上条「異常だよ、この街は」(302)

初ssです。スローペースだと思いますがよろしくお願いします。

グロいの入ると思うので注意してください。



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「ひぃっ、やめてくれぇぇぇぇえ」

「やめるわけねえだろーが。屑野郎」

日も落ち、街灯も切れかかった裏路地に二人の少年がいる。
一人は顔をくしゃくしゃに歪めながら懇願する少年、もう一人はまるで悪魔のような笑みを浮かべながら
今に目の前の敵を殺そうとしている少年。

「わ、悪かったっ!! もうしないから見逃してくれぇぇ!!」

「おいおいおい、今まで散々やってきた奴がそんなこと言うのかよ。
 ハッ、笑えねーな」

「い、いやだっぁぁぁぁ!!」

悲痛な叫び声を上げながら逃げようとする少年を、慣れた手つきで捕まえ
首を強い力で掴む。

「……がっ……ぐがぁ……」

メキメキメキと鈍い音がする。首が締まっている音だ。
少年はその手を引き離そうともがくが、全て無意味に終わる。

「アハハハハッ、いい気味じゃねえーかッ!!」

「た…す……け……」

「因果応報って言う四字熟語知ってるか?その意味は簡単に言えば『やった事は全部、自分に帰ってくる』!!」

「い………」

「じゃあな。化け物」

先ほどの音とは全く違う残虐な音が裏路地に響いた。





「早くスーパーに行かないとヤバイぞ!、特売が終わっちまうっ!!」

上条当麻は走っていた。普段の場合は特売などは事前にチェックして
遅れることのないようにしている上条であったが、今日は担任の小萌先生から
『上条ちゃんは休みばっかりなので補修でーす』と突然、学校が終わって帰宅しようと
するちょうど間際に言われ、遅くまで居残っていた為である。

「ちくしょう。これで間に合わなかったら小萌先生恨むぞ……」

苦学生の上条にとってはタイムセールを逃すのは致命的なのだ。
それもこれも暴飲暴食シスターの食費と度重なる入院でもともと少ない奨学金の
大半をもってかれ、いろいろと節約しないと生活が危うくなるという状態であるためだ。

「はぁ…はぁ……タイムセール終了まであと二十分だ。これなら間に合うか!?」

お買い得商品はほとんど売り切れだろうが、他のものは少しぐらい残っているだろうと
上条は僅かな希望を抱きつつ大通りを駆け抜ける。

「あれは……」

しばらく進むと交差点に差し掛かると人だかりができていた。野次馬の向こう側には
大勢のアンチスキルやらジャッジメントが忙しなく動いているのが見える。そして微かに金属臭い匂いがする。
なんだろうと思い、上条は足を止め、最後尾にいた野次馬の少年に尋ねた。





「何が起きたんだ?」

「また無能力者狩りさ。これで何件目だか……」

「嘘だろ……まだ日も落ちていないのに!?」

「……うん」

野次馬の少年は苦しそうにそう伝える。おそらくこの少年も
無能力者なのだろう。

「犯人は?」

残念そうに首を横に振った。その顔には悲痛が見て取れるほどだった。

「……そっか」

ここ最近、高位能力者による殺人事件が多発している。
被害者は無能力者や低能力者など低レベルの能力者ばかりだ。
手口も『大人数で奇襲』といった卑劣なもので多くの学生は殺されており
女学生に至っては強姦されてから殺されている。

そのため学園都市は完全下校時間を早め、夜間は外に出歩かないように注意を呼びかけ
アンチスキルを巡回させるなどの対策をとっているが犯人はまだ捕まってない。






「現場みた?」

野次馬の少年が苦痛な声のまま質問する

「いや……」

「現場を見てみなよ。本当に非道いから……何でこんなことできるんだろうって思うよ」

上条は目を向ける。さっきの野次馬がまだ群がっているが誰ひとり声を上げていない。
無音の空間の中にアンチスキルたちの指示しか響いていない。

「……っ」

上条は群れを掻き分け先頭に出る。その光景は最悪なものだった。

交差点の中心は爆弾で吹き飛ばされたかのように抉れ、信号機は針金のようにグニャグニャに変形しており
地面にはバラバラになった看板やアスファルトで覆われている。車数台が何かの能力だろうか、不自然にペシャンコに潰れている。

それだけならまだいい、時間をかければ元に戻せる。しかしこの羅列したもの全部に塗り固められている赤黒いものや
ピンク色のモノは元に戻せない。

上条は地獄を見ている。耳に響くのは呻き声や泣き叫ぶ声。鉄の匂いが鼻に嫌というほど鼻につき、取れない。
地面にはすごく濃い赤い影や虫がたかっている腕、細長い腸のようなモノがブツ切れに散らばっている。
そして首や体やらがありえない方向に曲がっているモノが横たわっている。







「うっ……」

胃が逆流するのを感じ、力強く口を抑える。顔は青ざめ、目の焦点が合わない。筋肉が不自然に振動し、体全体が震える。
目からは涙が自然と溢れてしまい、体を支えられず膝をつく。

野次馬の生徒もそうだった。全員、この地獄の光景に戦慄し恐怖している。
言葉を発することもできない。

アンチスキルやジャッジメントが生徒だったモノの隣で生き残った生徒たちを懸命に治療している。
被っている生徒の顔は皆、痛みと恐怖に支配されボロボロになっている。

(どうしてこんなことができんだよ…なんで……なんで……)

理解できない。地に膝を着き、口を抑えながらそう思う。
なぜこんなことができるのか、どんなに考えても理解できない。




(異常だ……異常すぎる……)



(どうして……どうして…どうして、どうしてッ!!)




          「あっ」




上条は理解した。どうして奴らがこんなことできるのか。




         











  そうか   








       奴らは――――――――




















 化け物なんだ










日は落ちかけて夜はもう近い。上条は帰路に就いていた。その足取りは弱々しく遅い、俯きながら帰るその様子は
同情を買うだろう。

「……」

先ほどの光景を思い出す。未だにあの圧倒的な赤が目にこびり着いて消えない。
あの鉄の匂いが鼻を掠める。

他のもっと楽しいことを考えようとするが、その度にあの地獄が頭をちらつく。
それぐらい衝撃が大きかった。

「もうダメだ、ダメだ。こんな姿インデックスに見せられねーよ
 こういうのは上条さんらしくないですのことよ!!」

頭を強く振って、威勢良く言ってみる。あの悪夢を振り払うがごとく。
周りにいる少ない学生がチラリと横目で怪訝そうに見る。

「……っ」

また頭を過ぎる。あのピンク色のモノや悲鳴が。
あの空気が。あの状況が。ハンマーで後頭部を殴られたかのような感覚が走る。








「……しばらく飯は食えないな」

乾いた声でハハッと笑う。心の中で『タイムセールにも行けなかったし』と自虐を付け加える。

「……」

笑えない。むしろ虚しくなる。あの人たちは行きたい所にも行けずに死んだんだろう。
まだろくに人生も過ごしていないのに。やりたいことだってたくさん有ったはずだ。
もっと、もっと……

「……くそッ」

小さい声で呟く。誰にも聞こえない声で、自分だけにしか聞こえない声で。
上条の心の中にはいろんな感情が渦を巻いている。怒りや悲しみや恐怖や苦しみや嫌悪。
たくさんの感情が行き場をなくして上条の体を巡っている。

(化け物)

あの時浮かんだ言葉。あの惨劇を起こした奴らは化け物だと上条は思う。
人の皮をかぶった化け物なんだとそう思った。あれを見て何も思わない奴らだと。

それに相応しい能力も持っているし――――――――

ゾクッゾクッゾクッと上条の背筋に悪寒が走った。
バッと上条は辺りを見渡す。






「にゃ、にゃあ?!」

ドテッと驚いた反動で尻餅をついた。
後ろを振り向いた先にいたのは綺麗な茶髪で常盤台中学校のブレザーを着た少女だった。

「み、御坂!? どうしたんだ?」

結構、派手についていたので痛そうだなと思いながらも
上条は尻餅ついた少女を立たせながら聞いた。

「いたたた……」

「大丈夫か? 御坂」

「うん……大丈夫よ、ありがと」

若干、顔を赤くしながら礼を言う常盤台の超電磁砲こと御坂美琴を
微熱でもあるのかと思いながら上条は尋ねた。

「もう一度言うけど、御坂はどうしたんだ?こんな時間に
 あと顔赤いけど熱でもあるのか?」

そう言いながら上条は自分の額を御坂の額に合わせる。








「ね、ねつなんてないわよぉ///」」

「本当か?更に上がった感じしたんだか?」

「ほほほほんとうにないからぁ/// だ、だいじょーぶよぉ///」

「そっか、ならいいんだが」

顔から湯気が出ている御坂の言葉に従いとりあえず上条は額を離した。
御坂はというと深呼吸して呼吸を整えている。その様子を上条は
本当は病気じゃないのかと有らぬ心配をしている。

「とりあえず御坂がここにいる理由を聞きたいんだが……
 帰り道は逆だろ」

深呼吸が終わったのを見計らって上条は聞いてみる。

「アンタのせいよ!!」

「上条さんのせい……?」







「とぼけんなっ!!いくら呼んでも反応ないし仕方ないから
 気づかせようと近づいたらアンタが私を脅かしたんじゃないのよ!!」

「へっ…? じゃあ、後ろにいた?」

「『へっ…』じゃないわよ!!馬鹿にしてんのアンタ、いたわよ」

「馬鹿にはしてないけど、えっーと…御坂サンはその…いつからいたんでしょーか……?」

右手で頬を掻きながら上条は聞いてみる。歩きながら結構独り言を言っていたので
他人ならまだしも知り合いに聞かれていたら恥ずかしいのだ。

「アンタが『もうダメだ、ダメだ――――』って一人で言っている時からいたわよ
 インデックスって何?人?」

(は、恥ずかしすぎる。やっちまったぁぁああ)

上条は恥ずかしさにワナワナと震える。顔が真っ赤なので俯いて隠す。

「どうしたの?プルプル震えて?」

御坂が心配そうに聞く。その問に上条は答えない。
ただ思いっきり深呼吸して




「不幸だぁぁっぁあああぁぁああああ」






「ほらっ、これ飲みなさい。私のお気に入りだから」

「さんきゅ」

「やっぱおいしーわ、これ」

ポイと渡されたアルミ缶を上条は慌てて取る。ヤシの実サイダーというものらしい。
一口飲んで口から離す。

上条たちは公園に来ていた。なんでも御坂が話をしたいらしく立ち話もナンだということで
ここに来たのだ。しかし完全下校時刻が近いので長居は出来ない。

「で、御坂は俺になんの用だよ」

上条は御坂に聞く。言葉は悪いが何度無視(気づかなかっただけだが)されても話したい
理由があるらしい。

「アンタさ。体調悪い?」

「い、いや、ぜんぜん」















                   「ウソでしょ」













真剣な眼差しでそう聞かれて上条はたじろぐ。
いつものフザけた感じはない。とても真剣に。

「さっき、足フラフラだったわよ。顔色もすごく悪かった。それも体調不良とか
 そういうのじゃなくて何か悪いものでも見てそうなったって感じだった」

「どうしたの?」

「……」

別に御坂にいうことはダメということじゃない。別に上条自身はあの事件に関わっていないし
野次馬として見たというだけだから。あのことに関して言えない秘密なんかないし、存在しない。
勝手に事件現場をみて、勝手に衝撃を受けただけだ。

ただあの光景を思い出すのが嫌なのだ。

「御坂と話したら少し楽になったから言うよ」

しかし上条が言ったことも事実だ。御坂と話していたら気分が良くなった。
このまま言わなかったら、御坂はずっと心配するだろうしいったほうが良い。







「無能力者狩りの現場を見ちゃったんだよ
 発見者とかじゃなく野次馬として」

御坂は一瞬目を見開き、そして目を伏せた。

「……そう」


「黒子も今、そんな感じよ。ジャッジメントで沢山の死を見てグロッキーになっちゃって
 今も病院で療養中だわ……」

「白井が……?」

「そう」

辛そうに目を伏せながら御坂は言う。

「私も見たわ、今日のもだけど他の日のも
 最低だけど慣れちゃったわ」

御坂が沈痛な表情をする。唇を噛み締め拳を握っている。
悪魔のようなあの実験の中心いた御坂は許せないのだろう。







お互いに沈黙する。公園には二人以外誰もいないので
風の音しか響かない。

「……もし……もしも能力がなかったらどうなってたんだろうな?
 起こらなかったのか?」

沈黙を上条が壊す。その質問は絶対に叶わない仮定の質問。

「関係ないわ。能力があってもなくても、やる奴はやるわよ。
 ただ被害の程度の違いだけ。なかったらもっと減ってた」

「……結局は使う人次第よ」

「だよな」

その言葉を聞いて前に感じた悪寒が薄まっていくのを上条は感じた。
結局使う人次第だ。悪用する奴はするし、しない奴はしない。
能力が悪い訳じゃない、使う人間が悪いのだ。

上条が黙っていると御坂が橙色の雲を見ながら呟いた。














「どうしてあんな非道い事できるんだろう」









変なところできれましたが一応ここで投下終了です。

続きもちょくちょく書き試して頑張って投下します

ちょっとかけたんで投下
全然進まねぇ……




「もうすぐ完全下校時間だし帰るか」

時計を見ながら上条が提案する。太陽も既に落ちて
薄暗くなった公園を外灯と自販機の光が照らしている。

「そうね」

御坂も了承しこのまま解散することになった。
上条と御坂の帰り道は逆方向のため自然と上条は一人で帰ることになる。
……のだが

「どうして御坂さんはついてくるのでしょーか…?」

「別にいいじゃなーいっ!!ダメなの」

「ダメ!!」

ジト目で見ながらそんなことを言ってくる御坂に
上条はNOを突きつける。






「何、私と帰るのがイヤって訳!!」

上条は御坂の肩に両手を添えながら顔を近づけ。
諭すように、真っ直ぐに目を見た。

「違う、御坂が心配だから言ってるんだ。最近は物騒なんだから
 下校時刻は守らないとダメだ。だからもう帰れ」
 
「ちょ、ちょちょっとぉお///」

突然顔を近づけられた御坂はボンと音が出そうなくらい赤くなり
バリバリと頭から漏電している。

「あっ」

頭が沸騰して平衡感覚を失っていた御坂は足がもつれて上条に
寄りかかる形になってしまう。

「おいちょっと御坂?!大丈夫か?おいしっかりしろ!!」

突然、倒れかかってきた御坂を添えていた両手で支える上条。
支え方がちょうど御坂を囲むように、つまり抱きしめる形になっていた。

「ふ、ふにゃああぁぁっぁあああ」

「御坂ぁぁぁあ!!しっかりしろぉぉぉおおお!!」

御坂美琴の意識はそこで途切れた。







「はぁ…疲れた。結構きついな…」

上条は帰宅していた。帰宅といっても寮の階段を上がっている最中である。
部屋が七階なので階段で昇降するのは結構きつい。ならエレベーター使えという話なのだろうが
なぜかボタンが全く反応しなかったのだ。十分ほど粘ってみたのだが意味はなかった。

「御坂のせいでなんかいつもの倍は疲れた気がする。
 あいつこそ体調大丈夫かよ…パトロール務まんのか」

パトロール。これが先ほど御坂が付いてきた理由。アンチスキルと一緒に
巡回をするらしく、その集合場所が上条の寮と方向が一緒だったからついてきたらしい。
なんですぐ言わないのかと上条が聞いたら「別にいいじゃない」と顔を赤くして言っていた。

その答えに不服であるが顔が赤くなったり、気絶したりと体調が良くなさそうだなと上条は推測して
それ以上何も言わず黙っていたのだ。

「パトロールねぇ……」







御坂はこれをアンチスキルのお偉いさんに直接頼まれたと言っていた。
レベル5が一緒に巡回していれば犯人たちも迂闊に動けないからという理由らしい。
確かに効果的な手だ。御坂は強いし、遭遇すれば全員捕まえることだってできるだろう。
しかし、それだけじゃ犯行は収まらない。

(そもそも何で捕まらないんだ)

上条は疑問に思う。今日のように相当派手にやっているのになぜ捕まえられないのか?

(バンクで照合すれば犯人たちの能力ぐらいはアタリがつけられるはずなのに……)

「……とりあえず家に入ろう」

部屋の前まで行きドアノブを上条は回す。
キィィと甲高い金属音を響かせながらドアをあける
そしてただいまーと上条が言う前に白いシスターが頭めがけて突っ込んできた。

「とぉぉぉうぅぅぅぅぅまぁぁっぁっぁぁ!!!」

「痛い痛い痛い痛い痛い!!頭が砕けるぅぅぅうううう!!!」

ガリっと言う余り気持ちの良くない音が上条の耳に直接届く。
めちゃくちゃ痛いが上条はとりあえず胸いっぱい空気を吸い込んで
恒例の口癖を叫ぶ。

「不幸だぁっぁぁっぁあああああああ」



終わり。 話が全然進まない

やべ、日付変わった。投下します




「……」

上条は俯きながら歩いていた。この時間帯は学生は授業を受けている時間帯で
通りは人気が少ない。肌寒い風が強く吹いている。

上条のその歩幅は非常に狭く、遅い。
足を動かしながら頭に浮かぶのは、先ほどのインデックスの表情。
そして小さいが明確に聞こえた報道の声。

「また……っ」

昨日の惨劇がまた起きたという事実に上条は苛立ちを隠せない。
上条の胸にフツフツと純粋な怒りが込み上げる。

色んなことに巻き込まれ沢山の心配をかけたが
インデックスのあんな表情を見たのは久しぶりだった。

病院で目を醒ますたびにああいう表情をしていた。

今にも泣き出しそうに目が揺れていて、声は掠れていた。
そんな表情をさせたことを悔やむ。





ここ最近で街全体の活気が減った。多くの人が最近の事件で
出歩かなくなった為だ。いつ自分も被害者になるかわからない状況では
無理もない。

『罪のない人々を大勢殺し、周りを恐怖に陥れた』

この事実に上条は怒りの炎を燃やす。インデックスのように
多くの人を悲しませる原因を作った能力者たちが許せない。

この感情をどう処理すればいいのか上条は分からない。
体全身を拭えきれない苛立ちで小刻みに震える。

(ふざけんな……)

ただ、ただこの一言が心に浮かぶ。
こんな惨劇は起こっていいはずがない、起こらせていいはずがない。
このまま自分が見過ごしていいわけがない。



「……そんな最悪な幻想はぶち殺してやる」

上条はそう宣言する。もう二度とこんなことを起こさせないと誓う。
上条の目つきが変わる。





上条は一般人だ。アンチスキルやジャッジメントではない。
唯の高校生だ。犯人を見つける方法も知らないし、分からない。

(俺に何ができるなんて分からない)

アンチスキルやジャッジメントが厳重に現場を検証し尽くしているはずだ。
もしかしたら犯人の痕跡やら、もしくは犯人特定まで進んでいるかもしれない。

(意味ないかもしれない)

自分ができることなんて無いかもしれない。だからといって見て見ぬ振りはできない。
あの惨劇を、悲しい顔をもう見たくない。

(協力なんて大逸れた事はできないかもしれない)

そう考えたら上条の足は自然と学校から遠ざかって行く。
動き出した足は昨日の地獄へと向かっていった。

(でも俺の出来る限りのことはしたい)

純粋な想い。たったこれだけで行動する。
上条はそういう人間なのだ。






「これは……」

上条は息を飲んだ。その顔には焦りと驚きが混じっている。
自分は惨劇現場へと向かっていたはずだ。場所も間違えてない。間違えるはずがないのだが

「直ってる……」

そう直っていた。完璧に元通りになっていた。
まるで何もなかったかのように。

あれだけいたアンチスキルが一人だけになっている。
抉れていた地面は綺麗に修復されており、傷一つない。
グニャグニャに折曲っていた信号は新品に取り替えられている。
バラバラになっていた看板や標識はも同様だ。

あれだけ朱に染まっていたのにその痕跡すらなく、鉄の匂いもない。
普通にトラックやらバスが走っている。

学園都市は科学が進んでいる。それは上条もここの常識として分かっていたが
まさかここまでとは実感が沸かなかった。






しかしそのことは今はどうでも良い。ここで何か手掛かりを探すことが重要だ。
上条はただ一人現場にいたアンチスキルの男性に尋ねる。

「昨日、ここで無能力者狩りが起きたんですけど、犯人に関する
 痕跡とか手掛かりとかってありませんでしたか?」

「またか……残念だけど守秘義務で答えられないよ」

「また……?」

上条は聞き返す。自分の他にも協力しようという人がいるのだろうか。

「おっと、すまない。マスコミやら新聞記者やらがたくさん来て
 君と同じようなことを言うからつい……」

アンチスキルは心底疲れたという声色で続ける。






「一人だと対応するのも疲れてしまって……って
 また愚痴ってしまった、すまない。ところで君は何しに来たの?
 新聞部とかの取材とか?」

「いや、違います。ただ俺に何かできることがあったらなって思って……」

上条がそう言うとアンチスキルの男性は一瞬、目を丸くし、
機嫌よく笑い始めた。

「いい青年だな。こういう子が増えれば
 オジサンの仕事も楽になるのにな、一人でここに居ることもない」

「そういえば、どうして一人なんですか?
 昨日ほどの事件ならもっといても良いと思いますけど?」

上条は質問する。現場は綺麗さっぱり直っていても
昨日、あんな事件が起きたのだからアンチスキルがもっと居てもいいんじゃないかと上条は思う。







「アンチスキルというのは教師と兼任だろ?だから、生徒が学校の間は
 少なくなってしまうんだ。それと同じ理由でジャッジメントもいないだろ?
 彼らは生徒だからね」

「……」

アンチスキルはそう答える。上条はその答えに違和感を感じる。
とても小さな、小さな違和感を感じる。
頭に『何かが引っかかる』という感じがする。

アンチスキルは『教師と兼任』であり『ボランティア』だ。
給料は出ないし、体を張ることもする。時には命にも関わる。その代わり様々な特権がある。
アンチスキルとはそういうシステムなのだ。ジャッジメントも同様にそうだ。

この街では当たり前の常識。
しかし何かが引っかかる。謎の違和感が微かにする。

「どうしたんだ?君」

アンチスキルが怪訝そうに上条の反応を見る。
上条は慌てて取り繕う。






「い、いや。なんでもないです」

「そうか。じゃもう学校に行ったほうがいいんじゃないか?
 私は事件については何も喋れないし、ここにいても手がかりはつかめないぞ
 それに学校サボるのは教師として見逃せないしな」

「……そうですね」

上条は低い声で返答し、アンチスキルに背中を向け歩き出す。

「もし、良かったらジャッジメントに入りな。君みたいな正義感の強い子は
 大歓迎だからな」

背中からそんな声が聞こえる。上条は歩きながら顔を後ろに向ける。
そして手をフラフラと振る。

「一応、考えておきますよ」

そう、言って上条は学校へ向かった。


終わりで。地の文がムズい…




上条は廊下を歩いていた。階段を上がってすぐに自分のクラスに向かう。
この時間帯は二時間目の時間帯で、授業がある程度進んでいる時間帯だ。
上条は『ノート写すのめんどくせぇ……』と溜息をつきながら、クラスのドアを開ける。

「すいません、遅れました」

上条が大きくも小さくもない声でそう伝える。
どうやら今は政治・経済の時間帯らしい。
クラスの皆が『あれ、休みじゃないの?』というような態度をとっており
上条は若干、気まずい気分になって顔を引きつらせる。

この状況は不登校児が突然学校に来たという感じである。

先生も上条のそんな顔を見て呆れ顔になる。
上条はもともと自分の度重なる入退院により、教師の評価が地の底なのだ。それに単位も危うい。
不真面目というか、学校に来ることが珍しいと思われているらしい。






「……上条君、コレ」

先生の顔がもう呆れ顔を通り越して疲れているようなモノに変わり
上条に大量のプリント類を手渡す。表紙は白紙で題名を隠すように覆われている。

「……なんですか?これ……?」

政経の時間はプリント類で授業はしない、基本板書だ。
つまり授業で使うものではないということだ。

「大丈夫。ちょうど学園都市の単元だし、そんなに難しくないから」

「いや、そんこと聞いてないんですが……
 これは、何ですか……?」


「……」

無言。無言だが教師が『もう分かっているんだろ』という目を上条に向けてくる。
クラスの皆がクスクスと笑っている。そんな中、悪友の青髪ピアスが『上やん、頑張ってな』と
ニタニタしながら声をかける。生真面目な吹寄制理は先程から仏頂面をしている。






上条自身にとっては笑い事ではない。これは上条の大嫌いなアレかもしれないのだ。
と言うよりもう、アレなのだが上条はまだ希望を捨てない。

(これはアレだ。でも、俺は諦めねぇ!!この謎のプリントが俺を
 ビビらせるためのドッキリ的なものの可能性を諦めないっ!!)

上条は自分の手の上にあるプリントをジッと見つめる。その眼差しは真剣そのものである。
まるで戦争に行く前の兵士のような覚悟を決めた顔をしている。そして白紙をどけるように手を伸ばす。

この上条の様子を見て周りのクスクス笑いが唯の笑い声になる。先生ももう笑っている。

(俺は諦めねぇ!!これがアレなんて言うフザけた幻想は全部まとめてブチ殺――――)

白紙がヒラヒラと床に落ちる。そしてプリントの表紙が露出する。

『上条君専用☆宿題プリント☆』

それを見てしまった瞬間、脊髄反射的に上条は叫ぶ。

「不幸だァァっァァァァァああああ」

その後、授業中に大声出すなと吹寄に鉄拳制裁をくらった上条であった。






「上やん、ほんま大変やったなぁ」

先ほどの騒ぎも落ち着き、授業が始まって暫くした後、
青髪がコソコソとそんなことを言う。

「本当、朝から大変でしたよ上条さんは……
 インデックスの奴め……本気で噛みやがって……」

そう言って後頭部を掻く。インデックスに噛まれたところがチクリと痛む。
朝に比べて痛みは引いてきたが、それでもまだ痛い。

「……また、またか上やん……」

青髪の声にドスが混じる。目つきが鋭くなる。

「はっ……?」

突然の豹変に上条は驚く。上条にはなぜ怒っているか分からない。

「また、あの銀髪碧眼まな板シスターとイチャついてたちゃうんの……?」

『学園都市は50年以上前に作られました。能力開発はその頃から
 行われており、約20年前には超能力者を生み出せ―――』

授業が続いているが関係なしに青髪は話を続ける。





「そうなんちゃうん……?」

「ちげーよ…… 起きたらアイツが風呂場に来て
 なんやかんやで噛み付かれたんだよ……思い返すだけで不幸だ……」

「なっ……風呂場……だと…?」

上条からしたら自分は風呂場に寝ているので別に如何わしい事じゃない。普通のことだ。
しかし、それを知らない人は男子寮で少女と同棲している男が『風呂場に来た』なんて発言したら
誰もが関係を疑うだろう。

女の子に飢えまくりの青髪からしたら如何わしいとかそんなレベルじゃなく
もっと上の変態的な想像をするだろう。てかもう、してる。

「……クソリア充が」

口調が突然変わり、ギロリと青髪に上条は睨まれる。先程から額に青筋を浮かべていたが今では
顔全体に浮かべている。上条は青髪のただならぬ様子に少し怯える。

『――のとおり、能力の開発方法は薬や電極での刺激での開発が主流ですね。何故かと言うと
 首筋や脳などに直接それらを打ち込むため、一番能力を発現しやすいからです。また――』

青髪は今まで板書していたノートを千切り、高速で何かを書いて
それを後ろの男子に回す。





「青髪さんっ?今なにを……」

一人でブツブツ何かを呟いている青髪に上条は恐る恐る聞く。

「……ちっ」

質問の答えは帰ってこない。青髪が親の敵を目前にしたかのような顔をしながら睨んでくるだけだ。
周りを見渡すと、このクラスの男子生徒全員が青髪のような表情になっている。

「ひっ!!」

小さい悲鳴を上条は上げる。今の上条は狼の群れに放り込まれた哀れな子羊だ。
飢えに飢えた狼によって丸呑みされるだろう。

『皆さんも知っていると思いますが能力開発の存在意義は『SYSTEM』、『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』を
 作り上げるためにあるものです。そのために多くのカリキュラムや薬剤投与などをして――――』

上条の耳には先生の声と女子の声しか聞こえなかった。上条と同じように男子は先程まで喋っていて少し騒がしかったのだが
青髪があの紙切れを回した途端、急に静かになった。男子は皆、しっかりと前を向き授業を受けている






その状況に上条は震え上がる。普段、このクラスは休憩時間、授業時間問わず騒がしい。特に男子なんかはそうで
静かになるなんて滅多にない。だから今の状況はとてもおかしいのだ。

青髪、青髪と上条は焦りと恐怖を肌で感じながら呼びかけてみるのだが一向に反応してくれない。
まるで上条が存在してないかのような見事なスルーである。心の中で上条は『どうか、頼む!!』と
一生のお願いと言わんばかりに願う。

そんな願いが通じたのか青髪が指を使って反応を示した。親指を突きたてGOODのジェスチャーをしたのだ。
上条はそれを見て安堵した。何故怒っているのか知らないが取り敢えず許してくれるのだと上条が呑気に考えていると

青髪は親指を突き立てたまま首を跨るように直線を掻いた。つまり、首切りのジェスチャーである。
それと同時にチャイムが鳴った。本来このチャイムは授業が終わったのを告げるものだ。
しかし、今の状況は違う。狼の餌の時間を告げるものだ。

上条の顔がどんどん青ざめていく。逃げ出そうと足を動かすが青髪に手を掴まれる。
ギリギリとかなり強い力で抑えられているため逃げ出せない。

「上やん?覚悟しいや」





青髪がニコニコとした表情でそう宣言する。
周りには続々と男子が集まっている。ちょうど上条を囲むように。
絶対に逃げられないように陣形を作っている。

もう上条は抵抗することを諦め覚悟を決める。

「ちょっと、一つ言わせてもらてもいいか?」

「……遺言なら聞くで」

上条はその言葉を聞いて安心する。いや、安心するということは可笑しいのだが
どうせなら言いたいことを言って死んだほうがいい。
上条は胸いっぱいに息を吸い込む。

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



「まったく。ゴミはゴミ箱に入れなさいよ。もう……」

吹寄は居室の片隅に落ちていた紙切れを拾う。
その紙には今さっきの板書の内容が描かれており、
その上から塗りつぶすように濃く、深い筆圧で言葉が書いてある。

『上やん処刑』

教室の真ん中で男子たちが乱闘をしている。
それを見て呆れながら呟いた。

「バカばっかりね……このクラス……」


終わりです。

明日って言ったけど嘘でした。できたんで今投下します。




四時間目終了のチャイムが学校内に鳴り響く。
青髪を筆頭とした男子たちが『飯の時間だぁぁぁ野郎どもォォォォォ!!』『購買を襲撃だァァァァァ!!』などと
世紀末的なセリフを吐きながら教室から出ていく。

このクラスでは毎日見られるものであり、日常風景である。
始めは煩い教室も購買の学生がいなくなれば、だんだんと落ち着く。

弁当やあらかじめ昼飯を買っていた人達は談笑しながらランチタイムを
過ごす。このクラスでは何の変哲もない光景だ。

それを羨ましげに指をくわえて見ることしかできない生徒がいる。
彼の手にはシャーペンが握られており、机は弁当箱ではなくプリントで覆われている。
体は猛獣とでも戦ったのだろうか?と思われるほどボロボロで、鼻には血がかなり染み込んでいるティッシュを詰めている。
その様子は目を背けたくなるほどの容貌である。

この人間はいったい誰なのか?この楽しいランチタイム、同級生たちが高校生らしく部活や恋愛やその他諸々の話を
まったりとしている中、ボコボコにされた体で、机には頭が痛くなる程のプリントを広げて、一心不乱に勉強をしているは誰なのか?

上条当麻である。

「泣きたい……」

皆が楽しそうに食事している中、クソつまらない宿題をやっているという
実感を痛いほど受けて上条は目を少し赤くする。






家に帰ってからやればいいのだが、提出期限が明日なので暇な時間を
この宿題に費やさないと終わらないのだ。

「貴様のは全部、自業自得じゃない」

隣の席で姫神秋沙と昼食を食べていた吹寄が、平坦にそう言う。
非の打ち所がないほど、至極真っ当な正論を上条は更に涙目になる。

「でも、この量は無いだろ!?」

「休みまくっている貴様には適当な量じゃない」

「でもぉ……」

「『でもぉ……』じゃない!!」

吹寄が勢い良く立ち上がる。その反動で
推定100枚はあろう大量のプリント一瞬宙を浮く。

「ですよね……」

ガックリと上条は首を落とす。結局、自業自得なのだ。
やるしかないので上条はペンを握り直す。

「上条君。ガンバ」

「ああ……」






ゲッソリとしている上条に姫神が声援を送り
黙々と上条は勉強もとい宿題を始める。

十分ほど真面目にやってみたが、3枚ほどしか上条は終わらなかった。

宿題の内容は先生の告知どうり、学園都市の単元だ。
物凄く簡単というか、当たり前のことが問題なのだが
それゆえ、上条の作業スピードは遅くなる。

食べる、動く。といった感じに頭を使うまでもないようなことが
問題であるため、上条は『俺、こんなに馬鹿だと思われていたのか……』
『宿題じゃなくて作業じゃん……』などの思いが浮かんで
さらにヤル気が下がる。

「上やーん、がんばりやー」

購買から戻ってきていた青髪が上条の宿題風景を見ながら
励ますが、その声は全くの棒読みである。

「ちくしょう……」

ニタニタしている青髪に悪態をつきながら上条は宿題を続ける。
問題は『能力開発は何年前から行われていたか?』という学園都市では常識中の常識で
あり、先程も先生が言っていたことだ。上条は50と答えを書き込む。





「いつも思うねんけど、能力開発が50年前からやってるなんて信じられへんなぁ」
 
それを見ていた青髪がしみじみと感想をもらす。
それに上条は相槌を打つ。

「そうか?俺は別にそう思わないけど」

「なにいってん上やん。50年前から能力開発ができるほどの
 科学技術が有ったってことやろ?ごっつすごいやん。
 なんちゅー科学力って話や」

「……言われてみればすごいな」

学園都市は外とは科学技術が20年、30年違うと言われている。
その技術によって莫大な利益を貿易で得て、日本政府に圧力をかけ
実質上の自治権を勝ち取るほどだ。

「作られた当初は学生が人口の九割ぐらいだったらしいで。 
 やっぱ当時としても最先端の都市やから入学の倍率が凄かったんだってや」

「へぇー、そうなんだ……ってなんで青髪はそんなこと知ってんだよ!?」

「上やん……これは習ったことやで……」

「え゛……マジですか?」

「上やん……」






青髪が上条を見る。その目は上条を物凄く憐れむ様な
同情するような目だった。

「で、でも青髪がこんな真面目なこと言うなんて
 珍しいな。どうしたんだ?」

「酷いな上やん!?ボクだって真面目なこと言えるんよ」
 たまにはこういう事も話したくなるんよ」

政治の話をする中学生みたいな心境か、とか
いつも変なこと言ってる自覚があるのか、と上条は思いながら
青髪の話を聞く。
 
「20年前には今のアンチスキルとかジャッジメントとかの今の
 学園都市の制度が作られたらしいから、驚きやね」

「それも、勉強したところナノデスカ?」

上条は焦りながらも青髪に尋ねるが、青髪は首を横に振る。

「それに20年前には超能力者がもういたってんやから
 すごいわー」

「すごいけど何か……」






「ん?上やん?」

「20年前に超能力が作れるんだから、今の時代、
 高位能力者だけ作れるようにできなかったのかな?」

「どういうことや?上やん?」

「今の学園都市って無能力者、低能力者が多いだろ?
 10年もあれば学園都市の科学技術で安定して高位能力者を作れそうだけど」

上条の頭に疑問が浮かぶ。これだけ科学力を持ったこの街なら
無能力者と低能力者が人口の大半を占めているはおかしい。
50年も研究すれば強能力者とか超能力者を何人も作れそうなものだからだ。

「それは、能力がパーソナルリアリティーに因るものだからちゃう?
 想像力とか思いこみが強い人は強い能力を得るけど、逆にそういうのが弱い人や
 現実的な人は弱い能力やし」

「良くも悪くも普通の人が多いやね。この街」

「まあ、そうだよな。それに演算能力も高くないといけないし……
 それに俺じゃ絶対無能力者のままだし」

上条は自分の右手を見る。『幻想殺し』ありとあらゆる異能を打ち消す力。
この力がある限り、もし上条が能力を発現しても使えないだろう。






青髪は上条を励ますように声をかける。

「将来、レベルを人工的に、簡単に上げられるようになるかもしれんし、
 上やんもボクも能力を使えるようになるかもしれんよ?
 それほどこの街の科学力はすごいんやし」

「科学力か……」

上条はあの惨劇現場が綺麗に直っていたことを思い出す。
普段、あまり気を配ってないとこの街の凄さには気づかないというか
当たり前になってしまうんだなと上条は実感する。

「20年前で超能力者が作れたやから後、5年、10年したら
 あっという間やろ」

「……そうだよな。そんな前から能力者いたんだから――――――」

言って違和感を感じる。50年ほど前、この街と共に始まった能力開発。
20年前から存在した能力者。













その人達は何処に消えたのか?











「……」

50年前に能力開発が行われていたのなら今、その能力者は何処に居るのか?
20年前の超能力者は何処に居るのか?

今、学園都市の能力者は皆、子供だ。『大人の能力者』なんて見たことない。
でも『大人の能力者』は確かに存在していたはずだ。50年前から能力開発が行われていて
20年前には超能力者がいたのだから。

「痛……」

一瞬、上条の脳内に小さな痛みが走る。鋭い痛みではないが確かな痛みがする。
脳に極小の針を刺されたような。そんな痛み。

「上やん、どうしたんや?」

青髪が怪訝な顔をして上条の顔を覗き込む。

「別になんでもない」

痛みはすぐに消え、上条はそう答える。
青髪が頭に?マークを浮かべたが、すぐに気を取り直して話を続けた。






「一番最初の能力者ってどんな能力やったんやろ?」

「パイロキネシスじゃないか?」

青髪の問いに学園都市のメジャーな能力を上条は言う。
そんな上条を呆れた目で見る青髪。

「いやいやいや、サイコキネシスやろ……」

青髪の馬鹿にした態度にムッとして上条は言い返す。

「はっ?パイロキネシスに決まってんだろ」

青髪の眉がピクっと動き、言い返す。

「こういうのはサイコキネシスって相場が決まってんや。
 上やんは何も分かってないやね」

「お前こそっ……はぁ……もういい。サイコキネシスだよ……サイコキネシス」

上条は反論しかけたが、途中で諦めて青髪の意見にヤレヤレとばかりに賛成する。

「ムカァ!!なんやその態度!!その『コイツ分かってないな』的な態度は!!」

「そんな怒んなって。お前がそう思うんならそうなんだろ……
 お前の中ではな」







青髪は答えない。無言である。上条もそうだ。両者の間には上条の机を挟んでいるだけで
他には何もないが、無関係の人から見たらゴゴゴゴゴゴと暗雲立ち込める的なモノが見えるだろう。

「上やん」

「青髪」

両者がお互いの名前を呼ぶ。
特に意味はないようにも思えるその行為もしっかりと意味がある。

戦いの合図。

「上やぁぁぁぁぁぁん!!くたばれぇぇぇぇぇええ!!!!」

「上等だぁぁっぁぁぁああ!!!!青髪ぃぃぃぃぃぃいいいいいぃ!!!!」

お互いに意識を奪うほどの渾身の力を込めた右ストレートが顔面に突き刺さり、
吹寄と姫神によって保健室に運ばれた上条と青髪であった。





終わりです。地の文が変ですいません

日付変わっちまった。投下します




街灯の光も殆ど届かない、汚い裏路地。タバコの吸殻が突風によって宙を舞い、
微かな煙の匂いが香る。

地面には黒い染みや、飲み捨てられたアルミ缶が転がっている。

隣接している建物の壁には、アルファベットやら記号が落書きされている。
それは何重にも落書きが重ね塗りされ、元の色が分からなくなっている。

科学力が数十年進んでいる都市とは思えないその風景は
先進都市であり、国をも凌ぐ言われる学園都市の事実と大幅に乖離している。

貧困街を連想させるようなそんな場所に御坂美琴はいた。
この場所、普通の人なら恐怖や焦りを感じるだろうが、御坂は
怯える素振りもみせない。むしろ疲労や倦怠といったものが見て取れる。

「はぁ……あと何ブロックですか?これ……」

「次のGブロックを回ったら終わりじゃん」

「そうですか……」

完全下校時刻からもう3時間が経過しており、その間休憩も一切していない。
軍隊にも匹敵する超能力者の御坂といえど、体は普通の中学生のものと一緒だ。
流石に三時間も休憩もなしに、夕食も取らずに働きっぱなしというのは体力の消耗が激しい。





「ん~~ まあ、あともうちょいだから頑張るじゃん?」

「なんで疑問形なんですか?」

「だって確証がないじゃん。すぐ終わる」

「はぁ……」

「……本当はこんなこと頼んで申し訳ないじゃん
 アンチスキルの絶対数が少ないばかりに……」

「いや、別にそれは気にしてませんよ。自分で決めたことですから
 ただ、言ってみただけです」

「……ありがとうじゃん」

「そんな!! やめてくださいよ!!」

黄泉川が頭を下げる。それを御坂が慌てて静止する。

(こんなことで疲れてちゃダメだわ!!もっと頑張らないと)

御坂は強く決心する。ボロボロになった白井黒子。今日に見た、公園での上条の顔が
御坂の頭の中を高速で駆け巡る。






スピードを上げて御坂達はパトロールを続ける。
暗い裏路地を臆さずに進んでいく。

パトロールの方法は各学区を1ブロック、2ブロックと分けて
裏路地や、あまり使われていない道など事件が起こりそうな所を推測して巡回し、
また時間を決めて、7時~8時はDブロック、8時~9時まではEブロックのように巡回する。
なぜかといえば全学区を隅々まで駆け巡らす人員がないためである。

この街は所詮学生の街であり、大人の数が圧倒的に少ない。このことが原因である。

(ここも大丈夫か……)

特に何もなかったのを確認し大通りに出る。
街灯の光が眩しく感じる。

(やっぱり、警備が強化された夜の時間帯は現れないか……)

統括理事会が完全下校時刻を早めたことと、パトロールの強化によって夜の時間帯に無能力者狩りが起きることは減った。
しかし逆に昼の時間帯に起こることが増加した。
また犯行も徐々に過激になってきており、少数単位での襲撃だったのが大人数単位に変わってきている。

「これは……」

御坂は大通りに捨てられていた新聞をそっと手に持つ。今日の日付で速報と書かれたソレには
交差点で起きた惨劇の写真が生々しく色鮮やかに載せられている。





「っ……」

御坂の手が自然と強く握られる。あの惨劇現場を思い出すたびに悔しく思う。

どうして助けられなかったのか?
どうして救えなかったのか?

御坂は思う。

御坂は一度救われた。絶対能力進化実験。あの地獄は上条当麻によってブチ壊された。
しかし無能力者狩りに有った人は助けも呼べず、絶望しながら殺されたのだろう。
なんの意味もなく、身勝手な理由によって。

御坂は上条のことを思い出す。
酷い顔をしていた。いつもの元気な調子が全く見られなかった。
何か酷く思いつめていて、見たこともないような悲しい表情をしていた。

御坂は白井の事を思い出す。
無能力者狩りの犯人を捕まえると執念を燃やしていた。
しかし事件が起きるに連れて、日に日に弱っていった。
目も当てられないほど衰弱し、ボロボロになっていった。
そして壊れてしまった。

いろんな思いが波となって御坂の心を覆い尽くしていく。
怒り、憎しみ、苛立ち、苦しさなど様々な感情の中で御坂は一番に怒りと悲しみを感じた。






「どうしてこんな非道い事できるんでしょうね…………
 こんな奴ら死ねばいいのに」

御坂が悲しみと同時に憎しみを表に出す。
普段はあまり出さない感情を出す。

「それは私にわからないじゃん。でも……そんな死ねなんて良くないじゃん」

「どうしてですか?」

御坂がポツリと小さい声で言い放つ。
同行していたアンチスキルの面々は、悲しい顔やら困惑した顔をしながら目を伏せる。
その中で黄泉川がただ一人答える。

「私は一つ確信していることがあるじゃんよ」

「確信していることですか?」

黄泉川の顔つきは真剣そのもので、『子供を守る』というアンチスキル
そのものの威厳がある。

「大きな力は二つのモノを生むじゃん。
 一つは英雄。もう一つは――――――――















「化け物」










黄泉川の声が綺麗に、明白に御坂の耳に届く。
静かな学園都市に広がる。

「強大な力を人のために使えば英雄になるじゃん。
 逆にその力を自分のためだけに使い、溺れれば化け物になるじゃん」

それを聞いて、誰もが押し黙る。皆、その言葉を噛み締めるように
聞いている。

「この街には『能力』なんてモノがある。この力は
 とても便利で、素晴らしいものじゃん。だからこそ
 化け物も英雄も生まれやすい」

「英雄だけ生まれてくれれば世話ないじゃん。でもそうはいかない、
 英雄が存在すれば、化け物も存在するじゃんよ」

風が御坂たちの合間を縫っていく。
その音が全身に当たる。

「私たちには子供を守り、導く義務があるじゃん。
 それは英雄でも化物でも関係ない」

「皆、子供じゃん」






御坂は心を打たれた。今までアンチスキルのことを正直『弱い』と
勘違いしていた。ジャッジメントで十分じゃないかと考えていた。
しかし、考えが変わった。アンチスキルは自分たちを見守って
導いてくれる大人なんだと実感した。

「だから化け物になってしまった子供を英雄に戻してあげなければならないじゃん。
 それがアンチスキルとしての、大人のしての義務じゃん」

御坂はアンチスキル達の顔を見る。皆、前を向いて毅然としている。
大人としての態度を見て、自分が子供だったと反省する。

「……そうですよね。私が間違ってました。すいません」

「いやいやいや、そんな私の持論を言っただけじゃん
 そんな押し付けみたいなのじゃないじゃんよ」

「いや、でも本当にそう思ったんです」

御坂がまっすぐ凛とした目つきでそう言う。
それを見て黄泉川がニカッと笑う。





「ありがたいじゃん。じゃ、次の――――――」

黄泉川が言いかけた時、すぐ脇からジャッジメントの腕章をつけた一組の男女が現れる。

「定期連絡です。黄泉川さん、何か以上は有りましたか?」

「いや、ないじゃん。異常なし」

「そうですか。分かりました」

腕章をつけた少女が笑いながら黄泉川の手を触れる。男子のジャッジメントも軽い会釈して
一瞬にしてその場から消える。

「あれ、ジャッジメントも一緒にパトロールしてるんですか?
 ダメなんじゃないんですか?」

御坂が黄泉川に尋ねる。完全下校時刻をすぎて活動できるのはアンチスキル上層部のの許可を得た
人しか活動できない。御坂みたいな特例はともかく、普通、ジャッジメントは貰えない。

「ああ、人数が足りないんで手伝ってもらってるじゃんよ。 
 もし、犯人たちに遭遇しても大丈夫な高能力者限定で」

「そうなんですか……あとさっきのは何ですか?
 何か定期連絡とか言ってましたけど、連絡なら無線使う方が早いんじゃないんですか?」

御坂が再び質問する。連絡なら無線の方が早いし現実的だと御坂は思う。






「あの子はテレパスのレベル4じゃん。素早く、広範囲に念話できるから
 情報の伝達がスムーズにいくじゃん。だから活動してもらってるじゃん
 無線の場合だと一気に情報を送れないから」

「私以外にも頼まれた人がいるって訳ですね」

「そうじゃん。情けないことに」

黄泉川が申し訳なさそうにする。
他のアンチスキルも眉を下げて頭を下げている。
なんかドジ踏んでしまったと御坂は考え、調子を上げて言う。

「あ、あははは~~ も、もう行きましょうか。次のGブロックへ
 早く行かないと遅くなっちゃうし」

「ん?次はBブロックじゃん?」

「あ、あれ~~ そうでしたっけっ!?
 じゃあ、早く行きましょう」

御坂によって半ば強引にアンチスキル達は連れられていく。
Bブロックにも別段異常はなく、御坂が帰ったのはすぐのことだった。





ピピピピッという目覚まし時計の音で御坂は目を覚ました。
昨日のパトロールの疲れでまだ眠いが、起きないと鬼寮監によって
しばき倒されるのでノソノソと起きる。

半分眠りながら洗面所へ行き顔を洗う。
コップの中に入れてある可愛らしいカエルの歯ブラシを手にとって歯を磨く。

「……」

そのコップの中にあるもう一つの歯ブラシを手に取る。上品なデザインで紫色の大人っぽい歯ブラシ。
御坂のソレとは全く逆のものである。

『お姉さま!!またそんな子供っぽい歯ブラシ使って!!』

『いいじゃない。それにカワイイでしょ、これ』

『そんなガキっぽ―――――ギブギブギブぅぅぅぅ!! お姉さまギブですの!!
 そんな真顔で首絞めないでくださいましぃぃぃぃい!! カワイイですわぁぁぁぁあ!!』

『やっぱ黒子もそう思う!! 良かったー!!』
 
『く、黒木のはどう思いますの?』

『え? 良いと思うわよ。黒子に似合ってる』

『ぐすっ……コレは家宝にさせていただきますわ』

『おおげさじゃない!?」

歯ブラシを見ながら、そんな何気ないバカみたいなやり取りが御坂の脳に思い出される。
目を自分のベッドの隣に目をやる。






空っぽのベッド。本来は白井黒子のベットだが今は布団が取り除かれ枠組みだけになっている。
それが御坂の心を揺さぶる。

「黒子……」

返事はない。『お姉さま!!』という元気な聞きなれた声はしない。
寂しいという唯それだけの感情が噴出する。

寂しさを紛らわすように御坂は床に放り投げられていたリモコンを拾って
口を濯ぎながらテレビを点ける。

「えっ……何で?」

画面にはニュースが流れていた。それを見て御坂は間の抜けた声を出してしまう。

『昨日、また新たに無能力者殺人事件が起きました。被害者は中学生の女生徒で
 焼死体で発見されたようです』

『事件が発生したのは夜と思われており、統括理事会によってパトロールが
 強化されてから初めての初めての犯行になります』

『場所については7学区の――――』

御坂の手からリモコンが落ち、その拍子によって電源が切れる。
御坂はの額には汗がしっとりと湿っている。

「どうして……?」

目を見開きながら御坂は尋ねる。
その疑問に解消してくれる人はこの部屋には誰もいない。


終わりで。物語は一向に進んでいません。すいません

訂正『事件が発生したのは夜と思われており、統括理事会によってパトロールが
 強化されてから初めての初めての犯行になります』

→『事件が発生したのは夜と思われており、統括理事会によってパトロールが
 強化されてから初めての犯行になります』

他に何か意見があったら言ってください。





「アハハハハハハハハハハハ八ハハァァァァァァァア゛ア゛ア゛ァァア゛ァァァァァァァ!!」

怒りに染まった表情のまま絶叫する。その場をキリキリと震えさせる。
肉と肉が重なり合う度、血が噴き出し飛沫が宙を舞う。紅色の水玉が夜の闇を映し出す。
そして地に落ち、壁や地面を穢らわしく塗りつぶす。
その血はやがて少年達にも降り注ぐ。

鉄の塊で土を叩いたかのような重低音と、沼地の泥のような水の混じった音。
二つの音が混ざり合い、この場を振動させる。その音が不規則なリズムで繰り返される。
全身の力を込めた打撃を上条は何度も打ち放つ。もはや何回目なのかわからない。
何度も何度も唸り声を放ちながら相手の顔面を殴打する。

「アハッ、アハハッハアハハッハハハハ、ア゛ハハハハハハァァァァハハハハハ!!!!」

「アヒャヒャッ、ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッァ、アアアアアアアアアアアアアア゛ァァア゛ハアハ゛ア゛アァァァァァハァッ!!!!」

「ア゛アアああああああああァァァァああッァァぁァアァアああ!!!!」

上条によって少年の顔は見るに耐えないものに成っている。抵抗もなく、
小刻みに体を震わせ、ヒューヒューと小さく呼吸している。下半身には血とは異なる別の液体が
染み出ている。

「アハハハハハハハははっはハハハハあああああああああああぁぁァァァァァァァァァァァ、ああぁぁァっァ???!!!」

ぐったりとしている少年の髪を乱雑に引き上げ、困惑の色を見せながら上条は力任せに頭をぶつける。
点々と血の雫が上条の額に付着し、それらは顔をゆっくりと線を描くように滴っていく。

少年は真っ赤に染まった頭を力なく地に落とす。









腐乱死体のように強烈な匂いを発生させ、あまりにも衝撃的な容貌に成っている。
ハイエナが食い散らかした後のように粗雑で乱れている状態。ピンク色でプルプルした真肉が
右頬の辺り一面に露出しており、その中の純白が存在感を十分に醸し出している。

鼻筋の軟骨は皮膚を突き破って鋭利な刃物のように突き出ている。目玉は眼底の辺りから変形しており
歪な形をしている。歯はノコギリの刃のように欠けているところもあれば、中心から真っ二つに折れているのもある。
丸ごと抜け落ちているのもあり、赤黒い歯肉から糸のように肉のヒダが垂れ下がっている。

『酷い』なんて言葉では表せない程の状態。その状態に違和感が並在している。

首から上はまるでこの世のものとは思えないほど凄惨な有様。しかし首から下は
傷一つない。

顔面だけを徹底的に破壊されている。

「ウ゛アァァァぁあぁああああああああァぁぁっぁぁぁッ……!!!」

常人なら見ただけで吐いてしまうような状態。それでも上条は、その無残な死にかけている少年をさらに惨たらしい状態にしていく。
涎を飛ばしながら笑う。目に透明な涙を染み出しながら、基地外じみた笑い声を上げる。










ゴンガンドンバンガンギンドンガングジャ。

響き、少年の中の紅い体液が流れ出る。

ゴンガンドンバンガンギンドンガングジャ。

手は止まらない。

ゴンガンドンバンガンギンドンガングジャ。

我を忘れて半狂乱に、獣のように暴力を振るう。

ゴンガンドンバンガンギンドンガングジャ。

相手の存在を消そうと、無くそうと人間の一番印象的な部分を
荒々しく抉っていく。

「ア゛ァァァアァぁぁぁぁあああああああああ!!!」

目を見開き瞳孔を開かせながら、上条は咆哮する。
腰を捻り相手をグチャグチャにしようと右腕を大きく振りかぶり――――――――――――












瞬間。













               「あ?」




















上条は聞こえた。声というより息遣いのような音が聞こえた。
自分が今、馬乗りになっているこの少年が発したものじゃない。
壁側に仰向けで倒れている少年が発したものじゃない。

上条は視線を声のした方向へと定める。

「ぅ…………」


「え」


上条には少女が見えた。体の隅々まで朱色をしている少女が上条の瞳に映った。
その瞬間、上条は頭から急速に血が引いていく感覚を覚えた。

「あ……」

脳内のアドレナリンが落ち着いていくのを感じた。夢から覚め
現実にだんだん引き戻されるような感覚。そんな感覚に襲われた。
体が震える。













「俺は……」

上条は体温が下がっていくのを感じた。そして冷却されつつある脳を回転させ、
心に自問する。

何のためにここに来たんだ。

上条は少女を見つめる。ボロボロだ。一目で重症だと、早く病院に連れて行かないと
危険だという事が即効で理解できる。
それなのに

「俺はっ……」

何をしていたのか。

上条は自分の下に倒れている少年を見る。
ボロボロなんてレベルじゃない。もう『死にかけている』というのが
文字どうり当てはまるようなそんな状態だった。
それを

「…俺が……」

上条はヨロヨロと立ち上がり、倒れている少女のところに足早に向かう。
制服を脱ぎ捨て、自分のワイシャツの腕の部分を引き裂き、少女の応急手当のために使う。

白いワイシャツが一瞬で赤に染まっていき、浸ってしまう。
上条は強引に性急に傷口を強く縛る。

血が滴る速度が遅くなったのを確認すると、携帯電話を落としそうになりながらもポケットから出し
震える真っ赤な手でアンチスキルの番号を入力した。








――――――――――――――――――――――――

















アンチスキルに通報し終わるとすぐに倒れている少女を上条はそっと背負う。
血がベタベタと張り付いてくる気持ち悪さがするが上条は無視する。

普通ならばアンチスキルが来るまで待機していたほうが良いが、
少女は重症で一刻を争う状況にある。

アンチスキルが到着するまで待っているより、背負って運ぶほうが良いだろう。
幸い病院はすぐ近くにある。

上条は逃げるように走り出した。少年たちが倒れているのをあえて見ないようにして
通路を走り抜けた。震える脚で出せる全速力で駆け抜けた。




「お、俺は……」


酷く弱々しい声で、そう呟いた。












長椅子に上条は座っていた。祈るように手を絡ませ、下を向いている。
背中には病院の事務員が使っているジャージを羽織っている。
医師や看護師の慌ただしい声や足音が耳に入る。

ブーっとサイレンが鳴り響き、手術中と書かれた光が赤から青に変わる。
そこから現れた手術着のカエル顔の医師が優しく伝える。
それに上条は低い小さな声で答える。

「もう大丈夫だね、命は取り留めたよ」

「そうですか……」

「……」

上条の様子を見てカエル顔の医師は無言になる。
そして優しく気遣うように上条に言う。

「後で私のところに来なさい。君も怪我しているようだしね
 必ず来るんだよ? いいね」

「……はい」

少しだけ悲しそうな顔をしながらカエル顔の医師は上条の頭に手を置く。
そして優しく撫でながら言う。







「……気にしないほうがいい。
 結局命は助かったんだ。あまり、自分を責めないほうがいいよ」

「……はい」

カエル顔の医師は一瞬だけ辛そうな表情を見せたあと、病室へと向かっていた。
上条は座ったままその後ろ姿をいなくなるまでぼんやりと眺めていた。

「今……何時だ……?」

ふと思いつきポケットから血が付いている携帯電話を取り出す。時刻は
8時52分を示していた。完全下校時刻を大幅に過ぎている。

そしてよく見ると着信履歴が2件入っていた。
番号を確認してみると全部、家の電話番号だった。
誰が掛けたのか考えるまでもない。

そのままぼんやりと画面を見つめる。

「インデックス……」

今朝の悲しい表情が思い起こされた。またあの表情をさせてしまったのだろう。
約束したのに守れなかった。何やってるんだ。







そんな思いが上条の頭の中をグルグルと回っていく。
画面から目を離し、携帯電話の番号キーのところを上条は見る。

血が付いている。真っ赤なドス黒い血で染まっている。
冷や汗が背中から噴き出す。

「お…俺の方が……」

考えたくない。でも思ってしまった。
あの少年たちの見るも無残な顔が頭を貫く。

自分が助けた少女はボロボロだった。酷い状態だった。
そんな状態にした奴は許せないし、許したくない。敵だ。
制裁くらって然るべき連中だと思う。

でも

あの少年たちの方がボロボロだった。『酷い状態』なんて
そんな甘いものじゃなかった。『半殺し』であった。







あの時、アンチスキルの到着を待たなかった。
理由は、『少女を助けたいから』だった。心の内で思ったこと。
だがそれは上辺だけだった。

本当に心の中で、心の奥底で思ったことは違った。
ただ『あの場所にいるのが辛かった』というだけだ。

自分がやったことに恐怖を感じた。自分が導いた結果を見たくなかった。
だから少女だけ背負って、少年たちを見捨てた。

同じく重症。もしくはそれより酷い状況であったのに、アンチスキルに押し付けた。
自分がしたことだと理解したくなかったから。

あの時、上条は気づいた。

少年たちが少女にしたことは最低な行いだ。
あんなことを喜んでするなんて化物だと思う。

しかし




自分が少年たちに行ったことは彼らが少女に行ったコトよりも酷かった。
彼らより同等以上の行いをやってしまった。化物である彼ら以上に残虐な行為をしてしまった。
つまり自分の方が――――――――――――――

















「化物じゃねぇか」












ぶち切って申し訳ない。
これで投下終了です。

あと何か気づいたことがあったら指摘してくれるとありがたいです。

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