勇者「運命を壊す旅へ」(123)

ラビット速報掲示板で書いていたSSを構成し直したSSです
投下ペースはゆっくりめ、
内容は魔王勇者SS、
それでもいいよという方はお付き合いください。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1360477645

ー始まりの町、勇者の家ー

戦士「おい、そろそろ魔王討伐の旅に出ようぜ、もう国王から魔王討伐命令が出てから数ヶ月たってんぞ」

勇者「なんでんなことしなきゃいけないんだよ···」

戦士「なんでって···お前が勇者だからだろ」

勇者「戦士、リモコン取ってくれ」

戦士「ほらよ」ポイッ

勇者「おーサンキュー、」パシッ

戦士「っておい!テレビ見てる場合じゃねえんだよ!国王めっちゃ怒ってんだよ!」

勇者「なんだよ···ずっと前から言ってんだろ!!俺は絶対に魔王討伐になんて行かない!」

戦士「いい加減はったおすぞお前」イラッ

勇者「え···ご、ごめんなさい···」

戦士「謝んのかよ!?」

勇者「とにかく俺は魔王を倒しになんて行きたくないんだよ!」

戦士「···理由は?」

勇者「え?」

戦士「そんだけ反対するんだ、なんか理由があんだろ」

勇者「えーと···理由は···」

勇者「じ、実は俺猫アレルギーで···」戦士「魔王関係ねーだろそれ、ほら、もう装備買って行くぞ!」

勇者「い、いやだ!俺はこたつから出ないぞ!」

戦士「てめえマジブッ飛ばすぞ!!」

勇者「ごめんなさい!」

戦士「こ、この野郎···!」

勇者「ち、ちょっとトイレ!」スタコラ

戦士「あっ!?待てやゴラ!!」

バタン

戦士「ちっ···!(逃げられたか)」

戦士「ん···?これは···」

勇者の部屋、入るな!!

戦士「···そういや、勇者の部屋って入った事なかったよな···」

戦士「···」

入るな!

戦士「···」

入るな!

戦士「失礼しまーす」ガチャッ

戦士「···は!?」

戦士「···見なかった事に」

勇者「おい」ガシッ

戦士「」

ぎゃああああああああああああ!?

戦士「···」ボロッ

勇者「ごめんなさい···」ズタボロ

戦士「謝んのかよ!?」




戦士「しかし···まあ···この魔王グッズの数々は一体···」

勇者「全部自作だ」

戦士「いやスゴいけどお前は勇者だからどや顔しちゃダメだろ」

戦士「まさか···お前が魔王に惚れていたとはな、」

勇者「···そう、あれは2ヶ月前の事だ···」

戦士「いや別に聞きたいわけじゃねーんだけど」

~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺はいつもの様にアニメソングを歌いながらヨガをしていた

戦士「いやいつも通りかどうかは知らねーけど」

勇者『てーれってってってーてーてー』♪

そしてそろそろ休憩しようかと思い、ラジオをつけた瞬間

戦士「いや修行しろよ」

魔王『えーペンネーム「かたくりこ」さんからいただきました、魔王様は前魔王様の事をどう思っていますか?』

魔王『そうですねー、破壊と戦闘が大好きな方だったようですけど・・・え?電波が人間界に漏れてる?』

一種の放送事故というものだろうか、魔王の「魔王様とつながろうラジオ」の電波が人間界に漏れていたらしい

戦士「なんだよそのラジオ・・・」

その声を聞いた俺は、たちまち魔王の画像を探した、そしてその姿を目にした時・・・こう思ったんだ

勇者「ーーああ、踏まれたい、と」

戦士「ちょっと待ってろ、今救急車呼んでやるからな!!」




勇者「待て!落ち着けって!まだ話は終わってない!」

戦士「聞きたくねーよお前が変態になったエピソードなんて!」

町人「おいお前ら大変だぞ!出てきてくれ!!」

戦士「うっせーなこっちは変態なんだよ!!」

町人「は!?いいから出てきてくれ!!」

町人「魔物が···!襲ってきたぞ!!」

戦士「」勇者「」

戦士&勇者「···マジ?」町人「マジだってのとっとと来い!!」

ー魔王サイドー

魔王「もう···無理、限界」ポフッ

側近「魔王様、お疲れ様でした···あら、角が···もう、忙しくても角の手入れくらいキチンとしませんと···」

魔王「むにゃ···」

側近「···仕方ないなあ、魔王様は、最近頑張りすぎですよー?」

側近「お休みなさい、魔王様···」

ここは魔界、魔界とはいっても、別に世界自体が人間界と違うわけではない

一つの世界に、二つの種族が別れて住んでいるのだ

人間と動物は人間界に、魔族と魔物は魔界に···




魔物
動物が突然変異したものという説が最も有力
知能は個体によってバラバラ
特徴としては、とにかく異形であることと、
魔力と呼ばれる力を持つ事があげられる、が、
魔力をコントロールできる個体はごくわずかなようだ

魔族
魔物とは違い、魔力をコントロールできる者がほとんど、
角が生えていたり耳が尖っていたりする者もいるが、
大抵はほとんど人間に近い姿をしている、


側近「よし!私ももっと頑張らないと!」

諜報部員「たたた···!大変です魔王さまあああああああああああああああああああああああ!!」

側近「きゃっ!?ち、ちょっとしずかにしてください!魔王様起きちゃうじゃないですか!!」ビクッ!!

諜報部員「大変なんです!!辺境の魔物達が!人間の町を襲いにいったようです!!」

側近「···マジですか?」

諜報部員「マジですよ!!なんとかしてください!!」

ー勇者サイドー

勇者「···全部で25体くらいか、あれ」

戦士「ったく面倒くせえな···!おい、ちょっとこれ借りるぜ」つスコップ

勇者「じゃあ俺はこれで」つシャベル

町人「えっ!?剣とか斧とか使えよ!?」

戦士「武器は手入れがめんどくせーんだよ···あいつら潰すにゃこれくらいがちょうどいい」


戦士「よし、行くぜ勇者」

勇者「こればっかりはまあ···行くしかないしな、」

魔物A「なんだあ!?たった二人で向かってきたぞ!?」

魔物B「構うことはねえ!無視してつっこめ!」

戦士「おいおい、冷たい事言うなよ···」

戦士「こっちはお前らの為に、わざわざ魔翌力まで使ってやるんだからよ、」

戦士「魔神武装···」ズズズ···!

魔物A「!?お前···魔翌力持ちの人間!」

魔物B「人間が魔翌力を持つには、勇者として選ばれるか···魔物や動物の細胞を体に埋め込むかしかない!」

魔物B「だが!後者の場合『埋め込んだ細胞』によって、姿や能力が限定されてしまうものがほとんどのはず・・・!」

魔物A「ということは···貴様勇者か!?」

戦士「いいや違うね、ただの戦士だ」

魔物A「ふん!笑わせるな!俺の腕に付いた鎌は鋼鉄をも切り裂く、そんなスコップでなにを···」

戦士「なら先に鎌からへし折る」ブンッ!

ボキッ!ボキッ!!

魔物A「なっ···!?(スコップを振ったと思ったら···俺の鎌が折られている!?)」

戦士「何が鋼鉄をも切り裂くだ、魔翌力で強化した石ころ投げただけでへし折れたじゃねえかよ、拍子抜けにも程があるぜ」

戦士「まあ···出発前のチュートリアルとしちゃあちょうどいいがな」

魔物A「き、貴様···!」


さげのまんまでした指摘ありがとうございます

魔物達「おおい!魔物A!俺達も加勢してやろうか!?」

魔物A「うるせえ!黙ってろ下っ端ども!!」

戦士「···」

魔物A「ふん!一度鎌をへし折ったからといって調子に乗るなよ!俺の鎌は再生する!」ズルッ!!

魔物A「つまり!いくらへし折られようと、てめえの体を切り裂くまで刃は止まりはしない!」

戦士「うるせえなあ···!俺は勇者のせいで今イラついてんだよ!!」ズズズ···

戦士の体中に、黒い影のようなものがまとわりつくように浮かび上がる···

戦士「いいか···今から俺は、『足踏み』をする」

戦士「お前が今いるところから、少しでも近づいたら開始する、『足踏み』してほしくなかったらとっとと帰れ」

魔物A「···ぷっ、」

魔物達「ぎゃはははははははは!!」

魔物A「おいおい、笑わせんなよ···『足踏み』だと?そんなことをしたからってどうなるんだ?ええ?やってみろよオイ!!」

戦士「そうか···じゃあ遠慮なく」スッ···

戦士「ほいっと」

ズドォン!!

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側近「転移魔法、完了···」

側近「さて、魔物達を止めに行かないと···!」

戦士「だからわざとじゃねえって言ってんだろ!!」

勇者「言い訳すんな!俺がスコップ使って衝撃を空中に逃がしたから良かったけどな!下手したら町一つ潰してたんだぞ!?」

側近「!?(なにかしら···あの二人組は)」

側近「(というか···魔物達が一人もいない···けど地面はひどく荒れてるし、もしかしたら手遅れだったのかも···)」

側近「(···いえ、町自体は無事···ということはまさか!あの二人が魔物達を追い払ったと言うこと!?)」

戦士「まあ潰れたら潰れたで···魔物のせいにすりゃいいかなと」

勇者「はあ···その手があったか」町人「おい!?」

側近「(とにかく、事が大きくならなくよかった···それにしても、あの二人は一体···詳しく調べる必要がありそうですね)」

側近「(!)いけない!そろそろ戻らないと···転移魔法、発動!」パシュン!



戦士「おら!やっとお前も外に出たわけだし出発すんぞ!」

勇者「い、嫌だ!!テコでも動かねえぞ俺は!!」

戦士「···はあ、わかったよ、魔王は倒さねえ、会いに行くだけだ」

勇者「マジで!?」

戦士「マジだ、···あーもう絶対国王に怒られる···」

勇者「待ってろ!40秒で仕度するから!!」

戦士「···まったく、」

ーこの物語は、戦い続ける勇者と魔王の歴史を打ち砕く、二人の青年の物語ー

第一章、『森を抜けて』

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ーはじまりの町の門ー

勇者「よっしゃー!行くぞ!」

戦士「お前な···まあいいか、魔界に行くためにまずは迷いの森を抜けていかなきゃならないわけだが」

勇者「迷いの森かあ···どう抜ける?」

戦士「いやなんで俺リーダーみたいになってんだよ!お前が決めるんだよ!」

勇者「勘じゃあ自殺しに行くようなもんだし、かといって木を切り倒して進むわけにもいかないしなあ···」

戦士「おまけに森の中は魔物の巣窟だ、だから出来る事なら1日で抜けたいもんだが···」

勇者「確か変な花の花粉···だったかが感覚狂わせてくんだっけかなー、」

勇者「!!待てよ!確か迷いの森にも人間が住んでる村があるんだよな!?」

戦士「そいつらに道を聞くっていいたいんだろうが···そこまでたどり着けるかどうかも怪しいんだぞ?」

勇者「馬鹿、城下町に行けばさ、必要なものを買い出しに来た森の民にも会えるかもしれないじゃんか!」

戦士「おお!お前の割にはいい考えだな!」

勇者「それじゃ、まずは城下町に行くとするかな」

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ー城下町ー

戦士「とりあえず矢を扱う武具屋に来てみたものの···本当に来るんだろうか」

勇者「大丈夫だって!なあおっさん!!」

武具屋のオヤジ「おう!森の民のお嬢ちゃんはうちの常連さんだよ!」

戦士「えっ!?マジか!」

武具屋のオヤジ「ああ、最初『こんなにすばらしい矢を見るのは初めてです!』って言われた時はビックリしたもんだよ、うちで扱ってんのはごく普通の矢だからな」

武具屋のオヤジ「その1ヶ月後くらいによ、『すごいです!!この矢すごいまっすぐ飛んでいきます!』って大喜びで10ダース買ってってくれてよお、嬉しいったらありゃあしない」

勇者「最後に来たときはなん本買ってったのか覚えてる?最初に買ってった本数も」

武具屋のオヤジ「最初は3ダース、最後に来たときはたしか15ダースくらいだったかな、」

勇者「となると、単純計算で···1日一本ちょっとだから、来るのは約半年後か」

武具屋のオヤジ「おう、最後の来たのは160日前くらいだからもうすぐ来るんでねーの?」

勇者「おお!ラッキー!」

武具屋のオヤジ「情報量は500zになりまーす」

戦士「金とんのかよ・・・」

武具屋のオヤジ「でっへへ、冗談冗談、その代わりなんか買ってってくれよ、」

勇者「じゃあこの剣をもらおうかな、武器もってくんの忘れてたし」

戦士「お前冒険する気あんのか!?」

「すみません···」

勇者「ん?」

武具屋のオヤジ「おー!お嬢ちゃん!元気にしてたかい!?」

戦士「なっ!?」

勇者「ってことはこの子が!」

弓使い「はい?」

武具屋のオヤジ「お嬢ちゃん、この人達が君にお願いがあるんだってよ」

弓使い「え···?」

戦士「ああ、そんな身構えなくていい!ただ道を聞きたいだけだからさ!」

弓使い「はあ···?」キョトン

勇者「あー···俺勇者でさ、魔王城に行きたいから、迷いの森を抜ける為に道案内をしてほしいんだけど···」

弓使い「···あなたたち、強いんですか?」

勇者「俺はともかく、こいつの強さは保証するぜ」

戦士「けっ、どーも」

弓使い「だったらお願いです···!迷いの森を救ってください!!」

勇者&戦士「···んん?」

迷いの森が···腐ってきているんです

原因はわかりません、昔にも同じようなことがあったみたいですけど···

その時は五代目勇者様がなんとかしてくれたみたいなんです!

弓使い「お願いです!臭くて夜も中々眠れないんです!!」

戦士「助けてほしい理由そっちかよ!?」

勇者「んー、でも俺たちはそういうの詳しくないしなあ···」

弓使い「もしかしたら、神殿にお供え物をしなかったのが原因かもしれないんです···」

戦士「神殿···?」

弓使い「五代目勇者様の眠る場所です、」

戦士「へえ···迷いの森に墓があったのか」

弓使い「きっと、五代目勇者様が怒ってるんです、」

勇者「おいおい馬鹿言うなよ、ファンタジーの世界でもないんだ、死んだ人間が何かに干渉するなんてことできないよ」

勇者「何か、他に必ず原因がある!協力してやるよ、弓使い」

弓使い「本当ですか!?」

勇者「ああ、さっそくそこまで案内してくれ」

ー迷いの森ー

戦士「確かに、なんか邪悪なもんを感じるな···この森、最初はなんてことなかったけど、奥に進むに連れて空気が重くなって行く···」

弓使い「そうなんです、前までは空気もおいしくて、動物も魔物も皆元気だったのに···」

勇者「さっき言ってた神殿っていうのは?」

弓使い「ここからあと2kmほど歩くと村に着きます、そこで一旦休憩しましょうあ」

ー迷いの森、狩人の村ー

弓使い「着きましたよ!ここが私達、森の民の村です!」

戦士&勇者「おおっ···!」

緑色の泉、枯れた木々、灰色の空

そして草原を彩る動物や魔物の死骸···

戦士「···おい、ここ地獄の間違いじゃねえだろうな」

勇者「これは酷いな···」

弓使い「前まではすごく素敵な所だったんですよ!信じてください!」

弓使い「あれ···ああ、もうこんな時間···皆狩りに出掛けているみたいですね、」

勇者「それで?神殿はどこだ?」キョロキョロ

弓使い「えっと···あっちの方な気がします」

戦士「おい!?なんか今すごい不安なセリフが聞こえたけど!?」

弓使い「と言われても···ここは迷いの森ですから、あなた達もここまでどうやって来たか覚えてないでしょう?」

勇者「あっ···」

迷いの森は感覚を狂わす、知能が高ければ高いほど迷わされる、人間や魔族にとっては禁忌の森

二日もいれば、右か左か前か後ろか、なにも分からなくなって、そのまま永久にさまよい、朽ち果ててしまう

弓使い「そんな中でも私達が生活できるのは、私達森の民が持つ能力、『超感覚』があるからなんですよ」

弓使い「例えば···あなた達は、今私の後ろにある箱の影にネズミがいる事に気がつきましたか?」

勇者「いや···」

弓使い「平たくいえば私達は、俗に言う『勘』がもの凄く鋭いんです、」

ネズミ「チューッ」トテトテ

木箱の影からネズミが飛び出し、森の影へと消えていった

勇者&戦士「···!」ポカーン

勇者「つまり···俺達は君についていくしかこの森から出る方法はないってことか、」

弓使い「そうなりますね、」

戦士「はは、なにいってんだよ、別に案内してもらうくらい···」

弓使い「ごめんなさい、もしもこの問題が解決しなかったらあなた達を森の中に放置します」

戦士「よしわかった全力で原因を排除しよう」

弓使い「本当にごめんなさい···」

勇者「いいっていいって、どうせ戦うのはこいつだから」

弓使い「?勇者様は戦われないんですか?」

勇者「いや、だって俺よりこいつのが強いもん」

弓使い「えっ···?」

勇者「戦士はな、『魔神武装』っていう···まあ、自分を強化する能力があるんだ」

弓使い「『魔神武装』···?そんなスキル、聞いたこともありませんよ」

戦士「俺だってよくは知らねーよ、なんか使えたんだ」

弓使い「はあ···?」

勇者「それが鬼のように強くてな、皮膚は弾丸も通さないほど強靭になるし、パワーは鋼鉄を軽くひん曲げられるほど強くなる」

戦士「ま、だから戦闘は基本俺だけってわけだ、勇者出てきたらむしろ足手まといだし」

勇者「俺は代わりに戦士に指示を出す、まあ俺も戦えないってわけじゃあないんだけどな···」

弓使い「よくわかんないけど、すごいんですね!」

勇者「···」

戦士「んじゃ、神殿に行くか」

乙乙
できれば更新予定を告知しやがれ下さい

>>30
こっちの方はもうストーリーが出来上がっているので、
もう片方のSSの文章が思い付かず行き詰まった時に書く感じにしてましたが、
これからは土曜日の夜に書いていこうと思います

ー五代目勇者の神殿ー

勇者「ここが五代目の眠る神殿か···」

戦士「薄気味わりいなあ···せめて明かりとかがついてればいいんだが、蝋燭とか持ってないだろ?」

勇者「んなもん持ってくるくらいなら魔王の写真持ってくるって」

弓使い「大丈夫です、私が先頭に立ちますから···」

弓使い「···あれ?おかしいですね···ほとんど生物の気配がありません···」

勇者「え?」

弓使い「この間来たときも少しは気配があったのに···今はネズミ一匹ほどの気配も感じません」

戦士「なんかあったのか···?この神殿に」

弓使い「わかりません···進みましょう!」

真っ暗な神殿の中を、明かりもなしに進んで行く

しかし、弓使いの動きは、まるで神殿の全てを知り尽くしたようだった

勇者「これが『超感覚』···」

弓使い「···あれ?」

戦士「どうした?」

弓使い「一人···私達の他にも一人、います···」

戦士「おいやめろよ幽霊とかそういうの大嫌いなんだよ!」

弓使い「違います!この先の部屋に···誰か、います···」

勇者「誰かって、ここにこれるのは森の民しかいないんだろ?」

弓使い「でも···なんだかすごく、生臭い···」

弓使い「これ···狩りの時に何回も嗅いだことがある···血の···におい···!」

勇者「ッ!!」ガチャッ!

扉を開けた先に待っていたのは

フードを深く被った、謎の男と

森の民達の、無惨な死骸

弓使い「ッ···!きゃああああああああ!!」

???「···誤算だな、勇者と森の民を接触させない為にわざわざ殲滅に来たのに···無駄になっちまった」

勇者「お前···!何者だ!」

???「ヒーローは俺だけでいいんだ···」

戦士「訳わかんねーことを···!ぬかしてんじゃねえッ!!」

戦士が二つの大戦斧を構える

両手持ちの武器二つを片手で一つずつ扱う、怪力を活かした超攻撃的戦闘スタイル

戦士「そいつらは···森の民だな?」

???「ああ、俺が殺した···俺がヒーローであるために、邪魔だったからな」

弓使い「殺した···!?私のお父さんとお母さんも!?お兄ちゃんも他の皆も全員!?」

???「ああ、そいつらはもう死んでるよ···丁度よかったんじゃないか?」

弓使い「え···!?」

???「ほら、供え物がないとか騒いでたんだろ?そいつら供えとけば、ゴミも無くなり五代目勇者の怒りもおさまり一石二鳥だ」

神殿に大きな音が響いた、戦士が大戦斧を降り下ろした音だ

戦士「それ以上その口を開くんじゃねえ···殺すぞ」

???「···それが、『魔神武装』か···力の発生源はその目か?左目だけ造りがまるで違う···まるで魔族の目じゃないか」

戦士「···黙れ」

???「もしかしてお前、人間じゃないんじゃないか?」

弓使い「···死ね」

???「あん?」

ドスッ!!

???「···!?」ゴプッ!!

弓使いの放った矢が、謎の男に命中する

弓使い「死ねっ!死ね死ね死ね死ね死ねッ!」ドスッ!!ドスドスッ!!

???「お嬢ちゃん···残念、矢は確かに当たったけどさあ···」

ばらばらと、男の体から矢が落ちる

???「こんな矢じゃ、そこにいる貧弱な勇者すら殺せやしない」

弓使い「黙れ!!お父さんの···!皆の仇だ!!」

勇者「落ち着け弓使い!!」

弓使い「落ち着いていられるわけないじゃない!!皆が···!皆が······!」

勇者「悔しいが、お前の矢はあいつに通用しない···でも言っただろ、戦うのは、戦士の役目だ」

???「なんだ···?お前が戦うのか」

戦士「悪いな、俺は森の民達とはなんの関係もないけど···訳あって、勇者の頼みは断れねえんだ」

勇者「遠慮はいらない···全力で潰せ!戦士!」

戦士「了解···!」ズズズ···

???「!」

ゆっくりと、戦士が歩き始める

しかしその時男が見ていた物は戦士ではなく、これまで生きてきた中の出来事だった

???「···ハッ!?」

???「何だ···!?今のは!!(ただ歩くだけの行為で、俺が死を覚悟したのか···!)」

???「(こいつ···!歴代の魔王よりも、俺が今まで見てきた何よりも!圧倒的に異常だ!)」

???「···チッ、まあいい···今回は諦めよう、」

戦士「!てめえ!逃げる気か!」

???「逃げちゃいけないなんて聞いてないしな、だが次はお前の弱点を見極めた上で殺す、勇者と関わる物は全て殺す」

???「森の民の生き残り···お前もだ」

弓使い「···ッ!」ギリッ

???「俺がヒーローであるために···」

戦士「待てっ!!」

戦士が男の胸ぐらを掴んだものの、男は上着を捨て地面に潜り、どこかへ消えていってしまった

戦士「···くそっ!」

勇者「あいつは一体···なんだったんだ···?」

弓使い「···!これって···!」

勇者「今度はどうした······ッ!?」

五代目勇者の墓が掘り起こされていた

しかし、それはさっきの男がしたものではない、森の民の長がスコップを持ったまま死んでいたから、それだけは簡単にわかった

五代目勇者の体からは、装備がいくつか剥ぎ取られていた、恐らく森の民達がこっそりそれを盗み、売っていたのだろう

そしてその現場を、あの男が押さえた

弓使い「···お父さん···お母さん、お兄ちゃんも···皆こんなことをしていたの···?」

弓使い「森が腐っていった原因は、私達にあったの···?」

戦士「ヒーロー···正義の味方か···」

弓使い「でも···こんな正義、許せない···!」

弓使い「勝手かもしれないけど···!私はあの男が許せない!あんな男が正義を語るのが許せない···!」

相手が悪だからという理由をつけることで、自分の目的を正義とする、そんな男の事を弓使いは許せなかった

弓使い「勇者さん!!私も旅に同行させてください!」

勇者「えっ!?」

弓使い「いずれあの男は私の所にくる···だったら、あなたと一緒に旅をして、強くなりたい!強くなってあいつを倒したい!」

勇者「いや~···熱くなってるところ悪いんだけど···」




勇者「俺、その辺の武道家とかより弱いよ?」

弓使い「はっ?」

勇者「だから言ってるじゃん···戦うのは戦士の役目だ、強くなりたいなら戦士に頼めばいい」

弓使い「(た、頼りにならない···)」

戦士「バカ、お前に同行するってことは結果的に俺とも同行するってことだろ、」

勇者「そうか、言われてみれば確かにそうだな···」

戦士「悪いな···さっきの奴逃がしちまって」

弓使い「いいんです···いずれ、必ず倒します」

戦士「それにしても、やっぱ原因は···」

勇者「戦士、それから先は言うなよ」

戦士「···ああ」

弓使い「お父さん···お母さん···お兄ちゃん···!」




弓使い「···クズが···」ボソッ

戦士「ん?···さあ、今日は村に帰って休もうぜ、魔神武装使ったせいで無駄に疲れた···」

弓使い「あっ、はい!」

その後、死んだ森の民達を埋葬し、俺達は村に戻って休んだ

あの、ヒーローと名乗る男···なにか、『勇者』という存在事態に、なにか恨みがあるように感じた

それに···戦士の過去の秘密も、目を見ただけで読まれかけた···とにかく、ただ者ではないことは確かだ

勇者「てれっててってーててー」

戦士「おい、歌うなら外でやれっての、今アサリさん一巻読んでんだよ」

勇者「なんだよその漫画···つーか、俺のこれは日課だし」

戦士「なんだよその日課···つーか、俺のこれは小説だし」

弓使い「くー···」Zzz

弓使いは、家にかえるなりすぐに寝てしまった

気丈にふるまっていたが、なにか俺たちにしてやれることはないだろうか

戦士「あ、そうだ!女の仲間を入れるってのはどうだ?」

勇者「どうした急に、そろそろ女が恋しくなってきたのか」

戦士「ちげえよ!お前と一緒にすんな!弓使いだって男二人だけのパーティーにゃなかなか馴染めないだろ?」

勇者「ああ···なるほどな」

戦士「でも出来るだけ強いやつがいいな、俺の魔神武装と同等に張り合える仲間も欲しい!」

勇者「無茶言うな、国王軍の騎士長でもない限り、お前のパワーについてけるやつなんていないって···それともあれか、ムキムキの女の方が好みか」

戦士「違うっつーの!やっぱライバルとかそういうの欲しいだろ!」

勇者「でもお前···俺より断然強いけど、一度も勝てたことはないからそれでいいんじゃないか?」

戦士「···お前に勝つ事なんて、俺より数倍強いやつでもできやしねえよ」

勇者&戦士「···ハア···」

戦士「···ま、とりあえずは仲間を探すか」

勇者「まーそうだな、酒場にいるような奴はあまり信用ならないから、道中で探すことにしよう」

戦士「···(あ、こいつ探す気ないな、)」

実は俺、戦士は一度も勇者に勝ったことがない

ケンカでなら負けないが、真剣勝負では誰一人として勇者に勝てないのだ

そうなったのは、七年前···俺と勇者が出会った年、ある事件が起きてからだった

戦士「(ま、こんなこと今さら思い出してもしゃーねーか···)」

ー翌日ー

勇者「おーい、起きろー」

戦士「んごごご」Zzz

ズダンッ!!

戦士の頭すれすれに矢が刺さる

弓使い「次は本当に当てますよ」

戦士「んごごご」Zzz

勇者「なんでお前寝てられるんだよ!起きろ寝てたら死ぬぞ!」

弓使いがはやく旅に出たがって仕方がないようで、殺す勢いで俺たちを起こしてきた

戦士「ふああ···ん?おーす、」

勇者「起きたか···」ハア

弓使い「さあ、起きたなら早く出発しましょう、」

勇者「まあちょっと待てよ、なんでそんなに早く出発したがる?」

弓使い「こんな糞みたい···古い環境の所より、新しい所に行きたいんです、そうすればもっと強く···」

戦士「···この間の戦いで弓使いの矢が通じなかったのは、矢のせいじゃない」

戦士「その弓が原因なんだ」

弓使い「え···?これですか?」

戦士「その弓、作った木は適当に選んだだろ」

弓使い「えっ!?な、なんでわかったんですか!?」

戦士「人間以外の全ての生物は···扱える扱えないに関わらず、全てが必ず『魔力』を持っている」

戦士「魔物や魔族がそうなように、魔力の絶対値も個体によって違う」

戦士「植物も同じなんだ、魔力を多く宿す物と、そうでない物がある···その弓は、後者で作られたものだ」

弓使い「ふむふむ···」メモメモ

勇者「植物自体が魔力を使えずとも、人間や魔族など、知能の高い存在は『魔力』を扱う術を持っている」

勇者「植物を異常に成長させたり操ったりする魔法は、植物の中に眠る魔力を操っているからできる技なんだよ」

弓使い「ほう···」メモメモ

戦士「つまり、弓に使った自体に強力な魔力が宿っていれば、使い手が魔力を持っていなくとも『魔力持ち』と近い力が発揮できる!」

弓使い「おおっ!!すごいです!」

戦士「ただ、まあ魔力を多く持った木を見分けるのは簡単じゃあ···」

弓使い「ほいっと」

近くにあった巨木を、弓使いが蹴り倒した

勇者「···あれ?弓使···い···だよな?武道家と間違えたっけ?」

戦士「おいおい待て待て!!なんかこの木明らかに神木っぽいそれなんだけど!!」

弓使い「これでいいんじゃないかな?って思ったのでつい」

戦士「···なあどうする勇者、本当にこの娘連れてくのか?」ヒソヒソ

勇者「正直俺も今どうしようか悩んでたところだ···」ヒソヒソ

弓使い「あ、これ森の民が迷いの森の神としてとして崇めている神木···いやなんでもないです、気のせいです多分」

戦士「マジで神木だったよあれ!本気で置いていったほうがいいんじゃないか!?」ヒソヒソ

勇者「う、う~ん、でも絵面的に紅一点はほしいし···」ヒソヒソ

弓使い「この木けずって弓作るので少し待っててくださいね!」

戦士「お、おい!削るっつーか他にも色々工程が···!」

弓使い「大丈夫です!多分!」

勇者「まあまあ、弓使いの超感覚を信じてみよう」

戦士「でもよ···」

勇者「···今の内に逃げるぞ」ボソッ

戦士「(ええ~···)」

弓使い「あ、逃げても追いかけますよ、足撃ち抜いてでも」

勇者「ほ、ほらな!やっぱ超感覚はすげえや!」

戦士「あー···まー仕方ねえか···」ヤレヤレ

弓使い「出来ました!」

戦士「···まあ、弓として機能するかどうかはともかく···形は弓だな、」

戦士「(それでも普通の弓より強力に見えるあたりさすが神木っつーか···なんだよこの神々しさは···)」

弓使い「魔力のコントロール方法とかはよくわからないんですけど···勘でなんとかなるかな?」

勇者「ん、それは道中でゆっくり覚えていこうぜ」

弓使い「はいっ!」

ー魔界側、下級魔族の街ー

勇者「着いた!」

戦士「だから待てやこのアホ勇者」

勇者「なんだよ」

戦士「なんで魔界来てんだよ!!仲間集めんじゃなかったのか!?」

勇者「早く魔王に会いたい衝動に駆られて···」

戦士「さすがは目覚まし時計が魔王の罵りボイスな男···向こうみずにも程があるぜ」

弓使い「関係あるんですかそれ!っていうか魔王の罵りボイスなんてどこで入手したんですか!?」

勇者「『魔王様とつながろうラジオ』の音声を合成して···」

弓使い「···変態が」ボソッ

戦士「そんな無駄な技術をつけてる暇あったら修行しろ!そんなんだからそのへんの武道家に押し負けんだよ!」

勇者「だからどうせ真剣勝負では負けないんだからいいだろうが!!」

魔族「あのー···」

勇者「んぎぎぎ!!」戦士「ああちょっと待ってくれ!今こいつの口縫い付けるから!!」

弓使い「戦士さん!こんなこともあろうかと針に糸つけておきました!」

戦士「でかしたぞ弓使い!!」

魔族「(なんだこの人達···)」

魔族「あの、終わりましたか?」

勇者「終わりましたかじゃないよ!助けて!」

魔族「ええ~っ?どうしよう···」

戦士「いいからそこで待ってて!」

魔族「う、うーん···」

勇者「助けてくれたら魔王様の秘蔵写真あげるから!」

魔族「マジですか?でもうーん···」

魔族「···転移魔法、」

弓使いに押さえつけられていた勇者が、魔族の隣へとワープした

弓使い「えっあっ···!?これが魔法···」

勇者「はははバーカバーカ!!捕まえられるもんなら捕まえてみろや!」

戦士「弓使い!射て!」弓使い「まかせて下さい!」

勇者「いや射て!じゃねえよ!?そしてなんで射つことになんの躊躇いもないんだよ!ウッ!?」ドスッ

魔族「(騒がしい人たちだな···)」

ーとある魔族の家ー

魔族「(なんか泊めることになってしまった···)」

戦士「弓使い、弓を射つ時より、引くときの方が力を籠めやすい、そのためには極限の集中状態を常に···」

魔族「あの、あなたたちはどこから旅をしているんですか?」

勇者「はふへふひいい」

戦士「おっと、縫い付けたままだったすまん」ブチッ

勇者「いったい!!」

戦士「王国のはずれにあって、王国の人間からは『始まりの町』なんて呼ばれてる町からだ」

魔族「始まりの町···(歴代の勇者が旅立つ町···)なんで旅をしてるんですか?」

勇者「魔王様に一目でいいから会いたいんだ···魔王城ってカメラ持ち込みOK?」

魔族「いや知りませんけど···多分アウトかと···」

勇者「くっ···!せっかくこの日の為に貯金を下ろしたというのに···!」

魔族「それにしてもよかった···てっきりあなたがたを魔王様の命を狙う勇者かと思ってしまいました」

弓使い「なるほど、後ろに杖を構えているのはそのせいだったんですね、」

魔族「っ!?」

弓使い「もしも『魔王様の命を狙う勇者』だったら···ここで殺そうとしていたんですね、負ける事も、覚悟の上で···」

魔族「···すみませんでした、」ポイッ

勇者「···あんたも、よっぽど魔王様の事が好きなんだな」

勇者「いやさ、確かに俺たちは勇者パーティーだけど、魔王様の命をとる気はないよ」

魔族「!結局···勇者なんですか···」

魔族「···その言葉が本当なら、魔王様を助けてあげてください」

魔族「···魔王様は優しい方です···私達下級魔族と同じ生活をして、ラジオやテレビを通して魔界全土に愛を振り撒いて···」

魔族「でも、魔王様はまだ若すぎる···実力も、歴代魔王最弱とまで言われています···」

勇者「?だからなんだ?」

魔族「···それに不満を持った魔族が、暴徒と化したんです」

魔族「こんな若い女に魔王が勤まるかだとか···弱い王はいらないだとか···そんな理由で!魔王様を傷つけているんです!」

弓使い「···クズ共が···!」ボソッ

勇者「···それが本当なら···」

戦士「ああもうわかってるよ、戦いは俺に任せろって」

魔族「出会ったばかりなのに···すみません、私だってあなた達の事を信用できてるわけじゃないんですけど、」

勇者「目的が同じなら、俺達はもう仲間だ、裏切ったりなんかしないよ」

魔族「···ありがとうございます、勇者さん」

ーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は、とある研究所の所長の息子として生まれた

だが親父は俺を研究所にはいれてくれなかった、なぜだか理由はわかっている

その研究所では、魔族や魔物の細胞の研究を主に扱っていたからだ、

それでもどんな事をしているのか気になった俺は、こっそりと鍵穴から親父の仕事をする様を見ていた

真剣に研究に取り組む親父の姿は、俺の憧れで···

「所長、例の細胞を···入手できました」

「そうか、···おお···!これが···!」

これは俺、戦士のちょっとした昔話

ー俺がこの『魔神武装』を手にするに至った···一人の少年の、絶望の物語ー

第二章、『憧れを見る瞳』

戦士「おとーさん、今日もお仕事?」

所長「ああ、遊んでやれなくてすまないな」

戦士「ううん、がんばってきてね!」

所長「それじゃあ行ってくるよ、ありがとう」

戦士「いってらっしゃーい!」

親父はいつも申し訳なさそうに家を出ていく

お母さんは、俺を産んだ3年後に事故で死んでしまったらしい

だから俺はいつも、一人で留守番をしていた

戦士「よいしょ···っと」

だが、子供だった俺がいつまでもそれに耐えられるはずもなく···

ー研究所ー

所長「相変わらず魔族の細胞は謎が多い···細胞一つ一つが、人間における『食欲』のような物を持っている」

所長「エネルギーが足りなくなれば、周りの細胞同士で喰らい合い、エネルギーを補給する」

所長「エネルギーが多くなれば、それを魔力としてそれぞれの細胞が保管する」

所長「『魔力』についての研究は私達の本分ではない···が、それを解き明かすには、細胞の研究を進めることが必要不可欠だ」

所長「さて、今日も頑張って行こう!いつも言っていることだが、扱いには気をつけろよ!」

助手「はい!」研究員「はい!」

所長、助手、研究員二人

たったこれだけで構成された、小さな研究所

それでも実績はかなりあるようで、資金は王国からかなりもらっているようだった

戦士「へへ···おとーさん、頑張って」

鍵穴から研究所の様子を見る俺、当然大した範囲は見れないが、なんだかその狭い景色にワクワクしてしまい、気づけば毎日のように研究所に来ていた

この頃は、七代目魔王と七代目勇者の戦いも最終局面を迎えていた

その戦いの中で、勇者がやっとの思いで魔王の左眼を潰したという事が、話題になっていた

助手「所長!見てください!」

所長「!これは···!」

助手「3つ以上の細胞の集まりの前に、人間の細胞の塊を置いてみたんですが···」

所長「2つの細胞が···一つの細胞を、人間の細胞群に投げ込んだ···!」

助手「これはすごい発見ですよ!魔族発生のルーツがわかるかもしれません!!」

所長「···通常の魔族の細胞でこれとは···」

所長「···歴代最悪の魔王···たしか、最近左眼を潰されたと聞く」

助手「所長···?」

所長「恐らく、危険を少しでも減らすため···細胞は地面ごとえぐりだされ、細胞が死滅するまでどこかに保管されているはずだ···」

所長「何としてでも、魔王の細胞を入手するんだ!そうすれば研究がさらなる段階へと踏み出せるかもしれん!」

この日、魔族の細胞は人間の細胞よりも強力で、人間の細胞をのっとり、魔族の細胞へと変える力があることが発見された

その現象は、どの魔族の細胞でも同じだった、ブレーンを失い、片手で足りるほどの数の細胞の塊にのみ、この特性があるらしい

助手「所長、例の細胞を···入手できました」

所長「そうか、···おお···これが···!」

助手「魔王の···歴代最強と呼ばれた、七代目魔王の左眼の細胞です···!」

戦士「(魔王···?)」

所長「こ···こんな馬鹿な···!」

助手「どうしました!なにか細胞に異常が···」

所長「細胞の状態だというのに···なんというおぞましさだ!ガラスの内側に少しヒビが入っているぞ!」

助手「研究員!もっと強固な入れ物を持ってきてくれ!」

研究員1「はい!」

戦士「(なんだろう···皆が急にどたばたしはじめた···)」

研究員2「っ!?」

助手「どうした!!」

研究員の一人が、急に右足を抱えてうずくまった

研究員2「い···痛い!!誰か···!なんだよこれ!!」

所長「まさか···!お、おい!足をみせなさい!」

研究員2「ひっ···!ひいあぎゃあああああ!!」

所長「これは···!馬鹿な!!さっきの僅かなヒビが···!」

ガラスに空いていたヒビが小さな穴となり、そこから細胞が研究員の足へと飛ばされていた

所長「あ、ありえん!まさかこの細胞!この状態でも魔力をコントロールしていると言うのか!?」

研究員2「俺の···!俺の足がああああああ!!」

助手「急いで足を切り落とすんだ!!それしか方法はない!!」

所長「それより細胞の入れ物の穴を鉄板で塞げ!それが最優先だ!!」

研究員2「助けて···!所長!!!」

所長「ま···待ってろ!今斧を持って···!」

「ぎゃあああああああああっ!?」

助手「!?なんだ今の声は!」

所長「扉の向こうから···!?まさか!」



戦士「あ···ああああああああああ!?」ズズズ···

鍵穴から覗いていた俺の目に、魔王の細胞が入り込んだ

目の中に細長い虫が入り込んで行くような、奇妙な感覚が俺を襲う

戦士「痛い!!痛いよう!!」

所長「この声···!戦士!?」

戦士「おとーさん!!助けてええええええ!!」

俺は泣きさけんだ

自分の目が自分の物では無くなっていく、じわじわと体が侵食されて行く

子供の俺には、それが恐ろしくて仕方がなく、パニックになっていたんだと思う

所長「戦士!!」ガシッ!

親父が俺の腕をつかみ、眼をえぐり出そうとした時、俺は反射的に親父を押し退けようとしてしまった

···魔王の力が宿りはじめた体で、

親父の腕はもげ、体は宙へと投げ出される

所長「···!」

戦士「ああ···!あああああああああああ!!おとーさん!!」

所長「待ってろ···今···助けて···!」

助手「所長!!もう息子さんの事は諦めましょう!!今ここで二人を殺さなければ···!」

所長「諦めてたまるか···!戦士は私の···私と亡き妻の、大事な一人息子だぞ!」

助手「なぜです!その一人息子を想うなら!!これ以上ひどいことになる前に、今ここで殺してあげるべきでしょう!!」

所長「助手···!研究員二人を連れて、外へ出ろ、そして非常用のシャッターを厳重に閉めるんだ」

助手「!···はい!」

所長「···戦士、私を殺せ···」

戦士「お···おとー···さん···!?」

所長「すまない···!お前が研究室を覗いていることは、前から知っていた···なのに注意してやらなかった、そのせいでお前は···」

所長「···私が死ねば、この研究室にセットされている爆弾が自動的に発動する、閉ざされた空間でそれを食らえば、魔王の細胞とて生き残るのは不可能···!」

戦士「おとーさん···!いやだよ···!それに、本当はおとーさんが死ぬ必要はないんでしょ!?」

所長「···当然、私が死なずとも爆弾の起爆は可能だ、だが···それには私が外にいる必要がある」

所長「それに···いつもお前には、寂しい思いをさせてしまったからな···せめて最後は、一緒に···!」

戦士「おとーさん···でも!ぐああっ···!」ズズズ···

もしかしたら、爆弾が起爆したとしても俺だけは生き残ってしまう可能性がある

まだ成り立てとはいえ、既に体の2割ほどが魔王の細胞に乗っ取られているのだから

所長「たとえお前が生き残ることになってしまったとしてもかまわんさ···最後くらい···お前の代わりに、私が寂しい思いをするべきだ」

それでも、俺には親父を殺す事なんてできなかった

意識を失い、目覚めた時には親父が死んでいた、研究の証拠を全て消すための爆弾も···結局、俺を殺すことは出来なかった

どうやら、一時的に魔王の細胞に全身を乗っ取られていたようだ···その現象は、その後も度々現れた

俺が目を覚ます度に、侵食は進み、俺の周囲は瓦礫の山になっている

何度も自殺しようとした、何度も自分で自分を破壊してみた

だけどそれでも、この悪夢の細胞を殺す事はできず、むしろ侵食をすすめるばかり···

戦士「···」

俺は餓死をしようとしていた

飢え···それだけが、この細胞を殺す唯一の手段だと、子供の俺は考えた

今おもえば、それも侵食を早めるだけだったんだと思う···が、路地裏でずっと座り込んでいた俺に、一人の少年が声をかけた

???「···君···その体、どうしたの?」

半分が黒色に染まった俺の体を見て、少年が質問してきた

戦士「···僕に、近寄らないで、死んじゃうよ」

もはや、体をコントロールすることすらままならない、勝手に動こうとする半身を抑えるだけで精一杯だった

???「何言ってるの?」

戦士「近寄るな!!」

???「えー?そう言われると余計近寄りたくなるんだけど···」

戦士「この···!近寄るなってばっ!!」

ゴキッ!!

俺は少年を振り払うつもりで腕を振ったが、少年の右腕が折れてしまった、

???「痛っ···!?え!?」

戦士「お前なんなんだよ!!近寄るなって言ってるだろ!!」

戦士「今の僕はな!もう人間じゃなくなっちゃったんだ!!壊したくなくても全部壊しちゃうんだ!!」

戦士「お前なんかに···!お前なんかに僕の気持ちがわかるか!!」

???「···回復魔法···」

戦士「あ···れ···?」

少年の腕が、何もなかったかのように治って行く

???「···君はまだいいよ、」

???「だって、壊したくない物を壊しちゃうってことは···自分の意志じゃないんだもん···」

???「···殺したくもないのに、殺さなくちゃいけない運命を持って生まれた僕に比べたら···」

戦士「···え···!?」

勇者「···僕は勇者、魔王を殺す事を宿命付けられた一族の···八代目だ」

この日、魔王の細胞による俺の体の侵食は止まった

むしろ魔王の細胞を制御できるようになり、今では『魔神武装』という形で俺と勇者を支えている

ただ、侵食が止まった理由が、俺の精神がどうこうだの、そういう理由ならまだよかった···

もしそうならば、勇者にあんな呪いを背負わせる必要はなかったのに···

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戦士「弓使い、」

弓使い「はい?なんでしょう」

戦士「···お前の超感覚は、勇者のアレについてももう気付いてるんだろ?」

弓使い「···はい、」

戦士「それは絶対に口外しないでほしい···頼む、」

弓使い「···わかりました」

勇者が自ら背負った呪い、そして勇者と魔王が殺し合うという運命···

その二つをぶち壊すのが、俺の目的で、俺の全てだ

勇者の邪魔になる物は全て壊す、勇者の壊せない物は俺が壊す

この力はその為の力で、それだけの為の力なのだから···

町はずれの洞窟の前で、魔族が立ち止まった

戦士「お、着いたか···」

魔族「はい、ここが···反魔王勢のアジトです···」

勇者「そんじゃ、頼んだぜ···戦士、」

戦士「ああ···弓使い!援護を頼む!」

弓使い「はいっ!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は、迷いの森に住む、狩人の二人の間に産まれた

お父さんの超感覚は村一番だったし、お母さんの射る矢は百発百中だった

そんな二人の娘である私は、村の中では一番の落ちこぼれ

矢を射っても的には刺さらないし、超感覚だって五回に一度は外してしまう

そのくせ、心の底ではいつも他人を蔑みながら生きてきた

でも、それでよかったんだと思う

力故に欲望に溺れて、悪の道を進むよりは

第三章、『守られるべき物』

戦士「弓使い、まずは明かりを落として混乱させるぞ···」

弓使い「はい···!」ギリッ

お兄ちゃんはお父さんとお母さんの良いところを合わせたような、完璧な人だった

お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、出来の悪い私の事を···嫌っていた

私が獲物を取れなかった時は、私を気絶するまで何度も殴ったし

私が何か失敗した時は、二日間食事を抜かれた

ずっとこんな奴らは死んでしまえばいいと思っていた

だってそうでしょ、向こうだって私が死ねばいいと思ってたんだから

一族の恥さらしだって···ずっと言われてきたんだから

弓使い「···ふっ!」ビシュッ!

私の射った矢は、的である電灯から大きくはずれ、壁に突き刺さった

戦士&弓使い「···あ、」

「敵だ!!どこかに敵が潜んでいるぞ!!」

魔族「な、何やってんですか!!」戦士「あーもう!!後は俺にまかせとけ!」

弓使い「す、すみません···」

戦士「あー···すまん、あんまり気にするなよ、てめえら仲間の尻拭いは全部俺が引き受ける」

勇者「そうだぜ、全部こいつにまかせときゃあ、ぜーんぶ解決するんだからさー」

弓使い「で、でも···」

弓使い「やっぱり···私も何か、できる事を···」

戦士「!おい···なんか、急に静かになった···?」

勇者「···この空気、ただ事じゃなさそうだな」

弓使い「この感覚···まさか!」

戦士「!弓使い!どこに行く!」

弓使い「急いでください!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私が罰としてご飯を抜かれていたとき、とある女の子がパンをくれた

女の子「大丈夫?どうしたのその傷」

弓使い「いえ···私が悪いんですから、このパンはいりません···」

女の子「えー、そんなこと言わないでよ」

弓使い「あれ···?あなたは···」

女の子「ん?」

その子は、どういうわけか森の民ではなく、ちょうど同年代くらいの普通の女の子だった

女の子「アタシはわけあって盗賊やっててさー、そんで、このパンこないだ盗んだやつなんだけど、」

盗賊「ちょっと食べられなくてさ···キミに食べてもらいたいんだ」

弓使い「そんな···人の物を盗んじゃだめだよ!」

盗賊「世の中には、盗まなきゃ生きる事が出来ない人もいるんだよ···仕方ないって言う訳じゃないけどさ、」

盗賊「このパンだって···本当は盗みたくなかったんだ、」

弓使い「じゃあ、なんで···」

盗賊「飢えて苦しんでる子がいてさ···何か食べさせてあげたかったけど、お金がなくてね···このパンは、その子にあげる為に盗んだ物なんだ」

盗賊「だから、アタシが食べるのは···駄目かなって思ってさ、どうせなら苦しんでる子に食べてほしくてさ、」

弓使い「···でも、悪い事なんじゃ···」

盗賊「悪い事が許されないというのなら、みんなこの世界に生きてないよ、キミ達だって生き物を数えきれないほど殺してる」

盗賊「···同じ悪事なら、アタシは苦しんでる人の為に、人を苦しめてる奴に悪事を働きたい」

弓使い「···悪いって、難しいんだね···」

盗賊「そんで、落ち込んでフラフラしてたら、いつの間にかここにいたんだ」アハハ

弓使い「アハハじゃないよ···ここ、私達以外はそうそう入れないのに···」クスッ

盗賊「ま、伊達にこの歳で盗賊やってないってことかな!」

弓使い「盗賊ちゃんは、パパやママはいないの?」

盗賊「いた···んだろうけどさ、アタシには記憶がほとんどないんだ、ここ3年間の事しか覚えてなくて···」

盗賊「んー、まあいいじゃん!とりあえずこのパン、置いとくね!」

弓使い「あっ、いっちゃうの?」

盗賊「またいつか会えるよ、その時はキミの話も聞かせてね」

弓使い「うん!またね!」

それ以来、結局盗賊ちゃんには会えていない

森の中にはいくら探してももういなかったし、きっとどこかで悪事を働いているのかな

彼女は今どこにいるんだろう···
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

弓使い「やっぱり···この嫌な空気、あなただったのね···」

???「ん、あー···君は···」

自らをヒーローと名乗る謎の男の手によって、反乱軍が全滅していた

???「ああ、確か君はあの糞みたいな一族の中で、唯一正義を保った娘だったかな?」

戦士「よお···また会ったな、」

???「···お前についても、色々と調べさせて貰ったよ、半魔族の戦士君」

???「しかし、魔王の侵食を食い止めた理由までは分からなかった···是非とも教えてもらいたい」

戦士「今の俺にはそんなことはどうでもいい、それより···なぜこいつらを殺した」

???「なぜって?魔王に歯向かう悪のクズ共は正義に消されるべきじゃないか?」

弓使い「ッ···悪を殺す事が正義とか···ふざけたことばかり言ってんじゃないわよ!」

???「?俺はそうして殺されたぞ?じゃああなぜあの時俺を殺した奴は正義として今を生きている?」

弓使い「···!?」

勇者「よせ、弓使い···相手にするだけ無駄だ」

???「なあ何でだ?なんで俺が殺された時はあいつを正義扱いしたんだ?なあ」

戦士「どうやら、本気で頭が終わってるみたいだな···なにも命まで終わらせる必要はねえだろうが、てめえの妄想なんて知った事か」

???「なあなあ、なんでなんだよ、」

???「教えろ···教えてくれよおおおおおおおおおおおお!!」

戦士「勇者、どうするよ」

勇者「放っておいて逃げよう、俺らの勝手な戦いにまで、魔族を巻き込む理由はない」

弓使い「私は反対です、こいつは今ここで···!」

戦士「···確かにな、今ここで殺さないと···」

???「そうやって···みーんな俺の事を殺そうとするんだ、いつだってそうなんだ」

勇者「···お前ら、魔族を連れて村へ戻ってくれ」

勇者「こいつとは、俺一人で戦う」

戦士「!お前···!いや、わかった···行こう、弓使い」

弓使い「嫌ですよ!!私も勇者さんと一緒に戦います!」

戦士「あいつの戦いを見る事は俺が許さない···それが誰であろうとだ」

魔族「弓使いさん、あの変な人の事を恨んでいるのはわかりますが、ここは勇者さんに任せましょう!」

???「勇者···勇者か···戦争さえこの世になければ···正義と対立する悪さえなければ···」ヨロッ

勇者「裏がなければ表だって存在する事は出来ないんだ、お前のやっていることは、ただの人殺しに過ぎない!」

勇者「だから俺が···お前に本当の苦しみを教えてやる、」

???「俺はヒーローだ!この世の苦しみなんてすべて味わってきた!今さらお前みたいな勇者に教えられる事なんてないんだあああああ!!」

その叫びと同時に、男のフードが外れた

フードに隠されていたその顔は、アサリだった

勇者「···は?」

勇者「···あっ!?」

勇者「思い出した···!お前!戦士が読んでた本の!!」

アサリを象った仮面を被った謎のヒーロー、その名もアサリさん!
水のビームや殼カッターで悪を滅ぼす!
世界の平和は、今日もこの男に守られるのだ!

正義のヒーローアサリさん!
1~12巻、好評発売中!

アサリさん「···なんだ、知ってたのか、俺の事を」

勇者「名前だけは···え?あれ?なんでマンガのキャラクターが···」

アサリさん「だが、素性を知られた以上はやはり消すしかないよなあ!!」

アサリさんが懐からアサリの殼を二個取り出した、なめてるのかこいつは

勇者「狂った頭のコスプレ野郎とは、全く子供には見せられない正義のヒーローだな···」

アサリさん「必殺、『殼カッター』」

ゴトッ···

勇者「···はあ!?」

勇者の持っていた剣がポッキリと折れてしまった、いや、斬られてしまった

勇者「ちょっ!?待て待て待て待て!!全く頭が追い付かない!!なにこの状況!!」

アサリさん「それはよかった、あばよ、八代目勇者さん」

アサリさん「ッ!?」ドスッ!!

弓使い「勇者さん···ごめんなさい!どうしてもこの男は私の手で···!」

アサリさん「これは···矢か!?この短期間でここまで成長···するとは···!」

アサリさん「いいだろう···必殺···」

勇者「弓使い!!危ない逃げろ!」

アサリさん「『ウォータービーム』!!」

名前からは考えられないほどの高圧水流が放射される、

岩を穿ち、全てを砕く水のビームが弓使いの脚を貫いた

弓使い「ぎっ···!?」ヨロッ

勇者「···!(まさかコイツ本当に···)」

アサリさん「これで終わりだ、必殺!『シェルソード』!!」

勇者「させるか!!」

勇者がアサリさんの前に立ちはだかるも、その圧倒的威力には敵わず胴体を真っ二つにされてしまった

弓使い「ひっ···!?」

勇者「逃げ···ろ···!」

弓使い「ご···ごめんなさい!!私のせいで···!」

勇者「いいから早くしろ!!」

弓使い「···!は、はい!」タッタッタッタッ

アサリさん「フン、逃がすか···」

勇者「いいや、それはこっちのセリフだ」

アサリさん「···!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

勇者「はあ···!はあ···!」

アサリさん「馬鹿···な···!」

勇者「正義は必ず勝つ···ってな、」

アサリさん「ふざけるな···!その力のどこが正義だ!!」

勇者「お前に言われたくない、本の内容は事実なんだろうけど···全部お前が仕組んだことなんじゃないのか?」

勇者「悪を作り町を襲わせ、そこに助けに入る···俺達のいた町に来た魔物も、お前が送った奴等だったんだろう」

アサリさん「ぐっ···!」

勇者「俺は善悪どうこうには興味がないし、お前についても正直どうでもいい···だけど」

勇者「魔王を泣かせるようなマネは許さねえぞ···!」

アサリさん「···!」ゾワッ

アサリさん「なんでお前は···まだ会ってもいない魔王にそこまで···」

勇者「···俺が愛する事ができる相手が、魔王だけだからだ」

勇者「こんな体のせいで···な」

アサリさん「···わかった、わかったよ、俺の敗けだ」

アサリさん「認めよう、お前は···俺が体験してきた苦痛よりも、もっと苦痛を味わっている事を」

勇者「···で?どうするんだ、これからもヒーローの真似事をするというなら、まだ戦ってやるぞ」

アサリさん「···ヒーローごっこは、もうやめだ···」

アサリさん「これからは本物のヒーローとして頑張って行こうと思う、罪滅ぼしというわけじゃないが」

アサリさん「今までの俺をヒーローだと信じていた人達を···裏切るよりはマシだ」

勇者「なんだ、ただのキ○ガイかと思ったら意外と話が通じるんだな」

アサリさん「俺だって昔は、本物のヒーローを目指してたんだ」

勇者「···ま、事情は深くは聞かないよ、」

アサリさん「お詫びと言ってはなんだが、魔王城に連れていってやろうか?」

勇者「!?マジでっ!?」

アサリさん「ヒーローの初仕事だ、勇者の手助けが一番似合うだろうよ」

勇者「なんか急に大人しくなって怖いんだが」

アサリさん「負けると分かってる相手にまたケンカを売るほど馬鹿じゃねえよ、」

戦士「どうやら終わったみたいだな」ザッ

勇者「おう、心をポッキリと折ってやったぜ」

戦士「勇者の吐くセリフじゃねえ···」

アサリさん「···弓使いはどこだ?」

弓使い「···何?」

アサリさん「すまなかった···」

弓使い「···別に、私は正義を振りかざす悪が嫌いなだけですから」

弓使い「今度あなたが悪事を働けば、一撃で仕留められるくらい強くなってあなたを殺しす、それだけです」

戦士「(···意外だ、てっきりそれでも許さないもんだと思っていたが···)」

戦士「(弓使いは弓使いなりに、なにか思う所があるのかもな···)」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー魔王城ー

ここは魔王城、私は魔王様に仕える側近

側近「魔王様、食事の用意が出来たようです」

魔王「本当に!?」ガタッ

側近「はい!二日ぶりの食事ですよ!」

魔王「やったー!」

メイド「それが···その、」

メイド「食料庫の中···クッキー···一枚だけ···だったので、それだけなんですけど···」

魔王「···わ、わーい···」

側近「魔王様···」グスッ

魔王「い、いいの!私が望んでこうしてるんだから!!側近、半分こしましょう!」

メイド「魔王様···今急いで寮から私のおやつを持ってきます!失礼します!」

魔王「!いいの!?やった!!いや···」

魔王「これよりもご飯を食べられない人もいるんだ···!もっと少なくてもいいくらいよ!!」

魔王「···側近まで巻き込んで悪いとは思ってるけど···」

アルミホイルで光量を節約したシャンデリア、窓際の豆苗やかいわれ大根、机の引き出しにはもやし

魔王様は生活のレベルを下げに下げ、食費や電気代を国民の為に消費していた

それどころか城までも自らの手で解体し、その材料を売ってまで寄付をしている始末で···

今や魔王城は小さなプレハブ小屋で、城と呼ぶにはあまりにも脆弱な建物になっていた

最も、内装だけは私が『どうしてもそれだけは』と泣いてお願いしたから元のままだけど···

側近「私は全然大丈夫だよ、魔王ちゃんと一緒にいられるだけで幸せだもん」

二人きりの時は、「魔王ちゃん」と呼ぶのは昔からの癖、昔私は魔王様と良く遊ぶ仲だった

側近「それにこうしていると、なんだか昔を思い出さない?二人で城を抜け出して、何度も先代様の側近に叱られてたよね」クスッ

魔王「懐かしいなあ···秘密基地なんか作ったりしてたよね!」

側近「あの時は私が魔王ちゃんの側近になるなんて思ってもなかったなあ···、あ、ほっぺにクッキーのカスが···とってあげる」

魔王「ん、ありがと」

側近「久々の食事だからってそんなにがっついて食べるからだよ?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アサリさん「勇者、お前に言っておきたい事がある」

勇者「?」

アサリさん「俺は···初代魔王だ」

勇者「なにわけの分からないことを···」

アサリさん「俺と初代勇者は親友だった、当時は魔族も魔物もこの世にはいなかったんだ」

アサリさん「だが、目が覚めたらいつの間にか···俺は魔王になっちまってた」

勇者「え···?」

アサリさん「そして俺が魔王として目を覚ました時、人間は戦争を止めた」

アサリさん「だがその瞬間に、腐った宿命を俺たちが背負う事になった···」

アサリさん「人間は魔力を持つ魔族を恐れ、魔族は自分たちを迫害する人間を憎んだ」

アサリさん「だがそれでも人間と魔族の間で戦争が起きないのはなぜだかわかるか?」

勇者「···勇者と魔王がいるから···か」

アサリさん「そう、勇者と魔王は、人間と魔族の憎しみを一身に受ける存在···」

アサリさん「俺は一度親友···初代勇者によって殺された」

勇者「じゃあなんで···」

アサリさん「まあ聞け、それで俺は悪者扱い、勇者は英雄扱いだ」

アサリさん「おかしい話だろ、親友を躊躇いなく殺した奴が英雄だってんなら、自分を殺そうとする親友の顔を見て、それでも親友を信じようとした俺は一体なんなんだ」

アサリさん「だが、何者かの手によって俺は生き返った···蘇生魔法なんて使える奴はこの世にいないのに、だが俺は確かに一度死んで甦っている」

勇者「それが本当なら確かにひどい話だが···つまり何が言いたい?」

アサリさん「魔王を殺さずに済むなんて思うな」

勇者「···」

アサリさん「俺は歴代の勇者と魔王を見守って来た···でも、初代を除きその中に敵を殺したいなんて思ってる奴はいなかった」

アサリさん「歴代最強と呼ばれ、戦闘を好んだ先代魔王でさえ、勇者を殺す事はしなかった···やろうと思えばいつでもやれたのに、だ」

アサリさん「···ま、強い奴と少しでも長い間戦っていたいってのが本音だったんだろうが···」

アサリさん「とにかく、勇者が魔王を殺す事はもはや世界に決められたルール、どうやったって覆しっこないんだ」

勇者「それでも···何とかしてみるさ」

アサリさん「それが出来りゃ、歴代の勇者が涙を流す事も無かっただろうよ···」

勇者「知ってるよ、今の状態じゃあ魔王を殺さずには終われない事くらい」

勇者「俺の身体も、絶対に覆せない世界のルールの一部に組み込まれていることはもう体験しただろう」

勇者「・・・だけど、ひとつだけ魔王を殺さずに済む道がある」

アサリさん「・・・ま、期待してるぜ」

魔族「勇者さん」

勇者「ん?」

魔族「これを・・・魔王様に」

魔族「村の皆から少しずつ集めた食料です、」

勇者「・・・わかった、この食料は必ず魔王に届けてやる」

魔族「ありがとうございます・・・」

勇者「さあ行こう、案内頼んだぜ!アサリさん、」

ー魔王城ー

魔王「もう···限界」

側近「あとは私にまかせて、魔王ちゃんは少し休みなよ···」

魔王「側近だって···ここ二週間ろくに寝ないでこっそり私の仕事やってくれてるんでしょ···知ってるんだよ」

側近「う···で、でも、魔王ちゃんは魔王なんだし、やっぱり体を大事に···」

魔王「私にとって、側近は私の半身なの!どっちが休むべきだ働くべきだとか、そういうのは%>(,@&···」Zzz

側近「···いいセリフの途中で寝ないでよ、もう···」

側近「魔王ちゃんにとっては私は半身的存在かもしれないけど、私にとって魔王ちゃんは私の全てなんだからね···」

昔はよかった···なんて、まだそんな事を言える年でもないけど

いずれ誰かに殺されるとかそういう事を考えざるを得ない魔王という立場···

そして、それを見届けなければならない側近という立場も···

子供の頃は考えもしなかったし、悩みもしなかった

だから今更躍起になって、その運命を壊す方法を探している

魔王をこの世から消す方法は···?勇者をこの世から消す方法は···?

考えても考えても、答えは一向に出ない

もともとこの世界には人間しかいなくて、人間は国ごとの争いばかりしていた

ところがある日突然魔物と魔族が誕生し、強力な魔力に恐れ戦いた人間達は争いをやめ、協力しあい一つの『王国』となった

人間と同じく知能をもった魔族は、人間に淘汰されないよう魔族と魔物が住む世界を作った···

もちろん今度は人間と魔族の間で争いが起きた、だけどその戦争はすぐに終わる事になった

魔王と勇者の誕生によって···

人間達は魔族への苦しみと恐怖の全てを勇者に背負わせた

魔族達は人間への憎しみと不安を魔王に背負わせた

だから戦争は終わった、しかし戦いは終わらなくなった

どちらかが消えても、再び戦争が始まり、そしてまた新たな魔王と勇者が生まれる

でも私がいつか···この世界を変えて···!

ピンポーン

側近「!?」ビクッ!

側近「(あ、相変わらずこの『インターホン』には慣れませんね···!びっくりするじゃないですか!)」

側近「はい?」ガチャッ

勇者「どうも」

側近「人違いです」バタン


側近「(···どうしよう、意味がわからない!!なんでこの間旅に出たばかりの勇者がここに!?)」

「どうだった?」

「人違いです···って」

「やっぱ違うんじゃねーの?こんなプレハブ小屋が魔王城とかありえねえだろ」

「いやでもあのアサリさんが嘘をつくとは思えないし···」

「あのなあ、この間まであいつが敵だったこともう忘れてんのか!?」

「そうですよ!!所詮あいつはただのゲスな二枚貝だったんですよ!!」

魔王「そっきーん···?なにひへ···モガモガ」

側近「しっ!静かに!」

「···今なんかすごい可愛いらしい声が」

「は?ああとうとう幻聴まで聞くように···」

「おいなんだよその目は!なあ弓使い!可愛い声が聞こえたよな!?」

「え···?私も聞こえませんでしたよ」

「ほら、一番耳のいい弓使いがこういってんだ、やっぱ幻聴だろ幻聴」

側近「(こうなったらしばらく物音を立てずにじっとしてるしか···!)」

ガチャッ!!

メイド「魔王様!!おやつもって来ました!!」

側近「」

勇者「魔王様あァ!?今聞き間違いじゃなければ魔王様っていいませんでした!?」

側近「魔王様!!逃げましょう!」

魔王「あっ!?ちょっ待っ···!おやつーーーーー!!」

戦士「逃げた!」弓使い「いやそりゃ逃げますよ!!とりあえず誤解を解かないと···!」

勇者「待ってくれー!!とりあえずサインだけでも下さい!」

メイド「···な、何が起きてるの···?」

勇者「そうだ戦士!あれやってくれ!あれ!」

戦士「ああ!?あれはこの間崖にぶっ刺さって懲りたんじゃねえのかよ!」

勇者「いいから!追い付くにはそれしかない!」

戦士「どうなっても知らねえからな!」

側近「(···何!?戦士が勇者を持ち上げ···てええええええええ!?)」

戦士「飛んでけやあ!!」ブンッ!

勇者「死ッ!?」ボゴォッ!!

側近「···(地面に向かって思いっきり落とした)」ポカーン

戦士「ああ、すまん!!すっぽ抜けた!!」

側近「(なんなの···)」弓使い「捕まえました」ガシッ

側近「え?あっ!?(しまった···!)」

弓使い「誤解なんです、私達は魔王を倒しに来た訳じゃなくて···」

魔王「ん···誰?」

弓使い「あ、私は勇者パーティーの一人、弓使いです」

魔王「やるんなら一思いに殺して!!」

弓使い「いやだから違うんです!!私達は魔王の···魔王様の元につきたくて来たんです!!」

側近&魔王「···はい?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

魔王「えっと、つまり···王国を裏切るってこと?」

側近「···貴方達はバカなんですか!?そんな事をすればまた戦争が起きるに決まってるじゃないですか!!」

勇者「あ、これ魔族達からの日頃のお礼だそうです」

魔王「わっ!!」

側近「パンなんて久しぶりに見た···!じゃなくて!なんで王国を裏切ろうなんてバカな事を···!」

勇者「惚れた女の為に戦うのが男ってもんでしょーが!!」

側近「そのせいで戦争が起きるっていってんですよ!これ以上魔王様を困らせるようなら···!」

魔王「これ食べてもいいの?」

側近「···はあ、ほら、溢さないように···」

側近「···ちょっと待って、今何て?」

勇者「惚れた女のためにうんぬん」

側近「···惚れたって···」

勇者「魔王様に」

側近「魔王様に!?」

魔王「ぶっ!?」ゴフッ

勇者「お願いです!魔王様を僕に下さい!!」

側近「ふざけるのもいい加減にしてください!!」

戦士「おい!!怒らせてどうすんだよバカ!」

魔王「あ、あのさあ···私魔王なんだけど···」

勇者「そんなの構わない!俺には魔王様が必要なんです!」

魔王「そう言われても···信用···できない」

戦士「···はあ、じゃあこうしよう」

戦士「何か一つでいい、俺達に任務を課してくれ」

側近「はあ···」

魔王「それでその任務を達成できたら、仲間にしてくれってわけ···?」

戦士「そうだ、別に部下が増えるだけだ、悪い話じゃねえだろ」

側近「とりあえず、口を慎めこのボサボサ野郎」

戦士「ボサボ···!」ガーン

魔王「いいわ、その話にのってあげる」

勇者「本当ですか!?」

魔王「ええ、じゃあ早速任務を課すわ」

魔王「···今夜、大臣達との会議があるの、その会議を見守ってて頂戴」

勇者「えっ···?」

側近「魔王様···」

魔王「頼んだわよ」

弓使い「(···どうやら、また訳ありみたいですね···)」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー
財務大臣「魔王様···また下級魔族の村に寄付をしたそうですね」

魔王「···だから何よ」

財務大臣「勝手な事をされては困ります、下級魔族は私達上級魔族の糧であればよいのです」

魔王「下級だろうと上級だろうと、皆魔界の民であることに変わりはない、」

防衛大臣「そんな奴らの事より、軍に金を回すべきだと私は思いますが···」

魔王「私は魔王よ!私が王であるかぎり、勝手な真似は許さない!」

勇者「···(何のためかと思ったが···なるほどな)」

勇者「(こいつらは、魔王に対しての忠誠心も、恐怖心もないんだ···)」

副大臣「···魔王様、私はもう限界です」

副大臣「歴史ある魔王城を解体、下級魔族への必要のない優しさ、そして大事な会議に人間を連れ込むなど···」

副大臣「どれも魔王として恥ずべき行為···私は、もうあなたには付いていけませぬ」

魔王「···!だから···人間と友好関係を···」

副大臣「自惚れるな、あなたは所詮、勇者に殺される事が決まっているただの小娘に過ぎない!」

防衛大臣「ですね、歴代最弱の魔王であるだけで致命的だというのに、自分の命が助かる事を第一に考えていると来れば···」

魔王「だ、誰もそんな事···!」

副大臣「···次の会議までに、決めてください···」

副大臣「私達に道を譲るか、私達に道をこじ開けられるか···」

勇者「···」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー









魔王「ごめん···やっぱり駄目だった」

側近「魔王様···」

先代、七代目魔王は、最強最悪の魔王として名を轟かせていた
その圧倒的な力と好戦的な性格に、魔族達は恐怖と憧れを持ってついていった
しかしその娘、八代目魔王は歴代最弱、下級民を大切にし、人間との友好関係を望む魔王
だがしかし、それは魔族達の目には、既に諦めたようにしか映らないのだった

なぜなら、歴代の魔王は必ず勇者に敗北している、七代目魔王ですら例外ではない
どれだけ強くても、最後は必ず勇者に殺される運命にある
もう一度、魔王が勇者に勝つ可能性を···魔王と勇者が手を取り合う可能性を、
魔族達に示す事さえ出来れば···

勇者「···戦士、弓使い、行くぞ」

戦士「はいはい、」

弓使い「全く、仕方ないですね」

側近「あの、一体何処に···」

勇者「決まってるだろ、王国だ」

魔王「そう···よね、ありがとう、一瞬でもいい夢を見れたわ」

勇者「···またな、」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー翌日ー

魔王「···あいつらはそろそろ王国の城下町に着いてるころかしら、優秀なナビもいるわけだし」

側近「···そうですね」

魔王「だとしたら私が死ぬまで、遅くてもあと2日かあ···」

側近「···そうですね」

魔王「···なんだかんだ、楽しかったなあ···」

側近「そう···ですね···!」

魔王「もう、さっきからそうですねばっかり···」

側近「そうですね···!」グスッ

魔王「嫌だ···!死にたくないよ···!やっぱり生きていたいよ!もっと···!」

側近「私だって···!もっと魔王ちゃんと一緒にいたい!別れるなんて絶対に嫌だ···!でも···!」

側近「うぐ···!うああああああああーーーん!」

私達は、泣くしかなかった
やっぱり歴史は、運命は変えられなかったんだ

魔王は、勇者に殺される

国王「···帰ってきたのか、勇者よ」

勇者「ああ、少しこっちに用事があってな」

国王「ふん、相変わらず口の聞き方がなっておらん奴だ···で、その用事とはなんだ」

勇者「···国王、あんたを殺しに来た」

国王「ほう···?」

ジャキンッ!!

騎士長「貴様···正気か?」

勇者「正気かどうかは知らないが、本気だぜ、俺はそのために帰ってきた」

騎士長「魔王に催眠でもかけられているのか···?まあいい、国王様に刃を向けるのならば容赦はしない」

騎士長「その場の全てを我が武器とする、戦王一身流一代目当主、この騎士長が相手になろう」

勇者「ああ···手柔らかに頼むぜ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー
ー地下牢ー

騎士長「フン、拍子抜けだ」ポイッ

勇者「ぎゃふんっ!」ドサッ

ガチャンッ!

騎士長「魔王の洗脳が解けたら、出してやる···」

???「おいおい···何してんだよアンタ、久しぶりに会ったと思ったら···」

勇者「···お前に会いに来たんだよ、お前ならここにいると思ったからな···いてて···!」

向かいの房にいる女、この女こそが、帰ってきた真の目的

勇者「普通じゃここには入れねえからな···借りを返してもらいに来たぜ、盗賊!」

盗賊「アンタに返す物···?ああ、アレがあったか」

盗賊「私の愛、いるか?」

そいつは、苦しむ人の為に悪い奴から物を盗む自称義賊で、たまによくわからない事を口走る
要するに、変人である

これから始まるのは、奪還の物語
このダラダラとしつつも短い物語も、もうすぐ終盤に差し掛かろうとしていた
第四章、「聞こえる」

勇者「いらん!いいからまずはここを出るぞ」

盗賊「はあ?アンタ···ここが何処だか分かってるのか?」

盗賊「ここは国王城の地下の、死刑確定の極悪人が入るような牢獄だぜ、」

勇者「じゃあなんでお前は死刑されずにずっとここにいるんだよ、」

盗賊「私は特別だからな」

勇者「その特別な力を貸してもらいに来たんだ!頼む!」

盗賊「···アンタは勇者だ、その勇者が国王を裏切るという行為がどういう意味を持つか、それを知っての頼みか?」

勇者「知らん、俺はただ···魔王を助けてやりたいだけだ」

盗賊「ふーん···ま、私の恩人の頼みだ、仕方ないから脱獄囚にでもなんでもなってやろうじゃないか」

盗賊「ただし、私が仲間になるのはアンタだけだ···いいね?」

勇者「ああ、」

盗賊「鍵、開け」

ガチャッ

盗賊「ん~···久しぶりにこの房の外に出たなあ」

勇者「おい!早くこっちも!」

盗賊「わーってるって、開け」

ガチャッ···

勇者「おお···流石だな、」

盗賊「ここの牢は何人もの思念が染み付いている、このくらい簡単だよ」

勇者「なに言ってんだ、普通じゃ出来ない···」

盗賊「当たり前だ···アンタも私も戦士君も···全員化け物だからこそ言ったんだ」

兵士「おい!うるさいぞ···うわっ!?貴様らなんで」

盗賊「無理無理、その剣はしまった方が身のためだよ」

兵士「だ、脱獄しようとしているなら、そちらの方が無駄な事、厳しい訓練に耐えた俺の力を見せてやる!うおおおお!」

盗賊「···普通仲間を呼ぶのが先だろう」

兵士「なっ、うわっ!」ツルッ!

兵士の剣が持ち主に逆らうように手から離れた

兵士「い、一体どうなって···!」

盗賊「残念だったな、まあモブにしては出番もらえたしよかったんじゃない?」

兵士「そうか···お前は!」

盗賊「じゃあ、この剣は貰っていくよ」

兵士「え···あっ」

盗賊「逃げるよ、勇者」

勇者「ああ!全く頼りになる!」

兵士「まっ待て!クソッ!兵長様に連絡しなくては···!」

ーーーーーーーーーーーーーーー
兵長「···何だと!勇者が···そうか、あの女か!」

騎士長「騒がしいな、何事だ···」ガチャッ

兵長「騎士長殿、いや、どうも勇者が脱獄したらしく···」

騎士長「そうか、」

兵長「いや、そうかとは···」

騎士長「大したことではない、それより···こちらの方が問題だ」

騎士長「勇者の仲間の戦士が動き出した、こいつを止めなければ脱獄は止められないと思った方がいい」

騎士長「私が戦士を止める···だから、お前は勇者を捕らえてくれ」

兵長「はっ!」

騎士長「···それと、立場は同等なんだから普通に話してくれ」

兵長「わ、わかった···」

騎士長「そっちは任せたぞ、」

ーーーーーーーーーーーーーーー
ー戦士と弓使いー

戦士「さ、そろそろおっ始めるか、準備は···」

弓使い「いつでもいいですよ、」

戦士「そうか···ただ、もう一度確認するぞ」

戦士「この戦いに参加した時点で、お前は国に仇なす国賊としての扱いを受ける」

戦士「今ならまだ止められる···それでも来るか」

弓使い「私の帰るところは···もう、ここしかありませんから」

弓使い「ただ、本気で守ってくださいね?」

戦士「ははっ、了解だ」

弓使い「っ来ます!」

騎士長「茂みに隠れて作戦会議···か?」

戦士「!」

騎士長「国王様の敵は、一匹たりとも生かしてはおかない···」

弓使い「···戦士さん、この人···」

騎士長「戦王一身流一代目当主、参る」

弓使い「本当に、人間ですか···?」

戦士「どうかねえ···人間だったら嬉しいんだけどな、」

ーーーーーーーーーーーーーーー

ー勇者と盗賊ー

兵長「撃て!殺しても構わん!」

兵士達「はっ!」

勇者「ぴゃあああああああ!?」

盗賊「落ち着きな、私がいる限りあんな弾丸かすりもしないよ」スッ

勇者「さりげなく俺を盾にしてんじゃねえよおい!!」

盗賊「私だって女だ、怖い物は怖いんだ!」

兵長「無駄だ!何処まで逃げても、門が開かぬ限り決して貴様らに勝機はない!」

盗賊「開け!!」

門「はいっ!」ゴゴゴゴ···

兵長&兵士達「···は!?」

盗賊「じゃあの」

勇者「また会おうぜ、へっぽこ兵士共!」

兵長「おっ、お前が言うな···って!追え!追えーーーーっ!!」

ー戦士と弓使いー

戦士「チィッ!!」

騎士長「無駄な事、いくら武器を振り回そうとも、その武器は既に俺の武器だ···そして、」

騎士長「お前自身もまた、私の武器に過ぎない!!」

弓使い「戦士さんダメです!これ以上攻めたら戦士さんの体が持ちません!」

弓使い「戦士さんの攻撃の威力を受け流し、その威力をそのまま戦士さんへの攻撃にしているみたいです!」

戦士「くそっ···!柔道みたいなもんか、何が戦王一身流だ」

騎士長「その場の全てを武器とするのが我が流派、ならば素材や形が何であろうと同じこと」

戦士「はっ···あんまりふざけるなよ、俺の持ち主は勇者だけだ」

騎士長「持ち主···?」

戦士「俺は勇者の武器であり、盾であり鎧だ、他の誰の物でもない」

戦士「お前ごときが俺を武器として扱おうなんて百年早い!」ドゴッ!

騎士長「っ!(砂目潰しだと···!油断した!)」

戦士「今だ!」

弓使い「···」フラッ

ドサッ

戦士「(!?)弓使い!」

弓使い「う···」

戦士「大丈夫か弓使い!うっ、酷い熱だ···!」

騎士長「貴様···!」

戦士「(やばい···!弓使いを庇いながら戦うのはさすがに限界がある!)」

盗賊「開け!」

門「はいっ!」ゴゴゴゴ···

戦士「!?」騎士長「!?」

盗賊「じゃあの」

勇者「また会おうぜ、へっぽこ兵士共!」

盗賊「ん?」

勇者「ん?」

騎士長「···」

勇者「<(^o^)>」

戦士「勇者!早く逃げるぞ!」

騎士長「逃がすか!!」国王「···待て、騎士長」

騎士長「こ···国王様!?なぜここに!」

国王「放っておけ···それよりも、例の作戦を進めるぞ」

こっちはよ完結させておきたい、
思ったより忙しくなっちゃったもんで

ー魔王宅前ー

勇者「着いた···」

盗賊「へえ···ここが魔王城···いや、城とは呼べないねこれは」

盗賊「とりあえず、やっと落ち着いた事だし挨拶でもしておこうか」

盗賊「久しぶりだね戦士君、」

戦士「···国王の所になんの様があるのかと思ったら、こいつを仲間にするためだけに国賊の汚名を背負うとは···」

勇者「構わない、どうせいずれは国王に刃を向けるつもりだったさ」

盗賊「それで、その子は一体どうしたんだい?」

戦士「わからねえ···戦ってたら急に熱出しちまって」

盗賊「見た所病気の類ではなさそうだね、どれ、少し私がみてあげよう」

盗賊「ん?この弓は···へえ、大層な物持ってるねえ」

盗賊「神木の魂を上手いことこの形の中に閉じ込めてる、この弓は誰が作った?」

戦士「こいつ本人だ、適当に作ってる様にしか見えなかったけど」

盗賊「なるほどねえ···そんな芸当が出来るような種族は、私が知る限り一つだけ」

盗賊「森の民、か···」

勇者「とにかく中に入ろう、話はそれからだ」

「大変ですっ!勇者達がもうそこまで来てます!」

「えっ!?な···ななな···!」

「なんですとぉおおおおっっ!?」

勇者「はは···なーんか、ドタバタしてるな」

側近「来ましたね勇者!!魔王様には指一本触れさせま···!」

盗賊「まあまあそうカタくなりなさんな」ペロッ

側近「ぎゃっ!?な、なにするんですかいきなり!!」

盗賊「ふむふむ···あんた、魔族だね?」

側近「見ればわかるでしょ!!」

勇者「とりあえず···ただいま、」

側近「えっ···?」

戦士「悪いな、少しビビらせちまったみたいで」

側近「えっえっ?」

ーーーーーーーーーーーーー
魔王「ふざくんなっ!!」バキッ

勇者「きゃいんっ!!」ドサッ

魔王「私···!もうすぐ殺されるのかと思ってたんだからね!!」ドゴッゴスッ!

勇者「いいっ!あっ!もっと殴って!!」

戦士「うわあ···」

盗賊「っておい、それどころじゃないだろ」

勇者「いや···!スマンスマン、スキンシップが嬉しくて···!」

盗賊「弓使い、治したいんだろ?」

勇者「出来るのか?」

盗賊「任せな、もう大体原因はわかってる」

盗賊「森の民···ってさ、どうしてあんな森に住んでるかわかるか?」

勇者「自然が好きだから?」

盗賊「違うね···情報を極力少なくする為だよ」

盗賊「森の民の超越した感性は本人の意思に関係なく全てを見抜いてしまう、知りたくないことでさえもだ、」

盗賊「あの危険な森の中なら、生息する生物も少ないからね、」

盗賊「つまり森の民ってのは、外部とほぼ遮断された森にしか生きられない縛られた種族なのさ」

戦士「そうか、弓使いは···」

盗賊「要は情報の量が多すぎて頭が処理しきれなくなっているって事、恐らくあの付近にいた者全ての情報を一瞬にして得たんだろうねんだろうね」

側近「なんでそんなことまで分かるんですか?」

盗賊「私は盗賊、これまでいろんな物に触れて来た、物から情報を得るのは得意なんだよ」

盗賊「ま、高価なお宝のほとんどの物には思念が残ったり魂が宿ったりしているから、その影響で
いつの間にか物と自在に会話が出来るまでになっただけなんだけどね」

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