モバP「アイドル達の親愛度が(マイナス方向に)MAXになった」(465)

・胸糞要素あり
・アイドルのイメージが崩れる恐れあり

以上の点が苦手な方はそっ閉じ推奨です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370449083


  ガチャッ

杏「おはよーございまーす」ダラー

P「うおお! 杏! ついに自分から事務所に来るまでになったか!」

杏「寄るな変態」

P「!?」

杏「プロデューサーに無理矢理連れてこられるのが嫌だから自分で来たの」

杏「私が自分から動くってのは相当だよ?」

杏「それがどういう事かわかる? わかったらもう杏の事は放っといて」

P「やだ……辛辣」

杏「じゃあね……仮眠室で寝てくる」フラフラ


ちひろ「杏ちゃん、自分から事務所に来るなんて……」

P「あの態度……まあいいでしょう、迎えに行く手間が省けますからね」


   ガチャッ

夏美「おはようございます」

P「おっ、夏美さんおはよう!」

夏美「……おはようPさん」

P「いやあ、今日もお綺麗ですね!」

夏美「そう……ありがとう」

P「何か冷たいですね? 俺のベロシティベクトルは常に夏美さんの方を向いてるんだけどなあ」

P「いやむしろファイナルアプローチに入ってギアダウンしてるレベルなんだけどなあ?」

夏美「……」イラッ

P「あとは管制塔から許可が下りればすぐにでも着陸しちゃうゾ!?」

夏美「Pさん……私の事バカにしてるでしょ」

P「滅相もない!……実は俺、最近愛情という名のフューエルがビンゴなんですよ」

P「夏美さんと触れ合うことでそれが補給できるかなーと」

夏美「そのまま燃料切れで墜落しちゃえばいいのに」

P「早いとこ夏美さんが着陸許可をくれないと墜落しちゃいますね!」

夏美「レッスンに行ってきます」


   ガチャ バタン


P「……うむ」

ちひろ「(……何やってんだか)」


   ガチャッ

いつき「おはようございまーす……」

ちひろ「おはようございます、あら、いつきさん元気が無いですね?」

いつき「……最近のレッスン、表現力とかボーカルのばかりで……運動出来てないんですよ」

いつき「身体動かしたいのにー、欲求不満なんですー」


P「そういう事であれば! 俺と一緒に夜の特別レッスンとかどうだ?」

いつき「うわぁ……」ドンビキ

P「ベッドの上での組体操とかプロレスとか、結構な運動になるぞ!」

P「いろんな欲求不満も解消されること請け合い!」

ちひろ「Pさん、いつきさんならもうレッスンにいっちゃいましたよ?」

P「行動速いな!」

ちひろ「というか、よくそこまで生理的嫌悪感を催す言葉が次から出てきますね……逆に関心します」

P「そんなに褒めないでください」テレッ

ちひろ「」イラッ


P「なあゆかり?」

ゆかり「はい……? 何か?」

P「ゆかりのフルートの腕前は見事なものだと思うんだけどな」

P「たまには、違う笛も吹いてみたらどうかな?」

ゆかり「(また何か訳の分からないことを言いだした……)」ハァ.......

ゆかり「別の笛というと、なんでしょうか?」

P「ずばり尺八だ」

ゆかり「尺八? 私尺八なんて持っていませんけれど……」

P「そうだろうな、こんなこともあろうかと用意しておいた」カチャカチャ

P「とりあえず俺のこれを使って練習してみようか」ジイイィッ


   バチィン!


ゆかり「レッスンに行ってきますね」


   ガチャ バタン


ちひろ「うわぁ……頬にみごとなもみじ」

P「ちょっとしたジョークじゃないか」ヒリヒリ

ちひろ「ゆかりちゃんの寛容さに感謝した方が良いですよ、今のは訴えられるレベルでしたから」

P「さすがにやりすぎだったかなあ、現物は出してないけど」

ちひろ「出してたら完全にアウトです、ていうか私が警察呼びます」


   ガチャッ

蘭子「煩わしい太陽ね(おはようございます)」

P「漆黒の姫君の来臨、それは世界の終焉の始まりを告げる(おっ、蘭子おはよう! 今日も一日頑張ろうな)」

蘭子「邪気が……これは運命より課せられし試練……あるいは業ね(うわ……朝っぱらからプロデューサーに捕まるなんて、ついてないよ)」

P「異な事を言う、我が居城に足を踏み入れたるは其の方なり(そりゃ事務所に俺が居るのは当然だろう)」

P「我が悪虐なる牙を畏れぬか?フヒヒ(あんまり酷い事言うと、イタズラしちゃうぞ?フヒヒ)」

蘭子「分を弁えぬ愚物には、"調停者"の裁きが待っていよう(やっ、やめて下さい! 早苗さんに言いつけますよ!)」

P「其の言霊は、神を斬獲せし咎人の剣の如し……(ちょ、それはマズイ!)」


早苗「あたしを呼ぶのは誰かなー?」ガチャッ

P「何ィ!?」

蘭子「裁きの時よ!(早苗さんあとお願いします!レッスン行ってきまーす!)」スタコラ

早苗「いってらっしゃーい……さて」


早苗「P君、またおイタしたのかしら?」

P「誤解ですよ! 何もしてません!」

早苗「でも、さっきの蘭子ちゃんひどく怯えてたじゃない?」

早苗「P君がいくら何もしてないって言い張ってもねぇ……前科者だからね」

早苗「これは身体に直接聞くしかないかな?」ニコッ

P「前科って何ですか、ちょっ!……っ!」


早苗「素直に吐いたらどう? お姉さんもあんまり痛めつけるような事はしたくないんだけど!」ギリギリ

P「(り、理不尽だ! だがしかし、この腕に当たる柔らかい感触は災い転じて何とやらだ……っ!)」

P「や、柔らかい……ですっ!」

早苗「えっ、柔らかい……って……!?」ギリギリ

P「(しまったつい心の声が!)」

早苗「っ!///」ゴキッ

P「」

早苗「P君って本ッ当にどうしようもない変態ね! もう救えないわ!」スタスタ

P「ーーーー!!!(ちょっ、放置していく気か!)」ゴロゴロゴロ


ちひろ「……Pさん? のたうち回って、どうしたんですか?」オソルオソル

P「ち、ちひろさん……いやあ、ちょっと早苗さんにシメられてました」ハハハ

ちひろ「脂汗がすごいですけど、大丈夫ですか?」

P「これくらいで音を上げてちゃあね……あ、ちひろさん、肩入れてもらってもいいですか?」プラプラ

ちひろ「え……ちょっと、無理です!」ドンビキ

P「そんなこと言わずに、お願いしますよー」プラプラ

ちひろ「こわいこわい! こっちに来ないで下さい!」

P「しょうがないな……せえぇのっ!」ガッ

P「よし、元通り……さて、今日も元気に仕事を始めますか!」

ちひろ「(……頑丈だなあ)」


P「クラリス……おぉクラリス!」

クラリス「……?」ジトー

ちひろ「(クラリスさん、無表情だけど、露骨に嫌がってる……)」

P「俺は今まで無神論者だったんだけどな、君に出会って考えが変わったんだ」

クラリス「……」

P「かように美しい女性がこの世に存在するという事実……」

P「これはまさしく神のなせる業だ!ってね!」ドヤァ


クラリス「私も、P様に出会って認識を改めることがありました」

クラリス「今までは神は全知全能の存在だと信じておりましたが」

クラリス「貴方に出会い共に過ごしたことで、神も失敗をするのだという事を知りましたわ」ニコッ

P「っ!?」

P「そ、そうだなあ、神は自らの似姿として人間を作ったというからなあ」

P「その人間がこうして失敗ばかりという事は、神様も案外そうなのかもな……」ハハハ

クラリス「……それでは私は失礼して、レッスンに行ってまいります」


   ガチャ バタン


P「……」

ちひろ「Pさん? 大丈夫ですか? なんか燃え尽きたような感じになってますよ?」

P「……」

ちひろ「(あ……これはガチ凹みだわ)」

P「いやあ、よもやクラリスがあんな毒を吐くとは思いませんでしたよ……」ズーン

ちひろ「落ち込むくらいなら最初っから嫌がられるような事しなければよかったじゃないですか」




ちひろ「そもそも、どうしてアイドルにセクハラするんですか?」

P「実は俺……女性が苦手なんですよ」

ちひろ「はいィ!?」

P「いえ、あの、女性恐怖症とかそういうのではないんですけど」

P「なんというか……どう接していいか分からなくて」

ちひろ「……」

P「最後に女の子と触れあったのは幼稚園のお遊戯の時だったかな……なんて」ハハハ

P「ちなみに言っておきますけど、人並みに女性に興味は持っていますよ? 同性愛者ではありませんからね!」

ちひろ「別に何も言ってないですよ……」


ちひろ「でも、そんな人がなんだってアイドルのプロデューサーやってるんですか」

P「父に『大学を卒業するまでにやりたいことが見つからなければ自分の跡を継げ』と言われまして……」

ちひろ「……という事は、プロデューサーがやりたかったということですか?」

P「逆です、やりたくなかったんですけど、結局他の道も見つからなかったので仕方なしに」

ちひろ「えっ……お父様の跡を継いでプロデューサーに? ってことは……」

P「あ、話してませんでしたっけ? うちの社長は俺の父親です」

ちひろ「ええぇ!? 知りませんでしたよ!」

P「ちひろさん……目が$マークになってます、怖いです」

ちひろ「……これは失礼をば」ゴシゴシ


P「話が逸れちゃいましたね」

P「で、社長からプロデュース業を教え込まれた時に、アイドルとの絆を強める事が大事だと言われましたんですよ」

P「けど、絆って言ったって、今まで女性は名字呼びにさん付けで敬語が基本だったので……」

P「そんなんじゃ、仲良くなんてなれないじゃないですか」

ちひろ「そうですね……確かに、事務的に接するだけでは、冷たい感じがしますね」

P「アイドルのモチベーション維持も、プロデューサーの仕事ですから」

P「それで、まあ……いろいろ考えた結果ですね」


P「ギャルゲ等における、いわゆる悪友ポジってヤツを参考にしまして」

P「『いつもちょっかい出してきて鬱陶しいけど、いざという時には頼りになる三枚目』を演じようと……」

ちひろ「(なんじゃそりゃ)」

ちひろ「どうせ参考にするなら、主人公にしたらいいじゃないですか……」

P「主人公だと、特に何もしなくてもモテモテなので参考にならないんですよ」

ちひろ「なるほど……」


ちひろ「ただ、普段からちょっかい出してるのは分かりますけど、いざという時頼りになってるんですか?」

ちひろ「アイドル達の反応を見てると、ただの嫌われ者という感じですよ……」

P「……少なくとも、仕事で大きなミスをしたことは無いと自負しています」

ちひろ「それでもねえ……本気で嫌われていたら本末転倒ですよ」

P「ただ淡々と機械的に、仕事持ってきてーレッスン見てーってやるよりは、お互い距離が縮まると思ったんですけど」

ちひろ「うーん……」

P「あ、でも、俺が嫌われ者になることでアイドル同士の不和が減るっていうのはありますよね」

P「共通の敵、みたいな感じで……そう考えるとちょっかい出すのもそれほど間違ってはいないのかもなあ」

ちひろ「はぁ……(なんというか、タフだなあ)」


ちひろ「というか、私とは普通に話せてるじゃないですか?」

P「ちひろさんは……その……気を悪くしないでほしいんですけど」

P「女性というよりは、仕事仲間としての側面が強いので、話しやすいんですよね」

ちひろ「さいですか……(女として見られてないって、それはそれで面白くないなあ)」


ちひろ「Pさんがセクハラをする理由は分かりましたけど、やっぱりそれやめた方がいいですよ」

ちひろ「セクハラさえ無せば、アイドルに対しては割と理想的な対応をしてると思います」

P「理想的……ですか?」

ちひろ「ええ」

P「まあ、最近ちょっとアイドル達の反応が堪えてきてたところなので」

P「ちひろさんの言うように、もうセクハラはやめます……そもそもしたくてしてたわけでもないですからね」

ちひろ「それがよろしいかと……」


P「ただ、これからどうやってみんなと接していけばいいんだろうか……」

ちひろ「私の見立てでは、アイドル達からのPさんに対する親愛度はマイナス方向に振り切れてますね」

P「やっぱりそう思います……?」

P「おちゃらけた対応を控える分、ガチで冷たくされたらダメージは倍増しそうですよ……」

ちひろ「身から出た錆ってヤツですねー」ヤレヤレ

ちひろ「逆に、どん底まで好感度が下がっていれば、あとは上がる一方ですからね! 頑張ってください!」

P「これも自分で撒いた種か……あ、性的な意味じゃないですよ!?」

ちひろ「(これはセクハラ体質が染み付いちゃってるわ……)」

とりあえず導入部終わりです
ここからPがアイドル達の親愛度を高めるべく奮闘するハートフル()ストーリーになる予定

見てくれた人ありがとうございます

おつ
先読みのつもりじゃなかったが
正直すまなかった

あと注意書き忘れてました
Pがキャラ立っちゃうかも知れないので苦手な人はごめんなさい
つーか既に立ち気味という


>>25
悪いとかは全然思ってないのでむしろどんどんレスして欲しい

>>28
画像ありがとうございます!
ときメモはなんか世界征服しようとしてる人しか覚えてないわー


ちょっとだけ投下します


──ある日の事務所──

未央「いやー、やっぱりみむりんの作ったお菓子は美味しいねー」ムシャムシャ

かな子「ふふっ、ありがとう!」

卯月「私もママと一緒にお料理することはありますけど、かな子ちゃんみたいに上手には出来ないです」モグモグ

かな子「それなら、今度一緒にお菓子作ってみましょうか?」

かな子「練習すれば、これくらいならすぐ出来るようになるから」

卯月「わあ! みんなでお菓子作りなんて楽しそうですね!」

未央「ふむ、この厳しいアイドル業界を生き延びるのに、お菓子作りのスキルは役に立つかもしれない」キリッ

卯月かな子「未央ちゃん何それー」アハハ


    キャッキャウフフ


P「(うーん、相変わらずアイドル同士の仲はとても良好だな……)」カタカタ

P「(基本こちらから手を出さなければ向こうから干渉してくることは無いからな)」カタカタ

P「(何もしないで、時間が俺の悪評を解消してくれるのを待つか……)」カタカタ



かな子「……」チラッ


P「……」カタカタ


かな子「……」ソワソワ

卯月「? かな子ちゃん、落ち着きないですけど、どうしたんですか?」

かな子「えっ!? あ、その……」

かな子「やっぱり……プロデューサーさんにもお菓子差し入れしてあげた方が良いのかなって……」

未央「あの変態プロデューサーにも気遣いを忘れない……みむりんマジ天使だね!」

卯月「確かにプロデューサーさんもお仕事を頑張ってはくれてますけど……」

未央「下手に刺激するとまたセクハラされるよ? 多分」

かな子「うーん……」

未央「じゃあこういうのはどうかな」

未央「『このお菓子が欲しければ金輪際セクハラするのをやめるのだ!』っていうの」

卯月「未央ちゃん、ちょっと意地悪だよ? それ」

未央「えー? 今まで散々やられたんだからお返ししたっていいじゃん?」

かな子「じゃあ、それでいってみます、これで変な事言われなくなればいいけど……」

未央卯月「(あ、行くんだ……)」



P「うーむ」カタカタ

かな子「あの……プロデューサーさん?」ヒョコッ

P「うおわ! びっくりした!」ガタタッ

かな子「!?」ビクッ

P「おっと、これは失敬……して、この私に何用かな?」ニヤァ

かな子「っ! えっと……家でクッキー焼いてきたんですけど」

かな子「プロデューサーさんも、いりますか?」

P「!!?」


P「(手作りの……クッキーだと!? いやいやいやいや、ダメだろ)」

P「(女の子の手作りお菓子を貰うとか、それもう結婚モンだろ! ダメダメ!)」

かな子「あ、でも、条件というか……」

かな子「もうセクハラはしないって約束してくれるなら、あげます!」

P「……」

P「いいや、俺は要らないよ、俺の事は気にせずみんなで食べなさい」

かな子「えっ……」


かな子「いらないんですか?」

P「ああ」

かな子「どうして?」

P「え……えっと(担当アイドルのお手製お菓子なんか貰えないっつーの! 付かず離れずの距離感が大事なの!)」

P「(でもそれを正直に言うのもなあ、今まで変態キャラだったからなあ、急にマジメぶってもね)」

P「……それ貰ったら、セクハラ出来なくなるんだろ? それならいらないわ」

かな子「っ!?」

かな子「そうですか、わかりました……」



かな子「ただいまー……」

卯月「どうでした?」

かな子「セクハラ出来なくなるくらいならいらないって……」

未央「うわぁ……」

卯月「でも、あのプロデューサーさんなら、お菓子を貰ったうえでさらにセクハラもしてくると」

卯月「それくらいは、やりそうな気がします」

かな子「確かに……どちらかしか選ばないあたり、意外と律儀ですね」

未央「うーむ……しまむーの言う通り、ちょっと怪しいね」

かな子「私のお菓子……食べたくなかったってことかな」ショボーン

未央「そ、そんなに気にすることないって! あの変態プロデューサー相手なんだから!」

卯月「そうだ、今度一緒にお菓子作ったら、また持っていきましょう!」

卯月「三人で作ったものならプロデューサーさんもきっと受け取りますよ!」


──数日後──

卯月「プロデューサーさん」

未央「私たちがお菓子作ってきてあげたから」

かな子「食べて下さい」

P「!?」

P「え……何? どういう風の吹き回し?」

かな子「この前受け取ってもらえなかったから、リベンジですっ!」

P「(なんで構ってくるの?……俺の事鬱陶しく思ってたんじゃないの?)」

P「(しかも二人増えてるし!?)」


P「いや……だから……いらないって」


未央卯月「っ!」ムッ


卯月「どうしていらないなんて言うんですか!」

未央「仮にも人気アイドルの手作りお菓子だよ? ファン垂涎ものなんだけどなー?」

P「(だから困ってるんだっつーの! 市販のだったら貰うよ!)えっと……そう!」

P「俺今ダイエット中なんだよ! だから甘いものは控えてるの! ほっといてくれていいよ!」


未央卯月かな子「(明らかに出まかせだよねコレ……)」


かな子「……わかりました、二人とも、行こう?」

卯月「えっ……あ、かな子ちゃんまってー」


P「(……なんか三人共がっかりしてたように見えるのは気のせいだろう、多分)」


──三度挑戦──

かな子「これが最後の挑戦になるかな……」

卯月「狙うは2月の14日……バレンタインデーですね」

未央「さすがにこの日に手作りお菓子……チョコだけど、渡されたら断れないよね」

かな子「プロデューサーさんがどうして今まで受け取ってくれなかったのかは分かりませんが」

かな子「いずれにせよ、今回で決着をつけましょう!」

未央「なんかもう意地になっちゃってるよね、受け取らせるために」

卯月「変態プロデューサーさん相手でも手は抜きませんよ! 本命のつもりで頑張ります!」



卯月「えーっと……まずはチョコを細かく刻んで……」ゴリゴリ

かな子「卯月ちゃん細かくし過ぎです! 粉末になっちゃってますよ!」


未央「……湯煎? 湯煎てこうかな」ドボドボ

かな子「わー! お湯に直接漬け込んじゃダメですよ!」


卯月「後は……固めるだけかな?」

未央「固めるんなら冷凍庫だよねー」

かな子「あわわわ……」アタフタ


──数時間後──

かな子「なんとか……完成……しましたね」

未央「ご、ごめんねー? 足引っ張っちゃったみたいで!」

卯月「でも、かな子ちゃんのおかげでとっても上手にできました!」

かな子「そうですね! これなら、プロデューサーさんも受け取るはずです!」

卯月「ラッピングもまゆちゃんに教わりましたから、完璧ですね!」

未央「すごく出来がいいね! あの変態にあげるのはもったいないかなー? なんてね!」


──数日後・事務所──

卯月「プロデューサーさん、今日が何の日か分かりますか?」

P「えっ?」

P「何の日って、バレンタインデー……だよな?」

P「(最近その関係の仕事も多かったし、忘れようがない……まあ俺には縁のないイベントだけど)」

未央「どうせプロデューサーは誰からもチョコ貰えないだろうと思って、私達が用意してあげたよ」

P「はい!?」

かな子「これは受け取らないわけにはいきませんよね!」

P「(見るからに手作り……今までで一番受け取れねーだろコレ……)」


P「あー三人とも……俺にセクハラされたくない一心でお菓子作ってきてくれてるなら」

P「もうこれからはそういう、みんなが嫌がるようなことはしないからさ」

P「そんな、交換条件みたいなことして、気をつかわないでいいから……」

未央卯月かな子「……」


P「とりあえず、そのチョコは嬉しいけど、気持ちだけ受け取っておくよ、うん」

卯月「どうして……」

卯月「どうして受け取ってくれないんですか!」クワッ

P「うわっ! どうしてって……」

未央「普段は鬱陶しいくらい構ってくる癖に! なんでよ!」

P「ちょっ……落ち着きなさい!」

かな子「じゃあ……もうセクハラしていいですから、受け取ってください!」

P「何言ってんのこの子!?」


P「とにかくいらないの! 俺は仕事があるから! 話が済んだなら戻りなさい」

未央卯月かな子「……」





未央卯月かな子「……うぅ」グスッ

P「!?」


P「(えっ……えっ? なんでベソかいてんの?)」

かな子「せっかく……プロデューサーさんの為に作ったのにぃ!」ウエーン

未央「鼻を明かしてやろうとおもったのにー!」ビエーン

卯月「プロデューサーさんのばかぁ!」ウワーン

P「(どうしてこうなった……)」


  ヤダー マタナカセテルワー ヒソヒソ


P「(あぁ……またよからぬ風評が広まる、今回は何もしてないのに……)」

P「とりあえず君達、こっちで話し合おうか!」


──応接室──

P「とりあえず、落ち着いたか?」

未央卯月かな子「……」

P「いやー、いきなり泣き出すからビックリしたよ」

未央卯月かな子「……」

P「……」

かな子「……どうして、頑なに拒むんですか?」

P「えっと……」


P「(もうこの際気にしてられないかな、俺のキャラとか)」

未央卯月かな子「……」

P「俺はプロデューサーで、お前達はその担当アイドルだからな」

P「あまり親しくし過ぎるのもまずいと思ったからさ……」

未央「なにそれ……いつもいつもそっちからちょっかい出してくる癖に」

P「その事については、申し訳なかったと思ってる、この通り」ガバッ


未央卯月かな子「……」

かな子「申し訳ないと思っているんだったら……行動で示してください」

P「頭を下げたじゃないか……今ので気が済まないっていうなら土下座もする」

かな子「そこまでしてくれなくていいです、代わりにこのチョコ、食べて下さい」

P「(しつこい!! なんでそんなに食べさせたがってるのかってこっちが聞きたいよ!)」


P「俺なんかがさ、貰ったらダメだろ? せっかくのバレンタインデーに作ったチョコをさ」

P「こういうのは、好いている相手に渡す物じゃないのか?」

P「俺の鼻を明かしたいだとか、よくわからないけど……こういうのは、その時が来るまで大事にとっておいた方が良い」

P「事務所的には、色恋沙汰でスキャンダルとか、そういうのは困るけどな」ハハハ

未央卯月かな子「…………」


未央卯月かな子「(今までお菓子渡そうとした時の態度とか、今の話を聞いてて思ったけど)」

未央卯月かな子「(プロデューサーさんって、実はすごく真面目な人?)」


卯月「どうしても、受け取ってもらえませんか?」

未央「もしプロデューサーが要らないっていうなら、捨てちゃうしかないよね……せっかく作ったのに」

P「(流石にそれは心が痛む……けど)」

かな子「……プロデューサーさんは、好きな人にあげるようにって言いましたよね?」

かな子「じゃあ……その……」


かな子「プロデューサーさんは、チョコを渡したい大事な人なんですっ」

P「はいィ!?」

P「(やっぱり何言ってんのこの子!?)」

かな子「それならいいんですよね? 受け取ってくれますよね?」

未央「(みむりん、それは意地張りすぎじゃない!?)」

卯月「じゃあ私も! 大事なプロデューサーさんに受け取って欲しいですっ!」

未央「(ええー!?)」

P「ちょっと待って、頭が追い付かない」

未央「ええいままよ! 私も! 受け取ってよ変態!」

P「いや、だから俺はお前達のプロデューサーだから……」

P「……」


P「(……ここで本当に拒んでいいのか?)」

P「(流石に本気で言ってるわけじゃないっていうのは、わかる……けど)」

P「(女の子にあそこまで言わせてしまったからには……)」チラッ

未央卯月かな子「……」ドキドキ

P「(そんな、初めてステージ衣装を見せた時のような眼で見てこないで!)」

P「(……これはあれだよ、下手に拒んでこれ以上モチベーションが下がっちゃマズイからさ、仕方ないよね)」


P「お前達の気持ちはわかった、そういう事ならありがたく頂くよ」

未央卯月かな子「!」

未央「し、仕方ないなー! はいコレ!」

卯月「最初から素直に受け取ってくれたら良かったんです!」

かな子「せっかくですから、今食べて下さい!」

P「そうさせてもらうよ」


P「(鼻を明かすとかなんとか言ってたし、是が非でも俺に受け取らせようと意地になってたから)」

P「(このやたら丁寧に包装された箱がそこはかとなく怪しく見える……何か仕込まれているんじゃないかと)」スルッ

P「(だが、俺はプロデューサーだ! 担当アイドルを信じないで、他の何を信じるんだ!)」パカッ

P「……見た目は普通のチョコだな」

未央卯月かな子「……」ドキドキ

P「(それにしても、これ手作りなの? マジで? 俺、女の子の手作りお菓子食べようとしてるの?)」

P「(しかもバレンタインチョコとか……手が震えてきた)」プルプル

未央卯月かな子「早く食べて(下さい)!」


P「(腹を括れ、何をそんなにビビる必要がある……口に入れて咀嚼するだけだ……ッ!)」パクッ

P「……」モグモグ

未央卯月かな子「……」ドキドキ

P「……」ゴクン






P「……ウッ」ブワッ

未央卯月かな子「!?」


未央「ちょ、ちょっとプロデューサー!?」

卯月「なんで泣くんですか!?」

P「ううううぅぅぅ」ボロボロ

かな子「……お口に合わなかったんですか……?」

P「逆だよぉ! うううぅ、なんてこった……これが手作りかぁ!」ボロボロ

未央卯月かな子「(どうしようこの状況……)」

P「うううぅぅ」ボロボロ


──数分後──

P「スマン……感極まってつい」

卯月「えっと……何であんなに号泣したんですか?」

P「……女の子の手作りのお菓子を食べたのなんて初めてだったから、嬉しいやらなにやら」

未央卯月かな子「(やっぱり……実は初心だったんだ)」

かな子「それで、味の方はどうでしたか?」

P「言うまでも無い……」






P「どれも、とても美味しかったよ」ニコッ

未央卯月かな子「っ!」ドキッ


P「ただ、お菓子を受け取るのも今回だけだからな」

未央「どうして?」

P「さっきも言ったけど、担当アイドルから渡されても受け取り辛いんだ……他所に知れたら問題だし」

かな子「それは気にしすぎだと思いますけど……」

P「あーもう!」


P「あんまりそういう事されると、変な勘違いするから控えて欲しいって事!」

P「言わせんな恥ずかしい!」

未央卯月かな子「勘違い……」

P「(イカン、大泣きしたせいでテンションがおかしくなってるな……)」

未央卯月かな子「(初心なプロデューサーさん……ちょっと可愛いかも)


未央「えへへ、それ、勘違いじゃないかも知れないよ?」ズイッ

P「ちょっ、近い近い!!」

卯月「今までちょっかい出された分、今度はこっちからしちゃいます!」ダキッ

P「おまっ、やめっ! やめなさい!」

かな子「そうですね! 今度はケーキでも作ってきます! 食べて……くれますよね?」

P「……もう好きにして!」


───────────────

────────

───


    ガチャッ

凛「あ、出てきた」

早苗「Pくーん? 聞いたよ、まーた君は女の子を泣かせたの?」

P「ゲッ……待ち伏せとは卑怯ですよ!」

早苗「褒め言葉よ! 無駄な抵抗はやめて、大人しくお縄につこうねー!」

P「へっ! やなこった! 営業行ってきまーす!」ドタバタ

早苗「こらー! 待ちなさーい!」ドタバタ



凛「三人とも、大丈夫だった? 変な事されなかった?」

未央「うん、なんにも!」

卯月「むしろこっちからしちゃいました! えへへ」

かな子「プロデューサーさんの事……もっと知りたくなっちゃいました……」

凛「(……一体何があったんだろう)」

とりあえずここまで
無理矢理すぎる点が多いですがご勘弁を

ゲーム中の親愛度MAX状態と同じように、
親愛度マイナスでもアイドル毎に対応に差がある感じです

http://i.imgur.com/GO6h3FC.jpg
http://i.imgur.com/oSbzImr.jpg
本田未央(15)

http://i.imgur.com/4ybx1RX.jpg
http://i.imgur.com/3WjEjqM.jpg
三村かな子(17)

http://i.imgur.com/0XCFpNp.jpg
http://i.imgur.com/u7lIU4N.jpg
島村卯月(17)


一応現状出てる表現だと、セクハラ発言だけで触れたりしてないのかな?
『前科者』て言葉はあるから真相は判らんけどもw
なら、アイドルの中では
『触られた訳じゃないし、仕事はキッチリしてくれてる、あのセクハラ発言さえ無ければ…』
的なラインからなら巻き返しは不可能じゃないんじゃないかな、と個人的には思う。
アイドルの皆良い子だし

>>78
いずれ書こうと思ってましたが、プロデューサーのセクハラは言葉だけでお触りはしてません
前科者っていうのは、セクハラ発言でちえりんあたりを泣かせちゃったとかそんな感じです

それと後付ですが
事務所のアイドルは基本的に社長がスカウトしてきたってことと
アイドルの履歴書はPは見たことないっていう設定で
Pが知ってるのはアルバムで見られる情報だけってことでお願いします


ちょっと投下します


──P宅──

prrrrr

P「んぅ……なんだ……?」ピッ

P「ふぁい……もひもひ」

ちひろ『プロデューサーさんですか? 千川です、お休み中すみません』

P「へ、ちひろさん? 寝過ごした!? すみませんすぐ向かいます!」

ちひろ『落ち着いてください! 今日はプロデューサーさんは二週間ぶりのお休みですよ』

P「え……あ、そうだったっけ」


ちひろ『えーと、先ほど加蓮ちゃんの親御さんから連絡がありまして』

ちひろ『昨日の夜から熱が出ているそうで、今日は事務所には来られないそうです』

P「今日の加蓮のスケジュールは確か……レッスンだけでしたよね」

ちひろ『はい、トレーナーさんには連絡をしました』

ちひろ『それで……ですね、お休みの日に大変申し訳ないんですけど』

ちひろ『加蓮ちゃんのご家族が、今日はどうしても外せない用事があるそうでして』

P「(非常に嫌な予感……)」


ちひろ『プロデューサーさん、今日一日加蓮ちゃんのこと、看てあげられませんか?』


P「(やはりか)えーっと……俺じゃないとダメなんですか?」

P「凛とか、仲良いし家も近いらしいじゃないですか……」

ちひろ『凛ちゃんも、今日はレッスンの予定なので、流石に二人も休みが出るとレッスン代やらなにやらが』

P「むむ……」

P「こんなこと自分で言いたくないんですけど」

P「加蓮って、うちのアイドルの中でも特に俺の事嫌ってるじゃないですか……」

P「だから、看病するったって、逆に悪化させてしまいますよ」


ちひろ『あのですね……実は、親御さんの方に、折り返しPさんから連絡しますって言っちゃってるので』

P「えぇ!?」

ちひろ『断るにせよ、一度加蓮ちゃんのお宅に連絡してもらっていいですか?』

P「(この有無を言わさない手口、流石だ)」

P「わかりました、連絡してみます」

ちひろ『すみませんが、よろしくお願いします』

   ピッ

P「えっと……北条さん宅の番号はーっと」

P「はあ……気が重いわー」prrrrr

P「あ、お世話になっております、モバマスプロのPと申します───」


───────────────

────────

───


P「(結局押し切られてしまった……どうしろってんだ)」

P「(ていうか、普通ろくに知りもしない男を家に上げて娘と二人きりにさせるか?)」

P「(信頼されてるって考えていいのかなあ……いささか不用心な気がするんだけど……)」

P「(それに、多分加蓮の部屋に入ることになるんだろうなあ……うわーマジでどうしよう!)」


P「(まあでも、こうなった以上はしょうがない……)」

P「(大事な娘さんを預からせてもらってる立場だから、親御さんの替わりにしっかり看病しないとな……)」

P「ん、花屋か……」


P「うーん、花を買っていくってのも大げさかなあ、まあ見てみるかな」ゴメンクダサーイ

「はーい、いらっしゃいませー」

P「えっと、知人の見舞いに行くので、それにあった花をお願いします」

「お見舞いですね、ご予算の方はおいくらをお考えでしょうか?」

P「えーっと……」チラッ


フラワーアレンジメント ン千~ン万円


P「(結構高いな!)え、えっと……三千円分でお願いします」

「かしこまりました、少々お待ちください」


P「(うーむ、それにしても華やかだなあ、花屋だけに……ふふっ)」キョロキョロ

「おかーさん、レッスン行ってくるねー」

P「(ん……レッスン? どこかで聞いた声だな)」


「凛ちゃん! 今お客さん来てるから!」アセッ

凛「へ!? あ、いらっしゃいませ!」

凛「……って、プロデューサー!?」

P「凛!? あれ、ここ凛の実家だったのか」


凛「何でここにいるの? 迎えに来たっていうなら要らないお世話だよ、一人で行くから」

P「そう敵意を露わにしてくれるな……今日は俺はオフだよ、花を買いに来ただけだ」

凛「ふーん、まあなんでもいいけど……そこ、どいてくれない?」

P「あ、ああ、スマンな」スッ

凛「ふん……」スタスタ


凛母「あの子のプロデューサーさんだったんですね、すみません、うちの娘が」

P「こちらこそ、ご挨拶が遅れまして、凛さんのプロデュースをさせて頂いておりますPと申します」スッ

凛母「これは、ご丁寧にどうも」


凛母「……あの子少し不愛想なところがあるので、親としては心配なのですが……」

P「凛さんは問題無いですよ、(俺以外に対しては)礼儀正しくて真面目な子です」

P「そうですね、また後日、凛さんの近況報告も兼ねてご挨拶に伺いますので、よろしくお願いします」

凛母「はい……あ、こちらが商品になります」

P「ありがとうございます、それでは、失礼します」




凛母「あの子が言うような、悪い人には見えないわね……」


──北条宅──

P「(ここであってるよな……)」

P「ごめんくださーい」ピンポーン

加蓮母(以下母)「はーい」パタパタ

P「お初お目にかかります、先ほどお電話致しました、Pと申します」

母「ああ! プロデューサーさんですね、お待ちしていました」

母「とりあえず上がってください」

P「失礼します」


──加蓮の部屋──

母「加蓮! プロデューサーさんが来てくれたわよ!」

P「(うわあああ! 女の子の私室に初潜入だよ!)」

P「(……まあ今はそんな感慨に浸っている場合じゃないんだけどな!)」

加蓮「……ん」グッタリ

P「(おいおい、結構重症そうだぞ……)」

母「お母さんはちょっと出かけなくちゃならないから」

母「プロデューサーさんのいう事聞いて、大人しくしてるのよ!」

加蓮「……うん……げほっごほっ!」

P「(顔は真っ赤だし息も荒い……医者に連れて行った方がいいんじゃないか)」

母「なるべく早く帰るようにはするからね!」



母「すみませんが、私はそろそろ出ないとならないので」

母「加蓮の事、よろしくお願いします」

P「はい、お嬢さんは責任をもって看病させて頂きますので……」

母「ありがとうございます、それでは」ペコリ


    ガチャッ バタン


P「(さてと……とりあえず加蓮の様子を見ないとだな)」


P「加蓮? 大丈夫か?」

加蓮「……」

P「(熱は……額でいいか)」ピタッ

加蓮「………んっ……」

P「(こりゃ熱いな、39度くらいありそうだ……)」

加蓮「けほっ……」

P「(とりあえず何か食べさせて、風邪薬を飲ませないとだな)」

P「(台所と冷蔵庫の中身は自由に使っていいと許可はとったからな、おかゆでも作るか)」スクッ

加蓮「……」キュッ

P「(裾を掴まれた……)加蓮? どうした?」

加蓮「いかないで……」

P「!?」ドキッ


P「(え、誰このしおらしい子……俺の知ってる加蓮じゃないんだけど!)」

P「ちょっと、おかゆでも作ってこようってだけだからさ、すぐ戻るよ?」

加蓮「……やだ」ギュッ

P「」


P「(そういえば、加蓮は昔から病弱でよく入院してたって聞いたっけ)」

P「(面会には来てもらえていたんだろうけど、きっと寂しかっただろうな)」


P「わかったよ……どこにも行かないから、安心しなさい」ナデナデ

加蓮「あっ…………」

P「(きっと、俺がちょっかい出してストレス与えたのも、熱出した原因だよな……)」ナデナデ

加蓮「ん……」

P「ごめんな……加蓮」ナデナデ

加蓮「……」ウトウト

P「……」ナデナデ

加蓮「……」スヤスヤ


P「寝た……か?」

P「すぐ戻るからな、少し待っててくれ」


──おかゆ作ってきました──

P「加蓮、おかゆ作ったから、食べなさい」ユサユサ

加蓮「ん……?」

P「上半身だけでも起こせるか?」

加蓮「うん……」ムクッ


P「うーん、ちょっと熱いかな……」フーッフーッ

P「はい、口開けて……」

加蓮「あむっ……」パクッ

P「(うん、一応食べはするのな……これなら大事にはならないか)」

P「ほら、もう一口」アーン

加蓮「あーん……」モグモグ


───────────────

────────

───


P「(とりあえずおかゆを食べさせて、風邪薬を飲ませて、また寝かしつけたけど)」

P「(冷静になって考えてみると、さっきの俺なにやってたんだっていう……)」

P「(わざわざ俺の口で冷ますことないよな……うわー! 恥ずかしい!!)」


加蓮「……」スヤスヤ

P「はあ……ちょっと疲れたな、そういや昨日寝るの遅かったんだっけ……」ウトウト

P「俺も、ほんの少しだけ……休もう」


──数十分後──

加蓮「うーん…………ん?」パチッ

加蓮「あれ……今日って、確かレッスンの日……あれ?」ボケー

加蓮「あ……そっか、昨日熱出して寝込んじゃったんだっけ……」キョロキョロ





P「……zzz」コクリコクリ





加蓮「えっ」



 キャアアアアァァァ!!


P「!!?」ガバッ

P「なんだ!? 加蓮!?」

加蓮「な……なんでアンタが私の部屋にいるの!!」

P「えっ、え? なんでって、今日は俺がお前の看病するって」

加蓮「やだ! いやだ!! あっち行って!!」ポイポイ

P「うわっ! あぶな! 物を投げるのはよせ!!」

加蓮「出てって!! 出てってよお!!」

P「わかった! 出ていくから落ち着け!」スタコラ


──部屋のドア越し──

P「(これはあれだよね、熱で朦朧としてたから記憶があいまいになってるっていう)」

P「(まあわかってたさ……いくら病気で弱ってるからって)」

P「(普段の態度から、急にあんなにしおらしく素直になるワケないもんな)」


P「加蓮、一応弁解しておくとだな、今日俺がここにいるのはお前の親御さんに頼まれたからなんだ」

P「用事があるとかで、誰も家に居なくなってしまうから、お前の看病をしてくれってさ……」

加蓮「……」


P「親御さんの頼みとはいえ、勝手に部屋に上がったのは謝るよ……」

P「俺みたいな男にさ、部屋に上がられたら嫌だもんな、ごめんな」

加蓮「……」


P「その、まだ完全に治ったわけじゃないだろ? 今日一日は面倒見るからさ」

P「何かして欲しい事とかあったらさ、何でも言ってくれよ」

加蓮「……」


P「なあ加蓮、なんとか言って──」ピンポーン

P「ん……来客? ちょっと出てくるよ」


P「はーい、今開けます」

   ガチャッ

凛「えっと、私達、加蓮のお見舞いに来たんです……け……ど!?」

奈緒「ん? 凛、どうした……って……えぇ!?」

P「お、おう」


P「(この面子……これは変に話がこじれるパターンだな)」

凛「なんでアンタが居るの?」

P「加蓮の看病の為だ、ちひろさんと加蓮の親御さんに頼まれたんだよ」

奈緒「……」ジトー

凛「とりあえず、加蓮の部屋に通して」

P「勝手に行けばいいだろ」


凛「加蓮、加蓮? 私だよ、凛だよ! 開けて?」コンコン

奈緒「あたしもいるぞ!」

   ガチャッ!

加蓮「りんーー! なおぉ! うわああん!!」ダキッ

凛「よしよし、怖かったね……」ナデナデ

奈緒「あんの変態……」キッ

P「……」


P「(これはアカンなあ……とっとと退散したいが、弁解しないのもマズいよなあ)」

凛「何かされなかった? 触られたとか、襲われそうになったとか」

加蓮「わかんない、今さっき目が覚めたら……アレが部屋にいたの」

P「アレって……」

奈緒「ほぼクロじゃねぇか」

P「何もしてねーよ! 看病しに来たんだって言ってるだろ!」

奈緒「ふん、どうだか」

凛「大方、看病にかこつけて変なことしようって考えてたんじゃないの」

P「ッ!」

P「(俺の今までの行動が原因ではあるが……好き放題言いやがってからに……)」


P「あのなあ、こちとらてめえの休みを削って様子を見にきてやったんだ」

P「感謝されこそすれ、そんな謂れのない中傷を浴びせられるってのは納得がいかないな」

P「(あ……いかんいかん、感情的になっちゃいかん……!)」

加蓮「来てくれなんて頼んでないよ!!」

P「ッ! お前の親に頼まれたんだよ、半ば押し切られる形でな!」

加蓮「私は頼んでないっ!!」


凛奈緒「(どうしようこの状況……)」



P「…………はあ(やっちまった)」


P「大声出して悪かったな……お互い、ちょっと頭を冷やそうか」

P「買い出しに行ってくるけど、何か買ってきて欲しい物はあるか?」

加蓮「何も要らないから! さっさと出て行って!」

P「そうか……それじゃあな」


    ガチャ バタン


凛「……加蓮、大丈夫? 興奮すると熱が悪化しちゃうよ……」

加蓮「うん……なんとか、落ち着かせる……」

奈緒「……」


──数十分後・ドア越し──

P「三人とも、いろいろ買ってきたから、好きに食べなさい」

凛奈緒加蓮「(また帰ってきたー!?)」

P「ここに置いておくから、後で冷蔵庫にしまうものはしまってな」

P「特に加蓮! 食べるもん食べて、早く治すんだぞ」


P「それじゃ、後は凛と奈緒に任せるから……親御さんによろしく言っておいてくれよ」

P「借りた鍵はここに置いておくから、玄関のカギ閉め忘れるんじゃないぞ」

凛奈緒加蓮「(しつこい!!)」

P「じゃあな……また事務所でな」


   ガチャ バタン


奈緒「やっと……帰ったか?」

凛「みたいだね……」

加蓮「二人とも、来てくれてありがと」

凛「レッスンに行ったら、加蓮が熱出して休むって聞いたからさ、びっくりしちゃった」

奈緒「まあ、変態プロデューサーの魔の手から加蓮を救えて良かったよ」


加蓮「なんか……安心したらお腹空いてきちゃった……」

凛「プロデューサーが買ってきたっていうの、見てみる?」

奈緒「あれだけ大ゲンカしておいて、プロデューサーが買ってきた物を食べるってのも何かアレだけどな」

凛「いいんだよ、加蓮は病人なんだし、プロデューサーも食べろって言ってたし」ガサゴソ


凛「えっと……プリンにゼリーにヨーグルト、菓子パン、デザート類……」

奈緒「色んな清涼飲料水にミネラルウォーターに……冷えピタか」

凛「なんか……すごい量買い込んだみたいだね……」

加蓮「……」


加蓮「二人もさ、一緒に食べよう? せっかくだから」

奈緒「……いいのか?」

加蓮「うん、私一人じゃ食べきれないし、悪くなっちゃうよ」

凛「それじゃ……なんか気が引けるけど……いただきます」

奈緒「あたしはプリン貰おうかな……」


奈緒「ごちそうさまっと……この差し入れについてはプロデューサーに礼の一つ言ってもバチは当たらないかもな」

凛「ごちそうさま……まあ、そうだね……なんだかんだで食べちゃったしね」

凛「残ったのは、冷蔵庫にしまってくるよ? 中開けてもいいよね」

加蓮「うん、お願い」




凛「ただいま、台所におかゆがあったよ、温めてきたけどどうする?」

加蓮「おかゆ……?」

凛「なんかちょっと掬ったみたいだけど、お昼とかに食べなかったの?」

加蓮「お昼……」


『加蓮、おかゆ作ったから、食べなさい』

『はい、口開けて……』


加蓮「何か……食べたような気もする」

凛「そっか……これどうする? 今食べる?」

加蓮「じゃあ、せっかくだから、食べようかな」

凛「それじゃあ……ん……ちょっと熱いかな……」フーッフーッ

加蓮「っ!?」

加蓮「(既視感てヤツ? これって)」


加蓮「そ、そこまでしてくれなくていいよ!」

奈緒「何だ加蓮、恥ずかしがってんの?」ニヤニヤ

凛「病人なんだから、大人しくいう事聞いてね」ニヤニヤ

加蓮「えっと……そうじゃなくって……」

凛奈緒「……」ニヤニヤ

加蓮「あぁもう! 好きにして!」




加蓮「ごちそうさま、ありがとね? 食べさせてくれて!」

奈緒「そうむくれるなよ~ちょっとからかっただけだって……それじゃ、片づけてくるよ」スクッ


凛「……」ジーッ

加蓮「凛? どうしたの?」

凛「その花……どうしたの?」

加蓮「花? あ、ホントだ、昨日は無かったよ」

凛「……今日さ、家出る時に、プロデューサーに会ったんだ」

凛「『花を買いに来た』って言ってたから……それ、そうなのかな?」


奈緒「どうしたんだ?」ヒョコ

凛「おかえり、そこに飾ってある花、プロデューサーが買って来たんじゃないかなって」

奈緒「花ァ!? あの変態が、花を持って来たって? 似合わないだろそれ」ケラケラ

凛「確かに……うちに買いに来てた時もきょろきょろしてたから、花屋にあまり縁が無かったんだろうね」

加蓮「(でも……綺麗)」




   ガチャッ

   タダイマー


加蓮「!」

凛「ん、お母さん、帰ってきたみたいだね」

奈緒「うわ、もうこんな時間だったのか!」

加蓮「全然気付かなかった! ごめんね二人とも、付き合わせちゃって!」

凛「平気だよ、加蓮が元気になってくれてよかった」

奈緒「見舞いに来た甲斐があったってことだな」


凛「それじゃ、私達は加蓮のお母さんに挨拶して、帰るから」

奈緒「また明日な! ……明日は来られるよな?」

加蓮「うん、もうすっかり良くなったから」

加蓮「今日はありがとね」ヒラヒラ




母「加蓮、ただいま! ごめんね?遅くなって」

加蓮「ううん、凛と奈緒が来てくれたから、助かった」

母「二人とも良い子だったわね、加蓮が良いお友達を持って私も嬉しいわ」

母「それで、プロデューサーさんは、もう帰られたのかしら」

加蓮「……そのことだけど」

加蓮「勝手に部屋に上がらせたりしないで欲しかった……」

母「そうは言っても、あなたすごい熱出してたのよ?」

母「プロデューサーさんが看てくれてなかったら、また入院することになってたかも知れない」

加蓮「そんなに酷かったの? 全然覚えてないや……」


加蓮「そうだ、おかゆ作って置いといてくれたのってお母さん?」

母「おかゆ? お母さん急いでいたから、そんな余裕無かったわね」

母「台所使わせてほしいって聞いてきたから、多分プロデューサーさんが作ってくれたのね」

加蓮「そっか……」


母「あと、このお花、プロデューサーさんがわざわざ買ってきてくれたみたいよ」

母「今度、菓子折り持ってご挨拶に行かないとね」

加蓮「……」



加蓮「(そう、全然覚えてないんだ……)」

加蓮「(私が目を覚まして、プロデューサーを見つけてパニック起こした時……)」

加蓮「(プロデューサーも、すごく驚いたような感じだった)」

加蓮「(ということは、私が覚えてないだけで……熱出してる間ちゃんと看病してくれてたのかな……)」キョロキョロ


加蓮「(水を張った桶に……濡れタオル……古典的だなぁ)」クスッ

加蓮「(それに……そうだ……)」

加蓮「(おかゆが……熱いからって、息吹きかけて冷ますなんて)」

加蓮「(大の男がさ……恥ずかしすぎるよね……)」



加蓮「(本当、どうしようもない……変態だよ……)」

加蓮「(こんな、不愛想で……生意気で……恩知らずな小娘のために……)」グスッ

加蓮「(たまの休みを棒に振ってまで……付きっきりで……看病するなんてさ……)」ヒック


加蓮「ううっ……グスッ……プロデューサー、ごめんね……」

加蓮「酷い事言って……うぅっ……ごめんなさい……ううぅぅ」



加蓮「うわああああん!!」


──翌朝──


  チュンチュン  
          ピヨピヨ


加蓮「(あれ……あぁ、泣き疲れて寝ちゃったのか)」

加蓮「(酷い事した方の人間が、後悔して泣くとか……バカみたいだね)」

加蓮「(泣きたいのは……プロデューサーの方だよね……)」

加蓮「謝らなきゃ……あと、助けてくれてありがとうって……」


──事務所──

ちひろ「Pさん、昨日はせっかくのお休みにすみませんでした、それと、ありがとうございました」

ちひろ「見に行ってくれたんですよね? 加蓮ちゃんの様子はどうでしたか?」

P「(はあ、昨日はやっちまったからな……病人相手に怒鳴ってしまうとか、ないわー)」

ちひろ「Pさん?」

P「え?……あっ、そうですね、今日は来られるんじゃないですかね……だいぶ回復したはずですから」

ちひろ「(これは……加蓮ちゃんと何かあったのね……)」


    ガチャッ


加蓮「おはよう……ございます」


加蓮「おはよう……ございます」

P「……」

ちひろ「加蓮ちゃん、おはようございます」

ちひろ「もう、調子は良いの?」

加蓮「えーと……はい、おかげさまで」


P「加蓮……良かったな、元気になって」ニコッ

加蓮「っ!」

P「それと、怒鳴ったりして、悪かったよ……ごめん」

加蓮「……」

P「ちひろさん、俺、ちょっと出かけてきますね!」ガタッ

ちひろ「えぇっ!?」


加蓮「プロデューサー! 待って!」

P「ッ!」ビクッ

加蓮「あのね、プロデューサー……」

加蓮「今まで、何度も酷い事言って、ごめんなさい」

加蓮「私、プロデューサーのこと、勘違いしてたみたいだからさ……」

P「……」

加蓮「それと、昨日は……看病してくれて、ありがとう」

加蓮「今日元気に事務所に来れたのは、プロデューサーのおかげだよ」


加蓮「言いたかったのはそれだけだから!」

加蓮「それじゃ、レッスン行ってくるね! 昨日休んだ分取り返さないと!」


    ガチャ バタン




ちひろ「Pさん……良かったですね」

P「……」

ちひろ「誠意を持って接すれば、加蓮ちゃんみたいに、みんな分かってくれますよ」

P「そうですね……グスッ……頑張ります」


ちひろ「はい、ハンカチどうぞ」

P「ううう、ありがとうございます」ズビー

ちひろ「ちなみに……100モバコインになります♪」

P「!? ……ぷっ」

ちひろ「ふふっ、ダメですよ?」

ちひろ「プロデューサーが辛気臭い顔してたらアイドルにも伝染っちゃいますからね!」

P「ははっ、ちひろさんには敵いませんね! ツケといて下さい」

ちひろ「しょうがないですねー、今回だけですからね!」ウフフ

投下おわりです


あんまりアイドルに酷い事させ過ぎるとフォローできなくて
キャラdisというか、ただのネガキャンになりそうで怖い

もしそういう風に受け取られそうな表現があったとしても、
意図してやっているわけではないので、あしからずご了承下さい

http://i.imgur.com/nkbweiu.jpg
http://i.imgur.com/oKO13Pu.jpg
渋谷凛(15)

http://i.imgur.com/ZlrL4IR.jpg
http://i.imgur.com/tsoTMMJ.jpg
北条加蓮(16)

http://i.imgur.com/wEti7tq.jpg
http://i.imgur.com/1SYXAqs.jpg
神谷奈緒(17)

(最初に出てきたアイドルは導入役ってだけで話考えてなかったとは言えない……)

私的に、人生やめたくなるくらい冷たくされてる状況からデレに持っていくのとか好物なんですが、
モバマスの場合「そこまで嫌ってるなら事務所辞めればいいじゃん」という突っ込みができるので難しい

ちょっと投下します


──花見会場──

P「(アイドル達のロケの付き添いで、某所のお花見会場までやってきた)」

P「(撮影も滞りなく終わり、ちょうど桜も見ごろだということで)」

P「(打ち上げも兼ねて、お花見……という名の宴会を始めた訳だが……)」


早苗「今日は無礼講だー! 飲むぞー!」

あい「早苗さん、少しハイペースすぎやしないかい?」


P「(最年長がはしゃぎすぎで困る……)」


早苗「アイドル始めてから、こんなお酒飲む機会無かったし、いいじゃない!」

あい「……まあ、早苗さんは飲みなれているみたいだから、大丈夫か」

P「(ちなみに俺は送迎役なので飲めない……チクショー!)」


早苗「ほらほら、あいちゃんも飲んで飲んで!」トクトクトク

あい「ま、待つんだ早苗さん! 既に大分酔っているね!?」

早苗「うふふふ、あいちゃんはお姉さんのお酒が飲めないなんて言わないわよねー」

あい「ちょっ! 分かったから! 注ぎすぎだよ!」アワワワ

薫「……」ジーッ


P「(小学生も一緒に居るって言うのに、情操教育上よくないよ!)」

P「(まあ、アイドル達に変態発言ばかりしてた俺が言うのもアレだけどな)」


肇「……はーい、薫ちゃんはこっちで一緒にお花見しようね」

あずき「ほらほら、これ見て! 桜の枝が落ちてたよ!」

薫「わー! きれー!」

薫「かおるも花びら集めよー!」

P「(ナイスだ肇! その調子で薫を早苗さんから遠ざけておいてくれ)」

P「(……早苗さんにはいつもみんなのお姉さんやってもらってるから、たまには羽根伸ばしてもらいたいしな)」



P「あー……いかん、(ウーロン茶)飲み過ぎた……」スクッ

P「厠はどこだったっけかな……」

薫「あれ? せんせぇ、どっか行くの?」

P「ん? ああ、ちょっとお花を摘みにな」

薫「お花つみに行くの? かおるも行くー!」

P「あ、そうじゃなくて、おトイレの隠喩ね」

薫「おトイレかー、いってらっしゃい!」




P「ふう、落ち着いた……」

P「……」

P「(向こうは、あいさんと肇がいるし、放っといても大丈夫だよな)」



P「(うん、この辺は人も居ないし……)」

P「よっこいしょっと……」ゴロッ


P「(アイドルに囲まれて生活してるなんて、聞く人が聞いたら羨ましがられることなんだろうけど)」

P「(寝ても覚めてもそればっかりってのは正直しんどいな……自業自得とはいえアイドル達からの風当たりも強いし)」


P「はぁ~……たまには一人でのんびりすることも必要だよな……」

P「何物にも……煩わされないでさ……」ウトウト


P「……zzz」


あずき「うーん、どうしたらいいかなあ」

肇「(あずきちゃん、さっきから頭ひねってばかりいるけど……)」

あずき「そうだ! これならいけるかな、ふっふっふー」ニヤニヤ

肇「あずきちゃん、不敵な笑みを浮かべてどうしたの?」

あずき「作戦を考えてたんだよ!」

あずき「その名も、プロデューサー抹殺大作戦!」

肇「作戦名怖くない!?」


あずき「あの変態プロデューサーのことだから、お花見の雰囲気で調子に乗ってさ」

あずき「あずき達に『お酌してくれー』みたいなこと言ってくると思うんだよね」

肇「うん」

あずき「そこで、コーラを注ぐと見せかけて、この醤油を注ぐの」

あずき「誤って飲んじゃったプロデューサーはさあ大変ってね! どうかな?」

肇「名前の割に可愛らしい作戦ね」


※醤油でも、一度に多量に摂取すると身体に重篤な障害を及ぼす危険があります、良い子は真似しないでね!
  無理やりにでも飲もうとしなければすぐに吐き出すことになると思います


肇「でも、そのプロデューサーがどこか行っちゃって見つからないね」

あずき「うーん……どこ行ったんだろ、つまんないのー」

肇「居ないなら居ないで、ちょっかい出されないからありがたいけど」


あずき「……あれ……薫ちゃんも居ない……?」

肇「本当だ! どこに行っちゃったんだろう!」アワワ



あずき「あいさーん、早苗さーん! 薫ちゃんがいなくなっちゃったんですけど!」

肇「こっちには来て……いないか」


あい「だいたい、Pくんは甲斐性が無さすぎるんだ……いっつもこちらの顔色を伺ってばかりで……」グチグチ

早苗「わかるわ~……よくペラペラと調子良い事言ってるけど、あたしらと距離が取れる雰囲気のときだけだもんね~」グビグビ

あい「求婚に近いニュアンスの事を誰彼構わず触れ回っているが……一度その気でノってやろうか……あの変態め」グチグチ

早苗「ホント何考えてるのかしらね~あの男は……若い子達には冗談として通じていないし……」グビグビ


あずき「こりゃダメだね、完全に出来上がっちゃってるよ」

肇「私達で探さないと……!」

肇「……この辺まで来ると、もう花見客も見えなくなってきてるけど」

あずき「あ! あれそうじゃない!? かおるちゃーん!!」


薫「!」


肇「薫ちゃん、こんなところに居たのね……プロデューサー?」

P「……zzzz」スヤスヤ

あずき「プロデューサーと一緒に居たの?」

薫「えっとね、せんせぇがおトイレ行くっていったまま帰ってこないから、さがしてたの」

薫「そしたら、ここでせんせぇが寝てたから……えへへ、寝顔見てたんだ!」

肇「薫ちゃん、どこか行くなら声かけてくれないと……心配しちゃったよ?」

薫「うーん……ごめんなさい」シュン

肇「でも、無事に見つかって良かった」ナデナデ


あずき「それにしても、こんなところで呑気に寝こけているとは……不用心にも程があるね」

あずき「そんな迂闊なプロデューサーには、顔に落書き大作戦を決行するしかないよねっ!」キュポッ

肇「あずきちゃん、それどこから出したの?」

あずき「アイドルたるもの、サインペンは常に持ち歩いておかないとね!」

薫「あー、あずきさん! おイタしたらダメだよ!」

薫「せんせぇはおねむなんだから、そっとしておいてあげて?」

あずき「う……はい……ごめんなさい」ショボーン

P「………zzz」グースカピー


肇「……」

肇「薫ちゃんは、プロデューサーの事、好きなんだね」

薫「せんせぇのこと? うん! だいすき!!」

肇「そっか……どういうところが好きなの?」

薫「うーんと……せんせぇ、とってもやさしいから!」

あずき「優しい?(ロ○コンてやつかな?)」

薫「うん!」

肇「……小さい子には優しいのかな」

薫「むーっ、かおる、小さくないよ!」

肇「あっ……ごめんね?」ナデナデ


薫「それに、せんせぇはおねえちゃんたちにもやさしいよ?」

肇「お姉ちゃん達?」

あずき「あずき達にもってこと?」

薫「うん! かおるにだけじゃなくてね、みんなにやさしいの!」

薫「でも、よく怒られてて……せんせぇかわいそう」

肇「……皆に優しい……か」チラッ

P「……zzzzz」ムニャムニャ


薫「かおるね、せんせぇのお仕事はよくわからないけど……」

薫「みんなのためにがんばってくれてるってことはわかるの!」

薫「だから、かおるもせんせぇのためにお仕事がんばるんだ!」

肇あずき「(プロデューサーが……頑張ってくれてる……?)」



『あずき、新しい仕事をとってきたぞ! コンセプトは"艶娘愛され大作戦"だ! 衣装も豪華だぞ!』

『あずきの小柄な割に豊満な身体を余すところなく魅せつける素晴らしい出来だ! デュフフwww』


『いやー、肇は最初に会った時の作務衣のお陰で和風のイメージが強いけど、どんな衣装でも着こなすなあ』

『でも、こんな露出が多い衣装を着せたら、お爺様に怒られてしまうかな? 一度ご挨拶に伺わないとな!色んな理由で! フヒヒwww』


肇あずき「(確かに……お仕事はちゃんと取ってきてくれる……いちいち言動が変態的だけど)」

あずき「(それに、事務所に行ってプロデューサーに会わない日って、よく考えたら殆ど無いや)」

肇「(早朝に事務所に行っても会うし、夜遅くに帰る時も居残ってるし……鬱陶しいとまで思っていたけれど)」

肇あずき「(薫ちゃんの言う通り、すごく頑張ってくれてるってことだよね……)」チラッ

P「……うぅ、もう高級和菓子無いですぅ……zzzz」グースカ


肇「あずきちゃん、戻ろうか」

あずき「……うん」

肇「薫ちゃんは、どうする?」

薫「かおるは、もう少しせんせぇと一緒にいるー!」

肇「わかった、じゃあまた後でね」



あずき「ねぇ、肇ちゃん」

肇「ん?」

あずき「プロデューサーが頼んできたらさ、お酌くらいはしてあげてもいいかもね」

肇「……そうだね」

肇「たまには、労ってあげてもいいかも」

あずき「うん」

あずき「セクハラ発言はゴメンだけどねっ!」アハハ

肇「本当にね」ウフフ




P「ん……うーん」

P「あれ……? 熟睡しちゃったよ……んーっ」ノビーッ


P「ん……?」

薫「……」スヤスヤ

P「薫……いつの間に……」


P「(俺の事、探しに来てくれたのかな?)」

P「(薫は、俺に懐いてくれてるからな……手もかからないし、良い子だ)」

P「(プロデューサー業務で荒んだ心を癒してくれる……一服の清涼剤ってやつだな)」


P「薫のお陰で、俺は頑張れるんだな……」ナデナデ

薫「ん……せんせぇ、だいすき……えへへー……」ムニャムニャ

P「(かわいい)」ナデナデ

P「……」ナデナデ

P「(ここでこうして薫を愛でていたいけど、そろそろ戻らないといけないな……)」


──帰りの車内──


  ブロロロロ......


薫「……」スヤスヤ

P「(薫が疲れて寝ちゃうのは分かるが)」チラッ

早苗「……」グガー

あい「……」スピー

P「(まさか早苗さんとあいさんの二人も酔いつぶれて寝てしまうとは思わなんだ)」

P「(アンバランスだけど、肩寄せあっててかわいい……)」


あずき「ねえ、プロデューサー」

P「ん?」

あずき「今日のお花見、楽しかったよ」

P「そうか……楽しんでもらえたなら良かったよ」

肇「また……機会があったら……プロデューサーと一緒に、来てあげないこともないですよ?」

P「ははは、そりゃどうも」

P「ま、明日からはまた忙しくなるだろうから、今日は羽根を伸ばせて良かったな」

肇あずき「……」




あずき「……いつも、ありがとね」ボソッ

P「えっ?」

肇「私からも……えっと、その……ありがとうございます」

P「???」

あずき「ただ言いたくなっただけだから、気にしないで」

肇「そういうことです、気にしないでください」

P「そうか……よくわからないけど、わかったよ」


あずき「あー、疲れちゃったから、あずきは寝るよっ!」

P「そうか、まだまだ着かないから、そうしなさい」

肇「わ、私も……おやすみなさい……!」

P「ああ、着いたら起こすからな」




P「いつも、ありがとう……か」

P「(なぜかはわからないけど、少しは親愛度が上がったのかな……)」


P「俺の方こそ、ありがとな……俺なんかに付いてきてくれて」

投下おわりです

天使な薫が書きたかった…
台詞集見てて、薫って台詞に意外と難しい漢字も使うんだなーと再確認しました

やっちまった
あずきってあいさんのこと「東郷さん」て呼んでるじゃん…
まあ名前で呼ぶくらい親しくなったって事でお願いします

ちょっと投下します


──事務所──

P「(今日の主な仕事は美優さんのテレビ番組収録の付き添いか)」

P「(ただなあ……うーん)」チラッ

美優「っ!」ビクッ

P「(めっちゃ警戒されててやり辛い……)」

美優「……」

P「あー、美優さん、そろそろ出ましょうか」

美優「……はい」


──移動中──


 ブロロロ....


P「……」

美優「……」

P「(沈黙が気まずい……)」チラッ

美優「……」

P「(縮こまって所在無げにしてるけど……やっぱり警戒されてるっぽいなあ)」チラチラ

美優「……っ!」ビクッ

P「(あ、ミラー越しだけど目が合っちゃった)」


P「あの、美優さん……?」

美優「……なんですか」

P「そんなに警戒しなくても……取って食いやしませんよ?」

美優「……」

P「……」

美優「……私の事は放っておいてくれていいので」

美優「運転に集中してください……」

P「あ……ハイ……スミマセン」


P「(……取り付く島もないな)」

P「(どうやら、想像以上に嫌われているらしい)」

P「(あれかな、事あるごとに結婚してくれって迫ったせいかなあ……あくまでネタでだけどさ)」チラチラ

美優「あの……」

P「な、なんでしょうか」

美優「こそこそとこちらの様子を伺ってくるの……やめてくれませんか」

P「あ……ハイ……スミマセン」

美優「……」


──局に着きました──

P「そういえば、美優さんはこちらのテレビ局は初めてでしたよね」

P「(だから付いて来たんだけどね)」

美優「……そうですね」

P「それじゃ、俺も収録に立ち会いますから」

P「あまり気を張らずに──」

美優「け、結構です!!」

P「!?」


美優「あの……本当に結構ですので……」

美優「プロデューサーさん、他にもお仕事があるでしょう?」

美優「そちらの方を、優先してください」

P「……」

美優「私の方は、大丈夫ですから……」


P「(ここまで拒否するってことは、一緒に居たくないってことだよなあ……結構キツイね!)」

P「(うーん……この際美優さんの個人的な感情は無視するとして……収録の方は……)」

P「(……うん、まあ俺が居なくても大丈夫かな、美優さんもそれなりに経験があるしな)」

P「分かりました、そういうことでしたら、俺は別の仕事をしますので」

美優「そうしてください」

P「一応、収録が終わった後の連絡だけは下さいね」

P「電話越しでだって俺の声なんて聴きたくないかもしれませんけど……」ハハハ

P「(いっけね! つい口をついて出しちゃったけど、これは卑屈になりすぎだな……)」

美優「……わかりました」

P「それでは、収録の成功を祈ってますよ、頑張ってくださいね」ニコォ

美優「っ!?」ビクッ


──局内・休憩所──

P「(とは言ったものの、心配だからテレビ局には残るよ!)」

P「(念の為PC持ってきて正解だったよ、終わるまで事務作業してよう)」

P「(何かあったらスタッフさんに連絡くれるように言ってあるしな)」


──数時間後──

  ガヤガヤ

P「(ん……あれは、美優さんの出演する番組のスタッフさんだよな、収録終わったみたいだな)」

P「すみません、モバマスプロのPですが、収録の方は済みましたか?」

スタッフ「あ、はい、5分くらい前に終わりましたよ、特に問題も起こりませんでした」

P「そうですか、ありがとうございます」


P「(美優さんから連絡は……無しか)」

P「(嫌な予感……というかまず間違いないだろうな……)」


──スタジオ──

D「ね? 美優ちゃん! いいでしょ!?」

美優「え、えっと……その……」オロオロ

D「美優ちゃん好きな料理は何かな! おじさん、シャレオツなお店色々知ってるからさ! 奢ってあげるよ!」

美優「あの……ディレクターさん……こういうのは……こ、困ります……」オロオロ

P「(やはり絡まれていたか……)」

P「(美優さん、Dさんの好みにどんぴしゃりだもんなあ)」

D「んもう!つれないねえ! おじさん、美優ちゃんの事気に入っちゃったから、仲良くしたんだけどなあ?」


P「はーい、そこまでですよー!」

D「!?」

美優「プロデューサーさん!?」

P「はあ、Dさん……アイドルと個人的に交遊したいなら、事務所を通してくださいね」

P「というか、そもそもアイドルに手を出さないで欲しいですけどね!」

P「(どの口が言うんだって突っ込みは無しでお願いします!)」

D「ありゃ、美優ちゃんてば、Pちゃんところのアイドルだったの!?」

美優「え、えっと……」

P「出演者の所属事務所くらいは把握しておいてください……」


D「そっかー、それじゃ、大人しく引き下がるかねえ……」

美優「その……なんか、すみません……」

D「それにしても、Pちゃんところのアイドルは粒ぞろいだねえ」

D「おじさん美優ちゃんのファンになっちゃったよ! 応援してるから、これからも頑張ってね!」

美優「あ、ありがとうございます……」

P「それでは、我々はこれで失礼します、本日はありがとうございました」ペコリ

D「あ、美優ちゃんからの方からお誘いくれれば、おじさんすぐ駆け付けるからね! 待ってるよ?」

美優「は、はあ……失礼します」


──帰りの車内──


  ブロロロロ......


P「……」

美優「……」

P「(やっぱり怒ってんのかなあ、実は居残ってたって知って……)」

美優「あ、あの……!」

P「はい?」


美優「先ほどは……ありがとうございました」

P「先ほど……? ああ、Dさんの事ですか」

P「あの人も、悪い人じゃないんですけどね、ただちょっと女癖がよろしくないというか……」

P「美優さんは美人だから、世の男どもが放っておかないだろうってのもありますけどね」ハハハ

美優「そう……ですか……」

P「……」


美優「……」

P「……」

美優「どうして……来てくれたんですか?」

P「……」


P「うーん……そうですね」

P「美優さんの、助けて下さいっていう心の声が聞こえたので」ドヤァ

美優「!?」

P「なんて、冗談ですよ」ハハハ

P「俺はこれでもプロデューサーですからね、担当アイドルがどうしてるかっていうのは、ある程度は分かります」

P「もしかしたら困ってるんじゃないか~とかね」


美優「でも私、プロデューサーさんの事……拒絶して……酷い事を言いました」

美優「それなのに……どうして?」

P「それも、俺がプロデューサーだからですよ」

P「担当アイドルが困っていたら、値なしに助けるのがプロデューサーの役目ってもんです」

美優「……」


P「納得できませんか……?」

P「そもそも、美優さんに嫌われるようなことしてきた俺の方が悪いんですから、あんまり気にしないでください」

美優「それでも……私……プロデューサーさんに……」

P「……」


P「それじゃあこうしましょう」

P「今までの事はお互い水に流してこれからは仲良くやっていくか」

P「あるいは美優さんが俺に酷い事言ったって事を引きずるなら、詫びに俺と結婚するか」

美優「ええっ!?」

P「どっちがいいですか?」

美優「え、えっと……その……結婚というのは……困ります」

P「……いやまあ、冗談ですけどね」


P「今のも含めて、今まで美優さんが嫌がるような発言してきてすみませんでした」

P「これからは、その……変なこと言って困らせるようなことは控えますから、安心してください」

美優「……」

P「それと、できればもう少し信用してくれると嬉しいかなーなんて思ってたりもします」


美優「わかりました」

美優「私も、プロデューサーさんのことをよく知らずに、嫌っていた節はありましたから……すみませんでした」

美優「……これからも、プロデュースの方……よろしくお願いしますね?」

P「美憂さんの事、任せてくれてありがとうございます……きっと、後悔はさせませんから」




美優「(プロデューサーさん……いえ)」

美優「(Pさんはきっと……優しい方なんですね……)」チラッ

P「……」

美優「(でも、結婚……してほしいだなんて……冗談でも、困っちゃいますよ?)」ドキドキ

美優「(そういうのは……もっと、お互いの想いを感じられるようになってから、ですよね)」

P「……? どうかしましたか?」

美優「なんでもありませんよ? ふふっ」

投下おわりです

あまり好かれてないから、結婚して欲しいとかぬかしてもそこまで影響無い筈…

『今までは』ね、『今後』は…むーりぃー…でしょ、好感度フラグ積み上げるだけだと思う
しかし、『美憂さん』でも全く違和感を感じない不思議……

やっぱりチョロく見えちゃうかー

話を区切るために、心情の変化として若干大げさにデレさせてるけど
実際は「あれ?コイツ実は良いヤツなんじゃね?」位の評価に留まってるという感じでお願いします

ちょっと苦しいなww

岡崎先輩書いてたら丁度再登場してくれた
LIVEバトルの先輩、スペインの裕美ちゃん並に活き活きしてて吹いた

投下します


──ある日の事務所──

泰葉「はぁ……」

泰葉「(子役時代のツテで、アイドル事務所の社長さんに勧誘されたのはいいけど)」

泰葉「(スカウトした当の社長さんは、どこかに出払ったままもう半年くらい帰ってきてないし)」

泰葉「(担当プロデューサーは変態だし……お仕事の方も、鳴かず飛ばずだし……)」

泰葉「思うようには、いかないものね……」


泰葉「……」

泰葉「(それに、なまじデビューできたとしても、その後の方が大変なのよね……)」

泰葉「(いくら志があったって、実力を持っていたって……アイドルとして大成できる人なんて一握り)」

泰葉「(殆どは、流されて……消えていってしまう)」

泰葉「(今までにも、そんな人達のこと……嫌になるほど見てきたから)」


泰葉「……」

泰葉「(傍から見るアイドルは、ステージの上で笑顔を振りまいて、輝いている)」

泰葉「(私もあんな風に……って、憧れが無かったわけじゃない……けど)」

泰葉「(……やっぱり、私がアイドルになるなんて……無理なんだ)」

泰葉「……プロデューサーに辞めるって……伝えよう」

P「何か言ったか?」


泰葉「!!?」ビクッ

泰葉「なっ……いつの間に!?」

P「いつの間にって……今さっき帰ってきたんだけど、挨拶はしたぞ?」

P「まあ、なんだか考え事をしてるみたいだったからそっとしておいたんだけどさ」

泰葉「そうですか……好都合です、お話ししたいことがあるのですが」

P「話?」


泰葉「アイドルを……辞めようと思いまして」

P「辞める? どうして?」

泰葉「私には……無理だったんですよ……」

泰葉「すこし経験してみて、実感しました」

P「何言ってるんだよ、まだまだこれからだろ?」

P「仕事をあまり取ってこられないのは……その、申し訳ないとは思うけど」

P「俺も泰葉のために今よりもっと頑張るからさ、辞めるなんて言わないで続けてみないか?」

泰葉「……私には無理なんです、自分の事ですからよくわかります」

泰葉「プロデューサーがいくら頑張っても……無理だってね」

P「……」


P「(確かに、今までの泰葉の態度は、アイドル活動に対してあまり乗り気でないような感じではあった)」

P「(それは、俺が不甲斐ないせいだと思っていたけど)」

泰葉「プロデューサーも、担当アイドルが他に大勢いるじゃないですか……」

泰葉「私なんかにお金と時間をかけるくらいなら、事務所としてもさっさと辞めさせた方がいいと思います」

P「(この物言い……自己評価が低いのか知らんが、気に入らないな)」

P「(アイドル活動にも失望したかのような雰囲気だけど、本心では続けたいと思っているはずだ)」

泰葉「……」

P「(とりあえず、この冷めた表情をなんとかしてやりたい)」


P「そうやって、訳知り顔で最初から諦めて……」

P「泰葉は一体アイドルの何を知ってるっていうんだ?」

泰葉「……」


泰葉「……現実を知っています」

泰葉「あなたは軽々しくトップアイドルになれるだとか吹聴して回ってますけど」

泰葉「現実は、そんなに簡単にはいかないです」

P「……」


P「(泰葉のこの眼差し、俺は以前にもどこかで……?)」

P「(……そうだ……あの人も、こんな目をしていた)」


泰葉「私自身も、この業界に入って長いので、挫折した人を多く見てきました……」

泰葉「どんなに努力しても、上手くいかないことがほとんどだって、知ってるんです」

P「(あの人もそうだった……実力は申し分無かったし、常に努力もしていた)」

P「(それでも、ダメだったんだ……花開く前に、消えていってしまった)」


P「俺だって、分かってるよ……上手くいかない事の方が多いってことくらい……」

P「(けど、俺は泰葉に、自分のアイドルに……そんな簡単に夢を諦めて欲しくない!)」

泰葉「……」


P「……辞めるっていうなら、その前に一つだけ、答えて欲しいことがある」

泰葉「なんでしょうか」

P「この際、現実的な問題は置いておく、実現できるできないとか関係無しに聞くが」

P「泰葉はさ、もしなれるなら……なりたいか?」

P「その、トップアイドルに」

泰葉「……っ!」


P「お前が今まで見聞きしてきたものは一旦忘れて、本心を聞かせてくれ……」

泰葉「……」

P「……」

泰葉「なりたいですよ、トップアイドル……なれるものなら」

P「!」


泰葉「私だって……輝きたいです! トップアイドルの人達みたいに!」

泰葉「輝くことを……諦めたくない……!!」

P「……」


P「……泰葉の気持ちは、わかったよ」

P「諦める事なんてない……泰葉なら、トップアイドルにだってなれるさ」

泰葉「……っ!」ギリッ


泰葉「またそうやって……軽々しくそんなこと言うの、やめてください!」

泰葉「無責任すぎます! そんな保障なんてどこにもないのに!」

P「……」


P「そうだな……未来の事なんて、誰にだって分かる訳ないもんな」

P「あるいは、アイドルを辞めて普通の女の子としての生活を送る」

P「そうした方が泰葉にとって幸せかも知れない」

P「無責任だと言われたら、返す言葉が無い……」

泰葉「……」

P「けどな、俺はそれでも言うよ」ガシッ

泰葉「っ!?」

P「お前なら、トップアイドルになれる……トップアイドルになれるって、俺は信じてる」

P「だから……夢を諦めないで欲しい……」

泰葉「……」


泰葉「(こんな風に言われたの……初めて)」

泰葉「(なんでだろう、出任せ言ってるってことくらい分かってるのに)」

泰葉「(私も、プロデューサーのことを信じてみても……いいかなって)」


泰葉「どうして……そこまで……言えるんですか?」

泰葉「プロデューサーこそ……私の何を知ってるっていうんですか」

P「……」


P「俺は、お前のプロデューサーだ」

P「プロデューサーが担当アイドルを信じないで、他に何を信じるっていうんだ?」

泰葉「……」


P「それに、泰葉に初めて会った時、ティンと来たんだ」

P「『この子なら、トップアイドルになれる!』ってな」

泰葉「なんですか……それ」

P「感覚的なもので悪いけど、眼に浮かんだんだよ……泰葉が輝くステージの上で歌って踊ってるところがさ」

泰葉「私が……ステージの上で……」


P「今第一線で活躍してるうちのトップアイドル連中にも、同じように感じた事があったんだ」

P「だから、この感覚は割とアテにしてるんだけどな」

泰葉「……」


泰葉「……プロデューサー」

P「ん?」

泰葉「私……本当になれますか? トップアイドルに」

P「なれるさ、俺を信じて欲しい」

泰葉「プロデューサーに、頼ってばかりになるかもしれません……」

泰葉「それでも、いいですか?」

P「泰葉みたいにしっかりした子に頼られるなら、それは嬉しいな」

泰葉「……」


泰葉「……わかりました」

泰葉「こんなところで負けるのもいやなので」

泰葉「もう少し、頑張ってみようと思います」

P「そうか、続けてくれるか……ありがとな」



泰葉「プロデューサーが、私のことを信じてくれるって言うなら」

泰葉「私も、プロデューサーのこと信じますから……」

泰葉「夢、見せてくださいね?」

投下おわりです
>>209の眼に浮かぶ~の「眼」の字が違った…正しくは「目」でした

構想練ってたのを見返してみたら、登場アイドルがCoとCuばかりだった…

ナターリアや日野ちゃんの親愛度マイナスって想像できん

>>215
ナタ「オウゴミプロデューサー寿司カッテコイヨ トクジョウナ アトイキガクサイ」
茜「プロデューサーさんおはようございます! 今日も気持ち悪いですね、殴られたくなかったら近寄らないでください!」

こんなんじゃね

遅筆すぎワロタwwww
見てくれてる人ごめんなさい、そしてありがとう

ちょっと投下します


──事務所──

P「(今日の主な仕事はありすと桃華のテレビ番組収録の付き添いか)」

P「(うちの事務所の中でも、年少組は割と俺に懐いてくれているわけだが)」

P「(こいつらは例外なんだよな……懐くどころか反抗的だし)」

P「(子供からなじられるのって結構堪えるよね……)」


桃華「プロデューサー、何をしていますの? 早くお仕事に行きましょう?」

P「お、おう……すまん桃華」

桃華「気安く名前で呼ばないでくれませんこと? そのような体たらくで、わたくしのプロデューサーが務まるのかしら」

P「いや、ほら……まだありすの準備が出来てるかどうかわからないだろ?」

ありす「私ならとっくにお仕事に行く準備はできていますよ? あと名前で呼ばないでください」

P「そ、そうか……じゃあ出ようかね」

桃華「やれやれですわね」

ありす「まったく……」


──移動中──


 ブロロロ....


P「(相変わらずこまっしゃくれたガキどもだ!)」

P「(可愛げの可の字も無い!)」

P「……」チラッ

ありす「……」

桃華「……」


P「(二人とも仏頂面して……アイドルが愛想振りまくのはファンの前でだけ~ってか)」

P「(反抗期ってヤツかなぁ……それとも、単に俺が嫌われてるだけか)」

P「(ああ、薫とか仁奈とか千佳もあと何年かしたらこうなるのかなあ……)」

P「(いやだあああ、あの天使達が俺から離れていくなんて考えたくないいい!!)」ウワーン


ありす桃華「(なんかソワソワしてる……気持ち悪い……)」


──局に着きました──

P「あー、仕事に行く前にちょっと聞いてくれ」

P「俺は他の企画の打ち合わせがあるから、収録に立ち会えないんだけど」

P「二人だけでも大丈夫だよな?」

桃華「それはそれは、わたくしの仕事ぶりが見られなくて残念ですわね」

ありす「別にプロデューサーに見ていてもらったからといって、お仕事が成功するかどうかは関係ありませんよね?」

P「……」


P「(この言い草……12歳とは思えん……)」

P「(まあいいや、年齢の割にしっかりしてるってことだし、Dさんもいるし大丈夫だろう)」

P「じゃあ俺は居なくなるけど、頑張ってな」

桃華「言われるまでもありませんわ」

ありす「別のお仕事があるならいつまでもここに居ないで、早く行ってください」

P「……」


──打ち合わせ中──

P「(……二人とも大丈夫かなあ……心配だなあ)」ソワソワ

「Pさん、ここはどうしましょうか?」

P「うーん……これなら、即英して英霊日蝕ですかねー」

「なるほど、了解です」

P「(何事も起こらないといいけどなあ……)」ソワソワ


  ガチャッ


AD「会議中すみません! Pさんはいらっしゃいますか?」

P「はい? どうしました?(この人、Dさんとこのスタッフさんだよな)」

AD「あのですね……おたくのアイドルさんが、大御所さんと喧嘩してしまいまして……」

P「……えぇ!?」

P「(あー、そういえば、ありすと桃華は大御所さんと共演だったんだっけ……いやあすっかり忘れてたよははは)」

AD「すみません、ちょっと来てもらってもいいですか?」

P「わかりました! すぐに向かいます!」

P「(つーか何してくれちゃってんのマジで! 多少のミスならいいけど、大御所さんの機嫌損ねるとか一番やっちゃいかんぞ!)」


P「(とりあえず、収録スタジオに来ましたが空気が最悪です)」

P「(ADさんの話では、大御所さんのちょっとした発言からありす達と口論になったって聞いたけど)」

P「(これは、目を離した俺の責任だよなぁ)」

P「(歳の割にしっかりしてるとか思ってたけど、やっぱりまだ子供だったか……)」



ありす「……」ツーン

桃華「……」ムスーッ


大御所「……」ゴゴゴゴ.......

D「スミマセンスミマセン.......」ペコペコ



P「(クソッ! 行くしかねぇ!)」


P「失礼します、モバマスプロのPと申します」

D「あ、Pちゃん、待ってたよー」

P「すみません、ご迷惑をおかけしまして……」コソコソ

D「俺に謝ってる場合じゃないよ! とりあえず大御所さんと話して」コソコソ

大御所「……」

P「(チクショー! こええよ!)」


D「あー、大御所さん……ここでお話をするのもなんですので、楽屋の方に行きましょうか」

大御所「……」スクッ

P「ッ!」ビクッ

大御所「……」スタスタ

D「じゃあPちゃん、頑張ってね!」コソコソ

P「骨は拾ってください……」コソコソ


──楽屋──

P「失礼します……」

大御所「……」

P「この度は我が社のアイドルが、大変失礼致しました」

P「誠に、申し訳ございませんでした」ドゲザァ

P「今回の件は全て、プロデューサーである私の不徳の致すところでございます」

P「ですので、彼女らに対しては……何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます」

大御所「……」

───────────────────────────

桃華「なんですの、ディレクターさん? このような場所に連れて来て」

D「二人とも、よく見ておきなさい、これが彼の仕事だ」

ありす「え……?」


P「───! ──!」ペコペコ


桃華「プロデューサー……どうしてあんなに謝って……」

ありす「……」


D「君達の行動に対しての責任を取るということだ……君達のプロデューサーとしてね」

桃華「責任……」

ありす「私達は……間違った事を言った覚えはありません!」

D「うん、確かに君達の言い分ももっともだ……けどね」

D「世の中には、正しいか間違っているか、その二択では測れない事が多いんだ」

D「君達は賢いから分かるだろう?」

ありす桃華「……」


D「君達は間違った事は言っていないが、そのおかげで大御所さんを怒らせてしまった」

D「大御所さんは業界でも地位のある人だからね、もしかしたら今回の件で君達の今後の活動に支障が出てしまうこともあるかもしれない」

D「だからP君は君達のために必至で謝っている……まあ、彼自身のためでもあるけどね」

桃華「プロデューサー……」

ありす「私達のために……?」

───────────────────────────


P「すみませんでした! ホンットにサーセンっした!」ペコペコ

大御所「もう結構だ、頭を上げたまえ」

P「!」

大御所「今回は私も大人気無かった、子供相手に……」

大御所「いや、子供扱いは失礼だったな……あの子らは立派なアイドルだな」

P「大御所さん……」


大御所「そこのお嬢さん方、さっきは済まなかったね」

大御所「こっちへ来たまえ、仲直りをしようじゃないか」ニコッ

P「えっ……?」クルッ



ありす桃華「あっ……!」コソコソ



P「(あいつらなにやってんだー!)」


桃華「あ、あの……先ほどは、申し訳ありませんでした」オズオズ

ありす「大御所さんに、大変失礼な口を……すみませんでした」コワゴワ

大御所「元はといえば、私の失言が原因だ、君たちが謝る事ではないよ」

大御所「それと、P君といったかね」

P「は、はい!」

大御所「君も……すまなかったね」

P「い、いえ! 滅相もないことです!」

大御所「さて、スタッフの皆を長らく待たせてしまった……そろそろ戻るとしよう」



P「(その後、大御所さんが一方的に折れてくれたおかげで、中断していた収録も無事に済んだ)」


P「あ……Dさん」

D「大御所さんPちゃんの事褒めてたよ」

D「『担当アイドルのためにあそこまでできるとは今時見上げた若者だ』ってね!」

P「そうですか……それは、なんというか、喜ばしいことですけど」

P「……すみませんでした、今回はDさんにもご迷惑をおかけしてしまって」シュン

D「あーいいのいいの! 収録は無事に済んだんだしね!」

P「しかし……」

D「そんなに気になるんだったら、今度美優ちゃんとの食事セッティングしてよ! それでチャラってことで!」

P「それは……その、困ります……」

D「そりゃー残念! そうだねえ、他にしてほしい事もないからね、Pちゃんもあまり気にしすぎないことだよ」

P「Dさん……ありがとうございます」

D「……」


D「いやー、Pちゃん命拾いしたね!」

P「あ……Dさん」

D「大御所さんPちゃんの事褒めてたよ」

D「『担当アイドルのためにあそこまでできるとは今時見上げた若者だ』ってね!」

P「そうですか……それは、なんというか、喜ばしいことですけど」

P「……すみませんでした、今回はDさんにもご迷惑をおかけしてしまって」シュン

D「あーいいのいいの! 収録は無事に済んだんだしね!」

P「しかし……」

D「そんなに気になるんだったら、今度美優ちゃんとの食事セッティングしてよ! それでチャラってことで!」

P「それは……その、困ります……」

D「そりゃー残念! そうだねえ、他にしてほしい事もないからね、Pちゃんもあまり気にしすぎないことだよ」

P「Dさん……ありがとうございます」

D「……」


D「……ありすちゃんと桃華ちゃんだっけ? あの子達、大事にしてあげなよ」

P「え?」

D「まだ色々と危うい所が目立つけど、Pちゃんが育ててあげればきっと大物になるよ」

P「……」


P「そうですね……俺が、しっかりしないといけませんね」

D「二人とも、あと10年もしたら俺の好みに合いそうだしね! それまでよろしく!」

P「(これが無かったら良い人なんだけどなぁ……)」


──帰りの車内──


  ブロロロロ......


P「……」

ありす桃華「……」

P「(Dさんが、すこし諭してくれたみたいだけど、俺からもお小言をくれてやるべきだろうか……)」

桃華「あの……プロデューサー」

P「なんだ」

桃華「先ほどのプロデューサーの行動を見させてもらいましたけれど」

P「……そういえば、二人とも覗き見とは感心しないぞ」

桃華「そのことについては謝罪します……けれど」

桃華「プロデューサー、あなたはあの時、私達の代わりに謝っていたのですよね?」

桃華「なぜあんなに簡単に、頭を下げることが出来るんですの?」

P「……」


P「(大人になりゃ分かるって言いたいけど、そういうこと言うとまたヘソ曲げるだろうな)」

ありす「それも、自分に落ち度があったわけでもないのにあんな風にへいこらして……」

ありす「プロデューサーにはプライドというものが無いんですか?」

P「(こいつら……ワザと挑発してんのか!?)」

P「(まあ落ち着け……ここは大人の対応ってヤツを見せてやるところだ)」


P「そりゃあ、俺にだってプライドはあるよ」

P「人に頭を下げるのはやっぱり抵抗があるし」

P「年端もいかない女の子にヤジられれば、傷つくこともある」

ありす桃華「……」

P「(大人の対応とか言っておいてちょっと当て付けがましかった!)」


P「でもな、それが担当アイドルのためになるんだったら」

P「俺の安いプライドなんて、どっかに投げ捨ててやるさ」

ありす桃華「……」


ありす「不法投棄は……ダメですよ?」

P「あのな……言葉のあやってヤツだよ」

ありす「分かってますけどね」

P「……」


ありす「(プロデューサー……)」

桃華「わたくし達のために、プライドを捨てられるんですの?)」

P「(カッコつけてみたけど、自分が折れる事で円滑に事が進むならいくらでも頭下げるっていうね、処世術だよね)」


P「お前達は自分一人でなんでもできると思っているみたいだけど、実際はそんなことは無いんだぞ」

P「俺やちひろさんだってお前達のために頑張っているし、仕事先のスタッフさん達もそうだ」

ありす桃華「う……」

P「むしろ、お前達だけで出来る事なんてほとんど無い、それを肝に銘じておくこと」

P「それがわかったら、不要なトラブルを避けるためにも、もう少し謙虚になるというか、慎ましさを覚えるんだな」

ありす桃華「(確かに……少し生意気だったかもしれない)」


P「まあ……なんだ」

P「これからも、色んなトラブルが起こると思うけどさ」

P「そういう時には、俺の事を頼ってくれていいってことだからな?」

ありす桃華「プロデューサー……」

P「それと、もう少し敬意ってもんを払ってくれるとなおいいんだけどなー」ハハハ

ありす桃華「……」


桃華「わかりましたわ……これからは、アナタの事をプロデューサーとして認めて差し上げますわ」

P「やっぱりどこか上から目線なのね……」

桃華「そして、今までの非礼をお詫びいたします……申し訳ありませんでした」

ありす「私も……その、すみませんでした……それと、今日はありがとうございました」

P「……そう急にしおらしくされてもやり辛いな」


P「まあ、分かってくれたならいいんだ……お前達のためでもあるしな」

P「改めて、これからもよろしくな? 桃華 ありす!」

ありす桃華「名前で呼ぶのはやめてください(まし)」

P「oh.......」

投下おわりです

やたら説教くさくなっちゃった…

見たいと要望のあったアイドルは一応登場を検討してみますが、
ご希望通りにできるかはわかりません、ごめんなさい

http://i.imgur.com/hpHqcIe.jpg
http://i.imgur.com/YI7wBou.jpg
櫻井桃華(12)

http://i.imgur.com/19KtUa9.jpg
http://i.imgur.com/wXli5fk.jpg
橘ありす(12)

間が開いちゃった
ちょっと投下します


──どっかの温泉街──

P「(今度の企画、温泉ロケの下見にやって来た)」

P「(大体の雰囲気は掴めたので、仕事は終わりなわけだけど)」

P「(ちひろさんから、事務所の事は気にしなくていいから一泊してこいと言われている)」

P「サンキューチッヒ!」

P「(せっかく温泉地まで来たんだから、浸かっていかないと勿体ないしな)」

P「(そんなわけで、当日お世話になる旅館に今日も泊まっていくことになった)」


──露天風呂──

P「いやー、シーズン外れてるせいか、他のお客さんも居ないし……」

P「こりゃー貸し切りだなー、極楽極楽」チャプチャプ

P「……」


P「いーい湯だな、ハハハン」

P「湯気が天井からぽたりと──」

P「天井無かったわ……」

P「……」


P「いーとしいあーの子にバーイのバイのバイ」

P「変態扱いツライツライツライ」

P「げえぇぇぇろおぉぉっぱ!!」

P「……」




「ふふふっ」

P「!?」


「お歌が……お上手なんですね」

P「えっ……えっ!?」


P「(あ、この竹垣の向こう、女湯なんだね、なるほど!)」

「(竹垣と楓……竹垣楓……ふふっ)」

P「(ていうかなに? 独り言とか熱唱してたの聞かれてたってこと!?)」

「(あ……これ楓じゃなくてモミジだった…)」

P「(うわー死にたい! 顔から炎が出るわ!)」

P「すみません……一人だと思っていたもので」

「あ、お構いなく……」


P「(どうしよう……もう上がろうかな)」

P「(でも今上がったら、『恥ずかしくなって逃げたんだ』って思われるよな……)」

P「(それは何かイヤだ……)」

P「(どうしよう……)」モンモン


「あの……」

P「!?」

「ここへは……旅行で来られたんですか?」

P「(うぇ!? なんで!? なんで話しかけてくるの!)」

P「……」

P「(いや待て、落ち着くんだ……これは女性に慣れるチャンスじゃないか)」

P「(上手い具合に会話を弾ませるんだ!)」


P「えっと、仕事の一環と言いますか……旅行ではないですね」

「お仕事ですか……それは、お疲れ様です」

P「まあ、この温泉のお陰で、疲れもとれるってもんです」ハハハ


P「そちらは、ご旅行で来られたんですか?」

「はい、休みが取れたので……温泉めぐりが趣味なんです」

P「温泉めぐりですか、なんか、そういうの良いですね~」

P「僕なんかは、いかんせん仕事が忙しくて、なかなか……」

「あら……大変なんですね……」


「その、お仕事って、どのようなことをされてるんですか?」

P「仕事ですか? えっと……事務職と営業職両方合わせた感じの仕事ですねぇ」

P「一日中机に向かっている事もあれば、一日中外を走り回っている事もあります」

「そうなんですか……大変なお仕事なんですね」

P「(意外と話せてるぞ! うん)」


P「そちらは、どのようなお仕事をされているんですか?」

「私は……えっと、芸能関係……とでも言いましょうか」

P「芸能関係?」

「はい」

P「それでしたら、もしかしたら、お会いしたことあるかもしれませんね」

「えっ?」

P「僕も一応、芸能関係の仕事なので……まあ、裏方ですけどね」

「そうだったんですか」


「ただ、お仕事は楽しいんですけど……ちょっと悩みがありまして……」

P「(なんだなんだ! 愚痴を聞く流れか!)」

P「悩みですか? 僕で良ければ聞きましょうか」

P「(あえて突っ込むよ! 聞き上手はモテるって言うしな!)」

「……」

「ありがとうございます……」


「えっとですね……仕事場の、上司みたいな役割の男性がいるんですけど」

「その人からの……セクハラが酷くて……」

P「(oh.......意外と重たかった)」

P「(ていうかこれ、どう返せばいいんだよ!)」

P「セ、セクハラ……ですか」

「……はい」

「直接触ってきたりってことは無いんですけど、その……変なことを言われるんです」

P「(……なんだか耳が痛い話だ)」

「……」


「なんだかすみません、見ず知らずの方に愚痴ってしまって……」

「酔っちゃったのかしら……」

P「お、お酒を飲んでらしたんですか……」

「はい、露天風呂で熱燗……おいしいですよ?」

P「なるほど……なんだか、風流ですね」

P「……」

「……」


P「……」

P「実は僕も、同じような……いや、同じではないか……」

P「職場で、悩み事があるんですよ」

「……?」

P「職場の女性から、セクハラしてくるってことで嫌われてまして」

「あら……」

P「こちらとしては、仲良くなりたくておふざけでちょっかい出してるつもりだったんですけど」

「仲良くなりたくて……?」

P「ええ……でも、嫌がられてるってわかって、最近は控えるようにしてるんですけどね」

P「それでも、一度嫌われちゃうと中々関係修復できなくて……いやはや、大失敗でしたね……」

「……」


P「言い訳に聞こえるかも知れないですけど、僕は決してセクハラをしたくてしてたわけではないんですよ」

P「だから……もしかしたら、そちらの上司の方も、僕と同じような感じだったりするかもしれませんね」

「どうなんでしょうね……なんでセクハラしてくるんだって今度聞いてみようかな」

P「それがよろしいかと……ちゃんと話し合えば、セクハラもやめてくれるかもしれませんよ」

P「なんて、ちょっと差し出がましかったですね、すみません」

「いえ、私の愚痴なんかに付き合って頂いて、ありがとうございました」

P「こちらこそ、変な話聞かせてしまって申し訳ない」

「……」

P「……」

「あ……そろそろチェックアウトなので、上がります」

P「はい、お疲れ様でした」


──旅館・ロビー──

「ご利用ありがとうございました」

「こちらの台帳に記名をお願いします」

楓「はい……あら?」


楓「(このPさんて人……プロデューサーと同じ名前?)」

楓「すみません、今日って、ここの旅館に居たお客は二人だけでした?」

「はい? えっと、そうですね……高垣様と、もう御一方男性の方がいらっしゃっただけです」

楓「あ……そうでしたか」


楓「(じゃあ、さっき露天風呂で喋ってた人はこのPさんて人なんだ)」

楓「(名前が同じだし、芸能関係者で、事務職と営業職合わせたようなことやってて、セクハラして嫌われてるって……)」

楓「(やっぱり、プロデューサーよね……)」


楓「(仲良くなりたくて、ちょっかい出してたけど……)」

楓「(逆効果で嫌われちゃって、失敗したって落ち込んでて……)」

楓「ふふふっ」

楓「(プロデューサーってば……意外と可愛いかも……)」


──数日後・事務所──


P「楓さん、今度のロケの詳細が決まりましたよ」

P「某温泉街で湯けむりロケです、こちらが資料になります」ペラッ

楓「あら、この温泉宿は……」

P「? どうかしましたか?」

楓「いえ、何日か前にもここの温泉に行ったんですよ」

P「あ、そうだったんですか」

P「俺も一応下見に行きましたけど、結構良い所でしたね」

楓「……」


楓「プロデューサーさんも、当日はこちらの旅館に泊まられるんですか?」

P「え……? ええ、一応そうなります……けど」

楓「そうですか……ふふふっ」

P「(……なんだ?)」


楓「それでしたら……また、露天風呂に入りながらでも」

楓「プロデューサーさんのお歌、聞かせてください」

楓「ねっ?」

P「えっ」


P「(そういや、あの旅館の露天風呂で一緒に喋ってた女の人……)」

P「(温泉めぐりが趣味で芸能関係の仕事をしてて、風呂でまで飲むほどのお酒好き……)」

P「(まさか……)」

楓「うふふっ」

P「やっぱり!?」

楓「今度はプロデューサーさんも、一緒にお酒飲みましょう?」

楓「温泉ロケ、楽しみにしてますね♪」

終わりです

見ず知らずの人間に仕事聞いたり愚痴ったりとか普通しねーよっていう突っ込みは、
楓さんが酔ってたってことでなんとか……

そろそろ話を展開させないとダレてきちゃうなーなんて思いつつ…

ちょっと投下します


──ある日の事務所──


   ガチャッ


幸子「おはようございます」

ちひろ「おはようございます」

P「おはよう!」

幸子「うわ……」

P「(露骨に嫌な顔された……)」


P「い、いやあ、幸子は今日も可愛いなぁ! うん!」

幸子「やめてください」

P「えっ?」

幸子「そうやってカワイイって言ってくるの、やめてください」

幸子「アナタからはそういうこと言われたくないので」

P「」


P「……」

幸子「……」

ちひろ「……」

P「あ……俺今日は外回りだったっけ! こりゃいかんすぐ出掛けないと」

P「ちょっと出掛けてきますよー!」

ちひろ「いってらっしゃいませー」


    ガチャ バタン


幸子「……」


ちひろ「ねえ、幸子ちゃん?」

幸子「なんですか?」

ちひろ「どうして幸子ちゃんは、プロデューサーさんの事を目の敵にしてるの?」

ちひろ「プロデューサーさん、幸子ちゃんのこと可愛いって言ってくれてるのに」

幸子「……」


幸子「あの人が、ボクのことそういう風に言う時って、上っ面だけなんです」

幸子「ボクのこと、本当に解ってくれようとしてないんです……」

ちひろ「……」

幸子「腹が立つんです」

幸子「あの人に……というより」

幸子「あの人に少しでも期待してしまった、自分の、人を見る目の無さに」

ちひろ「(すごい良い様……)」


幸子「ボクの事を拾ってくれた、あの時のプロデューサーさんは、もっと……なんというか」

幸子「『この人ならボクのことを解ってくれるかもしれない』って、そう思わせてくれたんですけど」

幸子「誰にでも調子良い事言ってるし、変態だし、どうしようもないです」

幸子「正直がっかりしました」

幸子「あの人も所詮、そこらの凡百と同じだったってことですね」

ちひろ「(堰を切ったかのように……幸子ちゃんて実は溜め込むタイプ?)」


ちひろ「でも、Pさんは幸子ちゃんのこと……その、拾ってくれた訳で」

ちひろ「恩義とかは……感じてないの?」

幸子「あの人、ボクが前の事務所を追い出されそうだったってこと、知ってたんですよ」

幸子「ボクを引き抜いたのも『どうせフリーになるアイドルだったら、うちの事務所に置いておこう』とか」

幸子「きっとそんな理由ですよ」

幸子「ボクのことを必要としてたワケじゃないってことくらい分かります」

ちひろ「……」


ちひろ「ということらしいですけど、Pさん?」

幸子「えっ!?」


   ガチャッ


P「幸子……お前そんな風に……」ズーン

幸子「」


幸子「ち、ちひろさん! 謀りましたね!」

ちひろ「いやぁ、事務所の外に誰かが居て、私達の話を聞いてたなんて、私の与り知らぬことです」

幸子「ぐぬぬ……」


P「幸子……俺の話を聞いてくれないか」

幸子「なんですか、今更ボクのご機嫌取りですか?」

P「……」


P「その……幸子のこと可愛いっていうのが、上っ面だけっていうのは、その通りだ」

P「それに、幸子のことを解ってやろうとしてないっていうのも、その通りだ……」

P「その点については、謝る……すまなかった」

幸子「……」

P「でも、俺が幸子をうちの事務所に引き入れたのは、そんな適当な理由じゃない」

幸子「じゃあ、どういう理由だっていうんですか」


──────────────────────────────


──数か月前──

P「(いやー、うちみたいな弱小事務所がまさか某スーパーアリーナでLIVEできるとはな)」

P「(結構名が売れてきたってことか? なんてな!)」

P「(まあ、うちの事務所だけじゃなくて、LIVEバトルだけど……)」

P「(一応相手方に挨拶しておこうか……えっと、控室はどこだ?)」

「ちょっとそこのアナタ!」

P「ん?」


「どいてくれませんか? 人の楽屋の前で突っ立ってないでください」

P「あ、すみません……(って、ちっさ!)」

P「あれ……君はここの事務所の……?」

幸子「輿水幸子ですよ!」

P「輿水さんね……ということは、うちの今回のLIVEバトル相手か」

幸子「アナタ、モバマスプロとかいう事務所の人でしたか」

幸子「まったく! こんなにカワイイボクの事を知らないなんて、業界人としてどうかしてますね!」

P「ハ、ハハハ……ゴメンよ(なんだってんだコイツ!)」

P「ま、まあ今日のLIVEバトル、お手柔らかにお願いするよ!」

幸子「カワイイボクのトップアイドルになる為の踏み台になれるなんて、光栄なことですよ!」

P「……」


──LIVEバトル中──

P「(あの子……輿水幸子っていったか……)」

P「(うーん、さっき会った時の傲岸不遜ぶりに比べると、どこか無理して自分を抑えてる感があるなあ)」

P「(プロデューサーの方針か? 実に勿体ない!)」

P「(俺がプロデューサーだったら、もっとハチャメチャやらせたいところだなぁ)」


凛「(あの変態、ずっと相手事務所のアイドル見てる……)」


──勝ちました──

P「しぶりん!お疲れ様! お見事だったよ! 流石俺のしぶりん!」

凛「そのしぶりんっていうのやめてって言ってるでしょ」

P「うーん、つれない! 相変わらずCoolだね!」

凛「……」イラッ

P「まぁそうカリカリせんと───あっ」



幸子「……」トボトボ


P「やあ、輿水さん、お疲れ様」

幸子「あっ……アナタはさっきの……」

P「紹介するよ、さっきの君のLIVEバトルの相手、うちの事務所の渋谷凛だ」

凛「……どうも」

幸子「アナタが……」

凛「……」


幸子「ふ、ふふーん! ボクが勝ちを譲ってあげたのに気付かないで浮かれちゃって!」

幸子「まったくもって、おめでたい人達ですね!」

凛「別に浮かれてないけどね」

幸子「まあいいです! 次は本気でいかせてもらいますからね!」

幸子「覚悟しておくことですよ!!」スタコラ

凛「あっ……行っちゃった」

P「……」


P「(その後も、彼女とLIVEバトルをする度にこちらが勝ち越していって……)」

P「(丁度四回目の対決だったか……)」


P「(……今回も輿水さんとか……なんか縁があるなあ)」

P「(さて、挨拶しに行くか)」

P「ん……控室から話し声が……」


「輿水さん……これで三回負け越しですよ」

「新興事務所相手に何度も負けているようだと、ウチの事務所の評判にも関わってくるんです」

幸子「はい……」

「……今回もダメだったら……その時は、除籍ということになります」

「心しておいてください」

幸子「分かってますよ……」


P「ッ!」


『申し訳ないが、これ以上君を……事務所に置いておくことは出来なくなった』

『……分かりました』


P「(なんでこんな時に……思い出すかなぁ)」

P「(……クソ!)」



    ガチャッ


「うわっ! あ、あなたは?」

P「あ、私モバマスプロのPと申します、ご挨拶に伺いました」

相手P「ああ、あなたが」

P「本日はよろしくお願いします」」

相手P「こちらこそ、よろしくお願いします」

幸子「(今日だけは……絶対に負けられない!)」キッ

P「……」


相手P「それでは我々はこれで……輿水さん、行きますよ」

幸子「はい……」

P「……」

P「……うん」ポパピプペー



P「(結局、LIVEバトルは凛が勝って……)」

P「(幸子は、うちの事務所に移籍ということになった)」

──────────────────────────────


──回想終わり──

幸子「勿体なかったからって……どういうことですか?」

P「幸子のLIVEを見ててさ、ティンと来たんだよ」

P「『この子はもっと輝けるはずだ』って」

P「あの時の幸子は、なんていうのかな……なんかオドオドしてたっていうか」

幸子「……」

P「当時の担当プロデューサーの目を、気にしてたんだろ?」

幸子「っ!」


P「つい『俺だったらこんな風にプロデュースするのに』なんて考えちゃってさ」

P「で、立ち聞きするつもりじゃなかったんだけど……」

P「幸子が、所属事務所をクビになりそうだって話してるのが聞こえてさ」

P「うちに連れて来たってわけ」

幸子「それで、アナタのプロデュース方針でスカイダイビング……ですか」

P「評判は良かっただろ!? やっぱり幸子は多少無茶やった方が映えるんだ」

幸子「……」


幸子「(なんなんだろう……この人、意外とボクのこと見てくれてたってことかな)」

幸子「(確かに、こっちの事務所に来てから、人気も出てきたし……)」

幸子「(プロデューサーの手腕……なのかな)」


幸子「……アナタの言い分はわかりました」

幸子「確かに、今までの実績を見たら、アナタもそれなりにボクの為に働いてくれてたところはありますからね」

幸子「アナタのこと、ボクのプロデューサーとして認めてあげないこともないですよ!」

P「ああ、ありがとな」

幸子「えっと……その……」

P「……」


P「なあ、幸子」

幸子「……なんですか?」

P「今まではさ、ちゃんと、面と向かって言ってなかったけど」

P「幸子は、可愛いよ」

幸子「!?」

P「自社他社問わず何人ものアイドルを見てきた俺が保証する」

P「幸子は可愛い! うん!」

幸子「っ!!」


幸子「う……うぅ……」

幸子「れ、レッスン! 行ってきます!」


    ガチャ バタン!


P「……行っちゃった」

ちひろ「行っちゃいましたね」


ちひろ「けど、なんとなく幸子ちゃんもPさんのこと認めてくれたみたいで良かったですね」

P「ま、まあ、あの年頃の娘は、結構気難しい所がありますからね……」

P「今までいやがらせしてた分、上手い事これからの付き合い方を考えていかないと」


ちひろ「でも、幸子ちゃんが事務所追い出されそうだって話を聞いたのはわかりますけど」

ちひろ「よくうちに引き抜く気になりましたね」

ちひろ「Pさんて、アイドルスカウトしたこと無かったじゃないですか」

P「確かに、他のアイドルは社長がスカウトしたっぽい子だけですね」

ちひろ「幸子ちゃんは、やっぱりティンと来るものがあったから……ですか?」

P「……」


P「特に面白くもない話なんですけど、聞いてもらえますか?」

ちひろ「はい?」

P「昔、うちの父が、とあるアイドルのプロデューサーやってたんですよ」

P「その人、すごい努力家で……ダンスも歌もビジュアルも、申し分無かったんですけど」

P「なんか、鳴かず飛ばずでね……結局、名前が売れる前に業界から消えちゃいました」

ちひろ「……」


P「ギャラもろくに出ないからその人極貧生活してて……よく家で一緒に食事とかしてたんですけど」

P「ある時……丁度幸子が解雇通告受けてた時みたいに、その人と父が話をしてるの聞いちゃったんです」

P「もううちの事務所には置いておけないって……その人も、疲れ切った様子で……肯定してて」

ちひろ「……」


P「あの時の幸子の姿が、その人とダブっちゃって……同情とか憐れみとか、決してそういうのではないですけど」

P「……気が付いたらちひろさんに連絡してたんですよね」

ちひろ「……」


ちひろ「あれにはビックリしましたよ、いきなり『金を用意しろ』ですからね!」

P「いやはや、ご迷惑をおかけしました」

ちひろ「でも、いずれフリーになるんだったら、解雇された後に改めて勧誘すればよかったんじゃないですか?」

P「いやいや、さすがに非常識じゃないですか! ましてやLIVEバトルの相手事務所がそれやったら!」

P「幸子のためにも、後腐れ無い方が良いと思ったんですよ」

ちひろ「でも、Pさん移籍金のために自腹も切ってましたよね?」

P「当時は、うちもまだ弱小新興事務所でしたからねぇ……今でこそそれなりに売れてきてますけど」

P「まあ、一か月もやし炒め生活も、幸子がうちに来てくれた事を考えれば安いもんです……食費的な意味でも」

P「喉元過ぎれば何とやら、今じゃいい思い出ですね」ハハハ

ちひろ「……」


ちひろ「ということらしいですけど、幸子ちゃん?」

P「えっ!?」


   ガチャッ


幸子「プロデューサーさん……」グスッ

P「」


P「ち、ちひろさん! 謀りましたね!」

ちひろ「いやぁ、事務所の外に誰かが居て、私達の話を聞いてたなんて、私の与り知らぬことです」

P「ぐぬぬ……」


幸子「ぷ、プロデューサーさん……そんなに、ボクのこと……」ウルウル

P「あぁ……こんなの聞かせるつもりなかったのに」

幸子「う……うぅぅ……」


幸子「うわあああぁぁん!」ダキッ

P「うわっ! ど、どうした幸子!」

幸子「うぅっ……うわあああん!!」ギューッ

P「ちょっ……ちょっと待って! 離して!」

幸子「うううぅ……グスッ……ううう」イヤイヤ

P「あーもう、しょうがないな」ナデナデ





ちひろ「(これは、幸子ちゃんも陥落しちゃったかな?)」

ちひろ「はてさて、お邪魔虫は退散しますかね」ニヤニヤ

投下終わりです

実際はライバルアイドルに勝つと金もアイドルも貰えるっていう

>>1
>>331 ですよねー 自分もモバマスじゃないけどSSに挑戦して挫折したから、わかるわ。ネタは浮かぶけど文章に出来ないと言うね……

>>1 に質問、>>316 の売れなかったアイドルって誰かイメージ元ってあるの??

やべえ1ヶ月経ちそうになってた、夏は忙しいんよ
時間開けすぎてすみません、これからはちょっとずつ投下していきます

>>332
いずれ書くとは思いますが服部さんです
安易過ぎたかもしれない…


P「(何人かのアイドルからの対応は良くなったけど)」

P「(やっぱりまだ大半から嫌われてるんだよな)」

P「(毎日罵詈雑言浴びせられるのもそろそろ辛くなってきたYO!)」

P「(もういっそ『俺実は女の人苦手なんです、今まで調子こいてすみませんでした!』って、ぶちまけちゃおうかな……)」

P「……」

P「(はぁ……まあいいや、仕事しよう仕事)」

P「菜々ー! ミーティング始めるぞー」


菜々「(今日の予定はプロデューサーさんとミーティングかあ……)」

菜々「(でも、活動方針の相談って言ったって、私の世間のイメージは電波系年齢詐称アイドルって感じで固まってるし…)」

菜々「(他ならぬプロデューサーさんのおかげで!)」


──前回のミーティング──

菜々「ちょっとプロデューサーさん!」

菜々「なんでナナにオファーが来るのは『昭和の歌謡曲特集』とか『懐かしのあの頃』みたいな番組ばっかりなんですか!?」

P「え? だって、菜々そういうの詳しいじゃないか」

菜々「そ……それは……少しは? 古い曲とかも、知ってますけど?」

菜々「でも! 古い曲なら蓮実ちゃんだって詳しいですよ! 蓮実ちゃんじゃダメなんですか?」

P「蓮実は16歳だからなぁ、トークについていけるかどうか分からないし」

菜々「ナナと……えっと、一つ違いじゃないですか!」

P「そう言うなよ、菜々の事を見込んで仕事を取って来てるんだぞ?」

菜々「むむむ……」

P「(実際菜々の昭和ネタの守備範囲は相当広いからなあ)」

P「(ダイヤルでチャンネル合わせるテレビとか俺も見たことないぞ……)」

─────────────


菜々「(今までの印象から、インターネット界隈では『あべななさんじゅうななさい』なんて言われる始末)」

菜々「(アイドル活動自体は凄く楽しいんだけど……)」

菜々「(はぁ、また年齢ネタでいじられるのかなぁ……やだなぁ)」


P「……うん、まあ、ミーティングって言っても殆ど話し合う事なんて無かったな」

菜々「そうですね」

P「……」

菜々「……」


P「ところで……菜々」

菜々「……はい?」

P「あのさ……俺、今まで皆にセクハラ発言繰り返してきただろ?」

菜々「……それが何か?」

P「えっと……俺がさ、実は女性が苦手で、それを誤魔化すためにセクハラしてたって言ったらどう思う?」

菜々「……はい? なんですかそれ」

P「だからその……嫌がらせ目的でやってたわけじゃないというか……」

菜々「……?」

菜々「(女性が苦手なのを誤魔化すため?)」

菜々「(あのプロデューサーさんが?)」


──ちょっと前の新年会──

菜々「来年からも、ウサミン星の人口をドンドン増やしましょうね!」

P「ん、そうだな! 俺も協力を惜しまない所存だ!」カチャカチャ......ジーッ

菜々「ちょっ! なに脱いでんですか!?」

P「え? ウサミン星の人口を増やすんだろう?」

菜々「ファンの数ってことですよ!! この変態!!」バチコーン

─────────────


菜々「(女性が苦手って……」

菜々「ないよ、ないない)」

菜々「(今までのマイナスイメージを払拭しようとして変な事言い出したんだろうけど)」

菜々「(そんな簡単に騙されないから!)」


菜々「プロデューサーさんがどういうつもりでそんな事言い出したのかわかりませんけど」

菜々「プロデューサーさんは、ナナの担当プロデューサーってだけです」

菜々「それ以上でも、それ以下でもありませんから」

P「そ、そうか……(それって良いのか悪いのか分からんな……どうでもいいって思われてるって事かな)」

菜々「お話は終わりですか? ミーティングも終わったならナナは帰りたいんですけど」

P「あ、ああ、わかった……また明日な」


──次の日──

菜々「(とは言ったものの、実際プロデューサーさんはどういうつもりであんな事を……)」

菜々「……」

菜々「(これはアレですね、ウサミンリサーチを実行する時ですね!)」

P「よーし、送っていくから皆車に乗ってくれー」

菜々「(そういえばプロデューサーさんていつも……車に乗る時……)」

菜々「そうだ」ティン!


菜々「ねえ凛ちゃん、ちょっといいですか?」

凛「ん?」

菜々「ちょっと、プロデューサーさんに聞いてみて欲しい事があるんですけど」

凛「? 別に構わないけど、菜々が直接聞けばいいのに」

菜々「……菜々が聞いたら、勘付かれちゃいそうなので」

凛「??」


P「忘れ物は無いか? 車出すぞ」

凛「ねえプロデューサー」

P「ん?」

凛「なんで、助手席には人を乗せないの?」

P「!!」ギクッ

P「(近くに寄られると緊張しちゃうからだとか……言えない)」

凛「後部座席に三人は狭いんだけど」

P「えっと、助手席にはお前達の荷物を置いてるからな」

凛「私達が膝に抱えればいいでしょ」

P「……」


P「……あー、えーとだな……助手席って危ないんだよ」

P「事故が起きた時に被害が大きいのは助手席だって話は多いし」

凛「……」

P「そりゃ、俺だって事故は万が一にも起こさないつもりで運転してるわけだけど」

P「起こる時はどうしても起こるからな」

P「そんな時に助手席に乗ってたせいで、凛の玉の様な肌に傷でもついたら大変だろ?」


仁奈「たまのような肌? でごぜーますか?」

菜々「とっても綺麗なお肌って意味ですよ」

仁奈「菜々おねーさんは物知りでいやがりますね!」

菜々「年の功ってヤツです! ……ハッ!?」

凛「……」


P「……だから助手席にはアイドルは乗せないの!」

P「お前だって俺の隣なんて嫌だろ? はい、この話はお終い!」


──さらに次の日──

菜々「(プロデューサーさんが助手席にアイドルを乗せない理由は危ないから?)」

菜々「(うーん、それっぽくはあるけど……女の人が苦手だからっていう理由もあるように感じる)」

菜々「(これはウサミンリサーチ続行ですね!)」コソコソ


未央「プロデューサー、暇ー」

P「暇なら自主レッスンでもしてなさい」カタカタ

未央「えー、オフの日くらい羽根を伸ばしたいなー」

P「オフなんだったらわざわざ事務所来ることないだろ」カタカタ

未央「プロデューサーだってオフのはずでしょ?」

未央「……ちゃんみおは、ショッピングのお供をご所望であるぞ!」

P「あー、俺はやることがあるから誰か他の人を誘いなさい」カタカタ

未央「……」

未央「そんな冷たい事を言うプロデューサーには、こうだっ!」ダキッ

P「おわっ!! ちょっ! 抱き着いてくるのは止して!!」

未央「えへへー、観念して買い物に付き合うのだー☆」


菜々「(今日プロデューサーさんオフだったんだ……無駄足になるところだった)」コソコソ

菜々「(ていうか、未央ちゃんすっごいベタベタしてる……)」

P「──!」チラッ

菜々「(あ、目が合った)」

P「ほら未央! 菜々が居るぞ! 菜々と出掛けてきなさい」

菜々「えっ……えっ!?」

未央「うーん……プロデューサーがそこまで忙しいっていうなら、しょうがないかな」

未央「して、菜々ちんは暇なんですかな?」

菜々「えっ、ええ……一応」

未央「じゃあショッピング行こう! ショッピング!」

菜々「あわっ! 分かりましたから、引っ張らないでー!」


──さらにさらに次の日──

菜々「(昨日は結局未央ちゃんと歩き回る事になったけど……)」

菜々「(若い子の体力ってスゴイ、改めてそう思った)」

菜々「(未央ちゃんの話だと、プロデューサーさんは実は真面目?な人なんだって言ってたな)」

菜々「(なんだかんだで、プロデューサーさんの事信頼してる子もそれなりに居るんだよね)」

菜々「(でも、その中でも……)」チラッ

加蓮「……」ボーッ

菜々「(加蓮ちゃんの変わり身っぷりにはちょっとビックリですけどね!)」


菜々「加蓮ちゃん、ボーっとして、どうしたんですか?」

加蓮「……あ、菜々ちゃん」

菜々「もしかして、プロデューサーさん関係の事ですか?」

加蓮「……ええっ!?」

加蓮「な……なんでそんなこと……?」アタフタ

菜々「(ここまで露骨に慌てられるとは)えっと、加蓮ちゃんて、プロデューサーさんの事嫌ってたみたいなのに」

菜々「最近は仲が良いみたいなので」

加蓮「……!!」


加蓮「仲が良い? 私とプロデューサーが?」

加蓮「他の人から見て、仲良く見える?」

菜々「え、ええ、仲良く見えますよ!」

加蓮「そっか……良かった……ふふっ」ニヘラ

菜々「!?」


菜々「あの……加蓮ちゃん、プロデューサーさんと何があったんですか?」

加蓮「え? 何がって…………はっ!?」

加蓮「な、何にも無いよ! うん!」

菜々「!!?」

加蓮「私とプロデューサーは、アイドルとその担当プロデューサーってだけだから!」

加蓮「特に詮索されるようなことは無いよ!」

菜々「そ、そうですか! わっかりました!」


菜々「(それにしても、あの加蓮ちゃんをここまでデレさせるとは……)」

菜々「(プロデューサーさん……なんというやり手)」

菜々「(でも、親しくなった子とはむしろ距離を置いてるみたいだし)」

菜々「(って事は、やっぱり……)」


──Pのカミングアウトから一週間後──

菜々「プロデューサーさん……」

P「(なんか凄い気迫!?)な、なんだ?」

菜々「約一週間に渡るウサミンリサーチの結果」

菜々「プロデューサーさんが女性が苦手だという話は事実だと判断しました」

P「(ウサミンリサーチ?)……そ、それで?」

菜々「……どうしてプロデューサーさんは、ナナにそれを話したんですか?」

P「えっ……」

菜々「……」

P「……」


P「えっと、その……だな」

P「菜々ってさ、なんか年齢の割に包容力があるからさ……」

P「もしかしたら、受け入れてくれるかなーなんて……」

菜々「年齢の割にって、だからナナは17……歳……んん?」

P「はは……いい年こいた男が女子高生相手に何言ってるんだろうな……すまん、忘れてくれ」

菜々「(女子高生って……確かにリアルJKとかって言ってたことはあったけど……)」


菜々「えっと……もしかしてプロデューサーさん」

菜々「ナナのこと、ホントに17歳だと思ってるんですか……?」

P「えっ……?」

菜々「あっ……」

P「……」


菜々「えーっと、その……ナナは、永遠の17歳ですから!」

菜々「それで間違いないですよ! はい!」

P「……?」ポカーン

菜々「ああっ! もうこんな時間! レッスンに行かなきゃ!」イッテキマース


   ガチャッ バタン



P「(どういうことだ……?)」

P「(プロフィールには『永遠の17歳』なんてあからさますぎるネタが書いてあったし)」

P「(事あるごとに、狙いすましたかのように『年齢詐称してますよー』とでも言わんばかりの自爆アピールをしてたから)」

P「(てっきりそういう方向性のキャラで売っていくつもりなんだとばかり思っていたけど……)」

P「(17歳で……アイドル目指しつつ色んなバイトを経験(早数年)……よくよく考えたらおかしいよな)」

P「(それにあの古き良き時代に関する豊富な知識……)」

P「……」


P「ちひろさん……ちょっといいですか?」

ちひろ「はい?」

P「あのですね……アイドル達の履歴書を見せてもらってもいいですか」

ちひろ「履歴書ですか? えーっと、どこやったかな」ガサゴソ

ちひろ「あったあった、どうぞ」スッ

P「どうも、少しお借りしますね」


P「(えーっと……安部菜々……年齢は──)」

P「(……19XX年生まれの……X7歳……)」

P「(な……なんてこった……)」


──次の日──

P「菜々……いや」

P「菜々さん……」

菜々「……?」







P「大変申し訳御座いませんでしたァ!!」ドゲザァ

菜々「ええっ!?」


菜々「えっと、プロデューサーさん、どうしたんですか?」

P「いえ……今までの、数々の無礼をお詫びしたく」

菜々「……??」

P「あの、菜々さんの事を、今まで17歳だとばかり思っていまして」

P「その……ね、年齢に関する事で、配慮に欠けるような振る舞いも多かったかと存じます」

菜々「(まさかの、本気にしてたってパターンですか!?)」

菜々「ちょ、ちょーっと待ってください」

菜々「という事はプロデューサーさんは今までナナのこと17歳だと思ってたけど」

菜々「何かの拍子にナナの本当の年齢を知って……それで今までの事を謝ってると?」

P「その通りです、はい」

菜々「……」


菜々「(うわああーこれある意味謝られる方がキツイ!)」

菜々「(ていうか、普通気付くでしょう! 自分で言うのもアレだけどボロ出まくりだったし!)」

菜々「(というかこの状況……落ち着いて、今後の身の振り方を考えないと)」

菜々「……」


菜々「でも、気付かなかったんですか? ナナが……その、年齢を詐称してるって」

P「私が目を通したのは皆さんに関する情報は、自己申告で書いて貰ったプロフィールだけでしたので」

P「例えば、年齢や体重やスリーサイズに詐称があったとしても、私は感知しないという事です」

菜々「え、ええー?」

P「それに、あの……菜々さんは、女子高生と言われても違和感無いくらい可愛らしかったので……」

菜々「かわっ!?」

菜々「(こういうことさらっと言えちゃうあたり、女性が苦手とかいうのが疑わしくなるんですけど……)」

菜々「なんですかそれ……口説いてるんですか」

P「えっ!? い、いえ! そんなつもりじゃなくてですね!」アタフタ

菜々「(なんて……ちょっとからかってみたけど……反応が可愛い)」

菜々「(もう年齢の事とか知られちゃったなら開き直っていいよね)」


菜々「えへへっ♪」

P「!?」

菜々「プロデューサーさんには、ナナの秘密を知られちゃいましたけど」

菜々「ナナも、プロデューサーさんの秘密を知ってるって事ですからね!」

P「あ、あの……気の迷いみたいなものだったので、あの事は忘れて頂けると……」

菜々「それは無理ですねー!」

P「ぐ……変な事言うんじゃなかった……!」

菜々「まあまあ、プロデューサーさんが女の人に慣れる事が出来るように、ナナも協力しますから♪」ダキッ

P「おうふっ! いきなり抱き着いてくるのはらめぇ!」



菜々「プロデューサーさんには、本当のナナの姿……惜しみなく見せちゃいますからねっ!」

投下終了です
睡眠不足時には投下は控えた方がいいね!

6時起きなのに…やべえ

数日後に投下するといったな、あれは嘘だ

ごめんなさい、副業が変わったりしてて立て込んでました
ちょっと投下します


P「(セクハラキャラを止めて早数か月……)」

P「(確かに一部のアイドルからの評価は上がったけど、やっぱりまだ大半は親愛度が-300くらいなんだよな)」

P「(毎日なじられ続けて、そろそろ俺の精神も限界です)」

P「(割とマジで)」

P「(どうすりゃいいんだろうな……もうどうしようもないのかなー……)」ハァ.......


ちひろ「Pさーん! ちょっと、聞いてますかー!?」

P「うわっ! す、すみません、なんでしょう?」

ちひろ「ボーっとして……大丈夫ですか?」

ちひろ「これ、雇用契約書に署名捺印お願いしますね」スッ

P「(あ……もうそんな時期だっけ……)」

P「(今の契約は来月末まで……か)」

P「(これは……そろそろ手を引けっていう啓示かもな……)」


P「あー……ちひろさん」

P「次回の契約更新なんですが……しないという方向で、お願いします」

ちひろ「えっ……」

P「……」




ちひろ「えっ?」


ちひろ「ど、どういうことですかPさん!」

P「あの……やっぱり俺、プロデューサー業……向いてなかったみたいです」

P「これ以上続けていく自信が無いんですよ」
ちひろ「ど、どういうことですかPさん!」

P「あの……やっぱり俺、プロデューサー業……向いてなかったみたいです」

P「これ以上続けていく自信が無いんですよ」

ちひろ「何言ってるんですか! ここまで事務所が大きくなったのも、Pさんの手腕があってこそですよ?」

P「事務所が大きくなったのは主にアイドルの皆と、その素質を見抜いてスカウトしてきた社長のお陰です」

P「あと、裏方で頑張ってくれてるちひろさんですね」

P「俺なんか、皆に嫌がらせしてむしろ足引っ張ってたようなもんですよ」

ちひろ「(……やたら卑屈になってるなあ)」


ちひろ「……要するに、皆からの対応が冷たくて凹んじゃったって訳ですね」

P「(くっ……ずけずけと言ってくれる!)」

P「概ねその通りです……もう限界なんです!」

P「俺のカバーガラスの如きハートはもう大分前から粉微塵なんですよ!」

ちひろ「カバーガラスって……脆過ぎでしょう」


ちひろ「というか、それってそもそもPさんが原因じゃないですか」

P「そうです、俺が全面的に悪いんです」

ちひろ「そこは認めるんですね」

P「キャラを作って接するなんて浅知恵……正直失敗でした」

ちひろ「失敗って……そんな軽々しく……」

P「まあ、その点は俺も手探りだったものでご容赦願いたいところなんですが」

P「いずれにせよ、今のまま続けたところでいずれ綻びが出る……というか、既に出てるか……」

P「だったら、俺の代わりのプロデューサーでも雇い直してもらった方が得策ですよ」

ちひろ「(変に開き直っちゃってる……これは手強いですね)」


P「そもそもですね、社長の話では、まずは三ヶ月くらい試してみて~ってことだったのに」

P「その社長がどこか行っちゃって、なあなあのままにプロデューサーを続けてるんですよ」

P「最初に聞いていた話と違うっていうのは、十分辞める事由にはなると思うのですが」

ちひろ「(そのことに関してはぐうの音も出ない……って! 悪いのは社長ですけど!)」


ちひろ「で、でも、いきなりそんなこと言われても、困りますよ」

ちひろ「今Pさんに居なくなられたら、事務所が回らなくなっちゃいます」

P「……問題ないですよ、今の俺の仕事といったら送迎と営業くらいですから」

P「送迎は運転できる大人組に協力してもらうとして、営業はアイドル一人で行ってもらえばいいんです」

ちひろ「(いやいや……流石に無茶でしょう)」


ちひろ「仮にPさんが辞めたとして、残されたアイドルはどうなるんですか」

P「そんなの、俺の知ったことじゃないですよ」

ちひろ「っ!?」

P「今うちの事務所で稼ぎ頭と呼べるアイドル……例えば凛ですけど」

P「あの子なんか一人で仕事行っていますし、営業なんてして回らなくても勝手に仕事入ってくるくらい人気ありますから」

P「俺が居なくなっても問題無いと思います」

ちひろ「そりゃ凛ちゃんはベテランだからですよ! 他の大半の子はまだ一人でやっていくのは無理ですって!」

P「もし、俺が居なくなることでアイドルを続けられなくなる子が出てくるとしても」

P「それはまあ、言ってしまえば、それまでだったってことじゃないですかね」

ちひろ「そんな他人事みたいに……」


P「それに、よくよく考えてみてください」

P「今現在うちに所属している大半のアイドルは、プロモーション費用とかレッスン代とか考えると」

P「事務所に居てもらっていても収益的には赤字じゃないですか」

ちひろ「ちょ、ちょっと待って下さい……何を言って……」

P「つまり、事務所を運営していく上で本当に必要なのはさっきも言った一部の売れっ子だけで」

P「その他の大勢のアイドル達は居なくなっても特に損害にはなりませんし」

ちひろ「ちょ……」

P「まあ、今までにかけた手間とコストの回収は出来なくなりますけど」

P「逆に、居なくなったら居なくなったでその分他に回せる資金が増えるという事にもなりますから」

P「事務所的にも、むしろ好都合「Pさん!」」

ちひろ「Pさんあなた、何て事言うんですか!!」

P「……」


P「……とにかく、俺としては、このままプロデューサーを続けるのは厳しいんです」

P「体力的にも楽じゃないですけど……それ以上に、精神的に……」

ちひろ「……」

P「ちひろさんの言い分は尤もです、俺の勝手なわがままだってことも理解してます……けど」

P「これ以上は……無理です」


ちひろ「(うーん……さっきのまくし立てる感じからすると、一時的に参っちゃってるだけのようにも思うんだけど)」

ちひろ「(いつものPさんなら、あんな心にも無いことを言うはず無いし……)」

P「だから……本当に申し訳ないんですけど……もう、辞めさせてください……」

ちひろ「(どうしよう……どうにかして引き止めないと……)」



   ドサッ



Pちひろ「ん?」クルッ




泰葉「……」ボーゼン

Pちひろ「」


ちひろ「(物音の方に顔を向けると、事務所の入り口に立ち尽くす泰葉ちゃん……)」

ちひろ「(これはアカン)」


P「や、泰葉……来てたのか……荷物、落としたぞ?」

泰葉「……トレーナーさんの所でのレッスンを終えて……帰る前に事務所に顔を出しておこうと思ったんです……けど……」



──十数分前──


トレーナー「それじゃあ、今日のレッスンはここまで!」

「「「ありがとうございましたー!」」」


    ワイワイガヤガヤ


トレーナー「泰葉ちゃん、お疲れ様です」

泰葉「あ……トレーナーさん、お疲れ様です」

トレーナー「泰葉ちゃん、最近調子良いですね」

泰葉「? そうですか?」

トレーナー「はい! 以前はもっとこう……なんというか、乗り気でないような感じがしたんですけど」

泰葉「……」


泰葉「……そうですね」

泰葉「確かに、少し前まではその通りでした」

泰葉「せっかくトレーナーさんにご指導して頂いていたのに……すみませんでした」

トレーナー「あ、いえいえ! こちらこそ、責めるみたいになってしまってごめんなさい」

トレーナー「ただ、最近の泰葉ちゃんは元気も良いし、楽しそうにレッスンを受けてくれているので」

トレーナー「私としても嬉しいなーと、そう思っていたものですから」

泰葉「楽しそう……ですか?」

トレーナー「はい、とっても」ニコッ

泰葉「そ、そうですか……」テレッ

トレーナー「その調子で、これからも楽しんでやっていきましょう」

泰葉「はい、今後ともご指導のほど、よろしくお願いします」ペコリ


泰葉「それでは失礼します、ありがとうございました」

トレーナー「はい、暗くなってきてるから、気を付けて帰ってね」


泰葉「(楽しそう……か)」

泰葉「(トレーナーさんの言う通り、最近は毎日楽しい……)」

泰葉「(レッスンやお仕事もそうだし、事務所でみんなとお喋りしたり……)」

泰葉「(少し前の私からは考えられないな……)」

泰葉「……ふふっ」


泰葉「(これもやっぱり、Pさんのお陰……だよね)」

泰葉「(Pさんが私のこと見ていてくれてるから……)」

泰葉「(『よく頑張ったな』って褒めてくれるから、アイドルをやるのも楽しいって思えるようになった)」

泰葉「(少しずつだけど人気も出てきたし、このまま頑張ればなれるのかな……トップアイドルに)」

泰葉「(……Pさんと一緒なら……きっとなれるよね)」



泰葉「(そんなこんなで事務所に着いたけど……)」

泰葉「(Pさんとちひろさん、何か言い争ってる……?)」ソーッ

P「──このままプロデューサーを続けるのは厳しいんです」

泰葉「(……えっ)」

泰葉「(Pさん……何を言って……)」

P「もう、辞めさせてください……」

泰葉「」

─────────────


ちひろ「(そして今に至る……ということですね!)」

ちひろ「(泰葉ちゃんに聞かれていたとなると……とりあえず、様子を見ておこう)」


泰葉「プロデューサー……辞めるって、どういうことですか」

P「……聞いてたのか」

泰葉「答えて下さい!」

P「辞めるんじゃないよ、契約更新しないだけ」

泰葉「同じ事じゃないですか!」

P「……」

泰葉「いきなり辞めるだなんてそんな……どうして」

P「……疲れたんだ……プロデューサー続けるの」

泰葉「え……?」


泰葉「つ、疲れたって……」

P「そのまんまの意味だ」

P「疲れちまったんだよ……これ以上続けられないくらい」

泰葉「なんですかそれ……」

泰葉「そんな訳のわからない理由で……無責任じゃないですか!」

P「契約満了までは働くよ、社会的な責任は果たしているだろう」

泰葉「屁理屈こねないで下さい!」


泰葉「大体、私のことトップアイドルにしてくれるって」

泰葉「プロデューサー、そう言ったじゃないですか!」

P「確かに、泰葉ならトップアイドルになれるとは言った」

泰葉「っ! だったら!」

P「けど、俺の手でトップアイドルにするとは言っていない」

泰葉「っ!?」

P「泰葉の才能なら、俺なんか居なくたってトップアイドルになれるさ」

ちひろ「(これはないわー)」


泰葉「……」

P「……」

ちひろ「……」

泰葉「……です」ボソッ

P「なんだって?」

泰葉「……私のこと焚き付けるだけ焚き付けておいて、自分は突然居なくなるなんて……」

泰葉「そんなの卑怯です!」

P「……」

泰葉「……」

P「子供の頃から芸能界に身を置いてて、今更何言ってるんだ」

P「大人が卑怯だなんてこと、泰葉はとっくの昔から知ってたはずだろ」

泰葉「っ!!」

ちひろ「(これはPさんをひっぱたいてでも止めた方がいいかもしれない……)」

ちひろ「(けど、割り込める空気じゃない……)」


泰葉「……ひどいです」

泰葉「あなたと一緒なら、アイドルを続けられるって」

泰葉「トップアイドルにもなれるって」

泰葉「それで頑張ってきたのに……そんな……」

P「……」


泰葉「初めてだったんです」

泰葉「今まで、芸能界で生きてきた中で、プロデューサーだけだったんですよ」

泰葉「私のこと、あんな風に見てくれた人は」

P「……っ」

泰葉「それなのに、あなたが居なくなったら……私……また一人になっちゃう」

泰葉「……見捨てないで……下さい」ツーッ

P「っ!?」


P「(な……なんで泣くんだよ……俺が居なくなるってくらいで……)」

P「や、泰葉は……大げさだなあ」

P「俺が居なくなるって聞いたら、小躍りしだす子の方が多いだろ……多分」

泰葉「それでも……私は、Pさんと……」

P「(Pさん!?)」

泰葉「Pさんが居なくなったら……私、アイドル続けられません」

P「……」


泰葉「もう……さびしいのだけはいや……だから……」ボロボロ

泰葉「ひとりにしないで……」ボロボロ

P「(こわいから目を見開いたまま涙流すのやめてください!)」


ちひろ「泰葉ちゃん……大丈夫よ」スッ

泰葉「……?」

ちひろ「Pさんは辞めさせないから、落ち着いて……ね?」コソッ

泰葉「ふぇ……?」

ちひろ「とりあえずあの人で無しと話を付けてくるから、泰葉ちゃんは座ってて……きっと大丈夫だから」

泰葉「ちひろさん……グスッ……わかりました……」


ちひろ「ということで……Pさん?」

P「ち、ちひろさん……」

ちひろ「泰葉ちゃんのこと追いつめて、泣かして……満足ですか?」

P「そんなわけないでしょう……というか、そもそもなんで泣かれたのか」

ちひろ「本気で言ってるんですか」

P「……」


ちひろ「Pさんが辞めるって聞いて傷つく子は、泰葉ちゃんだけじゃないですよ」

P「……え?」

P「だって……皆俺の事嫌って……だから、辞めた方がお互いの為だって……」

ちひろ「はぁ……子供みたいに拗ねるのもいい加減にして下さい」

P「っ!」

ちひろ「確かにPさんのことを勘違いして嫌ってるアイドルは今でも多いですけど」

ちひろ「信頼してくれてる子だって居るんですからね」

ちひろ「……Pさんだって、本当は分かってるんでしょ?」

P「……」

ちひろ「だから、軽々しく辞めるだなんて、言っちゃダメですよ」

P「う……」


P「じゃあ、俺はどうしたらいいんですか……」

P「もう、汚物を見るような目を向けられるのは耐えられないです」

ちひろ「……確かに毎日の様に自分を嫌ってる相手と接していれば、ストレスが溜まって自棄になって」

ちひろ「『もうプロデューサー辞める~』なんて言い出しちゃうのも、分からないではないです」

P「(何その言い方……)」


ちひろ「そうですね、もうこの際、無理してキャラを作る必要も無いんじゃないですか?」

P「……というと?」

ちひろ「今のまま過ごしていても、これ以上関係の改善が見込めないのであれば」

ちひろ「仲良くなろうとか考えずに、Pさんがストレス無く過ごせるようにした方がよろしいかと」

P「なるほど……」


ちひろ「とにかく! もう『辞めたい』とか言い出すのは無しにして下さいね」

ちひろ「(万が一にもそんな事聞かれないようにしないといけない子は、泰葉ちゃんだけじゃありませんし)」

P「それは……分かりませんよ」

ちひろ「(まだ言うか)」


ちひろ「それなら……Pさんが事務所を辞めるっていうなら、私も一緒に辞めます」

P「えっ!?」

ちひろ「もしそうなったら、いよいよこの事務所も終わりですねー」

P「な、何を……」

ちひろ「関係各所にも影響出て、アイドル以外にも路頭に迷う人が大勢出ちゃいますねー」

P「……ちひろさん……本気ですか」

ちひろ「無論です」

ちひろ「(どの道Pさんが居なくなったら、私が残ってても事務所潰れちゃいます)」


ちひろ「さあ、駄々こねても辞められないって事が分かったら、泰葉ちゃんの所に行ってあげてください」

P「くっ……分かりましたよ」


P「泰葉……」

泰葉「……」フイッ

P「(顔背けられた……)」

P「辞めるなんて言って悪かったよ……ごめんな」

泰葉「……グスッ」

P「最近さ……精神的にちょっと参っててさ……あんな事言うなんてどうかしてた」

P「いや、言い訳がましいな……どう取り繕っても、泰葉のことを傷つけたのは事実だ」

P「だから……ごめん」

泰葉「……」


泰葉「プロデューサー……辞めないんですか?」

P「(相変わらず顔は合わせてくれない)……辞めないよ」

泰葉「私と一緒に……居てくれますか?」

P「ああ、約束する……もう、泰葉を一人にはしない」

泰葉「っ!」

P「……」

泰葉「……なら……いいです」ボソッ

P「え?」

泰葉「プロデューサーが酷い事を言ったのは、水に流します」

P「(プロデューサー呼びに戻った)そうか……ありがとな」


泰葉「それと、もう一つ約束して下さい」

P「ん?」

泰葉「私のこと……プロデューサーの手で、トップアイドルにしてくれるって」

P「分かった……約束するよ」

泰葉「……それだけ聞ければ……いいです」スクッ

P「? どこ行くんだ?」

泰葉「っ! か、顔を洗ってくるんです!」

P「そ、そうか……いや、ごめん」

泰葉「はぁ……」スタスタ


ちひろ「Pさん、ちゃんとフォロー出来ました?」

P「えっと……多分……」

ちひろ「世話が焼けるなあもう……」

P「……すみません……ご面倒をおかけしました」

ちひろ「まあ、あまり溜め込まないことですよ……愚痴ぐらいなら聞いてあげますから」

P「はい……ありがとうございます」

ちひろ「……なにしょぼくれてるんですか」

P「いえ……我が身の不甲斐なさに」

ちひろ「はあ……あ、泰葉ちゃん戻ってきたから、送ってあげて下さい」

ちひろ「今日はもうそのまま帰ってくれていいですから」

P「で、でも」

ちひろ「P、あなた疲れてるのよ……」

P「え……?」

ちひろ「ゴホン! とにかく! 今日はもう仕事切り上げて休んでください」

ちひろ「それで、冷静になった後気の迷いで変な事言っちゃったってのたうち回ってください」

P「なんですかそれ……まあ、今日の所はお言葉に甘えさせて貰います」

ちひろ「はいはい……ほら、行った行った」シッシッ


P「あ、泰葉……折角だから、寮まで送るよ──」


   ガチャ バタン


ちひろ「……ふぅ」

ちひろ「(Pさんが辞めるなんて言い出した時はどうしようかと思ったけど)」

ちひろ「(これで大丈夫かな……大丈夫よね?)」

ちひろ「……」


ちひろ「Pさんが居なくなられたら……私だって、悲しいんですからね」

ちひろ「なんてね……あーあ、早く仕事進めないと……」

終わりです

岡崎先輩は幸せにしたい(なって欲しい)アイドル筆頭ですわ
泣かせちゃってごめんネ!

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