勇者「魔王が勇者一族に呪いをかけたけどやっと対面できそうだ」(625)

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勇者「魔王が勇者一族に呪いをかけたけど治った」

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白龍「さて黒、お前はもう聞きたい事は無いのか?」

黒竜「普段あれを聞こうそれを聞こうと考えるのだが、いざ面と向かうと思いつかないな。」

青竜「じゃぁそろそろいいんじゃない?おーい赤ー。」
ドタドタドタ

白龍「人間さん達は他に聞きたい事やお願い事は無いかな。私達は少々事情があってここを動いてはいけない、だから暇でね。」
白龍「突飛すぎる事ではないならお話を聞かせてもらえるとうれしい。」

勇者「動けない?なぜだろうか。」

黒竜「すまないな。その点に関しては私達が話して良い事じゃない。」

女僧侶「そうなのですか、それはすいません。立ち入った事を・・・。」

白龍「いいのだよ。言われれば気になろうという物、私の気遣いが足りなかった。すまなかったね。」

勇者「いや、そんな・・・。」

黒竜「あぁそうだ人間。お前達は普段何を食べているのだ?わざわざ乾いた葉を湯で戻すなどよく思いつくな。」

女僧侶「お茶ですか?あれは、お腹を満たすことが目的では無く、お酒の様なものでして・・・。」
勇者「普段食べる物は野菜や肉、魚だろうか。」

白龍「肉か、懐かしいな。私も昔は魔物を飲み込んでいた。」

黒竜「野菜とは確か人間が食べる事が出来る植物の総称だったか?今持っているだろうか、見せてくれないか?」

女僧侶「あ、すみません本来なら持っていてもおかしくは無いのですが、今は持っていなくて・・・。」
勇者「今は動物を燻製にした保存食しか持っていない。」

黒竜「燻製・・・。肉を煙にあてた物だったか。なぜそんな事をするんだ?」

勇者「第一の目的はやはり保存の為だ。生の肉だと論外だし、ただ焼いただけでは簡単に腐る。木や草の煙に当てる事によって格段に腐りにくくなる。」

白龍「なるほど。人間は足が遅いから、自由に獲物を追えないから必要なのだね。他の生き物ならば、追えないというだけで絶滅の理由たりえるのだが・・・。」

黒竜「面白いだろう人間は。足りない物を補う知恵を持つ。無論私達も知恵を持ち人間より高次な魔法を扱えたりするが、生物の中では強大すぎる部類。」
黒竜「飢えても簡単に奪える。困る事が無い。だからこそ、発想を持たない。人間には確か必要は発明の母という言葉が有ったな。正にその通りだ。」

白龍「なるほどお前が人間に傾倒するのも少しは理解できた。確かに面白いと言える。しかし食べ物を保存するのは多種の動物でもやるだろう。」

黒竜「それはその個体が思いついた事ではない。たまたまその行動をしたものが生き残っただけと言える。」

白龍「同じ事ではないか。」

黒竜「違うな。知識伝播という他者へ伝える方法を懇意的にとるのは人間だけだ。リスや猿はそういった行動をとらないはずだ。」

白龍「知らないだけではないのか。」

黒竜「知らないだけだとしてもそういった行動をとる生物の中で一番成功したのは人間であるのは疑いようがない。」

白龍「観測するのならやはり人が一番だと、そういう事か。」

黒竜「うむ。そういう事だな。」

勇者「・・・。」
勇者(人間を観測する理由か。人も他の動物を観測して本にしたりしているからな。知性あるドラゴンが人間をそういった対象にしてもおかしくは無いか。)

白龍「あぁ、すまない。人間さんを仲間外れにしてしまっていたね。」

女僧侶「い、いえ。大変興味深いお話でした。」

黒竜「ふむ、それなら良かった。しかし青が遅いな・・・。」

白龍「また赤が何かをしたのだろう。毎度の事ながらあいつは飽きないな。」

赤竜「うーむ。水につかるのは久しぶりだった気がする。」
ズガズガズガズガ
青竜「なんで滝つぼに居るのよ・・・。」
ドタドタドタドタ

白龍「酔いは覚めたか?」

赤竜「儂は酔っとらんぞ。あー」
口≪ガボガボガボ≫

青竜「他にいきなり噛みつく奴が素面だと思いたくないわ・・・。」
白龍「確かに。まだ酔っている時だけの方がありがたい。」

黒竜「・・・そうだ!酒を造ろう!人間、酒の造り方を教えてくれ!」

勇者「い、いきなりだな。」

黒竜「酒が無かった間ずっと自分で作れればと思っていてな!ちょうどいいどうせまた壊してしまうのだろうから今のうちに教えてくれ!」

女僧侶「お、お酒ですか・・・。いろんな方法がありますけど、ここでは・・・・・・。」

黒竜「まずは材料を教えてくれ!」

勇者「・・・大概は、芋や麦、果物などから作る。後は水と酒麹か。」

白龍「ふむ、だとしたらここでは作る事が出来ないな。」

黒竜「確かにそうだ・・・。ここにあるのは竜の木とよくわからん草だけ。代わりになりそうな物が無いな・・・。」

青竜「葉っぱでやってみたら?」

黒竜「恐らく酒は微生物が分解するための飯が必要なのだろう。竜の木の葉は腐らない。微生物では分解出来ないのだ。」

青竜「ふーん。」

女僧侶「あ、でしたら、つけ込んでみてはいかがですか?」

黒竜「つけ込む?」

女僧侶「お酒を造るとは違うのですが・・・お酒に木の実などをつけ込んで味を変える方法が有るのですよ。」

白龍「ふむ。なるほど、今あるこの酒を別の物に変えるというわけかな。」

黒竜「なるほど面白そうだ!という事は別の器が必要になるな、どうするか・・・。よし!もう一つフラスコを作ろう!おーい茶よ!」
ドカドカドカ

赤竜「げふっ!それで儂はなんで呼ばれたんじゃい。」

青竜「あんたが人間を連れてきたんでしょ。責任もって返してきなさい。」

赤竜「何!外に出ていいのか!」

青竜「すぐ戻ってくるに決まってるでしょ!」

勇者「あ、それなんだが、少しの間此処に居てもいいだろうか。」

白龍「別にここは誰のものでもない。好きに居るといい。」

青竜「でも人間の食べ物はここにはないわよ?」

女僧侶「一応自分たちの食糧は有るので大丈夫です。ありがとうございます。」

白龍「それで、目的はなんだい?」

勇者「・・・少し、協力して協力してもらいたい事があるんだ。」

青竜「協力してもらいたい事?」

女僧侶「えぇ・・・。私達の知識向上など、強くなるための手助けをしていただきたくて・・・。」

赤竜「人間はこまいのだ。努力したところで無駄だろう。」
白龍「口に気をつけろ赤いの。尊厳を害する発言だ。・・・それで?人間さんは具体的にはどういった事を頼みたいのかな?」

女僧侶「え、えぇ。茶色いドラゴンさんを相手に・・・」

黒竜「おい赤いの!こっちへ来い!」

赤竜「なんじゃい!」

茶竜「フラスコ作る!」

赤竜「おお!いいぞ!」
ズガズガズガ

青竜「木の近くでやんないでよ!」
ドカドカドカ

白龍「ふむ。あいつに何をしてもらいたいのかな。」

女僧侶「まだ具体体には分からないのですけど、私たちの仲間が何かを頼みたいらしくて・・・」
勇者「とても強い敵がいるんだ。そいつを倒すにはとても強い攻撃が必要で、それを編み出すために一番固いドラゴンに手伝ってもらいたい。」

白龍「ふむ。なるほどだからさっきその質問をしたのだね。技の実験台になってもらいたいと・・・。」

勇者「先に断わっておくと・・・その仲間の攻撃で着いた傷は貴方たちの自動回復では治らない。だから、もし・・・」

白龍「殺すつもりはないのだろう?ならば後はあいつがどう答えるかだ。」

女僧侶「い、いいのですか?確かにそうですけど、大けがをするかもしれませんよ?」

白龍「私達は先ほど言ったように死なない種族。そして大概の怪我は治ってしまう。人間とは根本から違う。自動回復が発動しなくとも、少しの間つなげて置けばいつかは治る。」
白龍「それに、私達は大昔人間に挑まれたことが有る。人間が私達に致命的な怪我を負わせた事など一度も無い。」

白龍「個人的にはとても楽しみだ。たった数日で人間は私達を屠る事が出来るのかな。」

勇者「・・・。」
勇者(良いのだろうか。)

白龍「それにあくまであいつがうんというかどうかだ。早とちりはしないようにな。」

女僧侶「・・・わかりました。聞いてみます・・・。。」

白龍「それで、頼み事はそれだけでいいのかな?」

女僧侶「あ、いえ。出来れば、魔法についての質問などにも答えてほしくて・・・。」

白龍「その程度ならいくらでも聞くといい。答えられる範囲内ならば答えよう。」

フラスコ≪ザザザ・・・ピチャ、ピチャ・・・≫

勇者「? 酒が・・・。」

白龍「魔法を一時的に解いたのだろう。」

茶竜「グオオオオ!!!」
ゴゴン!!ゴゴン!!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!!!

女僧侶「きゃぁ!な、なんですか!?」

白龍「茶色がフラスコ用の型を作っているのだ。地面の揺れは大きく地面を動かしているからだろうね。」

勇者「地面が建造物の様にせり上がって・・・!」

ズゴオオオオン!!!!

勇者「た、高い・・・!」
勇者(2階建ての家の2倍程度か・・・!)

お茶にごしましたすいませんきっとこのすれでおわってくれるはずすいません

白龍「大きさはこのフラスコを作った時と同じだね。全く一体どこに置いておくつもりなのか・・・。」

女僧侶「ここまで大きく地面を動かせるなんて・・・。」

勇者「フラスコを作るという事だが硝子はどうするのだろうか?」

白龍「ふむ。今まさにどうにかしようとしている所だよ。見ているといい。」


茶竜「グオオオオ!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!
ズゴン!

勇者(・・・岩?)

黒竜「スゥー・・・」
黒竜「オオオオオオオオオ・・・」
ゴオオオオオ・・・

大岩≪ガギ、ガギギギギ・・・≫

岩≪ゴト!≫
白い岩≪ゴト!≫
白い岩≪ゴトン!≫

女僧侶「え?」

勇者「わ、別れた・・・?」

白龍「見ての通り黒は物を分ける息を吐く事が出来る。黒が作る硝子は石から取り出した物を複数合わせる。」

白龍「合わせるのは赤がやる。赤が適度に本気の息を吐くことで溶かし混ぜ、あの型に流し込む。」

女僧侶「ガラスとはそう作るのですね・・・。私は作り方も何も知りませんでした。」
勇者「・・・しかしそれだけではガラス内に気泡が出来てしまうのではないか?そうなると著しく強度が下がると思うが・・・。」

白龍「ふむ。確かに初めてフラスコを作る時は黒も同じような事を言っていた。しかしその問題は解決済みだ。」

白龍「緑が真空を作り出しその中で作業をすることにより、空気の侵入を防いでいる。」

勇者「・・・なるほど。」
勇者(作業工程すべてに呆れるくらいの膨大な魔翌力が必要な力技が用いられている。人が真似できる部分が一つもないな。)

白龍「今日はもう酒はお預けかな。聞きたい事は有るかな?」

女僧侶「あ、え、えっとですね・・・。」

白龍「・・・出来たら聞きに来るといい。私は・・・そういえば君たちのお仲間が私の居場所を取ってしまっていたね。」

女僧侶「あ、す、すいません。」

白龍「気にしないでいいよ。目をつむればすぐ去る大事な客。気にせず使ってくれていい。・・・私は日の当たる何処かに居る。見当たらなければ水の中に居るだろう。」

白龍「それと、出来るだけあそこには近づかない方がいい。私たちの息、特に黒の息だが、人間さんが触れてしまうと死は免れないだろうね。」
白龍「小さな人間さんは緑が気にかけてはいるが、出来るだけ離れさせて置くことをお勧めしよう。」

白龍「ではね。」
川≪サバァ!ザザザザ・・・≫


勇者「・・・では俺は魔法を呼んでくる。」

女僧侶「あ、では、私はお馬さんの所に行きますね。」

勇者「あぁ。どのくらいになるか分からないが、少しの間此処にいる事は決まったわけだから、滞在する準備を進めておいてくれ。」

女僧侶「了解しました。・・・私も何を聞くか考えておかないと・・・。」

勇者「・・・。」
ザッザッザッ・・・


赤竜「暇じゃー!!」

黒竜「オオオオ・・・」
ゴオオオオ・・・

茶竜「グオオオオオ!」
ズゴゴゴゴ・・・

赤竜「・・・暇じゃー!!」

青竜「うっさい!!」

赤竜「暇は暇だ!なんとかしろ!!」

青竜「なんであたしがあんたの相手しなきゃいけないのよ!」
緑竜「そんなに暇なら材料を上に運んでいればいいだろう。」

赤竜「嫌だ!つまらん!」

緑竜「後でやる事だろ。」

赤竜「明日でいいことは明日やるんだ!」

青竜「死ぬまで寝こけてろ!」

女魔法「・・・身勝手。」

緑竜「全くだ。」

赤竜「なんだとー!」

勇者「魔法。」

緑竜「やめろ!乗るな!」

女魔法「何?」

赤竜「お前は相も変わらず非力だな!」

勇者「ここは危ないからこっちへ来い。」

青竜「あんたが重いだけよ!」

女魔法「わかった。」

赤竜「儂より茶の方がもっと重いぞ!」

茶竜「ぐおっ!?」

緑竜「早くどけ!どかんと吹き飛ばすぞ!」

赤竜「うほほほほやってみろ!」

ザッザッザッ・・・

女魔法「・・・。」

勇者「全く愉快なドラゴン達だな。」

女魔法「うん。どれだけ知識が合ってもふざけ合えるんだね。」

勇者「対等な相手がいるからだろうか、それともドラゴンという種族は皆そういう物なのだろうか。」

女魔法「・・・。」

勇者「人はどうなのだろうな。俺はよく知らないが・・・歳を経てもあのように笑えるのかな。」

女魔法「・・・生きてれば、何時か笑えるようになる。」

勇者「・・・そうだな。そうだった。」

勇者「とにもかくにも、生きていなければ全ては閉じるか。」
勇者(・・・)

女魔法「・・・。」

赤竜「グオオオオオオオ!」
ヒュオオオオ・・・

ズゴォオオオオ・・・ン


勇者「・・・。」
勇者(重そうなのによく飛ぶな。)

女魔法「・・・ねぇ。」

勇者「どうした?」

女魔法「負んぶして。」

勇者「いいぞ。・・・」
ザッ

勇者「乗れ。」

女魔法「ん。」

勇者「よっと。」
ズザ

女魔法「・・・。」

勇者「軽いな。船の時から変わってない。」

女魔法「・・・。」

勇者「夢と現実は何か違いが有るかと思ったけど、足の細さなどは変わらないな。」

女魔法「・・・あんまり触らないで。」

勇者「あ、悪い。」
勇者(・・・負んぶの状態で触るなというのは無茶のような。)

女魔法「・・・」

勇者「・・・」

ザッザッザッザッ

勇者「・・・・・・。」
勇者(触るなと言われるとむしろ意識してしまうな。・・・今手を掛けているのは腿の辺り、少し手をずらせばお尻にあたる。)

勇者「・・・・・・・・・・・・。」
勇者(子供の頃読んだ人間の体についての本も妙に気恥ずかしく感じた。魔法はまだ子供だが、感じる気恥ずかしさは一緒だな。)

勇者「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
勇者(そもそも俺はそういった事を考えても仕方がない。意味のない感情だ。しかしながら繁殖に置いて必要な感情である事は疑いようがないわけだが人はこういった感情を劣った物として)

女魔法「勇者?」

勇者「っ、なんだ?」

女魔法「どこ行くの?」

勇者「・・・あぁすまない、考え事をしていた。」
勇者(いつの間にか変な方向へ・・・。)

ザッザッザッ

勇者「・・・。」
勇者(・・・ちゃんと発達しているんだな。・・・。)

ドカドカドカ
赤竜「・・・む?おお人間、いったい何をしている。」

勇者「っ、負んぶをしているだけだが?」
女魔法「・・・。」

赤竜「おんぶ?なぜそんな事をする?」

勇者「色々あって疲れたらしいから、あまり疲れていない俺が代わりに歩いてる。」

赤竜「ほう、なるほど。おんぶか、面白そうだの。よし・・・」

勇者「あ、いきなり乗ろうとしない方が無難だと思うぞ。」

赤竜「背中に乗せろと言っても聞いてくれるはずがない。ならば奇襲しなくてはいかんだろ。」

女魔法「・・・また凍るよ?」

赤竜「また溶ける。ほっほー!」
ドカドカドカ・・・

女魔法「・・・問題児。」

勇者「全くだな。しかしなんだかんだ周りも楽しそうだ。」

女魔法「そうかな?いきなり噛みつかれたりするのはやだな・・・。」

勇者「確かにな。だけどドラゴンは傷がすぐ治るという特徴のおかげで人間よりスキンシップの上限が高いのかもしれない。」

女魔法「・・・殴られたりするのと変わらないのかな。」

勇者「・・・ドラゴンにとっての噛みつきというのは俺たちにとっては小突く程度なのだろう。」

女魔法「そうなのかな。」

勇者「仲がいいからこそ出来るんだろうな。」

女魔法「ふーん。・・・」

女魔法「・・・。」

女魔法「・・・・・・・。」

女魔法「・・・。」

勇者「・・・俺は美味くないぞ?」

女魔法「っ! ・・・なんでわかったの?」

勇者「何となくな。」

女魔法「・・・。」

勇者(思い至ったのなら噛みついてくれればいいのに。・・・俺から噛みつきに行くのは大問題だからやらないが。)

女僧侶「あ、勇者様手伝ってくださいますか?」

勇者「いいぞ。何をすればいい?」

女魔法「・・・降りる。」

勇者「ん。」
スタッ

女僧侶「すいませんね。勇者様を借りてしまって。」

女魔法「別にいい。返してね。」

女僧侶「えぇ。それはもちろん。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・まぁ、別にいいか。悪い気はしない。)

女僧侶「えっと、それでですね、お馬さんのご飯兼私たちの寝床が陰になるように馬用の雨よけを立てようと思うのですが・・・」

勇者「分かった。寝藁を移せばいいか?」

女僧侶「あ、はい。えっと、場所はどこにしましょう?」

勇者「雨を凌ぎやすい壁際が良いだろう。・・・西側に設置すれば朝日は差し込んで夕日は差し込まないな。」

女僧侶「わかりました。ではお馬さん動かしますね。乗りますか?」

女魔法「ん。」

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――


赤竜「オオオオオオオ」
ゴオオオオオオオオ

緑竜「ふぁぁ・・・。どうだ?溶けたか?」

黒竜「うむ!順調に混ざっている!」

青竜「鍋は大丈夫?」

茶竜「赤いけど平気そうだ!」

赤竜「げへー・・・久しぶりで疲れるの・・・。」

黒竜「ほら休むな固まってしまうではないか。」

赤竜「これも違う酒の為か。スゥ・・・」
赤竜「ゴオオオオオ」
ゴオオオオオオオ

緑竜「弱いぞ。」

赤竜「オオオオオ!」
オオオオオオオオオオオオオ!!!

茶竜「鍋が溶ける!」

青竜「はいはい。ふー」
ヒュオー

黒竜「ほら弱めろ。」

赤竜「オオオオ・・・」
オオオオオオオオオオ

黒竜「よし、いいだろう、流せ。」

緑竜「真空魔法広」
茶竜「グオー!」

ドロドロドロ・・・


女僧侶「ドラゴンさん達本当に仲いいですね。息合ってます。」

女魔法「・・・。」

勇者「そうだな。ドラゴン達は夜眠らないのだろうか・・・。」

女魔法「まだお願いしないの?」

勇者「作業の合間に頼むのは気が引けてな。茶色いドラゴンが暇になるのを待っているんだが・・・あまりに時間が過ぎるのも良くない。」
勇者「日付が変わるまでに暇にならないようなら、作業中でも頼みに行こうと思う。」

女僧侶「確かに出来るだけ、早くお願いするべきではありますけど、ご機嫌を損ねられても困りますしね・・・。」

女魔法「優しいから聞いてくれると思うけどな・・・。」

勇者「そうあってほしい物だな。しかしここは月明かりがあまり入ってこないな・・・。」

女僧侶「八方に壁がそびえたっていますものね・・・。自力で外に出る事はできないでしょうね。」

女魔法「明後日くらいは月が高い位置に来ると思う。」

勇者「そういえばそろそろ満月か。だとするとちょうど重なりそうだな。」

女僧侶「この辺りは空気が澄んでいますから、綺麗に浮かぶのでしょうね。」

勇者「月見か・・・。満月は何となく眺める事が多かったな。」

女魔法「そうなの?」

勇者「図書館に居た頃だがな。木の上に登って、何をするでもなくただ眺めていた。」
勇者「月は結構好きだった。太陽の様に見ていても目がつぶれる事も無いし、空の無数の光の中でひときわ、しかし優しげに光っている大きな星。」

勇者「見ていると、落ち着く。」

女僧侶「勇者様普段から落ち着いていると思いますけど・・・。」

勇者「そうでもない。危機に陥ると、どうしても動揺が隠せない。衝動で行動してしまう事も多いしな。」

女魔法「勇者のそんなとこ一回も見た事ない。」
女僧侶「確かにそうですね。でもそれは・・・」

勇者「俺は皆のそばにいる事が出来なかったし、今までそういった事があっても、その時皆とは離れていたからな。仕方がないさ。」

女僧侶「・・・こんど勇者様がそういうことになったら頑張って止めてあげますね。ね、魔法さん。」

女魔法「ん。」

勇者「・・・はは、ありがとう。」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

黒竜「よーし!あとはゆっくり冷やせばよかろう!」

茶竜「ぐおー!」
赤竜「がはー・・・がーはー・・・ぐへぇあーーーーー。」
ゴオオオ・・・

緑竜「うわ、暑苦しっ。」

赤竜「ブレスを使いすぎると体が火照る・・・。」

黒竜「では水浴びでもしてきたらどうだ。人間は毎日のように水浴びをするらしいぞ。」

赤竜「ほー、白いのみたいだの。よし。」
ドカドカドカ・・・

黒竜「茶も疲れたろう。休んでくれていいぞ。」

茶竜「平気だ!でも上の葉が食べたい!」

黒竜「それ位ならいくらでも言え。緑取ってきてくれ!」

緑竜「己で行け!」


赤竜「とおぅ!」
ズガン!ヒュオオオ・・・

ドジュウウウウウウウウウウウ・・・!
白龍「あづぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
バシャアン!!
赤竜「む?」
ボゴボゴボゴボゴ・・・

白龍「な、なんてことするのだこの極阿呆は!!」
ばちゃばちゃ

赤竜「水が沸きたったくらいで騒ぎ過ぎだの。」

白龍「私にはこの温度は熱すぎる!!」

赤竜「もう平気だろう。すでに冷めた。」
ボコボコボコボコ・・・

白龍「まぁったく、毎度の事ながらやることなすこと迷惑千万。もう少し他の都合を考える事は出来ないのか。」

赤竜「何を言う。どうせ我らは死なぬのだ、少々大目に見てくれてもよいじゃないか。そもそもお前がいることなど知らなかった。」

白龍「ふん、大目に見ていなければお前は今頃路傍の石ころ。私の優しさに感謝するがいい。せめて中を確認しろ。」

赤竜「黒のブレスをくらった所で生き返るだけだがお前のブレスだけは勘弁じゃ。これからもよろしくの。」

白龍「それはこれからもお前の迷惑を容認しろという事だろうか。それこそ私が勘弁願いたい。」

赤竜「しかし今日は3回も水浴びしてるのー。なかなかおつだ。」

白龍「お前の耳は都合の悪いことを通さぬ膜でも着いているのかな。」

女魔法「・・・。」
ピチャ チャプ

女魔法「あったかい。」

白龍「おや、小さい人間さん。どうしたんだい?」
赤竜「人間!お前も水浴びするか!」

女魔法「煙がすごかったから見に来た。今日はいい。」

白龍「なるほど、確かに何事かと思うね。まぁ大概の事はこの馬鹿かあちらの馬鹿が起こしたと思って大きな間違いはないと思う。」
赤竜「なんだ人間は泳げんのか!ぶきっちょだの!」

女魔法「それは半日しかここに居ないけどわかった。・・・・・・水浴びはふつう浅い所でする。」

白龍「ふふ、それは余計な事を言」
赤竜「なに!茶も泳げぬから気にするな!あ奴は重くて浮けんのだ!」

女魔法「・・・・・・。」

赤竜「黒が茶にカナヅチと言っていたな!聞けば人間の道具で木の棒に鉄を括り付けた物!」
赤竜「言い得て妙だの!正に茶の様な奴に言える言葉だ!」

赤竜「カナヅチ!がははは人間はやわっこく水にもぷかぷかと浮くのだから泳げて然りだと思うがな!そう考えると茶より酷い!」
赤竜「ガハハハハぶきっちょぶきっちょガハハハハハ」

女魔法「雷流し」

赤竜「グバババババ」
バリバリバリバリ

白龍「ウゴゴゴ!?」
バリバリバリ

女魔法「あ、ごめん。」

赤竜「か、雷は腹にくるの!」
白龍「い、いや・・・この、馬鹿、が、悪い。し、しかし、出来るならば私を巻き込まないでくれ。」

女魔法「ごめんね。」

赤竜「そうだぞ!こいつは打たれ弱く根性無しなのだ!」

白龍「部分封印」

赤竜「うご!?」
ガキン!

白龍「・・・ふ、お前の口は災いしか産まないようだな。」

赤竜「・・・!」

白龍「分厚い甲殻を持つお前の様なとんちんかんはだからこそ鈍い。私は繊細なのだ。鱗も川魚の様に薄く、身を守るように発達したものではない。」

赤竜「・・・!」
バッシャンバッシャン

女魔法「・・・。」
びちゃびちゃびちゃ

白龍「必要ないからこそのこの脆弱さよ。故の繊細さ。私のみ手も足も無いが、足を使わずとも体を支えれ、手を使わずとも飯を食える。」
白龍「無駄がないこの体はお前の様なとげとげした体躯とはくらべるべくなく機能性が集約しているのだ。」

赤竜「・・・!」
ザッパンザッパン!

女魔法「・・・。」
ザパン!

白龍「やめんか阿呆たれ。」
尻尾『バシン!』

赤竜「・・・!」
バッシャァン!

赤竜「・・・!・・・!」
バシャバシャ

白龍「ん?・・・何を言っているか分からんな。もう少し大きな声でしゃべれ。」

赤竜「・・・・・・!!」
ザッパァァン!!

ドカン!
白龍「ぐわ!」

赤竜「・・・!・・・!」
ドバッシャンバッシャンザッパン!

白龍「やめ、やめんか!ど阿呆!」

女魔法「・・・」
びしゃびしゃびしゃ
女魔法「・・・はぁ。」


テクテクテク


ヒュゴオオオオ・・・!
白龍「が・・・」
赤竜「・・・!」
カチーン

青竜「あんたらうっさい!!寝れないでしょうが!」

白龍「わ、私の所為ではないだろう!」
バキバキバキ

青竜「同罪!」



女魔法「・・・。」

・・・テクテクテク

勇者「・・・魔法?どうした?」

女魔法「びしょびしょ。」

女僧侶「え、えぇ。それは見ればわかりますが・・・。」

緑竜「どうせまた赤いのだろう。」
黒龍「まったくあいつは客人にも容赦なしだ。」
大岩『・・・』

女魔法「寒い。」

女僧侶「そうでしょうね、もうすぐ冬なのですから。ほら、着替えるために馬車に行きましょう。」

女魔法「・・・。」

女僧侶「・・・あ、やはり、そうですね。勇者様?」

勇者「なんだ?」

女僧侶「私少しドラゴンの方々に聞きたいことを思い出しました。代わりに馬車まで行ってくれませんか?」

勇者「?」
勇者(それはつまり魔法の着替えの手伝いを、俺にしろ、と言っている・・・のだよな?)

勇者「・・・男の俺」
女僧侶「お願いしましたよ。ほら、魔法さん。少しの距離と言え濡れたままだと風邪をひきます。えっと・・・」

勇者「うお!」
ガバ!

女僧侶「勇者様の上着をローブの下に着てください。」

女魔法「ん。」
ゴソゴソ・・・

勇者「・・・。」

女僧侶「さ、背中に乗って~」
女僧侶「ではお願いしますね。」
グイ!

勇者「っ。」
タタッ

女僧侶「ほら、急がないと魔法さん風邪ひいちゃいますよ?」

勇者「あ、あぁ。・・・・・・。」
スタスタスタスタ・・・

黒竜「・・・いやはや。」
緑竜「人間も女の方が押しは強いか。」

女僧侶「あ、やはりドラゴンさん達にも性別という物があるのですね。」

緑竜「まぁ、な。青色にはなかなか頭が上がらん。」

黒竜「そこで寝ている奴は別段そんな事もないがなぁ。」

大岩『・・・』

女僧侶「・・・え?じょ、女性なのですか?」

緑竜「性別で分けるのならそういう事になるだろうか。」

黒竜「そもそも私達は増える事はしない種族。死なぬなら増える意味は無い。故に性別もあまり意味は無い。」

女僧侶「い、以外ですねぇ。何となく男性なのかと・・・。」

緑竜「ま、いろんな奴がいるという事だ。我らは6しかいないが、その事はよく知っている。」

黒竜「確かにな。6しかいなくとも色とりどりだ。」

女僧侶「ますますドラゴンさん達とはお友達になれそうですねぇ。あ、それでですね、茶色さんの件以外にもお願いしたい事が有るのですが・・・。」

緑竜「ほお、厚かましい物だ。」
黒竜「いったいなんだろうか。とりあえず聞こう。」

女僧侶「え、えっと、私たちの魔法はドラゴンさん達に比べまだまだ幼く、伸び代が有ると思うのです。」
女僧侶「で、ですから私が知る魔法条件を貴方達に推敲してもらいたいと思うのですが・・・い、いいでしょうか?」

緑竜「私はやらんぞ。」
黒竜「是非やらしてもらおう!!」
ずいっ

女僧侶「っ。」
緑竜「・・・。」

黒竜「その事ならむしろ私からお願いしたいくらいだ!人間の魔法を深く知るいーい機会だ!」

女僧侶「や、やってくれますか?」

黒竜「おお!いいぞ!」

女僧侶「あ、ありがとうございます!大変助かります!」

緑竜「・・・まぁ別にかまわんが私に押し付けるなよ。」

黒竜「まぁまぁいい暇つぶしではないか!一緒にやろう!」

緑竜「・・・ふぅ。断る。」

黒竜「だが人間さん。今日は少し勘弁してもらえるだろうか?」
緑竜「お前も話を聞かない奴だったな。」

女僧侶「あ、それはもう。ドラゴンさん達の都合がいい時にしてくだされば・・・。」

黒竜「いやはや今日は疲れてしまった。明日の昼程度まで寝るとする。」
黒竜「私の穴倉に戻る。ではまた明日、人間さん。」

黒竜「転送術式詠唱開始」

女僧侶「あ、おやすみなさい。」

黒竜「詠唱完了。」
バシュウ!

緑竜「まぁいい。また明日直接言うとしよう。またな人間。」
バサァ!バサッ!バサッ!

女僧侶「あ!お、おやすみなさい!!」

緑竜「・・・あぁおやすみ人間!」
ヒュゴオ!
ザザァァ・・・
女僧侶「・・・。・・・さて、お星さまでも眺めながらゆっくり戻りましょうか。」

――――――――――――――――――――――――
野営地点

馬「・・・」
馬2「ブルルル・・・」

勇者「・・・・・・。」

馬車≪ゴソゴソゴソゴソ≫

勇者「無いか?」

女魔法「見つからない。」

勇者「そうか。・・・。」
勇者(不自然だ。着替えが入った鞄が見つからないとは。・・・僧侶か?いや魔法が濡れるとはわかっていなかったはずだし先刻の反応を見ても予定通りの行動では無かったようだ。その線は薄い。)

勇者(しかしこのまま放って置くと本当に風邪をひかねない。・・・仕方がないか。)

勇者「魔法。」

女魔法「何?」

勇者「入ってもいいか?」

女魔法「いいよ。」

勇者「・・・。」
毛布≪ガサ≫

勇者「入るぞ。よっと。」
馬車≪ガタ≫

勇者「・・・。」

女魔法「なに?」

勇者「・・・俺の上着だけか?。」

女魔法「下も来てるよ。」

勇者(・・・・・・。あぁ、いかん。下着ならなおさらだ。それによく見れば俺の上着も濡れている。)

勇者「毛布だ。着替えは俺が探すから羽織って待っていろ。外に練炭が焚いてある。」

女魔法「・・・・・・。」

勇者「・・・やはり俺に着替えを触られるのは嫌か?」
勇者(異性の着替えを手伝うのは色々な点で非常識だ。しかし俺の妙な気恥ずかしさで風邪をひかせてはいかんか。)

女魔法「・・・ううん。別に。」

勇者「そうか。ほら、」
毛布≪ファサ≫
女魔法「・・・。」

勇者「よっと。」
がばっ

女魔法「っ。」

ガタ ズザッ
勇者「下ろすぞ。」

トサッ

勇者「今湯を沸かしてる。茶葉も何もないからただのお湯だが、体は暖まるだろう。」

勇者「まだ寒いか?」

女魔法「んーん。ありがと。」

勇者「くれぐれも風邪をひかないようにな。さて・・・」
勇者(馬車の中は魔法がさんざん探していたようだし無いと考えてもいいか。・・・あぁそうだ、魔法のローブも干しておこう。火がもったいない。)

勇者(ローブは馬車の中か。)
馬車≪ガタッガタガタ≫

女魔法「・・・・・・。」
ぺたぺた

女魔法「・・・。」

女魔法「・・・ックシュ!」

勇者「大丈夫か?」
スタッ

女魔法「グス・・・、平気。・・・やっぱり寒い。」

勇者「そうか。急いで着替えを見つけよう。」
勇者(練炭は火がつくのに時間が掛かる。)

女魔法「・・・ねぇ。」

勇者「なんだ?」
勇者(有るとしたらどこだろうか。馬車の中に無いなら馬車の下、野営地の藁の裏のどちらかだろうか。)

女魔法「あっためて。」

勇者(馬車の下は無いだろう。泥がつく・・・ん?)
勇者「・・・。」

勇者(あっためて?)

女魔法「寒い。」

勇者「・・・木などを燃やせれば多少は温かくなるが、今は無い。」

女魔法「寒い。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(魔法の意図していることは、なんとなくわかる。しかしそれはあれだいろいろ問題がある。)

勇者(ほぼ下着じゃないか。・・・あれこれしか思いつかない。いや待てえーと・・・)

女魔法「クシュンッ」

勇者「だ、大丈夫か?」

女魔法「ズズ・・・、着替えは僧侶が帰ってきてからでいい。」

勇者「・・・ま、まて。寝藁の裏を確認してから・・・」

女魔法「・・・。」

勇者「す、すぐ済む。」
タッタッタッ

勇者(無い。馬鹿なじゃぁいったいどこへ?)

女魔法「有った?」

勇者「無いな。・・・・・・。」
勇者(本当にどこだろうか。隠されたか?・・・僧侶が隠すとは考えがたい。有り得るとしたら魔法と共謀してこの状況を作り出した場合だけだ。さっきの反応からはそんな印象を受けなかったのだが・・・。)

女魔法「・・・・・・。」
スタ

グィ
勇者「っ・・・。」

女魔法「座って。」

勇者「・・・・・・ふぅ。」
トサッ

女魔法「はい。」
毛布≪・・・≫

勇者「・・・。」
勇者(諦めるか。俺が意識しすぎなだけかもしれない。)

勇者「わかったよ。座れ。」

女魔法「ん。」
トサッ

勇者「・・・。」
毛布≪バサッ≫

女魔法「・・・。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・大分体が冷えてるな。不本意ではあるが、たしかに即効性の有る体温維持方法か。)

勇者(しかし練炭は火がつくのに時間が掛かる上についても炎を上げないから温める範囲が狭いな。その分長続きはするようだが。)

勇者(調理に置いてもフライパンなどは使いにくい。じっくりと火を通すような調理法が向いている・・・。ん?そうだな、火を上げないなら焦がしにくい。ならば、串焼きなどに向いている燃料か?)

勇者(網焼きや串焼きか。炎に当てるとすすがついてまずくなる。だからこそフライパンなどを間に挟むのだが・・・練炭ならば必要ないか。)

勇者(しかし串焼き、網焼きか・・・。香草や香辛料が欲しくなるな。森ならよく見かけるのだが、草原だとあまり見つからない。今あるのは燻製肉と塩だけ。)

勇者(図書館に居た頃は薪ばかり使っていた。残った炭は特に利用するでもなく捨てていたな。今思えばあの大陸は緑豊かで薪には困らないかった。)

勇者(図書館か・・・。時間が無かったとはいえ一目見たかったな。まぁ、いつか帰る。何か月後か分からないがひと達も行く。その時様子を聞くことも出来るだろう。)

勇者(・・・ここは暗い。月明かりが入ってこないからとても暗いが、その分星が煌めいている。ここから見る星は草原で見る星より明るく綺麗だ。)

鍋≪グツグツ・・・≫

勇者「・・・。」
勇者(いつの間にか湯が沸いている。)

女魔法「・・・・・・スゥ。・・・・・・スゥ。」

勇者(いつの間にか寝ている。・・・いかんな、こんな恰好では風邪を引いてしまう。)

女僧侶「お二人の仲は縮まりましたか?」
スタスタスタ

勇者「・・・僧侶。計算づくか?」

女僧侶「いーえー。なんとなーく魔法さんが勇者様に視線を送っていたのでね?」

勇者「・・・それだけでこの状況を予想出来るのなら大したものだ。それで服はどこだ?いくらなんでも下着で寝る時期じゃないだろう。」

女僧侶「そうですね。ここは風が通りませんけど、寒い物は寒いですしね。しかし、そうですねぇ・・・。」

勇者「? 知らないのか?」

女僧侶「ん?いえ?あ、勇者様はもう馬車の中を覗いたのですよね?」

勇者「? あぁ。一度入ったが、確かに無かった。象牙に潰されているわけでもなさそうだったしな。」

女僧侶「はいはい、なるほど。んー・・・」
スタスタスタ

勇者「・・・。」
勇者(馬車の近くへ・・・?)

女僧侶「よっと。」
鞄≪ガタッ≫

勇者「・・・御者台の下に。」
勇者(明らかに隠されていたな。この流れは計画されていたのだろうか。・・・・・・恐るべしだ。)

女僧侶「全くもういじらしいですねぇ。一緒に寝たいなら一緒に寝たいと言えばよろしいのに。」

勇者「なに?」

女僧侶「なんでもありませんよ。ほら、魔法さん起きてください。」

女魔法「んぅ・・・?」

女僧侶「すいませんね、寝付いたばかりでしょうけど、さすがに先ほどの恰好のままでは本当に風邪を引いてしまいますよ。」

女魔法「・・・。」

女僧侶「濡れた下着を変えましょう。ほら、馬車の中に。」

女魔法「・・・平気。勇者あったかい。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・別にいいんだが、うーむ、なんだこの良く分からないもやもやは。)

女僧侶「そんな事言っていると勇者様の目の前で着替えさせますよ?」

勇者「っ!」

女魔法「・・・。」

女僧侶「ほら、勇者様の前で裸になるのは流石に恥ずかしいでしょう?大丈夫ですよ、勇者様は一緒に寝てくれますから。」

女魔法「・・・。」

女僧侶「さ、早く。」

女魔法「ん・・・。」
ムク

勇者「っ魔法、毛布を羽織れ。」

女魔法「ん。」
毛布≪ばさ≫
スタスタスタ・・・

女僧侶「勇者様も濡れた魔法さんを背負ったり抱っこしたりしているのですから着替えてください。明日洗いますから。はい、服です。」

勇者「わ、わかった。」
勇者(寝藁の陰ででも着替えるか。その後は沸いたお湯を湯のみに移してすぐ飲めるように覚ましておこう。)

――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――
朝 夜明け

勇者「・・・。」
パチ

勇者「・・・。」
チラリ

女僧侶「スゥ・・・スゥ・・・」
女魔法「・・・・・・スゥ、・・・・・・スゥ」

勇者(・・・腕を枕にされてしまっている。まぁ、いいか。)

勇者(今は・・・どのぐらいだろうか。習慣通りなら今は夜明けごろだが・・・。)
勇者(空の色から察するにだいたいその程度だろうな。しかし岸壁に覆われているせいでかなり暗い。)
勇者(火山の所為だからだろうか、あまり夜に冷え込まなかったな。草の上に寝っころがっても気持ちよさそうだ。)

勇者(さて・・・・・・俺はどういった努力をするべきだろうか。攻撃翌力が俺にはほぼない。魔法剣を使えば威力を上げる事は出来るが・・・)
勇者(それでも足りないだろう。攻撃翌力において考えるなら俺はこのパーティで僧侶の次に低い。俺だけの特異性を生かすなら、やはり足の速さ。)

勇者(そうなると遊撃が一番適所だ。囮として立ち回るのが戦士や魔法を生かす上で重要になってくるが、攻撃翌力が無い相手に気を回すか?)
勇者(最初の間はある程度反応してくれるかもしれない。しかし慣れてくれば俺を脅威と取らなくなり脅威になりかねない2人を狙いだすだろう。)
勇者(ある程度、俺にも攻撃翌力が必要だ。相手に傷を負わす程度の攻撃翌力。それを得るには・・・やはり魔法をよく知る事、か。)

勇者(もしくはもっと強い武器を使うかだが、俺の長所を殺さずに扱える武器が有るのかどうか・・・。大前提に軽さが必要だ。俺には腕力が無い。)
勇者(重さのない武器か・・・なにかあるか・・・?)

勇者(戦士・・・とても高い集中力を感じる。悪いな、無茶振りをしてしまった。しかし、絶対的な攻撃翌力はどうしても必要だ。)
勇者(アイツに勝つにはどうしても、必要な事だ。何とかして屈服させなければ。)

勇者(俺の目的、旅に出た理由。)

勇者(絶対に、成し遂げる。)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――


白龍「魔翌力による現象変換はそもそもが」
女魔法「魔法と魔法による現象の関係は」
白龍「そもそも魔法とは」
女魔法「だとするなら魔法場を作り出すことも可能で」


女僧侶「・・・」
服≪じゃぶじゃぶじゃぶ≫

勇者「手伝おうか?」

女僧侶「え?あ、いえ平気です。・・・というか勇者様?女性の服を触りたいのですか?」

勇者「え?あ、い、いや。別にそんなつもりじゃ・・・」

女僧侶「そうですねぇ、その気持ちは当然の事だそうですから攻めれませんねぇ。誰かが言っていたのですけれど、男とは元来そういった存在で、その感情こそが男であると。」

勇者「いや、俺は・・・」

女僧侶「私はむしろ勇者様がそういった感情を抱いたというのが何やら嬉しいですよ。確かに気恥ずかしいのですが、同時に何か嬉しさを感じます。前までは私達に対していったいどんな感情を持っているかも分からなかったですから。」

勇者「・・・。」

女僧侶「折角だからお言葉に甘えて手伝ってもらいましょうか。ほら勇者様?こちらの洗濯物をお願いします。」

勇者「い、いや、」

女僧侶「さ、残りは・・・あら私の衣服ですね。あらあら、さ、流石に恥ずかしいですけど、御好意を無碍にするのはよくないですね。」

勇者「お、俺は・・・」
勇者(白龍は魔法につきっきりだし黒竜も僧侶が相談するようだ。だとするなら・・・青竜だ。)

勇者「俺は青いドラゴンに話を聞いてくる。な、何かあったら呼んでくれ。」
ズザっ!ざっざっざっ
女僧侶「ふふ、はいわかりました、いってらっしゃいませ。」

女僧侶「・・・うーん、目と口元だけとはいえあの人の顔を見れるのは嬉しいな。ついからかいたくなっちゃうなぁ・・・。」
洗濯物≪バサッバサッ≫

――――――――――――――――――――――――
勇者「ふぅ。」
勇者(つい逃げてしまった。ま、まぁいい青い竜は・・・)

勇者(む、)

青竜「すぅー・・・すぅー」

勇者(日向ぼっこの途中か、起こすのも悪い・・・ん?)

赤竜「・・・・・・」
ズシャ・・・ズシャ・・・

青竜「すぅー・・・すぅー・・・」

赤竜「おりゃ~!」
ずごおお!
どざああああ

青竜「うひゃあ!?」

赤竜「がはははは!おんぶじゃおんぶ!」

青竜「な、なにすんのよあんたいきなり!」

赤竜「昨日人間がおんぶしとってのお!楽しそうだから儂もやろうと思ってな! がははははは」
赤竜「は」
カキン
ぐら どさぁ!

青竜「ったくこのスカポンタンは・・・!」

勇者(又懲りないのだろうな・・・。)

青竜「あぁまったくいい気持ちだったのにうざったい。・・・滝の上にでも行こうかな。」
ドタドタドタ・・・

勇者(あ、いかん。)
ダッ!

勇者「すまない!少しいいだろうか!」

青竜「ん?あら人間。なんか用?」

勇者「あぁ!頼みたい事が・・・!」
赤竜「まてー!がははははは!」
ドガドガドガ

赤竜「熱帯び!とう!」
青竜「熱帯び」
ドカン!
ゴオオオ!!

勇者「うおっ!」
勇者(風!?・・・温度差によるものか!)

赤竜「黒が起きるまで暇だ!遊べ!」
青竜「あぁ~もううっとうしぃ~。なんであたしなのよ・・・。」
ヒュゴオオオオ・・・

勇者「・・・。」
勇者(ドラゴン達のこの魔法、俺が考えていた魔法剣の基礎、剣加熱魔法によく似ている。自分の体に使えるのは恐らく耐性が高いからなのだろうな。)
勇者(雷なら威力を高めるのはさほど難しくないが、熱魔法は威力を高めると熱の範囲を抑えきれず手が焼けてしまう。)
勇者(単純性から考えて熱魔法の方が素早く高威力にしやすい。ならば、熱属性に詳しそうな赤竜に聞いた方がいいか・・・?)

赤竜「一番噛み心地が良いからな!」
青竜「今噛みついたら芯まで凍らせるわよ。」

勇者(わざわざ分ける意味も無い。今聞けば二つの意見が聞ける。)

勇者「すまない!俺の質問を聞いて・・・!」

赤竜「よおーし!久々に本気出すかのぉ!」
青竜「ちょ、やめなさいよ!近くに人間がいるでしょ!」

赤竜「いくぞおおおお」
青竜「人間離れて!」

勇者「っ!」
ズダッ!


赤竜「・・・!」
青竜「・・・!!・・・!」

勇者(・・・っ!?なんだ?なんともない?・・・いや、音が全くしない!明らかに争っているのに・・・)

緑竜「全く面倒を掛けるな人間。」
ズシャ ズシャ

勇者「っ!緑色のドラゴン!」

緑竜「ひとつ忠告しよう。あいつらがじゃれあい始めたらどんな事情が有ろうと急いで離れた方がいいぞ。」

勇者「あ、ありがとう、助けてくれたのか。」

緑竜「・・・・・・いや?別に助けたというわけではない。あいつらは分かりやすく属性が相対しているため本気で遊ぶことがたまにあるのだ。」
緑竜「その時に木々を守るのが私の役目と、それだけだ。」

勇者「なるほど、木が無くなると困るだろうしな。」
勇者(ならば俺を放って置いても問題は無かっただろうに。)

緑竜「あぁ、全く持って困る。あの馬鹿二人は私たちの苦労を全く知らん。厄介な奴らだ。」
勇者(馬鹿二人の内約には青ドラゴンは含まれていないだろうな。)

勇者「・・・俺は今真空の膜につつまれているのか?」

緑竜「御名答だ。膜に触れても何ら影響はないが、外に出ると半身が凍り半身が炭になる。出たければ出てもいいぞ。」

勇者「これだけ離れても影響が有るのか・・・。」

緑竜「伊達に図体はデカくないのだよ。まぁ、本気と言いながら今回はそこまで本気では無いようだがな。」

勇者「そうなのか?」

緑竜「確かにあいつは馬鹿で阿呆で間抜けの三拍子揃いの上、粗暴で身勝手で他者を玩具程度にしか思っていない自己中心的な奴のように人間には見えるだろう。」

勇者「いや別にそんな事は・・・」

緑竜「しかしそれらは事実として、あいつの小さい脳みそにも一応ながら思いやりというのも少しばかり存在はするのだ。私達他のドラゴンへの信頼の押しつけも然りだ。」
緑竜「あいつが本気を出せば周りの岩が溶岩と化すほど強い熱気が噴き出す。その場合この程度の距離では人間は一瞬で消し炭だ。」

勇者「・・・恐ろしい力だな。」
勇者(一応俺を気遣ってはいるのか。)

緑竜「人間にとってはそうだろうな。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・真空魔法を使えば、熱を遮断できる。)
勇者(しかし、剣自体を熱くする方法にはこの手段は使えない。物質の熱伝達を止める方法・・・。)

緑竜「それで?お前はこいつらに何を聞きに来たんだ?」

勇者「あ、あぁ。いや、物質に使用する魔法について聞きに来たんだが・・・」

緑竜「物質に使用する魔法?具体的にはどういったものだ。」

勇者「見せよう。」
シュラン

勇者「剣加熱魔法」
ゴオオ!

緑竜「ほう。」

勇者「これは一番単純な魔法剣だ。刀身の先を温めている。」
勇者「しかしこの魔法は時間が立つと熱伝導で手元まで熱くなってしまう。長時間の使用が出来ないんだ。」

勇者「解除。」
ゴオ・・・

緑竜「なんだ、ならば振動を逆に働かせればいいだけの話だろう。」

勇者「・・・振動を逆に働かせる?どういう事だろうか。」

緑竜「お前は今振動魔法を使ったのだろう?ならば+ではなく-に魔法を使うだけで出来るではないか。」
緑竜「それとも人間は不器用なのかな。違う魔法を同時に使用する事が出来ないのか?」

勇者「振動魔法?いや、俺が使ったのは熱魔法で・・・」

緑竜「・・・ふむ。私は振動属性持ちではないからなぁ。しばしそこで待っていろ。」
ズシャ ズシャ・・・

勇者「・・・。」
勇者(・・・どういう意味だ?振動魔法?・・・・・・)


ヒュゴオオオオオ
勇者「っ!」
勇者(真空膜が無くなったのか。)

緑竜「ほらそこまでだお前達。」

赤竜「なんじゃい!邪魔をするな!」

青竜「あぁ暑っ苦しかった・・・。」

緑竜「暇なのだろう?どうせだ、人間のお願いでも聞いてやったらどうだ。」
緑竜「人間!こっちにこい!」

勇者「! ・・・。」
スタスタスタ

赤竜「何だ!一体何を聞きたい!」
青竜「そういえばあたしを呼びとめてたね。なんか用?」

勇者「あ、あぁ。えーと・・・」

緑竜「人間は振動魔法を知らんようだ。教えてやれ。」

赤竜「なに!振動魔法も知らんのか!がはははは無知だのーがははははは!」
青竜「教えてやれって言われても・・・そういう魔法だからね。」

勇者「・・・で、では条件を教えてもらえないだろうか?」

赤竜「ははは・・・は・・・。」
青竜「いいよ、そのくらい。」

勇者「ありがとう、助かる。」

緑竜「赤いの。お前も教えてやれよ。」

赤竜「・・・条件ってなんだっけ?」

勇者「え?」
緑竜「は?」
青竜「・・・。」

緑竜「あ、あいた口がふさがらん。お、おまえそこまで馬鹿だったのか?」
青竜「うっそー・・・。」
勇者「・・・。」

赤竜「な、なんじゃい!ちょっと忘れただけだろうが!」

勇者「ふ、普段は魔法を使わないのか?い、いや、俺たちを転送術式でここに連れてきたじゃないか!じょ、条件を知らない事なんて・・・!」

赤竜「転送術式?あれはなんとなーくでこう・・・」

赤竜「ガッ、となぁ?」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・・・・。)

緑竜「ある意味での天才なのか本当の意味での馬鹿なのか。恐ろしい奴め・・・。」
青竜「今日本気でこいつが怖いと思ったわ。」

赤竜「なんだとー!儂は馬鹿でも阿呆でもないわ!少々抜けているだけではないか!」

緑竜「うわ、自分で言ったよ。」
青竜「少々?大部分の間違いでしょ。」

赤竜「なにおう!」

勇者「ま、待ってくれ!喧嘩はしないでくれ!俺には止めようがない!」
緑竜「人間もこういっている、落ち着け間抜け。」

赤竜「こ、こおおおおおのおおおおおお」

青竜「何煽ってんのよ!!」

赤竜「一度[ピーーー]ええええええ!!」
勇者「っ。」
緑竜「動くな。」
勇者「なにっ!?」

青竜「コオオオオオオ・・・」
ヒュゴオオオオオ
バギバギバギバギバギ・・・!
赤竜「」
カキン

緑竜「おう、助かった。」

青竜「全く・・・溶けた時に頭冷えてればいいけど・・・。」

勇者「き、肝を冷やした・・・。」

青竜「あんたさぁ~、からかうのが好きなのはわかるけど、時と場合を選びなさいよ。」

緑竜「確かにそうだったな。私の悪い癖だ。」

青竜「しかし・・・こいつ魔法条件を忘れてるなんて本当すごいわね・・・。尊敬しちゃうわ。」

緑竜「何となくだけで魔法を使うとはいやはや末恐ろしい。詠唱もまさか適当なのか?」

勇者「え、詠唱まで適当だったら転送術式なんてどこに行くか分からないじゃないか・・・!」

緑竜「脳みそを使わず脊髄だけで喋っているのだろうな。魔法も然り、と。」

青竜「いつも思ってるけど悩みなんて何もなさそー。」

勇者「し、しかし大丈夫なのか?怒らせたままなんて・・・」

緑竜「こいつは常に前進のみだ。怒りを貯めこむような奴じゃないさ。私達が謝ればさらっと水に流してくれる。」

青竜「さぁーて、振動魔法の条件だっけ?教えてあげるわよ。もう寝る気も無くなっちゃったし。」

勇者「あ、あぁ。お願いする。」

緑竜「よし!では頼んだよ。じゃぁな!」
バサァ!

青竜「ふー」

緑竜「うお!」
翼≪カキン≫

ドサァ!

青竜「押しつけといてそれは無いんじゃない?」

緑色「ぐ・・・。わ、私は振動属性は使えん!居ても無意味だろう!」
青竜「条件ぐらいしってるでしょ。良いから付き合いなさいよ。」


――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
青竜「分かった?」

勇者「あ、あぁ。」
勇者(だがこれは・・・俺の知っている熱魔法の基礎条件と酷似している。)

緑竜「まだ人間は疑問があるようだな。」

勇者「あぁ。この魔法と条件がよく似ている魔法を知っている。」

青竜「どんな魔法?」

緑竜「ふ、大方振動属性の正方向魔法だろう。」

勇者「・・・恐らく、そうだ。」

青竜「? なにいってんの?そりゃそうでしょ同じ魔法なんだから。」

勇者「あ、いや・・・」
緑竜「つまりは人間すべてが振動属性を二つに分けて考えてしまっているという事だ。」

青竜「んー・・・。・・・・・・あー、つまり振動属性の正と負を別の属性だと考えちゃってるのね、なるほどー。」
青竜「確かに同属性の割には使いやすさに個人差でるししょうがないのかなー?」

緑竜「人間はそもそもを別の属性と捉えているという前提条件を考えれば条件構築において全く別の作り方をしてしまったと考えてもなんらおかしくない。」

勇者「まさか氷冷魔法と熱魔法が同じ属性だったなんて・・・。」
勇者(魔法の基礎が崩れてしまうな・・・。)

緑竜「まぁーこれでお前にも人間が言う氷冷魔法が使えるようになったわけだ。さっそく武器に応用してみろ。」
青竜「武器に応用?」

勇者「やってみよう。・・・反振動魔法剣」
コオオ!

勇者「おお・・・。」
勇者(基礎が似通っているためにさしたる応用も必要がない。)

青竜「あぁ、武器を軸に魔法使ってるの。よく物に魔法効果を安定させれるわねー。」
緑竜「良かったな。さてあとはそれを応用して熱を制御するだけだ。」

勇者「同時にか・・・・。」
勇者(詠唱で魔法効果を出した後魔翌力の流れだけで維持し、余剰出力でもう一つを詠唱すれば・・・)

勇者「・・・振動魔法剣」

ゴオオ!ブ、ブブゥゥゥゥゥ・・・・

勇者「あ・・・。」
緑竜「どれ、」
ちょん

緑竜「ははは、予想通りいい塩梅の温度だな。熱くも無い冷たくも無い。」

青竜「あははは、意味ないじゃん。まずは各魔法の範囲指定と出力調整の練習しないとねー、ちゃんと使うなら。」

勇者「・・・難しいな。」

あ、やばい入れ忘れた。投下し直した方が良いのだろうか
後すいません遅れました

――――――――――――――――――――――――

女戦士「・・・・・・。」
大岩≪・・・≫

――――――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――――


黒竜「・・・人間は無駄な経路通る事が好きなのか?」

女僧侶「え?い、いえそんな事はございませんよ?」

黒竜「そうか・・・。まぁ、私達より寿命がはるかに短いのだから仕方がないのかもしれないな。」

女僧侶「・・・そんなに無駄が多いのでしょうか。」

黒竜「うむ。単純な魔法にも短縮できる経路がある。そもそも人間は残留魔力の流用をほぼしていない。」
黒竜「それと詠唱に頼りすぎるところが見られる。発声より魔力操作の方が早い。人間はまだまだ魔力操作がへたくそのようだな。」

女僧侶「そ、そうですか・・・。」

黒竜「あぁ、うむ・・・、しかし別段人間が阿呆と言っているわけでもない。まだまだ・・・そうだな発展途上と言った所だ。」
黒竜「私の知識を使えばすぐにでも改良する事が出来るさ。うむ。」

女僧侶「すいません、気を使っていただいて・・・。」

黒竜「なに、確かに無駄も多いがよい発想も多く、聞いてるだけで愉快なのも事実だ。さ、次の魔法を教えておくれ。」

女僧侶「は、はい。えっと・・・」

赤竜「なー、まだ新しい酒は出来んのか?」

黒竜「何回目だその質問は。何度も行ったが茶が居なければフラスコを取り出すことが出来ない。故に茶を探してこいと言ったはず。」

赤竜「アイツは時たま地面の奥底で昼寝をするではないか!探しようがない!」

黒竜「分かっているのならば大人しく待っていろ。今私は人間とお話ししているのだ。」

赤竜「うーむむ・・・そうだ!」
ズガズガズガズガ

黒竜「・・・まぁた何か厄介ごとを思いついたのか。」

女僧侶「大丈夫なのですか?放って置いて。」

黒竜「アイツは放って置くか一緒に遊ぶか2つに1つしか選べない奴だ。止めようとするととばっちりが来る。」

女僧侶「は、はぁ・・・。」

黒竜「一緒に居るだけで愉快なのも事実だが、時たま厄介なのもまた事実。あいつはあいつで己の退屈と戦っている。」
黒竜「暇とは病の様なものだ。とても厄介な事だ。」

女僧侶「暇とは病、ですか・・・。」

黒竜「うむ。人間にも、暇を持て余した存在がいるらしいな。そこは人も竜も変わらないようだ。」
黒竜「もっとも、人間の様に同族を殺そうとはしないがな。」

女僧侶「・・・・・・。」

黒竜「あぁ、うん、すまん。なに、人間がそういった奴らばかりではない事は知っている。そこは竜も人も一緒だ。」
黒竜「さぁ、次の魔法を教えておくれ。」

女僧侶「は、はい、わかりました。次は・・・そうですね、汎用攻撃魔法をお願いします。」

黒竜「うむ。」

――――――――――――――――――――――――

白龍「あぁ、日が沈んでしまった。空も真っ黒だ。」

女魔法「・・・。」

白龍「さて、どうだね。現象変換魔法の進度は?」

女魔法「・・・・・・もうちょっと。」

白龍「ふむふむ。現象変換が可能になったら今度は制御方法を考えないといけないね。今日はもう情報の整理に入るといい。」
白龍「続きはまた明日としよう、小さい人間さん。」

女魔法「ん。」

白龍「ところで・・・」

女魔法「?」

白龍「君は仮面の人間が好きなのかな?」

女魔法「っ!?」

白龍「・・・ふむ、そうなのか。なるほど。」

女魔法「な、なにも言ってない。」

白龍「驚愕しているのだから頭に無かったという事は無いはずだ。自覚はあるはず。」

女魔法「・・・・・・。」

白龍「ふむ、しかし君がそうだとすると・・・。うむうむ、あいつもまたそうなのだろうか。」

女魔法「あ、あいつって誰?」

白龍「赤の事さ。君は昨日仮面の人間に嫌がらせをしていただろう?」

女魔法「っ。・・・。」

白龍「私は目が良い。君の顔も口の動きも丸見えだ。」
白龍「あれはいじわるだったのだろう?仮面の男の立場と感情を鑑みればその考えに至る。」

女魔法「別に、いじわるじゃない。」

白龍「ただ好いているだけと、なるほど。」

女魔法「・・・・・・。」

白龍「目が良くなくともわかるほど赤い。」

女魔法「・・・・・・・・・・・・。」

白龍「うむうむ、確かに人間との交流も中々だ。私は水の中に戻るとしよう。また明日、小さい人間さん。」

女魔法「・・・・・・・・・・・・ん。」

白龍≪ニョロニョロニョロ≫

ざぶーん!!

女魔法「・・・・・・はぁ。」

水面≪どっっばぁぁぁぁぁぁぁん!!≫
女魔法「っ!?」
白龍「あっづぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

赤竜「ぎゃあはははははは!!大成功!!!」
どじゅうううううううう・・・!

白龍「あづ!あづ!」
びっしゃんばっしゃん!

赤竜「ずーっと待っとった甲斐が有ったわ!ぎゃーはははははは!」
ボコボコボコボコ

白龍「ぐっ!くぉっ!あち!」
ばしゃばしゃばしゃ

赤竜「ひーひひひひひひひひひ!」

白龍「こぉ・・・んのぉぉぉ・・・!」
白龍「大馬鹿がぁぁぁ!!コォォォォォ・・・」
キラキラキラキラキラ
赤竜「ひっ?!ぐわ!や、やめろ!」
バキン!ゴキン!

赤竜「うがががが!すまん!ゆるし」
バキバキバキバキ!

キュィ――――・・・・・・ン

ガラス玉≪・・・ポチャン≫
キラキラキラ・・・

白龍「ふぅー・・・ふぅー・・・そこで反省しているがいい!馬鹿者が!」

女魔法「・・・っ。」

白龍「・・・あぁ、すまないね小さい人間さん。見苦しい所を見せた。」

女魔法「石に・・・。」

白龍「・・・これが私の魔力。私の息に触れたものは全てが結晶となる。どんなものでも。」
白龍「ちなみに今残っている宙で煌めいている物は私の息により結晶化した気体だ。」

女魔法「も、戻るの?」

白龍「私が戻そうと思えばね。全く、人間さんが来たからか、叔母様が居なくなったからか、どちらか知らぬがはしゃぎおって・・・!」
白龍「明日の朝まで浅瀬で反省しているがいい!」

女魔法「聞こえるの?」

白龍「あくまで結晶化するだけだからね、こうなっても意識はあり周りの風景も見え音だって聞こえる。」
白龍「私の息は私たちの中で最も恐れられている。悠久の暇を問答無用に押し付ける力。」
白龍「長い時間の恐ろしさを知っている私達だからこそ絶対に避けたい無間地獄、私の力はそれを与える事が出来る。」

女魔法「・・・。」
チャプ・・・

赤いガラス玉≪・・・・・・≫

女魔法「・・・綺麗。」

白龍「・・・綺麗?・・・・・・そうか、人間は物質にも価値を見出すのだった。」
白龍「良ければ明日の朝まで持っているといい。無くさないように。」

女魔法「え?」

白龍「明日の朝、私の前まで持ってきておくれ。その時に戻すとしよう。」

女魔法「でも・・・」

白龍「なに、もし無くしてしまったとしても平気だ。どれだけ離れていても元に戻すことは簡単だからね。」
白龍「少しの間預かっておいておくれ。」

女魔法「・・・。」

白龍「ふぅ、では私は改めて水に潜るとしよう。ではね。」
ザブン!

女魔法「・・・・・・。」

――――――――――――――――――――――――
緑竜「そこだ!やれ!」

青竜「ほら、頑張れ!」

勇者「ふぅぅぅぅぅ・・・!!」

短剣≪ゴゴゴゴゴ・・・!!≫
短剣≪キィィィィィ!≫

勇者「ぐぅぅ・・・!」

短剣≪グオオオオオオオオ・・・!!!!≫

緑竜「よし!安定化を図れ!」

青竜「間違っても自分の方向に熱を逃がさないように!人間じゃ死んじゃうわよ!」

勇者「ふぅぅぅ・・・・・・!!」

短剣≪ゴォォォォ・・・!≫
短剣≪バシュウ!・・・ォォォォォォ≫

勇者「・・・・・・!出来た!」

緑竜「どれ!」
指≪スッ≫

ジュウウ!

緑竜「おっと!流石だ!私の肌を焦がす程度の熱量を発しているな!」
青竜「陽炎が剣みたいな形になってて面白いわね!」

勇者「・・・・・・。」
ぽたぽたぽた・・・

青竜「人間?汗かいてるけど大丈夫?」

勇者「あ、あぁ。手元付近で熱伝導を抑えているとはいえ、あ、暑い。」

緑竜「さぁ!試し切りだ!そこの壁に切り付けて見ろ!」

勇者「・・・よし。」

勇者「―――ッ!」
ヒュンヒュン!

ゴオ!

勇者「・・・フッ!」
ガキン!
壁≪ヂヂヂヂ・・・≫

緑竜「ふむ、岩を溶かすにはまだまだ熱量が足りないか。」

青竜「でも式は複雑じゃないしすぐ出来るようになるわよ。」

勇者「・・・解除。」
短剣≪ォォォ・・・≫

勇者「・・・ふぅ。」

青竜「・・・もう真っ暗だし続きは明日ね。」

緑竜「ふむ、そうだろうな。疲労を蓄積した状態では失敗率も高くなる。明日に備えて置け。」

勇者「いや、俺は疲れないから平気だ。魔力は・・・少しずつなら使っていても尽きない。」

緑竜「疲れない?そんなはずはないだろう。私達でさえ疲労という物から逃れえないのに。無理を言わずに・・・」
青竜「何?心配してんの?」

緑竜「・・・いきなり何を言う。」

青竜「? してんでしょ?」

緑竜「いいや、していない。ただ疑問に思っただけだ。」

青竜「ふーん、そう。」

緑竜「冷静に考えずともわかる。肉体を持っている以上疲労から逃れえるはずがないのだ。」
緑竜「何故なら疲労とは肉体の物質反応の連鎖の中途であり無くそうと思ってなくせる物ではなく、」
緑竜「そんな様々な物質法則を無視したような高度な魔法機能を集約したかのような生き物がたかが人間が」

青竜「まぁ人間も無理言わないで休んできなさいよ。」

勇者「・・・嘘はついていないんだが・・・分かった、今日はもう休むとする。」

青竜「ん。また明日ねー。」

勇者「あぁ、お願いする。」

緑竜「聞け。いいか、あくまで私はその有り得なさに疑問を抱いただけであり人間の事を心配したというわけでは」

青竜「あんって本当に優しいわよねー。いつもいつもあの子気にかけてあげてるし。」

緑竜「おい!私は別にあいつを気にかけているわけではない!!そもそもだ!いいかこの際だ聞け!私は別に・・・」

青竜「はいはい、わかってるわよ。そういえばあのこ今どこにいるの?」

緑竜「今は白色が良く居る場所の様にいる。・・・って!今はその事はどうでもいいのだ!私は別に他者を気にかけているわけでは・・・!」

ざっざっざっ

勇者「・・・」
勇者(2日ほどしかいない俺でも分かるくらいだ。ドラゴンの間では周知なのだろうな。)

勇者「・・・・・・」
勇者(・・・うすうす分かっていた事だが・・・・・・この短剣、妙に頑丈だ。)
勇者(低温、高温どちらにも対応可能・・・普通は加熱しすぎれば赤熱して脆くなるはず。)

勇者(今日かなりの高温にしてみたが特に変化は見られない。これは最初の剣の模造品。)
勇者(という事は最初の短剣も強い耐性を持っていたのだろうか。・・・しかしこれは助かるな。)
勇者(幅広く属性を扱える。魔法剣との相性が素晴らしく良い。明日は温度をもっと高めてみよう。)

――――――――――――――――――――――――
川の洞窟奥
女戦士「はぁあああああああああ!!」
ヒュォ
大岩≪ガキィン!!≫

女戦士「・・・くそっ!なんだこの岩!妙にかったい!」
女戦士「いけないな、一回落ち着こう・・・。ふぅー・・・。」

女戦士「・・・・・・あーもう勇者も無茶な事言ってくれるぜー。」
女戦士「たった4日で大技考えろってどうすりゃいいんだよちくしょー。」
ブンブンブン
大岩≪ガキンガキンガキン≫

女戦士「・・・はぁ、こればっかりはお父様も悩んでたしな。急がないとお母様死んじまうし・・・」

女戦士「・・・・・・予定通りいけば、明後日には良い状態になるし、それまでに、集中しとかねぇと。」
女戦士「取りあえず一個づつおさらいしとこう・・・。」
――――――――――――――――――――――――
野営地点

女魔法「・・・」
筆≪スラスラスラスラ≫

勇者「・・・」
両手≪ォォォォ・・・≫

女僧侶「勇者様?何してるんですか?」

勇者「氷冷魔法と熱魔法を同時に使用する練習だ。」

女僧侶「へぇ・・・勇者様氷冷属性も使えたんですねぇ。」

勇者「いや、ドラゴンから教えてもらったが氷冷属性も熱属性も実は振動属性と言う同じ物らしい。」

女魔法「・・・。」
筆≪ピタ≫

女僧侶「・・・え?!そうなのですか!?し、しかし熱魔法は使える人多いですけど氷冷魔法を使える人は少ないですよ!?」

勇者「条件さえ分かれば熱属性持ちならだれでも簡単に使えるようになるはずだ。かなり革新的だな。」

女魔法「・・・・・・・。」
筆≪・・・スラスラスラ≫

女僧侶「へ、へぇーそうなんですか。ちょっと興味ありますけど・・・私は使えませんからねぇ・・・。」

勇者「そういえば・・・僧侶が汎用魔法以外を使っている所を見た事が無いな。何故だ?」

女僧侶「あ、私は・・・属性が分からなくて。」

勇者「属性が分からない?」

女僧侶「たまに居るんですよ、自分の属性が、判明している属性に当てはまらないような人が。」
女僧侶「極端に少ない属性なんですね。使い道が判明していないんです。」

勇者「なるほど・・・。ドラゴンには聞いてみたのか?」

女僧侶「えぇ、黒いドラゴンさんに聞いてみましたけど・・・属性についてはあまり詳しくないそうなんです。」
女僧侶「自分たちが使える属性以外は知る機会さえないと言っていました。」

勇者「ふむ・・・。」
勇者(ドラゴンは個体数が少ないし明らかにもっている属性に偏りが見られる。知らない属性が有っても仕方がない事か。)

女僧侶「私はこの謎の属性しか持っていませんしね。汎用魔法しか使えないんです。」

勇者「そうだったのか・・・。」

女魔法「・・・乾燥魔法」
布≪シュゥゥ・・・≫

勇者「? 今の魔法は何だ?」

女魔法「布に書いた文字を乾燥させた。」

勇者「へぇ・・・ん?」
勇者(なんで昨日濡れた服に使わなかったんだ?)

女僧侶「しかしドラゴンさん達の知識の深さには本当驚かされますねぇ。」

勇者「・・・あぁ、振動属性の事もそうだが・・・質問しても完璧な答えが返ってくる。かなりの差を感じてしまうな。」

女僧侶「私もですね、知っている汎用魔法の条件の添削をお願いしたんですけど・・・」
女僧侶「すごいですよ。必要魔力量も詠唱時間もすごく少なくなって。」
女僧侶「例えば・・・自動回復魔法大詠唱開始」
女僧侶「詠唱完了」

勇者「!」
女魔法「・・・。」

女僧侶「この魔法は前は長い詠唱が必要だったのに今じゃ即時詠唱が可能です。他のは・・・まだちょっと練習が必要ですけど。」

勇者「驚いた・・・。そこまで短くなるとは。」

女魔法「・・・現象変換場」
杖≪カツン≫

変換場≪ぐおん!≫

勇者「!」
女僧侶「あら・・・出来るようになったのですか?」

女魔法「電撃」
バリバリバリ!

変換場≪バリバリバリ・・・≫
変換場≪・・・ピカッ≫

女魔法「減衰率が60%超えてる。まだまだ課題が多い。」

勇者「す、凄いじゃないか!こんなに早くに基礎条件の構築を・・・!」

女魔法「・・・凄い?」

勇者「あぁ、凄い!」

女魔法「・・・・・・そう。」

勇者「魔法は凄いな!」
頭≪ナデナデ≫

女魔法「っ!・・・・・・・・・・・・。」

勇者「俺も負けていられないな。岩を瞬時に溶かす程度の熱量を出せるようにしなければ。」

女僧侶「気を付けてくださいね?無くなってしまっては治すことも出来ませんから。」

勇者「あぁ、もちろん最大限に注意を払う。」
勇者(熱量を予定の出力まで高める事が出来たら次は冷気、その次は・・・爆雷を練習しよう。)

女魔法「・・・・・・。」
帽子≪グィ≫

女僧侶「あら・・・、戦士さん、ペンダント外してしまったようですね。」

勇者「何?・・・本当だ、煩わしかったのだろうか・・・。」

女魔法「・・・・・・。」
ザッ

女僧侶「? 何処へ行くのですか?」

女魔法「・・・・・・水浴びしてくる。」

勇者「水浴び?流石に風邪を引いてしまわないか?」

女僧侶「そうですよ。濡れタオルで体を拭く位にしておきましょう?」

女魔法「平気。ちょっとだけ魔力貸してもらう。」
赤いガラス玉≪・・・≫

勇者「川の水をお湯にするのか?必要な魔力はちょっとで済まない気がするが・・・。」

女魔法「ドラゴン達にしたらちょっと。」
赤いガラス玉≪・・・・・・≫

女僧侶「お湯に浸かれるのですか?でしたら是非私もご一緒させて下さい。」

女魔法「いいよ。勇者は?」
女僧侶「え?」

勇者「・・・・・・わざとか?」

女魔法「・・・。」
女僧侶「あ、あの、魔法さん?さ、流石に殿方と一緒に湯浴みというのは、そ、その・・・」

女魔法「・・・・・・冗談。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・・・・魔法が冗談、か。)

女魔法「い、いこ。」
女僧侶「あ、は、はい。わかりました、行きましょう。あ、少し待ってください、着替えを・・・」
ザッザッザッ

勇者「ふふ・・・」
勇者(・・・・・・)

勇者「・・・ふぅ。」
勇者(・・・・・・商人。平気、だろうか。今すぐ、走って迎えに行きたい。)

勇者(口惜しいが・・・力が足りない。今のままでは万が一にも魔王に勝てない。)
勇者(もう少しだけ、待っていてくれ。必ず、迎えに行く。)

馬2「ブルルル・・・」
勇者「・・・。」

――――――――――――――――――――――――

女魔法「・・・。」
ポイ
赤いガラス玉≪ポチャン≫

女僧侶「?」

女魔法「・・・・・・熱帯び詠唱開始」
女魔法「詠唱完了」

ボゴオオオ!!
ゴボゴボゴボゴボ・・・

女僧侶「さっき投げ入れた赤いビー玉は何でしょうか。」

女魔法「赤いドラゴン。」

女僧侶「え?」

女魔法「タオル巻いた方がいいよ。」

女僧侶「え、あ、はい。・・・・・・?」

――――――――――――――――――――――――

女魔法「・・・・・・。」
女僧侶「ふぅ・・・何か不思議ですねぇ・・・。」

水面≪ボコボコボコボコ≫

女僧侶「温かい川なんて初めてですよ。川に温泉が湧いている事もあるらしいですけど・・・」

女魔法「・・・・・・。」

女僧侶「・・・魔法さん?どうしました?」

女魔法「・・・・・・なんでもない。」

女僧侶「お話ししてください。今は私しかいませんから。」

女魔法「・・・・・・。」

女僧侶「・・・今日もお星さまが綺麗ですね。相変わらず雲が無くて、煌々としています。」
女僧侶「知ってます?星占いという物が有るのですよ。自分の生まれた日、時間、そういったものから自分のお星さまを選んで、一生を占うそうです。」

女僧侶「お空にはお星さまが多すぎて、」私には良く分からないですけどね。」

女魔法「・・・占いは統計学。完璧に当てはまるわけじゃない。」

女僧侶「ふふ、そうですね。でも、私は好きですよ。外れるところも含めて。」

女魔法「・・・・・・そう。」

女僧侶「えぇ。」

女魔法「・・・。」
女僧侶「・・・」

女魔法「・・・・・・勇者、可哀想だよね。」

女僧侶「・・・そうですね。本当に、聞いているだけで悲しくなる過去を持っています。」

女魔法「でも・・・・・・」
女魔法「・・・勇者が幸せだったら、私はここには居ない。」

女僧侶「・・・・・・。」

女魔法「・・・・・・・そう思うと、良く分からない・・・。」

女僧侶「・・・そうですね。もし勇者様が、普通に産まれて、普通に育って、・・・普通に生きていたら。」
女僧侶「私達は出会えなかったのかもしれません。ずっと、他人のままだったのかも。」

女魔法「・・・。」

女僧侶「・・・少し以外ですね。」

女魔法「・・・?」

女僧侶「魔法さんは、『過去は過去。変えられない事実。大事なのは、今。』」
女僧侶「『過去の仮定は無意味。過去の結果の今の事実が大事』・・・など言いそうな気がします。」

女魔法「・・・・・・。」

女僧侶「魔法さんは勇者様が幸せであってほしいと願っているのですよね。だからこそ、少しだけ主観的な意見を抱いたのでしょう。」

女僧侶「不幸せな過去を持っている勇者様が不憫で・・・幸せで有ってほしかったと願う。しかし・・・それでは勇者様と自分の関係は成立しない。」
女僧侶「・・・ちょっとだけ、歯がゆい感じがします。好きな人が不幸せでなければ、傍に居る事が出来なかった。」

女僧侶「色々、あるんですけどね。それでも・・・もやもやとした気持ちは抑えられません。」

女魔法「・・・。」

女僧侶「すいません。私の気持ちが入ってしまいました。」

女魔法「別にいい。・・・同じ。」

女僧侶「そうですか・・・。」

女魔法「・・・・・・今日も、一緒に寝れるから、それでいいや。」

女僧侶「・・・ふふっ、そうですね。お隣が、少し寂しいですけど・・・・・・。」

女魔法「大丈夫、すぐ5人で寝れるようになる。」

女僧侶「・・・そうですね。・・・そうです、よね。」

女僧侶「もうちょっとで、5人です。」

女魔法「・・・・・・上がる。」ザバッ

女僧侶「あ、はい、わかりました。お体拭きますね。」ザバッ

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
野営地点

女魔法「勇者。」

勇者「あぁ、上がったのか。おかえり。」

女僧侶「えぇ、お先頂きました。勇者様もどうぞ。」
女魔法「ん。」

勇者「それは有り難い。俺も風呂は好きだ。」

女魔法「じゃぁいこ。」

勇者「あぁ・・・。ん?」
勇者(行こう・・・、つまり一緒に?)

女魔法「・・・。」
手≪スッ≫

女僧侶「ほら、勇者様。お早く。」

勇者「あ、あぁ。」
手≪ぎゅっ≫
女魔法「・・・・・・。」

勇者(きっと案内するだけだろう。俺はどこを沸かしたのか知らないしな。そもそも2人は既に入った後だ。)

女僧侶「魔法さん?」

女魔法「・・・ん。こっち。」
クィ

勇者「・・・・・・。」
ザッザッザッ

――――――――――――――――――――――――

勇者「・・・・・・・・・・・・。」

女魔法「・・・・・・。」
女僧侶「勇者様?お湯加減はいかがですか?」

勇者「あ、あぁ。ちょうど、いい。・・・・・・。」

女僧侶「そうですか、うふふふ。」

勇者(・・・お、おちつかん。)

女僧侶「勇者様、良ければお背中を流しましょうか?」

勇者「い、いや、いい。この時期に濡れたまま外に出たら風邪を引いてしまう、から、な。」

女僧侶「そうですかぁーうふふふ。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(か、勘弁してくれ・・・。布を腰に巻いているとはいえ、水の透明度は高い。)
勇者(ひ、人に裸を見せるなんて、せ、背中と言えど経験が無い!)

女魔法「・・・・・・あつい?」

勇者「い、いや、ちょうどいい。」

女僧侶「そうですかぁ、耳が赤いのはなんででしょうねぇ。」

勇者「が、外気が冷たいからだな。」
勇者(確信を持って聞いているだろう僧侶。)

女魔法「・・・・・・。」
女僧侶「そぉですかぁ~。うふふふふふふふ・・・。」

勇者「・・・・・・くっ」

女魔法「・・・あ、ほくろ。」

勇者「っ!!」

女僧侶「え?どこですか?」

女魔法「そこ。」

女僧侶「どのあたりでしょう。」

女魔法「右の肩甲骨の上あたり。」

女僧侶「・・・あ、本当ですね。ちょっと薄いほくろが。」
女僧侶「これを知っているのは魔法さんと私と勇者様だけですねー。3人の秘密ですねー。」

女魔法「ん。」
女僧侶「んふふふふふ・・・。」

勇者「~~~っっっ。」
勇者(・・・・・・か、勘弁してくれ!)

――――――――――――――――――――――――
野営地点

勇者「・・・・・・。」

女僧侶「いやぁ眼福でしたねぇ。殿方の生の背面を見られるなんて・・・」
女僧侶「少々興奮してしまいましたよ。うふふふ。」

女魔法「・・・・・・。」

勇者「くぅ・・・。」

女僧侶「いけませんね。戦士さんが居たら『おっさんかよ』 と言われてしまう所です。ふふ。」

勇者(酷く恥ずかしい。)

女僧侶「さ、もう寝ましょう。勇者様も。」

勇者「い、いや、俺は・・・」
勇者(昨日は流されてしまったが今日は・・・)

女魔法「・・・。」
手≪ぎゅ≫

勇者「・・・・・・。」

女魔法「・・・・・・。」

女僧侶「何か?」

勇者「・・・・・・・・・・・・なんでもない。」

女僧侶「そうですかぁ。では、ほらどうぞ横になってください。お布団おかけしますよー。」

勇者「・・・・・・。」ドサッ
女魔法「・・・。」トサッ

女僧侶「はい、おやすみなさいましー。」
毛布≪ばさっ≫

女魔法「・・・僧侶は?」

女僧侶「はい?」

女魔法「一緒に寝ない?」
勇者(・・・・・・。)

女僧侶「え、いや、しかし・・・。」

女魔法「一緒に寝よ?」

女僧侶「そ、その、えっと・・・」

勇者(・・・・・・一人も二人も同じか。)
勇者「隣で寝るくらいいいだろう。魔法もそうしたいようだし。」

女僧侶「ゆ、勇者様・・・・・・。」

女魔法「・・・・・・。」

女僧侶「わ、わかりました。で、では失礼して・・・」
女僧侶「・・・お、お邪魔します。」
毛布≪パサ≫

女僧侶「・・・・・・。」

勇者「・・・・・・。
勇者(一人も二人も同じかと思ったが・・・ご、5割増しで恥ずかしい・・・。)

女魔法「ん。おやすみ・・・。」

女僧侶「・・・・・・。」
勇者「・・・・・・。」

勇者(今日は寝れるのだろうか。)

――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
朝 夜明け

勇者「・・・・・・。」パチ

勇者「・・・。」チラリ

女魔法「・・・スゥ。・・・スゥ。」
女僧侶「スゥ・・・。スゥ・・・。」

勇者「・・・。」
勇者(また腕が取られている。僧侶まで・・・・・・。)

勇者(まぁ、いいか。)

勇者(今の時間帯は・・・いつも通りならば夜明けのはずだ。空の色から察するにその程度かと思う。)

勇者「・・・。」
勇者(・・・努力の方向は合っているのだろうか。対応策はこれでいいのだろうか。)
勇者(悠長に訓練などやっている暇など本来無いのではないか?今すぐにでも走り出さなければ・・・)
勇者(・・・・・・分かっている。助けに行けば必ずあいつと衝突する事は。あいつを怯ませる一撃が必要であると。)

勇者(目を盗めるほど、甘い相手では無い、そのはずだ。これが、最善であるはずだ。)
勇者(・・・・・・結局は人頼み、か。俺は何とも、小さい存在だ・・・・・・。)

勇者(・・・何も、犠牲にせず、全てを得ようとするのは、傲慢、か・・・。)
心臓≪ドクン・・・≫

――――――――――――――――――――――――
女僧侶「・・・ん。」

女僧侶「・・・。」パチ
勇者「・・・・・・。」

女僧侶「ふぇ?あ、へっ!」
ガバッ!

勇者「・・・。」

女僧侶「あ、う、す、すいません勇者様、う、腕を枕に・・・」

勇者「・・・別にいい。おはよう、僧侶。」

女僧侶「あぅ、お、おはようございます・・・。」

女魔法「・・・?」パチ

女魔法「・・・。」
ムクリ

勇者「おはよう、魔法。」

女魔法「・・・おはよ。・・・ふぁー・・・・・・。」
ゴシゴシ

女僧侶「い、いけませんね、普段より深く寝てしまいました・・・。」

勇者(少し腕が痛い。)
ムクッ

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――

変換場≪バチ、バチバチ≫

白龍「これが・・・変換場か。」

女魔法「光と電気を相互交換してる。減衰率は60%くらい。」

白龍「なるほどなるほど、課題は多い、と。ふむ・・・。」
白龍「しかしながらこれほどに早く基礎条件の構築をされるとは思ってもいなかった。小さい人間さんは本当に人間かい?」

女魔法「・・・・・・うん。あと、これ。」
赤いガラス玉≪・・・≫

白龍「ふむ。そこらに投げておくれ。」

女魔法「ん。」
ぽい

赤いガラス玉≪とさっ≫

白龍「・・・・・もう少しこちらにおいで。」

女魔法「・・・・・・。」
ザッザッザッ

白龍「・・・解除」

赤いガラス玉≪バキン!≫
ズゴォォォォ・・・・・・!!

赤竜「ぐへぁー!!やっと出られたー!!」

白龍「少しは反省したか大馬鹿」
赤竜「おうおう!人間!昨日はよくも勝手に儂の魔力を奪ってくれたな!!」

女魔法「ごめんね。」

赤竜「許そう!あの程度何の問題も無い!」
白龍「・・・。」

赤竜「よぉーし!!腹が減ったー!飯だー!」
ズガズガズガ

白龍「・・・やはり効果無しか。」

女魔法「分かってたの?」

白龍「数度封印した事が有るからね。その時も同じくあまり効果が無かった。」
白龍「全く持って厄介なやつさ。」

女魔法「・・・。」

白龍「さて、人間さんの最終目標は思考加速への応用・・・その為には減衰率は2%ほどに抑える必要があるだろう。」
白龍「煮詰めて行こう。取りあえずは私が基礎条件の添削をしようか。」

女魔法「ん。」

――――――――――――――――――――――――
黒竜「しかしやはり人間は侮れないな。」

女僧侶「え?いきなりどうなされました?」

黒竜「短命であるのに私でも驚くような量の魔法条件を知っている。」
黒竜「短命であるからこそか、人間は総を個にする術に長けている。うむ、興味が尽きない。」

黒竜「可能ならば人間の世界で生きてみたいものだ。」

女僧侶「それは・・・ちょっと難しいかと思います。」

黒竜「ふふふ・・・そうかな?そうでもないのだなぁこれが。」

女僧侶「え?」

黒竜「まぁ思いついても試せないのが今の状況だ。もう少しゆっくり機会を待つとしよう。」

女僧侶「・・・?」

黒竜「ふふふふ・・・しかし今こそその機会がやってきたとも取れるが・・・ふふふふふ・・・。」

女僧侶「な、何を企んでいるのでしょうか?」

黒竜「ふふ、何でもないさ、なんでも、ね。さぁ魔力操作の練習をしようか。」

女僧侶「は、はぁ。」

赤竜「おーい!黒よ!酒は出来たか!?」
ズガズガズガ

黒竜「やっと来たかぁ!!どこいっとったんだ赤!」

赤竜「白に封印されておったんじゃい!いいから早く酒を寄こせ!」

黒竜「酒はまだできていない!しかしフラスコがいつの間にか取り出されていた!」
黒竜「これで酒を造る事が出来る!もう新しいフラスコには竜の葉と酒が入っているから酒を増やすだけだな!」

赤竜「よぉし!では魔力を貸すぞ!魂繋ぎの呪い」

黒竜「よおし!複製魔法詠唱開始」

赤竜「はようはよう!」

女僧侶「い、いつの間に準備を・・・」

赤竜「おっ!お前は水浴びしていた人間!なぜここに居る!」

女僧侶「え?え、えと黒いドラゴンさんに魔法を教えてもらっているのですが・・・。」

赤竜「おう!そういえば昨日も傍に居たか!ナハハハ人間は努力が好きだの!」

女僧侶「が、頑張って助けなきゃいけない人がいますから・・・。あ、あの、何故私が水浴びしていたと知っているのですか?」

赤竜「水の中から見ていたからだ!気が付かないとは人間とは鈍いなぁ!がはははは!」

女僧侶「え!?の、覗いて・・・!?そ、それに水の中なんて・・・!」

赤竜「しかし水の中から星空を覗くのは初めてだったのう!なんとも幻想的で久しぶりに空を飛びたくなった!」

女僧侶「そんな・・・!み、見られて・・・!」

赤竜「そんな事よりまだかっ!まだかっ!」

女僧侶「うぅ・・・っ、わ、わたし少々外しますね・・・。」

赤竜「はよおっ!はよおっ!」

女僧侶「うぅ・・・、そ、そんな・・・」ブツブツ
ザッザッザッ

――――――――――――――――――――――――

緑竜「人間。お前から妙な匂いがする。」

勇者「え?」

緑竜「何か持っているだろう。見せて見ろ。」

青竜「何言いだすのあんた。」

緑竜「する物はするのだ。ほら荷物を全てひっくりかえせ。」

勇者「・・・別にいいが・・・・・・。」
勇者(何かあったか?)
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――

勇者「俺が持ち歩いているのはこれくらいだが・・・」

緑竜「・・・・・・これは何だ?」

勇者「これは、魔力珠という物だ。俺の国の特産みたいな物で・・・」

緑竜「・・・うご」

勇者「?」

緑竜「おえ」
バシャッ

青竜「ちょ。」
勇者「うおっ!だ、大丈夫か?」

緑竜「・・・。」
魔力珠≪むんず≫

緑竜「あむ。」
ゴクン

勇者「な、なにを・・・?」

緑竜「一つもらっておく。代わりにそれをやろう。」

勇者「ど、どれを?」

緑竜「今私が吐いた物だ。川で洗ってこい。」

青竜「あんた・・・お返しだって言うんなら自分で洗ってきなさいよ。」

緑竜「む・・・、それもそうか。少し待っていろ人間。」

勇者「・・・あ、あぁ。」
勇者(・・・・・・意味が分からない。)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

緑竜「ほれ、やる。」
緑色の石≪ドスッ≫

勇者「・・・これはなんだろうか。」

緑竜「私の胃石だ。」

勇者「は、はぁ・・・。」

青竜「私達はね、お腹の中に高い魔力を持つ何かを入れておくの。」
青竜「じゃないと調子わるいのよねー。」

勇者「そうなのか・・・。なぜ、交換を?」

緑竜「長い年月放って置くと魔力が抜け、代わりに私たちの魔力が籠る。」
緑竜「理由は定かでは無いがそうなると調子が落ちる。だから定期的に変えるのだ。」

勇者「・・・・・・。」
緑の石≪・・・≫

勇者(これは・・・何か不思議な感じがするな。見た目よりも重く感じる。そして・・・明らかに魔力が籠っている。)

緑竜「しかしお前から貰った丸いガラスの石はそこらの石より魔力が綺麗な上、多量に含まれているな。うむうむ清々しい気分だ。」

青竜「よかったわねー。他の奴にもいらないか聞いてみたら?あと2つあるみたいだし。」
青竜「人間は道具を扱うのが上手いって黒が言ってるし持ってるとなんか役立つんじゃない?」

勇者「む・・・。」
勇者(せっかくお父さんから貰った魔力珠を・・・)

緑竜「お前はいらんのか?」

青竜「ここはお母様の領域だしなくてもへーき。」

緑竜「そうか。・・・人間、今すぐ決める必要もない。もう少し持っておいてもう少し後に決めろ。」

勇者「あぁ、そうする。」

青竜「今渡されると茶には行かない可能性が高いもんねー。」

緑竜「・・・貴様はまた下らない事を。」
緑竜「人間。決めたのなら今日の練習に入れ。」

勇者「わ、わかった。」

青竜「今日も昨日みたいにすんの?」

緑竜「折角お前が見ているのだ。今日はお前も手伝ってやるといい。」

青竜「? あたしが?」

勇者「・・・どうするのだろうか。」

緑竜「高出力を安定して制御できるようになるには人間にとって中々に長い時間が必要になるだろう。」
緑竜「それは段階を踏まざるを得ないからだ。脆弱な肉体を守る為に間違いを犯すことが出来ない。故に出力を少しずつ上げて練習する。」
緑竜「身を守るのを青いのが肩代わりする事により、段階跳びで高出力の制御の練習が可能だ。幸い、青いのは赤いのの所為で合わせる事は上手いからな。」

青竜「えぇ~なんであたしなのよ。」

緑竜「とんちんかんめ、お前でなければ物質の温度制御が出来ないだろう。私は私で熱気を遮断する。」

勇者「・・・そこまで協力してくれるのか?」

青竜「・・・まぁいいわ。毎日寝るか遊ばれるか怒るかだけだし。たまにはいいわよねー。」

緑竜「よい暇つぶしだ。うぬぼれるな人間、海抜よりも深く雲より高く感謝をしろ。」

勇者「あぁ、ありがとう。2人とも。」

緑竜「私達は人ではないがな。まぁ、いい。」
青竜「さっそくやりましょうかー。取りあえず最大出力で昨日の使ってみなさいよ。」

――――――――――――――――――――――――
女戦士「弐撃一献!!」
大岩≪ギャリィィィィン!!≫

女戦士「ふぅ・・・、ふぅ・・・。」
剣≪ヒュン≫

女戦士「・・・何とか深めのキズが付けれたな。やっぱりお父様の技が一番完成度が高い。」
女戦士「・・・でも必要なのはこれの何倍もの威力・・・。」

女戦士「ふぅー・・・・・・。」
女戦士「・・・・・・っ!」
大岩≪ガキン!≫

女戦士「・・・なんとなくイメージが湧いてきた・・・よし・・・。」

――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――


勇者「・・・」
両手≪ゴゴゴゴゴゴ≫

勇者(今日のはいい練習になった。かなりコツが掴めた気がする。)

女僧侶「・・・・・・。」

女魔法「・・・。」
布≪スラスラスラ≫

女僧侶「・・・うぅ・・・・・・。」

勇者「・・・・・・大丈夫か僧侶。」

女僧侶「大丈夫じゃありません・・・。」

勇者「何があったんだ。」

女僧侶「貴方だけには聞かれたくありません・・・・・・。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(何かまずい事をしたか・・・?)

女僧侶「・・・・・・なぜ私はこんなにも落ち込んでいるのでしょう。」

勇者「・・・。」
勇者(俺が聞きたい。)

女僧侶「よく考えたら2回目なのに・・・、いえでもあの時はすぐ隠せたけど・・・」

女魔法「・・・・・・。」
布≪スラスラスラ≫

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・迂闊に触らない方がいいのか?いや、しかし放って置く訳にも・・・)

女僧侶「でもドラゴンさんなのに・・・でも話を聞く限り男だし・・・」

勇者「・・・・・・僧侶、元気を出してくれ。」

女僧侶「す、すいません・・・・・・。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(元気を出せるような何かは無かっただろうか・・・・・・。家での記憶を・・・・・・。)

勇者(・・・)

勇者〈魔法〉ボソ

女魔法「?」

勇者〈さっき乾燥魔法を使っていたな。何にでも使えるのか?〉ボソボソ

女魔法「・・・。」
コクン

勇者〈そうか。じゃぁ後で少し手伝ってくれ。〉ボソボソ

女魔法「?」

勇者「・・・。」
スクッ

女魔法「どこいくの?」

勇者「少し黒いドラゴンの所へ。」

女魔法「・・・?」

女僧侶「・・・いってらっしゃいませ・・・・・・。」

勇者「・・・あぁ、行ってくる。」

――――――――――――――――――――――――
黒いドラゴンの洞窟深部

赤竜「げろげろげろげろ」
黒竜「おろおろおろおろ」

びちゃびちゃびちゃびちゃ

勇者「うぉ・・・!ひ、ひどい匂いだ・・・っ。」

黒竜「お、おぉ・・・に、人間さん、良い所に・・・」

赤竜「うごごごごごご」
ボタボタボタボタ

勇者「一体どうしたんだ?」

黒竜「酒盛りをしていたら止まらなく・・・」

勇者(・・・ただの飲みすぎか。)

赤竜「うげぇ~・・・。世界が回っているぞ・・・。」
どさぁ!

黒竜「い、いやはや・・・・・・大変に、気持ちが悪い・・・・・・。な、なにかいい酔い覚ましは、ないか?」

勇者「・・・そ、そうだな。俺が知っているのは水を飲んだりする事くらいで・・・」

黒竜「み、みず、か。で、では川へ行かなければ・・・うぐ」
黒竜「ゲロゲロゲロ」
ばしゃばしゃばしゃ

勇者「・・・普段もここまで酔うのか?」

黒竜「はぁ~はぁ~、ま、稀と言えよう・・・そ、そういえば人間さんは、一体、なにをしに・・・?」

勇者「茶器を貸してもらいに・・・」

黒竜「す、好きに漁ってくれ・・・うぷっ!・・・」
黒竜「・・・・・・っ。転送術式詠唱開始」

黒竜「詠唱完りょうげっ」
赤竜「・・・ガー・・・ガー・・・」

バシュバシュン!

巨大フラスコ≪ばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃ≫

勇者「・・・・・・いやはや。」
勇者(飲んでいたのは普通の酒か。・・・む?)

赤い石≪・・・≫

勇者「・・・・・・。」
勇者(あれは・・・赤いドラゴンの胃石か。ゲロまみれだな。)

――――――――――――――――――――――――
外~滝つぼ~

空中≪バシュバシュン!!≫
黒竜「げろげろげろ・・・」
赤竜「ぐごーぐごー」

ひゅーーー・・・

水面≪どっぼぉーーーーん!!≫

黒竜≪ぶくぶくぶくぶく・・・≫

赤竜≪ぐぼぼ・・・・ぐぼぼ・・・≫

黒竜「ぶへぇあ!!」ザバン!

黒竜「ふぅー・・・ふぅー・・・い、位置がずれてしまった・・・。」
黒竜「あー・・・少しは酔いが覚めた。なるほど水浴びをすれば良いのか。」

赤竜≪ごぼぼ・・・ごぼぼ・・・≫

黒竜「なるほど・・・確かにこれは中々・・・なんとも気分が・・・」

黒竜「・・・・・・。」
ふらふら

黒竜「・・・ぐぅ」トプン
水面≪ぶくぶくぶくぶく・・・≫

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
野営地点

勇者「魔法。」

女魔法「おかえり。」

勇者「ただいま。僧侶は?」

女魔法「馬車の中。」

勇者「そうか。・・・竜の葉を取ってきた。乾燥魔法を使ってくれないか?」

女魔法「何するの?」

勇者「茶葉を作るつもりだ。作り方を本で読んだ覚えがある。工程を何個も抜くことになるが・・・」

女魔法「ふーん。」

勇者「5枚ほど取ってきた。頼んだ。」

女魔法「いいよ。どのくらい?」

勇者「・・・少しずつ様子を見ながらやろう。」

女魔法「ん。」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

鍋≪コトコトコト≫

勇者「反振動魔法詠唱開始」

勇者「詠唱完了」

竜の茶葉≪ヒュォ・・・≫

勇者「よし、粗熱が取れた。ただ葉を乾燥させただけだが・・・、見た目は茶葉になったな。」

女魔法「でも・・・飲んでも平気なの?」

勇者「毒見してみるさ。お湯も丁度沸いた。どれ・・・」

茶器≪ジョボボボボ≫

勇者「・・・。」

茶器≪カチャ≫


カップ≪コポコポコポ≫

女魔法「・・・・・・透き通った緑色してる。」

勇者「あぁ、綺麗な物だな。」
勇者(・・・そういえば、今日は月が出ている。)

勇者「・・・」
クンクン
勇者(・・・深い森の匂いがする。奥深いが爽やかさを伴う独特な緑の香り・・・。)

女魔法「・・・。」

勇者「・・・」
ズズ・・・
勇者「・・・・・・。」

女魔法「勇者?平気?なんともない?」

勇者「・・・・・・あ、あぁ、今の所は、平気だが・・・・・・。」

女魔法「どしたの?」

勇者「・・・ずいぶん濃い味がする・・・・・・しかし、」
勇者(まず苦味、その後に渋み。舌が縮み唾液が出てくるがその後に・・・)
ズズ

勇者(ほのかな甘みを感じる・・・・・・。)
勇者「・・・・・・落ち着く。」

女魔法「・・・。」

勇者「・・・・・・1時間2時間様子を見て、何もなければ僧侶にも進める事にしよう。」

女魔法「・・・・・・そう。」

勇者「・・・今日は月が見えるな。」

女魔法「もうちょっとで満月。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
馬車内

勇者「僧侶。起きているか?」

女僧侶「・・・どうしました勇者様。何か問題でも・・・?」

勇者「特に何もないが・・・竜の葉でお茶を作ってみた。」

女僧侶「お茶を・・・?」

勇者「あぁ。ドラゴンの話では濃すぎる所為で虫も食べれないそうだが・・・お茶なら何とか飲めるかと思ってな。」
勇者「ほら、カップを持て。」

女僧侶「あ・・・はい・・・。」

女魔法「ん。」

女僧侶「あ・・・どうも・・・。」

カップ≪コポコポコポ≫

女僧侶「・・・・・・緑茶ですね。」

勇者「うむ。と言っても乾燥させただけなんだが・・・かえって良かったかもしれない。」
勇者(それだけ抽出されづらいからな。)

女僧侶「・・・・・・。」
ず・・・

女僧侶「・・・・・・これは・・・・・・美味しい・・・ですね。」

勇者「だろう?」

女僧侶「豊な緑の匂い・・・その奥に土の香りがあります。味は、少々苦いですけど・・・仄かに甘い・・・。」
女僧侶「・・・・・・緑茶は久しぶりですね。いつも紅茶ばかりでしたから・・・・・・」

女魔法「・・・これ、あんまり長くお湯につけてちゃダメみたい。」

女僧侶「そうなのですか?」

勇者「漬けて置けば漬けて置くだけ、どんどん味が濃くなる。とてもじゃないが苦味と渋みが強すぎて飲めない。」
勇者「あまりに濃すぎるとおなかを下すかもしれないしな。」

女僧侶「なるほど・・・・・・。」
カチャ

女僧侶「・・・大変美味でした。ありがとうございます、勇者様、魔法さん。」

女魔法「私は手伝っただけ。勇者が考えて勇者が作った。」

勇者「魔法が居なければ出来なかった。魔法のおかげだ。」

女僧侶「・・・ふふ、お二人とも、ありがとうございます。」

勇者「元気が出てくれば幸いなんだが・・・。」

女僧侶「・・・えぇ、お蔭さまで立ち直れそうです。心配をおかけしましてすいません。」

勇者「いくらでも掛けてもらって構わない。しかし・・・何故落ち込んでいたんだ?」

女僧侶「あ、勇者様の所為じゃありませんよ。少々、ショックな事がありまして・・・。」

勇者「・・・良ければ聞くが・・・・・・。」

女僧侶「うふ、先ほども言いましたが貴方だけには聞かれたくありません。」

勇者「そ、そうか。」
勇者(・・・何故だ。)

女僧侶「それはそうと魔法さん。酷いですよ、何故言ってくれなかったのです?」

女魔法「タオル巻いた方がいいって言ったよ。」

女僧侶「そうですけど・・・肝心な事については一言も教えてくれなかったじゃないですか。」

女魔法「タオル巻いてれば関係ないでしょ?」

女僧侶「大ありです。全く、勇者様以外の方にも恥じらいを持ってください。」

女魔法「・・・私達には良いのに勇者には駄目なの?」

女僧侶「あのですね、勇者様は男性で、私達は女なんですよ?前提が違うではありませんか。」

女魔法「女も男も一緒。」

女僧侶「一緒じゃありません。」

勇者「・・・。」
勇者(元気が出てくれたようでよかった。)

女僧侶「そもそも前勇者様に覗かれた時、恥ずかしがっていませんでしたか?」

勇者「っ。」

女魔法「・・・だって・・・・・・。」

女僧侶「ドラゴンさんは確かに人間ではないですけど・・・、でも男女に分かれているのですから。」
女僧侶「それに簡単に見せていい物ではありません。見せる人はちゃんと選びましょうね。」

女魔法「タオル巻いてた。」

女僧侶「ですから・・・」

勇者(飛び火しそうだ。退散しよう。)
ガタガタ

――――――――――――――――――――――――
野営地点

勇者「・・・。」
ゴソ
緑の石≪・・・≫

勇者(・・・高い魔力を感じる。ここから、魔力を抜き出して利用する事は出来るだろうか。)
勇者(明日この魔力の魔法条件を聞いてみよう。)

ゴソ
赤い石≪・・・≫

勇者(返すのは明日でいいか。どこに行ってしまったか分からない。さっき見た時は寝てしまっていたようだし、見つからないかもしれない。)

勇者(・・・少しでも練習しよう。)

勇者(熱は真空にされない限りなんにでも通る。・・・あくまで俺の経験上では、だが・・・。)
勇者(ここで覚えれたのは僥倖だろう。出来るだけすばやく温度を変化出来るように練習しておこう。)

勇者「・・・すぅー・・・・・・。」
勇者「振動魔法詠唱開始」

両手≪グオオォォォ・・・≫

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――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――
次の日~川の洞窟奥~

女戦士「・・・・・・。」

女戦士「・・・・・・・・・・・・スゥー・・・フゥー・・・。」

剣≪チャキ≫

女戦士「・・・。」
剣≪ヒュンヒュン≫


大岩≪・・・≫

女戦士「・・・・・・はぁああああああああ!!」
剣≪キン―≫

大岩≪ゴリィッ!!≫

女戦士「・・・・・・ふぅー・・・ふぅー・・・。」

大岩≪パラパラパラ・・・≫
剣≪・・・チャキ≫

女戦士「もっと早く・・・。」

――――――――――――――――――――――――
黒竜「ぶぇぇーっくしょい!!!!」

赤竜「黒!どうした!」

黒竜「ううむ・・・風邪を引いたようだ・・・・・・。」

赤竜「まるで白のようだのう。一体何をしていたのだ?」

黒竜「昨日一緒に水の中で寝ていたではないか。それしか考えられん。」

赤竜「実は儂も何か調子が出ん。全身気だるげだ。」

黒竜「なるほど・・・それは二日酔いという物かもな。」

赤竜「ふつかよい?」

黒竜「酒をしこたま飲むと、次の日起きても酔いが残ってしまうらしい。けだるかったり頭痛がしたりなどの症状が出るようだ。」

赤竜「おお、まさに儂だな!別に頭痛は無いがの!」

黒竜「う~・・・いかん。私は日向ぼっこでもしていよう・・・。」

赤竜「では儂は酒でも飲んでいよう!」

黒竜「竜の葉の方は飲むなよ。」

赤竜「わかっておる!」





赤竜「・・・・・・ぐふふふふ。」
ドガドガドガ
勇者「おおい!待ってくれ!」

赤竜「おお、どうした人間。儂は今ふつかよいなのだ。手短にな。」

勇者「二日酔い?・・・そ、そうか。それはそうと、昨日酒の置いてある部屋で石を見つけたんだが・・・。」
勇者「恐らくあなたのだ。返そう。」

赤い石≪・・・≫

赤竜「ん~?・・・・・・おぉ、儂の胃石か。そろそろ変えようと思っていた所だ。川にでも投げておいてくれ。」

勇者「え?い、いやしかしこれが無いと調子が出ないと聞いているが・・・。」

赤竜「儂はそんなものに左右されん!強いからな!有っても無くても同じだわい!」
赤竜「ではの人間!酒~!」
ズガズガズガ

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・と、取りあえず預かって置くか。後で気が変わるかもしれないしな。)

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――――――――――――――――――――――――
黒竜「うむぅ・・・。」

女僧侶「大丈夫ですか?出来るだけ温かくして寝ていてください。」
女僧侶「お水はしっかり飲んでくださいね。頭は痛くありませんか?」

黒竜「うむ・・・。しかしこの位ならば平気だ。」

女僧侶「本当は水にぬらした布などを頭に掛けられれば良いのですけど・・・。」

黒竜「・・・何、この程度すぐ治るさ。」

女僧侶「そうですか。では今日は教わった魔力操作の練習をしていますので気兼ねなくお休みください。お蔭さまでかなり慣れてきましたから一人でも大丈夫ですよ。」

黒竜「・・・すまないなぁ。」

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女魔法「・・・・・・。」

白龍「いい具合に減衰率が減ってくれたね。」

女魔法「でもまだ10%減衰する。もっと減らさないと・・・。」

白龍「ここからが大変だろう。隅から隅まで細かなあらを探して行こう。」

2か月もまたしてしまって文量これだけですいませんすいませんごめんなさい
これからまた書き出せるはずですすいませんほんとすいません

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夜 黒竜の洞窟深部

黒竜「あぁー!!!な、なんという事だ!!」

女僧侶「ど、どうしました?」

黒竜「せ、折角つけて置いた竜の葉の酒が・・・!」

葉の入ったフラスコ≪・・・≫

黒竜「い、一滴も残っていない!!あ、あの自己中竜がぁぁぁぁぁ!!!」

女僧侶「お、落ち着いてください!体に響きますから!」

黒竜「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
黒竜「ええい!!釘を刺しておいたのに完全に無視しおってぇえええ!!半分ほど削ってやる!!いくぞ人間!」

女僧侶「え、あ、あの、ちょっ」

黒竜「げぇっほげほげほげほ!!」
ズダズダズダ

女僧侶「ほ、ほら。無理をなさらずに。今日は休んで明日にしましょう!!ね?」

黒竜「いかん!あ奴は犬や猫と同じで悪事を行ったら可能な限り早めに身をもって知らせる必要がある!」
黒竜「それに!今回は私を侮辱した!!私を軽く見ているのだ!!」

黒竜「私達は同等の仲間だ!許せん!謝らせてやる!げぇっほげほ!」
黒竜「ぜぇ、ぜぇ・・・うおおおお!!」
ズダズダ!

女僧侶「きゃっ!」
ズデン!

黒竜「落ちない様にな!ふーふー!」
ズダズダズダズダ!

女僧侶「お、落ち着いてください!」

黒竜「私は常に冷静だ!うおおおお!」

――――――――――――――――――――――――

赤竜「がー・・・がー・・・」

・・・ズダズダズダズダ!
黒竜「すぅぅ・・・」

黒竜「オオオオオ・・・」
ゴオオオオ・・・
赤竜「っ」
ガバッ!バサァ!

地面≪バキゴキメキガキ!≫
地面≪ザザァァ・・・≫

女僧侶「あわわわわ・・・」

赤竜「い、いきなりなんじゃい!!」

黒竜「ぜぇ・・・ぜぇ・・・くそ、相変わらず勘が鋭い・・・!」

赤竜「どうしたそんな目を血走らせて!」

黒竜「貴様ぁ!!しらばっくれるかぁ!!!」

赤竜「・・・・・・・・・あぁ!さ、酒なら仕方があるまい!目の前にあるのが悪い!」

黒竜「・・・っ!!予想通り、反省の色、全く無し!!!」
黒竜「貴様は一度・・・」
黒竜「子供からやりなおせぇええええええええ」
ゴオオオ・・・

赤竜「うひー!」
バサァ!!

地面≪ザァア!≫

赤竜「い、いかん今日は虫の居所が悪いようだ、逃げるが勝ちよ!」
バサァ!バサッ!バサッ!

黒竜「ぜぇ・・・ぜぇ・・・くそ・・・」

赤竜「今のうち!」
ヒュー!

黒竜「はぁー・・・はぁー・・・」

女僧侶「だ、大丈夫ですか!?」

黒竜「うぐぐ・・・か、風邪とは辛い物だな・・・」

女僧侶「甘く見ないで今日はお休みください!その様子だとかなり酷くなっていますよ!」

黒竜「飛ぶのは久しぶりだが・・・!」
翼≪メキメキメキ・・・!≫

女僧侶「え?」

黒竜「ふぅー・・・!」
バサ!バサァ!

女僧侶「キャァ!ひっ、ちょっ、ドラゴンさん!む、無茶は、しないで・・・」

黒竜「うおおおお!」
ドヒュウ!

女僧侶「キャアアアァァァ・・・」

――――――――――――――――――――――――
野営地点

勇者「・・・?」
勇者(僧侶の声がしたような・・・。)

女魔法「・・・・・・。」
条件図≪・・・≫

女魔法「・・・・・・・・・・・・。」
条件図≪・・・≫

勇者「・・・」
勇者(穴が開きそうなほどにじっと見つめている。集中しているようだし邪魔をしないように・・・)

赤竜「うおおおおおお!」
ドヒュゥウ!!

勇者「っ!?」
ヒュゴオオオ!
女魔法「・・・。」
帽子≪ガシ≫
条件図≪パシ≫

オオオオオ・・・!
条件図≪バサバサバサバサ≫
帽子≪バタバタバタバタ≫

馬「ヒヒィ!」
馬2「バヒィィ!!」

女僧侶「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
黒竜「重力場」

地面≪ズゴン!ズゴン!≫

ヒュゴオオオオ・・・
勇者「そ、僧侶!?」

女魔法「・・・・・・」
条件図≪バサバサ・・・≫

勇者(・・・黒竜の看病をしていたら騒動に巻き込まれてしまったのだろうか。)
勇者(しかしあの速さは・・・加速呪を使った俺でも追いつけないか?)

勇者「加速呪」
勇者「魔法、何やら危なそうだ。緑色のドラゴンの元に行け。」

女魔法「ん。勇者は?」

勇者「追い掛ける。」

女魔法「ん。いってらっしゃい。」

勇者「あぁ、いってくる。フッ」
ズダン!ビュオ!
ビュオォォォ・・・

女魔法「・・・・・・。」
条件図≪・・・≫

ヒュォオオオ!
バサァ!

条件図≪バサバサバサ!≫
帽子≪バタバタバタ≫
魔法「・・・」

緑竜「平気か人間。」

女魔法「ん。」

緑竜「久々に癇癪が爆発したな。いやはや全く迷惑だ。」
ドザァ!

女魔法「・・・よく起こすの?」

緑竜「うむ。あいつは自分の物を取られるのが大嫌いなのだ、分け与えるのは好きだが。」
緑竜「もっとも、癇癪を起こさせるのはいつも赤色なのだがな。さて・・・」
緑竜「魔力緩衝障壁」

グオン!

女魔法「・・・。」
条件図≪・・・≫

緑竜「お前は熱心に白色とお話ししているな。確か思考加速魔法の基礎となる現象変換場の条件を考えているのだったか。」
ズズゥ・・・・・・ン

女魔法「そう。」
条件図≪・・・≫

緑竜「あいつは抜けている所があるからな・・・。」
顔≪ズイ≫

女魔法「・・・。」

緑竜「ふむ・・・・・・おぉ・・・なるほど・・・・・・。」
緑竜「よくもまぁ思いつくものだ。属性変換ならまだしも現象変換とは。少ない魔力を生かすために頭をこねくり回す。」

緑竜「長く生きれば生きるほど、お前達の様な存在は恐ろしく育つのだろうなぁ。」

女魔法「・・・人はそんなに長く生きれない。」

緑竜「全体の事を言っている。個ではない。」

バサァ!!バサァ!!
黒竜「重力爪」
ブオオオン!

赤竜「うひぃ!」
ひらり

魔力緩衝障壁≪バショオ!≫
ヒュオオオ!!
女魔法「!」

緑竜「重力魔法か。地面に叩きつけるつもりなのだろうが、この障壁は大きすぎる物理は防げんからなぁ。」
緑竜「相当頭に血が上っているか。取り押さえる準備でもしておくべきか。」

女魔法「・・・ねぇ、今、魔法が阻害されたように見えたけど・・・」

緑竜「私特有の魔法だ。人間には無理だから気にするな。」

女魔法「・・・私の知ってる奴も魔法を阻害できる。どうやってるの、教えて。」

緑竜「魔法を阻害する方法などいくらかある。超高濃度の魔力壁であったり、相手の魔法条件を一部上書きしたりな。」
緑竜「そいつが誰だか知らんが、私の方法ではない事は確かだ。私の方法を使える奴はこの世で2・・・いや今は3ほどしかいない、私含めてな。」

女魔法「教えて。」

緑竜「・・・私の方法は私の属性だけの手法だ。教えた所で何の参考にもならないし、何の手助けにもならない。」

女魔法「・・・。」

緑竜「・・・衝撃魔法」
バァンッ!

女魔法「!」
ヒュォォ・・・

緑竜「これが私の魔力の最も原型となる使い方だ。魔力が膨れ上がり周りの物を弾き飛ばす。」
緑竜「ある程度の対象物への選択の余地があり、条件によって物質、魔力どちらかを選ぶことが出来る。」
緑竜「衝撃の指向性も指定可能だ。」

女魔法「・・・。」

緑竜「目の前に展開している障壁は魔力に触れると自動的に反応するよう条件を組んである。」
緑竜「ある程度の物質移動にも反応するが、そこまで大きな力は出ない。私達くらいの質量は防げん。」

女魔法「・・・・・・これって魔法全部を阻害出来るの?」

緑竜「そうでもないな。現象のみの魔法には弱い部分がある。物質にも対応しきれない部分がある。」
緑竜「あくまで条件式を破壊するだけだ。」

女魔法「・・・・・・。」

緑竜「実際に経験した事だが、阻害される前提で条件式をぶつけられた事が有る。」
緑竜「その時使用したのはこの障壁の様に即時反応型の厚みの無い物だった。その性質上、条件式を押し込む形で破壊する。」
緑竜「その魔法は押し込まれる事で発動する形に条件式が調整されていた。」

女魔法「・・・そんな事出来るんだ。」

緑竜「あぁ、おかげで逃げ切られてしまった。いやはや全く人間とは・・・。」

女魔法「人にやられたの?」

緑竜「う・・・む・・・?いや・・・ ・・・そうだ人間。その条件図、少々気になる所がある。」

女魔法「?」

緑竜「あぁ、うむ・・・あぁー・・・ほ、ほら、例えばこの部分だ。」

女魔法「・・・?」

緑竜「この部分のこの形式は減衰率は確かに低いがその後の条件式に与える影響は決して小さくない。」
緑竜「ここはあえて減衰率が高い条件を使えば全体的に見て減衰率は小さくなる。」

女魔法「・・・。」

緑竜「白は一つの目的に囚われすぎる所がある。上手く扱うのだな。」

女魔法「・・・・・・。」

ビュオオオ!
勇者「うおっ?な、なんだこれは。」
女僧侶「へっくし!うぅ・・・。」

緑竜「あぁ、戻ってきたか。入れ。」

スタスタスタ

緑竜「それで、顛末はどうなった?」

勇者「白色のドラゴンが二人ともガラス玉にして場を収めた。今は説教中だ。」ポタポタポタ

女魔法「なんで濡れてるの?」

勇者「水に飛び込んだんだ。」ポタポタポタ
女僧侶「ゆ、勇者様が空中で受け止めてくださいまして・・・。」ポタポタポタ

女魔法「ふーん。」

緑竜「では、私は戻る事にする。また、明日。」

女魔法「来てくれてありがとう。」
女僧侶「あ、ありがとうございました。」
勇者「また明日。ありがとう。」

緑竜「別に自発的に来たわけではないのだが・・・」
ズシャズシャズシャ・・・

女魔法「・・・寒い?」

女僧侶「あ、あはは・・・寒い、ですねぇ。す、すいませんちょっと馬車の中へ。」
ガタッ

女魔法「・・・どうしたの?顔赤かった。」

勇者「・・・・・・水に上がってからあの調子だ。何故かは・・・良く分からん。」

女魔法「・・・触った?」

勇者「さ、触っていない!い、いや、それは背中や腿辺りは受け止めた時に触れたが・・・!」

女魔法「・・・ふーん。」

勇者「ぐっ・・・!」
勇者(魔法のあの座った目は問いただされるより心に来る・・・!俺は別に後ろ暗い事をしていないのに・・・!)

女魔法「・・・勇者。」

勇者「な、なんだろうか。」

女魔法「服乾かしてあげる。脱いで。」

勇者「い、いや、代わりの服は馬車に・・・。」

女魔法「風邪ひくよ?」

勇者「・・・。」
勇者(有無を言わせない圧力を掛けてくる・・・!)

勇者「・・・わかった。物陰で脱いでくる。」
勇者(一部譲歩して切り抜けよう・・・。)

毛布≪バサッ≫


女魔法「・・・」

馬車≪ガタ≫
女僧侶「あ、あまり勇者様をいじめてはいけませんよ。魔法さん。」

女魔法「・・・なんか楽しい。」

女僧侶「う、う~ん・・・これは問題かも知れませんねぇ・・・。」

女魔法「・・・出て来て平気なの?」

女僧侶「えぅ、だ、だってずっと隠れてる訳にも行かないじゃありませんか。」
女僧侶「・・・何故なんでしょう、夢の中ではあんなにも安心感で一杯だったのに・・・・・・。」

女魔法「夢?」

女僧侶「な、なんでもありません。と、とにかく魔法さん。あまり勇者様をいじめないであげて下さいね。」

女魔法「・・・はーい。」

女僧侶「何か最近反応が軽妙ですね・・・。っと、勇者様はどちらに向かいました?」

女魔法「寝藁の裏。」

女僧侶「そうですか。・・・どうやって服をお渡ししましょう・・・。」

≪―――投げてくれればいい!≫

女僧侶「・・・あ、勇者様お着替え終わりました?今服を届けに行きますね。」

≪―――い、いや!放り投げてくれれば・・・≫

女僧侶「今行きますねー。」

≪―――!≫

女魔法「・・・僧侶だっていじめてるくせに・・・・・・。」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

勇者「あー・・・それで、食料は今はどんな感じだろうか。」

女僧侶「そうですね、戦士さんが一切食べていないので、あと1日分ありますけど・・・」

勇者「・・・本当に大丈夫なのだろうか。ペンダントを取ってしまっていてこちらからどんな状態か一切分からない。」

女魔法「・・・戦士無茶するって・・・・・・」

勇者「あぁ、近い事を言っていた。一体何をするつもりなのか分からないが・・・不安だ。」

女僧侶「正直、ご飯を食べないなんて予想外でした。特訓が終わった後の休息の為に十分な食糧を用意しておきたい所です。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・・・・俺は転送術式が使える。座標も、ドラゴン達に教えてもらえばわかるだろう。)

勇者(転送術式詠唱に・・・この位置だと40分は掛かるか。)

勇者「今残っている資金は?」

女僧侶「え?え、えと・・・、たくさんありますよ。金貨も結局使い切っていませんしね。」

勇者「そうか・・・本当に大変な金額を受け取ってしまったんだな。」

女魔法「心配してくれたんだから、素直に受け取るべき。」

勇者「・・・そうかな。そうかもな。」

女魔法「ん。そう。」

女僧侶「それで?何か思いついたのですか?」

勇者「あぁ、食料を少し買ってこようかと思う。と言っても一回の転送で持ってこれるのは3日分程度になるし、大きく時間を空ける事になる。余り離れたくはない。」

女僧侶「あ、そういえば勇者様は転送術式が使えるのでしたね。具体的にどれだけかかりそうなのですか?」

勇者「・・・そうだな。行きに40分、帰りに15分、買い物自体にどれだけ掛かるか分からないが・・・」
勇者「・・・大凡向こうにいる時間は一回、1時間から2時間程度になるかと思う。」

女僧侶「・・・あまり掛からないじゃないですか。」
女魔法「・・・。」

勇者「そ、そうだろうか。出来るだけ離れたくないのだが・・・。」

女魔法「心配性。」
女僧侶「全くですね。半日位かと思っていましたよ。」

勇者「そ、そうか。」
勇者(1時間でさえ長く感じるが・・・魔法の言う通り心配しすぎなのだろうか。)
勇者(あの時は歯がゆかった。俺は、あの時急ぐ事しか出来なかった。皆が次々に、焦燥の中倒れていくのに、何も、できない。)
勇者(・・・ただの我儘か。今は俺のそんな気持ちより、戦士の体調を考えるべきだ。)
勇者(飯を食べないでいるのなら最初は消化が易い物がいい。肉では少々不安だ。パンや果物などを買っておきたい。消化器系の消耗は体調に大きく影響を与える。)

勇者「僧侶、今の時刻だと買い物は可能だろうか。行くのならば早い方がいいだろう。」

女僧侶「そうですねぇ、一般的な国ならば、皆さんもう店じまいしているかと。」

勇者「そうか・・・。・・・・・・。」
勇者(お父さんに無理を言えばこの時間帯でも食料くらいかき集めてくれるだろうが・・・余り迷惑を掛ける訳には・・・。)

勇者(迷子・・・。いや、既に俺の子か。唯一の有翼族のあの子は、今一体どうしているのだろうか。)
勇者(好奇心が旺盛な所があるから少々不安だ。空を飛ばないように釘を刺して置いたとはいえ・・・)
勇者(馴染めているかな、一緒に居てあげられない事が心苦しい。あの島から連れ出して置いて、唯一の顔見知りである俺はすぐ消えてしまった。)
勇者(一体それは子供にとって、どれだけの不安を煽る事になるのだろう。ただでさえ、親を失っているというのに・・・。)

勇者(あの子と分かれて、もう少しで2週間。この先座標を知ることが出来るのは早々無いだろう、いい機会かもしれない。)

勇者「む・・・。」

女僧侶「どうしました?」

勇者「ひと達が呼んでいる様だ。・・・今日は早めに寝るとする。」

女僧侶「あ、そうですか、わかりました。お休みなさいませ。」
女魔法「おやすみ。」

勇者「あぁ、お休み。」

――――――――――――――――――――――――
女戦士「ふぅー、ふぅー・・・!」

女戦士「ぁぁあああ!!」
ギュイン!
大岩≪ガキィィン!!≫
パラパラパラ・・・

女戦士「・・・・・・ふぅー・・・!」

女戦士「頃合いだな・・・。予定通り・・・。」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――



1106「おはよー」
1107「おはよー」

勇者「・・・あぁ、おはよう。今日はいつもより早いが、何か用事か?」

1106「これー。」
1107「はい。」

封筒≪スッ≫

勇者「?・・・これは、手紙か。」

1106「今読まないでね。」
1107「中身は秘密なの。」

勇者「はは、いつのまに・・・。ヒトヤ当てのも既に書いたのか?」

1106「まだ。起きてから書くの。だけど・・・」
1107「だいじょうぶかなぁ・・・。」

勇者「大丈夫だ。ひと達は真面目に勉強していたし、俺から見て上達も早かった。気持ちを伝えられるような文章を書けるようになっているはずさ。」
勇者「ヒトヤも驚くだろうな。」

1106「うんー、まだ何書くか悩んでるけど・・・」
1107「頑張って書くの!」

勇者「あぁ、そうするといい。俺もこの手紙の中身を楽しみにしておくよ。用はこれだけか?」

1106「ううん。あともういっこお手紙があるの。」
1107「今日は私達が書いたお手紙とこっちのお手紙を渡しに来たの。」

勇者「もう一つの手紙・・・?」

両方「剣のお姉ちゃんなの。」
紙切れ≪スッ≫

勇者「戦士から・・・?読んでもいいか?」

1106「・・・うん。」
1107「・・・平気。」

紙切れ≪カサッ≫

『約束を果たせ』
『明日すぐに、ナイフを抜いて』
『迎えに来い』

勇者「・・・これは・・・・・・。」

1106「・・・怖かったの。」
1107「ねぇ、どうしても、必要な事なの?」

勇者「・・・・・・戦士が、必要だというのなら、そうなんだろう。」
勇者「殺し合い・・・か。出足が鈍らなければ、いいんだが・・・。」

1106「・・・。」
1107「・・・。」

勇者「ありがとうひと達。俺も、精神統一しておこう。」

1106「・・・。」
1107「・・・。」

勇者「大丈夫だ。俺が相手をする限り、どちらも死なない。」

1106「・・・じゃぁ、」
1107「・・・じゃぁ。」

1106「明日の夜に、」
1107「また会おうね。」

勇者「あぁ。また、な。」
勇者「・・・・・・・・・・・・。」

――――――――――――――――――――――――
野営地点  明日少し前
 
勇者「・・・。」パチ

勇者「・・・。」
勇者(明日、か・・・。今夜は満月だな、そういえば。)

勇者「・・・」
勇者(光量は十分。時間は・・・あと少し。)

勇者(迎えに行く準備をしよう。)

勇者(・・・とりあえず、魔法をどかさなければ。)

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
白龍の洞窟 入り口前

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・)

洞窟≪ザシャ、ザシャ≫

女戦士「・・・。」
ザシャ、ザシャ

勇者(・・・既に抜いている。)

ザシャ!

女戦士「・・・準備はしてきたか。」

勇者「・・・・・やつれたな。4日、水だけで過ごしていたようだが。」

女戦士「・・・・・・おしゃべりは、あとでいいか。」
女戦士「わかってくれるだろ。私の、この状態を。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・ピリピリとした雰囲気。静かに、昂ぶっている。)

勇者(確かな殺意を感じる。同時に、信頼も感じるのは俺の驕りか?)

女戦士「ス・・・ぅー・・・」
女戦士「・・・。」
ギラり

勇者(来る!)


女戦士「・・・ぁぁあああああああああ!!!!」
ズダン!ズオオッ!!

勇者「っ!」

女戦士「アアア!」
ヒュバッ!!

勇者(避け・・・)
首≪プシュ≫
勇者(っ!?離れろ・・・!)
ザッ!

ザザザ!

女戦士「確認したか!抜き身の私を!次はもっと速く行くぞ!」

勇者「・・・回復魔法小」
首≪タラタラ≫
勇者(・・・・・・やはり効果無し。失敗は許されない。しかし・・・)

勇者(明らかに俺は避けた。それは間違いない。あの剣は俺には触れていない。)
勇者(見えたままの刀身がそのままの攻撃範囲では無いようだ。そして今のは手加減していた。つまりは、)
勇者(剣に対して垂直に避けるのはやめておいた方がいい、という事だ。)

勇者「・・・加速呪」
勇者(今回の目的は、戦士の訓練。満足いくまで付き合う。)

女戦士「いくぞおおおお!!」
ズダンッ!

勇者「予備詠唱Lv3」
勇者(・・・俺も本気で!!)

女戦士「あああああ!」
ヒュヒュ―
スカスカ

勇者「剣加熱魔法」
勇者「フッ―!」

女戦士「ハッ!」
ガキン!!

短剣≪ゴオオ・・・・≫

勇者(・・・む。)

女戦士「ハァッ!」
ヒュバ!

勇者「―――」
ザザザッ!

女戦士「チッ!ゴギブリみてぇに・・・!」

勇者(剣で受けられると魔法剣を解除されてしまうか。・・・)

勇者「真空斬り」
ヒュラヒュラ―
女戦士「っ真空斬りぃ!!」
ズバン!!

勇者「っ。」
スッ

地面≪ズバン!≫

勇者(俺の真空斬りが飲み込まれた。流石に本家は違う。)

女戦士「真空斬り二連!」
ズバズバン!!

勇者「―――」

女戦士「あぁぁ!!」
ズダン!

勇者(並んだ真空斬り、戦士は後を追っている。相手の虚を突くには・・・)
勇者(真ん中だ。)
ズダン!

スル

勇者(抜けると同時に突く!)
ヒュオ!!
女戦士「予想通り!!」
ヒュバ!

勇者(合わせられた、しかし想定内。)
勇者「爆雷小」
ズゴオオ!!

女戦士「っ!?」

勇者「ぐっ・・・!」
勇者(爆発で俺の体を持ち上げて、戦士の剣の威力を殺した。自爆なら回復可能だ。)

勇者(さぁ、このままでは首に刺さるぞ!どうする!)


ガキン!!

女戦士「・・・!」
歯≪ガチガチガチ≫

勇者「!?」
勇者(歯ぁ!?い、いくらなんでも顎で俺の体重を支えるとは・・・!)
女戦士「んが!」
ヒュ
勇者「くッ!」
ぐるん!

ザザッ!

勇者「回復魔法中」
勇者(ナイフを取られた。だが恐らく喉を傷つけた。浅いが流れ出る血で呼吸が少々難しくなるだろう。)

女戦士「ぺっ。」
ナイフ≪ザスッ!≫

女戦士「・・・。」
ナイフ≪ガン!≫

勇者「っ!」
パシ

女戦士「・・・来い。」

――――――――――――――――――――――――
野営地点

女魔法「・・・。」

―――ドゴォォォ・・・

女魔法「・・・・・・。」

女僧侶「う・・・、何か、騒がしいですね・・・。あれ?魔法さん?勇者様?」

女魔法「私はここ。」

女僧侶「あ、おはようございます。木の上に登って何を見ているのですか?」

女魔法「勇者と戦士が戦ってる。」

女僧侶「えっ?・・・・・・模擬、ですか?」

女魔法「割と本気。どっちも抜き身で勇者は魔法も使ってる。」

女僧侶「・・・っ!そ、そんな!止めなければ!」

女魔法「だめ。」

女僧侶「な、なぜ!?」

女魔法「必要な事だから。戦士がそう思ったから、勇者は相手してる。」

女僧侶「し、しかし!」

女魔法「近くに行くのもダメ。勇者は走り回りながら戦うから。」

女僧侶「そんな!!ち、治療も出来ないならば私が居る意味なんて・・・!」

女魔法「回復魔法は勇者も使えるし、戦士がつけた傷は回復魔法が効かない。」
女魔法「今回は仕方がない。相手が魔物じゃないから。」

女僧侶「どっちが傷ついても、私は働けない、そういう事、ですか・・・。」

女魔法「少なくとも回復魔法の出番は無い。」

女僧侶「・・・・・・。」

女魔法「登る?」

女僧侶「・・・そこからならば見えるのですか?」

女魔法「うん。」

女僧侶「では登ります・・・。」

――――――――――――――――――――――――

ヒン―――――
   ヒン――――
      ヒン―――
         ヒン――

勇者「―――っ」

女戦士「うらああああ!!」
ヒュバアア!

勇者「くっ・・・!」
勇者(どんどん、速くなる!明らかに、攻撃が鋭くなっていく!)

勇者「―――っ!」
ヒュヒュヒュヒュヒュ――ッ!!

女戦士「っ!」クイ
チッ!スカスカガキガキィン!!

勇者(戦士を防御に傾かせなければ捌ききれん!フェイントを織り交ぜ急所を狙わなければ・・・!)

女戦士「ぁあああああ!!」
ヒュ、ズオオオオ!!

勇者(低い横一線!跳んだら返して斬られる!引いて避けるしかない!)
タッ

スパン!!

勇者「ガッ・・・!」
勇者(しまった・・・!見えない刃に・・・!)

女戦士「おらああああ!」
ヒュオオオ

勇者(全力で引く・・・!)
ズダン!
ズザザザザ!

勇者「うっ・・・!」
腹≪ドクドクドク・・・≫

勇者(・・・くっ、内臓には達していないがある程度筋肉が断裂した・・・!範囲が広い、放って置いても血は止まらない・・・!)

勇者「熱魔法」
ドジュウウウ!!!

勇者「ぐが・・・!」
勇者(・・・これで、ひとまずは止血が・・・!)

女戦士「離れてるからって安心するな・・・!」

勇者「・・・っ!」ゾワッ

女戦士「退魔代12代目が奥義!!」

勇者(考えろ・・・!この状況下で使ってくる技だ!射程は広いはず!後ろに下がるのは得策ではない!)
勇者(跳ぶかしゃがむか2択!しゃがめば次は避けやすいが・・・!)

勇者(跳べ!)
ズダァッ!!

女戦士「三日月!!」

ズパァァン!!!

勇者「・・・!」
勇者(地面が抉れている・・・!なるほど三日月の形だ!)

女戦士「真空斬り!!」
ズバン!!

勇者「・・・っ!」
勇者(空中での身動きは・・・!)

勇者「爆雷小」
ズガアン!!

勇者(とりあえず避けたがバランスを崩した・・・!着地に失敗する!)

女戦士「うらああああああああ!!」
ズダン!

勇者(合わせる気だな・・・!白刃取りも出来なそうだ。どうする。)

女戦士「あああ!」
ヒュ――
勇者(横なぎか。)

―――――――――――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
勇者(―――)
両腕≪ヒュ≫

刃≪ガッ≫
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐―――――――――――――――

グルン!!

女戦士「あああ!?」

勇者「―――」
ズザァ!

女戦士「・・・てぇい!」
ヒュバ!
勇者(出足が鈍った。懐に入れる。)

ピタ!ガシぃ!

女戦士「っ!」
勇者「ハァッ!!」

ギュオ!ズガァアン!!

女戦士「ぐっ・・・!」

勇者(二の手を・・・!)
ヒュオ・・・!

ドスゥ!!
勇者「ぐっ・・・!」
脇腹≪メキ・・・!≫

腹≪ドガ!≫

勇者「ぐぁっ!」
ザザッザッ!

女戦士「ゲホッゲホッ!!」
ジャキ・・・!

勇者「・・・回復魔法小」
勇者(・・・広い範囲の回復を行うと火傷まで治ってしまう・・・!脇腹の打撲だけを軽減しておこう・・・。)

女戦士「・・・ちっ、跳び箱みたいに避けやがって・・・。」

勇者「・・・」
勇者(・・・戦士の剣を恐れすぎた故に剣が振れない状況になって焦りが出た。一度引いてから起き上がりに合わせるべきだったな。蹴られてしまった。)

勇者(・・・そうだ、相手を驚かせる技を見た事があった。たしか・・・)
タッタッタッ・・・

ドヒュ!

ドヒュ!

ドヒュ!

女戦士「・・・!」
チャキ・・・

勇者(怯んだ。ナイフを顔めがけ投げる。)
ブン!

女戦士「な・・・!」

勇者「雷矢細」
バシュウ!

勇者(別方向から同じ速さで突っ込む。)
ズダン!

女戦士「・・・ぁあ!」
ヒュオ・・・!

勇者(一動作で同時に対処しやすく3つの点を配置した。点と点を結ぶように一本の線が出来る。)

ナイフ≪ガキン!≫
シュパン!

勇者(それが剣の軌道。そして振り終わりなら、)
スカ

腕≪ガシィ!≫

勇者(手を掴める。)

女戦士「・・・!」

勇者(手首を捻りあげる。)
ギュィ!

女戦士「うぐぅ!!」
ガタガタガタ・・・!

勇者(剣を離さない。しかし力も入れられまい。鎧の可動範囲内だから不完全だが、一つの関節を支配した。)
勇者(関節と関節は繋がっている。つまり片腕以外は封じ込めた。その片腕も可動範囲内に俺は居ない。)

女戦士「・・・ああああ!!」
ゴキン!

勇者「!!」

ブオン!
腹≪ドボォ!!≫

勇者「っっっ!!」
ズキィン!

ドッドザァ!

女戦士「・・・か、片腕を捨てれば勝利が拾えるなら・・・!」
女戦士「私は迷わない!!」

勇者「・・・ぐぅ・・・・・・。」
ズキン!ズキン!

勇者(・・・勝利への執念を見誤ったか・・・!戦士の覚悟の程を・・・!)

女戦士「ぐ・・・!」
右腕≪だらん≫
ザス!チャキ!

勇者(・・・左手に剣を持ちかえた!)
スクッ クラッ・・・

勇者(・・・今の一撃で裂傷が腹膜を超えたようだ。腹腔内に血液が流れだしている。)

勇者「回復魔法小・・・」
勇者(剣以外でついた傷なら治せる・・・さけた部分を治そう・・・。少なくとも、これでこれ以上出血はしない。)

勇者(・・・貧血気味だ。)

女戦士「幸いだ・・・!そうだろ・・・!」

勇者「・・・確かに。ここまで二人が弱れば、命は落とさないかもな・・・。」

女戦士「お父様以外で初めてだ・・・!人間でこんなに強い奴は・・・!」
女戦士「鍔迫り合いも打ち合いも何もないのに!」

女戦士「思い出すよ!初めて会った時の事を!あの時は負けちまったよな!」

勇者「・・・楽しいか?」

女戦士「凄くな!痛みなんてどっかにいっちまうぜ!」

勇者「そうか。」

女戦士「なんでだろうなぁ!お前は今は私の道で!信じていたい信念だ!」
女戦士「きっと試すのが楽しいんだ!お前を!私を!」

女戦士「さっさとナイフを拾え!もうちょっとだ!もう少しで・・・!」

女戦士「お前に当てられる!!」

勇者「・・・はは、はっはっはっはっ・・・・・・。」
ズキィン!

勇者(笑うと腹が・・・。ま、まったく、無邪気なものだ。)

ナイフ≪パシ≫

勇者「前も言っただろう、恐らく無理だ。」

女戦士「お前って結構憎まれ口叩くよなぁ!さぁ、来い!」

勇者「・・・。」
勇者(この雰囲気、間違いなく大振りが来る。ならば俺も賭けよう。)
スタスタスタスタ

女戦士「一足先にお披露目してやるよ・・・!片腕だけど、いくぜ!」

勇者「すぅ―――。」

女戦士「スゥ―――」

女戦士「・・・おりゃぁああああ!」
ヒ―――
勇者≪スパン!ぼぅ・・・≫
女戦士「!?」
―――――――――ィィィン

女戦士「どこに・・・!」

ヒュ
喉≪―――ピタ≫

女戦士「・・・っ!」

勇者「・・・俺の勝ち。」

女戦士「・・・お前、いつの間に分身なんて覚えたんだ・・・?」

勇者「知り合いがやっていたのを途中で思い出した。それを魔力を使って強化してみた。」

女戦士「ちぇっ、結局成長したのはお前かよ。」

勇者「ほら、手を貸せ。」
グイ
女戦士「いてててて!」

勇者「回復魔法中」

女戦士「ててて・・・サンキュー。よーし・・・」
女戦士「固いドラゴン!出て来てくれよ!」

・・・
・・・ズズズ
ズズズズズズズ・・・
ズゴオオン

傷だらけの大岩≪呼んだか?≫

勇者「・・・・・・茶色のドラゴン。見ないと思ったら戦士の傍に居てくれたのか。」

女戦士「おう!今から試すからな!っとその前に」

女戦士「勇者、お前が決めてくれ。」

勇者「・・・何を?」

女戦士「技の名前!叫ばないと調子でないんだよ私の一族は!」

勇者「む、そうか・・・・・・そうだな。では、龍をも殺せる技・・・」
勇者「屠龍乃技、はどうだろうか。」

女戦士「そのまんまだな!よーし!!じゃ、いくぜぇ!!」

女戦士「退魔当代唯一技!!」

女戦士「スゥ―――」

女戦士「屠龍之技!」

―――――・・・

女戦士「・・・よし!」

大岩≪ズバン!!≫
茶竜「あぎゃー!!!」ズボ
ヒュオオオオ・・・

勇者「な・・・!」
勇者(み、見た所さっき片手で使った技の様だが・・・残像さえ捉えられない!なんという速さだ!)

茶竜「斬られたー!痛いー!うおーん!!」

女戦士「くー!やったぜ!おい見たかよ!これが私の代の奥義の原型!屠龍之技!!!」
女戦士「ただの横なぎだけど気合が乗ればここまで違うんだぜー!三日月も行っちまえば横なぎだしな!うひょー!!」

勇者「だ、大丈夫か戦士。妙に昂揚しているが。」

女戦士「はぁ・・・はぁ・・・いやあ・・・この状態は熱しやすくて冷めやすいっていうか・・・」
女戦士「あーもうとにかく疲れた。ドラゴンありがとうな。」
フラ

勇者「おっと。」
ガシャン

茶竜「うおーん!うおーん!!」

女戦士「・・・はー。」

勇者「お、重いな。」
ズザッ

女戦士「お前女の子に重いって言っちゃいけないんだぞー。」

勇者「ははは、それはすまない。なにぶん、腹が痛くてな・・・。」

ビュゴオオオ!
緑竜「茶、大丈夫か。」

茶竜「いたいー!!」

緑竜「どれ。・・・なんだ、ただの切り傷だな。このくらい放って置けば治る。」
緑竜「しかし・・・まさか本当にこいつに怪我を負わすとは。」

茶竜「うおーんうおーん!」

緑竜「見ていたぞ人間。なかなか楽しかった。」

勇者「はは・・・、それは、よかったのかな。」

女戦士「・・・。」

勇者「む、戦士?」

女戦士「・・・疲れた・・・寝る・・・・・・。」
女戦士「・・・グゥ」

茶竜「うおーんうおーん!」

緑竜「ええい!普段痛みを感じぬものだからかよく騒ぐな!ほら!白の所にいくぞ!」

女僧侶「ゆ、勇者様ー!!」
ダダダダ!

女僧侶「お、お怪我は!回復魔法大!」

勇者「ぐ・・・!」
腹の傷≪ブシュ!≫

女僧侶「あぁ!す、すいません!す、すぐ治療を・・・!」

勇者「・・・いやはや、戦士につけられた傷は傷で上塗りするしかないとは・・・」

女僧侶「包帯!包帯を・・・!あ、馬車の中ですわ!」

勇者「僧侶、落ち着いてくれ。」

女僧侶「そ、そうですね!すいません!えと、えと・・・」

ザッザッザッザッ・・・
女魔法「ふぅ・・・ふぅ・・・わ、私が、戦士を、はこぶ・・・。」

女僧侶「あ、魔法さん。そ、そうですね。では戦士さんをお願いします。私は包帯を取ってきますね!」
女僧侶「勇者様!それまで安静にお願いしますね!と、とりあえず服で止血を・・・!」
ガバ!

勇者「ま、まて僧侶。俺の服をつかえ。もう破れている。」
腹≪ドクドクドク・・・≫

女僧侶「は、はい!急がないと・・・!」
ビリッビリビリ!

勇者(腹腔内出血・・・量はそれほど出ていないようだが自然に治るのを待っていると時間がかかりすぎる。何らかの処置をしたい。)
勇者(本には確か管を入れて血を抜く方法があるとか・・・生兵法は大怪我の元だな。試すにはリスクがありすぎる。)

ギュ!
勇者「ぐっ・・・」

女僧侶「すいません勇者様、きつく縛らないと止まりませんから・・・」

勇者「いや、大丈夫だ・・・。ただ、腹の中にも血が出てしまっているからな・・・。」

女僧侶「えぇ!そんなに傷は大きいのですか!?」

勇者「いや、火傷で止血した後に腹を殴られて裂傷が広がってしまったんだ。」
勇者「もう塞がっているが少し腹の中に出血してしまった。それほどの量じゃないがあまりいい気分じゃない・・・。」

女僧侶「だ、大丈夫ですか?でも、もう出血はしていないのですね、ならば・・・一週間くらい安静にしていれば収まりますよ!」

勇者「それだと時間がかかりすぎる。戦士が技を編み出した以上、速やかに商人を助けにいかなければ。」
勇者「元の場所に帰してもらったとして目的の場所に行くまで五日。そうなると万全の体調で挑むことが出来なくなる。」

女僧侶「し、しかし血を抜くための器具がここにはありません。ど、どうしたって・・・あ。」
女僧侶「そうです!そうですよ!転送術式を使えばいいんです!」

女僧侶「そうすれば治療も受けられますし食糧の買い出しにも行けますから!」

勇者「・・・なるほど、それは確かにそうだな。だが俺はこんな状態だ。治療を受けるとしてその間は動けないから・・・。」

女僧侶「魔法さんを連れてってください!嵐島から小さい女の子と一緒に転送したのでしょう?魔法さんくらいなら出来るのでは?」

勇者「む・・・確かに。荷物を考慮に入れても魔法くらいなら・・・。」

女僧侶「治安のよい国なのでしょう?ならば魔法さんも一人でお使いくらいできますよ。」

勇者「・・・俺が治療を受けている間に魔法に買い物に行ってもらうと・・・ふむ。」

女僧侶「どちらにせよ勇者様のお腹の傷と中の血は私には少々手に余ります。時間を掛ければ何とかなりますけど・・・。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・あの子と仲良くなってくれるかも知れない。最近の魔法は何やらいい感じの様だし、一度連れて行くのも良いか。)

女僧侶「では治療道具を持ってきます!動かないでくださいね!」
ダッダッダッ

勇者「・・・ふぅ。」
勇者(・・・戦士、抱きかかえた時に診たがやはり衰弱気味だ。唇の乾燥具合から水もあまりとっていないようだし、目の状態から寝てもいなそうだ。)
勇者(だとしたら長い事寝るだろうな。12時間寝るとして、今日の昼過ぎくらいか・・・?)
勇者(いやもっと寝るかもしれない。起きたら直ぐに飯を食べたがるだろうし、準備はしておいた方がいいな。)

勇者(万全を期するなら一度帰らなくてはならない。店が開き始める時間を僧侶から聞いて、魔法が来るにせよ来ないにせよその時間に合わせて出発しよう。)

――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――




――――――――――――――――――――――――


女戦士「ぐぅ・・・。ぐぅ・・・。」

女魔法「行かない。」

女僧侶「え?なぜですか?」

女魔法「まだ思考加速の基礎魔法すら完成してない。完成度を上げるには竜たちの知識が必要。」
女魔法「興味は有るけど今優先すべきことじゃない。」

勇者「そうか。では俺だけで行くことにしよう。」

女僧侶「そうなりますと治療も含めて半日程度・・・ですかね?」

勇者「そんなものだろうか。となると夕方ぐらいに帰る事になる。・・・今日は出発できないな。」
勇者「っと、魔法。どのくらいで出来そうだろうか。」

女魔法「・・・せめて基礎は作りたい。応用なら、私だけでもなんとかなるかもしれないけど、基礎はどうしても知識が必要。」
女魔法「時間を掛ければ出来る事じゃないけど・・・最低でも一日欲しい。」

勇者(本来なら長い時間を掛けるべきなのだろうが俺たちは切羽詰まっている。一日・・・これでも大分譲歩しているな。)

勇者「分かった。俺が今日早く済んだとしても、もう一夜此処にいる事にする。」
勇者「明日の朝か今日の就寝前にもう一度聞く。」

女魔法「ん。」

勇者(急いで行っても返り討ち、時間を掛けすぎれば相手が焦れる。ぎりぎりまで力を貯めこむ必要がある。)
勇者(・・・まぁ、戦士についてはひと段落したんだ。順調だと考えよう)

勇者「じゃぁ俺は一度お父さんの国へ行ってくる。留守番は頼んだ。」

女僧侶「忘れ物ありませんか?お金は?」

勇者「・・・うん、恐らく大丈夫だな。あぁそうだ。何か欲しい物は有るか?」

女僧侶「そうですねぇ・・・。私は特にありません。」
女魔法「ジュース。」
赤竜「酒ぇ!!」
ゴオオ!!

勇者「・・・。」
女僧侶「・・・。」
女魔法「・・・。」

赤竜「なんだ人間!どこか行くのか!」

川≪ザバァァァ・・・≫

白龍「水の中で聞いていたが買い出しとかなんとか言っていたね。」

バサァ!バサァ!
緑竜「ほう!では何か私も頼むとするか!」

ズゴゴゴ!
茶竜「何か綺麗な物!」
ドカドカドカ
青竜「綺麗な物ってそういえばあんた胃石にちょうどいい物持ってなかった?」
黒竜「ぶぇーくっしょい!!ぅぅむ・・・悪化した・・・。」

赤竜「馬鹿だのー。昨日あんなことするからだ。」

黒竜「・・・馬鹿は風邪を引かないというがなるほど、確かにそのようだな。」

勇者「な、なんだろうか。ドラゴン達皆勢揃いしているが。」
女僧侶「な、何か御用ですか?」

緑竜「気の利かない事を言うな。こんな機会は早々ないのだ、少しくらいいいじゃないか。」
赤竜「酒だ酒だ!いろんな種類の酒!」
白龍「待て待て人間の世界は金が必要だ、あまり高い物は控えよう。」
青竜「えーでも私人間の世界でどれが価値があるとか知らないもの。」
茶竜「綺麗な物!綺麗な物!」
黒竜「あ、頭が痛い・・・。」

緑竜「風邪など放っておけば治るだろう。」
黒竜「薬という物を試してみたいのだ・・・。」
青竜「なんで水の中で寝たの?馬鹿がうつった?」
白龍「今はそんな話はどうでもいい。人間さんは急ぐようだぞ。」
赤竜「酒ぇぇ!!」
茶竜「人間だけが作れるのがいい!!」

緑竜「そうだな、では何を頼もうか。」
青竜「あたし久しぶりに果物食べたいなー。」
白龍「食い物か、牛を丸飲みしたいなぁ。」
黒竜「解熱剤も欲しい・・・。」
赤竜「さーけ!さーけ!」
茶竜「綺麗なのー!!」

緑竜「ふん、食い物というのもつまらんだろう。」
青竜「たしかにねー。でもここんところ竜の葉ばっかりだしなー。」
白龍「しかし私は人間がどういったものを持っているかよくは知らん。お前は何か知っているか?」
黒竜「人間は・・・必要になると物を作る・・・。」
赤竜「少ししか飲んだことはないがしゅわしゅわした黄色い酒が飲みたい!」
茶竜「人間が作る綺麗な物がいい!」

緑竜「必要に駆られてか、と言っても人間は小さすぎて私たちの大きさには合わないだろうなぁ。」
白龍「確かにな。やはり人間が作る道具より芸術の方が良いかもしれん。」
青竜「あたしは果物がいいわーやっぱり。変わってるやつ。」
黒竜「薬以外にも人間の日用品が欲しい・・・。そうだ、時計などがいい。」
赤竜「赤い酒!そうだ赤い酒をよこせ!」
茶竜「なにか!なにか!」

勇者「・・・・・・ぐちゃぐちゃで何を言っているか分からない。まとまったら教えてくれ、俺は詠唱に入る。」
女僧侶「は、はぁ。わかりました。」

女魔法「あんまり大きいのは持ってこれないよ。」
緑竜「そうか。ならば意見をある程度統合する必要があるだろうな。」
白龍「そうだな。とりあえずは・・・」
青竜「あたし果物は譲れないわ。」
黒竜「せめて頭痛薬を・・・」
赤竜「酒持ってこんかったら己ら食うからな!」
茶竜「綺麗なのだったらなんでもいい!」

<ギャーギャーギャー

勇者「・・・転送術式詠唱開始」
勇者(賑やかなものだ。)

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――

女僧侶「えっと・・・それではこれが勇者様に買ってきてもらう物のメモです。」

勇者「・・・」

女僧侶「ポケットの中に入れておきますねー。向こうで確認してください。」


白龍「いいや!この部分はこれで行くべきだ!」
青竜「えー、でもさーこれ人間の魔力出力だと厳しくない?」
緑竜「全くだ。使う者の事を考えろ。」
黒竜「ぜぇ・・・ぜぇ・・・。」
赤竜「なんだこのよく分からない絵は!」
茶竜「絵じゃなくて図だ!」

女魔法「じゃぁこっち採用する。」
白龍「うぬぬぬ・・・まぁ仕方がないか・・・!」
緑竜「そうだそうだ。それが懸命だ。」
青竜「使えなかったら意味ないもんねー。」
黒竜「絵に描いた餅というものだな・・・。」
赤竜「なに!それでは食えんではないか!」
茶竜「岩に描かれてたら食べれるぞ!」

女魔法「メモしておくからだいじょぶ。次は・・・」
青竜「あのさー気になったんだけど此処って必要?」
緑竜「む?・・・うーむ確かにあってもなくても良いような・・・」
白龍「たわけ!これこそ必要だ!これが無ければ残存魔力の流用が不可ではないか!」
黒竜「幾つもつける必要はないだろう・・・結果的に使用魔力が増えてしまうではないか・・・。」
赤竜「おお!多すぎると毒という物だぞ!」
茶竜「確かにこんなにはいらない!」

白龍「貴様ら2匹だけには指摘されたくはないわぁ!!」
赤竜「匹だとぉ!?それではわれらが蜥蜴の様ではないか!取り消せ!」
茶竜「グオー!」
青竜「あたし達毎回そのあたり悩んでるよねー。大概は1とか2とか言うけどさー。」
緑竜「竜とでもつけるか?」
黒竜「・・・どうでもよい話題だ。今はこの魔法について考えているのだろう?」


勇者「・・・・・・」
勇者(ドラゴン達が頭を並べて魔法を考えている。この分なら早く基礎構築が出来るだろうな。)
女僧侶「喧々諤々ですね。私入る余地ないかも・・・」

勇者(そろそろか。)

勇者「詠唱完了、ではいってくる。」
バシュン!

女僧侶「あ、いってらっしゃいませ。」

――――――――――――――――――――――――
西大陸聖国家  地下


家政婦「フンフフーン・・・」
箒≪ザッザッザッ・・・≫

バシュン!!

家政婦「きゃぁっ?!」
ドテッ!

勇者「あっ、すいません。驚かせてしまいました。」

家政婦「・・・あ、いえ。えっと・・・」

勇者「私は第三十一代目加護者 勇者 です。ここは聖国家の・・・」

家政婦「か、加護者様ですか!?え、えと・・・!」
ガバ!

家政婦「し、失礼しました! 私はこのお城で下働きをさせていただいている者です! 今婦長を呼んできますので少々お待ちくださいませ!!」
家政婦「失礼します!」
ペコ

扉≪ギィィ バタン!≫

勇者「・・・。」
勇者(・・・俺はこの国ではどういった立場なのだろうか。とりあえず俺が加護者で通じるなら間違いなく聖国家。ここを見たのは初めてだが・・・)
キョロキョロ

勇者(・・・転送術式用の部屋で合ってるか。絨毯や豪華な燭台があり客人を持て成すような作りだ。)
勇者(お待ちくださいませ、か。急ぎたいんだが・・・。)

勇者(・・・・・・取りあえず部屋から出よう。その位ならいいかな。)

――――――――――――――――――――――――
扉≪ギィィ・・・バタン≫

勇者「・・・。」
キョロキョロ

勇者(廊下だな。左右に伸びていてどちらも突き当り角に階段がある。)
勇者(しかし・・・なんだろうか。何かを置いておくようなスペースがあるのに何も置いていない。普段は使っていないのだろうか。)

勇者(・・・右側の廊下が薄暗い。よく見ると埃も多い様な・・・)

・・・タタタタタタ
「・・・ぉとおさぁあああああん!!」
勇者(む?)
クル

ドカ!!
勇者「ゲハ!」
ズキィィン!!

継子「お帰りなさい! ご用事終わったの!? 」

勇者「た、ただいま。元、気な様、だね。い、いや、ちょっと怪我して、しまったから、治しに帰ってきたんだ。」

継子「お怪我してるの?大丈夫?痛くない?」

勇者「うん、そこまで痛くない・・・よ。」

継子「・・・あれ?お顔の被り物変わってるね?」

勇者「あぁ、うん。仲間が作ってくれたんだ。」

継子「へぇー!かっこいい!!」

勇者「はは、ありがとう。」

婦長「お嬢様! 廊下を走ってはいけませんと何度・・・!」

勇者(・・・お嬢様?)
継子「ごめんなさーい。」

婦長「・・・これは、加護者様、お帰りなさいませ。私ご息女の身の回りのお世話を言いつかりました、この城で婦長をやらせていただいております者です。」
婦長「お見知りおきを。」

勇者「なるほど。私の居ない間の世話を・・・。ありがとうございます。」

婦長「いえ。・・・挨拶はこの辺りで。ご用件を伺います。」

継子「あのね! お父さん怪我してるんだって! 治してあげて!」

婦長「なるほど、畏まりました。では前王への謁見の前に医務室へ案内させて頂きます。どうぞこちらへ。」

継子「よいしょ!」
ぴょん!
ドサ!
勇者「おっと。」

継子「おんぶしてー!」

婦長「お嬢様、お父様はお怪我をしていらっしゃるのでしょう? お控えした方がよろしいのでは?」

勇者「はは、いえ大丈夫です。久しぶりですから、このくらいは。」

継子「えへへー。」

婦長「加護者様がそう仰られるなら。私もご息女の笑顔が見れて嬉しく思います。」

勇者(その割には顔を崩さないな。)

婦長「・・・では改めてこちらへ。医務室までにお怪我の詳細をお教えいただけますか。」

勇者「分かりました。」
継子「お父さんってよくお怪我するねー。」

勇者「あまり強くないからね。」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――
西大陸聖国家王城医務室


医者「魔法の利かない傷ぅ? へーそんなんあるんだなぁ。」

勇者「・・・。」

医者「よし、包帯ひっぺがすぞー。そりゃっと」
ベリィ!

勇者「・・・。」

医者「膿んでるねェ。こればっかりは解毒魔法利かないからなー。」

継子「痛そう・・・。」

医者「はいはいじょーちゃんはあっち行ってなさい。これからちょっと開くぞー。」

勇者「は、はぁ。」

医者「えーと・・・とりあえず血と膿洗うかー。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――

医者「はいはい一部深いねー。こりゃぁ人につけられた傷だろぉ? そうだろ。」

勇者「えぇ、まぁ。」

医者「やっぱねー。かなり鋭い切れ味を持った剣だな。こりゃーえっとー・・・手術が必要だなー。」

継子「しゅじゅつ?」

医者「といってもなー。俺は病理学が専門だしなー手術なんてほぼ必要ねぇし・・・。」

勇者「手術というのは簡単に言えば怪我を直しやすくするための方法だね。」

継子「へー。」

勇者「大概は魔法で治るからあまり必要ないんだけど、回復魔法が利かない人達が居て、その人達には必要なんだ。」

医者「ようしってるね! そう、俺は病気を治すのが専門なのさ! 医者って言ったら俺見たいなのか薬理学のどっちかだよ、うん。」
医者「しゃぁないね。紹介状書くから町の方の病院いってくんない?」

勇者「町の方、ですか。」

医者「そー、そっちで魔法使えない人用の病院あっからさ。怪我専門の珍しい研究病棟。腹の中の血もそっちのが手馴れてるでしょ。」
医者「とりあえず消毒ぶっかけて包帯まきなおすからなー。ほら起きろ起きろ。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
城壁内門

兵士「止まってー。身分証明お願いしますー。」

勇者「身分証明・・・。」
継子「はい!」
認識章≪・・・≫

兵士「またお出かけかい? あんまり抜け出してるとこわーい婦長に怒られっちまうぞー。」

継子「えー?優しいよー。」

兵士「物怖じしねぇなー。ほら、そっちの仮面の人も。」

勇者「・・・貰っていないな。」

兵士「? そりゃおかしいねー。認識章無いと入れないから中に居るって事は絶対発行されてるぜー? 不法侵入でもしたか?」

勇者「・・・前ここを通った時は素通りだったからな。」

兵士「決まりなんでねー、あんた拘束させてもらうけどいい?」

継子「えっ、この人私のお父さんだから・・・ダメ?」

兵士「う・・・だ、だめー。流石にこれ見逃すと怒られちまう。まぁ伝声管で聞くから悪い事してなきゃすぐ解放されるよ。はい手を後ろに回して。」

婦長「お待ちなさい。」

兵士「っ! は、はい!」
ビシ!

勇者「婦長さん。」
継子「ふちょーさん。」
婦長「こちらがこの方の認識章になります。お通しを。」

兵士「か、確認させていただきます! ・・・って、え!か、加護者殿でしたか! こ、これは失礼を・・・!」

婦長「顔馴染みが良く通るとはいえ砕けた言葉遣いは感心しません。職務の一部なのですからこれからは厳格で粛々とした門を預かる責任者としての・・・」

兵士「は、はっ! 申し訳ございません! こ、これからはぁ厳正に職務に励ませていただく所存であります!」

婦長「・・・小言はまた今度に致しましょう。加護者様、このようにお城から出る時入る時には、認識章提示を要求されます。」
婦長「これにより入場者などの状況を把握しています。問題発生時に速やかに原因を探る為の決まりですので、ご了承くださいませ。」

勇者「えぇ、わかりました。すいません、出る前に一言かけるべきでした。」

婦長「いえ、こちらの不手際です。さて・・・お嬢様。」

継子「うっ・・・。」

婦長「お城を出る際はワタクシにお声をかけて頂く事になっていましたね。」

継子「はい・・・。」

婦長「お一人でお出かけなさるのはまだまだ早いです。お嬢様は失礼ながらまだ常識も作法も身についておりません。残念な事ですが、この国もいい人ばかりではないのです。」
婦長「お出かけしてはいけないというわけではありません。ですが、お付きの者をお連れください。」

継子「・・・だってそれだとお友達と遊べないし・・・。」

婦長「言い訳はいけませんよ。あなたはワタクシとのお約束を破ったのですからね。何か不満や文句があるなら夜おっしゃって下さい。改善致しましょう。」

継子「・・・ごめんなさい。」

婦長「よろしい。さて、あなた。」

兵士「ははぁ!」

婦長「最初はワタクシの不手際であなたに一人で出してはいけないとお伝えし忘れてはいましたが、その後もたびたび外出許可を出していますね?」

兵士「こ、子供のお願いは断りにくいであります!」

婦長「・・・この子は確かに押しが強いところもありますが、だからといって一人で出すのは問題です。」

兵士「度々目こぼしする事に関してはぁ、ワタシが悪いですが今回は加護者殿がついておりましたので問題ないと判断した次第でぇ・・・」
婦長「見た所加護者様の確認をする前に退城者名簿に記入されたようですが。」

兵士「そ、それはぁ、そのぉ・・・」

婦長「普段提示できないような人物が通らないとはいえ、それは怠慢という物です。いけませんよ。」

兵士「も、申し訳ありません!!」

勇者(・・・この人の城の中での立ち位置が分かるな。)

婦長「あなたには職務怠慢として後々罰が下されるでしょう。謹んでお受けするように。」

兵士「は、ははぁ!」

婦長「さて・・・加護者様。城内医師に聞きましたが、西町外科専門研究病棟に向かわれるそうですね。」

勇者「えぇ。そう指示されました。」

婦長「しかしながらあなたはこの国に不慣れでいらっしゃると前王から伺っております。そこでもし町に出るならば案内人をお付けするようにとも申し付けられております。」

勇者「なるほど、助かります。しかし、ご迷惑では・・・」

婦長「御心配に及びません。様々な問題が起きても対応出来る様、種々取決めがございますから。ですので失礼ながらもう少々お待ちいただけますか。」

勇者「・・・わかりました。しかし少し急いでいますので・・・・・・。」

婦長「ご安心を、加護者様とお嬢様二人の共通の顔見知りであり、すでに召集を掛けております。すぐにやってくるでしょう。」
婦長「ではワタクシ仕事がありますのでこれで失礼させて頂きます。」
ペコ
スッスッスッスッ・・・


兵士「・・・くっそぉぉ・・・・・・、まぁた時間外清掃を言いつけられる・・・。」

勇者「・・・心中お察しします。」

継子「怒られちゃった・・・。」

勇者「婦長さんの意見は正しく思えたけど・・・町にお友達がいるのかい?」

継子「うん。お出かけする時兵士さんがついてきてくれるけどそうなるとお友達と一緒に遊べないから・・・。」

兵士「俺もそこが不憫でね。いや不憫でございまして。」

勇者「別に崩してくれて結構ですよ。」

兵士「あ、すいません、でもいちおー敬語使いますね。それがですねぇ、そのお友達どーもお城まで遊びに来るのを怖がってる節があるんですよねー。」

勇者「そうなのですか?」

兵士「いや、まぁここは厳正な場ですから。そうそう簡単に人入れられないんすよ。一番問題起きちゃいけない場所なんでね。」
兵士「それでまぁ自動的に武装兵士が集まるもんですから、女の子にはちょーっと怖いんじゃないすかねぇ。あ、一応お友達には許可だしてるんすよ。」

勇者「なるほど。」
勇者(その割にこの人は言葉づかいが適当だが。)

継子「一回お城の中で槍を突き付けられたって言ってて、それからこっちに来てくれなくて・・・。」

兵士「まぁーったくどこのどいつだか知りませんが子供怖がらせるなんてひっでぇ奴ですよ。兵士の風上にも置けませんよ。」
兵士「なのに城内兵士に任命されてるんですからね納得いかねー。」

文官「前半は賛同しますが後半はただの僻みでは?」

兵士「失礼しましたー!! ってなんだ、文官様ですか。」

勇者「あなたは・・・。」
継子「文官のおねーさん!」

文官「お久しぶりですね加護者様。改めて自己紹介させて頂きます。普段は城内大文献室の文官を担っています、今回町の案内を仰せつかりました。」
文官「よろしくお願いしますね。」
ニコリ

兵士「・・・っ!!!」

勇者「えぇ、よろしくお願いします。」
継子「よろしくね!」

文官「さて、西町にある専門病棟でしたね。少々距離がありますので、外門前に馬車を待たせてあります。」
文官「城内門管理官さん?これが私の認識章です。よろしいですか?」

兵士「う、うーっす。確認しました。どうぞお通りをー。」

文官「では行きましょう加護者様。」
勇者「えぇ。」
継子「やったーおでかけー。」
スタスタスタ

兵士「・・・大ニュースだぜ!」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
馬車内

勇者(内門の彼、出ていく時すごい顔をしていたな。)

継子「わーすごい。お父さん見て!お外が流れてく!」

勇者「はは、そうだね。あまり馬車には乗らないのかい?」

継子「うんー。いっつも歩いてお出かけする。」

勇者(楽しそうだな。外の景色に夢中だ。)

文官「加護者様、お怪我をしたと伺っていますが、平気なのですか?」

勇者「少し腹を切られただけで重傷ではありませんからね。」
勇者(息をするだけで痛むが。)

文官「そうなのですか。軽く済んでよかったですね。」

勇者「えぇ、幸いでした。」

文官「前王様も、心配なされていましたよ。医務室に向かって、入れ違いになったらしく残念がっておられました。」

勇者「そうだったのですか、それは私も残念です。挨拶くらいしていくべきだったのでしょうね・・・。」

文官「しかたありませんよ。怪我の処置を優先すべきですから。」

勇者「お気遣いありがとうございます。所で・・・私がいない間のこの子の様子はどうでしたか?」

文官「そうですね。・・・最初の頃はお城にも慣れてなく、意気消沈した様子で、自室から出てこなかったり等有りましたけど、そのうち外に遊びに出かける位には元気になりましたよ。」

勇者「やはり、寂しがっていましたか・・・。」

文官「最初だけですよ。2~3日で気を取り直して、今ではお城のマスコットです。」

勇者「はは、少々気にかかっていたのですが、それならばよかった。皆さんにはご迷惑をお掛けし通しで・・・」

文官「いえ、僭越ながら私がこの子の教育係に任命されたのですけど、最近はお勉強の時間が楽しみで、」
文官「むしろこちらがお礼を言いたいくらいですよ。」

勇者「勉強までお教えしてくださっているのですか。そちらの方はどうでしょう。」

文官「そうですね、大変好奇心が強く、向上心もありますからお勉強に関しては悩んだりはしませんよ。」

勇者「そうですか。それはよかった。」

文官「ただ好奇心は旺盛は旺盛なのですが・・・知らない間に兵士詰所に行っていたり目を離した隙に屋上に登って行ってしまったりなどの問題も・・・」

勇者「な、なるほど・・・。」

継子「・・・。」

勇者(耳が赤いな。)

文官「そうそう、今魔術研究所が大騒ぎになっているんです。」

勇者「? それはまた何故?」

文官「あなた様が残された書類ですよ。私は見ても詳しく分からなかったですけど、城に常駐している魔導師の方が興味を持たれまして、」
文官「その方がおっしゃるにはとても高度な転送術式の条件を前提にした算出式だと。それから残された書類を一枚残らず集めて魔術師学会員を緊急招致して、」
文官「『今こそ転送術式を完成させる時』、と日夜徹夜続きで条件解明にあたっています。」

勇者(俺が座標を変換する時に使ったメモ類か。あれだけで解る物かな。)

文官「私やこの子も最初の方は質問されましたよ。何か喋っていなかったか、とかこの絵の意味は? とか。」

勇者「それは・・・ご迷惑をお掛けしましたね。どうせならば条件式を全て書いていけばよかったかも・・・」

文官「いえいえ、あの時は急いでおいででしたたから。ただ、お城に帰ると質問責めにされるかも知れませんよ。」

勇者「はは、それは少々困るかも・・・」
継子「ねぇねぇお父さん、抱っこしてー。」

勇者「いいよ、おいで。」

継子「わーい。」
トサ

継子「お父さんの手やらかい。」

勇者「はは、くすぐったいよ。」

文官「好かれていますね。当たり前なのでしょうけど・・・、」

勇者「いやいや、お父さんなどと呼ばれてはいますが、私とこの子はそこまで付き合いが長い訳ではありません。」
勇者「元の場所に戻す術も曖昧なままに連れ出してしまいました。仕方がないとはいえ・・・本来なら、責任を持って傍に居るべきのはず。」

勇者「なのに私はすぐに居なくなって・・・好かれる資格など、本来は無いと・・・」

文官「資格もなにも・・・」
継子「私はお父さん好きだもん!」

文官「っ・・・。」

継子「しかくとかそんなのいらないもん!」
ガバッ!

勇者「・・・それは、そうだね。普通は好かれるのに資格も何も、無いか。」
勇者「俺が悪かった、ごめんな。」

継子「うぅ~・・・。」

勇者(よく泣く子だ。)

文官「・・・そうですよ。人が人を好きになる時、明確な理由など考えません。理由は後から付けれますけど、最初始まりはきっと、胸に抱いた一つの想いだと、私は思います。」
文官「その子だって同じことですよ。気持ちも無くあなたをお父さんなど呼びません。貴方はそれだけの存在なんですよ。」

勇者「そう・・・なのでしょうか。そうなんでしょうね。」
勇者「・・・私も特に、仲間を好きな事に理由があるわけでも無かった。確かに、そのとおりです。」
勇者(ただ傍に居てくれるだけで、俺は、それでいい。)

文官「お隣、しつれいします。・・・ほら、お顔をこっちに向けて。」

継子「ん・・・。」
ゴシゴシ

文官「・・・・・・泣き顔はひさびさですね。そろそろ着きますから、元気出してね。」

継子「・・・はい。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
外科専門研究病棟


受付「こんにちわ、初診ですか?」

文官「王城から特別な要請で赴きました。こちらの紹介状をお読みください。」

受付「はい、確認いたしますので、待合室で少々お待ちくださいませ。」


継子「人おおいね。」

勇者「そうだね。魔力無人間だけが対象だから、少ないかと思っていたけど・・・」
勇者(溢れているとまでは行かないが、それなりに人が多い。順番待ちしていたら、陽が暮れてしまいそうだな。)

文官「外科病院はここだけですから、国全土から人が集まってくるのですよ。」

勇者「そうなのですか。なるほど。」

文官「昔に比べて国の人口も増えましたから、実数がどんどん増えているのが実状ですね。」

勇者(本で読んだ限り、魔力無人間は通常の人間に比べ、肉体的に劣っている事が多いらしい。国の観点から考えれば、あまり好ましい事ではないのだろうな。)

文官「人口が多いので、現王がそろそろ国壁拡張に手を付けるべきだと提案しているのですが、未だ反対多数ですね。確かに人口を考えると広げるべきだと思うのですけど・・・」

継子「けど?」

文官「まだまだ難しいかなーってたくさんの人達が言ってるんですよ。おじさんもそこは認めてるけど、準備は進めるべきだって言ってるんですよね。」
文官「魔王の影響がそこかしこから報告されてるし、魔王が居なくなるまでどれだけかかるかも分からないから、時期尚早だという声が多いです。」

継子「ふーん?」

勇者「確かに準備にも人員を裂かなくてはいけませんし、国壁の材料も保存する土地が必要ですしね。魔王がいついなくなるか分からない今の状況では時期じゃないという事も納得できます。」

文官「それが一般的な意見かと思いますけど、現王は魔王を甘く見ているのか、大丈夫だというばかりで・・・。」

勇者「そ、それは・・・一介の王としてはその・・・」

文官「無鉄砲ですよ、考え足らずです。まず安全確保が我が国の前提で有るはずなのにあの人はそのあたりを考えてないというか・・・。」

勇者「・・・街中で言う事ではないのでは?」

文官「あ、そうですね。すいません。つい口を・・・」

継子「でもおじさん優しいよー?」

文官「その点には同意できるけど、改革を急ぎ過ぎてる節もあるんですよ。国の為を思っているのは伝わるのですけど・・・」

受付「紹介状を持ってこられた方ー」

文官「あ、はい。」

受付「第一処置室にお進みください。廊下に入り奥の通路右です。」

文官「了解いたしました。忙しい中感謝いたします。」

受付「いえいえ、お国の為に働いている方々を診られるなど光栄な事です。先生がお待ちですのでどうぞ。」

――――――――――――――――――――――――
第一処置室


医師「どうも、早速ですが怪我人はそこの仮面の人でよろしいですか?」

勇者「えぇ。」

医師「私が担当させていただきます。握手を。」
スッ

勇者「よろしくお願いします。」
ギュッ

医師「はいよろしく。睡眠魔法」

勇者「な・・・」
ガクッ

継子「お父さん!」
文官「ちょ、ちょっとあなた! 一体何を・・・!」

医師「すいませんね、この病院は忙しいんでさっさと済ませたいんですよ。カルテも受け取ってるんで確認したらすぐに始めます。」

文官「なぜわざわざ眠らせるのですか!」

医師「麻酔が必要なんでね。腹の中の血を抜くには針刺す必要があるんで。挿したらすぐ起こしますよ。」

文官「・・・随分手荒い病院ですね・・・・・・!」

医師「よっと」
ベッド≪ドサ!≫

布≪ヒラッ・・・≫
継子「・・・?」

医師「うし! 診断を始める。お嬢さん方、こっからは血生臭くなるから待合室で待っててください。」

継子「・・・。」
トテトテ

布≪ピラ≫


 買ってくる物 
 
 綺麗で見てて楽しい時計(大きいと良い)

 珍しい果物(たくさん)
 お酒(複数種)
 頭痛薬(貨幣袋3つ分)
 ジュース

 食料は勇者様の見立てでお願いします。
                            』

継子「・・・?」

医師「こら、お嬢さんあっちいってなさい。しっしっ。」

文官「・・・! こ、こんな病院に我が国の加護者様を任せられません! 帰らさせていただきます!」

医師「喚かないでください。一度任された患者を はいそうですかと放り出すのは主義に反します。」

文官「ならばちゃんとしてください! 信用できません!」

医師「信用なら待合室見てくれればある事が分かるでしょ。てーか急いでるんでしょう? 紹介状に書いてありましたよ。」
医師「別に監視したいってんならここに居てくれたって構いませんよ。頭巾とマスクはしてもらいますがね。」

文官「・・・そうさせてもらいますよ・・・!」

医師「はいはい了解。おーい! だれか頭巾とマスク!」

<はーい、ただいまー

文官「・・・お嬢様、あなたは待合室で・・・あれ?」
文官「お嬢様? お嬢様は?」

――――――――――――――――――――――――
外科専門研究病棟 外


大通り≪ガヤガヤガヤ・・・≫

メモ≪・・・≫
継子「・・・読めない。」

継子「ねーねー。」

通行人「はい?どしたのお嬢ちゃん。」

継子「これ読めますか?」

通行人「んー?・・・買い物の予定帳だね。おっきくて綺麗な時計と、果物と、お酒と、お薬と、ジュース。」
通行人「お使いかな?えらいねぇ。お金貰ってる?」

継子「うん。お父さんのポッケに入ってました。」

通行人「そう、どこに買いに行けばいいか分かる?」

継子「わかんないです・・・。」

通行人「そっかぁ。そうだねぇ・・・僕は今ちょっと忙しいから・・・お店紹介してあげるよ。きれいな時計屋さん知ってるから。それちょっと借りるね。」
通行人「さらさらさらっと、はい。」

継子「・・・? ありがとー。」

通行人「時計屋さんはこの大通りを真っ直ぐ進んで、道沿い右にある大きい時計を飾ってるお店だから、そこの店員さんにこのメモを見せてね。」
通行人「お嬢ちゃんにはちょっと大きい店だけど、時計屋だったらそこの店員さんが一番知ってるから。迷わないようにねー。」

――――――――――――――――――――――――
兵士詰所

文官「えぇ、えぇ・・・。すいません私の不手際です。ですから・・・えぇ・・・」
文官「よろしくお願いします。私は加護者様が起きるまで近くに居ますので、何かあったら人を遣わしてください。失礼します。」
伝声管≪ガチャ≫

文官「・・・はぁ。」

兵士「そんな心配しなくても大丈夫ですって。病院だって近くの住民から評判いいですし、子供の方もすぐ見つかりますって。」

文官「そうあってほしい物です・・・。私は病棟に戻らさせていただきます。」

兵士「お送りしますよ。おーいお前ら、休憩返上で労働だ、喜べ!」

文官「どちらも無事だと良いのですけど・・・。」

――――――――――――――――――――――――
国一番の時計屋


扉≪カランカラァン≫

店員「・・・いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件で?」

継子「あの・・・これ・・・。」

店員「拝見いたします。」



 買ってくる物 
 
 綺麗で見てて楽しい時計(大きいと良い)

 珍しい果物(たくさん)
 お酒(複数種)
 頭痛薬(貨幣袋3つ分)
 ジュース

 食料は勇者様の見立てでお願いします。

 追記
 この子はお使い中なので良識ある方
 お手伝いお願いします。
                            』

店員「・・・下の字は私の息子ですね。なるほど、承りました。」
店員「失礼ながら今日のご予算はおいくら程度でしょうか。」

継子「ごよさん・・・」

店員「お金はいくら程度持っていますか?」

継子「えっと・・・これ・・・。」
財布≪ザシャ≫

店員「拝見します。・・・こ、これは・・・・・・。」

継子「足りないですか?」

店員「いえいえ、十分すぎる額で御座いますよ。そうですね・・・綺麗で見ていて愉快で大きい・・・。」

店員「こちらにおいで下さい。実際に目で見て選ぶと良いかと。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
外科専門研究病棟 第一処置待機室 昼前


勇者「・・・。」パチ
ズキ

文官「あ、起きられましたか。」

勇者「え、えぇ、まぁ。・・・・・・。」
勇者(・・・確か眠らされて・・・・・・、すでに処置済みか。)

文官「起きないでください。まだ終わっていませんから。」

勇者「・・・。」
勇者(腹に管が入っている。ベッドが傾いているのは血を出す為か。)

文官「出血してから少し時間が立っているために処置にも時間が掛かるかもしれないとの事です。」

勇者「なるほど。・・・あの子は?」

文官「それが・・・あなたが眠った後に居なくなってしまって・・・。」

勇者「何? ・・・む。」

文官「すいません、私の監督不足でした。」

勇者「いえ。・・・あの子が何故居なくなったか見当がつきました。」

文官「え? ほ、本当ですか?」

勇者「えぇ。お父さんから預かった財布と買い物予定が掛かれた布が無くなっています。恐らくあの子が持っていったのでしょう。」

文官「だとするとあなたの代わりに買い物に・・・? 何を買う予定だったかわかりますか?」

勇者「それが、私もまだ中身は見ていなくて。食料を買うのは間違いないんですが・・・。」

文官「そうですか・・・。では、買い物という事ですから、お店を中心に探してもらうよう、巡回中の兵士に今の情報を伝えてきます。」
文官「それと・・・お友達の所に寄ったりしているかもしれませんから、少し訪ねてきます。ここからは少し遠いですが・・・」

勇者「すいません。ご迷惑を・・・」

文官「いえ、今回の騒動は私に責任が有りますから。加護者様は処置が終わるまで安静にお願いします。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――


店員「・・・・・・こちらの時計は時刻になるとこのように人形が現れて音楽を奏でます。外の彫刻も有名な彫り師で御座いまして中のオルゴールも大変高名な・・・」

継子「すごいすごい!」
ピョンピョン

店員「歯車機構も大変精密で50年は使い続ける事が出来る一品で御座います。」

継子「へぇー・・・。」

店員「一通り説明させていただきましたが、お気に召した物はございますでしょうか。」

継子「えっと・・・あれがいいです。」

店員「巨大オルゴール装置付きの振り子式時計で御座いますね。お嬢様お若いのにお目が高い。こちらはオルゴールを備えたにも関わらず高い正確性を誇り尚且つ簡単な手入れで長く使えるという・・・」
店員「・・・・・・と、整備の易さと正確性、尚且つの娯楽性と3つ兼ね備えた一品で御座います。その分お値段は少々張りますが・・・」

継子「足りないですか?」

店員「いえいえ十分でございますよ。・・・そうですねぇ、確認は後々という事で、では領収証を発行いたします。こちらにサインを・・・」

継子「さいん・・・。」

店員「貴方が書いたと分かれば何でもよいですよ。」

継子「んー・・・。」
≪ガリガリガリ≫
店員「・・・・・ははははは。」

継子「駄目ですか?」

店員「いえいえ良いですよ。もう一枚書いてもらっても?」

継子「はい。・・・・・・。」
≪ガリガリガリ≫

店員「ではお財布から金色の貨幣を5枚いただけますか?

継子「はい。」

店員「確かに。では貴方のおうちはどこかお教えください。」

継子「お城です。」

店員「お城・・・お城とはこの国の真ん中にあるあの大きなお城ですか?」

継子「うん。私そこにすんでます。」

店員「なるほど、ですからこの様な金額を・・・。ではその紙をしっかり持っていてくださいね。今日の日が暮れるまでに王城に届けます。」
店員「認識賞を提示していただいてよろしいですか?」

継子「はい。」

店員「・・・確かに。では、私から信頼できるお店を御紹介させていただきます。簡単にですが地図を御用意させていただきました。それとこちら紹介状になります。」
店員「地図の見方は分かりますか?私が懇意にさせて頂いている酒屋ですから、店主様にお渡しくださいね。」

継子「わかりました。」

店員「メモを今一度貸してもらってもよろしいですか?」

継子「はい。」
店員「・・・。」
メモ≪さらさらさら≫

店員「はい、どうぞ。又のご来店をお待ちしております。」

――――――――――――――――――――――――

兵士「いたか?」

兵士「見つからないな。」

兵士「金髪で長い髪した白いワンピースの女の子だろ?子供だからそこまで高い店に入らないよな?」

兵士「恐らくな。だが決め付けは危険だ、恐らく大通りを通っているはずだから、地道に聞き込みしていこう。」

兵士「あーまったく時間外労働って楽しいなぁちくしょう。」

兵士「全くだな。まぁこれも治安の為だ。ほら行くぞ。」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――
扉≪ガランガランガラン≫


店員「いらっしゃーい・・・お?」

継子「あの、これてんしゅさんに渡すようにって。」

店員「紹介状? あー親父当てかぁ。今居ないんだよねー・・・。」
店員「お嬢ちゃん一人で来たの?」

継子「そうです。」

店員「私にじゃないけど・・・まぁいっか。」
封筒≪ビリビリビリ≫
紹介状≪ピラ≫

店員「なになに・・・? ・・・ふむふむ、メモ見せてもらっていい?」

継子「はい。」



 買ってくる物 
 
 綺麗で見てて楽しい時計(大きいと良い)※売約済み

 珍しい果物(たくさん)
 お酒(複数種)
 頭痛薬(貨幣袋3つ分)
 ジュース

 食料は勇者様の見立てでお願いします。

 追記
 この子はお使い中なので良識ある方
 お手伝いお願いします。
 
 さらに追記
 こちらお城に住むお嬢様で御座います。
 丁寧な対応をお願い致します。
                                    』  

店員「え?あなたお城に住んでるの?」

継子「はい。」

店員「じゃぁお姫様って奴? うわー何時の間に! お姫様なのに買い出しなんて偉いなぁ。」
店員「うんうん、じゃぁサービスさせてもらっちゃおっかな! お城に住むならやっぱり高いお酒がいいよねー・・・。」

店員「何味のジュースが好き?」

継子「えっと、オレンジ・・・」

店員「オレンジジュースね! あたしも好きだなーオレンジ。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――

店員「こんなもんかな! はい、持てる?」

継子「んしょ・・・。大丈夫!」

店員「じゃー銀色のお金を・・・10枚頂戴。」

継子「はい。」

店員「ありがとー、カゴはおまけしてあげる。次ね、果物屋さんの場所教えてあげるからそこ行きな。」
店員「そこの女の人に酒屋のおねーさんが教えてくれたっていってね。」

継子「わかった。」

店員「メモ貸して。・・・・・・・・・・・・よし! ワインは後で届けに行くから! また来てねー。」

継子「ありがとうございました。」

――――――――――――――――――――――――

文官「そうですか・・・。」

おばさん「ごめんなさいね、お役にたてなくて。」

文官「いえ、いきなり押しかけて、どうもご迷惑をお掛けしました。」

おばさん「ぜーんぜん! しかしうちの子がまさかお城の子とお友達になってたなんてねぇ。」

文官「大変ありがたい事です。少々込み入った事情を持っている子ですから、お友達が出来て本当に嬉しく思います。これからも懇意にしてあげて下さい。」

おばさん「まかせといて! うちに遊びに来たらしっかりおもてなしさせてもらうから!」

文官「よろしくお願いします。では失礼させて頂きます。」

――――――――――――――――――――――――
果物屋


店員「いらっしゃ~い。」

継子「あの、さかやのおねーさんが教えてくれたんですけど。」

店員「あー、あの子ね。うんうん、今日は何を買いに来たの?」

継子「えっと、これ・・・。」

店員「どれどれ~・・・」


 買ってくる物 
 
 綺麗で見てて楽しい時計(大きいと良い)※売約済み

 珍しい果物(たくさん)  . ←――~б ̄)

 ■■■■■■                (_
 頭痛薬(貨幣袋3つ分)            安 
 ■■■■                     く
                            し

 食料は勇者様の見立てでお願いします。  て 
                             あ
 追記                          げ
 この子はお使い中なので良識ある方       て
 お手伝いお願いします。               ね

                               ☆
 さらに追記
 こちらお城に住むお嬢様で御座います。
 丁寧な対応をお願い致します。
                                    』  


店員「・・・んーどれがあの子が書いたのか丸わかりね。たくさんかぁ、どれぐらい?」

継子「んと・・・いーっぱい。」

店員「うふふ、そっかぁ。そうねぇ・・・お城・・・兵士さんのおやつなのかしら。だったら3樽くらいかしらね?」

継子「・・・?」

店員「珍しい果物かぁ・・・。どんなのがいいとか聞いてるかしら。」

継子「んーん、何も言われてないです。」

店員「そっかぁ、じゃぁちょっとだけ試食させてあげる。」

――――――――――――――――――――――――
外科専門病棟 第一処置待機室 昼

扉≪ガチャ≫

医者「経過見に来ましたよー」

勇者「どうでしょうか、もう抜けますか?」

医者「んー・・・まぁもうチョイって所ですかね。昼終わり前には取りあえず血は抜けるでしょ。」

勇者「そうですか・・・。」

医者「それで、抜糸の仕方適当にまとめておいたんで、ちゃんと読んでおいてくださいね。」

勇者「ありがとうございます。」

医者「本来ならまたこっちに来てほしいんですがね。ま、どうしようもない事ってのもありますわな。」
医者「また時間たったら経過見にくるんで大人しくしててくださいよ。じゃ。」

扉≪バタン≫

勇者(本当に忙しそうだな。・・・あの子は大丈夫だろうか、迷子になっていたりしなければいいんだが・・・。)

――――――――――――――――――――――――

継子「・・・!」
しゃくしゃくしゃくしゃく

店員「うふふ、おいしい?」

継子「・・・っん、おいしいです!」

店員「んふふ、可愛い。そんなにいい笑顔だとお姉さん嬉しくなっちゃうなー。」

継子「これ、これください!」

店員「ありがとー。この果物梨っていうのよ。樽3つは後でお城に送るから・・・一個おまけしてあげるね。はい。」

継子「ありがとー!」

店員「あとはお薬かぁ、こんなにたくさんだとやっぱり兵士さん用なのかしら。」
店員「お父さんが良く行く薬屋さん知ってるから教えてあげるね。メモ貸してもらえる?」

継子「はい!」

店員「・・・書く隙間が無くなってきちゃってるわね。・・・」
店員「はい。」

継子「あの、お金は・・・。」

店員「あぁごめんなさいね。銀貨7枚くれる?銀色のお金。」

継子「はい。」

店員「はいありがとー。ちょっと入り組んでる場所にあるけど迷わないようにね。」

継子「ありがとうございました!」

――――――――――――――――――――――――
第一処置室

扉≪ガチャ≫

文官「・・・戻りました。」

勇者「おかえりなさい。」
勇者(この様子だと見つからなかったようだな。)

文官「すいません、まだ見つかっていないようです・・・。」

勇者「お気になさらないでください。恐らく大丈夫ですよ。」

文官「あの子に何かあったらと思うと・・・大変、心苦しいです。」

勇者「・・・。」
勇者(愛されているな。少なくとも、この人にあの娘を任せる事には何の不安もない。)

勇者「この管が抜けたら私も探しに行きますから。足取りはある程度わかりましたか?」

文官「・・・高級時計店に入る所を見た方が居たそうです。あまりにも場違いな印象を受けたのではっきりと覚えているそうで・・・。」
文官「しかし、応対した店主の方が居なくて、そこからどこに行ったかなどの話は聞けていないそうです。」

勇者「なるほど。」
勇者(・・・高級時計・・・時計か、確かに黒色のドラゴン辺りが好みそうではあるな。)

勇者(買い物リストに高確率で乗っている物は恐らく酒だ。赤いドラゴンが頼むものはそれくらいしか思いつかん。)

勇者「すいません。あの子は度々街に出ているのですか?」

文官「え、えぇ。婦長の目を盗んでは度々・・・」

勇者「なぜ抜け出すのでしょうか?」

文官「・・・恐らく、好奇心に負けているのかと思います。あの子に取ってこの場所は、珍しい物でいっぱいでしょうから・・・。」

勇者「その高級時計店とは面識が有ったりするのでしょうか。」

文官「・・・・・・可能性は、低いかと思います。あの子は、探検する時方角を決める癖があるようです。」
文官「王城を拠点に東から北に向かって少しずつ活動範囲を広げている様ですから、西側の方はまだ未体験かと・・・。」

勇者「勉強をお教え下さっているのですよね。文字の読み方なども?」

文官「いえ、文字はもう少し後に教える予定です。今はとにかくここに慣れて頂こうと貨幣の仕組みやお店の使い方などを中心にしています。」

勇者(・・・・・・あの子はこちら側の町の地理に詳しくない、メモを読むには協力者が必要。)
勇者(つまりは、自分で行先を決めている可能性は非常に低い。)

勇者「・・・あの子が訪れた店で可能性が高いのが酒屋です。」

文官「酒屋、ですか?」

勇者「えぇ。メモにはほぼ間違いなく酒に関する何かが書いてあるはず。」

文官「・・・では、時計屋を中心に近くの酒屋を当たらせてみます。」

勇者「その中でも、高級な酒を扱っている店を先に訪ねてもらってもよいでしょうか。」

文官「な、なぜ?」

勇者「・・・あの子はこちら側の方は地理をよく知らない。そしてあの子はまだ文字を読めない、つまりメモを読むには協力者が必要。」
勇者「この2つの前提は、あの子が自分で行先を決めている可能性が薄いという事を示します。恐らく協力者に従っているでしょう。」

勇者「最初の時計店に入った理由は定かではありませんが、あの子はそんな場所で買い物を出来る程度の金額を持っています。」
勇者「そこであの子が持っている金額を店主などが確認したならば、次に紹介するような場所もその金額に見合った場所の可能性が高い。」

勇者「ですから、高級な酒を扱っているお店が怪しいと思った次第です。何個か穴がありますが、少しは参考になるかと思います。」

文官「・・・なるほど、わかりました。まず時計店の近くの高級な酒屋を当たってもらう事にします。」
文官「・・・・・・しかし、あなたはこんな時でも冷静なのですね。」

勇者「私は、この国を・・・お父さんが治めていた国を信じていますから。」

文官「・・・。」

勇者(それに協力者が金目当てなら一件目にすら寄らないだろうしな。運が良かったともいえるか。)

――――――――――――――――――――――――
路地裏


犬「ワンワンワンワン!!」
鎖≪ガチャガチャガチャ!≫

継子「ひゃぅ!び、びっくりした・・・。」

扉≪ギィィ・・・≫

継子「・・・・・・。」

店員「・・・いらっしゃぁい。今日は何のご用事かな。」

継子「えっと、これ・・・」

店員「うん・・・?」


 買ってくる物 
 
 綺麗で見てて楽しい時計(大きいと良い)※売約済み

 珍しい果物(たくさん)OK ! ←――~б ̄)

 ■■■■■■                 (_
 頭痛薬(貨幣袋3つ分)←お婆さん     安 
 ■■■■         これお願いします く

                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  し

 食料は勇者様の見立てでお願いします。  て 
                             あ
 追記                          げ
 この子はお使い中なので良識ある方       て
 お手伝いお願いします。               ね

                               ☆
 さらに追記
 こちらお城に住むお嬢様で御座います。
 丁寧な対応をお願い致します。
                                    』


店員「ごちゃごちゃしてて分かりづらいねぇ・・・。頭痛薬を貨幣袋で3つ・・・?そんな大量に買ってどうするんだい?」

継子「わ、わかんないけど・・・。」

店員「・・・お城ねぇ、常備薬の交換かねぇ。こんなに売っちゃうと在庫が無くなってしまうけど・・・・・・。」
店員「今持ってきますのでちょっと待っててくださいねぇ。」

継子「はい。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――

店員「はい、3袋。銀貨1枚と銅貨50枚ね。」

継子「えっと・・・はい。」
ザラザラザラザラ!

店員「ひぃ、ふぅ・・・」
店員「はいはい、ちょうどいただきますよ。いいかい、このお薬はお酒と一緒に飲んだりしちゃだめだからね。おうちの人に伝えるんですよ。」

継子「わかった。ありがとうございました。」

店員「また来てくださいねぇ。」

――――――――――――――――――――――――
路地裏

扉≪ギィィ・・・≫

継子「んと・・・。」
キョロキョロ

継子「・・・」
タタタタタ・・・

鎖≪・・・≫

――――――――――――――――――――――――
第一処置室待機室

兵士「失礼します!」
扉≪ガチャン!≫

兵士「有力な足取りが見つかりましたよ!!」

文官「本当ですか?」

兵士「えぇ! 酒屋の店員から特徴が合致するような子が買い物に来たと言う情報を聞けたそうです!」
兵士「買っていったものは複数の高級酒とオレンジジュース! その後は知り合いの果物屋を紹介したとのことで今足取りを追っています!」

勇者「・・・だいたいどのぐらい前の事か分かりますか?」

兵士「大よそ2時間前とのことです!。」

勇者(・・・だとしたらもう買い物が終わっていてもおかしくないな。ひょっこり帰ってきそうな・・・・・・。)

文官「御苦労さまです。すいませんわざわざ勤務時間内に・・・」

兵士「いえいえ!迷子を捜すのも仕事の一つでありますから!ではまた情報が得られ次第報告に来ます!失礼します!」

扉≪ガチャン≫

扉≪ガチャ≫

医師「あわただしいなー、経過見に来たよ。」

勇者「そろそろ抜けますか?」

医師「・・・んー、ま、大丈夫でしょうね。最初は違和感あるかもしんないけど2日もすれば収まると思いますよ。」
医師「抜きますよっと!」
ズリュ!

勇者「・・・。」
勇者(・・・痛い)

医師「局部回復魔法小」

勇者「・・・」

医師「はい治療完了でーす。受付にこの札渡してください。本日は御来院ありがとうございましたー。」

――――――――――――――――――――――――

受付「支払いはお城の方に請求しておきますねー。本日はありがとうございました。」

勇者「どうもありがとうございました。・・・さて、」
勇者「私も探しにいってくるとしましょう。貴方はここで待っていていただいてもよろしいでしょうか。」

文官「あ、はい。もしかしたら、ここに戻ってくるかも知れませんからね。了解しました。」

勇者「お願いします。」

扉≪ガラン!≫
兵士「っと、加護者殿治療が終わられましたか!」

勇者「えぇ。これから私も探しに行ってきます。」

兵士「なるほど了解しました!では・・・すいません此処は地図ありますか!?」
受付「ありますよー、どうぞ。」
兵士「お借りします!・・・・・・・・あの子の足取りをここまで掴めました!ご確認ください!」

勇者「拝見します。・・・」

勇者(高級時計店、路地から離れた酒屋、大通り交差点に面する果物屋、かなり入り組んだ場所にある薬屋・・・。)
勇者(薬屋で足取りが分からなくなっているようだな。何か有ったか?)

勇者(度々あの子は一人で遊びに行って一人で帰ってくるのだし道を記憶する力は有るだろう。薬屋までの道で覚えきれなくなったか?)

勇者(なんにせよ急ごう。この路地を中心に探す。)

勇者「地図を借りて行っても?」

受付「普段使わないんで全然構いませんよー。」
兵士「落書きしてしまったので後で弁償します!お気になさらず!」


――――――――――――――――――――――――

犬「ワンワンワンワン!」

継子「やぁだぁ~!!」
タタタタタ・・・

――――――――――――――――――――――――
路地裏薬屋前

勇者「・・・。」
鎖付きの首輪≪・・・≫

勇者(首輪・・・まぁ、犬用だろうな。大きさから中型犬か。)

扉≪ギィィ・・・≫

店員「いらっしゃぁい。今日は人がたくさんやってくるねぇ・・・。」

勇者「こんにちわお婆さん。今日、背丈はこのくらいで、金髪、長髪の子はきましたか?」

店員「えぇ、えぇ来ましたとも。たくさんの頭痛薬を買って行ってくれてねぇ。」

勇者「・・・頭痛薬?」
勇者(・・・・・・誰が使うんだ?)

店員「さっきも兵士さんが聞いてきたけど、迷子さんになっちまったのかい?」

勇者「・・・えぇ、私がする予定だった買い物を、あの子が自発的に買い出しにいってしまったのですよ。」
勇者「こちら側の町に不慣れな子なので、少し心配で・・・。」

店員「なるほどねぇ、いい子なんだねぇ。帰ってきたらちゃんと誉めてあげてねぇ。」

勇者「・・・そうですね。所で、店の前に犬小屋がありましたが、犬は居ないのですか?」

店員「いいええ? 居ますよぉ、この年になると寂しくって・・・いないんですか? コロ。」

勇者「えぇ、鎖のついた首輪しかありません。」

店員「また抜け出してしまったみたいですねぇ。ご飯の時間になると帰ってくるんで心配はしてませんけどねぇ。」

勇者「・・・コロは人を追いかけたりしますか?」

店員「いえいえ、うちのコロは大人しいですよぉ。はしゃぐのは散歩の時とおやつをあげる時くらいでねぇ。」

勇者「・・・おやつは何か決まったものをあげていますか?」

店員「えぇ、いつも果物をあげているんですよぉ。あの子甘い物が大好きでねぇ。」

勇者(果物屋に寄っているようだし原因はこれか?)
勇者「コロは人を噛んだりしないのですね?」

店員「えぇ。大人しい子なのでねぇ。」

勇者「なるほど、わかりました。・・・・・・?」
勇者「この店は飴も扱っているのですか?」

店員「えぇ、近くの子供たちが買いに来てくれるんですよぉ。本当にこの年になると嬉しくてねぇ。」

勇者「なるほど。」

店員「一つ差し上げますよぉ。」

勇者「い、いえ。今は財布が無いので・・・。」

店員「あの子がたくさんお薬を買って行ってくれたから大丈夫ですよぉ。あの子にあげて下さいねぇ。」

勇者「・・・では、ひとつだけ。ありがとうございます。」

店員「いえいえ、また来てくださいねぇ。」

――――――――――――――――――――――――
袋小路

犬「キャンキャンキャンキャン!」(おら! 持ってんだろてめぇ! 大人しく出しやがれ!)

継子「だめぇ!お父さんと一緒に食べるの!あげないもん!」

犬「わふわふわふわふ!」(そんな事しらねぇよ! おらよこせ今寄こせさっさと寄こせ!!)

継子「駄目だもん!」

犬「ふがふがふがふが」(ここか? ここか? あん? はやくだせよはっはっはっはっ)

継子「やだやだ服の中に頭いれないでよぉ! 息くすぐったいよお!」

犬「うぉんうぉんうぉんうぉん」(おめぇの体からぷんぷん匂うんだよぉ! あまぁい蜜の香りがよぉ! たまんねぇぜ!)

継子「あたし甘い匂いなんてしないもん!」

犬「わーうわーうわーう」(てめぇが両手に掲げてるいれもんの中に隠してるなんてもうわかってるんだぜこら! 大人しく出さないと怪我するぜぇ!)

継子「やだよぉ!やめてよぉ!」

――――――――――――――――――――――――
扉≪トントン≫

他人「はーい。」
扉≪ガチャ≫

他人「・・・どちらさま?」

勇者「私は・・・王城に住んでいる者です。すいませんが犬の鳴き声など聞きませんでしたか?」

他人「王城の方?またなんでこんな場所に?」

勇者「迷子を捜していまして・・・どうも犬に追いかけられているようなので、手掛かりを探しに来ました。」

他人「へー、犬の鳴き声ねぇ。確かに聞こえましたよ。」

勇者「本当ですか?」

他人「えぇ。確か・・・こっちからこっちに向かって走ってた感じだったかなぁ。女の子の声も聞こえた気がしますよ。」

勇者「なるほど、参考になりました。ありがとうございます。」

他人「いえいえ、事件が起こったら協力させてもらうのが市民の務めってものですよぉ。」

勇者「又何か起こったらご助力お願いするかもしれません。その時はまたお願い致します。では失礼します。」

扉≪バタン≫

勇者(走り回って逃げているようだ。空を飛んだりはしていない。どちらの方向へ逃げたかもわかった。)
勇者(薬屋で買い物をしている途中に犬が逃亡。あの娘が店を出て元の道を辿りながら帰ろうとしたところで遭遇。そして道を逆走。)

勇者(数軒に聞いてみた感じめちゃくちゃに走り回っている。これは本当に迷子になってしまっているかも・・・。)
勇者(だが俺ももう少しで追いつけるだろうな。しかしここは壁が高い上に入り組んでいて音が通りずらい・・・。)

――――――――――――――――――――――――

継子「うええええええええ・・・!うえぇぇぇぇぇ・・・」

ガラス片≪・・・≫
梨≪コロコロ・・・≫

犬「くぅ~ん。」(おいおい、悪かったって嬢ちゃん。そんな泣くんじゃねぇよ。)

継子「お、落としちゃったぁぁぁ!ヒック!ヒック・・・!」
継子「うえええぇぇぇぇ・・・」

犬「わふ・・・」(別にでけぇ怪我してる訳じゃねぇだろ。ほら、俺がよ、一緒に帰ってやるからよ。な? 泣き止めって。)

犬「・・・」
ペロペロ

犬「わう。」(お前には、涙は似合わねぇぜ・・・。)

継子「・・・グスッ。・・・・・・お父っさん、に、なん、てぇ、言おう・・・。」

犬「くぅーん。」(そりゃお前、正直に言うしかねぇぜ。自分の失態を隠すのはあんまり良い事じゃねぇよ。)
犬「へっへっへっ」(ごめんなさいってちゃんと言えば、お父さんも許してくれると思うぜぇ? な?)

継子「グスッ・・・うん・・・。でも・・・」

犬「わうわう」(でももかかしもねぇぜ、我が身可愛さに嘘つくのは・・・)

継子「ちがくてぇ・・・!おと、お父さん、に、や、役に立ちたかったのにぃ・・・!」
継子「ま、またメイワクかけちゃったあああ!うええええぇぇぇ・・・・・・!」

犬「クゥ・・・」(合わす顔が無ぇってか。・・・でもよぉ)

継子「うええええええ・・・!」

犬「クゥン・・・」(駄目だ、もう聞く耳持ってねぇ。・・・ん?)

犬「クンクンクン・・・」(・・・こいつからする匂いと同じようなのが漂ってくるなぁ。)

犬「・・・ワウワウワウ!」(・・・よし! おいいいかテメェ! こっから動くんじゃねぇぞ!! わかったな!)
スタタタタ

――――――――――――――――――――――――

勇者「・・・。」
勇者(空が赤らんできている。もう夕方か・・・。)

勇者(向こうでは然したる問題も起きてはいないようだから取りあえずは良し。)

勇者「む」

犬「わうわうわうわう!!」
タタタッ!

勇者「犬・・・。」
勇者(・・・首輪の大きさから察するに恐らくこのくらいの犬だな。)

犬「わうわふわうわふわんわんわんわんわん!!!」
グルグルグルグル

勇者「・・・。」
勇者(あの子は動物と話せるし、この犬が俺を案内しようとしても不思議じゃないか?)

勇者「・・・時間も無い。案内を頼む。」

犬「わう!!」

――――――――――――――――――――――――
袋小路

犬「ワオーーン!!グルルルルル・・・!」

勇者「・・・。」
勇者(居ない。しかし・・・割れた酒瓶がある。犬の様子からも恐らくついさっきまでここに居たんだな。)

勇者(怪我をしていなければいいんだが。さて・・・)

勇者「コロ、俺の言葉が通じるか分からないが、あの子を追う事は出来るか?」

犬「クンクンクン・・・」

犬「へっへっへっへっ」
スタタタ

勇者「頼むぞ。」

――――――――――――――――――――――――

犬「わふわふわふ・・・」
壁≪ガリガリガリガリ≫

勇者「・・・? どうした?」

犬「クゥーン、クゥーン・・・」
うろうろうろ

勇者「・・・。」
勇者(匂いがここで途切れている? ・・・・・・ここは窓もほぼ無いしな。大丈夫と判断したのかもしれない。)

勇者「よし、コロ。ありがとう。お前はもうお婆さんの所に帰っていいぞ。」
勇者(排水管から登ろう。)

犬「ワウワウワウワウ!」
ガバッ!
勇者「うぉっと!なんだ、行きたいのか。・・・犬にしっかり捕まって居ろというのも無茶か。仕方がない。」
勇者「少しの間上着の中に入っていてくれ。」

――――――――――――――――――――――――
住宅街屋上


継子「グスグス・・・」

犬「わふ!わふ!」(かぁ~!くっせぇなぁ!クスリの匂いがプンプンしやがる!)
ピョン
勇者「おっと。」

継子「・・・っ!」
タッ

勇者「おっと。」
ズダン!ビュォオ!

犬「わふ!?」(うぉぉ!?)

ガバ!
継子「キャン!」

勇者「・・・逃げるのは感心しないな。」

継子「グス、だ、だってぇ・・・」

勇者「怪我はしてないか?膝は?手は?」
勇者「擦りむいてるな。泥がついてるから、洗わないとな。」

継子「グスッグスッ、お、おと、お父さ、ごめ、ごめんなさい・・・。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・いつの間にか居なくなってしまった事を叱るべきなんだろうが・・・・・・)

勇者「・・・帰ろうか。お使い、お疲れ様。」

継子「・・・ヒック、うぇ、うぇぇぇ・・・・・。」

勇者「・・・。」
背中≪ポンポン≫


犬「クゥン・・・。」(お、俺の出る幕が無ぇ・・・!)

勇者「コロ、案内ご苦労様。順番に下すから、そこで待っていてくれ。」

犬「わうわうわうわう!」(おいてめぇ! 怒るんじゃねぇぞ! その子はお前の為にやったんだからな! おい!)

勇者「流石に同時には無理だ。落っことすかもしれない。大人しく待っていてくれ。」

勇者「君もちゃんと捕まっててね。」

継子「グスッ・・・。」
ギュッ

犬「わんわんわんわん!!」(おい聞いてんのか! おい! おい! 置いてくなよ! おい!)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――
外科専門研究病棟


文官「・・・、もう、夕方・・・・・・。」

扉≪ガチャ≫

文官「あ・・・」

勇者「見つかりましたよ。」

継子「グスッ、グスッ・・・」

文官「あ、あなたって子は・・・!」
ダッ!

文官「お怪我はありませんか?あぁ、膝を擦りむいて・・・、痛くありませんか?」

継子「だい、じょうぶ・・・。」

文官「すぐに汚れを落として魔法を使いましょうね。すいません、水場を借りても・・・」

受付「はいはいよろしいですよ。というかもう昼の部終わってるのでお帰り願いたいのですけどね。」

勇者「すいません、洗わせていただければすぐにでも。」

受付「ですからどうぞ。そちらにありますので。」

文官「すいません、少々お借りします。ほら、行きましょう。私が抱きますよ。」

継子「ん・・・。」
カツ カツ カツ・・・

勇者「・・・。」

受付「見つかってよかったですね。」

勇者「えぇ。大事に至っていませんし、本当によかった。業務時間外なのに待機させていただいてどうもすいません。」

受付「いえー、結局休憩なんていつも30分程度ですから。残りの時間は準備に追われていますしね。」

勇者「忙しいのですね。」

受付「ただでさえ外科医は少ないんで困りものですよ。お国の方には養成をしっかりしてもらいたい物です。」

勇者「伝えておきましょう。」

受付「え?」

文官「終わりました。回復魔法も唱え済みです。本日は真にご迷惑をお掛けしまして、申し訳ありませんでした。」
継子「ごめんなさい・・・。」

受付「い、いえいえ。また御用がありましたら御来院ください。ではまた会う日まで。」

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
王城外門


時計「ふむ、やはり子供の買い物ですからね、やめるという話になるかとも思い、支払っていただいた金額も持ってきております。」

兵士「すいませんっすねぇ、今どうもその子の関係者探し中みたいなんっすよ。外科病院言ってるって話なんすが・・・。」

酒屋「はーい、お届け物でーす。」

時計「おや、久しぶりですね。」

酒屋「あーおじさーん。いいお客様ご紹介ありがとうね。気前のいい子だったよ。」

兵士「ちょ、ちょっと。お届け物って、もしかしてそれ買った子って・・・」

酒屋「あり? お姫様だけど・・・まだ帰ってきてないの?」

兵士「お、お姫様ぁ? 金髪で長い髪の?」

酒屋「うんそう。その子がさぁ、買い物予定のメモ持ってたから私てっきり・・・」

果物「あらー、奇遇ね。貴方も?」

酒屋「お、ひさしぶりー。 その様子だと・・・」
兵士「ま、またっすかぁ?一応聞きますがご用事は?」

果物「あら、聞いてません? 梨3樽お買い上げ頂いたんですけど・・・、」

兵士「買った子ってこんくらいの?」

果物「えぇそのくらいの。金色の髪した可愛らしい女の子でしたよ。」

兵士「あー・・・、すんませんけど、その子まだ帰ってきてなくて、だから本当か分からないんですよ。すいませんね。」

果物「あら、そうなんですか・・・じゃぁちょっと待たさせてもらっても?」

兵士「そ、そりゃー構いませんが・・・」

酒屋「それで? 何売ったの?」

果物「さっきも言ったけど梨よ。おいしーんだから。貴方は?」

酒屋「あたしは、高級酒。ここのお姫様が何本も買って行ってくれてさぁ。ちょーっと安くしたけどそれでも普段は出無い様な金額の物だからいい感じに儲かったわー。」

時計「ふむ? つまりは今日はあなたがお店を?」

酒屋「そうなんだよ、親父は今日はちょっと出かけててついさっき帰ってきたの。べろんべろんで。店の酒勝手に飲みだすし困るわよ本当。」

果物「あら、お知り合い?」

酒屋「そ、お店によく来てくれるお客さん、親父の友達。今日はいいお客様ご紹介ありがとうね。おかげで新しい靴買えそうでいい気分ってものよー。」

時計「それは幸いですな。しかし今回のお客様は少々お若いのでもしかしたら取り止めになるかもしれませんが・・・」

果物「その時はその時ですよ。そうなったら普段通り売るだけです。」

酒屋「ま、それだけの話よねー。品物さえ帰ってこればぜーんぜん痛くない。」

時計「・・・やはりあなたの店を紹介したのは正解だったようですね。・・・おや、」

人力車≪キッ≫
人力車「はい、銅貨一枚ね。」

文官「ありがとうございました。」
勇者「どうも。」
継子「・・・ありがとうございました。」

人力車「またどうぞー。」


酒屋「あれ? 王様の子じゃないんだ?」
果物「あら・・・泣いていたようだけど・・・・・・。」
時計「貴方様達がその子の御両親様でよろしいですか?」

文官「えっ!?い、いえ、違います。私はこのお城で働いている一介の労働者です。」

勇者「えー・・・私がこの子の親代わりをさせて頂いている者です。」
継子「・・・。」

時計「なるほど。既にお聞きでしょうか、そちらのお嬢様が私達の店で高価な、または大量の品物をお買い上げいただきまして、今日はその品物をお届けに参った次第でございます。」
時計「しかしながらお買い上げいただいたご息女様の年齢が大変お若い事もあり、私達お金は預からせてはいただきましたがまだ売ったとは考えておりません。ひいてはお父様にご確認願いたいのですが・・・。」

勇者「なるほど。・・・・・・」
勇者(俺の金じゃないんだが・・・ここで断るのも、この子に悪い。)

勇者「全て買いましょう。」
勇者(お父さんには後で謝ろう。)

時計「ほっ。」
酒屋「いや-ん!お兄さんおっとこまぇ!!」
果物「あらあら、品物を確認しなくてもよろしいのですか?」

勇者「この子が選んでくれたものですから、大丈夫でしょう。」
継子「・・・。」

時計「ほっはっはっはっその通りですな。この子は幼いながらも見る目が良いですからねぇ。」
酒屋「いやー・・・少なくともお酒は選ばせらんないから、これは私が選んだけど・・・・・・でもどれも自信持っておすすめ出来るよ。」
果物「うふふ、この子は舌も確かですよ。美味しい果物を選んでいましたから、楽しみにしててくださいね。」

時計「それでは門兵さん、中に運び込んでも?」

兵士「あ、え、えっとーですね・・・。加護者殿? どこに運べば?」

文官「・・・全てあちらへ持っていくのですか?」

勇者「えぇ、そのつもりです。」

文官「では、検品の後、大広間へ持っていき一所に固めて置いておいて下さい。検品は・・・あなたにお願いしても?」

兵士「う、うっす!頑張ってやらせていただきます!」

文官「ではお願いします。皆様、わざわざ王城に御足労頂いた中申し訳ございませんが、城の中に入るには十分な審査が必要となりますので、今日入る事は出来ません。」
文官「なにか品物ごとに注意事項があるならば今お聞かせ願えますか?」

時計「・・・では2つほど。こちらの時計大変精巧な出来で御座います。故障の元となるため運ぶ時は動力を切るようお願いします。今も切ってあります。」
時計「動力はゼンマイで御座いますので一日一回、限界を超えて回し過ぎないようにお願いいたします。」

果物「んー・・・そうですねぇ。こちらの果物はリンゴに比べると痛みやすいので、出来れば早めにご賞味くださいね。」

酒屋「ワインの扱い知ってる人はいる? あんまり揺らさないようにして、もちろん保存は地下でお願いね。先に買ってってもらったやつも温度変化させ過ぎないようにして、光に当てないで・・・」

文官「・・・・・・はい、了解しました。では私が責任もって搬入させていただきます。本日はお届けとお手伝い、真にありがとうございました。」

時計「また御贔屓に。失礼いたします。」
酒屋「はい、ワイン。高いんだからね!ちゃんとしてよ!」
果物「どうぞ一つ御試食ください。お気に入り下さったらまた私の店へ来てくださいね。では。」

文官「ふぅ・・・、では伝声管で何人か兵士さんを呼んでもらってもよろしいですか?」

兵士「う、うぃーっす!すぐ呼びつけます!」

時計「おっとすいませんお父様、一つお渡しする物を忘れて居りました。」

勇者「? なんでしょうか。」

時計「こちら領収書の控えとなります、どうぞ。」

勇者「あぁ、これはどうもすみません。」

時計「今日の出来事は私にとって良い思い出になりました。今度は是非親子でご来店ください。では今度こそ、失礼致します。」

勇者「・・・。」チラ
勇者「フフッ・・・。」
勇者(なるほど、これを信用と実績が重要な高級店でやられたら、思い出にもなるか。良い思い出とは、あの人はいい人だな。)

勇者(サイン欄に熊の絵が描いてある。)

継子「・・・どうしたの?」

勇者「俺にとってもいい思い出が出来た、という事だ。」

王「おー我が弟!!怪我をしたと聞いて心配したぞ!」

勇者「・・・兄さん。」
継子「あ、おじさん。」

王「お・に・い・さ・ん!いいぞ弟!見た所そこまで酷い傷じゃないようだな!よかったよかった!」

文官「王!またあなたは抜け出して・・・!」

王「たまにしか抜け出していないのだから少し位大目に見てくれ。」

文官「冗談にすらなっていません!!あなたの執務室を抜け出す回数は全ての王の中でダントツですよ!そうに決まってます!!」

王「数を数えているわけでもないではないくせに・・・お? それは・・・ワインか!」

文官「い、いけませんよ!こちらは加護者様がお買いになった物なのですから!」

王「なんだそうなのか。弟、お前はイケる口か?」

勇者「い、いえ。飲んだ事は有りません。」

王「ほう、なるほど! では今日は豪勢にパァーっといくかぁ!」

文官「王ー!いい加減にしてください!!」

前王「いやいや、たまにはいいと、私も思うぞ。」

文官「ぜぜ、前王まで!!何故この場所に!?この人に毒されたのですか!?」

王「酷い言い様だな。そこまで私は信用が無いのか。」

文官「三日に二回は抜け出す人のその二文字など、露の様に消えているか陽炎のように薄いに決まっているでしょう!!」

前王「・・・耳が痛いな。」

前王「それで? 我が息子よ、今日くらい、食事を共にしないか?」

文官「コ、コホン。そうですね。加護者様は久しぶりに戻ってきたのですし、お食事くらいはしていったらどうでしょうか。その子も喜ぶかと。」

王「おーそうだそうだ。親と兄弟と子とその子、つまりは家族が食事する事に何の不思議もない。是非食べていけ。」

勇者「・・・」
勇者(是非そうしたい。だが・・・その場に居てほしい人が今は居ない。)

勇者「すいません。もし、俺が参加出来るなら、その場にいてほしい人が、今はいないのです。」
勇者「次帰ってきた時に、また誘ってくれますか・・・?」

王「その場に、いてほしい人、かぁ。なるほどな。うんうんそうかそうか。」
前王「・・・仕方がないな。楽しみは、先に取って置くとしよう。」

王「あー、全く持って仕方がない。酒はお預けだ。仕事場に戻るかー。」
文官「全くあなたは・・・。あとで手伝いに行きますから、ちゃんとしていて下さいね。」

勇者「すいません、折角の誘いを・・・」

前王「良い。お主の、その場にいてほしい人、この目で見るのが楽しみだな。」
前王「早く用事をすませて、帰ってこい。その時は、私の力を持って国の催事にしよう。」

勇者「そ、そこまでの事は・・・。」
継子「・・・さいじ?」

前王「お祭りの事だよ。お父さんが帰ってきた日は、嬉しいだろう?」

継子「うん、嬉しい!」

前王「だから、皆で祝うのだよ。嬉しい事は皆で共有だ。・・・息子よ、私は、お前が帰ってくるのを、待っている。無論、仲間たちも、その伴侶もな。」

勇者「・・・っ。」

前王「はっはっはっ、お主の赤い顔など、初めてみた。」
前王「さぁ、入用な物などは無いか? 用意させよう。」

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ドラゴンの住処


継子「・・・」

茶竜「・・・」

継子「うっわぁぁーーーい!!」
ブワァ!ペタ
茶竜「ぐおー!!」

継子「すっごぉい!おっきいい!!」

緑竜「おー飛べるのか!人間にしては珍しい!」
青竜「へー人間でも飛べる奴っているんだー。」
赤竜「よし!では儂とおっかけっこでも・・・!」
白龍「やめとけ阿呆。怪我させたらどうする。」
赤竜「怪我しても魔法を使って治せばよかろうが!」
白龍「しんだらどうする!この、考え無しが!!」

黒竜「それで、頼んだ薬は・・・」

勇者「・・・これだな、頭痛薬3袋。」

黒竜「ありがたい、では飲んでみるとしよう・・・。」


女僧侶「一時的にこちらに連れてきたんですか?」

勇者「あぁ。4往復する必要があって、そうなると詠唱だけで3時間掛かってしまうからな。」
勇者「一緒にご飯を食べたがっていたから連れてきた。仲良くしてあげてくれ。」

女魔法「ん。でも、ドラゴン達を怖がらないなんてすごい。」

勇者「あの子は物怖じしないな。それで、戦士は?」

女僧侶「まだ寝てますよ。」

勇者「そうか、でもそろそろ起きるかもしれないし、粥の用意をしてもらっていてもいいか?」

女僧侶「はいはい、しておきます。」

勇者「頼む、では俺は詠唱に入る・・・っと、そうだ。黒いドラゴン。」

黒竜「む? なんだ、ろうか・・・?」

勇者「龍の木の一部を貰って行ってもいいか?」

黒竜「勝手にもっていくといい・・・しかし恐らくここ以外では生えないと思うぞ。」

勇者「なぜ?」

黒竜「豊かな魔力が必要なのだ・・・。ここは常に魔力が噴き出している場所、そうそうこの様な処は無いだろうな。」

勇者「そうなのか・・・。」

黒竜「まぁ、丸々一本持って行く訳でもあるまい、少々なら構わぬさ。」

勇者「すまないな。取り木用に枝を10本ほど貰っていく。それと葉っぱも。」

荷物≪ゴソゴソゴソ≫
女魔法「・・・勇者、ジュースは?」

勇者「・・・・・・すまない、忘れていた。」

女魔法「・・・・・・。」

勇者「な、何が飲みたい? 城の人に頼んで用意してもらう。」

女魔法「・・・勇者が作ったのがいい。」

勇者「俺が? そ、そうか。じゃぁ・・・材料は3樽ほどあるし蜂蜜でも用意してもらおう。」

女僧侶「やったー、野菜がありますわー。最近ずっとお肉ばかりで恋しく思っていましたよー。」

勇者「瓶詰もかなり用意してもらった。当分は持つと思う。」

女僧侶「嬉しいですわ! 今日は腕に寄りを掛けましょう! ハーブもたくさんありますし!」


緑竜「どうだ、空飛ぶ人間!竜の中でも最速を体験してみるか!」

継子「緑さん一番早いの?」

緑竜「おうとも!私に比べればこいつら等空飛ぶカタツムリだ!さぁしっかり捕まっていろ!!」
バサァ!バサ!バサ!

緑竜「私は空気を味方だけにすることが出来る! すなわち抵抗を消し私を押すのだ!」
緑竜「噴射竜巻 真空帯び」

ヒュゴオオ!ヒュゴ!ッヴオオオオ!!

女魔法「・・・」
バサバサバサバサ!

勇者「は、はやいな。」

黒竜「あ奴は音速を超えて飛べる。しかし体に真空をまとう為体になんら影響はない。この場所は狭いためほぼ本気は出していないがな。」

女僧侶「真空を? 背中の子は大丈夫なのですか?」

勇者「・・・笑っているから平気なようだな。」

女僧侶「み、見えるのですか?」

勇者「あぁ。・・・お伽噺の竜騎士のようだ。」

黒竜「竜騎士・・・馬の代わりに私達に乗る存在か。ははは、ありえんだろうなぁ・・・。」

勇者「世界でもここに6しかいないんだからな。しかしあの子は元気に笑っている。」

勇者「さて、では詠唱に入る。荷物を持ってきて、ご飯を食べた後に返して、あの子とはまた少しの間さよならだ。」

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王城大広間 夜

スタスタスタ・・・
勇者(後は大時計だけだ。しかし・・・なんだ? さっき来た時は人がいたんだが・・・。)

王「・・・・・・やぁ、兄弟。ご苦労さん。」

勇者「兄さん。・・・何か御用でしょうか。」

王「他人行儀だな・・・。別に気にはしないが。」
グラス≪チャプ・・・≫

勇者「・・・すいません。通常の言葉づかいだと、あまりに失礼だと・・・。」

王「お前がそっちの方が俺に礼を失せぬと思ったならそれでいい。・・・さて、兄弟。」

王「わざわざ人払いしてお前を待っていたのはだな、一つご教授願いたかったからだ。」

勇者「・・・?」

王「・・・家を空けて全土を渡り歩くのはどんな気分だ?」

勇者「・・・・・・。」

王「私は生きてはいないから事実がどうかは知らないが、前代の勇者はちゃんと国の為に働いていた。単身魔物に向かい、退治して回った。」
王「確かにこの国に、加護者として生まれたというだけで生を縛るというのもおかしい話ではある。・・・しかし責任が全く無いというのもおかしな話だと思う。」

王「・・・お前の母は、この国に住んでいた。しかし今は居ない。どこに行ってしまったのか・・・。」

勇者「・・・・・・私は、あの人に辛い思いをさせてしまいましたから。あの人が、私を恨んでしまうのも・・・」

王「甘く見るな、アレはそこまで嫌な人間ではない。」

勇者「・・・?」

王「今に比べれば幼いお前を睨んだアレは、お前が憎くて睨んだのではない。」
王「お前を殺しかけた事や、捨てざるを得ない事に深く深く悲しみを覚えて、自分を嫌悪して、自分を罪人だと捉え、」

王「そうしてしまった自分を醜悪だと感じてしまうのだ。忘れる事も出来はしまい。お前を生んだ母なのだから。」

勇者「・・・。」

王「つまりはお前はアレにとっての罪の証足り得てしまうのだ。お前を見るは己の罪を見るのと同じ。自然と目も鋭くなるさ。」

王「不思議な物だ。実子と血の繋がりが無いとは、神の奇跡としか言いようがない。」

王「つまり私もお前とは本当の兄弟ではないのだ。カッコウのように腹だけ借りて産まれてきた存在。」

勇者「・・・っ! そ、その言葉の意味は・・・。」

王「アレが私達を残して消えてしまったのは仕方がないと思うよ。しかし酒に酔ってしまった今お前に辛辣な物言いをしてしまうのは許してくれ。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・この人は、俺の本当の兄、なのか・・・。いや、それより・・・。)

勇者「俺が・・・産んだ母と血が繋がっていない・・・?」

王「・・・前王か、意図的に図書館には情報を送らなかったか。まぁ、仕方あるまい。」

王「若い頃に見た私達の母を思い出してみろ。髪の色、目の色。」
王「何一つお前とは合うまい。私はアレからこの青い目を継いだがね。」

勇者「・・・!」

王「・・・それで? お前はこの国を外れて一体何をしているんだ。母を取り戻してきますと張り紙一枚残して、」
王「母とはどうせ図書館に憑いた影の事で、私たちの母ではないのだろう?」

勇者「・・・影の事を、知っているのですか。」

王「ふむ・・・。」
グラス≪チャプ≫

グラス≪クィ≫
王「・・・」

グラス≪・・・≫
王「ふぅ・・・。・・・・・・私がどれだけ知っているか、知らないかそんなに重要な事かね、弟。」

勇者「・・・?」

王「酒の勢いとは言え打ち明けたぞ。私はお前の・・・・・・本当の兄弟とな。血のつながりはないが。」

王「・・・教えてくれ。私が知らない事も、知っていることも、全てお前の口から聞きたいのだ。」
王「お前と精神的な受け責めを楽しむ為に人払いをし、わざわざ待っていたわけじゃないんだ。」

勇者「・・・。」

王「紛い物とは言え、お前は私の弟で、私はお前の兄だ。知っておきたい、お前をな。」

勇者「・・・・・・。」

王「・・・いかんな、今日は酔いが回りすぎる。許せよ兄弟。」

勇者「・・・。」

王「・・・。」

勇者「・・・・・・私は、図書館に居た影を、母と呼んで慕っていました。」

王「・・・。」

勇者「ある日、影は言いました。私を封印しなさいと。あなたの魔力を使って、私を殺しなさいと。」

勇者「私は言ってる意味を理解できたものの・・・何故なのか理解出来ませんでした。」

勇者「何故も何もない、私の存在がついにばれてしまったと影は言っていました。そうなれば、間違いなくあなたに災いが起きると。」

勇者「・・・影はいつか別れが来るとさんざん言っていました。ついにそれが来てしまったと言われました。」

勇者「・・・・・・私は、言われたとおりに封印しました。影は言いました、封印を解くときが、最後の別れだと。」

勇者「影は・・・魂だけの存在で、封印が解かれたら霧散してしまうらしい。」

勇者「影は・・・私が唯一傍に居れた会話のできる存在でした。ぬくもりも、何も無かったけれど・・・」

勇者「次の日から、私はまるで抜け殻のように何もせず過ごしました。3日ほど立ち、脱水症状に陥ってしまってから、ようやく動き出しました。」

勇者「とても近い死の感覚。死の存在感を隣に感じて、私は思った。」

勇者「死ねば最後にすら立ち会えないと。それだけは嫌だと。」

勇者「死の淵から戻って、日々を過ごすうちに俺の心はどんどん寂しさが広がっていった。」

勇者「母を・・・殺す為だけに日々を生きるのか? 俺は、それしかできないのか?」

勇者「ふと昔を思い出すだけで涙が流れてしまう日々。未来を思えば、悔しさで涙が止められない。」

勇者「その様に生きているだけの日々、そんななか、文通相手から手紙が届きました。」

勇者「ついに魔王が復活したと。魔王の大陸に近いこの大陸も魔王が活性化するかもしれない。」

勇者「魔王・・・魔王。人知を超えた魔法を使い、人間すべてを相手にしても一歩も引かない。」

勇者「そんな存在ならば、母を完全な形で元に戻せるのでは? そう、思って・・・」

勇者「・・・その、次の日には家を出ていました・・・。」

王「・・・なるほど。前王や、俺達の国の魔導師を頼らなかったのは、なまじ本による知識があって現時点での人間の限界が見えていたからか。」

王「自分が母と慕う者を、自分の手で喋ることも出来ぬ石くれに変えたと。」

王「足りん、足りんなぁ。」

勇者「・・・?」

王「気持ちの吐露が足りん。敬語で締めたのが証拠だ。」

勇者「・・・すいません。」

王「ふん、ほれ。」
ポイ

勇者「・・・。」
グラス≪パシ≫

ガタ!
王「・・・。」
スタスタスタ

王「飲め。」
瓶≪ジョボジョボジョボ≫

勇者「・・・。」
グラス≪ジョボジョボジョボ・・・≫
グラス≪・・・≫
勇者「・・・・・・。」

王「どうした、魔王に挑むことに物怖じしない癖に、初めての酒は物怖じするのか。」

勇者「・・・・・・。」

王「それとも一人では飲めぬか。まだ乾杯はしないぞ。」

瓶≪チャポン≫
王「・・・」
グビ、グビ、グビ・・・

勇者「・・・っ」
グラス≪チャプ≫

ゴクゴクゴクゴク・・・

勇者「くっ・・・。」
勇者(・・・不味い。)

王「はっはっはっ、別に杯を飲み干す必要も無かったのに。」

勇者「・・・酒は料理によく使いますが、こんな味をしていたのですね・・・。」

王「顔に出ているぞ。こんなものを好む奴が理解できないとな。」

勇者「そんな事は・・・。」

王「お前は今こんな奴が一国の王だとは信じられないと思っているだろう。」

勇者「い、いえ・・・。」

王「酒は人を曝け出す。この荒っぽいのが私の本質だ。」
王「良くも悪くも、今日は酔いすぎている。なぁ兄弟。」

王「お前はいつ酔っぱらうのだ?」

勇者「・・・。」

王「・・・お前が加護者としての責務を全うせずにふらふらしている理由は分かった。」

王「だがまだ気持ちは聞いていないなぁ。聞かせろ弟。」

勇者「・・・私が旅に出て、長い月日が経ちました。」
勇者「生きていた年月に比べれば、短い日々。しかし起こった事の濃さは、私の人生の半分は占めるでしょう。」

勇者「全てを語るには、私の口は足りません。」

王「分かってないな。酒を知らぬお子ちゃまの口だ。」
王「そんな口からこぼす整えたいい訳など何の価値も無い。」

剣≪スラッ≫

酒瓶≪ガシ!≫

コルク≪・・・っポォン!!≫

剣≪スチャ≫

王「酒を開けるのに、コルク抜きなどいらぬ。男なら常にかける腰物で開ければいい。」
王「酒を飲むのに取り澄ます必要もない。男は常に荒々しく有る。少なくとも心のどこかに激情を隠す。」

王「それが男だ。グラスを変えろ、軟弱な酒などもう飲まん。」

ショット≪ガチャ≫

王「お前は初めてだ、小さ目から行け。」

勇者「・・・。」

王「また一緒に飲るか。」

ショット≪トクトクトクトク≫

王「・・・。」
グビ、グビ、グビ・・・

勇者「・・・っ」
クィ・・・
勇者「っっっ!~~~」

勇者「カハッ!カハッ!・・・す、すごい、味だ。」
勇者(喉が焼ける・・・!)

王「クはーっ!やっぱりこれだ。酒は強くなければな。」

王「お前は俺より物を知っているだろう。だが酒なら俺の方が知っている。」
ショット≪トクトクトク≫

王「酒を楽しむなら弱くてもいい。だが、酔いたいときはには、」
王「こんな酒がいい。おらいくぞ。」

王「・・・」
グビ、グビ、グビ

勇者「・・・っ」
ククク~・・・

王「ぷハー!」

勇者「クハッ!はぁ・・・。」

王「ふぃー・・・。どうだ、酒の味は。」

勇者「・・・好みだとは、口が裂けても言えない味ですね・・・!」

王「かっかっかっ。おう、いい感じに憎まれ口叩き始めてるじゃねぇか。」

王「酔いを回すには時間が居る。少し昔話をしてやろうか。」

王「あー・・・昔々ぃ、西に豊かな草原を持つ大陸が有りました。その大陸を収める国もありました。」
王「ある少年はその国に住んでいました。兵士に憧れ、剣を振り回して年上のガキさえ怪我させるワンパク坊主でした。」

王「彼は、そのまま大きくなって兵士になり、近隣に住む魔物をバッタバッタとなぎ倒してやると夢見て暮らしていました。」

王「そんなある日、少年の母親が身ごもりました。本来なら家族総出で大喜びと行くでしょう。しかし何やらおかしな雰囲気。」

王「母親が気分が悪いとのたまっているのです。父親はつわりの所為だといってましたがぁ、その顔は決して単純な顔ではありませんでした。」

王「そうです、母は神に選ばれ、受胎したのです。しかしそれは神の試練。十月の間受胎した母は苦しみつづけ、その間は家族さえ近づけない。」

王「決まりだとかそういうもんでもなく、そうせざるを得ない。これが魔王の呪い。しかし同時に神の試練。」

王「勇者は必要だから生まれてくる。神の加護と魔王の呪いを一身に受けても世界に必要だから生まれてくる。」

王「幸いな事に同性なら近くに居ても少しは平気。3mと近づけねぇが、身の回りの世話くらいは出来る。」

王「母親は耐えきりました。10か月耐えきって、産んで見せました。しかしその呪いの所為で誰も産湯につけらんねぇ。」

王「碌に洗われず棒につままれて約束の森に打ち捨てられて、そのまんま勝手にデカくなりました。」

王「しかし少年の方にもデカい問題が残りました。」

王「母親です、10か月もの間呪いの近くに居続けて、精神に異常をきたさない訳がない。」

王「衰弱しきってそのまんまあの世にいっちまいそうなくらいだった。しかし何とか持ち直した。」

王「だが心にでっけぇ傷が残った。呪いの所為だと周りが言っても聞けるわけねぇ。自分が身を切って産んだような存在を、」
王「産湯にも付けず森に打ち捨てて、誰がそのまま生きていけるってんだ?」

王「・・・・・・結局誰にもいえねぇ傷を抱えてバケモンが出たとか言う森近くの村に移り住んで、結構な間見守ってた。」

王「贈り物とかしてた。毛布いれたり、新鮮な野菜入れたりしてたらしい。」

王「さて一方の少年は、兵士になる夢をあきらめました。」

王「少年の母親は家族と縁を切ってしまったのです。デカい傷痕に押し潰されそうになりながら家族とは暮らせない。」

王「以前の家族より一人の子供の方に気持ちが傾いちまうんだ。」

王「なまじ男だから余計に気持ちがわかんねぇ。父親も自分の子じゃない奴に憐れんでも同情できねぇ。」

王「おかしいだろ、おかしいよな。一人の存在の為に、一つの家族がぶっ壊れる。」

王「こんなのおかしいって思って、勉強しだしました。王様になるために。」

王「おしまい。いや、つづく、かな。」


勇者「・・・・・・。」

王「だがよ、少年だって子供で居続けられねぇ。大人になるよ、そのうち。」

王「時間たって気持ちが落ち着くっつうのか、自分だけの視点から離れて他人の視点から見れる余裕って奴を持てるようになる。」

王「それで気付く。打ち捨てられた元凶はどんな気分なのかってな。」


勇者「・・・・・・。」

王「知れば知るほど、お前の存在が不憫だ。生まれる前から役割持たされて、産まれた瞬間さえ憎まれて、」

王「誰も自分にぬくもりをくれない。」

王「全く、前王にはほんと敵わねぇ。近くに居なくともぬくもりを感じさせてたんだからな。」

王「・・・はぁ、喋りすぎた。」

勇者「・・・・・・わけが、わかりませんよ・・・!」

勇者「私に何を求めているのですか・・・!」

王「・・・。」

勇者「私は・・・私は! 一体何のために・・・! 産まれてきたと言うんだ・・・!」

勇者「少なくとも! あなたを不幸にするためじゃない!」

勇者「そうだ!産まれてきたことに意味などない! 人が存在する事に毛ほどの理由などあるものか!」

勇者「ならば俺は・・・!神とやらの為に産まれてきたんじゃない・・・!!」

勇者「俺は俺だ! 俺は俺が・・・!役目を見出す・・・!」

勇者「そう、生きていくと・・・! 決めたんだ・・・!」

王「・・・その役目が影を生き返らせる事か?」

勇者「違う! 俺は・・・!幸せに・・・!」

王「役目だなんだは建前だろ。お前は結局自分の幸せを考えてる。」

勇者「・・・!」

王「吐け。自分の漏らした言葉は真実だ。心から堰が切れそうなくらい出てきかけてる気持ちがあるんだろ。」

王「我慢するな。出せ。俺が聞いてやる。」

勇者「・・・! 俺は!・・・俺は!!」

勇者「・・・寂しかったんだ・・・・・・。」

勇者「ずっと寂しかった・・・!旅に出ても、ずっと・・・!」

勇者「お母さんを封印した時・・・初めてぬくもりを感じた気がしたんだ・・・!」

勇者「それから・・・火の暖かさが嘘くさく感じて・・・!」

勇者「ずっと・・・!心が開いたように・・・!」

王「・・・そうか。」

勇者「商人・・・!守れなくて、すまない・・・!俺が、傍に居れない存在だったから・・・!」

王「・・・。」

勇者「・・・うっ」

勇者「うええぇぇ・・・」
ビチャビチャビチャ・・・

王「・・・。」

ケトル≪カパッ≫
コップ≪トクトクトク・・・≫

王「水だ。酔いが覚める。」

勇者「・・・。」
ゴクゴクゴク

王「・・・弟。顔を上げろ。」

勇者「・・・。」

王「・・・・・・今まで、放って置いてすまなかったな。」

勇者「・・・・・そんな、俺が、いなければ・・・」

王「顔を上げろって。な、弟。お前の事カッコウだとかいろいろ酷い事言ったけどよ。」
王「全部取り消す。お前は間違いなく俺の兄弟だ。」

勇者「・・・・・・。」

王「乾杯だ。コップを出せ。」

勇者「・・・・・・。」
コップ≪・・・スッ≫

ケトル≪カパ≫

コップ≪トクトクトク・・・≫

王「・・・。」
タンブラー≪カチャ≫

ケトル≪カパ≫

タンブラー≪トクトクトク・・・≫


王「中身は水だが・・・大事なのは飲み干す気持ちだ。」

王「乾杯。」

勇者「・・・乾杯。」

カチン

王「・・・。」
勇者「・・・。」

ゴクゴクゴク

王「・・・・・・ふぅ。吐きだした後は飲み込む。それが正しい酒の飲み方だ。」

勇者「・・・・・・。」

王「・・・これでお前の気持ちを俺は飲み込んだ。お前の悲しみは俺の悲しみだ。」
王「共有するぞ。いいな。」

勇者「・・・はぃっ・・・!」

お休みなさいおそくなってすんまそん

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王城大広間

勇者「ぐ・・・・・・。」
勇者(頭がぐわんぐわんと・・・!)

王「・・・幾らなんでも飲ませすぎたか。」

勇者「い、いえ・・・へい、き、です・・・・・・。」

王「やはりお前は負けん気が強いな。何処と無く私と似ている気がする。」

勇者「そう・・・でしょうか・・・。」

王「最初の杯を飲み干した時も思った。その後も私が注いだ酒を一口で飲みきった。」
王「血の繋がりは無いというのに・・・・・・兄弟なのだな、と、思ってしまったよ。」

勇者「そんな・・・残すのも失礼かと、思っただけ、で・・・・・・。」

王「私がそう思っただけだ。やはりなんだかんだ繋がりは有るのかもしれないと、なんとなく思った。」
王「私は昔からなんとなくで距離感を掴むことが多い。私の基本性癖で、根本の判断材料だ。」
王「そう思ってしまったなら私はそれでいい。」

勇者「う・・・・・・。」

王「今日は泊まっていけ。流石にその状態では詠唱などままならないだろう。」

勇者「い、いえ・・・あの娘は私とご飯を食べる事を楽しみにしています、から。」
勇者「戻らなければ・・・・・・。」
スクッ

勇者「うっ・・・」
ふらっ
ガタ!

王「・・・ま、それなら仕方がないか。さてと、」
王「もう入ってきていいぞ!」

勇者「・・・?」

扉≪ギギギィィィ・・・・・・≫

老人「失礼します。」

王「先ほどから扉の前に居たのはあなたか。」

老人「すいませんな、どうしても聞きたかったもので。」

勇者「・・・?」

王「見ての通りの状態だ、手短にな。」

老人「そこまで手間は掛かりませぬ。さて加護者殿。」

勇者「なんで、しょうか・・・。」


老人「私の目の前で転送術式を詠唱をして頂きたい。」

勇者「・・・・・・気になるなら、条件式を残しましょうか?」

老人「それは有難い事です。しかし今は大変朦朧としているご様子。後々帰ってきてからでよろしいですよ。」

勇者「そう・・・ですか・・・。」

王「弟、これを持って行け。」

瓶≪スッ≫

勇者「・・・?お酒、ですか・・・。」

王「お前が持っていった酒は強い物や癖のあるものばかりだ。これはまだ飲みやすかろう。」
王「いいぞ、酒は。ただ酌み交わしているだけで相手を分かった気になれる。」

王「戻るまでに慣れておけ。いいな。」

勇者「わかり、ました。」

勇者「では、詠唱を開始、します。15分ほど、かかります・・・。」

老人「やはり長大な詠唱が必要なのですな。魔力視。」

王「高低差を誤らぬようにな。さて、私は文官に怒られに行く。」
王「またな、兄弟。次会う時を楽しみにしているぞ。」

勇者「えぇ、また、兄さん。」

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ドラゴンの住処 夜

光球≪フワフワ・・・≫

継子「お父さん遅い・・・。」
緑竜「確かに遅いな。人間、どうなっている。」

女魔法「・・・よくわかんない。あまり気分はよくなさそう。」
条件図≪カリカリカリカリ・・・・・・≫

継子「お父さんの事離れててもわかるの?」

女魔法「魂がつながってるから、わかる。」

継子「へー・・・?」

緑竜「魂繋ぎの呪いだろう?人間にも条件確立が終わっていたとはそれなりに驚いた。」

女魔法「・・・このペンダントに籠められている魔法は初めて見た。」
女魔法「たぶんこれを作った人しかしらない魔法、だと思う。」

継子「それ作った人すごい人なんだね。」

緑竜「・・・・・・魂繋ぎの呪いを人間ごときが一人で条件を確立・・・?」

女魔法「おかしいの?」

緑竜「・・・・・・いや、別にな。不自然だとは、思うがな。」

継子「なんでー?」
ゴロン

緑竜「頭の上で寝っころがるんじゃない。・・・・・・人間は魂を感知しにくい種族のはずだ。」
緑竜「物質的な生命の根本特徴だ。特に人間は高次の物質組成をした複雑な動物。」
緑竜「魂を包む肉の膜が厚くなればなるほど魂という存在を感じる事が出来なくなる。そういう物だ。」

緑竜「だから、人間が魂を直接どうこうするという方法を編み出すのはものすごく難しい、と言える。」

女魔法「・・・ドラゴン達だって物質で出来てる。違いは?」

緑竜「寿命の差だ。長く生きれば生きるほど経験や知識などで不確かな物が分かるようになる。」
緑竜「私達は死なない種族。さらに転生する特殊な生態を持つ。魂を感じる事は他の奴達より長けているのだ。」
緑竜「他の理由もあるがな。」

継子「なに言ってるかぜんぜんわかんない。」
ゴロゴロゴロ

緑竜「落ちても知らんぞ羽人間。」

継子「落ちても飛べるもん。」

女魔法「あまり迷惑かけないようにね。」

継子「はーい。」
ゴロゴロ

緑竜「・・・・・・ふぅ。」

女魔法「出来た。」

緑竜「見せてみろ。」

継子「なに?」
ピョン!ブワァァ・・・

条件図≪・・・≫

継子「・・・・・・なに?」

緑竜「ふむ、まぁ、よいのではないか?耐用上限がかなり低くなってはいるが・・・」

女魔法「今回の魔法にはそこまで必要無いから出来るだけ削った。」

緑竜「まぁそうだな。」

女魔法「これで基礎が完成した。あとは応用。」

緑竜「範囲はどこからどこまでだ?」

女魔法「・・・出来れば全身。」

緑竜「全身か・・・ならばなおさら応用の為の基礎をしっかりしなければな。」

女魔法「ん・・・。電気信号の出発点から着信点の間だけを光に変換する条件を考える。」

緑竜「簡単に言うが、そんな微細な調整ができるのか?」

女魔法「わからないけど、これが出来なきゃ思考加速は無理。」

継子「・・・?」

緑竜「人間は自分の体の理解度はどのくらいだ?」

女魔法「・・・体は電気を利用してるくらい。」

緑竜「ほぼ、無知か。総当たりで条件解明をする気か?」

女魔法「ある程度は予測を立てる。」

緑竜「それはそうだろうが・・・。」

継子「おねえちゃん帽子貸して。」

女魔法「・・・」
帽子≪バサ≫

女魔法「ん。」
帽子≪ボスッ≫
継子「わっ。」

女魔法「汚さないでね。」

継子「すごーい、ぶかぶかー。」

緑竜「そういえば小さい人間はなぜそんな不必要に大きい帽子をかぶる?」

女魔法「・・・なんとなく。」

緑竜「そんなものか。」

女魔法「ん。」

バシュンバシュン!!

女魔法「っ。」
緑竜「おっ。」
継子「?」

大時計≪・・・≫
勇者「うっ・・・。」
ドサッ

女魔法「・・・勇者?」
緑竜「・・・?」クンクン
継子「お父さん!?」
タタッ

勇者「だ、大丈夫、だ。」
スクッ

勇者「うっ・・・」
ふら・・・ふら・・・

継子「本当?」

勇者「あぁ・・・・・・。」

継子「・・・お酒臭い。」

女魔法「・・・。」
すたすたすた

女魔法「・・・。」

ドンッ
勇者「うぉ」

ドサッ!
勇者「う・・・・・・。」

女魔法「・・・・・・なんでそんなに酔ってるの?」

勇者「向こうで少し付き合わされた・・・・・・。」

継子「おじさん?」

勇者「あぁ・・・兄さんに、少し・・・。・・・魔法の帽子を被っているのか。似合うな。」
継子「えへへへ。」

緑竜「仮面の人間は酒に弱いのだな。」

勇者「初めて飲んだだけだ・・・・・・。慣れればもっと・・・」

緑竜「・・・・・・ふむ、まぁそういう事にしておこう。」
緑竜「この木の造形物が・・・時計、というやつか?」

勇者「あ、あぁ・・・。」
むくっ

勇者「壊れやすいようだから・・・雨風をしのげるような場所に安置しておいてくれ・・・。」

緑竜「ふむ、茶にでも作らせるか。とりあえずはここに置いておこう。」

勇者「・・・・・・。」
クラクラ
勇者(首が座ってくれない・・・。)

女魔法「勇者、立てる?」
継子「だいじょうぶ?」

勇者「平気、だ・・・、」
スクッ

勇者「・・・・・・。」
ふら、ふら、

女魔法「ん。」
トサッ

勇者「す、すまない・・・。」

継子「わたしも!」
グィ!

女魔法「馬車の所までいこ。練炭焚いてある。」

勇者「あぁ・・・ありがとう。」

継子「えへへへ。」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
野営地点

女僧侶「あら?勇者様、どうしたのですか?両手に花ですけど・・・。」

継子「おとうさん酔ってる。」
女魔法「酒臭い。」

勇者「少し、酒に付き合わされた・・・。」
クラクラ

女僧侶「・・・少しという量ではなさそうですけど・・・・・・。」

勇者「戦士は・・・?」

女僧侶「勇者様が一度戻ったあたりで起きて、おかゆをかっ込んですぐ寝ちゃいました。さっきも言いましたよ?」

勇者「・・・そうだったか?すまない。」

女魔法「もうちょっとこっち。」
グィ
継子「こっちこっち。」

勇者「あぁ・・・?」
スタスタスタ

女魔法「よい、」
継子「しょっと。」

ドサ!!

勇者「・・・・・・。」
女戦士「ぐー・・・ぐー・・・。」

女僧侶「・・・勇者様がこんな状態ですし、今日のご飯は私が作りましょうか。」

勇者「平気、だ。手伝う。」
ムクリ

女僧侶「別にいいですよ?材料の下ごしらえはもう終えてますから、すぐできますよ。」

女魔法「大人しく寝てて。」
継子「またお怪我するよ?」

勇者「・・・じゃぁ、ジュースでも作る。」

女魔法「・・・。」
継子「おとうさんジュース作れるの?」

勇者「あぁ、まぁ・・・。」

女僧侶「・・・火を使わないしそのくらいなら大丈夫でしょうかね。ではお願いします。」

勇者「あぁ、わかった。」

女魔法「・・・・・・ほんとに大丈夫?」

勇者「酔っても料理くらい出来る・・・。」

女魔法「・・・・・・。」
じー

継子「ジュースたのしみー。」

―――――――――――――――

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野営地店 夜明け過ぎ

勇者「・・・む?」
パチ
女魔法「スゥ・・・スゥ・・・。」

勇者「っ!!」
ビクゥッ!
ガバ!

勇者「・・・っ!?」


継子「クー・・・クー・・・。」
女魔法「・・・?」
むくり

勇者「ぐっ・・・。」
頭≪ズキン!≫

勇者「・・・。」
勇者(頭痛がする。・・・魔法の顔が目の前に・・・。)

女魔法「うっ・・・?」

勇者「どうした魔法。」

女魔法「・・・頭痛い。」

勇者「・・・魔法も?」

勇者「・・・・・・?」
勇者(昨日の記憶が曖昧だ・・・。たしか・・・帰ってきてから飲み物を作って・・・。)

女戦士「あ、起きたのか二人とも。」

勇者「戦士。そっちこそ、起きていたのか。」

女戦士「いやーたっぷり寝たぜー。夜明け前に目が覚めちまってよ。しかしお前ら・・・」
女戦士「私がいない間に随分仲良くなったんだな?」

勇者「は?」
女魔法「・・・?」

女戦士「おでこくっつけて寝てたじゃん。間にあの子挟んでさ。」

勇者「・・・っ。」
勇者(さ、さっき妙に顔が近かったのはそれか!)

女魔法「・・・・・・。」

女戦士「そうだ!勇者!お前卑怯だぞ私が寝てる間に酒飲むなんてよ!」

勇者「・・・酒を飲んだのは向こうで、帰ってきてからは飲んでいないぞ?」

女戦士「帰ってきてからも飲んだろ?」

勇者「いや?・・・飲んだ覚えは、無い。」
勇者(・・・・・・そもそも記憶が曖昧だが。)

女戦士「あれーそうなのか?酒瓶転がってたからてっきり・・・ま、いいや。腹減ったからなんか作ってくれ。」

勇者「あぁ、わかった。僧侶が作ったスープがある。とりあえずそれを温めよう。」

女魔法「・・・寝る。」

女戦士「2度寝か?」

勇者「そうだ、魔法。目的の思考加速魔法の進度はどの程度だ?」

女魔法「基礎は完成した。思考加速の前提条件に入る。」
女魔法「・・・もうちょっと脳に関しての情報が欲しい。」

女戦士「え?えーとたしか・・・電気を光に変える、だっけ?もう出来てんだろ?」
女戦士「それを人に使えばいんじゃねぇの?」

女魔法「人の頭はあくまで電気で動いている。この魔法は・・・まだ完成してないけど電気の移動を省略する魔法・・・になると思う。」
女魔法「始点と終点は電気じゃないといけない。」

女戦士「あー、魔法ってのはめんどくさいんだなー。」

勇者「その分効果は絶大な物が多いだろう。火矢」
練炭≪ボボウ!!≫

勇者「しかし、脳に関しての情報か・・・解剖学の域を超えているな。」

女魔法「私は魔法はたくさん習った。けど人の体はそこまで習ってない。」

女戦士「人の体ねー・・・。あ、あいつらに聞いたら?」

勇者「あいつら?」

女戦士「火と連と光。あいつらあんなところにいたんだし詳しいんじゃね?」

勇者「確かに・・・研究もしていたようだし、むしろ専門家か?」

女魔法「・・・。」

女戦士「使えるものは使わないとな。私たちは後がないんだから。」

勇者「・・・そうだな。あまり思い出させたくはないが・・・。」
勇者「それで、今日出発してもいいのか?」

女魔法「・・・ん。平気。」

女戦士「よし。じゃぁさっそくドラゴンに頼むかー。」

勇者「その前にあの娘を向こうに送り返してからだな。」

女戦士「そういえばあの子供は誰の子供なんだ?」

勇者「・・・・・・俺の子、かな。」

女戦士「え?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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西大陸聖国家地下 転送術式用小部屋

バシュン!

勇者「よし。」
継子「・・・・・・。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・なんて切り出そうか。また少しの間・・・)

継子「・・・またね、お父さん。」

すたすたすた・・・

勇者「・・・まだ頭痛がするのかい?」

継子「・・・もうだいじょうぶ。」

勇者「・・・。」
スタスタスタ

勇者「飴をあげよう。」

継子「あめ?」

勇者「あぁ。」
ゴソ
勇者「はい。」

勇者「昨日の薬屋のおばあさんから貰った。君にあげてほしいって。」

勇者「あとは・・・こんな物しかないんだが、これもあげる。」

継子「・・・・・・おっきい。」

勇者「俺が作った木剣だ。あまり丈夫な物じゃないけどね。」
勇者「俺の短剣の大きさだから、君には少し大きいかな。」
勇者(比率的には一般的な兵士の剣くらいか。)

継子「・・・。」
ブンブン

勇者(この娘には少し柄が太いか。振りにくそうだ。)

勇者「飾りも何もないけど・・・。」

継子「ありがとうお父さん。すごくうれしい。」

勇者「・・・それならよかった。じゃぁ、俺は戻るね。」

継子「うん。」

スタスタスタ

継子「・・・おとうさん。」

勇者「何?」

継子「なんで普通に喋ってくれないの?」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・確かにこの子と話すときは口調が変わっているが・・・、特に意識した覚えはない。)

継子「特別扱いされてるみたいでなんかやだ。」

勇者「・・・そんなつもりは無かったんだが・・・・・・分かった。君と話すときもこの口調にしよう。」

継子「・・・うん。」

継子「またね、お父さん。」

勇者「あぁ、またな。」

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドラゴンの住処

白龍「いやはや、たくさんお土産を貰ってしまったね。」

青竜「果物おいしかったわー。ありがとね。」

茶竜「じゃぁな!」

緑竜「気が向いたらまた来い人間。酒を持ってな。」


女戦士「茶色いのありがとうな!ほんと助かった!!」

女魔法「・・・ありがとね。なんとかなりそう。」

女僧侶「今まで本当にありがとうございました。大変力が向上したと思います。」

勇者「運よくここにこれてよかったよ。」


白龍「では送ろう。赤色が連れてきた道の下山地点までになるが・・・。」

女僧侶「あ、あの・・・黒いドラゴンさんと赤いドラゴンさんはどちらに?」

青竜「知らない。昨日の夜から見てないもの。どーせ酒の飲みすぎでどっかで寝てるんでしょ。」

茶竜「赤は寝てるぞ!!水の中で!!」

勇者「・・・赤色のドラゴンにこれを渡しておいてもらえないだろうか。」

緑竜「む?・・・あぁ、あの魔力のこもった珠か。茶。」

茶竜「なんだ?!」

緑竜「吐け。」

茶竜「は?」

白龍「黒は・・・いったいどこに行ってしまったのか。」

青竜「全くあいつらは・・・。」

女魔法「・・・・・・。」
女僧侶「居ないのですか・・・。特にお世話になったため改めてお礼を申し上げたかったのですけれど・・・。」

白龍「私から伝えておこう。急ぐ旅なのだろう?本当なら君たちの目的地付近に送ってあげたいのだが、」
白龍「ここ100年は近づいていない為地形が分からない。下山場所が一番安定して転送できる場所なのだ。すまんね。」

女戦士「いやいや、送ってもらえるだけでありがたいって!」

勇者「あぁ、本当に、何から何までありがとう。」

青竜「私達も久々に楽しかったわ。ありがとねー。」

茶竜「おえ!!」
ボト!!

緑竜「人間、寄越せ。」

勇者「あ、あぁ。」

緑竜「ほら飲め。」

茶竜「うぐぐ」

緑竜「赤色には責任もって渡しておく、安心しろ。」

勇者「わ、わざわざすまないな。」

緑竜「ふん。」
ジャブジャブジャブ

緑竜「ほれ。」
ポイ
ドサッ

緑竜「こいつの魔力は物質属性だ。うまく扱え。」

茶竜「物を疑似的に増やせるぞ!」

勇者「あぁ、ありがとう。」

白龍「そろそろ送ろう。君たちだけを転送する。」


女戦士「んじゃ改めて本当にありがとうな!!すんげー助かった!」
女魔法「・・・ばいばい。」
女僧侶「このご恩は忘れません。ありがとうございました。」
勇者「この位置の座標は覚えておく。またな。」


青竜「ばいばーい。」
緑竜「またな。」
茶竜「母様によろしくな!」
白龍「それでは、転送術式詠唱開始」

勇者(・・・母様?)

白龍「詠唱完了」

バシュバシュバシュ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
大火山の麓

バシュバシュバシュン!!

馬1「ぶるるる・・・!」
馬2「ひひぃーん!!!」

女戦士「おおお・・・見渡す限り草原!!」
女僧侶「この光景も久々ですねぇ。」
女魔法「・・・・・・。」

勇者「さて、では行こうか。」

女戦士「いやしかし・・・馬車の中食糧でいっぱいだな。」

女僧侶「寝るスペース一人分しかありませんね。」

勇者「・・・こんなに荷物はあっただろうか。」

女戦士「まだ酔ってんのか?」

勇者「・・・・・・気のせいか。」

女魔法「・・・・・・。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
荒れた道

ガラガラガラガラ・・・

勇者「大分道が荒れているな。」

女戦士「あぁ、困りもんだな。食糧に瓶詰が多いから、割れないようにしっかり固定しとかねぇと・・・。」

女僧侶「確か、目的の場所まで五日でしたっけ?」

勇者「この道の荒れようだとそれくらいかかるかも知れないな。山の中腹から下山地点まで省略できたから、少しは早く着くが。」

女魔法「・・・・・・ねぇ勇者。」

勇者「なんだ?」

女魔法「ひと達と話したい。」

女戦士「夜まで待てないのか?」

女魔法「今。」

女僧侶「流石にちょっと難しいのではないでしょうか・・・。」

女魔法「・・・・・・。」

女戦士「よし、勇者!念じろ!」

勇者「は?」

女戦士「念じるんだよ!ひと達にとどけーってな!!」

女僧侶「・・・。」
女魔法「・・・。」

女戦士「な、なんだよその目は!!」

勇者「念じる、なぁ・・・?」
勇者(念じる・・・ふむ・・・。)

女僧侶「いえ、別に・・・。もしかしたら届くかもしれませんし、やってみます?」

女戦士「そうだそうだ!何もしないよりましだきっと!」

勇者(・・・・・・ひと達、おーい。)
勇者(駄目だこれは顔から火が出そうなくらいに恥ずかしいぞ。)

女戦士「うおー!!!ひとー!!!」

女僧侶「こ、声に出さずとも良いのでは?」

女戦士「気合だ!気合を込めるんだ!!」

女戦士「ひーとー!!!!」

女魔法「・・・夜まで待つしかないのかな。」

女僧侶「戦士さんの方法がうまく行けばいいんですけど、うまく行かなかったら夜まで待つしかないでしょうねぇ。」

勇者「・・・。」

女戦士「ほら勇者!声を出せ!!」

勇者「勘弁してくれ・・・っむ・・・。」

女僧侶「・・・・・・勇者様?どうされました?」

勇者(・・・来た、のか?)
勇者「まさか本当に来ると・・・は・・・。」
カクン

女戦士「通じた!!うおっしゃああ!!!」

女僧侶「・・・たまたまでは?」

女戦士「なにおう!」

―――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


勇者「む・・・。」

1106「おはよー。」
1107「おはよー。」

勇者「・・・おはよう。」

1106「ご用事は何?」
1107「なんで呼んだの?」

勇者「つ、通じたのか?」

1106「約束したのに来なかったから、」
1107「待ってた。」

勇者「約束・・・あぁ、確かにしていたな。」

1106「ゆうしゃぐっすり寝てた。」
1107「だから起こさなかったの。」

勇者「酒にやられていたからなぁ・・・、すまなかった。」

1106「それにゆうしゃは特別。」
1107「とくべつー。」

勇者「特別?」

1106「ゆーしゃはわたし達の所に来てくれたから、」
1107「わたし達もゆうしゃに呼ばれたらすぐ行くの。」

勇者「・・・そうか。」

1106「常に受信態勢!」
1107「かんどりょうこー!!」

勇者「・・・なんだそれは?」

1106「へいしのお兄ちゃん達が言ってた!」
1107「びじんセンサー発動!!」
1106「じーざす!俺のアンテナは壊れてるらしい!」
1107「俺のセンサーは常に一本調子だ!!君に向かって感度良好!!」

勇者「・・・それはあまり真似しない方がよさそうだな。」

1106「たのしーよ?」
1107「君のひとみにかんぱい。」

勇者「・・・まぁ、それはあまりよくない気もするが、置いて於いて、ひと達を呼んだ理由は魔法がな・・・」

1106「ぼうしのおねえちゃん?」
1107「どしたの?」

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

火「・・・」
連「脳の仕組み?」
光「なんでまたそんなのを?」

女魔法「思考加速魔法の条件解明に必要。」

連「んー確かにあそこで人体実験なんて飽きるほど見てたけど・・・。」
光「細かい所まではちょっと難しいわねー。」

女魔法「少しでもいいから脳について教えて。」

火「・・・とっても難しいよ?」

女魔法「時間が無いから、急がなきゃ。」

連「記憶だけで脳の仕組みレクチャーって無茶だと思うんだけど・・・」

光「3人寄れば文殊の知恵とは言うわ。がんばってみましょ。」

火「勇者さんも習ってく・・・?」

勇者「い、いや、俺はいい。現実世界で練習しておくべき事があるからな。」

連「そー。ま、精々がんばってね。」
光「応援してるわ。」

勇者「あぁ、3人とも、よろしく頼む。」

火「任せて・・・。」

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馬車

勇者「む・・・。」
むくり

女僧侶「あ、勇者様、起きられました・・・」
黒髪の子供「いやぁ人間さんおはよう!!寝坊助だな!!」

女戦士「・・・。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・誰だ?)

黒髪の子供「うむ!すがすがしい!いやはや転生というのは何度体験しても気分が高揚するというもの!」

女戦士「えっとだな・・・。どっから説明すっか・・・。」

黒髪の子供「人間の体に調整してみたがうまくいって助かった!形態変換には時間がかかるがおかげでばれないだろう!」
シュシュシュ!

勇者「・・・・・・。」
勇者(転生、人間の体、そして口調・・・、いや、まさかそんな・・・。)

女僧侶「えと・・・こちら黒色のドラゴンさんらしいです。」

黒竜「久しぶりだな人間!ハハハハハ!」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・・・・。)

女戦士「あー・・・荷物で隠れてたんだけど・・・ちょっとこっちこい。」

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馬車内

卵の殻≪・・・≫

勇者「・・・随分大きい卵だな。」
女戦士「ゆで卵何百個分だろうな。」

女僧侶「荷物で隠されてたんですの・・・。」

勇者「俺が持ってきた量にしては荷物が多いとは思っていたが・・・!」

黒竜「はははは!とにもかくにも大成功だ!これで私は監視を逃れた!」
黒竜「魔力補充が厄介かもしれんが死にそうになったら戻ればいいだけの事!」

勇者「黒色のドラゴン・・・、いったいどうするつもりだ?」

黒竜「心配するな!お前たちには迷惑はかけんさ!」
黒竜「いやはや人間を見上げるなどなかなか貴重な体験だ!ハハハハ!」
バシバシバシ!

勇者「・・・。」
勇者(ず、頭痛がしそうだ・・・。)

女戦士「進んでたらいきなり馬車から変な音がしてよ、見てみたらスッパのこいつがいたんだよ。」

女僧侶「真っ先に発見したの私ですよ・・・。幸い子供の大きさでしたけど・・・。」

黒竜「悪いなわざわざ服を貰って!」

勇者「・・・よく見たら俺の服か。だぶだぶだな。」

黒竜「貰ってなんだが少し背中の方に切れ込みを入れてもらっていいか?」

勇者「切れ込み?」

黒竜「これでは翼が出せん!」

女戦士「翼?今は人間じゃないのか?」

黒竜「形態変化は私の十八番だ!今は見かけは人だが緑の様な形にもなれる!」

勇者「どのぐらい入れればいい?」

黒竜「縦に二本適当に入れてくれればあとは勝手に広げるさ!」

ビリビリ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
馬車外

黒竜「よっと!」
スタッ!

黒竜「すぅーふんんんんん・・・!!!」
メキメキメキメキ・・・!

女僧侶「わわ。」
女戦士「おー。」
勇者「・・・すごいな。」

バサァ!バサ!

黒竜「うぅむ!まだまだ慣れていないから翼を出すと手と足も変わってしまうな!」

女戦士「顔にも鱗が出てるぞ。」

黒竜「おっといかん!人前ではこの姿にはなれんな!」

黒竜「それではさようなら人間さん!またいつか会う日まで!!」
バサ!バサァ!バサァ!

勇者「ちょ、ちょっとまて!少しくらい説明してくれ!!なんで人間に!?」

黒竜「残念ながら君たちに話す事は私の捕捉に繋がる!ではな!!」
ヒュオオオ―――――――・・・・・・

女戦士「・・・行っちまった。」
女僧侶「な、なにがなにやら・・・。」

勇者「・・・・・・そういえば魔法は?」

女僧侶「上で寝てますよ。」
女戦士「魔法はなんか知ってんのかな・・・。」

勇者(・・・卵の状態でも動けるものなのか?俺たち全員が知らない間に紛れ込むなんて無茶のような。)
勇者(協力者がいたと言う事になるが・・・どうでもいいか。)

勇者「まぁ、いい。過ぎた事だ、いつまでも気にしても仕方がない。しかしドラゴンの卵の殻か。」

女僧侶「希少価値は高いでしょうねぇ。」
女戦士「でも私たちにとっては邪魔でしかない。道に捨てようぜ。」

勇者「そうだな。場所を取りすぎる。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


卵の殻≪ガンガランガラン!≫
破片≪ザシャァ!≫

女戦士「なんだこれ重い上にかってぇ!」

女僧侶「こんなのから出てくるなんて、子供の様に見えてもドラゴンさんは強いんですね。」

勇者「・・・やはり少しもったいないな。一部貰おう。」

女戦士「割るのもめんどくさいし破片にしとけよ。」

勇者「あぁ。・・・随分手触りがいいな。外側はつるつるしているが内側はさらさらしている。」

女僧侶「工芸品向けの材料になりそうですね。」

女戦士「幾らなんでも固すぎるだろー。加工が難しいんじゃね。」

勇者「そのままでも防具になりそうだ。」

女戦士「・・・んー私も少しもらっておこう。」

勇者「あぁ、せっかくだしそうしておけ。」

女戦士「どうせならでっかい奴で!!おりゃあ!」
スパン!

ゴト!

女戦士「四角くしようかな!」
女僧侶「私の分もお願いします。」

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昼過ぎ


馬車≪ガラガラガラガラ≫


女戦士「・・・見渡す限り草原ってのも暇だなー。」

女僧侶「後ろ見ても火山の大きさは変わりませんからねぇ。」

勇者「景色が変わらないとまるで進んでいないようだな。」

女戦士「気が滅入るぜ・・・。飯まだ?」

女僧侶「魔法さんが起きて下さらないんですよね・・・。」

勇者「魔法は見た目からじゃ悟らせてくれないが、焦っていそうだ。」

女戦士「あいつが焦るってなんとなく信じられねぇな。」

女僧侶「そうでもないでしょう。勇者様が呪われていたとき戦闘になったらすぐ走っていたりしましたし。」

女戦士「焦ってるのか?それは。」

女僧侶「・・・焦ってるとは違うかもしれませんね。」

勇者「全く新しい発想の魔法を開発しているのに期間が短すぎるからな。ドラゴン達がいなかったら基礎さえ完成しなかったかもしれない。」
勇者「あとは応用だが・・・ここはアイディア勝負なところがある。閃けば開発期間は短く済む、かもしれない。」

女僧侶「本来ならアイディアを煮詰める時間も必要ですから・・・。」

女戦士「私だってすごい苦労したんだぞ!新技!!」

勇者「ドラゴン達との経験が有れば出来ると思ってたんだが・・・結局一人で完成させてしまっていたな。」

女戦士「我が道を往く!つっても茶色のドラゴンが色々してくれたんだぞ?」

女僧侶「そうなのですか?」

女戦士「うん。まぁ基本的に的だったけど、食らった感想とか教えてくれた。」

勇者「・・・確かに的は普通喋らないからな。」

女戦士「なんかすげー新鮮だった。今のは響いたとかちょっと痛かったとかそんなんだったけど感覚は掴みやすかったぞ。」

女僧侶「・・・そういえば戦士さん洞窟に籠ってた間ご飯食べてなかったようでしたけど、そんな状態で集中できたのですか?」

女戦士「あぁ、それは私の家の特別な方法なんだけど・・・・・・。」
女戦士「体を適度に渇かすと、ものすごく神経が鋭くなるんだよ。なんでかは知らない。」
女戦士「その状態に調整しながら技を考えて、そうなったら勇者と戦おうって考えてた。」

女戦士「だから飯食わなかったのはわざとだ。」

勇者「・・・身体を渇かすと、か。」
勇者(確かに経験があるな。時間の流れが遅くなる・・・というか。あの時は体を動かすことなどほぼ出来なかったが。)

女僧侶「もーほんと密かに心配してたんですからね?」

女戦士「もうやらないから大丈夫だって。あれはあくまで訓練の時にしかやらないからさ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


川≪サァァ・・・≫

女僧侶「ここから先は当分水を補給できませんから、節約しませんとね。」

女戦士「瓶詰がたくさんあるからまぁ大丈夫だろ。」

勇者「よし。そろそろやるか。」

女僧侶「何をですか?」

勇者「この石から魔力を取り出す練習だ。」
赤い石≪・・・≫
緑の石≪・・・≫
土色の石≪・・・≫

女戦士「? それなんだ?」

勇者「ドラゴンの胃石、だそうだ。ドラゴンの魔力が含まれている。」

女僧侶「ドラゴンさんの?」

勇者「あぁ。と言っても俺はどんな魔力か知らないんだけどな。」

女戦士「危なくねーの?」

勇者「どうだろうな。馬車から離れて試してみる。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

勇者(・・・このくらい離れれば大丈夫だろう。)

女戦士「おーい!!どこまで行く気だー!!」

勇者「この辺りで試す!!あまり近づくな!!」

勇者(・・・さて、・・・緑色のから試すか。)
勇者(魔力誘導を用いて・・・原始的な魔力動作をさせてみよう。これで魔力の特徴が掴めるはずだ。)

勇者「・・・・・・。」
緑の石≪・・・ヒュゴ≫

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

女僧侶「随分遠いですね。」
女戦士「離れ過ぎじゃね?それより魔法まだ起きないのか?」
女僧侶「えぇ。いくらなんでも寝過ぎですよね。ご飯も食べていませんし・・・。」


ズガアアアアアアアン!!!

女僧侶「!?」
女戦士「なんだ!?」

ヒュゥーーーーーーー

ドサ!ゴロゴロゴロゴロゴロ・・・

ザボン!!

勇者「・・・」

女僧侶「ゆ、勇者さまぁ!?」
女戦士「な、なにしてんだ馬鹿!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

勇者「死ぬかと思った。」
ポタポタポタ

女僧侶「本当に死んじゃったかと思いましたよ!!!」
女戦士「すげぇな、100mは飛んだぞ。」

勇者「なんとか受け身は取れたが・・・あぁ危なかった。」

女僧侶「い、いったいどうしたんですか!?」

勇者「魔力誘導して石から出てる魔力を発動したんだ。」

女戦士「・・・つまり?」

勇者「この石の魔力を少し使った。」

女僧侶「そ、それだけであんなに飛びますか普通!?」

勇者「俺も予想外だった。・・・これは他の石も慎重に試さないとな・・・。」

女僧侶「ま、まだやる気ですか?さっきのも肩や腕の骨等々折れかけていたんですよ!?」

勇者「少量であの威力なら、うまく使えば大きい武器になってくれる。使いこなさなければ。」

女戦士「それはまぁいいけど、」
女僧侶「よくありません!!怪我で済まなかったらどうするおつもりですか!!」

勇者「・・・次はもっと慎重にやる。落ち着いてくれ僧侶。」

女僧侶「駄目です!!石を預かりますから出してください!!」
女戦士「はいはい聞き分けろって僧侶。」
ガシ

女僧侶「ちょちょっと離してください!!いくらなんでも危なすぎますよ!!」
女戦士「危ないもんはそれだけ便利なんだよ。包丁みたいなもんだろ。」

女戦士「私が抑えとくからお前は練習してていいぞ。」

勇者「すまないな。」

女戦士「体の一部落としたりしないように慎重にやれよ。」

女僧侶「せ、せめて近くに居させてください!!何かあったらすぐ回復できるように・・・!」

女戦士「巻き込まれたらどーする。女は大人しく後ろで待ってろって。」

女僧侶「あなたはどうなんですか!!」

女戦士「だから私も離れてるって。」

勇者(・・・魔力を使う時は石から直接使うのではなく分離して離れた場所で発動させるべきだったな。迂闊だった。)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ズガアアン!!

勇者「・・・っ。」
勇者(凄い威力だ。俺の爆雷より衝撃力が高い。)

勇者(次は赤い石を・・・。)

勇者(・・・・・・)

勇者(・・・怖いな。あのドラゴンの胃石か。なんとなく危なそうな気がする。)
勇者(発動距離を伸ばそう。)

勇者「・・・。」
赤い石≪・・・コォォ≫

地面≪ドロォ・・・≫

勇者「っ!」
チリチリ・・・!

地面≪ドロドロドロ・・・≫

勇者(こ、これは・・・振動属性のようだが・・・!なんだこの桁違いの出力は!)

草≪ボボォ!≫

勇者「い、いかん!反振動魔法!」

草≪シュゥ・・・≫
地面≪シュウウ・・・≫

勇者「これを最初に使っていたら・・・・・・」
勇者(腕が無くなっていたかもしれん。)

勇者(・・・これを武器に応用するのは少々無茶か。俺の全力より高い出力だ、武器が持たないだろう。そのまま使うには良いとは思うが・・・。)
勇者(広範囲を燃焼してしまう。使いどころを誤ると仲間に被害が及ぶな。)

勇者「次は茶色い石。物質属性だと言っていたが・・・。」

勇者(そういえばこの属性には詳しくないな。単純に物を生み出す魔力と考えていいのか?)
勇者(物質といってもたくさんあるんだがな・・・。取りあえず使ってみよう。)

勇者「・・・。」
土色の石≪・・・≫

勇者(む?)

勇者「・・・。」
土色の石≪・・・。≫

勇者(・・・発動しない?・・・条件式前提の魔力なのか?)

土色の石≪・・・≫

勇者(・・・だめだ発動しない。たしか研究所の3人娘の一人が物質属性持ちだったな。使い方を聞いてみるか。)

勇者(・・・ここが草原じゃなかったら赤い石の出力を試してみたいんだが・・・仕方がないな。)
勇者(しかしこの緑の石は汎用性が高そうだ。上手く扱えば機動力が高まるかもしれない。)

勇者(魔法剣の練習の後に石の練習をしよう。自由に出力を変えられるくらいにしなくてはな。)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


女僧侶「本当に肝を冷やしましたよ。」
女戦士「私も流石にびびったなー。人があんなに飛ぶのは初めて見た。」

光「相変わらず心配かけてるのねあなた。」
連「ドラゴンの胃石かー。汚いなーなんとなく。」
火「・・・。」

勇者「俺だってびっくりしたぞ。」

女魔法「・・・勇者は物から魔力を取り出したことないの?」

勇者「無いな。」

女魔法「・・・・・・杖を使ってると慣れるよ。」

勇者「そうなのか?」

女魔法「杖を使うのも魔力を取り出すのも原理は一緒。」

勇者「ほう、やり方を教えてくれないか?」

女魔法「・・・起きてからね。」

連「えーっとそれで、物質属性の使い方だっけ?」

勇者「あぁ、そうだ。上手く発動してくれなくてな・・・。」

連「多分それ発動してるよ。ただこの属性は最小単位がものすごく小さいからさ、分かりにくいんだよね。」

勇者「どういう事だ?」

光「物質属性は原子を疑似的に生成するのよ。」
火「原子は小さすぎるから・・・目には見えない・・・。」

連「どれに分化させるとか結合させるとかは条件式で指定しないと無理なの。いくつか基本的な式を教えるから明日試して。」

勇者「すまないな。」

女僧侶「あの、4人とも今日はずっと夢で話し合っていたんですか?」

光「そうなるわね。」
連「流石にちょっと疲れた気がするなー。」
火「・・・。」

女魔法「・・・脳は複雑すぎる。」

連「思考加速魔法の特徴聞いて必要そうな所だけ教えてるけど、いやほんと無茶無茶。」
光「脳神経の構造、軸索とか髄鞘とか・・・この辺りはまだまだ研究が進んでいない所だから・・・」
火「手に余る。所詮私達は・・・若造だったし・・・。」

女戦士「お前らでも難しいの?」

連「そりゃぁ非合法な場所にいたから他の研究所とかよりは研究進んでるかもしんないけどさ。」
光「それらすべてを理解できるかって言ったら別の話よね。」
火「私達は魔力回路についての研究が専門・・・・・・。」

女戦士「てことは全然すすんでねーってこと?」

光「・・・残念ながらね。」
連「でもこの子すごいね。知識の吸収率が半端じゃないよ。」

女魔法「・・・勉強は慣れてる。」

火「・・・?」

勇者「魔法は頭がいいからな。しかし・・・じゃぁ一日中何をしていたんだ?」

女魔法「そこまで知識のいらない方法の模索。」

光「4人寄れば文殊の知恵よ。」
連「魔法研究ってのもなかなか楽しいしね。」
火「うん・・・。」

女僧侶「・・・根を詰めるのは仕方がないにしてもご飯位は食べて下さいね。お三方も。」

女戦士「そうだぞー。親身に手伝ってくれるのはありがたいけど、自分の体も心配しろよ。」

連「へーきへーき、3日食べなくても死にはしないもん。」
光「そーそー。」

勇者「そうでもない。水くらいは飲んでおかないと本当に死んでしまうぞ。」

火「・・・経験談?」

勇者「・・・死んではいないから経験談ではないかな。」

女戦士「そういえばお前ら一日中寝てるわけだけどおねしょしてないよな?」

連「は?」
光「んー・・・何を言ってるのかしら?」

女僧侶「またあなたは突拍子もない事を・・・」

女戦士「だってトイレにも行ってねぇんだからいつの間にか漏らしてたーとかあるかもよ?」

火「・・・。」
女魔法「・・・。」

女僧侶「・・・た、たしかに否定はしきれないとは思いますけど・・・・・・。」

連「・・・明日からはトイレ休憩くらい儲ける事にしよう。」
光「そうしましょうか。」

勇者「・・・まぁ、適度に休憩は取ってくれ。」

連「この世界って肉体的疲労が無いからいつまででも居れそうなんだよねー。」

光「頭もあんまり疲れないものね。」

女僧侶「現実の方にも気を傾けて下さいね。」

女戦士「起きたら漏らしてたなんて嫌だしな。」

勇者「・・・。」

連「話を蒸し返さないでよ。」

光「あなたって本当に女なのか疑問に思う時があるわ。」

女僧侶「このデリカシーの無さは良い所でもあるんですけどね・・・。」

女戦士「へへん!目くそ鼻くそ笑ったってしかたねぇだけだ!」

女僧侶「それとこれとは話が別でしょう。誰しもが持つ恥じらいという物です。」
女僧侶「あなたは今この場で裸になれますか?」

女戦士「・・・・・・。」

勇者「・・・・・・。」

女僧侶「無理でしょう?」

女戦士「くっ・・・!私に二言はねぇ・・・!」
服≪ガッ!≫

勇者「まてまてまて服に手を掛けるんじゃない。」
女僧侶「貴方には本当に恥じらいは無いのですか!?」

女戦士「だってあんなこと言った手前、裸位になれねぇと・・・」

連「だからそれとこれとは話が違うつってんの!」
光「この場に男が居なかったら本当に裸にくらいなりそうだわこの人・・・!」
火「痴女・・・。」

女戦士「別に私に露出癖はねぇよ!!脱げるもんなら脱げって言ったのはこいつだろ!」

女僧侶「ですから普通は脱げるわけがないでしょう!?デリカシーと恥じらいの違いを説明するためにですね・・・!」

女戦士「どっちもそんなに変わんねーだろ!」

女僧侶「違いがあるからあなたは今ここで脱げないんでしょう!?」
勇者「ま、まてあまり挑発するな。」

女戦士「く、くそ!じゃぁ脱いで・・・!」

連「やめろよばか!!」

光「その場の勢いに任せて行動するのはやめなさい!!」

女僧侶「貴方はいい加減女性の振る舞いというものも覚えたら如何なんですか!?」

女戦士「う、うるせー!誰が馬鹿だ!私は餓鬼の頃から男みてぇに育てられてんだからそんなんできるか!!」

女僧侶「貴方の事情は教えてはもらっていますがだからと言って覚えなくていいというわけでも無いのでは!?」

女戦士「必要ねぇの!!剣振り回して生きるしかねぇんだから女らしさなんてほぼ邪魔なだけだ!!」

光「その割には貴方髪長いけど?」
連「あ、そういやそうだね。女らしさがいらないんだったら伸ばす必要もないんじゃないの?」

女戦士「う、こ、これは特別なんだよ・・・。」

火「特別・・・?」

女魔法「・・・。」

女僧侶「・・・その長い髪は、貴方のお母様の願いでもあるのではないのですか?」

女戦士「・・・そんな事いったって、戦場じゃ女なんて邪魔なだけだろ・・・・・・。」

女僧侶「それは、否定はしきれませんけど・・・・・・。」

勇者「・・・?」

連「・・・置いてけぼりくらってるのは分かった。」
光「何か事情があるみたいだけど・・・。」

女戦士「いや、別に人に話すことでもねぇからさ・・・・・・。」

連「話したくなければ話さなくてもいいよ。」

光「でも興味が無いとは言えないわね、ここだと。」

女戦士「・・・聞きたいの?」

火「・・・うん。」

女戦士「お前も?」

勇者「・・・まぁ。」

女戦士「・・・んー、別に面白い話じゃねぇんだけど・・・・・・。」

女戦士「お母様が言っただけだよ。貴方の髪は長い方が似合うって。」

女僧侶「・・・。」

火「・・・おしまい?」

女戦士「理由は今言ったのだけだ。」

連「話色々省いてない?」

光「お母様、ね。貴方にしては不自然なほど丁寧な言い方ねぇ。」

女戦士「別に子供の頃からの癖だよ。お父様、お母様って家では呼んでたんだ。」

連「お母様は生きてるの?」

女戦士「死んでるよ。私が10くらいの時に。」

光「・・・はいはい、だいたいの話は分かったわ。さっきのはお母様の遺言なのね?」

女戦士「そう。ベッドの上で話してたら死んじまった。ぽっくりとな。」

連「でー、あんたの家柄は昔っから騎士かなんかなんだ?」

女戦士「あれ?言ってなかったっけ?私の家は退魔の血筋なんだって。」

連「退魔?」
光「聞いてないわね。」
火「・・・?」

女戦士「えーと・・・まぁ昔っから魔物に対して有利な力が有る家なんだよ。魔物退治に明け暮れてる一族だな。」

連「どんな力?」

女僧侶「ちょっと切っただけで大けがになる力とでも言いますか・・・。」

女戦士「えーと固い魔物も簡単に斬れる。再生能力があっても無視できる。魔物にとっては毒みたいなものを持ってる。」
女戦士「後はゴーストとかにもちょっと攻撃が効く、とかかな。」

勇者「剣の大きさ以上に攻撃範囲が広い、魔法を剣で無効化できる、剣の傷は回復魔法が効かない、などもあるな。」

女戦士「身を持って体験したもんなお前。」

連「・・・身を持って?」

火「どういう事・・・?」

女戦士「そのまんまの意味だよ。私がちょっと勇者の腹を・・・」

火「・・・。」

光「目が怖いわよ。」
火「っ・・・。」

女戦士「へっへっへっ、楽しかったぞー。抜き身だとこいつと同じ程度の速さになれるってわかったのも嬉しかったな!」

火「遊びで・・・?」

勇者「いや、もとはと言えば俺が無茶をいったのが原因で・・・」

火「何処を切られたの?」

女戦士「だから腹だって。もう少しで内臓出ちゃうところだったなー。」

勇者「そうなっていたら間違いなく死んでいただろうな。」

女僧侶「もう本当に以後やめて下さいねあんなことは。心臓に悪いなんてもんじゃありませんでしたよ。」

女魔法「・・・結果的に目的が達せられたんだから大丈夫。」

女僧侶「で、でもですね、万一という事が・・・」

女戦士「へーきへーき何回やったってどっちかが死ぬなんてことには早々なんねーよたぶん。」

火「・・・たぶん、恐らく、きっとなんて言葉には確実性は微塵もないはずよ・・・?」

連「・・・だからあんたさっきから怖いって。」
光「嫉妬かしら?」

火「なっ・・・。」

女戦士「嫉妬?なんで?」

女僧侶「自慢するかのような事言っておいてわかってないのですか貴方は・・・。」

連「殺し合いが出来るほどの信頼関係なんでしょ?もう一つの人間関係として完成してるじゃん。」

光「ねぇ。背中合わせより向かい合わせの方が親しい間柄なら難しいものよね。」

女戦士「あーそういう事か。」

火「・・・。」

女魔法「・・・どうしたの勇者。」

勇者「いや・・・さっきから居心地が物凄く悪い気がして・・・。」

女戦士「あ?なんで?」

勇者「俺以外全員女じゃないか・・・。」

光「あなたは女を引き付ける呪いもかかってる気がするわよ?」
連「呪いの影響で女の方が近くに居やすいってのもわかるんだけど・・・見事に女ばっかりだもんねあんたのパーティ。」

火「・・・・・・。」

勇者「魔物を引き付ける事ならあるんだが・・・。」

女戦士「女は魔性ってか。はははは。」

女僧侶「酷い言い草ですわね・・・。」

勇者「お、俺が言っているわけではないだろう?」

女僧侶「そんなことはわかってますよ。」

連「魔性の女かー。そんな本あったよね?」

光「えぇ、あったわね。美貌を生かし城主にすり寄って権力を握った女だったかしら。」

勇者「そ、その手の本なら俺も読んだことがある。大概が国が滅んだり城が落ちたりしてしまうな。」

火「・・・あたしたちが読んだのもそんな終わり方。」

女僧侶「私が知っているのも・・・そんな感じで終わりますねぇ。」

女魔法「大樹が宿木にやられるみたいな終わり方。」

女戦士「お前らってそういう本よく読むのな?」

女僧侶「この中だと読まないのはあなたぐらいでは?」

女戦士「わ、私だって本くらい読むさ!・・・嫌いだったけど。」

連「あたし達だって学術書以外だとそんなに読まないよ。」

火「そもそもそういう本がすごく少ないもの・・・。」

光「読む機会なんて研究員が気まぐれで本棚に入れないと無かったしね。」

女魔法「・・・娯楽本はそういう施設では少ないのは当たり前。」

女僧侶「まぁ、そうなのでしょうね。」

光「さて、雑談はこのくらいにして、続きをやらないとね。」

連「そうだね。明日の朝一度起きて・・・あーヒトヤにまた監視お願いしとかないとな。」

女戦士「ヒトヤ?なんでだ?」

連「うちには馬鹿共が多くてさ。」

光「寝てる間に何されるかわかったもんじゃないわ。」

連「ヒトヤはナリは大きいけどまだまだ子供だしね。なんだかんだ言う事聞いてくれるから助かるね。」

女僧侶「それはまた・・・、」

連「いい加減慣れてきたけどさー。まじふざけんなよお前らって感じ。」

光「冗談で覗かれるのは勘弁願いたいわよほんと。」

火「・・・女の敵だらけ。」

女魔法「・・・でも馴染むの早いね。」
勇者「あぁ、それは思うな。もっと壁が出来てもおかしくは・・・」

連「それは、まぁ・・・あいつらが・・・問答無用で絡んでくるし・・・。」

光「気にしない性質とでも言えばいいかしら・・・研究所だとあまり接触しないように監視されていたりしたんだけどね。」

火「初日に大きさ聞かれたときは本当にびっくりしたわ・・・。」

女僧侶「大きさとは・・・胸ですか?」

火「・・・。」
コクン

勇者「・・・堂々と性的な質問をするのか彼らは。」

女戦士「勇者は男とは付き合い薄いから知らないんだろうけど男なんて6割はそんなんだぞ。お前が珍しいだけだ。」

勇者「そ、そうなのか?」

女僧侶「え、えと・・・十代後半くらいの方はそういう方達も多いですね。」

連「あたし達の知ってる男なんてほぼそんなんだけどね。年は二十代だと思うけど。」

光「そもそもあいつらぐらいしか知らないんだけどね。」

女戦士「まぁそういう奴の方が仲良くはなりやすいもんだよな。放っといてくれないもんだし。」

女僧侶「・・・私はあまりそういう経験ないですからなんとも。」
女魔法「私も無い。」

勇者「双方どちらも兵士、傭兵と荒っぽい稼業をしているから意見に偏りが出ている気もするが。」

女戦士「ま、私にとっての男はそんなんばっかりだったよ。」

連「楽しいっちゃ楽しいけどね。」
光「いい加減胸やけしそうよ・・・。」

火「・・・いい加減再開しない?」

連「あっとそうだった。いけないいけない。」

光「そういう事だから、貴方達はもう普通に寝たら?」

女戦士「そうすっかー。寝た気が薄いもんなーここにいると。」

勇者「ひと達が戻ってきたらお礼を言っておいてくれ。」

火「わかったわ・・・。」

女僧侶「さきほども言いましたが、根を詰めすぎなようにしてくださいね。ではおやすみなさい。」

連「はいはーいおやすみー。」

光「またねー。」

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朝 夜明け過ぎ

女魔法「・・・。」

勇者「鉄生成」
杖≪ザス≫
土色の石≪ゴォォ≫

杖≪ベキベキベキベキ・・・!≫

槍≪・・・≫

勇者「ふむ。」

ヒュン!ヒュン!

ヒュヒュヒュ!

勇者「・・・かなり慣れが必要な魔法だな。」

女魔法「私が寝てる間貸してあげる。・・・勇者にあげたブローチでも杖代わりになると思う。」

勇者「元はこの杖だったからか。・・・魔力精製に便利なのだな。初めて知った。」

女魔法「・・・お腹減った。」

勇者「今から作るよ。ありがとうな魔法。」

女魔法「平気。勇者も頑張ってね。」

勇者「あぁ。解除」

槍≪ボシュゥ≫
杖≪・・・≫

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馬車≪ガラガラガラ≫

勇者「・・・」
短剣≪ゴオオオ・・・!!!≫

勇者(俺のナイフはいったいどこまでの熱に耐えることが出来るのか・・・今の時点での全力には耐えてくれるが・・・。)

草むら≪ガサッ!≫

勇者「おっと。」
短剣≪ヒュオ!≫

ドジュウウ!!
蛇≪ゲァアアア!≫
ビクンビクン
草むら≪ボゥ!≫
女僧侶「きゃあ?!」

勇者(・・・む?)

勇者「反振動魔法」
草むら≪シュゥ≫

女戦士「毒蛇か?」

勇者「あぁ。背の高い草が多いから、見つけづらいな。」
ザッ!

ズポ

短剣≪・・・≫
勇者(・・・今のは剣が熱せられていただけだが・・・魔法を物質に乗せる。ふむ・・・。)

女戦士「どうした?」

勇者「・・・なんでもない。行こう。」

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勇者「真空魔法渦」
杖≪ヒュオオオオオオ≫

勇者(・・・物質を通して魔法を構築する。魔法を飛ばすには飛ばすための条件式が必要。)

勇者(射手は矢に魔法を乗せることが出来る・・・らしい。様々な属性を一気にばらまく事が出来るとか・・・。)

杖≪ヒュォ・・・≫

ゴソ
短弓≪・・・≫

勇者(結局使っていないな。矢が貴重だというのもあるが・・・そうだ。)

ゴソ
土色の石≪・・・≫
勇者「鉄生成」
パキパキパキ・・・

矢≪ガラン!ガランガラン!≫

勇者(俺ではまだまだ材質は指定できないし生成物も不格好だが、作りたい形は大体は作れるか。)

弓≪ギリギリギリ!≫

勇者「真空魔法渦」

矢≪ヒュオオオオ≫

勇者(地面にでも撃つか。)
バスン!ヒュォ・・・

ザス!

勇者(撃った瞬間に魔法が消えてしまった。なんとか乗せたままに・・・)

女戦士「勇者、飯出来たぞ。」

勇者「わかった。今いく。」

女戦士「・・・早くこいよ。」

勇者(・・・同時魔法の練習、石の扱い、魔法を射手に乗せる・・・課題が多いな。ひとまず練習を繰り返さなければ。)

勇者(進行状況から考えてあと3日ほど。予定通りといえばそうだが・・・。)
勇者(・・・やはり不安だ。これが限界の速度だとは思うが・・・。)

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連「・・・んー、やっぱり神経の元素に当たりつけてそれに対しての気質特異性を条件に付随させて・・・」

光「その方法だと始点と終点の判別が出来ないっていったでしょ。形状を感知してそれに類して・・・」

女魔法「それだと条件に当てはまらない所、関係ないところに当てはまる、という欠陥が出てしまう。」

火「髄鞘の形ならまだやりやすいかな・・・?絞輪の部分が多いけど・・・」

女魔法「それだと再変換の数が圧倒的に増える。損失が多くなりすぎて無理。」

光「えーっとそれじゃぁ・・・」

連「頭痛くなってきた。」

火「恐ろしく難易度が高いわ・・・。」

女魔法「・・・・・・何か、無いかな。・・・・・・。」

連「あー電気と光が同じ特徴持ってたらまだやりやすいのになー。」

女魔法「・・・?」

光「無茶言わないで。ほら、考えましょう。神経にしかない構造上の・・・」

女魔法「・・・ん。」

連「光を神経経路に乗せる方法も考えなきゃいけないのに・・・。」

光「1日半かけても進度0はへこむわね。」

火「脳科学と魔法学は分野が違いすぎるわ・・・。」

女魔法「脳の構造・・・うー・・・。」

連「あーくそ、悔しいけどここにあいつがいたらなぁー。」

光「確かに人体の専門家だけれど、もうあいつはこの世には居ないわ。私達に出来る範囲でがんばりましょう。」

火「・・・でもそろそろ思いつかない・・・・・・。」

女魔法「・・・今回はもう解散にする。」

連「え?大丈夫なの?」

女魔法「気晴らししないと案も出そうにない。明日はお休み。」

光「確かにそれはそうかもしれないわね。はー・・・。」

女魔法「脳神経の特異性及び終点始点の条件と経路途中の障害の有無と電気的ロスと・・・」
女魔法「・・・課題が多すぎる。」

連「一発でばーんと解決できるようなアイディアが降って湧いてくれたら助かるんだけどねー。」

火「そのために集まっているようなものだけど・・・。」

光「とりあえず解散しましょう。今日はもう普通に寝て明日休んで・・・また夜からでいいかしら?」

女魔法「・・・ん。」

連「それじゃおやすみ。」
火「おやすみなさい・・・。」
光「おやすみー。」

女魔法「おやすみ。」


女魔法「・・・・・・ふぅ。なにか、ないかな・・・。」

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朝 馬車上

女魔法「・・・・・・。」
ボー・・・

女戦士「・・・。」

女魔法「・・・。」

女戦士「・・・・・・。」
顔≪グニィ≫

女魔法「・・・なヒ?」

女戦士「いや、ぼーっとしてるなんて珍しいと思って。」

女魔法「・・・少し疲れた。」

女戦士「そうなのか。ふぅーん・・・」

グニグニ

女魔法「・・・。」

女戦士「・・・。」
体≪ベタベタ≫

女魔法「・・・なに?」

女戦士「いや、どのくらい成長したかなーって。」

女魔法「・・・そう。」

女戦士「ちょっと膨らんできてないか?」

女魔法「・・・そう?」

女戦士「うん。やっぱり素材がいいなー、うん。」
ムニムニ

女魔法「・・・いたい。」

女戦士「だろうな。お前くらいの頃だと胸って触ると痛いもんだ。」

女魔法「そうなの?」

女戦士「気になるなら僧侶にも聞いてみ。たぶん痛かったって言うから。」

女魔法「ふーん・・・。」


勇者「・・・。」
勇者(何をしているんだあの二人は。)

勇者「鉄生成」
棒≪バキバキバキ!≫

パシッ

勇者「衝撃魔法球」
緑の石≪・・・コォ≫

棒先≪ヒュゴ!≫

勇者「すぅー」
勇者「・・・ふん!!」
ヒュパッ!

ヒュオオオオォォォォ・・・・・・


地面≪ザクッ≫

ズガアアアアアアン!!

鳥≪バサバサバサ!!≫

ヒュオオオ・・・
勇者「・・・。」


勇者(・・・よし、物に魔法を固定させる方法はわかった。弓にも応用できるだろう。)

勇者(杖はもういいだろう。練習したくなったらブローチもある。魔法に返すか。)

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馬車

女魔法「さっきのなに?」
女戦士「馬がビビッて落ち着かせるの大変だったぞ。」
女僧侶「飛び起きてしまいましたよ・・・。」

勇者「・・・それはすまなかった。夜の間に練習していた事を改めて試しただけだ。魔法、杖を返す。」

女魔法「あ、うん。・・・物質に魔法を固定したの?」

勇者「あぁ。手に握ったままだったら自由に魔法を動かせるんだが、手から離すとどうしても条件がぶれる。」
勇者「かなり強引な方法だが、物質生成時に条件式の回路を埋め込んで、魔力を固定できるようにした。」

勇者「この石が無かったら俺には使えない方法だ。」
土色の石≪・・・≫

女戦士「あー知り合いに弓矢に魔法乗せてる奴いたなーそういえば。」

勇者「一晩悩んでみたがどうやっているのか分からなかった。実際に見たことがある訳でもないしな。」

女僧侶「・・・そういえばその石は魔力が切れたりはしないのですか?」

女魔法「いつかは切れる。けど当分は持つはず。」

女僧侶「そうなのですか・・・。勇者様、目的の場所まであとどの程度ですか?」

勇者「予定通りすすんでいる。山の中腹から下山地点までを省略したから、今日含め2日日あればつくだろう。」

女戦士「道の影響は?」

勇者「思った以上に出ていない。・・・馬の状態はどうだ?」

女戦士「元気元気。まぁ2日くらいだったら普通に歩いてくれるよ。」

勇者「強いんだな。」

女戦士「歩き続けるのなら人間より得意だよこいつら。」

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昼 馬車上

馬車≪ガラガラガラ≫

女魔法「・・・。」
ぼー


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御者台

女戦士「あいつどうしたの?」

勇者「・・・さぁ。」

女僧侶「らしくないですよねぇ・・・?」

女戦士「あいつがただ空眺めてるのはまじで初めてだよな。」

女僧侶「えぇ・・・。いつもは考え事していたりするものですけど・・・。」

勇者「この馬車を使い始めたころは惚けたりはしていなかったしな。」

女戦士「お前ちょっと話聞いてこい。」

勇者「俺?」

女僧侶「今いくなら勇者様しかありえませんよ。父親代わりなのですから胸くらい貸してあげてください。」

女戦士「最近だと毎晩貸してるけどな。」

勇者「・・・貸しているのは腕だけだ。」

女戦士「いいから早く行け。」
グイ
女僧侶「甲斐性を見せて下さい。」

勇者「・・・。」
ガタ

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馬車上

ガタン!
勇者「・・・。」

女魔法「・・・なに?」

勇者「・・・・・・。」
勇者(どうしろと。)

女魔法「・・・座る?」
ズリ

勇者「・・・そうする。」
ドサ

勇者「・・・。」

女魔法「・・・。」

空≪・・・≫

勇者「・・・今日は雲が映えているな。」

女魔法「そだね。」

勇者「・・・。」
女魔法「・・・。」

勇者(この大陸に入ってからずっと天気がいい。こうして空を眺めるのも、いい物だ。)

女魔法「・・・。」

勇者「・・・。」
スゥ
ボスッ

勇者(あぁ、これはいい。ここで寝転がると、空しか見えない。)

女魔法「・・・」

勇者(柔らかな日差しだ。)

女魔法「・・・何か見える?」

勇者「空が見える。」

女魔法「ふーん・・・・・・。」

女魔法「・・・。」
ボー

勇者「・・・」
勇者(・・・・・・こうして魔法を眺めると、空を見ているというよりは考え事をしているような気がする。)

勇者(目が何も見ていない。空に何かを浮かべているのかもしれないな。)

勇者(こう見ていると空はなんでも受け入れてくれそうな気がしてくる。子供の頃の俺にも空は有った。)

勇者(誰にでも存在する普遍的な物か。)

ドス!!
勇者「うぐっ?!」

女魔法「・・・どうしたの?」

勇者「な、なんでもない。」
勇者(せ、戦士だな。天井部分が皮張りだから馬車の中から突かれてしまった。)

勇者(というか、会話を聞かれているんだな。何を話せと・・・。)

女魔法「ふぁ・・・。」
女魔法「・・・。」

ボスッ

女魔法「・・・。」

勇者「・・・。」

勇者(むしろ話しかけない方が良い気がする。思考を散らしてしまうだろう。)
勇者(少し前の魔法は考え事をする時はうつむいたり馬車の中に居たりしていたが今は違う。)

勇者(無意識に委ねている印象を受ける。)

女魔法「・・・。」

勇者(しかし一応聞いておいた方が良いのか?魔法の今の作業は高度すぎて俺ではついていけないし、無意味な気もするが・・・。)

女魔法「・・・。」

勇者「・・・思考加速の進度はどうだ?」

女魔法「まだまだ。」

勇者「そうか。・・・何か手伝える事はあるか?」

女魔法「・・・・・・・・・・・・。」

勇者「・・・・・・。」

空≪・・・・・・≫

女魔法「電気が通れる経路に光を通す方法を考えて。」

勇者「電気の経路に光を・・・・・・。」
勇者(・・・・・・。)

女魔法「なにかないかな・・・。」

勇者(・・・む、無茶だろう。)

女魔法「思いつく?」

勇者「・・・・・・戦士はどう思う?」

馬車『へっ!?あ、あーそうだな・・・』
馬車『どっちも使えば?』

馬車『あなたはまた考えなしに・・・、』

馬車『い、いきなり聞かれたってわかるかよ!』

女魔法「・・・。」

勇者「正直、俺は何も思いつかないな。光と電気ではあまりにも特徴が違いすぎるし・・・。」

女魔法「そう、あまりにも特性が違いすぎる。だから・・・」

ガタッ!
女戦士「あーくそ!いきなり変な事聞くんじゃねェよ勇者!」

勇者「こういう事は皆で考えた方がいいだろう。」

女戦士「私は門外漢だっつーの!体動かしてる方が性にあってるんだよ!!」

勇者「門外漢の方が良い発想が出てくることもある。先入観が無い分な。」

女僧侶「もっともっ、」
ヒョコ
女僧侶「研究者の方からしたら鼻で笑ってしまうような意見が大半らしいですけどね。」

女戦士「しょうがねーよー素人なんだから。」

勇者「ふむ。」
ムクリ

勇者(3人もここに居ると天井が抜けてしまう。骨組の所に立とう。)
スタン

勇者「全く持ってその通りだ。知識のあるなしでは見える風景が違うんだからな。」
勇者「だからこそ知識が邪魔して見えないものもあるんだが。」

女僧侶「そんな感じの事をお父様が言っていました。知識とは望遠鏡の様な物。遠くを見通す事が出来るが全体を見通す事は苦手だと。」
女僧侶「頼りすぎれば見逃す物も増えてしまう。難しいですね。」

女戦士「難しく考えすぎるのはわりーってのは聞くな。剣術のときなんかは力抜く方が重要だ。」
女戦士「体を強張らせると剣先が鈍る。剣筋が歪む。良い事は少ないな。頭の方でもそうかもな。」

女魔法「・・・簡単にかー。」

勇者「理想論を求めてみるのもいい気晴らしになるかもな。」

女僧侶「理想論ですか?」

勇者「知識で物事が見えなくなる時はなまじ限界を知っている時が多いと思う。」
勇者「無意識のうちに不可能な事は考えないようにしている、というか。」

女戦士「まぁ・・・剣使ってる時に空飛ぼうなんて考えないな。」

勇者「一度広い視野を持つために出来るか出来ないか度外視して子供の夢の様な事を考えてみるといい、かも、しれないな。」

女僧侶「気晴らしにはなるかもしれませんね。」

勇者「まぁ素人の意見だ、気にしすぎないでくれ。」

女魔法「・・・・・・。」

勇者「ほら、馬車の天井が抜けてしまう。もう降りよう。」

女戦士「うーっす。」
ピョン

女僧侶「あ、魔法さん一人くらいなら平気ですのでそこにいて下さって良いですよ。」

勇者「邪魔したな。無理だったら無理でいいんだ。余り根を詰めすぎないようにな。」

女魔法「ん・・・・・・。」

勇者「よっと。」
ピョン

女魔法「・・・。」
ポス

空≪・・・・・・≫

女魔法「・・・・・・青い。」

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勇者(魔法に適当な事を言ってしまった気がする。)
勇者(もうすこし実のある話が出来ればよかったんだが・・・。)

勇者「・・・いかんな、集中しなければ。」

勇者(間違えたら大けがしてしまう。)

勇者(・・・・・・緑の石を利用して空を駆ける練習だ。出力を瞬時に操る練習にもなる。)
勇者(少し危険だが・・・この程度出来なければ。)

勇者「・・・よし。」
ズダッ!

ヒュオ・・・

ズガァン!
ゴオオ!

勇者「・・・!」
勇者(よし!この程度の衝撃力なら耐えられる!発動場所を調整しながら・・・!)

ボン!!

ボンボン!

勇者(今の高さは6m程度か!上に飛ぶだけではなく横に移動を・・・!)

緑の石≪・・・ヒュゴ≫
ズガァン!
グルン!
勇者(!?)
ヒュン―――

勇者(じゅ、重心を捉えきれなかった!ば、バランスが・・・!)
ズガン!ズガン!

勇者(か、回転を止めて地面方向に撃ち体制を立てなお・・・)
ズガン!
勇者「うお!」

地面≪ドカン!!≫
勇者「ぐぅっ!」

ゴロリ
勇者(・・・い、いたたたた。む、難しい物だな。)
勇者(いっそのこと発動場所を足限定にするか。石を右足に括り付けて・・・。)
勇者(空を蹴る感覚で使う事にしよう。そちらの方がいくらか感覚的だろう。)

ムクリ
勇者(空中制動はバランス感覚が重要だな。自信があったんだが・・・ダメダメだ。)

勇者(練習を繰り返さなくては。ある程度自由になったら他の魔法も同時に使用してみよう。)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ボッ!ボッ!ボッ!

勇者「よし・・・!」

勇者(浮き続けるくらいなら造作も無いな。次は出力を強めて横移動を・・・。)

ズガン!
ヒュン!

ズガンズガンズガン!

勇者(・・・!)

ズガンズガン!
ボッ!ボッ!

勇者「よ、よし・・・!」
勇者(横移動、くらいならなんとか・・・!次は3次元的な動きを出来るようにならなければ。)
勇者(出力調整は経験によるだろう。とにかく練習だ。)

ボッ!ズガン!
ズガァン!ズガンズガン!

勇者(目が回りそうだ!)
ズガン!
ドシャァア!
勇者「うぐっ!」

勇者(・・・横っ飛びはとりあえずできた。進歩ありと判断しよう。もっと練習だ。)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
馬車

女僧侶「・・・なんでこんなにも泥だらけになっているんですか?」

勇者「・・・すまない。」

女僧侶「い、いえ、別にかまいませんけど・・・。水源には当分つけないんですよね?」

勇者「あぁ、川は魔王の指定した地点よりも向こうだから、最低でも1日後になる。」

女僧侶「そうですか・・・。また汚す予定はおありですか?」

勇者「・・・出来るだけ汚さない様にはするが、また汚れると思う。」

女僧侶「そうですか・・・。仕方が有りませんね、努力します。お着替えになって下さい。」

勇者「わかった。」
ザッザッザッ・・・
勇者(属性剣の練習もしなければ・・・目標は空中制動との併用だ。)
勇者(茶色の石の扱いも練習しなければ、スムーズに大量の物質を出せるように・・・。)

馬車≪ガタッ≫

女戦士「よう、地面に盛大に激突してたな。」

勇者「・・・見てたか。」

女戦士「そりゃぁでかい音してたし。首から落ちて骨折ったりするなよ。」

勇者「努力はする・・・。」

女戦士「で、話ときたい事が有るんだけど。」

勇者「なんだ?」

女戦士「あたしの屠龍乃技あるじゃん?あれさ、煮詰めてみたんだけど・・・」

勇者「あぁ。」

女戦士「・・・どうしても発動に時間かかる。深呼吸一回分の時間が無いとできない。」

勇者「・・・そうか。そして範囲は極小なんだな。」

女戦士「あぁ。ほぼ剣の幅そのままだ。つまり敵の目の前で私はかなりの間無防備になっちまう。」

勇者「・・・やはりもっと攻撃力が必要か。俺に目を引き付ける程度の威力が・・・。」

女戦士「なんとかしてくれるってお前が言ったから、何とかしてもらうからな。」

勇者「あぁ、約束だからな。守るさ。」

女戦士「・・・ん、それだけ。私に手伝えることがあったら呼んでくれ。今度は私が手伝う。」

勇者「あぁ、わかった。」

女戦士「素振りしてくる。なんかあったら呼べよ。」
ザシャ!

ザッザッザッ・・・

勇者「・・・。」
勇者(敵の目の前での一呼吸はかなりの隙だ。俺が何とかできなければ戦士もそのままやられてしまうだろう。)

勇者(何か一つくらい、高威力の何かが欲しい所だ。)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夜明け前


勇者「ふっ!」
ボン!
ボボボボッ!!

勇者「真空斬り」
ヒュラヒュラ―――
ザシュザシュ!

ズガァン!

勇者(目標の頭上を取り・・・!)

勇者「石生成」
土色の石≪ゴオオ!≫
ズゴゴゴゴゴ!!

勇者(巨大質量を瞬時に生成、足場代わりにし後方へ飛ぶ)
ズダン!

勇者(離脱しながら・・・)
赤い石≪・・・ブゥン≫

岩≪ブゥゥン!≫
ドロォ・・・

溶岩≪ドロドロドロ≫
ボタ ボタ
ドジュウウウウウウ!!

勇者「鉄生成 矢」

メキメキメキ!パシ!
勇者「衝撃魔法球―――」
ヒュパ!ギリギリギリ・・・!


勇者「・・・」
スタン

勇者(このタイミングで撃つと溶岩を散らしてしまうな。やめよう。)
シュゥ

草むら≪ボオオ!!≫

勇者「反振動魔法」

草むら≪ボシュ≫


勇者(なんとか一夜でここまで出来た。あとは妨害があった時の練習をしたいな。)

勇者(妨害の形・・・いったいどんな形が予想できるだろうか。僧侶達に聞いた言動から察するに、魔法系統か・・・。)
勇者(よく使う手に見えない壁の様な何かを使う。俺が飛び回ったとして、ハエを振り払うように撃ち落とそうとするか。)
勇者(魔法に自信がある様な言動があるようだし、だとするなら広範囲を一気に払うような魔法か。)

勇者(火ならば緑の石で振り払う。雷なら物質属性で流す。振動属性なら打ち消す。振動属性は少し見分けづらいが、陽炎が出来るからなんとか・・・。)
勇者(真空魔法なら衝撃魔法で打ち消す事は可能だ。光魔法は扱うのか?)

勇者(もし扱うならかなり厄介だ。目に見えた瞬間には既に食らっている。)
勇者(闇魔法はどうか。・・・かなり謎が多いな闇魔法は。いったいどんな特性が・・・。)

勇者(それと当たったら気絶してしまう魔法もある。速度がかなりあるとか・・・。)

勇者(思考加速魔法も完成すれば大きな力になる。)

勇者(しかしその分壁は大きい。もし出来なかったとしても魔法は悪くない。悪いのは俺だ。)

勇者(見通しが甘い、と言う事。もっと力が必要だ。力・・・)

勇者(・・・戦士の一撃で、魔王が倒れない事も想定できる。しかし、最低でも壁は切り裂けると想定。)
勇者(そこに合わせる一撃を考えよう。ほぼチャンスは一度と考えていい。)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
馬車


女戦士「・・・結局あいつも一人でやるタイプなんだな。当たり前っちゃ当たり前なんだろうけど・・・。」
女戦士「サビシーもんだなぁ。」

女僧侶「・・・・・・ふぁっ・・・はー。」
むくり

女僧侶「・・・お早うございます。まだ勇者様は練習しているのですか?」

女戦士「あぁ。なんかもう動き方が人間じゃないぞ。」

女僧侶「・・・空中を蹴ってるかのようですね。」

女戦士「ほんとすげぇ。石のおかげらしいけど、だとしても普通の人間はあぁはいかねぇよ。」

女僧侶「・・・・・・魔王の地点に乗り込むのは、明日でしたか?」

女戦士「あぁ。闇魔法を警戒して乗り込むのは朝、太陽がしっかり出てからだ。」
女戦士「もっとも、場所を指定されてる時点で私達はものすごく不利なんだけど・・・。」

女僧侶「やるしかありませんよ。失敗は許されません。」

女戦士「・・・後がないってのはつらいなぁ。」

女僧侶「前なら有ります。がんばって突き抜けましょう。」

女戦士「・・・・・・お前ってたまーに前向きだよな。」

女僧侶「貴方の影響かと思いますよ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
昼前

女魔法「・・・。」
パチリ ガバッ!

女魔法「止めて。」

女僧侶「え?あ、起きたのですか?」

女魔法「うん。馬車止めて。」

女僧侶「え、あ、はい。少々お待ちを。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
馬車外

女戦士「どうしたいきなり。」
女僧侶「さぁ・・・。」

女魔法「勇者、石持ってる?」

勇者「石?ドラゴンの胃石か?もってるぞ。」

女魔法「緑色の出して。」

勇者「? あぁ。」
シュルル

緑の石≪・・・≫

女魔法「雷魔法雷球」
雷球≪ぽわん バリバリバリ・・・≫

女魔法「貸して。」

勇者「ほら。」

女魔法「・・・・・・条件砕き」
パキン!
雷球≪バシュッ≫

勇者「・・・む?」
勇者(雷球が消えた?)

女魔法「・・・ん。勇者、今の魔法条件教えるから覚えて。」

勇者「あ、あぁ。」

女戦士「魔法、説明しろ。」
女僧侶「そ、そうですね。何をしているのですか?」

女魔法「後で話す。待ってて。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

女魔法「私が魔法を使ったらすぐに使って。」

勇者「まて魔法。つまりは人体実験をやるつもりか?」

女魔法「時間が無いから急ぎたい。それは必須。」

勇者「幾らなんでもそれは・・・」

女魔法「発動したら一秒と立たずにお願い。」

女戦士「待てって馬鹿。」
ガツン!

女魔法「っっ!!!」
ガバ

女戦士「まったく・・・聞き分けろよ。」
蛙『ゲコッ』

女魔法「っ。」
ビクッ

勇者「蛙か。」

女魔法「・・・・・・。」

女戦士「まずこれで試せって。完成したんだろ?」

女魔法「・・・まだ完成じゃない。」

勇者「動物実験の後でも遅くは無いな。」

女魔法「・・・わかった。そこに置いて。」

蛙『ゲコ』

女魔法「・・・神経加速呪」
カキン!

ビョコ!

勇者「うぉ。」
女魔法「・・・。」
女戦士「おー。」

ぺしゃ
蛙『ゲゴゴゴ・・・』
ビクンビクン

女戦士「痙攣してるな。」
勇者「条件砕き」
パキン!

蛙『ゲコゲコ』
むくっ
ピョンピョンピョン・・・

女魔法「解除後に異常は見られなかった。勇者、すぐにお願いね。」

勇者「・・・わかった。」

女戦士「本当に大丈夫かよ。」

女僧侶「あ、あまり無茶はしないでくださいね?」

女戦士「・・・もう蛙はいねぇからさっさとこっちに来い。」

女魔法「・・・神経加速呪」
カキン!
勇者「条件砕き」
パキン!
女魔法「っは!はぁ・・・はぁ・・・。」

女戦士「・・・どした?」

女魔法「・・・出力を調整する必要がある。」

女僧侶「出力、ですか?」

女魔法「光は、速すぎる。もっと、速度を遅めないと、駄目。」

勇者(・・・一体どんな感覚だったのか。雷の速さと光の速さはかなりの差があるらしい。)
勇者(仮にその差の分、何十倍か何百倍かは分からないが思考が加速したとすると・・・)
勇者(一秒が一分にも10分にも感じられる事になるだろう。精神に異常をきたしてもおかしくは無い。)

女魔法「・・・半分じゃ足りない・・・もっと・・・。」

女魔法「・・・もう一度。」

勇者「わかった。同じくらいでいいか?」

女魔法「うん。」

女戦士「・・・どうすっかな。馬車動かすわけにも行かないよな?」
女僧侶「そうですね、大人しく待ちましょうか。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
女魔法「・・・はぁ、はぁ。」

勇者「大丈夫か魔法。」

女魔法「へ、平気。・・・・・・。」

勇者(平気という汗の量じゃない。)

女魔法「・・・これで完成とする。間に合ってよかった。」

勇者「じゃぁ・・・試しにかけてもらってもいいか?」

女魔法「・・・ん。大体3倍くらいに調整した。けど・・・これ結構負担がかかる。」

勇者「慣れるしかない。ほら、かけてくれ。」

女魔法「ん。・・・神経加速」
パキ
――――――――――――――――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ィィィーーンンンン・・・

勇者(・・・)

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐――――――――――――――――――――
女魔法「解除」

勇者「・・・・・・。」

女魔法「どう?」

勇者「・・・不思議な感覚だ。かかった時、戻った時に少し不快感があるな。」

勇者「もう一度。右手を挙げた時に解除してくれ。」

女魔法「ん。神経加速」

カキン!
――――――――――――――――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
勇者(・・・とりあえず、歩いてみよう。)
ザッ・・・

ザッ・・・

ザッ・・・

勇者(不思議な感覚だ・・・。体がゆっくりにしか動かない。)

勇者「ぁあ  ぁあ 。」

勇者(声もかなりゆっくりだ。慣れないと詠唱は難しい。)

右手≪スッ・・・≫
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐――――――――――――――――――――
パキン!

勇者「・・・今度は加速呪もかけてみてくれ。」

女魔法「ん。加速呪 神経加速」

カキン!
――――――――――――――――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
勇者「お 。」

ザッ
ザッ
ザッ

勇者「あ あ 。」
勇者(加速呪が掛かっているとちょうど良いくらいだな。これなら詠唱もできそうだ。)

勇者「じょうけんくだき」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐――――――――――――――――――――
パキン!

勇者「いい感じだ。いったいどうやったんだ?」

女魔法「・・・光と電気の中間物質を作った。」

勇者「中間物質?」

女魔法「変換式を中途半端に止めた。それで光と電気の両方の特徴を併せ持って両方ほどの特徴のない物質を作った。」

女魔法「勇者に言われた理想論がそれだった。光と電気の両方の特性がある物質。完全な形ではないけど実現できた。」

女魔法「中途物質は不安定だったけど、光を運用するより安定化の方が楽だった。ヒントありがとう。」

勇者「い、いや、俺は適当な事を言っただけだ。」

女魔法「・・・この魔法は維持に魔力をたくさん使用する。20分以上の連続使用は不可。」
女魔法「4人同時に使うなら5分。それ以上は無理。」

勇者「・・・なるほど。」
勇者(理想は5分以内にカタをつけると言う事か。早く済ませるという事は相手を慣れさせないという利点もあるから・・・。)

女魔法「・・・・・・ふぅー。疲れた、寝る。」

勇者「あぁ、お疲れ様。ゆっくり休んでくれ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
昼過ぎ

馬車≪ガラガラガラ・・・≫

勇者「・・・止めてくれ。」

女僧侶「はい。」

女戦士「・・・ここか?」

勇者「恐らく。目印になるものは何も無いが・・・。」
勇者「ここから西に進めば魔王の言っていた場所だ。」

女戦士「よし、じゃぁここからは私と勇者で馬の先導をする。」
勇者「わかった。」

女戦士「僧侶、お前は監視だ。草むらを見て何かあったりしたら教えてくれ。」

女僧侶「わかりました。」

女戦士「入る前に馬車の車輪に布を巻いて草が巻き込まれないようにする。勇者手伝え。」

勇者「いいぞ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ガサガサガサガサ・・・

女戦士「気をつけろよ。魔物も怖いけど馬が知らない間に蛇にかまれてたりするからよ。」

勇者「あぁ。」

女僧侶「く、草むらの監視ってほぼ中分からないですけど。」

女戦士「あまり集中しなくてもいい。目を光らせるって事に意味がある。」

女僧侶「は、はぁ・・・。」

勇者「反振動剣」
ヒュオ!
ザシュ
魔物≪ギュ≫
パキパキパキ!

勇者「・・・甲虫型の魔物か。こいつは確か木を食う。」

女戦士「虫型か・・・厄介だな。僧侶、馬の様子がほんの少しでもおかしかったら言えよ。」

女僧侶「わかりました。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夕方

勇者「見えるか?」

女戦士「・・・なんとか。」

女魔法「勇者、肩車。」

勇者「おんぶで勘弁してくれ。ほら。」
女魔法「ん。」

女僧侶「・・・あそこ、でいいんですよね?」

女魔法「・・・。」

勇者「あぁ、周りを見渡しても目印になる様な物はあれくらいだ。間違いないだろう。」

女戦士「・・・あの家に商人がいるのか。」
女僧侶「かろうじて家がある程度にしかわかりませんけど・・・。」

勇者「大きく、立派な洋館だ。あそこまで行くのに歩きで3時間程度。」

勇者「・・・準備をしよう。戦士、周りの草を刈ってもらっていいか。」

女戦士「りょーかい。」

勇者「今日は皆早めに寝ろ。明日の朝、夜の間に出発し、着く時間を夜明け過ぎ程度に調整する。」
勇者「あとは・・・商人を助けて、魔王を屈服させて終わりだ。それでこの旅も終わる。」

女戦士「ばーか。学校で言われなかったか? 帰るまでが遠足だぜ?」

女僧侶「ふふっ、そうですね。帰るまで旅は続きます。」

女魔法「・・・。」

勇者「そう、だな。」
勇者「皆で帰ろう。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

女戦士「三日月!」
ズパァン!

女戦士「よし!草刈おわり!これで知らない間に近づかれてもわかりやすい。」

勇者「戦士、ちょっといいか?」

女戦士「なんだ?」

勇者「空中機動時の回避を練習したい。この弓で手伝ってくれ。」

女戦士「あいよ。」

勇者「魔法、加速呪と神経加速を、あと気流魔法で妨害も頼む。」

女魔法「ん。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヒュゴオオオオ!!

勇者「―――」
ボンボンボン!

女戦士「ほらほら危ないぞ。」
弓≪バスバスバス!≫

勇者「―――」
ズガン!

スカスカスカ

ボンボンボン

女魔法「・・・ぜんぜんあたらない。」

女戦士「ハエか何かかこいつは!魔法やったれ!範囲攻撃!」

女魔法「・・・雷魔法蜘蛛糸走り」
バリバリバリバリ!

勇者「! 鉄生成傘」
メキン!
鉄傘≪バリィ!≫

女戦士「狙い目!」
バスン!

勇者「鉄生成盾」
ガキン!

女戦士「あーくそこのやろ!真空斬りぃ!」
ガチャズバン!

勇者「ふっ!」
ヒュ
ズガァアン!!

グルングルン・・・
勇者(衝撃魔法を使って打ち消すと体勢が崩れるな。)

女戦士「な、なにぃ?! 消され・・・!」
女魔法「雷矢3連」
バシュバシュバシュゥ!

勇者「ふっ」
ズガン!
スカスカスカ


女僧侶「何やってるんですか!!!」

女戦士「的当てだ!ひっこんで・・・」

女僧侶「やめなさい!」
ブオン!
ガィィン!!
女戦士「うげぇ!!」
ドサァ!

勇者「・・・条件砕き」
パキン!

トサッ

勇者「ふー・・・神経加速はすごいな。何が来ても避けれそうだ。」

女魔法「・・・勇者慣れるの早い。」

女僧侶「まったくもう・・・! あくまで練習でしょう!?」

女戦士「ほ、本気でやらないと練習になんねーだろ!」

女僧侶「減らず口を・・・!」

勇者「僧侶、戦士。明日の朝突入だ。今のうちに神経加速に慣れておいてくれ。」

女僧侶「わ、わかりました。」
女戦士「私はいい。もう慣れた。私の分も僧侶が練習しろ。」

女魔法「ん、いくよ。」
女魔法「加速呪 神経加速」
カキン!

女戦士「じゃ、がんばって避けろよ。」
チャキ

女僧侶「ちょちょとまってくださ」
女戦士「とりゃ。」
ブォン!

女僧侶「うわぁ!」
スカ

女戦士「ほらほら頑張れー。」
ブンブンブン

女僧侶「ひー!」


勇者「・・・・・・。」
勇者(あそこに商人が・・・・・・。)

ギリッ・・・!
勇者「・・・。」

女魔法「・・・目怖い。」

勇者「・・・すまない。気が逸ってしまった。」
勇者(平常心だ。体を強張らせてはいけない。)

勇者「・・・いますぐ、行きたいな。」
勇者(落ち着け! 俺たちが少しでも有利な条件にしなくてはいかん。今は駄目だ。)

女魔法「・・・そだね。勇者が魔物に襲われてる時みたいに・・・」
女魔法「・・・・・・もどかしい。」

勇者「・・・・・・。」
クル
勇者「気になるが、今は休まないとな。」

女魔法「ん。」
ザッザッザッ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夜明け前

ガチャン!
女戦士「さ、行っていいぞ。」

馬1「ブルルル・・・」
馬2「・・・。」

女魔法「・・・じゃぁね。」
女僧侶「今までありがとうございました。」

勇者「・・・では出発する。かなり暗いから気をつけろ。」

女僧侶「分かりました。」
女魔法「・・・。」
女戦士「馬車はどうするんだ?」

勇者「ここに置いていく。この位置なら回収もしやすいだろう。」
女戦士「ん。じゃ、行こうか。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夜明け 洋館外門前


鉄門≪・・・≫

勇者「随分と、古い建物だな。」

女戦士「お化け屋敷みてぇだな。」

女僧侶「・・・この門はどうしますか?」

勇者「・・・」
グィ
鉄門≪ギィィィ・・・≫

勇者「鍵は開いている。・・・この辺りに食糧を下しておこう。」

女戦士「りょーかい。」

ドサドサッ

勇者「・・・扉に向かうぞ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
洋館扉前


大扉≪・・・≫

女戦士「・・・ノックでもするか?」

女僧侶「こんな時に冗談はやめて下さい。」

勇者「・・・」
ググッ

扉≪・・・ガコン! ゴゴゴゴゴ・・・≫

扉≪ズズゥゥゥン・・・・・・≫

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
洋館内

家政婦「・・・」

勇者「・・・。」
女戦士「・・・。」
女僧侶「ひ、人?」
女魔法「・・・。」

家政婦「・・・ようこそおいで下さいました。神の尖兵御一行様。」
家政婦「わたくし、この家の主人により作られた土人形で、ございます。この度は案内役を仰せつかりました。」

家政婦「どうぞよしなに。」
ペコリ

勇者「・・・。」
女僧侶「・・・土人形、見かけでは、全く区別がつかない・・・・・・。」
女戦士「ご丁寧にどーも。じゃぁさっそくお前の主人の所に案内してもらおうか。」

家政婦「それは出来ません。私が仰せつかった任は、『指定の部屋を案内して来い』というもの。」
家政婦「しかしながら・・・貴方様方の目的であられる我が父・・・私の妹・・・このお二人に会いたいと望むのであれば・・・」

家政婦「ワタクシの案内にお付き添い下さることが懸命であられましょう。」
ペコリ

勇者「・・・俺達は急いでいる。この洋館すべてを燃やし尽くしても構わないんだがな。」
女魔法「・・・勇者?」

家政婦「・・・冗談が下手でいらっしゃるのですね。」
ニコリ

勇者「冗談?」

家政婦「大事な・・・とても大事なモノが有る場所に、火を放つなど・・・冗談以外の何物でありましょうや。」

勇者「・・・。」

家政婦「仮に・・・ワタクシを壊したとして・・・困るのはあなた方でございましょう。」
家政婦「仮に・・・この家を燃やしたとして、貴方様方の手に残るは灰のみでございます。」

家政婦「圧倒的有利は私達が陣営にございます・・・。既に後手の貴方様方は、ただ付き従うしか、選択肢など無いはずでございましょう。」

家政婦「ご安心くださいませ。我らが創造主様は、遊びたがっているだけでございます。」
家政婦「遊びに付き合えぬと申されるならば、どうぞ回れ右をしていただいて、歩みを進めてもらって結構ですよ。」

女戦士「ちっ。」
女僧侶「くっ・・・!」
女魔法「・・・。」

勇者「そうか。お前の事はなんと呼べばいい。」

家政婦「・・・お好きにお呼び下さいませ。父は、青髪などと呼びますが・・・。」

勇者「では青髪、案内を開始してくれ。」

青髪「かしこまりました・・・。」
ペコリ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
廊下

カツ カツ カツ 

女戦士「・・・。」
勇者「・・・。」

青髪「ご安心下さいませ。罠は有りませんし、不意打ちは致しません。」

女戦士「ケッ!どーだか!!」

青髪「確かに信じられるわけもございません。どうぞご随意に。」

勇者「・・・俺達をこの洋館内で引きずり回し、疲労させる事が目的か?」

青髪「父は新しいおもちゃを手に入れて喜んでございます。えてして新しい物は見せびらかしたいモノ・・・。それだけでございます。」
青髪「父はあなた方を敵とは見なしておりません。本気で戦えば戦いにすらなりませんから。」

勇者「・・・それはどうだろうな。」

カツ!
扉≪・・・≫
青髪「こちらが最初の部屋でございます。どうぞ、中にお入りくださいませ。」

女僧侶「・・・。」
女戦士「後ろから襲おうって魂胆か?」

青髪「ワタクシ戦闘用の土人形ではございません。故に戦闘能力は皆無でございます。」
青髪「しかしながら気になるとおっしゃられるならば・・・一時いなくなりましょう。」

青髪「この部屋にあるものを持って、この部屋から出られれば貴方様方の勝利・・・条件の一つを満たします。では失礼いたします。」
青髪「転送石」
バシュン!

女戦士「・・・くそ!調子狂う!なんなんだよあいつは!」
女魔法「土人形・・・、商人を、妹って言ってた・・・・・・。」
女僧侶「あの方には・・・自由意思はないのでしょうか・・・?」

勇者「ぶれるな。商人の救出が最優先。戦士。」

女戦士「なんだ。」

勇者「ぶち破れ。」

女戦士「了解!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドガシャァァン!!

ザッザッザッ
女戦士「・・・なんだこの部屋。」

女僧侶「随分、細長い部屋ですね。奥に何か台座の様なものが見えますが・・・。」

女魔法「・・・両側に穴がたくさん開いてる。」

勇者「・・・鉄生成球」
メキン!

ポイ

穴≪ズキュゥ―――ン≫
鉄球≪ガキィン!≫

女戦士「・・・なるほどな。銃が敷き詰められた部屋か。悪趣味だな。」
女僧侶「で、でもどうします? 進めませんよこれでは。」

勇者「・・・不快だ。」
女魔法「・・・?」

勇者「なるほど遊びなのだな。この部屋は俺達を足止めするわけでも、疲弊させたいわけでもない。」

勇者「ただ、自分が手に入れた物を見せびらかしているだけだ。」

女僧侶「勇者様・・・?」

勇者「こんな部屋付き合えるか。3人とも外にでて待ってろ。」

女戦士「な、何する気だ?」

勇者「ぶち壊す。」
緑の石≪・・・コォォ≫

勇者「出て行かないなら俺の後ろに隠れろ。」

女僧侶「わ、わかりました。」

勇者(真空で俺達を包む。一方で部屋の真ん中にこの石の魔力を集める。)

勇者「絶対に動くな。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋外

扉≪ズガアアアア!!!≫
窓≪ガシャン!≫
壁≪バキバキバキ!!≫

オオオオオ・・・


バシュン
青髪「・・・なんとまぁ。」

ガシャ!ガラン!

勇者「これでいいのか。」
鍵≪・・・≫

青髪「えぇ、父が言われた事は、『部屋に案内しろ』、ですからどのような方法を用いても何も文句はございません。」

女戦士「び、びっくりした・・・。」
女僧侶「音はしませんでしたけど・・・。」
女魔法「・・・。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
廊下

コツ コツ コツ コツ

青髪「その鍵は次の部屋の鍵でございます。もっとも、貴方様方には必要が無いようですが。」

女戦士「へっ、扉ぐらいぶち破れる。普段ならまだしも、今の私達は礼儀的ではないぜ。」

青髪「そうでございますか。私の体を調べたりしないので、随分紳士的だと思いましたが。」

女僧侶「お、女の人の体をまさぐるなんて、普通しません!」

青髪「おや、やはり紳士的ではございませぬか。敵地にてそのような礼儀、不必要でありますのに。」
青髪「それにワタクシ人ではございません。土人形、所詮モノ。遠慮は無用でございますよ。よろしければ裸にもなれますが。」

勇者「お前が人かモノかはどうでもいい。さっさと次の場所へ案内しろ。」

青髪「おやおや、辛辣な物言いが、心にチクチクと刺さって切なくございます。もっともワタクシには感情などございませんが。」

女僧侶「・・・冗談まで、言えるのですか。」

青髪「ワタクシは使用人として人間社会に紛れ込んでいたもので、そういったことに特化してございます。」

扉≪・・・≫

カツン!

青髪「・・・二つほど助言を。この部屋はぶち破るのはやめた方がよろしいかと。」
青髪「目的の物は、胸の奥にございます。では。転送石」
バシュン!

勇者「・・・準備は?」

女僧侶「自動回復魔法大詠唱開始」
女僧侶「詠唱完了」
女魔法「・・・ん。」
女戦士「さっさと開けてくれ。」

扉≪ガチャガチャ≫

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋内

扉≪ギィィ・・・≫

勇者「・・・これは。」

女戦士「でけぇ・・・。」
女僧侶「四足のドラゴン、の像でしょうか?」
女魔法「・・・。」

竜像「・・・敵か、味方か。」

女戦士「喋ったぞ。」
女僧侶「まさか、この像も・・・?」
勇者「・・・」

竜像「私は、戦闘用土人形である。答えないならば、」
竜像「お前たちは敵だ。」

勇者「散れ!」
女戦僧魔「っ!」
ババッ!

口≪ガパァ≫
炎≪ゴオオオオオオオオオオ!!≫

勇者「反振動魔法」
ゴオオ!

女僧侶「勇者様!?」

女魔法「雷矢太」
女戦士「真空斬りぃ!!」
バシュゥ!
ズバン!

竜像「ふん。」
ガイン!バリバリバリ・・・!

炎『衝撃魔法球』

バスン!
竜像「な」
ドス

ズガアアアアアアン!!
竜像「うぐおお!?」
ビリビリビリ・・・・・・っ!
女僧侶「うひゃぁ!」

女魔法「・・・地面隆起魔法」

竜腕≪ズゴン!≫
竜像「グオ!」
ドザ!!!

女戦士「退魔代11代目が奥義!!」
女戦士「半月!!」
ヒュ

ズバン!!

竜像「グッ」
竜頭≪ゴトォ・・・ン≫

女戦士「よし!」

炎≪ズガン!≫
パラパラパラ・・・

勇者「油断するな!首を落としたくらいで・・・」
女戦士「っ!?」

竜腕≪ズオオ・・・≫

勇者「人形は壊れない!!」

竜腕≪ブオオオ!!≫
女戦士「チッ!」
ガキィィン!!

ドカッ!ドゴ!ドサ!

女僧侶「か、回復魔法大!」

女戦士「いっつ・・・!」

竜像≪ギギギギ・・・≫

胸≪ガション!≫
ガトリング≪ズルゥ!≫

女魔法「なっ・・・!」
勇者「っ!」
ズダッ!

スタン!
女魔法「あっ・・・」
勇者「鉄生成壁!」!
メキメキメキ!!

ガトリング≪グワララララララ!!≫

鉄壁≪ギィンガンガンチュンガィンガキンガキンガキン≫

勇者「くっ!」
勇者(釘付けにされてしまった!このままでは僧侶達が狙われても動けない!)

竜腕≪ズィ≫
掌≪ガキョ!キュィィィ・・・≫

女僧侶「あっ・・・!」
女戦士「中心が光ってる?! とにかく回避だ! 動け!」

鉄壁≪ガガガガガガガガガガガ≫
勇者「魔法!!僧侶たちの目の前に壁を作れ!!」
女魔法「地面隆起魔法!」

土壁≪ズゴオ!!≫

掌≪ピュン≫
土壁≪ジジ≫
女戦士「おら散れ!」
女僧侶「っ!」
ダダッ!

ズゴオオオン!!

掌≪ズズ キュィィィ・・・≫

女僧侶「今度は勇者様達に!」
女戦士「やらせるか!」

勇者「不用意に突っ込むな!!」

尻尾≪ブオオオ!!≫

女戦士「誰に言ってんだぁァァアアア!!」
ヒュオオ!


バアン!!
尻尾≪ヒュンヒュン・・・≫

女戦士「オアアアア!!」

竜像≪ギギギ≫
竜腕≪ブオン!≫

女戦士「ふっ!」
スル・・・

女戦士「退魔第10代目が奥義!!」
女戦士「間欠泉!!」
ズダン
ガトリング≪ギュィィン!!≫

女戦士「よし!」
スタン

ガトリング≪ゴトン!≫

掌≪ピュン!≫
女僧侶「あぁ!」

鉄壁≪ジジ ズガアアン!!≫

勇者「―――」
スタ

勇者「下すぞ。」
女魔法「・・・。」
ドサッ

竜像≪グオオオ・・・≫
女戦士「潰す気か!」
ドサアアアアアア・・・・・・

女戦士「隙ありってかぁ!!」
ヒュオ!

肩≪ズバン!≫

竜像≪ギギ・・・≫

勇者「戦士下がれ!!」

背中≪ボンボンボン≫
黒球≪ドサドサ! ブシュゥゥ・・・≫

女戦士「っ!」
ザザッ!

女戦士「なんだあの煙!!」

勇者「毒ガスだろう。魔法、流せるか?」

女魔法「・・・この部屋には窓が無い。扉は私達の後ろ、無理。」

女僧侶「で、ではここは任せて・・・」

煙≪キラ≫

勇者「っ!」
ドン!
女戦士「うお!」
ドサァ

ピュン!!


ズガアアン!!

勇者「あっちは俺達の位置をつかめるようだ。」
女戦士「どうすんだ!?」

女僧侶「ですから、私にお任せを!」

女魔法「・・・僧侶が?」

女僧侶「あの煙を払います! 少々お時間を!」
カツン!

女僧侶「分解魔法詠唱開始」

勇者「・・・鉄生成壁」
鉄壁群≪ズゴゴゴゴ!≫

ピュンピュン!

ズガズガン!!

女戦士「扉開いてるから煙こっちに来るぞ!」

女僧侶「詠唱完了」
ブワアア・・・・・・

煙≪ジジ≫
煙≪バシャア!!≫

竜像≪びしゃびしゃびしゃ!≫

女魔法「・・・何? 今の魔法。」

女僧侶「分解魔法です! 黒色のドラゴンさんに教わりました!」

勇者「ふむ、すごいな。・・・む」

竜像≪ガギ ガギ ギ ギ ギ≫
竜像≪ガキョン!!≫

勇者「散れ!」
女戦僧魔法「っ!」
ザザザザッ

ズゴオオオオオ!!
鉄壁群≪ズガガガガ!≫

扉≪バゴン!≫
壁≪ズガアアン≫

ゴゴゴゴ・・・


竜像≪ギシ ギシ ≫
大砲≪シュゥゥ・・・≫

女戦士「あーくそ!アイツどうやったら止まるんだよ!!」
勇者「いや、もうこれで終わりだ。鉄生成矢」

メキン!
弓≪ギリギリ≫
勇者「衝撃魔法球」

ズパ!

大砲≪スポ≫

カッ!

ズガァァァァ・・・

ボトボトドサドカドスン!!

下半身≪・・・≫

ズズゥゥ・・・・・・ン

勇者「・・・ついノリで終わったなどと言ったが・・・・・・」
勇者「終わってくれたか?」

バシュン!

女僧侶「っ!」
女戦士「!」
バッ!

青髪「・・・おやおや。何とも酷い姿に。」

勇者「何か用か。」

青髪「信号が途絶えた為迎えに来ただけでございます。しかしながら・・・」
青髪「これでは鍵を探すのも一苦労でございますね。」

女戦士「お前が探せよ! 分かるんだろ!」

青髪「私が知っている事は核に鍵が有るという事だけでございました。今はすでにどこへやら・・・。」

女魔法「・・・。」

勇者「鍵はどうしても必要か。魔王は遊んでいるだけなのだろう?」
勇者「どこで見ているかは知らないが、既に目的は達したような物だろう。」

青髪「おっしゃるとおり・・・。扉を開けるのに鍵が必要ないのであれば、鍵を探す必要もございません。ではこちらへ。」
青髪「最後の部屋へと案内させて頂きます。」

女魔法「随分適当。」

青髪「親が親でいらっしゃいますから。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カツ カツ カツ
青髪「次の部屋では、特別なモノが手に入ります。こればかりは、手に入れてもらわないといけません。」

女戦士「どういうことだ?」

青髪「父のもとへ案内するのに必要なのですよ。先を進むのに必要な鍵・・・。」
青髪「ワタクシの記憶用媒体でございます。これが無いと、父のもとへの行き方を思い出せません。」
青髪「さきほどと同じく胸の奥に存在します。覚え置きくださいませ。」

扉≪・・・≫

青髪「ではごゆるりと。転送石」
ペコリ バシュン!

女戦士「どいてろ、うりゃ!」
扉≪スパン!≫

女戦士「ふん!」
ドカ!
扉≪ガランガラン!≫

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋内

?「・・・」

勇者「・・・っ!」
ドクン!

女魔法「あっ・・・。」
女戦士「っ・・・!」
女僧侶「しょ、商人、さん?」

女商人?「・・・初めまして。」

女戦士「・・・・・・。」
女魔法「・・・。」
女僧侶「い、いったいどういう・・・。」

勇者「・・・。」
コツ コツ コツ

コツ
勇者「お前は誰だ。」

女商人?「・・・私、貴方が望む人物じゃないです。ごく最近、父が大急ぎで作り上げた複製。」
偽商人「タダの、偽物です。あなたが欲しい物は、私の心臓部分に格納されています。」

偽商人「どうぞ、お開けください。ただ・・・」

勇者「・・・。」
女戦士「勇者。」
ガシ

女戦士「・・・私がやる。お前は外で待ってろ。」

勇者「・・・。」

女僧侶「・・・勇者様、外に出ましょう。なにも、なにも貴方がやらずとも」
女魔法「・・・。」
勇者「3人とも下がれ。」
偽商人「・・・。」

女戦士「・・・。」
女僧侶「・・・わかり、ました。」
女魔法「・・・。」

偽商人「・・・私、およそ戦闘に使えるような機能はありません。反抗するなとも言われています。」
偽商人「私には、罠は仕掛けられていません。胸を開けてもらえば、そこに記憶媒体が有ります。」

偽商人「ただ・・・私の体は開ける事が出来る様には作られていません。中の物を取るには、何かでこじ開けるしか、ありません。」

偽商人「・・・。」
服≪プチ プチ≫

偽商人「どうぞ、お開けください。」
グイ

勇者「・・・」
勇者(嘘を言っている可能性もある。油断するな。)

チャキ・・・

短剣≪フルフル・・・≫
勇者(・・・震えを抑えろ。俺がやるんだ。)

勇者「―――」

ヒュラ!

偽商人「・・・。」
ブシュゥ!

女戦士「・・・っ。」
女僧侶「・・・なんと、趣味の悪い・・・!」
女魔法「・・・。」

一部≪ガラン!≫
中身≪・・・≫
偽商人「血は、偽物です。中に見える、小さい物がそうです。」
偽商人「お取りください。」

勇者「・・・」

スッ
パチ

偽商人「それを、案内、役、に」
偽商人「おわた、し、くだ」
キュゥゥ・・・ン

偽商人「・・・」
グラ

勇者「・・・。」
パシッ

偽商人「・・・」

勇者「・・・」
・・・トサッ

勇者「・・・」
一部≪カタン≫

胸≪カパ≫

勇者「・・・・・・。」
胸≪ゴシゴシ≫

服≪ぷち ぷち≫

勇者「・・・」
スクッ

勇者「・・・いくぞ。」

女戦士「・・・ん。」
女僧侶「・・・はい。」
女魔法「・・・。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋外

青髪「お帰りなさいませ。」

勇者「これでいいのか。」
記憶媒体≪・・・≫

青髪「はい。少々お待ちを。」

首≪パカ カチ パタン≫

青髪「・・・では、いよいよ父の元へ案内させて頂きます。どうぞこちらへ」
カツ カツ カツ


女戦士「・・・今の部屋はすげぇイラついた。お前は何も思わないのか?」

青髪「思う、ですか。そうですね、特に何も。」

女僧侶「悲しいとか・・・そういう事は・・・。」

青髪「残念な事ですが・・・感情らしきものはワタクシ搭載されていますが、感情は持ち合わせていないのです。」
青髪「普通ならば、『怒る』。そんなところでしょうか。」

勇者「・・・商人が、感情を持ったのなら、お前達にも芽生えてもおかしくは無いと思うんだが。」

青髪「たまたまだと聞いていますよ。そうそう偶然は起きないというモノでしょう。」

女魔法「・・・。」

青髪「もしかすると・・・あの子のおかげでワタクシにも感情という機能が付くかもしれませんがね。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
洋館 ロビー


青髪「尖兵御一行様、少々お下がりくださいませ。」

青髪「魔力回路発動」

床≪ガゴン!ゴゴン!≫

床≪ズゴゴゴゴゴゴ・・・≫

階段≪ゴゴォォン≫

青髪「この下に父が居られます。どうぞ、お降り下さいませ。」
青髪「指定動作完了。停止します。」
キュゥゥ・・・ン

青髪「・・・」

勇者「・・・止まった。」
女戦士「くそっ後味悪い・・・!魔王の顔ぶん殴ってやる!」
女僧侶「・・・。」
女魔法「・・・いこ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
階段

カツカツカツカツ・・・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
広い部屋

カツン

勇者「・・・。」

スタスタスタ

女戦士「・・・ここに居んのか?」

女僧侶「どうでしょう。・・・随分広い部屋。」

女魔法「・・・。」

勇者「・・・前を見ろ。おでましだ。」

ヒュゥ・・・

フワッ

魔王「よーこそー。ゆーしゃサン? 俺が用意した3つのアトラクションはどうだった?」

女戦士「胸糞わるかったよ!!! てめぇはぜってぇぶち殺す!!!」
勇者「待て。」

女戦士「なんだよ!!」

魔王「随分・・・出来る事を増やした様じゃないか。はははいいなまったく楽しい楽しい。」

勇者「魔法、頼む。」

女魔法「ん。・・・加速呪 神経加速×4」
カキンカキンカキンカキン!

女魔法「時間は5分。雷矢太3連」
バシュバシュバシュ!!

勇者「魔王おおおおおおおおお!!!」
ズダンッ!!

雷矢≪シュンシュンシュン≫
魔王「なんだね勇者!!」


勇者「返してもらうぞ!!!!!」
ズダダダダ!!

魔王「ならば勝つことだ!!」
魔王「気絶矢!!」
ズガァァァン!
勇者「条件砕き!!」
バキン!

魔王「お?」

勇者「アアアア!!」
短剣≪ヒュゴオオ!≫

ビタッ!
勇者「っ!!」
短剣≪ガタガタガタ!!≫

魔王「私に近接攻撃など無駄というものだ。」

勇者(これが・・・! 見えない壁!!)

魔王「魔力掴み」
ガシ!

勇者「衝撃魔法!!」
ズガン!

魔王「おっ、魔力を弾かれた。」

ボンボンボン!!
勇者(頭上を取る!!)

魔王「・・・思い出した。草団子の魔力じゃないか。アイツとどういった・・・」

女戦士「オラァア!」
ブオン!

魔王「おっと。」
スカ!
魔王「お前だけは怖い。」


勇者(何!? 既に警戒されている!?)
女戦士「避けんじゃねぇえええ!!」
ヒュンヒュンヒュン!

魔王「避けるさ、この体はちょっと事情が有るんだ。万一にも触られたくは・・・」

勇者「石生成」
ズゴゴゴゴゴ!!

女戦士「!」
ズダン!

勇者「ハッ!」
スタ ズダン!

岩≪ゴオオ・・・!≫
魔王「ふははは!その程度の質量支えられないとでも・・・」

赤い石≪コオオ≫

岩≪ドロ!≫

魔王「おっ!」
ベシャア!!ドジュウウウ・・・!!

ぼたぼたぼた
魔王「はっはっはっ。溶岩であっても私の体には届かないさ!」

勇者「衝撃魔法球」
ズバンズバンズバン!

魔王「おおっと阻害!」
シュンシュンシュン

鉄矢≪カランカランカラン≫

女戦士「退魔代12代目が奥義!!」
女戦士「三日月!!」

魔王「魔力掴み」
バシィン!!

女戦士「っ!!」
剣≪ガタガタガタ・・・!≫

勇者「振動剣」
短剣≪カアアアア!!≫

ヒュオ!

ビタッ!
勇者「・・・っっ!!!」

勇者(熱は通るはず!!もっと温度を!)
手≪ジュウウ・・・!≫
勇者(高めろ・・・!)

魔王「・・・闇魔法光吸い」

フォ・・・

勇者(! 何も見えなく!! 離れろ!)
ズダン!

闇≪ボフ!≫

女戦士「チィ!」
闇≪ボフ≫

勇者(あの魔法は一定範囲の光を無くす魔法か!!)

女僧侶「回復魔法中」

勇者「くそ・・・!」
勇者(どうする! 魔王に戦士を警戒されている!! 俺に少しでも注意を・・・)

闇≪サァァァァ・・・≫
魔王「ふふふふ・・・この剣も懐かしい物だな。」
ヒュンヒュン

女僧侶「あぁ、戦士さんの剣が・・・!」

勇者(さっき衝撃魔法をわざわざ阻害して発動を邪魔した! 奴にとって不利な物なのようだと仮定しよう!)
勇者(もっと衝撃魔法を主体にして・・・!)

勇者「鉄生成剣」
メキメキメキ!

勇者「戦士!ひとまずこれをつかえ!」
ブオン!
女戦士「サンキュー!」
バシ

女魔法「詠唱完了 大地の手」

ズゴゴゴゴゴ!!
勇者(・・・利用させてもらおう!)

魔王「お!では片手同士力比べといくか!!」
魔王「ぬりゃあああああああああ!!」
ズゴォォン!!
ズゴゴゴゴゴ!!

女魔法「うぎぎ・・・!」

魔王「どうした!! 力が弱いぞ!!」
グオオ!!

勇者「衝撃魔法球」
バスン!

大地の手≪カッ!≫
魔王「む?」

ズガァアアアン!
パラパラパラ
砂煙≪もわぁ・・・≫

勇者「戦士!!」
ズダン!
女戦士「っ!」
ダッ!

勇者「・・・!」
ゴソ
土色の石≪・・・≫

勇者「取りつく!!」
ヒュオ!

砂煙≪ぼふ!≫

ビタッ!!

勇者「鉄生成・・・!」
勇者(見えない壁を包むように鉄を・・・!)
土色の石≪ブゥゥゥン≫

魔王「おお?!」
ズズズズ・・・カキン!!

女戦士「退魔当代唯一技・・・!」

女戦士「すぅー・・・」
女戦士「屠龍乃技!!」
――――――・・・

鉄≪ズバン!!≫

女戦士「・・・ちぃ!焦った!」
剣≪パキィン≫
ズタン!

鉄≪ドロォ≫
魔王「ははは、危なかったか? この剣が無ければ・・・」

鉄≪ドロドロ・・・≫

勇者「はっ!!」
ダン!
ヒュ・・・

スタン!
ジュウウ!!
勇者「衝撃魔法・・・!」

女僧侶「勇者様!?」

魔王「やめろ馬鹿。」
拳≪ヒュオ!≫

魔王「魔力殴り」

ドカン!!
勇者「ぐあっ!」
ドサ!ドサ!
女僧侶「回復魔法大」

女魔法「火炎龍詠唱完了」

魔王「ふむ?」
グオ
炎≪ゴオオオオオオオオオオオ・・・≫

勇者「衝撃魔法球」
ズバン!

炎≪ヒュッ≫
ズガアアアアアン!!

パラパラパラ・・・
魔王「はっはっはっ、返すぞ。そりゃあ!!!」
剣≪ブオンブオンブオン!!≫

女魔法「っ!」
サッ
スカ
剣≪ザスン!!≫

女戦士「い、急いで回収しねぇと・・・!」
ダダッ

魔王「ははは!そろそろ俺も攻めるとしようか!!」
魔王「気絶魔法矢20連」

ズガガガガガガガガガガ!!

勇者「―――」
ズガンズガンズガン!

勇者(衝撃魔法で体を回転させ蹴りの速さをあげる!!)
ズガァン!

ブオン!
足≪ビタッ!メキメキ・・・!≫
魔王「はは! 当たる訳ないだろう!」

勇者「衝撃魔法特大」
緑の石≪ヒュゴ≫

ドゴオオオオオオオオオン!!
魔王「っうおお?!」

ヒュン
雷矢≪バシュ≫

魔王「あ」

バシィィイイイ!!
魔王「うがあああ!!」
バリバリバリバリ!!

勇者「・・・!!!」
ブォンブォンブォンブォンブォン

女戦士「この馬鹿!!」
ドカ!!

ドサァ
勇者「ぐぅ・・・!」
足≪ボタボタボタボタ・・・!≫
女戦士「足ぐちゃぐちゃじゃねーか!!」

勇者「回復魔法中・・・!」

女戦士「なんであんな無茶をした!」

勇者「試す必要があった。そして試した甲斐はあった。見ろ、」


プスプス・・・
魔王「あ、あいつは素でも自分の命を犠牲にするのか・・・!」


勇者「通じたぞ。いいか戦士、時間はあと一分程度しかない、合わせろ。」

女戦士「・・・ちっ! 分かったよ! 足落とすんじゃねーぞ!」

魔王「・・・ふむ?あれだけばらまいて、一人も当たっていない。」
魔王「反応が早い・・・そんな感じだ。ふふ、ふふふふ・・・」

魔王「まったくもって楽しませてくれる・・・! さぁて、そろそろとっておきを使うとしようか!」

魔王「カオス銃」
ブオン!

カチャ

女魔法「っ。」
サッ
魔王「これは避けれまい!」
ズガンズガンズガン!

女魔法「・・・。」

魔王「・・・おや? 人間は音速に対応できたものだったか・・・?」

女戦士「ゼリャアアア!」
ブオン!
スカ!

魔王「ふむ?」
カチャ!

女戦士「!」
サッ

ズガンズガンズガン!

女戦士「おりゃ!」
ヒュン!
スカ!
魔王「おぉ?! 軸をずらされているのか! 運動機能の劣っていそうな人間まで出来るとなると・・・」

女魔法「・・・」

魔王「無駄弾も撃たない。攪乱さえしないのは、魔力が残り少ないからか?つまり・・・」

女戦士「こっち見やがれぇぇええええ!!!」
ブンブンブンブン

魔王「お前は明らかに攪乱だな。勇者が何かするための時間稼ぎか?」

女僧侶「神の矢!!」
魔王「お」
ズガアアアアアン!!

女魔法「火魔法黒煙」
バシュ!

ぼふん・・・!
魔王「うぉ!?」
パリパリパリ・・・!
勇者「ふっ!」
ぶわ

勇者「もう一度閉じ込める・・・!鉄生成」
ズズズズ・・・!

魔王「はは、2度も同じ手を使うのは舐めすぎじゃないか?」

ズガンズガンズガン!

勇者「ぐふッ!」

魔王「この銃は威力が高いぞ? 鉄など貫くほどにはなぁ!」

勇者「・・・!」
ギラリ

勇者「衝撃魔法極大・・・!」
緑の石≪ゴゴゴゴ・・・≫

魔王「なっ! 性懲りもなく・・・!」
勇者「命など・・・!」

魔王「魔力阻害」
勇者「条件砕き!」
カキン!

魔王「ならば発動前に握り潰す・・・!」
メキメキメキ

勇者「自硬化魔法」

魔王「うぬ・・・!こいつ・・・!」

女戦士「屠龍乃技!!!!」
――――――・・・

女戦士「ふぅー・・・。」

勇者「・・・」ニヤ
魔王「・・・っ!」


ズバァァン!!!


魔王「グアアア!!」

勇者「・・・」
どちゃり

勇者「ゴポッ・・・」
勇者(まだだ・・・俺を二の次にして、畳み掛けてくれ・・・!)


女戦士「おおおお!!!」
ヒュ!
ガキィン!
女戦士「固い・・・!」

魔王「い、いかっ!こうげ、き、そうて、が」
ガク!ガク!

女戦士「ならぶっ叩くだけだ!!退魔第13代目が奥義!」
女戦士「五月雨裂発!!」
ガキキキキン!

女魔法「大地の手!」
ズゴゴゴゴゴ・・・!

ズゴオオオオオ・・・!
魔王「ガァッ!」


女僧侶「勇者様!!」

勇者「・・・ゴプ」

女僧侶「回復魔法特大」

勇者「ぅっ・・・ゲハッ!ゲハッ!」
ビチャビチャ

勇者「ぐっ・・・!」
ムク・・・

女僧侶「まだ回復しきっていません!起き上がらないでください!!」

勇者「ま、魔王が、この程度でやられるわけがない。」

女僧侶「えっ?」

勇者「ここからが本領発揮のはず・・・!」


女戦士「おりゃあああ」
ガインガインガインガイン!!

魔王「・・・」

女戦士「ゼェイ!!」
ヒュオ!

ズガン!

ドカ!ドサッ!

魔王「・・・」

女戦士「はぁ・・・はぁ・・・」
女魔法「もう魔力無い・・・・・・。」

女戦士「立つなよ・・・!」

魔王「・・・」

魔王の体≪・・・ズオオオオオオオ≫

女戦士「な、なんだ!?」
女魔法「く、黒い・・・何か?」

オオオオオオオオオオオ

黒球≪オオオオオオ・・・≫

黒球「まったく・・・私のお気に入りの素体を・・・。」
黒球「・・・いくらなんでも甘く見すぎていたか。」

女戦士「なっ・・・!」
女魔法「エレメンタル・・・。」

ザッ
勇者「魔王・・・商人を返してもらおう。」

黒球「・・・くそ、他にもたくさん銃を考えていたのに・・・。」
黒球「いいぞ。私は疲れた。」

女僧侶「えっ?!」

黒球「転送術式」
バシュン!!

黒い塊≪・・・≫

黒球「だが・・・悪いんだが・・・再起動したら感情が無くなってしまったようで。」
黒球「頑張って直そうとしてみたんだ。だが・・・どうも原因不明で・・・、不可逆性の現象だった可能性が高くて・・・つまりは・・・」
黒球「すまん。それじゃぁな」
バシュン

女戦士「あっ! まちやがれ!!」


『そいつはもう既にお前たちの知っている奴ではない。持って帰ってもいいが、お前たちを敵と見做しているから、あとよろしく。』



勇者「・・・・・・なに?」

黒い塊≪ガキョン ブシュゥゥゥ・・・≫
ムク・・・

ガキョンガキョン

ヒュッ
斧≪ズガン!!≫

女商人「・・・」
腕輪≪シャリン≫

女僧侶「しょ、商人・・・さん?」
女魔法「商人・・・?」
女戦士「商人! おい! なんとかいえ!」
ダッ!

女商人「・・・。」
両肩≪ガッ≫

女戦士「おい!寝ぼけてんのか!!おい!!」

女商人「・・・」
ユッサユッサ

ガキィィン
女戦士「がっ!?」

ズザザ!

女商人「・・・。」
手≪・・・≫

女僧侶「戦士さん?!」
女戦士「へ、平気だ!おい勇者!!どうすんだよこれ!!どうすりゃいい?!」

勇者(・・・・・・思考がまとまらない。魔王、あいつは去り際になんて言った?)
勇者(感情が、なくなってしまった? 俺達を敵とみなしている?)

勇者(・・・馬鹿な。)

女商人「・・・魔力供給開始」
ズオオ・・・!!!

ゴォォ・・・!

女戦士「っ!ガァ・・・!」
女僧侶「ぅうう!?」
ばたっ!ばたっ!

女魔法「あぁ・・・!」

女魔法「頭・・・が・・・!!」

女魔法「う・・・あ・・・」

女魔法「あええ・・・!」
バシャ!ピチャピチャ!

女魔法「は、はき・・・け・・・? っ!! ゆ、ゆぅ、しゃ・・・!」
ぱたん

ゴオオ・・・
勇者「・・・・・・」


ドクン・・・

女商人「・・・」
ヒュ・・・
ガチャ!

ドクン

勇者(・・・憎い)
カチャ・・・

ドクン!!

勇者「ぐ・・・ぅ・・・!!!」

ドクン!!!!

勇者「・・・・うおおああああああ!!!!」
ズガン!!

勇者「振動剣!」
短剣≪カッ!≫

勇者「縊り殺す!」
ヒュオ!!

女商人「・・・」
クィ
ガキィン!!ジジジジ・・・!

女商人「・・・」
斧≪ヒュ≫
勇者「!」
ズタッ!!

斧≪ブオオオオオオオオオ!!≫

グオオン!!

ゴオオオオオ・・・・・・!!!

勇者「・・・額当て、首当て、鎧、腕甲、具足、そして巨斧・・・すべて黒い。」
勇者「固い、熱は通さない。ならば隙間を狙えばいい。」
ズタン!

勇者「―――」
ヒュオ・・・
女商人「・・・」

ガキィィン!!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次元の狭間

黒球「これこれ、メインイベントはこれよこれ!! かつての仲間との果し合い! はたして一体どちらが勝つのか!」
黒球「この戦いというコミュニケーションの中で、2人の絆がどれだけか試される! ハハハハハ!」

黒球「さぁ、奪い返せるのか勇者! 神の尖兵を脱した唯一の勇者!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
勇者「石生成」
メキメキメキ!!

勇者(頭上から落とす、対応するその隙に)

岩≪ズゴオオオ!!!≫

女商人「・・・」
ヒュ

バカアアン!!

勇者「衝撃魔法球」
ズバン!

女商人「・・・」
ブオン!カツッ!

ズガアアアン!!!

ビリビリビリ・・・

女商人「・・・!」

勇者「・・・」
ゴソ
赤い石≪ゴゴゴ・・・!≫

地面≪ドシャァアア!≫
溶岩≪ゴボオオ・・・!≫

女商人「っ」
タンッ!

勇者「・・・」
溶岩≪ザザアアアアアア!!≫

女商人「・・・」
タッタッタッ

女商人「・・・」
ヒュ

斧≪ブオオオン!!≫

勇者「しゃがめば済む。」
スッ

スカ!
ズガアアアアアン!

女商人「カオス斧」
メギン!!

勇者「ちっ」

ブオンブオンブオン!!

タッ
ズガンズガンズガン!!

勇者「・・・」
ひゅぅ・・・

ズガン!ボン!ボン!

勇者「石生成」

岩≪メギャ!≫
岩≪メギン!≫
岩≪バギャ!≫

岩群≪ヒュオオ!≫

女商人「カオス斧」
メギン!!

ヒュ
バカァン!ズガン!ガコン!
パラパラパラ・・・

勇者「・・・」
ボンボンボン・・・
赤い石≪ゴオオ!≫

岩≪ドロォ・・・!≫

女商人「っ」
タッ!

勇者「衝撃魔法球」
ズバンズバン!

溶岩塊≪ドプ≫
溶岩塊≪ズプ≫

なんか5万文字超えたおやすみす

今だ!パワーをメテオに!!

溶岩塊≪ヒュゴッ≫

女商人「カオス壁」
黒い箱≪ズゴン!≫

溶岩塊≪ブシャア!≫

黒い箱≪ビチャビチャビチャ!≫

地面≪ドジュジュジュジュジュゥゥゥ・・・!≫

勇者(黒い壁、大きい斧と同物質。熱耐性高。)
勇者(鎧も同物質の可能性高。)

黒い箱≪・・・・・・ザザァァ・・・≫

女商人「・・・。」

勇者(肘から先、膝から下、胸から股の部分を鎧が覆う。露出部は多い。)
勇者(弱点は・・・)
ズキン
勇者「・・・っ」

勇者(・・・?)

右手≪スッ≫
女商人「カオス砲」
右手≪メギメギメギメギ≫
黒い柱≪ガキンガキンガキンガキン!!≫

砲塔≪・・・≫
ゴォォォォ・・・

女商人「照準制御」

勇者(危険。)
ズダンッ!!
ズダダダダダ・・・!!

女商人「・・・」
砲塔≪スィ―――≫

勇者(大きく円を描いて逃げるのは下策。敵の隣へ直角に突っ込む。)
ズタァン!!
ダダダダダダダ!!

女商人「・・・。」
砲塔≪カチリ≫
砲塔≪ズガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!≫

勇者(軸はズレて・・・)
ヒュオ

ズオオオオオオオオオオ
勇者「ガッ!?」
ビュオオオオオオ!
ドカン!
勇者「グガッ!」
ドカッ!ドサ!


勇者「  ッ」
吐血≪     ≫

キィィ―――――――
勇者「っ・・・!」
勇者(しょ、衝撃、波、か! 大砲に寄るのは虫が良すぎた!)

ィィィィィ―――――――――
勇者(耳鳴り・・・鼓膜がやられてい、っ!)

女商人「   」
手斧≪   ≫

勇者「っ」

  ―――
    !!!!!


勇者「    」

勇者「・・・ェ!ゼェ!」

勇者(ダメージは・・・少々頭痛がするのみ。)

女商人「カオス銃」
右手≪パキパキパキ≫

散弾銃≪ガチャコン≫

勇者(遠距離は分が悪い、接近戦で首を刈・・・)
ズキン!

勇者「ぐっ!」

勇者(い、いや・・・あ、あいて、は、土人形。人の急所を狙っても、無意味。)

勇者(行動不能に陥らせる為には四肢の動作部位を)
ズキィン!

勇者「ガッ!!」
勇者(ず、頭痛が酷い!いかん目を離して・・・)

女商人「・・・」
散弾銃≪チャ≫

勇者「っ鉄壁」
鉄壁≪メキン!≫

散弾銃≪ドボォ!!≫
鉄壁≪ズボッ!≫
ドチュドチュドチュ!
勇者「グァっ!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次元のはざま

黒球「フハハハハ!俺の銃が鉄程度で止められるか!学習しない奴だ。」
黒球「私の魔翌力で作ったのだ性能が高い事など当たり前だ!無論斧でもなぁ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

女商人「・・・」
タンッ!
手斧≪ヒュオッ≫

勇者「っ!」
ズリッ!

手甲≪ガゴン!≫
勇者「っ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒球「は?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
手斧≪ギリギリギリ≫
女商人「っ?!」

勇者(・・・随分固いガントレットだ!)

緑の石≪ヒュオ≫
緑の石≪ズガァァン!!≫

勇者「ぐっ!」
ブワッ!

女商人「っ!」
ブワァ!

勇者「回復魔法中」
スタッ

女商人「・・・」
タン
散弾銃≪ガチャッ!≫

勇者「鉄生成」

銃口≪メキッ≫

散弾銃≪カチ≫

散弾銃≪ボォン!!≫
女商人「!!」

スタッ
勇者(銃無効化、隙を逃すな。)
ダンッ!!ダダダダ

女商人「・・・」
手甲≪ビリビリ・・・≫

破裂した散弾銃≪ポィ≫

ヒュオッ
勇者(銃を捨てた、残りの武装は左手の斧のみ。)

女商人「・・・」
手斧≪ヒュォ!≫

勇者(予想通り、受け流して・・・)

手斧≪かちり≫

ピキィィィィィィィィィィ―――

勇者「ギッ・・・!!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒球「大音量の高周波、鼓膜を突き抜け直接脳を揺さぶる!思考能力など明後日よ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――ィィィィィィン
勇者「・・・ぐ。」
手斧≪ォォォ≫

バツンッ!

左手≪がちゃり≫

勇者「グぁっっっ!!!」
左肘≪ブシュゥ!ドボドボドボドボ≫

女商人「・・・」
手斧≪ブォン!≫

勇者「っ!」
左肘≪ヒュ≫
血≪バチャベチャ!≫
女商人「っ!」

手斧≪オオオ≫
地面≪ガゴン!≫


勇者「ァァアッ!!」
右手≪ヒュオ!!≫

首≪ガシィ!!≫
女商人「っ」

勇者「ふッ!!」
左肘≪ドチャ!≫

女商人「!!」
グオン!

勇者(頭を叩きつけて首をへし折・・・!)
ズギン!!

勇者「グゥッ!」
フラッ

女商人「っ!」
ヒュオ、タン―

女商人「っ!!」
右手≪ブン≫

ドゴ!
勇者「がッ!」

手斧≪ヒュ、≫
女商人「っ」
手斧≪ッオオ!≫


右足≪バツン!!≫

勇者「っっアッ・・・!」
右腿≪ブシュウ!!≫

フラッ
勇者「ぐっ・・・!がァ・・・!」
勇者(痛、血、が・・・意識、が・・・)
ドサァ!
左肘≪ドプドプドプ≫
右腿≪ブシュ!ブシュ!ブシュ!≫

女商人「カオス銃」
散弾銃≪メキメキメキ  チャッ≫

勇者「・・・ァ」
勇者(寝るな・・・死ぬぞ・・・)
勇者(血を・・・止め、・・・)
勇者(・・・)

勇者(・・・)

女商人「・・・。」
散弾銃≪・・・・・・≫

散弾銃≪・・・キ≫

勇者≪ピクッ≫

女商人「?」

勇者「・・・こんのアホがああああああ!!!!」
ガバァ!!

女商人「!?」
ビクゥ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒球「む。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

勇者「衝撃掌底!!」
緑の石≪カッ!≫
右手≪ギュオ!≫

胸当て≪トン≫
女商人「っ?」

ドゴオオオン!!
女商人「!?」

ヒュオオォォォ・・・―――
                 ズガン

勇者?「原始回復」
左腕≪メキッ!≫
右腿≪グチュグチュグチュ!≫

勇者?「魔力肢」
ギュィィ!
左足≪タンッ!≫
右足≪   !≫

勇者?「なっていない、なっていないぞ!! お前が死ぬ時は今では無い!」
勇者?「殺せないならば殺せないなりにやりようは有るだろうが!!」

勇者?「衝撃障壁物理」
ヒュオ!
勇者?「真空渦」
短剣≪ギュィン!≫
勇者?「超気流魔法」
部屋≪・・・ゴゴゴゴゴゴ≫

部屋≪ヒュゴオオオオオオオオ≫

部屋≪オオオオオオオオオオ≫

勇者「私の魔力の使い方を教えてやる! よく見ておけ!」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
女商人「カオス砲」
砲塔≪メギメギメギメギ≫

女商人「・・・」
砲塔≪カチリ≫

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

勇者?「むっ」
勇者?「極大指向性衝撃!!」
右腕≪ヒュ≫

砲弾≪ズギャァァアアアア!!≫

右腕≪ギリギリギリギリ!!≫
砲弾≪ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!≫
勇者?「これはあいつの魔力か! いつの間にここまでの安定性を備えた!!」

勇者?「はぁ!!」
右腕≪ブン≫
砲弾≪ズゴオオオオオオ!!≫


ズガァァアアア!!

勇者?「しかし無念な事だな!! 私の魔力はもっとも汎用性があり物理に関しては何者も抗う事などできん!」

タタタタタタ
タン!!

女商人「・・・。」
大斧≪グオオオオ!≫

勇者?「ハァッ!」
短剣≪ヒヒヒン≫

大斧≪ガコ≫
ガラガラガラ・・・

女商人「っ!」
散弾銃≪ガチャ!≫

勇者?「無駄だ!」

散弾銃≪ドボン!≫
衝撃障壁≪キュイン≫

弾≪ピタッ≫

女商人「っ!?」

弾≪バシュン≫

ガインガインガイン!
女商人「あっ!」
バスバスバス

勇者?「ハァッ!」
短剣≪ヒンヒンヒン―――≫

手甲≪ズバ!≫
足甲≪ズバ!≫
胸当て≪ズバ!≫
女商人「・・・っ!」

勇者?「む!?」

女商人「っ!」
ガランガラガラ!

勇者?「・・・チィ! 今一度離れてろ! 気流操作!」
風≪ヒュゴオオオオオオオオ!!≫

女商人「!!」
ピュゥゥゥ・・・・・・

勇者?「意識が有るのか無いのか!! 邪魔をする位ならばシャキっと起きろ!!」

勇者(・・・・・・無茶を・・・言うな・・・。手足が、ちぎれたんだぞ・・・。)

勇者?「それがどうした! 人間と言う種はもっと根性が有るはずだろうが!」

勇者(・・・痛みのおかげで頭がはっきりしてきた。いい加減体を返してくれ。)

勇者?「阿呆め! 貴様の体は今血が足りていない! 返した所で意識が保たれるわけが・・・」

勇者?「なんで貴様起きてきている!?脳の機能も停止しているはずだろう!?」

勇者(・・・知らん。むしろお前の方が分かるんじゃないか。)

勇者?「・・・物質生命にはほぼ血液がある、生命活動の根底の基礎中の基礎。」
勇者?「それが無い状態は死んでいるか、それに類似した状きょ」

ドキュゥゥ―――ン
弾≪ビタッ!ドシュン!≫

勇者?「ええい! 結論を言えば血液が無いならば血液の代用が無ければ動かん! しかし血という物は存外複雑であり・・・!」
勇者?「ん?!」

土色の石≪ォォォ・・・≫

勇者?「魔力流出・・・いや、自動魔法?」
勇者?「血液の代用が出来るほどの高次物質を自動発動式でだと・・・」

ズギュゥゥゥ―――ン

ボッ!

勇者?「うぉ!」

勇者(・・・一人で納得していないで教えてくれ。俺は何故生きている?)

ズギュゥン!ズギュゥン!
勇者?「ええい鬱陶しい! 生きているのだから細かい事は気にするんじゃぁない!」
ボッ!ボッ!

勇者?「衝撃波」
右腕≪ブオン≫


------------------------------------------------------------------------------------------

ボッ!
頭≪ガィン!≫
女商人「っ!?」

------------------------------------------------------------------------------------------


右足≪フッ≫

ガクッ!!
勇者「うおっ!」

短剣≪ヒュオ・・・≫
気流≪オオオォォォ・・・≫

(とりあえず体は返すぞ。いいか人間、よく聞け。)
(魔力で足を作るのはお前には無理だ なんとかしろ)
(私もそろそろ妨害により干渉が断裂するだろう)
(どうするかは知らんが あとは勝手にするがいい 衝撃障壁だけは残しておく)
(何が有っても その物質魔力と衝撃魔力の石だけは離すなよ  じゃぁな)

ブツン!

左肘≪ズキン!ズキン!≫
右腿≪ズキン!ズキン!≫

勇者「ぐっ・・・ぅ!ま、まったく・・・! 急に現れ、勝手に体を使っておいて消えるのもいきなりとは・・・!」

勇者「ふ、ふふ・・・痛みのおかげか、殺意も抑えられている、僥倖・・・。」

ズギュゥン!
ボッ!!
勇者「っ。」
勇者(なるほど、狙いが逸れている。衝撃障壁とやらのおかげか。)

勇者(・・・俺の見ていない所で勝手にいなくなり、その上記憶が無くなった? しかも、その程度で俺達に敵対するとは)
勇者(許せない、事だ。)

勇者「鉄生成」
右腿≪パキパキ≫
棒≪ベキベキベキ!≫

右足≪カツ≫

勇者(簡素だが、立つ程度は出来る。)

勇者「・・・」
右足≪ゴソゴソ≫

緑色の石≪・・・≫

勇者「・・・・・・」
汗≪ポタ ポタ≫

女商人「・・・。」
ポイ
長銃≪ガラン!≫

女商人「っ!」
タタタタタタタ

右足≪ガン! ガン!≫
勇者(・・・この足では跳んでも着地が難しい。)

勇者(緑色の石は空中移動に使っていたが、接近戦でも利用できるかもしれない。)

女商人「カオス斧」
右手≪メギン!≫
左手≪メギン!≫
タタタタ

女商人「っ!」
タンッ!

勇者「・・・商人、久しぶりだな。」

女商人「っ!」
左手斧≪ブオン!≫

勇者「指向性衝撃」
緑の石≪カッ!≫

左手斧≪ズガン!≫
女商人「!?」

勇者「随分重い物質だな、逸らすのも一苦労だ。」

女商人「っ!」
右手斧≪ブオン!≫

勇者「―――」
短剣≪ギャリ――≫
スカッブオオオオ!

女商人「!?」
フラッ

勇者「重さは有っても鋭さが無い。受け流す事もまだ可能な域だ。」

勇者「・・・少し、当たるぞ。」

緑の石≪カッ!≫
短剣≪ヒュオ!≫
女商人「!」
兜≪ギャイン!≫

ヒュンヒュンヒュン!
ガンゴンギャリン!ドカ!ドゴ!
女商人「・・・!」

勇者「何故忘れた。」

勇者「そんなものか、俺達は。」

女商人「っ!」
右手斧≪ヒュオ≫

勇者「指向性衝撃」
ズガァン!
女商人「!」
右手斧≪ヒュンヒュンヒュン―――!≫

勇者「思い返せばいろいろと言いたい事がある。」

勇者「よくも俺を一人にしてくれたな。」
右手≪ヒュオ≫

腹≪ズドン!!≫
女商人「!!」

左手斧≪ガラン!ガラン!≫

勇者「寂しかった、な。仲間が増えたとしても、いや、増えたからこそ、俺は一人だった。」
勇者「思った事が有る。俺はパーティに置いて仲間外れだと、繋がりは薄いと。」
勇者「仲間が増えてから、俺は寂しくて仕方がなかった。」

女商人「!」
タッ・・・

勇者「鉄生成」

足≪グニュン!≫
女商人「あっ!」
地面≪グニュ ガキン!≫

勇者「また俺から離れる気か、俺の手の届かない所へ行く気か。」
ズリ ズリ
勇者「あの施設から俺が飛び出した時、なぜ来てくれなかった。」

勇者「おかげでこのザマだ。俺さえ忘れて、俺に牙を向いて。」

女商人「カオス・・・」
短剣≪ヒュオ!≫
ギャリン!
女商人「!」

勇者「・・・その腕輪は、なんだ?」

勇者「古いものだ。かなり昔に、神に結婚を誓い合う為の腕輪だろう?」

勇者「そうだ、誓いだった。愛を繋ぐ、と。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒球「俺の魔力の影響が弱まり始めている・・・?」

黒球「イラつきから嫌悪感、嫌悪感から殺意。今までの情報から私の魔力の影響はそのように段階を踏んで変化していたが・・・。」

黒球「今はイラつき程度に収まっているな。手足がちぎれたのならば頭に血が昇っても・・・あ、昇る血が無いのか。」

黒球「おまけに土人形の方まで動きが鈍っているじゃぁないか。おかげで機先を制され動けない。クックックックッ・・・」

黒球「愉快な展開になってきたな。この戦闘だけで一体いくつの特異点が関与しているのか。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

勇者「俺はそんなに不甲斐ないか、俺の手の中はそんなに不安か。」
勇者「商人が俺の傍に居れば俺は守る事も出来ただろう。連れて行かせる事など断じてさせるか。」

勇者「何故俺に守られていなかった。」

女商人「・・・真空珠」
ゴオオ!
勇者「衝撃壁」
ヒュオ!

ヒュゥゥゥ・・・

勇者「ずっと、寂しかった。俺の手の届かない場所で、仲間が談笑していて、守る事もできず、」
勇者「夜は一人で、火の熱さは冷たく感じて、月は寂しさを募らせる。」

勇者「俺は、一人だった。家に居る時も、家を出てからも、」

勇者「ずっと、一人だったんだ。商人、お前だけが、俺の傍に居れたんだ。」
勇者「ずっと、寂しかったんだ・・・。」

右手≪スゥ≫

女商人「っ!」ビクッ

ギュッ

勇者「・・・俺が体で感じる事が出来た初めての温もりは、お前だったんだ。」

女商人「・・・」

手甲≪・・・シュカ≫
針≪キラ≫

女商人「・・・。」

グイッ!

女商人「っ!」
ふら

勇者「俺が自分を忘れた時は、最後はお前が起こしてくれたな。」


勇者「お返しだ。」
女商人「っ」

スゥ――――――








―――――――――――――――――――――――――― チュ

勇者「―――」
女商人「―――」

スッ


勇者「・・・。」
女商人「・・・。」

ポロ・・・

勇者「・・・恥ずかしい、な。いつまでたっても、慣れそうにない。」

女商人「あっ・・・。」

ポロポロ・・・

女商人「あぁ・・・。」

涙≪ポタポタポタ≫

勇者「ずっと、一緒にいてくれ。」

女商人「あぁ・・・!あああ・・・!」
ぽろぽろぽろ

女商人「ゆ、うしゃさま・・・! ご、ごめんなさ・・・!」

女商人「う、あ・・・」

女商人「うううう・・・・・・!!」
ポタポタポタ

勇者「全部許す。商人、自分が許せないなら、せめて俺の傍に居てくれ。」

女商人「で、でも、わたし、勇者様を襲って・・・!」

勇者「それはおあいこだ。」

女商人「ゆ、勇者さまの、て、手と、足、が・・・!」

勇者「もう痒くも無い。」

女商人「わ、わたし・・・!わたし・・・!」

勇者「もう一度言うよ。・・・全部許す、だから、傍に居てくれ。」

女商人「うぅ、う、あ、」
女商人「うああああああああ・・・」
ぽろぽろぽろ


バシュン!

勇者「っ!」
ギュッ

女商人「ひぐっ ひぐっ?」

魔王「おめでとう、勇者。取り戻したな。」

勇者「・・・随分小奇麗になったな。ボコボコにされていたはずだろう。」

魔王「あれはノーカンだ。さっきの素体は物理衝撃を受ける前提で作ってはいなかった。魔力壁を展開できるように高出力調整を行って・・・」
魔王「故に物理的衝撃など受ける前提は必要無く、この星の全ての物質、魔素・・・あらゆる生命の中での唯一の例外、つまりは私自身が手を下したあの存在が・・・」
魔王「だからあれは俺が俺を倒したようなものでお前たちが私に勝ったというわけではないのはまさに道理と言う事だ。勘違いするな。」

勇者「もう一度やるか? 俺は今、真の意味でイラついている。」

魔王「ハッ! 冷静になるんだな。ある意味で、私のおかげでそいつは戻ったのだからな。」

勇者「知るか。胸糞が悪い。」

魔王「胸糞なぁ? ふん、もっと悪くしてやろうか?」

女商人「だ、駄目です勇者さま。おと、魔王には、絶対勝てないです・・・。」

勇者「・・・。」

魔王「・・・冗談だ、そう睨むな。」
魔王「転送術式」

バシュン!
青髪≪・・・≫

魔王「起きろ。」

青髪「声紋確認。お早うございますお父上。」

魔王「掃除。コピーも回収して研究室に送っておけ。」

青髪「畏まりました。」
ペコリ タッタッタッ

魔王「それで? お前たちは何のために俺に会いに来たんだ?」

勇者「商人を返してもらいに来た。それと、魂の復元をやらせに。」

魔王「たましいのふくげん~? 無茶だなそんなもん。死んだ時点で魂の”てい”なんて保ってられん。」
魔王「そもそも魂がなんだがわかってるのか? 人間が思っているような高尚な物じゃぁないんだぞ。」

勇者「少なくとも、魂だけのエレメンタルには知識の保持機能、記憶能力は有る。」

魔王「・・・まぁな。エレメンタルだったら可能かもな。しかしなー別にそれ俺にメリットがあるって訳じゃぁ・・・」

勇者「知るか、やれ。」

魔王「・・・確かにイラついているようだな。しかしなぁ、確かにお前達を戦うように仕向けたのは間違いなく俺だが、必要な事ではあったんだぞ。」

勇者「必要な事?」

魔王「あー・・・私は前例の無い土人形の自我の目覚めに大変興奮していた。記憶を覗いたら恐らくは人間の心の特徴であろう揺らぎも確認できた。」
魔王「再現が出来れば、大きな一歩だ。俺は人間理解へ一歩近づく。何せ自我は発生機序すら分からず、一寸先は闇の中手探り素潜りやっていた事だったからだ。」

魔王「その点でその土人形」
勇者「土人形では無い。訂正しろ。」

魔王「・・・話を遮るな。好きじゃない。絶好のサンプルである存在が偶発的にとは言え発生した。そりゃーもう再起動の瞬間は期待していた。しかし・・・」

魔王「やはりというかなんというか、かなり不安定な状況で自我を発生させていたようでな。再起動の影響でどこかの接続が切れたか、
   あるいは一時記憶媒体が重要な何かを担っていたか・・・。とにかく自我の発生の原因は不明だったし再現性もなかった。」

魔王「情報を丸々コピーした模造品を作って見たものの、自我は発生されなかった。そこで私は自我の発生原因とは大量の情報が有機的に結合した結果であると仮定をし、」
魔王「有機的に情報を結合するために臨機応変な情報処理をせざるを得ない状況に追い込むことに決めた、と言う事だ。恐らくの自我発生原因のは待っていれば来るわけだったし。」


勇者「・・・」

魔王「まぁーぶっちゃけ出たとこ勝負っていうかー、大博打っていうかな! 勝ったら万歳負けたら無念、下手すりゃサンプルを失う状況だったと。」

勇者「指向性衝撃」

頭≪ズガン!≫

魔王「ぐはぁ! 何をする! また俺の素体を壊す気か!!」

女商人「っ」
勇者「随分優しいんだな。」

魔王「言っただろう。人間は好きだ、とな。お前みたいな奴は見ていて楽しい上に・・・」
魔王「昔を思い出す。のすたるじぃ~って言うかな。本気でイラついたときは国に喧嘩を売ってやったりもしたが。」

勇者「・・・お前が何を言っているのか時々分からん。」
勇者(こいつと話していると妙に気勢を削がれる。甘く見られているのだろうが、にしても適当過ぎる。)

魔王「私の知能は高度だからなぁ。人間様が理解出来ない様な知識も知っているのさ。」

勇者「ならば魂の復元くらい軽く請け負え。」

魔王「だぁーから何度も言うがそれは俺には何の利益も・・・」

天井≪ジュウウウウウ≫

魔王「ん?」

天井≪ボロッ≫

ヒュゥゥ―――

ドスゥン!!

バジリスク「やっと見つけたよぉ!とりあえず・・・!」

魔王「誰だお前?」
勇者「なっ・・・?!」
女商人「ゆ、勇者さま?」

バジリスク「その横っ面はたかせてもらうよぉ!!」
ドスドスドスドス!!
グオオ!

魔王「分子結合解除」
バジリスク「うわ!」
バジリスク≪ザザァッ!≫

粉≪・・・≫
魔王「なんだったんだこいつは。」

勇者「・・・気のせい、いや、そんなはずは・・・!」

女商人「い、今のドラゴン?を知っているのですか?」

勇者「・・・俺の記憶が正しければ、あれはヒトミの体だ。」
女商人「ヒトミ・・・って、あ、あの、ですかっ?」

勇者「そうだ、一時期俺達のパーティに居た、人体実験被害者の少女、あの子の・・・魔物の姿だ。」
勇者「・・・商人、ゆっくり、話し合いたいんだが・・・嫌な予感がする。皆を安全な所に集めておいてくれないか。」

女商人「・・・はい。」
タタタ


魔王「こいつどうやって俺の実験場に穴開けたんだ? そうヤワじゃないんだけどな。」

粉≪ブワオオオ!≫

魔王「お?」
勇者「・・・っ!」

バジリスク「どうやったか?! それはねぇ毒さ!! 超強力なね!!」

魔王「・・・粉から復元? 随分不思議な事を」
尻尾≪ビュオ!≫

バシィン!
魔王「うお!」
ドザァ!

バジリスク「勇者さん久しぶりィ! 元気してた!? あらら腕と足がかたっぽないじゃない! いったそー!!」

勇者「・・・どういうことだ。一体・・・」

バジリスク「覚えてるかな? 覚えてないか。糞野郎の顔を殴るまで僕は死ねないって言ったんだけど。」
バジリスク「僕は君にカミサマのもとに送られた。そして既にそこにあったこの抜け殻の体と・・・」

バジリスク「合体させられちゃったのさぁ!! まったく僕の人生ってなんでこう改造ばっかりされちゃうんだろうねぇ!?」

勇者「・・・!」
勇者(この口調、そしてあの再生能力・・・! 間違い、無い。)

魔王「あぁ白団子の被害者か。勇者を失った事で焦り始めてるからなぁ。」

バジリスク「いいや違うよ糞野郎が! 僕が作られたのは勇者が手を離れたからじゃない!」
バジリスク「お前に・・・!」

爪≪ビュオ!≫
バジリスク「一発くれてやるためさぁ!!」

魔王「俺はお前の事を知らないぞ白団子の創造物よ。」
スカ!

バジリスク「あぁそういえばそうらしいね! 僕はてっきり魔王たるお前が魔物の源かと思ってたんだけど!」
ブォン!ヒュオ!

魔王「俺の魔力が進化の元になったのは魔物じゃなくて人間だ。」
スカ!スカ!

バジリスク「ゲロォ!」
毒≪ドプ!≫

魔王「分解」
毒≪ドシュ≫

勇者「ま、まて! お前は・・・フミヤなのか!?」

238「そぉだよ全てを救う人! 作られた特異点さん!」

魔王「厄介な奴だなーこいつ。どうするか・・・あそうだ。」
魔王「カオス物質」

黒い箱≪ガコォン!≫
238「わぁお! 流石だね!発動と発生の速さが桁違い!」

魔王「復活するためには細胞の一部とある程度の広さが必要そうだな。」
238「イヤー別にそんな事は」

黒い箱≪ぐしゃぁ!≫
黒い箱≪ポタポタポタ・・・≫

魔王「これで静かになるだろ。」

黒い箱≪・・・ブスブスブス≫

魔王「おやこれは・・・、腐食性の毒か。俺の魔力まで溶かすとは常識外れな。」


勇者「フミヤ・・・、俺は、神の下へ送った、はず・・・。」

魔王「あの腹黒が何を企んでいるかは知らんがどーもこいつもかなりの特異点の様だな。」

勇者「・・・特異点?」

魔王「通常とは違う常識外れの事を言う。たとえばお前の魂とか、ものすごくデカイ魔物とかな。」
魔王「特異点は少なからず特異点を呼ぶ性質がある。私の作った土人形は、お前という特異点に導かれ自我が発生した。まぁ類友ってやつだな。」

爪≪ブン!≫

ガリィ!
魔王「おっ?」

ジュオオオ!

238「その通り僕も特異点の一つさ! 魂の結合は僕の時代では成功率なんてコンマ以下! なのに数少ない伝説の魔物とたまたま結合成功なんて!鼻で笑うよ!」

魔王「復活は魂の位置か。」

238「おかげで僕はこんな事になっちゃってさぁ! お前さえ居なければ、僕はあの時死ねていたんだ!!」
238「お前の所為だ!! お前が居るから!! 魂までとろけてこの星に還れ!!還れぇ!!!!」
ガイン!ガイン!

魔王「・・・」
ドジュウウ・・・!
魔王≪ドサァッ!≫

238「ハァッ!ハッ!くそ!」

『―――うーん一日で2つの素体が壊されるとは、今日は厄日か?』

238「姿を現してくれないかなぁ! じゃないと殺せないじゃないか!!」

バシュン!
黒球「いいぞ」

238「あははは!!所詮毒なんて物質にしか影響を及ぼせないとでも思っているのか!?」
238「死ねぇぇぇええ!!!」
口≪がぱっ≫
煙≪ボシュウウ≫

黒球「過重力」
ズン!

煙≪ベシャ!≫

238「ウギャ!」
グチャァ!

黒球「・・・再生能力は魂の特性か。」
黒球「魔素核対消滅」

肉塊≪ズオオオオオオ!!!≫

オオオ・・・

地面≪・・・≫

勇者「・・・っ」
勇者(一切容赦が無ければ、あれだけ厄介な相手もこんなに容易く・・・。)

黒球「魂が無ければ再生できまい。やーれやれこれでやっと静かになった。」

黒球「目的はなんなのか。白団子が何の理由もなくこいつを送ってくるはずが・・・。」

ブクブクブク・・・
238「それはだねぇ・・・!」

黒球「おおう、これは驚いた。魂さえ再生対象なのか。」

238「これは僕が勝手にやった行動だからさ!! 神の知識をある程度は理解したからね! 君の位置も知っていたって事だね!!」

勇者「フミヤ、お前・・・」

238「今日は退かせてもらうよ! 幾らなんでも無計画過ぎたようだ! 勇者サマ!!」

勇者「な、なんだ?」

238「近々また会う事になるんじゃないかなぁ! その時は敵か味方が知らないけどね!!」
238「いや!間違いなく敵かな!アハハハハハハハ!!」

バシュン!

黒球「・・・うーむ放っておくと研究所を荒らしそうだ。白団子の意図に乗るのは癪だが・・・」
黒球「仕方がない。そろそろ決着という物を付ける時なのかな。」


黒球「人間。」

勇者「・・・なんだ。」

黒球「交換条件を出そう。目的を叶えたいのならば私の言う事を一つ聞け。」

勇者「・・・神に挑め、と?」

黒球「あいつと直接競うのは私だ。今の奴も含めあいつが用意している周りの戦力の排除をしろ。」

勇者「・・・勝てるかどうかわからん。今の・・・フミヤを殺す方法も思いつか」
黒球「報酬は先払いだ。」

勇者「・・・」

黒球「特異点の先導者、作られた特異点、特異点の中でもさらにさらに歪なお前は大きい戦力になるだろう。」
黒球「ま、嫌ならいいがな。」

勇者「・・・さっきから散々言っている作られただとか先導者だとか、一体俺の何を知っているんだ。」

黒球「お前はトクベツだと言う事だ。特異点、逸脱、または突出し、基準から逸れているモノ。」
黒球「この世界には様々なモノがあり、その数だけ特異点は存在する。要は例外、と言う事だ。」

黒球「お前は意図的に作られたニンゲンの例外、しかしそれだけではない。」

黒球「お前はその他の特異点と引き合う特性を特に持っている。運命だとか才能だとか・・・お前の生き方か、」
黒球「何が原因かは知らんがお前の周りには特異点が多い。」

黒球「お前自身がそもそもが神の尖兵から離脱した特異点でもある。歴史上初だな。」
黒球「又、私の土人形も、作られたモノとしては自我の発生は初だろう。」
黒球「お前の仲間、剣使いと魔法使いも、人間の中での例外。もう一人はよくわからんが・・・」
黒球「お前の顔見知りだったさっきの奴も、実験動物の例外だ。0%の成功確率から成功した運の悪い奴だ。」

勇者「・・・たまたまじゃないのか。」

黒球「タマタマ、歴代の神の尖兵が全てそういった特性を持っていた、と?」

勇者「歴代?」

黒球「そう、前のも全員が全員そういった特異点を集める特異点だった。」
黒球「私がお前の魂と接続してからはそもそもが他者と触れ合えない状況に陥ったため、この特性は抑えられていたがな。」

勇者「歴代の勇者全てが・・・。」

黒球「歴代の、という言い方はおかしい。全てお前なのだから。」

勇者「全て俺? どういうことだ?」

黒球「お前自分のルーツも知らないのか?」

勇者「・・・俺は、西大陸で生まれて・・・・・・」

黒球「お前が生誕したのは今から約・・・何年前だったっけ?」
黒球「忘れてしまった。1000年位前だったか?」

勇者「何?」

黒球「・・・説明が面倒だな。俺に協力するかしないか今聞かせろ。」
黒球「準備期間の間に気が向いたらポロポロ教えてやる。聞きたければ頷け。」

勇者「・・・お前が俺のやってほしい事を完璧にできるか、分からない。」

黒球「やってほしい事は魂の復元だったか? とりあえず、魂の状態を見せてもらおうか。」

勇者「・・・。」
拳≪ギュゥ≫
勇者「・・・転真魔法解除」
手の平≪フワッ≫

光球≪スゥゥ・・・≫
土色光球≪ふわ  ふわ  ≫

黒球「転送術式」
バシュン

素体≪・・・≫
黒球「よっと」
ズゴゴゴ!

素体≪ムクッ≫

魔王「どれどれ、一つは人間で、もう一つは・・・」
魔王「・・・・・・あれ?」

勇者「どうした?」

魔王「・・・随分と小さくなったなぁ。ダイエットにでも成功したか?」

勇者「何を言って」
ドクン!
勇者「うぐっ!!?」

魔王「お?」

(今条件が満たされた。これでお前は私の手足。)

勇者「なっ・・・!?」

(・・・ま そんな気分でもないがな)
(少し借りるぞ)

勇者「うっ」
ガクン!

・・・スッ
勇者「・・・久しぶりだな。」

魔王「・・・最近は随分と懐かしい奴に会うなぁ。」

勇者「それで? 今度は何を企んでいるんだ?」

魔王「別に何も。100年前から何も変わっていない。ただ今回はいい加減白団子が業を煮やしているようで、今日喧嘩を売られた。」

勇者「あいつが? 珍しい事もあったもんだ。」

魔王「そうでもあるまい。100年前にもキレられたぞ。」

勇者「キレさせたのはお前じゃないか。」

魔王「そうかもしれんが・・・まだ怒ってるのか?人類を半分にした事を?」

勇者「それはそうだろう。ニンゲンはあいつのお気に入りだからな。何度も模造品を作っては失敗しているようだし。」

魔王「今回はまだ大人しくしていたんだがなぁ。」

勇者「抜かせ。コイツをあいつから引きはがしておいて。」

魔王「火の粉を振り払って何が悪い。」

勇者「アイツにとっての火の粉がお前と言う事だ。互いに鬱陶しい存在なのだろう。」

魔王「まぁ、そうかもなぁ。」


勇者「・・・それで? 出来るのか?」

魔王「何が?」

勇者「この二つの魂・・・片方はどうでもいいが、土色の方の復元だ。」

魔王「白団子の魔力で封じられていたんだ。状態はほぼ完ぺき・・・と、言いたい所だが、」
魔王「所々損傷してるんだよなぁ。封印される前に何かされていた、もしくはしていた様だ。」

勇者「不可能か?」

魔王「お前は昔からこいつの事を気にかけていたな。私たちの中で最もお人好しだったのは変わっていないのか。」

勇者「その称号は私にとっては不本意な事だが、私自身は100年前から何ら変化は無いな。」

魔王「つまりは1万年前から変化はないと言う事か。」

勇者「さぁ、どうだったか。コイツは100年の間で随分変わったようだがな。」

魔王「出会いという物は、自我を変えるのだな。うんうん。」

勇者「出会い、な。私達は6しかいない上に中々会わないからな。」

魔王「その上馬も合わない。私達は寿命も無いが成長も無いし。」

勇者「競合の必要すらないしな。」

魔王「というかそもそも、生まれた時は俺達以外いなかったからなぁ。」

勇者「そうだな。いつの間にこの星はこんなに賑やかになったのやら。」

魔王「あの時もなんだかんだ賑やかだっただろう?」

勇者「ああいうのは賑やかとは言わん。五月蠅いと言うのだ。」

魔王「雷に豪風、大雨、大波、噴火・・・バラエティに富んでいるじゃないか。」

勇者「そのうち半分はお前が原因ではないか。」

魔王「そうだったか?」

勇者「しらばっくれやがって・・・それで? 出来るのか出来ないのか。」

魔王「・・・やるとするなら栄養が必要だな。飢餓の上衰弱している。」

勇者「ふうん?」

魔王「あ、そうだ。交換条件。お前も手伝え。」

勇者「なにぃ?」

魔王「杭を壊してやる。だから半分魔力を寄越せ。」

勇者「私だって衰弱しているぞ。」

魔王「知っている。何世紀にも渡り大規模な魔法を垂れ流しているのだからそら衰弱もするだろうな。」
魔王「それに俺が食うわけじゃない。」

勇者「俺はコイツの餌か。」

魔王「つまるところはそういう事だ。泥団子を助けたければ手伝え。」

勇者「・・・ちなみに、そいつはどうするんだ?」

魔王「こっちのは人間の魂だな。体から直接引っぺがしたおかげで生前の状態を保っている。」
魔王「・・・少し魂の状態が変だが、体を用意してやればまぁ個性ぐらいは残存させて復活させられるだろうな。」

勇者「・・・」

魔王「お前は少しの間勇者と繋がっていたんだな? 情が涌いたか? 泥団子の様に。」

勇者「・・・別に、そんなんじゃない。」

魔王「そうか。」

カツ カツ

魔王「ん?」
勇者「・・・。」

女商人「あ、あの・・・お父さん・・・。」

魔王「・・・父、なぁ。毎回思うが、変な気分だ。」

勇者「お前が設定したのではないのか?」

魔王「いいや? 俺と自分の関係性を考慮して好きに呼べと毎回設定するんだがな、いつも父扱いなんだ。」

勇者「そうか。」

女商人「・・・今は、勇者さまじゃ、ないんですね・・・・・・。」

勇者「そうだ。今は私が完全に抑え込んでいて自我すら寝ている。」

魔王「生素体かぁ。乗り心地はどうだ?」

勇者「常に邪魔が入るから若干悪い。」

魔王「やはり魂は邪魔か。」

女商人「あ、あの・・・」

魔王「なんだ?」

女商人「私・・・勇者さまと、共にいきたいです・・・。許して、くれますか・・・?」

勇者「・・・」
魔王「共に、な。壁の厚さを理解しているか?」

女商人「・・・はい。知識の解放Lvは最大ですから・・・」
女商人「お父さんと、同じ知識を持っています、から・・・。」

魔王「そうか。では理由は?」

女商人「・・・私、勇者さまを傷つけてしまいました、だから・・・。」
女商人「傍について、杖となりたいと思います・・・。」

勇者「・・・本当にこいつは土人形なのか?」

魔王「不思議なモノだろう? ウィットに富んでいる。」

女商人「お許し、頂けますか・・・?」

魔王「ま、好きにすればいい。個だというのならば、個で完結すればいい。」
魔王「私の土人形が、本当の意味で人と共に生きる、というのならば、好きにすればいいさ。」

魔王「もっとも、当の勇者サマは老い先短いみたいだが。」

女商人「・・・。」

勇者「まぁ、それはそうだろうな。一体何年酷使されていたのやら。」
勇者「擦り切れかけるその度に、補填を繰り返されて、いったいどれだけ芯が削られているのやら。」

魔王「白団子の魔力的後押しが無いならば、ま、あと10年か20年か。」
魔王「瞬き一瞬だな。」

女商人「・・・」

魔王「人としての生を全うできたとしても、お前にとっては結局はスグ別れる事になるしな。同じことか。」

女商人「・・・理解、しているつもりです。」

魔王「俺と同じ道を行く、と。」

女商人「いえ、その時は、私も・・・」
女商人「共に、いこうと思います・・・。」


魔王「そうか。それもいいんじゃないか? ではさっさと取りかかるとしよう。」

ガシ!
魔王「えーっと魔力臓器の位置はどこだったか。」
ゴソゴソ
勇者「まさぐるな。」

魔王「離れ臓器 目」

魔王「あぁそうだ、お前との魔力接続は切っておく。これで知識の更新も無くなる。」
魔王「それとお前の妹だが、餞別にくれてやる。好きに使え。」

女商人「あ、ありがとう、ございます。」

魔王「色々と教えてやるんだな。・・・っと、なんだ杭も随分老朽化しているようだな。」

勇者「従順にやってきたからな。」

魔王「お前については安心している、と。ふむ・・・。」
魔王「・・・お前を解放すると、恐らく残りの奴等も敵に回るか。」

勇者「当然だな。水色はもともとあいつに靡いている様だし、赤色は暴れられればどこでもいいだろう。」

魔王「こっちには死にかけが二つ、か。やれやれ苦労しそうだな。」
魔王「外れた。」

勇者「・・・」
ドサッ!


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嵐島≪ゴオオオオオオオオオ!!!!≫

嵐島≪オオオオオオオオオ≫

嵐島≪オオオオオオオ・・・≫

嵐島≪・・・・・・・・・・・・≫

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
嵐島 森

孫「・・・あれ?」

妹「どうした?」

孫「気のせいかな。風が止んだ気がする。」

妹「気のせいだな。そんな事あり得ないし。」

孫「・・・そっか。そうかね。」

妹「後で海でも見に行こう。そうすれば分かるし。今は枝拾えって。じいちゃんたちに怒鳴られるぞ。」

孫「う、うん。早く終わらして見に行こう。」

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部屋

勇者「・・・。」
ぱちり

ムクッ

勇者「・・・」キョロキョロ
勇者(ここは・・・)

ズキン!!
勇者「ぐっ!」

勇者(・・・腕と脚が痛むな。)

勇者(・・・腕と脚?)
チラリ

左肘≪・・・≫

勇者(・・・無いはずの腕と足が痛む。何かで読んだな、確か幻肢痛といったか。)

チャリ・・・
勇者「?」

勇者「・・・これは、」
勇者(腕輪とガントレット。そうか、落としてしまっていたな。・・・?)

腕輪≪チャリン≫

勇者(ふたつある。 俺のと、商人の物だ。)

勇者「・・・・・・。」


ガチャ

商人「あ、おはようございます。」

勇者「商人、忘れ物だ。」
腕輪≪・・・≫

商人「あ、いえ、それは私のじゃありません。」

勇者「? 何を・・・いや、待て。」
勇者(何か違う気がする。・・・)

勇者「もしかして君は・・・」

偽商人「あ、はい。私はお姉さんのコピーです。えと、商人と呼ばれていましたね。」

勇者「俺が胸を切り開いた・・・。

偽商人「はい。私お姉さんの言う事を聞く様言われました。これからよろしくお願いしますね。」

勇者(・・・見分けがつかない。)

勇者「・・・む?」
ゴソゴソ

偽商人「どうされました?」

勇者「・・・」
勇者(赤色の石が無い。)

勇者「石が無い。」

偽商人「あ、それはですね、私の妹が持っているはずです。」

勇者「君の妹?」

偽商人「見に行かれますか?」


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地下研究室


?「うわわわ」
よろよろ

青髪「どうですか?」

?「上手く、立てない! ば、バランス、がっ・・・!」

?「うわぁ!」
ドサ!

青髪「おやおや、3日ほど立ちますのに未だに直立さえ出来ないとは。」

?「そ、そんな事言ったって・・・」

青髪「ヒトミ、少なくとも歩けるようにならなければ迷惑ですからね。」

ヒトミ「うぅ~・・・ど、努力はしてるよ。」

青髪「・・・少し設定を調整してみましょうか。端子を。」

ヒトミ「あ、はい。」
首≪プシュ≫

青髪「はい失礼。」
カチッ

青髪「先ほどから毎回右に倒れていますね。バランサーの調節はどこが不自然かわかりますか?」

ヒトミ「腰がくにゃくにゃしてるかな。反動制御が強すぎる気がする。」

青髪「・・・では全体値を低めにし、右部分のみ高値に設定しましょう。動かないよう。」


扉≪がちゃり≫

女戦士「よう、調子はどうだ?」

ヒトミ「あ、おかえりー。まだまだ立つことも出来なくて。」

女僧侶「焦らずゆっくりやっていきましょう。」

ヒトミ「うん、がんばるよ。あれ? 魔法ちゃんは?」

女戦士「魔法は商人と一緒に居る。・・・はぁ。」

ヒトミ「まだ元気でない?」

女僧侶「えぇ・・・やはり、商人さんが勇者様を傷つけたことは事実、ですから。」
女僧侶「勇者様は許すと言っていたそうですけど・・・、商人さん自身は、・・・」

青髪「はぁ、我が妹ながら煮え切らないですね。」

女戦士「煮え切らないって、お前意味わかってんの?」

青髪「妹は罪の意識を持っていて、なのに勇者様のお傍に居るのですから、煮え切らないという表現を使いましたのけれども」
青髪「間違っておりましたか?」

ヒトミ「んー、それはちょっと違うと思うな。」

青髪「はぁ、感情というものは難しくございますねぇ。」 

女戦士「・・・罪の意識っていうか、責任感っていうか、あいつは物になろうとしてんだよ。」

青髪「モノですか。」

ヒトミ「好きな人を自分が大けがさせちゃったし、その償いに傍に居たいんだけど、傍には居ちゃいけないと思ってて、」
ヒトミ「でも気持ちとしては傍に居たいし・・・えっと・・・」

青髪「矛盾しているのですか。」


女僧侶「近くには居るけど、傍には居ない、というか・・・」
女戦士「アイツは勇者の杖になろうとしてる。杖は、何も考えない。」

女戦士「ただ使われるだけだ。腕輪を外してるのは、その意志の表れだ。多分な。」

青髪「物から人になったのに、又、物に戻ろうとしてるなんて、不思議な事をしていますね。」

女僧侶「・・・それが、人の証、なのでしょうか。」

青髪「はい、設定完了。もう一度立ってみて下さいな。」

ヒトミ「はーい。」


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広間


女魔法「・・・はい、こっち向いて。」

勇者「・・・。」
くるり

商人「・・・。」
商人「・・・。」

女魔法「どちらが前から居た商人でショー。」
パチパチパチ

勇者「・・・」
勇者(・・・・・・一体何をさせられているんだ俺は。)

女魔法「5秒以内に答えて。ごー、よーん・・・」

勇者「・・・右。」

女魔法「当たり~。」
ぱちぱちぱち

偽商人「すごいですねー。」
ぱちぱちぱち

女商人「あ、あの、これは一体何を・・・。」

女魔法「商人当てゲーム。理由はなんとなく。」

女商人「は、はぁ・・・。」

勇者「・・・。」
勇者(気を使っているのだろうか。)

女魔法「下いこ。ヒトミがいる。」

偽商人「わかりました。」

女商人「勇者さま、支えます。」

勇者「あぁ、ありがとう。」

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階段

コツ コツ コツ

勇者「・・・そうか、記憶が曖昧なのか。」

女魔法「うん。魂には本来記憶の保持機能は無いらしい。けど鏡みたいな性質は有って・・・」
女魔法「生きてる間に魂を保存したから記憶も疑似的に保存できてたみたい。」

勇者「そうか・・・。」

女商人「・・・あくまで疑似的でしたから、ある程度の再現は出来たものの、経験の部分はほぼ欠落しているようです。」
女商人「自分の人生が綴られた年表を、覚えただけの様、といっていました・・・。」

勇者「・・・人格的な問題は?」

女魔法「特にないと思う。前より、仲良くしてくれてる。」

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地下研究室

女戦士「よう勇者!かけっこしようぜ!!」
女僧侶「貴方はどれだけデリカシーが無いんですか!!!」
ボカッ!
女戦士「いってぇええええ!!」

勇者「・・・いきなりなんだ。流石に走り回る事は出来ないぞ。」

女戦士「くそ!じゃぁえーと腕相撲で!」
ボカ!
女戦士「あ、頭叩くんじゃねェ!!」

女僧侶「あ な た と い う ひ と は ~・・・!」

女戦士「そ、そんなに怒るなよな。ちょっとした冗談だろ・・・。」

女僧侶「冗談になっていないんですよ!!」

勇者「僧侶、別にいいよ。」

女僧侶「まったくもう・・・! 勇者様が優しいからって・・・!」

女戦士「へっへーん私の勝ちだな!!」

女僧侶「何の勝負ですか!!!」

≪ギャーギャー!

ヒトミ「ふふ、賑やかだなぁ。」

青髪「ほら、次は物を掴む練習ですよ。コップを握ってみて下さい。」

ヒトミ「はーい。・・・あ」
コップ≪バキャ!≫

青髪「・・・慣れるまでは機能制限したほうが良いようですね。握力は50㎏位を限界値にしましょう。」

女商人「ひとみさん、調子はどうですか?」

ヒトミ「見ての通りまだまだ時間かかりそー。当分握手は出来ないわ。」

女商人「・・・私達には、時間がたくさんありますから。ゆっくり、慣れましょう。」

ヒトミ「うん。でも早く歩ける様にはなりたいな。」

青髪「・・・あら」
偽商人「お客様が来たようですね。」

女魔法「お客?」

青髪「えぇ。大変珍しい事でございます。この洋館は人が居る様には見えないはずですから。」
偽商人「今は馬を繋いでいますし、その所為じゃないでしょうか。」

青髪「とにもかくにも応対しなければ。少々席を外します。」

ひとみ「いってらっしゃーい。」

勇者「・・・。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


扉≪ガンガンガン!≫
近衛兵長「誰か!誰か居りませぬか!!」

扉≪がちゃり≫
近衛兵長「!」
扉≪ギギギギィィィ≫

青髪「・・・申し訳ございません。我が主人はただいま留守にしておられます。何か御用があられましたら言伝をお受けいたしますが・・・。」

近衛兵長「い、いえ。この家に仮面をつけた人は来られませんでしたか?」

青髪「・・・仮面、でございますか。」

近衛兵長「もしいるのならば、確認して頂きたい! 私は西大陸聖国家近衛兵団の長をやっているものです!」
近衛兵長「言伝が有ってきたのです! 加護者殿が居られますならば急ぎ確認を!!」

青髪「・・・申し訳ございませんお客様。そのような方はお見えになっては・・・」
勇者「まった。」
女商人「・・・」

近衛兵長「加護者殿!! あぁ、神のお導きに感謝します!!」

青髪「あら、いつの間に。」

勇者「一体どうしたのですか?」
勇者(・・・おかしいな、この洋館の位置がいつの間にか変わっている。前は草原の中ほどだったのに、今は道に面している。)

近衛兵長「じ、実は今我が国で・・・!」

青髪「立ち話もナンでございましょう。どうぞ中へ。」
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応接室

近衛兵長「貴方様方が加護者殿の御一行でございますか。会う事が出来、光栄です。」
ぺこり

女商人「・・・」
女戦士「別に頭下げられるような身分じゃないって。普通にしてくれ。」

近衛兵長「お気遣い感謝いたします。今まで加護者殿を援助してくださり国を挙げて感謝すべき所ですが、今は私だけの謝辞で・・・」

女僧侶「あ、あの、急いで来られたのでしょう? 一体どうされたのですか?」

近衛兵長「あ、そ、そうですね。実は・・・我が国では今、加護者が大量に発生しているのです。」

女魔法「?」
女戦士「加護者?」
勇者「・・・どういうことでしょうか。」

近衛兵長「何の前触れもなく、神の魔力を発する人が出現し始めたのです。それも大量に。」

女僧侶「すいません、加護者とは一体・・・。」

近衛兵長「あぁ失礼いたしました。加護者とは我が国の聖人制度でございまして・・・単純に申しますと神の加護を受けた人物の事を指すのです。」
近衛兵長「神の加護とはすなわち魔力。生まれと同時に特別な魔力を授かった加護者は本来なら唯一の存在でありまして、我が国において大変重要な人物です。そんな存在が・・・」

女魔法「一人しかいないはずなのにいっぱい出てきた?」

近衛兵長「そうなのです。しかし、大体その現象は一過性で、暫くたつと収まるのですが・・・。」
近衛兵長「その、私の妹が・・・急に・・・。」

勇者「妹、ですか。」

近衛兵長「・・・神に選ばれたと言い残し、どこかへ消えてしまったのです・・・。」

魔王「白団子の仕業か。」

女戦士「あっ!お前いつのまに!!」
勇者「どういうことだ。」

魔王「・・・あいつは手駒を失った事で焦っている。私と勇者が接触する事を危惧し・・・」
魔王「戦力をまさに掻き集めていると言ったところか。あそこはあいつの地脈解放点だしな。他の意図もありそうだがな。」


近衛兵長「あ、貴方様は一体・・・」

魔王「家主だ。歓迎しよう。」

近衛兵長「あ、ありがとうございます。」

魔王「所でお客人。ここにはどうやって?」

近衛兵長「実は・・・一時的に神の加護を得た市民たちの多くが、神の啓示を得たと言いまして・・・」
近衛兵長「その啓示という物が一様にこの大陸のこの道の側道にある家を訪ね、第三十一代目加護者にこの事を伝えよ、と。」

魔王「なるほど。やはり何か別の意図があるな。」
女戦士「説明しろよ。」

魔王「あとで、な。俺は忙しい。」

勇者「あの、すいませんがこの大陸には一体どうやって?」

近衛兵長「転送術式です。緊急性が有ると判断されまして、加護者殿と知り合いであり、かつ戦闘能力が秀でているものとして選ばれました。」

女僧侶「・・・随分、落ち着いていられるのですね。」

近衛兵長「ま、まぁ・・・妹が居なくなってから、一週間以上経過してしまっていますし、この旅路も中々に過酷でありましたし・・・。」
近衛兵長「それに、私は一つの団の長ですから。身内に何かあったとしても、落ち着いていなければなりませんから。」

女戦士「せめて外面は落ち着かせてないとだめだもんな。大変だな。」

近衛兵長「いえ、そんな。」

魔王「・・・となると、ふぅむ。流石と言ったところか、うむ・・・。」
ブツブツ

女戦士「何一人でブツブツ言ってんだよ。」

魔王「こちらの話だ。さてお客人、ご用事はそれだけか?」

近衛兵長「あ、は、はい。」

魔王「相間記憶棒」
黒い棒≪メキメキ!≫
黒い棒≪メキャッ!≫

魔王「これを。」
スッ

ぱし
近衛兵長「こ、これは?」

魔王「事態に何か進展が有ったのなら、この棒を使いここに会いに来るといいだろう。」
魔王「送ろう。転送術式」

近衛兵長「い、いったい何の」
バシュン!!

女僧侶「ちょ、ちょっと?!」

魔王「もう用事は終わったのだろう? 今いい所なんだ。」

女戦士「そ、そういってたけど、そんなすぐ追い返さなくていいじゃねぇか!」

魔王「送るだけまだましと言うものだろう。本来ならば放っておいても良いのだからな。」

勇者「妹、か。」
女商人「・・・知っているのですか?」

勇者「いや、知らない・・・はずだ。うむ。」


扉≪トントン≫

魔王「入れ。」

扉≪ガチャ≫

からからから
小竜像「また誰か来てるぞ。」

勇者「な、なんだ? この人形は。」
女商人「えと、私達が大破させた、竜の像です。私のお兄さんに当たります。」

魔王「なにい? いったいなんなんだ今日は。勇者の所為か?」

女魔法「・・・そんなに人来ないの?」

小竜像「まぁな。そもそもこの大陸は人の数がかなり少ないし、この家は外見上も廃墟にしか見えないはずである。」

女魔法「ふーん。」

小竜像「今は5番目が相手している。仮面の男、お前を呼んでるぞ。」

勇者「俺を?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
玄関

頭巾「・・・あ。」

青髪「おや、来られましたか。」

カツ カツ
女商人「・・・」
勇者「・・・? 一体誰だろうか。」

頭巾「・・・やっぱりわからないかぁ。仕方がないよね、会うのは初めてだし・・・。」

勇者「初めて?」

頭巾「あっ、初めてじゃないのかな。2度目だね、うん。」

勇者「・・・??」

頭巾「・・・その人奥さん?」

女商人「へ?」
勇者「あぁ、そうだ。」

頭巾「へぇー・・・。おめでとう。幸せになれたんだね。」

女商人「・・・。」
勇者「まだまだ、だと思うけどな。」

頭巾「そっか、でも残念だね。あとちょっとしか居られないから。」

勇者「何?」
青髪「・・・。」ピクッ

頭巾「あ、今日はあいさつだけだから、安心してねメイドさん。えっと、加護者さん?」
頭巾「渡したい物があるの。手を出して。」

勇者「・・・・・・。」
右手≪すっ≫

頭巾「はい。」
水晶≪ポト≫

勇者「これは・・・。」

頭巾「今年はまだ、あげてなかったから。魔王さんに見せれば分かると思うよ。」

勇者「・・・何?」

頭巾「またね勇者さん。いや、もう勇者じゃないのかな。」
頭巾「だって、敵の創造物とおままごとしてるもんね。」

女商人「・・・っ。」
勇者「お前は・・・!」

頭巾「今度は私が、塔のお姫様。迎えに来てね、絶対。」

頭巾「またね、加護者さん。待ってるから、ね。」

バシュン!!

勇者「今、のは・・・・・・。」

女商人「知り合い、ですか?」

勇者「・・・そのようだな。・・・頭がこんがらがりそうだ。」

青髪「渡されたモノ、それがなんなのか勇者殿はお分かりなのですか?」

勇者「・・・あぁ。これは・・・転真属性で封印された何かだ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
地下研究室

籠≪・・・≫

女戦士「干し肉に、パン。・・・なんだこれ。」

女魔法「干し肉とパン。」

女戦士「いや、何の目的が有ってこんなもん送ってくるんだ?」

女僧侶「意図が読めませんね・・・。」

女商人「・・・」
勇者「・・・俺が前話した事を覚えているか? 捧げ物と文通相手の話、なんだが。」

女戦士「えーっと・・・あぁ、そんな事話してたな。」

女僧侶「相手が分からないんですよね?」

勇者「・・・あぁ。この加護の中身はその捧げ物と同じ中身。そしてこの籠を封印していた魔力は、神の物だ。」

女魔法「・・・つまり、」

勇者「俺の知り合いを人質に取った、と言う事なのだろうな。しかも、敵として。」

女僧侶「えっ?」
女戦士「・・・・・・。」

勇者「なぜそんな事をするのか、理由が分からないんだが・・・」

魔王「そんなもの、餌に決まっているではないか。」

女戦士「うわっ! お、お前神出鬼没だな。」

魔王「ふっふっふっ・・・そう褒めるな。」

女魔法「褒めてない。」

魔王「さて・・・この行動により白団子の意図がある程度読めた。あいつはコイツを諦めきれていないのだ。」
魔王「故にこいつの知り合いを寄せ集め、少しでも自分に近づく様仕向けているのだな。」

女商人「勇者さまを・・・?」

魔王「そう、あいつはちょっとした事情が有り、動けない。だから呼び込む必要がある。そういう事だ。」

女僧侶「な、なんでまた? か、神はあのとき、そいつはやろう、って・・・。」

魔王「何を言われたか知らんが、アイツはなんだかんだ嘘をつく。必要な事だと判断したのだろう。しかしこいつは少々予想外過ぎたのかな。」
魔王「なんせ例外中の例外、あり得ない繋がりを作られてしまった。」

女魔法「ありえない繋がり?」

魔王「草団子だよ。しかもあの白団子も完全に予想外だったのが泥団子の存在だ。」

女戦士「泥団子とか草団子とかお前は一体何言ってんだ?」

魔王「あぁ、うむ。私の同胞、6つのエレメンタルの事だ。私を含め6つ。」
魔王「合成 分解 振動 大気 物質 衝撃 これら六つの固有属性魔力のそれぞれの集合体、それがエレメンタルの頂点たる俺達なのだ。」

魔王「泥団子は物質、草団子は衝撃、白団子は合成を指している。見た目から私が名付けた。そっくりだぞ。」

女戦士「じゃぁお前は胡麻団子だな。」

背中が痒くなった
ほんとごめんなさい。

勇者「なぜ俺をそこまでして?」

魔王「お前は自分がどれだけ貴重な存在か分かっていないようだな?」

女戦士「もったいつけずにさっさと教えろイカスミ野郎。」

魔王「お前には相変わらずハラハラさせられるな、自己主張の塊め。」

女戦士「私のどこが自己主張の塊なんだよ!」

魔王「鎧。」

女戦士「紅いだけじゃねーか!!」

魔王「充分だろ。・・・まて今デジャブが・・・・・・。」
女商人「・・・」

勇者「・・・それで、理由は?」

魔王「ふぅむ、特異点の話はしたな。つまりは人間の世界を弄る上で物凄く便利な存在なのだ。」

女僧侶「・・・。」
女魔法「もっと詳しく。」

魔王「あーだからだな、人間社会という物は、常に特異点に導かれ発展を繰り返しているのだから、その特異点との繋がりを極端に作りやすいこいつはあいつが欲しいと思ってもおかしくあるまい。」
魔王「それだけでなくこいつは人間としての才能をこれでもかと詰め込んだ存在でもある。能力の高さはカリスマを生む。こいつ自身が人間の頂点に立つのも易いのだ。」
魔王「さらにこいつの魂源性属性は人間の中では本来ありえない合成属性・・・人間が言う転真属性なのだ。もっとも重要なのがこの部分。」

魔王「完全洗脳は少々都合が悪い所が有る。魂源属性が同じなのは非常に都合がいい。恐らくお前たちはこれからはあいつに完全に洗脳された存在と会う機会が増えると思うが、ぞっとすると思うぞ。」

女僧侶「・・・あ、あの、具体的にどう都合が悪いのでしょうか・・・?」

魔王「端的に言うならば、与えられた情報しか信じなくなる。信仰の為に隣人を殺し、神の為に生贄を捧げる。」
魔王「人には優先順位が有る。与えられた情報が、そいつの優先順位の一番上に躍り出る。つまりは柔軟さが消えうせる。」

魔王「頭が固い奴に人は付いてこないと言う事だ。うむ。」

女魔法「・・・まおうって人間みたい。」

魔王「人間として生きていたこともあった。それに、お前たちは俺から生まれたのだから似ていても何らおかしくは」
女僧侶「ま、待ってください!!」
ガタン!

女商人「っ、どうしたんですか、急に。」

女僧侶「あ、あの、聞き間違いでしょうか。私達、人が・・・人間が貴方から生まれた、なんて」
魔王「お前たちが俺の魔力に触れた時の反応からも推測できることだぞ。」

勇者「何?」
女僧侶「ど、どういう・・・?」

魔王「・・・気持ち悪いという感情は、中途半端に逸脱しているから感じるのだ。」
魔王「私の魔力を感知すると人間たちは吐き気を催す。これは強烈な嫌悪感が由来。」

魔王「ではなぜ感じるか。 答えは簡単、お前たちの魂が私に似ているから。」

女戦士「・・・意味わかんねぇ。似ているものが気持ち悪い?」

魔王「・・・お前は相も変わらず呑み込みが遅いなぁ。」

女戦士「私はお前の知り合いじゃない! それに! ほら、勇者達も信じられないって顔してんぞ!!」

勇者「・・・。」
女僧侶「そ、そんな・・・私の、故郷が、まさか・・・」ブツブツ

魔王「そんなにショックな事かね。」

女魔法「突拍子もない。」

魔王「そうか? そんなもんか、ふむ。」

女商人「・・・お父さん。知識として分かったとしても、理解、納得に繋がるかと言えばそれは違います。」
女商人「具体例とか・・・体験してみないと、どうしても・・・。」

勇者「・・・。」
勇者(商人の言動や行動に、引け目を感じる。俺達との立ち位置の間に線が引いてある。)

勇者(・・・。)

勇者(何をすればいいのだろう。俺が何を言っても、胸のつかえを取ってやれる気がしない。)
勇者(・・・無力だ。俺が出来る事は、傍に居る事だけ。重荷を背負う手伝いさえ、出来ないのか。)

魔王「そうか。『人間』の意見だ、聞いておくとしよう。」

女商人「・・・。」

魔王「そうだなぁ。・・・とうっ」
胸像≪メギッ≫

魔王「これは人間の一般的なジジィの顔だ。合ってるよな?」

勇者「・・・まぁ、そんなものじゃないか?」
女僧侶「・・・えぇ、中年男性、と言った感じです。」
女魔法「・・・。」

女戦士「何する気だ?」

魔王「これを、むんっ」
胸像の目≪にゅぃん≫

目の間が広い胸像≪・・・≫

魔王「これこのように目の位置をほんの少し変化させてみると、どうだ。」

勇者「・・・強い違和感を覚えるな。」
女戦士「うわーぶっさー。蛙かよ。」
女僧侶「・・・・・・たまに居ますよね、こういう方。」
女魔法「変なの。」

魔王「自分の見知った常識からの逸脱、遺伝子に刻まれた危険信号。」
魔王「人は、中途半端に近しい物は弾く性質が有る。いや、動物・・・生き物全て、か。なぜか。」

魔王「『微妙な逸脱』とはつまり、自分と遺伝子が違うと言う事だ。そのような同種は、排除せねばならない。」

魔王「行動に異常が有るから、とも言えるが・・・それ以外のもっと大きな理由。それが、『進化の近縁種』である事。」

女魔法「進化の近縁種・・・。」

魔王「生命とは、自分以外の進化を駆逐、絶滅させ、自分たちを唯一の種として確立してきた。」
魔王「そういった存在だけが、生き残れた。いや、生き残るのだ。他を蹴落とそうとする奴と、特に何もしない奴では話にすらならん。」

魔王「ただ、蹴落とされていくのみ、と。まぁそういう事だ。つまりは俺の魔力に対する人間の反応は『生命の反応』であるのだな。うん。」
胸像≪ぼしゅぅ≫

女戦士「でもそれは見た目の話じゃねぇの?魔力がどーとか関係あるか?」

魔王「まーたお前はどうでも良い所でコマイ事を気にする。説明しても理解できない癖に。」

女戦士「うるせぇ! お前が嘘ついてるかもしれないからだろ!」

魔王「嘘、ねぇ。まぁいい。お前にはこってり人間の『信号装置:フェロモン』『受容体』『基質特異性』『魔素』『魂』その他いろいろみっちり」
女戦士「あっ、やっぱパスで。」

魔王「・・・うーむ時間を逆行した気分だ。」

勇者「お前は随分と人間に詳しいんだな。」

魔王「素体を作る際に色々と参考にしたからな。」


女僧侶「・・・私の信じてきた事は、一体なんだったのでしょうか。」

女魔法「どうしたの?」

女僧侶「・・・神から、人が産まれたと、教わってきていましたから。」
女僧侶「それが、本当は神を阻害する存在から人が産まれていたなんて・・・。」

魔王「アイツお得意の情報操作だな。ま、何を信じるかは個次第。俺の話が信じられないのならば信じる必要もない。」

女僧侶「・・・。」
女商人「そ、僧侶さん・・・?」

女僧侶「あの・・・神の、目的はなんなのでしょう・・・?」

女戦士「ん?」
勇者「目的?」

女僧侶「宗教を作り出したり、勇者様という存在を欲したり・・・人間を操る、というか、」
女僧侶「一体何が目的で、そんな事を?」

勇者「・・・確かに。人を律するなら、その理由が有ってもおかしくは無い。」

女戦士「上に立ちたいだけじゃねぇの? なんつーか野心みたいなよ。」
女魔法「なんで人間? あっちからしたら私達は下位の存在。意味ない。」

魔王「人間にとっても単純な理由だ。アイツはまぁ人間が大好きなんだな。だから律し、調整する。」

女僧侶「人間が好きだから、人間を律する・・・?」

魔王「進化の果てには何が有るか知っているか。」

勇者「・・・何も無いだろう。果てすら有るのか知らないが、生命の終わりとは死だ。つまり、何もない。」

魔王「そのとーり正解。」
パチパチパチパチ

魔王「好きだから、ずっと居てほしい。それだけだ。人間が居なくならない様に、発展の方向性を定め、」
魔王「生きるのに飽きぬよう適度に緊張を与え、」
魔王「増えてきたら間引く、と。増えすぎればバランスの崩壊を来たすからな。」

魔王「そうだな・・・あいつを詩的に表現するならば・・・『利己的な天秤』、お前達人間は指で押さえられているのだな、ははは。」

女僧侶「・・・。」
女魔法「ふーん。」
女戦士「気分わりぃなー。何様だっつーの。」

魔王「『神様』だろ? まぁ人間が勝手に呼び出した呼称らしいが。」

勇者「間引く、とは、どうやってだ?」

魔王「大方は天変地異だ。大雨、大地震、魔物の大量発生に長い長い冬に凶作だとかまぁー多岐にわたるぞ。」

女魔法「・・・どうやって? 魔法だとして、そんなの世界中でやってたら魔力がどんなにあっても」
魔王「可能なのだなこれが。世界、いやこの星を使えば、なぁ。」

勇者「どういうことだ?」

魔王「秘密だ。俺はいい加減作業に戻る。お前達もどうやって人間を相手にするか考えておけよ。」
魔王「転送術式」
バシュン!

女商人「・・・魔王は、何かが欲しいらしいです。」

女戦士「何か?」

女商人「わからないですけど、神が持っているモノの様です。」

女魔法「・・・。」

勇者「見当もつかないな。最後にぽろっと言っていた事絡みの様な気がするが。」

女商人「・・・神が行ってきた事は、普通ならかなり無茶な事、の様です。」
女商人「この星の、今自分が居る場所の裏側にいきなり魔法を発動させたり、星全土を覆う規模の魔法を使ったり、」

女商人「・・・これ以上は情報がロックされていたので、私にもわかりません、けど・・・。」

女魔法「ろっく?」

女商人「あ、制限されている、と言う事です。私は、魔王の知識を閲覧する権限があったのですけど、制限が掛かっていて・・・」
女商人「えと・・・つまりは、魔王の知識は私の知識である、のです。ですが・・・」

勇者「知識を閲覧できない様に鍵が掛けてあったのか。」

女商人「えと、魔王の価値観、考え・・・個性により違いの出る部分は元々閲覧出来ない様、です。一度、無制限まで制限が緩和された事があったのですが、それでも閲覧できませんでした。」

女戦士「ふーん、しかしふっしぎだなー。」

女商人「何が、ですか?」

女戦士「いや、今の話とは関係ないんだけどさ。なんで私達平然とあいつに従ってんの? 敵だったのに。」

勇者「・・・?」
勇者(確かに。 あいつは人類に戦争を仕掛け、大量の人を殺した存在。)
勇者(歴史はそうなっている。未経験だから、実感が湧かないだけか・・・?)

女魔法「別に私は個人的恨みは無い。」

女僧侶「・・・私は、神様、いえ、神に対しては元々信頼が無くなっていました、から。」
女僧侶「だから、自分の価値観に揺らぎが有ったとも言えますけど・・・。でも、なんというか・・・話していると敵意が無くなるんですよね・・・。」

勇者「そういえば俺もそんな感覚が有った。毒気が抜かれるというか・・・。」

扉≪ガチャ! ギ ギ ギ ≫

ヒトミ「や、やー皆さん!こんにちわ!」
プルプル

女戦士「おーひとみ! 歩けるようになったのか?!」

ヒトミ「な、なんとか、ね! あとは、なれ、るだけ、っと、」
ふらふら

女僧侶「危なっかしいですねぇ。転ばないでくださいね?」

ヒトミ「だいじょーぶだいじょーぶ! 転んでも全然痛くないもん!」

勇者「まぁ・・・無茶はしないでくれ。」

ヒトミ「あ、私のハジメテの人! 責任とってよ!」

勇者「は?」
勇者(・・・・・・・・・は?)

女僧侶「い、いきなり何を言ってるのですかひとみさん?」

ヒトミ「いやね? 直立の練習中に自分の記憶を閲覧してたんだけど、初めて会ったときにチューされちゃってたの思い出して。」

勇者「っ!」
女戦士「・・・さすがスケコマシ。手が早い事で。」

勇者「ちがっ、そ、それは・・・!」

女僧侶「ゆ、勇者様って、実は女好き、なのですか?」
女魔法「最低。」

勇者「じ、人工呼吸だっただろう! と、というかその時ヒトミは寝ていた筈だぞ!」

女戦士「寝てる間にしただと・・・!」

勇者「人工呼吸なのだから当たり前だ!」

女魔法「・・・いつもより焦ってる。」
女僧侶「ゆ、勇者様はそういった方ではないと・・・。」
ヒトミ「乙女の純情を弄んでおいてー。」

勇者(あ、聞く気ないな。弄り倒す気だ。)

廊下≪コツ コツ コツ ・・・≫
女商人≪スっ≫

勇者(むっ商人?)

ヒトミ「お腹へったなー。責任とって毎日ごはん食べさせてよ。」

勇者「良いぞ別に。だけど、後でな。」

おでこ≪コン≫
ヒトミ「あっ、ちょ、」
フラフラフラ

ドスン!
ヒトミ「痛、くはないけど・・・」
女僧侶「大丈夫ですか?」

女戦士「どこ行くんだ変態。」

勇者「俺は変態じゃない。」
ぴょんぴょんぴょん

女魔法「勇者。」
ぽい

勇者「?」
杖≪パシ≫

女魔法「貸してあげる。」

勇者「すまないな、ありがとう。」
カタ!

カツカツカツ

女戦士「・・・あいつの順応能力はおっそろしいなぁ。」

女僧侶「手足無くしてまだ4日程度ですのに、既に平然と生活してますからね・・・。」

ヒトミ「やーん今日のご飯たのしみー。」

女魔法「味わかるの?」

ヒトミ「わかるよー、人間だったころの記憶と違いもないし。」
ヒトミ「なんで味覚とか五感に違いは無いのに運動能力には齟齬があるんだろ。」

女戦士「知らね。さーて、体でも動かしに行くか。」
女僧侶「またあなたは面倒くさい話題を避けて・・・」

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一室

女商人「・・・。」

勇者「・・・。」


勇者「・・・普通にしろ、というのは、やはり難しいか。」

女商人「・・・・・・すいません。」

勇者「別に、責めているわけじゃない。」
腕輪≪チャラ≫

勇者「・・・。」
腕輪≪・・・≫

女商人「・・・。」

勇者(欲張りだな。 一緒に居てくれるだけでいいと何度も思っていたのに。)
勇者(今は、もっと傍に居てほしい。俺を支える存在ではなく、背中合わせの人として。)

勇者(俺も、商人を支えたい。・・・出来ない、のかな。)

勇者「・・・少しの間、一緒に居れなかったな。」

女商人「・・・すいま、せん。私が、もっとちゃんとしてれば、砂漠でもなんとかなったかも・・・」

勇者「あー・・・戦った時に言った事は、まぁ、あまり気にしないでくれ。」
勇者(一部かなり支離滅裂な事を言っていたな。イライラしていた所為だろうか。)

女商人「・・・。」

勇者「・・・。」
勇者(手や足の1、2本がなんだ。俺にとっては、商人を失う事の方が辛い。傍に居てほしい、いてあげたい。)
勇者(全て許す。・・・軽い、言葉か、自分しか見ていない。商人は知っている。俺が許している事、どんな存在だとしても、受け入れる事を。)

勇者(だからこそ苦しんでいる。俺の傍には居れないと思う、資格が無いと考える。)
勇者(自分という存在を許し難い。商人の心の傷は、重く、のしかかる。)


勇者(俺はその重みを、肩代わりする事が出来ない。俺が、その重みだから。)

勇者「・・・どう、すればいいのかな。」
勇者(なんともかんとも、思いつかない。)

女商人「・・・・・・すいません。」

勇者(あの時俺は、間に合わなかった。どんな障害があったとしても、駆けつければければいけない。)
勇者(どんなところへでも、誰よりも速く、駆けつける事が出来る足が欲しい。)

勇者(全てとは言わない、守りたい人を守れる、腕も欲しい。)

勇者「・・・ゴホ」

女商人「っ。大丈夫ですか?」

勇者「あぁ、平気だ。ずっと寝ていたから、乾燥したのかもしれないな。」

女商人「お水持ってきますね。」

勇者「いや、一緒に行こう。支えてくれ。」

女商人「はい。」

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炊事場

水瓶≪チャプ≫

水面≪・・・≫
勇者(仮面、か。着けている所をちゃんと見るのは、初めてだったかな。)

勇者(火傷がきっちり隠されている上に、肌の露出が多い。・・・随分、細やかな仕事だ。)

勇者(・・・改めて思う。俺は仲間に支えられている。この旅が、いったいどれだけ賑やかになった事か。その事で俺がどれだけ安心できたか。)

勇者(俺は、支えようとは思っていなかったな。ただ、気を使っていただけか。)

勇者(・・・なんだろうか、少し気怠いな。)

女商人「・・・どう、されました?」

勇者「いや、・・・仮面がなかなか、似合っていると思って。」

女商人「魔法さんが作ったのですよね。シンプルですけど、洗練されていて・・・魔法さんはこういった事が得意なのでしょうか。」

勇者「きっとそうだな。俺の無茶振りにもしっかり応えてくれた。魔法には間違いなくセンスがある。」
勇者「あの子は天才だからな。」
女商人「・・・。」

カタン

女商人「あ、魔法さん。いらっしゃったのですか。」

女魔法「・・・ん。」
カツカツカツ

勇者(帽子を深く被っていて顔が見えない。)

女魔法「水飲みたい。」

勇者「あぁ、ほら。」

女魔法「ん。」
水瓶≪チャプ≫

勇者(水面に反射している顔が赤い。・・・聞かれたか、少し恥ずかしいな。)

女魔法「・・・」
コクコク

勇者「・・・しかしこの洋館はどうなっているんだ? 俺達が突入した時の場所と位置が変わっていないか?」

女商人「あ、はい。えと、この家は実は魔物でして、魔王が便利だからと改造したらしいです。」
女魔法「一夜で場所が大きく変わる。陸続きのとこしかいけないらしい。」

勇者「へぇ、面白いな。」
勇者(随分派手に暴れたが、平気なのだろうか。)

勇者「・・・」
キョロキョロ

勇者「・・・薪しか無いな。」

女商人「ご飯を食べなくてもいい人達ばかりですから。お姉さんが毎日お掃除してはいるんですけど・・・。」

勇者(青髪の事か。)
女魔法「すごく丁寧。起こしに来てくれるしご飯も作ってくれる。」

勇者「たしか使用人をやっていたとか言っていたか。慣れているのだろうな。」

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夕方

肉≪ジュゥゥゥ・・・≫
勇者「ふぅ・・・。」

女僧侶「どうされました? ため息など珍しいですね」

勇者「いや、少し肩が重い気がしてな。」

女僧侶「・・・さらに珍しいですねぇ。勇者様がそういった事を言うなんて。」

勇者「たしかにそうかもな。まぁ、血液が多量に流出してしまった影響だろう。特に問題は無い。」

勇者(しかし片腕は不便だな。ひっくり返すのも一苦労だ。食材を切る時押さえるさえ出来ない。)
勇者(うーむ料理の時くらい生えてくれないものか。)

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食堂

女戦士「お前って器用だなー。腕かたっぽ無いくせに。」
ガツガツ
女僧侶「はしたないですよ!」

ひとみ「あ。」
匙≪ぐに≫
女商人「はい、新しいのです。」

女魔法「・・・」
もぐもぐ


女戦士「このスープなんてーの?」

勇者「・・・特に名前はないな。王から貰ってきた野菜の瓶詰をスープに作り直しただけだ。」
勇者「長い間煮込む必要が無いからなかなか便利だ。」

青髪「・・・私も頂いてよろしいので?」
偽商人「・・・。」

勇者「別に無理に食べる必要はない。が、まぁ、作ってしまったのだから食べてくれるとありがたいんだが。」

青髪「そうでございますか、それならば有難く頂きます。しかし、残念ながらこちらの妹では無理かと。」

勇者「なに?そうなのか?」

偽商人「あ、はい。私はそこまで精巧に作られていなくて、疑似消化器官が無いんです。」
偽商人「身体能力は意図的に限界値が低いですし、構造的にも強化前提じゃないですから。」

女戦士「はー、よーするにアイツが手を抜いてたんだな。」

青髪「手を抜いた、では少々差異が御座います。手を抜いた、というよりはさらに意図的で御座いますから。」
青髪「あの騒動の後に創造されたそちらの末妹をご覧いただければ急造でも高性能な素体を造れるのがお分かりになるかと。」

ヒトミ「あ。」
皿≪ガシャン≫

女商人「大丈夫ですか? お換えしますね。」
ヒトミ「うーん、腕を動かすのが難しい・・・。」


女戦士「勇者、お前ってステーキ系よく作るけどこういうのが好きなのか?」

勇者「・・・いや、慣れているだけだな。動物を捌いて焼くだけの簡単なモノだから。」
勇者「串焼きなどもよくやっていた。野菜を食べる機会も多くは無かったし・・・」

勇者「俺は単純な調理法が一番慣れている。だから、まぁステーキは作りやすいんだ。」

女僧侶「そうなのですか?その割には結構前にパエリアの調理法を細かく指示してましたよね?」
女魔法「おいしかった。」

勇者「あぁ、単純な物に慣れているだけで複雑な物を作った事が無いわけじゃない。と言ってもパエリアは作った事など片手半分も数えられないが。」

女戦士「私サンドイッチとかが好きなんだよなー、今度作ってくれよ。」

勇者「サンドイッチか・・・。いいぞ、材料も、まぁ有るしな。」

女僧侶「あれ?でも勇者様確かパン等には慣れてはいませんよね?」

勇者「まぁ、な。しかし旅の間に何度か食べる機会も有ったから、恐らく平気だ。」

女魔法「・・・食べるだけで真似できるの?」

勇者「複雑な調理法じゃない限りは出来る。燻製や塩漬け等は真似が出来ない。」

女戦士「それって材料じゃね?料理って言うのか?」

勇者「保存食の作成も立派な調理だろう。簡易的な燻製なら木や草が有れば出来るが、本格的になるとどうしても設備がな。」

女僧侶「つまりは設備さえあれば出来るんですね・・・。勇者様ってほんとに多才ですね。」

勇者「そうでもない。真似できるのはあくまで知っているモノだけだからな。高級飲食店の様な所が出す物は全く作れん。」

女戦士「お前飯屋どころか町にすら入れなかったもんなー。」
女僧侶「知らない物を作れたら天才の枠にさえ収まりませんよ。」

女魔法「けぷっ」

女僧侶「魔法さん、はしたないですよ。」

女魔法「おなかいっぱい。」

女僧侶「ほらほら、口を拭いてください。貴方もそろそろ淑女のたしなみを覚えてほしいものです。」
ゴシゴシ
女魔法「んぅ。」

女戦士「良いじゃん別に。めんどくせーよ淑女のたしなみとかさ。」
バクバク
女僧侶「貴方はまず女性の常識から覚えましょうね?」

ヒトミ「・・・あー」
腕≪ぷるぷる≫

女商人「・・・。」

勇者(さっきから商人が会話に参加しない。皆は努めて普段の雰囲気を演出しているが・・・。)
勇者(俺達は普段通りな方が、商人にとってもいいとは思うんだがな・・・。)

勇者(歯がゆい事だ。)


偽商人「あの、私席を外しますね。ご飯、ありがとうございました。」

勇者「あぁ、いや、無理を言って悪かった。次は気を付ける。」

偽商人「いえ、食べる事は出来ないですけど、食事の時は呼んでください。お手伝いしますから。」
偽商人「それでは。」


女戦士「・・・あいつって料理できんの?」
女僧侶「さ、さぁ?」

青髪「それはこの子次第と言った所で御座いますね。」
女商人「・・・へ?」

女魔法「なんで?」

青髪「あの子はこの子の複製で御座いますから。味見は出来ないとはいえ記憶が有ればある程度は再現可能でしょう。」
青髪「まぁ、この子の料理の腕は先ほど手伝わなかったことから“ある程度”は推測出来ますけれど・・・。」

女商人「うぅ・・・。」

勇者(何か意地の悪さを感じるが・・・正直なだけとも言えるか。)

女戦士「料理が出来る必要なんてない!だって誰かに作らせればいいんだから!」

女僧侶「それはそうですがせめてお手伝い位はして欲しいですよ。人数分ご飯を毎日作るというのは案外大変なんですよ?」
女僧侶「あの頃手伝ってくれていたのは商人さんだけです。」

女商人「そ、そんな・・・私は・・・。」

女魔法「私もたまに手伝った。」

女僧侶「えぇ魔法さんも偉いですよね。偉くないのはあの人だけです。」

女戦士「飯炊きは私の仕事じゃねぇの!」

女僧侶「貴方の町での仕事は寝てるだけじゃないですか!毎朝毎朝しつこく起こす身にもなって下さいよ!」

女戦士「さ、最近は起きてたろ・・・。」

女僧侶「最近だけじゃないですか!!勇者様が起こすようになってからは途端に目覚めが良くなって・・・!」
女僧侶「なんで私の時だけあんなに粘るんですか!!」

女戦士「ゆ、勇者に起こされるのは慣れてないんだよ・・・。目覚め一発目に見るとびっくりするっつーか。」

青髪「特別な行動を起こすと言う事は特別な感情が御有りになると言う事ですか?」

女戦士「ねーよそんなもん!!こんな常時ミイラやってる様な自己犠牲野郎はむしろムカつくんだよ!」

青髪「あら?それはそれで特別な感情に当たりません?」

女戦士「よーし表に出やがれ。青い髪を真っ赤にしてやる。」

青髪「冗談で御座いますよ。ご容赦くださいませ。」

女魔法「血は赤い?」

青髪「えぇ赤いですよ。と言っても他者にばれにくくする為だけの疑似体液ですから、損失しても問題は御座いません。」

勇者(・・・と言っても心臓には悪い。人の形をした物を切り刻むのはやはり後味が良くない。)

青髪「貴方様方も私達土人形の体液はご覧になられたでしょう? 先ほど出て行った妹との初遭遇の時に。」

女僧侶「・・・あの趣向は随分悪趣味でしたね。何の意図が有ってあんな・・・。」

青髪「さぁ? 私には分かりかねます。しかし悪趣味という点で意見を言わせて頂くなら、その通りかと。」

女魔法「・・・何か逸話でもあるの?」

青髪「えぇ。人に対し喧嘩を買った時も、じわじわと時間を掛けて押しておりましたから。」
青髪「あのお力が有れば、人の上に立つ人物のみを狙う事も簡単であったはず。それをわざわざ緩慢に、蝸牛の如く極々ゆっくりと、」
青髪「文字通り前線を押して行ったのですから、これはもう悪趣味以外の何物でも無いでありましょう。」

勇者(・・・喧嘩を買った?)
女戦士「文字通りって・・・え? 前線を押す?」

青髪「魔力にて壁を作り、それを押していたのです。広い広い平野にて、人の端から端まで魔力を伸ばして、」
青髪「両手を押し付け、足を蹴り、何万人という人とおしっくらをしてやった。と言っておりました。」

女僧侶「・・・あり得ない、ですよそれは。一体どれだけ・・・。」
女戦士「そんな奴と戦ってたのかー私達。勝てたのは運が良かったな。」
ガチャガチャ

青髪「勝負事とは力だけで雌雄を決するモノばかりでは御座いません。 運もそうかもしれませんが、それを最大限に生かしたからこそ、妹に届いたので御座います。」
青髪「あえて、如きと評させて頂くならば、人間 如き が、 運が良かった 程度で父に勝つ事など不可でございますから。」

青髪「そちらの作戦勝ちですよ。」

女魔法「・・・作戦考えてたの?」
女戦士「聞いてねぇぞおい。」

勇者「・・・まぁ、一応俺達を舐めている間に一気に行動不能に貶めよう程度は考えていたけどな。」

女僧侶「何故一言も言って下さらなかったので?」

勇者「・・・」
勇者(言えば俺がした様に命を捨てかねなかったから、なんだが・・・、言っても仕方がない。)

女戦士「まー言われても結局私はいつも通りだったと思うけどよ。」
女魔法「・・・終わった事だから別にいい。」

女僧侶「少し前までは勇者様と私達の間では綿密な作戦は立てれませんでしたし、勇者様だけが知っている状況が一番慣れているのでしょうね。」

勇者「信頼していないわけじゃ・・・」

女僧侶「分かっていますよ。私達も信頼してるから、知らなくても戦ったのですから。」
女僧侶「もっとも、私は攻撃には参加できなかったのですけど・・・。」

女戦士「役割だっつーの。役割で命の賭具合が違うっつーのは当然だろ。」
女戦士「てゆーかお前が前線に出てきたらこっちが困るっての。怪我したら誰が治すんだよ。」
パン≪むしっ≫

女僧侶「それは・・・そうですけど・・・。」

女商人「僧侶さんは自分の役割を全うしていたのですから、十分ですよ。むしろ、仲間が危ない目になっているのに、抑えて後方にいる事の方が辛いかもしれません。」
女商人「十分戦ったと思います。」

女僧侶「商人さん・・・ありがとうございます。」

女商人「いえ・・・私は・・・。」

女魔法「商人、水おかわり。」

女商人「あ、はい。少しお待ちください。」
椅子≪ガタッ≫

勇者(負い目、か。・・・どうすればいいのだろうか。時間に任せるしか、俺には手段が無いのか?)
勇者(俺の手足が戻れば、少しは軽くなるのだろうか。)

女僧侶「それで、えーともう一人の商人さんの残されたご飯はどうしましょう?」

勇者「・・・そうだな。戦士、食べるか?」

女戦士「おー食う食う。」

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食後

ヒトミ「ぐー・・・ぐー・・・」

食器≪じゃぶじゃぶ≫
青髪「・・・」


女戦士「それでー? 私達これからどうすんの?」

女魔法「神と戦うの?」
女僧侶「・・・」

勇者「・・・」
勇者(元々、俺のわがままに付いてきてくれていたとはいえ、魔王を倒すという大義名分が皆には有った。)

勇者(しかし今回は、そういったものはほぼ無い。神が俺達人間を管理しているとは言うが、それが真実かどうかは分からない。)

勇者(俺個人の理由ならば、戦うしかない。 あいつは俺から人を奪っていった。顔を合わせた事も無かった、だが)
勇者(俺と長い間、対話してくれていた存在を。俺にとっては、充分戦う理由になる。)

勇者(だが言ってしまえば、それは顔見知りですらない人を救いに行くと言う事。皆が戦う理由は薄い。)
勇者(皆が戦う理由は、俺の感情のみ。いくらなんでも、そんな事に巻き込むのは・・・)

女戦士「ムズカシー顔してんじゃねーや。」
鞘≪ひゅ≫

頭≪ゴン≫
勇者「ぐっ」

女戦士「まーたいらない事考えてんだろ? どーせ私達を巻き込みたくないとかよー。」

頭≪ゴン ゴン ≫
勇者「がっ うっ」

女戦士「別にいいじゃねぇか。私達の命担保にしたって。惚れたもん負けだ。私達が悪いんだ。」
女僧侶「まぁ、死ぬのは嫌ですけどね。」

勇者「しかし・・・」

女魔法「私は勇者についてくしかない。勇者が行くなら私も行く。それだけ。」

勇者「・・・。」

女僧侶「・・・私や戦士さんはともかく、魔法さんにはあなたが必要でしょう? ねぇ、勇者様。」
女戦士「そーだそーだ。コイツの過去は全く知らねぇけど、連れてきたのお前だろ。責任取れよ。」

勇者「責任か・・・。・・・何か、俺が取らなければいけない責任が多くないか。」

女魔法「商人、僧侶、戦士、私、ひとみ、ヒトムヒトナ、あと魔法銃の一人。」
女商人「わ、私は別に・・・。」

勇者「・・・腕が足りそうにない。」

女戦士「何本有ってもたりねーよ。どーせスケコマシのこった、私達が居ない間にまたどっかで責任作ってんだろーしよ。」

勇者「スケコマシスケコマシと、それでは俺が節操無しの様じゃないか。」

女戦士「天然が何か言ってやがるぞ。言ってやれ僧侶。」
女僧侶「艶福家。」

女魔法「・・・えんぷく?」

女僧侶「モテる人、という意味ですよ。主に女性から。」

勇者「そ、そもそも俺は女性以前に人とすら・・・」

女戦士「うっせートクイテン野郎が。」

勇者「せめて意味を理解してから使ってくれ。」

女戦士「うっせーエンプクカ。」

勇者「・・・。」


勇者「・・・は、話を戻すが、神と戦うのは完全に俺の自己満足だぞ。助けに行くのは皆と共通の知り合いでもないし、その助けたい相手が襲ってくる。」
勇者「しかも理由が魔王との取引。魔王の話では、相手は俺達を管理している存在とはいえそれが本当かどうかも分からない。」

勇者「本来なら俺だけで行くのが筋だと思う。」

女戦士「だからさー、お前が行く時点で私達が行くのは決定してんの。私達を連れて行きたくなきゃお前が諦めろ。」
女僧侶「まぁ、勇者様が諦めるなんて言った日にはひっぱたいてでも訂正させますけどね。」
女魔法「眠い。」

勇者「・・・・・・。」

女戦士「惚れさせた責任とりやがれータラシ野郎がー。」
椅子≪ギィー ギィー≫

女僧侶「転びますよ。」

勇者「さっきからスケコマシやら惚れさせたやらと、お前は俺の事が好きだったのか?」

女戦士「男としてのお前には惚れてねー。いやうーん男としてか?」
女戦士「取りあえず異性としてはみてねぇよ。」

勇者「・・・そうか。」
勇者(色々あるんだな。)

椅子≪ガッタン!≫

女戦士「はー、なんか気ー抜けたわー。」
グデー

女僧侶「全く・・・まぁその気持ちも理解出来ますけど。」

女魔法「なんで?」

女僧侶「緊張の連続でしたもの。そしてもっともの目的である商人さんが戻ってきてくれていますし、少しは抜けるという物です。」

勇者「・・・?」
勇者(なんだろうか、違和感を覚える。)
勇者(確かに、一番の目的は商人の奪還だった。しかし魔王討伐もそれなりに大きい理由だったはず。)

勇者(商人奪還の達成感や安堵感が、魔王討伐を覆い隠して、いや)
勇者(魔王討伐を達成したかのように、感情を挿げ替えられている・・・? )

勇者(・・・考えすぎか。しかし魔王討伐が有耶無耶になっている事は)
茶≪コト≫

勇者「む?」

青髪「どうぞ。」

女僧侶「ありがとうございます。」

青髪「皆様方、ご随意に気を休まれることは宜しいかと存じます。」

青髪「しかし、僭越ながら御助言させて頂きますが、父の手助けを了承すると仰られるなら、」
青髪「覚悟はして置くべき、と、勧めさせて頂きましょう。」

女魔法「かくご?」

青髪「えぇ。貴方たちはの敵は、神ではありません。」

青髪「同胞たる “人間” で御座います。」

青髪「故に、覚悟せねばなりません。」

青髪「その手を染める、覚悟を。」


青髪「貴方様方は先ほど楽しげに勇者殿に付いていくと仰っておられましたが、事をしっかりと理解している様子には見えません。」
青髪「大事な人が行くから、ただ付いていくだけ、と。そのような甘い考えで、殺せるのですか?」

青髪「私も、父の知識を覗く事が出来ますので神に操られた存在は存じています。」
青髪「感傷的理解は及びませんが、一般的な価値観から語るならば、『可哀想』な敵ばかりで御座います。」

青髪「悪人ならまだしも、相手は善人。少なくとも、本人にとっては。」

青髪「自分が悪いなど微塵も思っていない確信犯ばかりで御座います。故に人間味の有りすぎる貴方達は、間違いなく躊躇するでしょう。」

青髪「それが人の性、という物なのでは?」

女戦士「・・・急にまくし立ててなんだ?お前が何を言いたいかはなんとなーく分かったけど、理解できないぞ。」

青髪「あら、それは失礼を。ワタクシ説明は不得手な物でして。」

女僧侶「・・・ええと、取りあえず、可哀想な敵、とは一体・・・?」

青髪「可哀想な敵、とはつまり過去に事件が有った人物を差します。」
青髪「今回の場合に置いては、過去に事件が有る、そういった弱者が利用されるでしょう。」

女魔法「・・・なんで?」

青髪「洗脳難度が低い為で御座います。心に傷が有るならば、そこから入り込む事が可能ですので。」
青髪「時間さえあれば、神にとっての人間などどんな存在でも洗脳可能で御座いましょう。しかしながら今回は時間が御座いません。」

青髪「急ごしらえに駒を揃えるならば弱者が狙われるのは至極当然なので御座います。

勇者「俺達の敵は人間で、しかも心に傷を持っていて、俺達に向かう事を全く恐れてなくて。」
勇者「そうだとしても何も問題は無い。神の呪縛を断ち切ればそれで済む話だろう。」

青髪「済まない話で御座います。」

女戦士「何?」

青髪「例えば・・・このカップに注目下さい。」
スッ
器≪・・・≫

女魔法「・・・。」
女僧侶「・・・?」

器≪バキャァ≫

ガシャガシャン!

青髪「貴方達は之を元に戻す事が可能ですか? 勇者殿が仰ったことは、つまりは私を壊す事がこのカップを直すことに繋がると言う事。」
青髪「カップが壊れた後ではまさに手遅れで御座いますね。ご理解いただけますか?」

勇者「・・・。」

女僧侶「つ、つまり・・・。」

青髪「貴方達が今回の事に首を縦に振ると言う事は、この砕けたカップを、これこのように」
砕けた器≪カチャカチャ≫

青髪「お片づけをする事に当たります。危ないですからお手を触れぬよう。」

女戦士「・・・心配してくれてんの?」

青髪「いえいえ、そんな事は御座いませんよ。現状認識が足りていないと判断したまでで御座います。」

女商人「・・・私は別に、平気です。」
女僧侶「えっ?」

勇者「・・・商人?」

女商人「殺せます。」

女戦士「・・・何言ってんだお前。」

女商人「お姉さん、ありがとうございます。これで現状認識が補填されます。」

青髪「いえ、差し出がましい真似をしましたね。本来ならばあなたの役割でしたものを。」

女戦士「おい商人!答えろ! お前自分が何いってっか分かってんのか!?」

女商人「はい。少なくとも今の皆さんよりは、理解しているはずです。」

ガタン!
女戦士「違う! 人を殺すって事の重さを理解してんのか!!」

女商人「・・・すいません、戦士さん。私にとっては、勇者さまが一番です。」
女商人「他人がどうとかは、余り関係が・・・」

女戦士「違う!私が言いたいことはそうじゃない!!」
ドカァ!

女僧侶「ちょ、ちょっと戦士さん!!」
勇者「・・・。」

女戦士「人が人を殺す事は確かに私が気に食わないだけだ!だけどな!」
女戦士「許容できないわけじゃない!仕方がないなって思える事もある!」

女戦士「それはちゃんと理解した上での選択が有ったかどうか!その上で私がわかって納得できる理由の時だ!」

女戦士「お前は自分の価値の優劣だけで判断している!それは」
女戦士「私が最も嫌いな人殺しの理由だ!!」

女商人「・・・。」

女戦士「商人、お前おかしいぞ! 勇者の腕ぶった切った事がそんなに辛いのか!?」

女商人「っ。」

女戦士「分かるとか言えねえけどな・・・! でも! 自分のことを責めて、人形になる事は」

勇者「・・・。」

女戦士「こいつはぜってぇ望まねぇ!! そんな事、わかってんだろ!?」

女商人「・・・っ。」

女僧侶「戦士さん!!落ち着いてください!!」

女戦士「話を遮るな! いいか、もう踏みこんじまった! ここで止めたら・・・」
女戦士「ぜってぇ遺恨が残る!それだけは駄目だ!」

女戦士「こうなっちまった以上、話をつけておかなきゃ行けねぇ!」

女僧侶「ならせめて落ち着いてください!今にも殴りかかりそうじゃないですか!」

女戦士「ぐっ・・・、わかったよ。確かにちょっと荒っぽかったよ。」
女戦士「商人、聞くぜ。お前、勇者の道具になろうとしてんだろ。」

女商人「・・・。」

女戦士「お前は人の気持ち考えて、ちゃんと分かる奴だ。だからお前がそんな事したら、勇者がどう思うかってのもわかってるはずだ。」

女戦士「逃げてんのか?」

女商人「ちが、います・・・よ・・・。」
青髪「・・・?」

女戦士「じゃぁ説明しろ。急用が出来たとかは無しだ。私達4人の前で、説明するんだ。」

女商人「・・・。」

女魔法「・・・。」

勇者(・・・そう簡単に、勢いで踏み込んでいい問題なのか?)
勇者(わからない。少なくとも、俺には出来ない方法だ。俺だけは、この問題に踏み込めない。)

勇者(踏み込んではいけない俺が、話を聞ける状況ではある。)

勇者(・・・そもそも俺はここで口を挟めないか。成り行きを見守るしかない。)

女商人「説明、なんて、何を、しろと・・・」

女戦士「お前がなんで勇者の道具になろうとしているか、についてだ。」

女商人「・・・・・・わたし、は、足手纏い、ですから・・・。」

女僧侶「そ、そんな! 商人さんは」
女戦士「静かにしてろ。」
女僧侶「う・・・。」

女商人「皆さんは、私の事を頼りになるって、言ってくれますけど・・・、」

女商人「そんなこと、ないです。迷惑、掛けどおしで・・・」

女商人「・・・わたし、けっきょくは作られたモノですから、皆さんとは根本がちがいます、し・・・・・・。」
ぽろ

女商人「この、っ涙、だって・・・。ただの、水です。わたし、はっ、人間では、ないんです。」

女商人「いっしょにいてってっゆうしゃさまに、いったけど・・・」
ぽたぽたぽた

女商人「結局わたしは人間じゃありませんでした。こっけいじゃないですか。一緒に居るなんて、あり得ない、です。」

勇者「・・・。」

女商人「ゆうしゃさま、は、みなさんと一緒にいれます。にんげん、ですから。でも、私は」

女商人「人じゃ、ない、ですもん・・・。わたしだけ、みんなと違います・・・。」

女商人「ひとじゃない、なら、わたし、は・・・」

女商人「・・・・・・」

女戦士「人じゃないからってっ・・・」
女戦士「・・・っ!」
ギリリ

勇者(戦士が言葉を飲み込んだ。わかっているんだな、その言葉は、軽いのだと。)
勇者(だからなんだ、は、経験が有るからこそ言える言葉。それ以外に使ってはいけない言葉。)

勇者(だから の、その先は、なってみないと分からない。)

青髪「・・・なるほど。何やらおかしいと思っていたのですが・・・。」
青髪「あなたはまだ何も言えていないのですね。」

女商人「・・・はい。」
ぽろぽろ

勇者「・・・どういうことだ?」

青髪「・・・では、妹がこんな様子なので、代わりにワタクシが説明いたします。この子と、」
青髪「貴方達の決定的な違いについて。」

女僧侶「違い・・・?」
女魔法「・・・。」

青髪「死の概念。貴方方は、寿命が御座います。故に死にます。」
青髪「しかしてワタクシ達は、死にません。半永久的に動きます。」

青髪「機能停止も、基本死ではありません。死が近づいてくる事はありません。」

青髪「死、とはひたひたと後ろを歩くものでは無く、貴方達の傍らに存在する、絶対的真理。生の裏側、つまりはよく知る知人。」
青髪「私達は、その存在を実感出来ません。死を怖いと思う事も、基本は有りません。・・・この子は少々違うようですが。」

青髪「詰まる所、私達土人形は、貴方達と共に歩む事が出来ないのです。私達と貴方達の間には、寿命の差というどうしようもない深い谷が存在するのです。」

青髪「一緒に居ようとは、それはつまり自分を置いていくと言われている事に他ならないのです。」

勇者「っ!」


勇者(・・・そう、か。)

勇者(俺が、言っていた言葉、一緒に居たいという言葉は、商人にとって重みでしか、無いのか・・・!)

女商人「わたし、その事を考えると、どうしようもなく寂しくて・・・」
ぽろぽろ

女商人「いっしょに居たいです。でも、居れないんです。だって」
女商人「みんな、死んじゃうんですもん・・・!」
ポロポロポロポロ・・・

女僧侶「しょ、商人、さん・・・。」

青髪「・・・そんな私達が、貴方たちに歩幅を合わせる方法は、ただ一つ。」
青髪「自殺しか御座いません。」

女魔法「じさつ・・・。」

青髪「理解が及びませんが、さぞや寂しいのでしょうね。見送った後に、自発的に自分の電源を落とすというのは。」


女戦士「・・・じゃぁ、どうするっつぅんだ。だから・・・、」
女戦士「だから・・・!」
ギリリ・・・!

女戦士「・・・くそっ!」

勇者(だから・・・モノになる。そうすれば、悲しくない、から。)
勇者(俺に無機質に尽くす事が・・・商人が最も出来る譲歩、か・・・。)

女商人「ごめんなさい・・・。ほんと、は・・・もっとはやく、いうべき、でした・・・。」
ぽろぽろぽろ

女戦士「謝るな・・・! 私達が、気付くべき事だった・・・!」

青髪「・・・もしかして、負い目、ですか?」

女戦士「・・・あぁ?・・・そうだよ、私達は、商人が悩んでるっつうのに・・・!」

青髪「いえ、私の妹の事です。なにか、足りない、様な・・・。」

女商人「・・・。」

勇者(まだ、何か隠していると言う事、か?)

青髪「・・・ワタクシではこれ以上察することが出来ません。妹、言わなきゃいけない事は、言わなきゃいけないんですからね。」

女商人「・・・すいません、いま、は・・・・・・。」

女戦士「っ・・・。」

勇者(このデカい、デカすぎる問題は、どう解決すればいい?)
勇者(商人に負い目を残さず、解決できる方法・・・)


勇者(・・・・・・・・・・・・思い、つかない・・・!)

女商人「・・・。」
女戦士「・・・。」
女僧侶「・・・。」
女魔法「・・・。」

勇者「・・・。」


勇者(沈黙。・・・当然、か。俺達が、何とかする方法を思いつかない限り、)
勇者(この沈黙は続く。)

女商人「・・・。」
ゴシゴシ

女商人「・・・すいません、皆さん。私の所為で、空気を悪くしてしまって。」

女戦士「ふざけろ! お前の所為な訳が・・・!」

女商人「ありがとうございます。でも、平気、ですから。」
女商人「決めた事、ですから・・・。」

女戦士「・・・っ!」
ギリリ・・・!

女商人「・・・魔王の作業が終わり次第、恐らく私達は歩いて進む事になると思います。この家以外では、転送術式は使用不可になると思いますから。」
女商人「恐らく、地脈の解放点へ向かって、中枢へ侵入する事になります・・・だから当分歩きます。」

女商人「・・・わたしの事は、置いて於いて、来るか来ないか、しっかり考えて下さい。」
女商人「心に傷が出来ると、神は取り込もうとしてくるはずですから・・・。」

女商人「・・・失礼します。」
スタ スタ スタ ・・・

場≪・・・≫


勇者(胸が、痛い。無知とは罪、か。)
勇者(結局俺は、商人を苦しめているだけだったのか。)

青髪「・・・しかし、理解が及びません。妹のその、モノになるという選択は、逃げではないので御座いますか?」

勇者「・・・逃げに見えるかも知れないが、少し違う。」
勇者「逃げとは、この場合俺から離れる事。一緒に居るという選択は、向き合ってはいる。」

勇者「その事がどれだけ辛いか・・・解るなんて、言えないが・・・」

青髪「なるほど、自分の感情故に向き合う選択が生じると。しかしてそれは離れたい理由ともなる。」
青髪「矛盾ですか。感情が無ければ平然と傍に居れると言うのに。」

青髪「・・・・・・あぁ、故に、モノなのですね。感情を殺して、傍に居る選択を、と。」
青髪「そしてモノでは無い故にそれに徹する事もまた出来ないと。なるほど・・・。」

青髪「さて。」
パン!
青髪「では質問を受け付けましょう。妹の発言には明らかに貴方様方が知らない情報が御座いました。」
青髪「宜しければ応えさせて頂きます。」

勇者(・・・そんな気分じゃないが、必要な情報は知っておかなくては。)
勇者「転送術式が使えない理由は?」

青髪「神の妨害を懸念しているのでしょう。もしかしたら、程度の可能性では御座いますが。」
青髪「位置がばれた以上は警戒しておくべき事で御座います。」

勇者「商人が言っていた、地脈の解放点、中枢については?」

青髪「大いなる魔力の流れ、とでも申しましょうか。そういった流れがこの星には存在しまして、その流れの一部の到達点を解放点と申します。」
青髪「中枢とはその魔力の流れの源・・・生き物に例えるならば心の臓、この星の心臓部の事で御座います。」

女僧侶「あ、あの、取り込まれる、とは?」

青髪「・・・神の手駒の増やし方は、あの子が申しましたように、心を弄り自分への狂信者へとする事。」
青髪「時間を掛ければどのような存在でも洗脳が可能ですが、時間が無い場合は心に傷を持つような、精神的弱者を利用致します。」

青髪「つまりは心に弱みを持てば、あっという間に洗脳されてしまう次第で御座います。勇者殿にはそういった経験もあるのでは?」

女戦士「・・・そうなのか?」

勇者「・・・有った気もする。自分の無力感が膨れ上がったと思ったら、声が聞こえてきた。」
勇者「私に身を委ねよ、と。その後・・・一瞬何も考える事が出来なくなった。あれが洗脳だったのか・・・?」

青髪「貴方様は神にとっても特別な存在。壊しきらぬ様、加減されていた筈で御座います。」
青髪「本来ならば不可逆性・・・元に戻るなど、あり得ぬことで御座いますから。」

勇者(・・・さっきから散々に、元に戻らないと訴えてくる。恐らく、俺の知人も既に、と言いたいんだろう。)
勇者(覚悟、か。あれは俺にも言っているんだな。殺す事になると。)

勇者(元に戻らない、か。・・・しかし少しだけ話した時には冷静だったようにも思えるが・・・。)

勇者「・・・俺は、殺す気は無い。」

青髪「そうで御座いますか、それも良かろうと存じます。」

勇者「・・・・・・今回に限っては、やはり俺一人の方がいいかもしれないな。」
スクッ

女戦士「私は帰らねぇぞ。」

勇者「戦士、お前の技は殺す技だ。今回はお前の技は必要ない。」

女戦士「・・・!」
ギロリ

勇者「僧侶、今度の旅は今までより辛いぞ。心の弱いお前は、もっとも取り込まれやすい。」

女僧侶「な、なにを・・・?」

勇者「魔法。・・・今回の相手はお前の同胞と言えなくもない。同情せずにいられるのか?」

女魔法「・・・。」

女戦士「勇者!てめぇ何が言いたいんだ!!」


勇者「お前達は付いてくるな。」

女戦士「カタワ野郎が何ほざいてんだ!!」
机≪ズガン!≫

襟≪ガシッ グイ!≫

女僧侶「戦士さん!」」

女戦士「勘違いしてんじゃねぇぞ勇者・・・!一人じゃ満足に歩けもしねェ癖に・・・!」
女戦士「今てめぇは私達の中で最も弱い!!お前の強みは足の速さ!そりゃ少し前まではお前が容赦さえしなきゃ人間には無敵に近かったさ!」

女戦士「でも今のお前には足が無い!そんなお前がどうやって剣撃を躱す!?魔法から逃げる!?」
女戦士「どうやって救いたい相手を追うってんだよ!!言ってみやがれ阿呆が!!」

勇者「・・・さぁな、知らん。」

女戦士「こんの・・・!」
ギュゥ・・・!
女僧侶「戦士さん!!!」

女戦士「・・・くそ!」
パッ

勇者「・・・。」
スタン

女戦士「お前らは二人揃いも揃って・・・!なんで自分を犠牲にしやがるんだよ!!」

女戦士「背負わせろよ!私達は仲間なんだろう!? 商人にしか分からない寂しさも・・・! お前の覚悟も!」
女戦士「それが出来なきゃ!仲間って言わねぇだろう!?」

女戦士「私は所詮他人ってか!?お前にとっては有象無象の一人なのかよ!!」
女戦士「ふざけてんじゃねェぞ大馬鹿野郎が!!」

勇者「・・・。」
勇者(・・・そんなわけがない。大事だからこそ、置いていきたい。)

勇者(だが、納得する訳もない。だからこそ、口実には喧嘩別れしか道が無い。)

勇者(・・・・・・俺はやはり、孤独な道しか歩めないのかな。)

女魔法「・・・っ!」
杖≪ブン!!≫

ボグッ!
勇者「がっ?!」

女僧侶「ちょ、ちょっと魔法さん!?」

女魔法「・・・勇者の」
杖≪フルフル≫
女魔法「バカァ!!!」
タッ!
タタタタ・・・

女僧侶「魔法さん!? え、えと・・・」
キョロキョロ

女僧侶「・・・あぁもう! 戦士さん!こっちはお願いしますね!」
タッ


勇者「ぐ・・・」
ズキズキ

女戦士「・・・ぷー、いよいよスケコマシのボロがはがれる時が来たか?女に殴られて逃げられるなんてよ。」

勇者「・・・」
勇者(・・・)

女戦士「思考停止中か?お前って目的が出来るとまず周りから手を出す奴なんだな。しかも冷静にどっちが大事か量って、」
女戦士「冷徹に切り捨てる。」

勇者「・・・そんなつもりは無い。」

女戦士「切り捨てるのはまず自分の身だってのもわかったよ。いや知ってた。お前は冷静に自分とそれ以外を量っていつも自分を捨てる。」
女戦士「なんでわざわざ孤独な道を選ぶんだ? いやわかってる。お前の境遇が特殊すぎるからだ。」

女戦士「お前が欲しい物を手に入れる為には戦うしかない。戦うってのは、失うって事。」
女戦士「失う可能性が常に付きまとう。お前は商人を得る為の戦いと、お前の目的の為の最後の最後で自分の手足を失った。」

女戦士「お前は身に染みてる。戦いが残す結果は常に損失だって事を。だけど、お前が欲しいものは戦うしか得る道は無い。」
女戦士「だから私達を置いてく。失いたくないから、先に失っておく。」

女戦士「・・・そうだった。そう。忘れてた。あぁ畜生忘れてた。」

女戦士「私が戦う理由も、戦う事でしか手に入らないモノが欲しかったからだ。」

勇者「・・・。」
勇者(戦士・・・?)

女戦士「・・・なぁ勇者。お前ってさ、何が欲しいの? 聞かせてくれよ。」

勇者「・・・何、とは?」

女戦士「聞くなよ。分かれよ。」

勇者「・・・」
勇者(何が欲しい・・・? 結局は、俺は、人との関係を望んで、その奥にある何が欲しい?)
勇者(俺は何故旅に出た? お母さんを助ける為だった。その先の目的・・・。)

勇者「・・・?」
勇者(つまりはこれ、か? 俺は、人と人が幸せに生きているその光景を、眺めていたい。一緒に居たい。)

勇者(俺の一緒に居たいという望みは、つまりは平穏?)

勇者(俺は平和な日々が欲しい・・・?)

女戦士「もやもやしててもいいよ。聞かせてくれ。」

勇者「・・・俺は、平穏が・・・」
勇者「いや、しかし俺は」
女戦士「理屈をこねるんじゃねぇよ。お前が欲しいのは、平穏、つまりは平和。そうなんだな?」

勇者(・・・いや、平和が欲しいなど、そんな事は無い。)
勇者(俺は、自分が良い様に思った事しかやらない。そんな奴が、平和だと?)

勇者(反吐が出る。あぁそうだとも、俺は結局は自分の都合を押し付け、不憫な思いをさせていただけだ。)

勇者(他者を思いやる気持ちなど、俺には無い。)

勇者(商人に寂しい思いをさせて居た奴に、そんな心など有るものか。)

勇者「違う。俺は利己的な人間だ。平和という皆が喜ぶような、そんな高尚な物は望んでいない。」
勇者「俺は」
女戦士「うるせーアホ。」
ゴン!
勇者「ぐっ!」

女戦士「お前は商人とどうなりたい?私達とどうなりたい?」
女戦士「一緒に居たいんだろ? 私達だけじゃなくて、出来るなら神様に持ってかれたって奴とも、知らない様な奴とも。」

女戦士「それを実現できる状況は、一つしかねぇ。 つまり平和だろ。平穏も、平和も似たようなもんだ。」
女戦士「お前の欲しい平穏は範囲がデカすぎる。見たこともねぇ奴とも出来るなら一緒にってどんだけだよ。」

女戦士「それに少なくとも、お前は隣に居る奴が悲しそうな顔してたら満足しねぇよ。」
女戦士「デカすぎる平穏は、平和って言うんだぜ。知ってたか?」

女戦士「勇者、受け取れ。」
剣≪ガチャ≫

勇者「・・・?」
剣≪チャッ≫

女戦士「お前に私の剣を捧げる。お前の道はやはり私の道だった。」
女戦士「お前がなんと言おうと私は付いていく。肝に銘じとけ。」

勇者「・・・戦士、お前が何を言っても、変わらない。」

勇者「俺は利己的な人間だ。自分の都合でしか動かないさ。」

勇者「そんな俺には」
女戦士「良いよそれで。利己的だって言うんなら、この剣、自由に使えよ。何も問題ないだろ。」

勇者「・・・。」

女戦士「まぁ、ムカついたら今度は一発目貰うからな。この剣、錆びさせないでくれよ。」

勇者「・・・」
ぽりぽり
勇者(何やら厄介な方向に話が進んでいるな。俺は置いていきたいと言うのに・・・。)

ヒトミ「すー・・・すー・・・」

勇者「・・・。」
勇者(・・・・・・・・・・・・くく、何とも図太い。ずっと眠りこけていたのか?)

女戦士「何にやけてんの?」

勇者「・・・怪訝な顔をしているんだ。どうしたものかとな。」

女戦士「諦めとけってー。私も魔法も付いてく気満々だぜー? 撒くのは大変だろーなーその足だと。」
ガシ

勇者「肩を組むな。」
勇者(・・・所詮俺は利己的な人間だ。皆がどういってくれようと結局は自分の目的の為にここまで来たんだ。)

勇者(ならば俺は、もっと利己的に。)

勇者(望む全てを手に入れる。)

勇者(それでいい。それで結局今までと変わらない。)
勇者「・・・修羅場だというのに、なんとも安らかな寝顔をしてくれる。」

女戦士「ん?」

勇者「なんでもない。」

女戦士「あー・・・、この図太さはちょっと前の商人みてぇだな。こんだけ騒いで起きねぇって。」

勇者(さて、明日から一体どうするべきか。・・・・・・寝顔というのは、なぜこうも毒気を抜いてくるのか。)

女戦士「・・・。」
むにむに
ヒトミ「う、うぅ・・・。」

勇者「・・・。」
パン!

女戦士「ひ、人の頭はたくんじゃねぇよ。僧侶みたいな事しやがって。」

勇者「・・・はぁ。」
勇者(ほんとどうしたものかな。)

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――――――――――――――――――――――――――――

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翌日


女魔法「勇者嫌い!!」

女僧侶「・・・。」
女戦士「あちゃー、こうなっちまったか。」

勇者「・・・そうか。」

女魔法「・・・!」イラッ
杖≪ヒュ≫
女戦士「振りかぶんな。」

女商人「あ、あの・・・あの後に何かあったんですか?」
青髪「さぁ? ワタクシは勇者殿が付いてくるなと全員に発言した後に人知れずに抜け出していますので、なんとも。」
女商人「え?ゆ、勇者さまが? そんな事を?」
青髪「詳しく知りたいのであれば、皆様方にお聞きなさい。ワタクシより詳しく聞けるはずですよ。」

ヒトミ「あ、あのー皆なんでそんなにピリピリしてるの?」

女戦士「コイツの所為。」
勇者「・・・。」

ヒトミ「わた、わたし、皆仲良くしてる方が好きなんだけどなー・・・?」
ちらっ

勇者「・・・。」
ヒトミ「・・・。」
ちらっ ちらっ

女魔法「ひとみ!そと行こ!!」
ヒトミ「ぅえっ?! あ、で、でも私まだうまく歩け・・・」

女魔法「杖貸してあげる! はやくいこ!」

ヒトミ「う、あ、はい。」


女戦士「お前あの後何してたの?」

女僧侶「なだめていたんですよ。どうも、信頼されていないと感じたようです。昨日のは、私だって少し堪えましたから・・・。」

女商人「・・・。」

勇者「・・・なんてことは無い。邪魔だと伝えただけだ。」

女商人「えっ?」

女戦士「コイツも昨日からこんな調子だしよ。パーティ崩壊の危機って奴だな。」

女商人「そ、そんな・・・!わ、わたしのせ」
女僧侶「違います!あなたの所為なわけ有りません!!」

勇者「おい。」

青髪「はい? 何か御用で御座いますか?」

勇者「魔王に会いたい。案内してくれ。」

青髪「はぁ、了解致しました。ではワタクシと腕を御組になって下さいませ。」

女戦士「何しに行くんだ?」

勇者「関係ないだろう。」

女戦士「そうか、まぁ頑張れよ。」

勇者「・・・。」


青髪「宜しいですか?では行きます。転送石」
バシュン!!


女僧侶「・・・あんなこと言われてよく怒りませんでしたね?」

女戦士「アイツが何考えてるか知らねぇけど目的は昨日再確認したからよ。」
女戦士「アイツなら悪ぃ様にはしないさ。たぶんな。」

女商人「・・・。」

女戦士「・・・お前もそんな顔すんじゃねぇよ。」
ガシッ
女商人「あ、で、でも・・・。」

女戦士「信じろよ。お前が寂しさを抱えてるってんなら、あいつは絶対にそのままになんかしたりしない。」
女戦士「わかるだろ?お前があのお人好しと、一番長く居るんだからさ。」

女商人「・・・。」

女僧侶「あなた、なにか吹っ切れていません?」

女戦士「スガスガシーっての? 尽くす気持ちって奴?」

女僧侶「貴方が何を言っているのか私全くわかりません。」

女戦士「そりゃけっこーだな。」

女商人「・・・。」

女戦士「・・・不器用なんだよ。どいつもこいつも。」
女僧侶「え?」

女戦士「なんでもね。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
研究室

フラスコ≪ゴポポポ・・・≫
鍋≪グツグツグツ≫

剥製≪・・・≫

バシュン!!

勇者「・・・ここに居るのか?」

青髪「えぇ。ここに入ってきた時点で父はお分かりになっているはず。そのうちやってくるでしょう。」

勇者「随分、悪趣味な部屋だ。」

青髪「余り弄らぬ方が賢明で御座いますよ。とても危険なので。」

勇者「・・・。」
地図≪・・・≫

勇者(壁一面に地図が・・・。この大陸、だけじゃない。全ての大陸が・・・)
勇者「っ!?」

勇者「せ、世界地図・・・!? し、しかも・・・!」
勇者「嵐島の精巧な形まで・・・?」

勇者(どういうことだ? 嵐島は少なくとも人間には未踏のはず。こんな地図、作れるやつが・・・。)

勇者(・・・これも、魔王が作ったと言う事か?)

青髪「そちらの地図はもう随分と古い物の様です。私が出来る前かと。」
青髪「父曰く、“陸の位置など頻繁に変わるんだから細かくメモっとく意味なんてない。”だそうです。」

勇者「・・・つまり魔王が書いたものだと。」

青髪「恐らく。曰く“めんどくさくてやってられるか”とも。」

勇者「・・・。」
勇者(・・・た、確かに面倒では有るのだろうが・・・・・・。・・・?)
勇者(面倒なのにこれを作るとは、必要だと言う事だな。わざわざ面倒を掛けてこれを作成しておく意味・・・。)

勇者「・・・」
食虫植物≪・・・≫

勇者「な、なんだこれは?」

青髪「はぁ、それは確か熱帯地方を原産とする虫を食べる草ですね。」
青髪「グロテスクな見た目が気に入ったから改造して長く持つようにしたとか。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(・・・悪趣味にもほどがある。)

青髪「失礼ながら少々お待ちください。ワタクシ此処の奥へは立ち入りは出来ないのです。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一時間後

勇者「・・・。」

青髪「此方の実験器具は人間をしていた頃に見かけたモノを最近起きてから再現したもののの様です。」
青髪「見ての通りかなり大がかりな実験装置となっておりまして、この膨れた部分に加熱し、次の螺旋状の部分で冷やし・・・」

勇者「あいつはまだ来ないのか?」

青髪「いつもならばワタクシがここに入った時点ですぐいらっしゃるのですがね。ワタクシ奥に立ちいる事は禁じられておりますので、いかんとも。」

勇者「・・・。」
カツ カツ カツ

カツン

世界地図≪・・・≫
勇者「・・・。」

青髪「御気に為りますか?」

勇者「・・・人が地図を描く際、計算が必要になる。」

青髪「はぁ。」

勇者「その為の道具もある。一点から距離を量り、数値化し、地図を書き起こす。つまりは実際に見て描いたわけじゃない。」

青髪「それがなにか?」

勇者「・・・この地図は、精巧すぎる。地形描写が詳細だ。」
勇者「人とは、明らかに視点が違う。実際に見て描いたと思えるような出来の良さだ。」

青髪「実際父ならば見て描く事も可能ですよ。」

勇者「何?」

青髪「父にとって視点ならば幾らでも増やす事は可能で御座います。空から見下ろす事も容易でしょう。」

勇者「そこまでしてなぜわざわざこの地図を描いた?」

青髪「さぁ? 父の考えは分かりかねます。」

勇者「・・・まぁいい。いい加減待ちくたびれた。」

青髪「申し訳ございません。私は奥に立ち入れないもので。」

勇者「・・・そうか。」

青髪「はい。」

勇者(つまりは俺一人なら問題無しと言う事か。)
勇者(・・・ますます感情が無いとは思えん。)

勇者「案内、済まなかった。」

青髪「ワタクシここで待っております。お帰りの際はご用命くださいませ。」

扉≪ガチャ≫

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
研究所通路

ギィィ・・・

勇者「・・・む?」

・・・ィィィィ

勇者(何の音だ? 聞き覚えが無い。)
勇者(曲がり角の奥か。)

カツ カツ カツ


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
工房

ドリル≪ギュィィィィィ・・・≫

魔王「・・・。」

ィィィィィィィィィィィィンン

魔王「・・・」
片腕≪コトッ≫

魔王「・・・。」
ジー

魔王「・・・ふむ。」

勇者「何をしているんだ?」

魔王「素体を作っている。今は息抜きにフレームをな。」

勇者「素体?」

魔王「魂の無い土人形とでも言おうか。私達の乗り物となる。」

勇者「・・・細い腕だな、女型か?」

魔王「私達に本来性別は無い。が、長く生きていると差別化されていってな。」
魔王「コイツは性格や口調が人間で言えば女の様だ。だから、まぁシャレを込めてな。」

勇者「コイツ?」

魔王「ん。」
指≪ピッ≫

巨大フラスコ≪・・・・・・≫
茶色い光球≪・・・≫

勇者「あっ・・・。」

魔王「まだまだ安定しなくてな。というか、もう正直限界ギリギリで、手助けをしないと今にも霧散してしまいそうでな。」

魔王「どうも自分の魔力、つまりは自分の身体を流出させて何かしらの魔法を使っていた形跡がある。」
魔王「そして消滅する直前に供給物を何かに変えた形跡もな。うーむ器用な奴だ、封印されながらもよくそんな小細工を。」


素体≪ガチャ!≫

魔王「ふむ。あとは顔だな。表情とは大事だ、うむ。」
勇者「・・・っ。」
ぷいっ

魔王「どうした、目をそらして。」

勇者「・・・裸じゃないか、その素体とやら。」

魔王「完成しなきゃ服など着せんよ。初心な奴め。」

勇者「お、お前は随分人体に詳しいんだな。」

魔王「・・・ふむ、まぁな。まぁ、構造学的な事は、草団子の方が詳しい筈だが。」

勇者「緑色のエレメンタルの事か?」

魔王「あぁ、あいつはずっと人間の体を弄り倒しているからな。その点は私も一歩譲らざるを得ない。」
魔王「しかし知識の使い方は私の方がずーっと上だ!アイツの知識が有れば私はあいつの作る人形よりもさらに10段階は上の物が作れる!」

魔王「まぁ、私の本分は人体だけでなく物質全体に偏っている。深さという点では仕方がないという物だ。私は悪くない。」

勇者「・・・いつ、話せるようになる?」

魔王「素体が完成した後だ。魔力を繋ぎ止める力さえないからな。」
魔王「素体に入れて強制的に安定させる。その後魔力間結合の固定化を図り・・・」

魔王「お前に行っても分からんか。要は私達の栄養失調を治すんだよ。」

勇者「・・・。」

茶色光球≪・・・≫

魔王「それで何の用だ。コイツの裸でも見に来たのか?」

勇者「・・・お前に聞きたいことが有る。」

魔王「ほぉ。内容によっちゃー聞いてやってもいい。」

勇者「お前、俺達に何をした?」

魔王「・・・。」ピクッ

勇者「違和感が酷いんだ。お前と話していると。」
勇者「何かしたんだろう?」

魔王「・・・ふむ、50点。」

勇者「何?」

魔王「何かした、は間違いだ。気づかないモノかね。」

勇者「した、では無いなら何なんだ。」

魔王「勝手になったとでも言うかな。」

勇者「お前はいちいち答えを濁すな。」

魔王「説明が嫌いなんだ。いちいち面倒だ。」

勇者「濁したらさらに面倒にならないか?」

魔王「そっちの面倒は楽しいからいいんだよ。」

勇者「・・・それで、結局何がどうなったら俺達はお前に対しての不信感が無くなるんだ。」

魔王「私の魔力の影響だよ。」

勇者「何?」


魔王「この前説明したな。遺伝子の近縁種の話。」

勇者「・・・あぁ。」

魔王「あれの類似度と感情的反応を相関図にすると、不気味の谷という物が現れる。」

勇者「それが?」

魔王「私の魔力の影響は、ちょうどその谷沈みかけの部分と言う事だ。しかし知っての通り、私の魔力の影響は、濃度により度合いが変わるだろう?」
魔王「つまり濃ければ濃いほど谷へ落ち、薄ければ谷を上がる。」

魔王「私の魔力は嫌悪感と同時に好意も発生させるという、二面性が有るのだよ。分かったかね。」

勇者「お前の魔力は、好意も・・・」
ドクン

勇者(待て、と言う事は・・・)

勇者「それは、つまり俺、にも・・・?」

魔王「当たり前だ。まぁ私の様に調節する事などは不可だろうがな。」

勇者(・・・・・・これは、キツい。今知れて、良かった。)
勇者(つまりは、皆が付いてきてくれた理由は、俺の行動結果によるものではなく、)

勇者(コイツの魔力の所為だった、と。・・・ハハハ)
勇者(・・・)

勇者「・・・」

魔王「聞きたいことはそれだけか。」

勇者「・・・・・・・・・・・・強くなる方法を教えてくれ。」

魔王「ふむ?」

勇者「始まりがどうあれ、今の俺にとっては皆大事な存在だ。置いて行こうとも思ったが、この腕と脚じゃ死にに行く様なものだ。」
勇者「近頃人間相手に戦う機会が増えた。大体の戦闘では手加減をして、苦戦を強いられる。」

勇者「この後も、人と戦う機会が増える。だから・・・」

勇者「手加減しても勝てる程度の強さが欲しい。」

魔王「・・・は? なぜそこで手加減が前提になるんだ。おかしいだろ。」

勇者「変な極悪人に出会った事が有る。そいつは結局、他の極悪人に捻じ曲げられただけの存在だった。」
勇者「・・・少なくとも、これから襲ってくる人間は、悪い人間じゃないという。」

勇者「ならば俺は、殺したくない。」

魔王「おかしいのはお前の頭だったか。反吐が出そうな甘さだ。そのうち魔物も救いたいとか宣いそうな勢いだな。」

勇者「俺は俺が欲しい物を諦める気にならないだけだ。その為には強さが必要であり、その強さは俺のみでは間違いなく身に着けられない。」
勇者「だからお前に頼みに来た。」

魔王「ばぁか馬鹿しぃ、俺が貴様に頼んだことは邪魔な存在の排除だ。殺さないと言う事はむやみにリスクを高める事になる。」
魔王「言う事聞かないとこの素体ぶち壊すぞ。」

勇者「・・・気になっていたんだが、人間より圧倒的に強いお前が、なぜ俺達の手助けを必要とするんだ? 必要ないだろう。」

魔王「転送術式」
バシュン!

竜像「お呼びですか、父よ。」

魔王「そいつと力比べ。」

竜像「了解。」

勇者「お、おい?」

竜像「問答無用。」
キュラキュラキュラ

勇者「うおっ!」
ガシッ!

ググググ!

勇者「ぐっ・・・!一体何をさせるんだ!」

魔王「拮抗状態を維持。」
スタスタスタ

竜像「了解。」
ギギギギギ

魔王「・・・。」
ツンツンツン

勇者「あっ、おい、やめろ! 脇腹をつつくな! 片足が無いからバランスが取りにくいんだ!」

魔王「私が危惧している状況はこれだ。つまりは目の前の奴と本気で力比べをしようって時に邪魔が入るのを防ぎたいのだ。」
魔王「まぁ恐らくは現存している人間の中では最も強い手駒では有る訳だし、精々がんばって頂きたいものだ。」
ドスドスドス

勇者「やめろ!!」

魔王「命令解除。」

竜像「了解。」
プシュー

勇者「・・・。」
ズキズキ

魔王「・・・しかし、そうだな。強くするというアイディァ~は悪くない。相手は殉教者なわけだし、せめて足位何とかしたいものだな。」

魔王「素体でもつけるか?いやどうせなら体全体を・・・、いっそのことサイボーグ化・・・」

勇者「不吉な言葉が聞こえる気がするが。」

魔王「目から光魔法とかどうだ?」

勇者「何がどうなんだ。」

魔王「つまらんか・・・。いざという時の自爆機能は外せんな。どうせ片腕無いのだし銃技術を応用して義手を爆発で飛ばすというのも・・・。」

勇者「俺はお前のおもちゃじゃない!!」

魔王「内臓を取っ払って大砲を内蔵して・・・」

勇者(い、いかん。コイツに頼むのは迂闊だったかもしれない。)

魔王「自爆機能もただの燃焼ではつまらん!そうだ!カオスを応用して半径200mを次元消滅させるウロボロス的な」
岩≪ゴン!!≫

魔王「うお!? な、なんだ、岩? なぜ岩が降ってくる?」

巨大フラスコ≪ゴポ・・・≫

魔王「・・・まぁいい。結局今やらなければいけない事はコイツの素体作りだ。」
魔王「お前の要望通り強くすると言ってもそれの後だ。時間的余裕が有ったらやってやる。」


魔王「いい加減邪魔だから帰れ。しっしっ」

勇者「・・・わかった。大人しく帰る。」
勇者(コイツに頼むのは虫が良すぎた。)

勇者「・・・そうだ、もう一つ。あっちの部屋のあの地図はなんで作ったんだ?」

魔王「あれは地脈を計算するためにだな。」

勇者「地脈?」

魔王「地脈とは魔力の通り道。ヒントはそれだけだ、あとは勝手に考えろ。」
魔王「どんな顔にしようかなー。茶目っ気の有る顔にしてやろうか、あいつの印象とは正反対の。。」

勇者「・・・。」
勇者(もう俺は眼中にないようだ。大人しく戻るか。)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
研究所

世界地図≪・・・≫

勇者「・・・。」
勇者(地脈がどうだと言っていたが、この地図は地形しか描かれていない。)

勇者(・・・地図はこれだけではないのか? 地脈計算用と言っていたし、地脈を計算したものが別に有ってもおかしくないか。)

青髪「御用事はお済ですか?」

勇者「・・・とりあえずは。」
勇者(どうしたものか。あいつを頼るのは危険すぎる。かといって頼らないわけにはいかないしな・・・。)

青髪「ではお戻りになられますか?」

勇者「・・・その前に、これ以外に地図は有るのか?」

青髪「これ以外は御座いません。」

勇者「では、地脈を見れるような物は?」

青髪「・・・あぁ、地脈がご覧になりたいのですか。少々お待ちを。」

スタスタスタ
スイッチ≪ガチン!≫

灯り≪バチッ≫

地脈地図≪・・・≫

勇者「うぉ?」
勇者(・・・ここだけ灯りが変だ。気が付かなかった。)

勇者(・・・光の線や点が世界地図に重なっている。なるほど面白い。)

勇者「・・・この5つの点は?」

青髪「解放点で御座いますね。」

勇者(この大陸の砂漠と火山、嵐島、俺の故郷の4つ・・・)

勇者(この4つの点に何か共通点が・・・?)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/c/c0/Wpdms_fh_uncanny_valley.jpg

不気味の谷の画像 ウィキペディア


短編


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
船の上 朝

ザァァァァ・・・・

兵士3「・・・今日も、風が気持ちいいぜ。」

兵士4「あぁ、爽やかな潮風が俺たちを導いてくれている。」

カモメ≪クー  クー ≫

兵士3「鳥が歌い、波が踊り、」

兵士4「日差しは眩しく、雲は流れる。」

3&4「今日も世界は美しい。」(ハモリ)



兵士2「・・・・・・・・・何やってんだお前ら。」

3「お、よーう今日も元気か―い?」

4「俺たちは朗朗と詩を吟じていただけだぜ。」

3「なんつーの? 俺ら文明人だから?」

4「自然と口からでちゃうっていうかー。」

3「まぁ俺らクラスになると黙ってても高潔さがにじみ出ちゃうんだけど」

4「たまには解き放ってあげようみたいなー。」

2「なんだいつものごとく馬鹿やってるだけか。」

3「・・・ふぅ」
4「やれやれ」

2「・・・・・・なんだよ。」

3「知ってるか?馬鹿って言った方が馬鹿なんだぜ?。」
4「全くこれだから野蛮人は。僻みとは美しくない。」

2「ほう、馬鹿に馬鹿と言えるのは馬鹿だけなんて初耳だぜ。馬鹿じゃねーの?」

3「いやいや、馬鹿と言ったやつが馬鹿なだけであって馬鹿に馬鹿呼ばわりされた奴は別に馬鹿とは決まってませんがー?」
4「君の脳みそは大変都合のいい思考回路をしているようだねー?」

2「撃っていいか?」

3「A-ha-n?」
4「無駄弾は無駄だから無駄弾っていうんだぜ? 知ってたか?」

2「よぉーしそこに直れ海に叩き落としてやる。」


1106「あー?」
1107「うー?」

3「よーうヒト、今日も可愛いな。」
4「あぁそうそう、前から気になってたんだけど何回までなら間違いで済むかな?」

3「テストは3回セクハラ2回と言った所だ。」
4「つまり一回までなら手を出しても・・・?」

3「まて、それがヒトたちの恐ろしい所だ。気付いた時にはどツボだぜ?」
4「あーそれはなんつーかファンタスティックだな。」

1106「?」
1107「?」

2「いつも言ってるけどこの馬鹿共の言ってる事は無視していいからな、な。」

3「HEY!聞きずてならねぇなまるで俺たちが教育に悪いって言ってるように聞こえるぜ!」
4「俺たちはこんなにも文明人で知的でクールでおまけにイケメンなのによ!イケメン無罪!」

2「いいかヒト達、これが見習っちゃいけない大人の見本だぞ。こうはなるなよ。」
1106「あー」
1107「いー」

3「おいナチュラルに無視されたぞどうしてくれよう。」
4「この泣き虫をマストに括り付けるってのはどうだろうか。」
3「名案って奴だな。思い立ったが吉日。」
4「即日実行。」

2「はっ! そう簡単に思い通りになる俺じゃないぜ!」

3「今だヒト!」
4「子供の恐ろしい無邪気さを教えてやれ!」

1106「あーい!」
1107「あー!」
ガシッ!

2「あっこら!や、やめろ、ってこら!銃に触るな!」

3「チャンス到来!」
4「有言実行!」

2「や、やめろー!!」


―――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
船内 昼

連「・・・」
キョロキョロ

連「おっけー、バレてないよ。」

光「ふぅ、いつもいつも覗きを敢行されてちゃたまったもんじゃないわよね。ゆっくり入る事なんて出来やしない。」

火「・・・」

連「だからわざわざこんな時間にしたんじゃん。まさか真昼間からお風呂とは思わないでしょ。」
1106「あー」
1107「うー」

光「そうだといいんだけどねー・・・、ってひと達? どこから入ったの?」

火「・・・最初から居た。」

連「言えよ! まぁ別にひと達なら裸見られたっていいけどさ。」

光「しかしすごい船よねー・・・お風呂付なんて。」
連「一個しかないけどね。でも海の上だと潮風でべたべたになっちゃうし充分ありがたいけどさ。」

火「・・・一緒に入る?」

1106「うー」
1107「あー」

火「ん・・・じゃぁ服脱ごうね・・・?」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
隣部屋

壁≪ (ウー アー) (くすぐったいの?) (いつ触っても髪の毛さらさらだねーうらやましいや)

3「タイチョー、大変うらやましいで有ります。」
4「ケシカランでアリます。子供の特権を思う存分行使させるとロクな大人にならないと思うであります。」
3「ここは俺達が乱入して皆楽しく幸せにするのがいいと思うでアリマス。」
4「子供は精神的苦痛を伴い大人になっていくのでアリマス。」

兵士5「馬鹿共が、勝手な行動の罰って事を理解して、大人しく銃の整備をしてろ。」

3「あーあーやだね堅物ってのは。固いのはブツだけにしろっての。」
4「まったく、男なんて一皮むけば違うのは大きさだけなのによ。なんでこーも違うんだろーな。」
3「だが待ってほしい。皮の色は十人十色ではなかろうか。」
4「俺のペルソナは真っ黒だぜ。」

5「黙ってやれ口が減らん馬鹿共め。」

3「思いついた。隣が更衣室なら穴を開ければいいじゃない。」
4「晴天の霹靂だな。蜘蛛の糸が垂れてきたぜ。」

3「という事でタイチョー修理代は自費負担しますので許可ください。」
4「今なら桃源郷を覗く権利もついて来る!買い時は今!」

5「作戦の性質上失敗する確率が9割を超える。そんな捨て駒の様な任務は許可する事が出来ない。」

3「とかなんとかいって見たい癖にー。」
4「お硬くしちゃって、まー。」

5「そんな上官想いなお前達にナイフ研ぎも追加だ。済むまでこの部屋からは出さん。」

3「こらぁふざけてんじゃねぇぞクロンボが!!」
4「黒いのはブツだけにしやがれ!」

5「良いもんじゃぁないか、油と鉄の匂いがロマンチックだろう。」

3「うるせぇ!今はマロンより桃だ!! もう我慢できない!」
4「おうとも!ロマンの詰まった桃畑はすぐそこに!」
3「なぜ毎日ナイフを研ぐのかって?!こういう時の為さ!」
4「窓が無いなら作ればいいじゃない!てぇい!」

ドス!ガリガリガリ!

5「・・・全く。」

3〈御開帳〉ヒソヒソ
4〈馬鹿野郎俺が先だ!〉ヒソヒソ
3〈言い出しっぺの法則!〉ヒソヒソ
4〈残り物には福が有る!〉ヒソヒソ

穴≪ピカー≫

3「ぎゃああああ!?」
4「目が、めがぁぁぁあああああ!!?」

穴≪丸聞こえよ馬鹿!!

5「馬鹿共には良い目眩ましだ。懲りない馬鹿共が。」

穴≪いいからさっさとそこから出て行け!!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
船室 夕方

1108「あー・・・8 かける 12 は、」
カリカリカリ

1108「・・・24?」

兵士長「おお外れだアホ。そりゃ8×3の答えだ。」

1108「あー糞が!なんで俺がこんなチマチマしたもんを・・・!」

兵士長「まぁーったく年相応の勉強やらせりゃこれだもんな、苦労するなんてもんじゃねぇなコイツ。」

1108「うっせー!! じゃぁやらせんじゃねぇよ糞ジジイ!!」

兵士長「はっ! 生意気な口答える前に手ぇ動かせアホ!!」

1108「あぁ!?なんだとこらぁ!!」
ガタン!

マスケット兵長「座れヒトヤ!! 隊長も挑発せんで下さい!」

1108「うっせぇ!! こんなんやってられっか!!」

兵士長「そういやーヒト達は4ケタの足し算引き算できるようになったんだったかなー。そろそろ九九を覚えてもいい頃合いかもなー。」

1108「ぐっ・・・!」

兵士長「いいのかなー兄貴がそんな簡単な掛け算できなくて。あーあー兄貴の癖してよー。」

1108「く、くそがぁ・・・!」
ドスン!

マ兵長「いいかヒトヤ、自分の書いた筆算を見直せ。十の位の計算を一の位に書いてしまっているのが間違えた原因だ。」

1108「な、なんだ、簡単なまちがえじゃねぇか。」

兵士長「そんな簡単な間違いをしちゃうのは誰かなー。」

1108「て、てめぇ・・・!」
ゴゴゴゴゴ・・・

マ兵長「抑えろ、口から火が漏れてるぞ。」

扉≪ガチャ≫

1106「あー。」
1107「うー?」

マ兵長「あぁヒト、悪いが兄貴は今勉強中だ。一緒にやってくか?」

1106「あー!」
1107「あー!」

マ兵長「じゃ、兵士長お願いします。邪魔ばっかりせんで働いてください。」

兵士長「しゃーねぇなぁ。おらヒト、今日は掛け算っての教えてやるぞ。」

1106「うー?」
1107「あー?」

兵士長「そうだ、掛け算だ。いいかー、掛け算ってのはー・・・」

1108「く、くそ、追いつかれちまう・・・!」

マ兵長「兄貴面したいんだったら急いで出来るようになるんだな。ほらこっち見ろ。」


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甲板

3「すーむとこ行くとこ何処も無し」
ザッザッザッザッ
4「かーえるばーしょはひとつだけ」
ザッザッザッザッ
3「そのー日ぐらしのヤクザな稼業」
ザッザッザッザッ
4「お天道様は見向きもしない」
ザッザッザッザッ
3「イチニーサンシ」
ザッザッザッザッ
4「イチニーサンシ」
ザッザッザッザッ

3「おー太陽が水平線に沈んでくぜ。」
ザッザッザッザッ
4「その様はまるでポーチドエッグ。」
ザッザッザッザッ
3「いいねぇ卵。こんだけ大所帯だと一人一個食う機会はそうそうねぇもんな。」
ザッザッザッザッ
4「この前卵が出た日はお前に食われた。」
ザッザッザッザッ
3「その代り2の奪ってたじゃねぇか。」
ザッザッザッザッ
4「そうやって憎しみの連鎖は広がっていくんですね。世の中の縮図って奴だぜ。」
ザッザッザッザッ
3「大概あいつが泣き寝入りだけどな。」
4「時々恐ろしい仕返しをくらうじゃないか。なんだかんだあいつも上手くやってるぜ。」

3「さーて、太陽が沈むまでのランニング終わり。」
4「いい運動だったぜチクショー。」

ライフル狙撃隊兵員1「おう、お疲れさん。」
ライフル狙撃隊兵員2「毎日毎日追加でランニングなんて努力家だなお前ら。」

3「はっはっはっ。俺は転んでもただじゃぁ起きないぜ?」
4「風呂と間違えて女部屋に!っていうハプニングがこの後起きる予定だぜ。無論裸だ。」

ラ兵1「懲りないねぇ。」
ラ兵2「そのうちどたまにピアス付ける事になるぞ。」

3「先駆けは突撃兵の花ってもんだ。」
4「あの世への道は整えておいてやんよ。」

ラ兵1「よし骨は拾ってやる。」
ラ兵2「後方支援は俺らの役目だ。」

3「お前らも好きだねぇ~」
ラ兵2「所で部屋に居なかったらどうすんだ?」
4「自分の部屋と間違えて気付かぬままに着替えを漁る作戦だ。」
ラ兵1「鍵は?」
3「あんな単純なモン3秒で2が開ける。」

4「よぉーしレッツラゴー桃の園!!」
ラ兵2「酒池肉林!」
3「理想郷!!」
ラ兵1「エルドラド!!」








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女部屋

ダララララララ!!!

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女部屋  夜

扉≪ガチャ!≫

連「またか!変た・・・なんだヒトヤか。 どうしたの? ヒト達も居ないのにここに来るなんて珍しい。」

1108「じゅ、銃口を向けんじゃねぇよ。あ、あー、他のふたりは?」

連「さぁ? 夜風にでも当たってんじゃない?」

1108「そ、そうか、ま、まぁいい。、あのよ。」

連「?」

1108「その・・・べ、ベンキョーおしえて、くんねぇか?」

連「・・・はい?」

1108「どどどうなんだよ、教えてくれんのか?くれねぇのか?」

連「・・・別に教えるのはやぶさかじゃないけどさ。どういう風の吹き回しなのさ。」

1108「り理由なんてどうだっていいだろ。教えてくれるっつうならさっさと教えやがれ。」

連「教わる態度じゃないよね。まぁいいけどさ。ここ座りな。」


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連「あんたって今何歳くらいだっけ?」

1108「知らねぇ。そういうお前はどうなんだよ。」

連「あたしも覚えてないねー。孤児やってた奴なんて大概覚えてないもんだよね。」

1108「気が付いたらとっ捕まって魔物にされちまった奴なんてもっとわかんねぇよ。」

連「まーそりゃそうかー・・・ってほら、あんたまた間違えてる。」

1108「糞が! なんでこんなんで・・・!」

連「計算なんて慣れだからさ。数こなした分だけ間違えなくなんの。ほらもう一回。」

1108「ちくしょう・・・こんなんじゃヒトムヒトナに追いつかれちまう・・・。」

連「・・・まさかあんたあの子達に追いつかれたくないからあたしに教えてほしいって言ったの?」

1108「うっ、べ、別にいいだろが!兄貴のプライドくらい俺にだってあらぁ!」

連「あはははははは!! 随分可愛い理由だねーヒトヤ君。」

1108「うっせ! 黙ってろ!」

連「でもあの子達の先行くっての大変そうだけどねー。頭いいよーあの子ら。」

1108「だ、だからお前に教わってんだろ・・・。」

連「あははそうでした。私に任せてくれれば100万年安泰だよ、安心しなさい。」

1108「うー、ベンキョーなんて性に合わねーのに・・・くそ。」

連「筋は悪くないと思うけどねー。あそこ抜け出してから勉強初めて掛け算に入ってんだからじゅーぶん早いよ。」

1108「ヒトムヒトナより早くねぇと意味ねぇンだよチクショー。」


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甲板

ザァァァァァァ・・・・・・

1106(ねぇヒトナ)
1107(なにヒトム)

1106(今日も楽しかったね)
1107(うん楽しかったね)

1106(いつまで続くかな)
1107(ずっと続くといいね)

1106(私たちが変わっちゃうのはいつなのかな)
1107(きっとずっと変わらないでいれるよ)

1106(だったらいいのにね)
1107(もし変わっちゃっても大丈夫)

1107(あの人が来てくれるから)

1106(・・・そうだね。きっと来てくれるよね。)
1107(うん、優しいから、絶対に来てくれる。)

火「・・・・・・ヒト。もう寝る時間。戻ろ。」

1106「あー」
1107「うー」

火「・・・二人はいつも一緒ね・・・・・・。すこし、うらやましい。」

3「やぁフロイライン。夜道は暗く危ない物です。よければエスコートしましょう。」

火「・・・っ。」

3「おやそんな嬉しそうな顔をしないでください。男として当然の事ですよ。」

火「えっと・・・あの・・・。」

3「さぁさぁお手を拝借。子供を寝かしつけた後始まるのは大人の時間、ならば手をこまねく意味は無い。」
ガシッ

火「・・・っ!」

連「やめろセクハラ野郎!!」
ガンッ
3「ぐへぇ!!・・・なんだ嬢ちゃんか。なんか用か?」

連「許可なく女の手を握るんじゃないっての!」

3「許可なら貰ったぜ?心の中で。」

連「鼻の穴増やしたいの?」

3「ごめんなさい調子こきましたすいません。」

4「まぁーいすぅぃいーてぃおはぬぃぃぃぃぃ!!!」

連「・・・」イラッ

4「さぁ行こう愛の巣へ!」

連「蜂の巣にしてやる!!」
ジャキ!

4「いいのかな?! ヒトに当たるぜ!?」

1106「う?」

連「子供を盾に」
1108「何してんだ糞がぁあああああああああ!!」
ブォン!

4「おっと?」
ひらり


1108「人の弟に手ぇ出してんじゃねぇぞこらああああああああ!!!」
ブンブンブンブン

4「おやおや知らないのかリザードマン。お手付きは1回までOKなんだよ?」
スカスカスカスカ

1108「ぶち殺す!!」
ブオン!

4「よっと」
ヒラリ

連「てゆーかヒトヤ!!ローブも着ないであんたは!」

3「さ、今のうちに・・・」

火「あの・・・」

連「あんたもどさくさに紛れてんじゃない!!」

4「ディーフェンス、ディーフェンス。」
1107「あー!」キャッキャッ
1106「あっあっ」ケラケラ


1108「ヒト達を盾にすんじゃねぇえええええええ!!!」




1107(楽しいね)
1106(楽しいね)






生涯2回目の集団生活 完

(ごめんなさい諸事情有送れるので短編でお茶を濁しときます一週間以内に頑張ってみます)
(普段の縛りプレイから解き放たれて書きましたごめんぬ)




短編


.


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崖の中の鉄格子


ザァァァァ・・・ザァァァァ・・・

月≪・・・≫

幼子「・・・・・・」

幼子「・・・つき。」




.


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どこかの城 謁見の間

若者「俺が講師?」

偉そうな老人「そうだ。お前が適任だ。」

若者「言われたからにゃやりますが、死んでも知りませんぜ。」

薄い中年「罷りならん!! 1000年に一人の逸材ぞ!!」

偉そうな老人「この計画は、いつか復活する魔王を倒す為に100年も前に発足した物だ。」
偉そうな老人「儂がまだ、乳飲み子の時からの、連綿と機を待った計画だ。失敗はゆるされん。」

若者「知ってますよ言われなくとも。世界で唯一の魔王の時代に生まれた最後の世代なんでしょ。」

若者「俺は金さえもらえりゃいいんです。そいつが死ぬか死なないかはそこらにかかってますんでケチんないで下さいよ。」

薄い中年「貴殿が育成を完了した暁には金貨1億枚を約束している。人生10度は遊んで暮らせる額だ。」

若者「ヒュー、改めて聞くとすげぇ額ですねぇ。それでも年間国費の半分なんだっつんだから国ってのは金食い虫ですなぁ。」

偉そうな老人「無論、育成中に必要な物は全て用意する。不満はあるまい?」

若者「まぁね。ただまぁそいつが使えるようになるまで・・・15年ですか? 随分と拘束されちまうってのはキツイもんがありますな。」

薄い中年「これは国王陛下よりの直接の厳命である!断る事など出来んのだぞ!!」

若者「へっへっへっ、そんな事言っていいんですか?世界広しと言えどあらゆる魔術に精通するのは俺くらいのもんですよ?」

薄い中年「貴様!!」
偉そうな老人「なにが望みだ。」

若者「金はまぁ溺れるくらいもらえるってんでいいんですがね。必要経費って事で、コレ。」
小指≪ピッ≫
若者「一月に一人超絶なのを送ってもらえますかね?」

薄い中年「・・・いいだろう。ただし!!趣味が合わないなんて理由で手を抜く事は許さんぞ!!」

若者「へっへっへっ、180も居るんだ。大方合ってりゃそこらへんは大目に見ますよ。」

偉そうな老人「良い。他は?」

若者「15年間古臭い知識で進めていくなんて愚の骨頂ですね。この国の機密書物は当然として他の国の機密も出来るだけ欲しいな。」
若者「あとはまぁ・・・『巨大なネズミ』もたくさん欲しいねぇ。新しい知識は、試してみないと信用できない。」

薄い中年「・・・よかろう! 可能な限り手配する。必要な数は追って知らせろ。」

若者「いやぁここまで贅沢な環境ってのはそうそう無いね。実績モトイ知を積んできた甲斐があったってもんだ。」

薄い中年「そうそうどころか一つだけに決まっておろう!」

若者「長い付き合いになりそうだけど、あんたとかおっちんじまうんじゃねぇの?」

薄い中年「ぶ、ぶ、無礼なぁ!!」

偉そうな老人「良い。任務は完遂をもってのみ報告を許す。行け。」

若者「へいへい。ハゲたオッサン、案内宜しくな。」

薄い中年「ぐっ・・・!! つ、ついてこい!!」



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初日


幼子「・・・だれ。」

若者「おっほぉ!! もう喋んの!? さぁすが1000年に一人の逸材!!」

幼子「わたしになにかするの。」

若者「あぁもう色々、しちゃうぜぇ~? 例えば・・・」

スッ
幼子「・・・?」

右肘≪ボキィ!!≫

幼子「!!!あっ!!アアアァァァァァァ!!」

若者「こんな事をなぁ。」

幼子「あぃ、あぁ~!!!」

若者「回復魔法中」

幼子「うっうっうぁぁ~・・・」

首≪ガシ≫
若者「静かに。」

幼子「ひっ・・・!」

若者「なぁに、安心しろ。俺は世界で一番魔法が上手い。お前がどんな怪我したって完璧に元に戻してやるよ。」

若者「だからお前がいくら頭を壁に打ち付けたり舌を噛んだり服使って上手く首つったとしても、」
若者「一緒に居る俺がお前の事を直してやる。お前は俺の言う事にハイって答えて首縦にふってりゃいい。」

若者「わかったか?」



幼子「ひっく、ひっく、」

若者「よっと。」
人差指≪ポキン!≫

幼子「ああああああ!!!?」

若者「おい、聞いてなかったか? お前は俺の言う事にハイって言って首縦にふってりゃいいんだよ。」
中指≪ポキン≫

幼子「痛い!痛い!!」

若者「そうか痛いか、どうすりゃいい?」
薬指≪ポキン≫

幼子「・・・!!」
コクコクコク!!

若者「おいおい、やっぱりちゃんと聞いてねぇなぁ。」
小指≪ポキン≫

幼子「あああ!!!」

若者「ハイって言って、っていったよな? 俺の言った事を一文字たりとも聞き逃すな。」
親指≪グググ≫

幼子「ハイ!ハイ!!」
コクコク!!

若者「そうだ、それでいい。だが・・・返事は一度、だ。」
親指≪ボキン≫

幼子「アアアアア!!!ゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!」

若者「・・・まぁ初日だしな。こんくらい大目に見といてやるか。」

幼子「ウゥゥゥゥゥ・・・!」

足≪ヒュッ≫
右手≪グシャ!!≫

幼子「アアアアアアアアアアアアア!!!」

若者「五月蠅いぞ。何度も言ってやるのは初日の今日だけだ。」
若者「・・・静かにな。」

幼子「ハイ!!」
コクコクコク!!

若者「80点。回復魔法中」

幼子「痛い・・・痛い・・・」

若者「あっらぁ~治りきらなかったかな? まぁ今日は疲れたから明日直してやるよ。」
若者「精々、今日の事は覚えておくんだな。少しでも痛くならないようにな。」


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一ヵ月目

若者「下手糞が!!」
頭≪ガシッ≫

ズガン!
幼子「うぅ!」

若者「おい俺が言った事復唱してみやがれ!!」

幼子「ハイ! 魔力の桶とは魔法的効果を保つ為の基礎条件式であらゆる魔法の基礎となる基本中の基本でさして難しい式では」

若者「だろうがよぉ!!それをなんだテメェは!!」
ドスッ!
幼子「ぐッ!」
若者「そんな程度の保有量の桶しか作れねぇのか!!」
ボクッ!
幼子「いぎっ!」

若者「回復魔法中」
若者「いいか!!よく見とけ!!雷魔法雷球中」
バチバチバチ!!

若者「明日までだ!明日までにこれくらいの大きさの魔法を使えなかったら罰を与える!!」
若者「死ぬ気でやれ!死にかけても直すから気兼ねなくな!」

扉≪ガシャン!!≫

幼子「うっ、うっ、ぐすっ」

幼子「・・・雷魔法雷球」
バチバチバチ


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三ヵ月目


書物≪・・・≫

若者「・・・さぁ~すが魔法国の機密。おもしれぇ事が描かれてるなぁ。」
若者「大地を手に見立て引きずり出して超質量を動かす・・・。複雑な演算とアドリブが多段に要求される魔法か。あいつが出来るようになるまでまぁ10年は掛かるか?」

若者「こんだけ大規模だと場所変えねぇとなぁ。さ、て、と・・・」

若者「『ネズミ』に餌やりしねぇとな。」

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牢屋

若者「ほれ、食え。」

死体≪ドチャ≫

「ううう・・・あああ・・・」

若者「お? そろそろ精神に異常が出たかな?」

「アアアアア!!」
鉄格子≪ガシャアア!!≫

「アアアアアアア!!」
ガシャァン!ガシャンガシャン!

若者「うんうん、人間一体を食わせ続けて・・・人間ってのは面白いねぇ。同族食らいを防ぐ機構が有る。」

若者「弱ったもんだな。魔力の底上げに同じことしようと思ってたのによ。」
ガシャン!ガシャンガシャン!!

若者「・・・真空魔法」
「あっ」
首≪スパ≫

ブシュウウウウウウウ!

死体≪ビクッビクッ≫

若者「・・・内臓、脳味噌、血、肉で4人か。4人で同じ実験をして・・・あとはアイツと年齢が近い餓鬼でやるか。」
若者「壊さず最大の効果を引き出すために慎重に実験を繰り返さねぇとなぁ・・・。」

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六ヵ月目

幼子「・・・真空魔法渦」
ゴオオオ!!

若者「おーこれが出来るとは中々だな。今日はソーセージを出してやろう。」

幼子「・・・いらない。」

若者「お?」

幼子「・・・もうおにくいらない。」

若者「・・・ほぉーん。」

左腕≪ガシ!≫

左肩≪ゴキィ!!≫

幼子「アアアアア!!」

若者「黙れ。」

左肘≪メキャ!!≫

幼子「うぐっ!! うっ・・・うっ・・・」

若者「今日はソーセージ出してやるよ。」

幼子「・・・ヤダ・・・・・・。」

右肩≪ゴキン!!≫

幼子「アアア! ・・・う、う、」

若者「今日は、ソーセージ、出してやるよ。」

右肘≪メキ  メキ   ≫

幼子「うぅぅ・・・ハ、イ。」
コクン

若者「回復魔法大」

若者「立て。次の魔法を教える。」

幼子「・・・ハイ。」
コクン

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八ヵ月目 牢屋

若者「肉体操作」

「ギャアアアアアアア!!」

ブチブチブチ!!

死体≪ドチャ≫

若者「・・・難しいもんだなこの魔法は。体内の魔力を利用して体を弄る方法・・・・・・。」

若者「ま、練習はいくらでも出来る。これが出来るようになりゃぁアイツの魔力総量がさらに上がる。」
若者「ふふふ、天才って奴はすんばらしぃねぇ。伸び白がどんだけあるのか興味が尽きないぜ。」

若者「さぁーて次次。」

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二年目

若者「今日は何日目だ?」

幼子「ハイ、366日目です。」

若者「そうだ、2年目の初日だ。こっちこい。」

幼子「・・・ハイ」
スタスタスタ


若者「・・・。」
手≪スッ≫

幼子「・・・。」ビクッ

モミ  モミ  
幼子「・・・。」
ビクッ  ビクッ

若者「・・・成長率には問題ねぇな。机の上に寝ろ。」

幼子「ハイ」


若者「このおしぼりを口に咥えてろ。」

ガブ
幼子「・・・ハヒ」

若者「肉体操作」

幼子「っ!!!?ウゥゥゥゥウウウウ!!!」
ビクン!ビクン!ビクン!!

若者「・・・」

幼子「ゥゥゥウウウアアアアアア!!」
御絞り≪ポロ≫

若者「咥えてろうるせえ。」
グイ!

幼子「ウウウウウウウウ!!!」

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幼子「ハァ ハァ ハァ」
ビクンッ ビクンッ

若者「・・・一日の許容限界はこんくらいか。」
若者「明日の朝から毎日これをやる。やってる間は出来るだけ静かにしてろ。」

幼子「ハァ、イ、」
ビクッ ビクッ

書物≪ドサドサドサ≫

若者「明日の朝までにこれ読んでおけ。いいな。」

幼子「ハ、イ。」
プルプル


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二年六ヵ月目


若者「肉体操作」

幼子「・・・」
ビクッ ビクッ

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薬≪ジャラ!!≫

若者「今日から食後毎にこの薬を飲め。」
幼子「ハイ」


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夕食後

幼子「ハッハッハッハッ」
ガタガタガタガタ

汗≪ダラダラダラダラ≫

幼子「アツイ・・・サムイ・・・」
ガタガタガタガタ

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三年目

若者「今日は何日だ。」

子供「ハイ、731日目です。」

若者「そうだ、三年目の初日だ。こっちへこい。」

子供「ハイ」

若者「・・・」
モミモミモミ

若者「・・・・・・ククッ」

若者「あれを行う、乗れ」

子供「ハイ」


若者「肉体操作」

子供「・・・」

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ゴト!

若者「今日から薬を変える。食前に飲め。」

子供「ハイ」


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子供「ゲホッ!ゲホッ!」

子供「・・・肺、痛い。」

子供「ゲホ!ゲホ!」
血≪ポタタ≫

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五年目

中年「今日は何日だ」

子供「はい、1462日目。」

中年「そうだ。5年目の初日だ。」
子供「・・・」
スタスタスタ

中年「・・・」
モミモミモミ

中年「・・・くっくっくっ。乗れ。」

子供「ハイ」


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子供「出力と射程の相間はM=(E+V)×mであり出力が高く距離が有るほど必要魔力量は高くなるのが基本でそれを解決するための条件式が長矢であり」
子供「この条件式は魔法効果の安定性を上げ推進魔法の影響を受けやすくしたもので結果威力は下がるが射程を長くなっているが、その条件式は」
子供「汎用魔法で有る為必要魔力量換算係数1.2704を乗算し矢から長矢の必要魔力は1.2高くなり距離単位では3/mの魔力が」

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壁≪ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ≫
子供「・・・・・・」
ポタ ポタ 

頭≪ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ≫


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七年目

子供「2192日目」

中年「・・・」
モミモミモミ

中年「・・・ハッハッハッ」


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外  平野

子供「・・・」

中年「やれ。」

子供「地面隆起魔法特大詠唱開始」

子供「・・・」

子供「・・・っ」


鞭≪シュル≫

バチィィィン!!

子供「っっ・・・!」

中年「もう一度。」

子供「ハイ」

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バチィィィン!!

子供「っ・・・」
血≪ポタ ポタ ≫

中年「もう一度。」

子供「ハイ」

子供「地面隆起魔法特大詠唱開始」

子供「・・・」

子供「・・・大地の手」

ズゴン!ズゴゴゴゴゴ!!

ゴゴォォ・・・ン

中年「・・・クフ」ニヤリ

中年「もう一度。」

子供「ハイ」

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岩石地帯

子供「・・・。」

中年「帰るぞ。」

子供「ハイ。」


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七年二日目 牢屋

中年「素晴らしい速さだ。私の計算を遥かに上回る成長速度だ。」
中年「クフ、クフフフフ。他人を育てるというのも楽しい物だなぁ。」

中年「もうここは必要ない。」

中年「大地鳴動」
ゴゴゴゴゴゴ・・・

ガシャァン!ゴトン!ガラガラガラ

「ギャアアアア!!」
「ヒィィィ!!ウワアアア!」

扉≪バタン≫

ゴゴゴゴゴ・・・

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九年目

子供「2922日目。」

中年「そうだ、9年目の初日だ。お前の歳は?」

子供「細かい日にち不明、10歳。」

中年「身長は?」

子供「120.3cm」

中年「体重は?」

子供「26.3kg」

中年「腹囲。」

子供「45cm」

中年「・・・クフフフフフ」
中年「今日から薬も肉体操作もやめる。」

子供「ハイ」

中年「新しい魔法を作って貰う。」

子供「ハイ」

中年「机に着け。」

子供「ハイ」

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夕暮れ

子供「魔方陣型任意起動式火柱魔法設置魔力78必 起動限界距離70m」

中年「次」

子供「毒魔法泡 種類 催涙 致死 爛れ 可」

中年「次」

子供「大地隆起魔法 詠唱完了から魔法発動の初動 速」

中年「明日は4つ作れ。」

子供「ハイ」

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九年十二ヵ月目

中年「・・・すでに俺の知識は全て与えた。基礎は一部の隙間も無く詰め込み応用量もみるみる内に伸びていく。」

中年「10年前はここまで楽しくなるとは思っていなかった。成長させると言う事がこんなにも楽しい事とはな。」

中年「・・・クフ、体の状態も上々だ。身長は低く、体重は有る。しかし脂肪が付いているわけではない。」

中年「・・・魔力臓器の比重概算で成人の1.7倍。10歳時点で、だ。クフフフフフ」
中年「ハハハハハハハ」

中年「ハァーッハッハッハッハッ!!素晴らしい!!素晴らしいぞ!!」
中年「得てきた知識を思う存分使う喜び!!脳髄が喜びで震えているぞ!!」

中年「知識を得る事も10年前以上に楽しいぞ!!常にあいつにどう活かすか考える喜びよ!!」

中年「すばらしいスバラシイ素晴らしい!!100年に一人の天才が1000年に一人の天才を創り上げた!!」

中年「私の人生はこの為に有ったのだ!!尽くす喜びよ!!ハハハ ハ ハ ハ ハ 八 八 八 八 八!!!!」

中年「もっとスバラシイソンザイを造るぞ!!まだまだアイツは上に行けるぞ!」

中年「ア――ッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」

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十年六ヶ月二十七日目 夕暮時


中年「ゲッエェェェ・・・」
ボタボタボタ

?「・・・これを命じたのは誰だ。」

首≪メキメキ≫
?「言え。」

中年「お、王だ、王だよ! 王に命じられた!」

?「・・・そうか。」

パチパチパチ
研究日誌≪メラメラメラ・・・≫

?「転真魔術」

中年「ガヒッ!?」
バシュン!!


?「・・・反吐が出る。」
カツ  カツ  カツ

報告書≪ゴオオオ・・・≫

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扉≪バタン≫

子供「・・・」

?「・・・?」
カツカツカツ

?「起きているか? ・・・どうも無いのか?」

子供「・・・」
―――ドク…

?「・・・微動だにしないな。脈を・・・」
スッ

―――ドクン!!
子供「・・・アアアアアアア!!!」
ガブッ!

?「つッ」

子供「近づくな!!向こう行け!!ムカつく!!!」

?「くっ、ハハ。よかった、生きてた。」

子供「笑ってんじゃねぇ!!反吐が出る!!早く向こう行けぇ!!!」

?「・・・ここはもう火が迫っている。悪いが、無理矢理連れて行くぞ。」
ガシ!

子供「離せ!!離しやがれ!!」

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街 門前

ドサッ
子供「っ!!」

?「あっ勇者さま!!どこ行ってた・・・ってこの子は?」

子供「糞が!!殺すぞ!!」

?「・・・今日からの新しい仲間だ。出発は一日遅らせる。それじぁ」

?「あ、待ってください! これお昼ご飯とお夕飯のお弁当です。」

?「・・・一つでいい。」

子供「ぅぅぅうう!!!」
ブン! ブン!

?「・・・。」
パシ  パシ

?「あっ、やめてあげてください! ほ、ほら、あっちいきましょ!? ねっ!?」

?「・・・。」
スタスタスタ

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子供「ウウウ・・・。」

子供「・・・。」

?「・・・? どうしたんですか? なんともありませんか?」

子供「ハイ」
コクン

?「 ?? そ、そうですか。 じゃ、じゃぁえっと・・・ついてきてくれます?」

子供「ハイ」
コクン

?「じゃぁ手を繋ぎましょ、ね。」

子供「ハイ」
コクン


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次の日 朝

?「なんか・・・騒然としてますねぇ。」

?「ぐぅ。」

?「あぁ、なんかこの国の王様が行方不明なんだろ? 一体何があったんだろーなー。」

子供「・・・。」

?「・・・勇者様も何の説明もなくこの子連れてきましたし、本当に何があったんでしょう。」

?「もしかしてコイツ王様の子供だったりしてな。ハハハハ。」

?「・・・ぐぅ。」

?「あれ? お前食べてないな。食いモンは体作りの基本だぞ。ちゃんと食え。」

子供「ハイ」

?「・・・変わった子ですねぇ?」

?「・・・目の光が無いのが気に為んだよな。一体コイツ何があったんだろーな?」







                                      終わり

あっ、ごめんなさい書こうか書くまいか迷ってた正史的なあれのようなそんな感じのうんぬんです
投稿数は19だけど文字数てきには10000くらいなんでそこまでおおくないっすごめんっす
続きもちゃんとかくっすうっすうっす


勇者「・・・今回俺達が目指す場所はどこだ?」

青髪「地図では上の、この島の最北端で御座います。」
青髪「以前私の父が封印されていた場所でも御座いますね。」

勇者「・・・5つ、か。」
勇者(5つを頂点に形成される図形・・・五角形と、五芒星。)

勇者(どちらも魔法条件式の中に置いて重要な位置付である図形だ。ならばこれは、阿呆程デカイ魔方陣?)

勇者「・・・。」
ジー・・・

青髪「戻られますか?」

勇者「・・・敵の襲ってくる地点は予想できるか?」

青髪「うふふ、どうでしょうね。解放点で襲ってくることはまず御座いませんが。」

勇者「なぜ?」

青髪「決着がつきませんので。父も神もあそこではほぼ無尽蔵に魔力を使う事が可能で御座います。」
青髪「再生も容易でしょう。大きな力で押しつぶそうとしても同じくらい大きな力で防がれます。」

青髪「あそこは神にとって利点は御座いません。辿り着かれれば甘んじて己が存在する星の中枢にまで招き入れる事でしょう。」

勇者「・・・現在地点は?」

青髪「・・・背が届きませんが、」
スタスタスタ

指≪ピッ≫
青髪「この少々上のあたりで御座います。」

勇者(・・・だとすれば大凡・・・馬を計算に入れて3週間と言った所か。)
勇者(3週間の間に何人と戦う事になるのだろう。俺は勝てるのか?)

勇者(勝つしかあるまい。でなければあの子を救う事が出来ないのだから。)
勇者(・・・いや、あの子を誘拐して逃げる事も可能だ。必ずしも魔王に従う必要はない。)

勇者(これが魔王の魔力の影響か? いつの間にか自然と協力する気になっている。)
勇者(恐ろしい。何より、気づけないという点が。 常に念頭に置いて行動しなければ。)

青髪「・・・そろそろ体勢を元に戻しても宜しいでしょうか?」

勇者「・・・あぁ。ありがとう。」

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三日後 深夜

玄関大扉≪・・・ギギギギギ≫
義足≪ガシュ!≫

玄関大扉≪ギィィィ・・・カチャ≫

タッ タッ タッ

スタン

ヒュォォォォ・・・

勇者「・・・。」
馬「ブルルル」

勇者(この三日で分かった事が有る。俺は疲労するようになった。)
勇者(原因は恐らく、・・・お母さんと離れた事によるだろう。)

勇者(お母さんは計算付くだったんだ。俺が図書館にやってきた日から、俺が図書館を出るその日まで。)

勇者(・・・手駒だったのかもしれない。計算通りの楽しみを与え、計算通りの悲しみを与える。)
勇者(神の魔力を逆手に取り俺の体の中に入り込み、ずっと、俺と一緒に居た。)

勇者(・・・ずっと、守っていてくれたんだ。意図がどうであろうと、その事実だけで良い。)

鐙≪ガチャ!≫

勇者(一人で行くと発言した事から皆は俺の独断行動を警戒するようになっただろう。俺が出発する時期を全員魔王の準備が終わる前だと考えていた。)
勇者(だから俺はその直前、魔王の準備が終わるほんの少し前に行く事にした。この時期には警戒を緩めるだろう。)

勇者(馬車の機動力の半分を持っていくんだ。皆だけで追いつく事はほぼ不可能。)

勇者「・・・行くか。」
女商人「待ってください。」
勇者「っ! 商人?驚いた、いつの間に・・・。」

女商人「私は今、この家の中の事は詳細に分かりますから・・・」
女商人「勇者さま。私を連れて行ってください。今の私はお水も食べ物も必要ありません。」

女商人「擬人形態も解除されてますから、前より性能が上がってます。勇者様が付けている機械式義足の整備もできます。」

女商人「・・・一人で行くのは、あまりにも、無茶ですから。せめて私だけでも連れて行ってください。」

勇者「・・・・・・。」
勇者(俺の企みが看破されていたわけでは無い、と言う事か。)

勇者(・・・。)

勇者「・・・この道を進んだ場所に大きな町がある。人が居るかは不明だが・・・。」
勇者「当分はそこを目指す。乗ってくれ。」

女商人「は、はい。」

ザスッ

馬「ブルルル」

勇者「・・・皆に言わないでくれて、ありがとう。・・・行くとしよう。」

女商人「・・・はい。」


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三日目  草原

勇者「・・・。」
カッポカッポカッポ

女商人(・・・体温36.5度 脈拍72。)

女商人(・・・あれから一度も話しかけてくれない・・・。ううん、それだけ、覚悟してる。)
女商人(勇者さまの、幼いころからの文通相手・・・私の学んだ社会文化に照らして考えても、)
女商人(そこまで重要な、自分の命を賭してまで救う相手じゃ無い。)
女商人(・・・勇者さまは、今回の相手をよく知ってる。一時期、繋がっていた相手だから。)
女商人(だから、皆を置いて行く事を選んだ。万が一にも、皆ともう一度戦いたくないから・・・。)

女商人(・・・勇者さまの背中は、広くて暖かい。でも、孤独を背負ってる。)

女商人「・・・・・・わたしじゃ埋める事は・・・。」ボソッ
勇者「・・・どうした?」

女商人「あっ、いえ・・・あっ!えっと! 勇者さま、何か来ます!」

勇者「どういうことだ?」

女商人「えっと、転送術式の位置指定魔力を感知しました。恐らくすぐ目の前に転移・・・」

バシュン!!
髭面「・・・」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

女商人「気を付けてください!恐らく神の尖兵です!!」

勇者「・・・。」

髭面「・・・あんたが、ユウシャサマかい?」

ザスッ!
勇者「・・・そう呼ばれているな。商人、馬を連れて下がっていてくれ。」

女商人「は、はい。」
カッポカッポカッポ


髭面「おれぁよ、あんたを連れてこいって言われてんだ。付いてきてくれるかい?」

勇者「連れて行ってどうする気だ。」

髭面「全ては主の御心のままに。俺の様な奴が知っていい事じゃぁないさ。」

勇者「ならば拒否する。」

髭面「もともと断る気満々だった癖によぉ。まぁいい、あんたは気づいてないだけさ。」
髭面「神様は全てをお許し下さる。あんたの謀反も許して下さる。だからまぁ・・・」

髭面「安心して付いてきな。」
右足≪ザス!≫
左足≪ザス!≫

髭面「知ってるぜぇ、有るように見える右足。ニセモンだろ?」
髭面「左腕も肘から下は無い。あんたの特に優れていたのは素早さだと聞いている。」
ザス ザス ザス

髭面「足の遅いネズミなんてタダの雑魚だぜ。首根っこ捕まえて引っ張ってってやるさ。それがあんたの為ってやつだ。」

勇者「・・・近づいてきてくれるとは有り難い。確かに足は自前じゃない。」
勇者「だがお前は甘く見すぎだ。」

髭面「へっ、よくしゃべる奴だな。」

勇者「お前もな。」

髭面「フンッ!!」
拳≪ゴォ!≫

ガッ!スカ
勇者(これは明らかに武術の型。)

髭面「捌きやがったか。情報通りお前もナンかしらの武術やってやがんな。」

勇者「・・・」

髭面「ケッ、だんまりかよ。シィ!!」
右足≪ギュォ!≫

勇者(上段回し蹴り。姿勢を落としスカらせ開いている腹に掌底。)
勇者「フッ」
ヒュ

ズゴン!!

髭面「グッ!」
フワッ

ザッザザッ!

髭面「なっ・・・?!」

勇者「何を驚いている。」

髭面「ほ、ほんとに自前の足じゃねぇってのかよ。」

勇者「それだけは確かだ。」

髭面「俺より全然ちいせぇ癖に俺をふっとばす掌底の威力も信じらんねぇ・・・。」

勇者「なんら不思議な事じゃない。お前の体重はこの星の重さを兆で割っても足りないくらいだ。」
勇者「ならば俺が星の重さをほんの少しでも借りる事が出来るなら、同じ人間位吹き飛ばせる。」

髭面「重さ・・・つまりお前さんの武術は地面を基にしたモノって事かい。」
髭面「体重移動特化か、ますます足がねぇってのが信じられねぇなぁ。」

勇者「お前の実力はその程度か。俺はまだ武器さえ使っていないぞ。」

髭面「あぁ安心しろ。俺は武器使わねェからよ。だがまぁ・・・」

髭面「頂いたお力位は使わせてもらうぜェ。」
上着≪ビリィ!≫

ペンダント≪・・・≫

勇者「・・・。」
短剣≪シュピン!≫

髭面「神力顕現」
両腕≪メキメキメキメキ・・・≫

髭面「俺の腕はもう砕けない。」
スッ
右足≪ズゴン!≫

勇者(何気なく踏み出した足の音がさっきより大きい。・・・強く踏み出したわけでは無いのならば、あの男の重量が上がってる?)

髭面「今度は突き出したテメェの手足を案じな。」
ズゴンズゴンズゴン!

勇者(固さを確かめる必要がある。)

髭面「はいやぁ!!」
拳≪グオ!≫

ギャリン!
ガキィィン!!
義足≪ギシギシギシ・・・!≫
ブワッ!

勇者「ぐおっ!」
スタン

髭面「おお怖ぇ怖ぇ。手首の健斬ろうとしやがって。」

勇者「・・・。」

髭面「俺達ゃあよ、神様から救いの為のお力頂いてんだわ。」
髭面「敵がどんな奴だろうと俺は正々堂々が好きだ。だから教えるぜィ。」

髭面「俺が顕現した神の力は質量増加だ。俺の拳は岩をも砕く。」


勇者「・・・はっ! 岩を砕くだけか。俺の知り合いほとんどに可能な事だ。」

髭面「だろうなぁ。俺ぁ頭わりぃからできねーけど、魔法使えば簡単だもんな。」
髭面「でもよ。」
ズシン!

髭面「このお力の事はよく知らねーが、随分固くもなるんだぜィ。」
ズシンズシンズシン

勇者(今の会話で判明したことはこいつの様な特殊な奴が複数いると言う事。重さを増加させ副次的な効果で体全体の硬化を行う。)
勇者(アイツの拳を生身で受けてはいけない。避けるか義足で受けるかしなければ。)

勇者「振動剣」
短剣≪カッ!≫

勇者(生身が人間だと言うのなら、熱には弱いだろう。)

髭面「出たな魔法。おれぁそういうのでぇっきれぇだ。」
ズシンズシン

勇者(・・・実際どうする。殺さず確保したとして、会話の様子から確かに盲信していることが伺える。)
勇者(心を操る・・・厄介な。)

髭面「骨の一本二本はもらっとくぜィ。」
拳≪グオオ!!≫

勇者「単調な―――!」
ヒュバ

左手≪ドジュウウウウ!!≫
勇者「なっ・・・!」

髭面「へぇっへぇ、この体はソーイウ内部に来るのが苦手だぜィ。だけどよ、」
頭≪ガシィ!≫
勇者「ぐっ!」

髭面「腕の一本二本安いもんだ。お前さんまだまだわけぇわ。」

勇者「雷まほ」
髭面「おっと」
ガシッ

勇者「・・・!」

髭面「口ふさぎゃぁ鬱陶しい魔法もでねぇだろ?足もうっとおしそうだ、抑えさせといてもらうぜ。」

女商人「カオス斧!!」
メギン!

ブオン!
ガキャァン!!
髭面「おいおい嬢ちゃん。別にあんたは連れて行かなくてもいいんだっつーの。」

女商人「勇者さまを、離してください!! 二度と・・・」
女商人「二度と!! 神の尖兵になんてさせない!!」

勇者「・・・っ!」

髭面「へぇっへ、スキだぜーそういうの。だけどよ、わかってくれなんて言わねェけど、必要な事なんだ。」
髭面「それによぉ、俺の能力の特性上こーいう膠着状態になったら勝ちらしいんだわ。嬢ちゃんの斧はかなり重いしイタソーだけどよ、」

髭面「俺を斬る事はできねぇからな。仲間の回収待つだけよ。」


女商人「・・・あなたの力が質量を増大するのなら・・・!」
女商人「核解放、重力場作動。」

髭面「おっ?」

女商人「重さを無くしてしまえば良いんです!! えい!!」
ヒュッ  ガキィン!!

フワッ!
髭面「うおっ!?」

手≪ズルッ≫
勇者「雷魔法感電」
バリィ!!
髭面「うげ!?」
勇者「ぐっ!」

ズルッ
ザザッ!

髭面「ちぃ!しくった! 握り潰さねぇよう手加減してたのが仇になっちまったぜ!」
フッ

ドスンドスン

勇者「しょ、商人。今の魔法は・・・」

女商人「私の核は真空珠のような、特殊な物なんです。重力魔法を行使できます。」

勇者(アイツの方だけ重力を打消し、吹っ飛ばしたか。俺の方は重力は変化していなかった事から範囲を限定する事が可能の様だ。)

髭面「あぁー。左手の指動かなくなっちまった。」
左手≪シュゥゥゥ・・・≫

勇者「・・・痛みを感じないのか?」

髭面「主の御心のがいてぇから感じねぇだけさ。それより、あんたよぉ、自分が誰に協力してっか分かってんのか?」
髭面「魔王だぞ?100年前の災厄だぞ? あんたら違和感覚えてねェから仕方無く、あんた目覚まさせるために俺らが集められたんだ。」

髭面「少しでもおかしいって思うなら・・・」

女商人「ふざけないで下さい!!」

髭面「着いてきて・・・って?」

勇者「・・・?」

女商人「元々は・・・勇者さまの魂を捉えて、何千年も酷使して・・・!」
女商人「まだ足りないと言うんですか!! もう、離してあげて下さいよ!!」

女商人「おかげで勇者さまは私のお父さんとかかわりあってしまって・・・もう、何回も繰り返し悲しみを負っているんですよ!?」

女商人「憐れと思うなら!! そちらこそ平穏を下さい!! 勇者さまの事を深く理解していながら・・・それを利用して自分の前に引きずり出して!!」

勇者「商人・・・。」

女商人「私は!! あなたのことが大嫌いです!! もう近づかないで!!」

髭面「・・・でもよぉ、今は魔王の手先だろ?」
髭面「魔王に捉えられちまってるだろ? だったら解放してやんなきゃ。それが出来るのは神様だけさ。」

髭面「別にアンタの事は連れてこいって言われてねェけど、連れてくんなとも言われてねェ。心配なら傍に居てもいいぜ。」

髭面「なんせ神様は寛容だからな。そんくらい許して下さるはずさ。」


女商人「勇者さまがなんで・・・! 貴方達と戦う道を選んだか・・・!」
女商人「知っているんでしょう?! その策を講じたのは、紛れもない神なんですよ!?」

女商人「貴方達がやっている事は人質を取る事となんら変わらない!! その手段を」
ガィン!!
女商人「っ?!」
ドザッ!ザザァ!!

勇者「商人?!」
・・・ダァーンン―――

勇者(音が後から・・・! 銃撃か!)
勇者「鉄生成 壁」
鉄壁≪メキ!≫

髭面「おいおい、まだ話してる途中だっての。勝手な事すんなや。」

髭面「いや、だけどよぉ。話すさまなんて力入っててまるで人間みたいでよぉ・・・」

髭面「・・・わかったよ。お前の言う事も間違いじゃぁねぇもんな。さっさとユウシャサマつれて帰るとするわ。」

女商人「・・・」
勇者(右こめかみの肉がはじけて下の固い何かが露出してしまっている・・・!)

勇者(脈を・・・いや、商人は人間じゃない! いったいどうやって生きているかを確認すれば・・・!)

ズシン!

勇者「くっ!」

髭面「わりぃな。それやったの俺の仲間だわ。不意打ちは好きじゃねぇんだけど・・・考え方はそれぞれだからな。」
髭面「その子が寝てる間に事を済ませる。あんたじゃ俺を完全に止めきれねぇだろ?」
ズシンズシンズシン

勇者「甞めるな独活の大木・・・!」
勇者「反振動剣」
短剣≪コオオ・・・≫

勇者「ふっ」
義足≪バショオ!!≫

ヒュッ

髭面「おっ?」

ザッ!
勇者「―――」

髭面「偽物の足の・・・空気を噴射して高速移動する技か? おれの傍通っただけで何も・・・」
髭面「あら? 動けねェ?」

勇者「腕の一本や二本と言ったな。ならば払ってもらおうか・・・!」
ザッザッザッ
髭面「・・・足が動かねェ。何しやがった?」

勇者「すぐわかる。」

義足≪ヒュォ≫

両足≪バキャァァァン!!≫
髭面「うおお!?」
ズドン!!ゴロン!!

勇者「よくも商人を・・・!」


髭面「お、おい!俺を殺すつもりか!?聞いてた話と違うぞ!!」

勇者「殺しはしない、殺しはしないさ。だが・・・」

勇者「オレは甘すぎた。五体満足で済まそうとしていた。もう―――」
勇者「オレに近づくな。」

髭面「・・・なんっつぅ冷たい目しやがる。背筋まで凍っちまいそうだ。」
髭面「だが分かったぜ。あんたを神様の元まで連れて行かなきゃいけない理由がな。」

勇者「戯言を・・・」

バシュン!!
?「・・・」

勇者「っ!」
クルッ
勇者(・・・なんだ、こいつ! 潜水服の様な、全身をゴムで覆ったかのような服は!?)

潜水服「・・・」
サッ!
短銃≪・・・≫

勇者(銃! 回避行動を!!)
サッ

短銃≪ビカァ!≫

勇者「ぐあっ!?」
勇者(光!?)

声『帰還行動を優先する。』
声『わ、わりぃ。』

声『早くしろ。』
バシュバシュン!!

ヒュォォ――――――

勇者「・・・くっ!!」
地面≪ガスッ!≫

勇者「・・・これが現実、か・・・!俺の力は・・・こんなものか!!」

勇者「そうだっ商人!?」
右手≪ザッ ザザッ≫

勇者(目がまだ・・・!)
ピトッ

勇者(居た! 横たわったままだ!)

勇者「回復魔法 中」
勇者(旅の間何回も回復魔法を使ったんだ! きっと効く! 効く筈だ!!)

勇者(くそっ! まだ見えない! 効果が確認出来ない!!)

勇者「商人! 商人!! 返事をしてくれ!!」
勇者(以前に気を失った時は自我が消えてしまっていた! 今回は・・・)

勇者「頼む・・・! 何事もなく目覚めてくれ・・・!」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
声「起きなさい。」
ガスッ!

声「だ、だれだ!?」

声「黒が作った存在が、低質量で音速の2倍程度の飛行体にぶつかった程度で破壊されるわけがないわ。早く起きなさい。」

女商人「うっ・・・?」

声「っ商人!? 聞こえるか?! 異常は?!」

女商人「へ、へいき、です。 ごめんなさい勇者さま、ごめいわく、を・・・」

勇者「よかった・・・!」

女商人「あ、あれ? 勇者さまもしかして目が・・・!?」

勇者「大丈夫だ、強烈な光で一時的に目が焼けているだけ・・・」

?「見せなさい。」
グィ
勇者「うおっ?!」
グキ

女商人「あ、あの・・・?」

?「・・・確かに問題は無いわね。」

勇者「商人、俺は目が見えない。俺の頭を固定している人は一体誰なんだ? 敵では無いようだが・・・。」

女商人「す、すいません。わからないです。あの、貴方は一体・・・。」

?「私の声を忘れてしまったのかしら。相変わらず物覚えが悪い子ね。」

勇者「え・・・?」

女商人「・・・?」

?「貴方が知っている私の情報は、声だけのはずよ。良く思い出しなさい。」

勇者「ま、まさか・・・お母さん、ですか?」

女商人「えっ!? と言う事は・・・」
女商人(物質属性のエレメンタル・・・。勇者さまの、育ての親。)

土「そう呼ばれるのも随分久しぶりね。」

勇者「そんな・・・! お母さん、俺は!」

土「馬鹿な子ね、本当に。 貴方とはずっと一緒だったけど、何度もそう思ったもの。」
土「でも今回の戦いは少し良かったわ。ようやく貴方も複数の優先順位が出来たのね。」

女商人「えっ?」

勇者「お、俺は・・・。」

土「次は出来るなら命を奪えるといいわね。それが最も合理的だものね。」

女商人「あ、あの、どういう事ですか・・・?」

土「貴方が寝てる間に勇者は手早く相手の行動能力を削いだ。つまり、」
土「両方の足を砕いたのよ。相手に対策の為の時間を与えなかったわ。」

女商人「勇者さま、が・・・?」

勇者「・・・っ。」


女商人「わたしの、せい、ですか・・・?」

勇者「違う! 俺が」
土「因果を決したのは貴方ね。貴方が銃撃された事により勇者が吹っ切れて行動した結果だもの。あの状況ではもう一方の敵に集中するためには必要な事だった。」

女商人(・・・私は、また・・・・・・)

女商人「・・・ごめん、なさい。わたしが、居なければ・・・・・・。」

勇者「何を」
土「謝る必要は無いわ。切り捨てる事は必要な事よ。貴方と言う大事な存在と、良く知らない敵を秤にかける。その結果あなたを選んだ。」

土「貴方は勇者の大事な存在よ。常に選択肢の上位の存在、もっと」
勇者「お母さん!!」

女商人「・・・。」
ぽろぽろぽろ

女商人(私の所為で、勇者さまが、残酷な行動を・・・せざるを得なかった。)

女商人(足手、纏い・・・、私は、居ない方が・・・)

土「・・・なんで泣くのかしら?」

勇者「全てを合理で考えないで下さい!」

土「合理的な方が良いと思うのだけれど・・・。」

勇者「人は、完璧な存在じゃない! ならば、不合理だって必要なんです!」

土「・・・良く分からないわ。私も完全な存在ではないもの。」

女商人「ごめんなさい、勇者、さま。わたしの所為、で、・・・」

勇者「商人、俺は・・・!」

土「・・・そうね、貴方の所為とも言えなくはないけれど、」
土「でも選んだのはこの子で、撃たれた時貴方は勇者の為に叫んでくれていたはずよ。」

土「えーと、・・・貴方の責任がゼロというわけでは無いけれど、貴方がこの子の事を想っていてくれる事だけは確か。」

土「だから、そんなに泣かないで頂戴。」

女商人「でも・・・」

勇者「でもじゃない! 商人が居なければ俺はそのまま捕まって居たんだ!」
土「私が傍に居たからそれはあり得ないけどね。」

勇者「お母さんは黙っていてください!」

女商人「・・・」
ゴシゴシ
女商人「・・・すいません、取り乱しました。」
女商人(私は、杖。勇者さまを支えるだけ。)

女商人「今後は、高速飛行体にも注意を向けて、万が一にも備えます。」
女商人(勇者さまが本当にやりたい事を、助けなきゃ。)

女商人「今回は、少し感情的になりすぎました。次はもっと押さえます。」
女商人(ほんとうなら、次は無かったかもしれないんだ。)

女商人(もっと、合理的に、人形に徹しなきゃ。)

勇者「・・・くそっ。」

土「話が済んだのなら早く出発したほうがいいわ。」

女商人「そう、ですね。お馬さん連れてきます、待っていてください。」

勇者「お母さんも付いてくるのですか?」

土「貴方たち二人で乗り切る事が不可なのは今の戦闘でわかったはずよ。私は黒に従う理由も無い。」
土「せっかく拾った命だもの、貴方と一緒に居る事にするわ。」

勇者「・・・ありがとう、お母さん。」

土「感謝されるのも、久しぶりね。」


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土「光魔法光球」

光球≪ぽわん≫

勇者「お母さん、俺はまだ平気です。別に夜休まなくとも・・・」

土「貴方は疲労という物に不慣れよ。本来なら休む時間はしっかり取らなければならない物。」
土「人間はそこまで頑丈じゃないの。」

女商人(・・・勇者さまのお母さん。物質属性のエレメンタル。)

勇者「・・・お母さん、俺が今まで疲れなかった理由は、もしかして・・・」

土「私がやっていた事よ。疲労物質を糖分に戻し、運動により産出される熱を下げ、筋肉の断裂を防いでいたの。」
土「貴方の中に居た間様々な事をしたわ。毒物の分解、内臓の傷の治癒。失血した時は大分魔力を使ったわ。」

土「貴方は本当に無茶ばかり・・・気が気じゃなかったわ。」

勇者「それは・・・すいません。」

女商人(人じゃないのに、勇者さまと親子をしてる。私の得た文化情報と照らしても、状況が特殊なだけで関わり合い自体はおかしい所はない。)
女商人(人間性を会得してるんだ・・・。)

土「・・・不思議な物ね。」

勇者「? 何がでしょうか。」

土「勇者、私達は親子よね?」

勇者「はい。間違いなく。」

土「ならば・・・この子とも親子という事になるわね?」
女商人「っ!」

勇者「それは・・・はい。」

土「と言う事は、この子が父と呼ぶ黒と私は夫婦となるのかしら?」

勇者「それは、少し違う気がしますが。」

土「そこはどうでもよいのだけれど、人というのは繋がりをたくさん持つのね。」

勇者「・・・そうですね。しかしそれは、他の動物でもそうなのでは?」

土「子供は子供で親は親で、動物はそれぞれの世代がそれぞれを生きるのが基本よ。人間を広く定義するのならば社会的動物だわ。」
土「しかし・・・そうね、亜人も含めて人と表現するけれど、人は他の社会性を持つ動物と比べて、自分たちの感性を重視している。」

土「感性を重視して自分達を変容させていく存在、というのは人が持つ独自性と言えるわね。」

勇者「・・・どういう事でしょうか。」

土「貴方はこの子が好きよね?」

勇者「うっ。そ、それは・・・は、はい。」
女商人「っ。」

土「貴方は出来るのならばこの子に好かれたいと思うわね?」

勇者「は、はい。」

土「その為にあなたは自分を変えようとするはず。・・・端的に言えば、自分の感情を基に行動する事。」
土「そしてその感情を群れ全体で共有して完全体へと近づこうとする事こそが他の社会的動物とは一線を画す独自性なのよ。」

勇者「つまり・・・何が言いたいのでしょう。」

土「・・・そうね、紅くなっている貴方達を可愛く思う、と言う事かしら。」

勇者「か、からかわないで下さい。」

女商人(繋がり・・・でも、私みたいな、他の生命に作られたような存在が、一緒になってもいいのかな・・・?)
女商人(色んな問題が出ちゃう。寿命の差とか・・・子孫の問題、とか・・・。)

女商人(自然を基に考えるなら、不合理な繋がり、だよね・・・。)


土「・・・この体も中々面白いものね。本当に、人になったかのような気がするわ。」
土「貴方との、親子、という関係も、本物になった気さえ・・・ね。」

勇者「・・・お母さん。俺達は」
土「分かっているわ。重要なのは、気の持ちようだと言う事は。でも、それでも、」
土「物質動物の血の繋がりも、魔質生命の様な魔力の由来も無いと思ってしまうのは・・・人間性と共に弱さをも得てしまったと言う事なのかしらね。」

女商人(人間性と共に弱さを・・・?)

土「合理で考えるのならば、発生と消滅は繰り返すもので、そこに特別な意味は何も無い。ただの現象。」
土「そこに特別な意味を見出すことが人間性ならば、その所為で発生する特別な弱さも、人間性の一部。」

土「・・・人間というのは不合理の様で合理的よね。人の持つプラスとマイナスを合わせれば丁度ゼロになるのかしらね。」

勇者「・・・相変わらず、お母さんは難しい事を言いますね。」

土「そんなに難しい?」

勇者「まるで謎かけの様です。一緒に居る頃は、よく頭を悩ませた。」

土「そのうち分かるようになるわ。きっとね。」

勇者「俺はもう年齢でいうなら十分大人なのですが・・・。」

土「人の寿命の半分も過ぎていないのに精神的に成熟しきるわけが無いわ。成熟しているなら、昼も躊躇なく行動に移れていたはず。」
土「貴方にはまだ迷いが有るわ。」

勇者「・・・。」

土「貴方の潜在能力は本来人間相手には敵無し程度は有るのよ。なのに苦戦すると言う事は、自分で自分の能力を制限している事に他ならない。」
土「私達の様な人間に取っての規格外を相手にするのならともかく、人間程度軽くあしらって欲しいものだわ。」

勇者「・・・しかし、そんな簡単に殺していい物、なのでしょうか?」

土「後々に遺恨を残さない方法を選びなさい。殺せば物理的に邪魔は消えるわ。生かしておく事は目的を達成するうえで不確定要素を残す事になる。不合理だわ。」

女商人(正しいけど・・・いやだな。勇者さまが人を殺すなんて・・・、あんまり、考えたくない・・・。)
女商人(だから、私がやらなきゃ・・・。)

勇者「それは、そうなのですが・・・。」

土「でも、貴方は昼間に言ったわね。人間は不完全な存在、ならば不合理も必要である、と。」
土「まだまだ理解は及ばないけれど、生かしておくことにより貴方が得する事も、あるのかもしれないわね。」

勇者「・・・。」

土「まぁ、そうね。人間なのだし・・・」
土「好きな様にやればいいのかしらね。」

勇者「好きな様に・・・?」

土「感情だけが人ではない。本能と理性のせめぎ合いにより自己が損をしたとしてもそれは経験を得たと言える。」
土「人を成長させるのが学びならば、選択、それによる損も決して完全な損失では無い。」

土「命を失わない限り、人は成長していける、と言う事ね。ならば好きに行動するのが正しい。合理的だわ。」


勇者「しかし・・・好きな様に選択した結果が」
土「自己の命に係わる事も有る。それは当然よね。・・・話は変わるけど、先人はどういう事をすべきだと思う?」

勇者「先人・・・先に生きている人、と言う事ですか? ・・・そうですね、後人の育成、でしょうか。」

土「そうね。でも、見守る事も重要であると思うわ。」

勇者「・・・見守る?」

土「右往左往している自分の跡を辿る者を、ね。」

勇者「・・・俺にもいつか、そういう存在が出来るのでしょうか。」

土「既に居るでしょう?」

勇者「え?」

土「貴方は鈍いのかしら。それとも考えた事も無いのかしら。極まれに計算しつくしたかのような勘違いをする事があるわよね。」
土「不思議だわ・・・。最初はわざとかと思っていたけど、そうでもない様だし・・・。」

勇者「・・・俺はそんな勘違いをする事があるのか?」
女商人「えっ? え、えと・・・たまに抜けている、というか・・・。」

勇者「そ、そうか。・・・そうか。」

女商人「で、でも、勇者さまは常に聡明ですし判断力も優れていますし、その、問題になりませんよ。」

土「貴方も可愛いわね。」

女商人「へっ!?」

土「徹しきれない弱さがある。傍から見ていて、本当に人間の様。」

女商人「あっ・・・。」

土「責めているわけじゃないわ。この子と同じ部分が弱いから、そう思ったの。似た者同士と言うのかしら。」

女商人「・・・。」

土「・・・明日から大変そうね。」

勇者「・・・そうですね、敵の一人は行動能力を削ぎましたけど、何人いるかも分からない。」

土「そういう事じゃないわ。」

勇者「え? では一体?」

土「慣れていないから、私も右往左往しそうね。」

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4日目

カッポカッポカッポ

勇者「・・・。」

女商人(神の尖兵は、どうやって勇者さまを連れて行く気だろう。)
女商人(昨日は狙撃で邪魔者の排除、直接的手段で勇者さまを捉えに来たけれど失敗した。)

女商人(だったら次は・・・電撃作戦? 昨日の戦闘で勇者さまの機動力が必ずしも戻ったわけでは無い事も悟られたかも・・・。)
女商人(私の隠し玉はまだあるけれど・・・必ずしも対応できるかは分からない。機動力が馬一頭だとばれていたとしたら、可能性が高いのはやっぱり・・・)

土「貴方、少しいい?」
ふわふわ

女商人「あっ、はい。なんでしょう。」

土「以前貴方は強烈な光で目を焼かれていたわ。現在も仕様はそのままなのかしら。」

女商人「あ、はい・・・構造的欠陥、みたいなものですから。以前は瞼を超えて火傷してしまいましたし・・・。」
女商人「損傷を防ぐ事は出来ません。」

土「そう。じゃぁこれを付けておいて。」

女商人「・・・ゴーグル、ですか?」

土「今生成したわ。貴方も。」
勇者「うっ」グキッ

仮面≪グニュ≫

勇者「あっ・・・」
土「眼孔部分にガラスをはめておいたわ。これで目くらまし程度の光は防げるはずよ。」

勇者「ありがとうございます。」

土「さてと。馬から降りなさい勇者。」

勇者「何故ですか?」

土「鈍いわね。敵よ。」

女商人「えっ?!」
勇者「何処に?」

土「昨日の様に遠くに狙撃要因が待機してるわ。右手の方向よ。」
土「今回の人数は・・・3人ね。前方と後方に一人ずつ。」

女商人「なぜわかるんですか?」

土「貴方に備え付けられている検知器は範囲が狭いのかしらね。昨日も狙撃要因の転送には気づいていなかったようだし。」

勇者「3人・・・しかも一人は狙撃要因か。壁を生成するとその陰から動けなくなるが・・・生成しないわけにも・・・」

土「私の属性を忘れたかしら?」

勇者「・・・あっ。」

土「貴方はもう少し他者に頼る事を覚えなさい。大地鳴動」

大地≪ズゴン!! ゴゴゴゴゴゴゴゴ≫


超巨大壁≪ゴゴォォンン……≫

女商人「・・・すごい。」

勇者「こんな無茶をして平気なのですか? 魔王の話では、・・・栄養失調で死にかけていたと聞きましたが。」

土「確かに私達エレメンタルにとって魔力を使う事は身を削る事に等しいのだけれど、この程度なんら問題は無いわ。」
土「さぁ、これで敵が用意した一つの要素を崩した。これで敵がどうでるか・・・。」

女商人「あっ、すぐ後方に転送術式の魔力を感知!」

勇者「行け!」
バシン!
馬「ヒヒィィン!」
パカラッ パカラッ

勇者「商人は12時方向警戒!」
女商人「は、はい!」

バシュン!

髭面「・・・うしっ! 転送完了!」

勇者「なっ・・・!?」
土「・・・。」

髭面「よぉくも俺の脚ぶっ壊してくれたなぁ!治ったけどよ!」

女商人「12時方向から誰かが高速接近中!」

髭面「昨日みたいにはいかねぇぜぇ!おっしゃああああ!」
ドスンドスンドスン!

土「勇者、わかっているわね?」
勇者「はい。明らかに掴みに来ている。」

女商人「12時方向目視距離まで来ました!えと・・・女の子!?」

頭巾「ゆ・う・しゃぁ~~~!! むかえにきたよー!!」
ゴオオオオオオオ!!

勇者「っ!」
土「目を逸らさない!」

勇者「は、はい!」

髭面「おらぁどうする! また凍らすかぁ!?」

頭巾「よっ―――」
足≪グググググ・・・≫

頭巾「っとぉおおおおおお!!」
ズゴォォォン!!
ギュン!

頭巾「ゆうしゃぁ~!受け止めてぇ!」
ギュォォォォォ!!

商人「核解放、重力場展開」
頭巾「重力魔法重力場相殺」
ぷしゅん
商人「えっ!?」

髭面「3人纏めて連れてってやらぁ!!」
両手≪グオオオ!≫
頭巾「どいてよおもちゃ! 私が抱きしめるのは勇者だけなんだから!!」
ォォォォォ!!


土「単純な挟み撃ちよ。このくらいなんとかしなさい。」

勇者「しゃがめ!!」

女商人「っ」
スッ

頭巾「つっかまーえ」
勇者「君なら軽い。」
ガシッ
頭巾「ふぇっ?」
ぐるん

胸≪ガシィ≫
頭巾「ぎゃおお!?」
髭面「うお!?わ、わり」

勇者「フンッ!!」
ブオン!

頭巾「いやぁぁ~~・・・」
ヒュー・・・

髭面「て、てめぇ!」
勇者「遅い。」
義足≪バショオ!≫

顎≪ガゴン!≫
髭面「ガッ・・・?!」
ぐわん

勇者「お母さん! 穴にでも埋めておいてください!」

土「はいはい。」
地面≪グオン≫

髭面「ウオオオオ!?」
ヒュー・・・ズズゥゥゥ―――ンン


スタン
頭巾「ひ、ひっどぉ~い!加護を受けといてなんて卑劣な手段を・・・!」

勇者「確認しておきたい。君は、俺が森に棲んでいる間の・・・」
頭巾「そうだよ。お手紙出し合ってたよね。」

勇者「そうか・・・。俺に、ついてきてくれないか?」

頭巾「え?」

勇者「俺は魔王なんてどうでもいい。君が神の尖兵になっていなければ、条件を蹴っていた・・・と思う。」
勇者「君が元の・・・故郷に帰るのであれば、争う必要は無いんだ。だから・・・」

頭巾「駄目だよ、そんなの。」

勇者「っ、なぜ?」

頭巾「だって、まだ魔王のおもちゃとごっこ遊びなんてしてるじゃない。」

女商人「っ・・・。」
勇者「・・・。」

頭巾「魔王に囚われてるショーコだよ。そっちこそ、私についてきてくれればいいんだよ。そしたら私だって帰れるもん。」

勇者「・・・予想はしていたが、平行線、か。」

頭巾「そっちが付いてきてくれれば済むお話でしょ?ほら、私に捕まればスグだから、ね。あっちにはね、あなたの」
バシュン!
勇者「っ!」
女商人「っ!」

潜水服「・・・」
短筒≪チャッ ボン!≫
網≪シュルルル≫

土「単分子剣」
ヒュバッ

網≪バラバラバラ・・・≫

頭巾「もうっ!貴方は水を差すのが好きなんだから!」

潜水服「作戦は失敗した。帰還行動を優先する。」

女商人「に、逃がしません!せめて拘束を」
潜水服「光魔法衛星光詠唱完了」

風景≪―――ッッ≫

勇者「なんだ!?風景が白く・・・」
土「いけない・・・!」

ビカッ

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
焼野原


草原≪メラメラメラ≫

小山≪ボコォ!≫

土「・・・居なくなってるわ。」

勇者「ハァッ ハッ 生きたまま蒸し焼きになるのは初めてだ・・・ゲホッ。」

女商人「あの・・・全身を黒いゴムで覆ったような服の人が使った魔法は、なんだったんですか?」

土「大出力の光魔法よ。光を集めて私達の真上に降らせたようね。」
土「単純な魔法だけど、予備詠唱済みだと発動阻害が出来ないわね・・・。」

勇者「ふぅ、あの顔も見えない特殊な服は、広範囲になりがちな光魔法を自分だけは避けるためだったのか。」

土「・・・そうかしら。」

勇者「別の理由が?」

土「あの頭巾をした女の子は別だけど、白の駒は傷心してるのよ?」
土「・・・不確定要素が多すぎて今考える事は危ないわね。それより、次の襲撃は気を付けた方がいいわよ。」

女商人「な、なぜですか?」

土「もともと隠すつもりも無かったけど、私の存在がバレたからよ。相手の目的は勇者の生け捕りとは言え、周りの破壊を厭わない相手でもないわ。」
土「人間が相手ならば甘さを期待できるけど、そうでない場合は大変になるわね。」

勇者「つまり・・・エレメンタルが来る可能性が?」

土「否定できないわね。人間相手には私は大きすぎる障害だものね。」

勇者「仮にエレメンタルが来たとして、対応できる物ですか?」

土「今の私は素体を壊されると霧散してしまうけど、この体は相当に頑丈だわ。黒の作るものの優秀さは相手も知る所。そして私の属性。」
土「物理的作用でこの体を壊すのは不可能に近いと評価できるわね。ならば魔法的作用か、私を別の場所に隔離する事を考えるかしらね。」

勇者「しかし例えば・・・転真属性などには対応できるのですか?」

土「それは避けるか逸らすかしかないわね。でも白が出てくることはありえないし、以前の貴方の様な存在が居たとしてもそこまで怖くは無いわ。」
土「人間の低出力では私達から見ればまともな運用が出来ないもの。」

女商人「では、注意すべきは相手の魔法・・・でしょうか?」

土「そうなるわね。来るとしたら相手のエレメンタルは・・・青かしらね。赤は大雑把すぎるから。」

勇者「属性は?」

土「大気属性よ。私とかなり似ているわね。私が個体特化なら相手は気体特化と言った所かしら。」

勇者「大気ですか・・・。」

土「物質生命と対するならもっとも優れている属性と言っていいかも知れないわ。だけど今は黒と全面的に争っている途中だからどれだけの戦力を」
女商人「えっ?あ、あの、争っているん、ですか?」

土「えぇ。領域の広げ合いをしているわ。直接的な攻勢は赤が、間接的な浸食は青がやってきていたわね。」
土「黒が白の元に来ることは確定事項だから、それまでにどれだけ削れるかが勝敗を分ける。」

勇者「と言う事は、戦士や僧侶、女魔法も戦っているのですか?」

土「エレメンタルと争いはしていないだろうけど、その他の手駒と争ってる可能性は有るわ。」

勇者「その他の手駒?」

土「ドラゴンよ。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

草原≪ゴオオオ・・・!≫


洋館『グオオオオオオ!!』

バッサバッサバッサ・・・
赤竜「ギャーッハッハッハッハッ!! これが噂のお化け屋敷か!! うごいとるぞ!!」
青竜「魔物なんだろうけどなんで人工物の形してんのかしらねー。」

白龍「魔法障壁が貼られていて私のブレスが届かんな。はがす事は出来るか?」

青竜「ちょっと難しいねー。さすがに伯父さんが住んでる場所だけあってガード固いわ。」

赤竜「スゥゥゥゥゥ・・・」

赤竜≪オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!≫
ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

洋館≪オオオオオオオオオオ≫

バショオオオオオオオ・・・

赤竜「さっきから何度も食らわしてるが全然だめだ、ナハハハハハ。」

白龍「膠着状態という奴か。果報は寝て待て、ゆっくり待つとしよう。」

赤竜「儂は少し遊んでくるぞ!!」

青竜「好きにすればー。」

赤竜「ギャッハッハッハッ!」
ズズ―――ン
ズガズガズガズガ

赤竜「では、取っ組み合いと行こうかのぉ!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ズズン・・・ズン ズン

女戦士「一体何がどうなってんだよ!!」

女僧侶「わ、わかりませんよ!! とにかく窓の外にはドラゴンさん達が居ます! この屋敷を攻撃してるみたいですよ!!」

青髪「これは困りましたねぇ。この家も大分長生きですが、さすがにドラゴン相手では分が悪い。」
青髪「その上3体。手の下しようも御座いません。」

女魔法「何かないの?」

青髪「私では思いつきません。力至らず申し訳御座いません。」

女僧侶「で、でも、なにかこう、ドラゴンさん達微妙に手を抜いていませんか?」
女戦士「真面目にやろうって感じではねぇな。おいおい青いのが寝だしたぞ。」

青髪「ドラゴンは気まぐれで御座いますからね。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


赤竜「おーしくーらまーんじゅーおーされーてなーくな!」
ギィィィ   ゴォォォ  ギィィィ  ゴォォォ
洋館『ウゴゴゴゴゴ』

赤竜「ギャーッハッハッハッ!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ギシギシギシギシ!!

女僧侶「ひっ、ちょ、ちょっと、この家本当に大丈夫なんですか!?」

青髪「剛性靱性どちらも高く御座います。故に物理的衝撃では滅多な事では歯牙にも掛けませんよ。」

女戦士「いやいや! めっちゃくちゃ揺れてんじゃねぇか!」

女魔法「・・・。」
スタスタスタ

女僧侶「魔法さん!?どこへ?!」

女魔法「話してくる。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


赤竜「アーループースーいちまんじゃーくー」
ズンズンズズン

小窓≪コンコン≫

赤竜「こーやーぎーをーたーべー・・・

小窓≪ガンガンガン!≫

赤竜「おっ?・・・おおっ!小さい人間!久しぶり、だったか!? ギャッハッハッハッ」

女魔法「なんで壊そうとしてるの?」

赤竜「いやな! 儂の父がここで遊んで来いっていってなぁ。儂は遊んどるだけだぞ!」

女魔法「お父さん?」

赤竜「うむ! 儂の元となった魔力の源流、その祖。星と共に産まれた存在よ!」
赤竜「その力は原初の炎! 星に温もりと破壊をもたらす者!」
赤竜「なーんて言われとったらしいのぉ! ただ暴れる事が好きなだけだぞ!」

女魔法「・・・よく分からないけど、この家壊されると私達死んじゃう。」

赤竜「おー! そういえばそうだな! 別に儂は楽しければどうでもよい! 何かいい代案はあるか?!」

女魔法「楽しければいいの? ・・・じゃぁ、」
女魔法「他のドラゴンと遊んだら?」

赤竜「・・・」
赤竜「・・・・・・それはいいのぉ! よーし青ー!!」
ズガズガズガズガ

青竜「なーにー。眠いんだけど。」

赤竜「遊ぼう!」

青竜「は?」

赤竜「ガオー!!」

青竜「なんでそーなんのよ!!」

白龍「なにやっとるんだお前達は。」

青竜「あたしも含めんじゃないわよ!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


女戦士「おっ、赤いドラゴンが仲間割れしだしたぞ!」
女僧侶「じゃれあってるようにしか見えませんけど・・・。」

青髪「今の内に逃げるとしましょうか。ほら、頑張ってくださいまし。」
柱≪トントン≫

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洋館『オオオオオ』
スゥゥ―――

白龍「む? 家が消えていく。」

赤竜「グオー!」
青竜「あぁもうこれじゃぁいつもとおんなじじゃない馬鹿じゃないのあんた!」
ゴロンゴロン

白龍「アストラルに逃げる気か。空間座標くらいは固定して」
ドガァ
白龍「グァ!!」

ゴロンゴロン

赤竜「ギャァッハッハ!からまってもうた!!」
青竜「ちょっと何この状態は!!なんでこんな事になんのよ!!」
白龍「重い!千切れる!!」

赤竜「やっぱ無抵抗をいびるのは好きじゃないのー。」
青竜「いいからどきなさいよ馬鹿!!」
白龍「動くなー!!千切れるー!!」

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洋館内

女僧侶「窓の外が真っ暗になっちゃいましたけど・・・」

青髪「現在魔力界を通行中で御座います。空間魔法で外部とは繋がりが断たれているために光も遮断されて御座います。」

女戦士「空間魔法?」

青髪「外界と内界を分ける為の魔法で御座いますね。」

女戦士「僧侶分かるか?」

女僧侶「すいませんちょっと・・・。」

女魔法「転送術式の理論式構築に於いて必須の概念。中核を成す基本的な考え。」
スタスタスタ

女戦士「まったくわかんねぇ。それで? 結局私達はどうすりゃいいんだ?」

青髪「移動速度を緩慢に設定する事で魔力界移動のリスクを低減してはおりますが・・・あまり長い事居座るのは得策では御座いません。」
青髪「先遣隊が目的地に付くまでの間は時間を稼ぐ必要が御座いますので、敵勢力を引き付けて頂きたく存じます。」

女僧侶「勇者様達も何も言わずに危険な役を買って出るなんて・・・水臭いですよね。」
女戦士「・・・役割分担ってのは必要な事だ。毎度毎度自分犠牲にしやがって・・・。」

女魔法「・・・ねぇ。」

青髪「はい、なんで御座いましょう。」

女魔法「本当に勇者がやるっていったの?」

青髪「えぇ。ワタクシに伝言をお頼みになり、それを妹が追っていった次第で御座います。」
青髪「ワタクシ基本的に他の方の行動を物理的に阻害する事は出来ませんので、お止めする事は叶いませんでした。申し訳ございません。」

女魔法「・・・ふーん。」

女戦士「追えない以上腰据えて私達の役割をこなすだけだ。あのドラゴン達が勇者の所いったらどうしようも無い。」
女戦士「それで? 具体的にはどうすんだ?」

青髪「数日はかくれんぼで稼ぎます。その次はおっかけっこ。その次は実力で。」
青髪「弟がただ今調整中で御座いますので一週間は相対せずに逃げ回ります。」

女僧侶「私達を狙うのをやめて勇者様達に向かう事は無いのですか?」

青髪「戦略上は恐らく。向こうとしましても人間程度にあまり気を向けないはず。捕獲ならば同じ人間の方が適していましょう。」

女戦士「結局私達がする事は当分何も無いって事か?」

青髪「えぇ。しかしドラゴンと戦う方法はお考え頂きたい。」

女僧侶「あんな強大な存在に、どう立ち向かえば・・・。」
女戦士「やるしかねぇんだ。やらなきゃ死ぬだけだ。」

女魔法「・・・ふんだ。」
スタスタスタ

女僧侶「あっ、どこ行くんですか?」

女魔法「寝る。」


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草原

勇者「そ、そんな! ドラゴンと戦うなんて、無茶です!」

土「そうかしらね・・・。ドラゴンはかなりの気紛れ、上手い事やれば無力化はそこまで難しい事じゃないと思うわ。」

女商人「で、でも、万が一が・・・」

土「貴方達の仲間は、そこまで信頼できないのかしら。」

勇者「今回は相手が大きすぎます! 心配くらいはするものです! ただでさえ何も言わず、伝言も任せず出てきたのですから!」

土「では戻るのかしら。黙って出てきた意味が無くなるわね。」

勇者「ぐっ・・・。」

女商人「・・・じゃあ、せめて私だけでも!」

土「出発して何日目? 戻るのに同じ日数かかると計算しても4日。貴方ならあの家が移動しても場所が分かるのかも知れないけれど、時間が掛かりすぎる。」

女商人「あっ・・・、私もうお父さんと繋がってないから場所がわからない・・・。」

土「そして戻っても戦力はあなた一人しか増強しない・・・あまり意味は無いわね。」

女商人「・・・あの場所を移動してたら私達もう戻れないんですね・・・・・・。」

勇者「・・・。」

土「思い通りに行く事の方が世の中少ないわ。それは敵も同じ事。もしかしたら、貴方達が二手に分かれた事が敵の不利益につながるかもしれない。」
土「状況を解し如何に利用するか。柔軟性を持ちなさい。戦力で劣る私達にはそれが必要よ。」

勇者「・・・はい。」

土「それでは行きましょう。さっきの光でお馬さんが死んでいなければ良いのだけれど・・・。」

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出発 → 6日目

馬「・・・」
カッポカッポ

勇者「・・・。」

女商人(体温36.7度 脈拍82)
女商人(・・・脈拍が平常時より高値を維持している。)

女商人「勇者さま、疲れていませんか?」

勇者「平気だ。」

土「・・・。」
ふわふわ

女商人「・・・。」
女商人(勇者さまは強がりだから、不調だったとしても教えてくれないだろうな・・・。)
女商人(・・・発汗量も可能な限り情報を纏めておこう。皮膚の血流量も、私の性能だと難しいけど、なんとか割り出そう。)
女商人(少しでも、勇者さまを助けなきゃ・・・。こうやって背中に身を預けていれば、血圧もなんとか・・・)

女商人「・・・あったかい・・・・・・。」ボソ

勇者「・・・どうした?」

女商人「あ、い、いえ! なんでもありま」
女商人「っ!」
ドンッ!

勇者「うお!」
ズルッ! ドサッ!

女商人「・・・っ!」
腕≪ドジュウウウウウ・・・!≫

勇者「っ、商人!? 腕から煙が・・・!」

土「大地鳴動」

巨大壁≪ズズゥゥン!!≫

土「・・・驚いたわ。私にも関知出来ない距離からの攻撃よ。攻撃方法は分かった?」

女商人「・・・っ、光、です。離れていたためにいつ射程に転送してきたか分かりませんでしたが、攻撃の際に多量の魔力を感知しました。」
女商人「光魔法は、見えたら既に当たっています。この威力は、勇者さまだと当たり所に寄れば死んでしまいます。」

勇者「すぐに回復魔法を・・・」

女商人「平気です! 痛みは一定量以上で遮断されて不快程度にとどまります! それより敵を警戒してください!」

勇者「し、しかし・・・」

女商人「擬人部分にしか影響はありませんから!」
土「大地鳴動」

巨大壁≪ゴゴゴゴゴ≫

巨大壁≪ズズズズ≫

巨大壁≪ズズン≫

土「入り組んだ岩場を形成したわ。これで全方位からの狙撃は心配ないはずよ。安心して治療されなさい。」

女商人「あっ、ご、ごめんなさい・・・。」
勇者「回復魔法中」

女商人(自分で治せる訳じゃないけど、本当に大丈夫なのに・・・。)


土「・・・恐らく狙撃要因が私達の後ろに転送してきたわ。でも正確な位置を掴めない。これは明らかに私達の関知能力への対策が成されてる。」
土「完全ではないけど正確な位置が掴めないわ。注意しなさい。」

勇者「エレメンタルでは有りませんでしたね。」

土「どうかし・・・?」

雨≪ポツ ポツポツ≫

土「・・・勇者、こっちを見なさい。」

勇者「はっ」
グキッ

チュッ
勇者「」

女商人「・・・」
女商人「・・・へっ!?」

雨≪ザァァァァァ・・・≫

勇者「なななななにを」

土「これで貴方は雨にうたれず、毒物の影響も受けないわ。ただし体温は奪われるから注意しなさい。」

勇者「・・・濡れない。」

土「雨が降ってきたことで敵が確定したわ。青よ。貴方も。」
女商人「えっ」
グィ!

チュッ
女商人「・・・~~!!!」
手≪パタパタパタ≫

土「はい、おしまい。」

女商人「ちゅちゅちゅうする意味はあああるんですか!?」

土「肺に魔法を掛けたかったからよ。」

女商人「わたしは呼吸が必要ありませんよ!?」

土「いいから警戒なさい。狙撃要因の足は遅いみたいだけど、攻撃力は高いわ。雨だから光魔法を使ってくることは恐らくないけど・・・。」
土「当たり所では貴方でも機能停止してしまう威力の飛行体を飛ばす能力が有るのよ?」

勇者「い、いまは敵に集中、と言う事ですね。わかりました。」

土「私は青にだけ注意を向けるわ。その他は任せるわね。」

女商人「はぁ、はぁ、わ、わかりました。では後ろの敵の相手をしてきます。」

土「いえ、それは勇者に任せて、貴方は私と一緒にいてくれるかしら。」

女商人「な、なぜ?」

土「不安な事があってね。良いかしら。」

女商人「は、はい。」
勇者「では俺は行きます、気を付けて。」
バシャバシャバシャ

土「貴方もね。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
岩石迷路

短剣≪シュピン≫

雨≪ザアアアアアアアアアア≫

壁≪―――≫
勇者(雨がどんどん酷くなる。視界があまり良くない。雷魔法と火魔法は効果が薄くなる。真空魔法も危ういか。)
勇者(振動剣も使えん。高熱にすれば蒸気と音が、低温にすれば雨が凍って手が固まる。)
勇者(衝撃魔法も緑の石を義足に組み込んでしまいもう使えん。・・・俺が現在行使できる魔法は物質魔法のみ。)

勇者(相手は光魔法を使えなくなる代わりに俺の攻撃手段を限定したというわけか。)
勇者(壁と壁の間はそこまで広くない。鉢合わせする可能性が高いな。)

勇者(足音は雨音で掻き消され、視界さえも飛沫が遮る・・・。)
バシャバシャバシャ

壁≪―――≫
勇者(壁で身を隠しながら少しずつ前進していくしかない。相手より先に気づかなければ銃撃を受けてしまう。)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

雨≪ザアアアアアアアアアアア≫

勇者「・・・。」
勇者(おかしい。いくらなんでももう会ってもおかしく無い。相手は俺の確保が目的だ、ならばこの壁群の外で待つ意味は無い。)

勇者(・・・両方が気づかない間にすれ違ったか? 可能性はある。ならばどうする?)
勇者(・・・)


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潜水服「・・・。」
起爆装置≪ガチン≫
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

壁≪ズゴン!!≫
勇者「グガッ!?」
ズザァ!

壁≪ドゴォォ≫
壁≪ゴゴン!≫

壁≪ゴゴゴゴゴ・・・≫

勇者(ば、爆弾・・・か! ここら一体の壁の端に仕掛けていた様だ!)
勇者(急いで壁の陰に隠れなければ・・・)

ズダァァ―――ン!!!
右肩≪ズバン!≫
勇者「ぐあっ!ぐぅ・・・!」

ズシャズシャズシャ!

壁≪―――≫

勇者「回復魔法中」

雨≪ザアアアアアアアアアア≫

潜水服「・・・そこに居るのは分かっている。大人しく投降しろ。」

勇者「・・・。」

潜水服「もうお前に勝ち目はない。」


右手≪ピリピリ≫
勇者(・・・・・・なんだ? 手が痺れる?)

潜水服「この雨は猛毒だ。既に銃創から体内に侵入している。」

勇者(なに・・・!)

潜水服「解毒魔法も通じない、俺達人間の理解を超えた毒物だ。まだ抗うというのならば。」
短筒≪ガシャコン≫

潜水服「さらに穴を開けるまで。三、」

勇者(どうする! 解毒魔法が効くか効かないか分からんが使う暇は無い!)

潜水服「二、」

勇者(痺れがどんどん広がっている! 間もなく動けなくなるかもしれん!)

潜水服「一、」

勇者(銃身を物質魔法で詰めるには目視が必要だ! 恐らくその前に撃たれる!)
勇者(ならば・・・!)

潜水服「ゼロ。突撃行動開始。」
勇者「―――ッ!」
バシャ!

短筒≪ドゴン!!≫
バスバスバスバス

勇者(やはり威力が弱い!)

潜水服「なっ」
勇者「反振動魔法」

短剣≪ヒィィィィ≫
雨≪ピキピキピキピキ≫

ズバン!
潜水服「グァ!」

勇者「殺せないのを利用させてもらう・・・!」
氷剣≪コォォ・・・≫

勇者(雨が毒と言うのならばそれを凍らした剣で斬ったんだ。あいつも影響を受けるだろう。)


全身≪ピリピリピリ≫
勇者(いかん、全身が痺れだした。傷口を塞がなくては。)

勇者「回復魔法中」

潜水服「・・・まだ、だ。」
ズシャ!

雨≪ザアア・・・ ポツ ポツ≫
雨≪・・・≫

潜水服「お前はもう動けない。俺が動けなくなる前に転送すれば・・・」

勇者「っ!」
義足≪バショオ!≫
ヒュン! ドシャ!

潜水服「なっ・・・!」

勇者「残念だったな・・・こっちには毒の影響をうけないあし、あ・・・」
勇者(上手く喋れない。毒の影響か。)

太陽≪―――≫

潜水服「・・・。」
露出部≪ブツブツブツ≫

勇者(何だ?潜水服から露出した肌が火傷したかのように・・・)

潜水服「装備破損、応援要請棄却、作戦続行不可と断定。帰還行動開始。」

潜水服「・・・。」
バシュン!

勇者「・・・。」
勇者(・・・呼吸だけは出来るようだが、手足が動かない。右手の氷剣も溶かせない。凍傷になってしまうかも知れないな。)

勇者(相変わらず、弱い。相手が殺そうとして来ない事を逆手に取らなければ、やられていたかもしれない。)
勇者(お母さんは、俺を人間の中では凄い存在だというが、全く信じる事が出来ないな・・・。)

勇者(・・・何故、俺の居場所がバレていたのだろうか。条件は対等だったはずなのに。)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
少し前 岩壁迷路

勇者「では俺は行きます、気を付けて。」
バシャバシャバシャ

土「貴方もね。」

女商人「そ、それで、私達はどうするんですか?」

土「前に進むのよ。隠れても仕方が無いもの。」

馬≪バシャァ!≫

女商人「あぁ、お馬さんが!」

馬≪ピクピク≫

土「やはりこの雨は毒だったわね。殺す事が目的でない様だから放っておいても平気よ。」

女商人「そ、そうなんですか?」

土「さ、行きましょう。私の後ろを付いてきて。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

土「・・・。」
ふわふわ

女商人「・・・。」
ぱしゃぱしゃ

雨≪ザアアアアアアアアアアアア≫

女商人(・・・この雨、魔力を含んでる。雑音が多すぎて検知器が働かない。)

土「止まって。」

女商人「は、はい!」

・・・ォォォオオオオオオオオ!
地面≪バキバキバキバキ!≫
女商人(氷!?)

土「真空魔法」
バシュウ!

バキバキバキバキバキ・・・
ヒュオオオオオ・・・

女商人「周り全部凍って・・・!」

土「雨に冷気。物体を封じるにはいい組み合わせだわ。」

バッサ バッサ
青竜「うわぁ、かわされてる。」

女商人「ど、ドラゴン!?」

青竜「・・・あれ? エレメンタルじゃない?」
グニュン
青色の光球「合ってるわ。中身がエレメンタル。」

女商人「青色のエレメンタル・・・!」
土「随分と久しぶりだわ。元気だったかしら?」

気「失望した。随分と矮小な存在に成り果てたね。」

土「否定は出来ないわね。でも、貴方に消滅させられるほどは小さくないわよ。」

気「強がりだね。大規模な魔法もほぼ使えない癖に。」

青竜「ねーおかあさまー。結局どうするの?」

気「あの体を壊す。」

青竜「でも腐ってもエレメンタルでしょう? そう簡単に行きますか?」

気「今の土は物質に囚われてる。ならば物質部分を壊せばいい。それで済む。」

青竜「でも散々頑丈頑丈って言ってたじゃないですかー。どうすんですか?」

気「わざわざ目の前で説明する義理も無い。いいから噛みついてきなさい。」

青竜「はーい。」
バサッバサッ

ズズゥゥゥン

雨≪ドザアアアアアアアア!!≫

女商人「雨が強く・・・!」

青竜「スゥー」
青竜≪コォォォォ・・・≫

バキバキバキバキバキ!

土「さて、商人ちゃん。」
バシュウウウ!

女商人「は、はい!」

土「あのドラゴンをお願いね。」

女商人「わ、わかりました! 努力します! カオス斧」
大斧≪メギメギメギ!≫

女商人「核解放、重力刃」
大斧≪ブォン≫

女商人(ど、どうしよう。凍らせられたら終わりなのに。)
女商人(・・・自分の重さを軽くして、速さで攪乱するしかない!)

女商人「行きます!」
ぱしゃぱしゃぱしゃ!

土「頑張ってね。」

青竜「最近は人間によく会うなー。一度ある事は二度あるね。」

女商人「わ、わたしは! 人間じゃありません!」

青竜「じゃぁ亜人? まぁいいや、私は別にあんたの事はどうでもいいもの。」プィ
ズシャズシャ

土「・・・。」

女商人「私が相手、です!」
タンッ!
大斧≪ブオオオオオ!≫

青竜「熱帯び」
青竜≪パキパキパキ≫

氷≪バキャァ!!≫

女商人「氷!?」
女商人(・・・纏ってる冷気の形に形成されてる!)


青竜「あー」
口≪グオオ≫

土「・・・。」

女商人(避けようとしない・・・? 動けないのかもしれない! 止めなきゃ!!)

女商人「核解放、超重力場」
ズンン!!

青竜「あうっ!」
ズシャァ!

青竜「うー、舌噛んだ。重力魔法って黒みたいな人間ねぇ。」
グググググ・・・!

女商人「すいません! 後ろに下がれませんか!?」

土「無理よ、ごめんなさい。」

女商人(やっぱり動けないんだ!)
青竜「知らないの? エレメンタル同士の戦闘は動けないのよ。」

女商人「な、なぜ?!」

青竜「領域がぶれちゃうから。押し相撲みたいなもんよねー。」

気「おしゃべりしない。」

青竜「はーい。」
ググググ・・・

女商人(人なら圧死するほどの重力なのに・・・!)

青竜「フー」
女商人「っ!」
タンッ

バキバキバキバキ!
青竜「ヒュー」

バキバキバキバキバキ
女商人「うぅ・・・!」
ト―――ン ト―――ン

青竜「ハー」
バキバキバキバキバキバキバキ!

女商人「幾ら連続して息を吐いても捕まりませんよ!!」

青竜「空気ってどう動くか知ってる? 壁に沿って動くの。冷気も然りよ。」

氷壁≪・・・≫
女商人「あっ・・・!」
女商人(左右と後ろを氷の壁に遮られてる! 前にはドラゴン、逃げ道が・・・!)

青竜「左右どちらに逃げようが、この形なら冷気は貴方を追う。はいおしまい。コオオオオオオ」
バキバキバ