アニ「私達、いい友達になってたと思わない?ミカサ」(91)

捏造、死ネタ

ザーザー

ミカサ「…すごい雨…」タタタッ

ミカサ「少し遠くの区画までパンを貰いに行ったらこんな天気になってしまうなんて…」

ミカサ「エレンもアルミンもお腹空かせてるだろうし…」

ミカサ「でも…このまま帰ったらパンも濡れてしまう…雨で見通しも悪い…」

ミカサ「どうしよう…」

ミカサ「…!ちょうどいいところに納屋が…」

ミカサ「少し雨宿りさせて貰おう…」タタタッ

ミカサ「よかった。パンは大丈夫そう」

ミカサ「それにしても真っ暗…この納屋、光が全く入らない…」

ミカサ「早く帰りたいけど…この雨じゃ…」

「…誰かいるの?」

ミカサ「!?」

ミカサ「だ、誰?」

「ただ雨宿りしてるだけだよ。あんたもそう?」

ミカサ「あ、うん…あなたは、どこにいるの?」

「ここだよ。真っ暗で碌に周りも見えないけどね」

ミカサ「天気も悪いうえにここは日差しが入らないから…」

「この雨は当分止みそうにないよ。気長に待たないとね」

ミカサ「えぇ」

ミカサ「…」

「…」

ミカサ「…いる?」

「いるよ」

ミカサ「…」

「…」

ミカサ「…いる?」

「だからここにいるって」

ミカサ「…うん」

「あんた、年は?」

ミカサ「数か月前、10歳になった」

「ふーん…じゃあ私の一個下だね」

ミカサ「…」

「…なんで黙るの?」

ミカサ「あの…同じぐらいの歳の女の子とあんまり話したことなくて…」

「…出身は?すごい田舎?」

ミカサ「…壁が壊される前はシガンシナ区にいた」

「…」

ミカサ「子どもは沢山いたけど…あまり仲良く出来なくて…」

ミカサ「街の女の子は私を怖がって逃げていく…いや、男の子も」

「なんで怖がられてるの?」

ミカサ「私は、すごく強い、から…」

「…友達はいないの?」

ミカサ「一人だけ、いる」

「一人いれば十分だよ」

ミカサ「うん。私は家族とその友達がいればなにもいらない」

「…羨ましいよ」

ミカサ「あなたは?」

「友達は一人もいないよ。家族とも離れ離れ」

ミカサ「…それじゃあ、ひとりぼっち?」

「一応、同郷の仲間がいるけどね…」

ミカサ「…それならよかった」

「なにが?」

ミカサ「ひとりは、寒い、から」

「なにそれ」

ミカサ「あなたも開拓地で働いてるの?」

「そりゃこんなところにいるからにはね…」

ミカサ「私たちはもう下ったところの地区を開拓してる。あなたもそう?」

「いいや。私はその反対だよ」

ミカサ「そうなの」

「…あんた、シガンシナ区出身ってことは見たんだろ、巨人を」

ミカサ「えぇ」

「…どうだった」

ミカサ「…家族を、殺された。さっき言った家族は、もう一人しかいない」

「…」

ミカサ「あなたはどこの出身?」

「ド田舎の村出身だよ。そこには帰れない」

ミカサ「…やっぱり巨人に?」

「…いつか帰る。帰らなきゃいけない」

ミカサ「…でも…」

「…約束したんだ」

ミカサ「…誰と?」

「…さぁね」

ミカサ「でも…帰ると言っても…壁は壊れてしまった」

「…」

ミカサ「…まさか、あなたも調査兵団に入るの?」

「はぁ?しかも『も』て何?」

ミカサ「私のたった一人の家族も…調査兵団に入ると言っている」

「無謀だね。私はそんなことはしない」

ミカサ「じゃあ…」

「…とにかく帰る。はい、この話はおしまい」

ミカサ「…」

「…ックシュン」

ミカサ「寒いの?」

「あぁ…ちょっと濡れちゃったからね」

ミカサ「そっちにいってもいいだろうか?」ゴソゴソ

「なんで?」

ミカサ「どこにいるか暗くてよく分からない…」ゴソゴソ

「ちょっと…」

ミカサ「声の方向的にこっち…?あ、これが手?」ギュッ

「ちょ、ちょっと…」

ミカサ「…冷たい」

「あんた何なの…」

ミカサ「ちょっと待ってて欲しい」ゴソゴソ

フワッ

ミカサ「こうすれば暖かい」

「な、なに…これ…?」

ミカサ「マフラー。少し大きいから二人で巻いても十分」

「あんた、変わってるね」

ミカサ「私も、寒いときにマフラー巻いてもらって、すごく嬉しかったから」

「ふーん」

ミカサ「それにこうしてくっついていればさらに暖かい」ギュッ

「もう好きにしなよ」

ミカサ「この距離でもあなたの顔が見えない」

「そうだね」

ミカサ「この辺りにはよく来るの?」

「いや、今日はたまたまパンの貰える量が多い区まで来ただけ」

ミカサ「それじゃあ私と同じ」

「あんたも?」

ミカサ「うん。家族と、友達の分」

「私も他二人の分を貰ってきたよ」

ミカサ「さっきの仲間?」

「うん。二人とも男子だし、体が大きいから働く量が私よりも多いんだ」

ミカサ「同じ。私の友達も、家族も男の子。だから私がパンを取りにきたの」

「そう」

ミカサ「でも、私の方がよっぽどその二人より力も体力もある」

「さっきから気になってるんだけど、あんたってそんなに強いの?」

ミカサ「その辺の男の人に勝てる自信はある」

「子どもが余計なこと考えるんじゃないよ」

ミカサ「あなたも子どもでしょう?」

「でもあんたより一つ上だよ」

ミカサ「でも子どもは子ども」

「あんたよりは大人だもん」

ミカサ「でも子ども」

「うるさいね。心配して言ったのに」

ミカサ「あ…ごめんなさい」

「別にいいよ」

「実は私も結構強さに自信があるんだ」

ミカサ「本当に?」

「うん。格闘技習ってたから多少相手が大きくても倒せるよ」

ミカサ「すごい。私以外に強い女の子に初めて会ったかもしれない」

「明るかったら一緒に競争したいね」

ミカサ「うん。でも負けない」

「私だってお父さん以外には負けたことないんだから」

「…どうもあんたには話過ぎるみたい」

ミカサ「私も他の女の子とこんなに話すのは初めて」

「私もだよ…いけないな…話し過ぎちゃいけないのに…」

ミカサ「どうして?」

「仲良くするなって言われてるの。話もするな、とか」

ミカサ「見張りに来る憲兵の人は話はしないで働けって言う。今はいないから大丈夫」

「ううん。そうじゃない」

ミカサ「それじゃあどういうこと?」

「…話しちゃいけないって言われてるけど、内緒にするから、あんたと話す」

ミカサ「よく分からないけど、嬉しい」

ミカサ「あなた、どんな顔してるの?」

「顔?その辺にいる普通の顔だよ」

ミカサ「髪の色は?目の色は?」

「髪は金色。目は青いよ」

ミカサ「本当?お姫様みたいで羨ましい」

「色だけで大げさだよ」

ミカサ「でも、小さいころに絵本で読んだお姫様はみんな金色の髪と青い目だった」

「私はお姫様からほど遠いけど」

ミカサ「私の友達も金髪で青い目なんだけど、とても綺麗」

「ふーん」

「そういうあんたはどうなの?」

ミカサ「私は髪も目も真っ黒」

「真っ黒ってのは珍しいね」

ミカサ「うん。顔の様子も珍しいみたいで、知らない人にじろじろ見られる」

「そうなの?」

ミカサ「もしかしたら他の人からみたら凄く変な顔してるのかもしれない…」

「…」

グイッ

ミカサ「っ…痛い…」

「…」ペタペタ

ミカサ「ねぇ…顔を触ってどうしたの?」

「…別に、変な顔してないと思うよ。鼻も、口も、輪郭も変な形してないと思う」

ミカサ「…そう、なの?」

「それに、髪の毛は凄く綺麗だと思う。長いね」

ミカサ「…うん」

「じろじろ見られるのは変じゃなくて可愛いからじゃないの?」

ミカサ「ううん。それはないと思う」

「どうして?」

ミカサ「だって鏡見ても美人は映らないもの。お母さんの方がずっと綺麗だった」

「そうかな」

「あんたの綺麗な髪の毛、ちゃんと明るいところで見てみたい」

ミカサ「私もあなたの顔を見てみたい」

「私は見せるような顔じゃないよ。少なくともお姫様じゃないね」

ミカサ「そう?」ペタペタ

「ちょっと…触んないでってば」

ミカサ「あなたもさっき私の顔を触った」

「やめてって…鼻が大きいの気にしてるんだよ…」

ミカサ「高い鼻は羨ましい」ペタペタ

「やめてってば」

「まったく…」フゥ

ミカサ「それにしても雨が全然止まない」

「そうだね」

ミカサ「二人とも、お腹空かせてるだろうに…きっと私の帰りを待ってる」

「心配性なんだね」

ミカサ「そうだろうか…でもたまにうるさがられてしまう」

「世話を焼きすぎなんじゃないの?」

ミカサ「うん…でもつい…」

「私も他の二人と比べると体が小さいんだけど、それだけで子ども扱いするんだ」

ミカサ「その二人も子どもなの?」

「一つ上と同い年。鬱陶しいったらありゃしないよ」

ミカサ「きっとその二人もあなたのことを心配してるんだと思う」

「そうかな」

ミカサ「そう」

「あんたの家族って、弟?」

ミカサ「ううん。家族だけど、兄弟じゃない」

「どういうこと?」

ミカサ「血はつながってないの。でも家族」

「フクザツな家庭のジジョー…ってヤツ?」

ミカサ「うん」

「そう…」

ミカサ「お母さんとお父さんと暮らしてた頃は、畑で野菜育ててたの」

「へぇ」

ミカサ「夏は草むしりが大変だけど、収穫できる野菜も沢山で楽しかった」

「いま、野菜もあんまり手に入らなくなったね」

ミカサ「真っ赤なトマトが食べたい」

「私はトウモロコシが食べたい」

ミカサ「…」

「…」

ミカサ「お腹が空いた…」

「…うん」

「私の村は山羊とか羊とかの家畜を育てて生活してた」

ミカサ「動物と暮らすのも楽しそう」

「あと馬もいたよ。可愛かった」

ミカサ「馬に乗ってみたい」

「乗ると意外と高くてびっくりするよ」

ミカサ「そうなの?」

「うん。地面が遠い」

ミカサ「でも走ったら気持ちよさそう」

「うん」

ミカサ「そういえば、海って知ってる?」

「…海?」

ミカサ「私の友達はとっても物知りでいろいろ教えてくれる。この壁の外にはすごく大きな水たまりがあるらしい」

「へぇ」

ミカサ「しかもその水は全部塩水で、大きさはこの壁の中よりもずっと大きいみたい」

「…」

ミカサ「他にも砂の雪原とか氷の大地、燃える水なんて物もあるらしい」

「信じられないね」

ミカサ「途方もないけど、二人はいつかそれを見に行こうと思っている」

「家族と友達が?」

ミカサ「うん」

「あんたは?」

ミカサ「私はよく分からない。正直信じられない気持ちも少しあるし…壁の外は巨人がいるから…」

「…」

ミカサ「男の子はたまに分からない。勝手に盛り上がって私はついていけないことがある」

「分かる。私が女だからって時々仲間外れにするんだ」

ミカサ「そうそう。この間も二人でこそこそ話してて私には話の内容を教えてくれなかった」

「私も。なんか本を読んでたんだけど、私には絶対見せてくれなかった」

ミカサ「シガンシナにいた頃にも、危ないところには連れていって貰えなかった。私の方が強いのに」

「うん。女が来るところじゃないって言われて、置いて行くんだ」

ミカサ「ずるい」

「うん。ずるい」

「まだ、名前聞いてなかったね」

ミカサ「あ、そういえばそう」

「教えてよ」

ミカサ「うん。私の名前はミ…」

ピシャーン!!

ミカサ「!!」

「!!」

「…びっくりした…雷が落ちたみたい」

ミカサ「一瞬光った。顔、見えた?」

「ううん。目、つむちゃった。あんたは?」

ミカサ「私も目を閉じてしまった。残念」

「そういえば何の話してたっけ?」

ミカサ「うーん…?びっくりして忘れてしまった」

「また後で思い出すよね」

ミカサ「うん。きっと」

ミカサ「最近、手足が痛い」

「大丈夫なの?」

ミカサ「うん。成長してる証拠だって聞いた」

「そういえば、他の二人も痛い痛い言ってた」

ミカサ「あなたは?」

「私はまだそんなに。でもいつか二人を追い抜いてやるんだ」

ミカサ「きっと伸びる」

「だよね。これから大きくなる」

ミカサ「うん」

「身長どれくらい?」

ミカサ「測ってないから分からない」

「ちょっと立ってみよう」

ミカサ「うん」

スクッ

「こう…頭のてっぺんから手をまっすぐ持ってって…」

コツン

ミカサ「あっ」

「私の方がちょっとだけ大きいね」

ミカサ「だってあなたの方が年上だもの」

「それもそうだね」

ミカサ「座ろう」

「うん」

ミカサ「もっとあなたの話、聞きたい」

「そんなに面白い話はないよ」

ミカサ「いいの。山羊の話でも、あなたの家族や仲間のことでも。それに私は話すのが上手じゃないし…」

「そうなの?その割にはさっきから結構話すじゃない」

ミカサ「思ったより浮かれてるのかも…」

「どうして?」

ミカサ「…初めて…女の子の友達ができたから…」

「…友達?」

ミカサ「あ…あなたはそう思ってない…?」

「…ううん。友達だよ。あんたは、私の初めての友達」

ミカサ「…ふふっ」

「なに笑ってるの?」

ミカサ「嬉しくて」

「…あはっ、変な子」

ミカサ「そういえば、雨音が弱くなってきた」

「本当だね」

ミカサ「走って帰れば大丈夫かな…」

「もう行っちゃうの?」

ミカサ「うん…パン持って行かなきゃ…」

「そう…」

ミカサ「あなたは?」

「ちょっと遠いしね…もう少し弱くなるの待ってから行くよ」

ミカサ「そう…じゃあさよなら?」

「…うん」

ミカサ「あの…また会えないだろうか?」

「…!うん!」

ミカサ「よかった…今度は、晴れてる時に」

「一回外に出ればお互いの顔見れるけど…」

ミカサ「ううん。それは次のお楽しみ」

「あはは、やっぱり変な子」

ミカサ「ねぇ、明日、またここに来れる?」

「うん。きっと大丈夫」

ミカサ「じゃあ、また同じ時間に、ここで」

「晴れるといいね」

ミカサ「うん」

「どっちが強いか競争しよう」

ミカサ「うん。負けない」

「私だって」

ミカサ「それじゃあ、また明日」

「うん。マフラーありがとう」

ミカサ「風邪、ひかないでね」

「世話焼きだね。大丈夫」

ミカサ「うん。さようなら」

「ばいばい」

ギィー バタン

ミカサ「よかった。すっかり雨が止んでる」

ミカサ「…あ、名前聞くの忘れてしまった…でも明日聞けばいい」

ミカサ「雲も薄くなって空が見えてきた…」

ミカサ「…!」

ミカサ「虹が出てる…!」

ミカサ「あの子も見てるかな…」

ミカサ「晴れたしもう納屋から出てきてるかも…」

ミカサ「…」チラ…

ミカサ「…ううん。明日までのお楽しみ」サッ

ミカサ「早く帰ろう」タタッ















ミカサ「次の日、暗くなるまで待ってもその子は来なかった」

ザーザー

ミカサ「すごい音…どんどん酷くなってるみたい…」

ミカサ「運よく小屋があってよかった…」

ミカサ「…まさか貴女とこんなところに来ると思わなかったけど」

ミカサ「アニ」

アニ「同感だね」

ミカサ「アニ、どこにいる?」

アニ「ここだよ」

ミカサ「真っ暗で何も見えない」

アニ「だろうね」

ミカサ「とにかくここで何とか凌ごう…」

アニ「…」

ミカサ「…」

アニ「…」

ミカサ「…傷は?」

アニ「自分の心配しな。まさか立体機動装置が壊れるなんてね」

ミカサ「近くにこの小屋があってまだよかった」

アニ「なかなか来るのにも難儀したけどね」

ミカサ「雨の中彷徨うことになったら大変だった」

アニ「誰か見つけてくるのにも時間がかかりそうだしね」

ミカサ「えぇ。人数が多いから着いてから確認しないと誰がいないか把握するのは難しい」

アニ「ま、主席のあんたがいないと大騒ぎになりそうだけど」

ミカサ「…」

ミカサ「アニ、近くにいる?」

アニ「いるよ。ここに」ギュッ

ミカサ「…うん」

アニ「嫌がらないの?」

ミカサ「寒いから…少しでも暖かければいい」

アニ「ふーん…」

ミカサ「こんだけ雨が降れば、今年の収穫は期待できそう」

アニ「そうだね」

ミカサ「美味しい野菜、しばらく食べてない」

アニ「このタイミングで食べ物の話はやめてよ」

ミカサ「正直お腹空き過ぎて何も感じない」

アニ「逆に食べる気なくなるよね」

ミカサ「分かる」

アニ「なんか話してよ」

ミカサ「なかなかの無茶振りをする」

アニ「気を紛らわせたいし」

ミカサ「…この間、エレン達男子が固まってなんか見てたの」

アニ「うん」

ミカサ「後ろからこっそり覗いたらその…そういう本をみていた」

アニ「うわぁ」

ミカサ「軽くショックを受けた…」

アニ「…どんまい…」

ミカサ「それでふと思ったの。子どもの頃にもそういうことあったなって」

アニ「うん」

ミカサ「その時ももしかしたら…って…」

アニ「…!」

ミカサ「どうしたの?」

アニ「…気づきたくなかった…」

ミカサ「…?」

アニ「あー…お風呂入りたい…」

ミカサ「同感…」

アニ「汚れだらけだし、臭いし…」

ミカサ「しょうがない…」

アニ「立体機動で雨の中飛び回ってたしね…」

ミカサ「着替えて暖かい布団で眠りたい…」

アニ「分かるよ。それ」

ミカサ「雨風しのげるだけまだマシかも…」

アニ「小屋を見つけた私に感謝してよ」

ミカサ「…うん」

ミカサ「…共同浴場の劣悪さはなんとかならないのだろうか」

アニ「あぁ…シャワーぐらいだよね…」

ミカサ「私はゆっくりお風呂でくつろぎたいのに…」

アニ「無理な相談だね…まともな湯船もないし」

ミカサ「現実は厳しい…」

ミカサ「温泉って入ったことある?」

アニ「いいや」

ミカサ「普通のお湯と成分が違って体にもいいらしい」

アニ「でもたかがお湯でしょ?そんなに差はあるの?」

ミカサ「分からない…けど一度入ってみたい」

アニ「私は腐った卵の臭いがするって聞いたことあるからパス」

ミカサ「そうなの?」

アニ「らしいよ」

ミカサ「…じゃあちょっと考える」

アニ「そう」

ザーザー

ミカサ「…」

アニ「…」

ミカサ「…」

アニ「…」

ミカサ「アニ、私は馬鹿なのだろうか」

アニ「そう思うならそうなんじゃない?」

ミカサ「そう…」

アニ「うん」

ミカサ「…」

アニ「…きっと私も馬鹿なんだろうね」

ミカサ「…うん。大馬鹿」

アニ「…知ってる」

アニ「…あんた、どれくらい鍛えてる?」

ミカサ「たくさん」

アニ「バッキバキだね」

ミカサ「でも、アニもなかなかの腹筋をしているのを私は知ってる」

アニ「いや、あんたほどじゃないけどね」

ミカサ「触らせて」

アニ「ちょ…やめてよ。触らないで」

ミカサ「少しだけ、少しだけ」グイグイ

アニ「ちょっと…!本当にやめて…!」

ミカサ「それ」スッ

アニ「…あ」

ミカサ「…」

アニ「…」

ミカサ「…なんで…?」

アニ「…だからやめてって言ったんだよ」

ミカサ「…全然気づかなかった…」

アニ「だろうね」

ミカサ「…ずっと自分の血の匂いかと思ってた」

アニ「もうどっちがどっちの血か分からないよ」

ミカサ「…いつ?」

アニ「あんたに切られて落ちたとき。運悪く誰かのブレードが地面に刺さっててね、その上に落ちちゃった」

ミカサ「…治らないの?」

アニ「もう修復する力なんて残ってないよ。そんなに都合よくないんだ。知ってるだろ?」

ミカサ「…」

アニ「これだけ普通に話せてるのに信じられないでしょ?やっぱりニンゲンよりしぶといのかな」

ミカサ「痛くないの…?」

アニ「何回も何回も指や手足を切断されてるしね。もう、慣れた」

アニ「正直、あんたを抱えて逃げるのは大変だったよ。まともに痕跡も消してないからそのうちここが分かるだろうね」

ミカサ「ねぇ、アニ。なんで私をここまで連れてきたの?」

アニ「悪あがきさ。あんた、人質なんだよ」

ミカサ「…私を人質にしたところで何も意味が無い」

アニ「だろうね…あんたの命と人類の未来だったら、あの連中は迷わず人類を取るよ」

ミカサ「じゃあなんで?」

アニ「だから悪あがき。意味が無いと分かっててもやらずにはいられないんだよ。1%でも0.01%でもここまで来たからには賭けなきゃいけないんだ」

ミカサ「…私には、もう、価値がない…」

アニ「…」

ミカサ「兵士何人分と言われた戦闘能力は、もう無い」

アニ「…手足がそんなんじゃね…」

ミカサ「骨をくっつけられれば…筋を…神経を…繋げられれば…」

アニ「無理だよ。あんたはニンゲンなんだから」

ミカサ「…エレン、を、守れ、ない」

アニ「うん」

アニ「…ねぇ、私が憎いでしょ」

ミカサ「うん。憎くて、憎くて堪らない。絶対に許さない」

アニ「それがいいよ」

ミカサ「裏切り者」

アニ「うん」

ミカサ「殺人鬼」

アニ「うん」

ミカサ「巨人」

アニ「うん」

ミカサ「嘘つき」

アニ「うん」

ミカサ「…馬鹿」

アニ「…」

ミカサ「…阿呆」

アニ「…相変わらずの言語力だね」

ミカサ「私、今どんな顔してる?」

アニ「だいぶ雰囲気が変わったね。前の方が美人だった」

ミカサ「…ねぇ、アニ。今あなたはどんな顔してるの…?」

アニ「血みどろのおっかない、殺人鬼の顔だよ」

ミカサ「なにも、見えない…」

アニ「触ってごらん」

ミカサ「…」ペタペタ

アニ「…」

ミカサ「…泣いてる?」

アニ「血だよ」

アニ「…目のことは、残念だったね」

ミカサ「ううん。兵士になったころから、そういう覚悟はしてた」

アニ「…そう」

ミカサ「うん」

アニ「なんかあんたとこういう風に話してるのが信じられないよ」

ミカサ「…私も」

アニ「だって、これ、加害者と被害者が交わす会話じゃないよ」

ミカサ「…うん」

アニ「…もっと怒りなよ」

ミカサ「…凄く、怒ってる。貴女が、憎い。殺してしまいたい」

アニ「うん」

ミカサ「…でも、知ってしまったから…」

アニ「…」

ミカサ「絶対に許さない。死んでも恨む」

アニ「うん」

ミカサ「…でも、気の毒、だとは、思う…」

アニ「…」

アニ「ねぇ、今から、あんたが凄く怒ること言うよ」

ミカサ「…何?」

アニ「私は、大馬鹿者の殺人鬼だからね。最低なことを言うよ」

ミカサ「…聞こう」

アニ「もし、この世に一体も巨人がいなくて」

アニ「壁が無くて」

アニ「理不尽に親と離れ離れになる子どもなんていなくて」

アニ「誰もが、普通の子どもとして成長して、自由に遊びまわって」

アニ「…そんな世界で私とあんたが出会っていたら」

アニ「私達、いい友達になってたと思わない?ミカサ」

ミカサ「お断り」

アニ「そういうと思った」

ミカサ「アニは、現実主義者だと思っていた」

アニ「最期ぐらいは夢のある話をさせてよ」

ミカサ「貴女と友達になるなんて悪夢」

アニ「あっはは!酷いね!」

ミカサ「…笑わないで欲しい」

アニ「笑わせてよ!あはははは!」

ミカサ「やめて…」

ミカサ「…」

ミカサ「貴女が笑ってると普通の女の子だと思ってしまいそうで、嫌」

アニ「私も昔は普通の女の子だったんだよ」

ミカサ「…」

アニ「信じてもらえなくていいけどね、よく笑う、明るい子どもだったんだ」

ミカサ「…嘘」

アニ「本当だよ」

ミカサ「…信じてもらえなくてもいいけど、私はおっとりした子どもだった」

アニ「嘘」

ミカサ「本当」

アニ「もし、お互い何事もなくこの年まで生きてたらどうなってたんだろうね」

ミカサ「…想像もできない」

アニ「私はサシャみたいに快活で、あんたはクリスタみたいな美少女だったかも」

ミカサ「…どうだろう」

アニ「やっぱり仲良くできたんじゃない?私たち」

ミカサ「お断り」

アニ「あははっ」

アニ「思えば、寂しい人生だったよ」

ミカサ「…」

アニ「周りと仲良くせず、壁を作って一匹狼気取ったりしてさ」

ミカサ「…うん」

アニ「本当は、友達も、たくさん欲しかった」

ミカサ「…うん」

アニ「ずっと一人ぼっちでさ…周りが羨ましくてしょうがなかった」

ミカサ「…うん」

アニ「…でも、こんな私でも一人だけ友達がいたんだ」

ミカサ「…」

アニ「一回しか会ったこと無いんだけどね。笑えるでしょ?」

ミカサ「それは友達なの?」

アニ「でも、友達だって言ってくれたんだよ。嬉しかった」

ミカサ「訓練兵時代?」

アニ「次の日も会おうって約束したんだ。だけど、こっそり抜け出すときに見つかってね」

ミカサ「私の質問…」

アニ「凄く怒られたよ。自分たちは戦士だって。仲良くするなって。でも、ライナーもベルトルトも複雑そうな顔してたな」

ミカサ「…アニ?」

アニ「それで約束破っちゃって…その子とはそれっきり。名前も顔も全然覚えてないよ。いや、分からなかった」

ミカサ「アニ?アニ、聞こえてる?」

アニ「あの子怒っただろうな…今思えば、その頃から私は嘘つきだったんだね」

ミカサ「アニ!聞こえる!?」

アニ「綺麗な髪をよく覚えてる…見てみたかったな…あの子、今どうしてるんだろ…」

ミカサ「アニ!!!」

アニ「…ねぇ、ミカサ、なんでさっきから何も言わないの?」

ミカサ「…っ」

ザーザー

アニ「急に暗くなってきた…でも雨は止んだみたいだね」

ミカサ「アニ…アニ…まだ、雨は降ってる…」

アニ「…なんか眠い…疲れてるのかな…」

ミカサ「アニ!しっかりして!!」

アニ「そうだ…行かなきゃ」

ミカサ「どこに!」

アニ「…約束してるんだよ」

ミカサ「アニ!何を言ってるの!?」

アニ「…」

ミカサ「…アニ!!!」

ミカサ「…いる?」

アニ「…」

ミカサ「…いる?」

アニ「…」

ミカサ「私は、いる。ねぇ、返事をして」

アニ「…」

ミカサ「見えない…何も見えない…」

ミカサ「いないの…?誰も…いないの…?」

ザーザー

……………

ミカサ「…」

ミカサ「…アニ、寝てるならそのままで構わない」

ミカサ「私にも初めてできた女友達がいた」

ミカサ「待ち合わせしてたの」

ミカサ「でも、その子は来なかった」

ミカサ「次の日も、その次の日も、私は何回も待ち合わせ場所に行った」

ミカサ「…」

ミカサ「…その子は私より背が高かった」

ミカサ「…もしかしたらどこかで会えるかもしれないって、自分より背の高い、お姫様みたいな女の子を探した」

ミカサ「…でも、ついに会えなかった」

ミカサ「…あの子は今どこで何をしているんだろう…」

ミカサ「…」

……………

「いたぞ!ここだ!」

「無事か!」

「ミカサ!!ミカサは!?」

「大丈夫か!しっかりしろ!」

「おい…こいつ…目が…」

「脈はある!急いで救護へ!!」

「女型の巨人は!?」

「隣で息絶えています!最終的に修復が間に合わず限界を迎えたかと…」

「最後まで無駄な足掻きをしやがって…」

「なんで笑ってやがる…気色悪い…」

「そんなことより兵の救護が先だ!早くしろ!」

「あっ、はい!」

バタバタバタ…

ミカサ「…」















ミカサ(もし、この世に一体も巨人がいなくて)

ミカサ(壁が無くて)

ミカサ(…そんな世界だったら)

……………

「…来ないなぁ」

「…あの、あんた、昨日の…?」

「!!あっ!もしかして…!」

「昨日、納屋にいた子、あんた?」

「そう!金髪に青い目!もしかしてあなたがそう!?」

「…!うん!そう!」

「思ってたよりずっと可愛い!」

「あんたの髪もとっても綺麗。素敵だね!」

「…!あ、ありがとう…!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月21日 (水) 20:07:42   ID: M9Tpn5Tz

PV少ないけど名作だとおも

2 :  SS好きの774さん   2015年11月06日 (金) 10:16:08   ID: t15uqrey

号泣した

3 :  SS好きの774さん   2016年01月31日 (日) 18:02:16   ID: vVGBKwZ8

全俺が泣いた。

4 :  SS好きの774さん   2017年03月14日 (火) 01:14:33   ID: s5_Blwip

ミカサ(もしこの世に一体も巨人がいなくて)

ミカサ(壁が無くて)


ミカサ(そんな世界だったら)


涙線崩壊した。

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