P「カウントダウン」(122)

立ったら書きます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1352943640

P「ゲホッ、ゴホッ」

小鳥「プロデューサーさん、風邪ですか?」

自分のデスクでパソコンを叩いているときに音無さんにそう訪ねられ俺は最近、体調が優れないことを話した。

そうすると、今日の仕事は私がやっておくので病院に行ってきてくださいと言われてしまった。

小鳥「ダメです!プロデューサーさんは働き過ぎなんです。アイドルたちも今日は現場から直帰ですし、プロデューサーさんに倒れられると困るのはアイドルたちなんですから。」

P「でも…」

正直、病院に行かしてもらえるのは有難い、でも音無さんも事務所でかなりの書類と格闘をしている訳でそんな音無さんに仕事を押し付けてまで自分の体調を優先したくはなかった。

そんなことを考えていると、社長室から社長が現れ俺の思考を読んだかのように言った

社長「仕事の方は私も手伝うから大丈夫だよキミィ、病院に行って全身をくまなく検査してきなさい。今のうちに他の悪いとこも見つけて治療してしまおう。」

P「そんな、社長まで…」

社長「これは社長命令だよ」

そこまで言われてしまうと仕方がない俺は諦め、病院へ行くことにした

P「社長、音無さんありがとうございます、この埋め合わせは今度しますから。」

それだけ言うと帰り仕度をし、事務所を出た。外は明日から11月ということもあり、少し寒い、暖房の効いた事務所から出てくるとその寒さが心地よかった。


タクシーを捕まえると運転手に行き先を告げた。

P「双海病院までお願いします」

大きな病院というだけあり診察まちの患者の数はそれなりに多かった、これは待たされるななどと考えながら受付を済ますと10分ぐらいでと診察室へと通された

双海院長「Pさん、お久しぶりですね」

P「お久しぶりです。待ち時間が少なくてビックリしてます、結構混んでいたようですが」

双海院長「先ほど社長からお電話がありまして、あなたの身体を検査してほしいと。


既に準備は出来ていますのでお着替えになったら早速始めましょう」

若い看護師につれられ、更衣室まで行き手早く着替え更衣室から出た。

看護師「準備はよろしいですか?ては、最初はこの検査からです。」

検査は30分ほどで終了した。結果が出るまでお待ちくださいと言われた。
手元に暇を潰せるものがないので考え事をしながら待つことになった。自然に頭に浮かぶのは2ヶ月後に控えているカウントダウンライブのことだ。
曲構成から新しい衣装のこと、仕事のことを考えていると楽しかった。つくづく仕事人間なんだなぁとささやかな休暇を与えてくれた社長と音無さんに心の中で謝りながら考え事を続けているとそこへ

双海院長「検査結果が出ました」

双海院長が現れた

その後に続く言葉を待ったが院長はなかなか口を開かない、さらに目は伏し目がちになっている。そんな表情をされるとこちらも不安になってくる。どうしたものかと思っていると

双海院長「Pさん、率直に申し上げます」





双海院長「あなたの胃に悪性の腫瘍、ガンが発見されました。」





病について知識のない人間からすると考えつく中での最悪の結果

双海院長「さらに肺と肝臓にも転位しています、もう手遅れなところまで進行しています」

手遅れ、そう言われても実感が湧かない。

双海院長「余命はあと2ヶ月ほどかと……」

そんなこと言われても納得なんてできない!

P「先生…なんとか…なんとかできませんか?」

俺はまだ死ぬわけにはいかない

P「あいつらをトップアイドルにするまでは死ねないんです!」

双海院長「申し訳ございません…もう私達に出来ることはないんです。もう少し早く発見できていれば…」

もう出来ることはない、そう言われてもまだ実感が湧かない。このまま俺が死ぬのは構わない。いや、構わなくはないが自分の体調を管理出来ていなかった自分の責任だ。ただ、このまま俺が居なくなると765プロはどうなる?最近、テレビで観ないことがないと言われるまでになったアイドル達を事務、雑務を含め俺、律子、音無さん、社長の四人で回している四人でもいっぱいいっぱいなのにそんななか俺が抜けてしまえば……

でも俺はもう消えてしまう、この国でも最高レベルの技術を持つ医療機関からそう告げられてしまった。もうあいつらのためにしてやれることはないのか…?

いや……違う

してやれることではなくしなければならないことがある

双海院長「このまま入院して延命治療を受けていただくことも出来ます」

P「いえ、入院する気はありません」

まだ実感したわけではない

でも…

P「この……」

言葉に詰まる

P「死ぬまでの…二ヶ月の間にしなきゃならないことがあるんです」

言葉にすることで無理矢理に実感しようとした

P「だから入院している時間はないんです」

P「あとこの事はアイドル達には秘密にしておいてください、社長には明日僕からお話を…しますので」

双海院長「本当によろしいんですね?」

P「はい」

もう決めたことだった

双海院長「解りました…あとPさん」

双海院長「休みの日はできるだけ通院してください、投薬で少しでも延命が出来ますので、それと……」

突然院長が言葉を詰まらせる

双海院長「最期まで亜美と真美をお任せして申し訳ありません」

今まで感情を感じさせなかった医者としての顔がその時だけは父親の顔だった

P「いえ、僕の方がありがたいと思ってます、あんな素敵な子供達をプロデュースさせていただけるんですから」

それでもまだ

双海院長「お願いします……」

院長は顔をうつむけ申し訳なさそうに言った

P「任せてください、俺はあいつらの──」


P「プロデューサーですから」

見てくださっている方がいるかわかりませんがキリがいいので一旦終了です。

またかきためてきますので

家に帰るまでのことはあまり覚えていない。普段は家に帰ると一息つけるのだがとてもそんな気分にはならなかった

病院に居たときから切りっぱなしにしてあった携帯の電源を入れる、すると音無さんからの着信が三件来ていた。

プルル…

P「もしもし」

小鳥『あっ、プロデューサーさん!電話したのにどうして出てくれないんですか?』

P「すいません、検査が終わってから電源を入れるのを忘れていて」

小鳥『で、検査の方はどうだったんですか?』

言葉に、詰まる

小鳥『プロデューサーさん?』

P「ああ、検査ですか?ただの風邪でしたよ、ただ、ちょっと拗らせちゃったみたいで少し通院することになりそうです」

小鳥『よかった、重い病気とかだったらどうしようかと思いましたよー』

あまりにも的を射た言葉に思わずドキッとしてしまう

P「し…心配しすぎですよ、通院といっても暇なときに行って少し薬とかをいただくだけですから」

小鳥『なんなら明日も休んでいただいてもいいですから』

P「いえ、大丈夫ですよ、この程度で休んでられませんから」

この程度、という言葉に自分で笑ってしまう

小鳥『この程度だからです!プロデューサーさんの体調が悪化したらどうするんですか!』

音無さんは俺のことを心から心配してくれている。そんな彼女に嘘をつくのは心苦しい、でも

P「本当に大丈夫ですから、このぐらいでへばってたらあいつらのプロデュースなんて出来ませんよ」

伝えるわけにはいかない

小鳥『……本当に無理はしないでくださいね?』

P「明日、その事について社長と少し話をする予定なので」

小鳥『わかりました、ではまた明日。おやすみなさいプロデューサーさん』

P「おやすみなさい音無さん、わざわざ電話ありがとうございました」

いつも通りの会話が終わった、電話越しの何気ない会話でもボロが出そうになる。こんなことではいつかバレてしまう、バレなくともアイドル達に動揺を与えかねない

P「このままじゃダメだ…」

そう思い、自分のデスクへと向かう。明日からのやらなければならないことの計画を立てるために。

小鳥「あ、おはようございます、プロデューサーさん」

P「おはようございます、音無さん」

小鳥「今日は随分早いんですね、大丈夫なんですか?」

確かに今日はいつもより30分ほど早い、でも彼女はもっと早く来ている訳で

P「音無さんの方が早く来ているじゃないですか」

小鳥「私はもう習慣になってますから」

その彼女の習慣のおかげで765プロは一日を始める事が出来る

P「いつもありがとうございます、音無さん」

小鳥「きゅ…急にどうしたんですか、プロデューサーさん?」

このタイミングで言っておかないともう言える機会が無いと思った

P「いえ、いつも思っていることを伝えただけですよ、それと社長はいますか?」

小鳥「はい社長室にいますよ。あ、もしかしてそれでいつもより早く?」

P「はいこれからのことを少し話しておこうかと思って」

そう言い残して俺は社長室へと向かった

すいません急に呼び出しがあったので一旦はこれで

四時間後位にまた少し投下します

ドアの前に立ち、社長に伝えることを頭の中で繰り返す。

意を決してドアを叩いた。

P「失礼します」

社長「今日はいつもより早いんだね」

P「社長に少しお話がございまして」

社長「なんだね改まって」

社長が俺の真剣な雰囲気に書類に走らせていた手を止める

P「昨日の検索の結果についてです」

社長「音無君からは風邪と聞いているが」

P「音無さんには申し訳無いです、彼女には嘘を伝えました」

社長「?、どうしてだね」

P「本当は…」

大きく息を吸い気持ちを落ち着ける

P「…本当は末期の胃ガンだと、そう診断を受けました」

社長「な……」

淡々と続ける

P「さらに肝臓と肺にも転移していると、余命は2ヶ月だそうです」

社長「なんとか…ならないのかね」

P「もう何も出来ることはないと病院側からそう伝えられました、後は気休め鄭どの投薬による延命程度だそうです」

しばしの沈黙

社長「なんと言うことだ……!」

社長は机に手をつき顔伏せ絞り出すようにそう言った

社長「キミのような将来ある者がどうして……!」

俺は社長の涙を何度も見てきた。アイドルが初めてCDを出したとき、テレビに出たとき、初めての単独liveのとき……数えればキリがない、それらは全て嬉しさや感動からくるものだった。でも…

今回は違う、今回の涙は悔しさややりきれなさからくるものだった

社長が涙を流してから数秒後

社長「済まないね、見苦しいところを見せてしまった」

伏せていた顔を挙げ眼鏡を外し、目元をハンカチで拭いながら社長は言った

社長「これからのことは君の好きにしてくれて構わない」

社長「こんなことになってからで済まないがこれ以上年寄りの夢に付き合わせるわけにはいかないからね」

P「社長」

俺は

P「俺は社長の夢に付き合っているつもりはありませんよ」

こんな俺を拾ってくれた社長に

P「一緒に夢を追いかけているつもりです」

心から感謝している

P「ですから、最期までここに残りますよ」

この事を伝えなければ社長は俺にずっと後ろめたさを感じるはずだ

社長「本当に…いいのかね…?」

P「はい、俺はこの765プロに…感謝してもしきれませんから」

社長「ありがとう……」

そういうと再び顔を伏せ涙をこぼした

P「俺には死ぬまでの間にやらなけれならない事があります」

唐突に話を切り出す

P「社長にも協力していただきたいんです」

社長「…ワタシに出来ることなら何でもしよう」

俺の願いを聞き入れてくれた社長の顔はいつも通りの社長の顔だった

P「俺がこのまま2ヶ月後にいなくなれば765プロはいずれやっていけなくなると思います」

ここからが話の本題だ

P「ですから大阪と横浜から大阪Pと横浜Pを呼ぼうと思っています」

社長「二人を、かね?」

765プロはアイドル達の活躍によって大きな資本的成長をした、そのため事務所の移転を計画したが、アイドル達のこの事務所から離れたくないという要望によりこの計画は打ち切られた。

そこで社長はその金を使い大阪と横浜に次世代の育成のため養成所を設立した、その養成所をを任されているのが大阪Pと横浜Pだ

P「あの二人はあまりプロデュースの経験を積んでいませんが見所はあります」

P「あの二人を2ヶ月後のカウントダウンライブに関わらせて経験を積ませようと思ってます」

P「あいつらなら俺が居なくなった後でも律子と三人で765プロを支えていけると思いますから」

P「そして年明けには765プロを退社しようと思ってます」

俺の話を黙って聞いていた社長が大きく目を見開く

社長「……どうしてだね」

P「アイドル達が俺をよく慕ってくれているのはわかっています、ですからあいつらの前で死んでしまうと言うのはあいつらに動揺を与えると思うんです」

社長「あんまりではないか…彼女らのことを一番に考えているキミが最期に一緒にいることができないとは……」

P「ですから家業を継ぐことになったという理由で退社をすればあいつらももう大人ですから納得は出来なくとも理解はしてくれるはずです」

もちろん大嘘だった両親は既に他界しているし母は専業主婦で父は会社勤めをしていた

ただ怖かったのだ、アイドル達の前で倒れてしまうのが、俺は最期まであいつらに頼られる強いプロデューサーで居たかった

そこまで話すと社長が

社長「キミが決めたことならもう何も言うまい」

複雑な表情を浮かべそう言った

P「ありがとうございます」

社長「礼を言うのはまだ早いよキミィ、全てが終わってからにしようじゃないか」

俺は社長に頭を下げると社長室を後にした

P「ゴホッ」

手で口を抑える、口元から手を離すと




手が血で赤く染まっていた



これで今回の投下分は終わりですまた少しずつ書き溜めてきます

これから少し忙しくなるので期間が空くかも知れないです

読んでくださる皆さんありがとうございます
投下期間が空いてしまって申し訳ないです、また少し投下させて頂きます

3日連続徹夜はキツイ……

余命宣告から一週間がたった

最近は食欲があまり湧かなくなってきた、通院したときに吐血のことを伝えると思ったよりも進行が速いと言われた

でも、

焦ってはダメだ、プロデュースにおいて焦ることは失敗を意味する

そして、あいつらがやって来た


「「おはようございます(!!)」」

春香「あ!大阪Pさんに横浜Pさん!どうなさったんですか?」

横浜P(以下、横P)「一週間前に異動命令が出てね、しばらくお世話になります春香ちゃん」

大阪P(以下、大)P「お世話されてどーすんねん、俺ら一応プロデューサーとして来てんねんから」

横P「細かいな、お前は」

大P「お前がテキトーすぎんねん」

相変わらず仲は良いなこの二人

大P「とはいえ何かわからんことも多いやろうから、よろしく頼むな天海さん」

春香「春香で良いですよ♪」

大P「あんまり下の名前で呼ぶんは…」

春香「でも候補生の子達は皆名前で呼んでらっしゃるじゃないですかー」

まだ大Pは少し堅いか、まぁでも一緒に仕事していけばいつか慣れるだろう

P「二人ともおはよう」

横P「あ、おはようございますPさん!」

大P「おはようございます」

P「疲れてるところ悪いが社長室に来てくれるか、ちょっと話があるんだ」


亜美「おやおや?真美隊員、これは怪しい臭いがしますな?」

あ、厄介なのが

真美「これは捜査の必要がありますな亜美隊員♪」

悪い笑みを浮かべながらにじり寄ってくる二人を見て律子に目線でSOSを出す

律子「ほら、あんた達余計なことしてないで仕事よ、亜美は竜宮で真美はやよいと一緒よ」

軽い溜め息をつきながらも助け船を出してくれた

亜美「真美隊員、ここは二手に別れよう」

真美「ああ…生きて必ずここで再開するんだ!」

律子「さっさとしないとおいてくわよ?」

亜美「あぁん!待ってよりっちゃん!」

伊織「さっさとしなさいよね!このスーパーアイドル伊織ちゃんを待たせるなんて……」

真美「とか言いつつしっかり待っててくれるとはいおりんはツンデレですな?♪」

伊織「だっ、誰がツンデレなのよ!!」

あずさ「それではお二人ともごゆっくり?」


いつもの事務所でいつも通りの光景

その何てことのなかったいつも通りの光景が今はとてつもなく貴く感じられる

横P「賑やかでいいですね」

P「賑やかすぎるぐらいだよ」

大P「ウチの候補生達も元気はあるんですけどね……」

横P「うちの事務所もみんなも元気有り余ってますよ!」

大P「皆、いつデビューさせてくれるんですか!?ってしつこいねんなぁ……」

横P「俺らが頑張らないとな!」

少し前までなにも知らなかった二人が、こうして楽しそうに候補生のことを話しているのを見ると少しは成長したんだな、と嬉しくなる

P「さて、社長を待たせてしまっているからそろそろ行こうか」


P「失礼します」

二人が俺に続く

大・横「「失礼します」」

少し緊張しているようだ

社長「二人ともよく来てくれたね、さあかけてくれたまえ」

そういうと社長も椅子から立ち社長室真ん中にあるソファへ腰をおろした

俺も社長の横へ座り二人も俺と社長に向かい合うようにして座った

咳払いの後、社長が口を開く

社長「今回、二人に来てもらったのはだね、2ヶ月後に控えた765プロ年越しカウントダウンライブを任せようと思ったからなんだ」


間髪入れず横Pが身を乗りだし

横P「ホントてすか!?」

凄く目が輝いてる

大P「Pさんは良いんですか?前から凄く楽しみにしてたじゃないですか」

こう言いつつもかなり嬉しそうだ

P「ああ、なにも全部お前らに任せようって訳じゃないからな」

社長「君たちだけではわからないこともたくさんあるだろうから彼や律子君から色々教えてもらいたまえ」


社長「君たちなら彼のように765プロを支えていけると信じているよ」

横P「そんな…Pさんみたいになんて……」

いや、本当に支えていってもらわなければ困る、ただ…

P「社長、俺が765プロを支えている訳じゃありませんよ、アイドル達を含めて皆で支えているつもりです」

だが俺はその支えの輪から去らなければいけない

社長「そうか…そうだな」

社長は一瞬、寂しい表情を見せた

社長「では二人とも期待しているよ」

二人とも少し怪訝そうな顔をした─何故かはわからないが─だがすぐに

横P「わかりました!ご期待に添えるように頑張ります!」

大P「それでは2ヶ月間、精一杯頑張らせていただきます」

いつもの顔に戻りそう言い残し社長室を後にした

社長と同時に深い溜め息をつく、これからが本番だ、俺の人生を賭けた人生最後のプロデュースが始まる

これからの事を考えると少し表情が緩んでしまう

社長「少し嬉しそうだね、どうしてだい?」

俺の顔を見た社長が淡々とした口調で訊く

俺は緩んだ表情のまま答えた

P「アイドルをプロデュースしながらそのプロデューサーまでプロデュースするなんて─」


P「プロデューサー冥利に尽きるじゃないですか」

今回の投下分はこれで終了です
ホントに少なくてすいません

これからテスト期間に入るのでまた少し遅れます
ご容赦下さい

あれ??が?に変わってる……
律子「さっさとしないとおいてくわよ?」

あずさ「それではお二人ともごゆっくり?」

です、訂正お願いします

訂正できてねぇ……
この律子とあずささんの台詞の最後は「なみせん」です
訂正お願いします

小鳥「プロデューサーさん、何か飲みますか?」

P「じゃあコーヒーをブラックでお願いします」

小鳥「かしこまりました」

そう言い、ペコリと30゜のキレイなお辞儀をしてキッチンへ入って行った

朝からなにやら上機嫌な音無さんだが何かあったのだろうか

音無さんがキッチンから出てきたので聞いてみることにした

P「音無さん、最近何かあったんですか?」

小鳥「?、どうしてですか?」

P「いや、なにやらご機嫌な様子だったので」

小鳥「そうですか?あ、もしかしたらプロデューサーさんと一緒にお仕事できるのが嬉しいからかもしれませんね♪」

音無さんはそう言うとついっと向こうを向きキッチンへ戻って行った

ガラにもなくドキッとさせられてしまった

どうすればいいかわからず一人で悶えていると、ゆっくりと事務所のドアが開く

開いたドアの前に立っていたのは

P「お、真美おはよう」

真美だった

真美「あ、兄ちゃんおはよー…」

明らかに元気がない、それに来る時間があまりにも早すぎる

P「どうかしたか?」

真美「いや……なんでもないよ」

いや、なんでもないことはないだろう

真美は…まぁ亜美もだが何か嫌なことや落ち込むようなことがあっても次の日には大抵けろっとしている

もともと楽天的な性格なうえに普段元気な自分が落ち込んだりしているとみんなに迷惑がかかると変な気づかいをしている──それを迷惑だと思うならもう少しイタズラの方を控えてほしいが──

それがこんなあからさまに落ち込んでいる……考えられるとすれば

P「真美」

出来る限りの優しい声で

真美「な、何?」

P「昨日亜美と何かあったか?」

真美「……さすがだね兄ちゃん」

真美の話によると昨日は二人とも仕事から直帰で先に真美が帰りその一時間ほど後に亜美が帰宅したそうだ

その際に亜美から少しからかわれてカチンときてしまい口論に発展したらしい

P「なるほどな、でも普段はそんなことで怒ったりしないだろ?」

真美「昨日はちょっと仕事で失敗しちゃって…」

P「番組の進行ミスのことか?」

真美「え…兄ちゃんどうして…」

P「仕事の終わりに大Pと横Pから報告を受けるんだよ、あいつらも成長したといってもまだまだだし、それに」

P「お前らの事が心配だからな」

真美「兄ちゃん…」

P「なるほどな、そのミスについてからかわれた訳か」

真美が頷く

P「確かに今回は亜美にデリカシーがなかったかもしれないな」

真美「で…でも…」

真美「真美もひどいこといっぱい亜美に言っちゃったし……それで…亜美にぃ…きらわれちゃったらっどうしようと…思ってぇ…」

顔を伏せてすすり泣いている、真美の泣いているところを見るなんていつ以来だろう

P「そうか…悪いことしたと思うならごめんなさいしないとな」

真美「でも…ゆるしてくれるかな…」

P「真美は亜美にそんなこと言われたら亜美のこと嫌いになるか?」

ぶんぶんと首をふった

P「なら大丈夫だよ、亜美もそんな簡単に真美のことを嫌いになんかなったりしないよ」

P「誰もお前達が仲良くないところなんて見たくないんだからな」

そう言いながらくしゃくしゃと頭を撫でてやる

真美「ん……アリガト兄ちゃん、ちょっとゲンキ出たよ…」

P「亜美とちゃんと話できるか?」

真美「うん!」

赤くなった目をごしごしこすりながら元気よくうなずいた

真美の首肯と同時に事務所のボロボロになったスチールのドアを乱暴に開け放つ音が響いた

亜美「真美!」

真美「え…亜美?どうして……」

荒くなった息づかいを整える間もなく声の主は真美に近づくなり頭を下げた

亜美「ごめんなさい!」

静かな事務所に大きな声が響いた

亜美「昨日仕事から帰ったら真美が元気なかったからちょっとからかってやろーと思っただけなんだよ!」

亜美「それがこんなになるとおもわなくて……真美に嫌われたらどうしようと思って……

後半は声が少し上擦っていた

ドアの音に驚いたのだろうキッチンから出てきた音無さんが状況を飲み込めずにしどろもどろしている

真美が来る前からは考えられないほどに張り詰めた空気が場を支配する、すると真美が亜美に歩みよりそんな空気をぶち壊した

真美「はっはっはー」

右手を腰にあて左手は亜美の肩に置いている

真美「亜美よ、何をそんなに謝っているのだね」

真美「まさか真美がそんなことで亜美を嫌いになると思ったのかね」

さっきまで嫌われちゃったらどうしようって泣いてたのは誰だ

亜美「真美ぃ~…」

真美「ま…まぁ真美も昨日はちょっと言い過ぎたっていうか…ごめんなさい!」

亜美「真美が謝ることないよ!昨日のは亜美が悪いんだもん…」

この二人がここまで謙虚になるのは珍しいなぁなどと思いながら二人の頭を撫でてやる

亜美「真美ぃ~…」

真美「ま…まぁ真美も昨日はちょっと言い過ぎたっていうか…ごめんなさい!」

亜美「真美が謝ることないよ!昨日のは亜美が悪いんだもん…」

この二人がここまで謙虚になるのは珍しいなぁなどと思いながら二人の頭を撫でてやる

P「仲直りできてよかったな、もうそんなことでケンカするなよ」

真美「当たり前っしょー!真美達は世界一の双子だかんね!」

P「さっきまで亜美に嫌われたらどうしようって情けないこと言ってたのは誰だ?」

真美の顔がみるみる紅くなる

真美「んなっ…兄ちゃんそれは言わない約束っしょ!」

亜美「あれぇー真美、そんなことあったんだー」

真美「あ、亜美だってさっき泣いてたじゃんかー!」

亜美「あ、あれは…だって…」

言ったそばからこれかよ…まぁ種を蒔いたのは俺なんだけど

P「おい、お前ら…」

目の前で始まった小さな争いを治めようとすると、いつの間にか横にきていた音無さんがにこやかに話した

真美「こうなったら亜美!」

亜美「何?真美」

真美「兄ちゃんにイタズラして先に参ったって言わせた方が勝ちってことにしない?」

待て、なぜそうなる

亜美「それ、チョー良いアイデアじゃーん!」

亜美も同意するな!

真美「そうとなったら」

亜美・真美「「んっふっふ?」」

赤みが残る目でこっちを見ながら両手をわきわきさせてすこしづつにじりよってくる

勘弁してくれよ…音無さんもにこにこしてないで助けてくださいよ!



アッーーーー!

これからはこんな感じでPとアイドル達のやり取りを書いて行くつもりなんですがこの工程を省いてサクッとラストを書いてしまった方がいいでしょうか?
ただこの工程を省くと内容が薄くなる気がするので

すいません>>82>>83の間に抜けている部分がありましたので補完お願いします

小鳥「良いじゃないですか、ケンカするほど仲が良いって言いますし、それに」

小鳥「亜美ちゃんと真美ちゃんがお互いを嫌いになることなんてありませんよ」

P「ま、そうですね」

二人の仲の良さを再確認した俺と音無さんの前ではまだやいのやいのとやりあっている、すると真美が突然会話の流れを止めた

週をまたいでしまいましたが今書き溜めできている分だけ投下させていただきます
中途半端で数も非常に少なく申し訳ないです

P「熱?」

横P「はい…今朝長介君から連絡があって」

例によって俺が事務仕事に精を出していると顔面蒼白になった横Pが事務所に駆け込んで来たのだった

横P「やよいちゃんは行くって言ってたみたいなんですけど、とても無理だから今日は休ませるって…」

P「そうか…で、連絡はしたのか?」

横P「え…」

P「仕事先にだよ」

横P「わ、忘れてました!えっと…今日のスケジュールは…」

そう言いながら手帳をめくり始めるがその手帳を取り落としてしまった

…焦りすぎだろう

でも確かにこういう緊急時─俺と律子にとっては大した緊急とは呼べないが─の対処も教えていなかったし焦るのも無理は無いかもしれない

P「今日のやよいは午後からラジオとバラエティが一本ずつだよ」

横P「そ、そうでした」

P「先に仕事先に連絡して後で直接謝りに行こう……音無さん後お願いできますか?」

小鳥「任せてください!」

ピッと親指を立てて快く承諾してくれた

P「確かどっちもゲストで出演だったな」

横P「はい、バラエティの方は料理番組でラジオの方は芸人さんのやっているラジオです」

今度は手帳を見ずに答えている、少しは落ち着いたか

P「そうか…まずは代役だな」

確かこの時間は伊織が空いていたはずだ

P「律子ー、今日やよいが熱で収録に行けないから代役で伊織出せないか?」

律子「えぇ!?やよい大丈夫なんですか?」

P「ちょっとやばいみたいだな」

律子「そうですか…それで収録のほうはいつからですか?」

P「16時半から30分だな」

律子「それなら…なんとか大丈夫そうですね」

横P「お、お願いします!」

律子「わかりました、16時半からラジオですね……っと」

確認するように呟きながらメモを取り手帳に挟む

律子「伊織ー」

伊織「何?どうしたのよ律子」

律子「今日ちょっとやよいが熱出しちゃってね、代役お願い出来るかしら?」

伊織「ちょっと!それ本当?やよいは大丈夫なの?」

P「ああ、大事を取るだけだそうだ」

伊織「そう…ならよかったわ、それと代役だっけ?」

P「ああ、ラジオにゲストで呼ばれてるんだが…お願い出来るか?」

伊織「任せなさい!やよいのためならどんなことだってしてやるわ!」

P「ありがとう、助かるよ」

横P「あの、Pさん……」

また不安そうな顔を……

P「どうした?」

横P「料理番組の方は……」

あぁ、なるほど

P「空いてるやつがいなかったんだ仕方がない」

ガックリと肩を落とす、こんなことでへこんでもらっちゃ困るんだが

P「代役も決まったことだし先方へ連絡するか」

受話器を取り頭の中の電話帳を捲りながらボタンを押す

トゥルルル…とコールが始まる

横Pにもこういう時の対応を覚えてもらわなければならない

P「おーい…」

呼び掛けるが返事がない

見ると伊織と何か話しているようだ、内容まではわからないが…

すると今度は受話器の向こうからの返事があった

P「あ、おはようございます765プロのPです…いつもお世話になってます、今回はうちの高槻がですね……」

アイドルたちを仕事先に送り届け車内には俺と
横Pの二人になった

P「まだへこんでるのか」

運転席で死んだ魚ような顔をしている横Pに問いかける

横P「すいません…」

P「起こってしまったことは取り返しはつかないよ、それをどうカバーするかが大事なんだよ」

横P「いえ、違うんです…」

横P「Pさんがおっしゃっていることは前にも教えていただきました…」

P「なら何をそんなに……」

横P「さっき伊織ちゃんに言われちゃって……」

横P「担当アイドルの体調管理もプロデューサーの仕事の内だってそんなことも出来ないようじゃ私たちのプロデュースは任せられないって」

なるほど…それはなかなかクるな…

横P「それで俺、なんか自信なくしちゃって…本当にPさんみたいになれるのかって……」

P「なるほど、それは確かにへこむな…でもな」

P「そんなことでへこんでたらこの先やっていけないよ」

P「お前はまだまだ素人に毛が生えた程度のプロデューサーだ、失敗もするしわからないことも多いだろう」

P「失敗なんか気にしなくていいよ、俺が全部責任とるから、失敗なんかは怖がってたらプロデュースなんて出来ないよ」

P「誰もやったことのないことに挑戦するのがプロデュースなんだから」

今回はここまでです次の投下はできるだけ急ぎます
呼んでくださる方ありがとうございます

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