ゆみ「私は君が欲しい!」京太郎「!?」(1000)

・京太郎SSです。苦手な方はブラウザバック推奨。

・京太郎は鶴賀に入学した設定です。

・開始時期は5月くらい。

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京太郎「東横ー。いるか?」

桃子「いるっすよ。席に座ってるっす」

京太郎「ああ、そこにいたのか。何やってるんだ?」

桃子「パソコンで麻雀をやってるっす。見ればわかるじゃないっすか」

京太郎「見ればってお前……」

桃子「……」

京太郎「……」

桃子「……はぁー。ノリ悪いっすね! ここは『いや見えねえよ!』とか言うところっすよ!」

京太郎「それで悩んでる奴にいきなりそんなこと言えるか!」

桃子「まったく、次からは気をつけるっすよ」

京太郎「はいはい……。で、麻雀って誰とやってるんだ? ネット麻雀ってやつ?」

桃子「んーネットはネットっすけど、学内ネットでやってるっす」

京太郎「そういうのもあるのか。てことは相手は同じ学校の人だな」

桃子「そうっす。麻雀部が最近始めたみたいっすね。掲示板にチラシが貼ってあったっす」

京太郎「へー。挑戦者来たれ! みたいな感じか?」

桃子「そういう感じではないっすね。チラシには麻雀に興味ある人歓迎って書いてたし」

桃子「何度か勧誘も受けてるから部員集めの一貫だと思うっす」

京太郎「初心者歓迎ってことか」

桃子「興味あるなら須賀くんもやってみたらどうっすか?」

京太郎「いや、俺はいいよ。ノートパソコン持ってないし、そもそも麻雀の役もわからないしな」

京太郎「興味はあるからよければ観戦させてくれ」

桃子「いいっすよー。私の勇姿を見るがいいっす!」

京太郎「おう、期待してるぞ」

---対局終了---


桃子「くーっ! また勝てなかったっす!」

京太郎「麻雀部3人を相手に2位なら十分凄いじゃないか」

桃子「これでも麻雀の腕には自信があるんすよ。そこらの麻雀部員にも引けをとらないくらいには」

桃子「なのにこのかじゅって人にはなかなか勝てないっす」

京太郎「麻雀って運に左右されるんだろ? そういうこともあるさ」

桃子「20局以上打って勝ったのは数回だけ。さすがに悔しいっす……」

京太郎「20局で数回……。麻雀はよくわからないんだけど、それはどのくらい強いってことなんだ?」

桃子「ええと、そうっすね。風越女子は知ってるっすか?」

京太郎「そりゃもちろん。長野の女子麻雀部では一番強いとこだろ」

桃子「その風越でレギュラーになれる。少なくともそれくらい強いと思うっす」

桃子「まあもちろん、実際に打つのはダメって人も中にはいるっすけどね」

京太郎「そんなに強いのか……ん? なんか書いてるみたいだぞ」



かじゅ『打ち筋からしていつも打ってくれている人だろうか? 今日も来てくれてありがとう』

むっきー『また負けちゃいました。やっぱり強いですね。一度だけでも麻雀部に見学に来てくれませんか?』

カマボコ『しつこかったらごめんなー。でも毎日来てくれて本当に嬉しいんだ』

カマボコ『見学に来たから入れ、なんてことは言わないし、それに来てくれればきっと気に入ると思うんだ』

かじゅ『気が向いたら来て欲しい、と言いたいところなのだが私たちには時間がない』

かじゅ『だから君が麻雀のことを好きなら、ぜひ部室に来て欲しい。後悔はさせない』



京太郎「おお……。凄い勧誘だな。ほら、返事書こうぜ」

桃子「……今書くっす」



default player『気持ちは嬉しいです。でもごめんなさい』

---default playerはログアウトしました---

京太郎「……ってあれ?」

桃子「どうかしたっすか?」パタン

京太郎「いや、見学くらい行ってもいいんじゃないか? あれだけ熱心に言ってくれてるんだしさ」

桃子「……まあいいじゃないっすか。ほら、帰るっすよ」

京太郎「あっ、おい」

桃子「先に行ってるっすよー」

京太郎「ちょ、ちょっと待て。先に行かれたらまた見つからなく……」

桃子「校門から出るまでに見つけられなかったら明日の昼ご飯おごりっす!」タッタッタッ

京太郎「いきなり何言って……って待て、走るなー! 見つからなくてもおごらないからな!」

桃子「見つけたら私がおごってあげるから頑張って探すっすよー!!」タッタッタッ

京太郎「絶対見つけてやる……!!」

その後東横のことは校門の辺りで電話をかけて、その着信音で見つけた。
東横には卑怯っす! ノーカウントっす!! と怒られた。理不尽だ。

---3日後---


京太郎「東横ー、いるか? 今何やってる?」

桃子「パソコンで麻雀っすよ。見ればわかるじゃないっすか」

京太郎「見れたらこんなこと聞かないっての」

桃子「……他人のコンプレックスにズバズバ切り込んでくるっすね」

京太郎「この前スルーしたらノリ悪いとか散々言ったよな!?」

桃子「記憶にないっす!」

京太郎「まったく……。麻雀はこの間の麻雀部の人とか?」

桃子「そうっすよー」

京太郎「俺あれから役とか覚えてみたんだよ。また見せて貰っていいか?」

桃子「いいっすよ。今ちょうど終わったところなんでちょっと待つっす」

京太郎「了解」

桃子「……いつもはすぐ次の局に入るんすけど今日はちょっと時間かかるっすね。席を外してるみたいっす」

京太郎「まあそういうこともあるさ。ゆっくり待とうぜ」

京太郎「……ん? あれ、今日はこの前みたいにチャットで勧誘されてないんだな」

桃子「そうなんすよね。今日は勧誘してこないみたいっす」

京太郎「脈なしと思って諦めたんじゃないか?」

京太郎「4月が終わっても勧誘してたってことはメンバーが足りないんだろうし、他の人を探すことにしたとか」

桃子「そう、かもしれないっすね。まあ何度も断っちゃったししょうがないっす」

京太郎「……毎日のようにパソコンで打ってるんだし麻雀は好きなんだろ? なんで入らなかったんだ?」

桃子「んー、まあ大した理由じゃないっす。こういう体質っすから集団行動とか苦手なんすよ」

桃子「今までこんなに必要とされたことがなかったから嬉しかったは嬉しかったっすけどね。ただ……」

京太郎「ただ?」

桃子「言うのはちょっと恥ずかしいっすけど、やっぱり、直接言ってもらうのに憧れる」

桃子「目の前で、私の目を見て必要だって言って欲し――」

そこまで言ったとき、突然教室のドアが開かれ

ゆみ「麻雀部3年の加治木ゆみだ!」

そんなことをいいながら、上級生が1人教室へと入ってきた。
穏やかな放課後に突如乱入してきたその人は、教室の真ん中までツカツカと足を進め、忙しげに周りを見渡したかと思うと大きく息を吸い込んだ。
そして――

ゆみ「私は君が欲しい!!」

京太郎・桃子「「!?」」

大声でそんなことを叫んだ。

クラスメイト達は遠巻きにして成り行きを見守っている。
下級生の教室で突然あんなことを大声でいう上級生が相手だ。普通なら俺だって関わろうと思わない。
でも事情を知っているからにはどうにかしないとなーみたいな責任感が芽生えてしまう。
だからまずは、目を白黒させている友人を焚きつけてやろう。

京太郎「東横。よかったな、まだ勧誘諦めてなかったみたいだぞ!」

桃子「その笑顔をやめるっす!」

京太郎「でもほら、東横の望み通り直接誘いに来てくれたわけだし」
                                                                        ワタシノハナシヲキイテホシイ!!>
桃子「まあそれは心底嬉しいっす」

桃子「須賀くんは茶化してると思うっすけど、私の中では嬉しさが溢れかえってるっすよ」

マジか。いやまあ茶化しているわけではないんだけど。

桃子「ただそれはそれとして、今あそこに行くのはちょっと恥ずかしいっす……」
                                                                      ワタシニハキミガヒツヨウナンダ!!>
京太郎「注目の的になれるぞ。本望じゃないか」

桃子「限度があるっす!」

今も叫んでるもんな。見た目と違って情熱的な先輩らしい。
                                                                       スコシデイイ、ハナシヲシヨウ!!>
京太郎「冗談はともかく、ここまで来てくれたんだし、麻雀部に入りたいとは思ってるんだろ?」

桃子「それはそうっすけど……」

京太郎「よし、じゃあ行くぞ」

桃子「ちょ、手を引っ張らないで……!」

ゆみ「頼む、姿を見せて――」

京太郎「あの、ちょっといいですか?」

ゆみ「!! ああ! もち、ろん……だ…………」

念願の新入部員が来たというのになぜか語尾が弱々しい。
ってそうか、東横のこと見えないんだったな。

ゆみ「その、もしかして君が私たちと麻雀を一緒にやっていた人、なのか……?」

俺しかいないと思って目に見えて落ち込む先輩。
美人のしゅんとした姿を見ていると、なんというか、もっといじめたくなってしまう。
まあかわいそうだからやらないけど。

京太郎「あれは俺じゃないですよ。ちゃんと女子です」

ゆみ「本当か!! あ、い、いや、これは君が悪いとかそういうわけではなくてだな」

落ち込んだ様子から一転して明るい表情に。そして間を置かず見せる焦った姿。
ああ、可愛いなこの人。クールビューティーな見た目とのギャップが凄くいい。

京太郎「大丈夫ですよ、事情は聞いてますしわかってます」

ゆみ「そ、そうか。ありがとう」

京太郎「それで俺の隣にいるのが先輩の探しているやつです」

ゆみ「……? すまない。隣には誰もいないように見えるのだが」

京太郎「見えないけどいるんですよ。ほら、ここです」

桃子「どうも、初めまして。東横桃子っす」スゥ

ゆみ「」ビクッ

京太郎「あ、やっぱり驚きますよね。いつものことなんで気にしないでください」

桃子「他人に言われると無性に腹が立つっすね」

ゆみ「君は一体いつからそこに……いや、そうか。君はそういう体質なんだな」

桃子「自分で言うのもなんですけど、受け入れるの早いっすね」

ゆみ「チャットの会話から何か理由がありそうだとは思っていたのでな」

ゆみ「我ながら少々派手なことをしたかなと思ったが、結果的には間違っていなかったようだ」

京太郎「いま少々って言ったか?」ヒソヒソ

桃子「言ったっすね。ちょっと見習いたいっす」ヒソヒソ

ゆみ「聞こえてるぞ……まあ、それはともかくだ。改めて言わせてもらいたい」

ゆみ「東横くん。私は、私たちには君が必要だ。麻雀部に入って欲しい」

加治木先輩は、真っ直ぐに東横の目を見つめてそう言った。
傍から見ていてもこの上なく真剣に言っているのだと感じる。
東横の望み通り、もしかしたらそれ以上のシチュエーション。
これならきっと麻雀部に入るだろうと東横のほうを見ると

桃子「…………」

あれ、なんか微妙な表情。

京太郎「東横?」

桃子「うーん」チラリ

京太郎「?」

ゆみ「……」ソワソワ

桃子「えっと、一つ条件、というかお願いがあるっすけど……」

ゆみ「何だ? 何でも言ってくれ」ガタッ

東横はなぜか加治木先輩ではなく俺の方を向く。
そして――

桃子「……須賀くんも麻雀部に入って欲しいっす」

京太郎「……は?」

突然、そんなことを言い出した。

投下は以上になります。
気になるところなどあれば言って下さい。

サクセスストーリーの人ではないですよー

なんで間違われたんだろうと思いましたが投下分見ると京モモですね
京かじゅにするつもりでやっています。期待された方は申し訳ない

なぜ私は2,3日くらいスレ立てを遅く出来なかったのかと激しく後悔
3レスくらいですが投下します

ゆみ「……その、須賀くん……でいいのかな」

京太郎「……へ!? あ、はい!」

ゆみ「今の東横くんの提案なのだが君としてはどうだろうか」

京太郎「ええと、そのですね……。と、東横? なんでいきなりそんなこと」

桃子「えっと、どうしても嫌なら無理にとは言わないっす。わけも……」チラリ

ゆみ「?」

桃子「……別に隠すようなことじゃないしすぐ教えるっす。ただ、出来れば須賀くんにも麻雀部に入って欲しいっす」

桃子「ダメっすか……?」ウワメヅカイ

京太郎「う……」

京太郎「か、加治木先輩はどうなんですか」メソラシ

ゆみ「あ、ああ。突然で驚いたが麻雀部としては断る理由はない」

ゆみ「……というか、その、入って貰わないと凄く困る」

ゆみ「君にとっても突然みたいだし困惑していると思う」

ゆみ「君にも都合があるだろう。だから助けると思ってとは言わない」

ゆみ「それでも、君がもし少しでも麻雀に興味を持っているなら、麻雀部に来て欲しい」

ゆみ「……だめだろうか?」ウワメヅカイ

京太郎「うう……!」

右を向けば東横が、左を向けば加治木先輩が、上目遣いで俺を見ている。
タイプは違うけれど美人といって差し支えない2人。

京太郎(……こんなの断れるかー!!)

京太郎「俺でよければよろしくお願いします」

ゆみ「本当か! ……ありがとう」フカブカ

京太郎「ちょ、頭を下げるのはやめて下さい!」

京太郎「さっき麻雀に興味があるなら来て欲しいって言ってたじゃないですか。だから入るんですよ」

ゆみ「……うん、そうか。須賀京太郎くん。入部してくれてありがとう」

ゆみ「東横くんは……」

桃子「女に二言はないっす! 加治木先輩、よろしくお願いします」

ゆみ「ああ、よろしく。……東横くん、ありがとう。君のおかげで私たちは大会に出ることが出来る」

桃子「私も興味があったからネトマしてたんですよ。何度も断ってたのに直接誘いに来て貰えたなんて……本当に嬉しいっす!」

桃子「それより、誘った私が言うのもなんっすけど須賀くんはこの場で決めちゃってよかったんすか?」

京太郎「どうせ放課後暇してたしさ。それに麻雀に興味を持ったってのも本当だぜ」

桃子「無理してないならよかったっす」エヘヘ

ゆみ「2人とも、入部ありがとう」

ゆみ「それでは早速だが、2人がよければ今から麻雀部に来て貰いたい。部員の紹介もしたいんだ」

桃子「私は大丈夫っす」

京太郎「俺も特に予定はないです」

ゆみ「よし、じゃあ私は先に廊下に出ているよ。あまり長居しても迷惑だろうし」

京太郎(……はっ!? 急展開すぎてここが教室だって忘れてた)

京太郎(冷静になるとクラスメイトの視線が痛い……!!)

ゆみ「ん? どうかしたか?」

京太郎「い、いえ、なんでもないです。廊下で待ってて下さい」

京太郎(明日の反応が怖いな……)ハハハ

以上になります
今度はもうちょっと書きためてから投下する予定

いやあブラジルは強敵でしたね。
投下します。

加治木先輩が先導して、俺と東横はその後をついていく。
意識しないと声が聴こえないくらいの距離を取り、ついて来ているか確認しているのかときおりこちらを振り返る。

京太郎(東横と話しやすいように気を遣ってくれたのかな)

京太郎(せっかくだし今のうちに聞いておくか)

京太郎「なあ、東横。俺を誘った理由って何だったんだ?」

桃子「え? ああ、ほら、私ってこういう体質じゃないっすか」スゥ

京太郎「話してるときに消えるな!」

桃子「冗談っすよ。こうやって意識して消えることも出来るっすけど、基本的には人に見つけてもらえない厄介な体質なんすよ」

京太郎「ああ、知ってる。俺が見つけられたのも偶然だったしな」

桃子「加治木先輩が教室に来て、誘ってくれて嬉しかった。でも私がこういう体質なのは知らなかったじゃないっすか」

京太郎「まあそんな体質があるなんて普通思わないよな」

桃子「それで、こういう体質の私とコミュニケーション取るのって大変っすよね」

桃子「私から話しかければ驚かれる。話しかけて貰おうにも私のことは見えないから、いるかわからないところに声をかけるしかない」

京太郎「ん……楽と思ったことは確かにないな。けど面倒だとか思ったことも一度もないぜ」

桃子「ありがとうっす。須賀くんはそうやって受け入れてくれたっすね」

桃子「麻雀部の人たちは私を必要としてくれた。でもそれと私を受け入れるかっていうのは別っすよね」

桃子「加治木先輩もきっと私に合わせてくれると思うっす。だけど他の人たちもそうやって受け入れてくれるか不安だったっす」

桃子「だから私との付き合いに慣れてる須賀くんが入ってくれたら安心だなって。それが理由っすよ」

京太郎「……気にしすぎじゃないか?」

桃子「そういうと思ったっす。須賀くんは私の体質は知ってても苦労までは知らないっすからね」

京太郎「それを言われるとな……。まあ不安だっていうなら、俺でよければいくらでもいくらでも入るよ」

京太郎「でもあそこまでして必要としてくれる麻雀部だ。きっと東横の心配するようなことにはならないと思う」

桃子「私の取り越し苦労だったらそれが一番っすね。そうすると須賀くんには迷惑かけただけになっちゃうっすけど」ニコッ

京太郎「さっきも言ったろ。好きで入ったんだって。……お、着いたみたいだぞ」

ゆみ「ここが麻雀部だ。入ってくれ」ガラッ

京太郎「おじゃまします」

桃子「おじゃまするっす」

智美「ゆみちんおかえりー。期待の新入部員はどうだ……ってあれ?」

睦月「ええと、先輩。もしかして麻雀の相手はそっちの男の子だったんですか?」

ゆみ「ああいや、ちゃんと女子だったよ。ええと……」キョロキョロ

ゆみ「すまない東横くん。姿を見せて貰えるか」

桃子「はいっす。私はここっすよ!!」バーン

智美「」ビクッ

睦月「」ビクッ

ゆみ「」ビクッ

京太郎(おー、みんな驚いてるなー)

ゆみ「すまない、どうもまだ慣れていないようだ……」ドキドキ

桃子「私は慣れてるので気にしないで欲しいっす」

ゆみ「そうか……なるべく早く慣れるようにするよ」

智美「ゆ、ゆみちん……」

ゆみ「ん? どうした」

智美「私はついに霊感を獲得したみたいだ!」

ゆみ「失礼なことをいうな!」

睦月「その、先輩。彼女が新入部員ですか? 今のは手品かなにかですか?」

ゆみ「ああ、彼女が今日から麻雀部に入部する東横桃子くんだ。今のについては彼女自身から聞いたほうがいいだろう」

桃子「改めまして、今日から麻雀部に入部することになりました東横桃子っす」

桃子「私は極端に存在感が薄くて、中々気づいて貰えない体質なんすよ。さっきのも隠れていた訳じゃなくて私はずっとそこにいたっす」

桃子「こういう体質っすから迷惑かけることもあると思うっすけど、これからよろしくお願いします」ペコリ

睦月「そうだったのか……ごめんなさい、驚いてしまって」

智美「私もごめんなー。でももう驚かないぞ」ワハハ

智美「しかし世界は広いなー。こんな体質もあるなんて」

睦月「そうですね。目の前にいたのに気づけなかったなんて……」

京太郎(2人とも驚いたみたいだけど、気味悪がったりはしていない)

京太郎(別に特別な反応じゃない。普通の人なら誰だってこんな反応をするはずだ)

京太郎(まあでも……)チラリ

桃子「……」

京太郎「な、俺の言ったとおりだったろ」

桃子「……そうっすね!」

智美「ところでゆみちん。そこの金髪の子は誰なんだー」ワハハ

ゆみ「ああ、こっちは須賀京太郎くん。彼も同じく新入部員だ」

京太郎「須賀京太郎です。麻雀は初心者ですがよろしくお願いします!」

睦月「うむ、よろしく。一気に2人も入ってくれて嬉しいよ」

智美「君も新入部員かー。鶴賀麻雀部史上初めての男子部員だな!」

睦月「まあ共学化したのも今年からですしね」

京太郎「ははは……泥を塗らないように頑張ります」

智美「頼むぞー少年」ワハハ

ゆみ「さて、次は私たちが自己紹介する番だな」

智美「まずは部長の私からかなー」ワハハ

京太郎「えっ」チラリ

桃子「えっ」チラリ

ゆみ「……私は部長じゃないぞ」

智美「……このくらいでは泣かないぞ」ワハハ

京太郎「す、すみません!」

桃子「ごめんなさい!」

智美「冗談だよ、冗談。期待通りの反応してくれて嬉しいぞー」ワハハ

智美「私は蒲原智美だ。麻雀部の部長をやってるぞー」

京太郎「いやその、すみません。よろしくお願いします、蒲原部長」

智美「智美」

京太郎「え?」

智美「智美って下の名前で呼んでくれ。私たち3年生は早ければ6月の頭には引退しちゃうからなー。早く仲良くなりたいんだー」ワハハ

京太郎「ええと、それじゃよろしくお願いします。智美部長」

智美「よろしくなー京太郎」

桃子「よろしくっす! 智美部長!」

智美「よろしく……モモって呼んでいいかー?」ワハハ

桃子「……! はいっす! 嬉しいっす!」

智美「よかったー。よろしくなーモモ」

睦月「じゃあ次は私が。私は津山睦月。部長たちとは違って2年生だ」

京太郎「よろしくお願いします、えっと……」

睦月「……? ああ、そうか。よろしく、京太郎くん」

京太郎「はい! よろしくお願いします、睦月先輩」

睦月「うむ」

桃子「私もよろしくっす! 睦月先輩!」

睦月「うん、よろしく。モモ」

ゆみ「さ、最後は私か……」

京太郎「どうかしましたか?」

ゆみ「い、いや。なんでもないんだ」

ゆみ「2人とも知っていると思うが改めて」コホン

ゆみ「私は加治木ゆみ。3年生だ」

桃子「よろしくっす! ゆみ先輩もモモって呼んで欲しいっす」

ゆみ「ああ、わかった。よろしくな、モモ」

京太郎「よろしくお願いします、ゆみ先輩」

ゆみ「――!」カアァ

京太郎「……ええと、本当に大丈夫ですか?」

ゆみ「だ、大丈夫だ!」

ゆみ「よろしく、きょ、きょう……うぅ」

ゆみ「ちょ、ちょっと待ってくれ」スーハー

京太郎「はい、ゆみ先輩」

ゆみ「――――!!」カアァァァ

桃子(空気読まないっすねー)

睦月(あれはわざとやってるのかな)

智美(期待の新人だなー)ワハハ

ゆみ「……その、すまない。須賀と上の名前で呼ぶことにしていいだろうか」

京太郎「え? え、ええ。いいですよ」

ゆみ「それと私のことも加治木先輩と呼んでくれると助かる」

京太郎「わかりました……」

京太郎(俺嫌われたのかな……)ズーン

桃子「そんなことないから安心するっす」ポン

京太郎「え、今の声に出てたか!?」

桃子「顔見れば須賀くんの考えてそうなことくらいわかるっす」

桃子「……あ、そうだ。今度から須賀くんも私のことはモモって呼んで欲しいっす」

京太郎「ああ、これから頑張ろうな。モモ」

桃子「一緒に頑張るっす! 京太郎!」

以上になります。
中々話が進みませんがご容赦を。

こういう展開が見たいくらいでしたらやることもあるかもしれませんが、さすがにヒロインを変える気はないのでご了承いただければと思います。
では投下します。

ゆみ「自己紹介も済んだことだし麻雀を打とうか。モモとはネットで何度も打っているが実戦での実力も知りたいしな」

桃子「私は実戦のほうが得意っすよー」フフフ

ゆみ「それは楽しみだな。須賀くんも一緒に入ってもらっていいか?」

京太郎「いえ、俺は実戦どころかネットでもやったことないので……」

ゆみ「それなら最初は見学からだな」

京太郎「はい、そうさせてもらいます」

智美「誰か一人のをじっくり見てるといいと思うぞー」

京太郎「わかりました。じゃあモモ……」

桃子「あ、私はやめたほうがいいっすよ」

京太郎「え?」

桃子「勉強するつもりなら私のは見ないほうがいいっす」

京太郎「……? まあそういうなら。ええとそれじゃあ――」

京太郎(やっぱり強い人のほうがいいよな。かじゅは加治木先輩だろうし)

京太郎「加治木先輩。見てていいですか?」

ゆみ「わ、私か!?」

京太郎「だ、駄目なんですか?」

ゆみ「い、いや。ちょっと驚いただけだ」コホン

ゆみ「私で良ければ参考にしてくれ」

京太郎「え、ええ。もちろんです」

智美「ゆみちん。そういうのちょっと直した方がいいなー」ワハハ

ゆみ「わ、わかってるっ」

智美「じゃあ始めるぞー」タン

桃子「負けないっすよ」タン

睦月「ネトマで何度も負けてるけど、先輩として最初くらいは……!」タン

ゆみ「私も譲る気はないぞ」タン

…………

………

……



【南二局】
智美「リーチ。ゆみちんをまくってやるぞー」ワハハ

桃子「……」タン

睦月(うーん……降りよう)タン

ゆみ(蒲原の捨て牌は……)チラ

ゆみ(こっちかな)タン

………

……

ゆみ「ど、どうした?」

京太郎「い、いえ。そんなことまで考えて麻雀をしているんだなと」

ゆみ「まあ必ず当たるわけではないし、そんなに大したことではないさ」

ゆみ「というか須賀くんはともかく、蒲原と津山は知っているだろう」

睦月「いえ、そういう技術があるのは知ってますがこんな身近に実践している人がいたなんて……」

智美「私はそこまでの余裕はちょっとないなー」

ゆみ「何もずっと見ているわけじゃないぞ? 重要なところだけ見ればいいんだ」

ゆみ「まあその辺りは対局が終わったら教えようか。雑談はこの辺りにして、次の局に行こう」

桃子「…………」

京太郎(そういえばモモのやつさっきから全然話してないな。集中してんのかな……?)

【南三局】
睦月(ラス親かあ。まだ焼き鳥だしここでなんとか)タン

ゆみ(今のところトップで2位のモモとは約1万5千点差)

ゆみ(配牌は四向聴か)タン

タン タン タン タン タン……

桃子「リーチっす」タン

京太郎(モモは索子の染め手っぽいな。これくらいはわかるぞ!)

睦月(一向聴から中々進まない……!)タン

ゆみ(形聴は狙えそうだな)タン

智美(ううん、引きが悪いなー)タン

京太郎(あれ、リーチしたのにみんなあんまり反応してないな)

桃子「……」タン

ゆみ(役牌が重なった。これなら上がりも狙えるか)タン

京太郎(索子!? しかも1枚も見えてない三索!?)

桃子「ロン! 立直、混一色で7700っすよ!」

ゆみ「なっ!?」

智美・睦月「えっ!?」

ゆみ「モモ、リーチ宣言は……」

桃子「ちゃんとしたっす!」

京太郎「俺も聞いてました。そんな小さな声じゃなかったと思うんですが……」

ゆみ「ん……そうか。それはすまない」

ゆみ(さっきの反応からして蒲原も睦月も、モモのリーチ宣言を聞いていない)

ゆみ(かといってモモも須賀くんもリーチをしたなどという嘘を付きはしないだろう)

ゆみ(つまりおそらく――――)

【南四局】
ゆみ(配牌はあまり良くないか……どこまで対抗できる分からないが、やるだけやってみるとしよう)タン

智美(今のは何だったんだー?)タン

桃子(フッフッフ。ネトマのリベンジ達成はもうすぐっすよー)タン

睦月(リーチが聞こえなかったなんて、こんなの初めて)タン

ゆみ「チー!」タン

桃子(仕掛けが速いっすね)

ゆみ「ポン!」タン

智美(東を鳴かれたかー。いや、でもこれは速いというか……)

ゆみ「チー!」タン

睦月(こんな先輩らしくない無理矢理な仕掛けをなんで……?)

ゆみ「ポン!」タン

京太郎(四副露!? なんでここまで急ぐ必要が……)

桃子(ううー、なるほど。そういう手もあるんすね……)

ゆみ「ロン。東のみ」

1位 加治木ゆみ
2位 東横桃子
3位 蒲原智美
4位 津山睦月

【終局】

桃子「いやー参ったっす。初見では絶対負けない自信があったんすけどねー」

ゆみ「たまたま運がよかっただけだよ。トータルではおそらく私が負け越すさ」

桃子「そもそも東場で消えられるのが普通なんすよ。まさか南二局までかかるとは思わなかったっす」

京太郎「ええと、モモ。何の話?」

桃子「最後の二局のことっすよ。ゆみ先輩が私に振り込んだのは見たっすよね?」

京太郎「ああ。加治木先輩にしてはおかしいなと思った」

ゆみ「あのときだが、私にはモモの捨て牌が見えていなかった……いや、それでは正確ではないな」

ゆみ「私にはリーチ宣言も聞こえていなかった。モモのことが認識できていなかったんだ」

京太郎「……はい?」

睦月「よかった。聞こえなかったの私だけじゃなかったんですね」

智美「むっきーも聞こえてなかったか。私も聞こえてなかったぞー」ワハハ

京太郎「いや、確かにモモは存在感薄いですけど一緒に麻雀してて消えるなんて……」

桃子「ほら、来る途中にもやったじゃないっすか。私は自分の意志でも消えられるんすよ?」

京太郎「……あー。そういえば」

桃子「麻雀でやると私だけじゃなく牌も消せるんすよ。正確に言えば気づかなくさせるっすけど」

京太郎「つまり相手に警戒されなくなるし、振り込むこともなくなるってことか? そりゃすごいな」

桃子「気づかれない私の唯一の利点といっても過言じゃないっす! まあまさか初見で破られるとは思わなかったっすけど……」

京太郎「ああ、加治木先輩が鳴きまくってたのはそれで……」

ゆみ「破るなんて大層なものじゃないさ。たまたま運よく行っただけだ」

ゆみ「どうせ見えないなら防御するのも不可能だからな。上がられたら確実にまくられてしまうし、なら鳴いて速く手を進めてしまえというだけだよ」

桃子「まあ理屈ではそうっすけど……私が鳴けないから手が遅いってのもわかった上でやったんすよね。凄いっす!」

ゆみ「ネトマのときから極端な面前思考で気になっていたから試してみたんだ。上手くいって幸いだった」


京太郎「なんというか……追いつける気がしない」

智美「気にするな京太郎。私もだー」

睦月「私なんてリーチ宣言聞き逃したとしか思ってませんでしたよ……」

ゆみ「さて、じゃあもう1局打とうか」

桃子「次は負けないっすよー」

智美「京太郎、私が抜けるから代わりに入るんだー」ワハハ

京太郎「え!? でも俺ほんと初心者で……」

睦月「私も入ってすぐ打たされたよ。とりあえずやってみよう?」

ゆみ「とりあえず簡単なルールさえ分かっていれば大丈夫だ。別に練習だし軽い気持ちでいいぞ」

京太郎「……そうですね。よろしくお願いします!」

…………

………

……



京太郎「」ズーン

智美「見事に飛んだなー」

桃子「見事に飛んだっすねー」

睦月「先輩の倍満と跳満に続けて振り込み……」

ゆみ「その、すまない。どうも運がよすぎたようで……」アセアセ

京太郎「い、いえ。手加減しちゃ練習になりませんしね……」ハハハ

以上になります。
次あたりで入部初日終わらせたいです。

智美「テンパイ」

桃子「ノーテンっす」

睦月「ノーテンです」

ゆみ「テンパイだ」

智美「うっ、また止められてたか。今回はわからないと思ったんだけどなー」ワハハ

ゆみ「蒲原とは何度も打ってるからな。なんとなくわかるさ」

京太郎(南二局まで終わって、振り込んだのは睦月先輩と蒲原先輩が一回ずつ)

京太郎(加治木先輩ももちろんだけど、他の3人も全然振り込まないな)

京太郎(……見ててもどうやって止めてるのかさっぱりわかんねえ!!)

ゆみ「須賀くん? どうかしたか?」

京太郎「あーその。染め手とかは分かるんですけど、今のとかどうやって止めてるのかなと思いまして」

ゆみ「ああ、なるほど。基本的には捨て牌を見て予測しているんだ。筋とか色々あるんだが……まだ君には早いな」

京太郎「はい」キッパリ

ゆみ「そう断言されても困るな」ハァ

ゆみ「他にも相手を直接観察して理牌や目線を見ているが、これは慣れるまではやめたほうがいいだろう」

ゆみ「まあ特に理牌は相手の癖を知らなければわからないから、あまり使うべきではないのかもしれないが……ん?」

京太郎「」ポカーン

智美「」ポカーン

睦月「」ポカーン

ゆみ「ど、どうした?」

京太郎「い、いえ。そんなことまで考えて麻雀をしているんだなと」

ゆみ「まあ必ず当たるわけではないし、そんなに大したことではないさ」

ゆみ「というか須賀くんはともかく、蒲原と津山は知っているだろう」

睦月「いえ、そういう技術があるのは知ってますがこんな身近に実践している人がいたなんて……」

智美「私はそこまでの余裕はちょっとないなー」

ゆみ「何もずっと見ているわけじゃないぞ? 重要なところだけ見ればいいんだ」

ゆみ「まあその辺りは対局が終わったら教えようか。雑談はこの辺りにして、次の局に行こう」

桃子「…………」

京太郎(そういえばモモのやつさっきから全然話してないな。集中してんのかな……?)

【南三局】
睦月(ラス親かあ。まだ焼き鳥だしここでなんとか)タン

ゆみ(今のところトップで2位のモモとは約1万5千点差)

ゆみ(配牌は四向聴か)タン

タン タン タン タン タン……

桃子「リーチっす」タン

京太郎(モモは索子の染め手っぽいな。これくらいはわかるぞ!)

睦月(一向聴から中々進まない……!)タン

ゆみ(形聴は狙えそうだな)タン

智美(ううん、引きが悪いなー)タン

京太郎(あれ、リーチしたのにみんなあんまり反応してないな)

桃子「……」タン

ゆみ(役牌が重なった。これなら上がりも狙えるか)タン

京太郎(索子!? しかも1枚も見えてない三索!?)

桃子「ロン! 立直、混一色で7700っすよ!」

ゆみ「なっ!?」

智美・睦月「えっ!?」

ゆみ「モモ、リーチ宣言は……」

桃子「ちゃんとしたっす!」

京太郎「俺も聞いてました。そんな小さな声じゃなかったと思うんですが……」

ゆみ「ん……そうか。それはすまない」

ゆみ(さっきの反応からして蒲原も睦月も、モモのリーチ宣言を聞いていない)

ゆみ(かといってモモも須賀くんもそんな嘘を付きはしないだろう)

ゆみ(つまりおそらく――――)

【南四局】
ゆみ(配牌はあまり良くないか……どこまで対抗できる分からないが、やるだけやってみるとしよう)タン

智美(今のは何だったんだー?)タン

桃子(フッフッフ。ネトマのリベンジ達成はもうすぐっすよー)タン

睦月(リーチが聞こえなかったなんて、こんなの初めて)タン

ゆみ「チー!」タン

桃子(仕掛けが速いっすね)

ゆみ「ポン!」タン

智美(東を鳴かれたかー。いや、でもこれは速いというか……)

ゆみ「チー!」タン

睦月(こんな先輩らしくない無理矢理な仕掛けをなんで……?)

ゆみ「ポン!」タン

京太郎(四副露!? なんでここまで急ぐ必要が……)

桃子(ううー、なるほど。そういう手もあるんすね……)

ゆみ「ロン。東のみ」

1位 加治木ゆみ
2位 東横桃子
3位 蒲原智美
4位 津山睦月

【終局】

桃子「いやー参ったっす。初見では絶対負けない自信があったんすけどねー」

ゆみ「たまたま運がよかっただけだよ。トータルではおそらく私が負け越すさ」

桃子「そもそも東場で消えられるのが普通なんすよ。まさか南二局までかかるとは思わなかったっす」

京太郎「ええと、モモ。何の話?」

桃子「最後の二局のことっすよ。ゆみ先輩が私に振り込んだのは見たっすよね?」

京太郎「ああ。加治木先輩にしてはおかしいなと思った」

ゆみ「あのときだが、私にはモモの捨て牌が見えていなかった……いや、それでは正確ではないな」

ゆみ「私にはリーチ宣言も聞こえていなかった。モモのことが認識できていなかったんだ」

京太郎「……はい?」

睦月「よかった。聞こえなかったの私だけじゃなかったんですね」

智美「むっきーも聞こえてなかったか。私も聞こえてなかったぞー」ワハハ

京太郎「いや、確かにモモは存在感薄いですけど一緒に麻雀してて消えるなんて……」

桃子「ほら、来る途中にもやったじゃないっすか。私は自分の意志でも消えられるんすよ?」

京太郎「……あー。そういえば」

桃子「麻雀でやると私だけじゃなく牌も消せるんすよ。正確に言えば気づかなくさせるっすけど」

京太郎「つまり相手に警戒されなくなるし、振り込むこともなくなるってことか? そりゃすごいな」

桃子「気づかれない私の唯一の利点といっても過言じゃないっす! まあまさか初見で破られるとは思わなかったっすけど……」

京太郎「ああ、加治木先輩が鳴きまくってたのはそれで……」

ゆみ「破るなんて大層なものじゃないさ。たまたま運よく行っただけだ」

ゆみ「どうせ見えないなら防御するのも不可能だからな。上がられたら確実にまくられてしまうし、なら鳴いて速く手を進めてしまえというだけだよ」

桃子「まあ理屈ではそうっすけど……私が鳴けないから手が遅いってのもわかった上でやったんすよね。凄いっす!」

ゆみ「ネトマのときから極端な面前思考で気になっていたから試してみたんだ。上手くいって幸いだった」


京太郎「なんというか……追いつける気がしない」

智美「気にするな京太郎。私もだー」

睦月「私なんてリーチ宣言聞き逃したとしか思ってませんでしたよ……」

ゆみ「さて、じゃあもう1局打とうか」

桃子「次は負けないっすよー」

智美「京太郎、私が抜けるから代わりに入るんだー」ワハハ

京太郎「え!? でも俺ほんと初心者で……」

睦月「私も入ってすぐ打たされたよ。とりあえずやってみよう?」

ゆみ「とりあえず簡単なルールさえ分かっていれば大丈夫だ。別に練習だし軽い気持ちでいいぞ」

京太郎「……そうですね。よろしくお願いします!」

…………

………

……



京太郎「」ズーン

智美「見事に飛んだなー」

桃子「見事に飛んだっすねー」

睦月「先輩の倍満と跳満に続けて振り込み……」

ゆみ「その、すまない。どうも運がよすぎたようで……」アセアセ

京太郎「い、いえ。手加減しちゃ練習になりませんしね……」ハハハ

改めて以上です。
グダって申し訳ない。
更新数見て投下多いなと思った人ごめんなさい。

最初の投下する前はWBC終わる頃には終わらせたいなと思ってたんですが、今思うとあの頃は何考えてたんだろうという感じです。
投下します。

――帰り道――

智美「それじゃあ私たちはこっちだから」

桃子「また明日っすー!」

睦月「さようなら先輩。京太郎くん、また明日」

京太郎「はい、お疲れさまでした」

ゆみ「ああ、また明日」

下校途中の大きな交差点。鶴賀の生徒の多くはここで大きく二手に分かれて帰宅する。
俺達麻雀部もそのご多分に漏れず、俺と加治木先輩は右へ、部長と睦月先輩とモモは左へと分かれることになった。


京太郎「……」テクテク

ゆみ「……」カラカラカラ

京太郎「……その、加治木先輩自転車押してますけど家遠いんですか?」

ゆみ「あ、ああ。学校まで大体自転車で20分ちょっとかかるな」

京太郎「そうなんですか。……急いでるようでしたら俺に気を遣わなくても大丈夫ですよ」

ゆみ「いや、今日は特に何もないから大丈夫だ。途中まで……い、一緒に帰ろう」

京太郎「そうですか……」

ゆみ「……」カラカラカラ

京太郎「……」テクテク

京太郎(……き、気まずい!!)

京太郎(なんか会話もぎこちないし、嫌われたのか苦手に思われたのか……)

京太郎(こっちから話しかけないほうがいいかな。でもこのまま無言ってのも……)

京太郎(うん、悪いところがあったら直せばいいんだしな。もう一回声をかけて)

ゆみ「須賀くん!」

京太郎「は、はいぃ!!?」

京太郎(な、なんだ!? なんかしたか俺!?)

ゆみ「その、だな……」

京太郎「……」

ゆみ「……」

京太郎「…………」

ゆみ「……すまない、ちょっと情けないことで話すのに心の準備が必要でな」

京太郎「……?」

ゆみ「ふぅ……」スーハー

ゆみ「……その、私は男子と話すのが得意ではなくてな」

京太郎「……は?」

ゆみ「君に対してそっけない態度を取っていると思うのだが、決して君のことが嫌いとかそういうわけではないんだ」

京太郎「え、いやでも部活とか教室ではそんなこと全然」

ゆみ「麻雀なら君に対しては指導するという立場でいられるからな。普通に話すのに比べれば大した緊張はない」

ゆみ「教室は……あのときの私はどうかしていた」カァァァ

ゆみ「部員を見つけることだけを考えていて、他のことは何も頭になかった。緊張なんてする暇もなかったよ」

京太郎「そうだったんですか」

ゆみ「だから、その、だな。君を不快にさせてしまったかもしれないが、決してわざとというわけではないんだ」

京太郎「ははは、嫌われたのかと思ってましたよ」

ゆみ「す、すまない……」シュン

京太郎「い、いえ。そういうつもりでは」

京太郎「言ってくれて嬉しかったですよ。言われなかったら誤解したままだったかもしれないです」

ゆみ「ん……そうか。そういってくれると助かる」

京太郎「でも意外ですね。男子とか苦手な風には見えないです」

ゆみ「ふむ、まあ女の子らしい見た目ではないからな」

京太郎「そんなことないですよ!」

ゆみ「はは……うん、そう言ってくれるのは嬉しいよ」

京太郎(本心なんだけどなあ……)

ゆみ「男子と話すのが苦手な理由は、まあ単純に話す機会がなかったんだ」

京太郎「小さい頃から女子校だったんですか?」

ゆみ「いや、そういうわけではないんだが、私は小さい頃から何かと男子を注意するような役回りになることが多くてな」

京太郎「あー……」

ゆみ「今日一日一緒にいただけだが、何となく分かるだろう?」

京太郎「ええ、なんとなくわかります」

ゆみ「自分から言うことはそんなになかったんだが、女子から注意してくれとよく頼まれた」

ゆみ「そのせいで男子からは敬遠され、女子からはさらに頼られ、男子と普通に話す機会をほとんど持てなかった」

ゆみ「その上女子校に入学してしまったからな。自業自得ではあるんだが、慣れようがなかったんだ」ハハハ

京太郎「共学化したときとかはどうだったんですか?」

ゆみ「麻雀部に来るかもしれないと思ってやはり緊張したよ。結果は……まあ今日見た通りだが」

京太郎「あはは……」

ゆみ「まさか1人も入らないとは思わなかった。まあ確かに麻雀をやりたい子がわざわざ鶴賀に来るわけはないんだが」ハァ

ゆみ「だから今日、モモと君、2人も入ってくれて本当に感謝している」

京太郎「モモはわかりますけど俺もですか?」

ゆみ「ああ、もちろんだ」

京太郎「でも俺は男子ですし、麻雀も初心者ですよ」

ゆみ「確かに大会には出たいし、そのために部員を集めていた。でも私が卒業した後、部員不足で麻雀部が潰れてしまっては悲しいだろう?」

ゆみ「女子だろうと男子だろうと、麻雀の経験があろうとなかろうと関係ない。私は君が入ってくれてとても嬉しかったよ」ニコッ

京太郎「――!」カァァ

ゆみ「うん? どうかしたか?」

京太郎「い、いえ。なんでもないです」

京太郎(ほんと先輩はストレートだな……!)

京太郎「そういえば部員って今日いたので全員なんですか?」

ゆみ「? あれで全員だがそれが?」

京太郎「いえ、麻雀の団体戦って5人でやるじゃないですか。1人足りないんじゃないかと」

ゆみ「ああ、そのことか。確かに説明していなかったな」

ゆみ「蒲原には幼馴染がいるんだが、その子が4人集まったら入ってくれると言っているらしいんだ」

京太郎「ああ、じゃあモモが入ったからその人も入ってくれるんですね」

ゆみ「そういうことだ。彼女は初心者と言っていたかな。君と一緒だ」

京太郎「へーそうなんですか。よかったです、1人初心者で気後れしてたんで……」ハハハ

ゆみ「誰だって始めたときは初心者だよ。これから上手くなればいい」

京太郎「今日の加治木先輩とモモの会話聞いてたらそうは思えませんよ……」

ゆみ「モモのは彼女の生まれ持った資質だけど、私のは練習の賜だ。努力次第だが私くらいにはなれるさ」

京太郎「うーん、なれますかねえ」

ゆみ「なに、これから私たちが教えるんだ。独学で学んできた私より上手くなって貰わないとな」

京太郎「ははは、そうですね。ご指導よろしくお願いします」ペッコリン

ゆみ「ああ、任された」フフッ

京太郎「それじゃあ俺はこっちなんで」

ゆみ「ああ、それじゃあ……もうこんなところか。君との話に夢中で気がつかなかった」

京太郎「ありがとうございます。――あ、そうだ。加治木先輩」

ゆみ「なんだ?」

京太郎「加治木先輩が男と話すの苦手っていうの、きっと思い込みだと思いますよ」

ゆみ「そうだったらいいが、現に私は君にぎこちない態度を取ってしまっていたと思うのだが……」

京太郎「全くないとは言いませんが、そういうのって大体俺が急に話しかけたときとかじゃないですか」

京太郎「多分話すのが苦手というよりは、何を話せばいいのか分からないんですよ」

ゆみ「それは確かにそうだが、その2つにあまり差はないんじゃないか……?」

京太郎「だってほら、先輩と俺、帰り道は普通に話してたじゃないですか」

ゆみ「ふむ、確かに言われてみればそうだな」

京太郎「あんまり固く考えなければいいんですよ。そうすればきっとすぐ直ります」

ゆみ「ああ、君の言うとおりかもしれないな。でも、須賀くんだからというのもあると私は思う」

京太郎「えっ……」ドキッ

ゆみ「私に話しかけてくる男子はほとんどいなかったからな。高校に入ってからは須賀くんが初めてだ」

京太郎「あ、ああ。そういう……」

ゆみ「すぐには慣れないと思うが、これからも話しかけてくれると嬉しい」

京太郎「え、ええもちろんです」

ゆみ「ありがとう。それではまた明日。部室で」

京太郎「さようなら……」

京太郎「……」

京太郎「…………」

京太郎「天然でやってんのかあれは!?」

以上になります。
初日終わったらさくさく日程飛ばしたいです。

初日終わらせるのに20日かかるとは……
投下します。

――自室――

京太郎「お、咲からのメールか」

京太郎「1日ぶりだな。どれどれ……」

咲『京ちゃん元気?』

京太郎『おう、元気だぞ。昨日はメールなかったけどどうしたんだ?』

咲『本を読んでたらそのまま寝ちゃって……』

京太郎『はは、お前らしいな』

咲『うぅ……そ、そんなことより、今日私文芸部に行こうとしたんだよ!』

京太郎『おお、ついに入部し……行こうとした?』

咲『う、うん。その、ドアの前までは行ったんだけど、中がすごく和気あいあいとしてて入りづらくて……』

京太郎『まあもう5月だからなあ』

咲『どうしよう京ちゃん! 私文芸部に入れないよ!!』

京太郎『いやそのくらい気にせず入れよ……そもそもなんで4月に入らなかったんだ?』

咲『ええと、ほら、清澄に行った友達がいるじゃない?』

京太郎『ウチの中学から清澄に結構行ってたよな? 図書委員のやつ?』

咲『ううん、そっちじゃなくて班で一緒だったクラスの子』

京太郎『ああ、あいつか。結構仲良かったよな』

咲『そうそうその子。まあ京ちゃんとほどじゃなかったけどね』エヘヘ

京太郎(俺基準って……まあいいか)

京太郎『それでそいつがどうしたんだ?』

咲『うん、その子に一緒に文芸部に見学に行かない? って誘ったんだけど断られちゃって』

京太郎『へー、見学くらい行ってくれてもいいのにな』

咲『まあ先週誘った私も悪かったんだけど』

京太郎『先週!? ちなみにあいつ部活入ってるのか?』

咲『入学してすぐ園芸部に入ったよ。私も見学に付き合ったの』

京太郎『断られるに決まってんだろ!!』

咲『やっぱりそうだよね……』

京太郎『っていうか4月に行ってない理由にはなってなくないか?』

咲『ええと、さっき言ったとおり4月の初めにあの子と一緒に園芸部に行ったんだけど、私も体験入部したんだ』

京太郎『咲は花育てるのも好きだったよな』

咲『うん、最初はお花を育てるの楽しいし、本は1人でも読めるからここに入ろうかなと思ったんだけど……』

京太郎『ふむふむ』

咲『園芸部って土とかお花の鉢運んだりするんだ。それが結構重くて……』

京太郎『あー、それがきつくてやめたのか』

咲『そのくらいじゃやめないもん!』

京太郎『え? じゃあなんでやめたんだよ』

咲『ええと、頑張って運ぼうとしたんだけどお花植えてるプランターこぼしちゃって……』

京太郎『お、おう。まあでも一回くらいならやめるほどではないんじゃないか』

咲『ううん、何度も』

京太郎『…………』

咲『無言はやめてぇ!!』

京太郎『ま、まあ居づらくなって園芸部やめたのはわかった。それで?』

咲『え?』

京太郎『体験入部のうちにやめたんだろ? なら文芸部だって体験入部期間に行けたんじゃないか?』

咲『そ、それはそのう……』

京太郎『……うん、言わなくていいぞ。大体わかった』

咲『うぅ……で、でも勇気出したよ! 先週は友達誘ったし、今日は部室の前まで行ったもん!』

京太郎『まあなんだ。咲が頑張ったのはよくわかった。でももう少し頑張ろうな』

咲『京ちゃぁん……』

京太郎『入っちゃえば意外となんとかなるもんだぜ。俺も今日部活入ったけどみんな歓迎してくれたよ』

咲『京ちゃん部活入ったの!? 何部?』

京太郎『麻雀部』

咲『麻雀……京ちゃん麻雀出来たっけ?』

京太郎『いや全く。完全に初心者だよ。でも歓迎してくれた』

咲『そっか』

京太郎『咲は麻雀出来るのか?』

咲『……うん、出来るよ。昔よく家族でやってた』

京太郎『へー、なら麻雀部入ったらどうだ?』

咲『麻雀部?』

京太郎『ほら、清澄の麻雀部って聞いたことないからきっと強くないだろ? なら5月からでもウチみたいに歓迎してくれるさ』

京太郎『それに麻雀部なら大会でお前と会えるかもしれないしさ』

咲『……そうだね。考えてみる』

京太郎『まあ最終的には咲が後悔しないようにすればいいと思うけどな』

咲『これだけ言っておいて結局それ? ……うん、でもありがと』

京太郎『おう』

咲『ところで京ちゃん。大会で会えるかもってもしかして女子と合同の部活なの? そういえば鶴賀って元女子校だったよね?』

京太郎『ああ、というか俺以外全員女子だよ』

咲『な、何それ!!』

京太郎『何って……去年まで女子校だったし麻雀部も俺含めて今のところ5人だしな。そういうこともあるだろ』

咲『どうせハーレムだー! とか思ってるんでしょ!』

京太郎『初心者俺1人だぜ? そんな余裕ねえよ。……まあ嬉しくないって言ったら嘘になるけど』

咲『京ちゃんのバカ! もう知らない!!』

京太郎「おおう……まあ部活入れないって相談してきたのに、俺は部活でハーレムだって言ったらそりゃいい気分はしないか」

京太郎「なんて返すかなあ。ってあれ、咲からメールが」

咲『言い忘れてた、おやすみ!!』

京太郎『おやすみ。別に男子が俺だけだから入ったわけじゃないからな!』

咲『うん……その、私急に怒っちゃったけど、京ちゃん怒ってない? 明日もメールしていいよね?』

京太郎『これくらいで怒るわけないだろ? 明日は俺からメールするよ』

咲『京ちゃんありがとう!!』

京太郎『俺も悪かった。また明日』

京太郎「10時半か。ちょっと早いけどもう寝……ん? 加治木先輩からメール?」

ゆみ『今日はありがとう。男子と話したのは久々だったよ』

京太郎『いえ、俺も楽しかったですよ。それにしてもアドレス交換しましたけど、まさか今日メール貰えるとは思いませんでした』

ゆみ『蒲原に話したらその日のうちにメールするべきだと言われたんだが……』

京太郎(早く仲良くなるようにって部長が気を遣ってくれたのかな……うん、まあ嬉しいんだけど)

ゆみ『男子にメールしたのは初めてなのだが何かおかしなところがあっただろうか』

京太郎『いえありませんよ。せっかくですし、教本で気になったところがあるのでよければ教えて下さい』

ゆみ『勉強熱心だな。いいぞ、なんでも聞いてくれ』

京太郎『それじゃあ――』

以上になります。
今週は3回くらい投下する予定。

WBC負けちゃいましたねー。決勝を放送しないようで残念。
では投下します。

京太郎「ロ、ロン!! 立直平和で裏ドラは……乗った! 3900です!」

ゆみ「む……」

京太郎「よっしゃあ! やっと加治木先輩から直撃取れた!」

智美「ついにゆみちんから直撃かー。気分はどうだー」ワハハ

京太郎「最高です!」

桃子「後は私から直撃取れば全員制覇っすね!」

京太郎「モモ、一度消えないでやってみないか?」

桃子「消える前に頑張るっす!」

京太郎「せめて東場は消えないでくれよ……」

桃子「気合で頑張るっす!」

京太郎「うぅ……」

佳織「うわー凄いね京太郎くん!」

京太郎「ははは、佳織先輩には負けますよ」

佳織「? 私加治木先輩からロンしたことないよ?」

京太郎「あははは……」

京太郎(代わりに初めての麻雀で役満上がってるんだよなあ……)

睦月「おめでとう京太郎くん。でもまだ打ってる最中だからほどほどに」

京太郎「あ、すみません。つい嬉しくて」

睦月「ふふ、私も初めてのときははしゃいだから気持ちはわかるよ」

京太郎「睦月先輩がはしゃぐのってあんまり想像つかないですね」

ゆみ「今の須賀くんのような感じだよ。まあそのうち見られるさ」

京太郎「そのうち?」

ゆみ「津山はプロ麻雀せんべいをよく食べているだろう?」

京太郎「そうですね。俺も睦月先輩に影響されて食べ始めましたよ」

ゆみ「いつの間に……まあいい。津山はレアカードが当たったとき、人が変わったように喜ぶんだ」

睦月「そ、そんなことないですよ!」

京太郎「へー。楽しみにしてますね」

睦月「しなくていいから!」

智美「3人とも、そろそろ次の局行くぞー」

ゆみ「そうだな。すまない」

京太郎「この勢いでトップを狙います!」

…………

………

……

京太郎「結局3位か。配牌は良かったんだけどなあ」

桃子「京太郎は牌効率がまだまだっすね。いくら配牌がよくてもそれじゃ勝てないっすよ」

京太郎「一応考えてるつもりなんだけど難しいな。筋とか壁とかそういうのは決まってるから覚えやすいんだけど」

桃子「え? もう覚えたんすか?」

京太郎「ああ、教本読んだり加治木先輩に教わったりしてるからな。もうバッチリだ!」

桃子「見た目と違って真面目っすねー……ってゆみ先輩に?」

京太郎「見た目は関係ないだろ! そうだけどどうかしたか?」

桃子「部活でそんなにじっくり話してるの見たかなーと」

京太郎「ああ、帰ってからメールで教えて貰ってるんだよ」

桃子「む。個人指導っすね」

京太郎「まあそうなるな」

桃子「羨ましいっす!」

京太郎「は?」

桃子「私もゆみ先輩に教えてもらいたいっす!」

京太郎「それを俺に言われてもなあ」

ゆみ「私なら構わないぞ」

京太郎「加治木先輩!?」ビクッ

ゆみ「あんまり驚かれると傷つくな……」

京太郎「す、すみません」

ゆみ「い、いや、冗談だ。気にしないでくれ。……それよりモモ、聞きたいことがあったらいつでもメールしてくれて構わないぞ」

桃子「ほんとっすか!?」

ゆみ「ああ、後輩の指導も先輩の役目だ。なるべく速く返信するよ」

桃子「嬉しいっす! ゆみ先輩大好きっすー!」

智美「ゆみちん、ちょっと来てくれ」コイコイ

ゆみ「?」テクテク

智美「部員が集まって嬉しいのはわかるけど、最近ちょっと詰め込み過ぎてないかー?」

ゆみ「そんなつもりはないんだが……」

智美「牌譜持ち帰る量も増えたし、他校の研究も本格的に始めたんだろー?」

ゆみ「バレていたのか」

智美「これでも部長だぞー」ワハハ

ゆみ「……まあそうだな。お前の言うとおり以前より熱心にやっているよ」

ゆみ「折角部員が集まったんだ。1回戦で負けて終わりなんて嫌じゃないか」

智美「それには同意だなー。でも少しくらい分けてくれてもいいんだぞ」

ゆみ「そうだな……」ムゥ

智美「私とゆみちんの仲だろ? 遠慮せず言ってくれていいぞ」

ゆみ「ん……こういうのはなんだが、私のほうが向いていると思うんだ」

智美「やっぱり私じゃ力不足かー」ワハハ

ゆみ「いや、性格的に」

智美「想定外の方向から突き刺さったな……」

ゆみ「遠慮するなと言ったのはお前だろう」

智美「そっちから来るとは思わなかったぞ」

ゆみ「まあ1人でやったほうが効率的だというのもなくはないがな」

智美「じゃ、じゃあアドバイスの方なら! それなら私でも出来るぞ!」

ゆみ「私がやると言ったことだしな。それを任せるというのも」

ゆみ「それに……」チラッ

智美「?」

桃子「むっちゃん先輩! この間話してた喫茶店に行く話っすけど、今日の帰りどうっすか?」

睦月「今日は予定もないし……うむ、行こうか」

桃子「かおりん先輩はどうっすか?」

佳織「~♪」

京太郎「佳織先輩、モモが呼んでますよ」

佳織「えっ!? ご、ごめんね桃子さん」

桃子「私はこっちっすよ」

佳織「あわわわ……」

京太郎「気にしないでください。そのうち見つけられるようになりますよ」

桃子「京太郎が言うんじゃないっす!」

睦月「あはは、京太郎くんはどうする? 一緒に行く?」

京太郎「行きたいんですが課題が残ってるので……」

睦月「そう……あ、そうだ。この前約束したプロ麻雀カード、ダブってるやつ持ってきたよ」

京太郎「おお、ありがとうございます!」

佳織「キラキラだねー」

睦月「結構貴重なレアなんだ。大事にしてね」

京太郎「はい!」

ゆみ「」ジー

智美「どうしたゆみちん。恋する乙女かー」ワハハ

ゆみ「なっ!? バ、バカを言うな!!」

智美(からかいがいがあるなー)ワハハ

ゆみ「……私はあんな風に仲良くなれていないからな。せめて麻雀で距離を縮めたい」

智美「そんなことないと思うけどなー」

ゆみ「それに実際大した負担ではないんだ。頼ってもらえるというのは純粋に嬉しいしな」

智美「まあゆみちんがそういうなら。でも無理はダメだぞ」

ゆみ「ああ、わかってるよ」

京太郎「智美部長、加治木先輩! 早く帰りましょう!」

ゆみ「すまない、今行く……っと」フラッ

京太郎「大丈夫ですか?」

ゆみ「少しふらついただけだ。心配ない」

桃子「先輩も喫茶店行かないっすか?」

ゆみ「ありがとう。だけど牌譜の整理があるから遠慮しておくよ」

桃子「残念っす……」

智美(……やっぱり心配だなー)

以上になります。
京太郎も3位にはそこそこなってる設定。

センバツ始まりましたねー。今年こそ埼玉の優勝を見たいものです。
では投下します。

京太郎「こんにちはー……ってあれ。部長だけですか」

智美「みんなまだみたいだなー」

京太郎「じゃあ来るまで教本でも読んで……」

智美「なあ京太郎、息抜きするなら何がいいと思う?」

京太郎「唐突ですね」

智美「いいからいいから」

京太郎「そうですねー……まあ普通に遊びに行くのが一番じゃないですか?」

智美「やっぱりそうだよなー」ワハハ

京太郎「急にどうしたんですか?」

智美「最近ゆみちん根詰めてるだろ? 息抜きに買い物に誘ったんだけど断られちゃってなー」

京太郎「そういえばたまに辛そうにしてますね」

智美「だろー? 大会まで時間がないのは確かだけど、あれで持つのか心配なんだ」

京太郎「時間がないといっても無理が続くほどではないですしね」

智美「気を抜いてくれればまた違うと思うんだけどなー。京太郎、何かゆみちんに息抜きさせるいい方法はないかー?」

京太郎「ただ誘うだけだとダメだったんですよね? うーん……」

智美「まあすぐじゃなくてもいいさ。考えておいてくれ」

京太郎「わかりま……」

ゆみ「」ガラッ

京太郎「」ビクッ

智美「」ビクッ

ゆみ「ど、どうしたんだ?」

智美「い、いや。なんでもないぞー」ワハハ

ゆみ「怪しいな……何かよからぬことでも考えてたんじゃないだろうな」

京太郎「そ、そんなことないですよ! それよりその雑誌はなんですか?」ガタタッ

智美(ナイスフォローだ京太郎!)

ゆみ「バ、バカっ! 近い!」カアァァ

京太郎「はっ! す、すみません!」カアァァ

智美(……わざではないんだろうなー)

ゆみ「ざ、雑誌だったな。これは麻雀の専門誌だよ」コホン

京太郎「そ、そういえばそういう名前の見たことあります」

ゆみ「初心者向けのコーナーもある。参考になるだろうから読んでみるといい」

京太郎「へー、読んでみますね」ペラペラ

京太郎「……ん?」

ゆみ「どうかしたのか?」

智美「どれどれ……高校生チャンプ宮永照?」

京太郎「ええ、はい」

智美「確かに美人だから気になるのもわかるけど、女子2人の前でそれは感心しないなー」ワハハ

ゆみ「須賀くん、そうなのか……」ジー

京太郎「違いますよ!」

智美「ワハハ、冗談だ」

ゆみ「わ、私はわかっていたぞ」

京太郎「加治木先輩……まあいいです。えっと、前に住んでたところに宮永って幼馴染がいるんですよ」

ゆみ「なるほど、同じ名字だな」

京太郎「そいつも女子なんですけど、なんとなく雰囲気が似てるなーと思いまして」

ゆみ「宮永照のいる白糸台は東京だろう? 須賀くんは前に住んでいたところも長野だったと聞いた覚えがあるのだが」

京太郎「ええ、そうなんですけど他人の空似とは思えなくて」

智美「ふーん。なら親戚なのかもしれないなー。その子も麻雀は強いのか?」

京太郎「いえ、そもそも打ってるところも見たことが……」

京太郎「あ、いや。そういえば家族麻雀はしていたみたいです。俺も最近聞いたんですが」

ゆみ「ふむ、仮に宮永照がその幼馴染の親戚だとすると、我が部には高校生女子麻雀チャンピオンの親戚の幼馴染がいることになるわけか」

智美「世間は狭いなー」

京太郎「近いのか遠いのか微妙な繋がりですけどね」ハハハ

佳織「何を話してるんですか?」ガラッ

モモ「私も入れて欲しいっすー!」

佳織「わっ! 桃子さん!?」

睦月「最初からいたよ」クスクス

智美「みんな来たかー。今は京太郎が女子麻雀チャンプの知り合いだって話をしてたんだー」ワハハ

京太郎「ちょっと部長!?」

桃子「なんと、衝撃の事実っす! さては今までの麻雀素人っぷりも演技っすね!?」

佳織「京太郎くんそんな人と知り合いなの!? 凄いねー。でもおんなじ初心者だと思ってたからちょっと寂しいな」

京太郎「モモ悪ノリするな! 佳織先輩、智美部長のもモモのも嘘ですからね!?」

佳織「智美ちゃん嘘だったの? もう、信じちゃったじゃない」

ゆみ「正確にはチャンピオンの親戚の幼馴染かもしれないというところだな」

睦月「反応が難しいですね……」

京太郎「雑誌見てての雑談ですから! もうやめて下さい……!」

桃子「その屈辱は麻雀で晴らすっすよ! さあ勝負っす!」

京太郎「お前のせいでもあるからな!? 畜生、今日こそは勝ってやる!」

桃子「受けて立つっすよー!」

ゆみ「はは、今日は最初は1,2年生に譲ろうか」

智美「私たちは見学だなー」

睦月「ありがとうございます。モモも京太郎くんも、2人で盛り上がってるけど私も負けないよ」

佳織「私も頑張ります!」

…………

………

……

――帰り道――

京太郎「それじゃみなさんまた明日」

佳織「また明日」

睦月「さようなら」

智美「2人ともまたなー」

モモ「今日の雪辱はまた果たすっすよ!」

京太郎「今日だけで何度も果たされたよ!」

ゆみ「はは、4人ともまた明日」


京太郎「……」テクテク

ゆみ「……」カラカラカラ

京太郎(何度も一緒に帰ってるけど、やっぱり別れてすぐは会話が途切れるなあ)

京太郎(俺から話しかければいいんだろうけど……)チラ

ゆみ「……」ソワソワ

京太郎(……うん、もうちょっと待ってみよう)

京太郎「……」テクテク

ゆみ「……」カラカラカラ

京太郎「……」テクテク

ゆみ「……す、須賀くんっ」

京太郎「はい、何でしょう」

ゆみ「その、だな。今日は初めての2位おめでとう」

京太郎「ありがとうございます!!」

ゆみ「うわっ」ビクッ

京太郎「いやもうほんと嬉しかったんですよ! いつ話振ってくれるかなってそわそわして……って」

ゆみ「」

京太郎「そ、その、すみません……」

ゆみ「ふっ、くくっ……」

京太郎「加治木先輩?」

ゆみ「ふふ、すまない。ついおかしくてな」

京太郎「う……ついはしゃぎすぎましたけど、初めての2位なんですよ。嬉しくて当然じゃないですか」

ゆみ「それにモモの上を行ったのも初めてだった」

京太郎「そうです。目標が2つ同時に達成できたんですよ。そりゃ喜びますって!」

ゆみ「うん、まあ気持ちはわかる。でもな」

京太郎「?」

ゆみ「まだ君は部に入って間もないが、その努力を私は誰よりもよく知っているつもりだ」

ゆみ「君はよく努力している。そんなに喜ばなくともこれから何度でもなれるし勝てるよ。私が保証する」

京太郎「加治木先輩……」ジーン

ゆみ「うん? どうした」

京太郎「いえ、感動してました」

ゆみ「なっ!?」

京太郎「他人に真正面から評価されるってこんなに嬉しいものなんですね……!」

ゆみ「大げさだな……そういう感動はもっと大事なときに取っておいたほうがいい」

京太郎「じゃあ今度は1位になったときにまた言って下さい」

ゆみ「ん……まあいいだろう」

京太郎「はい、頑張ります!」

ゆみ「ではそのためにはもっと実力を上げなければな」

京太郎「え……」

ゆみ「須賀くんの牌譜も集まってきたしな。ちょうど言いたいことがあったんだ」

京太郎「ええと、今日のところはいい気分のままでいさせて頂けたりとかは……」

ゆみ「1位を目指すんだろう? わかっているとは思うが、須賀くんの実力はまだまだ足りていないぞ」

京太郎「それはまあ、最初に2位になった後はいつも通り3位や4位ばかりでしたし……」

ゆみ「なら勉強だ。まず君は対子を集める傾向があるな。何か意味はあるのか?」

京太郎「いや、その、ポンってどこからでも鳴けるから得だなーと」

ゆみ「まあそんなところだろうと思っていた」ハァ

ゆみ「単純に有効牌の数を考えてみてくれ。塔子なら両面待ちで8枚、嵌張や辺張でも4枚あるだろ? 対して対子では2枚しかない」

京太郎「……おお、言われてみれば!」

ゆみ「まあもちろん場に出ている枚数や手役との兼ね合いもあるがな。基本的には対子より塔子を残すことを考えてくれ」

京太郎「勉強になります」

ゆみ「さて、次は……」

京太郎「ま、まだあるんですか!?」

ゆみ「当たり前だ……む、もうこんなところか」

京太郎「あ、分かれ道ですね。それでは俺はここで……」

ゆみ「帰ってからメールするから返信するように」

京太郎「ですよね……」

ゆみ「ああ、それじゃあまた夜に」カラカラカラ

京太郎「はい、さようなら」テクテク

京太郎「加治木先輩結構スパルタだよなあ。まあ親身になってくれてるってことだけど」テクテク

京太郎「……ん? あれ、なんで加治木先輩歩いて帰ってたんだ? ……ん、メールが」


ゆみ『さっきはああ言ったが、正直君がモモに勝てるのはもっと先のことだろうと思っていた』

ゆみ『モモのステルスは偶然だけで勝てるようなものじゃない。麻雀を初めて一週間ほどで勝てたのは誇っていいと思う』

ゆみ『君の打ち方については帰ってからメールで言うつもりだったんだが……その……君に言われたことが恥ずかしくて、誤魔化すように言ってしまった』

ゆみ『きつい言い方になってしまったと思うんだが、よければこれからも頼ってほしい。すまなかった』


京太郎「……頼らないわけないのになあ」ハハ

京太郎(歩いてたのはすぐメールするためだったんだな)

京太郎「さて、なんて返そうかな。まずは気にしてないということと、それからお礼と……」

以上になります。
モモに勝ったので、かじゅ以外には勝ったことがあることになってます。

3回投下をなんとか達成できて嬉しい。
投下します。

――自室――

ゆみ『今日はここまでにしておこう。また明日』

京太郎『ありがとうございました。また明日よろしくお願いします』

京太郎「ふー……おお、2時間も付き合って貰ってたのか!?」

京太郎「部長に言われたばっかりなのに頼りすぎた……ちゃんと息抜きのしてもらい方考えないとなあ」

京太郎「ま、今はそれより咲からのメールに返信を……っと」

京太郎『悪い悪い、返信遅れた』

咲『もーいつもはすぐ返ってくるのに1時間も来ないから心配したよ』

京太郎『悪かったよ。それより今日は何かあるのか?』

咲『ううん、特にはないかな。今日は京ちゃんの話聞かせてよ』

京太郎『その言葉を待ってた! 聞いてくれ!』

咲『な、何?』

京太郎『今日初めて2位になれたんだよ!』

咲『京ちゃんおめで……2位?』

京太郎『2位だよ! 悪いか!』

咲『すっごく喜んでたから1位になったのかなって思ったんだけど……』

京太郎『初心者が麻雀部相手に2位になったんだから十分凄いだろ!』

咲『京ちゃんも今は麻雀部じゃない』

京太郎『それはそうだけど! 初めてトップ2になれたんだよ! 咲も麻雀やってたなら初めて2位になったときの気持ちわかるだろー』

咲『……そうだね。きっと嬉しかったんだと思う』

京太郎『思う?』

咲『昔のことだもん。でも、うん。昔は楽しくやってた気がする。だから思う、かな』

京太郎『そうか……それと、咲に聞きたいことがあるんだけどいいか?』

咲『なあに?』

京太郎『今日麻雀の雑誌読んだんだ。それに高校生女子麻雀チャンピオンのインタビュー載ってたんだけど、そのチャンピオンの名前が宮永照っていうんだよ』

京太郎『その宮永照って人は東京の高校に通ってるんだけど、なんとなく雰囲気がお前に似てるから気になったんだ。もしかして親戚だったりするか?』

…………

京太郎「メール返って来ないな……なんかマズイこと聞いちまったか? とりあえず……」

京太郎『その、答えにくかったら無理に答えなくていいぞ? こっちも突然聞いて悪かったし』

咲『ううん、大丈夫……その人は、宮永照は私のお姉ちゃんだよ』

京太郎『お前にお姉さんなんていたのか?』

咲『うん、京ちゃんと会う前にお父さんとお母さん別居しちゃってたから』

咲『私は長野でお父さんと住んでるんだけど、お姉ちゃんは東京でお母さんと一緒に住んでるの』

咲『……そういえば京ちゃんに私の家族の話したことなかったね』

咲『ちょうどいいし聞いてもらっていいかな? ちょっと相談したいこともあるんだ』

京太郎『確かになかったけど……俺が聞いていいような話なのか?』

咲『別に隠すようなことじゃないし気にしないで』

京太郎『そっか。それなら咲、久々に電話かけてもいいか?』

咲『うん、いいよ。……ありがとう京ちゃん』

京太郎『もしもし、聞こえるか?』

咲『もしもし、聞こえるよ』クスクス

咲『それじゃあ話すね。ええと、どこから話そうかな』

咲『家族麻雀をよくしてたって話はしたよね?』

京太郎『ああ、この間聞いた』

咲『私ね、実は家族麻雀そんなに好きじゃなかったんだ』

京太郎『そうなのか? 家族で出来るなんて楽しそうだななんて思ってた』

咲『うん、私の家ではね。お金をかけて麻雀やってたんだ』

京太郎『それで負けてたのか?』

咲『ううん、そんなことないよ。多分勝ち越してた』

京太郎『じゃあお金をやり取りするのが嫌だったとか?』

咲『それもちょっと違うかな。勝っても怒られてたんだ。負けたらお金を取られるし、勝ったら怒られる。京ちゃん、これどう思う?』

京太郎『なんというか……酷い話だな』

咲『でしょ? だから私は麻雀のことがそんなに好きじゃないんだよ』

京太郎『……』

咲『それで相談っていうのはここからなんだけど……』

京太郎『おう、ゆっくりでいいぞ』

咲『えっとね。京ちゃんが読んだっていう雑誌なんだけど、私も見たんだ』

京太郎『もう知ってたのか?』

咲『うん、お父さんから見せてもらってたんだ』

咲『私ね、一度東京へ、1人でお姉ちゃんに会いに行ったことがあるんだ』

京太郎『1人で行けたのか?』

咲『ちっちゃい子じゃないんだから行けるよ! 京ちゃんは私のことをなんだと思ってるの!?』

京太郎『悪い悪い。続けてくれ』

咲『うん、それで家まで行ったんだけど、お姉ちゃんは一言も口を聞いてくれなかった――』

咲『お姉ちゃん、きっとまだ私のこと怒ってるんだ』

京太郎『怒ってる?』

咲『家族麻雀の話で、負けたらお金を取られる、勝ったら怒られるって話はしたよね? それで私はどうしたと思う?』

京太郎『どうしたって……麻雀をやらなくなったとかじゃないのか?』

咲『ううん、違うよ。私はね、±0にしちゃえばいいんだって思ったんだ。それならお金を取られないし、取らないから怒られることもないから』

京太郎『……は? いや、そんなの狙ってできるものじゃないだろ?』

咲『狙ってやったんだ。狙えるようになったって言ったほうがいいかな。ちっちゃい私の精一杯の抵抗だった』

京太郎『……凄いな』

咲『あはは、ありがと。でもお姉ちゃんは私の勝ちを狙わないやり方が気に入らなかったんだと思う』

咲『きっと、だから今でも私と話してくれないんだ』

京太郎『……咲はお姉さんと仲直りしたいのか?』

咲『うん、だから雑誌の記事を見て、麻雀部に入ればお姉ちゃんとまた会えるかもしれないって思ったんだ』

京太郎『ああ、俺もそう思う』

咲『それで麻雀部に入ろうかどうか迷ってるの』

京太郎『結局文芸部には入らなかったんだろ? 麻雀部に入ればいいじゃんか』

咲『でもさ、京ちゃん。お姉ちゃんを怒らせた原因は麻雀なんだよ? その麻雀を使ってお姉ちゃんに会おうなんて余計に怒らせたりしないかな?』

京太郎『それは……』

咲『麻雀部に入らなければ、時間はかかるかもしれないけどその内お姉ちゃんは私のことを許してくれるかもしれない』

咲『麻雀部に入ればすぐお姉ちゃんに会いに行ける。でも、もっと怒らせて私のことをずっと許してくれなくなるかもしれない』

咲『京ちゃん、私はどうしたらいいのかな……』

京太郎『……咲は麻雀のことどう思ってるんだ?』

咲『え?』

京太郎『だからさ、咲は麻雀のこと好きなのか?』

咲『……さっき言ったじゃない。あんまり好きじゃないよ』

京太郎『でもさ、それは勝つことじゃなくて、±0を目指してたからじゃねーのかな』

咲『……』

京太郎『俺はさ、麻雀始めたばっかだけど、勝てるとすげー楽しいよ』

京太郎『初めて3位になれたときでも嬉しかったし、今日初めて2位になれたときなんかは思わず叫んじまった』

京太郎『まだ1位になったことはないけど、なれたらきっともっと楽しいんだろうなって思う』

京太郎『咲はどうだ? 1位になって楽しいとか嬉しいって思うことなかったか?』

咲『……昔、まだ家族で仲良く麻雀でやってたとき、1位になれたら凄く嬉しかった』

咲『そうだね。京ちゃんの言うとおり、あの頃は家族仲良く、楽しく麻雀やってた』

京太郎『そっか。それなら咲は麻雀部に入るべきだ』

京太郎『今度は勝つことを目指して、楽しんで麻雀をすれば、それをお姉さんに見てもらえば、きっと咲のこと許してくれるよ』

咲『そう、かな』

京太郎『ああ』

咲『……うん、そうだね。会わなきゃ何も始まらないよね。わかったよ京ちゃん。明日、麻雀部に行ってみる』

京太郎『ああ、それがいいよ』

咲『相談に乗ってくれてありがとう、京ちゃん』

京太郎『気にするな……そうだ。咲、ちょっといいか?』

咲『何?』

京太郎『さっきお前麻雀部に入ればお姉さんにすぐ会えるみたいなこと言ってたよな? 県大会に勝つ前提とは随分偉くなったなあ』

咲『ふぇっ!? も、もう、揚げ足取らないでよ! 京ちゃんのバカ!』

京太郎『ははは……実際咲は強いのか?』

咲『京ちゃんなんか足元にも及ばないくらい強いよーだ!』

京太郎『……』

咲『な、何か言い返してよぉ……』

京太郎『いやまあ、あの宮永照と家族麻雀で±0狙ってるやつだと思うと……』

咲『お、お姉ちゃんだって高校入って上手くなってるはずだよ!』

京太郎『と言ってもなあ』

咲『うぅぅ……』グスン

京太郎『はは、冗談だよ』

咲『もう、あんまりからかわないでよ……』

京太郎『面白いからついな』

咲『ついじゃないよ! こっちは本気で気にするんだからね!』

京太郎『悪かったって。それじゃあな』

咲『またね。……京ちゃん、今日はありがとう』

京太郎『気にするなって。またなんかあったら電話しろよ。大会で会おうぜ』

咲『うん、大会で』

以上になります。
この後咲ちゃんの出番は大会までない予定。
それと次は火曜日に投下するつもりですが、火曜日に出来なければ金曜日以降になります。

もう少し進めたかったですが、なんとか出来上がりましたので投下します。

女生徒「残りは私がやっておくから。須賀くんは部活行ってていいよ」

京太郎「いいのか?」

女生徒「いいっていいって。私帰宅部だし。部活頑張ってねー」

京太郎「おう、ありがとな」


京太郎(今日こそは1位になるぞー! ……あ、階段に加治木先輩が)

京太郎「加治木先輩、これから部活に行くところですか?」ウエミアゲ

ゆみ「ん、須賀くんか。そのつもりだよ」

京太郎「じゃあ一緒に行きましょう。昨日聞きそびれたところがあるんですけど途中で聞いていいですか?」

ゆみ「ああ、構わな……」フラッ

京太郎「加治木先輩!?」

ドタッドタタタタッ!

京太郎「いてててて……加治木先輩、大丈夫ですか?」シタジキ

ゆみ「あ、ああ、大丈夫だ。ありがとう、今どく……痛っ!」

京太郎「どうしたんですか!?」

ゆみ「き、気にするな。なんでもないっ」

京太郎「なんでもないわけないじゃないですか! ……足ですか?」

ゆみ「……そうだとしても君に迷惑をかけるわけにはいかない。先に部室に行っていてくれ」

京太郎「……そういうこと言うならこっちにも考えがありますよ」ムッ

ゆみ「?」

京太郎「だっことおんぶと肩を貸す。どれがいいですか?」

ゆみ「……は?」

京太郎「保健室まで連れて行くって言ってるんです。さ、だっことおんぶと肩を貸す。どれにします?」

ゆみ「ま、待て! そんなどれを選んでも恥ずかし……い、いや。そもそも必要ないと言っているだろう!?」

京太郎「あんな声出して何言ってるんですか。選ばないならだっこで運びます」

ゆみ「なっ」

京太郎「よいしょっと」グイッ

ゆみ「う、うわっ! な、なんでよりにもよってお姫様だっこなんだ!? というかそもそも重いだろう!?」

京太郎「一番持ちやすいからです。それとむしろ軽いくらいですから大丈夫です……さあ、保健室まで行きましょうか」

ゆみ「わ、わかった! 肩を借りるから! だから下ろしてくれ!!」

京太郎「始めからそうやって人の好意を受け取ればいいんですよ……っと」

ゆみ「好意じゃないとは言わないが、とてもではないが素直には受け取れないな……」

京太郎「加治木先輩、腕はちゃんと肩に回しました?」

ゆみ「ああ、回した」

京太郎「じゃあ行きますよ。ゆっくり歩きますね」

ゆみ「ありがとう」

京太郎「……」

ゆみ「……」

京太郎(加治木先輩と話すのは最近慣れてきたけどさすがにあんなことした後だとキツイな……)

京太郎(なんであんなことしたんだろう……)ズーン

ゆみ(ん……私が肩に手を回しやすいように少し屈んでくれているのか)

ゆみ(その体勢で歩くのは決して楽ではないはずなのに。……優しいやつだな)

ゆみ(さっきの強引な三択も、普段の須賀くんなら絶対にやらないはずだ)

ゆみ(それでもやったということは、それはきっと――)

ゆみ「なあ須賀くん」

京太郎「はっ、はい!」

ゆみ「そんなに力を入れなくても……いやそういう話になるかもしれないな」

ゆみ「その、さっきのことなのだが……」

京太郎「?」

ゆみ「さっきの君は怒っていたのか?」

京太郎「……当たり前じゃないですか」

ゆみ「……理由を聞いてもいいか?」

京太郎「決まってるじゃないですか。加治木先輩がまた無理しようとしたからです」

ゆみ「私は無理なんて――」

京太郎「してるから倒れたんです」

ゆみ「ぐっ」

京太郎「無理して倒れたのに、なんでさらに無理しようとするんですか」

ゆみ「君には――」

京太郎「関係ない、なんて言わないでくださいよ。自分が麻雀部にどれだけ大切か知らないわけでもないでしょう」

ゆみ「むぅ……」

京太郎「ほら、早く言わないとまたお姫様だっこしますよ」

ゆみ「や、やめろ! わかった、言うから!」

ゆみ「……麻雀部は私が麻雀をもっと本格的にやりたいから、なんて身勝手な理由で作ったんだ」

ゆみ「だから自分で出来ることなら自分でやりたい。他人に無駄な負担はかけたくない」

ゆみ「雑務は私がやるから、君たちには純粋にただ麻雀を楽しんで欲しいんだ」

京太郎「……はあ」

ゆみ「な、なんだ」

京太郎「加治木先輩は優秀なんですから、出来ること全部やろうなんて思ってたらパンクするに決まってます」

ゆみ「そんなことは……」

京太郎「実は部長から加治木先輩をなんとか息抜きに誘えないかって相談を受けてたんですよ」

ゆみ「何?」

京太郎「部活の仲間が辛そうにしてるのに純粋に麻雀を楽しむなんて出来ませんよ」

ゆみ「…………」

京太郎「あ、保健室ですね。その、無理しないって考えて貰えると嬉しいです」

ゆみ「……ああ」

京太郎「失礼します……先生はいないみたいですね」

ゆみ「ああ、外出の張り紙はないからすぐ戻ると思うのだが……」

京太郎「とりあえずこの椅子に座って下さい。湿布探しますね」

ゆみ「ああ、ありがとう」

京太郎「ええと、湿布は……お、あった」

ゆみ「ああ、それじゃ渡してく――」

京太郎「それじゃ脱がしますね。足上げて下さい」

ゆみ「ああ……って、え?」

京太郎「」スルッ

ゆみ「んっ」

京太郎「」スルスルスルッ

ゆみ「ふあ」

京太郎(綺麗な足だな……触ってみた――はっ!?)

京太郎(な、何やってんだ俺!? 咲の手当てずっとしてたからその癖か!?)ダラダラダラ

京太郎(か、加治木先輩が意外と平気にしてるかも……)

ゆみ「……」カアァァァァ

京太郎(やっちまったー! ど、どうする!?)

京太郎(……ああ、でも白くてスラっとして艶々としてて、いつまでも見ていたくなるような――)

ゆみ「す、須賀くん。あまり見られていると、その、恥ずかしいのだが……」カアァァァ

京太郎「す、すみません!!」バッ

ゆみ「あ……」

京太郎「あ……」

謝ろうと顔を上に向けると、顔を真っ赤にした加治木先輩と目があった。

ゆみ「……」

京太郎「……」

ゆみ「…………」

京太郎「……………」

ゆみ「――き」

保険医「誰かいるの? ごめんね席外しちゃ……」ガラッ

保険医「……ええと、お邪魔だったかしら?」

京太郎・ゆみ「「そんなことないです!!」」

保険医「んー軽い捻挫ね。病院に行く必要はなし。湿布を貼ってれば明日、明後日には治ってると思うわよ。もちろん安静にね」

ゆみ「ありがとうございます」

保険医「それと疲れてるみたいね。顔色悪いわよ。若いから無理は効くでしょうけど、ちゃんと休みは取ったほうがいいわ」

ゆみ「……はい」

保険医「部活はやってるの?」

ゆみ「麻雀部に入ってます」

保険医「それならやっても大丈夫ね。これから行くのかしら」

ゆみ「そのつもりです」

保険医「そう。ここには松葉杖とかはないから、彼氏くんはちゃんと連れてってあげるのよ」

ゆみ「かっ……!?

京太郎「ただの後輩です!」

保険医「そう」クスクス

保険医「まあ無理はしないことね。大会も近いんだし怪我で実力を発揮できないのはつらいわよー」

ゆみ「……わかりました。ありがとうございます」

保険医「お大事にー」

京太郎「ありがとうございました」ガラッ

京太郎(……さっきまでは怪我に気が行って意識しなかったけど、肩を貸すとかなり密着するな……)

京太郎(加治木先輩、普段凛としてるけど触れると女の子らしく柔らかいんだな……特に胸とかバストとかおもちとか)

京太郎(それになんかいい匂いも……)

ゆみ「須賀くん」

京太郎「ひゃいっ!」

ゆみ「ど、どうした?」

京太郎「い、いえ。なんでもないです」

ゆみ「そうか。……須賀くん、ちょっと聞きたいことがあるのだが」

京太郎「なんです?」

ゆみ「……君は躊躇せずお姫様だっこをしたり私のソックスを脱がしたりしてきたが……女性の扱いに慣れているのか?」

京太郎「……はい?」

ゆみ「普通はああいうことをやるときは多少なり躊躇するものだと思うのだが、君は自然にやるものだからこっちも反応が遅れてな……」

京太郎「お姫様だっこなんて慣れてないですよ! やったのも初めてです!」

京太郎「……その、あのときはちょっとカチンと来まして、勢いでといいますか……」

ゆみ「ふむ」

京太郎「脱がした方はですね。その、幼馴染みの手当てをいつもやっていたのでついそれと同じように……」

ゆみ「なるほど……須賀くん」

京太郎「はい」

ゆみ「それは直したほうがいい。いつかきっと問題を引き起こす」

京太郎「あはは……でも大丈夫ですよ」

ゆみ「何?」

京太郎「大切な相手じゃなきゃあんなに焦ったりしませんから。そういう相手ならきっと怒るくらいで許してくれます」

ゆみ「――っ」カァァ

京太郎「加治木先輩?」

ゆみ「だからそういうところを直せと言っているんだ……」ハァ

京太郎「す、すみません。もしかしてそんなに嫌でした……?」

ゆみ「そういうわけじゃ……いや、もういいか」

ゆみ「須賀くん」コホン

京太郎「は、はい」

ゆみ「意地を張っていた私を引っ張ってくれてありがとう。1人じゃ保健室へ行くのは正直厳しかったと思う。手当てをしようとしてくれたこと、嬉しかったよ」

京太郎「……はい!」

以上になります。
次は多分日曜日に。

前回はここまで書きたかった、というわけで短いですが投下します。

京太郎「すみません。遅くなりましたー」ガラッ

智美「おお、2人とも何してた……」

睦月「そ、そんなにくっついてどうしたんですか?」

ゆみ「くっつ……! あ、足を捻ったから肩を貸してもらっているだけだ!」

佳織「歩けないみたいですけど大丈夫ですか?」

ゆみ「ああ、座っていれば大して痛まないし、明後日には治ると言われたよ」

桃子「そんなに重傷じゃなくてよかったっす」

智美「今日は部活やらずに帰るのかー?」

ゆみ「いや、痛むのは足だけだし参加するよ。須賀くん、すまないが椅子まで運んでもらっていいか?」

京太郎「もちろんです」

ゆみ「……っと、ありがとう。対局が終わるまで君の牌譜を見ていこう」

京太郎「よろしくお願いします」

…………

………

……

智美「それじゃそろそろ帰るかー」

ゆみ「まだ早くないか?」

智美「怪我人は早く帰って安静にしなさい」

ゆみ「む……」

京太郎「はは……そういえば加治木先輩、その足で自転車に乗れますか?」

ゆみ「さっきに比べれば痛みも引いているしまあ大丈夫だろう」

智美「……ゆみちん、ちょっと歩いてみてくれるか?」

ゆみ「ああ……痛っ」

智美「ゆみちん、そんな足で自転車漕ごうなんて無理はよくないぞー」

睦月「そうですよ。悪化しちゃいます」

ゆみ「そう言われてもな。バスを使おうにも私の家からバス停までは遠いし、両親も仕事だ」

京太郎「家まで肩を貸す……のはちょっと外では恥ずかしいですね」ハハ

ゆみ「出来れば校内でもそう思って欲しいんだがな。もちろん感謝はしているが」ハァ

ゆみ「それに、そもそも須賀くんに家まで付き合わせるのは悪いだろう」

京太郎「俺が歩く分には大丈夫ですよ。いい運動です」

ゆみ「ん、そうか……」

ゆみ「……ああそうだ。そんなことをしなくてもタクシーを呼んで――」

智美「思いついたぞー!」ワハハ

ゆみ「もら……蒲原、嫌な予感はするがとりあえず言ってみろ」

智美「失礼な。今回は名案だぞー」

桃子「どんな案なんすか?」

智美「京太郎がゆみちんの自転車でゆみちんを送ればいいんだ」

睦月「ああ、二人乗りですか」

ゆみ「ま、待て。他人の前でそんな……」

智美「肩を貸すくらい密着してたんだからこれくらいは大丈夫だろー?」

ゆみ「うっ……」

佳織「でも智美ちゃん、二人乗りなんてやってたら危ないし注意されちゃうんじゃないかな?」

ゆみ「そ、そうだ。だからタクシーを――」

智美「非常事態なんだしいいだろー。それに学校が見えなくなるまではゆみちんを乗せて押せばいいし」

佳織「そっか。それもそうだね」

ゆみ「妹尾!?」

桃子「まあいいじゃないっすか。タクシーは高いっすし、それに二人乗りやってるくらいじゃ誰も見ないっすよ」

睦月「二人乗りそんなに嫌なんですか?」

ゆみ「い、嫌というわけでは……す、須賀くんはどうなんだ!?」

京太郎「二人乗り自体は中学の頃よくやってたので、加治木先輩が嫌でなければいいですよ」

ゆみ「」

桃子「問題が片付いたところで帰るっすー!」

智美「ゆみちん、置いてくぞー」

睦月「それじゃ、肩貸しますね」

ゆみ「ありがとう。ついでに頼みがあるんだがタクシーを――」

睦月「京太郎くん、自転車乗り場からはよろしく」

京太郎「任されました!」

ゆみ「ああ、うん。わかっていた。私はいい後輩たちを持ったよ」

京太郎「照れますよ」

睦月「照れますね」

佳織「照れちゃいます」

桃子「照れるっすよー!」

ゆみ「よし、お前たちは明日までに『麻雀何切る?』を1冊終わらせて来い」

智美「後輩たち、あんまりからかっちゃダメだぞー」ワハハ

ゆみ「蒲原は2冊だ」

智美「ワハ!?」

以上になります。
明日から働き始めるので投下ペース落ちると思います。最低週一回は投下したいとは思ってます。

夜中に書けないとこんなにはかどらないものなんですねー
遅くなりましたが投下します

智美「ゆみちん、ここまで自転車を押して貰った気分はどうだ?」

ゆみ「見られてばかりで全く落ち着かなかった……二人乗りくらい目立たないと言ったのは誰だ」

桃子「二人乗りじゃなくて京太郎が押してたじゃないっすか。6人いて1人だけ自転車に乗って押されてればそれは目立つっすよ」

智美「どこの女王様だって感じだなー」ワハハ

京太郎「まあ嘘は言ってなかったですね」

ゆみ「嵌められたか……」

桃子「人聞きが悪いっすねー」

睦月「まあまあ、明日には誰も覚えてませんよ」

ゆみ「そうだといいんだがな」ハァ

京太郎「じゃあ前乗りますね」

ゆみ「ああ、今後ろに移る」

京太郎「よっ……と」

ゆみ「……そ、それじゃあ捕まるぞ」ギュッ

京太郎「!?」ビクッ

ゆみ「ど、どうかしたのか?」

佳織「わわわ……」カァァ

睦月「凄い……」カァァ

桃子「だ、大胆っすね」カァァ

智美「どうかってゆみちん、それはこっちのセリフだぞ」カァァ

ゆみ「え、えっ?」

ゆみ「だ、だって少女漫画とかでは二人乗りするときはこうやってギュッと抱きしめて……」

桃子「どんだけ乙女っすか!」

智美「本気で言ってるんだよなー……」

ゆみ「ど、どこがおかしいんだ!? ちゃんと捕まらないと危ないだろう!?」

睦月「抱きしめなくても腰を掴んだり荷台やサドルを持ったりすれば落ちないのでは……」

ゆみ「……!!」

智美「いや、そんなその発想はなかったみたいな顔されてもなー」

佳織「と、とりあえず京太郎くんを離してあげたらどうでしょう?」

ゆみ「え?」

京太郎「」パクパク

ゆみ「う、うわっ! す、すまない!!」バッ

京太郎「……はっ!? い、いえ! こちらこそ!」

桃子「何がこちらこそなんすか?」

京太郎「……いや、なんでもないぞ?」

桃子「ところで感想は」

京太郎「柔らかくていい匂いがし……しまった!?」

睦月「素直だね」

智美「正直者だなー」ワハハ

ゆみ「」プシュー

桃子「……さて、それじゃあそろそろ帰るっすか」

智美「邪魔者はお暇するかー」

京太郎「ま、待った! せめてこの空気をどうにか――」

睦月「そうですね。早く帰りましょう!」

佳織(何でもいいからここから逃げ出したいなあ……)

京太郎「睦月先輩!? 佳織先輩もだんまりはやめましょうよ!」

智美「それじゃあまた明日なー」ワハハ

京太郎「ちょっとー!?」

スタスタスタスタ……

京太郎「ほ、本気で帰りやがった……」

ゆみ「」プシュー

京太郎「え、ええと、その加治木先輩。さっきのは……」

ゆみ「い、いや、いいんだ。悪いのは私だから」

京太郎「そんなことは……」

ゆみ「と、ともかく! 自転車を出してくれ!」

京太郎「は、はい! 加治木先輩の家遠いですもんね!」

ゆみ「あ、ああ! 早く行かないと日が暮れてしまう」

京太郎「わかりました! それじゃしっかり捕まって――」ハッ

ゆみ「あ……」ジー

京太郎「そ、そういう意味じゃないですからね!?」

ゆみ「わ、わかっている! それじゃあ荷台を掴んで……」

京太郎「大丈夫ですか?」

ゆみ「ああ、ちゃんと掴んでいる」

京太郎「それじゃ出しますよー」

ゆみ「よろしく頼む」

京太郎「……」シャー

ゆみ「……」シャー

京太郎(中学のとき、咲とよくこんなふうに二人乗りしてたなー)

京太郎(初めてやったときは咲が憧れだったって言って横乗りしたっけ)

京太郎(ちょっと漕ぎだしたら咲が倒れそうになったからすぐやめたけど。あいつ悔しそうな感じで涙目になってたな)

京太郎(その後も何度か挑戦しようとしたから止めるのが大変だった。あいつ変なところで頑固だからなあ)

京太郎(咲とのどうでもいい話とか結構楽しかったな。そのうちあいつの重さがない自転車が物足りなくなったりして)

京太郎(風を切る感覚も感じる重さも似てるけど、見える景色はやっぱり向こうと違う。……当たり前か)

京太郎(……おんなじ長野なのにな)ハァ

ゆみ「なあ、須賀くん」

京太郎「なんですか?」

ゆみ「二人乗りはよくやっていたと言っていたな」

京太郎「そうですね。前に言った幼馴染をよく乗せてました」ハハ

ゆみ「そうか。……間違っていたらすまないのだが、今そのときのことを思い出してはいなかったか?」

京太郎「……もしかして声に出したりしてました?」

ゆみ「そういうわけではないが、ため息をついたり考え込むような顔をしていたからな」

京太郎「はは……加治木先輩には敵わないですね」

ゆみ「それで、これももしなんだが」

京太郎「何がです?」

ゆみ「今、寂しい、と思っていないだろうか」

京太郎「寂しい……ですか」

ゆみ「ああいや、違っていたらそう言ってくれ。別に何か特別な根拠があって言っているわけではないんだ」

京太郎「ん……考えたこともなかったですけど」

京太郎「けど、言われれば寂しかったのかもしれないです」

京太郎「俺、幼馴染……咲って言うんですけど、そいつと毎日メールしてるんですよ」

京太郎「昔からよくメールはしてたんですけど、引越す前は毎日なんてことはなかったです」

ゆみ「ふむ。聞いた私が言うのも何ではあるが、違うところにいるんだ。それくらい普通じゃないか?」

京太郎「いえ、そこじゃないんです」

京太郎「咲は地元の高校に行ったんで、やっぱり中学の友達もたくさん一緒のところ行ってるんですよ」

京太郎「咲とのメールにもよく出てくるんですけど、それがちょっと羨ましいなとかいいなとか思っちゃうんです」

京太郎「こっち来て使ってる道も、普段登校に使ってる道はもう見慣れた風景になってるんですけど、今こうやって違う道を行くとやっぱり全然見覚えがなくて」

京太郎「前のところはどこ行っても大体見慣れてたんで、自分はここの人間じゃないんだなとか感じたんです。それでさっきため息ついちゃったんですよ」

京太郎「そんなこと考えてると、俺はなんで1人でこっち来たのかなってちょっと後悔が」

ゆみ「……そういえば須賀くんがこっちに来た理由を聞いていなかったな」

京太郎「ああ、親の仕事の都合ですよ。まあ向こうで一人暮らしすることも出来たんで、決めたのは自分です」

ゆみ「高校生が1人で暮らすのは言うほど簡単じゃない。自分のせいだなんて思う必要はないさ」

京太郎「加治木先輩……」ジーン

ゆみ「……まあ私もしたことはないからどんなものかわかるわけではないが」

京太郎「加治木先輩……」ジー

ゆみ「と、ともかくだ! 自分が選んだからしょうがないなんて思わず、寂しければ素直にそう思えばいい。そのほうが楽になる」

京太郎「……そうですね。ありがとうございます」

ゆみ「……」シャー

京太郎「……」シャー

ゆみ(あまり表情は明るくなっていないな……ああ)

ゆみ「寂しくて、じゃあどうするかまで言わなければ片手落ちか」ボソッ

京太郎「何か言いました?」

ゆみ「いや、なんでもない」

ゆみ「……須賀くん。この先に急な坂道があるのが見えるか?」

京太郎「ああ、結構急ですね。しっかり捕まってください」

ゆみ「ああ」ギュッ

京太郎「っ!? か、加治木先輩!?」グイッ

ゆみ「きゃっ! ハンドルを急に切るな! 危ないだろう!?」

京太郎「それはすみません! でも何ですかいきなり!?」

ゆみ「き、急な坂だからしっかり捕まったんだ。それに……」

京太郎「それに?」

ゆみ「……このほうがいいかと思ってな」

京太郎「……ええと、それは、まあ、さっきのも嬉しかったですけど」

ゆみ「そ、そういう意味じゃない! 君は寂しいのかもしれないと言っていただろう?」

京太郎「そ、そっちですか」

ゆみ「私は地元を離れてはいないから、君がどれほど苦しいか分からない」

ゆみ「でも、君のつらさを和らげたいとは思う。そのためにはこうするのがいいと思った」

ゆみ「君の故郷にいなかった私が君のその寂しさを埋めたいというのはおこがましいかもしれないが、それでも私を頼って欲しい」

ゆみ「君は、私の大切な後輩だからな」

京太郎「……そんなに心配されるような顔してました?」

ゆみ「ああ、何かしてあげたいと思うくらいにはな」

京太郎「……まったく、加治木先輩は背負い込みすぎですよ。麻雀部のことだけで倒れちゃったのに、俺のことまで背負ってどうするんですか」

ゆみ「う……」

京太郎「でも、ありがとうございます」

ゆみ「ああ、いい声だ」

京太郎「これからも頼っていいですか?」

ゆみ「もちろん。いつでも頼ってくれ」

京太郎「それじゃ、加治木先輩も俺を頼ってください」

ゆみ「うん?」

京太郎「麻雀はまだ全然敵いませんけど、でも牌譜の分析とか出来ることはやりますから」

ゆみ「しかし……」

京太郎「ただでさえ倒れたのに、この上さらに加治木先輩に頼るなんて言ったら部長に何言われるかわかりませんよ」

ゆみ「だが私が勝手にやっていることで負担をかけるわけには……」

京太郎「加治木先輩が俺に大切だって言ってくれたのと同じで、俺にとっても加治木先輩は大切な先輩なんですよ!」

ゆみ「……それを言われるとはな」フゥ

ゆみ「量を減らそうと思っていたんだが、そう言ってくれるならお願いするよ」

京太郎「任せてください!」

京太郎「…………」シャー

ゆみ「…………」シャー

---------------------------------------

ゆみ(……今まで意識していなかったが、背中、広いな。それに固い)

ゆみ(男子とこんなに密着したのは初めてだが、体の作りがこんなに違うのか)ポー

ゆみ(……前はどうだろう)サワッ

京太郎「」ビクッ

ゆみ(腹筋の辺りも引き締まっている。細身だけど筋肉質だ。鍛えているんだな……今さらか。部活の前にお姫様だっこをされ――)

ゆみ(いかん、自分で考えていて恥ずかしくなってきた)カアァァ

ゆみ(いつの間にか鼓動も速くなっている)ドクンドクン

ゆみ(こ、これは須賀くんに伝わっているんじゃないだろうか)ドクンドクン

ゆみ(……もっとこう、トクントクンと可愛らしくならないものかな)ハァ

ゆみ(……須賀くんも緊張しているんだろうか)

ゆみ(……えい)ピト

ドキドキドキドキ……

ゆみ(私よりも速い。私よりも緊張してくれているのか。……なんだか嬉しいな)

ゆみ(心地いい音だ。もう少し、家に着くまでこのまま――)

---------------------------------------

---------------------------------------

京太郎(……ぴったりくっついてるな)ドキドキ

京太郎(加治木先輩と密着したの今日何度目だ!? 今まで一度もこんな経験なかったのに!)

京太郎(ああ、背中に柔らかいおもちが……いかん、運転に集中しろ集中!)

京太郎(ふー……うん、少し落ち着いてきた)

京太郎(柔らかく包まれてるみたいでなんか安心する。こういうの母性っていうのかな)

京太郎(加治木先輩が言ったとおり、ギュッとされてると寂しさが和らいできた)

ドクンドクン……

京太郎(……ん? なんだこの振動)

京太郎(これは……心臓の音か。もしかして加治木先輩も緊張して――)

ゆみ「」サワッ

京太郎(って!? な、何やってんだこの人!?)ドキドキドキドキ

京太郎(寂しさなんか吹っ飛んだけど! ただでさえ我慢してんのに!)

京太郎(この人ついこの間まで男と話すの苦手とか言ってたよな!? 話してなきゃいいのか!?)

ゆみ「ん……」ピト

京太郎(背中に耳を……まさか俺の心臓の音聞いてるのか? うおお、恥ずかしい!!)

京太郎(ど、どうしよう。何か話しかければ離れてくれ――)

ゆみ「――もう少し、このまま――」ボソッ

京太郎(……まあ、俺も加治木先輩の音聞いたんだしお互い様か)

京太郎(家まであと少しだし、このままでいいか)

京太郎(俺もそのほうが嬉しい……って何考えてんだ俺)ドキドキ

---------------------------------------

――加治木宅前――

京太郎「加治木先輩、家ってここですか?」

ゆみ「……ん? ああ、ここだ――」ポー

ゆみ「――っ!?」バッ

ゆみ「す、すまない! ずっとこんな、だ、抱き締めるような真似を……!」

京太郎「い、いえ、大丈夫です。全然」ドキドキ

ゆみ「そ、そうか。それとその、さっきの君のお腹を確かめようと思ったのも……」

京太郎「そっちも少しくすぐったかっただけですから大丈夫です」ドキドキ

京太郎「……って確かめ?」

ゆみ「っ! な、なんでもない!」

ゆみ「そ、そんなことより」コホン

ゆみ「私のためにこんな遠回りまでしてくれてありがとう、須賀くん」ニコッ

京太郎「っ!!?」ドキィ!!

ゆみ「うん? どうかしたか?」

京太郎「い、いえ。なんでもないです」ドキドキ

ゆみ「そうか、それならいいのだが……」

京太郎(な、なんだ急に? 加治木先輩の笑ったとこ初めて見たってわけでもないのに)ドキドキ

ゆみ「なんだか顔が赤いな……もしかして私が重くて疲れたのだろうか」シュン

京太郎「」ムッ

京太郎「そんなことないです!!」

ゆみ「わっ!」

京太郎「部活の前にも言ったじゃないですか! 加治木先輩は重くなんてないです!」

ゆみ「そ、そうか。そこまで強く言われると照れるな……」カアァァ

京太郎「あ……すみません」

ゆみ「まあそう言ってくれたのは嬉しいよ。ありがとう」フフッ

京太郎「っ!」ドキッ

京太郎(さっきからのこれは)

京太郎(加治木先輩が自分のこと卑下するのがなんか嫌で、笑うと胸が高鳴って)

京太郎(ああ、もしかして)


京太郎(――俺、加治木先輩のこと好きになったのか)


ゆみ「須賀くん? 本当に大丈夫か?」

京太郎「大丈夫です。むしろスッキリしました」

ゆみ「? まあそれならいいんだが」

京太郎「それより加治木先輩。牌譜渡して貰っていいですか?」

ゆみ「ああ、そうだったな。それじゃあ半分――」

京太郎「全部下さい」

ゆみ「何?」

京太郎「これからは牌譜の整理と分析は俺がやります。加治木先輩は作戦を考えたり自分の練習をしたり、加治木先輩じゃなきゃ出来ないことをやって下さい」

ゆみ「しかし……」

京太郎「最初はやり方を聞くことになると思いますけど、でもすぐに覚えます!」

京太郎「麻雀部の、加治木先輩の役に立ちたいんです!」

ゆみ「……自転車に乗っているとき、お願いすると言ったしな」フゥ

ゆみ「わかった。それじゃあ牌譜の整理と分析は君に頼んだよ」

京太郎「はい!」

ゆみ「ちなみにこれだけあるんだが本当に大丈夫か?」ドサッ

京太郎「お、おお……すごい量ですね」

ゆみ「やはりこの量は……」

京太郎「いえ、大丈夫です! やってみせます!」

ゆみ「そうか……ただ、失敗を経験した者として言うが、無理だと思ったら私を頼るんだぞ」

京太郎「倒れる前に頼ります」ハハ

ゆみ「それじゃあ須賀くん、自転車の鍵を取ってもらっていいか?」

京太郎「あ、はい、これです。足まだ痛みます?」

ゆみ「ん……歩くのは少しつらいな。まあ明後日には治ると言っていたから大丈夫だろう」

京太郎「そうですか……その、加治木先輩」

ゆみ「なんだ?」

京太郎「明日の行きも送らせて貰えませんか」

ゆみ「なっ!? あ、明日の行きとはつまり登校のことか」

京太郎「はい」

ゆみ「し、しかし登校時間には人も多いし朝からというのは目立ちそうだな……」

京太郎「二人乗りが目立つなら、人が多くなったらまた押しますよ」

ゆみ「余計に目立つだろう!?」

京太郎「じょ、冗談です」

京太郎「無理にではないですけど、もし痛むようなら明日も大変かなと思ったので……」

ゆみ「むぅ……」

京太郎「……」

ゆみ「……」

ゆみ「……そうだな。お願いしてもいいだろうか」

京太郎「はい、喜んで!」

ゆみ「ありがとう。それじゃあこれを」

京太郎「これは……自転車の鍵ですか?」

ゆみ「ああ、明日も来るんだ。自転車のほうが楽だろう? どうせ私は使えないしな」

京太郎「ありがとうございます!」



京太郎「そろそろ帰りますね」

ゆみ「ああ、今日は助かった」

ゆみ「保健室へ連れて行ってもらって、家まで送ってもらって、牌譜を引き受けてもらって、明日も来てもらう。君には借りが随分と出来てしまったな」

京太郎「どれも好きでやってることですから。気にしないでください」

ゆみ「私はいい後輩を持ったよ。……何か埋め合わせをしないとな」

京太郎「いえ別にそんな……」

ゆみ「後輩に助けて貰いっぱなしの先輩というのも情けない。私に出来ることなら何でもいい、考えておいてくれ」

京太郎「……わかりました。考えておきます」

ゆみ「ああ」

京太郎「それじゃあ加治木先輩、また明日」

ゆみ「また明日。今日はありがとう」


京太郎(いい後輩かあ……)シャー

京太郎(いつか、後輩としてじゃなく俺を見てもらえるように、頑張ろう)

いつもより長くなりましたが以上です。
次はもっと速く投下出来るようにするつもり。

昨日投下する予定だったんですが予想外に伸びてしまった。
投下します。

ヒソヒソヒソ……

京太郎「こんにちはー」ガラッ

桃子「こんにちはっすー!」

智美「おー京太郎、モモ」

睦月「思ったより気にしてなさそうだね」

京太郎「? モモなんかしたのか?」

桃子「特に覚えはないっすけど……」

佳織「あれ、もしかして噂になってるの知らない?」

京太郎「噂? 幽霊が出たって噂ですか?」

桃子「その喧嘩買うっすよ」

智美「それくらいじゃ今さら話題にもならないなー」

桃子「先輩だからって遠慮すると思ったら大間違いっすよ! 姿の見えない怖さを思い知るがいいっす!」

智美「実は最近、モモの居場所が匂いでなんとなくわかるようになってなー」ワハハ

桃子「なんと!?」

佳織「智美ちゃん、話が進まないよ」

智美「それもそうだなー」ワハハ

睦月「噂になってるのは京太郎くんたちの方だよ」

京太郎「俺ですか? というか"たち"?」

睦月「うん、京太郎くんと加治木先輩」

京太郎「そ、そうですか。どんな噂が?」ドキッ

睦月「ええと、二人乗りしてたカップルがいて、後ろの女の子が金髪の男の子をギュッと抱き締めてたとか」

京太郎「」

智美「鶴賀で金髪の男子と言ったら京太郎だよなー」

桃子「女子の方は男子の背中に顔をうずめてたと聞いたっす」

智美「まったく。私たちに隠れて大胆なことするじゃないか」

京太郎「」ビクッ

佳織「智美ちゃん、あんまりからかわないの」

睦月「うむ、昨日加治木先輩が抱きついてしまったときたまたま見られて、それが広まったんでしょう」

京太郎「ソ、ソウデスヨ」

桃子「まあそれはわかってるっすよ」

智美「噂話は伝言ゲームみたいなところがあるからなー」

桃子「幽霊がいたとかいう噂もあるっすよね。ちょっと私が見えづらいからって大げさっす」

智美「それは例としてどうかなー」ワハハ

桃子「まだ言うっすか!!」

佳織「もーダメだよ智美ちゃん」フフフ

京太郎「アハハ……」

ゆみ「」ガラッ

京太郎「!」ビクッ

ゆみ「すまない、遅くなった……なんだか騒がしいな」

桃子「あ、ゆみ先輩! 部長が酷いんすよー!」

ゆみ「なんだ蒲原? 後輩イジメは感心しないぞ」

智美「心温まる触れ合いのつもりだったんだけどなー」ワハハ

桃子「熱くはなったっすね。怒りで」

ゆみ「何をしているんだ……」ハァ

ゆみ「騒いでいたのはそれでか?」

桃子「いや、そもそもは京太郎と先輩のうわ――」

京太郎(まずい! このままじゃ昨日のことがバレちまう!)

京太郎「モモ、ちょっとこっち来い!!」

桃子「もう、なんなんすか?」

京太郎「いいから!」

桃子「あーれー」ズルズル

ゆみ「…………」ジー


京太郎「その噂はわざわざ加治木先輩に言わなくていいんじゃないか?」ヒソヒソ

桃子「え? いやでも京太郎みたいに知らないかもしれないっすし」

京太郎「加治木先輩だってあんまり触れられたいことじゃないだろ?」

桃子「むぅ……それは確かにそうっすね」

京太郎「だろ? だから話題に出すのは避けよう」

桃子「わかったっす」

京太郎(よし!)グッ

ヒソヒソヒソ……

ゆみ「……」ジー

睦月「どうかしましたか?」

ゆみ「えっ!? い、いや。なんでもない」

睦月「? ……ああ、さっきモモが言おうとした話ですね。それなら――」

京太郎「睦月先輩!! ちょ、ちょっとこちらへ」ガシッ

睦月「うわっ!? い、いきなりどうしたの?」

京太郎「とりあえず来て下さい。モモ、部長たちには頼んだぞ」

桃子「了解っす」

京太郎「それじゃあ睦月先輩。行きましょう」グイグイ

睦月「ちょ、ちょっと。あんまり押さないで……」

ゆみ「……」ジー


京太郎「」ペラペラ

睦月「」ウンウン

京太郎「」ペラペラ

睦月「」ンー

京太郎「」ペラペラペラ

睦月「」……コクッ

京太郎「」グッ

桃子「ジーっと見てどうしたっすか?」

ゆみ「っ!? い、いや。なんでもないぞ。そ、それよりさっきの話は……」アセアセ

桃子「あ、あれっすか? あれもなんでもないっす」アセアセ

ゆみ「そ、そうか」

桃子「そ、そうっすよ」

京太郎「ふう……」

ゆみ「あ、須賀くん」

京太郎「か、加治木先輩!?」ドキッ

京太郎(昨日と今日の朝は二人乗りの勢いで話進められたけど、改めて加治木先輩と話すと思うと緊張が!)

ゆみ「津山やモモと何の話をしていたんだ?」

京太郎「い、いえ。なんでもないですよ?」

ゆみ「だが……」

京太郎「モモ、速く麻雀打とうぜ!」ダッ

ゆみ「あっ」

桃子「えーと……待つっす京太郎ー!」タタタ


桃子「もーさっきからなんなんすか」

京太郎「り、理由はわかるだろ?」

桃子「わかるっすけど、やり方ってものがあるっす」

京太郎「うぅ……」

佳織「まあまあ、京太郎くんも焦ってたんだよ」

京太郎「佳織先輩……」ウルウル

佳織「もうちょっといいやりかたはいくらでもあったと思うけどしょうがないよ」

京太郎「ぐはっ!」

佳織「えっ、えっ!?」

睦月「悪気がない分キツそうだね」

京太郎「あ、睦月先輩。一緒に打ちません?」

睦月「立ち直り早いね……いいけど、今日も負けないよ」

京太郎「望むところです」

ゆみ「……」ジー

智美「どうしたゆみちん?」

ゆみ「いや、仲がいいなと思ってな」

智美「まあ2つ違いよりは同い年や1年違いのほうが話しやすいよなー」ワハハ

ゆみ「それはそうだが……」

智美「もしかして拗ねてるのかー」ワハハ

ゆみ「なに?」

智美「ゆみちんとの会話を途中で切り上げて他の女の子に走ったんだもんなー」

ゆみ「ん……」

智美「でもな、ゆみちん。あれには京太郎なりの理由があったんだ。だからあんまり責めちゃダメだぞ」

ゆみ「そうだな。それについてはそんなに気にしていない」

智美「ワハ?」

ゆみ「須賀くんは理由もなしにそういうことをする人間ではないからな。私に言えない何かがあったことくらいわかるし、詮索する気もない」

ゆみ「だから今の私は、蒲原が言ったとおり拗ねているんだろう」

智美「まさかツッコミがないどころか、言ったとおりなんて言われるとは思わなかったぞ」

ゆみ「はは……私は須賀くんとあんな風には話せていないからな」

ゆみ「帰りが一緒だから話す機会には恵まれていると思うのだが、だからこそな」

智美「そんなことないと思うけどな」

智美(キャラの問題もあるしなー)

ゆみ「だが……」

智美「どうしても気になるならこっちから歩み寄るなきゃダメだと思うぞ」

ゆみ「歩み寄る?」

智美「こっちは年上だからなー。後輩から話しかけるのはやっぱり気後れするだろー?」

ゆみ「ふむ……」

智美「だからこっちからこういう感じで話しかけていいんだぞと伝えないと、向こうも話しづらいだろ?」

ゆみ「なるほど」

智美「だからゆみちんから行動しないとダメだぞ。アプローチしたいならなおさらなー」ワハハ

ゆみ「な、なにを!?」

智美(からかい甲斐があるなー)ワハハ

――部活終了――

ゆみ「須賀くん」

京太郎「な、なんですか?」ドキッ

ゆみ「いや、昨日の話について確認しようと思ったんだが……」

京太郎「き、昨日のというと」

ゆみ「ほら、私に出来ることならなんでもやると言っただろう」

京太郎(なんでも……)ホワンホワン

京太郎(な、何考えてんだ俺は!)ブンブン

ゆみ「?」

智美「ゆみちん、あんまりそういうことは言わない方がいいと思うぞー」ワハハ

ゆみ「なぜだ? 昨日今日と助けられたんだからこのくらいはしてもいいだろう」

智美「健康な男子高校生には毒だぞー」

ゆみ「毒?」

智美「あー……」チラッ

京太郎「な、なんですか!? お、俺はなにも」

智美(大丈夫そうだなー)

智美「とりあえず、せめて京太郎以外には言わないようになー」

ゆみ「それはまあ助けてくれたのは須賀くんだしな」

智美「……まあいいかー」

桃子「それで京太郎は何を頼むんすか?」

京太郎「うわっ!? 突然現れるなよ」

桃子「失礼っすねー。で、どうするんすか?」

京太郎「えーと……」

桃子「エッチなこと頼んじゃダメっすよ」ヒソ

京太郎「ばっ、た、頼むわけねえだろ!?」

ゆみ「うん?」

京太郎「な、なんでもないですよ!」

桃子「ふふふ……それじゃあ私はむっちゃん先輩とかおりん先輩と先に行ってるっすよー」

京太郎「言うだけ言ってそれかこの野郎!」

桃子「野郎じゃないっすー!」タッタッタッ

京太郎「モモめ……」

智美「まあまあ。まだ決まってないんなら提案があるけどいいかー?」

京太郎「なんです?」

智美「日曜日にみんなで遊びに行こう!」

ゆみ「待て待て。大会も近いのに……」

智美「そうやって根を詰めすぎなんだよゆみちんは」

智美「京太郎とモモと佳織が入って本格的に大会を目指してから2週間、大会まで後2週間。休むにはちょうどいいだろー?」

ゆみ「しかし……というかそもそも須賀くんに対する埋め合わせなんだが」

京太郎「い、いえ。俺もそれがいいです」

京太郎(このまま1人で考えてると色々とドツボにはまりそうだしな……)

ゆみ「むぅ……」

智美「あーもちろん足が治ってないなら無理はさせないけどな。実際どうなんだー?」

ゆみ「まだ少し痛むが、まあ日曜日までには治るだろう」

智美「なら決まり。みんなには私から伝えとくぞ」

ゆみ「……まあ息抜きは必要か。須賀くんは本当にそれでよかったのか?」

京太郎「え、ええ。もちろんです」メソラシ

ゆみ「っ……」

京太郎(加治木先輩と遊びに……い、いや。他の4人もいるんだ。いつもの部活と一緒だ! うん!)

智美(やっぱりやったほうがよさそうだなー)

――分かれ道――

智美「それじゃまたなー」

京太郎「はい、さようなら……そうだ、部長。日曜日のことは」

智美「ああ、大丈夫大丈夫。ちゃんと言っておくから任せとけー」ワハハ

睦月「何の話ですか?」

智美「帰り道で話すよ」

ゆみ「別に今話してもいいと思うんだが……」

智美「まあまあ。それじゃあなー」

佳織「さようなら」

桃子「さよならっすー」

睦月「それではまた」

ゆみ「ああ、またな」


京太郎「……」テクテク

ゆみ「……」カラカラカラ

京太郎(や、やっぱり緊張するな……)

京太郎(何か話したいけど何も思いつかねえ)

ゆみ「なあ、須賀くん」

京太郎「は、はい!!」

ゆみ「部活の前にモモや津山と何か話をしていたな」

京太郎「えーと、それは……」

ゆみ「ああいや、別に何を話していたのか知りたいというわけではないんだ」

京太郎「?」

ゆみ「その、なんだ。私に言えないことも言えるような仲なんだなと思ったというか」

京太郎「い、いえ。そういうわけじゃ」

ゆみ「私は何を言っているんだろうな……すまない。忘れてくれ」

京太郎「は、はい……」

京太郎「…………」テクテク

ゆみ「…………」カラカラカラ

京太郎(ああもう、加治木先輩にあんな顔させて、何やってんだ俺)

京太郎(……ていうか今なら別に言ってもよかったんじゃないか? 元々モモたちにバレたくなかったわけだし)

京太郎(よし、それなら今からでも……)

ゆみ「須賀くん」

京太郎「!?」ビクッ

ゆみ「その、あ、歩いていたら足がまた痛んできたんだ」

京太郎「えっ? 大丈夫ですか!?」

ゆみ「ああ、まあ心配される程ではないんだが家まではちょっとつらいかもしれん」

京太郎「そんな……」

ゆみ「だから、その、もし良ければでいいん――」

京太郎「加治木先輩! 今日も俺に送らせて下さい!!」

ゆみ「」ビクッ

京太郎「悪化したら大変です! その、また恥ずかしい思いをさせることにはなりますが」

ゆみ「あ、ああ。須賀くんがよければこちらこそ頼みたい」

京太郎「俺のことなら気にしないで下さい。加治木先輩のほうが大切です」

ゆみ「う……」

京太郎「自転車借りますね。よ……っと。それじゃ後ろに乗って下さい」

ゆみ「あ、ああ」

京太郎「それじゃ出しますよ」

ゆみ「ああ、よろしく」

京太郎「」シャー

ゆみ(……ここまで本気で心配されると胸が痛むな)シャー

ゆみ(でもまあ、目の前で隠し事をされたんだ。これくらいは許されるだろう)ピトッ

京太郎「」ビクッ

ゆみ(おそらくこれが最後だろうし、たっぷりこうしていよう……)

――加治木宅前――

京太郎「つ、着きました」

ゆみ「ああ、ありがとう」

京太郎「明日の朝はどうします?」

ゆみ「それまでには治っていると思う。2日間ありがとう」

京太郎「気にしないでください。俺が好きでやってることですから」

ゆみ「そういうわけにもいかないさ。日曜日のとは別に何か言ってくれても構わないぞ」

京太郎「はは……じゃあ日曜日は麻雀のことは考えないで全力で遊んでください」

ゆみ「それは難しいな……」

京太郎「加治木先輩はそれくらいでちょうどいいですよ」

ゆみ「むぅ……そんなに麻雀ばかり考えているように見えただろうか」

京太郎「見えたっていうか事実じゃないですか?」

ゆみ「……それなら気をつけないといけないな」

京太郎「是非気をつけて下さい……それじゃ、そろそろ帰ります」

ゆみ「ああ、さよなら。……き、京太郎くん」カアァァ

京太郎「はい、さよ……い、今なんて!?」

ゆみ「き、聞き返すなバカ!!」

京太郎「す、すみません! そ、それでは失礼します。……ゆ、ゆみ先輩」カアァァ

ゆみ「あ、ああ。またな京太郎くん」

京太郎「はい、ゆみ先輩」

ゆみ「ああ、京太郎くん」

京太郎「はい、ゆみ先輩」

ゆみ「京太郎くん」

京太郎「ゆみ先輩」

ゆみ「……京太郎くん」

京太郎「……ゆみ先輩」

ゆみ「…………早く帰れ」カアァァ

京太郎「は、はい」カアァァ

---------------------------------------

智美「……というわけで、日曜日に遊びに行こうという話になったんだ」

睦月「元々部活のつもりでしたし大丈夫ですけど、結構急ですね」

智美「うんうん。それで、ちょっと相談があるんだ」

佳織「相談?」

智美「ああ、私たちはドタキャンして2人きりにしたらどうかなと思ってなー」

睦月「2人きりですか?」

智美「なんかゆみちんが京太郎とモモたちみたいに仲良く話せないとか思ってるみたいでなー」

桃子「そんなことないと思うっすけど」

智美「私もそう思う。ただまあこういうのは本人の気持ちの問題だからなー」

智美「それに実際京太郎が下の名前で呼んでないのゆみちんだけだから、あながち的外れとも言えないしなー。まあそれはゆみちん自身がそうさせたんだけど」

智美「部活とか帰り道じゃなくて、休みの日に2人で1日過ごせればそんなことも思わなくなると思うんだ」

睦月「うーん、言ってることはわかりますけど……」チラッ

佳織「そうだね。それだとちょっと……」チラッ

桃子「?」

智美「うん、まあだから最初はみんなで行こうって話にしたんだ。モモはどう思う?」

桃子「私っすか?」

智美「ああ、もちろんモモの都合もあるだろうから、嫌ならそう言ってくれて構わないぞ。仲良くさせる機会なんて他にも作れるからなー」

桃子「嫌なわけないじゃないっすか。私は賛成っすよ?」

一同「……」ポカーン

桃子「ど、どうしたっすか?」

智美「い、いや。ちょっと意外でなー」

睦月「うむ。本当にいいのか?」

佳織「桃子さん、嫌ならそうはっきり言ってくれていいんだよ?」

桃子「はっきりも何も、ゆみ先輩と京太郎が仲良くなるならそっちのほうがいいことじゃないっすか」

桃子「それはまあみんなで遊びに行けないのは寂しいっすけど、それはまた次行けばいいことっすよ」

睦月「そういうことじゃなくて……」

佳織「ええと、なんていうか……」

桃子「?」

智美「つまりだな。単刀直入に言うと、モモは京太郎のこと好きなんじゃないのか?」

桃子「好き……それはいわゆる男女関係的な好きっすよね」

一同「」コクコク

桃子「うーん……」

一同「……」

桃子「うーん……分かんないっす」

睦月「分からない?」

桃子「一人ぼっちだった私を見つけてくれた京太郎のことは好きっすよ。でもそれが恋愛的なものかどうかは分かんないっす」

桃子「元々深く人と関わったことがなかったっすから。友達的な好きなのか、恋愛的な好きなのか。区別がいまいちつかないんすよ」

智美「それなら判断がつくまで保留というか、少なくともデートさせたりとかはしないほうがいいんじゃないかー?」

桃子「それはそうかもしれないっすけど、でも今回はそうしたらきっと後悔するっす」

智美「後悔?」

桃子「京太郎は私を見つけてくれて、ゆみ先輩は私の世界を広げてくれた。……私は京太郎と同じくらいゆみ先輩のことも好きなんすよ」

桃子「高校に入るまで誰も私を見てくれなかったっすけど、今では5人も私を見てくれる人がいる。それはゆみ先輩と京太郎のおかげっす」

桃子「私にとってはその2人が仲良くなってくれることが何よりも大事っす。少なくとも今は」

桃子「もしかしたら後で後悔するかもしれないっすけど、今させなくても絶対後悔するっす。だから2人で行かせたいっすよ」

佳織「桃子さん……」ウルウル

桃子「ちょ、そんな反応されると恥ずかしいっす!」

智美「うん、そういうことなら日曜日は2人にさせるぞー」

睦月「わかりました」

智美「ゆみちんと京太郎の集合場所はあそこの神社の前にするから、みんなはあそこからちょっと離れたところに集合なー」ワハハ

佳織「覗くつもりなんだ!?」

智美「こんな楽しそうなこと放っておく手はないぞー」ワハハ

睦月「色々と台無しですよ……」

桃子「私にあれだけ言わせてオチを付けるとは思わなかったっす」

智美「そこまで不評だとは……じゃあやめるか?」

睦月「い、いえそれは……」

佳織「み、見守りたいかなーなんて」

桃子「行くっすよ!!」

智美「……みんな好きだなー」ワハハ

以上になります。
というわけで次回はデート。どこに行かせるかは未定。

デートまで行くかと思ったらそんなことはなかった。
まあ筆が進まなかっただけなんですが。
とりあえず出来たとこまで投下します。

智美「みんな遅いなー」

智美「いや、来ていてもわからないのかもしれないな。私の変装は完璧だからなー」ワハハ

睦月「……もしかして部長ですか?」

智美「おお、よく見つけられ……どちらさま?」

睦月「津山です!」

智美「むっきーなのか!? 全然気づかなかったぞ……」

睦月「髪を二つ結びにしてメガネかけただけじゃないですか」

智美「ということはそっちにいるのはもしかして……」

佳織「私にも気づいてなかったの!? 智美ちゃん酷いよー」

智美「気づく気づかないというか、もはや誰って感じだなー……」

佳織「ストレートにしてコンタクトに変えただけなのに……」

睦月「そんなに印象変わりますか?」

智美「髪もあるけど服装がなー。2人ともそんな服持ってたのかー」

睦月「あ、これは昨日2人で交換しました」

智美「ワハ!?」

佳織「やっぱり普段の印象と変えなきゃダメかなって思って」

智美「ふ、2人ともやる気出しすぎじゃないか……?」

佳織「デートを覗くんだしこのくらいやらないと!」

智美「そ、そんなものか……?」

佳織「それより、智美ちゃんのそれはちょっと……」

智美「え?」

睦月「サングラスに帽子、ですか……」

智美「て、定番だろー?」

桃子「むしろ余計目立つっすよ」

智美「モモいたのか!?」

桃子「最初っからいたっすよ! いやでも正直その変装はないっす」

智美「なっ!?」キョロキョロ

佳織「」サッ

睦月「」サッ

智美「な、なんで目を合わせないんだ」

睦月「いえ、まあその……」

佳織「ええっと、ひと目で智美ちゃんだってわかったかなって」

智美「!?」

桃子「言い出しっぺがそれはどうかと思うっすよ」

智美「そ、そういうモモは何も変装してないじゃないかー!」

桃子「……本気を出した私が見つかると思うっすか?」スゥ

智美「うっ……」

睦月「ま、まあどちらにしろ極力視界に入らないようにするわけですし」

桃子「見つからないように頑張るっす!」

佳織「気をつけてね!」

智美(絶対私はおかしくないんだけど……)

智美「なのにこの敗北感はなんなんだろうな……」ワハハ…

桃子「それにしても京太郎もゆみ先輩も遅いっすね」

睦月「もう5分前なんだけどなあ」

佳織「あの2人が時間前に来ないなんて意外だね」

智美「ああ、集合時間は12時って伝えておいたからなー」ワハハ

桃子「えっ、私は11時って聞いたっすよ?」

智美「ここにいる3人には11時って連絡したんだ」

佳織「なんでそんなことを……」

智美「下手したらあの2人は30分前に集合しそうだからなー」

睦月「それはわかりますが……」

智美「まあまあ。それまでガールズトークでもしてようじゃないか」

桃子「ガールズトークって言うほど潤いのある会話は出来そうにないっすけどね……」

智美「女子がやってればそれがガールズトークだ。細かいことは気にするなー」ワハハ

佳織「智美ちゃん……」

――15分後――

睦月「へえ、部長、免許取ったんですか」

智美「大会が終わったらみんなでドライブに行きたいなー」

桃子「楽しみっす! ――あ、京太郎が来た……って早いっすね!?」

佳織「京太郎くんは集合時間を12時って思ってるはずだよね……?」

睦月「50分前……」

智美「さ、さすがに予想外だな」

桃子「11時集合にしててよかったっすね……」

智美「だ、だろー」


――10分後――

睦月「あ、加治木先輩が……」

桃子「早すぎるっすよ!!!」

智美「あの2人のことをなめてたなー」ワハハ

睦月「加治木先輩、いつもこんなに早く来てたんですね……」

佳織「ま、まあ早めに集まってよかったよ」

智美「それもそうだなー。さて、それじゃかおりん。メールをするんだ」

佳織「うん…………これでよし。ちゃんと送ったよ」

睦月「私とモモは昨日送りましたから、後は部長だけですね」

智美「ああ、ちょっとしたら送るぞー」

---------------------------------------

京太郎「あ、ゆ、ゆみ先輩。おはようございます」

ゆみ「まだ慣れていないんだな」フフッ

ゆみ「おはよう、京太郎くん。……というか早いな」

京太郎「ゆみ先輩だって40分前に来てるじゃないですか。どっちもどっちです」

ゆみ「まあそれはそうか」

京太郎「ん……あれ、佳織先輩からメールが」

ゆみ「私にも来たな」

京太郎「今日は行けません……佳織先輩もかよ!!」

ゆみ「これで私たちと蒲原以外が休みか……なんだか嫌な予感がしてきたな」

京太郎「同感です……」

ゆみ「まあ今から心配してもしょうがない。時間まで待とう」

京太郎「そうですね」

ゆみ「それまでは……そうだな。麻雀関連で何か聞きたいことはあるか?」

京太郎「今日は麻雀を忘れて遊ぶことにしたような……」

ゆみ「なに、集まるまでだよ。そんなに熱を入れるつもりはないさ」

京太郎「そういうことでしたら。そうですね……」

京太郎「質問という感じじゃないですけど、皆さん守備堅いですよね。俺はどうしても振り込んじゃうので」

ゆみ「京太郎くんは押しすぎだ。相手が低そうに見えるからといって、何でもかんでも突っ張るのはやめたほうがいい」

京太郎「うっ……で、でも稼げるときに稼がないと勝てないじゃないですか!」

ゆみ「満貫以上のような高い手なら時と場合によるが、安い手で押すのは愚策だ」

ゆみ「ダマテンは仕方ないが、リーチに突っ張るのはリターンよりリスクのほうが大きい」

ゆみ「まあ余程の根拠があるか、自分の感覚を信じてやるのならそれはそれでいいんだがな。ただなんとなくというのであれば押すべきじゃない」

京太郎「おっしゃるとおりです……」

京太郎「ちなみにその守備はどうやって身につけたんですか?」

ゆみ「ああ、最初はネットを中心にやっていたからな。上がり重視より振り込みを少なくするほうがトータルで見ると成績がいいんだ」

ゆみ「3人ともそれで自然と身についた。たださっき言ったこととは逆になるがそれも良し悪しあってな……」

京太郎「振り込まないのはいいことじゃないですか」

ゆみ「ああ、それはもちろんだ。だが大会だとちょっと勝手が違ってな」

京太郎「というと?」

ゆみ「ネトマなら4位にならなければレートは下がらないから、最下位にならないことを目指すんだ。そうすれば自然にレートは上がっていくからな」

ゆみ「だけど大会では得点で順位が決まるだろう? 特に団体戦では1位にならなければ次に進めない」

ゆみ「守備的なのは悪いことではないんだが、早めにオリるということでもある。得点を稼ぎづらいから、大会向きではないんだ」

京太郎「なるほど……」

ゆみ「昔からいる私たち3人はその傾向が強い。そういう意味でモモや妹尾には期待しているな」

京太郎「モモはステルスモードに入れば守備を気にしなくていいですからね。佳織先輩も役満バンバン出しますし」

ゆみ「ああ、2人とも頼れる部員だ。……まあモモはともかく、初心者の妹尾に頼るというのも情けない話だがな」

京太郎「情けないなんてことないですよ。同じ鶴賀麻雀部の部員なんですから、頼れることは頼っちゃいましょう!」

ゆみ「…………」

京太郎「あ、あれ。変なこと言いました?」アセアセ

ゆみ「いや、君の言うとおりだと思ってな。情けないなんて思う必要はない、か。きっとそういう意識が私には足りていないんだろうな」フッ

京太郎「ええと……?」

ゆみ「君に教えられたというだけだよ。あまり気にしなくていい。……ん、蒲原からメールか」

京太郎「今日は行けなくなった……ですか」

ゆみ「まったく、白々しい」ハァ

京太郎「どうします?」

ゆみ「ここまでお膳立てされたんだ。2人で遊ぶことにしよう」

京太郎「俺はいいですけど……」

ゆみ「私も構わない。これで決まりだな」

京太郎「おお……2人乗りをあれだけ渋ってた人とは思えないです」

ゆみ「2人乗りとこれでは全然違うだろう」

ゆみ「……それに、この間の私の態度が原因だろうしな」ボソッ

京太郎「すみません、今なんて?」

ゆみ「何でもない。それより京太郎くん、エスコートよろしく頼むぞ?」」

京太郎「ま、まだこの辺りは全然わからないんですが……」

ゆみ「ああ、アドリブがどれほど利くのか楽しみにしているよ」フフッ

京太郎「えっ!?」

ゆみ「ほら、待ち合わせ場所でいつまで立たせているつもりなんだ?」

京太郎「はっ!? そ、それじゃあお昼も近いですしどこかで食べたりとか……」

ゆみ「そうだな。京太郎くんのオススメの店に案内してくれ」

京太郎「お、オススメですか……」ダラダラ

ゆみ「……すまない、からかいすぎたな」クスッ

京太郎「心臓に悪いんでやめて下さい……」

ゆみ「……? 確かにからかいすぎたとは思うが、いくらなんでも緊張しすぎじゃないか?」

京太郎「そ、それはその……」

京太郎(相手がゆみ先輩だからです!! とは言えねえ……!)

ゆみ「……まあいい、近くにファミレスがあるからそこへ行こうか」

京太郎「はい!」

今回は以上です。
どこ行かせようかさっぱり思いつかない……

難産でしたがどうにか完成。
どういうわけかいつもよりさらに長くなりましたがお付き合いください。

智美「お昼はファミレスかー」

睦月「定番ですね」

佳織「わあ、デートしたことあるんだ」

睦月「……友達で遊びに行くときの定番ですね」

佳織「ご、ごめんね……」

睦月「いや、気にしないで……」

智美「なんで傷を抉りあってるんだ」ワハハ

桃子「ドリンクバー持ってきたっすよー」

智美「おお、ありが……このよくわからない色はなんだー?」

桃子「いやードリンクバーでミックスするの一度やってみたかったんすよ」

智美「今まで麻雀部でやられたことなかったから無警戒だったなー」ワハハ…

智美「さて、佳織とむっきーにはどんなジュースが……」

桃子「かおりん先輩には頼まれてたオレンジジュースっす」

佳織「ありがとー」

智美「えっ」

桃子「むっちゃん先輩はアイスティーっすよね」

睦月「うむ、ありがとう」

智美「ワハ!?」

桃子「私は烏龍茶で……」

智美「ちょ、ちょっと待った!」

桃子「どうかしたっすか?」

智美「な、なんで2人は普通のなんだ!?」

桃子「それを頼まれたからっすよ?」

智美「確かに何でもいいって言ったな……」

桃子「小学生の頃から一度友達にやってみたいって思ってたから感謝してるっす!」キラキラ

智美「そ、そうかー」ワハハ

智美(純粋な目で見られている……!)

智美(こ、これは飲まないとダメな雰囲気か……?)チラッ

睦月・佳織「」コクッ

智美「ううぅ……」

桃子「」ワクワク

智美「えいっ」ゴクゴク

睦月・佳織「……」

智美「……うまいっ!!」

睦月・佳織「えっ」

智美「これうまいぞー! よければこれからも作ってくれー」ワハハ

桃子「適当に混ぜたからまた作るのは無理っす……」

佳織「智美ちゃん、その色で本当においしいの?」

智美「ああ、佳織も一口飲んでみるかー?」

佳織「じゃ、じゃあ」ゴクゴク

佳織「……おいしい!!」

睦月「じゃあ私も」ゴクゴク

睦月「……ほんとだ、おいしい!!」

桃子「むぅ、おいしいなんてつまらないっす……」

智美「まあまあ。モモも飲んでみろー」

桃子「んー」ゴクゴク

智美「どうだー?」

桃子「……マズイじゃないっすか!!」

智美「うまいわけないだろー!!」

桃子「かおりん先輩もむっちゃん先輩もノリよすぎないっすか!?」

佳織「騙されたと思うと悔しくて……」

睦月「こうなったらモモにも飲ませようと思って」

桃子「くっ!! 思えばあれがおいしくなるわけないっすよね!!」

智美「だからなにを混ぜたんだ!?」

桃子「騙されたのに教えると思うっすか!?」

---------------------------------------

<サキニヤッタノハソッチダロー!
<ソレハソレッス!


ゆみ「向こうが騒がしいな」モグモグ

京太郎「そうですねえ」ジー

ゆみ「ここのパスタはなかなかおいしいぞ」モグモグ

京太郎「そうですねえ」ジー

ゆみ「……君はバカか?」

京太郎「そうですねえ」ジー

ゆみ「……おい!」

京太郎「は、はい!?」ビクッ

ゆみ「まったく、先に食べ終わったからといって上の空なのは感心しないな」

京太郎「す、すみません」アセアセ

京太郎(見惚れてたとは言えないな……)

ゆみ「京太郎くんとお昼を一緒に食べるのはこれが初めてだったな」モグモグ

京太郎「学年も違いますし、部で食べることもないですしね」

ゆみ「去年は何度かやったんだが……今度部室かどこかで食べようか」モグモグ

京太郎「いいですね。楽しみです」

ゆみ「ああ……ふぅ、おいしかった」

京太郎「ドリンクバー何か取ってきましょうか?」

ゆみ「いや、大丈夫だ。それよりこれからどこに連れて行ってくれるのか聞かせて貰わないとな」

京太郎「えっ!? い、いやさっきのは冗談だったんじゃ……?」

ゆみ「他人が話しかけているのに気づかなかったんだ。もちろん何か考えてくれていたんだろう?」

京太郎(意外と気にしてた!?)

ゆみ「ほら、あんまり待たせるとこのまま帰ってしまうぞ?」

京太郎「え、ええとですね……」

京太郎(な、何かないか!)キョロキョロ

京太郎(ん? これは……)

京太郎「ゆみ先輩! ここ行きましょう!」

ゆみ「どれどれ……水族館か」

京太郎「はい。多分そんなに行くことないでしょうし、久しぶりに行けば楽しいと思うんですよ」

ゆみ「確かにここ数年行っていないな」

京太郎「なら行ってみません? ちょうどここに優待券も置いてありますし」

ゆみ「……一応聞いておくが、それが目についたからという理由ではないよな?」

京太郎「あ、あはは……」

ゆみ「……まあいいか。そこへ行くとしよう」

京太郎「い、いいんですか?」

ゆみ「久しぶりなのは本当だしな。聞いてて行きたくなったよ」

京太郎「それならよかったです。もう出ます?」

ゆみ「そうだな。早く行こうか」

---------------------------------------

智美「2人を追って着いたのがここかー」

睦月「水族館ですか。デートコースの定番ですね」

桃子「まあ優待券ありきだとは思うっすけどねー」ピラピラ

佳織「イルカショーだって! 可愛いんだろうなー」

智美「2人がどこに行くかよく調べてくれたなー、モモ」

桃子「麻雀部に入って私の影の薄さは磨かれたっすからね! それなりに自由自在に出来るっすよ」

智美「おお、凄いなー」

睦月「さすがモモ」

佳織「桃子さん凄いよ!」

桃子「素直に褒められると照れるっすね」テレテレ

睦月「ふむ……体質を悪用するのはよくないと思うぞ」

智美「……あんまり他人の恋路に踏み入るのはどうかと思うぞ?」

桃子「先輩たちもノリノリだったじゃないっすか!」

睦月「いや、こういう反応を望んでいるのかと」

桃子「照れ隠しっすよ! わかって欲しいっす!」

佳織「わかってやってるんだよきっと」

桃子「きっとというのが不安っすね……」

---------------------------------------

京太郎「この水族館長野で一番大きいらしいですよ」

ゆみ「ほう、そうなのか」

京太郎「人も結構多いですね」

ゆみ「長野には海がないから……というのはあんまり関係ないか」

京太郎「それじゃあ早速入りましょうか」

ゆみ「ああ」

…………

………

……



京太郎「最初は熱帯ゾーンですね」

ゆみ「色とりどりの魚が可愛らしいな」

京太郎「アロワナは大きいですねー」

ゆみ「世界最大級の淡水魚だったか。見た目のインパクトも凄いな」

京太郎「あの口は特徴的ですよね。……おお、水から飛び出して虫を食べてる」

ゆみ「見た目によらず動きが早いな」

京太郎「あっ、クマノミがいますよ!」

ゆみ「ファインディング・ニモだな。親子の愛情が感じられて好きだったよ」

京太郎「今度続編もやるらしいですよ」

ゆみ「そうなのか」

京太郎「その……公開されたら一緒に見に行きませんか?」

ゆみ「えっ……ああ、いいぞ。楽しみだな」

京太郎「ほんとですか! やった!!」

ゆみ「よ、喜びすぎだ」カアァァ

京太郎「次は餌やりが体験できるコーナーですね」

ゆみ「凄い数の鯉だな」

京太郎「幸福池っていうらしいですよ」

ゆみ「ふむ、特定の色の鯉に餌をあげると願いごとが叶う……か」

京太郎「……特定の色ってなんなんですかね?」

ゆみ「……それも含めて運試しというところなのか?」

京太郎「とりあえず餌あげてみましょうか」

ゆみ「そうだな。珍しそうな色の鯉にあげてれば当たるだろう」

京太郎「えい!」ポーイ

ゆみ「それっ!」ポーイ

京太郎「……当たったかなあ」

ゆみ「それは神のみぞ知るだな」

京太郎「ゆみ先輩の願いごとはなんです? やっぱり麻雀で全国行けますようにとかですか?」

ゆみ「いや、違う。……それに、他人に聞くときはまず自分から言うものだぞ?」

京太郎「俺ですか? 俺は先輩たちが全国に行けますようにってお願いしました。一緒だと思ったんですけどね」ハハハ

ゆみ「ふふ、それならある意味一緒のようなものだよ」

京太郎「え?」

ゆみ「私は京太郎くんが全国に行けますようにとお願いしたからな。お互いがお互いに同じことを祈ったんだから一緒だよ」

京太郎「ぜ、全国ってハードル高いですね……」

ゆみ「言っておくが私たちも大会に出るのは初めてだぞ? 無理を言っているのは君も同じだ」

京太郎「それはそうですが……」

ゆみ「なに、所詮はおまじないだ。あんまり気負わず喜んでくれると嬉しい」

京太郎「……そうですね。俺も頑張ります!」

ゆみ「うん、その意気だ」

京太郎「お待ちかねのイルカショーですよ!」

ゆみ「確かに楽しみにしていたが、お待ちかねというほどではないぞ」ソワソワ

京太郎(そんなにソワソワして言われてもなあ)

ゆみ「どうする? 前のほうに行くか?」グイグイ

京太郎「どうするというか引っ張ってるじゃないですか!?」

ゆみ「な、なんのことだ?」

京太郎「先輩……まあともかく、前のほうはやめときましょう」

ゆみ「何故だ!? ドルフィくんが近くで見られるんだぞ!?」

京太郎「そのうちわかりますよ。だから座るのは真ん中辺りにしておきましょう」

ゆみ「君がそこまでいうなら……」

ゆみ「おお!」

京太郎「すげー、尾ビレで水の上歩いてる」

ゆみ「人を乗せて運んでる!?」

京太郎「プールの端から端まで鼻の上に人を乗せて……初めて見た」

ゆみ「おー!」

京太郎「定番ですけどジャンプで輪を連続してくぐるのは見てて楽しいですね」

ゆみ「……なあ京太郎くん。やっぱり前で見ててもよかったんじゃないか?」

京太郎「さっきが小さいジャンプだったから……そろそろですよ」

ゆみ「?」

調教師「さあ次はドルフィくんの得意技、大ジャンプです! 見事このハードルを越えることが出来るでしょうか!」

ゆみ「」ドキドキ

調教師「ドルフィくん行くよー!」ピッ

ドルフィ「」ジャンプ

バッシャーーン!!

調教師「見事ハードルを越えましたドルフィくんに、盛大な拍手をお願いします!」パチパチパチ

<ウワッビショビショニヌレタッス!!
<ダカラヤメトコウッテイッタロー!?

京太郎「ほら、前のほうだとあんな風にジャンプしたときの飛沫がかかることがあるんですよ」

ゆみ「思ったより大量にかかるんだな……」

京太郎「いや、あれはさすがに運が悪かったんだと思います」

ゆみ「なんにせよ君のおかげで濡れずに済んだよ。ありがとう」

京太郎「どういたしまして……それより前で濡れてた人蒲原先輩に似てませんでした?」

ゆみ「ああ、確かに似ていたな。だが周りに3年の友人も、妹尾や津山の姿もなかったから別人だろう」

京太郎「なんとなくあの辺りの雰囲気が麻雀部っぽかったんですが……まあでも先輩たちがいなかったんですから違いますよね」

ゆみ「そうだな。それに隠れてついて来ているなら私たちの前に座ったりしないさ」

京太郎「それもそうですね」

京太郎「最後は海水魚コーナーですか」

ゆみ「最後だけだいぶ括りが広いな」

京太郎「きっと色々あるんですよ。あ、2万匹のイワシ玉とかあるみたいですよ」

ゆみ「2万匹とは凄いな」

京太郎「えーと、でも……」キョロキョロ

ゆみ「……見当たらないな」

京太郎「ですねえ。あ、これ……」

ゆみ「……用意していたイワシはサメやアジに食べられてしまいました」

京太郎「……魚の世界も厳しいんですね」

ゆみ「狭い水槽だから玉になったくらいでは誤魔化せなかったんだろうな」

京太郎「……スイミー」ボソッ

ゆみ「あれは海だし、大型の魚に化けていただろう!」

京太郎「……」

ゆみ「……」

京太郎「次、行きましょうか」

ゆみ「ああ……」

京太郎「あ、先輩! カジキマグロですよ!」

ゆみ「ほう」

京太郎「え、ええと……加治木先輩とカジキマグロで……」

ゆみ「ああ」

京太郎「その……」

ゆみ「どうした? 続けろ」

京太郎「すみませんでしたぁ!!」

ゆみ「わかればいい」

京太郎「でも水族館でカジキマグロって珍しくないですか?」

ゆみ「カジキマグロは外洋で泳いでいる魚だからな。水槽の中では壁やガラスにぶつかってすぐ傷つくから、飼育に向かないんだ」

京太郎「詳しいですね」

ゆみ「昔何度もからかわれたからな。意地になって調べてやった」

京太郎「……すみませんでした!」

ゆみ「謝るな!」

京太郎「おお、マンボウ!」

ゆみ「初めて見たが思っていた以上に大きいな」

京太郎「知ってます? マンボウってプランクトンの一種なんですよ」

ゆみ「ああ、知っている」

京太郎「えっ」

ゆみ「プランクトンは浮遊生物という意味です。マンボウも泳ぐ力が弱くて海流に逆らえないため、プランクトンの一種に含まれます」

ゆみ「そこに書いてあるのを読んだんだろう? 私もさっき読んだよ」

京太郎「あ、あはは。よく見てますね」

ゆみ「こういうものが目につく質だからな。それにここに書いていないマンボウの特徴も知っているぞ?」

京太郎「へー。どういうのがあるんですか?」

ゆみ「さっき言ったようにマンボウは泳ぐのが下手で岩にぶつかってよく死んでしまうんだ」

ゆみ「水族館ではそれを防ぐためにネットやフィルムで保護しているが、それに引っかかって死んでしまうこともあるらしい」

京太郎「へー」

ゆみ「更にマンボウは寄生虫を取るために水中からジャンプして水面に自分の体を叩きつけるんだが、それで死ぬこともある」

京太郎「え?」

ゆみ「それと魚は泳ぐことで呼吸をしているんだが、マンボウは泳ぐのが下手だからすぐ酸欠になってしまう。場合によってはそのまま死ぬ」

京太郎「えっ?」

ゆみ「他にも……」

京太郎「他にも!? ちょ、ちょっと待って下さい! 何ですかそのひ弱な生き物! そんなのすぐ絶滅するでしょう!?」

ゆみ「マンボウは絶滅しないために、体を強くするのではなく子孫をたくさん残すことを選んだんだ。一度に数億個の卵を産むことは知っているだろう」

京太郎「いや知ってますけど!」

ゆみ「まあそういう生物もいるという話だ」

京太郎「こんな呑気そうな顔してますけど、厳しい競争を勝ち抜いてきたエリートなんですね……」

ゆみ「ああ、私たちもこのマンボウのように大会を勝ち抜かないとな」

京太郎「う、うーん……」

京太郎「……そういえばゆみ先輩、マンボウにも詳しいんですね」

ゆみ「ああ、カジキマグロのことを調べるときに目についたからついでにな」

京太郎「すみませんでした!」

ゆみ「だから謝るな!」

京太郎「おみやげコーナーですね」

ゆみ「地元だとあまり買うこともないな」

京太郎「麻雀部には……」

ゆみ「来なかったのはあっちだ。いらん」

京太郎(意外と怒ってたのか……)

ゆみ「京太郎くんは何か買いたいものがあるのか?」

京太郎「んー……はい。ちょっと買いたいものが」

ゆみ「そうか。なら私はここで待っているよ」

京太郎「はい、すぐ戻ります」


京太郎(ゆみ先輩に何か買いたかったけど、思ったより時間かかっちゃったからなあ)

京太郎(ここであげられそうなのを見つけないと……)キョロキョロ

京太郎(あ、イルカのストラップ)

京太郎(これくらいなら気軽に受け取ってもらえそうだな。あんまり待たせても悪いし……)

京太郎「すいません、これください」

店員「はい、ありがとうございましたー!」

京太郎「すみません、お待たせし……ってあれ、いない?」

京太郎「も、もしかして先に帰ったのか!? やばい、何かしたか俺!?」

ゆみ「待て、いくらなんでも連れを置いて帰ったりはしない」

京太郎「あ、ゆみ先輩!」

ゆみ「すぐ戻るとは言っていたが本当に早いな」

京太郎「お待たせしたら悪いですから。それよりゆみ先輩はどこ行ってたんですか?」

ゆみ「あーその……あまり聞くな」

京太郎「……? はい」

ゆみ「それじゃあそろそろ帰ろうか」

京太郎「はい。結構長居しちゃいましたね」

ゆみ「そうだな。だが楽しかったよ。誘ってくれてありがとう」

京太郎「こちらこそ。凄く楽しかったです。それとその……」

ゆみ「ん?」

京太郎「よ、よければ今日も家まで送ります」

ゆみ「なんだ。そんなことならかしこまらなくてもいい」フフッ

ゆみ「最後までエスコートを頼んだぞ。京太郎くん」

---------------------------------------

――帰り道――

佳織「そういえば智美ちゃん、今回のデートで2人にはどのくらい仲良くなってもらうのが目標だったの?」

智美「ん? そうだなー。名前で呼ぶくらいになってくれたら満足かなー」

睦月「あの2人だと難しそうですねえ」

桃子「え? それなら喫茶店のときにもう『ゆみ先輩』『京太郎くん』って呼びあってたっすよ?」

智美「えっ」

睦月「えっ」

佳織「それじゃあこの間帰るときにそう呼ぶようになってたのかな?」

桃子「そうみたいっすねー」

智美「……無駄な気遣いだったかなー」ワハハ……

睦月「そ、そんなことないですよ! きっともっと凄く仲良くなってると思います!」

智美「……付き合うまでいったら悔しいなー」

睦月「うっ」

桃子「そのときは全力でからかってその悔しさを晴らせばいいっす!」

佳織「凄く自分たちが惨めになりそうな……」

桃子「振り返っちゃダメっすよ! 勢いが全てっす!」

智美「……そうだなー。そのときは全力でからかおう! 部長として許す!」

佳織「部長とかって問題なのかな……?」

睦月「まあまだ付き合ってるわけでもないしね」

桃子「こういうことは先に決めておくほうがいいんすよ」

智美「嫉妬する心の準備もできるしなー」ワハハ

---------------------------------------

――加治木宅前――

ゆみ「着いたか……いつもありがとう」

京太郎「どういたしまして」

ゆみ「久しぶりに麻雀のことを忘れたよ。いい息抜きになった」

京太郎「大会まで後2週間ですね」

ゆみ「ああ、これからはまた厳しくやらせてもらうぞ」

京太郎「お、お手柔らかにお願いします」

ゆみ「それは君次第だな」フフッ

京太郎「あはは……」

京太郎「えっと、ゆみ先輩。ゆみ先輩に渡したいものが」

ゆみ「何だ?」

京太郎「水族館で買ったんですけど……イルカのストラップです」

ゆみ「わぁ……! 可愛いな。嬉しいよ。ありがとう」

京太郎(よかった、喜んでもらえた……!)ホッ

ゆみ「それでだな。その、私からも渡したいものがあるんだ」

京太郎「え?」

ゆみ「マンボウのストラップだ。キャラもののような可愛い系ではないから、男子が付けていてもおかしくはないと思うのだが……」

京太郎「お、俺にですか!? うわ、すっげえ嬉しいです!」

ゆみ「喜んでくれたか。よかった……」

京太郎「喜ぶに決まってるじゃないですか!」

ゆみ「マンボウが成長するように、君に大会を勝ち抜いて欲しいという思いも込めてみたんだ。よければ付けてくれ」

京太郎「そんな期待まで……! もちろん付けますよ! ありがとうございます!」

ゆみ「ありがとう。私もイルカのストラップ、付けさせてもらうよ」

京太郎「本当ですか! 水族館選んでよかった……!」

ゆみ「――――……正直なところ、私はどこでもよかったんだがな」ボソッ

京太郎「ちょっ、これでも必死に考えたんですよ!?」

ゆみ「君は耳がいいな」ハハ

ゆみ「別に悪い意味で言ったんじゃない。とても楽しかったのは本当だよ。久々で新鮮で、水族館でよかったと思ってる」

京太郎「まあ、ならよかったですけど。後何かその前に言おうと――」

ゆみ「それよりほら、あまり遅いとご両親が心配するぞ」

京太郎「いえ女子じゃないんですから……というか、まだそんな遅い時間でもないですよ」

ゆみ「なんだ、家に上がって行きたいのか?」

京太郎「どうしてそうなるんですか!?」

ゆみ「まだそんなに遅い時間ではないんだから家に上げろと言いたいんだろう? 一応言っておくが両親はいるからな」

京太郎「上がりづら……というか上がりませんよ! 帰ります!」

ゆみ「ああ、また部活でな」

京太郎「はい、さようなら。また学校で!」

ゆみ「……行ったか」

ゆみ(……危なかった。追求されていたら口を滑らせたかも……ああ、考えるだけで恥ずかしい!)

ゆみ(何より、君が私のために考えてくれたということが嬉しいんだ。だから正直なところ、私はどこでもよかったんだがな、なんて)

ゆみ(何を考えているんだ私は!! 考えさせたのは私だろう! それに口に出すなんて!)カアァァ

ゆみ「前半のほうを聞かれていなかったのは幸いか……」

ゆみ「……京太郎くんは、私のことをどう思っているんだろうな」

ゆみ「……いや、違うな。京太郎くんより、私がどう思っているのか……」

以上になります。
後2,3回部活やったら大会に入る予定です。

乙ー

加治木=楠らしい
そして須賀神社には
天然記念物の楠がある

ようするに京かじゅ最高って事だな

>>309
おお、そんな豆知識が。いずれ何かで使いたい

そんなわけで投下します

京太郎「こんにちはー。ゆみ先輩1人ですか?」ガラガラガラ

ゆみ「ああ、みんなまだ来ていないようだ。……ぜひとも聞きたいことがあるんだがな」

京太郎「あはは……あ、ゆみ先輩。この間言われてた牌譜の分析です」

ゆみ「ああ、ありがとう……うん、よく出来てるよ」

京太郎「ありがとうございます!」

ゆみ「だが京太郎くんは自分の打牌には甘いところがあるな。ほら、ここ」

京太郎「えっ?」

ゆみ「生牌ならともかく、1枚切れの嵌張に受けるくらいなら役牌の対子を残したほうがいい。順目も早いしな」

京太郎「あーなるほど」

ゆみ「別にミスがあることで責めたりはしないさ。ただ直さないのはよくないな」

京太郎「うう、見落としてました……」

ゆみ「自分の打牌は、なまじ意図が完璧にわかっている分ミスに気付きづらい。特に注意してみるといい」

京太郎「はい!」

ゆみ「うん、頑張れよ」

ゆみ「さて、次は他校の生徒の分だ。ここの牌譜が分かりませんと書いているな」

京太郎「そこはほんとにわかりませんでした」

ゆみ「そうか。この捨て牌の意図はな…………」

桃子「入るっすよー」ガラガラガラ

智美「おー2人とももういるのかー」

睦月「早いですね」

ゆみ「ああ、4人で来たのか」

智美「途中で一緒になってなー」

ゆみ「そうか。私は京太郎くんと話しているから、先に始めていていいぞ」

京太郎「ゆみ先輩、もう大会も近いんですから俺の指導なんて後回しでいいですよ」

ゆみ「大会が近いのは君も同じだろう。それに牌譜はどうせ見るんだ。君に教えながら見たほうが効率がいいさ」

桃子「うーん、仲良くなったっすねー」

智美「気を回した甲斐があったなー」

ゆみ「元々悪くなんてない。いらない気遣いを」ハァ

智美「ちょっとゆみちんには金曜日の言動を思い出して欲しいなー」

ゆみ「き、記憶にないな」

智美「ゆみちん……」ハァ

智美「まったく、そんなに嫌だったのか?」ワハハ

ゆみ「そんなわけな……! そ、それとこれとは話が別だ!」

智美「素直なほうが人生得だぞー」ワハハ

桃子「ある意味すっごく素直っすけどね」

佳織「というか、用事があって休んだわけじゃないって気づいてたんですね」

睦月「ちょっと露骨すぎましたか」

京太郎「4人も休んで偶然だなんて思うわけないじゃないですか」ハァ

桃子「部員のことはちゃんと信じなきゃダメっすよー?」

京太郎「結局嘘だったじゃねえか!」

桃子「それは結果論っす! 信じるかどうかが大切なんすよ!」

京太郎「酷い屁理屈だな!」

京太郎「……あれ? ゆみ先輩。そういえば俺が先輩のこと下の名前で呼ぶようになったのって、金曜日でしたよね?」

ゆみ「ん? ああ、私が京太郎くんと呼ぶのもそれからだな。しかしそれがどうかし……そうか」

睦月「?」

桃子「?」

智美「うん? それがどうかしたのか?」

京太郎「いや、普通少しくらい反応があるんじゃないですか?」

佳織「なんのこと?」

ゆみ「私が須賀くんではなく京太郎くんと呼んでいて、京太郎くんが私のことを加治木先輩ではなくゆみ先輩と呼んでいることだ」

4人「「「「あっ」」」」

京太郎「まるで知っていたかのように自然に受け入れてましたよね」

智美「そ、それはほら。あんまりからかっていいことでもないかと思って」

ゆみ「わざわざ2人きりで遊びに行かせるほど私たちの仲を気にしていたんだ。別にからかいとしてでなくとも聞くほうが自然だろう」

桃子「あ、あれっすよ! 今日学校で2人が喋ってるのを聞いて」

京太郎「残念ながら今日ゆみ先輩とは放課後しか喋ってない」

睦月「2人の呼び方が自然だったので違和感なく……」

ゆみ「さすがに苦しいな」

佳織「ええと、それじゃあ……」

京太郎「今それじゃあって言いましたよね!?」

佳織「ふぇっ!? い、いや、違うの!」

ゆみ「そもそも最初の"あっ"という反応でわかっている」ハァ

京太郎「そういえばイルカショーのとき蒲原先輩らしき人がいましたね」

ゆみ「ああ、結局は君の言ったことが正しかったというわけか」

桃子「ほら、やっぱりあの変装じゃバレバレだったんすよ!」ヒソヒソ

智美「前の方に行きたいって言い出したのはモモだろー!?」ヒソヒソ

ゆみ「内輪もめはいい。それよりいつから見ていたんだ?」

智美「い、いやたまたま水族館に遊びに行ったら偶然ゆみちん達が……」

佳織「智美ちゃん、もうやめよう」ポンッ

睦月「待ち合わせのときからです」

京太郎「最初からですか!? 俺たち結構早く移動しましたよ!?」

ゆみ「遊ぶ場所は集まってから決めたし、待ち合わせ時間よりだいぶ早く動いたから安心していたんだが……」

桃子「先輩たちより1時間早く集まってたんすよ。部長に言われて」

智美「さりげなく私に責任を負わせるなー! 後をつけるのやめるかどうかちゃんと聞いたろー!?」

桃子「私たちは先輩が言わなかったら後をつけようなんて言わなかったすよ!」

智美「む……そもそもモモが言わなければ名前を呼んでるのにちゃんと驚けたんだぞー!」

桃子「話題に出したのはそっちじゃないっすか!」

ギャーギャー

ゆみ「……おい、2人とも」ギロッ

智美・桃子「」ビクッ

ゆみ「騒いでうやむやにしようという努力は買おう」

智美・桃子(バ、バレてたかー/っすか……)

ゆみ「だがまあ……誤魔化されると思うなよ?」ニコッ

智美・桃子「ヒッ」

ゆみ「津山、妹尾。お前たちもだからな」

津山・佳織(黙ってやりすごせなかった……)

京太郎「せ、先輩? 穏便にしてくださいね?」

ゆみ「ああ、うん……まあ、京太郎くんは気にするな」ニコッ

京太郎(こ、こえー……)ブルブル

ゆみ「さて、蒲原。次はこの局だ。まずどこが悪いと思うか言ってみろ」

蒲原「こ、ここかなー?」

ゆみ「ふむ、そこだけか?」

蒲原「こ、ここもかな?」

ゆみ「違う」

蒲原「ひっ」

ゆみ「そこのドラ切りは一見危なく見えるが、下家の手牌にドラがあることが濃厚だから通りやすい。少なくとも他の牌よりは安全だ」

蒲原「な、なるほどー」

ゆみ「大会も近いし、やはりもう少し厳しくしないとダメか……」ブツブツ

蒲原(ひ、ひええ)ガクガクブルブル

京太郎「よっしゃあああ!!!」

桃子「くぅ、悔しいっす」

睦月「京太郎くん、おめでとう」

佳織「凄いよ、おめでとう!」

京太郎「ありがとうございます!」

ゆみ「ん? どうしたんだ?」

京太郎「ゆみ先輩、俺ようやく1位になれました!!!」

ゆみ「本当か!? 凄いじゃないか!」

京太郎「なんとかモモから逃げ切れました。先輩のおかげです!」

ゆみ「君の実力だよ。モモに勝てたんだな」

桃子「後一歩だったっすよー。今回は手牌もそこまで悪くなかったし、大会までにもう一度負けるとは思わなかったっす」

京太郎「ふっふっふ。1位も取ったし、これで残った目標は先輩に勝つだけです」

ゆみ「そうか、私もそう簡単には負けないぞ?」

京太郎「望むところです。さあ打ちましょう!」

ゆみ「ああ、勝負だ」

智美「た、助かった……」

桃子「先輩は京太郎との勝負に集中してくれそうっすね。負けて悔しいっすけど、ある意味助かったっす」

睦月「京太郎くんも強くなったね」

佳織「そうだね。始めたの同じくらいなのにもう全然敵わないや」

智美「まだまだ2週間ちょっとだろー。佳織には役満があるんだし、これからこれから」

佳織「その役満が出るってのは偶然だと思うんだけど……」

睦月「いや、妹尾さんが役満で上がった数、私が今までに上がった役満の数より多いよ?」

佳織「えっ?」

桃子「もうちょっと自分の凄さを自覚して欲しいっすね」

智美「貴重な才能だぞー」ワハハ

佳織「そ、そんなこと言われても……」

京太郎「先輩ー。速く席着いてくださいよー」

智美「ああ、悪い悪い」

佳織「いま行くよー」パタパタ

桃子「んー京太郎も強くなったっすけど、佳織先輩ももっと自信持って欲しいっす」

睦月「うん、爆発力は凄いし、1位になったことだって何度も……」


佳織「あ、ロン。清一色……かな?」

ゆみ「……妹尾、それは九蓮宝燈と言ってな。役満の一つだ」

佳織「えっ」

智美「京太郎のトビで終了だなー」ワハハ

京太郎「」

佳織「ご、ごめんね? 京太郎くん」

京太郎「い、いえ。さすが佳織先輩……」ハハハ…


睦月「……」

桃子「……」

睦月「なんで自信持たないんだろう」

桃子「ほんとっすね」

京太郎「……立直です」

佳織「」ドキドキ

睦月「」ドキドキ

桃子「ううん」タン

ゆみ「……」タン

智美「んー」タン

京太郎「……ツ、ツモ! 2600・1300です!」

智美「おおー!」

ゆみ「1位だな。おめでとう」

桃子「むー、また負けたっすか」

睦月「おめでとう京太郎くん」

佳織「今日初めて1位になったのに、同じ日に2度もなるなんて凄いよ!」

京太郎「……」

ゆみ「京太郎くん?」

京太郎「…………よっしゃああああ!!!」

ゆみ「」ビクッ

京太郎「やっとゆみ先輩に勝てた! しかも1位! 2回目! うわ、すっげえ嬉しい!!」

京太郎「今日の俺凄いなー! ゆみ先輩、やりましたよ! ……ゆみ先輩?」

ゆみ「……京太郎くん、まずはおめでとう」

京太郎「ありがとうございます!」

ゆみ「だが、いきなり大声を出すのはやめろ」

京太郎「あ、すみません」

ゆみ「それと……目の前でここまで喜ばれるとな。さすがにリベンジしないわけにはいかないな」ゴッ

京太郎「えっ」

ゆみ「蒲原、モモ。順番だと私と京太郎くんだが、私たちの代わりに津山と妹尾と交代して貰っていいか?」

智美・桃子「」コクコク

京太郎「えっ?」

ゆみ「さあ、京太郎くん。続けよう」

京太郎「……えっ?」

…………

………

……

――帰り道――

京太郎「先輩……酷いですよ……」

ゆみ「す、すまない」アセアセ

京太郎「1位になってゆみ先輩に褒めてもらいたかったのに……」ボソッ

ゆみ「? 今なんて……」

京太郎「何でもないです!」

京太郎(ゆみ先輩、前言ったこと忘れてるのかなあ)ハァ

京太郎「それより、あの後3位とか4位ばっかりで心折れかけましたよ!?」

ゆみ「べ、別に負けたときから本気だったから実力が変わるわけでは……」

京太郎「ゆみ先輩は手牌読んだり出来るじゃないですか。俺の手牌集中して見てませんでした?」

ゆみ「うっ」ギクッ

京太郎「やっぱり!」

ゆみ「悔しかったんだ、わかれ!」

京太郎「逆ギレ!?」

ゆみ「……まあその、別に京太郎くんだけ見ていたわけじゃない。ただ調子がよさそうだから警戒を強くしたというか――」

京太郎「! ゆみ先輩!」

ゆみ「な、なんだ?」

京太郎「それって、俺のことを強い相手だって認めてくれたってことですか!?」

ゆみ「うん? まあそうだな」

京太郎「本当ですか!? やった!!」

ゆみ「何をそんなに喜……ああ、君は勘違いしていたのか」

京太郎「勘違い?」

ゆみ「京太郎くんが強いだなんて前から知っているよ。警戒したのだって別に今回が初めてじゃない。というかそうでなければもっと早く1位になれていたさ」

京太郎「えっ」

ゆみ「前にも言ったが……そうだな。1位になったのだし改めて」

ゆみ「君の努力は私が誰より知っている。君は強くなった」

ゆみ「今回1位になったのも偶然じゃない。これから何度だってなれるさ。私が保証するよ」

ゆみ「京太郎くん、よく頑張った」ポン

京太郎「……!!」

京太郎「ゆみ先輩、覚えててくれたんですね……!」ウルウル

ゆみ「あ、当たり前だ。何も泣くことはないだろう」カアァァ

京太郎「いや、もうほんと嬉しいです。俺、これからも頑張ります!!」

ゆみ「……しかし正直に言って、京太郎くんが入ったときは2週間でここまで上手くなるとは思わなかった」

京太郎「そこまで言われるほど上手くなりました?」

ゆみ「もちろんだ。特にモモにはステルスもある。私とモモがいる卓で1位を取るのは、早くても大会が終わってからだろうと思っていたよ」

京太郎「今日勝てたのは嬉しいですけど、ゆみ先輩とモモはもちろん、睦月先輩にも部長にもあんまり勝ててるわけじゃないですよ?」

ゆみ「そこまで上手くなられたら私たちの立つ瀬がないな」ハハハ

ゆみ「京太郎くん、大会でどこまで行ってみたいと考えてみたことはあるか?」

京太郎「どこまでというとやっぱり決勝リーグまで行ってみたいです。ただそもそもどんな感じなのかが……」

ゆみ「ふむ、そういえばそういう話をしたことがなかったな。それじゃあ分かる範囲で説明しよう」

ゆみ「……説明するといったが、正直言って男子の方は私もよくわからん」

ゆみ「だがまあ、君は麻雀を初めたばかりの初心者だ。男子のほうがレベルが高いと聞くし、決勝リーグまで進むのはかなり難しいだろう」

京太郎「ですよねー」ガックリ

ゆみ「だが、ここ長野に限っては可能性がある」

京太郎「え? なんでですか?」

ゆみ「長野の男子には恐ろしく強い3人の選手がいるんだ。全国大会の1位から3位までその3人が独占していた」

ゆみ「点数も圧倒的でな。その3人とその他大勢というか、とにかく別次元の強さだった」

京太郎「そんな強かったんですか?」

ゆみ「その3人の誰かがいる卓では、1万点残ったら運がいいと思えと言われている」

京太郎「なんですかそれ!?」

ゆみ「信じがたいが本当だ。去年1人は卒業したんだが、まだ2人いる。予選では全選手と当たるからな。その2人とも当たることになる」

京太郎「ふんふむ」

ゆみ「その2人と当たったときにどれだけ点を取られないか。決勝リーグに出られるかどうかはそれにかかっている」

ゆみ「まあつまり、経験の少ない君でもその2人から上手くオリられれば、決勝リーグまで進める可能性があるということだ」

京太郎「そんな、予選が何試合あると思ってるんですか。そのうち2試合くらいで……」ハハハ

ゆみ「……」

京太郎「……マジなんですか?」

ゆみ「ああ、一切誇張はない」

京太郎「……ちなみにもしゆみ先輩が戦うとしたらどうします?」

ゆみ「配牌で一向聴でなければベタオリだ。それでも5巡目までに聴牌しなければオリる」

京太郎「はい?」

ゆみ「まあ実際にはベタオリすら狙われるからな。自分の意志ではなく、ランダムな法則でいつオリるか決めたほうがいいんだろうが、基本的はそうなる」

京太郎「ちょ、ちょっと待って下さい。なんですかそれは」

ゆみ「なんですかもなにも私ならそうするという話だ。実際に打ったことはもちろんないが、それほど圧倒的な相手だ」

京太郎「お、恐ろしいですね……」

ゆみ「ああ、だからこそ決勝リーグも狙えると思う」

京太郎「正直その話聞いて自信なくしたんですが……」

ゆみ「何もその2人に勝てというわけじゃない。このペースで成長すればいい線まで行くと思うぞ?」

京太郎「……そうですね。どうせ初心者ですし、当たって砕けろですよね! 決勝リーグ目指します!」

ゆみ「うん、その意気だ。一緒に頑張ろう」

京太郎「一緒に……! はい、もちろんです!」

以上になります。
ようやく京太郎が1位に。鶴賀なら2週間あればきっとなれるはず。

>>ゆみ「長野の男子には恐ろしく強い3人の選手がいるんだ。全國大會の1位から3位までその3人が獨佔していた」

また例の京ちゃんのお友達か?

>>ゆみ「信じがたいが本當だ。去年1人は卒業したんだが、まだ2人いる。予選では全選手と當たるからな。その2人とも當たることになる」

残りは誰?

3人は愉快な仲間たちですねー。まあ2人残ってますが本編では書いても1レス位の予定なのであまりお気になさらず。
それと鶴賀なら1位になれるはずというのはメンバー的な問題だったり。長野だと龍門渕も清澄も魔物がいるので。風越はキャプテンがどうにかなれば。

それでは投下します。

――食堂――

睦月「部のみんなでお昼を食べるのは久し振りですね」

ゆみ「ああ、妹尾と京太郎くんとモモが入ってきてからは初めてだな」

桃子「こういうの憧れだったんすよー!」

智美「たまには部活以外でも集まろうと思ってなー。大会も近いことだし。それと……」

佳織「それと?」

智美「京太郎が調子悪いだろー? それをゆみちんから相談されたんだけど、これで何か気分転換になればと思ってなー」ワハハ

桃子「あー、この間1位になったのに、それから3位とか4位ばっかりっすよね」

ゆみ「調子の波自体は誰にでもあるが、京太郎くんは初めて経験するだろうからな」

智美「大会直前のこの時期になるのは不安なはずだからなー。こういうのは部活以外で話したほうがいいと思うんだ」

睦月「そうですね。あんまりプレッシャーかかっちゃいけませんし」

佳織「ところでその京太郎くんは……?」キョロキョロ

ゆみ「そういえば遅いな」

桃子「いつもパンかお弁当だから手間取ってるんすかね? 私もそうだったっすし」

智美「モモはおばさんがモモのことを見つけられなかったからだろー」ワハハ

桃子「だから学食は困るんすよ!」

睦月「でもそのモモより遅いのはなんでなんだろう?」

ゆみ「ふむ……ああ、ちょうど来た、よう……だ……?」

佳織「うわあ……」

桃子「あ、あれは凄いっすね」

睦月「あれ食べきれるのかな……?」

智美「さすが男子高校生だなー」ワハハ

京太郎「す、すみません。遅くなりましたっ」ドスン

ゆみ「い、いや。それはいいんだが……」チラッ

桃子「それ食べきれるんすか?」

智美「山盛りの唐翌揚げに大量のエビフライ」

佳織「ハンバーグとメンチカツも2つずつ」

睦月「ご飯も2人分くらいあるね。それと申し訳程度にサラダが」

桃子「聞いてるだけで胃がもたれそうっすね」

京太郎「……死ぬ気で食べます」ゲッソリ

ゆみ「普段学食で食べているが初めて見るな。なんという料理なんだ?」

京太郎「メンズランチを注文したらこうなりました……」

睦月「ああ、男子が入って来てから出来たメニューだね。だから見たことないんだ」

佳織「今まで女子だけだったから、きっと食堂のおばさんが張り切ってこんなメニュー作ったんだね」

ゆみ「しかし学食で食べるのが初めてにしても、友人から聞いたりはしなかったのか?」

京太郎「今日は普段一緒に昼食べてるやつに、麻雀部のメンバーと食べるって言って来たんですよ。そしたらそいつ学食ではメンズランチがオススメだって言って……!」

桃子「あー……。まあご愁傷様っす」

京太郎「うう、あいつ覚えてろよ……!」

…………

………

……



京太郎「き、キツイ……」キュウ

ゆみ「だ、大丈夫か?」

京太郎「す、少し休憩すればまだ行けます」

睦月「うむ、まあ無理はしないように」

京太郎「はぁ……そうだ。最近俺スランプで、麻雀全然勝てないんですがどうすれば直りますかね?」

智美「おお、そっちから切り出したかー」

京太郎「はい?」

智美「いや、なかなか言い出しづらいだろうと思って、どう切り出そうか考えてたんだけど必要なかったなー」

京太郎「ああ、そういうことですか。まあ聞くは一時の恥って言いますし」ハハハ

桃子「ちなみに京太郎的には何が悪いと思ってるんすか?」

京太郎「んーネトマでは変わらずそれなりに勝ててるから、なんか癖とかあるのかなあって」

ゆみ「うん? ネトマのほうでは勝てているのか?」

京太郎「はい。部活でやるときだけどうも上手く行かなくて……」

ゆみ「ふむ……」

睦月「何か気になるんですか?」

ゆみ「いや、最近の京太郎くんの牌譜を見ると明らかに不自然な捨て牌があるから、ネトマでやっていないなら何が原因なのかと思ってな」

智美「確かにこの間見た牌譜は変なとこがいくつもあったなー」

京太郎「どのへんが変でした?」

ゆみ「具体的にではないが、そうだな。ところどころ比較的安全な牌を切らずに他の牌を切っているだろう? たまに向聴数を上げてまでしていることもある」

ゆみ「それにあからさまな危険牌を振り込むこともある。正直今の君のレベルからしたら不自然だと思うんだが、何か理由はあるのか?」

京太郎「それは……なんというか上手く言えないんですけど、感覚でこれを切ったらヤバイとか、これなら行けるみたいなのを感じるというか……」

ゆみ「……」

ゆみ(確かに読み切れそうもない難しい待ちを回避していることもある……)フム

桃子「勘違いじゃないっすか?」

京太郎「そんな気もするけど、ステルスとかいうお前が言うな!」

佳織「私はそういうの全然感じたことないなあ。まだ始めたばっかりだし、その内感じられるようになるのかな?」

京太郎「むしろ感じたことがないことにちょっと驚いてます」

佳織「えっ!?」

ゆみ「ちなみにそれは何割くらいで成功しているんだ?」

京太郎「体感で大体5割くらい……だと思います」

智美「結構高いなー」ワハハ

京太郎「まあいつも感じられるってわけじゃないんですけどね」

ゆみ「そうか……」

睦月「先輩はどう思ってるんですか?」

ゆみ「そうだな。ネトマではいつも通りに打っているんだろう?」

京太郎「そういえばネトマではないですね」

ゆみ「ならそれは対局相手の癖や雰囲気を感じているんじゃないか?」

京太郎「癖や雰囲気ですか? でもそういうのを考えたことはあんまりないですよ?」

ゆみ「この短い期間に何度も同じ相手とだけ打っているんだ。無意識に刷り込まれていてもおかしくはない」

智美「でもそれだと私たちも感じてないとおかしくないかー?」ワハハ

ゆみ「それは個人差があるだろう。京太郎くんがそういう面に優れているのかもしれない」

京太郎「うーん……」

ゆみ「ピンと来ないか?」

京太郎「はい。他の人はともかく、ステルスしてるモモ相手にもたまに感じることがあるので……」

桃子「そういえばそんなこともあったっすね。後で牌譜見てちょっと驚いたっす」

ゆみ「ふむ……モモもステルスとはいえ本当に消えているわけじゃない。見えていないが見ているということはあるんじゃないか?」

京太郎「ああ、なるほど」

ゆみ「まあこれはあくまで私の解釈だから、これを君にを押し付けるつもりはないよ」

ゆみ「……それより話が脱線してしまったな。京太郎くんのその感覚が観察によるものか、それとも他の何かかどうかなんてどっちでもいい」

京太郎「えっ」

睦月「バッサリ行きましたね」

智美「ゆみちん、もうちょっと言い方ってものが……」

ゆみ「む、結論から言ってしまおうと思ったんだが……」

京太郎「い、いえ。全然大丈夫です。続けてください」

ゆみ「そうか、よかった」ホッ

ゆみ「話を聞く限り、京太郎くんは感覚の通りに打った結果、それが裏目になって勝てていないんだろう?」

京太郎「はい」

ゆみ「なら簡単だ。感覚に頼ってスランプになっているんだから、それに頼るのをやめればいい」

京太郎「あっ」

桃子「何度か裏目った時点で気付いて欲しいっすねー」

京太郎「みんなこうやってると思ってたんだよ!」

京太郎「でも対策がわかったんだ! 今日は1位になるぞー!」

桃子「まあその前に目の前の食事を片付けるっすよ」

京太郎「うっ……」

睦月「あはは、少しぐらいなら食べてあげるよ」

佳織「私もちょっと手伝うよ」

京太郎「睦月先輩、佳織先輩……! ありがとうございます!」

ゆみ「……」

智美「ゆみちんどうかしたのかー?」

ゆみ「……いや、何でもない」

智美「そうか? まあゆみちん、悩んだときは当たって砕けろだー」

ゆみ「……まったく、わかっているなら聞くな」ハァ

ゆみ「でもそうだな。ありがとう」

智美「ワハハー」

――帰り道――

京太郎「ゆみ先輩、今日はアドバイスありがとうございました!」

ゆみ「アドバイスという程のものじゃないさ」

京太郎「そんなことないですよ! 1位にはなれませんでしたけど、久々に2位になれてめちゃくちゃ嬉しいです!」

ゆみ「……ちなみに、今日も切るべきかどうかという感覚はあったのか?」

京太郎「そうですね。半荘で3,4回くらいはありました。今日は言われたとおりそれ無視してやりましたけど」

ゆみ「それでいい結果になったんだな」

京太郎「はい! やっぱり基本に忠実にやったほうがいいですね」

ゆみ「話を聞いている限りでは振り回されているだけのようだったからな」

京太郎「アハハ……恥ずかしいですね」

ゆみ「……ただ、昼に言ったことと逆になるんだが、もったいないとも思っているんだ」

京太郎「え?」

ゆみ「京太郎くんのそれはきっと磨けば大きな武器になるはずだ。だから昼に言ったことが全部正しいわけじゃない」

京太郎「ええと、それなら昼はああ言ったのは……?」

ゆみ「さっき言ったとおり、君が振り回されているからだ」

京太郎「確かにあやふやな感覚に頼るくらいなら完全に無視したほうがよかったですね……」

ゆみ「京太郎くんは感覚に頼るのではなく、使いこなさなければダメだと思うんだが、大会までは時間がない」

ゆみ「付け焼刃の感覚を使おうとするよりは、無視したほうがいいと私は思う」

京太郎「使いこなすというと成功率を上げるってことですか?」

ゆみ「……それは出来るのか?」

京太郎「いやさっぱりわかりません」

ゆみ「だろうと思ったよ」ハァ

ゆみ「そうだな……例えば危険牌だとわかっていても押さなければならない場面や、おそらく安牌だと感じていてもオリたほうがいい場面があるだろう?」

京太郎「はい」

ゆみ「君の場合はそれをより正確に感じることが出来るわけだから、当然押し引きの基準も変わってくるはずだ」

ゆみ「これは単純な例だが、もっと複雑な場面も多くあるだろう? その時々で最も有効な打ち方を判断できるようになったら使いこなせたといえるんじゃないかと思う」

京太郎「なるほど……」

ゆみ「私が教えてあげられればいいんだが、なにぶん君にしかわからない感覚だ。君が実戦で磨くしかないし、それに基礎力ももちろん必要だ。そうすると大会までにはおそらく間に合わない」

京太郎「あっ、だから頼るのはやめろって……」

ゆみ「ああ、君は強くなった。普通に成長すれば決勝リーグに残ることもそう無理なことではないと思う」

ゆみ「私は大会が終わるまでは普通に練習をして、大会が終わってから、その感覚を活かした打ち方を見つければいいんじゃないかと思う」

京太郎「……私はってことは、他の道もあるってことですか?」

ゆみ「そうだな。今からその感覚を活かした打ち方を見つけるという方法もある。次の大会で全国に行こうと思うならこれが一番可能性があるだろう」

京太郎「ぜ、全国ですか!?」

ゆみ「まあ完璧とまで行かなくとも、ある程度完成させられればという前提だがな。ただおそらく無理だろう」

京太郎「き、厳しいですね」

ゆみ「当たり前だ。自分のスタイルなんてそう簡単に身につくものじゃない。前例にない特殊な打ち方をするならなおさらだ」

ゆみ「さらに言うなら、そこまで上手く行ったとしても可能性が出てくるという程度だ」

京太郎「どっちを選ぶべきか……」ウーン

ゆみ「……実はな、この話は言おうかどうか迷ったんだ」

京太郎「え? なんでですか?」

ゆみ「京太郎くんが迷うと思ったからだよ。誰だって全国は目指したいだろう?」

京太郎「そうですね」

ゆみ「だけどそのスタイルが完成するまでは、きっと昨日までのように負け続けることになる」

ゆみ「誰だって負けるのは嫌だろう? そんなことで京太郎くんが麻雀を嫌いになったら悲しいからな」

京太郎「そんなことは……」

ゆみ「……まあそれで嫌いになるというのも、私の勝手な想像だ。だから最終的には君自身に決めてもらうことにしたんだが」

京太郎「はい」

ゆみ「どっちを選んでもいいぞ。どちらでも出来る限りのサポートはしよう」

京太郎「……大会までは普通に練習することにします」

ゆみ「うん? そうか。わかった」

京太郎「あれ、ちょっと意外そうですね」

ゆみ「そうだな。正直京太郎くんは、今から感覚を活かした打ち方を見つけると言うと思っていた」

京太郎「3年ならそうしたかも知れないですけど、無理して次の大会で勝とうと思わなくても俺はまだ1年ですから」

ゆみ「ああ、確かに私もそう考えたから今は普通の練習をしたほうがいいと言ったんだが……」

京太郎「……あー、その。ですね」

ゆみ「うん?」

京太郎「ええと……」

ゆみ「?」

京太郎「……ゆ、ゆみ先輩が俺のためって考えてくれたのが嬉しかったんですっ!!」

ゆみ「なっ!?」カアァァ

京太郎(い、言っちまったああああ! ひ、引かれたりしないよな……?)

ゆみ「そ、そのだな」アタフタ

京太郎「……」ドキドキ

ゆみ「た、確かに京太郎くんは大切な後輩だし、君のために考えたというのも正しいが、それでももう少しいい言い方があるだろう!?」カアァァ

京太郎「っ!」

ゆみ「そ、それともわざとそういう言い方にしたのか?」

京太郎「……そ、そうなんですよー。やだなバレちゃいましたか」

ゆみ「や、やっぱりそうだったか……」シュン

京太郎(先走ったかあ……まあ、誤魔化せただけいいかな)ズーン

ゆみ「まったく、京太郎くんも言うようになったな」ハァ

京太郎「あ、あはは」

ゆみ「でも嬉しいよ。モモとはいつもこんな感じで話しているだろう?」

京太郎「モモはああいう奴ですからね。ゆみ先輩には、もし同じ学年でもモモと同じようには話せませんよ」

ゆみ「今言っていたじゃないか」

京太郎「そ、そうでしたね……」アハハ

ゆみ「これからも言ってくれていいんだぞ? 私は気にしない、というか楽しい」

京太郎「そうですか? 意外ですね」

ゆみ「今まであまり言われたことがなかったから新鮮なのかもしれないな。……それかもしくは」

京太郎「もしくは?」

ゆみ「……京太郎くんとは特別話しやすいからかもしれないな」

京太郎「えっ――」ドキッ

ゆみ「……」ジー

京太郎「……」ドキドキ

ゆみ「……ふふ、冗談だ。あまり後輩に言われてばかりではな」

京太郎「もう、俺が悪かったですから、からかうのはやめてくださいよ……」

ゆみ「ちょっとした仕返しだよ」

京太郎「まったく、ちょっと前までが男と話すの苦手とか言ってたの誰ですか」

ゆみ「……今も他の男子とはほとんど話さないし、話すのは苦手だ」

京太郎「えっ?」

ゆみ「私がこういうことをできるのは京太郎くんだからだよ。きっと」

京太郎「なっ」カアァァ

ゆみ「……」ドキドキ

京太郎「こ、こんな続けてはさすがに引っかかりませんよ!」ドキドキ

ゆみ「……ああ、そうだな」

京太郎「ゆみ先輩は冗談も真顔で言うから分かりづらいです……」

ゆみ「見分けられるようになることを期待しているぞ」

京太郎「努力します……それじゃあゆみ先輩、また明日」

ゆみ「ああ、もうこんなところか。また明日」

ゆみ(まったく、あまり慣れないことはするものじゃないな)ハァ

ゆみ(見分けられるように……そもそも私はどういう返事を期待していたんだ?)

ゆみ(自分でも分かっていないのにあんなことを……いや、やめよう。考えるのは大会が終わってから――)

ゆみ「そうか、大会が終われば私は引退……」

ゆみ「もう少しだけでも長く続けられればな。蒲原と妹尾と睦月とモモと、それに京太郎くんがいる今のメンバーで。大会がなくても放課後に集まって麻雀をして」

ゆみ「それも全国まで行けば、か……ただ楽しみが続けばと思うだけなのに、つらい道のりだな」ハァ

ゆみ(それでも、目指さなければ届かない……頑張ろう!)

以上になります。
先週末立てこんでてちょっと遅くなりました。

>>378
モモの能力は普通の相手だとほぼ無敵だしな
振り込む危険が無いってことは高い手狙ってゼンツ出来るし
逆にリーチに対しあえて当たり牌切ることでチョンボによる罰符で稼ぐことも出来る

池田は決勝で役満実質2度も上がってますし強いと思ってますよー。諦めない姿が大好きです。
上で挙げなかったのは安定感の問題ですね。池田より上の順位は稀になれそうですがキャプテンは……

それでは投下します。

京太郎「こんにちはー。部長だけですか?」ガラッ

智美「ああ、みんなまだ来てないなー」

京太郎「そうですか。それじゃあみんな来るまで牌譜の整理でも……」

智美「まあまあ、そんなのいいからちょっとこっち手伝ってくれー」

京太郎「なにやってるんですか?」

智美「決起集会に必要なものを考えてるんだ」

京太郎「決起集会?」

智美「ああ、大会直前だから、気合を入れるためにもやっとこうと思ってなー」

京太郎「へえ。初めての大会ですしいいかもしれませんね」

智美「それで京太郎に決めて貰いたいことがあるんだ」キリッ

京太郎「む、責任重大ですね。なんでしょう?」

智美「ああ、きのこの山とたけのこの里のどっちを買えばいいかと……」

京太郎「真剣な顔してなにかと思えばそんなことですか!?」

智美「そんなこととは失礼だなー。きのこたけのこ戦争を甘く見ると痛い目にあうぞー」ワハハ

京太郎「じゃあ大袋のでいいじゃないですか。両方入ってますし量もありますから」

智美「おお、名案だなー。そうしよう」カキカキ

京太郎「……ていうか決起集会で何をするつもりなんですか?」

智美「お菓子とジュースで楽しく過ごすつもりだ」ワハハ

京太郎「決起集会なんですかそれは!?」

智美「堅苦しいのは嫌だろー?」

京太郎「いやそれはそうですが……」

智美「まあ別になんとなくやってるわけじゃないんだ」

京太郎「ほんとですか?」

智美「ああ、最近大会が近いからかみんな緊張してるだろ?」

京太郎「確かに睦月先輩と佳織先輩は牌落としたりミスが多くなったりしてますね」

智美「うん、むっきーと佳織は分かりやすいなー。でもモモとゆみちんもだぞ?」

京太郎「そんなふうには見えないですけど……」

智美「例えばモモは消えるのが遅くなってるだろ?」

京太郎「え? あれって慣れたからじゃ……」

智美「慣れたくらいで見えるようになるならモモも苦労はしてないと思うぞ?」

智美「多分緊張からだと思うけど、牌を捨てるときに音が大きくなってたり、打ってるときにソワソワしたりしてていつもより目立ってるんだ」

京太郎「全然気づきませんでした……」

智美「京太郎はまだまだだなー」ワハハ

京太郎「それじゃあゆみ先輩はどんな感じなんですか?」

智美「なんか考えこんでることが増えたなー」

京太郎「……それ緊張からですか?」

智美「うーん」チラッ

京太郎「?」

智美「……緊張じゃないかもしれないけど、何かあったんだろうなー。多分京太郎のせいで」

京太郎「俺何もしてないですよ!?」

智美「気にするなー」ワハハ

京太郎「しますよ!?」

智美「それに他人事みたいに言ってるけど京太郎もだぞー」

京太郎「露骨に話そらしましたね! でも俺は負けて元々ですしそんなに緊張は……」

智美「この間廊下で京太郎を見かけたんだけど、歩きながら教本見るのは危ないからやめたほうがいいと思うぞ」

京太郎「うっ」ギクッ

智美「ところで負けて元々だからなんだっけー?」

京太郎「いやー、初めての大会は緊張しますねー!」

智美「そうだろー」ワハハ

京太郎「でもみんなのことよく見てますね。さすが部長」

智美「京太郎も殊勝なことを言うようになったなー」

京太郎「え?」

智美「初めて会ったとき、部長に見えないとか言われたの覚えてるぞ」ワハハ

京太郎「勘弁して下さい……」

智美「ワハハ。まあゆみちんのほうが部長らしいもんなー」

京太郎「そんなことないです!」

智美「ん?」

京太郎「最初自己紹介で下の名前で呼ぼうって言ってくれたじゃないですか。実際あれがなければこんなに仲良くなれなかったと思いますよ」

京太郎「モモなんかむっちゃん先輩とかかおりん先輩とか呼ぶくらいの仲になってますし」

智美「あれはちょっと驚いたなー。でもそれはモモ自身のことで」

京太郎「それだけじゃないですよ。ゆみ先輩たちのことも俺たち後輩のことも、色々と気を配ってくれてるじゃないですか」

京太郎「麻雀部に入って思いました。鶴賀麻雀部の部長は智美部長しかいません!」

智美「ワ、ワハハ」

京太郎「部長?」

智美「て、照れるじゃないかー」ワハハ

京太郎「でも本当に部長には感謝してるんですよ」

智美「そ、そういうのはもうちょっと遠回しに言ってくれると……」カアァァ

ゆみ「まだ2人だけ……何をやっているんだ?」ガラッ

京太郎「あ、ゆみ先輩。今はいかに部長に感謝しているかということを――」

智美「京太郎に弄ばれてたんだ」グスン

京太郎「部長!?」

ゆみ「京太郎くん、詳しく話してもらおうか」ゴゴゴ

京太郎「ゆみ先輩も信じないでくださいよ!?」

ゆみ「別に信じているわけじゃない」

京太郎「え?」

ゆみ「蒲原の様子を見るに何かしたのは事実だろう。隈なく教えるように」ゴッ

京太郎「お、俺は悪いことしてませんからね」ビクビク

――説明中――

ゆみ「ふむ」

京太郎「何もしてませんよね?」

ゆみ「君が悪いな」

京太郎「なんでですか!?」

ゆみ「悪気はないんだろうが、ストレートに言うのはもうちょっと控えたほうがいい。君と相手のためだ」

京太郎「そんなつもりはないんですが……ゆみ先輩がそういうなら」

ゆみ「……私以外にもそうだったんだな」

京太郎「えーと、まあ自覚してないので……」

ゆみ「そうか……」

京太郎「それがどうかしましたか?」

ゆみ「いや、何でもない」フイッ

智美「……要はヤキモ」ボソッ

ゆみ「何か言ったか?」

智美「何も言ってないぞー」ワハハ

京太郎「?」

桃子「こんにち……あれ、修羅場っすか。むっちゃん先輩、かおりん先輩。ちょっと外出てましょう」

佳織「あれ、桃子さんとじゃないんだね」

睦月「いつかやるとは思ってたけど部長ととは思わなかった」

ゆみ「京太郎くん、どういう意味だ?」ゴッ

京太郎「知りませんよ! 終わった話をややこしくするのは止めてください!」

桃子「あれは私を京太郎が見つけたとき……」

京太郎「特にお前に言ってるんだよモモ!!」

…………

………

……



ゆみ「決起集会か」

智美「顧問もいないようなものだし、注目されてる部でもないから内輪だけだけどなー」

睦月「いいんじゃないですか? やりましょう」

佳織「でもお菓子とジュースって全然決起って感じはしないね」

智美「堅苦しいのはウチの部に合わないだろー?」

桃子「そうっすね! リフレッシュして大会に出るのもよさそうっす」

ゆみ「ああ、私も賛成だ。……しかし大丈夫かな。まだやるべきことが……」

智美「ないない。もう十分だ」

ゆみ「だが対策が出来ていない高校がいくつも……」

智美「1校にしか通じない対策を練るより、私たちが普段通りの麻雀が出来るようになるほうが効率いいだろー?」

ゆみ「……!」

智美「まあゆみちんが最後で全部捲ってくれるって言うなら別だぞ?」ワハハ

ゆみ「……私には最後で捲るほどの力はないからな。ここは蒲原の言うとおりにしておこうか」フフッ

智美「決まりだなー」ワハハ

桃子「場所は部室っすよね?」

智美「ああ、ついに部費を使うときが来たなー」ワハハ

佳織「それはさすがにマズイんじゃ……」

智美「バレなきゃ大丈夫だろー」

京太郎「いや、バレたらシャレにならないことになる可能性が……」

ゆみ「そんなことで大会出場停止なんて笑い事にもならないぞ」

智美「しゅ、出場停止までは考えてなかったな。おとなしくお菓子とジュースは持ち寄るか……」

睦月「そうしましょう!」

ゆみ「……津山。みんなで食べるからってプロ麻雀せんべいばかり買ってくるんじゃないぞ」

睦月「そ、そんなことしませんよ!!」アセアセ

京太郎(持ってくるつもりだったんだな)

桃子(ブレないっすねー)

佳織(本当に好きなんだ)

――帰り道――

ゆみ「最近調子がまた上がってきたようだな」

京太郎「はい、今日は久々の1位ですよ!」

ゆみ「まあ私がいる卓ではなかったがな」

京太郎「ぐっ……結局ゆみ先輩に勝てたのはこの間の1回だけでしたね」

ゆみ「そもそもあれから対戦数が少ないというのも……」

京太郎「どうかしました?」

ゆみ「いや、君には我慢をさせていると思ってな」

京太郎「我慢ですか?」

ゆみ「ああ、ここ最近は以前に比べて対局時間がだいぶ減ってしまっている。君には貴重な時間だというのにすまない」

京太郎「大会に向けて作戦会議してるんだから当然じゃないですか。そんなこと気にしないでくださいよ」

ゆみ「しかし私たちが話しているのは女子のことばかりだしな」

京太郎「この短い期間で男子の対策も立ててくれなんて言いませんよ。それに俺だって牌譜を見るくらい出来るようになりました」

京太郎「ゆみ先輩たちが女子の対策話してるとき、俺だって男子の牌譜見てどう打つか考えてます! 無駄になんかしてませんよ!」

ゆみ「……ありがとう。そう言ってくれると教えた甲斐があって嬉しいよ」ニコッ

京太郎「!」ドキッ

ゆみ「ん? どうかしたか?」

京太郎「い、いえ。なんでも」

京太郎(ゆみ先輩、人にストレートに言うなって言ってるんだから自分も気をつけてくれないと……!)カアァァ

ゆみ「……本当に大丈夫か?」

京太郎「だ、大丈夫ですよ! そ、それより大会は勝てそうなんですか?」

ゆみ「大会か、そういえば細かいところは君に話していなかったな」

京太郎「はい、俺の方は当たって砕けろというか、いかにあの化け物達から逃げるかって感じですけど」

ゆみ「ああ、うん。まあ仮に砕けたとしても気にするな。あれは多分災害のようなものだ」

京太郎「気にするにも実力が必要ですよね。まあ、直撃で決勝リーグ行けないとかだとさすがに落ち込みそうですけど。それで女子はどうなんですか?」

ゆみ「そうだな……裾花はわかるか?」

京太郎「えーと、今長野の女子団体でランキング県3位の高校でしたっけ?」

ゆみ「ああ、そこだ。妹尾の調子が良くて、モモに相手が上手くはまってくれたという前提だが」

京太郎「だが?」

ゆみ「勝つことも夢ではない……というか五分五分以上で戦えそうだ。妹尾の調子が悪くても勝ち目がないわけじゃない」

京太郎「凄っ!?」

ゆみ「っ」ビクッ

京太郎「鶴賀って去年まで大会とか全然出てないんですよね!? それで長野3位に互角以上って、そんな先輩たち強かったんですか!?」

ゆみ「京太郎くん、とりあえず少し声を抑えよう」ドキドキ

京太郎「す、すみません。ちょっと驚いて……」

ゆみ「うん、分かってくれたらいい」コホン

ゆみ「そうだな……まず何より、モモのステルスの強さは君もよく知っていると思う」

京太郎「理不尽ですよねーあれ。何度振り込んだことか……」

ゆみ「妹尾は何故か分からないがよく役満で上がっている」

京太郎「何度も飛ばされましたね……」フッ

ゆみ「……そういえば君はよく振り込んでいるな」

京太郎「何なんですかねあれ。……というか今そんなこといいじゃないですか!!」

ゆみ「ああ、すまない。脱線したな。津山と蒲原はどちらも大崩れはしないだろう?」

京太郎「2人とも守備堅いですもんね」

ゆみ「そして私自身もみんなが稼いでくれたリードを守るくらいの力はあると思っている」

京太郎(むしろ広げられると思います)

ゆみ「それに裾花レベルの高校であれば対策もしっかりしている。データのない向こうに比べればこちらがだいぶ有利だろう」

ゆみ「さっき話したのはそういう面も含めての勝率だな。まあ、麻雀である以上水物ではあるんだが」

京太郎「いやそれでも凄いですよ。本当に全国も夢じゃないですね!」

ゆみ「……」

京太郎「……あれ?」

ゆみ「裾花は3位といったが、その上の1位2位はまた別次元なんだ」ハァ

京太郎「そんなに強いんですか?」

ゆみ「そうだな。まず風越は主将の福路が読みと洞察力に優れている上、対応力もずば抜けている。天江衣を除けば間違い無く長野一の雀士だ」

ゆみ「去年1年で大将をやっていた池田もおそらく出てくるだろう。彼女は高火力が武器だ。安定性では福路に劣るが、爆発力では妹尾並かそれ以上だろうな」

京太郎「佳織先輩以上とか想像したくないですね……」

ゆみ「まったくだ」ハァ

ゆみ「風越のことだし、去年いなかったメンバーもそれぞれ高い実力を誇るはずだ。正直勝ち目は薄いだろう」

京太郎「さすが名門ですね……。もう一つの高校は龍門渕でしたっけ? そっちはどうなんですか?」

ゆみ「龍門渕は去年全員1年で県大1位だったんだが、その時点で先鋒から副将まで4人とも全国レベルだ。隙がない」

ゆみ「そしてその4人が霞むくらいの脅威が大将の天江衣。昨年の決勝ではさっき話した風越の池田を圧倒しているし、全国大会でも平均打点はトップだ」

京太郎「凄まじく強そうですね……勝てそうですか?」

ゆみ「遠慮無く聞くんだな」

京太郎「す、すみません」アセアセ

ゆみ「気にするな。こういうときのそれは直さなくてもいい」

ゆみ「まあそうだな……。万に一つ勝てればよしといったところだろうな」

京太郎「そうですか……」ズーン

ゆみ「君が落ち込んでどうする」

京太郎「それはそうなんですが」

ゆみ「なに、そもそも大会に出られるかどうかもわからなかったんだ」

ゆみ「妹尾とモモと、そして京太郎くん。いいメンバーに恵まれて大会に参加出来るだけで満足だよ」

京太郎「でも……」

ゆみ「ああ、もちろん諦めているわけじゃないぞ? 万に一つを掴めるようにどうすれば勝てるか必死で考えてきた。それでもそれは君が気に病むことじゃないさ」

ゆみ「……それにそんなに勝って全国に行くことに拘るなら京太郎くんが頑張るといい。私たちが団体で全国に行くより君が全国に行くほうがおそらく可能性が高いぞ」フフッ

京太郎「お、俺は決勝リーグ目標にしてる男ですよ!?」

ゆみ「君が言っているのはそういうことだよ」

京太郎「あ」

ゆみ「砕けて元々は私たちもだ。まあもちろん砕ける気はないし、勝って欲しいと思ってくれるのは嬉しいが、もっと気楽にな」

京太郎「……ゆみ先輩にそれを言われるとは思ってませんでした」

ゆみ「君に言われた通りに変わったと思ってくれ」

京太郎「俺が言った通り変わるだなんてそんな……」

ゆみ「これは冗談じゃない。その……素直に、受け取って欲しい」ウワメヅカイ

京太郎「――です」

ゆみ「……? すまない、よく聞こえなかった」ズイッ

京太郎「はっ!? も、もうこんなところですね。それじゃさようなら!」

ゆみ「あ、おい! ……もう、なんなんだ」

ゆみ「……また明日くらいちゃんと言わせろ。バカ」


京太郎(何するんだあの人、今日2度目だぞ!? 危なかった! 好きですとか言うとこだった!!)カアァァ

京太郎(俺に言う前に自分を直してくれ!! 今度絶対やめさせ――)

京太郎「……あれ他の男にもやってるのか? いや、男と話すのはまだ苦手とか言ってたし3年に男子はいないしやってないはず……」

京太郎(……まだ注意しなくていいか。うん、大会前だし。無駄なことを意識させると悪いし。別にもっとやって欲しいとかそういうのじゃないけど!)

今日は以上です。
次で大会入る予定だったけど筆が滑ったのでもう1話挟みます。

透ハギスレが久々に更新されてて嬉しい。ちょっと前だけどもう一つのほうが落ちたときは悲しかった。
それでは投下します。

智美「鶴賀麻雀部の健闘を祈って……かんぱーい!!」

一同「かんぱーい!!」

京太郎「こうしてるといよいよ大会だって気がするな!」

桃子「と言ってもお菓子食べたりするだけっすけどねー」パクパク

智美「まあ練習しないで休むことが目的だからなー。1人でいたらなんだかんだ休めそうにないし」ワハハ

ゆみ「確かにここのところ1人でいるとつい大会のことを考えてしまうな」

京太郎「ここのところ……?」

ゆみ「なんだ?」

京太郎「い、いえ。なんでも」

桃子「私もそうっすけど、先輩でも緊張するんすね」

ゆみ「それはまあ私にとっても初めての大会だしな」

京太郎「鶴賀の麻雀部は先輩と部長で作ったんでしたよね」

ゆみ「ああ、最後の最後で大会に出られるほどメンバーが集まってよかったよ」

桃子「そういえば、先輩はなんで麻雀部のある高校に行かないで鶴賀に来たんすか?」

ゆみ「ん? 元々は麻雀をやる気はなかったから、単純に通いやすさや校風を考えて選んだが」

智美「女子校の中からなー」ワハハ

ゆみ「う、うるさい!」

京太郎「……あれ、麻雀部作ったのは1年のときで、作ったのは本格的に麻雀をやりたかったからですよね?」

ゆみ「ああ、そうだな」

京太郎「最初は麻雀続ける気なかったんですか?」

ゆみ「続ける? そもそも高校を選ぶときは麻雀をやっていなかったんだが」

京太郎「え?」

桃子「え?」

ゆみ「ああ、言っていなかったか。私が麻雀を始めてやったのは1年の文化祭だ。本格的にやろうと思ったのはそれからだよ」

京太郎・桃子「ええっ!?」

ゆみ「そ、そんなに驚くことか?」ビクッ

桃子「ゆみ先輩って昔からの達人とかそういうのじゃないんすか……?」

ゆみ「麻雀歴ならモモのほうが長いと思うぞ」

桃子「うはー」

京太郎「麻雀歴2年ちょっとでそんなに強いんですか……」

ゆみ「私が始めて1ヶ月の頃は京太郎くんよりずっと弱かったさ」

京太郎「自分が2年でゆみ先輩くらい強くなれるとは思えないです……」

ゆみ「それは私の教え方が上手くないということか?」シュン

京太郎「そ、そんなことないですよ!」

ゆみ「冗談だ」フフッ

ゆみ「とはいえ私が教えられることは全て教えるつもりだ。3年生のときには、少なくとも今の私より強くなって貰わないとな」

京太郎「ど、努力します」

桃子「京太郎、責任重大っすねー」

ゆみ「モモ、お前もだ。ステルスは確かに強いがそれに頼りすぎているようではダメだぞ」

桃子「うっ、藪蛇だったっす……」

智美「まあまあ、ゆみちんもその辺で。今日はそういう話は置いとこう。ほら、むっきーと佳織を見習って」

京太郎「え?」クルッ

睦月「おおお……! 小鍛治プロのキラカードだ!!!」

佳織「わー縁起がいいね!」

ゆみ「……結局プロ麻雀せんべいを買ったのか」

睦月「い、いいじゃないですか! 1袋くらい!」

京太郎「でも小鍛治のキラカードってトップレアでしたよね? ほんと幸先良いですよ!」

睦月「だよね! 京太郎くん、分かってくれて嬉しい!」

京太郎「なんか分かり方が違う気がしますが、とりあえずおめでとうございます!!」

睦月「ありがとう!!」

智美「テンション高いなー。私たちも見習うかー」

ゆみ「あれは見習っていいのか……?」

智美「何事も気からだぞー」

佳織「運が向いて来そうだね」

桃子「テンションについて触れない辺りさすがっすね」

佳織「?」

桃子「あ、いや、何でもないっす」

京太郎「小鍛治健夜プロって国内無敗の伝説のプロなんですよね。憧れるなあ」

睦月「うむ、かっこいい。この写真も数少ない姿を収めたんだろうね」

桃子「どれどれ……レアカードってもっとこう、凛々しい感じのほうがいいんじゃないっすかね?」

睦月「レアだから普段見れない姿を載せてるんだよ」

ゆみ「前に見せてもらったときも、かっこいいというよりはその……親しみやすい姿が多かったように思うんだが」

睦月「普段やらない姿をカードにするなんて優しいですよね」

佳織「……普段からそ

智美「佳織、そこまでだ」

佳織「」ムググ

京太郎「でもジャージ姿は珍しいですね」

睦月「健夜っていう名前の通り、健康に気を使って運動も欠かさないんだろうね。文武両道、かっこいいなあ」

桃子「名は体を表すって言うっすけど……ううん?」

ゆみ「まあ体力があるかどうかは見た目では判断しづらい、が……」

智美「名は体を表すかー。ウチの部ではどうなんだろうなー?」

桃子「そうっすね、私は……あんまり桃っぽくはないっすね」

佳織「そうかな? そんなことないと思うけど」

桃子「桃って花も実も結構目立つじゃないっすか。私とは大違いっすよ」

京太郎「……十分桃らしいな」ボソッ

桃子「そうっすか? どのへんが桃っぽいんすか?」

京太郎「えっ、聞こえたか!?」

桃子「聞こえたっすよ。どのへんっすか?」

京太郎「い、いやほら、か、顔とか?」

桃子「なんで疑問形なんすか……んーまあ丸っぽいっすからねえ」

京太郎「そ、そうだな」アハハ

ゆみ「……京太郎くん、さっきはモモのどこを見ていたんだ?」ゴッ

京太郎「ひっ!」ビクッ

ゆみ「どうした? 素直に言ってくれればいいんだ」

京太郎「か、顔ですよ……」アハハ

ゆみ「ふむ、そうか」フッ

京太郎「は、はい」ホッ

ゆみ「……」ツネリ

京太郎「痛っ!?」

桃子「2人は何してるんすか?」

智美「気にするなー」ワハハ

桃子「むっちゃん先輩はどうっすか?」

睦月「私は1月生まれで睦月だからあんまり意味とかはなさそうかな」アハハ

京太郎「でもなんか月ってクールな感じするじゃないですか」

智美「それならむっきーにピッタリだなー」ワハハ

睦月「そ、そうですか?」テレ

桃子「プロ麻雀カードのときは……」

ゆみ「それは触れてやるな」

智美「私の名前もむっきーに負けず劣らずピッタリだと思うんだー」

京太郎「ああ、蒲の穂ってカマボコの語源らしいですね」

智美「なんでそんなこと知ってるんだ!? というかカマボコって何のことだー!?」

佳織「あー智美ちゃんよく笑うから確かにピッタリだね」

智美「佳織まで! だからカマボコはなんなんだ!?」

睦月「口の形ですよ」

智美「あー……って、私がピッタリって言ったのはそっちじゃなくて智美の智の方だー!」ワハハ

桃子「智に適当って意味なんてあったんすか」

京太郎「さすが智って名前にある人の話は勉強になるな」

智美「しまいにゃ泣くぞ―!」

ゆみ「2人ともその辺りにしておけ」

京太郎・桃子「ごめんなさい」ペッコリン

智美「謝る気あるのか!?」ワハハー!

佳織「まあまあ」

智美「佳織の漢字はどういう意味なんだー?」

佳織「私? 調べたことないから……」

ゆみ「妹尾の佳は美しいという意味だよ。佳人とか言うだろう?」

桃子「さっぱりっす!」

京太郎「初めて聞きました!」

ゆみ「お前たち……」

佳織「そういう意味なんですね。名前負けしちゃってるなあ」アハハ

智美「そんなことないと思うぞ?」

睦月「うむ、妹尾さんによく合っていると思う」

佳織「えっ、ええっ!?」テレテレ

智美「京太郎はどうなんだー?」

京太郎「よくぞ聞いてくれました。俺は……」

桃子「語感っすよね。苗字が2文字だと名前が長いほうがバランスいいっすし」

京太郎「ああそうだよ! よくわかったな!!」

桃子「本当にそうだったんすか……」

京太郎「ウチの親適当だからな……」トオイメ

ゆみ「つけた理由はそうかもしれないが、私は合っていると思うぞ?」

京太郎「え?」

ゆみ「京には人の集まるところという意味があるんだ。部員が集まったのは京太郎くんがいるからという部分もあるしな」

京太郎「ゆ、ゆみ先輩……」ウルウル

睦月「そんな意味があるんですね。京太郎くんに合ってると思うよ」

佳織「ピッタリだね!」

京太郎「睦月先輩、佳織先輩……」ウルウル

智美「私には負けるけどなー」ワハハ

桃子「罪悪感がなくなったっすよ!」

京太郎「そこの2人」

京太郎「ゆみ先輩も佳織先輩と同じですよね」

ゆみ「ん? どういうことだ?」

京太郎「え? ゆみって名前じゃないですか」

ゆみ「ああ、そういうことか。私の名前はひらがなで"ゆみ"と書くんだ」

京太郎「へー。なんとなく意外ですね」

ゆみ「まあひらがなの丸いイメージは私には合わないだろうな」

京太郎「ああいえ、そうじゃなくて」

ゆみ「うん?」

京太郎「美しいって漢字が入ってると思ったんでピッタリだなーと――」

京太郎「……はっ!? すみません今のナシで!」

ゆみ「……うぁ」カアァァ

桃子(相変わらずっすねー)

睦月(前から思ってたけどわざとやってるのかなあ)

佳織(確かにピッタリだなー)

智美「京太郎、早く直そうなー」

京太郎「」

…………

………

……

ゆみ「そういえば京太郎くんの幼馴染は麻雀部に入ったのか? ほら、チャンピオンの親戚とか言っていた」

京太郎「あ、言ってませんでしたね。入ったみたいですよ」

智美「チャンピオンの親戚かー。その子も強いのかなー?」

京太郎「親戚というか咲……あ、俺の幼馴染ですけど、咲はチャンピオンの妹だったみたいです」

一同「妹!?」

京太郎「わっ!?」ビクッ

ゆみ「なんだそれは本当なのか!?」

京太郎「そんなことで嘘つくようなやつじゃないんで、本当だと思います」

桃子「ダークホース出現っすね……」

睦月「ま、まあ妹と言っても強いとは限らないし」

佳織「そ、そうだよね!」

京太郎「ええと……」

ゆみ「知っているなら言ってみてくれ」

京太郎「小さい頃は両親と宮永照と咲で家族麻雀してたらしんですけど、咲は狙って点数を±0にしていたらしいです」

桃子「そ、想像以上にエグいっすね……」

睦月「狙って±0って……」

京太郎「ま、まあ少なくとも小中学校で麻雀はしてなかったからブランクもありますし、宮永照だってその頃からずっと強くなったから個人戦2連覇してるんですよ!」

佳織「でもきっと強いよね……」

ゆみ「ちなみにその宮永はどこの高校へ行ったんだ?」

京太郎「清澄って高校に行きました」

睦月「清澄……どこかで聞いたことがあるような……」

ゆみ「大会の牌譜は大体見たはずだがその名前は見覚えがないな」

京太郎「ええ、清澄も今年部員が揃ったみたいで、大会に出るのも初めてって言ってました。ウチと一緒ですね」

桃子「風越とかならどうしようと思ったっすけど、それならまだ勝ち目はありそうっすね!」

佳織「当たるのはいつになるんだろう」

智美「えーと、順調に勝ち進んでも決勝だなー」ワハハ

ゆみ「だいぶ先だな」

桃子「当たる可能性は低そうっすね」

睦月「……あ、そうだ!」

智美「どうかしたのかー」

睦月「清澄ってインターミドルチャンプの原村和が行ったところですよ! 前に雑誌でなぜ無名校にみたいな特集がありました」

桃子「い、インターハイチャンプの妹と、インターミドルチャンプがいる高校っすか……」

ゆみ「中々手強そうだな」

京太郎「手強そう……ってことは負ける気は全然ないんですね」

ゆみ「元々私たちは初出場で相手はどこも格上だ。1つ格上が増えたくらい、いまさら変わらないさ」

智美「ゆみちんの言うとおり今から怖がってもしょうがないしなー。私たちはまず1回戦突破を目指さないと」ワハハ

睦月「……そうですね。そんな先のことを考えられる立場じゃありませんでした」

桃子「負ける気はないっすけど、確かに部長とゆみ先輩の言うとおりっすね」

桃子「そういえば京太郎の方はどうなんすか?」

京太郎「俺か?」

桃子「自分たちで手一杯で気が回らなかったんすよ。勝てそうなのか聞きたいっす!」

京太郎「んーネトマではそれなりに勝ててるけど……」

睦月「雀荘に行ったりはしなかったの?」

京太郎「何度かは行きましたよ。ただ本格的にやってる人はあんまりいなかったです」

智美「それじゃああんまり参考にはならないなー」ワハハ

睦月「他の高校と試合出来ればよかったんだけどね」

京太郎「人数が揃ってる女子でも無理だったんですし、1人だけの男子ならなおさらですよ」

ゆみ「決勝リーグに進んでもおかしくない実力は付いているよ。それは保証する」

桃子「おかしくないってことは行けないこともあるんすね」

ゆみ「それはそうだ」

京太郎「うぅ……」

ゆみ「結局はあの2人に当たったときにどうなるかだな。無難にやり過ごせれば決勝リーグに行けるさ」

京太郎「他人次第って不安ですね……」

桃子「初めて1ヶ月で決勝に行けるかもしれないってだけで十分っすよ」

京太郎「それはそうなんだけどな」

智美「まあ麻雀なんて水物だからなー。そんなに気負っちゃダメだ」

京太郎「そうですね。男子1人の個人戦なら何があっても自分の責任ですし、精一杯頑張ります」

佳織「っ!」ビクッ

智美「佳織もだぞー」

佳織「ふぇっ!?」

智美「初心者の佳織を無理言って麻雀部に入れたのは私たちなんだから、勝てないかもなんて気にしなくていいんだぞ」

ゆみ「そんなことを気にしていたのか。団体戦はチームでやるんだ。少々失敗しても私たちが挽回すればいい」

佳織「智美ちゃん、加治木先輩……ありがとうございます」

佳織「でも私も鶴賀麻雀部の一員ですから、役に立てるように頑張ります!」

睦月「うん、期待してる」

桃子「かおりん先輩、役満頼むっすよー!」

佳織「そんな、無理だよー」アハハ

一同(……絶対1度は役満で和了るんだろうなあ)

智美「それじゃあそろそろお開きにしようか」

ゆみ「そうだな。あまり遅くなっては明日がつらい」

桃子「いよいよ明日は大会っすね。腕が鳴るっすよー!」

京太郎「俺は明後日からだから、明日は応援だな」

桃子「ちゃんと横断幕は用意したっすか?」

京太郎「今からしてやろうか?」

桃子「出来るもんならしてみるがいいっす!」

京太郎「俺が本気を出したら一晩で完成させられるぞ?」

ゆみ「そんなところで本気を発揮しなくてもいい」

睦月「というかそもそも掛ける場所ないからね」

佳織「そっか。明日はもう大会なんだね」

智美「何だ佳織、そんなことも知らなかったのかー?」ワハハ

佳織「ち、違うよ! そうじゃなくって実感がわかないなって思って」

睦月「みんなが集まってから1ヶ月経ったんだね……確かに実感わかないや」

智美「3人のときも楽しかったけど、6人になってからはもっと楽しかったなー」

ゆみ「そうだな、ようやく部活らしくなった気がしたよ」

桃子「……大会が終わったらゆみ先輩たち引退しちゃうんすよね」

京太郎「……!」

智美「うん、私たち3年は引退だなー。でも部活には顔を出すと思うぞ。な、ゆみちん」

ゆみ「ああ。大会に出られなくても麻雀は出来るし、後輩の様子も見たいしな。まあ受験勉強があるから毎日というわけにはいかないが」

智美「……ワハハー」

ゆみ「おい、なぜ目をそらす」

智美「ゆみちんは気が早いなー」ワハハ

ゆみ「むしろ遅いくらいだ」

佳織「応援しかできないけど頑張ってね」

智美「ついに佳織にも見捨てられたかー……」

佳織「智美ちゃん3年生じゃない」

智美「佳織は厳しいなー」

ゆみ「ほらみんな、いい加減帰るぞ」

智美「佳織に付き合ってたらいつまでも帰れそうにないし帰るかー」ワハハ

佳織「私のせい!?」

睦月「まあまあ」

桃子「ほら京太郎も帰るっすよー。……京太郎?」

京太郎「ん? あ、ああ。大丈夫、帰るよ」

桃子「どうかしたんすか?」

京太郎「何でもないから大丈夫」

桃子「ならいいっすけど……」

ゆみ「なんだ、どうかしたのか?」

京太郎「大丈夫ですって! ……ゆみ先輩、今日は送らせて貰っていいですか?」

ゆみ「え?」

京太郎「ほら、俺は明日試合がないけどゆみ先輩はあるじゃないですか。疲れを残しちゃいけませんし」

桃子「それなら私も送ってくれていいんすよ?」

京太郎「お前は自転車じゃないだろ」

桃子「贔屓っすー」ブーブー

京太郎「話は自転車を持ってきてからだ。……それでゆみ先輩、どうですか?」

ゆみ「まあ君がそう言ってくれるならお言葉に甘えようか」

京太郎「ありがとうございます!」

ゆみ「こちらこそ、ありがとう」


智美「青春だなー」

睦月「そうですねえ」

佳織「2人ともああいうことあったの?」

智美「……むっきー、抑えてろー」

睦月「はい」ガシッ

佳織「えっ、な、何? ど、どうしたの急に……あ、アハハハ!! く、くすぐったいよ! や、やめてー!!」アハハハ

智美「そういうこというやつはお仕置きだー!」コチョコチョ

――帰り道――

京太郎(寂しいけど、ゆみ先輩とは大会が終わったら会えなくなるかも知れないんだよな。少なくとも、今よりは絶対に会えなくなる)

京太郎(ゆみ先輩は受験勉強もあるから、これから先俺とゆみ先輩が会う時間はどんどん減ってく)

京太郎(待てば今より仲良くなれるか? ……ダメだ。考えるほど疎遠になるんじゃないかって考えちまう)

京太郎(それなら、今日告白したほうが……)


ゆみ(京太郎くん、今日はあまり話しかけて来ないな。明日が大会だから気を使っているんだろうか……そんなこと必要ないんだがな)

ゆみ(京太郎くんに送ってもらうのはこれが何度目だろう。足の怪我が治った後も何度か送ってもらったしな……)

ゆみ(……まあいいか。今日は静かな分京太郎くんの鼓動がよく聞こえて、これはこれで落ち着く)ギュッ

ゆみ(最初の頃に比べると随分鼓動が落ち着いているのは喜ぶべきなんだろうか)ウムム

ゆみ(……大会が終わったらこれも出来なくなるのか。それは、少し寂しいな――)

京太郎「ゆみ先輩、着きましたよ」

ゆみ「ああ、ありがとう」

京太郎「その…… ゆみ「今日は」」

ゆみ「っと、すまん、先にいいぞ」

京太郎「い、いえ。ゆみ先輩が先に」

ゆみ「そうか。まあ大したことではないんだが、今日は最近の君にしては珍しくあまり話さなかっただろう?」

京太郎「そ、そうでした?」ギクッ

ゆみ「いや、別にだからどうだというわけではないんだが……ちょっと考えこんでしまってな」

京太郎「考え込む?」

ゆみ「ああ。大会が終わったら京太郎くんとこうして帰ることもなくなってしまうのかと思うと少し寂しいな、と」

京太郎(ゆみ先輩も俺と同じことを感じて――)

ゆみ「つまりその、後1ヶ月程度しか君と2人で帰ることが出来ないと思うと凄く嫌で、だからもっと君と……ああ、もう! 私は何を言っているんだ! すまない忘れてくれ!!」カアァァ

京太郎「え?」

ゆみ「だ、だから忘れてくれ! 大会前で少し気が動転して――」

京太郎「あ、いえそうじゃなくて。後どの程度って言いました?」

ゆみ「だから本心ではな――いや本心じゃないわけじゃないんだが……ってうん? 1ヶ月程度と言ったんだ。全国に行けばそのくらいになるだろう?」

京太郎「……!」

ゆみ「それより私のさっきの発言は忘れて――」

京太郎「大丈夫です。正直よく聞いてませんでした」

ゆみ「そ、そうか……」シュン

京太郎「?」

ゆみ「それじゃあ次は君の話を……」

京太郎「いえ、そっちは大丈夫です」

ゆみ「私の時間なら問題ないぞ?」

京太郎「何でもなかったんです。また後でちゃんと言います」

ゆみ「ん、そうか。応援期待しているぞ」

京太郎「任せてください! 自分の個人戦以上に気合を入れて応援します!」

ゆみ「それはやりすぎだ。……まあ楽しみにしているよ」フフッ

京太郎「はい、期待しててください!」

ゆみ「ああ。また明日」

京太郎「はい、また明日」


京太郎「あー……俺はバカか。全国に行けばもっと長く部にいてくれるなんて、言われれば当たり前じゃねえか」

京太郎(ゆみ先輩はやっぱカッコいいな……。いやまあ、そういう人だから好きになったんだけど)

京太郎(大会が終わったら言いますとか言ったけど、俺がゆみ先輩に告白する資格なんて元からないんじゃないか……?)

京太郎「……まあ大会で勝てばいいんだよな。上手く行けば決勝、奇跡が起きれば全国だ! やってやる!」

今日は以上です。
次はようやく大会。久々に咲登場の予定。

鶴賀スレが復活してて嬉しい。
なんとか一週間で書き終えたので投下します。

――大会会場――

智美「ついに来たぞー!」

ゆみ「いよいよ本番だな……」

桃子「腕が鳴るっすよー!」

佳織「緊張してきたよ……」

睦月「私も……ちょっと気分が」フラッ

京太郎「む、睦月先輩!? 試合はまだですよ!?」

智美「むっきーはプレッシャーに弱いなー」ワハハ

ゆみ「まあ試合をこなせば慣れるだろう」

睦月「先輩たちは全然緊張してませんね……」

智美「いやーそんなことないぞー」ワハハ

京太郎「えっ、どこがですか?」

智美「失礼だなー。佳織なら分かるよなー?」

佳織「え? う、うん。もちろんだよ!」

智美「ほら、佳織を見習えー」ワハハ

桃子「どこで分かるか聞かないんすね」

ゆみ「ああ、察したんだろう」

京太郎「にしても人多いですねー」

ゆみ「年々参加者が増えているらしいぞ」

佳織「麻雀人気って凄いんですねえ」

智美「佳織みたいに全く知らないってのは珍しいと思うぞ」

佳織「か、簡単なルールは覚えたよ!?」

智美「結局全部の役は覚えられなかったなー」

佳織「特に役満だけど、麻雀は役が複雑すぎるよう……」

睦月「妹尾さんは役満を真っ先に覚えるべきだったとは思うよ……?」

佳織「でも役満って出づらいんだよね? なら出る役から覚えたほうが……」

睦月「う、うむ。それはそうなんだけど……」

ゆみ「まあ麻雀は水物だ。3つ揃えるということさえわかっていれば後はなんとかなるさ」

ザワザワザワザワ

京太郎「なんか騒がしいですね」

ゆみ「あれは……」


「風越女子だ!」

「部員80人を擁する強豪!!」


京太郎「あれが風越ですか。部員80人ってすげー」

ゆみ「ウチの10倍以上か……」

桃子「なんの、こっちは少数精鋭っすよ!」

佳織「えっと、桃子さん。初心者の私が鶴賀にはいるんだけど……」

桃子「……団体戦は5人いれば十分っすよ!!」

京太郎「仕切り直した」

智美「あっちは80人からの精鋭だしなー」ワハハ

桃子「そこ、うるさいっすよ!」

ゆみ「お前たちは緊張しないな」ハァ

睦月「あはは、でも見てると気が楽になりました」

ゆみ「ああ、そうだな」

ザワザワザワザワ

京太郎「また騒がしくなりましたね」


「四天王は2年になっても健在だ!」

「目立ってなんぼですわ!」


ゆみ「今度は龍門渕か」

京太郎「なんかあのメンバーの中から声が聞こえたような……」

智美「目立つのが好きなんだろー」

京太郎「……あれ、4人しかいないみたいですけど龍門渕は部員少ないんですか?」」

睦月「あそこは団体戦メンバーの5人しかいないみたい」

京太郎「それで全国……まさに少数精鋭」

桃子「団体戦は5人いれば十分って証明っすね!」

ゆみ「龍門渕と同じと考えれば私たちもやれる気になるな」

睦月「ものは考えようですね」

佳織「が、頑張りましょう」

智美「気楽になー?」

智美「それじゃあ対局室見に行くかー」

京太郎「はい、わかりまし……ってあれ?」

ゆみ「どうかしたのか?」

京太郎「あいつは……すみません、ちょっと待っててください」タッタッタ

ゆみ「あ、おい――」


咲「うぅ、ここどこ……」キョロキョロ

京太郎「おい」ポンッ

咲「ひぅっ! わ、私違います!!」ビクッ

京太郎「何が違うんだよ……咲、俺だよ」

咲「え?」クルッ

咲「きょ、京ちゃん!?」

京太郎「おう、久しぶりだな」

咲「うん、久しぶり! ……ってもう、脅かさないでよ! ほんとにびっくりしたんだから!!」

京太郎「久々に見つけたと思ったらいきなり迷ってるんだぜ? そりゃ脅かしたくもなるって」

咲「どんな理屈なの!?」

京太郎「まあまあ、案内してやるから機嫌直せよ」

咲「私を脅かしたような人の案内なんて……!」

京太郎「いらないのか?」

咲「……お願いします」ウゥ…

京太郎「分かればよろしい」

京太郎「それじゃあ先輩たちに断ってくるから咲も来い」

咲「先輩たち?」

京太郎「……お前俺がなんでここに来てると思ってるんだ?」

咲「えーと……女の子の物色?」

京太郎「あ、そうだ。迷子なら事務所に運んで放送してもらったほうが速く合流できるよな」グイッ

咲「じょ、冗談だから!! それはやめて!!」アセアセ

京太郎「まったく……それじゃほら、付いて来い」

咲「う、うん……」オドオド

京太郎「人見知りまだ直ってないんだな」

咲「そ、そんな早く直らないよ」

京太郎「麻雀部の仲間とは上手くやれてるのか」

咲「うん! みんな良い人たちだよ」

京太郎「そっか。ならよかった」ポン

咲「あ、頭撫でないでよ……」

京太郎「悪い悪い」

桃子「あ、戻ってきたっすよ」

京太郎「すみません、こいつが……」

智美「会場に着くなりナンパはどうかと思うぞー?」

桃子「さすがの私もドン引きっすよ」

睦月「ちょっと擁護できないかな」

佳織「いいことじゃないと思うよ?」

ゆみ「京太郎くん……」

京太郎「違いますよ! こいつは何度か話した幼馴染の咲です! 迷ってたから連れてきたんですよ!」

京太郎「……ていうか俺そんなことするやつだと思われてたんですか!?」

智美「日頃の行いだなー」ワハハ

咲「京ちゃん部活で何してるの……?」

京太郎「真面目に練習やってるよ! 畜生、なんだこの扱い!」

桃子「まあ冗談は置いといて、あんたが宮永咲っすか……」ジロジロ

咲「な、何ですか?」ビクビク

桃子「……京太郎と付き合ってたりするんすか?」

京太郎・咲「え?」

ゆみ「」ピクッ

桃子「身体の距離が近かったり頭撫でたり手引っ張ったりしてたじゃないっすか。もしそうなら……」

咲「あはは、やだなー。私が京ちゃんと付き合うって……そんなことあるわけないじゃないですか」

京太郎「そうそう。俺が咲と付き合うなんてありえねえ」

咲「どういう意味?」ムッ

京太郎「お前も同じ事言ってること忘れてないか?」

咲「私が言うのはいいけど、京ちゃんに言われると腹立つ」

京太郎「めちゃくちゃ言ってんなお前!」

桃子「……まあ違うならいいっすよ」

佳織「2人とも仲いいねえ」

京太郎「あーまあ、幼馴染ですから」

睦月「そんなに仲良くなるものなの?」

京太郎「そんなもんですよ」

京太郎「それで、こいつ迷ってるみたいなんで清澄のところに送って行っていいですか? すぐ戻りますから」

咲「ま、迷ってるって……」

京太郎「いや迷ってんだろ?」

咲「そうだけどそんなにはっきり言わなくたって……」アセアセ

智美「送ってきてもいいぞー。私たちは対局室見たら控え室に行ってるから」

京太郎「すみません、部長」

咲「あ、ありがとうございます!」ペッコリン

智美「気にするなー。初出場同士、お互い頑張ろうなー」ワハハ

咲「は、はい!」

京太郎「それじゃちょっと行ってきます」

睦月「気をつけてね」


京太郎「咲、部員はどこにいるんだ?」

咲「組み合わせ見てるって言ってたかな……?」

京太郎「よし、じゃあまずはそこ行くか……咲、そっちは逆だ」

咲「えっ!?」

京太郎「お前よく1人で東京行けたな……」

咲「下準備をこれでもかってくらいやったんだ」

京太郎「……うん、お前のそういうところは偉いと思うよ」

咲「でしょー」エヘン

智美「あれが宮永咲かー」

佳織「見た目は普通の女の子って感じだったね」

桃子「そうっすねー。見た目で麻雀の強さはわからないっすけど、チャンピオンの妹っていうからもっと威圧感あるかと思ったっす。ただそれより……」

睦月「うむ。幼馴染とは聞いていたけど、想像よりずっと仲良かったね」

ゆみ「」ピクッ

智美「……ゆみちん、さっきから全然喋らないなー」

ゆみ「え、なっ、何のことだ?」ビクッ

智美「それで誤魔化してるつもりなのかー……?」

桃子「まあ私も付き合ってたらお仕置きしてやろうと思ったっすけど、あの反応は本当に付き合ってないと思うっすよ?」

ゆみ「そ、そうかな」

睦月「そうですよ。幼馴染だとあのくらい仲良くなるもんだって言ってたじゃないですか」

智美「そうだぞー。私と佳織も仲いいだろー?」ワハハ

ゆみ「確かにそうだが、しかし男女であれは……」

佳織「幼馴染だと男女とかより家族って感じだと思います。だからそんなに落ち込まないでください!」

ゆみ「なるほど家族か……って、だ、誰も落ち込んでなんていない!」

佳織「ええっ!?」

智美(地雷踏んだなー)

桃子(相変わらず躊躇なく行くっすね)

睦月(私も妹尾さんの強さは見習いたいなあ)

ゆみ「た、ただ私は京太郎くんがああいうことを人前でするのは、あまりよくないのではないかと思ってだな……」ワタワタ

ゆみ「だから、べ、別に京太郎くんが仮に付き合ってたとしても、人前でああしないなら私は特に……何も……何も、うぅ」シュン

智美「ほら佳織、あんまりゆみちんをいじめちゃダメだぞー」ワハハ

佳織「わ、私何かした!?」

睦月「無自覚なのが一番怖いよ」

桃子「大物っすねー」

佳織「えっ!?」

智美「ゆみちん、対局室見に行こうか」

ゆみ「ああ……そうだな。そうしようか」

智美「それじゃあ行くぞー」ワハハ

京太郎「組み合わせ表はこの先か」

咲「うん……あ、みんな!!」

優希「咲ちゃん! 探したじぇ!」

和「心配しましたよ」

咲「ごめんね、ちょっと迷っちゃって……」

久「まあすぐ見つかってよかったわ。それでそっちの彼は?」

咲「何度か話に出した、私の幼馴染の京ちゃんです」

久「ああ、あの彼ね。初めまして、私は清澄高校麻雀部部長の竹井久よ」

京太郎「初めまして。鶴賀学園1年の須賀京太郎です」ペコリ

京太郎(……あの?)

まこ「おい、今何度かというたか?」ヒソヒソ

優希「言ってたじょ。一時期なんか毎日のように話してたのに……」ヒソヒソ

京太郎(視線を感じる……)

久「鶴賀? 聞いたことないわね……」

京太郎「ああ、ウチも清澄と同じで初出場なんですよ」

久「そうなの。どおりで……お近づきの印にお互い情報交換でもしない?」

京太郎「なんか怖いので……すみません」

久「ちぇっ」

和「須賀さん、咲さんを送って頂きありがとうございました」

京太郎「いえいえ、昔から俺の役目なんで」

咲「昔から私が迷ってたみたいな言い方……!」

京太郎「迷ってたろ?」

咲「……迷ってたけど」シュン

久「咲は須賀くんに随分助けられてたのね」クスクス

京太郎「高校に入ってからもメールで色々やってますからね。もう生活の一部ですよ」

咲「京ちゃんのバカ」ムッ

京太郎「なんでだよ!」

咲「なんでも!」

和「仲がいいですね」クスクス

まこ「妬けるのう」

優希「羨ましいじぇ」

京太郎「それじゃそろそろ戻るんで……」

久「ええ、ありがとう。人数ギリギリだし助かったわ」

和「鶴賀学園でしたよね。戦えるのを楽しみにしてます」

京太郎「伝えときます。それじゃ失礼します」

咲「京ちゃん、またね!」

京太郎「ああ、またな」


優希「さて、それじゃあ咲ちゃん……」

まこ「キリキリ話してもらおうかのう」

咲「え? 何をですか?」キョトン

久「とぼけようったってそうはいかないわよ。咲の話してたとおり中々いい子だったじゃない。見た目も70点ってとこかしら」

咲「とぼける……? でも見た目は高すぎですよ」クスクス

久「……あれ、低いって言ってくると思ったのに意外ね」

咲「だって京ちゃんですよ? せいぜい50点です」

久「き、厳しいわね」

まこ「基準があれじゃから辛口なんじゃろうか」

優希「なるほど……」

和「試合の前に何をやってるんですか……それに悪趣味ですよ」ハァ

久「まあまあ、少しくらいいいじゃない。それで咲、須賀くんとは月にどのくらい会ってるの?」

咲「月にですか? 高校に入ってから会うのは今日が初めてですけど……」

久「ダメよ、ちゃんと手綱握っておかなきゃ。遠距離だからって何ヶ月も会わなかったら逃げられちゃうわよ?」

咲「逃げられる……? ……あ! もしかしてみんな勘違いしてます?」

優希「勘違い?」

咲「えっと、私と京ちゃんは別に付き合ったりはしてませんよ? 単なる幼馴染です」

和・優希・久・まこ「えっ!?」

咲「鶴賀の人にも言われたんですけど、私と京ちゃんが付き合うわけないじゃないですか」アハハ

咲「……あれ、みんなどうし――」

和「じょ、冗談ですよね!!??」ガッ

咲「わっ! ど、どうしたの和ちゃん!?」

和「毎日メールしてたり須賀さんのこと毎日のように話に出したりしてるじゃないですか! それで付き合ってないなんてそんなオカルトありえません!!」

咲「そ、そう言われてもメールしてるのは幼馴染だからだし、話は、その、話題が思いつかなくて……」

和「読書とか園芸とか色々あるじゃないですか!?」

咲「……あー」

和「天然ですかっ! 可愛いですねもうっ!」

優希「の、のどちゃん落ち着くじぇ」

和「はっ! ……すみません、取り乱しました」

咲「和ちゃん意外と早とちりなんだね」アハハ

和「……」

久「和。言いたいことは色々とあると思うけどここは私たちに代わりなさい」

まこ「咲よ、おんしにとってあやつはどういう存在なんじゃ?」

咲「京ちゃんは麻雀部に入れって背中を押してくれたり、中学のときも人見知りな私のことたくさん気づかってくれたりして……」

咲「本人には言えませんけど、大切な存在です」

久「咲から見た須賀くんってどういう人なの?」

咲「えーと……京ちゃんって見た目軽そうですけど根は真面目で優しいんです」

咲「私が上手く話せなくてもずっと待っててくれますし、私のことからかったりはするけどバカにすることは絶対ないですし」

咲「ちょっとバカでエッチで私のこと子供扱いしてきますけど、でもすっごく頼りになる幼馴染です!」

優希「……メールは毎日1時間してるんだっけ?」

咲「うん。……あ、1時間は最低で、普段はもっと長くやってるからね!?」アセアセ

優希(何の話をしてるんだじょ……?)

和「あくまで咲さんと須賀さんの関係は幼馴染だと言うんですね?」

咲「? うん、そうだよ?」

和・優希・久・まこ「…………」

咲「え、えっと?」

和「そんなオカルトありえません……」

優希「のどちゃん。私も信じられないけど世の中には色んな付き合いがあるってことだじぇ」

久「……まあ本人がそういうならそうなのね。あまり追及するのもやめましょう」

まこ「そうじゃな。ほれ、試合が始まるし移動じゃ」

咲「はい! 強い人と戦えるのが楽しみです!」

久「やっと咲に共感できたわ……! それじゃ登録したオーダーを発表するわよ――」

ゆみ(……女の子らしい女の子だったな。京太郎くんはずっと彼女と……やはり好みもああいう子なのだろうか)ソワソワ

ゆみ(いや、それ以前に京太郎くんはああ言っていたけど実は付き合って……いやいや、信じないでどうする。だがしかし……)ソワソワ

京太郎「すみません、戻りました!」

桃子「ようやく来たっすか」

智美「中々戻らなかったからゆみちんがそわそわしてたぞー」

ゆみ「なっ、別に私は――」

京太郎「え? なんでですか?」

ゆみ「っ……その、だな。君と宮永との関係は……」

京太郎「幼馴染ですよ? さっき言ったじゃないですか」

ゆみ「……すまない、聞きたいのはそういうことじゃなかった。……京太郎くんは彼女のことをどう思っているんだ?」

京太郎「どうと聞かれると難しいですけど……可愛い手のかかる妹みたいな感じです」

ゆみ「妹……そうか。変なことを聞いたな。ありがとう」

京太郎「いえ、別に気にしてないですけど……やっぱり対戦相手と思うと気になるんですか?」

智美「まーそんなところだ。あんまりいじめてやるなー」

京太郎「いじめ……ええ!?」

桃子「女の敵っすねー」

睦月「京太郎くんは悪い男だね」

佳織「もっと周りを気にしてね?」

京太郎「俺何かしました!?」

ゆみ(……されたよ。バカ)

今日は以上です。
1回戦くらいは終わらせたかったのにどうしてこうなった。半分くらいは咲ちゃんのせい。
次は試合の予定です。

和は友だちじゃなければさん付けのが自然かなーと思ってそうしました
ようやく試合。まあ対局描写とかほとんどありませんが
それでは投下します

智美「ついに試合だなー」

桃子「念願の晴れ舞台っすね!」

佳織「ドキドキしてきました」

睦月「私は緊張で気分が……」ウッ

ゆみ「さっき緊張がほぐれたと言っていたじゃないか」

睦月「まさか先鋒だとは思わなかったからですよ……」

京太郎「先鋒だと何かあるんですか?」

睦月「先鋒で突き放せたほうが有利だから、団体戦だとエースを先鋒に持ってくることが多いんだ……」

京太郎「なるほど、エース対決……それだとゆみ先輩かモモのほうがよかったんじゃないですか?」

ゆみ「それも考えはしたんだが龍門渕の大将はおそらく天江衣だ。私でも間違いなく力不足だが、それでも任せるわけにもいかない」

佳織「桃子さんが先鋒じゃないのはなんでですか?」

ゆみ「どこまで効果があるのかわからないが、ステルスを活かすにはあまり目立たないほうがいいと思ってな」

ゆみ「先鋒で不自然な振り込みが続けば他校の中から異常に気付く人間も出てくるかもしれん。まあ気休め程度だが」

睦月「私が一番最初で躓いたりしたら……ああ、考えるのが怖い!」

智美「まあまあ。取り返すために私たちがいるんだぞ」ワハハ

ゆみ「ああ、それに別に消去法で選んだわけじゃない」

睦月「え?」

ゆみ「津山なら多少流れが悪くとも大崩れはしない。どんな状況でも確実に後ろにバトンを繋いでくれると思っているから先鋒を託したんだ」

睦月「先輩……」

ピンポンパンポーン
「1回戦が始まります。各校先鋒の選手は対局室へ集合してください」

京太郎「始まるみたいですね」

ゆみ「ああ、津山。行ってこい」

智美「期待してるぞー」ワハハ

桃子「頑張るっす!」

佳織「ふぁ、ファイトっ!」

睦月「は、はい!」ガチガチ

京太郎(まだ緊張してるな……よし)

睦月「そ、それじゃあ行ってきます」

京太郎「」コソッ

睦月「」スタスタ

京太郎「えいっ」メカクシ

睦月「ひゃあ!?」ゴスッ

京太郎「ぐぉっ!?」

ゆみ「何をやっているんだ君は……」

京太郎「い、いえ。緊張をほぐそうといたずらをしたら肘打ちが……」ウゥ…

睦月「ご、ごめんね?」アセアセ

桃子「謝らなくていいっすよ」ハァ

智美「ほら、遅れるから対局室へ急げー」ワハハ

睦月「は、はいっ」タタッ

京太郎「うぅ…まだ痛む」

ゆみ「緊張をほぐすにしてもあれはないだろう」

京太郎「驚かすのが一番だと思ったんです……」

智美「試合前にあれはなー」

桃子「緊張を解くのに何が一番か、京太郎はわかってないっすねー」

京太郎「む、じゃあモモは知ってるのかよ」

桃子「当たり前じゃないっすか。むっちゃん先輩ならすぐ出来るっすよ」

京太郎「じゃあなんで言わなかったんだ?」

桃子「言ったら意味ないっすからね。ほら、始まるっすよ」

京太郎「?」

ゆみ「私たちが言うのもなんだが、初戦の相手に強豪はいない。津山なら普通に打てば見劣りしないさ」

智美「むっきーは堅実だからなー。配牌も悪くないし上手く行けば1局目で……」

佳織「あ、聴牌しました!」

京太郎「立直はしないんですね」

ゆみ「すべきだとは思うが……まあ緊張からだろう。だがこれで」


睦月『ロ、ロン! 3900です!』


京太郎「やった!」

智美「むっきーいいぞー!」

桃子「流石っす!」

ゆみ「肩の力も抜けたようだな」

京太郎「え? あ、ほんとですね。見て分かるくらい……」

桃子「」ドヤァ

京太郎「……その顔はなんだモモ」

桃子「さっき言ったじゃないっすか。緊張を解くための方法」

京太郎「言ってはねえよ!?」

桃子「細かいっすねー。要するに一度上がれば緊張なんて取れるもんすよ」

京太郎「あーなるほど」

ゆみ「津山も長くやっている。緊張しているといっても全く上がれないことはないと思っていたが、1局目で上がれたのは幸運だったな」

京太郎「じゃあ後は大丈夫ですか?」

ゆみ「まあ相手はおそらく各校のエースだ。楽な勝負とはいかないだろうが、津山に任せよう」

京太郎「はい……睦月先輩、頑張って下さい!」

睦月「た、ただいまー」

京太郎「睦月先輩お疲れ様でした!」

睦月「うん……ありがとう」

佳織「区間2位おめでとう!」

睦月「ありがとう……でも1位になれなかったのは悔しいな」アハハ

智美「この欲張りさんめー」ワハハ

ゆみ「よくやった。後は任せろ」

睦月「はい。ゆっくり応援してます……」

京太郎「飲み物どうぞ」リョクチャ

睦月「うん、ありがとう」ゴクゴク

桃子「気がきく……ってそのペットボトルいつ用意したんすか!?」

ゆみ「対局中は外に出ていないはずだが……」

京太郎「来るときに用意してたんですよ。今日は出ないですしこれくらい用意しておかないとって思ったんで」

智美「なんかデカイ箱持ってるなと思ったらクーラーボックスだったのかー」

京太郎「全員の好きなの持ってきたんでよければ飲んでください」

佳織「わあ、ありがとう! 頑張ってくるよ!」オレンジジュース

桃子「私も1本貰うっす」モモノテンネンスイ

智美「応援頑張ったし私も飲もうかなー」コーラ

ゆみ「私も貰おうかな。ありがとう、京太郎くん――」ハッ

ゆみ(好きな飲み物なんて話した覚えがないな……)

ゆみ「京太郎くん、この飲み物は……」

京太郎「え? ああ、俺からの差し入れですよ。気にしないでください」

ゆみ「そういうことじゃ――いや、それはそれで後で払おう。そうじゃなくて私がレモンティーを好きだなんて話した覚えがないんだがどうして知っていたのかと」

京太郎「ああ、そっちですか。1ヶ月も一緒にいればわかりますよ」

ゆみ「ん、そうか……」

桃子「あーそれで私が桃天好きだって知ってたんすね。隠してたつもりなんすけどねー」

京太郎「毎日のように桃天飲んどいてどこが隠してんだよ!?」

ゆみ「え」

智美「私のコーラ好きもバレてたかー」

京太郎「モモほどじゃないですけどよく飲んでますしね」

ゆみ「な」

睦月「私は……」

京太郎「あれだけせんべいと緑茶飲んでればそりゃわかりますって」

睦月「いや、実はストレートティーのほうが」

京太郎「じゃあせんべいも紅茶と一緒に食べてくださいよ!?」

睦月「そこは相性の問題だね」

京太郎「なんで誇らしげなんですか……はい、ストレートティーです」

睦月「あるんだ!? いや、流れに乗っただけで緑茶も好きだし、こっちで大丈夫。わざわざありがとう」

京太郎「じゃあしまっておくんで後で飲んでください……あれ、ゆみ先輩どうしました」

ゆみ「なんでもない……」

ゆみ(私だけじゃなかったんだな)ハァ

京太郎(ゆみ先輩は色々飲んでるからわかりづらかったけど当たってよかった……! 遊びに行ったとき飲んでたのをよく覚えてた! 偉いぞ俺!)

桃子「なんかまた2人でやってるっすね」

智美「一回戦とはいえ余裕だなー。というかいい加減にしろー」ワハハ

佳織「うぅ……すみません……」

京太郎「ドンマイです。4万点差くらいどうとでもなりますよ」

佳織「でも区間4位で役立てなくて……」

ゆみ「昨日も言ったじゃないか。1ヶ月前に入れるなんて無理を頼んだのは私たちだ。妹尾の取られた点棒は私たちが取り返す」

桃子「かおりん先輩の後は部長に私にゆみ先輩。まさに盤石っすよ!」

智美「そうそう気にするなー。佳織の敵は私が取るぞ」ワハハ

佳織「みんな……」ウルウル

智美「ワハハー。それじゃ逆転してくるかー」

ゆみ「ああ、行ってこい」

睦月「お願いします!」

桃子「ファイトっすー!」

…………

………

……

ゆみ『ツモ。2000・4000』


一同「…………」プルプル

京太郎「か、」

智美「勝ったぞー!」

睦月「勝ったんだ……」ヘニャ

佳織「よかった……!」

桃子「みんな喜びすぎっすよー。初戦突破なんて通過点っす!」ニヘラ

京太郎「その顔で言うなよ」ハハ

桃子「嬉しいんだからしょうがないっすかー」バシバシ

京太郎「痛っ!」

桃子「もー大げさっすねー」バシバシバシ

京太郎「やめい! ほんと痛えよ!?」

睦月「あはは、夢じゃなさそうだね」

佳織「うん、痛がってる」フフ

京太郎「微笑ましそうにするのやめてください!」

桃子「やーでも私たち勝てたんすねー。夢じゃないんすねー」ニヘラ

京太郎「部長、モモ、ゆみ先輩が区間1位だぜ。順当だよ」

智美「ワハハ、そんな褒めるなー」

佳織「智美ちゃんありがとう!」

睦月「モモも先輩たちも、やっぱり凄いですね」

智美「2人が踏ん張ってくれたからだぞー。……そろそろゆみちんが帰ってくるなー。ちゃんと迎えよう」

桃子「そうっすね! 盛大に出迎えるっす!」

ガチャ


京太郎「ゆみ先輩! おめでとうございます!!」

ゆみ「」ポー

京太郎「飲み物どうぞ……ってどうしたんですか?」

ゆみ「私たちは勝ったのか……?」ポー

京太郎「何いってんですか! ゆみ先輩なんて一度も振り込まずに圧勝したくせに!」

ゆみ「実感がない……京太郎くん、ちょっと後ろを向いてくれないか?」ポー

京太郎「? はい」クルッ

ゆみ「ん……」ピト

京太郎「はい!?」ビクッ

桃子・智美・佳織・睦月「!?」

ゆみ(いつもの……いつもよりは速いか? でも聞き慣れた京太郎くんの鼓動だ……)

ゆみ「……うん、ありがとう。ようやく現実に戻ってきた気分だ」

京太郎「」

ゆみ「京太郎くん?」

智美「……あー、現実に戻ってきたところ悪いんだけどなー?」

ゆみ「なっ、え!? なんでお前た……あ」

桃子「これは本気で私たちのこと忘れてたっぽいっすね……」

睦月「しゅ、集中力凄いですね」

佳織「凄い慣れててこっちが赤くなっちゃいました」

ゆみ「い、今のは、その……忘れてくれ……」カアァァ

智美「ちょっと難しいなー」ワハハ

桃子「というか今さら1個忘れたくらいじゃどうにもならないっすよ?」

ゆみ「なら今までの全部だっ!」

睦月「あ、自覚がないわけじゃないんですね」

佳織「私は無自覚って言われたましたけど、さすが加治木先輩ですね!」

ゆみ「うぅ……」シュン

ゆみ「京太郎くん……」ジッ

京太郎「」

桃子「京太郎?」

京太郎「……はっ。一瞬意識が飛んでたぜ」

智美「いつから飛んだんだー?」

京太郎「その、ゆみ先輩が俺の背中に……」

ゆみ「……そこからは記憶にないんだな?」

京太郎「ええと、そうですね」

ゆみ「……ならまあ」

桃子「いいんすか!?」

智美「それくらいいつもやってるって感じだなー」

京太郎「よくやられてますけど、やっぱ心の準備してないと驚きますね」アハハ

佳織「よくやってるってほんとに慣れてたんだ……」

京太郎「ところで俺の意識が飛んでる間に何が」

ゆみ「いいから! ほら次の試合が始まるぞ!」

桃子「……今さら何が恥ずかしいんすかね」ヒソヒソ

智美「ほら、自覚があるって思われると恥ずかしいんじゃないか?」ヒソヒソ

睦月「なるほど」ヒソヒソ

ゆみ「聞こえてるぞ!」

ゆみ「……どう思ってるかなんて自分でもよくわからない」ボソッ

ゆみ(京太郎くんとまだ一緒にいたいと思うのは、蒲原たちと一緒にいたいと思うのと違うものなんだろうか……)


京太郎「佳織先輩、あっちで何か話して……」

佳織「い、いやあの……そ、それより私ちょっと喉が渇いたから飲み物が欲しいかな!?」

京太郎「あ、はい。どうぞ」

智美「2回戦はさっきより手強いなー」

桃子「さすがは1回戦を突破しただけあるなー」

京太郎「睦月先輩苦戦してる……休憩がほとんどないのは辛いですね」

ゆみ「確かに辛いがそれは相手も同じだ。裾花に天竜に高瀬川……やはり一筋縄では行かないな」

佳織「津山さん! 頑張って!」

…………

………

……



睦月「すみません、もっと点数取って繋げたかったんですが……」

ゆみ「なに、相手はそれなりの強豪だ。その先鋒を相手にして2位と僅差の3位なら十分だよ」

睦月「2位の次は3位……このままだと次は4位に」ウゥ…

智美「相手は強くなっていくわけだしなー。でもエースを相手に踏ん張ってくれるってのはそれだけでありがたいんだぞ?」

桃子「そうっすよ。最終的にチームが勝てば問題なしっす!」

ゆみ「まあもちろん勝ってくれるのが一番だ。決勝は期待しているぞ」

睦月「……はい、切り替えます!」

佳織「わ、私も差を広げられないよう頑張ります!」

智美「そうだなー。まずは目の前の試合に勝たないと。期待してるぞー!」ワハハ

京太郎「佳織先輩、頑張ってください!」


佳織『よ、よろしくお願いします』ペッコリン


桃子「かおりん先輩は緊張が解けないっすねー」

智美「緊張というかあれはよくわからなくて戸惑ってるんじゃないかー?」

京太郎「起家ですか。配牌はよさそうですね」

ゆみ「ああ。……いや、よさそうというかこれはもしや」

睦月「ま、まさか……」

佳織「3つずつ、3つずつ……」

裾花次鋒「……その、ごめんなさい。速く切ってもらいたいんだけど……」

佳織「ご、ごめんなさい! ええと、これは……」

裾次(初心者の子なのかな。初心者がいて勝ち進むなんて要注意ね)

佳織「うーん? これはどうすればいいんだろう……?」

3人「?」

佳織「最初からでもいいのかな。ええと、ツモのみ、です。500オールかな?」

3人「なっ!!?」

佳織「えっ!? 間違ってました!?」ビクッ

天次「……最初から揃ってるときは天和って言って役満になるの。点数は……16000オール」

佳織「これも役満なんですか!? わあ……」


京太郎「さ、さすが佳織先輩……」

ゆみ「起家で天和とは……恐ろしい」

智美「やってくれるとは思ってたけどここまでやるとはなー」ワハハ

桃子「かおりん先輩カッコいいっす!」

睦月「妹尾さん凄いな……私も次こそは!」

佳織「ただい――」

智美「よくやったぞ佳織ー!」

京太郎「区間1位おめでとうございます!!」

佳織「あ、ありがとう。でも運がよかったよ」アハハ

桃子「開幕天和は凄まじかったっすねー」

ゆみ「相手も動揺したのかベタオリが多かったからな。妹尾の独特の捨て牌にも翻弄されたようだ」

睦月「実際その後も倍満とか上がってますからね。凄いなあ」

佳織「一回戦の分、取り返せてよかったです」エヘヘ

智美「私もこの流れを切らないようにしないとなー」ワハハ

ゆみ「ああ、期待しているぞ」

京太郎「頑張ってください!」

智美「ワハハ、任せろー」

…………

………

……

智美「ワハハ……」

京太郎「お、お疲れ様です」

智美「区間4位とはなー……」

ゆみ「まあそういうこともあるのが麻雀だ。気にするな」

睦月「そうですよ! 配牌は悪かったですけど、悪い打ち方した訳じゃないですし」

桃子「私とゆみ先輩が取り返すから問題ないっすよ!」

佳織「総合順位はまだ3位だし大丈夫だよ」

智美「……そうだなー。これからは応援頑張るぞー!」

桃子「頼んだっすよー! それじゃサクッと逆転してくるっす!」

京太郎「おいおい、そんな甘く見てて大丈夫か?」

桃子「大丈夫っす。言葉の綾っすよ。まあ私が1位にしてくるのは本当っすけどね!」

ゆみ「最悪私で逆転するつもりだが、頼んだぞ」

桃子「任されたっす!」

桃子(さて、ああは言ったけど裾花も天竜も強敵っすね。中々振り込みそうにないっす)

桃子(序盤はおとなしくして終盤勝負っすね。我慢比べになりそうっす)

裾副(配牌はいい、今日は好調ね。リードを守るなんて考えるよりこのまま差を広げましょう)

天副(裾花やっぱり強い……! ここでなんとか巻き返さないと)

高副(4位だけど諦めるわけにはいかない! 全員捲ってやるわ!)


京太郎「硬直してますね……」

ゆみ「実力はモモのほうが上だと思うが……相手も強豪校でレギュラーを取っている選手だ。中々上手くはいかないな」

睦月「まだ消えられてないみたいですね。打牌が慎重です」

智美「冷静に考えると消えられてないって凄いこと言ってるよなー」

佳織「応援頑張るって言ったのはどうしたの!?」

桃子(……消えられたみたいっすね。南2局までかかるなんてやっぱりこの人達強いっす)

桃子(まあゆみ先輩ほどじゃないっすけどね!)

裾副「立直」

桃子(立直っすか。あの捨て牌は……。ちょうどいいっすね。反撃開始っすよ!)

裾副(今日は絶好調! 二-四-五-七待ちならすぐ上がれそうね)

桃子「」タン

天副「」タン

高副「」タン

……



高副「うー」タン

裾副「ロン! 裏ドラは……」

桃子「ちょっと待った! ダメっすよ。捨て牌はちゃんと見ないと」

裾副「は? 何言って……っ!!?」

天副「え!?」

高副「なっ!?」

裾副「ちょ、ちょっと! すり替えたりしてないわよね!?」

桃子「審判がいてカメラで撮影されてるのに出来るわけないじゃないっすか」

裾副「そんな、見落としてたなんて……」

桃子「ともかくチョンボっすから罰符っすよ」

裾副「くっ……」

京太郎「いやーほんとえげつないなあ」

ゆみ「あれに関しては回避しようがないからな。ロン上がりを放棄するか運に任せるしかない」

智美「私は事故みたいなものだと思って無視してたなー。罰符を何度払ったか数えてないけど」ワハハ

京太郎「俺も何度あれにやられたことか……」

睦月「わかっててもショックだよね。上がれると思ったのに罰符を払うことになるなんて」

ゆみ「ああ、そして相手はモモのステルスを知らない。受ける衝撃も数段上だろう」

京太郎「見るからに落ち込んでますね。気持ちわかるなあ」

佳織「私は何故か桃子さんのステルスで罰符払ったことないんですよね。なんででしょう?」

京太郎「……佳織先輩だからですよ」ニコッ

佳織「な、なんか喜べないな……」

桃子「宣言通り1位になってきたっすよー!」

京太郎「すげえぞモモ!」

ゆみ「よくやった」

桃子「私にかかればこんなもんっすよ!」ドヤッ

智美「ワハハー、生意気だなー」ウリウリ

桃子「ちょ、ちょっと部長!」

智美「凄いぞモモー」ワハハ

桃子「わかったからやめて欲しいっすー!」

智美「……ありがとなー」

桃子「……チームなんだから当然じゃないっすか」

佳織「これで1位ということは……」

睦月「後ちょっとで決勝……!」

京太郎「ゆみ先輩、頑張ってください」

ゆみ「みんながここまで繋いでくれたんだ。必ず守り切るさ」

智美「飛ばしてしまっても構わないんだぞー?」

ゆみ「無理をする必要がどこにある……行ってくる」

桃子「頼んだっす!」

…………

………

……

京太郎「決勝進出だー!!」

桃子「なんで私たちより喜んでるんっすかー!?」ニヘラ

京太郎「お前も十分喜んでるだろ!」ニヘラ

智美「まさかここまで来れるとはなー」ワハハ

睦月「2回戦に行けただけで嬉しかったのに、まさか決勝に行けるなんて……」

佳織「私も凄い嬉しくて……」グスッ

智美「こらこら、泣くのはまだ早いぞ」

佳織「なんか気が抜けちゃって……」

ゆみ「気を抜くのはまだ早い。明日は決勝だぞ」

京太郎「ゆみ先輩! おかえりなさい、おめでとうございます!!」

ゆみ「ありがとう……だがみんな、明日はもっとキツイ試合になる。喜ぶのはいいが疲れは残さないようにな」

京太郎・智美・桃子・睦月・佳織「……」

ゆみ「な、なんだ?」

智美「……一回戦の後何したか忘れたのかー?」

ゆみ「うっ」

桃子「棚に上げるってレベルじゃないっすよね」

ゆみ「よ、喜んでいたわけじゃないしいいじゃないか!」

智美「浮かれっぷりは飛び抜けてたと思うぞ?」

桃子「周りが目に入ってないってああいう事をいうんすねー」

ゆみ「なんで私はあんなことを……!」

京太郎「ま、まあまあ。ゆみ先輩が言ってることは正しいじゃないですか」

佳織「確かにそうだね。そっか、明日で決まるんだね……」

睦月「明日で最後にしたくないね……ここまで来たら全国に行きたい」

桃子「後1勝だけっすしね。負けたくないっす」

ゆみ「ああ、私もだ。明日も早いし今日は帰ってゆっくり休もう」

智美「そうだなー。私たちの家は遠いし帰るかー。明日は頑張るぞー!」

一同「おおー!」

――帰り道――

京太郎「ゆみ先輩、今日はお疲れ様でした。カッコ良かったですよ」

ゆみ「ああ、ありがとう。だが明日の相手は正直言ってレベルが違うからな……」

京太郎「龍門渕と風越と……清澄ですね」

ゆみ「そうだな。天江衣は牌譜を見てもわけがわからない。素人のような打ち筋だが全てが勝ちに繋がっている。実際に打ってみるまで対抗手段は思いつかないだろうな」

ゆみ「池田華菜は火力が凄まじい。9割近く満貫以上で上がっているんじゃないかあれは。あのツモ運は素直に羨ましいよ」

京太郎「咲はどうですか?」

ゆみ「ううん、今年からの出場でデータがないからな。牌譜がないとなんとも……」

京太郎「あ、それならこれをどうぞ」バサッ

ゆみ「これは……!」

京太郎「清澄と龍門渕と風越の今年の牌譜です。一応注釈も付けてます。応援で待ってる間に作ってみました」

京太郎「応援だけしか出来ませんでしたから、出来る範囲で役に立ちたくて。まあゆみ先輩ほど上手く注釈出来てないですけど」アハハ

ゆみ「いや、あるとないとでは大違いだよ。ありがとう京太郎くん」

ゆみ「ふむ……」ペラリ

京太郎「どうですか?」

ゆみ「軽く宮永のを見たが、1回戦で4万点以上残している相手を飛ばしているのか……さすがというべきだろうか」

ゆみ「打ち方に関しては正直よくわからない。無駄があるように見えるがきっちり勝っている。何にせよ要注意だな」

京太郎「やっぱり強いんですねあいつ……全然そんな感じしないのに」

ゆみ「見た目と麻雀は関係ないが、随分と女の子らしい女の子だったな」

京太郎「女の子らしい女の子って……まああいつがダメなのは中身ですから見た目じゃわからないですね」

ゆみ「そんなふうには見えなかったが……」

京太郎「まず会場入ってすぐ迷子になってる時点で察してください。昔からああなんですよ」

ゆみ「そうか……やっぱり仲がいいんだな」

京太郎「まあそうですね。あんなんですけどいいやつだからほっとけないです」

ゆみ「……」

京太郎「あ、もちろん明日は鶴賀を応援しますよ! 今の俺にはゆみ先輩が1番です! 咲なんかやっつけちゃってください!」

ゆみ「……信じるぞ? その言葉」

京太郎「もちろんです……っていうかわざわざ念を押すほど信用ないですか!?」

ゆみ「ん……そうだな。今日のナンパの一件で君の信用はガタ落ちした」フフッ

京太郎「だから誤解……それ咲じゃないですか!?」

ゆみ「幼馴染を見つけて助けようとするのはいいが、それならもっとちゃんと伝えろ」

京太郎「うっ……すみません」

ゆみ「わかればいい……明日は応援頼んだぞ。ちゃんと私にするように」

京太郎「はい!!」

ゆみ「……絶対だぞ」

今日は以上です。
ステルスでチョンボは>>379見て思いついたわけじゃないよ! 最初からやりたかったんだよ!
次は決勝です。

書く時間取れなかったのと少し長くなったので中々書き上がりませんでした。
分割したほうがよかった気もしますが投下します。

――控え室――

ゆみ「ついに決勝戦だな」

智美「そうだなー。泣いても笑っても今日が最後だー」ワハハ

睦月「2日目にもなると緊張もほぐれてきますね」

佳織「あれ? さっきから右手と右足一緒に出してるから緊張してるのかと思ってたよ」

睦月「……自分に言い聞かせてたんだ」

佳織「ご、ごめんなさい!」

桃子「緊張感のない会話っすねー」

京太郎「これなら今日は大丈夫そうですね」

睦月「まあ昨日の初戦よりは緊張してないと思う。ただ今日は相手が……」

京太郎「風越の先鋒、強かったですね」

桃子「龍門渕の先鋒も10万点飛ばすとかわけわかんないことやってたっすねー」

睦月「うん、私でどこまで離されずにいられるか……」

智美「ダメだぞー初めからそんなんじゃ」

ゆみ「蒲原の言うとおりだぞ。初めからそういう意識では守りに入ってしまう。そこを狙われると最悪だし、それが出来る相手だ」

桃子「そうっすよ。むっちゃん先輩は堅実なとこがウリで元々攻撃的じゃないんすから、最初から守りに入ったら上がれなくなっちゃうっすよ」

睦月「でも……」

京太郎「俺が言うのも何ですけど、1人が調子悪くても周りのみんなでフォローするのが団体戦じゃないですか!」

ゆみ「津山を先鋒に置いたのは私なんだから、自分の好きに打ってこい。後のことは任せろ」

ピンポンパンポーン
「決勝戦が始まります。各校先鋒の選手は対局室へ集合してください」

智美「ちょうど始まるみたいだなー」ワハハ

佳織「津山さん、頑張って!」

桃子「期待してるっすよー!」

睦月「……うむ、精一杯やってくる」

京太郎「決勝はルール変わるんでしたっけ?」

ゆみ「ああ、半荘が2回になる。長丁場になるから逆転の可能性は増えるな。逆もしかりだが」

智美「麻雀は運に左右されるから、2回にして実力を発揮してもらおうってことなんだろうなー」

桃子「まあ2回じゃまだまだ運が大きいと思うっすけどね」

ゆみ「1回じゃ味気ないというのも理由なのかもしれないな……さあ、始まるぞ」

京太郎「清澄と龍門渕の配牌がいいですね」

ゆみ「ウチと風越は我慢の展開だな。なんとか耐えて欲しいが……」

桃子「ああ、なんで南を切るんすか!」

京太郎「生牌とはいえ聴牌だしなあ。俺も切りそうだ」

佳織「あそこにいると早く上がりたくなるよね」

ゆみ「オリの判断は難しいが、うーむ……」

智美「まあ今戦ってるのはむっきーだ。私たちは落ち着いて見守ろう」

京太郎「それにしても龍門渕の先鋒は変な鳴きしてますね」

智美「確かになー。それに鳴いたあと清澄のツモが悪くなってないか?」

ゆみ「ふむ、亜空間殺法の使い手なのかもしれないな」

京太郎「あく……なんですか?」

ゆみ「亜空間殺法だ……改めて言わせるな」カアァ

ゆみ「コホン。亜空間殺法というのは、簡単に言えば鳴いてツモ順をずらして相手のいい流れを切ったり自分に運を引き寄せたりするものだ」

佳織「そんな上手くいくものなんですか?」

ゆみ「私には出来ないな。何か独自の感覚なり理論なりがあるんだろう」

京太郎「なるほど……清澄の先鋒も配牌もツモもいいのに後一歩で上がれてないですね」

ゆみ「あれを狙ってやっているとすると恐ろしいな。10万点飛ばしてのはさすがに運も絡むんだろうが……」

桃子「狙われてないのは幸いっすね。調子がいいほど狙われてるみたいっすからあんまり喜べないっすけど」

智美「清澄には悪いけどこのまま引きつけてて貰いたいなー」

智美「前半戦終了かー」

佳織「龍門渕がリードしてるね」

ゆみ「ああ、しかし風越も目立たなかったが堅実に稼いでいるな」

京太郎「あれ、ほんとですね。最初は調子良さそうじゃなかったのにいつの間に」

桃子「風越のキャプテンは伊達じゃないっすねー」

佳織「津山さん、ため息ついてる……」

ゆみ「先鋒という厳しい中でよくやってくれているんだが……しまったな。対局室の近くへ行っていればよかったか」

智美「直接声かけたほうがよかったかなー」

京太郎「後半戦始まりますね。睦月先輩なら大丈夫ですよ」

桃子「そうっすよ。部長とゆみ先輩にとっては守るべき後輩かもしれないっすけど、私たちにとっては頼れる先輩なんすから!」

ゆみ「……そうだな。一度先鋒を任せた私がうろたえていては津山に申し訳ないな」

智美「どっしり構えるかー」ワハハ

京太郎「はい、睦月先輩を信じましょう!」

…………

………

……

睦月「ただいまー……」

京太郎「お疲れ様です」

睦月「うん……負けちゃった。次は4位なんて冗談で言ってたけどなあ」ハァ

ゆみ「……確かに津山の満足な結果ではなかったと思うが、4位とは言っても2,3位とは僅差だ。よくやったよ」ポン

智美「そうだぞー。前半から5000点しか削られてないじゃないか。よく耐えてくれたなー」

桃子「そうっすよ! 前半よりずっとよくなったんすからもっと胸張るっす!」

佳織「あ、後は私たちに任せて」

睦月「妹尾さんまで……うん、ありがとう。後はよろしくね」

智美「佳織も言うようになったなー」

佳織「か、からかわないでよう」

ゆみ「1人浮きなら他の3校も風越を狙うだろうからかえってやりやすいが……妹尾は好きなように打ってこい」

佳織「私も風越をマークしたりしなくていいんですか?」

京太郎「……出来るんですか?」

佳織「……出来ないね」

ゆみ「慣れないことはしなくていい。そんなことをして持ち味を消す必要はないさ。点数調整は私たちの役目だ」

桃子「点数で負けてるのに飛ばすのだけは注意っすよ!」

佳織「そ、それはちょっと無理かな」

智美「ほらほら、話すのはそのくらいにして出陣だー」

佳織「お、押さないでぇー」

ゆみ「次鋒戦の開始だな」

京太郎「……全員メガネっ娘ですね」

ゆみ「言い方に何か違和感を感じるな」

京太郎「気のせいですよ……あれ、1人外しましたね」

桃子「あれで見えるんすかね?」

智美「伊達メガネだったりしてなー」ワハハ

睦月「オシャレしたいのかしたくないのかよくわからないですね」

ゆみ「まあ何か理由があるんだろう。さすがに意味もなく外しているとは思えん」

京太郎「メガネを外すと印象が変わって……」

ゆみ「何を考えている」ゴッ

京太郎「ヒィッ!?」

桃子「少しくらい懲りたらどうなんすか」ハァ

智美「風越がリーチしたなー」

睦月「清澄は堅実にオリてますね」

桃子「かおりん先輩は……あぁ中が」

智美「これは振り込むなー……やっぱり」

京太郎「佳織先輩度胸ありますよね」

ゆみ「それなりには教えているはずなんだが、中々難しいな」ハァ

ゆみ「まあこれも含めて妹尾の打ち方だ。あれでも部内断トツビリというわけではないしな」

桃子「そうっすねー。かおりん先輩の調子がいいときは少しくらい削っても役満で一気に取り返されるっす」

智美「今回も出るといいなー」ワハハ

京太郎「……うおお、四暗刻聴牌」

睦月「あの配牌から四暗刻目指すのかぁ……」

智美「まあ本人には目指してるって意識はないと思うけどなー」

ゆみ「何にせよあの捨て牌はそれだけで脅威だな。清澄もオリたようだ」

桃子「私ならステルスでオリなくても平気っすけどね!」

京太郎「なんで対抗してるんだ……というか押したほうが点数的には有利じゃないか?」

ゆみ「結果論ではそうだが、長い目で見ればオリたほうが正解だろう。もちろんこの試合に限れば別だが」

京太郎「お、言ってる間に佳織先輩ツモりましたね。この舞台で役満か……」

ゆみ「スター性というか、何か持っているのだろうな」

智美「無理にでも麻雀部に入ってもらってよかったなー」

睦月「これで相手も攻め込みづらくなるといいですね」

京太郎「佳織先輩防御はからっきしですからねえ。早めにオリてくれるといいな」

ゆみ「いきなり中を切ってしまっているからな……難しいところだが慎重な相手なら可能性はあるか」

桃子「メガネキャラは慎重派って相場が決まってるっすよ!」

京太郎「いや佳織先輩がいきなり違うじゃねえか」

桃子「……何事にも例外はあるっす!」

…………

………

……

智美「佳織ー! 大活躍だったなー!!」

佳織「あ、あれでよかったかな?」

ゆみ「十分すぎる。あの収支に不満などない」

京太郎「区間1位ですよ1位! 凄いですよ!」

桃子「麻雀は何があるかわからないっすね。凄いっす!」

ゆみ「麻雀は運ではないが、決勝でこの結果をだせるのは妹尾の力だろうな」

睦月「なんとか風越が射程内に入りましたね」

ゆみ「ああ、……蒲原!」

智美「ん?」

ゆみ「射程にはいった的を逃すな」

智美「撃ち落せばいいんだろー、風越を!」

京太郎「……あの、ゆみ先輩、智美部長」

ゆみ・智美「うん?」

桃子「……何もそんな死亡フラグ立てなくてもいいじゃないっすか」

ゆみ「な!? い、いやそんなつもりではなかったんだが……」

京太郎[言ってしまったものはしょうがないです。部長、フラグなんかに負けないでください」

智美「新しい応援だな……。まあ頑張ってくるぞー」ワハハ

京太郎「風越の中堅は1年生か。凄いなあ」

桃子「私も1年っすよ!」

京太郎「ウチは人数がいないだろ」

桃子「ぐぬぬ」

ゆみ「まあモモの実力なら風越でもレギュラーを取れるさ」

桃子「フフフ」ドヤァ

京太郎「腹立つわー」

睦月「何遊んでるの……ほら、始まるよ」

京太郎「おっとそうで……龍門渕のあれは手錠?」

佳織「ファッションなのかな?」

桃子「世の中には色んな人がいるんすね」

ゆみ「だから気を散らすなと」ハァ

睦月「あ、清澄が立直しましたね。でもなんで単騎に……?」

京太郎「⑧切りなら5門張ですよね? まあ他の手牌見る限り5門張でも上がれなさそうですけど……」

ゆみ「打牌を見る限り少なくとも一萬を引いたのは偶然だと思うが……」

桃子「和了る確率は間違いなく下がるっすけど、振り込んだときのダメージは大きいっすね」

京太郎「変な待ちだとオリるのも難しくなるしなあ」

睦月「手強いですね……」

ゆみ「蒲原はあれでオリるときはしっかりオリるからそうそう振り込まないとは思うが、やはり厳しそうだな」

桃子「清澄また和了ったっすね」

佳織「風越が2位になってウチが1位だね!」

京太郎「清澄が風越を撃ち落としてくれましたね」

ゆみ「あまり喜べないな……」

睦月「清澄強いですね。あんな待ちで和了れるなんて」

京太郎「狙われてるって感じではないですけど、風越がよく振り込んでますね」

佳織「智美ちゃんは全然振り込まないね」

ゆみ「風越が見かけによらず攻撃型のようだからな。蒲原は守備重視だしその辺りの差だろう」

桃子「後はそもそも当たり牌引いてないっすからね。悪待ちだから引く確率も少なくなるっすし」

京太郎「うわ、清澄またテンパッてる……」

睦月「今度は嵌張待ち……手なりでなったんだろうけどこれなら和了らないかも」

ゆみ「この流れだと厳しそうだが……うわ」

桃子「……凄いっすねあれは」

佳織「ツモった牌を指で弾いてその間に手牌を倒して、弾いた牌掴んで叩きつけて……練習してるのかな?」

京太郎「清澄も今年麻雀部出来たんですよ。中堅の部長の人は1年生のとき1人だったはずなんできっとその間に……」

睦月「冷静に考えるのはやめよう」

…………

………

……

智美「」ワハハー

睦月「横並びですから! 気を落とさないでください!」

京太郎「風越に比べれば全然マシですよ!」

桃子「マシって言い方もどうなんすかね」

智美「リード守れなくてごめんなー……」

佳織「私も運がよかっただけだから」

ゆみ「まだまだ1位を狙える位置だ。後は私とモモでなんとかしよう」

智美「頼んだぞー」

睦月「お願いします!」

桃子「任せるっす! 半荘2回なんてまさに私のためにあるようなルールっすからね!」

京太郎「どういう意味だ?」

桃子「私のステルスは消えるのに時間がかかるんすよ」

京太郎「ああ、知ってるけど」

桃子「半荘が終わったくらいで私のステルス効果が消えることはない……この意味がわかるっすか?」

京太郎「」ゴクリ

桃子「つまり私は半荘1回丸々ステルス状態で戦えるんすよ!」

京太郎「な、なんだってー!」

ゆみ「出番直前だというのに余裕だな。いやまあいいんだが」ハァ

桃子「いやー今からじたばたしてもしょうがないっすからね。出来ることをやるだけっすよ」

智美「ステルスの使える時間が長くなるってのは単純に強いからなー。期待してるぞ」

京太郎「消える前に点数削られないようにな」

桃子「消える前に削るのは散々ゆみ先輩にやられたっすね」

睦月「見てて怖くなるくらい狙われてたね」

ゆみ「し、仕方ないだろう!?」

桃子「わかってるっすよ。おかげで素の実力も上がったっす!」

佳織「頑張ってください、桃子さん!」

桃子「かおりん先輩に負けないくらい稼いでくるっすよ!」

睦月「副将は原村和が出るんですよね。インターミドルチャンプかあ」

ゆみ「決勝で清澄が注目されている理由の1つだな」

京太郎「鶴賀は全然注目されてませんね」

智美「運でたまたま勝ち上がってきたって思われてるんだろうなー」

佳織「……何も言い返せないなあ」

ゆみ「……運も実力のうちだ」

佳織「フォローされてない!?」

京太郎「それで勝ち上がったんですからむしろ凄いですよ」

睦月「無名のまま勝てたらカッコいいよね」

ゆみ「そうだな。最後まで注目されずに勝つというのも面白い」

京太郎「とりあえずはモモ次第ですね。応援しましょう」

京太郎「あれはペンギン……?」

ゆみ「エトピリカになりたかったペンギン、略してエトペンだな」

佳織「可愛いですねー」

智美「ゆみちん詳しいなー」ワハハ

ゆみ「た、たまたま知っていただけだ」

智美「恥ずかしがらなくてもいいだろー」

京太郎「でも人前でペンギンを抱えたまま麻雀なんてよく出来ますね」

ゆみ「彼女なりの集中方法なのだろう」

智美「清澄は先鋒から副将までみんなキャラ濃いなー」

京太郎「東場のタコス、メガネを取るメガネっ娘、牌投げ悪待ち、ペンギン抱っこ……確かに」

智美「ウチは佳織くらいかな。モモも対戦相手には強いけど目立てはしないしなー」

佳織「そんなことないと思うけど……」

睦月「私も何かしたほうがよかったのかな」

京太郎「いや清澄以外は普通にしてますから!」

ゆみ「キャラが薄くても別に構わないだろう。試合に勝てればいいんだ」

ゆみ「……それに注目されたら普段通り打てなくなりそうだ。目立つのには慣れていない」ボソッ

智美「1年生の教室で大声で勧誘したのは誰だったかなー」ワハハ

ゆみ「だからこそだ!!」カアァァ

京太郎(可愛い)

睦月「あんまり動きがないね」

京太郎「みんな固い打ち手みたいですね」

ゆみ「こういう打ち手にモモのステルスは効果的だろうな」

京太郎「高い手を作るタイプじゃなさそうですから、消えるまでに削られるのも大丈夫っぽいですね」

佳織「でもみんな参考になりますねー。なんでそう切ってるのか全然わからないや」

京太郎「佳織先輩はあんまりとらわれないほうがいいと思います」

ゆみ「いや、技術が身についても今の運のままでいられるかもしれない」

京太郎「なるほど……」

佳織「な、なんか扱いがおかしいような……」

智美「気にするなー。お、モモが上がったぞー」

京太郎「龍門渕の副将驚いてますね!」

ゆみ「ふむ、消えたようだな」

睦月「裾花のときもですけど、今回は更に時間かかりましたね」

佳織「最終局でようやくだね」

智美「ここからはモモの独壇場だなー」

京太郎「お、早速龍門渕が振り込んだ!」

睦月「ドラとはいえモモが見えていなければ切りますね」

ゆみ「ここからは安心して見ていられそうだな」

智美「このまま飛ばしてくれればいいんだけどなー」ワハハ

京太郎「そうなればいいですね……ん?」

睦月「清澄がツモらな……!?」

智美「ス、ステルスモードのモモが」

ゆみ「振り込んだだと!?」

佳織「消えられてなかったんでしょうか……?」

ゆみ「いや、少なくとも龍門渕は明らかに不自然な振り込みをしていた」

京太郎「となると原村にはモモが見えてるってことですか……?」

ゆみ「そう考えるのが自然だが……まいったな」

智美「明らかにモモの天敵だなー」

ゆみ「ああ、私のオーダーミスだ。副将に置くべきではなかった」

京太郎「仕方ないですよ。モモが見える相手がいるなんてわかりませんし、わかったところで副将になるかどうかなんて完全に運じゃないですか」

佳織「原村さんに見えてても他の人には見えてないみたいですし、まだまだ有利ですよ」

智美「それに普通の麻雀でもモモは十分強いだろー?」

睦月「そうですよ。元々ネト麻見て勧誘したんじゃないですか」

ゆみ「……そうだな。これで落胆してはモモにも失礼だ。モモを信じよう」

…………

………

……

桃子「いやー参ったっす。どーにも清澄だけ抜くことが出来ませんでした」

京太郎「原村には見えてたみたいだな」

桃子「あんな相手がいるんすね。自信無くしたっすよ」

ゆみ「何を言う。獲得点数を見れば誰が活躍したか一目瞭然だ」

ゆみ「去年トップの2校と原村和を相手に1番点を稼いだんだ。お前が一番だよモモ」

桃子「先輩――」

智美「そうそう、佳織ほど稼いではないけど1位なんだから胸を張っていいぞー」

桃子「最後にそういうこと言うんじゃないっす!!」

智美「褒めてるんだぞ!?」

桃子「どこがっすか!?」

智美「胸を張っていいって言ってるじゃないかー!」

桃子「最初を言わなくてもいいじゃないっすか!」

京太郎「あの2人はほっといて」

佳織「いいのかな……」

京太郎「いいんですよ。……ゆみ先輩、こんなことしか言えませんけど、頑張ってください」

ゆみ「……月並みだな」フフッ

京太郎「う……なんかカッコいいこと言えればよかったんですけど……」

ゆみ「いや、嬉しいよ。……うん、凄く嬉しい」

ゆみ「昨日言ったが、かっこ良くなくても気の利いた台詞じゃなくても、私を応援していてくれればそれでいい」

京太郎「それなら任せてください。ちゃんと対局室に聞こえるくらいの応援しますから」

ゆみ「それは恥ずかしいからやめてくれ」

京太郎「注文が多いですね」

ゆみ「君が無駄な条件を付けるからだ……それじゃ行ってくる」

京太郎「はい、優勝を決めるところを楽しみにしてます」

ゆみ「ああ、期待していてくれ」テクテク

---------------------------------------

ゆみ(決勝の対局室は随分と広いな。……広くする意味はあるのだろうか)

ゆみ(1人先に来ているな……あれは宮永か)

ゆみ「よろしく。決勝で会うことになるとはな」

咲「あ、はい。よろしくお願いします。えっと……昨日はすみませんでした」

ゆみ「京太郎くんがやったことだよ。気にしないでくれ……まあどうしても気になるなら、お手柔らかにしてくれると助かる」フフッ

咲「そ、それはちょっと」アセアセ

ゆみ「すまない、冗談だ。君の話は京太郎くんから話を聞いていて一度戦ってみたかったんだ」

咲「きょ、京ちゃんはなんて言ってたんですか……?」

ゆみ「ふむ……宮永照を手玉に取っていたというようなことを聞いたよ」クスッ

咲「京ちゃんやっぱり……! う、嘘ですからね? もっとずっと小さい頃で、お姉ちゃんが邪魔しなかったからなんとかですよ!?」アセアセ

ゆみ「……そこまでは事実なのか」

咲「あぅ……」

ゆみ「……こんなことはあまり話しても仕方がないか。すまない、試合前に話すことではなかったな」

咲「い、いえ、悪いのは京ちゃんですから。もう……」

ゆみ(……やはり仲がいいのだろうな。きっと私よりも……)

咲「? どうかしましたか?」

ゆみ「いや、何でもない。お互い全力を尽くそう」

咲「はい!」

---------------------------------------

京太郎「あ、天江衣ってあんな小さい子供みたいな人だったんですか!?」

智美「京太郎達の1つ上だぞー」ワハハ

桃子「あの可愛い見た目で全国トップクラスの打ち手っすか。見た目は当てにならないっすねー」

佳織「あ、加治木先輩が早速立直ですね!」

京太郎「おお、幸先いいですね!」

桃子「そうっすねー……え? 清澄カンっすか?」

睦月「ウチとしてはありがた……!?」

智美「嶺上開花!?」

佳織「これって珍しいことでしたよね?」

桃子「ほとんどないって言っていいんじゃないっすかね……運が悪かったっすよ」

京太郎「……そういえば昨日の1,2回戦の牌譜でも嶺上開花で和了ってたような」

睦月「ぐ、偶然かな?」

京太郎「そうだといいですけど……」

睦月「2度目の嶺上開花……」

京太郎「咲がこんなこと出来たなんて……」

桃子「まあ幼馴染だからって知らないことくらいあるっすよ。ゆみ先輩ならどうにかしてくれるっす」

智美「そうだなー。ゆみちんならどうにかするだろー」ワハハ

京太郎「そう、ですね。応援するって約束しましたし」

佳織「あ、早速聴牌しましたよ!」

睦月「え? 南切り?」

智美「これはまさか宮永を狙ってるのかー……?」

京太郎「うわっ! 槍槓決まった!?」

桃子「先輩最高っすー!!」

………

……

智美「一時は風越が0点にされてどうしようかと思ったけど、風越が役満和了ったりゆみちんが天江から直撃取ったり、まだまだわからないなー」ワハハ

睦月「そうですね、まだまだこれから……!?」

桃子「ぬ、脱いでもいいですかって!?」

京太郎「あ、ああ靴か……最初からそういえよ!」

佳織「でもなんで急に脱ぎだしたんでしょう?」

桃子「おっぱいさんのぬいぐるみと一緒で集中方法の一つなんじゃないっすかね?」

智美「それでもなんで今までやらなかったのかわからないなー。京太郎は何か知ってるか?」

京太郎「いえ、俺も全然……」

睦月「力を抑えていたとかだったりは……」

智美「そ、それは笑えないなー」

京太郎「そんなこと出来るやつじゃないと思いますけど……あ! あいつただ単に脱ぐの忘れてたのかも……」

桃子「わ、忘れる? そんなことあるんすか?」

京太郎「咲ならありえる」

桃子「麻雀からは想像つかないっすねー……」

桃子「……終わったっすね」

京太郎「国士無双一向聴……後1巡あれば……!」

智美「ゆみちんが山を見なかったんだ。そういう後悔はしたらダメだぞー」

佳織「悔しいね……」グスッ

睦月「うむ……出れただけで嬉しかったけど、それでも……」

桃子「私がおっぱいさんに見つからないくらいちゃんと消えていれば……」

京太郎「いや、それは無理なんじゃ……」

桃子「それくらいの気持ちってことっす」

智美「みんな全力は尽くしてたし運も向いてたと思うぞー。これで届かなかったんだからしょうがないさー」ワハハ

智美「私たちは長野県3位になったんだ。風越より上だぞー? 胸を張って帰ろう」

一同「……はい!」

桃子「ゆみ先輩まだ帰って来ないっすね」

京太郎「……部長、その、俺……」

智美「ゆみちんのところかー? 迎えに行ってやれー」ワハハ

京太郎「はい!」タッタッタッ


――階段際ベンチ――

京太郎「ゆみ先輩、お疲れ様でした」

ゆみ「京太郎くん……」

京太郎「……横、座りますね」

ゆみ「ああ……」

京太郎「……」

ゆみ「……今は、悔しいというより残念な気分だ。私はあの場で終わらない祭りを楽しみたかったんだ……」

ゆみ「そして行きたかった。みんなで全国に――」

京太郎「ゆみ先輩……」

ゆみ「……そうか、私は勝ちたいというより、ただ部のみんなと、君ともっと長くいたいとしか思っていなかったんだな」

京太郎「それは勝つ理由になるじゃないですか」

ゆみ「1つの理由になるかもしれないが、麻雀部でなくともいくらでも会えるだろう? 少なくとも君の幼馴染ほど強い理由ではないさ」

ゆみ「神様がいるなら強い思いの方に微笑むはずだ。私は勝ちたいという意志が足りなかったのだろう。だからきっと肝心な場面で勝ちきれ――」

京太郎「……俺は、嫌です」

ゆみ「うん?」

京太郎「ゆみ先輩が引退して、麻雀部で会える時間が減るなんて、俺は嫌です!」

ゆみ「……私も引退したいわけではないが、いずれ引退するのは分かっていただろう?」

京太郎「それはそれです! 今引退しなくてもいいじゃないですか!」

京太郎「それに、みんなで全国は無理になったかもしれないですけど、個人戦があるじゃないですか!」

ゆみ「個人戦か……負けに行くつもりはないが、しかし今日の試合を見ていただろう? 私が勝ち抜けると思うか?」

京太郎「もちろんです!」

ゆみ「……清澄の原村は今日も十分活躍したが、長期戦でこそ輝くのが彼女だ。間違いなく上位に食い込むだろう。中堅の竹井も強かった」

ゆみ「天江は出ないにしろ龍門渕は全員全国クラスの打ち手だし、風越の福路はおそらく長野で天江に次ぐ実力者だ」

ゆみ「そしてその天江に打ち勝った宮永……この面々が相手にいるんだぞ?」

京太郎「ゆみ先輩なら勝てるって信じてます」

ゆみ「しかし……」

京太郎「でももしゆみ先輩に自信がないなら、俺がなんとかします」

ゆみ「え?」

京太郎「俺が全国に行きますよ。そうすれば俺の全国が終わるまで、ゆみ先輩は麻雀部にいてくれますよね」

ゆみ「それはそうだが、しかし全国なんて……前に今年は目指さないとも言っていたじゃないか」

京太郎「あのときはあのとき、今は今です。……ゆみ先輩が全国に行けないと思うなら、俺が行くしかないじゃないですか」

ゆみ「……なんでそこまで私と一緒にいたいと思うんだ?」

京太郎「……俺はゆみ先輩が」

ゆみ「っ」ドキッ

京太郎「あなたのことが……」

ゆみ「……」ドキドキ

京太郎「…………俺はあなたが欲しい!!」

ゆみ「!?」

京太郎「俺はあなたと一緒にいたいんです! 少しでも、一秒でも長く!!」

ゆみ「」

京太郎「だから俺は……あれ、ゆみ先輩?」

ゆみ「」

京太郎「……そこまで嫌でした?」ガクッ

ゆみ「違う!! 君は! なんでよりにもよってそれを言うんだ!?」

京太郎「告白するときは俺がゆみ先輩と出会うきっかけになったこの台詞しかないかと思って……場所はあれですけどまあいいかなーと」アハハ

ゆみ「そういうことじゃない!! ああ、もう……」ブンブン

ゆみ「……そ、そうだ。返事は、だな」カアァァ

京太郎「そ、それはまだいいです」

ゆみ「……は?」

京太郎「俺が全国に行けたらゆみ先輩の返事を聞く資格が持てると思うんです。だからそのときに返事をください」

ゆみ「いや待て。何を意味のわからないことを……」

京太郎「と、とにかく今日は先帰ります。荷物は持って帰るんで明日またー!」ダダダダ

ゆみ「ちょ、ちょっと待て! ……あのバカ」ガクッ

智美「いやーあれは酷いなー」ワハハ

ゆみ「か、蒲原!? いつからいたんだ!?」

桃子「私たちもいるっすよー。個人戦の話してる辺りからいたっす!」

佳織「ど、どうも」

睦月「まさかあんな話になるとは……」

ゆみ「」

睦月「それで返事はどうするんでしょう」ワクワク

ゆみ「……しようとしたらいなくなっただろう」カアァァ

桃子「全国行くなんて無茶苦茶な条件つけて何考えてるんすかね」

智美「ゆみちんどうするつもりなんだー?」

ゆみ「……まあ京太郎くんがああいうことをしてきたんだしな。私にも考えがある」

桃子「この状態でもすぐ対応するのはさすが先輩っすねー」

ゆみ「この状態……?」

桃子「さっきから顔真っ赤っすよ」

ゆみ「っ!?」バッ

睦月「今更隠さなくてもいいじゃないですか」クスッ

智美「ゆみちんは可愛いなー」

ゆみ「あぅ……」カアァァ

智美「それじゃゆみちんからかうのも程々にして帰るかー」ワハハ

佳織「明日の個人戦も頑張ろうね」

睦月「加治木先輩、全国行ってくださいね」

桃子「私も狙うっすよ! 2人で行くっす!」

ゆみ「ああ、目指すよ。だから少し先に行っていてくれ……」カアァァ

桃子「了解っすー」パタパタ

智美「ゆみちん、意気込みはどんな感じだー?」

ゆみ「そうだな……一緒にいたいと思うことがダメなんじゃない。一緒にいたいと思う強さが足りなかったんだというところだな」

智美「何の話だー?」

ゆみ「精神論だよ。気の持ちようだ。……明日は必ず勝つ」ゴッ

智美「……燃え尽きてないかと思ったけど心配はいらなそうだなー。じゃあ帰るかー」

ゆみ「ああ」

---------------------------------------

和「こんなところであんな告白するなんて破廉恥です!」カアァァ

優希「台詞も凄かったなー。周りがざわついてるじぇ」

咲「……」

優希「でも私は嫌いじゃないな。あれくらい情熱的に告白されたらグラッとくるじぇ」

和「ゆーき、またそんな……」

優希「のどちゃんは嫌か」

和「嫌ですよ! ……まあ気になっている相手からなら、嬉しくないかというとそんなこともないでしょうけど……」

優希「のどちゃんも好きだなー」

和「違います! ……宮永さん? どうかしました?」

咲「えっ!? ううん、何でもないよ? 京ちゃんバカだよね。あんなところで告白なんて……しかもあなたが欲しい!! って」

咲「あんな、あんな恥ずかしい台詞をこんなに人の多い所で言えるくらいあの人のことが好きなのかな。でもいくら好きだからってこんなとこで……」

和「……」

優希「……」

咲「ほら、2人とも何か言ってあげてよ。京ちゃんからかうのに使いたいんだ。……あ、話したことないから言いづらいよね! 大丈夫、名前出したりしないから――」

優希「咲ちゃん」

咲「え?」

優希「目の下、触ってみて」

咲「なんで急に……あれ、なんだろこれ。なんで濡れてるんだろ」ポロポロ

和「宮永さん、いいんですよ。優勝しておめでたいときですけど、辛かったら泣いていいんです」ギュッ

咲「……う、うわあっぁっぁぁぁぁあ!!」

咲「京ちゃん、私のことずっと気にかけてくれてて、優しくて、私が中々友達作れなかったときも……えぐっ、京ちゃんが助けてくれたの!!」ヒック

咲「違う高校に行ってからも毎日メールしてくれて、私の愚痴とか聞いてくれて、相談に乗ってくれて……!」

咲「ずっと、ずっと京ちゃんのこと大切な幼馴染だって思ってて……! えぐっ、それだけだと思ってたのに、告白してるとこなんて見ちゃった……」エグッ

和「宮永さん……」ポンポン

咲「京ちゃんが私のそばからいなくなっちゃうんだって思ったら、胸が痛いんだ。 ……なんで気づかなかったのかな」グスッ

咲「私、こんなに京ちゃんのこと好きだったんだ……今更気付いても、もう遅いのに」ヒック

優希「近すぎて気づかないってこともあるじぇ……慰めにもならないけど」ナデナデ

咲「うん……」ヒック

和「気の済むまで泣いていていいですよ。落ち着くまで待っていますから」ポンポン

咲「原村さん、ありがとう……もう少しだけお願い。ちゃんと落ち着くから……」

咲「うあぁぁっぁ……、うわああぁぁぁっぁあぁん……!! うわあぁぁっぁぁぁ――」

…………

………

……

――京太郎自室――

京太郎「明日はついに俺も試合に出るのか……緊張するな」

京太郎「あ、そうだ咲にメール送ってなかった。こういうときはいつもあいつから来るのに珍しいな」

京太郎『今日はおめでとう、咲ってあんなに強かったんだな。知らなかった。全国では俺たちの分も頑張ってこいよ』

京太郎『それと明日の個人戦は俺も出るから応援頼んだぞ! 咲のことも先輩たちの次に応援してやるから!(笑)』

京太郎「こんなもんでいいか。送信っと」


――2時間後――


京太郎「……返信来ないな。珍しいってかこんなことなかったのに」

京太郎「勝ったからって気を使ってんのかな。んなこと気にするなよなあ。まあ優しいのは咲のいいとこだけど」

京太郎『勝ったからって気を使ってんのか? もし気を使ってんならそんなこと全然気にしなくていいぞ』

京太郎『明日はお互い頑張ろうな。お前みたいに俺も全国行ってやるぜ!!』

京太郎「……返信は来ないだろうな。明日もあるしもう寝よう」

京太郎「しかしゆみ先輩に言ったこと我ながら支離滅裂だったな……まあ勝てば問題ないんだけどなあ」ハァ

京太郎「ゆみ先輩、俺頑張ります……!」

今回は以上です。試合が原作通りなのはご愛嬌。
次は個人戦ですね。一週間以内に投下できるよう頑張ります。

おつ
>佳織「でもみんな参考になりますねー。なんでそう切ってるのか全然わからないや」
全然参考になってなくてワロタ

>>541
見直し漏れてた!
「みんな凄いですねー」とかに脳内変換しといてください……

佳織のは一応考えて書いたけど言われればおかしいかなと思った感じですねー。
それと>>535で個人戦が明日みたいなこと書いてましたが来週でした。
よく考えたら平日にやるわけないですよね。適当に脳内変換お願いします。
一週間以内は無理でしたが何とか二週間はかからなかった! では投下します。

――控え室――

京太郎「ここに来るのも1週間ぶりかー。やっぱ移動も疲れますね」

佳織「私たちの住んでるところからだと遠いよね」

京太郎「ほんとですよね。明日も来るんだから泊まらせてくれればいいのに」

桃子「こんな狭い部屋で女子5人とお泊りなんて何するつもりっすか!」

京太郎「何もしねえよ!! というかなんでここで泊まるんだよ!」

智美「ウチの部じゃホテルとかは難しいなー」ワハハ

睦月「風越はホテルで泊まってるみたいですね。羨ましい……」

京太郎「やりくりすればなんとかなったりしませんかね。その……ゆみ先輩」カアァァ

ゆみ「あ、ああ。で、出来なくはないだろうが……」カアァァ

京太郎「?」

ゆみ「その、全国へ行く……んだろう? ただでさえ部費が足りていないのに、ここで使ってしまってはな」

京太郎「っ! そ、そうですね。ちゃんと考えてませんでした……」

智美「まだそれやってるのかー?」

桃子「まあ最初に比べたら良くなったじゃないっすか」

佳織「目を合わせる度顔真っ赤にしてたね」

睦月「その割にお互いがお互いを見ようとするんだよね」

智美「さすがの私もどうしてやろうかと思ったなー」

ゆみ「うぅ……」カアァァ

京太郎「あなたたちがからかうからでしょ!? っていうかなんでみんな知ってたんですか!」

桃子「そんなのあんなところで大声で告白すれば当然じゃないっすか」

京太郎「あんなふうに送り出しといてついてくるか普通!?」

智美「ゆみちんと京太郎を2人きりで遊びに行かせたとき、私たちが何をしたか忘れたようだなー」ワハハ

京太郎「開き直らないでください!!」

睦月「まあでも、ついていかなくてもその内知ることにはなってたと思うよ?」

ゆみ・京太郎「……え?」

桃子「いや当たり前じゃないっすか。あんな人の多い所であんな告白したら噂になるに決まってるっす」

佳織「あなたが欲しいって告白は中々ないよね。聞いてて恥ずかしくなったよ」アハハ

京太郎「……で、でももうみんな忘れてますよね!?」

ゆみ「そ、そうだな。一週間も経っているのだし……」

智美「それは難しいかもなー。鶴賀の大将が金髪に告白されてたってちょっとインターネットで話題になってるぞ」

桃子「さすがに一時期程じゃないっすけど、グラマスって人がまだまだ飽きそうになくて目立ってるっすね」

佳織「私も見たけど執念みたいなのを感じたよ……」

睦月「ちょっと怖かったね。文字だけなのに……」

京太郎「お、俺そんなの知らなかったんですけど!?」

ゆみ「私もだ。なんで教えてくれなかったんだ」

智美「いやー大会前に見せるにはちょっと怖くてなー」

京太郎「じゃあ終わってからにしてくださいよ!?」

桃子「今からなら見ないだろうからいいかなーと思ったっす」テヘペロ

京太郎「見なくても気になるんだよ!」

智美「まあ別にテレビで映ったとかじゃないし、知らない人は知らないから大丈夫だろー」ワハハ

桃子「ちょっとからかっただけっすよ。気にするほどじゃないっす」

ゆみ「それならいいんだが……」

京太郎「そうですね……」

京太郎「初めての公式試合……というか部員以外の人と戦うの初めてだ。緊張するなあ」

桃子「ネトマでいくらでもやってるじゃないっすか」

京太郎「そりゃそうだけど、現実にやるとやっぱり緊張するよ」

桃子「ネトマでやってるんだから大丈夫と思えってことっすよ。緊張してもいいことないんだから、解消しようと思わないとダメっす」

京太郎「あ、なるほど。発想の転換だな」

睦月「個人戦じゃ仲間がフォローしてくれないからね。私も個人戦が先だったらと思うと……うぅ、気分が」ヨロッ

ゆみ「想像でダメージを受けるな」

智美「来年までには直すんだぞー」ワハハ

佳織「でもそっか。他の人たちはほとんど団体戦で慣れてるけど、京太郎くんは個人戦が初めてなんだね」

桃子「そう考えると少し不利かもしれないっすねー。まあ普通1試合くらいで緊張も解けるとは思うっすけど」

智美「逆に調子崩して引きずることもあるかもなー」

京太郎「縁起悪いこと言わないでくださいよ……」

智美「そこで私から提案だ」

京太郎「はい?」

智美「ゆみちん、京太郎の緊張をほぐす一言をどうぞ!」

ゆみ「なっ!?」

京太郎「えっ!?」

睦月「」ドキドキ

佳織「」ドキドキ

桃子「ドキドキ」

京太郎「声に出すのやめい!」

ゆみ「そ、その。京太郎くん」

京太郎「は、はい!」ビクッ

ゆみ「団体戦の後に君が言ってくれたこと、凄く嬉しかった」

ゆみ「団体戦で感じた他校の高い壁。それを私なら乗り越えられると言ってくれて、たとえお世辞でも勇気づけられた」

京太郎「それはお世辞なんかじゃ――」

ゆみ「自分の実力ならよくわかっているよ。私は個人戦で1位にはなれない。だから京太郎くんが本気で言っていても、それはお世辞だ」

京太郎「……」

ゆみ「……私が一番嬉しかったのは君が全国を目指すといってくれたことだよ」

京太郎「え?」

ゆみ「私は長野で1番強いなんて思っていない。けれど、それでも京太郎くんに比べれば、全国に出られる可能性は遥かに高いだろう」

京太郎「あ、あはは……」

ゆみ「……き、君は私に、その、こ、告白、をしただろう?」カアァァ

京太郎「は、はい」カアァァ

ゆみ「そ、それがどれほど決意が必要か私も分かるつもりだし、きっと返事もすぐ聞きたいと思う」

ゆみ「そんな大事なことを全国に出ることを条件にした。……君が部で過ごす時間をそんなに大切に思っていてくれたことが、本当に、本当に嬉しい」

ゆみ「私も君も、けして長野で1番強い雀士ではない。だけど、麻雀は強い者が必ず勝つものじゃない」

ゆみ「君ともっと長い時間を過ごしたいのは私も同じだ。一緒に全国へ行こう。私と、君で」

京太郎「ゆ、ゆみ先輩……」プルプル

ゆみ「……」

京太郎「……」プルプル

ゆみ「……? どうかしたか?」

京太郎「い、いえ、その。必死で耐えてます」

ゆみ「何をだ?」

京太郎「その、えーと……やっぱりやめときます」

ゆみ「気になるじゃないか」

智美「察してやるんだ。多分ゆみちんを抱き締めたいんだと思うぞ?」

ゆみ「えっ!?」

京太郎「ちょ、ちょっと部長!!」

桃子「気持ちはわかるっす! 私は今みたいなこと言われたら迷わず抱きつくっすよー!」

ゆみ「そ、そういうものなのか?」

睦月「そういうものというか、さっきのはそうしたくなる台詞だったかなと……」

佳織「私は嬉しくて逆に動けなくなっちゃいそうです」アハハ

智美「全然一言じゃなかったしなー」ワハハ

ゆみ「……」

京太郎「お、俺は嬉しかったですよ! やる気もめちゃくちゃ出ましたし! 緊張してる場合じゃないなって感じで……」

ゆみ「……いいぞ?」

京太郎「……え?」

ゆみ「そ、それが君のためになるのなら、私のことを、だ、抱き締めてもいい」カアァァ

京太郎「」

ゆみ「た、ただ! あ、あんまり強くはしないでくれ。痛いのは……いや、君ならいいか」

ゆみ「……私のことを好きにしてくれ、京太郎くん」ウワメヅカイ

京太郎「……う」プルプル

ゆみ「うん?」

京太郎「うおおおおおぉぉぉぉ!!」ダダダダッ

ゆみ「あっ、おい! ……行ってしまったか」

桃子「行ってしまったかじゃないっすよ!! いきなり何してるんすか!?」

ゆみ「いや、見ての通りだが」

佳織「そういうことじゃないと思います……」

睦月「なんであんなことを?」

智美「さすがにちょっと京太郎がかわいそうだぞー」

桃子「そうっすよ! 確かにヘタレとか思ったっすけど!」

睦月「そこは真面目って言ってあげようよ」

ゆみ「……もちろんわかっているよ。だからこそだ」

佳織「どういう意味ですか?」

ゆみ「京太郎くんが全国へ行けなかったら返事をしない。私はあれを厳密に守る」

桃子「いやもうほとんどしてるようなもんだと思うっすけど……」

ゆみ「……付き合うかどうかはまた別だ」プイッ

ゆみ「ともかく、だから私は京太郎くんに抱き締めてもいいと言ったんだ」

ゆみ「……私自身も出来ないと思うと寂しいしな」ボソッ

智美「そ、そこまで本気だったのか?」

睦月「正直なんだかんだで負けても付き合うんだと思っていたんですけど……」

ゆみ「それは京太郎くんにも失礼だろう」

桃子「それはそうかもしれないっすけど、全国っすよ? しかもあの怪物がいる長野男子個人戦っすよ?」

ゆみ「だからこそ可能性も出てくるだろう? 普通なら可能性はないと言っていいくらいだ」

桃子「それはそうっすけど、モノは言いようって感じで……」

佳織「でも信頼してるってカッコいいですね! 憧れます!」

ゆみ「ああ……だ、大丈夫かな?」ウルウル

桃子「そこでヘタレるんすか!?」

ゆみ「い、いや。心配される分にはいいんだが期待されると急に不安に……」

智美「そういえば前に考えがあるって言ってたなー。それはなんなんだ?」

ゆみ「うん? それは……まあ追々な」

桃子「むぅ、気になるっすね」

ゆみ「大したことじゃないから気にするな」

---------------------------------------

京太郎「ああもう、ゆみ先輩何考えてんだ! 試合前だってのに心臓が!」ドクドクドクドク

京太郎「……まあ緊張は吹っ飛んだな。さすがに戻れないしこのまま別館の試合会場に行くか」

京太郎「でも惜しいことしたかなあ。ゆみ先輩があんなこというなんて夢みたいなこと、もうねーだろ絶対……」

京太郎「はぁ……あれ、おーい咲ー!」ブンブン

咲「」ビクッ

京太郎「また迷ったのかー!? まだ時間あるし控え室に連れてってやるぞー!」

咲「……っ!」タッタッタッ

京太郎「あ、おーい! ……聞こえなかった……にしちゃ不自然だよな」

京太郎「まさかまだ気にしてんのかな。先週からメールも全然してこねえし……いい加減普通に話して欲しいんだけどなあ」


ピンポンパンポーン
「男子個人戦、予選が始まります。出場選手の方は対局室へ集合してください」


京太郎「ついにか……」ブルッ

京太郎「うわ、震えてきた。……ゆみ先輩にあんなこと言って予選落ちなんてシャレにならないしな。やってやる!」

京太郎「おお、男子ばっかりだ。鶴賀は女子が多いからこの感じ久々だなー」

京太郎「……しかしなんか視線を感じるな。噂されてるような……」


「おい、あいつだろ? 先週ロビーで告ったってやつ」

「あんな話題にされてるのに普通に出てくるなんてすげえな。俺はとても来れないわ……」

「あなたが欲しいってそもそも告白なのか?」

「その告白でもギリ許される顔だな……クソッ、許せねえ!」


京太郎「な、なんかここにいるとマズイ気がする」ブルッ

京太郎「さっさと対局室に行くか……」



京太郎「ふう、対局室の辺りはさすがに静かだな……そういえば対戦相手見てなかったっけ。誰だろ?」テクテク

モブA「」ガタガタガタガタ

京太郎「あれ、すげえ震えてる。緊張してるの……」

アカギ「ククク……」

傀「どうも」

京太郎「」

アカギ「どうした? 席はそこだ」

京太郎(神様。いくらなんでも、初戦からこれはあんまりではないでしょうか……)

…………

………

……

京太郎「戻りましたー!!」

ゆみ「……お、お疲れ様。京太郎くん」カアァァ

京太郎「え、あ、ありがとうございます」カアァァ

ゆみ「……見ていたよ。予選突破は出来ると思っていたが、それでもよくやった。おめでとう」

京太郎「は、はい!」

睦月「……もういいと思いますか?」ヒソヒソ

智美「もうちょっと待ったほうがいいと思うぞー」ヒソヒソ

京太郎「聞こえてます! いつでもいいですから!!」

睦月「うむ、お疲れ様。予選突破おめでとう」

佳織「凄いよ京太郎くん!」

桃子「最初の組み合わせ見たときはもうダメかと思ったっすよ。2人で牽制しあってくれてよかったっすね」

京太郎「みんな何事もなかったかのように……! まあそうだなー。最初見たときは生きた心地がしなかったぜ」

ゆみ「あの2人が揃った卓は散々に削られるか、牽制しあって膠着状態になるかどちらかだからな。日頃の行いがよかったんだよ」

京太郎「ほんと最初は生きて帰れるかどうかの心配してましたからね……」

睦月「さっきからそんな大袈裟だよ」アハハ

ゆみ「いや、天江衣かそれ以上が2人と考えるとあながち大袈裟では……」

京太郎「ほんとですよ。なんなんですかあのプレッシャー!? 物理的な圧力を感じましたよ!!」

ゆみ「それが魔物と呼ばれる雀士なんだろうな。私も天江や宮永からそれを感じたよ」

京太郎「咲もそうなんですか……」

ゆみ「天江に勝ったのは伊達ではないさ」

智美「初めての試合の感想はどうだー?」

京太郎「そうですね……意外とやれる! ってのとまだまだだ……ってのが半々くらいです」

桃子「半々とは大きく出たっすね!」

京太郎「1ヶ月必死でやったし、ゆみ先輩にも鍛えられたからこれくらいはな」

京太郎「……ただ俺より強い人もいくらでもいるんだってのも実感したよ。わかってはいたけど化物2人ほどじゃなくても俺より強い人たくさんいるんだなあ……」

桃子「当たり前っすよ。上には上がいるっす。まして京太郎は初めて1ヶ月の初心者じゃないっすか」

京太郎「そりゃそうだけど、俺は今ここで勝たないと……!」

桃子「勝つつもりではいるんすね。よかったっす」

智美「うんうん、弱気になってないのはいいと思うぞ。ゆみちんも全国に行かないと返事しないって宣言してたしなー」ワハハ

ゆみ「……ああ、それについては考えを変えるつもりはないよ」

京太郎「覚悟はしてます。自分で言ったことですから」

ゆみ「そうか。……それじゃあ次は私たちの応援を頼んだぞ」

京太郎「はい、先輩たちに負けないように5人分応援しますよ!」

智美「素直にゆみちんの応援を一番頑張るって言ってもいいんだぞー」ワハハ

桃子「所詮友情なんてこんなもんっすか」シクシク

京太郎「何も言ってねえよ!」

佳織「まあまあ、私たちのことも加治木先輩の10分の1くらいは応援してね」アハハ

睦月「同じくらいとは言わないからよろしくね」

京太郎「先輩たちまで! ……まあその、8割くらいで何とか」ボソッ

ゆみ「バ、バカっ。う、嬉しくないとは言わないがみんな同じように応援を――」カアァァ

桃子「あ、いやそういうのいいっす。ほんとに」

智美「惚気に付き合わせるのはやめて欲しいなー」

ゆみ「ああもうっ! 京太郎くん、君がどうにか……」


ピンポンパンポーン
「女子個人戦、予選が始まります。出場選手の方は対局室へ集合してください」


佳織「じゃ、じゃあ行きましょうか」

睦月「うむ、ここにいるといつまでも巻き込まれそうだしね」

ゆみ「ま、待て。このまま行かせては……!」

桃子「ほらほら、遅れるっすよ」

智美「行くぞー」グイッ

ゆみ「こ、こら。引っ張るなー!」ズルズル


京太郎「……」

京太郎「よし、応援頑張るぞ!」

…………

………

……

睦月「うぅ、負けてしまった……」

佳織「私も。……技術も経験も足りてないのはわかっていたからしょうがないけど、でも悔しいなあ」

睦月「実力がまだまだ足りてなかったね……」

京太郎「でも佳織先輩が国士無双和了ったときは盛り上がってましたよ! 睦月先輩も最後まで諦めてなくてカッコ良かったです」

睦月「ありがとう、京太郎くん。でも私たちより先輩たちにおめでとうって言ってあげて」

京太郎「……はい! 部長、モモ決勝進出おめでとうございます!!」

智美「いやーなんとか残れてよかった」ワハハ

桃子「東風戦はつらいっすね。中々点を伸ばせなかったっす」

京太郎「ステルスが長く使える東南戦のほうがやっぱり好きなのか」

桃子「当たり前じゃないっすか! 明日が楽しみっす。言っとくけど私も全国狙ってるっすよ?」

京太郎「知ってるよ。明日も頑張れ」

桃子「もちろんっす!」

京太郎「それで……えっと、ゆみ先輩。決勝進出おめでとうございます。予選4位ですし全国まで後一歩ですね!」

ゆみ「ああ、ありがとう。……しかし試合開始前は凄い視線を浴びせられたよ」ハァ

京太郎「ゆみ先輩もですか。俺も見られましたよ。というか多分睨まれてたに近いですね」

ゆみ「うん、やはり一週間程度では噂は収まらないんだな……」

京太郎「その、俺のせいで、すみませんでした」

ゆみ「……君はしなければよかったと思っているのか?」

京太郎「そんなことないです! 俺はしたことも言ったことも後悔してません! ただ、それでゆみ先輩に迷惑をかけてるならやらなければよかったと……」

ゆみ「私は迷惑だなんて思っていないよ。あんな場所でしたのはまああまりいいことではないだろうが。だから気にするな」

京太郎「ゆみ先輩……はい!」

ゆみ「そんなことより、ちゃんと応援してくれていたか?」コホン

京太郎「もちろんですよ! 熱くなりすぎってくらい応援してました」

京太郎「東風戦なんて短い間にも相手の癖を見抜いて即対応して……そういうときは見惚れて応援できてなかったですね。カッコ良かったです」

ゆみ「……ありがとう。4位とはいえ全国に行くには届いていない。少し不安になっていたが、君がそう思ってくれているなら頑張らないとな」フフッ

京太郎「3位の風越のキャプテンは恐ろしく安定してましたね。でも2位の片岡は団体戦見る限り、多分東場で異常に強いタイプですよ」

ゆみ「そうだな。風越の福路を上回るのは難しいと思わされたが、片岡は東場で恐ろしく強い分、東南戦になれば付け入る隙はありそうだ」

ゆみ「……しかし、その東場で無類の強さを誇る片岡ですら2位とはな」

京太郎「歴代最高得点塗り替えたのに2位ですからね。……咲、そんなに強かったなんて」

ゆみ「私もほとんど何も出来なかったよ。せっかくの親番も嶺上開花の親被りが怖くて他家への差し込みに使ってしまった」

京太郎「あのときの咲は三倍満くらい狙える手牌だったんで正解だったと思います」

ゆみ「そうか……。宮永はあまりにも圧倒的だ。彼女は間違いなく1位になる。全国へは実質2席を奪い合うことになりそうだよ」

京太郎「一緒に頑張りましょう。大丈夫、俺は1席ですからそれに比べれば!」

ゆみ「……フフッ、そうだな。君に比べればチャンスは2倍か」

京太郎「そうですよ! ……俺は明日どう戦えばいいんだろう」ガクッ

ゆみ「それについては少し考えが――」

智美「いいところ悪いけど、電車の時間がまずいからそろそろ帰るぞー」

桃子「2人の時間もいいっすけど、電車の時間もちゃんと考えなきゃダメっすよー!」

京太郎「ふ、ふた……! 上手いこと言ったつもりか!?」

睦月「それは置いといて時間がちょっとまずいから」

佳織「次の電車に乗れないと帰るのが2時間くらい遅くなっちゃうよ」アセアセ

京太郎「も、もうそんな時間ですか? ゆみ先輩、すみません話はまた後にしましょう」

ゆみ「……そうだな。私も気づかなかったしまた後で」

智美「それじゃ早く帰るぞー」ワハハ

――帰り道――

京太郎「今日はお疲れ様でした」

ゆみ「ああ、君もな」

京太郎「電車間に合ってよかったですね。遅くなると明日に疲れが残っちゃいますし」

ゆみ「あんなに走ったのは久しぶりだったよ。……走って疲れるのと遅く帰って疲れるのではどちらのほうがいいんだろうな」

京太郎「どうなんでしょう。俺は精神的に疲れるよりは走ったほうがいいですね」

京太郎「それでその……帰りがけに言いかけたことってなんですか?」

ゆみ「ああ、君の打ち方についての話だよ」

京太郎「俺の打ち方ですか? まさかどこかおかしかったり……」ズーン

ゆみ「ああいや、今のところ京太郎くんの打ち方に問題はないよ。経験や技術はまだ足りていないだろうが、少なくとも私の教えた通りに打っている」

ゆみ「将来的にもそれでは困るが、まあ今の時点では何の問題もないし、よくやっている」

京太郎「それじゃあ一体何についてなんですか?」

ゆみ「……君は全国へ行きたいんだろう?」

京太郎「えっ……はい! もちろんです。ゆみ先輩と約束してますし!」

ゆみ(あの一方的な言い捨てを約束と言うか……まあ、私も京太郎くんの言ったとおりにするつもりだが、言われた私が一体どう感じたと思って……!)ゴゴゴ

京太郎「え、えっと、ゆみ先輩?」ビクッ

ゆみ「あ、ああ。すまない。……君も今日戦ってわかったと思うが、現時点の君では全国へ行くには力不足だ」

ゆみ「たとえあの2人がいなかったとしても、君が全国へ行くのは極めて難しいだろうと私は思う」

京太郎「……はい。俺もそう思ってます」

ゆみ「京太郎くんの今の実力では届かない。それなら実力以外のものを使えばいい」

京太郎「え?」

ゆみ「君が前に言っていただろう? この牌は切れるとかこの牌を切ればマズイとかがなんとなくわかると。今日はどうだった?」

京太郎「確かに今日も感じましたけど……でも部でやっても全然勝てなかったじゃないですか」

ゆみ(ふむ、技術ではなかったか……羨ましいな)

京太郎「ゆみ先輩?」

ゆみ「ああ、すまん。私が言いたいのは感覚に頼れということだよ。大負けする可能性が高いが、しかし全国へ行ける可能性も間違いなく高くなる」

京太郎「それはそうかも知れませんけど……」

ゆみ「まあ1%が5%になる程度だろうが」

京太郎「そんなもんですか」ガクッ

ゆみ「そんなものだよ。……それでも君が全国へ行きたいのなら、これが最良だと思う」

京太郎「上手くいくかどうか博打ですね……」

ゆみ「普通に打っても全国へ行ける可能性は低いのだから、どちらも博打に変わりないさ」

ゆみ「要は君が何を目指すかだよ。少しでも高い順位を目指すのなら今のやり方を続けるべきだし、全国を目指すのなら感覚を頼りにしたほうがいい」

京太郎「なるほど……。確かに今までのやり方よりよさそうですね」

ゆみ「ああ……私だって君には全国へ行って欲しいんだ」

京太郎「はいっ! 朝も言ってくれましたしね!」

ゆみ「うるさい」プイッ

京太郎「な、なんか地雷踏みました!?」

ゆみ(2人きりで言っているんだから、告白の返事をしたいという意味だと分かれ……というのは私のわがままか)ハァ

ゆみ「君が全国へ行けたら教えよう」

京太郎「ハードル高いですね」

ゆみ「わからない君が悪い」

京太郎「えぇー」

ゆみ「……泣いても笑っても明日で全てが決まる。私も、君も」

京太郎「はい」

ゆみ「どうなるかわからないが、悔いのないよう頑張ろう」

京太郎「……なら俺は勝たないとダメですね」

ゆみ「何?」

京太郎「昨日も言ったじゃないですか! ゆみ先輩といられる時間が短くなるなんて嫌です。そうなったらどれだけ健闘したって悔いは残ります」

ゆみ「……」ポカーン

京太郎「……あれ、またなんか変なこと言いました!?」アセアセ

ゆみ「いや、君はそういうやつだったな」フフッ

ゆみ「……実はさっき走って少し疲れているんだ。少し腕を貸してくれ」

京太郎「はい? 肩じゃなくてですか?」

ゆみ「んっ」ウデクミ

京太郎「ちょ、ゆ、ゆみ先輩!?」アセアセ

ゆみ「疲れているからあまり騒がないでくれると嬉しい」

京太郎「あ、う……」カアァァ

ゆみ「嬉しかったよ。京太郎くん」ボソッ

京太郎「うぅ……え? すみません、今ちょっとよく聞ける状態じゃなくて」

ゆみ「何でもない。明日期待しているよ」ギュッ

京太郎「……期待に応えられるよう頑張ります」

今日は以上です。いよいよ個人戦決勝ですねー。
残り数回の予定ですので7月中には完結できるよう頑張ります。

7月中に終わらせると言ってこの体たらく
ちょっと忙しくてなかなか書く時間が取れませんでした
ほんとは女子の方まで終わらせるつもりだったんですが、長くなったのといつになるかわからないので男子だけ先に
それでは投下します

京太郎「……決勝リーグか。ここまで来れるなんて思わなかったな」ブルッ

桃子「何緊張してるんすか。昨日勝ち抜いたんだから自信持つっすよ」

京太郎「いや、昨日は初めての試合で緊張したけど、今日は勝たなきゃってプレッシャーが……」

桃子「負けて元々じゃないっすか。当たって砕けろっすよ!」

京太郎「負けたら砕けちゃダメなところもまで砕けるんだよ!」

智美「ハートブレイクだなー」ワハハ

京太郎「多分物理的に砕けますね」

佳織「死んじゃうよ!?」

京太郎「それくらいの勢いで砕けそうです……」

桃子「全然物理的じゃないっすね。……そんな情けない京太郎に代わって、私が負けたときの案を考えてあげたっすよ!」

京太郎「不吉なこというなよ……で、どんな案だ!?」ガタッ

睦月「食いつきすぎじゃない!?」

佳織「そんなに必死に……切実なんだね」

京太郎「今の俺に見た目を気にする余裕なんてないんですよ! モモ、さあ早く!」

桃子「イラッと来るっすねー。まあ教えてあげるっす」

桃子「京太郎は全国へ行ったら返事をくださいと言ったっすけど、いつとは言ってないっす。つまり今回負けても次を目指せばいいんすよ!」

京太郎「……」

睦月「さ、さすがにそれは……」

京太郎「……アリだな」

佳織「ありなの!? 次は秋だよ!?」

京太郎「い、いや。だって勝てるかわからないっていうか昨日戦った感じだとむしろ……」

智美「まあアリかナシか以前に、それはゆみちんが待っててくれないとダメなんだけどなー」ワハハ

京太郎「あっ」

智美「さっきから全然喋ってないけど、ゆみちん的にはどうなんだー?」

ゆみ「ん? ああ。そ、そうだな……」

ゆみ「ま、待つ待たない以前に負けることを前提に考えるのは感心しないな。うん」コホン

智美(ていよく逃げたなー)ワハハ

京太郎「ですよねー! いやー俺もそんなのいいって言ったんですけどモモが無理矢理」

桃子「ゆみ先輩がいるところで話したのにそういうこと言えるのは尊敬するっすよ」

智美「ところでゆみちん静かだったのはなんでだー?」

ゆみ「まあ……その、緊張してな」

睦月「団体戦のときも昨日も全然そんな風に見えませんでしたけど、先輩でも今日は緊張するんですね」

佳織「大丈夫ですよ! 加治木先輩なら勝ち抜けます!」

ゆみ「いやそれで緊張しているわけじゃ……」ハッ

ゆみ「そ、そうだな。ありがとう、落ち着いてきたよ」

桃子「?」

智美「……? まあいいかー」

ピンポンパンポーン
「男子個人戦、決勝が始まります。出場選手の方は対局室へ集合してください」


京太郎「もう始まるのか……」

桃子「暗いっすねー。もっとやってやる! みたいな意気込みで行くっすよ」

京太郎「や、やるぞー」

桃子「だからテンション低いっすよ」

智美「ゆみちん、出番だぞー」

ゆみ「ま、また私か!?」

桃子「それはまあゆみ先輩しかいないっすよ」

ゆみ「そ、そうなのか……それじゃあ京太郎くん」

京太郎「は、はい」

ゆみ「言うべきことは昨日言ったから、今日は一言だけ。……勝ってこい」

京太郎「……はい!!」

…………

………

……

アカギ「ロン、12000だ。トビだな」

モブ「は、はい……」

京太郎(……よし! 最終戦前の山場を何とかしのいだ!!)グッ

京太郎(俺より順位が上だった人が飛んだから、今大体6,7位くらいか……最後1位になればまだ可能性も!)

京太郎(しかし信じられないくらい絶好調だな。部活じゃあんな酷かったのに……ゆみ先輩の返事聞きたいから、実力以上の力が出てるのかな)ハハ

アカギ「……おい、そこの金髪」

京太郎「は、はい!?」ビクッ

アカギ「昨日と打ち方が違うな……今は上手くいっているようだが、どんな武器を持ってようが何も考えずに打ってると怪我するぜ」

京太郎「な、なんでそんなこと……!?」

アカギ「まるで別人だ。誰だって分かる」

京太郎「……俺は今勝たないとダメなんです。だから、変えるつもりはありません」

アカギ「ククク……人の話を聞くのは苦手か? ……まあいい。残り1局、頑張りな」

京太郎「は、はい……あの、なんでいきなり俺に声かけたんですか?」

アカギ「飛ばそうと目を付けた相手が、昨日と全く違う打ち方をしていたから興味が湧いた。それだけだ」

京太郎(俺飛ばされるところだったのか……)ブルブル

アカギ「せいぜい楽しませてくれよ」スタスタ

京太郎「……あー緊張したぁっ!」

京太郎「やっぱ今の打ち方危ねえのかな……まあ、変えてなかったら飛ばされてたみたいだけど」

京太郎(どっちにしろ俺に出来るのは全力で打つだけだ。次で決まるんだ。やってやる!)

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ゆみ「」ジッ

智美「いくら見てても最終戦はまだ始まらないぞー」ワハハ

桃子「京太郎めちゃくちゃ調子いいっすねー」

睦月「うむ、非効率な打牌もあるけど、それがことごとくいい結果になっている」

佳織「相手の当たり牌を抑えててカッコいいね」

ゆみ「……とはいえあまりにも上手く行きすぎだ。最後までこの調子で行ってくれればいいが……」

桃子「いや、最後までこの調子じゃダメっすよ!」

智美「そうだなー。最後はもっと調子を上げないと全国へは行けないなー」

睦月「今が6位ですか……」

佳織「初めて1ヶ月の初心者で6位なんて凄いなあ」

桃子「確かに凄いっすけど、全国へは届いてないっすから……」

ゆみ「……運良くというべきか、決勝の同卓に3位の選手がいる。そして例年通りトップの2人が図抜けていてその下は接戦だ」

智美「ここで1位が取れれば3位になれる可能性はあるなー」

睦月「まさに天王山ですね」

桃子「京太郎は乗り越えられるっすかね?」

佳織「きっと大丈夫だよ。応援しよう」

アナ『全国高校生麻雀大会長野県予選、男子個人戦決勝最終局。いよいよ始まります!』


ゆみ「ついに始まるか……」

桃子「京太郎は……お、映ったっすね」


アナ『男子個人戦、全国への切符は3枚。そのうち2枚はほぼ決まっているので、残り1枚を争う形になっています』

靖子『現在3位がいるのがこの卓か』

アナ『はい。それに同じ卓には現在6位の須賀選手もいますね』

靖子『須賀は……鶴賀の選手か』


智美「おお、京太郎の名前が出たぞ」

睦月「注目されてるんですね」

智美「全国3位ってのはどの相手だー?」

睦月「京太郎くんの下家です。上家と対面は両方共10位中盤くらいみたいです」

佳織「3位って強いんですか?」

桃子「少なくとも京太郎よりはずっと強いっすね」

ゆみ「だが最低でも下家に勝たないと全国へは行けない……厳しいな」

アナ『女子の決勝に残った高校で、男子でも決勝に残っているのは須賀選手だけのようです』

靖子『彼を褒めるべきなのか他の高校の男子が情けないと思うべきなのか……』

アナ『ちなみに風越は女子校ですし、龍門渕と清澄は共学ですがそもそも男子麻雀部がありません。鶴賀も男子は彼1人のようですね』

靖子『……凄いことは凄いんだが、何かこう……』

アナ『男子と女子の強豪はあまり被っていないようですね』

靖子『身も蓋もないことをいうな。というかなぜそんな話を振った』

アナ『ダークホースと騒がれた鶴賀ですが、今後男女共に長野の強豪となることは出来るでしょうか?』

靖子『完全に無視か……まあ数人が強いくらいでは継続して強くなるというのは難しい。実績を残さなければ厳しいだろうな』

アナ『なるほど。6位とはいえ3位までは接戦です。全国まで行けば十分な実績と言えますね』

靖子『そうだな。厳しいことに変わりはないが、可能性はある』

アナ『そういった意味でもこの試合は注目ですね。では次の卓を見て行きましょう』


ゆみ「何だったんだこの解説……いや解説というか……なんだ?」

桃子「まあ注目されてるってことっすよ」

智美「ウチが強豪って呼ばれるなんて全然考えてなかったなー」ワハハ

佳織「全国行けたらかあ。厳しいね」

睦月「まあ強豪って言うならそのくらいは必要だよね……」

桃子「女子は私たちが行ってやるっすよ! 問題は京太郎っすね。根性見せるっすよー!」

ゆみ「……頑張れ、京太郎くん」ギュッ

---------------------------------------

京太郎(ここで稼げないと全部終わりか……やべ、緊張してきた)

京太郎(二向聴で三色も狙えるな。配牌は悪くない。まずは最初に上がって流れに乗って――)

下家「ツモ。1000・2000」

京太郎「うっ……」

京太郎(くそ、好配牌だったのに! ……落ち着け。こんなの事故みたいなもんだ。次だ次!)

…………

京太郎「ロン、3900」

京太郎(よし、この調子で……)

下家「ロン、12000」

下家「ツモ、2000・4000」

京太郎「……っ!」

---------------------------------------

桃子「……京太郎も決して悪くない、というかむしろ絶好調なのに……!」

ゆみ「ああ、上家も対面も全く寄せ付けていない。……だが下家がそれ以上だな。打点、速さともに凄まじい」

睦月「点は稼いでるけど、3位の下家に勝てなきゃ全国へは行けない……」

智美「京太郎ももどかしいだろうなー。自分が今までにないくらい絶好調なのに、それでも上回れないなんて」

佳織「京太郎くん、勝てますか?」

ゆみ「……点差をひっくり返すためには、満貫の直撃以上で和了らなければならない」

ゆみ「今日の京太郎くんの調子は最高だ。だからきっと諦めなければ逆転手も入ってくるはずだ……!」グッ

智美「ゆみちん……」

桃子(自分に言い聞かせてるんすね……)

智美「京太郎が諦めるわけないさ。私たちは京太郎が勝つことを祈ってよう」ワハハ

ゆみ「ああ、そうだな……」ギュッ

---------------------------------------

京太郎(くそっ、結局差を縮められないままオーラス……)

京太郎(頼む、逆転手が入ってくれ……っ!!)

手牌 一四四七七七⑥⑧888西西  ドラ九

京太郎(刻子が2つ、対子が2つ! 四暗刻二向聴!! これなら逆転できる!)


二巡目 一四四七七七⑥⑧888西西 ツモ西 打⑧

京太郎(よし来た!)

下家「……」タン

対面「っ……」タン

上家「ちっ……」タン


七巡目 一四四七七七⑥888西西西 ツモ⑥ 打一

京太郎(聴牌だ! ツモれば最高、直撃でも逆転!! 4位の人がよっぽど稼いでなければ全国に行ける!)

京太郎(後は他家だけど……)チラッ

京太郎(……捨て牌を見る限り上家と対面は今のとこ大丈夫そうだ。下家は微妙か……まあだからって変わらない。後は早く和了るだけだ!)

---------------------------------------

アナ『須賀選手、四暗刻聴牌しました! 1位へのロン和了りでも逆転です!!』

藤田『まくるための最低条件は諦めないこと。和了っても和了っても追いつけない中よく耐えたよ』

アナ『このまま須賀選手は逆転できるでしょうか』

藤田『聴牌とはいえ待ちは4枚。1つは溢れそうにないから実質3枚だ。1位の選手も好形の聴牌になりそうな形だ。このまま終わるとは思えないな』

アナ『なるほど。長い試合も最終盤。最後まで白熱した戦いが続きそうです』


ゆみ「よしっ!」グッ

桃子「きたきた、来たっすよー!!」

智美「ここであんな手が入るなんて持ってるなー」ワハハ

佳織「六筒は下家が1つ持ってますけど、四萬は生牌です!」

睦月「京太郎くん早く和了って……!」

ゆみ「くっ……なかなか引けないな」

桃子「京太郎か1位が引かないと意味ないっすからね。なかなか……あ!」

下家『……』ピクッ
手牌 455678⑥⑦⑧東東東白 ツモ5 打白


智美「下家が聴牌しちゃったかー……」

ゆみ「しかも四門張……厳しいな」


アナ『須賀選手に少し遅れましたが聴牌しましたね』

藤田『ああ。だが待ちの広さが段違いだ。先に聴牌したとはいえ須賀は苦しくなったな』

アナ『須賀選手は直撃かツモらなければならないですが、どんな形でも和了ればいいとなるとその差は大きいですね』

藤田『ここからはどちらの運が上回るかという戦いになるだろうな。もちろん追う須賀のほうが厳しいが』

アナ『果たして須賀選手は逆転全国行きを決めることが出来るのか。注目です』


佳織「だ、大丈夫ですよね?」

睦月「うむ……そう信じたいな」

智美「後は京太郎の運を信じるだけだ……って、え?」

桃子「待ちを変えた……っすか?」


下家『……』タン
手牌 4555678⑥⑦⑧東東東 ツモ五 打4


ゆみ「この待ちは……!」

アナ『四門張を捨てて五萬単騎待ち!! 藤田プロ、これはどう考えますか?』

藤田『普通に考えればありえないな。メリットはほとんどない』

アナ『ほとんどと言いますとゼロというわけではないんですね?』

藤田『ああ、捨て牌を見てみろ』

アナ『捨て牌……ですか?』

藤田『二萬と八萬が捨ててあるから五萬は両筋になる。さらに自風の東も切っているし、どの役牌も最低1つは見えているから目眩ましになっている』

アナ『誰かが振り込むのを狙っているということですか? それにしても待ちが狭くなるデメリットのほうが大きいように思いますが……』

藤田『ああ、それは間違いない。こればかりはその場にいなければわからんが、あの待ちでは和了れない、もしくは須賀に負けると思ったんだろう』

アナ『雀士の勘というやつですね。これが吉と出るか、それとも凶と出るのか!』

藤田『そういえば、この待ち方は女子団体戦で加治木が天江から直撃を取ったものとよく似ているな――』


ゆみ「……私の場合は和了るために手を進めていたら、たまたまああいう形になっただけだ。意味がまったく違う」

桃子「そうっすよね。京太郎がここからオリるなんてそもそもありえないっす」

睦月「それでもやったってことは勝算があるってことですよね?」

ゆみ「……そうだな。私にはわからないが、何らかの確信があるんだろう」

佳織「天江さんみたいな人なんですね」

智美「さすがにあそこまでじゃないと思うけどなー」

睦月「それでも自分のことを信じきるのは凄いです。私だったらあそこで四門張は捨てられない」

ゆみ「それが津山の麻雀なんだろう? 自分を貫くという意味では同じ……っ!」

桃子「……掴まされたっすね」

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十二巡目

手牌 四四七七七⑥⑥888西西西 ツモ五

京太郎(くそっ、まだ揃わないか。もう十二巡目なのにっ!)

京太郎(次だつ――)ピタッ

京太郎(……下家の捨て牌。そして今俺がツモった牌。ゆみ先輩が決勝で天江から直撃取ったときと似てるな……)

京太郎(って、待て。何考えてんだ俺。別に俺の感覚が危ないって言ってるわけでもないのに)

京太郎(そもそも、デジタルで考えてもここで引くなんてありえない。もう十二巡目だぞ!? ここから手を崩してまたテンパッて和了るなんて……!)

京太郎(……くそっ! 頭じゃ分かってるのにどうしても切れない!)

京太郎(……そういえばさっき考えないと怪我するとか言われたな……少し落ち着いて考えるか)

京太郎(レベルは全然違うけど、天江が咲に振り込んだときもこんな感じだったのかな。あれは間違いなく迷ってたと思う)

京太郎(そして天江は咲に負けた……あれはきっと感覚に頼ったからだ)

京太郎(俺は何をしてんだ? 感覚は大丈夫と言ってるし、デジタル的にもここで引くのはありえない)

京太郎(……なのに、ゆみ先輩の打ち筋が頭から離れない。天江から直撃を取った、あの打ち筋。ゆみ先輩の集大成のような綺麗な麻雀)

京太郎(この場面で突っ張るのはゆみ先輩を信じてないみたいな、そんなことになる気がする。……どう考えても言うこと聞かないほうがそうなのに、バカみたいなこと言ってんな)ハハッ

京太郎(それでも、俺の感覚はあくまで俺のもので、ゆみ先輩の打ち筋はゆみ先輩のものだ。どっちを信頼するかなんて言うまでもない)

京太郎(……俺がここまで来れたのはゆみ先輩のおかげだ。なら、最後までそれを貫こう)

京太郎(自分の感覚を捨てるより、効率を無視するより、俺はゆみ先輩の麻雀を裏切るほうがずっと嫌だ!)

京太郎(ゆみ先輩、言うこと聞かずに、これで負けたらすみません。全部俺の責任です。それでも俺は、これを切ります!)タンッ 打⑥

---------------------------------------

ゆみ「えっ……」


アナ『須賀選手、なんと四暗刻聴牌を崩して六筒切り! 絶体絶命の危機を回避したーー!!』

藤田『……驚いたな。あの状況から止めるとは』

アナ『須賀選手はなぜ止めることできたのだと思われますか?』

藤田『感覚的に当たり牌を察知したとしか思えないな。これ以外にも効率的には間違っているが上手く回避しているという場面がいくつかあるようだし』

アナ『なるほど。須賀選手、素晴らしい打ち筋を見せました』

藤田『もっとも、厳しいようだが終わりが遠のいただけともいえる。須賀には狙った牌をツモる才能はない。ここからまた聴牌をして直撃かツモを狙うにはのは厳しいな』

アナ『ファインプレイではありましたが結果的には聴牌から一歩引いた須賀選手。果たして全国へ行くことは出来るのか!?』


桃子「おおっ! よく避けたっす京太郎!」

智美「切っちゃダメだっていう感覚があったんだなー」ワハハ

ゆみ「……違うと思う。きっとあれは京太郎くんの感覚では大丈夫な牌で、それを自分の意思で止めたんだ」

桃子「え? なんでそう思うんすか?」

ゆみ「今日の京太郎くんが明らかにおかしい打牌をするときはほぼノータイムで切っていたが、さっきのはだいぶ迷っていたからな」

智美「聴牌崩したらほとんど和了れないんだぞ? 迷わないほうがおかしいと思うけどなー」ワハハ

ゆみ「……凄く、辛そうな顔をしていたからな。当たり牌だという感覚があるのならあんなに辛そうな顔はしないさ。感覚に頼れといったのは私だ」

ゆみ「自分で言うのもなんだが、私は京太郎くんにそれなりに信頼されていると思う。私の言ったことを守るだけならあんなに迷うことはない」

桃子「……け、結構すごいこと言ってるっすね」

智美「自分の言うことなら役満聴牌だって迷わず諦めるって言うとはなー」ワハハ

ゆみ「そ、そういうつもりで言ったんじゃ……」アセアセ

睦月「言ってますよ」クスッ

佳織「でも合ってると思いますよ。きっと京太郎くんならそのくらいには加治木先輩のこと思ってます」

ゆみ「うぅ……」カアァァ

桃子「……さて、じゃあ後は京太郎がここから和了れるかどうかっすね」

智美「こればっかりはなー。京太郎にその運があるかどうかだ」

睦月「下家のほうを止めたとはいえ、自分が和了れなければどうにもならないですしね……」

佳織「そうだね……あ、下家の人が待ちを変えた!?」

桃子「むぅ、もう出ないと思ったんすね。凄まじい勘の良さっす」

ゆみ「しかも引いたのが9索か……フリテンとはいえ両面待ちだ」

桃子「厳しいっすね……」

ゆみ「……」ギュッ

…………

………

……

対面「聴牌」

上家「ノーテン」

京太郎「……聴牌、です」

下家「聴牌。和了り止めします」

京太郎(ああ、クソ。俺は間違ってなかった。間違ってなかったけど、それでも勝てなかった……!)

下家「……なあ、なんであそこで止められたんだ?」

京太郎「え?」

下家「俺が五萬の単騎待ちに切り替えたところだよ。なんとなくこっちのほうが和了れそうな気がしたんだけど、まさか引いたのに止められるとは思わなかった」

京太郎「……先輩がおんなじような打ち筋で天江から直撃取ってましたから。どうしても踏み込めませんでした」

下家「……それだけで役満聴牌を崩したのか?」

京太郎「あそこでそれ以上に信頼出来るものなんてありませんでしたから」

下家「ハハハッ! あーすげえなお前。勝たせてもらったけど勘弁しろよ!」

京太郎「え? ……ああ、告白のことですか」ハァ

京太郎「まぁ、自分で言ったことですからしょうがないです。悔いは山ほどありますけど」ハァァァァ

下家「え? あれ本気だったのか……気を落とすなっても無理だろうけど、秋に会えるのを楽しみにしてる」

京太郎「はい、今度は負けません!」

下家「ああ、またな」スタスタ

京太郎「はい……はぁ」

---------------------------------------

智美「お互いに和了れなかったなー」

桃子「後一歩だったっすね……」

ゆみ「そう、だな。聴牌までは行けたのに……」ギュッ

智美「ゆみちん……」

睦月「で、でも京太郎くん凄いじゃないですか! 初めて一ヶ月で6位ですよ!」

佳織「そ、そうですよ! 入賞するなんて凄いです! だから……」

ゆみ「……京太郎くんが言ったことだからな。私から曲げさせるわけにはいかないさ」

佳織「でも!」

ゆみ「……少し早いが決勝の会場へ行ってくる」

智美「京太郎が来るの待ってからでも遅くないぞー?」

ゆみ「きっと今会いたくはないだろう」

桃子「そんなこと……」

ゆみ「……私だって今会いたくはない。だから京太郎くんもそうだよ」

一同「……」

ゆみ「私と京太郎くんの話だ。みんなはあまり気にするな……巻き込んでいるほうが言う台詞じゃないか」

ゆみ「京太郎くんに、よくやった。入賞おめでとうと伝えておいてくれ」

智美「それはゆみちんが言わないとダメだと思うなー」

ゆみ「……それもそうだな。わかった。直接言うよ」

ゆみ「それでは、先に行っている」スタスタスタ

……

京太郎「はぁ……」バタン

桃子「ドアを開くなりため息ってどういう了見っすか」

京太郎「しょうがねえだろ……あれ、ゆみ先輩は?」

桃子「先に行ったっす。京太郎は今会いたくないだろうし、私もそうだからって」

京太郎「まあそうだよなあ」ハァ

智美「やっぱり会いたかったか?」

京太郎「ホッとしたのが半分、残念なのが半分です。あんなこと言って負けたのは気まずいですけど、声かけて貰いたかったなってのも少し」

佳織「全国惜しかったね……でも、入賞したのは凄いと思うよ!」

京太郎「ありがとうございます……ああ、後一歩だったのにな」ハァ

睦月「四暗刻聴牌を諦めてまで振り込まなかったのはカッコよかったよ。もう少しだったね。……そういえばあそこで五萬を止めたのは……」

京太郎「ゆみ先輩が天江から直撃取ってたじゃないですか。あれと似てたんでどうしても切れませんでした」

一同「……」

京太郎「ど、どうかしましたか? いや自分でも滅茶苦茶なこと言ってるなとは思いますけど」

智美「いや、よくお互いのことわかってると思ってなー」

京太郎「えっ」

桃子「京太郎、ゆみ先輩のこと諦めるんじゃないっすよ」

京太郎「いや、そりゃまあ諦めるつもりはないけど、なんだいきなり」

桃子「惚気に巻き込まれそうで説明するのは嫌っすから、後でゆみ先輩と話すといいっす」

智美「それじゃ私たちも行くかー」スタスタ

桃子「はいっす!」スタスタ

京太郎「ちょっと、気になるんだけど! 睦月先輩と佳織先輩は知ってます?」

睦月「うむ、ただまあ……」

佳織「後で加治木先輩と2人で話すといいと思うよ?」

京太郎「先輩たちまで!」

佳織「もうすぐ決勝始まるね。加治木先輩たち映るかなあ」

京太郎「ん、そうですね……」

睦月「……妹尾さん、ちょっと飲み物買いに行かない?」

佳織「え?」

京太郎「あ、俺が買いに行きますよ」

睦月「ううん。京太郎くんは疲れてると思うから、京太郎くんの分も私たちが買ってくるよ。ね、妹尾さん」

佳織「……あ、そうだね。一緒に行こう」

京太郎「いやそんな……」

睦月「頑張った後輩をねぎらうのも先輩の仕事だから。京太郎くんはここで待ってて」ギィ

佳織「それじゃあ行ってくるね」バタン

京太郎「……1人にしてくれたんだよな」ハァ

京太郎「ああ、くそっ。ほんと後もう少し。少しだけ俺に運があれば……!」ドンッ


アナ『いよいよ女子個人麻雀決勝が始まります!』

藤田『男子に負けず熱い戦いを期待したいな』


京太郎「始まったか……あ、ゆみ先輩」

京太郎「……勝ちたかったなあ」

今日は以上です。次こそ個人戦が終わるはず。
7月中は無理でしたが8月中には何とか終わらせたい。

次は女子個人戦って言ってるじゃないですかー!
というわけで女子個人戦決勝投下します。

睦月「京太郎くん、お待たせ。飲み物買ってきたよ」

京太郎「ありがとうございます」

佳織「みんなはどんな感じ?」

京太郎「モモとゆみ先輩は調子いいですね。モモはステルスが長く使えるのが単純に強いですし」

京太郎「ゆみ先輩は……鬼気迫るというか、凄い気迫が」

睦月「京太郎くんが後一歩届かなかったから、きっと思うところがあるんだよ」

京太郎「そう、なんですかね。俺のことなんかあんまり気にしないでやって欲しいんですけど」ハハ

佳織「京太郎くんが全力を尽くしてたの伝わったから、頑張らないわけにはいかないんだと思うよ」

京太郎「な、なんか照れくさいです」

佳織「ふふ……ところで智美ちゃんはどう?」

京太郎「……厳しそうです。なかなか上手く和了れてないですね」

佳織「そっか……やっぱり決勝はみんな強いんだね」

京太郎「そうですね。団体に出ていなかった人にも強い人がいますし」

睦月「平滝高校の南浦さんだね。お爺さんは元プロなんだよ」

京太郎「へー、英才教育とか受けてそうですね」

睦月「実際受けてるみたいだよ。スタイルも似てるみたいだし」

京太郎「そうなんですか。詳しいですね。一体どこでそんな……」

睦月「プロ麻雀カードには往年のプロシリーズもあるんだ! 今ちょうど持ってるから見せて……」

京太郎「い、いえ。大丈夫です」

睦月「そう? 若いころの大沼プロとかもあるんだけど」

佳織「あ、加治木先輩と桃子さんが同じ卓みたい」

睦月「ほんと? それは見ないと」クルッ

京太郎(佳織先輩! さすがです!!)

京太郎「……ってモモとゆみ先輩が同卓ですか!?」

佳織「うん。今始まったところみたいだよ」

アナ『ここは鶴賀の加治木選手と東横選手が同卓になりましたね』

藤田『ああ。鶴賀以外の生徒はこの卓をよく参考にしたほうがいいだろうな』

アナ『といいますと?』

藤田『東横はどうも対戦相手に自分の捨て牌を隠すことが出来るようだ』

アナ『捨て牌を隠す……ですか? 物理的にということではないですよね』

藤田『それは反則だろう……。要するに東横の対戦相手は東横の捨て牌を認識することができなくなるということだ』

アナ『そんなことが出来るんですか。対処が難しそうですね』

藤田『ああ。だからこそ普段から対局をしているだろう加治木の打ち方をよく見たほうがいい』

アナ『なるほど。東横選手への対抗策を学ぶということですね』

藤田『そういうことだ』

アナ『ちなみに藤田プロならどのような対策をされますか?』

藤田『ふむ。まあいくつか考えてはいるが、ここで喋ってしまっては不公平だからな。やめておこう』

京太郎「モモのステルスも有名になってきたのか……にしても見逃すところだった。危ない」

佳織「普段から部活で戦ってるけど、やっぱり見逃せないよね」

睦月「そうだね。いつも以上に真剣勝負って感じだし。……今のところどっちの順位が上なんだろう」

京太郎「ええと、モモのが少し上みたいですね」

佳織「ほんとだ。2人とも一桁かあ。凄いなあ」

睦月「……私も来年はこの2人みたいになれるかなあ」

京太郎「一緒に頑張りましょう。今日の俺は運が良すぎましたし」

睦月「うん。それじゃあまずはこの試合をしっかり見てようか」

京太郎「はい!」

…………

………

……

京太郎「東場はゆみ先輩がリードしてましたけど、南場はやっぱりモモが強いですね」

佳織「絶対に振り込まないのはやっぱり強いんだね」

睦月「うむ。……わあ、加治木先輩あれ鳴くのかあ」

京太郎「まだ点数で勝ってるうえ三向聴で……。急所が残っちゃいますけど、やっぱりモモ相手だと少しでもスピードを上げるんですね」

佳織「桃子さんは普段戦ってるからっていうのもあるけど、それでも加治木先輩は対応が早くて凄いなあ」

京太郎「そうですね。あんなふうな麻雀やってみたいです」

睦月「私も。後一年であれって考えると少し大変だけど」ハァ

佳織「私は早く麻雀のルールちゃんと覚えないと……」

京太郎・睦月(ちゃんと覚えたら凄いことになりそうだなあ……)

佳織「ど、どうかした?」

京太郎「いえ。なんでもないです」フイッ

睦月「もう対局が終わりそう。これは加治木先輩の早仕掛けが成功するかな?」

佳織「反応してくれないんだ……ええと、風越の人が切りそうかな?」

京太郎「そうですね――あ、ゆみ先輩が和了りました!」

睦月「さすが加治木先輩。モモは悔しそうだね」

京太郎「部活じゃ東南戦だとゆみ先輩とモモは大体互角か、モモが少し成績よかったですけど、ここ一番で勝ち切るのは最上級生の意地ですかね」

佳織「そうだね。実力以上ってわけじゃないけど、いつもより負けそうにない感じがする」

京太郎「これでゆみ先輩は……今5位ですね! モモもまだ9位です!」

睦月「1位はちょっと厳しいけど、まだ接戦だし加治木先輩もモモも3位以内目指せそうだね」

佳織「2人とも頑張れー!」

…………

………

……

アナ『長かった全国高校生麻雀大会長野県予選もいよいよ終わりが近づいております。女子個人戦決勝最終戦、まもなく開始です!』

藤田『女子もなかなかレベルが高いな。風越の主将の福路、インターミドルチャンプの原村は注目していたが、それに勝るとも劣らない選手も多い』

アナ『はい。福路選手はやや余裕を持って2位ですが、現在3位の原村選手は7位まで接戦。まだまだ安心は出来ません』

藤田『最終戦次第では一気にひっくり返ることもあるだろうな。……しかし1位の宮永は凄まじいな』

アナ『昨日歴代最高得点を大きく塗り替えた宮永選手ですが、決勝でもその実力を遺憾なく発揮していますね』

藤田『決勝でも記録を更新するのは確実だろうな。ただ、少し気になるところもある』

アナ『盤石に見えますが何が気になるのでしょうか』

藤田『団体戦のときと比べて和了る速度が少し遅くなっている。それでも大抵の場合対戦相手よりは速いが、何度か速度で負けている局があるようだ』

アナ『そう言われますと確かにそうなっていますね。何が原因なんでしょう?』

藤田『カンの回数が増えていることだろうな』

アナ『カンが増えているからですか? しかし宮永選手はカンをして有効牌を持ってくることが多いように思いますが……』

藤田『それはその通りだが、カンをしようとすると最低刻子を手牌に入れなければならない』

藤田『宮永でも最初から刻子をいくつも抱えているわけではないからな。必然的に手は重くなる』

アナ『なるほど。つまり早和了りに勝機があるというわけですね』

藤田『気になるところではあるが、一概には言えないな。速度が落ちた分、打点が大幅に上がっているから少々のリードではすぐ逆転されてしまう』

藤田『早和了りを続けられればいいが難しいだろう。何も考えないよりはマシという程度かもしれないな』

アナ『それだけでは足りないということですね。他にはどのような戦い方が考えられますか?』

藤田『カンをするということはこちらの打点も高くなりやすい。それを狙うのも一つの手だろう』

アナ『しかし宮永選手は嶺上開花で和了ってしまうのではないでしょうか』

藤田『まあ主導権を奪われるということだからな。リスクはあるが、そもそも不利な状況でどう戦うかという話だから仕方ない』

アナ『藤田プロでも宮永選手相手では不利なんですか?』

藤田『……うるさい』

京太郎「いよいよ最後ですね。ゆみ先輩は今6位か……」

睦月「でも3位との差はあんまりないね。ちょうどさっきの京太郎くんと似たような感じかな。ただ、最後の相手が……」

佳織「宮永さんが相手だね……。プロの人も不利って言う相手なんて」

京太郎「ま、まあ咲に勝たなくても点数稼げれば3位にはなれますよ! どのくらい稼げれば行けます?」

睦月「元々点数で負けてるからどのくらいっていうと難しいけど……原村さんはこういう状況で負ける人じゃないから、きっと1位になると思う」

睦月「そうするとオカが入っちゃうから、加治木先輩も1位にならないと厳しい……と思う」

京太郎「そうですか……」ガクッ

佳織「で、でも宮永さんも振り込まないってわけじゃないし、きっと勝てるよ!」

京太郎「けど昨日の予選では……」

睦月「……京太郎くん、これから宮永さんと戦うのは誰?」

京太郎「……? ゆみ先輩ですよね?」

睦月「そう。私たちの頼れる先輩で、麻雀始めてたったの2年であんなに強くなった人」

睦月「そんな加治木先輩が、戦うのが3度目になる相手に何も出来ないなんて思う?」

京太郎「それは……思いませんけど」

睦月「相手は宮永さんだから、私も絶対勝てるなんて言わないよ。でも京太郎くんが弱気になっちゃダメ」

睦月「加治木先輩は最後まで諦めずに京太郎くんのこと見てた。だから京太郎くんも諦めずに応援しよう?」グッ

京太郎「……ありがとうございます。そうですよね。応援してるほうが先に諦めるなんて絶対ダメですね」

京太郎「目が覚めました! ゆみ先輩が勝つって信じます!」

睦月「うん。私たちの分も頑張ってもらおう!」

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ゆみ(最終戦、そして相手は宮永か。……団体戦を思い出すな。まあ再現になってしまっては困るが)

ゆみ(予選ではどうにも出来なかった。今回はどうにかしないとな……あ)

咲「……」

ゆみ(私もそこそこ早かったと思うが、さすがに私より速いか)

咲「……あ」

ゆみ「よろしく。こうして君と戦うのは3度目だな」

咲「はい……」ウツムキ

ゆみ(緊張しているのか? そういうところは1年生らし……私も大会は初めてだったな。大差はないか)フッ

咲「……いつから……」ボソッ

ゆみ「? いつから? 麻雀のことか?」

咲「ふぇ、聞こえ……! な、なんでもないです!」

ゆみ(麻雀ではないのか。なら一体……)ハッ

ゆみ(バカか私は。彼女と私の共通点なんて、麻雀を除けば1つしかないだろう)

ゆみ「……もしかして京太郎くんのことだろうか?」

咲「っ! ……はい」

ゆみ「……私が京太郎くんと初めて会ったのは大体ひと月前だ。それからは部活で大体毎日会っていたが」

咲「そう、ですか。たったのひと月前……」

ゆみ(……やはり、彼女も京太郎くんを)

咲「……私、京ちゃんに昔からよく助けられてたんです。高校生になって離れてからも、麻雀をまた始めるきっかけをくれたり、相談に乗ってくれたりして」

咲「ずっとこんな関係でいるのかなって思ってました。……ううん、今でも私が今まで通りに接したら、きっと関係は変わらないんだろうなって思います」

ゆみ「……」

咲「一緒にいるときは気づかなくて、離れてもそれがなんだかわからなくて。……失くして初めて知りました」

咲「だから悪いのは私です。恨んでるとかじゃないです。だけど、これで麻雀まで負けたらあんまりだから……」

咲「……試合前に関係ない話してごめんなさい。でも、私は負けられません。原村さんと一緒に全国に行くって約束したんです」ゴッ

ゆみ「……そうか」

ゆみ「だが、私も負けないよ。全国へ行けなければ引退だ。ようやく5人揃って大会に出られんだ」

ゆみ「たとえ団体で行けなくなっても、まだ夏を終わらせたくはない」

咲「……お互い、負けられないですね」

ゆみ「ああ。団体決勝と個人予選のリベンジ、果たさせてもらうぞ」

咲「絶対負けません!」

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京太郎「ゆみ先輩のところが映りました!」

睦月「うん、点数は……ちょっと差が開いてるね」

佳織「宮永さん以外の対戦相手は天竜の人と裾花の人なんだ」

京太郎「加治木先輩もちょっと削られてますけど、他の2人のほうがだいぶ点数低いですね……」

睦月「宮永さんは断トツだ。さすが……」

佳織「あ、ダイジェストが始まるみたいだよ」


アナ『宮永選手のいるこの卓。先制したのは意外にも加治木選手でした』

藤田『強引な仕掛けをしていたがそれが上手く嵌っていたな』

アナ『藤田プロのおっしゃっていた宮永選手の隙を上手く突いた形でした』

アナ『しかしその後試合をリードしたのはやはり宮永選手。嶺上開花での和了りは実に4回!』

藤田『その間に加治木も何度か和了っているが、やはり打点の差はいかんともしがたいな』

アナ『はい。宮永選手と2位加治木選手との差は約5万5千点。厳しい点差となっています』

藤田『宮永以外に和了っているのは加治木だけだったと思うが、それでもこの差か』

アナ『そうですね。天竜女学院、裾花は両者とも1万点を割っています』

藤田『どちらもけして実力がない選手ではないんだが……相手が悪かったな』

京太郎「こう改めて見ると咲凄まじいですね……」

睦月「手がつけられないってこういうことを言うのかな」アハハ…

佳織「あ、加治木先輩この局は和了れそうだよ!」

京太郎「ほんとですか! ……あ、でもこれだと」

佳織「え、どうかしたの?」

睦月「ちょっと点数が低くなりそうだね。仕方ないんだけど……」


アナ『現在は南3局。加治木選手にとってはここで点差を縮めたいところでしょうか』

藤田『宮永も加治木も南4局では子で、役満でもツモ和了りでは逆転が出来ないからな。せめて4万8千点以内にはしたいところだろう』

アナ『おっと、言っている間に加治木選手が和了りましたが……これは5200ですね』

アナ『宮永選手からではないので、依然として三倍満が直撃してもでも逆転は出来ません。勝利には役満の直撃が必須です』

藤田『少しでも稼ごうと思ったか、それとも宮永に和了られると思ったか。おそらく後者だろうな』

アナ『宮永選手がポンをしているのを見て、直撃を待つ時間はないと判断したわけですね』

藤田『ああ、宮永の場合はそこから加槓で有効牌を1つ引いてくるからな』

アナ『なるほど。加治木選手の判断が光ります。……しかし点差は依然として大きい。いよいよ南4局。決着はもうすぐです!』

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ゆみ(まったく、予選のように逃げられないのがつらいな)

ゆみ(さて、最後の配牌は……!!)ピクッ

手牌 14一九九①⑨東東南西白發 ツモ7 ドラ七

ゆみ(国士無双二向聴……宮永と打つときはよくよく国士に縁があるようだな)

ゆみ(……さてどうするか。この状況、普通に考えれば、というより正気なら続けないという選択肢はありえないが)

ゆみ(特に宮永に対して、国士無双は暗槓でも直撃を取れる。おそらくこれ以上ない配牌だろう)

ゆみ(しかし……)チラッ

ゆみ(宮永はカンによる有効牌の引きや嶺上開花が目立っているが、おそらくそれだけじゃない)

ゆみ(池田への差し込み、最終局近くでの細かい和了り、天江に掴ませた当たり牌)

ゆみ(天江と同じく配牌やツモにも影響を与えていると考えるのが妥当だろう)

ゆみ(ならばこの配牌も……)

ゆみ(……天江に対して普通に和了ろうとしても無駄だった。宮永に対してもそれは同じではないだろうか)

ゆみ(団体戦の決勝では実際に止められている。まあ、あれは捨て牌が露骨だったが)

ゆみ(なまじ天江に比べて和了れるから勘違いするが、それは宮永に届かない範囲でしかないのでは……?)

天竜「あの、すみません。そろそろ……」

ゆみ「ああ、すまない。もう少しだけ待ってくれ」

ゆみ(……いずれにせよ普通に和了りを目指しては敵わないだろう。京太郎くんもこんな気分だったのかな。確かにこれは辛い表情にもなる)フッ

ゆみ(彼は自分を盲信するでもなく、効率を追求するでもなく、自分の打ち方を見出して貫いた)

ゆみ(ならば私がすべきことも1つだ。これでは勝てない。そう考えよう)

ゆみ(最善手ではないかもしれない。馬鹿げた選択かもしれない)

ゆみ(けれどそれが如何に無謀に見えても、自棄になったように思えても、私は私の感じるベストを尽くす)

ゆみ(それが後輩に、京太郎くんに示せる私の麻雀だ!)

ゆみ「九種九牌。……流局にしてくれ」パタン

天竜「……はあ!?」

裾花「えっ、それで……?」

咲「!?」

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睦月「え!? なんで九種九牌なんて!」

佳織「1つずつ……あれってもう少しで役満だよね?」

京太郎「そうですね……国士無双です」

佳織「なんで加治木先輩は国士無双目指さなかったんだろう?」

睦月「うーん……あ、解説やるみたいだよ」


アナ『まさかの九種九牌。驚きましたがこれはどのような理由で流局にしたのでしょうか』

藤田『普通に考えればありえないな。何ひとつメリットがない』

アナ『先ほどの男子個人戦決勝で、同じ鶴賀の須賀選手も気になる打牌をしていましたが……』

藤田『それはメリットが薄いというだけでなくはないからな。これはそもそもメリットがないと言っていい』

藤田『ただ加治木は大胆なところはあっても基本的に手堅い選手だ』

藤田『博打ですらない判断だが、その場にいなければ感じられない何かがあったのかもしれないな』

アナ『須賀選手のように危険を感じた結果ということでしょうか』

藤田『そうではないだろうな。加治木のこれまでの牌譜は理に適ったものだ』

藤田『これも感覚ではなく、団体決勝でやった宮永への槍槓のように加治木なりの筋を通した結果が九種九牌なんだろう。私には理解できないがな』

アナ『なるほど。ありがとうございました。仕切り直しの南4局。勝利の女神は誰に微笑むのか!』

睦月「話題に出てたけど京太郎くんは加治木先輩の判断はどう思う?」

京太郎「そうですね……ゆみ先輩が考えないであんなことやるわけありませんから、正しいって信じてます」

睦月「そっか……私はやっぱりあのまま続けてたほうがいいと思う。間違ってるとまで言わないけど……」

京太郎「それも正しいと思います。変える必要なんてない場面ですし」

睦月「うむ……ただ団体戦の決勝で2回もあんな形のを和了れなかったから、続けたくなかったんだろうなとは思うよ」

京太郎「そうですよね。あそこまで揃うのもめったにないのに、そこから和了れないなんて……」

佳織「え? そんなに珍しい?」

京太郎・睦月「……」

佳織「えっ、え?」

京太郎「さあ応援しましょう!」

睦月「頑張れ加治木先輩!」

佳織「うぅ。前もこんなことあったような……」

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ゆみ(さて、あんなことをしてケチがついていなければいいが……)カチャッ

手牌 279一四七①⑧⑨南西北中 ドラ北

ゆみ(……自分でやったこととはいえ気が滅入るな)ハァ

ゆみ(本当に団体戦の再現になってしまいそうだが、まあ弱音を吐いてはいられないか)

ゆみ(その前に、天竜と裾花の2人は……)

天竜「……」ギラギラ

裾花「……」フゥ

ゆみ(2人とも絶望的な点差だが諦めてはいないようだ。団体戦終盤の池田と同じような目をしている……ありがたい)

ゆみ(最初のツモは……む、上手く自風の南が重なったか)タン 打2

天竜「……」タン

裾花「……っ」タン

咲「ポン!」 ポン九

ゆみ(随分仕掛けが早いな。ポンは九萬か。こんなに早いうちに仕掛けたということは……!)

ゆみ(最終形は決まった。後は私にそれを和了りきる力があるかどうかだ!)タンッ 打西

咲(加治木さん、なんで九種九牌なんてしたんだろう。確かに北と九索は嶺上牌にあったけど……)

咲(ううん。もう流局したんだから、さっきのは関係ない。私は今ここで勝たなきゃ)

咲(和ちゃんのために。……それと、自分のために)

咲(京ちゃんのおかげでまた始められた麻雀だもん。京ちゃんが好きに……)ズキッ

咲(……好きになった人には負けられない!)

……



十一巡目
咲手牌 三三三五六六七發發發 ポン九

咲(うん、揃った。嶺上牌に發と九と六があるから、後は三萬が出れば和了れる)

咲(天竜と裾花の2人は和了らないよね。後は加治木さんだけど、加治木さんも役満の直撃じゃないと和了れない)

咲(捨て牌を見る限り国士無双ではなさそう。大三元とか發が必要なのは出来ないし清老頭も多分違うよね)

咲(やっぱり四暗刻かな。単騎待ちのはずだから気をつけるのは難しいけど……)

咲(……どっちにしろカンしちゃえば問題ない! それで勝てるんだ!)タン

天竜「……」タン

ゆみ「っ! 立直!」タンッ

咲(え、立直? 立直すれば届くってことかな。清一色とか……?)

咲(まあ私が萬子を揃えてるから、清一色でも萬子じゃないはず。三萬さえ出れば……!)

……

天竜「うー」タン

咲(来たっ! 三萬!)

咲「カン!」 カン三 嶺上ツモ發 新ドラ3

ゆみ「っ!」

咲「もいっこカン」 カン發 嶺上ツモ九 新ドラ⑤

咲(これで……!)

咲「もいっこカン!!」 カン九 嶺――

ゆみ「ロン!」

咲「……え?」

ゆみ「ロンだ。……上手くいってよかった」ホッ

咲「そ、そんな! 槍槓じゃ足りるはずが……」

ゆみ「そうだな。このままでは足りないよ」パタッ

手牌 789七八⑦⑧⑨南南南北北 ロン九

ゆみ「立直、槍槓、三色同順、場風、自風、混全帯?九、ドラ2。10翻だ」

咲「じゃあなんで……!」ハッ

咲「まさか裏ドラ狙いで……?」

ゆみ「カンで出てくれると心臓に良かったんだが……まあどちらでも同じか」

咲「そんな無謀なことするより初めから役満狙ったほうが……」

ゆみ「普通の相手ならそうしたが、なにぶん相手は宮永咲だからな」

咲「私は別に――」

ゆみ「……すまない、そろそろめくらせてもらうぞ」

咲「……」

ゆみ(私が乗り越えなければならないハードルは3つあった)

ゆみ(1つは九萬を引かないこと。2つ目は宮永が和了るより先に聴牌すること)

ゆみ(宮永がカンをするのは分かっていたから、これでほぼ確実に宮永から和了ることが出来る)

ゆみ(……そしてこれが3つ目。カンドラ、もしくは裏ドラで3翻を得ること。幸い九萬の加槓は3回目のカンだった。おかげで3枚裏ドラをめくれる)ドキドキ

ゆみ(ここまで分の悪い賭けに勝ってきたんだ。最後も頼むぞ……!)ドキドキ

ゆみ「……っ」 裏ドラ②

ゆみ(次は……!) 裏ドラ中

ゆみ(数牌3つや数牌と北と組み合わせは色々あるが……まさか5つドラがあるのに1つも出ないとは)フゥ

ゆみ(後は東をめくるしかない。幸い東はまだ1枚も見えていない。頼む……!)ドキドキドキドキ

咲「……」ギュッ

ゆみ「――」スーッ



裏ドラ南



『数え役満ーーーーー! 加治木選手の逆転で決着!!!』

ゆみ「――――よしっ!!」グッ

咲「……あ」

天竜「……はぁ、まったく良い物見せてもらったわ」テクテク

裾花「……信じられない」テクテク

ゆみ「……まあ、私も二度とやりたくはないな」

咲「そっか。負けちゃったんだ。……絶対負けたくなかったのに」

ゆみ「まあまだ原村を上回ったわけでは……いや、上回っていなければ困るんだが」

咲「……負けられなかったのは和ちゃんのためでした。でも、負けたくないのは私のためです」

ゆみ「……そうか」

咲「その、加治木さんが全国へ行ったら……あ、えっと、行けなくても、もう一度打ってもらえますか?」

ゆみ「……もちろん。負け越しているのは私の方だからな。まあ、全国で戦えることを望んでいるが」

咲「ありがとうございます! ……それと、1つだけ聞いていいですか?」

ゆみ「答えられることなら」

咲「……先週の京ちゃんの告白。京ちゃんは全国に行けなかったですけど……」

ゆみ「……京太郎くんの言ったとおりだよ。彼は全国へ行けなかった。だから返事はしない」

咲「そう、ですか。……ごめんなさい。もう1つだけ聞かせてください。加治木さんは――」

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アナ『裏ドラが乗って数え役満! 加治木選手、見事宮永選手から役満を和了りました!!』

アナ『これで加治木選手は逆転。宮永選手を抜きトップとなりました』

アナ『早和了りやドラが増えるところを狙うなど、試合前に藤田プロが言っていた点を突いての勝利でしたね』

藤田『まあ特別な作戦というわけではないからな。誰しも考えるが実践は難しいという類いのものだ』

アナ『そうですか。まくりの女王と呼ばれる藤田プロから見てこの逆転劇はどうでしたか?』

藤田『カンでドラが増えるとはいえ、九萬が最初にカンされるかもしれない。最後のカンでもドラが出るかはわからない』

藤田『しかし実力が上の選手に勝つには無茶も必要だ。結局は勝つと信じ切れなければまくることは出来ない。泥臭いがいいまくりだった』

アナ『加治木選手、素晴らしい逆転劇でした。……あ、どうやら全ての卓で試合が終わったようです』

アナ『最終結果が発表されます……1位は宮永選手、2位福路選手。そして3位は……』

アナ『……加治木選手です! 加治木選手、僅差で原村選手を逆転! 総合順位でもまくりを決め、全国行きの切符を手にしました!!』

藤田『原村も最終局は1位か。2人とも見事だな』

アナ『数々のドラマがあった女子麻雀個人戦決勝、ハイライトで振り返りたいと思います――』


京太郎「すっげえ……」

睦月「あれで逆転するなんて、しかも宮永さんに」

佳織「私もあんなにドラが乗ったことはないなあ。凄いや」

京太郎「シビレました。もう鳥肌が立っちゃいましたよ」

桃子「鳥肌が立つって言葉にいい意味はないんすよ」

京太郎「しょうがねえだろ実際立ったんだから……ってモモ、いつの間に」

桃子「いつの間にって……私の体質だからしょうがないじゃないっすか……」

京太郎「そういう意味じゃねえよ!?」

桃子「冗談っす。ついさっきっすよ。……にしても凄いっすね。考えてもやらないっすよあんなこと。まして和了りきるなんて」

智美「まあウチの部で一番無茶するのはゆみちんだからなー。たまに冷静さをどこかに置いてっちゃうんだ。そこがいいところなんだけどな」ワハハ

京太郎「そういえば俺たちが入ったのもそれででしたね」

智美「私も今来たところだけど、私には何も言わないんだなー」

桃子「やっぱり私が見えないから……」

京太郎「2度目はもういいでしょ!?」

智美「緊張をほぐすために重ねてみたぞー」ワハハ

京太郎「はい? 今さら何に緊張を……」

智美「ゆみちんのとこ行くんだろー?」

京太郎「えっ……」

桃子「いやまあ、ここで私たちに見られながら振られるのがお好みっていうならそれはそれでいいっすよ」

京太郎「嫌だよ! というか振られるわけじゃねえ! ……でもそうですよね。俺は行かないと」

睦月「うむ、加治木先輩も真っ先に京太郎くんに会いたいと思うよ」

佳織「頑張って!」

京太郎「まあ返事は貰えないんですけどね……」ハハ…

京太郎「それじゃ一足先に全国大会出場を祝ってきます!」タッタッタ

智美「頑張るんだぞー」ワハハ

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ゆみ「……あ、京太郎くん」ドキッ

京太郎「ゆみせんぱーい!」タッタッタ

ゆみ「こ、こら。ただでさえ注目されているんだからあまり大声を出すな」

京太郎「す、すみません、早く伝えたくて。全国大会出場、おめでとうございます!」

ゆみ「――! そうか、私は原村に勝てたのか……」

京太郎「はい! 槍槓からの数え役満凄かったです! 俺じゃとても出来ないですよ」

ゆみ「私も2度やろうとは思わないな」フフッ

ゆみ「……これで麻雀部のみんなで過ごせる時間が長くなった」

京太郎「そうですね。全国大会が終わるまでは一緒にいられます」

ゆみ「ああ……君と同じ部に、長くいられる」

京太郎「……」

ゆみ「……」

京太郎「……」

ゆみ「……京太郎くん」

京太郎「はい」

ゆみ「よく頑張った。入賞おめでとう」

ゆみ「ずっと見ていたよ。君の先輩として、君に麻雀を教えた1人として、君のことを誇りに思う」

京太郎「ありがとうございます」

ゆみ「こう言っては何だが実力以上の力を出していたと思う。ただ、本番でそういうことが出来るのも才能だと私は思う」

京太郎「いつもこのくらい出さればいいんですけどね」ハハハ

ゆみ「まったくだな」フフッ

ゆみ「……だが、それでも全国には届かなかった」

京太郎「……はい」

ゆみ「君が言った条件だから、私が勝手に破るのはよくないと私は思う」

京太郎「……俺からもやっぱりなしでとは言いません。一度言ったことですから」

ゆみ「そうか……それなら私も返事はしない」

京太郎「……はい」

ゆみ「だから、ここからは私の話だ」

京太郎「はい?」

ゆみ「」スゥーッ





ゆみ「私は君が欲しい!」

京太郎「!?」



---------------------------------------

咲『加治木さんはこれからどうするんですか?』

ゆみ『どうとは……』ドキッ

咲『えと、京ちゃんに会ったら何をするんですか?』

ゆみ『……やっぱりわかるものなのか』

咲『それはまあ。同じ人を好きになったんですから』

ゆみ『そんなものか……まあ君にならいいか』

ゆみ『告白するよ。返事はしないと言ったが、告白しないとは言っていないからな』

咲『凄い屁理屈』クスクス

ゆみ『京太郎くんが勘違いしているのが悪い。返事をしないというのがどういう意味だと思っているんだろうな』

咲『同感です。基本的に気配りしてくれて優しいんですけど、たまに抜けてるんですよね』フフッ

ゆみ『まあ彼も私から言ったら意地を張ったりはしないだろう』

咲『そうですね。……すみません。最後にあと1つだけいいですか?』

ゆみ『……意外とグイグイ来るな。まあ構わないが』

咲『ごめんなさい。どうしても聞きたかったんです』

咲『……加治木さんが全国へ行けなかったら、どうしてましたか?』

ゆみ『……変わらないよ。たとえ全国へ行けなくても、私は私から告白していた』

咲『……そうですか。ありがとうございました。おかげで最後勝ってれば、なんて悔いは残らなかったです』

ゆみ『……そうか』

ゆみ『さて、それでは私はそろそろ控室へ戻るよ』

咲『はい。今日はありがとうございました。今度は負けません!』

ゆみ『それは私の台詞でもある。それじゃまた。次やるときもいい試合にしよう』スタスタ

咲『楽しみにしてます! ……』

咲『……』グスッ

---------------------------------------

京太郎「え。え、えっ?」

ゆみ「……思った以上に恥ずかしいなこれは。前と違ってなまじ理性が残っている分つらい」カアァァ

京太郎「い、今なんて……」

ゆみ「君がこの前言ったのと同じだ。もちろん意味も」

京太郎「で、でも俺勝てませんでしたし」

ゆみ「だからこれは返事じゃない。私からの告白だ」

京太郎「けど俺、情けない姿しか見せられなくて……」

ゆみ「もし、それが君の麻雀のことだとしたら、私は本気で怒るぞ」

京太郎「……ゆみ先輩はそう言ってくれても、ゆみ先輩と比べると俺は……」

ゆみ「……」ハァ

ゆみ「なあ、京太郎くん」ズイッ

京太郎「は、はい」ドキッ

ゆみ「告白の返事をしないでいいというのはどういうつもりで言ったんだ?」

京太郎「どうってあのときは……」

ゆみ「いやまあ焦っていたのはわかるが……きっと一種の罰みたいなものと考えていたんだろう」

京太郎「罰っていうと大げさですけど、まあ勝てないようなら返事貰う資格なんかないっていうハードル的な……」

ゆみ「分かってはいたが、やっぱりそういうつもりか……」ハァ

京太郎「ゆみ先輩?」

ゆみ「あのな、京太郎くん。告白の返事をしなくていいというのは、私と君が付き合えないということだ」

京太郎「そりゃまあ、俺はゆみ先輩と付き合えないという意味で言って――」

ゆみ「君がじゃない。私と、君がだ」

京太郎「……え? い、いやでもそれ」

ゆみ「私の気持ち、知らなかったとは言わせないぞ」ポスッ

京太郎「……」

ゆみ「京太郎くんは1年生だからわからないと思うが、3年生になると残りの高校生活の短さを実感するんだ」

ゆみ「全国へ行けるのは早くても半年近く経ってから。近くにいるのにそんなに長い間君とこれ以上親しくなれないなんて、私は耐えられない」

京太郎「ゆみ先輩……」ドキッ

京太郎「俺だってそんなの嫌ですよ!」

ゆみ「……そうか。それなら、返事をしてくれ」ドキドキ

ゆみ「一応言っておくが、これは私が私のためにした告白だからな」

京太郎「はい。……ゆみ先輩、俺も、あなたのことが大好きです!! こんな俺でよければ、よろしくお願いします!」

ゆみ「京太郎くん……ありがとう。嬉しい」ポロ

京太郎「俺のほうこそですよ……ってゆ、ゆみ先輩? 涙が……」

ゆみ「え?」ポロポロ

ゆみ「あ、あれ。気を張っていた反動か……ヒクッ 安心したら止まらないな……エグッ」

京太郎「……ゆみ先輩、落ち着くまでこうしててください」ギュッ

ゆみ「わっ……ありがとう、少し……ヒクッ 胸を借りる」ポスッ

……



ゆみ「……今日は、朝から緊張していたんだ」

京太郎「今日で引退かどうか決まっちゃいますから、そりゃしますよ」

ゆみ「いやそうじゃなく。君がもし全国へ行けなかったら告白しようと決めていたんだ」

京太郎「……ああ、そういえば朝、最後なのとは別に緊張してるとか言ってましたね」

ゆみ「ああ。……君に告白することは決めていたが、断られたらどうしようって頭の中をグルグル回っていたんだ」

京太郎「俺だってゆみ先輩に告白したじゃないですか」

ゆみ「告白されたからって断られる可能性は0じゃない。君が俺はまだ勝ててないからなどというかもしれないしな」

京太郎「うっ……」

ゆみ「……まさか本当に言うつもりだったのか」

京太郎「い、いえ。ただその、頭をよぎらなかったといえば嘘になるかなーと……」アハハ

ゆみ「笑い事じゃない。まったく……」

ゆみ「まあ、これで緊張するのもわかっただろう。OKされて一気に緊張が解けたんだ」

ゆみ「……本当に嬉しかった。ありがとう、京太郎くん」

京太郎「俺のほうこそ、というかほんとは俺からちゃんと言いたかったんですが」

ゆみ「君がバカな条件なんてつけるからだ」ムゥ

京太郎「あはは……ゆみ先輩。涙、もう大丈夫ですか」

ゆみ「ああ、ようやく収まってきた。これで君の顔を見れるよ……京太郎」

京太郎「っ!」ドキッ

京太郎「ゆみ……さん」

ゆみ「さん?」

京太郎「今すぐはちょっと……」

ゆみ「私は呼び捨てのほうが嬉しいんだがな」

京太郎「すみません、俺の問題です」

ゆみ「そうか……まあ追々直してくれ」

ゆみ「……京太郎。もう一度呼んで貰っていいか?」

京太郎「ゆみさん……」ジッ

ゆみ「京太郎……」ジッ

京太郎「……」

ゆみ「……ん」メツブリ

京太郎「! ……」ソーッ

ゆみ「……」ドキドキ

京太郎「……」ドキドキ

京太郎「――」スーッ

桃子「はいそこまでっすよー」

京太郎「うおぉっ!!??」バッ

ゆみ「も、モモ!?」バッ

桃子「お楽しみのところ悪いっすけど電車の時間が迫ってるから帰るっす」

京太郎「お、お前ステルス悪用するなよ! 全然気づかなかったぞ!」

桃子「今回ばかりはステルス関係ないっすよ」チラッ

京太郎・ゆみ「え?」

智美「ワハハー」

睦月「えっと……」

佳織「あはは……」

京太郎「い、いつの間に……!」ガタタッ

智美「入賞おめでとうの辺りかなー」ワハハ

ゆみ「ほぼ初めからじゃないか!!」

桃子「少し離れてただけなのに気づかないのが悪いっす」

睦月「ちなみに他校の人も周りに結構いましたよ。先輩が泣いた辺りから辛くなったのかいなくなりましたけど」

智美「私達も置いて帰ってやろうかと思ったなー」ワハハ

ゆみ「うぁ……」バタバタ

京太郎「ぐおぉ……」バタバタ

佳織「でもなんにせよよかったです。おめでとうございます!」

桃子「そうっすね。ゆみ先輩には上手く騙されたっすけど」

ゆみ「……あれだけ答えないと言っていれば、気を使って来ないだろうと思って誤魔化してたんだがな。私が甘かったよ」ハァ

智美「あれだけ人前でイチャついておいて隠そうだなんて甘いぞー」ワハハ

京太郎「イチャついてなんかいませんて!」

桃子「……動画でも録っておけばよかったっすかね」

睦月「それはさすがに……」

佳織「で、でも効果はありそうだよ!」

京太郎「佳織先輩!? モモのフォローのつもりですかそれは!」

佳織「えと、半分はそうかな」

ゆみ「待て、残りの半分はなんなんだ」

智美「そんなのわかりきってるだろー。それよりほら、いい加減時間がないぞ」

京太郎「お願いですからしっかり反論できる時間を……!」

ゆみ「……まあ時間がないのは確かみたいだし、残りは帰りの電車の中ででも話そう」

桃子「私たちを先に帰らせて、2人は残って楽しんできてもいいんすよ?」

京太郎・ゆみ「するか!」

佳織「え? 意が……あ。それじゃあ私たちは玄関で待ってますね」

ゆみ「何か言いかけたのが気になるが……もういいか」ハァ

京太郎「あはは……それじゃ荷物取ってきますね。行きましょうゆみさん」

ゆみ「ああ、京太郎」フフッ

京太郎「……」キョロキョロ

ゆみ「どうかしたのか?」

京太郎「いえ、ちょっと周りの確認を……よし」

ゆみ「?」

京太郎「」ギュッ

ゆみ「きょ、京太郎!? て、手を……!」アワアワ

京太郎「その、周りに誰もいないみたいなんで……ダメですか?」

ゆみ「ダ、ダメじゃない! た、ただ驚いただけだ!」ワタワタ

京太郎「ありがとうございます!」ギュッ

ゆみ「……」テクテク

京太郎「……」テクテク

ゆみ「……」テクテク

京太郎「……な、なんか緊張しますね」アハハ

ゆみ「あ、ああ。もっと見られて恥ずかしいことはやっているのにな」

京太郎「なんでこんな気分になるんですかね?」

ゆみ「……きっと恋人らしい行為だからだろうな」

京太郎「な、なるほど……」カアァァ

ゆみ「……京太郎」

京太郎「はい」

ゆみ「全国大会が終わって私が引退しても、出来るだけ一緒にいような」

京太郎「はい。学校であんまり会えないのが寂しいですけど」

ゆみ「……部室で勉強するのはありだろうか」

京太郎「嬉しいですけど、集中できますか?」

ゆみ「集中力はある方だと思うが……」チラッ

京太郎「?」

ゆみ「……君に見惚れるかもしれないな」ボソッ

京太郎「~~~!!」カアァァ

京太郎(やべえ、抱きしめたい!)

ゆみ「コホン……京太郎、大好きだよ。これからもよろしく」ギュッ

京太郎「ゆみさん、俺も大好きです。よろしくお願いします」ギュッ

ようやくスレタイ回収が終わった……
今回が書きたくて始めたようなもんでした。
ではまた次回。

いやああああああああああああああああああああ



>確かに北と九索は嶺上牌にあったけど……

さらっと咲さん恐ろしいこと言っとる

睦月「えんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

モモ「いやぁぁぁぁぁぁ」

2人「「うぃうぃうぃらぁびゅぅ~うぅうぅ~」」


どっかのSSでちょうど二人が歌ってるのあったな

京太郎「……そういえばなんで俺は先週怒られたんですか?」

ゆみ「先週? ……君が大声で叫んだときか?」

京太郎「せめて告白と言ってもらえると……いやまあそうなんですけど」

京太郎「さっきゆみせんぱ……ゆみさんも同じ告白したじゃないですか!」

ゆみ「なんだそんなことか」

京太郎「そんなことって……」

ゆみ「私が言おうとしていた台詞を京太郎に言われたんだ。あのくらい言わせろ」プイッ

京太郎「……え? ゆみさんも告白しようって思ってたんですか。しかも同じ台詞で……」

ゆみ「……京太郎が私を好きな気持ちと同じかそれ以上に、私は君のことが好きだよ」

ゆみ「それに私が君に告白するならあの台詞しかないと思った。理由は君と同じだ」

京太郎「」ポカーン

ゆみ「……どうした?」

京太郎「ああいえ、今めちゃくちゃ嬉しいんです。もうなんか、顔が緩まないようにするのが大変なくらい」ニヤニヤ

ゆみ「十分緩んでるぞ」

京太郎「ヤバイ、すっげえ嬉しいです。ゆみさんと同じこと考えてるってだけでこんなに嬉しいんですね……!」ニヤニヤ

ゆみ「私も嬉しいが、京太郎は少し緩みすぎだ」ニコニコ

京太郎「ゆみさんも口元ニヤついてますよ」クスッ

ゆみ「なっ!」ワタワタ

京太郎「ほら、急ぎましょう。電車遅れちゃいますよ」

ゆみ「お、おい。言いっぱなしにするな!」

ゆみ(……同じことを考えている、か)

ゆみ(こんなことでドキドキしてしまうなんて、本当、私もどうしようもないな)ドキドキ

ここからはエピローグ。時期的には9月中旬から下旬くらい?
それでは投下します。

ゆみ「京太郎だけか?」ガラッ

京太郎「はい。先輩たちもモモもまだ来てないですよ」

ゆみ「ふむ。まあちょうどいいか」

京太郎「何かあったんですか?」

ゆみ「ああ。推薦が決まったんだ。早く君に伝えたかった」

京太郎「ほんとですか! おめでとうございます!」

ゆみ「ありがとう、京太郎。これで大学も自宅から通えるよ」

京太郎「はい。……卒業してからも一緒にいられますね」

ゆみ「うん、素直に嬉しいよ」フフッ

京太郎「俺も嬉しいです! にしてもやっぱり不安がることなんてなかったじゃないですかー」

ゆみ「君もこの立場になってみればわかる。第一、私の実績なんて大したものではないからな」

京太郎「全国大会で決勝リーグまで行ったじゃないですか。十分凄いですって」

ゆみ「行ったからこそわかる実力の差というのもあったよ。順位もよくなかったしな」

京太郎「でも少なくとも全国で2桁以内の実力じゃないですか」

ゆみ「それはまあ、うん」

京太郎「じゃあ自信持ちましょう! プロ目指すんですから、謙遜しすぎるのもよくないですよ」

ゆみ「……そうだな。私のことを評価してくれたわけだし」

京太郎「そうですよ。それに推薦が出た大学って藤田プロが推薦してくれたとこでしたよね?」

ゆみ「ああ。合宿で少し話したときに、ちゃんとした指導は受けたことがないと言ったら藤田プロの出身校を紹介してくれたんだ」

ゆみ「まあほんとに紹介だけだったんだがな」

京太郎「自分の力で受かれってことですか。藤田プロらしいですね」

ゆみ「そうだな。プロを目指すならこのくらい他人に頼るなということなんだろう」

京太郎「……プロ目指したのって、やっぱり藤田プロに大学紹介されたからなんですか? 聞いたのは全国終わってからでしたけど」

ゆみ「いや、全国大会が終わってからだよ」

京太郎「そうなんですか? 差を感じたって言ってたような……?」

ゆみ「だからこそかな。悔しかったんだ。特に宮永には一度手が届いた分なおさらな」

京太郎「全国大会の咲凄かったですね。特に最後の照さんをまくったところ、長野の決勝のゆみさんみたいでしたよ」

ゆみ「総合順位で上回ったというところが私と違うがな」フフッ

京太郎「仕方ないですよ。逆転できる点差じゃなかったですし」

ゆみ「わかってる……少し話がそれたな。その宮永や宮永照のような圧倒的に格上の相手に負けて悔しいと思ったんだ」

京太郎「? そりゃ悔しいですよ。俺だってアカギさんや隗さんに負けたときも、当然ってわかってても悔しかったです」

ゆみ「それが君のいいところなんだろうな」

ゆみ「私は団体戦で負けたときも、悔しいというよりは寂しいと感じてたよ」

ゆみ「だからこそ、悔しいと感じたことは自分でも意外だった。勝てるなんて思っていなかったはずなんだがな」

京太郎「……麻雀をするとき、心の底から勝てないと思ってする人なんていませんよ。一度勝てたからそれが表に出ただけです。きっと」

ゆみ「……そうだな。まあ、だから全国大会のあとこのままじゃ終われないと思ってプロを目指そうと思ったんだ」

ゆみ「大体だな……そんな大事なこと、決めたらすぐ君に話すに決まっているだろう」

京太郎「」

ゆみ「ど、どうかしたか?」

京太郎「いえ、愛されてるなあと」ジーン

ゆみ「あ、愛っ!? へ、変なことを言うな!」カアァァ

京太郎「……俺は愛して貰えてなかったんですね」ガクッ

ゆみ「誰もそんなこと言ってないだろう!」

京太郎「冗談ですよ」アハハ

ゆみ「まったく。……そんなこと冗談でもあまり言って欲しくはないな」

京太郎「う、反省します」

ゆみ「ああ。ちゃんと反省してくれ」

京太郎「でもゆみさんがプロ目指してくれてよかったです」

ゆみ「うん? 受験するにせよ麻雀をやめるつもりはなかったが」

京太郎「それはそうですけど……」

ゆみ「けど?」

京太郎「俺はゆみさんの、技術と対応力で相手を倒す麻雀が大好きなんです」

京太郎「牌に愛された子みたいな特別な力がなくても、麻雀を愛してれば対抗出来るんだなって思えて……」

京太郎「これからも全力で打ち込んでるところを見ていたかったんです。……まあ、俺の勝手な押し付けですけど」

ゆみ「……君は恥ずかしいことを平気でいうな」カアァァ

京太郎「ゆみさんが言いますかそれ」

ゆみ「まるで私が恥ずかしいことを言っているみたいな言い方じゃないか」

京太郎「言ってないとは言わせませんよ!?」

ゆみ「……まあいい」プイッ

京太郎(自覚ないわけじゃないんだな)

ゆみ「京太郎にそこまで言われたら私も頑張らないわけにはいかないな。だからその……」

ゆみ「わ、私をその気にさせたのは京太郎だ。だから、責任をとってちゃんと最後まで一緒にいてくれなきゃ嫌だぞ」カアァァ

京太郎「……当たり前じゃないですか。俺こそ一緒にいさせてください」

ゆみ「京太郎……」

京太郎「……」

ゆみ「……」メツブリ

京太郎「……」ソーッ

ゆみ「ん……」ドキドキ

京太郎「――」スーッ

ゆみ「……んっ」チュッ

京太郎「……な、なんか恥ずかしいですね」カアァァ

ゆみ「そ、そうだな」カアァァ

ゆみ「……でも、嬉しい。ようやく君と出来た」

京太郎「モモとかに邪魔されてなかなか出来ませんでしたもんね。……」ジーッ

ゆみ「? ……っ! あ、あまり唇を見つめるな。恥ずかしいだろう」バッ

京太郎「す、すみません! つい……」

ゆみ「……実は、さっきは嬉しさでいっぱいでな。あまり感触がわからなかったんだ」

京太郎「! お、俺もです」

ゆみ「だからな、その……」チラッ

京太郎「……目、閉じてください」

ゆみ「……うん」スッ

京太郎「――」ドキドキ

ゆみ「――」ドキドキ

睦月「……」ドキドキ

佳織「……」ドキドキ

桃子「……」ニヤニヤ

京太郎「……え?」

ゆみ「どうかし――っ」

桃子「こんにちはっすー!」ニヤニヤ

京太郎「っ!」ガタタッ

ゆみ「っ!」ガタタッ

睦月「あ、ご、ごめんなさい。気にしないでください!」

佳織「ど、どうぞ続けてください!」

ゆみ「続けられるか! いつからいたんだ!?」

桃子「最初はドアの窓から隠れて見てたっすから、どこからかはわからないっす。まあキスする前っすね」

京太郎「隠れるなよ! というか見るなよ!」

睦月「うむ。それはもっともだけど、今まで何度も邪魔しちゃったから今回は見守ろうと思って……」

京太郎「見る必要あります!? 気を使って見るのもやめてくださいよ!」

睦月「そこはまあ……好奇心?」

京太郎「素直ですね畜生!」

桃子「でもキス終わってからドア開けて入ったのに、気づかれなかったのは予想外だったっす」

ゆみ「え?」

桃子「だからキスした後冷やかそうと思ってドア開けたのに、気づかなかったじゃないっすか。おかげでいいもの見れたっすけど」

佳織「集中してましたよね。2人だけの世界って感じでした」

ゆみ「……うぅ」ガクッ

京太郎「ゆみさん!? しっかりしてください!」

ゆみ「どこかに消え入りたい気分だ……」

京太郎「俺がついてますから。恥をかくときは2人一緒ですよ!」

ゆみ「京太郎……」ジーッ

京太郎「ゆみさん……」ジーッ

桃子「そこのバカップルはほんと懲りないっすねー」

ゆみ「ひゃっ!」バッ

京太郎「うおっ!?」バッ

睦月「邪魔して悪いけど、そろそろ部活始めよう?」

京太郎「い、いえ。全然悪くないです! むしろ歓迎です!」

佳織「三麻やっててもいいけど……」

京太郎「大丈夫ですから!」

睦月「加治木先輩はどうされます? 久しぶりに打ちますか?」

ゆみ「いや、邪魔になっては悪いから。ここでおとなしくしているよ」

睦月「わかりました……じゃあ皆、始めよう」

一同「はい!」

……

智美「遊びに来たぞー」ガラッ

京太郎「あ、ぶちょ……智美先輩」タン

智美「そろそろ慣れようなー。部長はむっきーだぞ」

睦月「ちゃんと私のことも部長って呼んでくれてますよ。智美先輩は1日ぶりですね」タン

智美「昨日は来れなかったからなー。毎日来たいんだけ……」

ゆみ「お前、そんなに来ているのか」

智美「ゆ、ゆみちん!? め、珍しいじゃないか」ワハハ

ゆみ「今日は推薦が決まったからその報告にな」

智美「おお、決まったのかー! ゆみちんおめでとう!」

ゆみ「ありがとう。後は蒲原だな。さあ勉強をするぞ」

智美「ちょ、ちょっとくらい息抜きも」

ゆみ「来たばかりで息抜きも何もないだろう。早くノートを出せ」

智美「ワハハ……」

智美「ゆみちん、ここ教え――」

ゆみ「……」ジーッ

京太郎「……」タン

智美「……ゆみちん?」

ゆみ「はっ! どうした?」ワタワタ

智美「京太郎と何かあったのかー?」

ゆみ「な!? な、なにもないぞ」

智美「ゆみちんはいつも京太郎のこと見てるけど、今日はいつもより見てる時間が長いからなー」ワハハ

ゆみ「うっ、無意識にそんな……」

智美「それで何したんだー?」ワハハ

ゆみ「……キスした」ボソッ

智美「ワハッ!?」

ゆみ「な、なんだ。悪いか!」

智美「いやーちょっと驚いたぞー。そうかついにかー」ワハハ

ゆみ「誰のせいだ誰の」

智美「確かに何度か邪魔したけど悪気はなかったんだぞ?」

ゆみ「信じられるか」

智美「まあまあ。それで1度目は告白のときで、2度目は全国大会だったかー?」

ゆみ「その次は公園。その後は学校でだったな。……4回だぞ!」

智美「不幸な偶然だなー」ワハハ

ゆみ「どれだけ気まずくなったことか……」

智美「まあ遅くなったけど出来てよかったじゃないか」

ゆみ「……あ、ああ」カアァァ

智美「ちなみにモモたちは知ってるのかー?」

ゆみ「……まあ、見られたしな」プイッ

智美「そうなのかー」ワハハ

智美(後で様子を聞いておこう)ワハハ

睦月「お疲れさま。今日はこれで終わりにしよう」

京太郎「お疲れさまでした! くそー全然勝てなかった」

桃子「あんなとこ見せられたら麻雀で勝たせるわけには行かないっすよね」

京太郎「ちくしょう、いいとこ見せたかったのになあ」

ゆみ「大丈夫。結果には出ていなかったけどよくなってるよ」

京太郎「ありがとうございます!」

智美「むっきーも部長が板についてきたなー」

睦月「いえ、まだまだ先輩たちのようには」ハァ

智美「まあ私にはゆみちんがいたからなー」ワハハ

智美「そうだ。推薦も決まったんだし、ゆみちんも手伝ってあげたらどうだ? 自分の練習も必要だろー?」

ゆみ「いや、引退した私がいては津山もみんなもやりづらいだろう」

睦月「そんなことないですよ。まだまだ教わりたいこともありますし、加治木先輩の練習の手伝いもさせてください」

ゆみ「しかし……」

佳織「えっと、加治木先輩は今も京太郎くんに教えてるんですよね?」

ゆみ「……それは、うん」チラッ

京太郎「ゆみさんも忙しいからずっとってわけじゃないですけど」

佳織「それなら私たちにも教えてくれると嬉しいです」エヘヘ

ゆみ「……わかった。それならもう少しお世話になるよ」

桃子「決まりっすね!」

智美「それじゃあ私もお世話になろうかなー」ワハハ

ゆみ「……蒲原の勉強を見ながらになるが、よろしく」

一同「よろしくお願いします!」

蒲原「ワハッ!?」

…………

………

……

ゆみ「じゃあまた明日」

京太郎「お疲れさまでしたー」

一同「さよならー」

ゆみ「さて、私たちも帰ろうか」

京太郎「はい」

ゆみ「……今日は家まで送ってもらっていいか?」

京太郎「もちろんです! というか毎日送るって言ってるじゃないですか」

ゆみ「君が大変だろう」

京太郎「そんなことないって言ってるのに……」

ゆみ「私の家がもう少し近ければ別なんだが……京太郎に無理をさせたくないという私の気持ちもわかってくれ」

京太郎「それは嬉しいですけど」

ゆみ「まあいいじゃないか。週に1回くらいは君に送ってもらってるんだから」

京太郎「……そうですね。それじゃたまにしか一緒に帰れない分、頑張って送りますよ!」

ゆみ「ああ……いや、ゆっくりでもいいぞ」

京太郎「……はい、じゃあゆっくりめで」

……

ゆみ「――それは君らしいじゃないか」フフッ

京太郎「そんなことないですって」ムゥ

京太郎「……そういえば今日はなんで送らせてくれたんですか?」

ゆみ「うん?」

京太郎「今週は一度送ったじゃないですか。だから珍しいなって。いや嬉しいですけど」

ゆみ「ああ、なるほど。それは……その、今日君と、しただろう?」カアァァ

京太郎「? ……っ! は、はい」カアァァ

ゆみ「あ、あのときはすぐモモたちが来ただろう? だからその、余韻というか、君と2人の時間が欲しかったというか……」

ゆみ「と、ともかく! だから君に送って貰いたいと思ったんだ」

京太郎「は、はい! その……俺も一緒にいたかったです」

ゆみ「そうか……嬉しい」ギュッ

京太郎「!」ドキッ

ゆみ「……久々にこの状態でドキドキさせられたかな」フフッ

京太郎「くっ……今度俺がドキドキさせてリベンジしますからね!」

ゆみ(いつもさせられてるんだけどな)ギュッ

京太郎「ゆみさん?」

ゆみ「いや、楽しみにしてるよ」フッ

――加治木宅前――

京太郎「ゆみさん、着きましたよ」

ゆみ「ああ、もう着いてしまったか」

京太郎「話してると早いですよね……やっぱり俺が毎日送りますよ!」

ゆみ「それはダメだ」

京太郎「強情ですね」グヌヌ

ゆみ「それは君の方だろう」

ゆみ「……まあ、その代わりに」

京太郎「?」

ゆみ「……」コイコイ

京太郎「? はい」テクテク

ゆみ「――」グッ

京太郎「えっ――!」

ゆみ「」チュッ

京太郎「」

ゆみ「…………」スッ

ゆみ「……お、送ってくれたお礼だ。どう、だったかな」カアァァ

京太郎「えっと……」スッ

ゆみ「うん? ――!」

京太郎「」チュッ

ゆみ「!?」

京太郎「…………」フゥ

京太郎「こんな感じです」ニコッ

ゆみ「ば、馬鹿か君は!?」カアァァ

京太郎「ち、違いますよ! 突然されたからよくわからなかったんでもう一度しようと……」

ゆみ「すぐやり返すやつがあるか!」

京太郎「で、でもちゃんと感触はわかりましたよ。柔らかくて……」

ゆみ「……ふぁ」カアァァ

京太郎「……や、やめましょうか」カアァァ

ゆみ「あ、ああ。思った以上に恥ずかしいなこれは……」カアァァ

京太郎「それじゃそろそろ帰ります」

ゆみ「うん……なんだか寂しいな。いつもはこんなことないのに」

京太郎「俺もです」

ゆみ「……寄っていくか?」クイッ

京太郎「……ご両親いらっしゃるんですよね?」

ゆみ「母だけな」

京太郎「ま、まだ勘弁してください。心の準備が……」

ゆみ「まあそういうと思ってたよ」

京太郎「明日からはまた毎日部活で会えますね」

ゆみ「そうだな。……今度こそ全国へ行けるように鍛えるから覚悟するように」

京太郎「うっ。甘い部活生活はないんですかっ」

ゆみ「そういうのは部活の後だ」

京太郎「厳しいですね……まあ、俺も強くならないと」

ゆみ「ああ、私も頑張るから京太郎も一緒に頑張ろう」

京太郎「はい!」

ゆみ「……これからもよろしく。大好きだよ、京太郎」ニコッ

カン!

長い間お付き合いありがとうございました。
前回にカンつけようかと思ったんですが、とりあえずキスまでやっとこうと思ってエピローグまで。
一応完結させましたがいくつか書きたい小ネタがあるのでまた来ます。
それではまた。

ゲームにうつつを抜かしている間に2週間も……
小ネタなので短いですが投下します

京太郎「モモー、いるかー?」ガラッ

桃子「いるっすよー。どうかしたっすか?」

京太郎「やっぱ部室にいたのか。先生が呼んでたぞ」

桃子「あー進路調査っすかねえ」

京太郎「まだ出してなかったのか? まだ1年だし適当に書いてればいいだろ」

桃子「そういう適当なの好きじゃないっす!」

京太郎「そう言って遅れてりゃ世話ないって」

桃子「それはまあそうなんすけどね。とりあえずあと少しだし、これ読み終わったら行くっす」ペラ

京太郎「さっさと行けよ……何読んでんだ?」

桃子「少女漫画っすよー。ゆみ先輩に借りたっす」ペラ

京太郎「ゆみさん少女漫画好きなのか」

桃子「前に少女漫画の2人乗りのやり方を真似たとかあったじゃないっすか」

京太郎「あー……?」

桃子「ああ、そういえばあのとき京太郎は一瞬意識飛んでたっすね」

京太郎「お、俺はそんなことを忘れたのか!? ちくしょう!」

桃子「一緒に帰るとき毎回2人乗りしてるんすから、今更そんなのいいじゃないっすか」ペラ

桃子「まあともかく、ゆみ先輩は少女漫画大好きっすよ。私から貸すこともあるけど、借りるほうがずっと多いっすね」

京太郎「そうなのか」

桃子「そうだ、ゆみ先輩にこの主人公みたいなことやってみたらどうっすか?」

京太郎「どれだ?」

桃子「これっすよ。後ろからギューッて。俗にいうあすなろ抱きっすね!」キャーッ!

京太郎「こ、これはちょっと恥ずかしくないか」

桃子「女の子がやってもらいたい抱きしめ方第1位っすよ!」

京太郎「これやってゆみさんに拒否られたら俺立ち直れねえぞ……」

桃子(ゆみ先輩が嫌がるとか本気で言ってるんすかねこれ)

桃子「まあまあ、騙されたと思ってやってみるといいっす」

京太郎「いやでもなあ……」

桃子「……しょうがない、先にネタばらししてあげるっす」

京太郎「ネタばらし?」

桃子「ゆみ先輩がこれ見て『……いつか、私もやってもらいたいな』って言ってたんすよ」

京太郎「マジで?」

桃子「大マジっす。ゆみ先輩の望みを叶えるためにもやるっすよ!」

京太郎「そういうことなら……!」

桃子「その意気っす。私は先生のところに行ってくるから頑張るっすよー!」

京太郎「おう!」

ゆみ「京太郎、もう来ていたのか」ガラッ

京太郎「ゆ、ゆみさん!?」ガタッ

ゆみ「な、なんだ?」ビクッ

京太郎「あ、す、すみません。特にどうというわけでは……」

ゆみ「おかしな奴だな」クスクス

京太郎「部長たちは説明会とかで遅れるみたいです」

ゆみ「ああ、もうそんな時期か。懐かしいな」

京太郎「ゆみさんはこの時期には進路決めてましたか?」

ゆみ「おおまかにはな。……まあ、プロを目指そうとは露ほども思っていなかったよ」

京太郎「試合とか出れてなかったですもんね」

ゆみ「ああ、私がプロになろうと思ったのは君のおかげだよ」

京太郎「お、俺ですか? 別に何もしてないですよ?」

ゆみ「そんなことはないさ。少なくとも全国へ行けたのは、長野の決勝で宮永に勝てたのは君がいたからだ」

京太郎「?」

ゆみ「分からなければそれでもいいよ」フフッ

京太郎「気になるじゃないですか」

ゆみ「……それじゃ、私が君に感謝しているということだけ分かってくれ」ボソッ

京太郎「……! は、はい」カアァァ

ゆみ「……へ、変なことを言ってしまったな。ええと、この間の牌譜は……」クルッ

京太郎「……ゆみさん!」ダキッ

ゆみ「ひゃっ!?」

京太郎「俺こそゆみさんには感謝してもしきれないですよ。麻雀を始めたのも、少しずつでも上手くなっているのも……」

ゆみ「わ、わかった。わかったから!」アワアワ

京太郎「……あれ? い、嫌でした?」ギクッ

ゆみ「い、嫌なわけないだろう。ただ突然だったから……」カアァァ

京太郎「よかった……! 嫌がられたらどうしようって思ってました」ギュウ

ゆみ「ひゃぅ……な、なんでこんなことしようと思ったんだ?」カアァァ

京太郎「モモからゆみさんがこういうの憧れてるって聞いたんですよ」ギュッ

ゆみ「……ちょっと待て。私はそんなことを言った覚えはないぞ」

京太郎「……え?」

ゆみ「そもそも憧れてもいない」

京太郎「えっえっ?」

京太郎「えっと、じゃあこれは……」ダラダラ

ゆみ「……」

京太郎「……あ、メールが」


桃子『先生にこってり絞られたんで今日は部活行かないで帰るっす(/_;)』

桃子『PS.騙されたと思ってやってくれたみたいっすね! ちゃんと写真も撮ったっすよ!(≧∇≦)/』


京太郎「……そういうのは騙されたと思ってって言わねえよ!!」

ゆみ「……写真も添付してあるな。というか部室に来てるじゃないか……モモお前その辺りにいるだろう!?」

シーン

京太郎「……くそっ、あいつ本当に帰ったみたいですね」

ゆみ「そのようだな……」ハァ

京太郎「……」

ゆみ「……」

京太郎「……」ギュッ

ゆみ「あっ」

京太郎「ハッ、す、すみません! つい無意識に! い、今離します」ワタワタ

ゆみ「ま、待った」ギュッ

京太郎「……? ゆみさん?」

ゆみ「もっと……」

京太郎「へ?」

ゆみ「も、もっとやってくれ。嫌じゃ、ないから」カアァァ

ゆみ「その、君に包まれているようで安心するというか落ち着くというか」

ゆみ「いつも君の後ろから抱きついているけれど、こうして抱きしめられるのもいいなというか……」ハッ

ゆみ「わ、私は何を言っているんだ……」カアァァ

京太郎「」ズキューン

ゆみ「きょ、京太郎? すまない、今のは忘れて……」

京太郎「忘れられるわけないじゃないですか!」ギュッ

ゆみ「きゃっ!?」

京太郎「ああもう、ゆみさん大好きです!!」ギュー

ゆみ「きょ、京太郎!?」アワアワ

京太郎「ゆみさんすげー可愛いです。愛してます! もう一生離しません!」ギュゥ

ゆみ「ば、バカなことを言うな。その、嬉しいがこんなところを見られたら……」

京太郎「大丈夫ですってモモも来ないって言ってま――」

ガラッ

睦月「こんにち――」

佳織「遅くなってごめ――」

京太郎「……」(抱きしめてる)

ゆみ「……」(抱きしめられてる)

一同「………………」

睦月「す、すみませんでしたー!」ダダダッ

佳織「ご、ごゆっくりー!」タタタッ

ゆみ「ま、待て! ち、違う、これは違うんだ!」バッ

京太郎「そ、そうです! モモに騙されて!」バッ

佳織「そんな力強く抱きしめといて何言ってるの!?」タタタッ

睦月「今日は自主練習にしておきますから!」ダダダッ

京太郎「ちょ、せめて走りながら抱きしめてとか言うのはやめてください!!」

ゆみ「……行ってしまったな」

京太郎「……まあ、冷静に考えたら誤解も何もないですよね」

ゆみ「まったくだ。何をしていたんだ私たちは……」ガクッ

京太郎「どうしましょう。もう今日はみんな来ないでしょうし帰ります?」

ゆみ「そうだな……。もう誰も来ないか……」ハッ

ゆみ「じ、実はいい麻雀の教本を持ってきたんだ。よければ一緒に読まないか?」

京太郎「いいですよ。……って一緒に?」

ゆみ「あ、ああ。2冊あればよかったんだが1冊しか持っていないんだ。だから一緒に……」

京太郎「一緒に……も、もしかしてさっきので?」

ゆみ「……」コクッ

京太郎「……わかりました。じゃあそこのソファーで。俺の上に座ってください」

ゆみ「! あ、ああ」

京太郎「はい、どうぞ」

ゆみ「それじゃあ……ど、どうだ? お、重かったら言ってくれ」

京太郎「重くなんてないですよ。むしろ軽いです。……それよりあんまり深く腰掛けないでくださいね」

ゆみ「なぜだ?」

京太郎「えっと……まずいので」

ゆみ「? まあわかったよ」

京太郎「ありがとうございます。じゃ、じゃあ本借りますね」

ゆみ「あ、ああ。その、一緒に勉強しよう」

京太郎「は、はい」

京太郎「……」ペラ

ゆみ「……」

京太郎「……」ペラ

ゆみ「……落ち着くな。普段より頭に入ってくる気がする」

京太郎「俺も全然眠気とか感じないです。本読んでるとよく眠くなるんですけど」

ゆみ「……そういうことを言っているのではないんだが」ハァ

京太郎「え!?」

ゆみ「まったく、もっと知識も付けないとダメだぞ」フフッ

京太郎「はーい」


イチャイチャ


智美「……なんだこれは」

あすなろ抱きやらせてみたかった
今日はここまで
次回はもうちょい早く来れるよう頑張ります

今回は小ネタは新人戦
それでは投下します

――新人戦――

京太郎(これを通さないときっと勝てない……!)

下家「……それだ。ロン。8000」

京太郎「うげ……」ガクッ


アナ『試合終了ーー! 須賀選手、最後の最後で振り込んでしまいました』

藤田『夏のような回避は出来なかったか。まあミスをして振り込んだというわけではないが』

アナ『これで須賀選手はこの卓で3位に転落。現在総合順位は4位ですから3位以内に入るのは難しくなりました』

藤田『上位のミス待ちだが、こういう流れではそれも期待薄だろうな』


京太郎「なんであんなの切ったかなあ……」

下家「よう、また会ったな」

京太郎「あ、下家(しもや)さん」

下家「3ヶ月で随分上手くなってるじゃねえか。夏大じゃ俺もヤバイかもな」

京太郎「1位の癖に何いってんですか」

下家「まあ負ける気はねえよ。リベンジは夏までしか受け付けてねえからな。楽しみにしてるぞ」スタスタ

京太郎「……俺が負けられなかったのは今回だったんですよ」ハァ

京太郎「はぁ……」ガチャ

桃子「お疲れさまっす。ため息なんてついてどうしたっすか?」

京太郎「最後の最後で振り込んだからだよ……ちなみに順位はどうだった?」

桃子「変わらずっすね。4位っす」

京太郎「あー、やっぱりそうか……」ガクッ

睦月「落ち込むな……って言ってもダメかな。後一歩だったね」

京太郎「はい……」ハァ

桃子「そんなに落ち込むことないすっよ。麻雀初めて1年も経たないのに県4位なんて凄いじゃないっすか」

京太郎「上出来だとは思うけど、どうしても、というか出来れば今回全国へ行きたかったんだよ……」

桃子「そりゃあ出来れば勝ちたいのは当然っすけど、そんなこと言ったらキリないっすよ」

京太郎「まあ確かに負けてから言ってもしょうがないんだけどな……」ズーン

佳織「そんな顔してたら加治木先輩に心配かけちゃうよ? いい成績だったんだから胸を張らないと」

京太郎「ゆみさん……」ハァ

佳織「あ、あれ? 余計元気なくなった?」アセアセ

桃子(あーもしかして)

睦月(加治木先輩がいる間に全国に行きたかったのかな……?)

睦月(加治木先輩は別に気にしないと思うけど……本人の問題だしなあ)ムムム

桃子「……ほら! クヨクヨするのはその辺にして、私たちの応援するっすよ!」

睦月「! そうだね。せっかく私たち3人決勝に行けたんだから、頑張って応援してもらわないと」

京太郎「……そうですね。すみません、自分が終わったからって……」

睦月「ううん。ただ、それは私たちじゃどうにも出来ないから、帰ってからゆっくり2人で話してね」フフッ

京太郎「えっ」ギクッ

桃子「あれだけわかりやすかったんすから、そんなバレたみたいな顔しないで欲しいっすね」

京太郎「ええ!?」

佳織「えっえっ?」

桃子「かおりん先輩はそれでいいんすよ」ポンッ

佳織「気になるなぁ……」

睦月「後で教えるから、今は決勝をがんばろう」

佳織「うん。わかった!」

桃子「それじゃ行ってくるっす。応援ちゃんとするっすよー」

京太郎「ああ、分かってるよ。先輩たちも頑張ってください!」

――帰りの電車――

桃子「~♪」

佳織「嬉しそうだねー」

京太郎「電車の中であんまりはしゃぐなよ?」

桃子「あれ、僻みっすか? 僻みっすね? 男の嫉妬は見苦しいっすよ~♪」プププ

京太郎「殴りてえ……!」

佳織「だ、ダメだよそんなことしちゃ」

京太郎「そりゃしませんけど気分として……!」

睦月「まあまあ、全国に行けたんだから今日のところは多目にね」

桃子「そうっすよ。心を広く持つっす!」

京太郎「本人に言われると腹立つな!」

睦月「あはは。……それにしても夏と秋、連続で全国出場するなんて想像もしてなかった」

桃子「来年はきっと新入部員たくさん来るっすよー!」

佳織「そうだね。新入生に負けないかちょっと怖いな」ブルブル

京太郎「佳織先輩は大丈夫ですよ。何があっても入れます」

佳織「京太郎くん、3年生だからってそれはよくないよ」

京太郎「いや、実力ですよ」

佳織「……? あ、それまでに上手くなれってことだね。頑張ります!」

京太郎「…………はい!」

佳織(少し間が空いたのが気になるなあ……?)

桃子「次は団体で全国に行きたいっすね」

睦月「うむ。私も部長として恥ずかしくないように頑張らないと」

京太郎「団体戦は俺も出たいなあ」

佳織「来年は出られるんじゃないかな? 夏の最後の試合はかっこよかったよ」

京太郎「ほんとですか! 俺に憧れる後輩が出来るのか……!」

桃子「今日の最終戦で振り込んだのがどう出るかっすね」

京太郎「忘れようとしてたのに言うなよそれを……」ガクッ

睦月「大丈夫だよ。別にミスってわけじゃないんだし」

京太郎「結果的に振り込んじゃいましたから……」

桃子「まったく、いつまでも引きずるんじゃないっすよ」

京太郎「誰のせいだよ!?」

佳織「まあまあ。そろそろ着くよ」

京太郎「あ、ほんとですね。モモなんかにかまってる場合じゃありませんでした」

桃子「なんかとは失礼っすね」

京太郎「お前が悪い」

桃子「んー! 疲れたっすー!」

佳織「だいぶ遅くなっちゃったね。もう暗くなってる」

睦月「もう秋だね。夜になると寒いや」ブルッ

京太郎「ですねえ。……これじゃ今日はゆみさんに報告出来ないなあ」

睦月「え? まだしてなかったの?」

京太郎「はい。直接言おうと思って。もうちょっと早く帰れるかなと思ってたんですが」

桃子「勝ってたらいいっすけど負けてるとあれっすね」

京太郎「わかってるよ! 言うなよ!」

睦月「でもそれなら悪いことしちゃったかな。蒲原先輩に結果送っちゃったから、もしかしたら加治木先輩にも伝わっちゃってるかも」

京太郎「まあそれはそれでしょうがないです。どっちにしろこれじゃ明日になりますから、ニュースか何かで知っちゃうかもしれないですし」

佳織「もう一本早い電車に乗れてればよかったね」

京太郎「そうですね。電車が少ないと辛……!?」

ゆみ「おかえり、京太郎」

京太郎「こ、こんな寒い中何やってんですか!?」

ゆみ「寒さは大丈夫だよ。ほら」ピトッ

京太郎「わっ!?」

ゆみ「カイロを持ってきてるんだ。さっきまで電車にいた君の頬より暖かいだろう。まあカイロを使うには時期が少し早いが」

京太郎(あわわわわ。やばい、顔が熱い。いや手が熱いから顔も熱くなってるんだけどそれだけじゃなくて……)

京太郎「って、そうじゃなくて! それはそれです! カイロがあるからってこんな寒い中ずっと外にいたら体に良くないです」

ゆみ「京太郎が頑張って来たんだからこれくらいなんてことはない。それにしょうがないだろう。君の結果を早く聞きたかったんだ」

京太郎「すげえ嬉しいですけど、もっと自分の体も大事にしてください。せめて喫茶店とかで待ってるとか」

ゆみ「しかし……」

京太郎「しかしじゃないです」

ゆみ「わかった……」シュン

京太郎「あ、い、いや。凄い嬉しいんですよ? 嬉しいんですけどゆみさんのほうがずっと大事なので……」

ゆみ「大丈夫、わかってるよ。ありがとう」

ゆみ「ところで結果はどうだったんだ?」

京太郎「ええと……」

桃子「私は全国出場出来たっすよー!!」

ゆみ「本当か!? 凄いじゃないかモモ!!」

桃子「先輩に続いて夏秋連続っす! 鶴賀も強豪の仲間入りっすよ!」

ゆみ「よくやった!」

桃子「嬉しいっす!」

京太郎(モモおおぉぉぉ!! お前が先に言うと俺が言いづらいじゃねえか!! せ、せめて最後にならないように……)

京太郎「俺h」

睦月「私は決勝リーグには行けました。順位はあまり良くありませんでしたけど……」

佳織「私も決勝リーグに出場出来ました! でも順位は良くなかったです……」

ゆみ「そうか、2人もよく頑張った。夏は予選で敗退してしまっていたんだから、よく成長しているよ」

ゆみ「順位なんて後から付いてくるものだ。そんなに気にする必要はないさ」

佳織「はい、ありがとうございます」

睦月「わかりました。でも部長として恥ずかしくないくらいの順位は取っておきたかったです……」

ゆみ「別に部長が強くなければならないというわけじゃない。要は部をまとめられるかどうかだよ。蒲原もそうだろう?」

睦月「……そうですね。蒲原先輩みたいになれるよう頑張ります」

京太郎(先輩ー! いい話なんですが、前とほとんど変わらない俺が余計言いづらい空気に!!)

ゆみ「……それで京太郎は――」

桃子「あ、もう遅いし私たちは先に帰ってるっす」

睦月「2人でゆっくりしてください」

佳織「京太郎くん、加治木先輩を送って行ってね」

ゆみ「ん、そうか」

京太郎「ちょ、お、おいモモ」

桃子「なんすか?」

京太郎「お前こんな雰囲気で置いてくなよ! 前回と似たような感じでしたなんて言いづらいじゃねえか!」ヒソヒソ

桃子「……や、正直惚気けるの分かっててこの場に居るのはちょっと」

京太郎「はあ!?」

桃子「……そんな心外だみたいな顔されても」

ゆみ「……何をこそこそ話しているんだ?」

京太郎「い、いえ。なんでもないですよ」アハハ

桃子「それじゃ私たちはお先に」

睦月「さよならー」

佳織「また明日ね」

京太郎「うわ、ほんとに帰った……」

ゆみ「いいじゃないか。その、き、気を使ってくれたんだろう」

京太郎「まあそうなんでしょうけど……」

ゆみ「……それに、2人きりになったのにそんな顔をするのはどうなんだ」

京太郎「あ、いえ、決して嫌というわけではなくてですね……」アセアセ

ゆみ「それはわかっているが……まあなんだ。し、嫉妬したくなるからやめてくれ」カアァァ

京太郎(あ、やばい。めちゃくちゃ嬉しい)ジーン

ゆみ「そ、そんなことより! 大会の結果はどうだったんだ!?」

京太郎「うっ」ギクッ

ゆみ「?」

京太郎「そ、その……4位でした」

ゆみ「……なんだ、さっきから言いづらそうにしていたから何かと思えば。いい成績じゃないか」

京太郎「いえ、モモが全国に行ったり、睦月部長たちは決勝リーグに進めるようになったり成果上げてるのに、俺だけほとんど変わりないですし……」

ゆみ「そうか? 4位になれたんだ。私は十分成長したと思うよ」

京太郎「でも得点的にも前回と比べて誤差くらいのもんですよ?」

ゆみ「そうかもしれないが、今回は前回までいた2人の魔物が混ざっていないだろう?」

ゆみ「あまり場が荒れない中でそれだけの点数を稼いだんだ。よく頑張った」

京太郎「それはそうかもしれませんけど」

ゆみ「ただまあ、それとは別に後一歩で全国へ行けなかったというのは単純に悔しいだろうと思う」

京太郎「……そうですね。夏に続いてですし」ガクッ

ゆみ「お疲れ様ということで残念会……というと失礼かな。ともかく、よければこの辺りで食事でもしていこう。今日は私が奢るよ」

京太郎「家の方は大丈夫ですか?」

ゆみ「遅くなるかもと伝えてあるから問題ないよ。帰り道も君が送ってくれるだろう?」

京太郎「それはもちろん」

ゆみ「なら安心だ」フフッ

京太郎「じゃあ行きましょうか。……でも奢るのはいいですよ。というかむしろ俺が出しますって!」

ゆみ「君をねぎらうのに君が出しては本末転倒だろう」

京太郎「じゃあせめて割り勘で」

ゆみ「ダメだ。今日は先輩として私が出す」

京太郎「いやでも……」

ゆみ「それじゃあ次は彼氏として京太郎が出してくれ。それでいいだろう?」

京太郎「……わかりました。それじゃ今日はご馳走になります」

ゆみ「うん、素直なのが一番だ」

京太郎「それじゃどこに行きます?」

ゆみ「私の好きな店があるんだ。そこでいいか?」

京太郎「いいですよ」

ゆみ「わかった。それじゃ行こうか」

京太郎「はい」ギュッ

ゆみ「!」

京太郎「どうかしました?」

ゆみ「……いや、なんでもない。案内するよ」

京太郎「わかりました」

ゆみ(寒いと言ったからかな。恋人繋ぎ)

ゆみ(初めてではないけれど、自然にやってくれたのは多分初めてだ。恋人らしくなっているのかな)フフッ

京太郎「ゆみさん、なんか嬉しそうですね」

ゆみ「ああ、京太郎のおかげだよ」

京太郎「え?」

ゆみ「ふふっ」

京太郎(……よくわからないけど、ゆみさんが嬉しそうだしいいか)

今日は以上です
次はもうちょっと短くまとめられるよう頑張る

乙です
この二人が一番好きなので嬉しい

>>784
おお、同志。一番好きって人は初めて見ました

それでは投下します

咲『こんばんはー』

ゆみ『こんばんは』

咲『この間京ちゃんと会っちゃいました。加治木さんのいないところで2人きりで』

ゆみ『ああ、私は大会に行かなかったからな』

咲『普通に返されてちょっと悲しいです』

ゆみ『何を期待しているんだ何を』

咲『ちょっと焦らせようと思ってもいいじゃないですか!』

ゆみ『はぁ……』

咲『まあそれは置いておいて、東横さんの全国出場おめでとうございます』

ゆみ『ああ、よくやってくれたよ』

咲『私も振り込んじゃいましたから、全国ではリベンジしたいです!』

ゆみ『リベンジも何も勝っているだろう。まさか一度も振り込まないことを目指しているのか……?』

咲『そ、そういうわけじゃ』

ゆみ『ふふ……君も断トツでの全国出場おめでとう。全国2連覇へ向けて好調だな』

咲『うーん、でも全国には大星さんとか荒川さんとか強い人がたくさんいますから……』

ゆみ『同じ長野の代表として、モモの次に応援してるよ』

咲『ありがとうございます!』

咲『……ところで、京ちゃんはどうでしたか?』

ゆみ『どうというと?』

咲『その、また後一歩ってところで負けちゃったから落ち込んでたりとかは……』

ゆみ『……そうだな。落ち込んでいたよ』

咲『そうですか……』

ゆみ『もう少しだったみたいだからな。多少はしょうがない』

咲『(ここで私が元気づければ……!)』

ゆみ『こら、何を考えている。それにその日のうちに私が元気づけたからもう遅いぞ』

咲『ちぇー』

ゆみ『本当に毎回油断も隙もないな……』

咲『本気なら書きませんって』

ゆみ『どうだか』

咲『信用してください!(>_<)』

ゆみ『……悪いと思って今まで聞いていなかったんだが……夏大の後京太郎に告白したりしたのか?』

咲『……それを私に聞くんですか?』

ゆみ『冗談と分かっていてもさすがにこう何度も言われると気が気じゃないんだ』

咲『……断られると分かっててするわけないじゃないですか!!』

ゆみ『……そうか、それはすまなかった』

咲『そうですよ。するなら京ちゃんと加治木さんが別れてからです』

ゆみ『おいこら』

咲『傷心の京ちゃんを慰める私。そしてずっと好きだったのと囁く』

咲『いつも身近にいた幼なじみからの突然の告白。離ればなれになって何かが足りないと思っていた京ちゃんは本当に大切だったものに気がついて……』

ゆみ『それが狙いかお前は!!』

咲『別れるまでは何もしないので安心してください!』

ゆみ『出来るか!!』

咲『待つのは私の自由です!』

ゆみ『うっ……』

咲『……最初は私も諦めようと思って部活のみんなにそう言ったんですけど、優希ちゃんからそんなことで諦めるのかって言われて……』

咲『部長……竹井先輩からも確かに2人が別れる可能性は低いかもしれないけど、悪待ちって意外と来るものよって言われたんです!』

ゆみ(久か! あいつがこの元凶か!)

咲『でも本当に私から何かすることはないので安心してください。恨まれるからやめたほうがいいわよって言われましたし』

ゆみ『……そういう気遣いまで教えるのかあいつは。はぁ……』

ゆみ『ちなみにそういうことは私に言わないほうがいいとは言われなかったのか?』

咲『どっちでもいいけど、後腐れなくしたいなら言ったほうがいいかもとは言われました』

ゆみ『本当にあいつは……!』

ゆみ『……まあ何もしないなら私がどうこう言うことじゃない。ただ、無駄に時間を費やすだけだからやめたほうがいいとは言っておく』

咲『はい、わかってます。大会で久しぶりに会ったときも加治木さんのことばっかり話すんですよ。どう思います?』

ゆみ『嬉しいな』

咲『ですよね! うぅ……まあおもちには弱いみたいですけど』

ゆみ『おもち? どういうことだ?』

咲『あ、胸のことです。京ちゃん巨乳が好きじゃないですか』

ゆみ『初耳だ』

咲『そうなんですか? 全国大会のとき永水の巫女さんたち見て鼻の下伸ばしてましたよね。この間の大会で会ったときも私より先に和ちゃんのおもちのほうを見てましたし……』

ゆみ『ほう……』

咲『……! ち、違いますよこれは! 加治木さんも知ってると思ったからで……!』

ゆみ『ああ、うん。大丈夫だ。別にこれで別れるとかそういうことはないし、むしろ貴重な情報を伝えてくれて感謝している。それではまた今度』

咲『ああぁぁ……。京ちゃん、ごめんね……』

――部室――

ゆみ「……」

京太郎「……おい、どうしたんだ今日のゆみさんは」ヒソヒソ

桃子「知らないっすよ。私が来たときからずっとあそこに座って腕組んでるっす」ヒソヒソ

智美「京太郎、何したんだー?」ヒソヒソ

京太郎「お、俺ですか!?」ヒソヒソ

桃子「そりゃ他にいないっすよ」ヒソヒソ

京太郎「身に覚えがまったくねえよ……」ヒソヒソ

ゆみ「おい、モモ」

桃子「は、はいっす!」ビクゥ

ゆみ「ちょっとジャンプしてみてくれ」

桃子「はい?」

ゆみ「いいから」ゴッ

桃子「わ、わかったっす!」プルンッ

京太郎「?」チラッ

ゆみ「……ありがとう」

桃子「ど、どういたしましてっす」

ゆみ「……」トコトコ

京太郎「……? あの、ゆみさん今日はどうし――」

ゆみ「」ツネリ

京太郎「いたっ、痛いですよ!?」

ゆみ「まあこれで許してやろう」

京太郎「何がですか!?」

ゆみ「後で教えてやる」

京太郎「えええ……今教えて下さいよ」

ゆみ「これは京太郎に対する私の慈悲なんだが……まあ、そこまで知りたいなら今教えてもいい」

京太郎「な、なんか怖いんでやっぱりやめてください」

ゆみ「うん、賢明だ」


桃子「ゆみ先輩は急にどうしたんすかね? まあ京太郎がなんかやったんだと思うっすけど」

智美(さすがに自分でやらせてあれってことはないだろうから、今までの分かなー?)

智美「それにしても今さらって気はするけどなー」ワハハ

桃子「あれ、智美先輩はなんのことかわかってるんすか?」

智美「わかってるぞ。まあ秘密だけどなー」

桃子「気になるっすー!」

智美「ワハハー」

咲ちゃんとかじゅのガールズトークでした
強かな女の子は魅力的だなあと思います
それではまた

こんばんは。
風邪引いたり雨の中外に立たされたりしていたら遅くなりました。
それでは投下します。

ゆみ「おじゃまします」

京太郎「どうぞ上がってください」

ゆみ「ここが京太郎の家か……」キョロキョロ

京太郎「そんな面白いもんじゃないですよ」

ゆみ「綺麗だな。家が出来てから半年くらいか?」

京太郎「もう少し経ってます。10ヶ月くらいですかね」

ゆみ「ふむ……」

京太郎「それがどうかしました?」

ゆみ「いや、小さい頃から暮らした家から引っ越すというのは寂しいのかなと。……私が思うのも失礼だな。なんでもない」

京太郎「まあ、寂しくなかったかって言ったら嘘になりますね。でも住めばここもいいもんですよ」

ゆみ「ん。そうか」

京太郎「それに向こうにいたままだったらゆみさんに会えませんでしたし! それだけでもこっち来てよかったですよ!」

ゆみ「そ、そうか」カアァァ

京太郎「じゃあここで待っててください。お茶でも出しますよ」

ゆみ「ああ、ありがとう」

ゆみ(日当たりが良くて気持ちいいな)

京太郎「粗茶ですが」

ゆみ「おかまいなく……何を言わせるんだ」

京太郎「一度言ってみたかったんです」

ゆみ「はぁ……ふむ、緑茶か」

京太郎「紅茶のがよかったですか? 煎れ慣れてないんでこっちにしたんですけど」

ゆみ「いや、和室にはこちらのほうが合っているさ」コクリ

ゆみ「ん、おいしいな。煎れるのが上手いんだな」

京太郎「母親によくやらされたんですよ」

ゆみ「しっかり成果は出ているな」フフッ

ゆみ「……そういえばご両親はどちらに」ソワソワ

京太郎「親父は仕事です。おふくろはなんか急に引っ越す前の友達と遊びに行くとか言って出てっちゃいました」

ゆみ「そうか。安心したような気が抜けたような……」ホッ

ゆみ「……っ! と、ということは今この家には……!」

京太郎「え? ……! や、ち、違いますよ! ちょ、ちょっと待っててください!」バタバタ

ゆみ(ど、どうしよう。気軽に遊びに行きたいなんて言ったがまさかこんなことになるなんて)

ゆみ(ご両親と会うことは覚悟して来たけどこっちは覚悟してないぞっ。……か、覚悟って何の覚悟だ!?)

京太郎「ゆみさん」

ゆみ「ひゃっ!? お、落ち着け京太郎! まだ私たちには……!」

京太郎「まずゆみさんが落ち着いてください。ほら、連れてきましたよ」

ゆみ「……うん? それは?」

京太郎「ペットのカピです。ゆみさんこいつが見たくて来たんじゃないですか」

ゆみ「……そ、そうだったな」

京太郎「こいつがいるから2人きりじゃないですよ。だからその、決してそういうつもりだったわけでは……」

ゆみ「あ、ああ、うん。わかった。変なことを言って悪かった」

京太郎「俺もちゃんと言っとけばよかったですよね。すみません」

ゆみ「これがカピバラか……」キラキラ

京太郎「はい。ほらカピ、ゆみさんだぞー」

カピ「キュー」トコトコ

ゆみ「おお……! な、撫でてもいいか?」

京太郎「もちろん、いいですよ」

ゆみ「で、では。カピー」ナデナデ

カピ「キュ~」

ゆみ「意外と毛は固いんだな」ナデナデ

京太郎「ええ、ちっちゃい頃は柔らかかったんですけどね。手が痛くなりますから、あんまり撫ですぎないほうがいいですよ」

ゆみ「でも気持ちよさそうにしているしな……」ナデナデ

カピ「キュ~」

京太郎「あんまり甘やかし過ぎるのもよくないんですよー」

ゆみ「まあたまにはいいじゃないか。しかし可愛いなあ」フフッ

京太郎「ですよね! こののんびりしたところがほんと可愛くて……!」

ゆみ「ふふっ。カピバラを飼っているなんて家は初めて見たが、どうしたカピバラを飼おうと思ったんだ?」

京太郎「大した理由じゃないですよ。俺が小さい頃にテレビを見て、可愛いとか飼いたいとか言ってたら無理して買って来てくれたんです」

ゆみ「そうなのか。いいご両親だな」

京太郎「あー……まあ、そうですね」

ゆみ「素直に感謝してもいいんだぞ?」クスッ

京太郎「やめてくださいよもう……なんか恥ずかしい」

ゆみ「ふふっ。おや、カピはどうしたんだ?」

カピ「キュゥ……」スースー

京太郎「ああ、寝ちゃったみたいですね。日当たりもいいですし、ゆみさんが撫でたのが気持ちよかったんですよ」

ゆみ「そうか。じゃあ起こさないように静かにしないとな」

京太郎「そうですね。すみません、こんな早く寝ちゃって。普段は日中寝たりしないんですけど」

ゆみ「それだけくつろいでくれたなら嬉しいよ。気持ちのいい日だしな」アフゥ

京太郎「ゆみさんもあくび出てますよ」アハハ

ゆみ「うん、休日のこの時間はよく寝ているからな。恋人の家に来てこれは我ながらどうかと思うが……」ウトウト

京太郎「自分の家みたいに思ってもらっていいですよ。というかゆみさん昼寝とかするんですか? あんまりイメージじゃないですけど」

ゆみ「よくしているよ。私の好きなものは昼寝だからな」

京太郎「……え? 智美先輩じゃなくてですか?」

ゆみ「君は蒲原をなんだと……いや気持ちはわかるが。ともかく、私の趣味は昼寝だよ」

京太郎「てっきり読書とかそういうのが趣味なのかと思ってました」

ゆみ「それも好きだが、昼寝のほうが好きだよ」

京太郎「そうなんですか。意外な一面ですね」

ゆみ「意外も何も隠しているつもりはないんだが……」

京太郎「普段の姿から想像できないから一緒ですよ」

ゆみ「むぅ」

ゆみ「まずい、こんな話をしていたら本当に眠くなってきた……」ウトウト

京太郎「昨日あんまり寝れなかったんですか?」

ゆみ「京太郎のせいだぞ」

京太郎「え?」

ゆみ「君の家に行くと思うと楽しみでなかなか寝れなかったんだ。ようやく眠れそうになったときにはご両親がいることに気付いて今度は緊張して眠れなく……」ウトウト

京太郎「俺のせいですかそれ!?」

ゆみ「ああ」

京太郎「理不尽だ……そんなに眠いなら寝ててもいいですよ。というか一緒に寝ましょう」

ゆみ「しかし初めての京太郎の家でそれは……い、一緒にねね寝る!?」

京太郎「ちょ、ち、違います! 昼寝するだけです!!」

ゆみ「紛らわしいことを言うな! ああもう、想像してしま――ってないからな!!」

京太郎「ほんとすみませんっ!」ペッコリン

ゆみ「……しかしそうだな。お言葉に甘えようか。カピも気持ちよさそうに寝ているし」ウトウト

京太郎「はい。少し仮眠とりましょう。何か掛けるもの持ってきますよ」

ゆみ「いや、いいよ。十分暖かいし」

京太郎「そうですか? じゃあ枕代わりにクッションでも――」

ゆみ「いや、それもいい。その……」モジモジ

京太郎「?」

ゆみ「きょ、京太郎に腕枕してもらいたいんだ。ダメ、かな?」カアァァ

京太郎「」ズキューン

ゆみ「昔から憧れてたんだ。い、嫌だというなら別にいいんだが、出来ればやってくれると、その、う、嬉しい」モジモジ

京太郎「もちろんやりますよ! いくらでもやりますとも!」

ゆみ「ほ、本当か?」パアァァ

京太郎「当然です! さあすぐにやりましょう!」

ゆみ「ああ!」

ゆみ「んっ」

京太郎「どうですか? 寝心地はあんまり良くないと思いますけど……」

ゆみ「これはどちらかというと精神的に落ち着くためのものだよ。京太郎に守られてるようで安心する」

京太郎「それにしてはちょっと遠いような気が」

ゆみ「これ以上近づくとドキドキしすぎて眠れそうにない。仰向けなのも同じ理由だ」カアァァ

京太郎「全然落ち着いてないじゃないですか」

京太郎(まあ俺もこれ以上近づかれたり、顔がこっち向いてたりしたら寝るどころじゃないだろうけど)ドキドキ

ゆみ「それはそれ、これはこれだ。……それじゃあおやすみ、京太郎」

京太郎「はい、おやすみなさい」

……



ゆみ「ん……」コロン

…………

………

……

京太郎「ふわぁ……うわやべ。3時間も寝ちゃって……っ!?」

ゆみ「」スースー

京太郎(ゆ、ゆみさんの顔が目の前に!? ち、近い近い! 動いたらぶつかりそうだよ!)

ゆみ「んー」モゾモゾ

ゆみ「ぅん、おはようきょうたろう」トロン

京太郎「お、おはようございます」

ゆみ「ふわぁ。ん~……うん!?」バッ

ゆみ「ち、近っ!? な、何がどうした!?」アワアワ

京太郎「お、落ち着いてください! と、とりあえず起き上がりましょう」

ゆみ「そ、そうか。私が起きないと君も起き上がれないのか。よっ……っと」バサッ

京太郎「ふぅ。心臓が破裂するかと思うくらい驚きました」バサッ

ゆみ「私もだ。一気に目が覚めたよ。……どうも私が寝返りを打ったせいのようだ。すまない」

京太郎「いえ、その、役得でした」

ゆみ「そ、そうか」カアァァ

ゆみ「……ところでこのタオルケットは一体?」

京太郎「ほんとですね、いつの間に……まさか」サアァァ

ゆみ「? あれ、テーブルの上に紙が」

京太郎「すげー嫌な予感がします」ペラッ


『京太郎へ
 こんな時期に何も掛けずに寝るなんて何考えてるの!? あなたはともかく、彼女さんが風邪でも引いたらどうするの。
 恋人の体調を守るために最善を尽くすくらいの甲斐性は持ちなさい。ただ腕枕をしたのはいい選択だったと思います。

 ゆみさんへ
 初めまして。手紙での挨拶になってしまってごめんなさい。
 まず息子がこんなに美人な子と付き合っているということに驚きました。
 今日は自分の家のようにリラックスしてもらえたようでとても嬉しいです。
 生憎これからまた出かけなければならないのでお話はできないのですが、今度は起きているときにお会いできるといいですね。
 こんな情けない息子ではありますが、これからもよろしくしてやってください。                                』


ゆみ「」サアァァ

京太郎「ほんとやめてくれマジで……」ガクッ

ゆみ「私のバカ! なんでせめてお母様が来たときに起きなかったんだ!」

京太郎「いいですよ、気にしないでください。俺から言っときますから」

ゆみ「しないわけがないだろう!? 何を言うんだ!? うあああぁぁ……」

京太郎「大丈夫ですって。こんなの書き残したのは最悪ですけど、書いたことには悪気とか悪意とかはないですから」

ゆみ「そういう問題じゃ――」グスッ

京太郎「ゆみさん」ギュッ

ゆみ「ひゃう!?」

京太郎「またウチに来てください。そのときにもう一回やり直しましょう」

ゆみ「……うん」コクッ

今日は以上です。
京太郎の家に行くかじゅでした。
次は日曜辺りには投下したい。

日曜辺りには投下したいなのでセーフ
フリゲの更新に気付いてそっちやってました
それでは投下します

京太郎「ゆみさ~ん」ダキッ

ゆみ「ん、どうした?」

京太郎「うーん」

ゆみ「?」

京太郎「あすなろ抱き、やっぱり前より喜んでもらえてないのかなあと」

ゆみ「そんなことはないさ。嬉しいよ」

京太郎「だって最初の頃みたいに慌ててくれなくなったじゃないですか」

ゆみ「それはまああれだけやられればな。1日1回くらいのペースでやっていただろう。どうしたんだいきなり?」

京太郎「いや、モモからこんなこと言われたんですよ」

---------------------------------------

桃子『またあすなろ抱きやってたっすね』ゲッソリ

京太郎『最初にやれって言ったのお前だろ。というか人がいるところではそんなにやってないはずだけど……』

桃子『あれで隠れてやってるってのも驚きっす。それに最初に言ったのは私でも限度があるっすよ。……!』ピコーン

桃子『それにゆみ先輩も実はそんなに嬉しくないんじゃないっすか?』

京太郎『そんなはずないだろ?』

桃子『でも最近は最初の頃みたいに慌ててないじゃないっすか』

京太郎『それは確かに……』

桃子『慌ててないってことはドキドキしてないってことっす! つまり飽きられてるってことっすよ!』

京太郎『な、なんだってー!?』ガガーン

桃子『だから控えたほうがいいっす。わかったっすか?』

京太郎『そんなバカな……』

---------------------------------------

京太郎「こんな感じで」

ゆみ(モモには後でお仕置きだな)

ゆみ「飽き……というか慣れてきたのは確かだが、別に嬉しい事に変わりはないぞ? ギュッと君に包まれている感じがして落ち着く」

京太郎「でも最初の頃ほどの感動はないですよね?」

ゆみ「感動というと違和感があるが、まあそうだな。……だからと言ってやめるなんて言ったら嫌だぞ」キュッ

京太郎「もちろん、俺も嫌ですよ。ですがこのあたりで改めていく必要はあると思うんです!」グッ

ゆみ「改める? どうするつもりなんだ?」

京太郎「俺たちが一番よくやるのは俺の上にゆみさんが座って、俺が後ろから抱きしめるって形じゃないですか」

ゆみ「うん、そうだな」

京太郎「ここで逆向きにしましょう」

ゆみ「逆か? ううん……」

京太郎「どうでしょう」

ゆみ「京太郎がしたいというのなら私も頑張るつもりだが、あまり長くやるのは難しいな」

京太郎「え? なんでですか?」

ゆみ「さすがに京太郎を私の上に乗せて長時間というのは……まあ、どうしてもというなら構わないが。強引なのも嫌じゃな……」ゴニョゴニョ

京太郎「ゆみさんにそんなことさせるわけないじゃないですか!? 逆にするのは位置じゃなくて向きだけですよ! 向きだけ!」

ゆみ「なんだ、向きだけか」シュン

京太郎(落ち込んでる……? まあいいか)

京太郎「そうですよ。お互い向き合ってギューッと」

ゆみ「ふむ、たまには違う形でやってみてもいいかもしれないな」

京太郎「じゃあさっそくやりましょう!」

京太郎「……あの、それとは別に後ろから抱きつくの今度やって貰えませんか? 俺がゆみさんに乗るとかはやりませんけど」

ゆみ「ああ、いいぞ」フフッ

京太郎「ど、どうぞ」

ゆみ「あ、ああ。……と」ギシッ

京太郎「大丈夫ですか?」

ゆみ「ちょっとバランスを崩しただけだよ。しかしこの体勢は少し恥ずかしいな」

京太郎「何がです?」

ゆみ「……君の両足を挟む形になるから足が開いてしまって、その、スカートが無防備にだな」カアァァ

京太郎「可愛い」ボソッ

ゆみ「なぁっ!?」

京太郎「い、いや、すみませんつい!」

ゆみ「き、君はまったく」ウツムキ

京太郎「それでえっと、どうしましょう。止めますか? やっぱそれは良くないでしょうし」

ゆみ「いや、いいよ。どうせソファーじゃ向こうからは見えないし、私の気分的な問題だけだからな」

京太郎「そうですか。じゃあもうちょっと近くに」

ゆみ「ん……このくらいでいいかな」カオアゲル

ゆみ「逆向きになってみたわけだがどうだきょうた……ろう……」

京太郎「はい、新鮮でいいです……ね……」

京太郎(やばいこれやばいやばいやばいって! すげー近い! ゆみさんの目に俺の顔が映ってるのが見えるし!?)

ゆみ(まずい。これはまずい。こんな近くで見つめ合うなんて……瞳に吸い込まれそうだ)クラクラ

京太郎(……近くで見て改めて思うけどゆみさんって綺麗だな。まさにクールビューティーって感じだ。まあ顔は真っ赤だけど。……ドキドキしてくれてるんだな)

ゆみ(……顔で好きになったわけではないが、やっぱりカッコいいな。思わず見入ってしまう。緊張して真っ赤な顔も様になるんだから卑怯だ)

京太郎(耐えられるかわからないけど、もう少しこのまま)

ゆみ(……これはダメだ。見惚れてしまって動けそうにない)ポー

……

京太郎(……もうダメだ!)

京太郎「ゆみさんっ」ギュッ

ゆみ「ひゃぅ!? きょ、京太郎!?」アセアセ

京太郎「ごめんなさい、あのままだともう耐えられなくなりそうだったんです!」ギュー

ゆみ「た、耐えるって今のこれはなんなんだ!?」

京太郎「耐えてるんです!」

ゆみ「そ、そうなのか? うぅ……」カアァァ

京太郎「……」ギュー

ゆみ「あうぅ……」

京太郎(ゆみさんの耳、小さくて可愛いな)

京太郎「……」ウーン

京太郎「……愛してます」ボソッ

ゆみ「~~~~~っ!!」カアァァ

ゆみ(み、耳元でっ! 愛してるって! ば、バカじゃないのか!? バカじゃないのか!?)

京太郎「ゆみさん、大好きです」ボソッ

ゆみ「ふあぁぁ……」ヘニャァ

京太郎「……」カプッ

ゆみ「んぁっ……ってこのバカ! それは違うだろう!?」

京太郎「す、すみません。つい」

ゆみ「ついじゃない! それにさっきもついと言っていただろう。何度言うつもりなんだ」

京太郎「反省してます」

ゆみ「いまいち信用出来ないな」

京太郎「信用してください……俺、本気で反省してます」ボソッ

ゆみ「~~~っ! だ、だからそういうところが信用出来ないんだ!」

京太郎「あれ、こっちも嫌でした?」

ゆみ「……嫌じゃない。続けてくれ」カアァァ

京太郎「はい」

智美「……モモー?」ワハハ

桃子「わ、私が悪いんすか!?」

智美「あの2人にそんなこと言ったらこうなるに決まってるだろー! 心配して見に来たらこれだー」

桃子「私が甘かったっす……」ガクッ

智美「反省するんだぞー」

智美「さて、後はどのタイミングで入ってやるかだなー」ワハハ

桃子「私がステルスして2人の目の前に突然現れるのはどうっすかね」

智美「それはちょっとやり過ぎ感があるなー」ワハハ

桃子「そうっすか?」

智美「こういうのは見られたか見られなかったかわからないくらいのほうが緊張感が出ていいんだ。見られたと知ったら開き直りそうだしなー」

桃子「勉強になるっす」

智美「中の様子は――」

チュッ
フゥ……ンッ
ユミサン……
キョウタロウ……

智美「……これ以上ほっとくのはダメだ。今すぐ開けるぞー!!」

桃子「はいっす!」

今日は以上になります
それではまた日曜辺りに

楽天日本一おめでとう!
最終回に田中が出てきたときは色んな意味でドキドキして見てました

それでは投下します

智美(ワハハですが部室の空気が最悪です)


ゆみ『むぅ、ここでこういうことをやるのはあまり気が進まないんだが』

京太郎『いいじゃないですか。2人しかいないんですから』

ゆみ『しかし』

京太郎『それにゆみさんも気持ちいいって言ってたじゃないですかー』

ゆみ『確かにそう言ったが……』


智美(……風紀的な意味で)

智美(気持ちいいって、あ、あの2人何してるんだ!?)

智美(……なんてなー。私は騙されないぞ。こういうのは早とちりだって相場が決まってるんだ)ワハハ

智美(まあそれはそれとして面白そうだからもう少し立ち聞きしてみるかー)

京太郎『俺が言い出したことですけど、ゆみさんがこんなにハマるとは思ってませんでした』

ゆみ『勘違いされたら困るが、決して私が進んでしたがってるわけではないぞ』

京太郎『そんなことないでしょう? この間俺がしたいって言わなかったときは先輩の方からしたいって言ってきたじゃないですか』

ゆみ『そ、それは……!』

京太郎『ほらほら、どうなんです?』

ゆみ『調子に乗るな』コツン

京太郎『痛っ』

ゆみ『……私が進んでしたがってはいないというのは嘘じゃない』

京太郎『え?』

ゆみ『私がしたがるのはそれ自体が好きというより君とだからだよ』

京太郎『ゆみさん……』


智美(……)

智美(いやいや、騙されないぞ。したいとかしたがってるとか言ってるだけだしなー)ワハハ

智美(……まずそうになったらドアを開けよう)

京太郎『でもなんで好きじゃないんですか? てっきりゆみさんも楽しんでたのかなって思ってたんですけど』

ゆみ『楽しんでないわけじゃないんだ。ただやるにしても適度じゃないと』

京太郎『そんなに激しくしましたっけ……?』

ゆみ『私にとってはな。……していると、なんというか変になってしまいそうで』

京太郎『そんなことないですって。ゆみさんはしっかりしてますから』

ゆみ『ううん、京太郎に弱いところを見せたくないんだ。だから……』

京太郎『確かにこれなら俺でもゆみさんに負けてませんからね』アハハ

ゆみ『君の前ではいつでも頼れる先輩でいたいんだ』ムゥ

京太郎『何でもかんでも負けてたら俺の立つ瀬がありませんって』

ゆみ『それでもだ』


智美(変になる……いやいやいや。まさかさすがにそんな)

京太郎『んー、それじゃ止めます?』

ゆみ『っ!』ピクッ

京太郎『やっぱりやりたいんじゃないですか』アハハ

ゆみ『う、うぅ』

京太郎『いいじゃないですか、そんな恥ずかしがらなくても』

ゆみ『仕方ないだろう。あまり見せたくないところを見せてしまうんだから』

京太郎『ゆみさんはあまり見せたくないかもしれませんが、俺にとっては見たいところです!』

ゆみ『まったく君は……』フフッ

京太郎『……それじゃしましょうか』

ゆみ『……うん』


智美(い、今からここで!? こ、これはさすがに止めないと)

智美(正直気まずいけど、いくらなんでも放ってはおけないしなー)ワハハ


智美「何してるんだ2人と……も?」

京太郎「あ、智美先輩」

ゆみ「蒲原か。どうしたんだ?」

智美「……ワハハー?」

智美「2人麻雀?」

京太郎「はい。最近ゆみさんとやってるんですよ」

ゆみ「あまりやったことはなかったがなかなか楽しいぞ」

智美「気持ちいいとか言ってたのは何だったんだー?」

京太郎「……? ああ、確かに言いましたけど、結構前に言ったことのような。いつからいたんですか?」

智美「ちょっと入るのを戸惑ったんだー」

京太郎「? まあそれは点数のことですよ。2人麻雀は萬子と字牌でやってるんで点数が高いんです」

ゆみ「そのままだとすぐ飛んでしまうからトビはなしにしているがな。結構気持ちいいぞ」

智美「激しくとか変になるとかはどういう意味なんだ?」

京太郎「激しくは頻度ですね。そんなにやってないと思うんですけど……」

ゆみ「十分多い。こんなルールで毎日やっていたら変な癖がついてしまうだろう」

京太郎「そんなことないですって」

ゆみ「それでもし弱くなったらと思うとな。そんなところ君に見せたくはない」

京太郎「あれ、そういう意味だったんですか? てっきりこれなら俺が勝ち越してるからだと思ってました」

ゆみ「……まあそれもある」プイッ

京太郎(可愛いなー)

智美「ってことは見せたくない姿っていうのはゆみちんが負けるところって意味だなー?」

ゆみ「ああ、勝負の結果とはいえ見せたいところではないさ」

京太郎「俺は見たいんですけどね。まだまだ滅多に見れませんし」

ゆみ「普通の麻雀で見れるようにしろ」コツン

智美「なるほどなー」ワハハー

京太郎「あはは」

智美「……紛らわしい!」

京太郎「うわっ」

ゆみ「い、いきなりなんだ」

智美「なんだじゃない! 最初は騙されないぞと身構えてて、聞いててまずそうだと思ったらこれかー!?」

京太郎「知りませんよ! 大体騙されるってどう騙されるんですか」

智美「気持ちいいだの変になるだの言ってたんだからわかるだろー?」

ゆみ「……! な、ば、バカかお前は!」カアァァ

智美「こっちの台詞だー!」ワハハー!

……

京太郎「ふぅ。智美先輩、落ち着きましたか」ハァハァ

智美「あ、ああ。なんとかなー」ハァハァ

ゆみ「勘違いされそうな言葉を使っていた私たちも悪かったよ」ハァハァ

智美「いや、勘違いした私が悪いんだ」

京太郎「ともかく誤解が解けてよかったです」

智美「そうだなー」ブルッ

智美「ところでちょっと寒くないかー? なんで窓が開いてるんだ」ピシャリ

京太郎「ああ、すみません。昼休みから開けててそのままにしてました」

智美「なんだ、昼休みもここにいたのかー」

ゆみ「いつもではないが、たまに来ているな」

智美「でも窓開けてたら寒くなかったか?」

京太郎「4限に体育があったんですけど、ちょっと汗臭くなったんで開けてたんですよ」

智美「なるほど。そのとき制汗剤も使ったなー」

京太郎「え? 使いましたけどわかります?」ギクッ

智美「私はモモを匂いで見つける女だぞー。柑橘系の匂いがするから何かと思ったんだ」クンクン

ゆみ「そ、そんなにお前の鼻は効くのか」ギクッ

智美「ゆみちんからも同じ匂いがするなー。ゆみちんが貸したのかー?」クンクン

ゆみ「あ、ああ。私も少し汗をかいたから使ったんだ」

智美「そうなのかー。冬に珍しいなと思ったんだ」

京太郎「……その、他には何か感じます?」

智美「いや、特にはわからないなー」クンクン

京太郎「そうですか」ホッ

智美「? それにしてもみんな遅いなー」

京太郎「ああ、今日は部活休みですから」

智美「えっ、私は知らないぞ」

京太郎「すみません伝えてなくて」

ゆみ「謝らなくていい。蒲原はもう部員じゃないんだから、あるかどうかは自分で先に確かめろ」

智美「ゆみちんは厳しいなー」ワハハ

京太郎「でも智美先輩鼻いいんですね。そこまでとは知りませんでした」

智美「犬にだって負けないぞー」ワハハ

京太郎「ほんと凄いですよ。ゆみさんのいうとおり窓開けたり制汗剤使ったりしなかったら危ないところでした」アハハ

ゆみ「バ、バカ! 何言ってるんだ!!」

京太郎「えっ――あ、な、何でも、何でもないですから!!」ブンブン

智美(……)

智美(……)

智美(……)

智美(……………………え?)

というわけで定番の勘違いネタでした
それではまた日曜辺りに

詳細は皆さんの心の中にあります(訳:エロ書けません)
気が向いたら書くかもしれませんがまあ期待せずに

ここのところ忙しくてだいぶ遅れましたが、忘れられない程度には投下できるように頑張ります

――加治木宅前――

ゆみ「ありがとう、京太郎」

京太郎「いえいえ。それじゃまた明日……あれ」

ポツポツ

ゆみ「雨が降ってきたようだな」

京太郎「そうですね。でもこれくらいなら――」

――ザァーザァー

ゆみ「強くなってきたな」

京太郎「そ、そうですね。でもこれくらいなら――」

ゆみ「意味のない意地を張るな。夏じゃないんだから風邪引くぞ?」

京太郎「そうですけど傘がないので」

ゆみ「ここは私の家だぞ? 他人の家というわけじゃないんだ。傘くらい貸すさ」

京太郎「あ、そうですね。じゃあすみませんけど貸してください」

ゆみ「ああ、じゃあちょっと待って……」ピコーン

ゆみ「そうだ。せっかくだしちょっと上がっていくか?」

京太郎「え、ゆみさんの家にですか?」

ゆみ「うん、私は京太郎の家に何度か行っているが、京太郎が来たことはなかっただろう?」

京太郎「いやそうですけど突然上がるわけには」

ゆみ「こんな雨なんだから上がる理由としては十分だろう」

京太郎「ええとその……」

ゆみ「もしかして私の両親と会うかもしれないと思って緊張しているのか?」

京太郎「はい、突然だったんで心の準備が」

ゆみ「私も君のお母さんと会うときは緊張するから気持ちはわかる」

京太郎「ですよね! だから今日は傘だけ借りて――」

ゆみ「だから覚悟を決めろ。いずれ会わなきゃいけないだろう?」

京太郎「べ、別に今じゃなくても」

ゆみ「……君が会うつもりがないというなら別に構わないんだが」

京太郎「」ホッ

ゆみ「……つまり私と一緒になるつもりがないということだろうか」ウルッ

京太郎「ち、違いますよ! 気持ち的には高校卒業したらすぐにでも――って何言わせるんですか!?」

ゆみ「そうかっ。それならほら中に」パアァァ

京太郎「いやその……はい。わかりました」ガクッ

ゆみ「うん、嬉しいよ」

京太郎(うぅ、ゆみさんのお母さんと対面か。緊張するなぁ)ドキドキ

ゆみ「ただいまー」ガチャ

京太郎(最初が肝心だよな。会ったら丁寧に挨拶を……)ドキドキ

ゆみ父「おかえり。遅かったな」

京太郎「」

ゆみ「部活が少し長引いたんだ。お父さんこそ早いじゃないか」

ゆみ父「ああ、今日は何か早く帰った方がいい予感がしてな。半休を取ったんだ。そちらの彼は?」

ゆみ「彼は私のこい――」

京太郎「後輩の須賀京太郎です! 初めまして!!」バッ

京太郎(ゆみさんいきなり何言おうとしてんの!? よく反応した俺! 自分で自分を褒めてやりたい!)ドッドッドッ

京太郎(というかいきなりラスボスかよ!? もっと段階踏ませてくれ!)ドッドッドッ

ゆみ父「そうか。君が須賀君か。君のことはゆみからよく聞いているよ」

京太郎「そ、それはどうも」

ゆみ父「ゆみと付き合っているそうだな」

京太郎「」

ゆみ「うん……」モジモジ

京太郎(誤魔化した意味なかったー! ゆみさん喋ってたんだ!? でも可愛いなもう!)

ゆみ父「それでなんで須賀君は来ているんだ?」

ゆみ「部活で遅くなったから送って貰ったんだ」

ゆみ父「そうか。それはすまなかった」

京太郎「い、いえ。とんでもないです」ブンブン

京太郎「それじゃあ俺はこれで……」

京太郎(よし、滅茶苦茶慌てたけど無難に対応できた! 少なくとも悪印象じゃないはずだ! よくやった俺!)グッ

ゆみ「あれ、帰るのか? 上がっていくと言っていたじゃないか」

京太郎(ゆみさん勘弁して下さい!!)

京太郎「い、いやほら、家族水入らずなわけですし俺が上がるわけには……」

ゆみ「お父さんが単身赴任しているわけじゃあるまいし、水入らずなんて大袈裟なものじゃないさ。そんなこと気にするな」

ゆみ父「……そうだな。雨も降っているしせっかくだから上がっていくといい」

ゆみ父「色々と聞きたいこともあるしな」チラッ

京太郎(あ、これダメなやつだ)

ゆみ「お父さんもこう言っているし、どうかな京太郎。もちろん無理にとは言わないが」シュン

京太郎「……その、じゃあ少しお邪魔させて貰います」

ゆみ「そうかっ」パアァァ

京太郎(ああ可愛いなあ)ポワー

ゆみ父「……」ジッ

京太郎(ひっ!)ビクッ

ゆみ「それじゃ京太郎。私の部屋はこっちだ」

京太郎「え? は、はい」

ゆみ父「……ゆみの部屋に行くのか?」

京太郎「い、いえその」

ゆみ「うん。この間京太郎の部屋に行ったから、今日は私の部屋を見てもらうと思って」

ゆみ父「須賀くんの部屋に行ったのか」ジロ

京太郎「あ、あはは……」

ゆみ父「ゆみの部屋に行ってしまうのではあまり話せないな。ついでだ。夕飯も食べていくといい。母さんに言っておく」

京太郎「い、いえ、そこまでご迷惑をかけるわけには!」

ゆみ「何か予定があるのか?」

京太郎「そういうわけじゃないですけど」

ゆみ「それなら遠慮するな。ありがとう、お父さん」

京太郎(胃がキリキリしてきた……)

京太郎「ここがゆみさんの部屋ですか」キョロキョロ

ゆみ「あまりジロジロと見るな」

京太郎「うーん」

ゆみ「どうかしたか?」

京太郎「いえ、机と椅子しかないほどさっぱりした部屋か、これでもかってくらい少女趣味な部屋かのどちらかだと思ってたんですが」

ゆみ「なんなんだそのイメージは」

京太郎「見た目通りかギャップ萌えかです!」

ゆみ「何を言ってるんだ……それで、実際に見てどう思ったんだ?」

京太郎「普通ですね」

ゆみ「もしかして喧嘩を売られているのかな私は」

京太郎「そんなことないです。ゆみさんの部屋ってだけで感動してますよ!」

ゆみ「そ、そうか。そういえば普通って他の女子の部屋を知っているのか?」

京太郎「知ってますよー」フフン

ゆみ「ほう」ゴッ

京太郎「し、知ってるっていっても咲ですよ。中学まではお互い行き来してたんで」ダラダラ

ゆみ「ああ、そうか。そうだったな。そういえば宮永から聞いたことがあったよ」

京太郎「咲からですか? あ、メールとかよくしてるんでしたっけ」

ゆみ「うん、散々自慢された」

京太郎「自慢って。まああいつからしたらそんなつもりじゃないと思いますよ」アハハ

ゆみ「……そうだな」ハァ

京太郎「?」

ゆみ「ちなみに宮永の部屋と比べて私の部屋はどうだ?」

京太郎「咲の部屋より綺麗ですね。あいつ読みかけの本とかよくその辺に置いてるんですよ」

ゆみ「宮永は本が好きなんだったな」

京太郎「はい。中学のときは暇さえあれば読んでましたよ」

ゆみ「ふむ、私も読書は好きだがさすがにそこまでではないな」

京太郎「あーでも少女漫画はゆみさんのほうが多いですよ」

ゆみ「それはあまり喜べない情報だな……宮永はたくさん持っていそうなイメージだったんだがそれより多いか」ガクッ

京太郎「咲も少女漫画読みますけど、メインは小説ですからね」

ゆみ「くっ」

京太郎「でも部屋に入って初めてゆみさんが少女漫画好きなんだなって実感しましたよ」

ゆみ「あまり男子とまともに話すことがなかったからな。少女漫画を読んで憧れたりしていたんだ」

京太郎「そうなんですか」ヘー

ゆみ「……」ピト

京太郎「ゆ、ゆみさん?」ドキッ

ゆみ「蒲原に散々からかわれたが、憧れが現実になったときは嬉しかったよ」

京太郎「え、えっとそれは……」カアァァ

ゆみ「もちろん京太郎のことだ。まあ後輩ものはほとんどないんだが」クスクス

ゆみ「それでも、あれくらい劇的な告白はそうないんじゃないかと思うよ」

京太郎「そう言われるとプレッシャーですけど、告白の後も少女漫画のイケメンに負けないように頑張りますよ」

ゆみ「無理せずにな」クスッ

京太郎「はい」ハハ

ゆみ「もうこんな時間か。……そうだ、私はお母さんの手伝いに行ってくるよ」

京太郎「え?」

ゆみ「初めて君が来たんだからそのくらいしないとな」

京太郎「そしたら俺は……」

ゆみ「ここにいてもいいぞ? 大したものはないが」

京太郎「い、いや、それはやめときます!」

ゆみ「そうか? それじゃリビングで待っていてくれ」

京太郎「は、はい……」

ゆみ父「……」

京太郎「……」

京太郎(やっぱこうなるよな! 気まずい……)

ゆみ父「須賀くん」

京太郎「は、はい!」ビクッ

ゆみ父「君は中学までは別のところにいたと聞いたが」

京太郎「あ、はい。父の仕事の都合で卒業と同時にこっちのほうへ引っ越してきました」

ゆみ父「鶴賀に入ることにしたのは何故だ?」

京太郎「偏差値的にちょうど良かったんです」

ゆみ父「去年まで女子校だが、入ってから大変そうだとは思わなかったか?」

京太郎「……その辺りはよく考えずに偏差値と進学実績だけ見て選んでました」アハハ

ゆみ父「ふむ、そうか」

京太郎(元女子校って響きに憧れたなんて言えねえ……!)

ゆみ父「それと、須賀くんには聞きたいことがあったんだ」

京太郎「は、はい!」

ゆみ父「君は――」

ゆみ母「お父さん、須賀くん。ご飯できたわよ」

ゆみ父「む、そうか。須賀くん、話は食卓で」

京太郎「は、はい……」

京太郎(生殺しだ……)ゲッソリ

ゆみ母「須賀くん、改めて初めまして。挨拶が遅れてごめんなさい」

京太郎「い、いえ。おれ……僕のほうこそ、ゆみさんのお母さんに挨拶に行かずにすみません」

ゆみ母「無理しないで俺でいいわよ」クスクス

京太郎「は、はい」アセアセ

ゆみ母「それと、ゆみさんのお母さんなんて言いづらいでしょう? お母さんでいいわよ。ねえお父さん」

京太郎(ゆみさんのお母さん、お願いですからそっちに振らないで!)

ゆみ父「いや、ゆみさんのと付けたほうが礼儀正しくていいと思うが」

京太郎(何にもしてないのに地雷踏んだよちくしょー!)

ゆみ母「そう? 私はどっちでもいいと思うけど」

ゆみ「お母さん、京太郎をあまり困らせるな。京太郎、遠慮せずに食べてくれ」

ゆみ母「あら、作ったのほとんど私じゃない」

ゆみ「結構手伝ったじゃないか。変なこと言わないでくれ」

京太郎「あはは……」パクッ

ゆみ母「お口にあうかしら?」

京太郎「はい、おいしいです」

ゆみ「京太郎、こっちも食べてみてくれ」

京太郎「は、はい」パクッ

京太郎「……」モグモグ

ゆみ「ど、どうかな」

京太郎「おいしいですよ」

ゆみ「そ、そうか」パアァァ

ゆみ「と、ところで最初に食べたとの後に食べたのではどっちがおいしかった?」

京太郎「え? ええと……」

ゆみ「……」ドキドキ

京太郎「あ、後に食べたほうがおいしかったですよ」

ゆみ「そうかっ! 実は後に食べた方を私が作ったんだ」パアァァ

京太郎「そ、そうだったんですか」アハハ…

ゆみ母「ゆみ。そんなにプレッシャーかけたら、後に食べた方をおいしいっていうに決まってるじゃない」

ゆみ「私がどっちを作ったかなんて言ってないじゃないか」ムゥ

ゆみ母「あなたのそういうところ、少しは知っていたつもりだったけど……」ハァ

ゆみ「?」

ゆみ父「須賀くん、さっきの話の続きなんだが」

京太郎「は、はい!」

ゆみ父「本題に入る前に1つ聞きたい。君は昔から金髪なのか?」

京太郎「はい、昔からです。でも染めてるわけじゃなくこれは地毛なので生まれたときから……」

ゆみ父「ああいや、それは構わない。……そうか。地毛か」

京太郎「ええと、はい」

ゆみ父「……すまない。本題に入ろう。私が聞きたいのは麻雀の大会のときの話だ」

京太郎「大会ですか」

ゆみ父「ゆみから聞いたんだが、君は大会会場の大勢がいるところでゆみに告白したらしいな」

京太郎「は、はい」ダラダラ

ゆみ「恥ずかしくて仕方がなかったけど、でも嬉しかったよ」

ゆみ父「ああ、まあそこまではいいんだ。情熱があって悪いことではないと思う」

京太郎「あ、ありがとうございます」

ゆみ父「ゆみから聞いたのはここまでだが、インターネットで長野の大会会場でのある噂を見たんだ」

京太郎「どんな噂ですか」

ゆみ父「金髪の学生が先輩に大声で告白した後全力で逃げ出したという噂だ」

京太郎「」

ゆみ父「挙句よく分からない条件を付け、最終的にその次の週の個人戦で、最初に告白された女子の先輩の方から自分に告白させたとか」

京太郎「」

ゆみ父「……まさかとは思うのだが、これは君のことか?」

京太郎「え、ええとそれはですね……」チラッ

ゆみ(すまない、フォローできない)フイッ

京太郎(ですよねー)

京太郎「すみませんでしたぁ!! もう2度といたしませんっ!!」ドゲザ

ゆみ父「そこまでしなくてもいい、というか2度あっても困るんだが……やはり君とゆみのことだったか」フゥ

ゆみ母「まあまあいいじゃない。ちょっとヘタレなところがあったほうが可愛らしくて」クスクス

京太郎「」グフッ

ゆみ「きょ、京太郎! 2人ともいいじゃないか別に! 確かにあのときは本気で腹立ったけどそんなダメなところも好きなんだ!」

京太郎「」ガクッ

ゆみ母「あなたがとどめ刺してどうするの」

ゆみ「え?」

ゆみ父「……」ハァ

……

京太郎「今日はどうもありがとうございました」

ゆみ母「こちらこそ、ゆみを送ってくれてありがとう」

ゆみ父「また来なさい。今度は落ち着いて話そう」

京太郎「は、はい」ダラダラ

ゆみ「じゃあ私は家の前まで見送るから」

ゆみ母「はいはい」クスクス


ゆみ「今日は楽しかったよ」

京太郎「こちらこそ。大会のこと言われたときは死のうかと思いましたけど」ハハ…

ゆみ「告白されたということは話していたが、まさか2人が知っているほど噂になっているとは……すまなかったな」

京太郎「まあ自分のやったことですし。後になってバレるよりよっぽど良かったですよ」

京太郎「それより告白のときのこと知っても優しい対応してくれたのが嬉しかったです。一人娘の彼氏とかどんな対応されるかと思ってましたよ」

ゆみ「私は男子と普通に話したことがほとんどなかったからな。2人とも心配してたんだよ。君には感謝していると思う」

京太郎(感謝ってことはないと思うなあ、特にゆみさんのお父さんの方は)アハハ…

ゆみ「……いつまでも話していたら遅くなってしまうな。京太郎、また明日」

京太郎「はい。また明日」

ゆみ「そうだ、ちょっと待った」クイッ

京太郎「はい?」

ゆみ「今度来るのは2人のいないときにな」ヒソッ

京太郎「えっ」ドキッ

ゆみ「フフッ、それじゃ今度こそまた明日」ガチャッ

京太郎「はい……」

京太郎(急にあんなこと……あーもう、ずるいって)カアァァ

両親へご挨拶でした
今日は以上になります

今週で忙しいのは終わる予定なので次は2週間もかからないはず
それではまた

かじゅが出てくるスレが出来ていて嬉しい
それでは投下します

――卒業式後 部室――

ゆみ「私たちも卒業か……」

智美「早かったなー」ワハハ

ゆみ「そうだな、特にこの1年は時間がすぎるのがあっという間だった」

智美「3年間色々あったけど、一番印象的なのはやっぱりあれだなー」

ゆみ「ああ、部員が揃って団体戦に出られたのは本当に嬉しかったよ」

智美「いやそれじゃな……って個人戦で全国に行けたことじゃないのか。ゆみちんらしいなー」

ゆみ「まあ個人戦は私が意地を張って出なかっただけだからな。蒲原こそこれじゃないならなんなんだ?」

智美「私のもゆみちんがよく知ってることだと思うぞ」

ゆみ「気になるだろう。もったいぶらずに言ってくれ」

智美「ゆみちんが本気で転校しようか悩んでるって相談してきたときだなー」

ゆみ「なっ!?」

智美「理由を聞いたときは、初めてゆみちんのことをバカなのかと思ったなー」ワハハ

ゆみ「し、仕方ないだろう!?」

智美「女子校に来たのに男子が来るから転校したい、とか言い出すのが仕方ない状況なんてないと思うぞ」

ゆみ「女子校なんだからそう思う女子がいてもいいだろう別に!」

智美「何かあったとかならわかるけど、何を話したらいいかわからないってだけで転校したいってのはなー」ワハハ

ゆみ「本気で悩んでいたんだ! なのにお前は笑い転げて……!」

智美「そもそも3年生と1年生じゃ話す機会があるかどうかもわからないのに」ワハハ

ゆみ「実際あったじゃないか!」

智美「まあそうだなー」

ゆみ「だから私はおかしくない」

智美「その後輩と会ってから数ヶ月で付き合ってなければおかしくなかったなー」ワハハ

ゆみ「うっ」ギクッ

智美「しかも付き合ったかと思ったら人目も憚らずイチャイチャイチャイチャ。あのときの言葉は何だったのかと思ったぞ」ワハハ

ゆみ「人のいるところでは控えていたはずだ!」

智美「あれで控えてたのか……まあ、人がいないところではしてたって自覚はあるんじゃないか」

ゆみ「ぐっ」ギクッ

智美「男子と話せないなんて言ってた親友がすぐバカップルになるとか人間不信になりそうだ」ワハハ

ゆみ「べ、別にバカップルじゃない。それに京太郎じゃないと上手く話せな……」ゴニョゴニョ

智美「まだ言うかこいつは。お、京太郎たちが来たぞー」

京太郎「ゆみさん、智美先輩。卒業おめでとうございます!」

桃子「2人ともおめでとうっす!」

佳織「加治木先輩、智美ちゃん、おめでとうございます。寂しくなりますね」

睦月「そ、卒業おめで、とうございます」グスッ

ゆみ「みんなありがとう。津山はそんなに泣くな」ポンポン

智美「もうすぐ新入生が入るんだから、頼れる先輩にならないとダメだぞー」ワハハ

睦月「わ、わかってますけど」グスッ

佳織「今日くらいは仕方ないですよ。わ、私だって」グスッ

京太郎「2人とも湿っぽくするのは止めようって言ったじゃないですか! もっと明るい話題にしましょう!」

桃子「そうっすよ! とりあえず智美先輩の進路が決まってよかったっす」

智美「私の実力なら心配なんていらなかったけどなー」ワハハ

ゆみ「お前そう言ってギリギリだったじゃないか」

智美「勝てば官軍だー」ワハハ

佳織「もう、なにそれ」アハハ

睦月「ぐすっ……智美先輩も大学で麻雀を続けるんですか?」

智美「そのつもりだぞ。ゆみちんとは敵同士だなー」ワハハ

ゆみ「ああ、負けないぞ」

智美「ゆみちんは長野一の強豪行くんだから負けたら赤っ恥だなー」ワハハ

ゆみ「いちいち話の腰を折るな」ハァ

桃子「私も2年後はゆみ先輩の大学に行くっすよ! 全国制覇を目指すっす!」

睦月「わ、私も目指します!」

佳織「私は――」

智美「私のところには来ないんだな」ワハハ…

佳織「わ、私は智美ちゃんのところに行くよ!」

智美「無理しなくていいんだぞ」ワハハ…

佳織「別に無理なんて……」

智美「いやまあ麻雀やるにしても佳織の学力的にも、あえて私の大学目指す理由なんてないしなー」ワハハ

佳織「それ言っちゃうんだ……」

桃子「春からは2人とも女子大生っすかー」

睦月「大人の女って感じがするね」

京太郎「大人の女……」ウーン

桃子「京太郎、アウトっす」

京太郎「何でだよ!?」

智美「目つきがアウトだったなー」

佳織「京太郎くん……」

京太郎「響きだけでも惹かれるんですよ! しょうがないじゃないですか!」

ゆみ「……それは私があまり年上らしくないからかな」シュン

京太郎「ち、違いますよ。ゆみさんが女子大生になるところ想像してたんです」

ゆみ「ん、そうか」パアァァ

京太郎「はいっ」

桃子「唐突なイチャつきやめてくれないっすかね」

睦月「鮮やかだったね」

智美「最後までこんな感じだったなー」ワハハ

佳織「来年はもう見られないと思うと少し残念かな」

ゆみ「私たちをなんだと思ってるんだ!」

京太郎「まるでいつもいちゃついてるみたいに!」

一同「……そのものじゃない」

京太郎・ゆみ「そんなはずは」

一同「それ!」

桃子「バカップルは置いといて、先輩たちの送別会もちゃんとやりたいっすね」

睦月「そうだね、盛大にやろう」

智美「それはちょっと恥ずかしいな」ワハハ

京太郎「今日はクラスで集まりますよね」

ゆみ「そうだな。さすがに今日はそっちに出る予定だ」

京太郎「それじゃ土曜日にやりましょう。精一杯送り出しますよ!」

智美「寄せ書きとか憧れるなー」ワハハ

ゆみ「この人数で寄せ書きというのも難しいだろう」

智美「ちょうど四分割すればいいから書きやすいんじゃないか?」

ゆみ「そういうものかな。私も書いたことがないからよくわからないが」

睦月「その、出来ればそういう話は控えていただけると……」

智美「おお、ネタ潰ししてたら悪かったなー」ワハハ

ゆみ「すまない、あまり気にしないでくれ」

睦月「い、いえ……」アハハ

京太郎(ハードル上がったな)ヒソヒソ

桃子(わざとかって感じっすね)ヒソヒソ

佳織(土曜日までに何か考えないと……)ヒソヒソ

京太郎「そうだ、せっかくだし記念写真でも撮りましょうか」

桃子「いいっすね。でもカメラはあるんすか? まあ携帯でもいいっすけど」

京太郎「携帯にセルフタイマーとかあるのか?」

桃子「結構あるっすよ。というか大体あるんじゃないすか?」

京太郎「マジかよ。全然知らなかった」

桃子「機械に疎いっすねー。それでも男の子っすか!」

京太郎「携帯は大抵女子のが詳しいだろ」

智美「盛り上がってるとこ悪いけどちゃんとカメラはあるぞー」ワハハ

佳織「用意いいね。卒業式だから持ってきたの?」

智美「いや、部費で買ったカメラだ」ワハハ

睦月「部費で!?」

ゆみ「いつの間に、というかどう誤魔化して買ったんだ」

智美「全国大会出場をアピールして押し通したんだ。いい順位なのに写真も残せないなんて恥だとか何とか」

京太郎「さっぱりわからないですけどさすが智美先輩!」

智美「もっと褒めるといいぞー」ワハハ

佳織「智美ちゃん、部費で買ったなら私たちに言っておこうよ」

智美「……ワハハー」

ゆみ「私たちまで誤魔化すな」ハァ

京太郎「それじゃタイマーセットしますよ。10秒です」

ゆみ「ああ」

京太郎「行きまーす」


ピッピッピッピピピピピ……カシャッ


智美「どんな感じかなー」

睦月「うん、よく撮れてますね」

桃子「このカメラの最初の写真が卒業式の集合写真っすか。もっとたくさん撮りたかったっすよー!」

智美「買うだけ買って忘れちゃってなー。まあ今日でデータがいっぱいになるくらい撮ろうじゃないか」ワハハ

佳織「いっぱいって何枚くらい撮れるの?」

智美「確か千枚ちょっとかなー」ワハハ

佳織「ちょっと多いよ!?」

智美「私たちが打ち上げに行くまで撮ってればきっと撮れるだろー」

京太郎「1分間に1枚どころじゃないんですが」

智美「まあなんとかなるさ」ワハハ

ゆみ「いい時間だし、そろそろ私と蒲原は昼ご飯を食べに行こうと思うがお前たちはどうする?」

桃子「行くに決まってるじゃないっすか!」

佳織「もちろん行きますよ」

睦月「なかなか言われないのでこっちから切り出そうかなと思ってました」

ゆみ「そうか。それじゃあちょっと先に行っていてくれ。ちょっと京太郎と蒲原に用があるんだ」

京太郎「?」

睦月「時間かかります?」

ゆみ「いや、すぐに終わるよ。少しだけ待っててくれ」

桃子「了解っす」

佳織「わかりました」

京太郎「用ってなんですか?」

蒲原「私も残ってていいのか?」

ゆみ「あー、いやその、だな」チラッ

蒲原「……あー。京太郎とツーショット撮りたいんだな」ワハハ

京太郎「えっ?」

ゆみ「……」コクッ

智美「そんな顔真っ赤にするくらいなら、わざわざかしこまらなくてもこの後流れで撮ればいいじゃないか」

ゆみ「……部室にはもう来ないだろうから、京太郎と思い出を残して置きたいんだ」カアァァ

京太郎「ゆみさん……」ジーン

智美(聞いた私が馬鹿だったなー)ワハハ…

智美「待たせると悪いから速く撮るぞー」

ゆみ「あ、ああ」

京太郎「は、はい」

ゆみ「……」ドキドキ

京太郎「……」ドキドキ

智美「ほらほら、さっさとくっつけー」イラッ

京太郎「は、はい!」グイッ

ゆみ「きゃっ」

智美「」パシャ

京太郎「どうですか?」

智美「こんな感じだなー」

京太郎「いいんじゃないですか?」

智美「それじゃ行こうかー……ゆみちん?」

ゆみ「……その、もう一枚だけ」

智美「え?」

……

――10分経過――

智美「も、もうそろそろいいだろー?」グッタリ

京太郎「睦月部長たちをこれ以上待たせちゃ悪いですし……」

ゆみ「そ、そうだな。じゃあこれが本当に最後で」アハハ

智美「本当に最後だぞー」

ゆみ「もちろんだ」

智美「それじゃ撮るぞ」

ゆみ「ああ」クイッ

京太郎「ゆみさん?」オットト

ゆみ「」チュッ

智美「」パシャ

京太郎「――な、ゆ、ゆみさん!?」カアァァ

ゆみ「最後だし、ほっぺくらいいいだろう」カアァァ

智美「どんどん大胆になってたけど、こっちの身にもなって欲しいなー」ワハハ…

京太郎「なんというか慣れてきてましたね」アハハ…

ゆみ「そ、そんなことはない。ほら行こう――」ガラッ

桃子・睦月・佳織「あ」

ゆみ「え?」

一同「……」

ゆみ「お、お前たち見てたのか!?」

桃子「いやー遅かったから気になったんすよ」アハハ…

睦月「見たら写真撮っててマズイかなーと思ったんですけど」アハハ…

佳織「好奇心に負けてズルズルと」アハハ…

ゆみ「……こ、後輩にあんなところを見られるなんて」ガクッ

智美「気にするなゆみちん。正直今さらだから」ワハハ

ゆみ「そ、そんなはずは……」チラッ

桃子「いやー」フイッ

睦月「その」フイッ

佳織「あ、あはは」フイッ

ゆみ「くっ……」ガクッ

京太郎「ゆみさん。大丈夫です、俺がいますから」

ゆみ「京太郎ぉ」ギュッ

一同(こんなことしてるのになんでそんなはずはなんて言えたんだろう……)

…………

………

……

――加治木宅前――

ゆみ「まさかあんな風に思われていたとは……」

京太郎「意外でしたね」

ゆみ「知られていたのならあまり隠さなくてもよかったのかな」

京太郎「そうかもしれませんね。まあどっちにしろこれからは隠さなくてもいいじゃないですか」

ゆみ「そうだな。……家についてしまったか」

京太郎「はい。家でよかったんですか?」

ゆみ「ああ、どちらにしろ一度着替えなきゃいけないからな」

京太郎「あ、そうですね」

ゆみ「……こうやって君に送られるのも最後か」

京太郎「……はい」

ゆみ「今まではなんとなくしていたのに、出来なくなると思うと寂しいな」

京太郎「会えなくなるわけじゃないですし、すぐ慣れますよ。まあそれも寂しいですけど」

ゆみ「……そうだ。京太郎、第2ボタンをくれないか?」

京太郎「俺は卒業生じゃないですけど……」

ゆみ「いいじゃないか。私は卒業してしまうんだし」

京太郎「それもそうですね。よっと……」

ゆみ「ああ、いいよ。私が取る」モゾモゾ

ゆみ「……ん、取れた」

京太郎「な、なんか恥ずかしいですね」

ゆみ「そうだな」フフッ

ゆみ「京太郎、私の第2ボタンも貰ってくれ」

京太郎「え? でも女子のは縫い付けてあるじゃないですか」

ゆみ「ハサミくらいあるよ。ほらこれで」スッ

京太郎「そ、それじゃあ失礼します」

ゆみ「ああ」

京太郎「っと……」チョキン

ゆみ「大切にしてくれよ」

京太郎「当然です。ゆみさんこそ俺のボタン大切にしてくださいね」

ゆみ「もちろんだ」

京太郎「でも珍しいですね。ゆみさんは写真もボタンも好きそうですけど、自分からはあんまり言い出さないのに」

ゆみ「……卒業が近くなるともっとああしておけばよかった、こうしておけばよかったと思うんだ」

ゆみ「今から戻ることは出来ないから、せめて写真とかボタンとか、形になるものを思い出として残しておきたいと思って」

ゆみ「……自分から言うのは少し恥ずかしかったけどな」カアァァ

京太郎「ゆみさん……」

ゆみ「悔いはあるけれど、京太郎と写真も撮れたし、ボタンも貰えた。これで大学生活も頑張れそうだ」フフッ

京太郎「……俺、毎日電話しますよ!」

ゆみ「ああ、ありがとう。君も高校生活を頑張れよ。2年間は長いようで短いから」

京太郎「はい。……ゆみさん、1年間ありがとうございました」

ゆみ「私のほうこそありがとう。まあ、ここから離れるわけじゃないんだがな」フフッ

京太郎「一応高校生活のけじめです」

ゆみ「そうか。……そろそろ準備しないと。またな、京太郎」

京太郎「はい。また」

卒業式でした
今日は以上になります
それではまた

いつの間にやら12月
かじゅの誕生日ももうすぐだしSS増えないかなあ
それでは投下します

――大会会場――

桃子「あ、ゆみ先輩! 今週も来てくれたんすか!?」

ゆみ「ああ、当たり前だろう? まあ少し遅れてしまったが」

桃子「京太郎の個人戦開始には間に合わなかったっすねー」ニヤニヤ

ゆみ「べ、別にそういうわけでは」

桃子「そんな無理しなくていいっすよ」ニヤニヤ

ゆみ「まあなんだ。電話はしたしな。間に合わなくて残念じゃないといえば嘘になるが……」

桃子「そ、そうっすか」エー

智美「ゆみちんの惚気けっぷりをなめちゃダメだぞ―」ワハハ

佳織「智美ちゃんも来てくれたんだ」

智美「もちろんだ」ワハハ

睦月「お二人ともありがとうございます」

ゆみ「気にするな。後輩の晴れ舞台を見るために来たんだから」

智美「団体戦の雪辱を果たすんだー!」ワハハ

ゆみ「雪辱といっても4位だし十分立派じゃないか」

智美「ダメだぞゆみちんそんなこと言っちゃ。自分がそう言われて納得できたかー?」

ゆみ「む」

桃子「そうっす! 私は来年も4位に甘んじるつもりなんか微塵もないっすよ!」

佳織「私がもうちょっと振り込まなければなあ……」

桃子「や、天江宮永を相手に役満2回も和了ったかおりん先輩を責める人なんていないっすからね?」

佳織「でも……」

睦月「あの2人で対抗しあってたとはいっても、十分凄いことだよ? ほんとに」

ゆみ「妹尾は相変わらずのようだな」

智美「これでこそ佳織ってかんじだなー。でも個人戦まで引きずっちゃダメだぞ」ワハハ

佳織「それは大丈夫。みんなに余計な心配かけたくないから」

睦月「うん。その意気」

ゆみ「それでその……」

桃子「なんすか?」ニヤニヤ

ゆみ「きょ、京太郎の様子はどうだろうか」

桃子「ようやく本題に入ったっすね!」

ゆみ「ほ、本題とはなんだ。私は別にただ後輩の応援に来ただけで」

智美「来るときに途中経過出てたと思うけど見なかったのかー?」ワハハ

ゆみ「……怖いじゃないか」ボソッ

智美「ゆみちんは可愛いなー」ワハハ

睦月「京太郎くんは……あ、ちょうど映るみたいですね。見てください」フフッ

ゆみ「あ、ああ」ビクビク


アナ『ついにオーラスを迎えたこの卓。現在総合1位の下家選手と総合3位の須賀選手がトップを争っています』

藤田『下家の総合1位はほぼ確定だが、須賀は4位との差が小さい。須賀はなんとしても勝ちたいだろうな』

アナ『その須賀選手はなかなかの好配牌。他家と比べても手が速そうです』

藤田『打点も悪くない。1位も十分狙えそうだな』


ゆみ「全国圏内じゃないか!」

睦月「はい。京太郎くん頑張ってますよ」

佳織「凄いですよね。後はここで勝つだけです」

桃子「私たちも負けていられないっすね!」

智美「ちょっと気が早いぞ。まずは応援だ」

ゆみ「頑張れ、京太郎くん……!」ギュッ

…………

………

……

---------------------------------------

京太郎「ツモ! 3000・6000!」

アナ『試合終了ーーー! オーラスで須賀選手が下家選手を逆転! トップで終了です!』

京太郎「~っしゃあ!!」

下家「あー負けちまったか。須賀、おめでとう」

京太郎「ついにリベンジが果たせました」アハハ

下家「総合順位じゃまだ俺が勝ってんだからな。借りは全国で返す」

京太郎「俺も今度は総合順位でも勝ってみせます!」

下家「言うようになったじゃねえか。それじゃ全国でな」

京太郎「はい!」

スタスタスタ…

京太郎(……試合前は来てなかったけど、ゆみさん来てくれてるかな)

京太郎(多分全国も決まっただろうし、ちゃんと言わないとな)

---------------------------------------

桃子「全国行きほぼ決まりっすね!」

佳織「京太郎くん凄い!」

睦月「誰よりも頑張ってたもんね。報われてよかった」

智美「卒業してからも頑張ったんだなー」

ゆみ「京太郎くん……!」ウルッ

智美「ん? ……ゆみちん、京太郎のところへ行って来たらどうだー?」ワハハ

ゆみ「い、いやしかし卒業した私が今の部員より先に行くわけには……」ウルッ

睦月「気にしないでください。ほら、私たちは私たちの決勝の準備とかありますし」

佳織「それに私たちはおめでとうっていう機会はいくらでもありますから」

ゆみ「でも……」グスッ

桃子「というかあれっすよ。決勝を控えてる私たちの前で惚気けられるのもちょっと」

ゆみ「だ、誰がそんなこと」グスッ

智美「まあ既に泣いてる時点で説得力はないなー」ワハハ

ゆみ「うっ」

桃子「ほら、行ってくるっす。京太郎も待ってるっすよ」

ゆみ「……わかった。ありがとうみんな」タッタッタッ

智美「まったく、付き合ってるんだからあんなに躊躇しなくていいのになー」ワハハ

佳織「大学生になってもやきもきさせられるところは変わらないね」フフッ

桃子「ゆみ先輩らしいっすよ」

睦月「真面目だよね。私たちのことなんて気にしなくていいのに」

智美「まあ本当に気にしないで目の前でやられてもそれはそれで困るけどなー」

睦月「それはそうですね」クスッ

睦月「……さあみんな、ここからは切り替えて、京太郎くんに負けないように私たちも決勝がんばろう!」

一同「おー!」

京太郎「よし! 全国決まってた! 結果見ると安心するなー」ホッ

京太郎「次は控室で応援を――」

ゆみ「京太郎!」タッタッタッ

京太郎「ゆみさん!? 来てくれてたんですか」

ゆみ「もちろんだ……まあ、少し遅れてしまったが」

京太郎「それでもすげー嬉しいです!」

ゆみ「ん、そうか。京太郎、全国出場おめでとう」

京太郎「ありがとうございます! ……その、ゆみさん、先に謝っときます。ごめんなさい」

ゆみ「うん? どうした?」

京太郎「……ゆみ」

ゆみ「!? な、なんだどうしたいきなり!?」ドキッ

京太郎「俺、全国に出られたら言おうと決めてたことがあるんだ」

ゆみ「う、は、はい」ドキドキ

京太郎「俺もプロを目指すよ。ゆみの隣にずっといられるように。ゆみと同じ大学に行って」

ゆみ「!」

京太郎「今まではその、自分に自信がなくてそんなこと言えなかったけど、やっとゆみと同じだけの結果を残せたから」

京太郎「ずっとゆみと同じ道を歩いて行きたいんだ。……今の俺はまだ後ろにいるけど、いつか追いつきたいし、追い越したい」

京太郎「だから、これからもずっと一緒に頑張りたい! ダメだって言っても追いかけるけど、出来れば認めてほしい」

ゆみ「……敬語を使わなくなったのも、これでようやく私と同じところに立てたとか思ったからか?」フフッ

京太郎「うっ。は、はい。その、嫌でしたらもちろんやめますので……」

ゆみ「もっと自信を持って欲しいな。呼び捨てでいいなんて前にも言ったろう?」

京太郎「そ、そうで……だったっけか」

ゆみ「まあその、驚いたし多分顔も真っ赤になっていると思うが、直に慣れるから気にしないでくれ」カアァァ

京太郎「わかった」

ゆみ「それでプロを目指すんだな。そんなこと、私が認めるも認めないもないだろう」

京太郎「いやでも……」

ゆみ「うん、まあ言いたいことはわかるよ。……実を言うと、私も想像していたんだ」

京太郎「え?」

ゆみ「京太郎もプロを目指してくれたらいいなって私も思っていたんだ。学生の間だけじゃなくて、大人になってからもずっと同じ道を歩いていけたらって」

京太郎「ほ、本当に!?」

ゆみ「ああ、だから君がそう言ってくれて、おんなじことを考えていたんだなって思うと嬉しかったよ」フフッ

京太郎「……ゆみ!」ガバッ

ゆみ「ひゃぅ!? な、何を!?」ワタワタ

京太郎「俺頑張るから! とりあえず全国で入賞できるように応援しててくれ!」ギューッ

ゆみ「……うん、応援も出来るだけ行くようにするよ」ギュッ

京太郎「いや、それはお金がかかるでしょうから無理しなくても」

ゆみ「なんでそこだけ現実的になるんだ」ハァ

京太郎「抱きしめたらちょっと冷静になって来たんですけど、そしたら恥ずかしくなってきたので少し現実逃避を」

ゆみ「今さら遅い。だからもう少しこのままでいてくれ」

京太郎「……いや、でもいつものパターンだとこの辺りで」

ゆみ「蒲原たちか? 決勝を控えてるんだからいくらなんでも――」チラッ

智美・桃子・睦月・佳織「あ」

京太郎・ゆみ「え」

一同「…………」

ゆみ「お、お前たちもうすぐ決勝だろう!? なんでここにいるんだ!」

桃子「いやーこんなの放置して行ったら麻雀に身が入らないっすよ」

睦月「むしろ見たほうが落ち着くかなと……」

佳織「まあその、そういうわけで……」

智美「面白そうだったからなー」ワハハ

ゆみ「くっ、何故私はもっと我慢できなかったんだ!」

京太郎「お互いもっと忍耐力付けないとダメだ