マミ「魔女のいない世界で」(302)

 見滝原の歩道橋の上で、二人の魔法少女が戦いを繰り広げていた。

 一方は、リボンを自由自在に操る黄色い魔法少女。

 もう一方は、槍を武器とする赤い魔法少女だった。

マミ「悪いけど、あなたの魔法も戦い方も知り尽くしているのよ? そんな正攻法だけで私に勝てると思っているの?」

杏子「ハンッ、こっちも知ってるんだよ! あんたの拘束魔法なんか、余裕で見切れるのさ!」

 赤い魔法少女・佐倉杏子は近付いてきたリボンを槍先で切り裂くと、相手の方へと突進した。

マミ「それは失礼…。でも、闇雲に正面から向かうなって散々言い聞かせてたはずなのに、守らないのね」

 黄色い魔法少女・巴マミが自らのリボンを変形させたマジカルマスケット銃で槍の突きを受け止める。

杏子「チッ、てぇい! 」

 杏子はマミに向かって何度も槍撃を繰り出そうとする。

マミ「全く、諦めが悪いのね。それじゃあ、これはどうかしら……」

 マミは辺り一面に張り巡らせたリボンを大砲やマスケット銃に変化させると、杏子の周りを覆い囲んだ。

マミ「これでも…、真正面から突進出来るのかしら?」

 だが、杏子は向けられた大量の魔銃にも臆することなく、マミの方へ直進していった。

杏子「笑わせんな! そんな[ピーーー]気の無いなまくら玉、避ける必要すらないんだよ!」

マミ「えっ?」

杏子「ハァーーーッ!」

 杏子の槍は、マミの胸元のリボンを引き裂いていた。

杏子「次はリボンだけじゃ済まないよ。あんたとはもう覚悟が違うんだ」

 マミはその場に呆然と立ち尽くしていた。

杏子「あたしは風見野に戻るよ。今まで世話になったね」

 杏子は槍を下げると、マミの方を通り過ぎ、そのまま背を向けて歩き出した。

マミ「どうして…?」

杏子「さっきも言った通り、あたしはもう誰かの為に魔法を使うつもりはないから…、さ」

マミ「でも…、あなたは一人で平気なの? 孤独に…、耐えられるの!?」

杏子「……さよなら、巴マミ」

 杏子はそうつぶやくと、その場から去っていった。

マミ「……ダメだなぁ。どうして、いつもこうなっちゃうのかな?

また、ひとりぼっちにもどっちゃった……」

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 暁美ほむらは、病院のベッドの中で目を覚ました。

 病室の壁に貼られたカレンダーには、退院日に花丸の、学校の編入予定日に星型の印が、それぞれ付けられていた。

 サイドテーブルに載っている学校編転入用の書類を見つめると、ため息をつくほむら。

ほむら「(そういえば、もう退院なんだよね…。新しい学校はどんな感じなんだろう? 今から緊張しちゃうなぁ……)」

 やがてほむらは、自分の身体に起こっていた“異変”に気付いた。

ほむら「(あれ? どうしてだろう…。そういえば、胸の違和感が全然無い……)」

 退院出来る程度にまで落ち着いてきたとは言っても、今まで常に感じていたはずの心臓への負担がきれいさっぱりと無くなっているということに、ほむらは驚いていた。

ほむら「(うーん、体の調子が良くなってきたっていうことなのかな? でも……)」

 そうしているうちに、自らの左手にも違和感があることにほむらは気付いた。

ほむら「あれ…? 何だろう、これ…?」

 ほむらの左手の中指には、紫色に輝く宝石がはめられた指輪があった。

 ほむらは、自らの指に嵌められていた不思議な指輪を見つめていた。

ほむら「こんな指輪、付けた覚えは無いんだけどな……」

 しばらくその指輪を眺めていたほむらだったが、やがて反対側の手にも何かが握られているような感覚があることに気付き、布団から右手を出した。

ほむら「えっと、こっちにも何か……」

 ほむらの右手には、真っ赤なリボンが握られていた。

ほむら「これ、可愛い!」

ほむら「(でも、どうしたんだろう、これ? どっちも持ってた覚えは無いんだけど……)」

ほむら「(だけどこのリボン、見つめていると何となく懐かしいような気持ちになってくるんだよね…。それにこっちの指輪も、何故か肌身離さず付けていないと駄目なような気がしてくるし……)」

ほむら「(あっ、そういえば、これから退院するお祝いに看護士さんがくれたのかな? でも、私にはこんな可愛いリボンは似合わないだろうしなぁ…。うーん……)」

ほむら「(だけど、捨てちゃうのはもったいないよね。せっかくだし、初登校の日に付けて行ってみようかな…?)」

和子「はーい、それじゃあ自己紹介いってみよー」

ほむら「あ、あの…、あ、暁美…、ほ、ほむらです。その、ええと…、どうか、よろしく、お願いします……」

 眼鏡を掛け、三つ編み姿のほむらが緊張した様子で自己紹介の挨拶をしていた。

和子「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたの。久しぶりの学校だから、色々と戸惑うことも多いでしょう。皆、助けてあげてね」

 委縮した様子のほむらを見て、助け船を出しながら自己紹介を早めに切り上げようとした和子だったが、何故か当の本人は教室の後方の一点をじっと見つめ続けていた。

和子「暁美さん、どうしたの?」

ほむら「い、いえ、何でも、無いです……」

ほむら「(どうしてかな…? 何で私は後ろの席が気になったりしたんだろう……)」

 休み時間には、ほむらが周りのクラスメイトから質問攻めにあっていた。

女子A「暁美さんって、前はどこの学校だったの?」

女子B「部活とかやってた? 運動系? 文化系?」

女子C「すんごい長い髪だよね。毎朝編むの、大変じゃない?」

ほむら「あの…、わ、私、その……」

???「暁美さん。確か保健室に行かなきゃいけないんじゃなかったっけ? 場所、分かる?」

ほむら「え? いいえ……」

???「それじゃあ、案内してあげるよ。あたし、こう見えても実は保健係なんだよね。

    というわけだから、皆、ゴメンね! 暁美さんって休み時間には保健室で薬を飲まないといけないみたいでさ」

女子A「ああ、そうだったの」

女子B「ごめんね。引き止めちゃって」

女子C「暁美さん、またあとでね」

???「それじゃあ、行こっか」

ほむら「は、はい……」

???「ゴメンね。皆悪気は無いと思うんだけど、転校生なんて珍しいし、結構はしゃいじゃってるみたいでさ」

ほむら「いえ、その…、ありがとうございます」

???「そんな緊張しなくていいってば! クラスメイトなんだしさ」

ほむら「は、はい……」

さやか「あたしは…、美樹さやか。さやかちゃんって呼んでね!」

ほむら「え? そんな……」

さやか「そんなに気にしなくていいってば。そうだ、あたしは何て呼ぼうかな…? 転校生、ってのはあれだし…。

暁美さん、でもちょっと他人行儀な感じがするから、ほむらって呼んじゃっていい?」

ほむら「私、その…、あんまり名前で呼ばれたことって、無くて…。凄く変な名前だし……」

さやか「そんなことないって。何っていうかさ、その、カッコいい名前だと思うけど」

ほむら「!! そう言ってくれたのは、美樹さんで二人目です……」

さやか「へぇー、そうなんだ! それじゃあさー、その、前にカッコいいって言ってくれたのはどんな人だったの?」

ほむら「えっと、あの、その……」

さやか「何よー。もしかして、皆には内緒にしておきたい秘密の相手だったりするわけですかな?」

ほむら「い、いえ! 別にそういうのじゃないんです。ただ……」

さやか「ただ?」

ほむら「私も、何故だか誰に言われたのかをはっきりとは覚えてないんです……」

さやか「ふーん、そうなの? あっ、保健室はここだから」

ほむら「はい、ありがとうございます……」

教師「それじゃあこの問題をやってもらえるかな」

ほむら「は、はい……」

 黒板の前に立ち、何とか問題を解こうとしていたほむらだったが、計算のやり方が分からず、しまいには泣き出してしまっていた。

教師「ああ…。うん、君は休学してたんだっけな。友達からノートを借りておくように」

 うつむいて席に戻るほむらを、近くの席のさやかが慰める。

さやか「心配すんなって、あたし…、は直接教えてあげられないけど、友達の仁美に貸して貰えるように頼んであげるからさ」

ほむら「あ、えっと、ありがとうございます……」

さやか「いいよいいよ、別に気にしなくていいって」

仁美「あの、さやかさん…、私が暁美さんにノートを貸すのは別に構いませんけど…、あなたもちゃんと勉強して下さいね」

さやか「もう。仁美ったら、分かってるってば…!」

仁美「本当、ですの…?」

さやか「グサッ、さやかちゃんの心は傷付きましたよー!」

教師「おい、美樹! うるさいぞー」

さやか「えっと、すいませんでした!」

 疲れた様子で、グラウンドの隅の柱の前に座っているほむら。

女子A「測定を始める前に貧血って、ヤバイよねー」

女子B「半年もずっと寝てた人にしては、まだマシな方なんじゃない?」

 再び泣き出しそうになっているほむらの前に、測定を終えたばかりのさやかが近付いてきた。

さやか「大丈夫、ほむら? つらいんなら、保健室に連れてってあげようか?」

ほむら「い、いえ、大丈夫です。おかまいなく……」

 ほむらは、教室で帰宅の準備をしていた。

ほむら「(ハァ…、やっと授業が全部終わったよ。早く帰ろう……)」

さやか「ほーむら!」

 ほむらの背後からいきなり抱きつくさやか。

ほむら「きゃっ! み、美樹さん?」

さやか「あの、せっかくだしさ、もし良かったら一緒に帰らない? まぁ、あたしだけじゃなくて仁美もいるけど」

ほむら「えっと、いいんですか…?」

仁美「さやか、さん? そのような言い方は少し酷いんじゃありませんか?」

さやか「ゴメン、ゴメン。冗談だってば…。で、ほむらはどうする?」

ほむら「でも…、せっかく誘って貰ったのに申し訳ないですけど、お二人にも迷惑がかかっちゃうと思いますし、今日は一人で帰ります」

さやか・仁美「そんな、迷惑なんて……」

ほむら「それじゃあ、失礼しますね。さ、さよならー!」

 ほむらはうつむいた状態で足元を見つめながら帰宅していた。

ほむら「(私なんかと一緒にいたら、美樹さん達にも迷惑がかかっちゃうよね。だから、あれで良かったんだよ……。
だって私、何にも出来ないし、人に迷惑ばっかりかけて、恥かいてばっかりだし……。
だけど、どうすればいいんだろう…? 私、これからも、ずっとこのままなのかな…?)」

 ずっと落ち込み続けていたほむらだったが、やがて、周囲の空気がいつの間にか禍々しいものに変化していたことに気付いた。

ほむら「これは…! あなた…、一体何なの!?」

 とりあえず、これで一旦終了します。

 この続きは本日中か、遅くても明日の深夜には投下します。

 まずは1レス分だけ投下して、日付変わった一時頃にまた続きをやります。

 それとお話の都合上、序盤は色々な意味でさやかちゃん無双な状態になっちゃうかもしれませんが、ご了承下さい……

 ほむらの目の前には、シンプルな白い布のような服を纏った、人型の巨大な化け物が立っていた。

ほむら「え? いやっ、来ないで!」

 化け物が、段々とほむらの方に迫ってくる。

さやか「ほむら、伏せて!」

 しかし、消火器を持ったさやかがいきなりその場に現れると、化け物に向かって消火液を噴射した。

ほむら「え、美樹さん!?」

さやか「いいから早くこっちに!」

 さやかはほむらの手を掴むと、走り出した。

さやか「何だよあれ! あんな化け物、見たことある?」

ほむら「いいえ、私も初めて見ました! それより、美樹さんはどうしてここに?」

さやか「あんたの様子が何か変だったような気がしたから、ほっとけなくてこっそり追いかけてたの!

 えっーと、出口は…? って、こっちにもいた!」

ほむら「こっちにも…。ああ、囲まれちゃいました!」

さやか「あーもう、どうすればいいのさ!」

ほむら「もう…、駄目です!」

さやか「そんな…、冗談でしょ? 私、悪い夢でも見てるんだよね? ねえ!」

 化け物達の群れが、今にも二人に襲いかかろうとしていた。

”序盤は”って事は……

 >>19
 中盤以降はちゃんと他の皆も活躍させたいなって思っているだけで、特に深い意味は無いと思います。多分……

 自分達の死を覚悟したほむらとさやかだったが、しばらくしても何も起こらず、二人とも同時に目を開いた。

さやか「あ、あれ?」

ほむら「私達、助かったんですかね?」

 気が付くと、さやかとほむらは何らかの結界で守られており、化け物達も黄色いリボンのようなもので拘束されていた。

??「間一髪、ってところね。でも、もう大丈夫」

 ほむら達の背後には、大人びた雰囲気を持つ少女がいつの間にか現れていた。

??「その制服、あなた達も見滝原の生徒みたいね。二年生?」

 そして、その少女はほむらの左手の中指に付けられた指輪を見ると、僅かに驚いたような反応を示した。

??「あら、あなたも魔法少女だったのね…。どうして、変身しなかったのかしら?」

ほむら「えっ、魔法? 変身? 何のことか、私にはさっぱり……」

さやか「あの…、お取り込み中のところ悪いんですけど、あなたは?」

??「そうそう、まずは自己紹介しないとね」

 二人を守るかのように、化け物の前に立つ少女。

 よく見ると、その少女の足元にはぬいぐるみのような外見をした白い生物が立っていた。

??「でも、その前に!」

マミ「ちょっと一仕事、片付けちゃっていいかしら?」

 まばゆい光を放ちながら、巴マミは魔法少女へと変身した。

 そして、魔法少女へと変身したマミは、大量に召喚したマジカルマスケット銃を化け物達の群れに向けて一斉に放った。

 化け物達は、マミの銃撃によって一体も残らずに倒されていた。

さやか「凄い…!」

ほむら「かっこいい…!」

 自らの“仕事”を終え、変身状態を解除した巴マミがほむらとさやかの元へ近づいてきた。

マミ「改めまして、私は巴マミ。あなたたちと同じ、見滝原中の三年生。

 そして…、キュゥべえと契約した、魔法少女よ」

さやか「あ、あたしは美樹さやか。二年生です!」

ほむら「わ、私は暁美…、ほむらです。同じく二年生です……」

マミ「美樹さんに、暁美さんね。二人とも、よろしく」

さやか「よろしくお願いします! それと、さっきは助けていただいて、ありがとうございました!」

ほむら「あ、ありがとうございます……」

マミ「どういたしまして。ところで二人とも…、このあとのお時間はまだ空いているかしら?」

さやか「私は大丈夫ですけど…、ほむらは?」

ほむら「私も、大丈夫です」

マミ「そう、良かったわ。色々と説明しなくちゃいけないことがあるんだけど、せっかくだし、私の家でお茶をしながらの方がいいかと思って。
 
 それに…、私の方からもちょっと聞きたいことがあるしね」

キュゥべえ「僕からも君にお願いしたいことがあるしね。美樹さやか」

さやか「うわぁ、喋った!? それと、何で私の名前を…?」

ほむら「それで、あなたが美樹さんにお願いしたいことって何なんですか?」

キュゥべえ「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

 短くて申し訳ないのですが、お馴染みキュゥべえの“殺し文句”が決まったところで今回は終了。

 ちなみに次回も前回と同じく、本日中か明日の同じ頃に続きを投下予定です。

 ちなみに、今回は長ったらしい説明パートになります。

 ほむらとさやかはマミの自宅に招かれており、二人にはケーキと紅茶が振る舞われていた。

さやか「んー、めちゃうまっすよ」

ほむら「とっても美味しいです……」

マミ「ありがとう」

 二人がケーキを食べ終わった頃合いを見計らって、マミが話を切り出す。

マミ「キュゥべえに選ばれた以上、あなた達にとってはもう他人事じゃないものね。

 詳しく説明をしておかなくちゃいけないと思って…、大事なことだから」

さやか「うんうん、何でも聞いてくれたまえ」

ほむら「美樹さん、それじゃあ逆ですよ……」

 マミはソウルジェムを取り出すと、二人に見せた。

マミ「それで…、これがソウルジェム。キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石。
 
 魔力の源であり、魔法少女であることの証でもあるの」

さやか「契約って?」

キュゥべえ「僕は、君たちの願い事を何でも一つ叶えてあげる」

さやか「え、ほんと?」

ほむら「願い事って…?」

キュゥべえ「何だって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

さやか「うお…、金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか?」

ほむら「あの、美樹さん…、それはちょっと……」

キュゥべえ「でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。
 
 この石を手にした者はね、魔獣と戦う使命を課されるんだ」

ほむら「魔獣?」

さやか「魔獣ってさっきみたいな化け物のこと? そういえば、魔法少女と何か関係があるの?」

キュゥべえ「魔獣というのはね、この世界の歪みから産まれた存在なんだ。

 そして、君達人類が持っている、あらゆる感情のエネルギーを吸い取り続け、そのエネルギーをグリーフシードへと変えていく」

さやか「グリーフシード?」

マミ「私達、魔法少女がソウルジェムを維持していく為に必要なものよ。

 でも、それについての説明の前に、まずはソウルジェムのことを、もっと詳しく説明しておく必要があるわね」
 
 マミの表情が少し険しくなったのを見て、気を引き締め直す二人。

マミ「二人ともよく聞いてね。実はね…。この、ソウルジェム…、私の魂そのものなの」

ほむら・さやか「えっ!?」

 “ソウルジェムの真実”を伝えられて驚きを隠せない二人の少女に、キュゥべえが自らの行為の正当性を主張していた。

キュゥべえ「僕の役目はね、君達のような少女の魂を実体化し、手に取ってきちんと守れる形にする為に、魂を抜き取ってソウルジェムに変える事なんだ。

 だから、君達の本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できる、コンパクトで、安全な姿が与えられるようにしている。

 弱点だらけの壊れやすい身体をもった人間の少女を、過酷な状況に適応させ、少しでも安全に魔獣達と戦えるようにする為には、その方が便利だろう?」

さやか「確かに、あんたの言ってることは間違っちゃいないと思うけどさ。それって、何だか……」

ほむら「美樹さん、とりあえず話を聞き終わってからにしましょう」

 ほむらに言われ、納得のいかない様子ではあるものの、さやかは口を噤んだ。

マミ「それでね…、さっきも言ったけど、ソウルジェムは私達の魂そのもの。だから、魔法を使うだけでなくて、負の感情を抱いたり、ショックを受けたりしても穢れが溜って、この色も濁っていくの。

 そして、消耗した分の魔力を補うのにはグリーフシードが必要。だから、グリーフシードが無いと、魔法を使うことが出来ない。それに……」

さやか「それに…?」

マミ「ソウルジェムが濁りきってしまった時、私達魔法少女は…、この世から消え去ってしまうの」

さやか「何よそれ!? キュゥべえ、さっきから、一体どういうことなのよ?」

キュゥべえ「申し訳ないけど、浄化しきれなくなったソウルジェムが消滅してしまうのことの理由や原理については、僕達にも解明出来ていないんだ」

さやか「いや、そういうことじゃなくてさぁ……」

マミ「おそらく…、これは私の推測が混じっているのだけれど、私達がキュゥべえとの契約によって叶えてもらう願い事は、この世の条理を覆して、本来は不可能なはずのことを可能にする、まさに、奇跡によって成り立っていること。

 だから、希望を求めた因果がこの世に呪いをもたらす前に、魔法少女は消え去るしかないということなのだと思うわ」

さやか「……」

ほむら「と、とにかく、魔法少女が活動していくには、グリーフシードが不可欠だということなんですね」

マミ「ええ、そういうことになるわね」

さやか「でも…、その、グリーフシードって、誰かの感情エネルギーを吸い取って出来上がるんでしょ?
 
 それって、それだけ犠牲になる人が出ちゃうってことじゃん。だからさ、何とか魔法少女を増やさないようにして、魔獣だけを減らしていくことは出来ないの?」

キュゥべえ「先程と同じく、どういう原理なのかは僕にも分からないんだけど、魔獣は何度倒しても、次から次へと勝手に湧いてくる。

それに、魔獣を倒すことが出来るのも魔法少女だけなんだ。だから、魔法少女がいなければ、おそらくこの星は魔獣どもに覆い尽くされてしまうだろうね」

さやか「そんな……」

マミ「そうならないように、私達魔法少女は戦っているの。命懸けでね」

ほむら「……巴さんは、ソウルジェムや魔法少女の実態を知って、何とも思わなかったんですか?」

マミ「もちろんショックを受けたわ。でも、私には、それでもキュゥべえとの契約をしなくてはいけないだけの事情があったのよ」

ほむら「その事情について、詳しく聞かせて貰うことは出来ますか?」

さやか「ちょっ、ほむら!」

マミ「いいの。私もあなた達には聞いてもらおうと思ってたし。

 そうね、あれはもう二年以上前になるのかしら。私はね……」

 マミの過去を聞いて、ほむらとさやかはすっかり黙ってしまっていた。

マミ「確かに、キュゥべえに選ばれた子にはどんな願いでも叶えられるチャンスがある。

 でも、その代償として、死と隣り合わせの戦いを強いられることになるし、一生逃れることの出来ない、過酷な運命を背負って生きていくことになる。

 だから、ちゃんと選択の余地のある子には、きちんと考えた上で願い事を決めて欲しいと私は思っているし、慎重に選ばなくてはいけないの」

ほむら・さやか「……」

マミ「それと暁美さん…。気の毒だけど…、あなたはもうその運命から逃れることは出来ないのよ」

ほむら「えっ、一体どういうことですか?」

マミ「あなたの左手の指にはめられているその指輪、それはソウルジェムよ」

ほむら・さやか「えっ!?」

マミ「ショックが大きいとは思うけど、これを見て」

 マミは自らのソウルジェムを指輪形態に変形させると、二人に見せた。
 
マミ「ほら、宝石の色は違うけど、私の指輪と同じ形をしているでしょう?」

さやか「そ、そんな! 何てこと…、きっと何かの間違いでしょ!?」

ほむら「美樹さん、落ち着いて下さい!」

さやか「何言ってんのよ、ほむら! ていうか、あんたはどうしてそんな落ち着いてられるのよ!?」
 
ほむら「私だって驚いてますよ! でも、まずは詳しい話を聞くのが先決です……」

マミ「あなた、強い子ね…。でも、本当に今まで何も知らなかったの?」

ほむら「はい…。この前、退院の日に目を覚ましたら、いきなり見覚えのない指輪があって、それからも転校の手続きとか色々あってバタバタしていたので、今まで考える暇もなくて……」

マミ「そうだったの……」

マミ(テレパシー)「(キュゥべえ、一体どういうことなの?)」

キュゥべえ(テレパシー)「(実は、僕にも彼女の事情はよく分からないんだ。もしかしたら、契約内容と何か関係があるのかも)」

マミ(テレパシー)「(まあいいわ。そのことは後にしましょう)」

マミ「あの、暁美さん?」

ほむら「は、はい。何ですか?」

マミ「とりあえず…、まずは魔法少女に変身してみましょうか……」

 マミから基礎的な魔法の使い方を教わったほむらは、魔法少女に変身していた。

さやか「本当にほむらも魔法少女なんだ……」

ほむら「そうですね、私も驚いてます…。それにしても、これからあの化け物と戦っていかなくちゃいけないなんて……」

 ほむらは自分達が魔獣達に襲われた時の光景を思い出して、震えていた。

マミ「そこで提案なんだけど…。暁美さん、私と一緒に魔獣退治をしてみない?」

ほむら「え、いいんですか? でも、私みたいな初心者が一緒だと巴さんにも迷惑がかかるんじゃ……」

マミ「後輩の面倒を見るのは先輩としての義務ですもの!

 それにね、魔獣退治は一人よりもチームを組んでやった方がやりやすいのよ?

 ですから、私が責任を持ってあなたの面倒を見てあげます。だけど、指導は厳しく行うつもりだから、覚悟してね?」

ほむら「は、はい! よろしくお願いします……」

マミ「うふふ…。これで、私と暁美さんの魔法少女コンビ、結成ね!」

 そう言ったマミの様子は、心なしか浮かれているように見えた。

さやか「あの…、マミさん」

マミ「えっと、何かしら?」

さやか「その…、魔獣退治ですけど、私も一緒に連れてってもらうことって出来ますか?」

ほむら「えっ、美樹さん!?」

マミ「……そうしたいと思った理由を聞かせて貰えるかしら」

さやか「えっと、まだ出会って間もないんですけど、ほむらの事は大切な友達だと思っているから、出来ればあたしがそばで見守ってあげたいし…。

 それに、実は私にも叶えたいと思っている願い事があるんです。だから、二人には迷惑がかかっちゃうかもしれないけど、見学だけでもさせて欲しいなって思って……」

マミ「そうね…。そういうことなら構わないわ」

ほむら「巴さん、本当に大丈夫なんですか?」

マミ「魔獣との戦いがどういうものなのか、もっとその目でちゃんと確かめてみるのも悪くないだろうし、その上で、その願い事が本当に過酷な運命を受け入れてまで叶えたいものなのかどうか、じっくり考えてみるべきなのかもしれないと思ったの。

 だから、私は反対しないわ」

さやか「マミさん、ありがとうございます!」

マミ「その代わり、絶対に私や暁美さんのそばを離れちゃ駄目よ?」

さやか「分かってます。マミさん、ほむら…、二人とも、よろしくお願いします!」

 今回の分はこれで終了です。

 あと、次回の投下までは少し間が開くと思います(週末のどこかの予定です)。

 先週は急な用事が入ってしまったため、予定通りに再開出来ず申し訳ありませんでした!

 書き溜めとかもほとんど出来なかったので、少しだけ(2~3レス程)になりますが投下します。

 ほむらが実戦に入る前の訓練を行うため、マミ、ほむら、さやかの三人は、通学路から外れたところにある高架下の場所に集まっていた。

マミ「もう一度確認しておくわね…、あなたの武器は、その弓。

 そして、固有魔法は光の翼を発現する能力、ということでいいのよね?」

ほむら「はい、そうみたいです……」

マミ「初めて会った時から暁美さんには凄い素質があると感じていたけれど、まさか、こんな凄い力を持っているなんてね……」

さやか「ほむらの魔法って、そんなに凄いものなんですか?」

マミ「ええ、私達のような魔法少女はね、基本的に空を飛ぶことって出来ないの。

 でも、暁美さんの魔法は僅かな時間だけではあるけれど、それを可能にすることが出来る。

 それに、暁美さんの力はまだ目覚めたばかりでしょ?

 だから、今はまだ自力で飛びたったり長い時間空に留まり続けることは出来なくても、これから才能を伸ばしていけば、自由自在に空を飛ぶことだって出来るかもしれないわ」

さやか「へぇー。それにしても、アニメとかの魔法少女とは結構違うんですね」

マミ「ええ、現実の魔法少女は意外と厳しいところも多いのよね……」

さやか「でもさー、白い羽が生えてて弓を持ってるなんて、何だかちょっと恋のキューピッドみたいだよねー」

ほむら「あっ、そういえば、そうですね……」

さやか「全く、あんたは誰のハートを射止めちゃうつもりなのかな? 可愛いやつめー、このこのー!」

マミ「あの…、美樹さん? 素敵な考え方だとは思うけど、今は一応訓練中なんだから、茶化すのもほどほどにね?」

さやか「あっ、すみません、つい……」

マミ「それじゃあ、今度は射撃の訓練を始めましょうか。まずは、あのドラム缶を狙って矢を放ってみましょう」

ほむら「は、はい!」

さやか「ほむら、ガンバ!」

ほむら「行きます! えいっ!」

 ほむらが放った光の矢は、標的のドラム缶の横を通り過ぎていき、そのまま爆音を放って後ろの壁に直撃すると、壁全体を盛大に破壊していた。

さやか「あの…、マミさん。どうします…?」

マミ「ちょっと場所を変えた方がいいかもしれないわね…。

 とりあえず、ここは私が片付けておくから、あなた達は先に行って別の場所を探しておいてくれる?」

マミ「暁美さん、あなたが直接狙って当てようとするのではなくて、まず頭の中で標的のイメージをしっかりと思い浮かべて、それから矢を放ってみて」

ほむら「はい、やってみます……」

 ほむらが放った矢は、まるでドラム缶の方へと吸い寄せられるように命中した。
 
マミ「そう、その感じよ! 」

さやか「す、すげー!一体どうなってるの?」

マミ「暁美さんの魔力で作り出した矢なんだから、暁美さん自身の意思である程度は軌道をコントロール出来るんじゃないかと思ってアドバイスしてみたんだけど、思っていた以上に上手くいったわね」

さやか「なるほど」

マミ「これで、狙いの方は何とかなりそうだから、次は威力の調整ね。暁美さん、今度はもう少し魔力を溜めてから矢を放ってみてくれる?」

ほむら「えっ、でも……」

マミ「さっきのことで自分の力が怖くなっちゃったというのは分かっているわ。

 でもね、早いうちに使いこなせるようになっておかないと、これからの実戦の時に困ってしまうのはあなた自身よ?

 それに、今ならまだ変な癖とかも少ないでしょうし、矯正するだってそれほど難しくないはずよ」

ほむら「分かりました、頑張ります……」

 マミの指導の元、数時間に渡ってしばらく訓練を続けていたほむらは、かなり疲れた様子で息を切らしていた。

マミ「今日は、このくらいにしておきましょうか」

さやか「お疲れ、ほむら!」

ほむら「お疲れ様です……」

マミ「えっと…、その状態でこれから魔獣と戦うのはさすがに大変でしょうから、今回は私一人で行ってくるわね」

ほむら「あっ、あの、すみません……」

マミ「いいの、気にしないで。今日は明日に備えてゆっくり休んでおいてね」

 今回の分はこれで終了ですが、この三連休中は暇なので、今度こそ続きを書いて明日か明後日の同じ頃に投下したいと思います。

 以前と同じく、まずは1レス分だけ投下して、日付の変わった一~二時頃に続きをやります。

 ほむらとさやかの二人と別れたマミは、魔獣の反応があった場所の近くへと来ていた。

マミ「(暁美さん、初めて会った時は何だか得体の知れないような印象があったから、ちょっとだけ不安に思ってしまったけど、やっぱりちゃんと話してみたらいい子みたいで安心したわ。まぁ、一人前になるまでにはまだまだ時間がかかりそうだけれどね……)」

 やがて、魔獣を一体見つけると、用意していたマジカルマスケット銃の狙いを定める。
 
マミ「(それにしても、こんな幸せな気持ちで戦うなんて久しぶり。やっぱり、魔法少女のお友達が出来るのは、嬉しいものなのね!)」
 
 幸せそうな表情で戦っていたマミだったが、何故か一瞬だけ表情が暗くなる。

マミ「(いや…、今度こそ大丈夫。それに私だって、あれからもっと強くなったんですもの)」

マミ「(そういえば、美樹さんはどんな願い事を叶えたいんだろう?

 もしも魔法少女にならなかったとしても、ずっと友達でいてくれたら嬉しいな)」

マミ「(とにかく、私にはもう怖いものなんて何もない! だって…、もう一人ぼっちじゃないんだもの!)」

 そして、マミは大量の魔獣達が集まっていた場所を見つけると、本格的な臨戦態勢を整えた。

マミ「さーて、今日という今日は、速攻で片付けさせてもらうわよ!」

 マミはマスケット銃をいくつか生成すると、魔獣達を一か所に追い込むように発砲していく。

マミ「レガーレ・ヴァスタアリア!」
 
 マミはそこにいた魔獣達をリボンで一斉に捕縛すると、手にしていた銃に魔力を集中させ、巨大な大砲へと変化させた。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

 魔獣達の群れが、マミの攻撃によって一掃されていく。

 しかし、実はその場に拘束魔術を逃れた魔獣が一体だけ残っており、自身のすぐ背後まで迫ってきていたということに、マミは気付いていなかった。

マミ「えっ?」

 何とか反応しようとしたマミだったが、一瞬の判断の遅れは、既に致命的な隙を生みだしてしまっていた……

 一方その頃、ほむらはさやかを家まで送っていた。

ほむら「あの、美樹さん……」

さやか「何?」

ほむら「どうして美樹さんは、ここまで私を気にかけてくれるんですか?」

さやか「へっ、どうしたのさ、急に?」

ほむら「だって、私、転校してきたばかりでほとんど面識もなかった私に、とっても親切にしてくれてますし…。

 それに、私みたいな、暗くて、魔法少女になった後でも失敗続きの、結局皆に迷惑ばっかりかけてる役立たずにつき合わせちゃうなんて、ほんとに申し訳ないというか……」

さやか「あのさ…、そういう風にさ、自分を卑下し過ぎるのって良くないんじゃない?」

ほむら「えっ?」

さやか「それにさー、あたしがあんたと一緒にいたら、何か問題ある?」

ほむら「いや、あの…、美樹さんに迷惑が……」

さやか「それはさっきも聞いたし、もういいってば」

ほむら「いや、でも……」

さやか「あー、もう家に着いちゃったし、とにかくこの話は終わり! それじゃあ、また明日ね!」

ほむら「えっと…、はい。また あした……」

 この続きは明日の同じ頃に投下予定です。

 この後の内容は本編からさほど変わらない部分が多かった為、ある程度は書き溜める事が出来ましたが、話の展開上少し間を開けたいので、今回も少ないですが2レス分だけ投下します。

 巴マミが魔獣による攻撃にさらされようとしていた、まさにその瞬間、どこからともなく魔力を纏った何かが飛んでくると、そのまま魔獣を貫いて、一瞬で消滅させていた。

マミ「あれ…、私?」

 マミが周囲を見渡すと、少し離れたところに少女のものらしき人影があるのを見つけた。

マミ「あの、あなたが…? あっ、待って下さい!」

 マミは呼び止めたが、既に少女はその場を去っていた。

マミ「(おそらく魔法少女であるってことは間違いないのでしょうけど……。

 この感じは、まさか…!?)」

??「ったく…、調子付いてる時ほどツメが甘くなっちまうっていうのは、相変わらずなんだね……」

キュゥべえ「何か言ったかい?」

??「チッ、何でもねぇよ」

キュゥべえ「それにしても、まさか君がこの土地に戻って来るとはね」

??「こっちにずっといるつもりはないっての。用事を済ませたらすぐに帰るさ」

キュゥべえ「だけど、せっかく来たというのに、ちゃんとマミと会わなくても良かったのかい?」

??「……あいつとまた会うつもりなんてないよ。

 まぁ、新しく魔法少女になったっていうルーキーの方には、先輩として顔を見せてやるつもりだけどねー」

キュゥべえ「今回ここに来た目的はそれかい?」

??「何よ、何か文句でもあるっての?」

キュゥべえ「いや、別にそういうつもりはないよ。

 ただ、君が彼女と接するつもりなら、少し慎重に行動した方がいいんじゃないかと思ってね」

??「へぇー、何でさ?」

キュゥべえ「あの子が極めつけのイレギュラーだからさ。

 確かに彼女は、魔法等の使い方の熟練具合を見た限りでも、明らかに新人であるということは間違いないと思うけど、なかなかの潜在力を持っているし、僕にも推測出来ない、何らかの大きな因果を背負っているようでもある。

 そもそもね、僕には彼女と契約した覚えすらも無いんだ」

??「ハァ!? 一体どういうことなのさ?」

キュゥべえ「あいにくだけど、答えようがないね」

??「へっ、上等じゃないの。だったらなおさら、そいつに会ってみたくなったね……」

キュゥべえ「それなら、今から彼女のところに案内すべきかい?」

??「さすがに今日のところはよしとくよ。そいつのこと、事を構える前にもう少し調べておきたいしね」

キュゥべえ「そうか。それじゃあ、彼女について何か新しく分かったことがあったら、また君に知らせるとするよ」

??「ああ、よろしく頼むね」

 次回の分は書き溜めがある程度まで進んでいるので、近い内(少なくとも今年中)に投下したいと思います。

 この三日間はシャフトブースの劇場版まどか原画集目当てで地方からコミケに初参加していたのですが、予想以上の混雑具合に圧倒された影響で遅くなってしまいました……

 とりあえず、2~3レス分だけ投下します。

さやか「恭介、お見舞いに来たよ!」

恭介「やあ、さやか。久しぶりだね」

さやか「あー、そうだよね。あまり来れなくてゴメン…」

恭介「いや、別に謝らなくても良いよ。

 ただ、最近忙しかったみたいだけど、何かあったの?」

さやか「いやー、ちょっとね? ウチのクラスに新しく転校生が来たんだけど、その子とすっかり仲良くなっちゃってねー。

 それでさー、その子を通じて三年生の先輩とも知り合う機会が出来て、みんなで色々と遊びに行ったりしちゃってたんだよねー。あっ、心配しなくても、二人とも女の子だからね!

 それでね、中々来れなかった代わりと言ってはなんだけど…、はい! 今日は沢山持って来たからね」

恭介「わぁ…。いつも本当にありがとう! さやかはレアなCDを見つける天才だね」

さやか「あはは、そう? でも、きっと運がいいだけだよ」

恭介「特に、この人の演奏は本当に凄いんだ。さやかも聴いてみる?」

さやか「い、いいのかな?」

恭介「本当はスピーカーで聴かせたいんだけど、病院だしね」

さやか「(恭介ぇ…、ち、近いよ///)」

 ほむらとマミは、さやかが見守る中、魔獣達と戦っていた。

マミ「レガーレ・ヴァスタアリア! 暁美さん、お願い!」

ほむら「は、はい! えい!」

 ほむらの放った光の矢が、マミによって拘束されていた魔獣達の群れを一度に消滅させた。

さやか「いやー、やっぱマミさんってカッコイイねえ!」

マミ「もう! 見世物じゃないのよ? 危ないことしてるって意識は、忘れないでおいて欲しいわ」

さやか「イエース!」

ほむら「美樹さん、私の戦い方は、どうでしたか…?」

さやか「ほむらは、まだまだ危なっかしい感じかな?」

ほむら「そ、そうですか……」

マミ「でも、今日の戦い方、前よりずっと良くなって来てるわよ、暁美さん」

ほむら「ありがとうございます、巴さん……」

さやか「ねえ、マミさん。願い事って、自分の為の事柄でなきゃ駄目なのかな?」

マミ「え?」

さやか「例えば、例えばの話なんだけどさ、私なんかよりよっぽど困っている人が居て、その人の為に願い事をするっていうのは……」

ほむら「それって…、前に言ってた、上条君っていうお友達のことですか?」

さやか「た、例え話だって言ってるじゃんか!」

キュゥべえ「別に契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例も無い訳じゃないし」

マミ「でも…、あまり関心できた話じゃないわ。

 他人の願いを叶えるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておかないと。

 美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」

ほむら「巴さん……」

マミ「同じようでも全然違うことよ。これ」

さやか「その言い方は…、ちょっと酷いと思う」

マミ「ごめんね。でも今の内に言っておかないと。
 
 そこを履き違えたまま先に進んだら、あなた、きっと後悔するから」

さやか「そうだね。私の考えが甘かった。ゴメン」

マミ「やっぱり、難しい事柄よね。焦って決めるべきではないわ」

キュゥべえ「僕としては、早ければ早い程いいんだけど……」

マミ「駄目よ。女の子を急かす男子は嫌われるぞ!」

キュゥべえ「僕達の種族には、君達人類のような性別なんてものは存在しないんだけど……」

マミ「とにかく、美樹さんの契約を急かしちゃ駄目。大事なことなんだからね!」

 これから劇場版の一挙上映を見に行くので、続きは来年以降になります。

 一応明日の一時頃に投下予定ですが、もしも寝オチしてしまったらごめんなさい……

乙です。

来年以降ってことは、ひょっとして、あと一年ぐらいかけてゆっくりと書いていくって意味だったりして?
(↑ことば尻を捉えて余計な突っ込み入れてばかりで、すんません)

あけおめ乙乙!
俺が行った時には原画無理だったorz

 やっぱり元日は睡魔に勝てず、次の日にさっそく投下しようとしたのですが、ありがちなことに書き溜めデータの入ったUSBメモリを紛失してしまい(おそらく宿泊先に忘れた可能性大)、書き直していた為に遅くなってしまいました……

 それと前回は焦って投下した為か、文章中に抜け落ちている箇所が多かったので、まずはそれらを一気に投下してから続きに移行します。

 >>66
 本来は去年の内に終わらせるつもりでいたのですが、力不足故、スレを立てる前の段階から既に遅れてしまっている有り様で……。
 今のところ、終了予定時期は明確には決まっていないのですが、少なくとも今年中には書き終えたいと思っています。

 >>69
 シャフトブースが魔女を産むなら、皆……

 音楽に聞き入っていたさやかがふと目を開けると、恭介が泣いていることに気付いた。
 
さやか「(恭介……)」

さやか「マミさん、今日もよろしくお願いします!」

マミ「ええ、美樹さん。よろしくね」

ほむら「巴さん、昨日はお一人でも大丈夫でしたか?」

マミ「あの、えっと……」

さやか「こら、ほむら! ベテランのマミさんにそれはないでしょ。新人の癖に生意気なこと言わないの!」

ほむら「そ、そうですよね…。巴さん、ごめんなさい……」

マミ「その…、別に気にしてないからいいのよ、暁美さん。美樹さんも、あまり怒らないであげてね?

さやか「えっと、でも……」

マミ「それじゃあ、今日の特訓を始めましょうか!」

さやか「恭介! 今日もお見舞いに来たよ!」

恭介「さやか、か……」

さやか「CD、また買って来たよ! あたしオススメの作品なんだよね!」

恭介「……」

さやか「これ、CDかけるね!」

恭介「……」

さやか「素敵な曲だよね……」

恭介「……」

さやか「あ、あたしってほら、こんなだからさー、クラシックなんて聴く柄じゃないだろってみんなが思うみたいでさぁー。

 たまに曲名とか言い当てたら、すごい驚かれるんだよね。意外すぎて尊敬されたりしてさ。

 ……恭介が教えてくれたからだよ!

 でなきゃあたし、こういう音楽をちゃんと聴こうと思うきっかけなんて、たぶん一生なかっただろうし……」

恭介「さやかはさぁ……」

さやか「なぁに?」

恭介「さやかは、僕をいじめてるのかい?」

さやか「えっ!?」

恭介「何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?」

さやか「えっ、だって…、恭介、音楽好きだから……」

恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!

 自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて!

 僕は…、僕は!」

 上条恭介は、傷付いた自らの左手をCDプレーヤーに叩きつけた。

さやか「恭介!」

恭介「こんなもの、もういらない! 」

さやか「やめて、恭介!
 
 お願い…、もうやめて―!」

恭介「こんな手、どうなってもいいんだ! ううっ……」

さやか「恭介…、手から、血が出ちゃってる……。待ってて! 今看護士さんを呼ぶから……」

恭介「いいんだ、もういいんだ……。

 動かないんだ…、もう、痛みさえ感じない。こんな手なんて……」

さやか「恭介……」

恭介「ごめん…、こんなこと、さやかに言っても仕方ないよね。

 さやかは何も悪くないのに……」

さやか「ううん、大丈夫…。恭介の気持ち、分かる…、つもり……」

恭介「ごめん…、ちょっと、一人にしてくれない、かな……」

 順番が分かりにくくなってしまい、すみません。

 続きはまたいつもの時間(明日の一時頃)に再開します。

乙乙!
さやか契約してしまうん?

 丸一日遅れましたが、再開します。

 >>78
 まだ今後の内容は、内緒だよっ!

さやか「(何で恭介なのよ…。

 あたしの指なんて、いくら動いてたって何の役にも立たないのに…。

 何であたしじゃなくて、恭介なの?

 だけど…、もしもあたしの願い事で恭介の体が治ったとして、それを恭介はどう思うの?

 ありがとうって言われてそれだけ?

 それとも…、それ以上のことを言って欲しいの?)」

さやか「あたしって…、嫌な子だ」

??「アイツのことで、何か新しいことは分かったかい?」

キュゥべえ「あいつって?」

??「暁美ほむらのことに決まってるだろ。他に誰がいるんだよ?」

キュゥべえ「実はね、新しい魔法少女の候補者がいるんだ。契約はまだだけど、一応君には伝えておいた方がいいかと思ってね」

??「ハァ!? アンタ、まだ増やすつもりなの? 一つの街に魔法少女がそんなにいてどうするっていうのさ……」

キュゥべえ「僕としては、魔法少女の数は多いに越したことはないんだけどね」

??「そりゃあ、アンタにとってはそうかもしんないけどさ…、こっちにとっちゃあ、予定が全部崩れて大迷惑だっての……」

キュゥべえ「それは済まなかったね」

??「ハンッ、どうせ何とも思ってないくせに。で、何てやつなの、そいつ?」

キュゥべえ「美樹さやかっていう子だよ」

??「ああ、あの…、マミ達の魔獣退治の時、まるで金魚のフンみたいについて回ってた、あいつか?」

キュゥべえ「もう君も知ってたのか」

??「まあ、名前くらいはね。でも、何だかぐずぐず悩んでるみたいだし、すぐに契約する心配はなさそうだと思ってたんだけど、一応目を光らせておくべきかねぇ……」

キュゥべえ「それで、君は一体どうするつもりだい?」

??「さーて、どうしようかねぇ…?」

 キュゥべえとの話を終えた魔法少女が、見滝原にあるマンションの前まで来ていた。

??「(さて、入口まではいつもの感じで何とか入れたけど…、問題はここからか。

 まあ、当然結界くらいは張ってあるだろうしな…。今のあたしの力で突破出来っかな…?)」

 しかし、そこに張られていた結界が、その魔法少女の行く手を阻むことはなかった。

??「(どういうことだ!? まさか、罠とかじゃねぇよな…? )」

??「(さっきの結界もそうだけどさ…。鍵の隠し場所まで変えてないとか、アイツは一体何考えてんだよ…?

 まあ、そのおかげでこっちとしてはだいぶ助かったんだけどさ……)」

 その魔法少女は部屋の中を少しの間だけ物色すると、すぐに目的の物を見付けたらしく、ニヤリと笑った。

??「悪いけど、ちょっと借りてくよ」

 魔法少女の手には、見滝原中学の制服が握られていた。

??「さてと、これから偵察タイムと行こうかね……」

??「(放課後になったらあいつらが合流しちまうだろうし、一人ずつ観察するなら、やっぱ学校の授業中がベストだよなー。

 それにここなら、万が一マミに見つかったとしても、アイツも魔法で目立つようなことは出来ないはずだから逃げるのも簡単だし、他の奴に見つかったところで、どうとでもなるしねー)」

??「(何だ、美樹さやかとやらはどうやら学校を休んでるみたいだね…。

 まあいいか、どうせ今日は暁美ほむらの方を調べるつもりだったしさ)」

さやか「恭介、入っていいかな?」

恭介「……」

さやか「あ、あのね。今日はレアなCD無いんだけど、恭介とちょっと話がしたくて……」

恭介「さやか…、今日は帰ってくれないかな」

さやか「えっ? 次はちゃんとCD探してくるからさ!」

恭介「そうじゃないんだ…。ただ、今日は誰にも会いたくない。お願いだから、帰って……」

さやか「恭介…。ど、どうしたの? いつもの恭介らしくない……」

恭介「もう、諦めろって、言われたんだ」

さやか「諦めろ…? それって、まさか……」

恭介「もう演奏は諦めろってさ。
 
 先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって」

さやか「そんな…。恭介、そんなことないよ!」

恭介「僕の手はもう二度と動かない。

 奇跡か、魔法でもない限り、治らない……」

さやか「あるよ……」

恭介「え?」

さやか「奇跡も、ま……」

(僕の役目はね、君達のような少女の魂を実体化し、手に取ってきちんと守れる形にする為に、魂を抜き取ってソウルジェムに変える事なんだ)

(その代償として、死と隣り合わせの戦いを強いられることになるし、一生逃れることの出来ない、過酷な運命を背負って生きていくことになる)

(美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?)

さやか「ごめん、やっぱり何でもない……」

恭介「とにかく帰ってくれ! もう誰にも会いたくないんだ! 僕にはもう、何も無いんだ!

 だから…、帰ってくれ…。これ以上、僕を苦しめないでくれ!」

さやか「うん、分かった…。とりあえず帰るね。

 でも、元気出して、恭介……」

 次回の投下は出来れば本日中か、明日の一時頃の予定です。

 ちなみに今回の投下分は、ほぼさやかちゃんメインの内容です。

キュゥべえ「やあ、さやか」

さやか「何だ、来てたんだね…。こんなところまで来て、一体何の用?」

キュゥべえ「君が僕の助けを必要としてるんじゃないかと思ってね」

さやか「あたしが?」

キュゥべえ「美樹さやか。君は、上条恭介を救いたくないのかい?」

さやか「そ、それは……」

キュゥべえ「さあ、僕と契約して、魔法少女になってよ」

さやか「む、無理だよ、あたしには…。

 大体、この街にはもうマミさんとほむらがいるじゃんか。あたしなんかが魔法少女にならなくたって……」

キュゥべえ「僕としては、魔法少女の数は多いに越したことはないからね。

 それに、魔法少女が集まって協力すれば、魔獣達との戦いもずっと楽になるはずだし、もちろんエネルギーの回収効率だってその分だけ高まっていくわけだ。

 まあ、人数が多ければ、グリーフシードの供給が追い付かなくなるというようなリスクも無い訳ではないんだけど…、幸いなことに、この街の魔獣の数はとても多いからね。その心配をする必要もあまりないだろうし」

さやか「で、でも……」

キュゥべえ「それにね、魔獣というものは負の感情を強く持っている人間に引き寄せられやすいんだ。

 例えばね、君も近くで見てきたから分かると思うけど、周囲の人間に対して劣等感を感じていたほむらのような子や、今、まさに絶望しかけている、上条恭介のような人間にね」

さやか「ち、違う……」

キュゥべえ「何が違うんだい?」

さやか「恭介は…、恭介はそんな弱い人間なんかじゃない!」

キュゥべえ「でも、君は知らないかもしれないけど、芸術に生きる人間というのは凄く壊れやすいんだよ」

さやか「うるさい、もうついてこないで!」

キュゥべえ「……」

さやか「(さっきはキュゥべえの言ってることについカッとなって帰ってきちゃったけど、もしも、本当に恭介が魔獣に狙われているとしたら……)」

さやか「……恭介!」

さやか「恭介!?」

さやか「恭介! 恭介ー!」

さやか「いない…? 恭介、どこ? どこなの!? まさか!」

さやか「恭介!」

恭介「さやか!?」

 上条恭介は、今にも病院の屋上から飛び降りようとしているところだった。

恭介「く、来るな!」

さやか「恭介? そんなところで何やってるの!?」

恭介「来るな! 僕はもう生きてても意味なんかないんだ!」

さやか「何を言ってるの…? 危ないから戻って!」

恭介「うるさい! 君に僕の気持ちなんか分かるわけがない!」

さやか「分かる、分かるよ! 恭介が辛いこと、死ぬほど辛いこと!」

恭介「嘘だ、分かりっこない!」

さやか「分かるよ!」

恭介「だったら、だったら死なせてくれ!

 バイオリンが弾けない人生なんか、生きてる意味が無いんだ!

 ここから飛び下りれば、全て終わる……。この苦しみからも、解放される」

さやか「恭介……」

恭介「さやか…、今までありがとう……」

さやか「恭介、駄目ぇ!」

恭介「離してくれ、さやか……」

 上条恭介が飛び降りようとしたその瞬間、さやかは恭介の体に抱きつくようにして押さえこみ、何とか引き止めていた。

さやか「駄目、絶対駄目!」

恭介「さやか、離して…。離してよ……。

 お願いだから、死なせてよ……。う、うう…、うわぁぁあああ!」

さやか「恭介…、ちょっとだけでいいから待って!

 必ず、あたしが何とかしてあげるから…、それまではあたしを信じて待ってて!」

恭介「何とかするって、一体どうやってさ? 下手な慰めの言葉なんて、もう聞きたくない!」

さやか「恭介、前に言ってたよね?“僕の手はもう二度と動かない。奇跡か、魔法でもない限り、治らない”って」

恭介「そんなこと、今はどうだって……」

さやか「あるんだよ」

恭介「え?」

さやか「奇跡も、魔法も、あるんだよ!」

キュゥべえ「上条恭介は、病室に戻ったのかい?」

さやか「うん…。お医者さんが、鎮静剤を打ってくれた」

キュゥべえ「そっか。無事助かって良かったね」

さやか「あのさ…、キュゥべえ?」

キュゥべえ「どうしたんだい?」

さやか「あたし、決めたよ」

キュゥべえ「何をだい?」

さやか「あたしの願い事。

 恭介の…、

 …恭介の手を、治して」

 ちなみに今回の内容は、ポータブル版でのさやかルートがベースとなっています。

 次回からはなるべく話を展開させていく予定ですが、投下はおそらく週末になると思います。

改変後なのにヤケにQBが積極的だな。
嫌な予感しかしないぞ。

 今回もまた、少し時系列が入れ替わります(前回投下分と同日の出来事→次の日まで)。

 >>98
 状況的にさやかちゃんを契約させる絶好のチャンスということで、ちょっとだけ積極的な感じにしました。

??「アンタが、暁美ほむらだね?」

ほむら「はい、そうですけど…、あなたは?」

 杏子は黙ったまま、自らのソウルジェムを見せた。

ほむら「!! あなたも…?」

??「ちょいと面貸してくれない? 聞きたいことがあるからさ」

ほむら「それで、私に聞きたいことっていうのは…?」

??「そうだね…、単刀直入に聞くわ。アンタ、どういう願い事で魔法少女になったのさ?」

ほむら「それが…、私にも分からないんです……」

??「ハァ!? アンタ…、それマジで言ってんの?」

ほむら「はい。キュゥべえに聞いても、教えてくれなくて……」

??「(ということは、やっぱあいつの言ってることは嘘じゃなかったのか……)」

ほむら「あの、もう帰ってもいいでしょうか…?」

??「もう一つだけ。アンタの魔法少女のお仲間について、ちょっと聞かせてもらえるかい?」

ほむら「えっと…、巴さんですか?

 私達に魔法少女として必要なことを色々と教えてくれたり、いつもお茶をご馳走になったりもしてて、厳しいところもありますけど、基本的にはとっても優しくて親切な先輩ですけど……」

??「そっか…。分かった、もう帰っていいよ」

ほむら「えっ、でも……」

 しかし、ほむらが話し終わるよりも先に、相手の魔法少女は既に姿を消していた。

 マミとほむらは、普段から魔獣退治の前の待ち合わせ場所としてよく使っているファーストフード店に来ていた。

マミ「あら、美樹さんはまだ来てないのかしら?」

ほむら「はい…。今日は学校を休んでいたので、多分来ないと思います……」

マミ「そうなの…。それじゃあ、今日は二人でパトロールをしましょうか」

ほむら「そうですね…。あっ、そういえば、巴さん?」

マミ「どうしたの?」

ほむら「今日、学校で魔法少女の人に話しかけられました」

マミ「!! どんな子だった?」

ほむら「えっと…。髪型はポニーテールで…、結構ベテランっぽい感じの人でした」

マミ「その子、私のこと何か言ってた?」

ほむら「いえ…。ただ、私に魔法少女の仲間はどんな人だって聞いてきて、簡単に説明したら、いきなり帰っちゃったんですけど……」

マミ「そう……」

さやか「二人とも、おはよう!」

仁美「おはようございます、さやかさん」

ほむら「おはようございます、美樹さ…!」

 さやかの左手には、ほむらにとっても見覚えのある指輪が付けられていた。

仁美「昨日はどうかしたんですの?」

さやか「ああ、昨日はちょっと風邪っぽくってね。でも、今日はもう大丈夫だから!」

仁美「確かに、今日はいつもより元気そうですわね。何か良いことでもありました?」

さやか「へへ、ちょっとねー」

ほむら「(美樹さん、あの……)」

さやか「(ゴメン、後でちゃんと説明するから)」

マミ「そう、美樹さんも契約したのね……」

さやか「あの、マミさん。ごめんなさい……」

マミ「別に、私に謝る必要なんてないのよ?

 美樹さんもよく考えた上で決めたのでしょうし、あなたの決断を否定することなんて、誰にも出来ないわ」

さやか「マミさん……」

マミ「それで美樹さん、これからも、今までと同じように私達と一緒に行動していく、ということでいいのよね?」

さやか「は、はい! 二人とも、改めて、よろしくお願いします!」

マミ「こちらこそ、よろしくね!

 それと暁美さん…、あなたも先輩になるわけだから、これまで以上に頑張らなきゃいけないわね…?」

ほむら「えっと、はい。そうですね……」

さやか「よろしくお願いしますね…、ほ、む、ら、先輩!」

ほむら「あの、美樹さん?」

マミ「うふふ…。それじゃあ、まずは基礎訓練から始めましょうか!」

 次回の投下は、明日以降の予定です。

 どのみち正体がバレバレなのは分かってますが、こういうミスは地味に悔しいので、出来れば気付いた方は見なかったことにして下さい……

 というわけで、いつもより少し遅い時間ですが、投下します。

 美樹さやかは、補習授業の為に居残りさせられていた。

さやか「やっと終わった…。

 うわー、もうこんな時間!? 早いとこ、マミさん達と合流しないと!」

さやか「(マミさんって、普段は優しいけど、訓練の時はめっちゃ厳しいからなぁ…。

 まぁ、今回は止むを得ない事情があったから大丈夫だと思うけど……)」

さやか「(でも、よく考えたら、遅れた理由を言うのがちょっと恥ずかしいかな…。

 今まで休学してたほむらはともかく、マミさんはだいぶ前から魔法少女をやっているはずだけど、ちゃんと両立出来てたみたいだし…。

 そもそも、今回はほむらにも負けちゃってるしさ…。

 あいつ、仁美とかマミさんがちゃんと基礎を教えたら、いつの間にかあたしより出来るようになっちゃってたんだよね…。

 それに魔獣退治の方でも、最近は……)」

さやか「(それにしても、やっぱ魔法少女をやりながらの学校生活は厳しいよなぁ…。

 今なら、仁美の大変さが少し分かるような気がするね……)」

さやか「(そういえば最近、恭介にも全然会いに行けてないなぁ…。

 そうだ! 何とか一日くらいは休みを貰えるようにマミさんに頼んでみて、明日にでも―)」
 
??「ちょっとアンタ!」

さやか「えっ、何? もしかして…、あたし?」

??「そうだよ。他に誰がいるってのさ」

さやか「確かにあたししかいないけど…、いきなり何ですか?」

??「ったく、これを見せれば分かんだろ?」

さやか「……魔法少女?」

??「そう、アタシはアンタと同じ魔法少女さ。ただ…、アンタみたいなトーシロじゃあないけどねー」

さやか「トーシロ? そりゃあ、確かにあたしは最近魔法少女になったばかりだけど……」

 ていうかあんた誰よ? いきなり話しかけてきて、一体何の用?」

??「いやー、別に大した用はないんだけどさー。アンタみたいなヒヨっ子を見てたら、何だかちょっと可哀相に思えてきてさー。

 せっかくだし、同じ魔法少女の先輩として、少しくらいはアドバイスでもしてあげようかと思ってねー」

さやか「さっきからトーシロとかヒヨっ子って、あんた、ずいぶんと失礼だよね。

 それに、あたしには立派な先輩がついてくれてるから、あんたみたいな見ず知らずの魔法少女のアドバイスなんか必要ないわよ!」

??「まぁそういうなって。アンタの先輩だ、どうせ甘ちゃんだろ? まぁ、そんな事はどうでもいいや。

 それよりアンタ、他人の為に願い事をして魔法少女になったんだって?

 それも、よりによって男のために、さ」

さやか「だったら、どうだっていうのよ?」

??「他人の為に頑張るなんてバカじゃないの?

たった一度の奇跡のチャンスを、くっだらねぇことに使い潰しやがってさ」

さやか「くだらない、ですって!?」

??「ああ、マジでくだらねぇ」

さやか「さっきから黙って聞いてれば…、あんたなんかに何が分かるっていうのよ!?」

??「分かってねえのはそっちだ、バカ! 魔法少女はね、自分のためだけに生きるのが正解だっつーの!」

さやか「あんた…、とんでもない自己中だね」

??「そりゃーそうさ、アタシは魔法少女なんだからね」

さやか「あたしが知ってる魔法少女は、そんな人達じゃない!」

??「ハンッ! マミが特別なのさ。

 そんなマミの甘さに人が集まって、甘いヒヨッコ共が群れをなす……」

さやか「それの何が悪いってのよ! ていうかあんた、マミさんのこと知ってんの?」

??「……商売敵のことくらい、知ってたって別におかしくないだろ?」

さやか「ふん、どうせそんなとこだろうと思ったわよ。

 それと言っておくけどね…、よそは知らないけど、見滝原に悪い魔法少女なんていないのよ!」

??「なら、その見滝原の外にぶっ飛ばしてあげようか?

 まぁ、命の保証はないかもしれないけどねぇ!」

さやか「くっ……」

??「へぇー、ルーキーにしちゃあ意外とやるじゃん。

 アンタのご自慢の先輩とやらの指導のおかげかい?」

さやか「ふん…。マミさんはね、あんたなんかとは違うのよ!」

??「そんなこと、今さら言われなくても分かってるって。

 それよりさ、足元がお留守になってるぜ?」

さやか「はっ!」

??「チャラチャラ踊ってんじゃねーよ、ウスノロ!」

さやか「うっ!」

??「あんだけ言って聞かせても、全く分かろうともしないバカとなりゃあ…、

 後は直接体に叩きこんでやるしかないよねぇ!?」

さやか「!!」

マミ「そこまでよ!」

さやか「あ…、マミさん!」

マミ「美樹さん、大丈夫?」

さやか「は、はい!」

マミ「良かった…。

 それと…、お久しぶりね。佐倉杏子さん?」

杏子「……久しぶり。

 相変わらず、スカしてんじゃん。マミ先輩?」

 というわけで、今回はこれで終了。

 次回の投下予定日はまだ未定です。


ΩΩΩ な、なんだってー
役者が揃ってきたな

乙乙!
どうしてさやか、直ぐ契約してしまうん?

き、杏子だって俺は分かってたし(震え声)

 今回は短い内容ですが、少しだけ投下します。

 >>114,115,117
 あ、ありがとうございます…!

 >>116
 “願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの”(さやかちゃん談・第5話より)

 >>118
 やっぱり、分かっちゃいましたか…?

 巴マミは、部屋のクローゼットを見て溜め息をついていた。

マミ「やっぱり、無くなってるわね……」

マミ「(そういう趣味の人の犯行かしら?

 でも、それにしてはこのクローゼット以外には手を付けた痕跡がほとんどないし、他の服とかも全く盗られてないのよねぇ。

 それに、犯行の手口から考えても、私の部屋をあらかじめ知っていた者の仕業としか思えない…。

 そもそも結界を張っていたから、大抵の人はここには侵入すら出来ないはずだし……)」

マミ「やっぱり、あの子がここに…?」

マミ「あなた…、本当に、変わったわね」

杏子「あんたが変わらなさ過ぎるんだよ」

マミ「……それで、どうしてまたこの街に戻ってきたの? 目的は何?」

杏子「ふん、どこに居ようがあたしの勝手じゃんか。それが魔法少女だろ?」

マミ「そんな答えで私達が納得出来ると思っているの?」

杏子「チッ、分かってるよ。アタシはさ、ただ、見に来ただけだよ」

マミ「何を?」

杏子「決まってるじゃんか。もちろん、アンタの間抜け面さ。

 何も知らないヒヨッコどもを引き連れてすっかりいい気になってる、アンタのその顔をね。

 それに…、“あの”有名な巴マミと一緒にいることが出来るのは一体どんな奴らなのかってのも、ちょっと見てみたくなってね……」

ほむら「……」

マミ「それなら、用はもう済んだのでしょう。早く帰ったら?」

杏子「アタシもそうしようと思ったんだけどねー。

 どうやら、こいつはそうさせてくれるつもりはないみたいだぜ?」

マミ「そんな訳ないでしょう。そうよね、美樹さん?」

さやか「マミさんには悪いけど、こいつの言う通りです。あたし達の戦いはまだ終わってません。

 だから、今だけはあたしに構わないで下さい」

マミ「美樹さん、何を言ってるの!?」

杏子「ほらね、こいつはヤル気みたいだぜ。そういうわけだからさ、邪魔しないでくれる?」

マミ「そんな訳にはいかないわ」

杏子「ハンッ、どうせアンタならそういうだろうと思ってたよ。仕方ねぇな……」

 杏子はそういうと、自分達とマミの間に縛鎖結界を作り出した。

マミ「(この技は…!)」

杏子「アンタから頂いたこの技、結構役立たせて貰ってるよ」

マミ「佐倉さん、早くこの結界を解きなさい!」

 マミはマジカルマスケット銃で結界を攻撃したが、効果はほとんど無いようだった。

杏子「いいからアンタはそこで見てなよ。どうせすぐ終わっちまうからさー」

さやか「ナメるんじゃないわよ!」

杏子「威勢だけはいいけどさー、肝心の実力が伴っていないんじゃあ、どうしようもないよねぇ?」

さやか「うるさい、黙れぇ!」

 しかし、さやかは杏子に翻弄され続け、まともに戦うことは出来ていなかった。

杏子「ルーキーにしちゃあちょっとはやるかと思ったけど、やっぱ所詮はトーシロか。

 いい加減、こんな茶番も終わりにしちゃおうかねぇ?」

マミ「美樹さん!」

マミ「(こうなったら、ティロ・フィナーレで…)」

 だがその時、マミは自分の背後から凄まじい量の魔力が放たれているのを感じ取り、思わず動きを止めていた。

ほむら「……」

マミ「あ、暁美さん…?」

 次回の投下は、おそらく明後日以降になると思います。

 遅くなりましたが、本日も少しだけ投下します。

 暁美ほむらは、自らの強大な魔力を開放し、巨大な翼を発現させていた。

さやか「ほむら…?」

 だが、その時ほむらの背中から現れたのは、普段のような白い光の翼ではなく、どこか禍々しい雰囲気を漂わせている、“黒き翼”だった。

杏子「そういや、アンタは極めつけのイレギュラーだって言われてたんだっけな…。

 確かに、得体の知れない技を使いやがる…。

 やっぱり今日のところは、降りさせてもらった方がいいかねぇ…?」

マミ「佐倉さん、待ちなさい!」

 すると、ほむらの“黒き翼”が縛鎖結界をやすやすと破壊し、杏子の方へと近づいていく。

マミ「よくやったわ、暁美さん。後は私に任せて―」

 しかし、“黒き翼”は止まることなくそのまま攻撃を開始し、その場から離れようとしていた杏子の退路を絶ち、一撃で吹き飛ばした。

杏子「グハッ!」
 
マミ「佐倉さん!」

杏子「チッ、テメェ、何しやがんだ!」

“黒き翼”は、杏子に向かってさらなる攻撃を開始した。

“黒き翼”は、杏子に対して容赦のない攻撃を放ち続けていた。

 杏子はその攻撃を何とか槍で防ごうとしていたが、全てを受け止めることは出来ず、次第にダメージを負っていき、後方へと追いやられていた。

マミ「暁美さん、やり過ぎよ!」

さやか「あの…、ほ、ほむら?

 その、あたしのためにやってくれてるってのは分かるけど…、もう、それくらいにしといてあげたら―」

マミ「!! 美樹さん、今の暁美さんに近づいては駄目よ!」

さやか「えっ? きゃっ!」

 “黒き翼”は、制止しようとしたさやかすらも吹き飛ばし、さらに進撃を続けていく。

マミ「美樹さん!」

杏子「テメェ、一体どういうつもりだ!? そいつを助けたいんじゃねぇのかよ!」

ほむら「……」

マミ「レガーレ!」
 
 マミは自らのリボンによる拘束を試みたものの、“黒き翼”の攻撃によって一瞬で引き裂かれていた。

マミ「そんな……」

 “黒き翼”が、さらに杏子を追い詰めていく。

杏子「クソッ…!」

 そして、“黒き翼”はその形状を鋭利なものへと変え、逃げ場を無くして追いつめられた杏子にトドメを刺そうとしていた……

 というわけで、本日はここで終了です。

 次回の投下は、また週末のどこかの予定です。

勝ったな

ああ

 >>130
 >>131
 勝っちゃダメだ、勝っちゃダメだ、勝っちゃダメだ……

杏子「(ちくしょう、何なんだよコイツ……)」

 暁美ほむらの“黒き翼”が自らにトドメをさそうとしているのを感じ取り、佐倉杏子は思わず目を閉じていた。

杏子「(駄目だ、やられる…!)」

 しかし、杏子の体が“黒き翼”に貫かれることはなかった。

杏子「(あれ…? アタシ…、何ともない?)」

さやか「マミさん!」

杏子「(……マミ?)」

 そして、ゆっくりと開かれた杏子の目に映ったのは、“黒き翼”によって全身を貫かれ、大量の血を吐いて苦しむ巴マミの姿だった。

杏子「マミ!」

 “黒き翼”によって体を串刺し状態にされていたマミだったが、その攻撃をする為にほむらの上半身が無防備状態になっていることに気付くと、何とか力を振り絞って魔力を溜め、ほむらに向かって攻撃を放った。

ほむら「わっ!」
 
 暁美ほむらが“元の意識”を取り戻し、驚いて尻持ちをついた。

ほむら「あ、痛ったーい…。あれ、私……」

 それと同時に、マミの体も地面に向かって放り出されていた。

杏子「マミ!!」

 傷ついたマミの体を、杏子が抱きかかえる。

杏子「マミ!!! ちくしょう……」

ほむら「と、巴さん!? 一体、どうして……」

杏子「テメェは何を言ってやがんだ!? お前がやったことじゃねぇか!」

ほむら「そ、そんな…。嘘ですよね、美樹さん!?」

さやか「残念だけど、そいつの言ってることは本当だよ……」

杏子「マミ、どうして……」

マミ「佐倉さん。無事で良かった……」

杏子「っ……」

ほむら「わ、私……」
 
 ほむらは、うろたえながらその場から走り出した。

さやか「ほむら!」

 さやかは去っていくほむらを少しの間見つめていたが、やがて背を向けると、マミを抱えている杏子の方を睨んだ。

さやか「マミさんから離れて」

杏子「……」
 
さやか「早く! あたしの治癒魔法でマミさんの怪我を治すんだから……」

杏子「分かった……」

マミ「美樹さん…。私のことはいいから、早く暁美さんを追いかけてあげて」

さやか「何を言ってるんですか? マミさんの怪我を治す方が先です!」

マミ「これくらい、自分でも治せるから……」

さやか「それが本当だとしても、あたしはマミさんを治し終るまでここを動きません」

マミ「美樹さん…、ごめんね……」

 マミの治癒が終わったさやかは、立ちあがって後ろにいた杏子を再び睨みつけた。

さやか「あんた、まだいたの?」

杏子「……アタシがいたら何か問題でもあるのかよ」

さやか「当たり前でしょ。一体何を企んでるんだか……」

杏子「アタシは、マミのことが心配で……」

さやか「どの口でそんなことが言えるの!?

 大体、あんたがあたし達に突っかかってこなければ……」

マミ「美樹さん、今だけは佐倉さんを責めないであげて。

 それと佐倉さん…。私のことを心配してくれたのは嬉しいけど…、今日はもう帰って」

 杏子は少しの間躊躇っていたが、やがて、そこから離れていった。

マミ「美樹さん…。私はもう大丈夫だから、暁美さんを追いかけてあげて」

さやか「でも……」

マミ「彼女はきっと自分のしたことにショックを受けているはず。だから、誰かがそばにいてあげないと……」

さやか「分かりました。あいつを探してきます」

マミ「お願いね」

 そして、マミはさやかが去っていくのを見届けた後、壁に向かって寄り掛かった。

マミ「(もう少しここで休んでいこうかしら…?

 いや、やっぱり自分の家の方が安心よね……)」

 マミは再び立ち上がると、自宅へ向けて歩き出した。

次回の投下もまた週末の予定です。

 ちなみに次回の投下日については、少々遅くなるかもしれません。

 マミは、自分の部屋のベッドで寝ていた。

キュゥべえ「マミ、調子はどうだい?」

マミ「キュゥべえ、来てくれたのね……」

キュゥべえ「さやかから、マミが重傷を負ったと聞いて来てみたんだけど、その様子だともう大丈夫そうだね」

マミ「ええ、美樹さんの治癒魔法のおかげでね。ただ……」

キュゥべえ「ただ?」

マミ「ううん、何でもないわ。気にしないで」

キュゥべえ「分かった」

マミ「……そうだわ、キュゥべえ。一つ、お願いしたいことがあるんだけど……」

キュゥべえ「何だい?」

マミ「佐倉さんへの伝言を頼みたいんだけど、大丈夫?」

キュゥべえ「もちろんだよ。魔法少女のサポートをするのが僕の仕事だからね。

 それで、どんな内容だい?」

マミ「明日の昼に、私と会ってもらえるように頼んでみて欲しいの」

キュゥべえ「いいよ。ただ、どこに来てもらうように言えばいいんだい?」

マミ「多分、“いつもの場所”って言えば分かってくれると思うわ」

 結構遅くなってしまい申し訳ありませんが、再開します。

マミ「……佐倉さん、来てくれたのね!」

杏子「はぁ、呼び出しといて何言ってんのさ?」
 
マミ「だって、来てくれないかと思ってたもの……」

杏子「……あんたには、また借りを作っちゃったからね。

 いくらあたしでも、それくらいの礼儀はわきまえてるつもりさ」

マミ「……そう。でも、そんなに気にしなくてもいいのよ。

 だって、お互い様でしょ?」

杏子「なんの話さ?」

マミ「うふふ……。

 そうだわ、佐倉さん。お昼、食べちゃった?」

杏子「いや、まだだけど……」

マミ「クッキーを焼いて来たんだけど、食べる?」

マミ「(こうして、二人で何かを食べるのも久しぶりね……)」

杏子「……マミ」

マミ「(この後、お茶会の誘いをしたら私の家にも来てくれるかな?)」

杏子「マミ?」

マミ「あら、ごめんなさい。なぁに?」

杏子「あたしがここに来たのは、あんたに伝えておきたいことがあったからなんだ」

マミ「そう! 何かしら?」

 マミは、期待に満ちた眼差しで杏子の方を見つめていた。

杏子「あたしは……、もうこの街から出ていくよ」

 杏子は、マミの方を見ずにそう言った。

マミ「えっ!? どうして急にそんな……」

杏子「やっぱり、あたしみたいなのがこの街にいたら、あんた達にも迷惑がかかっちまうだろ?」

マミ「そんなこと……」

杏子「どう考えたって、あんたがあんな酷い怪我してしまったのは、あたしのせいじゃないか……」

マミ「でも……」

杏子「それに、今回のことは全部あたしが引き起こしたことだ。

 あんたの後輩達にちょっかい出して、色々揉め事起こして、挙句の果てにあんたをあんな目に合わせちゃってさ」

マミ「……」

杏子「それとさ、あたしはこんな風になっちまったけど、あんたはまだ変わらずに正義の味方を続けてくれてるし、こんなあたしみたいなのでも助けようとしてくれた。

 あんたのそんな姿を見てたら、やっぱりあたしはここにいるべきじゃないって思い知らされちゃったし、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと思ったんだよね」

マミ「わ、私は……」

杏子「だけどさ、今回のことであたしも少しは反省したからさ。
 
 償いになるようなこととかは何にも出来なくて悪いけど、せめて、ちょっとくらいは生き方を変えてみてもいいんじゃかなって思えてきたんだよね。

 だからさ……、まぁ、さすがにあんたみたいな真似は出来ないけど、もう少し真っ当な生き方が出来るように頑張ってみるよ」

マミ「佐倉さん……」

杏子「……あたしはもう行くよ。

 ああ、さやかのやつには、悪かったって伝えといてくれる?

 それとクッキー、ありがとう。おいしかったよ。

 それじゃあ、さよなら」

マミ「ま、待って!」

 マミは引きとめようとしたが、その言葉を聞く前に杏子は去っていた。

 見滝原から立ち去ろうとしていた杏子は、病院へ向かおうとしていた美樹さやかとたまたま出くわしていた。

杏子「げっ……」

さやか「あんた……!」

杏子「……よう」

さやか「何だよ、この前の続きかよ?」

杏子「そんなつもりはないって。

 どうせ、アタシはもうこの街から出ていくし、もう戻るつもりもないからさ」

さやか「そう、それならさっさと出て行きなさいよ」

杏子「チッ、お前に言われなくてもそうするっつーの」

 そのままさやかのいる場所を通り過ぎようとしていた杏子だったが、急に立ち止まった。

杏子「やっぱちょっと待った」

さやか「何よ、まさか心変わりしたっていうんじゃないでしょうね?」

杏子「いや、先輩としてアンタに言っておきたいことが一つだけあってさ」

さやか「この前言ったでしょ、あんたみたいな魔法少女のアドバイスなんか必要ないって」

杏子「今度は真面目なやつなんだ。ちょっとでいいから聞いてくれない?」

さやか「……言ってみなさいよ」

杏子「アンタはこれから、助けてやった坊やとか、願い事そのものに裏切られて、後悔する時が来るかもしれない」

さやか「はぁ!? いきなり何を言い出すかと思ったら、あたしが動揺しそうなことを言って、困らせようとでもしてんの?」

杏子「そうじゃない。ちゃんとした忠告だよ」

さやか「どうだか。

 それに、どうしてあんたにそんなことが分かるっていうのさ?」

杏子「身を持って経験したことがあるからさ」

さやか「えっ、どういうことよ?」

杏子「アタシも、アンタみたいに他人の為に願い事をして魔法少女になったんだ。

 ……そして、アタシ自身の願い事に裏切られた。
 
 だから、アンタもそうなっちまった時に困らないように忠告しておきたくてさ」

さやか「……そう、それはお気の毒に。

 でも、恭介があたしを裏切るわけないし、あたしが後悔することなんてあるわけない」

杏子「……そうだといいな」

さやか「あたしを馬鹿にしてるの?」

杏子「そうじゃないって。そのままの意味だよ」

さやか「あっそう。ならいいよ」

杏子「それともう一つ。

 ……マミのこと、よろしく頼むな」

さやか「ふん。あんたに言われなくたって、マミさんのことはあたしが守ってみせるよ」

杏子「……そうか。それならよろしく頼んだよ。
 
 じゃあな」

さやか「? 変なやつ……」

 次回の投下は、来週くらいの予定です。

さやか「あれ、恭介は…?」

看護婦「あら? 上条さんなら昨日退院したわよ」

さやか「そ、そうなんですか?」

看護婦「リハビリの経過も順調だったから、予定が前倒しになって……」

さやか「えっと、そうですか……」

さやか「マミさん、お待たせ!」
 
マミ「あら、美樹さん。用事はもう済んだのかしら?」

さやか「……うん、もう終わりました。

 それより、どうしたんですか? そんなにおめかししちゃって」

マミ「いや、その……、ちょっとね」

さやか「もしかして、誰か男の人とでも会ってたんですかー?

 あっ、恋人とか?」

マミ「もう、そんな人いないってば!
 
 先輩をからかんじゃありません!」

さやか「はーい!

 ……そういえば、ほむらは今日も来てないんだね」

マミ「えっと、そうねぇ…。やっぱり、彼女自身もショックが大きかったのでしょうね。

 だけど、こういう時は焦っても仕方ないわ。少しずつ、暁美さんが元の状態に戻れるようにしていきましょう?」

さやか「……マミさんは、優し過ぎだよ」

マミ「えっ?」

さやか「ううん、何でもない。それより、早く魔獣退治に行こう?」

マミ「え、ええ……」

 今回は3~4レス分くらいの内容です。

マミ「美樹さん、今日はどうしたの?」

さやか「えっ、あたし、何か駄目なところとかあったかな?」

マミ「いえ、そういうわけじゃなくてね。何と言えばいいのかしら……。

 そうね、いつものあなたらしくなかったわ。

 早く一人前になる為に頑張ろうとしているってのは分かるんだけど、ちょっと無茶し過ぎっていうか、焦ってるように思えたの」

さやか「別にあたしはいつも通りだと思いますけど。

 ……むしろ、マミさんこそ、今日は何だかあたしに気を使い過ぎじゃない?」

マミ「えっと…、そうかしら?」

さやか「うん、だっていつもなら、魔獣退治の時のマミさんはもっと厳しくしてくれたはずだよ。

 もしかして、この前のことであたしに遠慮してるとかじゃないよね?」

マミ「そんなつもりはないけど……。

 それより、やっぱり美樹さんは今までよりも無理してるんじゃない?」

さやか「……やっぱマミさんにはバレちゃってるかー。

 そうだね、あたし、この前のことで気を入れ替えたんです。もっと強くならないといけないなって。

 じゃないと、魔獣退治の時とか、またあいつみたいなのが来た時にも、足手まといになっちゃうだろうし」

マミ「だけど、……佐倉さんはもうこの街には来ないって言ってたわ。

 だから、そんなに心配しなくても……」

さやか「そうだとしても、あいつみたいな考え方の魔法少女が他にもいるかもしれないじゃないですか。

 それに、ほむらがまた暴走したりしたら、マミさんはどうするつもりなの?」

マミ「……」

さやか「ちょっと言い過ぎました、ゴメン。

 今日は、ここで別れましょう?

 マミさん、また明日」

マミ「……ええ、美樹さん。また明日ね」

仁美「おはようございます、さやかさん」

さやか「おはよう、仁美」

仁美「それにしても、暁美さんは今日もお休みかしら?」

さやか「ああ、そうみたいだね。あっ……」

 その時さやかは、松葉杖をついて登校しようとしている上条恭介を見付けた。

仁美「あら…、上条君、退院なさったんですの?」

さやか「……」

中沢「上条、もう怪我はいいのかよ?」

恭介「ああ。家にこもってたんじゃ、リハビリにならないしね。

 来週までに松葉杖なしで歩くのが目標なんだ」

仁美「良かったですわね。上条君」

さやか「うん、そうだね……」

仁美「そういえば、さやかさんは、お声をかけなくても宜しいんですの?」

さやか「私は…、いいよ」

仁美「……」

仁美「……あの、さやかさん」

さやか「どうしたの? 仁美」

仁美「さやかさんに少しご相談したいことがあるのですけど、この後お時間は大丈夫ですか?」

さやか「うん。大丈夫だけど…、何の話?」

仁美「ここでは、ちょっと……」

さやか「そっか。それなら、いつものあの店でならどう?」

仁美「ええ、そこなら問題ありませんわ」

さやか「あっ、ちょっとだけ待ってて」

仁美「分かりましたわ」

 さやかは携帯を取り出すと、メールを一通送信した。

さやか「もう大丈夫だよ。それじゃあ、行こっか」

 次回の投下はまた来週あたりの予定です。

せめて木曜には投下しようと思っていたのですが、ここ自体がちょうど落ちてましたし……

とりあえず、この後一時くらいから再開します。

マミ「(美樹さん、今日は来られないのね…。
    もしかして、昨日私が言ったことで怒らせちゃったのかな…?)」

マミ「(いえ、たまたま今日は忙しいだけなんだわ。
    ちょっと、気にし過ぎよね…?)」

マミ「(それよりも、美樹さんが来ないということは、久しぶりに一人で魔獣と戦うことになるのよね…。
    この前みたいなことがないように気をつけないと)」

マミ「(でも、まだしばらく魔獣が出る気配はないわね…。
    どうしようかな?)」

マミ「(そうだわ、今日は魔獣退治の前に暁美さんに会いに行ってみましょうか。
    そろそろ彼女も落ち着いてきただろうし、これ以上気に病むことが無いように私からフォローしてあげないとね!)」

ほむら「……はい、どなたですか?」

マミ「私よ、暁美さん」

ほむら「巴さん!?」

マミ「待って、ちょっとだけ話をさせてもらえないかしら?」

ほむら「で、でも……」

マミ「私は、別にあなたを責めたりしに来たわけじゃないのよ?
   本当に、少し話をしたいだけなの」

ほむら「……分かりました。ちょっとだけ待ってて下さい」

ほむら「巴さん、この前のことは本当にごめんなさい!
    あの、私……」

マミ「……私のことなら、もう気にしなくていいのよ?
   それにほら、この通りにすっかり元気になったしね!
   それよりも暁美さん、ソウルジェムの調子はどうなの?
   そろそろ穢れが溜まってきてるんじゃないかしら…?」

ほむら「あっ……」

マミ「やっぱりね。
   そう思ったから、今日はあなたの為にグリーフシードを持ってきたの」

ほむら「あ、ありがとうございます……」

マミ「暁美さん」

ほむら「はい、何でしょう?」

マミ「私、この後魔獣退治に行くつもりなんだけど、今日は美樹さんが用事で来れないそうなの。
   だから……、その代わり、というわけではないんだけど、あなたも一緒に来てくれない?」

ほむら「えっ!? でも、私……」

マミ「もちろん、あなたをいきなり戦闘に復帰させるつもりなんてないわ。
   あなたにとって、この前のことがショックだったことは分かってるから…。
   でも、いつかは魔獣退治を再開しないといけないでしょう?
   だから、こういう時は徐々に元に戻していくのがいいと思うのよね。
   今日は見学だけでも構わないから、どうかしら?」

ほむら「あの、ええっと、その……」

マミ「なぁに?
   もしかして、先輩の誘いを断るつもりなの?」

ほむら「いえ、私、そんなつもりじゃ……」

マミ「今のは冗談よ。
   それにまだあなたの心の準備が出来ていないというのなら、無理しなくてもいいからね」

ほむら「……いえ、もう大丈夫です。
    まだ戦うのは無理ですけど、今日はよろしくお願いしますね」

マミ「ええ、暁美さん。今日はよろしくね!」

 志筑仁美は、夜の街を一人で歩いていた。

仁美「(これで、良かったのですよね…。

  上条君のことを見つめていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですもの。

  さやかさんに、私の先を越す権利があるのは当然のことですわ。

  ですから、もしも上条君がさやかさんの気持ちに答えたとしても、私は……)」

 その時、突然仁美の周囲の空気が禍々しいものに変化した。

仁美「これは…、一体何なのでしょう?」

 仁美の目の前には、一体の魔獣が立ちはだかっていた。

仁美「あなた、一体何なのですか?」

 もちろん魔獣がその問いに答えることはなく、うめき声を上げながら仁美の方へと迫っていく。
   
仁美「それ以上近づいたら、警察を呼びますわよ!」

 異形の化け物に対しても何とか冷静に対処しようとしていた仁美だったが、魔獣が近づいてくるにしたがって、次第に心が恐怖に支配されていき、その場から動く事も出来なくなっていた。

 そして、魔獣は仁美に掴みかかり、感情エネルギーを吸い取ろうとしていた……

 続きは何とか土日中に投下したいと思います。

 巴マミと暁美ほむらは、離れた場所で魔獣に襲われている志筑仁美を発見していた。

マミ「(この距離からでは、あの魔獣だけを正確に打ち抜けるかしら…?)」

 マミのマジカルマスケット銃は、魔力によって生成される際に威力や命中精度等を高める為の工夫がいくつか施されているものの、基となっている銃自体の構造的な問題もあり、精密射撃には向かないという欠点があった。

マミ「(近づいてから攻撃している時間の余裕も無いし、どうしましょうか……)」

マミ「もう迷っている余裕は無い! 仕方ないわ、ここは……」

 マミがマスケット銃の引き金を引こうとしたその時、背後から光の矢が放たれ、そのまま横を通り過ぎていき、魔獣だけを正確に打ち抜いていた。

マミ「!! 暁美さん……」

 マミが後ろを振り向くと、いつの間にか魔法少女に変身していたほむらが構えていた弓を下ろそうしている姿が目に入った。

今回はとりあえず、残りの一レス分だけ投下して終わります。

ほむら「志筑さん!」

 ほむらとマミは、倒れている仁美の元に駆け寄った。

ほむら「巴さん、どうですか?」

マミ「心配ないわ、ちょっと気を失ってるだけみたい。

 危ないところだったけど、間一髪で何とか間に合ったわね…。

 そういえば、暁美さん。この子とは面識があるみたいだけど、もしかして、暁美さんのクラスメイト?」

ほむら「はい、そうなんです。

 ちなみに、志筑さんは美樹さんとは昔からのお友達だったみたいなんですけど、二人とも、私にとても良くしてくれて……」

マミ「そうだったの…。間に合って良かったわ」

ほむら「だけど、志筑さんにはこわい思いをさせちゃいましたね……」

マミ「おそらくこの状況なら、目が覚めれば夢だったと思ってくれるはずよ」

ほむら「夢、ですか……」

マミ「ええ、悪い夢を見ていただけ。
 
 そうだわ、暁美さんはこのまま彼女についててあげたらいいんじゃないかしら?」

ほむら「なるほど…。確かに、その方がいいかもしれませんね。

 ただ、残りの魔獣はどうすれば……」

マミ「大丈夫。後は私が引き受けるわ。
 
 それに元々、今日は暁美さんには戦わせないつもりだったしね」

 だけど、暁美さん。さっきの判断はとても良かったわよ?

 この感じなら、完全な復帰までにもそれほど時間はかからなそうね」

ほむら「そうですか? ありがとうございます……」

マミ「それじゃあ、暁美さん。

 ちょっと一仕事、片付けちゃってくるわね!」

とりあえず、今日は生存報告がてらに一レス分だけ投下します。

仁美「あら、私……?」

ほむら「志筑さん、大丈夫ですか?」

仁美「あら、暁美さん。

 私なら、何ともありませんけど……。

 それより、どうしてここに……?」

ほむら「良かったぁ~!

 なかなか目を覚まさないから、心配してたんですよ」

仁美「それにしても、どうして私はこんなところで倒れていたのかしら……。

 暁美さん、私が目を覚ます前はどんな状況だったのか、教えてくださいますか?」

ほむら「ええっと、私はその……。

 志筑さんがここに倒れていたのを、たまたま見つけただけなので……」

仁美「そうですの……。

 ああ、そうだわ!

 暁美さん、ここで化け物のようなものを見ませんでしたか?」

ほむら「いえ、私は何も見てませんけど……」

仁美「そう、ですの……」

ほむら「志筑さん、立てますか?」

仁美「(どうしてでしょうか、胸のあたりに少し違和感があるような……)」

ほむら「あの、志筑さん?」

仁美「あら、ごめんなさい」

ほむら「いえ……」

仁美「あれは……、ただの悪い夢だったのでしょうか……?」

ほむら「えっ?」

仁美「……何でもありませんわ。
 
 暁美さん、行きましょう」

ほむら「あっ、はい……」

今回はまた2、3レス分だけ投下します。

マミ「暁美さん、今日も来てくれたのね!」

ほむら「はい…。

 それと、今日からはまた本格的に魔獣退治に参加しようと思っているので、よろしくお願いしますね」

マミ「あらあら、心強いわね。

 でも、別に焦って復帰を急ぐことはないのよ?

 もう少し時間を掛けて、ゆっくりと段階を踏んでからじゃなくてもいいの?」

ほむら「いえ、私はもう大丈夫です」

マミ「…そう。

 それなら、今までと同じように厳しめに指導しても構わないのね?」

ほむら「あ、ええっと…、大丈夫、かな…?」

マミ「ふふっ、それは冗談だから安心して」

ほむら「あ、はい……」

マミ「そういえば、美樹さんは今日もまだ来てないわね…。

 暁美さん、美樹さんからは何か聞いてる?」

ほむら「いえ…。
 
 というか、今日は美樹さんが学校をお休みしていたので……」

マミ「…そっか。

 それなら、今日も私達二人でパトロールに行くことになるわね」

ほむら「そうですね……」

マミ「それじゃあ、そろそろ行きましょうか」

マミ「美樹さん」

さやか「…久しぶり、マミさん」

マミ「どうしたの? 改まって」

さやか「…ちょっと、マミさんに会って言っておかなくちゃいけないことがあったから」

マミ「あら、何かしら?」

さやか「…あたし、マミさんと一緒に魔獣退治に行くのをやめるよ」

マミ「え…?」

 今回の投下量は5~6レス分くらいです。

マミ「…もしかして、この前私が美樹さんに失礼なことを言っちゃったから?

 そうだとしたら、あの時のことは謝るわ。

 だから……」

さやか「いや、この前のことは別に気にしてないよ」

マミ「それなら、どうして?……」

さやか「この前、マミさんと、ほむら…。
 
 二人で、あたしの友達の仁美って子を助けてくれたんだよね?」

マミ「ええ、そうだけど……」

さやか「あたしね、あの子を見捨てようとしちゃったんだ」

さやか「…あの日は、あの子とちょっとケンカみたいな感じになっちゃっててさ。

 その後、パトロールに行こうとした時にまた見かけたんだけど、あたしは声を掛けなかった。

 それから結局、パトロールも中途半端に終わらせて帰っちゃったんだよね。

 そしたら、仁美は…。

 ね、最低、だよね?」

マミ「でも、それは…。

 別に、美樹さんが悪い訳じゃないでしょう?

 それに、彼女が魔獣に襲われるかどうかなんて分からなかっただろうし……」

さやか「でも、何となく仁美が落ち込んでるってことには気づいてたんだよね。

 それなのに、あたしは追いかけようとはしなかった。

 そういう時は魔獣に狙われやすいって、キュゥべえに聞いて知ってたはずなのにさ」

マミ「いくらなんでも、気にし過ぎよ。

 それに、結果的には無傷で助かったんだもの」

さやか「そうだね。

 マミさん達が助けてなければ、あの子は魔獣に感情エネルギーを吸い取られちゃって、大変なことになってただろうね」

マミ「……」

さやか「あたしって、ホント調子いいヤツだよね。

 口先では正義ぶってるくせに、いつも誰かに頼りっぱなしで…、

 肝心な時に役に立たなくてさ…。

 こんなんじゃ、マミさんの背中を守ることなんていつまで経っても出来ないよ」

マミ「…美樹さん。

 私は、仲間に頼るのを悪い事だとは思わないわ。

 それに、私はこの前美樹さんに命を救ってもらった。

 あの時、あなたがいてくれたから私は……」

さやか「マミさんは、優しいよね。

 どうして、あたしを責めたりしないの?

 この前のことだって、そもそもあたしがあいつの挑発に乗ったりしなければ、マミさんを危険な目に合わせることも無かったはずでしょ?

 それにさ…、元はと言えば、マミさんが色々と忠告してくれたのを押し切ってあたしが契約しちゃったのが原因だっていうのに…。

 ましてや、願い事を考える余裕も無かったマミさんや、よく分からない内に魔法少女になっていたほむらなんかとは違って、

 あたしには、たっぷりと考える時間があったはずなのにね?」

さやか「それに、マミさんがいつもあたしをフォローしてくれるのは嬉しいけど、

 そういうのが、時々ちょっと辛いっていうかさ…。

 …ごめん。

 マミさんのチームから抜けたい理由って、それもあるんだよね。

 そんなに優しくされても、あたしには返すものがないから。

 それにさ、元々あたしにはマミさんと組む資格なんてなかったんだよ。

 魔法少女の命も、街の人の命も関係無い。

 あたし達は行動ひとつで他人の命を左右できる立場にいて、それだけ重い物を背負っちゃってる。

 だから、どんな事情があったとしてもみんなを守らなくちゃいけないのに…。

 そんな当たり前の覚悟すら無かったってことに、今回のことで気付かされちゃったから。

 マミさんだって、あたしみたいなのがチームにいたら迷惑でしょ?」

マミ「わ、私は……」

さやか「それでも…。

 他人も見捨てたこんなあたしでも、一緒に組めるって言うんなら…。

 あたし、マミさんのこと幻滅しちゃうかも」

マミ「っ!」

さやか「あたしがチームを抜けることは、ほむらにも言っておくから。

 あれからちょっと心配だったけど…、ほむらの調子もだいぶ戻ってきたみたいだし、あたしなんかがいても二人の邪魔になるだけでしょ?

 あの子のこと、よろしくね」

マミ「……」

さやか「(ごめんね、マミさん……)」

 今回の内容は、TDS中巻の第7話がベースとなっています。

 なお、続きの投下は本日中を予定しています。

 今回は3~4レス分程投下します。

ほむら「美樹さん、どうして急に…?」

さやか「…別に、ただ、そろそろ一人立ちしてもいいかなって思っただけだよ。

 とにかく、あたしはもう決めたから。

 あっ、あんたはまだ危なっかしいから、マミさんと一緒に頑張るんだよ?

 それじゃ、あたしはここで」

ほむら「あっ……」

杏子「…さやかがマミのチームを抜けたってのは、本当なのか?」

キュゥべえ「ああ、マミとさやかの両方から聞いたことだし間違いないと思うよ」

杏子「アイツ……」

キュゥべえ「杏子、どこへ行くんだい?」

杏子「決まってんだろ。さやかに会いにいく」

さやか「!」

杏子「…よう」

さやか「…あんた、もうこの街には来ないんじゃ無かったの?」

杏子「まぁ、そんなかてぇこと言うんじゃねぇよ」

さやか「で、何?

 やっぱり気が変わって縄張りを奪いにでも来たとか?」

杏子「いや、ちょいとアンタと話がしたいだけさ。

 だから、面貸しなよ」

 次回の投下は、今週中を予定しています。

とりあえず、また一レス分だけ投下します。

さやか「こんな所まで連れて来て、一体何の用?」

杏子「…アンタ、マミのチームから抜けたんだって?」

さやか「っ!

 …質問に質問で返すんじゃないわよ」

杏子「そいつは悪かったねぇ。

 でも、先に確認しておきたくてさ。

 で、どうなの?」

さやか「…その通りだよ。

 ていうか、何であんたがそのこと知ってるわけ?」

杏子「キュゥべえのやつから聞いたんだよ」

さやか「…へぇ、話したいってのはそのこと?」

杏子「まぁ、それだけじゃないんだけどさ…。
 
 …ちょっとばかり長い話になる。

 食うかい?」

さやか「…いらない」

杏子「…そうかい。

 それじゃあ…」

さやか「悪いけど、やっぱりあんたの話を聞く気にはなれない。

 あたしはもう帰るよ」

杏子「お、おい!

 あいつ…」

 なお、続きは今日中か明日までには必ず投下します。


魔女にならないだけで、さやかってば概ね原作通り進んでいってるな

 >>207
 個人的には、改変後の新しい世界でも大事な一点(正確には二つ?)以外の事は前の世界とそんなに変わらない状況だったのではという説を信じて参考にしている為、現時点までは敢えて原作とその派性作品の展開からあまり変化の無いようにしています。

教師「…美樹さん、大丈夫?

 具合が悪いのだったら、保健室に行った方がいいわね。

 保険係の子は…、そういえば美樹さんだったか。

 それじゃあ、誰か代わりの人を……」

ほむら「あっ、私が一緒に……」

さやか「あー、大丈夫です。

 日陰で休んでます」

ほむら「美樹さん……」

ほむら「…美樹さん、ここに居たんですね」

さやか「……」

ほむら「美樹さん、最近はすごく辛そうですよね。

 …巴さんも、心配してましたよ?

 私、このままじゃ良くないと思うんです。

 ですから……」

さやか「あたしがいたって、二人の邪魔になるだけだよ」

ほむら「そんなことは……」

さやか「とにかく、あたしは……

 !」

ほむら「…美樹さん?」

 美樹さやかの視線の先には、上条恭介が立っていた。

さやか「恭……介?」

さやか「なんで……」

恭介「ここにいたんだね、さやか」

さやか「ど、どうしたの?

 なにか…、用なの?」

恭介「うん、渡したいものがあってさ」

さやか「えっ?」

恭介「遅くなって悪いんだけど…。

 さやかには、入院中に色々お世話になったからさ。
 
 ちゃんとお礼しておかなくちゃって思ってたんだよね。

 だからこれ、良かったらって……」

さやか「……」

恭介「学校くらいでしか、会う時間も無いしね。

 放課後は…、僕も忙しいし」

さやか「…そ、そんなのいいのにさー!

 なんだか、気を使わせちゃったみたいだねー。

 ははは……」

ほむら「……」

さやか「お礼なんていいって!

 べつにあたし…、感謝されたくてお見舞いに来てたわけじゃないし。

 それに、今のあたしが受け取る資格なんて……」

さやか「それにさ、恭介は……」

 その時、黙ってその場に座っていたはずの暁美ほむらが急に立ち上がった。

さやか「…ほむら?」

ほむら「上条君、聞いて欲しいことがあるんです」

恭介「暁美さん…?」

ほむら「上条君…。

 あなたの手が急に治った事、不思議に思いませんでした?」

恭介「えっ?」

さやか「!

 ほむら、あんたまさか……」

ほむら「あの、上条君?

 あなたの手を治したのは……」

さやか「ほむらっ!」

 さやかは、思わずほむらの顔を引っ叩いていた。

ほむら「きゃっ!」

恭介「暁美さん、大丈夫かい!?

 さやか、一体どうして君はこんな事を……」

さやか「あ、あたしは……」

 そして、さやかはその場から逃げるように走り去ってしまった。

ほむら「美樹さん、待って下さい!」

 なお、次回の投下分でこの話に一段落をつかせる予定です(でも、終わりというわけではありません)。

改変後でもさやかちゃん安定させるなんて鬼!悪魔!虚淵!

 >>217
 お褒めの言葉を頂き、ありがとうございます。

 でも…、さやかちゃんのことを諦めるのは、まだ早いかもしれませんよ?

 美樹さやかは、たった一人で無数の魔獣達と戦っていた。

さやか「……」

 さやかは両手に剣を持つと、魔獣達の群れに向かっていった。

 そして、凄まじい勢いで二本の剣を振るって魔獣を倒し続けていく。

 だが、無茶な戦い方を続けていた為に魔力の消費も大きく、その上あまりにも多い魔獣の数に圧倒され、次第にさやかは劣勢に追いやられていた。

 やがて、さやかは魔獣達に囲まれてしまっていた。

さやか(……これで、いいんだよ。
    あたしなんか、このまま消えてしまった方が……)

 魔獣達がさやかにトドメを刺そうとしたまさにその時、突如としてさやかの体がリボンによって包まれていき、さやかを囲んでいた魔獣達も大量のマスケット銃からの銃撃によって一掃されていた。

さやか「……ま、マミさん。
    どうし―」

マミ「間一髪だったわね、美樹さん。
   あとは、私に任せて。
   魔力も、あまり残っていないはずよ」

さやか「……」

マミ「一緒に帰りましょう?
   みんなのところに」

さやか「……いやだよ。
    帰りたくない」

マミ「……どうして?」

さやか「あたしは……、悪者になんかなりたくないんだ。
    あたしが最低な人間だってこと、大切な人に知られたくない。
    だからって、自分に都合のいい部分しか伝えないようなずるい自分にもなりたくなくて……」

マミ「……」

さやか「それでも、結局どっちか選ばなくちゃいけないなら……。
    いっそあたし、逃げちゃおうかって……」

マミ「……言いたくないなら、黙っていればいいじゃない」

さやか「!」

マミ「自分に都合のいいことだけしか伝えなくたって、
   ずるい子になったっていいじゃないの。
   ……私だって、ずっとそうしてきたんだから」

さやか「マミさん…?」

マミ「美樹さんは、私のことをどう思ってる?
   もしも、正義の為に戦う真面目な先輩だって思っているなら……。
   それは私が騙してたの」

さやか「……」

マミ「私はね、正義の味方でいたかったわけじゃない。
   ……ただ、誰かと一緒にいたかっただけなの。
   本当の私はただの寂しがりなのに、ずっと嫌われるのが怖くって……。
   あなた達の前では真面目な先輩ぶって、いつもみんなにいい顔してた。
   ……でもね、そんなウソはもうやめるの」

マミ「お願い、美樹さん。
   あなたのためでも、他の誰かのためでもなくて……。
   ……私のために、一緒にいて」

さやか「……」

マミ「あなたが自分を許すつもりがないのなら……。
   私だって、正義の味方なんてやめるわ。
   だから…、私の前からいなくならないで」

さやか「……駄目だよ。
    そんなマミさん、あたしの憧れのマミさんじゃないよ……。
    ……あたしは、正義の味方のマミさんが好きなんだ。
    だからこそ、マミさんの足手まといは絶対に嫌だった。
    なのに…、そんなこと言われちゃったらさ……」

マミ「……」

さやか「……いいの?」

   (あたしは悪い子だよ?
    それでも、マミさんはいいっていうの?)」

マミ「当たり前じゃない」

さやか「……はは、参ったな。
    ここは厳しく言い返さなくちゃいけないところなのにな……」

さやか「……嬉しいんだ。
    こんなあたしを、必要としてくれて」

マミ「……これからの事は、皆でお茶をしながら考えればいいのよ。
   さあ、帰りましょう?」

さやか「ありがとう、マミさん。
    うん、帰るよ。
    ……みんなのところに」

(……こうして、私は今度こそ、大切な人の命をしっかりと繋ぎ止めることが出来ました)

 ちなみに、最後以外はほとんどTDS中巻終盤の展開そのままになっている為に分かりにくくなってしまったので少しだけ説明しておくと、前の世界ではさやかちゃんが完全に魔力切れで魔女化していたところが、少し優しくなった新しい世界ではギリギリで助かったという感じになっています。

 なお、次回の投下はまた来週を予定しています。

今日はとりあえず、2~3レス分だけ投下します。

ほむら「みっ、美樹さん……」

さやか「…あの、ほむら。
    何か、色々迷惑かけちゃってごめ……」

ほむら「美樹さん、ごめんなさい!」

さやか「えっ?」

ほむら「だって私……。
    美樹さんの気持ちも考えないで、余計なことをしちゃったみたいですし…」

さやか「ううん、ほむらは悪くないってば。
    むしろ、あたしの方こそ、感情的になってほむらを叩いたりしちゃってごめんね」

ほむら「いえ、そんなっ!」

さやか「あたしを、許してくれるの?」

ほむら「もちろんです!
    それより、美樹さんも私を許してくれるんですか?」

さやか「うん、もちろんだよ」

ほむら「よ、良かったぁ~!」

マミ「これで、仲直り出来たわね」

さやか「そうですね……。
    ……それじゃあ、ほむら。
    改めて、これからよろしくね!」

ほむら「ええ、こちらこそよろしくお願いしますね。
    美樹さん」

(また仲間に戻れて良かったな、さやか。
 ……マミ、さん)

さやか(あれ、あそこにいるのって……?)

 さやかは遠くで見守っていた杏子に気付いた。

さやか「あっ!」

マミ「どうしたの、美樹さん?」

さやか「いや、あそこに杏子のやつがいたような気がして」

マミ「えっ、佐倉さんが?」

 マミは急いで探してみたが、すでに杏子は姿を消していた。

さやか「……」

次回の投下は今度こそ数日中に行います。

今日もとりあえず2~3レス分だけ投下します。

さやか「あの、マミさん?」

マミ「美樹さん、何かしら?」

さやか「マミさん、次の日曜日って何か予定とかあります?」

マミ「えっと、今のところは特に何もないけど……」

さやか「それじゃあ、あたしとデートしない?」

マミ「えっ、デート!?」

さやか「えっと、デートってのは冗談だけど……。
    実はね、隣町に新しくスイーツの美味しい店が出来たらしくて、マミさんと一緒に行ってみたいかなって思って」

マミ(隣町、かぁ……)

さやか「……えっと、駄目かな?」

マミ「ううん、私は構わないんだけど……。
   暁美さんも誘わなくていいの?」

さやか「あ、ええっと……。
    確かほむらは…、日曜日もちょっと用事があるみたいだから、二人で行っちゃってもいいかなって」

マミ「そう……。
   それなら、今回は二人で行きましょうか。
   暁美さんには…、お土産を買って来てあげればいいわよね」

さやか「うん、そうだね。
    それじゃあ、待ち合わせ場所は……」

マミ「遅くなってごめんなさい。
   美樹さ…、えっ?」

杏子「……ったく。
   そっちから呼び出したくせに、遅れるってどういうことさ……。
   って、マミ!?」

マミ「さ、佐倉さん!?」

杏子「……なっ、何だよ、こんなところに来やがってさ」

マミ「ふふっ、そっかぁ。
   美樹さんたら、最初からそのつもりで私達を……」

杏子「?
   ……もしかして、さやかに言われてここに来たのか?」

マミ「ええ、そうよ」

杏子「チッ、アイツ……」

杏子「……悪いけど、アタシは帰るよ」

マミ「ちょっと待って、佐倉さん。
   せっかく会えたんだし、私と少し話をしていかない?」

杏子「別に、アタシはいまさらアンタと話すことなんて……」

マミ「それじゃあ、私が勝手に話すから、聞いてくれる?」

杏子「……分かったよ」

次回は金曜日の夜です。

今日はいつもよりも少しだけ多めに投下します。

マミ「……私はね、ずっとあなたと友達になりたいと思ってたの」

杏子「ハァ?
   アンタ、いきなり何言って……」

マミ「いいから、最後まで聞いてちょうだい」

杏子「……ああ、分かった」

マミ「……佐倉さん、前に言ってたわよね。
   あなたにとって、私は友達とは違うって。
   もちろん、分かってはいたのよ?
   あなたが私と一緒にいてくれたのは、魔法少女として強くなるために必要だったからってことはね。
   でもね……、私は先輩とか、上下関係のある関係なんかより、あなたとは、友達みたいに仲良くしたかったの」

杏子「……」

マミ「……だけど私には、歩み寄る勇気なんてなかった。
   あの時のことだって、あなたと離れるのが怖くて仕方なかったのに、何もしてあげらなかった。
   でもね……、今なら言えるわ。
   私はもう、正義の味方なんて止めたっていい。
   だから佐倉さん、私のお友達になって欲しいの。
   もちろん私は、もう魔法少女としてのあなたの生き方に口を出すつもりなんてないわ。
   ただ、私と一緒にいてくれる、それだけで十分だから」

杏子「……それは、駄目だ」

マミ「えっ!?」

杏子「……大体さ、アタシ達はもう魔法少女になっちまってるんだ。
   どんなに目を背けようとしたって、この運命から逃れることなんて絶対に出来ない。
   いつだったか、アンタもそう言ってたじゃんか?
   だからさ……、アタシには、そんな風に割り切って考えることなんて出来ないよ」

マミ「……そうよね。
   今さら、仲良くしてだなんて虫が良過ぎるわよね……」

杏子「……待ちなよ。
   まーだアタシの話は終わってないってば。
   つーかさ、人の話は最後まで聞くもんでしょ?」

マミ「……ごめんなさい。
   それで、何かしら?」

杏子「その……、やっぱり、あたしはさ。
   ……あんたと、一緒に戦いたいんだ」

マミ「えっ……!
   今、なんて?」

杏子「だからさー、あたしと……。
   ……もう一度、コンビを組んでくれないかな?」

マミ「さ、佐倉さん……」

マミ「……でも、それはちょっと無理かしら」

杏子「はぁ!?
   何でだよ!!」

マミ「……だって、今の私にはもう二人も魔法少女のお友達がいるんだもの。
   つまり……、あなたが私と組みたいのなら、コンビじゃなくてチームになるわね」

杏子「……ったく。
   相変わらずいちいち細かいっつーか、アンタも意外と意地が悪いよね……」

マミ「うふふ、それはお互い様でしょう?
   あなただって、私を勘違いさせたんだから」

杏子「そのことは、謝るよ」

マミ「それじゃあ、佐倉さんは私達のチームに入ってくれるのよね!
   だったら四人組になるわけだし……、そうねぇ、チーム名はマギカ・カルテットなんてどうかしら?
   あ、どうせならイタリア語でクァルテットの方がいいかな……」

杏子「そういうところも、相変わらずなんだね……」

マミ「佐倉さん、それはどういう意味ぃ!?」

杏子「だーかーらー、あたしもその、えっーと、マギカ・カルテットだっけ?
   それに入るって言ってるの!」

マミ「本当に?」

杏子「ああ、もちろんさ」

マミ「佐倉さん!」

杏子「ああっ、ちょっと!
   いきなり、抱きつかないでよ……」

マミ「だって、だって……。
   あなたとこうしてまた仲直り出来たことが、嬉しくてたまらないんだもの……」

杏子「そっか……」

杏子「……マミさん。
   また……、よろしくね」

マミ「……ええ、佐倉さん。
   こちらこそ、よろしくね!」

ほむら(テレパシー)「(あのー、美樹さん?
            私達、このままここに隠れててもいいんでしょうか……)」

さやか(テレパシー)「(だから大丈夫だってば!
     ていうか、今さらここで出ていくわけにもいかないでしょ?)」

ほむら(テレパシー)「(ま、まぁ。
            確かに、それはその通りですけど……)」

さやか(テレパシー)「(それよりもほむら?
            あんた、次にマミさんと会った時に変なこと言ってばれないように気をつけてよね!)」

ほむら(テレパシー)「(あっ、はい……)」

マミ「……ほらっ、佐倉さん?
   美樹さん達が、あそこにいるわよ」

杏子「いや、だからさ……。
   あたしは別に、一人で大丈夫だって」

マミ「駄目よ。
   またケンカしちゃったら困るし、私がついてないと……、ねっ?」

杏子「この、お節介女……」

マミ「何か言った?」

杏子「……いや、もうアイツとはケンカしないから安心してよって言ったのさ」

マミ「……そう。
   それじゃあ、もう二人を呼んじゃうわね!
   美樹さ~ん、暁美さ~ん!!」

さやか「えっ?」

ほむら「あっ……」

マミ「あのね、美樹さん!
   佐倉さんから、美樹さんに言いたいことがあるらしいの。
   ……ほら、行ってきなさい」

杏子「あっ!」

杏子「あの、そのさ……。
   ……この前は、色々と悪かったね」

さやか「……ううん。
    あたしの方こそ、色々とごめんね」

杏子「な、何だよ……」

さやか「何って、仲直りの握手に決まってるでしょ?」

杏子「いや、そういうのはちょっと恥ずかしいっていうか……」

マミ「佐倉さん?」

杏子「ああ、分かったって!
   ほらよ!!」

マミ「もう……」

杏子「……それと、この前はありがとな」

さやか「えっと、何のことかな?」

杏子「ったく、とぼけやがって……」

マミ「それとね、もう一つみんなに発表があるの!」

ほむら「巴さん、何ですか?」

マミ「今日から、私達のチームに佐倉さんが入ります!
   それでね、新しいメンバーも入ったことだし、新しくチームの名前を考えてみたの!」

さやか「おお~、いいですね!」

杏子「えっ、あれを言うのかよ……」

マミ「……佐倉さん、何か不満でも?」

杏子「いや、何でもない……」

ほむら「それで、チーム名はどんな感じなんですか?」

マミ「私達のチーム名は……。
   マギカ・カルテットよ!!!!」

さやか「おお~、カッコいい!」

杏子「マジかよ……」

(そして、その日から私達四人は、チーム:マギカ・カルテットとして活動していくことになりました)

それと次回からは、ほのぼのな感じでお送りしていく予定です。

今回も2~3レス分だけ投下します。

さやか「スクワルタトーレ!」

ほむら「美樹さん、お疲れ様です!」

さやか「どうよ、あたしの新技は?」

マミ「とっても素敵よ、美樹さん! 」

杏子「ったく、どこがだよ…?」

さやか「…何だよぅ、杏子。
あたしの必殺技に何か問題でもあるっていうの?」

杏子「まぁね。
相変わらず、無駄な動きが多いし、魔力の効率も悪いじゃんか。
あとは…、マミ。
技の名前だけどさ、何でスクワルタトリーチェじゃないんだよ?」

マミ「えっ?」

ほむら「えっと…、どういうことですか?」

杏子「スクワルタトーレだと男性形だから、その技を使ってるさやかも男ってことになっちまうだろ?
大体さ、切り裂き魔って意味の言葉で技名を付けるのもどうかと思うんだけど……」

さやか「杏子、それって本当?」

杏子「ああ」

さやか「ちょっとマミさん、どういうことですか?」

マミ「いや、その…。
ほら、美樹さんってちょっとボーイッシュでカッコいいところがあるじゃない?
だから、つい……」

さやか「ついじゃないですよー、もう!」

ほむら「…そういえば、佐倉さんもイタリア語に詳しいんですね?」

杏子「いや、ほら、ええっと…。
その、最近はマミに技の練習とか名前を付ける作業なんかにつき合わされてるからさ……」

さやか「へぇー、そうなんだ……」

杏子「おい、さやか!
あんた、何ニヤついてんだよ?」

さやか「いやー、別にぃ?」

杏子「ったく…。
…そうだ!
そういやほむらはまだマミに名前を付けてもらってなかっただろ?
マミ、ほむらの分も考えてあげなよ!」

ほむら「あ、えっと、佐倉さん?」

マミ「実はね…、もう考えてあるのよ!」

ほむら「えっ?」

マミ「フィニトラ・フレティアというのはどうかしら?」

ほむら「えっと…、素敵な名前ですね……」

マミ「ちなみに暁美さんの武器は弓矢だから、仕上げの矢という意味で名前を考えてみたんだけど…。
あなたの必殺技にはぴったりじゃない?」

ほむら「え、ええ……」

一応こんな風に“四人の日常”的な話を何かネタが浮かんだら少しずつ投下していく、という感じでやっていく予定です。

こんなのってないよ!あんまりだよ!

ほむら「……あの、美樹さん?」

さやか「何、ほむら?」

ほむら「ちょっと、確認したいことがあるんですけど、
    今日って、美樹さんの誕生日ではないですよね?」

さやか「うん、違うけど……」

ほむら「それじゃあ、誰かお友達に今日が誕生日の人っていたりしませんか?」

さやか「!
    ……急にどうしたのさ?」

ほむら「えっと、あのですね……。
    その、今日は私にとってすごく大切な人の誕生日だったような気がするんですけど、
    どういうわけか、誰の誕生日だったかを思い出すことが全然出来なくって……」

さやか「そっか……」

さやか「……あのさ、ほむら?」

ほむら「何ですか?」

さやか「……もしかして、その大切な人ってさ。
    前にあんたが言ってた、名前を褒めてくれたって人のことじゃないの?」

ほむら「!
    そうかもしれません……」

さやか「やっぱりね。
    ただ、それだとちょっと変なことになるんだよなぁ……」

ほむら「えっ、何がですか?」

さやか「いや、実はさ……。
    あたしもね、今日は大切な人の誕生日だったような気がする、って思ってたんだよね……」

ほむら「それって、上条く……」

さやか「違うってば。
    恭介も大切な友達だけど、その子は、何ていうか、その……」

ほむら「?」

さやか「駄目だ。
    どうしても、思い出せない……」

ほむら「そうですか……」

さやか「よし、決めた!」

ほむら「何をですか?」

さやか「この後、魔獣退治が終わったらさ……。
    マミさんに頼んで、みんなでその人の誕生祝いをしようよ!」

ほむら「えっ?
    でも、急にお祝いって言われても、二人とも混乱するんじゃ……」

さやか「大丈夫。
    杏子とマミさんには、何かそれらしい理由を考えて言っておくからさ。
    それに、その人のことをちゃんと覚えていない時点で申し訳ない気もするけど、何もしないよりはマシじゃない?」

ほむら「えっと、確かにそうかもしれませんけど……」

さやか「決まりだね。
    それじゃあ、とっとと集合場所に向かっちゃいますか!」

ほむら「あっ。
    美樹さん、待って下さい~!」

何とかギリギリで誕生日ネタを使って少しだけ書いてみましたが、時間があれば、もうちょっとしっかりと話を考えたかったような気も……。

それと、もしかしたら時系列的に問題があるかもしれませんが、あくまで今回の分はおまけのようなものということで。

そして、次回はマミ杏組の話(内容は今回の誕生日ネタとは無関係)を近い内に投下する予定です。

>>266
名前を出してあげられなくて、ごめんなさい……

ちなみに、今回は少し時間が遡ります。

マミ「そういえば、佐倉さん。
   今は、住む場所とかってどうしてるの?」

杏子「いや、その……」

マミ「怒らないから、ちゃんと答えて」

杏子「適当にホテルとかに泊まってる」

マミ「……その宿泊代は、どうやって?」

杏子「……」

マミ「はぁ……」

マミ「……ねぇ、佐倉さん?」

杏子「な、何だよ……」

マミ「私と一緒に、暮らしてみない?」

杏子「……」

マミ「……あら、佐倉さん。
何か、忘れてない?」

杏子「ん?」

マミ「お家に入ったら、何か言うことがあるでしょ?」

杏子「はぁ……。
おじゃまします」

マミ「もう!
そうじゃないでしょ?」

杏子「じゃあ、何さ?」

マミ「ええっと、その……。
ここはもう、あなたの家でもあるんだから……」

杏子「マミ……。
そっか、そうだったね。
……ただいま」

マミ「……お帰り、佐倉さん」

杏子「マミ」

マミ「なぁに、佐倉さん?」

杏子「あたし、風呂に入りたいんだけどいい?」

マミ「ええ、そうね。
そうしましょうか……」

杏子「?」

マミ「それじゃあ、用意するから少し待っててね」

杏子「ああ、分かった……」

(数分後)

マミ「お待たせ!
じゃあ、さっさと入っちゃいましょうか」

杏子「……ちょっと待ってよ。
まさかあんたも一緒に入るつもりじゃないよね?」

マミ「もちろん、そのつもりだけど」

杏子「何で?」

マミ「何でって、二人で入った方が節約になるでしょう?
それに、昔はよく二人で入ってたじゃない」

杏子「まぁ、確かにそうだったけどさ……」

マミ「それにあなた、髪のお手入れもちゃんと出来てないみたいだし、久しぶりに私が洗ってあげようと思って」

杏子「……」

マミ「……もしかして、私と一緒に入るのはもう嫌だった?」

杏子「……嫌じゃ、ない」

マミ「それじゃあ、早く入りましょう?」

杏子「……うん」

マミ「……やっぱり、髪のお手入れがちゃんと出来てなかったわね。
女の子なんだから、そういうところもきちんとしなくちゃ駄目よ?」

杏子「……」

マミ「佐倉さん、私の話をちゃんと聞いてるの?」

杏子「……マミ」

マミ「なぁに?」

杏子「一つ、言わせてもらうよ……。
何だよ、これぇ!」


マミ「何って、何のことかしら?」

杏子「いや、だからー!
このパジャマだよ、パジャマ!」

マミ「ああ、それね。
あなたに似合うと思って、さっき買ってきた物よ。
やっぱり、私の目に狂いは無かったようね!」

杏子「ドヤ顔で言ってんじゃねぇよ!
それに、あたしにこんなの似合うわけないじゃん!」

マミ「あら、そんなこと無いわよ?
良く似合ってるし、とっても可愛いじゃない!」

杏子「なっ……。
と、とにかく、あたしはこんなの着ないからな!」

マミ「でも、あなたのパジャマはそれしかないわよ?」

杏子「こんなの着させられるくらいなら、下着だけで寝てやるよ!」

マミ「あなた、何言ってるの?
女の子が、そんなはしたない真似しちゃ駄目でしょう!」

杏子「あたし一人の時は、結構やってたけど」

マミ「はぁ、そんなことをしてたなんて……。
でも、もうそんなの私が許しません!
だから、これからあなたの服は、私が選んだものを着てもらうことにするわ」

杏子「ハァ!?
どうして、そんな……」

マミ「いい、これは先輩命令よ。
分かった?」

杏子「……ちっ、分かったよ」

杏子「……で、あたし用の布団は?」

マミ「今はクリーニング中よ」

杏子「じゃあ、あたしはどこで寝ればいいのさ?」

マミ「もちろん、私と一緒にこのベッドで寝てもらうわ」

杏子「ハァ!?
あんた、何言ってんのさ?」

マミ「大きいベッドだし、私とあなたの二人くらいなら十分な広さだと思うけど……」

杏子「いや、そういうことじゃなくてさぁ……」

マミ「……佐倉さんは、私と一緒に寝るのは嫌?」

杏子「別に、嫌じゃないけど……」

マミ「それじゃあ、問題無いわよね!」

杏子「はぁ……」

イメージ画像:http://uploda.cc/img/img52596e01a9c08.jpg

杏子「これは……」

マミ「佐倉さん、どうしたの?
あっ……」


杏子「……まだ、取ってあったのかよ。
とっくに捨てちまったんだろうと思ってたけどな……」

マミ「……何言ってるのよ。
捨てられるわけ、無いじゃない……」

杏子「……何でだよ?
あんたに散々逆らった、不肖の弟子から貰ったものなんか、普通は捨てるだろ……」

マミ「そんなこと無いわ!
だって、大切な友達から初めてプレゼントされた物ですもの……」

杏子「友達、か……」

マミ「えっ?」

杏子「……あたしは、あんたのこと……」

マミ「……何?」

杏子「……何でもない。
さぁ、さっさと寝るよ!」

マミ「う、うん……」

(前から本当の家族みたいに思ってた、なんて、やっぱり恥ずかしくて言えないよ……)

何故かやたらと規制がかかるので(新しい仕様?)、書き溜め分を投下しているだけなのに結構時間がかかってしまいました……

あと、次もこの続きを近い内に投下予定です。


このほのぼの路線でいいから、叛逆での内容がとか気にせず続けてほしいわ
改変後シリアスストーリーみたいな展開かと最初期待してたのは確かだけど

マミ「ねぇ、佐倉さん?」

杏子「どうした?」

マミ「出来れば、今日も私と一緒に寝てくれないかしら……?」

杏子「何でさ?
もう布団もあるし、わざわざ二人で寝る必要無いじゃん」

マミ「ほら、あなたもベッドを使いたいかなって……」

杏子「別にあたしは布団で構わないけど」

マミ「ええっと、その……」

杏子「……もしかしてアンタ、一人で寝るのが恐いのか?」

マミ「……」

杏子「そういや昨日、心霊番組を見てめっちゃビビってたよな……?
ははーん、そういうことか……」

マミ「ち、違うわよ!」

杏子「じゃあ、一人でも寝れるよな?」

マミ「えっ……!」

杏子「冗談だから、そんな顔すんなよ。
ったく、仕方ないねぇ。
いいよ、今日は一緒に寝てやるよ……」

マミ「……ありがとう、佐倉さん」

杏子「ていうかさ、恐いんなら最初から見なきゃいいじゃんか……」

マミ「それは……。
その、恐いもの見たさっていうか、こうなるって分かってても、つい見たくなっちゃうものなのよ……」

杏子「そういうもんかねぇ……。
あと、アンタも意外と恐がりなんだね」

マミ「そうかしら?
これくらい、普通じゃないの?」

杏子「だってアタシ達は、普段から魔獣のやつらと戦ってんじゃん。
あれだって、幽霊とかと大して変わらないんじゃない?」

マミ「違うわよ!
魔獣は私達の手で倒すことが出来るけど、お化けは倒せるかどうかは分からないし……」

杏子「まぁ、そうだけどさ……」

マミ「それに、この前美樹さんもお化けが恐いって言ってたわよ」

杏子「マジで?」

マミ「ええ」

杏子「そいつは、いいことを聞けたな」

マミ「えっ?」

杏子「今度、幽霊のふりでもして、さやかのやつをビビらしてやろうかな」

マミ「そんなことしちゃ駄目よ!」

杏子「何で?
別にいいじゃん。
ちょっとおどかすだけだってば」

マミ「だーめ!
人が嫌がることは、例え友達相手でもしちゃいけません!」

杏子「でも、あいつも結構アタシにいたずらとかしてくるけど」

マミ「だとしても、駄目なものは駄目よ。
分かった?」

杏子「ちっ、分かったよ……」

次は、水曜あたりに投下予定です。

>>281
そう言って頂けるのは大変嬉しいのですが、叛逆を見てしまった後だと、どうしても何らかの影響を受けてしまうと思うので……
(もしも全滅エンドとかになってたら、悲しくなってもう何も書けなくなりそうですし)
それと、ここではアニメ本編と逆の展開(鬱展開と見せかけて、ほのぼのストーリーに)をしたかったのですが、そのせいでジャンルをシリアスものと勘違いさせてしまったことについては、すみませんでした。

 暁美ほむらと美樹さやかは、二人で魔獣達と戦っていた。

さやか「ふぅー、これで終わりっと!
いやー、今回はあたし達だけでも倒せちゃったし、わざわざマミさんと杏子を呼ばなくても良かったかもねー」

ほむら「ええ、そうですね……」

さやか「それじゃあ、どうしようか?
一応、マミさんと杏子がここに来るまで待っててあげた方がいいかな?」

ほむら「はい、その方がいいと思います」

さやか「……ったく、あんたはいつまであたしに敬語を使ってんの?
同級生だし、しかも同じ魔法少女仲間なんだから、別にタメ語でいいってば!」

ほむら「でも、私……。
そういうくだけた話し方って、あんまり慣れてなくって……」

さやか「まぁ、確かにほむらは、そういうのって似合わなそうだしね。
でも、ほむらみたいに大人しそうな子があえて使うってのも、結構ありだと思うんだけどなー」

ほむら「えっ、そうですか……?」

さやか「うん。
いわゆる、ギャップ萌えってやつ?」

ほむら「なるほど……」

さやか「あっ、そんなに真面目に考えなくってもいいってば!
まぁ、気が向いたら使うくらいでいいと思うよ」

ほむら「あっ、はい……」

さやか「……ねぇ、ほむら」

ほむら「どうしたんですか?
美樹さん」

さやか「ちょっと、あんたに頼みたいことがあるんだよね……」

ほむら「何でしょうか?」

さやか「そのリボン、明日一日だけ貸してくれたりしないかなー、って……」

 さやかは、ほむらが髪を留める為に使っている赤いリボンを指して言った。

ほむら「このリボンを、ですか……?」

さやか「駄目、かな……?」

ほむら「別に構わないですけど、理由を教えてもらってもいいですか?」

さやか「ええっと、その……。
前にも話したけど、何と言うか、そのリボンを見てるとさ。
懐かしい気分になるっていうか、何だか勇気が湧いてくるような気がしてきてさ……」

ほむら「……勇気、ですか?」

さやか「うん。
それでね、あたしさ、明日はちょっと大事な用事があるんだけど、そのことで、実は少し緊張しちゃってるんだよね。
でも、そのリボンを持ってたら、その強さを分けて貰えるっていうか、何となく、自信を持てるような気がして……」

ほむら「……」

さやか「あっ、何言ってんのか全然分かんないよね。
ごめん、忘れて……」

ほむら「……いえ、大丈夫です。
分かりました、そういうことなら……」

さやか「……いいの?」

ほむら「ええ、どうぞ」

 自分の髪からリボンを外し、さやかに渡そうとしたほむらだったが、その直後に危険を察知し、意識をそちらの方に向ける。

さやか「どうしたの?
ほむ……」

 そしてほむらは、まだ一体だけ生き残っていた魔獣が、さやかを攻撃しようと狙っていることに気付いた。

ほむら「美樹さん、危ない!」

 さやかをかばって飛び出したほむらに、魔獣による容赦のない攻撃が放たれた。

明日か、明後日のどちらかに続きを投下予定です。

さやか「ほむら!」

 魔獣によって感情エネルギーを吸い取られてしまい、棒立ち状態のままうなだれたほむらは、まだ限界状態ではないものの、ソウルジェムもかなり濁ってしまっていた。

さやか「よくも、あたしの仲間をこんな目に合わせてくれたわね……。
絶対に、許さない!」

 一方、ほむらの感情エネルギーを吸い取ったその魔獣は、本来の大きさの数倍までに巨大化していた。
 
さやか「ハッ!」

 さやかは剣を何本か作り出すと、巨大化した魔獣に向かって投げつけながら、自身の方へと来るように誘導したが、
その攻撃では与えることの出来たダメージが少なかったのか、その魔獣はほとんど気にも留めていない様子で近付いてきていた。

さやか(こんな小手先の技なんかじゃ全然効き目が無いみたい…。
本当なら、杏子やマミさんが来るまで待った方がいいんだろうけど、今すぐに仕留めないと、ほむらが……)
 
さやか(よし。
こうなったら、修行中のあの技を使うしかないかな?
でも……)

 ふと、さやかが自分のソウルジェムの様子を確認してみると、ほむらのものよりもマシであるとはいえ、かなり魔力を消費している状態だった。
 
さやか(今、ここで大技を使ってしまったら、あたしだって無事でいられる保証なんてないよね……。
……でも、大切な“友達”を見捨てるなんてこと、もう二度としたくない!)

 さやかは剣を構えると、必殺技を放つ為の魔力を溜め始めた。

 そして、魔力を溜め終わったちょうどその時、二人の魔法少女がその場に到着していた。

杏子「さやか、ほむら、大丈夫か!?」

さやか(よし、間に合ったみたいだね……。
マミさん、杏子……。
二人とも、後のことは頼んだよ!)
 
マミ「美樹さん、あなたまさか…!」

さやか「行くよ……。
スパーク・エッジ!」

 美樹さやかは、三人の魔法少女に見守られながら、“最後の一撃”を放った。

さやか(あれ、あたし……?)

 “美樹さやか”が目を覚ましたのは、眩しい光に包まれた世界だった。

さやか(そっか。
あたし、もう……)

???(久しぶりだね、さやかちゃん)

さやか(えっ?
あなたは……!)

???(やっぱり、私のことは覚えてない?)

さやか(……いや、全部思い出したよ。
というか、何で今まで忘れちゃってたんだろ……?)

???(……それは、仕方ないよ)

さやか(……あたし達のこと、ずっと見守ってくれてたんだね)

???(うん)

さやか(それじゃあ、さっさとあたしも……)

???(待って、さやかちゃん)

さやか(どうしたの?)

???(さやかちゃんには、どうしても見せてあげたい……。
いや、見せなくちゃいけない“未来”があるの)

さやか(えっ、何?)

???(ちょっとだけ、待っててね!)

さやか(……?)

“暁美ほむら”は、どこかの場所で意識を取り戻していた。

ほむら(ここは……?)
 
 そこは、かつてほむらが巡ってきたいくつかの時間軸で美樹さやかが魔女化し、
さらには、その事件を引き金に起こってしまったある悲劇の舞台となった場所と同じ、深夜の駅のホームだった。

杏子「さやかは?
おい、さやかはどうした!?」

 佐倉杏子は、突然自分達の目の前から消え去ってしまったさやかの安否を尋ねた。

マミ「逝ってしまったわ……。
“円環の理”に導かれて……」
 
 巴マミが、悲しげな表情で杏子の問いに答える。

マミ「美樹さん……。
さっきのあの一撃に、全ての力を使ってしまったのね」

杏子「バカヤロウ……。
惚れた男の為だからって、自分が消えちまってどうするんだよ……」
 
 自らの拳を柱に叩きつけながら、杏子がつぶやいた。

杏子「バカ……。
やっと、友達になれたのに……」

マミ「それが魔法少女の運命よ。
この力を手に入れた時から、分かっていたはずでしょう?」
 
 ほむらは、自分の左手に握られていた真っ赤なリボンを見つめていた。

マミ「希望を求めた因果がこの世に呪いをもたらす前に、私達はああやって、消え去るしかないのよ……」

ほむら「“まどか”……」

 ほむらはそうつぶやくと、リボンを胸に抱きしめて泣き出した。

杏子「ん……?」

マミ「暁美さん……?
“まどか”って……」
 
杏子「誰だよ?」

キュゥべえ「ここ最近の君は、まるで人が変わったようになってしまったね」

ほむら「……“以前”の私は、どうだったのかしら?」

キュゥべえ「まず、魔法少女としての戦闘に慣れていなかったし、もっと弱々しい性格だったように思う」

ほむら「……なるほど」

キュゥべえ「マミや杏子とも会ってないそうだね。
二人とも、心配してたよ」

ほむら「……そう」

キュゥべえ「そういえば、君が興味深い話をしていたと聞いているよ。
出来れば、僕にも教えてくれるかい?」

ほむら「……確かに、まだあなたには話してなかったわね。
それじゃあ教えてあげるわ。
自分の存在と引き換えに、全ての魔法少女を救おうとしてくれてた、一人の“少女”の話を」

 一応、この後に“アニメ本編に続く”という感じの終わり方にしたつもりですが、当初の予定とは少し違った形の終わり方になっています。

 というのも、実は同時進行で書いていた別のSSと繋げる予定だったのですが、私自身の不手際(HTML化までの締め切り時間の確認ミス)によって、そちらの方をエタらせてしまった為、急遽、このような終わり方にしました。

 それと、とりあえずこれでこの話は終了ですが、叛逆鑑賞後に何か面白いアイディアが浮かべばまだ続けるかもしれないので、このスレについては少しの間だけ残しておこうと思ってます。

と言っても、未見の方にはちょっと意味が分かりにくい内容かもしれませんが、一応ご注意下さい。

それでは、少しだけですが投下します。

杏子「……悪い、さやか。
ちょっと先に帰っててくれない?」

さやか「えっ?
別にいいけど、どうしたの?」

杏子「ちょっと菓子でも買おうと思ってさ。
心配しなくても、すぐにあたしも帰るからさ」

さやか「あっ、なんだ。
分かった、そうするね」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

なぎさ「……マミ、今日はあのチーズが食べたいのです」

マミ「あなたよりもずっとお姉さんなんだし、呼び捨てにするのはやめて欲しいんだけどなー。
……まぁ、いっか。
それで、あの一番上の棚にあるやつが欲しいの?」

なぎさ「ええ、そうなのです」

マミ「あれ、結構高いやつじゃない」

なぎさ「……駄目なのですか?」

マミ「……分かったわ、今回は特別だからね。
今取ってきてあげるから、ちょっと待ってて」

なぎさ「はい、急ぐのですよ」

マミ「……もう。
あら、ちょっとこれ、思ったよりも高さが足りな……、きゃあ!」

なぎさ「!」

杏子「大丈夫か、マミ!?」

マミ「えっ、あっ……、うん。
……ありがとう、佐倉さん」

杏子「いや、これくらい気にしなくていいよ」

なぎさ「マミ、大丈夫なのですか?」

マミ「……ええ、私は大丈夫」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

マミ「……さっきは、ありがとう」

杏子「だから、そんなに気にしなくていいって……」

マミ(あっ、そういえば……!)



杏子「……そういやあんた、何であたしの名前を知ってたんだ?」
マミ「……あなたは、どうして私の名前を知っていたのかしら?」





マミ・杏子「…………えっ?」







ほむら「………………」



おわり?

というわけで、今度こそ“この話”に関しては終わりにしたいと思います。

ただ、もしかしたら別のスレでこの続き的なものというか、関連した話を書くかもしれません。

あと、HTML化依頼については、ちょっと明日までお待ち下さい。

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