まどか「本当の私と向き合えますか?」(747)

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

ほむら(何度やっても自己紹介は緊張するわね)

ほむら(そしてそれ以上に、まどかの視線が辛い)

ほむら(今度こそ、今度こそあなたを)ジッ

まどか「……」ニコニコ

ほむら(……なんであんなに嬉しそうなのかしら)


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ほむら(もしかして自己紹介がおかしかった!?い、いえこれまでのループと変わらない挨拶をしたはず)

ほむら(それとも服装?家を出る前にちゃんと鏡を見たはずだけど…)

ほむら(もしかして寝癖?靴が汚れてる?それとも…)

早乙女「あのー暁美さん。そろそろ座ってもらえると……」

ほむら「す、すみません!?」

休み時間

ほむら(はぁ、さっきは恥ずかしかったわ)

ほむら(さて、クラスメイトと適当に話したら、まどかを連れて…)

モブ子「暁美さーん」

ほむら「なにかしら」

モブ子「暁美さん、前はどんな学校に「暁美さん!」……あれ?どったの、まどっち?」

まどか「暁美さん。私、鹿目まどか。このクラスの保健委員なんだ」

ほむら「ええ、よろしく」

ほむら(あれ?こんなに積極的な子だったかしら?)

まどか「みんなごめん、暁美さん休み時間は保健室行かなきゃいけないんだ」

モブ子「そうだったの、ごめんね暁美さん。引き止めちゃって」

ほむら「いいえ、そんなこと」

まどか「行こ、暁美さん」グイッ

ほむら「ええ、じゃあみんな。また後で」

ほむら(クラスメイトとの会話を遮り、転校生の腕をつかんで保健室へ連れて行く)

ほむら(おかしい、なにかがおかしい)

まどか「それにしても自己紹介の時のほむらちゃん可愛かったなぁ。あ、『ほむらちゃん』って呼んでいい?私のことも『まどか』って呼んでいいから」ニコニコ

ほむら「え、ええ」

ほむら(なんか、こう、自信に満ちているというか……自信?)

まどか「ほむらちゃんの名前ってさ、なんかかっこいいよね。燃え上がれーって感じ」

ほむら(まさか!?)

ほむら「まどか!」

まどか「うぇ!?ど、どうしたの?」

ほむら「まほ…」

ほむら(……ここで『魔法少女なの?』なんて聞いたら、いつかの二の舞よね)

ほむら「もし魔法少女になれるとしたら、なる?」

ほむら(あれ?これもけっこう恥ずかしいこと言ってない?)

まどか「え、魔法少女?……好きなの?」キョトン

ほむら「いえ、まったく」

まどか「???」

ほむら(よし、この反応。まどかは魔法少女になってない、セーフ)

ほむら(私のなにかがアウトになった気がするけど、セーフ)

ほむら(さて、お昼ね)

まどか「ほむらちゃん、一緒に食べよう」

ほむら「ええ」

ほむら(よかった、距離を取られたりしなくてよかった)

さやか「なんだー、まどかは転校生にもう懐いちゃったのか」

仁美「今日はまどかさん、暁美さんにべったりでしたわね」

まどか「そんなことないよー」

さやか「そんなことあるって。体育で転校生が走ったあとなんて、お説教とかしちゃってさ」

まどか「だ、だってほむらちゃん前まで入院してたんだよ。あんなに激しい運動しちゃダメだよ」

仁美「確かにすごかったですわね、先生もびっくりしてましたわ」

ほむら「そういうのも含めて、大丈夫になったから退院したのよ。本当は薬も飲まなくていいぐらいなのだけど」

まどか「ダメだよ、お医者さんの言うことはちゃんと聞かなきゃ」

ほむら「そうね、気を付けるわ」

まどか「そうだ、ほむらちゃん今日は放課後ヒマ?街を案内してあげる」

ほむら「残念だけど、今日は引っ越しの片づけとかをしなくちゃいけないの」

まどか「そっか。あ、片づけのお手伝いとか必要だったりしない?」

さやか「こらこら、あんたは転校生のお世話係にでもなる気かね」

ほむら「ありがたいけど遠慮しておくわ。お客さんにそんなこと、させられないもの」

まどか「そう、なら仕方ないね」

仁美「本当に暁美さんがお好きなんですのね」

さやか「なにー、そんなのさやかちゃん認めないぞー!」

まどか「もう、さやかちゃんったら」

ほむら(……楽しい)

ほむら(今度こそ、この幸せな時間を)

CDショップ

さやか「よし、これ買おうかなっと」

まどか「それ上条くんに?」

さやか「まあね、あいつも退院できればいいんだけど」

『助けて』

まどか「!?誰か助けを呼んでる!!」ダッ

さやか「ちょ、急に走りだしてどうしたの!?今のあんたすっごい不思議ちゃんだよ!」ダッ

さやか「ああ、CDもどさなきゃっ」コトッ

さやか「まどかー」ダッ

ほむら「くっ、待ちなさい!」バンッバンッ

QB「……」サッサッ

QB『助けて、助けてまどか』

ほむら「待ちなさいったら!」

まどか「ほむらちゃん!?」

さやか「なにやってんのさ転校生!?」

ほむら「まどか!?」

ほむら(まどかを呼ぶとは、この淫獣。……楽しい時間も終わりね)

ほむら「そいつを渡して、まどか」

QB「うう……助けて、まどか」

さやか「こいつ喋った!?」

まどか「……」

まどか「ねえさやかちゃん、どうしようかコレ」

さやか「ええっ!?そりゃ渡しちゃダメでしょ、怪我してるし」

まどか「そっか…そうだよね」

まどか「そんなことより、ほむらちゃん」

ほむら(そんなこと!?)

まどか「ダメだよこんな場所で遊んじゃ。よく知らない街で、もしもの事があったらどうするの!」

さやか「あのー、まどかさん?今まさに『もしもの事』が起きてるような」

まどか「退院したからって、油断しすぎだよ。人より丈夫じゃないのは変わらないんだから!」

まどか「しかも魔法少女?のコスプレなんかして。好きじゃないんじゃなかったの!」

ほむら(なんで?なんでインキュベーター放置で説教が始まってるの?)オロオロ

ぐにゃあ

さやか「うわ、なんか景色が変な感じに!?」

ほむら(しまった!?)

まどか「なに、これ?」

ほむら「二人とも、じっとしてて」カチャッ

さやか「ええ!?その銃、本物!?」

ほむら「黙ってて」

使い魔『キキキキキキ』

ほむら「あなたたちは、私が守るから」

マミ「それは信用ならないわね」

ほむら(くっ、こんな面倒な時に)

マミ「私の友達に随分と酷いことしてくれたそうじゃない」

まどか「あなたは?」

マミ「私は巴マミ、その子と同じ魔法少女よ」

さやか「魔法少女!?」

まどか「……」ジー

ほむら(視線を感じる、まどかの刺すような視線を感じる)

ほむら「いろいろ言いたいことはあるだろうけど、まずはこの結界をどうにかするのが先じゃないかしら」

マミ「そうね。あなたがその子たちになにもしなければ、だけど」

ほむら「二人を守るといったのは嘘じゃないわ」

マミ「……いいわ、今は信じてあげる」

マミ「ただし、巻き込まれたくなかったらあなたはそこから動かないことね!!」

さやか「なにあれ、変身したと思ったら、どこからともなく銃が!手品じゃないよね?」

さやか「すごい、すごいや本当に魔法少女みたい」

ほむら「『みたい』じゃないわ。正真正銘、魔法少女なのよ」

ほむら(相変わらず、さすがね巴さんは)

まどか「…………」

さやか「かっこいいなぁ、あたしもなれないかなぁ」

ほむら「っ!?それは」

マミ「そのことについて、話があるから私の家に来てくれない?」

ほむら「一般人に余計なことを」

マミ「あら、悪いけどあなたに家の敷居をまたがせるわけにはいかないわ。キュウべえのこと、許したわけじゃないんだから」

ほむら(……いつかはこうなることぐらい、わかってた)スタスタ

まどか「…………」

マミホーム

さやか「うーん、願いとかいきなり言われてもわからないなぁ」

マミ「焦ることはないわ、時間はあるんだから」

さやか「マミさんは何を願ったんですか?」

マミ「私は……事故で死にかけていたときにキュウべえに会ったから」

さやか「あ…す、すみません」

マミ「いいの、気にしないで」

まどか「ほむらちゃんも魔法少女なんですよね?」

まどか「ほむらちゃんはどうしてキュウべえを襲ったのかな?」

QB「僕がいなくなれば魔法少女は生まれないからね。君たちが魔法少女になって、グリーフシードの取り分が減るのを恐れたんだろう」

さやか「なにそれ、ひどくない!?」

QB「グリーフシードは魔法少女が活動を続けるのに必要だからね、どうしても取り合いになるんだ」

マミ「残念な話だけど、自分のためにまわりを犠牲にする。そんな魔法少女も少なくないのよ」

まどか「……ねえ、ソウルジェムが濁りきったら魔法少女はどうなるの?」

QB「魔法が使えなくなるよ、そして魔法少女としての一切の働きが不可能となる」

まどか「じゃあ、濁りきったソウルジェムにグリーフシードを使ったらもとに戻るの?」

QB「それは無理だ、一度濁りきったソウルジェムがもとに戻った事例はないよ」

マミ「だから魔法少女は常にグリーフシードの残量には気をつかってるの」

さやか「けっこう大変なんだなぁ、正義の味方も」

マミ「そうね、でもそれが魔法少女の使命だから」

学校

モブ子「暁美さん、お昼一緒していい?」

ほむら「ええ、いいわよ」

モブ子「あれ、いいの?てっきりまどっちと食べるのかと」

ほむら「今日は約束してないのよ」

ほむら(昨日はあんなにかまってくれたのに、今日は話しかけてもくれない)

ほむら(予想通りよ。あんなことがあった後じゃ、当然よね)

モブ子「そっかー、でも正直昨日のまどっちにはびっくりしたなー」

ほむら「いつもは違うの?」

モブ子「違うっていうか、暁美さんどっちかっていうと気の強そうな見た目でしょ?まどっち人見知りだから、暁美さんのこと怖がると思ったのに」

ほむら(いつもは人見知り?だったらなんで昨日はあんなに……)

ほむら(わからない、まどかの気持ちが)

放課後

さやか「さて、やってきました魔法少女体験ツアー!!」

まどか「…さやかちゃん、声大きいよ」ハァ

さやか「まあまあ、初回なんだからテンション高めに!むしろ、まどかはなんでそんなにテンション低いのさー」

マミ「ふふ、美樹さんやる気十分ね」

さやか「ええ!ところでさっきからソウルジェム出してなにやってんですか?」

マミ「こうやって魔女を探知してるの」

さやか「なんか、地味ですね」

マミ「地道な努力っていうのよ」

さやか「かれこれ歩き続けて三十分、なかなかいませんね、魔女」ガックシ

まどか「平和なのはいいことだよ」

さやか「そりゃそうだけどさ、もう一度みたいじゃん、マミさんの変身」

まどか「私はべつに…………っ!?」ピクッ

マミ「あら、どうしたの、鹿目さん?」

まどか「え、ええと。あそこの、あそこのケーキ屋さん、前にモブ子ちゃんが美味しかったって言ってて、その」

マミ「あらあら、だったらちょっと休憩しちゃいましょうか」

さやか「あはは、まったくまどかは食いしん坊だなぁ…………マミさんっ!?人が!!飛び降りようとしてる!!」

マミ「え?…いけないっ!!」ダダッ

マミ(気づくのが遅れた!間に合って!!)

さやか「はぁ、はぁ。マミさん走るの速い……って、女の人は?」

マミ「無事よ、あと少し見つけるのが遅れてたら間に合わなかったわ。ありがとう、美樹さん」

さやか「えへへ、でもあのタイミングから助けられるマミさんも凄いですよ。さすが正義の魔法少女!」

マミ「ええ、本当に助けられてよかった」ホッ

まどか「…………」

マミ「いまからケーキって気分でもなくなっちゃったわね。私はこの人の介抱をするから、今日はここで解散ね」

さやか「うん、しかたないよね。まどかも、ほら元気だしな」

まどか「うん……」

学校

ほむら(どうやら巴さんは二人を連れて見学ツアーをしているらしい)

モブ子「暁美さん、はいクッキーあげる」

ほむら「あら、どうしたのこれ?」

ほむら(できればあまり魔法少女に関わるようなことはしてほしくないけれど、言ってやめるような人でもないし……)

モブ子「さっき職員室で先生がくれたんだー」

ほむら「それならあなたが食べればいいのに」

ほむら(それになんだか、まどかがツアーに乗り気じゃないように見えるのも気がかりね。いいことではあるんだけど)

モブ子「ああ、あたし甘いのダメだから」

ほむら「そう、ならいただくわ」

ほむら(あら、美味しい)

今回はここまでです。読んでくれた方、ありがとうございました。

放課後

さやか「さてさて、やってきました魔法少女体験ツアー実戦編」

マミ「美樹さん?もう結界内なんだからお静かにね」

さやか「はーい、すみません」

まどか「……」

さやか「あれ?まどか、どうしたの黙っちゃって?気分悪い?」

まどか「ううん、ただ変わった場所だなって」

マミ「そうね、でもすぐに慣れるわよ」

マミ「っと、着いたわ」

魔女『ギュラギュラギュラギュラギュラ』

さやか「うわ、なにあれ!?グロい!」

まどか「あれが、魔女……」

マミ「さてと、可愛い後輩にかっこいいとこ見せないとね!」パァァ

さやか「やった、ほらまどか!マミさん変身したよ!」

まどか「う、うん。私も見てるよ」

さやか「ほらマミさん戦ってる!マミさん魔女と戦ってるよ!!」ガクガク

まどか「見えてる、見えてるから揺らさないでー」クラクラ

魔女『ギャアアアアアアアアアア』

さやか「うわ!?必殺技だ!!すごいやマミさん、あんなに気持ち悪かった魔女をあっさり倒しちゃったよ!やっぱマミさんかっこいい!マミさーん」タッタッタッ

まどか「……すごいね、本当に」

魔女『』シュワァァァァァァ

まどか「凄すぎるよ」

さやか「いやー魔女ってのもけっこう呆気なかったですね」

マミ「今回はうまくいっただけよ」

マミ「全部が全部こんなに楽なわけじゃないんだから、魔法少女の仕事が命懸けなのに変わりはないわ」

ほむら「そうね、そう思うのなら勧誘なんてしないでほしいのだけど」

まどか「ほむらちゃん!?」

マミ「……あらストーカー?趣味悪いのね」

マミ「魔法少女になるかは二人が決めることよ。あなたにとやかく言う権利はないわ」

ほむら「あなたは魔法少女の仲間を欲している。権利というのなら、あなたにだってそんなものはない。これ以上、一般人を連れまわすのはやめなさい」

マミ「知らなきゃ悩むこともできないでしょ?行きましょう、二人とも」

ほむら「どこへ行く気?」

マミ「今から私の家でお茶会をするのよ。言っておくけどついてこないでね、ストーカーさん?」

さやか「あ、マミさん。あたし今日、用事があるので無理です」

まどか「え、ええと。私も……」

マミ「あ、あらそうなの?」

さやか「じゃあ、マミさんまた明日。…転校生もまた明日」タッタッ

まどか「ええと、さようなら」ペコッタッタッ

マミ「…………」

ほむら「…………」

マミ「……誘わないわよ」

ほむら「……行かないわよ」

病院

さやか「恭介、お見舞いに来たよー」ガラッ

恭介「やあ、さやか。いらっしゃい」

さやか「今日も新しいCD持ってきたよ」

恭介「……そう」

さやか「あ、あれ!?お気に召さない?一応お店のおすすめの中から選んだんだけど」

恭介「ううん、ありがとう。じゃあ隣においでよ、一緒に聞こう」

さやか「うん」チョコン

さやか(恭介……)

恭介「いい曲だったよ、さやかはいつもいい物を見つけてくるね」

さやか「まあね、今回はおすすめから選んだってのもあるけど」

さやか「……恭介が好きそうなの選んだからね」

恭介「…そうだ学校のみんなはどう?鹿目さんとか」

さやか「まどか?まどかはなんか最近、考え事してる姿をよく見るんだよね。あの子悩みとか人に相談しないタイプだから心配でさー」

さやか「仁美は相変わらず毎日忙しそうだし、前に話した転校生もクラスに馴染んだみたい」

恭介「へえ、会ってみたいな」

さやか「あはは、『転校生は美人さんだ』ってあたしが言ったからでしょ?」

恭介「そんなんじゃないってば」

さやか(マミさんは転校生のこと、悪い奴かもって言うけど、あたしにはまだよくわからない)

さやか(キュウべえを虐待してるのは見たし、その後もことあるごとにあたし達に契約するなって言ってくるから、マミさんの言う悪い魔法少女っていうのは正しい気はするけど)

さやか(たとえ悪い魔法少女だとしても、悪い人だとは思えないんだよね)

さやか(初めて結界に取り込まれたとき、まっさきにあたし達を守ろうとしてくれたし)

さやか(それ以上に一日だけとはいえ、べったりだったまどかに困った顔はしても嫌な顔はしなかった)

さやか(うーん、わからん。結局どっちなのか。いい奴?悪い奴)ムムム

恭介「……やか!さやか!どうしたのさ、ぼーっとして」トントン

さやか「うわぁぁっ!!ちょ、ちょっと考え事を…」アワワ

恭介「ははは、なんださやかも鹿目さんと同じじゃないか」

恭介「ありがとう、さやか。いつもお見舞いにきてくれて」

さやか「え、いいよいいよ。幼馴染なんだから、このくらい」

恭介「幼馴染でもさ。ありがとう」

さやか「も、もういきなりどうしたのさ?恥ずかしい奴だなぁ、まったくー」テレテレ

さやか「そうだ、そこの花瓶!せっかく綺麗な花瓶なんだから、空っぽなんてもったいないよ」

さやか「こんど何か買ってこようか?」

恭介「花?いいよ、そんなの。さやかにはもう、いろいろしてもらってるし」

さやか「そう?遠慮しなくていいのに」

恭介「それに……」

学校

さやか「それで恭介の奴ったらさー」

さやか「『さやかには花なんてわかんないでしょ』とか言うんだよ!」

さやか「さやかちゃんもうら若き乙女なんだぞー!!」プンスカ

まどか「あはは、上条くんらしいや」

仁美「さやかさんは、その、少々男らしいところがありますから…」

さやか「もう怒った!花なんてわからないさやかちゃんは、絶対花なんて持っていってやるもんか!」

まどか「それでもお見舞いには行くんだね」コソコソ

仁美「CDは持っていくのでしょうね」コソコソ

さやか「聞こえてるぞ、そこー!!」プンプン

放課後

さやか「まったくまどかも仁美もからかって」テクテク

まどか「ごめんってば、だからこうしてお買いもの付き合ってるでしょ?」テクテク

さやか「まったくもう」

QB「やあ、どこへ行くんだい?」

まどか「っ!?」

さやか「ちょっと、キュウべえ!まどかが嫌がるから、あんまり出てこないでって言ったでしょ」

QB「そうは言っても、素質のある子に契約を持ちかけるのが僕の役目だからね」

QB「それに僕の容姿は君たち思春期の少女にとって一般的に警戒をとく、いわゆる『かわいい』と呼ばれるもののはずだよ」

さやか「それを自分で言っちゃうあたりがダメなんじゃないの?ほら、まどかもそんなに距離とらないの、噛んだりしないから」

まどか「ち、違う。さやかちゃん、あれ」スッ

さやか「あれは、壁にグリーフシードが刺さってる!?」

さやか「ど、どうしよう!どうすればいいの?キュウべえ食べれる?」

QB「孵化しかかってる、うかつに触るのは危険だ」

さやか「ええっと、よし!まどか、マミさん呼んできて!あたしがこいつを見張ってるから」

まどか「で、でも」

さやか「あたしはいいから!」

QB「僕も残る、まどかは急いだほうがいい」

まどか「……わかった!!」ダッ

結界

マミ「この先に二人はいるのね。まだ孵化していないそうだから、静かにいきましょう」

まどか「はい……」

マミ「大丈夫、鹿目さん?怖がらなくていいのよ?私がついてるから」

まどか「はい……」

ほむら「そんな言葉をかけるぐらいなら、結界に連れてこないことね」

マミ「……またあなたなの?いい加減、何が目的か教えてほしいのだけど」

ほむら「……私の目的はまどかと美樹さんを魔法少女にしないことよ」

マミ「そう、あくまで邪魔をしたいっていうのね」

マミ「だったら!!」シュルシュル

ほむら「なっ!?」ガチッ

マミ「そこで、じっとしててもらえるかしら?」

ほむら「待ちなさい!今回の魔女はあなただけでは倒せない!!」

ほむら「行ってはダメ!!」

マミ「そんなこと言って、私がリボンを解くと思ったの?もっとましな言い訳を考えることね」

マミ「行きましょう、鹿目さん」スタスタ

まどか「い、いいんですか?」

マミ「大丈夫よ、帰りにちゃんと解放してあげるから」スタスタ

まどか「え、ええと。ほむらちゃん、ごめん」テクテク

ほむら(どうして……どうしてこうなるの!!)

マミ「ごめんなさい、鹿目さん」

まどか「え?」

マミ「あなたがこの魔法少女体験ツアーに抵抗があることも、魔女を恐ろしく思っていることもわかってる」

まどか「…………」

マミ「暁美さんにしてもそう。あの子の言い分はきっと正しい」

マミ「素質があるとはいえ、一般人のあなた達を魔法少女の仕事に連れまわすのはとても危ないこと」

マミ「でもあの子の言葉に従いたくないから、私が一方的にあの子を敵視している」

マミ「たぶん私は嬉しかったんだと思う」

マミ「他の人には言えない、魔法少女の活動を一緒に体験してくれる人ができたのが」

マミ「ずいぶん前に他の魔法少女と一緒に活動していたんだけど、結局その子とも別れてしまって」

マミ「それからずっと一人ぼっち」

マミ「なのに突然二人も素質を持った子があらわれて、もしかしたらあの子のような後輩ができるかもって」

マミ「あなた達にあの子を重ねて、あの子といた日々を重ねようとして、あなた達自身をないがしろにしてしまった」

マミ「ごめんなさい、鹿目さん。体験ツアーは今回で終わりにしましょう」

まどか「マミさん、手つなぎましょう」ギュッ

マミ「手を……?」ギュッ

マミ(鹿目さんの手、あたたかい……)

まどか「ずっとマミさんは一人ぼっちで頑張ってきたんですね」

まどか「でも大丈夫ですよ、マミさん。マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないですよ」

マミ「鹿目さん……」

まどか「だってマミさんにはもう…」

まどか「ほむらちゃんがいるじゃないですか」

マミ「え?」

まどか「もういいんですよ」

まどか「マミさんはもう一人で戦わなくていいんです」

まどか「ほむらちゃんならきっと、一緒に戦ってくれる」

マミ「ちょ、ちょっと待って鹿目さん。暁美さんは私とは違う!!」

マミ「あの子の目的もまだわからないし、それに彼女が街のみんなをを守る保証もないのよ!!」

まどか「……じゃあマミさんにはあるんですか?」

マミ「わ、私?」

まどか「マミさんにはこの街を守る保証、それとも理由って言ったほうがいいのかな?違うな、そう…」

まどか「マミさんには、この街を守る義務はあるんですか?」

マミ「だって私は魔法少女で…」

まどか「違います」

マミ「え!?」

まどか「マミさんは、魔法少女である前に」

まどか「一人の、女の子です」ギュッ

マミ(抱きしめられた!?)

マミ「か、鹿目さん!あ、あの!」アタフタ

まどか「かわいそう……」ポロポロ

マミ(!?)

まどか「中学生の女の子が、日々を戦いに費やすなんておかしいよ」

まどか「こんなの、絶対まちがってるよ」

マミ「……でもね鹿目さん。魔法少女は魔女を狩るものなの、仕方ないことなのよ」グイッ

まどか「仕方ないなんて…なんでそんな諦めたみたいな事が言えるんですか!!」

マミ「仕方ないのは仕方ないのよ!私は魔法少女なの、奇跡を願った代償を払わなくてはいけないの!!」

まどか「いつまで払い続ける気ですか!死ぬまでずっとそうして戦いつづけるんですか!!」

マミ「っ!?さっきから言わせておけば…」

まどか「マミさんが死にたくないと願ったのは、戦うためですか!!」

マミ「そんなわけないじゃない!!」

マミ「私だって本当は普通の学生生活を送りたいわよ!」

マミ「友達とごはん食べたり、遊びに行ったり」

マミ「旅行とか勉強会とかお泊りとか」

マミ「そんな普通の女の子したいに決まってるじゃない!!」

まどか「だったらやりましょうよ!!」

マミ「っ!?」

まどか「一緒にご飯を食べましょう。遊びに行きましょう」

まどか「休みの日には旅行に行って、その前日には私の家にお泊りして」

まどか「勉強は……私は教えてもらうことしかできないけど」

まどか「そんな、普通の女の子になりましょう」

まどか「もうマミさんは、一人ぼっちじゃないんですから」

マミ「でも、魔女が…」

まどか「魔女退治はほむらちゃんがやってくれます」

マミ「それはさすがにっ!」

まどか「いいえ、何もおかしくないことです。マミさんはこれまで何年もこの街を守ってきました」

まどか「あとは後輩に任せて、卒業しましょう」

マミ「卒業…」

まどか「はい、卒業です。きっとほむらちゃんがこの街に来たのは偶然じゃなくて、そういう運命だったんですよ」

マミ「運命…」

まどか「マミさん、これまで私たちを守ってくれてありがとうございました」

まどか「もう、休んでもいいんですよ」

マミ「……鹿目さん、私…いいのかなぁ?」グスッ

マミ「魔法少女…やめちゃっても……」ヒグッ

マミ「普通の、普通の女の子みたいな生活しても…いいのかなぁ?」ポロポロ

まどか「いいんですよ、マミさん」

まどか「それに『みたいな』じゃありません。正真正銘、普通の女の子です」

まどか「行きましょう、マミさん」ニコッ

まどか「ほむらちゃんに謝って、さやかちゃんを助けにいって」

まどか「魔法少女巴マミの、最後の舞台へ」ニコッ

今回はここまで。

ほむら「……戻ってきて、拘束を解いて。いったいなんのつもり?」

マミ「暁美さん、いままでごめんなさい」ペコリ

ほむら「へ?」

マミ「これまで勝手にあなたを目の敵にして、言葉に耳を貸そうともしなかった非礼を許してほしい。そして私と一緒にこの魔女を倒してほしい」

ほむら「いったい何があったの!?」

ほむら(願ったり叶ったりな展開ではあるんだけど、あまりに急展開すぎる)

マミ「私、魔法少女をやめることにしたわ」

ほむら「なっ!?」

マミ「今日この魔女を倒したら、これからは魔法を使わない普通の女の子として生きるの。見滝原の魔法少女の座はあなたに譲るわ」

ほむら「!?あなた、自分が何を言ってるかわかってるの!?」

マミ「ええ。街を守るなんて大役、そうそう人に委ねていいものじゃないのは承知しているわ。でも鹿目さんが、あなたになら任せられるって」

マミ「鹿目さんが信じるというのなら、私もあなたを信じられる」

ほむら「そうじゃない!魔法少女にならないってことは、魔女と戦わないってことよ!グリーフシードはどうするの!?」

まどか「そんなの必要ないよ」

ほむら「まどかっ!?」

まどか「マミさんは魔法少女をやめるんだから、もう魔法を使うこともないの。だからもしソウルジェムが濁りきって、二度と魔法が使えなくなっても何の問題もないんだよ」

まどか「ね、マミさん」

マミ「……ええ」

マミ「鹿目さんの言うとおりよ。もう私に魔法は必要ない。だからグリーフシードも必要ない」

ほむら(違う、違うの巴さんっ!!)

ほむら(ソウルジェムが濁ってしまったら、あなたは魔女になってしまうの!!あなたはもう普通の女の子には戻れないの!!)

ほむら(言いたい……でも、言うわけにはいかない、すくなくとも今は)

ほむら(それにこの流れに従えば、まどかと美樹さんの二人を魔法少女の世界から遠ざけることができる)

ほむら(魔法を使わないのなら、ソウルジェムの濁るスピードもかなり抑えることができる。ワルプルギスの夜まではおそらく問題ない)

ほむら(なんなら私が余ったグリーフシードを定期的に使用してもいい。今はワルプルギス戦のためにグリーフシードをためているところだけど、それを過ぎたら魔法を使わない魔法少女一人分くらいどうとでもなる)

ほむら(それでも巴さんが魔女になってしまった時には……)

ほむら「いいわ」

マミ「え?」

ほむら「あなたの話に乗ると言ってるのよ」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん!」

ほむら「だから早く進みましょう、いいかげん美樹さやかを助けにいってあげないと」

マミ「暁美さん」

ほむら「なに?」

マミ「本当に、ありがとう」ニコッ

ほむら「かまわないわ」

ほむら(……胃が痛い)ズキズキ

まどか「さやかちゃーん」

さやか「あ、まどか!ようやく来た。怖かったですよマミさーん、って転校生もいる!」

マミ「今回は暁美さんが手伝ってくれることになったの」

QB「危ないよマミ。彼女はまだ目的がわからないんだ、君の不意を打とうとするかもしれない」

ほむら「本人を前にして、随分な言いぐさね」

マミ「大丈夫よ、暁美さんは信用できるわ。それに私も魔法少女やめるから、不意打ちする理由なんてないわよ」

さやか「え、やめるってどういう意味ですか!?」

ほむら「待って、魔女が孵化するわ!」

まどか「なんか……不気味な魔女だね」

さやか「そう?あたしはけっこう可愛いと思うけど」

まどか「あ、二人とも変身したね」

さやか「おお、マミさん開幕でティロ・フィナーレだーー!!共闘と言いながら、開始早々幕を下ろそうとする展開に転校生の出番はあるのかーーー!?」ワァァァ

まどか「……なんで実況?」

さやか「って、魔女からなんか出た!?あ、危ないマミさん!?逃げ、うわぁぁぁぁ!!爆発した、なんか魔女が大爆発したよ!?あっぶないなぁー!!」ドキドキ

まどか「キャラ崩れるの早いなぁ」

さやか「わ、なんか転校生がワープしてる!すごい、いいなー!!」

まどか「そうかな?」

さやか「そりゃいいでしょ!ワープだよワープ、あれがあれば絶対に遅刻しないよ」

まどか「もとからさやかちゃん、遅刻してないでしょ」

さやか「そりゃそうだけどさー、朝ギリギリまで寝てられるってのはよくない?」

まどか「そしたら今度は、寝過ごしちゃうんじゃないかな?」

さやか「そうかなー、まどかは欲しくないの?ワープ」

まどか「私は、さやかちゃんと仁美ちゃんと一緒におしゃべりしながら登校する方がいいから」

さやか「……うわ、可愛い!まどかは可愛いやつだなー」ナデナデ

まどか「さ、さやかちゃん。……それに、やっぱりあんな能力……」


ほむら「何の話をしているの、もう終わったわよ」

さやか「あれ、いつの間に!」

学校

ほむら(あれから巴さんは変わった)

モブ子「暁美さんはどんな花が好き?」

ほむら「そうね、ちっちゃくて可愛い花が好きよ」

ほむら(前のように人と距離を取ろうとしなくなり、放課後もクラスの人達と一緒に遊びに行くようになった)

モブ子「えー、意外。もっとこう、ゴージャスな感じの花が好きそうなのに」

ほむら「ゴージャスって……、そういうのは病院で見飽きてるのよ。それより地べたに根付いて健気に咲く花のほうがいいわ」

ほむら(もとからあの人は人に好かれるタイプの人。彼女が距離を取ろうとしなければ、自然と人はよってくる)

モブ子「あー、病院じゃ根のついた花はNGだもんね」

ほむら「ええ。ところで、どうしたの?急に花の話なんてして」

ほむら(それでも誘いの大部分を、まどかと遊ぶからと断ってるのはいただけないわね。私が言えたことじゃないけど、人との付き合いかたを学ぶべきね)

モブ子「なんか、今クラスで花がブームみたいなんだよね」

ほむら「あら、そうなの?」

ほむら(でも巴さん、毎日楽しそうにしてる。これなら魔女化の恐れもないし、何の問題もない。ないんだけど……)

モブ子「うん、今朝さやかに『その、人に渡す花で、女の子らしいと思われるのを教えてほしいんだけど……。あ、それとこの話は誰にも内緒で』って言われちゃって」

ほむら「……その話、私は聞いてよかったの?」

ほむら(あんなに憧れていた正義の魔法少女を、完全にやめてしまった巴さんを見るのは……つらい)

モブ子「まどっちもこの前商店街でお花買ってたしさ、これはもうブーム来てるよね!」

ほむら「そうね、私も部屋に飾ろうかしら」

ほむら(巴さん……)

マミ「じゃあ、鹿目さん。また放課後にね」トコトコ

まどか「はい、また後で」

さやか「……ねえ、マミさんいったいどうしちゃったのかな?」

まどか「どうって?」

さやか「あんなに街を守るんだって張り切ってたのに、あの日を境にあっさり魔法少女やめちゃったんだよ。しかも全然後悔とかしてなさそうなの」

さやか「なんか納得いかないんだよね、まどかはそう思わない?」

まどか「うーん、マミさんの考えは私にもよくわかんないかなぁ」

まどか「でもキュウべえも言ってたでしょ、魔法少女が集まるとグリーフシードの奪い合いになるって。だったらそうならないように、引退するってのはおかしな考えじゃないと思うんだけど」

さやか「えー、でもさあ。マミさんなら転校生と協力して、一緒に街を守ろうとするんじゃないかな。和解したんだよね?」

まどか「そうだけど……、さやかちゃんはマミさんが魔法少女やめたの反対?」

さやか「反対っていうかさー、もうマミさんは街を守ってないんだなーって思うとこうモヤモヤするというか」

まどか「ほむらちゃんじゃ心配?」

さやか「いやなんかさぁ、信用できないわけでもないし、強いのはこの前の戦闘を見て知ってるんだけど」

さやか「言い方悪いけどさ、街を守る役目を転校生は押し付けられたようなものでしょ?正義の味方ってそういうものじゃないような気がするというかー」

まどか「もう、さやかちゃん。そんなこと言ったら、マミさんの申し出を快く引き受けてくれたほむらちゃんに失礼だよ。もっと信じてあげないと」

さやか「そうだよね、そうなんだけど……」

さやか「……ねえ、まどか。もしあたしが魔法少女に」

まどか「ダメ!!」

さやか「……まどかさん?」

まどか「あ……、えっと、マミさんだって魔法少女になりたくてなったわけじゃないんだよ。魔法少女は奇跡の代償に仕方なくなるものなんだよ」

まどか「だから、なりたいからなんて理由で魔法少女になっちゃダメ」

まどか「それは、これまで街を守ってきてくれたマミさんに対しても、この街を守る役を受け継いでくれたほむらちゃんに対しても、一番やっちゃいけないこと」

さやか「……」

まどか「それに……私もさやかちゃんに魔法少女になって欲しくないよ。さやかちゃんに魔女と戦うような生活をしてほしくない」

さやか「……まどか」

さやか「うん、そうだね。あたしが間違ってたよ。それにせっかく願いを叶えてくれるってのに、願いもなしに魔法少女になるなんてもったいないしね」

まどか「願いがあっても契約してほしくないんだけど……」

さやか「もう、まどかは心配性だなぁ。あ、もうすぐ授業はじまるよ」テクテク

さやか(願い、か)

さやか(……恭介)

放課後

さやか(これはさっき買ったCD。そしてこれは…その後買った、花)

さやか(よし!)

さやか「恭介、お見舞いにきたよー」ガラッ

恭介「…………」

さやか「ってどうしたの恭介?黙っちゃって」

さやか「そうそう、特に理由はないけどせっかくだから、さっきお花屋さんによって……ああっ!?」

さやか(花瓶に花が飾られてる!!)

さやか(あっちゃー、恭介のお母さんかな?どうしよ、ここで花を出すのはさすがのさやかちゃんでも恥ずかしい……)

恭介「さやか……」

さやか「えっ!い、いや、あはは!!ほ、ほら今日はちょっといつもとは違うタイプのCDを……」アセアセ

恭介「さやかは、僕を苛めているのかい……?」

さやか「…………え?」

恭介「どうして僕に音楽を聞かせようとするんだ……」

恭介「もう音楽なんて聞きたくないのに……!!」

さやか「ど、どうしちゃったの、恭介!!」

恭介「医者に言われたんだ!!……もうこの指は治らないって」

さやか「えっ!?」

恭介「もう嫌なんだ!!僕にかまわないでくれ!!」

恭介「僕に出来もしない音楽をやらせようとしないでくれっ!!」

さやか「そんなこと言わないで!!恭介、前はあんなに……」

恭介「僕は……!僕は……!!」

恭介「音楽なんて、嫌いだっ!!」

さやか「っ!?」

恭介「帰ってくれ!!早く!ほら!……出てけっ!!」

さやか「…恭介……ごめん、ごめんね……」ガラッ

さやか(…………まどか、ごめん)タッタッタッ

恭介「…………」

コンコン

恭介「……帰れっていったろ」

コンコン

恭介「いい加減にしてよ!!もう僕に関わらないでくれ、さやか!!」

ガラッ

「私だよ、恭介くん」

恭介「あ…………」

恭介「また……、来てくれたんだね……」

恭介「まどかさん」

まどか「うん」ニコッ

今回はここまで。

まどか「ねえ、さっきのだけど、さやかちゃんと何かあったの?」

恭介「……もう指は治らないって医者に言われたんだ」

まどか「……そう」

恭介「そんな僕の気も知らないで、CDを持ってくるさやかに腹が立って…」

まどか「…それで?」

恭介「出てけ、って言っちゃって……その……」

まどか「…………」

恭介「…………ごめん」

まどか「それは伝言?」

恭介「あ、いや……今度、自分で伝えるよ」

まどか「うん、そうしてあげて」

まどか「さやかちゃんは恭介くんのことを、本当に心配してるんだから」

まどか「ほら、これ」

恭介「それは、花?また買ってきてくれたの?」

まどか「違うよ、病室の前の廊下に落ちてたの。きっと、さやかちゃんが落としていったんだよ」

恭介「さやかが……」

まどか「これも一緒に花瓶に飾っちゃおうか……うん、綺麗」

まどか「謝るときに、お花のお礼もちゃんと言ってね」

恭介「……わかった」

恭介「…………」

まどか「………」

「「あの」」

まどか「あ、先に恭介くんからでいいよ」アワワ

恭介「い、いやまどかさんからで」アセアセ

まどか「そ、そう?だったら言うね」

まどか「確かにさやかちゃんは、恭介くんの演奏をまた聴きたいと思ってるかもしれない。恭介くんの指が治ったら、また恭介くんの演奏が聴けると思うかもしれない」

まどか「でもそれは全部、また演奏することが恭介くんの望みだと思ってるから。演奏している時が、恭介くんが一番幸せな時だと信じてるから」

まどか「そしてさやかちゃんがCDを持ってお見舞いにくるのは、恭介くんが音楽に囲まれて前と同じ笑顔をしてくれることを期待してるから」

まどか「さやかちゃんが本当に恭介くんに期待してるのは、もう一度演奏をすることじゃない」

まどか「もう一度、あの頃みたいに笑ってくれることなの」

まどか「だからね?さやかちゃんに謝ったりしたら、さやかちゃんの『また演奏してほしい』っていう期待に応えたことになるんじゃないか」

まどか「なんて、心配しなくていいの。ただ正直に、思ったとおりに『ごめんなさい』って言えばいいんだよ」

まどか「幼馴染なんだから」ニコッ

恭介「…………」

まどか「それで?恭介くんの話は?」

恭介「え?えっと、その……」

恭介「もう解決した、かな」

恭介「ねえ、まどかさん。僕が二度と演奏ができないことだけど、まわりの人は僕に失望するのかな……?」

まどか「……するだろうね。ああは言ったけど、たぶんさやかちゃんも悲しむと思う。恭介くん、上手だったし」

恭介「そっか……」

まどか「大丈夫だよ、恭介くん」

恭介「わわっ!?」

恭介(顔が近いよ、まどかさん……!!)

まどか「私は失望したりなんてしないから」

まどか「恭介くんにまた演奏しろなんて、言わないから」

まどか「それにまわりの人も恭介くんが『もう音楽をやめたい』ってちゃんと言えば、きっとわかってくれるよ」

恭介「……ありがとう、まどかさん」

恭介「君はいつも僕に優しくしてくれる」

恭介「君がいてくれなかったら、きっと今も医者に言われたことを悲しんで、落ち着いていられなかったと思う」

恭介(まどかさんはいつも『頑張らなくていい』と言ってくれた)

恭介(まわりが『頑張って治せ』と、『治してまた演奏しろ』と言うなかでどう頑張ればいいのか、何を頑張ればいいのかわからなくて狂いそうだった僕に『頑張らなくていい』『演奏もしなくていい』と言ってくれた)

恭介(甘えてると思う。このまま甘え続けてはいけないと思う。けど……)

まどか「そんな、いいよお礼なんて。気にしないで」テレテレ

恭介(この人はそれすらも『頑張らなくていい』と言ってくれるだろうな…)

まどか「じゃあ、今日はもう帰るね。さやかちゃんにちゃんと謝ってね」

恭介「わかってる。ああ、あと僕らが会ってるってことは…」

まどか「ああ、うん。言われた通りちゃんと秘密にしてるよ」

まどか「でも、なんでわざわざ秘密にするの?『恭介くん』って呼んでいいのも二人しかいない時だけって言うし」キョトン

恭介(さやかならまだしも、クラスの女子が定期的にお見舞いにくるとか、絶対クラスで噂になるからだよ!!)

恭介(……とか言ったら意識されて、もう来てくれないんじゃないかと不安で言えない)

恭介「ひ、秘密にしないと、さやかと一緒に来たりしてこうやって二人で話す時間が減っちゃうからね」

恭介(あれ?これって『二人っきりがいい』って言ってないか?気のせい?セーフ?)

まどか「そうだね、ならこれからも秘密にしなきゃね。それじゃあ、またね」ガラッ

恭介(セーフ!!)

短いけど、今回はここまで。

ゲームセンター

杏子「どういうことだ……」

ほむら「いま言ったとおりよ。巴マミは魔法少女をやめ、見滝原を私に委譲した」

杏子「ふざけんな!あのマミがそんな事するわけねえだろ!!」

ほむら「本当の話よ。今日も彼女は後輩と一緒に下校して、クラスの友達とショッピングをしてすごしたわ」

杏子「なんだよ……それ…」

ほむら「正直、私も彼女の変化には驚いているし、あなたが驚くのも無理はない。けれど、本題はそれではないの」

杏子「まだ何かあるってのかよ」

ほむら「近いうちにワルプルギスの夜がくる」

杏子「なにっ!?なんでそんなこと知ってるんだよ!」

ほむら「それは秘密。そして佐倉杏子、あなたにワルプルギスの夜討伐を手伝ってほしい」

杏子「はっ、やなこった。なんであたしがそんな面倒なこと手伝わなきゃいけないんだよ。それこそマミにでも手伝ってもらえばいいじゃねえか」

ほむら「もちろん巴マミにも当日は手伝わせるわ。でもまだ戦力が足りない。それにあなたにもメリットはある」

杏子「なんだよ?」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒したら、私は見滝原から出ていく予定なの。あなたには、私がいなくなったあとの見滝原をあげるわ」

杏子「……マミはいいのかい?」

ほむら「ええ、見滝原の権利を彼女はすでに放棄して、私のものになっている。それをどう扱おうと、巴マミに文句は言わせないわ」

杏子「……いいぜ、交渉成立だ」

杏子(こいつの素性も、マミの現状もわかんねえことだらけだ。だから今は協力しておいて、いろいろ調べてみるか)

杏子(どうやら行くしかないみたいだな、見滝原に)

街中

まどか「あれ、仁美ちゃん?どうしたのこんなところで。家、こっちじゃないよね?」

仁美「あら、まどかさん。今から素晴らしいところへと行くんですの」フラフラ

まどか「どうしちゃったの、仁美ちゃん!?……これは、確か魔女の口づけ……!」

仁美「まどかさんもご一緒しませんか?」フラフラ

まどか「仁美ちゃん、ダメ!!そっちに行ったら危ないよ!!」

仁美「大丈夫ですよ。ほら、他にも一緒に行く方たちがこんなにもいるんですから」

まどか「こんなに……あ、あれは!?」

仁美「ええ、あの二つの水を使って、私たちは旅立つのです」

まどか「待って!!その二つを混ぜちゃダメ!!とっても危ないんだよ、死んじゃうんだよ!!」ダッ

仁美「いけませんわ、まどかさん。儀式の邪魔は許されません」ガシッ

まどか「っ!?放して仁美ちゃん!!このままだと仁美ちゃんが死んじゃうの!!」

まどか「仁美ちゃんは、こんな人たちと一緒に死んでいいような子じゃないのっ!!」ダッ

仁美「まどかさん、何を!?」

まどか「こんなもの……えいっ!!」ガシャーン

仁美「ああ……それを捨ててしまうなんて……まどかさんっ!!」

まどか「に、逃げなきゃ!!」ダダッ

まどか「…あれ?体、動かない……?」

まどか「ここは……魔女の結界!?」

テレビ『アナタタチハ、ワタシガマモル』

まどか「…………そっか……私、死んじゃうんだ……」

テレビ『ソノコトオナジマホウショウジョヨ』

まどか「…でも……もういいよね…生きてても、つらいだけだもんね……」

まどか「私なんかが、これ以上生きてたって………」

テレビ『ホントウニタスケラレテヨカッタ』

まどか「……………………助けて」

まどか「助けて!!誰か、助けて!!誰かっ!!!!」

テレビ『コウハイニカッコイイトコミセナイトネ』

まどか「助けて!!さやかちゃんっ!!」

さやか「わかった!!」

さやか「助けにきたよ、まどか!」

まどか「え……さやか、ちゃん…?」

さやか「そうだよ、みんな大好きさやかちゃんだよ!」

さやか「安心して、まどか。こんな魔女、正義の魔法少女さやかちゃんがやっつけてやるから!!」

まどか「あ……ああ……」

さやか「よくもまどかを泣かせてくれたなぁ!そんな魔女はこうやって!こうして!」ザクッグサッ

さやか「これで、とどめだぁぁぁっっ!!!!」グシャァァ

まどか「…………………私の、せいだ」ボソッ



テレビ『…………ジ…ジジ…』

テレビ『……セイギノマホウショウジョ…サヤカチャンガ……』

テレビ『…………』シュゥゥゥゥ

さやか「よし、これで終了!あれ、あたしってけっこう強い?」

まどか「……さやかちゃん、その恰好…」

さやか「あー、あのね……契約、しちゃった」アハハ

まどか「……なにを、願ったの……?」

さやか「……恭介の指を治してほしい」

まどか「!?」

さやか「あいつ、見てられなくてさ。ごめん、まどか」

まどか「ううん、助けてくれてありがとう……」

さやか「さてと、仁美たちはどうしようか?救急車でも呼んどく?」

まどか「うん、それがいいよ」

まどか「…………」

ピリリリリリ

まどか「……っ!?…………もしもし」ピッ

恭介『もしもし、まどかさん?こんな遅くにごめん』

まどか「ううん、かまわないよ。どうしたの?」

恭介『聞いてくれ、僕の指が治ったんだ!!』

まどか「っ!!……ええ!すごい!!何があったの?」

恭介『それが僕にも医者にもわからなくて、奇跡としか言いようがないんだ』

まどか「よかったね、恭介くん!おめでとう、これでやっと退院できるね」

恭介『うん、リハビリがあるから退院にはもう少しかかるけど。まどかさんには伝えておきたくて』

まどか「?待って。その話さやかちゃんにはしてないの!?」

恭介『え?う、うん。まだだけど…』

まどか「もう!私なんかどうでもいいから、早くさやかちゃんに教えてあげなよ!」

恭介『ええ!?わ、わかったよ』

まどか「それと、恭介くん?」

恭介『は、はい!!』

まどか「本当に、おめでとう」

恭介『……ありがとう』

まどか「それじゃあ、またね」

恭介『うん、また今度』ピッ

まどか「…………あ…ああ………」

まどか「ああああああああああああああああ!!!!」

とりあえずここまで。

学校

ほむら「ちょっと来なさい」グイッ

さやか「な、なにさ転校生?」

ほむら「それはこっちのセリフよ。あなたは何を考えてるの、魔法少女になるなんて」

さやか「あー、あたしにも叶えたい願いがあったと言いますか……」

ほむら「上条恭介ね」

さやか「ええ!?なんでわかったの、超能力者!?」

ほむら「魔法少女よ」

ほむら(甘く見てたわ。今の巴さんを見てまだ魔法少女になろうとするなんて、魔法少女なんてならない方が幸せだって学ばなかったの!?)

ほむら(それよりもこのままでは、佐倉さんとの同盟に問題が生じる)

ほむら「あなた、これからどうするつもりなのかしら?」

さやか「どうするって、何を?」

ほむら「魔法少女としての身の振り方よ」

ほむら「巴マミのように魔法少女をやめるのか、それとも続けるのか」

さやか「もちろん続けるよ!マミさんがやめちゃって、転校生一人で街を守るのは大変でしょ?一緒にこの街を守ろうよ!」

ほむら「そう。なら忠告、いえ命令しておくわ」

ほむら「私がいいと言うまで、魔法少女の活動はしないこと」

さやか「ちょっと、なんでそうなるのさ!!」

ほむら「はっきり言って、今のあなたでは足手まといなの。それなりに戦えるようになるまで、稽古してあげるからそれまでは我慢しなさい」

ほむら(こうすれば、美樹さんと佐倉さんの接触は避けることができるはず。本当は魔法少女をやめさせるのがいいのだろうけど、できれば美樹さんにも対ワルプルギスの夜用の戦力になってほしい)

さやか「でもあたしは昨日、魔女退治したんだよ。実力はあるって」

ほむら(これも私の失敗。今のまどかなら、すぐ巴さんに助けを求めると思っていた。……なんだろう。これまでの統計から予測を立てているはずなのに、このごろは悉く外しているような)

ほむら「不満なら、私を倒してあなたが見滝原の魔法少女を名乗ってもいいのよ」

さやか「ぐっ!?……稽古お願いします……」

ほむら「よろしい」

ほむら(近いうちに上条くんが退院してくる。そしたら志筑さんのこともあって、美樹さんは魔法少女に集中できなくなるはず)

ほむら(だから美樹さんには魔女退治はせず、ずっと稽古だけをしてもらって……そのままワルプルギスの夜と戦ってもらうことになるけど、いいわよね?むしろその方がワルプルギスの夜対策の訓練だけに専念できるわけだし)

ほむら(巴さんによって魔法少女をやめるという選択肢がある今、ある程度育ったら美樹さんには佐倉さんとの同盟が終わるまで魔法少女をやめてもらうというのも手ね)

ほむら(普通の女の子として失恋するのなら、いや失恋すると決まったわけではないけど、心の傷も深くはならないでしょ。……信じてるわよ、美樹さん)

ほむら(……大丈夫。これなら美樹さんも魔女にならずにワルプルギスの夜がくる日を迎えられる)

ほむら(問題はその後だけど、その後のことを考えている余裕は今の私にはない。だから気にしない)

ほむら(私は今できることを、するだけ)

マミ「鹿目さん。聞いたわ、美樹さんのこと」

まどか「……マミさん。マミさんはどう思いますか?」

マミ「そうね。なんの相談もなかったことは悲しいけど、私は魔法少女をやめた身だからそれは仕方ないとして」

マミ「美樹さんが、前の私のような正義の魔法少女になろうとしないか心配ね」

まどか「…………」

マミ「前の私みたいになろうとして、前の私みたいに正義の魔法少女像に縛られて独りよがりにならないか」

マミ「そのあたりは、暁美さんがうまくやってくれるといいのだけど」

マミ「……私の忠告を聞いてくれるとは、限らないから」

まどか「…………」

まどか「……私、さやかちゃんには魔法少女になってほしくなかったんです」

マミ「……そう」

まどか「でも昨日、魔女に襲われた時に思わずさやかちゃんに助けを呼んじゃって……」

まどか「そしたら魔法少女になったさやかちゃんが現れて、助けてくれて……」

まどか「いつだって、何もできない私をさやかちゃんは助けてくれて、何度も何度も迷惑をかけてきたのに……」

まどか「今回も私のせいで、さやかちゃんは魔法少女の力を使うはめになって……!!」

まどか「そんな力使ってほしくないって!そう思ってるのに!そう思ってるのは私なのに!私のせいで……私のせいで!!」

マミ「それはちがうわ、鹿目さん!!」

マミ「美樹さんが契約したのは、幼馴染の男の子のためでしょう?別にその子に責任があるとか言うわけではないけれど、そのことで鹿目さんが自分のせいだと思うのは間違ってるわ!!」

まどか「…………」

マミ「美樹さんが契約したことには、私も思うところはあるわ。けど、美樹さんが鹿目さんを助けたことは、なにも間違ってない。もし間違えだった、なんて言う人がいたら私が叱ってあげるから」

マミ「だから……自分が助かったことを後悔しないで。それは、とてもつらいことだから」

まどか「…………」

さやか「あ、いたいた。まどかー!マミさーん!」ドタドタ

マミ「あら、どうしたの?暁美さんも連れて」

ほむら「あ、あの…美樹さやか……」アワアワ

さやか「せっかくなんで、転校生も一緒にお昼食べようと思いまして。いいですよね?」

マミ「あら、いいんじゃないかしら。ね、鹿目さん?」

まどか「あ……その……」チラッ

ほむら(っ!?…まどか…どうして…どうしてそんなつらそうな顔をするの?…はじめはあなたから誘ってくれたのに……)

ほむら「あ、あのやっぱり私は……」

モブ子「ちょっと待った!!」

モブ子「ほむりんはあたしとお昼を食べるんだから、さやか達には渡せないなー」

さやか「ええ!?いつも一緒に食べてるじゃんかー」

さやか(ほむりん?)

マミ「あらあら、それなら邪魔しちゃ悪いわよ。またね、暁美さん」テクテク

マミ(ほむりん?)

さやか「ちぇー、いいよ今度は仁美が休んでない日に誘うから。ほら、行こうまどかも」スタスタ

まどか「う、うん」トコトコ

ほむら「ねえ、その……」

モブ子「うん?どうかした?」

ほむら「……『ほむりん』はないと思うわ」

モブ子「あ、あれー?」

ほむら(……ありがとう)

放課後

まどか「さやかちゃん、こんなことやめようよ。ほむらちゃんと約束したんでしょ?」

さやか「転校生には魔女と戦うな、っていわれただけだよ。大丈夫だよ、こうしてパトロールをしてるけど、魔女の反応があったらちゃんと転校生を呼ぶって」

まどか「で、でもー」

杏子「おいおい、さっそくほむらの話と違うじゃねえか。なんであいつやマミ以外の魔法少女がいるんだよ」

さやか「誰!?」

QB「それは仕方ないよ。目の前の魔法少女、美樹さやかが契約をしたのは、ほむらが君と交渉をした後だ。こうなるとは、ほむらも予想していなかっただろう」

杏子「こういう場合、契約はどうなるんだ?やっぱりなかったことになるのか?」

QB「いや、それはないよ。ほむらの予測に問題があったとはいえ、魔法少女の素質を持った子がいるか、聞かなかった杏子にも責がある」

杏子「ふーん、そういうもんか。まあいいさ、力づくで追い出せばいいだけの話だろ」

さやか「あんたは誰だって聞いてるの!!」

杏子「うるせえなぁ。…あたしは佐倉杏子。この街を貰う魔法少女さ」

さやか「この街を貰う?何の話?」

杏子「なんだよ、ほむらから何も聞いてないのかい?……どうやらあいつにとっても予想外ってのは本当みたいだな」

杏子「もうすぐこの街にワルプルギスの夜…、ってもわかんねえか。すげえ強い魔女がやってくるんだと。それで隣町のあたしは、ほむらに戦力として雇われた」

杏子「報酬はワルプルギスの夜を倒した後の、この街だ」

さやか「ちょっと待ってよ、聞いてない!この街って、転校生はどうするの?」

杏子(転校生?ああ、そういえば最近引っ越してきたとか言ってたな。……名前で呼んでやれよ)

杏子「あいつなら、ワルプルギスの夜を倒した後いなくなるって言ってたぜ」

さやか「え!あいつ、また引っ越すの!?」

杏子「さあね、それは本人に聞けよ。で、ここからが本題だ。悪いことは言わねえから、あんたもこの街から出て行きな」

さやか「なっ!?ちょっと何勝手なこと言ってんのさ!」

杏子「言ったろ?もうすぐここはあたしの縄張りになるんだ。あたしはマミと違って、魔法少女どうし仲良くなんてする気ねえからな。あたしの狩場を荒らすってんなら、容赦しねえ。力づくで追い出してやる」

さやか「いきなり出てきて、何を!!」

まどか「ねえ、杏子ちゃん」

杏子「あ?誰だあんた?どうやら魔法少女じゃないみてえだけど」

QB「彼女は鹿目まどか。魔法少女の素質を持った子さ」

杏子(……そうか、こいつが)

まどか「杏子ちゃんは、縄張りを荒らされたくないんだよね。だったら、さやかちゃんが魔法少女をやめたなら、どう?それでも追い出す?」

杏子「……あたしの邪魔をしないってんなら、こっちも手は出さねえよ」

さやか「ちょっとまどか!勝手に話をすすめないでよ!!」

まどか「さやかちゃんは、上条くんの指を治すために魔法少女になったんだよね。だったらもう目的は達成したわけだし、魔法少女を続ける必要ないでしょ?」

QB「僕としては、魔女との戦いを放棄されるのは非常に困るんだけど」

さやか「キュウべえは黙ってて!それはダメでしょ、あたしは契約したんだよ。恭介の指を治してもらうかわりに、魔法少女になる契約を。それなのに願いを叶えてもらっておいて、すぐに魔法少女をやめるなんて」

QB「一応伝えておくと、過去にも同じことを考えて契約した少女は何人かいたけれど、みんな最期には後悔していたよ」

まどか「キュウべえは黙ってて!それならもう、私を守るために戦ってくれたじゃない。命を懸けて戦ったんだから、契約の対価はあれで十分だよ」

さやか「で、でもあたしはやめたマミさんの代わりになろうと……」

まどか「それはほむらちゃんがやってくれてるからいいの!そしてほむらちゃんがいなくなった後は、杏子ちゃんがやってくれるって言ってるでしょ!」

さやか「そうだけど……」

使い魔『テリュテリュテリュテリュテリュ』ブーン

さやか「あ、使い魔!?追いかけないと!!」ダッ

杏子「待った、何してんのさ」ガシッ

さやか「離してよ、逃げちゃうじゃない!!」

杏子「追いかけてどうすんだよ、使い魔はグリーフシード落とさねえぞ」

さやか「何言ってんの、使い魔だって人間を襲うじゃない。倒さないと!」

杏子「……そういや、あんたはマミの知り合いか。じゃあ知らねえのもしょうがないか」

さやか「……何よ」

杏子「使い魔を倒す魔法少女は甘ちゃんだ、って話さ。普通の魔法少女は使い魔が人間を襲って、魔女になったところを倒す。常識だぜ」

まどか「!?」

さやか「あんた、自分が言ってることの意味わかってんの!?」

杏子「わかってねえのはあんた等の方だ。食物連鎖って習わなかったのかい?魔女が人間を食って、あたしら魔法少女が魔女を食う。そうやってこの世界はできているのさ」

さやか「そんな!?あんたは人がどうなってもいいの!?」

杏子「いいんだよ、この世は弱肉強食。弱い奴に生きる資格なんてねえのさ。そうそう、あんた等さっき、あたしがマミの代わりになるとか言ってたけど、別にあたしはマミみたいに正義の味方するわけじゃないから勘違いするなよな」

さやか「……やっぱりあんたにこの街は渡さない。どいて、あたしはさっきの使い魔を追いかける」

杏子「どかしてみろよ、できるもんならな」パァァァ

さやか「やってやろうじゃない」パァァァ

まどか「やめて!!」バッ

さやか「まどかはさがってて!こいつは一回殴らないと気が済まない」

杏子「は、いきがんなよ、ひよっ子が!今のうちに力の差ってやつを教えといてやるよ。あんたも怪我したくなきゃさがってな」チャキッ

さやか「まどか、さがって!!」

まどか「……嫌だよ」

杏子「……警告はした、ぜっ!」ヒュン

さやか「まどかっ!!」

まどか「…………」

杏子(嘘だろ……、寸止めしたとはいえ、槍を向けられてなんで一歩も動かないんだよ!?)

まどか「……さやかちゃんがこれ以上戦う姿を、私は見たくない」

まどか「話、しようか」

まどか「杏子ちゃん、武器を収めてくれるかな」

まどか「杏子ちゃんの言い分はわかるけど、まだこの街はあなたのものじゃない。それとも、ほむらちゃんの縄張りを荒らすつもり?」

杏子「……ちっ」シュゥゥ

まどか「ねえ杏子ちゃん、使い魔も倒すように考えを変えてくれないかな」

杏子「……断る。あたしは自分のためだけに、この力を使うって決めてるんだ。街を守るなんてことはできない」

まどか「そう、じゃあ仕方ないね」

まどか「帰ろうか、さやかちゃん」

さやか「ちょっとまどか!こいつは放っておくの!?」

まどか「うん、別に危害を加えに来たわけじゃないから大丈夫だよ。それにほむらちゃんとも話し合わないといけないし。だから一旦、帰ろう」

さやか「あー、もう!!こうなったのも転校生が悪い!!まどか、今すぐ転校生のところに行こう!それと、あんた!あんたとはまた今度決着つけるから!!」ダダッ

杏子「……しらけちまったな、あたしも帰るか」

まどか「あ、そうそう杏子ちゃん」

杏子「……なんだよ」

まどか「ほむらちゃんがいなくなった後だけど、好き勝手できると思わないでね」

杏子「…………」

まどか「目に余るようだったら、力づくで追い出すから」

杏子「はっ、なんだよあんなこと言っときながらやる気じゃねえか。あの新人があたしに勝てるとでも思ってんのかい?」

まどか「ううん、さやかちゃんにこれ以上魔法少女なんてさせないよ。でもさ……」

まどか「この街には、ベテランの元魔法少女がいることを忘れないでね?」ニコッ

杏子「っ!?」ゾワッ

まどか「それじゃあね、杏子ちゃん」タッタッ

杏子「…………」

杏子「…………」

杏子(この街にきて、真っ先にマミの様子を見に行った。そして、本当に魔法少女をやめてクラスの友達と遊んでいる姿を見て愕然とした)

杏子(正直見ているのがつらかった。けど、そうやって普通の学生生活を送るマミは楽しそうだった、幸せそうだった)

杏子(そもそもあたしとマミは違うんだ。あたしは自分の願いのせいで、家族を死に追いやった責任がある。贖罪のためにも魔法少女を続ける義務がある。けど、マミは違う。マミはいつだってこんな血なまぐさい世界から身を引いてよかったんだ。そう思った)

杏子(ほむらによると、マミが魔法少女をやめた原因は鹿目まどかという少女らしい。そしてその少女は魔法少女をやめたマミにとっての、一番の友人だという)

杏子(話を聞いた時から、どんな奴か気になっていた。気になっていたのに……)

杏子(なんなんだよ、あいつは……!)

杏子(…………そういえば)

杏子(槍を向けたときのあいつの目。あれと同じ目をするやつを、前にどこかでみたような……)

今回はここまで。

まどかホーム

QB「まどか、話があるんだ。窓を開けてくれるかい」

まどか「……何の用?それと、部屋には入らないで」

QB「まどか、君の目的はいったい何だ?ここ数日君を見てきたけど、君の言動は不可解だ」

まどか「キュウべえには言われたくないよ。それで?それを聞いてどうする気?」

QB「僕なら君の力になれると思ってさ」

まどか「……あなたに出来るのは契約だけじゃない。私は契約しないよ」

QB「確かに僕に出来ることは少ないけれど、話を聞くぐらいはできるよ。それに僕という個体が君の行動指針を知りたいと思っているんだ、今後のためにもね」

まどか「私には話す理由がないよ」

QB「そうだね。君の話を聞いて、この街に居続けるメリットがないと判断したらこの街から出ていく。これならどうだい?」

まどか「……どうせそんなの嘘でしょう?」

QB「僕は嘘はつかないよ。君たち人間とは違ってね」

まどか「……」ピクッ

まどか「……いいよ、話してあげる。何を聞きたいの?」

QB「どうして君は、マミとさやかに魔女退治をやめるように勧めたんだい?」

まどか「ほむらちゃんがいるからだよ。この街を守る魔法少女は一人いれば十分でしょ」

QB「確かに、ほむらなら一人でこの街を守ることが可能だろう。でもだからと言って魔女退治をやめさせる理由にはならないんじゃないかな。魔法少女どうしが共闘することはよくあることだよ」

QB「それに彼女たちも魔女退治には乗り気だったじゃないか。ここは本人たちの意思を尊重すべきじゃないのかい?」

まどか「どんなに本人が乗り気でも、魔法少女を続ける女の子を私は見たくない。魔法を使って日夜戦って。あんなの異常だよ」

QB「そう思うのは、君がこれまで魔法少女を知らずに暮らしてきたからさ。さやかはともかく、マミにとってはあれが日常だった」

まどか「私もはじめはマミさんには魔法少女を続けてもらおう、って思ってたんだけどね。でもやっぱり一人でも多くの魔法少女を減らしたいから、ダメ元で説得してみたんだけど上手くいくとは思わなかったよ」

QB「なるほどね。でもさ、どうしてほむらには同じように魔女退治をやめるように言わないんだい?」

まどか「……本当は、魔法少女なんて全員いなくなればいいのにって思ってるんだ。魔女が全部いなくなって、みんな魔法少女を続ける意味がなくなればいいのに、って」

まどか「でも実際に魔女はいて、魔法少女がいてくれないと私たちは安心して暮らせなない。……だから、私はほむらちゃんに魔法少女をやめてなんて言えない」

QB「つまり君は、自分たちの生活のためにほむらを犠牲に選んだわけだ」

まどか「……何とでも言えばいいよ」

QB「だとすると、君が杏子との会話でマミをけしかけるようなことを言ったのは……」

まどか「うん、杏子ちゃんはこの街を守ってくれないからだよ」

QB「君はマミに魔女退治をやめるように勧めておいて、必要になったらまた魔女退治をさせるつもりなのかい?」

まどか「……さっきから、ずいぶんと棘のある言い方をするね」

まどか「そのとおりだよ。ほむらちゃんはいなくなる。杏子ちゃんには任せられない。さやかちゃんに魔法少女をさせるわけにはいかない。なら、あとはもうマミさんしかないでしょ?」

QB「わからないな、魔女退治のやる気をなくしているマミよりも、さやかの方が適任じゃないのかい?どうしてマミには魔女退治をさせて、さやかにはさせないのさ」

まどか「……さやかちゃんには幸せになってほしいから」

QB「?マミには幸せになってほしいと思わないのかい?」

まどか「そういうわけじゃないけど……さやかちゃん、あと仁美ちゃんは特別なの。二人はダメでなにも出来ない私を、いつも守ってくれたから。こんな私と仲良くしてくれた、大切な人達だから」

まどか「この二人のためなら、私は他の人を犠牲にできる。ほむらちゃんだって、マミさんだって」

まどか「誰を犠牲にしてでも、私はさやかちゃんに魔法少女をやめてもらう。これが今の私の目的だよ」

QB「だったら僕と契約すればいいじゃないか。君の資質ならその程度の願い、たやすく叶えられるだろう」

まどか「言ったでしょ。契約はしない、って」

QB「どうしてさ。それこそ君が言うように、願いだけ叶えて魔女退治を放棄すればいいだけの話じゃないか」

まどか「私はあなたに願いを叶えてなんてほしくないし、奇跡なんてものに頼らない。それに……あんな力、いらない」

QB「まどか……、君は……」

ピリリリリ

まどか「……電話かかってきたから、帰って」

QB「なら最後に質問だ。どうして杏子の槍を避けなかったんだい?君は杏子が槍を止めることがわかってたのか?」

まどか「わかってたわけじゃないよ。さすがに一般人を刺したりはしないだろう、とは思ってたけど」

まどか「ああでもしないと、さやかちゃん戦ってたでしょ?」

QB「それは希望的観測にすぎない。君は殺されていてもおかしくなかった」

まどか「…………それでもよかったんだよ」

QB「どういう意味だい?」

まどか「……あ、ほら電話するんだから帰ってよ!」ピッ

まどか「あ、もしもし?恭介くん、どうしたの?」

QB「……じゃあね、まどか」シュッ

まどか「学校に来る日が決まった?やったね!……それで、手伝ってほしい、って?……だったらさ……」

少ないけど、ここまで。

放課後

ほむら「今日の訓練はここまでね。まだまだ粗いけど、基礎は出来上がったと思うわ」

さやか「はぁー、疲れたー!転校生スパルタすぎるよー!しかも素振りとか動き方とかばっかりで、魔法はほとんど使わせてくれないし!」

ほむら「訓練でいちいちグリーフシードを消費されてたまるもんですか。それにあなたの魔法は回復系だから、練習する必要はないのよ」

さやか「えー、でもさぁ」

ほむら「傷を治すより、傷をつくらない練習をしなさい。どうしてもというのなら、半身が吹き飛ぶこと覚悟で魔女に特攻をかける戦い方もあるけど、燃費悪いからおすすめしないわ。うっかり致命傷うけるかもしれないし」

さやか「怖いこと言わないでよ……」

さやか「でも転校生ってすごいね。剣で戦ってるわけじゃないのに、あたしに剣の使い方教えられるなんて」

ほむら「……前にあなたと同じような魔法少女と共闘してたのよ」

さやか「それってあたしみたいな美少女って意味?」キャハッ

ほむら「…………」

さやか「……ごめんなさい」

さやか「というか転校生にも仲間っていたんだね。てっきりずっと一匹狼でやってきたんだと思ってたよ。そのあたしに似た魔法少女とは、今も連絡とってたりするの?」

ほむら「いいえ、とってないわ。というか、とれないわね。その子、死んでしまったもの」

さやか「……ごめん」

ほむら「気にしてないわ」

さやか「ねえ、あたしはどうしたらいいのかな……」

ほむら「どうしたの、いきなり?」

さやか「転校生があたしを鍛えてくれてるのは、ワルプルギスの夜と戦うためなんでしょ?そのために転校生はあの杏子とかいう奴に応援を依頼して、かわりにこの街をあげることにした」

さやか「ワルプルギスの夜を倒したら、あたしが魔法少女として戦う場所はなくなる。せっかく転校生が鍛えてくれた力を、たくさんの人を救えるかもしれない力を使う機会がなくなる」

さやか「ううん、それだけならいい。でも杏子は人を救う気なんてない、最初から見捨てるつもりでいる。そんな奴にこの街を任せようと思えない。そんな奴に任せるぐらいなら、あたしがこの街を守りたい」

さやか「でもでもそれだと、転校生がワルプルギスの夜を倒すために杏子とした約束が無効になっちゃうかもしれなくて」

ほむら「…………」

さやか「あー、もう!どうすればいいか、わかんないよ!!」

ほむら「そうね。私自身、ワルプルギスの夜を倒すために必死だから、あんまり他のことに気をつかっている余裕はないのだけれど……」

ほむら「佐倉杏子とは、あなたが彼女と出会った日に話し合いの場を設けたわ」

さやか「それで、どうなった?」

ほむら「とりあえずワルプルギスの夜とは戦ってくれることになったわ。あれでも、一度した約束を反故にするような子じゃないから」

さやか「よかったぁ」

ほむら「それと見滝原のことだけど」

さやか「う、うん」

ほむら「これも約束に従って、佐倉杏子に渡すことになったわ」

さやか「そんな!」

さやか「転校生はそれでいいの!」

ほむら「残念だけど、私の目的はワルプルギスの夜を倒すことなの。その後のことは管轄外よ」

さやか「で、でも」

ほむら「いい?美樹さやか。あなたはまず魔法少女の常識を身につけなさい。巴マミのように正義の味方になるのも、佐倉杏子のように自分のために戦うのも、どちらが正しいなんてないの」

ほむら「力を持つ方が正しく、力を持つものだけが自分の意思を貫けるのよ」

さやか「そんな……」

ほむら「……ここまで言ってもわからないの?」

さやか「わかるわけないでしょ!そんなの……」

ほむら「意思を貫きたいのなら、強くなりなさい。と言っているの」

さやか「……え?」

ほむら「ワルプルギスを倒した後、私はこの街を佐倉杏子に渡す。これは変わらない」

ほむら「けれど、その後にあなたが佐倉杏子を倒して、この街をあなたの縄張りとするのはあなたの自由よ」

ほむら「もちろん佐倉杏子だってベテランの魔法少女だから、あなたがこうやって鍛錬したところで勝ち目はないに等しいけれど、その辺はあなたの努力しだいね」

ほむら「どう?わかったかしら?」

さやか「…………」

ほむら「それと、この話は佐倉杏子にも言ってあるし彼女も了承済みだから、騙してるみたい……、とか思う必要はないわ」

さやか「ばれてる……!?」

ほむら「さて、そろそろ私が教えることもなくなったわね」

さやか「あれ?そうなの?」

ほむら「さっき言ったとおり、私は他の魔法少女の動きを見たことがあるだけよ。あとは自分で練習しなさい。……魔女との戦いも許可するわ」

さやか「本当!?やった!」

ほむら「ただし!魔力を温存すること。むしろ魔力を抑えて戦えないような魔女が相手だったら、撤退して私に連絡しなさい。あなたなら即死することはないでしょ」

さやか「……転校生はところどころ怖い話をはさんでくるよね」

ほむら「魔法少女の世界は怖いものなのよ。あと、佐倉杏子には極力出会わないこと。約束があるとはいえ、彼女はあなたをよく思っていないから」

さやか「……うん、わかった。今までありがとうね、転校生」

ほむら「お礼なんていいわ。私は私の目的のためにやっているだけだから」

さやか「もう、転校生師匠は冷たいなぁ」

ほむら「転校生師匠、って……。どっちかにしなさいよ。それか名前で呼びなさいよ」

さやか「へへ、わかったよ。ありがとうね、ほむら」

ほむら(……師匠は?)

ほむら「ええ、それじゃあ、また明日」

さやか「うん、また明日!……明日…明日かぁ……」ニヤニヤ

ほむら「?なによ、その笑いは」

さやか「え、笑ってた?いやいや、なんでもないよー、なんでもー」ニヤニヤ

ほむら「言いなさい」ズイッ

さやか「ほ、ほむら!無表情でせまられると怖い!い、言うよ!言いますからっ!」

学校

仁美「今日はさやかさん、どうなさったのでしょうね?『用事があるから一緒に登校できない』なんて…」

まどか「え、えーと。なんだろうね?……あ、あれ!さやかちゃん!」

仁美「あら、本当……?その隣にいるのは……」


恭介「さやか、ちょっとくっつきすぎじゃないか?まわりの目がきついよ」

さやか「恭介は退院したばかりなんだから、注目されてるだけだよ!気にしたら負け!」

恭介「でもやっぱり近いって。日常生活が送れるぐらいには治ってるんだから、そんなに心配することないよ」

さやか「もう、補助を頼んできたのは恭介でしょ!!」

恭介「な、なんでそんな大きな声で言うんだよ」


まどか「わぁ、上条くん退院したんだ。さやかちゃんも嬉しそう」

仁美「……ええ、よかったですわね」

ほむら(まさか上条くんが美樹さんに頼るなんてね)

モブ子「ねえ、ほむりんはサンタクロースって信じてる?」

ほむら「信じてるわけじゃないけど…、その質問の仕方が間違ってることはわかるわ」

ほむら(完全に予想外の展開だけど、これで美樹さんが魔女になる可能性は大幅に減った)

モブ子「なんでサンタクロースは夜中にプレゼント配るんだろうね?」

ほむら「だって昼間に配ったら、みんなに見つかって大騒ぎになるでしょ?」

ほむら(恋愛なんてしたことないから、美樹さんが魔女になるたびにどう対処すればよかったのかわからなくて、つらかったのよね)

モブ子「別になってもいいんじゃない?プレゼントはよい子みんなに配るんだし。それにサンタクロースがクリスマスにプレゼント配ることは、みんな知ってるんだよ?」

ほむら「そうね、なら誰にも気づかれてはいけない事情があるのかしら?」

ほむら(これで美樹さんの、正義の味方への熱意も冷めてくれるといいのだけれど)

ほむら(まあ、それは望みすぎとして、今のところ計画は紆余曲折あったけど順調といえそうね。誰も死ぬことなく戦力が揃っている)

モブ子「実は恥ずかしがり屋で、自分の姿を見られたくないとかは?絵で見るサンタクロースってだいたい太ってるし」

ほむら「ダイエットするべきよね、人様の屋根にのぼるのだから」

ほむら(まどかも契約しそうにない今、警戒すべきは……魔法少女の秘密ね)

モブ子「誰にも気づかれないようにしながら、プレゼントという痕跡は残していく……。けっこう変わってるよね、サンタクロース」

ほむら「けっこう、どころではないと思うけど。でもそうね、気づかれたくないのなら、どうしてプレゼントなんて配るのかしら?実際には、感謝の手紙なんて届かないでしょうに」

ほむら(でもこれって巴さんが魔法少女をやめている状況では、まったく無知でいるわけにいかないことよね。……今の魔法少女への憧れがない巴さんなら、絶望しなかったりするのかしら?)

ほむら(いえ、さすがにそれは……。それに美樹さんのこともあるわけだし……)

モブ子「いやいや、感謝の手紙なんて届かなくても、サンタクロースはプレゼント配りを止めないとあたしは思うなー」

ほむら「あら、そう?……それはもしかして、『サンタクロースは子供の味方だから』かしら?」クスッ

ほむら(方針は変わらない。彼女たちに魔法少女の秘密は教えない。もしばれた場合は、第一にまどかの契約阻止)

モブ子「あー、いまちょっと馬鹿にしたでしょ。そりゃ、そういうのもあると思うけどさ。サンタクロースっていつも雪国で一人ひっそりと暮らしてるような人でしょ?」

ほむら「馬鹿にはしてないけど……それで?どうしてサンタクロースはプレゼントを配るの?」

ほむら(彼女たちの魔女化も阻止したいところだけど、どうかしら?今の私の言葉を、彼女たちはどのくらい聞いてくれるのかしら?)

モブ子「たとえ一方的でもみんなに何かしてないと、本当に一人ぼっちになっちゃうからね」

ほむら(……ダメね、今回は。なまじ敵対していないせいで、みんなを救いたいと、そう思ってしまう)

ほむら(魔法少女の願いは、裏目にしか出ないのに)

さやか「まったく恭介は幸せ者だなぁ、女子に囲まれてお昼を食べられるなんて」

恭介「や、やっぱりいいよ。僕は中沢たちと食べるから。こんなの鹿目さんたちに悪いよ……」

さやか「いいのか悪いのか、はっきりしなさいよ」

恭介「だから悪いって……」

仁美「あら、私はいいですわよ」

まどか「うん、私もいいよ」

恭介「え?その…」

さやか「ほら、二人ともいいって言ってんだから、諦めなさい。それともあたし達とは、ご飯食べられないっての?」

恭介「わ、わかったよ……」

まどか「それで上条くん、もう怪我は大丈夫なの?」

恭介「!う、うん。ちゃんとシャーペンも持てたし、字も書けたよ」

仁美「…………」

仁美「あら、それではさやかさんがいつもより綺麗に書いたノートは無駄になってしまいましたわね」クスクス

さやか「ちょっ!?なんで知ってるの!?」

仁美「あ、あら?本当にそのようなことを……」

さやか「うわ、墓穴掘った!?」

恭介「さやかは心配しすぎなんだよ、学校に通えるぐらいには治ってるんだから」ハァ

まどか「でも、さやかちゃんらしいよ」ニコニコ

さやか「そっかー、もう字も書けるんだ。だったら……」

さやか「恭介のバイオリンを聞ける日も近いね」

恭介「っ!?……」

まどか「…………」

まどか「あ、そうだ上条くん。お医者さんに大丈夫って言われてても、無理は禁物だよ」

まどか「何かあったら、言ってね。私、保健委員だから」

恭介「そうだね、何かあったら頼むよ」

仁美「あら、さやかさんもまどかさんも上条くんに取られてしまいましたわね」

さやか「ちょ、ちょっと仁美!」

恭介「そ、そんなんじゃないよ!」

まどか「あ、そっか。上条くんのお世話はさやかちゃんのお仕事だったね。ごめんね、さやかちゃん。上条くんも困った時はさやかちゃんに頼んでね?」

さやか「まどかまで……」

恭介「か、鹿目さん……」

仁美「…………」

仁美「あらあら、せっかく私もお二方と一緒に、上条さんのお世話をしてみたかったのですが」

さやか「なに言い出すの、仁美!?」

恭介「さすがに志筑さんにまで頼りだしたら、僕のクラス男子内での立ち位置がなくなるので勘弁してください!」

仁美「あら、残念ですわ」

さやか「まあ、今こうやって女子に囲まれてる時点で、もうかなりヤバめだけどね」アハハ

恭介「わかってるなら、誘わないでよ……」トホホ

仁美(……本当に、残念ですわ)

仁美(さやかさんを恋敵にするだけでなく、まどかさんを障害としなければならないなんて……)

仁美(それでも、私は……)

今回はここまで。
こちらは気楽に書いているので、どうか気楽に読んでください。

放課後

仁美「私、上条くんのことを前からお慕いしてましたの」

まどか「!」

さやか「えっ!?……そ、そうなんだー、恭介の奴やるなー」アハハ

仁美「さやかさんは、上条くんとは幼馴染でしたわね」

さやか「そ、そうだけど……あたしは、その……」

まどか「あ。あの!私、席をはずそうか?」

仁美「いえ、まどかさんも聞いてください」

まどか「う、うん」

仁美「さやかさん。私は明日の放課後に、上条くんに告白します」

さやか「!……そう」

仁美「……さやかさんの方が上条くんを見つめていた時間は長い。なので、一日だけお待ちしますわ。だから決めてください」

仁美「上条くんに思いを伝えるべきかどうかを」

さやか「あ、あたしは!……あたしは……」

さやか「……ごめん……あたし、帰るね」ガタッ

仁美「さやかさん」

さやか「…………」

仁美「私、決めたんですの。もう、自分には嘘はつかないって」

仁美「あなたは、あなた自身の本当の気持ちに向き合えますか?」

さやか「……また明日」

まどか「さやかちゃん……」

まどか「仁美ちゃん、何で……こんな……」

仁美「まどかさん。私はさやかさんも、まどかさんも大切なお友達だと思っています。お二方には幸せになってもらいたいと、そう願っております。それは本当です」

まどか「なら、なんで……」

仁美「でも、私の上条くんへの気持ちも、間違いなく私の本心です」

まどか「そんな……」

仁美「私はこれからもお二方の友人でありたいと思います。だからこそ、秘密を抱えるのはやめたいんです」

まどか「……ねえ、どうして明日なの?そんなに急ぐ必要はあったの……?」

仁美「まどかさん……」

まどか「もっと後でいいじゃない、今までだってみんな仲良くできてたでしょ?秘密なんて誰だって持ってるんだから、仁美ちゃんがそんなに思いつめる必要なんてないよ」

まどか「ううん、秘密をなくす、っていうのはいいよ。でもそれなら今の会話で十分じゃない。仁美ちゃんの気持ちは私たちもわかったから、だから告白までしなくても」

仁美「まどかさん」

まどか「仁美ちゃん、どうして……」

仁美「これ以上自分に嘘をつきながら、お友達に嘘をつきながら、これまでと同じように一緒に笑う弱い私を、私は許せませんの」

まどか「…………」

仁美「それに……」

仁美(私もさやかさんも告白できずに、失恋なんてしたくありませんもの)

まどか「それに?」

仁美「……いえ、なんでもありませんわ」

仁美(なんて、まどかさんに言っても困らせるだけですわね)

仁美「今日はもう、解散としましょう。ああ、ついでですが、まどかさん」ガタッ

まどか「な、何?仁美ちゃん?」

仁美「まどかさんは上条くんのこと、どう思っていますの?」

まどか「ええっ、私!?その、いい人だと思うよ。で、でも恋愛として好きとか、そういうのはないからっ!!」アタフタ

仁美「そう、そうですか」

仁美(……何を聞いているのでしょうね、私は)

さやか(あの後、気分転換にパトロールをしてみたけど、魔女の反応はなし、か)

さやか「それにしても……仁美か……」

さやか「やっぱりこのままだと、仁美に恭介とられちゃうよね……」

さやか「あたし自身の本当の気持ち……」

さやか「……嫌、だな」

杏子「だったら、とられないようにすればいいじゃないか」

さやか「っ!?あんたは!」

杏子「恭介ってあれだろ?あんたが契約で怪我を治してやったっていうボウヤだろ?」

さやか「何よ!あんたには関係ないでしょ!」

杏子「まあ聞けって。ボウヤを他のやつにとられたくないってんなら、ボウヤの腕なりをへし折って、あんたの助けがなけりゃ生きていけないようにすればいい」

さやか「何言ってんの!そんなこと、やっていいわけないでしょ!!」

杏子「いいんだよ。ボウヤの怪我を治してやったのはあんただ。あんたが願った結果なんだ、あんたの好きにすればいい」

杏子「人のために貴重な願いを使ったりするから、そんなことになるんだ。今からでも遅くねえから、自分の願いを自分のために利用してきな。なんなら手土産代わりにあたしがやってきてもいいんだぜ」

さやか「……あんた、やっぱり最低だよ」

杏子「……最低じゃなきゃやってらんねえんだよ、魔法少女は」

さやか「ほむらには悪いけどさ、どうせあんたとは共闘なんて無理だから、今ここでこの街から追い出してやる」パァァァ

杏子「同感だな。どうせひよっこがいたところで戦力になんかならねえんだ。ここで叩き潰しても、問題ねえ」パァァァ

さやか「行くよ」チャキッ

杏子「はやく来いよ、びびってんのか?」スチャッ

さやか「あああああああ!!!」ダッ



マミ「何やってるの二人とも!!」

杏子「ちっ、マミか。邪魔すんなよ」

さやか「……マミさん」

マミ「久しぶりね、佐倉さん。本当にこの街に来ていたのね」

マミ「それで?結界でもないこんなところで、互いに武器を構えて何をしていたのかしら?」

杏子「はぁ、相変わらず平和な頭してんな。それとも魔法少女やめたからか?見てわかんだろ、魔法少女どうしの決闘だよ」

マミ「決闘、って……何言ってるの!美樹さんはこの前契約したばかりなのよ!それに決闘というのなら、美樹さんじゃなくて暁美さんでしょう!」

マミ「美樹さんも、武器をしまって!平和を守る魔法少女どうしが戦ってどうするの!」

さやか「……マミさんは黙っててください」

マミ「え?」

さやか「魔法少女をやめたくせに、魔法少女のことに口出ししないでください!!」

マミ「そんな!私はただ、二人が争うなんておかしいと……」

さやか「言ってるだけで何が変わるんですか!これは魔法少女の戦いなんです。マミさんには関係ないでしょ!!」

マミ「か、関係ないって、そんな」

杏子「いいから引っ込んでろよ、マミ。ここは魔法少女のステージだ。力を捨てたあんたがいていい場所じゃないのさ」

マミ「…………わかったわ」スッ

マミ「かつて後輩だった二人を止めるために力が必要というのなら、私はもう一度この力を使うわ」パァァァ

マミ「二人とも、覚悟はいいかしら」チャキッ

ほむら(もうすぐね。こんどこそ……まどか、あなたを救ってみせる)

QB「やあほむら、今日も武器調達かい?」

ほむら「……ええ」

QB「水を差すようで悪いけど、どんなに君が武器や兵器を集めたところで、君ではワルプルギスの夜に勝つことは不可能だと思うな」

ほむら「……悪いだなんて、あなたは思ってもないでしょう?それに、私はあくまでサポートよ。本命は他にいる」

QB「マミ達だね。でも彼女たちは本当に共闘してくれるのかな」

ほむら「させるわ。なんとしてでも」

QB「そう上手くいくかな。今まさに、彼女たちは仲間割れしているというのに」

ほむら「そんな、まさか!?」シュンッ

QB「……速いね。おっと、僕も行かなくちゃ」トットコ

さやか「くっ……動けない……」ガチガチ

杏子「ちっ……」ギシギシ

杏子(腕は衰えてねえってことか……)

マミ「頭は冷えたかしら?」

さやか「こんな…力があるのに……、どうして街を見捨てたりなんか……!」

マミ「っ!?待って!私はべつに街を見捨てたりなんか……」

さやか「見捨ててるじゃないですか!街をほむらに押し付けて、それから一度も変身したりしないで」

さやか「もうすぐほむらがいなくなって、杏子がこの街にやってくるんですよ!杏子がどんな奴かは、マミさんも知ってるんでしょ!なのに何も言ってこないで、もう自分は関係ないって顔して」

さやか「どうしてそんな態度でいられるんですか!!」

マミ「違う!!私は押し付けてなんて……私はただ暁美さんに任せただけで……」

さやか「だったらほむらと話し合いでもしたんですか!勝手にマミさんがそう言ってるだけでしょう!!」

マミ「そうじゃなくて……魔法少女が集まると、グリーフシードの奪い合いが……」

さやか「ほむらはそんな事しません!それはマミさんだって知ってるじゃないですか!」

マミ「……いいじゃない!私には、私には街を守る義務なんてないんだから!!」

杏子「マミ!?それは……」

さやか「…………マミさんは、義務でこの街を守ってたんですか……?」

マミ「…………え?」

マミ「……あれ?……私、なんで……街を……私…………」



まどか「どうしたんですか、マミさん?」

さやか「まどかっ!?なんでここに!?」

まどか「さやかちゃんを探して歩いてたんだけど……、これは……?」

マミ「……かな…め……さん?」

まどか「あ、マミさんの魔法少女姿。久しぶりですね」

マミ「……ち、違うの。これは、非常事態だったから変身しただけで、決してもう一度魔法少女になろうとか、そういうわけじゃなくて……」シュゥゥ

杏子「マミ……?」

まどか「え?マミさん、魔法少女に復帰する気になったんですか?」

マミ「待って!違うの!!本当に今だけだから!もう変身なんてしないから!!」

まどか「そんな慌てなくてもいいですよ、マミさん。それに……うん、やっぱりマミさんは魔法少女でいた方がかっこいいです」

マミ「やめて!そんなこと言わないで!鹿目さん、言ってくれたじゃない!もう一人で戦わなくていいって、普通の女の子になっていいって」

まどか「マミさんがまた戦いに戻るのは寂しいけど……」

マミ「一緒にいてくれる、って……」

まどか「仕方ないですよね、マミさんは魔法少女なんですから。ずっとそうやって生活してきたんですから」

マミ「やめて、お願い!私を見捨てないで!私を一人ぼっちにしないで!」

杏子「お、おい!マミ!!」

マミ「嫌!嫌なの!もう、あんな生活は!!」

さやか「マミさん……?」

マミ「誰にも気付いてもらえずに、一方的に助けるだけで……でもそうでもしないと自分が一人ぼっちだって、もう私のことを見てくれる人はいないんだ、って……」

マミ「だからあの時、鹿目さんがこれまでの私を認めてくれたのがうれしくて、普通の生活を一緒にしてくれるって言ってくれたのがうれしくて……」

まどか「…………」

マミ「……ねえ、どうして何も言ってくれないの?私、謝るから……。約束やぶって魔法少女になったこと、謝るから……。もう二度と魔法少女なんかにならないから……」

まどか「…………マミさん」

マミ「!な、なにかしらっ!?」

まどか「ごめんなさい」

マミ「…………え?」

まどか「私は、マミさんは魔法少女をやめた方が幸せになれると思ってました。マミさんは魔法少女をやめたがっていると、そう思ってました。でも、それは間違いだったみたいです」

マミ「そんなこと……、そんなことない……」

まどか「私が気づくべきでした。どうして魔法少女をやめて、もう二度と変身しないなんて言いながらも、マミさんがソウルジェムを肌身離さず持ち歩いていたのかを」

マミ「これは……思い入れのあるものだから、持ち歩いていただけで」

まどか「……マミさんは、どうしてさやかちゃんと杏子ちゃんの戦いに気付いたんですか?」

マミ「!そ、それは……」

まどか「私はさやかちゃんの声とか、銃声がする方に歩いてきたんですけど……」

まどか「マミさんは……魔力を感じたから、ですか?」

マミ「……そうだけど、その」

まどか「ねえ、マミさん。もうわかりきってるじゃないですか」

まどか「マミさんは魔法少女を捨てられない。普通に暮らしていても、魔力の反応があったら駆けつけてしまう。そして魔法少女に変身する」

マミ「こ、今回は佐倉さんと美樹さんが争ってたから、しかたなく!!」

まどか「いいえ、マミさんはたとえ魔力の反応が魔女のものだったとしても、同じことをしたと思いますよ」

マミ「ち、違う……」

まどか「だから、ごめんなさい。私のわがままでマミさんに普通の生活なんてさせてしまって。窮屈な思いをさせてしまって。マミさん優しいから、言い出せなかったんですよね?」

マミ「お願い……話を、聞いて……」


まどか「だから、もういいんですよ」

マミ「っ!?」

まどか「私のことは気にせず、また魔法少女に戻ってください」ニコッ

とりあえずここまで。

マミ「……そうよね、私が何を言ったところで信用できないわよね」スッ

杏子(マミのやつ、ソウルジェムなんか持って何を……!)

マミ「えいっ」ブンッ

まどか「え!?」

杏子「何やってんだ!馬鹿!!」

杏子(ソウルジェムを橋の下に投げやがった!!)

マミ「……これで信じてもらえるわよね?」

杏子「マミ!どうしてそこまで!!」

マミ「だって、一人ぼっちは……」ドサッ

さやか「……マミさん?」

杏子「お、おいマミ!どうしたんだよ、いきなり……」

まどか「マミさん……?」

さやか「ちょ、ちょっと……マミさん、どうしちゃったの?」

杏子「……!?……おい、どういうことだ」

まどか「え?」

杏子「死んでんじゃねえか!!」

さやか「あんた、いきなり何を言って……」

ほむら「巴マミのソウルジェムはどこ!?」シュンッ

さやか「ほ、ほむら!マミさんが!」

ほむら「早く言いなさい!ソウルジェムは!?」

まどか「は、橋の下に……」

ほむら「そんな……くっ!」シュンッ

さやか「いったい、何が起きてるの……」

QB「やれやれ、マミは何を考えているんだい?自分から橋の下に身を投げるなんて」

まどか「何を……言っているの?」

ほむら(……やっと巴マミのソウルジェムを取り戻せた)

ほむら(けれど……)

まどか「…………そんなのって」

杏子「…………」ギリッ

さやか「…………嘘」

ほむら(遅かった……)

マミ「……?……私は、いったい……?」ムクッ

マミ「そんな……嘘でしょ?ねえ、キュウべえ?」

QB「なに言ってるんだマミ、僕が嘘なんてつかないことは君もよく知っているだろう?」

マミ「そんなのって……」

まどか「!……ねえ、キュウべえ。ソウルジェムが濁りきると、どうなるの?」

さやか「もしかして……」

QB「どうしたんだい、今さらそんなこと聞くなんて。何度も言っただろう?」

QB「魔法少女としての一切の働きができなくなるんだ」

マミ「それって……」

ほむら「…………」

杏子「死んじまうってことかよ!この、てめえだけは!!」チャキッ

まどか「……待って、杏子ちゃん」

さやか「まどか……?」

まどか「何か見落としてる……。まだ何かある、そんな気が……」

まどか「ねえキュウべえ。……『魔法少女としての』って、何?その、他に何か……あるの?」

ほむら「まどか!?それは!!」

QB「…………」

まどか「魔法少女としての活動ができなくなると、魔法少女はどうなるの……?」

QB「たぶん、君たちの思っている通りだよ」

まどか「はぐらかさないで!ちゃんとあなたの口から言って!魔法少女としての一切の働きが出来なくなった魔法少女は、どうなるの!?」

QB「……やれやれ、どうしてそんなに疑り深いんだい君は?まあ、いいや。別に隠していたわけじゃないしね」

ほむら「やめなさいっ!!」

QB「ソウルジェムが完全に濁ったとき、魔法少女は魔女になる。これで満足かい?」

マミ「嘘……」

さやか「…………」

杏子「……ふっざけんなっ!!」

ほむら(…………もう、終わりね)

まどか「そんな……魔女も、もとは人間だったなんて……」

まどか「キュウべえ!魔法少女を、魔女を人間に戻す方法はないの?」

QB「あるよ」

まどか「っ!?教えて!!」

QB「まどか、君が契約することさ」

まどか「私が……?」

QB「ああ、君の素質ならここにいるみんなを人間に戻すことも、この街にいる魔女をすべて人間に戻すことも容易い」

さやか「…………」

QB「いや、容易いなんてものじゃない。君が願えば、地球上の魔女と魔法少女を人間に戻すことも十分に可能だ」

マミ「…………」

QB「もちろん使い魔から成長した魔女は別だけどね。もとの人間がいないそれらは、人間になることなく消え去るだろう」

杏子「…………」

QB「まどか、君は魔法少女の争いを嫌っていたね。どうだい?君が契約さえすればこの地球上から魔女はいなくなり、魔法少女は君だけとなる。少女が戦いに身を投じる、魔女退治はなくなるんだ」

まどか「…………」

QB「魔女のいない世界。君以外の魔法少女がいない世界。魔女退治のない世界。それを君が望むというのなら」

QB「僕と契約して、魔法少女になってよ」

まどか「私が……契約すれば、……魔法少女に……」

ほむら「何を言ってるの!まどか!!惑わされては駄目!!」

QB「惑わすとはひどいな。僕は提案しているだけさ」

QB「さやかを、マミを、杏子を、そしてほむらを魔法少女の運命から救いたいと思うのなら……その槍はなんだい、杏子」

杏子「黙りな」チャキッ

ほむら「佐倉杏子……!」

杏子「あたしの運命はあたしが決める。あたしが決めた。勝手に救われてたまるか」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子「いいか?あたし達を救うために契約なんかしたら、今度こそあたしはあんたを殺す」

まどか「っ!?…………」

杏子「事情を知らなかったとはいえ、あたし達は自分の意思で魔法少女になった。だったら、受け入れるしかねえだろ。……ふん、あたしは帰るぜ」スタスタ

さやか(あの後、杏子に続くように、誰も何も言わずにみんな解散した)

さやか(魔法少女……魔女……頭の中でいろいろな思いがごちゃごちゃになって、気持ちが悪い)

さやか「…………恭介」

ピリリリリ

さやか「っ!?恭介!!」

さやか(……待って、今のあたしに恭介と電話する権利は、あるの……?あたし、化け物なんだよ……。それに、仁美のこともあるし……)

さやか「…………無理だよ」

ピリリリリ

さやか「…………」

さやか「…………」ピッ

さやか「……もしもし」

さやか(あたし……ダメだって、わかってるのに……)

恭介『もしもし、さやか?ごめん、寝てた?』

さやか「うん、そういう感じ?なんの用?」

恭介『ああ、僕の手助けのことなんだけど。中沢たちに話したら、それぐらい変わってやるって。……というか女子に囲まれるとか許さねえ、って言われちゃって』

恭介『だから、明日からはもう僕にぴったりくっついてくるとかしなくていいから』

さやか「…………そう」

恭介『どうしたの、さやか?なんか元気ないようだけど……』

さやか「……ううん、なんでもないよ」

恭介『そう?ああ、それと、さやか。今日は一日ありがとう。ちょっとまわりの目が辛かったけど、助かったよ』

さやか「……そう、よかった」

恭介『あのさ……さやか、本当に大丈夫?』

さやか「大丈夫だって、ちょっと眠いだけだよ」

恭介『……さやかは自分のことになるとすぐ思いつめるから、僕が聞いても教えてくれないんだろうけど、それでも僕の助けが必要だったら気にせず言ってくれ』

恭介『僕は、さやかの幼馴染なんだから』

さやか「……もう、なに言ってんの。恭介のくせに生意気」

恭介『生意気って、幼馴染なのは本当だろ?まったく……』

さやか「恭介」

恭介『なに?』

さやか「ありがとっ」

恭介『……うん。……それじゃあ、また明日』

さやか「うん、また明日…………恭介」

恭介『?どうしたの、さやか?』

さやか「…………」

さやか(……本当に、気にせずに言えたらいいのに)

恭介『さやか?』

さやか「…………好き」

恭介『っ!?さやかっ!?』

さやか「な、なんでもない!!なんでもないからっ!!おやす…」

恭介『さやかっ!!聞いてくれっ!!』

さやか「な、何!?」

恭介『さやか、ありがとう。さやかの気持ちはとてもうれしい』

さやか「……どうして気づくのよ……いつもは鈍感なのに……」

恭介『……聞いてくれ、さやか』

さやか「……うん」

恭介『さやかの言うとおり、僕は今まで恋愛には鈍感だったみたいだ。僕はずっと音楽のことばかり考えていて、誰かに恋をしたことなんてなかったから』

恭介『今思い返せば、入院していたときにさやかが僕にいろいろと手を焼いてくれたのは、そういう意味だったのかもしれない』

恭介『でも僕は自分のことばかり考えていて、まわりに目を向ける余裕なんてなかった。いや、もしかしたらさやかの気持ちには気づいていたけれど、見ないふりをしていたのかもしれない』

さやか「…………」

恭介『ねえ、さやか。さやかの気持ちはとてもうれしい。本当にうれしい。けど、ごめん』

恭介『僕、他に好きな子がいるんだ』

さやか「っ!?…………そっか」

さやか(なんだ……最初から、あたしが仁美に勝てるわけなかったんだ……)

恭介『僕は鹿目さんが、まどかさんが好きなんだ』

さやか「えっ?」

さやか「なんで……そこでまどかの名前が……?」

恭介『……実はまどかさんは僕が入院しているとき、何度もお見舞いに来てくれていたんだ』

恭介『保健委員だから、って言って。こんなの保健委員の仕事でもなんでもないのに、何度そう言っても、それでも来てくれて』

恭介『そして……僕を救ってくれた』

さやか「…………」

恭介『恥ずかしいから、まどかさんにも秘密にするように頼んでたんだけど』

恭介『ごめん、さやかにも秘密にしてしまって』

さやか「……そっか……そうなんだ」

恭介『……ごめん、さやか』

さやか「もう、なんで謝るのさ。うん、まどかは可愛いし優しいもんね。好きになるのもわかるよ!」

恭介『……そう言ってもらえるとうれしいよ。僕の一方的な片思いだけどね』

さやか「……っと、もうこんな時間か、長話しちゃったね。それじゃ、おやすみ」ピッ

恭介「うん、おやす……ってもう切られてるか」

恭介「……ごめん、さやか」

恭介「『他に好きな人がいる』……か。どうせ告白なんてしないのに、何言ってるんだろうな、僕は」

恭介「まどかさんは退院した僕のことなんて、好きでも嫌いでも……なんでもないっていうのに」

ここまで。

学校

ほむら(……美樹さんも巴さんも今日は休みね)

モブ子「ほむりん、さやかどうしたんだろうね?先生に連絡もなかったらしいけど、何かあったのかな?」

ほむら「……そんな心配しなくても大丈夫よ、あの美樹さやかだもの」

ほむら(魔女化することを考えると、学校なんて行かずに二人の様子を見に行くべきなんでしょうけど……)

モブ子「うーん……そうだね、さやかだもんね!風邪ひいてるわけないか!」

ほむら「それは遠回しに馬鹿にしているような……」

ほむら(まどかが登校している以上、できるだけ学校にいた方がいい。それにこの時間帯に学生が歩き回るのは目立つから、武器集めもやりづらいし)

モブ子「いや、そうじゃなくて。さやかみたいに元気な子が風邪ひく姿なんて、想像できないなーって」

ほむら「……そうね。彼女が弱ってるところなんて、考えられないわ」

ほむら(今回のループは予測できない展開が多い。そのせいで全員を救えるんじゃないか、なんて考えたりもしてしまうけど……それではいけない)

モブ子「だよね。……あ、でもそれはほむりんも一緒か」

ほむら「……?あの、知ってのとおり、私はつい最近まで入院していたんだけど……」

ほむら(目の前に大きな希望が見えているからこそ、自分の本来の目的を見失わないようにしなければ)

モブ子「えー、でも初日から体育ですごい走ってたし、勉強も楽勝です!って感じで落ち着いて受け答えしてたしさ……ぶっちゃけ、ほむりんが入院してたって話は嘘なんじゃないかって説もあるよ」

ほむら「どんな説よ……」

ほむら(まどかを契約させない。それが私の目的。……昨日の時点で美樹さん達を救う望みは潰えたと考えなくては)

モブ子「信じてる人は少ないけどね。ほむりん優秀でかっこいいけど、クラスでの評価は『ちょっと抜けてる優等生』だから。入院ぐらいならするだろう、って」

ほむら「入院をちょっと抜けてるで済まされるのは、納得いかないけど……。それよりもちょっと抜けてるって何よ?」

ほむら(ワルプルギスの夜を倒すのも一人でやることになりそうだけど……ええ、もともと誰にも頼らないと決めていたんだもの)

モブ子「ほら、初日の自己紹介の時、クールな感じで自己紹介したと思ったら全然座ろうとしなかったから、先生に声かけられたでしょ?ぼーっとしてたのか知らないけど、びっくりして変な声出してさ。あれからクラスでの、ほむりんのイメージは決まったんだよね」

ほむら「……確かにあれは抜けてたかもしれないけど、それ一回じゃない。もう言われる理由はないと思うけど?」

ほむら(……とりあえず戦力が必要ね)

モブ子「うーん、なんといいますか……」

モブ子「一度つくられたイメージを壊すのって、大変だよね」

ほむら(まどかを気にしつつ、さらに武器を揃えなくちゃ。インキュベーターを黙らせるぐらいに)

マミホーム

マミ(……ん、朝……?)ムクリ

マミ(そっか、帰ってそのまま寝ちゃったんだ……)

マミ(学校は……、遅刻……ううん、お休みね)

マミ(今日は学校に行く気がしないわ……。サボっちゃいましょう)

マミ(……ふふ、悪い子になったみたい)

マミ(クラスのみんな、びっくりするかしら?それに鹿目さんも……っ!?)

マミ(…………こわい)

マミ(怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!)

マミ(鹿目さんに見放されてっ!!私はもう人間じゃなくてっ!!このままだと魔女になってしまってっ!!私がこれまで倒してきた魔女も元は人間でっ!!)

マミ(どうすればいいのっ!?もう私は一人ぼっちなのにっ!!誰も私を助けてなんて……助け……助け……)

マミ(っ!?)

マミ(あの時……キュウべえが、鹿目さんなら魔法少女を人に戻せると言った時……)

マミ(私は…………期待した!!)

マミ(わかっていたのに!それは自分の苦しみを鹿目さんに押しつける、自分勝手にもほどがある考えだってことは!!なのに)

マミ(鹿目さんなら私たちを救ってくれるんじゃないかと、そう思ってしまった……)

マミ(……彼女は私を救ってくれた)

マミ(私にもう一度魔法少女をやるように言ったりもしたけど、それもきっと彼女が私のことを思って、悩んでくれたから……)

マミ(鹿目さんはとっても優しい人だもの)

マミ(そんな彼女に、私は……私はっ!!)

マミ(もうわからない。どんな顔で鹿目さんと会えばいいの?いえ、もう私とは会ってくれないかもしれない)

マミ(鹿目さんは私にもう一度、街を守ることを望んだ。なのに私はソウルジェムを投げるなんて。きっと鹿目さんは私に失望したわ……)

マミ(……誰か……助けて…………)

「おーい、マミー!いるかーー!!」ドンドン

マミ(……佐倉さん?)

「おいってばー!!」ドンドン

マミ(佐倉さん……何の用かしら?昨日は彼女にもずいぶんと情けないところを見せちゃったな……)

「なんだよ、学校行ったのかー?」

マミ(佐倉さんも、私に失望してる。たぶん美樹さんも。……暁美さんはどうかしらね)

マミ(……もう嫌。誰にも会いたくない)

「んー、でも居留守かもしれねえしなー」

マミ(このままだと、私も魔女になるのかしら……。それなら、いっそ……、でも………)

「おい、マミ!!」

「10数えるまでに開けなかったら、ドアぶっ壊すぞー!!」

マミ(……あいかわらず乱暴ね)

「10……9……」

マミ(本当に壊して入ってくるのかしら?……べつにどうでもいいけど)

「8……7……」

マミ(今さらドアが壊れたところで、どうでもいい……。そう、何もかもが……)

「6、5、4、3、2、1、0!!よしっ!!」チャキッ

マミ「ま、待ってっ!?いま、いま開けるからっ!!壊さないでっ!!」ドタタッ

マミ「おはよう……」ガチャッ

マミ(うう……自分の弱さが悲しい……)

杏子「なんだ、いるじゃねえか……寝起きか?髪ぼさぼさだけど」

マミ「ええ……。それで、何の用かしら?」

杏子「ちょっと面かせよ、出かけようぜ」グイッ

マミ「え、待って今、私学校ずる休みしてるとこで……!」

杏子「休むんならいいじゃねえか、ほら早く」グイグイ

マミ「わかった!わかったから、準備させて!!引っ張らないで!!」

街中

マミ「誰にも見つかりませんように……」

杏子「心配しすぎだろ、学校さぼった程度で」

マミ「私、クラスでは優等生なのよ」

杏子「自分で言うなよ……。てか、前はクラスメイトなんて気にしてなかっただろ。何を今さら心配してんだ」

マミ「だってそれは…………」

杏子「……魔法少女をやめてたから、か?」

マミ「……今思えば、とても滑稽だったんでしょうね。魔法少女をやめる、なんて」

マミ「普通の女の子になったんだ、って浮かれてはしゃいで……ふふっ、本当に馬鹿みたい」

杏子「マミ……」

杏子「マミはこれからどうするんだ?」

マミ「…………わからないわ」

マミ「このまま魔女になるくらいなら、いっそ自分でソウルジェムを砕いてしまおうと思ったんだけど……決心がつかないの」

マミ「おかしいわよね……前までの私なら、正義の魔法少女に憧れていたころの私なら、自分が災いをもたらす魔女になることをなによりも恐れて泣きながら自殺したでしょうに」

マミ「今の私は……それと同じくらい、死ぬのが怖い」

マミ「死ぬことを考えると、ほんの数日間だけ魔法少女をやめた気になって遊んでいた日々が頭に浮かぶの」

マミ「いつも遠くから見守っていた、私のいる場所とは異なる世界」

マミ「なのにいつのまにか私もその世界の一員になっていて、憧れが現実になって……」

マミ「きっと、罰が当たったのよ」

マミ「憧れは憧れにとどめておけばいいのに、違う世界になんて行けるはずがないのに」

マミ「まるで自分も幸せになれるんじゃないか、なんて希望を捨てきれなくなって」

マミ「守りたいものをいつか壊す自分を、壊せない」

マミ「本当に……馬鹿みたい」

杏子「…………」

杏子「…………っと、着いたぜ」

マミ「……?ここに何かあるの?ただの裏道のようだけど」

杏子「ああ、確か数日前はこのあたりに…………いたっ!!」

マミ「この反応は、使い魔っ!?」

杏子「…………」

マミ「方向は……こっちね」タタッ

杏子「待ちな、どうする気だ?」ガシッ

マミ「……!」

杏子「『使い魔を殺しても意味がない』『人を食って魔女になったのを殺して、グリーフシードを手に入れるべきだ』……あたしがよく言っていたことだ」

杏子「それをあんたは正義の味方を気取って、そんなの間違ってる!と言ってたよな」

マミ「…………」

杏子「あたしはその、あたしには出来ない言動にいつもムカついてたけど、それでも言い分はわかったし、なによりそんなマミを……尊敬してた」

杏子「でも、もうその正しさは通用しない。グリーフシードがないとあたし達は魔女になる。生きるために、あたし達にはグリーフシードが必要なんだ」

杏子「使い魔を倒しても、グリーフシードは手に入らない。それどころか、魔力を使うからソウルジェムの濁りが進む。いいことなんて、一つもない」

杏子「生きたいというなら、使い魔を倒すのはやめときな」

マミ「…………」

杏子「もう一度聞くぜ」

杏子「マミはこれからどうするんだ?」

マミ「…………」

短いけどここまで。

マミ「……どうして」

杏子「へ?」

マミ「どうしてそんなに私を気にかけてくれるの?」

杏子「……べつに気にかけてなんかねえよ、ただ昨日あんなことがあったからな。マミはどうするのか気になっただけだ」

マミ(昨日……)

マミ「心配、してくれたのね」

杏子「は!?だから違うって言ってんだろっ!」

マミ「あんなに取り乱して情けない私を見て、心配して見に来てくれたのよね?そして今は、私が一人で悩まないように外に連れ出して、自分の中で結論を出すように導いてくれている」

杏子「……相変わらずお人よしな勘違いだな。なんであたしがそんなことするんだよ」

マミ「佐倉さんは昔から優しい子だもの」

杏子「……あたしは優しくなんかねえよ」

杏子「マミのことを何もわかってやれなかったんだから」

杏子「あたし、ずっと知らなかったんだ。マミがずっと苦しんでたなんて」

杏子「正義の魔法少女なんて綺麗ごとならべるマミを、何もわかってないって馬鹿にして、あたしの言うことを何もわかってくれないって喧嘩して」

杏子「わかりあえない、って決めつけて……勝手にいなくなった」

杏子「そりゃわかりあえるわけないよな。あたしが自分の中で『マミは喜んで人助けをする甘ちゃんだ』なんてイメージを作ってたんだから」

杏子「本当のマミがどんな奴かなんて、知ろうとしなかった」

マミ「……佐倉さんは悪くないわ。鹿目さんと話をするまで、私自身も自分をそういう……人間だと思っていたのだから」

杏子「そうかもしれないな。でもな、あたしはこうも思うんだ」

杏子「マミが自分のことを『正義の魔法少女』だと思いこんじまった原因は、あたしにもあるんじゃないか、って」

マミ「……どうしてそこで佐倉さんのせいになるの?」

杏子「……マミは昔から面倒見がいいからな」

杏子「あたしみたいな不良少女の前で、弱音を吐けなかったんじゃないか?」

杏子「大して歳が離れてるわけでもないのに、いちいちお姉さん面して」

杏子「ケーキを手で食うなとか、すぐ横になるなとか、ぐちぐちとうるさいし。自分も家ではけっこうだらしないのを棚に上げて、あたしの前ではかっこつけようとするし」

杏子「……その結果が、自分に嘘ついた『正義の魔法少女』だなんていう結果なんじゃないのか?」

杏子「マミは昔から……自分がつらいことも我慢するような、お節介な奴だから」

マミ「私が正義の魔法少女に憧れたのは、私の問題よ。佐倉さんが背負う必要はないわ」

マミ「……それに今の佐倉さんに、お節介だなんて言われたくないわよ」

杏子「ああ、そうだな。今のあたしもずいぶんお節介だ」

杏子「なあ、マミ。あたしはもう、マミに心配されるだけのあたしじゃねえんだ。マミの弱さを知っちまったあたしは、マミにお節介を焼くこともできるんだ」

マミ「佐倉さん……」

杏子「マミ、もうあたしに気をつかうな、かっこつけようとすんな。悩みがあるなら言え、助けになってやるから」

杏子「これでもあたしは、お姉ちゃんやってたんだぜ」

マミ「ふふっ、本当に佐倉さん、頼もしくなっちゃったわね。それとも私が情けなくなっちゃったのかしら」

杏子「……そういうとこがオバサンっぽいんだよなぁ」

マミ「オバサンっ!?お姉さんじゃなくてっ!?」

杏子「で、話がそれちまったけど、結局どうすんだ?出来れば、今ここで返事が欲しいんだけど」

マミ「そうね、……ねえ、佐倉さん?」

杏子「ん?どうした?」

マミ「ちょっと頼みがあるんだけど、聞いてもらえるかしら?」

杏子「いきなりかよ。まあ、ああ言った手前、断る気はねえけどよ。何だい?」

マミ「私が魔女になったら、被害を出す前に使い魔もろとも殺してくれないかしら」

杏子「……!?それは……」

マミ「正直に言うと、私は弱いわ。一人が怖い、死ぬのが怖い、平穏な日常を失うのが怖い、魔女になるのが怖い……知らない誰かが、使い魔や魔女に殺されるのが、怖い」

マミ「魔女退治をしたくないと思ってるのに、それでも魔女や使い魔を見ると倒さずにはいられない。なんとしてでも生きたいと思っているのに、使い魔が人を襲うことを許容できない。はっきりと自分を割り切れない、弱い存在よ」

マミ「それでも私は、そんな私でも……人を助けたい」

マミ「これが佐倉さんの言うかっこつけなのか、私にはもうわからないけど。……昨日、鹿目さんに言われたように、私は使い魔だろうと人を襲うものを見過ごせない」

マミ「だから私は、使い魔も倒すわ。グリーフシードが手に入らないとわかっていても、人を守るために」

杏子「……そうか」

マミ「でもね、それでもやっぱり魔女になるのは怖い。ううん、魔女になって人を襲ってしまうことが怖い」

マミ「どうしようもなくなった時は、自分でソウルジェムを砕こうとは思うけれど、……私は怖がって砕けないかもしれないから」

マミ「だから酷い頼みだとは思うけれど、佐倉さんにお願いしたいの。私の後始末を」

杏子「あたしは……」

マミ「……頼んでおいてあれだけど、無理しなくてもいいのよ?私を殺して、なんて人に頼むのが非常識なお願いなんだから」

マミ「こんなの了承したところで、私がこれからも見栄を張ってかっこつけられるようになるだけの話なんだし」

マミ「私もこんな事で、佐倉さんの優しさに甘えたいとは思ってないわ」

杏子「………………」

マミ「嫌ならはっきり言ってちょうだい。佐倉さんだって、私に気をつかう必要なんてない」

マミ「……どうかしら?」

杏子「…………わかった」

マミ「……いいの?その、私の自己満足でしかないのよ?」

杏子「……断れねえよ。マミがまわりに流されるんじゃなく、自分の意思でかっこつけようとしてるんだ。ならあたしは、そんなかっこつけなマミを助けるしかないだろ」

マミ「……ありがとう、佐倉さん」

杏子「気にすんな。でも後始末を頼んだからって、死んでもいいとか思うんじゃねえぞ」

マミ「ふふっ」

杏子「な、なんだよ?」

マミ「やっぱり佐倉さんは優しいなぁ、って」

杏子「あー、だから優しいとか言うな!むず痒い!!」

マミ「ところで佐倉さん?」

杏子「ん?」

マミ「佐倉さんはこれからどうするの?」

杏子「あー、どうすっかな。マミが復帰するとなると、見滝原を手に入れるのは無理っぽいんだよな」

杏子「ワルプルギスの夜は……どうしよう。共闘の約束したけど、これもう完全にただ働きじゃねえか。やだなぁ」

マミ「……佐倉さん」

杏子「んー、なんだよ。今けっこう悩んでるとこなんだけど……」

マミ「質問を変えるわね」

マミ「私が『使い魔も倒す』と決断したことは、佐倉さんの悩みを解決できたかしら?」

杏子「…………まだだ」

杏子「あたしもまだ、割り切れない」

放課後

まどか「…………」トボトボ

まどか「……っ!?さやかちゃんっ!?」

さやか「……まどか」

まどか「あ…………、えっと。今日、学校休んだよね?」

さやか「…………それで?」ギロッ

まどか「その、どうしてかなって……」

さやか「……そんな事もわからないの?」

まどか「ち、違うの!ただ、その、今日は仁美ちゃんが上条くんに告白するって……」

さやか「…………」

まどか「いいのかな、って……その……」

さやか「なんでまどかが、あたしの心配なんかするの?」

まどか「……え?だってさやかちゃんはずっと上条くんのことを……」

さやか「だからっ!!なんでまどかにあたしを心配してるふりが出来るのか、聞いてるの!!」

まどか「え?……ええ?」

まどか「私は、本当にさやかちゃんのこと心配してるよ……?」

さやか「どの口が言うのさ!知ってんだからね、あんたがあたしに隠れてこそこそと恭介に会いに行ってたことは!!」

まどか「わ、私はただ保健委員として、クラスメイトの上条くんが入院してるからお見舞いに行っただけで」

さやか「そんな建前が通用するわけないでしょ!!保健委員として?言い訳ならもっとちゃんとしたもの考えなさいよ!!」

まどか「言い訳なんかじゃ……」

さやか「じゃあ何よ!?どうしてあたしに隠してたの?後ろめたいことがあったんじゃないの?」

まどか「ない!!ないよ、さやかちゃんに対して後ろめたいことなんて!!ただ、私がお見舞いにきてることは秘密にしよう、って上条くんが」

さやか「……さっきからさ、『上条くん』って言ってるよね?それは、なんなの?」

まどか「え……?」

さやか「恭介さ、まどかの事を『まどかさん』って言ったんだよね。それなのに、どうしてまどかは『上条くん』って言ってるの?」

まどか「それも、えと……」

さやか「……そう、やっぱり二人の時は名前で呼び合ってるんだ」

まどか「待って、違うの!これはただ仲良くなろうと思って、だから別にさやかちゃんの思ってるようなことじゃなくて」

さやか「あたしが思ってること、って何!!あんたにあたしの気持ちの何がわかるっていうの!!」

さやか「わかるわけないでしょ!!まどかは人間で、あたしは魔法少女……化け物なんだから!!わからないくせに、わかったふうな口きかないで!!」

まどか「そんな、さやかちゃんは化け物なんかじゃ……」

さやか「だから、そういうところがムカつくって言ってんの!だったらあんたが契約してよ!あんたなら魔法少女を人間に戻すことも簡単なんでしょ!!」

まどか「それは……!」

さやか「出来ないでしょ!?出来るわけないよね!誰だって化け物になんかなりたくないものね!」

まどか「わ、私は……ただ、さやかちゃんが魔法少女だろうと幸せになれれば、って……」

さやか「……まどか」

まどか「っ!?な、何!?」

さやか「あたしはもう、まどかの言葉を信じられない」

まどか「…………え?」

さやか「まどかは前から思ってることを声に出せない子だったけど、あたしはそれをただの引っ込み思案だと思ってた」

まどか「……さやかちゃん?」

さやか「でも今、話をしてわかった」

まどか「ねえ、さやかちゃん」

さやか「まどかの言葉は薄っぺらだよ。優しい言葉をかけてるようでも、頭ではまったく別のことを考えてる」

まどか「さやかちゃん!!話をきいて!!」

さやか「あんたの言葉は嘘ばっかりだ!!あたしを心配する言葉も、応援する言葉も、何もかも!!」

まどか「…………っ!?」

さやか「あんたなんか、あんたなんか…………っ!!」

さやか「…………」ダッ



さやか(…………最低だ……あたし)グスッ

まどか「……………………」

まどか「…………そっか、やっぱり無理だったんだ」

まどか「さやかちゃんと仁美ちゃん。私の大切な友達」

まどか「何にも出来ない私でも友達の幸せを願うことなら出来ると思ってたけど、やっぱり私には無理だったんだ」

まどか「嘘ばっかり……だもんね」

まどか「……この気持ちだけは、本当だと思ってたのになぁ」ポロポロ

ここまで。

学校

マミ『暁美さん、ちょっといいかしら』

ほむら『……もう大丈夫なの?』

マミ『ええ、佐倉さんのおかげで。やっぱり持つべきは優しい後輩ね』

ほむら『そう。……すまないわね、優しくない後輩で』

マミ『あ、いやそういうつもりで言ったわけじゃないんだけど。気に障ったら、ごめんなさい』

ほむら『気にしてないわ、事実だもの。それで?用件は何かしら?』

マミ『そんなことないと思うけど……。えっと、美樹さんのことなの』

ほむら『…………』

マミ『美樹さん、今日も学校を休んでいるのよね?そしてどうやら家にも帰っていないらしいし』

ほむら『そうね』

マミ『彼女が何をしているか、心当たりはあるかしら』

ほむら『……言っておくけど、私にも美樹さやかから連絡は一切きてないわよ。それとあの子が今なにをやっているかは、あなたも予想ぐらいついているでしょう?』

マミ『……正義の魔法少女、よね』

ほむら『おそらくね。このところ使い魔を含む魔女の反応が激減していることからも、それは確かでしょうね』

マミ『そう、暁美さんも把握はしていたのね。よかったわ』

ほむら『……何がかしら?』

マミ『暁美さん、お願い』

マミ『美樹さんを止めるのを手伝って』

ほむら『……あなた達だけではだめなの?』

マミ『ええ。美樹さんが目指しているのは正義の魔法少女だから、それをやめた私の言葉をきっと彼女は聞いてくれない』

マミ『佐倉さんも無理でしょうね、あの子は美樹さんに似すぎているもの』

ほむら『あなた達で無理なら、私にも無理よ』

マミ『いいえ、無理じゃないわ。美樹さんは、あなたのことだけは嫌ってないから。それに戦い方を教えてくれたあなたの説得なら、美樹さんも聞き流しはしないと思うの』

ほむら『……やっぱり無理ね』

マミ『なぜ?確かに説得が成功するかはわからないけど、やってみる価値は』

ほむら『私に美樹さやかを説得する気がないからよ』

マミ『ちょっと待って!何を言ってるの!?今の美樹さんはどう考えても無茶をしているわ。このままだと危険よ』

ほむら『魔法少女のシステムは美樹さやかだって理解しているわ。それを知ったうえでの行動なら、他人に口を出す権利はない。そうでしょ?』

マミ『それは……、でも今の彼女は自暴自棄になってる。暁美さんはそれでいいの!?』

ほむら『……私には関係のない話よ』

マミ『関係ない、って……そんなわけないでしょ!!』

ほむら『言い方が悪かったわね。いえ、正確ではなかったわね』

ほむら『美樹さやかが魔女になろうと、私には興味のない話よ』

マミ『……っ!?』

ほむら『念話、切るわよ』

マミ『ちょっと、暁美さんっ!?まだ話は』プツンッ

ほむら(これでいい……、これで……)

モブ子「ほむりん難しそうな顔してるけど、どうかした?」ヒソヒソ

ほむら「……そんな顔してた?」ヒソヒソ

モブ子「うん、いつもの2割増し」ヒソヒソ

ほむら「それっていつもと変わらないんじゃ……」ヒソヒソ

早乙女「ほら、そこ!お喋りしない!」

ほむら「すみません」

モブ子「はーい」

早乙女「さて、ええと……どこまで話しましたっけ。……あら?」

ドドドドド゙ッ

早乙女「誰か廊下を走ってますね。まったく、注意しときますか」スタスタ

バンッ!!

早乙女「ひっ!?」

マミ「暁美さんっ!!ちょっと来なさいっ!!」

ほむら「…………え?」

モブ子「…………誰?」

まどか「…………マミさん?」

早乙女「あ、あのー、今授業中なんだけど……」

マミ「見つけた!!」ガシッ

ほむら「え、ちょ、ちょっと?」

マミ「行くわよ!!」グイッ ドドドッ

ほむら「ま、待って!!引っ張らないで!!走らないで!!止まってーー!!」キャアアアアァァァァァ

「え、何あれ?」「先輩、だよね?」「すげー力だったな」「ああ、胸でかかったな」ガヤガヤ

モブ子「ほむりんが拉致られたーー!?」

まどか「え?え?…………ええぇ!?」

屋上

マミ「ここまで来ればいいかしら?」

ほむら「待って……本当に……なんか気持ち悪くなってきた……」

マミ「ええと……大丈夫?」

ほむら「大丈夫じゃ、ないわよ。どんな顔して教室に戻れば……」

マミ「あー、その、ごめんなさい?」

ほむら「……はぁ、もういいわ。まさかあなたがこんな手段をとるなんて」

マミ「ええ。人を引きずり出すには強引な手段がいい、って身をもって学んだのよ」

ほむら「佐倉杏子ね……」

ほむら「それで?私を実際に引きずって、何をするつもりなのかしら?お茶会でも開いてくれるの?」

マミ「残念だけど、今はお茶もお菓子も用意してないの。だから、そのぶん」

マミ「お喋りしましょう」

マミ「話の続きよ」

マミ「美樹さんが魔女になろうと興味がないって、どういう意味?」

ほむら「……そのままの意味よ。そもそも私は私の目的のために生きているの。他のことはどうでもいいのよ」

マミ「その目的が何かは、教えてくれないのかしら?」

ほむら「……話すつもりはないわ」

マミ「そう。ワルプルギスの夜を倒すこと、ではないのよね?」

ほむら「ええ。それは条件の一つではあるけれど、目的そのものではないわ」

マミ「?でも条件の一つなんでしょ?それもクリアするのが困難な。だったら戦力になりそうな美樹さんを助けないのは得策ではないんじゃないの?」

ほむら「…………」

マミ(黙秘、ね。つまり、それぐらいわかっているけど、でも美樹さんを助けない理由がある)

マミ(美樹さんには興味がないと言ったのが正しければ、美樹さんが魔女化することが暁美さんの目的の条件だったりするわけじゃない)

マミ「このままいけば、暁美さんの目的は達成できそうなの?」

ほむら「……ええ、このまま何事もなければきっとうまくいくはずよ」

マミ(何事もなければ、って……まさか!?)

マミ「暁美さんは、美樹さんを助けることで予想外の何かが起きることを恐れているの!?そんな理由で美樹さんが魔女になるかもしれない現状を放置しているの!?」

ほむら「……ええ。美樹さやかは最悪このままだと魔女になる。けれど魔女になるとわかっていれば、こちらも対策がとれるわ」

マミ「っ!?あなた本気で言ってるの!?」

ほむら「……もちろん本気よ」

マミ「だとしたら、あなたは最低よっ!!美樹さんをなんだと思っているのよ!!」

ほむら「……言ったでしょ、私は目的がすべてなの。他のことはどうでもいいわ」

マミ「目的、目的って……!!いったい何なのよ、その目的とやらは!!」

ほむら「言う気はないわ。……もう話すこともないようだし、失礼するわね」クルッ

マミ「そんな……、そんな……」

マミ「そんな友達をないがしろにする目的、間違ってる!!」

ほむら「…………なんですって?」ピクッ

ほむら「今の言葉、取り消しなさい」

マミ(っ!?態度が変わった!?)

マミ「取り消さないわ。あなたがどんな目的を掲げているのか知らないけど、友達を見捨ててまで叶えようとするんだもの。それはそれは崇高なものなんでしょうね」

ほむら「言ったわよね、私にとってこの目的はすべてだと。それ以上言うなら、容赦しないわよ」

マミ(この流れは……)

マミ「あら、わかってなかったの?今、私はあなたのすべてを否定してるのよ。あなたの目的も、目的を達成しようとする意志も、これまで目的のために費やしたすべてをも、間違ってると言ってるの」

ほむら「っ!?……何も知らないくせに!!」

マミ「あなたが教えようとしないからでしょ!!魔法少女のことも、魔女ことも、あなたの目的も!一人で何でも知ってる顔して、全部一人で抱え込んで!何様のつもりよ!!」

ほむら「私だって好きで抱え込んでるわけじゃない!でも言ったところで誰も信じなかった、誰も味方になれなかった!」

ほむら「だから私は、もう誰にも頼らないと決めたの!!一人でだって、ワルプルギスの夜を倒してみせる!そして約束を果たしてみせるって!」

ほむら「そのためなら他のすべてを犠牲にしてみせるって、そう決めたのよ!!」

マミ(挑発したとはいえ、まさかあの暁美さんがここまで激昂するなんて)

マミ(キーワードは友達、そして約束。たぶん暁美さんの目的は『友達との約束を果たす』でいいのよね。そして一人と言っていることから、その友達はすでに……。)

マミ(どんな約束をしたのかはわからない。けどこれだけははっきりしてる)

マミ(暁美さんは、本当はとっても友達思いだってこと。それこそ自分のことは後回しにして、友達のことを第一に考えてしまうような、優しい子)

マミ(……だったら)

マミ「暁美さん、もう強がるのはやめなさい」

ほむら「っ!!」

マミ「友達のために友達を見捨てるなんて、間違ってるわ」

ほむら「…………」

ほむら「……ただの友達じゃないのよ」

ほむら「ずっと一人ぼっちだった私に、初めてできた大切な友達」

ほむら「『友達に順位なんて無い』ってあなたは言うかもしれないけど、あの子は他の友達とは違うのよ。私にとっては特別なの」

ほむら「今回だってそう。あの子と美樹さやか、二人を天秤にかけて迷いなく私はあの子を選んだ。……美樹さやかを切り捨てることにしたのよ」

ほむら「たとえつらくても、私がやることは変わらない。軽蔑するならすればいい」

マミ「……軽蔑なんかしないわよ。それに『友達に順位なんてない』なんて言えるほど、私は大人じゃないわ」

マミ「ただ……そうね、例えば暁美さんと鹿目さんのどちらかしか助けられないというのなら、悪いけど私は鹿目さんを助けると思うの」

ほむら「……そうでしょうね」

マミ「でも暁美さんを切り捨てるつもりはないわ」

ほむら「……?」

マミ「暁美さんだって助けてみせる」

ほむら「……相変わらず、言うことはカッコいいわね。でもね、理想だけじゃどうにもならない事があるのよ」

マミ「違うわ、暁美さん。私はカッコいいヒーローをやろうってんじゃないの。それに今さら私がそんな事しても、かっこ付かないでしょ?私が言ってるのは、もっと単純な話よ」

マミ「私は鹿目さんを助けたわ。そして暁美さんは……美樹さんに助けてもらうの」

ほむら「なんでそこで美樹さやかが出てくるのよ?」

マミ「あら、暁美さんがピンチなのよ。出てこない方がおかしいでしょ?友達なんだから」

ほむら「そんな屁理屈……」

マミ(……この子は、やっぱり)

マミ「ねえ、暁美さん。一人で頑張るあなたは忘れてることかもしれないけど、友達は助けあうものなの」

マミ「順位なんて関係なく、友達にだったら助けを求めていいのよ」

マミ「一人で抱え込む必要なんてないわ。すべてを失ったと言ったけど、今の暁美さんには仲間がいるじゃない」

ほむら「仲間……」

マミ「ええ、ちゃんと暁美さんの言うことを信じられる仲間を今の暁美さんは持っている。少なくとも、私はそのつもりよ」

ほむら「でも、私は」

マミ「暁美さん、あなたが望むなら私は暁美さんの目的達成に手を貸すわ」

ほむら「その……」

マミ「それとも、私の言うことは信じられない?」

ほむら「…………」

マミ「…………」

ほむら「……ズルいわ、その聞き方」

マミ「こうでも言わないと、暁美さん聞いてくれないじゃない」

ほむら「…………はぁ」

ほむら「私の負け、ね」

マミ「ふふっ、勝ち負けの問題じゃないわよ」

マミ(というより。美樹さんのことをお願いしてたはずなのに、なんで私は説教をしてるのかしら。……たぶん佐倉さんの影響よね)

ほむら「まさか巴マミに友達について語られる日がくるとは……」

マミ「感想それ!?」

ほむら「ショックだわ……」

マミ「ショックなの!?」

ほむら「冗談よ。……それじゃあ美樹さやかを説得しにいきましょうか」

マミ「……ありがとう、暁美さん」

ほむら「いいわよ、礼なんて。私だって美樹さやかを助けたいと思ってるんだから」

マミ「ええ、そうだったわね」

ほむら「だからマミへの貸しは一つだけよ」

マミ「……え?」

ほむら「街を守る役目を押し付けられたこと」

マミ「あ」

マミ(そうだった……。ていうか、やっぱり暁美さんっていい子よね。頼まれたことを断れないタイプの)

ほむら「……忘れてたわね。別にいいけど」

ほむら(巴マミ……。共闘し、敵対し、ある時は私が殺すこともあった彼女と、友人になるなんて許されるはずがない)

ほむら(いつかちゃんと話そう、そしてちゃんと嫌われよう。だから今だけは……)

マミ「じゃあ、まず教室に鞄を取りに戻って……ああっ!」

ほむら「どうしたの?」

マミ「帰る前にみんなの誤解を解かなきゃ!このままじゃ私、授業中に後輩を拉致した変な子だと思われちゃう!!」

ほむら「……あってるじゃない」

街中

さやか「……さっきからコソコソついてきてる奴、出てきなよ」

キリカ「コソコソとは酷いな。君が殺気をまき散らしてるから、出るに出られなかったんじゃないか」

さやか「魔法少女っ……!!」

キリカ「だから殺気を抑えてくれよ、私は話をしに来ただけなんだ」

さやか「あたしには話すことなんてない」

キリカ「出てこいと言ったくせに、それは勝手じゃないか?」

さやか「……」スタスタ

キリカ「ちょ、ちょっと待ってくれ!これは織莉子に頼まれたことなんだ、相手をしてもらわないと困る!」

さやか「うるさい、あたしは忙しいの」スタスタ

キリカ「待てって!これは君にとってもいい話なんだぞ!」

さやか「……」スタスタ

キリカ「君は愛が欲しくないのかっ!!」

さやか「…………え?」ピタッ

キリカ「やっと止まってくれたか。織莉子から戦いは禁止されてるからどうしようかと思ったけど、何はともあれ」

キリカ「私の、そして織莉子の話を聞いてくれ」

キリカ「ああ、それにしても君には本当に同情を禁じ得ないよ」

キリカ「愛を受け入れられないのは、すべてを受け入れられないのと同義だ」

キリカ「もし私が君と同じ状況だったらと思うと……うわああああ!!考えなきゃよかった!想像するだけで身が引き裂かれそうだ!!」

さやか「…………」

キリカ「はぁ、よかった。なんて私は幸運で、幸福なんだろう。最悪の想像だったけど、改めて自分の愛を認識することができた」

キリカ「大丈夫、私の愛は死んだりしない。大丈夫、大丈夫。よしっ!」

キリカ「さて、それで話というのはだね」

さやか「……あんた、ふざけてるの?それともあたしを怒らせにきたの?」

キリカ「なっ!?」

キリカ「ふざけてるとは心外だな。私はいつでも愛に真剣だ」

キリカ「むしろふざけてるのは、君の方じゃないか!?」

さやか「はぁ!?あたしのどこがふざけてるって言うのよ!!」

キリカ「君は愛から逃げている」

さやか「……っ!?」

キリカ「愛する人に受け入れられない苦しみは、それは過酷なものだろう!傷を癒す時間が必要なのはわかる。でも今、君がしていることはなんだ!?」

キリカ「ひたすら魔女退治に日夜勤しんで、自分を追い込むことで愛を忘れようとしてる!それは愛への冒涜だ!!」

キリカ「君が愛の本質を理解しない愚者だというのなら、私だって何も言うことはない!けど君は愛する者のために魔法少女になったそうじゃないか!そんな君がなんて体たらくだ!!」

さやか「さっきから、愛、愛、って!しかたないでしょ、もうあたしは振られたんだから!」

キリカ「仕方ないと思うのなら!だったら向き合え、愛と!!それが出来ない君は、愛を知らない子供だ!!」

さやか「向き合え、って……どうしろってのさ」

キリカ「いいかい、愛は無限で有限だ。君の愛が本物だというのなら、その愛を貫く方法を考えるんだ」

さやか「愛を……貫く……」

キリカ「そうだ!」

さやか「……無理だよ」

キリカ「何故?」

さやか「あたしはもう、人間じゃない。あたしなんかに好かれても恭介が困るだけだよ。……あの時はあんなこと言っちゃったけど、まどかが本当はいい子なことをあたしは知ってる」

さやか「たぶんあたしは何もしないほうが、恭介は幸せになれるから……」

キリカ「それが君の答えか」

キリカ「人間じゃなくちゃいけないというのは否定したいけど……、それが君の愛の形だと言うのなら私が口を出すわけには……うん?」

キリカ「今、『まどか』って言った?」

さやか「……え?言ったけど、あれ?まどかの事を知ってるの?」

キリカ「知ってるも何も!織莉子の伝言はズバリその『まどか』についての話なんだよ!!よかった、やっと本題に入れる!!」

キリカ「美樹さやか、君に頼みがあるんだ」

キリカ「鹿目まどかを魔法少女にしてくれないか」

さやか「…………え?」

キリカ「契約の願いはなんでもいいんだ。ただ織莉子は、鹿目まどかが魔法少女になることが必要だ、とだけ言っていたから」

キリカ「君は鹿目まどかの友人で、鹿目まどかの資質を使って人間に戻りたいんだろう?だったら願いはそれでいいから、君の方で鹿目まどかに頼んでくれないか?」

さやか「そんなことするわけないでしょっ!!」

QB「何を言ってるんだい、さやか。他ならぬ君自身がまどかに言ったことじゃないか」ヒョコッ

さやか「キュウべえっ!?」

キリカ「……今は私が織莉子への愛を証明しているところだよ。邪魔する気かい?」

QB「まさか。ただ鹿目まどかの契約は僕にとっても好都合だからね。目的は一緒なんだ、そう邪険にしないでよ」

さやか「あんたの思い通りになんてしない……!」

QB「そうかい?でもこれは君にとっても思い通りになる話なんだよ」

QB「まどかなら、さやかを人間に戻すことが出来る。ここで君が感じているコンプレックスは解消される」

QB「そしてまどかは魔法少女となり、上条恭介と結ばれることはなくなる」

QB「君にとってこれ以上なく良い話じゃないか。何を悩むことがあるんだい?」

さやか「それじゃあまどかが不幸になるでしょ!!」

キリカ「なんだ?君は悩んでいるのか?」

さやか「っ!?ち、違う悩んでなんか!!」

キリカ「そうだ、悩む必要なんかないとも!君はすでに一度、すべてを愛として捧げたんだ!これ以上なにを悩む必要がある?」

キリカ「愛はすべてだ!他のことなんて等しく無価値、そうだろう?」

QB「上条恭介の指を治したのは君だ。僕には愛情というものは理解できないけど、その分の利益を得ようとする権利はあると思うな」

さやか「違う……違う……」

パンッ

さやか「っ!?」

ほむら「その子から離れなさい」

さやか「ほむら、何で……?」

QB「出会いがしらに殺すのはやめてくれないかな、もったいないじゃないか」ヒョコッ

さやか「増えたっ!?」

ほむら「もっと殺されたくなかったら、はやく消えなさい」

QB「やれやれ、わかったよ」トコトコ

キリカ(負ける気はしないけど、織莉子に戦闘は禁止されてるし……)

キリカ「私も立ち去るよ。話、考えておいてくれ」ヒュンッ

さやか「…………」

ほむら「…………」

さやか「……ほむら」

ほむら「何かしら?」

さやか「……ありがと」

ほむら「……どういたしまして」

ここまで。

さやか「でも、どうしてほむらがここにいるの?学校は?」

ほむら「サボったに決まってるでしょ。あなたがいつ魔女になるかもわからなかったんだから」

さやか「そっか心配してくれたんだ……ごめん」

ほむら「……やけに素直ね」

さやか「うん、だってわかるから。今のほむらは、ちゃんとあたしのことを見てくれてるんだ、って」

さやか「本当に……あたしを心配してくれてるんだ、って……」ポロポロ

ほむら「ちょっと、さやか!?」

さやか「ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロポロ

ほむら「ああ、もう。泣き止みなさい」ナデナデ

ほむら「落ち着いた?」ナデナデ

さやか「……うん。ごめんね、ほむら」

ほむら「さっきから謝ってばかりね」

さやか「うん、でも謝らなくちゃいけないんだ。心配かけたこと、そして」

さやか「ほむらが鍛えてくれた力を、自分への言い訳に使ったことを」

ほむら「…………」

さやか「本当はわかってたんだ、まどかは何も悪くないってことぐらい」

さやか「まどかはとっても気が弱くて人見知りだけど、怪我してたり弱ってたりする人のためなら強くなれる子だから。恭介のことだって本当にただのお見舞いでしかないんだって、わかってたはずなのに」

さやか「恭介にフラれたのを魔法少女のせいにして、……まどかのせいにした」

さやか「悔しいけど、さっきの女の子の言うとおりだったよ。あたしは自分の愛から逃げてた。失恋から逃げてた」

さやか「もう駄々をこねるのは、やめるよ」

ほむら「……大丈夫なの?」

さやか「……うん、だってあたしはちゃんと告白したから。それでフラれちゃったなら、認めるしかないよ」

さやか「あたしは恭介に告白したけど、恭介はまどかの事が好きだった。それは変わらないし、誰かのせいってわけでもないんだから」

ほむら「そう、強いのね」

さやか「……ううん、強くないよ。強くないから、いっぱいまわりに迷惑かけちゃった。……みんなに謝らないと」

ほむら「…………」ナデナデ

さやか「……なんで撫でるのさ?」

ほむら「また怖い顔してるからよ、そんな顔で謝っても脅してるようにしか見えないわ。自分を追い込むのもほどほどにしときなさい」ナデナデ

さやか「……怖い顔はほむらが言えたことじゃないでしょ」

ほむら「……」グリグリ

さやか「ちょ、力入ってる!?気にしてたのっ!?」イタタタ

ほむら「落ち着いたわね」

さやか「いてて、ほむらって転校したころはもっとクールな感じじゃなかったっけ?」

ほむら「そうかしら?」

さやか「そうだよ、だって前までのほむらならあたしを助けたりしなかった。というより、いつも別の何かを考えていて、あたしの事を気にかけたりしなかったでしょ?」

ほむら「考え方が変わったのよ」

さやか「そうなの?……あ、でもなんだかんだでほむらって人付き合いいいから、そっちが素だったりして」

ほむら「…………へ?」

さやか「どうしたのさ?ポカンとしちゃって」

ほむら「……私、人付き合いよかったかしら?」

さやか「え?だってなんだかんだであたしの面倒見てくれたりしたし、今だって。それにクラスにもすぐ馴染んだでしょ?」

ほむら(……そういえばこのループに入ってから、休み時間を一人で過ごしたことがないような)

ほむら「そう、私も変わったのね……」ボソッ

さやか「え、何か言った?」

ほむら「何でもないわ」ファサァ

ほむら「それで、あの一人と一匹と何の話をしていたか、教えてもらえるかしら?」

さやか「う、うん」

さやか「それが……まどかを魔法少女にしてくれ、って」

ほむら「えっ!?」

さやか「も、もちろん断ったよ!当然で」

ほむら「ちょっと待って!あいつはともかく、呉キリカがあなたにそう言ったの!?」ガシッ

さやか「わわっ!?キリカってのがあの女の子のことなら、そうだよ!確か、織莉子とかいう子に頼まれたんだ、とも言ってた!!」

ほむら「そんな……どうなってるの……?」

さやか「いや、それはこっちのセリフだよ。何?知り合いなの?」

ほむら「…………そんなんじゃないわよ」

ほむら(なぜ?美国織莉子の目的は、最悪の魔女が生まれることを阻止することのはず。そんな彼女が、まどかを魔法少女にする理由なんて……)

ほむら(どちらにせよ、障害であることには変わりはないけど……一度会って話をした方がよさそうね)

通学路

仁美「……あっ!」

さやか「ごめん、待った?」

仁美「『ごめん』じゃありませんわ、私ずいぶん待ちましたのよ」

さやか「えぇ、けっこう急いで来たよ?仁美、どんだけ早くから待ってたのさ」

仁美「それはもう、何日も待ってましたわ」

さやか「……ごめん」

仁美「私が告白したことは、間違いだったのではないかと気が気じゃなかったです。とても、とても心配したんですよ?」

さやか「本当に、ごめん!!」

仁美「許しませんわ」

さやか「えー」

仁美「ゆ、許してほしかったら、その……」

仁美「私と、これからもお友達でいてください」

さやか「うは、仁美可愛い!!え、何これ?こんな可愛いの朝から独り占めしていいの?いいの?するよ!?」

仁美「お、落ち着いてください、さやかさん!あと可愛いを連呼しないで!」

さやか「よいではないか、よいではないか……あ、可愛いで思い出したけど、まどか遅いね」

仁美「あ……その、まどかさんは『先に行って』と今朝メールが」

さやか「……そっか、じゃあ行こうか」

さやか(まどかには会って謝ろうと思ってたのに……)

「…………」

ササッ

公園

まどか「はぁ……はぁ……」タタタッ

まどか「はぁ…………」

まどか「どうして……どうして……」

「おねえちゃん、泣いてるの?」

まどか「あ……。ううん、なんでもないよ」

まどか「久しぶりだね、ゆまちゃん」

ゆま「うん!!」

まどか「今日は、学校はお休み?」

ゆま「うん、だからおねえちゃんに会いに来たの。あ、でもおねえちゃんは学校……」

まどか「……えっと、私も今日は学校行くつもりないから、大丈夫だよ」

ゆま「え?でも制服着てるよ?」

まどか「その、さっき急に行きたくなくなったの」

ゆま「あー、ずる休み!いけないんだ」

まどか「あはは、そうだね。だからナイショにしてくれる?」

ゆま「うん!なんてったって、まどかおねえちゃんはゆまのヒーローなんだから」

まどか「ヒーローだなんて大げさだよ。っていうかヒーローはずる休みしないよ」

ゆま「そんなことないよ!ゆま今でも憶えてるもん、まどかおねえちゃんとこの公園で会った時のこと」

まどか「あ……そっかこの公園でゆまちゃんと会ったんだったね」

ゆま「うん。一人で泣いてたゆまを助けてくれた時から、おねえちゃんはゆまのヒーローなの」

まどか「……たまたま公園で泣いてる女の子を見かけたから、声をかけただけだよ。その後のことも、べつに声をかけたのが私じゃなくても同じことになってたよ」

ゆま「そんなことないもん!おねえちゃんだから、ゆまは変われたんだもん!!」

まどか「そんな……でも、ありがとうゆまちゃん」

ゆま「……?なんでおねえちゃんがお礼するの?」

まどか「あはは……なんでだろうね」

まどか「それで……その、最近はどう?……お母さんとか」

ゆま「……やっぱり今もママはゆまのことが嫌いみたい」

まどか「……そう」

ゆま「で、でもまどかおねえちゃんがママとお話ししてくれた日からは、一度もいじわるされてないよ」

まどか「そう、よかった」ギュッ

ゆま「……おねえちゃん?」

まどか「本当に、よかった」

とりあえずここまで。

ゆま「おねえちゃん、泣いてるの?」

まどか「あれ?……本当だ」スッ

ゆま「悲しいの?」

まどか「ううん、きっとこれはうれし涙」

ゆま「うれしい?」

まどか「うん。ゆまちゃんが元気だってわかったから」

ゆま「……グスッ」

まどか「あ、あれ?どうしたの!?もらい泣き?」

ゆま「おねえちゃん……だけだから……」グスッ

ゆま「ゆまのことで……喜んだり、泣いたりしてくれる人……」グスッ

まどか「…………」ナデナデ

まどか「涙、止まった?」ナデナデ

ゆま「うん。……ありがとう」

まどか「どういたしまして」

ゆま「ねえ、おねえちゃん」

まどか「ん?何、ゆまちゃん?」

ゆま「ゆまね、大きくなったらおねえちゃんみたいになりたい」

まどか「っ!?…………どうして?」

ゆま「だってまどかおねえちゃんは、とっても優しくてかっこいいから」

まどか「……そんなこと、ないよ」

まどか「ゆまちゃんなら、私なんかよりもずっとすごい人になれるよ」

ゆま「そうかなぁ?」

まどか「そうだよ。私なんかよりもずっとずっとすごくなって、すぐに私のことも……」

ゆま「どうしたの、おねえちゃん?」

まどか「……なんでもないよ」

まどか「それに私もまだまだ子供だから」

ゆま「じゃあ、おねえちゃんは大きくなったらどんな人になりたいの?」

まどか「えっ!?」

ゆま「…………」ジーッ

まどか「え、えーと……そんなに見つめないで……?」

ゆま「じーーーーっ」

まどか「声に出されても……うー、わかったよ」

ゆま「やった!!」

まどか「でもなぁ、どうなりたいっていきなり聞かれても困るかも」

ゆま「そうなの?」

まどか「……私はただ、友達がいて家族がいて、時々困ってる人を助けられたら幸せだから」

ゆま「人を助けたら幸せなの?助けてもらったらじゃなくて?」

まどか「私、昔からなにもできなくて。だから誰かに助けてもらうことはあっても、誰かを助けることなんてほとんどなかったの」

まどか「それでも、怪我してる人や苦しんでる人は私の助けを必要としてくれて」

ゆま「……うん」

まどか「そうやって頼りにされてる時に思うの」

まどか「これが私の生きる意味なんだ、って」

織莉子「そう、貴女も自分の生きる意味を持っているのですね」

まどか「!?」

ゆま「だれっ!?」

織莉子「初めまして、鹿目まどかさん」

織莉子「私の名前は美国織莉子。そしてこの子は呉キリカ」

キリカ「よろしく。それで実は私たち、今かなり困っててさ」

織莉子「助けていただけますか?」

ゆま「え?え?」

まどか「……ゆまちゃん。商店街にあるハンバーガー屋さん、わかる?」

ゆま「え?う、うん」

まどか「お金渡すから、先に行ってて。私、ちょっとこのお姉ちゃんたちとお話ししなくちゃいけないから」

ゆま「でも……わ、わかった」タタタッ

織莉子「すみません、わざわざ」

まどか「かまいません、あの子を魔法少女に関わらせたくないだけです」

キリカ「あれ?私たちのこと知ってるの?暁美ほむらからでも聞いたのかい?」

まどか「いいえ。ただ、初対面で『私』に話しかけたりするのは魔法少女ぐらいですから」

織莉子「なら余計な手間は省いて説明しますね」

織莉子「私たちはある危機を迎えようとしています。そしてそれは貴女や貴女の友人にも関係があることです」

まどか「……なんですか?」

織莉子「私の魔法少女としての能力は未来予知。その能力で、私はある光景を予見しました」

まどか「光景?」

織莉子「貴女もすでに知っていると思いますが、もうすぐこの町にワルプルギスの夜がやってきます」

まどか「とても強い魔女、ですよね?あなたの言う危機ってワルプルギスの夜の事ですか?それなら……」

織莉子「ええ、それなら今も暁美ほむらが対策を練っていることでしょう。しかし、私が見た光景はその先なのです」

まどか「……?」

織莉子「暁美ほむら、巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか。私が見たのは、彼女たちがワルプルギスの夜に挑み、敗北する光景」

まどか「うそ!?」

キリカ「織莉子は嘘なんかつかないよ!!……流石は伝説の魔女と言ったところだね、彼女たちも決して弱いわけではないだろうに」

織莉子「その光景を見て私は理解しました。アレを倒すには、真に強い魔法少女の力が必要だと」

まどか「……そういうことですか」

織莉子「理解がはやくて助かります」

織莉子「鹿目まどかさん。キュウべえと契約して、魔法少女になってください」

まどか「えと、少し質問いいですか?」

織莉子「ええ、なんなりと」

まどか「どうして『ワルプルギスの夜を消したい』と私と願わせないんですか?」

キリカ「願わせるとは、なんとも人聞きの悪いな」

キリカ「ただ、そうだね。その必要がないんだ」

キリカ「そんなことしなくたって、君に眠る魔法少女の力はけた違いさ。しろまるの受け売りだけれど、魔法少女にさえなればそれこそワルプルギスの夜だって相手にならない」

まどか「そんなに……」

キリカ「まさに最強の魔法少女へと君はなる、らしいよ」

まどか「……」

織莉子「願いは貴女自身のために使ってください。魔法少女となって、ワルプルギスの夜を倒してくれれば私たちからは言うことはありません」

まどか「あの、どうしてワルプルギスの夜を倒そうとするんですか?勝てないのなら、戦わずにやり過ごしたほうが……」

織莉子「……残念ながら、そうもいかないのです」

織莉子「アレによる街への被害は甚大です。アレの接近にともない人々は非難することになるでしょうが、それでも建物は崩れ多くの命が失われます」

織莉子「おそらく貴女の家族や友人も例外ではありません」

まどか「そんな……」

織莉子「それと、私個人の理由もあります」

まどか「え……?」

織莉子「私がキュウべえに願ったのは『自分が生きる意味を知りたい』」

まどか「!?」

織莉子「この願いにより私は未来予知の力を得、ワルプルギスの夜の脅威を知りました。そして自身の生きる意味を知りました」

織莉子「私はワルプルギスの夜を倒すために生きているのだと」

織莉子「お願いします、鹿目まどかさん。私に力を貸してください。この街と、人と、そして私のすべてのために」

まどか「わ、私は……」

キリカ「私からも頼むよ。織莉子のすべてには、私のすべても入っているんだから」

まどか「でも、私……魔法少女になんて……」

織莉子「?ああ、魔法少女になることに嫌悪感を抱いているのですか」

キリカ「確かにゾンビにされるってのは、あのしろまるの思惑通りにされてるようで腹立たしいかもしれないけどさ、なってしまえば結構悪いものでもないよ」

キリカ「グリーフシードの数には気をつけなくちゃいけないけど、それだけさ。これだって君、もとい最強の魔法少女なら心配するほどのことでもないだろう」

キリカ「なにより、魔法少女になれば君は大いなる力を手に入れることになるよ!さっき言ったじゃないか、人に頼られたいって。最強の魔法少女になれば、君の助けを求める人で行列ができるね!!」

織莉子「……キリカ」

キリカ「あれ?私、なんか変なこと言っちゃった!?」

織莉子「……いえ、大丈夫よ。いつも通り」

織莉子「鹿目まどかさん」

まどか「は、はい」

織莉子「どうか首を縦に振ってはもらえないでしょうか。心配せずとも、貴女が魔法少女になった後、グリーフシードに困ることはありませんから」

まどか「でも……」

ほむら「話に乗っては駄目よ、まどか」

キリカ「なっ!?」

織莉子「来たわね」

まどか「ほむらちゃん!?」

ほむら「ええ、私よ。それで?これはどういう状況なのかしら?」

ここまで。

学校

モブ子「近頃、職員室ではこのクラスの話題で持ちきりらしいですよ」

マミ「あら、どうして?」

モブ子「そうですね、例えば無断で学校を休む生徒がいたり」

マミ「美樹さんね」

モブ子「休み時間に勝手に帰る生徒がいたり」

マミ「暁美さんね」

モブ子「授業中に乗り込んでくる先輩がいたり」

マミ「ごめんなさい」

モブ子「休み時間ギリギリまでなかなか自分の教室に帰らない先輩がいたり」

早乙女「…………」

マミ「ごめんなさいね」

モブ子「いや帰りましょうよ、そこは。先生も遠い目しちゃってるじゃないですか」

マミ「みんなの視線が辛いから、あまりクラスにいたくないのよ」

モブ子「やっぱりまだからかわれたり?」

マミ「からかうとかじゃなくて、なんというか……優しいの」

モブ子「優しい?」

マミ「『受験勉強で疲れてたんだろう』っていう同情から、『禁断の愛ですわ』な応援とかそういう」

モブ子「お、おお」

マミ「視線だけでも人が考えてることってわかるものなんだ、ってよくわかったわ」

モブ子「目は口ほどに物を言う、ですか」

マミ「ええ、身に染みたわ」ヤレヤレ

早乙女「…………」ジー

モブ子「……本当に身に染みてます?」

公園

ほむら「なるほどね。貴女がまどかの契約を望んでいるというのは、初めて聞いたときは信じられなかったけれど、どうやら本当みたいね」

ほむら(この世界で織莉子が見た未来はワルプルギスの夜まで。しかも私たち魔法少女が全滅するまでというのなら、最後までまどかは契約をしなかったと考えていいはず)

ほむら(つまりこの世界のまどかなら余程のことがない限り、いえ余程のことがあっても契約はしない)

ほむら(加えて織莉子はまどかに契約を迫っているから、まどかの殺害を企てることもない)

ほむら(この機会を逃すわけにはいかない。この世界でなら、私はまどかを助けられる!!)

織莉子「あら、何かおかしいことでも?鹿目さんには、魔法少女として破格の才能が眠っています。ワルプルギスの夜打倒の手助けを乞うことは当然でしょう?」

ほむら「それは見過ごせないわ。どんなに才能があろうと、まどかを魔法少女にするわけにはいかない。それはまわりが強要していい範疇ではないわ」

織莉子「あら、それを言うのなら貴女の方こそ、鹿目さんの契約について余計な口出しをしているように見えますけど。ねえ、鹿目さん」

まどか「私は……」

ほむら「駄目よ、まどか。魔法少女の末路がどんなものかは、あなたも知っているでしょう。彼女の言葉に惑わされては駄目」

キリカ「待ちなよ。さっきから織莉子に酷い言葉を向けているけれど、織莉子は君たちのことも救う案を出しているんだよ。このままその子が契約しなかったら君たちは全滅なんだから、君が迷う余地なんてないじゃないか」

キリカ「それとも君はその子が契約さえしなければ、ワルプルギスの夜に殺されてもいいとでもいうのかい?」

ほむら「…………」

まどか「……ほむら、ちゃん?」

ほむら「……いえ、そんなことはないわ。ただ、そうね。これだけは言っておく」

ほむら「私にとってはワルプルギスの夜を倒すよりも、まどかを魔法少女にしないことの方が大切なことよ」

キリカ「なっ!?」

まどか「っ!?」

織莉子「……やはり、そうでしたか」

キリカ「じゃあワルプルギスの夜はどうするのさ」

ほむら「もちろん倒すわ。まどかを魔法少女にしないで、あいつを倒す方法を考える」

キリカ「そんなの無理に決まってる!!」

織莉子「帰りましょう、キリカ」

キリカ「え、ちょっと!?勧誘はどうするのさ?」

織莉子「無理よ、少なくとも暁美さんがいる今は。……でも、どうなのかしらね?暁美さん」

織莉子「貴女は貴女の信条に基づき、鹿目さんを魔法少女にせずワルプルギスの夜と圧倒的に分の悪い戦いをすることを選んだわけですけれど、他の皆はどうなのかしら」

織莉子「鹿目さんが自分たちと同じ境遇になるだけで、必ず勝利できるということがわかっていながら、命懸けの戦いをしようと思えるのかしら」スタスタ

キリカ「織莉子、待ってくれ」タッタッ

ほむら「…………」

まどか「ねえ」

ほむら「まどか、彼女たちに何を言われても気にすることないわよ」

まどか「うん。あの、ほむらちゃんに聞きたいことがあるんだけど」

ほむら「何かしら?」

まどか「どうしてそんなに私を魔法少女にしたくないの?」

ほむら「魔法少女なんてあんなもの、まともな人間がなろうとするものじゃないからよ」

まどか「そ、そうじゃなくて!!」

まどか「どうして、私なの……?」

ほむら「……初めて、手を引いてくれた人だから」

まどか「え?それって」

さやか「やっと見つけた!!」

まどか「さやかちゃん!?」

ほむら「あら、やっと来たの」

さやか「『やっと来たの』じゃないよ!!先に見つけたんなら教えてよ!!」

まどか「なんでさやかちゃんが……、あ、そもそもどうしてほむらちゃんも。今、授業中だよね?」

さやか「そんなのあんたが無断欠席したからでしょうが。心配したんだよ、なんか事件とかに巻き込まれたんじゃないかって」

まどか「もしかして二人とも、ずっと私を探して……?」

さやか「当然でしょ」

まどか「さやかちゃんはただでさえ、連続不登校した後なのに……」

さやか「ぐ……」

ほむら「だからあなたは学校に行きなさいって言ったのに」

さやか「むむむ。いや、でも今日はどうしてもまどかに会わなくちゃいけなかったから」

まどか「……?」

さやか「まどか!!」

まどか「は、はい!?」

さやか「ひどいこと言って、ごめん!!」

まどか「え?……あ」

さやか「この前は魔法少女のこととか、恭介のこととか……。なんかもう、頭ぐちゃぐちゃになっちゃってて。まどかの話も聞かず、やつあたりみたいに一方的に酷いこと言って」

さやか「本当にごめん!!」

まどか「あ、頭をあげてよ、さやかちゃん!!」

さやか「本当に、本当にごめんなさい!!」

まどか「さやかちゃん、土下座はやめて!?制服汚れちゃうよ!?」

ほむら(流行ってるのかしら、力づく外交)

さやか「こんなあたしだけど、一方的に絶交したあたしだけど、また友達になってください」

まどか「へ?」

さやか「へ?」

まどか「……いいの?」

まどか「私なんかと、また友達になってくれるの?」

さやか「いや、お願いしてるのはこっちなんだけど……」

まどか「だって私……さやかちゃんを怒らせるようなことばかり……」

さやか「ああ!!あの時言ったことは気にしないで!!本当にやつあたりから出た言葉だから」

まどか「それに……魔法少女でもないのに」

さやか「あれは忘れて!!まどかは契約なんかしなくていいんだから」

ほむら「……あなた、何を言ったの?」ジトー

さやか「なんでもない!!なんでもないよ!!ね、まどか」

まどか「う、うん」

ほむら「……まどかがそういうなら」

さやか「それに魔法少女とか関係ないよ。あたしはまどかと友達でいたい。……駄目かな?」

まどか「……ううん、そんなことないよ。こちらこそよろしく、さやかちゃん」

ほむら「…………」

さやか「あれ?どうしたの、ほむら?……うらやましい?」

ほむら「……なにがよ?」

まどか「……?」

さやか「大好きなまどかに自分はよろしくされなくて、悔しいんでしょ!いやー、ほむらはまどか大好きだからなあ」

まどか「えっ!?」

ほむら「うるさいわね。用がすんだらさっさと学校に戻るわよ。特にさやかは問題児扱いされてるんだから」

さやか「感動の仲直りの扱いが軽い」

まどか「あ、あのほむらちゃん、今のって?」

ほむら「ほら、無駄口叩かない!!走る!!」

まどか「待って。ごめん、私この後用事ある」

さやか「この子学校サボる気まんまんだよ」

ほむら「ついていきたいけど、さやかはもちろん私も立場上あまり休めないわね。……マミを呼びましょうか」

さやか「マミさん受験生だよ!?そんなに心配しなくても大丈夫だって。何かあったら連絡してね、わかった?」

まどか「うん、わかった。……ほむらちゃん」

ほむら「なに?」

まどか「ありがとう」

ほむら「え?」

まどか「それだけ。いってらっしゃい」

ほむら「え、ええ。いってきます?」タッタッ



まどか「…………どうしよう」

ハンバーガー店

まどか「え、来てないんですか?」

店員「はい。小学生のお客様はお見えになっていませんが」

まどか「そうですか。ありがとうございます」ペコ



まどか「いったいどこ行ったんだろう……」テクテク

「さて、どうすっかな」

まどか「この声は……」

ゆま「……」スースー

杏子「ここに寝かせとくわけにもなぁ」

まどか「ゆまちゃん!!杏子ちゃん!!」

杏子「あ?……なんだあんたか。こいつ、知り合いなのか?」

まどか「うん、ちょっと。えっと、これはどういう?」

杏子「言っとくけど、あたしはこいつになんもしてないぞ。あたしはただ、使い魔に襲われて気絶したこいつを助けてやっただけだ」

まどか「わあ、ありがとう、杏子ちゃん。ゆまちゃんを助けてくれて」

杏子「たまたまだよ。襲われてたから思わず助けちまっただけで」

まどか「…………」ニコニコ

杏子「……なんだよ」

まどか「よかった。杏子ちゃん、人を助けるようになったんだね」ニコッ

杏子「…………」

まどか「杏子ちゃんが守ってくれたら、みんな安心だね」

杏子「……なるほどな。そうやって、こんどはあたしに町のヒーローを押し付けるつもりかい?」

まどか「ヒーローって……何の話?」

杏子「とぼけんなよ。さすがに天然ってわけじゃないんだろ」

杏子「優先順位、ってやつなのかね。仲の良くなったマミに戦わせないように、ほむらに町を押し付けて。友達のさやかが魔法少女になって、そのうえほむらがこの町からいつかいなくなることがわかったから、今度はマミに町を押し付けようとした」

杏子「そして今度はあたしが人を守る魔法少女に改心したから、あたしに町を守ってもらおう、ってとこだろ?違うか?」

まどか「そんな!!」

杏子「違うのか」

まどか「…………なの?」ボソッ

杏子「ああ?」

まどか「それは悪いことなの?だって魔女がいて、人を襲ってて、それを防ぐことができるのは魔法少女しかいなくて!!でも自分で戦う勇気はなくて、でも友達が危ないことをするのも嫌だから、他の人に頼ろうとすることは間違ってるの!?」

杏子「悪くねえよ、なにも。こればっかりは自分で戦え、ってまわりが言っていい話じゃないしな。それに友達に危ない目にあってほしくないと思うのも、当然のことだ」

杏子「生きるため、グリーフシードのために最低限戦うのと、町を守るために使い魔含めて戦い続けるとじゃあ、危険も面倒も違うもんな」

まどか「……ごめんね、杏子ちゃん」

杏子「…………」

まどか「ごめん……」

杏子「はっ、謝るぐらいなら本当のことを言ってほしいね」

まどか「……え?」

杏子「あたし相手にそんな優しい言い訳つかうんじゃねえって言ってんのさ」

まどか「ど、どうしたの急に!?」

杏子「マミ達は優しいからな。あんたの話に共感して、納得してくれるかもしれないけどさ。あたしはあんたが嫌いだから、そんな言い訳は通用しねえぞ」

まどか「なにを言ってるの、杏子ちゃん!?」

杏子「目をみりゃわかるんだよ。あんたは友達に戦うのをやめてほしいんじゃない。あんたがやめてほしいと思ってるのは、魔法少女そのものだ」

まどか「……同じことでしょ?」

杏子「違うだろ、全然違う。危ないからとか、そんな優しい理由じゃない。あるのはもっと単純な気持ちだ」

まどか「…………」

杏子「あんたは魔法少女が嫌いなんだ。魔法少女という存在そのものが」

とりあえずここまで。

まどか「……なんで」

杏子「…………」

まどか「なんで、わかったの……?」

杏子「……あたしの親父がそうだったからな」

まどか「お父さん……?」

杏子「いい人だったよ。食事に困るぐらい貧しい神父だったんだけど、それでも正しさを見失わない人だった。……どんなに他の人に耳を傾けてもらえなくても、教えを説きつづけた」

杏子「当時のあたしは、そんな親父の話を誰も聞かないのが悔しくてさ、『みんなが親父の話を真面目に聞く』ようにキュウべえに願っちまった」

まどか「そんなっ!?」

杏子「……教会は繁盛して、あたしは魔法少女になり魔女と戦うようになった。親父とは違うかたちで自分も人を助けるんだって、けっこうはりきってたっけな」

杏子「そしてある日、魔法少女のことが親父にばれた」

杏子「親父があたしに向かって何て言ったと思う?『魔女』だってさ。皮肉だろ?」

まどか「…………」

杏子「それから親父は教えを説くことをやめて、酒ばっか飲むようになった……そして最後はあたしを残して一家心中しちまった」

杏子「それでな、あんたが魔法少女を見る目は、あたしの親父とそっくりなんだ」

杏子「化け物を見るような目。いや、あんたからしたら『ような』じゃなくて化け物を見る目、なのか」

まどか「……そこまでばれちゃってるんだ」

杏子「あたしにとっては忘れられない思い出だからな」

まどか「……私がおかしいのかな?」

まどか「魔法少女を怖いと思うのは、おかしいことなのかな?」

杏子「…………」

まどか「人間じゃ歯が立たない魔女と互角に戦える能力を持っている魔法少女。そんなのどっちも化け物なことには変わりないと思うんだけど」

まどか「その気になれば人間を簡単に殺せる化け物が人間と同じ格好をして、街や学校ですれ違ってるかもしれないなんて、怖くない方がおかしいよ」

杏子「……魔法少女は人間を襲わないだろ」

まどか「襲うよ。襲う理由があれば」

まどか「常にナイフを持ち歩いている人がいるようなものだよ。ううん、ナイフならまだいい、おまわりさんが捕まえてくれるから。でも魔法少女を止める方法を人間は持ってない」

杏子「確かにな」

まどか「怖いよ。こんなことなら、知らないままでいたかった。魔法少女とか魔女とか、私の知らないところで勝手に戦っていてほしかった」

杏子「だからあんたは、そうしたわけか。転校したばかりであまり親しくないほむらに全部押し付けて、自分のまわりから魔法少女の世界を排除しようとした」

まどか「まだ魔法少女をやめられるものだと思ってたからね。魔法少女の数、もとい化け物の数は少ないに越したことはないから」

まどか「あ、でもちょっと訂正。本当はね、マミさんに魔法少女をやめるように言ったのは、マミさんと仲良くなったからじゃないんだ。なんならマミさんとほむらちゃんで勝手にやっててくれれば、とも思ってたんだけど」

まどか「あのままだとマミさん、さやかちゃんを魔法少女に勧誘し続けるだろうから、その前にマミさんを人間に勧誘するしかなかったの」

まどか「友達が化け物になるなんて、絶対に嫌だった」

まどか「……失敗したけど」

杏子「さやかが契約しちまったからなぁ」

まどか「魔法少女をやめるようにさやかちゃんを説得しようにも、さやかちゃんはほむらちゃんの弟子気分でノリノリだったし。どうしようかと色々頭を悩ませてたら」

杏子「魔法少女の真実、か」

まどか「魔法少女は人間に戻れない。でもそれ以上に、魔女の真実の方がショックだった」

まどか「どんなに恐ろしくても、魔法少女は魔女を倒してくれているんだからって思ってたのに、その魔女ももとは人間だなんて」

まどか「ここでさ、私が魔法少女の契約をしてさやかちゃんを人間に戻す、みたいなことが出来ればよかったんだけど……。いざ自分が化け物になるかと思うと、……何もできなかった」

まどか「人間じゃなくなると思うと、怖かった」

まどか「今ね、魔法少女になってくれって頼まれてるの」

杏子「キュウべえか?」

まどか「ううん、二人組の魔法少女」

杏子「なに!?それでどうしたんだ?」

まどか「その二人はほむらちゃんが追い払ってくれたんだけど……ほむらちゃんがいなくてもきっと私は契約しなかったと思う。……できなかったと思う」

まどか「たぶん、殺されそうになったとしても。化け物になるぐらいなら……こんな化け物だらけの世界で自分も化け物になって生きるぐらいなら……」

杏子(死を選ぶ、ってか。いったいどれぐらい魔法少女が嫌いなんだ、こいつは)

杏子(いや、もう魔法少女のあたしにはこいつの気持ちなんてわからないか)

まどか「……なんかいっぱい話したね。こんなに胸の内を誰かに話したのは、初めてかも。……感想、聞いてもいいかな?」

杏子「…………」

杏子「今の話をきいてわかった、やっぱりあたしはあんたが嫌いだ」

まどか「…………だよね」ニコッ

まどか「そう言ってもらえた方がずっといいよ。お互いに嫌いあってる方が、ずっと気が楽」

まどか「なのに、なんでかなぁ」

まどか「さやかちゃんもマミさんも……ほむらちゃんも。魔法少女……なのに、化け物なのに……、どうして私なんかに優しくするのかなぁ……」

まどか「ねえ、杏子ちゃん。ちょっと私の悩み事聞いてくれる?」

杏子「悩み?なんだよ」

まどか「さっきほむらちゃんと話してから、私変なんだ」

杏子「ほむら?そういえばやけにあいつ、あんたのことを気にかけてたな」

まどか「やっぱり、そうなんだ」

まどか「魔法少女だってわかってるのに、嫌いで嫌いで仕方のない魔法少女だってわかってるのに」

まどか「ほむらちゃんが私を……その、大事にしてくれてるって思うと、なんだか嬉しいの」

杏子(……へぇ)

まどか「おかしいよね、こんなの。魔法少女だってわかってから、ずっと避けてたような相手にこんな気持ちになるなんて」

まどか「これまではほむらちゃんの事を気にも留めてなかったのに……急になんだか気になるようになって。……仲良くしたい、とか思って」

まどか「わからないよ。ほむらちゃんの手を引いたのなんて、まともに話をしたのだって、そんなの初日だけなのに……。どうしてそれだけのことで、あんなに優しくしてくれるの……?」

杏子「よくわかんないけど、あんたにとってはそれだけのことでも、ほむらにとっては大事なことだったんじゃないの?」

まどか「え?」

杏子「あいつ転校してきたんだろ?転校初日で右も左もわからない時に、率先していろいろ教えてくれる奴がいたってのはデカいだろ」

まどか「でも本当に転校初日だけだよ?その後はたいてい他の子と一緒にいて」

杏子「それでも、最初の一人は特別だろ。そりゃ次の日から話しかけてもらえなくなったりしたのは辛いだろうけどさ」

まどか「私が……特別?」

杏子「勘違いとはいえ、あんたはあいつに優しくしたんだ。そのことは変わらねえからな」

まどか「……私、どうすればいいの」

杏子「ああ?何悩んでんだよ」

まどか「これまで無視してきたのに……」

杏子「はぁ、めんどくさい奴だな。急に無視し始めたんだから、急に仲良くなったっていいじゃねえか」

杏子「ただ、ほむらがあんたを大事にしてるってのは本当だ。魔法少女とか人間とか、あんたにしかわからない悩みがあるのかもしれないけど、それだけは憶えておいてやってくれ」

まどか「……うん」

まどか「なんだか、不思議だね」

杏子「何がだ?」

まどか「こんな話をさやかちゃんでもマミさんでもなく、私を嫌いな杏子ちゃんとするなんて」

杏子「そうだな」

杏子(……こいつは、自分が人に好かれるタイプじゃないと思ってるみたいだ)

杏子(教会にも来てたな、こういう奴)

杏子(だからほむらみたいな、好かれようとしていない相手からの計画外の好意に困惑する。納得するだけの理由がないから)

杏子(そしてあたしみたいな嫌われてもいい奴にほど、気兼ねなく会話ができる)

杏子(難儀な性格だな……他人事だけど)

ゆま「……!?あれ、ここどこ!?」

まどか「あ、ゆまちゃんおはよう」

ゆま「え、なんでまどかお姉ちゃんがいるの?あれ?なんでゆま寝てたの?」

まどか「ゆまちゃん疲れて道端で寝ちゃったんだよ。それをそこのお姉ちゃんが介抱してくれたの」

ゆま「??そうなの?お姉ちゃん、ありがとう」

杏子(……お姉ちゃん、か)

杏子「いいよ、じゃああたしはもう行くからな」

まどか「あ、今からご飯食べに行くんだけど、杏子ちゃんも来る?お金出すよ」

杏子(こんな会話した相手を飯に誘うのかよ、こいつは……)

杏子「やなこった」

ここまで。

学校

モブ子「昨日の休み時間中ずっと巴先輩と話をしていて気づいたんだけどさ」

ほむら「?」

モブ子「巴先輩って胸大きいよね」

ほむら「ずっと話をした結論がそれ?」

モブ子「いやいや、あれはしょうがないよ。なんか色々な話をした気がするけど、話してる間ずっと胸の事考えてたもん」

ほむら「マミが不憫すぎる……」

モブ子「男子たちの視線も釘づけだったしね」

男子達((ばれてる……!?))

ほむら「へえ、そう」

モブ子「声が怖くなってるよー。でもさ、ほむりんだってあれを前にしたら、思うところぐらいあるでしょ」

ほむら「……それはどういう意味かしら」

モブ子「言っておくけど普通に女子として、だよ?」

ほむら「……そうね。確かにあの胸は」

モブ子「羨ましいよね」

ほむら「妬ましいわね」

モブ子「……あれ?」

ほむら「……ん?何か?」

モブ子「そこは、羨ましい!自分もああなりたい!じゃないの?」

ほむら「何よそれ。そう思ったところで私の胸が大きくなるわけじゃないじゃない。それよりもマミの胸が萎むことを望むわ」

モブ子「胸が萎む方がもっとないよ……」

ほむら「だいたいあんな大きくたって、全力疾走するとき邪魔になるだけよ」

モブ子「女子中学生が全力疾走するってどういう状況?」

ほむら「わけがわからないわ。どうしてみんなあんなものに執着するのかしらね」

モブ子「今のほむりんに言われたくないよ」

放課後

まどか「ほむらちゃん!!」

ほむら「な、なにかしら?」

まどか「いいいいっしょに帰らない!?」

ほむら「え……いいわよ、一緒に帰りましょう」

ほむら(急にどうしたのかしら。この世界ではもうまどかとの関係はあきらめていたけれど……)

まどか「わあ、ありがとう!ほむらちゃん!!」

ほむら「じゃあ準備するからちょっと待ってくれるかしら」

ほむら(……いえ、理由なんてどうでもいいわね。まどかが前みたいに話しかけてくれるのなら)

帰り道

杏子「お?」

ほむら「あら」

まどか「杏子ちゃん!こんなとこで会うなんて奇遇だね」ギュー

杏子「ちょっとな。……なんでまどかはほむらにしがみついてるんだ?」

まどか「えー、これぐらい普通だよ」ギュー

杏子「いや、普通に歩きづらいだろそれ」

ほむら「これぐらいどうってことないわ」

杏子(いやいやいやいや)

杏子(急に仲良くなっても問題ないとは言ったけどさー。さすがにこれはおかしいだろ)

杏子(というかほむらもつっこめよ)

杏子「そうか、じゃああたしはもう行くな」

まどか「ばいばい、杏子ちゃん」

杏子(ま、本人たちがいいってんなら放っておくか。めんどくさいし)

ある日 学校

さやか「これは友達の話なんですけど、告白されて好きな人がいるからと言って断ったのにまったくその好きな人に告白する素振りのない男ってどう思います?」

マミ「それって上条くんのこと?」

さやか「違います!あくまで友達のことで!!」

仁美「それだと私のことになるのでやめてもらえません、その例え」

さやか「じゃあ知らない人の話なんですけど」

マミ「すごい相談ね」

仁美「さすがさやかさんですわ」

さやか「もー、どうしろっていうの」

マミ「落ち着いて美樹さん。それで、美樹さんはその人にはやく告白をしてほしいの?」

さやか「え?ああ、えーと……なんといいますか。断ったからには態度で示してみせろというか」

仁美(おとこらしいですわ)

さやか「幼馴染としては二人がその、どうなるか気になるというか」

マミ(幼馴染って言っちゃってるわね)

マミ「うーん、確かに気になるのはわかるけど、やっぱりそれは二人の問題だと思うわ。やっぱり告白ってまわりに急かされてするものじゃないと思うし」

仁美(ごめんなさい、急かしました)

マミ「その男の子もタイミングが掴めていないだけで、きっともうすぐ告白するわよ」

さやか「そっかー、じゃあもうちょっと待とうかな。マミさんが言うんならそうなんだろうし」

仁美「そうですね、巴先輩が仰るんですもの。一緒に待ちましょう」

マミ「…………」

マミ(この子たちの中で、私は何なんだろう)

マミ(……聞くの怖いなぁ)

ある日 マミホーム

杏子「なあ、マミ」

マミ「何かしら、佐倉さん」

杏子「マミはクラスの友達できたんだよな?」

マミ「ちょっと、まるで今まで友達がいなかったみたいな言い方は止めてもらえる?」

杏子「友達っていったって一緒に放課後遊んだりはしたことないだろ?そういうのずっと断ってただろうし」

マミ「別に放課後一緒に遊ぶだけが友達じゃないわよ」

マミ「まあ、いいわ。それで?それがどうしたの?」

杏子「なんで家であたしと寂しくケーキ食ってんだ?クラスの友達と食べればいいのに」

マミ「佐倉さんがいるから寂しいわけないじゃない。それにクラスの友達は大事だけど、佐倉さんのことも大切よ」

杏子「……ふん、変な奴」

マミ「もう、そうやってすぐ悪ぶらないの。耳真っ赤にさせながらじゃ、かっこつかないわよ」

杏子「うるせえなぁ。……なあ、マミ」

マミ「なあに、佐倉さん?」

杏子「紅茶、おかわり」

マミ「はいはい」

とりあえずここまで。

放課後

ほむら(もうすぐね……)

まどか「ほむらちゃん、帰ろう!!」

ほむら「ごめんなさい、まどか。今日はちょっと用事があるの」

まどか「お買い物?付き合うよ」

ほむら「いいえ、魔法少女のことなのよ。ワルプルギスの夜があと数日でくるから、他のみんなと話し合ったり。まどかは危ないから、その」

まどか「あ……。うん、わかった。ほむらちゃんも気をつけてね」

ほむら「ええ、じゃあまた明日」

まどか「またね」



さやか「まどかのやつ、あたしには目もくれずに帰っちゃったよ。うー、ほむらにまどかとられたー」

ほむら「喚かないの、めんどくさい」

さやか「辛辣!?」

さやか「とにかく、あたし達も行こうか?」

ほむら「ええ。マミと杏子とも途中で合流しましょう」

さやか「ほむらの言ってた会議できる場所ってほむらの家?」

ほむら「いえ、それはちょっとした知り合いの家よ」

さやか「ふうん。話し合いが出来るぐらい広い場所なの?」

ほむら「そうね、なかなか大きなお屋敷よ」

織莉子ホーム

キリカ「で、招かれざる客人は何しに来たのかな?」

さやか「ちょっとほむら!?知り合いってこいつらのこと!?」

マミ「暁美さん、勝手に人の家を集合場所にするのはまずいわよ」

杏子「アポぐらいとっておけよな」

ほむら「静かにしなさい。話ができないじゃない」

キリカ「いいからとっとと帰りなよ、ここは私と織莉子の場所だ」

織莉子「キリカ、待って」

織莉子「暁美さん。いったいなんの御用かしら?」

ほむら「二人にお願いがあってきたの」

織莉子「…………」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒すのを手伝ってくれないかしら」

さやか「なにやってんの、ほむら!?こいつらはまどかを契約させようとしてるんだよ!そんな奴に助けてもらう気!?」

キリカ「そんな奴とはずいぶんな言いぐさだね。それが人にものを頼む態度かい?」

織莉子「キリカ、挑発しないの」

キリカ「あああ、ごめんよ織莉子。わかった、もうしないよ!!あと君、すまない言い過ぎた」

さやか「へ?あ、うん」

マミ「なんか変わった子ね」ヒソヒソ

杏子「お前と気が合いそうだな」ヒソヒソ

織莉子「そもそも、私たちはワルプルギスの夜を倒すことに協力を惜しむつもりは初めからありません」

織莉子「そのために一番安全で確実な方法を提案しているというのに、拒んでいるのは貴女方でしょう」

織莉子「鹿目まどかが魔法少女になれば、ワルプルギスの夜は倒せる。逆に鹿目まどかが魔法少女にならなければ、貴女方は敗北する。そう言ったはずよ」

杏子「あたし達が負ける、だ?適当なこと言ってんじゃねえ」

ほむら「事実よ、おそらくね」

杏子「なんだと?」

ほむら「彼女は未来を見ることができるの」

マミ「未来予知の魔法少女……!」

ほむら「美国織莉子。あなたの言うとおり、このまま私たち四人でワルプルギスの夜に挑んだところで負けるのが運命だというのなら、その運命を変えるために力を貸して」

織莉子「……確かに私たち二人、合わせて六人の魔法少女で戦いを挑めば運命は変わるかもしれない。けれど、変わらないかもしれない」

織莉子「そんな上手くいくかわからない策を実行する理由は、私たちにはありません」

織莉子「そんなことをするぐらいなら、貴女方がワルプルギスの夜と戦っている間に鹿目さんに契約を迫ります」

さやか「っ!!ほむら、やっぱり無理だよ!!こいつらはあたし達の敵だ!!」ガタッ

キリカ「へえ、戦おうっていうのかい。数で勝っているぐらいで、いい気にならないことだ!!」ガタッ

マミ「待って、美樹さん。座って!!」

ほむら「……駄目なのよ」

マミ「……え?」

ほむら「駄目なのよ、まどかを魔法少女にするわけにはいかない理由があるの」

杏子「…………?」

ほむら「今日ここにみんなを集めたのは、ある大切な話をするためよ。さやか、マミ、杏子。そして美国織莉子、そして呉キリカ。ここにいる全員に関係する話」

ほむら「そして、できればまどかには聞かせたくない話」

織莉子「…………」

ほむら「私は未来から来たの」

まどかホーム

まどか「ほむらちゃん、大丈夫かな……」

まどか「ううん、ほむらちゃんなら心配ないよね」

ピリリリリ

まどか「あれ、電話?……上条くんからだ、なんだろ?」

まどか「もしもし、上条くん?」

恭介『やあ、まどかさん。今、大丈夫かな?』

まどか「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」

恭介『まどかさんに大事な話があるんだ』

まどか「大事な話?なに?」

恭介『いや、その今ここでじゃなくて、ええと今度の日曜日、空いてる?』

まどか『今度の日曜日?空いてるよ』

恭介「そう、なら空けといてもらえるかな。その日に二人だけで話がしたいんだ」

まどか『べつにいいけど……、今じゃだめなの?』

恭介「だ、大事な話だからね」

まどか『ふうん、変な上条くん』

恭介(ぐ……)

恭介「じゃあ、詳しいことはまた学校で会った時に」

まどか『うん、わかった。また明日』

恭介「また明日」



恭介(『上条くん』か……)

織莉子ホーム

ほむら「以上が私の話よ。信じられないというのなら、それも仕方ないと思うけれど」

織莉子「なるほど。鹿目さんが契約した世界での私は、ワルプルギスの夜のその後を見たというわけですか」

キリカ「信じるのかい、織莉子?こいつの話を。言っちゃ悪いけど、未来からきたなんて嘘っぽくてしょうがないよ」

織莉子「それは私の能力も同じよ。私の未来予知の能力を暁美さんは疑わなかった。信頼できると思うわ」

ほむら「美国織莉子、あなたは目的はワルプルギスの夜を倒すことだったわね。でもそのためにワルプルギスの夜以上の魔女を生んでしまっては、本末転倒なんじゃないかしら」

織莉子「……貴女は少し勘違いをしているわ」

ほむら「……?」

織莉子「他の世界はどうか知りませんが、この美国織莉子の生きる目的はワルプルギスの夜という驚異を取り除くことただ一つ。それさえ達成できれば、あとの事はどうでもいいの」

ほむら「くっ……」

ほむら(やっぱり実力で排除するしか……)

織莉子「ですが」

ほむら「……!?」

織莉子「そうですね。脅威を排除するために脅威を生んでいては、本当に何をしているのかわからなくなりそうですし」

織莉子「いいでしょう、暁美ほむらさん。鹿目さんに契約を迫るのは止めにします」

ほむら「そう。わかってもらえて、嬉しいわ」

織莉子「ですが、私とキリカが戦力として加わったところで、ワルプルギスの夜に勝てるかどうか」

ほむら「そのための作戦会議よ」



ほむら「それで、あなたたち。もういいかしら」

さやか「…………」ズーン

マミ「…………」ズズーン

杏子「あー、まだ無理っぽい」

ほむら「はやく立ち直ってもらわないと、次に進めないんだけど」

さやか「だってさ……、話のなかのあたし。ひたすら迷惑なやつじゃん。しまいには魔女になるし……」ブツブツ

ほむら「今のあなたはなってないんだから、いいじゃないの」

マミ「仲間に……。みんなに銃を向けるなんて……」ズズズーン

杏子「べつにあたしは気にしねえから、マミも気に病むなって。ソウルジェム濁るぞ」

ほむら「はぁ、もうちょっとかかりそうね。それにしても杏子はその辺の切り替えがはやいわね」

杏子「ん?まあ、あたしはな。……でもホントなのか?まどかが猫のために契約したっていうのは」

ほむら「え?なにかおかしいかしら?」

杏子「……べつに」

杏子(ほむらの話を信じないわけじゃないけど、こいつの言ってるまどかが、あたしの知ってるまどかと同一人物とは思えないんだよなあ)

ここまで。

帰り道

さやか「どうしてあの二人を味方にしようと思ったんだろう」

マミ「美国さんたちのこと?」

さやか「あの二人はまどかを殺したって言ってましたよね。そんな相手になんで」

杏子「べつにあの二人が殺したわけじゃねえだろ。そういう世界もあったってだけで」

さやか「えー、でもやっぱり他人じゃないんだから、仲間にとは思えなくない?」

マミ「もうそんな事を言っている余裕もないのかもしれないわ」

マミ「今みたいに鹿目さんが契約せず、魔法少女が一人も欠けたり敵対することなくワルプルギスの夜を迎え撃つのは初めてだって言っていたから。自身の感情は無視してでも進まなくちゃいけないのよ」

杏子「すべてはまどかとの約束のため、か」

マミ「約束のため、と言えば聞こえはいいけど……。暁美さんのそれはもう約束は超えているのかも」

マミ「何度も時間を繰り返すなかで、最後に残った道標。暁美さんを支える唯一の柱。そういうものになっているんじゃないかしら」

さやか「ほむら……大丈夫なのかな」

マミ「大丈夫かどうかは、私たちの頑張りにかかっているわ。ワルプルギスの夜を倒して、暁美さんを運命の檻から解放してあげましょう」

さやか「そうですね。よーし、頑張るぞ!」

ピリリリ

さやか「電話だ。……恭介?何だろ」

杏子「じゃあ、あたしたちは先に帰るぞ」

マミ「大丈夫だとは思うけど、夜道に気を付けてね」

さやか「はい、また明日」

さやか「もしもし、恭介?どうしたの?」

恭介『ああ、さやか。一応さやかには伝えておこうと思って』

さやか「?」

恭介『今度の日曜日、僕はまどかさんに告白する』

さやか「……え」

さやか「ええええええ!?」

さやか「恭介が!?まどかに!?告白!?いや、それよりも」

さやか「なんでそれをあたしに言う!?」

恭介『え?さやかには伝えといたほうがいいかな、って』

さやか(かなって……じゃない!!)

恭介『さやかには、色々迷惑をかけたから』

さやか(この男……無自覚に人の傷口に塩を塗ってくれる。全部とは言わなくても、あたしが魔女化した原因、こいつにもあるんじゃなかろうか)

さやか「……はぁ。そう、せいぜい頑張んなよ」

恭介『うん。といっても、もう結果はわかってるんだけどね』

さやか「なにさ?自信ないの?男らしくないなぁ」

恭介『自信がないというより、フラれる自信がある感じかな。さっきまどかさんと話をして、もう彼女は僕に興味はないってわかったから』

さやか「興味はない?」

恭介『まどかさんは、本当に、ただ単に、怪我をして入院していたクラスメイトの世話をやっていただけってことさ。だから怪我が治った僕の事は、ただのクラスメイトとしか思っていないんだ』

さやか「そんな……」

さやか(そういえば、結局まどかが恭介をそう思ってるのかわからないままだ……)

恭介『呼び方も『恭介くん』から『上条くん』に戻っちゃったし』

さやか(あ、なんかイラッときた)

恭介『僕がヴァイオリンが弾けないと悲しんでいたから、彼女は僕に優しくしてくれた。そしてもう僕が悲しい思いをしないようにと、僕からヴァイオリンを遠ざけた』

恭介『本当に嬉しかった。まわりの期待に応えるために、はやく怪我を治さなくちゃと思っていた僕にとって、彼女の言葉は救済のように思えたよ』

さやか「…………」

恭介『でも、今の僕は彼女の救いを必要としていない。だからだろうね、前まではあんなに話しかけてくれていたのに、いつからかまったく話をしなくなったのは』

恭介『まどかさんには感謝している。入院している間も、退院してから今までも穏やかな気持ちでいられるのは、彼女が僕に頑張らなくていいと言ってくれたからだと思う。でも』

恭介『でも、やっぱりこのままじゃいけない気がしてきたんだ』

さやか「え?」

恭介『今からヴァイオリンを練習しようとしても入院開けで今までみたいな音が出せなかったり、思うように指が動かなくて憤ったり、悲しい思いをするかもしれない』

恭介『せっかく悲しい思いをしないようにと、まどかさんが用意してくれた安らげる生活を壊すことになると思う。それは彼女に対する裏切りかもしれない』

恭介『けど、やっぱり僕はヴァイオリンを弾きたい。あんなに、まわりから弾くよう言われるのが嫌だったヴァイオリンをまた弾きたいんだ』

さやか「恭介……」

恭介『この気持ちを伝えたあと、告白するよ。そして結果はどうあれ、自分の気持ちに決着をつけて、またヴァイオリンの練習をしようと思う』

さやか「恭介」

恭介『なんだい?』

さやか「あんたやっぱ先にあたしに伝えておいて正解だったわ。フラれるつもりで告白した、なんて後から言われてたらあんたのこと殴ってた」

恭介『怖いな、さやかは』

さやか「これぐらい当然でしょ。まあ、色々覚悟の上みたいだから、殴るのは止めてあげる。せいぜいきつーくフラれれば」

恭介『ありがとう、さやか。ああ、それと』

さやか「なに?まだなんかあるの?」

恭介『入院してたとき、きつくあたってごめん』

さやか「……おそいわよ、馬鹿」

マミ「そういえば佐倉さんって今はどこに住んでいるの?」

杏子「えっと、……野宿?」

杏子(さすがにホテル無断使用とは言えねえし)

マミ「ちょっと、女の子が野宿って大丈夫なの!?」

杏子「大丈夫に決まってんだろ、あたしだぞ」

マミ「でも……」

杏子(言い訳に野宿は失敗だったか……ん?)

杏子「どうしたんだ、マミ。急に立ち止まって」

マミ「あの子、どうしたのかしら。夜中に一人でベンチに座って」

杏子「子供?」

マミ「ちょっと待ってて」タッタッ

杏子「あ、おい」

マミ「お嬢ちゃん、一人?お母さんは一緒じゃないの?」

ゆま「…………」

マミ(うーん、だんまり。迷子ならお母さんを探すんだけど)

杏子「なんだ、この前のちびっこじゃねえか」

ゆま「あ、あの時のおねえちゃん」

マミ「佐倉さん、知り合いなの?」

杏子「ちょっとな。どうしたんだ、こんなとこで。まどかを探してんのか?」

ゆま「ううん、今日はそうじゃないの。ただ、家に帰りたくなくて」

マミ「帰りたくないって、お母さん心配するわよ?」

ゆま「しないよ」

マミ「え?」

ゆま「ママはゆまを心配したりしない。帰らなくても、何も言わないもん」

マミ「それって……っ!?」

杏子「どうした、マミ?」

マミ『佐倉さん、今日はうちに泊まってちょうだい』

杏子『なんだよ急に念話して。マミがいいなら世話になるけど』

マミ『この子の額、髪に隠れてるけどタバコの跡がある』

杏子『……そういうことか』

マミ「ゆまちゃん、でいいのよね?家に帰りたくないのなら、うちに来ない?」

ゆま「おねえちゃんの家?」

マミ「ええ、私は巴マミ。女の子が外で夜を明かすなんて、危ないわよ」

ゆま「いいの?」

マミ「ええ、今日はこの佐倉さんもうちに泊まる予定だったから、一人増えたところで気にすることないわ。三人でお泊り会しましょう」

ゆま「お泊り会……うん!!」

マミ「じゃあ、行きましょうか」

ゆま「よろしくね、マミおねえちゃん、キョーコおねえちゃん」

杏子「……あたしのことは杏子でいい」

ゆま「キョーコ?」

杏子「おう」

マミ「あ、そうだ二人とも。好きな食べ物は?せっかくだから食材買って帰りましょう」

ゆま「えっとねー」

杏子(あいかわらずマミは甘いというか、なんというか……変わらねえな)

杏子(……この状況、警察に見つかったら面倒なことになりそうだけど)

ここまで。

マミホーム

マミ「さてと、そろそろお風呂にしましょうか」

杏子「おう、あたし一番風呂な」

マミ「え、みんなで入らないの?」

杏子「なんでだよ。だいたい狭いだろ」

マミ「大丈夫よ、三人って言ったって一人はゆまちゃんだし」

杏子「でも一人はマミだぞ」

マミ「それどういう意味?ゆまちゃんだってみんなで入りたいわよね?」

ゆま「お風呂は……」

マミ「ゆまちゃん?」

杏子「…………」メクリ

ゆま「ひゃっ」

マミ「…………」

杏子(腹とか背中にも傷痕、か……)

ゆま「あ、あの」

マミ「大丈夫よ、ゆまちゃん」ギュッ

マミ「怯える必要はないわ。傷があったからって、私たちはゆまちゃんを避けたりしないから」

ゆま「マミおねえちゃん……」

マミ「一緒にお風呂入りましょう、ね」

ゆま「……うん」

杏子「…………」

マミ「佐倉さんも」

杏子「ちっ……わかったよ」

杏子『おい、マミ』

マミ『どうしたの、佐倉さん?』

杏子『ゆまの傷、これ全部古い傷だ。新しい傷が見当たらない』

マミ『そう、つまり今はもう虐待を受けていないってことかしら。……大変よ、佐倉さん』

杏子『どうした?』

マミ『虐待を受けている子供を保護したつもりで、私たち見知らぬ女の子を自宅に連れ込んだことになってるわ』

杏子『……自覚なかったのか。あと、さりげなくあたしを共犯にするな』

マミ『ええ!?共犯でしょ!?どうしましょう、親御さん心配してるかも』

杏子『大丈夫だろ、心配しないって言ってたし』

マミ「ねえ、ゆまちゃん。お母さんは」

ゆま「……この傷は、ママがつけたの」

杏子「…………」

ゆま「前は優しかったのに、いつからかゆまに悪口言うようになって、それから痛いことするようになって」

マミ「で、でも今はされてないのよね?」

ゆま「うん。まどかおねえちゃんがママを説得してくれたから」

マミ「鹿目さんが?」

ゆま「ゆまがママにぎゃくたい?されてるって気づいて、それからママのところに行って説得してくれたの」

杏子「……説得って、何て言ったんだ?」

ゆま「……わかんない。危ないから、玄関で待っててって言われてたから。ただ、その日からママは一度もゆまに痛いことしたり、嫌なこと言ったりしなくなって」

杏子(説得、ね)

マミ「なら、お母さんはゆまちゃんのこと心配してるんじゃ……」

ゆま「ううん、ママはゆまのことが嫌いだから。ママはゆまに何も言わないの。ただ、ゆまが家にいると辛そうにするの」

マミ「そんな……」

ゆま「前までは、役に立たないと捨てられるって思ってたけど、今のゆまはママの役に立ちたくても、役に立てないの。そんなゆまをママは捨てられないから、辛そうにするの」

マミ「ゆまちゃん……」

ゆま「あ、でもね。今日はたまたま家にいたくなかっただけで、いつもはちゃんと家に帰ってるよ。ときどき、まどかおねえちゃんの家に泊まるぐらいで」

マミ「あら、鹿目さんの家に。いいわね」

ゆま「うん!……でも、やっぱり昔のママに戻って欲しいな」

杏子「…………」

マミ「それにしても、鹿目さんすごいわね。大人を説得するなんて」

ゆま「うん!!まどかおねえちゃんはすごいんだよ!!」

杏子「うお、びっくりした」

ゆま「この前も言ってた。『私は困ってる人の役に立ててるときが、一番うれしい』って」

マミ「まあ、鹿目さんらしいわね」

杏子「…………」

ゆま「他にもね、ええと……ええ……と」

杏子「お、おいどうした?」

マミ「いけない!ゆまちゃん、のぼせてる!!」

ゆま「……『こんな私を』……『頼りにしてくれる人がいて』……『うれしい』って」

翌日

杏子「マミが学校だから一緒に家を出たけどさ、ゆまは学校行ってんのか?」

ゆま「うん、行ってるよ」

杏子「そりゃそうか、義務教育だもんな」

ゆま「ぎむきょういくってなに?」

杏子「あたしもよく知らないけど、小学生と中学生はちゃんと学校に行かなきゃいけないらしいぞ」

ゆま「ふーん」

杏子「っと、この辺でいいか。どうする、それとも家まで一緒に行くか?」

ゆま「大丈夫、ここからなら一人で帰れるよ」

杏子「そっか、じゃあな」

ゆま「バイバイ、キョーコ」

杏子「おう、じゃあな」

ゆま(あれ?キョーコは学校行かないのかな?)

QB「やあ」

ゆま「え?」

QB「君が千歳ゆまだね?」

ゆま「……喋る猫さん?」

QB「僕の名前はキュウべえ。君には何か叶えたい願いはあるかい?」

ゆま「叶えたい……願い……?」

ゆま(ママ……)

QB「君が僕に願いさえすれば、なんだって叶えてあげられる。だから」

QB「僕と契約して、魔法少女になってよ」

とりあえずここまで。

学校

モブ子「へえ、ほむりん猫飼ってるんだ」

ほむら「ええ、ここに来たときに拾ったんだけどね。名前はエイミーって言うの」

モブ子「可愛いよね、猫。うちでも飼ってたよ。その子が死んじゃって、今は犬を飼ってるけど。名前はタマね」

ほむら「あら、猫らしい名前だったのね。犬は?」

モブ子「タマだよ」

ほむら「……?ええと、今ちょっと混乱しているんだけど、どういう事かしら?」

モブ子「なんかね。猫のタマが死んじゃって、少ししてから犬を飼い始めたんだけど、さあ名前どうするってなったときに、なんとなく死んじゃった子と同じ名前つけちゃったんだよね」

ほむら「なんとなくって……」

モブ子「タマがいなくなって、寂しいから猫はやめて犬を飼い始めたのに、同じ名前つけてたら世話無いよねー」

ほむら「犬として可愛がってあげていれば、いいんじゃないかしら」

モブ子「そだね。ただやっぱり犬にタマはないね」

ほむら「それは……そうね」

日曜日 街中

まどか「準備してたら、遅くなっちゃった。上条くん、もう待ってるかな?」タッタッ

まどか「裏通り使って、近道しよっ」タッタッ

「やあっ!たあっ!」

『ケレケレケレケレ』

まどか「え、この声は……」ピタッ

「あ、逃げられちゃった……」

「君の能力はあまり攻撃向きじゃないからね。他の魔法少女に協力を求めた方がいいかもしれない」

まどか「なに、やってるの……ゆまちゃん」

ゆま「あ、まどかおねえちゃん!!みてみて、ゆまね、魔法少女になったんだよ!!」

まどか「どういうこと……キュウべえ?」

QB「どういうこと、って見たまんまさ。つい先日、ゆまは僕と契約をした。それだけだ」

まどか「なん……で……」

QB「願いのことかい?ゆまの願いは『母親が自分に優しかったころに戻るように』だよ」

まどか「っ!?」

ゆま「すごいんだよ、キュウべえって。家に帰ったら本当にママが昔の優しいママに戻ってたの!!すごいよね!!」

まどか「…………」

ゆま「ほ、ほら!それにこれ、魔法少女!!ゆまね、魔法少女になったからこれからは人を悪い魔女から守るんだよ!!人の役に立てるんだよ!!ってまだ弱いんだけど、えへへ」

まどか「…………」

ゆま「まどかおねえちゃん……?どうして何も言ってくれないの……?」

まどか「…………って」ボソッ

ゆま「……え?」

まどか「帰って。もう、私の前に現れないで」

ゆま「…………え?」

まどか「…………」

ゆま「なんで!?なんでそんなこと言うの!?ねえ、まどかおねえちゃん!!」

まどか「…………」

ゆま「ねえ、ねえってば……うぅ」

ゆま「うわああああん!!」ダダッ

QB「ゆま!!……どうしたんだい、まどか。ゆまが可哀想じゃないか」

まどか「そんなこと、思ってもいないのに言わないで。どういうつもり!!どうしてゆまちゃんを魔法少女にしたの!?」

QB「どうしてって。魔法少女の素質がある子に契約を持ちかけるのが僕の役目なんだから、なにもおかしいことはないじゃないか」

まどか「はぐらかさないで!!」

QB「はぐらかしているつもりはないよ。ただ、そうだね。君が契約すれば、君を慕う千歳ゆまを人間に戻すことは可能だ、とは言っておくよ」

まどか「……そう」

QB「じゃあね、まどか。いつでも契約したくなったら呼んでくれ」シュッ

まどか「…………何で」

まどか「何で……こうなるの……」

マミホーム

マミ「あら、何か聞こえない?」

杏子「ん、近くでガキが泣いてんだろ」

マミ「でもなんだか声が近づいているような……?」

ゆま「うわあああん!!うわああああん!!」バタン

マミ「え、どうしたの!?ゆまちゃん!?いったい何が」

杏子「待て、マミ!!おい、ゆまその恰好は!?」

ゆま「まどかおねえちゃんのばかーー!!」

マミ「え?え?」

杏子「ゆま!!お前、魔法少女になったのか!?」

ゆま「うわああああん!!うわあああああん!!」

マミ「待って!!二人とも落ち着いて!!」

街中

恭介(来ないな、鹿目さん……)

恭介(はっ!?まさか……告白する前から避けられた!?そんな……)

恭介(なんて、鹿目さんに限ってそんなわけないか。あ、あれは)

恭介「おーい、鹿目さ……ん?」

まどか「…………」フラフラ

恭介(顔が真っ青で、足もふらついてる!?)

恭介「だ、大丈夫!?鹿目さん!?」ダッ

まどか「上条くん……」

恭介「体調悪いのなら、メールしてくれれば!いや、それよりも救急車呼ぶ!?」

まどか「大丈夫、だよ。それよりも上条くん、ちょっと聞いてもいいかな?」

恭介「な、なに?」

まどか「上条くんは、治らないって言われてた怪我が急に治って嬉しかった?またヴァイオリンが弾けるって、嬉しかった?」

恭介「え、なんでそんなことを?」

まどか「お願い、正直に答えて」

恭介「……嬉しかった。奇跡が起きたんだ、って。僕はまたヴァイオリンが弾けるんだって嬉しかった。でも」

まどか「そう、そうだよね」

恭介「鹿目さん……?」

まどか「ごめん、上条くん。やっぱりちょっと具合が悪いから、用はまた今度でいい?絶対埋め合わせするから」

恭介「う、うん。本当に大丈夫?送っていこうか?」

まどか「ありがとう、大丈夫。今日は、ごめんね」

恭介「ううん、じゃあ気を付けて」

まどか「……そうだよね」フラフラ

まどか「みんな奇跡は嬉しいよね」フラフラ

まどか「奇跡の方が、嬉しいに決まってるよね」フラフラ

恭介「鹿目さん……?」

ほむら(武器の調達もすんだし、あとはワルプルギスの夜を迎えるだけ。その前にもう一度みんなで集まっておいたほうがいいわね)テクテク

まどか「…………」フラフラ

ほむら(あれは!)

ほむら「まどか!?」

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「どうしたの?具合悪いの!?」

まどか「ほむらちゃんは、私が魔法少女になったら……嬉しい?」

ほむら「な……急に何を言ってるの!?」

まどか「私が何かしたところで、他の誰かがそれを塗りつぶす。私に頼るぐらいなら、誰もが奇跡にすがる方を選ぶ」

ほむら「まどか……?」

まどか「人間の私は、役立たずな私はこの世界に必要とされているのかな……」

ほむら「まどかっ!!」

まどか「っ!?」

ほむら「そんな事言わないで!!私にはあなたが必要なの!!あなたを救う、それが今の私の全てなの!!」

ほむら「お願いだから、魔法少女になるなんて言わないで!!必要とされていないなんて言わないで!!」

ほむら「自分を……そんな風に言わないで……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「お願いよ……」

まどか「……うん、わかったよ。ほむらちゃん」

まどか「もうちょっと、あとちょっとだけ……頑張るよ」

ここまで。

ワルプルギスの夜襲来 前日

さやかホーム

さやか「ふーん、で結局まどかには告白できなかったんだ」

恭介『うん、埋め合わせはするって言われたけど、あんな姿を見た後だと声かけづらくて』

さやか「そんなにひどかったの?学校じゃいつもと変わらないよ」

恭介『本当に、ただ体調が悪かっただけなのかもね。病気とかじゃなくてよかったよ』

さやか(うーん、でもワルプルギスの夜がくると思えばブルーにもなるか)

さやか「まあ、心配しなさんな。次の日曜には元気になってるって」

恭介『次の日曜?』

さやか「え、だって埋め合わせするんでしょ?」

恭介『いやいや、前の日曜ダメだったからって、すぐ次の日曜に誘うっていうのは……』

さやか「だまらっしゃい!さすがにね、これ以上先延ばしにされちゃあこっちももたないっての」

さやか「はやく告白しろ、というつもりはなかったけど、もう覚悟したことをダラダラと後回しにするのには異議を申し立てるよ」

恭介『そんなぁ。まどかさんに、がっついてるとか思われないかな』

さやか「うわ、女々しい!?」

恭介『女々しいって……、さやかから見ればそうだろうけど』

さやか「ちょっと、それどういう意味?」

恭介『なんでもないよ』

さやか「まったく……そんなこと心配するぐらいなら、明日の嵐の心配でもしなさいよ」

恭介『ああ、明日くる嵐はとても強いらしいね。もしかしたら、避難所にいくことになるかもしれないって』

さやか「嵐で街が滅茶苦茶になったら、告白も何もあったもんじゃないでしょ。せいぜい嵐がはやくに過ぎますようにって祈っとけば?」

恭介『はは、そうだね。嵐が何事もなく過ぎ去って、空が青く晴れるように祈っとくよ』

さやか「そうそう。じゃ、そろそろ電話切るね」

恭介『うん、じゃあまた』プツッ



さやか「……かっこ悪いなぁ、あたし」

さやか(あたし、頑張るよ。だから応援しててよね、恭介)

織莉子ホーム

キリカ「ついに明日だね」

織莉子「ええ、やっとよ。これでようやく私の生きる意味が全うされる。私という存在が完遂するわ」

キリカ「喜んでいるね、織莉子」

織莉子「もちろんよ。願いが成就するのだから。……ねえ、キリカ」

キリカ「なんだい?」

織莉子「貴女にお願いがあるの」

キリカ「どうしたんだい、急に。そんな改まらなくても、織莉子の願いなら私はなんだってきくよ」

織莉子「そうね、わかってる。でも、これだけは改まって言わせてほしいの」

織莉子「最後まで、私と一緒にいてくれる?」

キリカ「もちろん。最後までと言わず、その先だって一緒にいるよ」

織莉子「その先って……そうなったら、私は生きる意味を終わらせた存在になっているわよ。そんなものと一緒にいてどうするの?」

キリカ「さあ、それはなってみないとわからない。一緒に次の生きる意味を探すのもいいし、一緒に死ぬのもいい。ただ織莉子といられるのなら、私はそれでいいんだ」

織莉子「やっかいな子に好かれちゃったわね」

キリカ「嫌いになったかい?」

織莉子「まさか。大好きよ、キリカ」

キリカ「ああ、でもどちらかというと、生きていたいかな。織莉子にもっと好きだと言ってほしい」

織莉子「あらあら。それなら、もう少し二人で生きてみましょうか」

マミホーム

マミ「本当に一緒に戦うの?」

ゆま「戦うよ、ゆまだって魔法少女だもん」

マミ「でも」

杏子「いい加減覚悟決めろよ、マミ。今日まで、ゆまにはみっちりと戦い方を教え込んだし、魔女退治の経験も積ませた。足手まといにはならないはずだぜ」

マミ「それは私も一緒に見てたからわかるけど。でもゆまちゃんはまだ」

杏子「まだ子供、なんて文句は魔法少女には通用しねえよ。戦う力と意志があるんだ。それだけあれば十分だろ」

マミ「ゆまちゃんはそれでいいの?せっかくお母さんとも仲直りできたのに、死んじゃうかもしれないのよ?もう会えなくなっちゃうかもしれないのよ?」

ゆま「マミおねえちゃん、心配してくれてありがとう」

マミ「ゆまちゃん……」

ゆま「ママに会えなくなるのはいやだよ。死ぬのもこわい。でも、マミおねえちゃんとキョーコが危ない目にあってるのに、なにもしないのもいや」

ゆま「ゆまは戦うよ。そして笑うの。ゆまもマミおねえちゃんもキョーコも、みんな生きててよかったねって笑うの」

ゆま「ダメ?マミおねえちゃん?」

マミ「……はぁ、わかったわ。ただし、自分の命を最優先にすること。わかった?」

ゆま「はーい」

杏子「はは、マミの負けだな」

マミ「佐倉さんも!!」

杏子「な、なんだよ」

マミ「絶対に生きて帰ること、いいわね?」

杏子「はいはい。マミも死ぬなよ、マミがいないと玄関の鍵開けられねえんだから」

マミ「この居候は……」

ゆま「あ、そろそろ帰るね。また明日―」ガチャッ

マミ「はい、さようなら」

杏子「またなー」

バタンッ

マミ「……私、感情移入しすぎかしら」

杏子「いいんじゃねえの。あたしらにとっちゃ、家族ってのはお互い思うところあるだろ」

マミ「そうね。あと、てっきり佐倉さんは戦わせない派だと思ってた」

杏子「あー、それも考えてたけどさ、たぶんあいつは戦わせなくちゃいけないんだと思う」

マミ「どういうこと?」

杏子「ゆまは誰かの役に立てないと不安になる。いや、自分の価値がなくなることを恐れるって言った方がいいか」

杏子「気をつかって戦力から外したりしたら、それこそあたし達に捨てられたって思って絶望するぞ。ただでさえ今は街を守る魔法少女に没頭することで、悩んだりせずにすんでるんだから」

マミ「……鹿目さんのことね」

杏子「ああ。あたしもよく知らねえけど、まどかに捨てられたってのはゆまにとってかなりでかいことだったみたいだ。ここに駆け込んできたときソウルジェムかなり濁ってたし、危ないところだった」

マミ「そうね。といっても、魔女化しなかったのは絶望とかする暇がないくらいの勢いで、佐倉さんが契約したことを叱りはじめたからじゃないかしら」

杏子「あれは、なんていうか頭にきちまったんだから仕方ねえよ」

マミ「その辺は佐倉さんの気持ちもわかるから、何も言わないわ。けど、その後のスパルタな修行はどうかと思ったわよ。わざときつくしてるのかってぐらい見ててハラハラしたもの」

杏子「魔法少女になったら自分の命は自分で守るもんだからな。はやいとこ、一人でも戦えるようになってもらわなくちゃ困るんだよ」

マミ「厳しいわね」

杏子「甘やかすのはマミがやるからな、バランスだよ」

マミ「甘やかしてるつもりは、ないんだけど」

杏子「そうか?今日のケーキだって、あたしのよりもゆまのケーキの方が大きかったぞ」

マミ「我慢しなさい」

ほむホーム

ほむら「明日ね……」

ほむら「今度こそ、誰ひとり欠けることなく明後日をむかえてみせるわ。…………あら?」

ほむら「……エイミー」

エイミー「ニャー」

ほむら「おいで、エイミー」

エイミー「ニャオ」

ほむら「ねえ、エイミー。おかしいわ」

ほむら「いま私、誰ひとり欠けることなくって言ったわよね?」

エイミー「フニャ」

ほむら「美国織莉子、呉キリカはもちろん、千歳ゆまも杏子もマミもさやかも。まどか以外のすべてを切り捨てるつもりでいままでやってきたつもりだったのに、どうして私はみんなが助かるように願っているのかしら」

ほむら「おかしいわね」

エイミー「ニャン」

ほむら「いつの間に私はおかしくなったのかしら」

ここまで。

ワルプルギスの夜 襲来当日

ほむら『みんな準備はいい?』

さやか『もちろん、いつでも突撃できるよ』

マミ『美樹さん、最初は暁美さんが爆撃をするから突撃しちゃだめよ』

ゆま『だ、大丈夫かな。さやかおねえちゃん……』

杏子『さやかなら大丈夫だろ。治せるし』

織莉子『それは大丈夫なのでしょうか』

キリカ『そういう織莉子は大丈夫かい。調子悪くなったらすぐに言ってくれ、駆けつけるから』

織莉子『駆けつけなくていいから、作戦通りに動きなさい』

『キャハ……』

ほむら『雑談は終わりよ。来たわ!!』

ワルプルギス『キャハハハハハハハ』

ほむら「今度こそ、終わりにしてやるわ」ジャキッ

避難所

まどか「…………」

QB「始まったよ」

まどか「そう」

QB「行かなくていいのかい?」

まどか「私が行ったところで何の役にも立たないもの」

QB「君は何度僕に同じことを言わせるつもりなんだい?君には契約があるじゃないか」

まどか「あなたこそ何回私に同じことを言わせるの?契約はしないよ、ほむらちゃんと約束もしたからね」

まどか「それに契約する必要もないよ。だってほむらちゃんは勝つから。ワルプルギスの夜に勝って、ここに帰ってくるから」

QB「どうかな。それは難しいと思うけど」

まどか「そうやって濁した言い回しをして、私が動揺すると思う?」

QB「疑り深いね、まどかは。ならはっきりとわかっていることだけ話そうか」

QB「暁美ほむらはこれまで何度もワルプルギスの夜に挑み、そして敗北し続けている」

まどか「……それは、どういう意味?」

QB「やはりこの事を暁美ほむらは、君に話していないようだね。もっとも僕も偶然聞いた話だけれど」

まどか「この事って、何の事!?」

QB「暁美ほむらは時間遡行者だ。君のために、君を守るために何度も同じ時を繰り返している」

まどか「なに、を……」

QB「暁美ほむらにかわって僕が話してあげるよ。君のために、彼女がどれだけの犠牲を払ったのかを。君が本当に救うべきは、誰なのかを」

ワルプルギス『キャハハハハハハハハ』

杏子『おい、どうなってやがる。こいつ全然ダメージが通らねえぞ』

さやか『ほむら、こいつ弱点とかないの!?』

ほむら『あったらもう教えてるわよ』

マミ『伝説の魔女……、まさかここまでとはね』

織莉子『本来なら、貴女たちが4人がかりで挑み敗北した魔女です。これぐらい当然でしょうね』

ゆま『だったらゆま達が頑張んないとね』

キリカ『ほう、いいこと言うじゃないか、おちびさん。そうだな、ここらで織莉子にカッコいいところを見せるのも悪くない』

織莉子『あら、キリカはいつでもかっこいいわよ』

キリカ『そ、そうかな』

さやか『そこ!戦闘中にいちゃつかない!!ってうお!?』

ワルプルギス『キャハハハハハハハ』

さやか『あっぶない、当たるところだった。でもどうするの、このままじゃ……』

杏子『ほむら、必殺技とかないのか!?』

ほむら『あったらもう使ってるわよ』

まどか「今の話、本当なの……」

QB「すべて暁美ほむらの言ったことさ。もちろん嘘ではないし、故意に一部分を言わないなんてこともしていない」

まどか「そう……」

QB「どうだい、まどか。暁美ほむらの献身を知って、何か心変わりはあったかい?」

まどか「…………」

QB「契約するなら、急いだ方がいいよ。これは僕の予想だけど、そろそろ魔法少女たちにも限界がきている頃合いだ。……ってどこへ行く気だい?」

まどか「ほむらちゃんのところへ。ちょっと聞きたいことがあるの」

QB「……まあ、手遅れになっていようと、君の素質ならどんな途方もない願いだって叶えられるから大丈夫か」

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「っ!?……一瞬、意識が飛んでたようね」

マミ『暁美さん、大丈夫?かなり吹き飛ばされていたけど、怪我はない?』

ほむら『大丈夫、じゃないわね。体が動かないし、治癒に時間がかかるかも』

ほむら『他のみんなは?』

マミ『みんなまだ無事よ。ただ、そろそろキツイわね……』

ほむら『そんな……』

マミ『暁美さん…………えっ?』

ほむら『ど、どうしたのマミ?』

マミ『どうして……ここに?』

ほむら『なにがあったの、マミ!?』

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「まどかっ!?どうしてここに!?」

QB「君に会いにきたのさ」

ほむら「インキュベーター!!」

まどか「ごめんね。ほむらちゃんの話、聞いちゃった」

ほむら「そんな……。いえ、今はいいわ。だったらわかるわよね、私があなたの契約を望んでいないことも。ここは危ないわ、はやく避難所に戻りなさい」

まどか「……ほむらちゃん、一つ答えて」

ほむら「後でなんでも聞くわ、だから今は」

まどか「どうしてそんなになってまで、私を守ろうとしてくれるの?」

ほむら「それは……」

まどか「ほむらちゃんの口から聞きたいの、お願い」

ほむら「あなたと約束したからよ」

まどか「……何て?」

ほむら「インキュベーターに騙される前のあなたを助けるって、そう約束したの」

ほむら「あなたは私を助けてくれた。あなたは私を守ってくれた。そしてなにより、あなたは私の友達になってくれた」

ほむら「だから今度は私があなたを守りたい。お願い、まどか。私にあなたを守らせて。今は大人しく避難所に戻ってちょうだい」

まどか「……そう、わかったよ」

まどか「ほむらちゃんはずっと、私のことなんか見てなかったんだね」

ほむら「…………え?」

まどか「キュウべえ」

QB「なんだい、まどか」

まどか「契約、しようか」

QB「暁美ほむらとの話は終わったのかい?」

まどか「うん、もういいよ。もう……どうでもいいよ」

ほむら「待ってまどか、今のはいったい……」

まどか「私は苦しんでいる人を救いたかった」

ほむら「え……?」

まどか「こんなちっぽけな私でも、悲しんでいる人の助けになれるのが嬉しかった」

まどか「すべての人を救えるとはもちろん思ってなかったけど、でも手の届く範囲の、一握りの人を助けることができたらそれでよかった」

まどか「でもね、わかったの」

まどか「私の救いなんかよりもみんな心の底では、奇跡とか魔法とかそういう特別なものに助けてほしいんだって」

まどか「ただの人間の私に助けてもらっても、誰も喜んではくれないんだって」

QB「君が願えば、すべての人間に救いをもたらすことも可能だろう。あとは願いを口にするだけだ」

QB「さあ、鹿目まどか。その魂を対価に、君はいったい何を願う?」

ほむら「やめてっ!!まどか!!」

まどか「私は……私はこの世界から奇跡や魔法を消し去りたい!人の手による救済を踏みにじる特別な力なんてこの世界にはいらない!!」

ほむら「なっ!?」

QB「なにを言い出すんだい、まどか」

まどか「魔法とか、奇跡とか。そんな特別な力で、気まぐれに人を救ったり殺したりするような人を見下した化け物たちはいらない」

まどか「人を襲う魔女なんていらない!人より優れた魔法少女なんていらない!奇跡や魔法を願う人なんていらない!そんなもの、なくなっちゃえ!!」

QB「待つんだ、まどか。そんなものは願いとは呼べない。それはもう」

まどか「さあ、私の呪いを叶えてよ!!インキュベーター!!」

まどか『…………』

杏子「おい、なんだ今の光は!?」

さやか「えっ!?なんでまどかがいるの!?」

マミ「暁美さん、これはいったい……?」

ほむら(私は知っている……)

ゆま「まどかおねえちゃん、魔法少女になったの!?」

キリカ「……あれ、織莉子。鹿目まどかは契約していいんだっけ、駄目なんだっけ?」

織莉子「駄目……だけど、今は彼女の力が必要ね。暁美さんには悪いけど……暁美さん?」

ほむら(赤いリボン、桃色の髪、そして同じく桃色の衣装)

ほむら(何度も目にした、私の憧れ。まどかの魔法少女姿。のはずなのに……)

ほむら(どうしてどこにもソウルジェムがないの!?)

マミ「……契約してしまったのなら、仕方ないわ。とにかく今はワルプルギスの夜を……えっ?」

さやか「何、あれ……」

織莉子「ワルプルギスの夜が……崩れていく」

ワルプルギス『キャハハハ……キャハ…ハハ……』ボロボロ

キリカ「……消えた。いったい鹿目まどかは何を願ったんだ」

ゆま「すごい、まどかおねえちゃん」タッタッ

杏子「っ!?近づくな、ゆま!!」

ゆま「え?」ピタッ

まどか『ティヒ……』

さやか「ま、まどか……?」

まどか『ティヒヒヒヒヒヒヒヒ』

ゆま「まどかおねえちゃん!?」

杏子「……おい、キュウべえ」

QB「なんだい?」

杏子「答えろ、アレは何だ。まどかは何を願った」

QB「鹿目まどかは、この世から特別な力がなくなることを憎しみの心で願い、世界が呪われることを望んだ。いやはやこんな事態は初めてだ、僕も驚いているよ」

杏子「アレは何だ!!」

QB「君もわかっているんだろう?アレは負の感情から生まれ、呪いを振りまく存在。世界に災いをもたらす脅威」

QB「アレは魔女さ」

QB「鹿目まどかは魂を呪いに捧げることで、魔女になった」

QB「魔法少女という過程を飛び越えてね」

杏子「ちっ!」ジャキッ

さやか「杏子!?何する気!?」

杏子「決まってんだろ、あいつを殺すんだよ」

マミ「何言ってるの、佐倉さん!?」

ゆま「キョーコ、だめー」

杏子「邪魔すんな、今しかチャンスはねえ。このままほっといたらヤバいことになるんだろ」

織莉子「…………」スッ

マミ「待って、美国さん」

キリカ「待つわけにはいかないよ、アレは危険すぎる」

さやか「止まりなさいよ!」

杏子「お前ら全員じっとしてろ!これはあたしの役目だ!!あたしがやらなきゃいけねえんだよ!!」

ゆま「だめだってば!!」

まどか『ティヒヒヒヒヒ』

パリンッ

さやか「えっ?」

織莉子「ソウルジェムが砕けた……」

ゆま「みんなの魔法少女の衣装も消えちゃった」

マミ「これはいったい……!?みんな、鹿目さんから離れて!!」

まどか『ティヒヒヒヒヒヒティヒヒヒヒヒ』

織莉子「結界が広がって!?みんな急いで、飲み込まれます!!」

さやか「うわわ……って何してんの、ほむら!?」

ほむら「…………して」

杏子「おい、馬鹿!!突っ立ってんな!走れ!!」

まどか『ティヒヒヒヒヒヒ』

ほむら「…どうして……まどか……どうして…」

ここまで。

???

「起きて、ほむらちゃん」

ほむら(あれ?ここは……視界がぼやけて)

「あ、ごめんね。落とすと危ないから、眼鏡外しといたんだった。はい、かけてあげるね」

ほむら(この声は……)

ほむら「まどか……」

まどか「うん、おはようほむらちゃん」

ほむら「まどかっ!?」ガバッ

まどか「うわわ!?膝枕してるのに、急に起き上がったら危ないよ」

ほむら「あ……ご、ごめんなさい」

まどか「ほらほら、ほむらちゃん、もう一回横になって」グイッ

ほむら「あう」ポフッ

まどか「それにしても、ほむらちゃんの髪っていつもさらさらだよねー。ふふ、ちょっぴりくすぐったいや」

ほむら「あ、あの……」

まどか「あれ?膝枕、嫌だった?いつも喜んでくれてたから、てっきり好きなんだとばっかり」

ほむら「い、いえ。嫌じゃ、ない……です」

ほむら(ここは……学校の屋上?)

ほむら(それに眼鏡……髪も三つ編みになってる!この恰好、初めて見滝原に来た時と同じ……)

ほむら(いや、それよりも……それよりもこの雰囲気は……まさか!?)

ほむら「まさか……鹿目まどかなの?」

まどか「あ、気づいてくれた?そうだよ、私はほむらちゃんと最初に会った鹿目まどか。久しぶりだね、ほむらちゃん」

まどか「ほらほら、ほむらちゃん、もう一回横になって」グイッ

ほむら「あう」ポフッ

まどか「それにしても、ほむらちゃんの髪っていつもさらさらだよねー。ふふ、ちょっぴりくすぐったいや」

ほむら「あ、あの……」

まどか「あれ?膝枕、嫌だった?いつも喜んでくれてたから、てっきり好きなんだとばっかり」

ほむら「い、いえ。嫌じゃ、ない……です」

ほむら(ここは……学校の屋上?)

ほむら(それに眼鏡……髪も三つ編みになってる!この恰好、初めて見滝原に来た時と同じ……)

ほむら(いや、それよりも……それよりもこの雰囲気は……まさか!?)

ほむら「まさか……あのまどかなの?」

まどか「あ、気づいてくれた?そうだよ、私はほむらちゃんと最初に会った鹿目まどか。久しぶりだね、ほむらちゃん」

ミスった、修正。

ほむら「まどかっ!!……いたっ!?」ガバッ ガンッ

まどか「あたた……だから膝枕してる時に急に起きたりしちゃ危ないってばぁ」ヒリヒリ

ほむら「ご、ごめんなさい」

まどか「ほむらちゃん、大丈夫?頭、痛くない?」

ほむら「え、ええ。大丈夫……。そ、それより、どうしてあなたが!?いったい何が起きているの!?」

まどか「ほむらちゃん」ギュッ

ほむら「ま、まどか……」

まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。何にも怖がることなんてないよ。ここにはほむらちゃんを悲しませるものは何もないから」ナデナデ

ほむら「ここには……?」

ほむら(そういえばさっきから、私たち以外の気配がまったくない。そう、まるで世界に私たち二人しかいないみたいに)

ほむら「まどか、ここはいったいどこなの?」

まどか「ここはどんな願いも叶う場所。幸せに満たされた空間。悲しみのない世界」

まどか「天国だよ」

ほむら「天国……」

まどか「あ、と言ってもほむらちゃんが死んじゃったとかじゃなくて、魔女になった私が作り上げた結界だけど」

まどか「ほむらちゃんは結界に取り込まれて、このほむらちゃんが望んだ世界が生まれたの。何もかもが初めてだった、あの頃をイメージした世界が」

ほむら「そう……あれは夢じゃなかったのね」

まどか「……うん」

ほむら「私は、失敗したのね。まどかは魔女になって、私のソウルジェムは砕けてなくなった」

まどか「……うん」

ほむら「う、うう、ああああああああ!!!!」

ほむら「ごめんなさい!!ごめんなさい、まどか!!私はあなたを救えなかった!!」

ほむら「ソウルジェムも砕けて、もう私はあなたを救えない!!結局、あなたとの約束を守れないまま……!!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!落ち着いて!!」

ほむら「もう、無理……、無理なのよ……。私にはわからない、あのまどかが……鹿目まどかがわからない。どうしてまどかがあんなことをしたのか、わからない……。どうすればよかったのか、まったくわからないの……」

まどか「……ごめん。ごめんね、ほむらちゃん。私が勝手なお願いをしたばっかりにつらい思いさせちゃったね……」

ほむら「謝らないで、まどか。まどかは悪くないわ。すべては私が弱いせい。強くなったつもりでも、あなたに会った時からまったく変わっていない、弱い私のせい……」

まどか「ほむらちゃんは私との約束を守ろうとしてくれただけだよ」

ほむら「でも……」

まどか「ほむらちゃんは悪くないよ。ただ、ちょっと歯車がずれちゃっただけ」

ほむら「歯車って……?」

まどか「この世界の私は、因果に囚われているの」

キリカ「ここまでくれば安全かな。織莉子、大丈夫かい?」

織莉子「ええ、魔法の力を使わずに走るのは久しぶりで、少し疲れたけど。……思ったより結界は広がらなかったわね」

マミ「……暁美さんは、結界に飲まれてしまったようね」

さやか「助けにいかなきゃ!!」

杏子「どうやってだよ。もう魔法も使えねえんだぞ、行ってあたしたちも食われるのがオチだ」

さやか「だったら、あんたはほむらを見捨てるっての!?」

マミ「美樹さん、落ち着いて。言い方はきついけど、佐倉さんの言うとおりよ」

ゆま「あれ?」

織莉子「どうしたの?」

ゆま「私たちってもう魔法少女じゃないんだよね」

織莉子「そうね。ソウルジェムが砕けても無事みたいだから、幸か不幸か人間に戻った。といったところかしら」

ゆま「だったらもう一度、キュウべえと契約すればいいんじゃないかな?」

さやか「それだ!!」

QB「残念だけど、それは無理だ」

さやか「何でよ!?」

QB「鹿目まどかの願い、いや呪いは『この世界から特別な力を消し去ること』。それは魔女や魔法少女だけでなく、僕らインキュベーターも例外ではなかったみたいだ。今の僕に契約をする力はない」

マミ「ちょ、ちょっと待って。じゃあ、この世界に魔法少女は一人もいなくなったってこと?」

QB「そうだね。そして魔女も、呪いと同時に契約した鹿目まどか自身を除けば一体も存在しない。さらにいえば、非現実的な話だけれど君たちの神話にでてくるような神や悪魔といったものからの干渉も、まどかの強大すぎる呪いによってこの世界には存在しないだろうね」

織莉子「それは、まさか……」

QB「そう、つまりあの最強の魔女を脅かすものはこの世界には存在しないということさ。今は動きを止めているけど、やがて動き出したあの魔女によって世界が終わるのをただ眺めていることしか、僕らに出来ることはない」

ゆま「そんな、なんとかならないの!?」

QB「どうにもならないよ」

キリカ「神や悪魔って……鹿目まどかはどれだけの素質を持っていたというんだい」

QB「それはもう、計り知れないほどさ。常識では考えられないぐらいだ」

マミ「どうして……どうして鹿目さんなの。せめて他の人だったら、暁美さんも救われたのに……」

QB「それは違うね。むしろこれは暁美ほむらが招いた結果だよ」

さやか「何を言い出すのよ、あんたは!」

QB「鹿目まどかの素質がここまで強大になった原因は、暁美ほむらにあると言っているのさ」

織莉子「暁美さんに……?」

QB「君たちは、因果というものを知っているかい?」

QB「魔法少女の素質は、背負い込んだ因果の量で決まる。それこそ一国の女王や救世主とかだったりすれば、因果の量も魔法少女の潜在量も跳ね上がる」

QB「しかし鹿目まどかは、なんの変哲もない普通に暮らしてきた少女だ。あれほどの因果を背負うだけの理由がない」

QB「そこで暁美ほむらだ」

QB「ほむらはこれまで幾度となく時間を繰り返してきた。鹿目まどかの安否を基準にしてね」

QB「それはつまり、鹿目まどかの存在を中心にして世界が繰り返されてきたことを意味する。鹿目まどかを理由に、世界で起きたあらゆる事象がなかったことになるわけだ」

QB「では消えた因果はどこへいったのか。これは推測だけど、繰り返されることで消えて行った並行世界の因果は、すべて鹿目まどかに集まって束ねられてしまったのだろう」

QB「そう考えれば鹿目まどかの素質にも説明がつく。世界一つ分、いや複数分の因果だからね。最強の魔女が生まれるのも当然だ」

QB「暁美ほむら。彼女こそが最強の魔女を作り出した元凶、そう考えていいんじゃないかな」

さやか「ほむらはただまどかを救おうとしただけでしょう!!」

マミ「あんまりだわ……」

QB「僕に言われても困るよ」

杏子「…………なあ」

QB「なんだい、杏子?」

杏子「さっき女王や救世主なら、たくさんの因果を背負うって言ったよな?」

杏子「だったら、普通の人間がたくさんの因果を背負ったらどうなるんだ?」

QB「そんな事象は今回が初めてだから詳しいことはわからない。けど言っただろう、魔法少女としての素質が強まるって」

杏子「いや、そのあとどこかの女王になったりするのかなって」

QB「それはないよ。たとえ多くの因果を背負っていようと、本人にその因果を扱うだけの環境や能力がないと意味がない。魔法少女は人間の理から外れているから因果が強い影響力を持つけど、仮に鹿目まどかが契約せずにいたら普通の人間としての人生を全うしただろう」

マミ「どうしたの、佐倉さん。何か気になることでもあるの?」

杏子「……どうしてまどかはあんな性格になったのかな、と思ってさ」

織莉子「それは育った環境、という話ですか?」

さやか「まどかの家族はいい人達だよ。お母さんはカッコいいし、お父さんも優しい人だし」

杏子「そういう事じゃねえよ。お前らはほむらの話を聞いて、違和感とかなかったか?」

マミ「違和感?」

杏子「ああ。なんていうか……ほむらの話す鹿目まどかは、普通すぎる」

さやか「普通すぎるって……まどかは普通じゃないって言う気?」

杏子「そうだ、あたし達の知ってるまどかは人を救うことに執着しすぎてる。それこそ、救世主にでもなろうとしてるみたいに」

キリカ「そういえば鹿目まどかは、人助けを自分の生きる意味と言っていたね。でもそれがどうかしたのかい?そういう女子中学生がいてもいいじゃないか」

杏子「悪いとは言ってねえよ。ただな、ほむらの話す鹿目まどかは気弱な普通の女の子だったはずだ。間違っても、他人様の家の家庭内暴力を自力で止めにいくような奴じゃない」

織莉子「……私たちの知る鹿目さんと、暁美さんの知る鹿目さん。確かにその二人の間には、差が生じているようですね。ですが、それが何を意味するというのですか?」

杏子「もしかしたら、その因果ってやつのせいじゃないのか?」

まどか「その身に余るほどの因果に、この世界の私は引きずられてしまったの」

まどか「世界に影響力を持つ人には多くの因果が集まる。それが自然なはずなのに、まったく逆のことが起きちゃったの。多くの因果を背負った私は、膨大な因果に見合うだけの影響力を持つ人にならなくちゃいけない。そんな使命感があの私の中でいつからか渦巻き始めた」

まどか「でも鹿目まどかは普通の人間。お姫様にはなれないし、英雄になれるほどすごい人間でもない。もとから多くの因果に見合うだけの人間になんてなれっこない」

まどか「それで終わればよかったんだけど、そんな弱い自分に絶望していた時、自分でも必要としてくれる存在に気付いて同時に生きる意味を決めてしまった」

まどか「それが救済。あの私は弱者を救っている時だけ、存在を認められていると感じるようになってしまった。人を救うことでしか、自分の価値を証明できないようになってしまった」

まどか「それからのあの私は、凄まじかったよ。なんせ救済は生きる意味、だからね。自分の身の安全とか、そういうのを全部後回しにして、その使命を全うした」

まどか「そして、魔法に出会った」

まどか「願えば何でも叶えてくれる奇跡。さらには奇跡の代償として手に入る、人を超えた魔法少女の力。あの私にとって、それらはすべてを覆す脅威だったの」

まどか「きっとあの私が願えば、すべての人を救済することも可能だった。けどそれはこれまで人助けに奮闘した時間を否定する。だからあの私はそれをしようとしなかった」

まどか「魔法少女にならなかったのも、同じ。魔法少女になれば今までよりも、もっと楽にたくさんの人を救えるのに、あの私はそれを望まなかった」

まどか「あの私はね、人を助けたかったんじゃないの。人助けをしたかったの。それがあの私の生きる意味だったから」

まどか「でも何度も奇跡を目の当たりにして、こう考えるようになった。本当に世界が求めているのは、自分ではなく奇跡のほうだと。奇跡がある限り、自分の救済には価値がないと」

まどか「……あの私は特別な力を憎むようになった。人助けよりも、奇跡の排除を求めるようになった。その後はもう、わかるよね?」

ほむら「…………」

ほむら「やっぱり……私のせいじゃない。私が時間を繰り返したせいで……」

まどか「ううん、違うよ。お願いしたのは私なんだし。それに因果に負けない道は、いくらでもあったんだよ」

まどか「自分がどれだけ家族や友達に大切にされているか気づくだけでも、あの私は因果に引きずられたりしなかった。本当に、本当にそんな簡単なことで、普通の人生を送れたはずだったのに」

まどか「あの私は、それを選ばなかった。気づこうとしなかった」

まどか「それをしなかったのは、私の弱さだよ」

ほむら「そんな……でもそもそもの原因を作ったのは……。いえ、もういいわ」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「誰のせいとか、今さら話し合っても意味はないわね。やめましょう……もう疲れちゃった」

ほむら「なんだったのかしらね、これまでの私の苦悩は……。まどかを救うためにすべてを捧げていたはずが、やっていた事は事態を悪化させることばかり。嫌になっちゃうわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「確かここは天国なのよね?だったらもう、いいじゃない。どうせもう何も出来ることはないんだし、ここで一緒に過ごしましょうよ」

ほむら「私に出来ることなんて、何もないんだから……」

まどか「……ここは天国。」

まどか「どんな願いも叶う場所。幸せに満たされた空間。悲しみのない世界」

まどか「それがほむらちゃんの願いなら、この世界が終わるその時まで私はほむらちゃんと一緒にいるよ」

まどか「ねえ、ほむらちゃん。本当にそれがほむらちゃんの願いなの?」

ここまで。

ほむら「……本当はこんな場所にいたくない」

ほむら「だって悔しいじゃない。まどかを救うために何度も何度も同じ時間を繰り返して、その度に痛みや悲しみに苛まれて、でもいつか必ずまどかを救える日がくると自分に言い聞かせて堪えてきたのに」

ほむら「いきなり横から一方的に幸せを押し付けられて、私が何かするまでもなく救いたかった人は救われようとしている」

ほむら「それをただ喜んで受け入れるなんて、そんなの惨めじゃない」

ほむら「私はまどかをこの手で救いたかった!かつて私をあなたが助けてくれたように、今度は私があなたを助けたかった!」

ほむら「私はそのために魔法少女になったのに!!」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……でも受け入れるしかないのよ」

ほむら「どんなに惨めでもどんなに悔しくても、あなたが笑ってくれるのなら、あなたが幸せでいられるのなら私は喜んでこの世界を受け入れるつもりよ。だから」

ほむら「笑って、まどか」

まどか「……ごめん、ほむらちゃん。私」

ほむら「やめてっ!!」

ほむら「謝ったりしないで!そんなこと言ってほしいわけじゃない!」

ほむら「どうして?まどかは嬉しくないの!?せっかく生き返ることができたのよ?これからは魔法少女も魔女もいない平和な時間を過ごせるのよ?」

ほむら「まどかは嫌じゃないの?せっかく生き返ったのに、また消えてしまうのが辛くないの?」

まどか「……消えるのは辛いよ」

ほむら「そうでしょう。でも大丈夫よ、私が絶対にあなたを消させたりなんかしない」

ほむら「そうよ、せっかくだから全部やりなおすのはどうかしら?そういう風に私が願えば可能なはずよ」

ほむら「街も人も全部元通りになるように願うの。そこで本当の日常を過ごしましょう?」

ほむら「朝は一緒に学校に行きましょう。まどかは寝坊しちゃうかもだけど、ちゃんと私たちは待っているから安心してね。もちろん寝坊しないほうがいいんだけど」

ほむら「お昼はみんなでお弁当を食べるの。見計らったように杏子がこっそり学校に来てさやかに叱られたりするのかしら」

ほむら「放課後は、どうしましょうか?駅前のケーキ屋さんに行くのもいいし、マミの家でお茶会するのも……ふふっ、ケーキばかりね」

ほむら「そして夜は電話でおしゃべりね。それで二人とも夢中になって気づいたら夜更かししちゃうの。それでまどかは次の日も寝坊しちゃって」

ほむら「そんなあるはずだった幸せを……一緒に……」

まどか「ほむらちゃん」

まどか「もう、いいよ」

ほむら「っ!?」

ほむら(……わかってた)

ほむら(自分がどんなに無意味なことを言っているのかも)

ほむら(どうしてまどかが笑ってくれないのかも)

ほむら(まどかが私に何を望んでいるのかも)

ほむら(全部わかってた)

ほむら「……まどかはそれでいいの?」

まどか「……うん」

ほむら(ええ、あなたはそう答えるわよね。自分がどんなに辛くても、誰かのために苦しみを受け入れてしまう)

ほむら(そんなあなただから、私は救いたいのに)

ほむら「私ではあなたを幸せにすることはできないのね」

まどか「ううん、そんなことない。私、ほむらちゃんのおかげで今とっても幸せだから」

ほむら「あなたはまたそうやってっ!!」

まどか「違うよ、自己犠牲とかじゃなくて。ほむらちゃんが私を私として見てくれているってわかったから」

ほむら「え?」

まどか「言ったでしょ?ここはほむらちゃんの願いが叶う場所。私がほむらちゃんとここで一緒にいたいって思うようにほむらちゃんが願えば、私の気持ちは簡単に変えることができるの」

ほむら「それは……」

まどか「でもほむらちゃんはそれを望まなかった。私が私であることを何よりも願い続けてくれた。大切な友達がちゃんと私を見てくれている。そうわかっただけで、もう十分幸せだよ」

ほむら「あ……」

まどか「ねえ、ほむらちゃん。最後に私のお願い聞いてくれる?」

ほむら「……何かしら?」

まどか「私のこと、忘れないで」

ほむら「忘れないわ、それだけは」

まどか「ほむらちゃん、後ろを見て」

ほむら「後ろ?……扉があるわね」

まどか「結界の外に出たいと思いながら扉を開ければ、外に出られるよ」

ほむら「そう、便利ね」

ほむら「…………」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「いえ、その前に寄り道しなくちゃいけないわ」

まどか「寄り道?」

ほむら「ちょっと会いに行かなくちゃいけない子がいるのよ」

まどか「それは……。いいよ、ほむらちゃん。もう私を、鹿目まどかを助けようとしなくてもいいんだよ」

ほむら「ごめんなさい。でもやっぱり私はあの子を見捨てるわけにはいかないの」

ほむら(『ほむらちゃんはずっと、私のことなんか見てなかったんだね』)

ほむら「私はあの子に言わなくちゃいけないことがある」

ほむら「だから、行くわ。この結界の主のところへ」ガチャッ

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「さようなら、まどか。あなたと友達になれてよかった」

まどか「さようなら、ほむらちゃん。私もほむらちゃんと友達で幸せだよ」

ほむら「……よかった」

バタンッ

魔女の結界

ほむら(……白い)

ほむら(ただ真っ白な部屋、装飾も何もない空っぽの部屋。唯一違う色を持っているのは、部屋の中央に座っている女の子)

ほむら「まどか」

まどか『ふーん、出てこないと思ってたよ』

ほむら「あなたに用があってきたのよ」

まどか『なんだろ?ああ、私を退治しにきたのかな?だったら無駄足だったね』

ほむら「……?」

まどか『だってもうすぐ私は消えるから』

今回はここまで。
遅くてすみません。

織莉子「もしかしたら世界は終わらないかもしれないわ」

キリカ「どういう意味だい、織莉子?」

織莉子「世界を滅ぼすほどの魔女が誕生したにしては、魔女の結界が発生してからいまだに何も起きていないわ」

織莉子「あなたも見たでしょう、ワルプルギスの夜が砕けていく様を。もし本当に鹿目まどかの呪いが世界に届いたのだとしたら」

さやか「魔女となったまどかも消える……」

織莉子「ええ、魔女が行動を起こさないのは呪いの影響で何も出来ないから。そう考えることもできます。どうかしらインキュベーター?」

QB「可能性は否定できないね。このまま何事もなく、まどかが消滅するだけで済むかもしれない」

さやか「何事もなくって!」

QB「世界が滅ぶことに比べたら、大したことじゃないだろう?何を怒っているのさ」

マミ「……鹿目さんは何のために契約したの?」

織莉子「何のため?」

マミ「だってそうでしょう?鹿目さんは奇跡で人が救われる世界を憎んでいた。だから奇跡をこの世界から消し去って、人の力で人が救われる世界に変えようとしたというのに」

マミ「それで自分が消えちゃったら意味ないじゃない」

キリカ「案外うっかりしていただけかもしれないよ。自分の呪いが自分に降りかかるなんて、誰が想像するというんだ」

さやか「うっかりって、そんな理由でまどかは消えるの!?」

キリカ「そんな理由とは言うけどさ、それはここにいる誰もが少なからず経験していることじゃないかい?」

キリカ「うっかり契約してゾンビになってしまった私達だよ?似たようなものじゃないか」

さやか「あ……」

キリカ「まあ、私は後悔していないけどね」

杏子「奇跡に頼っても、それは裏目に出るだけ。それは呪いだろうと変わらないってことだろ」

さやか「……」

ゆま「ねえ、マミお姉ちゃん」

マミ「どうしたの?」

ゆま「まどかお姉ちゃんは魔法とか奇跡とか無くなっちゃえって契約したんだよね?」

マミ「ええ、そうよ」

ゆま「それで、ワルプルギスの夜は魔女だから消えちゃったんだよね」

マミ「でしょうね、だから鹿目さんも」

ゆま「なんでゆま達は消えなかったのかな?」

マミ「……え?」

まどか『もうこの世界に魔法は存在しない。だから魔法少女も魔女も同じく存在しない』

ほむら「でも私は消えずここにいるわ。それも人間に戻っている」

まどか『そりゃそうだよ。魔法少女から魔法がなくなったんだから、あとに残るのは少女、人間の女の子でしょ』

ほむら「そんな簡単なことで!?」

まどか『今までの、魂が石ころに閉じ込められていた状態がおかしかったんだよ。魔法で封じられていた魂が解放されて、本来のあるべき場所に戻っただけ』

まどか『魔女は戻るべき肉体がもう残ってない場合が多いから、消えるしかなかったけどね』

ほむら「それならあなたの身体は残ってるわ、だからあなたは消えないはずよ!人間に戻れるはず!」

まどか『……だから言ったでしょ。魔女の私は消えるから、退治する必要はないって』

ほむら「そういう意味だったの!?」

ほむら(はぁ、なんだかどっと疲れたわ)

ほむら(何も焦ることなかったじゃない。魔法少女も魔女も、みんな魔法から解放される)

ほむら(ふふっ、これにはインキューベーターも慌てずにはいらえないわね)

ほむら(…………)

ほむら(何かしら、この違和感。なんだか上手くいきすぎているような)

ほむら(これがまどかの祈りなら納得できた。けど彼女の場合は呪い、そして魔女になるほどの絶望があったはず)

ほむら(これではまるで魔法に関わった人を救うために契約したかのよう)

ほむら「ねえ、まどか?」

まどか『どうしたのほむらちゃん?難しい顔して?』

ほむら「あなたは……何を呪ったの?何に絶望したの?」

まどか『うーん、何から話そうかな?えーとね』

まどか『私のママってすごくカッコいいんだ』

ほむら「……?」

まどか『お仕事遅くまで頑張って、それでも弱音を吐いたりしないんだ』

まどか『パパは料理がとっても上手でね、美味しいご飯をいつも作ってくれるの』

まどか『たっくんが生まれてからも、私のことを放っておいたりしないで色々と相談に乗ってくれた』

ほむら(いったい何の話を?)

まどか『さやかちゃんはいつでも元気いっぱい。これと決めたことは絶対に譲らない強さを持ってる』

まどか『仁美ちゃんの家はお金持ちだけど、仁美ちゃんはそれを自慢したりしない。家じゃない自分の良さを磨くため、いつも習い事を頑張ってる』

まどか『みんな私が憧れる人たち。私が辛いときに助けてくれる人たち』

まどか『そんな人たちに囲まれて、私も同じぐらいすごい人になりたいって思ったんだ』

まどか『人に助けられるだけじゃなくて、人を助けられる人に』

まどか『だから私に出来る範囲で人を助けて、少しでもみんなに近づこうと思ったんだけど』

まどか『でも私はみんなみたいに優秀じゃないからいつも上手くいかなくて』

まどか『だからって努力してみても全然足りなくて』

まどか『そんな劣等感ばかりの毎日はとても辛かった』

まどか『けどね、嬉しかったりもしたんだ』

まどか『私の自慢の人たちは、本当にすごいんだって。いつかは私もみんなみたいになるんだってずっと思ってた』

まどか『魔法に出会うまでは』

ほむら「……」

まどか『ふざけてるよね』

まどか『願うだけでなんでも叶うなんてさ』

まどか『強くなりたいと願えば、料理が上手になりたいと願えば、一瞬で叶うなんてズルいよ』

まどか『その代償でさ、人をはるかに超えた能力が手に入るんだよ』

まどか『本当にふざけてる』

ほむら「まどか、でもそれは」

まどか『わかってるよ。人の力では叶えられない願いがたくさんあることも、それにすがる人の気持ちも』

まどか『魔法少女には魔法少女の苦しみがあるってこともわかってる』

まどか『それでも私は魔法が憎い。これまでの私の努力も、これからの私の目標も、今の私の価値も奪った魔法が憎い』

まどか『私の世界を奪った魔法が憎い』

ほむら(魔法そのものへの憎しみ。これがまどかの呪い!)

ほむら(予想でしかないけれど、きっと前まではこうじゃなかったはず)

ほむら(人間の生活を脅かす魔女を、奇跡を振りまくインキュベーターを、人の形で人を超えた能力を振りまく魔法少女を)

ほむら(自分ではなく人間ではなく、奇跡に救いを求める人間を)

ほむら(そして救いを求める人間に、人の身では救いを与えられない自分の弱さを呪い続けていたんだと思う)

ほむら(けどもう、この子の呪いは特定の誰かでは受け止められない)

ほむら(魔法というすべての元凶、そして魔法を認めている世界そのものがまどかの呪いの対象)

ほむら(世界が憎むべき相手。これが彼女の絶望だというの。だからまどかは魔女になったというの)

まどか『……ねえ、ほむらちゃん』

まどか『この気持ちも全部、因果の影響なのかな?』

ほむら(えっ?)

まどか『キュウべえからほむらちゃんの事、あと私の因果の事を聞いたときにね。思ったんだ』

まどか『話にでてくる鹿目まどかって子は、まるで私と似ていないなって。まるで別人みたいだなって』

まどか『じゃあなんでそんなに違うのかって考えたら……因果しかないよね』

まどか『そして予想は当たった』

まどか『因果が私に与えた影響、それはほむらちゃんも聞いたよね』

ほむら「それは……」

まどか『面白いと思わない?』

まどか『私の憧れも、努力も、劣等感も全部!この私を築き上げてきた今までのすべての感情が全部!全部、因果の影響を受けて歪めれられたものだったんだよ』

まどか『魔法を憎むこの気持ちさえ、因果とかいうよくわからない物で作られている』

まどか『ねえ、ほむらちゃん。自分の全てが偽物のまがい物で、これまでもこれからも今も全部本当の自分じゃない、間違いでしかない。これ、何て言うんだろうね?』

ほむら(まさか……これがまどかの……)

まどか『絶望だよ』

ほむら「あなたは、偽物なんかじゃ」

まどか『それをほむらちゃんが言う?ずっと私を別の誰かと重ねて見ていたほむらちゃんが』

ほむら「っ!?」

まどか『ああ、でも怒ってるわけじゃないよ。悪いのはほむらちゃんじゃなくて、魔法だってことはわかってるから』

まどか『少し……ううん、とっても悲しかったけどね』

まどか『大した理由もないのに、私に……優しくしてくれたのはなんだか私自身を認められているみたいで嬉しかったから』

まどか『まあ、私の勘違いだったんだけど』

ほむら「……ごめんなさい」

まどか『謝らないでいいってば。事情は私も知ってるし、仕方ないよ』

ほむら(仕方ない……そんな言葉で済ませられるの?今のあなたはその程度で済ませてしまえるの?)

ほむら(……怖い)

ほむら(もう何も心配はないとわかったのに、とてもとりかえしのつかない事が起きているような)

ほむら「まどか、結界を解いて!そうすればあなたもすぐに人間に戻るはずよ」

ほむら「そして何の相談もなくこんな世界にしたことを、外のみんなに謝りましょう。きっと誰も怒ったりはしないから」

ほむら「あなたの呪いで、これからは魔法に煩わされることはなくなったわ。これからは普通の、ありふれた学生としての生活が待っている」

ほむら「だからやり直しましょう、私たちの関係もこれからはただのクラスメイトとして、もう一度始めましょう」

ほむら(そう、やり直せる。私たちにはこれからがあるんだから)

まどか『……そうだね、もう目的はすんだし結界を解いてもいいかな』

ほむら「目的?」

まどか『ほむらちゃんの天国をつくることだよ。というか見ておきたかったんだ、本当の鹿目まどかがどんな子なのか』

まどか『私が消えた後、鹿目まどかがどうなるのかを。話に聞いてたとおり、優しくていい子みたいでよかった』

まどか『あれが本当の、あるべき鹿目まどかだったんだね』

ほむら「消えた後って……あなたさっきは消えないって言ったじゃない!」

まどか『消えないよ、鹿目まどかはね。ちゃんと呪いに従って、人間に戻ると思う』

まどか『でもそうやって人間になったそれは私じゃない。本当の、本物の鹿目まどかだよ』

まどか『ほら、私の呪いは魔法とか奇跡とか、そういう非日常の間違ったものを消し去ったでしょう?』

まどか『因果で歪められた私っていう間違いも、きっと消えちゃうから』

ここまで。

まどか『大したことじゃないよ』

まどか『みんなからしたら、私の性格が変わったように感じるだけだと思う』

まどか『そうしてまともになったまどかは、すぐにみんなと馴染めるはずだよ。まるで元からそんな性格だったみたいにさ』

まどか『そして当たり前みたいに、みんなから愛されるだろうね。だってこれからの鹿目まどかは、本物なんだから』

ほむら「……どうして、そんな事が言えるの?どうして自分を簡単に捨てられるの?」

まどか『仕方ないよ、だって私は間違いなんだから』

ほむら「間違い間違いって、じゃあそんなあなたを大切に思う人はどうなるの!?」

まどか『……その気持ちもきっと間違いだよ』

ほむら「っ!?あなたそれは」

「ふざけんじゃないわよ!!」

ほむら「え?」

まどか『さやかちゃん?』

「なんか話が聞こえるようになったと思ったら、今の会話はなに!?今の言葉は聞き捨てならないわよ!」

ほむら(さやかの声は聞こえるのに、姿は見えない?いったいどこから?)

「落ち着いて美樹さん!とりあえず二人とも無事なのね?」

ほむら(こんどはマミ……あ!結界の一部が崩れて小さな穴が出来てる。これは)

まどか『結界が壊れ始めてるんだよ。……そろそろ時間だね』

「とにかく二人とも無事なのよね!?怪我してない?」

まどか『はい、無事ですよマミさん。そしてさよならです』

「さよなら?ってどういう」

ほむら(いけない!)

ほむら(このままではまどかは消える!……それなら!)

ほむら「さやか!インキュベーターはいる?」

「ええっ!?いるけどなに!?」

ほむら「こっちに投げ入れて!」

「え、でも穴小さいよ!」

ほむら「多少無理してもいいから!」

「わ、わかった!」

「ちょっと待ってくれ!なんで僕がわぁぁぁ!!」

ほむら「……やればできるものね」

QB「わけがわからないよ。あと頭を掴むのはやめてくれ」

まどか『……ねえ、なんのつもり?今さらキュウべえなんかで何ができるっていうの?』

ほむら「あら?こいつの使い道なんて、契約しかないでしょう?呪いを生むのに使った子もいたけど」

まどか『ふーん、ここはまだ呪いの影響を拒絶している魔女の結界内、だから契約もできるはず。そういうことかな?』

ほむら「ええ、どうかしら?できると思う?」

まどか『出来るだろうね。でも、無駄だと思うよ』

まどか『ほむらちゃんが何を願おうと、私の呪いの邪魔をすることなんてできないよ』

ここまで。

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