照「アルバイト………?」(292)

ふと思いついたから書いてみただけの、すぐ終わる単発ネタの予定。
大学生になった照がバイトを初めようという話です。
インハイ団体戦の順位は白糸台・清澄・千里山・臨海で白糸台が三連覇を成し遂げてます。
個人戦の成績は宮永照・咲のワンツーフィニッシュ、3位ガイトさん、4位荒川憩です。
インターハイとは宮永照のためにあった。
照と咲の仲は色々あった後で修復済みですが、咲は卒業まで長野で照は東京の大学へ進学してます。
こんな感じで補完オナシャス。

作中に出てくるお店は現実の団体とは関係ありませんが、どこかの世界線には存在するかもしれません。
元ネタ分かる人は照達がそこの制服を着てるって妄想出来てより美味しいかも?

照「お母さん、小遣いちょうだい」

母「この前にあげたばかりでしょ。あれはどうしたの」

照「咲に会いに行くのに全部使い切った」

母「休みの日に家にいないとは思ってたけどわざわざ長野まで行ってたのね」

照「この前行った時は咲の友達の原村和と片岡優希と須賀京太郎とも遊んだ、楽しかった」

母「咲の友達ってみんな高校二年生よね。
  あなたくらいの年だと年下の子と遊んでても楽しくないんじゃない?」

照「そんな事はない。原村和は私にお菓子くれるから好き」

母「餌付けされてるじゃないの。あの子もなかなかやるわね……」

照「片岡優希は私と会った時は泣きそうになったけど頭なでて上げたら落ち着いた。可愛かった」

母「咲の学校以外の子は守りが硬かったからその子ばっかり狙ってたんだっけ? 可哀想に……」

照「須賀京太郎はのど乾いてたらお茶持ってきてくれるし、さり気なくハンカチとか渡してくれる気の利く子。
  白糸台でマネージャーやってくれたら菫の負担が減って良かったのに……」

母「いい加減咲と照どっちにするかはっきりしなさいよあの糞ガキ……!」

照「何か言った?」

母「いいえ何も。それより、いつでもどこでも何もかも弘世さんに頼ってるんじゃありません」

照「私は菫がいないと生きていけない……」

母「咲に甘えてばかりだからわざわざ東京に連れてきたのにこれじゃ意味ないじゃない……
  とにかく、お小遣いはこれ以上あげられません。
  貴女だってもう大学生になったんだしバイトくらいしなさい」

照「知らない人の前に出るの緊張する」

母「雑誌のインタビュー受ける時の営業スマイルで切り抜けなさい」

照「ニコッ」(営業スマイル

母「そうよその調子。じゃあ明日から探してみなさい」

照「分かった」(営業スマイル

母「分かったからそれはもういい」

照(菫に頼んで一緒の所に行こう。菫が一緒ならフォローしてくれる)

母(照より先に弘世さんに連絡しておかないとねぇ)

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翌日・国立市のとある大学

照「すみれー」

菫「照か。どうかしたか?」

照「一緒にバイトをしよう」

菫「断る」

照「え……」

菫「この世の終わりみたいな顔をするな。
  お前の母親から電話があったぞ。
  照に社会勉強をさせたいから手助けするなとな」

照「そんな……」

菫(そういう寂しそうな目で見つめられるとつい手を貸したくなってしまうが……
  いやいやこれも照のためだ! 新道寺の先鋒のように鋼鉄の意志を持つんだ弘世菫!)

菫「しょうがないな。直接サポートは出来ないが私の知り合いが働いてるバイト先を紹介してやろう」

菫(おいいいっ! 私のメンタルは阿知賀の監督並かあっ!)

照「菫、ありがとう……」ニパァ

菫(ああでも営業スマイルじゃないその笑顔を見られるだけで私は満足だよ)

トゥルル トゥルル ガチャ

智葉『お電話ありがとうございます。喫茶ファミーユアルバイトの辻垣内と申します』

照「ええええっと、あの、あああアルバイトの募集をしてると知り合いから聞いてお電話させて頂いたのですが……」

智葉『え? 何て言いました? 声が遠くて聞こえないのですが』

照(あうう、緊張して変な声出しちゃったからなんか怒ってるっぽい……)

智葉『もしかしてアルバイト希望ですか?』

照「あ、はい。弘世菫って人がここに電話すれば知り合いが仲介してくれるって」

智葉『弘世さんの知り合いでしたか。と言うことは彼女と同じ大学の生徒さんですね』

照「はい」

智葉『そうですかー。実は私もなんですよ。
   高校の時にも顔を合わせた事はあったですが話をするようになったのは大学に入ってからです』

照「そうですか。菫がお世話になっております」

智葉『いえいえこちらこそ。それではお名前を伺ってもよろしいでしょうか』

照「宮永照です」

智葉『はい、みーやーなーがーてるさんっと……宮永照!?』

照「わっ」

照(いきなり大きな声出さないでよ……)

智葉『ああっとごめん。いきなり有名人の名前が出てきてびっくりしたもんだから』

照(あ、なんかタメ口になった)

智葉『私、去年のインハイで団体と個人で貴方と当たった辻垣内智葉って言うんだが覚えてない?』

照「えーっと。臨海の中で一人だけ浮いてた日本人?」

智葉『浮いてたって……確かにあの面子の中だと普通過ぎて逆に浮いてたけど』

照「でも決勝の先鋒戦は私の一人浮きだった」ドヤァ

智葉『上手いこと言ってさり気なく自己アピールのつもりだろうが、自慢したいだけなら他でやってくれないかな』

照「ごめんなさい許して下さい知らない人ばかりの所で働くの怖いんで雇って下さいお願いします」

智葉『インハイ三連覇のチャンピオンから怖いなんて言葉が出てくるとは……
   とりあえずオーナーには私から話を通しておくから、明後日にこの店まで出向いてくれないか』
照「迷いそうで怖い・・・」

智葉(駅前のショッピングモールなのにどう迷えと……?)

智葉『一応弘世さんにでも連れてきてもらいなさい』

照「はい」

智葉(本当にあのチャンピオンと同一人物なのか? 信じられん)

二日後・喫茶ファミーユ 事務所

智葉「話をしたら即採用と言われたよ」

照「やったっ」

菫「紹介しといてあれだが、通常時の照はまるでダメダメだぞ。
面接とかしなくて良かったのか」

智葉「確かに対応した瞬間からダメダメオーラ全開だったがな。
オーナーが一つ目の店をやり始めた時にも相当ダメダメな店員がいたらしい。
それが懐かしくなったから採用だとさ」

菫「そんなんでよく経営が傾かないもんだな……」

智葉「うちらと同じ大学の経済学部OBらしいから頭は良いんだろう」

照「ここがこれから私が働く職場……洋館みたいで綺麗……」ボケー

菫「あんなのが現役にいる大学だが?」

智葉「大丈夫だろ、多分。それより私はインハイ三連覇の絶対王者の素顔があんなのだった事の方が驚きだよ」

菫「うん、みんなそう言う」

照(菫と辻垣内さん仲良さそうだなぁ……でも菫は渡さない)

そして照の出勤初日・・・

智葉「予想通りだけど料理は出来ないとの事なのでホールに出てもらいます」

照「いらっしゃいませ! お客様は神様です!」(営業スマイル

菫「とりあえず最低限の愛想だけは振りまけるようにしてきた」

智葉「こっちで研修をするつもりだったけどわざわざどうも」

智葉(私はこの営業スマイルと黙々と連荘をする卓の前での宮永照しか知らなかったが……
   まあいくらダメダメと言っても配膳くらいは出来るだろう)

智葉「じゃあ制服に着替えて貰うので更衣室へ行って下さい」

照「制服! あの可愛いやつ!」

菫(そういえばここって西洋の屋敷をイメージした店内に併せてメイド服みたいな制服なんだよな……
  ……はっ!? 照のメイド服姿だと!? 目に焼き付けておかねば……!)

智葉「ここの制服は着替えるのが難しいので先輩に教えてもらうように」

照「はい。わーい可愛い制服ー」テクテクテク

菫「そういえばここには他にもウチの大学の生徒がいたよな」

智葉「ああ、宮永照にとっても馴染みのある人物だよ」

更衣室

コンコン

照「失礼します」

?「あ、ガイトちゃんが言っとった新人さんやな。入ってえーでー」

ガチャ

照「こんにちは」

?「こんにちは……って、あんた宮永照やんか!」

照「そういう貴女は千里山の……きよみずでら?」

竜華「清水谷やっ! ウチを京都モンみたいに言うんやめい!
   ウチは大阪に生まれた事に誇り持っとうしあちらさんにも失礼やろ!」

照「ご、ごめんなさい」

照(よくしゃべる人だなぁ。しかもまくし立ててくるから怖い……)

竜華「まあええけど。ていうか宮永さんが来るんやったらガイトちゃんも言ってくれたら良かったのにー。
   扉が開いたらいきなりチャンピオンとかびっくりしたわ」

照「人を怪物みたいに言わないで欲しい……傷付く」ションボリ

竜華「ご、ごめんごめんって。いきなり知っとう人と鉢合わせしてびっくりーみたいな。
   そういうニュアンスやから」

竜華(なんやこの子、ホンマにあの宮永照なんか……?)

照「それならいいけど。それよりこっちこそびっくりした。
  北大阪代表の大将がなんで東京の喫茶店でバイトしてるの」

竜華「怜と二人暮らししたくて……」

照「ん?」

竜華「いやほら東京に出てくる事で大阪の良さが再発見出来るかなーとか思って」

照「なるほど。私もたまに長野に帰ると懐かしい。そして咲が可愛い」

竜華(チャンピオンの妹さんかー。あの子と白糸台の大将には決勝戦でボコボコにされてもたなぁ。
   まああの子らのおかげで新しい何かが掴めた気がするけど)

竜華「それでガイトちゃんからはどっちで入ってくれって言われたん?」

照「ガイトちゃん? ああ、あの臨海の。
料理が出来ないからホールに入れって」

竜華「そうなんか。ここの制服は着るん難しいから最初のうちは手伝ったるわ」

照「ありがとう」

竜華(なんか聞き分けの良い子供みたいやなぁ)

着替えシーンはカット。
照のウエストの細さに竜華がヤキモチ焼いて脇腹くすぐるとかあったりした。

ホール

竜華「じゃあ最初はウチが横に付いとくから、オーダー受けてキッチンの人に伝えるまでやってみい」

照「が、頑張ってみる」カチコチ

竜華「って今はちょうどお昼時が終わったばかりやからお客さんおらへんな」

菫(可愛い! メイド服姿の照ちょーCawaii!!)

菫「よ、良かったら私が練習相手になってやるぞ?」

竜華「弘世さんもおったんか。ならちょうどええな」

菫(さり気なく照に接客してもらう私マジ策士)

照「すみれー」トテトテ

竜華「すみれー、やない! お客様や!」

照「そ、そうだった。お客様、ご注文は何になさいますか?」

菫「そうだな。今日は昼ごはんを食べてないし何か軽食を……」

菫(やたらと卵料理推しだな……ケーキと材料が共有出来るからか?
  卵サンドにフレンチトーストにキッシュにオムライス……オムライスか)

菫「このオムライスってケチャップかデミグラスソースのどっちなんだ?」

照「え、えーっと」

照、メニューの欄を確認する。

照「どちらも選べるようになっております」

菫「そうか。ケチャップを選ぶと、その、あれだ。仕上げはウエイトレスがやってくれるのか?」

照「え? え? ええと……」アタフタ

竜華「すいません、当店ではお客様に美味しく召し上がって貰いたいのでキッチンの者が責任を持って調理しております」

照「だ、そうです」

菫「そ、そうか。照、こういうお客さんもいるから上手くあしらえるようにしておけよ」

照「う、うん」

竜華「こんな格好やからよー勘違いされるけど、ここは西洋の館みたいな雰囲気をコンセプトにした普通の喫茶店やから。
   たまにアキバやオタロードにあるような店と勘違いした客がおるから困るわ。
   こっちからは強く言えんのをえーことに無理矢理意見通そうとしてくるし」

照「こっちの弱みにつけ込むとは……嫌な奴だな」

菫「そ、そうだな。とりあえずデミグラスソースのオムライスをストレートの紅茶セットで頼む」

照「かしこまりました」

菫(早まらなくて良かったああああ!)

キッチン前

竜華「で、オーダーの通し方なんやけどな。
   ウチでデミグラスソース使ってるんはオムライスだけやから、デミって言ったら自動的にオムライスのデミグラスソースになる。
   そんで何も入れへん珈琲はブラックで紅茶はストレートやから『デミのストレート』って言ったら通る。分かった?」

照「???」

竜華「まぁピーク中にいちいち全部読み上げてられんから略してるだけやしなぁ。
   分からんうちは普通にその通りに言うたらええから」

照「分かった。オムライスのデミグラスソースをストレートティーのセットでお願いしまーす!」

智葉「りょうかーい!」

竜華「言った後で伝票をここに止めておくんも忘れんようにな。キッチンの人が再確認する時に必要やから」

照「分かった。ふぅ、結構覚える事あって難しい……」

竜華「ウチも最初の一ヶ月くらいは全然やったから、初めはミスさえせーへんかったらええよ」

照「白糸台と同じくらいの名門校を纏めあげてた千里山の部長……
  つまり菫みたいな人がやっても慣れるのに一ヶ月掛かる? 
  私に出来るか不安になってきた……」

竜華「いやいやウチだって初めてのバイトやったし部長も何も関係ないって」

竜華(ていうか宮永さんの判断基準は全部弘世さんなんやろか?)

そんなこんなで研修を重ねっていった照でありましたが……

国立市のとある大学

照「皿を割った枚数が歴代二位になった。インハイ三連覇の絶対王者としては一位を狙わなければ……!」

菫「何を言っとるんだお前は」つむじチョップ

照「痛い……」

竜華「あはは、でも宮永さんの営業スマイルは中々好評なんよ?」

菫「そうなのか? 私は褒めてあげた時に見せる恥じらいを含んだ笑顔の方が好きなんだが」

智葉「なんだそのオッサンみたいな趣味は」

菫「しっ失礼なっ」

怜「照だけに照れ笑いが最高って?」

竜華「何つまらんことゆーとんねん!」わけめチョップ

怜「や、やめてーな。ウチ病弱やねんからそんなに強く殴られたら死んでまうわ」

竜華「突っ込みくらい受け止められんで何が大阪人やねん! それに病弱アピールやめい!」

照「大丈夫? 怜ちゃん」

怜「アカンわ、照ちゃん」

智葉(なんでちゃん付け?)

菫(園城寺怜、いつの間に照とそんなに仲良くなってたんだ……)

竜華(てるやん、油断ならない子……!)

智葉「まあインハイ三連覇の有名人で清楚系の美人と来たもんだから客寄せにはなってるよ」

竜華「そのぶん一時期は変な客も増えたけど、全部てるやんが追い返してるもんな」

照「営業妨害する邪魔者は吹き飛ばす」ギュインギュイン

菫「武力行使かい…… まあすぐ辞めさせられないか心配だったが何とか続いてて良かったよ」

怜「照ちゃんが働いとるんやったらウチもやってみたいなぁ」

竜華「ウチの稼ぎだけじゃ不安なん!?ならウチがもっと頑張るから怜は勉強頑張ってーな!」

智葉「それ完全にヒモの貢ぐ駄目な女の考え方だぞ」

菫(ギクッ)

竜華「ヒモちゃうわ! これがウチの幸せなんや!」

智葉「まあ考え方は人それぞれではあるが」

菫「うんうん、そのとおりだ」

怜『とまあ、こんな感じで病弱アピールすんな言う癖にこんな時は過保護なんやけどどうしたらええかな』

智葉『そういう事は私に聞かないで自分で考えて貰えるかな。
   というかこうやって心に話しかけてくるのは一巡先を見るみたいな特技と同じなのか?』

怜『準決勝で新道寺相手にやってみて以来、なんか使えるようになった。
  決勝のガイトちゃんは聞いてくれてる割になんもしてくれへんかったけど』

智葉『私がいくら無様に負けようと臨海のメンバーなら逆転してくれると信じてたからな。
   団体戦でチャンピオンに挑める最初で最後の機会に全力を尽くす事しか頭になかった。
   どんな手段を用いようとチャンピオンを止めようとした怜の戦術も間違っていなかったとは思うがね』

怜『……ウチは一巡先が見えるだけでエースになった三軍選手やったから。
  みんなを信じてるとか自分の力を試したいとか偉そうな事言う前に何をしてでも勝たなあかんかったんや』

智葉『それが千里山と臨海の順位を決める結果になったわけだからな。
   自信を持って良いと思うし誰も怜を悪く思ったりしなかっただろうさ』

怜『……ありがとさん』

智葉(と、自分に言い聞かせてる部分もあるがね。
   そうだよ、間違っていなかったのだよ。怜も、メガンもな。
   彼女は尊敬すべきチームメイトだった。
   今は海の向こうの母国へ帰ってしまったが、また会いたいな)

智葉「まあ縁あってインターハイの決勝でしのぎを削ったメンバーがこうして集まったわけだ。
   折角だから菫や怜も私達と一緒の所でバイトしてみてはどうだろうと私は思うわけだが」

竜華「ガイトちゃん!?」

怜「せやろー。さっすがガイトちゃんは話が分かる人やなー」

怜『ナイスやでガイトちゃん。でもさっきは自分で考えろとか言わへんかったか?』

智葉『まあ人の考えなんてすぐ変わるもんだろう』

怜『よー分かんけどそういう事にしとくわ』

照「菫と一緒か、私もその方が良いな」

菫「い、いや私は照の母親から止められてるから……」

菫(お義母さんの心証を悪くするのは得策ではないからな)

照「言わなきゃバレない。それより私と一緒なのは嫌……?」

菫「……ま、まあバレなきゃオッケーだな」

菫(ああ、相変わらずの豆腐メンタル)

智葉「まあ菫については余裕で大丈夫だろうし、怜も照以上にひどいなんて事は無いだろうから即採用だろう」

照「ひどい言われよう……」

菫「否定はできんな」

竜華「ウチの怜をてるやんと一緒にせんといてもらえるー!?
   怜はやれば出来る子やねんからな!」

智葉「だからその言い方がヒモに貢ぐ駄目女っぽいんだって」

竜華「だからヒモ言うなっちゅーの!」

照「菫と怜ちゃんも一緒か……楽しくなりそうだ」

カン!

他のシリーズのネタを考えてる裏で浮かんだ一発ネタなんでひとまずこれで終了って事で。
単発ネタだからニュー速でも良かったんですが何故か書き込めなかったという……
続けた方が良さそうならスレは残しておいて気が向いた時に書きますが、無さそうならすぐにHTML化してもらいます。

(お、ワイの大学か?)

続き見たいで~

>>12 コメントありがとうございます。
東京都国立市にある経済学部が有名な大学っていう設定にしてます。
白糸台からはそれなりに近く、竜華と怜の二人は近所に部屋を借りています。
なので23区のどこかから通学していると思われるガイトさんが一番遠いかも。
 
そして続き見たいっていう貴重なコメントを頂きましたのでもうちょっとだけ続くんじゃ。

大星淡の来店

照「いらっしゃませー」

淡「来ちゃいました」

照「」

リューカ、セッキャクマカセル
エーウチキュウケイチュウナンヤケドー

竜華「いらっしゃいませー。って白糸台の大将さんやんか」

淡「こんにちは清水谷さん。宮永先輩は?」

竜華「なんかキッチンに引っ込んでもたけど。
   後輩に働いてるとこ見られるん恥ずかしいんちゃう?」

淡「そうですか……それが見たくて来たのに」

菫「まったく、いきなりキッチンと変わってくれってあいつ料理なんて出来な……」

淡「あ、弘世せんぱーい。こんにちは」

菫「」

サトハ、キッチンハマカセロ
オマエモカ、トリアエズテルガコボシタホイップクリームカタヅケテオイテ
ワカッタ、ッテ、テルガクリームマミレ!
コウフンスルナヨ

智葉「もうすぐ夜のピークだと言うのに何をやっているんだ……
   菫がいるなら何とか回るだろうが。
   っと、どうもこんにちは大星さん。久しぶりだね」

淡「ってどなたですか?」

智葉「宮永照曰く、臨海で一人だけ浮いてた日本人だ」

淡「ああ、先鋒の辻垣内智葉さん……って明らかに別人ですよね!?」

淡(あの人確か眼鏡かけてたし後ろで髪を束ねてるだけの飾りっけ0%の優等生キャラだったような。
  それが眼鏡外してポニーテールにしただけでここまで!?)

智葉「あー……こういう反応されるからホールにはあまり出たくないのに」

竜華「でもそうしてる時のガイトちゃんかわええで」

智葉「からかうのはやめてくれないか」

淡「いや本当に可愛いと思いますよ」

智葉「……ありがとう」

淡(これが見られただけでも収穫あったかも。
  いや、でも今日は宮永先輩の接客光景を眺めに来たんだ。
  そしてベストショットを納めて白糸台のみんなや宮永咲に送信するのが目標)

淡「みやながせんぱーい、出てきて下さいよー」

照「嫌やねん」

竜華「……そういう中途半端なイントネーションの関西弁が一番イラつくわ。
   大星さん、てるやんはウチが責任を持って連れてきたるわ」

淡「お願いします」

智葉(イントネーションって、それお前が言うか?)メタァ

こんな感じで。
本命は別にあるのでこっちはそっち以上に亀進行になると思いますがネタ切れになるまでは投稿するかもです。

勉強は知的な競技なので勉強と両立できるという事で一つ。
ほ、ほら奈良の強豪も偏差値70のエリート校だったから(震え声

キッチン内

竜華「ほら! さっさとホールに戻りーな!
   てるやん料理できんねんから弘世さんの邪魔になるだけやろ!」

照「嫌だあああ恥ずかしいいいいい」

怜「何やっとん?」

竜華「怜から言ってやってーな。
   てるやん高校の後輩が来ただけで恥ずかしい言うてキッチンで棒立ちしとんねん」

照「棒立ちじゃない。カスタードクリーム混ぜようとしてた」

菫「その結果が全身クリームまみれだったわけだけどな」

菫(顔に付いたクリームを舐めとる仕草はちょっとエロかった……)

怜「ふむ、照ちゃん」

照「なになに、怜ちゃん」

怜「ここでしっかり仕事しとる事を見せつける。
  そしたら大星淡は確実に照ちゃんの事を尊敬する。
  そんで、大星淡と宮永咲は決勝戦で死闘を演じて以来の大親友や。
  つまり、ここで大星淡にえーとこ見せたら宮永咲にも報告して……」

照「咲が私の事を尊敬する……! 分かった、頑張る」

菫(説得するの早いな……私でもここまで上手い事出来ないぞ)

竜華(あ、なんかインハイ決勝戦でボコボコにされたん思い出してもた……)カタカタカタ


結構元ネタ分かる人いるようでびっくり。
あくまで咲SSなので元ネタの人達に出番は無いつもりですが……
複数店舗運営が出来るくらい経営が順調で、そのために必要な人は……? というのがヒントと言う事でオナシャス。
あとガイトさんのお相手は今の所メガンさんの予定。
でもあわあわとの絡みが面白そうならそっちへ行ってもええんやで?

仮に出すとしても明言はせずに匂わせる程度が無難じゃないかなぁ

>>31 我が意を得たり!

出てくるとしても、たまに出てくるモブキャラの中に「あれ? もしかしてこれってあの人の事なんじゃ……?」
みたいな感じにしようかなと思っていた所です。
これまでに出てきたものを引用すると「昔いたダメダメ店員」みたいな感じで。
ファミーユにした理由が『ドト○ルやミ○ドみたいな実在する企業の名前を出すのは色々と怖いけど、完全に架空の店を作るのもイメージしにくいなぁ……』といった具合だったので、クロスさせようとは最初から考えてなかったんですよね。

というかとっくに終わらせてHTML化してもらってたはずでした(笑
それが思ったより読んでくださってる方がいて生存と相成ったわけですし、需要かネタが無くなるまではのそのそと更新させて頂きます。
とりあえずメガンさんが出てくるまでは頑張りたいです。

ホール

照「いらっしゃいませお客様、こちらがメニューとなっております」(営業スマイル

淡(出てきたと思ったらいきなり完璧な営業スマイル……
  失敗して慌ててる先輩が見たくて来たのに面白くないなぁ)

照(かんっぺき……っ。これでもうあわあわは私の虜。そして咲も私の虜)

淡「えーっと、そうですねー。折角だから店員さんオススメのケーキを聞かせて貰えませんかね」

淡(我ながら良い質問だよー。
  宮永先輩を困らせるのにも使えるし宮永先輩の好みも分かるし。
  別に宮永先輩の好みが分かった所でどうもしないけど。どうもしないけどね)

照「そうですねー……」

照(あれっ? 私ってここのケーキでどれが好きなんだろう。
  いちごのショートケーキはシンプルながらも厳選されたホイップクリームがちょうど良い甘さで美味しいし。
  チーズケーキは隠し味のレモンのお陰でしつこさが緩和されてて何個でも食べられるし。
  フルーツタルトに盛られてるフルーツは契約農家から毎日送られてくるから新鮮で色鮮やかで見た目からして美味しそうだし。
  ……あれっ? 私ってここにケーキ食べに来てただけ? 
  待て、待つんだ宮永照。
 ここで一番美味しいのはプリン……プリンだ!
  卵にうるさいオーナーが自ら選んだ卵をたっぷりと使ったあの濃厚さ……
  これしかないっ!)

照「私のオススメはカスタードプディングでございます」

淡「あ、そうなんですか」

淡(いつもの宮永先輩じゃないですか。本当にオススメなのかなぁ?
  ていうかケーキって言ったのにプリンをオススメされてるし!)

照(今日も帰りに買って帰ろうっと♪)

菫(何故オススメしたのか理由を言わないと淡には伝わっていないと思うぞ)

怜(照ちゃんもまだまだやな)

ということで今日の分をさくっと更新。

キッチンにて

照「完璧だった。これで咲と淡の中の私はバリバリのキャリアウーマン」

菫「残念ながらそれは無いな」

照「なんで……」

菫「じゃあ淡はお前に何を頼んだ?」

照「……聞いてくるの忘れた」

菫「ほらな」

怜「しゃーないなぁ、次はウチにまかせーな」

ホール

怜「そんなわけで次はウチの番や」

淡「どんなわけですか」

怜「……」

淡「っていきなりだんまりですかっ」

怜(ウチには会話の一巡先を見通す能力がある。
  つまり、これからウチが言おうとしてる事への大星さんの反応を見る。
  これを何回か繰り返していけば最善の回答を提供出来るはずや……!)

淡(あーこれは完全に私の好みを予想してそれをオススメする感じの目だ。
  私は本当にここで働いてる人のオススメが聞きたいだけなのになぁ。
  園城寺さんがこの店のオススメを言ってくれるまでは『それは好きじゃないです』って言い続ける事にしよう)

怜(……チョコレートケーキは『それは好きじゃないです』……アカンか。
  なら次はダブル……これもアカン。
  トリプル……これも無理。
  なら、最近使えるようになったクアドラプルや!)

怜「……」フラフラ

淡(え、ちょ、なんか倒れそうなんですけど……)オロオロ

竜華「怜!? あんたまたアレ使ったん!?
   普通に接客してっていつも言うてるやんか!」

怜「ごめんな竜華、ちょっとアレ使い過ぎたわ……」

竜華「とりあえず落ち着くまで休んできい」

淡(あ、アレってなんなのー……)

菫(園城寺はまた休憩か。
  園城寺が休憩してる間は清水谷が二人分くらい動くから店は回ると言えば回るんだが……)

智葉(園城寺は昔は体が弱かったというし大事に育てられた箱入り娘だったんだろうな。
   だからこそ自立したいいう思いが強いのかもしれないが……
   空回りして清水谷に迷惑をかけているようではまだまだぞ)

照(プリン美味しいなぁ)

キッチン

菫「さて、次は私の番だな。竜華、キッチンは任せた」

竜華「え、まあええけど……」

竜華(いつの間にか大星さんに良い所を見せる流れになっとるやんか)

智葉(いい加減仕事しろよ。というか菫も恥ずかしいから引っ込んだクチだったが大丈夫なのか)

ホール

菫「こ、こんにちは。今日はお日柄もよろしいようで」モジモジ

淡「は、はい。そうですね」

菫(な、何言ってるんだ私は!
  平常心だ平常心。いつも通りやれば何の問題もない
  後輩にメイド服姿を見られている程度で何を恥ずかしがっているんだ。
  それにそもそもメイド服じゃなくて制服が可愛い喫茶店の制服だ!)

淡(どうしたんだろう弘世先輩。
  白糸台で部長やってた頃の先輩はこんな感じじゃなかったのに)

淡「そ、その制服可愛いですよね。似合ってますよ」

菫「!!」

淡「あ、どっか行っちゃった」

智葉(恥ずかしがりすぎだろ……)

淡(結局まだ何も頼めてない……)

キッチン

竜華「怜は疲れて休憩中、弘世さんはまたキッチンに戻ってきた、そしててるやんはつまみ食い。
   ガイトちゃん一人で大丈夫なんやろか」

照「智葉なら大丈ぶっ」ゴンッ!

菫「何もせずキッチンに引っ込んだ私もあれだが、つまみ食いしてるお前にだけは注意出来るぞ」、

照「いたい……」

竜華「まあ、ホンマに大丈夫って思えるんがガイトちゃんのすごいとこなんやけどな」

智葉「はい、オムライスをバターライスのケチャップがけが一つ。
   セットのドリンクはアールグレイのホットですね。かしこまりました。
   そちらのお客様は………なるほど、ダイエット中だけどケーキを食べたい気分で迷ってらっしゃるのですね。
   そういったお客様のために当店ではローカロリーケーキも各種ご用意しております。
   こちらのメニューをご覧になってお決め下さい。
   オーダー、卵サンドとブラックが2つずつ、和風ロールのミックスジュースがひとつ、オムバターケチャップのアールグレイひとつでお願いします!」

竜華「はーい!」

菫「りょうかーい!」

照「まさに筒子のメンチンタンピン二盃口の活躍だな」ドヤァ

菫「素直に大車輪って言えよ」つむじチョップ

照「いたい……」

菫「あとすまないが清水谷、ここは良いからホールに戻ってやってくれないか」

竜華「ええよー。着替えてくるついでに怜も呼んでくるな。
   最近はアレ使ってもすぐ回復出来るようになったみたいやしそろそろ大丈夫やろ」

ホール

智葉「さてと、あまりお構い出来なくてすまないね」

淡「いきなり押しかけてきたのは私ですし良いですよ。
  宮永先輩は意外とちゃんと仕事してるみたいですし、弘世先輩の可愛い制服姿も見れましたし満足です」
  
智葉「それなら良いけど。じゃあお詫びと言っていいのか分からないが、はい」

智葉が淡のテーブルに和風ロールケーキとミックスジュースを置く。

淡「え? なんですこれ」

智葉「私のオススメ。一号店からのメンバーで和菓子屋の娘さんでもあるパティシエが考案した隠れた人気商品なんだ。
   抹茶を生地に練り込んであって上品な香りがするし味が甘過ぎないのが良い。
   そういえば白糸台には対局中にお茶ばかり飲んでる子がいた気がするな。
   これとかオススメなんじゃないだろうか」

淡「確かに、渋谷先輩とかすごい好きそう」

智葉「ミックスジュースについては……まあ、私の趣味だ。
   ケーキがあまり甘くないから飲み物は甘いものを飲んでバランスを取っているわけ」

淡「へー。なんか意外。辻垣内さんって甘くないケーキにこそストレートティーだって言いそうだったから」

智葉「そう見えるように振舞ってきたつもりだし、そう見えても仕方ないな。むしろ光栄だよ」

智葉(本当の所はレモネードやミックスジュースを作るのが好きな同級生がいたってだけなんだけどな。
   ずっと飲んでいるうちにすっかり慣れてしまったんだよなぁ)

智葉「じゃあ、あまり長話もしていられないしこれで。
   ここのお代は私が払っておくから」

淡「えっ、良いですよ。何の連絡もなく冷やかしに来といてタダ食いなんて出来ないです」

智葉「ならこれのお代でお茶好きの先輩に買って帰る。それでいいだろう?」

淡「あっ……そういう事でしたらそれで……」

智葉「テイクアウトのレジはあっちだから。それじゃあ」

淡「はい、ありがとうございました」

淡(なんかデキる女って感じでカッコイイなぁ……)

淡「あれ、ケーキの皿の下になんか挟まってる……」

―大星淡へ―

 宮永照と弘世菫の仕事ぶりがよく分かる写真を何枚か用意しておいた。
 どう使うかは君次第だが二人は有名人でもあるので仲間内だけで回すように。 

                    ―辻垣内智葉より―

淡「まったく、敵わないなぁ、辻垣内さんには」

と言う事で今回の更新分&大星淡来店編カン!
ドジっ子照SSを書こうと思っていたつもりなのに、いつの間にかガイトさんがメインキャラになりつつある件。
ちなみに1の中でのガイトさん像は何でもストイックにこなす秀才タイプです。
団体戦で外国人しか使わない学校にいながらも個人戦で優秀な成績を残すとか妄想が膨らんで仕方ないです。
本編の出番はよ!

2334455556677 2
めんちんたんぴんりゃんぺーこー(大車輪ではない)
6+1+1+3=11

>>39

お、おう……
何の計算をしてるのか分かりませんが、
ここの照はローカル役の大車輪と大車輪の活躍をかけただけでしか無いのであしからず。
オーダーも七対子になるようにしといた方が二重のネタになって尚良かったかもorz

国立市のとある大学・学食

菫「そういえば、千里山の江口セーラはどうしてるんだ?
  彼女ほどの選手ならどの大学に入ったか噂になるはずなのに何も聞かないが」

照(学食のプリン結構美味しい……
  でもファミーユのカスタードプディングの方が倍満くらい美味しい)パクパク

怜「セーラか? 大阪の実業団で麻雀続けとるよ」

竜華「もう勉強はいややー! 言うて、スカウトの話来たら一発で受けとったわ」

菫「噂が出ないのは実業団の世界ではあまり目立たない存在と言うことか……
  やはり上の世界は厳しいな」

照「勉強楽しいのに……」

怜・竜華「!?」

智葉「勉強が大事だというのは納得出来るが楽しいと言う人は中々いないな。
   どうしてそう思う?」

照「一人でも出来るから。麻雀してない時は家で本を読むか勉強してた」

智葉「あー……悪かった」

菫「照は極度の人見知りだったからなぁ。
  虎姫のメンバー以外とは一緒に帰宅する事すら無かったんだ。
  まあそれだけ勉強してたからこの大学にも入れたわけだが」

怜「照ちゃん……これからは他にも趣味が見つかるとええな」

照「怜ちゃん……ありがとう」

菫(だからなんでそうやってすぐ良い雰囲気になれるんだよ)ギリギリ

竜華(てゆーか怜の方からてるやんに迫って行ってるように見えるんやけど)ギリギリ

智葉(めんどくさい人間関係だなぁ……)




智葉「江口セーラはの事は分かったが、怜と竜華はどうだったんだ?」

照「確かファミーユで会った時には怜ちゃんと二人ぐら……」

竜華「わーわーわー!」

怜「?」

竜華「余計な事言うたらアカン! 分かった!?」(小声

照「う、うん。分かった」(小声

竜華「オッホン。それでは改めて説明や」

竜華(まぁ、真面目な方の理由もそれはそれで恥ずかしいんやけどな……)

竜華「ウチは全国四位のチームやったとは言え、白糸台や清澄のルーキー相手にええとこ無しやったからなー。
   残念ながら地元の大阪ではやれ戦犯だのやれ恥さらしだの言われてもてなー」

怜「大阪では個人戦で良い成績残した愛宕洋榎や現在三年の荒川憩ばかり評価される風潮なんよ」

照「それは許せないな。竜華は優秀な打ち手だった。
  ただ私が大事に育てた妹と後輩が強すぎただけ」ドヤァ

竜華「あはは、一応励ましてるんやと思って受け取っとくわ」

菫(淡を育てたって言ってもほんの数ヶ月だろ……
  それに家ではむしろ妹さんに世話されてたと思うんだが……)

竜華「そんなわけで関西じゃ推薦なんか来るわけない状況やったんよ。
   じゃあ折角やし東京にでも出てみるかー! って思ったんよ」

菫「なるほどな」

智葉「つまり、大阪から逃げたのか」

菫「お、おい智葉……! この流れでそういう事言うのは……」

竜華「ええんよ。ガイトちゃんの言う通りやし。それにもう吹っ切れとるから」

智葉「だろうね。そして一度折れた人間は立ち上がる時には更に強くなって帰ってくるものだ。
   三連覇の王者達には分からない感覚だろうけど、そういうモノなんだよ」

竜華「そうそう」

怜「そういうもんやねん」

菫「むぅ……」

照「仲間ハズレにされた……」怜「で、ウチはと言うとそんな竜華に誘われて一緒に上京してきたんよ。
  受験勉強は大変やったわー。他の事やっとる暇なんか無かったから。
  高校生活の最後の半年は参考書と竜華の顔しか見とらんかった気がするわー」

照(怜ちゃんは竜華が心配だったんだろうなぁ。
  そして竜華は怜ちゃんに麻雀以外の事で頭を一杯させようと思ったんだろうなぁ。
  怜ちゃんは先読みの能力を使う前提で打っていたから体力の消耗が早すぎた。
  しばらく麻雀から離れるための、療養も兼ねての受験勉強だったに違いない……)

照「いい"ばなじだよぉぉぉぉ」ブワッ

ナンダナンダ? アレッテミヤナガテルジャナイ?
ダレソレ ミヤナガテルヲシラナイニワカハアイテニナランヨ

菫「わっばかっ。いきなり大声で泣くなよ!」

智葉「とりあえず場所を移すか。空いてる教室探そう」

半端ですがとりあえず今日の分の更新。
阿知賀編の最新話が掲載されたみたいですね。
なんでもSS界隈で見かける大星淡と弘世菫とは結構なズレがあるようで。
しかしこのSSの菫さんとあわあわは完結までこのままで行くと思います。
本編のイメージが形になる前に書ききらないといけませんね。

空き教室

菫「はぁ……落ち着いたか?」

照「うん。大丈夫。迷惑をかけて申し訳なかった」ペッコリ

竜華「ちょっと恥ずかしかったけど、ウチらのために泣いてくれたんやから許したるわ」

照「ありがとう……」ジワッ

怜「だからまた泣いたあかんで照ちゃん」

智葉「さて、キリも良いところだし今日の所はこれで解散と言うことで」

怜「待ちいや。まだガイトちゃんがここを選んだ理由を聞いとらんよ」

照「そうだっ、聞きたいなー」

智葉『……余計な事を』

怜『逃げたとか言うた事へのちょっとした仕返しや』

智葉『はぁ、分かったよ』

智葉「私は将来通訳になりたいと思っているんだが、あの仕事はただ言葉を訳すだけでは駄目なんだよ。
   相手の国の成り立ちから文化まで幅広く知識を吸収して、相手の立場になって理解する必要がある。
   そのために必要な勉強がここなら出来ると思って来たんだ」

照「おおーっ。なんかすごい」

竜華「まさに世界を股にかけるって感じやな」

菫「近いだけの理由で選んだ照とは大違いだな」

照「何度も言わないで欲しい」

怜(近いってだけでここに入れる学力があった方がすごいわ。
  ウチなんてここ入るのにそれこそ残りの青春捧げる勢いで勉強したのに)

菫(そしてそんな照の面倒を見るために同じ大学を選んだ自分もすごい恥ずかしくなってきた)

智葉「ちなみに、臨海にメガン・ダヴァンっていう副将がいたのは覚えてる?」

菫「それはもう。うちの亦野が良いようにあしらわれて随分と苦しめられたからな」

竜華「フナQもあの人が三年生でホンマ良かったって言っとったなー」

照「他の留学生はなんだか浮き足立ってる感じだったけど、あの人だけはどっしりと構えてた。
  本当に成し遂げたかった事は他にあったのだろうけど、割りきってチームの優勝のために打ってたように見えた」

智葉(さすがチャンピオン、麻雀に関しての事だと本当に良く見てるな……)

智葉「覚えていてくれて何より。あの子に日本語を教えたのが私なんだ。
   それがここを選ぶ大きなきっかけになったと言える」

照「1年かそこらであんなに喋れるようにしたんだ、すごい。
  咲が二回戦で当たった学校にも留学生がいたけど、その子は日本語なんてまるで話せなかったらしいのに」

どこかの県のどこかの大学

?「へっくちっ」

?「どうしたの、風邪かい?」

? ササッ(何人かでしゃべってる絵)

?「誰も噂なんてダルい事してないって……」

?「私の噂ならたくさんあるかも!」

?「ちっちゃい子が飛び級で大学に来てるとかー?」

?「うるさいそこ!」

?「ご、ごめんってー」


菫「なんか聞こえなかったか?」

怜「さあ?」

智葉「人に話を振っといて何故上の空とは偉くなったもんだな……」

怜「おっとすまんな。なんか北の国からって感じの電波を受信しとったみたいや」

照「あ~あ~ あああああ~あ~♪」

怜「そうそうそんな感じや照ちゃん」

菫「それ東北じゃなくて北海道だと思うんだが」

竜華「まあその話はどっかにおいといて。メガンさんは今どうしてるん?」

智葉「臨海を卒業してからアメリカで進学したよ。
   最近来たメールでは結構良いクラブに入れたけど上下関係が少し煩わしいとぼやいていたな」

照「クラブ? 何クラブ? やっぱり麻雀?」

智葉「私もあっちの事情を詳しくは調べてないが、日本で言う部活動的なものとは全然違うらしいぞ。
   やたらと伝統と権力のあるサークルみたいなものらしいが」

怜「ウチが見た映画やと、その後の4年どころか将来も決まるみたいに描かれとったなぁ」

菫「ふむ、あっちの大学生活の方が大変そうだな。まあ、メガンさんならちゃんとやっていけてるんだろうが」

智葉「そうだろうと私も思っている」

照「クラブ、サークル……そうだ、私達も何か作ろう。楽しそう」

菫「おいおい、何かって何だよ。ていうかこの5人がやれる事と言ったら……」

智葉「……麻雀しかないだろうな」

怜「えっ。悪いけどウチらはパ……」

竜華「ええやんそれ! やろやろ!」

怜(!? 竜華、ホンマにええんか? インハイの後はあんなに落ち込んどったのに……)

竜華「あ、先に言っとくけど怜はあんま先を読む能力使ったらあかんでー。
   最近はマシになったみたいやけど連続で使うとまだつらいやろ?」

怜「ま、まあそれはほどほどにはするつもりやけど……」

竜華「腕が鳴るわー。ウチの事を見放した関西の人らに一泡吹かせたるー」

怜(……なんや、そういう事か。なら協力したるんが友達ってもんやな)

照「じゃあ今日から三尋木プロの所に通うのやめるって連絡してくる」

智葉「チャンピオンが麻雀部の無い大学に入って何してるのか疑問だったのだけどようやく謎が解けたよ」

怜「部活に所属してへん大学生ならプロ・アマ規定も無いもんな。
  一介の学生がプロのチームに顔出ししとるんは驚くべきとこやけど、照ちゃんの実力なら納得やわ」

菫「これでようやく照を横浜まで連れていく激務から解放される……」

照「早速電話してくる」

ウンメイガー♪ マワリダスー♪ ←待ちうた

咏『ほいほーい。どうしたの照ちゃん』

照「いきなりで悪いんですけど、もう三尋木プロの所に通うのをやめようと思います」

咏『ふーん。ウチに通わなくなったらどこで麻雀すんの~? 麻雀部でも作んの?』

照「はい。ちょうど5人いるんで団体戦にも出れます」

咏『旦那の菫ちゃんはともかく人見知りの照ちゃんがよく5人も集めたね。さては全員身内だったり?』

照「一緒のバイト先で働いてる人達とやることにしました。全員麻雀経験者です」

咏『ていうかそれって臨海と千里山の子じゃね?』

照「よく分かりましたね……」

咏『うふっは! 当たったんだ! なんでそう思ったか自分でもわかんねー! にゃはは』

照「そんなわけで、プロ・アマ規定とかもあると思うのでそっちには行けなくなります。
  短い間でしたがお世話になりました」

咏『大学生なら確かアマでもオッケーだったんじゃね? 知らんけど。
  まぁ大学生はやっぱ大学生同士で打ってた方が良いよ。
  照ちゃんがプロになった時に戦う相手は照ちゃんらと同じ世代だろうしねぇ』

照「他の人は知らないですけど三尋木プロが3、4年そこらで一線から退いてるなんて考えられないです」

咏『いやいやあるんだなーこれが。
  3つ違いでも勝ち逃げされてる私が言うんだから間違いない』

照「勝ち逃げ? それってどういう意味です?」

咏『いや知らんし』

照「自分で言ったんじゃないですか」

咏『そうだっけ? まあ4年はトップに居座っててあげるからインカレの世界で思う存分暴れてきなって。
  私としては4年間ずっと一線級で居続けるよりその4年の間に結婚したいんだけど』

照「それは私からは何とも……」

咏『だっよねぇ~! まあどっちもそれなりに頑張ってみるって事で。
  んじゃ、指導とかはしてあげらんないけど暇な時はまた遊びに来てよ』

照「はい、分かりました」

この電話をした翌年、26歳の誕生日に三尋木咏が入籍したのはまた別の話。

照「電話終わったよ」

菫「そうか。照が電話してる間にこっちでも話をしていたんだが、サークルにするのが良さそうだと言うことになった」

竜華「上京して二人暮らししとるウチと怜はバイトのシフト減らせへんし」

智葉「私は都内とはいえ23区内から通ってるから少し遠くて時間が作れない。すまないな」

照「そっか。私はみんなと一緒に麻雀出来るならそれで良い」

怜「照ちゃん……」

照「怜ちゃん……」

菫・竜華(だからなんでイチイチそんな雰囲気に……)ギリギリ

智葉(ていうか私ってもしかしてぼっち?)

数日後

菫「申請したら許可が降りたぞ。あの宮永照が名を連ねてると言ったら立直一発ツモだった」

智葉「おまけに裏ドラが乗ってサークルとしては異例だが部費まで出してくれるそうだ」

智葉(この麻雀での例えって必要? 言っててちょっと恥ずかしい)

竜華「おー、てるやんのネームバリューはさすがやね」

菫「本当は文化会所属の部活として大々的な活動をするように求められたんだがな。
  間違いなくプロになるだろう照はともかく、私たちはそういう訳でもないから丁重にお断りさせて頂いた」

智葉(文化会のお偉いさんの弱みを次々と射抜いていく菫は友達ながら少し怖かった。
   胸ポケットから覗いてる紙からキャバクラ通いしてる事を言い当たり、
   誰も気付かないような不自然さからズラである事を見抜いたりとか……)

怜「そんでここが今日からウチらの部室ってわけなんか」

ガラッ

照「おー、全自動卓がある。あれ? でもこれ見た事あるような……」

菫「さすがに自前で買うと部費が飛んでしまうから白糸台から余ってるのを持ってきてもらった。亦野一人に」

竜華「えっ? 一人って、これを?」

怜「これ50キロくらいあるモデルやん……病弱なウチにはよーでけへんわ」

竜華「病弱やなくても普通の女の子には無理やわ!」

照「誠子、腕は鈍ってないようだな……」

竜華「判断基準そこなん!? 麻雀の腕っていうより純粋な腕力やん!」

智葉「今やりあったらダヴァンは彼女に勝てるだろうか。
   単純な腕力と体格では分が悪いが日本で勉強した合気道を併用すればあるいは……」

竜華「そこはそこで何冷静に分析しとるん!? 二人が去年対戦したんは麻雀やろ!?」

菫「竜華、ナイス突っ込み。確かに亦野には頼んだけど単に部長だからってだけだから。
  一人で運んできたわけじゃない。多分」

竜華「多分!?」

照「誠子ならやりかねない」

竜華「真相は知らん方が良さそうやな……」

コンコン

?「この大学に麻雀サークルが出来たと聞いたんですが、ここがその部室でよろしいでしょうか」

照「はーい、ここがそうですよー」

怜「噂広まるん早いなー。これもチャンピオン効果なんかな」

菫「勝手に情報をリークしてるなあの文化会の人……ただでは転ばないといったところか」

ガチャ

?「見せて下さい、王者の打ち筋を!」

菫「…‥は!?」

竜華「へ?」

怜「あんた確か晩成の……」

照「小太やえ!」

やえ「小走です。いきなり名前を間違えられるのも王者の仕打ちだと思えば心地よい」

智葉「いきなりのドM発言……変なのが来たなぁ」

菫「これはこれは、『元』奈良県代表の晩成高校の先鋒ではありませんか。
  ここへは何の用がおありで?」

菫(この子からは何か危険な匂いがする……何とかして追い払わなければ)

やえ「インターハイ王者の宮永照さんが麻雀サークルを作ったと聞いて馳せ参じた次第です」

菫「部長は私ですけどね」

やえ「それよりも宮永さんとお話がしたいのですが」

照「あわわわ、小太りとかいってごめんなさいっ」

やえ「ふっ……私は小3の頃からそのあだ名で泣いた事がないので大丈夫ですよ」

照「そうなんだ」

菫(無視された……!)

やえ「それにしても、大学では勉学に励もうと思っていた所で貴女の姿をキャンバスで見た時は感動しました。
   あれだけの成績を残したのにプロへ行ったという話は聞かなかったので何をしているのか心配してたのですよ」

照「少し前までは三尋木プロのチームに通って色々教えてもらってた」

やえ「現トッププロから直々のご指導ですか。さすが十年に一人の天才です」

照「そ、それほどでもない」 アセアセ

やえ「それほどでもありますよ。
   史上初の団体戦三連覇を成し遂げた白糸台のエースであり個人戦でも三連覇。
   その他にも連続和了や連荘の回数など今後破られる事は無いだろうと言われているタイトルを保持しています。
   そうそう、その連荘記録で思い出したのですが一昨年のインターハイ決勝戦は実に見事でした。
   60,000ビハインドで迎えた大将戦を七連荘でまくったあの対局は後々になっても語り継がれる事でしょう」

照「う、うん///」

やえ「しかしそんな貴女でも一年生の頃には跳満の直撃を食らってあわや西東京代表落ちかと言う場面もありましたね。
   その時もラスの親の連荘で逆転を果たしたわけですが、相当打ってるチャンピオンでもあの頃はまだ隙があったと言うことですか」

照「一年の時の予選の事まで知ってるんだ」

やえ「宮永照の事についてならそこらへんのニワカは相手になりませんよ」

怜(そういや春期大会で当たった時、休憩時間中に延々とチャンピオンの事聞かされたん思い出したわ。
  あん時は能力使いすぎてフラフラやったから内容はまともに覚えてへんけど)

菫(嫌な予感が的中したな。この子、照の熱狂的なファンだ!
  それも照が注目され始める前からの生粋の……!)

智葉(これは照を巡る三角関係と言うやつか。
   そしてまた私はぼっち。ああ、ダヴァンに会いたい)

怜「小走さんやったっけ、久しぶり」

やえ「久しぶり園城寺さん。春季大会以来といった具合かな」

怜「せやな」

怜(照ちゃん以外にはタメ口かな? 気ぃ使わんでええしその方がウチもありがたいけど)

怜「知り合いやしウチから説明するわ。
  ウチらのサークルはバイトの合間に集まって打つつもりやから、そんなに時間取れへんけどええんかな」

やえ「それで構わないよ。
   私は特待生だからそこまでバイトしなくて良いし時間に余裕はあるから皆さんの都合に合わせる」

竜華「この大学で特待生って……さすが偏差値70の名門出身……」

やえ「私は小3の頃からペンだこすら出来ない」

怜「さっきも小3言っとったけど、アンタ小3の頃にイベント起きすぎちゃうか?」

菫「お、おいなんで入部させる方向で話が進んでるんだ」

智葉「特に断る理由も無いからな」

菫「た、確かにそうだが」

やえ「心配しなさんな。私はあなたが危惧しているような事はしないよ。
   王者の従者に相応しいのは弘世菫の他に存在しないのだから」

菫「そ、そうか? ははは、やっぱりそうだよな!」

竜華「ちょろすぎやろ菫」

怜「ていうか『従者』って言われて嬉しがる人も珍しいわ」

照「菫が従者……」

 その時、宮永照の頭には甲冑に身を包んだ弘世菫の姿が浮かび上がる―――

 世間では虎姫の異名で恐れられてこそいる宮永照だが、普段の彼女は押せば壊れてしまうようなか弱い少女でしかない。
 その傍らで、常に主のために忠義を尽くしてくれる侍がいてこそ生きていられるのだ。
 その名は弘世菫。
 ある時は敬愛すべき虎姫に害を成すモノへ一直線に向かい射抜く矢となる。
 ある時は時に親愛なる虎姫を優しく包み込む外套ともなる。
 彼女にとっては虎姫こそ全て、また虎姫にとっても彼女が全て。
 二人にとって互いは唯一無二の存在なのである。

 ―――それが宮永照の『理想を描きし心の画布(ウィッシュアート)』だった。
 
照「良い!」

智葉「ただの妄想だろそれ」

どこかの県のどこかの大学。

「へーちょ」

「また風邪ー? ほら、ちーんして」

フルフル(赤くなってる女の子の絵)

「恥ずかしがってる場合じゃないでしょ! ほら!」

ちーん!

「体調悪かったら私がおぶってあげるよー。ちょー見晴らしいいよー」

「……じゃあ私も」

「歩くのだるいからって楽するの禁止だから!」

「だるい……」

そんなこんなで小走やえが加入してからの初めての練習試合。

菫「宮永照が大学で麻雀をやり始めたと知った途端にやりたいと言って来た学校があった」

智葉「ふむ、どこもレギュラーが4回生ばかりの学校だな」

竜華「これはあれやなー。『私達が一つ下の学年だったら宮永照に三連覇などさせなかった』みたいに思ってる連中からの挑戦状やな」

怜「興味があるんのは照ちゃんだけでウチらは眼中に無しってか」

照「面白い……私達の世代が弱かったなんていう思いあがりを正してやろう」ギュインギュイン

やえ「これが王者の暴風……!」

『麻雀シーンは全部キンクリじゃけんのう』

東京都内のどこかの大学の麻雀部部室

照「ありがとうございました」

対戦相手×3「」

菫「さすが照だ。東二局から誰にも和了らせず連続和了で全員を飛ばしてみせたぞ」

照「口ほどにも無かった」

照(三尋木プロの嘘つき。インハイで当たらなかった学年には強い人がいるって言ってたのに……)

「だ、団体戦なら負けない!」

菫「……なるほど。私達が混ざったら勝てると思ってるわけですね?」

怜「そうですよね。ウチとか病弱やしいかにも弱そうですもんね」

智葉「私なんかお情けで作ってもらった日本人枠のレギュラーですしね」

竜華「去年決勝戦みたいに何も出来んかったらどうしましょー怖いですわー」

菫・怜・智葉・竜華(とか思ってるわけないだろ(あらへんやろ)!」

やえ「……」

東京都内のどこかの大学の空き教室

菫「で、急遽団体戦用のオーダーを考える事になったわけだが」

やえ「それなら私に名案がある」

智葉「ほう、聞こうじゃないか」

やえ「まず、先鋒と次鋒は宮永さんと弘世さんの元白糸台コンビで行こうと思う。
   宮永さんには王者の打ち筋でとにかく点数を稼いでもらい、弘世さん2位を突き放すか4位を飛ばす方向で直撃を狙う。
   そうして広げたリードを後の三人で守り切ったり更に引き離したりするのが基本戦略となる」

照「インターハイの時と同じ感じか。分かりやすくて良い」ギュインギュイン

菫「その時の気分というか流れで狙う相手を決めていたが、よく考えてみれば徹底的にやった方が効率的だな。
  私の癖をよく分析して効果的な運用を考えついたものだ」

怜「即興でそこまで考えるとはやっぱ頭ええねんなぁ」

やえ「さて、話を続けるよ。
   先鋒と同じくらいポイントゲッターが置かれる事が多い中堅は、直撃を受けない園城寺さんに任せる」

怜「よっしゃ任せとき」

やえ「副将は大将へどういう形で繋ぐかも考慮して臨機応変な打ち方が出来る清水谷さん。
   ……でも、いざと言うときは本気を出して目に物見せやるように」

竜華「! 分かったわ!」

竜華(小走さん、ウチのアレに気づいとるんやろうか。練習では使わんようにしとったんやけどな。
   まあ、このメンツやと簡単に使えんってだけやけど)

やえ「最後に大将は……緻密な点数計算も出来る計算高さと逆転トップをもぎ取れる地力を併せ持つ辻垣内さん」

智葉「ん? 私は別にそれで良いがそれだと……」

やえ「私は控えで十分。途中入部で一番の新顔だからね、今回は遠慮させてもらうよ。
   それに、私は王者の打ち筋をこの目に焼き付ける大事な作業がありますから」

照「あ、あんまり細かい所まで観察しないでね」アセアセ

やえ「それは難しい相談ですね」

照「えー」

怜(控えで十分、ねぇ。春季大会の時はそないな殊勝な態度しとったっけなぁ)

とりあえず今回の投下はここまでです。

そして団体戦開始―――
今回の練習試合は4つ大学の共同だったという事にしといて下さい。
あと闘牌描写を描き出すとすごい長くなりそうなのでキンクリしてダイジェストでお送りします。

一回目:先鋒戦で飛び終了

照「貴女……去年の新道寺のオーダーを馬鹿にしてたみたいですね。私にはお見通しです」(ニコッ

A「ひっ……」

照「結果的に負けこそしましたが、彼女達だって白糸台を倒すために苦渋の選択をしていたんですよ」(ニコッ

A「」(カタカタ

照「それに、10万点もあれば飛ぶはずも無いのに飛ばないだけの雑魚をなんで先鋒にとか思っていたようで。
  でも貴女飛んでるじゃないですか」(ニコッ

A「ご、ごめ……」

照「謝るなら今すぐ福岡まで行って新道寺の皆さんと、そして花田煌に謝ってきて下さいね」(ニコッ

A「」(ブクブクブク

怜「営業スマイルで人を[ピーーー]とは……さすが照ちゃんやで」

竜華「いやいやまだ殺してへんからまだ」

菫「というか次鋒の私にすら回ってきてないんだが……団体戦やった意味ないだろ」

やえ「これが真の王者の打ち筋……!」

智葉「小走さんしか得しない展開だったな」

B「も、もう一回だ! 私達はまだ何もしてないぞ!」

照「私は別に構いませんけどオーダーは変えた方が良いですよ。
  次も手加減をするつもりは無いのでまたA大学の人が飛んじゃいますよ」(ニコッ

A「」

怜「やっぱ麻雀しとる時だけはチャンピオンやなぁ。
  普段の姿から想像できんくらい怖いわ」

智葉「私達は普段のドジっ子照に慣れてしまったが知らない人達には常にあんな風に見えてるんだろうな」

菫「だが私は普段のドジっ子照の方が良い」

智葉「言わなくても分かってるって」

そして二回目 先鋒終了時スコア(点数計算はややこしいので万単位は四捨五入
照:280000 A大学:30000 B大学:50000 C大学:40000

照「ありがとうございました」

A・B・C「」

照「プラス180000……インターハイの準決勝や決勝戦のスコアを遙かに上回っているこの事実を胸に刻みつけて下さいね。
  深く、深くね……」(ニコッ

菫「さて、次は私の番か」

次鋒戦:半荘二回目の菫の親番

菫「ロン、12000」ドシュッ

B「……は!?!?」

怜「やっぱ菫がロンする時って弓で射抜いてるように見えへん?
  ていうかあれもう弓っていうかバリスタ……」

竜華「あれのお陰というか泉はインハイ以降もロンさせんように必死やったもんなぁ。
   お陰で鉄壁の守備型選手になってつよぉなったんはつよぉなったけど」

怜「すっかり別人になってしもたもんなぁ」

次鋒戦終了時スコア
菫:325000 A大学:25000 B大学:25000 C大学:25000

菫「2位から直撃を取る事ばかり気にしてたらあまり点数は稼げなかったな」

竜華「いやいや+45000って普通に大金星やから」

智葉(このままだとまた私まで回ってこなさそうだなぁ)

やえ「皆さん、ここまで点差が付くと本来の実力が出しづらいでしょう。
   なのでルール変更を提案します」

C「へぇ、聞こうじゃない」

やえ「ここからは剣道などの団体戦ルールにならって、半荘一回で一位の選手を一勝、それを五回繰り返すとするルールにしましょう」

菫「つまり、私と照は両方トップ通過だから現在私達が2勝と言うことか」

やえ「そうなるね。どうでしょう皆さん。
   30万なんていう絶望的な点差をひっくり返すよりここから三連勝する方が勝ち目があると思いますが」

C「それはいいわね。そうしましょうよ」

C(宮永照以外になら勝てる自信はあるしちょうど良いわ)

智葉(ナイスだよ小走さん)

怜「と言うことで次はウチやな」

中堅戦:怜の起家

怜(っていきなり九種九牌かいな。ついてへんわー。流してまおっかなー。
  って思うんが高校までのウチやったけど……トリプル!)キュイイイン

怜(……ふむ。これなら行けるわ)

そして―――

怜「ツモ、国士無双13面待ちやけど……ダブル役満ってありですか?」

C「な、なしでお願いします……」

智葉「3巡先が常に見えるなら九種九牌からの国士無双がありか無しかも分かるよな」

照「インハイ決勝までにこれが完成してたら白糸台も危なかったかも」

菫「だが今では私達のチームメイトだ。頼もしい限りだよ」

そして起家の役満和了からは一巡先を見ながら直撃を避ける闘牌でリードを守りきり怜のトップ終了

怜「ありがとうございました」

A・B・C「……」

菫「直撃を取るしかない状況でそれを全くさせてくれない絶望感に包まれているな。
  私にとっては相性最悪の打ち手だからあの人達の気持ちがよく分かるよ」

竜華「な、怜はやれば出来る子やろ!?」

智葉「だからそのヒモ付き発言いい加減やめなって」

やえ「やれば出来るのは園城寺さんだけじゃないですよ。ね、清水谷さん」

竜華「……当たり前やん! ウチもちょっと一発かまして来るわ!」

照「……もうすぐ2つ目の花が咲くな」

菫「? 何か言ったか?」

照「なんでもない」

菫「そうか、なら良いが」

照(竜華ならきっと出来るよ、頑張って)

副将戦:オーラス

B(ここまでで2位とは5,000点差……私が親だし最後に和了ってそのまま終局させるよ)

菫「そういえばこの卓の面子は全員インハイ経験者だったな」

やえ「多分それぞれの大学でのエースだろう。
   世間様の評判に釣られて一番の穴だとされる清水谷さんを狙い撃ちする算段だったのだろうね」

智葉「エース同士の対決から逃げたのか。卑怯な人達だ」

怜「竜華……なんでみんな竜華ばっかり攻めるんや……」

照「大丈夫、今の竜華ならそんな外野のやっかみだって弾き飛ばせる」

竜華(この人ら、人間性は最悪やけどさすがに強いなー。
   伊達にインハイ経験者やないって事か。
   でもな、あんたらの世代に照ちゃん、それに―――)

竜華「リーチ!」バァン!

二萬三萬四萬 五索六索七索 南南南 二萬三萬 白白 捨て牌:七萬

竜華(照ちゃんの妹や大星淡もおらんかったんやからな!)

照「真上から卓に思い切り叩きつけるリーチ宣言……来るか」

智葉「もしかして、照の照魔鏡には竜華の何かが見えていたのか?」

照「怜ちゃんじゃないけど、竜華が次に引く牌を当ててあげる。南だよ」

菫「竜華の待ちは壱萬か四萬の両面待ちしかないから送り槓が出来るな」

照「でも、それだけは終わらない……」

怜「え……?」

一巡後

竜華(きたあああ! 送り槓用の槓材!)

竜華「カン!」カンドラ:東

菫「カンドラが東か……暗槓をした南がそのままドラ4になったな」

照「そして、ここから」

竜華(分かっとるよ、そこにおるんやろ……?」

王牌からのツモ牌:一萬

竜華「ツモ! リーヅモリンシャン連風牌ドラ4は4000・8000!」ゴゴゴゴ

怜「あれ、リー棒が……」

菫「起き上がった……」

照「嶺上開花でツモ和了をする。嶺上に生える竜胆が花開くように……」

やえ「リーチをした時に送り槓の出来る暗刻があれば、次順でドラ4嶺上開花が確定する……
   これが清水谷さんに新たに発現した能力の正体だよ」

智葉「リーヅモリンシャンドラ4で合計7翻だから和了れれば最低でも跳満か」

菫「だが練習中の対局でこんな和了を見せた事はほとんど無かったはずだが」

やえ「その練習相手が真の王者たる宮永さんではそう簡単に出せるはずがないでしょう。
   待ちの変わらない暗刻を用意するのはそれだけ手が遅くなると言うことですから」

菫「その条件下で照のテンパイスピードに追いつくのは厳しいものがあるな」

智葉「元々の竜華は状況に応じて柔軟な対応が出来るオールラウンドタイプだからな。
   テンパイ速度が必要な対照戦ではやらなかったと言う事か」

怜「……ウチはそういう能力とか条件とかややこしい事はどうでもええわ。
  ようは竜華にとって決して折れへん軸となるもんが見つかったって事やろ。
  それだけで十分やわ」

照「うん、竜華はインハイで咲や淡に何も出来なかっただけでは折れなかった。
  それどこか、咲の嶺上開花を参考にして自分の麻雀を進化させた。それだけの事だよ」

智葉「それもそうか……
   さて、竜華の華々しい復活を祝すためにも全勝でしっかりしめてくるよ」

そして大将戦、智葉は何の危なげもなく着実に点数を伸ばし一人浮きで勝負を終えた。
その後の練習試合でも負けなし、インカレでも決勝戦まで全員プラスを続けて勝ち上がり続けた。
そして決勝戦―――

恒子「やって参りましたインカレ決勝せーん!
   実況はアマチュア麻雀実況がすっかり板についてきたふくよかじゃない福与恒子と!」

健夜「健やかじゃない小鍛治健夜でお送りします。って私健康体だよ!?」

恒子「ふむふむ、安産型アピールですかー?」

健夜「そうそう華奢に見えますけどこれでも実は脱いだらすご……何言わせるの!?」

恒子「それはそうと今大会の注目は何と言っても全員一年の西東京代表と岩手代表ですよね」

健夜「せっかくノリツッコミしたのにスルー!?
   ……こほん、この世代では実業団入りした江口セーラ選手も最近ではレギュラーとなり頭角を表してきましたし、
   大阪で同じチームにプロ入りをした愛宕洋榎、竹井久、福路美穂子の三選手も来年にはレギュラー入りかと言われていますね」

恒子「しかーし! そんな黄金世代の中で三年連続優勝を成し遂げた選手がここにいます!
   そう、皆さんご存知の宮永照です!
   いやー、プロリーグの実況はまだやらせて貰えないんで視聴率の取れる宮永選手がインカレに来てくれたのは私としてはありがたい限りです」

健夜「ぶっちゃけ過ぎだよ!
   えっと、対する岩手県代表も去年インターハイに出場しているメンバーが集まっています」

恒子「というか去年の宮守女子メンバーのまんまですよね」

健夜「そうですね。その後も熊倉トシコーチが指導に当たり力を伸ばしています。
   特に麻雀経験の浅かったエイスリンウィッシュアート、姉帯豊音の両名の成長が凄まじいです」

恒子「なんと脅威の連続和了を誇る宮永選手とエイスリン選手の和了率がほぼ同じと言うデータがあります。
   こういった所からも強さが伺えるチームですね」

健夜「そうですね」

健夜(データ調べたんだ……私は二人よりこーこちゃんの成長の方が驚きだよ)

筆(タイピング)が止まったので今回の更新はここまでです。
竜華の名誉挽回回と言った感じでした。

おおう。saga入れるの忘れてピー入ってる……
仕留めるとかそんな感じの言葉で脳内補完お願いします。

恒子「ちなみに両校のオーダーはこうなっております」

西東京代表 先鋒:宮永照 次鋒:弘世菫 中堅:小走やえ 副将:清水谷竜華 大将:辻垣内智葉
岩手県代表 先鋒:姉帯豊音 次鋒:エイスリンウィッシュアート 中堅:鹿倉胡桃 副将:臼澤塞 大将:小瀬川白望

健夜「西東京代表は中堅の園城寺選手が補欠の小走選手と交代していますね。
   高校時代から体調に不安があるようなので大事を取ったと言う事でしょうか」

恒子「ちなみに今大会では交代する選手の所にそのまま入るのがルールとして決まっております。
   なので仮病とか使っても都合の良いようにオーダーを組み替えたりできません。
   大学生は単位にバイトに忙しいのは分かりますが大会にはちゃんと出てきて下さいね!」

健夜「岩手県代表は宮守女子時代のオーダーから姉帯選手と小瀬川選手が入れ替わってますね。
   エースである姉帯選手を先鋒に据える、定石通りのオーダーに変更と言った所でしょうか」

恒子「ちなみに、姉帯選手はインターハイの時に宮永選手の妹である宮永咲さんと対戦して敗退しています。
   形を変えたリベンジマッチですね。これは血の雨が降りますよぉぉ」

健夜「降らないから! 普通に麻雀するだけだから!」

恒子「と、普通に麻雀してるだけで数々のトラウマを生み出してきたグランドマスターが申しております」

健夜「そ、それは強い人と打ってると楽しくなってきてついつい力が入り過ぎたとか色々あってぇ」

恒子「それでは先鋒戦開始です! カメラとマイクを対局室へ移しますねー」

健夜「ってまたスルー!? ちょっとま――」ブツンッ

対局室

照「……いじめる?」

豊音「いじめないですよー!! むしろこっちがいじめられる側じゃないかってくらいです!」

照「良かった……姉帯さん身長高いし取っ組み合いになると負けそうだったから」

豊音「ええっ!? 私そんな事するように見えます!? ちょーショックだよー……」

照(あからさまに落ち込んじゃった……
  姉帯さんだって女の子だし暴力振るう人みたいに言われたらショックだよね)

照「えっと、あの、ごめんなさい……
  アナウンサーの人があんな事言ってたから真に受けちゃってた」

豊音「……じゃあサインください」

照「え?」

豊音「許してあげるからサイン下さい! 出来れば皆さん全員の!」

照「え、えっと。分かった。後でみんなに聞いてみる」

豊音「やったー、ちょーうれしいよー」

照「切り替え早い子だなぁ……」

モブA・B(私ら影うっすいなぁ……)

今更気づいたんだけどインカレで県単位の代表は麻雀人口一億の世界観でもさすがにあり得ませんね。
地区代表くらいにしておけば良かった。

照「さて、姉帯さんがインカレ優勝校の選手からサインを貰うためにも早く始めようか」ギュインギュイン

豊音「それはどうかなー?」ポポポ

先鋒戦直前の控え室

トシ「ここまでは順調に勝ち進めてきたけど、最後の最後でとんでもないチームと当たっちまったねぇ」

豊音「インターハイ三連覇の宮永照さんに弘世菫さんでしょー。
   団体戦3位の千里山の園城寺怜さんに清水谷竜華さんでしょー。
   個人戦3位の辻垣内智葉さんでしょー。ちょー有名人ばっかりだよー」

塞「インカレ決勝校のエースでモデル顔負けの身長のアンタも大概有名人だけどねぇ」

白望「帰る頃にはサインをお願いされる側かも」

豊音「えっ、どっどどどどしよー! 何の準備もしてないよー」

胡桃「ドカンっ! って感じで色紙一杯に名前書けばそれっぽいかも」

エイスリン「~♪」サラサラ

塞「おお、見事な筆記体。さすが英語圏内だね」

エイスリン(トレードマークの帽子を強調した豊音の似顔絵)

白望「一緒に付けるイラストは任せろってさ」

トシ「はいはい、盛り上がるのは良いけど色紙にインカレ優勝校って書きたくないのかい?」

塞「そうですね、相手が強いだけにしっかり対策を考えないと」

胡桃「ほら、作戦会議だよ! シロも起きるの!」

白望「えー、私最後だしそれまで寝かせてよー」

塞「とか言いながらなんだかんだで全員の対局を見守ってるよねシロって」

白望「……うるさいさえ」

トシ「まあまあ落ち着きなさいな。
   さて、スター選手は情報が多いからそれだけ対策立てやすいのよね。
   そんなわけだから豊音、アンタに宮永照への対策を伝授するよ」

豊音「はーい」

トシ「まずは―――」

ここから闘牌描写が入るがダイジェストじゃけんのう。
席は東家:姉帯 南家:A 西家:B 北家:照って事で。

東一局:豊音の親番の一巡目

豊音「先勝リーチだよー」

照(いきなりダブリーか……清澄の優希みたいに先行逃げ切りの能力? 
  東一局はひとまず様子見かな)

豊音「ツモ! ダブリー一発ツモのみで3900オールだよー」

豊音(様子見の一局ではとにかく和了る事。ですよね監督、じゃなかったコーチ)

照(リーチしか役が付かない状況からの3900オール。これを連発されるときついかも)

豊音:111700 A:96100 B:96100 照:96100

東一局一本場:豊音のツモ前

照(さて、見るか……)ゴゴゴゴゴ

照(さっきのは親番の1局目のみダブリーをすると一発ツモを確定させる『先勝』の能力か。
  他にも5つの能力があるんだ。全部ピンポイントで使われたらさすがにきついかも)

『ぼっちじゃないよー。みんなといるから楽しいよー』

照(精神状態としては、成績どうこうの前にチームメイトと過ごす時間が楽しくて仕方ないみたい。
  ……これは覗いちゃ悪かったかな。ごめんね。
  でもチームメイトとの時間を大切にしてるのだったら私も負けない)

照「ツモ、300・500」  

照(だから私も全力を出させてもらう)

豊音:111200 A:95800 B:95800 照:97200

東二局:Aの親番

照(この手牌は……)

豊音「大盤振る舞いだよー」

一筒一筒一筒 白白白 西西西 二萬四萬 八索 東 ツモ牌:五索

照(いきなり三暗刻・白と自風牌の役牌2が確定してる……
  三元牌と自風牌の暗刻をそれぞれにばらまくのが『大安』の能力だったっけ。
  一見、高い手を献上して自滅してるようだけど……
  でも姉帯さんにとって三元牌や風牌は安全牌も同然だし、必然的に数牌ばかりになるから順子系で牌を集めやすい。
  そして、他家が大物手を和了ろうと欲を出した所を安手で刈り取る、か……
  そもそも、満貫確定のこの手は今の私には高すぎるし暗刻を一つ崩して和了るしかないか)

照「ツモ、700・1300」

照(他家の大物手に振り込まないか冷や冷やしたけど思いの外簡単に和了れたかな)

豊音(チャンピオンは連続和了してこそだしそうこなくちゃ。
   でも、和了っちゃうと次が大変だよー)

豊音:110500 A:94500 B:95100 照:99900

東三局:Bの親番

照(……しまった。『仏滅』の発動条件が完全には分からなかったけど、大安発動時に和了る事だったんだ。
 『大安』発動時に和了った人を次の局で八種八牌にするのが『仏滅』の正体か……
  配牌は最悪だけど九種九牌じゃないから流局させる事も出来ない……
  だけどこのくらいならまだ行ける!)ゴゴゴ

照「ロン、ホンチャン役牌2で5200」

B「は、はいっ」

照(無理矢理鳴いて手を進めれば何とか和了れた……
  姉帯さんはテンパイの気配あったし危なかった)

豊音(追いつけなかった。やっぱりチャンピオンは早いね。すごいっ)

豊音:110500 A:94500 B:88900 照:106100

東四局:照の親番

照(三連続和了で回ってきた親番……ここは大事にしないと)ギュインギュイン

豊音(おおーっ。あれが生で見られるよー。ちょー楽しみだよー)


中盤くらい

ギュインギュイン……
ガシッ、ドゴーン!

照「ロン、メンタンピンドラ1赤1で12000」

B「あわわわわ……」

豊音「まくられちゃったよー。でも生でギュインギュインが見れてちょーかんどーだよー」

A「ギュインギュイン……?」

豊音(見たいものは見れたしチャンピオンの呼吸も何となく分かったし、ここからはちょー本気出すよっ)

豊音:110500 A:94500 B:76900 照:118100

やっぱダイジェストでも闘牌描写入れると長くなるわ……

東四局 一本場

照「リーチ」ギュインギュイン

豊音「追っかけるけどー」ポポポ

照(先負か……これは咲と対局した時にも出してたし分かる。これの対策は……)

ギュインギュイン……
ガシッ! ドガッ!

照「リーチ一発ツモ一盃口ドラ2白の一本場は6100オール」

照(一発で和了ってしまえばいい……!)ゴッ

豊音(力でねじ伏せられちゃったよー。でもそうこなくちゃ!)

豊音:103300 A:88300 B:70700 照:137700

東四局 二本場

豊音(この辺からさすがのチャンピオンでもきつくなってくるんだっけ。
   そろそろ攻め時かな……?)

照「リーチ」

豊音「また追っかけるけどー」

照(またこの展開か。でも私の速度には追いつけ……)ゾワッ

豊音(ニヤリ)

照のツモ牌 赤5p そのままツモ切り

照「しまっ……」

豊音「ロン、タンヤオ赤2の二本場は5800だよー」

照(やられた。赤5p一枚を持っているともう一枚の赤5p待ちで和了りやすくなる『赤口』……
  先負と見せかけてこっちを使っていたのか)

豊音:110100 A:88300 B:70700 照:130900

南一局:豊音の親番

豊音「またまた先勝リーチだよー」

照「ポン」

照(とりあえず一発は消したけど……親のダブリーが当たり前とはとんでもない能力だ」

トシ(豊音の素質は天江衣や神代小蒔のような魔物の類と同等だからねぇ。
   性格が純真なもんだから勝利への執着心とかが無くて困っていたんだけど……
   負けた時の悲しさと悔しさを教えてくれた宮永咲には感謝しないとね)

豊音「ツモ、ダブリーツモのみで2000オールだよー」

トシ(お陰で姉帯豊音は正真正銘の天才になった……!)

照(お構いなしに次巡で和了られたか。
  打点が戻った分だけスピードも早くなる私を追い抜くとはね……面白い!)

豊音:116100 A:86300 B:68700 照:128900

南一局 二本場:豊音の親番

照「ツモ、タンヤオのみの一本場は400・600」

照(そう簡単に私に追いつけると思わない方が良い……!)ゴッ

豊音:115500 A:85900 B:68300 照:130300

南二局 Aの親番

豊音「大盤振る舞いだよー」

照(また大安か。いっそのこと和了っても良いんだけど……
  仏滅の支配力に対抗するには順々に打点を上げていく方が良さそうだ)

中盤くらい

B「ロ、ロン! 三暗刻ホンイツ字牌2は12000!」

A「え、マジ!?」

照(Aは欲が出て安易な放銃をしてまったな。
  Bも3位と4位の点数移動はほとんど意味が無いのに和了らずにはいられなかったか。
  この流れが姉帯さんの思い通りなら、場の支配力は天江衣に匹敵するか)

豊音(宮永咲ちゃんの真似するのも結構楽しいよー。
   ……なんて、宮永照さんと真っ向勝負しても多分勝てないから苦肉の策なんだけどねー。
   この調子で出鼻をくじきながらプラスで終えてみせるんだから。
   そしたらシロ、褒めてくれるかなー)

豊音:115500 A:73900 B:80300 照:130300

次は南三局 Bの親番という所で終わりです。

豊音:115500 A:73900 B:80300 照:130300
南三局 Bの親番

B(うわぁ……配牌最悪。鳴いて形式テンパイでも取れれば……)

照「ロン、タンヤオのみで1000」

B(やっぱり無理でしたーっ)

豊音:115500 A:73900 B:79300 照:131300
南四局 照の親番

照(私の親番だけどまだまだ打点が和了ってないな。
  今の点数でも十分と言えば十分だけど、みんなのために連荘してなるべく点を稼かないと)

照「ツモ、平和ツモで700オール」

照(まずは一本場……)

豊音:114800 A:73200 B:78600 照:133400
南四局 一本場 照の親番

豊音「ポン」

豊音「チー」

豊音「チー」

豊音「ポン」

豊音「ぼっちじゃないよー、ツモ。役牌のみの一本場は400・600だよー」

照(友引は咲の中継映像は穴が開くくらい前から見たから知ってた。
  でも実際にやられるときつい。私が大きな手を育てている間にそれより安い役で追従してくる。
 『背向の姉帯豊音』か。先負の能力からそう言われてるみたいだけど……
  私からすればこうしてずっと二位に付けられてるこの状況こそ背向だと思うよ)

休憩・親決めを挟んで再び東一局
照が起家でこのような順番になっています。
照:132800 豊音:116200 A:72800 B:78200 

東一局 照の親番

照(点数は増えて行ってるけど姉帯さんとの差は中々広がらない……
  これ後々に響いてくるような気がするしなるべく直撃を狙っていこう)

照「ポン」

照「ツモ、發のみで500オール)

照:134300 豊音:115700 A:72300 B:77700

東一局 一本場 照の親番

照「ロン、3200」

豊音「どうぞ」

照(何もしてこない……様子を見てるのか知らないけど不気味だな)

照:137500 豊音:112500 A:72300 B:77700

東一局 二本場 照の親番

照「ツモ、1500オール」

照:142000 豊音:111000 A:70800 B:76200

豊音(そろそろギュインギュインの打点かなー。
   これやるとちょっと疲れるからしたくなかったんだけど、そろそろいっちゃうよ!)

東一局 三本場 照の親番

照(ダブ東と白の暗刻が来たか。これはまた大安かな。
  次の局仏滅から跳満の手を作るのはきつそうだけど、とりあえずここで親満を和了っておく)

照「リーチ」ギュインギュイン

照(ダブ東白リーチで満貫確定、裏が乗ったらその時はその時。
  照魔鏡で見た感じでは一局内での能力の多重使用は負荷が掛かるからほとんどしない。
  つまり、大安が発動してる今は先負が発動する事はあり得ない)

豊音「じゃあ追いかけるけどー」ポポポ

照(何……? たまたま暗刻が来てただけで大安では無かった?)

そして次巡の照のツモ牌は―――5p

照(まさか……)

豊音「ロン、リーチ一発赤2の二本場は8900。5pちゃんの友達が来たよー」

豊音(さすがに大安、先負、赤口のトリプルはちょーしんどいよー
   ここまでしてようやく宮永さんに一太刀浴びせられるって程度かな。
   ここからはもう大人しくしとくよー)

照(ここへ来て能力の重ねがけ……
  こういう無茶をする子を私はよく知ってると言うのに、なんという慢心だ。
  インハイでは三連覇を成し遂げ、インカレでも大したつまづきもなくここまで来た。
  それですっかり気が緩んでいたようだ)

照:132100 豊音:120900 A:70800 B:76200

照「ツモ、300・500」

照「ツモ、500・1000」

照「ロン、3900」

照:139100 豊音:119900 A:65600 B:75400

南一局 照の親番

照(姉帯さんから出ていたオーラが消えたような気がする。
  ここは連荘のチャンスだ)

B「ロン、3900です」

豊音「はい」

照(わざと差し込んで最後の親を流させたか。
  でも最後まで私のやることは変わらない)

照「ロン、1000」

照「ツモ、500・1000」

照「ロン、3900」

恒子「先鋒戦終了ー! 宮永選手のトップ通過こそ下馬評通りですが、姉帯選手も健闘してプラスで終えています!」

健夜「宮永選手の打点が手の付けられなくなる前に姉帯選手が勢いを断つと言うのが大筋の流れでしたね。
   宮永選手が二回も放銃するのはとても珍しいことでした」

恒子「リーチを掛けたと思ったら逃げられるのと、リーチすら出来ないのってどっちが辛いんですかね」

健夜「それ、なんか違う意味を込めて言ってるよね?」

恒子「さー? 三尋木咏プロの倍満リーチ報道を聞いて以来、どこかの人が鳴きまくってテンパイアピールしてる話なんてしてないですよー」

健夜「咏ちゃんの話をここで出すって事はやっぱりそういう意味で言ってるんだよね!?
   そういうのはワイドショーの仕事であって今ここですべき事じゃないよね!?
   この前だってこーこちゃんは」プツン

『大変申し訳ございません。ただいま映像が乱れておりますので復旧まで少々お待ち下さい』

ギバード「またお花さんダァァァ……。これ多いからこの人の解説嫌い!
     わっかんねー言わなくなって分かりやすくなったし今は咏ちゃんの方が好きー!」

先鋒戦の結果
照:146000 豊音:115500 A:59700 B:78800

大会後に宮守勢+αが照達の店に来るっていう展開が書きたいだけなのに何やってんだろうね。
キンクリしようかな。

どっちでも良さそうと言う感じなのでは重要な場面以外は端折りつつ引き続き決勝戦!

東北代表控え室

トシ「お疲れ様。あの宮永照相手によくやったよ」

豊音「裏をかくのにトリプルで使っちゃったからちょー疲れたよー」

塞「顔色悪そうだとは思ってたけどやっぱりか」

胡桃「そうだろうと思ってソファー繋げといた!」

エイスリン(棒人間が棒人間を蹴飛ばしてる絵)

白望「寝てたのに叩き起こされた……だるい」

塞「寝転がってモニター凝視してた、の間違いじゃない?」

胡桃「素直じゃないなぁ!」

豊音「みんなぁ~~~ありがとう~~~っ!
   ではお言葉に甘えて……あ、ソファーもう一つ」

塞「まだ足りないの!?」

トシ「さて、次はエイスリンだね。アンタは自分のやりたいようにやってきなさい」

胡桃「頑張って!」

塞「一気に駆け抜けちゃいなさいなー」

豊音「ちょー応援してるよー」

白望「……エイスリンなら行けるよ」

エイスリン「ウン、ガンバル」

西東京代表控え室

菫「いつもの事ながら1位通過ご苦労だった」

照「でも今回は姉帯さんにしてやられた」

やえ「それでも王者の打ち筋である事にはかわりありませんよ」

照「う、うん。ありがとう」

照(いつの間にか近づかれておしぼりで手を拭かれている……)

菫(ぐぬぬ……)

竜華「そういえば今大会でてるやん相手にプラス終了って姉帯さんが初めてやな」

怜「照ちゃんのはじめて……」

菫(ガタッ

智葉「寝言で何言ってるんだ怜は……」

智葉『おい、本当は起きてるんだろう? いつまでも竜華に膝枕してもらってるつもりだ』

怜『ありゃ、やっぱりガイトちゃんにはバレとるかー』

智葉『決勝まで来て体調不良を理由に欠場したのは、あの子が原因か?』

怜『さぁ、どうやろな』

智葉『まあ、やえも遅れを取るのは思っていないから別に良いけど』

怜『そーそー、今回はこれがウチのベストオーダーや』

菫「さてと、そろそろ行ってくるか」

照「すみれー、頑張って」

智葉「いつも通りにな」

竜華「ファイトやでー」

やえ「王者のリードを守るのが騎士の努め。ゆめゆめ忘れぬように」

菫「分かってるさ」

次鋒戦開始
親決めの結果はBが親番となり以下の順番になります
B:78800 菫:146000 エイスリン:115500 A:59700

東一局 Bの親番

菫(さて、この状況では二位の岩手代表と四位のAのどちらを狙うかだが……
  やはり二位の岩手代表だろうな)

菫「ロン、8000」ドシュ!

エイスリン「ハイ」ガキーン!

菫(何……? 何か大きな盾のような物が見えたが……)

岩手控え室

塞「弘世さんの弓は盾を描いて弾き返す。まずは作戦成功ですね」

トシ「これでエイスリンへの精神的ダメージは皆無さ。
   後はエイスリンのやりたいようにやらせよう」

B:78800 菫:154000 エイスリン:107500 A:59700

東二局:菫の親番

菫(さきほどの盾はなんなのかは分からんが直撃を取るのには成功してる。
  この調子で行くぞ)

3巡目

エイスリン「リーチ」

菫(早いな……二向聴の状態ではまだ狙えない)

その2巡後

エイスリン「ツモ、リーチツモ、ウラドラ2、2000・4000デス」

エイスリンの手牌 123m 456m 567s 88m 99m ツモ牌:9m

菫(その手牌でリーチのみだと? 3巡目でこれなら一通や清一色だって狙えたろうに)

B:76800 菫:150000 エイスリン:115500 A:57700

東三局 エイスリンの親番

エイスリン「ロン、ピンフノミ、1500デス」

菫「はい」

菫(くっ……5巡目で和了られたのでは狙いを定める前に逃げ切られる。
  しかも平和のみなんていうノミ手で和了ってきたぞ)

B:76800 菫:148500 エイスリン:117000 A:57700

エイスリン「ツモ、リーチツモ、イッポンバ、1100オール」

エイスリン「ツモ、ピンフタンヤオツモ、ニホンバ、1500オール」

エイスリン「ロン、ピンフ、サンボンバ、2400」

菫(おいおいなんてスピードだ……火力こそ無いがスピードだけなら照に匹敵するぞ。
  何かされる前に最速で和了ってしまおうと言う事か?)

東四局 四本場

B:71800 菫:145900 エイスリン:127200 A:55100

菫(ふぅ、ようやくテンパイ。そして狙い撃つ準備も万端だ。
  さあ、無防備な姿を私に晒すと良い……)

エイスリン「ツモノミ、ヨンホンバ、900オール」

菫(なん、だと……)

岩手代表控え室

トシ「理想の牌譜を最速で描き出す……それがエイスリンの今の能力さね。
   配牌からテンパイへ至るまで裏目に出る事はほぼ皆無。
   手を高くするための張り替えをしないから平均打点は低いけど、和了率は高校の時より高くなった」

塞「去年のインハイでは完全に抑えられた事が相当こたえてたみたいだからねぇ」

胡桃「私もマイナスだったからエイスリンだけが悪いわけじゃないのに、自分の事ばっかり責めて……」

白望「でも、今のエイスリンは完封とか狙い撃ちとか、そんなダルい事をやられた所で関係ない」

豊音「だって、今のエイスリンちゃんは―――」

岩手代表の全員(私達の自慢のスピードスターなんだから!)



恒子「次鋒戦終了ー! 岩手代表のエイスリン選手、自身の親流れ以外ではほぼ誰にも和了らせず堂々のトップ通過です!」

健夜「これでエイスリン選手は今大会では宮永選手の和了率を抜いて単独一位になりましたね」

恒子「それ、今言うことですか? 相変わらず宮永照選手には厳しいですね。若さへの僻み?」

健夜「……余計なこと言うんじゃなかった」

恒子「二位通過の弘世選手の和了は全て区間トップのエイスリン選手へのシャープシュートです」

健夜「それが無ければ今頃逆転されてますね。
   それでも和了る事のみに力を注いだエイスリン選手の懸命な姿勢が勝りました」

恒子「それでは最後に現在のスコアと区間スコアを表示して休憩に入ります!」

総合得点 西東京:159,700 岩手:155,100 A:37,500 B:47,700
区間スコア菫:+13,700 エイスリン:+39,600 A:-22,200 B:-31,100

岩手代表控え室

エイスリン「ブイッ」

豊音「エイスリンちゃんちょーすごかったよー!」

塞「トップとの差は4600か。これはもう捉えたも同然だね」

白望「胡桃か塞がAかBのどっちかを飛ばしてくれたら私の出番になる前に勝ちが決まるね」

胡桃「また楽しようとしてる……! まあ狙うけど! じゃあ行ってくる!」

豊音「胡桃ちゃんがんばれー」

白望「ここでもう決めちゃって」

塞「まあ、狙えるなら狙うに越した事無いね。でも無理はしないように」

エイスリン(胡桃を胴上げしてる絵)

胡桃「おっけー!」

スタスタスタ

塞「それにしても後半戦はいつにも増してスピード勝負だったねぇ」

エイスリン(眼鏡を掛けた女の子の似顔絵)

白望「ああ、清澄の次鋒の真似ね」

塞「でもあの子の似顔絵にしちゃ美化しすぎじゃ」

エイスリン「オカゲでワタシ、ツヨクナレタカラ」

塞「その気持は大事だけど何も真似までしなくて良いのに。相手さんはご愁傷さまだったね」

西東京代表控え室

菫「次鋒戦怖い次鋒戦怖いいつの間にか試合が終わってる次鋒戦怖い……」

照「菫が壊れた……」

智葉「プラスで帰ってきたというのにどうしたんだ」

菫「途中からどうやって和了ったのかすらよく覚えてないんだよ……
  まるで世界が早送り再生でもされてるように感じて、気がつけば終わっていたんだ……」

竜華「泉も決勝は和了ったり直撃食らってる内にいつの間にか試合が終わったとか言っとったなぁ」

怜「次鋒戦っていうフィールド自体に何か魔物でもおるんやろか……」

照「とりあえずお疲れ様。ほら、ここにあんぱんっがあるよ。食べて」

菫「すまないな……」モグモグ

怜「折角店からケーキとか持ってきとんのにあんぱんっ?」

竜華「二人が会った時にてるやんが食べてたのがあんぱんっだったとかで思い出の品らしいで」

怜「ウチらとセーラの三色パンみたいなもんなんかな」 

竜華「そうかもしれへんな。
   チョコクリームをどっちが食べるかで怜とセーラが喧嘩しとったんが懐かしいわ」

智葉(ダヴァンに作り方教えてもらったレモネード美味しい)ゴクゴク

やえ「……」

怜「やえ、次はアンタの番やで」

やえ「怜、アンタもう元気そうだし私と―――」

怜「今更オーダー変更はできへんよ」

やえ「しかし……」

怜「うん、分かっとる。鹿倉胡桃はテンパイ気配が分かりにくいからウチの未来視が有利やって言うんやろ?」

やえ「そうだよ、だから」

怜「確かに、あの子だけやったら確かにウチが適任やわ。
  でもB大学のあの子はやえの方が適任や。ていうかやえが戦わなあかん」

やえ「……」

怜「インターハイに忘れてきたもんを取り返すんは今やで。
  うちらにも見せてーな、小走やえの王者の打ち筋を」

やえ「……やれやれ、そこまで考えていたという事はやっぱり仮病だったのかい」

怜「万全じゃないんはホンマやで。だからやえに任せるんや」

やえ「分かったよ、ではお見せしよう、王者の打ち筋を!」

中堅戦開始5分前

恒子「休憩を挟みまして間もなく中堅戦が始まります!
   ぶっちゃけ西東京代表と岩手代表の一騎打ちになってきた感じですがどうでしょう」


健夜「確かに残りの2校はここからの挽回は難しいと思います。
   ですがB大学の中堅は相当な高火力選手ですからまだ分かりませんよ」

恒子「と言ってるそばから最初に入場してきたのがその選手ですね。
   では改めまして紹介を。B大学中堅、松実宥選手です!」

健夜「去年プロ入りした赤土晴絵さんが阿知賀女子の顧問をしていた時に育てた選手の一人ですね。
   中でもこの子が一番のお気に入りだったらしく、二代目レジェンドを襲名しています」

恒子「混一色や清一色、赤ドラを含む三色同刻など基本的に和了る時の打点は高いですね」

健夜「ですが場合によっては中のみで早和了りをしたりベタオリをしたり柔軟性の高い選手です。
   赤土さんが同じチームにスカウトするのかと思っていましたが大学進学を選んだようですね」

恒子「なんでも実家の旅館が上手く行ってないみたいですよ。
   しかも客が来ないんじゃなくて支配人である父親の経営手腕が悪いせいなんだとか。
   だから未来の女将候補として大学で勉強中だそうです」

健夜「よくそこまで調べたね……マスコミってやっぱり怖いよ」

恒子「いやこれ本人も公言してるんですよ。貸借対照表が暖かいせいで懐が寒いって」

健夜「つまり赤字って事ですか。
   本人は上手い事言ったつもりなんかなくてそのまんまの意味なんだろうなぁ」

恒子「まあ、さすがに宮永照選手ほどではないですが、
   奈良県期待の星として注目されているので視聴率の取れる選手である事はかわりありません」

健夜「また数字の話ー? あんまり何回も言うとさすがにウザがられるよー?」

奈良県のとある家庭

ギバード「宥ねえダアアアア!」

穏乃「おー! 本当に宥さんTVに写ってるよ!
   玄さんからいきなり電話来た時はびっくりしたけどみんなで応援しないとね!」

憧「ちょっシズ、身を乗り出しすぎだって! 画面見えない!」

玄「お姉ちゃん頑張れー」

憧「でもこれは正直きつくない?」

玄「トップや2位とは10万点以上も差が付いてるもんね……」

穏乃「大丈夫だって! 宥さんならきっとなんとかしてくれる!」

憧「なんとかしてくれるたってこれは……
  まあ宥姉なら区間トップは取れるだろうけど。ねえ灼さん」

灼「二代目レジェンド……私が……ぶつぶつ……」

憧「駄目だ聞いてないや」

再び会場

やえ(松実宥……私が直接対戦した松実玄ほどの火力はないが、色々な打ち方が出来る便利な能力を持った選手だ。
   奈良県期待の星と言われるのも納得だよ。正直言って格上の相手だ。
   みんなには大見得切ってきたけど挑戦者として挑ませて貰うよ)

ということで今回はここで終わりです。
次回は小走先輩、宥姉、胡桃の三つ巴の中堅戦の予定。
うーん、そろそろモブ大学のライフが尽きそうだしかませ的な強さのオリキャラとか出そうかなぁ。
出来ればあんまりオリキャラ出したくないんだけど……

宥「こんにちはー。お久しぶりです」

やえ「どうも。県予選以来だね」

宥「園城寺さんが欠場だって聞いたんですけど……体調は大丈夫ですか?」

やえ「大丈夫だよ。今頃はまた竜華の膝の上じゃないかな」

宥「そうですか……それなら良かったです」

宥(玄ちゃんの代わりにリベンジしようと思ってたのに残念だな。
  でも小走さんだって玄ちゃんを相手にプラスで終わった人、油断はしないよ)

やえ(やっぱり怜と戦いたかったんだろうかね。ま、心配しなさんな。
   ―――退屈な思いなんてさせてやらないから)

胡桃(混ざれない……! 同じ奈良県出身で因縁があるのは分かるけど、無視してたらひどい目に遭うよ!)

西東京:159,700 岩手:155,100 A:37,500 B:47,700
席決めの結果 東家:やえ 南家:宥 西家:胡桃 北家:A大学モブとなりました。

東一局

やえ(親で7巡目テンパイ……これは行くしかないね)

やえ「リーチ」

控え室

怜「綺麗なリー棒回しや、今日のやえは走っとるな」

竜華「せやな、絶好調や」

智葉(リーチに一家言ある人間にはあれで調子が分かるんだな)

照「ふんっ、ふんっ。駄目だ、上手く回せない……」

菫「あれはリー棒に愛された人間だけが出来る技だ、早々真似出来るものではないさ」あんぱんっモグモグ

再び対局室

やえ「ツモ、リーヅモピンフは1300オール」

やえ(まずは一撃……でも予想通り赤ドラは来なかったね。
   松実宥も鹿倉胡桃も親リーを見て綺麗にオリてきたし、大きく引き離すのは厳しそうだよ)

西東京:163,600 岩手:153,800 A:36,200 B:46,400

東一局 一本場

中盤

宥「」トン
宥の捨て牌 5s(赤)

やえ(このタイミングで『暖かい牌』切り……これは多分張ってるね。
   リーチしないのは打点が十分だからか待ちが広がるのを狙ってるのかどっちなんだろうねぇ)

胡桃(ずっとダマ麻雀やってきたから分かる……この人、絶対張ってる!)
胡桃の捨て牌 5s

胡桃(ツモ和了なら西東京の親っかぶりでウチとの点差は縮まるしここはベタオリするよ!)

二巡後

宥「ツモ、ツモタンヤオ三暗刻赤2の一本場はで3100・6100です」
宥の手牌333m 555m 777m 45p 66p ツモ牌:3p

やえ(そう来たかい。私があんたの能力を知ってるから裏をかいて出和了りするつもりだったわけだ。
   だが残念、とっくに研究済みさ。ニワカじゃない私はその手には乗らないよ)

胡桃(やっぱり張ってた! この調子で守りを固めてどこかで西東京を出しぬいてトップに踊り出るんだから!)

宥(我慢してあんまり暖かくない牌を持ってたのに直撃取れなかった……
  A大学の人がそろそろ飛びそうだしあんまり削りたくなかったのに……)

西東京:157,500  岩手:150,700 A:33,100 B:58,700
東二局 宥の親番

という所で今回の更新は終わりです。

西東京:157,500  岩手:150,700 A:33,100 B:58,700
東二局 東家:宥 南家:胡桃 西家:A大学 北家:やえ

宥(私の親番……出来れば小走さんか鹿倉さんから直撃を取りたい。
  でも、鹿倉さんはダマで張ってた前の局でも綺麗にオリてた……
  教えてもらった牌譜やデータでも放銃率はとても低い上に、わざと点数の低いにばかり差し込んでる感じだった。
  うーん、直接削るのは難しそう……
  そうなると小走さんの裏をかくしかないんだけど、小走さん頭良さそうだし……
  ううん、悩んでても仕方ない。出来る限りの事はしなくちゃ)

やえ(それにしても、持っていようと思えば赤くない牌まで持っていられるとなると厳しいね……
   今回は露骨に態度に現れていたから見破る事が出来たけど、そんなものは隠そうと思えばいくらでも隠せる。
   インターハイ決勝戦の菫がいい例だ。
   彼女は準決勝で見破られた癖を修正するばかりでなく、時にはブラフとして用いる事で精度を格段に向上させた。
   ここからは読み合いになりそうだね……)

胡桃「……」
   
10巡目

宥「リーチ」

やえ(来たね親リー。松実宥の河には索子と字牌の捨て牌が多いし、普段通りの染め手か一通あたりかね?)

 胡桃の捨て牌は4枚目の北、Aの捨て牌は3mで松実宥の和了は無し。
 小走やえのツモ番になる。

やえ(点差もあるしA大学はツッパるみたいだね。
   ま、松実宥がAを見逃せば同巡フリテンになるからAの下家である私としてはありがたいけどね。
   さて、私は親の3巡前に捨てた現物の2sを切って様子を見るかな)

やえの捨て牌:2s

胡桃「ロン! 3900!」

やえ「え……?」

和了役は平和タンヤオ一盃口の30符3翻の3,900 胡桃→やえへの直撃。
加えて松実宥のリーチ棒1000点が供託点として胡桃に入る。

恒子「おおーっとぉ! 一位の西東京代表が二位の岩手代表へ放銃!
   ここへ来てとうとう岩手代表がトップへ躍り出たー!!」

健夜「松実選手の河には打点の高さが露骨に現れていましたからね。
   現物切りは妥当な判断だと思います。
   索子が出やすいだろうと予測を立てて、オリる準備もしながら手を作っていた鹿倉選手が上手かったと言えるでしょう」

胡桃(よそ見ばっかりしてるからこういう事になるんだよ!)フンス

宥(親番流されちゃった……あったくない……)

西東京153,600(-3,900) 岩手155,600(+4,900) A:33,100 B:57,700(-1,000)
東三局 東家:胡桃 南家:A大学 西家:やえ 北家:宥

岩手代表控え室

豊音「やった! 胡桃がトップに立ったよー!」

塞「こらこら、はしゃぐにはまだ早いでしょ。まあ、気持ちは分からなくも無いけど」

トシ「一番失点が多かった事を相当気にしてたみたいだからねぇ。
   だからっていきなり鳴き麻雀に転向しようとした時は焦ったよ」

エイスリン「……ワタシモ、ゴメンナサイデシタ」

白望「あの時は誰も悪くなったよ。
   それに、エイスリンがそうだったように胡桃だってちゃんと立ち直った」

トシ「その通り。今のあの子なら万全の状態でバトンを渡してくれるに違いないさ」

西東京代表控え室

菫「逆転されてしまったか……くそ、私がもっと稼いでいれば」

竜華「菫は十分に活躍しとったって。それよりもやえは大丈夫やろか……」

怜「トップを明け渡してもたいうてもまだ2,000点差やんか。
  やえはこの程度でメゲる打ち手やないって」

照「その通り、まだまだ巻き返せるよ」

智葉「あり得ないとは思うが、このまま失速するような事になっても竜華と私で取り返せばいいだけじゃないか。
   今まで公式戦から逃げていたやえがようやく表舞台に出てくれたんだ。
   私としては是非優勝メンバーにしてやりたい、竜華もそうだろう?」

竜華「……そうやな。やえ、絶対に勝てなんて言わへん。
   でも自分の力は全部出し切るんやで」

対局室

やえ(鹿倉胡桃の打ち筋は把握していたはずなのに簡単に振り込んでしまうなんてね……
   松実宥……阿知賀女子OGの松実宥に気負い過ぎていたみたいだよ)

胡桃(やった! トップ浮上!
   豊音やエイスリンのリードを守るだけだったけど、今大会で初めてちゃんとみんなに貢献出来た気がする。
   ……ううん、そうじゃない。ここからもっと貢献するんだ!)

胡桃「ロン! 12,000!」

A「ぁぅ……」

和了役は混一色一気通貫の満貫 胡桃→Aへの直撃。

胡桃「一本場!」

胡桃(ここからはツッパり気味の4位を狙い撃ちして一気に飛ばしちゃうよ!)

やえ(飛ばして逃げ切ろうって魂胆かい。良いさ、付き合ってあげようじゃないか)

宥(うう、このままじゃ……)

西東京代表:153,600 岩手代表:167,600(+12,000) A:21,100(-12,000) B:57,700
東三局 一本場:胡桃の親番

A「り、リーチ!」
Aの捨て牌 西

やえ「西」

やえ(リーチで少しでも打点を上げるつもりだね。
   でも役牌を鳴いて混一色をテンパイ出来たし、親から出てきそうな牌での待ちは万全だし行けるはず)

やえ「……」トン

宥「……」トン

宥「……」ブルブル

やえ(ん……? 随分と震えてるようだけど思うように牌が集まっていないのか?)

胡桃(うーん、大きな手が張れる気配も無いしここはベタオリで良いかな。
   ツモられた時はしょうがない!)

A「あ……きた! 6,100・12,100!」

やえ「え……?」

胡桃「って、三倍満の親被りはさすがにきついんだけど!」

宥「……」

和了役は立直、門前清自摸和、タンヤオ、三色同刻、三暗刻、裏ドラ2、赤ドラ2の三倍満
子のツモ和了で親被りは鹿倉胡桃

やえ(赤2……なるほど。わざと牌への支配を弱めていたわけかい。
   それにしても、やっぱりドラ牌というのは怖いものだね)

胡桃(頭がそのまま裏ドラに乗っちゃったかぁ……
   押せ押せ麻雀はこういうのがあるから怖い。
   でも、もう自分ではやろうとは思わないけどね!)

宥(うう、寒いよぉ。これで少しは無茶をやめてくれると良いんだけど……)

西東京代表:147,500(-6,100) 岩手代表:155,500(-12,100) A:45,400(+24,300) B:51,600(-6,100)
東四局 東家:A大学 南家:やえ 西家:宥 北家:胡桃

A「ツモ! 4000オール!」

和了役は立直、門前清自摸和、平和、、赤ドラ2の満貫
親のツモ和了

やえ(また赤ドラ……ウチや岩手代表の点数を削るのは良いけどね。
   それで自分がラスに転落しちゃ意味が無いんじゃないかい?)

宥(そ、そろそろ良いかな? もう良いよね?)ブルブル

西東京代表:143,500(-4,000) 岩手代表:151,500(-4,000)A:57,400(+12,000) B:47,600(-4,000)
東四局 一本場

A「リーチ!」

胡桃(Aがすっかり勢いづいてきちゃってるなぁ。
   この点数だけ見ると完全に安全圏なんだけど、副将戦を考えるとあんまり稼がせ過ぎる訳にもいかないよね。
   ……よし、これでどうかな!)

胡桃「……」トン
胡桃の捨て牌:中

宥「ポン」

胡桃(トシさんの言ってた通りだ! やっぱり赤い牌を集めてるみたいだね。
   私はテンパイまで遠いし、ここは最下位の松実さんに和了ってもらって親を流してもらう。
   この状況だと2位との差が縮まらないようにするのが一番大事だからね!)

宥「ツモ、1,100・2,100」

和了役は翻牌(中)、赤ドラ2の30符3翻
子のツモ和了で親被りはA大学

西東京代表:142,400(-1,100) 岩手代表:150,400(-1,100)A:55,300(-2,100) B:51,900(+4,300)
南一局 東家:やえ 南家:宥 西家:胡桃 北家:A大学

今回の投下はとりあえずここまでです。
別のスレで指摘された事を参考にして点数申告の形式を少し変えてみました。

西東京:159,700 岩手:155,100 A:37,500 B:47,700

南一局 東家:やえ 南家:宥 西家:胡桃 北家:A大学 ドラ表示牌:西
西東京代表:142,400 岩手代表:150,400 A:55,300 B:51,900

やえ(私の親番か。ここは和了っておいて少しでもトップとの点差を縮めておきたい所だね)

胡桃(なんて思ってるだろうけどそうはさせない!)

中盤

やえ「リーチ」クルクル

胡桃(ここで親リー……捨て牌の感じからすると普通に両面待ちかな?
   タンピンツモなら最低でも7,800で追いつかれるし、どこか安い手に差し込むのが良いかな……?)

Aの捨て牌 1p 9p 1s 1s 9s 3m 5p(赤) 北 9p Aの副露牌 234s 55(赤)5m 678m

胡桃(この感じだとタンヤオ赤1のテンパイって所かー。
   なるべく早く局を進めて点数を維持して副将で一発逆転に期待ってつもりかな?
   そこまで上手く行くとは思えないけど……)

A「ロン! 2000です」

胡桃「はい」

胡桃(やっぱりそんなもんだったね。
   ベタオリでも良かったんだけどツモ和了されそうだったしこれがベストかな)

やえ(くっ、親番が潰された上にリー棒分削られた)

和了役は、タンヤオ、赤1の30符2翻+供託点1000点
西東京代表:141,400(-1,000) 岩手代表:148,500(-2,000) A:58,300(+3,000) B:51,900

ここからはちょっとダイジェストなんじゃ

南二局 鹿倉胡桃が門前清自摸和、平和、ドラ1をツモ和了。
南三局 流局 テンパイ者は小走やえのみ(一気通貫赤1を一位への直撃狙いで黙聴)
南四局 松美宥の立直に全員がベタオリしてそのまま流局。テンパイは松美宥のみ。
    供託点1,000点は半荘トップだったA大学が手にする。

西東京:142,700 岩手:149,100 A:56,600 B:51,600

恒子「中堅の前半戦終了ー! 見事に逆転を果たした岩手代表がトップをキープしております!」

健夜「スコアこそマイナスではありますが、2位の出鼻を挫く事を重点を置いた立ち回りが見事でした。
   点数を稼ぐ事が全てではない団体戦では、こういった選手が一人いてくれると心強いですね」

恒子「なるほどー。そして西東京代表は今大会初の二位転落です。一体どうしたんでしょう」

健夜「むしろ今までずっと一位だった事の方が凄いんだけどね……
   中堅の小走選手は必要以上に松実選手を警戒しているように見受けられます。
   気になるのはよく分かりますが麻雀は4人でやる競技ですから他家にも注意を払うべきでしたね」

奈良県のとある民家

ギバード「宥姉2位ダァァァ」

憧「まぁ最下位の人が全ツッパしてる状況じゃ飛び終了回避のために下手に動けないよね」

玄「でも中堅戦開始時点は10万点以上差が付いてたのに9万点くらいになったよ」

穏乃「つまり流れは来てるって事だね! 頑張れ宥さん!!」

灼「このまま追いつけると良いね」

灼(とは言ったけど、宥さんは勿論だけど小走さんにも頑張って欲し。
  あの人だって同郷だし壮行試合の恩もあるし。
  2代目レジェンドって呼ばれてる宥さんが羨ましいとかそんなんじゃないんだから。
  ……なんで私じゃ駄目だったのかな)

休憩中の対局室

宥(思ったより稼げなかったなぁ……
  こんな調子じゃ二代目レジェンドなんて名乗れない。
  赤土さんとのあったかい約束も守れないよ……)

阿知賀女子高校 卒業式の日

宥「私が、二代目レジェンドに……?」

晴絵「そう、私は来年度からプロリーグに行く事になったのは知ってるよね」

宥「はい。瑞原プロと同じチームなんですよね。おめでとうございます」

晴絵「ありがと。それで、だ」

宥「それで?」

晴絵「プロの世界ではルーキーなのに、レジェンドなんて大層な肩書きを持ってるってのもなんかおかしいじゃん?
   だからこれはどこかへ置いて行こうと思ってね」

宥「それで後輩に襲名させるって事ですか?
  それは分かりましたけど、それだったら私なんかより……」

晴絵「分かってる。灼だろ?」

宥「分かってるならなんで……」

晴絵「慕ってくれてるのは嬉しいし、私がプロ行きの誘いに乗ったのも準決勝でのあの子を見たからだ。
   でもね、いつまでも私の影を追っているだけじゃ駄目だと思うんだよ」

宥「影、ですか……」

宥(私や玄ちゃんがずっとお母さんの事に執着してきたのと同じ感じだよね)

晴絵「駄目かな?」

宥(思い出に浸るのはとても楽な事だからよく分かる……
  そしていつの間にか依存してしまって前に進めなくなっちゃう事もあるって知ってる。
  それは私達だけじゃなく、想われてる方にとっても悲しい事なんだ)

宥「分かりました……。力不足かもしれませんけど頑張ってみます」

晴絵「変なお願いしてすまないね」

宥「いえいえ」

晴絵「あと、変なお願いついてでにもうひとつ。
   この肩書きを背負うからには、灼の中で美化されたまま止まってる私のイメージを上書きしてしまうほどに活躍してね」

宥「そ、それはちょっと荷が重いかもです……」

晴絵「大丈夫、宥なら出来る。ってちょっと無責任過ぎかな?」

宥「大分……」

晴絵「おお、結構はっきりとゆうねぇ。……あー今のなし!
   別にギャグのつもりで言ってないからね!?」

宥「ふふ、分かってますよ。あんまり暖かくなかったです」

晴絵「だからつい出ちゃったんだってー。うーん、なんか締まらないなぁ。
   やっぱ駄目だわ私、こういうの向いてない」

宥「そうでも無いですよ。先生としての赤土さんは怖い所もあったけどとても暖かかったです。
  今までお世話になりました」ペッコリン

晴絵「いやいやこちらこそ、色々勉強させて貰ったよ。
   プロに行ってからもここで学んだ事は大切にするから」

宥「赤土さんがプロの舞台で新しい伝説を築いていくのを楽しみにしています」

晴絵「任せな。肩書きやら何やらを全て捨てて0からのスタートだけど……
   小鍛治プロを叩き潰して名実共にトップを目指すから!」ゴッ

後半戦開始 場決めの結果 東家:A大学 南家:やえ 西家:胡桃 北家:宥 ドラ表示牌:発

宥(灼ちゃんのためにも赤土さんのためにも、そして私のためにも……
  背負った物の重さに見合うだけの人にならないと!)

宥「あ、あの……上着を脱いでも良いですか?」

胡桃「え、どうぞ……」

胡桃(というか暑苦しいから逆に脱いでくれた方が……)

やえ(一体どういうつもりなんだろう……)

宥「よいしょっと……」ぬぎぬぎ

宥「うぅ、寒い……」ガタガタガタ

胡桃(え? なんでそんなに寒そうなの?
   今の時期だとこれくらいが普通なんだけど!)

宥(でも、これだけ寒いからこそ……)

9巡目

宥「カン」 中の暗槓 ドラ表示牌:8p

宥「リーチ」

宥(より多くのあったかい牌が集まってくる!)ゴッ

胡桃(ドラの役牌を暗槓からのリーチ……これで最低でも跳満確定!
   振り込むのだけは絶対避けないと……)

やえ(中張牌は当たり牌の可能性が極めて高いだろうから、抱えつつヤオチュウ牌で和了役を作らないと……
   インターハイで松実玄と戦った時の事を思い出すんだよ。
   あの時だって私は上手くやれたはず)

13巡目

宥「ツモ。8,000・16,000」

胡桃「なっ……!」

やえ(間に合わなかった……っ)

恒子「か、数え役満だー! 松実選手、ドラ牌の中や赤ドラを絡めての強烈な一撃だー!」

健夜「薄着になった途端にこれまでとは比べ物にならないほどの牌の偏り方になりましたね」

恒子「面前なのにどんどん赤ドラが揃っていきましたからねー。
   ……はっ、まさか全裸になったらもっとすごい事に!?」

健夜「いきなり何言い出すの!?
   あ、あれでも相当無理してるように見えるし多分それは無いと思うよ……」

恒子「そうですか。残念です。
   それにしてもド派手な和了でした! 二代目レジェンドの名前に偽り無しです!」

健夜「そうですね……って今さらっと残念って言わなかった!?」

健夜(二代目、か……私にはそういう風に慕ってくれる子がいないから赤土さんが羨ましいな)

和了役:門前清自摸和、飜牌、三色同順、ドラ4、赤4(数え役満)子の宥のツモ和了

西東京:134,700 岩手:141,100 A:40,600 B:83,600
東二局 東家:やえ 南家:胡桃 西家:宥 北家:A大学 ドラ表示牌:2m

12巡

宥「リーチ」

宥(七対子で待ちは良く無いけど、南待ちならどこかから出る可能性もある。
  ここはリーチを掛けて威嚇しておく……!)

やえ(また高そうな手でリーチを掛けたね。出和了りには期待せず打点重視って所かね。
   そう何度も和了らせる訳には行かないね。ここは鳴いて聴牌まで持って行って―――)

『ロン。32,000です』

やえ「……っ」ピクッ

終局

やえ「ノーテン……」

胡桃「ノーテン」

宥「テンパイです」

A「ノーテン」

やえ(切れなかった……直撃を食らうのが怖くてベタオリしてしまった……)

恒子「松実選手、今度は赤ドラを絡めた七対子のテンパイでしたが和了れませんでした」

健夜「小走選手は松実選手の捨て牌を鳴けば聴牌でしたが素直にオリることを選びましたね。。
   2巡目後に来たのが松実選手の当たり牌だったので、結果だけ見るとこの判断は正しかったのですが……
   先ほどの数え役満のイメージが後を引いているようですね。
   このままだと松実選手の独壇場になってしまいそうです」

西東京控え室

智葉「まずいな……逃げ腰になってる」

菫「松実宥は去年のインターハイで私が一番苦戦した相手だった。
  手強い事は分かっていたが一年でここまで成長していたとは……」

照「……」

怜(やえ、ホンマにそんな打ち方でええんか……?)

回想シーン インカレのオーダー提出直前

怜「なぁ、ホンマにあのままのオーダーでええん?」

やえ「良いも何もあれが最善のオーダーだと思うけど」

怜「そういうんはええねん。ウチはアンタが控えでもええんかって聞いてんの」

やえ「そのことかい。そもそも私はチャンピオンの打ち筋を間近に見たかっただけだからね。
   マネージャーしかしないつもりだったし問題ないよ」

怜「え……?」

やえ「大学でもやるつもりなら強いところへ行くだろう?
   それなのに弱いどころか麻雀部すらないここを選んだ時点で察して欲しいね」

怜「つまり、大学では麻雀をやるつもりが無かったって言いたいんやな?」

やえ「そう。麻雀は高校までにして大学では勉学に勤しもうと思っていたんだよ」

やえ「……麻雀ではこれ以上は上に行けない事を悟ってしまったからね」ボソ

怜(なるほど、やえの学力ならもっと上だって狙えたはずやからずっと疑問やったんや。
  ウチと竜華がここを選んだ理由と似とるな。
  ウチらと違うんは、やえは完全に麻雀を捨てるつもりやった所か……)

怜「やえ、今でも麻雀は好き?」

やえ「好きじゃなきゃマネージャーなんてやろうと思わないよ」

怜「そっか……。控えの出番があるとしたら多分ウチの代わりやろうからその時は頼むな」

やえ「そうならないように体調管理はおろそかにしないように頼むよ」

怜「そこはまぁ、善処しますって事で」

西東京:132,000 岩手:139,500 A:34,300 B:94,200
南四局 東家:宥 南家:A大学 西家:やえ 北家:胡桃

恒子「中堅戦もとうとうオーラスに突入です! 後半戦はまさに松実選手の独壇場! 
   試合の主導権は完全に彼女が握っています!」

健夜「他の選手はとにかく先に和了るか、ベタオリするかの二択を迫られていましたね。
   確かに平均打点が極めて高い手作りをしてきますからツッパるのは危険ではあります。
   ですが、それを逆手に取った威嚇目的のリーチでベタオリさせたりと他家を翻弄していましたね」

恒子「そしてオーラスはその松実選手の親番で、もし和了れれば決勝戦での宮永照選手の区間スコアを上回ります!
   大会中の平均和了率はすでにエイスリン・ウィッシュアート選手に抜かれていますが、ここでもまたタイトルを失ってしまうのか!?」

健夜「そうですね。そういった観点からも注目の一局です」

健夜(数字だけでは測れない強さもあるんだけどなぁ。
   でもこういう事を言うのが恒子ちゃんの仕事だし突っ込むのは野暮だよね……)

やえ(このままだと照の個人タイトルまで潰してしまう……
   私は二位に転落して王者の経歴に泥を塗るためにのこのこと出て来たのか?
   しかし、やっぱり私では……)

6巡目

宥「リーチ」ゴッ

恒子「おおっとー! ここでツモり四暗刻のリーチだー!
   そして出和了りでも親ッパネ! これはまたベタオリなんじゃないでしょうか!」

健夜「いや、分かりませんよ。
   小走選手も一向聴ですし次巡で聴牌出来れば勝負に出る事も考えられます」

健夜(そもそもどんな手を聴牌してるとか観客側の立場だから分かる訳で当の本人達は……
   いや、あの子には何となく分かっているかも。そんな目をしてる)

やえ「……」カチャ

やえ(ここに来て聴牌か……さて、どうする?
   私の待ちは8pと西のシャボ待ちで、立直している松実宥から直撃を取れる可能性は高い。
   彼女はこういう赤くない牌を絡めて手を作る事はあまりしないはずだから。
   でも、そう思わせるのが狙いだとしたら?)

宥「……」

やえ(駄目だ。こんな状況で立直なんて掛けられない。
   そもそも、立直するために捨てる5pは生牌だし危険過ぎる。
   そうだ、やっぱりここはオリるのが最善……)

怜『インターハイに忘れてきたもんを取り返すんは今やで。
  うちらにも見せてーな、小走やえの王者の打ち筋を』

由華『来年は私が晩成の王者の威信を取り戻してみせますから!
   だから……いつかまた戻ってくる事を信じて待ってます!』

やえ(……そうだよ。私は晩成高校のエースだった小走やえなんだよ。
   こんな体たらくじゃ歴代の偉大なOGの方々に申し訳が立たない。
   そして、未来の部員達にとって私もそんな存在でなきゃいけないんだ。
   二代目レジェンド、その師弟の絆は素晴らしいものだし松実宥自身も強いよ。
   でもさ、私が背負っているのは王者の伝統なんだ!)

やえ「リーチ!」クルクル

やえ(だからお見せしようじゃないか、王者の打ち筋を!)

恒子「ここで小走選手もリーチだー! オーラスは松実選手と小走選手の熱いめくり合いの様相です!
   果たして先に当たり牌を掴むのはどちらだ!?)

宥(私が……!)ゴッ

やえ(私だ……!)ゴッ






「ロン」




やえ「8,000だよ」

宥「……はい」

恒子「き、きまったー! 先に当たり牌を掴まされたのは松実宥選手でした!!
   そして子の和了により中堅戦後半も終了、オーラスで西東京代表がトップに返り咲きました!」

健夜「最後は互いの意地がぶつかり合った良い対局でしたね」

健夜(めくり合いの時には二人の背後に見えたのって、赤土さんや晩成のOGの方達だよね?
   やっぱり先輩達が与える影響って大きいんだね。
   私も、久しぶりに母校に行ってみようかな)

西東京:141,000(+9,000) 岩手:139,500 A:34,300 B:85,200(-9,000)
中堅戦区間スコア やえ:-18,700 胡桃:-15,600 A-3,200 宥:+37,500

ハートビーツ大宮 練習室

晴絵「宥、お疲れ様。良い対局だったよ」

はやり「ごきげんよー☆ あれれ? エルちゃんスマホで何見てるのー?」

晴絵「インカレ決勝戦の中継ですよ。あとエルちゃんって呼び方何とかならないんですか」

はやり「えー、だってハルちゃんだけは絶対にやめてって言ったのエルちゃんだよー?」

晴絵「ハルちゃんだけは絶対に駄目です」

はやり「そこだけはやけに意地になるよね。この呼び方に特別な思い入れでもあるのかな!?」

晴絵「さあ、どうでしょうね」

はやり「またそうやってはぐらかすー。はやりつまんないっ!
    でも、大事にしたい思い出っぽそうだから聞かないでおいてあげる。
    それよりも私にも中継見せてー」

晴絵「ああ、はい。どうぞ」

はやり「ふむふむ、おー、一度派手な和了を見せて相手の揺さぶりを掛ける打ち方がエルちゃんとそっくりだね」

晴絵「あ、やっぱりそう思います?
    まあ私の場合は数々の情報をかき集めて裏をかく打ち方なのに対して、この子は力づくでやってしまえる所は違うんですけどね」

はやり「二代目レジェンドさんか。良い弟子を持ったね」

晴絵「この子だけじゃなくて阿知賀こども麻雀倶楽部で教えてた子はみんな自慢の弟子ですよ」

はやり「そっか。そしてエルちゃんは私から二代目牌のおねえさんを襲名すると」

晴絵「それだけは絶対にありません」

晴絵(同じレジェンドでも私と宥はやり方は違う。時代は変わっていってるんだよ。
    これを見て灼もそれに気づいてくれるはずだ)

奈良県のとある民家

灼(ハルちゃん、宥さん……二人の言いたい事は分かりました。
  一生ハルちゃんのファンなのはやめないけど、阿知賀のレジェンドだった頃のハルちゃんばかりを見るのはやめにするよ)

灼「穏乃、憧、玄。この放送終わったら部室行かない?」

憧「あ、インカレ見て燃えてきた感じ? 実は私もなんだよねー」

穏乃「私も! よーし思い切りうちまくるぞー!」

玄「そうだ、折角だからみんなも来ない?
  久しぶりに子供麻雀倶楽部やってた頃みたいにみんなで打ちたいな」

子供達「いきたい!」

灼「決まりだね。ハルちゃんみたいに上手くは出来ないけど出来る範囲で教えてあげる」

ギバード「ありがとうアラチャー!」

灼「アラチャーって……別に良いけど」

憧(試合開始前はなんか機嫌悪かったみたいだけど、今は逆にすごい機嫌良さそう。
  宥姉が活躍したのが嬉しかったのかな? まあ私には分からないけど)

灼(まずは麻雀を打つ以外にハルちゃんがやっていた色々な事にチャレンジしてみよう。
   そしたら何か見つけられるかもしれない)

巽由華の自室

由華「最後のリーチ、見事でした。
    先輩から託されたエースのバトンに報いるために、私も頑張らないと」

ピンポーン

由華「はーい、って岡橋じゃない。どうしたの?」

初瀬「これからレギュラーの皆でインカレの牌譜を検討しないかって話になったんですけど、巽先輩はどうします?
    メールに気づいてくれてないみたいだから近場だし来ちゃったんですけど」

由華「良いよ。どうせだし私の家に集まってもらおう」

初瀬「分かりました。他の皆さんにも連絡回しておきますね」

由華「岡橋、今年は私達が全国に行くよ」

初瀬「当然じゃないですか!」

という事で、中堅戦終了+他校パートをまで投下して今回はここまでです。
ほのぼのキャンバスライフを書くつもりだったのにどうしてこうなった……
でも、名門校の伝統を背負って頑張る小走先輩を書きたかった。

次回からは副将戦の予定。

西東京代表・控え室

やえ「結局中堅戦での最多失点か……不甲斐ない打ち筋を見せて面目ない」

智葉「何を言っているんだ。最後まで逃げずに戦って首位を取り返してきたんだ。
   やえを責める奴なんてこの中にはいないさ。もっと胸を張るといい」

菫「松実宥が手強いのは承知の上だったからな。
  私もインターハイでは彼女にだけは一手先を行かれた。
  お陰で今のシャープシュートがあるわけだが……
  今日の対局を見ている限りだとあちらも更に強くなっているようだな。
  まあ、今度対局する時があれば必ず勝ってやろうとは思っているが」

照「……菫、松実さんの事になるとやけに熱弁しだすよね」プンスカ

菫「えっ!? あ、いやそういうつもりじゃ……」

照「さとはー、菫が薄情者なんだけどー」スリスリ

智葉「うわこら! ひっつくな暑苦しい!」グイグイ

菫「」

竜華「あはは、菫の自業自得やしフォローはせーへんでー」(怜の髪の毛梳きながら)

怜「せやな」(竜華に膝枕されながら)

菫「むむむ……」

竜華「さて、次はウチやしろそろ行くわ。怜、ちょっとの間ごめんな」

怜「ええよー。その間はやえの膝借りとくから」

竜華「……」

怜「嘘やって、うそうそ。ちゃんと座って竜華を応援しとくからそんな目で見んといて」

竜華「まぁ、それやったらええけど。
   やえ、お疲れ様。後はうちに任せてーな」

やえ「ああ、頼んだよ」

 そして竜華は対局室へ、やえは怜の隣に座る。

怜「……王者の打ち筋、思い出せた?」

やえ「……ああ」

怜「そっか。それなら良かったわ」

岩手代表・控え室

豊音「お疲れ様だよ胡桃ー」

胡桃「ごめん、最後に逆転されちゃった」

塞「気にしない気にしない。
  それにしても、松実宥さんはとんでもない人だったね……
  私があの人と戦ってたらモノクル全壊だった気がするよ」

エイスリン「デモ、クルミガンバッタ」

白望「最終的にたったトップに1,500点差まで詰め寄ったんだからどう見ても勝者は胡桃だよ」

トシ「オーラスの小走やえはどうしようも無かったさ。
   そこ以外では完璧なゲームメイクだったよ」

胡桃「そうですか……ありがとうございます」

塞「そうそう、胡桃にそこまで静まられると私の立場が無いって。
  何の巡り合わせか私の相手は『また』あの子なんだから」

A大学(学校法人神代学園が運営する鹿児島の大学)・控え室

初美「お疲れ様ですー」

霞「はい、おしぼりです。これで手を拭いて下さい」

中堅「あー、ありがとう。すっごい疲れたー。
   去年のインハイってあんな子達ばかりだったわけ?」

初美「そうですねー。宮永照さんみたいな人が他にも何人かいましたよー」

中堅「まぁ、アンタ達のいたチームですら二回戦負けだった時点でレベルは推して知るべしだよね。
   結果だけ見ればほとんど失点してないけど、完全に掌の上で踊らされてたよ……」

霞「急に大会に出たいだなんて言い出してすいませんでした。
  このサークルは本当だったら勉強の合間の余興という立ち位置のはずでしたのに」

中堅「いやいや、気にすること無いって。
   まさかこんな所まで来れると思って無かったけど、上の世界が見られるのは楽しいよ。
   良くも悪くも私達はそんなに情熱注いでる訳じゃないから心折れるなんて事もないし」

初美「先鋒の人なんてあの宮永照と姉帯豊音さんと対局したのにもう平然としてたですよ……」

霞「すごいわよね」

中堅(まあ、アンタ達と打っててそある程度は慣れてるってのもあるけどね)

初美「私の顔に何か付いてるですかー?」

中堅「いや何も……付いてない訳ではないね。いつものお面してるし。
   まあそろそろ時間だし行ってきなよ」

霞「頑張ってね、初美」

初美「了解ですよー」スタスタスタ

中堅(薄墨と石戸はこの4年でプロになれる成果を残さないと実家を継ぐのが決定してるんだよね……
   私達は応援しか出来ないけどふたりとも頑張りなよ)

B大学(関西にある国立大学)

恭子「お疲れさん、決勝でも大活躍やったな」

宥「でも原点復帰までまだまだあるよ。数字の赤字はあったかくない……」

恭子「せ、せやな」

恭子(うーん、学部がちゃうからまだあまり打ち解けられてへんなぁ。
   ホンマはもっと仲良くしたいんやけど、どうも会話のテンポが掴めへん。
   洋榎やったらこの子とも上手くやれるんやろか……)

宥(ま、またやっちゃったよ……
  なんでもあったかいかどうかで例えるのは控えた方が良いって憧ちゃんからアドバイス貰ってたのに。
  き、嫌われてないかな……?)

恭子「じゃ、じゃあそろそろ行くわ」

宥「う、うん。行ってらっしゃい」

恭子(さて、松実さんとのコミュニケーションの取り方はまた考えるとして……
   今は目の前の対局に集中や。相手は清水谷竜華、臼沢塞、そして薄墨初美。
   この組み合わせやと席決めの時から戦いが始まっとると言っても過言じゃない。
   ベストなのは臼沢さんが薄墨さんの四喜和を塞がざるを得ない配置になる事や。
   最低でも薄墨さんの下家になる事だけは阻止せんとな……)

席決めの結果 東家:末原恭子 南家:臼沢塞 西家:清水谷竜華 北家:薄墨初美

恭子(って思ってたのに最悪の結果やん!)

塞(うーん、清水谷さんが初美の下家になるのがベストの配置だったんだけどなー。
  塞ぐ意味があんまり無い配置で楽なのは良いんだけど)

竜華(あちゃー、同郷のよしみで末原さんには同情するわ。でも……)

東一局 東家:恭子 南家:塞 西家:竜華 北家:初美

7巡目

竜華(対戦相手になった以上は手加減せーへんで!)

竜華「リーチ!」バシーン!
竜華の捨て牌:北

初美「ポンですよー」
初美の副露牌 北北北 東(暗槓)

塞(この状況でそれ捨ててリーチ!?
  待ちが多いからか知らないけどなんて血迷った事を……
  まあ、わざわざ自滅しようとしてくれてるんだったら有難い限りだけどね。
  やられちゃえ、清水谷竜華!)
  
竜華(とか思っとるんやろうなぁ。
   でもな、この状況でウチが振り込む心配とかする必要ないねん)

竜華の手牌 234m 456m 444p 8p 888s ツモ牌:8s

竜華「カン」カンドラ表示牌 7s

竜華(だって、ここからウチが牌を捨てる事は無いんやから)

竜華「ツモ。4000・8000!」

塞(リーチからの送り槓で嶺上開花!? たまたまなの?
  いや、清水谷さんはそんな運頼りの打ち方なんてしない。
  役満に振り込むより先に和了れる自信があったわけだ。
  となると、やっぱりこれも能力なんだろうなぁ。
  北家の初美だけじゃなくリーチを掛けた時の清水谷さんも警戒しなくちゃいけないわけか。
  忙しい対局になりそう。頑張れ私)

恭子(やっぱり普通の麻雀はさせて貰えへんか。
   しかもよりにもよってリンシャン使い……これは燃えるわ。
   似たもの同士かと思っとったけど、そういう打ち方するんやったらこっちにも考えがあるで)

初美(北家流されたですよ……)

和了役:立直、門前清自摸和、タンヤオ、嶺上開花、ドラ4(倍満:子のツモ和了)
竜華:157,000(+16,000) 塞:135,500(-4,000) 初美:30,300(-4,000) 恭子:77,200(-8,000)

今回の更新はこれで終わりです。
竜華の打ち筋を完全オリジナルにしちゃってるんですけど今月号でそろそろお披露目されてそうですね……。

あと、ここからは一気に巻いてそろそろ日常編に戻ります。
やりたいエピソードは後2つほどなので年末までに終わればいいなぁ。

和了役:立直、門前清自摸和、タンヤオ、嶺上開花、ドラ4(倍満:子のツモ和了)
竜華:157,000(+16,000) 塞:135,500(-4,000) 初美:30,300(-4,000) 恭子:77,200(-8,000)

東二局 東家:臼沢塞 南家:清水谷竜華 西家:薄墨初美 北家:末原恭子

塞「ツモ。2000オール」

和了役:連風牌、ドラ1(30符3翻:親のツモ和了)
竜華:155,000(-2,000) 塞:141,500(+6,000) 初美:28,300(-2,000) 恭子:75,200(-2,000)

塞(和了るまでに13巡掛かったけど、清水谷さんからは特に何も感じなかった。
  リーチが掛かるまでは特に何もしてこないのかな?
  だったら塞げば終わりだ。使うなら存分に使うと良いよ)

恭子「……」

初美「うぅ……」

東二局 一本場

竜華「立直」トン

初美「……」トン

恭子「……」トン

塞(来たね、和了れる物なら和了って見せると良いよ……!)トン

初美「ロン! 3900の4200ですよー」

塞「……! はい……」

塞(しまった、清水谷さんに気を取られ過ぎた。
  それにしてもダマで平和・三色同順なんて、去年戦った印象からは考えにくい打ち方をしてくるんっだね)

初美(鬼門を開かせてくれない相手もいるって事を教えてくれたのは他でもない貴女ですからねー。
   普通に打っても勝てるように霞達と練習したですよー。
   じゃあ、あの時の借りは返させてもらうですよ!)

和了役:平和、三色同順(30符3翻:子のロン和了)
竜華:155,000 塞:137,300(‐4,200) 初美:32,500(+4,200) 恭子:75,200

初美「ツモ、1300、2600」 和了役:タンヤオ、対々和(40符3翻)

初美「ツモ、1300オール」 和了役:立直、門前清自摸和、平和(20符3翻)

初美(調子良い……!)

健夜「薄墨選手、着実に点差を詰めてきてますね」

恒子「でもちょっとTV的にはつまらないかなー。
   大四喜! ドドン! みたいなのを視聴者の方々は期待していると思うんですけど」

健夜「切り札は実際に使うだけのものじゃないからね。
   ちらつかせて相手の焦りを誘うとかフェイクに使うとか、持ってるだけで意味のあるものなんだよ」

恒子「なるほど、オトナの駆け引きってやつですか」

健夜「『オトナの』はいらないよ!」

健夜(駆け引きが大事って事をちゃんと意識しないと苦戦することになりそうだね。
   あの子はちゃんと分かってるのかな?)

東四局 一本場 東家:薄墨初美 南家:末原恭子 西家:臼沢塞 北家:清水谷竜華

初美(ここまでは順調ですねー。
   あとは無駄な失点を避けながら一度でも四喜和が和了れれば霞一人で逆転出来る!)

恭子「立直」トン

塞「……」トン

竜華「……」トン

初美(捨て牌には筒子が多めだけど索子が全く無いですねー。
   安牌は無いしこれで親マン確定テンパイだし追っかけるですよ)

初美「立直!」初美の捨て牌:8p

恭子「通らへんで、ロン。裏2つ載って8000やな」和了役:立直、一発、タンヤオ、裏ドラ2

恭子の手牌:567m 88p 345s 55s 888s ロン牌:8p

初美「……はい」

初美(多面待ちですかー。まあ仕方ないですね。
   次は北家ですし気持ちを切り替えて次に行くですよ)

恭子(4位からの直取りとか戦略的に見ると旨味は無いけど、少しでも点数を稼げるだけマシか。
   薄墨初美のアレには対策があるとは言え完璧では無いし、最下位転落阻止と思うことにしよ)

南一局

塞「ツモ、500・1,000」

初美(また北家を流された!)

恭子(せっかくテンパイしとったのに……!)

塞(和了れたから良いけど、清水谷さんにサポートされてたみたいでなんか気持ち悪かったな)

竜華(うん、まあこんなとこやろ)

西東京代表控え室

智葉「薄墨はすでに東と北を揃えていたし親の末原も数巡前からテンパイ気配濃厚だった」

やえ「失点を抑えるには妥当な判断だね」

照「怜ちゃん、竜華のあれって怜ちゃんの……」

怜「んー? ウチがどうかしたん?」

照「あれ? 何もしてないの? でも去年のインハイ決勝では……」

怜「照ちゃん、ちょっとこっち来て」

照「へ?」トテトテ

怜「照魔鏡で何でも見えるのはしゃーないけど、それを何でもかんでもベラベラ喋ってまうのは歓心できへんな」ヒソヒソ

照「ご、ごめん……でも配牌はそこまで悪くなかったのに和了る気が無いように見えたから。
  そういう事なのかなと思って」ヒソヒソ

怜「決勝でも見透かされてたからウチを通して照ちゃんにはバレてるとは思っとったけどな。
  でも、今の竜華は自分の力だけで戦ってる。
  その証拠に、最近見た時は竜華自身の新しい力しか見えんかったやろ?」ヒソヒソ

照「あっ。そういえば……」ヒソヒソ

怜「この局の打ち筋も竜華自身の直感による危機回避やと思うわ」ヒソヒソ

照「直感? 竜華にテンパイ気配が見える能力なんて無かったような……」ヒソヒソ」

怜「能力の有無で強さを測ろうとするのも照ちゃんの悪いクセやで。
  あれは名門千里山の部長として頑張ってきた努力の結晶やから能力なんかじゃない」ヒソヒソ

竜華『立直』バシーン

怜「まあ見とき」

  宮永咲や大星淡を前にして縋れる物全てに縋るしかなかったインハイ決勝の、最善手の見える清水谷竜華やない。
  鶴田姫子や高鴨穏乃と互角以上に渡り合って2位抜けを果たしたインハイ準決勝の、最高状態の清水谷竜華の実力を―――

試合会場

南三局 東家:清水谷竜華 南家:薄墨初美 西家:末原恭子 北家:臼沢塞

塞(来たね、今度こそ完全に塞いでやる……!)

恭子「その牌ポン」

恭子(細かい条件とかはまだ分からへんけど、清水谷さんのこれは立直の次巡で和了れるような能力やと思う。
   だからツモ牌がずれれば計算が狂ってくるはず)

塞(末原さんも何か勘付いてるみたいだね。
  それに加えて私が塞げば、この対局中にもう清水谷竜華が和了れる事はない!)

塞「……」トン

初美(……気のせいかな。今の清水谷さんからは東一局の時みたいな怖い感じはしないですよー)

竜華「……実は、これ前から言ってみたかってん」

恭子「え?」

竜華「ナイス小細工ポン! ツモ! 2600オール!」

和了役:立直、門前清自摸和、平和、裏ドラ1(20符4翻:親のツモ和了)

塞(あれ? カンしないの? ていうか塞いでた割には手応えがまるで無かったような……)

恭子(あー、そう来るかぁ。こういう手合いはウチが一番やりたくないタイプや。
   でも、一番戦ってておもろいタイプでもあるわ)

初美(あの時みたいに送り槓できる手牌になってない……だからあの嫌な感じはしなかったんですかねー)

北大阪地区のとある麻雀卓メーカーの社員食堂

竜華『ナイス小細工ポン! ツモ! 2600オール!』

セーラ「ブフーッ!」

七実「うっわきたなっ! いきなり何すんねん!」

セーラ「わわ、すんません! ちょっとダチに台詞パクられてビックリしてしまいまして」

七実「あー、竜華か。ちょうど副将戦が始まったトコから全部見とるで」

セーラ「あれ? 竜華を知っとるんですか?」

七実「アホぬかせ。千里山のレギュラーは創部の頃から今年の暫定レギュラーまで全部把握しとるわ」

セーラ「すごいっすね。ウチなんか藤白先輩くらいしか知りませんでしたわ」

七実「おい……」

セーラ「あ、す、すんませ……」

七実「ウチの事は覚えとったんやったら許したるわ!」

セーラ「う、うっす」

セーラ(ウチが言うのもアレやけどそれでええんか……?)

健夜『恒子ちゃん、これが駆け引きって言うんだよ』

恒子『???』

健夜『さっきの話ちゃんと聞いてた!?
   切り札を持っていながらあえてそれを使わない。
   この局で清水谷さんがやったのはまさにそれなんだけど』

恒子『一体どういう事なんでしょうか』

健夜『はぁ……臼沢さんに相手の切り札を塞ぐ力があるのは去年のインハイでも話題になってたよね。
   だから臼沢さんの前では切り札ありきの打ち方はしちゃいけない。
   だけど、清水谷さんは普通に打っても普通に和了れるだけの地力がある』

恒子『ほぉほぉ」

健夜「それに対して他の三人は、大きな一発がある事も意識しながら普通に打っても強い清水谷さんを相手にしなきゃいけない。
   これって気を付けるべき事が多いから相当消耗を強いられるんだよね』

恒子『なるほど、とにかく清水谷選手がすごいって事だね!』

健夜『……まあそれで良いよもう』

七実「とにかく清水谷選手がすごいやって。今更そんな当たり前な事を言われてもなぁ」

セーラ「ですよねぇ」

七実「それを去年のマスゴミやネットのアホどもは散々叩きよってからに。
   思い出すだけで今でも腸煮えくり返るわ」

セーラ「見た目通りに責任感の強い奴ですから……
    本来ならチーム全員の責任な所を、自分は部長やからって全部引き受けさせてしもた」

七実「セーラはなんも悪くない。竜華もそこは覚悟して千里山の部長になったと思うしな。
   悪いんはいわれの無い難癖ばっか付けとったアホな連中や。
   まあ、そういう連中が今頃手のひらクルーしてるやろうと思うと少しは溜飲も下がるってもんやけどな」

セーラ「はは! それは最高や! ネットとか普段みーひんけどそれだけは見てみたいっすわ!
    ちょっとスマホ貸してくれませんかね?」

七実「―――しかし、時間の流れと言うのは残酷や。もう昼休みが終わる」

セーラ「マジっすか……まあ俺らは実業団選手やから最低限の仕事しかしてませんけども」

ピンポンパンポーン

アナウンス『昼休み終了5分前になりました。
      が、社長の粋なはからいによりインカレ中継の副将戦が終わるまで昼休みを延長する事になりました。
     『東京へ出ても千里山の清水谷竜華は大阪府民の誇りや! 精一杯応援せい!』だそうです』

ワーワー! パチパチパチ

セーラ「さっすが社長!」

七実「愛してるでー!」

南三局 一本場

塞(どうしよう……立直されたらまた塞いだ方が良いの?)

竜華「立直」バシーン

塞(また来た……! とにかくもう一度塞いでやる!)

恭子「ロン、3900の4200」

塞「……っ。はい」

恭子(すっかり呑まれとるなぁ。悪いけど稼げるうちに稼がせてもらうで)

岩手代表控え室

胡桃「塞……」

エイスリン「ガンバレ……!」

トシ(晴絵からAブロック準決勝のデータを貰ったりして、分析は十分してきたつもりだったんだけどねぇ。
   まったく、若い子達の成長は眼を見張るものがあるさね。まあ、だからこそ面白いんだけどね。
   さて、後半戦を塞にどう戦ってもらうか考えておくとするかねぇ)

南四局

竜華「ツモ、500・1000」

恒子『オーラスは清水谷選手が軽く流し、オトナの駆け引きを駆使して彼女だけが一人浮きのまま前半戦終了です!』

健夜『だから『オトナの』はいらないから!』

前半戦終了時点 西東京代表:159,100 岩手代表:128,400 福岡代表:33,100 京都代表:79,400
竜華:+11,800 塞:-11,100 初美:-1,200 恭子:‐5,800

塞「ただいま」

エイスリン「オカエリ、サエ」

豊音「大丈夫? 疲れてない?」

塞「んー、体の方は意外と大丈夫。
  薄墨初美に加えて清水谷竜華も塞がないといけないと思ってたから席から動けなくなるくらいは覚悟してたんだけど」

トシ「東一局以外は普通に打ってたんだろうね。
   あんなに攻撃的な能力を持ちながら依存せず状況に応じた打ち方が出来る。
   あの子の一番怖い所はそこだろうね」

塞「なるほど……私はまんまと術中にハマってたって訳ですか。反省しないと」

トシ「清水谷竜華に関しては単純に『麻雀』で勝負するしかないね。
   薄墨初美については北家警戒の方針はそのまま。
   最後に、侮ってるわけではないんだろうけど末原恭子への警戒が甘いから気を付けるように。
   気を抜いたら狙い撃ちにされるよ」

塞「はい!」

胡桃「残りの半荘も頑張って!」

白望「塞なら出来るよ」

塞「いい加減な事言ってくれっちゃって。ま、ベストは尽くさせてもらうよ」

西東京代表控え室

智葉「竜華、戻ってこないな」

やえ「そういえば大会中はずっと休憩時間に戻って来なかったね。怜は何か知ってる?」

怜「対局室に残って集中したいって言っとったから心配せんといたって」

照「じゃあ飲み物か何か持ってあげようかな」

怜「あー、それもやめたってくれへんかな?」

菫「どうしてだ? 水分補給は必要だと思うが」

怜「対局中は自分の直感だけを信じたい。
  でもチームメイトと顔を合わせたらみんなに頼ってしまう弱い自分が出てきてしまうかもしれへん。
  竜華はそう言っとった」

やえ「だから一人であそこにいると。ストイックなことだね」

怜「大丈夫、ウチらが応援してるんはちゃんと伝わっとるから」

照「分かった。じゃあここから応援してる」

怜(竜華……頑張りや)

 後半戦は一進一退の繰り返しが続くが、薄墨初美が少しずつ削られていきながら局が進んでいった。
 しかし、オーラスで初めて彼女が大きく動いた。

 3巡目

初美「ポンですよー」副露:南南南

恭子(ダブ南鳴かせてもーた。
   ヤオチュウ牌とは言えドラの1sを早々に捨てとったし筒子の混一色あたりか?
   1位、2位とはまだまだ点差もあるし立直掛けたかったけど、和了られるくらいなら鳴いて仕掛けるべきかもしれへんな)

更に2巡後

初美「カン」副露:西西西西 槓ドラ:6p

塞(筒子にドラが載ったね。こっちは手の進みが遅いし店じまいかね。
  不幸中の幸いか清水谷さんが親だしツモ和了りなら親被りでウチとの点差は縮まる)

竜華(……アカン。これは何か来るわ。
   何をするつもりかまでは分からへんけど気を付けよ)

初美「……」ゴゴゴ

初美(後半戦もオーラス時点ではマイナス、普通に麻雀してるだけじゃやっぱり勝てなかったですか……
   経験値が違うから仕方ないですねー。
   でも、この局だけは私の領域に付合ってもらうですよ)

恭子(薄墨は南家で副露牌が南と西。これってまるで……
   まずい、ウチの仮説が正しいなら薄墨は……)

12巡目

初美「ツモ。8,000・16,000ですよー!」

恭子「大四喜……!」

恭子(間に合わんかったか……)

塞(裏鬼門から開く事も出来るようになってたのか……
  南家と北家で役満チャンスがあるとかインチキにも程があるでしょ。
  フルで使われてたら私の体力は持たなかっただろうね。危ない危ない)

初美(こっちはまだ上手くいかない事も多いからあまり使いたくなかったんですけどねー)

初美「……ふぁ」(立ちくらみ)

初美(やっぱり来ましたか。帰ったら時間一杯まで霞にお祓いして貰わないとですよー)

竜華(最後に役満親被り、なんか来るって思ったウチの直感に間違いは無かったって訳か。
   次にやる時には先に和了って潰せるように動くとして、今日の所はまずまずの成績で終われた事を喜んでもええかな?)

怜(何がまずまずや。その三人を相手にそんだけやれたんやから最高の結果やで)

竜華(そっか……他でもない怜のお墨付きなんやからそうなんやろうな)

竜華「お疲れ様でした!」

恒子『副将戦終了ー! 西東京代表、清水谷選手の健闘により再び2位を引き離す事に成功!
   福岡代表、京都代表はここからの逆転はさすがに厳しいか!?
   とはいえ役満を連続で和了ればまだまだチャンスはあります。選手たちの奮闘に期待しましょう!
   それでは、休憩を挟んだらいよいよ大将戦です!』

副将戦終了時点スコア
西東京代表:148,200 岩手代表:126,700 福岡代表:58,600 京都代表:66,500
副将戦区間スコア 竜華:+7,200 塞:-12,800 初美:+24,300 恭子:-18,700

これで今回の更新は終了です。
書き始めた頃は大将卓の能力や結果が判明してなかったので今回で帳尻を合わせました。

岩手代表 控え室

塞「ごめん、完全にしてやられたよ」

トシ「手の内はどんどん見せてきそうな薄墨初美があんなものを温存してるとはねぇ」

胡桃「ていうか半荘で二回役満が和了れるかもしれないとかずる過ぎるんだけど!」

白望「まあ、全員がそれを知っていればいくらでも防ぎようはあるけどね。四喜和は必要な牌が分かりやすいし」 (しゃべりながら立ち上がる

豊音「あ、シロもう行くの?」

白望「うん。ちょっと試合前のお小水に行きたくて……」

エイスリン「シロ、ガンバッテ!」

塞「あんまりいい状況でバトン渡せなくてごめ……」

白望「いいや、塞はよくやってくれたよ」頭なでなで

塞「ちょ、大学生にもなってそれは恥ずかしいんだけど……」

白望「これくらいなら逆転出来る点差だしダルくないよ。それじゃあ、行って来る」

タッタッタッ……

トシ(何でもないような顔しちゃってまあ。
   チームの大将だから緊張してる所を見せたくないんだろうねぇ。
   頼んだよ、大将)

京都代表控え室前の廊下

恭子(あかん、点差詰めるどころか副将区間のラスやったしみんなに合わせる顔が……)

宥「あ、お帰りなさい」

恭子「た、ただいま……」

宥「喉乾いてますよね? あったかい紅茶を用意してくれてますよ。
  確か……アッサム? だったかな?」

恭子「ありがとう」

恭子(こんな真夏に温かい紅茶って……
   罰ゲームか何かなんかと思うのが普通やけど、これが彼女の普通やねんなぁ……)

宥・恭子「……」

宥「あの、中に入らないんですか?」

恭子「あ、ああ……やっぱりちょっと入りづらいっていうかな……」

宥「……」

ぎゅっ

恭子「ええっ!? ちょ、な、なに!? ていうか体あついなっ!!」

宥「私とぎゅってすると運が貰えるって高校の時のチームメイトが言ってたので……」 

恭子「いやそれやったら試合する前にやってや!」

宥「あっ、それもそうでしたね……」

恭子・宥「……」じーっ

恭子・宥「///」カァァ

サッ

宥「ごごごごめんなさい。私ったらいきなり大それた真似をしてしまいまして……」

恭子「え、ええよ。ウチのためにと思ってやってくれた事なんやし」

恭子・宥「……」テレテレ



美幸(出て行きづらいよもー!)

福岡代表控え室

初美「かすみぃー。試合始まるまでで良いから少しお祓いして欲しいですよ」フラフラ

霞「何かただならぬ気配を感じたのだけどやっぱり使っていたのね。
  もう、あんまり無茶しちゃダメって言ったじゃない」

初美「ごめん。でも私達にはこの4年間しか無いから結果が残したかったですよ」

霞「私も同じだからその気持ち自体は分かるわ。
  姫様……小蒔ちゃんのために参加したインターハイとは違って、今は私達の意志でプロになるためにここにいるのだものね」

初美「そのためにはある程度の無茶もしないといけないですよ」

良子「ザッツライト。初美と霞はようやくスタートラインに立ったようだね」スッ

霞「え? 良子お姉ちゃん?」

初美「いつからいたですか?」

良子「ついさっきね。ワークで近くまで来ていたから顔を出しに来たよ」

霞(というかさっきまでまるで気配を感じなかったのだけど……
  昔から良子お姉ちゃんはこうやって人を驚かすのが好きだったのよね。
 『The Spook(幽霊)』なんていう通り名が付くのも納得だわ)

良子「去年みたいに遊びで麻雀をしに来てるようだったらヘルプなんかするつもりは無かったけど。
   ちょっとはマシな麻雀をするようになったじゃないの」

初美「相変わらず結構きついですね……」

初美(そういう風にちゃんと叱ってくれるから、普段はみんなのお姉さん然としてる霞も『お姉ちゃん』って慕っているんでしょうけどねー)

良子「でも今の二人はグッドだよ。初美のお祓いは私がやってあげるから霞は試合に集中しなさい」

霞「はい。最下位で状況は厳しいですけど……
  何とかして、いえ、絶対に優勝をもぎ取ってきます」ゴッ

良子「その意気だよ」

西東京代表控え室

怜「おかえり」

竜華「ただいま」

照「良い一戦だったよ」

竜華「っ……ありがとう」

やえ「まさに王者の打ち筋だったよ」

竜華「あれ? 王者の打ち筋は照だけのものやったんとちゃうん?」

智葉「やえはこう言いたいんだろうさ。
   私達が優勝するから全員が『王者の打ち筋』なんだと」

菫「予告優勝とは大した自信だな」

照「でも、智葉が言うと大言壮語に聞こえないから不思議」

怜「せやな。智葉なら有言実行してくれるに違いないわ」

智葉「さて、そろそろ行くか」

照「行ってらっしゃい」

竜華「がんばりやー」

智葉「ああ」

智葉(やえと竜華の二人がようやく逃げる事をやめて自信を取り戻した試合なんだ。
   ここで優勝を取りこぼすようではいけない。
   対戦相手には悪いが、不用意に踏み込んでくれば容赦なく狩らせてもらう)ゴッ

対局室

恒子『いよいよ始まりますインカレ決勝大・将・戦! 注目の選手は誰ですか小鍛治プロ!』

健夜『そうですね、やはり暫定トップでバトンを受け継いだ辻垣内選手でしょうか。
   インターハイでは大会ルールの都合で先鋒をせざるを得ませんでしたが、本来の彼女は大将向きであるように思います。
   特にトップで回って来た時の彼女をまくるのは相当骨が折れることでしょうね』

恒子『今大会でも追いつくために無理をしようとしてバッサリ切り捨てられた選手がたくさんいましたねぇ』

健夜『あとは最下位ではありますが石戸霞選手にも要注意でしょうか。
   去年のインターハイ出場者も多い今大会ですが、一年間での変化は一番大きいように思います』

恒子『なんと!? ただでさえ反則級に大きかったのに更に成長したと!?』

健夜『胸の話はしてないよ!? しかも可哀想な目でこっち見るのやめて!!』

霞「……」

白望(石戸霞……「あら、お久しぶりですね小瀬川さん」って、いかにものんびりした感じで話しかけてきそうだったのに今日は視線すら合わせる気配がない。
   うーん、ダルい試合になりそうだなぁ……)

智葉(小瀬川白望に石戸霞、この二人からは麻雀をしている時の照や明華達と同じような気配を感じる。
   やはり向こう側の人間か。相手にとって不足なし)

恒子『それでは、大将戦スタートです!!』

場決めの結果 東家:白望 南家:霞 西家:智葉 北家:美幸
大将戦開始時点スコア
西東京代表:148,200 岩手代表:126,700 福岡代表:58,600 京都代表:66,500

東一局

白望(前半戦は起家かぁ。配牌は悪くないし狙えそうなら高めを……)

智葉「……」

白望(……やっぱり早めに和了っておくかな)

白望「リーチ」

美幸(早いよもー!)

白望「ツモ、1,000オール」

智葉「ふむ」

白望(高めとか直撃を狙おうだとか、この人相手に余計な事はあまり考えない方が良さそう。
   だったら……私がすべきなのはとにかく和了り続ける事)

智葉(不用意に踏み込んでは来ないか。小瀬川白望、やはり一筋縄ではいかないな)

今回の更新はここまでです。中途半端なところですいません。
投下してみたら最後のレスが半端な量だったので大将戦始めちゃいました。

西東京代表:147,200(‐1,000) 岩手代表:129,700(+3,000) 福岡代表:57,600(-1,000) 京都代表:65,500(-1,000)

一本場

智葉「それだ、ロン。5,200の5,500」

美幸「はい……」

美幸(なんだか刃物突きつけられてるような寒さを感じる……怖いよもー)

白望(即効で親が流された……)

霞(そろそろ良いかしらね)

西東京代表:152,700(+5,500) 岩手代表:129,700 福岡代表:57,600 京都代表:60,000(-5,500)

東二局

霞(私の親番ですね……)スゥ

智葉(む。この感じは……)

白望(もう来るのか。というか、東一の時からすでに影響は出始めていた。
   あれだけ強力な能力だからそこまで乱用出来ないってトシさんが言ってたのに……)

美幸(うわぁ……恭子ちゃんの言う通り本当に絶一門になってる……
   って感心してる場合じゃないよもー!)

霞『……』

6巡目

霞『リーチ』

美幸「あ、それポンです!」

美幸(ええと、石戸さんの能力はツモ順をずらすと一時的に崩れるらしいからその間に手を進めればいいんだっけ。
   ううでもまた三向聴だよぉ。遠いなぁもー)

2巡後

霞『ツモ。6,000オール』

智葉(立直、門前清自摸和、役牌、そして混一色で跳満か。
   これに一発や一通あたりが乗るだけで倍満以上になるし、ドラが乗り方次第では数えすら見える。
   ……早めに手を打っておくか)

西東京代表:146,700(-6,000) 岩手代表:123,700(-6,000) 福岡代表:75,600(+18,000) 京都代表:54,000(-6,000)

一本場

白望「……」トン

智葉「ポン」トン

美幸(あれ? この局はなんか手が進むのが早い気がする。
   もしかしてここに来て確変!?)

9巡目

美幸「ツモ! 3,100、6,100です!」

美幸(この三人から跳満手を和了れるなんて……もーすごいよ!
   この調子で頑張ろう!」

智葉「……」

有珠山高校・部室

成香「この感じ、もしかしてあの時の……」ボソボソ

爽「ごきげんよー! 元気してるー!?」

揺杏「ごきげんよう。また獅子原先輩ですか。大学はどうしたんですか?」

爽「そんなの、今日もブッチしてきたよ」

由暉子「ごきげんよう。テサロニケの信徒への手紙二の3章10節には「働きたくないものは食べてはならない」と言った言葉があります。
    つまり、大学をサボってここへ来ている獅子原先輩には食べ物を食べる資格が無いということです」

爽「相変わらずきびしー。まあ、ちょうどダイエットしようと思ってた頃だしちょうど良いか」

揺杏「そういう問題なんですかね……」

成香「……」ジーッ

爽「で、成香はさっきからTVに張り付いてるみたいだけど何を見てるの」

揺杏「今日ってインカレの決勝戦じゃないですか。
   今は大将戦をやってる所なんですがそのメンツの中に『あの人』がいるんですよね」

爽「あー、『あの人』ね」ニヤニヤ

成香「やっぱりちょっと怖いです。でも……やっぱりとってもカッコイイです」ポヤヤン

爽「成香、さっきから心の声駄々漏れダゾ」

成香「わっ。し、獅子原先輩っ。なんでいるんですか」

爽「いやー。ユキちゃんのプロデューサーとしてはコンディションを確認しに来るのは当然の責務だよね」

由暉子「あ、そうだったんですか。だったら働いてる事になるので食べる資格もありますね」

揺杏「だからそれで良いの……?」

爽「そんなことより! 成香は相変わらず『あの人』にご執心なんだねぇ」ニヤニヤ

成香「そ、そんなのではないのですっ。だってそのあのええと」モジモジ

爽「素直じゃないなぁ。まあウチがそういう学校だから気持ちは分かるけどね。
  でも……いつもおどおどしててもたまには勇気を出してみる必要があると思うよ」ヒラヒラ

成香「そ、それは……?」

爽「ファミーユっていう制服の可愛い喫茶店のチラシ。
  大学で出来たミーハーな友達が東京へ行った時に貰ってきたものなんだけどさ」

揺杏「あれ? ここに載ってるのって西東京代表の方々じゃないですか」

爽「そうなんだよ! 麻雀を打たせれば超一流、さらに全員美少女!
  そんな超有名人達がメイド服来て接客してるんだよ!? 話題性抜群に決まってるじゃない!
  今までははやりんしか眼中に無かったけどこれは由々しき事態だよ……
  ユキちゃんの新たなライバル出現だよ……」

揺杏「……はぁ」

成香「そ、それがどうかしたんですか?」(辻垣内さんのメイド服姿キレイです……)ジーッ

爽「実はさ、敵情視察に行こうと思ってるんだよね。
  そして、ここに格安飛行機のチケットが3枚ある。これがどういう意味が分かるかな?」

成香「獅子原先輩は当然行くとして、多分ユキちゃんも一緒に連れていきますよね。
   あれ、一枚余ってます……」

爽「成香、一緒に来ない?」

成香「え、私がですか?」

爽「うん。本当はそのミーハーの友達を連れて行くつもりだったんだけど他に予定があるみたいでさ。
  まあそんなわけで余ったチケットの有効活用に協力してよ」

成香「……そういう事でしたら、仕方ないですね」

爽「決まりだね! インハイが始まる直前辺りに東京入りする感じになるからそのつもりでね」

揺杏「今年は団体戦に出られる人数じゃないからあんまり気にする必要は無いですけどね」ハハハ

揺杏(獅子原先輩、最初から成香は誘うつもりだったんだろうな。
   即断即決の先輩がわざわざ日程をずらしてチケットを取るとは思えないし。
   まったく、素直じゃないのはどっちなんだか)

北海道のとある大学

誓子「爽……また大学休んでるじゃない!」プンスコ

西東京代表:143,600(-3,100) 岩手代表:120,600(-3,100) 福岡代表:69,500(-6,100) 京都代表:72,300(-18,300)

これで今回の更新は終わりです。
せっかく有珠山のキャラも判明してきた事ですし登場させてみました。
見た感じツッコミ不在っぽかったですけど、それだと収拾がつかなくなるのでイマイチキャラが把握しきれていない揺杏さんをツッコミキャラにしてみました。
後で大きくキャラがずれるようだったらその時に補完します(行き当たりばったり)


東三局 東家:智葉 南家:美幸 西家:白望 北家:霞

智葉(さて、椿野をサポートするのは良いがそれだけではこのメンツを相手には勝てないだろうし、健闘したやえや竜華に顔向け出来ない。
   そもそも削られつつトップを守りきるなんてのは私の主義じゃないしな、ここは攻めさせてもらう)トン

8巡目

智葉(さて、聴牌だが……石戸が赤ドラ2枚の筒子を支配している影響か打点があまり伸びないな。
   ここは先制立直で揺さぶりを掛けてやるか)

智葉「立直」トン

智葉(さて、どう出る?)

 智葉の親リーに対して椿野美幸と石戸霞はベタオリ、小瀬川白望のみ全ツッパを選択し局が進む。
 結果は智葉と白望がテンパイ、椿野と石戸はノーテンとなり一本場へ突入する。

一本場

霞『ツモ。4,100・8,100』

智葉「……」

智葉(和了れさえすれば高打点が約束されているんだ。
   この点差だろうと無駄にツッパる必要はないと言うことか。だが―――)

智葉:137,000(-8,100) 白望:118,000(4,100) 霞:84,300(+16,300)美幸:60,700(-4,100)

東四局

霞『リーチ』

智葉「ロン。3,900だ」

霞『……』

智葉(攻める時には字牌への警戒が甘い。そしてこういう結果になる。
   オカルトの力を磨くのは結構な事だが……これは『麻雀』なんだ。
   それだけで上手くいくほど甘くはないんだよ)

白望(やっぱり強いな。トシさんが言うには特別な能力は無いらしいけど、それだけに対策のしようもない。
   ダルいけど……実力で勝負するしかないかぁ)

智葉:140,900(+3,900) 白望:118,000 霞:80,400(-3,900) 美幸:60,700

 傍から見れば石戸霞の高火力が目立っているが、辻垣内智葉と小瀬川白望のトップ争いこそが重要なポイントであった。
 両名は相手が和了れば自分も和了ると言ったシーソーゲームを繰り返し、点差は平行線のまま局が進行していく。
 そして大会の大詰め、大将戦後半のオーラスとなる―――

南四局 東家:美幸(39,500) 南家:智葉(150,800) 西家:白望(126,700) 北家:霞(83,000)

美幸(いよいよオーラスかぁ。行けるかなって思ってた時もあったけど、他の人達に踊らされてただけだったんだね。
   松実さんの火力おかげでこんな所まで来ちゃったけど、やっぱり私には分不相応だったのかな……
   違う違う! 違うよもー! 実力では格上なのは百も承知だけど気持ちで負けてちゃ駄目だよもー!
   先輩の中にはこの大会を最後に引退する人だっている。そんな先輩達に優勝をプレゼントするんだから最後まで諦めない!)

美幸「ツモ! 1,000オール!」

美幸「ツモ! 1,100オール!!」

恒子「おっと椿野選手、小刻みではありますが2連続和了です!」

健夜「ラス親なので和了り続ければ負けはありませんからね。
   もっとも、小瀬川選手と石戸選手は点差を考えると下手には和了れないからと言うのもありますが」」

恒子「石戸選手と言えば後半戦が始まったあたりから息苦しそうに見えるのですが大丈夫ですかね?」

健夜「彼女の打ち方はとても神経をすり減らすみたいですからね。まだ鍛錬が足りていないのかもしれません」

恒子「にしてもあんな反則級のスタイルを持つ美人女子大生が苦痛に喘ぐ姿ってエロくないですかね」

健夜「何そのおじさんみたいな発想!?」

恒子「そうなんですよ! だから私はお茶の間のお兄さんお父さんお爺ちゃん達が心配で心配で」

健夜「おじさんみたいって所は否定しないんだ!?」

霞「はぁ……はぁ……くぅっ……」

霞(やっぱり半荘二回の間にずっと降ろしておくのはまだ早かったかしら。でも、私は……!)グッ

白望(石戸さんがここまで鬼気迫る表情を見せるなんて驚いたな。
   それだけ本気で取り組んでるって事か。私もダルいとか言ってられないな。
   トップとの差は24,100。椿野さんの連荘で今は二本場だからハネ直か倍満ツモで逆転だ。
   何とか手を育てないと……)

三巡目

智葉「リーチ」

恒子「おおーっとここで先制リーチ! 彼女が和了った時点で西東京代表の優勝が決定します!」

健夜「十分な点差もありますし無理に攻める必要も無いように感じますが……
   ここまで来ると自分の和了で決めたいという意地の表れでしょうね」

智葉「……」ゴゴゴ
 
白望(早い……! しかも、数巡もすれば和了りそうな気配がある)スッ

白望「……ちょいタンマ」

白望(今引いてきた牌でテンパイ出来た。でもこの手牌だとタンヤオぐらいしか確定していない。
   崩して手を育てるか、立直してド高めと裏ドラに期待するか……)

白望「……リーチ」

白望(そんな悠長な事は言ってられない。それに勝つにしろ負けるにしろ私が納得出来る方を選ぶ)

そして―――試合終了を告げる「ロン」の声が会場に響き渡る。

智葉「3,900だ」

美幸「……はい」

恒子「試合終了ー! インカレ決勝戦の優勝は……西東京代表に決定しましたー!!
   それでは表彰式の準備が終わるまで一旦カメラをお預かりして、今大会の講評を小鍛治プロから頂きましょう!」

健夜「えー、今大会は宮永照さんを始めとして去年のインターハイを騒がせた選手たちを中心にハイレベルな―――」

対局室

智葉「お疲れ様」

白望「お疲れ様でした」

白望(どっちにしろ届かなかったかぁ……)

美幸「お、お疲れ様でしたぁー」ヘナヘナ

霞「お疲れ、様、でした……」

智葉「おい、大丈夫なのか?」

霞「な、何とか……ご心配をお掛けして申し訳ありません」

良子「お疲れ様。霞、よく頑張ったね」

霞「良子お姉ちゃん……」

白望「貴女は確か戒能プロ……どうしてこんな所に?」

良子「私も一応神代ファミリーだからね。身内の応援に来たんだ」

美幸「そういえば末原さんがそんな事を言ってたような言って無かったような……」

タタタッ

照「智葉っ」

智葉「勝ったよ」

照「うん、勝ったね」

美幸「み、宮永照さん!? ほ、本物だよもー……」

照「な、なんか怖がられてない?」ヒソヒソ

智葉「それはそうだろう」ヒソヒソ

照「そうなんだ……私って怖いんだ……」ショボン

智葉(中身を知らない人にはそう見えるって意味でな)

良子「ユーは宮永照……」

照「戒能さん、お久しぶりです」営業スマイル

良子「プロの世界で二年前のリベンジ出来ると思ってたのにまさかお預けを食らうとは思ってなかったよ」

照「もっと自立出来るようになってからと言われたもので……」

良子「ああ……起きたらブレックファーストが用意されてる生活がどれほど幸福だった事か……」

照「分かります……」

竜華(パンと卵を焼いて牛乳を入れるだけなのに何をそんなに有難がってるんやろ……)

恭子(常識外の強さを持った人は常識的な事が出来ないっていう法則でもあるんやろか……)

実況席

健夜「へくちっ」

恒子「どうしました? どこかで誰かがお嫁にしたいって噂でもしてるんですかね?」

健夜「ほ、本当!? ……ごほん、失礼しました。それでは解説の続きに参りましょう」

恒子(婚期ネタはまだしばらくは使えそうだなー)

対局室

良子「さて、表彰式が始まるまでに霞のお祓いを済ませないといけないしそろそろ失礼するよ」

照「はい、さようなら」

白望「初めまして。去年に妹さんの学校と当たった宮守女子の小瀬川です」

照「知ってますよ。その節は咲がお世話になりました」

恭子「私もお世話に……大変お世話になりました……」カタカタ

宥「恭子ちゃん落ち着いて。ここには宮永咲さんはいないからね」

美幸(いつの間にかちゃん付けになってる! 大将戦の間に何があったのよもー!)

菫「ひ、久しぶりだな松実宥」

宥「あ、弘世さん……お久しぶりです」

竜華「ちょっと菫ー、緊張しすぎとちゃうー?」

怜「そうや、対局した事ある人は顔見知りみたいなもんやで。なあ椿野さん」

美幸「え、あ、はい……」アセアセ

怜「あれ、なんかそっけない」

恭子「分かるで、その気持はよー分かるで椿野さん」

美幸「美幸だよもー!」

恭子「え、あ、はい……」アセアセ

恭子(ウチなんか悪いことしたかなぁ……)

胡桃「はいはい、表彰式のためにここに集まってるんだから同窓会ムードはその辺にしてそろそろ整列!」

塞「はーい胡桃おかあさーん」

胡桃「お母さん言わないそこ!」

豊音「あれー、さっきまで戒能プロがいたはずなのにもういないよー! サイン貰おうと思ってたのにー!」

エイスリン「トヨネ、ホカニモイッパイイルヨ」

豊音「確かに! 戒能プロは残念だったけど有名人でいっぱいだよー!
   ということでサインください小走さん!」

やえ「え? 私……!?」

豊音「うん! 奈良県個人戦トップのちょー有名人だよー!」

やえ「そ、そうか……仕方ない、ならばニワカは相手にならないサインをお見せしよう!」スラスラ

 こうしてインカレは西東京代表の優勝で幕を閉じた。

決勝戦成績

先鋒戦区間スコア 宮永照:46,000(区間賞・決勝戦最多得点) 姉帯豊音:15,500 福岡代表:-40,300 京都代表:-21,200
次鋒戦区間スコア 弘世菫:13,700 エイスリン・ウィッシュアート:39,600(区間賞) 福岡代表:-22,200 京都代表-31,100
中堅戦区間スコア 小走やえ:-18,700 鹿倉胡桃:-15,600 福岡代表:-3,200 松実宥:37,500(区間賞)
副将戦区間スコア 清水谷竜華:7,200 臼沢塞:-12,800 薄墨初美:24,300(区間賞) 末原恭子:-18,700
大将戦区間スコア 辻垣内智葉:-1,400 小瀬川白望:16,000 石戸霞:20,400(区間賞) 椿野美幸:-35,000

大会MVP:宮永照 大会委員会特別賞:松実宥

書き溜め分はまだあるんですけど、ちょうどキリもいいですし今回はここで終わっておきます。

※注釈

>>1 でも書いていますがこのSSは阿知賀編における準決勝の結果とは違っております。
あと名前は出しませんが店の元となっている作品からそれらしき人が登場するかもしれません。
では今回の更新を開始します。

そして表彰式終了後―――

菫「さて、まだ夕方くらいだがどうする? 折角だしどこかで打ち上げでもやろうか?」

照「打ち上げっ。なんかすごく大学生っぽい響き……!」

豊音「あ、弘世さん。ちょっと待ってください!」スタタタ

照「あれは岩手の姉帯さん……?」

豊音「あの、良かったら今から弘世さん達の働いてるお店を案内してくれませんか!」

菫「え?」

胡桃「いきなり要件だけ行っても混乱させるだけでしょ!
   実は大学のパソコンでネットをするのが趣味になっちゃってて、その時に偶然皆さんのお店の評判を目にしたんですよ」

トシ「それでどうしても一目見てみたいってずっと言っててねぇ。
   じゃあ大会が終わった後にでも行けば普通に客として良いじゃないって言ったんだけどね。
   それだと顔を覚えられていた場合に気まずくて恥ずかしいだなんて言うんだよね」

豊音「そ、それは言わない約束ですよー」

竜華(それでいきなり話しかける強硬手段に出るとか、人見知りなのかそうじゃないんかよく分からん子やなぁ)

智葉「とは言われても全員を連れて行くとなると席の確保が出来るかどうか……
   ちょっとオーナーに電話して確かめてみる」ピポパポ

智葉「実はウチに来たいって言ってる人がいまして……ええ、ありがとうございます。
   は? え、ええ。ありがとうございます。
   それじゃあ1時間ほどでそちらへ向かいます。それではまた」

竜華「オーナーはなんて?」

智葉「インカレ優勝おめでとう、店を貸し切りにする準備は出来てるからいつでも来いだとさ」

菫「この手際の良さ……間違いなくあの人が動いたな」

怜「常に一巡先を読んでいるようなあの人が……」

照「とうとうあの人が……」

恭子(この三人がここまで言う『あの人』って一体どんな怪物やねん……)カタカタ.

智葉「まあそんな訳なのでこちらとしては問題はありません」

トシ「そうかい、じゃあみんなは行っといで。
   私は折角関東まで出てきた事だしちょっと知り合いの近況でも聞いてくるよ。
   遅くなるようだったらホテルへの連絡は忘れるんじゃないよ」

胡桃「分かりました」

智葉「じゃあ、行こうか」

??「ちょっと待ったー!」

照「え?」

美幸「ファミーユに行くなら私達も行ってみたいよもー!」

恭子「実は椿野さんはケーキや紅茶には一家言あって……」

美幸「だから美幸だよもー!」

恭子「あ、はい……」

宥「折角だから私も行ってみたいです……
  どういう接客をしているのか家業の参考にもしたいですし」

智葉「勉強と言う事事なら創設時のベテラン社員が対応してくれる今日はこの上ない条件だな」

菫「そ、そうか。松実も来るのか」

照「……」ジト目

初美「そういう事だったら私達も混ぜて欲しいですよー」

霞「今日は少し疲れてしまいましたし美味しいスイーツが食べたいと初美と相談してた所だったんですよ」

智葉「えーと、私達6人で岩手の人達が5人で……」

福岡先鋒「あー、私達は数に入れなくて良いよ。
     ウチら上級生でその辺の居酒屋に行くことにしたから」

京都次鋒「さすがにあなた達の前で酒は飲めないからねぇ」

智葉「そういう事だったら京都の人が3人で福岡の人が2人で合計16人か。
   人が増えた事を連絡しとかないと」ピポパポ

智葉「人数なんですが16人に増えましたが大丈夫でしょうか? 
   はい。わ、分かりました。それでは失礼します」

竜華「何となく分かる気がするんやけど……なんて?」

智葉「20人くらいにはなる前提で用意を始めてる。良いから早く来いって」

怜「ダブルやと……!?」

菫「二割で良いから照に麻雀以外での機転の良さを分けて貰いたくなるな……」

照「失礼な、一割で十分だよ」

竜華「一割でも貰うのには変わりないやろ!」

恭子(……なんか、宮永照を怖がってた自分がアホらしくなってきた)

智葉(また一人、先入観を払拭した者が増えたか。良いことなのやら悪い事なのやら)

移動中のイベントはすっ飛ばしてファミーユへの最寄り駅

智葉「もうすぐ見えてくるぞ。ほら、そこに……ん?」

誠子「宮永先輩、弘世先輩、インカレ優勝……」

虎姫一同「おめでとうございます!」

照「みんな……ありがとう」

尭深「直接会場まで行けなくてすいませんでした」

菫「お前たちのインハイ予選も近いんだし最後の追い込みをしてたのだろう?
  むしろ四連覇のために気を抜かない姿勢は称賛に値する。
  どうやら亦野に部長を任せたのは正解だったようだな」

淡「亦野先輩、去年の雪辱を晴らすために燃えてますからね。
  私も今年は高鴨穏乃にリベンジを……」

宥「あの、ごめんなさい……
  阿知賀女子は私が卒業したからメンバーが足りなくなって今年の団体戦にはエントリー出来ないの」

淡「えぇー!? 部員の一人くらい何とか集められなかったんですか!?」

宥「去年5人集まっただけでも奇跡みたいな物だったから。
  赤土さんがプロになったからコーチ不在で教えられる人もいないし……」

美幸「阿知賀はお嬢様学校だし難しいかもねー。
   劔谷もそうだったけど伝統ある部にするために並々ならぬ努力をしてきたってOGが来る度に聞かされてたよ」

胡桃「宮守なんて全員三年生だったから自動的に麻雀部は廃部になっちゃったしね。
    私達としては何とかして残したかったんだけど」

塞(トシさんが高校に残ってたら去年みたいにメンツを集めて全国大会くらいまで来そうだったけどね……
  あの人、どこかにアンテナでも付いてるのかってくらいの嗅覚だし)

竜華「自分の高校の事しか知らんかったけど、それぞれ色んな事情があったんやなぁ」

誠子「では、そろそろ私達は学校に戻ります。挨拶だけになってすいません」

菫「わざわざご苦労だったな。四連覇も期待しているぞ」

淡「まっかせて下さいよ!」

尭深「それでは失礼しますね」

スタスタスタ

智葉「それじゃあ、私達も行くか」

怜「そうやね」

ファミーユ前

照「あれ? 店の前に誰かいない?」

菫「貸し切りになっているのに気づいていないのだろうか。説明してあげる必要があるな」

智葉「ん? 確かあいつらは……」

爽「折角来たのに閉まってるってどういう事さー!」

由暉子「巡り合わせが悪かったのでしょう。今日の所は帰りましょう」

成香「残念ですけど貸し切りなら仕方ないですね……」

智葉「お前たち、そんな所で何をしている?」

成香「すいませんすいません、このお店に入りたくて来たのですが閉まってるみたいで……?」

智葉「ああ、君は確か有珠山の」

成香「あわわわわわわ辻垣内さん……! お、おおおしさひぶりです」

智葉「分かったから少し落ち着きなさい」

成香「はい、すいません……」

爽「あ、優勝おめでとー。テレビで見てたよ」

由暉子「獅子河原先輩、後ろにおめでとうじゃない方々もいます」

爽「ありゃ? これは失礼。ていうかインカレに出てたあたしの同期勢ぞろいじゃん。
  みんなして何してるの?」

菫「これからここでインカレの打ち上げをやるんだ」

爽「そうなんだ。だったら折角だしあたし達も混ぜてくれない?」

菫「は……? 君達は大会に出ていないだろう。
  獅子河原さんほどの実力があれば北海道代表にだってなれただろうに」

爽「やーあたしは雀士である前にユキちゃんのプロデューサーなんで。
  そんな事よりあたし達もみんなの健闘を讃えたいし混ぜて欲しいなー。
  ねえ成香?」

成香「え!? は、はい。私も辻垣内さんの健闘を讃えたいです」

智葉「ん? 私だけ?」

成香「はわっ。ごめんなさい……け、決してそういうつもりではっ」

智葉「まあ、直接対決した事があるのは私だけだし真っ先に名前が出てくるのは不思議ではないな」

成香「はい……そうですね……」シュン

怜(ん……?)

照「それで、どうするの?」

菫「ちょっと中に入って確認してくる」

数分後―――

菫「外から聞こえてくる声が私達の名前を読んでいたからとっくに計算に入れていたそうだ」

爽「じゃあ問題は無いって事だねー」

菫「ただし、近所迷惑一歩手前くらい騒いでた罰として最後の洗い物を手伝えとさ」

爽「ありゃ。さすがにそこまでは甘くなかったかー。まあ混ざれただけでも良いかな」

爽(ってあれ? みんなの懇親会って感じなんだから接客するのって宮永照達じゃないよね。
  偵察に来たのにこれじゃ意味ないんじゃ? ……ま、いっか! 折角だし楽しもう!)

ということで今日の更新はここまでです。

菫「あー、配膳も完了した事だしそろそろ乾杯の音頭を……っておい照」

照「本店パティシエの作りたてケーキ美味しい……」パクパク

怜「レシピと設備が揃っててもあの味は中々出せへんもんなぁ」

竜華「って拾うのそこちゃうやろ!」

やえ「他の者に合わせる必要がないのは王者ゆえの特権なのだよ」

智葉「そういう問題じゃないと思うんだが……君もそうは思わないか?」

成香「えっ……ええと……自分だったら人を違う事をするのは……怖い、です……」

成香(あわわわ、なんで辻垣内さんがお隣さんなんですかー)テレテレ

爽(宴会とかで良い席に座るのもプロデューサーに必要な能力だからね)ドヤ顔

由暉子(ちゃっかり上座のほうに座ってるんですが良いのでしょうか……)

ちなみに席順はこんな感じです。


    初美 美幸 塞 白望 エイスリン 照  やえ 怜 竜華 
入口                                    菫 キッチン
    霞  恭子 宥 胡桃   豊音 由暉子 爽 成香 智葉


菫「おい、とりあえず食べるのやめろ」

照「ほぇ? なんへ?」モグモグ

竜華「あはは……なんやったらウチが進行しよか?」

怜「えー。竜華はウチの隣で膝枕するっていう大事な仕事があるやん」

菫「いや、別にいいよもう……無視して進めるから。
  えー、インカレではお疲れ様でした。
  今年はここにいる皆さんを始めとして非常にハイレベルなプレイヤーの揃った大会でした。
  そんな中で私達が優勝出来た事を大変光栄に思っております。
  そして、輝かしい成績を一度で途切れさせる事なく、二つ、三つ、四つと重ねていけたらと思っております」

初美「ほう、予告連覇ですかー」

霞「あらあら、大きく出たわねぇ」

白望「……そんなダルい事させると思ってるの」

塞「おお、珍しくシロが本気だ」

宥「来年は灼ちゃんと玄ちゃんも入ってくるから……そう簡単にはいかないと思います……」

恭子「えっ、そうなん?」

美幸「聞いてないよもーっ。帰ったら頑張って練習しないと!」

爽「おやおや、皆さん随分とやる気になってるねー。わざとけしかけたのかな?」

菫「さあ、どうだろうな。なんだったら獅子原もやる気になっても良いのだが?」

爽「考えておくよー」

菫「ふむ。ではそろそろ……今年の健闘への労いと、来年の更なる飛躍を願って……乾杯!」

全員「かんぱーい!」カチャン

胡桃(と、届かない……!)

霞「どの料理も美味しいわねー。たまには洋食もいいものだわ」

初美「ですねー。ところで体調はもう大丈夫ですか?」

霞「心配してくれてありがとうねはっちゃん。
  まだちょっと宙に浮かんでるような感じがするけど大丈夫よ」

恭子「今年は去年と違って神代小蒔みたいになっとったけど、去年となんか違ったんか?」

美幸「と、とっても怖かったのよー」

霞「そうねぇ。小蒔ちゃんがおろせる神様は比較的優しい方々ばかりなのだけれど、私がおろせる神様は少し荒々しいのよね」

初美「本来なら去年でも姫様と同じ深さまでおろす事は出来そうだったんですけどねー。
   それをやると暴走したきり戻ってこれなくなって卓を囲む人達が大変な事になってたですよ……」

恭子「そ、そうなんか」カタカタ

霞(こらこら、大げさな事を言って脅かしちゃダメじゃない)

初美(情報を盗もうとしてたので釘を刺しておいただけですよー)

胡桃「んーっ。んーっ」

宥「あ、これが欲しいんですね。どうぞ」

胡桃「あ、ありがと……」

塞(まるで姉妹みたいだなぁ。松実さんには妹さんもいるみたいだしお姉さんが板についてるって感じ)

白望「あーん……」(塞が皿に取り分けた料理を口に運ぶ)

宥(長年連れ添った夫婦みたい……というより、おばあちゃんの介護をするお孫さんのようにも見えるかも……)

エイスリン「……」ササッ

照「……」モグモグ

エイスリン「イーソー!」パッ

由暉子「おー、手慣れたものですねー」

豊音「でしょーっ。エイちゃんちょー凄いんだよー」

やえ「なんの。照だって王者の絵心でこのくらい朝飯前だよ」

照「えっ」

爽「おおーっ。宮永照は絵も描けるんだ! これは要チェックだねー」

エイスリン「ハイ!」

照「ええー……」

照(ケーキ食べてたいのに)

菫「余興だと思ってやってやれば良いじゃないか」

照「菫がそう言うなら……」スゥ

成香「な、何をしてるんですか?」

智葉(これは……照魔鏡か?)

照「……」スラスラ

豊音「ちょ、ちょー早いよー」

怜「しかも段々と手の動きが早くなっとるような……」

竜華「絵を描くときも尻上がりに調子上げていくんか」

照「出来た」

爽「な、なんだよこれ……」

照「白糸の滝。オーナーが奥さんと静岡の実家に帰る時に一緒に連れて行って貰った」

爽「白糸繋がり? いやまあ、場所はどうでも良いんだけど……」

豊音「水墨画みたいだよ……ペンだけしか使ってないよね?」

エイスリン「オシショウ! デシにシテクダサイ!」

菫「ふふん」

竜華「いや、なんで菫がドヤ顔してんねん」

怜「照ちゃんは生活力と方向感覚以外はホンマに万能なんやなぁ」

もっとキリの良い所まで書いて投稿しようと思っていたのですが、更新が停滞してた事ですしひとまずここまで投下しておきます。
あと獅子河原は完全にこちらの誤字です、すいません。

 そんなこんなで宴会は進んでいく。
 全ての料理とデザートを出し終え、後片付けも終わった所で本店スタッフは退散。
 菫や智葉が間食などを用意しながらの二次会モードへ突入する。

恭子「この場面についてなんやけど……」(インカレの牌譜を見せながら)

智葉「私だったら親番でもあるしツッパるな。点差を考えるとオリている場合でもないし」

菫「私も智葉の意見に賛成だな。対面の捨て牌から当たり牌が出てきそうな気配もある事だし」

やえ「私なら迷わずリーチするね」

美幸「でも上家が赤ドラを含めたチーをしてるよ? タンヤオと鳴き三色もあり得そうだし危なくない?」

塞「私もここはオリるの優先であわよくば流局テンパイって感じかなー」

照「その人は大きな手をテンパイ出来る場合くらいしか中々鳴かないからオリといた方が良いよ」

みんな「打ち筋が読めるの前提で話すのやめて貰えないかな」

照「う……ごめんなさい。だからってみんなで言わなくても良いのに」

霞(しかも当たってるのが怖い所よねぇ……先輩って基本的に門前派ですもの)

初美(さすが照魔鏡ですよー)

成香「検討会に参加してるのは良いですけど発言出来る機会がないです……」

爽「ここにいるのって本来なら高卒即プロとか実業団レベルとか子達ばかりだからねー。
  ま、聞いてるだけでも勉強になるだろうし置物になってなよ」ドンッ

智葉「ん? どうかしたか?」

成香「あわわわわ」

爽「ごっめーん。席を立とうとしたらちょっとよろけちゃったよ」

成香「し、獅子原せんぱぁい‥…」小声

成香(肩を掴んじゃいました……)
竜華「あっちは盛り上がっとるなぁ」

豊音「そうだねぇ」

宥「そうですねぇ」

怜・白望・由暉子「すーすー……」

エイスリン「ミンナ、オツカレ」

胡桃「大会も終わって緊張感から解放されたしねー。ふぁあ、私も何か眠くなってきちゃった」

エイスリン「ヒザマクラ、スル?」ポンポン

胡桃「そ、そんな子供みたいな事するわけないでしょっ」

豊音「あはは、良い子はそろそろ寝る時間だよー……ああああーっ!」

胡桃「え、何どうしたの!?」

豊音「終電、終わっちゃってない……?」

胡桃「え、ちょっと待ってよ……」(ケータイで路線情報を検索中)

胡桃「……今から出てもホテルまでは戻れないね。ちょっと塞と相談してくる」タタタ

塞「だからここは全ツでしょ!」

菫「何を言っているんだ。回し打ちに決まっているだろう」

恭子「回し打ちなんて中途半端な事をするならオリるべきやろ」

霞「ここでオリるような人に勝利は掴めるものなのかしら?」

恭子「は? 今なんて言った? いまウチの事馬鹿にせんかったか?」

霞「いいえ別に?」

恭子「そうやろうなぁ。全ツ、オリの駆け引きなんてまともに考えた事のない絶一門お化けが意見なんて出来るわけないもんなー」

霞「言ってくれたわね……私の事はどうでも良いけれど神様の事を『お化け』呼ばわりした事は懺悔に値するわよ……」

初美「お、泣く子も黙る石戸霞が久しぶりに本気でキレるですかー。やれやれ、やっちまえですよー」

胡桃(お酒とか飲んでないのにヒートアップしすぎでしょ……。あと薄墨初美は煽るな!)

ぎゃーぎゃー わーわー \ニワカッ!/

胡桃(……ああもおおおおおおう!!)

胡桃「うるさいそこおおおおお!!!」

全員「!?」

胡桃「塞! もう終電終わってるよ!」

塞「え? ってマジ!? やばっ!」

胡桃「とりあえず私はホテルに連絡してくるからどうするか考えといてよね!」

塞「う、うん。分かった」

塞(って言われてもどうしたら良いんだろ)

恭子「終電……? って、ウチらも終わってへんか?」

初美「あー私達も終わってますねー」

霞「議論に熱中しすぎたわね」

爽「え? みんな終電無いの? てっきりこの辺に宿を取ってるものだと思ってたよ」

菫「インカレのために東京へ来たのだから会場の近くに泊まるだろ」

爽「あ、それもそうだねー。私達とは違うもんね」

菫「そういえば獅子原達は何をしに東京まで出てきたんだ?」

爽「企業秘密です」

菫「なんだそれは……」

智葉「あー……この調子だと私も家まで帰れないな。とりあえず家に連絡してくる」ピポパ

竜華「こういう時は実家通いって不便やな」

怜「二人暮らしは二人暮らしでしんどい事も多いけどなー」

竜華「う、うん。そうやな」

竜華(家事はほとんどウチがやってるんやけど……まあええか)

菫「えー、とりあえず整理してみようか。岩手の5人、関西の3人、福岡の2人に智葉が帰れないと」

智葉「合計11人だな」

菫「泊めてあげても大丈夫な家はあるか?」

照「私の家は3人までなら泊まれるよ。
  私の部屋に1人と、咲がこっち来た時のために用意してある部屋に2人泊まれるから。
  ちょっとお母さんに了承取ってくる」

竜華「ウチらの部屋は1人かよくて2人やなぁ。仕送り貰っとる手前そんなに大きい部屋借りてへんし」」

やえ「私の部屋も1人か2人だな」

爽「私らの泊まるホテルは定員ギリギリだから無理だよー。協力出来なくてすまんね」

菫「となると、少なくて4人で多くて6人が私の家に来てもらう事になるな」

宥「6人もお邪魔して大丈夫なんですか?」

菫「え? あ、ああ。問題は、ないな」

照「……問題を起こしそうなのは菫本人だけどね」

菫「いやいや何もしないからな!?」

竜華「ホンマかなぁ。で、どうするん?」

菫「そうだな……」

というわけでここで唐突に安価を出してみようと思います。
白望、エイスリン、胡桃、塞、豊音
恭子、宥、美幸
霞、初美
そして智葉の11人を照、怜竜、やえ、菫の家に割り振ってお泊り会をさせます。

>>267>>268>>269 は照の家
>>271>>272 はやえが一人暮らしてる部屋。
>>274>>275は怜竜が二人暮らししてる部屋。
残りが菫の家に招待する流れで書こうと思います。

一週間経っても決まっていなければ>>1 が勝手に決めて書きます。
滅多に更新がなくて埋もれてるスレだしその可能性は十分にある……

といった感じで今回の更新は終了です。

エイスリン

サトハー

美幸

塞ぐ

シロ

末原

菫「とりあえず希望のあるものは……」

エイスリン「ハイ! オシショウのイエイキタイ!」ブンブン

照「え? 私? 別に良いけど英会話がちょっと……」

智葉「そういう事なら私も照の家に行っても良いか?」

照「智葉……!」キラキラ

菫「じゃあその2人は決まりだな。後は……」

恭子「ウチは同郷やし清水谷さんとこが良いかなぁ」

竜華「ウチはええよー。怜は?」

怜「ウチもええよ。愛宕洋榎の近況とか聞いてみたいし」

宥「そう言う事なら私も小走さんの家にお邪魔しようかな……」

やえ「え?」

宥「あ、あうう……」

宥(うう、やっぱりやっぱりやめておこうかな……)

やえ「いや、末原さん達と一緒じゃなくていいのか?」

宥「え、ええと……同じ奈良出身ということもありますし。ダメでしょうか……」

やえ「え、ああ。構わないよ」

宥(やっぱり乗り気じゃないのかな……それもそうだよね。
  連続出場を阻まれた阿知賀女子のメンバーなんだし……)

菫「……」

やえ(菫の視線が怖いんだが……何もしないから心配しないでおくれよ」

照「菫ー?」ジロジロ

菫「え? ああ……他には?」

白望「あー……ここから一番近いのってどこ?」

竜華「それやったらウチやな」

白望「じゃあそこでお願いします……」

塞「実にシロらしい判断基準だね……」

胡桃「他所様の家で迷惑掛けちゃダメだからね!」

怜(この2人は保護者か何かなんか? まぁ、照ちゃんも菫に保護されてるようなもんやしなぁ)

照(心外な。怜ちゃんこそ竜華のヒモじゃないかな)

怜(否定はできへんな)

塞「ていうか今更なんですけど、関東出身の宮永さん達はともかく関西出身の三人はなんでこっちいるんです?」

豊音「そうそう。私もちょー気になってたんだよー。
   みんな麻雀で推薦取れるレベルのスター選手ばかりなのに一般受験で入ったみたいだし」

竜華「えーっと……まあ、色々と……」

恭子「……臼沢さん、人にはそれぞれ事情ってもんがあるんやしそのへんに」

やえ「良いよ。理由が聞きたいと言うのなら教えてあげるよ」

恭子「……え? ええんか?」

やえ「別に隠す理由も無いしね。気を遣わせてしまってすまないね」

恭子「いや、ウチは別にええんやけど」

塞「じゃ、じゃあそういう事だったらよろしくお願いします」

塞(あちゃー、なんか地雷踏んだっぽい。マズったなぁ。お家着いたらどうにかフォローしないと)

菫「あとは照の家にもう1人で、残りは私の家だな」

美幸(あ? あれ? 残ってるのって九州の2人と岩手の3人と私だよね?
   私、ぼっちじゃない……? もーなんで恭子ちゃんも宥ちゃんも早々にばらけちゃうのよもー!)

美幸「じゃあ私は宮永さんの家が良いです!」

菫「そうか。じゃあそうしよう」

美幸(勢いに任せて立候補しちゃったよもー。
   き、きっと大丈夫……)

照「……」薄目

美幸(や、やっぱり怖いよもーっ)

照(眠い……)ウトウト

菫「振り分けはこんな感じか。それじゃあ戸締まりは私がやっておくから各自解散してくれ」

豊音「後片付け手伝いますよー」

胡桃「私もやるよ」

菫「じゃあ配置をこんな感じにしておいてくれないか」(標準レイアウトの図面を胡桃に渡す)

胡桃「了解。永水の2人も手伝ってよね」

霞「はーい。はっちゃんは鹿倉さんと一緒にテーブルを運んでもらえるかしら。私は姉帯と一緒に運ぶわ」

初美「がってんしょうちですよー」

菫「じゃあ照達は他のみんなを家まで連れて行ってやってくれ」

竜華「じゃあみんな行くでー」

爽「じゃあ私らもホテルに戻りますかー。いい加減門限やばそうだし」

成香「そうですね。みなさん、お邪魔しました」

智葉「気を付けて帰るんだぞ」

成香「は、はいっ」

今回の更新はここで終わりです。
そして人数を数え間違えてるの気付いたので修正です。

菫「あとは照の家にもう1人で、残りは私の家だな」

美幸(あ? あれ? 残ってるのって九州の2人と岩手の2人と私だよね?
   私、ぼっちじゃない……? もーなんで恭子ちゃんも宥ちゃんも早々にばらけちゃうのよもー!)

美幸「じゃあ私は宮永さんの家が良いです!」

菫「そうか。じゃあそうしよう」

美幸(勢いに任せて立候補しちゃったよもー。
   き、きっと大丈夫……)

照「……」薄目

美幸(や、やっぱり怖いよもーっ)

照(眠い……)ウトウト

菫「振り分けはこんな感じか。それじゃあ戸締まりは私がやっておくから各自解散してくれ」

豊音「後片付け手伝いますよー」

胡桃「私もやるよ」

菫「じゃあ配置をこんな感じにしておいてくれないか」(標準レイアウトの図面を胡桃に渡す)

胡桃「了解。永水の2人も手伝ってよね」

霞「はーい。はっちゃんは鹿倉さんと一緒にテーブルを運んでもらえるかしら。私は姉帯と一緒に運ぶわ」

初美「がってんしょうちですよー」

菫「じゃあ照達は他のみんなを家まで連れて行ってやってくれ」

竜華「じゃあみんな行くでー」

爽「じゃあ私らもホテルに戻りますかー。いい加減門限やばそうだし」

成香「そうですね。みなさん、お邪魔しました」

智葉「気を付けて帰るんだぞ」

成香「は、はいっ」

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