吉良吉影の奇妙な友情 (18)

舞台はS市杜王町。

吉良吉影が川尻浩作に扮し、バイツァダストを身につけ、

そして『仗助達と戦わなかった』場合の想像のお話。



吉良はある少年と少女に出会う。




※オリジナルキャラ及びオリジナルスタンドが登場します。


拙い文章ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368162895

商店街の電器店。
テレビの前に二人の学生が集まっている。

学生A「おおお〜〜!グルメリポーターの億泰だッ!今日は『自然薯そば』かよ〜っ!」

学生B「すげーよな、同じ街の高校生がテレビに出るなんてよォ〜〜
飯食ってる時にスカウトされるとか、うらやましいぜェーーッ!」


「名匠が研いだ刀みてーな蕎麦のなめらかさ!
自然薯もよォ、こねくり回した餅みてーな感触っつーかよおー、
箸で持ち上げてもこぼれそうでこぼれねェーーッ!
祭りの時の金魚すくい、みてーによお〜っ!ゥンまああ〜〜〜いっ!!」


学生A「ゴクリ。今日の昼飯はそば屋『有りす川』で決まりだなッ!」

学生B「あぁ、もう12時になる!早く行こうぜええ〜〜っ!」

時計の針は12時ちょうどを指している。

吉良はサンジェルマンの紙袋をゴミ箱に捨て、
駅に向かって商店街を歩いていた。

「今日のカツサンドも美味だった」

そんな事を考えていると、
ふと背後に言い表せない『奇妙な感覚』を感じた。

吉良は後ろを振り向く。

少年と少女が歩いていた。
早人と同じくらいの年だろうか。

吉良「(この『感覚』は……この少年達か?)」

吉良が少年達をじっと見ていると、少年が口を開いた。

少年「僕の名前は『孝貴(こうき)』」

少女「……わたしは『紗枝(さえ)』」

少年「おじさんの名前は何て言うの?」

吉良「(ん?何だこの子供達は…
わたしの名か?わたしの名は『吉良吉影』。
フフフハハハハッ!この名を誰かに言うわけがないだろう)」

少年「言うわけがない?でもごめんね、僕『わかる』んだ。
『キラヨシカゲ』って言うんだね、おじさん」


ゴゴゴゴゴゴ…

吉良「…な、なにィ!?」

吉良「(こいつ…新手のスタンド使いかッ!?)」

少年「?? ねぇ『スタンド使い』って何?」

吉良「考えを読まれた!?
(仕方ないッ!早人のバイツァダストを解除し…) キラークイーンッ!」

シュバッ!……ピタッ

少年「??」

吉良「み、見えていないのか…?『キラークイーン』が!」

少女「キャアッ!?」

吉良「!?」 少年「!?」

不良「一家団欒のおしゃべり中スミマセンねェー。幸せ家族もさ、
少しは『不幸』にならなきゃいけねーとオレは思うわけよ」

少女「あれ?バッグが…!?ねぇ、バッグとったでしょ!返して!」

不良「うるせーぞッ!ソバカスだらけの顔しやがって!
ブツブツ言うのは顔面だけにしろよコラァ!」

少女「!? う…うぅっ……」

少年「おいッ!バッグ返せよ!『大切なもの』なんだ!あと謝れ!」

不良「ハハッ!やなこった!ホレパ〜〜スッ!」

仲間の不良にバッグを投げる。仲間の不良はそのままどこかに走り去ってしまった。


少年「あ、あいつ…ッ!?」

吉良「(わたしは、トラブルには極力関わらない。
カワイソーだとは思うが、私は無関け……こ、これはッ!?)」

吉良の視界に少女の『手』が映った。

吉良「(う…美しいッ!なんて美しい『手』なんだ!
この少女は『大器』だ。大人になれば素晴らしい女性になるッ!)」

不良「おいおっさん。どこ見てんだ?反抗期の子供はちゃんとしつけとけよ。
しょうがねぇッ!まずはオレがてめーをしつけてやるぜェェーーッ!」

吉良「(ムッ!『手』に見とれて呆けていたか。
わたしとしたことがこんなカスに絡まれるとはな。仕方ない…)」

ボンッ!ピュッ
吉良はキラークイーンで不良の指を切断する。


不良「!? おおおあっ…ふううああ〜おおあ!?」

不良は泣き叫びながらどこかに走り去ってしまった。

吉良「(フン。失せろ。さてこの少年達をどうするか。
わたしを襲うつもりならもうやっているはず。
しかし、何もしてこない。『心は読める』が、
どうやらスタンド使いではないらしいな…)」

少年「……」

吉良「君達に話がある。ついてこい。
(もし逃げるのであれば、すぐに『始末する』)」

吉良達は、商店街から脇道にそれた場所にある、
小さな公園に来ていた。公園の中央部に大きな樹がある以外に、取り立てて目立つものはない。

駅からも近いが、吉良達以外に人はいなかった。

吉良「静かな良い場所だ。正式名称は忘れたが、
通称『初公園(ういこうえん)』と呼ばれていたかな」

少女「……」

少女はバッグの行方を追いたかったようだが、
少年が「ダメだ。行ったらおじさんに殺される。
さすがにこんなところで死ぬのは嫌だろ?」
という話をし、渋々ついてきたようだ。


『キミタチ三人ハ 「三ツ」以上ダ』

吉良「ん…?何か今、『声』が聞こえたか…?」

吉良「(それにしても…
この少女はさっきからずっと『目をつぶっている』。それにあの杖。盲目なのか?
バッグを盗られた時も、一瞬何があったかわかっていない風ではあったが…まぁいい)」

吉良「(ここでこの吉良吉影の考える選択肢は二つだ。
�二人共殺す
�片方を殺し、片方をバイツァダストの対象にする
どうするかな。先程早人から解除したとはいえ、
現状バイツァダストの対象はあいつがベストだろうし…)」

少年「ねぇ、聞きたいんだけど」

吉良「……何だ?」

少年「さっき紗枝のことを『美しい』って思ってたよね?」

吉良「……あぁ、確かにそう思っていた。それがどうした?」

少女「ええ!?わ、わたしが『美しい』…!?そんな…でも嬉しい」

ポッ
少女の頬が赤らみ始め、そして恥ずかしそうに微笑んだ。

少年「紗枝が僕以外の人間の前で笑った…!!すごい!」

吉良「(…な、何なんだ?)」

少年「おじさん、ありがとう!『あの日』以来だよ!快挙だ!」

吉良「どういうことだ?話が見えない」

少年「あぁ、ごめん。さっきも疑問に思ってたよね。盲目なのか?って。
そう、紗枝は目が見えないんだ。5才の時から…」

吉良「生まれつきではないのか。何か事故にでもあったのか?」

少年「ううん。事故じゃない。紗枝は自分で自分の目を…」




少年「『潰した』んだ」

名門の栗生家は、杜王町から内陸部へ車で1時間半程走ったところにある。

少女の名前は『栗生紗枝(くりうさえ)』。

兄の名前は『栗生孝貴(くりうこうき)』。1988年1月30日に、この二人の双子は生まれた。


双子には特別な『能力』があった。

その目で『見た』人間の『考えがわかる』という、一種のテレパシー能力。

しかし現在、このテレパシー能力を使えるのは孝貴だけだ。


紗枝は5才の時に、この能力を『失明』という形で失っている。

- 7年前(5才の時) -

チュンチュン…
小鳥が少女の左手に乗っている。

紗枝「うふふ、かわいい」

孝貴「おーい!ご飯のじかんだぞー!」

紗枝「あら、それじゃあ今日はここまでね。お行きなさい」

バサバサバサ…
紗枝が声をかけると、鳥は庭の木へ向け羽ばたいていった。


孝貴「紗枝はとりやねこがすきだね」

紗枝「うん。だってうそをつかないから…」

母「(さて、紗枝にもそろそろ料理を覚えてもらいましょうか)
ねぇ紗枝。今度お母さんと一緒にお料理を作らない?」

紗枝「……」

母「(ノーリアクション。ほんっと不気味な子だわ。あーやだやだ。召し使いにやらせよう)
あら、お母さんとは嫌かしら?じゃあ仕方がないわね。メイドさんに任せましょうか」


メイドA「お嬢様、本日も素敵なお召し物ですね。
(この年でこのソバカスの量!あれだけケアしてこれなんて、超ウケルわ〜〜〜)」

メイドB「奥様から料理のお勉強をするよう仰せつかっておりますが、いかがなさいますか?
(この子本当に気持ち悪いィィ〜〜〜ッ!無表情だし。ノーって言わないかなあ〜、っていうか言えッ!)」

メイドC「お嬢様は本当に鳥がお好きですね。
(そんなに訓練された鳥が好きなのォ〜?まぁ野生の鳥なんて見たことがないんだろうけどねェ〜〜〜)」

孝貴と紗枝は、庭にあるベンチで星空を見ていた。


孝貴「……今日みた映画むずかしかったね」

紗枝「うん。でもわたしとてもすき。いままでの映画で『いちばんすき』よ」

孝貴「『ひのなごり』だっけ?」

紗枝「そう。ねぇお兄ちゃん…」

孝貴「ん?」


二人は顔を合わし、見つめ合う。


紗枝「(お兄ちゃんは紗枝のこと、すき?)」

孝貴「(あたりまえじゃないか。すきだよ。『いちばんすき』だ)」

紗枝「(うれしい。ねぇ…わたしお外にでたい)」

孝貴「(そうだね、僕もでてみたいなあ。よし、なんとかぬけ出してみよう!)」


二人は生まれてから、ただの一度も家の敷地から外に出たことがなかった。

敷地内にいる動物や鳥類は訓練され、二人の言うことを聞くように『躾られていた』。

紗枝は『野生』の鳥や動物に会ってみたかった。

孝貴は、紗枝の望みを叶えてやりたかった。

ただそれだけだった。

母「何ですって!?孝貴と紗枝が見当たらない!?あいつらッッ!!」

屋敷内は騒然としていた。
昼食の時間になっても孝貴と紗枝が姿を見せず、
使用人総出で二人を捜索。結果、敷地内に二人の姿を見つけられなかったのだ。

二人が『外』に出てもう何時間も経過している。


執事「何…?うん、うん、わかった。奥様!お二人を発見したそうです!」

母「本当!?どこにいたの!?」

執事「そ、それがその…」

母「早く言いなさい!」

執事「ぶ、『ぶどうが丘総合病院』…です」

母「な、何でそんなところに!?」

- 数時間前 -

自宅からここまで、2時間近くかかっただろうか。
二人はタクシーに乗り、海まで来ていた。

運転手「ここら一体の海岸は別荘地帯なんだ。
東京に住んでいるどこかの社長の避暑地としても使われているんだよ」

紗枝「すっごおおお〜〜い」

孝貴「うわあああ、きれいだな〜〜」

二人はタクシーから降り、辺りの景色を眺め感嘆の声を上げている。


運転手「ところで…まだ乗るかい?」

孝貴「いや、ここでいいよ。どうもありがとう!」

運転手「……あの、『お代』の方を頂きたいんだけど」

孝貴「おだいって??」

運転手「……ええ、だから『お金』ですよ。二人は『栗生家』のご子息だよね?」

孝貴「『お金』って……なんだ?」

ドゴァッ!
運転手が孝貴を蹴り上げた。

孝貴「……ッ!?」

運転手「てめーこのクソガキがあああぁぁぁッ!『栗生』じゃねーのかよ!!」

ドゴッ!ドカッ!

運転手「許せねぇ!図に乗りやがって!教育だ!教育してやるッ!
金がねーだと!?こんな距離走らせやがって!ぶちのめさねーと気がすまねェーーッ!!」

紗枝「や、やめて!」

ドガッ!ドカッ!

運転手「はぁ…はぁ…!やめるわけねーだろうがッ!オラ!どうだ!思い知ったか!」

孝貴「う…うぅ……」

ゴロツキA「ねぇオジサァ〜〜〜ン、ナニやってるんスかぁ〜〜?」

バイツァは再起動するのにもう一度深く絶望しなきゃならないんじゃなかったっけ

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