ある日のホロウメイガスちゃん(19)

初投稿の為、いろいろ変なところがあると思われますがどうか生暖かい目で……


・世界樹の迷宮Ⅳの第六迷宮ネタがメインです

・ⅠⅡⅢ新のネタを微量含みます

・君はネタバレを避けるためにクリアするまでこのSSを見なかったことにしてもいいしネタバレ上等と言いながら読んでもいい

・かぎづめモグラは出ませんファンの方ごめんなさい

 ボウケンシャという方が来るらしい。つい先ほど楽園への導き手さんの破滅と絶望の右腕くんがそう伝えてくれたのだけど。

「さすがにお客様が来るのにこのままなのは良くないと思うの」

 軽く屋敷を見回りながら呟く。隣にいる破滅の花びらちゃんは特に興味なさそうに(と言うか眠そうに)「そーだね」と返してくる。私は真面目な話をしているのに。

「と、言うわけで掃除をしましょう」

「えー、めんどくさい……」

めんどくさい言わない。

 大王ヤンマくんを呼んで手伝いをお願いする。掃除の話をすると「まあそうだな」と納得してくれたのだけど。

「そもそも時間が足りないんじゃねえか?」

「そうかもしれないけど……」

 右腕くんはおそらく明日には来ると言っていた。それまでに三人だけでこの屋敷全体を掃除できるとは思っていない。

「でも、三階だけでも掃除できれば時間ができるんじゃない?」

「ああ、なるほど」

 納得した様子の大王ヤンマくん。実際、この屋敷はびっくりするぐらい広くて入り組んでいる。三階はあまり来ない私では下手をすると迷うほどだ。

「アーマービーストくん」

「ん、どうしたの?」

 ちょうど近くを転がっていたアーマービーストくんにも協力をお願いする。幸いにも二つ返事で参加してくれた。

「まずは、電球を取り替えましょう」

 いくらなんでも三歩先が見えないのは駄目だろう。

 この屋敷の天井はやけに高いので飛べる大王ヤンマくんと私、それと破滅の花びらちゃんで電球を替え、アーマービーストくんには電球を運んでもらう。

 久しぶりすぎてどこに予備の電球が置いてあるのかも忘れてしまい、見つけるのに数時間ほど消費してしまったけど。

 三階の広間から見上げた空がいつの間にか暗くなっていたな、間に合うのかな……。

 少し手間取ったけど取り替えが終わり、床の掃除にうつる。

 いつこぼしたのかもわからない固まった栄養ドリンクを削り取っていく。
 あまりにも固いのはアーマービーストくんのぶちかましで砕いてもらったりもした。
 もっときれいに飲んでくれないかな、ビートルロードくん。

 床掃除だけでも十分すぎるほど苦労したけど、それでも竜巻状の物があるおかげか三階はほかの階に比べて綺麗だ。
 あまりにも意味ありげに立っているので不気味で近づきたくないのだろう。まあ私も普段は三階には来ないので人の事は言えないが。

 そして壁と本棚の掃除にうつろうとしたのだけれど。

「メイガスちゃん、金鹿図書館のザリガニくんから」

「ありがとう、巨大な邪花ちゃん」

 どうやら近くの図書館にいるザリガニくんから電話が来たらしい。

「もしもし。どうしたの、急に?」

『今そっちにボウケンシャっぽいやつが向かっていったから、一応連絡しておこうと思って』

「え、本当!?」

『おう。もうすぐ着くんじゃないか?』

 広間に戻って空を見てみると夜が明けていた。これは大変だ。まだおもてなしの用意もできてないのに。

「うん、ありがとう。じゃあ急いでるからまた!」

『おう、またなー』

 時間はほとんどないけれど、何をやればいいだろうか。少し悩んだのだけれど、

「そう言えば階段とかの明かり取り替えるの忘れてないか?」

「あ、そうだった!」

 危ない危ない、大王ヤンマくんに言われなかったら忘れっぱなしだった。

「じゃあ……、とりあえず私は簡単に料理を作っておくから、大王ヤンマくんと破滅の花びらちゃんで階段まわりの電球をお願い。
 アーマービーストくんは穴の周りに設置してある柵が壊れていないか確認をお願い」

「りょーかい」

「わかりましたー」

「うう、めんどくさい……」

 この期に及んでまだそんなことを言うか、破滅の花びらちゃん。こうなったら……、

「せいっ!」

「あうっ、……仕方ないわね、やればいいんでしょやれば!」

「その意気! じゃあお願い!」

 とりあえずこれで少しはやる気を出すかな。三階のことは三人に任せて急いで台所へ向かう。時間もなかったので簡単にパンとスープを作っておく。
 二階以降の掃除もあるのでちゃんと料理できないのが残念。

「切れてた電球取り替えておいたよー、あー反動ですごい眠い……」

「柵も異常はなしです、ぶちかましてみても壊れなかったので」

「ありがとう……、あれ、大王ヤンマくんは?」

「二階のほうも取り替えておくって言ってた」

 ありがたい。とりあえず三階はこれでいいとして、次は二階を綺麗にしないといけない。

「二階に来たはいいけど、この部屋はもともと照明器具がついていないのよね」

 一階二階に何故か数部屋あるのだ。設計ミスではないだろうか。せめて窓だけでもつけてくれればいい

のに。
 いつだったかそう愚痴ったら赤獅子くんに「よく眠れるからこのままがいい」って言われたけど。

「まあまずは床掃除かしら」

 この階はもうひどかった。まず部屋にまるごとぶちまけたとしか言いようのない量の栄養ドリンクが固

まっている、しかも一部は氷血の粛清でも狂血の契りを足した力溜め棘の雨でも削れなかった。
 いっそのことビートルロードくんに掃除させようか。

 飛南瓜くんたちの部屋は自分たちでやっているから掃除はしなくて大丈夫とのこと。どう見ても汚いけ

ど、そういうなら仕方ない。

 次に電気の無い部屋。この部屋を掃除するのは無理かな……。足元すら見えるか怪しい。

「ちなみにこの赤いのはなに?」

「ああ、それはライデンジュウくんのおやつ」

「……」

 どこかからかぬるりと出てくるライデンジュウくん。そしてきっちり食べて去っていく。後でおかわりを置いておこう。

「一階……ねえ……」

 もう投げ出したくなってきたなー。っていけない、これじゃ破滅の花びらちゃんと一緒になってしまう。

「とても失礼なことを言われた気がしたわ」

「気のせいよ」

 モスロードさんたちの部屋、はいいや。少しでも物音をたてると「ゴチャゴチャうるせー!!」って叫びながら切り刻んでくるし。若者って怖い。

「で、また照明器具なし、と……」

 正直一階ってまともに掃除ができるところがない気がするのは私の気のせいだろうか。気のせいであってほしいな、気のせいじゃなかったけど。

「って何、この部屋。ひどい臭い……」

「失礼しちゃうわね! アタシの香水の香りよ!」

 げ、うごめく毒樹……さん。この人は苦手だな、と一歩下がるとさっきまで氷が張っていたところが解けて水になっていた。
 まあ私は浮いているから濡れることはなかったんだけど。そのまま逃げるように香水の匂い(折衷案)が充満する部屋から出る。

「よう、上の階は終わったのか?」

「あ、大王ヤンマくん。終わったけど……何してるの? って、静かにした方がいいよね」

 大王ヤンマくんの後ろには暖炉があり、火が燃えている。冬は点けてないと寒くてやってられないって(破滅の花びらちゃんが)言うけれど、今は夏だしむしろ暑い。

「換気扇がしっかり動いてるか確認しようと思ってな、まあ問題なかった」

 そう言って火を消す大王ヤンマくん。少しして一階がかなり涼しくなる、まあ夏だしいつも通りと言えばそうなんだけど。階段前に場所を移しつつ言う。

「換気扇か、それは思い至らなかったわ、ありがとう」

「礼には及ばねえよ、ちなみに今ボウケンシャ……だっけか? 何階にいるんだ?」

 それとほぼ同時に階段から痺れエリンギくんたちが顔を出す。十二人集まってピラミッドを作っているけどなんでだろう。あと一番上に三人乗るのはいくらなんでも無茶だと思うの。

「呼ばれて飛び出て痺れエリンギーズただ今参上!」「ピリ辛調味料としていかがかな?」「痺れエリンギ十二面相、またの名を痺れ爆発と言う……」
「天気予報もできる万能の痺れエリンギはこちらです」「びりびりびりびりびりびりびり」「あそれ びりびりびりびりびり」
「レッツセ~イ、ナァム!」「パララァイズ!」「痺れエリンギーだエリンギーッ!」
「芸術は痺れ爆発だ!」「この痺れ……、おぬし、また腕を上げおったな」「はいはい麻痺消し麻痺消し」

「うっるさーい!」

 相変わらずキャラが濃い。ツッコミ疲れるから遠慮してほしいのだけど。

「ボウケンシャーは現在二階で気を失っている、気をつけろ!」

「えっ、本当!?」

「おっ……、おう……」

 何やらとても微妙な顔をしているがおそらく「気を失っている」と「気をつけろ」をかけた駄洒落のつ

もりだったのだろう、わかりづらい。

「どの部屋!?」

「揺ら、すな、頭が、くらくら、する、うえっ」

「おーい、ちょっとおちつけ、メイガス」

 飛南瓜くんたちの隣の部屋で倒れているらしい、細かい場所はわからないけれど。出てきた姿を誰も見

ていないと言っていた。
 一つの扉に三人ずつ文字通り貼り付いていたらしいし確かだろう。各扉一人ずつ残して私に言いに来て

くれたらしい。

「ところで暗いことの対策は何かあるのか?」

「一応……、ライデンジュウくん、いる?」

「……?」

「大放電で部屋を照らしてくれる?」

「……」

 むくむくと大きくなるライデンジュウくん。とりあえず床に向けて撃つとボウケンシャさんにあたって

しまうかもしれないので上に向けて撃ってもらう。バリバリと閃光が飛び、若干目に痛い。

「どう、見つかった?」

「いや、見当たらないな……」

「ですな」「ですね」「ですにゃ」「ですです」「ですます」「ででしま」

「ストップ」

 まだ言っていない痺れエリンギくんが露骨に残念そうな顔をする。無視。

「とりあえず、痺れエリンギくんたちはここで待ってて」

「ういっす」「おいっす」「へいへい」「なりなり」「ぬるり」「めらめら」

 さっき喋れなかった六人のほうが満足そうに喋っている。無視。ライデンジュウくんを抱えて部屋を見回る。

「ん、今箱のほうに何かあったぞ」

「箱?」

 さっきの鎚が入っていた箱だろうか、鎚以外にももらった弓八幡を入れておいた気がする。何を思ってホロウホプリテスちゃんは私に渡したのだろう、私も弓は使わないのに。
 まあボウケンシャさんが持っててくれれば有効活用してくれるだろう。

「これは……、紙箱?」

 箱には『どの迷宮からもこれ一本! すぐに町まで送り届けます! 探索・調査のお供に アリアドネの糸 Adventurer Edition』と書いてある。

「アリアドネの糸……? 知ってるか?」

「うん、少し前に毒吹きアゲハちゃんから聞いた覚えがある」

 なんでもリスくんからもらったのを使ってみたら即座に自分の巣まで帰れたらしい。たぶんボウケンシャさんが使うと書かれている通り町に帰れるのだろう。と、言うことは。

「どうやら心配は無用だったみたい」

「そうか、まあお前が言うなら大丈夫だろ」

 ボウケンシャさんの捜索を切り上げて一度みんなに集まってもらう。そういえば途中から破滅の花びらちゃんは何処に行っていたんだろう。
 アーマービーストくんは他の柵が壊れていないか確かめてきてもらったんだけど。

「ただいまー、っと」

「あ、破滅の花びらちゃん」

 なんでもルーカサイトくんとデススコーピオンくん、アークピクシーちゃんとねとげと言うのをやっていたらしい。

「あと一人ほしかったから募集したら ✝死を呼ぶ妖鳥✝ ってひとが来てさー」と言っていたけどよくわからないので適当に流す。

「みんなありがとう、おかげでどうにか間に合ったわ」

「てやんでい」「お礼はいらんぜ姐さん!」「フハハ、もっと褒めるがいいさ!」
「センッキュゥゥゥウウウ!」「一番痺れエリンギ、花火のモノマネ行きます!」「どういたしましてだエリンギーッ!」「食後の御口直しにいかがかな?」
「びりびりびりびりびりびりびり」「あそれ びりびりびりびりびり」「チャージ!」
「この爆発……ッ! そうだ、これを待っていたッッッ!」「―――勝負、あった、な……」

 うるさい。まあ今はいいや。

「あとビートルロードくんはどこにいるか知ってる? 氷血の粛清を浴びせてきたいんだけど」

「どうどう、おちつけメイガス」

 固まる前にきちんと掃除しておけばこんなに苦労しなかったのに、と言うかその時間を欠陥部屋に燭台つけたりするのに回せたんじゃないかと思うと落ち着いていられない。
 壁と本棚の掃除は……、今日は疲れたしいいや。

 お皿を片付けようとパンとスープを置いておいたところに向かうと、テーブルの上に『おいしかったよ ありがとう!』と言うメモがおいてあった。
 明日も作るか、と躍起になる私であった。
《完》

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