男兵「女勇者が女ばかり仲間にしたがる……レズなのか?」(573)

女勇者「まずは衛生兵を仲間にしないと。」


男兵「なら、医学の心得のある優秀な兵が知り合いに……」

女勇者「可愛いの!?」

男兵「え?いや……たくましい男だとは思うが……」

女勇者「……なんだ男か。却下。他は?

女限定で……」

男兵「女?魔王倒しに行くのに、男の方が頼もしいだろ?」

女勇者「嫌よ!!穢れる!!
私は勇者らしく、女の子達に囲まれてウハウハ気分で旅をしたいの!
ハーレム万歳~!!!」



男兵「………俺も着いていくんだけど……」



女勇者「………。


今すぐ性転換しなさい。」

男兵「無理。」

女勇者「ならどっか行け!消えろ!!」

男兵「いや……でも、勇者の護衛は兵士長の命令だし……」

女勇者「なんでよ!!なんで女兵を護衛に来させないのよ!!?」

男兵「俺が軍で一番優秀な兵だからだよ。
オークは100体、ドラゴンは20体も今まで倒した記録がある。
凄ぇ~だろ?」


女勇者「私は昨晩の戦いで50匹のドラゴンの群れを吹き飛ばしたわよ?この剣で一度に。」


男兵「…………」

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シスター「あの~、すいません。帝国修道院はどこでしょうか?」

男兵「ん?それなら、あっちに………」

女勇者「…………」

シスター「ありがとうございます。心優しい貴方方に、神のご加護を。」

男兵「あ、ども。お気をつけて……」

女勇者「ちょっと待った!!!」



シスター「………?はい?どうかなさいましたか?」

女勇者「………あなた、」

シスター「はい?」

女勇者「可愛い!!」

シスター「ありがとうございます。
きっと私が神様の事を思い願う気持ちが、私自身の体を清く美しく見せているのですね。

ああ、神よ。あなた様の恩恵に感謝します。」

男兵(………こいつ、ちょっと痛いな……)

女勇者「あなたはシスターね?てことは、回復系の魔法は使えたりしない?」

シスター「はい。他人を傷つける類いの魔法は使えませんが、人々の傷を癒す魔法なら……」

女勇者「いい!いいわ!!あなた!ぜひ、私のハーレム………旅の仲間になってください!!」

シスター「………仲間?」


男兵(……………)

女勇者「回復魔法はどのぐらい使える!?」

シスター「癒しのみなら上級魔法まで心得ています。」

女勇者「年齢は!?」

シスター「16歳です。」

男兵(へ~。背がちっこいから、もっとガキかと……)

女勇者「スリーサイズは!?」

シスター「……あ、あまり自信ないです……」

女勇者「好きな食べ物は?好きな書物は?好きな天気は?」

シスター「……??……え、え~と……」(オロオロ)


男兵(さすがにひいてる……)

男兵「その……修道院には何しに行くんだ?」

シスター「はい。私、前にいた修道院で神からお告げを受けました。『勇者と共に旅をせよ』と。
だから、帝国修道院の方ににお頼みして、勇者様とお会いさせていただきたいと……」

男兵「マジで!?……嘘だろ……」

シスター「……?」


女勇者「くくく……。男兵!!これは運命だったのよ!」

男兵「………へいへい……。分かりました。認めます。」

シスター「……あの~……ひょっとして、貴方方は勇者様のお知り合い……?」

女勇者「私こそが、その勇者だぁ~!!!!!」ピカッ!!


男(!?な、なんだ!?なんか女勇者が輝いてる……。これが勇者のオーラ!?)

シスター「その輝き……。
貴方様が勇者だったのですね。

ああ、神よ。この素晴らしき出会いも全ては貴方様の御導きなのですね……」


男兵(………。
女勇者は一目見てシスターを気に入った。そのシスターは神のお告げで勇者を探してた。
しかも上級クラスの回復魔法使い。

偶然なのか……?)

女勇者「次は攻撃系魔法使いや射手や戦闘兵が必要ね。もちろん、女の子限定で……」

男兵「はいはい……」

女勇者「後は、料理を作ってくれる新妻みたいな娘とか、身の回りの世話をしてくれるメイドちゃんとか、夜を共に過ごしてくれる慰安婦や……」

男兵「お~い。後半、明らかに私的な欲求になってるぞ~?
真面目に考えろよ!」


シスター「慰安………?それはつまり疲れた勇者様を癒すという事ですね。私の魔法でよろしければ、お役に立てますよ?」

女勇者「魔法なんていらないわよ~。ただ、ベッドの上でじっとしてれば……」

男兵「あー、あと女勇者様の教育や説教やシバく係も必要だなぁ~。」

女勇者「し、シバく!?

………私、別にSMなんかには興味ないんだけど……美しいお姉様に叩かれたいかも……」

男兵「……はぁ。駄目だこりゃ……」



ぐぅ~……


シスター「!?……/////」
女勇者「……お腹減ったの?」

シスター「……うう……はしたない……。皆さんが見ている前で……」

男兵「勇者様が長ったらしく要求を力説してるから、お昼がとおに過ぎてしまったんですよなぁ~。」

女勇者「………わ、分かったわよ。早くご飯にしましょう。」

シスター「す、すいません。私なんかの為に……」

女勇者「いいわよ。

………でも、これからは我慢しないで。お腹が空いたらいつでも言ってね。後、何か困った事があってもすぐに相談してよね?仲間なんだから……」

シスター「は、はい!!//////」



男兵「飯屋なら、いいレストランがあるぞ?勇者様ならまけてくれるんじゃね?」

女勇者「タダにしてもらいましょう!!勇者の特権で!」

男兵「おいおい……」

男兵(………そういえば、あのレストランには……)

帝都~レストラン~


女勇者「モグモグ………美味しい!すごく美味しい!!」

男兵「……この味……やっぱり……」

シスター「はぁ~、この世のものとは思えない味です。この料理にも、きっと食材一つ一つに神の恩恵が宿り……」




??「……勇者様ですね?」

女勇者「ん?そうだけど……誰?

………って、可愛い!?」

男兵「………やっぱり……」

??「男兵。久しぶりですね。」

女勇者「え!?あ、あんた!!こんな可愛い娘と知り合い!?」

??「私は男兵さんと同じ養護施設出身の者です。私は小さな頃から男兵さんの事を兄の様に慕ってました。」

男兵「血は繋がらないが、妹みたいなものさ。
そして、今はコックをやってるんだよな?」

??「はい。ここの厨房で料理を作ってます。今まさに皆さんが食べた料理は私が作ったものです。
勇者様ご一行がいらっしゃったと聞いて、腕によりをかかせていただきました。」

女勇者「嘘………こんな美味しい料理を作れるの……?」


シスター「……このレストランって……かなり高級そうに見えますが……」

男兵「その通り。帝都で一二を争う名店だ。
……こいつが料理上手いのは知ってたけど、こんな店の厨房にもう立たせてもらってるとは……」



女勇者「………あなた!!」

??「はい?」

女勇者「私の新妻になって、毎晩手料理を作ってくれないかしら!!?」

男兵「はは………何故そうなる……」

~??が勇者達のテーブルから去った後……~


男兵「女勇者。実は、俺から一人、仲間にする奴を推薦しようと考えてたんだが……」

女勇者「え!?誰!?可愛い娘!?」

男兵「ああ。可愛らしくて、真面目で、おまけに生まれつき膨大な魔翌力を抱えて、小さい頃から超上級魔法が使えるんだよな。」

女勇者「嘘!?そんなに可愛いの!?」

シスター「超上級……凄いです。まさに神に選ばれし者……」

男兵「最も……お前が女好きな変態と知ったからには、教えるのは止めようと思ってたんだけどな。」

女勇者「なんでよ!?教えなさいよ!!このドケチ!」

男兵「……それに、そいつはてっきり自慢の料理の腕を掲げて帝都の高級レストランに飛び込んだはいいが、でも結局は落ちこぼれて下働きでもさせられてるのかと思ってたんだ……。

だが、そいつはそのレストランでも上手くいってるみたいだし。
わざわざ旅の仲間に誘って、帝都一のコックになるっていうそいつの夢を邪魔するのも…………ねぇ?」


シスター「………それって………その娘って……さっきの……」

女勇者「……………」

男兵「……順調に夢を果たしてるようだし……。
悪い。だから、今の話は聞かなかったって事で……」


女勇者「そっか。どうりであの娘の料理は美味しいはずだわ。将来、この帝都一のコックになるんだものね。
旅の仲間にそんな凄いお方を連れて行くなんて、いくら私でもそんな大それた事できないわ。」


シスター「勇者様………ご立派な判断です……。」


男兵「……フッ。あんたならそう言うと思ってたよ。」


女勇者「当然よ。
彼女にはこの帝都一のコックになってもらうわ。

そして、私が魔王をぶっ飛ばして帝都に戻ってきた時に、新妻として料理を作って貰うんだ!!」

男兵「………そう言うもと思ってた……」

女勇者「じゃあ、早速、今晩あの娘と将来の新妻になるという契りをベッドの上で交わさないと~♪」

男兵「はは。全力で阻止しないと~♪」

女勇者「なんでよ!?私の話が聞こえなかったの!?一緒に旅に出るのは諦めるって言ってんの!!
だから、今晩ぐらい十分に堪能させて貰ってもいいでしょ!?」

男兵「俺の話も聞いてなかったのかよ!あいつは俺の可愛い妹なの!」

女勇者「だからなに!?
………さては、血の繋がらない妹に兄妹愛以上の思いを抱いて……」

男兵「違うな。単に妹が魔物に襲われそうなのを助けてるだけっつーの!」

盗賊「うるちゃさなぁ~。向こうのテーブル。」

射手「……あれは、勇者様ご一行……?」

盗賊「マジで~!?それならきっと、お金をガッポリ持ってるはず~♪」

射手「あ、あの~………待ってください~!」







女勇者「私の言う事が聞けないの!?」

男兵「聞く~?俺に聞く義務も権利もないってんの!!」

盗賊「あのぉ~。すいません。」

女勇者「何よ!?

………って、ロリ幼女!?」

男兵「……子供?」

盗賊「こ、子供って失礼なぁ~。あたしはもうすぐ10歳になるんだからね!!」
男兵「……やっぱガキじゃん……」

女勇者「……はぅ~ん♪ロリっ娘……ガチロリ………」

男兵(な、なんだ!?女勇者の様子が……幸せそう……)


射手「あ、あの~……」

男兵「また誰か来た……」

女勇者「……眼鏡をかけた地味子タイプ……真面目で優しそうけど、なんかトロそう。すぐ転けて、パンチラしそう……。
パンツは白だけど地味に動物の絵柄……って感じかな?」

男兵「トロそうで弱々しいな……。背中に担いでんのは弓か?
………ん?なんか上物の弓みたいだな。かなりの射ち手か?」


射手「……きゃっ!?」ドスン!!

女勇者(やっぱり転けた。しかも豪快なパンモロ……。やっぱり白地に可愛い熊の絵柄……)

男兵(トロい転け方だな……。
ただ、右だけ庇った様な気がしたな……。利き腕を守ったのか?
それに、太ももの内側に軍章の刺青。このマーク……確か……)


盗賊「おまえぇ~、また転けたしぃ~。ホント、トロいんだから~。
しかも勇者様の前でパンツ丸出しとか……」

射手「ふぇ、ふぇぇ~ん!し、失礼致しま……きゃっ!?」ドスン!!


女勇者(二、二連続!?このドジっぷり……。メイド服とか似合いそう…)

シスター「だ、大丈夫ですか?お怪我は?」

男兵(………あれ?)

盗賊「もぉ~、本当にトロいんだから……」

射手「痛たた……」

シスター「大丈夫ですか?」

盗賊「心配ないよ!この娘は頑丈だから。」

シスター「そうですか。それならご安心です。
きっと日頃から神を信じる気持ちが貴方の体に神秘の力を与えて、肉体を頑丈に…」


男兵「…それはそうと、子供。何かようか?」

盗賊「ん~?特にないよ~。ただ、お姉さん達が楽しそうにお話してたから、気になったの~。」

男兵「……本当にそうかぁ~?」ニヤリ

盗賊「!?………ほ、本当だよ~……。じゃ、じゃあね!あたし達、用事が……」




女勇者「そうはいかないわ!!」


盗賊「!?」

射手「!?はわわ……」

女勇者「あんた達……私が勇者って事は知ってるわね……」

男兵(おっと……さすがは勇者様。気付いてたか?)

女勇者「ロリっ娘!ドジっ娘!あたしの仲間になりなさい!!」



盗賊「………ふぇ?」

射手「え……ええ~!?」

男兵(………)

盗賊「ゆ、勇者様の仲間………に……?」

射手「そんなぁ~……私なんかが……」

女勇者「あんたは特に!!私のメイドになりなさい!!」

射手「ふぇぇ~ん!私、メイドなんか無理ですぅ~!!手先不器用だしぃ~!」

女勇者「大丈夫!たっぷりとドジっ娘メイドを演じてくれたらいいの!そしてパンチラも!!」

射手「ふぇぇ~ん!そんなぁ~!」

女勇者「それに、あんたはヴァルキュリア・アーチャーでしょ?」

盗賊「え!?ばれてたの!?」

女勇者「あんたがパンチラした時に見えた太ももの軍章、あれってヴァルキュリア部隊の紋章でしょ!?」


シスター「ヴァルキュリア部隊……?」

男兵「帝国最強の女兵部隊さ。見た目の若さや可憐さとは対照的に、男にも勝るかなりの優秀兵が集まってるらしい……」


女勇者「あたしの憧れなのよ!!ヴァルキュリアに囲まれて旅するのが!!勇者になれば、彼女達が私の護衛に来ると思ってたのに……」

男兵「………確かにあいつらは強かったがな。俺以外の男兵は模擬戦で皆倒されてしまったさ。ただ、俺が全員に勝ってしまったからなぁ~……。
だから俺が勇者の護衛に選ばれたんだが……」


女勇者「………でも、ここでその一人に会えるなんて!!しかもアーチャー!!これは運命だわ!!」

シスター「そんな……これも神の御導き……」

男兵「……そんな都合のいいものなのか……?」

射手「……うぅ……私なんかが……本当に……?弓矢しか能のない私が……?」

女勇者「何を言ってるの!貴方にはまだまだ魅力があるのよ!!弓矢なんか二の次よ!!」

射手「ほ、本当ですか!?」

男兵「………あんな奴とは模擬戦してないな……。

あー、そういや、模擬戦当日に遅刻したヴァルキュリアが居たとか言ってたな……。
他のヴァルキュリアは真面目なエリートばっかだったのにな……。」


盗賊「………ま、まぁ、その娘の意志なら、あたしは止めないし。
じゃ、じゃあ、あたしはこれで……」

男兵「………ちょっと待て。」

盗賊「!?…にゃ、にゃにかなぁ~…?」

男兵「ウチの勇者様は、あんたも指名したんだけどな?」

盗賊「あ、あたしぃ!?あたしは……」



女勇者「きゃっほ~い♪」ガバッ!

盗賊「に゛ゃああああ!!?抱き付くなぁ~!」

女勇者「可愛い~♪ペットにしたい~!遊びたい~!弄びたい~!!グヘヘ」


盗賊「ゾワ~……な、なんか怖い………た、助けてぇ~!!」

男兵「………そうだな。なら、財布を返せよ。皆の分な。」

盗賊「うぅっ!?……分かったにゃ……」ドサッ

男兵「はい。どうも。」

女勇者「え?あたしのも?いつの間に……」

シスター「あらら。私のも?それに他にも……」


男兵「全く……目にも止まらぬ猫足……。お前、ただのガキじゃないだろ?」

盗賊「う………


その通り……。
あたしは盗賊にゃ!!そして人猫の混血種にゃ!!」


女勇者「嘘!?猫耳生えてる!?
ロリっ娘猫耳きたぁああああ!!!!」

女勇者「な、仲間になれ!!なってください!!ならなきゃ駄目!!駄目ですだよおおお!!!」

盗賊「にゃにゃぁ!!?……勇者が怖い……」

男兵「……こんな小さいのに俊足………。いや、小さいからこその隠密さ……。」


射手「………でも、盗賊ちゃんは自分の里に帰りたいんじゃ……」

盗賊「……そのつもりだし……。あたしはスリぐらいしか特技はないよ?ただの盗賊だから……」


女勇者「……問題ないわ……」

盗賊「え!?」

女勇者「あなたには、その猫耳があるんだから!!!」

盗賊「………やっぱり、こんな勇者の傍は嫌にゃあああ!!」


男兵「なら、盗賊として衛兵につき出す。」

盗賊「にゃ゛に!?それは困る……」

女勇者「男兵!!脅したらかわいそうよ!
勧誘はあくまで本人の意志を尊重するのよ!?」

男兵「……そうだな。
なら猫盗賊。これからあの変態と一緒に旅するか、今晩だけあの変態と一緒の部屋のベッドで寝るか、好きな方選べ。」


盗賊「にゃ!?後者の方の意味がわかんないにゃ……」

女勇者「そうね……ここで別れるのは寂しいわよね。だからせめて、あなたの心に私を焼き付けてあげるわ。……ベッドの上で♪」


盗賊「ゾワ~………わ、分かった………。一緒に旅をするにゃ……。
……どうせ、里に帰ってもやることないし……」


男兵「交渉成立だな♪」

女勇者「ひゃっほ~い♪」ガバッ!

盗賊「ぎゃあああ!!また抱き付かれた!!
しかも、どこ触ってるに゛ゃあああ!?」





シスター「……あらら。この財布の山はどうしましょうか?持ち主の人の名前なども書いていませんし……」

射手「そ、そうですね……。修道院に寄付しては?」

シスター「そうですね!有り余る富、神の恩恵の名の元に、貧しき人々のもとへ幸福を……」

射手「シスターさん……なんか遠い世界に行っちゃった……」

女勇者「あぁ~、猫耳かぁ~………あたし、あの猫耳をしゃぶってみたいわぁ~……」


盗賊「ゾクッ!!……」


女勇者「そして、あの猫耳をあたしの…………

……………うへへ……」



男兵「順調に女ばっかを仲間にしてる。
上級回復魔法使いのシスター、俊足な猫盗賊のガキ、ヴァルキュリアの射手。

女とはいえここまで逸材が揃うとは……さすがは勇者様と言ったもんだ……」


女勇者「しかも聖女にドジっ娘に猫耳ロリ!!
完璧なハーレムね!!」

男兵「………。俺の同僚にも優秀な人材はいっぱいいるんだぞ?ドラゴンの巣に飛び込んだ猛者やら、3キロ先の的を射る弓使いとか。」

射手「3キロ……。稀にみる才能ですね……。私も2.5キロが限界……」

盗賊「ドラゴンの巣って……子供を守る為に母ドラゴンが血眼で応戦してくるんですよね……。
すご~い……さすがは帝国軍……」

女勇者「何が凄いの?むさ苦しいだけじゃない。男なんて……。」

シスター「あらら……。でも男兵さんも男性ですよ?」

盗賊「あれ?そういや、なんでコイツは付いてくるの?」

射手「衛生兵、隠密行動兵、射撃手……どれにも当てはまらない。確かに、男兵さんの存在は余りますね……。
い、いえ別に……男兵さんがいらないワケじゃ……」

盗賊「……荷物運びとか?」

男兵「なっ!?俺は勇者の護衛だよ!!」

女勇者「………でも、あたしは強いから護衛はいらないし……」

男兵「………まぁな。なら………どうするっかなー?」


女勇者「………帰れば?」

男兵「そしたら任務放棄で兵士長にキレられる。」

盗賊「なら軍に帰らなきゃいいんじゃない?旅にでも出るとか?」

シスター「旅は人を考え方を深くし、視野を広くさせますよ?」

男兵「なるほど……。そりゃいいな♪
どうせお前らと居ても、魔王討伐の為に面倒な旅になるんだしな。」

女勇者「そうね。短い付き合いだったけど、はい。報酬。」

盗賊「……って、あたしが盗んだ財布の山……」

シスター「え?……修道院に寄付しようと思っていたのに……」

女勇者「あんたが世界中回って貧しい人達に渡してきなさい。」


男兵「……マジで?面倒だな……」

シスター「私からもお願いします!
そうです。これはきっと神様が貴方に与えた宿命……」

男兵「………はいはい。分かった。
……偽善なんて、性に合わねぇがな……」


女勇者「じゃあ、宜しく~♪」

盗賊「ばいばーい。」

シスター「また会える日を。」

射手「あ、あの!し、失礼します!!」


男兵「おう。しっかり魔王を倒してこいよ!」

女勇者「当然!!」




~数時間後~

男兵「さてと……」

男兵(とりあえず、修道院に行くか。勇者様に命令されたし………。
……本当、やることないからな。ぐーたらするぐらいなら、偽善してた方がよっぽどマシか。)


メイド「あの~。すいません。」

男兵「?なんか用か?」

男兵(………この容姿、メイドか?)

メイド「あなたは帝国兵ですね。失礼ですが、勇者様はどこにおられますか?」

男兵「勇者?勇者ならもう旅立ったが……」

メイド「え?そうなのですか?
………まさか……。あのインチキ占い師め……外しやがりましたね……」

男兵「?なんだ?そんなに会いたかったのか?勇者に。」

メイド「はい。私は代々勇者様に仕えてきた一族の者。今回も勇者様にお供するようにと、族長より命を受けてきました。
しかし、一族の預言者が申した時間通りに帝都に着ましたが、まさか勇者様がもう旅立たれていらっしゃるとは……」


男兵「…………。
一つ質問。なんでメイド服?」

メイド「私の一族は勇者様の身辺の世話をしてきました。つまり、専任のメイドの様なものです。ですから、服装も……」

男兵「………メイド……?」

男兵(………なんだ。なんか思い出すな……。

確か女勇者は衛生兵に射手に魔法使いに戦闘兵、そしてメイドやら料理作る奴やらが欲しいって言ってたな………
射手をメイドにするとは言ってたが、あのドジの嵐に勇者の身の回りの世話は無理だろ。
じゃあ……コイツがまさに勇者の身の回りの世話をするメイド……?)


メイド「………何をジロジロと見ていますか?
……まさか、私の可愛らしい姿に発情した……!?
……獣め……」

男兵「………もう一つ質問。なんで俺に話掛けたんだ?帝都には帝国兵なんて他にもいるだろ?」

メイド「それは単純です。あなたが一番暇そうでしたから……」

男兵「………なるほど。いい勘してるな。俺に話しかけて正解だよ。」

メイド「ほぉ~……失礼。大した自信でありますね。
あなたはただの軍兵ではないと?」

男兵「ああ。期待してくれ。ちゃんと、任務を果たすから。」



??「男兵さん!!」

男兵「ん?……って、お前!!レストランはどうした!?」

??「私、レストランは当分休みます!!女勇者様と一緒に旅に出ます!!」

メイド「……む……新たな仲間……?」

??「私、この帝都にきて色々学びました。
その中で、ある食材の存在を知りました。でも、その食材は闇のはびこる土地でしか採れないそうです。」

男兵「なるほど……。勇者と旅をしていたら、嫌でも闇の土地には行くはめになるわけだな。」

??「私一人じゃ、たどり着けないかもしれない。
でも、勇者様がレストランで私を勧誘してくれた!
これはきっとチャンスなんです!私が、勇者様と旅をしてその食材を手に入れる!!

私には昔から強力な力もあります。この力で、勇者様と共に……」

男兵「……だが、何年も使ってないだろ。いくら才能に溢れてても……」

??「大丈夫!私、いつも練習していました!いつかは闇の土地に向かおうと思ってたから……」

メイド「……頼もしいですね。しかも、勇者自らが勧誘……とは……」

男兵「……くっ……。これも運命なのか……」

??「それで……勇者様は?」

男兵「……もう先に行ってる。だから、これから追いかけるんだ。
仕方ないな。お前も来いよ………ホント……仕方ないが…」

??「はい!頑張ります!お兄ちゃん!!」

メイド「お兄ちゃん……?そのようなご関係で……」

??「あ、つい……昔の癖……」


男兵(………しかし、こいつは料理作りの新妻か?それとも魔法使いか?どっちの要素もあるな……。両方を兼ねてるのか?それとも……)

男兵「……ところで、自分より強力な魔法使い見た事あるか?」

??「…いや、帝都にも優秀な人がいっぱいいるらしいけど、私ほどの潜在魔力の持ち主は居ないみたい……」

男兵「……なら、自分より料理のウデがいい女コックは居なかったか?」

??「…………。
昔、別の街からやってきた女の子がいて、その子もコックらしいんだけど……私よりずっと上手だった。」

男兵「そっか。なら、そいつが“新妻”になってくれるのかもな。」

??「え?」

男兵「つまり、お前は魔法使いだな。頑張れよ。」

??→魔法使い「え、あ、うん……。」

男兵「ホント……新妻の方じゃなかってくれよ……兄として心配だ……」

魔法使い「……?」

男兵(………これで勇者の言っていた仲間は大分揃ったな

射手、シスター、魔法使い、メイド

多分その内仲間になるはずの新妻や戦闘兵

後は……慰安係か?


そういや、“猫盗賊”の立ち居がわかんねぇな
盗賊やら隠密行動兵やらは女勇者は求めてなかったし

じゃあ、残る3枠のどれかに当てはまるのか?

あの小柄で戦闘兵はないし、料理は……多分、魔法使いのより下手くそだろうな
料理上手が売りの新妻なんだから、あいつより下手な奴にはつとまらないだろうし

……て事は慰安?
猫盗賊……。お前………かわいそうだな…………
生まれる時代を間違えたんだ……
今回の勇者があんなのだったのが運のつきだな……




つまり、勇者が求めた仲間が自然と集まってるワケか……

勇者………それがお前の力か……

女が欲しいと言ったら、見事に女ばかり集まりやがって……)


男兵「………男の俺が勇者のもとへ行くのは、勇者の意志に反してるんだよな……。
いいのかな?後を追っても……?」

メイド「?……男兵さん。何をぼーっとしていらっしゃいますか?立ちながら、欝ですか?」

男兵「……いや、運命を感じつつ、その流れに逆らってる様な気がしてさ。
そんな俺もカッコいいのかなって思ってたのさ。」

メイド「ああ……俺KAKEEEEEEEってやつですか?」

男兵「ああ、まさにそれだ。自分の推理やらに酔ってるだけなのかもしれないな。」

男兵(……そうだな……考え過ぎだよな………)

自分で書いてて何にか似てるなと思ったら、アレだった

思った通りに運命が動かすヒロイン…………



続きは明日溜め書きでもする

乙カレー


何か…何かが勇者パーティーに足りない気がする…

>>19
教えて、足りないの全部

~帝都から離れた街道~

女勇者「帝都を出てから3日………。そろそろ新しい仲間が現れないかしら?」

猫盗賊「例えば、どんなのが……?」

女勇者「やっぱりメイドが欲しいわ。後、いろんな攻撃魔法が使える術者とか。」

新妻「わ、私が貴方の身辺の世話はしますよ~!
メイドなんか不必要です!!」

女侍「……あまりに多人数では……戦闘に不適…。」

シスター「いえ。大勢の方がよりお互いに励まし合えます。
それに、神はより多くの人々に支えられし勇者により深い恩恵を与え…」

射手「えと……え~と……」



女勇者「……はぁ……レストランにいたあの娘……。可愛かったなぁ……。
強力な魔法使いなら、仲間にしたかったや……」



新妻「勇者様が深刻な顔です……」

射手「昨日の戦闘の疲れ?」

新妻「オーク達に襲われた私の街に勇者様がいらしていて、本当に助かりました。私の店もなんとか無事でした。」

女侍「さすがは勇者……あのオークの群れを一撃……」

シスター「……でも、あの様な力をお使いになっては、かなり体力を消耗されてしまうのでは?」

猫盗賊「消耗?そんなのあり得ない!!

昨晩の……あいつ……凄かったんだから……!!」

射手「盗賊ちゃん!!そんな…大きな声で……///////」





~昨晩、とある街で~


女勇者「……ふぅ~……今のが最後のオーク?」

射手「はい。残りは逃げ出したみたいですが、最初にいた軍勢の9割は倒しました。
……あ、あの~……お疲れです……」

女勇者「そっちこそ。いい腕前ね。三本同時にそれぞれ三人の敵に当てるなんて……」

射手「い、いえ……これぐらい……。本当なら、5本を5人に当てる事だって……」

新妻「あ、あの~……」

女勇者「ん?あ、あんたはさっきの料理店の……可愛い娘ちゃんじゃない!?」

新妻「助けてくれてありがとうございます!!」

女勇者「ん~?助けた?何の事?」

シスター「勇者様、気付いてなかったのですか?
先ほどのオークが剣を向けてた女の子は彼女だったんですよ?」

女勇者「マジぃ!?
……いや、助けた人達の顔とかあんまり見てなかったから……。
ただ、助けなきゃって思って……」

新妻「か……カッコいいです!!憧れます!!」

女勇者「ありがとう。

…………ところで、あなた。」

新妻「はい?なんですか?」

女勇者「私達がさっき店で食べた料理、あなたが作ったのよね?」

新妻「はい!私、料理は得意です。それに、ただ料理しているワケではなくて、食材におまじないもかけたりしてます!」

女勇者「おまじない……?」

新妻「はい。私……実はハーフエルフなんです。」

ガサッ(新妻ちゃんは頭に巻いてた頭巾をとった)

シスター「あ……神秘的な感じが……。
これは……エルフの光の力…?」

新妻「……あまり、迫害を受けたくないから隠しているんですけど……勇者様になら………」


女勇者「……………。


……ハーフエルフ……?

………ムフフ……」

新妻「……?」

女勇者「……知ってる?歴代の勇者ってエルフの女の子と結婚してる人達が多いらしいの。
闇の土地に行く為に、エルフの光の力が必要だから、仲間に必ずエルフを入れるんだって。
そして……2人の間に愛情が……」

新妻「……?」

女勇者「……というわけで、あなた!!
私の仲間になりなさい!!料理を作る新妻ね!!はい決定!!」

新妻「え?……は、はい……

……ええ!!?な、仲間に!?しかも……妻……?」


射手「……はわわ……。
……あ、あの……男兵さんがいない今、私が勇者様を止めるべきなのでしょうか?
……ねぇ?シスターさん。」


シスター「聖なる一族の末裔たるハーフエルフさんが仲間に……。
ああ、神よ……こよいも素晴らしき出会いをお与えくださり……」

シスター「あうぅ~…、シスターさんがまた遠くに……」

猫盗賊「射手ちゃん!いい人見つけた!!」

射手「盗賊ちゃん。その人は?」

女侍「お初……和の国よりやってた剣士……」

猫盗賊「この人、滅茶苦茶強いんだよ!!10体のオークに囲まれたのに、一瞬で逆転しちゃうんだよ!?」

射手「凄い……ヴァルキュリア部隊でも上位に立てそうですね……」

女勇者「あ~!猫耳~♪お帰り~!!」

猫盗賊「ひ、ひぃいいいい~!!?く、来るなぁ~!!!」

女侍「む……よからぬ気配を纏ってる……」

カチャ(女侍は刀を構えた)

女勇者「む……。………巨乳………」

女侍「そなたは………何者……!?」

シスター「ゆ、勇者様!その人からは聖なる雰囲気が……。きっと神が仕えさせた者です!」

女勇者(……シスターは微妙。大きくもないし小さくもない、ほどよい大きさ……)

射手「あ、あの……お侍さん……。どうか、刀を収めて……」

女勇者(……射手は案外貧乳………雑魚……)

射手(!?……い、今、心に何かが刺さった………うぅ……)

女勇者(猫耳ちゃんはロリだから問題なし、そして新妻ちゃんも………まぁ、これから大きくしてあげればいい、揉んであげて……


つまり、我が部隊には巨乳が居なかった!!
そして今、巨乳が目の前に………)


女勇者「…………」

女侍(……微動だにしない……この者は……
それに、先ほどより、何か威圧感を感じる……)


女勇者「……………………グヘヘ……」

女侍(……笑ってる……。なるほど……)

女侍「……参った……。」

猫盗賊「え?何々!?どうしたの!?」

女侍「……我が先ほどの戦いで疲労して、もうまともに刀を扱えぬ事が、勇者殿にはバレている……」

シスター「え!?そうだったんですか!?
……だって、お侍さん、今の殺気だと、すぐにでも斬り掛かろうとしてる様に……。
というより、相手が勇者様だって気付いてたのですか!?」

女侍「……はったり……。敵に己の隙を付かれるようにと……。
勇者がどんな対応をするか……実験……」

射手「勇者様を試したのですね……」


女侍(……だが、先ほど勇者殿より、よからぬ気配を感じたのは事実だが……)


女勇者「…………グフフ…」

女勇者「女侍!!あんたを仲間に認定する!!」

女侍「……受けよう…」

猫盗賊「やった~♪また仲間が増えた~!!」

新妻「……ちょっと怖い人ですけど……」



女侍「……しかし……空腹……限……界…」

バタン

シスター「女侍さん!?
………お腹が空き過ぎて倒れた……?」

女侍「戦闘で……体力が……」

女勇者「仕方ない。新妻ちゃん。なんか作ってあげて。」

新妻「は、はい。分かりました。」

女侍「……て、天ぷらを……」

新妻「はい、任せてください!」

女侍「エビの天ぷら、赤飯に乗せて、黒蜜をかけて、トマトをのせて、大根おろしをかけて、鯛の切り身を………」

新妻「え!?ちょっと!?ええ!?それ全部ですか!?しかも混ぜるの……?」

シスター「鯛?この辺りでは採れないのでは……」

女侍「!?………な、ならば………」

女勇者「何でもいいよ。新妻ちゃんの料理は全部美味しいから♪」

女侍「………承知……新妻の選択に託す……」


新妻「は、はい!頑張ります!!」

新妻(……あ、意外と女侍さんって、いい人……?)



女勇者「……さて、巨乳ちゃんは疲労してるし……。

猫耳ちゃ~ん♪」

猫盗賊「ひぎぃっ!?………な、なんですにゃ……?ガクガクブルブル……」

女勇者「今日も、今から私と一緒にベッドに来てくれない?」

猫盗賊「い………ぎ……ぎゃ…………や……」

射手「盗賊ちゃん!?どうしたの!?」

女勇者「そんな大げさに拒否らなくても~♪
昨日は猫耳ちゃんの尻尾を使って楽しんだだけじゃん。
猫耳ちゃんだって、気持ち良かったでしょ?尻尾を伝って、私の温かさを感じてくれたでしょ?」

猫盗賊「そ、そんな事!!……ない……ないのに……ありえないし……////////」

射手「……盗賊ちゃん……。
分かった!今日は私も手伝いますから!!」


女勇者「え!?3人で!?
いいけど………あたしの体が保つかな……?」

猫盗賊「射手ちゃん……あたしの為に……」

射手「いいんです。私の事は、気にしなくても……」


女勇者「んじゃま、行こうか♪」

猫盗賊「うぅ………」

射手「……ところで、3人で何をするんですか?」

~再び、街外れの街道~


新妻「……うぅ……勇者様……私を妻にしておきながら………盗賊ちゃんと……」

シスター「?……よくわかりませんけど、勇者様はお優しいのですね。」

猫盗賊「……あたし、もう勇者様に触られるだけで、体が痺れるんだ………声を聞くだけで……頭が弾けて……」

射手「そ、そんなぁ~!盗賊ちゃん、昨日はあんなに可愛らしかったのに……」

猫盗賊「ぎゃ、ぎゃぁあああ!!わ、私が私でなくなるぅ~!!」

新妻「と、盗賊ちゃんが発狂した!?」

女勇者「ん~?どうかしたぁ~?」

射手「勇者様!盗賊ちゃんが……」

女勇者「ん~………」

ギュッ(勇者は猫盗賊を抱き締める)

猫盗賊「に゛ゃがぁっ!?」

女勇者「……ニャー……ゴロゴロ………」



新妻「勇者様?勇者様もおかしくなられた……?」

シスター「いえ……きっと、盗賊さんの心に触れ合おうとしているのですよ。」


猫盗賊「……にゃ……あ…………
にゃは~ん♪」

射手「盗賊ちゃんが……幸せそうな顔に……」

シスター「上手くいきましたね。」

女侍「……神秘……?」


新妻「……て、いつまで抱き合ってるつもり……」







男兵「おんどらああ!!!」

「ガァアアア!!」

グシャッ!!バシャッ!!


新妻「え!?何!?今の音!?」


バッシャアアアアン!!(突然、勇者一行の頭上から赤い液体が降り注いだ


シスター「こ、これは………雨?」

射手「……なんか生臭い……」

新妻「これって、血!!?」

女侍「……温かい……」

女勇者「にゃ~ん♪
…………って、ぎゃぁあ!!目に何か入った!?水!?雨!?赤っ!?」

猫盗賊「にゃふ~ん♪」

男兵「シスター………?なんだ?修道着、真っ赤に染めなおしたのか?」

射手「いえいえ!これは先ほど降ってきた赤い液体で……」

男兵「……あー、このデカ熊の血か……?」

新妻「え!?……やっぱりこれって……血!?」

射手「全身にかかりました………生臭いです……」

女侍「……いい水浴び……」

射手「動物の血で水浴びなんて、不衛生です!!」

シスター「生き物の血は最も穢れ、最も悪とされる液体。
それを全身に浴びる………これは神が与えし試練!?」


女勇者「ぎゃああ!!何なのよ!?あんた!」

男兵「ん?女勇者!やっと見つけたし。」

女勇者「何しに来たの!?また私のハーレムを邪魔しにきたの!?」

男兵「いや。別にあんたの事はどうでもいいし、魔王討伐とかしっちゃ事じゃない。
ただの付き添いさ。」

女勇者「つ、付き添い?」



魔法使い「男兵さ~ん!!大丈夫ですか!?」

メイド「ちゃんと生きていやがりますか~?」

女勇者「ん?あれ?あの娘は……」

新妻「あれ?帝都のレストランにいた……」

魔法使い「あ!あなたは、隣町の店の……」

新妻「はい!久しぶりです!私は今、勇者様の新妻です!」


男兵「新妻……。そうか。魔法使いの料理の腕を抜く女の子コックだな?」

魔法使い「はい!彼女の料理は凄いんです!」

新妻「お、大げさですよ……。あなたと違って、私はおまじないを使ってるし……」

魔法使い「ハーフエルフとかは関係ないです!!私は純粋に、あなたの料理への心構えを尊敬してるんです!!」


女勇者「魔法使いちゃん?新妻がハーフエルフって事、知ってるの?」

魔法使い「はい!………それがばれて、帝都を追い出されたんですよね……?」

新妻「…………仕方ない事です。ハーフエルフは穢れた種族……」

男兵「あー、迫害か。全く、帝都にも嫌な風潮が蔓延してるよな。
そういう迫害を斡旋してる団体の方が屑な奴らの巣窟なのにな……」


新妻「え?……あれ?男の人……?」

男兵「ん?」

新妻「…………


きゃあああああ!!!!」

男兵「!?」

新妻「お、男の人………ひぃ……ひぃいいいい!!!」

女勇者「新妻ちゃん!?どうかしたの!?」

女侍「……男に……怯えてる……?」

女勇者「あ、あんた!!新妻ちゃんに何したの?」

男兵「……いや。多分、男性恐怖症なんだろな。俺が男と分かった瞬間におかしくなった。」

新妻「嫌………男………怖い……」

男兵「迫害を受けてきた種族の女にはよくある症状だな。ま、俺以外に男はいないし、俺が彼女から離れたらいいんだろな。」

女勇者「なら、さっさとどっか行く!」

俺兵「しゃぁ~ない。後は宜しくな。」




新妻「……う…ぅ……」

魔法使い「男兵さんの言う通りです。新妻さん、昔から男の人には近づこうとはしなくて……」

メイド「大丈夫ですか?落ち着いてください。もう獣は消えましたよ。」


女勇者「……ん?メイドが居る………?」


メイド「……はい。私はメイドです。あなた、勇者様の……」



~~~~~~~~~~~~

男兵「……ハーフエルフ……男嫌い……。
もし、勇者が男だったら、あのハーフエルフは仲間にならなかっただろうな……。
……偶数なのか?女勇者が男性恐怖症のエルフを仲間に………」


猫盗賊「………すぅ~zzz」

男兵「ん?猫盗賊?こんなところで寝てる………。
………えらく幸せそうな顔で……何か好い事でもあったのか~?お~い。」

ツネッ(男兵が猫盗賊の頬をツネる)

猫盗賊「むにゃぁ~♪……zzz」

女侍「………」

女勇者「ん~?どうした?熊ちゃんの死体なんか見つめて……。
うひゃ~、やっぱ大きいなぁ~。」

メイド「見れば見るほど、図体だけの野郎ですね。」

女勇者「メイドちゃ~ん♪どうかしたぁ~?」


メイド「……男兵も、よく一人でこんなの勝てましたね。」

女勇者「あたしならこれを10体相手にしてもいいけどね~♪」

女侍「我にとっても……そう難儀な事でもない……」

女勇者「それに、あいつは帝都一の兵士だしね~。」


男兵「おいおい。俺より強い戦士なんてごまんと居るぞ?
将校共やヴァルキュリア部隊にだって、こいつの数倍もある熊を倒した奴もいるし。」

女勇者「数倍!?凄いわね!!可愛い女の子なら、仲間にしたいわ♪」

男兵「ま、俺はそいつらには模擬戦で勝ったけどね。
ただ、あいつが強いのも事実。
今回俺がこの熊に勝てたのも、半分は奇跡。次やった時は殺されるかもな。
もちろん、易々と殺される様な真似はしないけど!俺は強いから。」


女勇者「あんた……。自分が強いと自慢したいのか、大したことないと自虐してんのか分かんないんだけど!?」

男兵「俺なんかよりも、強いお方は沢山居るって事さ。
勇者様とか、そこの侍さんとか……」

女勇者「あったり前よ!!あたしは勇者なんだから!!」




女侍「………」

女勇者「何?巨乳ちゃん?まだ何か考えてるの?」

メイド「……。あの男、自分が死ぬかもしれない様な相手と戦ったんですね。」

女勇者「まぁね。ジャイアントベアーなんて、易々倒せる戦士なんてそうはいないでしょ。」

メイド「じゃぁ、どうして戦ったのでしょうか?
私達は食材探しをしてました。
男兵が巣で寝ていたジャイアントベアーを見つけて、わざわざそいつを狩るって言いだしました。
しかも魔法使いさんや私には遠くに行けと言って、一人で……」


女勇者「あなた達を巻き込みたくなかったんじゃない?
しかし、わざわざ強敵に勝負をふっかけるなんて……死にたがり?死が怖くないとか?」


射手「それって、残命悦楽思想でしょうか?」

女勇者「射手ちゃん?何それ?」

射手「昔、帝都の戦士達の間に広がった思想です。

俗に言う戦闘狂の様なものです。より強い相手と戦い、より危うい戦場に身を投げ入れる。

危険な戦場を生き抜くという達成感、そして強敵に勝つという快感を得ることに悦楽を感じるという思想です。

そういった考えの人々は、より危険な相手に勝利する事だけを求めて、自分が死ぬ事を恐れないといいます。そしていつかは戦場で命をおとす。
だから、その思想を持った戦士らは皆死んでしまって、帝都からも思想は消え去ったと言われてました。」


女勇者「より強い相手と戦いたい………あたしみたいな考え方ね!?」

メイド「あなたは自分の命が惜しくないと考えているのですか?」

女勇者「いや……そこまでは……」

射手「男兵さんも、きっとその思想に近い考えを持っているのですよ……。
彼はヴァルキュリア部隊の皆や軍将さん方にも勝ちました。
きっと、自分より強い敵との戦い方を心得ているのですよ。

でも……言った通り、そう言った考えの人達は長生きしません……」


女勇者「……ふ~ん。
あいつがそう易々くたばる様な輩には見えないけどなぁ~。
でも、メイドちゃんや魔法使いちゃんが居るのに危険な怪物に手を出すような輩は、やっぱり私の仲間には相応しくないわね。

男だし……」


女侍(勝利……生き抜く事に……悦楽……?
しかし、熊を倒した男の顔に悦楽さは感じなかった……)


女勇者「……でも、男兵は模擬戦で自分よりも強い戦士達にどうやって勝ったの?」

射手「胡椒を投げつけたとか。ヴァルキュリアの女兵には海鼠やミミズの束を………」

女勇者「あ、悪徳!!つか、ミミズとかエロっ!!」

射手「模擬戦は何でもありでしたから。
他の兵士には相手の女兵の気を逸らす為に裸になったのも居ますし、相手のペットの犬を人質にとった者もいました。結局は負けましたけど……」

メイド「子供のお遊戯ですか?」

射手「優秀な戦士ほどまともに戦って、下層な戦士ほど滅茶苦茶な戦いを見せました。
勇者様の護衛になる為に、皆さん必死に……」

女勇者「……なんか、あたしのせいみたいな言わないで……」

猫盗賊「むむ……勇者達の話……なんか難しかったなぁ……」



男兵「盗賊ってのは、盗み聞きも得意なんだなぁ~。」

猫盗賊「うん、ばっちしぃ~♪
………て、男兵!?いつの間に!?」

男兵「フフフ……。俺も忍び足には自信があってなぁ~。
……しかし、勇者や侍に気付かれずに盗み聞きか。あのメイドの奴もかなり勘がいいような奴だと思ってたんだが……。
お前の忍び足、予想以上だな。

んで、あいつらはどうせ俺の事を話してたんだろ?」

猫盗賊「う、うん。男兵が思想とか……」

男兵「思想?俺が?俺は思想やら流派やらには近寄らない主義なんだけどな。
ま、確かに俺の危なっかしい戦いぶりを見たら、なんかの宗教にでも結び付けたくなるわな。」

猫盗賊「残命……思想……とか言ってたかな?」

男兵「あー、それは俺が昔即効で付けた名前だ。」

猫盗賊「ええっ!?男兵が!?」

男兵「まぁな。昔は命知らずの馬鹿は単に戦闘狂とか言われて英雄視されたり、非難されてたりもしたそうだ。
んでさ、帝都で俺みたいに強敵ばかりと戦う戦士は戦闘狂戦闘狂って、まるで病気みたいに言われたんだ。そんな中、どうせなら思想っぽくしようって話になって、俺を含んで10人ぐらいが集まって適当に会議してつけたんだ。

当時はカッコいいと思って付けたんだがな……」

猫盗賊「……ちょっと、変……かな……。
でも、射手ちゃんの話し振りだと、その思想ってかなり帝都では広がってるんじゃ?」

男兵「反面教師みたいなものだろ?そんな危険な戦い方はするなって、教官達が新米兵達に教えてるんだ。」


猫盗賊「なるほど~。」

男兵「………さて、今後も頑張って盗み聞き頑張れよ。」

猫盗賊「う、うん………」

猫盗賊(しかし、気を抜いていたとはいえ、私の背後に近寄られるなんて………
この男兵……侮れない!)


男兵(…………。
立ち居は慰安係なんだろうが、隠密行動もガキにしては優秀だな……。

ホント、勇者様は面白い人材を集めてくれるな……。

女ばっかだけど……)

女勇者「……くんかくんか………うぅ、体が生臭い……
男兵のせいで……」

射手「もうすぐ街ですから。我慢してください。」

新妻「………この先の街は……学都ですね?」

女勇者「学都?学問の街って事?」

シスター「帝都の次に巨大な街で、学園や研究機関がたくさんある都市ですね?
私も一度行ってみたかったんです!
ああ……神よ。これもあなたの御導き……」

女侍「……新妻……都市は男がいっぱい……」

新妻「………大丈夫です。近くまで寄られたりさえしなければ………先程みたいに……」

女勇者「じゃあ、新妻ちゃんは真ん中、他の人は彼女を囲む様に列を組みましょ。極力、新妻ちゃんと人間の男とが接触しないようにする為に……」

新妻「……すいません。私の為に……」

女勇者「当然よ。仲間なんだから……それに、あたしのお嫁さんなんだし……」

新妻「///////」


女勇者「……んで、男兵!あんたは一番後ろ!新妻ちゃんからは離れて歩きなさい!!」


男兵「……はいはい……」

新妻「………男兵さんも……すいません……私のせいで……」


男兵「何を言ってんだぁ~!?離れてた場所でそんな小声じゃ聞こえないって!!」


新妻「ご、ごめんなさい!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


魔法使い「男兵さん!新妻ちゃんを恐がらせたら駄目じゃない!」

メイド「すぐ怒る短気ぶり………野獣のごとく……」

男兵「大きな声を出しただけじゃんか………ったく……」


射手「新妻ちゃん……。大丈夫だから。男兵さんは、きっと好い人ですから!」

男兵「“きっと”は余計だろ!」

メイド「10%ぐらいの割合で好い人ですよね?」

男兵「いやいや、10万%は好い人だろ?」

魔法使い「男兵さん。100を突破したら、臨界ですよ……」


女勇者「大丈夫だから。いざとなったら、私が男兵をぶっ飛ばしあげるから。ね?」

新妻「勇者様………ありがとうございます……//////」


男兵「……ケッ、カッコいい勇者様だこと……」




女勇者「……ところで男兵。話があるの。ちょっと来て。」

男兵「ん?何さ?」

女勇者「……その、他の人には話せない事があって………。

あたし、あんたに帝都でどっか行け、とか言ったじゃん。
……軽率だったわ。あなたの価値も考えないで……。
あなたにはまだまだ利用価値があったのよ!!」


男兵「………なんか嬉しくなれないんだが……。
ま、俺にしか相談できない用事があるってことだな?」

男兵(……だから、俺は勇者様に再び会えたのか?勇者様自身が俺との再会を望んでたから……。

……なんだ……俺は勇者の作った運命にまんま乗せられ続けてたのか……。
逆らえたのかと思ってたのに……)


女勇者「……そうなの。男であるあなたにしか頼めない用事なの………」

男兵「……へぇ……。勇者様にも出来ない事があるんだな。
俺でよければ手を貸すが……」

女勇者「ありがとう!やっぱりあなたは頼れるわね!さすがは帝都一の戦士!!


じゃあ、シスターちゃんを襲ってくれない?」

男兵「シスターを?どうして?
……まさか、アイツは裏切り者だとでも……?」


女勇者「ううん。全然。彼女は立派な聖職者よ。
ただ真面目過ぎて、清らか過ぎて………その………なんか未だに手が出しずらいの……」


男兵「……………はぁ?」

女勇者「あんなに可愛くて、清楚で、今すぐにでも真っ白な心を私色に染めたくなるのに!!……手を出せないのよ……。あの娘、いつも神様神様とか言ってて、私とのフラグを立ててくれなくて……。

んでね!あの娘が他の男に襲われてるところを神じゃなくてあたしが助ければ、いくらシスターちゃんでもあたしの方に目を向けてくれると思うの!!

だから男兵!一瞬だけ発情する事を許可する!裸になってもいい!シスターちゃんの胸に触ってもいいわ!凶悪な変態のフリをして、あの娘を襲って!!」



男兵「…………」





猫盗賊(にゃ、にゃ~………エライ事を盗み聞いてしまった………?
勇者と男兵がシスターを襲う……?
理由は聞こえなかったけど、大変にゃ!!
シスターまでもが、勇者の毒牙に!?

男兵………

お前だけはまともだって信じてたのに………)

猫盗賊「シ、シスター!!」

シスター「はい?盗賊さん。どうかされましたか?」

猫盗賊「た、大変だにゃ~!勇者と男兵が……」

シスター「あ、盗賊さん。猫耳が立ってますね。可愛いですねぇ~♪」

猫盗賊「にゃにゃ!?こ、これは興奮してるから……。にゃことより!!大変にゃ~!!シスターの身に危険が……」

シスター「あら?男兵さん。どうかなさいました?」

猫盗賊「はぅっ!!?」

クルリ(猫盗賊が後ろへ振り向くと、真後ろに男兵が立っていた。)

猫盗賊(や、やられたにゃ!!また気配を読めなかった……)

男兵「よぉ。猫盗賊。なんか興奮して~。嬉しい事でもあったか?」ニヤニヤ…

猫盗賊「うぅ………な、何も……」

シスター「男兵さんも。何か嬉しそうですね~?」

男兵「まぁな。猫足がウリの隠密兵の背中を2度も取る事に成功したからな。」

猫盗賊「にゃにゃ!?そ、そんなの偶然だにゃ!!」


女勇者「あらぁ~?
でも、3回連続で背中を取られると、さすがに反論できないでしょ~?」


猫盗賊「にゃがぁっ!?ゆ、勇者!?いつの間に!?」

女勇者「そぉ~れ♪」ガバッ!

猫盗賊「ぎゃぁああ!!」ヒョイ

女勇者「ああ!シスターの背中に隠れられた~!
どうしたの?いつもなら抱き付かせてくれるのに……」


猫盗賊「………も、もう嫌だ………
勇者に触られたら……私……おかしくなっちゃう………」ガクブル…

シスター「と、盗賊さん!?どうしました!?そんなに震えて……」


男兵「お前………嫌われたな……」

女勇者「う、嘘ぉ!?どうして!?」

男兵「ウザイ女を通り越して、アレルギー症状まで引き起こす様になっちまったんだろな……。
いやぁ………御愁傷さん。」


女勇者「…………。

…………そっか。じゃあ、私が抱き付かなかったらいいんだよね!
そっかそっか。ならやめるわ!!

やめるから………ね……。」

トボトボ……(暗そうな様子で女勇者は行ってしまった……)


シスター「勇者様………。辛そうですね……」

猫盗賊「…………」

男兵「………。なぁ、猫盗賊。勇者に触られると、どうおかしくなるんだ?」

猫盗賊「……え~と……体が熱くなって、頭が回らなくなって、視界一面に勇者が広がるかのような感じ………かな……?」

シスター「……まぁ!それはまるで私の神への気持ちとそっくりですね。“愛”ではないでしょうか!?」

猫盗賊「愛?………愛って………」

メイド「愛。つまりは、恋ですね。」

男兵「あ、毒舌メイド。居たのか。」

メイド「私も隠密には自信がありますです。はい。

そして、他人の恋ばなと不幸は好物であります。」

男兵「うわ……口だけじゃなくて、性根もひどいな、これ……」



猫盗賊「愛?恋?それって、小説とか映画の世界の話でしょ?」


し~ん……………


猫盗賊「…………あれ?皆どうしたの?あたしの顔を見つめて………」

メイド「………お前、何を言ってやがるんですか?」

男兵「はは。ま、年相応っちゃあ、年相応だな。……」

メイド「いえいえ。この年でしたら、むしろそういった知識ばかりを収集しているはずです。」

シスター「……恋い焦がれる気持ちを感じ、愛し愛される事を知る………。
人とは素晴らしき存在ですね。」

猫盗賊「………?
だって、あれはエンターテイメントの話で……」


男兵「シスター。あんたの力で、猫盗賊に愛を教えてやれねぇのかぁ?」

シスター「え、え~とですねぇ……。
愛と言うのはお互いの事を思いやる事、そしてそれを確認しあう事から始まって……」

猫盗賊「確認しあうって、シスターは神様と確認しあってるの?」

シスター「もちろんです!
私はいつもどんな時でも、神様に私の気持ちを試されています!!生きるという試練を通して……」


男兵「あー、猫盗賊。シスターのケースは特別な場合な。
お前だって、もっと分かりやすい方法で勇者と確認しあってるはずだって。」

猫盗賊「え!?どうやって……?」

メイド「盗賊さんは毎晩勇者様と床を過ごしてきたそうですよね?うらやまけしかん……です。」

猫盗賊「なっ!?ま、まさか………あれが……!?」

男兵「………いや。単純にさ。日頃から抱き付かれたり、頭撫でられたりしてただろ?
あれでも十分愛されてたはずだぞ?」


猫盗賊「あ、あれが……愛……恋なの……?」

女勇者「さてさて、今の私の仲間(ハーレム)はいい感じに恵まれてるわ~。

シスター(清楚でおしとやか)に射手(ドジっ娘)に盗賊(猫耳ロリ!)に新妻(ハーフエルフで料理が上手!私に毎朝味噌汁作ってぇ~♪)に女侍(クールなボイン!)に魔法使い(分析中)にメイドちゃん!!


だけど………盗賊ちゃんに嫌われちゃった!?

………ぐすん……」


射手「勇者様~。ここにおられて………きゃっ!?」ドスン!

女勇者「あ、転けてはパンモロな射手ちゃん。」

射手「ひゃっ!?ああ……見ないでください~……うう……」

女勇者「最近は戦闘とかでもカッコよく活躍してるのに、日常生活では相変わらずなドジっぷりね~。

………ていうか、また下着の柄が違う。今度は百合の花柄?」

射手「え?ま、まぁ……。気分を華やかにしようかなって……」

女勇者「ひょっとして、毎日下着の柄を替えてたりするの?

軍のエリート兵になのに、そんなところにオシャレを感じるなんて……」

射手「いえ……外見はいつも同じような軍服を纏ってますから、こういうところで女の子らしさを持ちたいかなって思って……。
結構、女の子の兵士の間では普通な事ですよ。先輩とかも個性は必要だ、って言ってましたし……」


女勇者「ふぅ~ん。なんか、知られざる帝国女兵達の裏事情を知ってしまったって感じかな?」

射手「う、裏事情だなんて……大袈裟な……。
あまり一瞬にはしてほしくはないですけど、男性の兵士さん達が個性を出すために刺青をいれたりしますよね?あんな感じで考えて貰っても構いません。」


女勇者「ふぅ~ん。
……でも、1日に何回も履き替えるなんてね……」

射手「……え?」

女勇者「今朝は桜の柄だったし、お昼は薔薇の模様だったわよね?んで今は百合の花模様……」

射手「な、なんで知ってるんですか!?わ、私、今日はさっきの一回しか勇者様の前で転けてないのに!!?」」

女勇者「ムフフ……パンモロはなくとも、そんなスカート履いてたら日常のあらゆる場所にパンチラは潜んでいるんだよ。
いやぁ~、射手ちゃんは一日中眺めてても飽きないし~。」

射手「は、はぅぅ……。もうお嫁にいけない……

お昼のは、男兵さんにジャイアントベアーの体液をかけられた時に汚れたので、履き替えたんです。」

女勇者「履き替えた……?体自体をまだ綺麗に洗ってないんなら、また汚れるわよ?」

射手「…………あ。」

女勇者「……ホント、そろそろお風呂に入りたいわね……。」

射手「そうですねぇ~。」

女勇者「はぁ……どっかこの辺に大浴場がある館とかないかな……?」

射手「そんな都合よく……」



女侍「勇者。」

女勇者「ん?巨乳侍ちゃん。どうかした?」

女侍「向こうの森に洋館がある。………少し怪しい……」

女勇者「洋館!?ちょうどいいわ!!お風呂を借りましょう!!」


射手「そ、そんな都合よく………!?」




~~~~~~~~~~~~

魔法使い「洋館が?こんな町はずれに?」

男兵「おいおい……大丈夫かよ?絶対ろくな持ち主の洋館じゃねぇぞ……。」

女勇者「大丈夫よ!洋館って言うんだから、出てきてもゾンビやら吸血鬼ぐらいでしょ?」

男兵「お、おい!?そんな面倒な事を言うな…」

女兵「きっと吸血鬼とかなんて、気品にあふれた妖美なお嬢様吸血姫に違いないわ~。
ゾンビもきっと可愛い女の子ゾンビ……」


男兵「ああ…………もう絶対出るな……女ゾンビに吸血姫……。」

魔法使い「男兵さん。いくら勇者様がこう言うからって、そんな都合悪く……」


男兵「……はは……。ま、出てきても、俺が倒せばいいか。」

女勇者「何を言ってるの!?可愛いゾンビ娘ちゃんや吸血姫ちゃんなら仲間にするに決まってるじゃない!!」


男兵(……oh…)

魔法使い「……勇者様って、どうして女の子ばかりを仲間にしたがるんですか?」

女勇者「ん~?勇者だから。」

男兵「最低な思考の勇者様だな。」

魔法使い「男兵さん?何が最低なの?勇者様も女の子だから、女の仲間の方が頼れるって事なんじゃ?」

男兵「いや、……勇者なんて男だろうが女だろうが、どうせ色の事しか考えていないだよな。全く……」


魔法使い「……?」

~街はずれの森の洋館~


シスター「あぁ……何とも寂しい雰囲気の屋敷ですね……。」

猫盗賊「建物は立派なのに………しかも、ホコリ一つないな。手入れが隅々まで行き届いてる…。」

新妻「……でも、人の住んでいる様な雰囲気が全くしませんね?」

女勇者「そうね。せっかく期待してたのに……。」

男兵(……結局、来ちまったし……)


魔法使い「………い、意外と不気味な雰囲気ですね……」ビクビク…

女勇者「ん?魔法使いちゃん?どしたの?震えちゃって…」

男兵「あー、こいつ、怪談系とか苦手だから。」

魔法使い「い、いえ!!子供の頃よりは、大分慣れましたから……」

男兵「あ。魔法使いの肩に白い手が……」

魔法使い「ええ!!?ど、どこですか!?嫌ぁあああ!!!と、取ってください!!助けて勇者様ぁ~!!!」

ガバッ!(魔法使いが勇者に抱き付く)

女勇者「きゃっ!?も、もぉ……魔法使いちゃん。そんな激しく……/////////」



男兵「まぁ、んな感じで。魔法使いの前では怪談系の談話は禁止な。」

猫盗賊「お前が最初にしたくせに……」


女勇者「よ~しよ~し……私が居るからね~。安心してよ。魔法使いちゃんは私が守ってあげるから。」


魔法使い「……ぐすん……すいません……」




メイド「勇者様。侍さまと屋敷内を一通り回ってきました。」

女勇者「ご苦労!さすがは出来るメイドちゃん!
んで、どんな感じだった?」

メイド「誰も居ませんでしたね。あらゆる部屋を調べ回りましたが……」

女侍「……地下への扉だけに、厳重な鍵がかけられていた………。怪しい……」

女勇者「地下?そこだけになの?」

猫盗賊「それはきっと宝物庫だにゃ!!金銀財宝がガッポガッポだにゃ!!」

男兵「逆に凶悪な亡霊が封印されてたりして……。」

魔法使い「ゆ、幽霊ですか!!?」

女勇者「むむ……そこは後回しにしましょ。
んで、キッチンとか浴場はあったの?」

メイド「はい。大きなキッチンに、大浴場もありました。」

女勇者「そぉ……。なら、今晩はここに泊まりましょうか!」

魔法使い「えぇ!?ほ、本気ですかぁ!?」

男兵「………。」

新妻「キッチンですか?」

女勇者「新妻ちゃんと魔法使いちゃんは料理を作って貰えない?」

新妻「はい。……あ、でも魔法使いさんと……?」

魔法使い「わ、私……その……」

男兵「魔法使いさんは屋敷内を移動するのが怖いから、勇者様と一緒に居たいってさ。」

魔法使い「わ、わぁー!?わ、私!こ、怖くなんか……!!」

女勇者「……魔法使いちゃんって、こんなキャラだったかしら……。
ま、分かったわ。なら、新妻ちゃんの手伝いは…」

新妻「あ、あの!私は一人でも料理は大丈夫ですから……」

女勇者「そぉ?でも、何かあった時の為に最低2人で行動してもらいたいの。
だから、シスターちゃん。彼女を後ろで見ていてあげてくれない?」

シスター「はい、分かりました。」

新妻「あ……それなら……」


女勇者「……男兵。ひょっとして新妻ちゃんと魔法使いちゃんって仲悪いの?」ヒソヒソ

男兵「仲悪いとかじゃなくて、料理に関してはお互いのやり方があるから。出来れば一人で作りたいんだよ……」ヒソヒソ

女勇者「……そっかぁ。料理得意同士だからって、協同ではしたがらないのか……」



新妻「そうだ。皆さん、何か料理に関してリクエストはありませんか?」

女勇者「そうね。エビフライ。」

射手「え、えっと……チョコパフェ……」

猫盗賊「チラシ寿司ぃ~♪」

男兵「おいおい……。海産とかチョコとか材料がねぇだろ……。さっきの熊の肉を使うんだから…」

女勇者「じゃあ、ハンバーグ!!」

女侍「豚カツならぬ熊カツ……」

メイド「いえ、ここはダシを取ってラーメンを……」


新妻「はい。分かりました。

………後、男兵さんは……」ゴモゴモ…

男兵「ん?何か言ったか?声が小さくて聞こえなかったが……」

新妻「お、男兵さんも……何か……リクエスト……」ゴモゴモ…

男兵「だから聞こえないって!!」

新妻「ひ、ひぃいい~!!!」


女勇者「男兵!何を大きな声を上げてるの!?また新妻ちゃんを怖がせて……」

メイド「うるせぇー、静かにしやがれであります。」


男兵「………わ、悪かったよ……」



新妻(……ああ……別に男兵さんが悪いワケではないのに……)


女勇者(……でも、このまま新妻ちゃんの男性恐怖症をほっとくのもな……。今後の彼女の為には……。

まぁ、私が新妻ちゃんの旦那さんになるんだから問題ないし、男兵もその内に旅からは離脱してもらうし。(ハーレム完成の為に)

ただ………やっぱり……)

女勇者「新妻ちゃん。さすがに男兵ぐらいには慣れてくれないかな?」

新妻「え?……は、はい……。努力はしてるんですけど……」

シスター「男兵さんはいい人です。話していればすぐに分かる事なのですが……。」

新妻「……でも、まだまともに話せた事がないですから……そんな事も分かんないや……」


女勇者「そう………なら、会話さえできたらいいのね?」







ヒュルルル………トン

男兵「ん?何か頭に当たったか?」

猫盗賊「何か飛んで来たよ?
………これは、紙ヒコーキ?」

男兵「何!?……ったく、どいつの悪戯だ!?」



新妻(!?……ひぃぃ……怒ってます……)



男兵(ん?あそこに居るのは新妻か?もしかして、あいつが……?)

猫盗賊「……あ、この紙、手紙だ。字が書いてある。」

『男兵さんへ
料理を作るのですが、男兵さんも何かリクエストはありませんか?
新妻より』


男兵「……なるほど。文通か……」





ヒュルルル……パサッ

新妻「あ、紙飛行機です。」

女勇者「早速返してきたわね。え~と、何々ぃ~?」


『適当。お前の腕に任せる。』


女勇者「……な、なんて無関心な返事なの!!?
あん野郎ぉ~……新妻ちゃんが頑張って書いた手紙を………。

ゴゥラァアア!!男兵!!どこにいやがるんだぁあ!!?」



新妻(……あ、裏にも何か書いてる……)


『これからもよろしくな。イェイ!』


新妻「………。
……好い人…ですね……」


『あ、後、勇者には気を付けろよ。あいつはお前が考えている以上に女垂らしてで……』


新妻「………はい。ご忠告感謝します。
大丈夫。ちゃんと分かってますから。私は勇者様の事をちゃんと見ていますから……。

……勇者様が何人の女性に目を向けようとも、その分一人一人に対する思いが弱くなるなんて事は決してないという事も……」

??「………あれ?ここは………」


「……気が付いたか……勇者よ……」


??「……勇者……?生憎だが、俺はあいつの護衛で……」

??(………あれ?俺の声、こんなに高かったか……?)


「……ははは。今に分かる。お前こそが、真の勇者であるという事が……」

??「………姿も見せないで、ベラベラ喋ってんじゃねぇよ。名前ぐらい名乗ったらどうだ!?」


「私は、お前を作り出した存在。残念だが、私にはもう名前などない。

だが、お前達は私に名前を付けてくれたな。

“魔王”と。」


??「魔王……?はは。まさか、俺の前に現れてくれるとはな……。
勇者様は不在だが、今すぐ最終決戦でもおっぱじめるか?」


魔王「……フフ……。今はその時ではない。
お前が勇者となった時に、私の前に現れるがよい……。」








??「………うう……。

……あれ?ここは……洋館……?」


??(……そうか。確か勇者に連れられて洋館に入って……………眠ってたのか?)


射手「……あ、あの~……」

??「………ん?射手か?どうした?」

射手「え!?は、はい!?どうして名前を知っているんですか!?」

??「はぁ?今更何を……」


メイド「むむ……。その服装……その喋り方……。」

??「毒舌メイド?どうかしたのか?」

メイド「………あなた、男兵……でありますか?」

??「……?何を言ってんだ?俺が俺以外に見えるっていうのか?」

射手「え!?や、やっぱりですか!?
だ、だって……あなた、どう見ても……」


??「……?」

メイド「……はい。手鏡をどうぞ。」

??「ん?あ、ああ……」



??(………ん?鏡にうつってるの………女……だよな………
………あれ?俺の顔を見ているのに………女…の顔が………?)


??「………えーと……」

??(……そういえば、胸の辺りが若干膨らんだような……。逆に、下半身にあるはずの何かがないような……)

メイド「……男兵さん……?」

女兵「………いや、今は女兵………かな?」

射手「はわわ……お、男兵さんが……性転換しちゃった………」

女兵「…………えと、俺ってどうなったの?
この洋館に来て、何があったんだ?」


メイド「知りません。皆で洋館を探索する事になって、あなたは盗賊さまと一緒に行かれて……」

射手「それで気が付いたら、ここに倒れてました。
……女性の姿で……」

女兵「………つまり、俺がどうして女になったのかは、2人とも知らないんだな。」

メイド「女兵さまこそ、覚えておられないのですか?そんな大事な事を?」


女兵「…………いや。

………魔王……がどうとか……」

射手「ま、魔王ですか!?魔王が何か……」




女勇者「あれぇ~?3人とも、こんな所で何してんの?」

女兵「……勇者……」

メイド「勇者様。非常事態であります。」

女勇者「何々!?なんか面白い事でも……………………あれ?」


ジーッ(女兵を睨み付ける……)


女勇者「……………?」

女兵「………え、え~と……」

女勇者「可愛い!!」ガバッ!

女兵「は、はぁ!?」

女勇者「あなた名前は!?趣味は!?年齢は!?スリーサイズは!!??」


女兵「お、落ちつけ!!俺は男兵だって!!」

女勇者「え!?そう、男兵って名前なんだ!!
それでそれで、スリーサイ………………はぁ!!?」


女兵「……い、いや……マジだからな……」

女勇者「……え?あ?ええ!?ええ~!!?」

女兵「……悪いな。なんか、惨めな事になっちまって……」

女勇者「最高じゃな~い!!今まであなたが男だったから、優秀でも旅からはおろさないと、って思ってたのに!!
あなたが女だったら、ハーレムの一員にできる!!」


女兵「………はぁ、やっぱそうなるのか……」


女勇者「あなた、どんな魔法を使ったの!?奇跡!?奇跡なの!?めっちゃ可愛くなれたじゃん!!
胸もそれなりに可愛くなったしぃ~♪」プニプニ

女兵「さ、触んなって!!俺は結構落ち込んでるんだぞ!!」

女勇者「なんでぇ~?別に落ち込む事もないんじゃない?」

女兵「…………………………………言われてみれば、確かにないな……」

女勇者「新妻ちゃ~ん♪」

新妻「は、はい?どうされました?まだ、ご飯の準備が……」

女兵「……ど、どうも……。」

新妻「……?どなたでしたっけ……?」

女勇者「男兵よ!男兵!!今は女の子になったから女兵だけど!」

新妻「!!?……あ、あなたが、あの男兵さん……?」

女兵「はは……ちょっと、魔王に何かされたみたいでさ……。気が付いたら、こんな姿に……」


新妻「……………。
…………はっ!!よ、良かったですね!!」

女兵「……え?」

新妻「これで、男兵さんとも面と向かってお話が出来ます!!私、嬉しいです!!」

女兵「あ、ああ……。そういや、そうだな……。」


女勇者「ねぇー!だから言ったでしょ!?女の子になったら、むしろ良い事がいっぱいだって!!」

女兵「……ま、まぁな……」


シスター「……でも、男兵さんを女性にしたのって、魔王なんですよね……」

女侍「……魔王……何を考えてる……?」

女勇者「魔王も女の子が好きなんじゃないの?」

女兵「いや……。俺が真の勇者だとかどうとか……」

女勇者「勇者?勇者はあたしでしょ?」

女兵「……だよな。魔王の言ってる事は全く理解出来なかった………。」




女兵(……魔王のあの言い方からして、女になった俺は真の勇者として覚醒するって意味なんじゃ………。
じゃあ、今の勇者はどうなる……?)


女勇者(魔王は女兵が真の勇者って言った。
……つまり、私は真の勇者じゃないって事?

………だった、、私が新・真の勇者になってやればいいだけの話でしょ!!そうすれば、真の勇者様ははれて私のハーレムの一員に………)




シスター「……ですが、男兵さんは男兵さんですから。例え、どんな姿におなりになっても……」

女兵「……ありがとう。今のとこ、その言葉が一番の慰めかもな。」

女勇者「なんでよ!?女になれた事は素晴らしい事じゃない!!」

女兵「お前はさっきから女となった俺の体しか見てないだろが!」

新妻「……あ!す、すいません。私も、男兵さんが女になった事を喜んで……」

女兵「………いや。女になってなかったら、今もこうやって面と向けて話せていなかっただろうな。
だから……俺も嬉しい……かな。」

新妻「そ、そうでよね!!私も本当に嬉しいです!!」

~街外れの洋館、とある客室~

猫盗賊「……うわぁ~。高そうなツボがあるし~♪」

男兵「手をつけるなよ。館の主に怒られるぞ?」

猫盗賊「これだけ探し回っても誰一人として居ないんだし、やっぱりこの館は無人なんだよ。だから、このお宝はあたしが……」


男兵「いや、勇者が言ったんだ。吸血鬼に会いたいって。だから、必ず出るだろな。」

猫盗賊「ゆ、勇者が……?ふ、ふ~ん……」


男兵「……はぁ。どうしたぁ~?まだ、勇者の事が割り切れないのか?」

猫盗賊「……だって……あたし、勇者の事なんか好きでもなければむしろ怖いのに……。これが“恋”なワケが……」


男兵「……ま、人それぞれに抱く感情だし。
ただ、このまま勇者から距離を置き続けていても、何も変わらないだろうがな……」


猫盗賊「………うぅ……」


男兵(………つか、勇者もこんな子供を毎晩毎晩いじってるからこんな事に……。
全く……鬼畜勇者め……)


猫盗賊「ところで、男兵は好きとかないの?」

男兵「ん?何が?」

猫盗賊「勇者様や他にも可愛い女の子がいっぱい居るんだよ?男兵だって男なんだから、普通に好きな女の子とか居たりしないの?」


男兵「……そうだなぁ……。お前とか?」

猫盗賊「な、なぁぁっ!?マジか!?」

男兵「嫌いか好きかと言われたら、好きに入るだろな。お前、面白いし。

……ただ、それだけだ。それ以上はないな。」

猫盗賊「……?ただ好きなだけ?結婚とかはしないの?愛し合ったりも?」

男兵「結婚どころか、毎晩お前が女勇者とやってる事もないだろうな。
俺の好きってのは、まぁ一緒に居て楽しい奴って程度のものだから………。」


猫盗賊「……なんで?……どうして?」

男兵「個人の自由。それが俺の考え方なんだ。
それ以上……言い表す言葉なんか思い付かないな……」

猫盗賊「………ひょっとして、男兵は私以上に寂しい人生なんじゃ……」

~街外れの洋館、ダイニング~

メイド「勇者様。非常事態その2であります。」

女勇者「今度は何?女兵が男に戻ったとか?」

メイド「……半分正解でありますね。」

女勇者「は、半分?……まさか、オカマになっちゃったんじゃ……!!?」





女兵「…………」

男兵「…………」

シスター「え、え~と……あれ?」

射手「お、男兵さんが2人!?
い、いえ……男兵さんは一人で、もう一方は女兵さんだし……」

猫盗賊「ん~?この女は誰?服装は男兵そっくりだけど……男兵の知り合い?」

シスター「こ、これは……神様のお与えになった試練………!?」

女侍「神じゃない……魔王の仕業。」


魔法使い「え?あれ?男兵さんが女の子になったって聞いたのに……男兵さんは普通に居て………。
え?じゃあ、あの女の人は……?」



男兵「…………誰?」

女兵「お、俺は男兵……元はな。今は女兵だが……」

男兵「………いや、今も昔も俺が男兵だが……」

女兵「……じゃあ、俺は誰だよ?」

男兵「いや……女兵なんじゃね?」

女兵「…………あー、そっか。そうだよな……。」



女勇者「……あれ?なんで男兵がいるの?女兵ちゃんも?」

メイド「……どうやら、男兵さまは盗賊さまとずっと探索をしていたらしくて……」

女勇者「え!?……じゃ、じゃあ、あの女の子は!?」

新妻「……な、なんか、頭が痛くなる展開ですね……。意味が分かりません……」

新妻「え?でも、見た目が男性な方が普通に男兵さんなんじゃ……」


女勇者「……いや、男兵は魔王によって女にされて、男兵の姿をした魔王が私達をスパイしに来たのかも……」

女勇者(……何より、女兵と話した時に違和感を全く感じなかった。普通に、男兵として受け入れてた。

だから、彼女は男兵のはず……なんだけど……)



魔法使い「え、え~と、、男兵さんの昔のあだ名は?」

男兵「非道戦士。」
女兵「非道戦士。」

魔法使い「施設で男兵さんがいつも困らせてた養母さんの名前は?」

男兵「ピーマン婆。」
女兵「ピーマン婆。」


魔法使い「わ、私が……その……8歳の時の夏の朝、男兵さんに秘密にしてって言った事は……!?」

男兵(おねしょの件か?)女兵(おねしょの件だろな)


男兵「朝顔が枯れても言わないぜ。」キリッ
女兵「朝顔が枯れても言わないさ。」キリッ



男兵「なっ!?お、お前……」

女兵「お、お前、なんで今の言葉を……!?」



女勇者「ん?何?今の2人が同時に言った恥ずかしい言葉は?」

魔法使い「お、男兵さんが、当時私と秘密を交わしてくれた時の約束の言葉なんです……//////」

魔法使い(お兄さん……。お兄さんなら、秘密の内容なんか言わずに、その言葉を言ってくれるって信じてました……)

女勇者「んで?その秘密って、何?」

魔法使い「秘密です。私とおに……男兵さんとの。」


男兵「……くそぉ。魔王とかいう奴は、人の恥ずかしい名言まで調べあげてんだな……」

女兵「……もう、互いの知識を探り合う必要もないようだな……」

男兵「……なら、次は武術ってワケだな……」ジャキン

女兵「ふん……こっちの方が手っ取り早いか……」ジャキン

新妻「ふ、2人共、剣を構えましたよ!?」

女勇者「ん~?いいんじゃない?こっちにはシスターちゃんも居るし。例え傷ついても治してあげれば……」


女勇者(………あれ?なんか、女兵ちゃんの方に妙なオーラを感じる……?)

~1時間後~

女兵「はぁ……はぁ……」

男兵「……まったく……やっぱ、中々決着にはいたらねぇか………」


女勇者「……やっぱ、男兵同士が戦っても引き分けになるわよね……」

魔法使い「私は……もうどちらが男兵さんでも構いません。きっと、どっちも男兵さんなんですよ!」

射手「え!?じゃあ、男兵さんはやっぱり2人に増えたんですか!?」

女勇者「……そうなるわよね…?」




女兵「こんの……いい加減に……」

男兵「へっ!それはお互い様…………ん?」

男兵(女兵の体が……光ってる!?)

女兵「くたばりやがれぇっ!!!」

ドゴォオオオン!!!(男兵が吹き飛ばされた)


男兵「ぐっ!!?がっ!………!?」



女勇者「え!?な、何!?今の力……!!?」

魔法使い「女兵さんが……使った!?」

射手「今の女兵さんの力……まるで、勇者様みたい……」


女兵「……え……?な、なんだ!?今の力……」


男兵「……くっ、お前……なんでそんな力が……」

女兵「し、知るかよ!夢中になってたら、いきなり……」


女勇者「はいはーい!この勝負は終わり!!勝者は女兵ちゃんね!」

男兵「ちょ!ま、まだ、決着はついてないし……」


シスター「男兵さん!そんな傷で続けるのは無理です!!」

女勇者「そうね。ついでに言わせてもらうと、“第一回・どちらが本物の男兵?”大会の勝者は男兵!あんたの方ね。」

男兵「と、当然だろ……。だが、だったらそっちの女兵は………」

女兵「……はは。こんなデタラメな力が使える俺が、もはや男兵を名乗れるワケはないわな……。」


女勇者「ん~とねぇ~……女兵ちゃんは女兵ちゃんって事でいいんじゃない?」

女兵「……へ?」

女勇者「男兵とは別に女兵ちゃんが居るって考えたらいいじゃない?
もちろん、元は2人とも男兵だったって事で……」


女兵「そ、それじゃあ、何の解決にも……!!」

女勇者「え~?だって、どちらが本物の男兵かを決めて、何か得する事でもあるの……?」

女兵「そりゃあ~…………特にはない……か。」

男兵「……全くだ。俺が俺であろうがなかろうが、ぶっちゃけどうでもいい事だよな。
今現在、俺が存在しているという事実は変わらないんだから……」


女勇者「……いや。女兵ちゃんには別の問題があるわね……」

女兵「な、なんだよ………?」

女勇者「さすがの私も、今の力を使ったあなたをこのまま野放しにするワケにはいかないわね。
……正直、かなり怪しいわ。もし、あなたが魔王の手先だったとしたら……」


女兵「……疑ってるのか……?まぁ、当然の事だろうな。勇者の力を使う人間がもう一人居たら……」

女勇者「……あなたが真に選ばれし勇者だからなのかもしれないわね……」

女兵「……かもな。」


女勇者「……とにかく、あなたの事はもう少し調べる必要があるわね。
体の隅々、スリーサイズから性感帯まで……」

女兵(……うわ、嫌な予感……)

女勇者「と、いうわけで、魔法使いちゃん。今から女兵ちゃんとお風呂に行って、体の隅々まで徹底的に調べましょ~♪」


女兵「…………ゆ、勇者!!お前、こんな時に……!!」


男兵(……あれ?女兵は女になった俺……って考え方だよな。
て、ことは、女兵のピンチは俺のピンチ?
……いや、俺は俺として別に居るワケだし………)


女勇者「シスターちゃんは男兵を手当て、或いは私達の入浴を覗きに来ないように見張っててくれる?」

シスター「はい。分かりました。」


女勇者「後、そっちで空気化してた皆~!あんた達も来なさ~い!!皆でお風呂に入りましょー!!」


メイド「むむ……私達も、その得体の知れない女兵と一緒にですか?」

女侍「……不安……」

射手「だ、大丈夫ですかぁ~?裸なんて無防備な姿をさらしたら、後ろから襲われるんじゃ……」

女勇者「だから皆で入るのよ!!もしもの時は、皆で袋叩きにすればいいじゃない?」

女兵「……おいおい…。」


猫盗賊「あ、あの~……私は……」

女勇者「………盗賊ちゃんは、男兵を見張っててくれないかな……?シスターちゃん一人じゃ、男兵に何されるかは分からないし……」


男兵「……て、結局俺は危険物扱いかよ………」

猫盗賊「は、はい……分かりました……」


女兵(……勇者。まだ猫盗賊に嫌われた事を引きずってる……?
猫盗賊は、自分に素直になれてないだけなのにな……)

~街外れの洋館、浴場、鏡の前にて~


女兵「………これが、俺の………女の体……」

女兵(なんか……もの凄く違和感を感じる……)


女勇者「もぉ~♪可愛いんだから!!」ガバッ!

女兵「おい!?裸で抱き付くなよ!?肌どうしの摩擦でヒリヒリする……!!」

女勇者「あ~。感じる……感じるわ!!女兵ちゃんの肌の感触……温もり……」

女兵「………勇者。お前、キモいな……」

女勇者「いや~ん♪もっと私を罵って~♪」

女兵「………勇者が、こんなに変態だったとは……」


メイド「勇者様……。そんなワケもわからぬ存在に密着し過ぎては危険ですよ……?」

女勇者「ん~?メイドちゃん………?
………あ、あなた!!その胸……!?」

メイド「……ふふ。普段はメイド服で隠れていましたが、こう見えても私は大きい方なのですよ?ふふふ。」

女勇者「……さ、さすがは代々勇者に仕えてきた使用人のメイドの家系……」

女兵「俺の倍以上もある………。女の胸には、どうしてこんなに差が出来るんだ?」



射手「わわっ!?勇者様!?そ、そんなに女兵様に近づかれては危ない!!………きゃっ!?」

女兵「へ?うわっ!?」


ドスン!

女兵「……痛てて……ったく、射手。人を巻き込んで転けやがって………」

射手「痛たた……………あ。」

射手(あれ?お、女兵さんが……私の上に……)

女勇者(女兵ちゃんが射手ちゃんに覆い被さってる?)

メイド(女兵さまが射手さまを押し倒した……?)


射手「あ……嫌………!!」

女兵「痛ぁ~。ったく、大丈夫かぁ~?」

射手「た、助けてぇ~!!!!私!!襲われる~!!!!!!」

女兵「……襲われるって……誰に……?
……って、はぁ!?お、俺かよぉ!?」

女勇者「女兵……あなた、やっぱり肉食系なのね!!?」

メイド「淫らな野獣の限りでありますね……」




魔法使い「……侍さん。やっぱり、胸が大きい……」

女侍「………よく、食べるから……」

魔法使い「え!?や、やっぱり、いっぱい食べる人の方が大きくなるんですか!?」

新妻「あ、あの!女兵さん!!」

女兵「ん?新妻か。どうした?」

新妻「そ、その………き、綺麗ですね!!」

女兵「え?いや……俺なんかよりも、エルフなお前の方が肌も白いし………」

新妻「わ、私なんて……。白い肌がお化けみたいで気持ち悪いって虐められてきましたし………」

女兵「いや?普通に綺麗で神秘的だろ。その虐めた奴のセンスが悪いだけだって。」

新妻「お、女兵さん…////」


女勇者「新妻ちゃ~ん……男兵が女になった時から、妙に馴れ馴れしく接するわね……浮気かぁ~!?」

新妻「ち、違います!!ただ、今までお話ができなかったから、つい嬉しくて……」

女勇者「嬉しくてですって!?
このぉ~……やっぱり、一度あなたの体に私と一緒に居る事の楽しみを叩き込んであげないと……」

新妻「え、ええ!?勇者様!?な、なんか怖い顔で………きゃっ!?どこ触って………」






魔法使い「女兵さん。」

女兵「魔法使い、お前にその名前で呼ばれると、さすがに違和感が……」

魔法使い「……女兵さんは、確かに男兵さんだったのですよね……?」

女兵「まぁ……つい最近まで男兵の姿でお前らと居た記憶があるからな……」

魔法使い「……あっちの男兵さんも、記憶を持っているみたいですよ?
……さっきの私の質問に、ちゃんと答えてくれたし……」

女兵「……そうなんだよなぁ……。あんな事まで知ってるとはな……。やっぱり、あいつは男兵で……俺が偽物……?」



魔法使い「女兵さん。昔、私がクラスの男子達にいじめられて泣いていた時の事……覚えてますか?」

女兵「……その後、俺がその男子達を崖の上から逆さ吊りにして、お前に謝らせた……っけな。
あの後、先生に死ぬ程怒られたっけ……」


魔法使い「男兵さんは、昔から私の為に色々してくれました……。私が帝都に来てからも、毎日の様に手紙をくれて……」

男兵「本当は会いに行きたかったんだがな。一人前のシェフになったら、そっちから呼んでくれるって言ってたじゃん。だから我慢してた。
……結局は気になって、勇者を口実に会いに行ったがな。」


魔法使い「そんな約束まで…………。やっぱり、男兵さんなんですね……」

女兵「さぁね。男兵の過去を全部知ってる魔王が男兵のフリをしているだけかもな。」

魔法使い「……女の姿で、ですか?」

女兵「勇者は女好きだからな。この姿の方が、勇者に気に入られて、一緒に旅に出られるだろ。
そうすれば、魔法使いの事を近くから守る事もできるしな………」

魔法使い「私の事を……守る……?」

女兵「もちろん、勇者や他の奴らもな。
この姿やらさっきの力のおかげで、勇者のパーティーに入れてもらえそうだしな……」

魔法使い「……じゃあ、男兵さんの方はどうなるんでしょうか?」

女兵「……多分、もうすぐ居なくなるさ。
……勇者は、男兵を必要としていないから……」




~数時間前、街道~


女勇者「シスターちゃんを襲って!!あんたはその為にあたしの前に現れたんでしょ!?」

男兵「お前……それ以外の理由で俺を必要とはしてないのか!?」

女勇者「うん。全く。」

男兵「……じゃあ、俺がそれを断ったらどうするんだ?」

女勇者「なら、あんたはいらない。どっか行って。」

男兵「いらないって……俺が男だからか?それとも、大して強くないからか?」

女勇者「……う~ん。強さ的には、まぁいい感じじゃない?あんな大熊仕留めたし。
……まぁ、男である事に目をつぶってあげたとしても、あんたはやっぱり勇者の仲間にはむかないかな?」


男兵「……なんでだよ?」


女勇者「上手くは言えないけど……。あんた、私達と一緒に居たらその内死ぬと思うんだ。多分、次の街ぐらいで……」

男兵「……それは、勇者の勘か?」

女勇者「まぁね。正直、あたしもあなたがそう易々くたばるとは思ってないんだけどなぁ……


それでもいいって言うなら、付いて来なさいよ。あなたの大事な妹さんの前で、あなたの死ぬ姿をさらしてもいいならね……」

女兵「……男兵だった俺は、勇者のもとから離れるつもりだったから……」

魔法使い「……男兵さん。もうすぐ居なくなるんだ……」


女兵「ところが!こんな風に女になった俺が居るからな!!俺が元男兵として、勇者に付いて行くさ!

そして、お前も守るから……」

ナデナデ(女兵が魔法使いの頭を撫でた)

魔法使い「……お兄さんに頭を撫でて貰えるのって、久しぶりですね。」

女兵「お、お兄さんって……。今の姿で言われるとはな……」

魔法使い「……じゃあ、お姉さん……ですか?」

女兵「……それも、まぁ違和感を感じるがな……」






射手「……あれ?何か落ちてますね……?」

メイド「……校章ですね。学生が制服に付ける物です。」

射手「……学生……?なんでこんなところに……」

メイド「ふむふむ……。学都立第一小学校……と書いてありますね。」


射手「……そういえば、最近、学都の小中学校の女子生徒が行方不明になる事件が多発しているとか………」






「………あ゛あ………」




魔法使い「!?……お、お姉さん!?い、今、へんな声が………」

女兵「?……何が?」




女勇者「今の声、新妻ちゃん?」

新妻「はぁ…はぁ……ふぇ?な、何か………?」

女勇者「………気のせい……?」




女侍「………!?な、何か殺気が………」

~数ヶ月前、帝都軍部会議室~


男兵「え~と、他に意見は?
……ないな。じゃあ“残命暴落思想”採用。」

同僚A「残命悦楽だろ。自分でつけた名前くらい、覚えろよww」

男兵「……大体、お前らも何か案を出せって!!」

同僚B「男兵が一番名付けるのが上手いじゃねぇーか。お前に任せるわ。」

同僚C「ホント、その辺のガキが面白がって叫びそうな名前ばっか、よく思い付くよな?」

男兵「俺のセンス……だな!はは。」

同僚C「……いや、褒めたつもりじゃないんだが……」



戦乙女隊長「貴様ら!こんな時間まで、会議室で何をしている!?」

男兵「あ、ヴァルキュリアの鬼隊長。」

戦乙女隊長「お前は男兵だな?相変わらず、上司への言葉使いが分かっていないようだな……」


男兵「……お前の方が年下のくせに……」

同僚B「男兵。やめてやれよ。隊長様は若くして偉大なるヴァルキュリア部隊の女隊長になられたんだぞ。
そりゃあ、エリート意識の塊で年齢コンプレックスも持っているさ。」


戦乙女隊長「男兵とお前は、明日一番私の部屋に来るように……。」


男兵「げっ……」
同僚B「はは……すんません……」


戦乙女隊長「ふん。それで、何をしていた?」

同僚A「我が帝国軍の兵士達に見られる共通した考え方をグループ分けして、いくつかのパターンに分けていました。」


男兵「つまり、兵士達の間に多く見られる思想とかをリストアップして、名前を付けていたんだ。」


戦乙女隊長「ほぉ~。中々面白い事をするな。例えば?」

同僚A「グループA“絶対集団思想”。個々の意思を持たずに集団での決定のみで動く兵士達です。

端から見れば真面目な兵士達ですが、集団の決定が誤っている場合でも、個々はその決定に従います。」


同僚B「グループGは逆に個々が自由に行動。意思の合う者達だけが共に協同するという兵士達。集団で意思を作るのではなく、意思が集まって集団となすタイプ。」

男兵「それ、まだ名前付けてなかったな。そうだな、“独志集積思想”とか?」

戦乙女隊長「ふふ……男兵は面白い名前を付けるなぁ。」

男兵「ども~♪」

同僚C「いやいや、褒めてねぇだろ……」

戦乙女隊長「それで?男兵は自身がどの思想に当てはまると考えている?」

男兵「俺は……グループM。“勇者超越思想”!!皆がちやほやしている勇者って存在を超えてやる!って考えだな!!」

戦乙女隊長「超える?つまり、倒すというのか?帝国の一兵士が、勇者様を?」


男兵「……まぁ、勇者って立ち位にあぐらをかいてるような奴なら、俺が引きずり落としてやるな。」

同僚A「そんな事したら、誰が魔王と戦うんだ?」


男兵「………俺かな?
別に誰でもいいだろ。倒したい奴が倒せばいいじゃん。」

同僚A「おいおい……」

男兵「どうせ……俺にやられる様な勇者には、魔王なんて倒せやしないさ……」


戦乙女隊長「……勇者に、お前ごときが勝てるとでも言うのか?」

男兵「負けるとは思っていませんよ。
戦えるんなら、必ず倒してやるさ!!」


同僚C「……この……馬鹿が……」

戦乙女隊長「なるほど。男兵は、確かに我が軍でも稀に見る考え方の戦士だな……」







~帝都、勇者旅立ち当日~


男兵「………。勇者……か。昨晩の、ドラゴンの群れを一掃したあの女が………。

………あんなに強いとは思ってなかったな。
つか、もっとイケ好かねぇ男だと思ってた……。
事実は小説より面白い………か?」


女勇者「……あの~。あんた、帝国の兵士よね?」

男兵「ん?……ああ。やっと来たか勇者様。」

女勇者「帝国が私に派遣してくれた超優秀で可愛い護衛ちゃんをどっかで見かけなかった?」


男兵「……………。
それ、多分……俺の事……」


女勇者「え?あ~。



え?
え?
はぁああああ!!!!?
あんた、男じゃん!?」

男兵「……え?ま、まぁ………」

女勇者「どぉおゆぅう事なのよぉ!!?なんで勇者の旅の護衛が男なのよ!?」

男兵(………何を言ってるんだ?この勇者は……)

~町外れの洋館、キッチン~


シスター「男兵様の体調もよくなられたようですし。
……それにしても、女兵様のあの力……。まるで勇者様の様でした……。


………という事は、勇者様が女兵様も含めてお二方いるという事なのですね!?二人の勇者様に出会えるなんて!!

ああ……神よ……。私にこのような素晴らしき出会いをお与えくださり……」




「……くくく………。」


シスター「!?い、今のお声は……まさか、神!?」


「くく……。おめでたい思考の聖職者ね……」


シスター「お褒めいただきありがとうございます!
……ああ、神よ!私はあなたの事を………」


「………しつこいわね。私は神なんかじゃないわ!!」


ヒョイ………ストン


シスター「え!?神ではないのですか?
では、貴方は一体……」


「私は、この洋館の主。古代より闇の世界を生きてきた高等種族。お前達人間は、我らを吸血鬼と呼んでいたわね?」

シスター「まぁ……あなたが吸血姫様ですね。お会いできて光栄です。」


吸血姫「……ふふ。相変わらず面白い反応ねぇ。シスター。貴方は今のご自分の立場が理解出来ているのかしら?」

シスター「え~と……。吸血姫様とお話をしておりますが……」


吸血姫「そぉ。私は吸血姫。私の好物は新鮮な少女の生き血。
特に、心も真っ白な純潔聖女の血は格別ですわぁ~。」


シスター「……はぁ。私にはあまり理解できません。
人間だからでしょうか?」

吸血姫「そうね。人間の血の美味しさは、吸血鬼にしか理解できないですもの。

それでは、貴方にはじっとしてもらうわね!」

シスター「はい。分かりました。
ですが、どうしてでしょうか?」

吸血姫「これから貴方の血を貰うから、暴れずにじっとしている事ね……」

シスター「はい。分かりました。」

吸血姫「………?
貴方、私の言っている事が理解できているの?」

シスター「はい。吸血姫様は私の血をお吸いになるのですよね。
どうぞ。こんな私の血液でよければ……」

吸血姫「………あなた、私を馬鹿にしてるの?」

シスター「いえ。特には。
……あのぅ、ひょっとして私、何か吸血姫様のお気に障る様な事を……?」


吸血姫「……私が……見た目が小さな女の子だからって、怖くないとでも言うの?
私は闇の種族。あなたはその清純な身体が私の手で汚されようとしているところなのよ?」

シスター「大丈夫です。私には神のご加護がありますから。
それよりも、貴方が私の血をお吸いになりたいと言うのに、私がそれを拒否する理由などありません。」


吸血姫「……もし、神のご加護やらが効かなくて、貴方の体が闇で汚れたら……?」

シスター「……それは、私の神への思いが弱かったという事です。
……あなたのせいではありません。私の弱さの結果なのです。」




吸血姫「あなた………本当に面白いわね。気に入ったわ。
例え貴方が闇に落ちたとしても、私が拾い上げてあげるわ。
そして、私の下で私に仕えなさい。」


シスター「……私は神に仕える身。それが神が与えし運命であるというのなら、私はそれに従います……。」


吸血姫「………そぉ。分かったわ。

……失礼。」グイッ

シスター「……はい。」


吸血姫「息は緩やかに落ち着いていて……緊張をほぐして…………」




……カプッ


シスター「っ!?……………はぁ……はぁ……」


吸血姫「……ん……ん……」


シスター(………感じます………私の体から血が抜かれてゆき、体の中に闇が溜まっていって、少しずつ身体が重くなってゆくのが………


大丈夫……私には……神様の……加護……が……)


シスター「…………はぁ…………ん……あ…」


吸血姫「……ん……ん……」


吸血姫(……面白い女だったわ………。久々に楽しかった。

……ありがとう。だから……ゆっくり……静かに……私の闇の中に………)






男兵「おい、シスター?飲み物を取りに行くのに何分掛かって……………」

女勇者「んでぇーぃ!!」

ドゴォン!(勇者がキッチンに飛び込んできた!)


吸血姫「!?……ちっ……」

シスター「……あ……ぁ……」

女勇者「そこの可愛いゴスロリ幼女!!シスターちゃんを放しなさい!!」


吸血姫「……勇者……!全く、お邪魔虫さんね……」


男兵「……吸血姫!?やっぱり出たか……。
………つうか、勇者!?
お前、服はどうした?」


女勇者「着る暇なんてなかったわよ!!男兵!見んな!!見たら殺す!!」

男兵「……しかし、勇者が言った通りに吸血姫が出てくるとはな……」

女勇者「って、こらぁ~!!無視すんなぁ~!!女として、なんか恥ずかしいだろぉ~!!」



吸血姫「……勇者。お前が勇者なのか?」

女勇者「えぇ。私が今回の勇者を担当させて貰ってるわね。
貴方は……シスターちゃんの細い首筋に噛み付いてチューチューしてるなんて……

さてはレズ幼女ね!?」

男兵「……いや、普通に吸血姫だろ……」

吸血姫「……仲間を助けに全裸でご登場とは……。
勇者……。私は歴代の勇者を何人も見てきたが、お前みたいなのは久々だな。

そして、このような面白い性格のシスターは見たこともなかった……」

女勇者「シスターちゃんは好い娘に決まってるでしょ!?私の、勇者の選んだ仲間なんだから……」


男兵「そういうワケ。だから、さっさとシスターから離れろって!!」


バッシャアアアン!!(男兵が吸血姫に何かをかけた)

吸血姫「熱っ!………人間!!何をかけた!?ただのお湯ではないな……」


女勇者「男兵!?それって新妻ちゃんの料理鍋……!?」

男兵「んとな……多分、カレーだな。熊の肉で煮込んだ……」


吸血姫「なっ!?………このドロドロ……カレーだと!?
……おのれ、人間ごときがよくも私にカレー……。

………若干、美味しいが……」

女勇者「当たり前でしょ~!なんたって、新妻ちゃんの料理なんだから……」




女兵「勇者!?なんだってんだ!?いきなり浴場から走り出て……」

女勇者「お、女兵ちゃん!?あなたまで来たの!?しかも、裸で!?
きゃあ~!!男兵!見るなぁ~!女兵ちゃんの裸体まで見ちゃダメぇ~!!」


男兵「ん?………あ、女兵か。いい体だなぁ……。」

女兵「……あ、どうも。」

男兵「ふ~ん。確かに、見事に女化してるんだなぁ。」

女兵「……まぁな。結構、イケてるだろ?魅入ったか?」

男兵「どうかな?俺をおとしたかったら、もっと女らしい表情やら言葉使いやらにでもしてみたらどうだ?
……ま、“俺”には無理だろうがな。」


女兵「……はは。違いねぇ。」


女勇者「お、女兵ちゃん……私の目の前で、男兵に裸を見られても嬉しそうに話して……………ぐすん……」


吸血姫「……あの女………魔王の人形……か……?」


女勇者「こうなったら、私の心の隙間を埋める為に、吸血姫!!あなたを私の仲間に……」


吸血姫「………て、いうか、体がカレーまみれで気持ち悪いわ……。お風呂でも入って来ようかしら。
それじゃ~ね。元気な勇者さん。」


女勇者「あ!こらっ!?待ちなさいよ!!」


女兵「風呂場……だと?おいおい、魔法使い達が危ねぇーじゃないか!!」

女勇者「早く行かないと!!
男兵!あんたはシスターを見てて!!お風呂場は男子禁制だからね!!」


男兵「はいはい……。
女兵。勇者や魔法使い達の事、頼んだぞ……」

女兵「任せとけ。なんたって、俺なんだからな!」





シスター「……うぅ………」

男兵「シスター?目、覚ましたか?」

シスター「………私……生きてる………?」

男兵「辛うじて。勇者様の助けのおかげ……だな。」

シスター「……はい、分かりました。闇の奥に沈んで行ってる様な気がしてて、そんな中で、2つの光が私を照らしてくれました。」

男兵「……2つ……?」

シスター「……はい。勇者様が………2人……」


男兵「……ふ~ん。なるほどね……」

男兵(勇者……か。だが、吸血姫は女兵を見て、魔王の人形……って……)


シスター「……あ!吸血姫様は!?どこへ行かれたのでしょうか!?」

男兵「え?……風呂場に……」

シスター「お風呂……お風呂に行かれたのですね。そう言えば、私もまだ入っていませんでしたし。吸血姫様とご一緒してきましょうか。
よろしければ、男兵様も………。あ、でも、男兵様は男性……吸血姫様は女性ですし……」

男兵「い、いや……俺は行かないから……」

魔法使い「……勇者様達、戻って来ませんね……」

射手「どうなされたのでしょうか?」

新妻「……勇者、一瞬だけ真剣な目付きでしたね……。」

魔法使い「……やはり、向こうで何かあったのでは……」


吸血姫「あらあら。あの勇者のお仲間って、皆女の子ばかりでしたのね。」

女侍「!?……闇の気配……」

新妻「だ、誰!?……って、女の子……?」

射手「えと……この洋館のお嬢さんでしょうか?」

吸血姫「えぇ。私は古くよりこの洋館の主である吸血鬼ですわ。」

魔法使い「きゅ、吸血鬼!?こんな小さな娘が!?」

吸血姫「見た目で判断されるとは、浅はかなお方達で事。
………いや、一人だけさっきから殺気を感じさせてる人がいますわね……」


女侍「……吸血鬼。闇の一族……」

吸血姫「人間にしては、中々の威圧感。貴方、立派なのはその大きな胸だけではないようね……」


メイド「むむ。胸なら私も負けてはいないであります!!」


吸血姫「ふふ……。この館に住んでる者達は成長が止まってしまった者ばかり。
彼女達からしたら、貴方達の成熟中の新鮮な身体は羨ましくて恨めしいモノでしょうね……」

魔法使い「か、彼女達ですって……!?」

メイド「むむ、嫌な予感であります……」


吸血姫「皆ぁ~!客人をお持て成しなさい。」



……パシャン

メイド「む?何か居る……!?」

……パシャン……パシャン……

パシャパシャパシャパシャパシャ…!!

魔法使い「え…?お、お湯の中から……何かが……」

新妻「すごい数!?か、囲まれましたね………」

射手「人……でしょうか?それも……子供!?」


吸血姫「紹介するわね。彼女達は私の館の召使。私に血を吸われて、そのまま闇に落ちて死しても歩き彷徨う女の子達。
そう……ゾンビ達よ。」


「ああ゛……あ……」



魔法使い「ひぃ、ひぃぃぃ~!?!!?た、助けて!!!」

女侍「……非道……」

射手「この子達……まさか、学都で行方不明になった子供達じゃ!?」

吸血姫「ふふふ……。さらったつもりはなくてよ。この館までやって来たのは、彼女達の意志なんだから……」

新妻「は、早くどうにかしないと……」

射手「え!?で、でも……私は弓矢がないと……」

魔法使い「怖い……怖いよぉ~……助けて……お兄さん……お姉さん……」

ゾンビ娘A「あ゛あ……あ……」

ゾンビ娘B「あ……あ゛……」


メイド「ゾ、ゾンビ達が会話をしている……!?」

射手「……でも、“あ”しか言っていませんけど……」

新妻「……ゾンビ達の中では、会話が成立しているのかもしれませんね……」

射手「……でも、会話をしている姿……可愛らしいかも……」

メイド「まぁ、ゾンビとは言っても肌が青いだけで、見た目は普通の女の子達ですからね。」



ゾンビ娘A『お早うー。元気ぃ~?』

ゾンビ娘B『元気元気~。久々にご主人様に起こされたよねぇ~。』

ゾンビ娘C『つか、なんか人間が何人か居るんだけど、お客さんかな?』

ゾンビ娘D『うわぁ~……あの女の人、胸大っきぃ~ねぇ~。』

ゾンビ娘E『ホントだ。羨まけしからん……』



吸血姫「さぁ、私のかわいいゾンビ達。お客様方を持て成して差し上げなさい。」


ゾンビ娘J『……ご主人様のご命令だぁ~。』

ゾンビ娘L『お持て成しって、どうするの?』

ゾンビ娘H『今更何言ってるの?あんた、ひょっとして新人?』

ゾンビ娘L『はい。最近、ご主人様に血を吸われました。』

ゾンビA『そっか。なら教えてあげる。
私達、ゾンビのするお持て成しっていうのは………

相手の全身を舐めまくる!!!』

ゾンビ全員『おおお~!!!!!!!!』



射手「きゃ、きゃぁ~!!?侍さん!ゾンビ達が向かって来ますぅ~!!」

女侍(……変。彼女達からは、敵意が感じられない……)


新妻「……ひっ……こ、来ないで!!……きゃっ!?」

ゾンビ娘B「一人捕獲!!……せ~のっ!!」



ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ…………

新妻「キャハハハハハハ!!!!?や、やめてぇ~!!!?」


射手「ああ!?新妻さんが………なんか凄い事に……」

メイド「こ、これは!?私達も危ないですね!女として、大事な何かを失ってしまいます!?
早く逃げましょう!!」


射手「え!?でも、新妻さんは……」

メイド「そうです。彼女は犠牲となったのです!彼女の死を無駄にしない為にも、私達は生き延びるのです!!」



新妻「………あはは……あ……ガクッ」

ゾンビ娘A『標的撃沈。ターゲット変更!!』

射手「ひぃ!?こちらを睨んで来ましたよ!?に、逃げないと………きゃっ!?」ドスン!


メイド「射手さま。……我が身を呈して、私達を守ってくれると言うのですね?」

射手「え!?ち、違っ!……ただ、転んだだけ……」

メイド「あなたの死も無駄にはしませんから!!サヨナラであります!!」

射手「い、嫌ぁ~!置いてかないでぇ~!!」


ゾンビ娘C『標的発見!捕獲!!』

射手「はわわ……!や、やめてください!!近寄らないで!!」

バキッ!

射手「あ……つい、手があたって……ごめんなさい……って、首!!?ゾンビさんの首が取れた!?」

ゾンビ娘C『あれ?視界が変だなぁ~?』

ゾンビ娘A『く、首が取れてるよぉー!!大変だぁー!』


射手「え、え~と……元に戻せばいいのかな………?」

トスン(射手ちゃんはゾンビの首を胴体の上に戻した)

ゾンビ娘C『お~。戻った戻った。サンキュー。あんたいい人。』


射手「え、え~と……感謝されたのかな……?」






女勇者「勇者登場~!!皆、大丈夫!!?」

メイド「勇者様!?どこに行かれてたのですか!?」

女勇者「いやぁ~。喉が滅茶苦茶渇いたから、必死でキッチンまで水を飲みに行ってたら…………

………って、何!?あの肌色悪い女の子達……!?」

メイド「ゾ、ゾンビ達であります……」

女勇者「きゃあ~!!可愛い可愛い可ん愛ぃいいい~!!!!」

メイド「勇者様!危険です!!あいつらは群れで、私達の全身を舐めてきます!!」

女勇者「え!?何ですって!?舐めてくれるの!?
なんてサービスなの!!最高!!

ささ、ゾンビ娘ちゃん達~!!私の身体を舐めてぇ~!!」


ゾンビ娘L『ひょ、標的発見………ですが、なんか変……?』

ゾンビ娘O『ま、気にせず持て成しましょ~!!』





吸血姫「あらあら。あの勇者ったら……相変わらずね………」

女兵「ホント、全くだな……。なぁ、吸血姫様ぁ。」

吸血姫「……あら、貴方は……」

女兵「俺の事を、魔王の人形、って言ってくれたんだっけな?」

吸血姫「あら?気にしたの?私的には、的を射たネーミングだと思ってるのだけれど……」

男兵「なるほどぉ~。んで、どうゆう意味で的を射てるんだ?」

女兵「おいおい……、女勇者に男子は禁制って言われてただろ……?」

男兵「うるせぇ。自分だけ女の身体手にいれといて、俺を仲間ハズレか?」


吸血姫「……子女の入浴を覗くなんて、男の風上にも置けませんわね。」

男兵「うるせぇな。化け物が。」

女兵「どうでもいい。知ってる事、全部教えろって!!」


吸血姫「………ふふ。魔王がしでかした遊び事ですわ。女兵。あなたは魔王に気に入られているのですのよ?」

女兵「……気に入られてる……だと?」

吸血姫「ええ。貴方が、次の魔王の婚約者として……」



女兵「はぁ!?」

男兵「こ、婚約者だと!?」

吸血姫「ええ。まぁ、光栄に思われても宜しいんじゃないかしら?闇の魔王が直々に貴方を嫁に欲しいと言っているのだから……」


男兵「ちょ、ちょっと待てよ!!意味が分からないって!!女兵が魔王の嫁だと!?はぁ!?何でだよ!?」

吸血姫「ですから、次の魔王が貴方を気に入ったからですわよ!

お分かりにならないかしら?次の魔王は貴方の様な人間を嫁に欲していたの。でも、貴方は男。

だから、わざわざ貴方を女に変えた人間を作り出したのですわよ。」


女兵「……て事は、魔王は男兵だった俺と結婚したいが為に、俺を女にした……?」

男兵「いや、違うだろ。男兵はあくまで俺だ。お前は結婚の為だけに作られた人形だろ。
俺の意志、記憶を持っているだけの……」

吸血姫「まぁ、魔王は結構完璧主義だから。女兵の身体は、男兵が女として生まれてた場合の姿らしいわよ。
つまり、貴方達は兄妹。いえ、性別以外は同一人物ってワケね。」

ほほぅ…

女兵「………じゃあ、もう一つ。魔王は俺の事を真の勇者って言ってたのは……」


吸血姫「………勇者って、どうしてあんなに強いか知ってる?
魔王のお嫁さんが弱かったら、魔界を支配出来なくなるでしょ?」

男兵「………なるほど。勇者ってのは、つまりは次期魔王の婚約者候補って事か……」

吸血姫「正解。でも、今はどうかしらね?だって、真の勇者は女兵なんでしょ?
……つまりは、今のあの女勇者は………」


男兵「………まさか……」



吸血姫「……試してみましょうか?

ねぇ~?勇者さまぁ?」



女勇者「あは……はは………はひ?な、なんか用…?」


吸血姫「……混沌の闇の彼方より、黒き炎よ!来たれ!!」


メイド「!?勇者様!!闇魔法です!!」

女勇者「知ってる!大丈夫!!いつも通り、勇者の力………
…………あれ?」


吸血姫「………ふふ。どうやら、既に腑抜けな勇者と化した様ね……」

男兵「何!?」

女兵「ゆ、勇者!!」


女勇者「あれ?あれ?
………そんな………嘘………」


吸血姫「……残念ね。落ちた勇者様。ここで灰になりなさい!!」



女勇者「……しゃぁない!!これでもくらえ~!!」

ゾンビ娘A『あ……視界が……』

ブン!!

吸血姫「え!?ゾ、ゾンビの首!?
ちょ、危ないですわよ!?」

女勇者「そぉ~れ♪もう一球~♪」ブン!

ゾンビ娘D『あ~れ~!』

吸血姫「や、やめなさい!!可哀そうじゃない!!無闇に投げたりしたら……」


女勇者「え!?
………うぅ……私、自分が助かる為に、ゾンビ娘ちゃん達の事……考えずに…………ごめんなさい!!」


ゾンビ娘A『え?い、いや……そんなに気にする事じゃないですよ……』


吸血姫「………やっぱり、この勇者はかわってるわね。……もっとも、もう勇者でもなんでもないみたいだけどね………」


男兵「………女兵。お前は、力使えるのか?」

女兵「ん?えっと…………そりゃああ!!!」


ドゴォオオオン!!!

女勇者「え!?い、今のって……女兵!?あなたなの!?」


男兵(おっと、俺が浴場に居るのがバレたらまずいか。
一旦退散~♪)



吸血姫「あらあら。さすがは真の勇者ねぇ~?」

女兵「………俺が、真の勇者……」

女勇者「……女兵。あなたが……やっぱり……」

女兵「……勇者……その……」

女勇者「真の勇者、覚醒おめでとう!!」

女兵「え!?……あ、ああ……」


メイド「勇者様!ご無事ですか!?」

女勇者「メイドちゃ~ん!見た見た?さっきの女兵ちゃんの力!?」

メイド「はい。凄い力でしたね。勇者の力そのものです。
……で、勇者様。あなたの力は……?」

女勇者「んとね~、使えくなったみたい。」


新妻「ゆ、勇者様!?い、今、何て……」

女勇者「え~とね……なんかさ、力が湧き出ないんだ。ちっとも……」

射手「……勇者様が……勇者の力を使えないなんて……」

女侍「勇者失格。」

メイド「というか、もう勇者ですらないのでは……?」


女勇者「あはは。そうだね。私、もう勇者じゃないのかも。
でも、ご安心!勇者なら、そこに居るわ!!新しい勇者様が……」


女兵「……へ?あ、俺!?」

女勇者「そ。彼女が私の代わりに勇者となって、魔王退治にするのだぁ~!!」

女兵「あ……ああ。まあな……。」



新妻「ゆ、勇者様………」

女勇者「ん?何?」

新妻「私、勇者様の妻になるはずだったのですよね!?勇者様と一緒に闇の大地へ向かって……一緒に魔王と戦って………
………でも、勇者様が勇者様でなくなった今、その約束は……」


女勇者「……え~とね。図々しいかもだけど。
勇者じゃないあたしでよければ、その……むしろ妻になってあげるけど……」

新妻「ゆ、勇者様ぁ……//////////」



吸血姫「………あらら。勇者様、もっと落ち込むと思ってたのに……。
ホント、へんな勇者様だこと……」


女兵「魔王退治………!?あれ?そういえば、勇者は次期魔王の嫁候補なんだろ?それが、なんで魔王退治に……」

吸血姫「分かんない?貴方はその身を次期魔王に捧げて、人間達の平和を魔王から貰うんでしょ?
つまりは、生け贄ってな感じよ。
それを貴方達人間がカッコよく退治って呼んでるだけじゃない?」

女勇者「ええ!?勇者ってそんな役目だったの!?

帝国の人たちは何も教えてくれなかったし……」

メイド「……勇者一人を生け贄に捧げて……世界平和……ですか?」

女兵「………はぁ。勇者ってのは、魔王の胸に剣を突き立てるカッコいい役目だと思ってたのに……」


女勇者「なんだぁ~。じゃあ、あたし、勇者辞めて正解じゃん。魔王のお嫁さんなんて嫌だし。」

女兵「……俺も嫌だし……」

女勇者「……あ、ていうか、このままじゃ、女兵ちゃんが、魔王のお嫁さんにされちゃうんだ、

……それは可哀そうだね!
やっぱり、魔王は討伐しないとダメね!!」


メイド「さすがは勇者様。いえ、元勇者様。カッコよくて身の程知らずな発言です。私、貴方様を見直しました。」

女侍「……我、元より討伐が目的……」

新妻「勇者様がそう言うなら、私だって!!」


吸血姫「あら。皆さん、安易な決断が好きなのですわね。」

女勇者「あ、吸血姫ちゃん。あなたも私達の仲間になって、魔王討伐を……」

吸血姫「残念ですけど、私は人間世界の平和などにこれっぽっちも興味はありませんわ。
ですから、あなた方がご自由になさってください。」


女勇者「え~!……せっかく、私のハーレムに……」

メイド「勇者様。勇者様でなくなった今、もはやハーレムを作る事など不可能なねでは……?」

女勇者「……あ……」

男兵「………お~い、魔法使い。」

魔法使い「……うぅ……ここは……?」

男兵「悪い。浴場で倒れてたのを連れ出してきた。」

魔法使い「……あー……浴場で何か大変な目に合ったような……
………て、いうか!私、裸!?」



男兵「………なぁ、魔法使い。お前って、なんで昔から強力な魔法が使えるんだろな?」

魔法使い「え!?……えっと……生まれつき……」

男兵「生まれつき、魔翌力がどうのこうの………か……。

…………なぁ、魔法使い。お前、俺の事は好きか?」


魔法使い「え?はい、好きですよ………」

男兵「………んじゃあ、女兵と俺となら、どっちが好き……?」


魔法使い「……え~と………って、両方とも男兵さんじゃないですか!?」


男兵「いや……俺は男だが、あっちは女だろ。」

魔法使い「……はい……」

男兵「……なぁ。なんで闇の大地に行きたいんだっけ……?」

魔法使い「……それは……伝説の食材を………取りに行くって……口実で………………本当は……勇者様に付いていきたかった。

男兵さんに付いていきたかったんです!!」


男兵「………え~と、お前が魔王だから……か?」

魔法使い「…………違います。魔王は私の親です。

私は……次の魔王です……。」

うわ、ちょっとヤバい……

行き当たりばったりの挙げ句に乱立した伏線を繋ぎ合わせた結果、かなりスレタイとそれた展開になってしまった


ちょっと書き直したいかも……

と泣き言

今のところ一番困ったのは>>58での展開
女兵の存在はいいんだけど、この>>58に魔王とか出すんじゃなかった……

書き直せないからな……掲示板は………

どうしようかな……

1です
書き直します
>>86から
>>85まではこれでいいや

2日考えて、何とか方針が整いました

吸血姫「……あら、貴方は……」

女兵「俺の事を、魔王の人形、って言ってくれたんだっけな?」

吸血姫「あら?気にしたの?私的には、的を射たネーミングだと思ってるのだけれど……」

男兵「なるほどぉ~。んで、どうゆう意味で的を射てるんだ?」

女兵「おいおい……お前はいつの間に……。女勇者に男子は禁制って言われてただろ?」

男兵「なんだなんだ?自分だけ女の身体手にいれといて、俺を仲間ハズレか?」


吸血姫「……子女の入浴を覗くなんて、男の風上にも置けませんわね。」

男兵「うるせぇな。化け物が。」

吸血姫「あら?私の湯浴み姿を見るだけに留まらず、そんな言葉も吐くなんて………。
人間のくせに大した度胸ね。そんなに私に殺されたいの?」


女兵「んなのはどうでもいい。知ってる事を全部教えろって!!」


吸血姫「………ふふ。魔王がしでかした遊び事ですわ。
女兵。あなた、最近変な気分にはなりませんか?体から力が溢れて、まるで自分が勇者にでもなった様な……?」

女兵「え?……いや……そ
の……」

男兵「俺を吹き飛ばしたあの力の事だろ?」


吸血姫「まぁ、魔王というのは自分の宿敵である勇者をずっと野放しにしておく様な愚か者でもありませんわ。
……例えば、勇者の元に自分の作った人形を送り込んで、その人形が近くから勇者の力を無意識に吸い出していたとしたら……?」



女兵「……何……!?」

男兵「……えっと、つまり、今女兵が勇者の力を持ってるって事は……」



吸血姫「……試してみましょうか?

ねぇ~?勇者さまぁ?」



女勇者「あは……はは………はひ?な、なんか用…?」


吸血姫「……混沌の闇の彼方より、黒き炎よ!来たれ!!」


メイド「!?勇者様!!闇魔法です!!」

女勇者「分かってるって!大丈夫!!いつも通り、勇者の力で………
…………あれ?」

メイド「勇者様!?何をボサっとしているのですか!?」


吸血姫「………ふふ。どうやら、既に腑抜けな勇者と化した様ね……」

男兵「……マジかよ……!?」

女兵「ゆ、勇者!!」


女勇者「あれ?あれ?
………そんな………嘘………」

吸血姫「……残念ね。落ちた勇者様。ここで灰になりなさい!!」



女勇者「力が………安定しない………。


……しゃぁない!!これでもくらえ~!!」

ゾンビ娘A『あ……視界が……』

ブン!!

吸血姫「え!?ゾ、ゾンビの首!?
ちょ、なんですの!?危ないじゃないの!?」

女勇者「そぉ~れ♪もう一球~♪」ブン!

ゾンビ娘D『あ~れ~!』

吸血姫「や、やめなさい!!可哀そうじゃない!!無闇に投げたりしたら……」


女勇者「え!?
………うぅ……私、自分が助かる為に、ゾンビ娘ちゃん達の事……考えずに…………ごめんなさい!!」


ゾンビ娘A『え?い、いや……そんなに気にする事じゃないですよ……。特に痛みもないですし……』


吸血姫「………やっぱり、この勇者はかわってるわね。……もっとも、もうすぐ勇者でもなんでもなくなってしまうみたいだけどね………」




男兵「………女兵。お前は、力使えるのか?」

女兵「ん?
えっと…………そりゃああ!!!」


ドゴォオオオン!!!



女勇者「え!?い、今のって……女兵!?あなたなの!?」


男兵(おっと、俺が浴場に居るのがバレたらまずいか。
一旦退散~♪)



吸血姫「あらあら。さすがは真の勇者ねぇ~?」

女兵「………俺が、真の勇者……」

女勇者「……女兵。あなた……やっぱり……」

女兵「……勇者……その……」

女勇者「真の勇者、覚醒おめでとう!!」

女兵「え!?……あ、ああ……」


メイド「勇者様!ご無事ですか!?」

女勇者「メイドちゃ~ん!見た見た?さっきの女兵ちゃんの力!?」

メイド「はい。凄い力でしたね。勇者の力そのものです。
でも、勇者様はどうされたのですか……?」


女勇者「え?……いや、なんか力が………。疲れちゃったのかな……?」

女兵「………勇者……」



吸血姫「……ふふふ。」

女兵「なぁ、吸血姫。魔王が勇者の為に人形を作った理由は分かったが、なんでその人形が俺なんだ?しかも女化した上、ご丁寧に男兵時代の記憶も添えて……」


吸血姫「………理由?決まってるじゃない。
魔王は悪趣味だから。きっと横の彼女が貴方の事を気に入ってるって知ったからね。」

女兵「横の彼女……?」

女勇者「え?あ、あたし!?」

吸血姫「勇者。貴方は男兵の事を気に入ってたでしょ?」

女勇者「……まぁ…。可愛い女の子なら、仲間にはしようと思ってたけど……。

え!?ひょっとして……」

吸血姫「あらあら、良かったわねぇ~。魔王が勇者様の願いを叶えてくれたわよ?
魔王は完璧主義者よ。その女兵の姿は、男兵が女として生まれてた場合の姿そのものなんだから。」


女勇者「嘘っ!?魔王ってめっちゃいい奴じゃん!!」

吸血姫「そぉね。勇者が気に入って、自分の身近に置きたがるであろう人形を上手に作ってあげたんだから……」


女兵「…………ちっ」

女勇者「もぉ~♪今度、魔王に何かお土産でも買っといてあげようかなぁ~♪」

女兵「……勇者。喜んでいるところを悪いが、俺はな……」

女勇者「女兵。女兵は女兵だから。
魔王が作った人形だったとしても、私の仲間なんだから……」


女兵「…………」



吸血姫「………ふふふ。全く、この勇者様は早死にするわね。

さて……ゾンビ達。そろそろ、晩ご飯の準備をなさい。」



……………………


吸血姫「………あら?ゾンビ達………?」







シスター「♪♪♪~」

ゾンビ娘B『心地よい歌だなぁ~♪』

ゾンビ娘J『ホントぉ~……眠くなってきた……』

一応、書き直した点を説明

勇者が魔王の妻候補とか設定がありましたが、それを省きました
やっぱ、勇者と魔王は宿敵って事で

後、女兵の存在理由も若干変えたし、女勇者もまだ完璧には力を失ってはいません

それだけの為に2日間苦しみ考えました
未熟だ…

吸血姫「あら?シスターもお風呂に来て………って、何をしているの!!?」

シスター「あら?吸血姫様。」

吸血姫「……あ……あなた………今、何を歌っていたの………」

シスター「鎮魂歌です。この世を彷徨う死者達の魂を天にお導きしようかと……」


ゾンビ娘A『……眠い……私には……ゾンビには……睡眠なんか……必要ないのに………』


吸血姫「う、嘘っ!?こんなシスターの歌で……私のゾンビ達が……」

ゾンビ娘C『吸血姫様………?吸血姫様のお顔が………だんだん……遠く……』

ゾンビ娘G『眠い……おやすみ………』


吸血姫「いや……嫌ぁああ!!待って!!あなた達!!いかないで!!」


シスター「あ、あの……吸血姫様……?」

吸血姫「嫌!!私を置いてかないで!!………そんな………」

シスター「あ、あの~………」

吸血姫「………一人にしないで………

嫌よ……また一人になって……何十年何百年も………」

シスター「ならご安心を。私が吸血姫様のお傍に居れば、吸血姫様は一人で寂しい思いなど……」

吸血姫「うるさいぃ!!!」

シスター「き、吸血姫様………?」

吸血姫「お前ら人間が!!たった100年しか生きられない人間ごときが、私の孤独を満たせるとでも言うのか!!?不老不死でもない、ゾンビ以下のお前らが……!!」

シスター「…………」

吸血姫「………そうだ。悲しむ事などない。もう一度、ゾンビを作ればいいのよ。
貴方、確か私の傍に居てくれるんでしょ……?」

シスター「……はい……私が……一緒に……」

吸血姫「そぉ……ありがとう。なら、今すぐに私の下部にしてあげるわ。
もう一度……貴方の血を吸ってね!!」

ガブッ!!

シスター「ん!!………あ…あ……」


吸血姫「ん……じゅる……じゅるる……」


シスター(……また……体に闇が……。

でも、前のとは違う……。闇が……もっと深く……もっと悲しそう……)



………むぎゅっ

吸血姫(!?…シスターが……抱き締めてきた!?)


シスター(……悲しい……寂しい……。闇を通して……吸血姫様の悲しみが寂しさが伝わって………)

シスター「……吸血姫様……辛いですか……?
貴方にも……神の……お恵みを………」


吸血姫「……………」

吸血姫(……温かい……ゾンビや、私にはもうない温かさ……

人の温もり……こんなの、何百年ぶりだろう……?)

吸血姫「…ん……ん………ひっぐ……ぐすん……」

シスター「……吸血…姫……様……泣いて……?」

吸血姫「な、なひてなんかいないわよ!!」


吸血姫(このまま……この娘を殺してしえば……この温もりは………


………嫌………嫌だ……)


吸血姫「………なひてなんか…………ひっぐ……」


シスター「……はぁ……はぁ……。……吸血姫様…もう血はお吸いにならないのですか……?」

吸血姫「………あ、あなたの血なんか!!………美味しくないんだから………」



……ぎゅっ…


シスター「?……あのー、吸血姫様?」

吸血姫様「………ごめんなさい。このまま……もうちょっとだけ………」

シスター「……はい。私の身体でよければ、いつまでも抱き締めていてください。
吸血姫様に抱き締められるというこの素晴らしき出来事も、きっと神のお導きなのでしょう……
ああ……神よ……」


吸血姫「………この……神馬鹿…………」





女勇者「………ねぇ、そろそろ私もシスターちゃん達にまざってもいい頃かしら?」

女兵「……何が?」

女勇者「もちろん。3Pよ。」

女兵「……アホか……」

女勇者「……ああ、でも、いいわね………あの百合百合さは………

………女兵。私達も負けてられないわね……。」

女兵「何が?」


女勇者「……ちょっとこっちに来なさい。」グイッ

女兵「へ?え?いや……お、おい……!?」

女勇者「ああ……あなたが女になってくれたおかげで………こんな事も出来ちゃう……」

女兵「やめろって……顔を近づけんなって……!!」

女勇者「……恥ずかしがるなよ……もっと気を楽に……」


ゴキッ!!

女勇者「いったぁ~い!!!何すんのよぉ~!!?」

女兵「……何って、キスだろ?してやっただけじゃん。」

女勇者「そんなスピードで口をぶつけたら歯同士がぶつかって痛いに決まってんでしょ!?
キスってのは、もっとロマンチックに………」

~街はずれの洋館、リビング~


シスター「はい、あ~ん♪」

吸血姫「ご、ご飯ぐらい自分で食べれるから!!そんな子供扱い……」


シスター「あ、し、失礼しました……つい、養護施設の子供達を思い出して………」ショボーン


吸血姫「……仕方ないわね。……あ、あーん……」

シスター「!?吸血姫様ぁ!!」

吸血姫「い、一回だけですからね!!」

シスター「はい。ああ、神よ。今日という日、この私めと吸血姫様との出会い…」

吸血姫(シスターの遠くを見る目……綺麗……)



射手「……勇者様。いくらシスターさんと仲が良いとはいえ、や、闇の種族を仲間にですか?」

女勇者「いいじゃん。吸血姫ちゃんは可愛いし♪」

吸血姫「貴方!私の事は、吸血姫様とお呼びなさい!!」

女兵「はいはい……吸血姫ちゃま~。」

吸血姫「ぐっ!!あ、貴方……ご自分の立場を理解しているのですか……?」

女兵「ん?なんだぁ~?俺の立場が知りたいんなら、今この場で教えてやるぞ?お前をぶっ飛ばしてな!」


新妻「はいはーい!食事中はお静かに!!……分かりましたか?」

魔法使い「女兵さん。料理を作ってくれた人に対する敬意が足りませんよ?」

女兵「ちっ……どっかのお子ちゃまの相手をしたばっかりに……」

魔法使い「もぉ……またそうやって挑発するし……!」



吸血姫「………魔法使い。貴方………」

魔法使い「……はい?何でしょうか……?」

吸血姫「……いい匂いね………闇の匂い……」

魔法使い「……?」



新妻「……あれ?変ね……。このカレーだけ、私が試食をした時と味付けが違う?」

女勇者「カレー?カレーって確か男兵が……」

女兵「勇者。きっと男兵があの後作りなおしておいたんだよ。だから、上手く誤魔化してあげてくれ。」ヒソヒソ


女勇者「……女兵ちゃん。私、男の為に嘘付く気はないから!!

てなわけで!そのカレーは偽物よ!!男兵が溢した後に、誤魔化す為に新しく作ったものよ!!!」

女兵「お、おい!?お前……」


新妻「え!?これ……男兵さんが作ったもの……!?嘘……」

女勇者「あー、でも、シスターちゃんを助ける為だったワケだし……多目に見てあげ……」


新妻「このカレー、美味しいです!私の作ったのより……」

女勇者「えぇ!?」

魔法使い「……男兵さん、カレーだけは上手でしたから……」

女兵(……確かにカレーは得意だけど、あの短時間の中で限られた食材から新妻を越えるのを作るとか………我ながらに凄い……)


女侍「バク………旨い……」

女勇者「あむ………うわ、とろけるぅ~♪」


新妻「男兵さんが………こんな………」


女兵「いやぁ~……偶然だって。」

魔法使い「さすがは、私のお兄さん……」

女勇者「て、事は、女兵もこれを作れるの!?」

女兵「ま、まあな。その気になれば……」

女勇者「私の新妻になって、毎朝カレーを……!!」

女兵「やだ。……つか、毎日カレーとか地獄だろ……」




新妻「……しかし、男兵さんはまだ戻ってこないのですか?早くしないと、せっかくの料理が冷めてしまいます………」

女兵「いや……どうせお前、男兵が来たらまた恐がるくせに……」

新妻「!……で、でも、せっかくの料理は食べ貰いたいんです!!
……後、盗賊ちゃんも戻って来ませんし……」

女勇者「盗賊ちゃんは時間かかるかもね。」

射手「え?どうしてですか?」

女勇者「だって、あの娘は今頃地下の部屋の鍵を開けてるところでしょ?」

女兵「なんで知ってんだ?見てきたのか?」

女勇者「ううん。勇者の勘よ。だって、あの娘は盗賊じゃん。地下の宝物庫が気になってしょうがないハズよ。」

女兵「……へぇ。意外といい勘してるな。
しかし、一人でそんな危なっかしい事をさせておいて大丈夫なのか?」

女勇者「大丈夫よ。男兵が一緒に居るだろうし。アイツだって、あの娘が気になって向かったと思うの。」


女兵(……まぁ、確かに。お風呂場を追い出された俺なら、唯一一人で別行動をしている猫盗賊の事を気に掛けるかな……。)


吸血姫「宝物庫?地下には宝物なんかないですわよ?」

女勇者「え?じゃあ、何もないの?」

吸血姫「いえ……まぁ……」

女兵(……しかし、勇者の運命を操る力?はかなり強力だったはず。特に今までは、仲間にしたいと勇者が言った奴は仲間になってきたし……。

だが、今回はちょっとハズれたな。ゾンビ娘はシスターのおかげで全滅したし、吸血姫は仲間になるみたいだが、正直勇者の仲間と言うよりはシスターを気に入っただけみたいだし……。

勇者の言霊が弱まったのか……?)


女勇者「ん~?女兵ちゃんがそんな鋭い眼差しで私を見るなんて……いや~ん♪」

女兵(……もし、勇者の力を俺が吸い取っているとして………

つまりは、俺にも言霊やら運命を思い通りにする力があったりして……)


女兵「……100万ゴールド……拾ったりしないかな…?」ボソリ

女兵(とか口に出したら、本当に拾えたりして………。ま、上手くいかないだろうがな。拾えても100ゴールドぐらいだろ……)


魔法使い「女兵さん。足元に100ゴールド金貨が落ちてましたよ?女兵さんのですか?」

女兵「……て、マジで100ゴールドかよ……」

女兵(……こんなんじゃ、偶然なのか勇者の力なのか分からんし……)




男兵「おっす。ただいま~。」

猫盗賊「にゃにゃ~ん♪地下部屋にスッゴい宝物があったにゃ~!!」

女兵「へぇ~、勇者様の言った通りだったみたいだな?さっすが勇者様。」

女勇者「あったり前でしょ!それで?どんなのどんなの!?宝物はどんなのなの!?」

猫盗賊「これ!この純金でできた剣!!凄いでしょ!?」

男兵「……後、何故か100万ゴールドが落ちてた。まぁ、宝物庫に現金が入っててもおかしくはないが……」


女兵「……って、そっちの俺が拾うのかよ!?」

男兵「……はぁ?何大声出してんだよ……?」

女兵「……い、いや……」


吸血姫「ふぅ~ん。その剣、手に入れたんだ……」

猫盗賊「にゃにゃ!?だ、誰にゃ!?貴様……!?」

女勇者「吸血姫ちゃん。この剣ってなんなの?ただの置物?」

吸血姫「それは、何代も前の魔王が使ってた魔剣よ。そして、その剣には……」

~街はずれの洋館、正面門~

女兵「……男兵。もう行くのか?」

男兵「まぁね。勇者には女兵さんもいるし、男の俺なんかはもう必要ないだろ……?」

女兵「そうか……。だが、俺はもしかしたら魔王の手先かもしれねぇぞ?」

男兵「そうかぁ?勇者のハーレムの一員として作られた人形なんじゃねぇのか?
俺の記憶と性格を持った……」

女兵「……それだけならまだいいが……。自分の事がよく分からないなんて……情けねぇよな……」


男兵「……勇者は学都に向かう。俺がこのまま勇者と共に次の街に行けば、勇者の言う通りに俺は命を落とすかもしれないな。
勇者様の予言は怖いから……」

女兵「やっぱ命は大事だよな。生きてなんぼ。
全く、結局俺は残命なんちゃらでも死にたがりでもないんだよな。」

男兵「……だが、今のお前なら、勇者を越えられるかもな……」

女兵「……もし、俺が勇者を越えたら、それは俺が勇者って事になる。そうしたら、次はお前が俺を倒しに来るんだろ?勇者超越思想……だったっけな。」


男兵「……その時まで、俺が生きていたらの話だが……」


女兵「大丈夫さ。今までだって、しっかり生き抜いてこられたじゃねぇか……。
弱気になんなよ。俺らしくないぞ?」

男兵「……お前に慰められると、なんか自然だな。いつも俺を慰めてきたのは俺自身だったし……。孤独だけが友達だったな。」

女兵「そうだな。でも、それを寂しく感じた事なんかなかっただろ?今までは。」


男兵「俺の友達は俺自身。仲間は仲間であって、結局は他人。意志が合えば共闘し、意志がすれ違えば対立する。
他人は、一生俺にはなってくれない。

……でも、お前は違う。結局は俺同士なんだから、今までと同じ。自分で自分を見つめては励ましているだけなんだろうな。
だから、こんな風に不安な表情もつい晒けだしてしまったな。

……お前も何か不安があったら、俺に言ってくれてもいいんだぜ?女兵。いや、もう一人の俺……」





女兵「…………怖いな……。自分の存在が………。


自分が……なんの為に生きてるのか………生かされつるのか………


このまま、勇者の力を吸い取って、俺が勇者になったとして…………
それは楽しい事かもしれないが………

なんなんだろな………この不安は……………


ま……お前には分からないだろうがな……。魔王の人形である俺だけが感じる不安なんだよな……」


男兵「いや、俺も感じるぞ?その不安……」

女兵「え!?」

男兵「……お前が今どんな不安を抱いてるか……結構簡単に推測できそうだがな。」

女兵「……なんでだよ?俺はお前と違うぞ?女ってだけじゃなくて……色々……」


俺兵「俺って、昔から想像力豊かだから……。自分が女になって、自分が魔王の人形とか言われて、そして勇者の力を吸い取っている………。
そうなった場合の自分の気持ちを想像するなんて、そんなに難しくはないだろ?」

女兵「……嘘だろ。分かるもんかよ……この不安が………」


男兵「おいおい、“俺”すら信用できなくなっちまったのかよぉ?“俺”さん。気弱もそこまで行くと、卑屈だぞ?」


女兵「……じゃあ、俺はこれからどうすればいいんだ………?」

男兵「もちろん、魔王を倒すんだろ?勇者と一緒に……」

女兵「……もし、負けたら……?勇者が死んでしまったら?俺のせいで……」


男兵「……“俺”ってのは、こんなにも弱気な存在だったんだな……。
今まで俺の内側で葛藤してきた事を外側で見ると痛感するわ~。」

女兵「………普通の人なら、他人に向かってこういう弱音をぶつけ合うのにな。
俺達ときたら、もう一人の俺自身にぶつけ合って……」

男兵「……いやぁ、魔王がもう一人の俺を作ってくれたおかげで、大々的にこんな自己嫌悪を繰り広げられるな。あたかも、他人と喧嘩してる様に……」


女兵「……とても恵まれた事とは思えないな……。
自分で自分をの時点で、結局は孤独なまんまじゃねぇか……。」


男兵「……だが、楽しいもんだな。自分の不安を誰かにぶつける事が出来るってんのも……」

女兵「でも、こんなの、勇者や他の奴らとはやりたくないな……。
やるんなら、やっぱり自分の中だけで……」


男兵「……全くだな。」



女兵「……なぁ。」

男兵「ん?どうかした?」

女兵「……抱き締めてもいいか?男兵を……“俺”の体を……」

男兵「え!?………ちょっと嫌だな……」

女兵「なんでだよ……いいじゃん。その体は元は俺のだし……」

男兵「いやいや、最初から俺のだし。
それに、お前が俺に抱き付いたら、俺がお前に抱き付く事になるだろ?女化した俺に抱き付くとか……」

女化「……何か問題でもあるのか?“俺”が“俺”に抱き付く事に……」


男兵「……いや、まぁ……特には………」

女兵「それじゃあ、失礼~。」


……ぎゅっ


男兵「…………」

女兵「…………」

男兵「……何か感想は?」

女兵「……温かい……かな。」

男兵「あ、そう……」

女兵「……そっちは?」

男兵「いい匂いがする。石鹸の……」

女兵「……ありがと……。
胸を押し当ててるのは分かるか?」

男兵「おっと……逆セクか?」

女兵「ちょっとしたサービスだ。……それに、なんか気持ち良い。胸の中のモヤモヤしたやつが、消えていくみたいだ……」



男兵「……あれ?お前、近くで見たら、目の下が赤いぞ?泣いてたのか?」

女兵「!?……バレたか……」

男兵「……なにを今さら。俺だって、一人で自分を責めては泣いた事なんていくらでもあるし。そうだろ?」


女兵「……そっか。お前は俺だし……恥ずかしくないか……」


男兵「……んで、いつになったら放してくれんの?」

女兵「……他人とハグなんて、子供の時以来だろ?しかも、女が相手とか。
……もっと、興奮したりしないのか……?」

男兵「いや……自分で自分を抱いてるかと思うと……気分が悪くなって……」


女兵「……やっぱ、“俺”なんだな……。

……だけど、放さない。」


男兵「はぁ!?なんでだよ?」

女兵「……お前も、泣け。泣き顔を見せろ!」

男兵「……泣くったって……何に対して……」


女兵「誤魔化すなって……。今のお前の不安は俺には分からんが、昔からの不安なら俺には分かるし。」

男兵「…………」


女兵「さんざん周りの兵士達が死ぬところを見てきて、それでも自分は生き残って、しまいには戦闘狂みたいに戦いを求める様になって……。
……でも、死にたくはない。死ねば、今まで自分が見殺してきた人達、助けられなかった人達の死が無駄になるから。他人の死で積み上げてきた自身の命は、もはや俺だけの命じゃない………」


男兵「……なぁ、“俺”。お前、んな事言ってる自分で泣いてるぞ………」

女兵「……。お前だって、目が潤ってきたぞ……?」


男兵「……やっぱな。さすがは俺。嫌な泣き所を突いてきやがる……」


女兵「……当り前だろ。俺の泣き所でもあるんだから……」


男兵「…………勇者の言う通り、俺はもうすぐで死ぬのかもな。
やっと、あいつらのもとに行けるのか………」

女兵「……お前、俺を置いて先にいく気かよ……」

男兵「お前は魔王なり勇者なりに気に入られてるんだから。俺なんかよりもずっと長生きするさ……」


女兵「……ふざけんな………俺を置いて……自分だけ死ぬとか……絶対に許さねぇぞ!!」


男兵「!!?………やめろ……そんな涙目で俺を見んなって……」


女兵「……お前が死んだら……俺は……こんな風に出来なくなる……

自分に泣き言を言って、自分を貶して、自分に抱きついて、安心して………」


男兵「………それに対して、俺はあの世に行けば、そんな事を悩む必要もなくなるワケだな。
はは。こりゃあ、死ぬのも悪くないや……」



女兵「……じゃあ、なんで泣いてるんだ?さっきから………。

死ぬの、怖いんだろ……?そうなんだろ……?」


男兵「…………泣いてなんか………くそ……なんでこんな………」



女兵「……はは。こりゃあ、とんだ黒歴史をお互いに作り出してしまったな……」


男兵「……全くだ。
俺なんか、女化した“俺”を抱いて、そいつを慰めて、自分も泣いてるんだ。恥ずかしすぎだ……。

もぉ、魔法使いに“お兄さん”なんて敬われないかもな……」



女兵「……なぁ。」

男兵「……今度はなんだよ……?」

女兵「……キス……するか?」

男兵「……………あ、俺も今思い付いたわ。それ……」


女兵「……やっぱり、“俺”にはこんな状況、似合わないんだよな……」

男兵「……お互い様だ……な。」









ゴキッ!!!!




男兵「いってぇ~!!?」
女兵「いってぇ~!!?」


男兵「お前!?このぉ……」
女兵「お前!?このぉ……」



女兵「…………」
男兵「…………」

男兵「はは。こうなるわな。全く……“俺”達ときたら……」

女兵「そうかぁ?お前、一瞬何かロマンチックなのを期待してなかったか?」

男兵「さ、どうだか。

さて、俺はもう行くわ。
これ以上いたら、このままお前と2つの体を使っての大々的な自慰をやってしまいそうだ……」


女兵「つまりは、男としての性欲をおさえきれなくなって、俺を襲ってしまいそうだと?」

男兵「俺じゃなくてお前がな。」

女兵「おいおい、俺がいつそんなどこぞの勇者みたいになったって言うんだ?」


男兵「はは。互いに互いを既に信じられなくなってきてるのかもな。」



女兵「なぁ。“俺”。変わらずに、俺のままで居てくれよな……」


男兵「……お互いにな。」













猫盗賊「………はぁ……はぁ………

熱い2人だったにゃ……


見てたこっちもドキドキしたにゃ………」



女勇者「………そうね……」

猫盗賊「にゃ、にゃぁああ!!?ゆ、勇者!!?いつの間に!?」

猫盗賊(まさか、また勇者に知らない内に背中をとられた……。
男兵達を見るのに集中し過ぎていたからかにゃ………!?)


女勇者「……………」

猫盗賊(あれ?勇者が真剣な目付き……)

女勇者「………あの娘の胸中の相手があの娘自身なんて……

………あの娘の心に私が付け込む隙なんか……もう……」

猫盗賊「………勇者……?」

~勇者の旅立ち数ヶ月前、帝都、軍事裁判所、待合室~


第一軍将「男兵。お前の処分はなんとか無処分で片付く様だな。」

男兵「……え?あ、そうっすか……」

第一軍福将「あなたの判断は結果的に誤りではありませんでした。あなたの部隊がオーク達の足止めをしたおかげで、多くの村人が避難できました。

確かに戦力差は歴然であって、無謀な乱戦だとは思いますが……」


男兵「……ちょっと相手の数を減らして、後は村と反対方向に逃げる予定だったんだ。隊長達とそう決めてた。
だが、いざとなったら皆夢中になって、しかも村の男共まで剣を持って参戦してきて………同僚Aは重症。それ以外の隊員やら村人は皆死んだな。」


第一軍将「皮肉だな。逃げたわけでも隠れていたワケでもない。戦場でオークと戦い続けて無傷で帰った英雄の様な君を軍事裁判にかけねばならないとはな。」


男兵「……生き残った奴の義務っすかね……」




第一軍副将「軍将。その同僚Aさんとやらについてですが……先程、お亡くなりになられたと医療施設から……」


男兵「……あちゃ~……やっぱ、あの毒グモの猛毒には治癒術も対抗できなかったか………」




~帝都、兵士集会所~


同僚K「男兵!お前、また生き残ったのか!?やるな~!」

男兵「……ドラコンハンターなお前に比べたら……俺なんて小さいわな……」

同僚C「しっかし、最近の魔王軍は小さな村から大きな都市まで色々襲ってるな………。」

同僚E「彼らの行動には焦りが見えますね。
もしかしたら、勇者の目覚めが近いのでは……?」


男兵「……勇者……か………」








~現在、学都はずれの街道

女勇者「みんなぁ!よく眠れたぁ~?」

女侍「おぉー。」

射手「はい~。ばっちりぃ~。」

猫盗賊「にゃにゃ……勇者と一緒じゃなかったから、逆に寝れなかった……」

メイド「勇者様は昨晩は私と新妻様と……ね?」

新妻「/////////

ですが、昨晩の勇者様、どことなく……目が虚ろになりがちでしたけど……」

女勇者「女兵ちゃ~ん。昨晩は私のベッドまで怒鳴りに来てぇ~♪
混ざりたかったんなら、そう言えば良かったのにぃ~♪」

女兵「お前らの喘ぎ声がうるさくってね………頭にきたんだ!!」

女勇者「またまたぁ~、そう恥ずかしがらなくても………」

むぎゅっ

女兵「……暑苦しいんだが。むやみに抱き付くなって……」


女勇者「……熱いの……?むしろ、温かいんじゃない?」

女兵「はぁ?」

女勇者「ほらほらぁ~。心を素直にしなさいなぁ~♪」

女兵「そっかぁ~。今の気持ちを素直に表したら、こうかな!!」ゴン!!

女勇者「あいたぁ~い!!女兵がぶったぁ~!!」

新妻「はいはい……痛くないですよぉ~……」

女勇者「……ぐすん……ひっぐ……」

女兵「……お前ら、もはや親子だろ……」

女兵(……嫌な予感がする……。昨日の、まさか勇者に見られてたのか?)



シスター「昨晩の吸血姫様の寝顔も素敵でした。
まるで、美の女神がこの世に立ち下りたみたいでしたわ~♪」

吸血姫「ほ、褒めても何もあげないわよ!」

吸血姫(昨日は気持ち良くねれたな……。シスターとの布団、温かかった……)


メイド「ほぉほぉ~。レズな勇者様に対して、こちらは百合百合ですね……」

女侍「……ムシャムシャ……(おにぎりを頬張る)」



猫盗賊「んでさ。勇者。この純金の剣だけど……」

女勇者「ん~?そんな危なかっしい物、さっさと売ってしまいましょう!」

吸血姫「……魔王の剣を売る勇者。……ふふふ。面白いわね~…」


猫盗賊「なら、学都より港の方に向かおうよ。鑑定師達がたくさんいるし……」

女兵「……港街か……」

女勇者「……どうかしたの?女兵ちゃん……」

女兵「……いや…」

女兵(港街か……。同僚Aと最後に一緒に戦った村って、あの周辺だったっけ……。)


女勇者(………女兵ちゃん………黄昏ちゃって……。
ひょっとして、男兵の事でも思い出してるの……?)

~商業と交易の都市、中央広場~

射手「うわぁ……帝都とは違う意味で大きな街です……」

魔法使い「私も……帝都ばかりが巨大な都市と思っていました……。」

女兵「他国との交易を目的で作られた臨海都市。歴史は浅いが、今帝都で一番活気のある街だろうな。」


メイド「勇者様。お力、かなり良い調子でしたね……」

女勇者「うんうん♪さっきも狼の群れを軽く粉砕したしぃ~♪昨日の不調具合が嘘みたい~♪」

女兵(……俺が勇者にあまり近づかない様にしていた効果か?やっぱり、俺が勇者に近づきさえしなければ、勇者は力を失わずに……)


女勇者(……女兵ちゃんが遠くに感じる。あたしに近づいたら、あたしから力を奪ってしまうと思っているのかな?
………そんな事、あたしは気にしない……。だから………)


新妻「勇者様?」

女勇者「……何?新妻ちゃん。」

新妻「……お腹、空きませんか?」

魔法使い「あ、私、あのレストランに行ってみたいです!!」

女侍「……いい香り……期待大!」

女勇者「そうねぇ~。皆で行こうか?」


射手「勇者様。私、街の軍事施設に行きたいのです。
ヴァルキュリア隊長がこちらにいらしているそうなので、私が勇者様の仲間になっているご報告を……」

女勇者「そぉ?なら、行ってらっしゃ~い。転ばないようにねぇ~。」


女兵「……勇者。俺もちょっと行ってくる……」


女勇者「……え……?」


女兵「この街にも昔居た事があるんだ。
こんな姿だが、ちょっと昔の同僚に挨拶してくる……」


女勇者「……………

………女兵ちゃん。」

女兵「……?なんだ?」

ガシッ!!

女兵「え?お、おい……」

女勇者「……んんっ…!!」

女兵「んぅ!?」


新妻「ゆ、勇者様!?こんな街中でキス……」

メイド「むむ……しかも、深いやつでありますね……」

女勇者「んん~ん~」

女兵「………」

女勇者「……ん……ん………………あり?女兵ちゃん?」

女兵「…………んで、俺はこの後どうしたらいいのさ……?」

女勇者「………ご感想は?」

女兵「気分悪い。」

女勇者「あぅ~……本気で傷つく……」

女兵「………じゃあ、行ってくるから。」

女勇者「……あぅ~、女兵ちゃ~ん!私の事、そのキスの味を忘れないでね~……」


射手「……あはは。まるで、永遠のお別れみたいですね……」

女兵「ああ……全く…」

射手「あの~、それで、勇者様のキスの感想は~?」


女兵「舌がウザかった。」

射手「お、女兵さん……そんなばっさりと……」


女兵(……やっぱり勇者がおかしい。変に近寄ってきてはセクハラまがいなスキンシップ。
のくせに、さっきの狼戦の時みたいに戦闘の時だけは離れようとしてな。

勇者は俺の事を知ってる?俺の近くにいたら、力が吸い取られると知っているのか?
やっぱり、昨晩の話を聞かれたか……。

……俺は気にしないが、男兵はあんな恥ずかしい現場を勇者に見られたなんて知ったら、どう思うだろうか……?



あ、でも、俺がどうとも思わないって事は、向こうも対して気にしないのかもな……)






魔法使い「勇者様!?いきなり女兵さんに何をしてるんですか!?」

女勇者「……マーキング……かな。」

メイド「勇者様。どうやらお焦りになられているようですね?
何かございましたか?」

女勇者「……いや……。

ねぇ、魔法使いちゃん。」

魔法使い「はい?」

女勇者「あなたのお姉さんもお兄さんも、その内2人一緒に遠い世界に行ってしまうかもね……。
もちろん、生きながらにして……」

魔法使い「は、はい?」


新妻(……さすがに勇者様のご様子が………
これは一体……)

~商業と交易の都市、修道院付属養護施設~


「うわぁ~、綺麗なお姉さんだぁ~」

「肌白~い」

「目が赤~い」


吸血姫「な、なんですの!?この子達は……」

シスター「ほらほらぁ~♪お姉さん達がが遊んであげますよぉ~♪
ねぇ?吸血姫様ぁ。」

吸血姫「わ、わたくしがぁ!?ど、どうして……」

シスター「え?あ、あの……ダメでしたか……?」

吸血姫「……いえ、べ、別に………。


………仕方ない。人間(ゴミクズ)共の餓鬼達ですけれど、特別に私が遊んで差し上げますわ。」

「わ~いわ~い。」

「ごみくず……って、なぁに?」






~商業と交易の都市、商店通り~


猫盗賊「え~と、どこの鑑定師に頼もうかな?
子供の盗賊相手でも馬鹿にせずに、勇者様ご一行だからといってビビらない人がいいかな………」



??「もしもし、お嬢さん。ちょっと、いいかしら?」

猫盗賊「はい?なんでしょうか?」

??「このチケットに書いてある港を探してるのだけど……」

猫盗賊「これなら、あっちですよ。」

??「そぉ、ありがとう。」

猫盗賊「いえいえ、お構い無く……」


………………………………

猫盗賊「あれ?あれ!?
………財布がない!?」

??「……あら?私の財布が……」

猫盗賊「……お前、私から財布を盗ったな!?」

??「……あなたも、私から財布をすった?
……そして、お互いにそれに気付かなかった……?」

猫盗賊「……お前、何者だにゃ!?」


??「……ふふふ。あらあら、ダメじゃない。こんな事に興奮して、猫耳を立ててたら……。」




猫盗賊「………え?あ、姉上!?姉上なのかぁ!?」

~商業と交易の都市、帝国軍施設~



射手「ヴァルキュリア隊長!失礼します!!」

戦乙女隊長「あら。あなたは確かクラス・ヴァルキュリア・アーチャーの娘ね?」

射手「はい!私、今は勇者様のお傍に居ます!!」

戦乙女隊長「そぉ。あなたぐらいの実力者なら、確かに勇者の護衛もこなせるわね。
ただ、普段の生活面は大丈夫?早起きとかは?」


射手「はい!ばっちりです!!
……まぁ、最近やっと寝坊癖がなおったのですけどね……」


??「……そうか。こやつが、勇者の護衛か……?」

射手「は、はい!
……あのぅ~、どちら様でしょうか?」

戦乙女隊長「あら?会うのは初めてかしら?
こちら、ヴァルキュリア部隊の前隊長で、前回の魔王討伐で勇者様と活躍した……」


??「初めまして。私はクロト。ヴァルキュリア部隊のOGにあたる者だ……」


射手「は、はい………。あ、あなた……その黒い肌……その光る目……ダークエルフですね!?」

クロト「おや。随分嬉しそうな反応だな。
帝国軍人には、ダークエルフを災いの象徴と考える思想があるらしいな。
確か……黒精不信思想……だったかな?はは。愉快な名前だな。」

戦乙女隊長「クロト隊長。まだその様な名前を覚えて……ふふっ」

クロト「そうか。勇者の護衛の兵士がこの名前を作ったと聞いたが、こやつの事か?」

戦乙女隊長「いえ。帝国軍人の護衛はもう一人居ます。私が先程話していた面白い兵士と言うのも、もう一人の方です。」


射手「もう一人……男兵さんの事……?」

~商業と交易の都市、レストラン~

??「にしても、盗賊の腕、上げたみたいね。よかったわぁ~。」

猫盗賊「……姉上。普通は怒る事なんじゃ……。一族から盗賊が出たら……」

??「まぁまぁ。でも、今は勇者様と一緒に旅をしているのでしょ?」

猫盗賊「うん!そうなの。
………でも、勇者様ってね……」


??(2)「アカネ!ちょっと問題発生よ!」

アカネ「あら?アオミン。どうかしたの?」

猫盗賊「姉上?知り合いの人?」

アカネ「私と一緒に旅をしていたアオードルッツェミンファーさんよ。」

猫盗賊「な、長い名前……どこの国の人……?」

アカネ「だから、略してアオミン!」

アオミン「うわぁ~。この娘、可愛いぃ~♪」ギュッ

猫盗賊「な!?こ、こらぁ~!!抱くなぁ~!」


アカネ「それで?どうしたの?」

アオミン「可愛いぃ~♪
……え?大変?そうでした!ミドリがまた大食い対決を始めたの!そしたらホワイトもそれを応援してて……」


アカネ「あらら~。また、持ち金が減っちゃうわねぇ~。」

アオミン「しかも相手もかなりの大食いで………」








女侍「ガツガツ……!!ガツガツガツガツガツガツ!!!!」

魔法使い「いけぇ~!侍さぁ~ん!!」

メイド「あんなガキに負けるなぁ~!!」


ミドリ「パクパク……パクパクパクパクパクパクパクパク」


ホワイト「やったれぇ~!そんなボイン!潰したれぇ~!!」


女勇者「新妻ちゃん!新妻ちゃん!!敵側の今食べてる小さなチャイナ服の娘……可愛い!!」

新妻「……あんな小さいのに。盗賊ちゃんぐらいの年齢ですよね?どうしてあんなに食べれるんですか!?」

女勇者「……ああ。でも、あっちで応援してる娘もいいわ~!!ボーイッシュな感じぃ~?いい!!いいわ!!

さっきどこかに行ったで落ち着いた様子の人も綺麗だったし……、

これ、もし私達が勝ったら、あの娘達を皆仲間に……!?」



ホワイト「……にしても、敵さんの侍、あんな細い身体のどこに食った物を取り入れてんねん……?

ひょっとして、あの大きな胸の中にかぁ!?

くぅ~……今回の勇者の仲間は恐ろしいわぁ……」

~商業と交易の都市、修道院近くの墓地~


同僚C「お前が女にねぇ~……」

女兵「笑えたかぁ?大したギャグだろ?」

同僚C「いや……。お前、やっぱりなんか違うのかもな。俺ら一般人と…」

女兵「……俺は確かに一般人じゃないな。
ただ、お前らと過ごした男兵な俺は、お前らと同じただの人間だったよ……」


同僚C「……そっかぁ。」

同僚O「なぁ、男兵。」

女兵「……違和感があるなぁ……女兵で頼むわ。」

同僚C「じゃあ、女兵。」

女兵「……わりぃ。やっぱな……その……」

同僚O「じゃあいっそ、男女転換思想者で?」

女兵「それは勘弁!大体、お前のセンスはダメだな。ありえないわ!」

同僚O「お前にだけは言われたくなかったな……」



同僚C「あ、ここだここ。あん時の戦いで死んだ奴らの墓。同僚A君とかのな。」

同僚O「男兵が墓参りとか……ありえなかったな。お前、女になって感傷的にでもなったか?」


女兵「……うるさい。気まぐれだよ……」



同僚C「……おっと。この後、警備の仕事があったな?」

同僚O「そうだな。じゃあな。男女兵。じっくり感傷に浸れよぉ~♪」






女兵「………」




女兵「……なぁ……“俺”。
俺はどうすればいいんだ?


勇者は明らかに、俺の扱いに戸惑ってる……

俺は、このまま勇者の仲間で居ていいのか……?


なぁ………

“俺”………。



………くそ……」

今までこんなに独り言をベラベラ言った事なんてなかったよな……

何があっても、俺の中で全部片を付けてた……


でも……前の……あの夜……


俺は“俺”と出会った

そして、“俺”同士で会話したんだ……




気持ち良かった……

何もかも全ての事を共感しあえて……

他人じゃない、明らかに自分自身……もう一人の俺だからこそ……

変な気遣いもいらない

言葉を慎重に選ぶ必要もなかった……




お前が居なくなって、俺は一人だな……


お前と居たとしても、そこにいるのは結局は“俺”一人なんだから、孤独には違いない……



でも……温かかった……


“俺”と居た時は……温かいんだよな……


その差は大きい



温かい孤独と寂しい孤独……

今までならどんなに寂しくても耐えてきたが、温かさを知ってしまった今……

俺にはこの寂しさは寒過ぎる……


………なぁ、“俺”

俺には……やっぱり……“俺”が必要みたいだな……




女兵「………お前らはどう思う?俺と一緒に戦った無名の英雄さん方……」



…………

こいつらはやっぱり何も応えてくれないか……

死人に口なし……


寂しい奴らだ……

~商業と交易の都市、修道院付属養護施設~

「ねぇねぇ?お姉さんは勇者様って知ってる?」

吸血姫「もちろん。今は私の手中に居るのだから……」

「勇者様ってカッコいいのぉ~?」

吸血姫「ふふふ。まぁ、あの勇者は……」


??「勇者はカッコよかったですよぉ?優しくて、でも少し頼りがいがなくて慌てん坊さんでしたけど……」


吸血姫「………何?」


??「それでも、彼の勇姿は勇者そのものでした。

そして、そんな彼の元には多くの勇姿が集まりました。


アカネ
猫を伺わせる可愛らしい容姿
それとは裏腹に俊敏性と剣の腕に長けた戦士


アオードミンファー
水の様に普段は静か
しかし、一度熱くなると激流の様に全てを凪ぎ払う
水魔法使い


クロト
闇の中から闇を切り裂く
闇より生まれし闇を狩る
ブラック・ヴァルキュリア


ホワイト
真っ白な笑顔で皆に癒しを運び
悪きものからはその生命力を奪う生命術者


ミドリ
小さき巨人、その小粒な拳が大地を引き裂く
魔王に作られた人造人間兵器にして純情な心で無邪気に微笑む少女



彼女達と勇者はお互いを信じ、共に魔王に立ち向かい、そして魔王を撃破しました。」



吸血姫「……なるほど。いい感じなおとぎ話ですわね?
それで、あなたは?」



??「私は、そんな勇者の近くで勇者を守り、勇者を愛したただのエルフです

……そぉ……ただの……」

女兵(…………

なんだったんだ……さっきの気持ちは………

女になったせいか、かなり感傷的になってた……?

意味分からない事を考えて、ぼーっと炎天下の中を立ち尽くして……


そのせいで、頭がくらくらする………熱中症か……?

………くそ、何が寒いだよ……滅茶苦茶暑いじゃねぇか!!)



女兵「……暑っ………頭痛い………」


射手「女兵さん?用事は済みましたか?」

女兵「あ?ああ……なんとか……」

射手「女兵さん!私、前回の勇者様と旅をしていた人に会ったのですけど…!!」

女兵「……大きな声はやめろ……頭に響く……」



女勇者「よっお~!!女兵ちゃ~ん!!寂しかった!?私は寂しかったよぉ~!!!」

女兵「……う、うるさい………」

女勇者「女兵ちゃん?顔悪が赤いよ??照れてるの?それとも、熱?」

メイド「熱中症ではないでしょうか?女兵様は空調性の悪い軍服を着ていますし……」

魔法使い「女兵さん。この季節にその服は危ないですよ?」

女兵「え…?でも……この服が一番慣れてるし……」



吸血姫「魔王が貴方の肉体を作った時に、服も男の貴方の着ていた物に似せた物を作ったのでしょうね。」

女兵「あ、吸血姫ちゃん達も来た。」

シスター「修道院に寄付をしてきしたわ。ああ、これでまた多くの子羊達に神のお恵みが…」

吸血姫「つまり、女兵さん。貴方が着ている服は魔王の作った物ですわよ?
そうと分かっても、その暑苦しい服を着続けますの?」


女兵「……確かに……嫌かもな……」


女勇者「うはぁ~ん♪なら、今すぐ女兵ちゃんの服を皆で買いに行きましょう!!」

女兵「……いや……別に……」

メイド「大丈夫です。私もお手伝いしますから……」

魔法使い「女兵さん。私も服は買うべきだと思うなぁ。女の子らしく……」


射手「し、下着も、ちゃんとした可愛いものを揃えるべきです!!!」


女兵「……もう……どうにでもなれ………」

~商業と交易の都市、市場~


アカネ「う~ん、まだ頑張れるわよね?」

鑑定師「こ、この価格でもダメですか……?」

アカネ「私の可愛い妹が持ってきた品よ。魔王が使ってた純金の剣。
さ、もう一度鑑定をやり直して!!!」



猫盗賊「あ、姉上……何もそこまで……」

アオミン「君ぃ~♪本当に可愛いわねぇ~♪」スリスリ…

猫盗賊「う、うにゃ~……ほ、頬擦りはやめてぇ~……」




ホワイト「お前、ハーフエルフやったんか!?へぇ~、凄いなぁ~!」

新妻「お、大きな声で言わないでください!!
……そうしないと、石とか投げつけられて……」

ホワイト「ん?そんな迫害、この街にはあらへんよ。
そんなん未だに続けてんのは帝都みたいな古くさい街だけやって。せやから安心しぃや。」


新妻「え!?そうなんですか!?………良かった……」


ホワイト「……ま、皆の心中の考えまでは分からんけどな……」


新妻「…………」

ホワイト「安心しな。誰かが何か言うてきたら、ウチらが守ったるけん!!」


新妻「……ありがとうございます……」




ミドリ「……あなた、先程の食べっぷり、見事でした……」

女侍「……そなたも凄かった。賞賛に値する。」

ミドリ「……ありがとうございます。

あ、よければ、アイスでも食べませんか?あっちに美味しい店があるのですが……?」


女侍「……興味深い。食してみようぞ。」

~商業と交易の都市、カジュアル店~

女店員A「これなどはいかがでしょうか?」

女兵「……いや……あの……」

女店員B「そうね、もっと華やかな方が……」


魔法使い「女兵さんはカッコいい感じのが似合うと思います!」

女店員A「確かに、今までこんな軍服を着てたからカッコいいイメージが定着しているのかもしれないわね。

でもね。ファッションは普段とは違う自分に目覚める場所なの。
私には分かるわ……あの娘の内なる可愛さが、外の世界に飛び出そうとしているのが……!!」


女勇者「ねぇねぇ!これなんてどうかな!?」

女店員B「あら!お客様。いいセンスでございますね!」

女勇者「へへぇん!私は勇者だから!女兵の事なんて、何もかもお見通しよ!!」


女兵「……わーったから……もうそれで……」

女勇者「なら、早速試着しましょう!」

女兵「……し、試着?試着って………」

女勇者「じゃあ、服を脱がすわよ!」

女兵「……え……おい!馬鹿!やめろ……こんなところで……」

女店員A「ご心配なさらずに。当店は女性客のみの出入りとなっておりますので。」

女兵「……いやいや……この勇者は危険………」

女勇者「……はぁ…はぁ………女兵ちゃんの……綺麗な肌………」

女兵「……くそっ……体が……重い……熱中症のせいで……」

女勇者「……ちょっと舐めても………?」

女兵「!?馬っ鹿ぁ……やめ……」


魔法使い「勇者様………私の目の前で、女兵さんに乱暴な事はやめて頂きませんか……?」ギロッ!!

女勇者「……ま、魔法使いちゃん?ちょっと……怖いかも……

や、やだなぁ~!冗談だよぉ~……」


女兵「………はぁ……魔法使い……助かった……」


魔法使い「はい。勇者様の代わりに、私が脱がしてあげますからぁ~♪」

女兵「……い、嫌……それはいいって……って、おい!?なんでお前も脱いで……」

魔法使い「え?だって、女兵さんだけ裸になるから恥ずかしいんですよね?
だから、私も裸になります!」

女勇者「……なるほど……。そっかぁ。一人だけ裸もかわいそうだしね………。

じゃあ、あたしも脱ぐか!んしょっと……」


女店員A「あ、あの……ご試着以外での無意味な脱衣は………」

女勇者「…………あんた達も脱ぎなさいよ。」

女店員A「……は?」

女勇者「私達の裸を見ておいて、自分達だけは見せないでいるつもり!?脱げって!!このぉ!!!」

女店員A「え!?あ!お客様!!?や、やめ……」

女勇者「……はぁ……はぁ……」

女店員A「……あぁ……ひどい……」

女店員B「……もぉ……お嫁にいけない……」



客A「……ちょっと、あの人なんなの?」

客B「店員さんを脱がしてたわよね……変態?女なのに……」


女勇者「……おっと、まだ獲物がいたか……

シャァアアアアアア!!!!!」

客A「嘘っ!?こっちに来るし!?」

客B「え!?や、ダメ!!助けてぇ~!!!」






魔法使い「女兵さん。着てみてどうですか?」

女兵「……まぁ……軍服よりは涼しいかな……」

魔法使い「もぉ!着心地なんかより、見た目の変化を見てくださいよ!!
ささっ!鏡の前に……」



女兵「………あ………」

魔法使い「どうですか?可愛いですよね……」

女兵「……まぁ。確かに……。」

魔法使い「これが、女の子ですよ?女兵さん。」

女兵「……女って、着ている物で、印象が全く変わるんだな……」

魔法使い「そうですね。だから、自分を可愛らしく見せたい相手の前では、ちゃんと可愛い服を着るんですよ?」

女兵「……自分を……可愛いく見せたい相手……?」

魔法使い「そぉです。もちろん、ちゃんとその人の趣味な合った服を……」


女兵「………わざわざ、他人に可愛く見られる事を考えないとダメなのか?
自分では可愛いと思っても、相手のセンスに合わなかったら、その服を着る意味は無くなるのかよ?」


魔法使い「い、いえ……ただ、自分だけが可愛いと思っていても、相手にそれが通じなかったら、楽しくないじゃないですか?」


女兵「……それでも、自分が可愛いと思えるんなら、少なくとも自分は楽しいだろ?」

魔法使い「……ま、まぁ……そうですけど……」

女兵「……ま、何事も独り善がりはダメって事なんだろうがな……」



女勇者「……女兵ちゃん……」

客B「……あ…あ…もう許して……」

女勇者「……女兵ちゃんの独り善がり。
でも、それって結局は、アイツとは一緒なんだよね……」

メイド「勇者様。勇者の髪ですが……」

女勇者「ん?あたしの髪?」

メイド「その長い髪をただ垂らしておくのも勿体ないないですよ?女の子らしく、ツインテールにしてみては?」

女勇者「あぁ……でも、髪の毛って邪魔よね。戦う時には、一々視界入ってくるし……」

女兵「……確か、ヴァルキュリアにはツインテールにナイフを仕込んで振り回す戦士もいたな……」

女勇者「……なるほど。女の子の可愛いさの武器であるツインテールを戦闘面でも武器化したのか……!!」


メイド「女兵さま。」

女兵「ん?なにさ?」

メイド「……女兵さんも髪を括りませんか?」

女兵「……いや、俺のはそんなに長くないし……」

メイド「でも、その長さでもツインテールはできますよ?小さくて可愛らしいのが……」

女兵「……可愛いくしてどうすんだよ……?」


女勇者「私!見てみたい!!女兵ちゃんのツインテ!!」

女兵「……よし、反対意見も出たところで……」

女勇者「えぇ~!?いいじゃん!絶対に可愛いぃ~よぉ~!女兵ちゃんなら似合うって!!
きっと男兵も気に入ってくれるって!!」

女兵「男兵?アイツは俺が気に入った物ならほぼ全て気に入るだろ。
センスも何もかもが同じなんだから……」

女勇者「じゃあ、その服も気に入るだろうね。さっき女兵ちゃんも気に入ってたし……」

女兵「まぁ、間違いなくな。ただ、馬鹿にされるかもしれないな。順調に女の子化していく俺を見て……」


女勇者「ば、馬鹿にしたら、あたしがアイツを天の国までぶっ飛ばしてやるんだから!!!」


女兵「……?いや……特にそんな事しなくても……。
別にアイツに何を言われても俺は気にしないぞ。どうせ“俺”の意見でもあるんだし……」

女勇者「……なら、アイツに誉められても、何も感じないの?」

女兵「……それは、素直に喜ぶだろうな。自画自賛になるかもしれないが……」


女勇者「……ふ~ん。嫌な言葉は無視、賞賛の言葉は素直に喜ぶ。
……都合のいい関係ね……」

射手「女兵さん!あなた、いまだに男物の下着とか付けてないですよね!?」

女兵「いやいや。それはさすがにしなかったな……」

射手「じゃあ、既に下着は何枚か持ってるんですね?」

女兵「……いや?」

射手「じゃ、じゃあ……今、女兵さんは……?」

女勇者「ノーブラノーパン!!?」

女兵「……って、さっき俺を脱がした時に見ただろ!?」


女勇者「……いえ、改めて聞くと、破壊力のある言葉ね……。
今まで私の横で剣を振って激しく動いていた女兵が下着を付けてないなかったなんて……。

汗をかき、服が肌に密着する時、下着を挟まずに生の素肌があなたのあの軍服に付いていたと言うの……!!?

ああ!!我慢できない!!魔法使いちゃん!!その軍服を寄越しなさい!!」

魔法使い「え!?ああっ!!?」

女勇者「……クンカクンカ………いい匂い……女兵ちゃんの……」


女兵「うわっ……さすがに背筋に寒気を感じる……。勇者って、あんなに怖かったっけ……?」


メイド「ふふ……夜の勇者はまさに魔王ならぬ夜王ですよね?」

射手「え!?いや……//////////」



女兵「……しかし、さすがに女ものの下着なんて、センスが分からんな……」

射手「いえ、むしろ男の人のセンスで選んでください。
女の子のセンスでは、男の人に気に入ってもらえるのを選ぶのは意外と難しいんですよ。
単純に、男兵さんとして、女の子がどんな下着を着けていたら可愛いと感じるか、感覚で選んでください。」



女兵「……別に、男受けする下着を選びたいワケじゃないんだが……


そうだな………これとか?」

射手「え!?そ、それですか……!?」

女勇者「ん?どんなの……って、ださっ!!
あはは!!もう、子供っぽいとかじゃなくて、ダサいの域よ!それは!!」

女兵「……え?俺の感覚じゃ、こんな物かなって……」

女勇者「……あはは。全く。あなたは何にも分かってないわね……。女の子のパンツがどういう物かを!!
いいわ。私が選んであげる!!」

女兵「……ま、まぁ……好きにしてくれよ……別に……」


射手「女兵さん。さっきお選びになってたのも買っておきましょうね。」

女兵「え?……い、いいよ………別に……」

女勇者「あら?いいんじゃない?ある意味この中で唯一男のセンスを持つあなたが選んだ物なのだから……」

女兵「……いや、いいわ。別にこれが欲しいワケじゃないし……」

女勇者「……いいじゃん。例え他の人が馬鹿にしても、あなたが気に入ったものなんだから………。」

女「………そ、そうだな……」

女勇者(それにあなたには、必ず共感して褒めてくれる人がいるでしょ?)

~商業と交易の都市、東広場~

猫盗賊「私のところの勇者は変態です!!」

新妻「盗賊ちゃん!?そんな言い方……」


ホワイト「……どない考える?アカネ。」

アカネ「……あなたのところの勇者様は立派じゃないかしら……。初めからハーレムなんて断言してるだけ……」

アオミン「こっちの勇者は優柔不断で、気が付いたらハーレムを作ってました、って感じでしたからね。

あれは最悪でした。結局は、私達が涙を流す羽目になりましたし……。」


猫盗賊「で、でも……夜な夜な私を……」

ホワイト「でも、楽しいんやろ?一緒に居ると……」


猫盗賊「……そこがおかしいんです……
私、あの人が怖いのに……知らず知らずにあの人と居るのを楽しんでしまう……私自身が……」



アカネ「……ねぇ、私の妹。もっと素直になりなさいな。」

猫盗賊「え?」

ホワイト「あんたんところの勇者はおかしいところもあるけど、良いところも沢山ある奴やんか。
もっと勇者の良いところも探してあげたらどうや?」


新妻「あの……皆さんの勇者様は男性だったんですよね……?」


アカネ「……むしろ、女の勇者様の方が珍しいわね。しかも、ハーレムだなんて……前代未聞じゃないかしら……。」

ホワイト「……でもな、勇者の事が不安で信用でけへんのに一緒に旅をしてた輩は今までにもたくさんおるけんな。

例えば、あそこにいるミドリも。最初は魔王のスパイとして、勇者に近づいてたしな。」

アオミン「彼女は純粋に、魔王が正義、勇者が悪と思わされてたみたいでした。

でも、勇者と接する内に変わっていきました。今まで魔王の下で受けてきた洗脳を全て断ち切って、勇者を信じる事を選んだのです。」



猫盗賊「………勇者と一緒に居る内に……か……」

アカネ「ねぇ……ホント、もっと勇者を信じてあげなさい。
あなたも……新妻さんもね。」

新妻「え!?私は……」

アカネ「……あなたも勇者の事で何か不安に考えてない?
勇者が……信じられなくなった……?」


新妻「………」


アオミン「……それに比較しても、あのお侍さんはかなり勇者の事を信用していますね。
……いえ、勇者の全ては信用する必要がないと分かっているのですね。」

新妻「……全てを……?」

アオミン「勇者は完璧である必要はない。不完全な要素は、仲間であるあなた達が埋めてあげればいい。

お侍さんはその覚悟があるのでしょうね。例えば勇者が戦えなくなっても、自分が代わりに戦う……とか。」

アカネ「覚悟……あなた達に、勇者を支えてあげる覚悟なんてものはあるのかしら?」

新妻「………」

猫盗賊「………」



アカネ「……そうよね。ない方が普通だわ。

……最初に勇者の仲間になった頃の私達にもなかったのだから……」




ホワイト「………そろそろかいな?アカネ、ミンファー、ミドリ。」

アオミン「……そうね。」

ミドリ「……時間ですね。お侍様。またお会い致しましょう。」

アカネ「……じゃあね、私の可愛い妹。また会いましょう。」



猫盗賊「あ……うん。またね、姉上……」

猫盗賊「……覚悟……?私には……ないの?勇者様を支えてあげる……覚悟…が……」

女侍「……あの娘、ミドリ、良い子だった……」





~商業と交易の都市、中央広場~

アオミン「クロト。準備は?」

クロト「ああ、大丈夫。軍の施設に行って、街の警備の状態を調べてきた。」



アカネ「………こんな日に、勇者……妹達も街に来るなんて……」

ホワイト「……ま、勇者なら自力で生き延びるやろな。」

アオミン「………エルフさんは?まだ来ないの?」


クロト「……呼びに行ったんだが。修道院に居たいらしい……」


アオミン「……そうですか」


ミドリ「……………。

……………やっぱり私も………」

ホワイト「……ミドリ。強制はせんからな。
嫌なら、やめてもええんやで。」


ミドリ「……違う……やめない。やる!私、やるから!!」




アカネ「……じゃあ、私は空からドラゴン部隊を……」

アオミン「私は海からクラーケン達を……」

ミドリ「……地中から大きなワームを……」

ホワイト「……あの世の狩人、大鎌の死神を召喚!!」


クロト「……闇の世界より、オーク兵達よ、蘇れ……!!!

………さて、勇者達よ。この魔王軍の多勢から、見事に生き延びてみるがいい………」

『ちょっと登場人物を簡単に整理』

・勇者の仲間

女勇者…ハーレム第一?の頼れる勇者様

射手…トロい、すぐ転ける、しかし射的がピカイチなヴァルキュリアの弓兵

シスター…神を信じる純潔な聖職者

猫盗賊…まだ子供、でも金欲は大人並。勇者の事は怖いけど好き?

新妻…ハーフエルフ。男性恐怖症。勇者様大好き。男兵は苦手、でも女兵は好き

魔法使い…男兵の妹(血縁はなし)。生まれつきの強力な魔法使い。

女侍…クール。強い。大食い。無口。

男兵(どっか行ったけど)…ため口。強い。ネーミングが厨二。妹の魔法使いは大事。勇者も大事?そして、女兵も大事??

女兵…男兵が女化した存在。吸血姫の洋館で現れた。洋館に来るまでの男兵と同じ記憶と性格を持つ。なので、“ため口。強い。ネーミングが厨二。妹の魔法使いは大事。勇者も大事?”そして、男兵も大事??



吸血姫…勇者の仲間だが、勇者の事が好きなワケではない。シスターの事が気になる?


・帝国兵士

同僚…男兵(女兵)の元同僚の兵士達の事

戦乙女隊長…帝国の女部隊“ヴァルキュリア”の隊長

第一軍…帝国のいくつかある軍の中隊の一つ。第一軍将はその指揮官


・前回の勇者の仲間(しかし、今は何故か魔王軍を操る……)

名前無きエルフ…本人曰く、勇者を愛しただけのただのエルフ。魔王軍は操っていない。

アカネ…猫盗賊と同じ種族で姉上と呼ばれる。ドラゴンを操る。

クロト…ダークエルフで前戦乙女隊長。オークを操る。

アオミン(アオードミンファー)…おとしやか…?クラーケンを操る。

ホワイト…なんか明るい。死神を操る。

ミドリ…少女、チャイナ服が趣味。グランドワームを操る。



・女兵の事をさらに詳しく

女兵は魔王によってつくられた存在。勇者の近くにいるだけで、勇者の力を吸い取っていく。

女兵は男兵が女化した姿であり、男兵と同じ人格を持っている

魔王が何故わざわざ女化した男兵の人形を作ったか?
女勇者は男兵の事を気に入っていたが、自分の仲間を女の子ばかりにしたかったので、男である男兵を仲間にするのを躊躇していた

だから、男兵の女化した存在である女兵を送り込めば、女勇者はすぐに仲間にするだろう、と魔王は考えた

吸血姫曰く、魔王は悪趣味である

実際、魔王の罠と分かっていながらも、女勇者は女兵を近くに置いている

しかし、女兵は自分の存在に疑問を持ち、悩んでいる

~商業と交易の都市の西側の郊外の街道~


戦乙女隊長「何!?魔王軍が!!?」

戦乙女A「はい!街の東側から進行しているようです!!」


戦乙女隊長「東……?何故?あっち側はむしろ帝国軍の施設が多い場所だぞ……?
……まさか、奴らの狙いは、帝国兵士達か!!?」





~商業と交易の都市、東側軍事施設~




兵士A「……くそ……おい!しっかりしろ!!」

兵士B「……だ、大丈夫……」



「グォオオオ!!!」

兵士A「くそっ!?こんなところにもオークが!?ちくしょう………

悪い……俺を恨まないでくれよ……」

兵士B「え!?お、おい!!置いて行くなよ!?


……くそ……俺は……まだ……死んでたまるか……帝国軍人の名にかけて……オークを討ち取って……」



兵士A「うぁあああああ!!!!?」グシャッ




兵士B「!?……な、なんだ?さっきの兵の声……」


クロト「……仲間を見捨てる兵士……もはや誇り高き帝国軍人ではない……」

兵士B「あ、あんたは……?」

クロト「しかし、お前は違うな。死に直面してもなお、軍人としての誇りを保とうとする。

ここで死ぬのは惜しいな。我が部隊に入らんか?」


兵士B「……くたばれ……魔王の部下が……」

クロト「……ふふ。立派な帝国軍人だな。お前は生き延びて、未来の帝国軍を動かしてくれ……」

兵士B「ま、待て!!
………くそぉ、敵の大将を目の前にして……体が言う事を聞かない………」




ホワイト「クロトぉ~。軍人上がりのお方は軍人には優しいんやなぁ~?」

クロト「……私は自分の直感を信じた。
どんな者が死ぬべきで、どんな者が生き残るべきか……
しかし、どうせ奴も帝国軍人なら……」



兵士B「……こんな生き恥………さらすなら………」ザクッ

ホワイト「えぇー!?ま、まさかの自害!!?せっかく見逃してあげたのに……」

クロト「……哀れ、帝国軍人よ…………」

「グゥウウウウ!!」

兵士女「きゃあ!?嫌ぁ!!やめて!!」




クロト「オークはこの世で最も卑悪な戦闘種族だ。

男は殺して肉を食す、女は性欲の奴隷とし、飽きればやはり皮を剥ぐ

ただただこの世の秩序を乱す事しか考えない

悪魔の部隊……」



女勇者「……だから、私はこの世で男の次にオークは大っ嫌いよぉ!!!!」


ザクッ!!


兵士女「……あ、あなたは……勇者様……!?」

クロト「……ふふ。勇者。もう来たか。」


女勇者「……オークだけは本当に嫌いでね……見るだけで胸くそが悪いんだ……」

クロト「……私も嫌いだ。昔からこいつらの顔を見るとイライラしてくる。」


女勇者「なら……さっさとこいつらをどっかに消してくれない?あんたが操ってんでしょ!?」


クロト「……しかし、今は私の部下だ。私の意志で動く駒。
勇者。貴様こそ我々の邪魔をしないで貰いたいな。失せるがいい。」


女勇者「……私、怒ると怖いわよ………?」

クロト「……ふふ。見せてもらおうか……勇者の力を……」


女勇者「………ふぅ~…………どりぃぁああああ!!!!!」

ザァアアアン!!!!

「グゥガッ!?」バサッ!!
「ガァアッ!?」バサッ!!


クロト「!?ふ、風圧だけで、オーク達が死んでいく……!?」


女勇者「……それだけかしら………?」


スパッ……ザクッ!ビリッ!!

クロト「……なぁ!?わ、私の服が!?……服だけ斬られただと!?」

兵士女「きゃぁあ~!!?ゆ、勇者様ぁ!!私の服までもがぁ~!?」


女勇者「……前回の勇者の部下……だったかしら?前回の勇者のハーレムの一員………?

つまり、一人の男に集ったビッチってワケね……。」


クロト「……貴様ぁ……」

女勇者「私、そんな汚れた女は大っ嫌いよぉ!!

だから、たっぷりと虐めてあげるわぁ~♪」

~商業と交易の都市、市場~

アカネ「……あったあったぁ~♪先代魔王の純金の剣ぃ~♪
妹からは奪いたくなかったけど、鑑定師の物となった今なら、奪っても問題ないわよねぇ~♪」



射手「……あ、あなたは!?盗みの現行犯ですよぉ!!お、大人しく……」

アカネ「……あら?街に魔王軍が攻めてきているこんな非常事態に、法を重視する兵士が居るなんて……」

射手「な、何者ですかぁ!?あ、あなたはぁ!?う、動くな……ないでください!」グイッ…

アカネ「あら?弓矢?貴方は弓兵なの?
……ふぅ~ん。声は震えて、顔は怯えきってる。でも、矢先だけは一向にブレない……
あなた、かなりの射手ね?」

射手「わ、私は……帝国のヴァルキュリア・アーチャーです!!!」


アカネ「……あらぁ?やっぱり帝国の兵士なのねぇ~。でも、ヴァルキュリアは別に標的じゃないの。

だから、見逃してあげるわ。今すぐ弓を下ろしたら……」

射手「………嫌です。一度狙った標的は、例え死んでも放しません!!」


アカネ「……ふふふ……」

ヒョイ……ブン!!

射手「!?消えた!?いや、動きが早い!!!」


アカネ「ほぉ~らぁ♪」ヒョイ

射手「!!そこですっ!!」ビュン!

アカネ「え?……きゃっ!?」

射手「あ、当たった……!?」


アカネ「……足に擦っただけです……。
でも、私の俊足についてくるなんて……あなた……」


射手「今の動き……盗賊ちゃんみたい……いや、それ以上………きゃっ!?」ドスン!!

アカネ「あら。豪快な転け方。」

射手「……ば、バナナの皮……!?足元に……いつの間に!?」

アカネ「ふふ……私の動きばかりに目がいって、自身の周辺には目を配れなかったのね。

……あらあら、スカートが捲れちゃったわよ?可愛いぃ下着ねぇ~♪」

射手「えっ!?きゃああ!!?み、見ないで…!!」

アカネ「可愛い猫さんのプリントねぇ~。あなた、こういう系が好きなの?」

射手「……い、いえ……今日は可愛く決めちゃおうかなって……」

アカネ「あらあらぁ~。
でも、私の今日の気分はパンダさんなの。
だからぁ~、パンダに書き換えてあげるわぁ~♪猫の顔に斑点を足せば、立派なパンダにぃ~♪」

射手「え!?い、いや!?やめて!!放してください!!」

アカネ「はいは~い♪大人しく~♪」グイッ!!

射手「嫌ぁああ!!わ、私の下着だけは……下着だけは……嫌ぁああああ!!」

女侍「………ポリポリ…(スティック菓子を貪る」

アカネ「……あら?あなたは確か、ミドリと大食い対決をした……」

射手「さ、侍さん!助けてください!!わ、私の下着がぁああ~!!!」


女侍「……シュール……」


アカネ「……2対1……。この射手ちゃんの腕前も見せて貰ったし、侍さんも油断は出来ない……。

こうなったら、助っ人を呼ばせて貰いますわね!!」




『ゴォオオオオ!!!!』


射手「こ、この声は!!?ドラゴン!?」

女侍「……ポリポリ…」

アカネ「……闇の国より降り立つは魔王軍最強のドラゴン部隊。

さぁ、勇者のお仲間さん。実力を見せてもらうわよ!!!」









~商業と交易の都市、海岸線~


アオミン「……ドラゴンもどこかに行きましたね。
オークといい、ドラゴンといい、アカネもクロトも私的目的に使っているのですか……。

ねぇ、クラーケン。私達だけでも、帝国の兵士達を残滅しに行きましょう。」




吸血姫「シスター……そんな死んだ兵士など放っておきなさい!!」

シスター「いえ、この方達にも神のお導きがありますようにと、せめて鎮魂歌を……」


アオミン「……え?吸血鬼!?何故ここに……
しかも、修道女を襲っている!?」

吸血鬼「あら?……貴方はどなた?」

アオミン「!!こ、この吸血鬼………か、可愛いぃ……」

~商業と交易の都市、東広場~

「うわぁああ!!?」バクッ

「きゃぁああ!!?」バクッ



ミドリ「…………」



魔法使い「きゃあ!?お、女兵さん!!兵士さん達が、蛇みたいなのにどんどん地面に引き摺り込まれて……」

女兵「ワームの類いだな。あいつらは人間を丸呑みする。だが、胃で溶かしきるのに数日かかる。
つまり、今すぐ腹を切り裂いて助ければいいって事さ!!」

新妻「……ああ、でもワームには男の人も襲われてましたよね……。

つまりワームのお腹を開いたら、中から男の人がウジャウジャと………ひぃいいい!!!?」

女兵「ワームの腹を開くのは俺がやるから、まずはワームを地中から引き摺り出すぞ!」


ミドリ「……あの服……帝国軍人!!?」ドゴォオオン!!!!


女兵「なんだぁ?あのガキ……」

新妻「あ、あの娘は………
っていうよりも、家を丸々一つを持ち上げてますよぉ!!?」

女兵「かなりの怪力らしいな……。小さき巨人は大地を引き裂く。」

魔法使い「男女間の小さな歪みが、2人の関係を引き裂く!昔、そんな小説がありましたよね?」

女兵「まぁ、あういうのは元々が脆いからな……」


新妻「……って、言ってる場合ですかぁ~!!?」



ミドリ「……あ、でも、あれって確か魔王の人形……」


猫盗賊「にゃにゃ~ん♪」

ミドリ「……え?あなたは………」

猫盗賊「やぁ、大食いチャイナ娘。いい格好だねぇ~。家なんか頭の上に抱えちゃって、重くない?


こちょこちょこちょこちょ~♪」

ミドリ「……あ……何……やめ………そんなことしたら……」

猫盗賊「そのまま頭の上に落としちゃいなぁ~♪」

ミドリ「あ……でも……そしたら、近くに居るあなたも………アカネさんの妹のあなたも……」


猫盗賊「心配ご無用。私も姉上同様、種族で最速クラスの俊足だからね。逃げ足は朝飯前さぁ~♪

こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ…」


ミドリ「あ……ひ…あ…………嫌………ダメ…………あ。」ズルッ



ドッシャアアアアアアアアアアン!!!!!!!!

~商業と交易の都市、修道院~


兵士C「くそ………こんなところで……」

兵士D「ゆ……勇者様…………助け……」



ホワイト「……あちゃ~。帝国軍人のくせに、よりにもよって修道院なんかに逃げこみよるとはなぁー…」



兵士E「な、なんだ!?あの女の後ろに居る少女達は!?」

兵士F「空を飛んで…鎌を持って………」


死神竹「ホワイトぉ~。あいつらの命も奪っちゃうよぉ~?」

ホワイト「おー、好きにしぃや。兵士は皆殺しやからな。」

死神松「よぉし!!頂きぃ~!」

死神梅「うわっ!?松ちゃんずるぃ~!?」




ホワイト「……あー、なんか退屈やなぁ~

やっぱ、こんな雑魚共相手に楽しめるワケないやん

………魔王退治……また、したいなぁ……」






エルフ「ホワイト!?修道院には来ないでって……!!」

ホワイト「……しゃあーないやん。兵士達がこっちまで逃げてきたんやから……。


あんたは?何してたんや?」

エルフ「…………」




「………エルフ?それに、ホワイトか……?」


エルフ「あ……ゆ、勇者様…………」

ホワイト「……エルフ……まだそんな名前で呼んどんのか…………

魔王様。ご機嫌うるわしゅ~。」


魔王「……ああ。気分はいいなぁ………」

魔王「……エルフ。私の作った勇者はどうしている?」

エルフ「……あ、あの……」

ホワイト「アイツなら、今はミドリのペットと遊んでるんとちゃいますか?」


魔王「……それで、勇者の力はどうなっている?まだ奪いきれてないのか……?」

エルフ「………あまり、上手くは行ってません……」


ホワイト「元々の人格のせいかもしれんな。しかも、吸血鬼が魔王様の意図をバラしてしもうたからか、本人もあんま女勇者に近づこうとしてないねん。」




魔王「……中々賢い女みたいだな………。容姿も可憐だ……。ただ勇者の力を溜める器というだけには惜しいな。
真の勇者となったあかつきには、我の花嫁として迎えいれようか……」


エルフ「………勇者様……本気ですか……?」


ホワイト「…………」



魔王「………我が愛しのエルフ。私はお前のおかげでこうやって生きていられるのだ。お前こそが私の全て。
こんな人形に分け与える愛など、お前へのに比べれば、海に対しての雨粒一つに過ぎない……」


エルフ「……勇者様………」


ホワイト(…………勇者……様……ウチは?ウチは愛してへんの………?)




魔王「……しかし、女兵………貴様もまた魅力的な存在だな………

我が花嫁となる者よ……」

~商業と交易の都市、市場~


『ガァアアアア!!!!』
『グワァアアア!!!!』

カッシャアアアン!!!バキッ!!



射手「ひぃいい!!?ド、ドラゴン達が暴れだしましたぁ~!!?」


アカネ「あら?あなたが竜達の両目を片っ端から射ちぬくからじゃない!?
これじゃあ、私の言う声も聞こえないわ!!!」

射手「基本は相手の視界を遮断する事ですから…!!で、でも、こんなに暴れるなんて………」



女侍「……いや、隙だらけ……」ジャキン


アカネ「あら、ドラゴンの皮膚は凄く硬いわよ?そんな鉄の刀じゃ、折れちゃうわね。」

女侍「構わない。刀が切れなくなるまで使い尽くす。」


射手「そ、そうだ!!さっき貴方が盗んでいた……」

アカネ「あぁ……純金の剣なら大分保つわね……でも、金が削れちゃうし、これは魔王様へのお土産……」


ドゴォオオオン!!!!

射手「きゃぁあああ!!!と、隣の建物がぶっ飛ばされましたぁ~!!?」


アカネ「………仕方ないわね。先代魔王の武器なんか使って、呪われてもしらないんだから……」


女侍「……かたじけない………」



『ゴォオオオオ!!!!』


女侍「………居合い……捕えた!!!!」

ザクッ!!……ズシャッ!!


アカネ「……一太刀でドラゴンの首斬り?

やるぅ~♪」



女侍「……射手殿。あの竜、動きが激しい。脚を射て、地面に横倒しに……」

射手「は……………はいっ!!!」ギリッ……ビュルルン!!

アカネ(4本同時射ち……)



ザシュ!ザシュ!ザシュザシュ!!


『ガァアッ!!!』ドスン!!!



アカネ「いいわね…………この2人……いいコンビ……」

~商業と交易の都市、軍事施設~


クロト「……うぅ……」


女勇者「あらぁ~?随分暗い表情を見せはじめたわねぇ~?私の強さに絶望を感じ始めたぁ~?」

兵士女「……強いです……勇者様。
でも……勇者様……私の下着まで切っちゃいました…………ぐすん……」



クロト「……くそ……、やはりどの時代の勇者も、力だけは確かなのだな……」

女勇者「ん?やっと諦めてくれたぁ~?お姉さま。うふふ~♪」


クロト「……時に勇者。もしも、貴様のその力が失われるとしたら、貴様はその後どうする?」

女勇者「ハーレムを作る。」

クロト「……では、力を失った貴様の前に、魔王が現れたとしたら、貴様は戦うのか?それとも、逃げ出すのか?」


女勇者「逃げ出したら、私は本当に勇者じゃなくなっちゃうじゃん。
……それに、あたし魔王が大っ嫌いだから!!男の次に嫌いだから!!!」


クロト「…………口では、誰でもそう言える……だが、実際は………」


女勇者「ふぅ~ん。まぁまぁ、そんなシリアスはもうやめましょう♪」ガシッ

クロト「なっ!?な、何を……」

女勇者「分かってるでしょ~?私に負けたんだから、あなたは捕虜。敗者の罰をその身で受けて貰うわぁ~♪」


クロト「……くっ……ば、馬鹿な……貴様……それでも勇者……!?」

女勇者「あんたのところの勇者だって、どうせ毎晩ヤってたんでしょ?いいじゃん。女の子同士はノーカンノーカン~♪」


クロト「く……ぅ……こんな屈辱…………勇者…………助け……」



ホワイト「……って、なんじゃこりゃぁああ!!?」

女勇者「ん?新手?」


ホワイト「ク、クロトぉ!!?一体何してんねん!!?そんな女と……!!?」

クロト「……ホワイト……すまない……私が不甲斐ないばかりに……」

女勇者「黙れ♪お口封じ。ん~♪」

クロト「んっ…ん!?」

ホワイト「ク、クロトぉおおお!!!?

あ、あんた………そんな………

……許さへん!許さへんで!!女勇者!!!」

女兵「ん~?キスぐらいでうるさいなぁー。どうせあんたもビッチでしょ?」

ホワイト「ビ、ビッチ!?ビッチやと………

……て、どういう意味なん?」

女勇者「魔王に寄って集って、腰を振ってただらしないメス犬共………って意味かな。」


ホワイト「なっ!?なんやと………!?」


クロト「や、やめろ……ホワイト!そいつの挑発なんかに乗るな!!」


女勇者「勇者様になら、私の初めてをあげられる。
勇者様なら、私の事をいつまでも愛してくれる。
勇者様なら、例え他に可愛い娘がいっぱいいても、最後には絶対自分のところへ帰って来てくれる……

……そう思ってたんでしょ?そう思い込んでたんでしょう~?」


ホワイト「……やめろ……」

女勇者「それで結局は飼い主の事を信じて、飼い主についていって、飼い主の都合のいい時だけ遊んで貰って……」


ホワイト「勇者を………私達の勇者を馬鹿にするなぁあああああ!!!!!」



女勇者「私が馬鹿にしてんのはあなたよ?ホワイトちゃ~ん♪」


ホワイト「……なっ………」


女勇者「後悔してない?
どうせ全てが初体験だったんでしょ?
信じられる人を見てけて、頼れる仲間と旅をして、凶悪な魔王を倒して、勇者と一つになって…………

その全ての経験が無駄だったと言わないわよ?
……あなたが、それらを経て成長しているならね……」



ホワイト「……………ウ、ウチは…………」


クロト「……勇者……お前、どういうつもりだ!?ホワイトをどうするつもりだぁ!?」


女勇者「……私、あなたみたいに体だけが汚れてるなら、私のテクニックで浄化~♪…なんて考えれたけど、身体どころか心まで汚れきってるんじゃね……
いくら可愛い女の子でも、汚らしいわね。」





ホワイト「………………………………………………………………………ひっぐ……」

クロト「き……貴様ぁあああああ!!!!」

女勇者「きゃっ!?」


クロト「………ホワイト、一旦退くぞ!!早く!!」

ホワイト「……うん……」



女勇者「………あちゃー……、思った事、言い過ぎた?」

兵士女「……ゆ、勇者様……あのぉ、助けて頂いてありがとうございます!」

女勇者「ん?………………ジュルリ」

兵士女「……え?きゃっ!?勇者様!?」ドスン!

女勇者「いいのよぉ~♪お礼なんて……ちょぉ~っと、あなたの可愛らしい姿を見せて貰えれば……」

兵士女「え!?あ……嫌っ……ゆ、勇者様……ダメ………」

クロト「……ホワイト……奴の言った事なんか、気にするな……」

ホワイト「……アハハ、さすがは勇者様……やな……よく分かってるわ……ウチの事……」


クロト「ホワイト!やめろ!……やめてくれ……」

ホワイト「……ウチ……成長なんかしてないやん……

ウチ!!未だに!あの勇者様が今でも私の事を思ってくれてはる!……そう信じてんねで………馬鹿みたいに……」


クロト「……お前のその純粋な気持ちが、勇者に通じていないワケがなかろう……」


ホワイト「勇者は!!もう随分前からエルフの事しか見てないやんかぁ!!

……いや、今はあの女兵の事しか……

ウチは……そこまで分かってるのに………」


クロト「……ホワイト。お前は汚れてなどいない。
いつまでも、お前の心は純白で美しい……」

ホワイト「………」

クロト「……汚れたのは……私の方だ。もはや勇者など信じていない……私達の勇者も、あの女勇者も……

だが、それでもこうして、魔王の命令通りに行動している……

信じていない……はずの魔王……勇者の事を……結局は信じきっている………」


ホワイト「………やめてや……わざわざ自虐的になって、ウチと同じ目線に立とうとせんといて……」


クロト「ホワイト……お前だけじゃないんだ……
悩んで……後悔して……苦しんでいるのは、私も同じだ………」


ホワイト「…………クロトぉ…………」


クロト「……今日はもういい。どこかに行って休もう……。
二人で………」

ホワイト「………うん………」




アカネ「あらぁ~。あなた達、そんな関係だったのぉ~?」


ホワイト「ア、アカネ!?」

クロト「……貴様……いつの間に……!?」

アカネ「うふふ。二人で仲良さそうに話しちゃって。会話に入る隙がなかったわ。」

ホワイト「あ、あんた……竜はどないしたんや!?」

アカネ「全滅。魔王の剣も奪われちゃったわ。
かなり優秀な勇者の仲間達にね……」

クロト「……そうか。で、貴様はどうする?」

アカネ「休むわよ?あたしも。
あなた達が二人だけで仲良くしたいんなら、私は別の場所に行くけど……」

ホワイト「そ、そんな事……!!」

アカネ「……まぁ、随分前に勇者を見捨てたあたしには、あなた達の考えは理解出来ないけどね……」


クロト「…………貴様は、何故そんな決断を軽々と……」

アカネ「理由?私には、勇者以外にも大切な人が他にも居たからよ。
……可愛い可愛い、私の妹達が………」

~商業と交易の都市、東広場~

ミドリ「…………うう……あ……私………」

女兵「気がついたか?」

ミドリ「……お前は…………魔王様の……」


魔法使い「あなた、やっぱり魔王の部下なのね……」
猫盗賊「うぅ……前回の勇者の仲間なのに……今は魔王の部下だなんて……」

ミドリ「…………。……あ、ワーム達は?」

女兵「あ、それなら、あっちで開きにしてあるぜ。」


新妻「……ワームの中から…………男が1人……男が2人……男が………
ひぃぃぃ……」

魔法使い「もぉ、新妻さん!!しっかりして!!男の兵士さん達はもう逃げたから!!」


女兵「……後は、お前1人だな?怪力少女。」


ミドリ「……勇者の仲間……女兵………」

女兵「……なんだぁ?やんのかよ?」

魔法使い「お、女兵さん!!こんな小さな子に……」


ミドリ「……私、負けません!!」

女兵「おっと!?」

ドォオン!!!!!!

魔法使い「きゃあ!?じ、地面が割れた!?」

女兵「こんなパンチ、まともに食らったら……」

ミドリ「女兵さん……あなたの溜めた勇者の力……見せてもらいます!!」

女兵「……くぅ……そういう事なら…………」クラッ

魔法使い「女兵さん!?なんか動きが変……」


女兵(……頭痛……それに、身体が異常に熱い………もはやただの病気か………?)

ミドリ「……顔色が優れませんね?ひょっとして、体調不良ですか?」

女兵「……そう見えるか?なら、ただの勘違いだよ!!!」

ガキン!!

女兵「!?か、硬い腕だな……」

ミドリ「……こんな子供の見た目である私に切り掛かってくるなんて………」

女兵「ワームを操る魔王の部下が、今さら子供っ面………すんな……」

女兵(……くそ……視界も揺らぐ………)


ミドリ「まぁ、足を狙うところを見る限り、私の命を奪う事は躊躇しているようですね?」

女兵「……足をぶった切って、逃げれなくなったところを追い討ち……のつもりだったら……?」

ミドリ「………ならば、あなたはただの非道な悪です。」

女兵「俺が悪なら、お前らは何なんだよ……!?」



ミドリ「……私にも……分かりません……」

………………

兵士女「……………あれ?私………一体………?」


女勇者「あら?気がついた?」

兵士女「……勇者……様?

//////////////あ、あの!!私………!!」


女勇者「………可愛かったわ……あなた……」

兵士女「!!……あ……そんな………」

女勇者「……ねぇ……あなた………私の仲間に……」


メイド「勇者様。何をなされているのですかコノヤロウ。」

女勇者「あら?メイドちゃん?どうかした?」

メイド「いえ、勇者様がまた浮気をしているのではないかと……」

女勇者「……メイドちゃん。私はハーレム女王になるのよ?浮気だなんて……気にしちゃダメ♪」


兵士女「……あ、あの……私……実は、好きな男の人が居て……居たのに……勇者様に初めてを………ひっぐ……ぐすん…」


女勇者「大丈夫~♪女の子同士はノーカンよ!」

兵士女「……そ、そうですよね!!こんなの、ただのスキンシップですよね!!」


女勇者「………ま、まぁね。……そうよ……こんなのは、ただのスキンシップだから………

女の子同士なんだし……」



メイド「勇者様?何を暗い顔をされてるのですか?」


女勇者「…………スキンシップ…つまりは、遊び事……なんだなぁ……

女の子同士だったら……」

メイド「それは否定させてもらいます。
心と心が通じていれば、女性同士の秘事も立派な愛行為になる、と私は思います。」


女勇者「……気持ちが通じてあっていればね……」

新妻「光よ!!鋼鉄の鎖のごとく、悪きものの自由を奪え!!!」


ギシッ!ギシッ!!

ミドリ「!!……エルフの光魔法……」

魔法使い「業火の剣、敵を芯より焼き尽くせ……」


ミドリ「………炎で……剣を作った?」

魔法使い「はい。私は手に持っても平気ですが、他の人が触れれば、炎が燃えうつり瞬間的に燃え尽きます。
地味で小規模な魔法ですが、かなり強力です!
ですから、動かないでくださいよぉ~?」


ミドリ「……真に強い魔法使いは、強力な魔法を小規模に実演すると聞いた事があります……。

それで、その剣を私に突き刺す……と?」



女兵「……いや……お前には捕虜になって…貰う……」

猫盗賊「女兵、体は大丈夫~?」


女兵「……全く……新妻や魔法使いに助けられるとはな……」

新妻「当然の事ですよ。仲間なんですから……」

女兵「……男兵相手だったとしても、それと同じ事は言えたのか?」

新妻「!?……と、当然です!!仲間に性別なんか……関係ない……」


ミドリ「……捕虜?私を……」

女兵「ああ、悪いが、魔王との戦いに向けて人質にする。」

猫盗賊「あ、悪どい!!女兵、勇者様が怒りますよぉ!?」

女兵「いいんじゃね?こんな可愛い娘を捕虜にするって言ったら喜びそうだがな………あの勇者なら……」





魔王「……ここに居たか。女兵よ……」

猫盗賊「女兵の知り合い?」

女兵「…………あぁ。確かに一度会った事があるな……」

新妻「お、男の人………」

魔法使い「……凄い魔力を感じます………この人……」



魔王「……女兵。勇者の力はどうした?まだ奪えきれてないようだな……」


エルフ「ミドリ!?勇者様!ミドリが……」


魔王「ん?あぁ……ミドリ。平気か?」


ミドリ「………魔王様……」



新妻「え!?あ、あれが魔王!?」

猫盗賊「人間じゃんか!?」

魔法使い「……この人が……魔王……」



エルフ「!?……あの魔法使いは……」



女兵「勇者の力?欲しけりゃくれてやるよ!!
おらあああ!!!」


ザァアアアアン!!!!


魔法使い「きゃっ!?お、女兵さん!?こんな力が……」

エルフ「……く……既にこれほどの力を……」


魔王「……ほぉ、中々集めたじゃないか……。しかし、まだまだ……」

女兵「その首、落ちろ!!!!」ビュン!!

魔王「……何!?」

ガキン!!

エルフ「!?ゆ、勇者様!?」

魔法使い「女兵さん!?そんな、いきなり突っ込むなんて……」



魔王「……かなり交戦的な女だな………」

女兵「……はぁ……くそぉ……体調が良かったら……」

魔王「面白い!面白いな!!」ガシッ!


女兵「ぐっ!?……くそ……」


魔法使い「女兵さん!?
魔王!!女兵さんを放せ!!」

ミドリ「……魔王様の邪魔はさせません!!」バキッ!

新妻「あっ!?光の鎖が……!?」

魔法使い「ミドリさん!!邪魔しないで!!」

ミドリ「あなた達こそ、魔王様の邪魔をしないでください!!」

魔王「女兵……お前は強い……そして……綺麗だ……」


女兵「……お前は……弱くて……ムカつく!!」


魔王「……女兵。我が妃になる気はないか……?」


エルフ「!?……勇者様……そんな……」




女兵「……死ね……」


魔王「……はは。私の魅力に気付くのには多少の時間がかかるだろうな。
……いいだろう。私は待っているぞ。お前が勇者の力を完全に奪った状態で、私の下にくるのを……」


女兵「……はぁ……待たなくていいさ……今ここではっきりさせて………はぁ……」

魔王「……いい表情だな……女らしい表情だ…」

女兵「……病気で……顔が火照っただけだ……って………」


魔王「お前の目………綺麗だ………美しい……」


女兵「てめえの目だって………はぁ……綺麗だよ!!!ガリッ!!」


エルフ「ゆ、勇者様!!?」


魔王「……そうか。噛り付きたくなる程、私の目は魅惑的だったか……」

女兵「グチャ……ぺっ!不味いし……てめえの眼球なんか……」

魔王「安心しろ……片目だけでも、お前の美しさは理解できるからなっ!!」ドゴォン!!

女兵「っ!!!……弱ぇ……腹パン……だな………なまちょろ……」


魔王「……はは…」ゴキッ!!

女兵「っ!!……くっ…右腕の……一本ぐらい……」



エルフ「……勇者様……もう……やめて……」

魔法使い「お、女兵さん!!?」

新妻「え!?何!?今、何をやられたの!?」

ミドリ「………魔王…様……どうしてそんな酷い事を……」



女兵「……はぁ……はぁ……」

魔王「……どの歯だ?どの歯が私の顔に楯突いたのだ?この歯かっ!?」ボキッ

女兵「がっ!!?………痛い……し……」


魔王「……ははは……いい表情だ!可愛い!可愛いぃ!!我が花嫁よ!」


女兵「……お前の顔……見てると……吐きそうになるんだが……」

魔王「……そうか。利き目はどっちだ?左か?」ザクッ!!

女兵「っ………はぁ……は、ハズれ……俺は右利き……」


魔王「ん?反応が浅いな……………」ボキッ!

女兵「……はぁ…はぁ………」

魔王「……左腕……痛くはないのか?」バキッ…グシャ……ブチッ!!



女兵「……くっそぉ……俺の左腕……脆っ……そんな簡単に……取れる…とか……カルシウム不足……か……」


魔王「……そうか。もう痛みすらまともに感じていないのか……?」

女兵「……おかげさまで……今なら……針千本……熱湯風呂も……怖くないな………
女勇者とベッドを………一緒にするのも……

今の俺……最強……無敵……」


魔王「……両腕両足、全部の骨を折られて、左目潰された状態で……か?」


女兵「……ついでに…左腕は……独立してるし……体から……」




エルフ「……勇者様……やめて………もう酷い事は……

彼女は、あなたの花嫁なんでしょ……?」



魔王「……ああ。花嫁であり、私の可愛い人形だ……。」


女兵「……人形……確かに……そうなのかもな………

はは………」


魔王「……何か嬉しい事でもあったか?」

女兵「……もう……いいや………」

魔王「………?どうした……」

女兵「………ブッ!」

魔王「!!目が……くそ、何を吐いた!?」

女兵「…歯………お前が……折った……」



魔王「……この……まだ抵抗するとは……」





女勇者「くったばれぇええ!!!!魔王!!!」

ザクッ!!

魔王「!!?……ゆ、勇者か!?」

女兵「……うっ……」

女勇者「女兵!!大丈夫!?」ガバッ

女兵「……お前に……抱き抱えられるとか……俺も終わった……?」


女勇者「……あれ?女兵ちゃん?左腕は?
右腕も変な方向に曲がって………右足も……左足も……」


女兵「ついでに……左目も……ちょっと……な……」

魔法使い「…………酷い……酷過ぎます!!こんな……」

猫盗賊「嘘……これが……女兵さん……なの……?」

女兵「おいお…い……猫……俺が……人形に…でも……見え……るか……?」


猫盗賊「だって……腕とか足とかが……そんなの……!!?」


魔法使い「やめて!!言わないでよぉ!!お願い!!言わないで!!」



女勇者「………女兵ちゃん。
……後で………ね。」


女兵「……はぁ……はは……俺が……生きてたら……な……」



女勇者「……………魔王。どういうつもり?女兵ちゃんをそんなに虐めたかったの?」

魔王「……………

…………なんだ、それは?」

女勇者「……え?」

魔王「なんなんだ?その汚らわしい物体は!?」

女勇者「物体……女兵ちゃんの事?
あ、あんたね……自分でこんな風にしといて……」


魔王「……私が?私が彼女を、女兵をそうしたのか!?
なんだと……
エルフ!本当に私がやったのか!?」


エルフ「………いえ、私はそのような事など、見ていません。」

女勇者「……お姉さま……」

エルフ「……………」


女勇者「……やっと会えた……私のお姉さま……」


魔王「?……エルフ?こいつと、勇者と知り合いなのか………?」

エルフ「……いえ、私は………」

女勇者「やっと、やっと私!!勇者になったんだよ!!お姉さま!!」

エルフ「………」

女勇者「だから、もうそんな男についていかなくても!!!私が勇者なんだよ!?だから、私についてきてよ!!!」


エルフ「……やめて………」

女勇者「……どうしてよ?どうして?なんでまだそんな男のところに居るの?

勇者はあたしだよ?あたしなのに……。
そいつ、そんな男!もう勇者じゃないじゃん………」


魔王「……勇者。お前、さっきから何を……」

女勇者「……てめぇは黙ってろ。後で殺す。全身の肉を細切れにして、骨だけになっても女兵ちゃんに土下座させてやる。


お姉さま。ひょっとして、私がハーレムとか作ってるから、怒ってるの?
心配ないよ。私、そんなへなちょこ勇者の継ぎ接ぎハーレムなんかよりも完璧なハーレムを作ったよ?」


魔王「なっ!?」

女勇者「あたし、こんなクズ野郎にお姉さまを盗られて……悔しかった。

お姉さまはあたしだけを好きでいてくれたはずなのに………
小さかったあたしは、本当にお姉さまだけを愛してたんだよ……?」


魔王「………どういう事だ……?エルフ……」

エルフ「ち、違うの……!!落ち着いて!女勇者ちゃん!!別に私はあなたの事を……」


女勇者「まさか、スキンシップだったっていうの……?

あれが?あれが?あんな激しく愛し合ったのがぁあ!!?
そんなワケないよね?お姉さんと妹のちょっと大人な遊びってレベルじゃなかったじゃん!!

少なくとも、私は本気だった……

私は……お姉さまの事を……子供ながら……大人以上の思いで………」

魔法使い「……勇者様?」

猫盗賊「勇者様の様子が……変……」

新妻「…………」

メイド「……あんな勇者を見る羽目になりますとは……」

女兵「……メイド……」

メイド「……はい?」

女兵「俺……少し眠るから……後で……勇者の過去バナ……聞かせて……」

メイド「……任せてください。家政婦はご主人様の裏事情に精通する職業ですから。」





女勇者「……でも、ようやく私は勇者になれた。私からお姉さまを奪った、勇者って存在に……。

そして、私はそのへなちょこ以上の勇者になるって決めたわ!!

あんた以上に強くなって、活躍して、女の子だらけのハーレム作って……

そして……お姉さまを取り返すんだぁ!!!」


魔王「…………」

エルフ「………ごめんなさい……女勇者ちゃん……」

女勇者「……………

てな感じで、旅立ってはみたものも、勇者ってのは案外上手くはいかないんだもんねぇ~♪


挙げ句の果てに、一番信頼してた仲間を殺されかけるんだから………」


新妻「ゆ、勇者様ぁ!?やっぱり……女兵ちゃんの事が一番………」


女勇者「………私!!ふざけた気持ちでハーレムなんて作ってないわよ!!
誰かが悲しむ様なハーレムは作らない………

皆を……私は皆を愛するのだから!!誰一人見逃さない!!
料理がおいしい新妻ちゃんも、毒舌なメイドちゃんも、ちょっと怖い魔法使いちゃんも、可愛いロリロリな猫盗賊ちゃんも!!

そして、最初に私の仲間になってくれて、まるで運命の様に私の前に女化して現れてくれた……女兵ちゃんも!!!」



新妻「……勇者様……」

メイド「ふふっ、大したハーレム王ですね。」

魔法使い「……え?あ、あの……私もハーレムに入ってたの……!?」


女兵「……zzz」

猫盗賊「ゆ、勇者……////」

女勇者「……んでさぁ~、魔王様ぁ~♪」


魔王「……ふふっ、今回の勇者が……まさか、エルフの……な………」

エルフ「………あ、あの……」

魔王「それで、エルフはどうするつもりだ?勇者があんなにもラブコールを送ってきているのだが………」

エルフ「わ、私は!!あなたについていきます!!ついていきますから……!!」


魔王「……そうかぁ。感謝する。エルフよ……」


女勇者「………死ね。魔王………」

~商業と交易の都市、臨海公園~


アオミン「はぅ~♪可愛いぃ~♪」

吸血姫「よ、寄るな……このぉ!!」ギュッ

シスター「あぁ、このような美しい吸血姫様が私の身体に抱き付いてきて……神よ。私も他人に必要とされる存在になれたという事なのですね……」


吸血姫「シスター!この女をなんとかしてぇ~!」

アオミン「うふふ……可愛い……」



ミドリ「アオードミンファーさん!!」

アオミン「あらぁ?ミドリさん。どうなさいましたぁ?」

ミドリ「魔王様が勇者と……」

アオミン「あらあらぁ~。大変ですわぁ~。どうしましょうか?」

吸血姫「た、助けに行かれてはいかがかしら……?」

アオミン「はい。……でも、私、今はあなた様の事が気になっていますし……」

吸血姫「はぁっ!?そ、それでも魔王の部下なわけ!?」


アオミン「それに、エルフさまとは違って、私はあまり魔王様が好きではありませんしぃ~。

あ、帝国軍は嫌いですけどねぇ~。」


ミドリ(………あ。あっちにクラーケンが倒れてる。

……ミンファーさんも負けたんだ………。)







~商業と交易の都市、市街地~

死神松「ホワイトさんが消えちゃったね……」

死神竹「死んだの?」

死神梅「分かんなぁ~い。」



射手「あ、あ、あの子供達!!う、浮いてますぅ~!!?」

女侍「……バリバリ(煎餅をかじる」


死神梅「あー、お煎餅だぁー」

女侍「………食べる?」


死神松「やったぁ~♪も~らい!」

死神竹「あーずるい~!」

死神梅「くたばれぇ~!」


射手「……き、消えちゃった……?」

女侍「……成仏?南無~」

まあ金って柔らかい金属だし儀礼用とかなんだろうな
魔王もそういう目的で作ったけど知識のない今回の魔王や勇者は勘違いしてるとか
もしくは人間の鍛冶技術があまりにもへっぽこ過ぎて金で作ったものに劣るとか

>>194
言い訳させて貰うと
加工技術?的なものがあまり発展してないから

それにあまり頑丈ではないけど、侍のは鉄刀だったから、鉄よりは金の方がマシ……程度の事です

その程度の事です

~女勇者の幼少時~

女勇者「お姉さまぁ~♪」
エルフ「……あぁ、また来たの?あなたは……」

女勇者「うん!今日もお姉さまといっぱいお話がしたいからぁ~♪」

エルフ「………ふふ。そうねぇ、今日はどんなお話をする?」

エルフ(……毎日毎日、私の家に……。
私はエルフ。ただでさえ、人間はあまり近寄りたがらないのに……どうしてこの娘は……)





女勇者「お姉さまぁ~♪」

エルフ「……ど、どうかしました?」

女勇者「今日ねぇ~、学校で一番の成績を残したのぉ~♪」

エルフ「……一番?あぁ、学年で一位になったのね?」

女勇者「ん~とねぇ~、とにかく、私、学校の誰よりも“ゆ~しゅ~”だって、先生が言ってたぁ~♪」


エルフ「……え?学校で一番?……あなた、学年は確か……」

女勇者「小等部2年だよぉ~♪」

エルフ「…………」







女勇者「それでねぇ~、今日は学校でねぇ~、高等部の強いお兄さんと竹刀で戦ったんだぁ~♪」

エルフ「……そ、それで……まさか、勝ったの!?」


女勇者「ううん……負けちゃった………」

エルフ「……そぉ……残念……ね……」

女勇者「うん……もう少しだったんだけどね……」






「あのー、すいません。」

エルフ「はい?」

女勇者「あ、先生ぇ~。どうしたの?」

「私……この生徒の担任なのですが……」

エルフ「……はい。あの……何か……?」

「彼女……とにかく凄い生徒なんです!優秀なんです!!優秀過ぎます!!
知識や博学も専門家並ですし、武術のスキルも大人の兵士も凌ぐ腕前なんです!!まだ10歳も越えない子が………

エルフさん!いつも彼女と一緒な居ますよね!?……何か、魔法や薬などでもかけていたりしませんか……?」


エルフ「…………」

エルフ(……この娘……ただの人間じゃない……

………間違いないわ……勇者の力を受け継ぐ……)


女勇者「お姉さまぁ~?どうかしたの?」

エルフ「……い、いえ……。
ねぇ……あなた、たまに極度な正義感を感じたりしない……?」

女勇者「?……正義……?」



エルフ(……彼女が……勇者……?こんな小さな娘が………


私達神に最も近いと言われるエルフ、そして神の力を受け継ぐ勇者の血……
この2つは惹かれ合い、いずれは結ばれるもの……

まさか……彼女が私のところに来る理由って……彼女が……勇者の血が本能的にエルフである私を求めている………?


……いえ、彼女はまだ小さな……しかも……女の子……


それに……私は彼女の事なんか………そんな風に考えたことなんか……)



女勇者「お姉さまぁ~♪だぁ~い好き♪」

エルフ「え!?ええ!?あなた、今、なんて……」

女勇者「私、お姉さまと結婚したい!!私、お姉さまが大好きだから……」


エルフ「……わ、私も……あなたの事が大好き………よ………」


エルフ(……あれ?私、今何を考えたの……?)

エルフ「……ねぇ…」

女勇者「ん~?何ぃ~?」

エルフ(……やめなさい……私!!そ、そんな事を……こんな小さな子に……)


エルフ「……ちょっと、私の私室に行きませんか?」

女勇者「?いいよぉ~♪何するのぉ~?」

エルフ(……やめて……やめて……私……やめて……!!!)

エルフ(……私は……エルフの本能に従がった……?

エルフと勇者は結ばれる

勇者の近くに居れば、私…エルフは自然と勇者の事を………



だから何!?こんな小さな子に…………)



女勇者「………はぁ……はぁ………おねぃ……さま……?」

エルフ「……何……かしら……?」

女勇者「……てへっ♪……」

エルフ「……ゆ……勇者様…………」









女勇者「お姉さまぁ~!」

エルフ「……ゆ、勇者様……?」

女勇者「?……勇者?私の事なの?」

エルフ「え!?い、いや………」

女勇者「お姉さまぁ♪今日は街で一番の成績だったんだぁ~♪凄いでしょぉ~?」

エルフ「す、凄いわ!!それなら、何かご褒美をあげないと……」

女勇者「え~と、じゃあ、この前みたいなのやってぇ!!」

エルフ「………え……」

女勇者「お姉さま、あの時のお姉さま!凄く可愛かったんだぁ!!私も……楽しかったし……
私!!お姉さまがいいって言うなら、毎日やって欲しいなぁ♪」



エルフ「……………い、嫌………」

女勇者「………?お姉さま………?」

エルフ「……毎日は無理………3日に一回……ぐらいなら……」

女勇者「うわぁ~♪お姉さま!!ありがとぉ~♪」



エルフ(………私……私………私………

何も間違ってはいないわよね?
彼女は……勇者なのだから……

エルフである私と結ばれるのは……神が定めた事………)

エルフ(………今日、街に現れたあの男の人……

おっちょこちょいで、すぐ転けて、倒れながら私に抱き付いて、私の胸を揉んで……

最低な人でした……



でも、他人に優しくて、正義感にあふれて、私なんかが落とした財布ごときを真剣な眼差しで探してくれて……

何より、彼と一緒にいる女の子達……とっても嬉しそうな笑顔で……楽しそうでした……

あれが、勇者様ご一行……

あの人が……一見頼りなさそうなあの人が……勇者様……


一目で分かった

あの人が勇者

あの人が、私と、結ばれるべき人………)




女勇者「……お姉様……?どうしたの?さっきから、うっとりしてる……。」

エルフ「……ねぇ、あなた、“勇者”……って知ってる……?」

女勇者「うん。今朝会った、あのひ弱な男の事でしょ?お姉さまも街の皆も“勇者”って呼んでたじゃん?」



………………………………

女勇者「……お姉さま……あの“勇者”って人とどこかに行っちゃうの?」

エルフ「……うん。それが……私の使命だから……」


女勇者「使命って、大事な事なんだよね?それなら、仕方ないよね。
……でも、また会えるんでしょ?」

エルフ「……ええ……必ず、また会いましょう……」



女勇者(……お姉さま……行かないで……行かないでよ………

お姉さま……お姉さま……お姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さま…………お姉さま…………

~女勇者の旅立ちの日~



女勇者(…………

私は…………選ばれた

元より超優等生だった私だが、17歳を越える頃、遂に勇者の力を発揮しだした

やっぱり、私は選ばれし人間だったんだ!!

勇者になれたんだ!!


だから……最強の勇者になるんだぁ!!!


そして、お姉さまを奪ったあの屑を越えるハーレムを作って、魔王もさっさとやっちゃって………

お姉さまを……取り戻してみせる!!!


だから、まずは優秀な部下を見つけないと。

あ、優秀ってのは強さがってワケじゃないよ?

私がこんなに強いんだから。

強さなんかより、可愛い女の子の仲間がいい!

そぉ!女の子!!
女の子ばっかのパーティーで、魔王の城までウハウハ冒険~♪)



女勇者「んで……帝国がよこした超優秀な兵士ってどこに居るんだろぉ~?
きっと超優秀なんだろぉ~なぁ~♪


あの~。あんた、帝国の兵士よね?」


男兵「ん?ああ。やっと来たか勇者様。」

女勇者「帝国が私に派遣してくれた超優秀で可愛い護衛ちゃんをどっかで見かけなかった?」


男兵「……………。
それ、多分……俺の事……」


女勇者「え?あ~。



え?
え?
はぁああああ!!!!?
あんた、男じゃん!?」

男兵「……え?ま、まぁ………」

女勇者「どぉおゆぅう事なのよぉ!!?なんで勇者の旅の護衛が男なのよ!?」

~女勇者の旅立ちから3日後、街外れの街道~


女勇者「………。」

女勇者(……あいつ、巨大熊と降りてきたのって、男兵!?

つか、目が痒い!!熊の血!?この液体!熊の血なのぉ!?)


男兵「……ふぅ~……」


女勇者(……………

………カッコいい……

なんていうか、私の理想像の戦士………

敵の骸の上に立って、勝利を肌で感じているその姿……

カッコいい!!

戦士だ!!あいつこそ、戦士だ!!


やっぱ、戦士はこうでなくっちゃぁ~♪


あんの、へなちょこ勇者とワケが違うわぁ~……)



女「……って、私の身体が血だらくじゃん!!

ぎゃああ!!」





~街外れの洋館、浴場~

魔法使い「……ふふ。お姉さん♪」

女兵「ちょっ……マジでやめてくれ、その呼び名……」


女勇者「え?何々?魔法使いちゃんだけ、女兵ちゃんを独り占めするの!?」

女兵「……お前は入ってくんな……」

女勇者「ずるいぃ~!女兵ちゃんは私のお姉さまでもあるんだからぁ~♪」

女兵「うわ……キモっ!お前は二度とそんな呼び方するな!!」

女勇者「なんでよぉ~?私のお姉さまになってよぉ~?カッコいいお姉さまぁ~♪」ギュッ

魔法使い「あ、ず、ずるいです!!私も抱き付くぅ~!!」ギュッ

女兵「!?お、お前らなぁ……!!」

~現在、商業と交易の都市~

…………………………


女勇者「………魔王………」

魔王「………勇者……そんなに殺気だって、よっぽどエルフやその女兵のことが大事か………?」


……ザクッ!!


魔王「っ!?……い、いきなり斬り掛かるとは……」


女勇者「う゛らぁあ!!!」ズバッ!!


魔王「うぐっ!?……この、調子に乗るなぁ!!」ドゴォン!!!

女勇者「でぃやぁああ!!!あ゛ぁああ!!!んがぁあああ!!!!」ズバッ!ズバッ!!ドスン!!!


エルフ「勇者様!?………女勇者ちゃん………なんて怖い顔………」



メイド「……勇者様……あれでは、ただの獣です。」
女兵「……いい顔だな……相手を倒す事しか……考えないって感じだな……」



魔王「くそっ……深き闇の炎よ!!!勇者の生命の光を焼き尽くせ!!」ゴォオオオオオ!!!


女勇者「ぐっ!!!」シュン



猫盗賊「は、早い!?ゆ、勇者ってあんなに素早かったのかぁ!?」

メイド「……受けては致命症になる攻撃はちゃんと避けているのであります……」

新妻「ゆ……勇者様………やめて……」




女勇者「うがぁああ!!!」ザクッ!!

魔王「っ!!?……がぁあ…このぉ……!!!」グサッ!!

女勇者「っ!!?あ゛ああああ!!?……でめぇ……ごろす!!!ぐだばれ!!!」



エルフ「……やめて、やめて、やめて…………勇者様………女勇者ちゃん………」

シスター「え?では、今の魔王は前回の勇者なのですか!?

そんな……どうして……」

アオミン「勇者となる者は勇者の血筋を受け継ぐ者達が、ある瞬間に覚醒すると言われます。

それに対し、魔王はこの世の誰もがなりうる存在。
この世界で大きな恨みと憎しみを抱いて魔界に落ちた者の成れの果て……と言ったところでしょうか。

特に、勇者様は元より強力な力を持っていましたし……、かなり凶悪な魔王と化しました。」


吸血姫「憎しみ……?勇者が、憎しみを抱いて魔界に落ちたと言うの?」


ミドリ「………断言させてもらいます。勇者様は憎しみは愚か、一つの負の感情を抱いてなんかいませんでした。」

吸血姫「あらぁ、ならどうして、前回の勇者は魔王となったのかしら?」


ミドリ「………エルフ様が……勇者様の亡骸を魔界に落としたのです。
ご自身の帝国に対する恨みを添えて………」

シスター「エルフ……って、修道院に居た、あのお方が……?」


吸血姫「なるほどですわ。勇者自身のではなく、他人の憎しみを持って、勇者は魔王となったのですわね。

でも、エルフはどうして帝国を憎んだのかしら?」



射手「……やっぱり、勇者が帝国の手によって殺されたからですよね?」


シスター「射手様にお侍様。あの……今の話……」


ミドリ「………魔王が倒された以上、帝国にとって勇者という脅威はやはり目に付く存在だったのです。

特に、私達の勇者様は、貴族でも軍家でもない、その辺の素性の分からない平民の家の青年でしたから……。

帝国は、勇者が自分達の国に牙を向けまいかと恐れました。」


射手「何より、勇者が魔界に落ちて強力な魔王となる事も恐れたんです。
だから……勇者を殺した……」


アオミン「……私達は知らなかったけど、エルフは勇者様と一緒に居ました。だから、帝国の兵士が攻めてきて、勇者が殺されるのを目の前に見ていたのです。」


吸血姫「……そぉ。そういう事なら、エルフさんが帝国を憎むワケも分かるわね。」


ミドリ「………でも、勇者様は優しいお方でした。
帝国にそんな目に合わされても、決してこの世界の事を憎んだりしませんでした。

だから、今の帝国を憎んでいる勇者様……魔王様は、私達の知っている勇者様とは全くの別人!

魔界の邪悪な悪霊達の怨念が勇者様の肉体に取りついた、ただの魔王なんです!!!」

女侍「……ムシャムシャ……」


アオミン「エルフ様も後悔しています。人格すら整わない、冷酷で見る影もない勇者様が復活してしまったのですから……」

シスター「……でも、勇者様は素晴らしい徳の持ち主だったのですね。
帝国に命を奪われても、帝国を恨まないなんて……」

ミドリ「………ええ。あの人はどごまでもお人好しの……」


射手「……あの~、実は私も勇者の殺された現場近くにいました……」


ミドリ「!?お、お前が勇者を……!!」

射手「い、いえ!!私は知らなかったんです!!勇者を殺す計画は上官達は知っていましたが、私を含む大勢の兵士は知らずに現場に向かわされたんです!!

そしたら……最初は帝国は勇者一人に大群をけしかけようとしたのですが………勇者様の方が一騎討ちを所望しまして……」


アオミン「……い、一騎討ちを?それは本当なのですか!?」


射手「はい。帝国の兵士を無駄に斬りたくないからとか、帝国側の優秀な兵士と一騎討ちをしたいと……」


吸血姫「勇者と一騎討ち……どんなバカがそんな無茶をなさいますの……?」


射手「それが、数人の兵士が名乗りを上げて。皆階級はバラバラでしたが。

結局、その兵士達と勇者様が決闘をして……。

いえ、この決闘も、数人の兵士が一人ずつ勇者と剣を交えるという、ちゃんとルールに添った決闘で……」

吸血姫「結局はリンチじゃないかしら?」

ミドリ「……いえ。勇者という強敵相手に、順番に一人ずつが一騎討ちを行うという戦い方は異例です。」

アオミン「どのみち、勇者が勝っていたとしても、帝国は疲れ切った勇者を攻めていたでしょうね。」


射手「……ですが、最後の兵士が、かなりの猛者で、一人で勇者様を倒してしまったんです!!もちろん、勇者様も連戦で疲れていたとは思いますが……」


アオミン「……初耳です。エルフは、勇者の死の状況を詳しくは話してくれませんでしたし……」

ミドリ「…一騎討ちでの死。それが、勇者が帝国に恨みを持たずに死ねた理由と言うのですか?」

射手「……どんな戦士にとっても、一対一の戦いで強敵に敗れる事程の立派な死に様はありませんから……」

アオミン「……兵士の価値観は理解できませんね……」


シスター「でも、勇者様に勝つなんて、凄い兵士さまですね!!まさに、神に選ばれし戦士!!」

吸血姫「……どちらかというと、神に選ばれていたのは勇者の方でしょ?」


ミドリ「それで、勇者様を倒した兵士というのは!?」


射手「……いえ、それが分からないんです。隊長も、最機密事項だって……。

ただ、勇者様に挑んだって兵士さん達は、“勇者超越思想”っていう人達だったそうです………」

女兵「……メイド。」

メイド「……はい?」

女兵「……ちょっと俺の足を持ち上げて……」

メイド「はい。……こうですか?」

女兵「痛たたぁ!!?」

メイド「あ、すいません。
あら?女兵さん。足の感覚が……」


女兵「………右腕も温かくなってきた気がするな……。
さすがに左目や左腕が生えたりはしないだろうが、体の治癒力は上がってるみたいだな……」




魔王「………ぐぬぅ………」

女勇者「はぁ……はぁ………」

魔王「………勇者……さすがな力だ……」

女勇者「はぁ…はぁ………しゃべんなぁあああ!!!」

魔王「……だが………お前の弱点は……分かっているぞ……?」

女勇者「くたばれ!!死ねぇ!!!」ザッ


魔王「………ふふふ……我が部下達よ。我の盾となれ……」

女勇者「………!?」




戦乙女隊長「……はぁ……はぁ……魔王様…」

兵士女「……魔王様……」

戦乙女A「……はぁ……」

女勇者「……な、なんなの……これは……」

魔王「……それが………お前の弱点……“女”だ……」


女勇者「……これが……私の弱点……?」


戦乙女隊長「……勇者……魔王様に逆らうなんて……」

兵士女A「愚か……です……」

女勇者「……あ、あんた……さっきオークから助けた女の子兵士じゃん……」

兵士女A「……私は……魔王様の……物……」

女勇者「あ、あんた!?好きな人が居るって……言ってたのに……」

兵士女A「……私の全ては…魔王様の物……人間の男など…眼中にない……」




女兵「……嘘だろ……ヴァルキュリアの隊長……?」

魔法使い「お、落ち着いてください!!勇者様!!その人達は操られてるだけ………」



女勇者「………分かってる………分かってるけど……」

少女A「勇者のお姉さん……大人しくしてて……」

少女B「……魔王に逆らっちゃ……ダメだよ……?」


女勇者「……こんな……小さな子まで………」


店員B「……勇者さま……私、静かにしている勇者さまが好きです……」

店員A「……そんな暴れてないで……大人しくしていましょう……?可愛いんだから……」


女勇者「………あの時の……服屋の店員……?」



女兵「勇者!無闇に攻撃しないのと、大人しく捕まるのとじゃワケが違うぞ!!?」


女勇者「……………


…………無理……」



魔王「………勇者?どうした?」


女勇者「………こんな……女の子に囲まれて……楽しいはずの状態なのに……
お前がいるせいで、楽しくもなんともねぇんだよぉお!!!」

魔王「……くっ……」


女勇者「魔王以外は知らない!!魔王だけぶっ飛べぇえええ!!!」

ザァアアアアアア!!!!!!!

魔王「……ぐっ!?」

エルフ「勇者様!!……輝く光よ、壁となりて我らを包め!!!」ピカッ!!


女勇者「お姉さま……そんな奴を……」



戦乙女隊長「勇者……死ねぇ!!」

女勇者「!?や、やめて!!」

兵士女「死ね!死ね!!勇者!!」




女兵「……隊長、悪ぃ……」ザクッ

戦乙女隊長「うっ!?……ぁ…………」ドサッ

女勇者「お、女兵ちゃん……!?」


魔王「女兵……戻ったか……わが花嫁……」


女兵「……あー、体がグラグラするわ。どっかの魔王が両足を折ってくれたせいで……」

女勇者「女兵……いまの、ヴァルキュリアの隊長を……!?」

女兵「心配すんな。足を斬ってやっただけ……」

女勇者「……あ、あんた……知り合いなんでしょ!?どうして……」

女兵「…………勇者。」ギュッ

女勇者「!!!……あ……あ……あんた……何を……」

女兵「いや……バランス崩して倒れただけ……」

女勇者「……女兵……体は?」

女兵「お前から吸い取った力のおかげで……結構早く回復してる……」

女勇者「……そぉ……助けてくれて悪いけど、魔王はあたしが倒す……」


女兵「……どうぞ。俺は、後ろを守ってやるから……」


女勇者「ねぇ………魔王倒せたら、あたしの事を褒めてくれる?」

女兵「……ああ、もちろん……」

女勇者「………ご褒美くれる……?」

女兵「………それは、後で交渉してくれ……」

女勇者「……なんでよ……?」

女兵「どさくさに紛れて変な約束をしたくないんだよ……悪いな……」

女勇者「………なら、とりあえず一つだけお願い……」

女兵「……なんだ?さっさと言え……」

女勇者「………これから、“お姉さま”って呼ばせて………」






女勇者「……魔王……」

魔王「……勇者……」

女勇者「…………お姉さま……」

エルフ「………くっ……」

女勇者「……いえ、エルフ!魔王の部下のエルフ!!あなたは、あなた達は、私が倒す!!
特に魔王はたたっ斬る!!!」

エルフ「……女勇者ちゃん………」

女勇者「……エルフ……もう、あたしには、あなたは必要ない………
あなたなんて目標はいらないわ………
私の目標は………随分前に変わってたの……」


エルフ「……そぉ。あなたの目標……さぞかし高いものなのでしょうね。
……女…勇者様……」





戦乙女隊長「……魔王様には……手は出させん……」
女兵「……隊長。勇者様の邪魔をするんなら、もうこっちも手加減しないぞ……?」


新妻「光よ!降注いで、悪き者達の檻となれ!!」ピカッ!!……ガシャアアン!!!!!

戦乙女A「ぐっ!?……」
兵士女「……ま、魔王様……」


魔法使い「氷結の舞!!動く物は皆凍って静止しなさい!!」カチン!!!!!

店員A「………」
店員B「………」


魔法使い「女兵さん!!私達も!!」

新妻「勇者様の邪魔はさせません!!」

女兵「……サンキュ……恩にきるぜ!!」





………………



女兵「……………う……う………

………あ?……ここは……」

シスター「………気が付きました……?」

女兵「……あれ?シスター……か……。ここは……一体……」

シスター「修道院のベッドです。女兵さまは半日も眠っていらっしゃいました……」

女兵「……どうりで、体が重い……」ズシッ

女勇者「………スー…スー…zzz」

女兵「…………重いと思ったら、こいつが上に寝そべってたのかよ……」

シスター「……勇者様は女兵さまをずっと看病していました……。
本当に、心配そうに……」

女兵「………あれ?あの後……魔王はどうなったんだっけ!!?」

シスター「……覚えていないのですか?」

女兵「……全く………」

シスター「そうですか……。魔王は消えました。どこかに……。
そして、エルフ様が……」

女兵「あの魔王の近くに居たエルフか……あいつはどうなったんだ!?」



女勇者「………お姉……さま……ごめんなさい………ひっぐ……」



女兵「……?勇者?寝ながら泣いてる……?」

シスター「…………。エルフ様は死にました。魔王を庇って………勇者様の一太刀を浴びて……」

女兵「…………そっか………」


シスター「女兵さんのお斬りになられたヴァルキュリアの兵士さん達ですが……皆さん無事だそうです。」


女兵「当り前だろ。ちゃんと、急所は外したんだから。……隊長のは、ちょっと危なかったけど……」


シスター「………その~、女兵さま。」

女兵「……ん?なんだ?」

シスター「勇者様を……どうか、勇者様に声をおかけ下さい……。
勇者様、随分と悲しんでおられましたから……」


女兵「……分かった。勇者が起きたら、きっちり愚痴を聞いといてやるよ。」


シスター「……ありがとうございます。

では、失礼します。」






女兵「……声を……か。何を言ってやればいいんだ……?」

~商業と交易の都市、修道院~


女勇者「…………う……うぅ………」

女兵「…………」

女勇者「……ひっぐ……ひっぐ……」

女兵「…………お前でも、泣く事があるんだな……」

女勇者「……………い、いつから起きてたの?」

女兵「お前が起きるずっと前。寝ながら泣いているお前も、起きても顔を埋めて泣いていたお前も全部見てた。」



女勇者「………ひどい……ひどいし…………」

女兵「……何が?」

女勇者「…………私の……恥ずかしいところ……見やがったな……このぉ…」


女兵「……人の寝てるベッドに顔を埋めて泣くからだろ……」


女勇者「………女兵ちゃん。体調は?」

女兵「……いい感じ。左目と左腕以外は。目や腕はいつになったら生えるんだろうな……」

女勇者「………ごめんね。あたしがぼーっとしてたから……守ってあげられなくて……」


女兵「……いいよ。んな事………」


女勇者「………ねぇ。」

女兵「ん?どうした?」

女勇者「………約束、覚えてる?」

女兵「え?……ああ。俺の事を……“お姉さま”って呼びたいんだろ?
いいぜ。別に……」


女勇者「………お姉さま………」

女兵「……さっそく呼ぶのかよ………」

女勇者「私……お姉さまを殺しちゃったよ……」




女兵「……その“お姉さま”ってんのは、エルフの事か?」

女勇者「私……お姉さまを守れなかった………あの魔王から……取り返すはずだったのに………」


女兵「……気にすんな……。あのエルフ、魔王につく時点で多少は死を覚悟していただろうし……」


女勇者「………ねぇ、お姉さま………」

女兵「………ああ。それは俺の事か?どうした?」


女勇者「………私、頑張ったよね?

魔王は倒せなかったけど、魔王の悪い部下のエルフは倒したんだよ……?」

女兵「……ああ。頑張ったな………お前……」

女勇者「なら、何かご褒美をちょうだい!!」

女兵「……あ、ああ。そうだな。何がいい?何が欲しい?」



女勇者「………お姉さまの……可愛い姿が見たい……」


女兵「……可愛い……姿……?」


女勇者「……うん…」ギシ…ギシ…

女兵「……お前……何、他人のベッドに上がってきて………!?」


女勇者「……お姉さま……私、お姉さまと…………」


女兵「………おい……お前、いつもと目が違うぞ……?」



女勇者「……お姉さま……お姉さま………」


女兵「…………………」



ガバッ!!

女兵「!!?……だ、抱き付き!?」

女勇者「………お姉さまの胸の中……温かい~♪」


女兵(……あ、あれ?今、明らかに勇者は…………)

女兵「……勇者……?」

女勇者「………ん~?」

女兵「……今、明らかに俺を押し倒す気だっただろ?」

女勇者「………………かもね~♪」


女兵「……なんで止めたんだ?お前、俺に抱き付きたかったワケじゃないんだろ?
本当は…………」


女勇者「……気分だよ。気分~♪
私だって、年がら年中、性欲の虜ってワケではないのさぁ~♪」


女兵「……………」

女勇者「あ~♪お姉さまの胸の中ぁ~♪」



女兵「……勇者……。お前……人生最大のチャンスを逃したな………」


女勇者「………どういう意味………?


え?え!?ひょっとして、女兵ちゃん!?い、今、私に何をされてもオッケーって状態だったの!!?」


女兵「……さぁな……」

女勇者「………お、お姉さまぁ~♪だったら今からでもぉ~♪」


女兵「おっと。生憎、気分が合わないからダメだな。」

女勇者「そ、そんなぁ~……」

~修道院、講堂~

吸血姫「全く、魔王が目の前に居るのに逃がすなんて……」

猫盗賊「しょ、しょうがないじゃんか!!勇者は、自分の知り合いのエルフを倒してしまって……」


魔法使い「……でも、あのエルフさん、少し嬉しそうな顔をしていませんでした?」

メイド「……勇者様に『ありがとう』とも言ってましたよね……」

吸血姫「自分を死なせた相手にお礼?どういった心境だったのか、想像がつきませんわ!」




女勇者「………きっと、私が成長したのを喜んでくれたんだよ………」


吸血姫「あら?勇者。女兵はどうしました?」

猫盗賊「ま、まさか……」



女勇者「ささ、お姉さまぁ~♪こっちにいらしてぇ~♪」グイッ


女兵「ひ、引っ張るなって……」



魔法使い「お、女兵さん!!その格好……お服屋さんで買った服!?」

女兵「……ううっ……」

メイド「あ……しかも、私の買って差し上げたヘアーゴム。
ツインテールにしたんですね……小さくて可愛らしいですよ?」


女兵「……ど、どうも。勇者が勝手にしたんだがな……」

女勇者「そしてそしてぇ~♪スカートの下はぁ~?」ヒラリ

女兵「!?あ、こら!!」





魔法使い「……女兵さん……」

メイド「……女兵さま、その下着は、あなたがあの時選んでいらした………?」

吸血姫「あら?変な趣味ね。」


猫盗賊「か、可愛くない~。なんだよ、その下着ぃ~。」



女勇者「………女兵、なんでよりにもよってそれをはいたの……?」

女兵「……お前が、可愛い姿が見たいって言ったから………

………ダメ?」

~商業と交易の都市、臨海公園~

女兵「……ったく……
なんで……この下着だけ不評なんだよ……
俺のセンス……そんなにおかしいかよ……」




「ねぇ?あの娘可愛い~♪」

「えぇ~?でも眼帯とかしてるしぃ~。

……え!?あ、あの娘、左肩から先が……無い………」


「お母さ~ん。なんであの女の人、腕無いの~?」

「やめなさい!失礼でしょ!!」




女兵(…………俺が男だったら、こんな怪我ぐらいじゃ、気にされなかっただろうがな………

しかも、こんな服装だしな………
違和感たっぷりなんだろな…………)




「失礼。そこの可愛い服を着た、ため口で泣き虫で女勇者様の護衛をしている兵士さん。ちょっと、話をいいですかな?」


女兵「……いや、こっちも暇じゃないんでね。その辺で暇してる帝国兵にでも声をかけてくれよ。
ため口で泣き虫で勇者の護衛をサボり続けてる男の兵士がいるはずですからね。」


男兵「……おっと、男兵は確かにここに居ますけどね。
残念ながら、勇者の護衛ではないんだなぁ~。サボってるのは………」


女兵「……?男兵。お前、その格好………」

男兵「格好いいだろ?軍将クラスの正装は。
俺は勇者様の護衛の任は解かれたよ。お前のおかげで。
今の俺は、この商業と交易の大都市を管轄する帝国軍の総指揮を担当する軍将の1人さ。」


女兵「……お前が……軍将……?」

男兵「なんでも、昨日この街が魔王に襲われて、多くの兵が倒れたらしい。
そして、人員不足を補う為に俺すらかりだされたってワケさ。
しっかし、『軍将クラスになれるんならやってやる』って言ったら、本当になれちまうなんてな……」


女兵「……くくく……あははははは!!!
お、お前が軍将だなんて………“俺”が軍将になるなんて………ははははは!!!!!」


男兵「……おー、随分笑ってくれるな……。
ま、俺も最初、自分で自分を笑ったがな。」

男兵「しかし、お前の格好も随分また………。
女の姿をめいいっぱい楽しんじゃってんじゃね~か?」


女兵「いや……これは……その……」


男兵「まぁ、勇者の護衛の仕事はこなしてるみたいだな。
その目や腕を見る限りは……」


女兵「…………はは。しくじったぜ…全く。」

男兵「……誰にやられた?」

女兵「……聞いてどうするんだよ?」

男兵「お前が受けた傷は“俺”の傷だ。
俺を傷つけた奴がまだ生きてるんなら、倍がえしだな。両腕両目を粉々にしてやるさ。」


女兵「……いや、お前の出番はねぇよ。俺が自分でするから……」

男兵「そっかぁ?ま、ならそうしな。
……ただ、相手の名前ぐらい聞いてもいいだろ?かの有名な女兵さんをそんな重症にした猛者さんの名前ぐらい……」


女兵「……熱中症。」

男兵「…………ぶっ……ははははははは!!!!
ま、まさか、病気になったのかよぉ!!?」

女兵「……も、もとはといえば、お前のせいだろが!!!?」

男兵「ん?なんで?」


女兵「…………いや、なんでも……」


男兵「……そっかぁ。魔王は憎たらしいよな……」

女兵「……知ってたのか?それとも……」

男兵「勘だよ。どうせ、女兵さんが、勇者の力すら持ってるお前が苦戦する相手なんか………な。」


女兵「……全くだよ……」


男兵「……魔王、強かったか?」

女兵「……雑魚だよ。」

男兵「へぇ~。……で、どんな感じだ?腕をもがれるのは……」

女兵「………ご自慢の想像力で考えてみろよ……」


男兵「……痛かったか?」

女兵「……気になるんなら、今ここでお前の腕にも同じ事をしてやるぞ?」


男兵「……やっぱ、怖かったか……?死ぬかと思ったか?」



女兵「…………うるさい……」

男兵「……おいおい……“俺”に強がっても仕方ねぇだろ?」

女兵「…………」

男兵「怖かったんだろ?魔王を目の前にして、やっぱ死を覚悟しただろ?」


女兵「……なんで、さっきからそんな事ばっか……」


男兵「………俺な、お前らと分かれて、西の山を下ってたんだ。」

女兵「……それで?」


男兵「帝国軍が陣をはってた。山にバジリクスが大量発生したらしい。」

女兵「……バジリクス……?ああ。あの狂暴な……」


男兵「……ヤバかったな。バジリクスの群れが一気に山から下りてきてな、帝国軍は壊滅したな。」

女兵「……お前はどうしたんだ?」

男兵「何人かの生き残りと避難してたさ。
ただ、バジリクスは繁殖期で、餌を求めて追ってきてな。どんどん周りの奴は捕まっていってな……」


女兵「……でも、お前は生き残った。いつも通り、ただ一人だけ……」


男兵「……ああ。めっちゃ怖かった。死ぬかと思った。マジで。
最後の1人になった時……話相手や相談相手が居なくなって……励まし合う相手も居なくて………」


女兵「………だが、それは今までの場合と変わらないだろ?
今までだって、1人で人食い花の森を3ヶ月歩き回ったり、オークの援軍に追われながら岩山を抜けたり……。

孤独には慣れきってるはずだろ……?」



男兵「……さすがは女兵さんだな。どうやら、俺とお前には大きな差ができてしまったようだな……」


女兵「………どういう意味だ……?」


男兵「俺さ。あの晩、お前と会話した時のあの感覚。2人でお互いを誉め合って、貶し合って、励まし合って、しまいには抱き合ったじゃん?

あれも一応は孤独だろ?“俺”同士が、自分が自分に向かって話していた様なもんだしな。

でもさ、あの孤独ってさ、なんか温かくなかったか?今までの孤独と違って……」

女兵「…………」

男兵「“俺”という存在は1人だったが、2つの意志、2つの肉体があって、それが会話をするんだから、はたから見りゃあ孤独なんてものじゃないはずだ。。

ただそれでも、話合ってるのは自分同士なんだよな。
同じ感覚、価値観、人格を持ったほぼ同一人物。

他人じゃない。限りなく自分に近いもう1人の自分。もう1人の俺。」


女兵「……。もう1人の俺。心の中にいるもう1人の自分が、まるで具現化したみたい……。

話相手が自分だから、例え相手に貶されても気にはしない。所詮は自虐の様なものだから。
そして褒められた場合は自画自賛。褒めているのが自分自身と分かっていても、何故か嬉しくなる………」

男兵「とにかく!俺はお前になら、なんだって話せるんだよ!
……他人に話すような感じで、でもあくまで自分の中でだけで話しているように……」

女兵「……他人に話すのは恥ずかしいけど、相手が自分なら……って感じか。」


男兵「……全く。マジで怖かった。バジリクスはトラウマだな。あー、怖い。
最後にお前と話したい、なんて考えちまったな。」


女兵「……今の発言は気持ち悪いぞ。遠回しに、告白してないか?俺に……」

男兵「……はは。くたばれ。
だかな、寂しかったわ……寒い孤独は……」



女兵「……良かった。」

男兵「……何が?」

女兵「俺も……お前と話したかったんだ。
俺の中で……滅茶苦茶もやもやする事があってな……

でも、もう1人の俺に会いたい……だなんて……」

男兵「いいんじゃね?せっかく良い話し相手がいるんなら、有効活用しないとな。」

女兵「……そうだな。有効活用……しないと……な……」


男兵「……んで?なんだよ?その悩みとやらは?
ひょっとして、魔王に殺されかけたのがトラウマか?」

女兵「……その辺は違うんだよな。お前と俺では。
俺には、勇者や仲間が居たから……」


男兵「……お前の仲間共って、チート揃いだもんな……。
あーあ、羨ましいわー。」


女兵「……なぁ、男兵。お前、勇者を好きだと思った事……ないよな?」

男兵「……俺が?ないな。………そうだよな?」

女兵「……ああ。俺も自信を持って言える。
初めて会った時から今日この瞬間まで、一度もないな!!」


男兵「そっか。そりゃそうだよな。
………で、なんでそんな事で悩んでんだ……?」

女兵「………………」

男兵「………?」

女兵「………さっきな……ベッドで…………女勇者が俺を…………さ………」



男兵「……ちょっと女勇者を殴ってくる。」

女兵「ま、待て!違う!女勇者は何もしなかったんだ!!
……結果的には……」

男兵「……?ま、まぁ……それならいいが……」


女兵「……ただ……俺さ……雰囲気に流されててさ……
もし……勇者が俺を……押し倒してたりしたら…………俺…………」


男兵「“俺”なら頭突きをかますだろうな。」


女兵「………いや……俺………多分……そのまま、勇者と…………」

男兵「は?」

女兵「…………う、うぁあああ…………頭ん中が、ワケわかんなくなってきたあああ!!」


男兵「……い、いや、それはこっちのセリフだって!!

なんで!?お前、もっと自分の体は大事にしろよ!!」

女兵「んな事は分かってるって!!!」

男兵「いやいや、お前さ……お前は“俺”なんだから……もっとシャキッとしてくれよ………」


女兵「……ぐぅぅ……お、俺が……勇者の事を………

ああああああ!!!!

ヤバい!!ヤバいって!!“俺”!!助けてくれ!!頼む!!!」


男兵「…………どうやって?」


女兵「………はぁ……はぁ…………

……………」

男兵「………………」

女兵「……あ、あははははは!!!!!」

男兵「!?お、おい!?どうした!?」

女兵「ははは………はは。
あーあ、すっきりするわ~。」

男兵「……?」

女兵「俺が女勇者を?あり得ないって……。
多分、魔王にやられた屈辱感が俺を気弱にしてたんだな……」

男兵「……あ、そう……」


女兵「……男兵。」

男兵「……なんだよ?」

女兵「………ん」ヒラリ

男兵「なにスカートを捲ってんだ?
………可愛い下着…って事か?」

女兵「……可愛い?この下着が?お前、趣味悪いなぁ……」

男兵「え?そ、そうかぁ?」


女兵「……いや、嘘だよ。お前が可愛いと思うんだから、俺だって可愛いと思ってんだよ。“俺”同士だからな。」

男兵「……まぁ、そりゃそうだよな。」

女兵「……いやぁ、でもマジで可愛いよなぁ~♪俺もマジで気に入ってんだぁ~♪可愛いぃ~だろぉ~?」


男兵「……ま、まぁな。
ただ、あんまりそんな事やってると……はしたない女に見られるぞ…?」


女兵「……………………………………………………………あ………う……/////」


男兵「……え!?お、お前!!まさか今、恥ずかしいと思ったのか!?『はしたない女』って言われて……」

女兵「……んなワケあるかー!!!お、“俺”がそんな事で恥ずかしいなんて思うかよ!!」

男兵「いや、お前今……」

女兵「だ~か~ら~!違う……………うわっ!?」ズルッ

男兵「……て、危なっ!?」

ガバッ

男兵「……お前、いきなり転けるとか……」

女兵「な、ナイスキャッチ…………。
慣れない服で、はしゃぎ過ぎたかな?」

男兵「……全く………あれ?」

女兵「………なに?」

男兵「……お前、ずっと笑ってたから気が付かなかったが、泣いてたんだな。また、目の下が赤いぞ?」


女兵「……女になって、涙腺が緩くなったんだな……」

男兵「……難儀だな……一々涙が出るとか……」

女兵「うるさい!女になって得した事だって、ちゃんとあるんだぞ!?」

男兵「……例えば……?」


女兵「………ま、魔法使いとかと一緒にお風呂入れた……?」

男兵「……ふぅ~ん。」

女兵「………無理すんなって。卑しい気持ちではないにしろ、魔法使いの体がどれぐらい成長したかは興味あったろ?」

男兵「……いや、そんなもの、豊かな想像力で想像すればいいだろ?」

女兵「……お前、妹の事をそんな目で……」

男兵「うるさい。お前こそ、妹の裸なんて一々引き合いに出すな。」


女兵「……だが、お前は俺と違って、女湯には結局入れないだろ?」

男兵「……まぁ。でも、別にいいんじゃね?こうやって、お前もいるワケだし……」


女兵「……どういう意味だ……?」

男兵「女の裸なんて、お前がいくらでも見せてくれるだろ?」


女兵「………お前、ついに俺の事をそんな目線で………」

男兵「まぁ、半分冗談だがな。別に、見せても減るもんじゃないだろ?」

女兵「ま、まぁ……」

男兵「まぁ、見ても得するものとも思わんが……」

女兵「……て、もう見ただろが!!」



男兵「……ふぅ~。全く、普段の俺じゃないみたいだな。お前と居ると……」

女兵「……全く……、こんなふざけた会話ばかり………」

男兵「……ただ、もうお互い、シリアスな話題はでて来ないよな……」

女兵「……まぁな。
…………あ、そういや、お前、この街に居て平気なのか?」

男兵「………何が?」

女兵「だってさ。元々、勇者と次の街に行ったら死ぬって言われたから、ビビって勇者のパーティーから外れたんだろ?
ここで勇者と会ったら、別々にとはいえ、勇者と次の街に来た事になるんじゃ……」

男兵「……いや、だって。次の次の街で会うんなら、問題ないだろ?」

女兵「……次の次……?」

男兵「……お前ら、学都に行ってから、この街に来たんだろ?」


女兵「……いや、俺達は洋館を出て、すぐにこの街に来たんだが……」



男兵「……おっと、マズいな……。じゃあ、次の街ってここの事か……」


女兵「……みたいだな。」

男兵「……まぁ、まだ勇者の予言が必ず当たるって決まったワケでもないし……」

女兵「そもそも……勇者に遭わなければ………な。」

男兵「こうなったら勇者が街を出るまで隠れていようかな……。

……しかし、街の軍将になった以上、街から離れるワケにも行かないしなぁ~。」


女兵「……よく軍将になれたな。どんな交渉術をつかったんだ?」

男兵「いや、この街の軍のお偉いさんが俺の事を気に入ってくれてな。」

女兵「なんでまた?」

男兵「えっとな。あれが理由らしいな。
あの、どっかの農村で無茶苦茶強い剣士と闘ったじゃん?あれに勝った功績がかなり評価された。」

女兵「……あー、仮面を付けたあいつ?あんなの、連戦で疲れ切ってたところをなんとか倒せただけだろ。」

男兵「まぁな。俺の直前の奴がかなり粘ってくれたからな。
ま、それでも、無茶苦茶強かったよな。アイツ。」


女兵「……今思うと、アイツの使ってた力って、勇者の力に似てた様な……」



男兵「まさかぁ~。いくらなんでも、勇者が俺みたいなただの兵士に負けるかよ。」

女兵「……だな。」

女勇者「はぁ…はぁ……!!!男兵ー!!!」


男兵「……ヤバい、死が俺に迫ってる……」

女兵「もっの凄いスピードで走ってきてるな……。

あ~あ、お前、終わったな……」


女兵「あたしのお姉さまにぃぃ!!!手を出すなぁ~!!!!飛び膝蹴り!!」シュバッ!!

男兵「……おっと…」ヒョイ

女勇者「え!?ちょっと!?……きゃっ!?」ドスン!!(空振って、地面に激突)


女兵「……ったく。勇者、何をやってんだよ……」

男兵「なんだ女兵ちゃん。『私のお姉さま』って部分は否定しないのかぁ~?

勇者と良い関係を築いてんじゃね~か。」


女兵「勇者が俺の事を認めてくれたって事さ。
次は女王様って呼ばせてやる。」

女勇者「え!?お、お姉さま!!夜の私の女王様になってくれるの!?」

女兵「……うわ…助けて、お兄さまぁ~。」

男兵「はは。知るか。自分の事は自分でやってくれ。」

女兵「勇者相手に1人じゃ荷が重いって。バジリクスの方がマシだろ?」

男兵「バジリクスの方が可愛いからな。」

女勇者「………あ、そう。私、どうせ男に『可愛い』だなんて誉められても嬉しくなんかないから……」


女兵「勇者。可愛いぜ。」
女勇者「お、お姉さま……」

女兵「ベッドに踞ってずっと泣いてるんならな。」

女勇者「!!?お、お姉さま!?他の人の前で、それは言わないで!!」

女兵「隠すなよ。勇者様の涙は世界の涙。世界中の人に知って悲しんで貰わないとな。」

女勇者「そ、そこまであたしはプライバシーを世界に捧げてないしぃ~!!」


男兵(……女兵。さっきまでの感情的な心情とは違って、また“俺”らしい皮肉さを披露し始めたな。

やっぱ、“俺”以外の奴の前では、普段の“俺”に戻るんだな………)


女兵(男兵……さすがに勇者の前ではバジリクスにビビりまくった事を一口も声に出さないか……。

あくまで、女兵というもう1人の自分相手に漏らした弱音だったんだろな……)



女勇者「……しっかし、男兵。ちょうど良かったわ……」

男兵「……うわ、嫌な予感……」

女兵「まぁ、前もくだらない事を頼まれたしな。」

女勇者「……つか、あんた生きてるのね。
あたし的には、もうそろそろ死んでんじゃないかって思ってたわ。」

男兵「……死なないために、お前と別行動してたんだがな……」


女勇者「……むしろ、私の近くにいてくれた方が守ってあげられたわよ?私、いくら男嫌いでも、仲間を見殺しにはしないから絶対。」


男兵「……かもな。確かにお前みたいな強い輩は他にいないしな……
本当に生き長らえたいなら、強い奴の近くに居ろ……ってか。」


女勇者「まぁ、それでも、多分あんたはあたしよりも先に強敵に突っ掛かって、あたしの居ない内に死んでしまうだろうけどね……」

女兵「…………大当たり……だな……」

男兵「………?
……ま、否定はしないな。勇者の背中に隠れてばっかじゃ、帝国兵士の誇り……いや、俺自身のプライドが許さないから。」


女勇者「……ま、生きているんならちょうどいいわ。

しかも、その格好!!あんた、軍将クラスになったの!?」


男兵「……ふふふ!どうだ勇者!!恐れいったかぁ!?」

女勇者「あんたって……本当に優秀な護衛ね!!ちょうどいぃ~にもほどがあるわ!!」



男兵「え?……あ、どうも。
……で、何がちょうどいいんだ?」


女勇者「あたし、実家から通達が来たの。お見合いの……」

女兵「良かったじゃん。」


女勇者「……お姉さま……あたし、お父様の命令で、他の、しかも男に!!この身を捧げなくてはならなくなったのよ!!?
……悲しくないの?」


男兵「良かったな。いい飼い主が見つかったようで……」

女勇者「死ね」ギロッ

男兵「……うわっ……そ、そんなマジに睨まなくたって……」


女勇者「……お母様はあたしの事をよく理解してくれてるの!!もちろん、あたしが勇者となってハーレムするのも!!
ただ、お父様は世間体もあるから、形式上の異性の婚約者だけは作りなさいって………
あたしの気持ちを知ってるくせに………」


女兵「……まぁ、確かに可哀そうな話だけど……」

男兵「……お前の家って……」

女勇者「……帝都の東に貴族が沢山住んでる街があるでしょう?
あたしのお父様、あそこの領主なの。」

女兵「……へぇ~。それってかなり上流貴族……?
……って、お前、貴族のお嬢様だったの!!?」

男兵「……じゃ、じゃあ、お見合い相手って……?」


女勇者「……帝国の第…何番目かの王位継承者だって……」

男兵「……なるほど。
んで、俺に頼みたい用事は……俺が軍将クラスだったらちょうどいいんだよな?

……あー、何となく分かったわ~。
………ちょっと用事を思い出した。行ってくる。」

女勇者「逃げんなこらぁああ!!!」

男兵「……俺にお前の形式上の婚約者になれ……って事か…?」

女勇者「違う!!私は男となんか結婚しない!!
私は女兵ちゃんや新妻ちゃんとか、皆と結婚して多妻で幸せに暮らしたいの!!」


女兵「……勇者のどす黒い願望に今更ひいた……」

男兵「なら!そこにその1人がいるんだから!!女兵を連れて行けばいいだろ!!?」

女兵「おっと、我が身の保身の為に、俺を売るのかよ……」

男兵「………優先順位的には、元よりある俺の体の方が大事だろ!?」

女兵「…俺が大事なのは俺の体!この体だし!!」

男兵「……てめぇ、ついに言いやがったなぁ……」


女勇者「ま、あたしが大事なのも、女兵ちゃんの体だけどねぇ~♪」

女兵「……う、鳥肌が立った……」


男兵「……だがよ、勇者。俺を婚約者にしないんだったら、どうするんだよ?その第何番目かの帝国王と結婚する羽目になるんだろ?」

女勇者「もちろん断るわよ。
ただし、お父様はただ口で言っても聞かないわ。特に、私が女好きなせいで正式な男の婚約者を作らないかもしれないって事が一番心配みたいだからね……。」


男兵「……つまり、どうするんだ?」

女勇者「誤魔化すの。私は将来男と結婚する意志があるけど、今はお見合いはしたくない……って。
例えば、今まさに結婚を考えた意中の相手が居るって事にすればいいじゃない?

若年軍将で将来有望なエリート軍人が相手なら、お父様も何も言ってこないと思うの。」

男兵「……来た。彼氏のフリをしてって事だな。
……お前、そんなので誤魔化しても、ろくな事に……」

女勇者「さぁ!!さっさと来なさい!!私の婚約者ぁ!!」グイッ!!

男兵「痛てて!!?ひっぱんなって!!」





猫盗賊(にゃにゃ~ん……勇者宛に届いた手紙を見た途端、勇者が走って行ったから、こっそり後をつけたら……
……大変だにゃ。勇者、ついに男兵と婚約するんだにゃ~!!や、やっぱり勇者も女だったんだにゃ……
勇者様……あたしというものがありながら……)

女兵「……盗賊?また盗み聞きか?」

猫盗賊「にゃ、にゃぅうう!!?」

猫盗賊「た、大変だにゃあああ!!!皆!!………あれ?」




新妻「は、早く準備を!!」

吸血姫「もぉ~、なんですの~?騒がしいわね……」

射手「男兵さんと勇者様が勇者様のご実家で結婚するそうなんです~♪」

シスター「あらぁ~。なんと素晴らしい……」


新妻「これは何かの間違いです!!ゆ、勇者様がそんな……」

魔法使い「……お兄さん……私……複雑です…
……でも、お兄さんが勇者様を選んだのなら……」


女侍「婚約祝賀会?ご馳走、出る?」

メイド「勇者様と結婚なされれば、男兵さまも私のご主人様に……。
……ふふ。まぁ、男兵さまがお相手なら、私は構いませんが……」

新妻「勇者様……私も勇者様の実家に行き、その真意を確かめさせてもらいます!!」



女兵「……猫盗賊。お前、何を言ったんだ?」

猫盗賊「にゃ……ま、まだ何も……」


アカネ「あら、おかえりなさい。」

猫盗賊「姉上!?」

女兵「……お前……誰?」

アカネ「うふふ。初めまして。“俺”さん♪」

女兵「!!?……お前、さては全部聞いてたな……」

アカネ「そうね。でも、安心して。勇者と男兵が婚約って事しか、まだ皆にはバラしてないから……
でも、皆さん、反応が愉快ですわね~。」

女兵「……何が目的だ?」

アカネ「そぉね。私はもう魔王の部下も辞めたし、あなた達に私の新しい雇い主になってもらおうかしら?

ねぇ?素敵な“俺”さん♪」

女兵「……きょ、拒否権はあるの……か……?」

アカネ「いいわよ?断っても。あなた達の社会的立場がどうなっても、知りませんけどね~?」

猫盗賊「あ、姉上が仲間!?
やったぁ~♪女兵!姉上は強いぞ~?もっと喜べよぉ~?」



女兵「……無理……」


アカネ「さぁ~♪皆さまぁ~!勇者様のご実家に行きますわよぉ~♪」


『おおー!!!!!!』

>>234をBADENDに……





猫盗賊「た、大変だにゃああああ!!!」


新妻「……あら、盗賊さん……」ジャキン

猫盗賊「!?に、新妻!?な、なんで包丁……」

新妻「……結婚ですって……?男兵と勇者様が……」

猫盗賊「え?あ……ま、まぁ……」


新妻「……許さない。私から勇者様を奪ったあの氏虫………」

猫盗賊「……に、新妻……」


魔法使い「……お兄さまが……勇者様と結婚……

ダメよ……お兄さまはあたしだけのお兄さまなんだから………」

猫盗賊「……ふ、2人とも………様子が……」


魔法使い「……お兄さま。こうなったら、私と2人だけの世界に………この包丁で………!!!」

新妻「……あの氏虫……殺す……殺してやります!!!」




猫盗賊「……大変だにゃ……このままじゃ、男兵が………」


女兵「……男兵、この街に勇者とやって来たばっかりに、死ぬんだな……

いや~、残念残念。」


アカネ「うふふ~。面白いわぁ~♪」


Bad…End……

……ひとまず終わり……



ストーリー自体はまだまだ掘り起こしがききそうなんですが

書きたい事は一通り書ききったので、ひとまず終わります


全体的書きたかった事の要項(表現しきれたかは微妙だが)

・レズな女勇者とハーレム

・そのハーレムに女化して巻き込まれる女兵

・もとは同一人物だった男兵と女兵による二人だけの世界観(個人的には『ら○ま』のパクりw)

・前回の勇者がやらかした弊害の跡傷(残されたハーレムの他の女の子達の気持ちや、その勇者によって大切な人を奪われた女勇者の気持ちとか)

・女勇者のトラウマw

後は
・勇者の力をもたない戦士(男兵など)の生き様


まぁ、題名からして分かるかも知れませんが、
僕は男の勇者が主人公補正でハーレムを作るって設定が大っ嫌いです(つまりほぼ全てのラノベやPCゲームが嫌い)

だから、それを皮肉ってあえて勇者をレズな女勇者さんにしました
女勇者は嫌われて結構、そんなキャラだから

まぁ、僕は好きですが


僕の考えは男兵同様

『屑な勇者は俺が殺す』

後、金の剣の件ですが

金はサビないし、濃硫酸などの酸化力のある酸にも強いですが
思っていたよりも柔らかいみたいです
結構すぐに曲がるらしいです

まぁ……でも、黄金の剣で戦うとか、想像したら格好いいし……

………これが厨二脳か……

~あらすじ~

女勇者は父親から持ちかけられたお見合い話を断るべく、男兵に彼氏のフリをさせて父親のもとへ連れて行き、説得しようとしていた………


~貴族の街(女勇者の故郷) 女勇者の実家~


女勇者「お父様。あの……あたし、実は好きな人が……ここに居るの!」

男兵「ども、女勇者様のカレシの男兵です。よろしく~。」

女勇者(男兵!あたしの彼氏を演じるんなら、もっとシャキッとしなさいよ!!)

男兵(え?いや……面倒くさいし……)


父親「勇者……。お前が、男嫌いのお前が、男を連れて帰るとは……」

召使A「女勇者様が男を!?」ヒソヒソ

召使B「レズな女勇者様が!?」ヒソヒソ


父親「そうか、女勇者。お前にも、ようやく恋仲の男性ができたのだな。」

女勇者「はい!だから、お見合いの話は白紙で……」

父親「そうか……。見合い相手は将来の帝国王になるかもしれない王族なのだがな……。

分かった。お前が連れて来たその男を、私も信じるとしよう。」


男兵「え!?マジかよ!?」

女勇者「お、男兵!?なに大きな声をだして……」

男兵「い、いや……。案外、あっさり許してくれたもんだから。親父さんが……。

勇者から聞いてた話から、かなり頑固な親父かなと想像してたから、平民の俺なんかが貴族の娘である女勇者との婚約するなんて事は認めないんじゃないかって……」

女勇者「な!?あ、あんた!!」

女勇者(せっかくお父様の承諾を貰ったのに、そんな機嫌を損ねる様な事を……)

父親「……君がまだ私の娘の事をよく分かっていないだけなんだよ。

私の娘は男が嫌いだ。理由は知らんが、昔から男の友達の一人も作った事もなく、むしろ男に近寄らない様にしてきていた。

そんな娘が、私の前に初めて男を連れて来てくれた。
私は今、非常に嬉しいんだよ。
娘が男を連れてきたと言うのに、私は君にちっとも嫌気を感じないんだ。

私は娘を信じている。ただでさえ男嫌いの娘が連れてくる男なのだから、きっと素晴らしい人に違いない!と、私は思ったのだよ。

たとえ、それが演技であったとしても……」


女勇者「え!?ち、違う!!お父様!!私は男兵の事を……」

男兵「……演技ってバレてんなら、なおさらだろ。

娘は結局まともな結婚相手を見つけていないし、今後見つけるつもりもないんだぞ?
だったら今の内に、王族かなんかと婚約させていた方が……」

女勇者「お前!!馬鹿!裏切り者!!それ以上喋るな!!」

父親「……言っただろ。女勇者は、過去に一人も男の連れを作った事がなかった。
そんな娘が初めて男の仲間を作ったのだ。

恐らく、君が娘からかなり信頼されているからに違いない。男兵君。」

男兵「勇者が俺を信頼……ね。」

女勇者「………ま、まぁ……否定はしないけど……」

父親「まぁ、今は恋仲ではないようだがね。

男兵君。今後も、娘を頼むよ。」

男兵「……約束はしない。ただ、勇者を守る軍人てしてなら、いつでも勇者の盾になるつもりだ。」

女勇者「あんたみたいなぺらっぺらの弱っちぃ盾なんかいらないし……。私は強いから。」

男兵「メンタルは豆腐のくせに……」

女勇者「あらぁ~、女は涙の数だけ強くなるのよぉ~?
なんなら、その強くなった力、あんたの体にたたき込んであげようかしら?」

男兵「はは。ちょっと用事が……」

女勇者「逃げんなコラ!!」


父親「はは……本当に仲が良いようだな。娘が男とこんな会話をする日がくるとは……」

~女勇者 玄関~


男兵「ったく、こんな易々片付くなんてな……。
せっかく、あんなに父親を説得する練習をしてたのに……」

女勇者「お父様が、あんなに簡単に納得するなんて……いまだに信じられない……。」

男兵「もしかしたら、親父さん自身もお見合いに気が進んでなかったんじゃ?」

女勇者「王族とのお見合いに気が進まない理由なんてないでしょ?」



??「きゃっ!?」
女勇者「ふぎゃっ!?」ドン!

女勇者と誰かがぶつかった

男兵「おいおい……何やってんだよ。大丈夫か?あんた……」

??「はい……ありがとうございます……」

女勇者「コラぁ~、婚約者~。こういう時にこそあたしの盾になんなさいよ……」

男兵「いやに決まってるだろ。あの発言は嘘。見栄張ったの。
いいじゃん、美少女と劇的に触れられたんだから……」

女勇者「え?」
??「え?」


女勇者が見ると、ぶつかった相手は可愛い女の子であった


男兵「大丈夫か?通りすがりの美少女。運悪いな、こんな勇者にぶつかって……」

??「え?勇者?この人が……」



女勇者「……う~む……」ジロジロ

??「あ、あのぉ~……」

女勇者「可愛いぃ!!可愛いぃよぉおおお!!!」ガバッ!

??「きゃっ!?ちょっ!?」

女勇者「名前は~?年齢は?スリーサイズは!?好きな体の部位は!!?」

??「あ、あの……えと……」


男兵「はい、そこまで~。」グイッ

女勇者「ぎゃっ!!」


男兵が女勇者の首根っこを掴んだ


女勇者「何すんのよ!?男兵!」

男兵「……そいつの服装を見てみろ。」

女勇者「え?え~と……王族の着こなし…?え!?」

??「は、はい。わた……僕は確かに王族です。帝国王家、第12王位継承者です。」

女勇者「帝国王家……継承者って事は、帝国の王子様!?」

男兵「王位12番目って事は、本家じゃなくて分家の王子ってところか?

んで、王子様が勇者の家になんのようだ?」

王子「あの……僕は、女勇者様の許婚なので……」

女勇者「え!?許婚って、あたしのお見合い相手ってこと!?」

王子「は、はい……」

男兵「……お前、歳は?」

王子「14歳です。」

女勇者「そんな年齢で、あたしと婚約なんて……。」

男兵「……………。


………つかさ……」


王子「は、はい?」

男兵「王子って事は男だよな。勇者。つまりお前は今、男のガキとぶつかったって事だよな。」

女勇者「……………」

王子「??」

女勇者「あなた、本当に男なの?」

王子「え!?あ……あの……」

女勇者「……失礼。」さわさわ……

王子「きゃっ!?ど、どこを触って……」

女勇者「ないっ!?男兵!!アレがない!!」

王子「……うう……」

男兵「お前……セクハラ確定。」

女勇者「あら?この子は女の子なのよ?つまり、いくら体を触っても女同士だから許されるの~♪」ワサワサ…

女王子「え?……ひぃっ!!」


男兵「はい、お客さん、そこまで~。これ以上は追加料金がかかるんでね。」グイッ

女勇者「え~!?払う~!払うから~!!」

男兵「……はいはい。じっとしてろ。
んで、王子さん。女なのに王子って名乗るって事は……?」

女王子「はい………私の家には男兄弟がいなくて……父も私が産まれると同時に死にました。
王位継承権は女性には与えられない。だから、私は小さい頃から男の王子として育てられてきたの……」


男兵「戸籍捏造かよ……。まぁ、気持ちは分からんでもないが……」

女勇者「でも、そんな曰く付きの女王子ちゃんがなんであたしの許婚に?」

女王子「……王子になるからには、妃をとらないといけない……。
でも、私みたいなハリボテ王子と婚約してくれる貴族なんていないと思ってた。
そしたら、昔から交流があった女勇者様のお父様からお見合いの申し込みがあって……」

女勇者「お父様が!?どうして……

まさか……女の子が好きな私なら、女王子ちゃんとの婚約なら受け入れると……?」

女王子「……女勇者様のお父様は私のお父さんの知り合いで、昔から私を援助してくれていました。もちろん、私が女という事も知っていました。
でも、まさかご自身のお嬢さんである女勇者様との婚約をすすめて貰えるなんて……」

女勇者「……お父様、ひょっとして、私の事を思って?男と結婚できない私の為に、女の子の婚約者を……」

男兵「いや……女だって事がバレて王位継承権を剥奪されかねない危うい王子と結婚させる事が勇者の為になるとは思えないな。

むしろ、この王子さんが妃をとる為に勇者を差し出したんじゃね?」

女勇者「………それも否定しきれないわね。お父様とあたしは本当に仲が悪かったから……。特にあたしが男と結婚したくない事に関しては……。

あ。だから、さっき私が男兵を連れて行ったらすぐにお見合いの話を取り消してくれたのかしら?」

男兵「親父さん自身も不安だったんだろ。
勇者が俺と結婚する可能性があるのなら、真っ先にこの婚約は解消したかったんだな。」


女王子「………私も、今日はそのお見合いの話を断りに来ました。」

女勇者「え!?」

女王子「だって、私となんか結婚したら、勇者様の地位だって危うくなっちゃいますし……」

男兵「まぁ……確かに妥当な判断かもな。
ぶっちゃけ、王位継承なんて捨てて、どっかの田舎で静かに暮らした方がいいよな。」

女勇者「嫌よ!!せっかくここまで来たんだから、後戻りする必要ないんじゃない!?
私はあなたと結婚したい!!」

女王子「………え?」

女勇者「あたし、お父様と話して来るから!!」ダッ!

女王子「あ………あの……」




男兵「あ~あ……行っちまった……」

女王子「……うう……」

男兵「勇者も悪気はないんだよな……。半分は王子さんの為、もう半分は本人の欲望の為だがな。」

女王子「………」

男兵「しかし、なんで女勇者との婚約を断りたかったんだ?
勇者や勇者の親父さんの為にか?」

女王子「………はい。やっぱり、私の家の事情に女勇者様の家を巻き込むのは……」

男兵「つか、お前自身も普通に嫌だったんだろ?女に生まれたのに、男として女勇者と結婚するのが……」

女王子「……………」

男兵「女に生まれてから、ずっと男として育てられてきたんだよな?」

女王子「はい……普段は男の子の様な服装で男の子の様な喋り方を使わされて、女とバレたら困るから学校にも行けず……」


男兵「あー、徹底してるな。そんなの続けてたら、その内自分が最初から男だった様な考えになるのかもな。」

女王子「………私……もう無理……限界……。
こんな事続けたら、私の中の何かが壊れてしまう様な気がして……」

男兵「なら、やめるしかないだろな。男のフリをする生活を……」

女王子「でも、やめたら……私の王位継承権が……」

男兵「じゃあ、どうしたいんだよ?」

女王子「……分からないよ……そんなの……」

男兵「そんなんじゃ何も解決しないだろ。やめたいんならやめればいいだろ。」

女王子「そんな事!!……できない……」

男兵「やって見ろよ。一回ぐらい、女として生きてみろって……」

女王子「え!?一回……だけ……?」

男兵「今日1日だけでも、女として過ごしてみたらどうだ?」

~貴族の街 大通り~


女兵「こういう街は好きじゃないな……」

吸血姫「静かな街。気品も感じるわね。まさに貴族の街……。
ま、私はあまり好きじゃないわね。」

新妻「ここが勇者様の故郷……意外と男の人が多い……」

女兵「魔物と意見が合う日がくるなんてな……」

吸血姫「あらぁ?私を魔物扱いするつもり?あんな下劣な輩とは一緒にしないでくれる?」

女兵「どう違うんだ?人を襲うって時点で、なんちゃかわらないだろ。ガキっぽい見た目で、周りを誤魔化してきただけだろ?」

吸血姫「……そうやって私を挑発するのは、勇者の力を手に入れたという余裕からくる思い上がりなのかしら?
館であなたと戦わなかったのはあなたの力に怖気付いたからとでも思ったわけ?

生かせて貰っているという事実に気付いてないなんて、愚かな限りね……。」

女兵「なら、ここで決着をつけるか?
俺は女勇者と違って美少女相手にも容赦できないぞ。お尻ペンペンで済むと思うなよ?」

吸血姫「場をわきまえない戦闘は好きじゃないわね……
でも、悪いペットにはお仕置きが必要みたいね……。
その可愛いお顔に傷が付いても知らないわよ?」


新妻「男の人が……いっぱい……」


女兵「………新妻……大丈夫か?」

新妻「……あうぅ……ちょっと危ないかも……」

吸血姫「全く、気性の荒い女兵に男性恐怖症の新妻と一緒だなんて……。

シスター……あなたはどこに行ったのよ……?」

『配列!進め!!』

『はっ!!』



女兵「ん?なんか軍の小隊が移動してるな。」

吸血姫「暑苦しい限りね……。軍人なんて……」

新妻「男の人……いっぱい……」

吸血姫「あなたも参加してきたら?軍人なんでしょ?」

女兵「なんで知らない部隊の演習に一々参加しなくちゃなんないんだよ……。

……ん?」

吸血姫「あら?どうかしたの?」

女兵「……いや、知った顔があの中に混ざってるな……。」

吸血姫「知った顔って、あなたの知り合いって事なのかしら?」

女兵「まぁね。同じ施設出身の知り合いだな。

ちょっと会ってくる……ニヤッ」

吸血姫「?」





??「止まれ!!
これより自由時間をとる!今日の日の入りまで、解散!!」

「「はっ!!」」

??「……よし、お疲れ。演習はここまでだ。皆は自由行動にうつってくれ。」



女兵「……あ、あの、すんません……」

??「ん?君は…?
ああ……軍服を着ている様だし、どこかの軍人かい?」

女兵「は、はい……

あの………軍将どの。」

??「?何かようかい?」

女兵「俺……私、あなたの事が……好きなんです!!」

??「え!?君が、僕の事を?」

女兵「すんません……初対面でいきなり……」

??「はは……いきなりでびっくりしたよ。まさか、君みたいな美女に告白されるなんて……」


吸血姫「……?女兵の話相手は演習してた軍隊の軍将の様ですわね……。一体何を……?」

新妻「こ、告白みたいですけど……」

??「ただ、ごめんね。僕は君とは付き合えない……」

女兵「……どうして?他に好きな人が……?」

??「まぁね。
それにね、君の顔を見てると、昔の知り合いのお母さんの顔にそっくりなのを思い出すよ……。
男兵のお母さんにそっくりだね?」

女兵「マジ!?俺の母さんを知ってるのか!?」

??「ああ、養護施設に遊びに来てた君を迎えに来ていたお母様をよく見かけていたからね。

男兵。意外と綺麗に女化したね?」

女兵「……あーあ、バレてたのか……。さすがは俺の旧友だな。」

旧友「ついこの前、西の山道て男兵の方に出会った時に話を聞いていたんだ。
女化したもう一人の男兵の存在を……。

しかし、君は僕の事が好きだったなんてね。」

女兵「嘘に決まってんだろ。
美女に告白された軍将どのの反応が見たかったんだよ。」

旧友「はは。君は相変わらず性格が悪いな。」



吸血姫「なるほど、あなた達は幼なじみって事なのね?」

女兵「ああ。このいけすかねぇイケメン君は俺の旧友だよ。」

旧友「女兵、このお嬢さんは?」

女兵「魔物だよ。仲間のシスターがペットにしてる……」

吸血姫「ぺ、ペットって……ま、まぁ、それも悪くないかも……。
でも、魔物って表現は気に入らないわね。私は由緒正しき吸血一族の末裔よ?」

旧友「ああ、吸血姫というワケですね。通りで気品に溢れるお方だな、と思いました。」

吸血姫「あら?あなたは人を見る目があるようね。」

女兵「おいおい、旧友は女性に会ったら最初は適当に相手を褒めるんだよ。」

旧友「君みたいに相手の悪いところばかりを見ないんでね。良いところはちゃんと褒めてあげないとね。」

女兵「いや……だってこの吸血姫は沢山のガキを殺したし……」

旧友「それは吸血姫だから仕方ないんじゃない?」

吸血姫「……それを納得されても困りますわね……」

旧友「そう言えば、男兵も遂に軍将に昇格したらしいね?よかったね。」

女兵「いや、別に俺が軍将になったワケじゃないから。」

旧友「君の実力なら、必ずなれるって信じてたからね。妥当な昇格だよ。」

吸血姫「……軍人のわりには全く毒のない話方をしますわね。」

女兵「そうそう、昔から男気のない女々しい喋り方をするんだよ、こいつは。」

旧友「刺のある会話で相手を威圧しても仕方ないからね。
特に軍人ともなれば、ただであせ民間人からは恐れられるから……」



新妻「……うぅ……」

旧友「ん?そちらのお嬢さんは?」

新妻「ひぃい!?」サッ!

女兵「うぉっと!?また俺の後ろに隠れやがって……。」


旧友「……?あの……何か怖がられてるのかな?」

女兵「新妻は男性恐怖症なんだよ。悪く思わないでくれ。」

新妻「ごめんなさい……あなたが悪い人とは思わないんだけど……体が勝手に……」

旧友「そうか。男性恐怖症だなんて、過去に何か怖い思いでもしたんだろね。かわいそうに……

でも、新妻って名前はどういう意味なんだい?」

女兵「まんま、勇者の妻って事。女勇者は新妻の事をお嫁さんにするつもりなんだ。」

旧友「……勇者は女だと聞いたけど。女性が女性をお嫁にする……?」

女兵「つまりレズって事。」

吸血姫「可愛らしい性癖の持ち主なのよ。今回の勇者は……」


旧友「ああ……何か複雑な勇者なんだね。」

女兵「つか、勇者はただの女好き。女の仲間ばっか集めてハーレムを作るんだとさ。」

吸血姫「新妻さんの他にも色んな女の子がいましてよ。
もちろん、そこの女兵も勇者のハーレムに属してますわ。」

女兵「運悪く、捕まっちまったんだよな……」


旧友「なるほど……ひょっとして、僕の妹も勇者のお嫁さん候補だったりするのかい?」

吸血姫「妹?あなたの妹がどうかしたの?ていうか誰よ?」

女兵「ああ、旧友には血の繋がった妹がいるんだ。」

旧友「でも、妹は僕よりも、男兵の方の事を兄妹の様に慕ってたけどね。」

吸血姫「あら?それって、つまり……」

新妻「魔法使いさん……?」

女兵「魔法使いにとっては血の繋がった兄貴より、血の繋がらない幼なじみのお兄さんの方がいい相談相手になったんだよな。」

旧友「はは……そうだね……」

女兵「あるいは、実の兄貴の方を兄妹として見る事が出来ていない……とか……」

旧友「………」


吸血姫「あら?今のはどういう意味なの?女兵。」

女兵「旧友のちょっとした秘密事さ。あんまり突っ込まないでくれ。」

~貴族の街 裏路地~


女侍「モグモグ……(パンを食べている」

猫盗賊「はぁ~♪こういうガヤガヤした街は、やっぱり裏路地が落ち着くにゃ~♪」

魔法使い「はい。貴族の街は人口も帝都に次ぐ多さのベッドタウンですから……」

アカネ「そうね。街は平和ボケした貴族がいっぱいだからって、スリばっかしてちゃダメよ。猫盗賊ちゃん。」

猫盗賊「……ちょっとだけ肩慣らしがしたくて、つい……」

シスター「吸血姫様は大丈夫でしょうか……?少し心配です……」

アカネ「あら?そんなに吸血姫ちゃんを心配して、シスターさんはまるで吸血姫の保護者みたいね?」

シスター「いえ、そんなつもりは……。
ただ、吸血姫様には、この様な人で溢れる街などは不快なモノではないかと思って……」

猫盗賊「むむ……。吸血姫、他人を襲ってなければいいがにゃ……」

アカネ「それは大丈夫よ。彼女はそんな愚かな事をする器ではないわ。」

シスター「はい。吸血姫様はちゃんと命の大切さを心得ておりますから。
きっと神のお教えが行き届いて……」



猫盗賊「またシスターの神説話が始まったし。無視して先に行くし~♪」


??「うおっ!?」
猫盗賊「にゃがっ!?」ドン!


アカネ「あらあら、猫盗賊ちゃん。大丈夫?」

猫盗賊「いたた、正面衝突したし~……
いきなり暗闇から飛び出すなんて危ないにゃ!!」

??「ぐぅ……すまない、本を読んでいて……」

アカネ「裏路地を本を読みながら歩くなんて……かわった人ね?」

魔法使い「あの~、大丈夫ですか?」

??「あ、ああ……心配ない。」

シスター「お怪我はありませんか?よければ、私の治癒術で……」

??「ん?シスターか!?
いや、いい。我は平気だから……」

シスター「いえいえ、傷があったら大変です。一応見させてください。」

??「いや……よせ!やめ……!!」

シスター「………え?」

シスターは??が付けていた仮面を取った


シスター「え?あなたは……」

??「ぐっ……」

猫盗賊「どうした?シスター、そいつの顔がどうかしたか?

………え?お前、その姿……」

アカネ「あら?あなた、ひょっとして“オーク”?」

オーク騎士「………」


猫盗賊「オーク!?オークがなんでこんな街中に………」

女侍「……モグモグ……(パンを食べている」

魔法使い「まさか、魔王の手先!?」

アカネ「あらあら、醜き闇の戦闘種であるオークが、貴族の街の裏路地に現れるなんて……」


オーク騎士「いや、我は魔王の手先などでは……」

魔法使い「!?動かないでください!!」

オーク騎士「!?……い、いや……別に君たちに危害を加えるつもりは……」

アカネ「あらあら、ごめんなさいね。私の一族にはオークやゴブリンを見たらまずは疑え、っていう掟があるの。
ねぇ?猫盗賊ちゃん。」

猫盗賊「にゃ~!オークごとき、姉上の手にかかればイチコロだし!!」


女侍「…………モグモグ……」

猫盗賊「女侍!あんたも姉上を手伝ってオーク退治をしてよ!」

女侍「…………このオークに殺気は感じない。無害……」

猫盗賊「え!?」

アカネ「あら、そうかしら?私にはオークはただのオークにしか見えないけど……」

魔法使い「でも……人街に現れたオークを放っておくのは危険なんじゃ……」




旧友「そこまでだ!!」バッ!!


猫盗賊「にゃんだ!?また誰かやってきたにゃ!?」

オーク騎士「軍将どの!!」

魔法使い「え!?旧友さん……」

アカネ「あら、カッコいい軍人さんね。」

女兵「ちょっと待てよ!軍将どのさん、なんでオークが街にいて、お前がそれを庇うんだよ!?」

猫盗賊「あ、女兵も来たし……」


旧友「彼は、僕の部下だ。」

魔法使い「え、ええ!?」

女侍「………ふむ。」

アカネ「あらあら、オークは仲間って事?
つまり、そちらの軍人さんも闇の勢力ってワケなのかしら?」

女兵「いや、こいつに限って帝国を裏切るワケがないからな。

それに、そのオーク、帝国の軍服を着てる……」

猫盗賊「帝国の街に潜り込む為の変装だよ、きっと。」



オーク騎士「いや、我はれっきとした帝国軍人だ。」

旧友「僕の部隊に所属する、僕の優秀な部下の1人だ。」

魔法使い「え!?」

女兵「マジ……っぽいな……」

猫盗賊「うにゃ~……本気で!?オークが帝国兵になれるの!?」

旧友「ああ。上層部の許可はとったが、やっぱり民間の人達には受け入れ難い事みたいだね……」

オーク騎士「だから、街中では仮面を着けてフードを着て、バレない格好で裏路地を移動しているのだが……すいません。軍将どの。騒ぎを起こしてしまって……」

旧友「いいさ、この程度なら。
幸い、見られた輩は、僕の知り合いだったから。

魔法使い、そして勇者の仲間達……」


魔法使い「……旧友さん……」

女兵「………」



シスター「……それで、あの……」

オーク騎士「ん?どうかしたか?」

シスター「怪我は……大丈夫ですか?
見たところ、これといった傷は見当たりませんが……」

オーク騎士「お前、我は闇の種族であるのだぞ?光の聖職であるシスターが我に近寄る事がどういう意味か分かっておらんのか!?」

シスター「はい……でも、例え罪深き穢れ人だとしても、傷付いた者を見捨てる事は神の意思に反しています!
神は、生きる命のすべてに平等な恩恵を与えますから……」

オーク騎士「!!………貴様、本気でそう考えているのか?」

シスター「はい。神は誰一人として見捨てない、だから私も誰一人として見捨てるつもりはございません。」


吸血姫「ふふふ。シスター、相変わらずね~?」

シスター「吸血姫様!!ご無事で……」

吸血姫「オーク。この女はただの聖職者ではないぞ?
勇者の仲間だけあって、その器量、忍耐、そして心の強さはお前達とは比べものにならない。」

オーク騎士「お前も、闇の匂いがする。闇の種か!?」

旧友「勇者も既に闇の種族を仲間にしていたみたいだね。
さすがは勇者。普通なら、闇の種族なんて仲間にしないはずだ。魔王の手先かもしれないし……」

女兵「だったら、お前はどうなんだ?お前だって、オークを部下にしてるじゃねぇか?」

旧友「帝国の中でも、柔軟な考えをする上官が増えていてね。
例え闇の種族でも、軍人の器量がある者は積極的に採用していこう、って話が出たんだ。」

女兵「へぇ~、帝国もかわってきてるな……」


吸血姫「あまり賢い考えでもないわよ?
その内、闇の種族に帝国軍を乗っ取られるかもしれないわね。」

旧友「それも懸念されているね。例え人間であったとしても、軍人たる器量を持たない者に、軍服は着せられない。

でも、このオーク騎士は別だ。彼は素晴らしい器量を持っている。」

オーク騎士「いや、我はただの軍人だ。それ以上の器量など持ってなどいないです。」

女兵「ほぉ~、律儀だな。」

アカネ「あらあら、オークのワリに可愛らしいわね。」




魔法使い「………」

設定が壮大になってきてて、やっぱりSSの形じゃ表現しずらいかな……

~貴族の街 公園~

女王子「……ドレス、似合ってますか……?」

女勇者「もちろん!あたしのお古がこんなに似合うなんて、さすがお姫様~♪」

女王子「そ、そうですか……?えへへ……。

男兵さんはどう思いますか?」

男兵「ん?いやぁ~、普通に似合ってるんじゃないか?
さすがは王族。どんな服でも着こなすんだな。」


女王子「あ、ありがとうございます……。」


女勇者「じゃ、行こっか!」

女王子「はい……どこに?」

女勇者「今日1日女の子として過ごすんでしょ?
なら、まずは甘いスイーツ食べて、可愛い服を着て……」

女王子「え!?街に出るんですか!?
でも、こんな格好、民に見られたら……」


女勇者「大丈夫だから~♪行こう!」

~貴族の街 とある酒場~

オーク騎士「遅れてすまない。」

サキュバス騎士「あー、やっと来ました?副隊長。」

馬人騎士「ん?そっちの人間達は?」

猫盗賊「にゃがっ!?馬の化け物!?」

新妻「あっちの女の子には羽が生えてます……悪魔さん?」

サキュバス騎士「そういうあなたも、光の匂いがするわ。エルフとかじゃないの?」

新妻「え!?……は、はい……」

女侍「……モグモグ……(綿飴を食べる」


サキュバス騎士「あたしは悪魔は悪魔でも吸精悪魔のサキュバスよ。」

猫盗賊「あ~、男を襲って精気を奪う変態悪魔の……」

アカネ「アバズレね。まだ幼いのに大変ね。」

サキュバス騎士「………確かに、サキュバスはそういう生き物だけど……あたしは違うの。」

馬人騎士「その少女サキュバスは人間にトラウマがあって、男の人間を襲う事ができないんだ。」

新妻「……トラウマ?」


サキュバス騎士「最近の人間はサキュバスを恐れるどころか、捕まえて売女にしてしまいさえするの。
私も、母親サキュバスに売られて、色んな人間達に飼われて……」

オーク騎士「売人に売られているところを、旧友さんが保護したんだ。」

アカネ「あら……闇の種族のワリに、悲惨な人生ね……」

馬人騎士「俺も、飢え死にしかけたところを旧友さんに助けられたんだ。
聖獣であるケンタロスとは違って、馬人間は化け物扱いだからな…」


猫盗賊「だって、見た目が可愛いないもん。」

アカネ「私達、猫耳人間は見た目がより人間に近いから、人間との交流も簡単だものね。」

オーク騎士「後はあちらに座ってる4人も我の仲間だ。
人魚にスライム、ハエ男、人食い花、そしてダークエルフのクロトさんだ。」


スライム騎士「オ~クどの~?そいつらは~?」

人魚騎士「人間……か?」

新妻「人魚……初めて見ました……綺麗です……」

サキュバス騎士「人魚姉さんも凄く美人だよ?見た目だけじゃなくて、性格とかも……」

人魚騎士「誉められるほどではないさ。旧友どのに、人間社会での礼儀や作法をたたき込まれたのだ。」



女侍「………ジーッ」

スライム騎士「ん~?なんだぁ~?このお侍は~?」

女侍「ゼリーみたい……美味しそう……」

スライム騎士「な、なんとぉ~!!?」

オーク騎士「スライムはあまり栄養がよくない。食べる事はすすめないぞ。」

女侍「むむ……仕方ない。非常食にとっておく……」

スライム騎士「………」


猫盗賊「女の人っぽい形だけど、スライムさんも女性なの?」

スライム騎士「そだよ~。まぁ~、あんまりスライムには性別は関係ないけどぉ~。」

猫盗賊「むむむ……」


ハエ騎士「オークさん。旧友どのはどこへ行かれたし?」

オーク騎士「さぁな。少し散歩に出ると言っていたな……」

人食花騎士「ふわふわ~。この辺りの空気はあまり宜しくない。人間の街の空気は汚い。
早く、山か野に向かいたいかな。」

猫盗賊「あ、あなたの頭のお話、綺麗だね。」

ハエ騎士「ししし。その人食い花は人間っぽい見た目と綺麗な花で獲物を呼び寄せ、お腹にある大きな口で相手を丸呑みだし。」

人食花騎士「相手を油断させて不意討ち。頭脳犯人なのさ。」

猫盗賊「ちなみに、あんたは少年なの?少女なの?」

人食花騎士「もちろん女さ。ちゃんと雌しべもあるよ?ふわわ~。」


猫盗賊「むむ……闇の種族とはいえ、可愛い女の子ばっか……。

……勇者が気に入りそう……」

クロト「…………」

アカネ「あらあら、クロトさん。お久しぶり。」


クロト「お前、勇者の仲間になっていたのか?」

アカネ「あなたは何をしてるの?魔王軍オーク部隊の指揮はどうしたの?
それとも、あのオークが帝国軍にいるのもあなたの指示?」


オーク騎士「?クロトさん?その方は知り合いですか?」

クロト「私と同じ、昔の勇者の仲間だった者だ。」

オーク騎士「そうでしたか。あなたも、魔王退治の偉業を成し遂げた方だったのですね。」

アカネ(………?あなた、ひょっとして……)

クロト(私は元帝国軍人として、この特殊部隊の世話をしているだけだ。
彼らは、私が魔王軍にいた事を知らない。)

アカネ(……じゃあ、帝国軍に戻ったのは魔王の為ではないって事?
なら、あなたは魔王軍を……)

クロト(やめてはいない。ただ……今は魔王軍を動かす気にはなれないのだ……)



ホワイト「いらっしゃいませ~。ウチの酒場にようこそ~……
……って、アカネ!?何してんね!?」

アカネ「あら?あなたまで……こんなところで何をしてるの?」

ホワイト「ウ、ウチは………やる事がなくて……クロトはんのすすめで……アルバイト……」

クロト「魔王の顔を見たくないから戻りたくないらしい。」

ホワイト「うっ!?……うぅ……」


アカネ「あらあら。これでアオミンやミドリがいたら、魔王軍幹部勢が全員集合ね。
2人はいないの?」

クロト「ミドリは真面目だからな。魔王の城に戻ったさ。アオミンも、ミドリを追って帰った。」

ホワイト「それに比べてウチは……逃げ出してもうた……
もう、魔王には会いたくない……」

アカネ「あらあら……」



猫盗賊(………姉上……。)


アカネ「………」

ホワイト「ところで、さっきからウチらの会話を勇者の仲間の猫耳娘に盗み聞きされてるようやけど?」

アカネ「ほっといてあげましょ。いいじゃない。別に聞かれても……
むしろ、あたし達魔王軍のやる気のなさを聞いて安心するでしょうね。」

~貴族の街 とある通り~

ドカッ!

不良「痛ぇな!どこ見て歩いてんだ!?」

女王子「あ、すいません……」

女勇者「は?あんたがノロノロ歩いてるからでしょ?」

不良「な、なんだと……!!この野郎!!」

女勇者「勇者キック!!」ドゴン!!

不良「ぐあぁ!?……バタン」


女王子「ゆ、勇者様!?強い……今のも勇者の力!?」

女勇者「いや、ただの武術だよ。
あたし、勇者の力が覚醒する前からかなり強かったから。武術大会でも優勝しまくってた。」

女王子「……勇者様……凄い……私より、男の人っぽい……」


男兵「………なら、お前、勇者の力を失っても、その強さを持ってすれば、軍人になれるんじゃないか?」

女勇者「ん~?嫌だよ。あたしは勇者がいいの。軍人なんて暑苦しいのなんかイヤ。
ま、ヴァルキュリア部隊ぐらいなら考えてあげてもいいけど……」


男兵「……あ、そう。」

~貴族の街 とある小道~

魔法使い「あ、あの……旧友さん……」

旧友「……“お兄さん”とは、呼んでくれないんだね?」

魔法使い「え?……いや……だって………」

旧友「男兵や勇者様達とは上手くやってるようだね?」

魔法使い「……はい。」

旧友「そっか。なら、僕もあまり心配する必要はないみたいだね……」

魔法使い「あ、あの……その……」

旧友「…………じゃあ、そろそろ仕事に戻るね。」

魔法使い「え!?あ、待って!!」

旧友「……じゃあね。僕の……可愛い妹……」


魔法使い「嫌だ……もう、“妹”だなんて言わないでよ……
私は……旧友さんの事が、今でも好きなんだから……“彼女”として……」


旧友「……ごめん。僕は、今の僕には、もう昔みたいに君の愛には答えてあげられないんだ……」


魔法使い「………嫌だ……」

旧友「ごめん。君は、僕の妹なんだ。だから……ごめん……」





魔法使い「……行かないで……」

魔法使い「……旧友さん……」

魔法使い「“お兄さん”……」




女兵「………」

女兵「よっ。魔法使い。」

魔法使い「……女兵さん……。見てたんですか?」

女兵「アイツも、軍人になってからより堅物になったな。」

魔法使い「……まるで、私との事を悪い過去みたいに思ってるんですかね……」

女兵「まぁ……。実の兄妹だからな。
やっぱり、世間の風は痛いんだろな……」


魔法使い「兄妹なんか関係ない!私は旧友さんが好きで、旧友さんも私の事が好きだったのに……」

~貴族の街 大通り~


女王子「………」

男兵「眠~……ふぁ~」


女王子「……私、こんな事をしててもいいんでしょうか?」

男兵「……じゃあ、なにがダメって言うんだ?」

女王子「あたしには、王位を掴むって願いと、その為の……」

男兵「でも、男のフリするのには疲れたんだろ?」

女王子「でも、このままじゃ、王位継承権を剥奪される……」

男兵「なら、ちゃんと女勇者でも嫁に貰った方が良いだろな。」


女王子「でも……やっぱり、結婚は嫌かな……」

男兵「なんで?女勇者はああ見えて、案外良い奴……」

女王子「ううん。違うの。勇者様が嫌だっていうのじゃなくて、私には他に好きな人が………」




旧友「あ、ここにおられましたか。王子どの。」

女王子「え?……あ!!
旧友さん!!」

旧友「勇者様のご実家から出られていたのですね。よかった。ご無事で……」


男兵「お前……」

旧友「男兵。王子様を守っていてくれた事を感謝する。
……ありがとう。」

男兵「え?いや、それは良いんだが……」

男兵(王子は今、女物の服を着てるのに、なんで……?)


女王子「あ、あの……旧友さん。この服……似合います?」

旧友「……はい。とてもお似合いです。」

女王子「///////」


男兵「お前、この王子が女だったって事、知ってたのか?」

旧友「……彼……彼女の護衛を受け持つ上で、仕方なく知ってしまったんだ。」

女王子「あ、でも、心配しないでください。旧友さんはちゃんとした人ですから。絶対に他にはバラしません!」


男兵「いや、そういう性格なのは昔からよく知ってるが……」




女勇者「やっほ~!!王子ちゃ~ん♪トイレで遅くなってごめ…………

………って、アンタ誰?」

旧友「勇者どの。はじめまして。僕は帝国軍人の……」

男兵「勇者。多分、お前の恋のライバルだな。」

女勇者「なにぃ!?」

女王子「!!!?」

旧友「……?一体なんの事だ?」

旧友「はじめまして。勇者様。」ニコッ


女勇者「はいはい、どうもはじめまして~。」

旧友「噂には聞いてましたけど、こんな美しい方だったなんて……」


女勇者「そりゃあ、勇者がブスな女だったら、世界中の勇者ファンが泣くだろね~。」

男兵「勇者、今のはアイツなりのお世辞だって……」

旧友「お世辞?とんでもない。
勇者様は凄く綺麗な方じゃないか!」

女勇者「はいはい。あたしは男に褒められたって、なんちゃ嬉しくないの。」

旧友「……はは、これは手厳しい……」

男兵「まー、気にするなって。こいつを黙らせれる男がいたら、この世の王にはなれるって。」

女勇者「それも“お世辞”のつもりなの~?男兵君~。」ギロリ

男兵「ははは。そんなに見つめないでくれ。いくら俺がカッコいいからって…」

女勇者「あら~?なんなら、もっとカッコ良くしてあげるわよ?あたしの華麗な剣さばきでお顔を整形してあげる♪」

男兵「おー、怖っ。
勇者殿。お姫さんや帝国軍将さんの前で、そんな気の短い性格を披露されてよろしいんですかい?」

女勇者「あたしは別に気が短いんじゃないの。
ただ、かわいそうな程ねじ曲がった男兵君の性根を叩き直してあげたいのよ!!」



旧友「……あはは。男兵は、勇者様とは仲が良いんだね?」

女王子「二人とも、まるで御兄妹みたいですね。」


女勇者「何ソレ。汚らわしい。」

男兵「普通にムカつくだけだろ。こんな妹がいたら。」


旧友「……そうかな。相手の悪口を言い合える仲なんて、家族以外には存在しないと思うよ?いい絆だと思うよ?」


男兵「……まぁ、お前んとこの妹とは大違いだもんな。」

旧友「……あはは……そうだね……」

旧友「……では、王子殿。そろそろ、ホテルに戻りましょうか。
そんな女性の姿で長時間外出するのは危険です。」

女王子「あ、はい。行きましょう。」


女勇者「え!?あ……女王子ちゃん……」

女王子「勇者様。今日は楽しかったです。
……また、会いましょう。」

女勇者「………うん。必ずね!」



旧友「……そうそう、男兵。君の言ってた“女兵”さんに会ったよ。」

男兵「そうか。どうだった?」

旧友「君の母上さんに似ていたよ。」

男兵「そっか~?俺はそんな風には感じなかったが……」

旧友「でも、やっぱり完璧な“男兵”だったよ、彼女は。」

男兵「……当り前だ。“俺”なんだから……」

旧友「君が2人に増えたってことだね。
やっぱり、喜ばしいことなのかい?自分がもう1人現れる事って……」


男兵「………何とも言い難いが……」

女勇者「コイツがもう1人増えたって、世界が不幸になるだけよ!災害よ!公害よ!!

でも、女兵ちゃんは可愛いし、カッコいいし、もうサイコー!!女兵ちゃんが現れてくれて本当に良かったわ~♪」


旧友「……あはは。全く、勇者様は面白いお方だ。」





女勇者「ところで、男兵。」

男兵「ん?何か?」

女勇者「あんた、お母さん居たの?養護施設育ちって言ってたじゃん。」

男兵「……まぁ、毎日の様に施設に行っては遊んでたが、俺にはちゃんと両親や兄弟が居たよ。旧友や魔法使い達は本当に孤児だったがな。」

女勇者「ふ~ん。なんでわざわざ養護施設なんかに遊びに行ってたの?
家庭内で何か問題でも?それとも学校で友達が出来なかったの?」

男兵「違ぇよ。単純に、ふと施設の庭に侵入して、その時に子供ん頃の魔法使いと出会って、そいつの兄である旧友とも出会って、気が付いたら遊び仲間になってたんだ。
はたまた気が付いたら、施設の従業員とも遊ぶ仲になってて……」

女勇者「……あんた、子供の時から自由な男だったのね。」

男兵「………かもな。」

男兵「俺も一つ聞いていいか?」

女勇者「ん?何よ?」

男兵「お前、さっき俺がもう1人増えるのは嫌だけど、女兵が現れたのは嬉しいって言ってたよな。
あれって、まーつまり俺よりも女兵の方がいいって事だよな。」

女勇者「当り前でしょ。アンタみたいな男なんかより、女兵ちゃんの方が……」

男兵「女兵は性格も何もかもが俺と同じなんだぞ。
唯一の差は、性別が違うだけ……」

女勇者「そこが大きいのよ!!男ってだけで汚らわしいもの!!」

男兵「なら……俺がもし女だったら、勇者に好かれてた、って事だよな。」

女勇者「…………何気色悪いこと言ってんの?
あんた、女になりたいの?女装?それとも、性転換?
そこまでして、あたしのハーレムに入りたいの?

まぁ、実際になったら、ハーレムに入れてあげるのを考えてあげない事もないけどね。」


男兵「いやいや、女化した俺は普通に居るじゃんか。女兵が……。
つまり、女化した俺が既に仲間に居るんだから、男である俺はもう勇者の仲間には必要ないよな?」


女勇者「もちろんよ!あたしのハーレムには男は必要ないわ!」

男兵「そっかぁ。なら、俺はやっぱり勇者の仲間から外れるべきか……」

女勇者「………まぁ、好きにすれば?」

男兵「?好きにって……外れるのを強制はしないってことか?」

女勇者「………まぁね。本当なら、男なんて嫌なんだけど………まぁ、男兵がどうしてもって言うんなら……」




メイド「勇者様~!こちらにおられましたか。」

射手「探しましたよ~!!

……て、うわっ!?」ドン!


女勇者「あらら、射手ちゃんはまた豪快なパンチラ転けを……」

メイド「ムムム。早速、勇者様にサービスシーンの定提供ですか!?
……なら、私も………

あ~れ~」ドスン!コロリ


女勇者「うんうん。いい光景ね~♪」

射手「メイドさん、意外と可愛い下着を履いてますね!?」

メイド「メイドたるもの、全身隈無く勇者様に気に入られるように、常に心掛けてます!メイドの極意です!」

女勇者「さっすが~!メイドの極意、恐るべし!」

男兵「くだらねぇ極意……」

メイド「あ、男兵様も御見になられましたね?勇者様以外は有料ですから、お金払って下さい。」

男兵「大した悪徳商売だな。つか、俺は見てないからな。」

メイド「大丈夫です。他の殿方ならまだしも男兵様ですから。特別に安くして差し上げます。」

男兵「いやいや、だから俺は……」

女勇者「何言ってんの?アンタ、普通にガン見してたじゃない。」

男兵「……まぁ、見てたんだろうけどな。なんか記憶に残ってないんだよな。
多分、俺の頭はくだらない記憶をすぐに消去するんだろな。」


メイド「わ、私のパンチラがくだらない……なんて………
ヒドイ……私、女として傷つきました……」


射手「男兵さん!!女の子の下着を見ておいて、くだらないって言うなんて!!
酷過ぎます!悪魔です!女の敵です!!」


女勇者「……所詮はアンタも汚らわしい男だったって事ね……。残念だわ……」


男兵「………え?なんか、俺、悪い事でも言ったの?」


メイド「うぅ……こんな鬼畜が今後も勇者様の傍にいて、私を虐め続けると言うのですね……。
………でも、私は負けません。私は出来るメイド。どんな非道な事をされて、体を穢されても、心だけは勇者様のモノであり続けます!!」


女勇者「メ、メイドちゃん………」


男兵「イイハナシダナー……じゃねぇよ。
お前ら結局何しに来たんだよ……」




女侍「……モグモグ…」

女勇者「あ、侍ちゃん!それと……」


新妻「勇者様~!………と、お、男兵さん………」

サキュバス騎士「ううう……人間がいっぱい居る……怖い…………」


女勇者「……侍ちゃんの背中に隠れてるのは新妻ちゃん!……と、そっちの新妻ちゃんの後ろに隠れてる少女は誰?」

サキュバス騎士「うぅ………」

新妻「この娘はサキュバスなんです。でも、人間にトラウマがあるみたいで……」

サキュバス騎士「あ、あの………その………」

女勇者「………」

サキュバス騎士「え、えっと………」

女勇者「………ジュルリ。」

サキュバス騎士「!!!に、新妻さん……!!こ、怖い……」

新妻「勇者様!こんな小さな子を怖がせないでください!!」

女勇者「分かってるって♪デヘヘ~」

猫盗賊「やっぱり……相手がサキュバスだろうと、勇者は女には見境無いし……」

人食花騎士「アイツが勇者なのか?案外普通の人間だな。」

スライム騎士「だだの女じゃ~ん。本当に強いのぉ~?」

シスター「勇者様は強いですよ?敵を一瞬にして凪ぎ払う力は、まさに神に選ばれし力!!」


人魚騎士「人間ごときが神を語るつもりか?聖職者よ。」

吸血姫「あら?あなた方みたいに海の中で一生を過ごす種族とは違って、人間には中々教養深い者達も居るものなのよ?」

人魚騎士「……まぁ、確かに我々は海に住む者。陸、ましてや天の事になど興味はない。
だが、人間がどれほど愚かしい種族かは痛い程に知っている。そして、お前達吸血一族の不憫さもな……」

吸血姫「不憫なんて……余計なお世話よ。私は不憫に思われる様な生き方をしていないわ。
……あの娘、シスターのおかげでね……」

人魚騎士「……人間ごときに、吸血一族の悲しみに満ちた心を癒しきれるとは思えないがな……」



女勇者「ん~?あんたは?」

スライム騎士「帝国軍~魔族部隊~スライム騎士なのだ~。」

女勇者「スライム?
……じゃあ、今のその可愛い女の子の姿から他に変身できたりするの?」

スライム騎士「そゆこと~。変身というよりは変形~。ゼリー状に形を変えるぐらいかな~。」

女勇者「へぇ~。でも、せっかく女の子の姿をしてるんなら、わざわざその姿を崩さなくてもいいんじゃない?」

スライム騎士「だね~。この姿なら~、マントを着てマスクを着ければ~他人にはスライムってのがバレなくなるし~」

女勇者「ベッドの上とかでも……やっぱり人型の方が雰囲気でるしね……」

スライム騎士「だね~。」

女勇者「触り心地良さそう……でも、ちゃんと性感帯はあるの?肌とか胸とかも、ただのスライムなんじゃないの?」

スライム騎士「ふふふ~。スライムの性感帯は~、全身なのさ~。スライム全体で感じるのさ~。」


女勇者「な、何て羨ましいの!?
じゃ、じゃあ、こんな風に腕に触っただけで……!?」サワ……

スライム騎士「おぉ~。感じる~。勇者の手の感触~。じんわりほんのり来る~。」

女勇者「じゃ、じゃあ、こ、このスライム状の手を、わ、私のに入れただけで、お互いに絶頂感じ合えるって事なの!?そうなの!!?」

スライム騎士「え~!?勇者~、さすがにそういうのは~もっとお互いを知ってからじゃないと~。」



男兵「……スライムと何を話してるのかは知らんが、あんな嬉しそうな勇者の顔は初めて見たな。
勇者と魔族が笑顔で会話してるなんて、平和なんだな~。」

オーク騎士「女兵殿。なぜ同じ魔族の彼女達はよくて、我々は勇者様に会えないんですか?」

女兵「オークに馬の化け物にハエ男。どれも勇者が嫌いそうな魔族だからな。
出会った瞬間に斬られるかもな。」

馬人騎士「勇者は魔族に好き嫌いがあると?」

ハエ騎士「しかし、人魚はともかく、人食花やスライムが勇者に気に入られるとは……」

女兵「そりゃなぁ。なんだかんだで言っても、見た目は可愛い“女の子”だからな。」

魔法使い「……勇者様。早速、スライムさんとあんなに仲良くお話してますね。」

女兵「なんの下心もなければいいんだがな……。」


オーク騎士「……仕方ない。我々は先に軍将殿のもとに向かうか。」

ハエ騎士「ししし。結局勇者とは話せずか……」

馬人騎士「まぁいい。今後、また縁があれば会えるだろうしな……」


女兵「旧友のところに戻るのか?」

オーク騎士「はい。我らにも軍人としての仕事がまだありますから。」

女兵「帝国軍魔族部隊……。最近の軍上層部も面白い事をするもんだな。魔族を軍人にするなんて……」

オーク騎士「旧友さんや、色々な人達の後押しのおかげです。
と言っても、まだ我々7人しか居ませんが……」

ハエ騎士「人間の味方をするなんて、本当なら魔族の生き方に反してるんだがね……ししし。
でも、こうなった以上は、もはや魔王軍に戻る事もできやしないです。」

オーク騎士「我々は帝国を、いや旧友殿を信じてこれからを生きて行くつもりです。」


女兵「あ、そう。せいぜい頑張りな。

旧友なら、信じても損はない男だから……」


魔法使い「どうか旧友さんを、近くで支えてあげてください。」


オーク騎士「はい。言われなくとも。」

………………

男兵「えと、勇者。今、なんて言った?」

女勇者「スライムちゃんに、人魚ちゃん、お花ちゃん、そして萌え萌えサキュバスっ娘ちゃん!
皆を私の仲間にしたい!!」


人魚騎士「ん?」

スライム騎士「マジでかぁ~!?」

人食花騎士「え!?」

サキュバス騎士「!!?」


男兵「……いや、こいつらは旧友の部下で……」

女勇者「あんないけすかない奴の部下だなんて勿体ない!!今すぐ私のハーレム……もとい、仲間に加わりなさい!!」

人魚騎士「旧友殿を“いけすかない”と申すとは……」

人食花騎士「いいお方だと思うけどね。」

スライム騎士「勇者の仲間~楽しそ~。でも~、旧友殿は~我らの恩人~。」


サキュバス騎士「あ、あの……私は……旧友さんと……」

新妻「サキュバスちゃん、旧友さんと一緒に居るのは平気なの?」

サキュバス騎士「うん……。私が酷い目に合ってるところを助けてくれて……。
でも、昔から私を助けてくれた人が、結局は私を弄ぶことなんてしょっちゅうあった。………あたしの……サキュバスの体から常に出てるフェラモンに負けて……。
しかも、あたしのフェラモンって生まれつき強力なのみたいで、男の人でも女の人でも子供同士だって誘惑しちゃって……。

でも、旧友さんは違ったの。私を温かいベッドで寝かしてくれて………ただそれだけ。決して私を襲ったりはしなかった。
あの人には私のフェラモンが効いてない。多分、フェラモンの相性が悪い人なんだと思うの。
だから、あの人は私を弄んだりなんかしない。いつでも、私に優しくて……」


女勇者「あたしも、別にフェラモンに負けてるつもりはないんだけど……」

男兵「元からの変態には効かないんだろな。」

女勇者「じゃあ、アンタはどうなの?彼女を見て、何か感じる?」

男兵「…………何も。」

男兵(……何も感じてない……よな?俺の体……)



人魚騎士「……しかし、我々魔族が勇者の仲間になど………」

猫盗賊「にゃにゃ……さすがにこんな……」

メイド「私は……そうですね。スライム様や人食花様がお仲間になれば、プレイの幅が広がるかと。花様の触手や、スライム様のゲル状スライムを使って……」

男兵「…………まさか、こいつら、仲間になる……のか……?」


アカネ「あらら~、人数が増えて、賑やかになるわね~♪」

男兵「……お前誰だよ?」

アカネ「あなたの大好きな猫盗賊ちゃんのお姉さんよ。
はじめまして。いつも妹がお世話になってるわね。」

男兵「え?てことは、お前も猫耳種族なのか?
勇者や俺がいない内に、こんなのも仲間になってるなんて……」

猫盗賊「姉上は最強なんだぞ~!なんたって、前勇者の仲間だったんだから!」

男兵「……前勇者の……仲間?」

アカネ「そうね。つまり、あなた方より一足先に魔王退治をした者って事ね。」



女兵「勇者。」

女勇者「ん~?…って、お姉様!?」

人魚騎士「ん?なんだあの人間は?」

スライム騎士「ん~とね~。旧友さんの~昔の知り合いである男兵~の女化したクロ~ン的なヤツだって~。」


女兵「こいつらも仲間にする気なのか?」

女勇者「もちろんよ~♪だって、可愛いじゃん。」

女兵「………。止めはしないけど、あんまり勇者の仲間が大所帯になるのは危険だぞ。」

女勇者「なんで?」

女兵「………なんて言ったらいいのか……。少数精鋭の方が有難いって言うか……」

男兵「“SSの限界”だな。」

女勇者「え?」

女兵「つまりな、今こうしてここには俺や男兵、勇者に射手、シスター、猫盗賊、吸血姫、新妻、女侍、メイド、アカネ、魔法使い、
そしてスライムや花やサキュバスや人魚……っと。

総勢10人を越えるキャラが居るんだよ。
こんな大人数でこれから旅をしてみろ。漫画とかと違って小説、ましてはSSだったら、絶対存在感が消えるキャラが現われだす。

つか、既に元から無口な侍や控えめな魔法使いは空気化してる。」


魔法使い「なっ!?」

女侍「……モグモグ…」


女勇者「………なるほど。あたしって、もう10人以上の女の子のハーレムを作ってたんだ……。

サイコーじゃん!!!」


男兵「とにかく、この際だから、人数を絞って仲間を選別しよう。」

女勇者「はぁああああ!!!!?なんで!?せっかくのハーレムを崩せって言うの!?」

男兵「つ~わけで、今から勇者の仲間の選別を行う。」

女勇者「あ、あたしは……そんな事、やりたくないのに……」


射手「………さっき、男兵さんの言っていた“SSの限界”って、どういう意味なんでしょうか?」

メイド「私達が触れてはならない領域なんですよ。
きっと、主人公である勇者様や男兵様クラスの人達だけにわかる事なのです。」

シスター「男兵さんや勇者様って、主人公だったのですか?凄いです~!
……でも、一体何の主人公なのでしょうか?」

メイド「……“このSS”の……
まぁ、サブキャラな私には、これ以上深くは追及できませんが……」





女兵「とりあえず、なんか個々の特性を一人ずつアピールしていってもらおうかな?」

女勇者「え~と、私は勇者よ!好きなものはもちろん女の子!!」


女兵「……って、別に勇者はやんなくていいって!お前が他のヤツらから自分の仲間を選ぶんだから……」

女勇者「あ、あたしには無理よ……自分のハーレムを切り崩すなんて……!!」


男兵「え~と、じゃあまず俺が自分の個性をアピールするか。
帝国軍人やってる。趣味はなし。嫌いなものは勇者の女好きな性格。」

女勇者「はい、不採用。あたしの仲間からさっさと出ていって。」

男兵「………」

女兵「次は俺か。
帝国軍人やってる。趣味は特になし。嫌いなものは、勇者の……」

女勇者「採用!採用よ!!お姉様~!!一生あたしに付いて来て~!!」

男兵「………」

女兵「ははは……あ~、この選考には意味があるのかよ……。」

シスター「私は修道院や孤児院でシスターをしている者です。
趣味は、人々の笑顔を見ること、そして神の恩恵に触れることです。
勇者様の仲間になったら、回復魔法を擁して、勇者様や他の方々のサポートを行います。」

吸血姫「私は闇の高貴な吸血一族の末裔よ。趣味は読書。お花の手入れ。
勇者の仲間なんて興味ないわ。ただ、シスターが勇者に付いて行って危険な目に遭うというなら、私は彼女を守らなければならないから。シスターが行くのなら、私も付いて行くわ。」


男兵「じゃあ、シスターが選考から外れて、吸血姫だけ選ばれたら、どうするんだよ?」

吸血姫「シスターが居ないんなら、私が勇者と一緒にいる意味はないわ。当然、断る。」


猫盗賊「にゃにゃ~。あたしは猫耳種族だにゃ~。盗賊もやってたな~。俊足には自信があるにゃ~。
勇者の仲間になったら、偵察や隠密行動ができるにゃ~。だけど、夜の相手だけはもう絶対やらないにゃ!!」

アカネ「あらあら。うふふ。」


射手「私はヴァルキュリア・アーチャー。帝国軍ヴァルキュリア部隊の弓兵でした。」

スライム騎士「え~!?こんなのが、あのエリートぞろいのヴァルキュリア部隊に居たの~!?」

人魚騎士「人間、見た目で判断してはならない、と言うことだな。」

射手「弓の扱いなら、誰にも負ける気はしません!絶対、魔王を射止めてみせます!!

後……私、色んな下着を集めるのが趣味なんで……勇者様とはそんな私の趣味についていっぱいお話したいです。」

女勇者「うんうん♪パンツは女の子の命だからね♪」


新妻「……私は、勇者様の妻になるって決心したんです!それに、勇者様も私をずっと守ってくれるって……
勇者様の傍を離れるなんて嫌です!もう、人間達から迫害されたくない!人間の男が………怖い……。

だから、勇者様。私を守ってください……お願いします……」


女勇者「…………」

魔法使い「新妻さんはハーフエルフですし、光の魔法も使えます。」

シスター「それに、なんと言ってもエルフは神に最も近い種です。神の恩恵も深いことでしょうね。
エルフ様がいるだけで、我々にも神の御恩恵が……」


女侍「……モグモグ。和の国出身の剣士だ。刀の扱いには自信がある。
別に勇者の仲間にならなくとも、魔王を斬りに行くつもりだ。……モグモグ」

女兵「おにぎり食いながらの自己アピールとか……意外と余裕を感じる……」

魔法使い「わ、私は帝都でコック見習いをしていました。料理の腕には自信があります。でも、私なんかより新妻さんの方が腕はいいですけど……。
で、でも、上級魔法とかいっぱい使えますし、魔王討伐にあたっても足出まといにはなりません!」

女兵「選んでも全く損はない人材だよな。魔法使いなら、」



メイド「むむ……私の自己アピールですか……。
そうですね……とりあえず、一枚脱ぎましょうか……」バサッ

女勇者「採用!」

男兵「おい」



アカネ「え~と、私は…」

女勇者(あいつって、確か魔王の部下じゃん。……でも、あんまり悪い人には見えないんだよな……)

アカネ「出来れば、妹の盗賊ちゃんと一緒がいいわね。盗賊ちゃんが外れたら、私も外れるわ。」

猫盗賊「姉上……」



人魚騎士「…………」

女兵「ん?次はお前らの番だぞ?」

人魚騎士「なに?しかし、私達は旧友殿の部下なんだぞ?」

スライム騎士「勇者の仲間になれるのは面白そ~だけど~、旧友さんを裏切る様な真似は~……」

サキュバス騎士「勇者……怖いし………」

人食花騎士「選考から辞退するって事で……」


女勇者「以上、総勢15人の中から仲間を選ぶってワケね。
まー、男兵も一応選考にいれといてあげるわ~。」

男兵「はいはい、どうも。」

人食花騎士「あれ?僕らも人数に入ってない?」

人魚騎士「これで選ばれたら、私達はどうすればいいのだ?」

サキュバス騎士「うぅ……旧友さん………私、どうしたら……」

>>298からは、少し世界観が脱線していますが、軽く流してください】

>>298の中盤より再開


女兵「勇者は誰でも彼でも仲間にし過ぎだ!」

女勇者「えー、だって、ハーレムは人数多い方が……」

女兵「勇者。そんなに大勢の仲間が居て魔王に襲われたら、仲間皆を守り切れるのか?」

女勇者「それは……」


男兵「この際だから、仲間を厳選した方がいいだろな。」

女勇者「ちょ!?それ本気で言ってるの!?」

男兵「勇者がもし、あっちの帝国騎士達を仲間にしたいんなら、今の仲間と入れ替えになるだろな。これ以上人数を増やすのは危険だし……」

女勇者「わ、私なら、仲間が何人居たって、皆を守りきれるわよ!!」


吸血姫「どうかしらね。仲間が多いと、仲間内での人間関係も色々問題になってくるでしょうしね……」

アカネ「やっぱり、勇者の仲間は8人ぐらいがちょうどいいんじゃないかしらね?」

女勇者「………でも、私に仲間を選べって言われても……」

女兵「勇者。お前の仲間なんだから、お前の自由に決めたらいいさ……」

女勇者「………お姉様……」

~貴族の街、ホテル~


人魚騎士「軍将。今戻りました。」

旧友「ご苦労。勇者と話してみてどうだった?」

スライム騎士「勧誘されたよ~。勇者の仲間に~、って~」

旧友「ああ、やっぱりね。」

ハエ騎士「勇者は女好きの様ですね。例え魔族相手でも、女の姿をしていれば問題ないようで。」

サキュバス騎士「勇者……なんか恐かったよ……」

旧友「君達を勧誘か……。それで、君達は勇者の仲間になってみたいかい?」


人食花騎士「微妙ですね。」

人魚騎士「魔王と直接戦いたいとも思わないし……」

サキュバス騎士「私は!旧友さんの傍に居たい!
……他の人間の傍は……嫌だ……」


旧友「………。ところで、男兵や女兵のことはどう思ったんだい?」

スライム騎士「男兵~?なんか~ただの若造~って感じ~。」

人食花騎士「女好きのはずの勇者と意外と仲が良かった様にも見えたかな。」

サキュバス騎士「……ただの人間……だったと思うけど……」

人魚騎士「女兵の方は雰囲気も性格もかなり男勝りだったし、正直、男兵のとそっくりだったな。」

スライム騎士「あいつらは双子なのか~?男兵と女兵は~。」


旧友「双子……確かに、そんな感じの関係だね。彼らは……。
サキュバス。」

サキュバス騎士「はい、旧友さん。」

旧友「僕以外にだって、ちゃんと君に優しくしてくれる人間だっているはずだ。

例えば、男兵達なんかも………」


人魚騎士「あの人間らが?どうしてそう思いになるんだ?」

ハエ騎士「軍将殿の昔の知り合いなんですよね、男兵っていうヤツは。
昔から、優しい人間だったと言うんですかい?」


旧友「優しい……と言うより……」

夜~貴族の街~中央公園


女勇者「……仲間か……。

あたしは別に何人いようが守りぬく自信はあるんだけど……」





アカネ「あら、勇者じゃない。」

女勇者「あ、猫耳のお姉さん。」

猫盗賊「ゆ、勇者……」

女勇者「それに猫耳ちゃんも……。
二人も散歩?」

アカネ「ええ。ちょっと故郷の思い出話にふけっていたんです。」

女勇者「故郷?猫耳ちゃん達の故郷って、やっぱり猫耳な女の子がいっぱい住んでるの?」

猫盗賊「ま、まぁね…。人間も若干住んでるけど、あたし達みたいな猫人族が大半だよ。」

アカネ「可愛い猫耳少女がいっぱいですよ?」

女勇者「え!?マジで!?行きた~い!!めっさ行きたい!!!」

猫盗賊「あたしは……あんまり帰りたくないかも……」

女勇者「ん?どうして?」

アカネ「あたし達の一族は掟を重視する厳格な人達の集まりですから。
一族を抜けて盗賊になった者には風当たりはキツいんですよ。」

猫盗賊「…………」

女勇者「……ふーん。お姉さんはどうなの?一族を抜けて、前勇者の仲間になってたじゃん。」

猫盗賊「姉上はむしろ、一族からは英雄視されてるよ。
なんたって、勇者の仲間になれたんだから……」

女勇者「元勇者の仲間……。でも、今は魔王の手下じゃない?」

アカネ「あら?でも、今はあなた達“勇者ご一行”の一員じゃない。」

女勇者「あ、そっか。なら再び、一族の英雄ってワケなんだ。」

猫盗賊「……姉上は凄いから……。故郷にだって胸を張って帰れるんだよね……」


女勇者「あれ?でも猫耳ちゃんだって、今はあたしの仲間、“勇者の仲間”じゃない。」

猫盗賊「え?……でも……あたしは故郷でも厄介者扱いだったし、盗賊としてかなりの盗みとかも……」

アカネ「でも、今は勇者の可愛い仲間じゃないかしら?」

女勇者「そうそう!あたしの大事な仲間なんだから!」ギュッ

猫盗賊「ぎゃっ!?ゆ、勇者!?いきなり抱き付くな……」

アカネ「ああっ!?勇者様ばかりズルい!!この娘はあたしの大切な妹なんだから!!」ガバッ!!

猫盗賊「にゃがぁ!?あ、姉上まで!?」



女勇者「大丈夫だから……猫盗賊ちゃんはもう立派な勇者の仲間。
もし、故郷に嫌な奴がいたとしても、このあたしが守るから……」

猫盗賊「……勇者……」

アカネ「あたしも守ってあげる。
むしろ、魔王軍に居たあたしの方が一族の面汚しなんだから………」


猫盗賊「姉上………

ありがとう………」






アカネ「……でも勇者様。」

女勇者「ん?何か?」

アカネ「仲間を選別すると言ってましたけど、あたし達と一緒に故郷に来てくれるなら……」

猫盗賊「あたし達は、このまま勇者の仲間で居られるの?」


女勇者「え?もちろんよ。だって、こんな可愛い猫耳ちゃんや美人なお姉さんを仲間から外したりしないわ。」

猫盗賊「……え、え~と、でもあたしは多分、皆の中で一番弱いよ?足手まといになるかも……」

女勇者「大丈夫。あたしがカバーしてあげるから♪」

猫盗賊「……って、やっぱり勇者の足手まといになってるじゃん!!」

アカネ「…………」

アカネ(どうかしら……。盗賊ちゃんの猫足の速さはかなり上達してたし。
その内、私なんかよりも速くなる可能性だって……。

……ホント、小さい娘の成長は計りしれないわ……)


女勇者(……猫耳姉妹を仲間にするとして……。

……そうだな~……他の人達は………


う~ん………)

貴族の街~とある飲食店~


女勇者「……うう、考え事してたら、少しお腹減ったかな……。
何か食べて行こうかな……」



女侍「……バクバク……」

新妻「はぁー………」


女勇者(あ、新妻ちゃんに女侍ちゃん?
……珍しい組合せ♪)


新妻「勇者様、仲間を選別すると言ってましたけど……」

女侍「……モグモグ」

新妻「……勇者様、あたしを選んでくれる……のかな……」

女侍「……ムシャムシャ……。最有力候補……」

新妻「あたしが?……そうかな?
勇者様はあたしみたいな………面倒くさい女なんかより、侍さんみたいな強くてたくましい人を選ぶと思うよ?」

女侍「……強い……新妻も十分……。いや、我よりも強い……ガリガリ」

新妻「え?……でも、あたしは戦闘魔法なんて、光の具現化くらいしか……」

女侍「……我は剣士。剣士同士の闘いならば恐れるに足らず。が、勇者の敵は魔王、闇の頂。闇に優位な存在は光。
勇者はそなたの光を必要とするだろう……。」

新妻「……でも、あたしはハーフエルフだし……。世界には私なんかよりも優秀で純潔なエルフがいっぱい居るし……」

女侍「……バリバリ……勇者はそなたを気に入ってる……仲間として……女として……」

新妻「……勇者様。あたしを本当にお嫁さんにしてくれるのかな……?」

女侍「……ゴクゴク……勇者に嫁にしてもらう……否。そなたからなるのだ……勇者の嫁に……」

新妻「わ、私が!?
……私が……なる?私なんかが……」

女侍「……そなたほど、器量を備えた人材は他にはおらぬ……。
後は……そなたの覚悟しだい……」

新妻「私の……覚悟………」


女勇者(…………)

新妻「ありがとう、侍さん。相談にのってくれて……」

女侍「……我は何もしていない。全てはそなたが導き出す事……モッサモッサ……」

新妻「……侍さん……いい人だし……強いし……。
きっと、勇者様が仲間から外すワケがないよ!だから……」

女侍「……グチャグチャ……」

新妻「一緒に、勇者様の仲間で居よう!私も、勇者の仲間になる!!
例え、勇者様が選んでくれなくても……それでも……あたし!勇者様を……

選んでくれなくても……」


女侍「……フッ」


ポン……(女侍が新妻の頭を撫でた)

新妻「え?……侍さん……」

女侍「……そなたのその気持ちを理解せぬ勇者などではない……。
そなたの願い……勇者にも届いておろう……」

新妻「……侍さん……ありがとう……ございます……う、うぅ~……ぐすん……」

女侍「……何故泣く……?」

新妻「……あたし……勇者様に出た合ってから……色んな人に出会えた……。
魔法使いちゃんや、男兵さんや、侍さん……。
皆いい人ばかり……。


あたし……あたし……

……幸せ………う、うう……」

女侍「………そなたの日頃の善行の賜物……バキバキ……」


新妻「……ぐすん……。
そう言えば、侍さんは先へから何を食べているのですか?」

女侍「ワームの塩焼きにコカトリスの目玉とパイソンの首の炒めものとを混ぜて王蛙の生き血のソースを合わせた料理。」




新妻「・・・・・・・」


女侍「珍味。……そなたも一口……?」…ドロッ


新妻「い、嫌ぁあああああああああ!!!!!!!」



女勇者(…………。

女侍ちゃんに、新妻ちゃん………。


……………)

~貴族の街~墓地


吸血姫「………」

魔法使い「きゅ、吸血姫さん……?な、なんで夜のお墓なんかに…!?」ブルブル

シスター「……なんか、古式なお墓が多いようですね……」

吸血姫「……どうやら人間の貴族は、先祖より受け継ぎし御墓を後生も大切に愛用するみたいですわね。」

魔法使い「……うう……帰りましょうよ……。
あたし、お墓とかは……」


シスター「ああ、神よ。この地に身を宿す者達に安らかな眠りを……。」



吸血姫「……あったわ。この墓ね。」

魔法使い「え?何がですか……?」

吸血姫「“リリィ”の家のお墓。」

シスター「リリィ?そのリリィ様と言うのは、吸血姫様の御知り合いでしょうか?」

吸血姫「ええ。あなた方も以前にお会いしてますわよ?」

魔法使い「え?」

吸血姫「特に魔法使いさんとは深密に……。彼女の舌でその素肌を隅々まで触れられていらっしゃったわよね?」

魔法使い「え……あ……ま…まさか………」

シスター「あ、あの可愛いらしいゾンビ様方ですね。」

吸血姫「その通りよ。シスターが天国に送ってくれた可愛いあたしの家来よ。」

魔法使い「家来……。でも、吸血姫さんがゾンビにしたんですよね……。」

吸血姫「ええ。もう十年も前に……。」

魔法使い「?」

吸血姫「リリィはね、本当はこの貴族の街のある屋敷に住んでたの。屋敷の主である父親が死んでから親戚間をたらい回しにされて、最終的に学都に住む貴族の養子になったの。

でも、その屋敷の主に毎日の様に虐待を受けて……家出をして……森をさ迷って……私の屋敷にたどり着いたわ。
あたしは血を吸うついでに彼女を助けたわ。余りにも哀れだったから……。」

シスター「吸血姫様はお優しいのですね。」

吸血姫「気紛れよ。幸せな人間達を見ていて殺意を抱く事もあれば、哀れな少女に情けをかけてあげる事もある……。」

魔法使い「それで、そのリリィちゃんは……?」

吸血姫「しばらくして、自分の家に帰るって言ったわ。
吸血鬼である私と長く居る事に少なからずも恐怖があったみたい。人間を襲って食事している光景なんかも見られたし……。

でも、数日して気紛れに学都を訪れた私は養父達に殺された彼女の死体を見つけたわ……」

女勇者(……。偶然、墓地を通りかかったけど、なんか吸血姫ちゃんの過去を聞けるかも!?
立ち聞きしちゃお~♪)


シスター「それで、その娘をゾンビとして蘇らせなさったのですね。」

吸血姫「……彼女が屋敷にいた時に、もし自分が養父に殺される様なら私みたいな吸血鬼にして、と頼まれていましたし。
ま、吸血鬼は無理でしたのでゾンビとして差し上げましたけど。」


魔法使い「………あのゾンビが……?
……いや、いっぱい居たからどれがどれだか分からないけど………」

吸血姫「ゾンビとなった彼女は明るかったわ。生前の暗さとは程遠く……。
何より、最低な養父から逃れられた事が嬉しかったみたい……」

魔法使い「……ま、まぁ……ゾンビ達は確かに明るかったけど……気味が悪いくらいに……」

シスター「……。あの方達は……生きて居たのですね……。この世界で……明るく……」

吸血姫「ええ。私、家来にはあまり無茶を強いらないですから。
従者には明るく励んで欲しいから……」



シスター「……私は……そんな方達を……無理矢理天に導いてしまった……」

吸血姫「あら?シスター、ひょっとして後悔していらっしゃるのかしら?」

シスター「……分かりません。そのリリィさん達が例えゾンビであったとしても吸血姫様のお側で幸せに暮らせていたのなら……」


吸血姫「……でも、シスターは彼女達を天に導いた。……私の手元から彼女達を解放したわ……」

シスター「……。死せる者は神の下で安らかな眠りにつくべき……ですので……」

吸血姫「……そうね。私は本来は眠りなつくべき彼女達を無理矢理起こしては働かせてたわ。
私の為に……」

シスター「……ですけど、彼女達がそれで幸せなら……」



魔法使い「……あ、あの……」

吸血姫「あら?何かしら?魔法使いさん。」

魔法使い「し、幸せ……って言いますけど……。
ゾンビになった者が感じる幸せは、本当に私達人間の感じる幸せと同等のものなのでしょうか……?」


シスター「え……?」

吸血姫「……あら……」

魔法使い「ゾンビになったら感じ方や価値観も変わってくるはずです……。
……それに、そのリリィさんは人間だった時の生活が不幸過ぎただけであって、ゾンビとして吸血姫さんの従者になった事が幸せだったワケではないのでは……?」


吸血姫「……そうね。ゾンビになった時点で彼女達は人間としての感性はある程度失ってるわ。
私は彼女達を幸せにしてあげてるつもりだけど、彼女達をそのゾンビって立ち居にしたのも私自身ですものね。」

魔法使い「ゾ、ゾンビにしておいて……いくら幸せに扱っていたとしても、それはただの自己満足なのでは……」

シスター「……え~と……吸血姫様?お話の内容が理解し難いのですが……」


吸血姫「……嫌な視点での見方ね。私のしていた事はただの虚業って言いたいワケね……」

魔法使い「……そうは言いませんけど……。
ただ、ゾンビにしたからと言って……その……」

吸血姫「ただ、彼女は確かに生きていたわ。ゾンビになっても彼女として……。
少なくとも、私もそう思っていたわ……」


魔法使い「……それでも………。
………いえ、もういいです。」

吸血姫「……。リリィを殺したのは私じゃない。もちろんシスターでもない。
ゾンビとなった時点で、彼女は既に一つの死を跨いでいたから……」


サッ……(吸血姫は墓の前に何かを置いた……)

シスター「……それは……?」

吸血姫「遺骨よ。リリィの。」

魔法使い「……シスターさんが眠らせたゾンビ達は、皆屋敷の中庭に埋めたんじゃ……」

吸血姫「……悪いわね。リリィを含む何人かの遺骨は埋めなかったわ。
リリィはこの貴族の街に帰りたがっていたから、いつか連れて来ようって思ってたの。」

魔法使い「その為にここに来たの……?」

吸血姫「ええ。従者の最善の幸せを考慮したつもりでしたけど、あなたの言う通りただの自己満足に過ぎないかもしれませんわ。」

魔法使い「………。」

吸血姫「……シスター。私はリリィの眠るべき場所はここだと思うのだけれども、どうかしら?」

シスター「……はい。私もそう思います。きっとここで安らかに眠られることでしょう……」



魔法使い「……吸血姫さん……」

吸血姫「……何かしら?」

魔法使い「ゾンビになった事も従者にした事もない私の意見なんか、あまり深く受け取らないでください……。
……その……すいません……」

吸血姫「あら、謝る必要はないんじゃないかしら?
あなたの意見は意外と面白かったわ。まるで男兵や女兵みたいな言いぶりで……」

魔法使い「……確かに。私も少し意識してました。
……エヘヘ……」

吸血姫「ええ。
……そして、そんな人間の戯れ言に耳を傾ける私も、昔に比べて丸くなりましたわね……」



女勇者(吸血姫ちゃんに魔法使いちゃんにシスターちゃんか……。)

貴族の街~ホテルの一室~

男兵「………」パサッ

射手「男兵……軍将殿さん。」

男兵「……呼び慣れないなら呼びすてでもいいよ。
変に敬意語使われても気味がわるいし……」

射手「で、でも軍将になられたんですよね。ならちゃんと……」

女兵「着任したばかりの軍将殿が早速勤務先を放ったらかしてるんだ。
どうせもうすぐ首になるさ。」

男兵「……はぁ……だといいのにな……」

射手「あ、あの……男兵軍将さん?どうしました?」

男兵「嫌な報告書が届いたんだよ。第三軍将が死んだらしい……」

女兵「……へぇ~」

射手「軍将……って、第三軍将がですか!?」




女勇者「第三軍将?ああ、第三方面を総括する責任者だっけ……」

女兵「勇者!?いつの間に……」

男兵「神出鬼没な勇者様なこと……」

射手「え~と……第三方面ですから……」

女兵「えっとね。中等教育でならったわ。
第三方面は主に帝都の南側の学都や交易の街なんかがある地域よね。」

女兵「そして第三方面の軍隊全般、学都や交易の街の軍隊らを統べる責任者が“第三軍将”。」

男兵「“第一軍将”は第一方面、この貴族の街を含む帝都の西側にある街街の軍隊を統べる責任者。」

射手「さらに帝都の東側である第二方面の軍隊を統べるのは“第二軍将”。」

女兵「そして帝都軍を統べる“帝都軍将”。
帝国軍は主にこの4人の高位軍将を軸に動いてるのさ。」

男兵「ちなみに、各方面のそれぞれの街の軍を指揮する軍将達は中位軍将。さらにその下に次ぐ俺みたいな軍将達を低位軍将と言う。ま、低位を付けずに普通に軍将と呼ぶ事が多いがな。
低位って付けたら馬鹿にされてるみたいだし……」

女勇者「つまり男兵は低位軍将なワケね。貧相ねぇ~。なんだかかわいそうな感じがするわ。」

男兵「勇者に格位があったら、お前は底辺勇者だろ~な。」

女勇者「それでも、あんたよりは上だと思うわよ?底辺軍将さん♪」


女兵「しかし、高位軍将が死んだのか……」

男兵「底辺勇者~」
女勇者「勇者の時点で勝ち組だし~」

射手「死因は殉死ですか?」

男兵「女たらし~」
女勇者「褒め言葉だし~」

女兵「いや、老死だろ。かなりの爺だったし……」

男兵「クズっ!」
女勇者「カスっ!」

射手「でも困りましたね……。この時期に……」

女勇者「何が困ったの?」

男兵「大体高位軍将が死ぬとさ、後継者問題で帝国軍は揺れるんだよな……」

女兵「場合によっては、血で血を洗う魔王そっちのけの抗争にまでなるんだよな………」

女勇者「抗争!?そりゃまた……任侠の世界みたい……」

男兵「軍人には流派や派閥は個人で違うからな。それらのトップを決めるのはそう易々とはいかないさ。」

女勇者「普通に副軍将的な立ち居の奴がそのまま昇格すればいいんじゃ?」

女兵「それが罷り通ればいいんだがな……。
今の第三副軍将は故第三軍将と同じ派閥。つまりまた同じ派閥の者がトップに立つことになるから。他の派閥が黙ってないのさ。」

男兵「それにその第三軍将の派閥ってのは老兵だらけ。“元老院”って呼ばれる派閥だ。あんまり老人ばっかが上を抑えてたら、若い連中が痺れを切らすんだよ。」

女勇者「ああ、老害ってワケね?」

射手「いえ、元老院の方々は高齢ですが今でも現役な軍人です。たまに魔物狩りも行ってますし。」

男兵「だからと言っても、軍には他にも若くて強い連中は沢山いるし。
絶対、足の引っ張り合いが始まるな。」

女兵「そして、その第三方面の軍に所属する軍将である男兵は、自然とその抗争に巻き込まれるってワケだな。」

男兵「……自然な流れでいけば、自分の所属する交易の街の軍将を推すべきなんだろうが……」

女勇者「なら、そうしたら?」

男兵「万が一他の派閥が勝ったら、別の派閥を支援した軍将達はクビって事もある。
俺らにとって、どの派閥を支援するかは今後の軍事生命に関わってくるんだよ……」


女勇者「ふぅ~ん。くだらないわね。」

女兵「勇者。あんまり笑い事じゃないぞ。勇者にとっても……」

女勇者「え?」

射手「第三方面でなくとも、他の方面の軍人や私達ヴァルキュリアですら、こういった案件に無関係と言うワケにはいきません。もちろん、勇者も。」

男兵「勇者の後押しを得た派閥なんかはかなり優位視されるだろうし。色んな派閥から支援要請を受けるだろうな。」

女勇者「な、なんであたしに火が飛んでくるのよ!?」


女兵「勇者。これが今の帝国軍なんだよ。
独裁的でなく自由化が進められた挙げ句が、色んな流派が現れてトップ取りの抗争が乱発する体制なんだ……」


男兵「ちなみに勇者。支援するとしたら、どんな思想の派閥を支援する?」

女勇者「ん?とにかく可愛い女の子がいっぱいなの。」


「「「………」」」

女勇者「しっかし、そんな派閥争いで殺し合いにもなるってワケか……」

男兵「いや、マジでなるんだよな……それが……」

女兵「まぁ、この第一方面に居る間は中々関わることもないはずだ。
あくまで第三方面の抗争になるだろうし……」

射手「女兵さん。ここは第二方面に移動するべきでは?」

女兵「……だろうな。それが良策だな。」

女勇者「第二方面?なんでわざわざ?」

男兵「第二方面は派閥が安定してるんだ。似たような思想の集団ばかりが集まってる。しかも勇者に敬意を置いた思想が多い。
第三方面の抗争には最も遠い場所さ。」

射手「所謂“絶対勇者主義”の集まりなんです。」

男兵「!!絶対勇者……」

射手「はい。勇者に敬意を示す軍人達の事をそう言いますよね?
私はそう習いました。」

女兵「俺が思い付きで作った言葉……本当に使われてやがるとは……」

男兵「ある意味素晴らしい教育……」


女勇者「第二方面……って事は………」

女兵「第二方面って何かあったっけ?」

男兵「いや……おもな主要都市は第一方面に多いし、学都や交易の都市は第三方面だし……」

射手「え~と……教会の都は第一方面ですし……雪原地帯も第一方面……南国の楽園は第三……」



女兵「……ただの田舎だな。」

男兵「何もない田舎だな。」

射手「えっと……イメージがわきません……」

女勇者「え!?何を言ってるの!?第二方面と言えば東の巨大な平野。そこにはかの有名な伝説のパラダイスがあるじゃない!!」

女兵男兵射手「「?」」


女勇者「“メイドの花園”よ!!帝国貴族に仕える優秀なメイド達を教育する帝国屈指の養成都市!!しかも男子禁制の女の子の街!!」



女兵「……なんだそれ?」

射手「えと………さぁ?」

女勇者「帝都だけでなく、この貴族の街や帝国中のメイド達はその街出身なのよ!!」

男兵「メイドって、その辺に勝手に現れるんじゃねえのか?」

女兵「つか、養成ってなんだよ?」

射手「えと……洗濯物の畳み方とかを教えてもらえるのでしょうか?」

貴族の街の道端のメイドさん等に聞いてみた!!

Q.“メイドの花園”を知ってますか?


道端のメイドA(17歳)「メイドの花園……そこはご主人の良き従者となる事を夢見る少女の街………。
乙女ばかりが行き交う通りは、いつも華のような甘い薫りが漂ってました……」


道端のメイドB(19歳)「し~っ!こんな公道でその街の名前を出しては行けませんわ!!黒のメイド隊に捕まります!!
黒のメイド隊?花園を守秘する最強のメイド隊ですよ!第二軍将さんの直轄する帝国軍の裏部隊とか……」


道端のメイドC(12歳)「はい。私は8歳の頃からその街で英才教育を受けてました。
もちろん、最高の従者となる為にです!!そして今、私は立派な従者です!いぇい!!」


道端のメイドD(24歳)「あらぁ~、懐かしい~。あそこはいい所でしたよぉ~。女の子だけの街ですからねぇ~。
毎晩毎晩色んな寮の女の子の部屋に行っては“奉仕の練習”をするのが日課でしたわぁ~。特に○○寮の△△ちゃんの奉仕は魅力的で美味しかったわぁ~。」



道端の帝国軍人A(23歳)「え?花園?何それ?」


道端の帝国軍人B(31歳)「第二方面の事なんて知るかよ!!
それより第三軍将の後釜の件で第三方面の街で遂に暴徒が起こったらしい!!第三方面も大変だな……」


道端の帝国軍人C(21歳)「花園!?そんな所があるなら行ってみたいぜ!!
……そういや先日行方不明になった俺の同僚も東の平野地帯で女ばっかの街を見たとか言ってたな……。

……ん?誰?この全身真っ黒なメイドさん達。おたくらスタッフの仲間?

え?え!?ちょっ!?おい!?なんだよ!?

………ふごぉっ……………

………………」



道端の吸血姫(?)「あら素敵。そこには純血な女の子がいっぱいいるのね?もう既に涎がとまりませんわね。」


道端のシスター(16歳)「奉仕の極意?神への奉仕でしょうか?
でも……私は……神への奉仕が足りていないのかもしらません……。
………いえ、何でもないです。諦めたら終わりです!神はきっと私を……」


道端のハーフエルフ(14歳)「あ、あんな気持ち悪いものを料理に使うなんて!!
わ、私には理解できません!!

……男の人が居ない街?それは……住んでみたいかも……勇者様と//////」


道端の元魔王軍な猫耳(21歳)「あらら……メイドの花園……ね。男子禁制なのに勇者だけは入れて貰えるのよね。
そのせいで、前勇者は………うふふ♪」

~貴族の街~ホテル・男兵と女兵の部屋~


女勇者「な、なんで男兵が女兵ちゃんと同じ部屋なのよ!?ふざけんなぁ!!あたしと代われ!!」

男兵「……だとさ。なら俺は別の部屋に……」

女兵「逃げんな同士よ。共に“男兵”として生きてきた仲じゃないか。」

女勇者「お姉様……今晩だけでも、あたしと一緒に寝ましょうよ?」

女兵「え?いや……その……」

女兵(最近の勇者は、子猫みたいな目で見つめてくるし………なんか……)

女兵「///////」

男兵「顔赤くするところを見ると、女兵ちゃんも勇者と床につくのはまんざらでもないようだしな。
今晩は仲良くどうぞ。」

女兵「ちょ、ちょっと待てよ!!」

男兵「なんだよ!?」

女兵『ヤバいって!なんか最近の勇者……』ヒソヒソ

男兵『……』


女勇者「お姉様……あたしと一緒に寝るの……嫌?」


男兵『……確かに普段の勇者とは違うし、なんかキモいんだが……』

女兵『俺の前では何故かああなるんだよ。だから………』


男兵「……はぁ。ならどうしろってんだよ?」

アカネ「3人で一緒の部屋を使ってはいかがかしら?」

男兵「それはそれで嫌だな。」

女勇者「猫盗賊のお姉さん?いつの間に……」

男兵「妹譲りの忍び足ってとこか?」

アカネ「あら?普通は私の力が妹に受け継がれてる、って考えないかしら?」

女兵「なんで3人で一緒になるんだよ……」

アカネ「勇者様は女兵さんと一緒に居たい。女兵さんは男兵と一緒に居たい。
なら3人が一緒の部屋になればいいじゃない?」


男兵「やだよ。」
女勇者「嫌よ!!あたしとお姉様の花園に男兵なんか入れたくない!!」


女兵「……それで済むんなら、そうしてくれた方がいいかもな……」

女勇者「そ、そんなぁ~……お姉様!男兵なんか、男なんか野獣ですよ!?
きっと眠りについたあたし達を…!!」

男兵「なるほど。眠りこけた勇者を布団に包んで窓から棄てれば……」

女勇者「あんたは今この場で窓の外にぶっ飛ばしてやる!!!!」


アカネ「……ホント、勇者様や男兵や女兵さんを見てると、まるで3人兄弟をみている様ね。」

男兵「女兵はともかく、勇者はねーよ。」

女勇者「むしろ、しつけのなってないペットを飼ってる気分だわ!!」

女兵「……仲の悪い兄妹を持った父親の気分……かな……」

~貴族の街~ホテル・他の部屋

魔法使い「うわぁ~。ここって貴族しか泊まれないんですよね!?なんか普通の宿屋と違ってゴージャスです~♪」

猫盗賊「すっご~!!ベッドが超ふかふか~♪」フカフカ



メイド「メイドの花園?」

射手「はい。勇者様がそこに行きたいと……」

メイド「……そうでありますか。勇者様が行きたいと言うのなら……」

射手「あの~、どういった所なのでしょうか?」

メイド「………」

射手「?」

メイド「……ぶっちゃけ、その辺の道端にいるメイドは皆その街出身のメイドと言っても過言ではありません。」

射手「ほ、本当にですか!?」

メイド「ええ。ただし、その街の存在は公表してはならない。場所も存在すら、メイド達には守秘業務があります。
万が一破ったら、花園の番人達に捕まり、メイド服を剥ぎ取られ裸にされた挙げ句に、アカモリグモが大量に敷き詰められた壺の中に頭から下を入れられて10日間身動き取れない状態で放置です。」

射手「アカモリグモって……神経毒を持った小さな蜘蛛……?」

メイド「ええ……アカモリグモの毒は強力です。一噛みで全身に刺激が走ります。

分かりやすく言えば、その蜘蛛に噛まれた女性は一瞬で“絶頂”に襲われてイキます。

……大した拷問ですよ。それが10日間中続くのですから……」


射手「…………な、なんか想像つかないんですけど……」

メイド「……最初は気持ち悪いのですが、3日も経てば気持ち良さを覚え、8日目には悶絶、意識が飛んで錯乱状態になるそうです。
人によっては、10日間その絶頂の嵐に耐え切った人も居るそうですが……」


射手「……なんか恐ろしいですね……。ひょっとして、メイドさんも拷問を受けた経験が?」

メイド「む?何故そう思うでありますか?」

射手「いえ……なんか詳しいみたいですし、ご自身が経験なさったのでは?」

メイド「……ふふ。ノーコメントです。」

射手「え!?まさか本当に!?な、なら、メイドさんはどうなったんですか!?その拷問を受けて……」

メイド「さぁ?ご想像にお任せします。

ああ、ちなみにメイド以外の人が機密漏洩に関わった場合、女性は強制的にメイドとして花園に連れて行かれ、男性は収監或いは極刑だそうです。」

深夜~ホテル・勇者男兵女兵の部屋~


女兵「………」


女兵「……う……うう…」


女勇者「むにゃ~。お姉様~zz」むぎゅっ

女兵(!?い、いつの間にか勇者が俺のベッドに……!?)


男兵「うるさいな……なんだってんだよ……?」

女兵「勇者が俺のベッドに……」

男兵「はぁ?……ったく、さっさと叩き起こして……」


女勇者「むにゃ~。……大好き……むふふ……」

男兵「……。すげぇ幸せそうな顔してるじゃんか。
……さすがに起こしてやるのは可哀想だな……」

女兵「う……だけど、一緒のベッドは困る……」

男兵「まぁな。俺らは寝相悪いし、勇者を蹴飛ばしかねねぇよな。」

女兵「ああ。せっかく眠ってんだから、ゆっくり寝させてやりたいんだ。」

男兵「ま、女兵の方はどうせ勇者が気になって寝れないだろうがな。」

女兵「はぁ~……しゃあない。自分のベッドに帰してやるか。よいしょっと。」グイッ


男兵「おお、お姫様抱っこか。しかも勇者を起こさない様にゆっくり丁寧に持ち上げて……優しさを感じるね~。」

女兵「解説してねぇで、お前も手伝えよ……」

男兵「いいじゃん。お姫様を抱っこするのは、“王子様”の仕事だろ?」


女兵「それ……冗談のつもりで言ってんだよな?」

男兵「いや、わりと本気だな。」

女兵「俺が勇者と結ばれるとして、お前はどう思うんだ?“男兵”。」

男兵「さぁな。分からんけど、とりあえず“おめでとう”かな?
現に勇者はお前にラブコール送りまくってるし、応えてあげてもいいんじゃねぇか?」

女兵「……お前、他人事だと思って……」


男兵「はは。お前も女なんだから、売れ残る前に相手を見つけろよ?」

女兵「……アホか…」


女勇者「むにゃ~……」

~次の日~


女勇者「今日からのあたしの仲間を発表したいと思います!!」

新妻「うぅ……ワナワナ」

女侍「……」

魔法使い「……ドキドキ」


スライム騎士「のわ~。」

人食花騎士「むむ……ドキドキ」

男兵「……なんでお前らが居るんだ?」




女勇者「……皆!ごめんなさい!!あたしにはあなた達選別なんてできない!!
だって、あなた達は皆あたしの大切なハーレム……」

女兵「勇者殿はこれから東の平野に向かうらしい。
まず、ここから東の平野に行くのが嫌な奴は居ないか?」

吸血姫「あら?東に向かうの?」

シスター「ああ、でもせっかくですから教会の街に寄って行かれませんか?
そこで神の恩恵を得れば、旅もきっと順調に……」

新妻「東……?で、でも、勇者様が行くと言うなら……」

魔法使い「……せっかく貴族の街まで来ましたし、できれは更に西の料亭の街まで……。
あ、でも勇者様は遊びじゃないですし……」

女侍「……東…か。東の山奥に、由緒正しき剣士一族の村があると聞くが……」

メイド「私は勇者様に付いていくであります。
それに、花園に向かうのなら尚更……」

射手「わ、私はとにかく第三軍将の抗争に関わりたくないだけですし……」


女兵「意外と意見が分かれたな……な?勇者。」

女勇者「え、あ……そうね。」

人食花騎士「勇者殿!やはり東に向かわれるのですね?」

女勇者「ん?そうだけど。ひょっとしてあなた達も一緒に!?」

スライム騎士「隊長~の命令で~、第二軍将の所に書状を渡してこいって。」

女勇者「第二軍将?そいつってどこに居るの?」

スライム騎士「さぁ~?」

男兵「第二軍将はかなり放浪癖があって、第二軍の兵士達ですらどこに居るかが分からないと聞くが?」

人食花騎士「そうです。つまり、第二方面を片っ端から探す必要があるのです。
だから、勇者殿が第二方面に行くならボクらも一緒にと行けばいい、隊長殿に言われました。
恐らく勇者殿が訪れれば、その内第二軍将殿の方から顔を出すだろうと。」

女兵「なるほど。確かに悪くない考えだ。旧友らしいな。」

吸血姫「東か……。確かにあまり出向いたことのない地域だし、そのメイドの花園っていうのも気になるわね……」

シスター「吸血姫様は行かれるのですか?東に……」

吸血姫「ええ。そのつもりだけど、貴方も来るわよね?シスター。」

シスター「………。わ、私ももちろん吸血姫様に付いて行きたいですが……。
……ですが、教会の街に……」


猫盗賊「姉上……東って、故郷の方角……」

アカネ「あら?やっぱり故郷に行きたくないの?
でも勇者様も一緒なのよ?」

猫盗賊「うう……」



魔法使い「………私の目的は……勇者様のお手伝い……でも……」

女兵「料亭の街……ね。確かに魔法使いにとっては一度は行きたい所だよな?」

魔法使い「……うん。でも……」



男兵「………。俺はどうしたら……」

射手「男兵さんもやっぱり第二方面に避難するべきでは……」

男兵「そしたら俺のクビは確定だな。第二軍将さんが雇ってくれないかな……?」


メイド「メイドの花園……。

しかし、勇者様はどこでそれを?」

女勇者「私の屋敷のメイドに聞いたの。」

メイド「……そのメイドは漏洩罪であります……」

女勇者「ま、バレなきゃいいのよ。
……あ、でもあの娘それから3日後に屋敷から居なくなって、10日経ったら戻ってきたの……。

……でも、それからは花園の話を一切しなくなって、話掛けても怯え出すし……」


メイド「……さすがは黒のメイド達です。一貴族の屋敷のメイドにまで処罰を与えるとは……」

男兵「教会の街?」

シスター「私はそこに行きます。
今……私には勇者様のお供をする力がないかと……。私には神の恩恵が足りないんです!!」


女兵「シスターが卑屈になってる……何かあったのか?」

吸血姫「………」

男兵「教会の街……か。それってどこだ?」

魔法使い「えと……料亭の街へ行く途中にあるはずですけど……」

男兵「そっか。なら、魔法使いも一緒に行けばいいじゃねぇか。方角は同じだろ?」

魔法使い「え!?でも……」

シスター「料亭の街ですか?あそこは素敵な所ですよね。せっかくですし、私も是非ご一緒します。」

魔法使い「ほ、本当ですか!?」

吸血姫「……シスターが行くなら……。い、いや、その料亭の街とやらが気になるわね。」

男兵「吸血姫は人間の飯なんかに興味ないんじゃなかったっけ?」

吸血姫「五月蝿いわね。庶民の戯れに興味があるだけよ。」


男兵「ふ~ん。なら、俺も一緒に行こうかな……」

吸血姫「あら?あなたこそ何の用があるのかしら?
教会の街で懺悔でもなさるおつもり?」

男兵「いやね、シスターや魔法使い達を吸血姫と一緒に行かせるのが心配でね……」

吸血姫「私が2人に手を出すと言いたいの?」

魔法使い「男兵さん、吸血姫さんはそこまで悪い人じゃ……」

シスター「はい。吸血姫様はお優しい人です。」

男兵「家来だったゾンビの遺骨を大切に持ち歩いてるからか?」

吸血姫「……いつから気付いてたのかしら?」

男兵「いつも袋を大切に持ち歩いてりゃ、嫌でも目につくさ。
あ、中を見たのは俺じゃないから。」



猫盗賊「ギクッ!!」



男兵「てなワケで、俺はこいつらと西を目指すわ。」

女兵「また勇者のパーティーから離れる気かよ……。」

男兵「ま、これも運命なんだろうよ。」

女兵「自分で決めといて何が運命だよ……」

女勇者「……吸血姫ちゃん。別れる前に一つお願いが……」

吸血姫「なにかしら?」

女勇者「頭をなでさせて!!」

吸血姫「嫌よ。そう簡単に人間に触れられてたら……」

女勇者「シスターちゃんにはいつもやらせてるくせに!!ずるい~!!差別だ~!!」

吸血姫「なっ!?……シ、シスターはいいのよ……その………」

女勇者「強行突破」ガバッ!!

吸血姫「きゃっ!?」

女勇者「えへへ~♪可愛い~♪」ナデナデ……


女勇者「………あれ?」

吸血姫「……うふふ」

女勇者「なんだろ……なんか意識が遠く……」

吸血姫「私みたいな高貴な吸血鬼となると、接触するだけで相手を誘惑する事ができるわ……。
今の勇者にとって私の感触や匂いは妖美な物に感じるはず……」

女勇者「……えへ……あ……吸血姫……様……」

吸血姫「さ、早くそのみすぼらしい身体を私から離しなさい。」

女勇者「はい……」

吸血姫「いい子ね。シスターみたいな聖職者でもない一般人が私に触れる事がどんなに愚かな事か理解出来たかしら?」


女兵「………」

ポン…(女兵は吸血姫の頭に手を置いた)

吸血姫「……何のつもり?」

女兵「……いや、特に誘惑とかを感じないんだけど……」

吸血姫「そうね。貴方は私に対して警戒心が強いからかしらね?」

女兵「というか、勇者が誘惑に弱いだけだろ……」

女勇者「吸血姫様……綺麗……」

吸血姫「いいじゃない。可愛いらしくて。」ナデナデ

女勇者「ああ……吸血姫様……」

吸血姫「今までの勇者に比べたら、可愛いらしい方よ?」

女兵「……そんなもんなのかな……」


スライム騎士「そぉーいやぁ~、隊長達もぉ~教会の街に行くぅ~とか言ってたなぁ~。」

魔法使い「え!?旧友さんも!?」

男兵「……それも運命かよ……」

スライム騎士「隊長もぉ~教会の街に用があるとかぁ~。」

男兵「……あんま会いたくないな……」

魔法使い「どうしてですか?」

男兵「多分あいつは第三軍将の跡継ぎ抗争に関わってるだろうから、関わったら巻き込まれるかもしれないだろ。」

人食花騎士「よく分かりましたね。確かに、隊長殿は跡継ぎ問題に関して動いてます。」

男兵「……あいつも軍のゴタゴタにまともに取り組まなくていいのに……」




女勇者「それじゃ、あたし達は西へ向かうわよ!!」

新妻「魔法使いさん。料亭の街で学んだ事、後で教えてくださいね。」

魔法使い「任せといて!そっちもガンバだよ!!」

猫盗賊「ふぅ~……不安だにゃ……」

アカネ「大丈夫だから。勇者様も居るんだし。」

シスター「私……信仰を取り戻したら、必ず勇者様のもとに戻ります!!」

男兵「じゃあな、女兵。頑張れよ。」

女兵「あ、ああ……。」



射手「ところで、メイドさん。」

メイド「はい?何か?」

射手「メイドの花園って……」

メイド「射手様。こんな公道でその名を口にするとは……。アカモリグモ漬けの刑が怖くないのですか?」

射手「え!?い、嫌に決まってます!!
い、今のは別に秘密を漏らしたワケでは……」



??「失礼します。」

射手「は、はい?えと、どちら様でしょうか?」

??「私達は黒のメイド隊です。あなたを漏洩罪で処罰します。」

射手「え?あ、ちょ、ちょっと!?
嫌ぁ!!!助けて~!メイドさ~ん!!!」

メイド「射手様……あ~めん……」




女勇者「黒メイド見つけたぁああ!!!花園の手がかりぃいいい!!」ドゴオン!!

黒メイドA「きゃっ!?」
黒メイドB「うわっ!?」

~数分後~

黒メイドB「……うう……ここは……?」

黒メイドB「……気絶していたのか……。
先ほどの力は一体……」


黒メイドA「嫌ぁ!!止めて!!」

女勇者「あははは!!!」ビリビリ!!

黒メイドB「!?」

黒メイドA「止めて!!破かないで!!メイド服はメイドの命なのに……!!」

女勇者「果物の~♪皮を剥いての品定め~♪美味しい可愛いフルーツ探して~♪」ルンルン~♪

黒メイドA「うう……止めてよ……」

黒メイドB「おのれ……!!止めろ!!この……
……くそぉ!!私も縛られてる……!解け!!」


女兵「なんだよ、命令系じゃねぇか。お前、自分達の立場分かってるのか~?」


黒メイドB「き、貴様は!?……その服装、帝都軍……」

女兵「そういうお前らは黒のメイド隊なんだろ?花園の番人だったっけな?」

黒メイドB「ぐっ………。さぁな……。」

女兵「……あー、黙りで過ごそうってワケか。
さすがは帝国の裏部隊のプロ様方だな。」

黒メイドB「………」




黒メイドA「お願い……もう止めて……」

女勇者「あら、まだ何も始めてないのに……。」

黒メイドA「え……?」

女勇者「あなたみたいな可愛い娘を目の前におあずけだなんて、あたしには無理なの……。
花園の秘密は言わなくていいわ。そしたら、そこでお楽しみが終わっちゃうんだもんね……ウヘヘヘ……」ワサワサ……

黒メイドA「ひぃいいい~!!!!黒メイドBさん!!助けてください~!!」

女勇者「大丈夫。じっとしてれば、優しく終わらせてあげるから……はむ♪」

黒メイドA「嫌ぁ……そんなところ噛まないで……」


黒メイドB「……くっ……拷問なら私にすればいいだろ……」

女勇者「あんたには拷問なんかよりもこっちの方が効くかな、って思ってね。
さー、早く自白しないとお仲間が餌食になるぞ~?」


黒メイドA「……ひぐっ………うう……ああ……止め……て……」

女勇者「ペロペロ……花園の秘密は言うつもりはないのね……?」

黒メイドA「……言いません……それだけは、この身にかえても……」

女勇者「……健気ね……。かっうぁああいいいい~!!!」ガバッ!

黒メイドA「ひぃっ!?」

女勇者「なら、せっかくの拷問だしたっぷり楽しみましょうね~♪」

新妻「ゆ、勇者様……そんなところまで……//////」

猫盗賊「にゃわわわ……」

メイド「あのお二方は、悪役がとてもお似合いなのであります。」



女勇者「新妻ちゃん!猫耳ちゃん!」

新妻「は、はい!?」
猫盗賊「にゃっ!?」

女勇者「おいでおいで~♪皆で優しく拷問してあげましょ~♪」

黒メイドA「え!?あ……嫌……」

新妻「え!?で、でも、どうすれば……?」

女勇者「じゃあ、とりあえず舐めてあげましょっか。」

猫盗賊「にゃが!?なんでこんな人間の体を……」


黒メイドA「嫌です……お願いです……助けてください……お願い……」ウルウル…


新妻「……」
猫盗賊「……」

新妻(な、なんか……)
猫盗賊(この泣き顔を見てると……)


(弄りたくなる!!!)


新妻「……う、私は……勇者様以外に……そんな……」ユラリ

猫盗賊「……でも……この顔……もっと虐めたくなるにゃ……」ジリジリ…


黒メイドA「嫌ぁ!!来ないで!もう嫌!!嫌なのぉおお!!嫌ぁ………ああ…」




黒メイドB「……ぐっ……外道め……」

女兵「誉め言葉どうも。
別に命取るワケじゃないんだ。犬に噛まれた程度に思えばいいだろ?」

黒メイドB「ふざけるな!!女のプライドは命と同じくらいの価値があるんだぞ!!特に、あの娘みたいな純粋な娘には!
……いくら女同士だからといって……」


女兵「……命ほど価値のあるプライドなんかねぇよ……。プライドを貫こうとする奴はいつだって無様に死ぬだけだ。」

黒メイドB「……女とは思えない様な考え方だな……貴様は……」

女兵「……それも誉め言葉として貰っておくわ。
まぁ、確かに見るに気分がいいものでもないよな。辱めってのは……。

だが、助ける義理はない。あの黒メイドの貞操なんたらは知ったこっちゃないって事さ。
助けたきゃ、あんたがやりな。出来るもんならな……」

女侍「………?」

アカネ「お侍さん?どうかしたのかしら?」

女侍「……気配。強力な……近くに……」





黒メイドA「はぁ……はぁ………」

女兵「………」

女勇者「さぁ~て、次は何したげよっかな~♪」

女兵「……悪魔で口は閉ざし続ける気か?」

黒メイドA「はぁ……はぁ……もちろん……です……花園の……秘密は……絶対……」


女兵「そっか。なら、もう拷問はいいや。」

黒メイドA「……え…?」

女勇者「え!?ちょっ、お姉様!?もう拷問終わるんですか!?」

女兵「ああ、これ以上は時間の無駄だ。」


スッ……

黒メイドA「え………ひぃいい!!?」

女勇者「お姉様!?なんでその娘の喉元に剣をたてて……!?」

黒メイドB「き、貴様ぁ!!!」


女兵「ウチの拷問士がお手上げな捕虜なんざいらねぇな。
かと言ってみすみす逃がすワケにはいかねぇよなぁ?帝国の裏部隊員さんよぉ?」

黒メイドA「ひぃっ……助けて……」

女兵「なら最後に聞く。花園ってのはどこにあるんだ?」



黒メイドA「………っ…………あ……あ……」

黒メイドB「ぐっ……」





黒メイドA「………あ……あたしの死体に聞いてください!!!」

女兵「………」
女勇者「……わお…」
猫盗賊「にゃんちゅー発言……」


メイド「……黒のメイド隊……花園の番人……花園に身を捧げる……戦士……。
そして、花園を彩らせる花そのもの……であります。」



ビュン……ガキン!!(女兵の持っていた剣が弾き飛んだ)

女兵「っ!?……弓矢!?」

女勇者「!?誰!?」



??「戯れもそこまでにしてもらいたい。勇者達よ……」

黒メイドA「隊長様!?」
黒メイドB「隊長!?」

女兵「隊長って……あんた、確か第二軍将の書記さんじゃねぇか……。
なるほど、あんたが黒メイド達の隊長ってか……」

黒メイド長「おや、よく知ってらっしゃるね。」

女勇者「お姉様、知ってるの?」

女兵「帝都での軍会議を欠席する第二軍将の代役に第二方面から毎回来てる女さ。
なるほどね……タダ者じゃないとは思ってたが……」

射手「……しかも、あの人はヴァルキュリア部隊出身ですよ……。何年か前にいた超優秀なアーチャーだった人です!!」

黒メイド長「そんな事もあったね……。ヴァルキュリアはろくに強くもない癖にエリートを気取ってばかりの奴らで肩身が狭かったよ……」

射手「なっ!?」



黒メイドB「……今だ!とぉっ!!」ドスン!!

女兵「!?……くっ、いつの間に縄を……」

黒メイドA「チャ、チャンス!!……せいやっ!!」ヒョイッ


女勇者「ああん……逃げられちゃった……」



黒メイドB「隊長殿!!」

黒メイド長「二人共……」

黒メイドA「お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ないです……」

黒メイド長「……何を言う?
自分或いは仲間が命の危機にさらされているのに、お前達は花園を守ろうとした。
……立派な番人達よ……」

黒メイドA「隊長様……」黒メイドB「隊長……」



女兵「自分や仲間の命を捨ててまで守らねばならない程の物なのかよ?その秘密とやらは……」

黒メイド長「……ふっ。お前には程遠い次元の考え方なのだろうな……。女兵、いや“男兵”。」

女兵「……けっ…」


女勇者「ねぇ、メイド長さん!あたしは花園に行きたいんだけど、行き方を教えてくれないかしら!?」


黒メイドA「隊長様!あの人は危険です!もの凄く…その……えと……////」

黒メイドB「魔王の手のものかも知れません!」



黒メイド長「そうか。勇者殿がそう言うのなら、我々も花園への道をお教えしなくばなるまい。」


黒メイドA「……え?」
黒メイドB「……は?」
女勇者「やっほ~い♪」

黒メイドB「あ、あの……こいつが勇者……?」

黒メイド長「ん?お前達はまだ気付いてなかったのか?」

黒メイドA「え!?だって、あの人……女……。」

黒メイド長「女の勇者など、私の知る限り過去に5人は居たさ。珍しい話じゃあるまい。」

黒メイドA「…えー……?で、でも、あたしはあの女の兵士に殺されかけましたよ!?」

女兵「実際に殺したワケじゃないんだから、大した事じゃないだろ。
お前ら裏部隊さんの口の堅さを拝見させて貰っただけさ。」


黒メイド長「どうやら、お前達は勇者様にからかわれたみたいだな。」

黒メイドA「そんなぁ~…」

黒メイドB「うぅ……」


女兵「ま、そっちの話が終わったのなら、さっさと俺らの質問に答えて貰おうか。」


黒メイド長「これを……」ブン(女兵に向かって何かを投げた)

女兵「?なんだ?懐中時計?」

黒メイド長「短針は無視して構わん。長針の指し示す方向に、我らの街がある。
花園に来たくば、長針に従うがよい。」


女兵「なるほど、磁石の役割をしてるってワケか。」


黒メイド長「……一つ聞くが、あっちにいる魔族達も連れてくる気か?」

女勇者「ん?」


スライム騎士「~?」

人食花騎士「!?……」


女勇者「ええ。今は私、勇者の仲間だから。」

黒メイド長「……ふむ」

人食花騎士「え?あ、あの………」

黒メイド長「貴様ら、何故帝国軍の紋章を?」

人食花騎士「ぼ、僕らは帝国軍の軍人です!!」

スライム騎士「そぉ~なのさぁ~。隊長殿に頼まれて、第二軍将さんに書簡をとぉ~」

黒メイド長「書簡?見せてみろ。」

人食花騎士「え?でも、隊長は第二軍将さん本人に渡せって……」

黒メイド長「心配ない。どうせ第二軍将がいない以上、全ての業務は書記である私に押し付けられるのだから。」


黒メイド長「……ふむふむ。なるほど。『第二軍将殿にも魔王軍討伐に参加して貰いたい』か。」

人食花「ちょ!?あなた、書簡は極秘なのですよ!?そんな大声で……」



女勇者「……え?」

~貴族の街近辺・東西境界線沿いの川~

射手「この川の向こう側が第二軍将殿の管轄地域になります。」

アカネ「川……?こんな場所にあったかしら?」

射手「最近完成した人口河川です。貴族の街に水源から水を引いてくる為に。」


女勇者「………」

メイド「勇者様?先ほどの話がまだ気になっていますね?」

女勇者「帝国があたしに黙って勝手に魔王軍を討つなんて……」

女兵「帝国にも色々意図があるんだろな。勇者様には言えない何かが……」




ス男兵「或いは、女遊びばっかの勇者に愛想尽かしたとか……な。」

女勇者「女の子はあたしの機動力なの!!女の子無しにあたしの旅は続かない…………
って、あれ?」


ス男兵「ま、それでも勇者に黙ってやろうとする帝国の動向は謎だし、旧友がそれに関わってるのも釈然としないな……」

女兵「全くだ。旧友は何をやってるんだか……。
………で、お前は誰だ?」

ス男兵「俺?まぁ、今は男兵……かな。」

女勇者「お、男兵……?あんた、肌の色ってそんな紫だったっけ?」

女兵「髪も唇も紫一色だな……爪まで。」


人食花騎士「ス、スライムさん!?何やってるんですか!?」

ス男兵「ちょいと気分転換さ。暇潰し。」

女勇者「スライムちゃん?あなた、スライムちゃんなの?」


ス男兵「まぁな。」ドロドロ…

女兵「げっ!?男兵の顔が溶けた……」

スライム騎士「よいしょ~っと~。スライム騎士見参~♪」

女勇者「い、今のは…?」

アカネ「変身能力。スライムの中には、他の人間の形になるスライムもいるって聞いたわ。」

スライム騎士「まぁ~ね~。男兵の姿に合わせて体を変形してみたのさぁ~。」

人食花騎士「でも、スライムさんは見た目だけでなく中身の人格もその人そっくりに成り切るんです。
……だから……その……」

スライム騎士「例えば~………」ドロドロ…

ス吸血姫「私みたいな高貴の吸血姫にもなれますわ。
どうかしら?勇者。」


女勇者「……吸血姫様……」

女兵「おい、勇者がまた誘惑にやられたぞ……。
スライムの変身ってのは、変身相手の能力も真似るのかよ?」

ス吸血姫「いいえ、悪魔で姿や声色だけよ。
恐らく一度オリジナルの私の本格的な誘惑に掛かった勇者は、私の姿をみたり声を聴いたりしただけで誘惑されてしまっているのでしょうね。」

女兵「……喋り方だけでなく、言ってる内容も吸血姫が言いそうな内容だな……。」

ス吸血姫「肌の色がスライム色で気味が悪いけど、今の私は吸血姫そのものなのよ……。
理解できたかしら?」

人食花騎士「うぅ……スライムさん、悪ノリし過ぎ……」

射手「本人を真似るっていっても、能力は無理なんですよね……。
女勇者様に化けて能力も使えれば、勇者様が二人になって心強いですのに……」

ス射手「あ、能力は無理ですけど、こういうのは真似出来ますよ?」ヒラリ

射手「え?私?……って、きゃー!!何自分のスカートをめくってるんですか!!?
……って、その下着……」

女勇者「あれって、今日の射手ちゃんのと同じ柄じゃない?」

射手「え?は、はい。そうです………って、勇者様!?なんで知ってるんですか!?」

アカネ「あら、さっき道端で転けてたじゃない。私もその時に見たわよ?」

射手「うぅ……。ひょっとして、スライムさんも見たんですか?」

ス新妻「いえ、私は見てないですよ。」

女勇者「あ、次は新妻ちゃんになった……」

新妻「うぅ……私と同じ……だけど全身紫……」

射手「え?じゃあ、どうして下着の柄を?」

ス新妻「私の変身能力はただ形を変えるだけでなく、過去の又はその時点での対象物のデータを魔方陣で読み取ったモノをベースにしてるんです。
つまり、ただの変身ではなく一種の魔法なんです。」

女兵「……つまり、オリジナルがどんな下着を付けてるかを知らなくても、魔方陣の情報を通せば勝手にオリジナルと同じ柄になるってワケか……」

ス新妻「はい。例えばオリジナルの新妻さんの裸を私は知りませんが、ちゃんと私の裸は新妻さんと同じになってるはずです。
どうですか?勇者様。」

女勇者「どれどれ…………モミモミ………むむ、この胸の触り心地、まさに新妻ちゃん!!!」

新妻「……はっ!?ゆ、勇者様が変身したスライムさんにとられちゃう!?
うぅ………」


ス新妻「あ、それならこうします?」ドロ……

ス女勇者「女勇者登場~!」

女勇者「え!?あたし!?」

女兵「女勇者に変身しても能力は使えないんだろ?」

アカネ「でも、性格は同じ……て事は……」

ス女勇者「新妻ちゃ~ん!!」ガバッ!!

新妻「きゃっ!?勇者様ぁ!?そんな大胆に…//////」

女勇者「ちょ!?新妻ちゃん!!その娘はスライムちゃんよ!?」

新妻「え!?あ、そうでした…!!……でも……」

ス女勇者「新妻ちゃ~ん♪大好き!」

新妻「はぅう~ん/////……勇者様……私、幸せですぅ……」

女兵「……なるほど、本人の事を知らなくても本人と全く同じ姿になれるってワケだな。」

ス女勇者「はい。見直してくれましたか?お姉様♪」

女勇者「スライムちゃん!?お、お姉様だけは渡さないわよ!!」

ス女勇者「いくらオリジナル相手でも、お姉様はあたしのお姉様よ!!」


女兵「ならさ、第二軍将っていう名前ばっか聞くが姿を見せない奴にもなれたりするのか?」

ス女勇者「……ごめんなさいお姉様、それは無理……」ドロ…

ス黒メイドA「一度も会った事のない相手はさすがに無理です……」ドロ…

ス魔法使い「一度でも相手に会えれば、魔方陣を繋ぐ事ができるんですけど……」


女兵「なるほど……。」

ス猫盗賊「ごめんにゃ~……」

アカネ「あらら、可愛らしい盗賊ちゃんにまで……」

女勇者「………スライムちゃん。女兵にも変身できたりする?」

ス猫盗賊「簡単にゃ~」ドロ…

ス女兵「まぁ、どうせ男兵になれるなら男兵になりたいんだけどな。」

女兵「……確かに、男兵になれるんならなりたいよな………」


女勇者「お姉様……いやいや、この娘はスライムちゃんなのよ……。お姉様の姿をした……」

ス女兵「……?勇者、どうした?」

女勇者「お姉様……いや、お姉様の姿をしたスライムちゃん!!」

ス女兵「?なんだよ?」

女勇者「今日からあたしと一緒に寝て!!」

ス女兵「はあ!?」

女兵「……え?」

女勇者「あたし、いつかはお姉様と一緒の布団で寝たい……。だから、その時がくるまでに練習しときたいの!!
だから、スライムちゃん!練習相手になって!!」

ス女兵「は!?嫌に決まってるだろ!!なんだよ練習相手って!?」

女勇者「お願い!!お願いします、お姉様……の姿したスライムちゃん!!」

ス女兵「そ、そんな目で見ても無理なもんは無理!!」


女兵「……俺に変身して俺の人格を持ってるんなら、絶対拒否するわな。
諦めな、勇者。」


女勇者「いいえ……なら、無理矢理するまでよ!!」グワッ!!

ス女兵「はぁ!?ちょっと、おい!?」

女勇者「これもお姉様との完璧な初夜の為!!だから、お姉様の姿のスライムちゃん!!覚悟ぉ~!!!」

ス女兵「女兵!見てないで助けてくれって!!」

女兵「いや……普通に別の奴に変身すればいいんじゃ……」

ス女兵「くっ……仕方ない……」ドロ

女勇者「させるかぁあ!!」ピカッ!!!

ス女兵「なっ!!?」ガチッ

女兵「!?い、今のも勇者の力……」

ス女兵「へ、変身できない……!?嘘だろ……」

女勇者「さぁ~お姉様ぁ~、覚悟!!」

ス女兵「うぅ……くそっ……やめ……」

女勇者「……ペロッ」

ス女兵「!?……く…」

女勇者「ペロペロ……お姉様の裸……美味しい……舌がトロけちゃう……」



女兵「ていっ!!!」ピカッ

女勇者「きゃっ!?なに!?」

ス女兵「え?……あ、なんか体の硬直が溶けた感じが……。
変身できるか……?」ドロドロ…


スライム騎士「お~、戻った戻った~。」


女勇者「お姉様……いいところだったのに……」

女兵「いや、俺のそっくりさんが勇者に攻められてる光景なんて見れねぇし……」

アカネ「女兵さん、今の力……。」

女兵「勇者の力……か。
俺も順調、いやもうかなり勇者に近づいてるな……」


女勇者「………」



人食花騎士「スライムさん、隊長殿に人前での変身は控えろと言われてたのに……」

スライム騎士「まぁ~、勇者相手なら大丈夫さぁ~」

メイド「……魔族にもとんでもない能力がある様でありまするね……」

新妻「うん、肌色が紫だからまだいいけど、身体や人格が完璧に同じになるなんて……」


女勇者「スライムちゃん、女兵になってあたしと寝るのは嫌?」

スライム騎士「別にぃ~。女兵の人格ではぁ~嫌だけどぉ~、今のあたしは全ぁ~く気にしない~」

女勇者(……て事は、例えばその辺の可愛い娘ちゃんに変身させて、それをあたしがレイパ~したとしても、本人じゃないから結局は犯罪とかにならないんじゃ……
特にシスターちゃんや魔法使いちゃんみたいな人間関係に支障を来す身近な人とかなら尚更……
グフフ……これはとんでもない逸材を手に入れたかも……)

~その晩~

女兵「………」


女勇者『ほら、スライムちゃん。昼間の売店で見た女の子に化けて化けて♪』

女兵(ん?隣の部屋から勇者の声が……)

スライム騎士『あいあいさぁ~♪』ドロドロ…

ス女の子A『……はい。なりました。』

女勇者『いいわね。んじゃ……』

ス女の子A『あ、あの、勇者様……。私には好きな男性がいるんです。だから、いくら女の子同士でも……』

女勇者『そぉ。なら……姦るしかないわね!!』

ス女の子A『え?何!?嫌ぁあああ!!やめて勇者様ぁ!!』

女勇者『あははは!!』


新妻『スライムさん、迫真の演技ですね……』

猫盗賊『つか、あの女の子の人格に成り切って本気で嫌がってるんだにゃ……』

女兵(……うるせぇ……)

~そして……~

ス女の子A『…………』(レイプ目)

女勇者『もういいわ。スライムちゃん。戻っていいわよ。』

ス女の子A『……あ……はい………』ドロ…

スライム騎士『あ~い。勇者様ぁ~満足~?』

女勇者『まだまだ。次はレストランに居た可愛い店員ちゃんで……』

スライム騎士『おっけ~♪』ドロドロ…

ス女の子B『……っと。こんな感じです。』

新妻『あ、ホントにあの店員さんだ……』

ス女の子B『新妻さん!!昼間はレストランで料理を教えてくれてありがとうございます!』

新妻『あ、いえ、私に出来る事ならいつでも手伝います!』

猫盗賊『新妻……。そいつは本人じゃないにゃ……』

新妻『あ!?……お礼を言われたから、つい……』

ス女の子B『オリジナルの人も感謝してたみたいですし、どうしてもお礼を言いたかったんです!』

新妻『……えへへ。ありがとう。やっぱり、別人には思えないや……』

女勇者B『うんうん。じゃあ早速やりましょうか。』

ス女の子B『え?……本気なんですか……?』

女勇者『大丈夫。逃げようとさえしなければ、優しく済むから……。新妻ちゃん、そっちを押さえつけて!』

ス女の子B『うぅ……新妻さん……助けて……』

新妻『……ごめんなさい……』

ス女の子B『新妻さん……?』

新妻『大丈夫……相手はスライムさん、相手はスライムさん、相手はスライムさん、相手はスライムさん』

ス女の子B『……嫌……嫌よ……お願い…やめて……』


女兵(……何回やる気だよ……)

ス女の子B『……新妻…さ……ん……』

新妻『ごめんなさい……ごめんなさい……』

女勇者『いい喘ぎ声だったわよ……ウフフ…』

女兵「……zzz」(途中から慣れてきて寝た)

スライム騎士『ほぉ~い~。全く勇者は激しいねぇ~。』

新妻『スライムさん……無理矢理されて、嫌な気分にはならないんですか……?』

スライム騎士『全然~。変身した~時の人格が~いくら嫌がろうが~、今のあたしは無関係~。変身解ければ~気分も切り替わってリフレッシュ~だし~』

新妻『は、はぁ……』

女勇者『じゃあ、そろそろ……お姉様に!!』

スライム騎士『え~?いいのぉ~?あの人格は手強いよぉ~?』

女勇者『いいからいいから♪』

スライム騎士『ほいほ~い』ドロドロ……


ス女兵『……って、またかよ!?』

女勇者『お姉様……今度こそお姉様を……』

ス女兵『このっ……!!!』ガチャン!!

女勇者『あっ!?お姉様…の姿をしたスライムちゃん!?どこに行くのー!?』


ドタドタドタ……!!!

バタン!!

ス女兵「おい、オリジナル!!!」

女兵「……んだよ……うるせぇって……」

女勇者「お姉様ぁ~!!……って、お姉様が2人!?」

女兵「あーあ、さらにうっさいのを連れてきやがって……」

ス女兵「勇者!!なんで一々偽物の俺で試そうとするんだよ?どうせなら、本人と直接やればいいだろ……?」

女兵「はぁ!?お前何言って……」

女勇者「え!?そ、そんな……いきなり……////」

女兵「……って、今更恥じらい顔かよ……レズ勇者のクセに……」

ス男兵「全く、女兵さんのせいで面倒ばっかだな……」

女勇者「……って、男兵!?なんであんたが!?お姉様はどこにやったのよ!?返しなさい!!」ブン!!

ス男兵「危ねっ!!?勇者てめ!!いきなり剣抜くとか……」

女勇者「死ねー!!お姉様を返せー!!」

女兵「……いや、俺はここに居るし……」


ス男兵「くっ……しゃあない……」ドロドロ…

ス・シスター「このシスターの身……ああ、神のご加護を感じます……。
勇者様、神の力で清めらし私のこの身でよければ、どうぞお使いになってください……。
大丈夫です……私の身を通じて、勇者様にも神のご加護を……」

女勇者「ま、眩しい……シスターちゃんは真っ白で眩し過ぎる……
……ダメ……シスターちゃんだけは……汚せない……うぅ……」


アカネ「あらあら、凄い状況ね……」

猫盗賊「カオス極まりないにゃ………」

~朝~


女勇者「ねむ~……」

女兵「そりゃこっちの台詞だ………くそ、夜通しで叫び合いやがって……」


新妻「お二方、結局寝れなかったんですね……」

スライム騎士「おっは~。皆元気~?」

女兵「……なんでアイツは元気なんだ……?」

猫盗賊「スライムも勇者達の喧嘩に混ぜってたから寝てないんじゃ?」

スライム騎士「ん~?私達~スライムは~3日に1回6時間の睡眠とればOK~。一昨日寝たから~昨日はいらなかっのさ~。」

人食花騎士「ああ……隊長殿にスライムさんが能力を荒使いしないように監視を命じられてたのに……」

女侍「………」ジーッ

スライム騎士「侍~?何をジーッと見つめてる~?」

女侍「……変身能力……?」

スライム騎士「お~?侍も私の能力に~興味有りなのか~?」

女侍「……ビフテキなんかにも化けれるか……?」

スライム騎士「え~?無理無理~。人にしか変身できないし~。」

女侍「残念……腹減ってた……」

スライム騎士「や、やっぱ食う気だったのか~!!?」


射手「え~と、時計の針は更に北東を差してますね……」

メイド「あー……ここから先の森は、“人食いの森”ですね……」

射手「ひ、人食い!!?森が人を食べるんですか!!?」

アカネ「帝国が調査の為に派遣した兵士達が立て続けに行方不明になるから、そういう名前がついたのよね。」

メイド「ええ。ですが現第二軍将が率いる調査隊によって、最近やっと開拓が始まったそうです。」


女勇者「……でも……明らかに森中に魔物の気配がするわよ……?」

女兵「……開拓が……まだ進んでないんだろな……眠い…」

猫盗賊「にゃ~、2人共、しっかりするにゃ~。」


アカネ「あらあら、すっかり腑抜けちゃって……。」

新妻「勇者様ぁ~、しっかりしてください~!」

女勇者「あ~……無理かも……」


メイド「しっかりしてください。この森を抜けた先にある“霧の大平原”まで行けば、メイドの花園はもうすぐですから。」

女勇者「花園……そう……あたしは……花園……花園の為に!!!こんなところでだらだらしてられないわ!!
うぉおおおおおおおおお!!!!漲ってきたぁ~!!皆!!早くこの森を抜けるわよ!!」ダッシュ!!


新妻「ゆ、勇者様がいきなり元気に……!!?」

女兵「……あれも勇者の力……?」

アカネ「現金な娘ね~。」


人食花騎士「……てか、森の中に消えていっちゃいましたけど……」

射手「たたた大変です!!!このままじゃ、勇者様が迷子になっちゃいます!!」


女兵「……スライム」

スライム騎士「ん~?」

女兵「勇者になれ……」

スライム騎士「おお、いいよ~。」ドロ……

ス女勇者「あたし参上~!!世界中の女の娘は~あたしの物~♪あ、でもお姉様が一番だからね♪」


女勇者「……さて、勇者も戻ったことだし、先に行くぞ。」

射手「……って、何言ってるんですか~!!その勇者様はスライムさんじゃないですか!!」

ス女勇者「オリジナルもいないから、お姉様も射手ちゃん達も皆あたしの物よ~♪
……でも、あたしには勇者の力はないけどね……。」

新妻「ゆ、勇者様!?落ち込まないでください!!
例え勇者の力がなくても、私は勇者様の事が……」

猫盗賊「だからアイツは本物の勇者じゃないし……」

アカネ「新妻ちゃんは勇者様の姿をした人が居たら、好きにならずにはいられないのよね。恋する乙女、可愛らしいじゃない。」

ス女勇者「新妻ちゃん……ありがとう!!あたし、必ずあなたを幸せにするから!!!」

新妻「え!?あ、は、はい!!ありがとうございます!////」



女兵「……しゃ~ない……勇者の後を……追う……か……」フラリ

猫盗賊「女兵~、大丈夫か~?」

アカネ「大丈夫かしら?肩でも貸しましょうか?」

女兵「いや……いいから……」

ス女勇者「お姉様!遠慮なんかしないで……あたしが抱っこしますから!!」

女兵「結構」

ス女勇者「あう~……お姉様……でも……このままじゃお姉様が倒れちゃうし……
……仕方ない……」ドロ…

ス男兵「ほらっ、しっかりしな、女兵。」ガシッ

女兵「え?お、お前……」

ス男兵「“俺”が肩貸すぐらいなら別にいいだろ?な、“俺”さん。」

女兵「はぁ!?………お前……スライムだよな……」

ス男兵「まぁな、だが今は男兵だからな。気にするなって。」

女兵「……お前…いや、何でもない………」


メイド「むむ……スライム様の変身はやはり凄いですね。
物言いも男兵様そっくりになられましたし……。」

人食花騎士「ええ、もう男兵さんがこの場に居ると考えた方が楽だと思います。」

アカネ「……ん?あれ、ひょっとして……スライムさんって……」

アカネ「スライムちゃ~ん。」

ス男兵「………あ、ああ。俺の事か……。なんだ?」

アカネ「……今あなたが戸惑ったのって、あなたが男兵になりきってるからよね……?だからスライムと本来の名前を呼ばれても反応しきれなかった……。」

ス男兵「ま、そうだが……」

アカネ「ふ~ん……。でもあなたは確かにスライムさんなのよね……」

男兵「…………。」

アカネ「ねぇ、あたしに変身してくれない?」

ス男兵「ん?まぁいいが……けど……」


女兵「……射手、肩貸せ。」

射手「え?あ、はい。」

ス男兵「あれ?お前、いいのか?」

女兵「……まぁまぁ。俺の事は気にせず、どうぞ変身しろって。」

ス男兵「………。ま、いいけどな……」ドロ…


猫盗賊「?」
新妻「?」
女侍「……ムシャムシャ」


ス・アカネ「……よっと。変身完了……っとね。」

アカネ「………」

ス・アカネ「………。それで?次は何をしたらいいかしら?」

アカネ「……びっくりした?私、実は元魔王部隊だったのよ……?」

人食花騎士「ええっ!?」

ス・アカネ「あら?びっくりするも何も、私はあなたなんだから。知ってて当然よね。
まぁ、今知ったんだけど……」


新妻「?え~と……」

猫盗賊「姉上?何をさっきから話しての?」

アカネ「私に変身したスライムさんは、私が魔王の部下だった事を知っている……」

射手「え?だって、今のスライムさんはアカネさんだから、知ってて当然……ですよね?」

人食花騎士「あ、あ、あ、あああ………。スライムさん、ばれてますよ……これ……」

ス・アカネ「……みたいね。さすがは、魔王の部下さん。いい勘をしてるわ……」

射手「?えっと……何がなんだか……」

女兵「スライムがアカネに変身する前の時点じゃ、アカネが魔王の部下って事は知らなかったはず……。
だがアカネに変身した後では、その事を知っていた……。アカネに変身したんだから、アカネの過去は知ってて当然だよな……」

射手「はい……相手に変身したんだから当然なんじゃ………あれ?」

新妻「……ちょっと待ってください……。今スライムさんはアカネさんに変身してるから、アカネさんの過去を知っていて当然なんですよね……。
じゃあ、私に変身した時は、私の過去を知ってて……当然……?」

ス・アカネ「正確には、魔方陣を発動させて相手のデータを奪うって言ったじゃない?データってのは相手の体格や容姿、又はその時点までの相手の人格や過去……。それらをベースに私は変身したのだから。

変身相手の過去も当然知る事になるわよね……。」

女兵「……はぁ……マジか……」

射手「……え?」
新妻「まさか……」
猫盗賊「……?」

アカネ「変身した瞬間に相手の人格と一緒に記憶や情報を盗んでるって事ね……」

ス・アカネ「そういう事……。さすがは、私のオリジナル。ホント、いい勘……」


メイド「なるほど。では一つ気になるのですが、その変身した時に知った相手の情報は、変身を解除してからも受け継がれるんでありますか?」

ス・アカネ「……完全じゃないわ。人一人分の記憶を全部受け継ぐのは無理。大抵忘れちゃう。
でも、印象深いのはたまに覚えてたりもするけどね。
ね、“俺”さん♪」


女兵「!?……」

ス・アカネ「後は、例えば新妻ちゃんの熱~い勇者様に対する思いとか……」

新妻「えっ!?」

ス・アカネ「ホント……旅が終わったら勇者様とどんな所で暮らそうかとか、どんな呼び名で呼び合うか、何人の赤ちゃんを作ろうか、とかね……。
乙女チックで可愛らしかったわ~♪」

新妻「い、嫌ぁー/////
言わないでください!!言っちゃダメー!!!」

猫盗賊「こ、子供って……女同士なのに……」



アカネ「そぉ……なら、私の知ってる情報はどうなるのかしらね?」

ス・アカネ「……魔王の情報じゃないかしらね……。やっぱり……」

アカネ「……それは困るわ。いくら部下をやめたからって、魔王の秘密を漏らすワケにはいかない……」

猫盗賊「あ、姉上……?
目が怖いよ……?」

ス・アカネ「その気持ちも今は理解出来るわ。
安心して、私は口が堅いから。」

アカネ「今のあなたは信用出来るわよ。
でも、変身が溶けた、私以外の姿になったあなたが漏らさないとは限らないでしょ?
なら、害悪はここで断ち切る………」



人食花騎士「す~………ぶはっー!!!!」(口から粉を吐いた)

アカネ「!?か、花粉!?……くっ!目が……」

猫盗賊「姉上!?」

人食花騎士「スライムさん!!逃げましょう!!」

ス・アカネ「賛成。行きましょう、お花ちゃん。オリジナルはほぼ殺意満々みたいですし……」


アカネ「……逃がさない……。私の俊足で……。
………っ!?目が……見えない……」

女兵「猫盗賊!女侍!スライム達を追ってこい!俺らも後から行くから!」

猫盗賊「ラ、ラジャー!」
女侍「御意。」

~人食いの森~


人食花騎士「もー!!なんて事になるんですか!?」

ス人食花騎士「だってだって!!勇者の仲間に元魔王軍が居るだなんて、そんなの聞いてないです!」

人食花騎士「スライムさん!!ふざけないでください!!隊長にあれほど変身能力を多用するなって言われてたじゃないですか!?」

ス人食花騎士「うう……確かに僕が悪かったです……。すいません……」

人食花騎士「謝るんなら!!僕の姿ではなく元の姿に戻ってからにしてください!!」

ス人食花騎士「え……でも、元のスライムさんの人格じゃ、多分謝ったりはしないよ……?
絶対にこの状況を楽しんでるよ、きっと……」


人食花騎士「だからって、僕の姿に謝れたって……」



女勇者「よ~しよ~し♪」

『キュルルン♪』


人食花騎士「……ん?あれは勇者様?」


女勇者「あー、花騎士ちゃんいいところに……
って、2人いる!?あ、そっちはスライムちゃんか。」

ス人食花騎士「勇者様、その手に抱えてるの……」

『キュルル?』

女勇者「小さな女の子!!……の姿のマンドレよ。まだ花は咲いてないけど……」

人食花騎士「マンドレ……こんな森に生えてるだなんて……」

女勇者「あなた達人食花種と違って、マンドレは立派な植物だよね。普段は地面の中で栄養分を吸ってて、その根っこは医薬品の豊富な原料となる。だから、古くから人間達に刈られ続けてる。
茎から下が人間の子共の姿なのは、人間達を欺く為……だったかしら?」

人食花騎士「それは一説ですよ。もしかしたらマンドレは人間の祖先かもしれませんし。」


『キュルル♪』

女勇者「あ~ん♪可愛い見た目!!……でも、本当に女の子なのは見た目だけなんだよね……。
………穴とかないし……」

人食花騎士「え……?」

人食花騎士「それにマンドレの鳴き声は魔物をよせつけますし……」

女勇者「うん、泣き声はね。こうやって嬉し鳴きの声なら問題ないわ。」

人食花騎士「詳しいですね、勇者様。さすがです!」

女勇者「昔、図書館で植物事典を読んだよのね。その内容を未だに覚えてるだけ。」

ス・シスター「勇者様は、とても博識なお方だったんですね……」

女勇者「まぁね。一度見た事は無意識に覚えようとしちゃうのよ。昔から、」


『……ギュッ!?』

女勇者「ん?なんか鳴き声が変わった……」

『ギュルルー!!!』ダッ!

女勇者「あ、ちょっ!?どこ行くの~!!?」

ス・シスター「ああ、逃げちゃいました……」

女勇者「むむっ!なぜ今シスターちゃんに変身を…?」

ス・シスター「はい、シスターさんの姿にまだなった事がなかったので……。
それにこちらの姿になれば、自然と心が落ち着き、素晴らしき神の恩恵が……」


人食花騎士「……勇者様……。なんか嫌な気配がします……」ブルブル…

女勇者「そぉ?あたしにはただの生き物の気配しか……」



ガサッ……

人食花騎士「!?」

『ブルル』

女勇者「おー、純潔馬の群れか~。珍しい~♪」

ス・シスター「はい、純潔馬は翼を持たないペカザスとも言われる神獣です。」

女勇者「エルフ達の里にしか居ないって聞いてたけど、この白く光る体はそうに違いないわ!
かなりの俊足らしいし、勇者としては一頭ぐらい冒険の共にしたいわね。」

ス・シスター「他にも光種属性の力を持ったりして魔物よけにもなります。
特に植物系魔族を餌にすることから、昔からマンドレの掘り出しや人食花などの駆除を……
………あ」


人食花騎士「うわぁああああああ!!!!」

『ブルルッ!!!』
『ブゥオオ!!』グワッ!!

人食花騎士「ひぃいいい!!!助けて~!!」

女勇者「花騎士ちゃん!?そっか、天敵にあたるんだっけ!?」

ス・シスター「人間には害のない神獣も、魔の種にとっては敵対する存在……。
……いえ!きっと心が通じあえば共存も可能です!!神の下では万種が平等の恩恵を受け……」

人食花騎士「無理です!無理!!食べられちゃいます~!!!」

人食花騎士『いやぁ!!やだっ!……ひっ、いやぁ……やめて……』

人食花騎士『やめて…そんなとこ舐めないで……』

人食花騎士『!?いやぁ!!!そんな!そんな太いの入んないよぉ!!
止めて!止めて!!やだ!駄目ぇええええ!!!』



…………

女勇者「とか展開になったりして……グヘヘ…」

女勇者「まー、実際は花から下の女の子の姿した部分なんかもボリボリ食べられちゃうんだろうけど……」


人食花騎士「来ないで!!助けて~!!」

ス・シスター「お願いします!そのお方を食べないでください!」

『ブルッ!!』

ス・シスター「お願いします!神の、神の導きはきっと、全ての民が等しく生きる世界をご想像なさっておられて……」

女勇者「……馬に言葉は通じないし、かと言って神獣をぶっ飛ばすのも罰当たりかな。
ま、でも花騎士ちゃんの命には代えられないし、仕方ないか……」チャキン……



??「止めなさい!白馬達!」

『……ブルル……』

人食花騎士「……え?馬達が……退いた……」

女勇者「むむっ……なんか不穏な気配……」


??「危なかったですね……魔族の騎士さん。」

人食花騎士「え?……あ……ありがとうございます…」

女勇者「……お姉さん……誰?」

??「はじめまして、勇者様。私はこの森の番人をしている帝国軍の者です。」

女勇者「あなたが?ふーん……」

??「ようこそ、人食いの森に。森は決して狭くはありませんし、先ほどみたいな神獣なども放たれて魔物の数も少なくなってきてます。
ですが、まだ安全とは言い切れません。どうか、お気をつけてください。」


女勇者「……ご警告感謝するわ……。あなたはこの森の番人ってとこかしら?軍将って事?」

??「はい、中位の軍将です。」


人食花騎士「……勇者様。食い付きがいつもより弱くないですか?こんな美人の人を相手にしてるのに……」ボソッ

女勇者「……。なんか、嫌な予感がするのよね……」ボソッ

人食花騎士「え?でも、相手は帝国軍将ですよ……。まさか魔王軍だなんて事は……」ボソッ

女勇者「うーん……なんて言うか……」

猫盗賊「ふぎゃっ!?」ドスン!!

女侍「っ………」スタン!


??「む、何者ですか?」

女勇者「猫耳ちゃん!?侍ちゃんも……」


黒ナースA「侵入者ぁー!覚悟ぉー!!」ビュン!

女侍「くっ……」ガキン!!


女勇者「え!?黒いナース服……!?」

??「あなた達、何してるの!?」

黒ナースB「アカモリ様!侵入者です!!」

猫盗賊「あ、あたし達は勇者様の連れ……」

黒ナースA「嘘をつくなぁ!!この森に勇者様などが現れるワケないだろ!!」


女勇者「……え~と……」

??「……やれやれですね。あの二人は……」

女勇者「あなたの部下なの?て事は、帝国の軍人?」

??「いえ、彼女達は黒メイド隊の者達です。
……ですが、あの通り早とちりな上に気性が荒い娘達なので……」


黒ナースA「例え勇者様達が来たとしても、お前達みたいなのを仲間にしてるはずがないだろ!!猫人め!」

猫盗賊「にゃがっ!?」

黒ナースB「貴様みたいなみすぼらしい格好の田舎者が、勇者達の目にとまるワケがない!!
嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつけ!!」

女侍「………みすぼらしい……我が国の衣服を……」



女勇者「……な、なんか激しい娘達ね……」

??「全く、口の聞き方以前に道徳心から叩き直しね。
あんな風に花園でも他のメイドと喧嘩したり、種族が気に入らないだけで誤認逮捕を行ったりの問題児だったの。
それで友人の黒メイド長に頼まれて私が教育をしているのだけれど……」


女勇者「黒メイド隊の娘達なら、なんでナース服なんか着てるの?」

??「神聖なメイド服から離れる事で自分たちの未熟さを知って貰うために。
黒いナース服を着せたのは、彼女達に自分達の心の中の病に気付いて貰い、自分で自分を治療して貰いたい……という意味を込めて……」


女勇者「ふ~ん、でもあの調子じゃ……」

??「………。
にしても、あの娘達、よくもあんなに激しく動けるわね……、もう慣れちゃったのかしら?」

女勇者「ん?何が?」



黒ナースA「はぁ……はぁ……///」
黒ナースB「ひぎぃっ!……くっ……///」ビクッ

女侍「………」

猫盗賊「女侍!早くあんな奴ら斬っちゃってよ!!」

黒ナースB「……ぐっ……まだまだ……!!」フラリ

女侍「……おぬし等…足取りがよくない……体調でも優れぬのか……?」

黒ナースA「五月蝿い!!わ、私達の体の事を心配する暇など……っ!………お、お前達にはない!!」



女勇者「なんか変よね……」

人食花騎士「何がですか?」

女勇者「なんか……」


黒ナースA「…はぁ……ん!?……はぁ……///」

女勇者「あのナース達、エロい!!!!」

人食花騎士「……へ?」


ス・シスター「………あ、ではそろそろ変身を……」ドロッ……


スライム騎士「……ぷはぁ~っ。……って、あれぇ~?」

人食花騎士「あ、スライムさん。やっと元に戻った…」

スライム騎士「変だなぁ~。私~、あの女軍将に変身するつもりだったのにぃ~……失敗した~?」



黒ナースA「……ぐっ……あ……」バタン!

女勇者「あ、倒れた。もー、仕方ないな~……」スタスタ

黒ナースA「はぁ………はぁ……」

女勇者「ねぇ、しっかりしなよ、あんた。」

女勇者(うわ、近くで見たら可愛らしい……。顔が火照ってて、程よく汗で濡れてて……エロい!!」

黒ナースA「だ、誰だ貴様ぁ!?」

猫盗賊「勇者!!ここに居たのかにゃ!?」

黒ナースA「ゆ、勇者だと……………あぐっ!?……っ~!!…///」ビクッビクッ

女勇者「ん?あんた、何顔を赤くしてるの……?」

黒ナースA「ち、近づくな!!」


パサッ……

女勇者「ん?なんか服の中から落としたよ?」

黒ナースA「……ぐっ…」

女勇者「えと……何?この赤くて小さいの……」


………ワサワサ……

女勇者「え!?足がワサワサ……虫!?蜘蛛!?」

??「はい、それがアカモリ蜘蛛です。」


黒ナースA「……アカモリ様……うっ!?…わ、私には……もう……」

黒ナースB「はぁ……はぁ……アカモリ様……もうこの処罰を許してください……」

??「何を言っているの?貴方達、まだ何も反省できてないじゃない。
任務に真面目なのはいいけど、勇者ご一行を侵入者扱いで襲うなんて帝国軍人としても黒メイドとしても失陥ですね。
……貴方達にはもっと厳しい罰が必要なのかしら?」

女勇者「………

ちょっと、あんた!服脱ぎなさいよ!!」


黒ナースB「な、何を!?……や、やめろ!!」


ビリビリッ!!


女勇者「………?」
猫盗賊「あ、赤いシャツを着てる……?」


……ワサ……

女勇者「!?」
猫盗賊「!?」


ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ


猫盗賊「にゃぎゃいああああああ!!!!!!!!」

女勇者「え!?これ全部蜘蛛!!?」


黒ナースB「………ぐっ……」

??「アカモリ蜘蛛の群れをナース服の裏に這わせてるの……。」

女勇者「これが……拷問蜘蛛……」

猫盗賊「にゃぁああああ!!!!キモい!!キモいにゃあああああ!!!!」

??「この蜘蛛に少し咬まれただけで女性は絶頂をむかえるのに……貴方達は、そんな状態でよくあれだけ動けたわね……。今朝からもう何十万回は咬まれてるわよね?
その根気だけは認めてあげる……」

黒ナースB「はぁ……はぁ……ありがとう……ございま……」

??「やっぱり、これだけじゃ足りないのね。」

黒ナースB「え……?」


??「仕方ないわね……」スッ

女勇者(ん?なんか右手を差し出してる……?)

??「……」ギュッ

猫盗賊(空の右手を握りしめた?な、なんで……?)


………ワサ

女勇者「え!?」
猫盗賊「にゃっ!?」

??「……ふふ…」

猫盗賊(空だったはずの右拳から……蜘蛛が湧いて出てる!?)

女勇者「召喚魔法……?それとも、単なる手品……?」


黒ナースB「………嫌っ…」

??「ふふふ…!!」ガバッ!!

黒ナースB「もごっ!?」

猫盗賊「にゃっ!!?」
女勇者「右手の平でナースちゃんの口を覆った……」

黒ナースB「もごぉっ!?……げぼっ!?っっ!!!ごぼぉ!!」ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ

猫盗賊「にゃあああ!!!にゃあああ!にゃあああ!!!!」
女勇者「……エっグ………キモ……」

??「……どぉ?まだ食べ足りないかしら……?」


黒ナースB「………」ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ

??「……?あら、遂に失神しちゃったわ……」


猫盗賊「にゃ、にゃあああ!!!フシャーッ!!シャァー!!!」

女勇者「ね、猫耳ちゃんがあまりの衝撃的な光景を見て野生に返っちゃった……」

猫盗賊「フシャーッ!!!」

??「……ん?」ジロ


猫盗賊「にゃっ!?……にゃ、にゃーん……にゃ……」サッ

女勇者「え?ちょっと……」

??「あら、勇敢な子猫さんは勇者様の背中に隠れちゃったわね。」

猫盗賊「にゃ、にゃ~ん……」



黒ナースA「……ねぇ……ちょっと、あんたしっかり!」

黒ナースB「………」

??「さぁ~て、次は貴方の番かしら?」

黒ナースA「!!」


女勇者「あ、あんた、一体何者………」

??「そう言えばまだ名乗っていませんでしたね……。私はアカモリ。この森の軍将、又は黒メイド隊教育長も兼務してます。」


黒ナースA「こ、この……化け物……」

アカモリ「あら、上司を化け物呼ばわり?」

黒ナースA「化け物であっても……上司であることにはかわり無い……。
だが!!あんたを人間と同様になんか考えられない!!」

アカモリ「ふーん、それはそれで結構。私を人間として扱われても困るだけよ……ねぇ?」ニヤッ



黒ナースA「!?……あ……ああっ!!……」

アカモリ「なら、その化け物の前でせいぜい淫らに這いずりなさい。」

黒ナースA「嫌!!ま、待てぇ!!…ぐっ!!」バサッ!!


女勇者「え!?ちょっとなにストリップしてるワケ!?
………って……」

黒ナースA「やめろ!!嫌だ!!うぁあああ!!」ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ

女勇者(ナースちゃんの服についてた蜘蛛達が……なんか、ナースちゃんの下半身に集まって…………?)

黒ナースA「くそぉ!!やめろ!!入るな!!私の中に入るな!!!」ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ

アカモリ「蜘蛛達は温かい場所を好むからかしら?それとも貴方の蜜の味にでも惹かれたから?」

黒ナースA「……苦しぃ……そ…そんなに入るか……痛い…………私の大事なところを……やめ…ろ……」ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ

アカモリ「蜘蛛達は賢いから。これかはお世話になる家主を殺したりなんてしないわ。安心なさい。」

黒ナースA「…あっ……ああ………ぐ……ぐるしぃ……げほっ……」

アカモリ「大丈夫よ。そのうち慣れるわ……」


黒ナースA「……あ……ひぎぃ……もう……許して……」ビクビク



女勇者「…………」

アカモリ「さて、勇者様。お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。」


女勇者「……あなた、何者……?」

アカモリ「ですから、私は帝国軍将……」

女勇者「そんな事は分かってる!あんた、人間じゃないでしょ……」

アカモリ「………」

女勇者「あんたに、人間の女としての魅力を感じないのよ!!いくら見た目が美女だからって、私の女の子レーダーは誤魔化せないわ!!
多分人間でないというより、人型の魔族ですらないはず!!きっと、元の姿はスライムみたいな魔物なはずよ!!」


アカモリ「……そうですね。確かに、私のこの人間の姿は仮の姿。実際はもっと人外な容姿をしています。
……というより、私に実際の容姿なんてありません……」

女勇者「と、いうと……?」

アカモリ「実は私という存在は一つの集合体なんです。何万、何億の命の……」


女勇者「……はぁ?」

アカモリ「私という存在は一つではあるけれど、私を構築する命は一つじゃない。無限にある……。」

女勇者「あの……えーと……」


アカモリ「いいわ、無理に頭で理解しようとしないで。
見せてあげるから……」カチャッ


女勇者「ん?」

アカモリ「見ててください。これが私の……」グッ!

女勇者「え?ちょ、ちょっと!?何自分の首に剣を突き立て……」


ザクッ……ズバッ!!


猫盗賊「にゃ、にゃあああ!!?」

人食花騎士「え!?じ、自殺ですか!?自分の首を落とすなんて……」

女勇者「……!!」

女勇者(あれ……?斬れた首元から血が出てない……)


……ワサ……ワサ……


女勇者「!!!」

人食花騎士「き、傷口から蜘蛛が!?」

女勇者「ま、まさか………」


ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ……


女勇者「嘘……この胴体……肉も血の一滴もない……中身は全部蜘蛛だけじゃん!!」

人食花騎士「え!?それって……」

女勇者「なるほど……これが正体ね。アカモリ、あなたの体は蜘蛛が群れて形作ったもの……あなたは蜘蛛の群集そのもの……」


ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ……………………

アカモリ『そういう事よ……』

人食花騎士「く、首が生えた!?」

女勇者「……いえ、また作ったんでしょう?蜘蛛達が形をなして……」

アカモリ「そういう事ですね。私の体は蜘蛛達で出来ていますから……」


人食花騎士「く、蜘蛛達が人間の形になってあなたを作ってる……?」

アカモリ「そういう事です。」

猫盗賊「シャァー!!」

アカモリ「ん?」ジロ

猫盗賊「にゃ…にゃ………」シュン…

女勇者「群れを成すネズミは猫をも倒す……
群れを成す蜘蛛相手にも猫はお手上げって事か……。

一つ聞いていい?あなたの体って、何匹のアカモリ蜘蛛で構成されてるの?」


アカモリ「良い質問ですね。私の体は別に物理的な法則に従って作られてるワケではありませんからね。
普通の人間ぐらいの私の体の中ですが、無限と言っていい数の蜘蛛達を抱えています。」

女勇者「……それって、何匹?」

アカモリ「ですから、“無限”です。」

アカモリ「私の体は蜘蛛達の塊でもあり、無限に蜘蛛を吐き出す、または吸い込む泉と思ってください。
ですから、私からは無限に蜘蛛が出てきます……」


女勇者「原形はなさないから、剣で斬っても再生する……か。
なら、火をつけたらどうなるの?無限に燃えるの?」

アカモリ「はい。ですが、無限の蜘蛛達が逆に火を覆って消火するでしょうね。」

人食花騎士「マ、マグマとかに入ったら?そのまま溶けちゃうんじゃ……」

アカモリ「無限に湧きでる蜘蛛が片っ端から溶けていきます……。つまり永遠に溶け切れません。」

女勇者「じゃあ、天井と床で上下からぺしゃんこにしたら……?」

アカモリ「無限に湧きでる蜘蛛が作り出す無限の圧力で、逆に天井らを押し返すでしょうね……」


女勇者「……あんた、最強じゃない……。」

アカモリ「ありがとうございます。でも勇者様の方が強いです。私の存在自体を打ち消せばいいのですから……」

女勇者「い、いや、私と比べたって……。
少なくとも、あなたは帝国の軍将なんてレベルじゃないでしょ!なんで帝国なんかに……」


アカモリ「……こんな身ですし、行き場に困っていました。
そうしてたら、いつの間にかいい話し相手ができたんです……。」

女勇者「それが黒メイド隊長なワケね……」

アカモリ「彼女は素晴らしい人間です。私の誇りの友人ですね。彼女に誘われて、帝国軍に入隊しました。」


女勇者「……ふーん……」

人食花騎士「……軍将って、人間以外の種族でもなれるんですね……」

アカモリ「まぁ、メイド長さんの推しもありましたしね。」

女勇者「そっかぁ……。帝国軍って、案外おかしな輩が多いのね……。
男兵みたいなのから、人外生命体やら蜘蛛蜘蛛モンスターまでいるなんて……」

アカモリ「ふふ……」

スライム騎士(なるほど~。アカモリっ奴が~人ですらないから~あいつに変身できないのか~。
むむ~……くやしぃ~……」

~人食いの森・入り口~


アカネ「う……、まだ目が痛いわね……」

女兵「あからさまな敵意を剥き出しにするからだろ。」

アカネ「……まさかスライムごときにあんな力があったなんて……」

メイド「魔王の秘密……ですか。さぞかし恥ずかしい秘密があるみたいですね……」

射手「いつもマイペースなアカネさんにしては、さっきの動揺加減は理解しがたいですよね。
……私も、気になります……」

女兵「同じく。元魔王軍が勇者の仲間になるんなら、魔王の秘密の一つや二つは教えて貰わねぇとな……」


アカネ「大した事じゃないわ。今魔王が弱っているから、勇者や帝国に襲われたら危ない……とかかしら。」

女兵「なるほど……。」


・・・・・・・・・・・・

射手「……って、アカネさん!?さらっと言っちゃってますよ!?」

アカネ「いいわよ。どうせ勇者にもその内バレると思ってたし……」

新妻「魔王が弱っている……?」

射手「つまり、魔王を倒すチャンス!?」

女兵「さぁ~て、その話がホントかどうか、スライムに聞いてみないと分かんねぇだろな。
ただの嘘かもしれねぇし、もっと言えば罠かもしんねぇだろ?」

アカネ「あら、私を疑うのね……」

女兵「他人を信じない性分なんでね。
まぁ、さっきまで秘密を知った奴を殺そうとしてたお方がいきなり漏らし始めた話なんて信用しろって方が無理があるだろ?」


アカネ「……ごもっともね。信用しないならしないで、私もその方が助かるわ。」


新妻「……あなたは魔王を慕ってるのですか?なら、どうして勇者様の仲間に……」

アカネ「私は“今”の魔王が嫌いよ。でも、昔の思い人を蔑ろにするのが、どうしても心苦しいだけなの……」


射手「……魔王は、元は前回の勇者さんだった人ですもんね……。アカネさんの仲間だった人……」

メイド「恋する気持ちは永遠に枯れない、であります。」

女兵「…そんな事言って、いざ魔王を目の前にして剣が鈍ったらどうする気だよ……。
勇者の仲間になるんなら、魔王を殺す覚悟ぐらい見せて欲しいんだが……?」



アカネ「……ええ。いずれは見せてあげるわ。
私の決意を……必ず…」

~1時間後~

女兵「……zzz」


アカネ「……あー、だいぶ目の痛みがひいてきたわ……」

射手「そろそろ侍さん達を追いませんと……。2人とも心配ですし……スライムさん達や勇者様も……」

新妻「勇者様……。大丈夫でしょうか?
いえ、勇者様なら多分……」

アカネ「さぁ~て、スライムちゃん達を捜さないとね~♪」

射手「アカネさん……その……」

アカネ「分かってるわ。さっきみたいな事はしないわ。多分。」

射手「た、多分じゃ困りま…!」

アカネ「絶対!!手を出したりしないわ。安心して。」


メイド「あのー、女兵様が御眠になってますけど?」

アカネ「あら、こんな時間にお眠りだなんて、代謝に悪いわよ?」

射手「でも、昨晩余り寝ていらっしゃらなかったようですし……」


女兵「zzz~」


新妻「……なんだか幸せそうな寝顔ですね……」

射手「……起こすの、可哀そうですね……」

メイド「仕方ありませんね。女兵さんはおいて行っては?」

新妻「ええっ!?そんなの危ない……」

メイド「ご安心を。女兵様がお目覚めになるまで私も残ってますから。」

射手「え?でも……」

メイド「大丈夫です。私ももう少し女兵様の可愛い寝顔を独占したいですし。」

アカネ「あら、あなたもソッチ側の人だったの?」

メイド「……むふふ……」



女兵「……全く、勇者がいないつっても、安心して寝れやしないんだな…」

メイド「おや、お目覚めですか?」

女兵「おっと近づくなよ。“ソッチ側の人間”さん。」

メイド「可愛らしい寝顔の狸寝入りで生真面目なメイドを誘惑した小悪魔さんに言われたくありませんですね。」

女兵「悪いね。この魅惑的な体は知らない内にその辺の野獣を虜にしちまうみたいでね……」

アカネ「その野獣というのは勇者様のことかしら?」

メイド「……いえ、もっと身近な人の事かもしれませんよ?ねぇ、女兵様。」

女兵「……はぁ?」

射手「え~と、それって誰の事でしょうか?」

新妻「勇者様よりも、女兵さんに近い人……?」

女兵「………!!
……なるほどな。俺に魅了されるのは俺自身でもあるって事か……」

~人食いの森~


黒ナースB「……」

女勇者「おーい。おーい……」

黒ナースB「……」


女勇者「………~♪………ちゅぱっ」

黒ナースB「……」ピク

女勇者「じゅるるるるるるるるるるるるるるるるる」

黒ナースB「………う……あっ………んん……?」

女勇者「ペロペロじゅるるるるるるるコリコリじゅるるるるるるるる」

黒ナースB「!!?だ、誰だ貴様!?わ、私の胸に………や、やめ……っ!!」

女勇者「ペロペロん~?チュパチュパ起きたの~?コリッ」

黒ナースB「くっ!?……このぉ………っ…!」


アカモリ「あら、おはよう。よく眠れたようね?」

黒ナースB「あ、アカモリ様……うっ……っ」

女勇者「じゅるるるるるるるるるるるるるるゴクゴク」

アカモリ「元気そうで何よりだわ……ねぇ?」

黒ナースB「……さ、先ほど……は………っ!!………す……すみませんで…し……たぁ……っ……あ…んんっ…」

女勇者「ピチャピチャピチャピチャ」


アカモリ「分かってくれたならいいのよ。さぁ~て、さっきのあなたはどこがいけなかったのかしら?」


黒ナースB「……わ……私の……んんっ……いけなかった……と…ところは……ああ……あ…んん…っ……」


アカモリ「あら?まだ反対してないみたいね……」

黒ナースB「……ち……違う………違いま……す………はんせ……い……してまぅ……」

女勇者「ちゅぅううううううう………はむっ」

黒ナースB「っ!!!………あ……ああ……」


アカモリ「あらあら、質問にも満足に答えられないような悪い子は、帰ったら蜘蛛漬けの刑にしないとね。」

黒ナースB「…そ……そんな………」

女勇者「コリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリ」


女侍「……勇者……美味しそうに……。そんなにあの者の胸は味がいいのか………?じゅるり」

猫盗賊(野生化)「にゃ~♪にゃ~♪」

人食花騎士「そう言えば、この森って人食いの森というわりには特に人を襲いそうな魔物は見かけませんね……。」


アカモリ「あら、そうだった?
……ああ、確かにあなた達が出くわすことはまずないわね。」

人食花騎士「え?」

アカモリ「この森には吸精鬼がいたるところに住んでるの。見た目は可愛い女の子の姿をした悪妖精よ。
あいつらは男だけを獲物にするから、ずいぶん前に男の兵士ばかりの帝国軍がこの森を訪れた時は片っ端から吸い殺されていったわね。」


人食花騎士「吸精……。サキュバスみたいなのですか?」

アカモリ「そんな大それた悪魔じゃないわ。もっと低級な本能のままに動く魔物よ。男の精気を求めてね……」


スライム騎士「なるほどぉ~。私達のぉ~仲間に男がいないからぁ~襲ってこないのかぁ~。」

アカモリ「ええ、あいつらはずる賢いから……」







猫盗賊(野生化)「にゃ~♪」

黒ナースA「……うぅ……な、なんだお前は……汚らわしい……」

猫盗賊「にゃ~♪」

黒ナースA「なっ!?……く、来るな………」

猫盗賊「にゃ~♪にゃ~♪にゃ~ん♪」……グチョ

黒ナースA「っ!?や、やめろ!!そんなところに指を………」

猫盗賊「にゃ~ん♪」クチュクチュ………グイッ…パチャン


黒ナースA「んんっ…!……え……?それは蜘蛛…?
お前、私の中から蜘蛛を取り出してくれた……?」


猫盗賊「にゃ~ん♪」




黒ナースA「……あ……ありがとう……」


猫盗賊「にゃぁあ~ん……バリッ……ムシャムシャ……」

黒ナースA「!!?そ、そんな物を食べるなぁあああ!!!」

~人食いの森~


女兵「……ふ~ん、普通に自然豊かな森にしか見えないな……」

射手「でも、いくつもの軍隊がこの森の中で消息を絶ってますし……」

メイド「きゃー怖いですー。助けてー女兵様ぁ~。」ガシッ

女兵「……そんな心の籠もってない言い方されてもね……」

メイド「こうした方が女兵様のテンションが高くなるかと………」




『……キャハハ……』


新妻「……え?今のって……」

『……ウフフ……』

『……アハハ……』


女兵「おいメイド、隣で変な声出すなよ……」

メイド「……これは私ではないであります……」


射手「……ん?あれ……」

『……フフ…』ポツン

射手「え?お、女の子……でしょうか?」

アカネ「!?あれは悪妖精ね。油断しちゃダメ。隙を作らないようにしながら無視して進みましょ。」



『……クスクス……』

新妻「……なんか、こちらをみて薄笑いしてますけど……」

アカネ「無視して。相手にするだけ面倒よ……」


『……アハハ……』

『……クスクス……』

『……ウフフ……』


射手「……か、囲まれてますね……」

アカネ「ええ……。でも、攻撃してくる気配はないわね……。
ただ眺めてるだけ……?でも、妖精が意味もなく人間の前に姿を見せるなんて……」


『キャハハ……』

『アハハ……』


女兵「……なんか嫌な予感がするんだが……」

メイド「……同感です……」

女兵「……お前、ちょっとビビってないか……?」

メイド「………。女兵様。勇者様がおいでにならない以上、あなた様が私の勇者様ですから……」

女兵「……そんな謙遜しなくたって、いざというときは助けてやるから心配すんなって……」

女兵「………っち……」

『……アハハ…』

『……クスクス…』




射手「……変です。なんか妖精さん達、いつの間にか女兵さん達の周りに集まり出してます……」

アカネ「?……まさか……」


『……キャハハ…』

女兵「………こいつら……」

メイド「………」

女兵「……メイド、お前自分が狙われる事を知ってたな?」

メイド「……何故私が狙われてる……と?」

女兵「だから俺の側にずっと居たワケか。腕に力強くしがみ付きながらな……」

メイド「………こいつらは人食いの森の先住民達です。見た目とは裏腹にかなり残虐な魔物です。」

女兵「……そうか。なら、手加減してやる必要もないって事か……。
女の子供の姿なんて、勇者が好きそうな魔物だな……。それを俺がぶっ飛ばしてる光景を勇者が見たら悲しむだろうな……」


メイド「生存競争においては致し方ない事であります……」


『……ニコリ♪』……スッ


女兵「!?……おいおい。ガキ共、包丁やら槍やらを構え始めたぞ……」

メイド「私達が抵抗する意志を見せたからですよ。槍や包丁でまず足を狙ってきます。相手が動けなくなったところで次に腕を切り落として抵抗出来なくしてきます。」


女兵「なるほど、確かに残虐極まりない奴らだな……」



新妻「光の鎖!敵の足を封じ、その動きを束縛して!!」ピカァアア!!


ガチャッ!ガチャッ!ガチャッ!


『キーッ!キーッ!キーッ!』ガチャリ

『キャァアア!!!』ガチャリ


女兵「!……よしっ、走り抜けるぞ!メイド!!」
メイド「はい!であります。」

射手「2人共、急いでください!皆さんも走って!!」ビュン!!


『ギャッ!!』ドスッ!


アカネ「あら、さすがは射手ちゃん。走りながらも正確な弓の腕前ね。」

新妻「でも次々に妖精さん達が現れてますよ!?どんどん増えてます!!」

アカネ「妖精っていうのは森と共に生きる存在だから。森を焼き払わない限り全滅出来ないんじゃないかしらね。」


女兵「くそっ!!」ザクッ!

『キャン!!』

女兵「全く気持ちの良くない連中だな!人間の子供の姿なんてしてるから、斬ってても不快になるだけだ!!」

メイド「そこで愉快な気持ちになるようでしたら、私は女兵様の事を軽蔑したであります。……メイドウィーップ!」ビシッ!バシッ!


女兵「ん?そんな鞭どこから出した!?」


メイド「メイドたるもの!いつどこでもご主人様をしばいて快楽に落として差し上げる女王様にならなくてはならないのです。
これはその練習用の物です。……それっ。」ビシッ!

『キャウン!!』ビクッ!!


女兵「……お前次からもその鞭使って戦闘に混ざれよな!!」ザクッ!

メイド「私は戦闘は嫌いであります。可愛い女の子をいじめるのが楽しいだけ。……むふふ。」ビシッ!バシッ!


アカネ「あらあら、まだまだ余裕そうね。」

女兵「まぁな!だが、そろそろ終わりにしたいかもな!!」

アカネ「なら、勇者の力を使ってあいつらぶっ飛ばしちゃえば?」

女兵「俺がか?生憎だが俺はまだ力を使いこなしてねぇよ。いつもは女勇者様が披露した力を真似てるだけだから……」

アカネ「あら、ならちょうどいいわ。あなたが自分で思い描く力を使ってみたらどう?あの妖精達に向かって……」


女兵「……どうやって?」

アカネ「さぁ?……自分の力なんだから、自分を信じていれば自然と使えるんじゃない?」

女兵「……自分を……信じる……ねぇ……」

射手「あっ!?」ドスン!

アカネ「あらあら、またハデに転けちゃって。今日はオレンジのストライプなのね。」

新妻「きゃっ!?」ドスン!

アカネ「あら?あなたも可愛い桃色のパンツを披露してくれたの?」

新妻「ち、違います!何かにつま付いて……」

アカネ「何かって…………っ!!?」ドスン!


射手「!?」
新妻「!?」

射手(ア、アカネさんの下着……まさかの白パンです……)
新妻(ちょっと……意外……)


アカネ「痛た……。……ん?あら、何意外そうな顔をしてるの?」

新妻「!?……い、いや……」

アカネ「……そぉ。あなた達も、私みたいな女ならもっと大人っぽい下着を履いてると思ったのに……って考えたんでしょ?」

射手「い、いえ……その……」

アカネ「下着なんて他人に見せない物にそんなファッションなんて必要ないでしょ?誰かの意見なんか気にせずに自分が履きたい物を履けばいいの。
私は白が好きなの。だから白を履いてるの。悪い?」

新妻「い、いえ……別に…」

射手「とんでもありません!むしろシンプル・ザ・ベストです!アカネさん!!」

アカネ「……あら、ありがとう。」

射手「でも私、アカネさんが他の下着を履いてる姿も見てみたいです!!だから、他の柄も履いてみましょう!アカネさんなら、色んなのが似合うと思います!!」

アカネ「え?ええ……そ、そうね……」

アカネ(……この娘、こんなに熱い子だったかしら……?)


新妻「……ところで、私達は何につま付いて転けたのでしょうか?」

アカネ「ん?ああ、これね。」……ズサッ

新妻「……えと……腐食した木材……?」

射手「……あれ?この上の部分、人の顔みたい……。」


アカネ「……!!……これは腐敗した人の死体ね……」

射手「え!?」

新妻「で、でも、こんな……手足とかないですよ……?」

アカネ「切り落とされたんでしょうね。手足は全部。」

新妻「……あれ、この死体のここに書かれたマークって……」

射手「……帝国軍の紋章ですね……。じゃあ、この死体は帝国軍の兵士のもの……?」

アカネ「……ん?あら、あっちに転がってるのも死体じゃないかしら?」

新妻「え?あれ?こっちにもありますよ……?」

射手「その辺にあるの……まさかこれ全部が……?」

アカネ「凄い数ね……。ここはお墓なのかしら?それとも……」



女兵「おい!何立ち止まってるんだ!?さっさと逃げろって!」

射手「は、はい!でも、なんか死体だらけの場所に来てしまって……」

女兵「死体?なにが……」

アカネ「これよ。手足がない死体があちらこちらに沢山……」


メイド「!!……女兵様……これは……」

女兵「……なるほど。ここは死体捨て場……いや、あいつらの巣か……」

新妻「巣?それって……」

メイド「手足を切り落として抵抗できなくなった獲物をここに集めているのであります。」



『キャハハ……』


女兵「いや……ここに追い込まれた獲物の末路が手足を切られた死体になるって事なんじゃね?」


『……アハハ…』

『……クスクス…』

『……キャキャッキャッ…』


射手「……それでは、私達は……」


アカネ「ハメられたってワケね………」



『キャハッ♪』




女兵「……ふざけやがって……」

アカネ「凄い数……さすがに分が悪いわね……」

射手「一体何なのでしょうか……妖精さん達の目的は……」

メイド「きっとドM集団なのです。私達にギタギタに痛めつけられたくてやって来たのであります。」

女兵「ならお前一人でドS女王様でもやってろよ。利害の一致じゃねぇか。」

メイド「おや、女兵さんはか弱い私をこんな野蛮族の中に放り出していくつもりですか?」

女兵「まぁな……ただあいつらの狙いが本当にお前だってんなら、尚更一人には出来ないがな……」

メイド「……ありがとうであります……」

新妻「…………。
…………?あれ?なんか懐かしい感じ……」



??『キュオオオオオオオオオ!!!!』ピカァッ!!



『ギャアウッ!!』
『キーッ!キーッ!』
『キャーキャキャッ!』


女兵「なんだ!? この光……新妻か!?」

新妻「いえ!私の魔法じゃないです……この光…」

射手「妖精さん達、光に驚いて逃げ出しちゃいましたよ!?


アカネ「……これは……」

??『キュオオオ!!』


女兵「!?なんだこの白い馬は!?」

アカネ「これは……純潔馬……?いえ、もっと高貴な神獣……」


新妻「……羽が生えてる……?……ペガサス……」


ペガサス『……皆さん……大丈夫ですか……?』

女兵「!?しゃ、喋れるのか!?」

新妻「ペガサスはエルフの里の守護神です。神の使い、この世界の光……」

アカネ「ペガサス……。何故こんなところに……?」


ペガサス『僕は、この森を監視する者。帝国の勇兵アカモリ殿と共にこの森に迷い込んだ人々を導く者です。』


女兵「帝国……?お前もまさか帝国軍なのか…?」

ペガサス『僕の意志は帝国とは無縁です。ただ、この地方の帝国軍の者に信頼を置いているだけです。
僕がこの森に居るのも彼の者の頼み……。』

射手「ペガサスを従えさせる……一体どんなお人なのでしょうか……?」

ペガサス『……元はあなたと同じヴァルキュリア部隊の優秀な弓兵、今は東の平原にある花園の番人だそうです。』


射手「え!?それって……」

女兵「あの黒メイド長……か……」

アカネ「あの妖精達はなんなの?明らかに敵意剥き出しで襲われたんだけど……」

ペガサス『彼女達はこの森の古くからの住人達が魔物化したものです。本来なら人間達には見られないように隠れて生活してますが、彼女らは人間の男を襲う吸精鬼となってます。』


新妻「吸精……?」

アカネ「あら、案外卑猥な生き物達なのね。」

射手「で、では、ここに捨てられた手足のない死体は……」

ペガサス『彼女達の目的は人間の男の精気を吸い尽くす事。抵抗する者はそうやって手足を切り落とされます。』

女兵「んでもって、何も出来なくなったダルマ状態の奴から楽々精気を吸い出すって事か。」

新妻「え~と、吸精って……つまり……」

アカネ「うふふ…。男の人達は極楽気分を味わいながら死んでいけるんですものね。嬉しいんじゃないかしら?」

女兵「手足切り落とされたらそれどころじゃないだろ。」

メイド「おや?男という生き物は死ぬ間際に謎の興奮状態に陥るとか……」

アカネ「あら、なら妖精達の手法はかなり都合がいいものなのね。彼女達は優秀な策士のようね。」


女兵「そんな優秀なハンター達が、男でもない俺らを襲ったのはどうしてだろな?ペガサスには分からないのか?」

ペガサス『………。恐らく、彼女達の機嫌を害すような事をしたのでは……』

女兵「……まぁ、剣では斬ったな。」

メイド「鞭叩きにしたであります。」

射手「えと……討ちました……」

アカネ「あら、私は何もしてないわよ。逃げてただけよ。」

女兵「存在自体をウザがられたとか……」

アカネ「あら~、私はあなたの存在が憎たらしくなってきちゃった♪」

女兵「……ま、あいつらがアカネみたいにこんなくだらない理由でキレたとは思えないな。
他にも何かキレさせる様な事があったんじゃ……」




女勇者「ふ~ん♪ふ~ん♪あ、皆ここにいたの~!?」

新妻「あ、勇者様!ご無事で……………え……?」

女勇者「新妻ちゃん!なんか可愛い女の子達を捕獲したの!!」ズリズリ……

『キーッ!キーッ!』
『アウアウアウ~!』
『……キュウゥ…』


女兵「………………」

メイド「さすがは勇者様。あの妖精を捕縛するなんて……」

新妻「ゆ、勇者様……それが何かは分かってらっしゃるんですか……?」

女兵「妖精。確か男の精気を吸うんでしょ?
こんな可愛い見た目でなんて破廉恥な連中なのかしら……けしからん!!………ジュルリ」


『キィイイイイイッ!!』
『キャーキャーキャー!!』


ペガサス『よ、妖精達があんなに怯えるだなんて……さすがは勇者……』

女兵「妖精達もこれから勇者に何をされるかが本能的に分かるんだろな……」


女勇者「さぁ~て、じゃあこの子達を引き連れて早く森を抜けましょうか。」

ペガサス『それは無理ですよ。彼女達は森と共に暮らす妖精達……。
森から離れれば、その姿は森の木の葉や土へとかえります。」

女兵「消えてなくなるってワケか?森を離れたら存在出来ないのか……」

射手「なるほど……だからこの森にこんな凶暴な魔物が住んでるのに、近くの村や街に被害は出ないのですね。」


女勇者「……ちぇ~っ。なら、今ここで一口していこうかな……」

『キーッ!キーッ!キーッ!』

女勇者「さぁ、こっちにおいで~♪」グイッ

『キィイイイイイ!!!』ジタバタ

女勇者「……ほらぁ……暴れないの……」……クチャ…

『!!!キーッ!キーッ!キーッ!』



ペガサス『!?なっ………//////』

女兵「……あれが今回の勇者だ……」

ペガサス『ゆ、勇者も人それぞれ……。あれも、立派な個性……かと……』

女兵「……ふ~ん……」

ペガサス『……ただ、今まであの妖精達をあんな風に扱った勇者は僕は見た事ないです……。
あんな凶暴な妖精を押さえつけ……あの勇者はかなりの強引さ、度胸をお持ちですね……』


女兵「無理矢理褒めたら、確かにそれは長所なのかもしれないけど……」



女勇者「………う~ん、なんかこの子感じてないのかな?ずっと暴れてる……」

アカネ「その子達にとって行為は食事みたいな事だから、意味のない女同士の行為なんて時間の無駄と思ってるんじゃないかしら……」

女勇者「……ま、それなら私が勝手に楽しませて貰うだけだけどね~♪」

アカネ「あら、この勇者様は強い子なのね。感心感心~。」

~人食いの森外れの館~


アカモリ「あら、第二方面の将に会いたいの?」

人食花騎士「はい。隊長に任された書簡を出来れば第二軍将どの本人に渡したいのです。」

アカモリ「……そぉ……。残念ながらあの人がどこで何をやってるかは私達には分からないわ。」

スライム騎士「高位軍将のくせにぃ~部下に居場所も分からせないなんてぇ~デタラメな奴だなぁ~」


アカモリ「………まぁ、黒メイド長さんが代理を務めてくれてるしね。」



黒ナースA「……アカモリ様……」

猫盗賊「にゃ~ん♪」スリスリ

黒ナースA「……この猫人間が私に擦り寄ってきて……邪魔なのですが……」

アカモリ「いいじゃない。可愛らしくて……」

黒ナースA「……汚らわしいだけだし……」

アカモリ「あら~?ひょっとして、私の可愛い蜘蛛達の方がいいのかしら~?」

黒ナースA「ち、違います!!猫で十分です!!」

アカモリ「よろしい~。あなたは小動物にも愛情すら持てないから、他人の気持ちすら考える事ができないのよ。
その猫ちゃんの事をしっかり考えてあげなさいな。」


黒ナースA「は…はぁ……」




アカモリ「……あー、でも第二軍将に会うならメイドの花園は一番可能性が高いわね。」

人食花騎士「ど、どうしてですか?」

アカモリ「彼の婚約者がいるからよ。だからたまに花園に姿を見せるらしいわ。」

スライム騎士「なんだぁ~妻持ちかぁ~。」

人食花騎士「では、このまま僕達は勇者様と一緒に……」




アカネ「そうして貰えば助かるわ。
私も勇者とあなた達の両方が視野に居てくれた方が助かるし……ね。」


人食花騎士「な、なっ!?いつの間に……!!?」

アカモリ「あら……いつぞやの猫人族ちゃんじゃない……」

アカネ「……あなた……西の方の山に居た蜘蛛人間……。
あなたもこの森の……?」

人食花騎士「お、お知り合い……?」

アカモリ「確か、前の勇者様のご一行の方でしたね。私がまだ西方面に居た時に一度出会いました。」


アカネ「……ふ~ん……」

女勇者「ペガサス……か。あなたは雄なの?」

ペガサス『え?……まぁ……』

女勇者「そっか……仲間にしたいけど、男は無理なのよね……」

ペガサス『……え?』



アカモリ「あら、ペガサス。勇者様も。」


新妻「スライムさんに花さんも……無事でしたか?」

人食花騎士「え、ええ。まぁ……」

アカネ「……安心しなさい。もうあなた達に手を出すつもりはないから……。
大人しくしていれば……ね?」

スライム騎士「私はぁ~いつだってぇ~大人しい女だしぃ~。ときには男にもなるけどぉ~。」

アカネ「うふふ。それでいいのよ。
もちろん、お花ちゃんに花粉を吹き掛けられた事も根に持ってないからね♪」


人食花騎士「!!……」ゾワ……

アカネ「あれはキツかったわ……目が本当に痛くて……痛くて………うふふ。」




黒ナースB「!!……勇者……」

女勇者「ん?あら、ナースちゃ~ん♪」

黒ナースB「ひぃっ!?」ズリ…

女勇者「ん~?どうして胸元押さえてるの?顔が引きつってるし……」

黒ナースB「……ゆ……勇者が……」

女勇者「まぁいいわ。あたし少し運動してきたの。だから喉が渇いてね……」

黒ナースB「……はぁ…」

女勇者「あなたの美味しいミルク、また飲ませて貰える……?」

黒ナースB「!?ひぃいい!!!」

女勇者「大丈夫……優しく飲み干すから……」

黒ナースB「も、もう……やめ……やめて………」





メイド「む……あの黒服ナースの輩達は……?」

アカモリ「花園の問題児達を私が預かっているのよ。」

女兵「……あんたがアカモリか?この森の軍将……」

アカモリ「ええ。あなたも帝国兵士?勇者様の護衛ってところかしら?」

女兵「……まぁ、ある意味では保護者だがな……」

アカネ「あら?盗賊ちゃ~ん!こんなところに~♪」


猫盗賊「にゃふ~ん♪」スリスリ

黒ナースA「お、おい……いい加減に……」

アカネ「ああ……なんて羨ましい……盗賊ちゃんにそんなに懐かれて……」

黒ナースA「……ちっとも羨ましくなどない……邪魔なだけだし、猫人なんて汚らわしい……」


アカネ「汚らわしい?こんなに可愛いらしいのに?」

黒ナースA「当たり前だ!!人と畜生の混合体が人間の様に振る舞うなんて……」

猫盗賊「にゃ~♪」スリスリ…

黒ナースA「………吐き気がする……」


アカネ「……ふ~ん。まぁ、捉え方は人それぞれだけれど………」






新妻「……あ、あの……」

ペガサス『どうしました?……エルフの子。』

新妻「い、いえ……私は……」

ペガサス『……エルフの仲には、人間を下等な種族と見下す者も少なくない。そんな人間との間に生まれたエルフを差別する者もまた……。』


新妻「……」

ペガサス『……そういったエルフ達の姿勢が人間達のハーフエルフに対する意識に影響を与えたのかもしれません。本来なら人間とエルフの懸け橋となるべき彼らが差別の対象とされるなんて……』


新妻「……私には……エルフの里にも、私の居場所は……ない……?」

ペガサス『……僕には何とも言えません……』



女勇者「新妻ちゃん、こっちおいでよ!美味しいものがあるから……」

黒ナースB「!?……やめ……」


新妻「……は、はい!」


ペガサス『……この世界には、あなたの居場所は用意されていないかもしれませんね……』

新妻「……そうですね。私もそう思ってましたよ。あったとしても、苦しくて痛くておぞましい場所しかないって………
……でも、まだ救いはあったんだ………

私は……まだ恵まれていたみたいです………。
勇者様…………」

アカモリ「この館でよければ今晩を過ごすといいですよ。空き部屋はいくらでもあります。」


射手「この館は一体……」

アカモリ「この森が平和だった頃に営業してた大型宿泊施設ですよ。」

アカネ「あら、なら浴場とかもあるかしら?もう何日もまともにお風呂に入ってないの。」

女兵「その辺の川で水浴びが主流になってるしな。」

メイド「女兵さんはあまり、というより全く水浴びしている姿を見ませんでしたが……」

女兵「……あまり慣れないんだよ。他の女の前で裸になるのが……」

アカネ「隠れてしてるの?なんかやらしぃわねぇ~。」

射手「……でも、猫盗賊さんとはよく一緒にしてるんですよね?」

女兵「あいつが勝手に入ってくるんだよ。それに、あれは“女”じゃないからな。ただのガキだし。」


アカネ「あら、そんな事言ったらあの子が傷付くわよ?女性はデリケートよ?」

女兵「……俺だってデリケートだし……」


アカネ「本当に仲間なら、裸の付き合いは大切にした方がいいわよ?ねぇ、射手ちゃん。」

射手「え!?あ、はい!そうですよ、女兵さん。女性同士なんですから……」


女兵「……いいから。俺の事は気にしなくて……」

メイド「……まだ心から女性に成り切れてないようでありますね。」

女兵「……まぁ、男だった時の記憶の方が圧倒的に多いからな……」



アカネ「普通の男なら、むしろ喜んで他の女の子達とお風呂に入りたがると思うのだけれど……」

射手「実際は色々複雑なんですよ、やっぱり。」





アカモリ「……話が見えませんけど、あなたは女性なのですか?」

女兵「……多分…」

アカモリ「……そうですか。なら堂々と胸を張って女として生きていけばどうですか?」

女兵「……はぁ。いいんだよ、別に完全な女になれなくても……」


メイド「………ふむ。」

~アカモリの館・浴室~




・・・・・


女兵「………結局、一人で風呂に入っちまったし……」

女兵(……このまま、女として生きるのか……。

もう、男には戻れないんだよな………。


なら、そろそろ女としての自覚を持った方がいいのか………。

………はぁ……


いいよなぁ……男兵は気楽で………


男だった時の感覚……識別………

早く無くさないとな……)



女兵「……せっかく仲間があんなに居るのに、裸の付き合いすら出来ないんじゃな………。

猫盗賊や魔法使いとかなら一緒に居ても平気なんだが………」




女兵「……こんな立派な女の体してるんだから、中身が男のままの方がおかしいのかも……な……、

男兵、お前ならどう思う……?」

ガララ……


女兵「!……」


ヒタ……ヒタ……


メイド「!!」

女兵「……なんだ、メイドか……」

メイド「……女兵様。お一人で……」

女兵「そっちこそ、皆と時間ずらして一人で入りに来てるじゃねぇか。」

メイド「……メイドにとって、一人湯船での休憩時が1日の癒しなのです…」

女兵「……そっか。なら、俺は先に出るから……」


メイド「……いえ、ここは私が……。女兵様はゆっくり疲れをとっていてください……」

女兵「そ、そうか…?ならいいけど……」



メイド「………あ、一つお聞きになってもよろしいですか?」

女兵「なんだよ?」

メイド「ひょっとして女兵様は男兵様のままで生きていこうと思ってますか?」

女兵「……なんでそんな事を聞くんだ……?」

メイド「……例えば、女兵様が人を好きになる時、お相手が男性ならそれは女としての女兵様からすれば普通の事ですが、男の立場の女兵様からしたら……」


女兵「………また気色悪い事を言うな。俺が男を好きになるかよ……」

メイド「男兵様の事はどう御考えですか?」

女兵「いい男だよな。確かに。自分で言うのもなんだけど……。
でも……そうだな、好きになる事はあっても、そんなの恋愛でもなんでもないさ………」


メイド「………」

女兵「……なんだよ、人の顔をじっと見つめて……」


メイド「女兵様はご自身の魅力には気付いてますか?」

女兵「え?」

メイド「勇者様も、あなたの魅力にメロメロであります。女性の美しさを持ちながらも男性の様な強さや気高さを持つ。
……いえ、男兵様の強さを引き継いでなお美しさを保つ女兵様は、私の知る限りでは最高の女性かと思われます。……勇者様に匹敵、いやそれ以上の……」


女兵「……そこまで自意識過剰に考えてはいないけど、まー男兵自身もこの魅力に惹かれてはいるみたいだしな。」


メイド「女兵様も、本当は御自身の体を若干意識しているのでは……?」



女兵「つい最近女になったばかりで、ちょっとはしゃいでるだけだよ……。
お前や射手や勇者やら、ずっと女として生きてきて中身も女として構築されたお前らとは違うんだよ……」


メイド「……私ですか……」

女兵「……胸だって、お前の方がよっぽど女らしいし……」

メイド「………。胸が大きければ女性である……、
……そう思えた事など、私には一度もありませんでしたよ。」

女兵「え?」

メイド「まぁ、確かに私は女でありますよ。誰が何と言ようと。私自身がそう思うから……」

女兵「……まぁ、そうだろうな。」


メイド「……百聞は一見です、女兵様。」

女兵「はぁ?」

メイド「まぁ……とりあえず見てください……」







女兵「………?

……………

……!!!!!」


メイド「………これが、私の素晴らしき身体です……」

女兵「……えっと……。お前………まさか……」

メイド「私は女です。誰がどう言おうと……」


女兵「……いや、俺もお前が女だと思う……顔といい声といい胸といい……その……身体といい……。
……一部分を除いては…」

メイド「……いわゆる両性具障害ですね……。私は障害とは考えていませんが……」

女兵「両……性具……。なら……」

メイド「はい。ちゃんと女性のもついてます。女でもあり、男でもある……。
いえ、男の物が付いている………おぞましい限りです。
私は気に入っていますが、やはり美しい女性の体には必要ないかと……。」

女兵「………。この事は、他には誰か……」

メイド「私は人前で無闇に裸にはなりません。
少なくとも、なんとか下半身は隠してますし。」

女兵「……勇者にすらバレてないのか……?」

メイド「はい。勇者に見せた事もありません。
この勇者一行の中では女兵様が初めてです。」


女兵「………」

メイド「……女兵様?」

女兵「……今必死で記憶を追ってるんだ。
確か、吸血鬼の館でも風呂に入ったよな……」

メイド「あの時も上手く隠し通したであります。」

女兵「………まぁ、まさかお前がそんな体とは夢にも思わないだろうな……。
なんか……他人を信用するのが嫌になってくる……」

メイド「まぁ、私は女性ですからね、これ以外は。」

女兵「勇者が男って言われたら、ある意味納得するんだが……」

メイド「大丈夫です。勇者はれっきとした女であります。他の皆様方も。確認しました。」


女兵「………お前、女だよな……?」

メイド「はい。」

女兵「………」



メイド「……ああ、やはり私みたいな身体の女なんて同じ女として見て貰えないのですね……ぐすん(棒)」


女兵「……その態度はねじ曲がった女の性格そのものなんだがな……」

メイド「まぁ、私もいつも皆様の裸体を見つめてるワケではありませんよ。
大体、勇者様とは違ってそんな事をしても私はあまり興奮しませんし。」


女兵「…“あまり”……?」

メイド「…“あまり”…です。まぁ、女兵様の御美しい神体を目の当たりにして興奮しない方が失礼かと……」

女兵「………」

メイド「冗談です。そんな見下す目で見ないでくだい。別の意味で興奮してしまうであります。」

女兵「……いや……」

メイド「?」

女兵「案外気楽かも。……はっきり言って……自分に近い他人に会えた気がして……さ。」

メイド「そうですか。……私も、実はそう感じてました。」


女兵「……ただ、あんまり仲間を欺き続けるのはどうかと思うぞ……」

メイド「肝にめいじます。」



女兵「………!?
……あー、早速バレたな……」

メイド「む?誰か居るのでありますか?」



……ザッ

アカネ「……ウフフ。」

猫盗賊(正常態)「にゃ、にゃ~…」

黒ナースA「………」



女兵「……出た……盗聴シスターズ……」

メイド「……私が付けられてたでありますか?」

アカネ「うーんとね、どっちかっていうと女兵さんの方を見張ってたのよね。」


猫盗賊「……あうう……姉上……。あんな蜘蛛の化け物の館なんか、さっさと逃げ出そ……」

アカネ「でも、なんか面白い話を聞いちゃったわね~♪」


メイド「聞かれてしまった……こうなったら口封じを……であります。」

女兵「いや、むしろ話す手間が省けたんじゃないか?」

アカネ「あら、そう考える?」

メイド「女兵様。私は皆様にお話する機会を伺い、計画も立ていたのであります。
例えば、射手様ならこんな風に2人きりの浴場で話したらどんな反応をするか、楽しみにしてたであります。若干ブラックジョークで発情して襲うふりを見せたらどんな顔をするかなど、想像するだけで興奮するであります。」


女兵「お前、勇者レベルじゃねぇか……」

メイド「まぁ、今のもジョークですけど。ただ、盗み聞かれるのは本望ではないであります。」


黒ナースA「勇者の仲間は気色の悪い輩ばかりではないか……。猫人といいスライムといい、挙げ句には男女か……」


女兵「……えと、今のは俺の事を言われたのか?」

メイド「どうでしょう?身体は女性、心は男性なら女兵様の事ですし、心は女性、身体は男性なら私の事であります。」


黒ナースA「男か女かは関係ない!そんなおぞましい肉体で人間のふりをする方がおかしいんだ!!」


メイド「む……おぞましいとは失礼ですね。私はこの身体にかなりのプライドを持ってますよ。」

黒ナースA「何故だ!?私なら、己を恥じて自害するぞ!」

メイド「与えられた物が満足出来ないからと捨てるという発想が許されるのは子供までです。私は、むしろ好きになる事を心掛けたまでです。」


女兵「……その言い分じゃ、子供ん時は自分の体が好きじゃなかったって事になるな……」


メイド「足りないものがある自分、中途半端な自分が嫌いになる事なんか、その辺の子供だって考える事ですよ。中二病みたいなものですよ。
私の場合、少し他人には共感し難いものであっただけです。」

女兵「その気高さは女らしさなのか……男らしいのか……」

メイド「女性として当然のプライドであります。」


黒ナースA「ふざけるな!気色悪い見た目して!!」

メイド「……そういうあなた様は、さぞかし御綺麗なお体なのであるのでしょうね。」……スッ…

黒ナースA「なっ……近寄るな!このっ!」


アカネ「……こうゆう性根の腐った子は、一度痛い目みたいと分からないものね……」ガシッ!

黒ナースA「は、放せ!!獣人がぁ!このぉ!!」



猫盗賊「にゃ~……姉上~。そんな人間放っといて早くこんな館から……」

女兵「おい猫。」

猫盗賊「にゃ、にゃんだよ……?」

女兵「さっきの話、メイドの事は勇者にはまだ話すなよ……」

猫盗賊「……別にいいけど、交換条件があったらもっと口が堅くなるにゃ~。」

女兵「条件……ね。」

猫盗賊「どうするにゃ~?」

女兵「そうだな……今晩は勇者じゃなくて俺の部屋に来な。そこでゆっくり話をしようぜ」ニコニコ


猫盗賊「にゃあっ!?そ、それじゃあ、ただの脅しだにゃ……」




黒ナースA「や、やめろぉ~……っ!!うぁあああ!!!!」

アカネ「!?…うっ…」

メイド「!!……これは……」

女兵「なんだよ、うるせぇな……」

メイド「いえ……黒ナースさんの中から………」


黒ナースA「……うっ……うぅ……」ヒック…ヒック……


……サワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワ


メイド「子蜘蛛が大量に出てきたであります。」


猫盗賊「っっ~!!!!
ニャアアアア!!ニャーッ!ニャーッ!!フシャァー!!」

アカネ「あらら、また盗賊ちゃんが野生化しちゃった………」

女兵「うわっ……キモっ……」

黒ナースA「……うぅ……」

メイド「……散々他人を貶していたあなたが、こんな可愛い蜘蛛ベビー達の苗床にされていたとは……」


黒ナースA「……うぅ……う……」

メイド「汚らわしい。」
アカネ「気持ち悪いわね。」
猫盗賊「にゃ~。…ムシャムシャ…」

黒ナースA「…………」

黒ナースA「……うぅ……」

アカネ「醜いにも程があるわね。もう生きてる価値なんてないんじゃないかしら。」

黒ナースA「…んだと!!」


アカネ「…うざい!」バキッ!!

黒ナースA「うぐっ!……げふ…げほっ……あぁ……」


アカネ「……ほらぁ、せっかくの子供達………」サワサワ……

黒ナースA「え……?」


アカネ「ちゃんとあなたのお腹の中で温めてあげなくちゃねぇ!!!」グチャッ

黒ナースA「!?やめろ!やめて!!入れないで!!嫌ぁああ!!」

アカネ「あら何?お願い事なら、ちゃんとした言葉で話してみなさいよ?」

黒ナースA「やめろ……これ以上は……」

アカネ「ふぅ~ん、上から目線なの?」

黒ナースA「……やめてください……お願いします……」

アカネ「心がこもってないじゃない……ちゃ~んと、言わなくちゃダメよ!!」グチャグチャッ


黒ナースA「やめて!やめてください!!お願いしますから!!」

アカネ「それだけ?私、さっきあんな酷い事言われたのに……悲しいわ。」グリ…グリ…


黒ナースA「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

アカネ「それだけ?あの子達にも酷い事言ってたわよね……ねぇ?メイドちゃん?」

黒ナースA「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!」


メイド「……まー、許してあげましょう……であります。」


アカネ「良かったわね~。そうやって、素直にしてれば酷い事されなくて済むのよ~。分かったぁ~?」


黒ナースA「……ひっぐ……ぐすん……」


アカネ「聞こえないのかしらねぇ~!?」ギチギチギチ……

黒ナースA「痛い!痛いです!胸摘まないで!!ごめんなさい!!これからは素直にしますから!!」


アカネ「あらぁ~、素直になってくれて、私嬉しいわ。」

黒ナースA「……エ……ヘヘ…ありがとうございます……」




女兵「……なんだありゃ……」

メイド「……もしかしたら、アカネ様も自分を差別されて激怒されてたのでは?」

~アカモリの館~

女勇者「チュ~チュ~…」

黒ナースB「……あ……あ……」


新妻「……勇者様……もう3時間も経ちましたよ……」


女勇者「……ん~……でもあひないのよへ~♪チュ-チュ-チュ-チュ-チュ-チュ-チュ-チュ-チュ-チュ-」

黒ナースB「……あ……い……あっ……!!」


女勇者「……ぷはぁ~。仕方ないな。今日のところはこれくらいにしとくか……」

黒ナースB「……はぁ……はぁ……」




アカネ「あら、勇者様。」

女勇者「ん?猫耳お姉さん、どうしたの?」

アカネ「ほらぁ、あなたも勇者様にあいさつして。」

黒ナースA「あ、はい……。勇者様……お世話になります……」

女勇者「え……?なんかさっき見た時よりもしおらしくなってない……?」

アカネ「偉いわね~。その調子よ~♪」ナデナデ~

黒ナースB「えへへ……ありがとうございます。アカネお姉様。」


女勇者「なっ!?……あなた……やるわね。あたしの見てないところで……」

アカネ「あら?ひょっとてやきもちでもやいたかしら?勇者様とあろうお方が……」


女勇者「………ふふ。あなたがそのつもりなら……猫耳ちゃん!」

猫盗賊「にゃ、にゃん!」

女勇者「こっちにいらっしゃ~い♪」ニコリ


猫盗賊「にゃ……その……」

アカネ「盗賊ちゃん……?」

猫盗賊「……姉上……ごめん!」

アカネ「あっ!待って……」

女勇者「いい子ねぇ~♪偉い偉~い♪」ナデナデ~

猫盗賊「……うぅ……」


アカネ「……勇者様……。それで買った気にならないでね………」

女勇者「あなたの可愛い妹ちゃんはもうあたしのものなのよ?ねぇ~?猫耳ちゃん。……はむ。」

猫盗賊「にゃぁあん!……耳噛まないで……にゃ…」

女勇者「……ん?」

猫盗賊「にゃぁ……どうしたにゃ?勇者……」

女勇者「……何か聞こえた様な……悲鳴みたいなの………」


アカネ「……あら?何か焦げ臭いわね……」





射手「勇者様!!火事です!!向こうの方で森が燃えてます!」

女勇者「火事……?人食いの森で………。さっきの悲鳴……まさか……」

~人食いの森~


ペガサス『……酷い……』

女兵「この辺は焼け野原だな……。なんでこんな自然破壊をしたんだろな?」

ペガサス『森を燃やせば、森に従ずる彼女達も殺せる……』

メイド「妖精狩りですか……。確かに、この辺りにはもう妖精は居ませんね……」


……ガサッ

女兵「誰だ?」


「……くっ……」

メイド「誰か居ますね?……人……でしょうか?」

「な、何者だ…?」

女兵「……そういうお前は帝国軍の格好してるな。軍人がこんなところで何してんだ?」

兵士「……その格好……貴様も軍人か……」

女兵「帝都軍人だ。ちょっとしたヤボ用で遠出をしてるがな。そっちはどこの部隊だ?」


兵士「………ぐっ…」バタン


メイド「!?大丈夫でありますか?
………右腕が切り落とされてますね……」

兵士「…妖精共にやられた………くそっ……」

女兵「なるほど。お前らか、この辺りを焼き払ったのは……」

兵士「……魔物の住む森を焼き払い……魔物を殲滅するのみ……」


ペガサス『……勝手な事です。この森の開拓は僕達の勤め。自然を破壊せず、妖精達を正常にさせて、豊かな森に変える事を目指していたのに……。
……こんな強引なやり方では……』


女兵「……そんな何十年かかるかも分かんねぇ計画なんかじゃ、痺れを切らせる輩も現れるだろな。
ペガサスさんと違って、俺ら人間の寿命は短いんだ。」

メイド「……哀れな話ですね。」


女兵「……いかに早く結果を出すかが、軍の仕事だからな。
ちゃんと結果を見せないと、政府や国民は納得しないからな……。」

~人食いの森~


射手「……!?これは……死体……?」

女勇者「まだ死んで時間が経ってないわね……。こいつらが火事を起こしたのね。」

アカモリ「………」


射手「でも……この人達は帝国軍の格好ですよ……?」

アカネ「……手足を切り落とされてる……。妖精達の仕業ね。
……でも、妖精の気配が全くしないわ。焦げ臭いだけね……」

アカモリ「森を焼き払って、妖精達を殲滅させている……?」


女勇者「やっぱりそうなのね!?
……許せない。あんな可愛い子達を殺すなんて……」

射手「え?で、でも魔物ですよ?妖精って言っても……」

アカモリ「……森の開拓は私達が請け負う任務。勝手に妖精狩りをするなんて許せない………。
こんな事……黒メイド長……あの方が望んでいるワケないわ……」




人食花騎士「……スライムさん……この死体達……」

スライム騎士「ん~?こいつらぁ~第三軍の印があるなぁ~。」

人食花騎士「……何故こんなところに第三軍の輩が………」

あー、この時期は暇がない……

世界観広げ過ぎてSSじゃ追い付かない……

非常に悩ましい……

~人食いの森~

「勇者はまだ見つかりませんの?」

?「このように森を燃やしていれば、そのウチ現れますよ。お嬢様。」

お嬢「焦げ臭くてかないませんわね。それにその妖精達が死んでいく様も、とてもじゃないけど耐えられませんわね。」

??「匂い……悲鳴……妖精達の死。悲しいものです。」

お嬢「……まぁ、魔物に同情しても仕方ないですわ。
……にしても、早くあの勇者を探し出さないと……」

??「お嬢様……そう焦らずとも、勇者様ならきっと今のお嬢様を仲間にしてくださいます……」

?「帝国の軍将にまでなりましたし、きっともうすぐ第三軍将の座も手に入りますよ!」

お嬢「べ、別に私は勇者の仲間になりたいワケじゃなくてよ!ただ、昔馴染みだし、手を貸して欲しいと言うなら手を貸してあげなくもないだけで………」


?「……あちゃー、また始まった……お嬢様のツンデレTIMEが……」

??「素直になれないお嬢様……可憐……/////」




女兵「ていやぁっ!!」バサッ!!!



ビシャァアアアアアッ!!!(空から何か降ってきた)

お嬢「え!?何ですの!?この液体!?雨!?左目!右耳!大丈夫ですの!?」

左目「大丈夫です!右耳は平気?」

右耳「平気……」

お嬢「全く、いきなり雨だなんて……。
……あら?なんだか妙に赤い雨粒ですわね……」

左目「生温かいですね……」

右耳「……この匂い……血?」

ズドン!!!!

お嬢「きゃっ!?今度は何が落ちてきたんですの!?」

左目「これは、巨大な鷲の魔物の死骸……?」

お嬢様「最悪ですわ!!!いきなり魔物の血を浴びるだなんて!!」

右耳「……?誰か来る……?」




女兵「よっと。」ストン

お嬢「え!?」

女兵「………ん?」

左目「な、何者!?」カチャン!

お嬢「待ちなさい!この女性が着ているのは帝都軍の服ですわよ。あなたも軍人ですわね?」

女兵「ん?まぁ、そうだが。おたくらも軍人か?」

左目「なっ!?あなた!この方を誰だと思っているんですか!?」

女兵「………誰だよ?」

左目「我らがお嬢様は、一高位貴族の令嬢にして、若くして第三軍の一将まで登りつめたお方なのですよ!!」バーン!!

お嬢「ふふ~ん。どうかしら?」ドヤァ~ッ


女兵「どう……って、何が?」

お嬢「……え?で、ですから、『うわぁ~凄ぉ~い!』ぐらいの驚きはなさらないのですの!?」

女兵「……うわー凄ーい。」

お嬢「………ぅぅ……」シュン………


左目「ああっ!?お嬢様!?落ち込まないでください!!大丈夫です!あの方も心の中では驚き宣ってるはずですよ!!」

右耳「……お嬢様は落ち込み易い……ガラスのハートなんです……」ヒソヒソ…

女兵「は、はぁ?な事言われても……」


お嬢「ど、どうせ私なんか……勇者は私なんかを仲間にはしてくださいませんわ………」

女兵「……え?勇者がどうかしたのか?」

お嬢「私は小学校の頃から女勇者と同学年同じクラスでしたわ……。いつも私はクラスで2位、1位の女勇者には負け続きでした……」

左目「子供の頃より勇者様は勉学武術共にずば抜けてましたから……。
で、でも、負けじと2位で勇者様にくらいついていたお嬢様も素晴らしかったですよ!!」

お嬢「……ホント…?」

左目「はい!そうに違いないです!ですよね!?」

女兵「……へ?」

右耳「……ご協力を……」ヒソヒソ…

女兵「……ま、まぁ、そうだな。お嬢は凄いな。感動するなぁ~。」


お嬢様「そ、そうですわね!!いつもは勇者に1位をあけ渡していましたけど、私の手にかかればいつでも取りかえせますわ!!」


右耳「……お嬢様はすぐに調子にのります……」

女兵「……まぁ、扱い易くていいじゃん……」

お嬢「勇者ぁ~!!ライバルとして、是非ともあなたをギャフンと言わせて、仲間になってくださいと懇願するようになるほどにして差し上げますわよ!!」

女兵「勇者の幼なじみってヤツか……。そういや、勇者も貴族だったな……」

お嬢「そうですわ。貴族としても、私と勇者はほぼ同格ですわ。」

女兵「なるほど。ただ勇者とは違って、そっちは貴族匂がものすごいな。
あんたら2人も貴族?」

左目「私は左目。お嬢様の一族の分家の者です。昔からお嬢様に仕えています。」

右耳「私は右耳……貴族ではないです……お嬢様に仕えるメイドです……」

女兵「?……その目……」

右耳「はい……私は目が見えてません……
私は生まれつき視力が弱かったんです……それが数年前に光を失いました……」

お嬢様「でも右耳は聴覚や臭覚がとても優れていましてよ?数キロ先の臭いを嗅いだり、足音のみで相手を見極めたりなどが可能ですわ。」


女兵「あー、だから軍人になれたんだな。盲視のハンデを持って軍人になれるんだから、よっぽど凄いんだろうな。」

お嬢様「当然ですわ!私の右腕なのですから!」

女兵「……何故お前が威張る……。
……ちなみに、左目さんは名前に目が入ってるから、目が異常に良かったりするのか?」

左目「いえ、これは昔お嬢様が私につけて下さったあだ名です。」

お嬢様「左目はとても機転が利いて、私の気付かない所にも目が届く優れた人材ですわ。」

女兵「…つまり、軍将の補佐にはぴったりってワケか。
にしては、かなりの部下が殺られたみたいだな?妖精達に……」


お嬢「あんな方々、私は知りませんわ。私は断ったのにお父様が勝手につけた衛兵達ですわ。」

右耳「森に住む妖精達の情報……男のみを襲う……」

左目「森には入るな、と言っておいたのに、ついてくるからです。私達は止めたんですよ!」


女兵「あ、そう。確かに女だけならこの森一番の危険要素は突破できるな。
でも、なんで一々森を燃やしなんか……」

お嬢「成果を上げる為ですわ!この森の軍将さんには悪いけど、第三軍将になる為に成果を出さなければならないのですの!!」

~女勇者の幼少時代~


女勇者(10)「とりゃ~!」ブン!

お嬢(10)「きゃっ!?」ビシッ!

先生「そこまで!2人共、竹刀を置いて。」

お嬢「ま、まだ負けてませんわ………」

女勇者「え~……勘弁してよぉ……もう何戦もやったんだよ~?全部あたしの勝ちじゃん。」

お嬢「わ、私はまだ負けを認めてないですわよ!!
今のはウォーミングアップですわ!これからが本番ですわよ!!」


先生「コラッ!!いい加減にしなさい!!何をそんなにムキに……」

女勇者「いいよ、先生。止めないで……。
次の一手で、力の差をはっきりさせるから!!」

お嬢「の、望むところですわよ!!!」



女勇者は強かった……
わたくしも、子供にしてはかなりの剣の腕前でしたわ……
……でも……勇者はわたくしのはるか前を進んでいた……



お嬢「ぁあん!!」バタン

先生「ちょっと!?大丈夫!?」

女勇者「あちゃ~、本気出し過ぎちゃったかな?」

女生徒A「女勇者ちゃん凄~い!」

女生徒B「どうしてそんな強いの?」

女勇者「決まってるじゃん!あたしが勇者になる選ばれし者だからよ!!」





左目(12)「……お嬢様!大丈夫ですか……?」

お嬢「……ぅう………」

先生「あなた、まさかまだやるつもりなの……?」

お嬢「………ちょ、ちょっと!!女勇者さん!」

女勇者「ん~?なにさ~?」

お嬢「きょ、今日はこれぐらいにしておきますわ。
ま、まぁ~明日のわたくしは今日よりも調子も良くて数倍の力も出せましてよ。」


女勇者「……そっ。なら楽しみにしてるわよ?お嬢様♪バイバ~イ。
左目ちゃんもバイバ~イ♪今度一緒にお茶しに行こ~ね♪」

左目「は、はぁ……。それではごきげんよう。」



女生徒B「女勇者ちゃん、なんだかお嬢ちゃんには厳しいよね?どうして?」

女勇者「ん~?別にぃ~。まぁ~、興味がないのは事実だけど。
左目ちゃんはいいよね!なんか、真面目な従者って感じがいい!!一緒にお風呂で背中を洗って貰いたいなぁ~♪」

女生徒A「あはは……。また始まった……女勇者ちゃんの変態癖……」

女勇者「てへっ♪」

お嬢「………」

左目「お嬢様……?」

お嬢「……ぅう……また負けてしまいましたわ……」

左目「お嬢様……泣いてる……?」

お嬢「わたくしなんか……一生勝てない……わたくしは……弱いですわ………ぅう……」


左目「お嬢様……さっきまであんなに明るく振る舞われていたのに、突然どうしたのですか?」

お嬢「女勇者の前でこんな情けない姿は見せられないわよ………こんな姿見せたら……嫌われてしまいますわ……
……まぁ、あんなにボロボロに負けてしまってわ、もう飽きられてしまったかもしれませんわね……」


左目「お嬢様はあんなに頑張って女勇者さんに食らい付いたのですよ!!?女勇者さんもきっとお嬢様の熱意に気付いていますよ!!」


お嬢「……そうかしら……?」

左目「そうに決まってますわ!!女勇者さんも心の中ではお嬢様を賛美し尊敬してますよ!」

お嬢「そ、そうですわね……そうですわよ!!あれだけ女勇者さんを追い込んだのですもの!!」


左目「はい!!上級生ですら簡単に倒してしまう女勇者をあれだけてこずらせたのはお嬢様くらいですから……!!」

お嬢「ふふふ……女勇者!明日こそは、必ずわたくしが勝ちますわよ!!」






お嬢「女勇者さん!この前のテストの結果はどうでして?」

女勇者「え?あーテストね。あのね、お嬢様。あたしが受けたテストは小等部のじゃなくて……」

お嬢「高等部のテストでしたわよね?しかも難関クラスの。」

女勇者「そうよ。だから、あなたとは比べようが……」

お嬢「ご安心を。わたくしも受けましたわ!あなたの同じ試験を!!」

女勇者「え?あんた12歳でしょ?高等部の試験なんか解けるわけないじゃん。」

お嬢「あなたが受けて、わたくしが受けないワケにはいきませんわ!わたくしは武術においても勉学においてもあなたを越えなくてはならないのですから……」

女勇者「あ、そう。で、何点だった?」

お嬢「…………268点(300点中)ですわ……」

女勇者「え!?マジで?高等部の平均点どころか高偏差値じゃん!あんた凄いわね~。やるじゃん!」

お嬢「え?ま、まぁ、当然ですわ!わたくしは優等生ですもの!
もちろんあなたも、わたくしにはかなわずとも優秀な結果を残したのでしょ?」

女勇者「え?うん。296点。やっぱ高等部の試験だから、全く知らない公式が出てきてさ。手も足も出なかったわ……」


お嬢「……あ、あら……そ、そうですの……それは残念でしたわね!まー、また次がありますわ!その時はお互い満点を目指して頑張りましょう!」

女勇者「そうね、頑張ろっか!」





お嬢「………左目……わたくしの頭脳なんて虫以下ですわ……スポンジですわ……試験で満点も取れないなんて………もう頭の中から取り出して、今晩のスープにでもしてもよろしくてよ………」

左目「お、お嬢様………卑屈過ぎ……」

~人食いの森~


お嬢「女勇者はいつだってわたくしを圧倒してばかりでしたわ……、その上勇者に選ばれるなんて……」


女兵「アイツってそんな優等生だったのか……」

左目「はい。常人を遥かに超えてましたね。」

右耳「それに対抗してたお嬢様も……十分凄い……異能……」

左目「もちろんお嬢様も優秀なお方です!……女勇者様が居なければ、お嬢様が一番の優等生だったにちがいありません!!」


女兵「ふ~ん、あんたがあの化け物勇者のライバル……ね。
まぁ、その年齢で軍将になれるんだから、軍学校でも優等生だったんだろうけど……」

お嬢「ええ、もちろん。そして更に成果を上げていき、第三軍将になってみせますわ!」

女兵「ま~たデカイ夢だな……」

左目「勇者様と対等になるのですから当然のことです!!」

女兵「高位軍将なんて、いくら優等生でも簡単にはいかないだろ。
派閥とかはどうするんだ?強い味方でもいるのかよ?」

お嬢「当然ですわ!わたくしもただの独り狼でもなければ、横から軍将の座を奪う泥棒ネズミでもありませんわよ?
わたくしのバックには、前第三軍将を支持していた母体“元老院”が付いていますわ!」


女兵「はぁ!?それマジ!?」

右耳「だから……こんな強行策も可能……」

左目「この森の殲滅も、全ては元老院さん達の後ろ盾あってのことです!」


女兵「元老院……年老いた軍将達のかなり頑固な集団だと聞いたけど、こんな女を高位軍将に立たせる気かよ………。
……いくら優秀だっつっても、他の候補者達が納得するとは……」


お嬢「その時の覚悟は出来ていましてよ……」

左目「どんな困難も乗り切るつもりです。」

右耳「戦争も辞さない……邪魔する壁は排除……」

ペガサス『キュオオオ!!!!』バサッ!!



右耳「!?……お嬢様……ペガサスの声が……」

お嬢「……ええ、もう目の前に現れてましてよ。」


メイド「助けに参りましたよ!女兵様。」

女兵「……お~、格好良いいね~、ペガサスに乗ってのご登場かよ。」

メイド「非常に爽快ですよ。今度は女兵様も是非……」

女兵「……まぁ、そんな怖い顔のペガサスには乗りたくないかな……」


ペガサス『あなた達は!?この森で何をしているのですか!?』

お嬢「貴方がこの森に住むというペガサスですの?確か、黒メイド長さんのお知り合いでしたかしら?」

ペガサス『僕は彼女の友人です!そしてこの森を守る者……』

お嬢「この森を守る……。そんな心構えだから、未だに森の開拓が進んでないのですわ………」

ペガサス『何を……!?』

お嬢「この森が優しき妖精達の暮らす豊かな森だったのは遠の昔。妖精達は今や人々を襲う魔物と化して、凶暴な猛獣達も森に住み着くようになった。
……この森はもうおしまいですわ。もはや私達にはどうしようもない……」


ペガサス『違う……森は徐々に昔の様な静けさを取り戻しつつあった……。
あなた達、人間の目にはそれが見えないだけ……。だから僕は……!!』


右耳「森は確かに平穏さを取り戻してた……でも……遅過ぎる……」

左目「当り前のことです。壊れたものを直すのには壊した時の倍以上の時や力を有する……」

お嬢「後はその苦労に見合った分の価値が、この森にあるかどうかですわ。
……残念ながら、私にはそれが感じられませんでしたけど……」


ペガサス『あなた達……人間の価値観でこの森の素晴らしさが理解できるものか!!!』


メイド「ペガサス様、落ち着いてください。彼女達も帝国軍の……」

女兵「…………」

メイド「女兵様、この事態をどうしましょうか?」



女兵「……双方正反対の言い分なのに、どっちの意見も正しい様に聞こえる……。
……どうしたもんかな……」

ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ



左目「わ、わぁああ!!?虫ぃぃ!!?」

お嬢「これは……?赤い蜘蛛……?」

左目「うわっ!?足に付いた!?気持ち悪………ひゃぅううっ!!!」ビクッ!

お嬢「!?……右耳!こっちへ…!!」

右耳「お嬢様……左目が……」

お嬢「もう手遅れですわ……」


左目「あ……ああ……こ……こんな……ぁあんん!!!」ビクッビクッ!!



女兵「赤蜘蛛!?アカモリか……」


ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ

お嬢「な、なんなんですの……?」


『あなた達が他人の仕事場を侵す不届き者達ね……?』ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ


お嬢「!?……蜘蛛の群衆の中から……人が!?
……いえ、蜘蛛達が集まって人に変型した!?」

右耳「……凄い気配……何百、何千もの命の声……聞こえる……」


アカモリ「……やっぱり他の軍の者達ですね……。あなた方……」

お嬢「……あなたがアカモリさんですわね……。お初にかかりますわ。わたくしは第三方面の街・学都の軍将ですわ!!」

アカモリ「え……?あなたみたいな女の子が帝国主要都市の軍将だと言うの?」

お嬢「あら、人を見た目で判断なさるおつもりかしら?アカモリさんはもっと立派な軍将だとお聞きしましたけど……」


アカモリ「……そのいかにも!って喋り方、絶対第一印象で損してるわよ?気をつけた方がいいんじゃなくて?」


お嬢「……う、うるさいですわ!!」

アカモリ「あら、意外と短気ね。パッと見、三下の様な雰囲気だし、頭も色々抜けてそうね……」

お嬢「なっ!?……あ、あなあな…あなた………そこまで言わなくても……………」シュン


右耳「……お嬢様の弱点である豆腐メンタルを的確に攻撃……アカモリ軍将……強敵……」

アカモリ「……?」



お嬢「………ドウセワタクシナンカ……」ズ~ン……

右耳「元気出して……お嬢様……」ナデナデ…

お嬢「……右耳……?」

右耳「お嬢様……凄い人……私は知ってる……」

お嬢「……う、右耳さん………ありがとう………。
……そうですわ、あんな輩の言うことなんか………。
所詮、わたくしの凄さを知らずに述べてるだけですわ!!」


アカモリ「……意気がったり、沈んだり、そしてまた意気がったり……。精神の不安定な人ですね……。


……でも、その自信根拠が気になりますね!あなたの強さ、是非拝見させてもらいましょうかしら!!」

ペガサス『!?アカモリ様!いくらなんでも……』

右耳「光の鎖……白馬の動き……封じる……」ピカッ!

ペガサス『!?これは…!?』ガシャン!ガシャン!!


女兵「光魔法!?まさかあいつ……」

メイド「ハーフエルフですか……。」



お嬢「アカモリさん、わたくし達は一応は帝国に仕える身同士。
無意味な衝突は避けたいですわね……」


アカモリ「お気持ちはありがたいけど……。もちろん、私は森を破壊されたことを怒ってるワケじゃないわ。ペガサスの言うやり方が正しいとも思わない……」

ペガサス『…………』

アカモリ『ただ……ただただこの燃えてくる闘魂を鎮めたいと思うだけなの!!
付き合って貰えるわね?お嬢様!!」


お嬢「ええ!!ご一緒させてもらいますわ!!」カチャッ


女兵「……?なんだ?アイツの赤い剣?光ってるぞ?」

アカモリ「……あなた……その剣……」

お嬢「火の精霊の加護を受けし魔剣“イフリート”!!!
一振りで炎の嵐をおこしますわ!!!」

ブン!!!


アカモリ「!?……くっ!!」

女兵「!?って、こっちにも炎が飛んで……」

メイド「……あ………」







ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

シュ~…………



女兵「あっぶな……」

メイド「凄い威力ですね、木々が一瞬にして灰になりました……」

女兵「……あれで森を焼いて回ってたんだろな……」




お嬢「……アカモリさん……?」


アカモリ「……熱いわね……」ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ


お嬢「……蜘蛛を身にまとって炎を防いだ……?」


アカモリ「危ない玩具をお持ちね。あなたみたいな人間が振り回してたら、いつ自身の身を焼くことになるか……」


お嬢「余計なお世話ですわ!自分の武器に身を滅ぼされるような事など……」


アカモリ「なら……我が蜘蛛達の餌食になりなさい!!」ワサァアアア!!

お嬢「くっ!?このぉ!!」ズバッ!!

アカモリ「ほら!よそ見してたら危ないですわよ!!」ブン!


お嬢「それは……お互い様ですわ!!」ガキン!!


アカモリ「あら、ちゃんと剣は扱えるのね。ただただ玩具を振り回してるだけの子供ってワケではないってことかしら!」


お嬢「っ!!…このっ!!」





メイド「お二方共、やはり強いですね……」

右耳「お嬢様は最強……」

左目「お……お嬢様……はぅぅ………」

女兵「ほら、しっかりしろって……」

左目「す、すみませ………あうあ………」

ビュン!!


アカモリ「ぐっ!?」グサッ!

お嬢「!?鉄の矢!?」




女勇者「とおりゃっ!!!」

お嬢「っ!!」ガキン!!


黒メイド長「アカモリ、それに学都の将、今すぐ戦闘をやめよ!!」

アカモリ「……あなた……」

ペガサス『……長殿……』


お嬢「……女勇者……女勇者さん!!」

女勇者「………あちゃ~、まさかあんたが居るとは……」

お嬢「探しましたわよ!女勇者!!……い、いえ、別にあなたに会いたかったワケでは……!!ただ、あなたが勇者の旅に出たと聞いて、良ければ手を貸してあげなくもないと思って……!!」


女勇者「……はぁ……あー、面倒……」


左目「勇者様、お久しぶりですね。」

女勇者「ん?あ、左目じゃん!久しぶり~!相変わらず可愛いなっちゃって~!!成長した?胸とか大きくなった!?」




アカモリ「………」

黒メイド長「………。森が、静かになったな……」

ペガサス『……長殿……。申し訳ございません……』

黒メイド長「……神の直属のしもべであるお前が、我ごときに頭を下げるなど、勿体ないことだ。
責任ならば、我の方にあるはずだ……」


アカモリ「……私は気にしないわ。この森がどんな最後を迎えようと……。
ただ、誰かに仕事を盗られるのは気持ち良くないわね……」


黒メイド長「……出来れば、この森が昔そうであったという静かになった姿を見てみたかった。
だが、どうせ我の生きてる内に戻る予定でもなかったのだろう。そのような先の見えない計画では、帝国も納得して貰えなかった……。
すまないな、我の力不足だ……」


ペガサス『……僕は……。いえ、長殿がそう言うのなら………』

アカモリ「………はぁ。この世界もどんどん帝国に開拓されてるわね。
この森も無くなってしまうし、残すは魔王の土地ぐらいかしらね?帝国の手が届かない場所は……」


黒メイド長「そう悲観することはない。世界は未だに変化の途中にいるに過ぎないのだから。その結末がどうなるかは、我々の選択しだいなのだから。」

お嬢「お久しぶりですわね。黒メイド長さん。」

黒メイド長「学都の軍将。就任式以来か。相変わらず行動を起こしてばかりの様だな。
第三軍将の座を目指しているのか?」

お嬢「もちろんですわ。上を目指して、わたくしは万人に認められる存在へとなりますわ!」

女勇者「……ふ~ん……」


黒メイド長「イフリート……前の第三軍将の持っていた魔剣か……。元老院から譲り受けたのか?」

お嬢「ええ。軍将となる者なら使いこなせるだろう、と……」

黒メイド長「その剣はいわばじゃじゃ馬。いつ持ち主を己の豪火で焼き尽くすか分からんような代物だ。」

お嬢「そうなるのは、わたくしが自身の力を信じられず、抑制を失った時ですわね。
ご安心を。わたくし、そのようなことには絶対なりませんわ!」


黒メイド長「………そうか。ならば、我からはもう何も言うまい。」


女勇者「大丈夫?気がついたら灰になってるかもよ?あんたの体が……」

お嬢「わたくしにそのような隙はございませんの。
わたくしは優等生ですから……。」

女勇者「そう言って、テストの日に風邪を引いたこともあったかしらね?」


お嬢「あ、あれはハンデですわ……。本調子のわたくしでは、あなたを圧倒し過ぎるでしょう?」

女勇者「ふ~ん。まー、そう言うことにしといてあげるわ。」

お嬢「あら?ご不満なら、今ここで決着着けませんこと?」

女勇者「……げっ……なんでそんな話になるの……」

お嬢「久しぶりの再会ですし、お手合せ願いますわ!女勇者さん!!」

女勇者「い……嫌よ!面倒くさい…」

お嬢「それであなたがよくても、わたくしがよくないですわ!!」

女勇者「う、う~……あああああ!!!助けて!お姉様ぁ~!!」



女兵「え……?」

女勇者「アイツは昔っからあたしを見る度に決闘決闘うるさいのよ!!も~変態的なのよ!!」

お嬢「お待ちなさい!!女勇者ぁ~!!」

女勇者「うわぁ~!!こっち来んなぁー!!」

女兵「勇者が女性を避けるなんて……。このお嬢、実は凄い輩なんじゃ……」

~その頃、教会の街への道~


シスター「このようなところに温泉があるだなんて、これはきっと神様からの御恵み……」


吸血姫「シスター。たまには自分の運の強さを自覚するのも大切よ。神々言ってないで……」

魔法使い「ふぅ~……。生き返りますぅ~……」


吸血姫「男兵も一緒に入ればいいのにねぇ~?」

魔法使い「え!?あ、わ、私はいいけど、シスターさんや吸血姫さんは恥ずかしくないの!?」

吸血姫「別に構わないわ。前にも一度見られてるし……」

魔法使い「え!?それっていつですか!?男兵さんがそんな事を……」

シスター「むしろ、殿方に私の身体なんてお見せしてもよろしいのでしょうか……?」

吸血姫「何を言ってるの?シスターの……その……綺麗な肌や、華奢な体を見て……興奮しない人間なんて居ないわよ……」


シスター「そ、そうでしょうか……?それなら、男兵さんを呼んで……」

吸血姫「ダメ!!やっぱダメよ!男がシスターの素肌を見るのなんて!!私が許さないわ!!」

シスター「え?あ……はい……?」



魔法使い「ま……どうせ呼んでも来ないと思うけど………」




男兵「zzzz……」

男兵「…………」


男兵「……ん?……なんだ?この気配………あっちからか?」






アオミン「この辺は自然が豊かで気持ちがいいですね?」

ミドリ「教会の街の周辺ですから、教会が支配する土地。帝国の輩もそう易々は開拓できない場所です。」


男兵(……何だ?アイツら……)


??「ここも聖なる土地……人の手も届かず、魔の手からも逃れた……」


男兵(……んで、あの男も何者だ…?)


ミドリ「!!……誰かいます!」

男兵「うっ!?気付かれた!?」

アオミン「何者ですか?……帝国の軍服……!?」

ミドリ「帝国軍!?……ギリッ……」


??「待ってくれ!彼からはまだ敵意を感じない……」


男兵「帝国軍人を見ただけで殺意を剥き出しにするとは、よっぽど帝国が嫌いなのか?あんたらは、」


ミドリ「!?……彼は……」

アオミン「………。ちょっとばかり帝国に恨みがあるだけよ。」

ミドリ(ミンファーさん。彼は勇者の仲間の……)

アオミン(女兵の片割れの方ね。……でも、私達には気付いてないわ。
……特に、私達の隣にいるこのお方が前勇者であり“魔王”であることには……。」


魔王「例え帝国に因縁があったとしても、今この場で君にどうしようとかは考えたりはしないから。」

男兵「……あんたらは何者だ?俺の隠密行動を見破るなんて、ただ勘の鋭い子供ってワケでもないだろう。」

ミドリ「……私達は……」

魔王「教徒だよ。教会の街に参拝に行く途中の。」

アオミン「あなたも教会の街に用事でもあるのですか?」


ミドリ(ミンファーさん、勇者様、アイツは今の勇者の仲間です。
……ここで始末しておいた方が……)

魔王(……いや、いいんだ。彼には彼の役目がある。これから先も……。
……それに、今の僕にはそんな残酷な発想は出来ないよ……。“魔王”ではない今の僕には……)


ミドリ(……勇者様……)

~人喰いの森~


女勇者「ねぇ、ちょっと。イフリート見せてくれない?」

お嬢「え?まぁ、よろしいですけど……」



女勇者「……へぇ……」

女勇者(強い魔力が宿ってる……。使い方次第じゃ、本当にお嬢自身が焼かれてしまうかも……。
ま、こいつが死んでくれる事自体はありがたい事なんだけどね。)


女勇者「………イフリート……」

お嬢「……?」

女勇者「……お前の持ち主は私が幼き頃から知る者だ。決して、お前を邪悪な行いに使うことはないだろう。
だから、その刃をかの者に向けることのないように……」


お嬢「なっ!?」

女勇者「……て、まぁ一応念じといたから、よほど無茶をしない限りはあんた自身が焼かれる様な事態にはならないと思うけど……」

お嬢「女勇者さん……わたくしの為に……?」

女勇者「別に。ただ、あんたが傷ついたりしたら、あの娘達が可哀想でしょ?」


左目「え?……あ…」
右耳「……はい……悲しいです…」


お嬢「……そ、そうですわよね。わたくしの身に何かあっては、あの者達の面倒を見る者が居なくなりますわ。」

女勇者「あ、その時はあたしがあの娘達をひきとるから、心配しないで。」



女兵(……勇者にとってこの幼なじみの女はどんな存在なんだろうか?
嫌ってるってワケでもないのか……)

アカモリ「射手さん、ちょっといいですか?」

射手「はい?なんでしょうか?」

アカモリ「あなた方はこれから花園に向かうのですよね?」

射手「えぇ、その予定ですけど……」

アカモリ「これを……」

射手「え……?何?この小さくて赤いの……」


……ワサ……ワサ……

射手「!?こ、これ!?蜘蛛!!?」

アカモリ「ええ、アカモリ蜘蛛が1匹。ですが、ただの1匹ではありません。
……いわば、私の分身みたいなものです。」

射手「……え~……」


…ワサ……ワサ……スッ

射手「…って!?私の服の袖の中に!?
……ひぃっ!?ふ、服の中を……ひゃ……這ってる……!?」

アカモリ「あなたの事を気に入ったみたいですね。」

射手「き、気に入ったって…………そんな……」

アカモリ「安心してください。この1匹にもちゃんと意志がありますから、そう易々と人に噛み付く事は……」

射手「……え………ひゃっ!!」ビクッ!!

アカモリ「あら、早速噛み付いたの?悪戯なんて、悪い子ね……」


射手「……ハァ……ハァ……あ、あの……この蜘蛛どうすれば……」

アカモリ「これからの旅に連れていってあげてください。きっと役に立ちますから。」

射手「え、ええ~っ!?」

ワサワサ~♪

射手「……っ!?く、蜘蛛が私のお鼻の上に!?」

ワサワサ♪

アカモリ「ホント、あなたの事を気に入ったみたいね。この子は人懐っこいから……」



女勇者「………」ジーッ

射手「ゆ、勇者様……。何を見つめて……」

女勇者「……その蜘蛛、ひと噛みで女の子をイカせれるのよね……」

女勇者(色々な事に使えそう……ヌフフ……)

女勇者「いいわ!蜘蛛!!今日からあなたも私の仲間よ!!」

ワサワサ~♪

射手「……ひょっとして、喜んでる……?」

アカモリ「……うふふ…。勇者の事も気に入ったのね……」


女勇者「お、なんかあたしの手にものってきた。
案外可愛いかも……………はぅっ!?」ビクッ!!

アカモリ「うふふ、早速勇者様にも悪戯したわね、この子……」

女勇者「…あ……ひっ……この快感……ちょっと癖になりそう……」

ペガサス『……焼け野原となったこの森にも、いずれは新しい草木が芽生えることでしょう……』


黒メイド長「それが、私の生きている内であればよいのだが……」

ペガサス『……恐らく……。“魔王”の行動しだいです。』



女兵「……で、メイド長さん。」

黒メイド長「ん?どうした?若き女兵士よ。」

女兵「あんた、俺達をつけてきてるのか?事ある毎に姿を見せやがって。
勇者が気になるんなら、こそこそなんてせずに一緒花園とやらに向かったらいいじゃねぇか。」


黒メイド長「……まぁ、勇者も気になるがな、我々も暇ではない。今回も“運良く”お前達の難に立ちあえたにすぎない。」

女兵「運良く……ねぇ……。その言葉、どこまで信用していいんだが……」



新妻「女兵さん!!た、助けてください!!」

女兵「な、なんだよ……こんな時に……」

新妻「わ、私の服の中に!!く、蜘蛛、蜘蛛が………ひぃっ!!」

女兵「!!?」

新妻「……だ、だめ……嫌……あ……あ…」グッタリ…

女兵「お、おい!?いきなり倒れて……!?」


……ワサ…

女兵「?……赤い蜘蛛……?」

ワサ…ワサ……

女兵「……これがメイドの言ってたやつか。なんで新妻なんかに付いてんだか……」ヒョイッ

黒メイド長「ん?アカモリ蜘蛛を素手で掴むとは大したものだ。咬まれても平気なのか?」

女兵「はぁ?当たり前だろ。この拷問蜘蛛の神経毒は女にしか効かないから、男の俺……」

女兵(……ヤバっ……)


ワサ…ワサ……チクリ

女兵「!!!!?」

黒メイド長「……ふふふ…」

女兵「あ、あ……ぐっ………!!!!」

ワサワサ~♪

黒メイド長「なんだ?もっと女らしい顔になると思ったが、やせ我慢は得意なのか?」

女兵「……ハァハァ……ぐっ……このぉ……蜘蛛が……!!潰して……」

黒メイド長「やめろ女兵。たかが蜘蛛1匹、むやみに殺生することもない。」

ヒョイッ

黒メイド長「しかしむやみに人に咬み付くようだし、ビンにでも入れて保管しとけばいい。」

ポイッ……キュッ(蜘蛛を硝子ビンに入れて蓋をした)

女兵「あんたは平気なのか?咬まれても……」

黒メイド長「まぁ、長年こやつらと過ごしてきたからな。ある程度……ならな。」

アカモリ「あらあら、その悪戯っ子はビンの中に入れられちゃったのね。」

女兵「全く、こいつのおかげで新妻がな……」

新妻「……ひっ……あ……」

アカモリ「あら、可愛い顔になってますね……」

女兵「……男にとっては小さな蜘蛛一匹だが、女にとっては回避できない毒を持つ難敵なんだな……」

アカモリ「ま、そういうワケで、アカモリ蜘蛛は役に立つから。そのビンの中の子、旅に連れて行ってあげてね♪」

女兵「……どういうワケだよ……」



この時は分からなかった。
既に俺達はアカモリの罠に引っ掛かっていた。
女の天敵とも言えるこの蜘蛛……
小さな1匹とはいえ、女だけのパーティーに連れていくこと……

俺は甘く考えていたようだ……
まさか、この小さな1匹が、俺らのパーティーのピラミッド力関係で頂点に立つ存在になるとは……

もう、俺達にはこいつに逆らう力は残って居なかったのだ……



ちなみに、それは3日後の朝に分かった


猫盗賊「にゃ……は……」

人食花騎士「…………」

射手「……はぁ……はぁ……」

女勇者「……うひ……ひぃ…………最っ高ぉ……」

左目「……な、なんで私まで……」

お嬢「……女勇者に……恥ずかしいところ……見られてしまいましたわ……」

右耳「……、////」



女兵「……くそぉ……!!」ガクッ……ガクッ……

朝起きると、いや、朝起こされると、身体は既に麻痺していた
足はガクガクにふらつき、頭は沸騰しそうな程に熱くなり………
全身が……暑い……

周りには同じように地面でのた打ちまわる仲間……

皆、寝ている間に咬まれていた……

いつの間にか、ビンから逃げ出していたあの1匹の蜘蛛に……


ワサワサ~♪

アカネ「あら?女兵まで咬まれたの?」

女兵「……おま……平気なのか……?」

アカネ「うふふ、勇者一行ともあろう方々が蜘蛛に寝込みをお触れるなんて……」

ワサワサ~♪


ス・男兵「ふぅ~、咬まれた瞬間に男になったから、ギリギリ毒を回避できたわ。
全く、この変身能力がこんな形で使えるとは、こっちもビックリだ……」


女兵「……なら、さっさとこの蜘蛛を捕まえてくれ……」

ス男兵「へいへい……。」


メイド「………」

女兵「……メイド……無事だったか……?」

メイド「……あらあら、女兵様。どうしたんですか?そんなに頬を赤くして……」

女兵「え?……い、いや………」

メイド「……火照ってますね?」

女兵「!!……くっ…」

メイド「分かりました。後は私に任せてください……」ワキワキ…

女兵「!?ちょ!?な、なんだよその手は!?や、やめ……」


アカネ「うふふ、メイドちゃんったら、動けない女の子に発情しちゃって……いやらしい外道ね。」

メイド「……。ではアカネ様、逆に尋ねます。
普段男勝りな女兵様の頬を赤くして喘いでいる姿を目に、チャンスを捨てる愚かな選択などありますか?」

アカネ「………。ないわね。」

女兵「……お前ら、勇者の仲間失格……」


女勇者「お姉さまぁ~……あひ……ひゃぁ……一緒に気持ち良くなろぉ~……♪」

女兵「!!……こ、この馬鹿!!離れ……」


メイド「さてさて、冗談は置いといて。アカモリ蜘蛛の毒に強い抗力のある塗り薬があるのでありますが……」

女兵「なら、さっさと塗れよ!!!」

メイド「……塗れよ?命令系でありますか?」ニヤニヤ

女兵「……塗ってください……」

とある夜……

新妻「………」



『嫌っ!!痛い!やめて!!』

新妻(……え?これって……私……?夢?)


新妻(幼少期)『やめて!やめて!!痛い!痛いよぉ!!』

新妻(……街中の子供達から石とか蟲とか投げつけられてた……)


新妻『痛い!汚い!!嫌っ!!痛い!』

新妻(……そして……ちょっと大きな男の子達には……服を脱がされて……)

新妻『いやぁあああ!!!いだぁい!!抜いて!!抜いてよぉ!!嫌ぁ!!
げほっ!……だ…だすけ……て………』


新妻(……嫌……嫌……酷いこと……しないで……)

新妻『助けて……誰か……助けて……』

新妻(そのまま傷だらけで街をふらついてた………でも、大人も誰も助けてくれない……
それどころか………)


新妻『嫌ぁ……来ないで……来ないで……嫌……』



新妻(……やだ……止めて……止めて………)


『汚わしい!!』
『気持ち悪い!!』
『男を惑わす悪魔よ!』
『俺たちが“穴”として一生可愛がってやるよ!!』



新妻『はい……ご主人様方……。私は汚いゴミ奴隷です……。こんな私でも、どうかその足で踏み躙ってください……』


新妻(……これが私……、汚い……私……。人間に……人間の男の人達に奴隷としての忠誠を誓った………)


兵士『なんだ?このガキ……』

新妻『いや……助けて………』

兵士『……怯えてるじゃないか……大丈夫か?』

新妻『……何でもする…』

兵士『……え?』

新妻『私……何でもしますから……助けて……。
何でも……何しても……いいから………』


新妻(……傷つけられない為に……助かる為に……自分から汚れていった……

………嫌………

私は……私は……こんなの!!私じゃない!!

…………もう、嫌……)

新妻「………」

新妻「……嫌な……夢……」


アカネ「あら、こんな夜中に起きてるなんて、どうしたの?」

新妻「……アカネさん……」

アカネ「……本当にどうしたの?顔色が悪いわ……」

新妻「………。嫌な思い出を……ちょっと……」

アカネ「……何かしら?私でよければ相談にのるけど?」

新妻「……いえ、大丈夫です……」

アカネ「あら……。まぁ、私なんかより勇者様の方があてになるのかしら?」

新妻「………。勇者様には……一生無理です……」

アカネ「……あらあら。まぁ、確かにハートエルフの過去話はキツそうだものね。」

新妻「!!」

アカネ「……本当に、私じゃ相談相手になれないのかしら……」


新妻「……お気持ちだけ、ありがとうございます。
でも、心配ありません。私はもう、過去は踏み越えましたから。」

アカネ「……そう。あなた、強いのね……」


新妻「…………ええ。……なんたって、生き残る為に自ら汚れまみれになりましたし……ね……」

アカネ「……?」

~教会の街への道~

吸血姫「あら?あの男の兵士はどこにいったのかしら?」

魔法使い「あれ?男兵さん……どこに……?」



ズササササッ!!

男兵「……くそっ!」ザッ!!

シスター「きゃっ!?お、男兵さん!?」

魔法使い「男兵さん?草むらから慌てて飛び出して、何してるんですか?」

男兵「交戦中なんだよ!!!」

ズササササッ!!

ミドリ「……くっ、ちょこまか……うっとぉしいです!!」

吸血姫「……あら?あなたは誰かしら?」

魔法使い「あなたは!?……魔王の……」

男兵「やっぱり魔王となんか関係があるようだなぁ!?ガキんちょが!!」

ミドリ「……何を今更。いきなり私達を攻撃しといて……」




シスター「ええと……。
あの~、貴方、足を怪我されてますよ?大丈夫で…」

ミドリ「触らないでください。あの男兵にちょっと斬られただけです。」

シスター「あ、はい。なら治癒術だけでも……」

ミドリ「いりません!勇者の仲間なんかの助けなど……」

シスター「……でも、目の前で傷ついている人を見過ごすワケには……」

ミドリ「黙ってください。偽善なんて、煩わしいだけです……」

シスター「あ、……はい………」



吸血姫「……。魔王の部下というのは、やはり教育がなってませんわね……。」

男兵「シスターの空気読まず感の方が、悪気がないだけによっぽどタチ悪いがな。」

吸血姫「あら?私は好きですわよ?シスターのあの態度は……」

男兵「あの態度“も”……だろ?」

吸血姫「……あら?もしかして、焼きもちでも妬いてるのかしら?
安心しなさい。私は貴方のことも気に入っていますわ。」

男兵「……俺は好きになれないがな。人殺しの魔物なんか……」

魔法使い「……凍結……地を這う極寒……汝の体を封じる!!」


カチカチカチカチ……!!(地面が凍っていった)

ミドリ「!?あ、足が……地面ごと凍った……!?」

魔法使い「とりあえず、動きを封じました。」

吸血姫「ついでに体も吹き飛ばしちゃえばいいんじゃない?」

男兵「いやいや、このまま尋問といくか……」ニヤリ


ミドリ「……馬鹿にしないでください。こんな氷……っ!!」バキッ!!!


カチカチカチ(氷に突き立てた拳ごと、ミドリの腕が凍った)

ミドリ「!?……これは…」

魔法使い「氷の侵食魔法です。氷に触れたものは、たちまち凍ります。」

ミドリ「……やられました………」


吸血姫「随分素直に負けを認めたわね。」

男兵「……囮だからな。魔王を逃がす為の……」

魔法使い「……え?」

男兵「さっきあそこにいた冴えない兄ちゃんが魔王なんだろ?ガキんちょ。」

ミドリ「……知りません。」

男兵「つまり、このガキは魔王を逃がす為に俺と交戦して時間稼ぎしてたんだよ。
全く、こっちは遊ばれた気がして腹立たしいよ。」


吸血姫「魔王を目の前にして逃がすだなんて、勇者が聞いたら飽きれますわよ?」

男兵「………。意外とガキんちょが強くて……」

ミドリ「ガキんちょじゃないです!私の名前はミドリです!」


男兵「あ、そう。
ま、とりあえず、ミドリさん。痛い目にあいたくなかったら、黙秘権は乱用しないことだな。」

ミドリ「……無駄です。私は何も喋りません。」


吸血姫「あら、意外と手強い相手のようね。」

男兵「……。魔法使い、とりあえず雷魔法を……」

魔法使い「こ、こんな子供に…?」

男兵「大丈夫大丈夫。剣で斬り付けても弾きかえす身体なんだ。雷撃一発ぐらい大したことないだろ。」

魔法使い「で、でも……」

ミドリ「無駄です。私の体に雷撃なんて無意味です。
拷問で私が口を割るとは思わないでください!」



男兵「……こんな時に、あの変態勇者が居たらな……」

吸血姫「あら、あなたが勇者の事を頼るだなんて……。やっぱり勇者の事が……?」

男兵「別に。道具の意外な使い道に気付いて、捨てたのを後悔してるだけだよ。」

シスター「……では、とりあえず治療を……」

ミドリ「結構です!!」

シスター「……大いなる生命の神秘、神の恩恵を……」

ミドリ「いいって言ってるじゃないですか!!何を……」


魔法使い「こうなると、シスターさんは言うこと聞きませんよね……」

ミドリ「や、やめて……!勇者の仲間の助けなんか……」

男兵「……あー……やめて欲しかったら、魔王がなんで教会の街に向かってたか理由を言って貰おうかな?」

ミドリ「なっ!?あ、き……あ………っ!?」

吸血姫「あら、上手な尋問ね。確かにこのまま放っておいたら、シスターに完璧に回復されちゃうわよ?」

ミドリ「……くっ……」


吸血姫(変なの……。敵に治療されるのが、一番の拷問だなんて……)

男兵(プライドの問題なんだろな……。よっぽど屈辱的なんだろうよ。)



ミドリ「………うっ……うう……」グスン


魔法使い「…な…泣き出した?……そんなにまで……?」

男兵「……こんなのが、魔王の部下……か……」



シスター「……はい、終わりました。他に痛いところなどありませんか?」

ミドリ「……ぐすん……な……ないです……」

シスター「え?では何故そのように涙を……」

ミドリ「べ、別に泣いてなんか……!!」

シスター「え?あ、あの……でも…なんか辛そうですし………」オロオロ…

ミドリ「もう放っておいてください!」

シスター「ほ、放ってなんかおけません……な、何か、私にできることは……?」


吸血姫「そうね……。とりあえず、ハグしてあげれば?」

ミドリ「……え?」

吸血姫「彼女、なんだか淋しそうにも見えるわ。きっと、人肌淋しいんでしょうね。」

シスター「あ……そうですね。まだ、小さな女の子のようですし……きっと……」

ミドリ「ち、違っ…」



むぎゅっ

ミドリ「!!!?」

シスター「……大丈夫です……。私が温めてあげますから………」

ミドリ「あ……い……いや………ちが……あ……」



男兵「……なるほど。素晴らしい拷問だな。」

吸血姫「いえ、最高のご褒美……の前渡しよ。受け取った限りは、きっちり相応のお返しを貰わないと……ねぇ……」


バサッ  バサッ

?「失礼~♪」

男兵「ん?」

吸血姫「あら、ハーピーじゃない。珍しいわね。」

男兵「お前、帝都の伝書鳩……」

羽女「はい~♪本日は男兵さんに通達を持って来ました~♪」


魔法使い「……通達?」

男兵「嫌な予感しかしないな……。伝書鳩を使う通達なんか、緊急収集やらの急ぎの用事を伝える時ぐらいだからな……」

魔法使い「急ぎ……って?」

吸血姫「解雇通知じゃなくて?おサボり軍将さんなんか帝国には必要ない、って通達じゃないかしら?」

男兵「だと嬉しいんだが……」


……カラン

男兵「ん?」
吸血姫「あら?」
魔法使い「手紙に何か添えられてましたね。……時計?」


羽女「おやおや、年代物の懐中時計ですね~。」

吸血姫「……ただの粗悪品じゃないわ。何かの魔力も感じるし……」


男兵「………。これ、差出人は誰なんだ?」

羽女「はい~♪帝都軍将様です~。」

男兵「……ふ~ん…」

魔法使い「……誰ですか?」

男兵「帝国軍で事実上一番偉いオッサンだよ。俺も顔見たことあるぐらいの関係だな。」

吸血姫「そんなお偉いさんから貴方に直接通達ってこと?なら、随分大掛かりなことなんじゃなくて?」

男兵「話したこともない奴からの手紙なんて、怪しくて開きたくもないな。」

魔法使い「そうですね。何か嫌な胸騒ぎもしますし……」


羽女「あ、後これとは別に、帝都軍の兵士長さんから男兵さんに別に伝言があります。」

男兵「げっ……聞きたくない……」

羽女「サボるな、働け、ワシにバレてないとでも思ってるのか、たわけ!!……です。」

男兵「……マジかよ……。」

吸血姫「あらあら、随分アツいメッセージじゃない、その兵士長さんとやらの…」

魔法使い「男兵さんが帝都軍にいた時にお世話になってた上司の方ですよね?」

男兵「……なんでバレてんだ……あのオヤジに……。これじゃ、ますます帝都に帰りづれぇ……」

魔法使い「……男兵さんが動揺するなんて………よっぽど怖い方なのでしょうか?」


吸血姫「こんな所に通達を出してまで貴方のことを心配してくれてるなんて、いい上司様じゃない。ねぇ?」

男兵「あれはただ執念深いだけだよ……」

~人食いの森~

キーッ!!キーッ!!


女勇者「……また逃げちゃった……」

新妻「魔物達、先ほどから逃げてばかりですよね……」

女兵「そりゃ、こっちには勇者様がいるんだからな。魔物も怖じけづいてるんだろうよ。」

女勇者「……勇者と戦わない魔物なんて………魔物じゃない!!ただの肉よ!!」

女兵「なんじゃそりゃ。」

女勇者「あーっ!もぉ!!ストレス発散が出来ないじゃない!!」

女兵「よく言うな、毎晩女の子達で欲満たしてる奴にストレスなんてあるのかよ……」


女勇者「お姉様は分かってない!夜の情事はストレス発散なんかじゃないわ!!本能的な何かよ!!」

女兵「ナンジャソリャ」




射手「~♪」

ワサワサ~♪

射手「なんか最近、この蜘蛛ちゃんが可愛くなってきたかな~♪
たまに悪さするけど……」

ス男兵「その度に俺が対処におわれるんだからな。俺としては、いい迷惑だよ……」

アカネ「あら、可愛い女の子達の悶絶した姿が見られるのに。男なら嬉しいでしょ?」

ス男兵「……なら、お前もそのサービスシーンに参加してくれてもいいんだぞ?いつもお得意の猫足で逃げやがって……」

アカネ「あらあら?ひょっとして私、期待されてたのかしら?ごめんなさい、危機が迫るとつい逃げ出しちゃうの。
でも、貴方がみたいと言うのなら、いつでも見せてあげるわよ?私のハズカしい姿……」


ス男兵「そんな自信満々に見せつけられる様なのはいらねぇっての。
大体、やるんなら男兵本人にすればいいだろ……」

アカネ「あら?でも私は貴方のことも気に入ってるわよ。男兵に変身してる時は立派な男兵だし……」

ス男兵「……でも、本当に気になるのは、スライム兵本人の変身能力だろ?」

アカネ「……ええ。確かにそれはもの凄く気になるわ……。
本当に………」

お嬢「……左目、ちょっとお話があるのだけれど。」

左目「はい?なんでしょうか?」

お嬢「昨晩、女勇者に呼ばれましたわよね?」

左目「は、はい!?あ、あの……」

お嬢「その……貴方、その……。わ、私は別に、貴方の諸事情に口を挟むつもりはないのですけれど……」

右目「安心してください!お嬢様!私は勇者様とは何もしてません!!」

お嬢「あ、貴方!?そんな大きな声で……。
というよりも、女勇者に誘われたのに、何もしなかったっていうの!?」

右目「はい!」

お嬢「どうして!?なんでですの!?」

右目「だって……」

右目(お嬢様の気持ちを知っておきながら、私にはそんな不埒な真似は出来ませんって!)

右目「……わ、私には他に好きな人が……。だから、たとえ勇者様とはいえ、好きな人以外にこの身を晒したくなかったんです!!」

お嬢「そ、そうだったの……。よかった……」

右目「……ほっ。」

お嬢「それにしても女勇者!他人の従者にまで手を出すなんて……勇者にあるまじき行為ですわ!!」

右目(というよりも、なんでお嬢様は相手にされないんだろ?勇者様と昔からの付き合いだし……こんなにも凛々しくて、お綺麗なのに……)


お嬢「にしても、左目。貴方の恋、実るといいですわね。」

左目「は、はい、そうですね……」

お嬢「私も昔からの馴染みとして、応援させてもらいますわ!」

左目「は、はぁ……」



お嬢「それで、お相手は誰ですの?」

左目「……うっ…」

お嬢「私の知ってる人ですの!?そうですの!?」

左目「そ、それは……」

お嬢「……ひょっとして、帝都の闘技場に居たあの殿方かしら?確か、“男兵”という名でしたわよね……」

左目「えっ!?」

お嬢「闘技場で貴方、あの殿方の試合ばかり拝見してらしたわよね。やはり、あの方に見惚れてらしたのですわね!?」

左目「い、いや……。ただ、毎回面白い戦い方してるなぁ、って思って……」

左目(相手戦士のカツラを奪って脅迫したり、女の子戦士にカエルやらを投げつけたり……)

お嬢「そうですのね……貴方の恋はあそこから……。貴方の恋、主人である私の名誉にかけて、必ず成就させてみせますわ!!」

左目「ううっ……お嬢様の変なスイッチが入っちゃった……」

~環状山脈・東~


新妻「やっと森を抜けましたね。」

猫盗賊「げっ……」

女兵「どうした?猫盗賊、顔色が悪いぞ。」

アカネ「環状山脈……。あれを北に進むと、山頂に小さな街があるの。」

女兵「なるほど、猫耳達の里がそこにあるってことか。」

射手「あ、でも時計は真東をさしてますね……」

猫盗賊「……ほっ……」


女勇者「環状山脈、帝都の周りを壁のように囲ってる大きな山の並び。
帝都は今でも、山脈の壁、そしてそれぞれの山の山頂に作られた要塞らによって守られている……」

アカネ「私達の街もその要塞が街化したもの。今でも帝都軍や第2軍の兵士達が駐留してるわ…」

女侍「帝都は自然に護られている……。唯一、帝都の周りで山がないのは帝都と学都を結ぶ大道のみ……」

射手「そのおかげで、帝都と学都や交易の街が交流が盛んで、学都は帝国第2の街へと成長したんですよね。」

お嬢「ええ、今でも学都には帝都から多くの人々がやってきますわ。」


女兵「はい、地理の講義は終わり。
さっさと先に進むぞ。」



女勇者「……行きたい……」

女兵「ん?」

女勇者「猫耳っ娘の里に行きたい!!」

猫盗賊「にゃがっ!?」

アカネ「あらあら……」

~環状山脈・西~


ミドリ「………」

男兵「……」

吸血姫「……あなたはいつまで付いてくるつもり?せっかく解放してあげたのに……」

ミドリ「納得いかない!敵である私を、みすみす見逃すなんて……」

男兵「……まぁ、こっちとしても、魔王の部下を野放しにはしたくないんだけどな……」

シスター「……そぉ……ですよね……。私達は勇者様の仲間、魔王の手の者を目の前にして戦わないワケには行かないんですよね……。
例え、こんな小さな子供だとしても……」



男兵「………。
いや、今はやめとく。だから、さっさとどっか行けよ……」

吸血姫「あら、シスターに気を遣ってくれてるの?」

男兵「……せっかくシスターが治してあげた傷を、俺がもう一度切り裂くってのもな……」


シスター「……ごめんなさい、男兵様……」

男兵「……別に……」



ミドリ「……なんなんですか……?さっきまでは敵意むき出しで戦ってたくせに、何故そんなにも気変りをするのですか!!?
……それを優しさとでも言うつもりですか……?」

男兵「……どうとでも受け取れよ…。結局は、お互いに都合のいい結果になっただろ?なら、いいじゃねぇか、別に……」


ミドリ「……なんだって言うんですか……」




魔法使い「もうすぐ着きますね、教会の街。」

シスター「はい。街はこの山脈の向こう側です!」


男兵「環状山脈……。
昔はよくここで楽しんだな……」

吸血姫「あら、どんなお楽しみが行われたのかしら?」

男兵「帝都を守るために、魔物と一戦したんだよ。
命懸けの……」

~循環山脈・東、深夜~

女兵「絶対反対だな。」

アカネ「私は故郷に帰りたいわ……。でも、猫盗賊ちゃんは……」

女勇者「あたしは猫耳っ娘に囲まれたいのよ!」

女兵「花園とどっちが大事なんだよ?」

女勇者「どっちも大事よ!!」


アカネ「……猫盗賊ちゃんは、やっぱりまだ帰りたがらないでしょうね……」

女勇者「猫耳ちゃん、確かに故郷の話になると顔色が変わるわよね。お姉さん、何か知らない?」

アカネ「……さぁ?特に何も……」





新妻「……アカネさん……」

アカネ「ん?あら、新妻さん。」

女勇者「新妻ちゃん!どうしたの?」

新妻「ゆ、勇者様!?
……いえ…何でも……」

女勇者「え?何々?そのあからさまな動揺……」

新妻「………」

女兵「………。眠れないのか?」

アカネ「また怖い夢でも見たのかしら?」

新妻「!!……っ…」ダッ!!

女勇者「あ!?ちょっと、新妻ちゃん!?どこ行くの!?」

アカネ「勇者様はここに居て!あの子、私を指名してたみたいだし。ここは私が……!!」

女兵「………」



女勇者「どうしちゃったのかしら?新妻ちゃん……」



お嬢「女勇者さん?まだ起きてらしたんですの?」

女勇者「ん?なんだ、あんたか。」

お嬢「な、“なんだ”とは失礼ですわね!」

女勇者「あんた1人?従者ちゃん達はどうしたの?」

お嬢「彼女達なら、あっちのテントで眠ってらっしゃいますわ。あのテントや簡易ベッド、案外寝心地がいいですわね。」

女兵「魔法で作った圧縮空間テント。外見はただのテントだが、中身は宿屋の一室の様な広さと設備。
帝国軍の技術部が作った特注品らしいな。今はまだ試験段階だが、将来的には見た目はテント、中身は一流ホテルのスイートルーム的なのを目指してるとか……」

女勇者「私もあれのおかげで旅を続けられるわ~。一々野宿とかダルいだけだし。」

お嬢「……やはり勇者ご一行は凄いですわ………。あんなものまで常備してるなんて……」


女勇者「おかげで毎晩女の子達とインツゥザベッドができるわ~♪」

女兵「技術部の奴らも、まさか勇者にこんな使われ方されてるとは夢にも思わなかっただろうな……」

女勇者「そうでもないんじゃない?ベッドの横の机に花香るハーブや怪しい薬やゴムとか用意されてたし……。
準備万端って感じよ?」


女兵「………」

新妻「アカネさん……」

アカネ「さ~てと、どうして勇者様を避けたのかしら?」

新妻「駄目なんです!勇者様には、勇者様だけには聞かれたくなかったです!
私……私の……過去なんか……」

アカネ「過去?ひょっとして、夢にみているの?あなたの過去を……」

新妻「……最近見るのは同じ夢ばかり……。
私が……周りの人達から傷つけられ、蔑められて…………」

アカネ「……そう。同じ夢ばかり……ね。
それ、本当に偶然だと思う?」

新妻「……え?」

アカネ「誰かがあなたに意図的に見せている可能性があるわね。あなたを追い込む為に……」

新妻「そ、そうなんでしょうか……?」

アカネ「断定はしないけど、調べてみる価値はあるわ。ねぇ?」

新妻「調べるって……どうやって……?」

アカネ「夢を繋げる……。あなたの夢の中に侵入して直接調べるのよ。」

新妻「え?え?夢の中に直接ですか!?」

アカネ「ええ。簡単よ?勇者様の力を使えば……」

新妻「!!だ、駄目です!勇者様だけには知られたくないです!!私の夢なんて……」




女勇者「……」

女兵「ああ言ってるが、どうするんだ?勇者。」

女勇者「ハーフエルフの過去……か。やっぱり、悲惨なのかな…?」

女兵「ただ悲惨なだけじゃないのかもな。生き残る為に、自分も犯罪に手を染めたりしたのかもしれねぇし……。
とにかく、大好きな勇者には見せたくない過去の自分が居るんだろうな。」

女勇者「………」

新妻「勇者様……」

女兵「勇者はそこで大人しくしてろ。俺達が新妻の夢に入る。」

お嬢「私も行きますわよ。新妻さんが苦しんでるのを放っておけませんわ!」

女勇者「わ、私だって放っておけないわよ!!」

新妻「勇者様!お願いします!」

女勇者「な、何…?」

新妻「……勇者様は、現実世界で待ってて下さい。
私、勇者様のもとに帰ってきます。昔の私、悪夢にケリをつけてきます!!だから、ここで待っていて下さい……」

女勇者「……うぅ……、分かったわ……」

女兵「……随分聞き分けがいいな。新妻の為なら、1人でも夢の中に飛び込んでいくと思ってたが……」

女勇者「その代わり!お姉様!それにあんたも!!ちゃんと新妻ちゃんを助けてきてよ!!」

お嬢「ええ、私に任せていただけたのなら、必ずや結果を出してきますわ。」

女兵「ああ、言われるまでもなく、ちゃんと助けてくるさ。」

アカネ「いい意気込みね。なら、さっさと行きましょうか。」


女勇者「……どうやって?」

アカネ「あなたの力で。勇者の力で、新妻ちゃんの夢への道を開けるのよ。」

女勇者「なるほど、任せて!そんなの朝飯前よ!!」


女勇者「…………」

アカネ「……?」

女勇者「……道よ~、開~け~……道よ~……」


女兵「……馬鹿丸出しの呪文だな。」

女勇者「しょうがないでしょ!今までなら、頭に思い浮かべただけで力が発動してたのよ!
でも……」

アカネ「!?」

お嬢「え?」

女兵「……力が出ないのか……?」

女勇者「そ、そんなことないわよ!!これぐらい……!!!」

新妻「ゆ、勇者様……?」

女勇者「……これ……ぐらい……」


アカネ「あらあら、女兵ちゃんの弊害が、まさかここまで出ていたなんてね……」

女兵「……」

女勇者「……仕方ない。お姉様、多分今のお姉様になら使えると思うわ。」

女兵「……分かった。
…………っっ!!!」


ピカッ!!!

新妻「え??何?この光の穴……私に通じてる……?」

女兵「マジででやがったか。」

女勇者「……さすが、お姉様……」

アカネ「………。これが魔王の望んでいた……」

新妻「うぅ……眠くなってきた……」

女兵「おい、大丈夫か?」

アカネ「私達があなたの夢に入っている間、少しの間だけ眠っててもらうわよ。
大丈夫。嫌な夢なんて、すぐに終わらせるから……」


新妻「……いえ、皆さんを頼るだけではなく……私も……夢の中で……」

女勇者「新妻ちゃん!」

新妻「勇者様……、手……握ってて貰えませんか……?」

女勇者「うん!分かった!あたし、ちゃんと握ってるから!!」

新妻「……私……も……頑張……て……」



女兵「んじゃ、行くか。」

アカネ「ええ。」

お嬢「仕方ありませんわね。これも勇者と共に行く仲間の為ですわ。」





射手「むにゃむにゃ~……」

猫盗賊「ふにゃ~……zz…」


ワサワサ……

女侍「む?何奴?」

ワサワサ~♪

女侍「なんだ、そなたか………小さき生命よ……。」

ワサワサ~♪

女侍「……フッ。勇者は……心配などない……。私の知る勇者なら……」


メイド「勇者様を信頼してらっしゃるのですね。」

女侍「……そなたもそうであろう?……いや、そなたの興味は……“男兵”か……」

メイド「……私は勇者様に仕える身。もし、女勇者様が勇者でなくなった時、私は……」




女勇者「……私の力……私の役目……私の勇者………」

女勇者「私の……野望!!勇者となって、ハーレムを作る!!そのためにも、勇者の力を失う為には……」

女勇者「でも……お姉様……。お姉様が勇者なら……私は……」

~??の夢~

女兵「ここが新妻の夢の中……か?」

ニャーニャーニャー

女兵「猫がいっぱいいるんだが……」

アカネ「あら?これが新妻ちゃんの怖い夢なのかしら?」

お嬢「むしろ可愛い猫がいっぱいで癒されますわよね~。」


女兵「……ん?猫達の中に誰か……」


猫盗賊『にゃんにゃん♪お前達~、今日は何して遊ぶ~?』


アカネ「あら、猫盗賊ちゃんだわ~♪可愛い~♪」

お嬢「……何故、新妻さんの夢の中に……。
まさか、新妻さんが怖がってるのは、あの子!?」

女兵「なワケねぇだろ!きっと間違えて、猫盗賊の夢に入っちまったんだよ……」

アカネ「あら、光の穴は新妻ちゃんに向かってたハズなのに?」

女兵「……のハズだったんだかな。」

お嬢「なら、さっさと新妻さんの夢に行きませんこと?このまま猫さん達に囲まれていても仕方ありませんわよ?」

女兵「オッケー。なら、今すぐテレポートでもしてみるか。」

アカネ「テレポート?出来るの?あなたに……」

女兵「任せとけ!せーっの………」


ヒュン!!






猫盗賊『にゃんにゃん~♪
お前達は可愛いし、あたしと仲良くしてくれるし、あいつらとは大違いだにゃ~♪

ホント……里の奴らなんかとは………』



女勇者『猫耳ちゃ~ん♪』

猫盗賊『あ、勇者……』

男兵『何やってんだよ、置いてくぞ?』

女兵『猫盗賊が居なくて、男兵さんは寂しいんだとさ。』

男兵『あー、確かに寂しいなー。猫盗賊みたいが居ないとウチのパーティーは口五月蝿い女ばっかで癒されないからな。』

女勇者『なんですって!?』
女兵『うわ、うぜ~。ハーレム男のクセに……』


アカネ『ほら、猫盗賊ちゃん。行きましょう。』

猫盗賊『姉上……皆……』

女勇者『そぉ~れ~!その猫耳貰ったぁああ!!』ガバッ!!

猫盗賊『にゃあがああ!?だ、抱き付くな~!?』

アカネ『あらあら、勇者様ばかりずるいわ~。私も~♪』ギュッ

猫盗賊『あ、姉上まで~!?』

………でも、勇者も姉上も温かい………温かい……勇者達は……あいつらとは違う……
あたし……勇者達と出会えて嬉しかった……たまに勇者は変態だけど……でも……温かい……勇者……

~??~

女兵「今度こそ新妻の夢……だよな?」

アカネ「あら、今度は綺麗なお花畑にでたわね。とても怖い夢には見えないわ。」

お嬢「また間違えたのではなくて?」

女兵「……。やっぱり俺にはまだ……、力を使いこなせてないみたいだな。」

お嬢「そもそも何故あなたが?女勇者が力を使えばよかったのでは?」

女兵「……ま、あいつにも色々な都合があるんだよ……」



黒メイドB『先輩~♪綺麗な花輪を作ってみました~♪先輩に似合うといいんですけど……』

黒メイドA『あ、ああ、ありがとう……』

黒メイドB『よいしょ……わぁ~!先輩、似合ってますよぉ~!!綺麗~……』

黒メイドA『/////』



お嬢「あら、あの方達は……?」

アカネ「あらあら、確か勇者様や女兵さんが拷問なさっていた……」

女兵「黒メイド達かよ……。なんでまた……」


黒メイドA『む?……き、貴様は!?』

黒メイドB『きゃ~!!先輩、怖いです~!』

女兵「よっ、久しぶり~。」

黒メイドA『……何のようだ?』

女兵「……なるほど。このお花畑の風景……、そっちの可愛らしい性格のメイドの夢かと思ったが、どうやらお前の夢らしいな。」

黒メイドA『な、なんだと!?貴様、何を言って……』

アカネ「本当に綺麗なお花畑ね~。こんな綺麗な場所、一体どこにあるのかしら?」

黒メイドA『……ここは……この子とよく散歩をした花畑の丘……花園の外れにある……』

女兵「花園……。ここがメイドの花園なのか?文字通り花だらけってワケか。」

お嬢「そして、あなたとそちらの可愛らしいお方との大切な場所……ということなのですわね?」

黒メイドB『先輩~♪』

黒メイドA『ぐっ……。2人だけの秘密の場所だ……。
だから……誰にも知られたくなかった……』

女兵「安心しな。誰かにもらすつもりはないから。いつまでも2人の思い出の場所にしとくといいさ。」

黒メイドA『………』


女兵「さてと。お嬢、アカネ。また飛ぶぞ!」

お嬢「……大丈夫ですの?また関係のない人の夢に入っしまうのでは……?」

アカネ「さすがに不安だわ……二度あることは……」

女兵「ま、別に死ぬワケじゃねぇんだから……。とは言いつつ、自分でも不安だがな……」



女兵「今度は……どこだ?」

お嬢「遺跡でしょうか?建物がいっぱい……。それに、山?」

アカネ「何かしら……綺麗な四角の形の山……」

女兵「あれ、建物なんじゃねぇか?なんか岩というより、鉄っぽいぞ?」

アカネ「まさか……あんな巨大なのが?しかも10個以上はあるわよ?それも鉄だなんて……」


女兵「……建物やら四角い巨大な山が沢山……。ここはどこだ?」



アカネ「あら?これ看板か何かじゃないかしら?」

女兵「看板って……何も書いてないぞ。ただ、ワケのわからない……文字かこれ?」

お嬢「……ひょっとして外国語じゃないかしら?きっとここは帝国の外なのですわ。」

女兵「外国?こんなワケ分からない光景が?」

アカネ「私も渡航経験は豊富な方だけれど、こんな光景、見たことないわ……」

お嬢「この看板……色々なタイプの文字が書かれていますわ。恐らく、同じ意味の言葉を色んな国の言語で書いてあるのですわ。多分地名か何か……。
一番上の言葉には見覚えがありますわ。和の国の言葉“ひらがな”ですわね。若干なら私も教養がありましてよ。」


アカネ「あら、さすがは勇者様の2番手ね~。頭良い~♪」

お嬢「……それ、誉め言葉ですわよね…?」

女兵「和の国……?女侍の国か?」

アカネ「和の国なら何度も行ったことあるわ。でも、あそこは木造建築と言って木で作った建物だらけよ。こんな巨大で……鉄で作ったのなんて……」


お嬢「え~と……ぶくろ…?“いけぶくろ”と書いていますわね。」

女兵「“いけぶくろ”?」

アカネ「新種のフクロウか何かかしら?」

~夢の世界・明治通り池袋東口前~

女兵「この四角塊はなんだ?」

コンコン…
お嬢「硬い……金属でしょうか?こんな大きな…」



?『それは“車”と言われるこの世界の乗り物です……』



女兵「!?」
アカネ「あなたは……その背中の翼……」

天使α「はい、私達は光の世界の住民……あなた達が天使と呼ぶ存在です。」

女兵「天使……、お前みたいなガキがか?」

アカネ「天使様に失礼よ、女兵さん。見た目だけで中身を判断するなんて、あかたらしくもないわ……」

女兵「天使……もっと偉そうな姿をしたヤツだと思ってた……」

お嬢「天につかえる者は無垢で清らかな存在である少女の姿をしている……。我が師の言ってたとおりですわ………」


女兵「天使は神の国に住むんだろ?なら、ここは神の……」


天使α「違います。ここは人々の夢が作りだした幻影の世界。そして、私達天使の遊び場……」



天使β「あー、お前達か~?この世界に侵入した人間達は~?」

天使γ「タダ者ではないですね?まさか勇者!?」

女兵「まだいるのか……しかも全員ガキの姿か……」

アカネ「もし勇者様が見たら、“美少女ハーレムだ~!”って喜びそうね?」

お嬢「しかし、また新妻さんの夢ではなかったんですわね。」

女兵「また失敗したのか……。仕方ない、もう一回テレポートするか……」



天使α「もう帰られるのですか?」

天使β「せっかくだし、遊んで行こうよ?」

女兵「悪いな、俺らには急ぎの用事があるから……」


天使?「そんな事言わずに、もう少しお話して行きませんか?」


女兵「それはまたの機会にさせてもら………」
アカネ「!?あなた……!?」

お嬢「?お二方、あの天使様に見覚えが?」


天使?「……久しぶりね、アカネ。それに女兵さん、いえ男兵さん。」

アカネ「……エルフさん……」
女兵「お前、魔王のところのエルフ……?」

天使?「……ホント……お久しぶり……」


女兵「……てか、そんなにガキだったっけ?もっとお姉さんだったと思うが……。しかも、耳がエルフの耳じゃない普通の人間の耳だし……」

天使?「ええ……天使化する際に、人間の少女の姿へと若返ってしまったようなんです……」


アカネ「エルフさん……。あなた……」

~夢の世界・池袋・とあるビル1階ファーストフード店~


お嬢「え、え~と……チキンバーガーにポテトL2つ……ですわ。」

天使δ「はい、820円でになりますです~。」

お嬢「820……円?えーと……帝国通貨に直すといくらですの?」

天使δ「分かんな~い。とりあえず、金ないなら身体で払え~♪」

お嬢「え、ええっ!?」

天使δ「今日からただ働きだ~!あたしが先輩として、しっかりファーストフード店員の仕事を教えてやる~!!」

お嬢「え?ちょっ!?ええ!?な、なんなんですの~!!?」




女兵「……ここは店なのか?」

エルフ(天使)「まぁ……天使達がお店ごっこで遊んでるだけです。この世界は天使達の遊び場ですから。」

アカネ「でも、このハンバーガー、美味しいわね~♪こっちのポテトフライも……」

女兵「しかし小さな椅子に机だな……狭苦しいし……。店っていっても、全然くつろげそうにないんだが……。」

エルフ「この店はあくまで“軽い食事”をするためだけの場所。ゆとりある広さよりも、多くのお客さんが入店できることを目的としてるんですよ。」

アカネ「でも、人は全くいないわね。天使様ならいっぱいいるけど……」


エルフ「あくまで夢の世界ですから……」

女兵「……こんな街が、現実世界にあるってのか?こんなドデカい金属建物やらが乱立する風景……」

アカネ「本当にこんな街が人々に作れるの?……こんな神々しい光景を……」


エルフ「私にも分かりません。でも、どこかにはいるのでしょう。この様な、人間の手では不可能な偉業を成し遂げる人々が……」

女兵「んなのが居たら、勇者もお手上げだな。」



アカネ「………エルフさん。あなた、何故……」

エルフ「あなたこそ、どうして勇者様達と旅をしているの?」

アカネ「気紛れよ……ただの……。悪いかしら?」

エルフ「いえ、あなたらしいですね。本当に……あなたは自由ね……」


女兵「エルフ、お前は生きてんのか?その、現実世界でも……」

エルフ「私は死にました。……勇者様に殺されて。いえ、私の意志で……自分から……。
今の私は、天使となってこの夢の世界に生きる身。現実に現れることはできても、現実世界の住民にはなれない……」

女兵「……なら、現実世界にいる勇者には会えるんだよな……」

エルフ「……私は、会いたくないですけどね……」

お嬢「ハンバーガーとポテトLをお持ちしました。」

アカネ「あら、その制服、似合ってるわね~♪」

お嬢「ぐっ……何故私がこんな仕事を……」

アカネ「可愛い服装ね、もし勇者様が見たなら、きっと喜んでくれるわよ?」

お嬢「ゆ、勇者様が!?私の姿を見て喜んで……!?
そ、そんなこと……」

アカネ「あら、あり得ないことはないわよ?こんなに可愛いんだから……」

お嬢「そ、そんなこと……//////」




女兵「まぁ、勇者に会いたくない気持ちも分かるけどな……。」

エルフ「……ホントは会いたい……勇者様に。でも、そんなことをしても、あの娘を傷つけるだけです。」

女兵「どうだろな。あんたみたいな可愛い天使っ娘が現れたら、アイツは発狂して喜ぶと思うが……」

エルフ「……どうしてそう思われますか?」

女兵「勇者は可愛い女の子が大好きだからな。お前もよく知ってるだろ?」

エルフ「ええ……あの娘がああなったのは、私のせいだから……。
小さな頃に、私はあの娘を傷つけた。幼い純粋なあの娘を、私はこの手で……」

女兵「まー、間違ってはないだろうが、勇者が一番嫌ってるのは、あんたじゃなくて元勇者みたいだけどな……」

エルフ「……それでも、発端は私です……」

女兵「そうやって、罪悪感を感じてるのが楽だと思うんなら、そうしてればいいさ。
どのみち、今の勇者は心が頑丈みたいだから。あんたが何もしなくても、勝手に自分で立ち直るだろうよ。」


エルフ「……あなたが、彼女を手助けするから?」

女兵「……俺は何もしないさ。全ては、あいつ1人の問題だから……」


エルフ「……男兵さん、お願いします。彼女を、勇者様を支えてあげてください。」

女兵「断りはしないが、俺にはそんな力なんてないから……無理、かな。あいつにはもっとふさわしい仲間がいるはずだ。もっと、勇者の仲間にふさわしい奴らが……」


アカネ「………。さてと、そろそろ行きましょうか。」


天使δ「……え?もう行っちゃうの?お姉さん……私、もっとファーストフード店員ごっこやりたかったのに……」

お嬢「私達、あまり暇ではありませんから……。でも、またお暇ができたら必ず遊びに来ますわ。だから……」

天使δ「そっか……。なら、約束だね♪」

お嬢「ええ、約束ですわ。」

~数週間前・交易の街~


エルフ「・・・・」

女勇者「死ね!!そして、お姉様を返して!魔王!!いや、元勇者!!」

魔王「ぐっ!!……ここで消えるワケには……」


エルフ「……勇者様……。」


ピカッ!!

女勇者「うわっ!?眩しい……」

エルフ「勇者様……、勇者様は倒させない……!!」

女勇者「お姉様……そいつは勇者じゃないよ……!!あたし!!今はあたしが勇者なの!!」

エルフ「……ごめんなさい……女勇者ちゃん……」

女勇者「嫌っ!!やめて!!お姉様ぁ!!」


ガキン!!ガキン!!
エルフ「っ!?……光の鎖……?」

新妻「勇者様の邪魔はさせない!!」

エルフ「……あなたは……ハーフエルフ?」

新妻「光の鎖!!悪しき者を束縛せよ!!」


エルフ「……この程度の光魔法など……」ググッ……

新妻「……う……鎖が……千切れる……」

エルフ「……ハーフエルフの中途半端な光の力……そんな力で、勇者の仲間になれるとでも?」

新妻「……事実だとしても、魔王の手先になってるエルフなんかに言われたくありません!!」

エルフ「……勇者様を命掛けで守る力に覚悟があなたにはあるの?今のあなたで本当に勇者様を守れるの?」

女勇者「……守れる……守りたい……守りたい!!勇者様を守りたい!!この気持ちがあれば!!勇者様を思う気持ちさえあれば、出来ないことなんてないんです!!!」




エルフ「そぉ……分かったわ……」パキッ!!

新妻「え……?」



エルフ「気持ちだけじゃ繋がらない、願いだけじゃ叶わない、………現実を見つめなさい!!」



新妻「……あ……やだ……勇者様………」




女勇者「やめて!お姉様!!」バキン!!

エルフ「きゃっ!?ゆ、勇者……様…!?」

女勇者「新妻ちゃんに、私の仲間に手を出さないで!!」


新妻「………勇者様……」

女勇者「大丈夫!?新妻ちゃん!!」

新妻「うう……勇者様……ごめんなさい……私……弱くて……役立たずで……」

女勇者「強いから、役に立つから仲間にしてるんじゃない!!
ただ、一緒に居たいから、楽しく旅をしたいから、新妻ちゃんに側に居て欲しいのよ!!私は!!」

~夢の世界・池袋駅周辺~

エルフ「新妻さんを助けに行くんですね。」

女兵「まーな。だが、実際のところ、どう手助けすればいいのか分かんねぇがな。」

アカネ「新妻ちゃんが見ている悪夢……もしかしたら、夢魔がとりついてるのかもしれないわ。もしそうだったら、そいつを倒せばいいわ。」


女兵「だと、いいんだがな……」

お嬢「どういう意味ですの?」

女兵「アイツ自身が、単に鬱になって悪夢を見続けてるだけかもしれないだろ?」

アカネ「……だとしても、このまま放っておけないわ。」


エルフ「……ハーフエルフ……。あの娘……」

アカネ「……エルフさん……」

エルフ「アカネ……。もし、本当にまた勇者様の仲間になるっていうのなら、女勇者ちゃんのこと、よろしくね……」


アカネ「……大切な人が居るのなら、あんな風に死ぬことなんてなかった。
あの娘が大事なのなら、生きて、勇者様の前に居続ければよかったのに……」

エルフ「私に……魔王を選んだ私に、そんなことは出来ない……。
でも、あなたは違う。あなたなら……きっと……もう一度なれるわ。勇者様の仲間に……」

アカネ「ええ……そのつもりよ。
私は、何人たりともに縛られない……自由な女……。そして、大切な妹を守る為に………」

寝ぼけてついにsage忘れてしまった

今更だけど、こんな不定期投稿でごめんなさい

~夢の世界・池袋・高層ビルの展望フロア~


天使ε「この旗、なんだろね?」

天使ζ「う~ん、確か帝国の……」

エルフ「それは帝都軍の軍旗です。ここは、帝都軍の詰所ですから……」

天使ε「え~……?軍人さん達の基地なの?」

天使ζ「どうして帝国軍さんの基地が、この夢の世界に?」


エルフ「それが……帝国軍です。彼らは、世界中に多くの秘密を持つ。そして、多くの兵士達はその秘密を知らない。秘密を抱えた者同士ですら互いの秘密を知らない。
帝都軍が夢の世界にまで勢力を広げていること、魔族による戦闘部隊を設立していること、第2軍が管理する施設“メイドの花園”……。

帝国軍という同じ枠組みの中に居るにも関わらず、互いに巨大な秘密を持ち、自由に振る舞う。何故そんな軍隊が今だに統一されているのかは、私にも分かりません。」



天使ζ「へぇ~」
天使ε「ふぅ~ん」






~夢の世界・帝都軍兵詰所~


『勇者は花園に向かっているらしいな……』

『そんなことより!第1軍が魔王討伐の為に独自に動いてるらしいな?勇者を頼らず、例の兵器を使用すると聞いたが……』

『例の兵器?ワシは初耳だ。どんな兵器だ?』

『先代魔王軍の使ってた“トロール部隊”のことだ。幼い人間の子供達を魔改造して、頑丈で強靭な化け物にした部隊だ。』

『見た目はただのガキだが、肌は金属より硬く、家1つを軽々持ち上げる筋力を持つ。まさに怪物トロールの様な破壊力だ。
確か、先代勇者の仲間に“ミドリ”という少女がいたはずだ。彼女も元はトロール部隊だ。』

『あー、あの無口で大人らしいガキか。なるほどね。
つまり、第1軍は先代魔王軍の生物兵器を使って今の魔王を討とうとしてると?』

『それに、第3軍も内部抗争中ではあるが、魔王討伐に参加するらしい。』

『それなら、元老院様方の説得のおかげだろ?感謝してるぜ、爺様方。』

『お前らももうすぐ爺じゃろが。
まぁ、第3軍の馬鹿どもを言いくるめるのは簡単じゃったぞい。魔王討伐の功績で次の第3軍将を決める、の一言じゃ。』

『ぐっ、放せ!馬鹿者!』

『あん!もぉ、軍将様の意地悪♪』

『あんた、放しなさいよ!軍将様は私のものよ!』

『なによあんた達!?軍将様は私だけを……』

『……おいおい?大事な会議に女を連れて来てんのはどこの馬鹿だよ?』

『ぐっ……この者達が勝手に付いてきただけだ。夢の中まで……』





『なんだアイツ?あんなに若い女達を引き連れて……』

『奴は帝都軍の元エース。何代か前の勇者パーティーと共に魔王討伐を果たした帝都軍の英雄だ。』

『そうそう、だがもう今じゃあ、頭堅くて口うるさいただのオッサンだ。』

『だが優秀な兵士だったことにはかわり無い。
そして、奴には子孫がいない。奴の優秀な兵士の血を後世に遺すべくと、帝都軍将が彼の子作りを手伝う女を募集したんだ。』

『募集って……すげぇー事考えるな、帝都軍将は…』

『そしたら、ヴァルキュリアを卒業した女が何人か志願したらしい。意外と軍内にあのオッサンのファンが多く居たんだとさ。』

『ちなみにヴァルキュリア部隊は14~19歳までの女性達で構成される部隊。20歳になると卒業して、ヴァルキュリア部隊の管理職や他の帝国軍に鞍替えしなければならない。また、結婚などをした者も基本は脱隊を義務されている。まぁ、本人の意志や功績によっては在隊を許可されたりもするがな。』


『……なにを説明口調で話してる?そんな当たり前のことを……』

『いやぁ、分からない人達の為にな。あっちにいる盗み聞きしてるエルフ天使とかの為に……』




エルフ「……」





『だから!ワシは子作りなどしたくないと……』

『うっせぇエロおやじ。どうせベッドでは嬉しそうに腰振ってるくせに……』


『それがね~、軍将様さぁ~、ベッドでは普段と大違い!緊張しててすごく可愛いんだよ?』

『ば!?貴様!そういう事を漏らすな……』



『……なんだよ、あのリア充な会話はよ……。いいよな、あの歳でハーレムとか……』

『あいつは昔から真面目て女っ気が一つもなかったからな……。』


『そういやぁ、兵士長。』

兵士長『ん?なんだ?』

『お前んとこの……“男兵”とか若造は元気か?あいつも女っ気が全くない奴だったな……』

兵士長『あの“たわけ”は今、勇者の護衛中のはずだが……。まぁ、色々やらかしてるらしいな……』

『勇者の?勇者は女ばかり仲間にしてるそうだが……。なんでも大の男嫌いと……。そんな勇者が何故その男兵を仲間に?』

兵士長『……男兵の“混沌魔”の素質が関係してるのかもな……』


『カオス?なんだそりゃ?』


エルフ「勇者、魔王、帝国王……人々を束ねる統一者、人々から信頼される徳を持つ人々。彼らが共通して持つのは“覇王”の素質。

人々の上に君臨し、人々を扱い、または人々と協力して世界を創設する、生まれながらにして“王”となる素質を持つ者達……』


『お前!?先代勇者のエルフ……』

兵士長『勇者の力は選ばれしごくわずかの人々に与えられたもの。しかし“覇王”の素質だけを持つ者ならこの世界に意外と多く存在する。それでも、やはりほんの一部の人間だけではあるがな。』


『覇王の素質は人々を惹き付ける。つまりハーレム王にもなれやすってことだよな。
なら、あっちのエロおやじなんかいい例かもな。』

エルフ「まぁ……確かに勇者などは多くの女性を魅了しるようですけど……ハーレムなどは……」


兵士長『人々を惹き付ける潜在的な力を、我々は“覇王”の素質と呼んでる。
一方で、“混沌魔”の素質は、人々の上に立つこともなく、王の素質を完璧に持たないが、世界を変える力は持つ者達のことだ。』


『……世界を変える?』

兵士長『まぁ、大したことではない。混沌魔は世界を混乱させるもの。つまりは、世界の王に従わない者。

混沌魔達は永遠に覇王に従うことはなく、いつも覇王達を反発し、倒そうとする……』


エルフ「“覇王”の素質を持つ魔王を倒そうともしますが、同時に勇者をも危険にさらす恐れがある。
王を消しても自分が王になることはない。世界を混乱させてばかりの存在……」


『……全く、兵士長様もエルフさんもよぉ。そんなワケ分からないこと言って男兵君の悪口言っちゃって、厨二もいいとこだぜ?』

兵士長『……ハハ!!厨二か!確かにそうだな!』

エルフ「……勇者様や魔王に覇王の素質があるのは後付けのレッテルですし、男兵さんに混沌魔の素質というのも根拠なき言い分です。」

兵士長『だが、男兵は確かに誰かの下につくのを嫌い、だからと言って誰かの上に立とうともしなかった。
自由で、縛らるのを嫌い、女を作ることもなかった。ただ、アイツは決して孤立してはいなかった。色々な者達と関わり、共に行動することの方が多かった。』

エルフ「つまり人々を惹き付ける力は持っていたということですか?」

兵士長『むしろ、アイツが人に合わせるのが得意なだけかもしれんな。
奴自身は先導しないが、誰かが先導して行動する時には、よくアイツも関わっていたものだ。軍の食堂でおきた集団つまみ食い事件やら、ワシの机に有名絵画を模写した落書きをしたり……』

『有名絵画の落書き?そりゃ綺麗な落書きすぎて消したくても消しづらいですな。面白い悪戯だ。』

兵士長『そして上部の命令を無視して、勝手に村を襲っていた魔物達を排除しに行き……』

エルフ「でも、別に彼が先導したワケではないんですよね?」

兵士長『先導したのはその部隊の隊長だ。男兵はそれに共闘した一兵士に過ぎない。
ただ、その一件で部隊は数人残して壊滅、男兵だけが特に重症を負うこともなく帰還した。だから、一番注目を浴びたのは事件を先導した隊長ではなく、無傷で帰還した男兵だった。
アイツは戦闘中逃げ回っていたワケでも、運良く安全な場所にいたワケでもない。戦場の真ん中で敵と戦い続けていた。』


『それなのに無傷で帰還ですかい?そりゃ大した化け物だな。そこら辺で凶暴な魔物を討伐して名をあげてる勇兵なんかよりもよっぽど凄いな。』

エルフ「……男兵。特別な力を持つワケでもなく、大義をなす宿命を持つワケでもない……王になることのない普通の戦士……』

エルフ「彼は、勇者の仲間には向かない。魔王を倒す戦力にはなっても、勇者自身にも不益を与えます。」

兵士長『…とはいっても、アイツの実力は本物だ。我々が勝手にアイツを混沌魔扱いして危険視するのは大きな間違だろう。
それに、女勇者はアイツを選んだようだしな……』


エルフ「あの娘は、自分の仲間の女の子達を決して傷つけないと思って、男兵さんを仲間にしてるんです。男兵さんなら、例え無意識にも女の子達を傷つけることがない、と思って……」

『つまり、女勇者は自分のハーレムに混ぜても無害な男を選んだってワケか……』

『ある意味、その男兵にはハーレム王の素質がないってことだな。男兵君の一生は灰色で不運そうだな……』


エルフ「でも、女勇者は、自分に迫る危機を考えていない……。
……私は、男兵さんは先程申した様な混沌の力があると思います。」

兵士長『……つまりどういう意味だ?』





エルフ「彼は、いずれ勇者に剣を向けて……あの娘を殺すかもしれない……」




『………先代勇者は帝国の監視を拒否した。だから制裁を受けたんだ。
だが女勇者は帝国貴族だ。そう簡単に殺されることはないだろう……』

エルフ「帝国なんて関係ない……。男兵は、きっと勇者様を……」


兵士長『どうして、そんな風に決めつけて考えるんだ?』



エルフ「……似てるから……。男兵が………あの人に……」

『あの人?……って、誰だ?』

エルフ「……私達の勇者様を殺した……あの人……」

兵士長『あの時の兵士か。確か、今は第2軍将になってるはずだが……』

『兵士長は第2軍将に会ったことがあるのか?』

兵士長『いや……それがないんだ……、顔すら見たことがない。ただ噂では何度も聞いたが……』

~新妻の夢~


『よぉ、ハーフエルフ!今日も遊びに来たぜ!』

『今日も仲良く遊ぼうぜ!はは……』

新妻(幼少)『うん……今日もあたし、頑張るから……殴らないでね……』





……嫌だ……もう嫌……これ以上、汚れたくない……


新妻「もう嫌ぁ!!」

『な、なんだ!?誰だよお前?』

幼新妻『……え??』

新妻「私は確かに自分から汚れていくことを選んだ。自分の身を守るため、生きる為に………。
でも、そうして必死で、なんとか生きてこれたから、今こうして勇者様に出会えたの!」


幼新妻『……でも、生きる為に身体は汚れちゃったよね?』

『そうそう!俺達の欲液まみれの汚ぇ奴隷になって、ひーひー喘いでたくせに……』


新妻「だから何なの!?私は、今は勇者様の仲間!過去なんか関係ない!!私は勇者様の……新妻なんだから!!」


幼新妻『もし勇者様が真実のあなたを見たら、きっと捨てられるよ。こんな汚い女なんか、いらない!!って……』


新妻「……勝手なこと言わないで。勇者様を知った様に言わないでよ……」

『なら、お前は勇者の何を知ってるんだ?新妻ちゃんよぉ?』



新妻「……知らない。私だって、勇者様のこと、全く分からない……。
だから、私は知りたいの!勇者様にもっと近づいて……。たとえ、勇者様に嫌われて、捨てられても!!私から勇者様に付いていくんだ!!勇者様の近くにいて、勇者様をもっと知るんだ!!」


幼新妻『……それじゃあ、ただのストーカーだよぉ……』

新妻「……思いだけならストーカーの域です。でも、勇者様の笑顔がみたいから……できればそんなことはしたくないかな……。
だけど、勇者様に拾って貰おうだなんて受け身の気持ちじゃ駄目なの!私は、勇者様に付いて行く!!自分の足で、自分から……」





幼新妻『………そうなんだ。もう決めたんだ。
……でもね、いくらあなたが昔の自分を克服しても、男の人達の玩具だったっていう事実は無くならないよ?』

『そうそう、俺達は永遠に覚えてるんだぜ?お前の肌の味、その可愛い口からでるやらしい声、男達に怯えながらも男心をくすぐってくる上目遣い……。』


新妻「……そんなの……そんなのなんか……」

『いい匂いだったなぁ~。ハーフエルフってのは蜂蜜みたいなの吹き出すんだな?甘かったぜ?また食べたくなってきたなぁ……』





新妻「そんなの………そんなの…………


こうしてやる!!!」



ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!!!
『うわっ!!?ひぃっ!?ひ、光の剣……!?』


新妻「私はもう勇者の仲間です!!勇者を頼ってばかりじゃ駄目……自分の敵は自分で倒します!!」


『う、うわぁ!?ちょっ!?ま、待ってくれ……』

新妻「……それ以上変なこと言ったら、次は本当に当てますよ?」

『わ、悪かった!!もう言わないから……』


新妻「……私は、自分の身は自分で守る。昔みたいな卑怯なやり方ではなく、ちゃんとした自分の力で……」


幼新妻『………どうして?』

新妻「……?」

幼新妻『……どうしてもっと早くにそうしなかったの?私が……昔のあなたが汚れる前に、どうして勇者様が現れて、私を助けてくれなかったの……?

もう手遅れだよ?汚れちゃった私は……もう……」



新妻「……仕方ないですよ。後悔なんかしたって……。もう、汚れた私で生きていくしかないんです……。
……でも、それでも、勇者様の隣で居られるなら……」



幼新妻『……どうして……どうして……もっと早く……』


……シュン



新妻「……消えた……?昔の私……私が一番嫌いな私………」



私は………私に勝てた……?






男兵『新妻!』


新妻「………お、男兵さん……?どうしてここに?」

男兵『いや、俺は別に現実世界の俺じゃない。お前の夢が作った幻だ。』

新妻「へぇ~………。
……普通、自分で自分を幻って言うんですか?」

男兵『その辺りの矛盾さも男兵らしいだろ?な?』

新妻「え?そ、そうですか……?」

男兵『まぁいいさ。しかし、なんとか勝てたみたいだな?昔の自分に……』

新妻「はい……なんとか勝てました。本当は、勇者様や女兵様の力が必要かな、とも思いしました。
でも、自分の力で、なんとか……」


男兵『んじゃぁ、とりあえず………』ハイタッチ!!



新妻「………。」

男兵『……?』

新妻「……ごめんなさい……、やっぱり男の人にはまだ触れないです……」

男兵『え?昔の自分にケリつけたのにか?』

新妻「……ごめんなさい……」


男兵『……そうか。まぁ、それはまた次の機会にするか。』


………私は……男の人が怖いワケじゃない……

でも………



新妻「……ところで男兵さん。私の夢の中なのに、男兵さんしか居ないんですか?勇者様とかは……?」

男兵『まぁ、どっかには居るんだろうけどな。
ただ、新妻が昔の自分に勝って、最初に会いたいと思ったのは俺なんだろ?だから俺が最初に現れたんだ。』


新妻「え!?ど、どうしてですか!?私が真っ先に会いたかったのは勇者様のはず……」


男兵『……いや、新妻が最初に思い浮かべたのは男兵だったはずだ。』

新妻「……どうして……?」

男兵『……新妻が一番好きなのは女勇者だ。それは変わらない。
ただ一番信頼してるのは男兵だ。』

新妻「……嘘……」

男兵『まぁ、単純な話。ただでさえ苦手な男がパーティーにいるんだ。嫌でも信頼してなきゃ、やってけないだろ?』

新妻「……あ、そ、そういうことなら……分かるかも……」

男兵『お前は昔とは全然違う。昔は男に身体をゆるし続けてきたが、今じゃ男兵に心をゆるし過ぎてる……』


新妻「……そんな言い方しないでください……」


男兵『……だが、一番の理由は勇者なんだろうな。』

新妻「え?勇者様?」

男兵『お前、勇者様が一番好きだろ?だから勇者様を守りたいと思ってる。
そして、男兵のことを同じ勇者を守る存在として信頼してるんだよ。』

新妻「………。確かに、私には勇者様を守り続ける力がない……。でも、男兵さんなら……」


男兵『なんで俺には出来るんだ?俺にはエルフみたいな光魔法も、射手やら猫盗賊みたいな特技もない。
俺のどこに、勇者を守りきる力があるっていうんだ?』


新妻「………私には分かります。男兵さんは私と同じ、勇者様を守りたいと思っている者同士ですから……。男兵さんの私と同じぐらい、いやもっと強い、勇者様を守りたい気持ち……」

男兵『……俺は別に勇者のことが好きなワケじゃないからな……』

新妻「それも分かってます。勇者が好きではない、でも守りたい!って思う気持ち……。愛に勝るものですね。」

「……そう。男兵とあなたが抱いている勇者への思いは全く異なるもの。

新妻……あなたは間違っている。あなただけは、男兵を信頼してはいけない。

あなただけは……」




男兵『さてと……そろそろ、勇者に会いに行くか……』

新妻「え?あ、はい。……てことは、夢から覚めるんですね?」

男兵『いや、まずは夢の中の勇者様にご挨拶に行こうぜ。』

新妻「夢の中の勇者様??」





~新妻の夢・帝都の隣街~


新妻「……この街は……」

男兵『帝都の近くの……新妻が勇者に出会った街だろ?』

新妻「……どうして?どうしてこんな、焼け野原になってるんですか!?」


焼け跡の廃墟に、街にあった家々の面影がある……

ここは、確かに私が勇者様に出会った街……


~新妻の夢・帝都の隣街跡~


新妻「……ひどい……」

男兵『……原因はすぐ分かるさ……』

新妻「……え?」



ゴゴゴゴ……



新妻「!?ゆ、勇者様!?」


勇者様は街の中心地に立っていた………


でも……何か様子が変だ……


女勇者『………』

新妻「勇者様……?」



男兵『さて……ケリつけに来たぜ……新魔王さんよぉ……』


新妻「………え?ま、魔王……?」


女勇者『…………クク…』

……ゆっくり私の方を見た勇者様の目……

……交易の街で出会った魔王と同じ瞳……?


え?嘘?
勇者様………?……嘘……


男兵『待ってな勇者、今楽にしてやるから……』


男兵さん?何してるんですか?その人は勇者様ですよ?なんで剣を向けてるの……?



女勇者『……新妻……ちゃん……』


新妻「は、はい!!勇者様……」


女勇者『……助けて……私を……止めて……』



新妻「勇者様………勇者様!!!」


男兵『どけっ!新妻!!』

新妻「やめてください!!男兵さん!勇者様は、勇者様を傷つけないでください!!」


男兵『………悪いが、もう俺は躊躇しない……。俺は勇者と約束したからな……。勇者が魔王になる前に、俺が消す、ってな……』



新妻「男兵さん!!勇者様が死ぬんですよ!?それじゃあ、そんなの……私達はなんの為にここまで勇者様と一緒に生きてきたんですか!?」


男兵『……勇者が望んだんだ……、勇者の最後を……自分の結末を……。
俺は、それに従う……』


新妻「……駄目……やめて……やめて………やめて!!!!そんなの!!男兵さんのすることじゃない!!」



男兵『………恨みたきゃ、一生恨んでくれても構わないさ。こっちだって、そのつもりだ……』




新妻「男兵さん………私、男兵さんのこと………誤解してたみたいですね……」





「新妻……あなただけは、男兵を信頼してはだめ。
彼は、いずれ勇者を……」



新妻「………私、勇者様を守ります……。」


男兵「………」


新妻「勇者様を殺すなら……私を先に殺してください!!」

男兵『……ふぅ~ん……』ニヤリ

新妻「なにがおかしいんですか!?」

男兵『いや、随分とカッコいいセリフを吐くようになったなぁ、ってな……』

新妻「……あなたは随分とらしくない様な発言ばかりしますよね……。
男兵さんらしくなさすぎです……」


男兵『まぁ……、台本役者じゃ面白ないからな。迫真の演技でやらせてもらってるだけだよ。』


新妻「演技……?」

「!?」


男兵『まぁ、所詮は夢の中の出来事だ。とある舞台脚本家の言う通りに演技をしてるだけさ。』


新妻「……演技……?なら、あの勇者様は……」

男兵『あー、あれは本当に魔王化してる勇者だ。ただ、言ってる内容は全部脚本通りだから。
実際はあんな魔王らしい性格ではないと思うがな……」



女勇者『………』

女勇者(ああ、いつまで可愛い新妻ちゃんを前にして、じっと我慢してればいいの……?あんなに健気に成長した新妻ちゃんを早く抱き締めてあげたい!!)




「……どうして言う通りにしない?男兵……」

男兵『悪いな、あんたの演劇にはこれ以上付き合いきれない。
このまま新妻と一戦やらかすのも面白いかもしれないがな……。やっぱり、見知った女に剣向けるのは気が進まない……』


「……それは男兵に変身してるお前の意志か?それとも、男兵になりきった考えなのか?」

男兵『……分からないな、そんなの……』


新妻「変身……?」

「もういい……元の“水”に戻りなさい!!」

男兵『……ちっ……。しゃーないな。』

女勇者『私は嫌よ!まだ新妻ちゃんに何もしてないし……』


男兵『そーいうことだ、じゃあな、新妻。』ドロッ

女勇者『あん!!もぉ、最あ……』ドロッ


新妻「え!?……これは……スライム??」


「私の操る水によって作られた男兵の偽物…。まぁ、私特性のスライムってところね。」


新妻「あれが……偽物?あんな本人そっくりの性格の偽物が……?
まるでスライム騎士さんみたい……」

「あなたの仲間にも居たわね。他人に成り切り、相手の情報を全て抜きとってしまう能力を持ったスライムが……。
まぁ、変身においては身体の色を変えられない未熟なのだから、本人との識別は簡単につくでしょうけど……。

私の作るスライム達にはあの娘みたいに情報を取る力がない、だから私が男兵の人格を与えたのよ。」


新妻「あなたは何者なんですか??」


「私は……」




……スッ

新妻「!!……交易の街で会った人……?」

「私は魔王に使える夢魔、アオード。初めましてではなかったね?新妻さん……」ニコッ


新妻「……夢魔……?」

アオミン「人の夢を渡り歩き、人の夢を食らう者。
あなたの美しい悪夢は私を引き寄せた。あなたの夢に住み着いた私は、あなたの事ならなんでも知ってる。」


新妻「…全て……?」

アオミン「ええ、あなたの過去はもちろん、あなたが勇者に抱く理想、勇者に対する熱~い思い、勇者と何人の子供を作りたいかとか……」


新妻「わ、わ~っ!!?そ、そんな恥ずかしい事を言わないでください!!」

アオミン「何を恥ずかしがってるの?ここはあなたの夢の世界。あなたと私以外には誰も居ないわよ?」


新妻「あ……そうでした……」

新妻「それで、魔王の部下さんが私の夢に入って……どういう目的なんですか!?」


アオミン「安心して、魔王の部下としての目的はないわ。
私はただ、あなたの夢に惹かれただけ……」

新妻「……?な、何に惹かれたんですか?」

アオミン「あなたがよく見てるつらい過去の夢……不幸と恥辱にまみれた忌々しい記憶……」


新妻「……私が悪夢に苦しめられてる姿を見て、楽しんでたんですね……」


アオミン「ええ……。幼少期の可愛らしい君が、見知らぬ男達に純潔を散らされる無情さ……それがたまらないんだ……ハァハァ…」




新妻「……はい……?」


アオミン「幼い君の白い肌、幼気な瞳、愛くるしい声、それらが汚い男達によって汚されていくのがたまらない……。
ああ……私の理性がふっとぶところだったよ……ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」



………この人……危ない人!!?


新妻「あ……あ……あなたは……」

アオミン「……失礼。私はどうも小さい女の子には目がなくてね。
女性の夢に入っては、その女性の幼少期の姿を見て興奮してしまうんだよ……」

新妻「!!?」

アオミン「特に、君のは素晴らしかった。
君は気付いてないかもしれないが、幼い君を犯してた男達の中に、実は私も紛れこんだことがあったんだよ。ここは夢の世界だから、ちょっと魔法を使えば、私の身体に“男”を付けることも出来るから……」



新妻「え……あ……ええっ!!?な、あ、あなたは!?い、一体何を考えてるんですか!!?」

アオミン「今の私には、可愛い幼女しか見えていないのさ!!」


新妻「……なんか喋り方もおかしくなってるし……」

アオミン「……さてと…」


新妻「………??」


アオミン「水夢っ!!」

ザバァァァァン!!!!


新妻「っ!?……ぷはぁっ!?み、水魔法!?」

アオミン「フフフ……」



新妻「っ……げぼ……」

……息が出来ない……
……この人…やっぱり私を殺すつもりで………

~一方、“誰か”の夢にて~


女兵「……今度は誰の夢だよ……?」



女侍『バクバク……。
ん?女兵……、ここで何してる?」

お嬢「お、お侍様……?」

女侍『……よければ、一緒に食すか?』


アカネ「そこら中に食べ物ばかり……この夢、侍ちゃんの夢のようね……」

女兵「……また失敗かよ……」

お嬢「もう何回目ですの?早く新妻様の夢に向かわないと……」




アカネ「ええ……ぐずぐずしてたら、取り返しのつかないことになるわよ……」

女兵「取り返しのつかないって………新妻の精神がおかしくなるとかか?」

アカネ「……まぁね……、変なトラウマにならなくちゃいいんだけど……」


アカネ(アオミン……。彼女の仕業だとしたら、新妻ちゃんが危ないわ。
このままだと、新妻ちゃんが“食べ”られちゃう……)

~新妻の夢~

新妻「ぶはっ!!……な、なんなの……?」


アオミン「……フフフ」

新妻「あ、あなた……私を殺すつもりで……?」


……あれ?なんか、声が妙に高い……?


アオミン「今君が浴びた水は、ちょっとした魔法を秘めていてね……」

新妻「ま、魔法………??
………あれ?」


……なんか、視線が低い……それに…服がガバガバしてる……?


新妻「……あ……れ?わ、私………小さくなってる!!?」


アオミン「ちょっと幼児化してもらったよ。……フフフ。いやぁ~、君はやっぱり可愛い~ねぇ~♪」

新妻「……な、何故こんな……」

アオミン「さっきも言ったとおり、私は小さい女の子が“大”好きだ。他人の夢に入って、その人を幼女化して、そして食す!!!
……これに限るね~♪」

新妻「なっ!?……」


アオミン「………もうちょっとだけ、私に付き合って貰うよ………。ハハハ……」ジリジリ…

新妻「な、何笑ってるんですか!?こっちに来ないでください!!」

アオミン「いいね~、怖がる顔が私は大好きだよ……」

新妻「ひぃっ!?い、いやぁ!!来ないで!!」




アオミン「……そんなこと言って、女勇者相手ならなんでもするくせに……」

新妻「ゆ、勇者様は特別なんです!!」

アオミン「あ、そう。……なら……」


ドロドロッ

ア女勇者『これなら文句ないワケ?』

新妻「ゆ、勇者様!!?」

ア女勇者『まー、私の周りに水を張りつけて、女勇者の姿に似せただけなんだけどね……、
でも、これなら勇者様とヤってる気分になれるだろ?』


新妻「あ……あぁっ……勇者様………」

アオミン「そうそう、大人しくしてる新妻君も私は好きだよ。ヘヘヘ…」

新妻「や、やっぱり駄目ぇええええ!!!!」

ピカァッ!!!!!!


ア女勇者「っ!?……くっ……」


新妻「私にそういうことをしていいのは勇者様だけ!!あなたは勇者様じゃない!!!」



アオミン「……全く、強情な奴ですね……」

新妻「当たり前です!私は、昔みたいな弱い私とは違うんです!!」

アオミン「……そぉ。せっかく成長に協力してあげたのに……。」


新妻「あなたは……どうして私にあんなのを見せたんですか?」

アオミン「ああ、それはあなたの幼少期を堪能したかった…」


新妻「勇者様と男兵様のことです!!」



アオミン「ああ、あれねぇ。
あなたが男兵を信頼し過ぎてるから……」


新妻「……どういう意味ですか?私が勇者様の仲間を信頼しちゃダメなんですか!?」

アオミン「………。
さっき偽男兵が言ってたとおり、あなたは男兵をかなり信頼してる。
ここはあなたの夢の中。あなたが男兵に会いたいと思ったから、あなたは男兵に会ったのよ。」

新妻「でも、あれはあなたの作った偽の……」


アオミン「……例え偽者だとしても、あなたが望むから、彼はあなたの前に現れた。
あなたはこの夢の世界の創造主であり、神でもある。この世界で起きる全ての現象は、無意識であれあなたの望むままに起きるのよ。

もちろん、私も他人の夢多少の干渉できるけど、男兵が上手くあなたと出会えたのは、あなたがそう望んだから……」



新妻「……私が……望んだから……?」

アオミン「……そして、男兵が勇者様の敵になった時、あなたは彼と戦えるの?

あんなに信頼している彼と……」


新妻「………」


アオミン「好きな人と信頼してる人とは全然違う。あなたは好きな人の為に信頼してる人を殺せる?
それとも、信頼する人の為に、好きな人を犠牲にする?」



新妻「何故、あなたは男兵さんが勇者様を殺すと思ってるんですか?
あの人はそんなことする人じゃない……」


アオミン「……そうね。私も、あの男はそんな軽い推測があたるような男じゃないと思うわ。
ただ……もしも、仮に、あの男が女勇者に刃を向けたら、新妻、あなたはどうするの?」

<つぶやき>
“混沌魔の素質”なんて中2発言いらなかったかも


“王の素質”なんて胡散臭い言葉が創作物でよく使われますよね

男兵にはそれがない、つまり一生勇者やら魔王やらといった“王”になることのない、潜在的なごく“普通”の兵士って事を強調したかったのに、これじゃあ“混沌魔”とかいう新しい厨二設定が付いてしまう……


たまに凄く厨二設定を書きたくなってしまうけど、後で公開してばっかですね……



~とある夢の世界~


アカネ「さぁ~て、今度は一体誰の夢かしら?」

女兵「今度こそ新妻の夢にちがいない……はずだが……」


お嬢「ここは……どこかの倉庫?沢山の物を積んでいますわね……」

アカネ「あら……この箱に書かれたのって、帝国の……?」

女兵「……帝国軍の紋章か。ここは帝国軍の施設みたいだな。」

お嬢「帝国軍?新妻さんの夢に何故登場するんですの?」

女兵「……まぁ、アイツだって帝国軍に嫌な思い出の一つや二つあるんじゃねぇか?」


アカネ「……本当に新妻ちゃんの夢なら……ね?」

女兵「なんだよ……あんだけ失敗してりゃ、もう俺の力は信用されないってか?」

アカネ「説教するつもりはないけど、あなたは力の使い方が荒いわよ。もっと繊細に扱わないと……」


女兵「繊細に?具体的にどうすればいいんだ?」

アカネ「そうね……。例えば、自らの力の暴走によって自らが危険にさらされるなんて事を考えたりしてる?」

女兵「いいや。自分の手に負えないような力なんて、端っから使うつもりはないさ。」


アカネ「……もう手遅れよ。あなたは既に……」





お嬢「お二方!!大変ですわ!!」


女兵「どうした?何か見つけたか?」

お嬢「外の状況が………」

~夢の世界・倉庫の外~


女兵「………ちっ……」

アカネ「……これは…」

お嬢「ええ、死体ですわ。人間、そして魔物の……。その辺り一面に広がってますわね。」



……死体……血の匂い……焼けた匂い……何も聞こえない……


女兵「……2年前のか……」

アカネ「あら?ひょっとして、この光景に見覚えが?」

女兵「……ここは環状山脈だ。2年前の。
帝国軍と魔王軍が衝突して、さらにデカい魔物の群れが両軍を襲ってな………」

お嬢「……その戦いなら私も聞いたことありますわ。第3軍の1中隊が壊滅するほどの激戦だったそうですわね。」

アカネ「なるほど。つまりこの光景は、その戦場を実際に見た人が見ている夢、というワケね。
で?女兵さんにはそれが誰だか予想付いてるのね?」



女兵「……ああ、俺が2年前に見たのとまんま同じ光景だからな。
ここは戦場の中でも中心地で一番ヤバかった辺りだからな。そこに居て、この光景を見て生き延びた奴なんて“男兵”ぐらいだろうな……」



アカネ「つまり、これは男兵の夢……ってことね?」

女兵「そういうこった。さ、さっさと出ようぜ。」

アカネ「あら、もっと楽しんでいかないの?せっかく“あなた自身”の夢の中に来れたのに……」


女兵「いや、さっさと出るぞ。
……見たって楽しくねぇだろ?こんなの……」



アカネ「そう。あなたがそこまで言うのなら……。別にあなたの秘密を知りたいワケでもないし……」


女兵「ああ、そうしてくれ。さ、行くぞ、お嬢。」


お嬢「え?あ、もう行くのですの?」

女兵「ああ、さっさと出よう………」

~男兵の夢・環状山脈戦場~


『ギャァシャァアアアアア!!!!』


男兵『このヤロウがぁ!!ザクッ!!
おい、ヤバいんじゃねぇのかぁ!?この状況はよぉ!!』

同僚T『まだ喋る余裕があんなら大丈夫だろ!?さっさと走れよ!!』

同僚U『やべぇよ……何匹出てくんだよ?このトカゲの化け物共が…………ぁああっ!?』グシャッ


ポトッ
男兵『痛っ!?なんか飛んできたぞ!?これは?』

同僚T『そりゃ首だよ!同僚Uのだよ!!』

男兵『ちっ……なら大切に持って帰らねぇとなぁ!
…くそっ!!後何人残ってるんだ!?』

同僚T『さぁな!!10人居たらありがたいな!?』


男兵『大所帯じゃ逃げるのに不利だ!できるだけバラけた方が良さそうだな!』

同僚T『仕方ねぇか!達者で暮らせよ!!』

男兵『お前も生き延びろよ!!』




『ギャァアアアア!!!』

男兵『はぁ…はぁ……ちっ…。まだ追ってきやがるのか……』


男兵『…はぁ……はぁ……』


男兵『はは……まぁ、化け物共が俺を追ってきたんだから、同僚Tは助かったんだろうかな?まぁ、こっちは死にそうだがな……』



……あの時別れた同僚Tとはそれっきりだ
生存も死体も確認されなかった
軍事記録では死亡扱いになった

新妻「………うう…」


女勇者「新妻ちゃん!目が覚めた……」

新妻「勇者様……。」

女勇者「大丈夫?また嫌な夢見なかった?」

新妻「いえ……それより、勇者様……目の下にひどいクマが……?」

女勇者「あたしのことは気にしないで。徹夜なんて、昔から勉強で慣れてるから。」

新妻「……勇者様……」

女勇者「ホント……ご苦労さん。」





メイド「勇者様。」

新妻「あ……メイドさん。」

女勇者「ん?メイドちゃん。どしたの?」ケロッ

新妻(あれ?勇者様の顔がいつも通りになった。)

メイド「朝ご飯の支度が出来てます。お早く召し上がってください。
新妻様もご一緒に……」

新妻「え?あ、はい……、」

女勇者「そうだ。とにかくご飯食べようよ!新妻ちゃん。」

新妻「は、はい……」





メイド「それと、勇者様。」

女勇者「ん?何?」

メイド「……結局最後まで、勇者の力は発動しませんでしたね?」

女勇者「え?あ、うん。
新妻ちゃんを助けたいって何度も念じたのに、力が応えてくれなかった。
……まぁ、こういう時もあるわよね。徹夜で体調が優れなかったのよ……」


メイド「……力に頼るだけの勇者では、世界は救えない……。勇者様なら、ご理解しているかと……」

女勇者「もちろん。最近、勇者の力に頼り過ぎてたみたいだし、明日からは一旦控えようかな。」



メイド「勇者様……。あなたは素晴らしい勇者です。
もし、運命があなたを勇者にするのを拒むというなら……私はそんな運命など……」

お嬢「……つまりは先程の夢は男兵様の夢なのですね……」

女兵「……まぁな。あんな夢見るのはアイツくらいだ……」

お嬢「……まぁ、あの方も帝国軍人したものね……。渡り歩いた戦場を夢に見てしまわれる様なことも多々なのでしょう。」

女兵「……多々って程でもないさ。たまにふと思い出す程度かな。」

お嬢「しかし、あなたは男兵様とお知り合いだったのですわね……」

女兵「ん?ま、まぁな……アイツの事は昔からよく知ってるよ。(つか、元々同一人物だったし……)」



お嬢「ひょっとして……将来を誓い合った仲……だったりしますの?」


女兵「………将来を誓い合う……か。ある意味ではそうなのかもな……」

お嬢「え?それはつまり……」


アカネ「女兵さんは実は男兵さんの双子の妹なのよ。
ね?女兵さん。」

女兵「……あー、まあな。将来誓い合ったと言うか、一生切れない縁で結ばれた嫌な関係ってとこかな。」

お嬢「……なるほど。ご兄妹でしたのね、男兵さんと。」


女兵「あ、ああ。まぁな、」


お嬢「なるほど……。……ふぅ……」

女兵「?どうかしたか?」

お嬢「いえ……その……」



アカネ「……そういえば、従者の方の左目さんだったかしら?あの娘が思いを寄せてる相手も男兵さんだったわね……」

お嬢「え!?あ、あなた!何故それを……」

女兵「……え?」



女勇者「勇者チョップ!!!!」
バシッ!!


『キュォオオオ……』バタン



射手「す、凄いです……勇者様。巨大な怪鳥をチョップ一発で……」

女勇者「これ系の鳥モンスターは後頭部のこの辺が急所なのよ。そこに衝撃加えたらイチコロってワケ。」


猫盗賊「ふ~ん。でも今までの勇者だったら、そんな敵、衝撃波でぶっ飛ばしてたじゃん。
なんでわざわざそんな面倒臭い方法なの?それにいくら勇者でもそんな大きな鳥をまともに相手してたら危ないんじゃ……」


女勇者「なんとなく体を動かしたくなったからよ。
今までは“勇者の力”に頼り過ぎてたし。たまには普通の体術なんかも磨いとかないと……」


新妻「……でも、万が一怪我をされては大変です。勇者様の身体にもしものことがあったら……」



女勇者「大丈夫大丈夫。勇者の力を使わなくても、私がこんな魔物にやられるワケないじゃん。」


猫盗賊「……そんなフラグ立てちゃって……」

新妻「盗賊ちゃん、勇者様なら心配ないよ。勇者様なら、絶対に……」






アカネ「あら、意外と強いのね。勇者様は……」

お嬢「当然ですわ。あのお方は帝国の軍事学校を超エリートで卒業してますもの。例え勇者の力がなくても、帝国最強の兵士には違いありませんわ。」


女兵「……勇者の力がなくても……か……」

アカネ「……もとより力を持つ者だからこそ、強大な力が1つ増えたところで自分を見失うような事はない……ってことね……」


女兵「全く、羨ましいかぎりだな。なんでもかんでもな天才に恵まれていてさ。」


アカネ「あら?あなたがそんな事言えるのかしら?」

女兵「ん?俺が何かに恵まれているとでも言いたいのか?」


アカネ「あなたが、女兵がこの世に生まれたこと自体が、神からの贈り物なのではないかしら?」

女兵「神?俺を作ったのは魔王なんだろ?な~にが神からの贈り物だよ……」


アカネ「うふふ……自覚がないのなら、もういいわ。」



アカネ(……でも、やっぱりあの女勇者さんは完璧な逸材ね。
彼女なら……。そして、女兵さんになら……)

左目「お嬢様!!昨晩はどこに行かれてたのですか!?私も右耳も心配したんですよ!?」

メイド「おかけで私も昨晩かりだされて大変でありました。……ふわぁ~……。失礼、寝不足であります。」


お嬢「左目!ちょうどいいところにですわ!
実は男兵さんについての話が……」

左目「お嬢様!!今はそのような話をしてる場合では……」

アカネ「あら、せっかく主さんが従者の初恋の事を夜通しで考えていたのに、つれないわねぇ?」

左目「……え?」

アカネ「そうよね?お嬢様。」

お嬢「そ、そうですのよ!!左目!あなたの恋の成就、私の名にかけて果たしてみせますわよ!!」

左目「え?……あ、あの……お嬢様……本気で……?」


女兵「……それで?」

左目「は、はい?」

女兵「一体男兵のどこを気に入ったんだよ?あんなヤツの……」


左目「……あ、あの……」


左目(……どうしてこんな話に……。私は別にあの兵士さんが好きってワケでは……。
ただ……模擬戦とやらで面白いことばかりやってたので毎試合を見ていただけ……)


お嬢「彼の戦う勇姿に一目惚れしたのですわよね!?」キラキラ

左目「え!?い、いやぁ……」


左目(……お嬢様……なんて嬉しそうな顔……キラキラした目を……。
私が恋をしたのがそんなに嬉しいのでしょうか……?
……私はお嬢様に仕える身……。お嬢様の幸せこそが私の幸せ……。
私自身の恋なんて……)



お嬢「左目……あなたにもようやく、共になりたいと思える殿方が現れたのですね……」

左目「え?あ、あの……お嬢様?」

お嬢「私と一緒に居てばかりの17年間。あなたは私にばかり合わせてくれて……あなた自身の私情は後に回してばかりで……。
だから私は、早くあなたを私から解放して差し上げたかったのですわ……」


左目「お嬢様……そのようなことは……」


お嬢「だから、左目!
今まで私があなたにかけた迷惑の分、私はあなたの恋の為に頑張りますわ!!」


左目(……お嬢様……色々強引過ぎます……)

メイド「では、まずはその恋焦がれる気持ちを文面で男兵様に伝えてみてはいかがでありますか?」


アカネ「あら?そんな回りくどい。やるなら直球、面とむかって一言“あなたが好きです!!”じゃないかしら?
それも初初しく恥ずかしがりながら言えば、どんな男もイチコロにちがいないわ。」


左目「……うう……なんでこんな事に……」








女兵「………。お嬢、ちょっといいか?」

お嬢「あら?なにか御用ですの?」

女兵「……あの左目の反応見てて、正直あんまり男兵のこと意識してないように思えるんだが……。
さっきの尋問も、ほとんどがお前の誘導だったし……」



お嬢「……あなたは左目のことを何も知らないだけですわ。
あの娘は昔からいつも私の後を付いてきてくれて、私のすることに合わせてくれてばかりでしたわ。
……そんなあの娘が、ある日、自分から殿方の勇姿を見に行きたいと言ったのですわ。……あの娘は易々と異性に関わろうとするような人ではありませんわ。だからこそ、そんな彼女が興味を持つ相手………」


女兵「それが男兵だったのか?」

お嬢「私はその男兵さんの事、あまり詳しくは知りませんわ。
でも、あなたにならお分かりなられるのではなくて?その男兵さんには特別な魅力があると。左目の気をひくような……」



女兵「………さぁね。

………ただ、つい最近、男兵さんは今のお嬢さんの発言とよく似たことを言われてたみたいだがな。」


お嬢「え?どういうことですの?」


女兵「男兵ってさ、実はつい最近まで女勇者と一緒に旅してたんだよ。」


お嬢「……女勇者さんは大の男嫌いですわ。それが、一緒に旅を……?」


女兵「……そんでもって、女勇者の親父さんに言われたみたいだぜ。女勇者は男兵を気に入っている。他の男達とは全く違う、特別な気持ちで……」


お嬢「……つまり、男兵さんには、左目や女勇者さんを惹き付けるような魅力がある……と?」

女兵「……或いは、女勇者や左目の男趣味がおかしいだけなのかもな……」

お嬢「でも……女勇者さんがその男兵さんのことを意識してるだなんて……」


女兵「ああ、それなら心配ないさ。意識してると言っても、恋的な意味ではないようだし……」

お嬢「え?何故分かるんですの?」

女兵「だって勇者様が好きなのは可愛い女の子なんだろ?
男兵は残念ながら嫌味たらしい男だからな……」


お嬢「……そうですわよね………あの方が、男を好きになるワケ……」

女兵「それに男兵の方も勇者様のことなんて特に気に掛けてないようだし……。
だが安心するのは早いぞ?勇者はハーレム作りたがってるし、早い内に手を出しといた方がいいぞ?」


お嬢「……へ?」

女兵「好きな気持ちを文面に表すなり、直接言葉にしてぶつけるなりして、ライバル達よりも先にやった方が良いってことさ♪」



お嬢「え、あ、な、何を言ってるんですの!!?わ、私は、べ、別に……/////」


女兵「まー、はぐらかすならそれでもいいけどな。
……俺は誰の味方にもなれないからな。やるんなら、自分の力でやってくれよな。お嬢様。」


お嬢「………。
……私が一番やっかいだと思ってるのは、あなたですのよ?女兵さん……」


女兵「ふ~ん、なら安心しな。俺は既に戦線を脱してるからな。」


お嬢「それこそ、あなたの一方的な考え。当の女勇者さん自身はそう思っていませんわよ……」



女兵「……だろうな。全く、面倒な勇者様だよ……」


~教会の街・郊外の大聖堂~


男兵「……だ~れも居ないな~、でっかい建物だってんのに……」

ミドリ「元々はこの巨大聖堂を中心に教会の街があったのですが、最近起きた魔王軍との戦闘によって街の人達は、今では少し離れた場所にある帝国軍の要塞の周りに新たな街が出来つつあります……」


男兵「なるほどね……あの闘いのせいで、街は廃墟になったもんな。」

魔法使い「でもこの建物、全く傷ついてないですよ?ただ古いってだけで……」

男兵「そういやそうだな。なんでこの建物はそんなに被害を受けてないんだ?」

ミドリ「それは……分かりません。」

男兵「なんだ、偉そーに知識語ってたわりにはあっけないな。」

ミドリ「むっ………あなたこそ、戦闘の当時者なのなら、私より詳しくてもおかしくないんじゃないですか!?」


男兵「悪いがこの辺りのことは知らないな。俺が居た戦場はもっと前、最前線ってやつだったからな。」

ミドリ「……そんな所にいて生き延びたっていうんですか?ただの人間が……」

男兵「まー、俺以外の奴らは見事に全滅したみたいだけどな……。」


ミドリ「……その話が本当なら、あなたは英雄扱いで今頃帝都の中位将軍クラスであってもおかしくないはず……」

男兵「そうだよな。激戦を勝ち抜いた英雄が未だにこんな地方の凡人軍将をやってるワケないよな?」

ミドリ「……あなたの素性が掴めません……」

男兵「そう簡単には掴ませません……って事だよ。」



魔法使い「……ミドリさん、だんだん口数が多くなってきましたね……」

ミドリ「!?……わ、私は別に、お前達と馴れ合うつもりなど……」


魔法使い「あの……自己紹介がまだでしたね。私は……帝都のレストランでコックをしてました。今は勇者様のパーティーの魔法使いです。」

ミドリ「なっ……あ……ミ、ミドリです。よろしくお願いします……」

男兵「あー、俺はしがない帝国軍人だ、よろしく。」

ミドリ「それはもう知ってます。」

男兵「嫌いなのは女勇者様に魔王さん、後は役立たずの帝国皇族ども。後、その魔王さんにくだらない忠誠心を持ってる奴ら……だな。」

ミドリ「私もあなたが嫌いです!」

魔法使い「あはは……でも、なんかいい感じに馴染んでる様な……」

吸血姫「うぅ……ここは気分が悪くなるわね……」

魔法使い「教会といえば光の加護をうける聖地ですしね。多分、魔族の人にはよくない場所なのでは……」


男兵「なら、こっちの魔王の部下さんは何故平気なんだ?」

ミドリ「純粋な高貴魔族の吸血姫さんとはもとが違うんです。私の本性は人間ですから……」

吸血姫「……うぷ……吐きそう……」

男兵「勘弁しろよな、せっかくの聖堂が汚れちまう。」


吸血姫「……う……#$%&'[@\・、}^^#!:;!!!!!」
ザバーッ


男兵「あーあ……」

魔法使い「……て、うわぁー!?きゅ、吸血姫さん!?血っ!!血を吐きましたよ!?それも大量に……!!」

男兵「そりゃあ、吸血姫の戻す食物つったら、血だろな……」

ミドリ「一面、血の海ですね。」


吸血姫「ケホッ……私ともあろうものが、こんな……はしたない……」

魔法使い「……ていうか、大丈夫ですか……?い、生きてるんですよね……?」



バサッ   バサッ
羽女「はいぃ~。またまた登場の帝国郵書ハーピーの者で~す。」

ズルッ
羽女「ほぎゃっ!!」
ビシャッ!!


ミドリ「あ……転けました……」

羽女「アタタタ……何!?この水溜まり………って、真っ赤!?血の海!?」

男兵「うわ……色々気持ち悪ぃ……」

羽女「……ぐっ……あ……な、なんだか苦しい……」

吸血姫「……私の……吐いた血ですから……高濃度の闇の力が含まれてる……から……」

男兵「つまり浴びたらタダでは済まない……とな。
いや~、次からは気をつけないとな。」

羽女「う……ご………もうダメ………
………#$%&'[@\・、}^^^#!:;!!!!!^^」
ザバーッ


魔法使い「わーっ!?ハーピーさんも吐いちゃったの!!?」

男兵「……しかも今度は羽根ばっか吐きやがった……」

ミドリ「まぁ……鳥ですし、羽根を吐いても……」

男兵「猫の毛玉じゃあるまいし……。きっと、単純に食った物を吐いただけだろ。」

魔法使い「ハ、ハーピーって肉食なんですね……」

ミドリ「しかも同じ鳥を……共食いですね。」

羽女「ち、違っ……。これは……可愛い同僚の娘がいて……あの娘の事が好きで……胸が空しくて……ついその娘の羽根をオカズに……////////」


男兵「要するに、お腹が空いたから、“同僚”を食べたんだとさ。」

ミドリ「やっぱり共食いですね。」

バキッ


ミドリ「あ、大十字架が折れましたね。」

男「吸血姫が血なんか吐くから、聖堂を穢れたんだろな。」

吸血姫「私の……せいにする気……?……うぅ……」

羽女「うー……身体に闇が回る………誰か治癒術師を……」


男兵「おーい、シスター。」





シスター「ああ……偉大なる神よ……」


魔法使い「シスターさん……聖堂に入ってからあの調子……」

男兵「ありゃ使い物になんねーな……。」

羽女「うぅ……」

男兵「ほら、聖水振り掛けてやるから……」
ピシャッ

羽女「あ……う………

………ふぅ~……な、なんとか助かりました~。ありがとうございます。」

男兵「いや、別に。
……聖堂に飾ってたの勝手に使ったが、まぁいいか……。
ほれ、吸血姫も……」


吸血姫「私がそんなの浴びたら身体が浄化されてボロボロになっちゃうじゃない!!………うぅ……大きな声を出したらまだ……」


男兵「……とは言っても、他にどうしようもないしな……」

ミドリ「……というより、何故魔族のあなたが聖堂などに……?」

吸血姫「……だって……」



シスター「……ああ……主よ……」キラキラ~ン☆



吸血姫「シスターの……あんなに嬉しそうな姿……それを見たくて……」

男兵「……難儀な関係だな。聖職者と仲良くなる魔族だなんて……」

シスター「……さて……吸血姫様……」

吸血姫「……え?シスター……」

シスター「お時間掛けて申し訳ありませんでした。
改めて、ようこそ。中央聖堂、聖なる神域へ……」

吸血姫「え……ええ……」

シスター「……やはり、少し気分を悪くされてますね……。
ここは神様のお膝元、にも関わらず闇の種族にはここの聖なる雰囲気が毒となる……」


吸血姫「平気よ……これくらい……」


男兵「よく言うぜ、もう一人で立つのもやっとなクセに……」


シスター「……大丈夫です。……その……私の聖水を使えば……きっと…」

吸血姫「気持ちはありがたいけど、聖水なんて浴びたら……私は……」

シスター「普通の聖水なら魔族の者に害を与えるでしょう。でも、私のなら……神の意志の下、あらゆる魔族を救いたいと思う私の願いを込めた聖水なら……。
……こんな未熟な私でも、吸血姫様だけならお救いできるかもしれません。」


ミドリ「自信があるようですね?でも、もし失敗したら、吸血姫さんはただでは済みませんよ?」

男兵「今までのシスターを見てたら、まぁ可能かもしれないな。特に吸血姫との仲を見ても……」

魔法使い「あの二人、本当に仲良いですし……あの二人なら……」

ミドリ「……止めないつもりですね?」

魔法使い「ええ、少し様子を見るべきだね。」

吸血姫「それで……あなたの聖水はどこなの……?」

シスター「はい。たった今作りました。こうやって、聖堂の中心で神に念を捧げることにより……。多分、主にも私の意志が通じたはずです。」


吸血姫「……作った……神に祈ってるだけで作れるの……?」

シスター「……それでですね……あ、あのー……」


吸血姫「……?……どうかしたの……?」

シスター「……い、今から聖水を“出そう”と思うんですけれど……。
……吸血姫様が御不快に思うかもしれないし……」


吸血姫「……え……?」




男兵「??聖水ってのは作るもんなのか?」

魔法使い「聖水は湧き出る物ですよ。聖なる泉と言われる場所が世界のどこかにありましてね……」


ミドリ「それも聖水と言われますね。一般に対魔戦闘に使われる武器とされているのがそちらです。
しかし、“清める”という意味での聖水が別にあります。清らかな水と書いて“清水”と言われる事もあります。」

男兵「清める……?」

ミドリ「例えば、聖職者の卵が一人前になる時に、その者の清水を聖堂に捧げたりします。」

男兵「あ、じゃあまさか……」

魔法使い「先ほどハーピーさんに使われたのは、誰かがこの聖堂に捧げた清水だったってこと……?」

羽女「うわー……私、そんなの使って平気だったのかな?ちょっと飲んじゃったし……」


ミドリ「恐らく、聖職者へと成長する中で、しっかりと光の加護を受けた者の清水だったのですね。闇を払うという本来の役割もしっかり果たしたみたいですし……」



男兵「……で?」

ミドリ「……?」

男兵「清水ってのは、どうやって作るんだ?」

ミドリ「作るというより、作られる物です。
……もうシスターさんの身体の仲で……」


魔法使い「……え?」
羽女「ん?」


男兵「これは……嫌な予感……」

吸血姫「つまり……まだ出してないのね………」


シスター「は……はい……」


吸血姫「なら……早く出しなさい……」

シスター「…………。

……やっぱりダメです……」

吸血姫「……どうして……?」

シスター「吸血姫様に私のなんかを使うなんて……こんな未熟な私のなんか……駄目です!!吸血姫様が穢れてしまいます!!」

吸血姫「なっ……だって、あなた……聖職者になるにあたって、1度は神に捧げたこともあるんでしょ……?神には捧げれて……私は無理だっていうの!?」


シスター「か、神様は実際に私のをお使いになるワケではないんです!ただお供えするだけなんです!!でも、吸血姫様は実際にお使いになるんですよ!?
実在しない神様に捧げるのと、今ここにいる吸血姫様がお使いになるのとでは全く違うんです!!」



男兵「今シスターのやつ、神の存在を否定しなかったか?」

魔法使い「シスターさん、たまに現実的になるよね……」



シスター「………私のなんか……私のなんかじゃ駄目です……。教会の街には私なんかよりも素晴らしいシスター達がいますし、あの方達に……」



吸血姫「……私に……シスター?あなたは私に、あなた以外の女性の清水を浴びろと言うの……?」

シスター「……その方が効果的ですし……」

吸血姫「ふざけないで!!」

シスター「!!」


吸血姫「シスター……お願い……。多分、他のシスターのを浴びたら、私は浄化されちゃうわ……。
私を癒してくれるのは、本当に私のことを思っててくれてるあなたのだけ……。

そして……私はあなたのしか受け付けないわ……」

シスター「……吸血姫様……私は……貴方様を……私のなんかで穢したくない……」


吸血姫「あなたので私の身体が穢れるワケがないわ………あなたのだからこそ……」


シスター「………。



分かりました……。吸血姫様の為に……私が……」




魔法使い「シスターさん、決意したみたいですね。」

男兵「あのシスターがあんなに奥手になるなんて、よほど卑屈になってるのか……」

ミドリ「或いは、吸血姫さんが大切だからこそ、躊躇してしまうのか……」

羽女「……百合百合しいですねぇ……」



~30分後~


男兵「………」

魔法使い「/////」

ミドリ「/////」

羽女「……あ……あ……/////」



吸血姫「……ふぅ……どうやら助かったようね。あなたのおかげよ?シスター……」


シスター「……はぁ……はぁ……は、はい……これも……神のお力……です……」


羽女「こ、この変態女めぇ!!!!」

シスター「……え……?」

羽女「普段は清楚な雰囲気出してるくせに、いきなり修道着の裾を上げて……そんな……皆の見ている前で……ひ、独りで………」


魔法使い「……シスターさん……大胆ですね……////」

男兵「まー、そこがシスターのいいところなのかもな……」


ミドリ「……あなたは紳士ですね?シスターさんが頼んだワケでもないのに、早々と聖堂を飛び出して……」

吸血姫「あら……せっかくシスターの可愛い姿が見れたのに。残念ね。こんなチャンス、2度とないわよ?」

シスター「男兵様……やはり、私のはしたない姿なんて見たくなかったんですよね……。すいません、許しも得ずにいきなり目の前で……」


男兵「い、いや……そこを謝れても……」

吸血姫「シスターの姿……綺麗だったわ。赤く火照った頬、静かな息つき、子猫みたいな喘ぎ声……」


シスター「……すいません……私、慣れてなくて……。聖職者へとなる儀式用に出した時以来でしたので……」

吸血姫「……いいえ。初初しくてよかった。
……でもシスター、お願いがあるの。」

シスター「……はい?なんでしょうか?」

吸血姫「……これからどんな事があっても、今の姿を私以外の他人には見せないでね。お願いよ……シスター。」

シスター「……?は、はい。分かりました……」


吸血姫「それから、男兵。」

男兵「ん?」

吸血姫「私のことを気遣ったつもりかもしれないけれど、それなら他の皆も連れて出ていって欲しかったわね……」

男兵「あー、そんな余裕はなかった。悪かったな。」


吸血姫「……いえ。まぁ、いいわ。」

羽女「男兵さん!!じゃあ、さっきあなたがわたしにかけた聖水は……まさか!?」


男兵「落ち着けって。そこに飾ってたってだけで、まだ“清水”って決まったわけじゃ……」


シスター「そこ……って、その女神像の前ですか?それは神の僕の一人、迷える人々の意志を神に伝える役割を持つ女神の像です。シスターは清水をその女神像に捧げ、彼の者を通して神に意志を伝えるのです。」


吸血姫「つまり、さっきのはその女神に捧げられた“清水”だったってことね?」

男兵「マジでか……」


羽女「な、な、………なななななななななななにななななななぁああああ?!!!!!!!!!」


男兵「まぁ、気にするな。たかが知らない女の“清水”かぶったぐらいで……」


羽女「け、汚らわしいです!!知らない女のをかぶるだなんて、汚らわしいにも程があります!!!」

男兵「まぁ………正論だな。勇者なら喜びそうだがな。」

吸血姫「でも、お友達の羽根を食べてた様な変態さんの言う台詞かしら?」

羽女「……そ、それとは別問題です!!!」


男兵「まぁ、確かに。」


羽女「さっきから納得ばっかりしてないで!!あなたのせいですよ!?どうしてくれるんですかぁあ!!!?」

男兵「……。
あ。そういや、なんか届け物があるんじゃないか?だからまた戻って来たんだろ?」


羽女「え?……まぁ……ありますけど………」

男兵「今度は誰からだ?また帝都軍将か?それとも近所に住んでたオバサンからか?」

羽女「いえ、今回は第3軍からの便です。“交易の街”の軍将さんである男兵さん宛てに……」



男兵「!!………ついにきたか……」

魔法使い「……?第3軍ってことは……」

吸血姫「次の高位軍将が誰になるか、が決まったってことかしら……?」

男兵「第3軍に所属してた知り合いに、なんか決定事項があったら連絡しろって言っておいたんだ。
多分、なんか動きがあったんだろうな。ご苦労なこった。」


魔法使い「それで?どうなったんですか?第3軍の情勢は……」

~魔法使いの過去~


旧友(12歳)「……うぅっ……ぐすん……」

魔法使い(9歳)「お兄様……また泣いてるの?」

旧友「……うぇ……ひぐっ……」

魔法使い「またあいつらに虐められたの?
……なら、私が一喝してきます……」

旧友「そ、そんなことしたら……仕返しが……」


魔法使い「……大丈夫。その時は、私がお兄様を守るから……」









養母「……それで、お兄さんを泣かした仕返しの為に、またあなたは近所の男の子達をケガさせたのね?」

魔法使い「……すいません。」

養母「……まぁ、その一件を見ていた人達によると、向こうの男の子達もあなたを傷つける様なことを言ってたみたいだし。
日頃のあなたの行いも考慮して、今回はこれ以上のお説教はしません。

……でも、お兄さんの為だからと言って、むやみに他の子を傷つけては駄目ですよ!いいですね?」



魔法使い「……はい。」






旧友「……ごめん……僕なんかの為に……魔法使いちゃんが怒られて……」

魔法使い「……気にしないでよ。私は……お兄さんを守れたから……」






養母「お兄さんの方は気弱で泣き虫で……。それに比べて、妹さんの方はしっかりしてますね。ただ、たまにお兄さんのことを庇って少々行いが荒っぽくなりますね。」


第3軍将(故)「なるほど……。面白い子供達だな。」

第3軍将書記(当時の)「彼らのご両親についての情報はありますか?」


養母「えと……確か……」

孤児A「そーれ!パス!!」

孤児B「よぉし、任せろ!」




旧友「………」

魔法使い「……あの……お兄様。」

旧友「な、なに?どうしたの?」

魔法使い「……彼ら、サッカーしている人達と一緒に遊びたいんじゃ?」

旧友「……別に……。どうせ、僕はサッカー弱いから……」



孤児C(女子)「魔法使いちゃ~ん。一緒に遊ぼ?」

魔法使い「あ……うん。でも、お兄様が……」

孤児D(女子)「なら、旧友君も一緒に遊ぼうよ。」


旧友「え?………でも、僕は男だし……女の子と遊ぶのなんて、変なんじゃ……」

孤児C「あはは、へーきへーき。だよね?魔法使いちゃん。」

魔法使い「うん。お兄様、一緒に遊ぼうよ?」


旧友「……うん。」










~その夕方~

魔法使い「……。」

旧友「……ねぇ、魔法使いちゃん。どうして、ついて来るの?」

魔法使い「……お兄様と一緒に居たいから……」

旧友「……そ、そぉ……。」


魔法使い「……あ、あの、お兄様……」


旧友「ジュ、ジュース取ってきてあげる!!なにがいい?コーラ?オレンジ?」

魔法使い「え?あ、オ、オレンジ…」

魔法使い「………」



……お兄様、私のことが邪魔なのかな……?
……いつも一緒だから……。
でも、お兄様が近くに居なかったら………
………私……




魔法使い「………」





ザザッ……
男兵(12)「……ん?」

魔法使い「……え?」

男兵「……おぉ…」



……誰?この子……。施設の塀を乗り越えてきた……?


男兵「ん?……あ、そうか。ここ、養護施設だったのか……」

魔法使い「……あなた、誰?」

男兵「他人に名前を聞くときは、先に自分から名乗るもんじゃないのか?お母さんにそう教わっただろ。」

魔法使い「私……お母さん、居ない……」

男兵「ああ……だから施設に居るんだもんな。
とりあえず、男兵って呼んでくれ。」

魔法使い「………私は……」


男兵「養護施設の滅茶苦茶強いチビ女、って呼ばれてるぞ?お前、男5人を泣かしたんだろ?強ぇ~な?」

魔法使い「………」

訂正
>>64で、男兵は魔法使いが8歳の時に出会ったって描写をしてたみたいなんで

>>502を優先して、>>64を9歳に訂正します

~現在、教会の街、大聖堂、夜~



羽女「いただきま~す♪」

吸血姫「……どうしてあなたまで一緒に食べてるの?」

魔法使い「いいじゃないですか。皆で食べた方が、ご飯は美味しいですよ。」


シスター「この大いなる神のお膝元、大教会の聖堂で大切な方々と食すお食事。このかけがえのない一時、全ては神から贈されしもの……」


羽女「……あの、シスターさんは何を言っているんですか?」

吸血姫「ザ・シスター・ズ・ワールド。関わらない方が、身のためよ。」

魔法使い「シスターさんは、独特な世界観を持ってるんです。」

羽女「……というより、こんな歴史ある大聖堂の中で、勝手に食事を食べたりしても平気なんでしょうか?」


吸血姫「いいんじゃないかしら?ここは神の目先。神達に、私達が美味しそうに食べる姿を見せつけてやれば。」


魔法使い「……そうだ。せっかくだし、神様に何かお供え物でもした方がいいのかな?」

吸血姫「あら、お供え物なら、先程私がお供えしたんじゃなくて?」

魔法使い「え?それって………」

羽女「あの血ゲロのこと……?」


吸血姫「ゲロって言わないで!
高貴な吸血一族が体内から出す血はただの血ではないわ。闇の力を秘めた、最高級の産物よ。」

羽女「……そんな物をお供えしたら、神様が怒るんじゃ……」

魔法使い「実際、巨大十字架が折れてましたしね……。
あれ、あのまま放っておいていいのでしょうか?」


羽女「あれ……そういえば、あの折れた十字架は……?」



シスター「ああ……この十字架の下、私は神の意思の下……」キラキラキラ……



吸血姫「シスターが手に持って、天に掲げたりしてるわね。」

魔法使い「シ、シスターさん……」


羽女「……あいつ、本当に変な奴……」

~教会の街・市街地・帝国軍基地詰所~


同僚J(教会の街・下位軍将)「そんなに文句があるのなら、また交易の街に戻ればいいだろうが。軍将の仕事サボってるくせに、権限だけは主張する気か~?」

男兵「今更口出しても、首きられて終わるだけだろ。まー、こんだけ仕事放り出して好き勝手してても、上層部に文句さえ言わなければクビにはなんねーみたいだけどな……」


同僚K(教会の街・特殊部隊員)「文句さえ言わなければ、ちゃんとした給料だけは貰らえるってことか。ホント、いい職につけてよかったな。」


男兵「はは、そっちだって似たようなもんだろ?」

同僚K「まあな。だが、この仕事も退屈だぜ。ついこの前まで戦場だった街も、今となってはかなり再開発されているし。
教会の輩と帝国軍とのにらみ合いも消えつつあるしな……」



ガチャン
黒メイドC「失礼します。軍将どの。」

同僚J「ん?ああ、君か。」


男兵「……誰だよ?この真っ黒なメイドは……」

同僚K「最近俺らが帝国軍に勧誘してる逸材だよ。かなりのやり手だぜ、この女……」

男兵「メイドのやり手って……掃除洗濯が秒単位で行えるとかか?」

同僚K「いやいや。メイドとしてではなく、ちゃんと兵士として勧誘してんだよ。」



同僚J「それで、我々第1軍特殊部隊に入隊してくれることを決意してくれたのか?」

黒メイドC「いいえ、その件については以前よりお断りしているはずです。」


同僚J「それは残念だな。君みたいな者に、是非とも入ってもらいたいんだが。」

同僚K「特殊部隊は自ら魔物達の巣や魔王軍の下での隠密行動、或いは敵を影から殲滅することを目的としたエリート部隊だからな。

誰かしらもが入れるわけじゃない。俺らはあんたの実力をかってるんだぜ?」


黒メイドC「……私には、私の私情があります。残念ですが……」




男兵「……実際は、魔王軍というより帝国軍内での仲間内の探り合いを目的とした部隊なんだろ?その特殊部隊とやらは……」

同僚J「………まぁ……そういった任務もたまにはあるな……」

男兵「情勢不安な第3軍や軍内ですら秘密が多い第2軍、そして帝都軍。第1軍としても、他の軍の内情を知りもせずに肩を並べたくはないよな。」


同僚K「………当たり前だろ。表面上仲良くやってはいても、相手の内面がどうなってるかは知りたいもんだろ?」


黒メイドC「……そのような隠密部隊なら、なおさら私の様な素性が知れない者は不適なのではないですか?」


男兵「素性が知れないって………あんたら、このお嬢さんのこと、何も知らないのか?」

同僚J「ああ。この街に旅のついでに偶然立ち寄った旅人らいしんだがな。」

同僚K「出身や続柄も全く聞いていない。」

男兵「……よく、そんなのを特殊部隊なんかに勧誘するな……」

同僚K「軽い一目惚れだよ。その女が、養護施設を襲った強盗を捕える姿が勇ましくてね……」


黒メイドC「………」

~教会の街・夜の小路~


男兵「あの軍将どのも、まぁまぁいい奴だぜ。昔から頭のキレるし、浅い考えはしないはずだ。」

黒メイドC「でしょうね。」

男兵「かなり、あんたのことをかってくれてたと思うぞ?それでも入隊を断るのか?」

黒メイドC「ええ。私には使命がありますから……」

男兵「なるほどね。どうやら、かなり面倒くさい使命をお持ちらしいな。そりゃ大変だな。」


黒メイドC「………。」




男兵「………んでさ。さっきから、なんで俺の後をついて来てんだ?」

黒メイドC「私が軍将どののもとを訪れたのは、あなたが来ていると聞いたからです。男兵さん。」

男兵「俺?俺に会いたかった理由でもあるのか?」


黒メイドC「ええ。私は………」




「黒メイドCさん!!こんな所に居たんですか?とっくに帰還命令が出てるんですから、早く花園に帰らないと……」


黒メイドC「!!……あなた……」

男兵「ん?お前……」

黒メイドD「…………。
……ささ、メイドCさん。さっさと帰りましょ……」

男兵「………お前、ひょっとして同僚Dか?」


黒メイドD「ギクッ……」

男兵「………。いやいや、まさかな。戦乙女で名高い剣士で、男兵やらと共に各地戦場を歩き回った優兵がこんなところで、しかもそんなメイドのコスプレなんてしてるワケないか……。」



黒メイドD「………あ……その………ど、同僚Dなんてお方、私は知りませんわ!きっと、人違いですよ!!」


男兵「………ふーん。」

黒メイドD「……おほほ……」汗汗

黒メイドD(ぐっ!!よりにもよって男兵に知られるなんて……。

両親の病難の為に戦乙女を辞めて看病をしてたものの、両親は他界。その後、両親の残した借金が発覚して、16歳の若さで身売りにあって……。
そしたら、黒メイド隊長様が助けて下さって、黒メイド部隊に入れてもらえた………。

こんな無様な生き様、男兵だけには知られたく……)

男兵「……まぁ、あの同僚Dさんは親の残した借金で身売りにあったらしいからな。今ごろ、どっかの王国の城の地下でキツい労働にでも励んでるだろな。」ボソッ

黒メイドD「!!!!」


男兵「……とまぁ、同僚Cの奴に聞いた噂だったんだがな……」

黒メイドD「………お、おほほ。同僚Cさん?誰なんでしょうね?おほ、おほほほほ………」

~教会の街・夜の裏道~


黒メイドD「……あー、ありゃ絶対バレたわ。男兵に……」


黒メイドC「……なら、わざわざ男兵の前に姿を現さなければよかったのに……」

黒メイドD「……だって………黒メイドCさんが……」

黒メイドC「………」



黒メイドD「“お父さんの仇”を目の前にして、もう少しで剣を抜くところだったんでしょ……」

黒メイドC「…………」

黒メイドD「あなたのお父様は、魔王軍の寄生蟲に操られて味方に襲いかかったのよ。それを止めたのが……」

黒メイドC「当時、父の部下の1人であった男兵。あいつが……父を……」


黒メイドD「あなたのお父さんがあれ以上仲間の兵士を殺す前に、男兵がそれを止めた。結果的には、殺すハメになったようだけれども……」



黒メイドC「それが正当な行為だったことは分かっている。だが、自分の師匠を殺しておいて、それでも平然と帝国兵士を続けて、勇者の仲間になって……。

おかしくはないか?それが父を……仲間を殺した兵士の送る人生か?人を殺しておいて、悪びれた様子もなく、以前と変わらないような生活をしている……」


黒メイドD「……。確かに、男兵は帝国軍人として普通に過ごしてた。過去に捕らわれることもなく……。例え、自分の仲間を戦場で失い続けてても……普通に……」


黒メイドC「……あいつは人間ではない……。私の父は、あんな血も涙もない奴に殺された……。
……許せない……。例え非道なことだと分かっていても、あいつに剣を向けたくて仕方がない……」



黒メイドC「……お願い、メイドDさん。私のパートナーになった以上、私にはあなたを止める権利があると思うの。」

黒メイドD「……私の仇討ちを止める権利が、あなたにあるとでも言うのか……?」

黒メイドC「あなたは分かってない……。男兵は例え信頼してた仲間が敵になったとしても、刃が鈍ったりはしない。相手が子供でも老人でも、いざって時には切り捨てる。

メイドCさん。1度でも男兵に刃を向けたら、彼はあなたに容赦しないわよ。」


黒メイドC「その時は……私が奴をきる。例え、この身を捨ててでも……」

黒メイドD「……無理よ……男兵はそんな簡単に倒せる相手じゃないわ。」

黒メイドC「男兵が力量で私に勝っているとでもいうの?そんなに、あいつは強いって言いたいの?」

黒メイドD「……例えば剣術だけなら、今でも私の方が男兵より強いわ。彼の剣術は昔から型はずれのボロボロなのだったし。

でも、男兵は戦場で私なんかよりも腕のたつ剣士に勝ったことが何度もあった。


彼、剣術は苦手だけど、強い剣士との戦いで“生き延びる”ことに関しては、かなり優秀なのよ。」

~教会の街・郊外の大聖堂・テラス~


ミドリ「………」


グゥ~

ミドリ「………」


羽女「魔法使いさんだっけ。あの人のご飯、美味しかったなぁ~。」

ミドリ「………」

羽女「あなたも食べばよかったのに……」

ミドリ「………」

羽女「………」


グゥ~~~~~

ミドリ「………」




魔法使い「あ、こんな所に居たんですね。」

ミドリ「………」

魔法使い「……月が綺麗ですね……」

羽女「ホントだね~♪」

ミドリ「………」



コトン

ミドリ「……」

羽女「魔法使いさん?それは……」

魔法使い「はい、ミドリさんの為にまた料理作ってきました。」

ミドリ「………」

魔法使い「綺麗な月の下で食べる食事も風情があっていいですよね。」

羽女「そうですね~♪月見酒とかいいですね、お酒ありませんか?」

魔法使い「ごめんなさい……私達はまだ未成年なので……」


ミドリ「…私なんかに構わくてもいいのに……」

魔法使い「ごめん……私、お節介だから……」


ミドリ「……愚かですね……」

羽女「せっかくの好意を無駄にするなら、あなたの方が愚かになりますよ?」

ミドリ「……そのようですね。食材を無駄にするワケにもいきませんしね……」

魔法使い「たま~に、ミドリさんは素直になりますよね?」


ミドリ「私は別に他人に反抗するのが楽しいワケではありません。」

羽女「でも、私達……というよりも勇者の仲間にはかなり反抗的な態度とってますね?」

ミドリ「私は今の勇者と仲良くできない。……あの人を裏切りたくないから。」


魔法使い「……あなたにとって、その人は大事な人なの?」

ミドリ「大事……。命にかえても守りたい、と思ってる人です。」

魔法使い「そっかぁ……。今の私には理解できないや……」

ミドリ「あの人のことを未だに想っている私の気持ちがですか?」

魔法使い「それもだけど、命にかえても守りたいと思う気持ちの方もかな。」


ミドリ「?あなたには、そう思える様な人は居ないんですか?」

魔法使い「うん。というより、私にとって大事な人は、別に私が助けなくても、一人で何でもこなしちゃう人だからね。」


ミドリ「その人は凄い人なんですね。
でも、人間誰しもが全ての問題を一人で片付ける力を持ち合わせてるとは限りませんから。」



魔法使い「……面倒くさいよ?」

ミドリ「え?」


魔法使い「自分が他人を守るんだ、助けなきゃ、て。自分を暗示で縛り付けて、その人のことをいつも想って、心配して………。」

ミドリ「………」

魔法使い「それで、最終的にその人の為に命を落とすかもしれない。そんな自分の身を削ってまでして他人と付き合うのって……」


ミドリ「本当に大切な人を想うのなら、自分の身体のことなんか後回しです。」


魔法使い「それで?その人を自分の身体を挺してまで守って、なんになるっていうんですか?」

ミドリ「………」

魔法使い「私は……私も昔は、ある人の為なら何でもする覚悟で過ごしてました。
でも………疲れちゃいました。どんどんボロボロになっていく自分の身体に……その人のことを虚しく想う気持ちに……」


ミドリ「え……」

魔法使い「そう思ったら、なんだか馬鹿馬鹿しい感じになってきてね……。だって、馬鹿馬鹿しいじゃん……でしょ?」

ミドリ「………」

魔法使い「……私にとって大事だった人、泣き虫で、一人じゃなにもできない人。」

羽女「……出来損ないのヘタレだったんですね……その人……」


魔法使い「私は、その人に助けられたことなんて1度もなかった。結局最後まで、私が助けっぱなしだった……」


ミドリ「……その人って……一体……」



魔法使い「一方で、私のことをいつも守ってくれる人が現れた。スッゴく強くて、頼もしくて……」

ミドリ「……それは、男兵のことですね。」

魔法使い「守られる安心感、頼りになる人が身近にいることが、こんなに心が和らぐだなんて思わなかった。」


ミドリ「……別に私の大事な人だって、弱いワケじゃないんですよ……」

魔法使い「でも、心配なんだよね?その人と離れると……」

ミドリ「ええ…まぁ…」

魔法使い「私は、むしろ離れていた方が気楽です。近くにいると、若干気に掛けてしまいますからね。」


ミドリ「……そんなに信頼してるの?男兵のことを……」


魔法使い「うん。あの人は、凄いからね………」




羽女「……ミドリさん。あなたの想い人が、あなたに苦痛ばかり与えて何の見返りもないようなら、捨てた方がいいですよ?」



ミドリ「………」

~教会の街・夜の裏道~


黒メイドD「……あー、ありゃ絶対にバレたわ。男兵に……」


黒メイドC「……なら、わざわざ男兵の前に姿を現さなければよかったのに……」

黒メイドD「……だって………黒メイドCさんが……」

黒メイドC「………」



黒メイドD「“お父さんの仇”を目の前にして、もう少しで剣を抜くところだったんでしょ……」

黒メイドC「…………」

黒メイドD「あなたのお父様は、魔王軍の寄生蟲に操られて味方に襲いかかったのよ。それを止めたのが……」

黒メイドC「当時、父の部下の1人であった男兵。あいつが……父を……」


黒メイドD「あなたのお父さんがあれ以上仲間の兵士を[ピーーー]前に、男兵がそれを止めた。結果的には、[ピーーー]ハメになったようだけれども……」



黒メイドC「それが正当な行為だったことは分かっている。だが、自分の師匠を殺しておいて、それでも平然と帝国兵士を続けて、勇者の仲間になって……。

おかしくはないか?それが父を……仲間を殺した兵士の送る人生か?人を殺しておいて、悪びれた様子もなく、以前と変わらないような生活をしている……」


黒メイドD「……。確かに、男兵は帝国軍人として普通に過ごしてた。過去に捕らわれることもなく……。例え、自分の仲間を戦場で失い続けてても……普通に……」


黒メイドC「……あいつは人間ではない……。私の父は、あんな血も涙もない奴に殺された……。
……許せない……。例え非道なことだと分かっていても、あいつに剣を向けたくて仕方がない……」

黒メイドD「……お願い、メイドCさん。私のパートナーになった以上、私にはあなたを止める権利があると思うの。」

黒メイドC「……私の仇討ちを止める権利が、あなたにあるとでも?」

黒メイドD「あなたは分かってない……。男兵は例え信頼してた仲間が敵になったとしても、刃が鈍ったりはしない。相手が子供でも老人でも、いざって時には切り捨てる。

メイドCさん。1度でも男兵に刃を向けたら、彼はあなたに容赦しないわよ。」


黒メイドC「その時は……私が奴をきる。例え、この身を捨ててでも……」

黒メイドD「……無理よ……男兵はそんな簡単に倒せる相手じゃない。」

黒メイドC「男兵が力量で私に勝っているとでもいうの?そんなに、あいつは強いって言いたいの?」

黒メイドD「……例えば剣術だけなら、今でも私の方が男兵より強いわ。彼の剣術は昔から型はずれのボロボロなのだったし。

でも、男兵は戦場で私なんかよりも腕のたつ剣士に勝ったことが何度もあった。


彼、剣術は苦手だけど、強い剣士との戦いで“生き延びる”ことに関しては超一流みたいだから……」

<つぶやき>
>>515saga忘れたから、真面目な話してるのに、ピーー入れられたし

[ピーーー]って言葉使ってわるいかコノヤローが!![ピーーー]て、更に[ピーーー]て、[ピーーー]で[ピーーー]で殺しまくるぞ!!!このアホんだらぁー!!^^

~教会の街・夜の裏道~


黒メイドD「……あー、ありゃ絶対にバレたわ。男兵に……」


黒メイドC「……なら、わざわざ男兵の前に姿を現さなければよかったのに……」

黒メイドD「……だって………黒メイドCさんが……」

黒メイドC「………」



黒メイドD「“お父さんの仇”を目の前にして、もう少しで剣を抜くところだったんでしょ……」

黒メイドC「…………」

黒メイドD「あなたのお父様は、魔王軍の寄生蟲に操られて味方に襲いかかったのよ。それを止めたのが……」

黒メイドC「当時、父の部下の1人であった男兵。あいつが……父を……」


黒メイドD「あなたのお父さんがあれ以上仲間の兵士殺してしまう前に、男兵がそれを止めた。結果的には、殺してしまうハメになったようだけれども……」



黒メイドC「それが正当な行為だったことは分かっている。だが、自分の師匠を殺しておいて、それでも平然と帝国兵士を続けて、勇者の仲間になって……。

おかしくはないか?それが父を……仲間を殺した兵士の送る人生か?人を殺しておいて、悪びれた様子もなく、以前と変わらないような生活をしている……」


黒メイドD「……。確かに、男兵は帝国軍人として普通に過ごしてた。過去に捕らわれることもなく……。例え、自分の仲間を戦場で失い続けてても……普通に……」


黒メイドC「……あいつは人間ではない……。私の父は、あんな血も涙もない奴に殺された……。
……許せない……。例え非道なことだと分かっていても、あいつに剣を向けたくて仕方がない……」

黒メイドD「……お願い、メイドCさん。私のパートナーになった以上、私にはあなたを止める権利があると思うの。」

黒メイドC「……私の仇討ちを止める権利が、あなたにあるとでも?」

黒メイドD「あなたは分かってない……。男兵は例え信頼してた仲間が敵になったとしても、刃が鈍ったりはしない。相手が子供でも老人でも、いざって時には切り捨てる。

メイドCさん。1度でも男兵に刃を向けたら、彼はあなたに容赦しないわよ。」


黒メイドC「その時は……私が奴をきる。例え、この身を捨ててでも……」

黒メイドD「……無理よ……男兵はそんな簡単に倒せる相手じゃない。」

黒メイドC「男兵が力量で私に勝っているとでもいうの?そんなに、あいつは強いって言いたいの?」

黒メイドD「……例えば剣術だけなら、今でも私の方が男兵より強いわ。彼の剣術は昔から型はずれのボロボロなのだったし。

でも、男兵は戦場で私なんかよりも腕のたつ剣士に勝ったことが何度もあった。


彼、剣術は苦手だけど、強い剣士との戦いで“生き延びる”ことに関しては超一流みたいだから……」

~教会の街・郊外の大聖堂~

シスター「吸血姫様とこの地を訪れる日がくることを願っていましたが、ようやく夢が叶いました。」

吸血姫「そぉ?私はあなたが行く場所になら、どこへでもついていく覚悟ですのよ?シスター。」

シスター「でも、吸血姫様は魔の者ですし、教会の街にいらっしゃるなんてことは……」

吸血姫「確かにいい気分でにはなれないわね。こんな殺伐としたところ、旅の拠り所になんてしたくないわ。」


シスター「ええ。でも、吸血姫様にいつか是非、この大聖堂を見て欲しかったんです。」


吸血姫「……立派な建物ね。一国の城以上に高くそびえ立ち、しかも山の上にあるから周囲の土地を見渡せる……。
人間にしては、素晴らしい建造物だとは思うわ。」


シスター「はい。この建物は、ドワーフ様方の力やエルフ様方の英知を使った物ではございません。
帝国で数少ない、“人間”達の手によってのみ作られた建造物です。」


吸血姫「人間の力だけで作られた建物……でも、それなら他にもあるわよね?帝国城、あるいは帝都軍の本部施設とか……」


シスター「違うんです……。帝都のお城や軍施設は、人々が人々の為に建てたもの……。
でも、この大教会は、人々が神を思って……他の種族との平和を願って建てられモノなんです。」


吸血姫「あら、そう。人間が他の生き物達を思って……ね。」

吸血姫「シスター、平和って何かしら?」

シスター「全ての生き物が安心して暮らせる世界。誰も悲しむこともく、傷つくこともなく……」


吸血姫「まさに理想の世界……。全く現実味が感じられないわね。」

シスター「ええ……全ての生き物が平和に暮らせる世界なんて、非現実的かもしれませんね。
ただ、それを目指すという心が、人々には必要ではないでしょうか?
無理だ、不可能だと決めつけて、その平和に対する姿勢すら投げ出すのは、本当に愚かなことだと思います……」



吸血姫「そぉ……。あなたは発想は聖職者らしいのに、理想主義者ではないのね。……賢く、上手な行き方をしてるわ……」


シスター「そうでしょうか?」

吸血姫「ええ。あなたは他の聖職者達と同様に堅く強い信念を持っている。でも、周りの状況に合わせて、すぐその信念を変化させれる。しかも、自分の中で正当な理屈をつけて……。

……ほんと、柔軟よね。それで、よくシスターを続けられるわね?」


シスター「だって、私は神を………いえ、全ての生き物を愛していますから……。」


吸血姫「あら、じゃあ私のことも愛して下さってるのかしら?」

シスター「はい、もちろんです!」





吸血姫「………随分簡単に返事をしてくれるわね。」

シスター「え?あ……はい。すいません……」

吸血姫「……別に謝らなくてもいいわよ……」

シスター「……え~と、吸血姫様?何か怒っていらっしゃいますか?」


吸血姫「別に怒ってないわよ!」

シスター「え……でも……」


吸血姫(………鈍いのか、わざとなのか……。
ホント、シスターって掴み所がないわね……)


シスター「あ、あのぉ……」


吸血姫「………。そうね……」

シスター「?」

吸血姫「多少苛ついてはいるわね、私。
多分、食事をした後で、喉がウズいてるからですわ。」

シスター「きゃっ!?」

ドサッ

シスター「吸血姫様……?」


吸血姫「……痛かった?」

シスター「いえ……そこまでは……。」

吸血姫「そぉ、ならいいわ。
じゃあ、そのまま動かないでね……。」

シスター「……あのぉ、吸血姫様……。別にこんな風に押し倒さなくても、私はいつでも血を差し上げますけど……」


ビリッビリッビリッ!!

シスター「ええっ!?あ、あのぉ……きゅ、吸血姫様??どうして修道服を破くのですか……?」

吸血姫「ただ血を吸うだけじゃ面白くないわ。雰囲気よ、雰囲気♪」

シスター「……え、え~っとぉ……。やはり吸血姫様、何か怒っていらっしゃいますか……?」


吸血姫「いえ、怒っていないわよ。
ただ……」

シスター「……?」

吸血姫「もの凄く興奮してるわ。」


シスター「こ、興奮ですか……?」

吸血姫「……今、シスターは私の下で身動きを封じられ、身体を守護する修道服も剥ぎ取られ、その美しい艶体を私に晒してる……。

ホント、最高級な料理を目の前に、涎が止まりませんわね……。」


シスター「料理……ですか。それは魔法使い様のとどちらが凄いのでしょうか?」

吸血姫「あの娘の料理もなかなかよね。悪くはないわ。
でも、違うのよ。あの娘がどんなに美味しい料理を作っても、料理達は私を愛してくれたりはしないわ。
私は、私を愛してくれてるモノが欲しい……。」


ギュッ

シスター「っ!?……きゅ、吸血姫様……?」

吸血姫「シスター……。今日の私はいつも以上に興奮してるわよ。
もしかしたら、今日はあなたもただでは済まないかもしれないわ。」

シスター「はい……」

吸血姫「血を吸い付くして、あなたを殺してしまうかもしれないわ……」

シスター「分かりました。どうぞ、私の血を吸って下さい……」




吸血姫「……あなたは……どんなに脅しても、顔色一つ変えないわね。
ずっと涼しげな顔をして……」

シスター「例え死んだとしても、吸血姫様にゾンビとして生き返らせてもらえばいいですし……」


吸血姫「………聖職者がゾンビになるだなんて、神様に嫌われるわよ?」

シスター「そうでしょうか?」

吸血姫「さぁて、どうしてくれようかしらね……」


シスター「……?あの、吸血姫様?血をお吸いになるのでしたら、いつも通り首筋を……」

吸血姫「そうね。首筋を噛んだら、シスターの喘ぎ声が耳元で聞こえて気持ち良いわよね。
でも……今日は……」



サワ……

シスター「ひぁっ!?………きゅ、吸血姫様??」

吸血姫「シスター……あなた、本当に綺麗な身体ね……」

シスター「はい……私の身体は、常に神を願う心の清らかさが身を内側から神聖にしていって」


吸血姫「……うふふ…」

ペロッ

シスター「ひゃあ!?」

吸血姫「あら、可愛い声ね。シスターはここが弱いのかしら……」


ペロ  ペロ

シスター「っ……あぁっ……んんっ……」




カプッ

シスター「ひぃっ!?……あ……ああ……」

吸血姫「……ん……んん……」



チュルルルルルルルル……


シスター「……はぁ……はぁ……

……んっ……あ……」


吸血姫「ん………ん………ん……」


(……美味しい……)



シスター「……はぁ……あぁ………」


(シスター……あなたって、本当に美味しいわ………)



シスター「………吸血姫………様ぁ…あ……」



チュルルルルルルルルルルルル



ジュルルルルル………


シスター「……………あ……あ……ん……」



ジュルルルルルルルルルルルルル



(………もうどれくらい吸っているのかしら………、
シスターの声がだいぶ弱りきってるわね……)


ジュルルルルルルルルルルルルル


(でも……シスターの声………いい……心地いい………)




シスター「…………………」



(………美味しい………美味しい………シスターの血………美味しい………

シスターの味


シスターの声

シスターの香り

シスターの温もり

シスターの肌触り


シスターの………






ギュッ

吸血姫「………?」

シスター「……きゅ、吸血姫様ぁ………」


(シスターの手……細くて……綺麗で……)

シスター「私………私………わた………し………」



(シスター………シスター………シスター、シスター、シスター、シスター、シスターシスターシスターシスターシスターシスターシスターシスターシスター!!!!)


シスター「……吸血……姫様の………こと……が……………好き…………です………。」

吸血姫「………」



吸血姫「……!!!!!」

(シ、シスター……?今、なんて………)


吸血姫「シスター!?シスター!!!」


シスター「…………あ……きゅ、吸血姫様……?」

吸血姫「あ、あなた……今……」

シスター「……?どうなさいました……?」

吸血姫「そ、その……私のことが………好き……って……」



シスター「…………。どんどん気が遠くなっていったので……死ぬんじゃないかって思いました……」

吸血姫「し、死ぬって………私があなたを殺すワケないじゃない!!」

吸血姫「死んじゃう前に……何か吸血姫様に伝えなきゃって思って………

とっさに思いついたのが………その言葉でした………」



吸血姫「とっさに……思いついた……?」

シスター「……私……吸血姫様のことが大好きですから……。」


吸血姫「ええ知ってるわ。でも、あなたはシスター。生きる物全てを愛しているのでしょ?私だけじゃなくて……」


シスター「はい………でも………。


………あれ?じゃあ、なんで死ぬかもって思った時に、最初に思い浮かんだのが吸血姫様だったのでしょうか……?」


吸血姫「……シスター……」

シスター「……吸血姫様。多分、私は、吸血姫様のこと、凄く大切に考えてるのかもしれませんね……。」

吸血姫「……ええ、それは光栄だわ……シスター……」

シスター「吸血姫様……実は私、最近分かったことがあるんです……」

吸血姫「何かしら……?」

シスター「初めて吸血姫様と出会った、あの時……。吸血姫様に血を吸われ意識が遠退く中、私は闇を照らす2つの光を感じました……」

吸血姫「光……ね。」

シスター「その光は……神聖で、まさしく神のもたらす様な感じでしたが……どこか、私達に身近な感じがして……


1つは恐らく勇者様のものでした。

そして……もう1つは……」


吸血姫「……?」

シスター「………吸血姫様……」

吸血姫「………。私が、光……ですって……?」

シスター「吸血姫様……。貴女様は私を、この世界を照らす光の一つではないでしょうか?」

吸血姫「………。……ふふっ……」

シスター「吸血姫様……?」


吸血姫「私が光……?世界を照らす……?
……ふふふ………あはははははは!!!!」

シスター「吸血姫様……あのぉ……」


吸血姫「シスター、冗談が過ぎますわよ?高貴な闇の吸血一族である私を世界の光だなんて……。
あはははははは!!全く馬鹿馬鹿しいですわね!!」

シスター「あ、あのぉ……でも……」


吸血姫「……それ以上は侮辱として受け止めますわよ?シスター。
私は闇の種族。光などは無縁ですわ。」

シスター「……吸血姫様。でも……」




吸血姫「……もし、光だとすれば、それは光ってる様に見えているだけ。
近くにある強力な光に照らされて、私自身が光ってる様に見えているのでしょうね……」


シスター「……?吸血姫様の近くに、強力な光を放つモノがあるのですか?」

吸血姫「あら?あなたになら分かるでしょ?」


シスター「………。

………!!分かりました!神のことですね!?神が放つ聖なる光を浴びて、吸血姫様の身体も光り輝き……」


吸血姫「……全く、この神バカは………。」

吸血姫(自分がどれほど周りを照らしている太陽なのかも知らないで……)

~教会の街・郊外の大聖堂・テラス~


男兵「……こんな所で飯食ってるのかよ?」

ミドリ「……単なる気晴らしです。」

魔法使い「男兵さんも食べますか?」

男兵「お、サンキュー。
……そういやシスター達はどうした?」

羽女「下で吸血姫さんの様子を見ていますよ。体調がまだ優れないみたいで……」


男兵「そうか……。」


コトン

魔法使い「?男兵さん?その小ビンはなんですか?」

羽女「それ……清水が入ってたビンと似てる様な……」

男兵「それだけじゃねーよ。ここに名前が彫られてるだろ?」


魔法使い「この名前……シスターさんの……?」

男兵「教会の地下室で見つけたんだ。多分シスターが昔聖職者となる儀式で神に捧げたヤツだろうな。」

羽女「つまりはシスターさんの……清水……?」

ミドリ「何故あなたがそのような物を持っているのですか?」

羽女「そりゃあ……男の子ですからね。女性の“性水”には興味があるのでしょうね。」

魔法使い「お、お兄ちゃん!?ま、まさか……そんな……」

ミドリ「ああ……あなたはそういう趣味があったのですね。けがらわしい……」

羽女「ま、シスターさんは可愛いからね。女の私でも、多少興味が惹かれるかも。」



魔法使い「……………。

それで、男兵さん?」

男兵「ん?」


魔法使い「なんで反論しないんですか……?」

男兵「いや、改めて自分がしたことを考えるとな……。シスターの清水を教会の地下から盗み出して歩き回ってたんだから、変態扱いされても仕方ないか、って思ってたから……。」


魔法使い「で、でも!!男兵さんには何か致し方ない事情があったんですよね!?そうじゃなきゃ、男兵さんがそんな変態みたいなことを……」


男兵「………」

魔法使い「お……お兄ちゃん?ひょっとして……本気でシスターさんのが欲しくて盗んだの……?

そ、そんな……お兄ちゃん………」


男兵「……こういう機会でもないと、魔法使いに蔑まされた目で見られたりしないよな。
まったく、新鮮味があって良い体験だわ。」

ミドリ「何くだらないこと言ってるんですか?理由があるんなら、さっさと言いって下さい。煩わしい……」

男兵「シスターの清水が、本当に吸血姫に効くだなんて思ってなかったからな……。
正直、意表をつかれた。」

羽女「私はあの女があんな大胆な行為にでたことの方が意外でしたね。」

男兵「ああ、あれは別に意外でもないだろ。シスターならやりかねないだろうし。」

魔法使い「男兵さんはシスターさんをどんな風に見てるんですか……?」

男兵「やる時はやる女。」

ミドリ「なんと大雑把な……」

男兵「あのシスターが元からそういう素質があるのかもしれないし、本当に吸血姫のことを大切に思ってたから、魔属である吸血姫を癒せたのかもしれない。
なら、吸血姫と出会う前、吸血姫のことを知らなかったシスターの清水には吸血姫を癒す力はあるのだろうか?って思ってな。」



ミドリ「つまり、その昔のシスターさんの清水を吸血姫様に使うつもりなんですね?
それで、シスターの奇行が潜在的なモノなのかどうかを試す……と?」


羽女「ああ、だから男兵さんは、シスターさんの大胆なセクシーサービスショーの途中でどこかに行ったんですね。
てっきり私は我慢できないで、人気の無いところに“発散”しに行ったのかと思いました。」


男兵「はは、そりゃ大した濡れ衣だな。まぁ、シスターの姿に若干見惚れてたことは認めるけどな。」


魔法使い「み、見惚れてたって……お兄ちゃん……」ジトー

羽女「ま……男の子ですから……」

ミドリ「シスターさんは吸血姫さんのために真面目に行ったことを、あなたは不埒な目で見つめていたんですね?」


男兵「………3割はそうだったことは認めるが、7割は他人が見ている中で吸血姫の為にシスターが見せた根性、又は吸血姫への熱い思いに見惚れたんだがな。」


魔法使い「お兄ちゃん……別にいいワケしなくていいよ……」ジトー

羽女「仕方ないですよ、男の子ですから。」ニヤニヤ

ミドリ「……このムッツリが……」

男兵「……これ、明らかに男性差別だろ……。
大体、シスターだって裸で踊ってたワケじゃないし、肝心なところはあまり見えてなかっただろ。」

羽女「“あまり”ってことは多少は見たんですね?シスターさんの肝心なところ……」

ミドリ「どんどんボロが出ますね……」

魔法使い「もういいよ、お兄ちゃん。私は分かってるから………」ジトー

~教会の街・郊外の大聖堂~

シスター「すぅー……z」

吸血姫「……」

吸血姫(シスターの寝顔………本当に可愛いわね……

シスター……シスター……
シスター……シスター……
シスターシスターシスターシスターシスターシスターシスターシスターシスターラブリ~シスター!!!)






~シスターの夢~


ドタッ!!

女兵「痛っ!?……くそ、誰だ上に乗っかってんのは……」

お嬢「っ~……ここはどこですの?」

アカネ「今度こそ、新妻ちゃんの夢なのかしら?」

女兵「そうじゃなきゃ困るな。もう何人の夢の世界を渡り歩いたことか……」



シスター「世界が平和……全ての生き物が笑い、楽しく暮らせる世界……」


女兵「………」

お嬢「誰ですの?あの幸せそうな顔のシスターは……」

アカネ「あら……ま~たハズレのようね。」

女兵「今度はシスターの夢か……」


シスター「……ああ……神よ……」


女兵「こりゃ、さっさと次の夢に飛んだほうが……」

アカネ「待って。ちょっとだけ、この夢も見て行かない?」

女兵「何?」

アカネ「シスターちゃんの堅く、清らか、そして柔軟な性格の実体が掴めるかもしれないわよ?」

女兵「………、なるほど。だが、新妻の方は急ぎなんじゃねぇのか?」

アカネ「多少なら……余裕くらいあるでしょ。夢の中で殺されるようなことはないでしょうし……」

お嬢「??……あ、あの……お話している内容がよくわからないのですが……」

シスター「ん?あら、女兵様、お久しぶりです。」


女兵「よっ。元気そうで何よりだよ。」

アカネ「何か面白いことでもあったのかしら?随分幸せそうな顔をして……」


シスター「幸せなことですか?そうですね……」



吸血姫(修道着)「シスタ~!!」テクテクテク


女兵「ん?」
アカネ「え?」

お嬢「あら、小さくて可愛らしいシスターさんがいらっしゃいますわね。……あの娘もあなた方のお知り合い?」

アカネ「吸血姫……?なんでそんな格好……」

吸血姫「ん?………げっ……女兵……」

女兵「修道着を着て、幸せそうな顔で『シスター~!』とか言ってるとはね……」

アカネ「シスターちゃんの夢が作った吸血姫さんだからね。シスターちゃんの夢に染まってるのよね?」

吸血姫「……ええ、そうですわ。私はシスターの夢が作り出した幻ですわ。」


女兵「自分で自分を幻とか言ってるぞ?こいつ……」

アカネ「………。ひょっとして、あなたは本当に……」


吸血姫「……仕方ありませんわね。
ええ、確かに私は吸血姫ですわ。シスターが作り出した幻なんかではない、現実世界にも実在する存在。」

女兵「なるほど、お前も入ってきたんだな?シスターの夢に……」

吸血姫「入った……?私はただ、シスターの夢に思念体を送り込んだのですわよ?」

女兵「思念体……?」

アカネ「魔族がよく使う能力ね。自分の分身、と言っても実体はないのだけれどね、それを他人の心や夢に寄生させるのよ。」


女兵「分身ってことは、本物の吸血姫は別に居るってことか?」

吸血姫「ええ。きっと今ごろ、眠っているシスターのとなりでシスターの寝顔を眺めているでしょうね。」


女兵「そんな方法で他人の夢に入ることも出来るんだな……。」

アカネ「ええ、けど思念体は本体よりもかなり魔力は劣るし、私達みたいに夢魔退治をする時には適さないわね。」

女兵「……つか、吸血姫は何しにシスターの夢の中に入ってるんだ?」


吸血姫「そんなの決まってるわよ。シスターと私は現実世界では1日に24時間しか居られないわ。」

女兵「24時間って……本当に1日中シスターにくっついてんのかよ……」

吸血姫「しかも、シスターが眠ている時は会話が出来ないでしょ?まぁ、寝ているシスターを観察したり、ちょっと弄って遊ぶのは楽しいけど……。
そこで、夢の中にいるシスターに思念体を送って過ごすことで、1日に24時間以上シスターと一緒に居られるのよ!思念体の感じた事や経験した事は、後で本体が回収するから……。」

お嬢「……?この方は何を言っていらっしゃるのでしょうか?」

女兵「シスターが好きで好きで仕方がないんだとさ。」

吸血姫「………。あなた達こそ、何をしに来たの?」

女兵「俺らは……その……」

アカネ「シスターちゃんの真実を知りたいのよ。し・ん・じ・つ♪」


吸血姫「………そぉ。確かに、あの子の過去、気になるわよね。」


女兵「……お前、もしかして知ってるのか?もう既に見たとか……」

吸血姫「悪いけど、私はこれからシスターと遊ぶのだから。
あなた達は勝手にしなさい。
行きましょ~。シスタ~♪」

シスター「え?あ、はい……」



女兵「なんだ?今の反応……」

アカネ「さーてね。でも、過去を調べるなとは言ってなかったわね。」

女兵「じゃあ、どうする?」

アカネ「調べましょう。ここはシスターちゃんの夢の中。どこかにシスターちゃんの秘密やら記憶らがあるはずよ。」


女兵「……他人の秘密を探るのか……気が進まないなぁ……」

アカネ「あら?あなたはそういうのが大好きなんじゃなくて?」

女兵「………まぁ、人並みにはな。」

~シスターの夢・とある館~

女兵「なんだ?ここ……」

お嬢「大きな建物ですわね。一体どんな人が暮らしてるのでしょう?」



ガヤガヤ……


アカネ「誰か来るわね……」



タンタンタン……

『きゃっ!?』
女兵「うわっ!?」

ドン!

『……痛たた……すいません……』

女兵「痛ぇ……いや、気にするな。俺も前見てなかった……。
……って……」

シスター?(幼女)『?お姉さんは……誰でしょうか?』


アカネ「この子……ひょっとしてシスター?幼少期の……」

アカネ「ええ……確かに似てますわね。」

女兵「だがシスターならさっき居ただろ?吸血姫と一緒に……」

アカネ「……つまり、この幼少期のシスターは、シスターの夢、或いは記憶が作り出した幻影……ってとこかしら……」

女兵「シスターの記憶の中のシスター……か。」


シスター?「??あ、あのぉ……」


「1112さん!早くしないと遅れますよ!?」

シスター?「あ、1115さん。」


女兵「え……?」
アカネ「あら……」
お嬢「まぁ……」


1115「どうしたの?1112さん。その人達は?」

1112「分からないです。多分、“先生”様方のお客様ではないでしょうか?」


女兵「……えと……シスターにそっくりなガキが2人……?」

お嬢「双子……でしょうか?」

アカネ「………これって……もしかして……」


「お~い!」

1115「あ、1124さんだ!それに1120さんや1119さんも……」


女兵「なっ!?さらに増えやがった……」

お嬢「しかも皆同じ顔?………五つ子?」

1124「ん?誰だこの人達……」

1119「うわ~……こっちの人、綺麗だねぇ……」

アカネ「え?あ、ありがとう……」

1120「あれ?この女の人、帝国軍の紋章が入った服着てる……」

1115「あ、本当ですね。でもこの紋章は帝都軍の紋章ですよ。帝国軍の紋章とは若干異なります。」

1124「うわぁ~、帝都軍って超エリートじゃん!凄ぇ~!!」

1119「1124さん。そんな喋り方してたら、また先生に怒られるよ。聖職者になるには、言葉遣いに注意しないと……」

1124「わーってるって!!先生の前では直すから……」



女兵(……名前ではなく番号で互いを読んでやがる……)

お嬢(……なんだか不気味ですわ。ここまで瓜二つの子が5人も……)

アカネ「……」



1119「あの……そろそろ行かないと……」

1115「あ、そうでした!」

1120「あ、では失礼します。帝都軍の兵士様……」

女兵「ん?あ、ああ……」



アカネ「………まずいわ……」

女兵「アカネ?何か知ってるのか?」

お嬢「……1120?……まるで囚人を番号で呼ぶ様な感じですわね。あんな子供達が囚人……?あるいは……」




アカネ「……検体番号……」

女兵「!!!?」
お嬢「!!!!」


女兵「おいおい、検体……って、」

お嬢「……アカネさん。もしかして……この館は……」


アカネ「……早く、あの子達を追いましょう!!」

~館・食堂~


先生「皆様、おはようございます。」



「「「おはようございます。」」」




女兵「おいおい……5人どころか、100人は居るぞ?同じ顔が……」

アカネ「……間違いない……。あの子達は……」



先生「……では、まずはこの前のテストの結果発表。上位10人を読み上げます!」



女兵「……あの女教師は何者だ?修道着みたいなのを着てるが……」


先生「……はい。以上10人の皆様。あなた方の努力を誇り、そして神の恩恵に感謝しましょう!」


アカネ「あの女も……恐らく“研究者”よ……」

女兵「何?」



先生「次に、点数が低かった順に下から10名の方を発表します。996、1100、1120……」



1120「!!……」

1124「1120……お前、点数そんなに低かったのかよ……」

1120「……えと……その……」


先生「……1211。以上10名は残念ながら不合格です。今日でクラスは変更、今までの仲間とはお別れになります……。」



お嬢「これは……優秀な学校ではよくある成績でクラス編成を行う制度でしょうか?」

女兵「……いや、待て……なんか様子が……」



1119「先生!」

先生「はい?1119さん、どうなさいましか?」

1119「1118さんがこの前病気になりましたよね?あの時、1120さんが看病してて……だから、1120さんはテストの勉強が出来なくて……」


先生「!!……それは本当ですか?」

1120「……はい。でも……私は結果として、成績が悪かったですし……」

先生「素晴らしいです!病気の仲間を自分の時間を割いてまで介護するなんて!!
おお、神よ。あなたの下部たるにふさわしい者が、今私の目の前に……」

1120「……え?」

先生「分かりました。1120さん、あなたの不合格をとり消します。代わりに、下から11位の1106さん。あなたが残念ながら不合格です……」


1106「!!……嘘っ……」


1120「!……えと……」

先生「あなたは素晴らしいです、1120さん。神のご加護があらんことを……」

1120「……私の代わりに……1106さんが……」

1115「1120さん、あなたの功績が認められたんですよ?1106さんは可愛いそうですが、神はふさわしい者に評価を下したのです。」

1124「気にするなって。1106が成績悪かったのがいけないんだから……」



先生「さて、今回のテストを見事合格した皆様には、特別なランチを用意しています。今日のランチは“ステーキ”です!」


1124「やったぁ~!!久々のお肉だぁ~!」

1119「1124さん!はしたないですよ!」

1115「ここは聖職者らしく、食材となる生き物達に敬意を……」



女兵「………。久々のお肉……か……」

お嬢「女兵さん、私の勘違いかもしれないのですけど……」

女兵「なんだ?」

お嬢「あの先生?とおっしゃる方……」


先生「うふふ……皆様、しっかり食べて下さいね……」


お嬢「目が怖いですわ……何かこう………嫌な……感じ……」

女兵「……」




1124「お肉~お肉~♪」

1119「美味しそうですね~♪」


女兵「ん?ステーキが運ばれてきたみたいだな。
……ふ~ん……いい臭いだな……」

お嬢「そうですわね。でも牛のステーキはソースではなく、醤油で食べるべきですわ。」

女兵「ん?なんで牛肉って分かるんだ?あのステーキが……」

お嬢「え?だって、ステーキなんて言ったら普通は牛ですわよ?豚ならトンテキ、鳥ならチキンステーキと区別しますわよ……ね?」

女兵「……貴族様にとってはそうなんだろな。俺ら平民はな、ワニの肉だろうが狼の肉だろうと焼いたら全部ステーキ扱いだ。」


お嬢「なっ……ワニを食べるだなんて……野蛮ですわ……」

女兵「ああ。……だがな、あいつらが食ってる肉の臭い……牛でもワニでもなさそうだな……」

お嬢「え?あなた、臭いで何の肉か分かるんですの?」


女兵「いや……牛も豚も区別がつかないな。ただ、この臭いだけは分かるな……。
戦場を生きた人間ならな……。嫌でも臭ってしまうな。ホント……気分悪くなるぜ。よくあのガキ達は平気な顔で食ってるよな……。
まぁ、あいつらには何の肉かは分かってないんだろけどな……」

お嬢「……あなた、何を言ってるんですの……?」

女兵「……つまりな。
昔ドラゴン狩りをやった時、仲間の兵士がドラゴンの炎でおもいっきり焼かれたのを間近で見たんだがな。あれと同じ臭いなんだよな……」


お嬢「………え……」



ザッ
アカネ「そっちの様子はどう?」

女兵「お、おかえり。どうだった?さっき部屋を出ていかされた成績下位10名の女の子達は……」

アカネ「……よくわからないけど、厨房の奥の小さな部屋に次々と入れられてたわ。そして、誰も出てこなかったわ……」


女兵「なるほどな。
……なら、もう既にこの部屋に戻ってきてるぞ?そいつらは、」

アカネ「え?!……ど、どこに居るの?
……とは言っても、私にはこの部屋の女の子達の識別はつかないけど……皆同じ顔だし……」


女兵「……テーブルの上に並んでるだろ。90人の女の子達の前にそれぞれ並べられてさ……」




アカネ「……え?……あ……」



お嬢「……い……嫌っ……嘘……ですわよね……?」




1124「1120!!助けてやったんだから、一切れよこせ!!」

1120「あ、はい。どうぞ。」

1001「あ、ずるいです!!私だっておかわり欲しい~!!」

1124「あ、てめぇ!このぽっちゃりがぁ!!」

~館・とある部屋~


先生「さて、1119さん、1128さん、1136さん、1139さん。あなた方にはテストを受けてもらいます。」



女兵「テスト……ね。」

お嬢「…………」

アカネ「……女兵さん。先ほどのステーキの件ですけど……」

女兵「ん?ああ、ありゃ多分俺の勘違いだよ。あの肉はきっと猿の肉だろな。………人肉と似た臭いのする……な。」



先生「あなた方は聖職者となる者達です。聖職者たる者、あらゆる生き物を愛さなければなりません。」



ガシャン!!

1136「え!?部屋の鍵が閉まりましたよ!?」

1119「先生!?あ、あの……」


先生「さて、今その部屋にはあなた方4人と……」



『……グワァァァァアアア……』


1128「!!ま、魔物……!?」

先生「マッドリザードが1匹放たれています。
ですが、あなた方は聖職者となる者。他種の生き物を恐れてはなりません。あなた方は、彼らを愛し、導くのです!」



1139「い、嫌ぁああああ!!!!」

1136「う……そ……そんなの……無理……」


1128「だ、大丈夫です!!私達は聖職者ですよ?神のご加護があり、全ての生き物を愛す力を持ってます!!」

1119「…………」




女兵「……おいおい……おいおいおいおいおいおい!!!なんだよこりゃ!!?帝都軍の超難関実習訓練の比じゃねぇぞ!?丸腰のガキがデカいトカゲの部屋に監禁だと!?ふざけんな!!!」


アカネ「落ちついて!!女兵、彼女達は……あくまでシスターさんの夢の世界の幻影だから……」

お嬢「………嘘……ですわ……、は、早く助けないと………」


アカネ「……落ち着いて。様子を見ましょう……。
……いえ、見なくても結果は分かってるけど……」

先生「さ、早くあなた方の愛を見せるのです!」


『グワァァァァア!!!』

ジリ…ジリ……



1136「無理……無理だよ……」

1139「こ、来ないで……助けて!!助けて!!」



1128「……怖がらないで……」

1119「……1128?」

1128「あの子だって……驚いてるだけだよ……」


『グワァァァ……』


ジリ……ジリ……

1128「……神の前では、皆が平等……」


1136「1128さん!近づいたら危ないよ!!」

1128「……大丈夫……大丈夫……だから……」


『グワァァァ……アアア……』


1139「……え?」

1119「トカゲさんが……大人しくなった……?」



1128「怖くない……ほら?皆、同じ……神がつくりし存在なんだから……」




女兵「マッドリザードは常に地面の中に身を隠してる臆病者だ。だから、すぐに怖がる……」


1128「……ね?トカゲさん……」

『……グゥゥゥ……』


1139「………」

1119「………」



女兵「……そう、人間のガキが近寄ってきただけですぐビビって動けなくなってしまう。
……だが、そのトカゲがビビってるのは、自分に積極的に近寄ってきている1128のガキだけだ。」

1128「ね?だから大丈夫……」



『グワァァァアアアアア!!!!』
ダッ!!


1136「!!?」

1139「い、嫌ぁああああ!!来ないで!!来ないで!!」

『グワァァァアアアアアギャアァ!!!』

1139「嫌だっ!!助けて!!1128さん!助けて!助けて!!嫌だ!!」


グチャッ

1139「やあ゛あ゛ああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


グチャッ……グチャッ……ブチッ!!





1128「………」


1136「……あ……あ……」

1119「………。」


1128「……や、やめて!!やめてよ!!トカゲさん!お願いやめてぇ!!!」


ザクッ!!

1128「あ゛ぁっ!!い゛だい゛ぃいい!!!!引っ掻がれだぁああああ!!痛い゛ぃぃ!?いだいぃ!!いだいいだいいだい!!!!」



1136「い、嫌だ!!やだやだやだ!!助けて!!助けて先生!!先生!!」

1119「……駄目……私……ここで死ぬの……?」



1128「い゛だいっ!!!がまないでぇっ!!がんじゃだめぇえ゛ええ!!」

ギチャ……グシャッ!

1128「ぐぁあ゛………あ゛ぁぁ…………」


1119「……嫌……死にたくない……」

1136「やだ……やだ……1119さん……助けて……助けて!!お願い!!」

1119「お、落ち着いて……何か……何か方法が……」


……ストン
女兵「…………」

1119「え?あ、あなたは……帝都軍の兵士さん……?」

女兵「……トカゲ風情が……ふざけやがって……」

女兵「…………」


1119「あ、あのぉ……」

女兵「………っ」ギロッ

1119「ひぃっ!!……」


1136「た、助けてください!!お願いします!助けてください!!!」



女兵「……遅くなって悪かったな……」


1119「……え……?」









ザクッ!!

『ギシャァァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


ザクッ!!ザクッ!!ゴリ!!グシャッ!!ゴリ!!



女兵「……………」


女兵「……ったく……さっさと助けにはいりゃよかったぜ……。」


女兵「……おい、大丈夫か?お前ら……」




1119「………」

1136「………」


女兵「?!お、お前ら!?なんで……し、死んだ……?」


アカネ「……女兵さん。ここはシスターの記憶の世界。シスターの記憶通りに進む世界なの。
あなたがどんなに人を助けても、その人が死ぬはずだった運命は変わらない。
……この子達、1119も1128達も、ここで死ぬ運命だったのよ……」


女兵「…………」

お嬢「何年も前に、とある熱狂的な教会の輩達が第3方面の孤島でとんでもない研究をしていましたの。
人体錬成を駆使したクローン技術で、ある少女のクローンを何千人も作りましたわ。」

女兵「………」

お嬢「人体錬成という技術はとある昔の魔王が開発したものですが、完璧な複製は難しく、またクローンも10人に7人はすぐに死んでしまうような脆さでした。」

女兵「そんや危うい技術を使ってまで、そいつらはなんで女の子のクローンを作り続けたんだ?」


アカネ「その女の子のオリジナルは、何代も前の勇者の仲間。歴代最強と言われた賢者である少女の遺伝子なのよ。」

女兵「歴代最強って……山よりでかい巨人を一撃で粉砕したっていう、あの伝説の化け物か?」


アカネ「いえ、その伝説は間違ってるわ。巨人と心を通わせ仲間としたのよ、その賢者は……」


お嬢「その賢者とその時の勇者は教会出身ということもあって、その賢者が活躍した時代では、教会も帝国軍以上に権力を持ってました。市民達も武力より、宗教を選ぶもの達が多数派だったそうですわ。」


女兵「……だが、教会の権威はすぐに消えた。大司教様のお一人が、魔王と手を組んで帝国を乗っ取ろうとして、帝国軍に潰されたから……だろ?有名な事件だよな……。」


お嬢「教会は一気に人々の信頼を失いましたわ。
それでも、教会の中には再び教会出身で武力ではなく“心”で魔王を倒す賢者が現れれば、教会の信頼も取り戻せると信じる者達が現れだしましたの。」


女兵「んでもって、その島で賢者の遺伝子から何千人もクローンを作って……」

お嬢「教会の人々は、1人の完璧な賢者を作り出す為に、クローン達に無茶な実験を強要し続けたそうです。」

女兵「でっかいトカゲを説得しろって感じのか?そりゃ無茶にもほどがあるわな。」

お嬢「多くのクローン達が苦しめられ、命を落としていきましたわ……」


女兵「……それで?その事件の結末は?」

お嬢「駆け付けた帝国軍の強制捜査を拒んだ研究者達との抗戦の末、研究者は全員死亡。」

女兵「本当に全員死んだのか……?つか、クローン達はどうなったんだ?まだ大勢生き残りがいただろ?」

お嬢「それは……。噂によると、クローン技術自体が禁じられた裏の技術。それに同じ顔をした少女が多く存在するワケにもいきませんから……」


女兵「全員処分されたっていうのか?仮にも伝説の賢者のクローン達だろ?しっかり育てたら、いい人材になると思うし、帝国がすぐに廃棄するとは……」


アカネ「あら、さすがは女兵さん、鋭いわね。何百人かは生き残ってたみたいだけど、皆ちゃんと帝国が保護したわよ。」

女兵「……同じ顔が何百人もだぞ?帝国のどこに保護したんだよ?」


アカネ「……そうね…。ヒントは、全員女の子……かしらね。」

女兵「……?」

お嬢「……というより、シスターさんもそのクローンの1人だったのですから……。なら、現にシスターさんも生きてるのですし、他のクローン達も生きいますわよ、きっと……」

女兵「あ、そっか。シスターもその伝説の勇者のクローンなんだよな……。なるほどな……」

アカネ「ええ……それも、多分ただのクローンじゃないでしょうね。」

女兵「しかし、どれがシスターの幼少期だ?皆同じ顔で区別がつかないんだが……」

アカネ「そうね、一番“シスターらしい子”がそうなんじゃない?」

お嬢「はぁ……とはいっても、これだけの数が居ましたら……」



1401「あぁ……神よ……」

1581「全ての生き物は平等!平和に生きる権利があるのです~♪」



女兵「あいつとかあやしいな、さっきから“シスター”っぽいこと言ってるぞ?」

アカネ「ぽいだけじゃ駄目よ。ちゃんと“シスター”ちゃんを探さないと……」

お嬢「……こんなに数がいますもの……とても無理ですわ。」

女兵「……。いや、いい方法がある。」

お嬢「え?」



1115「1119さん……クラス変更したみたいですね。」

1120「……みたいですね。でも……彼女は私達の中でも優秀だった方なのに……」


女兵「お~い、優等生の1120さ~ん。」

1120「え?あ、あの、私ですか?」

女兵「お前らん中で、一番聖職者らしいのってどいつだ?」

1120「え、ええ?そう……ですね……」

1115「1119さん……は不合格になりましたし……。私が知ってる限りだと……」


研究員A「大変だ!また2221がやらかしたぞ!」

研究員B「A-30号室に急いで!早く!!」



お嬢「……なんだか騒がしいですわね。」

女兵「どうやら問題児がいるみたいだな……。シスターではなさそうだが……。」

1115「2221さんだ……。多分また……」

2221「……クチャ……クチャ……」


研究員A「また2221が共食いしてるぞ!」

研究員C「今度は2250が襲われたわ!!」



2221「……クチャ……グチャ……ペロリ」




女兵「うわぁ……マジかよ……」

アカネ「酷い……他の女の子を食べてる……」


1120「2221さんは……おかしいんです。いつも周りの子を襲って……たまに先生達も襲うんです……」


女兵「ありゃシスターにはほど遠いな。つか、皆と同じクローンのはずなのに、形相が……」

アカネ「ええ……なんというか、狂気に満ちた顔つきね……見ているだけでも恐ろしい……」

女兵「ありゃもう悪魔だろ。本当にクローンなのかよ……」

お嬢「恐らく……失敗作なのですわ。見た目だけでなく、性格もかなり歪んでしまった……」




2500「2221さん……」

2221「………」


女兵「?おい、誰か近寄ってるぞ?」

1115「2500さんだ……。」


2500「また暴れてるんですか?……また、友達を殺しちゃったんですね……」

2221「……ぁ……ぁぁ…」

2500「……大丈夫。お友達は居なくなったのではないですよ。ただ、遠くに行っただけ。またすぐ会えます。それまで、私が一緒にいますから……」


2221「………ぁぁ…」




1120「2221さんが暴れたら、いつも2500さんが止めに来て……そしたら2221さんはすぐ大人しくなるんです。」

女兵「……ふぅ~ん。」

アカネ「……面白い子達だけど、シスターってワケではなさそうね……」

女兵「なぁ、1120。他に変わった特徴を持った奴らはいないのか?」

1120「え?………そ、そうですねぇ……」

3000「あぅ~?」


女兵「……なんだこのチビは?」

1120「私達の中で一番最近やってきた子です。年齢は5歳だそうです。」

アカネ「……一番新しく製造された子……ってことね……」


2899「ういさ~!!今日のお題は“複素数”だよぉ~ん♪」


1120「あちらで小さな子達に数学を教えてるのが1899さんです。私達の中では一番の秀才ですね。」



11「おいそこっ!!さっさと掃除をしなさい!!サボってても、神様はちゃんと見ているんだぞ!!」


お嬢「あら、あちらに結構大人な方もいらっしゃいますわね。」

アカネ「あらホント。シスターちゃんと同じぐらいの歳かしら?でも、ここはシスターちゃんの過去だから、シスターちゃん自身はもっと若年なはず……」

女兵「しかもシスターなんかよりもかなり胸が大きいな。ありゃ完璧別人だろ。」

アカネ「あら、女兵さん。女の子を胸で判断するだなんて、案外“男の子”なのね。」

女兵「自分が女になってから若干気にするようになっただけだよ。大きいのを見ると、若干気に障るんだよな……」

アカネ「あら、案外順調に女の子になってるのね……ウフフ。」


1115「11姉様は少し厳しいですけど、皆のことを気に掛けてくれる優しい人ですね。」


女兵「11……かぁ。随分小さな数字だな。って事は、クローンとしてもかなり古いってことだろな……」

1115「クローン?古い?なんのことですか?」

女兵「あ、いや、こっちの話だ。気にするな。」

1120「……確かに姉様は昔からいるみたいですけど……。二桁数字の名前の人は姉様と66さんしかいませんし……」


アカネ「……その66さんはどこにいるのかしら?」

1120「え、え~と……多分食堂に居ます。66さんはいつも食事ばかりしてる人なので……」

女兵「大食い……か。シスターではなさそうだな。」

アカネ「そうね。もっと他を当たってみましょう。」

~とある部屋~


ヌルヌルヌルヌル……

1124「ひぃっ!!くそぉぉ!!!どけっ!触るな!!止めろぉ!!」

1199「いやぁ!!助けて!!やだぁ!!」

1124「くそっ!!このナメクジがぁああ!!」ベチャッ!!
先生「いけません!1124さん!その小さなナメクジさんにも命があるのですよ?」


1124「知るかぁ!! このままナメクジなんかに殺されてたまるかぁ!!」



先生「全く……。1124番は気性も荒い上に神を信じる心もない。廃棄ね。他の子達も、さっさから喚いてばかりね。皆、殺しちゃいなさい。」

研究員D「はっ。今すぐ、実験室に毒ガスを……」





女兵「……今度は肉食ナメクジか。群れになったら、人間の子供ぐらいすぐに溶かしちまうし、えげつない生物だな。」

先生「?誰ですか?あなたは……」

女兵「……さぁ?誰に見える?」……スッ

先生「!!ひっ!?け、剣!?あなた、まさか帝国軍……!?」

女兵「ちげぇーよ。ただの死神だよ!」

研究員D「なっ……!?」

女兵「もちろん、貴様らの……な。」




1124「……くそっ……痛い……やめろ……」

お嬢「大丈夫ですの!?しっかりなさって!」

1124「……あ、あんたは……」

お嬢「ナメクジなら、私の炎で……」


アカネ「無駄よ。今あなたがその子を助けたところで、過去のその子は恐らく死んだままよ……」

お嬢「だからと言って、こんな可哀想な子達を放っとけません!!」

アカネ「……全く。まぁ、私も同意見だけどね……」

~また、とある部屋~


先生「はーい、では1120さん、2225さん、2500さんと2889さんにはこの部屋である試練に挑戦してもらいますね~。」



女兵「おかしぃ~なぁ、あの女先生はさっき叩き斬ってやったはずなのに。なんで生きてるんだろな……クソ……」

アカネ「残念ね。ここはシスターちゃんの記憶の世界だから、シスターちゃんの記憶通りに世界は進むのよ。つまり何回殺しても、先生さんはまた違う場面で登場するわ。」

お嬢「……そして、私の助けたはずの子達は、気が付いたら見事に白骨化してましたわ……」

アカネ「彼女達の場合は逆に死ぬはずの運命だったのね……可哀想に……」

女兵「多分本来の過去では、あのままナメクジに骨まで溶かされちまったんだろな。」

お嬢「……虚しいですわ……せっかく助けたのに……」


女兵「仕方ないさ。俺らだって、意味のないこと承知で自分勝手な慈善行為を行っただけなんだし……」

お嬢「……次は1120さんが入ってますわね。」

女兵「……死ぬなよ……頼むから……」



先生「あなた達にはこの部屋で1時間過ごしてもらいます。」

2889「え?それだけですか?」

先生「ええ。それだけです。ただし、身を正し、慎み深い心を忘れてはなりませんよ?あなた達は聖職者となるのですから……」


1120「………」



女兵「さて、今度はどんな難問を叩きつけてくるんだろうな?」

アカネ「さぁて……あの人達のサディズムにはもうついてけないから、分からないわね。」

・・・・・・・・

2225「……なんだか暑くなってきてませんか?」

1120「はい……先ほどから汗が止まりませんね……」

ジュッ
2500「きゃっ!?か、壁が炎の様に熱くなってる!?」

1120「……まさか……火事!?」

2889「嘘っ!?は、早く逃げないと………」

1120「っ!!……駄目!扉が開かない!?私達は閉じ込められたの……?」

2500「そんな……これでは試練どころではありませんわ……」

1120「………。違う、これが試練なんだ……。私達はこの暑い部屋で1時間我慢しなくちゃならないんだよ……」


2225、2500、2889「えっ!?」

2225「そ、そんなの無理だよ!!焼け死んじゃいます!!」

2500「………。いえ、別に火炙りになってるワケではないです。ただの熱気です……。ちゃんと、水分を補給していれば……」

2889「水分?私、水筒なんて持っていませんけど……」


1120「なら……皆、取り敢えず自分の汗を舐めて。」

2889「そんなの汚いし、塩っぱいです!」

2500「1120さん、聖職者たるもの、自分の汗を舐めるなんてこと……」


1120「それでも……生き残る為には、そうするしかないじゃないですか!!!」




女兵「汗を舐めろ……か。暑さでまともな思考が出来てないのか、苦し紛れの打開策なのか……」

お嬢「そんな事を言ってる場合ですの!?早く助けませんと……」

女兵「………。」

お嬢「女兵さん!?どうしたんですか!?」

女兵「いや……もし、あの中の誰かがシスターだったとしたら、生き残ってるはずだよな……。
………」


アカネ「あなた……まさか1120さんがシスターだとでも思ってるの?」

女兵「いや……。シスターに近い様で、多分シスターじゃない。似てるとは思ったんだがな………」



お嬢「………。あなた方が何もしないとしても、私は放っておけませんわ!!」

女兵「あ、おい。……ったく、勝手に一人で行きやがって……しゃーないな。」

アカネ「あら?あなたもまた無意味な慈善をするの?」

女兵「そういうお前だって、さっきから足が震えてるぞ?黙って見てるのが我慢出来ないんじゃねーのか?」

アカネ「あら……ウフフ。そうね、たまには無意味な行為も良いのかもね……」

ジリリリリリリリリリリリ!!!!!!



研究員D「侵入者だ!!裏門Bから侵入者だ!!」


女兵「ん?なんだ、俺達のことか?」

アカネ「いえ……これは……!?」




研究員E「帝国軍だ!!裏門を突破しようとしている!!総員!ただちに戦闘配置!!」



女兵「帝国軍?それって俺?」

お嬢「わ、私のことかもしれませんわよ……?」

アカネ「あなたのことじゃないわよ。多分、違法研究施設の存在を知った帝国軍が攻めてきたのよ……」


女兵「それって……。」

アカネ「ええ。このくだらない研究所の最後……よ。」


研究員E「帝国軍はかなりの数だ!!クローン達にも武器を持たせろ!嫌がる奴には爆弾を括り付けて、敵軍に突っ込ませろ!!」

研究員A「2221を解放しろ!!あいつなら、帝国軍をかなり足止めできるはずだ!!」



女兵「……クソ野郎共が……最後までガキ達を道具扱いしやがって……」


アカネ「ええ、でも無駄よ。帝国軍は帝都の特殊部隊や戦乙女達といった勇兵揃い。研究員達は半日と保たないでしょうね……」

女兵「はあ?そりゃ大した軍勢だな。帝国側もガチじゃねぇか。」




2500「はぁ……はぁ……」

1120「あつ……い………」

2889「たす……け……」



ドン……ドン………


2500「……え……?」



ドン!!!

2221「ぅあぅぅぁぁぁ!!!ぅああぅ!うぅぁあっ!!」

2500「……2221……さん……?」


2221「ぁぁ………ぁ……」

2500「……貴女……私を助けに……?」



研究員A「くそっ!!2221!そんな奴らなんて放っておけ!!早く帝国軍を……」



ザクッ!!

研究員A「ぐあっ!?だ、誰……だ……?」


クロト「邪魔だ、人間の屑が……」



女兵「っ!?あいつは……」

お嬢「戦乙女部隊の前隊長!?あ、いや、昔だから普通に隊長殿ですわね……」

アカネ「クロト……」



クロト「……なんだ?この暑苦しい部屋は……。お前達、平気か!?」

1120「……あ、あなたは………」

2500「……2221……さん……。私は……大丈夫だから……」

2221「……ぁぁ……ぁ…」


クロト「……酷い。何故子供がこんな目に……。
剣士長!この子達を早く保護しろ!」

戦乙女剣士長「はっ!!」


女兵「ん?あの剣士長は……今の戦乙女隊長か?」

アカネ「あら、あなたのお知り合い?」

女兵「ああ、俺が帝都勤めしてた時は何回も世話になったよ。そして、交易の街では少し斬っちまったがな……」



剣士長「しかし、隊長殿。この子達をどこに保護するのですか……?」

クロト「……。違法なクローン技術により生まれたとはいえ、彼女達も立派な人間だ。
……だが、今の帝国には彼女達を保護する場所はない……か。」

剣士長「帝国評議会と相談しても、おそらくは廃棄処分……ですね。」

黒メイド長「なら、この子達の処遇、私に任せてもらえないだろうか?クロト隊長殿。」



女兵「!?」
お嬢「えっ!?」
アカネ「あらら、ご登場ね。」



クロト「貴様……ここで何をしている?」

剣士長「きゅ、弓兵長……。いえ、前弓兵長。お久しぶりです。何故この様な場所に?」

黒メイド長「……帝都軍を中心に面白い祭りがあると聞いてね……」



クロト「……貴様は今、第2軍に所属しているはずだ。何故こんな南の孤島に来ている?」

黒メイド長「いや、私とて大した用事でもなければ、自分の管轄する地方を離れてまで来たりはしないんだがねぇ。
ただ、帝都軍将殿に今回のことを聞かしてもらってな、クロトが私の助け必要としてるのではないかと思ってね……。」


剣士長「助けが必要?……弓兵長、仰る意味が分かりかねないんですが……」

クロト「前 戦乙女弓兵長、そして今は第2軍将の書記官をやっているのだったな?……いや、“黒メイド隊”とやらの長も勤めていたのだったか……」

剣士長「“黒メイド隊”……?まさか、あの噂に聞く“花園”を守るという特殊部隊?
でしたら隊長、“花園”は実在するということなのですか?」

黒メイド長「おや、剣士長さん。その発言は危ないね。“花園”のことを他言されては、黒メイド長としては見過ごせないな。秘密固持の為に、お前を“処分”しなくては……」

剣士長「えっ!?……いや、す、すいません……。今のはそんなつもりでは……」

黒メイド長「……はは。いやぁ、すまない。悪かった。今のはジョークだ。ちょっと驚しただけだよ、剣士長殿。」

剣士長「は、はぁ……そうですか……」


クロト「……貴様……本気か?ここのクローン達を皆引き取るつもりか?」

黒メイド長「ああ、クロト。私は元同僚であるお前が罪もない女の子達を殺しては辛い顔をしえる様を見たくはないからな。
せっかくお前が保護したんだ。この子達は私が引き取ろう……」


クロト「……くっ。全く貴様は都合が良く現れてくれるな……。」




アカネ「クロトはね、黒メイド長さんにため口で話してるけど、実は彼女、黒メイド長が弓兵長やってた頃に戦乙女に入隊したのよ。だから黒メイド長の方が先輩なの。
でも、クロトは決して黒メイド長さんに敬語を使わないわ……」


お嬢「どうしてですの?」

アカネ「簡単に説明すると、クロトが昇進して戦乙女隊長になると同時に、黒メイド長さんは戦乙女を退いたの。」

お嬢「それは………黒メイド長さんの方が、後輩であったクロトさんの下で働くのが嫌だった……からですの?」


アカネ「かもね。或いは、クロトが隊長を勤める戦乙女部隊ならば、自分は必要ないかもしれない、と考えのかもね。
クロトの方もそのことを特に追究したりはしなかったわ。でも、建前上、黒メイド長さんに敬語を使うのをやめたのよ。

あの2人は決して仲が悪いワケではないわ。互いの助けが必要な時には、ああして普通に手をとり合ってるし……」

最近めっきりシリアスになってきたね

黒メイド長「しかし、剣士長殿は相変わらず小さいな。一体何歳になったのだ?」

剣士長「弓兵長。年齢は関係ありません。小柄な体型でも、技術さえあれば戦闘はこなせます!」

クロト「彼女は優秀だ。もしかしたら、戦乙女部隊始まって以来の最年少隊長が生まれるかもしれないな。」

剣士長「隊長。私にはまだそんな……」

黒メイド長「まだ……か。なるほど、いずれは隊長になるつもりなのだな?」

剣士長「い、いえ……決してそんな……」



女兵「ま、実際に16歳で戦乙女隊長になるんだけどな、あの剣士長さんは……」

アカネ「あんな小さな時から、既に戦乙女の剣士長を勤めてるんですもの。かなり優秀なのね?」

お嬢「私や女勇者さん以外にも、こんなにも優秀な方がいらっしゃるのですわね……」

女兵「ホント、あいつは凄ぇーからな……。」




剣士長「あなた……名前は?」

1120「あ……11……20……」

剣士長「?……番号?それが名前なのか?
ま、いずれにせよ、もう大丈夫だ。我々があなた達を助けるから……」

1120「……あり……が……とう……」



お嬢「……1120さん、どうやら助かったみたいですわね。」

女兵「生きてるってことは、いずれは現実世界でも会えるんだろうな。良かった良かった……」



アカネ「…………。」

女兵「どうした?アカネ……」

アカネ「……シスターちゃん、まだ見つけていなかったわね……」

女兵「あ、そうか。だがよ、帝国軍も来たことだし、保護されたクローン達の中に混ざってるんじゃ……」


アカネ「いえ……おかしいわね。この場で保護されたクローン達は皆、黒メイド長によって“花園”行きになるはずよね。
花園に行けば、女は皆メイドになるのよ?でも聖職者になれたってことは、シスターちゃんは花園に行ってないはず……」


女兵「……確かに。てことはシスターは……」


アカネ「帝国軍に保護されるワケじゃない……。多分、どこかに………」

>>550
本当は勇者や女兵達の楽しい日常を描きたい!!


でも、シスターの過去が漸く考え付いたから……

まぁ、後から見たら、某学園都市のシスターズに似たりよったりな内容だけど……

~夢の世界、第3方面、孤島対岸の砂浜~


11「ここまで来れば安心か。……帝国軍め、意外と早く到着したな……」

66「はぁ……はぁ……。11さん、私達二人だけで来ちゃいましたけど……他の子達はどうするんですか?」

11「……分からない。帝国軍は聖職者達を忌み嫌ってるから、島に残された子達は皆殺しになったと思う……」

66「……そうですか。なら助けてくれてありがとうございました。」



11「え……?」

66「11さんは自分の命も危ういのに、わざわざ私を連れて逃げてくれました。もし11さんが私を助けてくれてなかったら、今頃私は帝国の方々に捕まっていました。」


11「……でも、私が助けたのはあなただけ。他の子達は、見捨ててきた……。」

66「それでも、貴方が私を助けて下さったことにはかわりありませんから。ありがとうございます。」


11「……あなたって、ホント良い性格してるわね。羨ましいわぁ……」


66「あ、あの~、それで私達はこれからどうなるのでしょうか?」

11「帝国軍に追われて逃げる楽しい日々の始まりじゃないかしらね。」


66「それは楽しそうですね!長らくの間、館内を動くだけの運動しかしていませんでしたから、そのような壮大な運動が出来るなんて……。
恐らくこれも、神の与えし試練!!」


11「……66。あなたって子は本当に緊張感がないのね……」


ぐぅ~……

66「あ……お腹が空きました///////
エヘヘ。どこかレストランに行きませんか?」


11「もぉ!!あなたっていう人は本当に……!!」

ガサッ

11「っ!?」

66「?誰か居るのですか?」



先生「……はぁ…はぁ…」

11「!!あなたは……」

66「先生!!無事だったんですね……」

先生「寄るな!クローン共!!」

66「え……?先生……」


先生「……11番……お前か……?お前が我々の情報、あの施設の情報を帝国軍に漏らしたのか!!?」


66「え?え?先生?何を……」


11「………」

66「11さん?あの……どうかしました?」


11「数週間前、帝国の伝達屋をしてるハーピーさんが島の海岸で休んでるのを偶然見掛けて……私、その人に手紙を渡した。帝国軍の偉い方に届けて欲しいって頼んで……」


先生「伝書鳩だと……?くそ……。
貴様……手紙に我々のことを書いたのか?クローンのことも、実験のことも……」

11「ええ。……どの道あのまま実験に付き合い続けてても、私達は皆殺されるんでしょ?私達の中から真の聖職者が生まれたとき、それ以外のクローン達は皆消される……」

66「え………」

先生「当たり前だ!伝説の聖職者と同じ顔をした輩が何千も居たら困るだろ?不良品は排除するに決まってる!」

11「そう……いずれは私も殺される。私は、真の聖職者にはなれない……」

66「で、でも11さんは真面目だし、私達の中で一番のお姉さんだし……志も聖職者に最も近いと思いますが……」


11「……無理よ……、私なんかより、もっと聖職者らしい子が居るんだもの……」

66「……?」


先生「くそっ……もう少しで、真の聖職者を…………ゲホッ!ぐっ……」

66「先生?ひょっとして怪我をなさってるのですか?」

先生「来るな!!汚らわしい!!お前らを見てると気分が悪くなる!!」

66「駄目です。怪我を治さないと……」

先生「やめろ!私に触るな!!ゴミ共が!!やめろ!!」



11「……こうなったら、66さんは止まらない……。あの子の善行は度を越えている……こんな人間を助けるなんて……」

先生「……くそ……クローンなんかに助けられるなんて……」

66「血がとまりません……このままじゃ危ないです。……私に、もっと強力な治癒術が使えたら……」


先生「……貴様は、そうやっていつも死にかけた他のクローンらを助けてたな……。」

66「はい……でも、完璧に助けれたことはあまりないです。いつも、手遅れで……」

11「そしたら、死んだ子を抱えて鎮魂歌を熱唱しだすのよね。あなたって子は………」

先生「………」

66「はい。死は旅の始まり。皆の旅始めを私の歌で飾りたいのです。」


11「なら、もうすぐ先生も旅に出るみたいだから、歌ってあげたら?鎮魂歌。」

66「駄目です。まだ先生は生きてます!早く、お医者さんのところに……」


先生「…………」


11「先生……あなたは、こんな66みたいな子も殺そうとしたのですか?」

先生「……。

私だって……私だって、最初の頃は、可愛い生徒達が死んでいくのを見て毎日泣いてたわよ……。
任務とはいえ、罪もない子達が苦しんでいるのを見て……何もできない……。


もう嫌だった……どうせいつかは死んでしまうあなた達を見ているのが……」


11「……それは言い訳のつもり?同情でも誘ってるの?」


先生「……さぁね…。」



「おい!居たぞ!こっちだ!!」



先生「……くそっ……見つかったか……。」

66「帝国の紋章の入って軍服……、帝国軍の方でしょうか?」

「ああ。帝国軍第3地方の分隊に所属する者だ。
お前達は、あの孤島からやってきたんだね?」


11「……くっ」


「……君達だけか?他にはいないのか?」

先生「……ええ。私達だけ……」


66「あ、あの!先生が怪我をしてて、至急病院に……」

11「……私達をどうする気ですか?……殺すのか?」


「殺す?何を言っている?目の前に現れた子女にいきなり剣を振る蛮行など、帝国軍人のすることではない。」

11「……え?なら、何故私達を探して……」

66「なら、先生を病院に連れて行ってください!早くしないと……」


「……なるほど。そちらの女性は措置を急ぐみたいだな。」

66「ですからお願いします!どうか……」

「…………。
ああ、分かった。今すぐ町の病院に連れて行こう。
ただし、一つ条件があるんだが……」


66「はい分かりました。だから、早く先生を病院に……」

11「66!条件が何かも聞かずそんな勝手に……」

~第3地方・とある漁街・帝国軍駐屯地~


女兵「………」
お嬢「………」
アカネ「……」


漁町の軍将「やぁ、はじめまして。少女達。私はこの街を統括する軍将だ。」


66「はじめまして。私は66と言います。」

11「……11です。」



お嬢「あの軍将はタダ者じゃないですわ。元老院と対立する派閥の一つを指揮してる、第3地方の名立たる軍将の1人ですわね。」

アカネ「でもここは夢の世界。シスターの記憶の中では、まだ田舎町のしがない軍将ようね。」

女兵「静かに。帝国軍の施設に忍びこんだのがバレたら、そのまま監獄いきだぞ。」

お嬢「全く……。この夢の世界に来てからというもの、盗み聞きばかりしていますわね……」

アカネ「あら、いいじゃない。楽しいわよね?他人の秘密を探るのって……」

女兵「まーどうせなら、こんなシリアスな会話でなく、他人の恋愛事情とかを聞きたいけどな。」


お嬢「……あなた方、嫌な性格ですのね……」



軍将「君達は双子か何かかい?名前も番号で呼び合ってる様だが……」

11「え?あなた、私達のことを何も知らないの?帝国の軍将のくせに……」


軍将「恥ずかしながら。孤島での事件に対応しているのは帝都軍のもの達で、私の部下ではないからね。しかも、私の上司と私は仲が悪くて、孤島付近を管轄する私に何の情報もくれないんだよ……」


女兵「上司……当時の第3軍将は元老院の輩だろ?あの軍将さんはもう既に元老院と対立してるんだな……」

お嬢「まぁ、元老院の方々と同じくらい、あの軍将さんも頑固者ですからね……」


軍将「君達の知り合いは既に病院に搬送した。それとは別に、君達にはお願いがある。」

11「……孤島で起きてる事件に関する詳細を知りたい……ですか?」

軍将「その通りだ。是非我々に情報提供してくれ。応じてくれれば、相応の謝礼もするし、勿論身の安全も保証しよう。」

11「身の安全……」


66「11さん。これは素直に応じるべきではないでしょうか?」

11「……」

~30分後~

軍将「クローンはまだ数百体もいるのか!?」

11「ええ……。培養カプセルで作成中のを含めれば、千、いや二千体は越えます……」


軍将「……それはまた……。教会の輩の行為にしては、大掛かりだな。
まぁいい。君達の情報提供には感謝する。ありがとう。」

11「……いいえ。
それで?私達はどうなるの?」

66「あの……私、お腹が空き……」

11「私達の素性を知った上で、あなたはまだ私達を生かして逃がすつもりがあるのですか?それとも……」


軍将「……いい目をしてるな。」

11「何?」

軍将「生への執念、そして殺意。この場で私を殺してでも、生き延びようとする気迫だな。
君も教会の輩の行った実験に巻き込まれては、生き延びてきたのだろ?恐らく、その信念がなした成果だろう。」


11「………」

軍将「生き延びる為、他のクローンを見捨て、或いは命を奪うこともあったのだろ?」

11「……くっ…」


軍将「ま、それを愚行とは申すまい。少しでも死んでいった者達を憐れに思うなら、その命らによって繋がれた自分の命を大切にすることだな。」


66「あ……あの~……えと……」


女兵(………)


軍将「まあ、まずこのお金を受け取ってくれ。」

11「……それが謝礼?」

軍将「いや、これはあくまで私個人から君達への贈り物だ。これから君達が生きていく上での資金にしてくれ。
今まで孤島暮らしだったのだから、いきなり帝国の社会に放り出されては困惑することだろう。」


11「それはつまり、このまま私達を見逃がしてくれるのですね……」

66「つまり、帝国軍さんに追われる日々がやってくるってことでしょうか?」

軍将「いや、その心配はない。
さっき入った情報だが、軍の上層部は今回の孤島の件は終息したと言っている。裁判の1つも起こさないつもりらしいから、恐らく島の生き残りはゼロ。その残虐な研究者も残りのクローンも全滅だ。
そんな中、新たな関係者として君達を上層部に差し出したところで、恐らく彼らはせっかく片付けた案件にまた引っ張りだされるのを面倒くさがるだけだ。君達わ連れて行く私も賞賛されるとは思えない。

なら、君達をこのまま見逃した方が私自身の為でもある。違うか?」


11「……やっぱり、島の人……他の子達は全滅した……?」

軍将「気の毒だが、そういうことだ。」

軍将「よければ、我々の軍用飛行艇で君達を他の町に送り届けることもできるが……希望はあるか?」


11「……いえ、特に……」

66「なら“教会の街”に行ってみたいです!私達の憧れの大聖堂、神のお膝元に行きたいです!」

11「66!あそこは“教会”の総本山よ!?私達をあんな目に合わせてた奴らの……」


軍将「さて、どうだろな。君達を隔離してた輩は、“教会”の中でも過激な保守派だ。教会の街自体はそれほど排他的でもなく、帝国軍も常駐している。」


11「……でも……」


ギュッ
11「え?」

66「行きましょうよ!!11さん!教会の街に……」

11「66さん……」

66「11さんだって、あんなに行きたがってたじゃないですか?なら、是非行きましょう!」

11「……わ、分かったから、手を握るのやめてくれないかしら?」

66「……あ、すいません……」


11「それに本気なの?本気で教会の街に行くつもりなの?」

66「はい。だって、私達は聖職者になる者ですから……」




女兵「あの66って奴。恐らくシスターだろうな……」

アカネ「意外ね……。もうちょっと特別な子なのかと思ってたけど、他のクローン達とかわらないわね。」

女兵「いや……よ~く分かったな。」

アカネ「何が?」

女兵「シスターのあのお花畑な性格は、過去にあったトラウマ等によって形成されたものじゃなくて、生まれてからのものだったってこと。
数千のクローンが出来上がるウチに偶然生まれた、それこそ生まれたつき神から与えられたものだったみたいだな。」


アカネ「クローン……ね……」


女兵「……でさ、アカネ。聞きたいことがあるんだが……」

アカネ「?」

女兵「クローン作る時に、オリジナルの性別をかえて作るとか出来たりするのか?男のオリジナルから、女の姿をしたのを作るとか……」

アカネ「………ええ多分。まー実際に成功例を見るまでは何とも言えないけど……。」

女兵「成功例か……。もしかしたら俺、見たことあるかもしれないな……」

アカネ「そうね、意外と身近に居るものよね。そういうのって……」

魔法使い『だ、駄目ですよ……シスターさん!!』


シスター『ごめんなさい……私……我慢出来ない……』


魔法使い『だ、駄目……。私達、女の子同士だし………。それにシスターさんには吸血姫さんが……』


シスター『お願いします!魔法使いさん!!私……私……!!』




いや……ダメ……ダメだよ………

そんな……そんな……








ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!


魔法使い「…………」

魔法使い「……?め、目覚まし時計……?

………あ
い、今の……夢だったの……?

私と………シ、シスターさんが………


あんなことに……


………………


・・・・・・・・・



~現実世界・教会の街・郊外の大聖堂~

吸血姫「♪~」


羽女「お?吸血姫さんがとてもご機嫌な様子ですね?」

吸血姫「ん?ええ、別に♪」


吸血姫(昨日のシスターの夢は楽しかったわ~♪シスターと一緒にお花畑で遊んだり、お風呂で遊んだり………ウフフ…)




羽女「……ふーむ。ま、いっか。
とにかく、私は昨晩シスターさんと“ヤバい”事になっちゃう夢を見ました!」

ミドリ「なぬ?」
魔法使い「!!?」



吸血姫「……今、なんて?」


羽女「昨日、シスターさんのあの様な姿を拝見したせいか、夢の中で発情したシスターさんに襲われる夢を見ちゃいました。
いやぁ~、しかし発情したシスターさんも可愛かったでしたね。久々に人間の雌に興奮しましたよ。」


吸血姫「……何ですって?……あなたの夢の中で、シスターが……」ゴゴゴゴ


ミドリ「あ、私も見ましたよ?シスターさんの夢………」

吸血姫「なっ!?」

ミドリ「……私も夢に勇者様(魔王)以外の人が出てくるのは久しぶりで……。
しかもシチュエーションが……一緒にお風呂入ってるシチュで……衣類を身にまとわぬ私の裸体を、発情したシスターさんが……////」


吸血姫「……あ……あ……」



羽女「魔法使いさんはどうでした?」

魔法使い「え、えっ!?」

ミドリ「あなたもやっぱり………?」

魔法使い「あ、あの……」


吸血姫「………見たの?」ギロッ

魔法使い「えっ!?え、えと……その……………
……………………
……………………………

い、言えません//////」


ミドリ「あ、見たんですね………」
羽女「顔赤くしちゃって……可愛いですね♪」


吸血姫「…………」



吸血姫「シ、シスターの浮気者~!!!!」

ミドリ「………」
魔法使い「あ~……」
羽女「ま、まさか吸血姫さんがあんなに取り乱すなんて……」


吸血姫「確かに、シスターは皆の事も考えてるし、私だけの存在じゃないことは分かってる……。

……でも……」



男兵「よ、おはよー。皆元気か?特に吸血鬼~。」

吸血姫「……男兵?
………まさか、あなたも……」

男兵「?」

吸血姫「あなたも夢の中でシスターと………!!?」

男兵「は?夢?
最近夢なんてほとんど見てねーがな。それに一々シスターが出てきたら、毎回神説話をされまくって鬱陶しいだろ。」



羽女「//////」
ミドリ「//////」
魔法使い「//////」


男兵「??
な、なんだよお前ら?3人仲良く顔赤くしやがって……。
…………まさかお前ら……」


魔法使い「み、見てません!!私は別にシスターさんとあんな事になる夢なんて……」

男兵「……自供するのが早過ぎだな……」

魔法使い「だ、だから!!わ、私からしたワケじゃなくて、シスターさんの方から……!!」



吸血姫「……こ、この雌猫が………。」

魔法使い「っ!?……ひ、ヒドいです……」




ミドリ「というか、男兵はシスターさんのあんな姿を見て、淫夢の一つも見なかったと……?」

羽女「……あなたは本当に男なのですか?」


男兵「いや、なら女のクセにシスターを夢にまで見たお前らは何なんだよ……?」


羽女「それは……一種の気の迷いというか……」

ミドリ「……好奇心?」

魔法使い「と、とにかく!!別に“そっち系”なワケではなくて……」


男兵「そっち……って、どっちだよ?」

魔法使い「え?だから……その……
ゆ、勇者様や吸血姫さんみたいな……」

男兵「つまりは“レズ”な。」

吸血姫「わ、私は別に……!!た、ただシスターのことが……」

男兵「全く、勇者ご一行ってのは皆色々豊かなだよな……」

~東の大平原~


女兵「……?」
射手「??」

猫盗賊「にゃ、にゃ~……?誰?こいつ……」



“謎の幼女”「ポリポリ……」

女侍「モグモグ……」


新妻「女侍さんとご飯食べてる娘……誰でしょうか?」

猫盗賊「しかも……裸……?パンツすら付けてない……」

謎の少女(全裸)「モグモグ……ゴクリ。
美味しい~♪おかわりなのじゃ~♪」


新妻「え?あ、はい。
……て、いうか、あの服着た方が……」

謎の少女「む?あ、ああ。気にしなくていいのじゃ。わらわは平気なのじゃ~♪」



猫盗賊「………露出狂?」

女兵「……女侍、お前の知り合いか?」


女侍「む?……ああ、案ずるな。勇者の仲間だ。」


新妻「ゆ、勇者様の仲間!?いつの間に……」

女兵「まさか……俺らの知らないウチに勇者が誘拐してきた……!?
あいつ……ついに犯罪を……」




アカネ「おはよ~♪盗賊ちゃ~ん♪ムギュ~ッ!」

猫盗賊「あ、姉上!?……あ、朝っぱからそんにゃ抱き付きなんて~……」

アカネ「あら?昨晩のベッドの中では盗賊ちゃんの方から抱きついてきたのに……。
一晩で変わってしまったのね。お姉さんなんて、もうどうでもいいのね……グスン」


猫盗賊「にゃ、にゃっ!?べ、別にそんなつもりは……」



アカネ「……あら?」

謎の少女「むむっ?」

アカネ「あなた……その歳で露出魔なの?レベル高いわね~。」


謎の少女「ろ、露出魔!?ガーン!
や、やっぱり服を着た方がいいのかの……?」

女兵「まぁ……多分な。」

射手「あの……ところであなたは一体誰なんですか?」

謎の少女「おやおや、射手~。まだ気付かないのかぁ~?」

射手「え?」


謎の少女「………。ま、分かるはずもなかろうか。そなたとはかなり深い関係になれたと思ったのじゃがなぁ~♪」

射手「?」

謎の少女「そなたの裸の感触……背中、ふくらはぎ、その小さな膨らみの胸から神秘な部分まで、体の隅々を這わせてもらったのじゃからのぉ~♪」


射手「ええっ!!?」

女兵「ちょっ!?射手!お前か!?このマセガキを連れてきたのは……」

アカネ「しかもかなり濃厚なプレイをしたようね……射手ちゃん。ロリ専だったの?」


射手「い、いや……私、身に覚えが……」



女兵「……だろうな。まぁ、射手に限ってそんな事はないだろうし。」

アカネ「あら?すぐに信じるのね。もしかしたらあの可愛らしい射手ちゃんの裏にはとてつもない性癖が……」


女兵「そんな変態は女勇者1人で充分だ。ま、アイツ以上の変態は居ないだろうがな……」



謎の少女「ちなみに、女兵の身体も少し噛らせてもらったことがあったのぉ~♪
アカネには逃げられたけど……」



女兵「………ふ~ん、段々謎が解けてきたな……」

射手「え?あの……何が……」

アカネ「あら?じゃあ、ひょっとして………」

猫盗賊「姉上……?」

女侍「バクバク……ムシャムシャ……」



女兵「なら、こうしても平気だよな?」スッ

射手「!?お、女兵さん!?何故その娘に向けて剣を構えて……」

女兵「……っ!!」ダッ!!

ザクッ!!


猫盗賊「にゃっ!?女兵!?何して……」

射手「女兵さん!?なんでそんな……………え?」




ワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサワサ


猫盗賊「にゃがぁっ!?にゃにゃにゃにゃっ!!!?」

射手「嘘……。傷口から……赤い……蜘蛛が……」


謎の少女「……ムフフ。ここまでくれば、さすがに分かったかの?射手殿。」

射手「………あなた……まさか……アカモリ軍将殿と同じ………?」

女兵「と、いうか、“アイツ”だよ。射手、お前に懐いてた“あの”アカモリグモ……」


射手「……え?ま、まさか……」

射手「あなた……“ちぅ”なの?」


女兵「“ちぅ”?何だそりゃ……」

新妻「アカモリさんから貰った蜘蛛に、射手さんが密かに付けた名前です。
射手さん、あの蜘蛛を意外と大切にしてたんですよ?」

女兵「マジで?あいつ、変わり者だな……」

アカネ「ロリ専ならぬ蜘蛛専?いや、でも今はロリの姿だし……」



射手「あなた……ちぅなの?」

ちぅ「……うん。それは、そなたがわらわに名付けてくれた名じゃの……」

射手「……え?だ、だってちぅは……あなたは、一匹の蜘蛛だったんじゃ………」


ちぅ「確かに、あの時のわらわは一匹じゃった。
しかし、わらわも無限に命を生む存在。一匹から無限に増殖し、今の姿を形作ったのじゃ。」

射手「……ほ、本当に……?」


女兵「つまり、お前もアカモリと同じ能力を持ってるんだな。
お前、アカモリの姉妹かなんかか?」

ちぅ「アカモリは、わらわを生み出した存在……わらわも元はアカモリの無限に作り出す命の一つじゃった。所詮は、一匹の小さな蜘蛛にすぎんかった……。
じゃが、知らん内に自分でも増殖出来る様になったのじゃ。そして今、こうして人型にもなれた……」


射手「ちぅ……本当にちぅなんですね……」

ちぅ「うん。そうなのじゃ。射手。
……ようやく、こうして言葉を交わせたのじゃ……」



女兵「なんだかよく分からんが、つまりお前も勇者の仲間入りってワケだな。」

アカネ「もしアカモリと同じ能力を持ってるなら、かなりの戦力になるわね?」

ちぅ「もちろん!わらわに期待してなのじゃ~♪」



射手「だ、駄目です!!!」

ちぅ「……え?」

女兵「??ど、どうかしたか?射手……」

射手「ちぅを危険な目に合わせるワケにはいきません!!もし、ちぅに何かあったら………私……私……」


女兵「………?なんだよ、あれ……」

アカネ「飼い主バカ?過保護?」

新妻「射手さんは大切にしてるんですよ。ちぅさんのことを……」


ちぅ「大丈夫なのじゃ~♪わらわは強いし~♪身体は傷ついても再生するし~♪」

射手「駄目ですって!!ちぅが傷つくところなんか見たら……私……私……!!!!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年07月02日 (日) 19:33:57   ID: zj34zajW

流石に金の下りは鳥肌がたった。
厨2もなにも中学生レベルのことがわかってない。
ssの限界とかいってるけと無駄に話を広げて収集できなくなってるだけじゃん。後付でポンポンだすから。

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