真美「新しく来た兄ちゃんが961んだけど」(854)

このSSは、愛「あたしという存在……」の続きとなります。


前作




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359212204



高木
「おはよう諸君」


赤羽根
「おはようございます!」


律子
「おはようございます社長」


高木
「ウォッホン! いきなりだが赤羽根君に聞きたいことがある。よく聞いてくれ」


赤羽根
「?」


高木
「これまでこの事務所は君たち二人だけでここまで成長することができた。しかし竜宮小町の3人を除き、他のアイドル達を全て君が担当するというのは負担が大きすぎる」


高木
「そこで赤羽根君の負担をなるべく減らす為に新しくプロデューサーを雇うことにしたのだが……」


律子
「確かに今まで一人で仕事ができたのが不思議なくらいでしたからね。私は良い考えだと思います」


高木
「ありがとう、律子君。だが、まずは赤羽根君の意見を聞かせてほしい」


高木
「君だって担当しているアイドルたちは可愛くて仕方が無いだろう。そんなアイドルたちを新しく来たプロデューサーに預けることに抵抗はないだろうか?」



赤羽根
「……そうですね。確かに不安はありますけど、美希や千早や雪歩……、みんな昔より一回りも二回りも大きく成長しました」


赤羽根
「だから、俺じゃないプロデューサーが担当になっても彼女たちなら頑張ってくれると思います!」


高木
「そうか……。それを聞いて安心したよ」


高木
「それでは膳は急げだ。早くプロデューサー応募職用のプロモーションビデオを作ってしまおう」


赤羽根
「いや、なにもそこまでしなくても……。ホームページで募集を掲示すれば良いんじゃないですか?」


高木
「それでも良いが、実際に仕事場の雰囲気を見てもらった方が応募する側も安心するだろう。それに、すぐに辞められては本末転倒だからね」


赤羽根
「なるほど」


高木
「それじゃ来週までにカメラマンを呼ぶが、君はいつも通りに過ごしてくれたまえ」


赤羽根
「分かりました」


高木
「新しく来るプロデューサーから尊敬されるくらいカッコよく仕事をするんだよ?」


赤羽根
「あはは……。やるだけやってみます!」


――



――コンコン。


赤羽根
「どうぞー」



「失礼します」



赤羽根
「お待ちしていました。今日はよろしくお願いします」



「えぇ、こちらこそ。プロデューサーのプロモーションビデオなんて始めてのことなので、色々と不都合をかけるかもしれませんが今日一日よろしくお願いします」



赤羽根
「はい! お互いに頑張りましょう! えっと……、話は変わるんですが、どこかでお会いしたことありますか?」



「……分からないですね」


赤羽根
「そうですか」



「どうしてそんなことをお聞きに?」



赤羽根
「いえ、なんとなく初対面ではないような気がして……」



「そうですか。いろんなアイドルを撮影しているので、もしかしたらどこかでお会いしたことがあるのかもしれませんね」




赤羽根
「なるほど……。すみません、話がそれてしまいましたね。それで、俺は普通に仕事してれば良いのかな?」



「はい。仕事をしている風景を撮るのがメインなので基本的にいつも通りで結構です。ただ、適当な場面でいくつか質問させて頂きますので、それに答えて下さい」



赤羽根
「分かりました」



「それではお願いします」



――



5:00


赤羽根
「……」カタカタ



「いつもこの時間からお仕事をされているのですか?」



赤羽根
「そうですね。昨日やり残した報告書の続きやみんなのスケジュールもまとめなくちゃならないから、定時に来たら間に合わないんです」



「大変なお仕事なんですね」



赤羽根
「アイドルを支えるのが俺たちの仕事なんだから、大変なのは当たり前だよ」



「なるほど。では、プロデューサーの魅力について教えて下さい」



赤羽根
「……やっぱり、一緒になって成長できるところかな」



「というと?」



赤羽根
「人気のアイドルや新人のアイドルにも不安やコンプレックスはあると思うんだ。だから一緒に分かち合って、考えて、みんなで乗り越える。俺は、そういうところがプロデューサーの魅力じゃないかなって考えてるよ」



「……素晴らしい考えですね。アイドルたちから慕われているのも納得ができます」



赤羽根
「ははっ。プロデューサー冥利に尽きるって感じかな?」


――



6:30


「だれか来ますね」



――カッ、カッ、カッ。


赤羽根
「この時間で来るとすれば……」


――ガチャッ。


小鳥
「おはようございます」


赤羽根
「やっぱり小鳥さんでしたか」


小鳥
「はい?」


赤羽根
「あ、いえ、こっちの話です」


小鳥
「はぁ、そうですか。ところで、こちらの方は……」



「カメラマンの――です。今日一日ご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」



小鳥
「あ、社長が言ってた……。私は事務員の音無小鳥です。話は伺っていますので、私にできることがあったら遠慮なく言ってくださいね?」



「はい。ありがとうございます」



――



7:00


――ガチャッ。


小鳥
「あ、おはよう春香ちゃん」


赤羽根
「ん? おはよう春香」


春香
「おはようございますプロデューサーさん! 小鳥さん! ……ところで、今日って取材ありましたっけ?」


小鳥
「えっと、あのカメラマンさんは……、なんて言えば良いんだろ?」


春香
「?」



「あ、自分のことは気にしないでください。高木社長に頼まれた別件で来てるだけですから」



春香
「別件?」


赤羽根
「社長の提案でプロデューサーを増員するんだ。俺たちはそのPV作りをしてる最中なんだよ」


春香
「へー。……あれ? それって私たちプロデューサーじゃない人にプロデュースされるかもしれないってことですか?」


赤羽根
「まぁ、そうなるかもな」


春香
「えーー! 嫌ですよ! 私はこのままプロデューサーさんと一緒が良いです! 増員なんて反対ですよ! 反対!」


赤羽根
「ワガママ言わないでくれよ。コッチも手一杯なんだからさ」


春香
「だって……」



赤羽根
「そんな顔するなよ。新しいプロデューサーが来るってまだ決まった訳じゃないだろ?」


春香
「……」


赤羽根
「それに、もし新しいプロデューサーが来たとしても俺は途中で投げ出すようなマネはしない。最後までお前たちの面倒を見るつもりだ」


春香
「……プロデューサーさん」




小鳥
「青春だわ」


「そうですね」




春香
「私ったらなに不安になってたんだろ……。あ、そうだ! プロデューサーさん、クッキー食べます?」


赤羽根
「せっかくだから貰おうかな。春香の手作りか?」


春香
「そうですよ。今日は一工夫してみました! プロデューサーさん、分かりますか?」


赤羽根
「どれどれ……。あ、もしかしてレモンが入ってるのか?」


春香
「ぉお! 正解ですよプロデューサーさん。風味付けにレモンを少しだけ使ったんですけど、いきなり正解するなんて凄いじゃないですか」



赤羽根
「ははっ。いつも春香のお菓子を食べてたお陰かな?」


春香
「じゃあ次はお菓子だけじゃなくてお弁当も作ってきますね!」


赤羽根
「それは春香に悪いんじゃないのか?」


春香
「大丈夫ですよ! いつも私たちの為に頑張ってくれてるから、そのお礼です!」


赤羽根
「そっか。ありがとな」




小鳥
「良い話だわ」


「そうですね」



春香
「カメラマンさんもお一ついかがですか?」



「え? くれるんですか?」



春香
「はい!」



「じゃあ頂こうかな」



春香
「どうです?」



「うん。美味しいです」



春香
「えへへ。当たり前ですよ。だって最高の隠し味が入ってますもん!」



小鳥
「茶番だったわ」


「そうですね」ボリボリ


――



8:00


『おはようございます!』


高木
「ウォホン! おはよう諸君。今日も元気でよろいしい。それでは朝礼を始めるとしよう」


高木
「みんなは既に気づいてるかもしれないが、このカメラマンは別の目的で我が765プロにおジャマしている。君たちを取材する訳ではないので気にしないように。以上」


赤羽根
「え~、それじゃあ今日のスケジュールを発表するぞ」


赤羽根
「春香は午前中はCM撮影が2件。それとグラビアが一つだな。午後は――」


律子
「私たちは赤坂でロケだから早めに行くわよー」


――



亜美
「ねぇ、律っちゃん。あのカメラマン、兄ちゃん撮ってなにしてるの?」


律子
「邪魔しちゃダメよ? 新しいプロデューサーの為にプロデューサー殿の仕事ぶりを撮ってるんだから」


亜美
「え~~ッ! じゃあ兄ちゃん辞めちゃうの!?」


あずさ
「 」ピクッ


伊織
「 」ピクッ


律子
「そんなワケないでしょ。社長が新しくプロデューサーを増やす為にプロモーションビデオを作ってるの。赤羽根殿はPVの主役に選ばれただけよ」


伊織
「 」ホッ


あずさ
「 」ホッ


亜美
「なら早く言ってよ→! 亜美、メチャクチャ驚いたんだからね!」


律子
「亜美が勝手に勘違いしたんでしょ」


亜美
「BOO→ BOO→ 勘違いさせた方が悪いんだよ→!」

――



10:20


真美
「それじゃあ兄ちゃん、行ってくるね→」


赤羽根
「頑張ってこい!」



「アイドルたちを現場に送った後はどうされるのですか?」



赤羽根
「売り込みだったりレッスンの方に顔を見せたりで色々かな」



「なるほど。では営業をされる時は私がいてはジャマでしょうから、その時は撮影を控えますね」



赤羽根
「そうしてくれると助かるよ」


――



11:58


赤羽根
「そろそろお昼かな?」



「そうですね。赤羽根さんは……お弁当ですか?」



赤羽根
「はい。響から貰っちゃったんですよ」



「アイドルからお弁当を貰うなんて羨ましいですね。プロデューサーの特権ですか?」



赤羽根
「かもしれないですね。ははっ」


――



14:00


赤羽根
「お待たせしました」



「そんなに待ってないですよ。それで、売り込みの方はどうでしたか?」



赤羽根
「えぇ、向こうも気に入ってくれたみたいです。次からのレギュラー番組も決まりましたよ」



「ぉお! それは凄い。さすが敏腕プロデューサーですね」



赤羽根
「いや、今日は偶々だよ」



「運も実力の内ですよ」



赤羽根
「そ、そうかな?」



「そうですよ」



赤羽根
「あんまり褒められたことがないから、照れるなぁ」


――



17:00


コーチ
「はい! ワン・ツー。ワン・ツー。その調子で次!」



「……」タッタッキュッ


やよい
「~~ッ」タッタッキュウッ


美希
「~♪」ッタッタッキュ


コーチ
「高槻さん、少し遅れてるわよ! もっと体重移動を意識してッ! それから美希さんは逆に早い! 真さんを基準に!」


赤羽根
「……」



「……」



「……」タッタッキュッ


やよい
「……ッ」タッタッキュッ

美希
「……」タッタッキュッ


コーチ
「だいぶ合ってきたわ。次も反復練習だから今の感覚を忘れないように! 今日の練習を終わりにします!」



『お疲れ様でした!』



やよい
「つ、つかれました~ッ」



「え、そう? 今日は軽めじゃない?」


やよい
「うぅ……。真さん凄いですね。私なんてヘロヘロですよ」ハァ。ハァ。


美希
「真くんは体力オバケなの」フゥ。フゥ。



「なんだよそれ! それじゃあ、まるでボクが体力バカみたいじゃないか!」


美希
「え、違うの?」



「違うよ!」


赤羽根
「はいはい。二人ともケンカしない」


真・やよい
『プロデューサー!』


美希
「ハニー!」



「……ハニー?」



赤羽根
「こ、こらっ! だからその呼び方は止めろって言ったろ?」


美希
「なんでなの? そこの人はミキたちとカンケーないから大丈夫って社長も言ってたの」


赤羽根
「いや、そうじゃなくて……。その呼び方を止めてほしいんだけど……」


美希
「分かったの」


赤羽根
「分かってくれたか!」


美希
「ハニーは照れてるだけなの! だからハニーが慣れるまでハニーって呼ぶの!」


赤羽根
「まるで分かってないじゃないか!」


――



赤羽根
「コホン。みんなお疲れさま。飲み物とか買ってきたから、呼吸を整えたらみんなでお茶会にしよう」


やよい・真
『ありがとうございます、プロデューサー!』


美希
「おにぎり~♪ おにぎり~♪」


赤羽根
「こら! 勝手に漁っちゃダメだろ!」


美希
「ハニー、おにぎりがないの……」


赤羽根
「あ、悪い。コンビニで買おうとしたんだけど、百円セールで全部売り切れになってて……」


美希
「それじゃ仕方が無いの。……あ、コレ良いかも!」



「あっ! それボクが狙ってたのに!」


美希
「ふふ~ん♪ 早い者勝ちなの!」



「ずるいぞ美希!」


やよい
「あうぅ……。私のツナサンドあげますから二人ともケンカしないでください~」


――



19:00



「今日一日ありがとうございました」



赤羽根
「コチラこそありがとうございました。なんか情けないところばかりでしたね……」



「そんなことありません。みんなに慕われてるプロデューサーなんてなかなかいませんよ?」



赤羽根
「そう言ってもらえると幸いです。俺も良い経験になりました」


――ガチャッ


高木
「お! みんなもう集まっていたのか。感心、感心」


小鳥
「あ、社長。お疲れ様です」


高木
「諸君、今日も一日お疲れ様」



『お疲れ様です!』



高木
「ところで赤羽根君。どうだい? ちゃんとカッコイイところを撮ってもらえたかい?」


赤羽根
「えっと、どうでしょう……」


高木
「そんな不安そうな顔をされては困るよ君ぃ。そんなことではせっかく来てもらったプロデューサーに示しがつかないではないか」


赤羽根
「ははっ、そうですね。……ん?」


律子
「せっかく来てもらった……」


小鳥
「……プロデューサー?」


春香
「ど、どういうことなんですか社長!」


高木
「ゥォホンッ! 今日一日、赤羽根君を撮影していたカメラマンだが……」



「ん? コレって……」


千早
「デジャヴ?」


赤羽根
「ま、まさか……」


高木
「何を隠そう彼が新しいプロデューサーだ!」


小鳥
「ぇ?」


律子
「え?」


アイドル全員
「ぇええええええええええッ!!!?」



「作戦成功ですね。まさかプロデューサーにドッキリを仕掛けるなんて思いませんよ」


高木
「うむ。気持ちの良い騙されっぷりだ」ニカッ


律子
「いや、そんな満面の笑みになってないで説明して下さいよ!」


高木
「説明もなにも私は最初から“新しいプロデューサーを雇う”と言っていたはずだが?」


律子
「確かに言っていましたけど……、だったらこんなドッキリじゃなくて普通に紹介してくださいよ!」


高木
「律子君……、細かいことを気にするとシワが増えるよ?」


律子
「叩かれたいんですか!?」


高木
「今だ、君! 話が長くなる前に自己紹介を済ませておきたまえ」



「分かりました」



――……ざゎ……ざわ……



「え~、今日から765プロダクションでプロデューサーになりましたPです。いきなりで驚かれたかもしれませんが、みなさんのお役に立てるように頑張ります」



――……ざゎ……ざわ……


高木
「彼のことだが、基本的に赤羽根君のサポートをしてもらうことになる。赤羽根君の手が回らない時は彼を頼ってくれ」



「よろしくお願いしますね、先輩」


赤羽根
「え? ぁ、うん。よろしく……」



「あと社長、個人的にプロデュースしたい女性がいるんですけど」


――ざわっ!?


高木
「ん? 気になる娘でもいたのかい?」



「はい。せっかくなんで指名しても良いですか?」


高木
「それは構わないが?」



「え~と……」


春香
(私が選ばれたらヤだなぁ……)


雪歩
(む、むりです~~ッ)


千早
(私はプロデューサーさんが良い)


真美
(この兄ちゃん髪白いなぁ……)


やよい
(選ばないでください~~)


美希
「ミキはハニーが良いの!」



(ボクはプロデューサーの方が良いなぁ……)


貴音
(私には心に決めた人がいます)


伊織
「まぁ、私たちは……」


亜美
「律っちゃんがいるもんね→」


あずさ
「良かったわ~」


高木
「なぜみんなが祈ってるのかは分からないが聞いておこう。君の選んだアイドルは誰なんだい?」



「それは――」


全員
『(それは!?)』



「音無 小鳥さんです」


高木
「……え?」


赤羽根
「え?」


律子
「え?」


小鳥
「え?」


全員
『え?』


小鳥
「わ、……私!?」


――



高木
「困るよ君ぃ! 話が違うじゃないか!」



「え? ダメなんですか?」


高木
「当たり前だよ。彼女はアイドルじゃなくて事務員なんだ」



「あ、じゃあ事務の仕事を俺が引き受ければ解決ですね」


高木
「いや、そう簡単に決められても……、彼女にも立場が……」



「小鳥さんはどうですか?」


小鳥
「わ、……私ですか!?」



「一緒になるの……嫌ですか?」


小鳥
「えっと、その……嫌という訳では……」



「なら俺について来てください。自分だったら、あなたをどこまでも高く羽ばたかせることができます」


小鳥
「えっと、あの……」



「どうですか?」


小鳥
「どうって言われても……もうアイドルなんて何年も前に引退しちゃったし……」



「大丈夫ですよ」ニコッ


小鳥
「プロデューサーさん……」



「29にもなって復帰したババァがいるくらいなんですから、小鳥さんでもできます」


小鳥
「ババ……!」ピキッ



「小鳥さん?」


小鳥
「えっと……、ところでプロデューサーさん。プロデューサーさんの中では舞さんはオバサンなんですか?」



「当たり前じゃないですか。29ですよ? もうすぐ三十路ですよ?」


小鳥
「――」グサグサ



「しかも復帰したくせに娘に負けてステージから降りてる負け犬じゃないですか。あんな魅力の無いヤツはババアで十分ですよ」


小鳥
「…………そうですよね~。確かにそのくらいの歳はオバサンですよねぇ~~」ビキビキ



「あれ? 小鳥さん……、もしかして怒ってます?」


小鳥
「怒ってませんッ!」



「怒ってるじゃないですか! あ、まさか小鳥さんってあのババアの友達か何かなんですか?」


小鳥
「違います!」



「じゃあなんで怒ってるんですか!? アイドルにしようとしたことですか? それともセリフがちょっとクサかったからですか?」


高木
(一つしかないと思うが……)


赤羽根
(NGワードの連発だったな……)


律子
(小鳥さん、内心は舞い上がってたわね。だから余計に怒ってるんだわ……)


小鳥
「私はアイドルなんて絶ッ対にやりません~~ッ!」


――



高木
「ゥオッホン! え~、P君の申し出だが、音無君は辞退したということで……」



「なにが悪かったんでしょう?」


高木
「いや、私に聞かれても……。他にプロデュースしたい娘はいるかい? アイドル限定で」



「アイドル限定ですか? なら双海真美さんしかいませんよ」


――ぉおお!


真美
「え? 私? ひびきんとか、千早姉ちゃんとか、ミキミキとかじゃなくて?」



「えぇ。真美さんだけです」


亜美
「ぉおっと!」


あずさ
「あらあら~」



「真美さん、無理は承知です。あなたをプロデュースさせて下さい。お願いします」ペコッ


亜美
「これは熱烈なアピールですな~。それでは双海真美さん、お返事をどうぞ!」


真美
「え、えっと……、良いよ?」 


赤羽根
「ッ!!?」



「良しッ!」グッ



赤羽根
「ま、真美? えっと……なんでそんな簡単に承諾するんだ? ほ、ほら、まだ初対面なのに……」


真美
「だって兄ちゃん、いつも忙しそうだし」


赤羽根
「い、いや、俺のことは気にしないでさ、もう一度よく考えてみないか?」


高木
「赤羽根君……、君だって承諾してたじゃないか」


赤羽根
「仕方が無いじゃないですか! これはプロデューサーとして当然の心境ですよ!」


真美
「う~ん……」


赤羽根
「ほら! 最初に“あ”から始まって“ね”で終わるプロデューサーだよな!?」



「先輩……、それは卑怯ですよ」


真美
「でも兄ちゃんより、そっちの兄ちゃんの方が面白そうかなって」


赤羽根
「 」


律子
「こ、これは……」


小鳥
「えぇ……、心の折れる音がハッキリと聞こえましたよ……」


律子
「純粋な一言は、時に人を傷つけてしまうんですね……」


真美
「よろしくね、白い兄ちゃん!」



「はい。コチラこそよろしくお願いしますね」


赤羽根
「ま、真美ぃいいいいい!!!」


――

プロローグ終わり。

更新ペースですが、>>1の仕事の都合で土日がメインになると思います。

それではお休みなさい。

お、密かに待ってたぞ

来たか

リメイクで765側に赤羽根増やしたのか
期待してる


みなさんコメントありがとうございます。

前回の失敗はしないように気をつけるので、最後までお付き合い頂けると幸いです。




『おはようございます!』


高木
「諸君、おはよう。P君、どうだね? もう職場の雰囲気には慣れたかな?」



「まだ一日目ですからどうでしょう? まぁ、自分のやり易いようにやらせて頂きます」


高木
「うむ。早くみんなと仲良くできるように精進するように」



「……そうですね」


高木
「私からの朝礼は以上だ。それではプロデューサー諸君、今日も一日よろしく頼むよ」



『はい!』



赤羽根
「それじゃあ今日のスケジュールだけど、響は……」


律子
「私たちは前と同じね」


――




「真美さん。ちょっと来てください」


真美
「なに→?」



「真美さんのスケジュールですが、今週は先輩から引き継いだ内容になります」


真美
「うん」



「では行きましょうか」


真美
「え!? どこに!?」



「どこって……、仕事に決まってるじゃないですか」


真美
「そんなこと言われても分かるわけないっしょ!」



「ホワイトボードにも書いてありますよ?」


真美
「そんなのゴチャゴチャして見にくいから見てないよ」



「先輩からスケジュール帳とか貰ってないんですか?」


真美
「貰ってないよ。いつもあんな感じだもん」




赤羽根
「真はアウトレッジの撮影だ。大変だろうけど、頑張ってくれ」



「ヤだなぁ……。血とか苦手なんだけどなぁ、ボク……」





「なるほど。でも、あれだとバタバタして騒がしそうですね」


真美
「いつものことだよ→」



「とりあえず車へ行きましょうか。スケジュールは移動しながら話します。やり辛いかもしれませんが、今日は耐えて下さい」


真美
「は→い!」


――




「――になります。分かりましたか?」


真美
「たぶん大丈夫→。ところで兄ちゃんって髪が真っ白だよね→。白ちゃんって呼んで良い?」



「恥ずかしいから止めてください」


真美
「白ちゃんっていくつ?」



「無視ですか……。22歳です」


真美
「え~、ウッソだ→。ホントはもっと年下でしょ→?」



「ウソつく意味がありません」


真美
「白ちゃんってココくる前は何してたの?」



「さっきからどうしたんですか?」


真美
「だって真美たち白ちゃんのこと何もしらないし~、ぶっちゃけ暇つぶし?」



「そうですか。ならお付き合いしましょう」


真美
「で、ドコでナニしてたの?」



「変な聞き方しないで下さい。今も前もプロデューサーでしたよ」


真美
「ほほ~う! どんな子をプロデュースしてたのか気になりますな~」



「最近でしたら日高愛さんですね。876プロダクションの」


真美
「ぇえええ!! 白ちゃん、愛ぴょんのプロデューサーだったのッ!?」



「耳元で騒がないで下さい。そんなに驚くことじゃないでしょう?」


真美
「驚くよ! だって愛ぴょんだよ!? 最年少Sランクアイドルだよ!? そんな人がウチに来るはずないじゃん!」



「コチラにも事情があったんです。ほら、着きましたよ?」


真美
「最後に一つだけ! 白ちゃんは後悔してないの?」



「……真美さんはクリアしたゲームをもう一周しますか?」


真美
「え? 面白かったらまたやるよ? それがどうしたの?」



「私はクリアしたゲームには興味がなくなってしまう性質なんです。つまりはそういうことです」


真美
「え~ッ! ぜんぜん分かんないよ~!」



「分からないなら分からないで良いんですよ。ほら、仕事に遅れてしまいますよ?」


真美
「ちぇ~。後で詳しく取り調べするからね!」



「お待ちしていますよ」







「やっと行ったか。……はぁ、やかましくて昔を思い出しそうそうだ」


――



真美
「終わった→!!」



「おつかれ様です」


真美
「白ちゃん! 労いが感じられないよ!」



「早めに終わったので午後の収録には大分早いですね。なにか食べに行きますか?」


真美
「そうこなくっちゃ!」



「ご希望は?」


真美
「んっふっふ~。真美みたいなセクシーなレディは大人なお店が良いんだよ→」



「ホストクラブですか?」


真美
「違うよ! なんかあるじゃん! 夜景の見えるレストランってかさ~。ふいんきの良いお店とかさ~。
そのほすと? ってなんなの?」



「男の人たちが女性を楽しませる場所ですよ」


真美
「ほほ~う。今度まこちんに教えてあげよ→」



「アイドルを続けたいのでしたら行かない方が良いですよ?」


真美
「危ないところなの?」



「女は金と思え。知人が勤め先で教えてもらった言葉だそうです」


真美
「うぇ……。なんでそんなトコで楽しめるの?」



「寂しい女性が癒しを求めて行く場所がホストクラブなんですよ」


真美
「ピヨちゃん行ってないよね?」



「大丈夫でしょう。彼女の場合、別の方向に癒しを求めているようなので」


真美
「も→まんたい?」



「YES」


――




「着きましたよ」


真美
「ここドコ?」



「大人の雰囲気を楽しみたいとのことでしたのでフレンチを選択してみたのですが」


真美
「え~っ! 真美マナーなんて分かんないYO→!」



「ここのオーナーはマナーに対して寛容です。子供なんですから気にせず食べましょう」


真美
「むっ。真美は子供じゃないよ!」



「背伸びしている間は私から見れば子供です」


真美
「むぅ~。白ちゃんは乙女心が分かってない」



「よく言われます」


真美
「美味しくなかったら承知しないからね!」



「はいはい。では行きましょうか」


――



ウェイター
「いらっしゃいませ。本日は当店のご利用、真にありがとうございます」



「二名です」


ウェイター
「かしこまりました。こちらの方へどうぞ」


真美
「……」



「どうかしましたか?」


真美
「フレンチレストランなんて始めて来たけど……やっぱ静かなんだね」



「まぁ、落ち着いて食べる場所ですからね」


真美
「真美、場違いじゃないかな?」



「怖気づきましたか?」


真美
「そんなことないじゃん!」



「でしたら堂々したらどうです?」


真美
「だって……」



「一流の店ほど客を選びます。入店させてもらえたということは、真美さんが認められたと同じことで
すよ? もっと胸を張ったらどうですか」


真美
「でも……」



「はい、チーズ」


真美
「は?」カシャ



「ひっどい顔ですね。ホントにアイドルですか?」


真美
「いきなり撮っておいてそれはないよ白ちゃん……」



「こちらの表情と今の表情。やはり普段の真美さんの方が良いです」


真美
「そんなこと言ったって難しいよ」



「そうですか? なら試してみましょう」


――さわっ


真美
「きゃっ! ぷくくく。白ちゃん止め、ぁはっはっははは!!」



「どうです? 自然に笑うなんて簡単でしょ?」


真美
「うひひ。分かった! 分かったから~! もう止めてよ~。ぷくくく」



「では止めます」


真美
「う~。セクハラで訴えてやる」



「セクハラが怖くてプロデューサーなんて務まりませんよ」


真美
「っていうかさっきの写真、いつの間に撮ったのさ」



「隠密は私の得意分野ですので」


真美
「白ちゃんは忍者にでもなるの?」



「それだったらルパンになりたいですね」


――



――「すいません。大変恐縮ですが、もう少しお静かにお願いします」


真美
「あ、すいません。ほら、白ちゃんも謝りなよ」



「……お久しぶりですね。オーナー」


オーナー
「これはこれはP様。騒がしいと思いましたが、やはり貴方でしたか」



「お騒がせして申し訳ない。他のお客さまに迷惑だったかな?」


オーナー
「ええ。大変迷惑しております」



「相変わらず正直な人だ。それじゃあ、残念だけど迷惑な客は退場させてもらうよ」


オーナー
「貴方も相変わらず捻くれていますな。恩人を追い返すようなマネを私がするはずもないじゃないですか」



「ならどうすれば良いんだい? まさか二人して立ってろと?」


オーナー
「ただいまVIPルームを貸しきっておりますのでそちらの方へご案内しますよ。もちろん料理もフルコースで出させて頂きます」



「悪いね、なんか性質の悪いクレマーみたいで」


オーナー
「こんなコミカルなクレーマーなら喜んで受け入れますよ。ふふっ。こちらがVIPルームになります。
さぁ、どうぞお入り下さい」


真美
「ねぇ、白ちゃんってホントに何者なの?」



「どこにでもいるプロデューサーですよ」


真美
「そんなプロデューサーが高級レストランのオーナーと知り合うワケないじゃん」



「そこはプロデューサーの数少ない特典です」


真美
「それがホントだったら真美もプロデューサーになってみようかな→」



「なら私の代わりにやってみます?」


真美
「……遠慮しとくよ」


――



真美
「ん~! 美味しぃ~!!」



「大好評ですね」


オーナー
「ええ。こんなに喜ばれては、つくった甲斐があったというものです」


真美
「でもオジちゃん。ホントに良いの? 真美、正直フォークとか適当に使ってるけど」


オーナー
「構いませんよ。料理というのは楽しんで食べるものなのですから」



「オーナー。予約もなしに入店させて頂いた上に最高の料理まで。なんとお礼を言ったら良いか分
かりません」


オーナー
「気にしないで下さい。貴方たちにしてもらったことに比べたら微々たるものです」



「私はなにもしてないのですが……ありがとうございます。どうにか威厳を保つことができそうだ」


オーナー
「……昔を思い出しますね。あの時も貴方は振り回されていましたなぁ。特にナイフで」



「ぐっ。さっきのお返しですか?」


オーナー
「精神攻撃は基本ですよ。それとも昔話はお気に召しませんか?」



「ちぇ、喰えない爺さんだ」


オーナー
「テングの鼻を折るのは私の趣味ですから。それから、ココでは昔のように話しましょう。せっかくの旧友が変わってしまったようで味気ないので」



「料理だけに?」


オーナー
「はっはっは。安心しました。どうやらセンスの悪さは変わってないようですね」



「皮肉にしちゃ効いたぞ」


オーナー
「それでは私はこれで。お連れの方と当店の料理をお楽しみ下さい。アデュー」



「ッチ。変わってねぇな~、あの爺さんも」


真美
「やっぱそっちの方が良いよ白ちゃん」



「そっちって?」


真美
「今のしゃべり方。そっちの方が似合ってるよ」



「どうも。だけど外では普段の話し方に変えるよ。印象が悪いし」


真美
「え~。Boo→Boo→!」



「社会人としてのマナーです」


真美
「ちぇ。ところであのおじちゃん、白ちゃんのこと恩人って言ってたけどなにかしたの?」



「なにを勘違いしてるのか知らないけど、俺はなにもしてない。やったのは担当していたヤツだ」


真美
「お? もしかして愛ぴょん?」



「おう」


真美
「愛ぴょんSUGE→! で、なにやったの?」



「潰れかけたこの店を復活させただけだ。名が知られるようになったのは爺さんの実力だろうな」


真美
「へ~。ココってそんなに有名なの?」



「知らん。潰れかけたくらいなんだし、知る人ぞ知る隠れた名店くらいじゃないか?」


真美
「うわ……白ちゃんってけっこう失礼だよね→」



「ふふっ、ようやく気が付いたか」


真美
「白ちゃん腹黒→い」



「傷ついたぁ」


真美
「というか料理が冷めない内に早く食べようよ→」



「……お前ってウルトラマイペースだよな」


真美
「んっふっふ~。これが大人の余裕ってやつだよ!」



「はいはい。真美さんは大人ですね~」


真美
「白ちゃん、真美のことバカにしてるっしょ?」



「んっふっふ~。それはどうでしょうかね~」


真美
「ムカつく~。白ちゃんなんて嫌いだ!」



「そりゃどうも。さて、元気が出たところで行くか」


真美
「は→い!」


――



ウェイター
「ありがとうございました。お会計、○万○千円になります」



「はいよ。ちょっと待ってくれ、今サイフだすから」


真美
「いつも食べてるトコより金額が10倍くらい違うよ……白ちゃんスゲ→!」



「だろ?」


オーナー
「君。ちょっと待ちたまえ」


ウェイター
「なんでしょうかオーナー?」


オーナー
「そちらのお客様は私の友人だ。お代は受け取らなくて良い」



「おいおい、待ってくれよ。あん時と違って今は金あるんだから払わせろよ」


真美
「おやおや~。なんだか雲行きが怪しくなってきましたな~」


オーナー
「年老いの言うことは聞くものだ。それに、君のような人間には貸しをつくる方がメリットがある」



「ちぇ、せっかく気持ちよく帰ろうとしたのに……。後悔すんなよ爺さん」


オーナー
「後悔なんてしないさ。そこらへんは信用してるからね」



「けっ、子供扱いされてムカつく気持ちが分かったわ」


真美
「なんでタダになったのに白ちゃんは複雑な顔してんの?」



「大人にはいろいろあんだよ」


オーナー
「私から見ればお前も子供だけどね」


真美
「大人って大変だね→」


オーナー
「ね→」



「なかなか微笑ましい光景だが腹が立つな」


オーナー
「バイバイ、真美ちゃん。それとP。また遊びに来なさい」


真美
「じゃ→ね→オモシロおっちゃん」



「俺はついでか。……ちゃんとした扱いをするならまた来るよ」


オーナー
「案外すぐに来たりするかもしれないな」



「ありえねー。わざわざ遊ばれに来るかよ」


オーナー
「さぁ、それはどうかな?」



「どういうことだ?」


オーナー
「それはお楽しみですぅ><」



「真美、コイツ殴って良いかな?」


真美
「止めときなよ。一応おじいちゃんなんだからさ」



「じゃあ止める」


オーナー
「子供に宥められるP……。ぶぉっへっふぁっ! 腹が痛いわい」



「このジジイ……、マジで天に召されたいか」


真美
「オジちゃんもあんまり白ちゃんからかうのはメッだよ!」


オーナー
「は→い! 気を付けま↑す!」


真美
「……真美もこのおじいちゃん苦手かもしれない」



「もはや気にしたら負けのような気がしてきた」


――




「ただいま帰りました」


小鳥
「プ、プロデューサーさん! 大変なんです! なにしたんですか!」



「落ち着いてください。一体どうしたんですか? ダイエットしたいって話なら聞きませんよ?」


小鳥
「確かにこの年齢になると……って違います! 私にそんなのは必要ありません!」



「じゃあどうしたんですか騒々しい」


小鳥
「さっき電話でプロデューサーさんと真美ちゃんを全面的に協力させてくれっていう方が……。ホントになにしたんですか!?」



「なにしたって……こっちが聞きたいですよ。どんな方なんですか?」


小鳥
「三ツ星レストランの支配人ですよ! ミシュランに乗るほどの人とどうやって知り合ったんですか!?」



「レストランの支配人? ……うげっ! あの狸ジジイそんなに有名だったのかよ!?」


小鳥
「そうですよ! 羨ましぃい!! 私も行きたかったぁああ!!」



「そっちが本音ですか」


小鳥
「はい! ぜひ連れて行って下さい!」



「え~」


小鳥
「……。もしかしてプロデューサーさん、私と行くの嫌なんですか?」



「別に嫌じゃないですけど、小鳥さんの前まで子供扱いされるのはちょっと……」


小鳥
「大丈夫ですよ。お姉さんがリードしてあげますから」



「なんか意味合いが違ってきてます。まぁ余裕ができたらってことにして下さい」


小鳥
「はい! 絶対ですよ! 約束ですからね!」



「分かりましたから落ち着いて。とりあえず詳しい話を聞かせて下さい」


小鳥
「はい。あれは今から二時間くらい前の話なんですけど……」



「なんで怪談風?」


小鳥
「えへ。おちゃめですから」



「はぁ、続けて下さい」


小鳥
「えっと、その時にオーナーから直々にお電話が来まして……」


――




「へー、あのプロデューサーとそんなことがあったんだ」


春香
「でも意外だったね。まさか愛ちゃんの元プロデューサーだったなんて」


赤羽根
(あぁ、なるほど。だからあの時に初対面な感じがしなかったのか)


貴音
「面妖な……。真美、“ふれんち”というのはどのような食べ物だったのですか?」


真美
「んっふっふ~。一口じゃ表せない美味しさだったよ。白ちゃん、また連れて行ってくれないかな→」


千早
「白ちゃん?」


真美
「うん。髪が白いから白ちゃん」


伊織
「~ッ! 私ですらまだ行ったことない店なのにぃ! なんなのあのプロデューサー! アンタも偶にはフレンチくらい連れて行きなさいよ!」


赤羽根
「ムチャ言うなよ!」


小鳥
「私は約束してもらったもんね!」


美希
「良いな~。ミキも行きたいな~。頼んだら連れて行ってくれるかな?」



「その時は自分も連れて行ってほしいぞ」


あずさ
「わたしも同意見だわ~」


美希
「みんなで頼んでみる?」


響・あずさ
『賛成~!』


やよい
「うっう~>< 真美ちゃん、そんなに高いお料理食べたんですか!? 怖くて私は行けません!」


伊織
「その時は私がッ!」ガタッ



「はいはい。病気はそこまでにしておきましょうね~」


――



真美
「という訳で白ちゃん、連れて行って!」



「ムリ」


真美
「え→! そんな~!」



「みんな忙しいんだ。普通に考えて全員で行くなんてムリだろ」


真美
「む→! じゃあ、みんなの予定が合えば連れて行ってくれるの?」



「ははっ。そんな奇跡が起きるなら、連れて行くどころか全員分オゴってやるよ」


真美
「言ったな→!」



「言った言った。だから仕事に行くぞ~」


――

今日はここまでにします。


更新する際の投下時間ですが、17時頃を目安にします。
それではまた来週。


嗚呼、フラグが立ってしまったww



――「今週のゲストは……双海真美さんです!」


~♬~♫


真美
「どうも→!」


観客
『カワイイ~~!』


サングラス
「あれ? 竜宮小町は前にゲストで来たけど、お姉さんの方は初めてだっけ?」


真美
「そうだよ→。亜美がメイワクかけてなかった?」


サングラス
「できたお姉さんだね~。むしろ盛り上がって大助かりだったよ」


真美
「良かった→」


サングラス
「それはそうと髪切った?」


真美
「え? 初対面なのになんで分かったの? もしかして……」


サングラス
「もしかして?」


真美
「あの時のスタイリスト?」


サングラス
「んなこたぁない」


観客
『ハハハッ!!』


――




「お疲れ様。この後は別のスタジオでゲスト出演する予定だから早めに出るぞ」


真美
「ねぇ、白ちゃん。なんでいつもゲストばっかりなの?」



「イメージ戦略だよ」


真美
「イメージ戦略?」



「あっちこっちにゲストで呼ばれたら、茶の間の観客は“売れっ子アイドル”って認識してもらえるだろ?」


真美
「あ、確かに!」



「まぁ、ランクを上げるにしても、なんにしてもお前の知名度はまだ低いから今は地盤を固めてる感じかな」


真美
「おぉ! なんか白ちゃん、敏腕プロデューサーって感じだね!」



「ありがと。だけどお前の方こそ覚悟しておけよ?」


真美
「どういうこと?」



「コッチは竜宮小町っていうハンデがあるんだ。まずはお前を竜宮小町より有名にさせる。そこから知名度を広げつつ、Sランクまで成長してもらうつもりなんだからな」


真美
「ん~、それはムリっしょ! 竜宮小町ってラピュタだもん!」



「は? ラピュタ?」


真美
「うん、ラピュタ」



「えっと……、もしかして雲の上の存在って言いたいのか?」


真美
「あ、そうそう。それだよ白ちゃん。よく分かったね」



「俺もそう思う」


――



――「撮影終わりまーす。お疲れ様でしたー」


真美
「やっと終わった→!」



「お疲れさん。とりあえず今日の仕事はこれで終わりだな」


真美
「メッチャ疲れたよ……」



「今日は頑張ったから、どっかメシでも食べて帰ろうか」


真美
「おっ! 良いねぇ~!」



「なに食いたい?」


真美
「フレンチ!」



「いや、みんなで行くんだろ? 楽しみにとっておけよ」


真美
「え~。Boo→。Boo→」



「ほかに要望は?」


真美
「う~ん」



「無いんならたるき亭で良いか?」


真美
「ならガストが良い!」


――



亜美
「なんか最近の真美、よくテレビで見かけるようになってきたね→」


真美
「これも白ちゃんのお陰っしょ!」


亜美
「さすが白ちゃん! 兄ちゃんにできないことを平然とやってのける! そこに痺れる憧れるゥウ!!」


赤羽根
「ぐぬぬ」


律子
「ほらほら、二人とも! あんまり赤羽根殿をからかわないの!」


亜美・真美
『は→い!』


真美
「でもさ→、もしかしたら白ちゃんの言った通りホントに竜宮小町より有名になっちゃうかもね→」


あずさ
「うふふ。私たちも負けてられないわね~」


伊織
「はぁ、そんなことある訳ないじゃないでしょ」


亜美
「いおりん?」


伊織
「夢を見るのは勝手だけど、少しは現実を見なさい」


真美
「いおりん、そんな言い方ってないんじゃない?」ムッ


伊織
「なに怒ってるのよ。当然のことを言ったまでじゃない」


真美
「あ~、分かった。真美が人気出てきたから焦ってるっしょ」


伊織
「バカね。私たちとアンタ、どれだけ差があると思ってるのよ。寝言なら寝てから言いなさい」


真美
「むっか~!」


あずさ
「あら~?」


亜美
「なんか険悪なムードになってきたよ→……」


律子
「不味いわね……」


亜美
「ど、どうすんの、律っちゃん~!」


律子
「伊織ー! そろそろ仕事だから行くわよー!」


伊織・真美
『フンッ!』


――



真美
「なにが“寝言なら寝てから言いなさい”だよ! 確かにちょっと言い過ぎかなって思ったけど、そこまで言わなくても良いじゃん!」



「荒れてるな~」


真美
「白ちゃんもそう思うでしょ!」



「そうだな」


真美
「あれは真美が人気になってきて焦ってるだけだよ。絶対にそうっしょ!」



「でも、向こうの方がランクが上なのは本当の事だろ?」


真美
「分かってるよ! でも、そんなの今だけじゃん! 白ちゃんだって真美を竜宮小町より有名にしてくれるって言ってたでしょ?」



「言ったな。でも、お前の方はあんまり乗り気じゃなかっただろ?」


真美
「気が変わったの!」



「そうですか」


真美
「絶対にいおりんを見返してやるんだから!」


――



律子
「伊織、なんでアンタ真美にあんなこと言ったのよ?」


伊織
「別に……、なんとなく人気が出てきたってだけで調子に乗ってる姿がムカついただけよ」


律子
「だからって、あそこまで言う必要はなかったでしょ?」


伊織
「私は間違ったことなんて言ってないわ。アイツはなにも分かってないのよ」


律子
「伊織……」


伊織
「だってそうでしょう!? 育ててもらったプロデューサーから鞍替えして、ちょっと人気が出てきたら私たちより有名になるって大口叩いてるのよ!? 少しくらいキツく言った方がアイツには良い薬だわ!」


律子
「だけど、あれは言い過ぎよ」


伊織
「そうかしら?」


律子
「真美の気持ちを考えてみなさい。私たちが活躍してた頃からずっと日陰にいたのよ? 少しくらい態度が大きくなるのは仕方が無いことでしょう?」


伊織
「……」


律子
「とにかく帰ったらちゃんと仲直りするのよ?」


伊織
「……分かったわよ」


――



――「お疲れさまでした~」



『お疲れ様でした』



律子
「みんなお疲れ様。それと伊織、帰ったらちゃんと謝るのよ?」


伊織
「何度も言われなくても分かってるわよ!」


亜美
「フンッ! 勘違いしないでよね。別にアンタと仲直りがしたい訳じゃないんだから! でも……、今朝はちょっと言い過ぎちゃったわ。……ごめんなさい……」


伊織
「……なにやってるの?」


亜美
「いおりんのセリフをシュミレート!」


伊織
「私はこんな照れ隠しみたいなこと言わないわよ!」


亜美
「え~! 絶対こんな感じだよ→!」


伊織
「絶対に違うわよ!」


あずさ
「あらあら~」


律子
「二人とも遊んでないで帰るわよ~」


――



律子
「ただいま帰りました」


亜美
「いよいよですな~」


伊織
「フンッ。野次馬は黙って見てなさい」


あずさ
「あら~? でも、肝心の真美ちゃんがいないわ」


亜美
「まだ帰ってきてないだけじゃない?」


律子
「小鳥さん、真美たちまだ帰って来てませんか?」


小鳥
「それが……、戻って来てからずっと社長と会議室に籠もったままでして……」


律子
「社長と? なにかあったんですか?」


小鳥
「プロデューサー曰く、やりたい企画ができたとのことですけど、詳しくは……」


――ガチャン。



「それじゃ、社長。よろしくお願いしますね」


真美
「……」


高木
「まぁ、良いだろう。後は律子君だが……」


律子
「私がどうかしましたか?」


高木
「おぉ、律子君か。丁度良いところに帰ってきた。ちょっとコッチに来てくれないか?」


律子
「なんですか?」


高木
「突然のことで申し訳ないのだが……」


律子
「?」


高木
「彼が企画したライブに君たち竜宮小町も参加してくれないだろうか」


律子
「日程が合えば参加させて頂きますけど、なんで私だけなんです? ライブなんて重要な話はみんながいる時にするべきだと思うんですけど」


高木
「まぁ、本来ならそうするのだが……」


律子
「?」


高木
「実はこのライブ、参加者が君たち“竜宮小町”と彼が担当する“双海真美君”の二組だけなんだ」


律子
「えっ!? ど、どういうことなんですか!?」


高木
「それについては私よりも彼から聞いた方が良いだろう」


律子
「プロデューサー殿!」



「真美も人気が出てきたからここらで竜宮小町との差を知ってもらおうと思っただけだが?」


律子
「意味が分かりません! そんなことしたら真美が傷つくだけじゃないですか!」



「本人も覚悟の上だ。……この意味、分かるよな?」


律子
「ぐっ……」


律子
(仲間内で争うなんてなに考えてるの、このプロデューサー!?)


伊織
「あら、良いじゃない。その勝負、受けてたつわよ律子」


律子
「伊織!?」


伊織
「まさかホントに私たちを超えるなんて思ってたなんてね……。冗談にしても笑えないわ」


真美
「言ってなよ。最後に笑うのは真美だからさ」



「それじゃライブの件は承諾ということで良いか?」


伊織
「えぇ、捻り潰してあげるわ」


律子
「ちょ、ちょっと勝手に決めないで! 承諾なんてする訳ないでしょ!」


伊織
「律子、いいから黙って受けなさい。私たちはコイツらに舐められてるのよ? このライブでどっちが上かハッキリさせた方が良いわ」


律子
「だけど……、それじゃ真美が可哀想……」


真美
「――ッ」



「可哀想? まさか自分のユニットが絶対に勝てると思ってるのか?」


律子
「え? い、いえ、そういう訳では……」



「なら、迷わず決めろよ。コイツらの意気込みをムダにするつもりか?」


伊織
「受けなさい律子!」


真美
「律っちゃん!」


律子
「……っく。分かりました。受けますよ」



「決まりだな」


律子
「……私は責任は取りませんからね!」



「あぁ。責任は自分で取るから安心してくれ」


律子
(どうなっても知らないんだから)



「それじゃライブの開催日だけど、都合の良い日程はあるか?」


律子
「それなら三ヶ月後の上旬ですね」



「そっか。分かった。その時までにお互い調整しておこう」


律子
「……分かりました」


――




「さて、いよいよ引き返せないとこまで来たな」


真美
「別に良いよ。それよりも白ちゃん。真美、勝てると思う?」



「現状としては敗色濃厚だな。向こうはファンも知名度もある一流ユニットだ。普通なら勝てない」


真美
「そう、……だよね……。やっぱり竜宮小町に勝つなんてムリだったのかな……」



「言っただろ? “普通なら”って。格下には格下のやり方があるんだよ」


真美
「?」



「とりあえずダンスと表現力だな。ダンスは良いとして、表現力は……」


真美
(難しい顔して考えてる……。白ちゃん、きっと本気で真美を勝たせようとしてるんだ)



「……普通にやってたら時間が足らないし……。取ってきた仕事はキャンセルして時間をつくるしか……」


真美
「……」



「なぁ真美、これからのレッスンなんだけど……」


真美
「レッスンする日が増えるんでしょ! キツくても頑張るから大丈夫だよ白ちゃん!」



「いや、レッスンは直前までやらないつもりだ」


真美
「え!? じゃ、じゃあ、どうするの?」



「そうだなぁ……。適当に遊んでるか」


真美
「!?」


――

今日はここまでにします。
それにしてもブラウザバックが重すぎてやりずらい……。

縺翫▽縺翫▽

専ブラ使えよ

専ブラ使えよ


前作いま見て来たおもろかったで。
今作も期待しとく。

あ、何か読みやすくなってると思ったら名前の位置変えたのね
頑張れ



律子
「今日のスケジュールだけど、午前中は昨日と同じね。午後はレッスンだけだから、今日はゆっくり移動しましょう」


伊織
「さて、向こうはどんな感じなのかしら?」


律子
「向こう?」


伊織
「あのバカたちよ。ニヒヒッ! きっと一日中レッスンよ。それくらいしないと私たちに追いつけないもんね」


亜美
「真美……」





「今日のスケジュールだけど、CMとモデルの撮影、それと雑誌の取材が二時まであるな」


律子
(意外と普通……?)



「そこから先だけど……、なにもないから遊びに行こうぜ?」


真美
「了解!」


律子・伊織
『!?』



「それじゃ今日のスケジュール終わり。さっさと行こうか」


真美
「はいは→い」




律子
「……え? どういうことなの?」


伊織
「馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ……」


――



真美
「ねぇ白ちゃん。ホントにゲームセンターに来たけど……、なに探してるの?」



「目当ての機会が無いんだよなぁ……。確かここら辺に……、あったあった」


真美
「……ダンレボ?」



「あぁ。今日からこれでトレーニングだ」


真美
「白ちゃん……。ダンスするなら普通にレッスンした方が早いと思うんだけど……」



「まぁ、騙されたと思ってやってみろよ。とりあえずダブルにして……、まずは簡単なヤツからな」


―― Selection music ♪


真美
「こんなの楽勝っしょ!」



「そうかもな」


~♪♫~♬


真美
「――ッ」


―― You were successful


真美
(で、できた!)



「ぉお! さすが真美だ! 初めての曲なのに踊れるなんて凄いじゃないか!」


真美
「んっふっふ~。そうでしょ→、そうでしょ→。ひびきんじゃないけど、真美だって完璧なんだから!」



「その通りだな! じゃあ、次はもう少し難しい曲でやってみようか!」


真美
「余裕だよ!」



「言ったな! じゃあスピードは最高速度にしよう」


―― Selection music ♪


真美
「え?」


~♬~♪


真美
「ぅお!? えっ? ちょ! 目で、追いつけないんだけど!」タンッ。タッ。



「どうしたー? ぜんぜん踊れてないぞー」


真美
「し、白ちゃん! コレちょっと早すぎるよ!」ダンッ。キュッ。キュッ



「遅くしたら簡単にクリアするだろ?」


真美
「そ、そうだけどさ~~ッ!」ダンッ。ギュッ



「ほらほら、ステップは軽くで良いんだよ。じゃないとスムーズに動けないぞー」


真美
「ムリムリムリ~~~ッ!!!」


―― You failed



「なんだよ、もう終わったのかよ情けねぇ」


真美
「そんなこと言ったって早すぎるんだってば!」



「知るか。ほら、もう一回やるぞ」


真美
「わっ! わっ! だから早いんだってば~~~ッ!!」



「がんばれ~。ちなみにチャレンジでトリプルAランク取るまでやるからな」


真美
「おに~ッ! あくま~ッ!」



「はははっ!」


――



真美
「ぜぇ……、ぜぇ……」



「時間が惜しいんだからさっさと呼吸を整えろよ」


真美
「む、り……」ゼー、ハー



「あー、違う違う。それじゃダメだ」


真美
「?」



「息は吐き切るんだよ。そうすれば自然と肺が膨らむから楽になるぞ?」


真美
(あ、ホントだ!)フーゥ、スーゥ



「回復したらまたやるぞ。他にもやらなきゃならないのがたくさんあるんだから頑張れ」


真美
「う、ん」フーゥ、スーゥ


――



―― Selection music ♪



「それじゃ、始めるぞ?」


真美
「……」コクッ


~♫~♬~♪


真美
( ↖ → ↘ ↑ → ・ ↖ ↘ ・ ← ↑ ↑ → ・ ↙ ← ↑ ↓ ・ ↙ ↑ ← ↗ → ……)タタタン。タ。タッ


―― You were successful !!


真美
「リザルトはッ!?」



「……」


――――――


Player 1 

Challenge


MARVELOUS : 389

PERFECT : 102

GREAT : 2

GOOD : 0

ALMOST : 0

BOO : 0

O.K. : 0

NG : 0

MAX COMBO : 493



Score : 989350



RESULTS
 
『 AAA 』

FULL COMBO !


――――――


真美
「や、やった……」



「良しッ!」


真美
「やった! できたよ白ちゃん!!」



「あぁ! たった二週間でクリアできるなんて思わなかったぞ!」


真美
「ヤバッ。チョ→嬉しいんだけど。記念に写メ撮っちゃお→」カシャッ


――




「さて、これで晴れてダンレボは卒業だ」


真美
「白ちゃん、次はなにするの?」



「そうだな……。予定よりも少し早いけどスケートをやってもらおうか」


真美
「スケート? スケートってあの氷の上を滑るヤツ?」



「そう、それ」


真美
「ねぇ、白ちゃん。もしかしてイナバウワーやれなんてなんて言わないよね?」



「いや、そこまで本格的にはやらないんだけど……」


真美
「じゃあ何やるの?」



「普通に滑ってもらうだけだから心配すんな」


真美
「ホントに~?」



「まぁ、余裕があればターンとか色々と試してみようかな?」


――



真美
「うぅ……、寒い……」ブルブル



「ほら、滑る前に体を暖めておけ」スッ


真美
「あ、ありがとう」ブルブル


――ゴクッ。


真美
「……すっぱい」



「柚子レモンだからな」ヵシュッ


真美
「あっ! 白ちゃんお酒飲もうとしてる! いけないんだ!」



「え? これ甘酒だぞ?」


真美
「じゃあちょうだい」



「良いけど、あんまり暖まらないぞ?」


真美
「別に良いも→ん」ゴクッ、ゴクッ



「はぁ。じゃあ、この柚子レモン、勿体無いから俺が飲むか」


真美
「うまー♪ ……ってダメ! 飲まないで白ちゃん!」



「は? だっていらないんだろ?」


真美
「いらないけど……。その、……なんというか……」



「?」


真美
「とにかく全部飲むの!」



「あっそ」


――



――シャー、クッ、スー。


真美
「どう? ちゃんと滑れてるっしょ」



「あぁ。やっぱり飲み込みは早いな」


真美
「~♬」



「さて、そろそろ上がろうか」


真美
「え~」



「楽しいのは分かるけど、そろそろ冷えてきただろ?」


真美
「まだ大丈夫だよ」



「ダメ。あまり長時間やって風邪でも引かれたら意味が無い。それに、どうせまた来るんだ。今日は我慢してくれないか?」


真美
「ちぇ→」


――



律子
「プロデューサー殿、ちょっと良いですか?」



「どうした?」


律子
「どうした。じゃないですよ! プロデューサー殿から貰ったライブの進行表、真美の歌う曲だけ決まってないじゃないですか!」



「……」


律子
「分かってるんですか!? これじゃ真美だけライブに参加できないんですよ?」



「……分かってるよ」


律子
「ならしっかりして下さい。ライブの企画者はプロデューサー殿なんですよ?」



「……」


律子
「私はもう行きますけど、これで“できない”なんて言ったら本気で怒りますからね?」



「……」


律子
「それじゃ、行ってきます」


――バタン



「ふぅ。やっと行ったか……」


真美
「メッチャ怒られてたね→」



「というか、なんで自分に関係のない事で怒ってたんだ?」


真美
「さぁ? ところで白ちゃん。なんであんなウソついてたの?」



「歌のことか?」


真美
「うん。だって真美の歌う曲って決まってるんでしょ?」



「確かに決まってるけど……、これに関しては最後まで言わない」


真美
「なんで?」



「だって切り札は最後まで取っておくのがセオリーだろ?」


――

少し短いですが、キリが良いのでここまでにします。

みなさんコメントありがとうございます。さっさと書き溜めの方を完結させて連日投下できるように頑張ります

息の整え方は空手の息吹きやないかww
前作から見てきたわ
面白いです
投下乙です

前作から見てきたよ!
すごく面白いから期待して待ってる

リメイク前のが思い出せないから読み直してきたが、そういえばあんなんだったな

今回は期待してる



律子
「それじゃ今日の予定だけど、あずささんは真と一緒に映画の撮影です」


あずさ
「あ、あの……、やっぱり辞めるわけには……」


律子
「ダメです。我慢して下さい」


あずさ
「私もシネマは好きじゃないんですけど……」


律子
「亜美は伊織と一緒にラジオの収録ね。それが終わったらあずささんと合流して写真撮影に向かうわ」


亜美
「了→解!」


伊織
「分かったわ」


律子
「仕事が終わった後は真美と一緒にレッスンだから余力は残しておきなさいよ?」


伊織
「あらそうなの? まぁ良いわ。真美のヤツがどれくらい踊れるか見てやるんだから」


――




「今日の予定だけど、10時にダンスレッスン。14時から千葉の房総でグルメリポート。そんで19時にもう一度ダンスレッスンだ」


真美
「は→い」


赤羽根
「ちょっと待ってくれ。10時と19時のレッスンは美希・響がそれぞれ使う予定じゃないのか?」



「えぇ、そうなってます。レッスンコーチの方には話を通してあるので先輩たちは気にしないでレッスンを受けて下さい」


赤羽根
「そうは言ってもな……」


真美
「兄ちゃん、真美たちジャマしないから見逃して」


赤羽根
「いや、だけど……」


真美
「お願いだよ兄ちゃん!」


赤羽根
「……仕方が無いな。でも、みんなのジャマは絶対にダメだぞ?」


真美
「うん! ありがと兄ちゃん!」



(……ちょろい)


――



美希
「あれ、真美? なんでココにいるの?」


真美
「今日からしばらくミキミキたちと一緒にレッスンやるんだって」


美希
「へー。あ、そういえばハニーがそんなこと言ってたかもなの。でも、ミキと同じレッスンしても意味ないと思うな」


真美
「ん~、ぶっちゃけ真美もそう思うけど、白ちゃんのことだから意味はあるんじゃない?」


美希
「あのプロデューサーの考えてることは良く分からないの」


真美
「だね→」


――ガチャッ


コーチ
「ごめんなさい。ちょっと遅れちゃったわ」


美希・真美
『おはようございまーす!』


コーチ
「それじゃあ、さっそくだけどストレッチから始めちゃいましょうか」


――



美希
「ねぇ、真美。真美はなんで竜宮小町と対決することになってるの?」グッ、グッ


真美
「それがさ→、聞いてよミキミキ! いおりんたら酷いんだよ→!」グニッ、グニッ


美希
「でこちゃんがどうしたの?」


真美
「最近の真美、ちょっとずつだけど有名になってきたでしょ?」


美希
「そうだね。良くテレビで見かけるようになったの」


真美
「それで気分が盛り上がって、つい言っちゃったんだよね→。“竜宮小町よりも有名になる”って」


美希
「うん。それで?」


真美
「そしたらいおりん、“寝言なら寝てから言いなさい”って言うんだよ! チョ→ひどくない!?」


美希
「それは確かに言い過ぎかも。でも、ミキ的には真美も悪いって思うな」


真美
「うぐっ。それは分かってるよ……。だけどバカにされたままなんて悔しいじゃん!」


美希
「真美って意外とごーじょーだったんだね」


コーチ
「ほらほら、お喋りも良いけどストレッチもマジメにやりなさい。肉離れになっても知らないわよ」


美希・真美
『はーい』


――



コーチ
「それじゃレッスンを始めちゃいましょう。美希ちゃんは前の振り付けの続きね。真美ちゃんは……プロデューサーさんから何か聞いてない?」


真美
「うーん……。白ちゃんからはミキミキのマネするだけで良いとしか聞いてないんだよね→」


美希
「ミキの?」


真美
「うん。だから見やすいようにミキミキの後ろで踊ってるよ」


コーチ
「分かったわ。じゃあそれに従ってちょうだい」


真美
「はーい」


コーチ
「それじゃレッスン開始するわよ。ミュージック、スタート!」


――




「お疲れさま」


真美
「ホントに疲れたよ→。っていうか白ちゃん! 真美がレッスンしてる間どこに行ってたのさ!」



「ん? あぁ、そういえば言ってなかったな。さっきまでライブの関係者と打ち合わせしてたんだよ」


真美
「なら許す」



「なんだそりゃ。もし俺が遊びに行ってたって言ったら?」


真美
「そんなの決まってるじゃん! 真美も連れてけ~ッ! だよ!」



「だよなー。というかお前ずいぶん元気があるな。ホントにレッスンやったのか?」


真美
「ちゃんとやってたよ! ミキミキのマネしながら踊るのすっごく大変だったんだからね!」



「なら許す」


真美
「ちょっと白ちゃん。それは真美のセリフだからマネしちゃダメだYO→」



「だが断る」


真美
「それ使い方間違ってない?」



「え、そうなの?」


――



真美
「ぷはー! 食った食った!」ポンポン



「オッサンかよ」


真美
「いや~、千葉って夢の国くらいしか知らなかったけど、意外と美味しいのがいっぱいあるんだね!」



「海に隣接してるから海産品は豊富だったろ?」


真美
「サザエの壷焼きに伊勢エビの刺身、ウニ丼も美味しかったなぁ……。んっふっふ~。千葉サイコ→!」



「うゎ……、最近どんどん舌が肥えてきやがった」


真美
「次は山の幸だ→! トリュフ食べさせろ→!」



「その前にレッスンな」


真美
「うぇー」



「はい、露骨に嫌そうな顔しない」


――



真美
「食後の運動だZE!」



「お前はレッスンをなんだと思ってるんだ」



「なんか今日の真美、テンション高いぞ」


真美
「美味しいものいっぱい食べたからね→。今日の真美は一味違うところを見せてあげるよひびきん」



「そうなのか? なら自分も負けてられないさー」



「張り切るのは良いけど、二人ともケガのないようにな」


ハム蔵
「ゥジュゥウウウウ!!!」



「いきなりどうしたハム蔵!?」


ハム蔵
「ジュウ! ヂュワ! デュワ!」



「こら、ハム蔵! そんなこと言っちゃダメだぞ!」


真美
「ねぇ、ひびきん。ハム蔵、なんて言ってるの?」



「それが……、真美のプロデューサーをもの凄く威嚇してるぞ……」


真美
「ちなみにどんな感じ?」


ハム蔵
「ジュゥ! ヂュヂュ! ヂュワワヂュ!」



「近寄るな化け物! 早くどっか行け! ついでにくたばりやがれ! って言ってるぞ」



「俺、なにもしてないんだけど……」


真美
「もしかして白ちゃんって動物に嫌われてる?」



「あぁ、いつもこんな感じだ」



「自分が動物に嫌われたら生きていけないぞ」



「それは大げさだろ。……まぁ、そんなに悪いことばっかりじゃない、……と思う」


真美
「例えば?」



「カラスが寄ってこないからゴミが荒らされない」


真美
「可哀想に……、それくらいしか見出せなかったんだね」



「まぁ、なんて言うか……ご愁傷様?」



「そんな真顔で同情するなよ……。泣きそうになるだろ……」


――



『お疲れ様でしたー!』



「はぁ~、疲れたさー」



「二人ともお疲れ様。飲み物あるけど飲むか?」



「あ、どうも」


真美
「サンキュー白ちゃん」



「というか、真美はあんまり疲れてないんだな」プシュッ


真美
「この後に竜宮小町のみんなと一緒にレッスンだかんね→」



「真美も大変なんだなぁ。自分、なにもできないけどライブ応援してるぞ」


真美
「ありがと、ひびきん♪」



「じゃあそろそろ事務所に戻るさー。真美も白ちゃんもお疲れー」


真美
「お疲れさま→」



「お疲れさま」


ハム蔵
「ペッ!」


――ガチャン



「……おい真美。今あのハムスター、俺に向かってツバ吐いたぞ」


真美
「白ちゃん……、ハムスターがそんな器用なことできる訳ないじゃん」



「……その哀れみの顔はやめろ」


真美
「それで、竜宮小町はいつ来るの?」



「向こうの仕事が早く終わるみたいだから後30分くらいで着くって」


真美
「んっふっふ~。いよいよパワーアップした真美を見せる時が来ましたな~」



「振り付けと位置確認だけなんだから本気にはなるなよ」


真美
「え~、ちょっとくらい良いじゃん!」



「ダメ。ちゃんとライブまで我慢しなさい」


真美
「ブー、白ちゃんのケチ→!」


――



律子
「お待たせしました」



「お疲れさま」


伊織
「早く帰りたいんだからさっさと始めなさいよ」


あずさ
「い、伊織ちゃん? ほら、真美ちゃんだってさっきまでレッスンだったんだから少しくらい休憩してからでも……」


真美
「別に良いよ。あんまり疲れてないし」


伊織
「フン。遊んでばっかでレッスンも適当に受けたんじゃないの?」


真美
「いおりん、なにも知らないのに適当なこと言わないでくれるかな?」


伊織
「どこが適当よ。事実じゃない」


真美
「あぁ、そう。だったら――」



「“真美”」


真美
「でも白ちゃん……」



「さっきも言っただろ?」


真美
「……分かったよ」



「伊織も煽るのはそのくらいにしてくれ。いつまで経ってもレッスンが始められない」


伊織
「フン。そんなの分かってるわよ」


――



~♫♪~♬


律子
「だいたい形にはなってきましたね」



「このペースならライブまでには間に合いそうだな」


律子
「それはそうとプロデューサー殿。真美が歌う曲は決まったんですか?」



「“ポジティブ!・青空の涙”の二曲かな」


真美
「……」タン、クルクル、スウッ


律子
「なるほど。カバー曲もありますけど、どれもテンポの良い曲ですね」



「どこに入れるかは考えてる最中だけど、ポジティブは前座で使おうと思ってる」


律子
「……分かりました。それでは順番が決まり次第、改めて私に提出して下さい」



「そうさせてもらうよ」


伊織
「話し合いはもう終わった?」



「あぁ。そっちもクールダウンは済んだみたいだな」


伊織
「そんなのとっくに終わってるわ。律子、帰るわよ」


律子
「その前に挨拶くらいはしなさい」


伊織
「イヤよ。そんなことするくらいなら一人で帰るわ」


律子
「伊織!」


伊織
「フン」


真美
「良いよ別に」


律子
「いや、でも……」


伊織
「本人が良いって言ってるんだから早く帰るわよ」


真美
「……」


あずさ
「えっと……、それじゃ私たち帰るわね。真美ちゃん、また明日」


亜美
「ばいばい」


律子
「すいません。帰ったらちゃんと言い聞かせます」



「伊織も意固地になってるだけだろうから、律子は気にしないでくれ」


律子
「だと良いんですけど……」



「それじゃ俺は真美を家に送るんで、そのまま直帰すると小鳥さんに伝えてくれないか?」


律子
「えぇ、分かりました」


伊織
「早く来なさいよ律子! アンタが来ないと帰れないでしょ!」



「呼ばれてるぞ?」


律子
「すいません。それじゃお先に失礼します」


――パタン。



「……よく我慢したな」


真美
「白ちゃんが止めたからね」



「そうだったな。自分で言っておいてアレだけど、途中からあの態度にムカついて仕方がなかったぞ?」


真美
「完全に真美たちのことを敵だと思ってるってことでしょ」



「敵ねぇ……。ところで、もう踊れるようになったのか?」


真美
「それって“どっち”のこと言ってるの?」



「どっちもだ」


真美
「真美は一応できたよ。……でも“あっち”は、もう少し時間が欲しいかな」



「まぁ、こればっかりは練習しないとなぁ……。とりあえず今日も行くか?」


真美
「うん」


――

今日はここまでにします。

>>93さん。
OVER DRIVE という漫画で見つけた知識でしたが、息吹とは知りませんでした。

>>94さん。
見てくださってありがとうございます。面白いと言われるのが何よりの励みになります。

>>95さん。
アレは流石は反省してます……。

投下乙



一ヵ月後  



「ついにこの日がきたな……。緊張はしてないか?」


真美
「ぜんぜん。むしろ楽しみで仕方が無いって感じ?」



「おっ! なんか今日の真美は頼もしいな」


真美
「んっふっふ~。自分でも一回り大きくなった感じだよ」



「自信があるのは良いことだが、油断だけはするなよ。あくまで勝敗を決めるのは観客だ」


真美
「分かってるよ。真美たちはチャレンジャーなんでしょ?」



「あぁ。ちゃんと分かってるみたいだな」


真美
「当たり前っしょ」



「とりあえず……9時か。ライブ開始が14時からだから昼食を挟んでも4時間くらい余裕があるな」


真美
「ねぇ、白ちゃん。なんでこんなに早く来たの?」



「ダンスの確認以外にもライトを当てるタイミングとか、やることがたくさんあるんだよ」


真美
「へー、白ちゃんも大変なんだね」



「他人事だと思いやがって。コッチはお前を勝たせる為にやってるんだぞ?」


真美
「うん。ありがとね、白ちゃん」



「……」


真美
「どうしたの?」



「いや……、お前が素直だと気持ちが悪いな」


真美
「チョ→ひどいんですけど!」


――



照明係
「ライトアップのタイミングなんですけど……」



「それは……でお願いします」


ディレクター
「ここは……ですか?」



「いえ、ここは……で……という感じでお願いします」


真美
「白ちゃん、まだーー?」



「もう終わりだー! その前にテストするから最初っから踊ってくれー!」


真美
「りょーかいー!」


~♬~♪~♫~


真美
「……♪」タンッキュッキュッ



――ダンッ。シュー。パッ


~♫~♬♪


真美
「……ふぅ」



「オッケー! テスト確認できたから休んでて良いぞー!」


真美
「分かったー!」


――




「朝から疲れさせて悪いな」


真美
「も→まんたい。だから気にしないで良いよ」



「そう言ってくれると助かる。ところでお前、途中から出てくるのが遅かったな。どうしたんだ?」


真美
「う~ん。実は着替えるのが手間取っちゃって」



「あぁ、だからか。じゃあ、その時は俺も手伝おうか?」


真美
「それはさすがに……。恥ずかしいっていうかなんと言うか……」



「?」


真美
「とにかく! 着替えは一人でやるから白ちゃんは必要なし!」



「一人でやって失敗したヤツがなに意地になってんだよ」


真美
「うっ……」



「とりあえず女性スタッフを待機させとくから、ヤバそうになったら手伝ってもらえ。分かったな?」


真美
「はーい」


――コンコン



「どうぞー」


伊織
「アンタたち声が大きすぎるのよ。外まで聞こえたわよ」ガチャッ


律子
「こら、伊織!」


亜美
「こんにちわ→!」


あずさ
「真美ちゃん、白さん。こんにちわ」



「皆もう揃ってたのか。挨拶に行けなくて悪いな」


律子
「いえ、コチラも来る時間が遅かったんですから気にしないで下さい」


伊織
「フン。バカ騒ぎして来るの忘れてたんでしょ? ずいぶん余裕じゃない」


真美
「むしろそっちは余裕なさそ→だね」


伊織
「なんですって?」


律子
「ほらほら口ケンカしないの! 挨拶は済んだんだし、もう自分たちの楽屋に戻るわよ」


伊織
「フン。分かってるわよ。せいぜい無様に散りなさい」


――バンッ!



「おい、真美……」


真美
「分かってる。……もう、良いんだよね?」



「思いっきり暴れてこい!」


真美
「うん! 今日で真美の方が上だってショーメイしてやるんだから!」



「その意気だ!」


真美
「勝つよ! 白ちゃん!」



「あぁ! 後ろは任せな!」


――



――『長らくお待たせしました。これより竜宮小町・双海真美によるライブイベントを開催します』




――ウォオオオオ! パチパチパチパチ!




高木
「ぉお! 始まったよ善澤君!」


善澤
「そうみたいだね」


高木
「今回も頼むよ! 彼女たちの魅力を余すことなく記事にしてくれ!」


善澤
「このライブはあの876プロの彼が企画したものだったかな? どんなステージになるか楽しみで仕方が無いよ」


――



伊織
『みんなー! 今日は楽しんでいってねー!』


亜美
『今日は亜美たちもホンキで踊っちゃうんだから!』


あずさ
『三浦あずさ、頑張りま~す!』


真美
『それじゃ最初は真美から! いッくよ→! ポジティブ!』




~♪♬~♬




真美
『悩んでもしかたがない』


――イェーイ!


真美
『ま、そんな時もあるさ あしたは違うさ』


~♫♬~♪~♬


――WOW WOW!!


真美
『悩んでもしかたがない。ま、そんな時もあるさ あしたがあるさ』


真美
『ググってもしかたがない。迷わずに進めよ 行けばわかるのさ!』


――ウォォオオオ!!!


――




「前座お疲れさま。ステージの感じはどうだ?」


真美
「ん~、まあまあかな」



「なら良いや。この後は竜宮小町と一緒にトークする予定だけど……、ちゃんとネタ考えてきたか?」


真美
「バッチシ!」



「OK。ムカついてもステージの上だけは笑顔だぞ?」


真美
「分かってるよ」


――ワァアアアアアア!!!



「……出てきたな」


真美
「そんじゃ行ってきま→す!」


――



亜美
『みんな→! 盛り上がってる~~?』


――ォオオオオオオ!!!


亜美
『良いね→良いね→。ノリの良い兄ちゃんは大好きだよ→!』


あずさ
『あらあら、亜美ちゃんったら』


――あずさサーン! 結婚シテクダサーイ!


あずさ
「あら~? どこかで見たことがあるような~」


伊織
「というかあの外国人、隣の女に蹴られまくってるわよ」


真美
『ねぇねぇ亜美。久々に“アレ”やろうよ!』


亜美
『おっ、良いね!』


――『?』


亜美
『んっふっふ~。みんな不思議そうな顔してるね~』


真美
『今から真美たちがシャッフルするから、どっちが亜美か真美かを選んでね!』


亜美
『じゃあ兄ちゃんたち、最初は亜美を当ててね!』


真美
『いっくよ→!』


亜美・真美
『どっちが亜→美だ?』


――『ひだりー!!』


亜美
『正解! コレはちょっと簡単すぎたかな~?』


真美
『それじゃ次から同じ髪型にするからちょっと難しくなるよ!』


亜美
『いくよ→真美!』


真美
『OK!』


真美・亜美
『せーの!』


亜美・真美
『どっちが亜→美だ!』


――『みぎー!!』


亜美
「ざん――」


真美
『正解ッ! さっすが亜美のファンだね!』


亜美
(えっ!?)


真美
『それじゃ次は真美を当ててね! いくよ→!』


亜美
「ど……」


真美
「せーの!」


亜美・真美
『どっちが真→美だ!』


――『みぎー!!』


真美
『またまた正解ッ! みんな、なかなかやるね~。じゃあもう一回! って言いたいところだけど、みんなそろそろ亜美たちの歌が聞きたいって顔してるね→』


あずさ
『それじゃあリクエストにお答えして』


伊織
『いくわよーッ!』


亜美
『やっぱ竜宮小町といえばコレっしょ!』


真美
『一曲目!』


『SMOKY THRILL !!』


――ワァアオオオオ!!!


――





「ナイスフォロー。よくやった真美」


真美
「いや~、アレはさすがにビックリしたよ→。みんなホントに亜美のファンなの?」



「さぁ? ファンといっても竜宮小町のメンバーそれぞれにいるんだから仕方が無いんじゃないか?」


真美
「そんなもんかな?」



「そんなもんだ。ほら、喋るのも良いが早く着替えろ。この後はお前の曲だろ?」


真美
「そうだけどさ……。白ちゃん、女性スタッフは?」



「いない。確認したらスタッフは男しかいないって」


真美
「そ、そんな~~!」



「という訳で俺が手伝うことになった」


真美
「なら一人でやるよ!」



「後ろのヒモ縛れるのか?」


真美
「そ、それは……」



「諦めろ。現実はいつだって非情だ」


――



――キュッ。



「良し。終わったぞ」


真美
「解けない?」



「俺しか解けない」


真美
「それじゃ、また白ちゃんに身体を触られちゃうの?」



「あぁ。それで恥ずかしくなってまた顔が紅くなってくんだろうな」


真美
「ッ!?」



「なかなか可愛い顔だったぞ?」


真美
「し、白ちゃん!」



「悪い悪い。それはそうと髪留め外しても良いか?」


真美
「なんで?」



「なんとなくだけど、そっちの方が似合ってるかなって」


真美
「……痛くしないでね?」



「はいはい」


――さわっ


真美
「ぁっ……」



「……ほら、取れたぞ」


真美
「……」ボー



「どうした?」


真美
「な、なんでもない。というか白ちゃんリアクションが薄いYO→!」



「生まれつきこうなんだから気にするな」


――ワァアアアア!!!



「丁度良いタイミングだ。真美、準備は良いか?」


真美
「バッチシ!」



「良しッ! 行ってこい!」


――



真美
『みんな盛り上がってるね→!』


――イェェエイ!!!


真美
『それじゃ次は真美の曲だよ→! みんな聞いたことあるかな~? 青空のナミダ!』


――ォオオオオオオオオ!!!


~♬♫♬~♪~♬♪♫


真美
『悲しみの中に、勇気がある。輝きつかむと、信じてる』


真美
『降りしきるー、青空のナミダ。いつの日にかー、笑顔に変えるよ!』


――ォオオオオオオオオ!!!


真美
『みんなありがと→!』


真美
『次は竜宮小町と一緒に“自分REST@RT”を歌うよ→! みんな応援してねーー!!』


――



ォオオオオオオオオオオオオオオ!!!


亜美
『いくよーーーー!!!』


ウォオオオ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!!


伊織
『昨日までの生き方を否定するだけじゃなくて』


ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!


あずさ
『これから進む道が見えてきた』


ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! 

Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑





~♫♬~♪~♬




真美
『輝いたステージに立てば』


Foooooooooooooooooooooooo!!! フゥッフゥ!!


伊織
『最高の気分を味わえる』


ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! 


亜美
『全てが報われる瞬間。いつまでも続け』


Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑

ハイッ! ハイッ! ハイッ! フゥッフゥ!! ハイッ! ハイッ! ハイッ! フゥッフゥ!!


あずさ
『夢なら覚めないで』


ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!


真美
『いーてッ!』


ウォオオ!! ハイッハイッハイッハイッ!!


――





――大空を~飛ぶ鳥のように~


『ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑』





「ここまでは順調……」



(真美も竜宮小町も曲はもう使い切ったし、後はこの曲が終るのを待つだけだな)


――「……おい」



「あぁ、悪い。そろそろ準備するか」


――



亜美
『どんなに遠くても行こう』


Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑ Fo‐↑ ハイッ! ハイッ! ハイッ! フゥッフゥ!


あずさ
『あこがれの世界』


ハイッ! ハイッ! ハイッ! フゥッフゥ!


真美
『夢だけでは』


ハイッ! ハイッ! ハイッ!


伊織
『終らせたくない』


YEEEEEEAAAAAAHHHHHH!!!!


亜美
『みんなありがとーー!!』


――

ちょっと休憩。残りは7、8時くらいに



律子
「みんなお疲れさま」


亜美
「ねぇ、律っちゃん。ライブってこれで終わり?」


律子
「そのはずだけど……」


伊織
「結局アイツらなにも仕掛けてこなかったわね」


律子
「えぇ。なにか仕掛けてくるとは思ってたけど、意外だったわ」


伊織
「フン。遊び人にはこれが限――」






――バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!






亜美
「え!? なになに!?」


伊織
「て、停電!?」


律子
「と、とりあえず落ち着きなさい! ライブはもう終ったんだから!」


伊織
「そ、そうね」




――バンッ!




亜美
「あ、直ったみた――」






真美
「……」






亜美
「って真美!? まだステージにいたの!?」


律子
(衣装が……変わってる?)








~♫♬~♪~♬


真美
『 ねぇ 消えてしまっても探してくれますか? 』








あずさ
「え?」


伊織
「これって美希の……」


律子
「……マリオネットの心?」


亜美
「ねぇ律っちゃん! どういうことなの!? ライブは終わったんじゃなかったの!?」


律子
「し、知らないわよ!」








♪~♬~♫♬~♪~♬


真美
『 きっと忙しくて メール打てないのね 』


真美
『 寂しい時には 夜空 見つめる 』


真美
『 もっと振り向いてほしい 昔みたいに 』


真美
『 素直に 言いたくなるの 』




~♬♫~♪♬~♫








亜美
「ねぇ! 真美、このまま歌い続けるみたいだよ!」


律子
「どういうことなの……? ステージの雰囲気を壊してまで何がしたいのよ」







真美
『 ZUKI ZUKI ZUKI 痛い 』


真美
『 DOKI DOKI DOKI 鼓動が身体 伝わる 』


真美
『 踏み出したら 失いそうでできない 』




――ダンッ!


北斗
「……」


――ダンッ!


翔太
「……」


――ダンッ!


冬馬
「……」


~♫♬~♪~♬


――ワァアアアアアアアアア!!!!!




真美
『 ねぇ忘れるフリすれば会ってくれますか?』


真美
『 待ち続ける 私マリオネット!』








亜美
「ジュ、ジュピター~~~~ッ!!?」


あずさ
「ど、どういうことなの!?」


伊織
「なにが……どうなってるの!?」


律子
(観客が驚いてない? ……まさか!?)


律子
「やってくれたわね……」


伊織
「律子! どういうことなの!?」


律子
「真美とジュピターを見て分からない? あのコンビネーションは一日そこらで出来るものじゃないわ!」


あずさ
「た、確かにそうね……」


律子
「それに、観客がまったくと言って良いほど驚いてないのよ。……つまり……」


伊織
「つまり……?」


律子
「……私たちはプロデューサー殿に騙されてたってことね」


亜美
「ぇえっ!? じゃ、じゃあ真美が遊んでたのも全部!?」


律子
「えぇ。きっとプロデューサー殿は、ここまで計算して伊織たちを挑発したんだわ」


伊織
「そんな……。じゃあ私たちはあの白髪の掌で踊ってただけっていうの……?」






真美・ジュピター
『 貴方に気持ち届かない Ah もどかしい 』


真美
『 ほらね 涙 ひと粒も出ない 』


真美・ジュピター
『 心が こわれそうだよー! 』






亜美
「ねぇ律っちゃん! ステージで踊ってるのホントに真美なの!? これじゃまるで、ミキミキだよ!」


律子
「……むしろ美希よりもタチが悪いわよ」


亜美
「え!?」


律子
「よく見てみなさい」








真美
『 切れそうになった糸は もう戻らないよ 』


真美
『 だけど勇気なくて 認めないの 』


真美
『 すでに醒めてしまった、ことーー!! 』




~♫~♪♬~♬


ジュピター
「……」




真美
「――ッ♪」タン、タタタン。ッタタン、ンッタタン。キュッ








あずさ
「真美ちゃんのソロだけど、……あ、あれって……」


亜美
「タップダンス!!?」


律子
「それも本来のダンスにアレンジを加えたオリジナル……」


伊織
「動きが変則的すぎるでしょ! あれじゃ本当に操り人形じゃない!」


律子
「マネだけじゃなくて完全に自分のモノにしてるってことみたいね……」


伊織
「くっ。あんな動き、真や響だってできないのに……。フリースタイルもいい加減にしなさいよ……」








~♪♫♬~


――タン、タン、タンッ!


真美
『 ねぇ まだ私のこと見つめてくれますか? 』


翔太
『 なにもできない 』


冬馬
『 それが 』


真美
『 マリオネット! 』


真美・ジュピター
『 貴方に気持ち届かない Ah もどかしい』


真美
『 ほらね 涙 ひと粒も出ない 』


真美
『 心が こわれそうッ、だよーーー!!』



~♪♬~♫♬~♪~♬


ジュピター
「……」ハァ、ハァ、ハァ


真美
「……」フーゥ、スーゥ


――



あずさ
「これが……真美ちゃんの……実力……?」


亜美
「ウソだよ……。こんなのウソだよ! だって真美、ずっと遊んでたじゃん! レッスンの時だって適当だったんでしょ!? こんなのオカシイよ!」


伊織
「私は認めない。認められるわけないでしょこんなの!!」


律子
「私だって悔しいわよ。……だけど認めなさい。この勝負……私たちの――」














『 ウォオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
 ワァアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! 』














律子
「――負けよ……」


――



真美
「白ちゃん! 白ちゃん! どうだった真美のステージ!?」



「あぁ、最高だったぞ! 歓声なんか独り占めだったじゃないか」


真美
「凄かったよね! 真美もチョ→気持ちよかったもん!」



「興奮冷め止まないって感じだな」


真美
「そりゃそうだよ! だって……だって……! ホントに勝っちゃったんだよ!!」



「ふふっ。気持ち良いくらいに圧勝だったぞ」


真美
「ジュピターのお陰じゃないよね?」



「違う。お前が実力で勝ち取ったんだ」


真美
「夢じゃないよね……? 白ちゃん、ちょっと抓って」



「ほれ」ギュウッ


真美
「いふぁい」



「ほれほれ」


真美
「いふぁい! いふぁいってほぁ!」



「ん~? なに言ってるか分からないな」


真美
「あわ~~ッ! シホひゃんのドえひゅ~~ッ!」



「はははっ」


――



――ワィワイ、ガャガヤ


律子
「ほら、行くわよ」


伊織
「……」


――コンコン。



「どうぞ」



律子
「……失礼します」


伊織
「おジャマするわ」


あずさ
「失礼します~」


真美
「あ、みんなおつかれ~。どうしたの?」


律子
「謝りに来たのよ。……その……、あの時は可哀想なんて言ってごめんなさい」


真美
「もう気にしてないって」


律子
「でも、真美を傷つけちゃったのは事実だから」


真美
「確かにあの時はグサッときたけど、そんなの今日のライブで忘れちゃったよ! だから律っちゃんも気にしないで」


律子
「……ありがとね、真美」


伊織
「私もキツイこと言って、わ、悪かったわ」


真美
「もう、いおりんも気にしなくて良いってば→」


伊織
「そう言ってくれると助かるわ。まぁ……、アンタも頑張ってたみたいね」


真美
「んっふっふ~。そうでしょ。そうでしょ」


伊織
「それよりもタップダンスなんていつの間に練習してたのよ」


真美
「ん~、ダンレボやってたらできた」


伊織
「はぁ~~ッ!?」


真美
「なんかさ→、スピードが速すぎてもう軽く踏むだけで良いやって考えたら、あんな感じになったんだよね→」


伊織
「じゃ、じゃあ、あの変則的な動きはなんなのよ!」


真美
「変則的? ……あぁ、スケートのこと?」


伊織
「スケート?」


真美
「うん。白ちゃんが言うには、あくまでイメージを掴むためにやってたんだけど……。なんかできた」


伊織
「ハァアア!? ってことはホントに高が遊びであの動きを身に着けたっていうの!?」


真美
「アレってそんな凄いことなの?」


伊織
「当たり前じゃない! やろうとしてできるものじゃないのよ!?」


真美
「ほほぅ。つまり知らない間にレベルアップしてたみたいですな→」


伊織
「はぁ。にわかに信じられないわね……」


真美
「ねぇ、白ちゃん! 真美、いつの間にかレベルアップしてたみたいだよ→!」



「そうなのか?」


真美
「んっふっふ~。真美のレベルはどれくらいだと思う→?」



「ん~、そうだな……。レッドのピカチュウくらいか?」


真美
「分かり辛いよ!」


――

ここまでにします。
来週の土曜日は来れなくなりました。ごめんなさい。

おつ
さっきまで前作読みふけってた

おつ!
色々気になることは有るけどきっと作者が全てを明らかにしてくれるだろうから終わるまで聞くのはやめとくよ
すごく面白いので頑張って書き終えてくれると嬉しい

何か上から目線な感じのレスになってしまって申し訳ない・・・

おつ
愛ちゃんは絡んでくるかな

乙!

真美かわいいなあ






『ウォオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
ワァアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』




高木
「なぜ……真美君とジュピターが組んでいるんだ!? 私はなにも聞いてないぞ!!」


――「フハハハハッ。無様だな、高木」


高木
「黒井!」


黒井
「久しぶりだな、高木」


高木
「これは一体どういうことだ!」


黒井
「フン。そんなもの、貴様の飼い犬に聞けば良いだろう」


高木
「なに?」


黒井
「クックック。やはりなにも聞いていないようだな」


高木
「……彼とはどういう繋がりだ?」


黒井
「それが人にものを頼む態度なのか、貴様は?」


高木
「ぐっ……」


黒井
「フン、まぁ良い。今日の私は気分が良いから話してやろう。これまでの経緯をな」


――



Prrr。Prrr。Prrr。


黒井
「なんだ?」


秘書
『お忙しいところ失礼します。社長と連絡を取りたいという方がいるのですが』


黒井
「繋げ」


秘書
『かしこまりました』


Prrr。


黒井
「黒井だ」



『……お久しぶりですね。黒井社長』



黒井
「誰だ?」



『分からないですか? まぁ、一度お会いしただけなので仕方が無いといえば仕方が無いですね』



黒井
「私は誰だと聞いている」



『……日高愛のプロデューサーと言えば分かりますか?』



黒井
「日高愛? ……あの時の小僧か」



『思い出して頂いて幸いです。IAではお世話になりました』


黒井
「皮肉にしか聞こえんな。それで、こんな時間に私になんの用だ?」



『黒井社長の力をお借りしようと思いましてご連絡させて頂きました』


黒井
「私の? いまいち主旨が分からんな」



『単刀直入に言いますと、……ジュピターを貸して下さい』


黒井
「貴様……、冗談にしては笑えないぞ?」



『至ってマジメです』


黒井
「ふざけるな! どこの世界に事務所の看板アイドルを貸せなどと世迷言を吐くプロデューサーがいるのだ!」



『ここにいますね』


黒井
「少しは骨のある人間だと思っていたが、貴様には失望したぞ」



『まぁ待って下さい。なにも無条件で貸せなんて言わないですよ』


黒井
「貴様がどんな条件を出そうがジュピターは貸さん!」



『私が765プロダクションの人間だとしてもですか?』


黒井
「……なんだと?」



『私が765プロダクションの人間だとしても話を聞くには至らないですか? と言ったんです』


黒井
「どういうことだ? 貴様は876プロの人間だろう?」



『追い出されましたよ。日高愛の事件……、黒井社長もご存知でしょう?』


黒井
「……なるほど。やはり黒幕は貴様だったのか」



『えぇ。お陰で死に際まで追い込まれてしまいました』


黒井
「その死に損ないがなぜ765プロにいるのだ?」



『石川社長のご好意で移籍することになったんです』


黒井
「つまり厄介払いという訳か」



『ははっ、相変わらず辛辣な返し方ですね』


黒井
「フン。貴様が765プロにいる経緯は分かった。だが、なぜジュピターを貸してほしいのだ?」



『実は三ヶ月後に私が企画したライブがあるのですが、そこで竜宮小町を出演させる予定なんです』


黒井
「うむ」



『なので竜宮小町を利用して担当してるアイドルを上位ランクまで食い込ませようと考えました。ジュピターはその為の布石に過ぎません』


黒井
「上位ランクに? 確か765プロのアイドルはほとんどがAランク以上だったハズだが?」



『いいえ、一人だけいるじゃないですか。そのアイドルが私の担当ですよ』


黒井
「……双海真美か」



『えぇ。さすが黒井社長。ご明察です』


黒井
「日高愛といい双海真美といい。貴様は一癖あるアイドルを育てるのが趣味のようだな」



『そういう人間は最後に勝ちますからね』


黒井
「フン。それで? 貴様に貸したところで私になんのメリットがある?」



『……“高木社長の驚愕する顔が特等席で見れる”って言うのはどうです?』


黒井
「……」



『お気に召しませんか?』


黒井
「……クフッ。……クックック! フハハハハハハハハハ!!」


黒井
「貴様というヤツは、自分の上司ですらも貶めるというのか!」



『利用できるものを利用するだけですよ』


黒井
「ハハハハッ!! これほど愉快な気分は久しぶりだ! やはり貴様はおもしろいヤツだ!」



『お気に召して頂けたようでなによりです』


黒井
「良いだろう! 貴様の思惑に乗ってやる! ジュピターでもなんでも好きに使え!」



『ありがとうございます、黒井社長』


黒井
「だが負けることは許さない! 私の名に傷を付けるようなマネをすれば貴様の首を取りに行くぞ!」



『残念ながら負ける自信がありませんね』


黒井
「フン、大した自信だな。貴様のような人間が765プロにいることが不思議で仕方が無い」



『それはどうも』


黒井
「あんなぬるい事務所を捨てて私のところに来たらどうだ? 金は好きなだけくれてやる」



『……黒井社長、少し勘違いしてませんか?』


黒井
「なに?」



『俺は金じゃ動きませんよ。それに――』


黒井
「……」



『 飼い犬にだって主人を選ぶ権利はあるでしょう? 』


黒井
「……フハハハハッハ!!! プロデューサー風情が自分の上に立つ人間を選ぶか! 気に入った! 気に入ったぞ狂犬!」


黒井
「今回は利用されるだけにしておこう。だが覚えておけ! 貴様を飼いならすのはこの黒井崇男だ! それを忘れるな!」


――



高木
「なんと……彼がそんなことを……」


黒井
「フハハハ。利用されるのは癪だが、確かに貴様の無様な姿が見れたことには感謝しないといけまい」


高木
「なにを考えてるんだ彼は。ジュピターを使ってまで勝つ意味などないだろうに……」


黒井
「相変わらず貴様は甘ちゃんだな」


高木
「なんだと?」


黒井
「勝つ為に利用してなにが悪い。騙してなにが悪い。私から言わせれば騙される方が悪いのだ」


高木
「……私は信頼することが全てだと思っている。それは今でも変わらない」


黒井
「戯言だな。貴様らも小僧を見習ったらどうだ?」


高木
「自分と似ているからと言って彼を引き込むのは止めろ。私は彼を君のようにするつもりはない」


黒井
「フン。あの小僧は貴様らには勿体無いくらいの逸材だ。せいぜい噛まれないように気をつけるんだな」


高木
(……まさかここまでとは。……石川め、とんでもないのを寄こしてきたな)


――

長くなりそうなので、少し休憩

超楽しみにしてた




「おはようございます」


赤羽根
「おはようP。今日は真美と一緒じゃないのか?」



「えぇ。本人から昨日の疲れがあると言われたので休みにしました。なので今日はほとんど先輩のサポートになると思います」


赤羽根
「そっか。いつも真美のプロデュースしながら俺の方まで手伝ってもらって悪いな」



「それが仕事ですから」


赤羽根
「じゃあお言葉に甘えて……“春香”と“やよい”、それと“響”を頼む」



「三人だけで良いんですか?」


赤羽根
「あぁ。他は俺が見て回るから大丈夫だ」



「分かりました」


赤羽根
「春香の相手はちょっとキツイかもしれないけど、お互い頑張ろうな!」



(どういうことだ?)


――



高木
「おや? P君はいないのかね?」


小鳥
「はい。今日は早くから春香ちゃんたちの付き添いに出かけましたよ」


高木
「そうか……」


小鳥
「なにかプロデューサーさんにご用時があるのでしたら、私から伝えますけど?」


高木
「いや、いい。私は社長室にいるから、彼が帰ってきたら教えてくれ」


小鳥
「……? 分かりました」


――




「さて、春香の様子は……」


――ごめんなさい!



「?」



ディレクター
「だから謝られても困るんだ。あ~あ~、これじゃ仕事にならないよ」



「どうかしたんですか?」


ディレクター
「ん? アンタは876プロの……」



「今は765プロダクションのプロデューサーです。まぁ、私のことは赤羽根の代理だと思って下さい」


ディレクター
「あぁ、そうなの?」



「それで、どうしたんですか?」


ディレクター
「見れば分かるだろ」



「……キレイにカメラの電線が切れてますね。誰がこんなことを……」


ディレクター
「お宅のアイドルが引っ掛けて壊しやがったんだよ。ったく、Sランクだかなんだか分かんないけど、こういうことされるとコッチも困るってことが分かんねぇのかな」



(……先輩が言ってた意味ってこういうことか)


春香
「……ごめんなさい」



「いや、気にしなくて大丈夫。それよりもケガとかなかったか?」


春香
「はい、なんとか……」


ディレクター
「Pさん。雑談も良いけど、コッチは仕事できなくて困ってるんだ。どうするつもりだよ」



「そうですね……。とりあえずラジオペンチ。それにビニールテープあります?」


ディレクター
「そんなもん何に使うんだ?」



「まぁ見ててください」


ディレクター
「?」


――




「――これで良し」ペタペタ



「どうです? 写りました?」


ディレクター
「おぉお! ホントに写ってやがる!」



「なら良かった。あくまで応急処置なので早めに修理代金を請求してくださいね」


春香
「あの……、白さん。ご迷惑かけてすみませんでした……」



「別に気にしなくて良い。それよりも春香、お前すごいな」


春香
「?」



「どうやったら転んで電線が切れるんだよ」


春香
「いや、それは……、ちょっと油断したというか……」



「しかも切れ口が凄くキレイなんだよな。もしかして靴にカッターでも仕込んでるのか?」


春香
「そんなことするわけないじゃないですか!」



「あー、俺も転ぶとこ見たかったなー。ちょっと転んでくれない?」


春香
「私がドジだからってバカにしてるんですか!?」



「ははっ、良い感じだな。じゃあ、その調子で撮影の方もよろしく」


春香
「あ……。もしかして励ましてくれたんですか?」



「さぁ?」


カメラマン
「撮影準備できましたー!」



「ほら、始まるってよ。さっきの感じなら大丈夫だろ?」


春香
「ふふっ、ありがとうございました」


――




「さて次は……」


やよい
「白さん」



「やよい?」


やよい
「あの、今日の番組なんですけど、食材がお肉なんです」



「それがどうかしたのか?」


やよい
「実は……、お肉をあまり使わないのでみんなが使えそうなアイディアがないんです……」



「ちなみにお肉ってどんなの?」


やよい
「あれです」



「……骨付きか。ならスペアリブの紅茶煮ってのはどうだ?」


やよい
「すぺありぶ?」



「あぁ。アレって煮込んでるうちに硬くなって骨から剥がれ難くなるだろ?」


やよい
「う~。食べたことも作ったこともないんで分からないです……」



「あ、悪い……。まぁ、その場凌ぎだと思って聞いてくれ」


やよい
「わかりました」



「さっきも言ったけど、お肉って煮込むうちに硬くなるんだよ」


やよい
「確かに! この前カレーつくった時もお肉が硬くなって食べづらかったです!」



「だろ? だから紅茶と一緒に煮込むことでお肉を柔らかくするんだ」


やよい
「へー、紅茶ってそんな効果があったんですね」



「ちなみに紅茶の茶葉には強い消臭効果もあるから、適当な容器に入れて冷蔵庫にでも入れておけば臭いが無くなるぞ?」


やよい
「白さんすごい! 今日の“さしすせそ”はコレで決まりです!」



「なんとかなったようで良かったよ。それじゃ収録がんばってな」


やよい
「はい!」


――




「最後は響だな」


――ギャゥッ!? ジュギェロォオオ!!



「嫌な予感……」


――バゥ!? ガゥォオオ!! シャーッ!  



「白ちゃん……」



「……どうした?」



「なんか白ちゃんが来てからみんな逃げ出しちゃったぞ……」



「……」


ディレクター
「辛いようだけど、収録にならないから帰ってくれる?」



「……はい」



「……ごめんね?」



「頼むから謝らないでくれ。……惨めになる……」


――




「ただいま戻りました」


小鳥
「あ、プロデューサーさんお帰りなさい。今朝、社長が呼んでましたよ?」



「高木社長が?」


小鳥
「えぇ。なにか神妙な顔つきだったので、とても重要なことなんじゃないですか?」



「……なるほど。それで、高木社長はどちらに?」


小鳥
「たぶんまだ社長室にいつと思います」



「分かりました。教えてくれてありがとうございます」


――



――コンコン


高木
「入りたまえ」



「失礼します」


高木
「……なぜ君が呼ばれたか分かるかい?」



「いいえ。正直さっぱり分かりません」


高木
「……先日のライブのことだ。美希君の曲をジュピターと真美君、一緒に歌わせたそうだね?」



「えぇ、それがなにか?」


高木
「なぜジュピターを使った?」



「勝たせる為。それ以外に理由はありません」


高木
「そうか……。君に他意がないのならそれで良い。だが、今後は彼らと関わりを持つのは止めてくれないか?」



「なぜです?」


高木
「我が765プロダクションと黒井が率いる961プロダクションは敵対関係だ。それは君も知っているだろう?」



「えぇ。律子から伺っています」


高木
「なら話は早い。今後一切961プロと接触をしないでくれ。いいね?」



「……」


高木
「無言か……。なら私も言い方を変えるとしよう」



「……」


高木
「“私の方針に従えないのなら直ちに去りたまえ”」



「……ハァ。……分かりましたよ」


高木
「よろしい」



「俺の話はそれで終わりですか?」


高木
「あぁ、呼び止めて悪かったね。それでは仕事に戻ってくれ」



「そういう訳にはいきません。次は俺の番です」


高木
「……なにか私に言いたいことでも?」



「えぇ、律子の責任問題についてです」


高木
「それについては私が考えることだ。君には関係ない」



「こっちはジュピターという痛手を被っているんですよ? 注意や減給なんて生ぬるい責任の取らせ方ではコチラの気が済みません」


高木
「……なにが言いたいんだね?」



「竜宮小町を貸してもらおうかと考えています」


高木
「なにッ!?」



「俺がジュピターと手を組んだのは、これまでの真美のイメージを払拭させる意味もありました。なら、その代役として竜宮小町を要求するのは当たり前のことです」


高木
「……しかし、それでは律子君があまりに痛手だ」



「なら……、これからも真美に日陰者でいさせるつもりですか?」


高木
「いや、そんなつもりは……」



「それでは社長、ご決断してください。……真美か。……それとも律子たちか」


高木
「ぬ、ぬぅ………」



「なにを悩んでいるんですか? 少しの間だけ貸すだけ。それだけで良いんですよ」


高木
「だが、一ヶ月も律子君から離すというのは酷というものではないか?」



「なにもずっと一緒にさせるつもりはありません。PVやコンサートなどで引き立て役になってもらうだけで良いんです」


高木
「それは……、彼女たちに真美君のピエロを演じろと言ってるようなものだ」



「えぇ。ハッキリ言えばそうです」


高木
「……」



「竜宮小町はあくまでイメージ戦略の要員です。役目が終わればキチンと返しますよ」


高木
「そうは言っても……」



「なら真美を日陰に戻しますか? やっと同じステージに立とうとしてる真美を、竜宮小町の方が大事だと言って突き落としますか?」


高木
「そんなことは言っていないだろう!」



「確かにそうですね。ですが高木社長、……“選ばない”ということは同じ意味なんですよ?」


高木
「ぐっ……」



「さぁ、選んで下さい。真美を選んで、律子たちに苦汁を舐めさせるか。竜宮小町を選んで、また真美を悲しませることになるか……」


高木
「そ、それは……」



「さぁ……、どっちなんですか?」ニヤァ


――

ここまでにします。長くなりそうだと思いましたが、そうでもありませんでした。すいません。


悪いやっちゃで

こういう駆け引き出来るPは好きやで



真美
「おはよ→!」



「おはよう。身体の疲れは取れたのか?」


真美
「モチ! もう完全復活って感じだよ!」



「そっか、なら良かった。それよりも真美……」


真美
「うん? なになに?」



「お前、髪留めのゴム付け忘れてるぞ?」


真美
「やはりそこに気づくとは天才か……」



「アホなこと言ってないでさっさと付けてこい」


真美
「え~、せっかく頑張ってイメチェンしたのに→」



「イメチェンだったのか?」


真美
「んっふっふ~。どう? ちょっと大人っぽいっしょ?」



「そうだなー」


真美
「うゎ、テキトー……。そういうの地味に傷つくんですけど」



「いや、似合ってるよ?」


真美
「えっ?」



「さっき声かけられた時なんか見違えるくらいに雰囲気が変わって驚いたぞ。前の髪型も子供らしくて良かったけど、こういうアダルトな魅力を出す真美も良いな」


真美
「ホ、ホントに? ウソじゃないよね?」



「こんなことでウソついてどうするんだよ」


真美
「……ウソじゃないんだ。……んっふっふ~♪」



「なんか嬉しそうだな」


真美
「まぁね♪」



「ふーん。ところで今後もその髪型にするのか?」


真美
「うん! 良いでしょ?」



「別に良いけど、次から声をかけてくれよ」


真美
「は→い♪」


――

きてた




「それじゃ、今日のスケジュールを確認するぞ。と言っても手帳に書いてある通りだからわざわざ言わなくていいか」


真美
「そうだね! だから早く行こうよ!」



「テンション高いな。そんなにこの歌番組に出たかったのか? それともPV撮影の方か?」


真美
「違うよ! 真美が楽しみなのはその後!」



「その後って……ティスニーランドでのリポートのことか?」


真美
「当ったり前じゃん! それ以外になにがあるっていうのさ!」



「楽しみにしてるのは良いけど、仕事だからな? 遊びに行くんじゃないからな?」


真美
「分かってるって! でも終わったら遊んでも良いんでしょ!?」



「まぁ、明日に響かないくらいなら構わないけど……」


真美
「やっほー! 今日はパレード見るまで帰らないZE!」



「おいおい、明日も早くから仕事があるんだぞ? パレードなんて見たら帰れないだろ?」


真美
「日付が変わる前に帰れば大丈夫だよ」ビシッ



「いや、でもなぁ……。そんな遅くに帰って来たらお前の親は怒るんじゃないか?」


真美
「んっふっふ~。まだまだ甘いね→。真美がなんで“お休みが欲しい”って言ったのか分かってないでしょ?」



「……まさか」


真美
「その通り! 昨日はずっと説得してました→! だからもう許可は取ってあるんだよ白ちゃん!」



「……コイツ、渡したスケジュール帳を有効活用してやがる」


真美
「というワケで帰りはよろしく!」


――



律子
「……」

――……つこ!


律子
「……」


――……りっ……ちゃ……!


律子
「……」


――……りつ……さん!


律子
「……」


伊織
「律子!」


律子
「――え?」


伊織
「ちょっと律子? どうしちゃったのよ?」


律子
「あ、みんな……」


亜美
「ねぇ、律っちゃん。ホントに大丈夫?」


あずさ
「疲れてるなら休まれた方が……」


律子
「心配かけてごめんなさい。ちょっとボーっとしてたわ」


伊織
「なら良いけど……」


律子
「えっと……」


伊織
「今日のスケジュールを確認するところよ。アンタ本当に大丈夫なの?」


律子
「あ、そうだったわね。ついうっかりしてたわ」ペラッ


律子
(……。やっぱり、見間違いじゃなかったのね……)


亜美
「今日は歌番組の収録が入ってるんだよね→」


あずさ
「あらあら、亜美ちゃんは私たちのスケジュールを覚えてるなんて偉いわね」


亜美
「んっふっふ~。やればできる子ですから」


伊織
「それって大抵はできないヤツの言葉よね」


律子
「それなんだけど……」


亜美・あずさ
『?』


律子
「……私たち、降番になったわ」


伊織
「――は?」


あずさ
「あらあら~。……えっ?」


亜美
「こうばん? 律っちゃん、それってな→に?」


律子
「……番組を降ろされることよ」


亜美
「へー、そうなんだ。……はい?」


律子
「私たちの代わりは真美が出ることになってるから……」


伊織
「ちょっと! どういうことなの律子! なんで私たちが降板で真美が変わりに出ることになってるのよ!」


律子
「……それから、……私は一ヶ月くらい竜宮小町から離れることになるわ。後のことはプロデューサー殿が引き受けるそうだから、ちゃんと言うこと聞くのよ?」


伊織
「ッ!?」


あずさ
「!?」


亜美
「えっ? えっ? ど、どういうことなの?」


――



赤羽根
「なぁ律子。さっきの話、ホントなのか?」


律子
「え? あぁ、スケジュール確認の時の……」


赤羽根
「なぁ、なにがあったんだ? 律子が竜宮小町から離れるなんてどう考えても変じゃないか」


律子
「赤羽根殿には関係ないです。これは私の問題ですから」


赤羽根
「そうやって溜め込むのは律子の悪いクセだ。俺たちは仲間じゃなかったのか?」


律子
「赤羽根殿……」



「話してくれよ。もしかしたら力になれるかもしれないだろ?」


律子
「……実は――」


――



赤羽根
「社長、律子を竜宮小町から外すなんてどういうつもりですか?」


高木
「それは……、律子君に反省させる意味も込めて……」


赤羽根
「それにしたってやり過ぎです! 今すぐ律子を竜宮小町のプロデューサーに戻してください!」


高木
「……悪いができない。竜宮小町は既にP君が担当している」


赤羽根
「そんなの社長が命令すれば済むことじゃないですか!」


高木
「……」


赤羽根
「社長、なにかあったんですか? あんなに良くしてくれた社長が律子に対してこんな仕打ちをするなんて俺には考えられません」


高木
「仕事に戻ってくれ。君には関係のない話だ」


赤羽根
「いいえ。社長から真相を聞くまではテコでも動きません!」


高木
「赤羽根君……。あまり私を困らせないでくれ」


赤羽根
「なら話して下さい! でないと俺はずっとココにいますからね!」


高木
「はぁ……。君は意外と頑固だったんだな」


赤羽根
「社長、お聞かせ願えますか?」


高木
「まぁ、良いだろう。つまらない意地を張ったところで過ちは消えないのだから」


――



~♪♬♫~



「はい。Pです」



――『あ、あの、プロデューサーさん! すぐに事務所に戻ってきてください!』



「小鳥さん? どうかしたんですか?」



――『赤羽根さんがすごく怒ってるんですよ。プロデューサーさん、なにかしたんですか!?』



「先輩と関わるようなことは基本的になかったはずですが……」



――『私だって分かりませんよ! とにかく早く帰ってきてください!』



「まだ収録の途中なので今はムリです。午後には戻りますよ」



――『それじゃ遅――もういいです小鳥さん。……おいP」




「先輩? どうしてまだ事務所に? 今日は千早の付き添いじゃなかったんですか?」



――『俺のことはどうでもいい。早く戻ってこい』




「先ほども言いましたがムリです。仕事を放り出してまで事務所に帰る意味が分かりません」



――『いいから戻ってこいッ!!』



「……はぁ。わかりました。少し時間がかかりますけど良いですか?」



――『あぁ……、そのくらいは我慢するよ』



「それはどうも」


――



赤羽根
「お前はなにを考えてるんだ!」



「いきなりなんですか?」


赤羽根
「律子の件だ! ライブでジュピターを使うのはまだ良い! だがなんで同じ事務所の竜宮小町まで利用するんだ!」



「それを決めたのは俺じゃなくて高木社長ですよ? 怒る相手が違います」


赤羽根
「あぁ。だから社長にも話を聞かせてもらった。律子たちと真美を天秤に掛けて選択を迫ったらしいじゃないか」



「……」


赤羽根
「なんで仲間を売るようなマネをしたんだ! 律子たちが迷惑してることが分からないのか!?」



「先にケンカを売ってきたのは律子たちですが?」


赤羽根
「それにしたって限度があるだろ! 律子は自分が担当してたユニットから外されたんだぞ!?」



「まぁ、今では俺が担当してますからね」


赤羽根
「茶化すな! 今回の件は律子の失言だろ? それなのになんでこんな重い責任の取らせ方をさせたんだ!」



「先輩。お言葉ですが、これのどこが重いんですか?」


赤羽根
「!?」



「律子と伊織。……真美を傷つけた責任としては妥当だと思いますが?」


赤羽根
「……確かに同じプロデューサーとしてアイドルを傷つけたことは許されることじゃない。でも、だからといって今まで担当していたヤツを急に外すことはなかったろ!」



「負けた人間がなにかを失うのは当然のことです。先輩もそれは分かってるでしょう?」


赤羽根
「まさか……、本気でそう思ってるのか?」



「えぇ。それがこの世界のルールですから」


赤羽根
「違うッ! それじゃ961プロと同じ考えじゃないか!」



「確かに似ていますね。まぁ、俺はアイドルに自分の思想を押し付けるようなマネはしませんけど」


赤羽根
「そんな話をしてるんじゃない! とにかく竜宮小町を律子に返すんだ!」



「お断りします。あのユニットにはまだ利用価値がある。それが無くなるまで返すつもりはありません」


赤羽根
「いい加減にしろッ!! 仲間を利用してまで伸し上がる意味があるのか!?」



「ありますよ。あるからこうして利用してるんじゃないですか」


赤羽根
「――ッ!」



「というか先輩たちが甘いんですよ。座れるイスが限られているんだから奪い合いになるのは当然。なのに、仲間だなんだ言って譲り合う意味が分からない」


赤羽根
「……」ギュゥッ



「そんな幼稚な姿勢だから真美のランクも低いままだったんですよ」


赤羽根
「……ッ。確かにそれは俺の所為だ。だけどな、勝つことが全てじゃないだろ! 仲間を信頼して一緒に戦うことだって大事なことだ!」



「そんなくだらないことを教えたいのなら教師にでもなればどうですか?」


赤羽根
「くだらない、……だと?」



「えぇ、実にくだらないです。俺たちの仕事はアイドルと仲良くなることではなく、担当しているアイドルのランクを上げることですよ?」



「先輩だって売り込みやオーディションで他のアイドルを蹴落としてきたんじゃないんですか?」


赤羽根
「それとこれじゃ話が別だ!」



「どこが違うんです? じゃあ先輩は、IAみたいな大会でも対戦相手が同じ事務所のアイドルだったら勝ちを譲るんですか?」


赤羽根
「ぐっ……」



「先輩も律子も危機感がないから油断するんですよ。そんなに仲良しごっこがしたいのなら、甘ちゃん同士、傷でも舐め合っててください」


赤羽根
「――ッ!」



「俺は自分の担当をトップアイドルをする為ならどんな手も使いますよ。それが俺のやり方ですからね」


赤羽根
「ふざけるな! そんなやり方で信頼が築ける訳がないだろ!」



「そんなものは必要ありません。あるのは利害関係だけ。それで十分です」


赤羽根
「お前は間違っている! そんなのはプロデューサーじゃない!」



「どうとでも言ってくれて構いません。……でも先輩、これだけは覚えておいてください」






「“俺のジャマをするなら潰しますよ?”」





――



赤羽根
「……」


高木
「やはり君でもダメだったか……」


赤羽根
「社長……」


高木
「まぁ、そう気を落とさないでくれ。いつかは彼だって分かってくれる」


赤羽根
「……本当にそう思いますか?」


高木
「……」


赤羽根
「黙らないで下さいよ。社長が信用して雇った人間じゃないんですか?」


高木
「私が、……というより、“石川が信用している”と言った方が正しいか」


赤羽根
「どういうことですか?」


高木
「彼は元々……、876プロの人間だ」


赤羽根
「えぇ。それは真美たちの会話で聞いたことがあります」


高木
「そうか。その彼なんだが……、どうやら事務所では居場所がなかったらしい」


赤羽根
「まぁ、あの考え方ですからね。受け入れてもらえないのもムリはないと思います」


高木
「いや、当初はそれほど悪い雰囲気ではなかったようだ。それに石川も新人ながら活躍する彼のことを気に入っていた」


赤羽根
「そうなんですか? それならなんで……」


高木
「詳しいことは分からない。しかし石川が紹介するくらいだ。彼も悪い人間ではないのだろう」


赤羽根
「そうですか。でも社長。それじゃあ石川社長が信用してるからPを雇ったってことですよね?」


高木
「そうなってしまうな。……少し違うとすれば、私にも彼を雇う目的があったことだろう」


赤羽根
「目的?」


高木
「うむ。君とアイドルたちのことだ」


赤羽根
「どういうことですか?」


高木
「以前にも言ったことだが、我が765プロは弱小ながら君たちの活躍もあってここまで大きくすることができた」


赤羽根
「……」


高木
「だがその反面、アイドル諸君が君に懐きすぎだと思ってね。……依存。……といっても良いだろう」


赤羽根
「確かにそう、かもしれません。……特に美希は……」


高木
「私も君と同じことを危惧していたのだよ。だから彼を雇った。他のプロデューサーと触れ合うことでアイドルとプロデューサーの関係を自覚してもらう為にね」


赤羽根
「なるほど。そういう意図があったんですね」


高木
「あぁ。だが予想外だったよ。多少強引な手を使うことは知っていたが、まさかここまでとは……」


赤羽根
「自分の担当をトップアイドルにするためには手段を選らばない。……それがPのやり方だそうです」


高木
「やはり……。彼もまた黒井と同じ。いや、それ以上に危険かもしれない」


赤羽根
「……俺はPを止められる自身がありません。邪魔をすれば、アイツは本当に俺たちを潰しにくる。そう感じました」


高木
「残念なことだが、彼は私たちを仲間だと認めていないということだろう……」


赤羽根
「力になれなくてすいません」


高木
「謝ることじゃない。彼を雇ったのは私の責任だ。この件については私がなんとかしよう」


赤羽根
「……どうするつもりですか?」


高木
「彼には既に厳重な注意をしてある。それでも彼が考え方を変えないのなら、……この事務所から去ってもらうしかない」


赤羽根
「クビ……ということですか……」


高木
「石川には申し訳ないが、そうするしかないだろう」


――

ご飯食べたらまた少し書きます。


楽しみにしてる

乙です!




「悪い。ちょっと遅れた」


伊織
「ふん。私たちを呼び出した張本人が遅刻なんてホントにどういうつもりかしら?」



「コッチだって好きで遅れたわけじゃない。どっかのお喋りのお陰で余計な時間をくったんだ」


律子
「……」



「律子も悪いな。いきなり竜宮小町の“送迎”なんて頼んで」


律子
「……いえ」



「そっか。この後のことはさっき言った通りだから」


律子
「……分かりました」


――



伊織
「……」



「軽蔑したか?」


伊織
「えぇ。最低の外道ね」



「それはどうも。だけど負けた分はキッチリ働いてもらうからな」


伊織
「私たちがアンタの言うことなんて聞くと思ってるの?」



「やりたくないなら止めはしない。その代わり困るのはお前らだ」


伊織
「……」



「信用を失くしたアイドルがどうなるか、お前らも分かるだろ?」


伊織
「……さっきの言葉、少し訂正するわ。……アンタは最低のクズよ。それもどうしようもないくらい性根の腐ったクズだわ」



「悪いが負け犬の遠吠えにしか聞こえないな。俺が嫌いなのは構わないが仕事だけは真面目にやれよ?」


伊織
「ふん。そんなの分かってるわよ。たかが一ヶ月じゃない」



「ははっ。さすが伊織、頼りになるな」


伊織
「気安く名前で呼ばないでくれる? 虫唾が走るわ」



「はいはい」


――



真美
「ん~~!」ポキポキ



「お疲れ。丁度良いタイミングだったな」


真美
「あ、白ちゃん! ……と竜宮小町?」


あずさ
「……」


亜美
「……」



「サプライズゲストだ。この後のPV撮影に竜宮小町も参加することになったから」


真美
「えっ、そうなの!?」


伊織
「そんなに驚くことじゃないでしょ? もしかしてアンタなんにも聞いてないの?」


真美
「?」


伊織
「……まぁ良いわ。気にしないで」



「それじゃ全員集まったことだし、撮影に向かうか」


伊織
「行くなら早くしなさいよ。このノロマ」



「とりあえず伊織は後部座席だな。助手席に乗せたら対向車の人が眩しそうだし」


伊織
「この白髪……。本当にムカつくわね」


――



ディレクター
「それじゃ先にイメージビデオから撮っちゃうんで、真美さんと竜宮小町のみなさんはスタンバイお願いします」


真美
「はーい」


伊織
「えぇ。分かりましたわ」


――「カメラ1、カメラ2、カメラ3、オールOKでーす!」


真美
「そんじゃ行ってくるね→」



「頑張ってこい」


伊織
「……」



「どうした?」


伊織
「別に。アンタみたいなクズに真美がなんで懐いてるのか不思議に思っただけよ」



「同感だな。でも今はそんなこと考える時じゃないだろ?」


伊織
「それもそうね。気は乗らないけど行ってくるわ」



「伊織」


伊織
「気安く呼ばないでって言わなかった?」



「めんどくさいなぁ……。伊織さん」


伊織
「なにかしら?」



「真美をよろしく頼みます」


伊織
「あら? アンタのことだから“真美のジャマをするなよ”なんて言うかと思ったけど意外だわ」



「いくら嫌われててもお前たちは俺の担当だ。そんなヒイキをするつもりはない」


伊織
「口だけは達者ね」



「……まぁ良いや。真美はこういうメインの仕事は慣れてないから危ないと思ったらフォローしてくれ」


伊織
「ふん。言われなくても分かってるわよ」



「そっか。なら良いんだ」


伊織
「話はそれだけかしら?」



「あぁ。引き止めて悪かったな」


――



――チェック終わりましたー。お疲れ様です。



『おつかれさまでしたー!』




「みんなお疲れさま」


真美
「やっと終わった→!」



「大げさなヤツだな。少しくらい長引いただけだろ?」


真美
「それでも長く感じたんだよー!」



「あっそ。……次の現場だけど、竜宮小町は律子と一緒にバラエティの収録。真美はお楽しみのティスニーランドだ」


真美
「白ちゃん~。早く行こうよ→」グイグイ



「分かった! 分かったからスーツを引っ張るな!」


――

今日はここまでにします。続きはまた明日

とりあえずPは社会的抹殺しておけ

765組が身内贔屓なだけでPはそんな悪くないよね

バネPが結果出せないのが悪いんだけどね
全員同じランクならいいけどそうじゃないなら馴れ合いよ

リアルのアイドルグループの蟲毒ぶり見ると、白ちゃんは天使レベルに優しいよね。



~♬♪♫


真美
「イェーイ! 来たぜ夢の国!」



「……」キョロキョロ


真美
「どうしたの白ちゃん?」



「いや、ティスニーランドなんて初めて来たけど、見た感じ凝ったアトラクションがたくさんあるなーって」


真美
「えっ!? 白ちゃんティスニーランド初めて!?」



「そんな驚くようなことか?」


真美
「だって→。今時だれでも来たことあるんだよ。ちょっと信じられないんだけど」



「へー。やっぱりココってそんなに人気なんだな」


真美
「ねぇ白ちゃん。ホントに来たことないの?」



「あぁ。だから今日は真美に色々と案内してもらおうかな」


真美
「えッ? 真美が?」



「ダメか?」


真美
「……んっふっふ~♪ ちかたないな→」



「なんか嬉しそうだな」


真美
「まぁね。それよりも覚悟しておいてよ白ちゃん。今日はとことん付き合ってもらうんだから!」



「お手柔らかに頼むよ」


真美
「ムリ♪」



「割とマジなお願いだったんだが……」


真美
「んっふっふ~♪ んっふっふ~♪」



「気分良く歌ってるところ悪いけど時間だ。そろそろ行くぞ?」


真美
「は→い!」


――



――「それでは真美さん、スタンバイしてください」


真美
「早く終わんないかな→」



「お前なぁ……」


――本番入りまーす。3・2……。


真美
「さぁ始まりました新コーナー! その名も“真美の好きにしやがれ”!!」


真美
「第一回ということでティスニーランドに来てま→す! なんでティスニーランドなんだ? なんて質問はナシだよ→?」


真美
「だってこのコーナーは真美が好き勝手にやっちゃう番組なんだもん! だから、もし飽きたらチャンネル変えちゃっても良いからね♪」


――ハハハハハハ


真美
「それじゃ、まずは絶叫系からだ→! レッツ・ゴー!」


――



――がゃがゃ。――ざわざゎ。


真美
「ん~~ッ! 人が多すぎて見れないよ~~ッ!!」



「こればっかりは仕方が無いだろ」


真美
「せっかく頑張ってお仕事してきたのに、コレじゃあんまりだ→!!」



「そんなこと言ってもなぁ……あ、始まった」



――バンッ! バンッ! バーンッ!


~♪~♫♬


ワヮァアアアアアアア!!!



真美
「白ちゃん! 背中貸して!」



「は? 背中?」


真美
「かたぐるま!」



「あぁ。そういうことね」


真美
「はやく~~ッ!」



「はいはい」スッ


真美
「んっしょ。……まだ動かないでよ!」



「もういいか?」


真美
「……うん! OK!」



「よっと」


真美
「ぉおっ!?」



「どうだ? 見えるか?」


真美
「んっふっふ~♪」



「見えてるっぽいな」


――「お兄ちゃん……?」



「なぁ、真美。喉が渇いたからジュース買いに行って良いか?」


真美
「ん~? ダメ→」


――「お兄ちゃん!」



「マジかよ……」


真美
「あと一時間くらいだから我慢してね」



「はぁ。そんなに長いなら先に買いに行けば良かった……」


――「むぅ……。プロデューサーさん!」



「ん?」クルッ



「あっ! やっぱりお兄ちゃんだ!」



「……愛か。久しぶり」



「うん! こんなところで会うなんて思わなかったよ!」


真美
「ちょっと白ちゃん! 急に動いたら危ないじゃん!」



「あ、悪い」


真美
「次から気を付けてよね→。……おっ! 愛ぴょんだ! 久しぶり→」



「……?」


真美
「あれ?」



「えっと……」


真美
「もしかして分からない?」



「ごめんなさい。どこかでお会いしたことあり……ますよね。だって久しぶりって言ってたし……」


真美
「えっ!? えっ!? 愛ぴょんホントに分かんないの!?」



「うぅ……。ごめんなさい……」


真美
「うわぁ……。忘れられるって結構ショックだよ……」



「忘れてるというよりも、髪型が違うから気づいてないだけなんじゃないか?」


真美
「え? あっ、そっか!」



「?」


――キュッ。


真美
「愛ぴょん。これならどう?」



「真美ちゃん!!?」


真美
「正解ッ! いや~、ホントに忘れられてると思ったから焦ったよ→」



「あたしも驚いちゃいましたよ! 髪型が変わると別人みたいですね」


真美
「そんなに違うかな→?」



「はい! なんだか大人っぽく見えましたよ!」


――「ぁぃーーー? ぁいーーーー?」



「誰かお前のこと呼んでないか?」



「あ、たぶんママだ」



「うぇ。ババアまでいるのかよ」ボソッ



「ママーー!! こっちだよーー!!」



「声だけ聞こえても分からないんじゃないか?」



「あ、そっか。……どうしよう……」



「はぁ。仕方がないな……。真美、ちょっと降りろ」


真美
「え~~」



「また乗せてやるから」


真美
「ちぇ→。せっかく良い感じだったのに→」スタッ



「ほら。乗れよ」



「え!? あたしが!?」



「そっちの方が分かりやすいだろ?」



「それは……、分かってるんだけど……」



「なに迷ってるんだよ。乗るのか? 乗らないのか?」



「あぅ……」



「めんどくさいなぁ……。愛、ちょっと後ろ向け」



「?」



「いいから言われた通りにしろ」



「こう?」クルッ



「OK。……よいしょっ」



「ひゃあッ!?」フワッ



「あんまり暴れると危ないぞー」



「な、な、なにしてるの!?」



「めんどくさいから直接セッティングする」



「だからっていきなりすぎるよーー!!」



「知るか」


真美
「むぅ」



「よっと。セット完了」



「あぅ……。恥ずかしいよぉ……」



「危ないから暴れるなよ?」


真美
「愛ぴょん! パレード見たいから早くしてね!」



「あーーーもうッ! 恥ずかしがってるあたしがバカみたい!」



「元々バカだろ」



「――ッ」スゥウッ







「ママーーーーーーーー!!!!!!!!!」ブンブン






真美
「――!!?」グァングァン



「――ッ。み、耳元で騒ぐな! というか暴れるな!」ビリビリ


――




「あ、いたいた! ……うゎ。アンタもいたの?」



「俺がいたら悪いかよ」



「別に。でもアンタがここにいるなんて意外ね。……デート?」



「アホか。仕事が終わったから遊んでるだけだ」



「そうなの? てっきりロリコン癖があるのかと思ったわ」



「ぶっ飛ばすぞババア」



「あ゛? 今なんて言った?」



「ババア」



「よく聞こえなかったわね~。お・ね・い・さ・ん! でしょ?」ギュウッ



「ふぁ゛ふぁ゛あ」



「あのね……。言っておくけどアンタと7・8歳しか違わないのよ?」



「30過ぎたらババアだろ」



「私はまだ20代よ!!」


――



真美
「愛ぴょん。お母さん来たんだから早く降りてよ→」



「あ、ごめんなさい! すぐに退きます!」



「おい、バカ! 危ないから暴れるな!」



「そんなこと言われても……」



「俺がゆっくり降ろすから少し大人しくしてくれ。良いな?」



「はーい」



「よっと」



「ぁ……」フワッ


真美
「白ちゃん! 次は真美の番!」



「はいはい」


真美
「んっふっふ~♪ やっぱり真美の定位置はココですな→」



「いいなー……」



「あら? じゃあ愛も肩車する?」



「えー。ママに乗っても見えないよー!」



「そこはアレよ。コイツが私を乗せて、愛が真美ちゃん? を乗せれば問題ないわ」



「トーテムポールか! というかできる訳ないだろ!」



「アンタ男でしょ! それくらい我慢しなさいよ!」



「ムチャ振りにも程があるぞ!?」



「二人ともあたしがママで我慢するから仲良くしてよーー!!」



「私で妥協!?」


――



真美
「白ちゃんってホントに愛ぴょんと仲が良いんだね→」



「そうですか?」


真美
「だってそうっしょ。愛ぴょんも白ちゃんと親しげじゃん」



「うーん。まぁ兄妹ですしね!」


真美
「えッ!? そうなの!?」



「はい! あたしも最近知ったんですよ?」


真美
「似てね→。……あれ? でも白ちゃんって確か22歳だよね? 愛ぴょんのお母さんが30歳くらいだから……。兄妹にしても年が合わなくね?」



「ぁぅ……。それは……」



「なぁ、真美。そろそろパレード終わるぞ?」


真美
「えっ? ……ぁあああああ!! みんなもうあんな遠くまで行ってるじゃん! なんでもっと早く教えてくれなかったの!?」



「いや、興味なくなったのかなって」


真美
「そんな訳ないじゃん!! 真美がどれだけ楽しみにしてたか知ってるでしょ!」



「なら、お喋りなんてしないで見てれば良かっただろ?」


真美
「気になったんだから仕方ないじゃん! というか白ちゃん! 早く追いかけてよーー!!」



「ムリ言うなよ。人ごみも多くなってきたし、どれだけ離れてると思ってんだ」


真美
「そんな~~~ッ!」



「諦めてくれ。もう間に合わない」


真美
「あぁ……。さよならミキー、ドナルドゥ、グーフィル……」


真美
「あぁ……。さよならミキー、ドナルドゥ、グーフィル……」



「そう落ち込むなよ。また来れば良いだろ?」


真美
「……白ちゃんは知らないと思うけど、パレードの内容って月ごとに違うんだよ?」



「そうなのか?」


真美
「うん。だから今日のパレードは帰ってこないんだ……」



「お、おう。……なんか悪かったな」


真美
「白ちゃんは悪くないよ……。悪いのは真美なんだからさ……」



「真美ちゃん……」

ドラッグする位置をミスしました。お見苦しいですが、もう一度投下します。



「そう落ち込むなよ。また来れば良いだろ?」


真美
「……白ちゃんは知らないと思うけど、パレードの内容って月ごとに違うんだよ?」



「そうなのか?」


真美
「うん。だから今日のパレードは帰ってこないんだ……」



「お、おう。……なんか悪かったな」


真美
「白ちゃんは悪くないよ……。悪いのは真美なんだからさ……」



「真美ちゃん……」



「……」


真美
「はぁ……」



「……なぁ真美。パレードって確かもう一回あるんだろ?」


真美
「そうだけど……、もう真美たち帰る時間だよ?」



「予定変更だ。今日は泊まる」



「!!?」


真美
「えッ!? ……でも明日のお仕事に間に合わないんじゃないの?」



「そんなものキャンセルだ」


真美
「ドタキャン!? だ、大丈夫なの!?」



「体調不良とかそんな理由なら大丈夫だろ」


真美
「テキトーじゃん! あ、だけど白ちゃんのことだからなんとかするんだろうな→」



「でも実際にサボることになったら明日は一日中オフになるぞ?」


真美
「ホントに!!?」



「……なんで嬉しそうなんだよ」


真美
「だって→、ミキーにまた会えるし、パレードも見れるし、それにティスニーホテルに泊まれるし、明日も遊べるんでしょ? テンション上がらない訳ないじゃん!」



「待て。なんか今さらっとホテルの場所まで指定してなかったか?」


真美
「え? そうかな→?」



「とぼけやがって。……まぁ、ヘタに外で騒がれるよりはマシか」


真美
「お? ということは?」



「俺の負けだ。そのティスニーホテルで良いんだな?」


真美
「さっすが白ちゃん! 話が分かるぅッ!」



「その代わり帰ったら家で大人しくしてろよ?」


真美
「んっふっふ~♪ 了解であります!」ビシッ



「ティスニーホテルって当日で予約できるのかなぁ……。ちょっと聞いて――」



「お兄ちゃん。……真美ちゃんとの話は終わった?」



「え? あぁ。終わったけど、……どうした?」



「……ホテル、泊まるの?」



「まぁ俺としては適当にカプセルホテルとかで良いと思ってたんだけどなぁ……」



「ふーん。……でもお兄ちゃん。アイドルとプロデューサーが一緒に泊まるなんてダメだよね?」



「は? 俺は――」



「 “ダ メ だ よ ね ?” 」



「――ッ!?」ゾクッ



「それに真美ちゃんは中学生だよ? 変なウワサができたらどうするの?」



「な、なぁ、なにか勘違いしてないか? 俺は――」



「 “うるさい” 」



「……」



「はぁ……。やっぱりちゃんと監視しないとダメかなぁ……」ボソッ



「なんか今すごい不穏な言葉が聞こえたんだけど気のせいだよな?」



「ん? あたし喋って良いなんて言った?」



「……」



「まぁ良いや。……ところでお兄ちゃん。今日お兄ちゃん達が泊まるホテルだけど、あたし達も泊まるね?」



「は? いや、ちょっと待て。お前は仕事があるだろ?」



「大丈夫だよ。どこかの誰かさんのお陰でしばらくお仕事がないんだから」



「ぐっ……。まさかお前の口から皮肉が聞けるなんて思わなかったぞ」



「ふふっ♪ 決まりだね」



「もう勝手にしてくれ……」



「ねぇ、お兄ちゃん」



「今度はなんだよ?」



「また、前みたいに……」





        「――勝手にいなくなったらダメだよ?」





――

ここまでにします。すみませんでしたm(_ _;)m

乙!
愛ちゃん怖かわいい

乙ー

誰かー!!この中にヤンデレ対策の専門家はいらっしゃいますかー!?


愛ちゃん病んじゃった……

ちょっとここに婚姻届用意しておきますね
この愛ちゃんからは逃げられないからね、仕方ないね

末期のヤンデレやんけ………

>>249
いやいや、異母兄妹だから無理だろ
たしかPの親父の不倫相手が日高舞だったよな

認知されてたっけ?

>>252
前作の終わりでマスコミに暴露してたような?

病みつつある愛ちゃんなら提出しなくても額縁に飾って満足してくれるよ(震え声)
浮気したら音殺されるけど(恐怖)

あんなに天真爛漫だった愛ちゃんが…
罪な男やで白髪P




「……」



「はい。お茶しかなかったけど別に良いでしょ?」



「あぁ……」



「アンタ大丈夫?」



「……。こ、怖かった……」



「お、おぉ。マジな感想だわ。アンタをここまで追い詰めるなんて愛もなかなかやるわね」



「……お前、愛になにしたんだよ」



「私の所為にする気? 愛があんな感じなったのはアンタの所為よ」



「……」



「黙らないでくれるかしら。コッチはアンタのお陰で色々と大変なのよ? 近所からは変な目で見られるし、家庭は絶賛崩壊中。やっと元に戻りかけて家族水入らずを楽しんでたのにアンタの所為で台無しよ」



「悪かったな。……でも俺は、……後悔なんてしていない」



「よく言うわね。本当は誰よりも後悔してたんじゃないの?」



「お前に俺のなにが分かる」



「その真っ白な頭を見れば分かるわよ。髪の色が抜けるまで悩んでたんでしょう? ……そうね、……愛を利用したことに負い目を感じたってとこかしら?」



「……」



「当たりみたいね。……そんなに悩むくらいなら最初っから私だけを狙えば良かったじゃない」



「……止まるわけにはいかなかったんだ。……俺の標的は、……“日高”だったからな」



「あっそ。でも愛を傷つけた責任は取ってもらうわよ」



「分かってる。……もう二度とお前らに関わらないつもりだ」



「ふざけないで。そんな都合の良い責任の取り方じゃ私が収まらないわ」



「なんでだよ。お前だって俺と関わりたくないんじゃないのか?」



「私はそうよ。でも愛は違うでしょ? アンタが消えれば、またあの子が悲しむわ。……悔しいけど、それだけ愛の中ではアンタの存在は大きいのよ」



「じゃあどうすれば良いんだ。俺はもう、愛にしてやれることはなにもないぞ」



「そうね……」



「……」



「……」



「……」



「……少しだけ」



「?」



「少しだけ、……“家族ごっこ”に付き合いなさい」



「家族ごっこ?」



「そうよ。……どこかに出かけたり、一緒に食事したり、妹に甘えられたり。……そういうありきたりな家族の真似事に少しだけ付き合いなさいって言ってるの」



「……」



「それくらいはできるでしょう?」



「……悪いが断らせてもらう。それじゃ責任を取ったことにならない」



「なんでよ?」



「相手よりも傷ついて、痛い思いをするのが誠意だ。俺はまだなにも失っていないじゃないか」



「なにも痛い思いをするだけが責任を取ることじゃないわ」



「……」



「アンタがどんな生き方をしてきたかなんて知らない。だけど、こういうやり方だってあるのよ?」



「……そんなやり方は、知らない」



「なら学びなさい。アンタだってやり直すチャンスはたくさんあるんだから」



「……。……まさかアンタに教わることがあったなんてな」



「なによその言い方」



「別に。……まぁ、礼は言っとくよ。……ありがとな」



「アンタからお礼を言われるなんだかと気持ち悪いわね」



「最初で最後だ。次から絶対に言わないから安心しろ」



「そうしてちょうだい。……あっ、アンタが家族になるならコレ渡した方が良いわね」



「なんだよそれ?」



「家のカギよ」


――チャリィン。



「……」



「これからはアンタの居場所でもあるんだから大切にしなさい」



「……。ココが……、俺の居場所……」



「いらないなんて言わせないわよ?」



「……いや、ありがたく受け取るよ」ギュッ



「ふふっ♪ 期待してるわね、“お兄ちゃん”」



「……。さっきの言葉……、やっぱり撤回させてもらうか」



「なんのこと?」



「言っただろ? 次からお礼なんて言わないって」



「あぁ。そういえばそんなこと言ってたわね」



「……もう一度だけアンタにお礼を言うよ」



「 ありがとな、……“舞さん” 」



「ぁ……」



「なんだよ。そんなに俺がお礼を言うのは変か?」



「な、なんでもないわよ!」



「ふーん」



(私としたことが見惚れちゃったわ……。コイツの笑顔なんて始めて見たけど、やっぱり父親にソックリね……)


――




「お兄ちゃん大丈夫?」



「あぁ。休んだら回復したかな」


真美
「ねぇ、白ちゃん。ホテルの予約は取れた?」



「お前は少しは労われよ……」


真美
「んっふっふ~。真美と白ちゃんに今更そんな言葉は必要ないでしょ?」



「意味が分からん」


真美
「それで、予約って取れたの?」



「なんとか取れたよ。愛たちと同じ部屋になったんだけど大丈夫だよな?」


真美
「え!? じゃあホントにティスニーホテルに泊まれるの!?」



「お前から指定してきたのになんでそんなに驚いてるんだ?」


真美
「だって→。あのホテル超大人気だし、まさかホントに泊まれるなんて思ってなかったんだもん」



「へー」


真美
「ありがとね、白ちゃん! 大好き!」



「……むぅ」



「お礼なら俺じゃなくて舞さんに言え」


真美
「なんで?」



「予約を取ったのは舞さんなんだ。俺の時は満席だった」


真美
「あ、そうなんだ。ちぇ→、白ちゃん使えね→」



「ひどい言われようだな……。まぁ良いや。ちゃんとお礼言っとけよ?」


真美
「うん! あ、でもどこにいるのか分からないや」



「あそこで年甲斐もなくヌイグルミと握手してるだろ?」


真美
「ぉお。真美も発見! それじゃ行ってきまーす!」ダッ



「ふふっ。そんなに急ぐと転ぶぞー」


真美
「……? 大丈夫だYO→!」


――



真美
「ねぇ→ねぇ→」



「なにかしら真美ちゃん?」


真美
「ホテルの予約取ってくれたのお姉ちゃんなんでしょ? ありがとね!」



「……お姉ちゃん?」


真美
「え? 違うの?」



(……良い子だわ)


真美
「お姉ちゃん?」



「あぁ、ごめんなさい。気にしないで良いのよ。愛も喜んでるもの」ニコッ


真美
「そっか→。んっふっふ~♪ ホテルの中ってなにがあるのかな~♪ やっぱ隠れミキーとかいるのかな~♪」



「楽しみにするのは良いけど、あんまり夜更かしするのはダメよ?」


真美
「うん♪ ……あ、そういえばさ→」



「?」


真美
「なんか白ちゃんの雰囲気って変わったよね」



「どういうこと?」


真美
「なんていうか……、前まではどこか寂しそうな感じがあったけど、今は優しくなったって感じかな? さっきも自然に笑ってたし」



「あらそうなの? でも、そういうのは私より愛に言った方が盛り上がるんじゃない?」


真美
「だって→。白ちゃんが変わったのお姉ちゃんと話してた後からなんだもん」



(ふーん。……アイツも前に進み始めたってことかしらね)


真美
「お姉ちゃん、白ちゃんになんて言ったの?」



「ん? そうね……、偶には帰ってきなさいってことかしら?」


真美
「へー、やっぱり白ちゃんたちって家族なんだ」



「ふふっ♪ そうなるわね」ニコッ


真美
「?」



「さて、……あら、そろそろチェックインの時間じゃない」チラッ


真美
「えっ、もう? 真美も愛ぴょんもパレードまだ見てないよ……」



「それなら部屋からも見れるわ」


真美
「そうなの?」



「えぇ。それもジャマな人ゴミがいないから絶景よ?」


真美
「おぉーーッ! お姉ちゃん! 早く行こうよ! 早くぅ~ッ!」ピョンピョン



「はいはい。それじゃ愛たちを迎えに行きましょうか」


真美
「わーい♪」



「ふふっ。なんだか愛が二人いるみたいで面白いわ」


真美
「~♪」


――



受付
「いらっしゃいませ」



「予約した日高よ」


受付
「あ、はい。スイートルームでご予約された日高様ですね。少々お待ちください」


真美
「ただでさえ高いホテルなのに、その上スイートだと……」



「私にかかればこんなもんね」


真美
「す、すげー!」



「ふふっ♪」


真美
「というか白ちゃんもフレンチ奢ってくれたけどさ、なんで皆そんなにお金持ってるの?」



「コッチは貯金がたんまりあるんだろ。俺の場合はコネクション」


真美
「へー。……あれ? じゃあ白ちゃんってやっぱりすごいプロデューサー?」



「さぁ? 先輩と同じくらいじゃないか?」


真美
「えー、それはないよ。兄ちゃんは連れて行ってくれたとしてもファミレスだもん」



「別に飲食店だけがコネじゃないぞ? 先輩だって俺の持ってないものをたくさん持ってるんだ」


真美
「お、おぉ。白ちゃんがそこまで言うなんて実は兄ちゃんもすごいプロデューサーなのかなぁ……?」



「ジャンルが違うから目立たなかっただけかもな。機会があったら良く見てみろ。先輩もすごいんだって分かるぞ?」


真美
「ジャンル? 同じプロデューサーなのに白ちゃんと兄ちゃんは違うの?」



「俺は演出に特化したスタイル。先輩は音楽に精通したスタイル。お互いにやり方が違うんだ」


真美
「ふーん。愛ぴょんの時もそんな感じだった?」



「え? う~ん……。あっ、確かにヴォーカルレッスンは特別なことはしなかったかな?」



「はいはい。辛気臭くなるからこんなところまで仕事の話はしない! 部屋のカギ貰ったからさっさと行くわよ!」



「あっ! ちょっと待ってよママ!」



「俺らも行くか」


真美
「は→い!」


――



――カチャッ。



「へー、なかなか良い部屋じゃない」


真美
「おおーーッ! ベット超フカフカだよ!」ポンポン



「あっ、見てよママ! 自分の好きなキャラクターに着替えられるみたいだよ!」


真美
「愛ぴょん! 後で一緒に着替えようよ!」



「うん♪」





――どれにする? あたしはコレ! じゃあ真美は色違いにしよっと。






「アンタも参加したらどうだ?」



「さすがにコスプレなんて恥ずかしくて出来ないわよ」



「ヌイグルミと握手してはしゃいでたヤツがなにいってるのやら……」



「ヌイグルミじゃないわ! シマリスのディールよ!」



「知るかよ」


真美
「ねぇ→ねぇ→! 白ちゃんたちも着替えようよ!」



「ほら、ママも!」



「い、いや私は……」



「なぁ、コレなんだ?」


真美
「うーん。なんだっけ? ……あ、それはⅩⅣ機関の服装だよ!」



「ふーん。じゃあ俺はコレにするか」



「なんでアンタはノリノリなの!?」



「だってなぁ……。せっかくコイツらが楽しんでるのに一人だけ普通の服装って悪いだろ?」



「ぐぅっ……。分かったわよ。私も着替えれば良いんでしょ!」



「~♪ ママはどれにする?」



「じゃ、じゃあディールかしら」



「筋金入りだな」バサッ



「お兄ちゃん着替えるの早いよ!」



「え? だって上に着るだけだし」



「へー。なんかアンタの格好、チェシャ猫みたいね」



「ママ、それ違う作品だよ」



「?」


真美
「白ちゃん! 着替えたなら早く出て行ってよ! 真美たちも着替えるんだから!」グイグイ



「分かった! 分かったから押すな!」




――ガチャン。




「ねぇ→、このリボンってどうやって結ぶの?」


「はいはい。ちょっと待ってなさい」


「ママー! エプロンが閉められないよ!」


「また成長したの!? はぁ……。仕方が無いわね。ほら、あんまり動かないで」


「あっ、写真撮影のサービスまであるみたいだよ! みんなでやらない?」


「良いわね。でもその前に……、これで良し」


「んふふ♪ どう? 似合ってる?」


「えぇ。みんな可愛いわ」


「お姉ちゃんも似合ってるよ!」


「ふふっ♪ ありがと♪」





「早く終わらないかなぁ……」




――



真美
「んっふっふ→。お・ま・た・せ♪」



「……」ジー


真美
「なに? もしかして真美の魅力にメロメロって感じ?」



「あぁ。思わず見惚れたよ」


真美
「ぁ……。もうっ! なんで白ちゃんは恥ずかしげもなくそんなことが言えるんだよ→!」



「大人をからかったお仕置きだ」



「……女たらし」



「人聞きの悪いことを言うな。……というか、……なんでお前はパジャマなんだ?」



「違うわよ! どう見ても“きぐるみ”でしょ!」



「いや、どうみてもパジャマだろ」



「お、お兄ちゃん!」



「ん? へー、お前もアリスか」



「あ、あの! ……どうかな? あたし、変じゃないかな?」



「……ふふっ」ナデナデ



「ぁぅ……。リボンが……」



「心配しなくても似合ってるよ。だからそんな顔すんな」



「ホントに?」



「あぁ。とっても綺麗だ」ナデナデ



「……えへへ」


真美
「むぅ。なんか愛ぴょんたち良いムードじゃん」



「なにむくれてるんだよ。お前も撫でてやろうか?」


真美
「真美はそんな軽い女じゃないですよ→だ!」ベー



「そう意地になるなよ」ナデナデ


真美
「ぁぅ……」


――



カメラマン
「準備ができましたら撮影を開始しますので、あちらのソファーへご自由にお座りしてください」



「……」


真美
「よっと!」ピョン



「……なんで俺のとこに座るんだ?」


真美
「ここは真美の場所→♪」



「あっ!」


真美
「んっふっふ~。早い者勝ちだよ愛ぴょん」



(そこはあたしも行きたかったのに……)


カメラマン
「奥さんはもっと旦那さんに寄ってください」



「……どういうことだ?」ボソッ



「この方が後々めんどくさくないでしょ?」ボソッ


真美
「~♪」ギュッ


カメラマン
「あ、いえ。お子さんではなく奥さんが……」


真美
「なんで? 真美たち夫婦だよ?」


カメラマン
「え?」


真美
「え?」



「はぁ……。カメラマンを困らせたらダメだろ?」


真美
「ちぇ→」



「これで良い?」スッ


カメラマン
「あ、あはは。それでは撮影を開始しますね。お子さんたちはそのままで」



「……」



「……」


カメラマン
「では目線お願いしまーす。はい。それでは3・2・1…」



「……」ギュッ


愛・真美
『あっ!』ピクッ


――パシャッ!


カメラマン
「あー、顔がブレ――」



「ちょっとママ! なんで抱きついてるの!」



「え? だってこの方がムード出るでしょ?」



「出してどうするの!?」


真美
「白ちゃんもデレッとしない!」



「するか」



「……EDプロデューサー」ボソッ



「なんか言ったかババア」



「あ゛?」


カメラマン
(なんだこの家族……)


――



――パシャッ


カメラマン
「はい。お疲れさまでした。写真は後日ご自宅の方に届けさせて頂きますね」



「楽しみだね真美ちゃん!」


真美
「うん♪ 届いたら教えてよね!」



「疲れた……」



「これくらいで疲れるなんて情けないわね」



「お前が愛たちをからかうからだろ」



「だってあの子たち面白いんだもの。そりゃあ、からかいたくもなるわよ」



「趣味悪ぃ……。真美も愛も大事な時期なんだから、あんまりからかい過ぎるなよ?」



「それだけ? もっとなにか言うのかと思ったけど?」



「俺が言ったところで聞かないだろ」



「そんなことないわ。ご主人様の言うことくらいは聞くわよ」



「なに言ってんだ?」



「あら? 私はアンタの人形じゃなかったかしら?」



「……ホント性格悪いな」



「ふふっ♪ あの時やられた借りはキッチリ返してやるわよ」


――

今日はここまでにします

乙ー



真美
「パレード♪ パレード♪」



「そろそろだね!」


――バンッ! バンッ! バーンッ!


~♪~♫♬


真美・愛
『はじまった!』



「ふふっ。ディナーを楽しみながら見るパレードもなかなか良いものね」



「パンケーキ三つにサラダとカプチーノ……。これのどこがディナーなんだ? 朝食の間違いだろ」



「よく見てみなさいよ。全部ミキーづくしでしょ?」



「ミキー? あぁ、あのネズミか」



「ミキーの悪口は許さないわよ!!」



「なに怒ってるんだよ」



「お兄ちゃん、今のはないよ……」


真美
「ないわ→」



「え? なんで俺が責められてるんだ?」


――



~♬~♫♪……


真美
「んっふっふ~♪ パレード面白かったね→」



「うん♪ あたしの好きなキャラいっぱい見れたから大満足だよ!」


真美
「真美も! ところで愛ぴょんはどのキャラが好きなの?」



「うーん……。アリスも好きだけどスウィッチも好きだし……、いっぱいあるから分かんない! 真美ちゃんは?」


真美
「全部!」



「あはは! 真美ちゃんも同じだね!」



「二人とも、パレード終わったんだからそろそろお風呂に入りなさい」


真美
「え~、これからが盛り上がるのに→」



「そんなのお風呂の中でも出来るでしょ?」


真美
「ちぇ→。愛ぴょん、一緒に入ろ?」



「うん!……って、あれ? ねぇ、ママ。お兄ちゃんは?」



「さぁ? 勝手にどっか出かけたわ」



「えっ!? そうなの!?」



「なるべく気配を消してたもの。アイツなりに気を使ってたんじゃない?」



「……お兄ちゃん、またいなくなったりしないかな?」



「大丈夫よ。戻ってきたらちゃんと拘束しておくから安心しなさい」


真美
「拘束って……。白ちゃんなにやったの?」



「それはアレよ。愛のブラジャー使って[ 自主規制 ]?」


真美
「えっ……」



「だからお兄ちゃんはそんな人じゃないってば!!!」


――



――カチャッ。



「おかえり。どこに行ってたの?」



「仕事先と真美のご両親に電話してただけだ。それよりもアイツらは?」








「ぉお! 愛ぴょん柔らかい!」


「あっ、ちょ、ちょっとくすぐったい!」


「うぇっへっへ。まるで吸い付くような肌だぜ! ……というかホントに揉み応えあるな→。もしかしたらはるるんよりも大きいんじゃない?」


「そんなの知らないよ!」


「良いな→。夢が詰まってるな→」


「ッン……。ま、真美ちゃん。そろそろ放して……」









「……風呂か」



「アンタも入ったら?」



「そうだな」



「えっ!?」



「なんでそんなに驚いてるんだ?」



「いや、まさか本当にロリコン癖があるなんて……。悪いけど愛たちに近づかないでくれる?」



「勝手な性癖を押し付けるな! 下の大浴場に決まってるだろ!」



「アンタねぇ……。今何時だと思ってるの? 入浴時間はとっくに過ぎてるわよ」



「マジかよ……。ジャクージとかサウナがあるって聞いてたから楽しみにしてたのに……」



「ジャクージならあるわよ?」



「は? 大浴場の他そんなのあったか?」



「ここ」



「……俺の見間違いじゃなければ指が自分の方に向いてるような気がするんだが?」



「だから、私が泡だらけになれば泡風呂になるでしょ?」



「なる訳ねーだろ!」


――



真美
「いや~、サッパリした→」



「ぁぅ……。のぼせたかも……」



「大丈夫か?」



「あっ! お兄ちゃんおかえり!」



「ただいま。というかお前らはしゃぎ過ぎだろ。声が漏れてたぞ?」


真美
「愛ぴょん声が大きいからね→」



「真美ちゃんがからかうからだよー!」


真美
「ちなみに、おっぱいも大きかったです。……マジで」ボソッ



「へー」ジーッ


真美
「……?」リンッ



「?」プリュン



「なんかアンタたちが並ぶと同じ歳に見えないわね」


真美
「くっ。言ってはならないことを……」



「お前だって成長期なんだから気にすることじゃないだろ」


真美
「それでも気になるの!」



「あっそ」



「でも男に揉まれると大きくなるみたいよ?」


真美
「揉まれると? まさか……」ジー



「揉まれてないよ!!?」



「……ッ! ッ!」プルプル



「お前なぁ……。自分の娘を貶めてなにがしたいんだよ」



「フフッ♪ やっぱりこの子たち面白いわ」


――

また後で書きにきます。



――ボォーン、ボォーン。



「12時か……。真美、愛。お前らもそろそろ――」


真美
「……みゅ」スゥスゥ



「……スゥ……スゥ」



「って、もう寝てたのか」



「あれだけ騒いでたもの。はしゃぎ疲れたみたいね」



「ほとんどアンタが引っ掻き回したのが原因だけどな」



「まぁ良いじゃない。……帰るんでしょ?」



「知ってたのか?」



「なんとなくだけどね。アイドルが休みだからってプロデューサーまで休みにはならないでしょ?」



「まぁ、な」



「真美ちゃんの面倒は私が見るからアンタは気兼ねなく行ってきなさい」



「悪いな。……でも、いきなり俺がいなくなったらアイツは戸惑うんじゃないか?」



「愛だって話せば分かってくれるわよ」



「なら良いんだけど……」


――「……白ちゃん?」



「あっ、悪い。起こしちゃったか?」


真美
「ンッ……。白ちゃん……どっか行くの?」ゴシゴシ



「あぁ。少し出かけてくる」


真美
「そっか……」ウトウト



「眠たいんだろ? ムリしないで休め」


真美
「ん~……、白ちゃんと一緒が良い……」



「お前が寝るまで隣にいるよ。それじゃダメか?」


真美
「ヤダァ……。一緒に寝るぅ……」



「困ったなぁ……」


真美
「……ダメ?」



「……分かったよ。一緒に寝よう」


真美
「ホントに……?」



「あぁ。でも今日だけだぞ?」


真美
「うん。ありがと……」



(……ごめんな、真美)


――



真美
「……すぅ……すぅ……」



「……」ナデナデ


真美
「……ン。……」



「さてと……」キシッ



「もう行くの?」



「みんな早くから仕事してるのに俺だけ定時に来るのは失礼だろ?」



「ふーん。でも仮眠くらいは取ったらどう? アンタまだ寝てないんでしょ?」



「まぁ、帰りにパーキングでも寄って少し寝るよ」



「はぁ……。なんでプロデューサーってこうも仕事人間ばっかりなのかしら」


――



赤羽根
「……」カタカタ


――ガチャッ



「あ、先輩。おはようございます」


赤羽根
「……おはよ。真美は一緒じゃないのか?」



「えぇ。今日のスケジュールは全てキャンセルしました」


赤羽根
「どういうことだ?」



「軽い過労ですよ。疲れが取れなかったみたいですね」


赤羽根
「なにやってるんだよ……。体調管理もプロデューサーの役目だろ」



「反省しています」


赤羽根
「口だけだ。ホントに反省してるなら、仕事よりも真美を優先してるはずじゃないか」



「そういう訳にもいきませんよ。俺の担当は真美だけじゃなく竜宮小町もいるんですから」


赤羽根
「それは律子のユニットだ。お前じゃない」



「そうですか。……ところで先輩、言いたいことがあるならハッキリ言ったらどうですか? 俺がムカつくのは分かりましたが、そういう突っかかり方をされると俺も腹立たしいです」


赤羽根
「……」



「黙ってたら伝わりませんよ」


赤羽根
「今日からアイドルたちを預けるのは止める。……信用できないんだよ、……お前は……」



「でしょうね。それが普通です」


赤羽根
「……」



「言いたいことはそれだけですか?」


赤羽根
「いや、まだある。……これ以上765プロの雰囲気が悪くなる前に、ココから立ち去ってくれないか。……お前といると、真美まで穢れるかもしれない」



「ずいぶん嫌われたものですね。……それは先輩の意見ですか? それとも社長の命令ですか?」


赤羽根
「俺の……、個人的な意見だ」



「なら、お聞きできません」


赤羽根
「……、誰かをこんなに疎ましく思ったのは初めてだよ……」



「へぇ。俺は最初に会った時から嫌いでした」


赤羽根
「そうか……、同じだったのか……」



「嬉しくもない両思いですね」


赤羽根
「……。……話はそれだけだ」



「えぇ、分かりました。でも仕事だけは私情を挟まないで下さいよ?」


赤羽根
「お前に言われる筋合いはない」



「あ、そうですか」


――

はよ、P社会的抹殺しておけ




「それじゃ次の現場に向かうぞー」


あずさ
「……」


伊織
「……」



「なんか伊織まで元気ないな。どうしたんだ?」


亜美
「……みんな限界なんだよ」



「亜美?」


亜美
「気安く呼ばないで。真美は白ちゃんを気に入ってるみたいだけど、亜美は嫌いだからさ」



「……」


亜美
「白ちゃんのやり方にはついて行けないよ。亜美たちを早く律っちゃんのところに返して」



「ダメだ。まだお前たちを手放すつもりはない」


亜美
「……返してくれないなら、亜美たちはお仕事しないつもりだから」



「……本気か?」


亜美
「うん。例え信頼を失くしても、また律っちゃんとやり直すだけだよ」



「……」


亜美
「もう亜美たちは白ちゃんに従わない。竜宮小町のプロデューサーは、律っちゃんだけだもん」



「……」


亜美
「ごめんね」



「……なんで謝るんだ? そんな理由ないだろ」


亜美
「白ちゃんのこと嫌いだけど、……それでも真美の為に頑張ってるの知ってるから」



「……なら、もう少しだけ我慢してくれないか? あと少しでSランクに手が届きそうなんだ」


亜美
「……ごめんね」


――

ここまでにします。


気になるとこで…!


こんなところで切りやがって


後ちょっとのとこで人間関係のツケが来たか。踏ん張れP

赤羽根も竜宮もPを嫌う理由が私情過ぎてPが悪く見えない
しかも優先度が真美<律子
真美かわいそ過ぎ

社長も赤羽根や律子は前作の映画見てなかったんだろうか?
見てたら紹介状あるとはいえ雇わないと思うんだけど

一人より複数を優先するのは当然じゃないのかな?

作品楽しみにしてる

実績からすればSランク育てた白Pの方が赤羽根Pより上だろ。
765プロの仲良しこよし体質の悪い部分が目立つな。

>>305さん。
裏設定ですが、……石川社長がすぐに映画の公開を止めさせたので赤羽根と律子は映画についてあまり知りません。

高木社長は映画を知っていますが、石川社長の説得+前作でPと善澤の会話に交じった際の印象を元に、疑心暗鬼ながらも雇うことにした。となります。


>>307さん。
現時点でのSランクアイドルは春香・千早・美希・愛・ジュピターを想定してるので、実績では赤羽根、実力ではPが上というパワーバランスにしたいと思います。


描写足らずですいません……。

追記:Pと高木社長は雇用契約を結んでいません。



――ガチャッ。



「……“お邪魔します”。って、みんなもう寝てるか」



「……? なんでココだけ電気が――」


――カチャンッ



「あ、お兄ちゃん!」



「遅い! こんな時間までなにやってたの! 」



「愛、それに舞さんも……。なんでみんな起きてるんだ?」



「待っててあげたのよ。せっかくの夕飯なのに、一人欠けてたら味気ないでしょ?」



「いや、だからってこんな時間まで……」



「良いから座りなさい。そんな所で立たれたらジャマよ」



「え? あぁ……」


――ゴトッ



「ふふっ。おかえりなさい! お兄ちゃん♪」



「えっと、……ただいま?」


――




「それでね! 今度ゲロゲロキッチンにでることになったんだよ!」



「へー。でも、わざわざローカル番組にでなくても良かったんじゃないか?」



「あの番組すごく好きだから出演してみたかったの!」



「ふーん」



「はいはい。お喋りはそこまでにして、二人ともご飯を運んでちょうだい」



「はーい! 行こ? お兄ちゃん」



「はいよ」



「ふふっ、今日のご飯は愛の自信作よ?」



「そうなのか?」



「うん! ママと一緒にビーフシチュー作ったの!」



「愛、そこは自分で作ったって言うところよ?」



「なんで? ママも手伝ってくれたでしょ?」



「……。まぁ、素直なのも愛らしさね」



「?」


――




「ごちそうさまでした」



「美味しかった?」



「あぁ。少し見ない間に家庭的になったな」ナデナデ



「えへへ」



「食器は水に浸しておいて。後で洗うわ」



「いや、自分でやるよ」


――カチャカチャ。ジャーッ



「……」



「ねぇねぇ、お兄ちゃん!」



「なんだ?」



「明日も帰ってきてくれる?」



「そうだな……。なにもなければ、しばらく厄介になろうと思う」



「ホントに!?」



「あぁ。これからよろしくな」



「うん!」


――




「それじゃ、ママ! お兄ちゃん! おやすみ!」



「えぇ。おやすみなさい、愛」



「あんまり夜更かしするなよ?」



「しないよーだ♪」


――カチャンッ



「夜だってのに元気なヤツだ」



「それだけアンタの帰りを楽しみにしてたのよ」



「そっか。……だとしたら、今日は悪いことしたな」



「そう思うなら次からは早く帰ってきなさい。私だって眠いの我慢してたのよ?」



「善処するよ」



「……ねぇ、やっぱり慣れない?」



「なにが?」



「この関係のことよ」



「……さぁな」



「……」



「正直、家族がどういうものなのか俺には分からない。今までずっと独りで生きてきた俺にとって、家族なんて幻想だと思ってたから」



「……怖いの?」



「どうだろう」



「……」



「でも、……誰かと一緒になってご飯を食べるのも、悪くない」



「……そう。なら良かったわ」



「感謝してるよ。居場所をくれたアンタにも、今まで通りに接してくれた愛にも……」



「お礼なんて言わないんじゃなかったかしら?」



「“ありがとう”なんて言ってないだろ?」



「ふふっ。……変わったわね」



「そうかもな」



「さて、そろそろ私たちも寝ましょうか」



「……舞さん」



「なに?」



「……明日から少し遅めに出るよ」



「あら? どういう心境の変化?」



「別に。こういうのも兄貴の仕事かなって」



「ふーん」



「それじゃ、おやすみ」



「えぇ、おやすみなさい。P」


――

一服してきます



赤羽根
「おはようございます!」


小鳥
「おはようございます赤羽根さん」


高木
「おはよう赤羽根君。なんだか今日は張り切ってるじゃないか」


赤羽根
「はい! 前々からアポを取ってたんですけど、ようやくお会いできることになりました!」


高木
「張り切るのも良いが、相手はかなりの大物だ。それに黒い噂もよく聞く。十分に気をつけてくれたまえ」


赤羽根
「えぇ……。でも気に入ってもらえれば強いコネがつくれます。みんなの為にも今日は気合を入れて行きますよ!」


高木
「うむ。その意気なら大丈夫だろう。君の報告、楽しみにしてるよ」


小鳥
「ふふっ、頑張ってください」


――



赤羽根
「今日はよろしくお願いします!」


取締役
「ん? 貴方は確か……」


赤羽根
「天海春香のプロデューサーをしている赤羽根です!」


取締役
「あぁ、そんな名前でしたね」


赤羽根
「はい! こんな大舞台で歌う機会を頂きありがとうございます!」


取締役
「いえいえ。コチラも彼女の歌声を聞くのは初めてなので楽しみにしていました。今日の収録、期待してますよ?」


赤羽根
「きっと春香なら、期待を裏切らない。……いえ、最高の結果になると思います!」


取締役
「そうですか。……ところで赤羽根さん。貴方、765プロダクションの所属でしたよね?」


赤羽根
「えぇ。それがどうかしましたか?」


取締役
「同じ事務所にPというプロデューサーがいると思うのですが……」


赤羽根
「P、ですか……」


取締役
「えぇ。個人的に話したいことがあるのでお会いさせて下さい。あぁ、もちろん彼の仕事が終わってからで構いません」


赤羽根
「……」


取締役
「どうかされましたか?」


赤羽根
「あ、いえ……。……分かりました。……伝えておきます」


取締役
「どうもありがとうございます。えっと、……赤種さんでしたっけ?」


赤羽根
「…………赤羽根です」


取締役
「これは失礼。それではよろしくお願いしますね」


赤羽根
「……はい」


――



赤羽根
「ただいま帰りました」


小鳥
「おかえりなさい赤羽根さん。その様子だとダメでしたか……」


赤羽根
「いえ、そういうわけじゃないんですが……」


小鳥
「?」


赤羽根
「とりあえず、……P、いますか?」


小鳥
「え?」


赤羽根
「先方が指名したのがPだったので」


小鳥
「あぁ、なるほど……。でもプロデューサーさん、社長と話し合いをしてるみたいなのでもう少し掛かると思いますよ?」


赤羽根
「社長とですか……。Pのヤツ、今度はなにを企んでるんだ?」


小鳥
「さぁ……。あの人の考えてることはよく分からないですからね」


赤羽根
「同感です」


――




「それでは失礼します」


――カチャンッ



「あ、先輩。もう帰ってきたんですか?」


赤羽根
「お前に少し用があってな」



「?」


赤羽根
「まぁ、それは後回しにしよう。それよりも……、今度はなにを企んでるんだ?」



「なんの話です?」


赤羽根
「とぼけないでくれ。社長と話し合いをしてたんだろう? 今度はなにをする気なんだ」



「あぁ、なるほど。……先輩たちにとっては朗報じゃないんですか?」


律子
「え?」


赤羽根
「……どういう意味だ?」



「竜宮小町の担当、降りるんですよ」


赤羽根・律子
「!?」



「良かったな律子。これで明日から竜宮小町のプロデューサーに戻れるぞ」


律子
「その話、ほ、本当なんですか!?」



「あぁ。信用できないのなら社長に聞いたらどうだ?」


律子
「そうさせてもらいます!」


――バタンッ!



「……それで、俺に用というのは?」


赤羽根
「え? あ、あぁ、そうだったな。実は……」


――




「お断りします」


赤羽根
「待ってくれ! 先方がお前を指名してるんだ!」



「知りません。そもそも先輩の実力不足じゃないですか」


赤羽根
「ぐっ……」



「俺はその件について一切関与するつもりはないので、そう伝えておいて下さい」


赤羽根
「相手は重役だぞ。……できる訳がないだろ」



「なら自分でなんとかすることですね」


赤羽根
「そんなこと分かってる。でもお前しかいないんだ! 頼む!」



「……敵対してる相手に頼み事をするなんてプライドはないんですか?」


赤羽根
「あるさッ! でも、みんなの為ならそんなプライド捨ててやる! だから頼む! この話を受けてくれ!」



「嫌ですね。いくら頼まれても考えは変わりません」




――「それなら、私からも頼もう」






「……社長? 律子と話し合っていたんじゃなかったんですか?」


高木
「赤羽根君が声を荒げているのが聞こえたのだよ。それよりもP君。この話、受けてくれないか?」



「……嫌です」


高木
「あの企業と繋がりができることはアイドル諸君もこの事務所にとっても大きなメリットになる。それを分かった上での答えなのかね?」



「えぇ」


高木
「そうか……。それならば仕方が無い」



「……」


高木
「社長命令だ。“受けなさい”」



「……断ると言ったら?」


高木
「前にも言ったと思うが……、その時は立ち去ってもらうしかあるまい」


小鳥
「それって……」


律子
「断ればクビってことですよね……?」


赤羽根
「……」


高木
「さぁ、答えを聞こうか。P君」



「……」


――



――コンコン。


取締役
「どうぞ」



「……お久しぶりですね」


取締役
「コチラこそお久しぶりです。以前にお会いしたのは一年ほど前でしたかな?」



「えぇ。その節はお世話になりました」


取締役
「そう警戒しないで下さい。お互い、過去のことは水に流しましょう」



「……それで、俺を呼び出したのはどのようなご用時ですか?」


取締役
「そうですね……。では単刀直入に言いましょう」






取締役
「 日高 舞さんとお食事させて下さい 」








「……」


取締役
「今でも日高さんと連絡を取り合ってるのでしょう?」



「……お断りさせてもらいます」


取締役
「ほう。理由をお聞きしても良いですか?」



「彼女との関係は終わりました。それだけです」


取締役
「……Pさん。ウソはいけませんね」



「どういうことですか?」


取締役
「例の事件、見させてもらいましたよ。あれだけ嫌悪していた人間をこんな短期間に許せるはずがない。……そうでしょう?」



「……」


取締役
「それとも仲直りでもしましたか? まぁ、家族の真似事をするくらいですから、そっちの方が有力でしょうね」



「なんの話か分かりませんね」



取締役
「……Pさん。私、ウソが大嫌いなんですよ。あまり幻滅させないで下さい」



「正直に話してるじゃないですか。ウソだと思うのは、あなたが信じてくれないからですよ」


取締役
「……あくまで隠し通そうとしますか。……ところでPさん。少し前から日高さんのご自宅にお邪魔してましたよね? 証拠も、……ほら」ピラッ



「――ッ」


取締役
「これでもう言い逃れはできませんよ」ニコッ



「……ずいぶん悪趣味なやり方ですね。盗撮じゃないですか」


取締役
「おやおや人聞きの悪い。“参考資料”ですよ」



「……」


取締役
「さて、話は変わりますが……、私の会社とあなたが所属する765プロ、実は深い繋がりがあるのはご存知ですか?」



「えぇ……。竜宮小町や星井美希、その他大勢のアイドルがあなたの企画した番組でブレイクしている。……それがどうかしましたか?」


取締役
「とぼけないで下さい。頭の良い貴方のことだ、ここまで言えば理解しているのでしょう?」



「……チッ。俺だけじゃなく事務所まで巻き込む気か」


取締役
「さぁ? それは貴方次第じゃないですか?」



「今更とぼけんなよ。俺の返答次第じゃ765プロを潰す気なんだろ?」


取締役
「そんな言い方をして良いんですか? お望みなら今からでも潰すことができるんですよ?」



「ふーん。なら、やれよ」


取締役
「なんですって?」



「だから潰すなら潰せって言ってるんだよ。……まぁ、その時はアンタが困ることになるがな」


取締役
「言ってる意味が分かりませんね」



「へぇ。じゃあ聞くが……、プロデューサーじゃなくなった俺とどうコンタクトを取る気なんだ?」


取締役
「……」



「確かに事務所を潰されたら俺は痛手だ。でも、逆に考えればアンタは唯一日高に関わりがある人間を手放すことになる。そうだろ?」


取締役
「……なるほど。この程度の脅しでは揺るがないようですね」



「残念だったな。こっちもそれなりに修羅場を潜ってきたんだ」



取締役
「そのようですね。それでは違う脅し方をしましょう。……実は日高 愛さんも私の番組に出演することになっています」



「笑える冗談だな」


取締役
「おや、信じませんか?」



「当たり前だ。愛は一度、アンタに利用されてる。その愛が同じ失敗を繰り返すとは思えない」


取締役
「なるほど。確かに愛さんは私と関わりがありません。……今はね」



(今は……?)


取締役
「不思議そうな顔をしてますね。では、ヒントだけ。……“ゲロゲロキッチン”」



「――ッ! まさか!」


取締役
「えぇ。お察しの通り、買収しました。なので、あの番組は既に私のものです」




「……ッ」


取締役
「さて、どんな企画にしましょうか……。あぁ、そういえば愛さんってまだ処女でしたよね。……楽しみにしていた番組で純潔を散らされるってのはどうですか? きっと良い“撮影”になりますよ?」



「テメェ……、そこまでして舞さんと寝たいのか! この下衆がァッ!!」


取締役
「クックック。……さて、Pさん。話し合いはここまでにして、そろそろご返答お願いしましょうか」



「くっ……ッ」


取締役
「おやおや、まだご自分の立場が分かってないようですね。それとも、まだ貴方を縛るには足りませんか? なら双海さんも――」



「真美は……、関係ない……」ギリッ


取締役
「そうですね。ではPさん、ご返答をどうぞ」



「……一週間……時間をくれ」


取締役
「それが人にものを頼む態度ですか?」



「……ッ。……時間を……下さい……」


取締役
「おや? “お願いします”が聞こえませんね」



「お願い……します……。時間を……下さい……ッ」ギリィッ


取締役
「えぇ、そうです。それが人にものを頼む時の態度ですよ」



「…………」


取締役
「それでは一週間後の連絡をお待ちしていますね、Pさん」


――




「……」


小鳥
「あっ、おかえりなさいPさん」



「……」


小鳥
「ど、どうしたんですか? 凄く怖い顔してますけど……?」



「……。一週間ほど……、休ませてもらいます……」


小鳥
「え?」



「……お疲れ様でした」


小鳥
「ちょ、ちょっと! そんな勝手に休まれたら困ります! せめて事前に――」


――バタンッ


小鳥
「あぁ……、行っちゃった……」


――

今日はここまでにします。

さっさとP死んとけ

いやいや、死ぬべきは取締役

社長もな

羽根Pがどうしようもない奴やで……

>>334
Pアンチ毎度お疲れ様です。
白P頑張れ。

シロちゃんに大きく非があるとはいえ765勢がイマイチ好きになれんぜよ

赤羽根がただの自己中にしか見えないからねえ

白Pの一週間の攻防がたのしみだ




「……」


――キッ、コン、キッ、コン、キッ、コン……。



「……。お兄ちゃん、帰ってくるの遅いね……」



「……まったく、どこで油売ってるのかしら?」


――~♫~♪♬~♬。



「誰よ、この忙しい時に。……P?」



「え?」



「はい、もしもし?」



『……舞さんか?』



「アンタねぇ……、遅れるなら遅れるって電話くらい掛けなさいよ」



『……悪い』



「それで? 今日は何時くらいになるの? さすがに朝帰りなら待ってられないわよ」



『いや、待たなくて良い。しばらく帰るつもりはないから……』



「……なにかあったの?」



『……。話はそれだけだから、切るよ』



「あ、ちょっと!」


――ツー、ツー、ツー……。



「……。なんなのよ……」



「お兄ちゃん何だって?」



「しばらく帰ってこれないみたい」



「そっか……」



「そう落ち込まないで。あんな薄情者のことなんか忘れてご飯にしましょう」



「うん……」







「……」



(アイツ、なにか隠してるみたいね……)



「どうしたのママ?」



「ううん。なんでもない」



(……なんだか胸騒ぎがするわ)






――




~♫~♪♬~♬。。



「……」




―――――


日高 舞


―――――





「……」


♬~♫♪~♬。――。
♬~♫♪~♬。――。
♬~♫♪~♬。――。
♬~♫♪~♬。――。



「……はぁ」



♬~♫♪……。



「もしもし?」



『遅いッ! 出るなら一回目に出なさいよ!』



「だからって着信画面を埋め尽くすなよ」



『アンタがすぐに出ないからでしょうが!』



「……。それで? 俺に何の用なんだ?」



『あぁ、そうだった。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……』



――ざわざゎ。――ざゎざわ。




『なんだか、ずいぶん騒がしいわね。アンタ今どこにいるの?』



「どこでも良いだろ。それより仕事中なんだ。切るぞ?」



――駅に――ぅ。――駅に到着ぅ。




『仕事ねぇ……。まぁ、良いわ。私もそっちに向かうから待っててちょうだい』



「……は? 言ってる意味が――」



『それじゃ。ちゃんと待ってなさいよ?』



「お、おい!」


――




「お待たせ♪」



「……ッチ」



「仕事のジャマしたのは悪いと思ってるけど、いきなり舌打ちはないんじゃない?」



「そう思うなら帰ってくれ」



「イヤよ。なんでせっかく来たのに帰らないといけないの?」



「……。何しに来たんだよ……」



「やけに苛立ってるじゃない。そんなに私がいると都合が悪いわけ?」



「そうだよ。……なぁ、頼むから帰ってくれないか?」



「イ・ヤ♪」ニコッ



「……」イラッ




「でも、そうねぇ……。アンタが企んでることを教えてくれたら考えなくも無いわ」



「なんのことだ?」



「アンタの事よ。……私たちに何を隠してるの?」



「考えすぎだろ。俺はなにも隠してなんかいない」



「ふーん。あくまで“なにもなかった”ことにしたいのかしら?」



「……」



「都合が悪くなったら黙るアンタの癖、なにかあったって言ってるようなものよ?」



「……話せば帰ってくれるのか?」



「えぇ。アンタがちゃんと話してくれたらね」


――




「――。まぁ、こんなところだな」



「なによそれ。私とヤりたい為に愛や真美ちゃんを利用してアンタを脅したってことじゃない」



「……」



「女の敵ね……。許せないわ」



「……言われた通り、全部話しただろ? だから早く帰ってくれ」



「帰るわけないじゃない」



「おい、話が違うぞ!」



「私は帰るなんて言ってないわ。それに、こんな話を聞いて引き下がる女に見える?」



「……ッチ」



「別にアンタのジャマはしない。でも、協力はさせてもらうわ」




「……ふざけんなよ。俺が何の為に一人で行動してると思ってんだ」



「そんなの知らないわよ」



「テメェ……」



「ねぇ、P。私も今、相当ムカついてるのよねぇ……。なんでだか分かる?」



「あ゛?」



「それはね……」



――グィッ。




「――ッ!?」



「アンタが何も教えてくれなかった事に対してよ!!!」



「ケホッ……。いきなり何しやがんだ!」



「うるさいッ!」



「グッ……」




「昨日の電話もそうよ! 脅されてるなら少しくらい伝えてくれても良いじゃない! そんなに私たちは信用できないの!?」



「これは俺の問題だ! お前らには関係ないだろ!」



「――ッ!」



――パァンッ!




「……ッ」ヒリヒリ



「私はね! そうやってなんでも抱え込んで、一人で解決できるって思ってるアンタのそういうところがムカつくのよ!!」



「なにが関係ないですって!? あるに決まってるでしょッ!! 自分の家族にケンカ売られて黙っていられるほど人間できてないのよ!!」



「“ごっこ遊び”の家族だろ! 結局は他人じゃねぇか!」



「そうよ! だから何!? 例えごっこ遊びでも、私たちにとって“家族”なのは変わらないわ!!」



「――ッ」





「……ねぇ、……私は嬉しかったのよ? 愛の為に家族になったことじゃなくて、純粋に家族が増えたことが嬉しかったの」



「それに、アンタは私に感謝してたけど、私だってアンタに感謝してたわ。……あれだけ憎んでいた私の過去を……許してくれたんだもの……」



「……」



「アンタが自分を他人だと思うのは仕方が無いのかもしれない。それでも……、少しくらい分けなさいよ。悩みでも愚痴でも、なんでも良い。……アンタを支えるのも、私たちの役目なんだから」



「舞さん……」



「……少し感情的になり過ぎちゃったわね。……頬、痛かったでしょ?」



「あ、いや、気にしなくて良い。……あれは俺が悪かったから……」



「……優しいのね」



「……」




「でも、これだけは覚えておいて。……アンタが私たちの為に身体を張るなら、私もアンタを守る為になんだってやる。……例えサルと寝ることになっても、家族を守る為なら喜んで寝てやるわ」



「そんなこと、……させない」



「例え話よ。そのくらい私は家族を大切にしてるの。だから今回の件、私も引く気はないわよ?」



「……」



「協力させてくれないなら、そのサルと寝るからね?」



「……。勝手な行動は取らない。これが条件だ」



「ふふっ。そうこなくっちゃ♪」



「はぁ……。幻滅しても知らないからな?」



「そんなに汚いやり方なの?」



「女のアンタから見たら最低だろうな。でも、上手くいけば社会的に抹殺できるかもしれない」



「ふーん。まぁ、自分で言ったからには最後まで付き合うわよ」



「なら良いけど……」


――



――コンコン。


取締役
「どうぞ」



「失礼します」


取締役
「これはこれは。お待ちしていましたよ、Pさん」



「……」


取締役
「ずいぶん嫌われたものですね。まぁ、良いでしょう。それで? お食事の件、どうなりましたか?」



「残念ながら貴方と食事する時間はありませんでしたが……」



――ゴトッ。




「ホテルの鍵です。……後は言わなくても分かりますよね?」


取締役
「クックックッ……。なるほど、“嫌な時間は短い方が良い”という訳ですか」



「……彼女は――ホテルの深夜2時頃に待機させます」


取締役
「えぇ、分かりました。ほかに用事はありますか?」



「……」フルフル


取締役
「そうですか。なら、お帰り頂いても結構ですよ」




「……」


取締役
「どうかしましたか?」



「……約束は果たしました。だから愛や真美、それに事務所にも手を出さないでくれますか?」


取締役
「あぁ、そのことですか。分かってますよ。約束通り、一切関わりません」



「……それを聞いて安心しました。それでは失礼します」


――カチャンッ。



取締役
「……」



取締役
「……クッ、クッ、クッ、……ハーハッハッハッハ!!!」


取締役
「まさかこうもあっさり日高舞と寝れるとは思わなかった! あのプロデューサー、素晴らしい駒じゃないか!」


取締役
「クックック……。お礼にちゃんと約束は守りますよ。“約束通り”ね……」


――



― AM2:00 ―



取締役
(クックック。このドアの向こうに、あの“日高 舞”が……)



――コンコン。



取締役
「失礼しますよ?」



「……アンタが私のお相手?」



取締役
「えぇ。今夜はよろしくお願いします」



「……。まさか私がこんなサルと寝ることになるなんてね……」



取締役
「ひどい言い方ですね。そのサルと寝ることを了承したのは貴方でしょう?」



「御託はいいから早く来なさいよ。それとも怖気づいたのかしら?」



取締役
「……その高飛車な態度がいつまで続くのか楽しみですねぇ」ニタァ


――




――バシンッ!



「ッ!」



取締役
「クックック。良い顔になってきたじゃないですか」



「……、サルのくせに良い趣味してるじゃない」



取締役
「さすが伝説のアイドル、まだそんな口が聞けますか。それでこそ楽しみ甲斐があるというものです。なら――」



――ビリィッ、ビリリッ!



「……ッ」



取締役
「こういうのも趣があって良いでしょう?」



「最低……ッ」



取締役
「ハハハハッ! その必死に耐える顔は堪りませんね」




――ペロッ。ツー。



「ひっ!?」



取締役
「おや? お腹が弱いんですか? これは良い発見をしました」



――さゎッ。



「い、いやッ! 止め、て……」



――バシンッ!!



取締役
「止める訳がないでしょう?」



「――ッ。……助けて……」



取締役
「誰も助けに来ませんよ。今夜はずっと“二人っきり”です」



「イヤ……。助けて……」



取締役
「クックックック。その悲痛に歪む顔、堪りませんね~」



「イヤ……。嫌……ッ! 助けて……! 助けてPさんッ!!」



取締役
「ハッハッハッハッハ!! 自分を売った人間が助けに来る訳がないじゃないですか! ハッハッハッハ!!!」






――「そうとも限りませんよ?」





取締役
「ハッハッハ……は?」



「Pさん!」




「よう。待たせて悪かったな」


取締役
「なぜ……貴方がここに……?」



「お楽しみのところ申し訳ありませんね。ちょっと“忘れ物”を取りに来たんですよ」


取締役
「忘れ物……?」



「えぇ。……作業員さん、お願いします」パチン






「はーい!」






取締役
「なッ!? 日高舞!? じゃあこの女は……?」



「ふふっ。日坂って言うんだが……、似てるだろ? なんせホンモノのお墨付きだからな」


取締役
「この女が偽者……? 私を騙したのですか!?」



「あれ? おっかしいわね……」



「おいおい。まだ見つからないのか?」


取締役
「人の話を聞きなさいッ!」



「うるさい。というかアンタちょっとジャマよ」グイッ


取締役
「うわっ!?」



「えっと、確かここら辺に……。あったわよ」ヒュッ



「サンキュー」パシッ


取締役
「……なんですか、それは?」



「あぁ、気にするな。ただの“参考資料”だ」


取締役
「くっ……。こんなことをして只で済むと思わないことですね」



「はぁ……。アンタ、まだ自分の立場が分かってないのか?」


取締役
「なんですって?」



「婦女暴行、脅迫、それにレイプ未遂……になるのか? とりあえず公表されたら暫くは塀の中だろうな」


取締役
「……ッ!」



「まぁ、向こうでも穴はあるさ。精々頑張って腰を振ってくれ」



取締役
「……いくらですか?」



「あ?」


取締役
「いくらでそのカメラを譲ってくれるんですか? 一億ですか? 十億ですか?」



「いくらねぇ……。いくら欲しい?」


日坂
「えっ!? 私ですか!?」



「一番の被害者だからな。いくらでも払ってくれるってよ」


日坂
「えっと……。じゃあ、一億……」


取締役
「一億ですね。すぐに用意させますよ」ニヤッ



「舞さんは?」



「そうねぇ……。世界が欲しいわ」



「ハハッ、舞さんらしいな」


取締役
「――は?」



「という訳で“世界+一億”を俺たちにくれ」



取締役
「……私をバカにしてるんですか?」



「コッチは至って真面目だ」


取締役
「ふざけないで下さい! なんですか“世界”って! 子供じゃないんだから具体的な金額を指定しなさいよ!」



「払えないのか?」


取締役
「当たり前じゃないですか! 要求金額が世界なんて払える訳ないでしょう!」



「ふーん。ならこの話は無かったことで」


取締役
「なッ!?」



「なに驚いてるんだ? 要求に従えないんだから当たり前だろ?」


取締役
「く……ッ。つまり最初っから交渉に応じる気はなかったのですね」



「もう気は済んだろ? さっさと消えな」


取締役
「……私を嵌めたこと、必ず後悔させてあげますよ」


――

残りは8時頃にします

困難な局面を反則的な手段で切り抜ける白Pな姿にカタルシスを覚えるわ
8時からのも期待。




「謝礼だ。受け取ってくれ」


日坂
「いち、じゅう、ひゃく、……ッ!!? い、いらないです! こんなに受け取れません!」



「なに言ってるんだ。“自分で要求した金額”だろ?」


日坂
「……? あっ! 違います! あれはその場の雰囲気というかなんというか……」ゴニョゴニョ



「良いから受け取ってくれ。それに俺は仕事に見合った金額だと思ってる」


日坂
「……えっと、じゃあ、その……遠慮なく……」



「あぁ。それじゃあ“この後のこと”、よろしく頼むよ」


日坂
「分かってます。あんな悪い人、ケチョンケチョンにやっつけてやるんだから」



「ふふっ、頼もしいな。……さて、やることも終わったし帰ろうか、舞さん」



「……」



「舞さん?」




――バシンッ!!




「――ッ!?」



「……最ッ低」



「ッてぇな。いきなり何すんだよ」ギロッ



「……確かにアンタのやり方は前に聞いたわ。でもね……、それでもムカつくものはムカつくのよ!!」



――バシンッ!!!




「――ッ」



「嵌めたからって何? 女の身体を傷つけて、結局アンタもあのサルと同じよ!」



「だから何だ? それでも良いって言ったのはアンタだろ」



「えぇ、そうね。でも、さっきも言ったでしょ? ムカつくものはムカつくのよ!」



「テメェ……」



「なかなか良い眼付きしてるじゃない。コッチも殴り足りないところなのよね」



日坂
「あ、あのぅ……」



「なによ!」


日坂
「ひッ!」ビクッ



「あ、ごめんなさい……」


日坂
「い、良いんです。でも、その……、Pさんを責めないで下さい」



「優しいのね。だけど、こんなクズ庇わなくても良いのよ?」


日坂
「違います! Pさんはクズなんかじゃありません! 私の恩人です!」



「……どういうこと?」


日坂
「私、……付き合ってた彼氏に騙されて借金を背負わされちゃったんです」



「……」


日坂
「仕方が無いからAVとか風俗で働いて地道に返そうとしてたんですけど、利息を払うのが精一杯で……」



「そう……。大変だったわね」


日坂
「でも、そんな時にPさんが助けてくれたんです! 借金を完済してくれた上にこんな大金まで……。だから、私はPさんが悪い人じゃないと思います!」



「騙されてるだけよ。現にアンタ、あのサルを嵌めるのに利用されてたじゃない」



日坂
「利用されてなんかいません! 借金を払ってくれる代わりにPさんの計画に協力させてもらったんです!」



「……。世間一般じゃ、それを利用されてるって言うんだけど……」


日坂
「それに私はPさんが悪い人じゃないっていう確信があります!」



「ふーん。ずいぶん自信があるじゃない。なにか根拠でもあるの?」


日坂
「だって家族の為にここまでする人、中々いないじゃないですか!」



「――っ! この馬鹿ッ!」



「……なるほど。そういうことだったのね」


日坂
「はい♪ 確かにやり方は汚いかもしれませんけど、それだけ家族を大切にしてるってことですよ」



「はぁ……」



「……なんだよ」



「別に。ただ、なんでアンタはいつもこんなに分かり辛いやり方しかできないのかなって思っただけよ」



「……フン。……前にも言っただろ。これは俺の問題だったんだ」



「だから巻き込みたくなかったって訳?」



「……悪いかよ」



「…………ツンデレ?」



「俺がいつデレたんだ!」


――



日坂
「Pさん、今日はありがとうございました」



「ホントに良いのか? 送って行っても良いんだぞ?」


日坂
「流石にそこまでお世話になる訳にはいかないですよ。一人で帰れます」



「あんまり女性を一人で歩かせたくないんだが……」


日坂
「優しいんですね。……でも大丈夫! これでもお店じゃNo.1なんですよ? 夜の街は私の庭みたいなものです!」



「……そこまで言うなら仕方が無いな。気を付けて帰ってくれよ?」


日坂
「子供に心配されなくても大丈夫ですよー」



「こ、子供ォ!?」


日坂
「だってPさん、どう見ても高校生くらいじゃないですか。そんな童顔がお姉さんを心配するなんて百年早いぞ?」ツン、ツン



「……襲われてしまえ」ボソッ



日坂
「舞さんも今日はありがとうございました」



「お礼を言うのはコッチの方よ」


日坂
「いえいえ。お礼を言われる程のことなんてしてませんよ」



「……顔、脹れてるわね」スッ


日坂
「ッ。……き、気にしないで下さい。自分で引き受けたお仕事ですから」



「ごめんなさい……。私たちの問題なのに無関係なアナタまで巻き込んで……」


日坂
「良いんですよ。私みたいな人間でも誰かの役に立てた。それだけで十分です」



「そう……。あの、これ。少ないけど治療費に使ってちょうだい」


日坂
「え? だ、大丈夫ですよ。それに、Pさんからこんなに頂いたんですから」



「それはアイツの謝礼。私からは何も渡してないわ」


日坂
「でも……」



「人の好意は受け取るものよ。そうでしょ?」


日坂
「……そうですね。遠慮なく頂きます」



「ふふっ。素直な人は好きよ」


日坂
「それじゃあ皆さん、今日はお疲れさまでした! またどこかでお会いしましょう!」


――



――ヴォルルル……



「……」



「……」



「……ねぇ。なんでアンタ、あんな大金を持ってたのよ?」



「あの小切手のことか?」



「それ以外にないでしょ」



「……876プロにいた頃に稼いだんだよ」



「へー。でも普通に働いてたら一億なんて金額にはならないと思うけど?」



「普通なら、だろ? あの頃は愛の出した利益の一割が俺の給料に上乗せされてたんだ」



「ってことは愛の稼ぎで生活してたってこと? うゎ、それってヒモってやつじゃない」



「なんでだよ」



「まぁ、冗談はともかく……、アンタいくら持ってるのよ?」



「誰が教えるか」


――




「着いたぞ?」



「……ゥ、……スゥ」



「はぁ。……ったく」



――ユサユサ。




「起きろ。寝るなら自分の部屋で寝てくれ」



「ンッ……」



「起きたか?」



「ここ……どこ……?」



「自宅だよ。見覚えあるだろ?」



「……ホントだ。……ありがと……」ゥト、ゥト



「歩けるか?」



「だい……じょう……ぶ……」ヵクン





「はぁ、フラフラじゃないか。……ったく」



「ぁ……」フワッ



「家の中までだぞ?」



「……ベットまで運んでくれないの?」



「調子に乗んな」



「……なんか、今日のあなた……冷たい……」



(あなた……?)



「なぁ、舞さん」



「……舞」



「は?」



「舞って呼んでよ……」



「……」



「ダメ……?」



(……。そういうことか)





「ぷろでゅーさー……?」



「……なぁ、舞さん。……俺を、……“ダレ”と間違えてるんだ?」



「……ぇ? ……あっ」



「気が付いたみたいだな」



「ごめん、なさい……」



「“自覚”してたことだ。気にしないで良い」



「ごめんなさい……」



「……。今日は帰るよ。明日は来るから愛に心配するなって伝えておいて」



「……」



「それじゃ、おやすみ」


――

ここまでにします。

前作から通しで読んでて白Pに感情移入してるから何か複雑な気持ちになった

乙。
早く他の皆が白髪Pの優しさに気付いて理解して欲しいものですな。
取締役の捨て台詞が恐ろしくて仕様がない



真美
「ちょっと白ちゃん! 一週間もなにやってたのさ!」



「悪い。ちょっと用事があってな」


真美
「なら許すけど、コッチは大変だったんだよ?」



「なにかあったのか?」


真美
「兄ちゃんも律っちゃんも忙しいから、白ちゃんの代わりに社長さんが真美の付き添いになったんだけど……」



「?」


真美
「社長さんの昔話ばっかりで気まずかった……」



「あー」


――




――Prrr。Prrr。



小鳥
「はい、こちら765プロダクションです。――えっ? それはどういう……。あっ、待って下さい! せめて事情だけでも!」


赤羽根
「……小鳥さんも同じですか?」


小鳥
「はい……。ほとんどの電話が仕事のキャンセルでした。それにこの事務所と関わりを持たないという電話も……」


律子
「――は? ……待って下さい! その仕事は竜宮小町にって正式に決まっていたじゃないですか! なんでいきなり――」


赤羽根
「律子もか……」


律子
「えぇ、急に降板されました。それに765プロとは関わらないって……」


赤羽根
「さっきからどうなってるんだ……? 一つや二つならコチラの不手際だと思うが、いくらなんでも多すぎるだろ……」


律子
「明日のスケジュールだけで半分くらいは白紙にされましたからね……」




――カチャッ。




「ただいま戻りました」


真美
「帰ったYO→」



「なんだか騒がしいですね。どうしたんですか?」


小鳥
「それが……、さっきからキャンセルの電話が相次いでるんです……」



「キャンセルの電話が……?」



――Prrr。



小鳥
「はぁ……。きっと、またキャンセルだわ……」



「……どういうことだ?」



~♬~♫♪~♬。




(……知らない番号?)


真美
「白ちゃん。鳴ってるよ?」



「……真美、ちょっと悪い。電話に出てくる」


真美
「え? あ、うん。分かった」


赤羽根
「……」


律子
「……」


――




「はい、もしもし?」



――『おやおや、自分の事務所が大変だというのに、ずいぶんのんびりしてるんですね』




「……なるほど。やっぱり、この騒動の原因はアンタか」


取締役
『人聞きの悪いことを言わないで下さい。私は約束を果たしただけです』



「約束だと? 俺は事務所にちょっかいを出すなと言ったはずだが?」


取締役
『えぇ。だから関わるのを止めたじゃないですか。“約束通り”』



「テメェ……ッ」




取締役
『なに怒ってるんですか? 自分で言ったことでしょう?』



「……ッ」


取締役
『それに、Pさん。……私だって怒ってるんですよ?』



「……」


取締役
『だから“最後”の脅しです。あのカメラを渡しなさい。でなければ本当に潰す』



「せっかくの提案だが……、渡せない」


取締役
「そうですか。頭の良い人だと思いましたが残念です。明日から路頭に迷いなさい」



――ツー、ツー、ツー。



(やはり苦し紛れに仕掛けてきたか……。となれば、コッチも動くしかないな)



――Trrr。Trrr。Trrr……。



「お忙しい所をすいません、Pです。……例の件、交渉が決裂したのでよろしくお願いします。それじゃ」


――




――カチャンッ。




「ただいま」


真美
「白ちゃん……」



「……? どうしたんだ、真美?」


赤羽根
「――P。突然こんなことを聞くなんて失礼かもしれないが……、この騒動、お前が関与してるんだよな?」


真美
「兄ちゃん!」


赤羽根
「ごめんな真美。でも、俺にはPが原因としか考えられないんだ」



「……そう思うのは、なにか根拠があるんですよね?」


赤羽根
「あぁ、ある。……お前、俺が頼んだ件に行ってから急に休んだよな? しかも、その休みが明けてこれだ。どう考えてもタイミングが良すぎるだろ!」


真美
「偶然だよ! そんなの言いがかりじゃん!」



「……」



赤羽根
「真美、お前がPを信じたいのは分かる。だけど、俺たちはPのことを信じることができないんだ」


真美
「なんで!? 白ちゃんだって仲間でしょ!?」


赤羽根
「……仲間なんかじゃない。もうコイツは、俺たちの敵だ」


真美
「兄、ちゃん……?」


赤羽根
「P、お前が原因なんだろ?」



「……。根拠としては弱すぎますけど……、まぁ、良いです」


赤羽根
「……それは、どういう意味だ?」



「認めてるんですよ。この騒動を引き起こした原因は俺です。ってね」


赤羽根
「――ッ」


真美
「え……?」


赤羽根
「なんでこんなことになった? お前、あの役人となにがあったんだ?」



「……」


赤羽根
「答えろッ!」



「……“嫌です”」


赤羽根
「――ッ! お前ッ!」



「責任は取りますよ。だから詮索しないで下さい」


真美
「白ちゃん……」


――




――コンコン。



高木
「入りたまえ」



「失礼します」


高木
「……話は聞いてるよ。……すまなかったね。私が行けと命令しなければ……」



「同情は止めて下さい」


高木
「同情などではないよ。私は、悔やんでいるのだ……。自分の愚かさをね……」



「……本題に入りましょうか」


高木
「そうだな。……気は進まないが、そうしよう」



「……」





高木
「――“この事務所から立ち去ってくれ”」





「……分かりました」


高木
「すまない……」



「気に病む必要はありません。事務所に損害を出したんです。然るべき処置でしょう」


高木
「だが、本当に良かったのだろうか……」



「高木社長、“過去は変えられません”。不安を抱えながらでは部下はついてきませんよ?」


高木
「う、む……」



「真美のプロデューサーも今日限りで構いません。契約も白紙に戻して、今まで受け取っていた報酬も全てお返しします。損害金も俺に請求して下さい」


高木
「いや、なにもそこまでしなくても……。それに、あのお金は既に渡したものだ。返さないで良い」



「そういう訳にもいきません。これが俺なりのケジメです」


高木
「……君も意外と頑固だったんだね」



「?」



高木
「気にしないでくれ。こちらの話だ」



「そうですか」


高木
「それで、君はこれからどうするつもりなんだい? 876プロに戻るのなら私から石川に伝えておくが……」



「戻れませんよ。あそこに帰るには、まだ時間が掛かります」


高木
「そうか……。他に行くアテがないのなら、知り合いの事務所へ紹介状を書こうか?」



「いりません。それに、アテならあります」


高木
「……まさか!」



「えぇ。そのまさかになると思います」


高木
「となれば、次に会う時は敵になってしまうのだな……」



「今も大して変わらないじゃないですか」


高木
「……」



「それでは高木社長、短い間でしたがお世話になりました。機会があれば、またどこかでお会いしましょう」


――




――カチャッ。




「……」


真美
「白ちゃん。社長さん……、なんだって……?」



「……クビだってさ」ナデナデ


真美
「え……?」



「じゃあな」


真美
「あっ! ちょ、ちょっと待――」


――カチャンッ。


真美
「って……」



伊織
「はぁー。やっと消えたわよ、あのクズ」


春香
「い、伊織!」


伊織
「なによ。春香だってそう思ってたんじゃないの?」


春香
「私は……。そりゃあ疑わしいなぁ、とは思ってたけど……」


伊織
「アンタも同じじゃない」


春香
「でも、なにも真美がいる目の前で言うことじゃないよ」ボソッ


伊織
「……アイツもそろそろ気づくべきだわ。自分のプロデューサーがどんなにクズだったってね」



赤羽根
「真美。大丈夫か?」


真美
「兄ちゃん……」


赤羽根
「Pのことだけど――」


真美
「……白ちゃん」


赤羽根
「え?」


真美
「クズなんかじゃないよね……?」


赤羽根
「あ、あぁ……」


真美
「白ちゃん……、汚くなんかないよね……?」


赤羽根
「そう、だな……」


真美
「目、逸らすんだね。それに言葉も濁ってた……」


赤羽根
「真美……?」


真美
「もう良い」



――キィイイ。



赤羽根
「お、おい! どこに行くんだ!?」


真美
「着いてこないで」



――カチャンッ。



――

短いですが、ここまでにします

おつ




「……」



――♪♫~♬~♬。




(……真美?)



――ピッ。




「……どうした?」


真美
『白ちゃん……』



「やけに声が暗いな。みんなとケンカでもしたのか?」





『――キィ。――キィ』




(……なんの音だ?)



「なぁ、真美。今、どこにいるんだ?」


真美
『……。――公園』



「分かった。俺もそっちに向かうから動くなよ?」


真美
『うん……』


――




「よっ!」


真美
「……」



――キィ。――キィ。




「なんかアレだな。自分から出て行ったのにすぐに会うとカッコ付かないな」


真美
「……」



――キィ。――キィ。




「無反応、か……。さっきまで普通だったのにどうしたんだ?」


真美
「……いおりんが、白ちゃんのことクズだって。……それに兄ちゃんも、白ちゃんが汚いプロデューサーだと思ってた……」



「……」




真美
「みんな勘違いしてるよ……。白ちゃんは……、真美のプロデューサーは……クズでも、汚くもない」



「……」


真美
「それなのに、なんで白ちゃんが辞めなきゃいけないの……」



――キィ。――キィ。――キィ。




「隣……、良いか?」


真美
「うん……」



――キィ。――キィ。




「ブランコなんて何年ぶりだろ」


真美
「……そうなの?」



「大人になると、公園で遊ぶことも無くなるからな」


真美
「……寂しいね」



「そうだな……」


――



真美
「……」



「……」



――キィ。――キィ。



真美
「……ねぇ、白ちゃん」



「……なんだ?」



――キィ。――キィ。



真美
「なんで……、辞めちゃうの?」



「……」


真美
「たった一回の失敗で追い出されるなんて絶対おかしいよ」



「……」


真美
「それに、白ちゃんだって――」







――キィ……。






「なぁ、真美。……汚い水で生きてきた魚は、綺麗な水では生きられないんだ」


真美
「え……?」



「……餌がないってのもあるけど、なにより眩しいんだよ」


真美
「眩、しい……?」



「あぁ。……眼が焼けるように痛くて、見ている世界の全てが鮮明で、……他の魚がどんなに綺麗なものなのか理解してしまうんだ」


真美
「……」



「だけど認めたくないから、必死になって暴れて、砂を巻き上げながら身を隠そうとする。あの醜い、濁りきった世界だけが自分の居場所だと思っていたから……」


真美
「それが、白ちゃんが辞めた理由……なの?」



「……少し捻くれた言い方だったかな?」


真美
「ううん。白ちゃんらしいと思う。……でも――」





「……」


真美
「それなら……、真美も汚すよ。白ちゃんがいられるように頑張って汚す。だから……」



「巻き上げた砂は、やがて元に戻る。……綺麗な場所は、なにをやっても綺麗なままなんだ」


真美
「そんな! だ、だったら――」



「それにな、俺にとっては、……真美、お前も眩しいんだ」


真美
「え……?」



「元気で、純粋で、無邪気で、……太陽みたいに輝くお前が、……俺には眩しいんだ」


真美
「……違うよ。……真美は、そんな人間じゃない」



「違わない。今までずっとお前のことを見てきた人間が言うんだ。間違えるはずがないだろ?」


真美
「真美はそんな人間じゃない!!」



「真美……?」




真美
「ねぇ……、行かないでよ……」



「……ムリだ。あの事務所に、俺の居場所なんかない」


真美
「なんで……。なんで……」



「ごめんな」


真美
「白ちゃんの、嘘つき……。真美を、Sランクにしてくれるって、言ったじゃん」グスッ



「……確かに俺は嘘つきだ。でも、俺じゃなくても先輩たちが導いてくれる」


真美
「真美は、……白ちゃんじゃないと、嫌だもん」



「あんまり困らせないでくれよ。お前はもう、子供じゃないんだろ?」


真美
「子供で良い! 白ちゃんと離れるくらいなら子供で良いよ!」



「真美……」




真美
「眩しいなら真美の手で白ちゃんの目を隠してあげる!」



「……」


真美
「居場所がないなら真美が傍にいる!」



「……」


真美
「真美が眩しいなら一緒に隠れてあげる!」



「……」


真美
「だから! だからッ! だからッ!!」












真美
「私の隣にいてよ!!!」














真美
「お願いだよ……、白ちゃん……」



「……“ごめんな”」


真美
「……ッ」



「……」


真美
「……ぇぐ、……」




――ポタッ。――ポタッ。――ポタッ。




真美
「……いや、だ……。白ちゃん、と、離れ、たくない」



「そんな顔するなよ」


真美
「……ひッぐゅ……ぃぐッ……」



「別にこれが今生の別れじゃない。今度また会う時は、“友人”としてお前を支えてやる。それじゃダメか?」


真美
「や、だ……。真美は、……ずっと、白ちゃんと、……一緒にい、たい」



「真美……」


真美
「……ぇぐ……ッ……」


――




「落ち着いたか?」


真美
「……」コクッ



「……ごめんな」


真美
「……ううん。真美の方こそワガママ言ってごめんね」



「いや、真美の言ってることは正しいよ。……本当なら、最後まで面倒を見るのが俺の責任だったんだ」


真美
「ねぇ、ホントに行っちゃうの……?」



「……あぁ」


真美
「……。そっか……」





「……次に会う時は敵同士になるかもしれないけど、その時はよろしくな」


真美
「……うん」



「……」


真美
「……」



「……戻ろう。みんな心配してる」


真美
「うん……」



「……」


真美
「白ちゃん」



「?」


真美
「……手、繋いで良い?」



「あぁ。今日は歩いて帰ろうか」



――ギュッ。



真美
「……白ちゃんの手、……やっぱり暖かいんだね」



――




「……着いたな」


真美
「……」



「どうした?」


真美
「ねぇ、白ちゃん。……今も、……気持ちは変わらない?」



「……。もう俺は765プロの人間じゃない。だからココまでだ」


真美
「そっか……」



「……」


真美
「ねぇ、白ちゃん」



「……なんだ?」


真美
「……今まで楽しかったよ」



「……俺もだ」


真美
「“さよなら”は言わない。きっとまた会えるって信じてるから。……だから――」



「……」








真美
「――“またね”」








――

ここまでにします。

申し訳ないのですが、書き為が尽きたので次から不定期更新にしたいと思います。


ごめんなさい……。


悲しいぜ


しかし相変わらず羽根Pェ……

序盤から伊織が酷い

アイドルたちは知らないだろうし知る必要もないと思うけど
赤羽根Pと律子には社長から知らせる義務があるんじゃないかなぁと思うんだけどな

あと、不定期だろうがなんだろうが面白いので気長に待ってますんで

そもそも会社にマイナスなことしたならともかく社内で担当替えただけで敵だのクズだの言われるのがすごい
最初から仲間として見てなかったとしか
まあ、降板させられた竜宮はちょっとは文句言ってもいいと思うけど仕事放棄するのはどうかと
春香も助けてもらってるのに地味にひでえ

あ、今回の件の前段階での話ね

甘い考えでこれまでやってきた連中と
使えるものは全て使い、使えないやつは切り捨てるやつの違い
仲間になんぞなれるかよ




――カチャッ。




「……ただいま」



「おかえりなさい」



「……」



「なんかあんまり嬉しくないみたいね。こんな美人に出迎えられてなにが不満なわけ?」



「……愛は?」



「876プロのアイドルたちとお泊り会だって。断りきれなかったみたいだわ」



「あっそ」



「ずいぶん素っ気無いわね。今度はどんなお悩みを抱えてるのかしら?」



「……今日のご飯なに?」



「ロールキャベツとポトフ。作りかけだから少し待ってて」



「……手伝う」



「ふふっ。ありがと」


――




「ご馳走様でした」



「はい、お粗末さま。……食器は私が洗うからアンタゆっくりしてなさい」



「それくらい自分でやるよ」



「ダメ。こういうのは主婦の仕事って相場が決まってるの」



「……」



――ジャァー。カチャヵチャ。




「それで、今度はどんなお悩みを抱えてるのかしら?」



「……」



「さっきは逸らかされたけど、今度はちゃんと聞かせてもらうわよ?」



「……あっそ」



「つれないわね。……まぁ、良いわ。早く話しなさい」



「……事務所、クビになった」



「そう」



「……」





「でも、悩みはそれじゃないんでしょう?」



「なんでそう思うんだ?」



「簡単よ。アンタがクビになったくらいで落ち込むような人間に見えないもの」



「……」



「言葉にしなきゃ伝わらないわよ?」



「……そうだな」



「……」



「……」



「……」



「……“真美を泣かせた”」



「そう……」



「……やっぱり俺は、みんなの言った通り“最低のクズ”なのかな?」



「……そうね。……例えどんな理由があったとしても、“女を泣かせたヤツ”は最低のクズに違いないわ」



「……」



「まぁ……、私が言えた義理じゃないけどね……」



「……。“クズ”、か……」





「……」



「……なぁ、舞さん」



「なに?」



「……正直、俺がこんなことを頼むのはお門違いかもしれない。バカにしても良い。軽蔑してくれても構わない」



「……」



「それでも、……俺の話を聞いてくれないか?」



「……どんな頼み事なの?」



「……」



「……」



「……もう一度だけ――」



「……」



「――“アイドルになってくれないか?”」



「え?」


――




「――。考えておいてくれ」



「ムリよ……」



「……それは、……“母親”としての答えか?」



「当たり前じゃない。私には愛がいるもの」



「……俺は、……“日高舞”に聞いてるんだ」



「……。なんで今更……」



「……理由は色々ある」



「……」



「でも、一番の理由は……。舞さんが親父の宝だからだ」



「私が……、プロデューサーの、……宝……?」



「あぁ。自分の担当した中で最高のアイドル。……それが舞さんだった」



「……」





「だけど、俺は……、舞さんも親父も嫌いだったから壊した。舞さんが大切にしてきた宝も、親父の宝も、全部な」



「……」



「……こんなことで許されるとは思ってない。……それでも俺は、……償いたいんだ」



「そんなの、……アンタの勝手じゃない」



「分かってるよ……。だけど頼む。俺にやり直すチャンスをくれないか?」



「……」



「……」



「……愛は、……どうするの?」



「……俺から話す」



「そう……」





「……」



「……少しだけ、……時間をちょうだい」



「……分かった。……答えが決まったら教えてくれ」



「……」



「……それじゃあ、お休み。舞さん」



「えぇ。おやすみなさい」



――カチャンッ。




「……ホント、……最低なプロデューサーね……」



――

少ないですが、残りは8時頃にします




――「それでは登場して頂きましょう! 魅惑の女装アイドル、秋月涼くんです!」




「……」



――ピッ。




「はぁ……。暇だな」



~♬~♫♪~♬。




「はい」



――「……テレビをつけろ」




「え? あぁ、分かりました」



――ピッ。



「……音楽企業、――の代表取締役、――が今朝、逮捕されました」




「……へぇ」



「なお、被害にあった女性は裁判の構えを示しており、検事側が提示する証拠の他、匿名の記者からの情報もあって実刑は免れないとの見方が強まっています」






――「……これで満足か?」




「えぇ。すみませんね、無茶なことを頼んで」



――「……お前の言った通り、俺は全ての情報を売った。……例の件、……忘れてないよな?」




「分かってますよ。……“報酬はキチンとお返します”」



――「そうか。それを聞いて安心した」




「……それでは失礼しますね」












「――悪徳さん」












――



真美
「おっはよ→!」


赤羽根
「真美!」


真美
「ん→? どったの兄ちゃん?」


赤羽根
「あ、いや、その……、大丈夫なのか?」


真美
「なにが?」


赤羽根
「なにがって……。昨日あんなことがあっただろ? 落ち込んでたんじゃなかって心配してたんだよ」


真美
「あー、大丈夫だよ」


赤羽根
「……ホントに大丈夫なのか?」


真美
「も→まんたい。兄ちゃんは心配性だな→」


赤羽根
「……」


真美
「それじゃ、お仕事に行ってくるね」


赤羽根
「……現場まで送るよ」


真美
「ありがと。でも、兄ちゃんも皆のお仕事を取ってくるのに忙しいでしょ?」


赤羽根
「俺のことは気にしなくて良い。それに、真美になにかあるよりマシだ」


真美
「……そうだね。じゃあ、送ってもらおうかな?」


赤羽根
「あぁ、すぐに車取ってくるよ」


――



真美
「おはよ→ございます!」



――「おはよう。……あれ? 真美ちゃん、今日はPさんと一緒じゃないの?」



真美
「白ちゃんなら辞めたよ」



――「え?」



真美
「クビだって」



――「そ、そうだったのか。辛いこと聞いちゃったな」



真美
「ううん。気にしなくて良いよ。……今日から兄ちゃんと一緒にお仕事することになったから、次からよろしくね?」


赤羽根
「……」


真美
「ほら、兄ちゃんも!」


赤羽根
「あ、あぁ……。今日はよろしくお願いします」



――「コッチの方こそよろしく」



真美
「それじゃ、お仕事始めよっか!」



――「……そうだね。真美ちゃん、今日はよろしく」



真美
「うん!」


――




――カメラ確認OK。お疲れ様でしたー。



真美
「お疲れ様でした→!」


赤羽根
「お疲れさま」


真美
「あれ? 兄ちゃん、みんなの所に行かなかったの?」


赤羽根
「まだ時間に余裕があるから次の現場に送ってから向かうよ」


真美
「ふーん」


赤羽根
「それで、次の現場ってどこなんだ?」


真美
「えっと、次のお仕事は……」ペラッ


赤羽根
「……」


真美
「……」


赤羽根
「……」ジー


真美
「はぁ……。兄ちゃん」


赤羽根
「え?」


真美
「そんなに見られるとやり難いんだけど」


赤羽根
「あ、悪い……」


真美
「んっふっふ→。もしかしてセクシーな真美にメロメロって感じ?」




赤羽根
「……それ、Pから貰った手帳なんだよな?」


真美
「え? あぁ、コレね。……それがどうかしたの?」


赤羽根
「いや、大切にしてるんだなって」


真美
「……まぁね」


赤羽根
「なぁ、真美。……俺には、どうしてもお前がムリをしてるように見えるんだ」


真美
「なんでそう思うの?」


赤羽根
「勘、……かな? Pと変わるまではずっと見てきたから、なんとなく普段の真美と違うような気がするんだ」


真美
「……嘘ばっか」


赤羽根
「嘘なんかじゃない。それに、俺が嘘をついてないのは真美だって分かってるだろ?」


真美
「そうだね。……でも、兄ちゃんが見ていたのは真美じゃなくて、“みんな”でしょ?」


赤羽根
「真美?」


真美
「……少し、イジワルだったね」




赤羽根
「……アイツに、何をされたんだ?」


真美
「……」


赤羽根
「もし俺に言えないことなら小鳥さんや律子でも良い。それでもダメなら――」


真美
「……白ちゃんは何もしてないよ」


赤羽根
「――え?」


真美
「ねぇ、兄ちゃん。あの時、不思議に思ってたよね。初めて会った白ちゃんに真美がついて行ったこと……」


赤羽根
「あ、あぁ……。でも、俺が聞きたいのは……」


真美
「前までさ、真美も分からなかったんだ。兄ちゃんじゃなくて、白ちゃんを選んだ自分が……」


赤羽根
「……」


真美
「今になってようやく分かったよ」


赤羽根
「……」


真美
「……きっと、……“恋”、だったんだね」


赤羽根
「……は?」


真美
「最初は、あの白い髪が気になってたのに、いつの間にか“白ちゃん”が気になってたんだもん」


赤羽根
「ま、み……?」


真美
「でも、気づくのが遅すぎたみたい。……白ちゃんを引き止めることも、自分の気持ちを伝えることもできなかったんだから……」


赤羽根
「……」


真美
「兄ちゃん。……真美、……フラれちゃったよ」


――

明日また更新します

屑P死ね

Pは結局今も舞や真美を騙してる真性の屑なのか?

赤羽根の方が屑すぎてどっちにも同情できん

あ、俺はやよぃとイチャイチャしてますね




「ただいまーー!!」



――ガチャンッ!




「おかえり」



「あれ? お兄ちゃんだけ?」



「不満か?」



「そんなことないけど、……ママは?」



「買い物に行ってる。夕飯までには帰るらしい」



「そうなんだ」



「ところでお前、もうご飯は済んだのか?」



「まだ食べてないよ?」



「ふーん。なら丁度良いや」



「あっ! もしかしてお兄ちゃんが作ってくれるの?」



「作って欲しいのか?」



「うん! ……ダメ?」



「別に良いけど、お前も手伝ってくれよ」



「はーい♪」


――




「なにが食べたいんだ?」



「うーん……。お兄ちゃんってなにが作れるの?」



「基本的なのなら何でも作れるぞ」



「へー、意外。男の人って料理が苦手なイメージだったけど」



「まぁ、一人暮らしが長かったからな。それで、リクエストは決まったのか?」



「うーん。……パスタ?」



「パスタかぁ……。いろいろ種類が多くて悩むな」



「あたしカルボナーラが良い!」



「はいはい。なら、俺はキノコでも使って和風パスタにするか」



「え? なにそれ美味しそう! あたしも食べたい!」



「お前、そんなに食べられるのか?」



「無理だよ! だから半分っこ♪」


――



P・愛
『いただきまーす』



「熱いから気をつけろよ?」



「うん!」



「……」モグモグ



「美味しいー♪」



「大袈裟なヤツだな。市販品とあんまり変わらないだろ」



「そんなことないよ! すっごく美味しいもん!」



「そう言ってもらえるのは嬉しいが……」スッ



「ぁ……」



「口元には気をつけような?」





「あ……。ごめんなさい……」



「反省したなら良いよ。……ほら」クルクル。スッ



「? ……あっ!」



「コッチのも食べたかったんだろ?」



「で、でも! これって!」



「いらないのか?」



「あ、え、その、えっと……。いる!」



「悩んだ割には素直だな。……はい」



「あ、あーん……」



――パクッ




「美味いか?」



「う、うん」


――




「ご馳走様でした」



「ご、ごちそうさまでした!」



「なんかお前、顔が紅くなってないか?」



「そ、それは……」



「それは?」



(いきなりだったから驚いたけど、やっぱり嬉しいけど……。ぁあ、もうッ!)



「?」



「と、とにかくお兄ちゃんがいけないの!」



「俺?」



「そうだよ!」


――




「さて、腹も膨らんだし、出かけるか」



「どこ行くの?」



「散歩」



「……あたしも行って良い?」



「当たり前だろ? 元々そのつもりだ」



「やった!」



「あ、でもプライベートだからって変装するの忘れるなよ?」



「うん!」



「どこ行こうかな~。そうえば、あそこの通りにアクセサリーショップが出来てたな……。帰りに寄ってみるか」



「ふふっ♪」





「どうした?」



「なんかコレって、デートみたいだなーって!」



「そうなのか?」



「そうなのか、って……。お兄ちゃんは違うの?」



「いや、兄妹でデートは変だろ」



「えー! 仲の良い兄妹なら普通だよ!」



「へー」



「あっ! ちょっと待ってて! 着替えてくる!」



「転ぶなよー?」



「分かってるよー!」


――タッ、タッ、タッ



「……」


――




「~♪」



「さて、家を出たばっかりだけど……、行きたい場所とかあるか?」



「ないよ! だから、お兄ちゃんがエスコートしてね!」ニコッ



「そんなこと言われてもなぁ……」



「お兄ちゃんが選んだ所なら、あたし何でも良いよ?」



「なんでも良いが一番難しいんだけど……。あっ、カラオケなんてどうだ?」



「カラオケ?」



「あぁ。久しぶりにお前の歌声が聞きたくなったってのもあるけど……、これなら二人っきりだろ?」



「え!?」



「冗談だ」



「もー! からかわないでよ!」



「悪かったよ。でも、お前の歌声が聞きたいってのはホントだから」



「ホントにー?」ジトー



「本当だ。ついでに鈍ってないかチェックしてやる」



「えー。それじゃあプライベートなのにレッスンみたいでヤダ!」



「ふふっ、お前がなにを歌うのか楽しみだ」



「むー! お兄ちゃんのイジワルー!」


――




♫~♪♬




「愛し合うー、ふたーり、しーあわせの空。隣どおし、あなたと、あたしさくらんぼー♪」



――もういっかい!




「笑顔咲クー、君ーと、抱ーき合ってたい」



~♬♫~♪




「愛し合うー、ふたーり、いーつの時ーも!」



―― Uh Yeah Uh! Uh Yeah Uh!




「愛し合うー、ふたーり、いーつの時ーも! 隣どおし、あなたと、あたしさくらんぼー♪」



~♬♪~♫~♬♫~♪~♪






「ふぅ……。ねぇ、お兄ちゃん! あたしの歌、どうだった?」



「そうだな……。愛らしくて良かったぞ」



「ホントに!? やったー!」



「ふふっ」ナデナデ



「ぁ……」



「どうした?」



「ううん。なんでもない」



「変なヤツ」



「ふふっ。なんだか懐かしいかも」



「……? なにが?」



「こうやって撫でてくれることだよ」



「……」



「お兄ちゃんの手、やっぱり暖かいね」



~♬~~♪~♫~♪




「あっ! コレ、お兄ちゃんの曲じゃない?」



「みたいだな」



「そういえば、お兄ちゃんが歌うところなんて初めてかも。どんな歌かな~?」


――




~♬~~♪~♪~♫




「美しい人生よ。 かぎりない喜びよ。 この胸のときめきを、あなたに」



「……」



「二人に死がおとずれて、星になる日が来ても、あなたと離れはしない」



~♪~♫~~♬~♫♪




「え、えっと……」



「意外か?」



「う、うん。……なんで松崎しげる?」



「大人だからな」



(どうしよう……。お兄ちゃんが大人に対して変な偏見を持ってる……)


――




「いや~、なかなか楽しめたな」



「そ、そうだね」



「なんでそんな微妙な顔してるんだ?」



「してないよ! それよりも、お兄ちゃん! 次はどこに行くの?」



「ん~。さっきは俺が選んだから次はお前が選んでくれ」



「えー! あたしが!?」



「俺はもうお手上げだ」



「むぅ。せっかくお兄ちゃんがエスコートしてくれたと思ったのに……」



「まぁ、こういうのもデートっぽいだろ?」



「……そうだね!」



「という訳でよろしく」



「うん! って言っても、あたしもノープランなんだよね」



「それなりにバリエーションがあって、色々と遊べるところなら別にどこでも良いぞ?」



「リクエストが多すぎるよ!」


――




――ワイワィ。――ざわざゎ。




「……なんでゲーセン?」



「だってこれくらいしか思いつかなかったんだもん! 仕方が無いよ!」



「まぁ、良いけど」



「あっ! コレ新しいの出てたんだ! 久々にやってみようかなー?」



「なんか手馴れてるな。もしかして、こういう所によく来るのか?」



「うん! 絵理さんがこういうゲームに詳しくて、すっかりハマっちゃった!」



「へー」



「お兄ちゃんもやってみる?」



「手加減してくれるならやってみようかな」



「あはは♪ あたしがそんな器用なことができると思う?」



「……思わない」


――




「……」クッ、クッ、ヵチャ、タッ、タンッ



――誰も傷つけたくないのッ! ――グォッ!? グォッ!? ガァッ!




(あと……、少し……ッ!)



――調子に乗りやがってッ! ゥオオオオオオッ! ドラゴンインストールッ!!




「――ッ!? た、耐えて……」



――ッチ。――ネクロ! ――グォッ!? グォオ!? ――SLASH!! ――You Win.




「あ、危なかった……」


――




「ちぇー、良いとこまでいったのに」



「ちょ、ちょっと! こんなに強いなんて聞いてないよ!」



「そうか? たいして強くないだろ」



「えー! 強いよ! というか、お兄ちゃんもこのゲームやってたの?」



「少しだけな」



「へー。でも意外かも!」



「?」



「お兄ちゃんがゲームセンターに来てたことだよ! そんなイメージぜんぜんなかったもん!」



「まぁ、真美のお陰かな」



「どういうこと?」



「最初は真美のトレーニングが目的だったんだけど、気分転換の意味も込めてよく付き合わされてたんだ」



「……ふーん」





「なにふてくされてるんだよ。もしかして俺が真美の話をしたからムッとしてるのか?」



「別にー。お兄ちゃんが誰と遊んでも、あたしには関係ないもん」



「分かりやすい嫉妬だな。はいはい。悪かった、悪かった」



「し、嫉妬じゃないもん! というか謝る気ないでしょ!」



「おー、よく分かったじゃないか」



「むぅ!」



「ははっ、完全にご立腹みたいだ」



「お兄ちゃんなんて知らない!」



「悪かったって。なんでもするから許してくれ」



「……ホントに?」



「本当だ。それで、どうしたら許してくれるんだ?」



「……あれ」



「?」



「あれで許してあげる!」


――




――背景を選んでね!




「えーと……。これと、これと、後これかな♪」ピッ、ピッ、ピッ



「なぁ、愛。ホントにこんなので良かったのか?」



「うん! というか……」



「?」



「最初っからコレが目当てだったりして。……えへへ」



「はぁ。……小悪魔め」



「ごめんね?」



「気にするな。お前が楽しんでるならそれで良い」



「うん。ありがと♪」


――




――ラクガキ・タイム!




「~♪」



「まだかー?」



「もうちょっと待ってー!」








「うん! これで良しっと!」




――バサッ。




「お待たせ!」





「別に待ってないけど……、お前、写真はどうしたんだ?」



「写真じゃなくてプリクラだよ!」



「なにが違うのか分からん」



「シールにできるのがプリクラ!」



「ふーん。それで、そのプリクラは?」



「ん~、もうすぐだと思うけど……」



――ビィー。




「あっ! できたみたい!」



「へー、どれどれ……」



「お兄ちゃんは見ちゃダメ!」





「なんでだよ。別に減るもんじゃないだろ?」



「ダメなものはダメなの!」



「ふーん……」ジーッ



「ぁぅ……」



「はぁ、……分かったよ」



「え?」



「なに書いたか知らないけど、そこまで嫌なら見ない」



「あ、うん」



「その代わり、ちゃんと自分で管理しろよ?」



「うん!」


――




「さて、次は俺の番だな」



「どこに行くの?」



「今朝も言ったと思うけど、新しくできたアクセサリーショップにでも寄ってみようと思う」



「そんなところあったかな~?」



「まぁ、あんまり人目に入らないようなところだから、知らなくても無理ないと思うぞ」



「へー」



「見た感じ色々と揃ってたから、気に入ったのがあったら買ってやるよ」



「ホントに!?」



「あぁ。でも、ピアスとかはダメだからな」



「分かってるよー♪」


――




~♬~♪♫♬~♬♪♫



――「いらっしゃいませー」




「あっ、この時計、ウサギの形してる! カワイイなー」



「なぁ、愛。こんなのどうだ?」



「ライオン!? あたし、そんなの使いたくないよ!」



「ちぇ、格好良いのに……」



「もう! 変なところで子供っぽいんだから!」



「はぁ? 俺のどこが子供だよ」



「そんなの選んでる時点で子供です!」



「むっ。じゃあ、お前の言う大人っぽいのってなんだよ」



「え? んーと……、こういうシックな時計とか……、飾り気のないタイピンとか……、そんな感じ?」



「……」ヵチャ、ヵチャ



「なにやってるの?」



「どうだ? 大人っぽいか?」



「うーん。どう見ても背伸びしてる高校生にしか見えないよ」



「……」ギュウゥ



「ぁぅ~~~ッ! ごへんなひゃい~~!」


――




「さて、戯れはここまでにして……。買いたいの決まったか?」



「うん! あたし、コレにする!」



「ペンダント?」



「やっぱりハートが可愛いなーって」



「ふーん」



「しかもコレ……、ほら!」



「?」



「少し小さいけど、写真が入れられるんだよ!」



「いや、そんな大きさの写真なんて――。 あ……」



「気付いた?」



「お前……、まさか……」



「うん! さっき撮ったプリクラ、入れるつもり!」



「ふざけんな。そんな恥ずかしいの買えるわけないだろ」



「む! お兄ちゃん、さっき好きなの買ってくれるって言ったよ?」



「ぅぐ……」



「ふふっ。決まりだね!」



「ちくしょー。どんな罰ゲームだよコレ……」



「お守りにしよーっと♪」


――

8時頃にまた来ます

プリクラ…

真美は報われないなぁ・・・

この二人のPは結局のところやり方が違うだけでどっちが間違ってるという話じゃないと思う
実際赤の方もそのやり方で実績があるわけだし
ただ白の方は一度クリアしたゲーム~のせいか好きになれんなー




♪♫~♬♬~




「5時か。……けっこう遊んだな」



「もう帰る時間なんだ。……時間が過ぎるのって、あっという間だね」



「なに感傷に浸ってるんだよ。もしかして帰りたくないのか?」



「……かもね」



「え?」



「嘘だよ。……でも、少し名残惜しいのはホントかな」



「……」



「ねぇ、お兄ちゃん」



「ん?」



「……今度は、……“どこに行っちゃうの?”」



「なんのことだ?」



「隠してもダメだよ。……もう、……分かってるから」





「……知ってたのか?」



「なんとなくだけどね」



「……ホントは俺から伝えようと思ったんだけどな。……なんで分かったんだ?」



「だって今日のお兄ちゃん、なんだか優しいんだもん」



「……」



「あはは。そんな顔しないでよー!」



「……今まで厳しい兄貴で悪かったな」



「ふふっ。……でも、ホントに楽しかったな~」



「……」



「一緒に食事したり、ゲームしたり、プレゼントを貰ったり……。いつも素っ気ないお兄ちゃんが、今日だけは別人みたいだったもん」



「……」



「まるで……、あたしに“何かを償っている”みたいに……」



「――ッ」



「……やっぱり、……そうだったんだね」





「なんで……、そこまで分かってて……、最後まで付き合ってくれたんだ……?」



「“最後”だからだよ」



「……?」



「あたし、気づいちゃったんだよね。……もしかしたら、また……“長いお別れ”になるのかもって」



「……」



「だから、今日の……ううん、今までの想い出を大切にしようって思ったの」



「……」



「ねぇ、お兄ちゃん。……また、帰ってきてくれる?」



「あ、……あぁ」



「そっか。……じゃあ、待ってる」



「え……?」



「だって、また帰ってきてくれるんでしょ? なら、“みんな”が帰ってきてくれるまで、あたし待ってるよ」



「……」



「やっぱり寂しいけどね。……えへへ」





「……。なんで――」



「?」



「なんで……、そんなに純粋でいられるんだ……?」



「……」



「勝手にいなくなって、全部メチャクチャにして、……また、お前を“独り”にしようとしてるのに……。なんで、そんなに純粋でいられるんだよ……ッ!」



「お兄ちゃん……」



「許さなくて良い。恨んでくれて良い。……お前には、……その権利があるのに。……なんで……なんで……」



「そんなこと、できないよ。……あたしの気持ち、……お兄ちゃんも知ってるでしょ?」



「……ッ」





「それに、あたしは独りぼっちなんかじゃない」



「え?」



「絵理さん、涼さん、……玲子さんに、石川社長、……春香さんや、真美ちゃん、……ママ、それにお兄ちゃんも……。みんな、あたしの味方だもん」



「……」



「あの時、お兄ちゃんが教えてくれたことだよ?」



「……」



「だから、大丈夫。……どんなに寂しくても、どんなに泣きそうになっても、……みんな、あたしと繋がってる。だから、あたしは一人じゃないもん」



「でも、俺は――」



「ねぇ、お兄ちゃん。約束して」



「……」



「遠くに行っても、離れていても、いつかは帰って来る。そう約束して」



「……」



「それが、あたしへの償い。……ほかに、……あたしは何もいらないもん」





「……あぁ。約束するよ」



「うん! じゃあ、お兄ちゃん。約束の証拠!」スッ



「……懐かしいな」スッ



――キュッ




「指きりげんまん」



「嘘ついたら針千本のーます!」



――『指切った!』













「約束だよ?」












――




――ガチャッ。




「ただいまーー!」



「ただいまー」



「あら、二人ともお帰りなさい。どこに行ってたの?」



「んー、カラオケとか、お買い物とか、色々かな?」



「あら、それってデートじゃない」



「うん! すっごく楽しかった!」



「ふーん……」ジッ



「なんだよ」





「別に。……それよりも、アンタたちってもう食べてきたの?」



「ううん! まだ!」



「そう。じゃあ今からパパッと作っちゃうわ」



「あたしも手伝う!」



「愛は疲れてるでしょ? 少し休んでなさい」



「えー! 疲れてないよー!」



「良いから休んでなさい。P、悪いけど手伝ってくれない?」



「……分かった」


――



――サクッ、サクッ。



「ねぇ、P。……アンタ、愛にあのこと伝えたの?」



「……まだ、舞さんのことについては伝えてない」



「ちょっと、話が違うじゃない」



「悪かったよ。でもまぁ、……最初っから気づいてたみたいだけどな」



「え?」



「さっき、愛に言われたんだ。“今度はどこに行っちゃうの?”って」



「……」





「もう、アイツは全て分かってる。俺たちがいなくなることも……」



「そう……」



「……あいつは、……強い女の子だよ」



「……」



「これから先、辛い思いをするのも、寂しい思いをするのも分かってるのに、それを許してくれた」



「……」



「みんなが帰ってくるまで待ってる。なんて言葉、俺なら絶対に言えないな……」



「そうね。……たぶん、私も言えないわ」



「……」



「……ねぇ、P」



「なんだ?」



「さっきの話だけど、……やっぱり自分で伝えるわ」



「……そっか」


――




――『ごちそうさまでした!』




「美味しかったー!」



「片付けは俺がやるよ」



「あっ! じゃあ、あたしも――」



「ねぇ、愛。……この後、……ちょっと良い?」



「?」



「話したいことがあるのよ」



「あ、うん……」



――ジャー。ヵチャ、ヵチャ。




「……」


――




「それで、あたしに話ってなに?」



「……」



「ママ?」



「ねぇ、愛。これから話すことはとっても重要なことだから、よく聞いて」



「うん」



「……。私、……もう一度アイドルになろうと思うの」



「……うん」



「でも、あの事件をキッカケに引退した私に、復帰するチャンスなんてない」



「……」



「だから――」



「……」









「――Pと一緒にアメリカへ渡ることにしたわ」










「……そっか」



「……驚かないのね」



「いなくなるのは、……分かってたから」



「そう……」



「……」



「……でもね、もし愛が“行かないで”って言うなら、私はこの話を断ろうと思うわ」



「え?」



「正直……、迷ってるのよ。あなたに寂しい思いをさせてまで世界に行く意味なんてないと思うから」



「……ママは、……どうしたいの?」



「私は……、愛さえいれば良いわ」



「違うよ」



「?」



「あたしが聞いてるのは、“アイドルとしてのママ”だよ。それに、母親としての気持ちは、ずっと前から知ってるもん」





「……」



「……行ってみたいんだよね?」



「……えぇ」



「そっか……」



「……」



「……」



「……」



「……ママ」



「なに?」



「行ってきなよ。……アメリカ」



「え?」



「だってママ、もう一度アイドルになりたいんでしょ? なら、あたしのことは気にしなくて良いから行ってきなよ」



「で、でも……」



「それに、あたしの知ってるママはこんな弱気になったりしない。思いつきで行動して、いつもあたしを振り回すけど、自分の気持ちに正直な人だったよ?」



「……これでも親バカなのよ」



「ふふっ。それは意外だったかも」





「ねぇ、愛。……本当に、……行っても良いの?」



「……あたしは、ママのしたいことを止めるつもりはないよ。……ううん。しちゃいけないの」



「……」



「でも、それでもあたしのことを気にしてるなら、ママの為に魔法をかけてあげる」



「魔法?」



「うん! とっておきだよ!」



「?」



「――“ママに勝ったアイドルはだ~れだ?”」



「……なるほど。そうだったわね」



「どう? この魔法、すごく効いたでしょう?」



「えぇ。確かにすごい魔法だったわ」



「えへへ。向こうのお土産、楽しみにしてるね!」



「きっと愛が驚くようなもの買ってくるわ。でも、その前にリターンマッチが先ね。……逃げないでよ?」



「心配しなくても大丈夫! チャンピオンはいつでもチャレンジャーの挑戦を受けるよ!」



「……ふふっ。言うようになったわね」


――

今日はここまで。明日投下して、また不定期にしたいとおもいます。

乙!
愛ちゃんの正妻の貫禄が凄い

愛ちゃん正妻過ぎて鼻血出そう




――コンコン。



黒井
「入れ」



「失礼します」


黒井
「……貴様か」



「お久しぶりですね。黒井社長」


黒井
「フン。なにが久しぶりだ」



「あ、やっぱり怒ってます?」


黒井
「自分の胸に聞け。少なくとも、私は怒ってなどいない」



「ははっ。既にお見通しという訳ですか」


黒井
「……私の事務所に所属したにも関わらず、独断で海外進出。……これは、どういうつもりだ?」



「ささやかな嫌がらせです。……俺は、自分を嵌めた人間にノコノコついて行くような負け犬じゃありませんからね」


黒井
「なんのことだか分からないな」



「隠さなくても良いですよ。“優しい記者”が全て教えてくれました」


黒井
「……ッチ。金を積んでやったというのに使えんヤツだ」





「ずいぶん強かじゃないですか。まさか、あなたが黒幕だったとは思いませんでしたからね」


黒井
「……」



「……でも、一つ腑に落ちないことがあるんですよ」


黒井
「なんだ?」



「わざわざ悪徳記者を雇い、その写真をあのサルに渡し、俺がここに来ざる負えない状況まで追い込んだ」


黒井
「……」



「そこまでして俺を引き入れたかったんですか? それとも、……なにか俺に恨みでもあるんですか?」


黒井
「フン。私の誘いを断る貴様が悪い」



「……そうですか。……でも、黒井社長。これだけは覚えておいて下さい」


黒井
「……」



「――俺に“首輪”を付けたこと、後悔させてあげますよ。……必ずね」




黒井
「吠えるなら鎖を引きちぎった後にしろ。今の貴様では、見苦しく虚勢を張る負け犬にしか見えないな」



「……失礼します」


黒井
「――小僧」



「なんですか? もう俺は、あなたと交わす言葉はないはずですけど?」


黒井
「確か、……貴様の出発は来月の中旬だったな?」



「……えぇ」


黒井
「そうか……。なら――」



「……」


黒井
「“ジュピターも連れて行け”」





「……は?」


黒井
「なにを呆けている。私はジュピターも連れて行けと言ったんだ」



「意味が分からないです。そもそも黒井社長は、あの看板アイドルたちを貸すつもりはなかったのでは?」


黒井
「気が変わった。貴様がホンモノかどうか見定めてやろう」



「……品定め、という訳ですか」


黒井
「ヤツ等のパスポートは用意してある。……私が合流するまで、貴様は好きに暴れてろ」



「黒井社長の意図は分かりませんが……、分かりました」


黒井
「フン」



「それでは失礼します」


――




「終わった?」



「終わったよ。そっちも挨拶は済ませた?」



「そんなのとっくに終わってるわ。むしろ生意気なアホ毛がいたから教育してあげたけどね」



「そっか」



「さて、これからどうしよっかな~。帰ってもやることがないのよね。バッセンでも行こうかしら?」



「……」



「ねぇ、アンタもバッセンに行く?」



「……いや、俺は少し寄りたい所があるから遠慮するよ」



「ふーん。まだ夕飯まで時間があるから良いけど、……どこに行く気?」



「……フラワーショップ」





「フラワーショップ? もしかして好きな子にでも会いに行くの?」



「……よく分かったな」



「へー、アンタに恋愛感情があったなんて意外ね」



「そんなじゃない。……大切な人に花束を贈る。それだけだ」



「それを恋愛っていうのよ。それで、お相手はダレなの?」



「……」



「教えなさいよ~」



「……。“舞さんに関わりのある人”、……かもな」



「私に? 誰なのかしら……?」



「悩んでるところ悪いけど、用事が終わるまでどこかで時間を潰してくれないか? 後で向かえに行くからさ」



「え? 嫌よ。アンタの相手がどんな子なのか、この目で確かめてやるわ」



「ついて来る気なのか?」



「えぇ、当たり前じゃない」



「……」



「ほらほら、行くんでしょ? さっさと案内しなさいよ」



「……まぁ、……良い機会かもな」



「?」



「気にしないでくれ。こっちの話だ」


――




「へー、なかなか良い店じゃない」



「すいませーん!」



――「あれ、Pさん? 久しぶりだね」




「久しぶり。今日は店番か?」



――「うん。練習ないからお母さんのお手伝い」




「そっか」



――「ところで……、お隣の方はPさんの彼女?」




「冗談でも止めてくれ」



「ちょっと、そういう言い方ってないんじゃない?」



――「仲が良いんだね」




「そう見えるなら良い眼科を紹介するよ」



――「ふふっ。お花はどうする?」




「いつもの頼む」



――「分かった。少し待ってて」




「あぁ、悪いな。凛」


――




「~♪」



「……」



「ねぇ、P」



「どうした?」



「アンタの好きな相手って、もしかしてあの子?」



「違う」



「そうなの? その割には、ずいぶん親しげじゃない」



「……欲しい花がここしか置いてなくてな。それで何年も前から来てるうちに、いつの間にかこんな感じになってたんだよ」



「つまり、何年も前からあの子を手篭めようとしてたのね」



「俺の話を聞いてた?」





「はいはい。痴話ケンカはそこまで。Pさん、お花できたよ?」



「あ、ごめん。いくらだ?」



「1万2千円だね」



「はいよ」



「2万円お預かりします。……お釣りはどうする?」



「いらない。自分の懐にでも入れてくれ」



「ふふっ。いつも悪いね」



「偶にしか来ないだろ」



「細かいこと。……はい、Pさんのお花」



「ありがと」



「へー、キレイな花じゃない。……水仙、だったかしら?」



「知ってるのか?」



「バカにしないで。それくらい誰だって分かるわよ」



「へー。舞さんのことだから、花なんて雑草と同じにしてると思ったけど……、意外だな」



「アンタ、私をなんだと思ってるのよ」



「ごめん」





「それにしても、“水仙”ねぇ……。ちょっと趣味が悪いんじゃない?」



「……どういう意味だ?」



「だって、水仙の花言葉って自惚れとか自己愛でしょ? そんなの渡したら“俺はナルシストだ”って言ってるようなものよ」



「……」



「なんだったら、私がもっとセンスの良い花を選んであげようか?」



「……いらない」



「なに意地になってるのよ。どうせ告白するんだから、少しは縁を担がなきゃダメでしょ?」



「告白……?」



「なぁ、舞さん。せっかくのアドバイスだけど……、俺はこの花を渡したいんだ」



「アンタも頑固ねぇ。なんでそんなにその花を渡したいのよ」



「……その人の“好きな花”、……だからかな?」



「その人の? ……はぁ。……なるほど」



「なんだよ」



「悪いことは言わないから、渡すのは止めときなさい」



「……なんで?」



「こんな花が好きなんて、どうせ碌な女じゃないわ」



「――ッ」





「……お姉さん。……なにも知らないのに適当なこと言わない方が良いよ?」



「え?」



「それに、さっきの花言葉……、間違ってる。お姉さんが言ってるのは、白い水仙。……黄色い水仙の花言葉は――」



「凛。やめろ」



「でも……」



「でもじゃない。お前の仕事は、お客を不快にさせることなのか?」



「……。分かったよ」



「ごめんな、舞さん。悪気はないんだ。許してやってくれ」



「え、えぇ……」



「凛。そろそろ俺たち行くから。……迷惑かけたな」



「ううん。……また来てね」


――




「ねぇ、P」



「なに?」



「アンタ……、ホントに好きな人に会いに行くの?」



「……」



「もしかして……、私は、なにか勘違いしてるんじゃない?」



「……間違ってないよ」



「ホントに?」



「あぁ。……でも、告白はしないけどな」



「……」


――

8時頃にまた来ます

乙!
まさかの凛ちゃん




「――着いたよ」



「でも、ここって……」



「うん。……母さんと、……親父のお墓」



「……。そう……」



「……」



「アンタが渡したい相手って、お母さんのことだったのね……」



「うん……」



「……ごめんなさい。……知らなかったとはいえ、あんなこと言って……」



「別に良いよ。気にしてないから」



「……ごめんなさい」



「……」



「……」



「舞さん」



「……なに?」



「掃除、……一人じゃ大変だから手伝ってくれない?」



「……えぇ。分かったわ」


――




「……」



「……」



「……」



「ねぇ。……その線香、一つ貰って良い?」



「……ン」スッ



「ありがと」



――カチッ。……フッ。




「……」



「……」



――スッ。






「……そこに挿すな」



「え?」



「ごめん。……だけど、……ここは“母さんの墓”なんだ。……親父のは、そっち」



「ぁ……」



「悪いな」



「……気にしないで。……少し、無神経だったわ」



「……」


――




(ここが……、あの人のお墓……。実感はないけど……、やっぱり死んじゃったんだ……)



「……」



(この香炉、ほとんど使われてないわね……)



――ッス。




「……」



「……」



「……ねぇ」



「なに?」



「……お父さんのこと、……どう思ってるの?」



「……」





「聞いても、良い……?」



「……どうして、そんなこと聞くんだ?」



「……この香炉、ほとんど使われてないのよ。……もしかして、お父さんに手を合わせたことがないのかなって」



「……」



「まぁ、言いたくないなら深くは聞かないけどね」



「……」



「……」



「……嫌いなんだ。……“その人”」



「え?」



「あんまり記憶はないけど、いつも母さんを泣かせてた。……だから、嫌いなんだ」



「そう……」



「……」





「でも、……お父さんのこと、そんな風に言うのは良くないわ」



「父親なんかじゃない」



「……」



「……確かに血は繋がってるけど、それだけだ。……俺は、……こんな人間が父親なんて認めない」



「P ……」



「それに、この人は……、母さんも、俺も、捨てようとしてた」



「……」



「……殺されて当然だよ。……こんなクズ」



「ぇ……?」



「……」



「……プロ、……あなたのお父さん、……自殺じゃ……なかったの?」



「……言っただろ。……“寄り添うように眠ってた”って」



「そう……、だったのね……」


――




「……」



「……」



「……なんで、……だろうな」



「……なにが?」



「……ここに来たことだよ」



「どういうこと……?」



「舞さんは知らないと思うけど、……俺、……もうここには来ないって決めてたんだ」



「……」



「でも、なんでかな」



「……」



「今日で終わりにしよう。……もう来ない。……これで最後だから。……そうやって言い聞かせてるのに、……また、俺はこうして花を添えに来ている」



「……」



「こんな花、“渡しても意味なんてない”のにな……」


――




「……ねぇ、もう一つだけ聞いて良い?」



「……」



「……その花、……どういう意味なの?」



「……聞いてどうするんだ?」



「……少し、……知りたくなったのよ。……“この人”も、……“アンタ”のこともね」



「……」



「……教えてくれない?」



「……」



「……」



「……」



「……」



「……白い水仙の花言葉は、……自惚れ」



「……うん」



「……黄色い水仙の花言葉は――」










       ――私のもとへ帰ってきて……。










――




「……」



「……」



「……悲しい、……花言葉ね」



「……」



「ごめんなさい」



「……どうして謝るんだ?」



「だって、……知らなかったとはいえ、アンタを傷つけたのは確かだから。……それに、アンタのお母さんまで……」



「……気にしなくて良いよ」



「だけど……」





「……なぁ、舞さん。……あの時、……なんであんたこと言ったんだ?」



「あの時……?」



「……こんな花が好きなんて、どうせ碌な女じゃない。……そう言ってたろ?」



「ぁ……」



「もしかして、この花……、嫌いなの?」



「……違うわ」



「じゃあ、なんであんなこと言ったんだ?」



「……これでも“親バカ”なのよ」



「そう」



「ごめんなさい……」



「別に良いよ」



「……」



「……花に“願い”を込める人もいれば、……“想い”を伝える為に花を贈る人もいる」



「……」



「それを覚えていてくれるなら、……それで良いよ」



「……えぇ。……分かったわ」


――




「……」



「……」



「……そろそろ行こうか」



「……」



「舞さん?」



「……ごめん。先に行っててくれない?」



「え?」



「そんなに時間はかからないわ。……少しだけ、一人にしてほしいの」



「……分かった。車の中で待ってるよ」



「……ありがと」


――




「……」



――ノ墓。




(この人が……、Pのお母さん……)



(あのPが慕うくらいだもの、きっと優しくて綺麗な方なんだろうな……)



(でも、私はあなたのことを好きになれそうにないわ)



(たった一人の子供を残して夫の下へ逝くなんて、同じ母親として許せないもの)



(……まぁ、……アイドルよりも女を取った人間が言えることじゃないけどね……)




――『 三流アイドルが笑わせんな 』





(……確かにアイツの言う通り、私は三流だわ)



(ううん。三流なんて優しいものじゃない。ただの……クズ)



(人の旦那を奪って、あなたや、アイツの人生まで壊して、責任も取らず逃げた)



(こんな最低の人間なんて、“クズ”がお似合いだと思う)





――ノ墓。




(……ごめんなさい。……あなたの大切な人を奪って)



(もう返すことはできないけど、それでも償わせて下さい)



(……これから先、どんな罰も受け入れます。……私が差し出せるものなら、なんでも差し出します)



(愛の為にも死ぬことはできないけど、あなたが許してくれるまで、罪を償い続けます)



(だから……)







「これからもPを――」










            ――見守っていて下さい。









――




「お待たせ」



「もう良いのか?」



「えぇ。少し感傷的になってただけよ」



「……」



――パン! ――プゥーッ!




「~~ッ!?」



「なに辛気臭い顔してんのよ」



「だからって、いきなり叩くなよ! ハンドルに頭ぶつけただろ!」



「あははは!」



「このババア……」





「ふふっ。それよ、それ」



「は?」



「私たちの関係はそんなんじゃないでしょ? 同情なんて気持ち悪いから止めなさい」



「……誰がするか」



「ふふっ」



「なんだよ」



「別にー♪」



「……フン」





「あ、それはそうと……」



「?」



「アンタの好物ってなに?」



「いきなりなんだ?」



「ただの気まぐれよ。たまにはアンタの好きなのでもつくってみようかなーって」



「……」



「それで、アンタってなにが好きなの?」



「……オムレツ」



「へー、ずいぶんシンプルなのが好みなのね。他には?」



「ハンバーグと、……カレー?」



「ふふっ、なにそれ。まるで子供じゃない」



「……悪いかよ」


――




「たっだいまー!」



「ただいま」



「二人とも遅いよ! どこに行ってたの?」



「んー、デート?」



「えッ!?」



「誤解されるような言い方するなよ。961プロダクションに挨拶しに行ってただけだ」



「あ、そうだったの? 良かった……」



「でも彼女に間違えられたことはあったわよね?」



「いや、あれはリップサービスだろ」



「むぅ。ホントに挨拶しに行っただけなの?」



「ふふっ。心配しなくてもちゃんと行ったわよ。まぁ、帰りに少しだけ寄り道しちゃったどね」



「ふーん」



「さてと、……そろそろご飯にしましょうか」



「手伝うよ」



「ありがと。だけど、アンタが手伝ったら意味ないでしょ?」



「そうなのか?」



「そうよ。だから愛、ちょっと手伝ってくれない?」



「はーい!」


――




「なんだか珍しいね」



「なにが?」



「ママがハンバーグつくってることだよ。いつも凝った料理しかつくらないのに、どうしたの?」



「アイツのリクエストよ。こういうのが好きなんだって」



「へー、そうだったんだ」



「子ども扱いされると嫌がるくせに、こういうのが好きなんて、やっぱり子供よね」



「ふふっ、そうかもね。……でも、それだけじゃないかもよ?」



「え?」





「だって、カレーもハンバーグも、みんな“家庭料理”を代表する食べ物でしょ?」



「……」



「一人暮らしが長かったって言ってたし、もしかしたら寂しかったんじゃないかな」



「寂しい? アイツが?」



「うん。……たぶん、お兄ちゃんは一人で食べるご飯の味を誰よりも知ってるはずだもん」



「……」



「だから、……少しだけ甘えてるのかもね」



「……」




――……誰かと一緒になってご飯を食べるのも、悪くない。





「ぁ……」



「どうしたの?」



「ううん。なんでもない」



「?」



「……ふふっ。ホントに分かり辛いヤツ」


――




――『ごちそうさまでした!』




「ごちそうさまでした」



「おいしかった?」



「あぁ。相変わらず料理上手だな」



「そっか。……ふふっ」



「?」



「……ふふっ」



「なんだよ」



「別にー♪」





「ママー、お風呂ってもう沸いたかな?」



「んー、たぶん大丈夫だと思うわ」



「そうなの? じゃぁ、入っちゃおーっと!」



「ねぇ、愛」



「?」



「今日は一緒に入らない?」



「え?」



「ほら、私たちってもうすぐ行っちゃうでしょ? だから、少しでも一緒にいようかなって」



「……」



「ダメ?」



「……うん! 分かった! 今日はずっとママと一緒にいるよ!」



「ふふっ、ありがと」



「ママとお風呂かぁ……。なんだか久しぶりかも」



「それじゃ、楽しみにしてるところ悪いけど、お風呂を見てくれる?」



「はーい♪」



――タッタッタッ。




「アンタも一緒に入る?」



「入るわけないだろ」


――




「ふぅ。……気持ち良かったわ」



「ずいぶん長風呂だったな」



「これくらい普通よ」



「ふーん。……ほらよ」



「お、気が利くわね。サンキュー」



「愛も同じので良いか?」



「うん! ありがと!」



「ふふっ。愛、飲みながらで良いからこっちにいらっしゃい。乾かしてあげるわ」



「はーい」



――ヴォーー。






「……」



「どうしたの?」



「いや、なんか微笑ましいなって」



「あはは。まさかアンタからそんな言葉が聞けるなんて思わなかったわ」



「……俺もそう思う」



「ふふっ。ねぇ、P」



「なんだ?」



「アンタ、やることないでしょ?」



「……」



「私の髪、ちょっと拭いてくれない?」



「雑巾で良いか?」



「アンタに任せるわ」



「……はぁ。……わかったよ」


――




「……」



――ヮシヮシ。




「んー、誰かに拭いてもらうのってやっぱり気持ち良いわね」



「ママー、もう少し下の方もやってー!」



「はいはい」



――ヴォーー。




「……ここら辺?」



「んー。もうちょっと左?」



――ヮシヮシ。




「……なんか、サルの毛づくろいみたいだな」



「その例え、他になんかなかったの? もうサルは懲りごりだわ」



「?」



「こっちの話よ」


――




「ふぁ……」



「眠いの?」



「うん。ホントはもうちょっと起きてたかったんだけど……」



「ムリしないで休みなさい。夜更かしはお肌の大敵よ?」



「……」



「どうしたの?」



「ねぇ、ママ。……今日、一緒に寝ても良い?」



「え?」



「……なんていうか、……今日は一人で寝たくないなって」



「……」



「やっぱりダメだよね。変なこと聞いてごめんね、ママ」



「……」



「それじゃ、おやすみなさい」



――ガチャッ。






「待ちなさい」



「ぇ?」



「なに勝手に行こうとしてるのよ。一緒に寝るんでしょ?」



「え? でも……」



「愛のワガママを断るはずないでしょう? 変な気を使ってるんじゃないわよ」



「……良いの?」



「えぇ、もちろん」



「ありがとう。……ママ」



「ふふっ。それじゃ――」



――ギュッ。




「今日は“三人”で寝ましょうか!」



「……は?」



「え?」





「なによ、その反応。もしかしてイヤなの?」



「当たり前だ! 意味が分からないだろ!」



「寝るのに一々理由なんて必要ないと思うけど?」



「ヘリクツを……ッ」



「むしろ正論でしょ」



「愛だってイヤだよな!? 俺が一緒の寝室にいるなんてイヤだよな!?」



「あたしは別にイヤって訳じゃ……」ゴニョニョ



「この子も満更でもないみたいだけど?」ニヤッ



「ぐっ……」



「諦めなさい。ここじゃ私がルールよ」


――




「……」



「ぁっぃ……」



「すぅ……すぅ……」



(なんだよ川の字って。これじゃ身動きもできないだろ)



「すぅ……すぅ……」



(はぁ……。お前はよくそんな無防備に寝られるな)



――ナデナデ。




「ン……」



(俺も寝よ……)





――「ねぇ、……まだ起きてる?」




「舞さん? ……寝てたんじゃなかったのか?」



「少し、……眠れないくてね」



「まぁ、色々あったからな」



「……」



「……」



「……あの後、あなたのお母さんに手を合わせたわ」



「……そう」



「手を合わせて、誓った。私が逃げた罪を、これから償うって……」



「……」



「ごめんなさい。……あなたの“幸せ”を奪って……」





「……舞さんは、責任を取った。俺はもう、それで十分だ」



「ホントにそう思ってるの?」



「……」



「無理、しなくても良いのよ?」



「……なら、“母さんを返せ”って言ったら、返してくれるのか?」



「それは……」



「……吐き出したところで“過去は変えられない”」



「……」



「自分の罪は、……自分で償うしかないんだ」



「そう、ね……」





「……」



「……」



「俺、もう寝るよ」



「……自分の部屋、……戻らないの?」



「今日は、……いいかな」



「そう……」



「それに、……ここが一番“暖かい”んだ」



「……」



「それじゃ、……おやすみ」



「えぇ。……おやすみなさい」


――

ここまでにします。

乙!




――ガチャッ。




「それじゃ、行ってくるな」



「うん! 向こうは危ない人が多いみたいだから、気をつけてね?」



「まぁ、なんとかなるだろ」



「もー! 心配してるんだから、ちゃんと聞いてよ!」



「はいはい」



「愛ー、私には何かないの?」



「お兄ちゃんに迷惑かけちゃダメだよ?」



「ひどッ! 私も心配してよ!」



「あはは!」



「まったく……、誰に似たのかしら?」



「間違いなく舞さんだろうな」



「ふふっ。それじゃ、……お兄ちゃん、ママ。行ってらっしゃい!」



「行ってきまーす」



「石川社長によろしくねー」




――ガチャンッ。




――




「~♪」



「ご機嫌だな」



「当たり前じゃない。どんな得体の知れない化け物がいるのか、楽しみで仕方が無いわ」



「ふーん。……あ、そうだ」



「?」



「これ、今のうちに渡しておくよ」



「……CD?」



「向こうで歌う舞さんの新曲。……と言ってもカバーだけどな」



「聞いてみても良い?」



「使い方、分かるのか?」



「バカにしないで。それくらい分かるわよ」


――




♪♬~♫~




「良い曲ね……」



「……」



「ねぇ。この曲、どういう意味なの?」



「ケースの裏側にカードがなかった?」



「あ、ホントだ」



♪~♫~♪♬♬~♫~




「……」



「……なるほど」



「舞さんにピッタリだろ?」



「確かにお似合いな曲ね」



「……」



「でも、……“アンタはそれで良いの?”」



「……どうでも良いよ」



「……そう」


――




――ニューヨーク行きをご利用のお客様は961便までお急ぎください。




「遅いな……」



「ねぇ、ホントにあの子たちも来るの?」



「俺はそう聞いてるけど……」



――あっ! いたいた! あの白い髪は間違いないよ!




「?」


翔太
「おーい!」


冬馬
「……」



「……やっと来たか」


北斗
「お待たせしてすいません」



「時間ギリギリじゃない。どうしたの?」


北斗
「冬馬だけ荷物検査に引っかかりまして……」



「ふーん」


冬馬
「……別に良いじゃねぇかフィギュアくらい」


翔太
「というか僕たち旅行に行くんじゃないんだから、普通は持ってこないよねー」


冬馬
「はぁ……」



「話は後だ。時間がないから急いで行くぞ」


――



CA
「チケットを確認させて頂きます」



冬馬
「……」スッ


CA
「ありがとうございます。チケットに書かれてるナンバーがお座りになる座席なので、間違いのないようお願いします」


冬馬
「どうも」



「ねぇ、後ろがつっかえてるんだから早く行ってくれない?」


冬馬
「あ、悪い」



――プシュー。




「おぉ、なかなか広いじゃない。さすがファーストクラスね」



「そんなとこで突っ立てないで早く座ってくれ」



「はいはい。それよりも荷物お願い」



「はいよ」





――ゴトッ。




「みんなもう座ったか?」


北斗
「冬馬。窓側の席、譲ってくれない?」


冬馬
「ん? あぁ、良いぜ」


北斗
「ありがと」


翔太
「あれ? 僕だけ一人?」



「じゃあ私がそっちに行こうか?」


翔太
「良いの?」



「えぇ」



「……座ったみたいだな」


CA
「それでは皆様、快適な空の旅をお楽しみ下さい」


――




「……」



――ワィワィガャガャ。




(ニューヨークまで、およそ13時間。……活動を開始するのは後にして、まずはボディーガードを雇うことからだな)


冬馬
「なぁ、白髪の兄さん」



「ん?」


冬馬
「俺たちは、あんたをなんて呼べば良いんだ?」



「どういう意味だ?」


冬馬
「……あんたとは初対面じゃねぇけど、あんまり面識がないからな。俺たちのプロデューサーって言われても、いまいちピンとこないんだよ」



「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな」


冬馬
「分かりやすく頼むぜ?」



「うーん……。876と765プロをタライ回されてクビになった落ちこぼれクズプロデューサーとでも思ってくれ」




翔太
「えっと……。な、なんて反応すれば良いのかな?」



「はぁ。アンタねぇ……」


北斗
「こ、個性的な人なんだね……」


冬馬
「……ホントに信用できるのかよ、コイツ」



「いや、しなくて良いよ」


冬馬
「は?」



「なに驚いてるんだ? ほとんど初対面の人間を信用する方がおかしいだろ」


冬馬
「そうだけどよ……」



「じゃあ、逆に聞くが、……お前らは信用できるのか? こんなどこの馬の骨かも分からない人間を、そんな簡単に信用できるのか?」


北斗
「……」


翔太
「……」





「俺はお前らに信用してくれ。とか、仲間だから、なんて言うつもりはない。俺は俺のやり方でお前らをトップアイドルにする。それだけだ」


冬馬
「……」



「だけど、その代わり……、俺が“信頼”に値する人間かお前らが決めろ。もしできないのなら、その時は遠慮なく切り捨てれば良い」


冬馬
「……なるほど。確かにオッサンの言う通り、毛色が違うな」



「……」


冬馬
「765プロから引き抜いたって聞いてたから、仲良しごっこで傷を舐め合ってるようなヤツかと思ったが、……気に入ったぜ、その考え方」



「それはどうも」


冬馬
「あんたの言った通り、しばらくは従ってやるよ。向こうじゃ右も左も分からない素人と同じだからな」



「……」


冬馬
「あんまり幻滅させるなよ、“プロデューサー”」



「精々期待に答えられるように頑張るよ」


――

ここまでにします。

あまとう・・・お前ってやつは・・・


あまとうがかっこいい

(この人フィギュア持ち込もうとして引っかかった人です)

しーっ
今いい話しているところだから

おもすれー



冬馬
「それで、俺たちのデビューはいつになるんだ?」



「まだ活動を開始したわけでもないのに気が早いな」


冬馬
「こういうのは気持ちが大事なんだよ」



「ふーん。お前たちも聞きたいのか?」


北斗
「えぇ。準備は早い方が良いですからね」


翔太
「後ろに同じー」



「右に同じー」



「満場一致か」


冬馬
「別に減るもんじゃないだろ。早く教えてくれよ」





「……向こうでの活動方針だけど、全員ソロで売り出そうと思う」


翔太
「え? ジュピターのままじゃダメなの?」



「それでも良いけど、せっかくアメリカまで来たんだ。それぞれの技術を磨いてみようと思ってな」


翔太
「ふーん」



「とりあえず、……北斗」


北斗
「あ、はい」



「お前のルックスはここでも通用すると思うから、俳優として売り出してみたい。……良いか?」


北斗
「面白そうですね。良いですよ」



「次に翔太」


翔太
「なに?」



「お前はダンスの技術が高いから、ダンサーとして活躍させるつもりだ。やってくれないか?」


翔太
「うーん。それっていろんな人のダンスが研究できるってわけだよね。良いよ」



「最後に冬馬だ」


冬馬
「おう」



「お前は全体的にバランスが良いから、アイドルのまま売り出そうと思う」


冬馬
「なんだ、俺だけ変化なしかよ」



「期待させて悪いな」


冬馬
「別にしてねぇよ」



「そっか」




冬馬
「それで? さっきも聞いたけど、俺たちはいつからデビューになるんだ?」



「しないけど?」


冬馬
「――は?」



「勘違いさせて悪いな。だけど、しばらくの間、活動するのは翔太と舞さんだけだ」


翔太
「え? 僕だけ?」


冬馬
「おい……。ふざけてんのか?」



「ふざけてなんかいない。コッチも色々と考えがあっての答えだ」


冬馬
「だからって、なんで俺らのデビューが見送られなきゃならねぇんだよ!」



「納得できないのか?」


冬馬
「当たり前だ!」



「はぁ……。仕方が無いな……」


冬馬
「納得できるような答えなんだろうな?」



「たぶんな」


冬馬
「じゃあ、聞かせてもらおうか。どうして俺らをデビューさせないんだ?」





「理由は二つある」


冬馬
「……」



「まず一つ目。……これは年齢的な問題だ」


冬馬
「年齢的な……?」



「……お前らも知ってるとは思うけど、女性アイドルの寿命は短いんだ」


冬馬
「……」



「いくら伝説のアイドルと言われようとも、ピークを過ぎれば落ちるだけ」


北斗
「……」



「ましてや30歳だぞ? もう、なりふり構っていられる程のチャンスは残されていない」


翔太
「……」



「だからアイドルとして活動できるのも、今だけなんだ」




冬馬
「そうか……」



「分かってくれたか?」


冬馬
「あぁ。アンタが姉御を先にデビューさせる理由は分かった。……それで、二つ目は?」



「……それが最も重要なポイントだ」


冬馬
「……」



「俺がお前たちをデビューさせない一番の理由。それは……」


冬馬
「それは?」



「……お前たち、英語できないだろ?」


北斗
「……ぁ」


冬馬
「……ぁ」



「納得した?」


冬馬
「あー、うん。すげぇ納得した」




翔太
「ねぇ、プロデューサーさん。僕も英語できないんだけど?」



「そうなのか?」


翔太
「うん。なのに、なんで僕だけ活動するの?」



「実はな、翔太だけは英語が話せなくてもマイナスにならないんだ」


翔太
「え?」



「もちろん英語ができるに越したことはないけど、ダンスなら実力だけで観客を沸かせられるだろ?」


翔太
「うん」



「とりあえずまだ不安なことだらけだから、最初は舞さんと一緒に腕試しをしてもらおうと思ってるけどな」


翔太
「腕試し?」



「あぁ。“アポロ・シアター”って場所だ」


翔太
「?」



「まぁ、プロへの登竜門だと思ってくれ」


翔太
「ふーん」



「でも、ブーイングされた時点で追い出されるから気をつけてくれよ?」


翔太
「えッ!?」


――

ご飯食べてきます




――ニューヨーク(ジョン・F・ケネディ国際空港)



冬馬
「おぉ! 来たぜアメリカ!」



「うるさいわね。もう少し静かにできないの?」


冬馬
「なに言ってるんだよ姉御! アメリカだぞアメリカ! テンション上がらない訳ないだろ!」


翔太
「冬馬くん、ムダに元気だね。僕はもう眠いよ……」


冬馬
「翔太は子供だからな! おっ! 見ろよ北斗! なんかボブ・サップみたいなのいるぞ! ははっ、すげー!」


北斗
「冬馬。頼むから黙ってくれないか? もの凄い恥ずかしいんだけど……」


冬馬
「普段から恥ずかしいセリフ言ってるヤツがなに言ってるんだよ!」


北斗
「……」




冬馬
「プロデューサー! なんか買いに行こうぜ! 腹減ったー!」



「チェック・インの後なら良いぞ」


冬馬
「おっしゃ! なかなか話が分かるぜアンタ!」



「あんまり食べ過ぎるなよ」


冬馬
「なに食べようかなー。やっぱアメリカに来たからにはハンバーガーだよなー。いや、でもステーキも……」


翔太
「冬馬くん、もう食べ物のことで頭が一杯だね」



「もう放っておいて先に行かない? 眠たくて仕方が無いわ」


北斗
「名案ですね」


冬馬
「プロデューサー! 早く行こうぜ!」



「はいはい」


――




――ヴォルルル。



翔太
「……スィ」



「……スゥ……スゥ」


北斗
「クゥ……」



――ヴォルルル……。



運転手
「It reached」
(着きました)



「Thank you. How much is payment?」
(ありがと。代金はいくら?)


運転手
「Since Mr. KUROI is ending with payment,you do not need to pay」
(既に黒井様がお支払い済みなので、あなたがお支払いする必要はありません)



「That is right.In it, it makes it only a chip to pass you」
(そうなんだ。それじゃ、渡すのはチップだけにするよ)


運転手
「You are welcome」
(ありがとうございます)





「冬馬。悪いけど――」


冬馬
「あんた凄いな!」



「え?」


冬馬
「英語ペラペラじゃねぇか! もしかして海外に住んでたのか!?」



「練習したんだよ。それよりも――」


冬馬
「へー! 俺も練習したらあんな風に喋れるのか!?」



「お前次第だろうな。その前に――」


冬馬
「おぉ! なら、やるしかないな!」



「……」


冬馬
「勉強なんて嫌いだけど、英語は別だ! 見せてやるぜ、俺の底力!」





――コツン。



冬馬
「痛ッ!?」



「うるさい」


冬馬
「だからっていきなり小突くなよ!」



「みんな長旅で疲れてるんだ。お前が元気なのは分かったから、少しは大人しくしろ」


冬馬
「あ、悪い……」



「分かってくれたなら良いよ。それよりも、舞さんたちを運ぶの手伝ってくれ」


冬馬
「分かった。……あ、北斗はどうする?」



「……起こすしかないな」


――



北斗
「すみません、起こしてもらって。お手数かけました」



「こっちこそ悪いな。まだ眠いだろ?」


北斗
「ベットまで我慢しますよ。俺たちの部屋、どこですか?」



「奥から2番目。カギはあるから渡しておくよ」


北斗
「ありがとうございます」



「俺たちはその隣だから、なにかあったら呼んでくれ」


北斗
「麗しい女性と二人っきりですか。羨ましいですね」



「なら変わってやろうか?」


北斗
「なかなか魅力的ですけど、俺の趣味じゃありません」



「……すぅ……すぅ」


北斗
「それに、お姫様はあなたが良いみたいですよ?」





「姫って歳かよ」


北斗
「女性はみんな天使であり、お姫様です。あくまで俺の持論ですけどね」



「あっそ」


北斗
「それじゃ、おやすみなさい」



「おやすみ。冬馬も悪いな」


冬馬
「気にすんな。でも、明日は付き合ってもらうぜ?」



「了解」


北斗
「食事の約束、ホントにしてたんですか?」



「まぁな」


北斗
「プロデューサーさんも律儀ですね」



「褒め言葉として受け取っておくよ」


――




――ガチャッ。パチッ。



北斗
「へー、なかなか広い部屋だね」


冬馬
「そうだな。ところでコイツ、どこに寝かせる?」


北斗
「翔太はあんまり寝相も悪くないし、冬馬に任せるよ」


冬馬
「なら、真ん中にでもするか」


北斗
「……」


冬馬
「どうした?」


北斗
「いや、こうやって冬馬たちと寝るのって初めてだなって」


冬馬
「そうか?」


北斗
「そうだよ。俺たち、ジュピターとして活動するのは長かったけど、一緒に過ごすことなんて少なかっただろ?」


冬馬
「……そういえばそうだな」


北斗
「なんか……、新鮮かもしれない」




冬馬
「まぁ、どうせソロになってバラバラに活動するんだ。しばらく我慢しようぜ」


北斗
「……俺は“そういう意味”で言ったんじゃないんだけどな」


冬馬
「?」


北斗
「まぁ、良いや。そろそろ寝ようか」


冬馬
「おう」



――カチッ。



北斗
「おやすみ、冬馬」


冬馬
「あぁ、おやすみ」


――

ここまでにします

追いついた 乙
やっぱある程度のドライさは大事よね


ジュピターとの絡みが面白くていいね

なんだかんだで良いPやってるよな白ちゃん
現実と理想の両方見てるし

理想の上司ですわ




――コンコン。




「Who's up?」
(だれ?)



――「I'm receptionist. It is time for check-out, but what would you do?」
   (受付係の者です。 退室の時間ですが、どうされますか?)




「OK. I'm coming. Thank you for teaching it」
(すぐ行くよ。教えてくれて、ありがとう)




「……なんだって?」



「チェックアウトの時間だとさ」



「え、もう? まだシャワーも浴びてないわよ」



「一時間前にコールしてもらうように頼んだから、まだ時間はあるぞ」



「あら、そうなの?」



「俺はあいつ等の部屋に行くけど、舞さんは?」



「んー、時間があったら顔くらい出すわ」


――




――コンコン。



北斗
「誰ですか?」



――「俺だ。入っても良いか?」



北斗
「あ、はい。今開けます」



――ガチャッ。



北斗
「おはようございます。どうかしました?」



「いや、大した用事じゃない。もう少し経ったら退室するから、それを知らせに来ただけ」


北斗
「もうそんな時間なんですか。それじゃ、急いで支度しないと」



「まだ時間があるから、ゆっくりで良いよ。……そういえば、あいつ等は?」


北斗
「翔太はとっくに起きてテレビ見てます。冬馬だけがシーツに包まったままですね」



「はぁ……。北斗、悪いけど起こしてくれないか?」


北斗
「えぇ、分かりました」





「チェックアウトは8時だから、それまでにフロアに集合してくれ」


北斗
「8時? それだと一時間くらい余裕がありますよ?」



「早めに行動して損はないだろ?」


北斗
「なるほど。確かにそうですね」



「そろそろ俺は戻るけど、シャワー浴びるなら今のうちだぞ?」


北斗
「ははっ。それなら起きてすぐに済ませましたよ」



「そっか。余計なお世話だったみたいだな」


北斗
「お気遣いありがとうございます」



「こっちこそ邪魔して悪かった。それじゃ、冬馬たちのこと頼むよ」


北斗
「えぇ。任せてください」


――



冬馬
「ふぁ~あ。……おはよ」



「おはよう。よく眠れたか?」


冬馬
「おかげ様で良く眠れたよ。北斗も悪いな」


北斗
「そう思うなら頭の寝癖、なんとかしてこい。見っともないぞ?」


冬馬
「あ、ほんとだ……。プロデューサー、少し時間もらっても良いか?」



「トイレの場所、分かるのか?」


冬馬
「それくらい分かる。……たぶん」



「そこの青いパネルにMENって書いてある所がトイレだ。間違えるなよ?」


冬馬
「ン」



「目的地まで時間が掛かるから、他にも行きたいヤツがいるなら今のうちに行っとけ。後でトイレに行きたいって言っても知らないからな」


翔太
「けっこう時間が掛かるんだ。……僕も行ってこようかな?」


北斗
「そういえば冬馬のヤツ、毛櫛とか忘れたって言ってたな。……俺のを貸してやるか」



――ゾロゾロ。






「なんか修学旅行みたいね」



「なら、後で自由行動の時間でも設けてやろうか?」



「あら、良いの?」



「まぁ、誰かを付き添いにさせるってのが条件だけどな」



「それならアンタしかいないわね。荷物持ち、よろしく」



「俺は冬馬と食べに行く約束があるからムリだ。他のヤツに頼め」



「知り合って間もないのにそんな頼みごとできる訳ないでしょ」



「え?」



「なによ、その驚いた顔は」



「いや、まさか舞さんにそんな一般常識があるなんて……」



「ちょっとそれどういう意味よ!」


――




――ヴォルルル。



翔太
「ねぇ、プロデューサーさん」



「なんだ?」


翔太
「僕たち、どこに向かってるの?」



「んー。これから住む俺たちの家、……だな」


翔太
「家?」



「さすがに毎日ホテルを転々としながら生活するなんて金のムダだろ? だから、活動が本格化するまでは、全員一緒に過ごした方が良いって考えたんだ」



「ねぇ、P」



「なんだ?」



「もしかして、……私も一緒に住むの?」



「当たり前だろ。なんで舞さんだけ特別扱いしなくちゃならないんだ」



「いや、そうなんだけど……。私、女なのよ?」



「だから?」



「……襲われたらどうするのよ」





「安心しろ。そんな猛者は一人もいないから」



「はぁ!? どういう意味よ、それ!」



「誰だって相手くらいは選ぶってことだろ」



「なッ!? こんなイカ臭い野郎の集団に私みたいな美女を放り込んだら襲われるに決まってるでしょ! そんなことも分からないの!?」



「えーと。どこまで話したっけな?」


翔太
「僕たちが一緒に住むってところだよ」



「あぁ、そうだった。みんなで住むって言っても、やっぱりプライベートは必要だろうから各自の個部屋は用意してある。着いたら部屋決めしておいてくれ」


翔太
「はーい」



「話を聞けー!」



「それから、お前たちに重要な伝達事項があるぞ」


冬馬・北斗・翔太
『?』



「各自、貞操は自分で守れ」


冬馬・北斗・翔太
『はい!』



「……納得いかねー」


――

ご飯食べてきます




「着いたな」


北斗
「へー、ここが……」



「あぁ、今日から住む俺たちの家だ」


北斗・翔太・冬馬・舞
『……』



「なんかテンション低いなぁ。どうしたんだ?」


翔太
「いや……」


冬馬
「だってな……」



「?」



「どうみても普通の家じゃない。ホントにここが私たちのホームなわけ?」



「なにか不満なのか?」



「別にないけど……」


北斗
「俺はてっきりマンションでも借りてるかと思いましたよ」



「黒井社長に予算を制限されてるんだから仕方が無いだろ」


舞・北斗
『……』


冬馬
「なぁ、翔太。アメリカってさ」


翔太
「うん。プール付きの大豪邸とか……」


冬馬
「夜景の見える高層マンションだよな」


翔太・冬馬
『……はぁ』



「文句があるなら自分で探せ」


――




――ヵチャッ。




「へー。中は案外広いのね」



「だろ? 探すのに苦労したんだぞ」



「はいはい。ご苦労様」


冬馬
「プロデューサー。俺、この部屋にしても良いか?」


翔太
「あ! ズルイよ冬馬くん! その部屋は僕も狙ってたんだよ!」


冬馬
「は? お前そっちの部屋にする。みたいなこと言ってたじゃねぇか」


翔太
「やっぱり日当たりは重要だからね。だから冬馬くん。その部屋、僕に譲って」


冬馬
「ヤダ」




翔太
「そっか。どうしても争うしかないんだね……」


冬馬
「なんだよ、やんのか?」


翔太
「うん。例え冬馬くんを傷つけることになっても、僕はその部屋が良いんだ!」


冬馬
「へっ、良い度胸じゃねぇか。受けてやるよ」


翔太
「いくよ?」


冬馬
「おう」



――最初はグー! ジャンケン、ぽい! あいこでしょッ!




「……あいつ等、さっきまで不満気だったよな?」



「実は楽しみにしてたんじゃない? 知らないけど」



――あいこでしょッ!



冬馬
「ぅわぁああああ!!?」


翔太
「へへーん。頂き!」


――




「全員、部屋決めは終わったか?」


北斗
「プロデューサーさん」



「どうした?」


北斗
「一つだけ余った部屋があるんですけど?」



「あぁ、それは黒井社長の部屋にするから、気にしないでくれ」


冬馬
「げっ、おっさんも一緒に住むのかよ」



「他になにか聞きたいヤツはいるか?」



――シーン。






「無いなら話を進めるぞ。まずは今後の食事についてだ」



「食事?」



「さっきも言ったけど、黒井社長からは予算を制限されてる。それも、お前らのレッスンと生活費でほとんど無くなるくらい小額だ」


北斗
「……」



「だから、少しでも使える金額を増やすために、食事は基本的に当番制にして、自炊にしようと思う」


冬馬
「めんどくせぇ……」


翔太
「プロデューサーさん、それって今日から?」



「今日は色々とやることがあるから、明日からだな」


翔太
「ふーん」



「それで、話って終わりなの?」



「いや、まだある。今後、お前らが活動することになる事務所についてだ」




冬馬
「?」



「とりあえず……、まずはこの書類にサインしてくれ」


冬馬
「なんだこれ?」



「お前らの移籍書」


冬馬
「は?」


翔太
「どういう意味?」



「簡単に言うと、この書類は961プロダクションの海外支店へ移籍する証明書なんだ」


翔太
「うん」



「まぁ、アメリカで活動することになって、日本の事務所に所属したままだと経理なんかで色々と不都合なことが多いから、コッチのほうに移籍してもらうことになったって思ってくれ」


翔太
「へー」



「ところで、この事務所名なんて読むの?」



「“The Sting Production(スティング・プロダクション)”だな」



「へー。どういう意味?」



「……さぁ?」


――

ここまでにします


Stingを調べたら不穏な意味が……

乙です

The STIGプロだって?(難聴)

ポリスか何かか?(すっとぼけ)



冬馬
「はぁ……。やっと終わったぜ……」


翔太
「俺も。というか、移籍するだけでなんでこんなに書かなくちゃいけないんだ?」



「……」


翔太
「つかれたー」



「自由行動まだー?」



「……うん。全員、不備は見当たらないな」



「お、ってことは?」



「お待ちかねの自由行動だ」


翔太
「やったー!」


冬馬
「もう昼だぜ。……腹減った」



「そんな時間だったのか。とりあえず腹ごしらえだな。俺は冬馬と食べに行くけど、お前らはどうする?」


北斗
「どうするもなにも、食材が皆無じゃ話になりませんよ」


翔太
「僕たちもついて行って良い?」



「どうする?」


冬馬
「二人も全員も同じだろ。俺は構わないぜ」


翔太
「決まりだね」



「それじゃ、P。私の分もよろしく」



「……俺が奢るのかよ」


――



店員
「Hello, for here,or to go?」
(ここで食べるのか? それとも、持って帰るか?)



「Here」
(ここで食べるよ)


店員
「Thank you very much. Please call, if an order is decided」
(そりゃあどうも。注文が決まったら呼んでくれ)



「――さて、冬馬の要望でステーキ・ハウスに来たわけだが……」


冬馬
「美味そうだな」グー



「どれもこれもガッツリしてるわね。もっとサッパリしたのないの?」


北斗
「なんて書いてあるか分からない……」


翔太
「プロデューサーさん。僕、これにする!」



「お前らも決まったか?」


北斗
「俺は一応……」



「私も決まったわ」



「冬馬は?」


冬馬
「ステーキ!」





「全員決まったみたいだな。……鳴らすぞ?」


翔太
「はーい」



――チリーン。




「あ、言い忘れてたけど、注文する時は自分で頼めよ?」


北斗
「えッ?」



「ムリよ。前もって勉強してたならともかく、いきなり会話なんてムリに決まってるじゃない」



「だからチャレンジさせてるんだろ? 何事も挑戦だ」



「そうだけど……」



「危なくなったら通訳してやるから、とにかくやってみろ」



「はぁ。分かったわよ」


北斗
「これ、なんて読むか分かる?」


翔太
「いや、僕に聞かれても……」


冬馬
「腹減った~」グー


――



店員
「Oh my god ……」


翔太
「ワン! ワン! コーラ!」ビシッ、ビシッ


北斗
「This、……プリーズ!」



「ハンバーグ! サラダ! オレンジジュース! オールワン!」



「ははっ、やっぱり苦戦してるな。……ん?」


冬馬
「Tボーン・ステーク。それと、確か……フレンチフライ」


店員
「It is french fries and T-bone steak」
(フライドポテトとTボーン・ステーキだな)


冬馬
「あと……、ライス。ラージ」


店員
「OK,Are you sure you want to if you cooked?」
(わかった。焼き加減はどうする?)


冬馬
「え?」



「どのくらい焼くのか聞いてるんだよ」


冬馬
「えっと……、ミディアム」



店員
「Boy please wait a little.I’ll bring the meat of the best」
(少し待ってな坊や。最高の肉を持ってきてやるよ)


冬馬
「なんて言ってるんだ?」



「すぐに持ってくるって。それよりも冬馬。お前、英語できたんだな」


冬馬
「はぁ? どこがだよ。思いっきり片言じゃねぇか」



「片言でも通じたなら、それで良いんだよ。それに、初めてにしては上出来だと思うぞ?」


冬馬
「そうか?」



「あぁ。でも、ステーキの発音はともかく、フレンチフライなんて単語よく知ってたな」


冬馬
「まぁ、こっちで食べたいのは決まってたからな。頼む時に困らないように調べてたんだよ」



「良い心がけだ」


冬馬
「褒めてくれるのは嬉しいんだけどよ、あいつ等そろそろヤバいんじゃねぇか?」



「?」




北斗
「だから! これ! プリーズ! オッケー!?」


翔太
「コーラ! コォオラ! キュォオオリァ!」



「いい加減にしなさいよ、このボケ! 指差しで分かるでしょ!?」



「……これはひどい」


冬馬
「まだかなー」グー



「お前ら落ち着け。通訳は俺がやるから、一人づつ食べたいの教えろ」


北斗
「これ!」


翔太
「ハンバーガーとコーラ!」



「ハンバーグ! サラダ! オレンジジュース!」



「混乱するから一斉に話すな!」


店員
「I’m sorry to have kept you waiting.Drinks are on me」
(待たせたな。このドリンクは俺のおごりだ)


冬馬
「ぉお! 美味そう! いただきまーす!」


――




「アンタの所為で恥をかいたじゃない」



「それはこっちのセリフだ。おかげで注目の的だったぞ」


冬馬
「ふー、美味かった」


北斗
「冬馬はのん気で良いな」


翔太
「プロデューサーさん。この後のご予定は?」



「ない。強いていうなら、明日の買出しくらいだな」


翔太
「なら、少しだけ行きたいたいところがあるんだけど、良い?」


冬馬
「あ、俺も」



「あんまり離れた場所じゃなきゃ付き合うよ」





「ちょっと、私の買い物に付き合ってくれるんじゃなかったの?」



「それは冬馬と食事に行くって理由で断ったはずだけど?」



「ご飯ならもう終わったじゃない。先に予約したのは私なんだから、私を優先するべきでしょ?」



「北斗、悪いけど付き合ってやってくれ」


北斗
「あ、はい」



「英語ができないヤツが付き添っても意味ないわよ。通訳はアンタだけなんだから、アンタが来なさい」


北斗
「……」



「自分で話せるようになるまで我慢するって選択肢は?」



「ない」


翔太
「えっと……。僕の用事は大したことじゃないから、後で良いよ」



「はぁ。舞さんがワガママ言うから、翔太が気を使ってるだろ」



「ぐっ……」


冬馬
「ん? 翔太は止めるのか? なら、俺と一緒に行こうぜプロデューサー」


翔太
「空気読みなよ、冬馬くん……」


――



翔太
「そういえば、冬馬くんってどこに行きたいの?」


冬馬
「アニメショップ」


翔太
「だと思った」


冬馬
「そういうお前はどうなんだよ」


翔太
「僕? 僕はお菓子屋さん。なんかパンフレット見た時から、絶対に行こうって決めてたんだよねー」


冬馬
「お前も人のこと言えないだろ」


翔太
「ははっ、そうかも」



「……このままじゃ埒が明かない。北斗、パンフレット貸してくれないか?」


北斗
「どうぞ」





「えっと、俺たちが今ここら辺だから……。お前らが行きたい場所ってどこだ?」


翔太
「ここだね」



「私は……、こことここかしら」


冬馬
「ダウンタウンにあるアニメ・ジャングルって店」



「ってことは、順番は翔太、舞さんだな」


冬馬
「俺は?」



「却下」


冬馬
「なんでだよ!」





「だってな……。ダウンタウンってロサンゼルスにある街だろ? ここからだと、飛行機じゃないと行けないぞ」


冬馬
「なッ!? そんなに遠いのか!?」



「車で行こうと思ったら一週間はかかるな」


冬馬
「そ、そうだったのか……」



「悪いけど諦めてくれ」


冬馬
「……わかった」シュン


翔太
「見る影も無いくらい落ち込んでるね」



「というか、なんでそんなとこに行きたかったのかしら?」


北斗
「たぶん、新しいフィギュアでも買おうとしてたんじゃないですか? ……ほら」


冬馬
「ごめん、ホロ……。俺、会いにいけそうにないや……」



「なんか、……哀れだわ」


翔太
「でも、こういうのって自業自得って言うんでしょ?」


――



翔太
「ぉおっ!」


店主
「Welcom to Economy Candy!」
(エコノミー・キャンディーにようこそ)



「へー、昔ながらの駄菓子屋って感じね」



「こっちにもこういう老舗ってあるんだな」


翔太
「これと、これと、これも……。後どれにしようかな」


北斗
「買い過ぎだろ。寝る前にはちゃんと歯を磨きなよ?」


翔太
「わかってるよ~♪」





「おじさん、これちょうだい」


店主
「It is do you want? It will be 35 ¢」
(それが欲しいのかい? 35セントだよ)



「?」



「35セントだって」



「どれ使えば良いの?」



「その1って書いてあるお札だな」


翔太
「おじさん! お会計お願い!」


店主
「Oh. It will be $ 45」
(凄いな……。45ドルだよ)


翔太
「プロデューサーさん、これで足りる?」



「十分だ」


店主
「Here is 5 dollars change.Watch out so that a cavity does not have it」
(5ドルのお返しだね。虫歯にならないように気をつけなさい)


翔太
「なに言ってるか分かんないけど、ありがとね」


――




「さて、いよいよ私の番ね」


冬馬
「……」



「今日は買うわよー。ヤロウ共! ついて来い!」


冬馬
「行ってらっしゃい」



「はぁ!?」


冬馬
「プロデューサーはともかく、俺はいらないだろ? 俺、そこの店でアイス食べてるから買い物は4人で楽しんでくれよ」



「荷物持ちが減ったら買える量も減るでしょ。いい加減に観念しなさい」


冬馬
「いや、だってここ……」



―― Victoria’s Secret(ヴィクトリア・シークレット)



冬馬
「ランジェリーショップだろ……」



「下着くらいなによ、情けないわね」


冬馬
「でもよ……」



「あぁ、もう! ウジウジ男らしくない! 行くわよ!」


冬馬
「絶ッ対にイヤだ!」



「良いから来なさい! ついでに女への耐性も付けてあげるわ!」



――嫌だーーー!



北斗
「体格なら冬馬の方が勝ってるのに、ズルズル引きずられてますね」



「……なんて雄々しい」


――

ここまでにします


みんな楽しそう

クズPしね

正直765プロよりも黒Pイキイキしてる感はある

>>599
もう病気だなお前

ホロでワロタ




「あ、これも良いわね」


冬馬
「なんで俺が……」ブツブツ


翔太
「もう諦めなよ」



「弱みを見せた時点でお前の負けだ」



「北斗くん、あれ取ってくれない」


北斗
「これですか?」



「ありがと。やっぱり買い物は男の子がいると楽ね」


北斗
「お役に立てて光栄です」





「ところで、なんで女の買い物っていつも長いんだろうな」


翔太
「さぁ? 僕たち男の子にとっては永遠のナゾだよ」



「無駄口を叩いてるヒマがあるなら手を動かす!」



「はいはい」



「そこのアホ毛! ちょっと来なさい」


冬馬
「……」



「呼んでるぞ?」


冬馬
「……」


翔太
「どうせ逆らえないんだから、早く行きなよ」


冬馬
「……はぁ」





「早く来なさい、このノロマ!」


冬馬
「なんだよ」



「どれが良い?」


冬馬
「は?」



「だから、どの下着が良いって聞いてるの」


冬馬
「いや、意味が分からないんだけど……」



「どっちか聞いてるのに意味なんてないわよ」


冬馬
「じ、自分で選べば良いだろ」



「良いから選びなさい。早くしないとマネキンに付いてる下着、アンタに付けるわよ?」


冬馬
「くっ……」





「なんで悩んでるんだ? 適当に選べば良いのに」


翔太
「プロデューサーさん、冬馬の気持ちも考えてみてよ。いきなり呼ばれて“好きな下着を選べ”なんて言われたら戸惑うと思うけど?」


冬馬
「~~ッ」



「それにしても悩み過ぎだろ」


翔太
「根はマジメだからね。それに、選んだのは必然的に“自分の好み”にされちゃいそうだもん。そりゃあ悩んでも仕方がないよ」


冬馬
「これ……?」



「ストライプ? なんか子供っぽいわね~。アンタってこういうのが好みなの?」


冬馬
「あ、姉御が選べって言ったんだろ! 別に俺の趣味じゃねぇよ!」



「ダウト」


翔太
「嘘だね」


北斗
「冬馬は良くも悪くも正直だからなー」


――



店員
「Here you are」
(どうぞ)



「なんで俺が……」



「なに言ってるのか分からないんだから当然でしょ?」



「それくらい事前に調べておけよ」



「あー、はいはい。小言は後で聞くわよ。それよりもアホ毛」


冬馬
「?」



「はい、これ」



――ファス。



冬馬
「……は?」



「パンツだって高いんだから、大事に使いなさいよ?」


冬馬
「い、いや、意味が分かんねぇよ!」



「意味ねぇ……。これから一緒に過ごすっていうのに、一々下着なんかでビビられたらコッチが迷惑なのよ。それくらいは分かる?」


冬馬
「そ、それは……、そうかもしれないけど……」



「だから! これ持って少しは耐性をつけなさい!」


冬馬
「でも……」



「返事は?」


冬馬
「……はぃ」


――




「はい。これと、これと、これ。後そこにある一式もお願い」



「むり」



「なんでよ?」



「もう入りきらないんだよ。悪いけど、残りは自分で持ってくれ」



「はぁ……。せっかくアメリカまで来たんだから、こんな横長じゃなくて、もっと大きな車にしておきなさいよ」



「文句があるなら黒井社長に言ってくれ。俺だってこんな派手な車は趣味じゃない」



「ちぇ。じゃあ、そうするわ」


北斗
「まぁ、不満を漏らしたところで、“フン。低俗な人間にはこの車の良さが分らんのだ”。なーんて言われるのがオチですけどね」





「さてと、まだ時間はあるけど、……どうする?」


翔太
「僕はもういいや。お菓子もいっぱい買えたからね」



「まだ買い足りないけど、もう入りきらないんでしょ? なら諦めるわ」



「北斗は?」


北斗
「俺は特に書いたい物もないので。……冬馬は?」


冬馬
「アニ――」



「却下」


冬馬
「……」



「それじゃ、今日のところは明日からの食材を買ってお開きにするか」


翔太・北斗・舞
『はーい!』


――




――ガラガラ。



翔太
「プロデューサーさん。これ買って良い?」



「5ドルまでな」



「ねぇ、お酒がどこにも売ってないんだけど……」



「売ってる訳ないだろ。酒類は専門店でしか買えないぞ」



「そうなの? じゃあ、帰りにでも寄ってくれない?」



「パスポート持ってるのか?」



「え? 置いてきたけど、それがどうしたの?」





「この国では身分確認ができないヤツに酒は売らないことになってるんだよ」



「へー。なら、アンタに買わせれば良いのね」



「……」



「仕方が無いから、私も付き合ってあげるわ」



「なんでそんなに上から目線なんだ?」


北斗
「――どっちが良いかなー?」


翔太
「なにやってるの?」


北斗
「ん? あぁ、いつ俺が当番になっても良いようにコーンフレークでも買おうと思って」


翔太
「あれ? 北斗くんって料理できなかった?」


北斗
「人並みには出来るけど……、全員分をつくるのって面倒だろ?」


翔太
「確かにねー。僕も似たようなこと考えてホットケーキミックス買ったもん」


北斗
「ははっ、さすが翔太だ。抜け目がない」


――



店員
「Take out 315 dollars」
(315ドル出しな)



「ン」


店員
「thank you」
(どうも)


冬馬
「なんか感じ悪ぃな、あの店員」



「こんなもんだろ」



「日本じゃ考えられないわね」



「なんか忘れてるような……。まぁ、いいや。帰るか」



「ちょっと! 私のお酒は?」



「あ……」


――




「ジン。ウォッカ。ブランデー。スピリタス。スコッチ。テキーラ。……カルーア・ミルクもあるんだ。口直しに頂いちゃおっと」


冬馬
「……」ヒクッ



「カルバドスにサングリア。あと、それと……。お、大吟醸まであるじゃない。これは買いね!」


北斗
「……」ヒクッ



「お待たせ」



――ドサッ。




「ふー。我ながら良い買い物をしたわ」




翔太
「す、すごい量だね」


冬馬
「しかも、どれも強い酒ばっか。……どういう肝臓してるんだよ」



「なぁ、舞さん……。こんなに買って車に入りきると思うのか……?」



「さぁ。なんとかなるんじゃない?」



「どう考えても入る訳ないだろ! 戻してこい!」



「ヤダ!」



「ヤダじゃねーよ!」



――




「~♪」



「……ッチ」


翔太
「はぁ。結局……」


冬馬
「俺たちが荷物持ちかよ……」


北斗
「まぁ、頼られるのは俺たちくらいないんだから仕方がないんじゃないか?」


翔太
「北斗くんは大人だねー。でも……」


北斗
「?」


翔太
「ねぇ、プロデューサーさん」



「なんだ?」


冬馬
「なんで僕たちだけこんな持たされて、お姉さんとプロデューサーさんは手ぶらなの?」





「仕方がないだろ。こっちの法律で酒類を運転者の近くに置けないんだ。悪いとは思うけど、少しだけ我慢してくれないか?」


翔太
「ぶー。そんなの不公平だー! 横暴だー!」



「どうしてもイヤなら、舞さんと席を変えさせるけど?」


翔太
「え? じゃあ――」



「なに言ってるのよ。この子たちが私みたいな“かよわい女”に、こんな重いものを持たせる訳ないじゃない。そうでしょ?」


翔太
「……」


北斗
「翔太、俺たちの負けだ。諦めよう」


冬馬
「かよわい?」



「なに?」


冬馬
「……いや、なんでもねぇ」



「さて、なんだかんだ寄り道したなぁ。少し早いけど、夕飯でも食べて帰ろうか」



「ラーメンが食べたいわね」


翔太
「プロデューサーさん。僕、中華が良い」


北斗
「俺はイタリアンが良いですね」


冬馬
「……桃のハチミツ漬け?」



「お前もしつこいな。銀貨やるから勝手にさがしてこい」


――

ここまでにします

乙です

うぜぇP…さっさとしね

↑氏ね



冬馬
「ふぁ~ぁ」



「おはよう。すごい欠伸だな」


冬馬
「……おはよう」



「寝ぼけてないで、顔でも洗ってこい」


冬馬
「……そういえば、今日の当番はだれなんだ?」



「初日は俺がつくるって昨日言ったろ?」


冬馬
「あー、そういえば……」



「目が覚めたら他の寝ぼすけ共を起こしてきてくれ。たぶん、それまでには用意できてるから」


冬馬
「ン」


――




『いただきまーす』



北斗
「翔太。その醤油、取ってくれないか?」


翔太
「はい」


北斗
「ありがと」



「ねぇ、私の苺ジャム知らない?」


冬馬
「♪」



「各自、食べながらで良いから聞いてくれ。今日の予定だけど、冬馬と北斗は午前に英会話レッスンが入ってる。一応、日本語が分かる講師にしたけど、なにかあったら相談するように」


北斗
「わかりました」


冬馬
「はいよ」





「まだ活動するには早いと思うから、今週はこの手帳を見ながら動いてくれ」


北斗
「……見事にスカスカですね」


冬馬
「しかも俺と北斗、ほとんど同じだな」



「次に翔太と舞さんなんだが……、来週の水曜に開かれるオーディションを受けてもらおうと思ってる」


翔太
「え、もう活動するの?」



「前にも言ったけど、このオーディションは腕試しなんだ。まぁ、勝てばTV出演くらいはできるかもしれないけど」


翔太
「ふーん」



「だから今週一杯までは、それぞれダンス・ヴォーカルに分かれてレッスンを受けてもらうことになる。これ、二人の手帳な」



「げぇ……。歌と英語でレッスン漬けじゃない」


翔太
「あ、僕の方はあんまり英会話ないんだ」



「それじゃ、食べ終わったヤツから支度してくれ。それから、食器は水に浸すように」



『はーい』



――



北斗・冬馬
『行ってきます』



「二人とも、弁当は持った?」


北斗
「はい。ちゃんと鞄の中に入ってますよ」


冬馬
「俺もあるよ。というか出る前に確認しただろ」



「それもそうね」


翔太
「冬馬くん。レッスンが退屈だからって寝るのはダメだよ?」


冬馬
「バカにすんな。俺は一度だって授業中に寝たことなんかないぜ」


翔太
「自慢することなのかな……?」



「北斗。レッスン中にナンパするなよ?」


北斗
「ははっ。それは約束できないですね」



「あまりにも羽目を外し過ぎるようなら、黒井社長と同室にするからな」


北斗
「……善処します」



「さて、俺たちもそろそろ行くか。二人とも、初めての海外授業を楽しんできてくれ」


――



翔太
「ありがとね、プロデューサーさん」



「翔太くん。タオルとか、飲み物とか、お弁当は持った?」


翔太
「うん。バッチリだよ」



「そう。それじゃ、行ってらっしゃい」


翔太
「行ってきまーす!」



「……」



「さてと……、みんなも送ったし、家に帰ってお酒でも飲もーっと♪ あ、帰りは特別に私が運転してあげるわ」



「おい、コラ」



「なに?」



「なに? はコッチのセリフだろ。なにシレっと初日からサボろうとしてんだ」



「えー」



「今さら勉強なんてイヤだろうけど、舞さんも行くんだよ」



「――ッ! お腹が急に……」



「トイレか? なら、そこの事務にあるから借りてこい。教室も近くにあるし、ちょうど良いな」



「ッチ。分かったわよ。行けば良いんでしょ、行けば」


――




Wednesday, October 31 at 08:02.



――アポロ・シアター



翔太
「……空気が、……張り詰めてる」



「みんな生活を賭けてまでプロを目指してるようなやつ等ばかりだからな。たぶん、意気込みが違うんだろ」



「この感じ、なんだか懐かしいわ」


翔太
「……」



「緊張してるのか?」


翔太
「……少しね」



「そっか。……なら、欠伸をしながら上を見上げろ」


翔太
「え?」





「緊張した際に、硬直しやすい箇所が首や肩だ。上を見るのは、この固まった筋肉を和らげるためだな」


翔太
「欠伸も?」



「それは……。まぁ、深呼吸よりもリラックスできる呼吸法だと思ってくれ」


翔太
「プロデューサーさん、説明できないのに勧めちゃダメだよ」



「悪かったよ。でも、効果があるのは間違いないんだ」


翔太
「へぇ。でも、試合前に欠伸なんてする人、普通はいないよ?」



「とりあえず騙されたと思ってやってみろ。文句はその後に聞くから」


翔太
「うん。……ふぁ~ぁ。……はふ」



「どうだ?」


翔太
「うーん。“いつも通り”、かな?」



「ははっ。なら良かった」


翔太
「ありがと、プロデューサーさん」



「お礼は勝って帰ってきてからにしてくれ」


翔太
「……そうだね。それじゃ、行ってきまーす!」


――




「……今のがアンタなりの送り出し方なわけ?」



「意外?」



「えぇ。これまで頑張ってきただろ? とか、練習は裏切らない。なんて甘い言葉でも吐くかと思ってたわ」



「俺のキャラじゃない。それとも言って欲しいのか?」



「お願いできるかしら? ちょうどお腹が緩んでたところなのよ」



「……“舞ならできる。後ろには俺がいるから、自分らしく行ってこい!”」



「ねぇ……。さっきの、冗談で言ったのよ?」



「知ってるよ。これは、ただの嫌がらせ」



「はぁ。ホント捻くれたプロデューサーね」


――




♬♪~♫……。




「――ふぅ」



パチ……、パチ、パチ。




(……アイツの所為で余計な感情まで入っちゃったわ)



パチパチパチ。



司会者
「Then, I wish to release a result. The first place ――」
(それでは、結果発表を始めたいと思います。第一位は――)



―――
――




司会者
「And the last prizewinner」 
(そして、栄えある最後の入賞者は……)




「……」


司会者
「It is Mai Hidaka!」
(日高 舞だッ!)



Fooooo!!




(アマチュアでこのレベル。なるほど……。しばらくは退屈せずに済みそうだわ)


――




「終わったわよ」



「おかえり。どうだった?」



「発音が危うかったからヒヤヒヤしてたけど、ギリギリの入賞だったわ」



「……ふーん」



「なんだか嬉しそうじゃないわね。そっちは?」


翔太
「ヘヘッ」



「その顔を見るからに……。勝ったわね?」


翔太
「うん! 余裕の一位!」



「へー。凄いじゃない」





「なにはともあれ、二人とも入賞おめでとう」


翔太
「これもプロデューサーさんのお陰だね」



「そう? 自分の実力だと思うけど?」



「俺から伝えることはないし、とりあえず午後のレッスンに向かおうか」



「えぇー。今日くらいサボっても良いでしょ?」



「ダメに決まってるだろ」



「ちぇー」


翔太
「プロデューサーさん。今夜はパーティーにしない? 祝勝会って感じでさ」



「そういうのは冬馬が得意だから、もし開くつもりなら冬馬に任せてみたらどうだ?」


翔太
「冬馬くんか……。ちょっと頼りないから、北斗くんにも声かけてみようかな」



「ねぇ。今日くらいはお酒飲んで良いでしょ?」



「別に良いけど、二日酔いにならないって約束できるか?」



「……オフまで我慢するわ」


――

ここまでにします

縺翫▽縺翫▽

乙!




――パァン! パァン!



翔太・舞
『祝! アメリカ初勝利ー!』



「……」


北斗
「初舞台でいきなり優勝か。すごいじゃないか翔太」


翔太
「うん! ありがと!」


冬馬
「おめでとー」


翔太
「ちょっと冬馬くん! いくら興味がないからってテキトーすぎるよ!」


冬馬
「そんなこと言われてもなぁ……。たかがアマチュアの大会で入賞しただけだろ?」


翔太
「いや、そうだけど……」


北斗
「冬馬。……せっかくみんなで開いたパーティーなんだ。雰囲気を壊すようなことだけは止めてくれよ?」


冬馬
「なんだよ。俺が悪いのか?」


北斗
「そうは言ってないだろ。俺は少しくらい親睦を深めたらどうだ? って言ってるんだ」


冬馬
「……ッチ。気が向いたらな」


翔太
「ねぇ。冬馬くんって僕たちのこと嫌いなのかな?」ボソッ


北斗
「それはないよ。でも、このパーティーは冬馬にとって“仲良しごっこ”だと思ってるからな……」


翔太
「まぁ、否定はしないけどさ」





「――話し合いは終わった?」


翔太
「あ、プロデューサーさん」


北斗
「えぇ、まぁ……」



「そっか。ところで、このクラッカー借りても良いか?」


北斗
「あ、はい」



「悪いな」



――パァン!




「全員注目」



「普通にやりなさいよ! 油断してる時に鳴らされるとビクッ。ってなるでしょ!」



「どうでもいい。それよりも、全員に渡したいものがある」


冬馬
「小遣いか?」



「そんな訳ないだろ。仕事の話だ」



「へー。どんなの?」



「とりあえず、今から名刺と書類を渡すから各自で目を通しておいてくれ」


翔太
「僕はバックダンサーだね」


北斗
「俺は任侠映画だ。アレ? この映画って……」



「見ての通り、日本の監督さんだ。お前もバラエティなんかでお世話になったろ?」


北斗
「あの人怖いんだよなぁ……。ハァ……。以外と世間って狭いんですね」





「私は、……教会? どういうこと?」



「そろそろハロウィンだろ? この時期になると多くのアーティストたちがライブを開くんだ。舞さんはその前座」



「あ、そういう……」



「もっとも、普通の教会じゃなくて“セント・ジョン・ディヴァイン”っていう大聖堂で謡ってもらうけどな」


冬馬
「ってことは俺も前座か」



「他に質問があるヤツはいるか?」



『……』




「それじゃ、俺からのプレゼントは以上だ。それと、来週に黒井社長が合流するそうだから、それまでに部屋の片付けを済ますように」


翔太
「えー。なんで黒ちゃんが来るだけなのに掃除なんてしなくちゃいけないの?」



「仕方が無いだろ。気が付いたら黒井社長の部屋がいつの間にか物置に変わってたんだから」


翔太
「まったく! 誰だよそんなことした人は!」


舞・冬馬
『………』


――




(撮影現場)



北斗
「い、イヤだ! 死にたくない! 助けて! なぁ助けてくれよッ!」



――カンッ! カンッ!



監督
「カットだ! カット! 同じこと何回も言わせんじゃねぇよ大根役者ァ!!」


北斗
「すいません……」


監督
「なにがすいませんだ! やる気ないんだったら失せやがれバカヤロウ!!」


北斗
「……」


監督
「ッチ。一時間の休憩だ! テメェはそれまでに頭でも冷やしてこい!」




北斗
「ハァ……」



「よう」


北斗
「あ、プロデューサーさん」



「すごい怒鳴り声だったな。スタジオの外からも聞こえたぞ」


北斗
「えぇ。思いっきり怒られましたよ。なにがいけなかったんですかね?」



「んー。全部だろうな」


北斗
「え?」



「お前の演技を見て思ったんだけど、……なんで相手を見ながら話してるんだ?」


北斗
「だって命乞いをするシーンですよ? 助けてくれ。って頼む場面なんだから当然じゃないですか」



「それが間違ってるんだよ」


北斗
「どういう意味ですか?」



「人間は凶器を突きつけられたとき、本能的に凶器を見続けてしまう性質があるんだ。例え、それが命乞いをするような場面でもな」


北斗
「……そうだったのか」



「後はどうやって緊迫したシーンに仕立て上げるかだな。これもアドバイスが必要か?」


北斗
「……いえ、それは自分で考えてみます」



「そっか。まぁ、後で結果報告でも聞かせてもらうよ」


北斗
「はい。ありがとうございました」


――




(セント・ジョン・ディヴァイン大聖堂)




「……神様とは無縁の生活だったけど、なかなか良い場所じゃない」



「……」



「それにしても……」









「広いわね……」









「まぁ、世界最大のゴシック大聖堂だからな」



「へー」





「それよりも、曲は大丈夫なのか? 見てた感じ、かなり苦戦してたようだけど」



「仕方ないじゃない。英語と日本語じゃ、リズムも発音もまるで違うんだもの」



「俺は大丈夫なのかって聞いてるんだが?」



「心配しなくても大丈夫よ。一週間も猶予があれば完璧だわ」



「ふーん」



「それにしても、まさか自分の持ち歌を英語で歌うことになるとはねえ……」



「……勘違いしてるみたいだけど、あの曲はもう舞さんのじゃない」



「え?」



「少なくともIAの一件であの曲は既に愛がオリジナルになってる筈だ」



「はぁ!? なんでよ!」



「同じ歌で勝負して、舞さんは負けた。それ以外に理由はいるか?」



「あるに決まってるでしょ。あの時の言葉、忘れたなんて言わせないわよ?」





「確かに俺は“わざと負けろ”と命令した。でも……」



「なに? 今になって言い訳でもするの?」



「――舞さん、本気を出して負けたんだろ?」



「……なんでそう思うの?」



「ステージから降りる時、一瞬だけど笑っていた。あれは脅迫されて負けた人間の顔じゃない」



「……」



「まぁ、俺の見間違いかもしれないけど」



「フン。よく見てるわね」



「やっぱり見間違いじゃなかったんだな」



「はぁ……。それにしても、たった一回負けたくらいで自分の歌まで持っていかれるとは思わなかった……」





「負けた人間がなにかを失うのは当然のことだ。それは舞さんも例外じゃない」



「肝に銘じておくわ」



「そうしてくれ。……さて、そろそろ準備するか」



「あら。もうそんな時間?」



「あぁ。チラホラだけど今日の主役たちが入り始めてる」



「へー。私はてっきりお客さんだと思ってたけど」



「ずいぶん太い神経してるな。前座の言葉とは思えないぞ」



「だって私が主役だもの」



「自信があるのは結構だけど、……勝てるのか?」



「当たり前じゃない。私を誰だと思ってるのよ」



「負け犬だろ」



「……吠え面かかせてやる」


――

ここまでにします。


アメリカ編面白いな

クズPさっさとしね。キモい

相変わらず良い性格してるわ白P



神父
「 So that everyone can enjoy this night, I pray to God.…… Amen 」
(皆様が今日この夜を楽しめるよう、我が主に祈ります。……アーメン)



『 Amen 』



神父
「 Thank you for your attention. So,will hold a halloween party than this 」
(ご清聴ありがとうございました。……それでは、これよりハロウィンパーティを開催いたします)



――パチパチパチ。



神父
「 Before that, I’ll introduce your guests from the small island nation 」
(その前に、小さな島国よりアメリカへ渡られた客人をご紹介いたしましょう)



「……」


神父
「 Ms,Hidaka.Previous please 」
(日高。……前へ)



「 Thank you 」





……。




「 Everyone nice to meet you. My name is Mai Hidaka 」
(みなさん始めまして。私は日高舞といいます)


神父
「……」



「 I will sing this song today to be a good day 」
(今日が良い日になるよう、この曲を歌います)



……。




「 Please listen 」
(……聞いて下さい)








「―― ALIVE 」








――




「 There is no standard on this earth, but there is a wonderful world 」
(この地球に標はないけど、素晴らしい世界がある)



♫♪♬♬ ……。




「ふぅ」



……パチパチ。……パチ。




「な、なんで……?」



――ポンッ。




「?」



「 Thanks, it's going to be a good stage 」
(おつかれさま。お陰で良いステージになりそうね)




「え、えっと……」



「 That's right. Do not come back soon? I will not be out 」
(早く戻ってくれない? 私が出られないんだけど)




「ぇ?」



「 Huh.The exit is there. Will you understand like it ? 」
(ハァ。出口はあっち。それくらい分かるでしょう?)



「あ、あぁ……。戻れってことね」


――




――『 Hey! Hey! You! You!』



『 I don’t like your girlfriend! 』




「へー。流石メジャーアイドルだ。あの空気を一瞬で変えるとは」



――『 No way! No way! 』



『 I think you need a new one 』




「……ただいま」



「お帰り。どうだった?」



「惨敗よ。……祝福はしてくれなかったみたい」



「そうみたいだな」



「あー! むかつく! 歌もダンスも完璧だったのに! 日本人だからって見下してんじゃないわよ!」



「荒れてるな」



「当たり前じゃない! こんな屈辱、生まれて初めてよ!」



「……まぁ、グチは車の中でも聞くよ。とりあえず、今は帰るのが先だ」



「私がそれまで我慢できると思う?」



「負けたステージに未練がましく残ってる方が惨めだと思うけど?」



「……ッチ」


――



翔太
「おかえりー」



「ただいま」


翔太
「ねぇ。お姉さんどうしたの? 帰ってきたと思ったらすぐ部屋に行っちゃったけど」



「仕事先で上手くできなかったから荒れてるんだよ」


翔太
「へー。お姉さんでも失敗とかするんだ」



「舞さんも人間だってことだな」


翔太
「あははっ。なにそれ」



「でも、いつまでも引きずってるような人間じゃないと立ち直ると思うぞ」


翔太
「ふーん。僕としては今日の当番やってくれるなら何でも良いけどね」



「まぁ、そこの頃には立ち直ってるよ」


――




『 ご馳走様でした! 』




「後で洗うから食器は水に浸けておいて」


翔太
「はーい」



「アホ毛。私はもう寝るから後よろしく」


冬馬
「なんでだよ! 当番は姉御だろ!?」



「……」スクッ


北斗
「お出かけですか?」



「ちょっと黒井社長に向かえを頼まれてな」


北斗
「もう来るんですか? まだ部屋の片付けも終わってないのに」



「あいつ等……」


北斗
「こんな物置に人が住めるか! なんて怒るのが目に見えますよ」



「はぁ。とりあえず今日は北斗と一緒に過ごしてもらうか」


北斗
「冗談ですよね?」



「……」


北斗
「冗談ですよね!?」





「冗談だよ。黒井社長には申し訳ないけど、俺と同室になってもらう」


北斗
「良かった……」



「あ、そうだ。お前等のスケジュールだけど明日はオフにしておいたから」


冬馬
「は? なんでだよ」



「どうも黒井社長に行きたい場所があるみたいでな。奢りみたいだから少しだけ付き合ってくれないか?」


冬馬
「まぁ、特に用事がある訳でもねぇから良いけどよ」


翔太
「奢りだって。お姉さんなに買ってもらう?」



「そうね……。服もバッグも買っちゃったし……。翔太くんは?」


翔太
「僕は自分用の冷蔵庫かな。今の冷蔵庫だと使えるスペースないから」



「奢りだって言っただろ。貢がせてどうするんだよ」


――



黒井
「私は……、私は辿り着いたのだな。この異国の地へ」



ざゎ。ざわ。



黒井
「フ、フフ……。フハッハハハ! アメリカ! 本物のアメリカだ!」



ざわ。ざゎ。



黒井
「……」スゥ



ざわ。ざわ。



黒井
「アメリカで名を上げるのは、この黒井だーー!!」





――フハハハハハハ!! アメリカ最高ォオオオ!! アーッハッハッハ!!








「……」



「……」


冬馬
「……」


翔太
「……」


北斗
「……」



「なぁ……」


北斗
「……なんですか?」



「俺は……、アレに声をかけるのか?」


北斗
「……お気持ち察します」


翔太
「なんか初めてココに来た時の冬馬くんみたいだよね」



「ペットは飼い主に似るって言うからねぇ……」


冬馬
「俺、あんな恥ずかしいヤツじゃないだろ!?」


――

ここまでにします。それと……。


愛ちゃん! 誕生日SS書けなくてごめんなさい!!!

黒ちゃんww

黒ちゃん、セーブしよー!!




「あー、黒井社長?」


黒井
「おっ、小僧か! 出迎えご苦労だな!」



「えぇ。まぁ……」


黒井
「むっ。それよりもジュピターたちはどうした。私は全員で来るように指示したはずだが?」



「……あそこにいますよ」


黒井
「ん? なんであんな離れた所にいるのだ?」



「……」


黒井
「まぁ良い。――おーい!」



――やべっ! 見つかった! ――ぼ、僕はバレてないよね!? ――ここまで、……かしら。



黒井
「フハハッ。私に会えなかったとはいえ、そんなに恥ずかしがるな。さっさと来い」




冬馬
「ちくしょう……」


翔太
「こんな恥ずかしい思いをするくらいなら来なければ良かったよ……」


北斗
「いつもならナンパを口実に逃げられたのに……」



「帰って良い?」



「お前らなぁ……」


黒井
「小僧、行くぞ!」



「え、えぇ……。少し待って下さい。車を取ってきます」


黒井
「3分間待ってやる! お前らは40秒で支度をしろ!」



「……」



「帰って良い?」



「考えさせてくれ」


――




「……」


黒井
「♪」


翔太
「僕、あんな恥ずかしい思いをしたの初めてだよ……」


北斗
「俺も」


冬馬
「違う。絶対に違う。俺はあんな恥ずかしいヤツじゃない」ブツブツ



「認めなさい。アンタも初めてココに来た時はあんな感じだったわよ」



「それで、黒井社長はどこに行きたいんですか?」


黒井
「そんなことも分からないとは……。ハァ。嘆かわしい」



「……」イラッ




黒井
「ここはどこだ?」



「どこって……。アメリカですよ」


黒井
「そうだ! アメリカだ!」



「……」


黒井
「アメリカといったらなんだ? カジノだろう!!」



「えぇ。まぁ……」


黒井
「なら、カジノの本場といったらどこだ?」ニヤッ



「……まさか」


黒井
「そのまさかだ。私の行き先など、ラスベガス以外にありえん!」



「無茶言わないで下さい! ここから一週間は掛かりますよ!?」


黒井
「フン。セレブな私がこんな車で長旅なんぞすると思うのか?」



「?」


黒井
「既にジェット機をチャーターしてある。まぁ、向こうの都合でワシントンまで行くことになってしまったがな」



「――は?」


黒井
「という訳で、最初の目的地はワシントンだ。…… アンダースタァン?」



「……」


黒井
「分かったなら早く車を出せ!」







「これからラスベガスに行くみたいだよ!」


「マジで!?」


「黒井社長もずいぶん太っ腹だなー」


「なぁ! ラスベガスに行く前にダウンタウンに寄ってくれよ!」


「好きにしろ。ただし、すぐに戻ってくるんだぞ?」


「流石おっさんだぜ! ……あ、そうだ。誰かタキシード貸してくれ!」


「そんなのある訳ないだろ。というか、何に使うんだ?」


「ホロに会いに行くんだよ!!!」






「ハァ」



「アンタも大変ね」



「……同情するなら変わってくれ」



「え? 嫌よ」



「ですよねー」


――



北斗
「……凄いな」


機長
「 It waited. Welcome Mr. Kuroi 」
(お待ちしていました。ようこそ黒井様)


黒井
「 Likewise, I am sorry that I keep you waiting. Today thanking you in advance 」
(こちらこそ待たして申し訳ない。今日はよろしく頼む)


機長
「 Yes. Was the destination Las Vegas? Please enjoy comfortable air travel 」
(はい。目的地はラスベガスでしたね? 快適な空の旅をお楽しみ下さい)


黒井
「 Thank you 」


北斗
「……黒井社長も英語できるんですね」


黒井
「セレブとして当然の嗜みだ」




冬馬
「すげーーー!!」



「これよ、これ! これぞまさにアメリカって感じよね!」


冬馬
「だよな!」


翔太
「僕、今日ほど黒ちゃんに付いて行って良かったと思った日はないよ!」


黒井
「そうだろう! そうだろう!」


冬馬
「961プロ最高!」


翔太
「黒ちゃん最高!」


黒井
「フハハハハ!! 貴様ら! 今日は私の驕りだ! 思いっきり騒ぎ倒してやれ!」


冬馬
「ッシャァ! 一発ぶち当ててやるぜ! っと、その前に……。機長さーん! カジノに行く前にアニメショップ寄ってくれ!」



「荒稼ぎしてやるわ」


北斗
「楽しみだね」


翔太
「うん!」


――




――ダウンタウン。



冬馬
「くぅう~~! 待ち侘びたぜ!」


黒井
「早く行ってこい」


冬馬
「あぁ! 帰ったら祝福してくれ!」


翔太
「うん。いつもに増して気持ち悪い」


冬馬
「行ってきまーす!!」



――Hello. Can I help you? 嫁をくれ!!! What!?



翔太
「行っちゃったね。……冬馬くんが帰って来るまでどうする?」


北斗
「ただ待ってるだけって退屈だよな」




黒井
「……お前ら、少し付き合え」


翔太
「え? 黒ちゃん、どこか行くの?」


黒井
「せっかく豪遊するというのに、その服装はなんだ? 見繕ってやるからついて来い」


翔太
「えー。僕、あんまり堅苦しいのは苦手なんだけどな……」


黒井
「フン。嫌なら来なくて良い」



「ねぇ。それって私も含まれてる?」


黒井
「当たり前だ。なんでも好きなものを買え」



「じゃあ、お言葉に甘えようかしら」



「冬馬の分はどうするんですか?」


黒井
「アイツはタキシードだ。自分で言っていただろう? サイズは……、少し大きめにすれば良いか」


――



翔太
「ぉお! 見て! 街がすごいキレイ!」



「ホントね。これが百万ドルの夜景ってやつ?」



「それ香港だから」



「そうなの?」


北斗
「フッ……クック。と、冬馬。なかなか似合ってるじゃないか」


冬馬
「確かにカッコいいけどさ……。せめて普通のネクタイにしろよ」


黒井
「そろそろ到着するぞ。準備は良いか?」


冬馬
「プロデューサー。ネクタイ交換しようぜ」



「嫌だ。というか、そんなにイヤなら外せば良いだろ」


冬馬
「あ、そっか」


――



黒井
「ほれ」


冬馬
「え!? マジで!?」


翔太
「こんなにくれるの!?」



「ワォ。太っ腹じゃない黒ちゃん」


黒井
「フフン。私はセレブだからな」


北斗
「一万ドル(約100万円)って……。大丈夫なんですか?」


黒井
「心配しなくともポケットマネーだ。お前らは好きに使うと良い」


北斗
「まぁ、そういうことなら……。ありがたく使わせて頂きます」


黒井
「うむ」



「……」


黒井
「ほれ。貴様の分だ。せっかくここまできたのだ。貴様も参加するのだろう?」



「……遠慮しておきます」


黒井
「なに?」



「すみませんが、他人の金でギャンブルをする気はないので」


黒井
「私からの施しは受けないということか?」



「そういう意味じゃありませんよ」


黒井
「フン。なら貴様には一銭もやらん。後で貸してくれと泣きついても聞かないからな!」



「えぇ。分かってます」


黒井
「勝手にしろ」


――



冬馬
「お、おぉ……!」



―― Next up is No. 21! ―― BINGO! ―― Fuck! There is no more money!



北斗
「すごい活気だ」


冬馬
「見ろよ北斗! アイツまた当てたぞ!」


北斗
「おぉ! アレっていくらになるんだろ?」


冬馬
「どうでも良いんだよ! それより俺たちもあのくらいメダルを積み上げようぜ!」


北斗
「そんな上手くいくかな?」


冬馬
「弱気になってたら運まで持っていかれるぞ? 勝負だ! 勝負!」


北斗
「はいはい。冬馬は相変わらずだな」


翔太
「お姉さんはなにやるの?」



「カジノと言ったらルーレットよ。そっちは?」


翔太
「んー。どれも知らない賭けだからな~。まず最初は黒ちゃんと同じのにするよ」



「それが賢明かもしれないわね」


――



ディーラー
「……」


黒井
「フォーカードだ」


ディーラー
「 Congratulations. It is the victory of the player 」
(おめでとうございます。プレイヤーの勝利です)


翔太
「ねー黒ちゃん。コレって黒ちゃんの勝ちなの?」


黒井
「フフン。私の圧勝だ」


翔太
「ぉお! なんか一杯メダルがきた!」


黒井
「フハハハハ!! 私にかかれば十万ドル(約1000万円)など容易い――」



―― Flooooooooo!! Woooooooo!!



黒井
「……なんの騒ぎだ?」


翔太
「なんだろうね。あっちに凄い人が集まってるよ」


黒井
「フン。人がせっかく勝利の余韻に浸っているというのに」


翔太
「まあまあ。でも、あれだけ集まってるってことは凄く勝ってるってことだよね」


黒井
「む。私だって凄く勝ってるぞ」


翔太
「知ってるよ。でもさ、野次馬って人の性じゃない?」


黒井
「ツキのある者をジロジロ見るのは俗物がやることだ。止めておけ」


翔太
「行ってきまーす!」


黒井
「あ、コラ! ……私も行く!」


――



翔太
「んー! 人が多過ぎて見えないよ!」ピョンピョン


黒井
「ック。俗物め。ジャマで見えないではないか!」


翔太
「今の黒ちゃんも立派な俗物だよ。というか、なんでいるの?」


黒井
「野次馬は人の性だからだ!」


翔太
「それ、さっき僕が言ったセリフだよね?」



ザヮ……。ザワ……。



――「 Split 」



ディーラー
「……ッ」



ォオオオオオオオオ!!





黒井
「なんだ!?」


翔太
「黒ちゃん! 僕が上で実況するから肩車して!」


黒井
「なるほど! 良いアイディアだ!」


翔太
「よっと」グッ。


黒井
「見えるか? どうなってる?」


翔太
「……ブラックジャックかな?」


黒井
「そんなことは分かってる! この俗物共を寄せ集めている首謀者はどんなヤツだ?」


翔太
「あ、あはは。それなんだけど……」


黒井
「どうした?」


翔太
「……その首謀者、プロデューサーさんみたい」


黒井
「なに?」


――




「……」


ディーラー
「……ッ」



「 What's happening? The handing me the card early audience because waiting 」
(どうした? 観客が待っているから早くカードを配ってくれよ)


ディーラー
「ク……ッ」





――シュッ。





『 A 』  『 A 』  『 A 』  『 A 』





――Oh Crazy. ――Four pieces of A!? ――What's going on!?
(……イカレてる。 場にエースが4枚!?  おいおい。どうなってるんだ!?)









「 First piece first 」
(まず、一枚目)


ディーラー
「……」





『 K 』 『 A 』





―― Black Jack! ―― The following cards!?
(ブラックジャックだ! つ、次のカードはッ!?)








「 The second 」
(二枚目)


ディーラー
「……ッ」





『 10 』 『 A 』





―― Black Jack! ――Next!? ――You are disturbed! Show me to me!
(ブッ、ブラックジャック! 次は!? お前ジャマなんだよ! 俺にも見せろ!)








「 The third 」
(三枚目)


ディーラー
「 Why ――」
(なんで……)





『 Q 』 『 A 』





――Moreover, twenty-one!? ―― Do you pull it surely!?
(またブラックジャック!?  まさかッ!? 引いてくるのか!?)








「 The fourth 」
(四枚目)


ディーラー
「 Why will only the court card be pulled!? 」
(なんでこんなに絵札ばかり引いてくるんだ!?)





『 J 』 『 A 』





―― It succeeded! ―― Do we see the dream?
(や、やりやがった! お、俺たちは夢でも見てるのか?)






「……」





―― How much is it this!?
(おい! これいくらにるんだ!?)








……ン。……トン。





ディーラー
「What will sound?」
(……なんの音だ?)





――トントン。





ディーラー
「 Surely 」
(……まさか)



「……」トントン


ディーラー
「 Please say that it will be a joke 」
(冗談だろ……)



「 Do not make it to ending without permission. It is a double down 」トントン
(勝手に終わりにするな。ダブルダウンだ)








―― What!? Why does twenty-one pull the card in addition though it has been approved!?
(ハァ!? さらにヒット!? もうブラックジャックは成立してるんだぞ!?)






「 The certainty and the ace did because it was counted as one. All in Bet 」
(確か、エースは“一”とも数えられるんだったよな。オール・イン・ベット)





――「 Crazy 」
(狂ってる……)






「Among three, one piece is a queen of the heart. One piece is eight of the spades. 」
(三枚の内、一枚はハートのクイーン。一枚はスペードの八)


ディーラー
「……Card Counting? 」
(カードカウンティングだと?)



「 And, another piece 」
(そして、もう一枚は……)





――This card
(こ、このカードって……)





ディーラー
「Are you a satan or something!?」ゾクッ
(お前は、悪魔か何かなのかッ!?)








「……どうやら俺に微笑んだのは女神じゃなくて――」




















「――“道化師”だったみたいだな」




















――

ここまでにします。


ブラックジャック詳しくない俺にダブルダウンとかカードカウンティング教えて

倍プッシュの事なのかな

ザワ…ザワ…

ダブルダウンはもう一枚引くから倍掛けさせろって意味
カードカウティングは今まで場に出たカードを見て山に残ってるカードを推測する技術
ちなみにフォーカードは日本語で、むこうではフォーオブアカインド(four of a kind)になる

ざわ・・・

   ざわ・・・




「フゥ。疲れた」



――ぐぬぬ……。小僧めェ……。




「黒井社長? そんなところで何やってるんですか?」


黒井
「フン! 少しくらい目立ったくらいで良い気になるなよ!」



「え? あ、はい」


翔太
「黒ちゃん。大人気ないよ」



「お前はなんで黒井社長の首に跨っているんだ?」


翔太
「あはは。気にしないで」


黒井
「私だってあれくらい……」ボソッ


翔太
「いい加減、負けを認めなよ。どう見ても完敗だったと思うけど?」


黒井
「私の強運を見くびるな! 絶対にコイツよりも目立ってやる!」


翔太
「ハァ。こうなったら止められないんだよね」



「お前も大変だな」


翔太
「もう慣れっこだよ」


黒井
「行くぞ翔太! ついて来い!」


翔太
「はいはい。それじゃ、プロデューサーさん。またね」


――




ヵラヵラヵラ……。



ディーラー
「No.11」



―― Hooooo!! Moreover, it came true!
(ゥオオオオオオ!! また当てたぞ!)




「んー。やっぱり十万ぽっちじゃ稼ぎが悪いわね」



「……。ホントなにやっても騒がれるな」



「あら、P。って、どうしたのその大量のメダル」



「稼いだ」



「ふーん。いくら?」



「さぁ? まだ精算してないから分からないけど、ざっと見積もって二億くらいかな」





「へー。なかなか良い金額ね。……ちょっと貸してくれない?」



「いくら?」



「んー。半分くらい?」



「返せるのか?」



「ハァ。守銭奴じゃないんだから気前よく渡せないの?」



「本気で言ってるなら正気を疑うな」



「じょ、冗談に決まってるじゃない。後でちゃんと返すわよ」



「あっそ」


――



ディーラー
「――ッ。No.13」



「フフッ。やっと調子が出てきたわ」



(……どういうことだ?)



―― What successive victories is by this it? ―― They are ten successive victories.
(こ、これで何連勝だ……? に、20連勝だ……)




(一点賭けなんてバカみたいな賭け方で大勝? いや、それよりも気になるのは……)


ディーラー
「 Please your Bet 」
(お賭けください)



「 After you throw out, it Bet 」
(投げた後に賭けるわ)


ディーラー
「…… It has understood 」
(……分かりました)



――ヵラカラカラ。




「……」ジィッ



――ヵララララ。




「……」スッ


ディーラー
「 NO more Bet 」
(締め切ります)



――ヵラヵラ……。コォン……。



ディーラー
「N,No.23」





「さぁ次も当てるわよ! 外す気がしないもの!」



(二、三秒くらいなにかを見ながら賭けた後は“まったく興味がなくなってる”ことだ。……まるで、当たると確信しているみたいに)


ディーラー
「 P,……Please your Bet 」



「 It is the same a little while ago 」
(さっきと同じよ)


ディーラー
「 OK.it starts 」
(分かりました。……始めます)



(なんだ? 一体、なにを見てるんだ?)



――カラララ。




「……」ジィッ



(視線は、……ホイール? いや、ボールも見ている)



――ヵララララ。




「……」スッ


ディーラー
「N,No32」



―― Hey. Does this woman by when win and follow? ―― I do not understand.
(おい。この女、……いつまで勝ち続けるんだ? ……知るかよ)




(……もしかして?)





「 All the won amounts are added. Please throw out early 」
(倍プッシュよ。早く投げなさい)


ディーラー
「……OK. It starts 」
(……始めます)



――カララ……。




「……。ボールのスピード、少し遅くなったわね」


ディーラー
「……ッ」



「これで最後にするわ」






――ジャラララッラ。







「え?」





「面白そうだから俺も参加させてもらうよ」



「美味しいとこ取りなんて良い趣味してるじゃない」



「いつも裏方なんだ。たまには目立っても良いだろ?」



「……好きにしなさいよ」








ヵラヵラ……。








P・舞
『“ ALL IN BET ”』








カラヵラ……。カン。コォン……。コン……。








ディーラー
「N,No.――」


――




「おっも~い!」



「 Will you give the trunk case other? 」
(トランクケースをもう一個くれないか?)



「私、これ以上持てないからね?」



「それくらいは俺が持つよ」



「なら良いけど」



「……ちょっとやり過ぎたかもな」



「なに言ってるのよ。ギャンブルにやり過ぎも何もないわ」



「それもそうか。……ところで、本当にこのメダル全部貰って良いのか?」



「元々アンタのお金なんだから当たり前でしょう?」



「まぁ、そういうことなら遠慮なく」



「ふふっ。私の豪運のお陰ね」





「なにが豪運だよ。あそこで止めてなかったら永遠に当て続けてただろ」



「なに? 私がイカサマしたって言うのかしら?」



「イカサマっていうか……。どこにボールが入るのか分かってたんだろ?」



「あら? どうしてそう思うの?」



「これは俺の推測でしかないけど……。最初の四点賭けはホイールの傾斜とボールのスピードを計算してたんじゃないのか?」



「……」



「そして誤差が修正できたところで荒稼ぎ。違う?」



「……ストーカー並によく見てるのね。でも、少しだけ違うわ」



「あれ? 違った?」



「えぇ。私は計算なんてないもの。どこに入るのかは感覚で分かるのよ」





「なんだそれ。もしかして共感覚でも持ってるのか?」



「共感覚?」



「なんていうか、……絶対音感みたいに何かを他の感覚と共有してる能力のことだよ」



「んー。よく分からないけど、それが私ってことなの?」



「もしかしたらな」



「ふーん。でも、そうしたらアンタも共感覚なのかしら?」



「なんで?」



「だって、あんな大量のメダルどう考えても異常だわ」



「そうか? ちゃんと実在する技術なんだけどなぁ……」



「まぁ、私から見れば“アンタも普通じゃない”けどね」



「……俺は普通の人間だよ」


――




「そろそろ良い時間ね」



「結構遊んだからなー」



「ねぇ、この後って外食なの?」



「いや、たぶんそのまま帰るんじゃないかな」



「ふーん。なら、早く帰りましょうよ」



「他のやつ等が集合してないのに帰れる訳がないだろ」



「ハァ。なにやってるのかしら?」



「探しにでも行くか?」



「面倒だからパス。後で向かえに来て」



「やる事ないんだろ? 良いから行くぞ」



「強引な男ってモテないわよ?」



「興味ない。というか、人のこと言えるのか?」



「どういう意味よ」





「女子力ゼロ。魅力ゼロ。そんな男も寄ってこない寂しい婆さんにとやかく言われたくないって言ってるんだよ」



「はァ!? 私が!?」



「違うのか?」



「違うわよ! お、男なんて掃いて捨てる程いたものッ!」



「へー」



「それに! 付き合った男たちから“ビッチの日高”なんて称えられたことだってあるんだからね!」



「そっか。……自分で言って悲しくない?」



「な、なにが?」



「だって舞さん、“友達で終わるタイプ”だろ」



「ッ!?」



「そんな人間がビッチって。ハハッ。舞さんでもジョークが言えるんだな。意外だったよ」



「ジョークなんかじゃない! 私はビッチだもん!」



「そうなんだー。舞さんはビッチなんだねー」



「ちゃんと私の話を聞きなさいよ!!」



「聞いてる聞いてる。どうやっても友達以上に発展しないって話だっけ?」



「~~~ッ!!」



「ハハッ。顔がすごい真っ赤だな。ピザでも作るの?」



「アンタなんて大ッ嫌い!!!」



「はいはい。分かったから冬馬たち探しに行こうか」


――

ここまでにします。

おつ!




「 And, the other day ――」
(それで、この前――)



「 It is so 」
(へー、そうなんだ)



「 Do it schedule and do it exist after this?When it is good, a more interesting story is told 」
(この後予定ある? 良かったら、もっと面白い話をしてあげるよ)



「 Is it an invitation of the date? 」
(それって、デートのお誘い?)



「 Yes. Or, are you dissatisfied with me? 」
(うん。それとも、俺じゃ不満かな?)



「 Ahh. It is good on mouth. Well. It ――」
(あはは。口が上手いんだから。うーん。それじゃ、――)






「こんなところにいたのか。探したぞ北斗」


北斗
「プロデューサーさん?」



「 Person of this  …… whom it? 」
(ねぇ。この人……誰?)



北斗
「 It is my superior 」
(俺の上司だよ)



「 Really? …… I return. Moreover, please invite it to the date 」
(そうなの? ……私、帰るよ。またデートに誘ってね)



――タッタッタッタ……。



北斗
「惜しかったなぁ。初の海外ナンパ成功だったんですけどね」



「あー、悪かったな。気が回らなかったよ」


北斗
「いえ、気にしないで下さい。次がありますから」





「それにしても、いつの間に話せるようになったんだ? そんな流暢に話せるなんて知らなかったぞ」


北斗
「まぁ、俺に合った授業だった。ってことですね」



「冬馬も同じくらい話せるのか?」


北斗
「どうでしょう? かなり苦戦してたみたいですけど……」



「ふーん。後でも試してやるか」


北斗
「ところでプロデューサーさん。俺になにか用ですか?」



「大した用事じゃない。そろそろ帰るから呼びに来ただけだ」


北斗
「え? あ、ホントだ。もうこんな時間だったのか」



「ちなみに、他はもう集まってるぞ」


北斗
「うゎぁ……。黒井社長、怒ってるだろうなぁ……」


――



黒井
「……やっと来たか」


北斗
「すいません、遅れました」


黒井
「時間は守れ。次は置いていく」


北斗
「えぇ。気をつけます」


翔太
「あ、北斗くんお帰り」モグモグ


冬馬
「おかえり」モグモグ


北斗
「ただいま。……というか、なに食べてるんだ?」


冬馬・翔太
『ハンバーガー』


北斗
「もうすぐ夕飯だってのに、よく食べられるなぁ……」


冬馬
「そんなに褒めたってコレはやらないぞ?」


北斗
「いらないから」


黒井
「もうすぐヘリの時間だ。さっさと食ってしまえバカ共」


冬馬・翔太
『はーい』モキュモキュ



「ところでアイツは?」


北斗
「アイツ?」



「Pのことよ。もう帰るっていうのに見かけないんだけど?」


北斗
「あれ? さっきまで一緒だったのに、どこ行ったんだろ?」


黒井
「今度はプロデューサーが迷子か。付き合ってられないな」





――Prrrr。



黒井
「私だ」



『あ、黒井社長ですか? Pです』


黒井
「小僧か。今どこにいるのだ? 早くしないと置いていくぞ」



『そのことですが……。どうやら合流できなくなりました』


黒井
「どういうことだ?」



『少し稼ぎすぎましてね。どうやら交渉に応じるまで帰してくれないようです』


黒井
「……無事なのか?」



『えぇ。すぐに済みますよ』


黒井
「なら良い。さっさと片付けておけ」



『はいはい』




黒井
「フン」


翔太
「ねぇ、黒ちゃん。プロデューサーさん、なんだって?」


黒井
「もう一勝負するそうだ。合流には間に合わないだろうな」


翔太
「えー。僕、お腹ペコペコだよ」


北斗
「……さっき食べてなかったか?」


黒井
「仕方がない。小僧が来るまでココで食事にするか。……要望はあるか?」


冬馬
「ステーキもハンバーガーも食べ飽きた感じがあるからな。俺は寿司が良い」


翔太
「あ、僕もそれが良い」


黒井
「北斗と舞ちゃんは?」


北斗
「俺もそれで良いです」



「私も」


黒井
「アメリカで初めての食事が寿司とは……」


翔太
「文句があるなら黒ちゃんが決めれば良かったのに」


黒井
「フン」





「ねぇ。そういえば、アイツなんの勝負するって言ってたの?」


黒井
「なんでそんなこと聞くんだ?」



「決まってるじゃない。面白そうなら私も参加するのよ。それで? なんの勝負だって?」


黒井
「ただの交渉だ。舞ちゃんが期待するようなものではない」



「なんだ。そうだったの?」


黒井
「言っただろう。期待するようなものではない、と」



「ふーん。でも“交渉”かぁ……。誰が相手か分からないけど同情するわ」


黒井
「どういう意味だ?」



「だって、騙し合いと読み合いはアイツの独壇場だもの」


――




――コンコン。



「 Please come in 」
(お入りください)




「……」



「よく来てくださいました。さっ、立ち話もなんですし、どうぞお座りください」




「ずいぶん日本語が上手なんですね」スッ



「え? あぁ、ココは日本からの観光客も多いので」




「そうですか」



「なにか飲みます? 生憎お茶はないんですけど、コーヒーと紅茶ならありますよ?」




「紅茶で。あ、砂糖やミルクはいりません」



「気が合いますね。私も何も入れないんですよ。紅茶は素材の味を楽しむものですから」




「……それで? 帰宅途中のお客に相談とは、どんな用件ですか、オーナー」


支配人
「ははっ。そんなに警戒しないでください。別に取って食べやしませんよ」



「いきなり怖いお兄さんたちに連行されたら、誰だって警戒すると思いますけど?」


支配人
「そうですね。ではストレートに言いましょう」



「……」


支配人
「――私のお金、返してください」


――




「……ギャンブルで勝った金を返せとは、ずいぶん面白いことを言いますね」


支配人
「私だって心苦しいんですよ。お客さまには笑顔で帰って頂きたいのに、こんなことを頼まなければならないのですから」



「なら軟禁なんてしないで帰させてください。そうすれば俺も笑顔になりますよ?」


支配人
「それはできません。100万ドル(約一億円)ならともかく、50億ドル(約5000億円)なんて大金、払えませんので」



「それは残念だ。それで? どうするつもりですか?」


支配人
「こちらが払える額で我慢してもらうしかありません」



「ちなみに、どの程度まで?」


支配人
「そうですね……。5000万ドル(約50億円)までなら」





「……それで納得できるとでも?」


支配人
「不満ですか? 普通の人間なら遊んで暮らせる額だと思いますけど?」



「それで満足できるなら、こんな稼ぎ方はしませんよ」


支配人
「あはは。確かにそうだ。……でもね、あなたは納得するしかないんですよ」



「へぇ。どうして?」



――ジャヵッ。



支配人
「こういうことだ」


――




「……」ズズッ


支配人
「なんかリアクション薄いな。もっと驚いてくれないと私がマヌケみたいだろ」



「あぁ、すみません。気にしないで続けてください」コトッ


支配人
「……まぁ良いや。それで? 5000万ドルで手打ちにしてくれるか?」



「やだ」





――ダァンッ!!







支配人
「いい加減にしろ。朝日が拝めるっていうだけじゃ不満か?」



「おー怖い。でも残念ながら夜行性でね。朝は苦手なんです」


支配人
「そんなくだらないことは聞いていない。交渉に応じる気があるのか。と聞いてるんだ」



「ありますよ。そちらが交渉する気があるのなら」


支配人
「……どういう意味だ?」



「こちらの意見も聞いてくれ。と言ってるんです」


支配人
「……」



「一方的な提案を押し付けるだけじゃ交渉とは言い難いでしょう?」


支配人
「……聞くだけ聞いてやる」





「こちらからの条件は3つ」


支配人
「……」



「一つ。このカジノに訪れる有名人、及び芸能関係者を俺に紹介すること」


支配人
「……」



「二つ。とある機材を買って俺に渡すこと」


支配人
「……」



「三つ。――という人物を探して俺に教えること。以上がこちらからの条件です」


支配人
「そんな条件、受けると思っているのか?」



「飲んで頂くのなら、このお金、全てあなたにお渡しましょう」


支配人
「……」



「どうです? 少なくても5000万ドルよりかは安上がりだと思いますけど?」


支配人
「……なるほど。確かに俺のは交渉じゃなかったな」



「交渉成立、ですね」


支配人
「アンタには負けたよ。だが、最後の条件に関しては期待しないでくれ。相手はこの国のトップランカーだ。見つけられるかどうか疑わしい」



「まぁ、気長に待ちます。……帰って良いですか?」


支配人
「あぁ。金をココに置いてくれたらな」



「それならドアの向こうにいるお兄さんたちを呼べば解決ですね」


支配人
「ッチ。俺の部下は荷物持ちかよ」


――




「遅くなりました」


翔太
「あ、おかえりプロデューサーさん」


北斗
「遅いですよプロデューサーさん。もう俺ら食べ終わるところですよ?」



「悪い悪い」


黒井
「フン。謝罪は良いからさっさと選べ。私は早く帰りたいんだ」



「それじゃ、お言葉に甘えて。……タマゴ二つ」


黒井
「20代とは思えないチョイスだな」



「人の好みにケチつけないでください」



「茶碗蒸しも頼めば? 絶品よ」



「マジで? 大将。追加で茶碗蒸し」


冬馬
「ついでにブリとアジとシラス追加!」



「……アンタまだ食べるの?」


――

ここまでにします



誰と会う気なんだろうか




「んー。昨日は楽しかったなぁ」


北斗
「ふぁあ。……おはようございますプロデューサーさん」



「おはよう。ご飯はもう出来てるから、顔を洗ったら食器を出すの手伝ってくれないか?」


北斗
「もう出来てるんですか? 相変わらず早起きですね」



「準備は早い方が良いだろ? 分かったらお前も早く顔を洗ってこい」


北斗
「はいはい。分かりましたよ」



「それから……」


北斗
「なんですか?」



「英会話のレッスンだけど、もう行かなくて良いぞ」




北斗
「え? それって」



「あぁ。今日からお前も本格的に活動を開始する」


北斗
「……良いニュースですね。目が覚めましたよ」



「それはどうも」


北斗
「ただ、俺としてはちょっと残念かな」



「?」


北斗
「だってナンパする機会がなくなるじゃないですか」



「だったらタレントでも口説いてろ。その為の体裁なら整えてやる」


北斗
「おっ! それ良い考えですね。期待しちゃいますよ?」



「……ったく。お前がそういうヤツだってこと、すっかり忘れてたよ」


北斗
「女の子はみんな“俺のエンジェルちゃん”ですから」



「ハァ。全ての女は俺のモノってか? ずいぶん強欲だな」


北斗
「そんなこと言ってませんよ」



「ホントかよ」


――




「それじゃ恒例のミーティングを始めるぞ」


黒井
「おい小僧。貴様はいつも食事の最中に会議をするのか?」



「いえ、今回は急に決まった件が多いので早めに報告するべきだと判断しました」


黒井
「フン。ゆっくり食事もできんとは……。まったく嘆かわしい」



「すみませんが、用がないのなら黙っていて下さい」


黒井
「……」



「話が逸れたな。まずミーティングを始める前に手帳を更新しておいた。各自、取りに来てくれ」



――ゾロゾロ。






「ぅゎ……。レッスンが無くなった代わりにビッシリ仕事が入ってる……」


北斗
「さっそくトーク番組か。可愛い子はいるのかな?」


翔太
「ダンスバトル? ……って! この対戦メンバー、僕でも知ってる人ばっかりじゃん!」



「このスケジュールは明日からだ。ビックイベントは毎月ごとに盛り込んでいるけど他にも要望があるなら取り入れるぞ」


冬馬
「なぁ、プロデューサー」



「なんだ?」


冬馬
「俺のスケジュール、まったく変わってないんだけど……」



「当たり前だろ。英語ができなきゃ仕事にならないんだから」


冬馬
「……」



「今度レッスンの様子でも見させてもらうよ。それでもダメなら俺も協力する」


冬馬
「……悪いな」




黒井
「小僧。私の予定はどうなっている?」



「黒井社長にはプロデューサーとして活動してもらいます。俺だけで何人もプロデュースするには限界があるので」


黒井
「フン。良いだろう。だが、私の担当となったアイドルには私のやり方に従ってもらう。それで良いな?」



「どういう意味ですか?」


黒井
「簡単なことだ。日高舞は私が担当する」



「なるほど。……ですが、それは承認できません」


黒井
「なに?」



「日高舞は俺の担当です。例え黒井社長と言えど、彼女を他のプロデューサーに預けることはできませんね」


黒井
「ほう……。貴様、私に歯向かうというのだな?」



「えぇ。こればっかりは譲れない」


黒井
「……イヌの分際で飼い主を困らせるとは。……潰すぞ小僧」



「アナタが飼い主? 笑わせないでください。……喰いちぎりますよ?」



――



冬馬
「おい、見ろよ。オッサンに真っ向からケンカ売るなんてスゲェな」



「ねぇねぇ! これって私を巡っての修羅場ってヤツ!?」


北斗
「間違ってはいないと思いますけど……」


翔太
「でも、プロデューサーさんが意地になるなんて珍しいね」


北斗
「もしかして、お姉さんとプロデューサーって“そういう関係”なんですか?」



「そんなんじゃないわよ。……でも、悪い気はしないわね」


冬馬
「なぁ、そろそろ止めないとマズイんじゃないか?」






黒井
「――あんまり調子に乗るなよ。貴様の代わりなんぞいくらでもいるんだ」



「やってみろよ。その時はアンタも道連れにしてやる」




翔太
「……僕、あの中に入っていく勇気はないよ?」


北斗
「冬馬。漢気を見せる時がきたぞ?」


冬馬
「俺に押し付けるなよ! お前が行けば良いだろ?」


北斗
「俺だってムリだ。さすがに猛獣のケンカに首を突っ込む気はないから」



「ったく。情けないわねぇ……。まぁ良いわ。アホ毛、ちょっとバケツに水を汲んでくれない?」


冬馬
「何に使うんだ?」



「あのケンカを止めるのよ」


冬馬
「……分かった。すぐに用意する」



「悪いわね」


――



黒井
「大体、貴様のような二流が彼女を扱うこと自体がおこがましいのだ。身分をわきまえろニセモノ」



「あ゛? 黙って聞いていれば良い気になりやがって!」



――バシャァン!!




「――」



「あら、水も滴る良い男になったじゃない」



「……おい。……なんのつもりだ?」



「少しは熱が引いたかしら?」



「俺は“なんのつもりだ?” って聞いてるんだよ」ジロッ



「くだらないケンカを止めてあげてるのよ。感謝してよね」



「アンタには関係ない。余計なお世話だ」



「へぇ、まだケンカを続けるっていうの?」



「だったら何だ? 部外者は引っ込んでろ!」








「 いい加減にしなさい!!!! 」






「――ッ」



「子供じゃないんだからこんなくだらないことでケンカしてんじゃないわよ!」



「……うるせぇな」



「なにがうるさいのよ!! それに、さっきの言葉使いは何? この人は仮にもアンタの上司なのよ! ムカついたからって挑発するなんてバカじゃないの?」



「……」



「謝りなさい」



「……」



「謝りなさい!!」



「……ッ」ギリッ





「……すみません……でした」ペコリ


黒井
「……」



「――黒井社長」


黒井
「……なんだ?」



「コイツもこうやって謝っています。……この件、どうか許しては頂けませんか?」


黒井
「ン。まぁ、……そうだな」



「……」


黒井
「頭を上げろ。……私も、……その、なんだ。……言い過ぎた。この件は水に流すことにする」



「ありがとうございます。黒井社長」


黒井
「フン」


――




――コンコン。




「……」



――ガチャッ。




「失礼しまーす」



「……」



「やっぱりアンタいるんじゃない。返事くらいしなさいよ」



「俺は入って良いなんて言ってない」



「よいしょ。っと」ポフッ



「勝手に座るな。出て行け」



「うるさいわね。どこで何しようが私の勝手でしょう?」



「……ッチ」





「ねぇ。なんであんなに意地になってたの?」



「なにが?」



「さっきのケンカのことよ。いつもなら煙に巻くか適当に受け流していたでしょう?」



「どうだって良いだろ」



「もしかして、私が他の人にプロデュースされるのがイヤだった?」



「もしホントにそう思っているのなら、頭の交換をおすすめするよ」



「ハァ……。素直じゃないわね」



「……」



「でも、そうやってなんでも隠そうとするなら私……、アンタに愛想を尽かして離れちゃうかもよ?」



「……それは、……ヤダ」



「フフッ」



「なんだよ」



「いや、アンタって意外とカワイイ反応するのね」



「……」プイッ



「ごめん。ごめん。謝るからそんなに拗ねないでよ」



「……フン」





「でも、少しくらい本音を話してくれても良いんじゃない?」



「……」



「そう。どうしても教えたくないって訳ね。なら――」



「ッチ。……日高舞をアイドルに戻すのは俺の責任だ。他のプロデューサーにその責務を任せたくなかった」



「え?」



「これで満足か?」



「……ふーん。それがアンタの本音なの?」



「だったらなんだよ」



「ハァ。くだらない」



「あ?」



「いい? 私のプロデューサーはアンタだけ。その私がアンタ以外のプロデューサーと組むわけがないでしょう?」





「……“信用できない”」



「それもそうね。確かに私は信用できない、か」



「……」



「なら信じなくて良いわ。でも、アンタが“信頼”してくれるその時まで、私は足掻きながらでも隣を歩いてやる。それで良いでしょう?」



「……勝手にしろ」



「その代わり、アンタもしっかり手綱を握ってるのよ? じゃないと、いつの間にか離れちゃうかもしれないからね」



「もう良いだろ? 早く帰れよ」



「はいはい。お望み通り帰りますよーだ」



「フン」



「ちゃんと身体を暖めておくのよ?」



「言われなくても分かってるよ」



「なら良いわ。いきなり水かけて悪かったわね」



――カチャンッ。




「……フン」



――『 私のプロデューサーはアンタだけ 』




「分かりやすい嘘つくなよ。アンタにとってのプロデューサーは、一人しかいないだろ。……バカ」



――

ここまでにします。

ここまで来るとなんか別物に見えるな




――バタン。



冬馬
「よお」



「冬馬か。そんなところに突っ立ってどうしたんだ?」


冬馬
「アンタ待ちだよ。送迎がいなきゃレッスンに行けないだろ?」



「……忘れてた。すぐ支度するよ」


冬馬
「まだ時間があるんだ。焦ることはねぇよ」



「なら無言でドアの前に突っ立ってるなよ。てっきり急かしてるのかと思ったぞ」


冬馬
「悪い。ちょっと聞きたいことがあってな」



「なんだ?」


冬馬
「アンタの処遇のことだよ。……もしかしてクビか?」



「雑用係だよ。しばらくあの三人は黒井社長が面倒を見てくれるらしいから、俺はお前の方に付っきりになるだろうな」


冬馬
「ッチ。俺は戦力外ってことか」



「そうふて腐れるなよ。英語ができるようになれば活動できるだろ?」


冬馬
「あぁ、そうだな。しっかし3人って……。あれだけ正面からケンカ売っていて格好つかないんじゃないか?」



「……言うなよ」



――


コーチ
「はい。そろそろ授業を始めますね。冬馬くん、ちゃんと勉強してきた?」


冬馬
「まぁ、一応……」


コーチ
「そう。それじゃ、早速だけどテストするわ」


冬馬
「またかよ……」


コーチ
「第一問! 自分の部屋で女の子と二人っきりです。この時、彼女にかける言葉とは?」


冬馬
「えっと……。Is anything drunk?(なにか飲む?)」


コーチ
「違います! 正解は……。There are not a lot of sheets of substitution and do not worry(心配するな。代えのシーツはいくらでもある)。です!」


冬馬
「分かるか!! つーかセクハラだろコレ!?」


コーチ
「ん? 早くヤりたい。の方が良かった?」


冬馬
「ストレートに言えば良いって問題じゃねーよ!」


コーチ
「第二問!」


冬馬
「人の話を聞け!」


――




――キィン。コン。カン。コォーン。



コーチ
「あら、もうこんな時間だったの? 仕方がない。今日はこの辺で終わりにするわ」


冬馬
「やっと終わった……」


コーチ
「一問も正解できなかった冬馬くんは罰として明日までにフロントホックブラジャーの説明ができるようになってること。分かった?」


冬馬
「ムリだよ!!」


コーチ
「北斗くんは出来たわよ?」


冬馬
「ぐっ……」


コーチ
「ということで、次の授業までに説明できるようになってるのよ? じゃ~ね~♪」ヒラヒラ


――




「よう。ずいぶん疲れてるみたいじゃないか」


冬馬
「みたい。じゃなくて、ホントに疲れてるんだよ。……アレは授業なんかじゃねぇ。ただのセクハラだ」



「俺も少し見させてもらったよ。ほとんど遊ばれてるだけだったな」


冬馬
「他人事だと思いやがって。アンタの人選だろ? どうにかしてくれよ」



「ならやり方を変えてみるか?」


冬馬
「例えば?」



「そうだな……。在り来たりだけどアニメとかマンガで覚えるっていうのは?」


冬馬
「それでいこう」





「決断が早すぎるだろ。……別に良いけど」


冬馬
「そうと決まればアニメショップに行こうぜ」



「それくらい通販で頼めよ」


冬馬
「え? こっちでも取り寄せって出来るのか?」



「できるよ。というか、メジャーなところだとアマゾンも活用されてるぞ?」


冬馬
「マジかよ……」



「とりあえず今はそれで様子を見るか。費用は俺が持つから好きなの買って良いからな」


冬馬
「マジかよ!」


――



翔太
「ただいまー!」



「おかえり」


翔太
「はー。今日も疲れた。なんか僕だけお仕事多くない?」



「なによりじゃないか」


翔太
「ま、それもそっか。よれよりも僕、お腹ペコペコだよ。もうご飯の準備って出来てるんだよね?」



「あー。それなんだが……」


翔太
「どうしたの?」



「確か、今日の当番って冬馬だろ?」


翔太
「うん。冬馬くんって意外と料理上手だから、今日のご飯、ちょっぴり期待してるんだよねー」



「その冬馬なんだが……」


翔太
「?」



「どうやら部屋に引きこもってるみたいなんだ」


翔太
「……はい?」


――




――コンコン。



黒井
「冬馬。そろそろディナーの時間じゃないのか? 私はお腹が空いたぞ」



「……」



北斗
「冬馬ー。なにがあったのか知らないけど約束を破るなんてお前らしくないぞー。だから早くご飯つくってくれー」



「……」



――ダン! ダダダン。 ダンッ! カッ。 ダン、ダダダン!




「50コンボだドン♪」


黒井
「ちょっ!? 止めなさい舞ちゃん! ドアが壊れる!」



「壊したら直せば良いじゃない。それよりもお腹空いたーー!!」ジタバタ




翔太
「ワーォ」



「驚くだろ? かれこれ6時間くらい引きこもってるんだぜ?」


翔太
「むしろ、そんなに待ってるなら誰か代わりにつくっちゃえば良いのに」



「みんな意地でもつくりたくないらしい」


翔太
「まぁ、6人分だもんね。……でも、なんでこんなことになったの?」



「んー。たぶん俺が原因かもな」


翔太
「?」



「いやー。あまりにも冬馬の英会話が進展しないからさ、試しにアニメやマンガで勉強させることにしたんだよ。そうしたらご覧の通り、この有様だ」


翔太
「うわぁ……。それって完璧にプロデューサーの所為だよ」



「やっぱりそう思う?」


翔太
「うん。だから責任を持って冬馬くんを引きずり出して?」



「えー」





「おーなーかーすーいーたー!」ダン! ダダダダン!


黒井
「だから止めなさい! 本当にドアが壊れちゃう!」



北斗
「……」カッ! カカカッ! ドゥン! ドゥン!



黒井
「お前まで何やってるんだバカ!」




――




――コンコン。




「冬馬、みんなお前待ちだ。早くココから出てきなさい」



「早くご飯つくれー!」


翔太
「そうだそうだー!」



「さっさと夕食の支度をしないと暴徒と化す勢いだぞ?」



「……」




「ったく。仕方が無いなぁ……」ガサゴソ



――ガチャッ。





北斗
「開いた!?」



「さっきまでビクともしなかったのに何で!?」


黒井
「さすがだ小僧!」


翔太
「プロデューサーさん、どんなマジックを使ったの!?」



「ん? 普通にマスターキーを使っただけだぞ?」



舞・北斗・翔太・黒井
『…………はい?』




「いつも俺が管理してるだろ? 知らなかったのか?」



舞・北斗・翔太・黒井
『……………』




「え、なに? なんでみんなそんなに怖い顔してるの?」



舞・北斗・翔太・黒井
『そんなのあるんだったら初めっから使えよ!!!』




「うぉ!? ごめんなさい!?」


――



冬馬
「……」~♫~♬~♪



「冬馬? みんなお怒りだ。これ以上暴徒を増やさない為にも、早く夕飯をつくってくれ」


冬馬
「……」~♫~♬~♪



「おい、聞いてるのか?」ヒョイ


冬馬
「あ! なにするんだ――。ってプロデューサーか。どうしたんだ?」



「どうした? じゃないだろ。何時だと思ってるんだ?」


冬馬
「え? えーと……、9時?」



「正解。そして今日の当番は誰でしょう?」


冬馬
「……あっ」



「やっと思い出したみたいだな」


冬馬
「悪い! すぐに支度する!」



「そうしてくれ」




冬馬
「あ、そうだ! プロデューサー!」



「なんだよ」


冬馬
「 When the meaning is understood, English is easy ! 」
(英語って、意味が分かると簡単だな!)



「……は?」


冬馬
「せっかくの披露なのにその顔はなんだよ。……まぁ、良いや。すぐにできるから早くこいよ!」



――バタン。



「あ! やっと出てきた!」


「遅いよ羅刹!」


「アホ毛ー。早くつくってー」


「悪い。すぐにつくるから勘弁してくれ。……というかって羅刹って言ったヤツ誰だ!?」


「御託は良いから、さっさとつくれ。……お腹空いた」








「……いや、単純すぎるだろ。……アイツ」







――

ここまでにします

あまとうwwwwww

乙かれさまです
そういや太鼓のアレって765だったな

愛「あたしという存在……」

との繋がりはわかるんだけどもこっちとあつ

途中投稿してしまった


あっちとこっち、どういう流れでかいたん?
向こうではこのssが前作になってるし

>>752
以前に今と全く同じスレタイで中身がキンクリされたSSを投下
その後にその話の前日談的な愛ちゃんの話を投下
愛ちゃんのが完結したあと最初の真美の話をリメイク←今ここ

>>753
なるほどやっと分かったよ
ありがとう



翔太
「おいしい! ホントにおいしいよ冬馬くん!」


黒井
「フン。なかなか美味ではないか」


北斗
「見た目も凝っていてオシャレだな。……おっ、隠し味は柚子か!」


冬馬
「へへっ。どうよ俺の実力!」



「まぁ、あれだけ空腹になってれば、なんでも美味しいけどね」



「そうか? 普通に美味いと思うけど。あっ、冬馬。お前の手帳、更新しておいたから」


冬馬
「おっ! やっとお前らの仲間入りか!」



「あぁ。やっと全員が英語を話せるようになったよ」


冬馬
「なに言ってるんだよプロデューサー。翔太はまだ話せないだろ?」


翔太
「おっと。その情報は古すぎるよ冬馬くん」



「むしろお前らの中で一番乗りだったけどな」



「そうなの?」


翔太
「うん! プロデューサーに教えてもらったからバッチリ!」


北斗
「は?」


冬馬
「はぁ?」



『はぁあああああ!!!?』



ここから英語をカットします。




――ワィワィ。ガヤガャ。



黒井
「そういえば小僧、事務所に届け物が来ていたぞ。貴様宛てでな」



「俺宛に届け物……? あぁ。アレか」


黒井
「心当たりがあるのか?」



「えぇ。たぶん知り合いからでしょう」


黒井
「ほう。貴様の知り合いとやらはずいぶんな高級品をプレゼントするのだな」



「人のプレゼントを覗き見るなんて趣味が悪いですよ黒井社長」


黒井
「入り口の前で梱包もせずに置いてあったのだ。あれで見るなと言う方が難しい」



「そうですか」


黒井
「それにしても、あんな代物が我が961プロダクションに届くとは。……貴様に扱えるのか?」



「どうでしょう? でも、できれば使いたくないですね。あの機材、神経を擦り切らしながら使うので疲れるんですよ」


黒井
「フン。なら私が頂こう。それで構わないな?」



「どうぞ遠慮なく貰って下さい。……扱えるのならね」


黒井
「ッチ。本当に喰えんヤツだ」





「それで? 他になにか無かったですか? 例えば手紙が届いてたとか」


黒井
「……目敏いな」



「まぁ、梱包もしてないのに俺宛だと分かるくらいですからね」


黒井
「貴様の言う通り、手紙が届いていた。中身は見てないから安心しろ」スッ



「どうも」


黒井
「なんと書いてあるのだ?」



「……少し出かけます」


黒井
「は? お、おい! どこへ行くというんだ?」



「――ナンパですよ」


――




【 とあるBAR 】



カラァーン。



マスター
「いらっしゃい。ママのお使いかい、坊や?」



「ちゃんと成人してるよ。……ほら」スッ


マスター
「これは驚いたね。てっきり小学生かと思ったよ」



「……お邪魔しても?」


マスター
「ごめんね。今日は貸し切りなんだ。また日を改めて来てちょうだい」



「……ふーん」



――スタスタ。



マスター
「あ、ちょっと!」





――ドサッ。




「隣、良いかい?」



「……そういうのって、座る前に聞くんじゃない?」




「どうでも良いだろ。それとも、強引な男は嫌いか?」



「さぁね。でも、強引なだけじゃ女の子は惹かれないわ。それに――」



――ジャヵッ。



「私には怖ーいボディガードがいるから」



――



黒服の男
「良い子はもう寝る時間だ。クソガキ」



「……」



「これで分かったでしょう? 悪いことは言わないから大人しく帰った方が身のためよ?」




「……なぁ。この国では人の頭に銃を突きつけるのが流行ってるのか?」



「驚いた。眉一つ動かさないのね」




「まぁ、慣れてるからな」



「へぇ。とってもユニークよ、あなた」




「お気に召して頂いてなによりだ。……ついでに俺と“友達”になってくれると光栄なんだが」



「もちろん。……と言いたいけど、私と友達になるにはまだ足りないわ」






「どういう意味だ?」



「私、強い人にしか興味がないの」




「……」



「だから、あなたがそれを証明できるなら私の友達になるのを許可してあげるわ」




「できなかったら?」



「怖ーいボディガードが店の外まで送ってくれるでしょうね」




「へぇ。なら、簡単だ」



「あら、もしかして証明できるの?」




「あぁ。俺は“弱いヤツにしか興味がない”からな。アンタの隣にいる時点で証明されてる」



「……どうやらジョークで言ってる訳じゃないみたいね」





「さて、今度はアンタが証明する番だな。どうやって俺の強さを証明するんだ?」



「……あなた、手持ちは?」




「サイフの中身が寂しくてね。100万しかない」



「へぇ。奇遇じゃない。私も同じよ」




「……競技は?」



「ポーカー」




「乗った」



「そうこないと。マスター、ちょっとトランプ持ってきてくれない?」



――




――シャッ。シャッ。シャッ。




「ずいぶん手馴れてるな。このゲーム、よくやるのか?」



「ポーカー意外でもトランプを使ったものなら、なんでもできるわよ?」




「なるほど。手強い相手になりそうだ」



「さて、ゲームを始める前にルール説明でも始めようかしら」




「……」



「このゲームに引き分けは無いわ。同じ役でも数字が高い方が勝ち。マークはスペード・ダイヤ・ハート・クラブの順で勝敗を決めるわ」



「……」



「チェンジは二回までの一発勝負。ベットするのはチェンジが終了した後にするわ。なにか質問ある?」




「上限は?」



「ノーリミット。いきなりオール・イン・ベットなんてやり方もアリだから安心して」




「分かった」



「他に聞きたいことは?」




「いや、ない」



「そう。それじゃ――」




「あぁ、始めようか。……Ms. Lady Gaga」



――



Lady
「最初の親は私が貰うわ」



「どうぞ」



――スチャッ。



Lady
「2枚チェンジ」



「 A 」 「 K 」




「……3枚チェンジだ」



「 J 」 「 7 」 「 2 」



Lady
「1枚チェンジ」



「 10 」





Lady
「こんなものかしらね。……ベット。50」



「……」


Lady
「どう? この勝負、受ける気はある?」



「……コール」


Lady
「ありがと。でもレイズよ。さらに50」



「……それがアンタのやり方なのか?」


Lady
「なんのことかしら?」



「あんまり人をバカにするなよ。レイズだ」


Lady
「レイズ? あなた、100万しかないんじゃなかったの?」



「確かに100万だけだ。でも、……“俺の在り金が100万とは言ってないだろ?”」





――ドサッ。ドサッ。ドサッ。



Lady
「え?」



「100万ずつ束ねないと入りきらないからな。やっとトランクが軽くなったよ」


Lady
「呆れた。あなた、とんだ嘘つきね」



「嘘つきはどっちだ。わざわざ手を崩しやがって」


Lady
「あら、なんのこと?」



「まだ白を切るつもりか。なら、手札を見せてみろ。それで証明してやる」


Lady
「……」



「どうやら見せられないようだな」


Lady
「……なんで分かったの?」



「手の内を晒す勝負師がいると思うか?」


Lady
「そう。とても残念だわ。私たち友達じゃなかったのね」



「……アンタ、なかなか口が上手いな」


――



Lady
「それで、なんで分かったの?」



「……視線だよ」


Lady
「視線?」



「あぁ。アンタの視線は手札を左から一回ずつ移してた。つまり最低でもツーペア以上の役があったはずだ」


Lady
「……」



「捨て札を見ても、アンタの手はブタ。もしくは出来てワンペアだと容易に推測できる。だからムカついたんだよ」


Lady
「なるほど。ポーカーを選んだ時点で私の負けだったのね」



「違うな。俺と勝負した時点でアンタの負けだ」


Lady
「フフッ。そういう強気な言葉キライじゃないわ。でも、次は私が勝つ」



「その時は同じ言葉をアンタに言い渡してやるよ」


Lady
「えぇ。楽しみにしてるわ。……あなた、名前は?」



「……悪いけど教えられない」


Lady
「あら、どうして?」



「どうも日本人はシャイでね。俺に会いたいならココに電話してくれ」


Lady
「――961プロダクション?」



「呼んでくれたら、いつでも駆けつけるぜ?」


Lady
「ふーん」



「それじゃ、アンタからのラブコール楽しみにしてるよ」


――



Lady
「……ねぇ」


黒服
「はっ!」


Lady
「この事務所、あなた知ってる?」


黒服
「961プロダクション……。確か、破竹の勢いで名を上げている事務所だったと思います」


Lady
「そう」


黒服
「なにか気になることでも?」


Lady
「まぁね」


黒服
「……」


Lady
(日本で成功したからといって、この国で通用するほどココは甘くない。ということは、……あの坊や、とんでもないペテン師かもしれないわね)


黒服
「Lady?」


Lady
「フフッ。お望み通り、ラブコールをかけてあげるわ」


黒服
「……興味のある人物にちょっかいを出すのはあなたの悪いクセだ」


Lady
「悪い? でも、それが私よ」


黒服
「ハァ」


Lady
「さて、今度はどう楽しませてくれるのかしら?」


――

ここまでにします。

言っちゃ悪いがもうオリジナルものだな

正直、真美の担当辞めてから方向性が迷子になってるように思う

いいんじゃないのオリジナルでも好きだよ俺

いい悪いの話ではないと思う
面白いしさ
ただ、アイマスでやる必要があるのかと言われると

>>774
前から言われてるけどそれはほぼ全てのアイマスssに言えるよね

それでも言うならキャラが多くて性格もわかっていて口調もいい感じにばらけていて使いやすいからだと思う

登場人物が男A女Aみたいなのが沢山いてもわけわからなくなるし




【 961プロダクション(海外支店) 】



冬馬
「プロデューサー。今日のスケジュールってなんだっけ?」



「お前のスケジュール? 確か午前中はワシントンでトーク。その後フロリダで他のアーティストと競演だったかな」


翔太
「ねー。僕は?」



「翔太は……。というか手帳を見ろよ」



――Trrr。Trrr。



黒井
「はい。961プロダクションです」



『――』



黒井
「小僧。貴様に電話だ」





「あ、はい。――もしもし? お電話変わりましたPです」


Lady
『ハロー。お望み通り、ラブコールをかけてあげたわよ』



「……アンタか」


Lady
『なに? せっかく電話してあげたのに、私じゃ不満だった?』



「いや、心待ちにしてたよ。それで? どんな用なんだ?」


Lady
『用っていう用じゃないけど……。あなた、来月に予定ある?』



「夜ならいつでも空いてるよ」


Lady
『そう。なら良かったわ。来月の日曜日に私のライブがあるから、そこで昨日の続きをしましょう』



「おいおい。俺は一般人だぞ。まさかステージに上がれって言うのか?」


Lady
『フフッ。あなたのパートナーがいるでしょ? プロデューサーさん』





「……調べるのが速いな。それで? 場所はどこなんだ?」


Lady
『マイアミよ』



「マイアミ? もしかして――ってライブか?」


Lady
『あら、知ってたの?』



「あぁ。別のパートナーを参加させるつもりだったけど、なんでアンタが参加してるんだ? 出演者に名前はなかったぞ」


Lady
『エントリーするの忘れてたのよ。でも、残念だわ。私から招待する必要もなかったのね』



「いや、アンタが参加すると分かった以上、こっちも真打ちを登場させるよ」


Lady
『本命ってこと?』



「伸び代はないけどな」


Lady
『ふーん。相手が誰だろうと私の敵じゃないけどね。まぁ、楽しみにしてるわ』



――ッ。……ツー。ツー。ツー。






「……」


黒井
「ずいぶん長話じゃないか」



「えぇ。ガールフレンドからでした」


黒井
「フン。女に現を抜かす暇があるなら仕事をしろ」



「よく言いますね。しっかり聞き耳立ててたじゃないですか」


黒井
「部下の管理も上司の務めだ」



「……。それよりも冬馬」


冬馬
「なんだ?」



「いきなりで悪いんだけど、今日からお前の担当を外れる。ここからは黒井社長と行動してくれ」


冬馬
「は? お、おい! どういうことだよ!」



「……とあるラアイドルのお誘いで舞さんをエントリーすることになった。どうしてもそのライブで勝ちたいから、ここからは別行動にさせてもらう」


冬馬
「一点集中ってことか。……分かったよ」



「悪いな」




冬馬
「ッチ。そう思うなら俺にもビックイベントを持ってこいよ。こっちだって早くランク上げたいんだ」



「心配するな。そのライブに俺たちと一緒に参加することになってる」


冬馬
「そうなのか?」



「あぁ。それも、アヴリル・ラヴィーンっていうAランクのゲストがお前の相手だ」


冬馬
「……誰?」



「日高舞をアメリカで一番最初に負かしたアーティスト。とでも言っておくか」



「はぁ!? 私がいつ負けたのよ!」



「大聖堂の前座で大失敗して帰ってきただろ? その後に会場のムードを立て直したアーティストだよ」



「ッ!? あの小娘が!?」



「覚えてるのか?」



「当たり前じゃない! あの見下した顔、……忘れたくても忘れられないわ」



「……ステージの上で一悶着あったみたいだな」





「アホ毛! アンタの対戦相手、私に譲りなさい! コイツは私が仕留める!」


冬馬
「嫌に決まってるだろ! コイツは俺の獲物だ!」



「舞さん。冬馬の相手はこのアーティストで決まってる。それは決定事項だ」



「なに? やられっぱなしで我慢しろって言うの?」



「リベンジはこのターゲットを片付けてからにしてくれ」



――ファス。




「誰よこの女」



「レディ・ガガ。現状、Sランクに居座る最強のアイドルだ」



「……最強?」



「あぁ。ダンス・ボーカル・ヴィジュアル、そして知名度。どれを取っても他を寄せ付けないレベルだ。間違いなくこの国を代表するアイドルだろうな」



「……」



「相手にとって不足は無いと思うけど?」





「気に入らないわね……」



「なにが?」



「私を差し置いてソイツを最強認定してることよ」



「たかがAランクに惨敗するアイドルが最強? 笑わせるな」



「ふーん。なら、ソイツを倒せば私が最強って良いわね?」



「出来るのならな。その時は潔く認めてやるよ」



「それだけ聞ければ十分。さっさと始めましょう」



「なにやるのか分かってるのか?」



「知らない。でも、私と行動するってことは、なにかしらの準備があるんでしょ?」



「まぁな。時間が掛かりそうだから、ライブまでの仕事は全てキャンセルするつもりだ」



「……アンタも本気じゃない」



「俺はいつだって本気だよ。……黒井社長。後は頼みます」


黒井
「フン。貴様に言われるまでも無い」


――




「それで? これからどうするの?」



「とりあえず事務所にある広い空き部屋を使わせてもらおうと思ってる」



「空き部屋? そんなところで何するつもりなのよ」



「振り付けだよ」



「はぁ? 持ち歌の振り付けなんてとっくに覚えてるんだから、そんなの必要ないでしょう?」



「確かに普通の振り付けなら必要ない。だが、俺が求めるのは一寸の誤差も許されない正確無比な振り付けだ」



「?」



「まぁ、とりあえずやってみるか。最初は普通に踊って良いぞ。どこまで出来るのか試してやるよ」



「よく分からないけど、お手柔らかに頼むわ」


――




【 961プロダクション(空き部屋) 】



――キュッ。キュッ。タンッ。




「――ッ」



「これで分かったか? 俺がやろうとしてることが」



「……狂ってるわね、アンタ」



「まともで勝てる相手じゃないからな」



「OK。ここまでしなくちゃ勝てない相手だって分かったわ。でも、ホントにできると思ってるの?」



「俺は無意味なことが嫌いだ。それに、できないと思うのなら初めからこんなことしないさ」



「やっぱり狂ってるわね。……いや、それともバカなのかしら?」



「さぁな。でも、コレが出来ないと話にならない。勝ちたいなら死ぬ気でやれ」



「はいはい。……まぁ、“そういうバカ”、嫌いじゃないわ」


――




「おい、またズレたぞ。どうしたんだ?」



「このトレーニング。……思った以上にキツイ」



「弱音を吐くならもっと集中しろ」



「ったく、なにが振り付けよ。まったく別物じゃない」



「嘘は言っていないだろ?」



「ッチ」



「時間がないんだ。始めるぞ」



――タンッ。タンッ。キュッ。




「――っ!」



「またか。序盤でこれじゃ先が思いやられるな」



「あー! もうッ!」



「できないからってキレるなよ。それとも諦めるか?」



「冗談じゃないわ! もう一回よ!」


――




――タンッ。キュッ。キュッ。




「ダメだな」



「ま、た……?」



「こんなもんだよ」



「……」



「慣れないことしたから疲れただろ。今日はもう帰るから少し仮眠室で寝たらどうだ?」



「そう、ね。悪いけど、そうさせてもらうわ……」



「送るよ」



「大丈夫……。心配いらない、わ」



「そっか」



「……おやすみ」



「あぁ。おやすみ」



――ガチャンッ。




「……」



――ドサッ。




「……ッチ。……コッチも限界、か」


――



冬馬
「今ごろプロデューサーたち、秘密の特訓でもやってるんだろうな」


黒井
「急にどうしたのだ?」


冬馬
「なんか、……こう普通に仕事してると不安になってくるんだよ」


黒井
「……」


冬馬
「なぁ、オッサン。相手はあの姉御を倒すくらいの猛者なんだろ? ホントに仕事していて良いのか? あんまりレッスンする時間もないし……」


黒井
「一つのことも満足にできんヤツは他でも上手くいかん。そんなことを嘆くヒマがあるなら、次の仕事に集中しろ」


冬馬
「……そう、だよな」




黒井
「フン。確かに相手が相手だ。時間は多いに越したことはないと分かっている」


冬馬
「なら――」


黒井
「だが、お前には必要ない。レッスンも今まで通りで十分だ」


冬馬
「でもよ……」


黒井
「冬馬、なにを不安になっているのだ? お前は負けを知らぬ王者だろう。その程度の不安、自信で掻き消せ」


冬馬
「……」


黒井
「それに、お前にはこの黒井が付いている。お前はタイタニックにでも乗ったつもりでいろ」


冬馬
「……っ。……あはははっ!」


黒井
「むっ。なにが可笑しい」


冬馬
「だってよ。それって最後には沈むじゃねぇか」


黒井
「あっ……」


冬馬
「ぷくくっ」




黒井
「い、いつまで笑ってるのだお前は!」


冬馬
「悪い。やっぱり頼りになる社長だなって思ってな」


黒井
「当たり前だ! 私をダレだと思ってる!」


冬馬
「オッサンだろ?」


黒井
「ぐっ……」


冬馬
「あー、笑い過ぎて腹いてぇ」


黒井
「フン」


冬馬
「もう心配しなくても大丈夫だ。小難しく考えて悩むなんて俺らしくなかったぜ」


黒井
「元々心配なんぞしてない」


冬馬
「悪かったって。まぁ、オッサンには借りができちまったからな。こいつはライブの勝ちで返してやるか」


黒井
「当然だ。……だが、ただの勝ちに興味はない。やるからには圧倒的な力で捻じ伏せろ」


冬馬
「言われなくても分かってるよ。どんなヤツも軽く蹴散らしてやるから見てな」


――



翔太
「ただいまー!」


北斗
「ただいま帰りました」



「おかえり」


北斗
「あれ? プロデューサだけですか?」


翔太
「みんなは?」



「黒井社長と冬馬はレッスンに行ってる。たぶん、まだ帰らないんじゃないかな」


翔太
「ふーん。お姉さんは?」



「自室で寝てるよ。かなり疲れてるから起こさないでくれ」




翔太
「へー。あのお姉さんがこの時間まで寝てるなんて意外だね」


北斗
「プロデューサーさん、どんなトレーニングしたんですか?」



「振り付けだよ」


翔太
「振り付け?」



「あぁ、ただの振り付け。……ところで北斗、翔太。悪いけど、今日の夕飯は適当に済ませてくれないか?」


翔太
「え? うん。良いけど、どうしたの?」



「舞さんほどじゃないけど、俺も疲れた。……眠い」


翔太
「あー。確かにプロデューサーさん眠たそうだね。というか、そんなに眠たいなら僕たちを待ってなくても良かったんじゃない?」


北斗
「翔太。そんな言い方は出迎えてくれたプロデューサーに失礼だろ。……俺たちのことは気にしないでゆっくり休んで下さい」



「悪い。……それじゃ、また明日」


北斗
「えぇ。おやすみなさい」


翔太
「おやすみー」





――ガチャンッ。


翔太
「なんか誰もいないと広く感じるよ、この家」


北斗
「……」


翔太
「ねぇ、北斗くん」


北斗
「なに?」


翔太
「僕たちも負けてられないね」


北斗
「そうだな。でも、俺は負けたつもりはないよ?」


翔太
「意外と負けず嫌いなんだ。……まぁ、僕もだけど」


北斗
「お互い、追い抜かれないように頑張ろうな」


翔太
「うん!」


――

8時頃にまた来ます。

>>771さん。>>772さん。

率直な感想ありがとうございます。自分なりのテーマに沿って書いていたつもりなのですが、もしかしたらアイマスの世界観に合わなかったのかもしれません。

あと少しでこのssを閉じようと思いますので、それまでお付き合い頂けたら幸いです。




「おはよう」


北斗
「おはようございます、プロデューサー」


翔太
「今日は遅かったね。もしかして寝坊?」



「あぁ。久しぶりに熟睡できたよ」



「それにしたって遅いわよ。ご飯は持ってきてあげたから早く食べなさい」



「悪い」


黒井
「私より遅く来るとは良い身分だな」



「反省してますよ。遅れながらですが、おはようございます黒井社長」


黒井
「うむ、おはよう。ところで小僧、首尾はどうだ?」



「微妙ですね。そちらは?」


黒井
「言われるまでもない。完璧だ」



「そうですか」




黒井
「なんだったら対戦相手を交換してやろうか?」



「大丈夫ですよ。ライブまでには成功させるつもりですから」


黒井
「フン。なら良い」



「……ごちそう様でした」


黒井
「そろそろ私は失礼するとしよう。お前らも行くぞ」


北斗
「えぇ。分かりました」


翔太
「さて、今日も頑張りますか」


黒井
「冬馬、準備は良いか?」


冬馬
「むしろオッサン待ちだよ」


黒井
「ほう。言うじゃないか」


翔太
「プロデューサーさん、お姉さん。後はよろしくね」



「えぇ、分かったわ」



「いってらっしゃい」



――バタンッ。




「……こっちも行くか」



「そうね」


――




【 961プロダクション・空き部屋 】




「……どう?」ハァ、ハァ



「少しズレてる」



「ま、また?」



「あぁ。でも、初日に比べたら、かなり進展したな」



「お世辞なんていらないわ」



「率直な感想だよ。それに、誤差も観客からは気にならない程度だ」



「……」



「ここで終わりにするか?」



「イヤよ。ここまで来たからには、最後までいくわ」



「……」



「それに、粗の残ったステージなんて相手に失礼だもの」



「……そうだな」



「始めましょう」



「分かった。これで決めろよ?」



「言われなくてもそのつもりよ」


――



冬馬
「終わったぞ、オッサン」


黒井
「ご苦労。まずまずの出来だったな」


冬馬
「次は?」


黒井
「ダンスとヴィジュアルのレッスンが入っている」


冬馬
「やっとか。待ちわびたぜ」


黒井
「威勢が良いのは結構だが、しばらくレッスンコーチは不在だ。というより、断っておいた」


冬馬
「は? なんでだよ」


黒井
「しばらく見させてもらったが、やはりダンス・ヴィジュアル共に十分なレベルだった。お前にレッスンは必要ない」


冬馬
「ちょっと待ってくれ! まだ時間はあるんだぜ? ただでさえ少ないレッスンを削って負けましたじゃ話にならねぇぞ!」


黒井
「フン、心配するな。ここからは私が直々に鍛えてやる」


冬馬
「オッサンが?」




黒井
「既に相手の能力は掌握済みだ。攻略の糸口も掴んでいる」


冬馬
「……」


黒井
「後は、お前次第だな」


冬馬
「どういう意味だ?」


黒井
「私は、勝ちさえすればそれで良いと思っている。だから、私で不安ならこのまま凡人とのレッスンを続ければ良い」


冬馬
「……」


黒井
「決めるのはお前だ」


冬馬
「……本当に勝てるんだろうな?」


黒井
「私について来て負けたことがあったか?」


冬馬
「その返し方は卑怯だろ」


黒井
「フッ、決まりだな」


――



冬馬
「それで? 攻略の糸口ってなんだ?」


黒井
「まぁ、待て。順番に話してやるから、そう急ぐな」


冬馬
「……」


黒井
「以前に小僧が話した通り、お前の相手はAランクの一流アーティストだ」


冬馬
「……」


黒井
「お前はアイドルとの対戦経験は豊富だが、アーティストとの対戦など無に等しいからな。そこで――」


冬馬
「なぁ、アイドルとアーティストってなにが違うんだ?」




黒井
「……人が話してる時は黙って聞いていろと習わなかったか?」


冬馬
「悪い。でも、気になってよ」


黒井
「フン。仕方がない。お前でも分かりやすいように説明してやろう」


冬馬
「おう」


黒井
「アイドルとは、言うならばオールラウンダーだ。ダンス・ヴォーカル・ヴィジュアル・トークなど、多彩な科目を卒なくこなすバランス型だと思え」


冬馬
「……」


黒井
「それに対し、アーティストとは一点だけを極めたスペシャリストだ。その他一切を排除して、自身の得意分野に絶対の自信を置いている特化型だな。……ここまでは良いか?」


冬馬
「うーん。まぁ、なんとなく分かった」




黒井
「そうか。……先ほども説明したが、このアーティストがお前の相手だ。ヴォーカルだけを極めたこのアーティストに正面から挑めばコチラの勝機はない」


冬馬
「……」


黒井
「だから、あえてヴォーカルは捨て、ダンス・ヴィジュアルで勝負することにした」


冬馬
「それって、オッサンが言ったように俺もアーティストになれって言ってるのか?」


黒井
「少し説明が悪かったな。……なにも、まったく歌わないという訳じゃない。あくまでダンスやヴィジュアルを重点的にアピールするということだ」


冬馬
「へぇ」


黒井
「なにを呆けている。これからのレッスンに関わることだ。きちんと聞いてろ」


冬馬
「んなこと言われてもなぁ。結局まわりくどい説明ばっかで、なにやるか分からねぇんだ。仕方ないだろ?」


黒井
「ハァ。なら結論から言ってやる。アーティスト対策として私がつくった新曲、……というよりアレンジだな。これを使って勝負するということだ」


冬馬
「アレンジ?」


黒井
「あぁ。お前たちのAlice or Guiltyを私が独自に“ロックアレンジ”したものだ。本番のライブでもコレを使う」


冬馬
「なんだよ、そんな簡単なことなら最初っから言ってくれよ」


黒井
「分かりやすく話そうとしたのに、お前が話しの腰を折るからだろう。……まぁ、良い。さっそく取り掛かるぞ」


冬馬
「了解!」


――

ここまでにします


いままでの事務所での交友が一部を除いてほとんどがアレだったからな
3つの中でここが一番相性がいいのかもしれない




【 フロリダ州・マイアミ (楽屋) 】



――コンコン。



黒井
「入れ」



――ガチャッ。




「失礼します」



「ごめん、ちょっと遅れちゃった」


黒井
「遅い。まったく、こんな大舞台に緊張感のないヤツらだ」



「あははっ。どうも疲れが取れなくて」


黒井
「言い訳など見苦しいぞ。……それよりも小僧、準備は良いのか?」



「えぇ。既に終わらせてきました。そちらも終わってるみたいですね」


黒井
「貴様のようにバタバタとするのは性に合わないからな。事前に済ませてある」



「あはは。痛いところを突かないで下さいよ」


黒井
「フン。そろそろ前座共の消化試合が終わる。我々も出るとしよう」



「満足な見送りもできず、すみません」


黒井
「気にするな。……だが、我々が帰ってくるまでには臨戦態勢を整えておけ。良いな?」



「分かってます」



黒井
「冬馬、行くぞ」


冬馬
「おうッ!」



「アホ毛。私のステージ、ちゃんと暖めておくのよ?」


冬馬
「むしろ俺の後に冷ますなよ?」



「言ってくれるじゃない。でも、それだけ言えるなら大丈夫そうね」


冬馬
「姉御はそこでどっかりと座ってな。すぐにバトンタッチしてやるからよ」



「楽しみにしてるわ」


冬馬
「……それからプロデューサー」



「あぁ。ぶっ潰してこい。お前ならできるだろ?」


冬馬
「当たり前だ! ド肝を抜かしてやるぜ!!」


――




 パチパチパチパチ!!



Avril
『みんな久しぶりー。元気にしてた?』



 WHOOPEEEEEEEEEEE!!




Avril
『うんうん。元気そうでなによりだわ。今夜はカーニバルよ。歌って騒いで心ゆくまで楽しんじゃってね!』



 WOOOOOOOOOOOO!!



Avril
『それじゃいくわよ! 最初は私のデビュー曲――っと、そうだった。曲をかける前に紹介しなきゃいけない子がいたわね』



 ?



Avril
『私の対戦相手よ。すっかり忘れてたわ。……小さな島国からのチャレンジャー! えっと、……トゥーマ? タゥマ? アマガセよ!』



 パチパチパチ。



冬馬
『間違いだらけの紹介ありがと。それと、俺の名前はトゥーマでもタゥマじゃねぇ! トウマだ!』


Avril
『そうなの? 日本語って難しいわね』


冬馬
『……まぁ、良い。せっかく紹介されたんだ。少し時間を貰うぜ?』


Avril
『えぇ。でも、手短にね』





 ……。



冬馬
『紹介に預かった天ヶ瀬冬馬だ。たぶん、ほとんどここにいるヤツらは始めましてだと思う』



 ……。



冬馬
『俺は持てる力を出し切ってこのライブに挑むつもりだ。もし気に入ってくれたら応援してくれ』



パチパチパチ。



Avril
「あら、もう終わり?」


冬馬
「あぁ、終わりだ。……先行はどっちにする?」


Avril
「もちろん私よ。なんでも一番じゃなきゃ気に入らないの」


冬馬
「気が合うな。でも、今は譲ってやるよ」


――




 HEY! HEY! YOU! YOU!



『 I know that you like me! 』



 NO WAY! NO WAY!



『 you know it's not a secret! 』



 HEY! HEY! YOU! YOU!



『 I want to be your girlfriend! 』






冬馬
「へぇ。これがAランクの実力か」


黒井
「不安か?」


冬馬
「いや、むしろ安心したよ。これくらいやってくれないと張り合いがないからな」


黒井
「ほぅ。良いコンディションだ」


冬馬
「……オッサン、勝ってくるよ」


黒井
「お前は我が961プロが誇る最強のアイドルだ。胸を張って戻ってこい」


――



Avril
『 NO WAY! NO WAY! HEY! HEY! 』



 HOOOOOOOOOO!! WOOOOOOOOOO!!



Avril
「まぁまぁね。……次はあなたの番よ?」


冬馬
「ご苦労さん。俺が完勝するところ、そこで指を咥えて見てな」


Avril
「あはは。お手並み拝見とさせてもらうわ」



パチパチパチパチ。



冬馬
『……』



 ♪♬~♫♭♬~♪~♬



ダンッ! ダ! ダッ! ダンッ!   



Avril
(へぇ、足でリズムを刻むなんて珍しいわね。それも、こっちまで振動が伝わるくらいに激しく……)



ダンッ! ダ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!



Avril
(日本人だからって舐めてたけど、このスタイル。……まるでロックスターね)



ダンッ! ダッ! ダンッ! ダンッ!  ダンッ! ダッ! ダァアン!!



Avril
(クスッ。おもしろい。どこまで戦えるのか見させてもらおうじゃない)



――




『 声の、届かない迷路を越えて。手を伸ばせたら 』


『 罪と、罰を全て受け入れて 』


『 今、君に裁かれようッ! 』





♬♪♬♫~♭♬♪






冬馬
(――ッ。さすがにロックアレンジとなるとキツイか。……だけどな!)




――タンッ!




Avril
「ワォ! バック・ハンド・スプリングから次のダンスに繋げた!?」





冬馬
「これが、……俺の力だッ!!」





 WOOOOOOOO!!! IT'S COOL!!





――



冬馬
『 今、君の。……裁き、で! 』





 YEEEEEEAAAAAAHHHHHH!!!!





冬馬
「……ッ」ハァ。ハァ



パチパチパチパチ。



Avril
「素晴らしいステージだったわ」


冬馬
「……俺の、勝、ちだ」ハァ。ハァ


Avril
「確かに私の負けよ。……グルーヴィーだったわ、あなた」


冬馬
「言、っただろ。俺が、……勝つ、って」ッハァ


Avril
「……大丈夫なの?」


冬馬
「少し、疲れ、た、だけだ。す、ぐに治る」


Avril
「そう」


冬馬
「……」フゥ




Avril
「ミスター・アマガセ」


冬馬
「?」


Avril
「次も、私と戦ってくれる?」


冬馬
「あぁ、いつでも来い。でも、次はちゃんと名前を覚えてくれよ?」


Avril
「えぇ。約束するわ」


冬馬
「ありがと。……俺はもう行くぜ。真打ちが控えてるんでな」


Avril
「おつかれ様。次に戦える日を楽しみにしてるわ。……Mr.冬馬」


――



冬馬
「……」


黒井
「ご苦労だったな」


冬馬
「……約束通り、勝ってきたぜ」


黒井
「当然の結果だ。自惚れるな」


冬馬
「そうかよ」


黒井
「……まぁ、それでも良くやったと言っておこう」


冬馬
「どういう風の吹き回しだ? オッサンらしくねぇぞ」


黒井
「ただの感想だ。聞き流せ」


冬馬
「あっそ。でも、どうせならコッチの方が嬉しいね」スッ


黒井
「フン、良いだろう。こんな青臭いこと私には似合わないが、……特別だ」スッ



――パァン。



黒井
「最高のステージだったぞ」


冬馬
「ヘヘッ。当然だろ?」





 ――ッ。ヵッ。



冬馬
「ぁ……」


黒井
「どうした?」


冬馬
「いや、もう一人伝えなきゃならねぇヤツがいるの忘れてたよ」


黒井
「?」



 ヵッン。カッン。



冬馬
「……」



 カッン。カッン。カッン。



冬馬
「……ちゃんと暖めておいたぜ、――姉御」



 カッン。カッ。ヵッ……。






「……焚き付けられたわ、アンタのステージ」


冬馬
「次は、そっちの番だな」



「ふふっ。アンタがここまで暴れてくれたんだもの。私も負けてられないわね」


冬馬
「まったく、……頼りになる大将だよ、アンタ」




 カツン。カッン。ヵッン……。





「――“冬馬”」


冬馬
「?」



「あなた、とっても格好良かったわよ」


冬馬
「……あ、……あははっ。まさか姉御に褒められるなんて思わなかったぜ」



「誰かを褒めるなんて無いんだから、素直に受け取っておきなさい」


冬馬
「あぁ、受け取ってやるよ。その代わり――」



「えぇ。勝ってくるわ」


冬馬
「期待して待ってる」


――



司会者
『こんな結果を誰が予想した!? あのAvrilを制し、まさかの番狂わせを起こしたのは、……トウマ・アマガセだァ!』



 Hoooooooooo!!!



司会者
『恐るべしジャパニーズ・アイドル! このまま二度も奇跡は起きてしまうのか!?』



 NO WAY!!



司会者
『ハッハー! 確かにありえない。奇跡は一度っきりだから奇跡だ! それを我らのエース様が証明させてくれるぜッ!』



 WoooooW!!



司会者
『さぁ、フィナーレの時間だ! 満を持して登場してもらおう! 遅れてきた英雄! レディ・ガガァーーーーーッ!!!!!!』



Lady
『 ヤー! みんなお待たせ! 』



 FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!



――




 GAGA!! GAGA!! GAGA!! GAGA!! GAGA!!




「……さすがSランクアイドル。登場だけでこの歓声か」


黒井
「完全にアウェーだな」



「そうですね。……でも、これこそ俺が求めていたものです」


黒井
「?」



「逆境を楽しんでこそ一流。……でしょう?」


黒井
「フン。利いた風な口をきくじゃないか」



「ははっ。ですが、このアウェーを歓声にひっくり返したら面白いと思いませんか?」


黒井
「確かに面白いだろうな。だが、相手は伝説とまでに謳われた英雄だぞ?」



「なに言ってるんですか。伝説なんて所詮、“死んでから付けられる称号”ですよ? 俺たちの相手はゾンビじゃありません」


黒井
「……」



「それに、俺がどうやって自分のアイドルを伸し上がらせてきたか、黒井社長なら知っているでしょう?」


黒井
「クックック。そうだったな。……小僧、お手並み拝見させてもらうぞ」



「えぇ。とびっきりのジャイアント・キリング、見せてあげますよ」


――




 GAGA!! GAGA!! GAGA!! GAGA!! GAGA!!



Lady
『はいはい。そこまでにしておきなさい。この後も一緒に歌うのに、声が枯れても知らないわよ?』



 GAGA!! GAGA! GAGA GA ……。



Lady
『良い子ね。それじゃ、さっそくだけど私の相手を紹介しようかしら」



 ……。



Lady
『日本からのチャレンジャー。マイ・ヒダカよ!』

 


 パチパチパチパチパチ!








『紹介してくれてありがとう、Ms.Lady。もう少しでアナタのマイクを奪うところだったわ』


Lady
『おー怖い。さすがあの坊やが担当するだけあるわ』



 ……?


Lady
『あぁ、そういえばみんなは知らなかったわね。実は彼女、私の友達が担当してるアイドルなの』



 Hu-m。



Lady
『きっと強いわよ。なにせ私が勝てなかった相手のアイドルだもの。もしかしたら彼女にも負けちゃうかも』



 HAHAHAHAHAHA!!




『……』



Lady
『さて、ちょっとお喋りが長かったわね。そろそろライブを再開させるわ』



 ――!!



Lady
『最初からフルスロットルよ! 全員、私についてきなさい!!』




        OH YEAH!! 

 GAGA!! GAGA!! GAGA!! GAGA!!




――




Lady
『 I was born this way hey! 』


 BORN THIS WAY HEY!


Lady
『 Hey! I was born this way hey! 』



 I’M ON THE RIGHT TRACK BABY



Lady
『 ―― Right track baby 』



 BORN THIS WAY HEY!



Lady
『 I was born this way hey! 』






  YEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


 ―― WOOOOOOOO!!! ―― HOOOOOOOOO!!! ―― FOOOOOOOOO!!!

      
 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!






――




    YEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAHHHHHHHH!!!!!




「……まるで地響きね」ビリビリ


Lady
「どう? これが私の力よ」



「えぇ。見させてもらったわ」


Lady
「次はあなたの番よ。この歓声をひっくり返せるかしら?」



「さぁ、どうかしら」


Lady
「あら、意外に弱気なのね」



「アウェーには慣れてないのよ。それに、この空気をひっくり返すのは私じゃないわ」


Lady
「まさか、あの坊やが参加するって言うの?」



「半分正解。気に入らないけど、今日の主役はアイツよ」


Lady
「へぇ、それは楽しみね」



「まぁ、そこで見てなさい。……みんなまとめて魔法をかけてあげるわ」


――




 パチパチパチパチ。



―― ♫♭♬~♪♬





『 ひとつの命が生まれてくる 』


『 二人は両手を握りしめて喜びあって幸せかみしめ 』


『 母なる大地に感謝をする 』





Lady
「……」





『 やがて育まれて命は 』


『 ゆっくり一人で立ち上がって歩き始める 』


『 両手を広げて まだ見ぬ煌き探す 』





Lady
「……魔法をかける。なんて仰々しいこと言ってた割りに、この程度なのね」


黒服
「まるでビデオか何かでも見てるようだ。覇気もなにも感じられない」


Lady
「えぇ。正直、期待してただけに残念だわ」


――




(ふふっ。やっぱり幻滅してるわね)




『 しかし闇は待ち受けていた 』





(でも、手の内を隠すのはここまで)




『 幸せ全てのみこまれ 』





(さぁ、始めましょうか。私たちの世界へ……)




『 希望失って悲しみにくれるなか 』





「 IT'S ――」




『 空から注ぐ光 暖かく差しのべる 』







―― SHOWTIME!!







――





『 Trust yourself どんな時も命あることを忘れないで 』




黒服
「なッ!?」


Lady
「あ、……あはははっ!!」





『 Find your way 自分の進む道は必ずどこかにあるの 』





Lady
「……やってくれたわね、あの坊や」


黒服
「なんだこれは!? ダンスも! ヴォーカルも! まるで別人だッ!! こ、これじゃ、まるで――」


Lady
「えぇ、確かに魔法ね。まさか“現実を捻じ曲げる”なんて思ってもみなかったわ」





『 未来の可能性を信じて諦めないで 』





Lady
「王座交代、ね」


黒服
「ですがLady」


Lady
「私の負けよ。それは変わらないわ」





『 あなたはこの地球(ほし)が選んだ 大切な子供だから……。 』





 ―― Beautiful. ――まるで、泡沫の夢でも見てるようだ……。 




Lady
「……そう。……魅せられた時点で私の負けなのよ」



――




『 Hope your brightness 大丈夫 全ては光へ続いている 』



『 Keep your dreams どんな想いも信じていれば いつかは届く 』



『 見守っててね 素敵な私が飛び立つまで 』





――っ。…っぐす。 ――ぇぐッ。 ――ひっぐ。





『 この地球に標はないけど 素晴らしい世界がある……。 』





           ……パチ。……パチ。

  パチパチパチパチパチ!!    パチパチパチパチパチ!!
         
       パチパチパチ!! パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!

  パチパチパチパチパチパチ!!! パチパチパチ!!!

      パチパチパチパチパチパチ!! パチパチパチチパチパチ!!

             パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!







黒服
「スタンディング・オベーション……」


Lady
「……」パチパチパチ


黒服
「Lady、あなたまで」


Lady
「彼女のパフォーマンスはココにいるみんなが認めているわ。なら、私もそれに従うまでよ」


黒服
「……」


Lady
「素直に歓迎したら? あなたも魅せられたんじゃないの?」


黒服
「まったく……。あなたには敵いませんね」



――パチパチパチパチパチ!!






Lady
「さぁ、新しいチャンピオンの誕生よ!」






――





              ……パチ。……パチ。





「――ふふっ」






  パチパチパチパチパチ!!    パチパチパチパチパチ!!
         
        パチパチパチ!! パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!

  パチパチパチパチパチパチ!!! パチパチパチ!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

      パチパチパチパチパチパチ!! パチパチパチチパチパチ!!

             パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!







「これだからアイドルって止められないのよね」






――「……おめでとう。良いステージだったよ」




「あら、アンタからそんな感想が聞けるとは思わなかったわ。どういう心境の変化?」



「別に。ただの気まぐれだよ」



「ふーん。まぁ、良いけど。……あっ、アンタあの約束、忘れてないでしょうね?」



「約束?」



「勝ったら私が最強だって認めることよ」



「あー。そういえば、そんなことも言ったな」



「それで? どうなのよ」



「……良いよ。認めてやる。日高舞こそ最強のアイドルだ」



「なんか含みのある言い方ね」



「まぁ、ギリギリの及第点だからな」



「ちぇ。いつか必ず認めさせてやる」



「はいはい。……そろそろ帰るか」



「そうね。アンコールに答えられないのは残念だけど、コッチも限界だもの」


――

夕方頃にまた来ます

糞スレ乙。オリジナルなら良いだかアイマスとしてはクズ。Pしねよ

君面白いしゃべり方するね
とってもキュートだよ

読むの遅いからここまで3時間もかかっちゃった 今までで一番の良作!続きが楽しみ!!




 コンコン。



黒井
「入れ」



 ガチャッ。




「失礼します」



「ただいまー」


黒井
「やっと来たか。待ちくたびれたぞ」



「お待たせしてすみません。アンコールを断るのに時間が掛かってしまいました」


黒井
「どうせ勝利の余韻にでも浸っていたのだろう」



「まぁね♪」


黒井
「フン。さっさと帰るぞ」



「えぇ。少し待っていて下さい。車を取ってきます」


黒井
「いや、帰りは私が運転しよう」



「あら、黒ちゃんが運転してくれるなんて珍しいわね」


黒井
「ただの気まぐれだ。ついでに貴様らの荷物も運んでおいてやろう」



「おっ、気が利くじゃない。ホントにどうしちゃったの?」


黒井
「そういう日もある。……小僧、お前は私が車を取ってくるまでに冬馬を担いでこい」



「えぇ。わかりました」


――



冬馬
「すぅ……」



「……クゥ。……クゥ」


黒井
「フン。こちらの気も知らず、のん気に寝てるな」



「まぁ、あれだけのパフォーマンスを披露したんです。疲れがピークにきてるんでしょう」


黒井
「……貴様は寝ないのか?」



「コイツらを運び終えた後に、たっぷり寝かせてもらいます」


黒井
「そうか」



「……」




黒井
「――小僧」



「なんですか?」


黒井
「貴様は……、この先が見えているのか?」



「?」


黒井
「貴様は、日高舞をアイドルに戻す手段としてこの地を選んだ。……なら、その目的が達成された今、貴様にはこの先が見えているのか?」



「さぁ、どうでしょうね」


黒井
「……このままアメリカで暮らしていくなどと言わないだろうな」



「まさか。あくまで日本で活動させるのが目的ですよ? 心配しなくてもちゃんと帰ります」


黒井
「……」



「それに、あなたへのお礼もまだしてませんからね」


黒井
「フン。小物め、まだ根に持っていたのか」



「やられたら、やり返す。それが俺の流儀ですよ」


黒井
「ほう。私にどんな喜劇を届けてくれるというのだ?」



「今それを言ったら面白みが無くなるじゃないですか。せっかくのサプライズなんだから、大人しく待っていて下さい」


黒井
「クックック。確かにな。それでは貴様の言う通り、その時まで待つとするか。……貴様も私に掴まれるようなマネはするなよ?」



「善処しましょう」


黒井
「そうか。なら、期待するとしよう」



「ふふっ。きっと気に入りますよ」


――



冬馬
「ふぁ~ぁ。おはよう」


黒井
「フン。相変わらず目覚めが悪いな。顔を洗ったら、さっさと支度をしろ」


冬馬
「ん? どっか出かけるのか?」


黒井
「日本へ帰る」


冬馬
「はぁ!? もう!?」


黒井
「既にこの地に用はない。少し長めの旅行だったが、そろそろ帰国するべきだろう」


冬馬
「マジかよ。せっかくトップアイドルの仲間入りしたのに……」


黒井
「心残りがあるのなら、お前だけ残るか?」


冬馬
「そういう訳じゃねぇけど……」


黒井
「なら、早くしろ。全員、お前待ちだ」


冬馬
「俺待ち? 他のヤツらはもう終わってるのか!?」


翔太
「うん。冬馬くんが寝てる間にね」


冬馬
「なんで起こしてくれないんだよ!」


黒井
「定時になっても起きないお前が悪い」



「早くしてよ。飛行機の時間に間に合わなかったらアンタの所為だからね」


冬馬
「ぐぅっ! ちょ、ちょっと待っててくれ! すぐに支度するから!」ダッ


北斗
「一人じゃ大変だろ? 俺も手伝ってあげるよ」



「ハァ……。俺も手伝ってやるか」


――




――日本行きをご利用のお客様は169便までお急ぎください。




「遅いな……」



「私たちのすぐ後ろだったのに、なんでこんなに遅いのかしら?」



「なんかデジャヴがしてきた……」



――やばい。時間ギリギリだよ! 急げバカ者! 急いでるっての! 




「やっと来たか」





翔太
「ご、ごめんなさい!」


冬馬
「……」


北斗
「お待たせしました!」



「また時間ギリギリじゃない。今度はどうしたの?」


北斗
「やっぱり冬馬だけ荷物検査に引っかかりまして……」



「ハァ……」


冬馬
「アイツらは何も分かってない」


翔太
「なんで引っかかるのが分かってるのに持ってくるんだよ! このバカ!」


北斗
「というか、俺たちが手伝ってたのにどうやって持ってきたんだ?」


冬馬
「俺はとんでもないものを盗んでいきました。……自分の嫁です」


黒井
「やかましいわ!」


――




――ドサッ。




「ふぅ。ギリギリセーフ」


翔太
「疲れたー」


冬馬
「おっ。ここのテレビ、アニメも見れるのか」


北斗
「ちゃんと反省しろよ冬馬。……あっ、お姉さん。グレープジュースとあなたのアドレス一つ」


黒井
「お前もナンパなんかしてないで大人しくしていろ。後で持たないぞ」


翔太
「そうなの、プロデューサーさん?」ヒョコッ



「まぁ、日本まで13時間もあるからな」


翔太
「へぇ。ってことは、向こうに着く頃には夜なんだ」



「時差ボケ対策にちゃんと寝ておけよ?」


翔太
「んー。上手く寝られるかなぁ……」



「じゃあ、その時は子守唄でも歌ってあげようか?」


翔太
「良いの?」



「えぇ。もちろん」


――




「Trust yourself どんな時も――」


翔太
「クゥ……。ゥ……」



「あらあら」



――スゥ……。スゥ……。




「周りもみんな寝ちゃってるわね」


翔太
「クゥ……。クゥ……」



「ふふっ」ナデナデ


翔太
「ン……」



「そういえば愛が小さかった頃、こうやって寝かせてたっけ」



……。




「――愛、今なにしてるのかしら」



……。




「早く会いたいなぁ……」


――




――ぃ……さん。……きろ。




「ン……」



――おき……。もう……だ。




「うるさいわねぇ……。なによ……」



『 起きろ! もう日本だぞ! 』




「――え?」



「ハァ。やっと起きたか」



「あれ、私……。あぁ、そっか。いつの間にか寝ちゃったのね」



「時間ギリギリだったから起こさせてもらったけど、ちょっと乱暴だったかもな。ごめん」



「え? あー、うん。気にしなくて良いわ」



「そっか。……いきなりで悪いけど、目が覚めたなら早く降りてくれないか? さっきも言った通り、時間ギリギリなんだ」



「そうなんだ。えーと、私の荷物は……」



「俺が持っていくよ」



「そう。……ありがと」


――



北斗
「あっ、やっと来た。遅いですよ!」



「ごめんごめん。ちょっと寝ぼけてたわ。アンタもありがとね。荷物、預かるわ」



「ふー。危うく肩が外れるかと思ったよ」



「大げさね。そんな重くないでしょ」


北斗
「……何はともあれ」


黒井
「これで全員集合だな」


翔太
「あ、もう日本……?」


冬馬
「なぁ……。早く帰ろうぜ?」




黒井
「お前ら、こういう時くらいシャキっとできないのか?」


翔太
「そんなこと言われても……」


北斗
「俺たち、いつもこんな感じですよ?」


黒井
「まぁ良い。既に迎えの車を用意してある。すぐに移動するぞ」


冬馬
「くゎ~ぁ。……眠ぃ」


黒井
「ハァ。時差ボケで遅刻されても困るから明日はオフにしておこう。ありがたく思え」


北斗
「着いて早々すみません黒井社長」


黒井
「フン。私からは以上だ。……それでは行くか」



「えぇ。私たちの帰る場所へ」


北斗
「それと……」



「俺たちが歩む」












『――次のステージへ』












――

これにて真美「新しく来た兄ちゃんが961んだけど」を終了されて頂きます。


次スレは、愛『あなたへのプレゼント』真美 というようなタイトルにするつもりですが、それは書き溜めができた頃に立てたいと思います。

>>844
続きってことでいいんですよね?

はい。次で完結にするつもりです

誘導もして貰えるのかな?

アメリカ編でずっとやってほしかった
ここの765はあんま好きじゃないから
ともあれ乙

>>847さん。誘導ってどうやるんですか?

>>849
HTML化の依頼出す前に新スレ立てたらスレのURLをこのスレに貼り付ける

>>849
HTML化の依頼出す前に新スレ立てたらスレのURLをこのスレに貼り付ける

なるほど。でも、書き溜めがないので立てられないです……

続きはいつごろになるのかな?

アメリカ編完結乙です

別に今すぐスレ立てなくても次回投下の時にこのスレで告知してくれればおk

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom