ほむら「手段は択ばないわ」(494)


諸注意

このSSは、まどかマギカ本編の11話からの分岐になります。
ワルプルギスの夜に追い詰められたほむらが、もう一度時間遡行をしていたら?というIFストーリーです。

では、お楽しみください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366515270

プロローグ

 立ちはだかる、舞台装置の魔女。通称、ワルプルギスの夜。
 ほむらは幾度と無く挑み、その度に叩きのめされ、逃げる様に時間を遡り続けた。

――君のおかげで、最強の魔女が出来上がったんだ。

 その結果は、親友を苦しめる最悪の状況を作り出してしまっていた。

 何度も見てきた、退院日の病院の天井。
(また、ダメだった……。それどころか、私の願いがまどかを苦しめていたなんて……)
 ほむらの頬に、一滴の雫が流れ落ちた。
(……ダメだ!! これ以上弱気になったら、無駄な魔女が増えてしまう!!)
 手の甲で拭い、奮い立たせるように自分に言い聞かせる。
(これ以上時間を繰り返せば、まどかの因果が増える一方……。もう時間を戻す訳には行かないのに……どうすれば良いの?)
 自問自答しても、活路は見えてこない。大きく溜息を吐き出し、自分のソウルジェムに目を向ける。紫の宝石は、かすかに濁りを溜めていた。
(……私の願いが原因。……私の願い?)
 そのキーワードが、頭の片隅に引っ掛かった。


――鹿目さんを守れる自分になりたい!!

 契約の願いを思い出す。

 何度も繰り返した時間の中で、幾つ物真実を目に焼き付けてきた。
(もし、この理屈だとすれば……)
 希望の光、道標の先が見えた気がした。
(可能性は低いけど……賭けるしかない!! もう、これ以上は繰り返せないから……)
 ほむらの眼つきは鋭く研ぎ澄まされ、表情は凛と張りつめた。

 暁美ほむらは知りたい。あの戦いの結末を……。

1.接触

 退院したその日。新たな住居に身を移したほむらは、荷物を解くよりも先に起こした行動。
≪……キュウべえ。聞こえるかしら?≫
 それは、殺し足りない位に憎らしい、契約請負人にコンタクトを取る事だった。
≪君は魔法少女の様だけど……僕と契約した記録は残っていないよ?≫
 感度は良好。返信はすぐにキャッチ出来た。
≪それを今から説明するわ。すぐに来てもらえるかしら?≫
≪……解った。今から向かうよ≫

 一分と経たない内に現れた契約請負人、インキュベーター。
 ほむらは、鋭い目付きでキュウべえを見下ろす。
「ここでは初めまして、ね。キュウべえ。私の名前は、暁美ほむらよ」
「……暁美ほむら。その名前の少女と契約した記憶は無いね。しかし、君はソウルジェムを持っている……。君は何者なんだい?」
 キュウべえは、少し首を傾けてほむらをジッと見つめる。
「私は、時間遡行者よ。違う時間軸のインキュベーターと契約したから、この時間軸の貴方が知らないのも無理はないわ」
「……そういう理屈なら、合点は行くね。しかし、君の様子を見ていると、時間遡行をしたのは一度や二度じゃ無い様だね」
「そうよ。今から一か月後に現れる、ワルプルギスの夜を倒す為に、この一か月を繰り返しているわ」
 ほむらの口調は、淡々としていた。

「……ワルプルギスの夜。歴史に名を残す最悪の魔女だね。確かに、並の魔法少女が集まった位では、あの魔女を倒す事は不可能さ。
 でも、この街には、巴マミと言うベテランの魔法少女も居る。何よりも、途轍もない才能を持った、魔法少女の候補も発見したんだ」
「鹿目まどか……でしょ?」
 キュウべえよりも先に、ほむらはその名前を口に出した。キュウべえは、思わず言葉を止めてしまった。
「……知っていたのかい?」
「ええ。彼女の才能は、確かにずば抜けているわ。彼女が魔法少女になれば、ワルプルギスの夜を倒す事は造作も無いでしょうね……。
 ただ、その後には、それ以上に最悪の魔女が生まれてしまう……」
「……全てお見通しって事か」
「私はソウルジェムの全貌も、貴方達の目的も知っているわ。
 私の目的は、鹿目まどかを契約させないで、ワルプルギスの夜を倒す。その為に、この一か月を何度もやり直しているのよ……契約してからずっとね。
 しかも、それが原因で、鹿目まどかに莫大な因果が集中してしまった……。彼女の素質が破格なのは、私が原因だったのよ」

た…択ばない…

 キュウべえは、ほむらをマジマジと見つめる。
「なるほどね。彼女の因果は、理論上ありえない数値を出しているの。しかし、君の能力が原因だとすれば、全て説明が付くよ」
「……お蔭様で、貴方を殺しても、足りない位憎んでいるわ」
 ほむらは、溜息交じりにそう告げた。
「……妙な事を言うね。
 だったら、何故僕をこの場に呼び出したんだい? それに、わざわざ君の知っている情報まで提供してくれる。
 ありがたい話だけど、どう考えても企んでいるとしか思えないよ」
「交換条件よ。少なくとも、貴方に有益な情報を与えたんだから、私に協力してくれても良いんじゃないかしら?」
「仮に、鹿目まどかと契約するなと言う条件は受け付けないよ。僕達も、宇宙の寿命がかかってるんだ」
「そこまで、高望みはしないわ。
 要望は二つよ。一つは、ワルプルギスの弱点を教える。もう一つは、ワルプルギスの夜が過ぎるまでは、彼女と契約しない」
「……厳しい要求だね」
「そうかしら? ワルプルギスの夜までの限定なら、決して悪い条件ではない筈よ。
 それに……ワルプルギスには、私一人で挑むわ」

 ほむらの一言に、キュウべえは反応を見せた。
「……正気かい?」
「当然よ。私一人で戦うなら、貴方も教える事位してくれるでしょ?」
 ほむらの口元は、小さな笑みを作っていた。
「はっきり言って、まともじゃ無いよ。君はワルプルギスの夜と、何度も戦ってきたんだろう? だったら、それがどれ程無謀な事か理解出来ている筈だ……」
「そんな事は解っているわ。
 でも、後戻りが出来ない以上、ここで刺し違えてもあの魔女を倒すしか道は無いのよ」
「……末恐ろしいね。
 君の様な魔法少女は、敵に回すと非常に恐ろしいタイプだよ……」
「どういう意味かしら?」
「目的達成の為なら、どんな手段も択ばないという事さ」
「ええ。その通りよ」

 キュウべえは意を決した様に呟いた。無表情だという事に変わり無いのだが、ほむらは確かにそう感じた。
「君には、興味が沸いたよ。協力とは言わないけれど、手は組ませてもらうよ」
「……ふふ。頼りにしているわ……インキュベーター」
 ほむらは含み笑いを見せた。もっとも、その視線は、冷たいままなのだが。
「僕は、ここで消えさせて貰うよ。ワルプルギスの事はまた後日に話す事にするよ」
 そう言うと、キュウべえはほむらの前から消えていった。
(……まず第一段階ね)
 ほむらは、ホッと胸を撫で下ろした。

 転校日。
「暁美ほむらです。よろしくお願いします」
 何時ものループと変わらない、淡々とした挨拶。しかし、クールビューティーな容姿が手伝って、クラス中の話題はほむらで持ちきりとなる。
 休み時間になると、ほむらの周囲はクラスメイトでごった返すのだった。
「ねーねー。暁美さんって、東京から来たんでしょ? どんな学校だったの?」
「ミッション系の学校だったわ。病気で余り、通学してなかったけれど……」
「髪の毛綺麗だよねー。シャンプー何使ってるの?」
「そんな良い物は使って無いわ。ホームセンターで売ってる物よ」
 多数の質問に、淡々と答える。
 ただ、今までのループとは大きく違う点がある。それは、鹿目まどかに対し自分から接触する必要が無いのである。

 と言っても、ここで言葉を交わす事は、もはや運命なのかもしれない。
「あの、暁美さん?」
「……?」
 ほむらに声をかけてきたのは、鹿目まどか。幾つ物ループで、守ろうとしてきた、大切な親友。しかし、まどかにその事実を知る由は、まだ無いのだが。
「私、鹿目まどかって言います。保健委員やってて、早乙女先生から保健室を案内してあげてって言われてて」
 まどかは、屈託のない笑みを見せて、ほむらにそう言った。
「……そうだったわね。案内をお願いしたいわ。皆ごめんなさいね」
 ほむらはそう断りを入れて、席を立った。
(好都合ね……)
 内心では、ほくそ笑んでいたに違いない。

 先導するまどかの背中を見ていると、ほむらの自然と険しくなってしまう。
(今回で確実に終わらせなければ……。貴女を呪縛から解かなきゃいけない……)
 そう思い込んでいると、不意にまどかの方から言葉がかかってきた。
「……暁美さん。やっぱり、気分が悪いの?」
 まどかは、余りにも険しい表情を見かねて、ほむらを体調を心配していた。
「大丈夫よ。それと……私の事はほむらで良いわ」
「……そっか。じゃ、私の事はまどかで良いよ」
 まどかは、そう言いながらニコッと笑みを見せた。
「ええ。よろしくね、まどか」
 ほむらも、笑みを見せてそう返答した。
「でもさ、ほむらってカッコイイ名前だよね」
「そうかしら? ちょっと変な名前だから、あんまり気に入って無いわ」
「私は、カッコイイと思うよ。燃え上がれーって感じでさ」
 言葉を幾つか交しながら歩いていると、保健室は目前だった。
「ここが保健室だよ」
「ありがとう。助かったわ」
 ほむらに言われると、まどかは照れた仕草を見せる。

「ねえ、まどか。一つだけ聞いても良いかしら?」
「どうしたの?」
 ほむらが少し間を置くと、まどかは周囲の空気が張りつめた事を感じた。
「……貴女は、家族や友達の事。大切だと思ってる?」
「……えっ?」
「どうなの?」
 一呼吸して、まどかは凛とした顔付きで答えた。
「勿論、大切だと思ってるよ。家族も、友達も、皆大好きな人達だから」
「……そう。ならば、一つだけ忠告させて。
 もしこの先、何が起ころうとも“自分を変えよう”だなんて、決して思ってはいけないわ。そうで無ければ……貴女の大切な物を、全て失う事になるわ」
「ほむら……ちゃん……?」
「変な事を言って、混乱させてしまったかしら? でも……私の忠告を忘れないで」
 そう伝えて、ほむらは保健室の扉を潜って行った。
(……何の話なんだろう)
 取り残されたまどかは、呆然と立ち尽くすしか無かった。

 その日の放課後。
 ショッピングモールのファストフード店で、談笑するまどかとさやか、そして仁美。内容が、転校生の事に偏るのは、致し方なしと言えよう。
「あっはっはっは……。ちょっと、それってマジなの!?」
 大爆笑で、目に涙を浮かべながらさやかはそう言った。
「さやかさん……笑いすぎですわ」
 呆れながら、仁美はそう呟いた。
「うぅ~……言うんじゃ無かった」
 まどかは、顔を赤くしながらポツリと言った。
「いやー悪い悪い。
 でもさ、才色兼備でミステリアスな転校生。だけど、実はサイコな電波さん。もしくは重度の厨二病……そりゃ笑っちゃうよ」
 さやかに反省の色は無かった。
「所でまどかさんは、あの暁美さんとはお知り合いなのですか?」
 仁美はさやかを一旦置いて、まどかに話題を振った。
「ううん。今日、保健室を案内しただけだよ。あ……でも」
「……でも?」
 まどかの思い出した様な一言に、さやかと仁美は注目した。
「夢の中で会ったような……」
 その言葉を聞いて、さやかと仁美は盛大に噴き出してしまうのだった。

 同時刻。同じショッピングモール内の改装中エリアにほむらはキュウべえと居た。
「……確かに、魔女の反応が有るね。君が過去をやり直しているのは、本当なんだね」
 キュウべえは、感心しきりだった。
「……信じていなかったのね」
 ほむらの返答は淡白な物だった。
「正直、半信半疑だったよ。だけど、確信できた。
 実際、予知能力の魔法を使う魔法少女でも、魔女の現れる場所や日付まで正確に当てる事は不可能だ。過去を見てきたからこそ、出来る芸当だね」
「そんな事はどうでも良い事よ……」
 溜息を吐き出しながら、ほむらはそっぽを向く。丸で、魔女と戦う意志が見られない。
「……魔女を倒さないのかい?」
「今倒す必要は無いわ。むしろ、この魔女を倒しに来る魔法少女に用が有るのよ」
「巴マミの事だね」
 キュウべえの言葉に、ほむらの首は縦に動く。

 お互いが無言のまま、数分経過。キュウべえはピクリと反応を見せた。
「その当ては外れた様だよ。あの魔女の結界に、鹿目まどかと美樹さやかが捕えられたみたいだ……」
「……何ですって?」
 ほむらは目を見開く。
「……魔女に捕えられるのは、何も口づけを受けた人間だけじゃないさ。
 魔法少女の素質を持つ人間も、結界に捕えられるのさ」
 キュウべえは得意気に言う。
「そんな事、初めて聞いたわよ……」
 ほむらは、キュウべえを鋭く睨みつける。
「それは聞かれなかったからね。
 魔女は魔法少女の末路。かつての姿を重ね合わせて、取り入れようとしているんじゃないかな?」
「……ちっ。御託は良いのよ!!」
 ほむらは焦った様に駆け出し、キュウべえはポツンと取り残されていた。

 まどかとさやかの目前に広がるのは、異空間と形容できる光景だった。
 綿毛のバケモノに取り囲まれて、動く事もままならない。
「……何よこれ」
 さやかは背筋から、冷たい汗が流れている。
「解んないよ……こんなの夢だよね!?」
 まどかは、体の芯から震えている事を感じていた。
 このままここに居れば、間違いなく死ぬ。本能が、そう察知していた。本物の恐怖に理性を支配され、叫び声さえ出せなかった。
(……誰か……助けて!!)
 声にならない叫びを、まどかは叫んだ。

 カツン、と床を踏みつける音が、耳に飛び込む。
「危ない所だったわね……」
 そう聞こえた時、黄色いリボンが二人の周囲を包み込んだ。思わず辺りをキョロキョロと見渡すと、見滝原中学の制服を着た女性が、すぐ近くに立っていた。
「……ど、どちらさまでしょうか?」
「貴女達、見滝原中学の生徒ね」
 女性は、二人に向けてにっこりとほほ笑みを見せた。
「でも、その前に……ちょっと一仕事片付けてもいいかしら!!」
 力強く、それでいて優しい声だった。女性が可憐なポージングを決めると共に、きらびやかな光を放つ。

 その中から再び姿を現すと、制服姿から変身を遂げていた。
「使い魔共、すぐに終わらせて上げるわ!!」
 女性はスカートの中から、大量のマスケット銃を一斉に召喚。
 大きく息を吸い込んで、集中力と魔翌力を高める。
「ティロ・ボレー!!」
 打ち上げ花火の如く、マスケット銃からの一斉砲撃で、無数の使い魔を蹴散らしていく。
 派手な発砲にも関わらず、魔弾は的確に的を撃ち抜いていた。
「……逃がしたわ」
 そう呟いた少女は、顔を少し苦々しくしていた。

 同時に、取り囲んでいた空間が、改装中の殺風景な物に戻っていた。
「……」
 まどかとさやかは、呆然と少女を眺めるしか、リアクションが取れない。
「……自己紹介が遅れたわね」
 少女は変身を解いて、元の制服姿に戻っていた。
「私の名前は、巴マミ。貴女達と同じ、見滝原中学の三年生よ」
 そう名乗った少女は、ニコッとほほ笑んだ。
「せ、先輩だったんですね。私は、二年の美樹さやかって言います」
「わ、私も二年の鹿目まどかです。助けてくれてありがとうございます」
 あたふたと自己紹介する二人を見て、マミは少しだけ吹き出してしまった。
「そんなに、畏まらなくても平気よ。二人とも、怪我は無いかしら?」
「は、はい!!」
 さやかは背筋を張りながら、大きな返事を返す。
「私も、大丈夫です……」
 ちょっと、しり込みながら、まどかも答える。
「フフ……そんなに緊張しなくても良いのよ」
 マミは温和な笑顔で、二人を見つめていた。

 コツ、コツ、と床を鳴らす足音。三人は、思わず足音の主に目を向ける。
「見事な戦いね。流石はベテランの魔法少女、と言った所かしらね……」
 不敵な笑みを見せながら、ほむらはそう声をかけた。
「……て、転校生!?」
「ほむらちゃん……!?」
 思わず声を裏返し、まどかとさやかは驚きを隠せなかった。
「あら? 見かけない子ね……」
 マミは内心では警戒しているのか、視線は僅かに鋭くなる。
「……そうね。最近、見滝原に引っ越してきたばかりなのよ」
 その一言で、マミはより警戒を高め、再び魔法少女に変身した。
「そう。……だったら、今回の獲物は貴女に譲ってあげるわ」
 マミはそう言って、ほむらを牽制する。
「どういう意味かしらね……」
 ほむらは微笑を浮かべたままだ。
「呑み込みが悪いのね……見逃してあげるって言ってるのよ」

 マミの言葉は、尻上がりに強い物に変わって行く。更に、左手にマスケット銃を召喚して、ほむらに銃口を向けた。
 いきなりの険悪な雰囲気に、まどかとさやかは呆然と見る事しか出来ない。
「……貴女、思ったより間抜けね」
 ニヤッとしながら、ほむらはそう言った。この一言が、マミの神経を思いっきり逆撫でした。
 一瞬の間に、右手からリボンを召喚し、ほむらに向けてリボンを投げつけた。

――シュン。

 しかし、投げつけたリボンは何も捉えておらず、絡まったまま地面にポトリと落ちていた。
「……え!?」
 マミは我が目を疑った。
「……嘘?」
「どういう事……?」
 さやかは呆気にとられるしか無く、まどかには理解出来る時間も与えられなかった。
「……どう? 驚いたかしら?」
 得意げに声をかけるほむらは、一瞬の間にマミの後ろに回り込んでおり、頭に拳銃を突きつけている。

「……喧嘩売る時は、少しは相手を見た方が良いわよ? 相手に武器を向ける行為は、自分も殺される覚悟があるって事になるわ。脅す為に使うのは、馬鹿のやる事よ。
 私がその気なら、貴女の脳みそに鉛弾をプレゼントしてたでしょうね……」
 口元をニヤリとさせるほむらだが、その眼は全く笑っていない。
「……くっ」
 意図も容易く手玉に取られ、マミの内心は屈辱を味わされていた。
「……貴女、目的は一体何なの? 縄張りなの? それともグリーフシードなの?」
 矢次口調のマミ。明らかに焦っている様だ。
「そうね……貴女の命」
「……!?」
「なーんてね」
 そう言って、ほむらは拳銃を下ろした。
「……まどか、美樹さやか、そして巴マミ。また明日学校で会いましょう。では、ごきげんよう」

 次の瞬間、ほむらの姿は再び消え失せた。
「な……何なんだよアイツ……」
 ほむらの行動と言動に、苛立ちを隠せないさやか。
「ほむらちゃん……?」
 不安に駆られ、表情を曇らせるまどか。
(……怯えてた。銃を突き付けられた瞬間……私は確かに怯えてた)
 マミの右手は、握り拳を作りながら、小さく震えていた。

本日は、ここまでです。ボチボチと投下していきます。


アニメ以上に遠慮無しモードのほむらか
後、改行した方が読みやすいし確認しやすいよ

乙!面白いよ。続き待ってる

警戒するってのはわかるが、見逃してあげるってのがわからん
今回キュゥべえ襲撃が無いはずなのに
性悪マミにしたいだけ?

>>29
性悪マミさんならさやかも憧れないかもしれないね


自分の情報を知っていてなおかつやってきた=縄張り争い と捉えたんじゃないの?


期待、確かにマミの警戒っぷりは過剰に見えなくもない


まあ魔法少女は縄張り争いするものって考えだしね
まず縄張りを奪いに来たって考えを最優先しちゃうんだろうね、曲がりなりにもベテランだし

より関係劣悪な本編でさえ拘束にとどめて、武器突きつけたりはしなかったわけだし
キュゥべえ襲撃以外の何かがあったのか?と思っただけなんだわ
まあまだ最初だしこれから明らかになるだろうとは思うので期待しよう

>>29の最後の一文みてマミ厨かと思ったけど俺もわからんかったわw>見逃して~
というかこのマミ、警戒心が強いというより喧嘩っぱやいバカだわ
それってむしろさやかの領域な気が...

気が向いたので、もう一話分投下します。

2.憂鬱

 翌日。まどかとさやかは、何時もの様に登校していた。
「凄い話だよね。何か、マミさんって、正義の味方って感じがしてカッコイイよね」
 明るく話すさやか。
「うん。でも……ほむらちゃんも魔法少女なのに……」
 まどかがそう言うと、さやかはあからさまに嫌そうな表情を見せた。
「あんな奴、私が同じ魔法少女だったら、コテンパンにしちゃうのに」
「だけど……あんな行動するなんて、何か有るんじゃないかな~って思うんだけど……」
 強気な発言をするさやかを、なだめる様にまどかはそう言った。
 昨日まどかは、さやかと共にマミから、魔法少女の事、そして魔女の事。一通り聞く事となった。その際、マミの仲介でキュウべえとも顔を合わせた。
 その為、登校中の話題は魔法少女の事ばかりだった。偶々、日直で登校時間の合わなかった仁美が居なかった事も、理由の一つだろう。

 学校に二人が到着すると、昇降口で不審な動きをするほむらを見かけてしまった。
(……転校生? アイツ、何してるんだ?)
 さやかは、ほむらの姿を目で追った。
「さやかちゃん? どうしたの?」
「まどか……あれ見てよ」
 さやかが指差した先は、下駄箱に何かを入れるほむらの姿だった。
「……何してたんだろう? まさか、ラブレター?」
「そんな訳無いじゃん。アイツ、もしかして嫌がらせとかしてるんじゃない? ほら、性格悪そうだし……」
 こそこそと話をしていると、ほむらは下駄箱から立ち去って行った。
「まどか……後付けて見ようよ」
「でも……」
「良いから、行くよ!!」
 さやかに押し切られて、まどかに選択権は無かった。二人はほむらの後を追う事になった。

 ほむらの向かった先は、学校の屋上だった。フェンスにもたれかかって、誰かを待っている様である。
 物陰から、ほむらの姿をうかがうさやかとまどか。
「……誰を待ってるんだろう?」
「もしかして、本当にラブレターだったとか?」
 こそこそと話していると、ほむらの元にその呼び出した人物が現れた。
「……一体、何のつもりなの?」
 呼び出された張本人、巴マミは明らかに不機嫌そうに表情を曇らせていた。
「あら? 私からのラブレターは気に入らなかったかしら?」
「そういう事を言ってるんじゃないの。貴女みたいな怪しい魔法少女に呼び出されたら、誰だって警戒するわよ」
 マミの視線は、睨む様に尖っている。

「テレパシーの方が早いけど、キュウべえに聞きとられるのよ。それに、手紙の方が粋だと思わない?」
「ふざけないで。意味も無い用事なら、私は教室に戻るわよ」
 ほむらは、フッと息を小さく吐いた。同時に、表情もキリッと引き締まった。
「呼び出したのは、昨日の事の釈明ですよ。
 私は、別に先輩の縄張りを荒らそうとか、グリーフシードを奪おうとか。そんな事は考えてません」
「……そんな言葉、本気で信用できると思ってるの?」
「別に信用しなくても良いですよ。
 仮に私が本気で縄張りを奪うつもりなら、魔女退治で消耗しきった後に、徹底的に痛めつけて二度と刃向わない様にする。それ位の事は平気でしますよ。
 そんな人間が、わざわざ一対一の話し合いをする訳がないじゃ無いですか」
 自信満々にほむらはそう告げた。
「最低の魔法少女ね……」
 この考えには、マミはドン引きしていた。
(……最悪)
(そんなの酷過ぎるよ……)
 隠れて盗み聞いている二人も、正直引いていた。

読みにくいから改行入れたほうがいいよ

「話を戻します。同じ街に複数の魔法少女が居る事が、どういう事か……。先輩だって、理解出来ますよね?」
「そうね……。普通だったら、縄張り争いやグリーフシードの奪い合いになる。下手に話が拗れてしまうと、魔女退治どころか、魔法少女同士の争いに発展してしまう……」
「そういう事ですよ。
 それを未然に防ぐって意味でも、舐められない様にするしかない。その為にも、あれ位の行動を起こさなきゃ、収まりがつかないんですよ。
 この縄張りを共有させて貰う以上、最低限の礼儀と筋は通します。だから、この見滝原での活動を認めて貰いたいという訳です」
 ほむらの言葉を聞いて、マミは少し考えを素振りを見せた。
「……一つだけ聞かせて。貴女は、誰かと仲間になる気は有るの?」
「有りませんね。
 ただ、利害の一意が有れば、当然ながら協力しますよ」
「……そう」

「解って貰えますか?
 お互いの均衡を保つ為ですよ。仲間になった振りをして、後から裏切る様な魔法少女は腐る程存在します。
 それ位だったら、最初から適度な距離感と緊張感を持っていた方が、良い方法だと思いますけれど……」
「……」
「納得いきませんか……先輩?」
「……引っ越してきて、今更活動するな何て事言えないわ」
 マミは、少し渋っていたが、結局折れてしまった。
「……感謝しますよ」
「でも、正直な事を言わせて貰うわ。私は、貴女の事が一切信用出来ない。
 もし、万が一縄張りを奪う様な素振りを見せれば……その時は一切容赦しない。それだけは肝に銘じて起きなさい」
「活動を認めて貰えれば、私はそれでいいですよ……」
 そう言って、ほむらは屋上から立ち去ろうとした。

「……あ、そうそう。まどか。それと、美樹さやか」
(……バレてた)
 隠れているさやかとまどかは、ドキリとしてしまう。
 だが、ほむらは構う事無く言葉を続けるのだった。
「盗み聞きとは、悪趣味ね。これは、貴女達が立ち入って良い話では無いのよ?」
 ほむらの言葉が、グサッと突き刺さった。
「……アンタ何様のつもりなんだよ」
 眉間にしわを寄せながら、さやかはいきり立っていた。
「さやかちゃん……やめようよ」
「まどかは黙ってて!!」
 まどかの制止も頭に入らず、さやかはほむらに突っかかる。
「マミさんは、この街を守ろうとする立派な魔法少女じゃない!! なのに、いきなり現れたアンタみたいな魔法少女が偉そうに……」
「黙りなさい」
 さやかの言葉を遮るように、ほむらはそう言った。静かでも力強い台詞。そして、刀の如く研ぎ澄まされた視線に、さやかはたじろいでしまう。

「一応言っておくけれど、私は巴マミの考えを否定する気は無い。ただ、私自身が賛同していないだけよ。どう言う考え方で活動するかは、人それぞれ……そうでしょ?」
「だけど……」
「けど、何かしら? 自分の考えと合わないってだけで、その人間の意見を簡単に否定するものではないわ」
「……」
 さやかは、反論の言葉を見つけられなかった。
「今、確信できたわ。
 美樹さやか……貴女は魔法少女になってはいけない。貴女は、魔法少女になる上で、一番重要な物が欠けてるわ」
「……何だって?」
「冷静さが無さすぎるわ。そんな簡単に熱くなる様では、魔女の餌になるか、余計な死体が増えるだけよ。
 如何なる時も、頭を冷やせなければ、戦い続ける事など不可能。無謀と勇気を履き違えてはいけないのよ」
「……そんなの……やってみなきゃ解らないじゃん!!」
「解るのよ……。巴マミに聞いてみればどうかしらね」
 そう言いきって、ほむらは屋上から立ち去って行った。

「くそ!! 何なんだよ!!」
 さやかは、当り散らす様に叫んだ。
「……美樹さん。落ち着きなさい」
 マミは、さやかにそう促した。
「……マミさん。さっき、転校生が言ってた事って……」
 助けを求める様に、さやかの視線はマミを捉えていた。
「正直、言い方は最低で酷いものだわ。ただ……概ね内容は間違ってはいない」
「そんな……」
「確かに、酷な意見かもしれないわ。だけど、魔法少女ってそんな簡単に勤まる物でも無いのよ……」
 マミは、諭すようにそう告げた。
「マミさんは……あんな奴に好き勝手言われて、何も思わないんですか?」
「……滅茶苦茶頭に来てるわね。もし、仲間になりたいって言われても、あの子だけは願い下げよ……」
「……」
「でも……あの子の考えを聞いて、少し思う事も有ったのも事実なのよ」

「思う事……ですか?」
「ええ。
 願いが叶うってだけで、誰かに契約を勧めてはいけない……それだけは解った。いえ、気付かされたって方が正しいわね……。
 当たり前の事を、すっかり忘れてたのよ……魔女と戦う事は、常に死と隣り合わせ……」
「マミさん……」
「魔女がどれ程、恐ろしい物か……。ベテランの癖に、それを忘れてる何て魔法少女失格ね……」
「そんな事有りません!!」
 ここまで黙り込んでいたまどかは、声を荒げた。
「……マミさんの考えは、とても立派だと思います。
 それに、ほむらちゃんは言ったじゃ無いですか……マミさんの考えは否定しないって」
「鹿目さん……」
「きっと、ほむらちゃんにはほむらちゃんなりの考えが有るんですよ……」
「……そうかなぁ」
 まどかの言葉に、さやかは何処か納得の出来ない様子だった。

「私とさやかちゃんは、魔法少女じゃないけれど……マミさんの事を応援する事は出来ます。
 それだけじゃ、頼りないかもしれないけど……私達に出来る範囲なら、マミさんに協力したいんです」
 まどかは、力強く言った。
「まどかに良い所持ってかれたかなぁ……。
 確かに、マミさんは命の恩人です。だけど、あたし達はそういうの抜きで、マミさんの事をもっと知りたいんです」
 さやかも、そう言ってまどかの意見に追従した。
「鹿目さん……美樹さん……。ありがとうね」
 マミは、感謝の言葉を述べた。そして、その瞳はかすかに光る物を浮かべていた。

 その日の夕方。
 昨日取り逃がした魔女を、マミは追っていた。
 使い魔の魔力の痕跡から、じっくりと足取りを追う。華やかなイメージとは対照的に、実に地味な作業と言える。
(……近いわね)
 魔女の行先は見えた。標的の近くまで来ている事を確信した。
 ソウルジェムの点滅が、次第に速度は増していく。路地を曲がり、目前に見えたのは廃墟となった雑居ビルだ。
(……あれは!?)
 ビルの屋上に、人影が見えた。しかも、フェンスから飛び出している。
 そのまま、フラリと人影は屋上から飛び降りた。
(いけない!!)
 咄嗟に変身を完了させて、落下する体をリボンで包み込む。落下速度は次第に遅くなり、体はゆっくりと地面に据えられた。

 飛び降りたのは、女性だった。今は気絶している様で、目を覚ます気配は無い。介抱していると、首筋に奇妙な痣が付いていた。
(……これは、魔女の口づけね)
 魔女は、このビルに潜んでいると、マミは確信した。しかし、このまま女性をほおって置くのも、少々気が引ける思いもあった。
「私がその人を見ておくから、貴女が魔女を倒しに行けば良いんじゃないかしら?」
 その言葉を聞き、マミは思わず振り返る。
「……何のつもりかしらね、暁美ほむらさん?」
 きつめの口調で、マミはそう告げる。

「魔女の痕跡を追ってきたら、偶々出くわしただけよ。魔女を追うのは、魔法少女の習性みたいな物でしょ」
「どうかしらね……。言ったでしょ? 貴女は信用できないって……」
「流石に見ず知らずの一般人にまで、手はかけないわ」
「……その言葉の通りなら、私には手をかけても良いと言う訳ね?」
 マミは相当に警戒をしている様だ。
「……ならば、こうしましょう。貴女がその女性を介抱している間に、私が魔女を倒してくる。
 それなら、私も貴女に狙われないで済む。それに、全ての魔女がグリーフシードを落とすとは限らない。そうでしょ?」
 ほむらは、間髪入れず別の提案を出した。
「……したたかね。この魔女は、貴女に任せるわ……」
 マミは渋々ながら、ほむらの提案を受け入れた。
「恩に切りますよ、先輩」
 不敵に微笑しながら、ほむらは魔女の結界へと向かった。
(……仕方ないわね)
 マミはフッと溜息を吐き出した。

 意識の戻らない女性を介抱していると、反応を嗅ぎ付けたのか、キュウべえも現れた。
「やぁ。どうやら、暁美ほむらに横取りされたようだね」
「……キュウべえ」
 マミはキュウべえを見つめた。
「君がこうも簡単に手玉に取られるなんて、思ってもみなかったよ」
 キュウべえの言葉に、マミはムッとした顔付きになる。
「手玉に取られてないわ。今回は、この人を介抱する必要があったんだし……」
「そういう事さ」
「……どういう事よ?」
「暁美ほむらの実力からすれば、強引に横取りする事も可能だ。
 しかし、不可抗力を上手く利用して、奪う事無く魔女を仕留める様に仕向けている。彼女は、恐ろしく頭の切れる魔法少女だね」
「…………」
「冷徹でいて狡猾。そして、強い。ある意味、最も敵に回してはいけないタイプさ」
「……キュウべえは、随分とあの子の事を買ってるのね」
「君の実力を否定する訳じゃ無いよ。ただ、暁美ほむらが異常なのさ……」
「その様ね……」
 マミの表情は、実に憂鬱そうだ。

 暫く時間が経過すると、女性はゆっくりと眼を覚ました。
「……こ、ここは? あなたは一体……?」
 女性は周囲を見回しながら、キョトンとしていた。
「……たまたま通りかかったら、ここであなたが倒れていたんですよ。お怪我は有りませんか?」
 マミは、女性を不安にさせない様に、ニコッと微笑んで見せた。
「は、はい……。特には何とも……」
 そう言って立ち上がろうとするが、女性の体は酷く震えており、真っ直ぐには立っていられなかった。
「大丈夫ですか!?」
「何とか……大丈夫そうです」
 気丈に振る舞っているが、女性は一人で帰る事は不可能だろう。
「……家まで送りますよ」
 相手の体を支えながら、マミはそう言った。
「はい……すいません」
 顔を青白くさせ、女性は弱弱しくなっていた。
≪これって、口付けの影響かしら……? それとも、落ちる時の光景が、本能的におぼえているのかしら……?≫
 マミはテレパシーでキュウべえに聞いた。
≪どちらかと言えば、前者だね。魔女の口付けは、精神面に大きく影響を及ぼすよ≫
≪そう……≫
 このまま、暁美ほむらが魔女に負けるとは考えにくい。そう判断したマミは、一つ提案を挙げた。

か・・・改行してくれ

≪ねぇキュウべえ。……暁美ほむらの様子を見ててくれないかしら。私は、この人を家まで送ってくるから≫
≪僕は一向に構わないよ。そういう事なら、後でまた落ち合おう≫
≪よろしくね≫
 女性を気遣うマミは、タクシー会社に電話をかけるのだった。

 女性を自宅まで送り届けると、辺りはすっかりと暗くなっていた。雲一つ無く、月明りと街灯で見通しは悪く無い中、マミは帰路に付いている。
(……暁美ほむら。彼女は、何を狙っているのかしら)
 マミの中に、ほむらに対する疑念が渦巻いていた。
(……協力を求める訳でも無く、縄張りを奪う訳でも無い。それでいて、あんな行動を取る魔法少女は、初めてだわ……。
 キュウべえの言ってた通り、強い上に頭が恐ろしく切れる……。狙いが解らない以上、こっちから手を打つ事も出来ないなんてね……)
 幾つかの推測を思い浮かべるが、決定的な策は見つけられない。
「……はぁ」
 思わず、大きなため息を吐き出していた。
(……考えてても仕方ないわね。コンビニでケーキでも買って帰ろ……)
 進路を変えて、公園を横切るように歩いていると、一番会いたくなかった人物がベンチに座って待ち構えて居た。

「ここで待っていれば、貴女に会えるってキュウべえが言ってたわ」
 ほむらに声をかけられて、マミは心底嫌そうに表情を歪める。
「……待ち伏せのつもりかしら。とうとう、本性を現したのね?」
 マミは苛立っている様で、口調もきついものだ。
「随分と嫌われたものね……。ま、無理も無いけれど」
「今度は何のつもり? 言ったわよね……素振りを見せたら容赦しないって」
「私は、貴女に話したい事が有るから待っていたのよ。今朝は、部外者が居たから、話さなかったけれど……」
「……信用出来ないわね」
 マミは極めて警戒しているが、ほむらはお構いなしに口を動かし始めた。
「……鹿目まどか。彼女だけは、魔法少女として契約させてはいけないわ」
「あら……貴女も気が付いて居たのね。彼女の素質を……」
「そうよ。正確には、知っていたと言う方が正しいかもしれないわね」
「自分より優れた才能が有る。だからこそ、鹿目さんに契約されると、商売敵が増えてしまう……。貴女みたいな魔法少女なら、確かに契約されると困るかもしれないわね。
 自分よりも強くなりそうな芽は、早めに積んでおく。丸で、いじめられっこの発想ね」
「……」
「確かに、鹿目さんが契約するかどうかは、私が口を出す所では無いわ。
 ただ、彼女は貴女の様に非道で残虐な考えは持ち合わせていない。もし、魔法少女になったとすれば……きっとこの街を護る為に戦ってくれるでしょうね」
 マミは、ここぞとばかりに捲し立てる。今まで好き勝手言われたお返しとばかりに。

「一つ聞くわ。貴女は、鹿目まどかや美樹さやかに契約して欲しいのかしら?」
「……それを貴女に言う必要は無いわ」
 ほむらはフッと息を吐いてから、言葉を吐き出す。
「私の様な卑劣な考えの持ち主が現れれば、他の魔法少女を殺しかねない。経験の浅い、契約仕立ての魔法少女ならば尚更危険。
 そう考えて、貴女はあえて契約を考える様に伝えたのでしょう?」
「……何が言いたいの?」
「仲間を手に入れられるチャンスを潰されて、尚更私が気に入らない。違ったかしら?」
「……違う。それは違うわ!!」
 マミは、思わず声を荒げた。
「……だけどね。私は何があろうと、新たな魔法少女を増やす事には反対なのよ」
「鹿目さんや美樹さんの様な、立派な考えを持つ子が魔法少女になれば、縄張りを争う事は減ると思うわ……。魔女を倒す事も楽になるでしょうし……」
 ほむらとマミの意見は平行線だった。ここまでは。
「……私が断固として、契約に反対する理由は、縄張り争いうんぬんじゃないわ。
 ソウルジェムの本当の秘密も……グリーフシードの正体も……インキュベーターの目的も知ってるからよ!!」
「……!?」
 ほむらは力強く言い切った。

とりあえず、ここまでです。

改行は……ごめん。今更、やるのがめんどくさすぎて……。

>>1
文字サイズ変えて読むわ
確かに面倒だよな改行

乙っす
開業は次回からやれば良いんじゃないかな


いかんマミさんが嫌な子に見えてきた

乙乙
ここまで読んで、
このマミさんが喰われようと
このさやかちゃんが魔女になろうと
このほむほむが失敗しようと

ざまぁwwwwwwwwとしか思えない
むしろそうなれとさえ・・・

マミもアレだけど、このほむらも大概じゃね?

なるほどこれがコミュ障の本気か…

ほむらが一人で戦うつもりな以上マミ達に好印象与えるわけにはいかんしなぁ

下手に仲良くなったりするとマミはワルプルギス戦で援護しにきたりほむらを助けるためにまどかさやかが契約しかねないし

この話し合いでワルプルギス戦で手を出させないように誘導するのかな?次回も期待

いいよいいよこの殺伐した空気。仲良しとか馴れ合いとかないこの空気が好きだ。>>1さん乙です

読みづらいからなんとかしてくれぇ


一触即発な雰囲気だな


確かにたまには殺伐としたのもいい

内容はすごくいいけど
すごく読みにくいね

駄目だ読みにくくて読む気せん



小説スタイルで行くなら読み難くなるから「!」「?」を連続でつける場合も全角で統一し「」内で改行しないで欲しい。
あと、キュゥべえの名前はちゃんと書いて欲しい。

>>60
改行すら面倒臭いんだったらSS書くの止めちゃえばいいのに

楽しみに待ってるから完結してほしい

>>76
改行ごときでそこまで言わなきゃいけないの?
読みにくいなら読まなければいいんじゃないの?
金払って読んでるわけじゃないんだし

今まで書いてきたSSで、一番アウェイ感が有る。

さて、投下。

3.真相

 マミは思わず言葉を止めていた。

「何よ……? その秘密って?」

 ほむらの瞳は、真っ直ぐにマミを射ぬいていた。

「ソウルジェムは、私達の魂を宝石に変えた物。言うなれば、ソウルジェムが私達の本体で、体は後付けの様な物よ」

「……貴女、何を言ってるの?」

「体から全ての血が抜けても、心臓が破れても、骨が粉々に砕けても……ソウルジェムが無事なら生き返られるわ。無論、魔力は使うけれどね。
 言い換えれば、ソウルジェムが砕け散ってしまうと、私達は死んでしまうわ。
 ちなみに、ソウルジェムが半径100メートル以上離れると、体の機能は全て停止する」

「ちょっと……訳が解らないわよ。性質の悪い嘘は止めなさいよ!!」

「……この目を見て、私が嘘を言ってるとでも思うの?」

「……」

 あまりの威圧で、マミは黙り込むしかなかった。


「次は、グリーフシードの事ね。
 貴女は、今まで疑問を持ったことが無いかしら? 何故、ソウルジェムの穢れはグリーフシードでしか浄化出来ないのか……」

「それは……グリーフシードは、魔女の卵。呪いから生まれる代物……」

「違うわね。元が同じ物だからこそ、浄化が出来るのよ」

「……!?」

「グリーフシードは……絶望するなり、魔力を使い果たすなり……ソウルジェムが穢れきって壊れた時に生まれ変わる物よ。
 つまり……魔女は元々は魔法少女だった」

「……嘘よ」

「嘘じゃ無いわ。この目で、私は見てきたの」


「だったら……キュウべえは何の為に魔法少女を生み出しているって言うのよ!!」

「私達の感情をエネルギーに変えて、宇宙の寿命を延ばしているらしいわ。特に、魔法少女が魔女になる時は、極めて効率よくエネルギーを回収が出来るとか抜かしてたわ。
 私はあいつ等じゃないから、良く解らないけど……」

 マミの瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。体は酷く震えだし、顔色は真っ青だった。

「ねぇ……キュウべえ。近くにいるんでしょ!? 嘘よね!? 魔法少女は希望を生み出す存在で、魔女は絶望を生み出す存在なんでしょ!?」

 マミの後ろに、キュウべえは現れた。

「ねぇ……彼女の言ってる事は……でたらめでしょ!?」

「全て真実だよ。
 それと、誤解している様だけど、魔法少女は希望から生み出される存在で、魔女は絶望から生み出された存在だと僕は教えた筈だ。
 ニュアンスは似ているけれど、意味合いは大きく異なっているよ」

 マミの理想は、呆気なく打ち砕かれていた。


「……何よそれ。
 ……それじゃ、私は何の為に魔女と戦って来たっていうのよ!!
 ソウルジェムが魔女を生み出すなら……皆死ぬしか無いじゃない!! 貴女も!! 私も!!」

 半狂乱となったマミは、黄色い光を生み出して、魔法少女姿に変身した。

(……きたわね!!)

 ほむらも、同調するように変身し、魔法少女姿になって見せた。


 マミは即座にマスケット銃を召喚し、ほむらに向ける。ソウルジェムに照準を合わせて、引き金を引く。
 銃声が、漆黒の夜に響き渡った。

 しかし、魔弾は空を切って公園の地面を抉ったにすぎなかった。

「……!?」

 目前から消えた標的。マミは本能的に後ろに向けて、リボンを放出させた。

(……居ない!?)

 絡みつくリボンは、何も捉えていない。

「……ここよ」

「……!?」

 突然のささやきは、右耳から聞こえた。

「……え?」


 今度は、左から鎖が飛んできた。マミの体に絡みつき、あっという間に拘束されてしまっていた。

「……ちょっと!! 何てことするのよ!!」

「殺されかければ、それ位しなきゃ大人しくしてないでしょ」

 声を荒げるマミに、ほむらの突っ込みは冷静だった。
 マミは力を込めて引き千切ろうと試みるが、纏わりついた鎖はビクともしない。

「無駄な抵抗よ。魔力を込めているから、そう簡単に切れる訳がないわ」

「…………」

 マミの体から力が抜けて、その場に両膝を着いてしまう。


 長い間、魔法少女として戦ってきたにも関わらず、意とも容易く負けていた。こうなってしまえば、魔法少女としては死を意味している。

 ほむらはゆっくりと歩み寄り、マミの頭に。否、ソウルジェムに向けて、銃口を突きつけた。

「……貴女の負けよ。巴マミ」

 この時点で、マミのプライドはズタズタだった。

「……殺してよ」

 マミの声は涙交じりだった。


「このままソウルジェムを、さっさと撃ち抜きなさいよ!! この縄張りも手に入るし、私の持っているグリーフシードは貴女の物になる!!
 もう十分じゃない!! 私は魔女になりたくない!! 早く引き金を引いて、私を殺せばいいじゃない!!」

 理性が切れた様に、マミは捲し立てた。

「……フフ」

「…………?」

「クックック……フフフ……アーッハッハッハ……」

 何を思ったのか。ほむらは、今まで見せた事の無い位に高笑いを始めた。

「何がそんなにおかしいのよ……」

「……そんなに死にたいなら、その命……私が貰ったわ。
 今すぐ、私に忠誠を誓いなさい……巴マミ」


「……!?」

「殺すなんて、勿体ないじゃない。死ねばゼロだけど……生きている限りは駒として動かせる。そうでしょ?」

 この一言は、屈辱だった。

「……貴女は、命を何だと思ってるよ!!」

「何とも思っていないわ。
 ただ、私は自分の目的の為なら、どんな手段も択ばないわ。例え恨みを買う方法でも、他人の命を踏みにじろうともね……。
 使えるなら、魔女だろうが魔法少女だろうが、何だって使うわ」

「……信じられない。魔女より性質が悪いわ……」

 ほむらの言葉を拒絶する様に、マミは吐き捨てた。


「ねぇ……魔女になる事って怖い?」

「怖いに決まってるでしょ!! 誰かを呪いながら生きながらえる何て、私はまっぴらよ!!」

 マミは、怒りで顔を真っ赤にしながらほむらに告げる。

「そりゃ、魔女になるのは私も御免よ。
 でも、魔女になる事が避けられないなら……私はそれを受け入れるわ」

「何よそれ……狂ってる……」

「普通に考えれば、そうかもしれないわね。
 だけど、仮に私が魔女になったとすれば、貴女が殺せばいい。そうすれば、少なくとも貴女は延命できるわ」

「……嫌よ。誰かを犠牲にしてまで生き延びるなんて……。私はそこまでして生きたくない!!」

「……本当にそう思ってる?」

「そうよ!!」

 マミの言葉を聞いて、ほむらは拘束する鎖を解いた。


「……何のつもり!?」

 マミはほむらと向き合う様に、体勢を変える。

「覚悟を試させて貰うわ」

 そう言うと、ほむらは盾の中から、リボルバー式の拳銃を取り出した。

「コルトパイソン。リボルバー式の拳銃でも、極めて威力の強い物よ。仮に頭を撃ち抜けば……脳みそは軽く飛び散るでしょうね」

 ほむらは銃弾の装備されるシリンダーに、一発だけ装弾。そして、シリンダーを思いっきり回転させたままリロードする。

「……まさか!?」

「そのまさかよ!!」


 ほむらは何のためらいも見せず、自分のソウルジェムに銃口を当てた。
 そして、一切の迷いも見せないで、引き金を引いた。

――カチン。

 空発。

――カチン。

 二回目も、弾丸は飛びださない。

――カチン。

 三度目の正直には至らない。ほむらの顔は、何時もと違わぬポーカーフェイスを保ったままだ。

「……ま、こんな所よ。
 言ったでしょ? 何とも思っていないってね」

 得意げに言いながら、ほむらはマミに拳銃を差し出す。


「次は貴女の番よ?」

「……」

 無言で受け取り、マミはソウルジェムに拳銃を突きつける。
 ドクリ、と心臓が高鳴り、全身の汗腺から汗が噴き出る。拳銃を持つ手は震え、奥歯がガチガチと鳴る。
 マミは、怖かった。死ぬ事は怖い。トリガーにかかる指を、動かす事が出来ない。
 改めて突きつけられた現実は、あまりにも非情であった。

 拳銃を構えて、数十秒。マミは、引き金を引く事が出来なかった。

「……これが、現実よ」

 ほむらは、冷たく言い放った。そのまま、マミから拳銃を取り上げる。

「……」

 全身の力が抜けた様に、マミは地面にへたり込んでしまう。


「怖いと思ってる?」

 ほむらの言葉に、マミの首は縦に動く。

「それが心理よ。だけど、怖さを知らない者は、強くなれないわ。
 自分の無力さを認める事は、悪い事ではない。少なくとも、私は全てを受け入れた上で行動を起こしているのよ。近い将来、魔女になる事も含めてね。
 出来もしない理想論を語るより、現状を見つめて出来る事を考える。それが私なりに導き出した、魔法少女の生き方よ」

 マミの反応は無いが、ほむらは言葉を続ける。


「……巴マミ。貴女は、自分に厳しすぎる。
 正義の味方とか、街を護るとか、その考え方は素晴らしいわ。だけど、自分でハードルを上げてしまい、自分自身を苦しめていては意味が無い。
 もっと、ズル賢くても良い。もっと、楽にすればいい。少し位、自分に甘えたってバチは当たらないわ」

「違うの……」

 弱弱しくマミの口は動く。

「私は……本当は弱いの。
 強がってばかりで、魔女と戦うのが怖くて……本当に死にたいと思っても、自決する勇気だって持って無い……。
 願いが叶う事は素晴らしいって、あの子達に言ったわ……。だけど、本当はそんな事を思って無い。
 私は、ただ魔法少女の仲間が欲しかった……」

「やっと、自分自身に向き合ったわね」

 そう呟いてから、ほむらは今日刈り取ったばかりのグリーフシードを、マミに差し出した。


「……?」

「早い内に浄化しないと、魔女になるわよ?」

 マミはグリーフシードを受け取った。その様子を見て、ほむらは再び口を動かす。

「自分のエゴは醜いと思うかもしれない。だけど、汚い部分も含めて、それが自分なの」

 その言葉は、マミの心に深く刺さった。

「巴マミ。これからどうするかは、貴女が決める事。
 もし、魔法少女を続ける気が有るのなら……明日の夕方。この公園で待っているわ」

 そこまで言うと、ほむらはマミに背を向け、足を進め出す。

「……待って」

 その一言に、ほむらの足はピタリと止まった。


「一つだけ聞かせて。
 暁美さん……貴女に取って、魔法少女はどんな存在なの?」

「そうね……。
 強いて言うなら、願いを叶えたが為に魔女退治をやらなければいけない、自業自得な存在かしらね」

「……貴女っぽい意見ね」

「ええ。気に入らないかしら?」

「いいえ。それも、魔法少女の有り方なんじゃないかしら……。
 ……本当なら今日で、私は殺されているわ。だからこそ、今の私は助けられたようなもの……。
 私は貴女と手を組みたい。いいえ、私に忠誠を誓わせてほしいの!!」

 マミの言葉は吹っ切れた様に、はっきりとしていた。

(……陥落したわね)

 ほむらは、ニッと口元を歪ませた。


「まぁ……そこまでは言わないわよ。だけど、貴女の力を借りれるのなら、心強いわ。
 よろしくね……マミ」

 ほむらは振り返りながら、スッと右手を挙げた。

「こちらこそ、よろしくね。暁美さん」

 マミも同じ要領で右手を挙げる。
 パン、とハイタッチする音が、公園に響いた。


「……そう言えば、何時の間にキュウべえは消えているわね。根掘り葉掘り問いただしたい事があったのに……」

 マミは、周囲を見渡したが、キュウべえの影は何処にもない。

「アイツの事だから、その内現れるわ。
 それと、アイツを見つけて、殺したところで意味は無いわよ。一匹殺したところで、別の個体が出てくるだけだから」

「……初めて聞いたわ」

「アイツらの事は、私でも解らない事は、まだまだあるわ。だから、あまりアイツの事を当てにしてはいけないのよ」

 ほむらは、鬱陶しそうに溜息を吐き出す。

「……ねぇ、暁美さん。まだまだ色々話もしたいから、ケーキでも食べに行きましょう」

「この時間じゃ遅すぎるわ。私はラーメンが食べたいわね」

「女子中学生二人でラーメンはちょっと……」

 この後、相談の末ファミレスに行く事となり、二人は夜の街に消えていった。


 何時の間にか姿を消したキュウべえは、ビルの屋上から街を見下ろしていた。

「やれやれ……。まさか、巴マミを手籠めにするとはね。
 しかし、ワルプルギスの夜に挑むのは、彼女一人だと言っていた。無論、嘘だと言う可能性も十分に有るけれど……。
 暁美ほむら……彼女は何を企んでいるんだ?」

 ほむらへの疑惑は、キュウべえさえも抱いていた。


 翌日の登校。

「おはよ~……」

 まどかは、眠たそうに眼をショボショボさせて、何時もの待ち合わせ場所に到着した。

「おはよ。遅いぞ~」

 さやかは、茶化すようにまどかに挨拶をした。

「おはようございます、まどかさん」

 仁美もにこやかに微笑みながら、まどかに挨拶をした。

「じゃ、行こっか」

 三人が揃った所で、学校へと向かい始めた。
 そして、待ち合わせていた公園を抜けると、さやかとまどかは思わず立ち止まってしまったのだ。


「どうかなさいました?」

 足を止めた二人に向けて、仁美はそう声をかけた。

「嘘……?」

 呆然とするまどか。

「何がどうなってるのよ……」

 さやかにも、その光景は信じられない物だった。

 思わず我が目を疑うのも無理はない。

「あら、おはよう。まどかに、美樹さやかに、志筑さん」

 と、淡々と挨拶するほむら。

「おはよう。奇遇ね」

 そう言って、にこやかに挨拶するマミ。


 昨日、散々いがみ合っていた二人が、仲良く一緒に登校していれば、驚くなと言う方が無理である。

「……転校生とマミさんが、仲良く登校してるって。何かの間違いよね?」

 信じられないとばかりに、さやかはそう聞きただしてしまう。

「紛れも無い事実よ。
 強いて言えば、昨日取っ組み合いの喧嘩してから、一緒に食事をしたからかしらね」

 ほむらは、事情を簡潔に説明した。

「まぁ……青春ですね!!」

 何の事情も知らない仁美は、その説明に目をキラキラと輝かせていた。

「まぁ……間違ってはいないけれど」

 マミは苦笑いを浮かべながらそう言った。

「……訳が解らないよ」

 流石に事情が呑み込めないまどかは、呆れ気味だ。

「そんな事より、早く行かないと遅刻するわよ」

 そう告げて、ほむらは先に足を進め始めた。

本日はここまでです。


大藪チック(?)なダーティーほむらか
案外良いかも

乙かれ

>>104
朝食はステーキとコーヒーか


マミさんはヒステリックでほむらは策謀家……
全員に好感が全く持ってないな…



ほむらに手段を選ぶ気がない以上マミは捨て駒にされる気がしてならない


面白いから完結させてくれよ


>>108の言う通りだな…
個人的にはやっぱり仲良くハッピーエンドがすきだけどこの先どうなるんだか期待してます

ショック療法から手込めにするこのやり方いいね。ロシアンルーレットもよかった。乙乙です

ロシアンルーレットはイカサマか。
時間停止の有効活用だな。

なんでマミさんが魔女化しないのか疑問

>>117
絶望しても、どこかに冷静さが有るんじゃない?

ほむら屑すぎワロタw

「あの冷酷な振る舞いは私達のためにやってくれてたんだよ!」「実は良い奴だったんだな」
みたいなありがちな展開にはして欲しくないな

ぐずほむきゃわわ

「ボクノホムホムTUEEE!ソノタオオゼイザコスギ!」
をほむらを下衆っぽく著すことでごまかしつつやってるだけの感が・・・
そして最後は>>120

うるせえお前らみてーな無能が口出しすんな
黙って見てろks

荒らしちゃダメだよー

お前らがとてつもなくまどマギ好きなのは分かった

むしろ>>120な様なのを見たい

パロディ、クロスや安価SS
ほむらが変態、異常に毒舌だったりマミがぼっちのような二次創作ベースのSSじゃなければなんでもいい

まどか未契約でワルプルギス撃破という目的以外は何の救いもないような話が見たい

お前らちょっと・・・いやもはや何もいうまい

お前ら注文多いな

続き投下します。

4.覚醒

 マミとほむらが協力関係を作って、三日ほど経過した。
 昼休みの屋上に、ほむらはマミを呼び出していた。

「暁美さんが呼び出す時って、あまり良い予感がしないのよね……」

 マミは、若干皮肉っぽく言い付けた。

「酷い言い草ね。ま、それ位の事をしてる自覚はあるけれど……。
 それはそうと、本題に入るわ」

 ほむらは一旦、咳払いを入れる。

「ちょっと、二、三日の間は魔女退治に参加できないのよ」

「そう。わざわざ断りを入れるという事は……何か考えが有るのよね?」

「ええ……」


 ほむらの眼光が、一瞬の間に鋭く尖った。

「……今から、約二週間後。ワルプルギスの夜が襲来するわ」

「……!?
 貴女、その情報を何処で手に入れたの!?」

「それは内緒。だけど、来る事は確実よ」

 ほむらがこういう場面で嘘を言うタイプでは無い。マミは十分に理解している。

「……貴女がそういう眼をしている時は、紛れも無い真実よね。だけど、それと魔女退治を休む事に、何の関係が有るの?」

「……この近辺の街の魔法少女を集めるわ。風見野町にあすなろ市。それに、この街にもまだ隠れている可能性だって有るわ」

「…………そう」

 マミの返事は、歯切れが悪い。


「何も、貴女が頼りない訳じゃ無いわ。
 ただ、確実に仕留めるのなら、人数が多い方が確実よ。“きっと勝てる”のでは無く“絶対に負けない”様にしなければならないのよ。
 仲間になるかは解らない。だけど、その時だけ手を借りる様に交渉をしてくるわ」

(……交渉というか、貴女の場合は脅し同然じゃない)

 マミは内心で突っ込んだ。

「……そういう訳だから、少しの間は単独になるわ。油断して、首を飛ばすような真似だけはしないでね」

 その言葉に、マミは少しムッとした。

「……あんまり、甘く見ないで」

「冗談よ。貴女の実力は、良く解ってるわ」

「……冗談に聞こえないわよ」

 マミは、げんなりとした顔だった。


 その日の夕方。
 まどかは、病院の待合室にいた。

(……今日は、随分と長いな)

 さやかは、幼馴染の上条恭介の元にお見舞いに行っている。まどかは連れられてきただけで、待合室で待っているだけである。

 病院で買ったホットレモンティーの温度は、既に温くなっていた。

「お待たせ、まどか」

 幼馴染のお見舞いを終えたさやかは、ようやく待合室に戻ってきた。

「上条君、どうだった?」

「うん……ちょっと精神的に参ってるみたいでね。あんまり元気はなかったよ」

 そういうさやかも、ちょっと落ち込んだ様子だった。

 トボトボと歩く二人は、病院の駐車場を横切って行く。


「……はぁ。どうにか、元気になってくれないかなぁ」

 力無くぼやくさやかだが、まどかは全く聞いておらず、呆然と病院の壁を見つめていた。

「まどか? どうしたの?」

「ねぇ、さやかちゃん……あそこに何か刺さって無い?」

「え? どこどこ」

 二人は、何かが刺さっている壁に向かった。

「二人とも。今すぐ離れた方が良いよ」

 突如後ろからの声に、足を止めてしまう。


「キュウべえ?」

 さやかは、裏返った様な声を出しながら振り返った。

「そこに刺さっているのは、グリーフシードだよ。しかも、孵る寸前だ」

「……!?」

 突然の告知に、二人の顔は青ざめる。

「どうしよう……マミさん前に言ってたよね。病院で魔女が生まれると、ヤバいって……」

 さやかは、マミの助言を思い出した。その瞬間、冷や汗が背中を滑り落ちた。

「そんな……。早く、マミさんかほむらちゃんに知らせないと……」

 まどかは、おろおろとしながら、携帯電話を取り出した。

「……少し待ってて。マミにテレパシーを送るから」

 キュウべえは、至って冷静だった。もっとも、焦る様な感情は持ち合わせていないのだが。


≪……マミ。聞こえるかい?≫

≪キュウべえ……何の様かしら≫

 テレパシーをキャッチした様だが、マミの声のトーンは低い。

≪市民病院で、グリーフシードが孵ろうとしてる。まどかとさやかもここに居るんだ。今すぐに、来れるかい?≫

≪……解った。だけど、急いでも五分はかかるから、早く逃げるよう……≫

 マミからの返信は、プツリと途切れた。

「……遅かったね」

 キュウべえは、淡々と告げた。

「嘘でしょ……!?」

 さやかは息を飲んでしまう。

「……そんな」

 まどかは、周囲の光景を見て、思わず目を覆っていた。


 辺りは、既に病院の駐車場の光景では無くなっていた。
 甘ったるい匂いが立ち込め、山盛りのお菓子が立ち並ぶ魔女の結界。

「これは、お菓子の魔女の結界だね。幸い魔女の方は、まだ孵っていない様だけど、結界に取り込まれてしまっては、僕達では脱出不可能さ」

「……何とかならないの?」

 キュウべえの説明を聞き、さやかは思わず聞きただす。

「方法は二つある。
 一つは、マミには魔女の結界の場所は教えてあるから、助けに来て貰う。結界に入ってからなら、最短ルートを僕から発信する事も出来る。
 だけど、急いでも五分はかかるって言ってたからね。それまでに、魔女が生まれない保証は無い」


「もう一つは?」

「君達が僕と契約して魔法少女になる方法さ。ただし、この方法は推奨しないよ」

「……どうして?」

 思わず、さやかは聞いてしまう。

「暁美ほむらの信頼を失うからね。彼女は、君達を魔法少女にする事を望んでいないのさ」

 キュウべえの言葉を聞き、さやかは納得が出来無い様だった。

「……アンタ、随分と転校生の事を買ってるのね」

「その件を、君達に話す筋は無いよ」

 キュウべえは、それ以上は語らなかった。


「……大丈夫だよ、さやかちゃん」

 まどかは、はっきりと言い切った。

「まどか……」

 さやかは、まどかに視線を向けた。

「きっと、マミさんもほむらちゃんも来てくれるよ。私達が信じなきゃ……」

 まどかは、凛とした声でそう言った。

「……残念ながら、ほむらは今日は居ないよ。用事で、別の街に居る」

 希望を打ち砕くかの様に、淡々と告げるキュウべえ。

「アンタは……少し位空気を読めっての」

 さやかは、苦々しく顔を歪めて、そう突っ込んだ。

(……こりゃ、腹を括るしかないかな)

 そして、内心では覚悟を決めていた。


 マミは、全力疾走で病院へと向かっていた。しかし、気持ちばかり先走って、足の進むペースは上がらない

「もう!! こうなったら!!」

 決めポーズも忘れた様に、路地裏で変身を完了させた。そして、強化した身体能力を駆使して、屋根へ飛び乗る。そこからは、忍者の如く屋根から屋根へと飛び移って行く。
 病院までの道のりを、真っ直ぐに突っ切ってショートカットする考えだ。

(……急がないと!!)

 懸念している点は二つ。一つは、魔女に殺されないか。もう一つは、閉じ込められた状態で、先走って契約していないか。

(……待ってて。鹿目さん!! 美樹さん!!)

 マミは最短距離で、目的地を目指す。友人を助ける為に。


 キュウべえはピクリと反応を見せた。

「……来たようだね」

 その一言に、まどかとさやかは、少しホッとした表情を浮かべる。

≪……キュウべえ!! 今、結界に入ったわ!!≫

 マミのテレパシーを、キュウべえは受信した。

≪予想よりも随分早かったね。魔女の方は、まだ孵化していないけれど、予断は許さない。僕達の位置を送信するよ≫

 キュウべえからの情報を、マミはキャッチした。

≪……最下層ね。すぐに向かうから、間違っても契約はしないでね!!≫

 そう釘を刺した。

≪信用無いなぁ……≫

 ちょっと残念そうに、キュウべえはぼやいた。だが、マミは既に電波を切っていた。


「……マミさんは?」

 さやかは、慌ただしくキュウべえに詰め寄る。

「もう結界に入ってるよ。最短ルートは教えてるから、すぐに到着するさ」

「良かったー。さっすがマミさんだね」

 安堵の息を漏らすさやかだった。

「……ねぇ、さやかちゃん。あの箱……何か震えて無い?」

 まどかに言われ、さやかもその箱に視線を向けた。

「何? あの馬鹿でかいお菓子の箱……」

 その箱は、確かにガタガタと震えている。

「……まずい。魔女が孵るよ」

 キュウべえの一言で、二人の顔は一気に青ざめた。


「恐らく、魔法少女の気配を感じ取ったんだ。下手すれば、使い魔達の動きも活発になるだろう」

「嘘……」

 まどかは、体の芯が震える事を感じた。

「……マミさん」

 願う様に、さやかは呟いた。

「使い魔に足止めをされたら、間違いなくマミは間に合わない。後は、運を天に任せるしかないだろうね……」

 キュウべえの言葉は、重苦しい雰囲気を助長した。


 その直後だった。

――パキン。

 金属がひび割れる音が響いた。大きなお菓子の箱は、無数に亀裂が入り、丸で卵から雛鳥が生まれる時の様だった。

「……魔女が生まれる」

 キュウべえが呟くと同時に、お菓子の箱はボロボロと崩れていった。

【お菓子】の魔女 シャルロッテ その性質は【執着】

 崩れ去った箱から出てきたのは、ぬいぐるみの様な風体の魔女であった。

「……あれが……魔女?」

 まどかは拍子が抜けた様に、キョトンとしている。

「何か……思ってたより怖くないな」

 さやかも、見た目で判断して、ちょっと舐めている様だ。

「確かにね。ただ、魔女で有る事は間違いないよ」

 キュウべえは、そう促した。


 バン、と扉が開いた。
 一同が一斉に振り返ると、頼みの綱の人物が姿を現した。

「……お待たせ。真打登場よ!!」

 ニヤリと笑みを見せながら、マスケット銃を構えたマミ。

「マミさん!!」

 まどかとさやかは、同時に声を張り上げた。

「もう大丈夫よ。今日と言う今日は速攻で片づけるわ!!」

 マミは、二人の周囲をリボンで取り囲み、結界を張りめぐらせた。

(……普段と。否、今までと雰囲気が違っているね……)

 マミの様子を見て、キュウべえは何かを感じていた。


 お菓子の魔女と対峙するマミに、臆する様子は微塵も無い。
 しかし、魔女の方も、特に攻撃を仕掛けてくるような様子も見られない。

(……何か有るわね)

 マミは、勘ぐっていた。

 右手からリボンを放出して、魔女の体を一気に拘束する。宙にブラブラと浮き上がる魔女の本体は、抵抗するような様子さえ見受けられない。

「……一気に決めるわ」

 マミの持つマスケット銃は、黄色い光に包まれ、大砲へと早変わりした。
 大砲に魔力を込めると、銃口は黄色い魔弾を生み出していた。

「……ティロ・フィナーレ!!」

 トリガーを引くと、強烈な魔弾が標的に向かって、一気に炸裂した。
 爆発音と共に、魔女の胴体を一気に貫く。

「やったぁ!!」

 さやかは、ガッツポーズを作り、まどかもホッとしたような笑みを作っていた。


 ぬいぐるみの体は、確かに貫いていた。
 しかし口からは、ニュルン、と蛇のバケモノの様な物体が飛び出していた。

「……!!」

 その蛇のバケモノは、とんでもない速度で真っ直ぐにマミに向かって突っ込んでいた。
 大口を開けて、マミを目掛けて噛り付く。

――ガチン!!

 大口は何も捉えていなかった。
 咄嗟の判断で、マミはバックステップで距離を取っていたのだ。

(……一瞬でも遅れてたら危なかったわ。やっぱり、裏が有ったわね……。恐らく、人形みたいな恰好は囮。本体はあの黒い奴……)


 マスケット銃を幾つか召喚。次々と手に取って、魔弾を連射。
 しかし、魔女の本体は全く怯まない。再び大口を開けて、マミに喰らい付く。

「……くっ!!」

 身を反転させてかわしたが、魔女の動きは想像以上に早い。

(……頑丈な上に、素早いわ。普段のマスケット銃じゃダメージは与えられないけど、大技を構える隙も無いわね……)

 マミは奥歯をギリッと噛み締めた。

 魔女は、再び襲い掛かる。マミは何とか避けるが、攻撃の手立てを見いだせない。

(……だったら)

 今度は、無数のリボンを放出して、大口を開けた魔女に狙いを定める。
 魔女の牙を、リボンが捕えた。口は開けっ放しで、魔女の動きは止まってしまう。

(これなら、避けられないでしょう)


 再び、瞬時に大砲を召喚。

「もう一発……ティロ・フィナーレ!!」

 ドン、と魔弾が魔女の口内に発射された。開きっぱなしの大口からは、煙幕が立ち上った。

 これなら、魔女だって一溜りも無い。全員がそう思った。

「……!?」

 再び口の中から、ニュルリと蛇のバケモノが姿を現した。
 最短距離で、マミの体に向かい喰らい付く。

「……きゃッ!?」

 ギリギリで避けたが、牙で腹部に大きな傷を受けてしまった。


(……しくじったわ)

 傷口からは、大量の血が流れ出る。左手で傷を抑えるが、痛みも流血も引かない。

(……傷を手当てする余裕も無さそうね)

 マミの脳裏を、嫌な予感がかすめる。

(……落ち着きなさい、巴マミ)

 首を振るって、嫌な予感を振り払う。
 目を凝らして魔女を睨む。

(追い込まれた時程、頭を冷やすのよ……)

 マミは限界まで五感を研ぎ澄ます。


 固唾を飲んで見守るまどかとさやか。しかし、素人目から見ても、マミは苦戦している事は明白だった。

「……マミさん」

 さやかは、何もできない自分を呪いたいとさえ思っていた。

「……マミさん」

 まどかは、祈る様にマミから視線を逸らさない。

「マミの攻撃方法で、あの魔女を仕留めるのは厳しいかもしれないね。相性が悪すぎる」

 そう言い放つキュウべえ。

「……ちょっと。そんな言い方無いんじゃないの」

 少し頭に来たようで、さやかはキュウべえに突っかかる。

「事実さ。ただ、マミも伊達にベテランじゃないよ。
 追い込まれた時にこそ、状況を打破する機転が求められる。それが出来なければ、戦いに生き残る事は不可能だからね」

 キュウべえはそう告げた。

「……」

 さやかは、何も答えない。ただ、今は見る事しか出来ないのだ。


 意を決したマミは、両手から再びリボンを繰り出す。

「……行くわよ!!」

 今度は網目の様に、リボンが大きく広がった。図体のでかい魔女を、漁の様に魔女の体を絡める。
 今度は、魔女の口は閉じたまま拘束されていた。

「……これなら、脱皮は出来ないわね!!」

 再びマスケット銃を、大砲に変形させる。しかし、大砲の砲身は、さっきよりも極めて長い。
 集中力を高め、砲身に魔力を込める。


(破壊力じゃないわ……魔力を一点に集中させる)

 再び込められた魔弾は、渦を巻いている。

「ティロ・フィナーレ……エボルツォーネ!!」

 魔力を限界まで練り込まれた魔弾は、ライフルの様に貫通力を上げた代物だった。一気に放出されると、高速回転しながら魔女の胴体を一気に貫いた。


「……今度は、復活出来ないでしょうね」

 マミはそう言い切った。
 同時に、魔女も息絶えてしまった様で、目から生気が消え失せていた。

(ごめんなさいね……。貴女もかつては、魔法少女だったのでしょ?
 だけど、誰かを呪いながら生きるのは、きっと生前の貴女も望んで居なかった筈よ。天国でゆっくりとお休みなさい。後は、私達が何とかするわ……)

 魔女の体が、グリーフシードに戻ると同時に、マミは胸の前で十字を切っていた。


 結界が崩壊すると、辺りは病院の駐車場に姿を戻していた。
 すると、緊張の糸が切れてしまったように、マミは地面に片膝を着いてしまう。

「マミさん!!」

「大丈夫よ……ちょっと疲れただけ」

 そう言って笑みを見せるが、マミの表情は披露困憊している。何よりも、魔法による治療が追い付いておらず、傷口はまだ塞がっていない。

「マミ。早くソウルジェムを浄化して、魔力を回復させた方が良いよ」

 キュウべえはそう告げる。

「…………そうね。だけど、美樹さんと鹿目さんに話したい事があるのよ。
 折角だから、私の家でお茶を飲みながらなんてどうかしら?」

 マミはそう提案した。


「……本当に、大丈夫なんですか?」

 まどかは、心配そうにマミの顔を覗き込んだ。

「ええ。私は魔法少女だもの」

 マミはそう言いながら、笑みを作っていた。

「……」

 ただ、その笑みには何か奇妙な物を、まどかもさやかも感じていた。
 今までの温和な笑みとは、どこか違う。何処か裏が有りそうな、暁美ほむらが時折見せる様な笑みであった。


 マミのマンションに呼ばれた、まどかとさやか。そして、キュウべえも同席している。

「適当に寛いでて。すぐにお茶の準備するから」

 そう言って、マミはキッチンに向かった。

「また、マミさんの紅茶をご馳走になれるんだ……やった♪」

 さやかはウキウキと心を躍らせる。

「さやかちゃんったら……。気持ちは解るけどね」

 まどかも、満更でも無い様だ。

「……」

 キュウべえは、無言で二人を見つめているだけだ。


 数分も経つと、紅茶の香りが部屋にまで漂ってきた。マミは自慢のティーカップと、紅茶の入ったポットをテーブルの上に置く。
 しかも、お持て成しの為のプリンまで用意している。
 ポットからティーカップに紅茶を注ぐと、紅茶の香りが鼻をくすぐる。

 差し出されたプリンと紅茶に、まどかとさやかはゴクリと生唾を飲み込んだ。

「……さぁ、召し上がれ」

「いただきます!!」

 我慢できず、プリンをスプーンですくい上げ、一口頬張る。

「おいしい~♪」

「めっちゃ美味い~♪」

 まどかもさやかも、舌鼓を打つ美味しさで、顔をニンマリとさせた。

「喜んでもらえて何よりだわ。
 ……さてと。ここで、本題に入りましょうか」

 マミは打って変った様に、引き締まった顔つきになっていた。


 雰囲気を察して、さやかとまどかの表情も張りつめた様子に変わっていた。

「正直な気持ちを教えて欲しいわ。貴女達は、まだ魔法少女になりたいと思ってる?」

 マミの意見は直球だった。

「……私は、正直良く解ってません。
 どんな願いが叶うって言われても、叶えたい願いも解らないし……。マミさんの助けになるなら、契約してもいいかなって思ってますけど……。
 でも、戦うのは怖いです。うやむやな気持ちで契約しても、多分上手くいかない様な気もしてます」

 まどかはまだ迷っている様で、言葉も歯切れが悪い。

「あたしは、契約したいって思ってます。命を懸けてでも叶えたい願いも有ります。
 それに、今日のマミさんが苦戦する所を見てて、あたしはどうして何も出来なかったんだろうって思いました。正直、それが悔しかった。これが、今のあたしの気持ちです」

 さやかは、しっかりした口調で言い切った。真っ直ぐにマミを見つめた表情は、真剣な物だった。


「……二人の気持ちは、良く解ったわ。助けたいと思ってくれる事は、とても嬉しいわ。

 だけどね……だからこそ、私は契約には反対よ」

 穏やかな口調だが、マミはきっぱりと言った。

「……どうしてですか?」

 さやかは、残念そうに聞きただした。

「理由も、今から話すわ。
 先日、私は暁美さんから、こんな話を聞かされたの」

 マミはそう言って、ソウルジェムをテーブルの上に置いた。


「このソウルジェムは、私の魂。これが無ければ、私の体を動かす事は出来ないの。言ってみれば、ソウルジェムが本体で、体は抜け殻。
 ソウルジェムが無事な限り、血を抜かれても心臓が破れても、魔力が有れば復活できる。これが魔法少女の仕組みなの」

「……それじゃ、丸でゾンビじゃないですか!!」

 さやかは、思わず声を裏返していた。

「的を得てる例え方ね。
 それに、魔法少女の持つソウルジェム。これは、魔力を使う度に、穢れを溜めていく。そして、ソウルジェムが穢れきった時……」

 マミは、さっきの魔女が落としたグリーフシードをテーブルに出した。

「ソウルジェムから、グリーフシードが生まれる。これが、魔法少女の終着点」

「……!?」

 まどかもさやかも、動揺の余り声を出す事さえままならなかった。


「……危ない目に会わせたくない、何て綺麗事は言わないわ。魔法少女が増えれば、魔女の数もそれだけ増えてしまう。
 それじゃ、何の為に魔女を倒す魔法少女をしてるのか……。訳解らないでしょ?

 魔法少女に契約してしまえば、後戻りは出来ないの。だからこそ、貴女達は引き返せる時に戻るべきなのよ」

 諭すような優しい口調で、マミは厳しく突き放した。

「……キュウべえ。何で、魔法少女何て物作ったのよ」

 さやかは、キュウべえを睨みつけた。


「君達の感情を媒体として、宇宙の寿命を延ばす様にエネルギー回生する為さ。特に、相反する感情の変化は、大きなエネルギーを生み出すからね。希望から絶望とかね」

 キュウべえは、さも当然の様に告げる。

「意味わかんない……。そんな事の為に、私達の命を弄んでるって訳!?」

「そんな事とは、人聞きが悪いね。この一秒の為に、宇宙のエネルギーは、どれ程消費されていると思っているんだい?

 そもそも、宇宙がなければ君達は生きていく事さえ出来ないんだよ。むしろ、魔法少女が魔女になる事で、君達は生き延びられるんだ。
 それを感謝される筋合いはあっても、恨まれる筋合いは無いよ」

「そんなの……あんまりだよ」

 キュウべえの淡々とした態度を見て、まどかは悲観してしまう。


「……これ以上、聞く事は無いわ。幾ら話しても、平行線を辿るだけですもの」

 マミはそう言って、解説を打ち切った。

「……そして、これから話す事は、私の独り言よ」

「……」

 マミの一つ一つの言葉に、皆静かに耳を傾けた。


「二年前になるわ。

 私は家族でドライブに出かけたの。だけど、私と両親は大規模な交通事故に巻き込まれた……。潰れた車の中で意識を失いかけてた時、キュウべえに契約を迫られた。叶えたい願いは有るか、とね。
 私は、ただ助かりたいって答えたわ。それが、私が契約した経緯なの。

 考える余地も無かったし、あの時契約していなければ、今私はここに居なかったでしょうね……。

 どっちが良かったなんて、今となっては解らない。だけど、結果だけ見てしまえば、この現実を受け入れなくてはいけないわ。将来魔女になる事も……」

 そう語るマミは、少し悲しそうに眼を伏せた。


「……暁美さんは、こんな事を言っていたわ。
 もし、私が魔女になったら被害を出す前に貴女が仕留めれば良い、とね。

 開き直ってると言えばそれまでだけど、そんな事簡単に出来る事じゃない。あの子が、どれ程の修羅場を潜り抜けてきたのか、私には想像も出来ない。
 だからこそ、私はあの子と手を組む事にしたのよ」

 マミの口調は滑らかだった。


「……じゃあ、マミさんは転校生の事を、もう信用しているって事ですか?」

「……難しい所ね。
 私自身は、暁美さんの全てを信用している訳じゃ無い。でも、利害の一致が有れば、間違いなく背中を預けられる。
 言葉では上手く説明できないけれど、彼女はそう言う存在。今は、間違いなくその時なのよ」

 そこまで言い終えると、マミは紅茶に口を付けた。

「……マミさんは、これからどうするんですか?」

 まどかは、思わず聞いてしまった。

「今まで通りよ。変えるつもりも、変わるつもりも無いわ。私は私のやり方をするだけよ」

 マミの言葉は、凛々しく、力強かった。

本日はここまでです。

ちなみに、エボルツォーネとは、イタリア語で進化版、究極版。
英語のエボリューションと、同じ意味になります。

ランサーじゃないよ、デルタだよ。若い子は知らないかな?

(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたら


次回も楽しみにしてる

乙!

乙かれ

さてどうなる



ランチャ・デルタ良いよね!

乙!この説明を先に持ってくれば契約しづらいはず、だけど安定のさやかだしな


魔女は勝手に増えるから魔法少女居なくなるとそれだけ魔女が多くなる気もする


てっきりお菓子の魔女にマミもさやかも食べさせる気なのかと深読みしたらそんなこともなくて安心したぜ
ほむらはあすなろなんて知ってるのか

手段を選ばないくらいループしたんだよ
だからいろんな知識を持ってるわけで


マミさんの反応見ると、最初に期待してた本当にハードな人間関係は望み薄だが
ぬるい馴れ合いにはならなさそうだからまだ読むよ


このSSとても面白いです
いつも楽しく読んでいます
作者さんこれからも頑張ってください

続き投下します。

5.策士

 マミ達がお茶をしているのと、同じ時刻。ほむらは、あすなろ市に居た。しかも、喫茶店の窓際で、コーヒーを飲んでいる。

 もっとも、のんびりしている訳でも無いが。

≪キュウべえ。巴マミの方は、無事かしら?≫

 テレパシーで、最寄りのキュウべえに連絡を入れた。

≪見滝原の個体にアクセスした所、無事に魔女を撃破したよ。今の所、マミの家にまどかもさやかも居るよ≫

≪そう。それなら、問題無いわね≫

≪しかしだ。君は何故、巴マミが相性の悪い魔女と戦う様に仕向けたんだい?
 まさか、わざと負ける様に仕向けたとつもりなのかい?≫

≪そんな回りくどい事する位なら、自分で殺してるわ≫

≪やれやれ……訳が解らないよ≫

≪解ってもらうつもりは無いの。また、後で連絡するわ≫

 ほむらは一方的に電波を切った。


 そのまま、暫しの間コーヒーブレイクをしていると、ほむらの座るテーブルに一人の少女が歩み寄った。

「……キュウべえから聞いたわ。貴女が、見滝原の魔法少女の暁美ほむらさんね?」

 そう声をかけてきた少女。黒のロングヘアーで、端正で美形の顔付き。知的と言う言葉が、非常に似合う少女だった。
 あすなろの魔法少女がようやく現れたのである。

「初めまして。まさか、売れっ子作家の御崎海香さんが、魔法少女だなんて思わなかったわ」

 そう言って、ほむらはニヤリと笑みを見せた。

「……そんな事は、今は二の次。違う街の魔法少女が、あすなろに何の用かしらね?」

 海香は、ほむらの向かいに座りながら、そう言った。極めて警戒をしているのか、ほむらを睨む様に見つめていた。


「そんなに警戒しないで欲しいわ。こういう時は、お互いを対等にしないと意味が無いでしょう?」

 そう言いながら、ほむらは自分自身のソウルジェムをテーブルの上に置いたのだ。

「……」

 海香の眉が、ピクリと反応を見せた。本人は、ポーカーフェイスを保ったつもりなのだろうが、ほむらはそれを見逃さなかった。

「……あら? もしかして、ソウルジェムの概要を知っていたりする?」

 微笑を保ちながら、ほむらは海香を見つめていた。

「……ええ。知っているわよ」

 海香の声のトーンは、下がる一方だ。

「それなら、話は早いわね。
 貴女に……違うわね。貴女達に交渉がしたいのよ。そこの後ろに座ってる、魔法少女の二人も含めてね」

「……!?」

 海香の顔は、明らかに動揺を見せていた。


「……何時気が付いたの?」

「貴女がこの店に入って来た時。そこの二人組と、僅かに目が合ったでしょ。その時に、すぐに逸らさなかったから、恐らく仲間じゃないかって疑ったわ。
 確信をしたのは今だけどね。貴女の動揺した顔を見てからよ」

 ほむらの説明を聞き、海香の眉間にしわが寄る。

「……本題に入りましょう」

 そう言いながら、海香も自身のソウルジェムをテーブルに置いた。


「今から二週間後。見滝原に、ワルプルギスの夜が現れるわ。それを倒す為に、協力してほしいの」

「……貴女、本気で言ってるの?」

「ええ、本気よ」

 その言葉を聞き、海香はほむらをジッと見つめる。

「そんな言葉を一々真に受けていたら、幾つ体が合っても足りないわ……」

 バン、とテーブルの上に掌を叩きつけ、ほむらは海香を思いっきり睨みつけた。

「……この目を見て、本気かどうか判断しなさいよ」

 海香は、背筋がゾクリとした。
 抜身の刀を突きつけられている様な鋭い視線に、殺気に近い物を感じ取っていた。


(……この子、なんなの!?)

 海香が過去に出会った魔法少女達の中でも、これ程恐ろしい物を感じた魔法少女は他に居ない。

(狂気とも、殺意とも違う……。だけど、何故この魔法少女に、こんなにも威圧されているの!?
 ソウルジェムをテーブルに差し出すなんて、真実を知っているならどれ程危険な事かも、解る筈なのに……)

 明らかに海香は、ほむらの気迫に呑まれていた。


「別に、貴女達を私の手下にしようとかって話じゃない。単純に、協力を要請したいだけなのよ。
 それに、あの魔女が現れたら、この辺り一帯が崩壊する事は免れないわ。初見でどうにかなる相手じゃないのは、見た事の無い貴女でも解るわよね?」

「……それはそうだとしても。貴女は、そんな話を何処で手に入れたの? 正直、信用できるレベルの話じゃ無いわ」

「それは内緒よ。わざわざ、自分の手の内をバラす程、アホじゃないわ」

 海香は、今一つ腑に落ちない。

「……一つ聞いて良い? もし、私達が協力を拒んだら、貴女はどうするつもり?」

 その質問を受けて、ほむらは少し考える素振りを見せた。


「そうね……。
 貴女達を拉致監禁して、生きていくのが嫌になる程痛めつけるわ。
 そのまま、一人づつ絶望させて、魔女に生まれ変わらせる。そうすれば、私の為のグリーフシードは、難なく手に入るわ」

 ほむらは、無表情を保ちながらそう告げた。

「……話にならないわ。そんな下衆に、協力をするなんて、反吐が出る……」

 海香は吐き捨てる様に言い返した。


「……あすなろのプレイアデス聖団も、案外抜けてるわね。これ、何かしら?」

 ほむらの手には、海香のソウルジェムが握りしめられていた。そして、テーブルに置いていた、紫のソウルジェムは既に無い。

「い、何時の間に!?」

「さて……今、貴女の命は私の手の中に有ります。私はこのソウルジェムをどうするべきだと思いますか?」

「ふざけるな!!」

「そうね。ちょっと、悪ふざけしすぎたかしら……」

 ほむらは、海香のソウルジェムをテーブルの上に戻した。その途端、海香は引っ手繰るように、自分のソウルジェムを手に収めた。


「……何が目的なの」

 海香の声は露骨に低く、怒りを抑えきれない様だ。

「さっきも言った通り、ワルプルギスの夜を撃破する事よ。その為に必要なのは仲間じゃない。
 私が欲しいのは戦力よ」

「……」

「絶対に負けないだけの戦力を揃えて、確実に仕留められる戦略を使うのよ。
 綺麗事じゃない。邪道でも、汚くても、私は構わない。ワルプルギスの夜を倒す為なら、悪魔にだって魂を売ってやるわ」


「……貴女の目を見ていれば、本気で言っているのは解る。それに……拒めば本気で殺すつもりでしょう。
 だけどね……私達にも、プライドは有るわ。殺さない変わりに協力しろと言われ、はい解りました何て言う訳が無いでしょう」

「……それで?」

「……その話に乗るか反るかは、貴女の実力を見定めてからよ。貴女が私達を平伏せられるだけの力が有るかどうか……はっきりさせましょう」

 淡々と口を動かす海香だが、腹の中は煮え滾っているに違いない。

「面白いじゃない……」

 宣戦布告を受けて、ほむらはニヤリと笑みを見せた。


 太陽が沈んで、街は夜の暗闇に染まっていた。あすなろ市の外れにある、資材置き場に到着したほむら。
 そして、対峙するプレイアデス聖団の残党、昴かずみ、牧カオル、そして御崎海香。

「……生憎だけど、ちょっと痛い目を見て貰うよ。君は、ちょっと調子に乗り過ぎている」

 普段は温厚なかずみも、ほむらに対して怒りを示していた。

「悪いけど、アンタには協力したくない。だから、全力で戦わせてもらうよ」

 カオルも、臨戦態勢が整っており、即座に攻撃を仕掛けられる状態だ。

「今更後悔しても、遅いわ。でも、命だけは勘弁してあげる」

 海香も武器を召喚し、ほむらに向けている。
 一対三。端から見れば、極めて分が悪い。しかし、ほむらは不敵に微笑を浮かべている。

「……格の違いを教えてあげるわ。かかってきなさい」


 ほむらの言葉を皮切りに、カオルは我先にと、攻撃を仕掛ける。

「カピターノ・ポテンザ!!」

 一気に間合いを詰めて、ほむらの体を目掛けて蹴りを繰り出す。

(……なるほどね)

 瞬時にバックステップを取って、カオルの攻撃を避ける。

「リーミティ・エステールニ!!」

 しかし、避けた方向に、かずみの放った光線が飛び交う。

――シュン。

 だが、かずみの放った光線は何も捉えていない。

「消えた!?」

 カオルとかずみは、思わず動きを止めてしまった。


(……瞬間移動? だったら……動いた先は)

 海香は、瞬時にほむらの動きを予測した。

「上よ!!」

 その言葉に釣られ、全員が天井に目を向けた。

「正解よ。流石ね」

 ほむらは、天井の梁に乗っていた。余裕があるのか、微笑を崩さないで見下ろしている。

「上に逃げても、逃げ場は無いよ!!」

 かずみは、ステッキに魔力を込める。再び、光線で狙い撃つ考えだ。

「……残念ながら、私の勝ちよ」

 ほむらは、確信した様に呟いた。


 その刹那、パン、と爆発音が響いた。花火が発射された音だ。

 しかも、一発では無い。色鮮やかな六尺玉やら、噴射式の花火。挙句の果てに、ロケット花火にネズミ花火。大小多数の火花が、三人の方向に向けて水平発射される。

「ちょっ……熱っ!?」

 狼狽えながら逃げ惑うかずみ。

「ふざけんなよ、アンタ!!」

 ふざけきった攻撃方法に、カオルは怒声を張り上げる。

「危ないでしょ!! これは駄目だって!!」

 冷静な海香さえも、この花火の波に呑み込まれていた。

 飛び交う火花を避けるが、花火の量は半端では無い。


「これも、オマケよ」

 そう言いながら、ほむらは発煙筒を投げつけた。

焼けた火薬の匂いと、充満する煙で、三人とも標的を見失っていた。

「……煙い」

 カオルは、服の袖で口元を抑える。

「あれ? アイツ、何処に消えた!?」

 目に涙をためながら、海香は必死にほむらを探す。だが、煙の立ち込めた中では、見つかる物も見つからない。

「……うわっ!?」

 今度は、突如として突風が吹き荒れ、かずみはスカートを手で押さえる。
 ほむらが次に出した道具は、業務用の大型扇風機だった。立ち込めた煙と、火薬の匂いが一気に吹き飛んでいく。


「チェックメイトよ!!」

 仕上げに、魔力を込めた網を投げつけて、三人を地引網の如く捉えてみせた。

「その網には、私の魔力を練り込んであるわ。簡単には逃れられないわよ」

 捕えられた三人を見下ろしながら、ほむらは得意気に言い放った。

「……くそぉ。こんな筈じゃなかったのに」

 かずみは、余程悔しいのか、顔を真っ赤にしてほむらを睨む。

「それに、今の状況なら……貴女達をこの場で殺す事さえも可能。言われなくても解るでしょ?」

「……」

 ほむらの言葉に対し、カオルは何も答えない。


「……解ったわ。私達も手を貸しましょう」

 海香は、そう告げた。

「……海香。本気で言ってるの?」

 カオルは、海香に目を向けた。

「本気よ。貴女の固有魔法は良く解らない。だけど、もしそこに仕掛けてあった物が、花火なんかじゃ無く、兵器だったとしたら……。
 私達は、三人纏めて木っ端微塵だったわ。それに、私達が三人揃ってこの有様。しかも、貴女はまだ本気を出していないんでしょ?」

「……!?」

 海香の一言で、かずみとカオルは言葉を失う。


「あら? そう思う?」

 ほむらは、すっとぼけた様に答えた。

「そうよ……私達の動きを、簡単に見極めてたわ。
 はっきり言って、貴女に勝とうとすれば、魔力切れを覚悟して戦わなくてはいけない。そこまでする気は、私達には無いわ。
 貴女……どんな修羅場を潜って来たの? そんな芸当、一朝一夕で身に着くものじゃない……」

「……そうね。嫌になる位に、死線は潜って来たわ」

 ほむらは、うんざりした様に言った。

 そして、三人に纏わりつく網を引っ張り、拘束から解き放った。


「解放したからって、闇討ちする様な真似はしないでね」

 嫌味っぽく、ほむらはそう言った。

「そうしたいのは山々よ。だけど、簡単に闇討ち出来る様なら、とっくにやってるわ……」

 海香は、冷静を装ってそう答えた。

「ふふ……頼りにしてるわよ。
 それと、見滝原に来るなら、巴マミって魔法少女を訪ねた方が良いわ。私よりは、大分真面な魔法少女だからね。
 では、ごきげんよう……」

 そう告げると同時に、ほむらの姿は一瞬で消え失せていた。


「ちくしょう……」

 落胆した様子で、カオルはうなだれていた。

「……」

 どこか、釈然としないかずみは、無言を貫く。

「……あの子は、今まで見てきた魔法少女と明らかに違う。絶対に超えては行けない一線を、平然と超えているわ……」

 海香は、ポツリと呟いた。

「彼女は、僕が見てきた魔法少女の中でも、極めつけのイレギュラーさ」

 静まり返った資材置き場に、一部始終を見ていたキュウべえが、颯爽と登場した。


「……見てたの?」

 キュウべえをジトッと見ながら、かずみはそう聞いた。

「そうだよ。君達が、如何にして暁美ほむらに立ち会うか、興味があったからさ」

「そんで、感想はどうなのよ?」

 カオルは反射的に聞きただしていた。

「予想通りだね。
 やはり、君達でも暁美ほむらに従わざるおえなくなった」

「……うるさい」

 不服なのか、不機嫌全開でかずみは呟いた。


「事実さ。
 特に、海香とカオルは、正直気が付いているだろう。認めたくはないだろうけどね」

「……」

 キュウべえの言葉は、図星だったのか。反論が出てこない。

「君達二人と、同じタイプの魔法少女。そうだろう?」

「……解ってた。正直解ってたよ。あの子は、下手な魔女を倒すより、余程厄介なタイプだ……。
 どんなに隠そうとしても、同種の匂いは隠せないね。その先にある道が、茨でも獣道でも突き進むタイプ。例え道の果てが地獄でもね……」

 カオルは、そう答えた。


「確かに、あの子は強いし、頭も切れる。彼女の実力なら、例え一人でも、相当なレベルまで行けるでしょうね……。

 だけど、キレすぎるナイフは嫌われる。一人でどれ程強くなっても限界は有る。そうなった時、あの子を待っているのは……呆気ない幕切れ。

 間違いなく、あの子は破滅型の魔法少女よ……」

 海香は、ほむらの事をそう評した。

「……カンナや、ユウリ。双樹姉妹……。
 彼女達の破滅的な行動も、全てを知れば理解も納得も出来た。あの子の起こした行動も、意味が有ってやってるのかな……?」

 かずみは、キュウべえに聞いた。

「少なからず、無意味なアクションは取っては居ないだろうね」

 キュウべえの答えは、淡々としていた。それを聞き入れた、プレイアデスの残党は、何を思うのだろうか。


 同じ日。風見野町。

「ゆま……何で魔法少女になんかなった?」

「だって……キョーコが……」

「だってじゃねぇ!! 言っただろうが!! 魔法少女になんかなるなって!!」

「……だって……だって……。オリコがゆったもん!! ゆったんだもん!!
 ゆまは……役立たずじゃない!! 役立たずなんかじゃない!!

「…………」


「キョーコのいう事、何でも聞く!! 好き嫌いも言わない!!

 だから……だから!!

 ゆまを一人にしないで……」

「……バカだなぁ」

「……ぐずっ……ひっく」

「他人の為に魔法少女になったって……何にもなりゃしないのに」

「キョーコ? 泣いてるの……?」

「バーカ……泣いてなんかないよ」

 そう呟くと、ポニーテールの少女は、小さな少女を抱き寄せた。

(オリコ……。何処の誰かは知らねーけど……この落とし前は、必ず着けてやる!!)

 固い決意を胸に秘めて。


 見滝原、某所。

「……第一段階は、完了ね。次は、貴女の出番よ……キリカ」

「織莉子……。君の頼みを、私が断る訳が無いさ。ちょっと、汚れる位何て、無限の中の有限に過ぎないからね……」

 二人の魔法少女は、笑みを浮かべながら、紅茶に口を付けていた。

本日はここまで。
補足ですが、かずみ達は、最終回後の設定です。


おりキリ生きてたのか
ここのほむなら契約前に殺害してるかと思ってた


おりキリも戦力に数えてるんじゃねーの?
味方となれば結構な戦力だろうし

乙かれ

乙!

うおおおおおおおおおおおおおおめっちゃおもしれえええええええええええええええええ

今んとこクズさはおりこたちが頭一つ抜けてるな

は?クズはほむらだろ??


ほむらと織莉子は、相互利用すればほぼ無敵かと

ほむらアンチキモスギワロエナイ
>>218はせめて理由くらい言ってからにしろよ

俺がクズだ

>>221
いやいや、俺がクズだよ


なんだかんだ言って好きなんだなお前ら

俺が、俺達がクズだ

終らない歌を歌おう~♪ 全てのクズどもの為に~♪

続き投下します。

6.籠絡

 昨日あすなろ市の魔法少女三人に、無事交渉が成立したほむら。
 交渉と言える内容かは微妙だが、一応協力を仰ぐことは出来た。

 今度は、風見野の魔法少女にも協力を要請すべく、街に訪れていた。

(……過去の統計上、ゲームセンターに居る確率は高いわね)

 午前中から、制服姿でブラブラしているほむらは、端から見れば家出少女同然。もっとも、本人が気にする訳が無い。

(居たわ……。だけど、あの小さな子は……)

 そして、ゲームセンターでダンスゲームに興じる一人の少女に声をかけた。


「……貴女が、佐倉杏子ね?」

「あんた……ちょっと……待ってろ。すぐに……終わるから」

 ほむらに声をかけられが、その少女はダンスゲームを止める気配が無い。

「……そう。
 良い話が有るんだけど、乗らない? もちろん、魔法少女に絡む事でね。
 折角だから、そこのハンバーガーでも奢るわよ?」

 その一言で、少女はピタリと動きを止めた。

「へぇ……。見ず知らずの人間に奢るとは、気前が良いな。新手のナンパか? ドッキリか?」

 振り返りながら、佐倉杏子はニヤリと笑みを見せていた。

「違うわ、取引よ。
 それに、そこの子も連れなんでしょ? 一緒に食べない?」

「ゆまも良いの?」

 ほむらの言葉に、ゆまと名乗った少女は、目をパチパチとさせる。

「ええ。勿論いいわよ」

 ほむらは、ゆまに向けて微笑んだ。


 窓際に席を取っているほむら。杏子とゆまは、反対側の座席に座った。

 ほむらのトレーはコーヒー一杯だけだが、杏子のトレーにはビッグサイズのハンバーガーが、五つも鎮座している。なお、ゆまはお子様向けのおもちゃ付きセットである。

「さて。改めて、自己紹介するわ。
 私の名前は、暁美ほむら。見滝原の魔法少女よ」

「へぇ……アタシは、佐倉杏子。まぁ、さっき名指しされたけど、一応な。んで、コイツが……」

「千歳ゆまだよ」

「そう。
 じゃあ、本題に入るわね。ワルプルギスの夜……聞いた事有るわよね?」

 ほむらの言葉で、杏子の顔が一気に強張った。

「わるぷるぎす……?」

 ゆまは、首を傾げたままほむらを見ているが、構わず口を動かす。


「今から二週間後に、見滝原にそいつが現れるわ。ワルプルギスの夜を討伐する為に、協力してほしいのよ」

「ちょっと待て……。色々聞きたい事が山ほど出来たぞ」

 杏子は、鋭い目付きでほむらを見ている。

「何かしら?」

「まず、その情報を何処で手に入れた?
 それに、見滝原には巴マミが居るだろうに、何でわざわざアタシの所にまで話を持ってきた?」

「情報源は秘密よ。先に手の内を見せる程、馬鹿じゃないわ。
 それに、巴マミの強さは確かだけど……それでワルプルギスに勝てると思う? 伝説にまで名を残す魔女に、たかが一介の魔法少女で勝てる保証は無いでしょう。

 一応、彼女の協力も得ているわ。だけど、私は貴女に仲間加わって欲しいと言う気は、全く無いの。ワルプルギスを討伐する為の、戦力が必要なのよ」

「……つまり、その時だけのチームを組むって事か」


「そうよ。勿論、ただとは言わないわ……」

 そう言い放ち、ほむらはカバンの中から、分厚くなった封筒を杏子に差し出した。

「……何だこれ?」

「現金で百万円入ってるわ。伝説の魔女を相手にするのなら、これ位の報酬は必要でしょ」

 杏子は、目を白黒させていた。

「お前……こんな大金、どうやって手に入れた?」

「どこかの資産家の家から、拝借してきたわ。
 警察の事なら大丈夫よ。これは、脱税して手に入れたお金みたいだから、盗んだ所で警察に届けられる訳がないの」

 得意げに言い張ったほむらを見て、杏子は呆然としていた。ゆまは、何が何だかわからず、キョトンとしたままだ。


「お前……滅茶苦茶だな」

「別に、何と言われても構わないわ。どうせ組むのなら、ドライな関係の方が揉めなくて済みそうでしょ。
 私は正義の味方でも聖者でも無いわ。自分の目的の為に行動を取る、魔法少女よ」

 ほむらの言葉を聞き、杏子はニヤリと笑みを見せた。

「アンタさ……この金だけ持って、アタシ達が直前になって逃げるとか考えてないのか?」

「勿論、考えてるわ。だけど、私の方の実害はゼロよ」

「……おもしれー奴だな。巴マミと正反対じゃねーか」

 そう言うと、杏子はハンバーガーを一口かじった。


「口先の言葉よりも、利益が有る方が当然良いでしょ。
 ハイリスクを伴う事には、ハイリターンじゃ無ければ、誰もやりはしない。そうでしょ?」

 バーガーをゴクンと飲み込んでから、杏子はケチャップの付いた口元を、ニヤッと笑わせた。

「……その通りだ。アンタの事、気に入ったよ」

「交渉は成立ね」

「ああ。アタシも、その話乗らせて貰うよ。だが……コイツは受け取れねぇわ」

 杏子は、封筒をほむらに返した。

「あら? 必要ないのかしら?」

「いや……全てが終わった時に、改めて貰う。
 それに、グリーフシードも、何個か追加してくれ。それだったら、アタシはアンタの手でも足にでもなってやらぁ。
 安心しろ。そう簡単に逃げ出す様な、ヘタレじゃねーよ」

 自信を漲らせて、杏子は不敵に微笑した。


「フフ……。ここで、報酬をつり上げるつもりね。
 良いわよ……条件に見合うだけの報酬は用意するわ」

 ほむらも、杏子に同調する様に、口元をニヤリとさせた。

「お近づきの記だ……食うかい?」

 そう言って、杏子はハンバーガーを一つ差し出した。

「……今は食欲が無いわ。第一、それは元々私が奢った物よ。その変わりに、今度何か奢ってもらうわ」

 ほむらはそう言って、やんわりと断った。

「……善処する。
 それとよ。協力する変わりに、情報が欲しい」

 杏子の表情が、不意に険しい物に変わった。


「何かしら?」

「白い魔法少女の、オリコって奴の事を探してる。何か知ってるか?」

「…………知らないわ」

 ほむらは、険しい表情でそう言った。

「そうか。もし、そいつの事で、何か情報があったら教えて欲しいんだ」

「解ったわ」

 ほむらは、そう言って席を立った。

「もう行くのか?」

 杏子に言われて、ほむらは縦方向に頷く。

「ええ。まだ、やる事は有るのよ」

「おねーちゃん、ハンバーガーありがとーね」

 ゆまは、笑顔で手を振った。

「ええ。ごきげんよう」

 そして、ほむらはバーガーショップを後にした。


「……ワルプルギス、か」

 杏子は、少し憂鬱な面持ちになっていた。

「キョーコ? 食べないの?」

「いや。すぐに食べるさ……」

 そう答えて、杏子は二つ目のハンバーガーに手を付けた。


 その日の夕方。

 ほむらとキュウべえは、電波塔の上から街を見下ろしている。

「ねぇ、キュウべえ。美国織莉子と呉キリカと言う少女と契約したの?」

「ああ。美国織莉子は先日。呉キリカも、二週間前程にね」

「そう……。もし、今から私が行動を起こさなければ、貴女は後悔したかも知れないわね」

 ほむらの言葉を聞に、キュウべえは疑問を抱く。


「どういう事かな? 過去の時間軸で、出会った事が有るのかい?」

「そうよ。
 恐らく彼女達は、鹿目まどかを殺そうとしてるわ。しかも、他の魔法少女も含めてね」

「それは、実に都合が悪いね。魔法少女が魔女になる前に殺されるのは、僕には不利益だよ」

「……だから、今から彼女達をこっちに引き込むわ」

「そんな事、出来るのかい?」

「まぁ、見てなさい。殺せばゼロだけど、生きてれば駒にはなる。
 要するに、こっちに刃向わない様にすれば良いのよ……」

 ほむらは、不気味な微笑みを見せていた。


 廃墟の様に、荒れた豪邸。

 幽霊でも出てきそうな雰囲気だが、そんな者は居ない。ただ、変わりに魔法少女が住居している。

「ドロレス……ストロベリーカップ……銀世界……プリンセスダイアナ……えーっと。あれは何だっけかな?」

 庭に植えられた薔薇を眺める、黒髪の魔法少女。呉キリカ。

「薔薇が好きなのね。もっと、庭に植えましょうか? キリカ」

 紅茶を淹れながら、キリカを見ながら、微笑む魔法少女。美国織莉子。

「……あれ? 織莉子は、薔薇が好きなんじゃないの?」

「お父様が好きだったのよ」

 織莉子が答えると、キリカは落胆した様に溜息を吐き出した。


「じゃあ、この情報は記憶から消しておくよ」

「折角覚えたのに? 勿体ないわね……」

「イヤイヤ……勿体ないのは、私の頭の容量だよ。私には君以外の情報は必要ないのさ」

 織莉子は、ふぅと息を吐き出した。

「キリカ……それでは貴女は無知な子供になってしまうわよ?」

 そう言われ、キリカはピクリと反応を見せた。

「君は何時も私を子ども扱いするんだ。
 たった121日と三時間年上だけでさ。だったら“君のお父様の好きな物が知りたいと”私は答えるべきだったの?」

「それは困るわ。
 私はお父様を尊敬しているのに、貴女がお父様に興味を持ったら……お父様に嫉妬してしまうかもしれないわ」

「なんだい、矛盾してるなぁ。織莉子もワガママな子供なんじゃない?」

 口を尖らせながらキリカが言うと、織莉子の眼つきは鋭くなっていた。


「えぇ~……やだやだ。怒らないでよ!!
 君に嫌われてしまったら、私は腐って果てるよ!!」

 困惑しながら弁明するキリカだが、織莉子が睨んでいたのはキリカでは無い。

「……キリカ。そのまま動かないで」

 織莉子は静かにそう告げた。

 その瞬間、ズドンと剣が地面に突き立っていた。
 そして、中庭を侵食していく異空間。織莉子が睨んでいたのは、それだった。

「ああ、前から思っていたんだよね。この家に有ると良いなって」

 能天気に笑いながら、鎧を模した魔女を見つめるキリカ。

「ブルジョワは、鎧を置くのがしきたりなんでしょ?」

「それは初耳だわ……」

 キリカの質問に、織莉子は苦笑いを見せる。


 魔女を目の当たりにしても、二人の魔法少女に動揺は無い。

「キリカ。紅茶に砂糖は何個入れる?」

 それどころか、織莉子は変身もしないで、紅茶を淹れ始める。

「三個!! あと、ジャムも三つ!!」

 キリカは、変身を完了させながらそう答える。そして、地面から高く飛び立って、魔女に斬りにかかる。

「丸でシロップを飲んでいるみたいね」

 と皮肉を言いながらも、カップに注いだ紅茶には、言われた通りの数の砂糖とジャムが入れられる。

「またそうやって君は私を子ども扱いするんだ!!」

 怒ってるのか不満なのか。叫びながら、キリカは魔女の体を斬り付けまくる。

「織莉子なんか……織莉子なんか……」

「嫌い?」

「……だいっ好き!!」

 そう宣言し、キリカの爪は、魔女を一刀両断した。
 止めの一撃で、魔女の息の根は止まっていた。コロリと、中庭にグリーフシードが転がり落ちる。


 地面に無事に着地すると、キリカと織莉子はティータイムの続きを楽しむつもりだった。

「そこの魔法少女!!」

 今度の襲撃は、魔女では無い。しっかりと、声を張り上げていた。

「……!?」

「何だ!?」

 織莉子とキリカは、声の方向に体を向けたが、そこには誰も居ない。

「……嘘!?」

「何がどうなって!?」

 拳銃が、二人の頭に突きつけられていた。火薬の匂いが、鼻の奥を刺激する。


「本来なら、二人ともこれでくたばってた訳だけど……。
 魔法少女を狩ろうとしている魔法少女が、他の魔法少女に狩られてたら、世話が無いわよね?」

 拳銃を構えた魔法少女は、冷たい声でそう告げた。

「……貴女、何故それを!?」

 織莉子は動揺を隠せない。

「……お前、何のつもりだ!!」

 キリカは鼻息を荒くして、捲し立てた。

「私の名前は、暁美ほむら。貴女達の同業者よ。それと、さっきのグリーフシードは貴女達に上げるわ」

「……随分と物騒なプレゼントですね。魔法少女ともあろう人が、魔女を使って襲撃するなんて……」

 織莉子は皮肉を込めてそう答える。

「それは当然よ。
 鹿目まどかの命を狙ってる以上、容赦しないわ!!」


「……!?
 私とキリカ以外に、知っている人は居ないのに!?」

 織莉子の顔から、血の気が引いていく。

「何処で聞いていたんだ!! 私と織莉子しか、知らない筈なのに……。そもそも、私達をどうするつもりだ!!」

 キリカは顔を真っ赤にしながら、言葉を荒げていた。

「どうするって言われてもね……。
 もし、鹿目まどかを殺す事を諦めないのなら、この場で死体にして魔女の餌にでもなってもらうわ。
 鹿目まどかの事を諦めるのなら、貴女達の命の無事は保障する」

 ほむらは、淡々と言った。


「ふざけるな!! あの娘を契約させたら、この世界は破滅してしまうのよ!!
 そうなってしまう前にあの娘を殺すしか、世界を救う事は出来ないのよ!!」

 キツイ言葉を吐き出して、織莉子は激昂していく。

「だったら、契約させなければ良い話よ。キュウべえと話は付けているのよ。
 少なくとも、ワルプルギスの夜が襲撃する日までは、契約を迫らない様に交渉は成立しているわ……」

「……それじゃ、何の意味も無いわ!! 貴女は、鹿目まどかを護ろうとしている!!
 それが、どれ程愚かな事か理解しているの!?」

「十分に理解しているわ。
 だけどね、世界の人口全ての命と、鹿目まどか一人の命を天秤にかけるなら……私はまどかの命を取るわ!!」

 ほむらは、大胆不敵な啖呵を切った。


「狂ってるわ……」

 織莉子さえもたじろいでしまう。

「話にならないね。君は……織莉子の敵かい?」

 キリカは静かに呟く。

「どうかしら? 交渉次第ね。そもそも、頭に銃を突き付けているのに、そんなに強気で大丈夫?」

 ほむらの挑発めいた発言に、キリカの怒りは沸点を超えていく。

「関係無い!! 織莉子の敵は私の敵だ!!
 君を殺す事は、無限の中の有限の過ぎない!! 今すぐ死んで償え!!」

 ブチ切れたキリカは、思いっきり爪を振り回す。

(……さてと)

 ほむらの頭の中は、意外と冷静だった。むしろ、この展開は予想通りだったのだろう。


 振り回した爪は、ブン、と空を切り裂いたに過ぎなかった。

「あらら……随分と短気ね」

 ニヤニヤと余裕を見せるほむらは、一瞬で十メートルほど後ろに下がっていた。

(……一瞬であそこまで後ろに!? この女……相当な実力の様ね!!)

 織莉子も変身を完了させた。内心では、相当に警戒している様で、ほむらから目を離そうとしない。

「うるさい!! 死ね!!」

 キリカは鉤爪を振り上げて、ほむらに向かい一直線に突っ込んで行く。

「キリカ!! 援護するわ!!」

 そして、織莉子も浮遊する水晶玉を召喚し、ほむらに狙いを定めた。


――シュン。

 またしても、ほむらの姿は消えていた。

「……プレゼント・フォー・ユー」

 織莉子の後ろに現れた、ほむらはそう呟いた。

 その瞬間、キリカと織莉子は口の中に、何かが入っている事に気が付いた。

「……!?」

 一瞬にして、二人の顔は真っ赤に染まり、額からは脂汗がにじみ出ていた。

「あ……あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「か……辛ぁぁぃ!!」

 二人して、口を押えてもがき苦しむ。


「今、貴女達の口の中には、ハバネロを五個づつ突っ込んであるわ。思いっきり味わって頂戴」

 ほむらは、ニヤニヤしながら解説した。
 非常にふざけた攻撃なのだが、甘党の二人に取っては地獄の苦しみに近いものだ。

「ふ……ふ……ふじゃけりゅな!!」

 捲し立てるキリカだが、舌が回らず目からは涙が零れている。

「こ……これが貴女の戦い方と言うのですか!?」

 織莉子も、涙目で抗議する。更に水晶玉を撃ち出すが、集中力が出ないので、狙いが定まらない。

「そうよ。意外と効果あるみたいね」

 易々と避けながら、ほむらは得意気に言い張った。

「くそぅ!!」

 キリカは再び爪で斬りかかる。


――シュン。

 しかし、瞬時にほむらは背後に回り込む。

「貴女達に勝ち目は無いわ。大人しく降参して、私の下に付きなさい」

 その言葉は、打って変った様に冷たい声だった。殺気にも似た空気が、ほむらの周囲から放たれていた。

「……何が目的なのですか!? 鹿目まどかを守る事なの!?」

 織莉子の口調は、明らかに焦っている。

「そうよ。鹿目まどかを契約させない事と、ワルプルギスの夜を仕留める事。
 その為にも、貴女達の力が必要なの。勿論、拒否権は与えないわ。従えないのなら、ここで殺す……。
 ちょっと、予知してみなさいよ。多分、自分達の死体の姿が見えるでしょうけどね!!」

 ほむらは、織莉子の固有魔法まで言い当てて見せた。


「……」

 織莉子もキリカも、何も言えないで黙ってしまった。

(……この女、本気ね)

 背筋に冷たい空気を、織莉子は感じてしまう。
 何よりも、僅かな時間の間に見た未来には、頭の吹き飛んだキリカと、体中に銃弾を受けた自分の姿が写っていた。

(こうなったら……)

 織莉子の目付きは、鋭く尖った。

(こいつは……危険すぎる!!)

 キリカはほむらの持つ空気に、完全に呑まれていた。
 しかし、織莉子の冷静な態度を横目で見て、あえて口は開かない。


「さぁ……どっち?
 ここで死ぬか、私に従うか……選びなさい!!」

 ほむらは、二丁の拳銃の照準を、織莉子とキリカに併せていた。

「……解ったわ。貴女の言う事に、協力しましょう」

 織莉子は即座にそう言った。

「織莉子……」

 キリカは、不安げな様子で織莉子を見つめる。

「……解れば、それで良いのよ。頼りにしてるわ……お二人さん」

 ほむらは、構えていた銃をポケットに仕舞う。

「それと……。
 風見野町の佐倉杏子って魔法少女が、貴女達と会いたがってるわ。一度会ってみたらどうかしらね」

 そこまで告げると、ほむらは再び姿を消してしまう。


「……また消えたわね。奇妙なお人ですこと」

 織莉子は脱力した様にうなだれた。

「でもさ、織莉子。あんな奴の言う事に、本当に従うつもりなのかい?」

 少し不満そうに、キリカは問う。

「表向きは、そうね。
 恐らく、暁美ほむらと正面からぶつかれば、私達の方が遥かに分が悪いでしょう。
 さっきも、その気なら殺せると言うのに、わざわざ唐辛子を使う必要が有るとは思えないわ」

「……つまり、仲間になった振りをしといて、後で仕留める訳だね」

「その通りよ。加えて、暁美ほむらに近づければ、必然と鹿目まどかにも近づける事になるわ……。
 逆にこれは、世界を救うチャンスなのよ」

「やはり、織莉子は天才だね。あの短時間で、そんな機転を利かせるなんて、私には出来ないよ」

 感心しきりのキリカは、表情を明るく変えていた。

「フフ……ありがとう。
 クーデターを起こすなら、突然火を点けてはいけないの。じっくりと、ガスを溜めこんでから、爆発させる……。
 これからが、ガスの元栓を緩めるその時よ……」

 織莉子は、冷たい目付きのまま、口元をニヤッとさせた。


 自宅に帰ったほむらを出迎えたのは、キュウべえだった。

「案外早かったね。その様子だと、上手く行ったのかい?」

 キュウべえの問いかけに対し、ほむらの首は横に動いた。

「そういう訳でも無いわね。
 彼女達は、確かに仲間になると言ったけれど……後で裏切る可能性は十分に有るわ」

「……そこまで解ってて、あえて見逃すのかい?」

「さっきも言ったでしょう。生きているなら、駒にはなる。
 ただ殺すだけなら、猿でも出来るわ。こっちに刃向わない様にするなら、じっくりと手籠めにする必要が有るのよ」

「その様子なら、既に次の一手は考えている様だね」

「ええ。佐倉杏子と接触させる様に仕向けたわ」

「……彼女は、利己的な好戦主義。あまり、説得に向いた人物とは思えないけれど?」

「見ていれば解るわ。彼女の本質は、もっと別の物になるのよ」

 ほむらは、無表情で告げるのだった。

本日はここまで。

良いお知らせと悪いお知らせを一つづつ。

現在の書き溜め進行状況は9割5分。完結は出来ます。

悪いお知らせ。ここで、まだ半分。

乙。長く楽しめるのは嬉しいです。

あとできれば次回投稿いつくらいか教えてくれ

>>257

次は、明日の同じ位の時間になると思います。

GWですが仕事が有るので、同じ位の時間に、一日一話ずつの投下になると思います。

>>259
サンクス。
次も楽しみにしてます。

乙かれ  



ついでに答えられるなら聞いておきたいがこのままほむら無双?
その回答次第で俺にとっていいニュースか悪いニュースのどっちかになる

なんつーか2ch脳だなぁ

もう半分か…

>>262

それは、読んでから判断して欲しい。

ちなみに、全部書き終わったので、後は細かい修正だけです。

投下ペースを上げます。

では、次スレから。


7.本音

 見滝原市とあすなろ市の中間に位置する風見野町。

 織莉子とキリカは、佐倉杏子を探すべく風見野に訪れていた。

「……さて、どうやってその佐倉杏子って魔法少女を探すんだい?」

 キリカは辺りを見渡しながら、織莉子に問う。

「とりあえず、魔女が現れるまで待ちましょう。恐らく、結界が出来上がれば、必然と鉢合わせる事になるでしょう」

 織莉子は、そう読んでいた。


 そのまま時刻は経過していく。結局、辺りが暗くなるまで徘徊したが、魔女の反応は無い。

「こういう時に限って、中々出てこないんだよね……」

 落胆気味に、キリカはぼやいた。

「仕方ないわ。時間も遅いから、そこのお店で晩御飯でも食べましょうか」

 そう言いながら、織莉子は目の前のうどんチェーン店を指差した。

「うどんかぁ……。うどんより、甘い物の方が……」

 キリカがそうリクエストした瞬間、運悪くソウルジェムが結界の反応を示した。

「……マジかぁ」

「タイミングが悪いわね……」

 がっくりと肩を落とすキリカと織莉子。しかし、気を取り直して、結界の方角へと駆け出した。


 人気の無い路地裏には、結界が出来上がっていた。

「不安定な結界だね」

 少々ご機嫌斜めのキリカは、武器をかざして何時でも戦闘に移れる姿勢だ。

「……キリカ。あの使い魔を斬りましょう」

 織莉子は、真剣な目つきで指示を出した。

「任せて……」

 キリカは、織莉子のマジな目つきに、ピンと来るものが有った。

(……多分、見えたんだろうね)

 そして、キリカは使い魔に向かい、地面を蹴った。

 標的向けて振るった鉤爪は、ガキンと弾き返された。

「……なるほどね」

 キリカの口元が、ニヤリと変化した。


「ちょっとちょっとー……アンタら何してんの?
 あれ、使い魔だよ。グリーフシード持ってる訳無いじゃん」

 赤い長髪を、ポニーテールに纏めた魔法少女が、キリカの前に立ちはだかる。

「そんな事は、百も承知さ。
 私は使い魔を狩りに来たんじゃないんでね……」

 キリカは、その魔法少女を鋭く睨みつけた。

「……アンタら、よそ者か。だったら何の用事だ? 縄張りでも奪いに来たのか?」

 風見野の魔法少女の眼つきも、鋭く研ぎ澄まされた。

「暁美ほむらって魔法少女に聞きました。佐倉杏子という魔法少女が、私達に用事があるとね……」

 後ろに立っていた織莉子は、そう告げた。

「だったら、その佐倉杏子はアタシの事さ。
 すると、アンタらのどっちかが、オリコって魔法少女か?」

 杏子の表情は、一気に険しくなり、あからさまな嫌悪感を示していた。

「如何にも……。私が、美国織莉子です」

 杏子は織莉子を睨みつけた。


「よそ見してる場合かな?」

 今度は、キリカが鉤爪を振り上げた。

「ちぃ!!」

 バク転で間合いを広げて、再度槍を構え直した杏子。

「どうやら、そいつを問い詰める前に、アンタを黙らせなきゃいけねーな」

「……アンタじゃない。私は、呉キリカ。織莉子には、指一本触れさせない!!」

 キリカは、間合いを詰めるべく、杏子に向かい特攻を仕掛ける。

(……速ぇ!?)

 ガキン、と一発目の鉤爪は防いだ。しかし、二発目も迫りくる。


「……散りなぁ!!」

(……バカが!!)

 爪を大きく振り被ったキリカだったが、腹部にズドン、と槍の柄が深く突き刺さった。

「ぐぅ……」

 一瞬動きが止まったキリカに、杏子は更に追撃の手を加える。

「……うらぁ!!」

 ズバッと、胴体を斬りつけ、更にキリカの体を蹴とばした。壁にまで弾き飛ばされ、キリカは地面にへたり込んでしまう。

「どーしたよ? その程度か?」

「抜かせ……」

 そう言って、再び立ち上がるキリカ。しかし、息は乱れて、流血は夥しい。


「……キリカ、下がりなさい。私が直接、お相手しましょう」

 織莉子は足を一歩前に踏み出した。

「最初っから、そーしやがれ。アタシの用が有るのは、アンタだからよ」

 杏子は織莉子に向けて、槍を構えた。

「……くたばりなぁ!!」

 織莉子に向け、真っ直ぐに突っ込んで行く杏子。

 対照的に、織莉子は微動だにしない。

(……これは、牽制。本命は……あの槍は多節根になる事ね)

 槍を右に回避すると、予知の通りに槍は体の周囲に絡みつこうとしていた。


「甘いですね」

 織莉子は、左手を杏子の横っ面に突き出した。

「……!?」

「飛びなさい」

 ドン、と杏子は横っ面から弾き飛ばされた。

(……いってぇ……アイツ、何しやがった?)

 杏子は再び立ち上がるが、想像以上にダメージは大きく、足元はふら付く。

「……ジャグリングしてるんじゃ有りませんよ?」

 余裕を見せる織莉子の周囲には、四つの水晶玉が浮遊していた。

(……あの妙な球が、武器って訳か)

 杏子は、再度槍を構えた。


「キリカを傷つけた代償は、償っていただきましょう」

 そして、織莉子は四つの水晶玉を、杏子に向けて撃ち放つ。

(……舐めんな!!)

 ドン、と杏子の体に、深々と水晶玉が突き刺さった。

「……!?」

 しかし、杏子は倒れない。気合だけで、織莉子の攻撃を凌いで見せたのだ。

「足元がお留守だな!!」

 しかも織莉子の足元に、多節根化した槍の柄が絡みつかせ、動きも封じ込める。

「……しまった!?」

 織莉子は、水晶玉を召喚しようと試みたが、時既に遅し。


 バキィ、と織莉子の顔面を思いっきりぶん殴った。思わず倒れ込んだ織莉子の体に、杏子は馬乗りになって胸倉を掴む。

「てめぇ……何のつもりだ!!」

 杏子は、鬼の様な形相で織莉子に問い詰めた。

「……何の事で?」

「とぼけてんじゃねーよ!!
 何で、ゆまを魔法少女になる様に仕向けやがった!!」

「ああ……あのおチビさんの事ですか」

 織莉子は不敵に笑みを見せていた。

「答えろ!! このまま、ぶっ殺されたいのか!!」

 掴んだ胸倉を揺する杏子は、怒りの余り冷静さを失っていた。

「死ぬのは……貴女ですよ!!」

 織莉子は、そう言い切った。


(……!?)

 奇妙な気配を感じ、杏子が横に視線を向けた時だった。

 鉤爪を振りかざしたキリカが、既に目の前にまで迫り来ていた。

「それには、及ばないわ」

――カチン。

 鉤爪が斬り裂いたのは、地面だけだった。

「……え?」

 呆気にとられるキリカ。

「どうなってるのですか……?」

 壁際に寝させられている織莉子は、呆然と動けない。

「何が起きやがった……」

 杏子は、道路に立ち尽くすしかなかった。

「……少し、落ち着きなさい」

 ほむらは、髪をかき上げながらそう言った。


「……暁美ほむら」

 織莉子は、ほむらを睨みつける。しかし、ほむらは気に留める様子は無い。

「おい……何のつもりだ?」

 杏子も、ほむらを睨みつけている。

「言ってたでしょ? 美国織莉子を探していると。見つけたから、貴女と会う様に伝えただけよ」

 ほむらの淡々としていた。


「……そうかい。だけど、何でこの場にアンタまで現れたんだ?」

 杏子は、何処か不満げだった。無論、織莉子とキリカも同様の様だ。

「そりゃ、貴女達全員は私の協力者なの。下手に揉め事を起こして、死なれるのは困るのよ」

「……アタシが、こいつらと手を組むのか? 何の冗談だ?」

 杏子は、苛立っていた。

「……私達も同感だね。
 こんな奴と手を組まなくても、ワルプルギスの夜なんて……」

 パン、と銃弾がキリカの頬をかすめた。

「口答えは許さないわ。私が求めているのは、仲間じゃ無くて戦力よ。仲良くしろだなんて、一言も言って無いでしょう。
 だったら、納得のいく様に、話し合いでもしましょうか」

 ほむらは、冷たく言い放った。

(……この女、本気で狂ってるわ)

 織莉子は内心で、毒づいた。

「と、その前に……使いなさい」

 そう言って、ほむらはグリーフシード三つ取り出し、一人づつに投げ渡した。

「……?」

「言ったでしょ。死なれては困るとね……」

 言われるがまま、三人ともソウルジェムの浄化を始めるのだった。


 ほむらの提案を受け、一同は人気の無い公園に場所を変えた。その際、ゆまとキュウべえも合流。

 織莉子とキリカ、杏子とゆまが対峙する様に位置を取る。ほむらとキュウべえは、少し離れた位置から、様子を見る格好だ。

「……さて。答えて貰おうか……。
 なんで、ゆまを契約するように仕向けた?」

 真っ先に切りだしたのは杏子だ。

「……私達の世界を救う為ですよ」

 織莉子は、悪びれる様子も無くそう言った。

「何だそりゃ? 英雄気取りのつもりか?」

「ええ。
 あれを……解き放ってはいけない。その為の計画の、第一歩に過ぎないのですよ」

 織莉子の言葉に、杏子の表情は怒りに染まって行く。

「計画の為なら、後の連中はどうでも良いって言いたいのか?」

「……その通りですよ。
 もっとも、そこの狂い切った悪魔のせいで、その計画も頓挫してしまいましたけれどね」

 織莉子は嫌味たっぷりに、ほむらを指差した。


「大体、あれって何だ? ワルプルギスの夜の事か?」

「違うわ……。
 見滝原にある魔法少女の候補が居る。その少女が、契約した暁には……最悪の魔女が生まれる……。
 世界の崩壊を示しているのよ……」

 織莉子は、顔面を真っ青にしながら、そう言った。目からは涙が溢れ出し、体中はガタガタと震えていた。

「織莉子!!」

 ふら付いた織莉子の体を、キリカが肩で支えた。

「……話がみえねーよ」

 杏子は、織莉子の豹変っぷりに戸惑いを隠せない。

「……ソウルジェムが、どす黒く濁りを溜めきると、グリーフシードが生まれるわ。
 つまり、魔女は魔法少女の慣れ果て……」

 ほむらは、横から言葉を投げる。


「……!?
 お前……冗談にしては笑えねーぞ?」

「事実よ。私も、貴女達も……ゆくゆくはそうなってしまうかもしれないわね」

 冷徹な言葉に、杏子はほむらに凄まじい剣幕で歩み寄る。そのまま、胸倉を掴んで、ほむらを睨みつけた。

「てめぇ……何様のつもりだ!!
 ただの事情通ですって自慢したいのか!! 何でそんなに得意気に喋ってられるんだよ!!」

「離しなさい……」

 ほむらは、冷たい視線で杏子を睨み返した。

「……!?」

 杏子の地肌に、鳥肌が立つ。

「離せっていってるのよ? 聞こえないの?」

「……!?」

 静かだが、恐ろしく冷たい一言だった。ほむらの言葉に従うしか、杏子は出来なかった。


(……コイツは)

 杏子は、ほむらの気迫に押し返されていた。無言の圧力は、今まで戦ってきたあらゆる魔女よりも、恐ろしい気配を持ち合わせていた。

「……少し頭を冷やしなさい。
 魔法少女が魔女になる運命は、覆せない。でもね……やり方によっては、有意義になるのよ」

「有意義だと!?」

「そう。
 魔法少女が魔女になる時、宇宙の寿命を延ばすエネルギーが生まれる。それが、キュウべえが魔法少女を生み出す理由よ」

「……」

「魔法少女が自分自身に限界を感じてしまえば、魔女になる事を避けられない。
 だとすれば……知り合いの魔法少女に仕留めて貰えば良いんじゃない?
 そうすれば、少なくとも他の魔法少女は延命できるし、キュウべえにも利益は有るわ」

 杏子は、ほむらの胸倉を、再び掴み取った。


「……お前は、何のつもりだ? アイツらの手先か?
 魔女になる事まで、受け入れろだと? ふざけた事抜かすのも、大概にしやがれ!!」

「じゃあ……他に方法が有るの?
 魔女にならない為の方法でも知ってるの? 魔女を魔法少女に戻す方法でも知ってるの? 知らないでしょう?

 拒絶したいのは、魔法少女なら皆同じでしょ!!

 グリーフシードが無ければ、私達は一年も生きては行けない。だったら、妥協して延命出来る様にするしかないんじゃないの?

 感情に任せて理想論を語るだけなら、馬鹿でも出来るわ。今できる範囲で、何かをすれば良いんじゃないの?」

「…………」

「先の運命ばかり見てて、今出来る事を見失っては、何の意味も無いわ。
 もし、私が魔女になったら、遠慮なく殺してくれて構わないわ。
 少なくとも、巴マミとあすなろ市のプレイアデス聖団の魔法少女達には、それで話を付けたのよ」

 ほむらの口調は、少しだけ落ち着きを取り戻していた。


「……」

 杏子は何も答えられない。それは、キリカと織莉子も同じだった。

 そして、これまで沈黙を続けていた、ゆまは静かに口を開いた。

「ねぇ……キュウべえ?
 ゆまたちは、いつかは魔女になっちゃうの?」

「そうだよ。いつかはね」

「それって、今すぐにでも魔女になるの?」

「ソウルジェムが濁らなければ、魔女にはならないよ。常に穢れを取り除けば、魔法少女のままさ」

「そっか……。だったら……」

――ゆまの“いつか”は“今”じゃないよ。

 ゆまははっきりと言った。


「……フフ。貴女達よりも、あの子の方が強いかもしれないわね」

 ほむらは、笑みを浮かべていた。

「……ち。らしくねーわ」

 杏子の表情は、吹っ切れた様にさっぱりとしていた。

「決心がついた様ね。私に協力してくれるかしら?」

 ほむらは、さっきまでは打って変った様に、表情を明るくしていた。

「ああ。アタシの“いつか”も“今”じゃねーよ」

 そう言って、杏子はニヤリと笑みを見せた。


 そして、ほむらが視線を、織莉子とキリカに向ける。

「……貴女達は、どうするのかしら?
 私に近づいた振りをして、後からまどかを狙う何て目論見は読めているのよ。
 それだったら、最初から私と一緒に鹿目まどかを契約させない様に、手段を取る事だって出来るんじゃない?」

 ほむらの問いに、織莉子は意を決して口を開く。

「……良いでしょう。貴女の覚悟は、解りました。
 私達は、鹿目まどかに手は出しません。約束します。

 しかし……万が一にも、鹿目まどかが契約する事になれば……その時は、貴女の思い通りには動きません」

 織莉子は凛とした表情で、ほむらを見つめる。

「私の意志は、織莉子に一存している。
 織莉子の意見は、私の意見も同じさ」

 キリカも、決心が固まっていた。


「……ふふ、当てにしてるわよ。また、何かあれば連絡するわ。
 では、ごきげんよう」

 そう言い残し、ほむらは公園から立ち去った。

 残された四人の魔法少女を眺め、ここまで沈黙していたキュウべえが、満を持して言葉を出した。

「君達も、暁美ほむらに着くんだね。もっとも、それは僕自身にも言える事だけどね」

 そう漏らしたキュウべえの喉元に、杏子は槍を突きつける。

「……仮に、お前を殺せばどうなる?」

「意味は無いよ。僕は一個体に過ぎないさ。
 一つの携帯電話を破壊しても、他の携帯電話に影響は無い。それと同じ理屈さ。すぐに別の個体が現れる」

「……ちぃ。無意味って事か」

 杏子は吐き捨てながら、槍を仕舞う。


「それと、もう一つ付け加えておくよ。
 君達は僕を信用出来ないと思っているだろう。だが、利用はしようとしている。それ位は、僕にも解る」

「何が言いたい?」

「だけど、それは暁美ほむらでしか出来ない芸当だから、君達は何もしない方が無難だよ。
 彼女以外の魔法少女を生み出したのは、この僕さ。君達のデータは、僕達が管理している以上、どんな手段に出るかは簡単に解る。
 君達は、時が来るまで、暁美ほむらを傍観しておく事をお勧めする」

 キュウべえはそう忠告をした。

「……どう言う意味だ?」

 杏子は、表情を苦くしながらそう問う。

「後々、本人から聞けるさ。
 彼女は、とびっきりのイレギュラー。君達の理解を超えている存在だからね」

 キュウべえはそう告げて、その場から消え失せた。


「……意味がわかんねぇ」

 杏子はポツリと言葉を溢す。

「……ただ、彼女は私達の理解を明らかに超えているのは、確かなのでしょうね」

 そう呟いた織莉子は、ふぅと溜息を吐き出した。

「何でも、構わないさ。私は、私に出来る事をするだけだよ」

 キリカは、はっきりとそう言った。

「キョーコ。ゆまたちにも、世界を救えるのかな?」

 ゆまは、屈託の無い笑顔でそう言った。

「どーだろうな……」

 杏子は笑みを見せて、ゆまを見た。

「……」

 織莉子は無言のままだった。

「……悪かったな。さっきは、ぶん殴ってよ」

 杏子は、少し照れながら謝罪を入れた。

「いえ……問題は有りません。私にも、落ち度は有りますから……」

 そして、織莉子も謝罪を、一応は受け入れた。


 公園を離れ、帰宅途上のほむら。そこに、キュウべえが追い付いた。

「……暁美ほむら。
 君は、最初の約束を覚えているのかい?」

 キュウべえは、そう言葉を投げる。

「勿論、覚えているわ。何人集まっても、ワルプルギスの夜に挑むのは、私一人よ」

「おかしな事を言うね。
 だったら、何故君は戦力をかき集める様な真似をしているのさ?」

 キュウべえに聞かれ、ほむらはふぅと、溜息を吐き出した。

「じゃあ、ワルプルギスの夜に、私はやられました。だから、後はどうなっても知りません。
 そんな事出来る訳無いでしょう。
 私の集めてるのは、私が死んだ後の保険みたいな物よ」

「じゃあ、君は何かい?
 自分が負ける前提で、戦おうとしてるのか……」

「あくまで、可能性の問題よ。
 確実に勝てる保証が無い以上、その後の事まで手を打つ必要が有るわ。ワルプルギスの夜を、確実に仕留める為にね」

 ほむらは、ニヤリと笑う。

(……本当に、彼女は何を狙っているんだ?)

 キュウべえは、ほむらに底知れぬ気味悪さを覚えていた。

今回は、ここまでです。

多分、1スレ以内には収まると思います。


ワルプル過ぎて時間停止が使用できなくなったら
誰もおりキリ阻止できないけどどうするんだろ

能力ネタバレ後なら、なんとかなるんじゃね?
予知以外は初見殺し特化みたいなものだし

ほむほむもある意味所見殺しだよなぁ…
まどか達は結局気づかなかったし



実際のところ時間停止って魔法少女相手だと卑怯な程強いよな
アニメとかだとあの体たらくだけど


種がバレると対策されるからって情報バレを警戒しすぎたばっかりに肝心な時に使えなくてアウアウ
だったわけで、先手とって完封しとけばおkって方針なら充分に強い

変身しないと使えない設定で
シャル刺激しないためか未変身で結界突入してたからなぁ
そのまま縛られEND

それなら先に入ればよかったのにな

やっと追いついた乙

そもそも魔法少女は強い力もってるくせに脆いんだよ
人間だからしょうがないけど

人間じゃねえよ

いいえ、違うわ。貴女もね

続きを投下します。

8.声

 さやかは、トボトボと帰宅途上だった。

「……はぁ~」

 普段の明るさは何処へ消えたのか。さやかの面持ちは暗い。

(……こんなタイミングで、そりゃ無いよ)

 さやかは、事の発端を思い返していた。

きたい


 仁美に何時も寄るファーストフード店に呼び出された事が、事の発端だった。

「仁美。話って何?」

 さやかは何時ものノリで椅子に座る。しかし、仁美の方は何時ものノリでは無く、実に真剣な面持ちだった。

「私……以前からさやかさんに、秘密にしてきた事が有るんですの」

 仁美は凛とした声で、さやかに告げた。

 普段と違う仁美の雰囲気に、さやかは思わず息を飲んでしまう。

「私、以前から上条恭介君の事を、お慕いしてましたの」

 ドクリ、とさやかの心臓が高鳴ってしまう。

「……そ、そうなんだぁ。
 まさか仁美がねぇ……。アイツも隅に置けないなぁ」

 笑ってごまかしたつもりなのだろうが、さやかの笑みは明らかに引きつっていた。


「さやかさんは、上条君と幼馴染でしたわね?」

「うん……まぁ、腐れ縁って言うか……」

「本当に、それだけ?」

 仁美にそう言われると、さやかは思わず口を噤んでいた。

「私、もう自分に嘘はつかないって決めたんですの。
 さやかさん。貴女はどうですか? 本当の自分の気持ちに向き合えますか?」

「な……何の話をしてるのさ……」

「さやかさんは、私の大切なお友達です。ですから、抜け駆けするような真似も、横取りするような真似もしたくありません。
 私は、次に上条君のお見舞いに行ったときに、告白しようと思いますの」

「……」

「一日だけお待ちします。それまでに、後悔なさらない様に決めてください。
 上条君に、気持ちを伝えるべきかどうかを」

 そう言い切り、仁美は席を立った。そして、さやかに一礼してから、ファーストフード店を後にした。

(……)

 さやかは、呆然とトレーに乗った飲み物を見つめるしか出来なかった。


 どうにか気を取り直し、その足で恭介のお見舞いに向かったが、今一つ顔に覇気は見られない。

 病室の扉の前で、大きく深呼吸。

(……何時もの通り。何時もの通りに行こう)

 そして、さやかは意気揚々と病室に入って行くのだった。

「やっほー、恭介。お見舞いに来たよ」

「……さやか」

 無理に明るく振る舞うさやかだが、恭介の顔には元気の欠片さえ見えない。


「今日も、CD買ってきたんだよ」

 そう言って、カバンからCDを取り出す。

 しかし、それを見た途端に、恭介の表情は一気に曇ってしまう。

「……さやかは、僕を虐めているのかい?」

「……え?」

 唐突な一言に、さやかは凍りついてしまった。

「何で、今も僕に音楽を聞かせるのさ……」

「だって……それは恭介が音楽が好きだから……」

「もう、聞きたくないんだよ!! 自分で弾けもしない音楽何て!!」」

 錯乱した様に、恭介は右手でCDプレイヤーを弾き飛ばした。


「恭介ぇ!!」

 さやかは、咄嗟に恭介の右手を押さえつけた。

「……治るよ。諦めなければ、いつかきっと……」

「諦めろって言われたのさ……」

 恭介の声は、涙交じりだった。

「……今の医学ではどうしようも無いって。
 バイオリンは諦めろって言われたんだ……。僕の右手は……僕の指は……もう動かないんだ……」

 恭介の一言が、さやかの心にズシンと伸し掛かった。

「ゴメンね……恭介」

 そして、逃げだすように病室から立ち去っていった。


 さやかは河川敷に座り、呆然と川の流れを見つめていた。

(……もし、恭介の右手を治す事と引き換えに、私が魔法少女になるとすれば? それなら、恭介は振り向いてくれるのかな?

 だけど……それって仁美に対してフェアなの? それに、魔法少女ってゾンビになるのに、それで抱きしめてとか、言えるの? 魔女になるかも知れないのに……魔法少女になるの?)

 頭の中にグルグルと、あらゆる考えが思い浮かぶ。

(……最悪じゃん。
 あたし……こんな状況なのに、自分の身が可愛いって思ってる)

 そんな自分に、嫌悪感を抱いていた。

「はぁ~……あたしって嫌な奴だぁ」

 ぼやき口調で立ち上がり、さやかは重い足取りで、自宅へ向かう。


 その筈だった。

――ねぇ? 今の自分が醜いって思う?

 突然、聞こえてきた声。さやかは立ち止まってしまう。

「何よこれ……?」

――君の望む世界は……ここじゃないよ。

「何……? 何なのよ!?」

――さぁ行こう。私達の素晴らしい世界へね。

 それが、さやかの耳に届いた時。
 さやかの意識は、飛んでいた。


 まどかはマミのお茶会にお呼ばれした後、自宅へと向かっていた。

(さやかちゃんも来る筈だったのに……どうしたんだろ)

 携帯電話を取り出すが、メールの返信も着信も無い。まどかは、連絡の付かないさやかの身を心配していた。

 そんな時。

(……あれは!!)

 大通りを歩くさやかの姿を見つけたのだ。

「さやかちゃーん!!」

 大慌てで、さやかに駆け寄るまどかを見て、さやかはニヤッと笑って見せた。

「さやかちゃん、今日はどうしたの? マミさんのお茶会に来ないし、連絡も全然してくれないし……」

「ゴメンねー。だけどさ、その変わりに、今からとってもいい所に連れて行ってあげるよ」

 そう言ったさやかを見て、まどかはある種の予感を感じた。


(このさやかちゃん……おかしい)

 無論、良い予感ではない。

「ねぇ……一緒に行こうよ」

 そう言って、さやかはまどかの手を、ギュッと握りしめた。

「……う、うん」

 言われるがまま、まどかはさやかに付き添うしかなかった。


 街外れの廃工場に、多くの人が集まっていた。

 中年の男性や、主婦らしき女性。それに、若いカップル等。集まった人間に、共通点は無い。

「俺は、ダメなんだ……。こんな小さな工場すら、満足に切り盛りできなかった。
 こんな時代に、俺の居場所何て、有る訳がねえんだ……」

 中年男性は、そう嘆きながら、バケツに液体を並々注ぎ込んで行く。

 すると、今度は主婦らしき女性が、別の容器からバケツに何かを入れようとしていた。

(……あれって、洗剤?)


 まどかの脳裏に、ある言葉が過ぎる。

(いいか、まどか? こういう塩素系の漂白剤は、他の洗剤と混ぜたら、とんでもなくヤバい事になる。
 猛毒ガスで、あたしら家族全員あの世逝きだ。絶対に間違えるなよ)

 以前に、母親から教えられた事だった。

「ダメ!! それを入れたら、皆死んじゃうよ!!」

 慌てて駆け寄ろうとするが、まどかの腕をさやかが掴んで離さない。

「邪魔しちゃダメだって。
 アレは神聖な儀式なんだよ。あたし達は、これから新世界に旅立つんだからさ」

 さやかは、恍惚な笑みを見せていた。

 その言葉に、周囲から拍手が沸き起こる。

「離して!!」

 まどかは、強引に腕を振り解いた。
 そして、バケツを引っ手繰って、窓の外へ思いっきり投げ捨てた。


(よかった……これで一安心……)

 そう思ったのも、つかの間だった。

(……じゃない!?)

 周囲の全員が、まどかを睨みつけている。
 ただならぬ雰囲気に、まどかは逃げ出す以外に選択肢が無かった。

 一番近くのドアを潜り抜け、即座に施錠する。

(……出口が無い!? ここって物置……?)

 キョロキョロと見渡すが、逃げ道は無い。更に、ドアをゴンゴンと叩きつける音が、まどかにプレッシャーを与える。

(どうしよう……どうしよう……)

 ドアから離れるが、もはやまどかはパニック状態に陥っていた。


 刺される様な視線を感じ、ゆっくりと振り向いていく。

(……これ……まさか!?)

 まどかの周囲は、見れた物では無い、歪んだ空間に支配されている。

 耳に纏わりつく奇妙な声は、この世の物と思えない。

【箱】の魔女“H・Nエリー・キルスティン その性質は【憧憬】

 箱に座る魔女は、まどかをじっくりと見定める。
 食いいる様に見つめられ、まどかは動けないままだ。

(これって……私に罰が当たったのかな?
 私が弱虫だから……こんな目に合うのかな?)

 魔女の結界の中で、確実にまどかの心を虫食んでゆく。

(私は……死んでしまった方が良いんだ……)

 目の前の景色が、グニャリと湾曲していく。

(どうして……私は生きているの……?)

 まどかの意識は、途切れそうだった。


 ドン、と派手な爆発音で、まどかはハッとした。

「……すぐに助けるわ!!」

 その声の主は、まどかも良く知っている。

(……ほむら、ちゃん?)

 まどかは、少しだけ意識が戻った気がした。

 箱の魔女と対峙する、ほむら。

(……良くも、私の友達を危険にさらしたわね)

 その表情は怒りに染まり、鬼気迫る物を感じさせる。その体からにじみ出る感情は、純粋な殺意。

「……覚悟しなさい」

 ほむらの気迫は、魔女さえも飲み込もうとする。

――カチン。

 魔女は、ただならぬ気配に、思わず逃げようと試みていた。


 結界が一気に収縮していく。

「手遅れよ……」

 ほむらが呟いた時だった。

 ドン、と再び爆発が起きていた。爆風が吹き荒れ、熱風が頬を撫でた。
 乱れた髪をかき上げ、ほむらは一点をジッと睨みつけた。

 そこには、グリーフシードが転がり落ちている。

 魔女を確実に消した事を確認し、ほむらはまどかへと駆け寄った。

「……まどか!! まどか!!」

 ほむらは、まどかの体を抱き起す。

「ほ……ほむらちゃん」

 良く知った顔を見ると、まどかの瞳から大粒の涙が、ポロポロと零れ出した。


「ほむらちゃん!! 怖かった!! 怖かったよー!!」

 ほむらに抱き着き、まどかは感情を一気に爆発させた。

「大丈夫よ……。もう、大丈夫だから」

 ほむらは、優しく抱き寄せながら、まどかを諭した。

「ごめんね……」

 一しきり泣いていたまどかが、少し落ち着いた事を見て、ほむらはホッと胸を撫で下ろした。

「問題無いわ。それよりも、美樹さやかを連れて、ここから逃げるわよ」

 ほむらの表情が、一気に引き締まった。


「うん……もう大丈夫だよ」

 そう言いながら、まどかは立ち上がろうとするが、足が震えて立ち上がれない。

「その分じゃ、大丈夫では無いわね」

 そう言って、ほむらはまどかに肩を貸した。

「……うん。ごめん」

 まどかは、支えられてようやく立てる状態でしかなかった。

 ドアを開くと、さっきまで集団自殺を試みようよした人々が、地面に横たわって気絶している。

「これって、魔女に操られてたからなの?」

「いいえ。催涙スプレーを、これでもかって位に噴射したわ。お蔭で、もう一個も残って無いの」

「……」

 まどかは、リアクションを取れなかった。

「それより、美樹さやかも連れていかないと。ぼやぼやしてると、警察が来て面倒になるわ」

 ほむらは、気絶しているさやかの体を担ぎ上げた。

「さて……逃げるわよ」

 ほむら達は、足早に廃工場を後にした。


 さやかが目を覚まし、最初に見えたのは、心配そうに顔を覗き込んでいる、まどかの顔だった。

「まどか……?」

「さやかちゃん!! 良かったー!!」

 さやかが上半身を起こすと、まどかは思いっきりさやかの体に抱き着いた。

「ちょっと!? 何が何だか解らないんだけど!?」

 困惑するさやかを余所に、まどかはしがみ付いて離れない。

「ようやくお目覚めね。気分はどうかしら?」

 次に声をかけてきたのは、ほむらだった。

「て……転校生までいるの?」

「そうよ。そもそも、ここは私の家だもの」

「……へ?」

 さやかは、ポカーンと口を開けて固まる。


「さやかちゃんは、魔女に操られてたんだ。だけど、ほむらちゃんが助けてくれたんだよ」

 まどかは、さやかにそう告げた。

「……そう……だったんだ。ごめん……迷惑かけたね」

 バツが悪そうに謝るさやか。

「問題無いわ。そんな事より、聞く事が有るの」

 ほむらは、引き締まった表情に変わり、さやかにも緊張感が伝わる。

「あなた……今、相当精神的に参ってるでしょ?」

 ほむらの言葉を受けて、さやかの顔色は悪くなる。

「図星の様ね」

 ほむらは、ヤレヤレと溜息を吐き出した。


「な、何で断言できるのさ……」

 焦っているのが丸解りのさやかに向けて、ほむらは自分のソウルジェムをかざした。すると、僅かだがソウルジェムが反応を見せた。

「……やっぱりね。貴女は、魔女の口付けを受けたのよ」

「魔女の……口付け?」

「そう。魔女が自分の結界に人間を取り込む時には、ターゲットに紋章を残すの。紋章自体は消えているけど、魔力は僅かに残ってるわ」

 ソウルジェムを指輪に戻すと、ほむらは解説を続けた。


「魔女の口付けを受ける人は、例外無く精神的にダメージを負っている人ばかり。
 マミからも聞いているかも知れないけれど、病院だとか交通事故の現場だと廃墟だとか。
 そう言った、負の感情を持ち合わせやすい現場だと、魔女の餌食になる事が多いのよ」

「……」

 さやかは、何も答えられなかった。

「話してみなさい」

 ほむらにそう言われても、さやかは口を閉ざしたままだ。

「……さやかちゃん。私達にも、話せない事なの?」

 不安げに口を開いたまどかだが、さやかの様子は変わらない。

「ま、無理に聞く必要も無いけれどね。ただ、一つだけ助言させて貰うわ」

「……?」

 ほむらが改めて真剣な表情になると、さやかは無言でほむらに視線を向けた。


「私は、自他ともに認める、悪人よ。
 味方を作る事は苦手だけど、敵を作るのはすごく得意なの」

「……自慢げに、それを言うか?」

 さやかは、呆れた様子で突っ込んだ。

「だけど、無理して味方を作ろうとして、良い人のフリをして……。それって、本当の自分自身なのかしらね?
 偽った自分を演じても、すぐにボロが出てくるわ。それだったら、最初から本心をさらけ出してしまえば、良いんじゃないかしらね」

「…………」

「意地汚い部分も、悪い部分も含めて、それが私。
 開き直って、諦めてしまうと、意外と楽になる物よ。結局、一人で抱え込める限度は、たかが知れているのよ」

 ほむらの言葉を聞き、さやかは何を思うのか。


「それ位の考えでなければ、魔法少女を続けられないわ。
 私は正義の味方でも、聖者でも無い。綺麗事を並べたって、それで強くなれる訳がないのよ」

 ほむらの言葉を聞き、さやかは吹っ切れた様に、フッと笑みをみせた。

「……アンタは、確かにクズだわ」

 さやかは、改めてそう言った。

「そうね。その通りよ」

「だけど……その汚い部分を隠そうともしてない。
 真似する気はないけれど、ある意味凄いと思うわ……」

 呆れながらも、さやかは感心していた。

「おだてたって、何も出ないわよ」

「いや、誉めてないから……」

 さやかは、普段のペースを取り戻しつつあった。


「さて。そろそろ、時間も遅いし、帰った方が良いんじゃないかしらね」

 ほむらに言われ、二人は改めて時計を見た。

「やば……門限が近いじゃん。帰らなきゃ!!」

 さやかは、焦った様に立ち上がった。

「うん。私達、もう行くね」

 門限の無いまどかは、さやかよりもマイペースだった。

「助けてくれてありがとうね、ほむらちゃん」

 まどかは礼を言いながら、ほむらに手を振った。

「借りはちゃんと返すよ。また明日ね……ほむら」

 そう言いながら、さやかも手を振った。

「ええ。二人とも、気を付けて帰りなさいね」

 ほむらは、ドアの方へ向かう二人を見送るのだった。


 帰路に付いた二人は、薄暗くなった路地を歩いていく。

 モチベーションが回復しつつ有るさやかを見て、まどかは少し安心した様だった。

「しかしなぁ……。アイツ見てると、悩んでた自分が馬鹿に見えてきたよ……」

 さやかは、吹っ切れた様にそう言った。

「でもさ……助けてくれたのは事実なんだし。言う程、悪い人間なのかなぁ?」

 まどかは、首を傾げながら、疑問を言う。

「それはそうだけど……。
 でも、アイツ見てて、魔法少女になりたいとは思えなくなったわ。
 そりゃああいう考え方の方が、魔法少女としては良いかも知れないけれど、人間としては最低だわ」

「アハハ……」

 毒舌なさやかを見て、まどかは苦笑いをするだけ。


「でも……良い面みせながら騙そうとする奴よりは、よっぽど信用出来ると思うよ。
 マミさんも言ってたじゃん、背中を預けれるって。何となく、言ってた意味は良く解ったんだ」

「さやかちゃん……」

 さやかは、ほむらの存在を認めていた。

(でも、その前に……。
 明日、恭介と仁美にもう一度、話をしないとね……)

「さやかちゃん? どうしたの?」

「ううん。何でも無いさ」

 まどかもさやかも、普段の笑みを取り戻していた。

とりあえずここまで。

もっと読みたいと言う声が多ければ、一時間後にもう一話分落とします。

無理すんな

ぜひお願いします

追いついた
さやかがどう決断するか気になる支援

よろしければもっと!
でもしんどかったらいいんだからね?

焦らない焦らない・・・

乙。
是非お願い!
……というのが本心だけど無理はしないでね。でもできればお願い

ご期待に答えましょう。

だけど、さやかちゃんの事は、少しだけ待ってて。

9.作戦会議

 ワルプルギスの夜が襲来するまで、後三日。

 ほむらは作戦会議を行う為に、今まで手籠めにした魔法少女達を呼び出した。
 狭い部屋には、まどか、さやか、マミ、杏子、ゆま、織莉子、キリカ、かずみ、カオル、海香、そして、ほむらとキュウべえ。

 一つのちゃぶ台を取り囲む様に、全員が着座している。

「改めて。ようこそ、我が家へ。
 ワルプルギスの夜が襲来するまで後三日だから、ここで作戦会議を開くわ」

 ほむらはそう言うが、各自の反応は薄い。

(……何で、私達まで呼ばれたんだろう)

 未契約のまどかは、隣に座るさやかに、こっそりと耳打ちをする。

(あたしにも、解んない……)

 同じく未契約のさやかも、戸惑うばかりである。


「ま、これだけそろってりゃ、ワルプルギスの夜も怖く無いだろ?」

 杏子は余裕が有るのか、危機感が無いのか。お気楽な声でそう言った。

「……と言いたい所だけど、生憎だけどワルプルギスと戦うのは、私だけよ」

 ほむらは、断言した。

「……どう言うつもりなのですか?」

 織莉子は、間髪入れず聞きただした。

「それを今から説明するわ。
 まず、作戦会議をする前に、貴女達が一番気になっている事……。
 私の正体を明かすわ」

 その一言に、一同は息を飲む。


「私は、この世界の人間じゃない。正確には、異世界から来た魔法少女なの。
 元々居た世界は、ワルプルギスの夜と言う魔女に、滅茶苦茶に壊されて逃げる様にしてこの世界にやってきた……。

 しかし、ワルプルギスの夜は、ただ一人取り逃がした私を追いかけて、この世界にやってくるの。
 信じられない話かも知れないけれど、これが真実なの」

 嘘をついていた。しかし、嘘の中に真実を混ぜて、嘘を信じ易くさせる。
 より正確に言えば、肝心な部分を隠しているとも言える。

「……確かに信じられる話じゃないわ。
 だけど、ワルプルギスの夜が現れると言う話が事実であれば、その情報を握っていても不思議では無いわね……」

 海香はそう言って、追従した。

「そして、私の固有魔法は、時間停止。
 一時的に時間を止める事で、相手に攻撃をする物。
 と言っても、止めていられるのは五秒が限度だから、素早く動く必要も有るし多用もしにくいわ。
 今まで、貴女達に仕掛けた攻撃を思い返せば、納得の出来るでしょ」

 ほむらに言われると、全員がハッとした顔になった。と言っても、時間停止の制限の部分は嘘なのだが。


「じゃあ、あの時のロシアンルーレットも、時間停止を使ってたの?」

 マミは、呆然としてしまう。

「そうよ。仮に、あの時引き金を引いても、貴女は死ぬ事は無いようにしていたわ」

 ほむらは、開き直った様に言う。

「……」

 マミは、無言でほむらを睨む。

「イカサマも、バレなければテクニックよ」

 ほむらは、堂々と胸を張ってそう言った。

「本当に、食えないお人です……」

 表情を苦々しくする織莉子。

「何とでも言いなさい。今更、解った事じゃないでしょう」

 ほむらは、得意げだ。


「君の事は解ったよ。
だけどさ。だったら、一人で挑むつもりなのに、わざわざ戦力を集めたのさ?」

 かずみは、ポッと出た疑問を投げる。

「ワルプルギスが来るのは、私のせいだもの。私にも責任は有るわ。
 それに、私はこの世界の人間じゃないです。だから、私が死んだ後はどうなっても知りません。そんな事言えるかしら?
 万が一の時に備えて、貴女達の協力が必要なのよ……ワルプルギスを確実に討伐する為にね」

 ほむらの眼光が、鋭くなる。

「……暁美さん。
 何故、一人で戦う事に拘るの? 今なら、皆で協力出来るチャンスでしょう?」

 マミは、改めて聞きただす。

「元々、コイツとはそう言う話をしていたのよ……鹿目まどかに契約を迫らない事を条件にね」

 ほむらは、キュウべえを指しながら告げる。

「わ、私?」

 面を食らった様に、まどかは目をパチパチとさせる。


「魔法少女の慣れの果ては、魔女。これは皆聞いてると思う。
 問題なのは、その魔法少女の素質によって、魔女になった時の強さが変わる事。
 素質の高い魔法少女であれば、魔女も強くなる。故に、最強の魔法少女は最強の魔女になってしまう。
 まどか。貴女は、破格の素質を備えているわ。だからこそ、契約させる訳には行かないのよ」

 一同の注目を浴びて、まどかはますます困惑する。

「……その通りです」

 織莉子の一言は、凛とした声でそう言った。

「私の魔法は未来予知です。
 その時、ワルプルギスの夜によって崩壊した街を見ました。そんな中、鹿目まどかが魔法少女として契約し、ワルプルギスの夜を意図も容易く倒す……。
 しかしです……。その鹿目まどかのソウルジェムから、途方も無い大きさを誇る魔女も生まれてしまう……」

 一しきり言い放つと、織莉子は顔を青ざめさせていた。


「……そういう事よ。
 今のまどかの素質は、例えて言えば軽自動車にロケットエンジンを積んでいる様な物。
 途方も無い素質を備えても、それを体が受け入れる事が出来ず、魔力に振り回されてコントロールする事は不可能。
 契約すれば、魔女化は確実と見てるわ」

 ほむらは、真剣な眼差しでまどかを見つめる。

「……でもよ。そんな魔女化する事知ってて、契約する奴居るのか?」

 杏子は、淡々と言った。

「確かに、今の段階なら、まどかもさやかも契約する事は無いと思うわ。
 だけど……もしワルプルギスの夜に、全員揃って殺された時。彼女達は、何を思うのでしょうね?
 そんな惨状を目の当たりにすれば、冷静でいられなくなるのは当然。

 そもそも、この二人が契約する時が来れば、止めれる人は誰も居ないわ。キュウべえに言われるがまま、契約してしまうでしょう。
 今、キュウべえが黙って見ている理由も、その一点に賭けてるんでしょうね」

 ほむらは睨む様にして、キュウべえに視線を移した。


「だけどさ。これだけそろってるんだよ?
 流石に、伝説の魔女と言っても、この戦力で負けっこないよ」

 カオルは自信を見せながら、左手で右の腕をポンと叩いた。

「……油断は禁物よ。慢心をすれば、自ずと隙が生まれるわ」

 海香はカオルにそう釘を刺した。

「その通りよ。
 だからこそ、絶対に負けない戦力で、絶対に倒せる戦術を使う必要が有るわ」

 そう言いながら、ほむらはちゃぶ台の上に、見滝原市の地図を広げて見せた。

「これを見て頂戴」

 全員が、地図を凝視する。


「まず、私が単独でワルプルギスに特攻をかけるわ。
 それまで、貴女達はこのビルの屋上に待機していて欲しい」

 そう言いながら、黒いペンで、ビルを丸印で囲んだ。

「ちょっとちょっと。君が強い事も、単独で挑む事も解ってるけど……特攻するってどういう事さ」

 キリカは、ほむらに視線を移した。

「簡単よ。ワルプルギスに向けて、全部の魔力と全ての武器を使って攻撃に集中するのよ。ただ、加減は出来ないから、下手に近づけば巻き添えを食らうでしょうね。

 それに、ワルプルギスと戦った経験が有るのは私だけよ。
 先手必勝の奇襲戦法で、可能な限りダメージを与える。それなら、後ろに控える貴女達の攻撃が通用しやすくなる筈よ」

 ほむらは、真剣な目つきで地図にマーキングを付けていく。

「恐らく、そのペースで攻撃を仕掛ければ、この化学薬品の工場付近で、私の魔力はガス欠になる。
 この地点までに、ワルプルギスを倒せなかった時が……貴女達の出番よ」


「……丸で、自分を捨て駒にする様な作戦じゃない。
 本気で言ってるの? 死ぬつもり?」

 かずみは、不安げにほむらを見つめた。

「馬鹿言わないで。犬死する気は更々無いわ。
 貴女も、私がどんな人間なのかは解ってるでしょう? このポイントに辿り着いたら、うまい具合に逃げるつもりよ」

 ほむらは、ニヤリと笑みを見せる。

「……だと良いけれど」

 マミは、今一つ不安を払拭しきれないでいる。

「お姉ちゃん……死んじゃだめだよ?」

 ゆまも、ほむらを見て、心配そうに呟く。

「大丈夫よ。
 だけど……万が一、余計な魔女が増えてたとしたら、迷わずに殺す。それだけは、約束して」

 ほむらの言葉が、全員の心にズシリとのしかかる。


「これは、街を護るとか、魔女を退治するとかって、生温い考えは必要ない。
 まして、愛と勇気が勝つだとか、気合と根性で乗り越えるだとか、そんな綺麗な言葉は使えないわ」

 ほむらは、大きく息を吸ってから、一言告げる。

「これは、負ける事の出来ない戦争なのよ」

 そう断言した。


「やれやれ……。君は本当にしたたかだね」

 ここまで、一言も発さなかったキュウべえが、初めて言葉を出した。

「約束は守りながらも、言葉の中の隙を突く。限りなくアウトに近い部分で、セーフの領域を見出す何て、普通の考え方じゃ思いつかないだろう。
 おまけに、その裏で上手く立ち回って、自分にとって有利な材料も出来るだけ揃えておく。本当に蛇の様な魔法少女だ」

 キュウべえは、皮肉っぽく言う。

「何回も言ってるでしょ。
 私は手段を択ばないわ。見抜けない奴が悪いのよ」

 ほむらは、当然とばかりに言い放つ。


「一つだけ、聞きたい。
 万が一、僕が君を出し抜いて、鹿目まどかと契約していた。もし、そうなったら、君はどんな行動に出ていたのかな?」

「簡単よ。貴方にとって、一番不利益な行動を取っていたわ。
 具体的に言った方が良いかしら?」

 ほむらは、不気味な微笑を作る。

「……言わなくていいから。むしろ、言うな。アンタの冗談は、笑えないから……」

 慌てた様に、さやかは横やりを入れた。

「フフ……。約束は約束よ。
 ワルプルギスの夜の弱点を教えなさい」

 ここに来て、ほむらは交換条件の要求を出してきたのだ。

「無理に聞いてこないと思えば、全員に聞かせるように仕向けてくる。本当に、君は狡猾だよ。
 だけど、約束は約束だ。ワルプルギスの弱点を教えるよ」

 キュウべえは、観念したのか。ワルプルギスの全貌を語り出した。


「ワルプルギスの夜。
 しかし、この名前はあくまで通称で、本名は今となっては解らない。
 この魔女の最大の特徴は、複数の魔女の集合体である事。それが故に、魔力の大きさは計り知れない。
 結界に身を隠さない事も特徴と言われるが、厳密に言えば結界を作れないんだ。
 複数の魔女が集まってる事で、結界を打ち消し合ってしまっているからね」

「……一つだけ良いかしら?」

 ほむらは改まった様子で、キュウべえに聞きただす。

「何だい?」

「貴方って……結構解説が好きね」

「データを取り出して、説明してるだけだよ。
 では続けるよ。

 また、ワルプルギスの夜は、舞台装置の魔女とも異名を持つ。
 舞台装置の単語が示す様に、彼女の本体は剥き出しの歯車であって、体はあくまで装甲に過ぎないよ」

 キュウべえは、饒舌な口ぶりで、ワルプルギスの夜を解説していく。


「……見た事無いから、ピンとこないわ」

 マミは、首を傾げながらそう呟く。

「そうね。大体、こんな具合ね……」

 ほむらは、手に持っていたペンで、適当なチラシの裏にワルプルギスの絵を描いて見せる。

「あの魔女は逆立ちの状態で、出現してたわ。それで、足の部分が歯車になってるの」

 そう言いながら、描いた物を見せる。

「……下手過ぎて、言われなきゃわかんねー」

 杏子は、呆れた様子で突っ込んだ。

「うるさいわね……。美術は苦手なのよ……」

 ほむらは、顔を赤くする。


「解説を続けるよ。
 今、ほむらが逆立ちと言っていたけれど、あれは本体を地面から遠ざけている。言ってみれば、防御の姿勢と言っていい。

 つまり、あの歯車が地面に降り立ったときは、本気の攻撃を仕掛ける姿勢になる。
 以前にほむらが見た状態は、恐らく本気には程遠い」

「……」

「だが、言い換えれば、本体で攻撃を仕掛けるという事は、防御を捨てるという事。
 つまり……あの歯車。本体その物が、ワルプルギスの唯一の弱点となるのさ」

「なるほどね……」

 ほむらは、ニヤリと笑みを見せた。


 だが、他の人物は釈然としない様子だった。

(……何故、キュウべえはあっさりと、ワルプルギスの夜の弱点を、全員に教えたのかしら?)

 マミは、心の奥底から湧き上がる疑問に、戸惑いを隠せない。

(わざわざ教える必要が有るのか……? 不利益なら、黙ってれば問題無いだろうに……)

 杏子も、それは同じだった。

(ゆまも、頑張れば役に立てるかな?)

 奮戦を、心の中で誓うゆま。

(……仮に、ワルプルギスを仕留められないのなら。鹿目まどかだけでも、抹殺すれば問題は無いわ……)

 不気味に、次の一手を考える織莉子。

(まぁ、何でも構わないさ……。その気になれば、織莉子と共に逃げれば良い)

 キリカも同様だった。ぼむらや、他の少女は見捨てても構わないと、内心で思っている。


(……キュウべえもそうだけど、あの子の反応も不気味だ)

 かずみは、ほむらを横目で見る。

(勝ち目は有る筈。だけど……この違和感は何なんだろう?)

 カオルも、不信感を拭い去れない。

(暁美ほむらも、キュウべえも、ギリギリの部分で駆け引きしてるわ……。キュウべえの狙いも、暁美ほむらの狙いも、全く解らない……)

 海香さえ、神経が磨り減る思いだった。

(……何でか知らないけど、ほむらはもっと別の事を考えてる気がする)

 さやかは、直感的にそう思った。

(ほむらちゃん……)

 まどかは、ほむらをジッと見つめるだけ。


 ほむらは、満足した様子だった。

「そこまで聞ければ、対策は取れるわ。
 皆。また、三日後に会いましょう。

 それと、ワルプルギスが現れるまでは、近辺の地域に魔女は現れないわ。嵐の前の静けさって奴かしらね。
 各自ゆっくりと、休んで頂戴」

 ほむらは、そう言って作戦会議を締めくくった。

本日は、ここまでです。

さやか未契約の経緯は、次回にて詳しいです。

そろそろ、終盤です。お楽しみに。

乙~
次回も楽しみにしてます

乙!



ここまでの数が集結してるのに、考えがバラバラなのは新鮮だわ

クズほむ最高乙

今更だが手段を択んでるからこそ
この状況を作れてるんじゃないか?
手段を択ばなかったのはむしろ原作な気が

手段を選ばないというのはたとえどんな非道なことでも成功するならそれを実行する
ってことであって無策とは違うだろ

意味合いを理解してないと恥をかくぞ

意訳するとノーガード戦法って強いよね


祝日なのに、仕事だった。

続きを投下します。後り、二話。

10.日常

 ワルプルギスの夜が襲来するまで、後二日。本日は日曜日である。
 決戦に向け、各自の思いは如何なる物なのか……。


 御崎家。

 筆が進まない海香は、ストレス解消に昼食を作っていた。

「……何かこう、サクッとアイディアは出ないのかしら」

 包丁で食材を切り刻む海香の頭部には、見えない角が生えていた。

「そう言われてもねぇ……。
 そもそも決戦前だから、そんなに切羽詰って小説書かなくても良いんじゃない?」

 カオルは、自分の席に座りながら、そう言った。

「それは出来ないわ。私の、小説家としてのプライドが許さないの」

 海香は、そう言い切った。

「……さいですか。
 でもさ。一つ思ったんだけど、あのほむらって子を主人公にしたら、面白い小説書けそうじゃない?」

 カオルはニヤニヤとしながら、海香をおちょくる。

「嫌よ。私が書きたいのは、恋愛とか青春なの。
 あの子が主役じゃ、仁義無き戦いになってしまうわ」

 海香は、即刻否定した。


 そんな中、かずみはまだ部屋に居た。
 ベッドに寝たまま、天井を見上げていた。

(……解んない)

 払拭できない疑問を、考え続けていた。

(あの子……。
 上手く逃げるって言ったけれど……本当に逃げられるの? 一度は上手く逃げられても、もう一度逃げられる保証は無い。
 そもそもあの子は、そんなに分の悪い賭けをする様にも思えない……)

 かずみは、柄にもなく、難しい顔のままだ。

(……目的の為なら、手段を択ばない。そういうタイプは……)

 かつて戦い、そして散って行った魔法少女達の姿が、かずみの脳裏をかすめていった。

「かずみー。ご飯出来たよー」

「うん。今行くよー」

 カオルに呼ばれ、かずみはベッドから起き上がった。


 市民病院の屋上に、さやかと仁美。そして、恭介は居た。

「今日も良い天気だね」

 晴れ渡った空を仰ぎ、さやかは笑顔を見せた。

「そうですね。上条君が無事に退院したら、何処かにお出かけしましょう」

 微笑みを見せながら、仁美はそう提案を出した。

「うん。
 その為にも、リハビリを頑張らないとね。僕の右手は、治らないけれど……また歩く事は出来るから」

 恭介の顔は、憑き物が落ちた様に、すっきりとしていた。


――数日前。

 ほむらに諭された翌日。

 さやかは、覚悟を決めて、恭介へのお見舞いへ向かった。

 病室の前に立ち、跳ね上がりそうな心拍数を、抑えようとする。

(落ち着かなきゃ……。私が落ち着かなきゃ……)

 大きく深呼吸。そして、意を決して扉を開いた。

「……よっ。看護婦さんかと思った?」

「……さやか?」

 予想通り、恭介の面持ちは暗い。
 しかし、何時に無く真剣な表情を見せるさやかに、恭介は少し面を食らっていた。


「ねぇ……恭介。
 少しだけ、話せない? どうしても、話しがしたいの」

「……僕は構わないけど」

 恭介は俯いて、さやかから視線を逸らす。正直、気まずいと思っているのだろう。

「恭介。
 恭介に取って、バイオリンを弾く事は、恭介の全てだったんだよね?
 もしも、私の命と引き換えに、右手が治るとしたら……どうする?」

「さやか……ふざけているの?」

「答えて……恭介。
 自分の望んだものが、他人を踏みにじってでも手に入るとしたら……そこまでしても、手に入れたい?」

 さやかは、真っ直ぐに恭介を見つめ続ける。


「……そんな事、僕には解らないよ!!」

 恭介は、怒鳴る様に声を張り上げた。

「僕だって、自分がどうしたいのか、解らないんだ!!
 バイオリンを弾く事が、僕の全てだったんだ……。今まで弾けた曲も、弾こうとしてた曲も……全て失ってるんだよ!?
 そんな僕に、どうしてそんな質問をするんだよ!!」

 バシン、と乾いた音が、病室に響いた。
 さやかは、恭介の横っ面を引っ叩いたのだ。

「……!?」

 恭介は、呆然とさやかを見つめる。

「恭介……どうして解らないの?」

 さやかは、瞳に涙を溜めていた。


「……どうして、バイオリンを弾く事に拘るの?
 それが、恭介に取って掛け替えの無い物だったのは解ってる……。

 だけど……無くした物を忘れられなくて、ずっとその場にしゃがみ込んでいるだけじゃない!!
 後ろばかり見て、前さえも見えなくなって……。気が付いたら、周りの事も見えなくなってて……。
 結局見えて居るのは、事故に合ったその事実だけ……。

 イジけたまま、バイオリンも握ろうともしないで……無くした事のせいに全てしてるだけじゃない!!

 どうして、進もうとしないの!! 右手がバイオリンを弾けなくても、動かす事は出来るじゃない!!
 この、意気地なし!!」

 泣きながら、さやかは叫んだ。そして、病室から飛び出して行った。


「…………」

 恭介は、俯いて何も出来ないで居た。

「か、上条君!? さやかさんと何かあったんですか!?」

 入れ違いで、病室に入ってきたのは、仁美だった。

 フルーツの盛り合わせを、棚の上に置き、慌ただしく恭介の元に駆け寄った。

「……し、志筑さん?」

「い、今さやかさんとすれ違ったんですの……。だけど、慌てて走って、何処かに行ってしまってて……」

 仁美は、動揺しすぎて、パニック状態に陥っていた。

「志筑さん……お願いがあります……。
 さやかを……さやかを追いかけてください!!」

「は……はい!!」

 凄まじい剣幕で言われ、仁美はさやかを追う様にして、病室から慌てて退室した。

 一人だけ残った病室で、恭介は右手を壁に打ち付けた。

「……僕は……世界一の愚か者だ」

 悔しさを噛み締める様に、嘆いてしまった。


 仁美は、病院中を駆け回った。そして、さやかの姿を見つけたのは、結局屋上だった。

「……さ、さやかさん。ここに居たんですね」

 壁にもたれて、力無くうなだれるさやかに、仁美はゆっくりと歩み寄った。

「仁美……。
 あたしじゃ、やっぱり無理だったよ」

「え……?」

「恭介の奴さ……事故以来右手がダメになってたんだ。
 バイオリンが弾けなくなって、アイツ落ち込んでて励ましてたけど、どうにもならなくてさ。
 思い切って、立ち直らせようとしてみたけど……あたしは恭介を怒らせただけだった……」

 さやかは、ポロポロと涙をこぼしていた。

「あたしって……ホントバカ……。本当にバカだよ……」

「そんな事有りません!!」

 仁美は、はっきりと告げた。


「さやかさんは、自分に向き合って……勇気を出した結果ですのよ?
 今、上条君の病室に行った時……凄い顔で、さやかさんを探してくれとお願いされました」

「……え?」

「まだ、事情は掴めてませんけれど……上条君はさやかさんを必要としてると思います」

「……」

「それに……私では、上条君にそんな事は絶対に言えませんの。
 幼馴染だからこそ……はっきりと物を言えるんだと、私は思います」

 仁美は、さやかを真っ直ぐに見つめた。


「……仁美って、お人好しだよね。
 こんな状況で恋のライバルを励ますなんてさ……」

 さやかは、笑みを作りながら、手の甲で涙をぬぐった。

「抜け駆けも、横取りもしたくないと、私は言いましたわよ?」

「ハハ……。何処かの誰かに、仁美の爪垢を煎じて飲ませてやりたいわ」

 そう言って、さやかは笑みを取り戻していた。

「……そうですか。
 それと、上条君に告白するのは、延期になりますね。フェアでは無いんですもの」

 そう言いながら、仁美も笑顔を取り戻していた。


――現在。

 さやかは、澄み渡った青空を見上げたまま。

「さやか? どうかしたの?」

 恭介は、そう声をかけた。

「ううん。何でも無いさ」

さやかはそう答えた後、フッと溜息を吐き出した。

「フフ。可笑しなさやかさんですね」

 仁美は、温和な表情で見つめていた。

(……ほむらが言ってたみたいに、私達が契約するしか無くなった状態になったら……。
 絶対にまどかには、契約させられない。

 あたしが契約して……恭介や仁美を護るんだ。例え、ゾンビでもバケモノでも構わない。
 あたしの願いで、ワルプルギスの夜を消し去るんだ……)

 さやかは、万に一つの可能性になった時。

 その身を捧げる覚悟を決めていた。


 杏子とゆまは、マミのマンションに訪ねてきた。

「よっ。遊びに来たぜ」

「マミお姉ちゃん、こんちわー」

 インターホンを押さず、ドアを開ける杏子。

「あら? 随分と早かったわね」

 そして、マミは微笑みを見せながら出迎えた。

「まぁね。魔女が居ないなら、アタシら暇だしさ」

 杏子はさっさと上がり込もうと、ブーツのチャックを下ろした。

「平和がいちばんだよ!!」

 ゆまは、エッヘンとばかりに、そう言った。

「ふふ。本当にそうね。さ、上がって待ってて。もうすぐケーキが焼けるから」

「よっしゃ!!」

「やったー♪」

 杏子とゆまは、遠慮なしとばかりにリビングに向かい、マミはキッチンに向かった。


 テーブルを囲み、魔法少女三人でお茶会を楽しむ。

「本当に、この平和が続けば良いのにね……」

 そんな中、マミはポツリと呟いた。

「でもよ。魔女が出なきゃ、アタシら生きられねぇんだ。あんまり平和すぎるのも、考え物さ」

 ニヤニヤしながら、杏子はそう言った。

「それもそうだけどね。
 本当に、ワルプルギスの夜が来るのかしら?」

「そりゃ、アイツしか解らん話だ。
 だけどさ……。アイツに、その話を持ちかけられた時にさ。アタシは、昔にマミと話してた事を思い出したんだ……」

 杏子は、少しもの思いにふける様な表情を見せる。


「キョーコ?」

 ゆまは、口元にクリームを付けたまま、杏子を見た。

「ねぇ、ゆまちゃん。
 私達、昔は一緒に戦ってたのよ」

 マミは、ゆまに視線を向けた。そのまま、ティッシュで口元を拭いた。

「そうだったんだ」

 ゆまは、表情を躍らせる。

「ああ……随分前だけどな」

 ふぅ、と息を吐き出して、杏子は再び口を動かす。


「ほむらの奴に協力を求められた時だ。マミの事を聞いた時は、正直信じられなかった。
 正義の味方なんて物を本気でやってる魔法少女が、あそこまで滅茶苦茶な魔法少女に協力する。何かの間違いかと思った。

 でも、ソウルジェムの事を全て聞いて、納得がいったよ。しかも、魔女に生まれ変わった時の約束までしてる何て、思いもしなかったわ……」

 噛み締める様に、杏子は独白する。

「そうね……。その話を聞いた時、私は死にたいと思った。だけど、自分の命を自分で終わらせる。それが、本当に怖かったの。
 後で、イカサマだった事を聞いたけど、あの時の暁美さんは……間違いなく本気の眼をしてた。

 もし、知らなければ、ある意味幸せだったかも知れないけれど……生き抜く事は出来ないでしょうね」

 マミは瞳を閉じて、そう答えた。


「やらしさも汚らしさも、剥き出しにしてる。
 それが、暁美ほむらの強さかもしれねーわ。ただ、あそこまでは出来ねーし、やりたくねー」

 杏子は、笑いながら断言した。

「それは、同感ね……」

 マミも笑みを見せていた。

「ねーねー、二人とも。
 ゆまはほむらお姉ちゃんみたいになれるかな?」

「それは、絶対に止めなさい!!」

 ゆまの言葉に、二人は同時に突っ込んだ。


 美国邸。

「うーん、織莉子の作ったホットケーキは、世界一だよ」

 キリカは、そう言いながら、特性ホットケーキを頬張る。皿から溢れそうな程のシロップをかけたホットケーキに、味もへったくれも無いのだが。

「おかわりはまだまだ有るのよ。幾らでも、焼いてあげるわ」

 満面の笑みを見せながら、織莉子はそう言った。

 その言葉を聞くと、キリカは持っていたフォークを、テーブルの上に置いた。


「どうしたの?」

「私は織莉子に出会えなきゃ、もっと下らない人生を送っていただろうね。
 何もかも詰まらなくて、そこに有るのは退屈だけ。エネルギーの発散の仕方さえ解らない、いじけた子供のままだっただろう。
 改めて言わせて貰いたいんだ……ありがとう」

 キリカは、深く頭を下げた。

「キリカ……頭を上げて。お礼を言うのは私よ」

 織莉子の表情は、キリッと引き締まった。

「私は、キリカが居なければ、とっくに壊れてたでしょう。
 私が私である。その意味を、知る事が出来たのだから……。
 私の夢を叶える為には……隣に貴女の存在が必要なの」

「……もちろんだよ。一緒に行こう」

 織莉子の問いに、キリカは力強く答えた。


 まどかの自宅。

 部屋で、パパの特性のココアを飲みながら寛いでいた。

「本当に……私は世界を滅ぼせる力が有るのかな?」

 自問自答するが、一人でその答えが出てくる訳が無い。むしろ、そんなお伽話を、真に受けろと言う方が無理である。

(だけど……ほむらちゃんやマミさんは、私を護ってくれた。
 そして、魔法少女にならない様に、手を打ってくれたんだ……)

 残り少なくなったココアを、全て飲み干す。

(皆、きっと街を護ってくれるよ……)

 そう信じていた。

 ただ……まどかは、ほむらと出会う前に、一度見たあの夢の光景が、頭から離れなかった。


 ほむらのアパート。

 ほむらが黙々と武器の整備をしている間、キュウべえは無言で見続けていた。

「……ずっと見てる割に、喋らないのね。気味が悪いわ」

 耐えかねて、ほむらはポツリと呟く。

「過去に、ワルプルギスの夜に対して、複数回挑んだ魔法少女は居ない。
 君は、あらゆる情報を握り、あらゆる戦術を繰り出そうとしている。
 そこで聞きたい。
 ワルプルギスの夜に勝てると思ってるのかい?」

「……負けるつもりで戦う馬鹿は居ないわ」

 キュウべえに向け、ほむらははっきりと言いのけた。それ以上、会話が進む事は無かった。


 そして、二日後の明朝。

 見滝原市全域に、避難勧告が発令された。

今回はここまで。

次話で、最終回になります。

九時前後に、投下を開始するので、しばしお待ちください。






いやこれだけしかないだろうけどもっと他になんかいうことあるだろう誰かの連投かと思ったわ

11COMBO!!

コンボ途切れたじゃねーかバカヤロー

皆様。
お付き合いいただき、ありがとうございます。

ラストです。

きたか

そんなことだから就職もできねーんだよ

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

11.決戦

「見滝原市全域に、避難勧告が発令されました。
 住民の方は、速やかに避難所に移動の方をお願いします」

 アナウンスが、町中に響く。

 暴風が吹き、黒く分厚い雲が、空を覆う。
 嵐来たるその日は、世界の命運を握っている事を、知る人は一握りだけ。


 避難所に退避しているまどかは、窓の外の荒れた天候を見続けていた。

「……まどか。やっぱりここに居たんだ」

「さやかちゃん……」

 後ろから声をかけてきたのは、さやか。表情には不安がにじみ出ていた。
 魔法少女以外で、この嵐の原因を知っているのは、この二人だけである。

「皆……戦ってるのかな?」

 まどかは、振り絞るような声だった。

「解んない……。
 だけど……マミさんもほむらも居る。理由は色々だけど、魔法少女達で力を合わせてるんだ。
 あたし達が信じなきゃ……」

 気丈に振る舞って、さやかはそう言った。

「そうだよ……そうだよね……」

 まどかも、力の無い笑みを作って、そう答えた。


 魔法少女達が控える、ビルの屋上。

 誰も声を出す事が出来ない。緊張感が張りつめ、胃から中身が飛び出しそうな気分だった。
 冷たい暴風に耐えながら、有る一点を見続ける。

 離れてても解る程強大で、酷く歪んだ禍々しい魔力。
 一か所から、溢れんばかりに滲み出ている。

 マミは、震えた声で、一言だけ放った。

「あれが……ワルプルギスの夜……」


 立ちはだかる魔法少女は、暁美ほむらただ一人。

 世界の終焉を、何度も見てきた。免れない崩壊と、変えられない運命に、逆らい続けてきた。

「ここが私の戦場よ……」

 空間の歪みから、魔女が姿を現していく。

――5

 心臓が高鳴る。

――4

 体中が震えだす。

――3

 汗腺から汗が噴き出てくる。

――2

 己の全てを使い。

――1

 暁美ほむらは挑む。

――開演


「キャハッハッハッハ……キャーッハッハッハ……」

【舞台装置】魔女 ???(通称:ワルプルギスの夜) その性質は【無力】

 笑い声を上げながら、宙を舞う巨大な魔女。ワルプルギスの夜が、ついに姿を現した。



――カチン。

 同時に、ほむらは盾に魔力を込めて、時間を止めた。

(……どんな攻撃力の有る武器を使っても、本体を撃ち抜けなきゃ話にならない!!)

 取り出したその兵器は。

――カチン。


 再び時が動き出す。


「キャハハ……?」

 ワルプルギスの体と本体である歯車を接続する軸には、ガッチリと二本の太いワイヤーが絡みついていた。

「……大型兵器ならぬ、大型重機よ!!」

 二台の大型クレーン車を使い、軸からガッチリと拘束。
 400トンもの重荷を落ち上げるクレーン車二台で、地上から全力で引っ張る。これでは、ワルプルギスの夜とは言え簡単には動けない。

「ここからよ!!」

 更に、バズーカー砲にロケットランチャー。現代兵器を次々に取り出し、ワルプルギスの本体に向けて構える。

さあ、ほむほむは絶望の甘さを打ち砕いて未来に進めるのか


 ドカン、と爆炎を上げ、砲弾やミサイルが次々と命中。本体の歯車を、的確に攻撃していく。

 しかし、動けないワルプルギスも、使い魔を次々と生み出す。

 そして、ほむらに向かい一斉に襲い掛かる。

「うぐっ……!!」

 魔法少女の影は、弓矢でほむらの腹部を貫く。
 更に、別の影は、ほむらを背中から叩き斬った。予想外の位置からの斬撃で、ほむらは弾き飛ばされた。

「……まだよ。まだまだ……!!」

 痛みを食いしばり、立ち上がる。



 再びミサイル砲を担いだ。そして、ワルプルギスの本体を狙い、トリガーを引く。

 ドン、と歯車から爆炎が立ち上った。

(使い魔に構ってられないわ……。
 アイツを……ワルプルギスの夜だけを狙い撃つ!!)

 使い魔の攻撃を無数に受けながらも、ほむらは攻撃の手を緩めない。

 丸で、弓矢を受けながらも、死して立ちはだかった弁慶の様に。


 ビルから、激戦を見下ろす魔法少女達。
 自然と作っていた握り拳は、小さく小刻みに震える。

「神風特攻だなんて、レベルじゃないわ……。
 あんなバケモノ相手に、一人で挑む何て無謀よ……」

 海香は、戦慄の余り背筋が凍りつく。

「見てらんねぇよ……。いくら何でも、あんなやり方じゃ体がもたねぇぞ!!」

 杏子は、今すぐにでも向かいたい衝動を抑えきれない。


「……どうして。どうして、あんなにして戦うの!!
 私達も居るのに……」

 かずみは、半泣きで叫ぶ。痛々しいまでの玉砕戦法は、見ている心を絞め付けた。

「ちくしょぉ……。
 構うもんか!! 行こうよ!! これじゃ、作戦だって通用するか解らないだろ!!」

 カオルは、腹が立っていた。この状況下で動かない自分に。

「ゆまも行くよ!!
 あのままじゃ……お姉ちゃんは死んじゃうもん!! ゆまが行って、お姉ちゃんを治さなきゃ!!」

 もはや、我慢は出来なかった。約束違反と言えど、ほむらの元へ向かう。
 そうするつもりだった。


 しかし、行こうとする先に、鉤爪からの斬撃が飛び交った。床に何本かの傷跡が走る。

「生憎だけど、ここは行くべきじゃないね」

 キリカは、淡々とした様子で言った。

「戦術を編み出したのは彼女。
 この状況は、彼女が作り出した事ですよ。手助けする必要がありますか?」

 織莉子は、うっすらと笑みを見せながらそう告げた。

「てめぇ……。
 信用する気は無かったが、裏切るつもりか?」

 杏子は、槍を構えだして、織莉子とキリカを睨みつけた。

「私達は、ワルプルギスを倒し、その後に鹿目まどかを殺す事が目的。ただ、その為に手を組んだだけ。
 彼女が生きようと死のうと、知った事では有りません。
 むしろ、彼女が居なければ……私達の計画は、確実に遂行できるのですよ?」

 織莉子は、当然とばかりに言い張る。

「織莉子と私の狙いは、その一点さ。
 本人も言ってたじゃないか。仲良くしろとは言って無い、とね」

 そして、キリカも追従した。


 この土壇場での裏切りに等しい行為は、織莉子とキリカが逆転を狙った故の物。
 元々、組んでいた訳では無いが為の、悪い部分を露呈してしまったのだ。

――シュン。

 複数の黄色いリボンが、瞬時に飛び交った。

 仲間の魔法少女達を、次々と拘束していく。

「…………」

 一言も話さず、マミは全員を睨みつけた。

「何だよ……。何で、アタシ達まで捕まえるんだよ!!」

 不服とばかりに、杏子は捲し立てた。


 しかし、マミは無言のまま、屋上の鉄柵にまで歩み寄った。

――ゴン!!

 太い鉄柵を、マミは思いっきり蹴りつけた。
 グニャリと、飴細工の様に曲がった鉄柵を見て、一同はゴクリと息を飲む。

「……貴女達は、黙って見てる事もできないの?」

 マミは、今まで誰にも見せた事の無い、怒りの表情で全員を睨みつけながら、冷たい声で静かにそう言った。

 この中で、一番怒っていたのはマミだった。
 温厚な人間が怒ると後が怖いと言われるが、マミはまさにそうだった。では、何に対して怒っているか?

 ベテランの癖に、何もしていない自分に。
 自らの計画の為に、他の人間を切り捨てようとする仲間に。
 約束も、ろくに守れない仲間に。
 そして、身勝手な事ばかりして、単身で挑む仲間に。

 何もかもに、怒り狂っていた。

(……暁美さん)

 ただ、見守る事だけ。それが、今出来る、たった一つの選択肢だった。


 残りの武器も少ない。
 身体能力の強化に全ての魔力を注ぎ込んで、使い魔の攻撃を耐え凌ぐ。時間停止を使っていないとは言え、魔力の消費は極めて早い。
 しかし、使い魔の数は増える一方。

(……もう少し……もう少しの辛抱よ!!)

 大型の武器はもう無い。
 ライフルで、歯車を撃ちまくる。的確に撃ち抜くが、先程の武器に比べても威力は数段落ちる。

 食い止めるクレーン車も煙を上げ始め、エンジンはオーバーヒートしている。
 魔力を回復させる時間も無い。


 ほむらは、解っていた。もう、自分の限界が近い事を。

(そろそろ……本気を見せなさいよ……)

 それでも、一心不乱にワルプルギスを攻撃し続ける。

「ねぇ……ワルプルギス!!」

 キレた様に、ほむらは叫んだ。

 その時だった。


 ブツン、とクレーン車のワイヤーがぶった切れた。勢い余って、クレーン車が横転し、建物の群れに突っ込んだ。

 そして……。

「…………」

 ワルプルギスの夜は、笑いを止めた。

 ゆっくりと、姿を反転させていく。

 歯車を地面に落とし、正立の姿をついに見せたのだ。

 力無き魔法少女を、全力で仕留める為に、本気を出す。

 ほむらを見下ろす様に、ワルプルギスが立つ。

「本体にあれだけ撃ち込まれれば、そりゃ怒るわよね……」

 しかし、ほむらの眼に、諦めの色は無い。

(ここからが正念場よ……)

 手に持っていた機関銃を、盾の中に片付けた。


 使い魔の動きは、格段に活発になる。
 ほむらに狙いを定め、何十体の魔法少女の影が迫りくる。

(……ここからよ!!)

 怪我を追って、動きの悪い体を、強引に動かす。
 応急処置を施す魔力も残っていない。そんな悠長な真似をすれば、使い魔の餌食になるだけ。

(……予想より引き延ばせた。後は、上手く誘い込むだけよ!!)

 ほむらは、撤退する予定のライン。科学薬品の工場に向けて、駆け出した。


 影魔法少女達は、ほむらに再三攻撃を仕掛ける。

「くっ……!!」

 命中や致命傷は避けながら、ほむらは全力疾走。
 ジグザグに走り回り、狙いを定めさせない。

 ドン、とワルプルギスの放った光線が、アスファルトに大穴を空けた。

(今の状態であれを受けたら、一溜りも無いわ……)

 冷や汗をかきながらも、ほむらは回避し続ける。


 そして、塀を飛び越えて、工場の敷地内に侵入。

 影魔法少女達も、次々と飛び越えてくる。

(……あそこよ!!)

 ほむらの眼に写ったのは、薬品を貯蔵する、野外に接地した巨大なタンク。

 看板には「危険物第1類」と示されている。

「……これで、一発逆転よ」

 ほむらは、小さく呟いた。


 ドカン、と建物を破壊しながら、ワルプルギスの夜も、ほむらを追いかけてきた。

 あれだけ大量に居た影魔法少女の姿は、全て消えていた。

 ワルプルギスの夜は、直々に暁美ほむらに止めを刺すつもりだ。

(……とっておきは、最後の最後に使う物)

 ほむらが、盾から出したのは、ダイナマイト。

(……私が初めて魔女を仕留めたのも、自作のパイプ爆弾だった……)

 しかも後ろに控えるのは、可燃性の化学薬品のタンク。

(……これも、何かの因果なのかしらね……)

 どれ程の大爆発が起きるか等、語るまでも無い。

(砂時計も落ち切った……。戻れないし……止められない……)

 そして、ワルプルギスの夜は、目の前に壁の如く立ちはだかっていた。

(でも……思い残す事は何も無い……)

 溜めこんだ魔力を、ワルプルギスは放出しようとしている。

(幸せになってね……まどか……)

 同時に、ダイナマイトの信管にも、電気が走った。

(……ざまあみろ……インキュベーター!!)



――ドオォォォォォン……。


 薬品工場から、途轍もない火柱が立ち上った。

 爆発、炎上。工場の敷地全てが、真っ赤に燃え上がる。

 待機していた者は、衝撃波を受けて、姿勢を乱す。

 今までの突風では無い。爆発の熱風が、体中を撫でた。


 本気の自爆特攻。
 ワルプルギスの夜は、どでかい火柱に包まれた。

「あ……暁美さん」

 マミは、呆然と上がった火柱を見つめていた。

「うそ……だよ……ね」

 ゆまはポロポロと、涙を溢れさせた。

「ば……バカ野郎……。上手く逃げるんじゃねーのかよ!!
 あんな爆発の中で、たった五秒じゃ一溜りもないじゃねーかよぉ!!」

 杏子は、感情をむき出しにして叫んだ。

「そこまで……そこまでしなくてもいいじゃんよ!!
 何で……何でなの……?」

 かずみは、地面にへたりこみ、火柱を直視出来ない。

「あんなの……技でも何でもないよ……。犬死するつもりは無いって言ってたのは……自分だろ……」

 カオルは、首を横に振る。

「彼女は……最初からこのつもりだったのね……。死ぬつもりで……それで居て、仕留められなかった時に、私達に託す……。
 馬鹿よ……。手段を択ばないにしても……自分まで犠牲にしてたら……何にもならないじゃない!!」

 海香は、この現実を受け止めきれない。


「……」

 キリカは、一言も喋らない。ただ、立ち上る煙を、目で追いかけるだけ。

(……何故なの?)

 織莉子は、大量の冷や汗を、背筋に感じていた。

(……さっきまで見えて居た世界の終焉が見えない……!?

 未来が……変わってる!?

 厄災が降り注がない……何故なの!?

 暁美ほむらは……何をしたと言うの!?

 鹿目まどかから……最悪の魔女が生まれない!?)

 その予知は、確実に未来を示していた。

(あの子が……暁美ほむらが出し抜こうとしてたのは……私達じゃない……)

 困惑の余り、体中が震える。


 暁美ほむらの本当の狙いに気が付いた時、織莉子は体中の震えを、抑える事が出来なかった。

(キュウべえだ……)

 青ざめた顔で立ち尽くすしか、織莉子は出来なかった。


 そして、契約請負人がその姿を見せた。

「ワルプルギスの夜は、完全に消滅したよ。
 このゲームは、暁美ほむらの一人勝ちの様だね」

 キュウべえは淡々と言ってのけた。

「ゲームですって……?」

 マミの静かな声には、怒りが滲んでいた。

「元々、鹿目まどかの契約を賭けて、僕と暁美ほむらは話を通していたんだ。

 だが、彼女一人で、ワルプルギスの夜を倒したんだ。僕は鹿目まどかと契約する事は、未来永劫無いだろうね」

 キュウべえは理屈っぽい答えを述べた。


 ズバン、と地面を槍が抉った。

 キュウべえは、辛うじて避けていたが、杏子はキュウべえを睨みつけたまま。

「今すぐに消えろ……。何体出てきても、潰し続けるぞ……」

 杏子は、即座に斬りかかれる姿勢で、キュウべえに槍を向けた。

「ヤレヤレ……。無造作に潰すのは、コストの無駄だからね……。
 エネルギーの回収は、まだまだ先送りになりそうだから、節約に越したことは無い。君達とは、暫く会わない方が良さそうだ……」

 吐き捨てる様に言い、キュウべえはその姿を消していた。


 昼前には避難指示が解除され、市民達は自分達の家に帰宅する事が出来た。

 ただし、大爆発を起こした薬品工場の消化作業は、夜を徹し行われる事となった。


 美国邸。
 ソファーに座り、織莉子は呆然と天井を見上げていた。

「キリカ……。
 未来は変わったのよ……」

 力の抜けた声で、織莉子はそう言った。

「……どういう事だい?」

 キリカは、無表情のまま聞き返した。

「暁美ほむらは……最初から解ってたのですよ。
 どういう手を使ったのかは解りませんが、降り注ぐ厄災を回避出来る手段を見つけていた……」

「……」

「私達では、敵わない訳だわ……。
 全て、彼女の掌の上で、私達も……キュウべえさえも踊らされていただけ……」

 織莉子の言葉を聞き、キリカは静かに言葉を出す。

「……織莉子。
 君はこれから、どうするんだい?」

「解らないわ。
 ただ、鹿目まどかを殺す必要も無いのなら……見滝原に留まる理由も無い」

「そうかい……」

 キリカは、それ以上の事を聞かなかった。

 美国織莉子と呉キリカの両名は、その日を境にして、見滝原市からこつ然と姿を消してしまう。
 そして、その後の消息は、一切不明である。


 マミに呼ばれ、まどかとさやかは、マンションを訪ねてきた。

 しかし、暗い表情のマミを見て、まどかとさやかは感じる物が有った。

「……マミさん。ほむらちゃんは……?」

 まどかは、決死の覚悟で聞いた。

 だが、マミの首は横に動いた。

「う……嘘ですよね……。
 ほむらは……殺しても死なない筈ですよ……。あんなにずる賢くて、しぶとくて……。

 そんな奴が……死ぬ筈無いですよ!!」

 さやかは、涙交じりの声を張り上げた。


「暁美さんは……命懸けで……魔女と戦ったの。
 自らの命を絶ってまで……魔女を倒したのよ……。彼女は口先だけじゃなかった……。

 目的達成の為に……手段を択ばなかったのよ。自分自身の命と引き換えにしても……」

 マミはそう語った。

 自然と涙が込み上げてきた。拭っても拭っても、涙を抑える事が出来なかった。

「マミさん…………。
 ほむらちゃんが……私達を護ってくれたんですよね!!」

 泣きながらまどかは言った。

 そして、マミの首は縦に動いた。

「マミさん……マミさーん!!」

 まどかはマミに抱き着いた。涙が枯れる位の勢いで。声枯らす位の大声で。まどかは泣き続けた。

 さやかも、すすり泣いていた。抑えようとしても、抑えられない感情を爆発させるしかなかった。


 三人とも、どれ位の時間を泣いていたのか、解らない。

 日が傾いて、西の空がオレンジ色に染まり出していた。

 まどかは、真っ赤な目で真っ直ぐにマミを見つめた。

「ほむらちゃんは……私の最高の友達です……胸を張って言えます。

 だから……私はほむらちゃんの分まで、生きようと思います!!」

 固い決意を、まどかは伝えた。


 それから数日もすると、魔法少女達は元の縄張りへと戻って行った。

 しかし、今回の出来事を切っ掛けにし、見滝原市、風見野町、あすなろ市。
 この三つの街を縄張りとする魔法少女達は、同盟を作る事となり、その名を轟かせる事となる。

エピローグ

 ある日の深夜。

 一人の魔法少女が、鉄塔の上から街を見下ろしていた。

「全く……。
 僕がまんまと、一杯食わされる羽目になるとはね。
 後にも先にも、僕を出し抜いたのは君だけだよ……」

 彼女の少し後ろで、キュウべえはぼやいた。

「……言ったでしょ?
 利用できるものは、何でも使う。情報もその一つなのよ……」

 少女は。

 暁美ほむらは、ニヤリとしながらそう言った。


 服の右袖は、風に煽られパタパタと揺れ、右目蓋は傷ついて閉じたまま。
 痛々しい傷を負いながらも、残った左目で街を見つめ、左腕で髪の毛をかき上げた。

「二つ想定していなかった事が、僕には有る。
 一つは、君がワルプルギスの本体を、確実に攻撃出来る技量を持っていると思わなかった」

 キュウべえの言葉に、ほむらは何も反応しない。

「もう一つは、君が最後まで、本当の狙いを隠し抜いてた事だ。
 何かを隠している事は解っていた。だけど、何を隠していたかが、僕には読めなかった」

 ほむらは、無言で髪の毛をかき上げた。


 キュウべえは、なおも言葉を続ける。

「君の魔法と、鹿目まどかの因果がリンクしている事は、君が教えてくれた。

 しかし、君の時間停止と時間遡行の魔法は、一か月だけの限定的な物だとは、教えてくれなかった。

 まさか、魔法の効果が切れると同時に、絡みついた因果の糸も解けるなんて、想像もつかなかったよ。

 そんな重要な事を隠す何て、君も人が悪いよね」

 キュウべえは、ぼやく様にそう言った。

「聞かれなかったから、答えなかっただけよ」

 しかしほむらは、当たり前の如くそう返した。


「更にそこまで考えた上で、自らの行動と言動で撹乱し、その事実に目を生かせない様にしつつ、大きく時間を稼ぐ。

 恐らく、自分がワルプルギスを倒せなかったとしても。
 鹿目まどかの因果だけは、消える様にしていたんだろう。

 しかし、万が一にもだ。
 鹿目まどかの因果が消えなかったら、君はどうするつもりだったんだい?」

 キュウべえは、ほむらに聞きただす。

「教えないわ。
 自分の手口を教える程、馬鹿じゃないのよ」

 ほむらは、その一点張りだった。



「全く。本当に、君は蛇の様さ。
 狡猾な手段で相手をハメる。嘘の中に真実を混ぜて、信憑性を高める。
 味方にも、全ては教えないで、肝心な所はボヤケさせる。まどかの素質の高さは、彼女達には永遠の謎だろう。

 時間遡行の事実を隠して、無駄なプレッシャーを与えない。
 その挙句、死んだ様に思わせておいて、実はしぶとく生きているだなんてね。

 これ程、切れ者の魔法少女は、他に居ないよ」

「……これでも、ギリギリまで考えて出した選択よ。
 あの爆発の時だって、炎の中に巻き込まれ、逃げきれるタイミングはギリギリだった。
 工場を飛び出してから、何とか回復はしたけれど、魔力はグリーフシードを丸々四つも使い切った。それでも、右目と右腕はどうしようも無かったのよ。
 実際、生きてるだけでも儲け物よ」


「しかしだ……。
 生きているければ、まどか達に会う事も出来る。それなのに、会う気は無いのかい?」

「無いわ。
 私は、あの時死んでいるの。二度と表側で生きていく事は出来ない。

 この先厄介な出来事に巻き込まれても、今回の様に上手く出来る保証は無いわ。それだったら、私は死んでいる事にした方が、絶対に良いのよ。
 私の為にも、彼女達の為にもね」

「やれやれ。君の行動は、本当に解らないね」

 キュウべえは、そう言いながら、空を見上げた。

「貴方には絶対に解らない事よ」

 ほむらは、ふぅと溜息を吐いた。


「だったら、君はこれから、どうするつもりなんだい?」

「これからの私は、裏の世界を生きていくわ。
 別に、捻くれて流されるがままに、裏の世界に行く訳じゃ無い。

 一つの道標に辿り着いた時。そこから、また新しい道を歩いていく事は出来るの。
 それがどんな道であれ、私の意志でその道を生きて行くわ。

 だから、陰ながら、まどか達の幸せを祈らせて貰う。
 私に出来る事は、それ位かしらね」

 ほむらは、はっきりと断言した。

「……生き続ける事が、可能だと思ってるのかい?」

 キュウべえに聞かれ、ほむらははっきりとした口調で言った。

「当然よ。
 この先、何か有るか解らない。だけど、何が何でも生き抜くわ。
 その為だったら……」

 ほむらは、力強くそう言った。



――手段は択ばないわ





ほむら「手段は択ばないわ」 FIN


よろしかった


これにて、完結です。

過去に書いたまどマギSSで、良くも悪くもここまで反響の大きい話は無かったです。

色々と、賛否両論とか、言い分も有るでしょうが、自分の中ではベストを尽くしました。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

質問が有れば、それなりには答えるつもりです。


本編では時間停止使えなくなった後に
まどか契約だったような…

質問としては>>450のQBの疑問の答えが知りたいかな


みててわくわくしたわ

>>456
ごめん、>>456の前半は勘違いだった


面白かった


クズほむもありだな

>>456

皆の前に、ひょっこり現れるかも、って感じですかね。

おもしろかった
過去作教えて

乙で

>>462

そんなに多くないよ。

保健委員 まどか☆マギカ(ギャグ)
ほむら「修学旅行で名古屋に来たわ」(オリジナル魔女スレとの合作)
オリジナル魔女スレのSSを二つ
魔法少女の大喜利、一と二(そのまんま)

ちなみに、このSSが最長になりますね。

乙!おもしろかった
名古屋のやつ読んだな

自分に対しても一切の甘さを見せなかったほむらさんマジかっけー
渋いラストだったわ

乙でしたー!

名古屋はリアルタイムで見てたわ

大喜利アンタだったのか
見てたよ

かっこよかったねマジ

名古屋と聞いていろいろ納得した

面白かった。
名古屋のやつ、地元民として見逃せませんな。次回作とか予定あったら教えてくれると嬉しいなって
とにかく乙。本当に乙。

隻眼隻腕のほむらか・・・何処の傭兵だwwww

>>471

予定は未定っす。

ただ、今回の話にかなりアイディアを突っ込んだから、良い話が書ける気がしないなぁ……

待ってるさ

471です。たびたびすまん
検索したら
『まどか「ほむらちゃん、名古屋いこ?」ほむら「ええ」』
だけ出てきたけどこれじゃないよね?

>>473
後日談でもいいんですぜ

乙過ぎて感想が書ききれない
いつかまた書いてね

検索下手かよお前笑っちまった
スレタイで出るだろう

・・・・ごめん名古屋名古屋に目がいってた
なんかごめん

>>475

それは、別人です。


では、皆様。明日も仕事なので、早い内に寝ます。

お疲れ様でした。お付き合いいただいて、ありがとうございました。

追いついたと思ったら終わってた乙
いい作品だった 個人的にこのほむらのキャラは大好きだ

>>479
お疲れ様でした、おやすみー

良かった 乙

>>472 ボスも左手ああなってたな

おつでした
面白かった!

乙、面白かった
これがまたほむら(とQB?)以外に誰も真実を知らないってのも心にくるな
スレタイ通りほむらが自分を犠牲にする手段すら容赦なく受け入れてていいキャラだった

乙、ハイスピーディーかついいボリュームだった!
次回作も期待してる

ほむら以外みんなそれぞれいいキャラだったから良かったのかな
まあほむらはヒロインだからこれはコレで納得だし
QBすらそこまで憎くないというか…
特にマミさんとゆまがいい味出してた
待たされずに一気に読めたのも良かったし

最高の乙を>>1に…

ほむら以外みんなそれぞれいいキャラだったから良かったのかな
まあほむらはヒロインだからこれはコレで納得だし
QBすらそこまで憎くないというか…
特にマミさんとゆまがいい味出してた
待たされずに一気に読めたのも良かったし

最高の乙を>>1に…

私の最高の乙

>>1は天才なのか?
私素人だけど物凄く文章が上手いように思える
ラノベ作家くらいなら簡単になれそうww

逆行はできるんじゃないかと思ったけどそんなことはなかったみたいだぜ
乙!


まどかがほむらを最高の友達と言った所には違和感
時間遡行に気付いてもないのに

乙ッす
>>491
命をかけて戦って、守り抜いてくれたからでしょ

本編ほむらにも、この何分の一かでも今の時間に全てを掛ける姿勢があればな…

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