乃さんに問い掛ける。

だが陽乃さんは微塵も臆することなく、朗らかな笑顔を顔に貼り付けて淡々と質問に答え始めた。


陽乃「んー? なんか無性に校内探索したくなっちゃってね。それでめぐりに案内を頼んだの」

陽乃「でもあんまり変わってなかったから、特に案内はいらなかったんだけどね」

城廻「ちょっとはるさん、その言い方はあんまりですよ……」

陽乃「あはは。ごめんごめん」

平塚「……陽乃、城廻は受験生なんだ。学習時間を削るような真似は」

陽乃「大丈夫だよ静ちゃん。ちゃんとこれが終わったら、わたしが責任を持ってめぐりの勉強をみてあげるから」

平塚「む……、」


陽乃さんは雪乃と同等かそれ以上に頭脳明晰で、県内の国立理工系に進学している。

めぐり先輩は確か進路が文系志望らしいが、学生時代はなんでも1番だった陽乃さんならどの教科も難なく教えることが出来るのだろう。


城廻「本当は1ヶ月後に行われる体育祭の打ち合わせではるさんを呼んだんですけど、打ち合わせの進行と監督を兼ねる厚木先生が急な出張で不在になってしまって……」

平塚「……なるほどな。そういえば今日は地域住民参加型競技に関する会議があったんだったな」


つまり陽乃さんは会議にお呼ばれして学校に足を運んだけれど、厚木がいなくて会議の進行が不可能になったと。

そして暇を持て余した陽乃さんが校内探索を始めて、訪れたのがこの部室ってわけか。なんで大人しく帰らねぇかなぁ……。


このあとはどうする? 以下より多数決

�可及的速やかにお帰り願う

�帰らせようとする前に陽乃が八幡にちょっかいを出す

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

すみません、今日はここまでです。

次回の更新は昨日と同じくらいの時間からです。

では失礼します。


陽乃「そういうこと。わたしだってもう立派な大人だよ? なんの理由もなく学校に来たりしないよ」

平塚「ふん、どうだかな」


平塚先生はほんの一瞬だけ雪乃に視線を向ける。

だが雪乃はそれに気が付くことなく、陽乃さんの動きを警戒するように睨めつけていた。

陽乃さんは陽乃さんで、にこにこと自然過ぎる完璧な笑顔を浮かべている。

……いかんな、なんだか空気が妙にギスギスしてきたぞ。

陽乃さんがこのままいても場が余計混乱するだけだし、ここはなんとかして帰ってもらわねぇと……。

密かに決意を固め、俺は陽乃さんに声をかける。


比企谷「……あの陽乃さん、ちょっといいですか?」

陽乃「ん? あれー、比企谷くんいたんだ? うわぁ、ぜんっぜん気が付かなかったよ」

比企谷「最初っからいましたよ。……ってか、入口から一番近い席に座る人間に気が付かないってどういうことですか」

陽乃「あー、ごめんね比企谷くん。あまりにも君の存在が矮小すぎて視界にすら入ってなかったの。ほんとにごめんね?」

比企谷「陽乃さん、謝ることが逆に相手を苦しめることになるのを知らないんですか? それ以上言うと俺ここから紐なしバンジーに挑戦するハメになるんですけど」

陽乃「こら比企谷くん、そんな簡単に自分の命を粗末にしちゃダメでしょ? たとえ比企谷くんの容姿がどんなに醜くても、性根がどんなに腐ってても、性格がどんなにねじ曲がっていても親不孝はダメだよ」

比企谷「……、」


おいなんだこの過剰迎撃。

俺が軽口を叩いただけなのに、陽乃さんは重火器フル装備で俺の鋼鉄の障壁を粉砕しようとしてきてるんだが?


↓4 八幡はどうする? 


陽乃「そもそも比企谷くんは全身から滲み出ているオーラがマイナスに振り切れてて、覇気が微塵も感じられないんだよね」

陽乃「それに加えて猫背で迫力に欠けるし、目は腐ってるし、運動不足で貧弱そうだし、瞳は腐敗してるし、感情表現乏しいし、眼球は腐乱しちゃってるし……」


ちょっと、なんで俺の目のことを三回もわざわざ言い換えてまで指摘するんですか。

いい加減その波状攻撃を止めて差し上げろ。でないと泣くぞ。わんわん泣くぞ。わおーん(働きたくないでござる!)。

だがいくら胸中で陽乃さんに訴えかけてもそれが届くはずがなく、無限バンダナを装備した陽乃さんに為す術なくウォール・ハチマンは突破された。

このまま陽乃さんに奉仕部の面々の精神が蹂躙され、お菓子やら何やらを戦利品として持っていかれるまでを妄想したところで、背後から冷然とした声音が耳朶を打つ。


雪ノ下「……姉さん、いい加減にして」


雪乃は椅子から立ち上がって陽乃さんの目の前まで移動すると、腕を組んで凛然たる態度を示す。


陽乃「おや? どうしたの雪乃ちゃん、そんな怖い顔して」


対する陽乃さんはきょとんと可愛らしく首を傾げてとぼけてみせる。

その反応に苛立ちを覚えたのか、雪乃は短い溜め息をこぼして陽乃さんを鋭く睨む。

そんな雪乃の様子を見て、陽乃さんの隣に立つめぐり先輩はおろおろあわあわしていた。


雪ノ下「どうしたもなにも、私は部員を馬鹿にされて黙って見過ごせるほど出来た人間ではないの」

雪ノ下「だから悪いけれど、出て行ってもらえるかしら?」


↓4 どうやって陽乃を帰らせる? (内容にそぐわないものは別の安価を採用します)

了解しました

それと今回はここまでです

再開は今日の昼以降になります

それでは


由比ヶ浜「そ、そうです! た、たしかにヒッキーは見た目とかふいんきとか色々残念ですけど、……い、いい所だってたくさんあるんですから!」


雪乃の冷酷な宣告に追従するように、由比ヶ浜が椅子から立ち上がって声を上げる。

でも最初の部分は同意しなくてもよかったんじゃねぇの? 同意でも人が傷つくことを察してくれよ。

なんなら他人から話しかけられただけで傷つくまである。

もう誰にも干渉されることのない密室に閉じ篭ることを検討し始めるレベルの繊細さ。

将来は自宅警備員になるのもありかもしれない。


陽乃「あらら、ガハマちゃんまでそんな怖い顔するかぁ……」

平塚「陽乃、どうやら君はあまり歓迎されていないようだぞ。だから今日は大人しく帰ったらどうかね、君はもう立派な大人なのだろう?」

陽乃「んー……、そうだね。でも、大人になっても子供心まで忘れたつもりはないよ。静ちゃんだって大人になっても遊んだりするでしょ?」

陽乃「誰かと遊ぶにはまず会話をしないとダメだからね。自分の要望を相手に伝えて、相手が承諾すればそれでよし。承諾しなかったら相手の意見を伺って妥協点を見つける。そうやって」

雪ノ下「……姉さん、論点をずらさないで頂戴。今はそんな話をしている暇なんてないわ、戯言なら大学のお友達とでもしていなさい」

陽乃「そ、そんなに邪険にしないでよ雪乃ちゃん。傷つくなぁ、もう。お姉ちゃんだってみんなとお話したいんだよ?」

雪ノ下「私は姉さんに話すことなんて一切ないわ」

陽乃「そんなこと言わないでさ」

雪ノ下「絶対に嫌」

陽乃「……、」

雪ノ下「……、」

城廻「……は、はるさん、ここは」

陽乃「みなまで言わなくていいよめぐり」

陽乃「……まったく、しょうがないなぁもう。雪乃ちゃんがどうしても嫌って駄々こねるから、今日は帰るね」

雪ノ下「私は駄々なんてこねていないわ。ただ姉さんを拒絶しているだけよ」

陽乃「そう。……でもね雪乃ちゃん、この世の中はそんな甘い考えが罷り通るほど単純じゃないからね」

陽乃「好きなものを好きと言えるのは学生の間だけだよ。大人になったら嫌いなものでも好きと言わなきゃいけない時期が遅かれ早かれやってくる」


陽乃「雪乃ちゃんのその愚かしいまでにまっすぐな素直さ、わたしは嫌いだな」




陽乃「じゃ、またね」

城廻「お、お邪魔しました」


雪乃の奮闘と由比ヶ浜と先生の後方支援により、陽乃さんはめぐり先輩と共に部室から去っていった。


このあとはどうする? 以下より多数決

�話し合いを始める

�スピーカーから完全下校を告げるチャイムが鳴り響く

先に4票集まった選択肢で話を進めます。


雪ノ下「……さて、由比ヶ浜さん。そろそろ話し合いを始めたいと思うのだけれど」


陽乃さん達が部室を出て行ったあと、扉の鍵を内側から閉めた雪乃は席に戻ると由比ヶ浜にそう提案した。


由比ヶ浜「うん、そうだね。そろそろいいかも」


雪乃に話しかけられてお菓子に手を伸ばしかけていた由比ヶ浜は手を引っ込めると、喉を潤す為かピーチティをストローで啜った。


平塚「陽乃の奴に思いのほか時間を割かれてしまったからな、そろそろ頃合いだろう」


平塚先生は口の端にするめの足を咥えながらその提案に同意する。


比企谷「……話し合いっつっても、なんかやることあんのか?」


俺が机に頬杖をつきながらそう呟くと、雪乃にジト目を向けられた。え、俺なんかマズイこと言った?


雪ノ下「あるに決まってるじゃない」

由比ヶ浜「そうだよヒッキー、話し合わなきゃいけないことはたくさんあるんだよ?」

比企谷「じゃあなにについて話し合うんだよ……」

由比ヶ浜「え? うん、えっとね、まずは」


↓4 何について話し合う? (内容にそぐわないものは別の安価を採用します)


由比ヶ浜「まずはヒッキーについて話し合うの」

比企谷「……ふぅん? なるほど、そんでアレか。白熱する議論の末に俺の弱点を導き出して、そこを執拗に攻め立てるわけか」

由比ヶ浜「ぜんぜん違うからっ!? ヒッキーについて話し合うってのは、ヒッキーの好きな食べ物とか……こ、好みのタイプとか色々あたしらが聞いて、それを元にゆきのんと色々話し合うって意味!」

雪ノ下「だから私はさっき『話し合いはあなたがいないと始まらない』と言ったのよ」

雪ノ下「質問があってもその問いかけに対する回答者がいなければ、問答は成り立たないでしょう?」

比企谷「……なるほどな」


それで得た情報を駆使して俺の孤独体質の改善を図るわけか。……別に俺は改善を望んでるわけじゃねぇんだがな。


↓4 このあとはどうする?


比企谷「……でもな、こう言っちゃなんだが、俺は別に改善なんて求めてねぇぞ?」

比企谷「この孤独体質でも特に不満はねぇし、それにこうしている方が気楽だ」

比企谷「俺は誰かに束縛されんのは嫌いなんだよ。もし仮に俺が誰かと付き合ってて、その相手から夜中に泣きながら電話がかかってきたらその時点で別れる自信があるぞ」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

雪ノ下「……、」

平塚「……、」

比企谷「だいたい時間ってのは自分の為にあるもんだろ? なんで他人の為に不平等な限られたリソースを消費しなきゃならねぇんだよ」

比企谷「孤独万歳、ぼっち最高。人生を楽しむには独り身が最適なんだよ」

比企谷「1人なら黙々と趣味に打ち込んだり出来るし、それに隠居生活を始める老人は大半が独り身じゃねぇか」

比企谷「つまり俺は世代を越えて時代の先を行く次世代のぼっち。周囲の人間が俺に追いついてこれていないだけなので、俺は改善を必要としない。変わるなら周りの人間が変わるべきだな」



↓5 八幡が吐露した本音。 彼女らはどう動く? (雪ノ下、由比ヶ浜、平塚の三人の内の誰かが主語で行動指定)

雪ノ下「……そうね。比企谷くん、私もあなたの考えには同意見よ」

由比ヶ浜「ゆきのんまで……っ」


雪乃は瞑想でもするように静かに目を閉じて小さく頷く。

ぼっちの思考を理解出来るのはぼっちのみ。

俺に匹敵するレベルで孤独を極めた雪乃とは対照的に、今まで他人との間に流れる空気を読んで同調してきた由比ヶ浜は唇を噛み締めて眉尻を下げていた。


雪ノ下「私も1人で読書をしている時が一番心が安らぐわ。ただ黙々と文字の配列を追い、文面から景色を想像して、筆者の心情を読み解きながらページを繰る。誰にも干渉されない時間というのは、それはそれでとても素晴らしいものよね」


閉じられていた瞼がゆっくりと開き、真っ直ぐで澄んだ淀みのない瞳が俺に向けられる。


雪ノ下「けれど私は最近になって、1人ではない時間も本当は素晴らしいものではないのかと考えるようになったわ」


そして雪乃は視線を由比ヶ浜、平塚先生の順に向けて再び目を閉じる。


雪ノ下「そう考えるようになったのは、きっとあなた達がそばにいたからだと思うのよ」

雪ノ下「私はこんな性格だから、今まで何度も何度も他人と衝突を繰り返して相手を傷つけてきたわ」

雪ノ下「そして気がつけば、周囲には誰もいなくなっていた」


自嘲気味に小さく鼻を鳴らして、悲痛な微笑みを浮かべる雪乃。

違う、やめろ。なんでお前がそんなことを言い始めるんだ。

今はそんな話は関係ないだろ。なんで引かないんだ。なんで距離を詰めようとするんだ。


雪ノ下「だから高校でもきっと同じ事が起こるものと想定していたわ。……けれど、現実は私の予想を大きく裏切った」

雪ノ下「あの日が初めてだったわ。私の正論に真っ向から歯向かって、捻くれた言葉を投げ返してきた男の人は」

雪ノ下「あの日が初めてだったわ。私の辛辣な言葉に対して、尊敬するような眼差しを向けてきた女の人は」


やめろ。そんな優しげな笑顔を俺に向けるな。

またその表情に浮かれて勝手に勘違いして、結局は心に傷を負うのは目に見えている。

だから、やめろ。やめてくれ。


雪ノ下「私はね、比企谷くん。あなた達と出逢えて本当に良かったと思っているわ」

雪ノ下「でもその反面、いろいろと苦心することは多かった。馴れない人付き合いで、授業中にも関わらず苦悩することも少なくなかった」

雪ノ下「人との触れ合いというのは複雑怪奇で、避けたくなる気持ちも理解できる」

雪ノ下「けれど、逃げてばかりではなにも変わりはしない。それは問題の先延ばしであって問題を解消しているだけよ。根本的な解決には至っていない」

雪ノ下「比企谷くん、1人で問題が解決出来ないのであれば、私があなたへ助言を呈してあげる。救いの手を差し伸べてあげる」

雪ノ下「自分で言うのは少し気が引けるのだけれど、私は体力がないという欠点を除けば基本高スペックよ。あなたの要望はすべて叶えられると自負しているわ」


やめろ。お願いだから。これ以上踏み込んでくるな。頼むから。


雪ノ下「主観ではわからなかったことも、客観的な意見を取り入れることで見えてくるものがあると思うの。…………だから」

比企谷「……っ」


八幡はどうする? 以下より多数決

�わざとコーヒーを零して部室から出て行く

�「……考えとく。後ろ向きにだがな」と呟いて沈黙

先に5票集まった選択肢で話を進めます。

これは多数決だから、連投つうか二回投票はなし……だよな?


雪ノ下「…………だから」


やめろ。それ以上しゃべるな。聞きたくねぇんだよその先は。


雪ノ下「…………だから、比企谷く」

比企谷「……考えとく。後ろ向きにだがな」

雪ノ下「——っ、……そう」

比企谷「……っ」


奥歯を強く噛み締める。

拳を固く握り締める。

この場から逃げ出したい気持ちを必死に堪えて、俺は雪乃の言葉を被せて断ち切った。

ここで話は終わりだ。だからもう会話を続ける必要はない。

もし誰かが会話を続けようとしても、俺が相槌を打つことはない。

誰かに質問を投げかけられても、回答してやるつもりもない。

——けれどそれは、さっきの雪乃の言う通り問題の先延ばしだ。

俺は逃げているのだ。現状の変化から。

先の見えない未来へ進むことを頑なに拒絶している。

自身が変わってしまえば、それまで『比企谷八幡』という一個人が積み上げてきた経験則は通用しなくなる。

常に孤独と向き合い、時に衆目に醜態を晒されながら、刻みつけられた数多の心の傷と共に得た酷く汚れた経験値。

獲得したステータスはすべて防御に注ぎ込んだ。

誰にも干渉されないように、強固で強靭な心の防壁を作り上げた。

だがその壁も、いまや貫通寸前まで追い込まれている。

実際、何度か貫通しかけていた。

それを必死に益体もない言葉で取り繕って、なんとか補強してここまでやってきた。

だがそれももう限界。壁を補強する為の道具が底を尽き始めている。


——もう諦めてもいいだろ。


そんな考えが頭を過ることは今までに何度もあった。


しかし、現状からの変化と引き換えに築き上げたものを喪失してしまったは『俺』は、果たして『俺』と呼べるのだろうか。

>>565さん あれ? 本当だ、連投があったとは……。 数字の方しか注目してなかったので気が付きませんでした、申し訳ないです。

さて、どうしましょう? 

安価は見事に票が割れてましたし、>>567の続きに組み込もうとすれば出来ないこともないんですが……。


これってどっち選んでも八幡は後ろ向きに進んでいたのかな? それならもうこのまま行っていいんじゃないかな けど1で少しでもいい方向に向かうなら続きでやってほしいね

>>570さん いえ、1を選ぶとここまで後ろ向きにはならないです。 言葉で厳然と突き放していないので、まだかろうじて挽回の余地が残されています


よし、困ったときの安価です。


以下より多数決

>>554の続きを1

>>567をそのまま継続

�まあ待て、ガハマさんがゆきのんの言動をただ指を咥えて見ているわけがないだろう(>>554から別の選択肢という意味です)


先に4票集まった選択肢で話を進めます。


主語が八幡という制限がなくなったので、選択肢としてあげられるのは4つです


どうする? 以下より多数決


�八幡がわざとコーヒーを零して部室から出て行く

�由比ヶ浜が雪乃の台詞に言葉を被せる

�平塚先生が詰め寄りすぎている雪乃を窘める

�完全下校を告げるチャイムが鳴り響く


先に4票集まった選択肢で先に進みます。

了解しました。安価は2でいきますね。

それとすみません、今から家の用事があるので更新を一度ストップします。

加えて学校の課題とかもあるので再開は22時以降になります。

あと『俺ぼっち』の方は少しだけ更新します。それはおそらく日付が変わった辺りになるかと……。

では一度失礼します。


雪ノ下「…………だから」


やめろ。それ以上しゃべるな。聞きたくねぇんだよその先は。


雪ノ下「…………だから、比企谷く」


由比ヶ浜「ゆきのんストップ! 抜け駆け禁止っ!」


逃げ出したい気持ちを必死に抑えつけていた俺の耳朶を打ったその声は、今まで聞いた由比ヶ浜の声の中で一番大きな声だった。


雪ノ下「——っ、……え? …………あ」


その声で我を取り戻した雪乃は、ようやく自分が俺に詰め寄り過ぎていたことに気がついた。


由比ヶ浜「落ち着いてゆきのん。ヒッキーもたぶん、困ってるから」

雪ノ下「……っ。……ごめんなさい由比ヶ浜さん、比企谷くん。私……」


顔を俯かせ、自らの言動を悔いる雪乃。

由比ヶ浜はそんな雪乃のそばへ近づいて行き、片膝を地面について雪乃の両手を優しく包み込む。


由比ヶ浜「謝るのはあとで聞くから、今は深呼吸して落ち着いてゆきのん」


優しく子供を諭す母親のような声音で、雪乃をなんとか落ち着かせようとする由比ヶ浜。

それに促されるまま、雪乃は何度か深呼吸を繰り返す。

そんな二人を見ていた平塚先生はテーブルの上に置いてあった紅茶を掴むと、開け口を開いてストローを差し込んだ。


平塚「雪ノ下、これでも飲んで落ち着きたまえ。話し合いはそれからだ」


平塚先生は紅茶を雪乃に差し出すと、雪乃はそれを受け取って少しだけ口に含んだ。


↓4 このあとはどうする? (内容にそぐわないものは別の安価を採用します)

なんかいい加減着地点見つけないとgdgdになりそう


それからしばらくして、ようやく雪乃は落ち着きを取り戻した。

しかしその表情は暗く沈痛な面持ちで、とてもじゃないがずっと見ていられるものではない。

だから俺は目を逸らしてしまった。

知人の悲しみに満ちた顔をずっと眺めていられるほど、俺の心は強く出来ていない。


由比ヶ浜「ゆきのん、落ち着いた?」

雪ノ下「……ええ、もう大丈夫よ。心配をかけてごめんなさい」

由比ヶ浜「うん、いいよ。許してあげる。……でも、今後はああいうのなしね」

雪ノ下「……そうね、善処するわ」

由比ヶ浜「約束だからね」

雪ノ下「……約束……」

由比ヶ浜「そう、約束。ねぇゆきのん、小指出して」

雪ノ下「? 小指?」

由比ヶ浜「うん、指切りするの。ちゃんとゆきのんと約束を守る為にね」

由比ヶ浜「指切りげんまん、嘘ついたらヒッキーもーらう、——指切ったっ!」

比企谷「ちょっと待て由比ヶ浜、なにお前勝手に決めちゃってんの?」


だが今の由比ヶ浜の言葉には聞き捨てならなかった。

なにさらっと俺の所有権を保持してんのこの子、油断も隙もねぇじゃねぇか。


由比ヶ浜「いいじゃん別に、減るもんじゃないって」

比企谷「いやいやいや、俺の確固たる尊厳とか保障された人権とかが急激な勢いで減退してるんだが?なに俺奴隷なの?」

由比ヶ浜「そんなわけないじゃん、ヒッキーはヒッキーでしょ?」

比企谷「いや、そりゃそうなんだが……」


いかん、アホの子の対応は色々と面倒だ。なんか話が微妙に噛み合わねぇ。

頭の中でどう説明したもんかとあれこれ考えてみるが、なかなかうまくいかない。


由比ヶ浜「……。ヒッキーはさ、あたしやゆきのんといるのはつまんない?」


脳内を知恵熱で温めていると、さきほどの大声とは打って変わり弱々しい声が俺の耳に届く。


比企谷「……な、なんだよ急に」

由比ヶ浜「だ、だって、さっきのヒッキー『人生を楽しむには独り身が最適』とかなんとか言ってたから、あたしらはヒッキーにとって邪魔なんじゃないのかなって思って……」

比企谷「それは……」


——邪魔じゃない。という言葉を口には出さずに飲み込む。

それを口にするのは覚悟を決めた時だけだ。

今までの自分を全てかなぐり捨てる覚悟が決まった時に、この二人の存在を認めることが出来る。

だから俺は無言の返事をした。

これが問題の先延ばしであることを自覚しながら、俺は固く口を閉ざした。


由比ヶ浜「……いやさ、あたしもヒッキーの言いたいことはなんとなくはわかるんだ」

由比ヶ浜「あたしってほら、今まで周りに合わせて生きてきたから、ゆきのんと親友になるまでちゃんと心の底から友達って呼べる存在はいなかったの」

由比ヶ浜「中学の頃の友達も今じゃ全然会わないし、連絡もとってない。メールを送っても何人かはアドレス変えちゃってたりしてメール出来なかったりするし……。あたしが友達だと思ってた子は、友達じゃなかったみたい」


乾いた笑い声を洩らしながら、無理矢理顔に笑みを貼り付けて気丈に振舞おうとする由比ヶ浜。

……そうか、こいつも。


由比ヶ浜「だから独り身のつらさも……痛いほどよく知ってる」



——俺や雪乃と同類なのか。



由比ヶ浜の言葉を聞いた八幡は? 以下より多数決

�「……そうか」と呟いて由比ヶ浜に近づいて頭に手を置く

�「……甘いな由比ヶ浜。友達と思える相手がいた時点でお前は孤独なんかじゃねぇんだぞ」と言って道化を演じる

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

>>599さん そうですね、そろそろ着地地点を見定めてルートを確定したいと思います。

少なくともこのスレの間にルートを確定して、次スレあたりでエンディングを迎えたいですね。

それと今日はここまでです。

再開は今日の20時以降です。

それでは失礼します。

ルートを確定したあとに他の子に行くと刺されちゃったりしますか?

えっ?
ゆきのんルートだよね?

逆に聞こう
一体いつからゆきのんルートだと錯覚していた?

奉仕部女子ルートだと思った?

残念、平塚先生ルートでした!

ゆきのんが八幡を落とす宣言してなかったっけ? 

してましたね

正直これでゆきのんルートじゃなかったら
ゆきのん相当みじめだよね

>>609さん ゆきのんの場合は中の人ネタで可能性はありますが、そういう流れになるかは未定です

>>610さん 今のルートを言うなら『ぼっちルート』まっしぐらです

>>611さん 言おうとしたら先に言われてた……。

>>612さん 川なんとかさんのことも思い出してあげてください

>>613さん >>614さん 八幡「いつ俺が雪乃の手に落ちたと錯覚していた?」

>>615さん 初恋(?)はそんなもんだと思います


3スレ目も折り返し地点を過ぎました。

そろそろ再開……といきたいところなんですが、学校の課題が出されたので更新が遅れます。

申し訳ございません、もうしばらくお待ちください。

修羅場の後の八幡を戸塚に会わせるなよ!絶対だぞ!

そうだ、戸塚ルートというのもあっていいんじゃないか?

剣豪将軍ルートか葉山君ルートでお願いします!

???「ふふフフフ腐腐…」


>>619さん >>620さん >>621さん 海老名さん増殖しすぎぃ!


えー、とりあえず課題が終わったので再開します。

もうしばらくお待ちください。



>>618さん 八幡「それはフリ?フリか?フリだよな?よし戸塚ルート突入だ(嘘)」


比企谷「……そうか」


肩を小刻みに震わせて今にも泣き出しそうな雰囲気の由比ヶ浜に、俺は素っ気ない相槌を打った。

由比ヶ浜も俺や雪乃と同じ心の痛みを抱える者。

ただ由比ヶ浜の心の痛みが発症した原因は、俺達とは根本的な部分で異なっていた。

俺や雪乃は孤独になった原因は自分ではなく、周囲の人間やこの世界そのものが原因だと考えていた。

自分は正しいことをしているはずなのに、周囲の人間はそれを欺瞞だなんだと口汚く批難する。

自分はただ普通に過ごしているだけなのに、世界はそれを勝手に優秀だなんだと持ち上げて知らぬ間に目の敵にされる。

しかし由比ヶ浜は孤独になった原因を他人ではなく、周囲に迎合出来ない自分自身だと考えたのだ。

自分が相手を満足させることが出来なかったから、相手は友達になってくれなかった。

自分が余計なことを口走ったせいで、相手は自分から離れていってしまった。

もちろんそんな証拠は一切ないはずなのだが、由比ヶ浜は自分でそう結論づけて行動に移してしまった。

自己を押し殺して他人に合わせるという選択肢を。

アイデンティティを自ら放棄するような行為を、由比ヶ浜は選んでしまったのだ。


由比ヶ浜「……、」


俺の淡白な言葉を聞いた由比ヶ浜は顔を俯かせて沈黙する。


雪ノ下「由比ヶ浜さん……」


そんな由比ヶ浜を見て、雪乃は戸惑いの表情を浮かべながら右手を宙に彷徨わせていた。

由比ヶ浜に触れようか触れまいか、急に告げられた事実に困惑して距離間を掴みかねている。

そしてどうにも踏ん切りがつかない雪乃は俺へ視線を向けた。

縋るような瞳で見詰められ、俺は返答の代わりに椅子から立ち上がって二人の元へ近づいて行く。


静謐な空間を裂くように、規則的な音が踏み鳴らされる。

それに反応するように、スピーカーからノイズが鳴り出す。

完全下校を告げるチャイムの前兆だ。

この部室で幾度となく聞いた、一日の終焉を告げる鐘の音。


——俺も、今の『自分』へ終焉を告げるべきなのだろうか。


そんな益体もないことを考えながら、俯く少女の頭に手を置くと同時に無機質な音色が鳴り響いた。


このあとはどうする? 以下より多数決


�それぞれの自宅へ帰宅する

�奉仕部の3人で寄り道をして帰る

�平塚先生にラーメン屋へ強制連行される八幡


先に5票集まった選択肢で先に進みます。


安価は2でいきますね。

それとすみません、今日はもう眠いので寝ます。

再開は明日の21時前後です……たぶん。

それでは失礼します。



※そろそろルート分岐のフラグを仕込んでいきますので、今後の安価はご注意下さい。


チャイムが鳴ると平塚先生はテーブルの上に広がるお菓子をビニール袋に詰め始めた。


平塚「さて、今日はもう鐘が鳴ったから帰りたまえ。このお菓子は君達で適当に分けるといい」


平塚先生は俺に袋を押し付けて早々と部室を後にした。

かつかつという床を叩く硬質な音が徐々に遠ざかって行く。

……さて、どうしたもんかな。

由比ヶ浜はいまだに顔を俯かせていた。

雪乃は様々な感情が込められた瞳で俺と由比ヶ浜を交互に見ている。

本音を言えばさっさとうちに帰ってごろごろしたいのだが、流石の俺もこの場でそんなふざけたことを言うほど浅慮ではない。

だから本音を押し殺す。俺の大嫌いな欺瞞で本心を偽る。


比企谷「……、」

雪ノ下「……、」

由比ヶ浜「……、」


そして訪れる沈黙は重く、苦しく、息が詰まる。

音の死んだ世界では、誰も言葉を告げようとしない。

静寂だけがこの場を支配する。


由比ヶ浜「…………あ、あのさ」


しかしそんな無音の束縛から逃れるように、小さな反抗の意志を秘めた声が鼓膜を揺らす。


由比ヶ浜「……二人とも、今からちょっと付き合ってくんない?」


その声に、俺と雪乃は互いに顔を見合わせて首を縦に振った。


由比ヶ浜はどこへ向かおうとしている? 以下より多数決


�由比ヶ浜の自宅

�学校近くの公園

�駅前のカラオケ

先に5票集まった選択肢で先に進みます。

安価は2でいきますね。

1レスしか更新してませんが今日はここまでです。

再開は今日と同じくらいの時間です。

短くて申し訳ございません。

それでは失礼します。


由比ヶ浜に先導されて向かった先は学校近くの公園だった。

園内にはブランコと砂場、その付近にベンチがあり、それに寄り添うように街灯が立っている。

このご時世に日没まで外で遊ぶ子供はいないらしく、公園には俺達以外誰もいない。

俺は押していた自転車のスタンドを立て、街頭に背中を預ける。

由比ヶ浜はブランコに座り、少々耳障りな金属音を響かせる。

雪乃はブランコの前に設置されているベンチに腰掛ける。

そして暫しの沈黙のあと、由比ヶ浜が口を開いた。


由比ヶ浜「……え、えっと、さっきはごめん。なんかあたし同情誘うようなこと言っちゃって……」


薄闇が広がる中でも街頭の明かりで見えるはずの由比ヶ浜の表情がどんどん暗くなっていく。

おいおいやめてくれ、自分から場の空気を悪くして一体何になるってんだよ。

……。


比企谷「……同情? ばっかお前、そんなんでぼっちマイスターである俺の気が引けると思ったら大間違いだぞ」

比企谷「俺は中学時代の友達に会わないどころかまずいないから会えねぇ」

比企谷「アドレスを教えてもらっても、数日後にはメーラー・ダエモンさんとかいう名の外国人がご丁寧にハッキングして、相手のアドレスを書き換えてメールを送ってくるからメールもロクに出来なかった」

比企谷「だいたいさ、友達と思える相手がいた時点でお前は孤独なんかじゃねぇんだ。独り身のつらさもお前の思い込み、錯覚だ」

比企谷「由比ヶ浜、世の中には『お友達制度』なるものが存在してだな、相手に月3万を払って友人役を演じてもらってまで繋がりを求めようとする人間だっているんだぞ? お前はそんな奴らの気持ちを考えたことがあんのか」

由比ヶ浜「……え? ちょ、ヒッキーいきなりなに言ってんの……?」

雪ノ下「由比ヶ浜さん、比企谷くんは遠回しにあなたを励まそうとしているのよ。察してあげて」

比企谷「ちょっと待て雪乃、違うから。これはぼっちがにわかぼっち対して勘違いを指摘してやってるだけだから。そこんとこ意味を履き違えんな」

雪ノ下「そう、なら私が意味を履き違えたのは捻くれたあなたに原因がありそうね。比企谷くんはこの件に対してどう落とし前をつけてくれるのかしら」

比企谷「……ふっ、残念だったな。我が社は当社の製品に対して一切の責任を負わねぇんだよ」

雪ノ下「それはもはや会社として成立していないじゃない……」

比企谷「そうだな、闇市に出回っている品に憲法は通用しねぇ。——つまり、出品者である俺がルールだ!」

雪ノ下「……なるほどね。けれど、規則も認知されなければただの文字の羅列よね。あなたの存在をちゃんと認識してくれる人が、私達以外にいるのかしら」

比企谷「……っ、……い、いるに決まってんだろ」

雪ノ下「そう、なら参考までに誰がいるのか聞かせてもらえるかしら」

比企谷「……」


八幡をちゃんと認識してくれているのは? 以下より多数決

�平塚静

�川崎沙希

�戸塚彩加

�雪ノ下陽乃

�やっぱりいない

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


由比ヶ浜「あ、あたしも気になる……かな」

雪ノ下「さあ比企谷くん、由比ヶ浜さんもこう言っているわ。大人しく白状しなさい」

雪ノ下「そして返事の内容如何によっては、それ相応の報いを受けることになるから気をつけるように」


雪乃は腕を組み、瞳に冷酷さを灯して鋭利な視線を俺へ向けた。

その眼光に思わず背後を冷たいものが走るのを自覚しながら、雪乃の問い掛けに答える。


比企谷「…………ひ、……平塚先生」

雪ノ下「……、そう。確かに平塚先生ならあなたの存在をちゃんと認識してくれているでしょうね」

雪ノ下「平塚先生は奉仕部の顧問だもの。顧問が部員の事を認識しているのは当たり前のことよね」

由比ヶ浜「そっか、よかったぁ。……もしもヒッキーがさいちゃんとか川崎さんの名前を出したらどうしようかと思った……」


言えない、選択肢として浮かんでいたなんて口が裂けても言えない。


このあとはどうする? 以下より多数決

�平塚先生から託されたお菓子を分けあって食べる

�近くの店に入る

�それぞれの家へ帰宅する

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

安価は2でいきますね。

すみません、今日はここまでです。

再開は昨日と同じような時間からです、それでは。

深夜更新は社会人に優しくないからやめちくりー

>>676さん 申し訳ございません、深夜前でないと更新が出来ないんです……。

仮眠とったらアニメの冒頭すっ飛ばす大惨事ですよ、どういうことだ。

見てる人はあまりいないでしょうが、少しだけ更新します。

しばらくお待ちください。


そのあと雪乃は「他には? もしいるなら正直に話をした方が身のためよ?」という意味を込めた瞳を向けて来たが、徹底的にスルーを決め込んだ。

ヘタに喋って傷口広げて、墓穴を掘らねぇようにしないとな。自制自重自戒、口は災いの元だし。


それから散発な会話を何度か繰り返していると、突然由比ヶ浜がブランコの椅子の部分に立ち、夜空に向かって手を差し伸ばす。

なに、星でも降ってくるのか? スターダストシェイクハンドとかやめろよな、俺が何度もタイムリープするハメになっちゃうだろ。


由比ヶ浜「ねぇねぇ二人とも、今から近くの店にごはん食べに行こうよ」


というくだらない事を想像したが、実際はただ発言の為に挙手をしただけだった。

先程の沈痛な面持ちはどこへやら、由比ヶ浜は楽しそうな声音と共にそんなことを言う。

しかし俺の財布の中身は現在500円ほど。昨日雪乃にメシを奢ったから元々少ない財政事情がさらに圧迫されている。

ワンコインしかない場合、近くのファミレスに入ってもドリンクバーを頼むかサイドメニューを頼んでお終いだ。

そろそろバイトしねぇとダメか……? 小金の錬金術師にも限界が見えてきたし。……でも働きたくねぇなぁ。


比企谷「いや、すまん由比ヶ浜。俺ちょっと今手持ちがな」

由比ヶ浜「大丈夫だよヒッキー、あたしがおごってあげるから」

比企谷「最後の『い』ぐらい言わせろよ……」


俺にしては珍しく明確な理由を述べて誘いを断ろうとしたのだが、由比ヶ浜にきっぱりと拒否された。


由比ヶ浜「ヒッキーにはなんだかんだでお世話になってるし、たまには……その、さ」

由比ヶ浜「……やー、なんかこういうのって日頃のお礼って言うの? そういうの、一度やってみたかったんだよね」


そう言って由比ヶ浜はブランコから颯爽とジャンプして地面に着地すると、体操選手のように両手をYの字にあげた。

だが俺と雪乃が称賛の拍手を送るはずもなく、場には嫌に冷たい空気が流れ出す。俗に言うスベリだ。

そのせいか、由比ヶ浜はしばらくそのまま硬直して動かなくなる。


比企谷「……? おい、どうした由比ヶ浜」


だがあまりにも微動だにしないので、堪らず由比ヶ浜に声をかけた。

すると由比ヶ浜はまるで錆び付いたロボットのような動作で首をこちら側に回すと、


由比ヶ浜「…………足、ひねっちゃった」


弱々しい声で、そう力無く呟いた。


足首をひねった由比ヶ浜、八幡はどうする?

�近くの自販機で冷たい飲み物を買ってきて捻挫した部分を冷やす

�由比ヶ浜を自転車の荷台に乗せて自宅まで送り届ける

�平塚先生に助けを求める

先に5票集まった選択肢で先に進みます。


比企谷「……は? マジで?」


おいおい嘘だろ、あの程度のジャンプで足ひねるとか運動神経低すぎじゃないですかガハマさん。


由比ヶ浜「……超いたい……」


MN5(マジで泣き出す5秒前)な由比ヶ浜は蚊の鳴くような小声を洩らす。

どの程度のひねり具合なのか確認したかったのだが、現在の由比ヶ浜の服装は制服(ミニスカ)である。

加えて負傷した箇所は足首、その部位を診察するには必然的に屈まなければならない。

女子の前で屈むという行為はスカートの中を覗く行為と同義である。

そりゃ健全なる男子高校生は暗幕の内側に隠された禁断のデルタ地帯に興味がないと言えば嘘になるが、やはり知人の絶対不可侵領域を侵そうとするのははたして許される行為なのだろうか、いや治療する為には仕方がないこと


雪ノ下「由比ヶ浜さん、少し診させてもらうわね」


……みたいな馬鹿な想像をしていたら雪乃が素早く診断を開始した。

雪乃は屈んで由比ヶ浜の足首に触れて症状を確認する。

その手が触れる度に由比ヶ浜の身体が小刻みに震える。

そしてドクター雪乃が下した診察結果は軽度の捻挫だった。

いわく、湿布を貼って大人しくしていれば翌日には治るとのこと。


由比ヶ浜「……あ、ありがとゆきのん」

雪ノ下「どういたしまして」


屈んで皺の寄ったスカートを直しながら雪乃は立ち上がると、くるりと向きを変えて視線を俺に向ける


雪ノ下「比企谷くん、由比ヶ浜さんを自転車の荷台に乗せて彼女の自宅まで送り届けてあげなさい」

由比ヶ浜「え、ちょっ、ゆきのん!?」

雪ノ下「たとえ軽度の捻挫でも歩く行為は足にかかる負担が大きいの。症状が悪化するのを避けるにはそれが得策よ」

由比ヶ浜「そんな、いいって! あたしの家は学校から近いから、そこま——っ、……」


負傷した箇所が痛むのか、痛みで顔を歪める由比ヶ浜。

そんな由比ヶ浜を見て雪乃は少し呆れたように小さな溜め息をつくと、逡巡するように目を伏せる。


雪ノ下「……。比企谷くん、お願い」


問題。

Q.とある女の子が負傷してその友人が女の子を助けるように頼んできました。あなたはどうする?

A.断る理由などないので要望に応える。



比企谷「わかった。でもお前はどうすんだ?」

雪ノ下「私は……」


雪乃はどうする? 以下より多数決

�一緒についていく

�帰宅する

先に4票集まった選択肢で先に進みます


雪ノ下「私もついていくわ」

比企谷「そうか」


こいつに夜道を一人で歩かれるのは心配だし、それに一人で由比ヶ浜を送り届けるのは気恥ずかしいから助かる。


由比ヶ浜「ちょっ、ちょっと二人ともあたしの話聞いて!?」

比企谷「うるせぇ、怪我人が口答えすんな」

雪ノ下「そうよ由比ヶ浜さん、大人しく聞き入れなさい」

由比ヶ浜「うぅ……」


俺と雪乃に強く出られ、可愛らしい唸り声をあげながら渋々引き下がる由比ヶ浜。

それを尻目に見ながら街灯から背中を離した俺は自転車のスタンドを立て、ハンドルを握って由比ヶ浜の目の前まで移動する。


比企谷「ほら、行くぞ由比ヶ浜。さっさと荷台に乗れ」

由比ヶ浜「う、うん……」


おずおずと由比ヶ浜は自転車の荷台へ横向きに座った。

掴んでいたハンドルが急に重みを増し、適度な重厚感が全身を駆け巡る。

由比ヶ浜と小町は身長はそんなに変わらねぇのにこうも感覚が違うのはアレか、アレだな、アレだよな。

……。


雪ノ下「由比ヶ浜さん、リュックを」

由比ヶ浜「え? で、でも」

雪ノ下「大丈夫よ。そこで煩悩を周囲に垂れ流している男に重しとして背負わせるから」


背後からビシバシ伝わる極北のブリザード。

だからなんでお前は俺の考えてることが分かんだよ。なにお前エスパー?

雪乃から冷酷な眼差しと共に手渡された由比ヶ浜のリュックを背負い、俺はサドルに跨らずに自転車を押し始めた。


静かな街中に空回りするチェーンの音と二人分の足音が刻まれる。

こうして歩いていると、夏休みの終盤にあった花火大会の帰り道を思い出す。

陽乃さんと別れた後に偶然歩くことになったこの道を、まさか再び踏み締めることになるとは思いもしなかった。

数週間前の出来事は、今でも克明に思い出すことが出来る。


『そしたら、ヒッキーがまたああやってくっだらないバカな斜め下すぎる解決法だしてさ。助けてもらうんだ、きっと。それでさ、』

『それで、きっと……』


あの時は偶然由比ヶ浜の母親から着信があったから話を逸らせた。

もしもあの時着信がなかったら、俺はどうしていたのだろうか。

……。

……ただ、いまさらそんなことを考えても意味がないことはわかっている。

過ぎ去った時間は永遠に戻って来ない。

時の流れは一方通行、後戻りなんて出来やしない。

だからあの日の選択が正解でも誤解でもすでに解は出ている。

修正が出来ないのなら、その求められた解をそのまま受け入れるしかない。


由比ヶ浜「……ッキー、……ヒッキー!」


沈み込んでいた意識を引き上げるように、背後の由比ヶ浜から名前を呼ばれる。

振り返ると、由比ヶ浜は左側にあるコンビニを指さしていた。


由比ヶ浜「そこのコンビニ行こうよ。ファミレスは行けなくなっちゃったけど、ファミチキくらいならおごれるからさ」

比企谷「いや、そんな気を遣わなくてもいいんだが……」

由比ヶ浜「いいからいいから。ほら、ゆきのんも行こうよ!」

雪ノ下「……そうね。コンビニなら湿布を取り扱っているかもしれないし、由比ヶ浜さんの怪我の悪化を防ぐ手段が見つかるかもしれないわね」

由比ヶ浜「ほらヒッキー、ゆきのんもこう言ってるんだし行こうよー」

比企谷「行くっつってもお前の行動権は俺が握ってんの忘れてんだろ……」


ぶつくさ文句を垂れながら、俺はハンドルの向きを左に傾けた。


ふらりと立ち寄ったコンビニ そこに知人はいた?

�戸塚彩加

�材木座義輝

�三浦優美子

�誰もいない

先に3票集まった選択肢で先に進みます


雪ノ下「まず私がコンビニの中で湿布を見つけて購入してくるわね。それまで由比ヶ浜さんはそこで大人しくしていなさい」


由比ヶ浜の捻挫に響かないよう慎重にスタンドを立てて自転車を停めると、雪乃は俺達にそう告げ一人で自動ドアへと歩いていった。

雪乃が自動ドアの前に立つと扉が開き、店内から女性店員の声が飛んでくる。


三浦「っらっしゃいませー」


……おい、なんかめっちゃ聞き覚えのある声がしたんだが?

あの声は、あの妙に高圧的な声音は、スクールカーストで最高位に君臨している炎の女王のそれだ。


比企谷「……なぁ由比ヶ浜」

由比ヶ浜「ん? どしたのヒッキー」

比企谷「ここのコンビニってお前の知り合いが働いてたりすんのか?」

由比ヶ浜「うーん……、たしか働いてなかった気がするけど」

比企谷「そ、そうか」

由比ヶ浜「なんで急にそんなこと聞くの?」

比企谷「いや、だってよ……」


チラッと店内の様子を確認する。

レジの裏側には金髪縦ロールの女王が佇んでいた。

どっからどう見ても、我らが2年F組の女王こと三浦優美子である。

コンビニで店員の制服を着てなにしてんだよ。……いや、バイトなんだろうけどさ。


比企谷「……三浦のやつが、レジの裏で仕事してるんだが」

由比ヶ浜「え? ウソ優美子いるの!?」

比企谷「っ、耳元で騒ぐなうるせーから」

由比ヶ浜「あ、ご、ごめん……」

比企谷「……。……で、どうする? どう考えても雪乃と三浦が鉢合わせしたら険悪なムードになること請け合いなんだが」

由比ヶ浜「ど、どうするって言われてもあたしは動けないし……」

比企谷「ちなみに俺はごめんだぞ。あいつらの間に飛び込んだら火傷と凍傷を同時に負うハメになるからな」

由比ヶ浜「じゃあどうしようもないじゃん!?」

比企谷「そうだな、流れに任せるしかねぇな」

由比ヶ浜「だったらなんで話を振ったんだし……」


やれやれと言った具合に深い溜息をつく由比ヶ浜。

いや、だって黙って由比ヶ浜と二人っきりで待つとか耐えられねぇし。なんなら気恥ずかしくなって逃げ出すまである。

なにかどうでもいい話を振らないと間が持たねぇ、はやく帰ってきてくれ雪乃。


それから他愛の無い事を由比ヶ浜と話していると、自動ドアが左右に開かれ雪乃が戻ってきた。

雪乃の手にはレジ袋が握られていたのだが、表情はどことなく不機嫌そうな印象を受ける。……なんか三浦とやらかしたなお前。


雪ノ下「ごめんなさい由比ヶ浜さん、この店では湿布を取り扱っていなかったわ。その代わりにロックアイスと小袋を買ってきたから、これを患部に当てて冷やして頂戴」


レジ袋からロックアイスと小袋、加えてミネラルウォータを取り出した雪乃は手早く簡単な氷嚢を作って由比ヶ浜に差し出した。

由比ヶ浜は受け取った氷嚢をくるぶしに当てて雪乃へ感謝の言葉を述べる。


由比ヶ浜「わざわざごめんねゆきのん、ありがと。ゆきのんにも今度なにかおごるからね」

雪ノ下「私は大丈夫よ由比ヶ浜さん。気持ちだけ受け取っておくわね」

由比ヶ浜「だーめ、それだとあたしの気が済まないもん」

雪ノ下「私はただ怪我をしているあなたを助けようと行動したまでよ。それに見返りなんて求めていないわ」

由比ヶ浜「むぅ……。……じゃ、じゃあさ、今度の日曜日に三人でどっか遊びに行こ。その時にあたしがなにかおごるから!」

雪ノ下「あくまで由比ヶ浜さんは奢りたいのね……。あなたは散財するのが趣味なのかしら?」

由比ヶ浜「違うよ!? あ、あたしだってもっと他にいい方法があればいいとは思ってるんだけど、そういうのよくわかんないし……」


……。


比企谷「……由比ヶ浜、そんな悩めるお前にありがたい言葉を教えてやろう」

由比ヶ浜「え?」

比企谷「『金の切れ目が縁の切れ目』だ。お金の力は絶大だが、その反面は非常に脆く脆弱だ。世の中を上手く渡っていくにはお金は重要なアイテムだが、不可欠ってわけじゃない。むしろ必須なのはお前みたいな八方美人な性格だ」

由比ヶ浜「っ! び、びびび美人とかヒッキー、急にほめないでよっ!?」

雪ノ下「由比ヶ浜さん落ち着いて、別に褒められているわけではないわ」

比企谷「つーかこんなくだりは前に一度やったんだがな……」


ルミルミにぼっちのありがたいご高説を垂れてる時にやったんだが、由比ヶ浜は覚えてねぇのか……?


雪ノ下「まあ比企谷くんの言うこともあながち間違いではないわね。今の世の中は資本主義社会だから、潤沢な資金を盾にして我が物顔で世界を闊歩する人間が掃いて捨てるほどいるわ」

雪ノ下「パーティーや式典でも綺羅びやかな宝石類で自身を着飾る大人をよく見かけるのだけれど、それで近づいてくる人間はお零れにあやかろうとする醜いハイエナなのだけれどね」

雪ノ下「そういうお金に這い寄る人間は、自身が瀬戸際に立たされたときには手を差し伸べてくれないの。ただ遠くから物珍しそうに眺めているか、より窮地に追い込もうとするかのどちらかよ。だから何事も無闇にお金で解決しようとしては駄目よ由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「え、えっと……う、うん。わかった」

比企谷「なんかその話、実感こもっててすげぇ怖いんだが……」

雪ノ下「だってそのソースは私だもの」

比企谷「実体験かよ……」


またいらぬ地雷を踏み抜いてしまった。 怖い、俺のトラウマなんかより数百倍怖いわ。


このあとはどうする? 以下より多数決

�コンビニで明日の昼飯を買ってくる

�由比ヶ浜の家に向かう

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


由比ヶ浜「そ、そろそろ行こっか。あんまり遅くなると二人とも帰るの遅くなっちゃうし」

雪ノ下「そうね、では行きましょう」


不穏な空気を感じ取った由比ヶ浜がそう提案すると、雪乃は広げた商品をレジ袋に仕舞って自転車の前カゴに置いた。……っておいこら。


比企谷「おい待て雪乃」

雪ノ下「なにかしら比企谷くん」

比企谷「氷、さらっと前カゴに入れんな。バランス取りにくくなんだろ」

雪ノ下「これも試練よ、耐えなさい」

比企谷「なんの試練だなんの」

雪ノ下「貧弱な比企谷くんが一般男性並の筋力を身につける為の試練よ。非常事態に備えて腕力は鍛えておいて損はないと思うのだけれど」

比企谷「非常事態ってなんだよ……」


恨めしく呟くが、雪乃は素知らぬ顔を浮かべて明後日の方向を向いてしまう。……こいつ、取り合う気さらさらねぇな?


比企谷「……ったく」


不満をスタンドにぶつけるように少し荒っぽく金具を蹴り上げる。


由比ヶ浜「うわわっ!?」

比企谷「——っ、」


しまった、由比ヶ浜が座ってんのをすっかり忘れてた。

後輪が地面に着地した衝撃で荷台に座った由比ヶ浜の上体が揺れ、安定を求めるように伸ばされた手が俺の右肩に伸びる。

細い五本の指が俺の制服を固く握り締めると、由比ヶ浜は顔を真っ赤にして非難の声をあげる。


由比ヶ浜「……も、もう気をつけてよ! あぶないじゃん!?」

比企谷「す、すまん」

由比ヶ浜「まったくもう……」


頬をハムスターの様に膨らませてそっぽを向く由比ヶ浜。

だが、掴んでいる手は離れようとはしない。

逃げ出さないように、離れてしまわないように、遠くへ行ってしまわないように。

そんな意図が含まれているんじゃないかと想像してしまうほど、俺より一回り小さな手はしっかりと繋ぎ止めていた。


由比ヶ浜「次やったら本気で怒るからね」

比企谷「……ああ、気をつけるわ」


拗ねた子供みたいに口を尖らせながらそう言う由比ヶ浜に、なんだが合わせる顔がなく俺は首を横に向けた。

そして逸らした視線の先には、レジに立ちながら目元を擦り上げている三浦の姿があった。……おい、本当に何をした雪乃。

雪乃と三浦の間にあの短時間で何があったのか無性に気になるところだったが、その気持ちを抑えてハンドルを前へと押し進めた。


そしてしばらく歩いて、あの日の夜に由比ヶ浜と別れた道へ差し掛かった。


由比ヶ浜「ヒッキー、そろそろ着くからもう大丈夫だよ」


荷台に座る由比ヶ浜はそう言うと今まで掴んでいた俺の肩から手を離す。

制服越しに伝わっていた熱が急速に冷めていく。


雪ノ下「由比ヶ浜さんの自宅はこの辺りなのかしら」

由比ヶ浜「うん、あそこのマンションの三階」


由比ヶ浜が示す指先には七階建てのマンションがあった。

カーテンで閉じられた部屋が多く、その大半は暖色で照らし出されている。

この時間は一家揃って夕食なのだろうか、多くの窓に映しだされた複数の影がせわしなく動いていた。


比企谷「部屋が三階ならそこまで行くの大変だろ」

由比ヶ浜「ううん、平気だよ。部屋はエレベーターに乗ってすぐ近くだし」

比企谷「そうか」


自転車を停めると、由比ヶ浜はゆっくりと荷台から地面へ降りた。

俺の背中からリュックを取ると自身の右肩に紐を掛け、痛めた足を少し引きずりながら歩き出す。


由比ヶ浜「……じゃ、二人とも、また明日ね」


振り返り、小さく手を振られる。

俺はあの時と同じように軽く手を挙げて応える。

隣に立つ雪乃は胸元へ遠慮がちに手を挙げている。

由比ヶ浜はそれを見て柔らかな微笑みを浮かべると、俺達に背中を向けて帰路へ着く。

そんな由比ヶ浜に俺は——


八幡はどうした? 以下より多数決

�「ああ、また明日」と告げる

�「……待て由比ヶ浜、やっぱり最後まで送っていく」と告げてリュックを背負う

先に5票集まった選択肢で先に進みます。



比企谷「ああ、また明日」


そう告げて、俺は自転車の向きを反転させ元来た道へと引き返した。

遠ざかって行く足音。付いて来る足音。空回る錆びついたチェーンの音が、静謐な街中へ溶けていく。

振り返りはしない、呼び止めることもない。

ただ後方で一瞬だけ止んだ足音が、明瞭に歴然と鼓膜を揺らす。

確実に聴いたのに、明確に耳朶を打ったのに、俺は。



俺は、それを、聞こえないフリをするようにベルを鳴らした。




駅前まで雪乃を見送ってから、俺は繁華街を抜けて帰宅の途に着いた。

夜風が頬を撫で、髪を乱雑に梳かしながら後方へと流れて行く。

漕ぐ足を止めて振り返ってもその風はどこにもいない。

周囲の空気と混ざり合ってどこか遠くへ消えてしまった。

手元に残ったのはカゴの中に置かれた凍てつく氷塊。

俺はその氷塊の中で手頃なサイズを一つを口の中に放り込む。


口に含んだ冷気の塊は、視界が霞んで見えるほど痛くて冷たかった。

今回はここまでです。

続きは今日の昼過ぎあたりです。

それでは失礼します。



ゆいゆいルートはもう無理かな



今回ルートフラグを叩き折ったみたいに見えたが……まだ挽回の余地はあると思いたい



いくらゆきのんルートでも、ゆいゆい叩き潰すのはいただけないな…

>>722 訂正です

【誤】 俺はその氷塊の中で手頃なサイズを一つを口の中に放り込む。

【正】 俺はその氷塊の中で手頃なサイズを一つ口の中に放り込む。


>>724さん >>725さん >>726さん

まだルートは確定していないとだけ言っておきます。ただ雪乃が一歩リードしているのが現状です。


俺ガイルSSが増えてきて、もう自分が書かなくてもいいんじゃないか?とか考える日曜の昼下がり。

さて、そろそろ再開といきたいところなんですが、その前に安価です。


このあとはどうする? 以下より多数決

�自宅に到着後、誰かとメールする

�早めに就寝して翌日

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


【自宅】


比企谷「ただいまー」

小町「おー、お兄ちゃんおかえりー。ごはん出来てるよー」


自宅に到着すると、小町がリビングで夕食を用意して待っていた。

俺は洗面台に向かって手を洗い、自室に鞄を置いて部屋着に着替えて脱衣所へ。

脱いだYシャツと靴下を丸めて洗濯機にぶち込んでリビングに戻ると、小町が茶碗に盛りつけたご飯をテーブルに並べていた。

そして小町と向かい合うように椅子に座り、両手を合わせて一礼。


小町「いただけお兄ちゃんっ!」

比企谷「なんで命令形なんだよ……。……いただきます」


今日も親父とお袋は夜遅くまで仕事で不在。いつも通り、二人だけの夕食だ。

小町の手料理に舌鼓を打ちながら、他愛の無い会話を繰り広げる。

そして食器の上の料理が空になると、再び両手を合わせて一礼。


比企谷「ご馳走様でした」

小町「ゴチになりました!」

比企谷「いや、料理作ったのお前じゃん」


小町のボケに軽いツッコミを入れて、俺は空になった食器を水に浸して部屋に戻る。

ベッドに腰掛け、何気無くスマホを握ってそれを眺める。


……誰かにメールでもするか。


誰にメールする? 以下より多数決

�雪ノ下雪乃

�由比ヶ浜結衣

�平塚静

�戸塚彩加

�材木座義輝

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


……雪乃にでもメールするか。

なんとメールする? 以下より多数決

�今週末、ウチに来て受験勉強で疲れてる小町の相手をする件について

�明日も話し合いをするのかどうかについて

�議事録の別紙の内容について助言を求める

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


そういや昨日『今週末、ウチに来て受験勉強で疲れてる小町の相手をしてやってくれ』とかなんとか命令したな。

明日は金曜だし、その件について少し聞いておくか。

スマホをぬるぬると操作して『何時ぐらいにウチに来るのか』というような内容を打ち込みメールを送信。

そしてしばらくベッドで横になって待っていると雪乃から返信がくる。


差出人『雪ノ下雪乃』
題名 『こんばんは』
本文 『私は何時でも構わないわ。
    けれど私はあなたの自宅を知らないのよ。
    だから最寄り駅まで私を迎えに来て頂戴。』


比企谷「……、」


八幡はどう返信する? 以下より多数決

�「わかった」と返信

�「なら自宅じゃない別の場所にするか?」と返信

�「由比ヶ浜と一緒に来いよ。あいつウチの場所知ってるし」と返信


先に4票集まった選択肢で先に進みます。


……まああいつは方向音痴だし、俺が迎えに行くのが得策か。迷子になられても困るしな。

俺は『わかった。じゃあ10時頃に海浜幕張駅北口で待っててくれ』と入力してメールを送信。

しかし返信はすぐには来ず、仕方がないので俺は別の用事を済ませることにした。


比企谷「……さてと、俺は議事録の別紙を書き上げねぇといけねぇのか。適当にでっち上げたのが失敗だったな……」


スマホを掴んで部屋を出て、パソコンの置いてある親父の書斎へと向かう。

無駄に高級感の漂う黒塗りのソファに座り、パソコンの電源を入れて文章制作ソフトを起動する。

キーボードをカタカタパチパチ連続タッチしていると、そばに置いてあるスマホが突然振動し始める。

誰かからの着信だ。


着信はメール、電話のどちら? 直下のコンマ判定により決定

偶数の場合はメール 奇数の場合は電話 (相手は次の安価で決定)


誰からの電話? 以下より多数決

�雪ノ下雪乃

�由比ヶ浜結衣

�平塚静

�戸塚彩加

�材木座義輝

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


キーボードを打つ手を止めてスマホを操作すると、画面に表示された名前は『雪ノ下雪乃』だった。


比企谷「しかも電話……。何かあったのか……?」


不穏な気配を感じながら受信のパネルをタッチしてスマホを耳元へ近付ける。

生唾を飲み込み、噤んだ唇を開き、僅かに吸い込んだ空気を言葉と共に吐き出した。


比企谷「……もしもし」

雪ノ下『……』


呼び掛けるも返事はない。


比企谷「……、もしもーし?」

雪ノ下『……』


再度呼び掛けるも応答はなし。

耳元に当てたスピーカーからはうんともすんとも聞こえない。

電波障害を疑ってスマホの画面を見るが、電波に問題は見られない。

つまり問題なのはこの電話越しに繋がっている雪乃だ。

なんなんだ、一体何がしたいんだあいつは。

無駄に緊張して強張った全身の筋肉を解すように大きく息を吐き、再び耳元へスマホを近付ける。


比企谷「(……これでなにも反応がなかったら切るか)」


そう決意し、三度目の呼び掛け。


比企谷「もしもし。なんの用だ雪乃」

雪ノ下『…………あ。……え、えっと』


ようやく俺の言葉に反応を示した雪乃だが、その声音はどうも上擦っているように聞こえた。

なぜ雪乃がこんなたどたどしい物言いなのかは気になったが、とりあえず言葉の続きを促す。


比企谷「なんだ?」

雪ノ下『…………や、夜分遅くに恐れ入ります。そちら、比企谷様のご自宅で……より、よろしかったでしょうか……?』

比企谷「どうした。二重の意味でどうした雪乃。頭でも打ったか?」

雪ノ下『わ、私は貴宅のご子息である比企谷くんと同じ部活動に所属している雪ノ下雪乃と申します。現在彼はご在宅でしょうか?』

比企谷「……おい待て落ち着け雪乃。まずお前が電話をかけてんのは自宅じゃなくて俺の携帯だ」

雪ノ下『ご自宅にはいらっしゃらないのですか? そうですか……』

比企谷「おい俺そんなこと一言も言ってねぇぞ。本当にどうしたお前?」


いかんな、詳しい理由は不明だが雪乃のやつ色々暴走してキャラがブレまくってんぞ。

ていうかどんだけ畏まってんだよ、いつものナチュラル見下し発言はどこに鳴りを潜めた?


なにやら様子がおかしい雪乃。 八幡はどうする?

�電話を切ってメールを送る

�電話を続けてなんとか落ち着かせようとする

�小町に助けを求める

先に3票集まった選択肢で先に進みます。


雪ノ下『では彼は何時頃にご帰宅なされるのでしょうか?』

比企谷「もう帰って来てるよ。……つーか今こうして会話してるんだが」

雪ノ下『そうですか。では恐れ入りますが、今週末の件で彼に伝えなければならない事があるので、取次をお願い出来ますでしょうか?』

比企谷「……、」


……こいつアレだ。俺が小学生の時に女子の家に連絡網を回したときと同じ反応してやがる。

電話で聞こえる声って、普段会話している時と若干異なって聞こえるんだよな。

おそらく雪乃は会話している相手が俺だと気づいていない。

聞き馴れない声だから俺を親父か別の誰かと勘違いしてるのだろう。

加えて相手の言葉の始めに意識を集中しているせいか、後半の部分を殆ど拾えていない。

だから会話が上手く噛み合わないのか。

……ったく、ずいぶんと世間知らずなお嬢様だなおい。


比企谷「わかった、少し待ってろ」


そう告げて俺は一度スマホを耳から話す。

そして喉の調子を確かめるようにスマホのマイクの部分を押さえながら軽く咳払いをして、俺は意図的に普段より低めの声を出した。


比企谷「あー、もしもし? なんの用だ雪乃?」

雪ノ下『……っ、こ、こんばんは比企谷くん。いえ、さっきのメールの件についてなのだけれど』

比企谷「さっきのメール? ああ、週末の件についてか。それがどうかしたのか?」

雪ノ下『ええ、その件で私から少し提案があるの。メールで伝えるのは味気ないからこうして電話を掛けたのだけれど……め、迷惑だったかしら?」

比企谷「いや別に、全然」

雪ノ下『そ、そう……』

比企谷「で、なんだよ提案って?」

雪ノ下『……。……あ、あの、その、これは提案と言うよりは、私の個人的な要望になってしまうのだけれど……』


雪乃の提案とは? 以下より多数決

�由比ヶ浜さんを誘ってもいいかしら

�受験勉強の息抜きをするなら、自宅よりもディスティニーランドの方が良いと思うの

先に5票集まった選択肢で先に進みます。

ガハマさん誘ううんぬんでここまで挙動不審になるのも違和感あるから2で

>>779さん ですよね、少し書き方をミスりました。これは2を選んで下さいと言ってるようなものですね。

すみません、今日はここまでです。

続きはまた明日。

あと「俺ぼっち」もこのあと少しだけ更新するので見て頂ければ幸いです。

それでは失礼します。


雪ノ下『受験勉強の息抜きをするなら、自宅よりもディスティニーランドの方が良いと思うの』

比企谷「……。なにお前、ディスティニーランド行きたいの?」

雪ノ下『わ、悪いかしら』

比企谷「いや、悪くはねぇけど……」


そういやこの前テレビで『パンさんのバンブーハント』がリニューアルされたとかなんとか言ってたな。

雪乃のお目当てはそれか。だから個人的な要望なわけだ、納得。

だがその要望を叶えるのは少々ハードルが高すぎるな。

何故なら小町は今年高校入試を控えた受験生だからだ。


比企谷「……でも小町はあれでも受験生だし、そんな長時間遠出させてる余裕はねぇんだよな」


現在小町は自室に籠城して鋭意勉強中。

この前あった塾の模試で総武高校への合否判定が『C』だったのでお兄ちゃんはかなり心配している。

なので「頑張れ小町、負けるな小町、お兄ちゃんがついてるゾ☆」って励ましたら「きもい」って一刀両断されたっけ。

きっと受験勉強で疲れてたんだな、だからあんな素気ない態度だったんだろう。

あの日見た小町の目が冷め切っていた理由を俺はまだ知らない。


比企谷「受験勉強の息抜きっつっても『休憩時間の遊び相手』って意味で頼んだわけだから、それはちと厳しいな」

雪ノ下『……、……そう』


やんわりと要望を断ると、電話越しの雪乃は力なくそう呟いた。

おいなんでそんなあからさまに意気消沈してんだよ。なんか俺が悪い事言ったみてぇじゃねぇか。


八幡はどうする? 以下より多数決

�「……、ディスティニーランドはまた今度な」

�「今日の帰り道で由比ヶ浜が『今度の日曜日どっか遊びに行こう』とかなんとか言ってただろ。それで一緒に行ってくればいいんじゃねぇの?」

先に5票集まった選択肢で先に進みます。

負傷している広瀬邑子(女子十五番)を抱き抱えようとする財前永佳(女子六番)。
その背後で、刀を構えた榊原賢吾(男子七番)。
永佳の手を振り払い、永佳と賢吾の間に飛び出した邑子。
少し遅れ、永佳の顔がそちらへ向く。
次の瞬間には、邑子の身体が傾く。
小さな小さな邑子の身体から、鮮血が激しく迸る。
春川英隆(男子十四番)の瞳には、まるで全てがスロー再生されているかのように、一部始終が見えていた。

「邑ちゃんッ!!!」

叫ぶと賢吾から受けた傷から痛みが突き上がったが、そんなことには構っていられなかった。
邑子が倒れた、それが何よりも重要だった。

地面に倒れた邑子の首からは、まるで噴水のように紅い血が噴き上がっていたが、それは徐々に収まっていった。
噴水の下に残っていたのは、まるで小学生のような幼い顔立ちだった顔も、クラス内で一番小さな身体も、全てを赤く染めた幼馴染の変わり果てた姿だった。
邑子を助けようとしていたはずなのに眼前で邑子が斬られる様を見てしまった永佳は、全身を邑子から降り注いだ鮮血で汚しながら、呆然と邑子を見下ろしていた。

身体が、動かない。
まるで足から地面へ根が生えたかのようだ。
物心ついた頃からの長い付き合いのある幼馴染の一人が倒れ、もう一人は襲撃者を前にして呆然としているというのに、動くことができなかった。

「邑ちゃん…永佳…くそッ!!
 ヒデお前ここでじっとしとけッ!!」

英隆の身体を支え、邑子が倒れるまでの一部始終を共に見ていた望月卓也(男子十七番)は、英隆の脇の下に通していた腕を抜くと、邑子と永佳の元へと駆けた。
所属するテニス部では、部長である城ヶ崎麗(男子十番)やダブルスパートナーである木戸健太(男子六番)を相手にして一度も負けたことがないと自慢していた俊足をここでも見せた。
ポケットに入れていた彼の支給武器である裁縫セットを賢吾に投げつけ、賢吾が反射的に手を上げて顔面にそれが当たるのを防いでいる間に永佳の元へ着き、倒れたまま動かない邑子を一瞥して目を伏せると、すぐに永佳の脇の下から腕を通し、引き摺るようにして賢吾から距離を取った。

英隆はようやく動くようになった、しかし震えの止まらない足で2人に駆け寄った。
「じっとしてろって言っただろ」と英隆を責める卓也の顔は青褪め、目には涙が滲んでいた——その様子が、邑子がもう動くことがないことを証明していた。

「ゆ…ゆう…ちゃ……ゆう、ちゃん、が……」

これまで第10班の中で誰よりも冷静で、誰よりもプログラムで生き残るための覚悟を決め、誰よりもクラスメイトたちを傷付けてきた永佳が、魂が抜けたような生気の感じられない声で呟き、倒れた邑子をじっと見つめていた。
その目に涙はなかったけれど、自分の身体を支えている卓也の深緑色のカーディガンを掴む手は小刻みに震えていた。

『卓也と邑ちゃんは、俺たちが護ろう』

そう、永佳と共に誓ったのに。
護ることが、できなかった。
邑子は、いなくなってしまった、死んでしまった。
あんなにも小さくて、あんなにも怖がりで、あんなにも死にたくないと泣いていた邑子が、仲間を護って逝くなんて。

英隆はカッターシャツの左胸部分をぎゅっと掴んだ。
ずきり、と胸が痛む。
自分は、初等部の頃、永佳を護ることができなかった。
しかし、邑子はそれをやってのけた——まさに今、命懸けで。

俺は、何をしてるんだ…
邑ちゃんはあんなに怖がってたのに、それでも頑張った…
それなのに、俺は、護ろうって決めた邑ちゃんを助けられなくて、さっきだって財前が危なかったのに足を動かすことすらできなくて…


「何でだよ…何で、約束が違うだろ、賢吾ッ!!!」


卓也の叫びに、英隆は我に返った。
後悔すべきことはあれこれあるのだけれど、今はそれどころではない。
英隆は賢吾と、賢吾の後ろに立つ鷹城雪美(女子九番)へと視線を向けた。
雪美はきょとんとした表情を浮かべ、首を傾げた。

「…『約束が違う』…あら心外だわ、賢吾が何の約束を破ったの?」

「『何の』って…こっちが背中向けた時に襲わないって…あれは何だったんだ!!」

「…守ったじゃない、ねぇ、みんな?
 あたしたちの誰が、いつ、『背中を向けた瞬間にパーン!ってこと』、した?」

雪美がくつくつと笑った。

やられた…ッ!!
最初から、これを狙って…引き分けなんてとんでもない、鷹城さんたちは端から俺たちを全員[ピーーー]気だったんだ…ッ!!

確かに、雪美はこの件について嘘は吐いていない。
『背中を向けた瞬間にパーン!ってことはしない』、つまり銃は使わないと言っただけで、賢吾が所持する刀や、湯浅季莉(女子二十番)が所持する鎌で襲ってくることについては一切触れていないのだ。
それを『背中を向けた時に攻撃しない』という意味に履き違えたのは英隆たちだ。
尤も、“引き分け”の件については雪美はこちらを騙したのだが。

それにしても、何なんだ、この4人——いや、鷹城雪美という子は。
教室で見ていた限り、雪美は地味な容姿のあまり目立たない女の子で、穏やかでおっとりしているイメージくらいしかなかった。
そう、その程度の印象しか残らないような、影の薄いクラスメイトだった。
それなのに、どういうことだ。
命の奪い合いをしているこの状況で、こうも平然と嘘を並べ、嘘を吐かなくとも攻める穴をしっかりと開けておく交渉などができるものなのか、平和に過ごしてきたただの中学3年生に。
それだけではなく、これまでのやりとりを見ている限りでは、大人しく気弱な松栄錬(男子九番)だけならまだしも、堅物の賢吾、そしてクラス内で最も派手なグループの中でもトップクラスで派手で気が強い季莉すらも、雪美が従えているように見える。
賢吾も季莉も錬ですらも制服の至る所に赤黒い染みができているというのに、雪美だけにはそれが一つも見当たらないことも、英隆を戦慄させた。

「鷹城さん…君は一体…」

「鷹城さんが何だろうが…関係ない…」

英隆の声を、永佳の唸るように低い声が遮った。
卓也の支えを振り解き、まだ震えが止まっていない2本の足で地面を踏み締め、コルト・ガバメントを両手でしっかりと握り、照準を雪美へと定めた。

「これは、プログラム…だから…
 死にたくないなら、[ピーーー]しかない…それだけ」

銃口を向けられているというのに、雪美は笑みを貼り付けたまま、季莉に視線を投げ、動揺を感じさせない落ち着き払った声で、言った。

「あらあら怖い…助けて、季莉ちゃん」

それは、助けを求めているというよりも、命令しているように聞こえた。
立ち上がり邑子の亡骸を凝視していた季莉はびくっと身体を震わせ、雪美へ目を向けた後、永佳へと視線を動かした。
鎌を握る右手に力が込められたと同時に、季莉は地を蹴った。

「永佳あぁぁぁぁぁあッ!!!」

鎌を振り上げ突進してくる季莉に対し、永佳は銃口を季莉に向け、引き金を絞った。
ばんっ、という破裂音と同時に、季莉の左腕が弾かれたように後ろへと撥ねたが、季莉はそのまま永佳へと突っ込んだ。
鎌を振り下ろしたが、永佳はその手首を掴んで止めた。

「雪ちゃんは…やらせない…ッ!!
 お願いだから…ここで…死んでよ…ッ!!
 冗談じゃないんだから…あたし、もう、人殺してるんだから…ッ!!」

「…だから、何…自慢?
 意味不明…それならあたしだって殺してる…
 プログラムなんだから、お互い不思議でも何でもないし、脅しにだってならない」

永佳の言葉に、季莉はびくっと身体を震わせた。
腕力も体力も、美術部員で体育以外で身体を動かすことがない永佳より、バレーボール部で鍛えてきた季莉の方が格段に上なのだが、永佳は季莉の動揺の隙を突き、季莉の鎌を握る右手に掴み掛りそのまま押し倒した。

「季莉っ!!」

錬が引き攣った声を上げ、S&W M36“チーフスペシャル”を構えた。
しかし、卓也が飛び掛かり、デイパックをぶんっと振り回すと、当たりはしなかったが勢いに気圧されたのか、錬はばたばたと手を振り回しながら尻餅を付いた。
どうやら錬は4人の中では最も負傷しているようで、一度倒れると支えなしには再び立つことが困難な様子だった。
つまり、武器さえ持たせなければ、そう危険な存在ではない、ということだ。

「卓也!!
 松栄君の銃、どっかに投げなさいッ!!」

英隆が叫ぶと、卓也は錬に飛び掛かった。
錬もチーフスペシャルを手放さないように身体を反転させたのだが、英隆の声を聞いてからの卓也の反射能力と生まれ持った運動能力に、元々運動能力が非常に低い上に負傷している錬が敵うはずもなく、卓也はあっさりとチーフスペシャルを錬から没収し、それを茂みの中へと放り投げた。

これで、松栄君にそう気を配る必要はない…
次は財前が動きを止めている湯浅さん、それから榊原君を——

『そう、撃つなら撃てばいいさ、重罪人がッ!!
 それで、アンタもろくな死に方せずに地獄に堕ちな!!』

荻野千世(女子三番)を撃った後、小石川葉瑠(女子五番)に言われた言葉がふと脳裏を過り、英隆はびくっと動きを止めた。

いや…いや、もう悩んでる場合じゃない、邑ちゃんが殺されちゃったんだ…
殺らなきゃ、財前と卓也まで殺させるわけにはいかない…っ!!

頭ではそう考えるのに、足が動かない。
季莉を撃たなければと思っているのに、ベレッタM92を握る右手も上げられない。
何度決意を固めても、いざとなるとあまりにも脆く崩れてしまう。
殺さないといけないと思っているのに、人殺しになりたくない自分がいる。

どうして、いつもいつも、自分はこうなのか。
自分が汚れること、傷付くことを前にすると、身体が動かなくなってしまうのか。

あの時も。


初等部5年生の春のある日。
永佳はいつもと様子が違っていた。
いつもはそれぞれクラスの友達と下校していたのに、その日は永佳が「一緒に帰ろう」と誘ってきたのだ。
そして、まるで邑子のようにべったりと英隆に寄り添っていた。
何かがおかしいと思った、けれど、何も言わなかった。

だって、永佳が——良いなと思っている女の子がそんなことをしてくれて、嬉しくないはずがないのだから。

いつからかはわからないけれど、明るくてハキハキとしていて、周りのことをよく見ていて優しくて——そんな幼馴染に、いつの間にか惹かれていた。
けれど、永佳が自分のことを同じように思っていてくれる保証はなくて、そんな中でこの気持ちを一方的に告げるのはあまりにも怖くて、英隆は淡い想いを自分の胸の中に閉じ込めてきた。
けれども、この時の永佳はとても近くにいてくれた。
もしかしたら、これがずっと続けば永佳も自分のことを特別に想ってくれているという証明になり、そうすれば想いを告げても怖くない、そう思った。

結局、一緒に帰ったのはこの日一日だけで、それが最後だったけれど。

それから1ヶ月程経ったあの日。
校舎裏で、永佳が同級生の女子から暴力を振るわれているのを発見した。
日に日に表情が乏しくなっていく永佳の様子から、もしかしたら誰かに苛められているのではないか、という考えはあったのだが、それが確信に変わった。
地面に倒れて腹を蹴られた永佳と、目が合った。

“助けて、ヒデちゃん”

声は聞こえなかったけれど、目がそう言っていた。
言われなくても、助けなければならないと思った。
苛めや暴力なんていけないことだし、見つけてしまったなら助けるのは当たり前だ。
それが好きな女の子なら、尚更。

それなのに。

脚が、動かなかった。
頭では助けたい、助けなければならないと思っているのに、身体が動かない。
もしも、現場を止めたことで反感を買って、苛めの対象が自分になったら、あんな風に、暴力を振るわれたら——脚が竦んだ。

そうだ、先生に言って、先生に助けてもらおう…!!

英隆はその場を後にした。
先生を呼ばなければいけないと、職員室へと走った。
けれども、本校舎の入り口で、またも英隆は脚が止まってしまった。
告げ口をしたと知られたら、仕返しをされるかもしれない、と思ったのだ。

永佳を助けたいけれど、助けているところを見られたくはない——結局英隆は教室へ戻り、廊下のロッカーに入れていた体操着の入った袋からタオルを取り、現場へと戻ったのだが、深く傷ついていた永佳には拒否された。
当たり前だ、永佳から見れば、自分は永佳の助けを無視して立ち去った薄情なヤツで、まるで兄妹のように自分のことを慕ってくれていた永佳にとっては、それは崖から突き落とされるようなショックだったはずだ。
『アンタと特別仲が良いと、こんな目に遭うの!!』——永佳が苛められた原因が英隆にあったことはこの時初めて知ったのだが、知っていようがいまいが、原因である英隆が見捨てたのだから、永佳から距離を置かれても縋ることはできなかった。

“ひぃちゃん”と呼ぶことを拒否され、“ヒデちゃん”と呼ばれることはなくなり、“春川の近くにいたくない”と距離を置かれ、以来永佳は英隆には近寄らなかった。


あの時も、今も、結局自分の保身を一番に考えてしまう自分が情けない。
あの時永佳に迷惑を掛けて永佳を見捨て、その結果永佳との間には決して埋めることのできない溝ができた。
しかし、今回プログラムに参加させられ、チーム戦という特殊ルールの元、永佳の近くにいることはできるようになった。
生きたい、仲間を護りたい——同じ意志を持った永佳を、今度こそは助けなければいけないと思っていた、それなのに。

「ヒデ、逃げろッ!!!」

卓也の叫びに、英隆はばっと頭を振った。
眼前に賢吾が、そして刃が迫っていた。
英隆は反射的に後ろに飛び退いたのだが、賢吾はそれすらも予想していたかのようにもう一歩前へ踏み出し、フェンシングのように刀を伸ばしてきた。

ずぶっ、という音が、聞こえた。
耳を通してのものなのか、身体の内から伝わったのかはわからない。
突き出された刃は、英隆の右胸部に突き刺さった。
先刻背中から刺された傷よりも深刻であることは、喉の奥から逆流してくる血液から明らかだった。

「ヒデッ!!!」
「平気…ッ!!!」

卓也の叫びを掻き消すように、英隆は精一杯声を張った。
口から血の霧が舞い、賢吾のカッターに新しい染みを作った。
平気なもんか、死ぬ程痛い。
しかし、英隆は賢吾の両腕を掴み、何とか倒れずに踏ん張った。
賢吾がそれを振り払おうとするが、英隆はカッターの布地に手を絡ませるようにしっかりと掴んで離さない。
現状この班で最も脅威になるのは、得体は知れないがここまで全く動いていない雪美ではなく、容赦なく邑子を殺害し自分の身体を二度も貫いた賢吾だ。
その賢吾の動きを止められるチャンスなんて、そう何度もない。

それに——

英隆は口許に笑みを湛えた。
傷付くのが怖くて何度も身体が止まっていたけれど、ここまで傷だらけにされてしまうと、かえって身体の自由が利くだなんて。
こんな状況で身体が張れるのなら、永佳が暴力を受けているのを止めることなんて、自分が考えたよりずっとずっと容易いことだったのではないだろうか。
英隆は、大きく息を吸った。

「財前ッ!!! 撃ちなさいッ!!!」

賢吾の顔色が変わった。
英隆の手を振り解こうとこれまで以上に必死にもがくが、英隆も渾身の力を振り絞って賢吾の動きを押さえた。

永佳が、力なくへたり込んだ。
コルト・ガバメントを握ったまま呆然と、倒れた英隆を見つめていた。

永佳が誤ってチームメイトを撃ち殺した、7班の全員がそう思っているだろう。
錬と季莉は身体を起こしていたものの身動き一つせず永佳の背中を見つめていたし、英隆の下敷きになっている賢吾が起き上がる様子はない。
これまで笑みを浮かべ続けていた雪美も、目を丸くして英隆の亡骸を凝視していた。

でも、違う。

卓也は、必死に涙をこらえ、止まりそうになる思考を何とか動かしていた。
英隆はチームリーダーで、そのことを忘れるはずがない——深い傷を負った英隆は、計算した上で永佳に自分を殺させたに違いない。
永佳と自分を助けるために、英隆は死を選んだのだ。

卓也はデイパックを担ぎ、立ち上がった。
呆然としている錬と季莉には目もくれず、永佳の隣に膝を付いて立ち上がらせた。
永佳の手から滑り落ちたコルト・ガバメントを拾い上げると、永佳を引き摺るように歩き出した。

「永佳、逃げよう…歩いて、頑張って歩いて…」

卓也の言葉に、永佳はふらつく足を何とか動かした。
けれども、卓也の声に対する応答はなく、その目は虚空を見つめていた。
落ちていた永佳のデイパックも拾い、英隆と邑子を一瞥し、卓也は必死に歩いた。
また背後から襲われたらどうしようという恐怖もあったのだが、血濡れた制服を纏う彼らにとっても今回のことは衝撃的だったようで、追いかけてくることはなかった。

邑子が死んだ。
英隆が死んだ。

2人の亡骸が目に浮かび、卓也は何度も泣き叫びそうになったが、唇を噛み、必死に嗚咽が漏れそうになるのを堪え、瞬きを堪えて上を向くことで涙が零れそうになるのも何とか耐えた。
今は泣いている場合ではない。
めちゃくちゃにショックで、めちゃくちゃに悲しくて、めちゃくちゃに悔しい——けれども、物心ついた時からの幼馴染を失った永佳のショックは計り知れない。
それも、邑子には庇われ、英隆のことを撃ってしまったのだから、尚更だ。

『…馬鹿ヒデ、お前…大丈夫だよな?』
『うん、大丈夫…死なせたりしないから、安心して』

ヒデの馬鹿野郎…違うだろ、“大丈夫”っていうのは、こういうのじゃないだろ…
しかも、よりにもよって、あんな死に方選ばなくてもいいじゃんか…
邑ちゃんと同じくらい、永佳はお前のことだって大事に思ってんのがわかんなかったのかよ…ッ!!
それを、あんな…あんな……ッ!!!

永佳の華奢な体が震えている。
触れる手は酷く冷たい。
涙は流していなくとも、全身が悲鳴を上げている。

触れている部分から伝わってくる永佳の悲しみ。
唇を噛んで口を固く閉じることで嗚咽だけは必死に堪えたけれど、いつの間にか卓也の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

 大丈夫よ、貴方たちが背中を向けた瞬間に『パーン!』ってことはしないから。
 ねえ、賢吾?」

「…あっそ、それは助かるわ。
 邑ちゃん、春川、立てる?
 それから卓也さん、腰抜かしてないで手伝って」

永佳は邑子と英隆の傍に駆け寄り、離れた場所で尻餅をついたまま固まっていた卓也に声を掛けた。
卓也は「だ、大丈夫、手伝う手伝う!」と騒がしく声を上げて駆け寄ってきた。
卓也は英隆の脇の下に腕を通し、立ち上がらせた。

「…馬鹿ヒデ、お前…大丈夫だよな?」

「うん、大丈夫…死なせたりしないから、安心して」

「おう、頼むよ…命大事にしてくれないと」

2人が囁き声でやり取りをしたのは、英隆がリーダーであることを雪美たちに知らせたくないからだろう。
「ほら、わっせ、ほいせっ」、「ちょ、卓也速い、響くから…」、「あ、ごめん」と言葉を交わしながら、2人の背中がゆっくりと離れていった。

「邑ちゃん、立てる? 抱っこしようか?」

永佳が邑子の背中と地面の間に腕を入れ、邑子の身体を起こした。
酷くふわふわとするこの感覚は何だろう——ああ、貧血だ、邑子は頭の中ですぐに自分を襲っている症状の答えを導き出した。
まずは永佳に「大丈夫だよ」と言わなければ——そう思い、口を開いたのだが、喉の奥から絞り出した声は、自分のものとは思えない程に弱々しく、微かな声すら永佳に届けることを邪魔するかのように、上下の歯がガチガチと小刻みにぶつかり合った。
身体が、震える——寒い。
幾ら日が暮れたとはいえ5月末、邑子は学校指定のブレザーは着用していないもののパーカーを身に付けているのだから、こんなにも寒いはずがないのに。

「…邑ちゃんどうしたの、寒いの…?」

邑子は、知らなかった。
賢吾に斬られた腕の傷は掌から裏肘に掛けて一文字に裂けていたのだが、手首の動脈も切り裂かれていたということを。
今が明るければ、地面に紅い水溜りができていることがはっきり見て取れることを。
クラスで最も小さなその身体からは、命に関わる量の血液が失われていたことを。

「…少し頑張って邑ちゃん、抱えて運ぶから」

永佳は邑子を所謂“お姫様だっこ”をして運ぼうと、邑子の膝の下に腕を入れた。
されるがままになっていた邑子は、視界にぼんやりと永佳を入れていたのだが、永佳の背後で賢吾が動き、反射的にそちらに焦点を合わせた。
賢吾が、刀を構えた。

ひぃが、危ない…!!

邑子は身体に残る力を振り絞り、永佳の手を振り払った。
永佳が驚愕で見開かれた瞳で邑子を追った時には、邑子は永佳と賢吾の間に立ちはだかっていた。


誰かを傷付けたり殺したりするのは怖い。
自分が死ぬのだって怖い。

でもね、ゆーこ、もっと怖いこと、わかったんだ。
ハルカワもひぃも、いつもゆーこを助けてくれる。
それは嬉しいよ、いつも甘えていたいって思ってきたよ。
でもね、でもね。
ハルカワの真っ赤な背中と、ひぃが錬にピストル向けられたの見て、わかったの。

ハルカワとひぃがいなくなる方が、もっと怖いの、嫌なの。


賢吾の一撃が、邑子の細い首を貫いた。
倒れる時、永佳の驚愕した表情が見え、英隆の叫び声が聞こえた。

ハルカワもひぃも、いなくなってない。
よかった、よかったよ、2人共いなくなってなくて、本当に——

邑子の意識は、深く深く潜り込んだ。
二度と戻ってくることができない、深い深い場所へ。

「…鷹城さん…そこから動かないで…
 動いたら…撃つから、季莉のこと」

永佳は鋭い視線を雪美に向けたまま、コルト・ガバメントの銃口を、永佳が馬乗り状態になっているために動けずにいる湯浅季莉(女子二十番)の額へ向けた。
銃弾を放ったばかりの熱せられた銃口が額に当たり、季莉は「ひッ!」と短く声を上げ、永佳を睨んだ。

「ひ…永佳…アンタ…ッ!!」

「何。 先に襲ってきたのは季莉でしょ。
 大体しょうがないじゃん、これ、プログラムなんだから」

永佳の冷たい声——いや、冷たく振舞う声は、邑子の耳にも届いていた。
永佳が本当に心から“しょうがない”と思っているわけがない、なぜなら、永佳は昔からとても優しい人だから。
それでも、永佳は邑子たちと生き残ることを何よりも優先し、これまで親しくしてきた季莉に銃口を向けている。
邑子たちのことを一番に考えてくれることが嬉しくて、けれども申し訳ない。

くつくつと上品な笑い声が聞こえ、邑子は身震いした。
雪美が笑っていたのだ、この状況で!

「そう…そうなの、財前さんたちは、やる気になっているのね」

「…だったら、何。
 これだけこっちのこと襲っといて怪我させといて、批難でもする気?」

今では殆ど表情を変えなくなってしまった永佳だったが、雪美の笑みも落ち着き払った声も不気味に思ったのだろう、眉間に皺を寄せて険しい表情を浮かべていた。
むしろここまで表情を変えていないのは、笑顔を浮かべている雪美の方だった。
雪美は笑みを浮かべたまま、首を横に振った。

「ううん、むしろ好感が持てるくらいよ?
 この状況で『戦うなんておかしい』とか言っている偽善者より、よっぽど信用できる」

「…信用とかされても、嬉しくない」

「やだ、つれないこと言わないで。
 せっかく、ここは引き分けにしてお互い引きましょうって、言おうと思ったのに」

邑子も、邑子の視線の先にいる永佳も、目を見開いた。
邑子を護るように四つん這いになっている英隆も、肩越しに振り返り雪美を見た。
ここで、引き分け。
ここで、この戦いが終わるのなら、みんなの手当てができる。
みんな、死ななくて済む。
すぐに雪美の言うことを受け入れるべきだ——邑子はそう思ったのだけれど、どうやら事態はそう単純なことではないようで、英隆が身体を起こして雪美に向き直った。
邑子に向けた背中、カッターシャツがほぼ真っ赤に染まっていた。
心臓を握り潰されそうな感覚が、邑子を襲った。

「…わからないな、鷹城さん…その、真意は?」

「わからなくはないと思うけど…春川くんは馬鹿じゃなさそうだし。
 簡単な話よ、やる気になっている人同士がここで潰し合うより、お互い頑張って
 人数を減らした方が、早く終わらせることができるでしょ?
 だから、人数が減るまでは、お互いには手を出さずにいましょう、そういうことよ。
 悪い話じゃないと思わない?」

英隆の首が、少し右へ動いた。
季莉の動きを拘束している永佳と、視線を交わしたのだ。
プログラムを生き抜くために、邑子や卓也を護りながら戦うことを決めた2人が、雪美の提案を受け入れるか否かを視線のみで相談したのだろう。
その様子に雪美は一つ溜息を吐いた。

「わからない?
 見逃してあげる、そう言っているのよ?」

涼やかな声には迫力があるわけではないのだけれど、邑子の身体は硬直した。
言うことを聞かなければいけない、邑子の中の生存本能が、そう叫んでいた。

「見逃す…随分上から言うね、ムカつく。
 あたしが季莉を撃てないとでも、思ってるの?」

「思ってないわ、あたし、財前さんのやる気を“信用”してるもの。
 信用してるからちゃんと忠告してあげる、今どっちが上なのかを。
 …賢吾、松栄くん」

雪美のやんわりとした呼びかけに、永佳の発砲で倒れていた、邑子と英隆を傷付けた犯人である榊原賢吾(男子七番)が中学3年生にしては少々老けている顔をしかめて右肩を押さえながら立ち上がり刀を英隆と邑子に向け、これまで姿を潜めていた松栄錬(男子九番)は気の弱そうな苦悶の表情を浮かべながらも卓也に向けて銃弾を放った回転式拳銃S&W M36“チーフスペシャル”の銃口を永佳に向けた。
英隆の「成程ね…」という引き攣った声も、離れた所にいる永佳の舌打ちも、邑子の耳にまで届いた。

「…わかった…退くよ、引き分け…というよりこっちの負けみたいなものだけど。
 財前、湯浅さんから離れなさい」

永佳が季莉にコルト・ガバメントの銃口を向けたまま立ち上がった。
雪美を睨み付けたが、雪美がいつもと変わらない垂れ気味の瞳でじっと永佳を見つめると、永佳は溜息を吐いて季莉から銃口を外した。

「ふふっ、話が早くて助かるわ。大丈夫よ、貴方たちが背中を向けた瞬間に『パーン!』ってことはしないから。ねえ、賢吾?」

しかし、光る瞳はどこにも見当たらない。

代わりに邑子が目を留めたのは、枝の色とは少し違う、ブラウン地のチェック模様——そう、邑子にとって見慣れた、帝東学院中等部の男女の制服のズボンやスカートの布地の模様。
そこまで思考が及ぶと同時に邑子は丸い目を大きく見開き、ばっと顔を上げた。
何かが自分目掛けて近付いており、邑子は「わっ」と声を上げながら咄嗟に上半身を後ろに倒しつつ、反射的に両腕を顔の前に出して防御の構えを取った。
次の瞬間、左腕を鋭い激痛が襲った。

「あああぁぁぁぁあぁっぁあッ!!!」

邑子は絶叫し、痛みの突き上げる左腕を右手で押さえた。
右手が生温い液体で濡れた。
左掌から肘の裏側に掛けてすっぱりと皮膚が裂けていたのだが、ただ痛くてたまらないということ以外、今の邑子にはわからなかった。

「邑ちゃんッ!!」

英隆が邑子に駆け寄った。
邑子を抱えようとする英隆に、襲撃者が再び襲い掛かった。

「春川、前ッ!!」

永佳がデイパックをぶんっと振るうと、それは襲撃者に当たり、「ぐっ」という短い悲鳴が聞こえ、襲撃者の身体がよろけた。
永佳は目の端で別の人物を捉え、もう一度デイパックを振るったが、今度は空を切るに終わり、相手はお返しとばかりに何かを持った手を振り下ろしてきた。
永佳はデイパックを捨ててその手を押さえようとしたが、伸ばした手は空を切り、何かが緑色のカーディガンの左肩部分を掠めて繊維を裂いた。
永佳は一瞬怯んだが、すぐに襲撃者に飛びつき、2人はもんどり打って倒れた。

「財ぜ——……ッ!!」

英隆の叫びを掻き消すように、ばんっという破裂音が響いた。
次の瞬間、卓也が何かに弾かれたように仰け反り、尻餅をついた。

「卓也ッ!!」

「びびびびっくりしたぁ!!」

英隆の切羽詰まった叫びを掻き消すように卓也は大声を上げた、どうやら深刻な怪我は負っていないらしい。
英隆が邑子を抱えて卓也に駆け寄ろうと腰を浮かしたが、邑子を斬り付けた襲撃者が刃物を振り翳したのを目の端で捉えると、邑子を庇うように覆い被さった。
振り下ろされた刃物が、英隆の背中に突き刺さった。
英隆の唸るような呻き声が、抱き締められた邑子の耳にも届いた。

「ハルカワ…ハルカワぁッ!!」

「だい…じょうぶ、平気…ッ」

英隆はそう答えるが、本当は大丈夫ではないことは、苦しげな声が物語っていた。
そして、英隆の後ろ、邑子と英隆の血で汚れた刃が、三度襲い掛かろうとしているのを見、邑子はぎゅっと目を閉じた。

しかし、新たな痛みは来なかった。
代わりに銃声が響き、邑子が目を開けた時には、襲撃者は表情を歪めながらぐらりと身体を傾けていた。
邑子は顔を少し右に向けた。
視線の先、永佳が、大型自動拳銃コルト・ガバメントを両手でしっかりと構えているのが見えた。
永佳が、邑子と英隆を助けるために発砲したのだ。

やっぱりひぃはゆーこを助けてくれた…
ハルカワもゆーこを助けてくれる…
ゆーこ、ひぃもハルカワもだーい好き…

「あらあら、容赦ないのね、財前さん」

おっとりとした、けれどもどこか冷たい声が聞こえ、邑子は視線をそちらに向けた。
木の陰から現れたのは、クラスの中ではあまり目立たないタイプで、邑子はほとんど関わったことのない女の子——つい先程まで銃声が響き負傷者が出ている状況だというのに笑みを浮かべている鷹城雪美(女子九番)だった。
いつも穏やかに笑顔を浮かべている人ではあったけれども、何かが違う。
何が違うのか具体的に言葉にできないが、今の雪美の笑みを見ていると、何故か背筋を何かがぞわりと這い上がるのだ。


……。


比企谷「……、ディスティニーランドはまた今度な」

雪ノ下『っ、……そ、そう。わかったわ、また今度ね。………………また今度』

比企谷「……。んじゃ、そろそろ切るぞ」

雪ノ下『ええ、今夜は突然電話してごめんなさいね』

比企谷「別に構わねぇよ。……ついでに面白いもんも聞かせてもらったしな」

雪ノ下『? 比企谷くん、それは一体どういう意』

比企谷「あー、じゃあな雪乃、また明日な」

雪ノ下『——味かしら……って、待ちなさい比企谷くん。まだ話は終わってな』


話を終わらせまいとする雪乃の制止の声を振り切り、俺はスマホを操作して通話を終了した。

そして追求の電話がかかってこないように電源をオフにして、スマホをデスクの端に置いて再びタイピングを再開する。


それから議事録の別紙を書き上げ、コピー用紙に印刷を終えたのは30分後のことだった。


このあとはどうする? 以下より多数決

�疲れたので寝る

�切っていたスマホの電源をオンにする

�小町の勉強をみる

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

不意に、右側から葉の擦れる音がし、邑子は足を止めた。

「邑ちゃん…?」

英隆の声色からは、気を付けろという思いが伝わってきたのだが、邑子はさして気にも留めず、茂みの方へ足を向けた。

「さっきの猫ちゃんかも」

先程水を与えた猫が、ついて来てしまったのかもしれない。どこかに、先程見たものと同じ光る瞳があるはずだ——邑子は茂みの傍にしゃがみ、枝の隙間を覗き込んで猫の姿を探した。
しかし、光る瞳はどこにも見当たらない。

代わりに邑子が目を留めたのは、枝の色とは少し違う、ブラウン地のチェック模様——そう、邑子にとって見慣れた、帝東学院中等部の男女の制服のズボンやスカートの布地の模様。
そこまで思考が及ぶと同時に邑子は丸い目を大きく見開き、ばっと顔を上げた。

少し西に行くと有刺鉄線が張ってあるD=01エリア、そこは北に向かってなだらかな上り坂になっている。
気温はこの時間帯が最も高い。
今の気温は35℃だが、温度計を持たない者にはわからない。
暑い、それだけだ。
木が沢山茂っている場所で、根岸法子(女子14番)はその大柄な体を縮めて震えていた。
額には汗が滲み、ブラウスは汗でぐっしょりと濡れている。
ショートカットにした髪の毛も、汗で風呂あがりのようになっている。
法子の表情にいつもの明るさはない。
怖い…
殺されちゃうよ……

朝の出来事を思い出し、法子は震えていた。

 

明け方、朝の6時前だ。
背後で突然銃声が聞こえたのは。
法子は慌てて振り返った。
自分に支給された卓球ラケットを構えた(どうにもならないが)。

自分に背を向けているのは、その後姿から瀬川小夜(女子8番)だとわかった。
法子たちのリーダー、女子委員長の近藤楓(女子5番)とは犬猿の仲の。
小夜が向いている先には、楓がいた。

楓サン…!
どうしよう…楓サンが殺されちゃう…!

法子は楓と目が合った。
視力が両目2.0の法子には、楓の表情も見えた。
微かに笑い、顎をくいっと上げた。

…逃げろってこと…?

法子は踵を返して走り出した。
楓の事が気がかりだが、楓が逃げろというジェスチャーをしたので逃げた。

楓サンなら大丈夫、簡単に死ぬような人じゃない…!

無理矢理納得して、法子は走り続けた。
しかし、心配になって後でその場に戻った。
そこには既に誰もいなかった。
多少の血痕と、穴を開けた木があるだけだ。
法子は西に移動し、そこでずっと身を潜めた。

 

楓サン…怪我してないかな…?

法子は空を見上げた。
血痕があったということは、どちらか(或いは両方か)が負傷しているということだ。
とりあえず楓の名前はまだ呼ばれていない。
小夜の名前も呼ばれていない。
という事は、2人ともまだ生きているという事だ。
それは嬉しい事だった。
他の人から、委員長グループと小夜グループはいつも争っていると言われるが、法子は別に争いたくなかった。
グループ同士の争いになると、いつも後ろで制止する立場だった。

何であそこまで仲悪かったんだろう…?
しかも2人のことなのに、どうして気がついたらグループ抗争になってたんだろう…?
あたしはみんなで仲良くすればいいと思うのに…

法子はいつもそう言ったが、他のメンバーは横に首を振った。
唯一同意してくれたのは、七瀬やよい(女子13番)だった。

やよいとは気が合った。
よく2人で買い物とか行った。

やーちゃん…元気かな…?
誰かと一緒にいるのかな…?
どうしてあたしを待っててくれなかったんだろう…?

出発は間に真木頼和(男子14番)を挟んで、4分違いだった。
頼和とは喋った事はないが、きっと殺し合いとかはしないタイプだ。
それでもやっぱりやよいは怖かったのだろうか?

「あ…ノリちゃん…?」
不意に肩を叩かれ、法子は振り向いた。
そして、微笑んだ。少しつり上がり気味の目、2つに結んだ髪の毛、法子の見慣れた友達の七瀬やよいだった。
「やーちゃん…今会いたいなって思ってたトコだよぉ…!」
やよいは突然わっと泣き出した。法子は慌ててやよいを抱きしめた。
「どうしたの、やーちゃん!?誰かに会って怖い目に遭った!?」
「違う…違うよぉ…ノリちゃんに会えて…嬉しくて…」
そう言うと再びやよいは泣き出した。
怖かったよね…寂しかったよね…大丈夫、あたしが一緒にいてあげるから…
「そうだ、やーちゃん」法子が口を開いた。
「やーちゃんさ、誰かに会った?」
やよいは頷いた。
「うん、さっき…浜本君に会ったよ」
法子はへー、と相槌を打った。浜本卓朗(男子11番)と言えば、ほのぼの系グループの1人で、絶対にやる気にはならないだろう男だ。
「で、会話か何かしたの?」
「うん、話し掛けられたから…野恵ちゃんを見かけなかったか、ってあたしは見なかったけど…ノリちゃん見た?」
法子は首を横に振った。天条野恵(女子12番)は卓朗と付き合っている、と盛岡小枝子(女子20番)に聞いた事があった。出発の順番がかなり離れていたから合流できなかったのだろうか?
「あ、そうだ」やよいがポンッと手を叩いた。
「さっきからずっと気になってたんだけど…もしかしてその卓球のラケット…ノリちゃんの武器?」
法子は手元のラケットを見、苦笑した。
「当たり。やーちゃんは?」
やよいは自分のポケットから何かを取り出した。それを軽く振ると、刃物が出てきた。
「サバイバルナイフっていうのかな、これ。あたしの鞄にはこれが入ってたの」
「何だ、銃じゃないのかよ」
不意に背後から声が聞こえ、法子は振り返った。それと同時にパン、と銃声が響き、やよいが悲鳴を上げた。
「やーちゃん!?」
見ると、やよいの左腕から血が流れていた。右手でそこを押さえていたが、指の間から血が流れ、右手も汚していた。
「誰!?」
法子はラケットを握ったまま叫んだ。
木の陰から現れたのは、カッターシャツと右手を赤く染めた西川東(男子9番)が立っていた。
あれは…自分の血じゃないよね…?ってことは…人殺し!?
法子はラケットを東に向かって投げた。
しかし、東はそれをかわした。

「テメェ、何しやがる!」

東が再び回転式拳銃(S&W M29、西田大輔(男子10番)の物だ)を構え、撃った。銃声と共に体に衝撃を感じ、法子は倒れた。
あたし…撃たれたの…?
しかし、衝撃の割りに痛みはなかった。自分は撃たれていない事がわかった。

一体これは…?

倒れた時に閉じた目を開くと、そこには蹲っているやよいがいた。

「やーちゃん?!」

法子が起き上がってやよいを見た。腹に銃弾を受けたらしい。更にそれが貫通したらしく、背中も赤く染まっていた。どうやらやよいが法子を突き飛ばしたらしい。

「ノリ…ちゃん……無事……?」

やよいが口を開けると、そこから血が流れた。

「…やーちゃん…あたしを庇って…?どうして…?」
「わかんない…けど……よかった…ケガ…してなくて……」

それだけ言うと、やよいは目を閉じた。
その表情はとても穏やかだった。
やーちゃん…!
法子の目から涙が溢れた。東の方を睨むと、東は銃口を自分に向けている事がわかった。
「ああああああ!!」
法子は絶叫し、東に向かって走った。
「うおっ?!」
東は驚き、引き金を引くタイミングを外した。法子は東の右手を払い、M29を手放させた。東が右手を押さえているのもお構いなしで、法子は東の左襟首とカッターシャツの右袖をぐいっと掴んだ。
続いて東の右足を蹴ってバランスを崩させると、東の体は法子の上を転がった。
柔道の技、大外刈りだ。柔道では県内2位の実力を誇る法子の技は美しかった。
法子より重い東の体が宙に浮き、勢いよく地面に叩きつけられた。

一番最初に目を覚ましたのは佐々川多希(女子6番)だった。
あれ…? あたしは確か勉強合宿で……

周りを見て、多希ははっきりと目覚めた。
自分は錆びたパイプ椅子に腰掛け、木製の机に身を任せていた。
明らかに旅館ではない。

周りを見ると、誰も起きていなかった。
席順は夏休み前の授業時の席順と同じだった。
窓際の後ろから2番目、そこが多希の席だった。
どうやら、手入れしていない教室らしい。
黒板もちゃんとあるが、電気は薄暗いし机は埃が被っている。

「ちょっと……茉有? 茉有ってばぁ……」

後ろの席にいた親友の野尻茉有(女子15番)の肩を揺すった。
しかし茉有は目覚めない。

茉有の肩を揺らしながら、多希は茉有の首に銀色の何かが付いているのがわかった。

何だこりゃ……悪趣味だなぁ……

しかし、それが周りのクラスメイトにも、そして自分にも付いているのがわかった。
存在に気付くと急に鬱陶しい存在になる。

「ふああああ……」

あくびが聞こえ、多希は右を見た。
男子委員長の良元礼(男子16番)だ。

「い……委員長……」

多希が声を掛けると、礼は振り向いた。そして、にっと笑った。

「よっす、グッドモーニング。 ……佐々川、今何時だ?」

多希は自分の時計を見た。
超人気テレビアニメの『ドラ太郎』というネコ型ロボットの絵がある時計だ。
あ、いや、そんなことはどうでもいい。

「えっと……4時前だよ、あ、午前の」

「あ? なんだそら。 ほとんど一日寝てたのか、オレら……」

そうだ、最後の記憶は朝ご飯を食べていた時だ。
ちょっと寝すぎかな?
頭がぼーっとしてる……おなかもすいた。

そのうち、生徒たちがだんだん起き始め、室内がざわついてきた。

「タッキー、何これ……」

茉有が目を覚ました。
何か、だって? 知るかそんなもん。

多希が見回すと、誰とも喋っていない生徒が目についた。

多希の前方、1番前に座る幼馴染の天条野恵(女子12番)が、隣の席に座る彼氏である浜本卓朗(男子11番)やその後ろの月野郁江(女子11番)と喋っているために喋る相手がいない小路幽子(女子7番)、多希の2列横の武田紘乃(女子10番)の1つ後ろ、普段から友達付き合いがほとんど無い戎嘉一(男子2番)、嘉一の2つ横、男子に周りを囲まれている大野迪子(女子3番)、そして廊下側(船海第一中学と同じなら)の1番後ろで腕組をしている稲毛拓也(男子1番)。
拓也の口が僅かに笑みの形を作っているような気がした。

稲毛君……何か知ってるのかな?

そう思ったが、詳しく聞くことはなかった。
教室前方の扉がガラッと開き、4人の男女が入ってきた。

「さぁ、みんな静かにしろよぉ!」

赤い帽子を被った4人の中で最も背の低い15,6歳頃の男(160ないかもしれない)が叫びながら手を叩いた。
すぐに教室内は静まり返った。

「ようし、みんなイイコだな!はじめまして、今日からみんなのトレーナー…いや、担任になったサトルだぜ!よろしくな!ついでに、皆から見て1番右にいるのが、タケル…あ、タケルはお姉さん大好きだから、女の子は注意してね!その横にいる見るからにオテンバそうな気の強そうな女はアスミだ!自称オテンバ人魚らしいけど、絶対ウソ、むしろ魚人…ウソだよ、イテッ!そして、1番左にいるキザなヤツは、オレのライバルのシゲキだ!皆君たちの世話をしてくれるんだ! よろしくな!」

タケルは今から登山にでも行くのかという格好をしている。アスミはヘソ出しにミニのズボン、海の近くに住んでいそうだ。さすが自称人魚。シゲキは普通の紫色のトレーナーを着ている。何なんだ、このアンバランスな組み合わせは。








見やすくしておきます。








比企谷「……まあこんなもんだろ」


俺は過去の記憶を引っ張りだして仕上げた議事録の別紙に不備がないことを確認すると、パソコンの電源を切ってスマホとプリントを掴んで自室へと戻った。

それからプリントを鞄の中へ折り目がつかないように慎重に仕舞い、そのあとはベッドへ仰向けに倒れ込む。


比企谷「あー…………疲れた」


このまま寝てしまってもよかったのだがなかなか寝付けず、仕方がないので先程電源を切った暇潰し機能付き目覚まし時計の電源を入れた。

しばらく待機していると闇色の画面から一転、メーカーのロゴやら使用上の注意が表示されたあと待ち受け画面が表示される。

画面上部の通知バーにはメールと着信のアイコンが表示されていた。


『新着メール24件、不在着信5件』


…………………………え?


夏休みの悪夢がフラッシュバックしながら恐る恐るメールボックスを開くと、液晶画面には


何が表示された? 以下より多数決

�すべてスパムメール

�『雪ノ下雪乃』の名前で埋め尽くされている

�『平塚静』の名前で埋め尽くされている

�『雪ノ下雪乃』と『平塚静』の名前に紛れて『☆★ゆい★☆』の名前が一件表示されている

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

……ヤンデレのん降臨フラグ? 

いや、まだ機械音痴なゆきのんの可能性が微レ存のはず……。


すみません、今日はここまでです。

それにしてもこのスレの住人、ゆきのん一筋である。

このままだとガハマさんはサキサキみたいに別スレで救済ですかね(まあサキサキ自体何ヶ月先になるかわかりませんが……)。

この続きは昨日と同じくらいの時間帯からです。

それでは失礼します。



※諸連絡

例の奇行種はスルーでお願いします。




夏休みの悪夢がフラッシュバックしながら恐る恐るメールボックスを開くと、液晶画面には





hachiman's mobile


『差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃
 差出人 雪ノ下雪乃』



比企谷「」


——『雪ノ下雪乃』の名前が黒々と隙間なく表示されていた。


……おいおいおいなんだこれなにしたどうした俺どういう状況なんだこれなにこれなにこれなにこれ。

一瞬で背筋が凍りつき歯の根が合わなくなる。

このままでは呪い殺されると悟り、一刻も早くホーム画面に戻ろうとスマホを操作するが、恐怖のあまり指先が震えて思うように操作出来無い。


そして震える指先が触れたのは、あろうことか『戻る』のパネルではなく『開く』のパネルだった。



差出人『雪ノ下雪乃』
題名 『non title』
本文 『何か返事をして頂戴』



八幡はどうする? 以下より多数決

�見なかったことにして寝る

�小町に助けを求める

�返事をする(内容は選択された場合、自由安価で決定)

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

↓5 返事の内容は?(あまりにも酷い内容の場合は別の安価を採用)


……『何か返事をして頂戴』ってなんだよ。逆に怖いわ。

これより前のメールを開けば攻略の糸口は見えそうな気もするが、爆弾積んでる可能性の高いメールを開く勇気なんてねぇしな……。

だからもうここは『やっはろー』とでも返信しておこう。『!』もつければいけるハズ(適当)。

未だ小刻みに揺れる指先でなんとか文字を入力して送信パネルに触れる。

そして『送信完了』の文字を確認すると、ようやく指先の震えが止まった。


比企谷「なんだったんだよ一体…………」


緊張の糸が途切れて深々と溜め息をついたその刹那、手中で暇潰し機能搭載型目覚まし時計が暴走を再開する。いい加減にしろ。


誰からのメール? 以下より多数決

�雪ノ下雪乃

�由比ヶ浜結衣

�k-saki1026@azweb.ne.jp

先に4票集まった選択肢で先に進みます。


僅かな苛立ちを感じながらメールボックスを開くと、再び姿を現すのは漆黒の文字群。

先程の画面との変化は一切ない。

ただ一点、既読のアイコンが付いたメールの上に『雪ノ下雪乃』の名前が表示されているのを除けば。


比企谷「……これアドレス教えなかったほうがよかったんじゃねぇか……?」


俺はそうぼやきながら一番上のメールを恐る恐る開く。


差出人『雪ノ下雪乃』
題名 『non title』
本文 『電話をかけてもいいかしら』


……。

…………アホなのかこいつは? 電話するのにわざわざ伺い立てる必要あんの?


八幡はどうする? 以下より多数決

�『勝手にしろ』と送信

�『ダメだ』と送信

先に4票集まった選択肢で先に進みます。

ごめんなさい、なんか吐き気がするので今日はここまでです。

明日は少し用事があるので再開が遅くなります。

それでは失礼します。



いつになったらガハマさん視点が始まるんですかね……。

俺も書いてみようかなぁ…

>>894さん 書いたら絶対に読みに行きます


昨日はご心配をおかけしました。もう平気です。

さて、このスレも残り100ほどになりました。

ゆきのん兵団の統率力が突出し過ぎてルートがほぼ確定しかけていますが、これからガハマさんとサキサキの逆転はあるのでしょうか?


あと主人公総選挙はもう意味がなさそうな予感。そうか、やはり八幡が主人公だったのか……。

まあそんなこんなで再開しますね。もうしばらくお待ちください。

……ったく、あいつは真面目過ぎるというか融通が利かないというか……。


比企谷「…………もう勝手にしろ」


呟いた言葉をそのまま文字に変換し、俺は雪乃へ送信する。

しばらくするとスマホが振動し始めたので、受信のパネルにそっと触れて耳に当てる。

スピーカーから伝わる声は、先程の上擦った声音とは打って変わって落ち着き払っていた。


雪ノ下『こんばんは』

比企谷「おう」

雪ノ下『また随分とぞんざいな返事ね……』

比企谷「いいだろ別に。『おう』という二文字はいついかなる状況においても万能な言葉なんだぞ」

比企谷「それに『おう』を漢字で書くとちゃんと心が込められてるし。だから『応』はぞんざいな返事なんかじゃねぇよ」

雪ノ下『また屁理屈を……』

比企谷「はっ、屁理屈を言って何が悪い。物事を真正面から見てもわからねぇもんは沢山あんだぞ」

雪ノ下『……そうね。とくにあなたみたいなひねくれ者は、無理矢理背後に回り込まないと実像は見えなさそうよね』

比企谷「そうかもな。でもまあ背後に回り込まれても後ろを向けば問題ねぇけど」

雪ノ下『あら、それは不可能よ。だって私が背後から一瞬で締め上げるもの』

比企谷「おい待て暴力はなしだろ」

雪ノ下『暴力ではないわ。それはあくまで調教……ごめんなさい、言葉を間違えたわ』

雪ノ下『それはあくまで矯正の為だもの。躾をするには肉体と精神の両方に痛みを与えて恐怖心を植え込み、それを絶妙のさじ加減で操作して手懐けるのが一番手っ取り早いのよ』

比企谷「鞭ばっかかよ……、飴はねぇのか飴は」

雪ノ下『躾のなっていない犬に与える餌なんてないわ。それくらい私が口にしなくても理解しなさいハチガヤくん』

比企谷「人のことを忠犬ハチ公みたいに呼ぶんじゃねぇよ。あと俺は飼い主が死亡した後も駅前で帰りを待ち続けるほど健気じゃねぇから」

雪ノ下『そうね。確かにあなたは健気ではないかもしれないけれど、待ち続けることに関しては一家言あるのではないの?』

比企谷「…………は?」

雪ノ下『あなたは変わらないことを望んだのでしょう? 現状維持を、不変を貫くことを、恒常であり続けることを、あなたは望んだのよね?』

比企谷「……おい、なんだ急に」

雪ノ下『「勝手にしろ」——と言ったのはあなたよ。だから私は勝手に言っているの。まあ由比ヶ浜さんに咎められているからこれ以上はあまり言及する気はないのだけれど』

比企谷「……平塚先生からその話を訊いたのか」

雪ノ下『……ええ、つい十数分前、メールで平塚先生から昨日のあなたと平塚先生の会話について教えられたわ。そしてそれはおそらく由比ヶ浜さんにも伝わっているはずよ」

比企谷「……っ、……そうかよ」

雪ノ下『……あなたの意志がそう簡単に揺らぐものではないのは重々承知しているわ。何故ならあなたは一度決めたことはどんなに手段や方法が間違っていたとしても、最後までやり遂げてしまうのを私はすぐそばで何度も見てきたから」

雪ノ下『……けれどそれでも、それでも私はあなたの抱えている苦悩を知って、ただ黙っていることなんて出来なかった』

比企谷「……、」

雪ノ下『……、』

比企谷「…………すまん雪乃、…………少し、考えさせてくれ」

雪ノ下『……わかったわ。……今日は、突然こんな話題に誘導してしまってごめんなさい』

比企谷「気にすんな、……とは流石に言えねぇな。…………まぁとりあえず、じゃあな」

雪ノ下「……ええ、おやすみなさい。…………また明日」


雪乃との通話を終えた俺は部屋の電気を消し、両眼を固く閉じた状態でベッドへ飛び込み、思考を深い意識の奥底へと沈めた。

何度も文を修正していたら思いのほか時間がかかってしまいました、申し訳ございません。

短いですが今回はここまでです。


それと全ルートをやろうという話がちらほらとあがっているようなんですが、それははっきり申し上げまして無理だと思います。

実は>>1自身が約2週間後の6月25日からバイトを始めるので、毎日更新するのが厳しくなるからです。

シフトがまだ明確に決まっていないのでなんとも言えないのですが、更新頻度が低下するのは避けられないでしょう。

出来るだけ更新するようにはしますが、当分はバイトの仕事を覚えるのに追われて更新できないかと……。


とりあえず次回でルートは確定する予定です。

しかしあくまでも予定ですのでずれ込む可能性があるのであらかじめご了承下さい。

再開は22時前後ぐらいだと思います。

それでは失礼します。



視界が捉えるのはすべてを無に帰す闇の色。

周囲の様子を伺う以前に自身の姿を確認することさえ叶わない。

いつからこんな暗然とした空間に身を沈めていたのだろうか。

疑問を覚えて過去を振り返っても、想起されるのは悶絶必至の黒歴史。

いついかなるときも纏わりついて離れない、解除不能の呪われた鎖が全身に絡みついている。


ろくに身動きも取れず、ただその場に縫い止められる。

退路はあったはずなのに、いつの間に消失した。

それはきっと新たな居場所を手に入れてしまったから。

そこが居心地が良い事を知ってしまったから。



すぐ近くにいたあいつらが、自分の居場所を見つけ出してくれたから。



『違うよ。待たないで、……こっちから行くの』

『あたしはヒッキーのことが好き。たぶんゆきのんが、ヒッキーのことを好きになるずっと前から』


『……でも、今はあなたを知っている』

『あなたが出来ないと言った人を愛する行為を、私が可能にしてみせる』



『本当に欲しい大切なものはすぐ近くにあるということを、君はよく覚えておきたまえ』



本当に、欲しい、大切なもの。



——俺が、

——俺が望むのは、

——俺が大事なのは、






かけがえのない者


�雪ノ下雪乃

�由比ヶ浜結衣

�雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣



先に6票集まった選択肢でルート確定


比企谷「……っ」


カーテンの隙間から差し込む陽の光で俺は目を覚ました。

起床後特有の倦怠感に包まれた身体をゆっくりと起こしてしばし黙考。

部屋に置いてある時計の短針は、5と6の数字の狭間を指し示していた。

…………さて、どうすっかな。


八幡はどうする? 以下より多数決

�朝食を作る

�外へ散歩に出掛ける


先に3票集まった選択肢で先に進みます。


比企谷「……たまには早朝の散歩でもしてみっかな」


普段はひきこもりのくせに今日に限って柄にもなくそう呟き、俺は部屋着から動きやすそうな私服に着替える。

そしてスマホを手に取り待ち受け画面を表示すると、バッテリー残量が残り20%に減少していた。

学校でバッテリーが切れると色々面倒なので、スマホは充電器をコネクタ部分に差し込んで机の上に放置。

代わりに腕時計をズボンのポケットに仕舞って自室を出た。

階段を降りて洗面台で顔を洗い、眠気覚ましに昨日川崎からもらったMAXコーヒーを飲んで家を出る。

空を見上げれば、東方の低い位置に浮かぶ日輪が住宅街を穏やかに照らしている。本日も晴天ナリ。


散歩の最中に誰かと遭遇した? 以下より多数決

�川崎沙希

�材木座義輝

�遭遇しなかった

先に3票集まった選択肢で先に進みます。

安価は3でいきますね

さて、それでこのスレも残り50ほどになったのですが、このあとはどうしましょうか。

前スレみたいに短編でもやりますか? それとも本編の続きをやりますか?

みなさんの意見を伺いたいです。

意見が半々なので、短編を一本やって本編の続きをやろうと思います。

↓4 誰の短編? (複数人可)


【名前とは裏腹に、雪ノ下雪乃はあたたかい】



雪ノ下「……ねぇ比企谷くん」クイクイッ

比企谷「ん?なんだ雪ノ下」

雪ノ下「今日は一段と冷え込むわね」

比企谷「あーそうだな、寒いな。なんか昨日と今日にかけて今シーズン最強の寒波が襲来してんだとさ」

雪ノ下「そう。……ところで、比企谷くんは手袋は付けない人なのかしら」

比企谷「いや、俺は手袋は付けるぞ。でも手袋はけさ小町に持っていかれたから付けたくても付けらんねぇんだよ」

雪ノ下「……もしかして、あなたがマフラーを巻いていないのも……」

比企谷「その通り、マフラーも持っていかれた」

比企谷「……あんのアホシスター、昨日降った雪で雪合戦して自分のマフラーと手袋びしょ濡れにしやがって……っ」

雪ノ下「小町さんの手袋とマフラーは洗濯中というわけね」クスッ

雪ノ下「……、」

雪ノ下「…………比企谷くん、これ、もしよければ」スッ

比企谷「ん?これって……手袋?しかも左手だけ?」

雪ノ下「私の手袋よ。片方だけでもないよりは幾分かは温かくなると思うわ」

比企谷「いや、でもそしたらお前の左手が冷えちまうじゃねぇか」

雪ノ下「あら、そんなことないわよ。だって」


——ぎゅっ


雪ノ下「…………こうしてあなたの右手を握れば、……あたたかいもの」


Fin.

デレのんとか無理でした、ごめんなさい

それと今回はここまでです。

次回は昨日と同じ時間からだと思います。

デレのんはこのあとのアニガイル11話

『そして、それぞれの舞台の幕が上がり、祭りは最高にフェスティバっている。』

でご確認ください。


それでは失礼します。

次スレになります。

【安価】比企谷「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」雪ノ下「その4よ」

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それと本編は次スレから再開することにしました。

なので残りは短編で埋めたいと思います。

↓3 誰の短編? (複数人可)

すみません。寝落ちしました。


【やはり海老名姫菜は腐っている】



戸塚「えっと、葉山くん、少しいいかな?」

葉山「ん? どうしたんだ戸塚?」

戸塚「あのね、さっき海老名さんに指摘されたシーンがあるでしょ?」

葉山「……ああ、バオバブの部分か」

戸塚「うん。それでぼく自身こういった劇ってやったことがないから、感情移入……? みたいなの、全然出来なくて……」

葉山「あー、……うん、そうだな。でもそんなに気負う必要はないんじゃないかな?」

戸塚「そうかなぁ……」

葉山「この台本は少し特殊だから、あまり感情移入することは意識しないほうがいいと思う」

戸塚「意識……しない……?」

葉山「そう。それで役を演じる上で重要なのは自然体でいることかな。戸塚の役である『ぼく』は一人称がぼくだから、戸塚は普段の生活通りにやればきっと大丈夫だ」

戸塚「そっか…………うん、そうだね。ありがとう葉山くん」

葉山「礼には及ばないよ」ニコッ


海老名「『その代わり、今日の放課後は俺の自宅で朝まで演技指導に突き合ってもらうけどな』」


戸塚「ッ!?」ササッ

葉山「ま、待ってくれ戸塚。今のは俺じゃない、俺じゃないから!」

海老名「『バオバブは大きくなる前は小さいから、俺が大きく育ててやらな——ぶ腐っ!!』」バタンッ

「また海老名さんが倒れたぞー!」

「またッ!? 今日だけで3回目だぞ!?」

「また床についた血を拭かないといけないのか……」

戸部「ちょ、海老名さんダイジョブ!?」

三浦「またやった……。姫菜、あんた文化祭だからってはしゃぎすぎだし」

葉山「……誰か、姫菜を保健室まで」

海老名「…………く、腐ってなお……わが人生に……悔い、なし……!」

由比ヶ浜「みんなたっだいまー……——って、なにこれどういう状況ッ!?」


Fin.

もはや海老名が主役

↓3 誰の短編? (複数人可)


【なんだかんだで、彼と彼女は似通っている】


雪ノ下「比企谷くんの改善点を挙げていきましょう」

由比ヶ浜「え? いきなりどうしたのゆきのん?」

陽乃「比企谷くんの改善点かー。いろいろ欠点があるからまず何を言うか困っちゃうね」

由比ヶ浜「陽乃さんがいる!? え? なにこれどういうこと?」

雪ノ下「あら姉さん、彼が早急に改善すべき点は端から決まっているじゃない。あの腐った双眸以外にあるかしら?」

由比ヶ浜「ゆきのんは勝手に始めちゃうし……。……あ、あたしは猫背かなぁ」

陽乃「うーん……わたしは性格だね。比企谷くんはひねくれ過ぎてて、あんまりわたしの思い通りに動かせないのがちょっとね」

由比ヶ浜「(陽乃さんの言ってることがなんか怖い……)」 

雪ノ下「……二人とも、一体何を見当違いな事を言っているのかしら。『目は口ほどに物を言う』とよく言うでしょう? 人間が喜怒哀楽の感情を最も顕著に表すのが目なのよ」

雪ノ下「何もしゃべらなくとも目つきから相手の感情がわかり、また言葉で偽りごまかしていても目を見ればその真偽がわかる。ひねくれ者の彼にはこれが一番効果的なはずよ」

由比ヶ浜「目と目だけで理解し合えるとかなんかすごいロマンチックだなぁ……」

陽乃「んー? でも雪乃ちゃん、その言い分だと性格を改善すればあの腐った目も同時に改善されることだよね? そもそも雪乃ちゃんはどうやって比企谷くんの腐敗した目を改善するつもりなのかな?」

雪ノ下「そんなの決まっているじゃない。私がただひたすら比企谷くんの目を見つめ続けるだけよ」

雪ノ下「もし彼が目を逸らしても目の前に移動して見つめ続ける。瞼を閉じたら無理矢理こじ開けて見つめ続ける。彼に小細工は通用しないのよ。策を弄じてもすべて斜め下にすり抜けられてしまうから」

由比ヶ浜「……ゆ、ゆきのんちょっと怖いよ……」

陽乃「雪乃ちゃんの真っ直ぐすぎる性格も、少し考えものだよね」


Fin.

なんだかんだで似ている姉妹。笑いのツボも一緒です。

とりあこのスレでの投下はこれにて終了です。

残りは雑談などで埋めて頂けると幸いです。

続きは次スレでお会いしましょう。それでは。


次スレ 【安価】比企谷「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」雪ノ下「その4よ」

【安価】比企谷「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」雪ノ下「その4よ」 - SSまとめ速報
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