勇者「出来損ないの魔法使い?」(930)

※勇者「狙撃しろ、魔法使い」のリメイクです
※ゆったり投稿させて貰えるだけで幸せです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1358638673


――とある森の館――




勇者「――それで、この鉄砲は使えそうなのか?」
魔女「正直なところ、難しいわね」


勇者「それはどうして」


魔女「そもそも、使い方が複雑すぎるわ。魔法を使うであろう事はわかるんだけどね」


勇者「あなたほどの魔法の使い手ならば、できるんじゃないのか」


魔女「あはは、むりむり。私そんなに凄くないわよ。こんなに多種類かつ精密性が必要な魔道具なんて初めて」


勇者「……そっか」


魔女「数日間、色んな文献を読んでみたわ。こんなに筒の長い鉄砲なんて、初めて見たし」


勇者「やっぱり普通の長さじゃないよな」


魔女「そうね。確かに鉄砲自体は珍しくない。でもこれはおかしい。
   胴体となる部分が長すぎる。それに、銃身を支えるようなモノまで付いてる。
   でも支えるにしては低すぎるのよね。まるで、銃を床に置けって言ってるみたい」


勇者「そうなのか……。あ、そういえばそれ分解もできるんだ」


魔女「本当? ますます訳がわからないわね……」


勇者「最初は俺にもわからなかった。でも、ずっと見ていたら、なんとなく組み立てることができた」


魔女「これぞ女神の加護ってことかしらね?」


魔女「ふぅ……。まったく、こんな変なものどこにあったのよ」


勇者「故郷の神殿に祭られてた」


魔女「ちょっと!? いいの、そんなもの持ち出して!?」


勇者「いいんじゃないかな。廃墟同然の神殿だったし、故郷の人でも知っている人が少ない」


魔女「ま、まぁ貴方がそう言うのであれば……」


勇者「ところで、この銃を使えそうな人はいないだろうか」


魔女「そうね……。ここから東に行ったところに、魔法学院があるわ。そこにいる誰かなら使えるかもね」


勇者「なるほど。それは良い事を聞いたよ。すまない、こんな道具の解析を頼んで」


魔女「いいよいいよ。私も面白いの見させて貰えたし、感謝したいくらいだわ」


勇者「そう言ってもらえると助かる」


魔女「でも、どうしてその銃の使い手にこだわるの?」


勇者「んーと、そうだな。
   これはあくまで勘なんだけど、これは使いようによっては凄く強いと思う。それも、魔法や弓、剣を凌ぐほどに」


魔女「まぁ、現代の勇者さまが言うならそれでいいけどね」


勇者「て、適当だな」


魔女「魔女なんてこんなもんよ。それに私の場合は、魔道具や薬物が専門だしね!」


勇者「ああ、そうだったな」


魔女「そうだ。これから東へ向かうなら回復薬を少しあげるわ」


勇者「そんなの悪いよ」


魔女「いいのいいの。ほら、それの解析ちゃんと出来なかったらお詫びってことで!」


勇者「……そうか。じゃあ少し貰っていくことにする」


魔女「私特性の魔法薬だからね! きっとよく効くと思うよ!」


勇者「うわっ、少しでいいって!」


魔女「あはは! お姉さんの言うことは聞いておきなって、ほらもってけ泥棒!」


勇者「ちょっと、待てっ……うおっと!?」


――東の魔法学院――


勇者「おお、ここが学院かぁ」

勇者「んで……どこから入ればいいんだ?」


バサバサ


勇者「うおっ、なんかでっかい鳥に乗って誰かきた!」


??「私はこの学院の教師(モブ)をしている。お前はどこの誰だ」


勇者「これはご丁寧にどうも。俺、勇者です」


教師「なんと!? こんな若者が……。それで、証拠になるものは?」


勇者「えっと確か……。はいこれ、王様から頂いた勇者バッチなんですが」


教師「ふむ、これは本物!? あああ、どどど、どうぞこちらへ!!」


勇者「持っててよかった勇者バッチ。……?」


教師「ささ、そちらへお座り下さい。……そ、それで勇者さまは何用でこのような偏狭の地に?」


勇者「どうもありがとうございます。単刀直入に言うと仲間を探しにきたんです」


教師「お仲間をですか! なるほど、たしかに我が院の教員たちは優秀です! もちろん私もですがね、ふふ」


勇者「いやいや、別にドでかい範囲魔法とか、超上級魔法が使えればいいって訳ではなくて」


教師「もちろん人間性にも問題はありません!」


勇者「そういうことでもなくて」


教師「はい?」


勇者「この魔道具を使える人を探しにきたんです」


教師「……何でしょうこれは」


勇者「あっ、やっぱり分かりませんか?」


教師「勉強不足で何分。こんなごちゃごちゃしたものが魔道具ですか」


勇者「まず、第一条件としてこれが何なのか分かる人でないと困るのです」


教師「勇者さまはご存知で?」


勇者「はい。今のこれはある種のパズルのようなものなんです。俺は組み立てるのにおよそ2ヶ月掛かりました。」

勇者「きっと正解を言えばすぐにわかるでしょう。でも、それでは少し頼りないんです」


教師「なるほど、わかりました。では、教員全員で順番に見させて頂いてもよろしいでしょうか」


勇者「もちろんです」


教師「その上で、私どもの誰も分からなかった場合、どうするのですか?」


勇者「学院生にも協力してもらえないかと」


教師「それは無謀です! 未熟者が集まるこのような場所では!」


勇者「それは大丈夫です。俺がしっかりと教育しますし、守りますので」


教師「……しかし」


勇者「無茶なお願いをしているのは分かっています。そこをどうか」


教師「……これは私個人では何とも」


学院長「良いのではなかろうか」


教師「が、学院長いつのまに!?」


勇者「最初からいましたよね。姿は消してましたが」


学院長「ホホホ。流石は勇者殿、見破っておられましたか」


勇者「いいえ、気配だけです。何かいるかな? って程度でしたが」


教師「なんという……」


勇者「野宿が増えるとこんなもんですよ?」


学院長「まぁまぁ。その、それにしてはやたら筒の長いものを、誰が見破れるか見物じゃな」


勇者「学院長にはこれが何なのかわかるのですね。ではこれを使うことはどうですか?」


学院長「左様。おそらくは使えぬこともないが、歳のせいで少々……」


勇者「……そうですね。申し訳ない、今のは忘れてください」


学院長「では、それが何なのか分かる者を探すことにするかのぉ!」


教師「そうですね。教員どもを集めて参ります」


勇者「ありがとうございます」


学院長「ホッホッホ、これも人助けじゃよ」


………2日後………


学院長「して、誰も分からなかったのか」


教師「面目立ちません……」


学院長「はぁ、やれやれじゃ」


教師「では、手はず通りに講義の中でこの魔道具を見せて、分かる者を見つけ出しましょう」


学院長「くれぐれも、勇者殿が我が学院に居ることはもらすでないぞ。学生が騒いだら混乱してしまうでな」






生徒A「なんか今日、特別な講義らしいな!」

生徒B「それ私も聞いた聞いた! 魔道具の勉強なんだってー!」

生徒C「でもま、あんたにゃ関係ない話しだよねー! くずでのろまの出来損ないの魔法使いちゃん?」


魔法使い「……そ、そうですね」


生徒A「つーかさ、なんでお前みたいな出来損ないが学院にいんのさ」


生徒B「だよねー。うちの評判を下げてるって思わないの? 恥ずかしいー!」


生徒C「ねぇ、なんとか言えって根暗女!」


魔法使い「いたっ……。あ、あの……暴力は止めて……」


生徒C「暴力じゃありませーん。スキンシップでしょ?」


生徒A「おい、Cになんて事言うんだよ。謝れくず」


生徒C「えーんえーん」


魔法使い「……ご、ごめんなさい」


生徒C「えー、やだぁ! 賠償金を請求しまぁす」


キーンコーンカーンコーン

ガララ


教師「講義を始めるぞー」


生徒A「おっと!」


教師「ん、魔法使い! 床に座り込んで何をしている!! さっさと席につけ!!」


魔法使い「す、すみませんっ」




クスクス
クスクス


教師「今日は、以前言った通りこの魔道具についてだ」


教師「誰か分かる者はいないか?」


生徒A「ガラクタです!」


教師「こら、しっかり答えんか!!」


生徒B「ねぇ、あんた答えてよ」
生徒C「そうそう。そんで赤っ恥かいてきてよ、ほらほら」

魔法使い「そ、そんな……うぅ……」


教師「ん、誰もいないのか?」


魔法使い「あ、あの」


教師「なんだ」


魔法使い「ひっ……」


教師「さっさと言え!!」


魔法使い「……そ、それ……たぶん、鉄砲……」


教師「鉄砲……だと?」


魔法使い「その、ばらばらになってますが……はい……」


生徒A「はぁ、あいつ馬鹿なんじゃねぇの?」

生徒B「あんたには言われたくないだろうけどね。でも、あんなのが鉄砲のはずないじゃん」

生徒C「だよねー。やっぱ出来損ないは一味違うよ」


教師「ばらばら……パズルということか?」


魔法使い「……」


教師「魔法使い、放課後になったら教員室へ来なさい」


魔法使い「……は、はい」


生徒A「うわー、かわいそー」


生徒C「あんなので呼び出しくらうとか、ねぇ?」


生徒B「さっすが出来損ないの魔法使い! 間違えただけで呼び出しとか!」




クスクス
クスクス


……………


教師「それでは、今日はここまでだ」


生徒B「おーい魔法使いちゃん! ちょぉっとこっちきて?」
魔法使い「ひぅ……」






生徒C「実はさー、私ら今ね、お金に困ってんの」

生徒B「そうそう! だからね、カンパしてくんないかなぁ? ちょうど賠償金も生徒Cに払わないといけないし?」


魔法使い「でも……」


生徒B「何あんた、びしょ濡れになりたいわけ? 私の水魔法、頭から被る?」

生徒C「じゃあ私はそこに雷魔法いっちゃおうかなー?」


魔法使い「や、やめて……」


生徒B「あんたの火炎魔法なんて、蝋燭の火くらいしかないもんねー」

生徒C「本当に、人間っていうか、赤ちゃんでちゅかー? って感じ?」


魔法使い「でも、……母さんからの」


生徒C「えー、そんなのうちらに関係ないじゃん」

生徒B「ぐだぐだ言ってないでよこしな」


魔法使い「……む、むりですっ」


生徒B「あっそう? えい」

生徒C「うわぁ、えげつないね! びしょ濡れじゃん!」


魔法使い「……」


生徒C「じゃ、次はうちの番かなー」

生徒B「うあぁ、気絶だけじゃすまないかもねー」


魔法使い「……」


生徒B「ほら、優しくしている今の間だけだよ?」

生徒C「マジ気絶するよ?」


魔法使い「そ、それでもっ!」


生徒C「へぇ。じゃあ寝てろよ出来損ない」


魔法使い「きゃあっ!」


魔法使い「あっ……――」


………

………

………





魔法使い「――……うぅ。あ、あれ? ここは?」


魔法使い「あっ、お金!……無い、そんな」


魔法使い「そうだ、今の太陽の位置は!? そ、そんな……月が昇ってる、もう放課後」


魔法使い「……でも、このままじゃ行けない。着替えなきゃ……」


魔法使い「……うぅ、ぐす……ひっく……」

――教員室――


教師「今を何時だと思っている!! いつまで待たせれば気が済むんだ!!」


魔法使い「……すみません」


教師「と、とにかく急いで学院長室に行くぞ!?」


魔法使い「え」








教師「お、遅れて申し訳ありませんでしたっ」


??「王手!」


学院長「ま、待った!!」


学院長「お、おお! 勇し……っと、勝負はここまでじゃな少年!」


勇者「はぁ、いい所だったのに……」


魔法使い「(誰だろこの人……)」


学院長「それで、その生徒が唯一あの魔道具を鉄砲と答えたのか?」


教師「はい! 今まで、杖、ろ過装置、錬金術の道具、など様々な答えを学生はしましたが……。
   全てはずれ。あの、そろそろ私にも答えを教えてくれませんか?」

学院長「なんだ、分かってなかったのか。あれは鉄砲じゃ、それも普通のものと比較するとかなり大きい」


教師「あ、あれが鉄砲!? まさか……そんな……」


魔法使い「(……何がどういうこと?)」


勇者「えっと、そちらの女の子は?」


教師「そうでした。こら、自己紹介しなさい」


魔法使い「え?」


教師「自己紹介だ」


魔法使い「は、はい……。私、魔法使いです……」


教師「そんな自己紹介の仕方があるか!!」


勇者「いやいや、突然こんな状況で混乱させているこっちも悪い。ごめんな」


教師「勇者さまがそう仰られるなら……。
    こちらの生徒は、魔法使い。筆記試験、習得魔術数はかなりのものです。しかし……」


勇者「しかし?」


教師「なにせ、魔力があまりに低いのです。彼女は火に属する魔法全般を専門にしていますが、威力はそこらの子供にも劣る」


魔法使い「……」


勇者「あ、別に構わないです」


教師「はい? いま、なんと?」


勇者「広範囲威力とか、そういう魔力が強いのいりません。っていうか、先に言ったような……」


魔法使い「……」


教師「で、ですがっ」


学院長「まぁ落ち着きなさい教師。勇者殿がよいと言っておるではないか」


教師「が、学院長……」


勇者「ねぇ魔法使いさん。君はこれが銃だとどうしてわかったんだい?」


魔法使い「ひっ……」


勇者「どうしたんだい?」


魔法使い「す、すみませんっ。あと、えと、それ……単純にバラバラになってるだけ……かな、と」


勇者「その通りだ。でも、普通はあんな鉄くずの集まりを銃だなんて思わない」


魔法使い「そ、それは……。図書館の一番奥の……古書で、似たようなものが……」


学院長「ほほう。あの失われた技術に関する文献を読んだのかね」


魔法使い「……はい」


勇者「じゃあ、これを組み立てることはできそう?」


魔法使い「……えと」


勇者「一度やってみて欲しいんだ」


魔法使い「わ、わかりました……」


魔法使い(本当にこの人、誰なんだろう)






魔法使い「こ、これで……」

勇者「おお、確かに形になっている!!」


魔法使い「あの、正しいか判りませんが」


勇者「大丈夫だろう! すごいな、俺なんて2ヶ月は掛かったのに……毎日徹夜だったのに……


魔法使い「……では、私はもう帰っても」


勇者「あと少しお願いが!」


学院長「すまぬが、今日はもう遅い……。学生を休ませては貰えぬだろうか?」


勇者「……そうですね。すみません、つい興奮してしまって」


学院長「ワシも若い頃は似たようなことをしたものじゃ。今日はありがとう魔法使い、帰ってゆっくり休むんじゃよ」


魔法使い「は、はい」


教師「仕方ない、送ってやろう。女子寮でいいんだな?」


魔法使い「……ありがとう、ございます」


――学院の近くの湖――


深夜


魔法使い「……はぁ、火炎魔法」


ボッ


魔法使い「ぴょこぴょこ……。うさぎさん……」


魔法使い「がおー……。クマさん……」


魔法使い「……」


魔法使い「うさぎとクマのワルツ……」


魔法使い「―――♪」


ガサガサッ




魔法使い「……物音?」


勇者「すごいな、それ」


魔法使い「ひぅっ!? だ、だれ!?」


勇者「ああ、さっき学院長室で会った者だよ」


魔法使い「あ、あなた……」


勇者「すごいね。俺とそんなに歳も離れてないと思うのに、火の魔法で動物を二体同時に作るなんて。
    しかも、唄いながらダンスまでさせるとは、まいったよ」


魔法使い「……」


勇者「さっきはすまなかった。初対面なのに慣れなれしすぎたかもしれない」


魔法使い「……」


勇者「それで、君は女子寮から抜け出して何をしているんだ?」


魔法使い「その……眠れないから……」


勇者「それで、女子寮を抜け出してこんな所に?」


魔法使い「はい……。その、あ、あなたは……」


勇者「俺は散歩。なんか歌声が聞こえたからこっちに来てみたら、魔法使いさんがいただけ」


魔法使い「と、ところで……あなたは誰?」


勇者「ああ、自己紹介が遅れたね。俺は勇者、魔王討伐の旅に出てる者だよ」


魔法使い「えっ?」


勇者「でも秘密にして欲しい。学院長がなんかそんなこと言ってた気がする」


魔法使い「ゆ、勇者さま……?」


勇者「旅に出て随分経つけど、まだ全然活躍できていないっていうね」


魔法使い「……」


勇者「君は言葉数が少ないんだな」


魔法使い「ご、ごめんなさい……」


勇者「謝ることでもないさ。それで、君が使える魔法の技術はすごいんだな」


魔法使い「……」


勇者「他には何ができるんだ?」


魔法使い「……い、色々」


勇者「じゃあさ、見せてくれないかな? お礼はもちろんするからさ!」


魔法使い「(お礼……お金。……お母さんっ)」


魔法使い「わかった。特別に……」


――♪


――――♪ ――――♪


――――♪





魔法使い「こ、これでいい?」


勇者「……す、すごかった。まさか、サーカスが始まるなんて思わなかった! 感動したよ!!」


魔法使い「……」


勇者「照れてるの?」


魔法使い「……っ」


勇者「君が唄い、魔法の動物たちが踊った。爆破系魔法や、風魔法での演出も素晴らしかった!!
    でも、どうしてこんなに難しい技術を?」


魔法使い「……と、友達がいないので……」


勇者「それで、芸を磨いて友達を増やそうとしたんだ」


魔法使い「ちがっ……。その、ぬいぐるみの、変わり……」


勇者「ぬ、ぬいぐるみ?」


魔法使い「嫌なことあったら……いつも……」


勇者「嫌なこと、あったんだ」


魔法使い「……でも、私が弱いせいだから」


魔法使い「あ、あのっ」


勇者「ん、なんだい?


魔法使い「……その、えと。……お礼を」


勇者「ああ、そうだったな!
    すまないけど、お金はほとんど持っていないんだ」


魔法使い「そ、そんな」


勇者「でも、……俺は君を強くすることができる。それはお礼にならないか?」


魔法使い「強く? こんな私が……」


勇者「約束しよう」


魔法使い「だ、だって私、出来損ないの魔法使いって呼ばれてる……」


勇者「出来損ないの魔法使い?」


魔法使い「……だから、強くなんてなれない……ならない……っ」


勇者「いや、君は強くなれる。俺といっしょに来るならば」


魔法使い「そんな……勇者さまのお供って、すごい人じゃないと……」


勇者「じゃあ凄くなろう! いっしょに成長しよう!」


魔法使い「……」


勇者「ダメかな?」


魔法使い「その……やっぱり他を当たってください……」


勇者「……」


魔法使い「さ、さようならっ」


勇者「あっ……」





勇者「あーあ、逃げられた」

とりあえずここまで書けました
なんか何でもいいので、感想とかくれたら嬉しいかも
次の投稿は、そのうち近いうちに


――翌朝――


魔法使い「……」


生徒A「おお、朝から根暗だな出来損ない」

生徒B「まっ、仕方ないんじゃないの? そうそう、昨日はどうもー」

生徒C「あーあ、朝からダウンだわ。あんたみたいなの、さっさと消えればいいのにね」


魔法使い「そう」


生徒C「はい? 何あんた、いきなり澄ましてんじゃないわよ」

生徒B「イメチェン? きもいんだけど。死ねば?」

生徒A「うわ、女ってこえぇ」


魔法使い「うん」


生徒C「だからうざいって」


魔法使い「いたっ……」


魔法使い(……やっぱり強くなんて、なれっこない)

魔法使い(ちょっと強がるだけで、もう膝がこんなに笑ってる)

魔法使い(怖い……怖いな……)


生徒B「単純に寝ぼけてるだけじゃないの?」

生徒C「あ、そっかぁ! じゃあ起こしてあげてよ生徒B」


魔法使い「や、やめっ」


生徒B「そぉら」


魔法使い「……」


生徒A「うわっはっは、本当にえげつないな、お前ら!」

生徒B「えー、そんなことないよー」

生徒C「ほら、土下座しろよ。打つよ?」


魔法使い「……」


生徒C「おい、なんか言えよ出来損ない」


魔法使い「……」


生徒C「そっかそっか、そんなに雷食らいたいんだぁ? いいよ、電気マッサージしてあげる」


魔法使い「……あの。
      ……ごめんなさい」


生徒C「あははは!! そうそう、あんたはそうやって地べたに這いつくばっていればいいのよ!」


魔法使い「……」


生徒C「ほらほら、そんな真っ黒な汚い髪の毛してさぁ!」


魔法使い「すみません……」


生徒C「弱っちぃくせに、出来損ないのくせに調子乗るんじゃないわよ!」


生徒B「ちょっと、頭踏みつけるのは流石に……」

生徒C「は? 別にいいじゃん」

生徒A「でも、そろそろ教師来るぞ? そこいらで止めた方がいいんじゃないか?」

生徒C「ちっ……」





魔法使い「……」


魔法使い(辛いなぁ……)


魔法使い(もうこんなのやだよ……)


魔法使い「……私なんか、強くなれっこないよ」


………


魔法使い(あーあ、初めて講義さぼちゃった……)


魔法使い(グラウンドで、みんな魔法の練習してる)


魔法使い(あれは、対象物を壊す……一番嫌いな実技だ。魔力ないから、いつも怒られるし、からかわれる)


魔法使い(……もっと、普通の村娘として生きたかったな)


魔法使い(でも、母さんが精一杯お金稼いで通わせてくれているし……)


魔法使い(魔法の種類ばっかり覚えても、遊びに使ってばっかりだし)


魔法使い(魔力の弱さを、知識と技術で補いたくても……補いきれない……)


魔法使い「何でこんなに弱いんだろ、悔しいな……」


勇者「悔しいの?」


魔法使い「きゃっ! ゆ、勇者さま……?」


勇者「あまりに退屈だから、冒険してたんだ。変なとこでよく会うね」


魔法使い「……」


勇者「昨日の件、考え直してくれたかなぁって思って」


魔法使い「だって私、弱い……」


勇者「だから強くなれるってば」


魔法使い「無理でした……」


勇者「無理でした?」


魔法使い「……はい」


勇者「どうして?」


魔法使い「……」


勇者「うーん……だんまりか。じゃあ、ちょっといっしょに修行してみないか?」


魔法使い「え」


勇者「どうせサボリなんだろ?」


魔法使い「……」


勇者「強くなりたいだろ?」


魔法使い「でも……」


勇者「でも、禁止」


魔法使い「だ、だって」


勇者「だっても禁止」


魔法使い「……」


勇者「黙るのもダメ」


魔法使い「そんな」


勇者「ほら、こっちに来てくれ」


魔法使い「あ、あの……え……?」


――学院の近くの湖――


魔法使い「あ、あの」


勇者「はい、これ」


魔法使い「……これ、昨日の鉄砲」


勇者「そう。これを使ってみて」


魔法使い「え」


勇者「とにかく、試しにさ」


魔法使い「で、でも……」


勇者「でも、禁止! 要は試しだ!」


魔法使い「そんなぁ……」


勇者「ほら、持ってみて」


魔法使い「お、重い」


勇者「そんなに重いか……」


魔法使い「ま、魔法使ってもいい……ですか?」


勇者「魔法?」


魔法使い「はい……。重力魔法で、軽くしてもいいですか?」


勇者「へぇ、そんな高度な魔法を使えるのか」


魔法使い「じ、自分が持つ無機物だけの限定ですが……その、ごめんなさい」


勇者「おいおい、それだけでも十分凄いって……」


魔法使い「ひっ、ご、ごめんなさいっ」


勇者「……あー。昨日の今日で難しいと思うけど、もっと楽にしていこうよ!」


魔法使い「えっと……」


勇者「確かに昨日の俺も少し硬かったと思うけど、これじゃあずっと肩が凝るしさ」


魔法使い「……」


勇者「た、頼むよ」


魔法使い「ど、努力します……」


勇者「そのたどたどしい敬語も弱々しく見えるよ?」


魔法使い「で、でも」


勇者「でも、禁止!」


魔法使い「あう……」


勇者「敬語もできるだけ止めて」


魔法使い(さっき、それで失敗したんだけどなぁ)


魔法使い「こ、これでいい?……ですか」


勇者「ま、まぁ……敬語は置いといて、どもらずに」


魔法使い「わかりました」


勇者「そうそう! そんな感じ!」


魔法使い(人見知りな私に対して、すごく踏み込んでくるなぁ勇者さま)


勇者「じゃあさっそく銃を使ってみようか!」


魔法使い「えっと、うん」


勇者「……」


魔法使い「えっと……文献では確か……こう、だったはず」


勇者「やっぱり地面に置くのか!」


魔法使い「え?」


勇者「ごめんごめん、続けて」


魔法使い「それで、弾が……ない?」


勇者「た、弾? 一応、これがあるんだけど」


魔法使い「銃口との大きさが、あってない……かも」


勇者「まじか……。じゃあ使えないのかよ」


魔法使い「……あの、要らない鉄とかってありますか?」


勇者「え? それくらいならたくさん……えっと、はい」


魔法使い「ありがとうございます。
      ……灼熱魔法で……これをこうして……これで」


勇者「……君、実はとんでもなく凄いだろ? どうして鉄をそんな粘土のように……」


魔法使い「でも、手に持った無機物限定です……」


勇者「それでも凄いさ! 灼熱の魔法なんて、初めて見た」


魔法使い「……これでよし」


勇者「まさか、手作業で弾を作れるなんて……」


魔法使い「これを確か……ここに装填するはず……」


勇者「……わくわく」


魔法使い「それで……うん。これでいいはず」


勇者「おお! とうとう撃つのか!?」


魔法使い「……何を標的にすればいいですか?」


勇者「そうだなぁー……。あの木の実でいいかな?」


魔法使い「近い」


勇者「え? いやいや、通常魔法でも200メートル先まで飛ばすのは難しいぞ!?」


魔法使い「じゃあ……向こうのキノコでいい?」


勇者「ちょっ、目測でも250メートルは離れてるぞ!?」


魔法使い「たぶん、簡単に届く。文献では、1.5kmは届くって書いてたはず」


勇者「すげぇ……」


魔法使い「で、でもっ。文献のものと、これがいっしょか分からないけど……すみません」


勇者「おーい、色々と戻ってるぞー」


魔法使い「うぅ……」


勇者「まっ、それはこれから先の問題か」


魔法使い「は、はい」


勇者「……じゃあ、あれを狙ってみてくれ」


魔法使い「わかりました」


勇者「……」


魔法使い「……」


勇者「あ、あの」


魔法使い「何ですか、気が散ります」


勇者「なんでうつ伏せになってるの?」


魔法使い「支柱の長さを調節すれば、座ってもできるけど……」


勇者「えっと、ごめん。なんでもない……」


魔法使い「……? じゃあ、撃ちますね」


勇者「ああ。頼む」


魔法使い「……すぅー、はぁ……んっ」



パァンッ!



勇者「う、うるせえ!?」


魔法使い「……」


勇者「……そ、それでどうだった」


魔法使い「キノコを木っ端微塵にしました」


勇者「凄い! それに、魔法使いさんは目もいい!」


魔法使い「視力上昇の魔法……。バードウォッチングのために、練習したので」


勇者「なんかもう、パーフェクトな能力だ」


魔法使い「そんな」


勇者「俺、君が欲しい」


魔法使い「……」


魔法使い「……え」


勇者「是非とも仲間になってくれ!! きっと、いっしょに強くなれるはず!」


魔法使い「あ、そういう……。でも……私みたいな……」


勇者「でも、もだっても禁止!」


魔法使い「だ、だって! あ……うぅ、いじわる……」


勇者「とにかくさ、君となら魔王討伐だって夢じゃない」


魔法使い「嘘です」


勇者「嘘じゃないさ」


魔法使い「……」


勇者「きっと、その銃をここまで上手く使えるのは君だけだ」


魔法使い「……私だけ」


勇者「そう!」


魔法使い「……わ、私でも、強くなれる?」


勇者「もちろん。俺が保障する」


魔法使い「本当に?」


勇者「本当だとも」


魔法使い「……でも」


勇者「だから、でも禁止だって! 強くなりたいのか、なりたくないのか、2択だけだ」


魔法使い「……なりたい。強くなりたい!! 強くなって、ここの皆を見返したい!!」


勇者「その返事が聞きたかった」


魔法使い「でも……お金が、それにせっかく入学させてくれた母さんにも悪い……」


勇者「あー……」


魔法使い「だから、もう少しだけ考えさせて欲しい……」


勇者「……うん。いいよ。一週間待たせてもらうね」


魔法使い「はい……お願いします」


勇者「でも、その間もいっしょに修行しような」


魔法使い「え」


勇者「文献だと1.5kmは飛ぶんだろ? じゃあ、そこまで到達しないとね」


魔法使い「そ、そんなぁ……」

ひとまずここまで
リメイクものなので、元の設定を生かして全く違うものを書きたいと思っただけです

>>1です
テスト書き

>>1です
テスト書き

再開します
書き方を少し工夫するので、アドバイス貰えると嬉しいかも

過去の話しじゃなくて、出会いから魔王討伐までを一から書いているだけです


――6日後の昼過ぎ 湖――


魔法使い「お待たせ」

勇者「おお、たどたどしい口調がちょっとずつ治ってきたな」

魔法使い「これも、勇者さまのおかげです」

勇者「そう言ってもらえると嬉しいかな」


魔法使い「……鍛錬」

勇者「そうだったな!」


ゴソゴソ


生徒C「へぇ、あんた最近ちょくちょく居なくなると思ったら、こんな所に来てたんだ」

魔法使い「あ……生徒Cさん……」


勇者「魔法使いさん、この人は」

魔法使い「生徒Cさん……。学院の人です」


生徒C「なにあんた、こんな所で男と逢引? 良いご身分ですね、出来損ないの魔法使い」

魔法使い「……」


生徒C「しかもこの人、絶対に学院の生徒じゃないよね? あーあ、学院長にチクったらどうなるかな



勇者「あ、いや」

魔法使い「だ、大丈夫です……」

勇者「……魔法使いさん」


生徒C「まったく、他人までかくまって……。本当にどうしようもないクズなのね」

勇者「なっ」


魔法使い「……ごめんなさい」

勇者「魔法使いさんまで!」


生徒C「そうそう。それに、あなた何処の誰だか知らないけどさ、そのクズといっしょにいても仕方な

いわよ?」

勇者「魔法使いさんはっ!」

魔法使い「やめて」

勇者「でも!」


魔法使い「私は大丈夫」


生徒C「あのさー、その鬱陶しい喋り方止めてよね。最近になって変えたと思うけど、苛々すんのよ」

魔法使い「ごめんなさい、無理」

生徒C「へ、へぇー。……私に逆らおうっての?」


魔法使い「……」


生徒C「なんとか言いなさいよ!!」


魔法使い「……」

生徒C「あ、あんたは!! むかつく、弱いくせに出来損ないのくせに!!」


生徒C「いいわ。思いっきり雷食らわせてやる!!」


生徒C「雷魔法!!」


カッ


生徒C「はぁはぁ……は、はは……っ。わ、私に逆らったあんたが悪いんだからね!?」

勇者「落ち着け」


生徒C「はっ? あなた何して……し、しかも無傷?」

勇者「だから落ち着けって」

生徒C「なんでそんなクズ庇うのよ!!」


魔法使い「……あの」

勇者「大丈夫だから」


生徒C「何なのよ!! もういいっ! 死ね、死ね!!」


魔法使い「あっ!!」


カッ
ピカッ
ドガンッ!


生徒C「これでも、この学院じゃトップクラスの魔力なんだからね!!」


勇者「すごい。でも、流石にそれじゃあ魔王とは戦えないな」

生徒C「は? 魔王?」


勇者「しっ!」

生徒C「……え?」


勇者「お願いだ、引いてくれないかな」

生徒C「い、いつの間に剣を……」

魔法使い「は、速い」


勇者「このまま剣を横に振りぬくと、君の綺麗な首筋に傷が付くよ」

生徒C「ひっ……」


勇者「何度も言おう。落ち着いて、そして引いてくれ」

生徒C「な、なんなのよぉ……っ!」


生徒C「もういいわよ! あんた、このままで済むとは思わないでよね!!」

勇者「ああ、わかった」





勇者「……ふぅ」

魔法使い「勇者さま!」

勇者「大丈夫だったか?」


魔法使い「わ、私は勇者さまが守ってくれたから
      でも……どうして……」

勇者「後方支援を守るのは、前衛の役目だろ?」


魔法使い「そんな……。私、まだお供になるとは」

勇者「えー、だめ?」


魔法使い「でも……」

勇者「だから、でもは禁止だって。……好きなんだね、その言葉」


魔法使い「……はい」

勇者「まぁいいんだけどさ……」


魔法使い「……」


勇者「それで、もしかして魔法使いさんは苛められているの?」

魔法使い「……」


勇者「沈黙は肯定。ああ、だから学院の皆を見返したいって……」

魔法使い「そう」


勇者「見返すことなんて出来るんじゃないのか?」

魔法使い「私、魔力低いから」


勇者「魔力魔力って……」


魔法使い「ここでは、それが全て……。技術を磨いても、私、すごく魔力弱いから」

勇者「なんだよそれ……」


魔法使い「だから弱い、子供程の魔力しか持たない出来損ないの魔法使い……です」

勇者「敬語になってんぞー」

魔法使い「うぅ」


勇者「でも、魔法使いさんの魔法の種類、技術の精密性なんてそこらの大魔道士よりも凄いと思うんだけどなぁ」

魔法使い「だ、大魔道士!?」


勇者「うん」

魔法使い「……ただ遊んでいただけ」

勇者「好きはモノの得意なれだな。才能もあるのかな?」


魔法使い「ところで、今日の鍛錬は」

勇者「そうだなぁ。やっと300m射撃に成功したばっかりだしな」

魔法使い「やっぱり出来損ないの落ちこぼれです……」


勇者「おいおい……」


勇者「きっと文献の銃と、この銃が違うだよ」

魔法使い「そうかな」


勇者「だって、300m以上の距離では威力ががた落ちするなんておかしいだろ」


魔法使い「……もう一度、文献を読んでみます」

勇者「ん、そうか」


魔法使い「じゃあ今日は、普段どおりの鍛錬ですか」

勇者「そうしよう。地道な鍛錬がモノを言う。土台はしっかりしないとな」

魔法使い「はい」


勇者「その後にでも、図書館で文献を読んでくれればいい」

魔法使い「……え」


――図書館 夜中――



魔法使い「……つ、疲れた。この銃、重力魔法で軽くしても重たいし……」

魔法使い(鍛錬のあとに直接図書館……疲労感がすごい……)

魔法使い(あっ、この本だ)

魔法使い(えっと……この文字の意味は……。調べないと……)


魔法使い(距離、威力……? 火薬だけじゃ無理?)

魔法使い「そんな……、こんなところにも魔法が?」


魔法使い(魔法によって、飛距離を変える……? わずかな魔力の違いで、大きく左右される……)

魔法使い「なるほど……」

――学院長室 同時刻――


勇者「こんばんわ」

学院長「あの娘はどうじゃ?」


勇者「かなり素晴らしいです。本当に仲間にしたい」

学院長「それほどか」

勇者「はい。でも、明日で期日の一週間なんです」


学院長「彼女は、はいと言いそうか?」

勇者「五分五分だと思います」

学院長「そうか」


勇者「ところで、魔法使いさんが苛められているのは知っていますか」

学院長「そんなもん、とっくに知っておるわ」


勇者「ならば何故、助けないのか」

学院長「……この学院に通うものは、貴族出身が多い」

勇者「それが何か」


学院長「彼女の母は農民にしか過ぎん。もし、子供のいざこざが親にまで影響を及ぼしたらどうなる?」

勇者「……村八分的なものですか」

学院長「左様。ゆえに、わしらは見て見ぬふりしかできないじゃ」


勇者「……差別、貧困。どこにでもありますが。まさかこんな影響があるなんて」

学院長「貴族同士でも、その優位に差があれば……苛めを無くすことは難しい」


勇者「心中お察しします」

学院長「そのようなことを言うではない。わしは、何もできぬ無能じゃ……。わしも、教員らも」

勇者「学院長……」

学院長「ホホ、このような少年に愚痴ってしまうなど、歳を取るものではないな」


バタン


教師「ががが、学院長!!」

学院長「なんだ、騒々しい」

教師「た、大変です!!」

勇者「……」


教師「ま、魔物が門に襲いかかっています! 
    教師陣がなんとか防衛していますが、このままじゃ破られる可能性も!」

勇者「なんだと」


学院長「そんなに多いのか」

教師「かなり。どうか学院長もお力添えを……勇者さまもお願いできないでしょうか」

勇者「もちろんです、任せてください」


学院長「なんじゃろうか、嫌な胸騒ぎがする」




――学院の近くの湖 同時刻――


生徒B「ちょっとぉ、こんな所に何の用なのよ」

生徒C「ここをめちゃくちゃに荒らそうかなって思ってね」

生徒B「だからってこんな時間じゃなくてもいいじゃない……」


ガサガサ


生徒B「え?」


――学院の門――


勇者「これは、酷い……」

学院長「なんという多さ。何故これほど」

教師「分かりません! 我が学院は、偏狭の地に立ててあり、魔物すらも寄り付かない土地だというのに」


勇者「では、俺は行ってきます」

学院長「わしはここで広範囲魔法の大詠唱をしておる」



勇者「どりゃーー!!」



「おお、勇者さまだ!」



勇者「……くっ、多い」


勇者「流石にこれは捌ききれないかもしれないな……」

魔物「ぐあー!!」


勇者「いやいや、弱音を吐いてどうする!」



学院長「はぁー……火炎魔法、超広範囲!!」



勇者「おお……。流石は学院長。すげぇ」

学院長「ホッホッホ、わしもまだまだ現役じゃわい!」


教師「我ら教員も負けてはおれんぞ!!」

「おお!!」


学院長「……むっ、あれは」

勇者「あれはまさか!!」



魔物「ぐお……」

生徒B「は、離してっ」
生徒C「いやだ……気持ち悪い……」



教師「学生です! あれは学生B、学生Cです! どうして……」


勇者「くそっ……魔物のくせに、人間を人質している……。一旦退く!」

学院長「あれでは魔法を放つこともできぬ」


勇者「どうする!?」


魔物「が……こ、ここを、とおせ……」

教師「できぬ!!」

魔物「ころ……す……」


生徒B「いや……やめてっ……」

生徒C「……やだぁ。助けてよぉっ……」


勇者「くそ、どうするっ」

学院長「……」


魔法使い「あ、あの……」


教師「魔法使い!? お、お前一体何をしているんだ!!」

勇者「魔法使いさん……」


魔法使い「私に任せて欲しい」

教師「何をするつもりだ! いいから部屋に戻っておらんか!!」


魔法使い「この銃、やっと使い方わかった」

勇者「魔法使いさん、それは本当か? 大丈夫なのか?」

魔法使い「……たぶん。いえ、絶対」


勇者「……人質をとっている魔物まで、距離はおよそ600mはあるぞ」

魔法使い「……」

勇者「大丈夫なんだな」


教師「だ、だが!」

学院長「……信じよう」

教師「学院長!!」


勇者「……」

魔法使い「……」

勇者「わかった。俺が敵の注意を引き付ける」


勇者「いいか、狙撃に二度目はないぞ」

魔法使い「うん」

勇者「一発で決めろ。……じゃあ、武運を」



魔法使い「……すぅ、はぁ」



勇者「……人質を離せ!!」

魔物「ば、か……か?」

勇者「卑怯だぞ!」

魔物「ぐ、ふふ……」


勇者「はっ、その余裕がどれだけ続くかな」


……
……
…………

魔法使い(……文献の通りだと)


魔法使い(この部分に、爆破魔法を……たぶん、これくらいの強さ……)


魔法使い(風は、ない。距離は……600m程……)


魔法使い(対衝撃姿勢)


魔法使い(……ただ、鍛錬どおりにすればいいだけ)


魔法使い「……すぅー、はぁ……んっ」



魔法使い(大丈夫、生徒たちには当たらない。……的だけを貫く!)



パァンッ

ブシュッ!


魔物「ががっ……!?」


勇者「よし!!」


魔物「がっ……」

勇者「ナイスショット!」

魔物「……――」


勇者「大丈夫だったか、二人とも!」

生徒B「ひっく、うぅ」
生徒C「……ぐす」


勇者「よしよし。とにかく今は退くのが大事だ」


学院長「……わしの生徒らを危険な目に合わせたことを後悔させてやる」

学院長「超級火炎魔法!!」



ドガンッ!!!!



勇者「……まじすか」

生徒B「が、学院長すご……」

生徒C「……辺り一体が、火炎の海」



魔法使い「よ、よかった……。命中した」


――学院の門 翌日――


学院長「昨日は、助かったぞ。感謝する」

勇者「いえ。俺なんて何もしていません」

学院長「ホッホッホ、そんな謙虚になるではない」


勇者「……」


学院長「して、もう行くのか?」

勇者「はい……。どうも俺、振られたみたいです」

学院長「……」


勇者「では、俺はこれで……」

学院長「……しっかりな。健闘を祈っておる」

勇者「ありがとうございます」


……


勇者「……ふああ、いい天気だ」

勇者「で、そこにいるんだろう?」


魔法使い「……」


勇者「いっしょに行くか?」

魔法使い「はい」


勇者「で、どうしてこんな所で待ってたんだ?」

魔法使い「わ、別れの挨拶が……」


勇者「なるほど、辛かったのか」

魔法使い「いえ、人と喋るのが嫌で」

勇者「おい」


勇者「……まー、いっか」

魔法使い「適当ですね」

勇者「あはは。これから宜しくな!」


魔法使い「はい!」


勇者「でも、本当に黙って出てきてよかったのか?」

魔法使い「どうして」


勇者「だって、お前の勇士を知っているのは学院長と教師だけだろ?」


魔法使い「別に、感謝して欲しかっただけじゃない」

魔法使い「ただ……自分がしたかっただけ」


勇者「……魔法使いさんがそう言うなら」

魔法使い「……ふふ。でも、とだっては禁止です」

勇者「あ」


1章 勇者と魔法使い 終わり

テストした意味は、サブタイトルを付けられるかなと思っただけです
今日はここまで

次はいつになるか分かりませんが、ゆったり書きたいと思います

ちょこっただけ書けたので投稿します

2章 錆びた町と魔法使い


――荒野――


魔法使い「はぁはぁ、ま、待ってください……」

勇者「どうしたんだ?」


魔法使い「こ、これ重たい……」

勇者「ああ、鉄砲か」

魔法使い「ああ、鉄砲か……じゃないです。鞄に入れてくれたのは嬉しいですけど」


勇者「持ち運びしやすいだろ?」

魔法使い「そうではなくて」

勇者「なんだよー」


魔法使い「鞄は大きいし、重たいし……。人一人背負っている気分」

勇者「大袈裟だろ」

魔法使い「大袈裟じゃない」


勇者「でもなぁ。これからそれをずっと持ち歩くんだよ?」

魔法使い「それは判ってますけど」

勇者「持ち続けたら慣れるさ。俺だって、初めて剣を持ったときは歩きづらかったなぁ」

魔法使い「そんなしみじみしないで下さい」


勇者「じゃあ、持ってあげようか?」

魔法使い「……それは結構です」

勇者「いいの?」

魔法使い「この子は、私の銃ですので」


勇者「おお、愛着が沸いたんだ」

魔法使い「う、うるさいです」


勇者「それにしても、見渡す限り荒野だなぁ。草木一本も生えてない」

魔法使い「ちょっとした岩山は岩石が多いですけど」

勇者「そういう所の影には何かが潜んでいる可能性が高い」

魔法使い「わかりました」


勇者「旅なんて、どこにでも危険が潜んでいると思った方がいい」

魔法使い「はい」

勇者「本当によく付いてきてくれてありがとう」

魔法使い「……」


勇者「後悔はしていないか?」

魔法使い「私の技術で世界に貢献できるなら、きっと母さんも喜んでくれるはず」

勇者「そっか」


魔法使い「でも、やっぱり帰りたいかも……」

勇者「お、おい」

魔法使い「帰ってもいいですか?」

勇者「ダメ! 魔法使いさんはもう俺の仲間なの!」


魔法使い「……屋根のある所でで寝たい」

勇者「贅沢言わない!」


魔法使い「魔物にもよく会うし……」

勇者「我が国と魔王軍との戦争が活発だから」

魔法使い「海のずっと向こうでは、魔王なんていないのに」


勇者「はぁ……。意外と自分の意見を言うんだね」

魔法使い「言えといったの、勇者さまです」

勇者「素直なんだか、捻くれてるんだか……」


魔法使い「ところで、人が魔物に襲われています」


勇者「え?」

魔法使い「距離、650m先で……女の人が魔物に襲われています」


勇者「よしっ、こんな世の中でも人助けに行こうか!」

魔法使い「うん。じゃあ、この子をちょっと組み立てます」

勇者「ああ。俺は先に行ってるよ!」


………



??「くっ、なんでこんなに魔物がいるのよ!」

勇者「大丈夫か!? 助太刀する!」

??「あなた! 勇者じゃない!」


勇者「へ?」

魔女「私よ! 魔女よ!」

勇者「魔女さん! どうしてこんな所に!?」


魔物「ぐあーー!」


魔女「い、今は先にこいつらを!」

勇者「任せろ!!」


勇者「どりゃーー!!」

ザシュッ

魔物「っぐおぉぉ」


魔女「ああもう! 火炎瓶!!」

魔物「ぎゃぁぁ」


勇者「まだまだぁ!」

魔女「いい加減にしてぇ!!」


<魔物は魔女にこうげきをしかけた>


勇者「あ、危ない!」

魔女「え?」


パァンッ!!
プシャ

魔女「……え?」

魔物「がっ……」

魔女「え、え? なんでこいつ頭から血を流してんの?」


魔女「それに、さっきの音は?」


勇者「ナイスショット! 流石だ魔法使いさん!」

魔女「も、もしかして……」




勇者「ふぅ、これでひと段落ついた」

魔女「はぁはぁ……。あ、ありがとうね」




魔法使い「勇者さまだいじょう……」

勇者「うん、援護射撃助かったよ!」

魔法使い「……そう」


魔女「ああー! その鉄砲使える人いたんだ!」

魔法使い「……」

魔女「凄い、凄いね!!」


魔法使い「えっと、うん」

勇者「魔法使いさん……?」

魔女「あはは、緊張してるのかな? お姉さんは優しいから安心してねー」


魔法使い「別に……」


魔女「おもしろいね、あなた! お名前は?」

魔法使い「魔法使い」

魔女「魔法使いって言うんだね? 私は魔女だよ! 専門は魔道具や薬物よ」

魔法使い「……ども」


勇者(なんか様子が変だな、魔法使いさん)


魔女「それにしても助かったわ。奇遇ね、こんな所で会うなんて」

勇者「そっちこそ。魔女さんは何をしていたんだ?」

魔女「ちょっと旅をね」

勇者「旅?」

魔女「そう。錆びた町って所に行こうと思って」


勇者「錆びた町?」

魔女「そうそう。そこの町長から依頼があってね」

勇者「へぇ。それはどういう」


魔女「幻覚を見せる薬物が出回っているから、解析をして欲しいって言われたのよ」

勇者「そんな危ないものが?」


魔女「そうなのよ。だから、解析と解毒を依頼されてさー」

魔女「急用って言われて、護衛も依頼する暇もなくてね」

魔女「なんとかなるかなーって思ったら、何とかなったわ!」


勇者「その何とかって、もしかして」

魔女「そそ、勇者たちのこと! それに、その魔道具のこともその娘に聞きたいしね」

魔法使い「……」


勇者「まぁ仕方ないか。いいよ、錆びた町までいっしょに行こう」

魔女「本当!? ありがとう勇者ー! 助かったー!」

勇者「うわっ、抱きつくな抱きつくな!」


魔法使い「……勇者さまの変態」

勇者「魔法使いさん!?」


魔女「あはは! ねーねー魔法使い、その魔道具の使い方とか教えてね!」

魔法使い「う、うん……」

勇者「はぁ……。こんなので大丈夫かな……」


魔女「大丈夫だって! 気にせずに行こう行こう!」

とりあえずここまで
暇つぶし程度になれたら嬉しい
読んでくれるだけでもかなり嬉しい

前回途中までしか追えなかったから楽しみ、頑張ってくれ

ところで生徒Cの所が胸糞だったんだけど、あそこまでイヤな奴にする必要あったのかな?
個人的には特に反省も何もなしで退場ならもうちょいマイルドな方が良かったと思うな

>>124
ありがとうございます

魔法使いの人見知りとコンプレックスを叩き込むならこれくらいがいいかなぁって思っただけなのです
個人的に、生徒Cをまた出したいなぁとも考えてますが、よくわかりません

投稿再開します


――錆びた町――


勇者「ここが」

魔女「そう。錆びた町よ! 相変わらず、寂れてるわね……」

魔法使い「……」


勇者「それで、こんな町で幻覚を見せる薬物が出回っているのか?」

魔女「そうらしいわ。詳しい話しは私も知らないの。だから、町長のところに行きましょう?」


勇者「そうだな。って、俺も?」

魔女「ここまで乗りかかったんだから、最後まで乗っていきなさい!」

勇者「お、おい。魔法使いさんも何か言ってやってくれ」


魔法使い「別に、いいよ」

勇者「魔法使いさん!?」

魔女「話しが分かるわね!」


魔女「それにしても、あなたって全然口を開かないわよね」

魔法使い「……」


魔女「もしかして、私のこと嫌い?」

魔法使い「ちがう」


魔女「じゃあもう少しお喋りを……」

魔法使い「……」


勇者「大丈夫か魔法使いさん?」

魔法使い「平気です」


勇者「でも、さっきから急に口数が……」

魔法使い「放っておいて下さい」


魔女「勇者とは普通に喋ってるのにぃー! なんで私とは喋ってくれないのよー!」

魔法使い「……」

魔女「おかげで、その魔道具についても全然教えて貰えなかったし……あーあ」


勇者「魔女さん、ずーっと一方的に喋ってたもんな」

魔女「そうなのよ! びっくりするくらい物静かな娘なのね?」

勇者「普段はもう少し喋るんだけどなぁ」


魔法使い「あの、ごめんなさい」


魔女「まぁ、いいけどさー……」

勇者「拗ねてるのか?」

魔女「拗ねてるわよ! こんな可愛い子が、私に懐かないなんて……」


魔法使い「……」


勇者「どうしたんだろうなぁ……」


――町長宅の前――



魔女「とりあえず、町長には私一人で会ってくるわ」

勇者「どうして?」

魔女「ぞろぞろと行くものでもないでしょ」

勇者「ああ、確かにな」


魔女「じゃあ行ってくるから、ここで待ってて頂戴。きっとすぐに戻るわ」

勇者「おう」

魔法使い「……」


魔女「無言で手を振ってる……。私、嫌われてないわよねー?」




勇者「なぁ、調子悪いのか?」

魔法使い「どうしてですか?」


勇者「さっきからずーっと口数が少なかったじゃないか」

魔法使い「そ、それは……」

勇者「それは?」


魔法使い「あの……。誰にも言って欲しくないのですが」

勇者「うん」

魔法使い「私、人見知りで」

勇者「うん?」


魔法使い「だからその、魔女さんがぐいぐい来るので……私、その……うぅ」

勇者「気押しされたと?」

魔法使い「……はい」


勇者「なんと」


勇者「でもさ、俺と出会ったときはそんなこと無かったじゃないか」

魔法使い「あのときは、喋らなくてはならない状況でしたので……」

勇者「ああー……。確かにそうだったかも」

魔法使い「はい」


勇者「だけどさ、今だって俺と普通に喋ってるよね?」

魔法使い「それは……」

勇者「それは?」


魔法使い「慣れただけです」

勇者「それだけだったかー」

魔法使い「他になにか?」


勇者「いいや、なんでもないよ。うん……」

魔法使い「……?」




1時間後


魔女「お待たせー」

勇者「どうだった?」

魔女「どうだったもこうだったも、結構やばいかも」

勇者「それって例の薬物の件か?」

魔女「それ以外にあり得ないわよ」


勇者「でも、どうしてなんだ?」

魔女「まぁ歩きながら説明するわね。町長が宿を用意してくれているから、そこへ向かいましょう」


勇者「それで、その籠に入っているのはなんだ」

魔女「えっとね。これがその例の薬物なんだけどさ。見てみてよ」


勇者「見るからに毒々しいね」

魔女「これは幻影花っていう花。この根を粉末状にして、鼻から吸い込むの」

勇者「どうしてそんなことをするんだ?」


魔女「幻影花の根を体内に接種すると、まるでそれはフワフワと極楽浄土に導かれた気分になるのさ」

勇者「へぇー」


魔女「でもね、その分花の効能が切れたときが酷い」

勇者「どういうことだ?」


魔女「質問ばっかりね、まあいいけど」



魔女「幻影花は人の精神を蝕むの」

魔女「そして、効能が切れ始めると人は凶暴化していく」

魔女「この花を廻って、殺し合いが起きたり、高額の金の動きが生まれてそれが賊どもの資金になったり」



魔女「そして最終的には……。お、いるわね」

勇者「え?」

魔法使い……?」


魔女「ほら、あの裏路地を見てよ」

勇者「ん……。これはっ」

魔法使い「……?」


勇者「魔法使いさんは見ないほうが良い」

魔法使い「……わかった」


魔女「あれが成れの果て。自分で考えること、動くことを止めてしまうのよ」

勇者「そんな……」


魔女「人間、ああはなりたくないわね」

勇者「解毒薬は作れないのか?」


魔女「端的に言うと、不可能。多くの学者が研究をしたけれど、ああなった人を救える方法はついに見つからなかった」

勇者「なんてことだ……っ」

魔女「ま、自業自得って奴よねー」


勇者「何をそんな呑気な!」

魔女「でも仕方ないじゃない? 理由はどうであれ、これが戦争の現実なのよ」

勇者「くそっ!」

魔法使い「……勇者さま」


魔女「さてと、宿屋に付いたわね。ここから先は、中で話すわ」

勇者「……ああ。わかった」



――錆びれた宿――


魔女「ふぅー、疲れたー!」

勇者「……」

魔女「もー、そんな怖い顔しないでよー!」

勇者「す、すまん」


魔女「さて、ここからが一番厄介なお話し」

勇者「厄介? 単純にその幻影花を消せばいいんじゃ」

魔女「それが消えないのよね。この花はゴキブリよりもしぶとく裏市場に出回る」

勇者「何故だ」


魔女「さて、それは何故でしょうー」

勇者「魔女さん!」

魔女「……これくらいの問題を解けないようじゃ、世界を渡り歩けないわよ?」

勇者「ぐっ……」


魔女「まぁ頭の硬い勇者じゃ自力では無理だろうから、ヒントをあげるわ」

魔女「まず、この花は人を極楽へ導くの」


勇者「さっき言ってたことだな」

魔女「その通り。第2のヒント、この花は人だけが使用している。他の動物、魔物すら近寄らない」

勇者「それはやはり毒物だからか」


魔女「まぁ及第点かな? では、どうして毒物と判っていながら人はこれを使うのか」

魔女「どうして毒物が高額で取り引きされているのか」

魔女「人は自殺概念がそれほどまで強い生き物なのか!」

魔女「どうしていつまで経っても幻影花はこの世から消えないのか! はい、お答え!」


魔法使い「人が人に売っている、かな」


魔女「おお! そう、その通り! 魔法使いは正解! ご褒美にいっしょに後でお風呂入ろう!」

魔法使い「お断り」

魔女「そ、そうですか」


勇者「……どういうことだ。どうして魔法使いさんのその答えが正解なんだ?」

魔女「この花は、人が育てて人が売っているの」

勇者「だからそれがどうして!」


魔女「お金になるから。それ以外にないわ」

勇者「お金って……」


魔女「戦争中だもの、何かに逃げたい人なんて大勢いるわ」

魔女「そこに付け込む連中がいる」


勇者「だからって毒薬を売りさばいて良い訳がない!」

魔女「そうね。でも、人だけが毒を好んで接種している。おかしな話よねー」


勇者「じゃあ、それを作って売っている人を懲らしめないと!」

魔女「そう! そこが一番厄介な所なのよ!」

勇者「……どうしてなんだ」


魔女「人の闇で商売をする。仮に裏の世界としましょう」

魔女「この裏の世界は、小さくないの。それこそ、この世界全体に蔓延っている」

魔女「もちろん海の遥か向こうでも同じよ」


勇者「しかし! 今この町の人を助けることくらい!」

魔女「売人なんて裏組織の下っ端しかいないわ。変えなんていくらでもいる」

勇者「……」


魔女「まぁ、頭の連中を潰せば少しは変わると思うんだけどね」

勇者「幹部クラスってことか」

魔女「ご名答! 稼業の規模が大きい分、こんな寂れたような場所には当分来なくなるかもしれないわ」

勇者「じゃあその幹部の連中を懲らしめてやれば」


魔女「だーかーらー! どうしてそうすぐやんちゃしたがるかなぁー!」

勇者「……俺には、この剣しかない」


魔女「まったく……。あのね? 仮に勇者が正義の剣を振りかざしたとしましょう?」

魔女「すると、勇者という存在は裏組織と敵対することになるの」


勇者「それくらい平気だ!」


魔女「だから勇者はバカなのよ」

勇者「ば、ばか!?」


魔女「大バカ者よ。世界規模の組織って言ったでしょ? 一つ一つは小さい組織でも、横の繋がりは確かにある」

魔女「裏っていうのは、それ自体が組織ってことなの!」

魔女「そんな連中を敵にするとね、世界の裏から常に見張られていることになるの!」


魔女「それこそ世界のどこに居てもよ!?」

魔女「どこに居ても命を狙われる! 勇者だけならいいけど、その周囲の人にも迷惑が掛かる!!」

魔女「あんたはそれでも剣を片手に殴りこみに行くつもりなのかしら!?」


勇者「……」

魔法使い「勇者さま……」


魔女「ふぅ……。ちょっとは判ってくれたかしら?」

勇者「確かに俺が浅はかだった……」

魔女「そういうこと。だから厄介なの」

勇者「流石に、魔物だけじゃなく人からも命を狙われたくない」

魔法使い「……」


魔女「だから、私はこの件から退こうと思ってるわ」

勇者「……」

魔法使い「……」


魔女「勇者も退いた方がいいんじゃない?」

勇者「……それでも、俺は勇者だ。困っている人を助けたい。自分を偽性にしても」

魔法使い「勇者さまっ」


魔女「生半可な覚悟じゃ死ぬよ? 向こうはきっと何人も用心棒を雇っているだろうしね」

勇者「そのときは、所詮俺はその程度ってことだろ」

魔女「魔法使いはどうするの?」

勇者「先に学院に送り届ける。それからもう一度ここに来て、殴り込みをする」

魔法使い「そんなっ!」


魔女「本気、なんだね?」

勇者「当たり前だ」

魔女「それは勇者だからするのかしら?」

勇者「違う。俺がただしたいだけだ。感謝なんていらない」

魔女「……」

勇者「……」




魔女「……はー、まったくもー。負けよ負け、私の敗北よー!」

勇者「は?」

魔女「まったくもう、あんたってとことん善人なのね」

勇者「し、知らん!」


魔女「私の策に、たった一つだけ身元をばれずに奴らを殲滅する方法があるわ」

勇者「それを先に言ってくれよ……」

魔法使い「……もしかして」


魔女「魔法使いは察しがよくて偉いねー! どっかの剣バカに見習わしたいくらいよ」

勇者「悪かったな」


魔女「そうさ。魔法使いのその銃で狙撃するの」

魔法使い「やっぱり」

勇者「なるほど……」


魔女「でも、これも私はオススメしたくない」

勇者「どうしてだよ」


魔女「奴らの動きを封じたいなら、傷を付ける程度の狙撃じゃだめ」

勇者「傷付ければその裏の連中だって、これ以上の悪事は止めようとか思わないのか?」

魔女「思わないわね。それくらいで止めるような覚悟を持ち合わせてないわ」

魔法使い「……」


魔女「だから、狙撃はただ一つ。連中を確実に殺すことよ」

魔法使い「……っ!」


魔女「魔法使い、あなたに人は撃てる? 人を殺すことはできる?」

魔法使い「……」


勇者「魔法使いさんはそんなことしなくても良い。人を殺す必要なんてないっ!」

魔女「そう言う勇者は人を殺したことはあるのかしら」

勇者「……ある、正義のために」


魔女「じゃあ魔法使いにそんなこと言える筋合いは無いわよね」

勇者「しかし!」

魔法使い「……私、やります」

勇者「魔法使いさん!?」


魔女「それは本気かしら? 折れない覚悟があるのかしら?」

魔法使い「ある」


勇者「どうして!」

魔法使い「……正義のために。少しでも、勇者さまに近づきたい」

勇者「魔法使い……っ!」


魔法使い「私、撃ちます。人を殺す覚悟は、あります……」

魔女「……わかったわ」


魔法使い「……」

魔女「まったく。現代の勇者さまパーティは正義感強い人たちばっかりで羨ましいわねー」


魔女「わかったわ。私が連中の居場所やら何やら調べといてあげる」

勇者「魔女さんが?」

魔女「私は魔女よ? そもそも真っ当な生き方なんてしてないわ」

勇者「……なるほど」

魔女「どうしてそこで納得するかなー!?」

魔法使い「……」


魔女「まったく。まぁ、裏の世界に詳しい知り合いもいるし……任せなさい!」

勇者「……ありがとう」

次回
”魔法使いには人を殺せるのか?”

投稿します
2章終わりまで


――宿屋 3日後の夕方――


勇者「……何もないまま、3日も経過してしまった」

魔法使い「お茶を飲みますか?」

勇者「うん、頂くことにする」


コンコン
バタンッ


魔女「勇者、魔法使い元気かしら?」

勇者「魔女さん! 一体どこをほっつき歩いてたんだ!」

魔女「私のつてで話しをねー。世界各地を旅してる奴だからさ、中々会えなくて」


魔法使い「ども」

魔女「魔法使いー! 寂しかったわー!」

魔法使い「……だ、抱き付かないで」


魔女「そうそう。この前言ってた薬物を売り歩いてる幹部がわかったわよ」

勇者「本当か!?」

魔女「ええ。とりあえず幹部って呼称するわね? 幹部は4人。彼らを筆頭に、構成員はおおよそ全部で15人」


勇者「詳しく調べられたんだな」

魔女「まーこれも人脈の力って奴よね」


魔法使い「私の出番は」


魔女「今日の深夜に、取り引きがあるらしいわ。そこには、幹部連中が勢ぞろいするらしい」

魔女「それだけ重要な取り引きがそこで行われるってことよね」


魔法使い「今日……」

勇者「急な話しになったんだな」

魔女「ごめんねー……。でも、こっちだって必死だったのよ!」

勇者「こちらこそすまない。無理を言っているのはこっちだったのに」


勇者「……それで、本当にいいのか魔法使いさん」

魔法使い「大丈夫です。正義のために……」

勇者「正義のため……か」


魔女「はいはい、いちゃいちゃしないの」

魔法使い「……っ!?」

勇者「い、いやこれはっ!」


魔女「はぁー、若いっていいわねぇ」

勇者「魔女さんも大概若いような……」

魔女「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃないですか!」

魔法使い「……」


勇者「な、なんで俺は魔法使いさんに睨まれてるんだ……」


魔女「あと、狙撃する場所を決めておいたわ」

魔法使い「……」

魔女「そこには後で案内するわ」


勇者「何から何まで……。本当は退く気なかったんじゃ?」

魔女「いいえ、退こうと思ったのは本当よ。でも、事情を知った裏のお友達が手伝ってくれてね」

勇者「裏の人にも、色々いるんだな……」


魔女「でもね、暗闇で生きるような人とは知り合いにならない方がいいわ」

勇者「そうなのか」

魔女「当たり前よ……。人を殺して、殺されてが当たり前なのだから」

魔法使い「……」


勇者「じゃあ魔女はどうして、その裏の人と友達なんだ?」

魔女「昔の知り合いの子供だからよ。まぁ恩返しみたいな感じかしらね」


魔女「じゃあさっそくポイントに向かいましょうか」

魔法使い「はい」

勇者「……」





魔女「歩きながら聞きたいんだけどさ」

魔法使い「うん」

魔女「狙撃の飛距離はどれくらいなの」

魔法使い「この3日で……。1kmになった」


魔女「おおー」

魔法使い「……」


勇者「もしかして足りないとか?」

魔女「んー、たぶん大丈夫でしょ!」

勇者「て、適当だな……」


魔女「まぁそれはそれで。狙撃の命中率は?」

魔法使い「……」

勇者「かなり精度は上がったよ! 鍛錬中、泣きながら頑張ったもんな」

魔法使い「う、うるさいですっ」


魔女「あはは。いい魔法使い? 女に恥じをかかす奴は、引っ叩けばいいのよ?」

魔法使い「ひっぱたっ!?」

魔女「そうそう!」


勇者「ま、魔法使いさんに変なこと教え込まないでくれ!」

魔女「えー、なんでよー!」

勇者「なんでって……」


――狙撃ポイント――


魔女「ここからさ、あの変な形の岩が見えるでしょ?」

勇者「どれだ?」

魔法使い「わかる」

勇者「……嘘だろ」


魔女「視力上昇の魔法を使わないと、この時間帯じゃ見えづらいかもね」

魔法使い「……」

勇者「や、やっぱり魔法を使う人はすげぇ」


魔女「それでね、あの岩の根元で取り引きが行われるわ」

魔法使い「……」

魔女「狙撃する時間はきっと真夜中になっているわ」

魔法使い「……」


魔女「たぶんだけど、取り引きの間はたいまつで向こうは明るいと思う」

魔女「……それで大丈夫そう?」


魔法使い「問題ない」


魔女「おお、頼りになるわね!」

魔法使い「……」


魔女「それで、狙撃するタイミングなんだけどね」

勇者「そ、そこまで決めているのか……」

魔女「当たり前でしょ? 何もかもがタイミングなのよ」

勇者「す、すまん……」


魔法使い「……合図のタイミングは?」

魔女「そうだったわね」


魔女「それは、幹部の取り引き相手が出してくれるわ」

魔法使い「……?」


魔女「あ、大事なことを忘れていたわ! 絶対に取り引き相手は殺しちゃだめよ?」

魔女「だって、その人が私の友人なんだから」

魔法使い「わかった」


勇者「それで、どんな合図を出してくれるんだ?」

魔女「それがさー、なんか見ていたら判るからよろしくって……」

勇者「適当だなおい!? 魔女さんたちは適当で生きてるのか!?」

魔女「あ、あははー……」


魔女「ところで、今から深夜までここで待ち続けるけど大丈夫?」

魔法使い「うん」

勇者「待機ってことか?」


魔女「そういうことかな? こういうのはきっと集中力と忍耐力が大事だからね」

魔法使い「……」


魔女「じゃあ私は帰るわねー」

勇者「え!?」

魔女「だって、私が役に立てるのはここまでだもの」

勇者「あ、ああ……」


魔女「武運を祈るわ、魔法使い」

魔法使い「……ありがと」


魔女「じゃあねー!」




勇者「なぁ魔法使い。本当にいいのか?」

魔法使い「いいです。だって、見逃せない……人を困らせるなんて」

勇者「優しいんだな、お前って」

魔法使い「そんなこと……」


勇者「じゃあ今から待機だな」

魔法使い「はい」


勇者「……日が沈んだ。星が綺麗だ」

魔法使い「そうですね」


魔法使い「でも、少し寒い……」

勇者「大丈夫か?」

魔法使い「へ、平気っ」


勇者「こんなので暖かくなるかわからないけど」

魔法使い「え? きゃっ……」


魔法使い「え、なんで抱きしめっ!? それも後ろから……」

勇者「少しは暖かいかなって」

魔法使い「……うん、暖かいよ」


勇者「俺にできることはこれくらいだ。魔法使いさんは、標的を見逃さないようにしてくれ」

魔法使い「……はい。ありがとうございます」


魔法使い「あの、一つお願いが」

勇者「なんだ魔法使いさん」


魔法使い「その、できれば呼び捨てで」

勇者「呼び捨て?」

魔法使い「さん、付けは他人行儀な気がして、その……」


勇者「わかったよ、魔法使い」

魔法使い「……っ! はい」


勇者「あはは、なんか照れるな」

魔法使い「……ふふ」



――数時間後――


魔法使い「来ました」

勇者「とうとう来たか……」

魔法使い「はい。大きく2つのグループがいます」


勇者「……どちらが標的かわかるか?」

魔法使い「……」


勇者「どうした?」

魔法使い「……嘘、女の子がいる?」

勇者「そんなバカな」


魔法使い「……女の子と、4人の男が対峙している」

勇者「きっと、その4人が幹部だ」


魔法使い「はい。15人の存在が確認できます」

魔法使い「それに対して、女の子の方は8人……」


勇者「……じゃあ、今からその女の子からの合図を待とう」

魔法使い「はい」



勇者「俺には何も見えないから……」

魔法使い「大丈夫です……。そろそろ、狙撃の姿勢に入る」

勇者「ああ。……じゃあ離れるよ」

魔法使い「あっ」


勇者「どうした?」

魔法使い「……なんでもない」



魔法使い「……」


魔法使い「……」


魔法使い「……」


勇者「……」




魔法使い(少女が手を高く上げた……?)

魔法使い(親指を突き上げて……下げた!)

魔法使い(今だっ)



魔法使い「……すぅー、はぁ……んっ!」



パァンッ!!


魔法使い(ヘッドショット……。うっ……)

魔法使い(残りの三人が逃げて行く……。でも、丸見え)

魔法使い(次弾を装填……)


魔法使い「すぅー……はぁ、んっ……」


パァンッ!!


魔法使い(ヘッドショット……。はぁはぁ、はぁはぁ)

魔法使い(あ、あと二人っ……)

魔法使い「はぁはぁ……、くっ)


魔法使い(て、手が震えて……っ)


勇者「……」

魔法使い「……勇者さま」

勇者「……手が震えてる。大丈夫だ、俺がその手を支えるから」

魔法使い「……」


魔法使い(……手の震えが止まった)

魔法使い(大丈夫、撃てる!)


魔法使い「すぅー……はぁ……んっ……!」


パァンッ!!


魔法使い「あと一人!」

勇者「ああ!」


魔法使い(次弾を装填……)

魔法使い「逃げても、無駄……。丸見えだもの」


魔法使い「……すぅー、はぁ……っ!」


パァンッ!!


魔法使い「命中……。ヘッドショットです」

勇者「よくやった魔法使い……」

魔法使い「はい」


魔法使い「あと、残り11名はあの8名がほとんど殲滅したのを確認できました」

勇者「そうか」


魔法使い「……はぁはぁっ、やだ、なんで急にまた震えが……」

勇者「大丈夫だ」

魔法使い「で、でもっ!……うぅ、はぁはぁ」


勇者「俺も同じだったよ。初めて人を殺したとき」

魔法使い「勇者さまっ」


勇者「大丈夫だよ。俺もいっしょだから」

魔法使い「うぅ……うわっ、ああ……」

勇者「そうだ。泣いてもいい」

魔法使い「ひぐっ……うぅ……」



――翌日 宿屋――



魔女「――……それで、殲滅できたと」

勇者「ああ」


魔女「魔法使いは大丈夫だった?」

魔法使い「……うん」


魔女「よかった! いやぁ、心配してたのよねー」

魔法使い「大丈夫」

魔女「そっかそっか! 寝込んでないか本当に気が気でなくてね……」


勇者「それで、あの8名はなんだったんだ?」

魔女「私の知り合い。それだけじゃだめ?」


勇者「あのグループは強かった。最初から殲滅が目的だったなら、俺たちは必要なかったんじゃ」

魔女「そうでもないさ。勇者と魔法使いが名乗り出なかったら、そもそも殲滅の話しすら無かったからね」


勇者「そうなのか」

魔女「それにさ、幹部連中を手早く狙撃できたからこそ、あのグループの殲滅に集中できたらしいし」

勇者「らしい?」


魔女「あの後さ、知り合いに会いに行ったんだけどね。すごく驚いてたわよ?」

魔女「どこから狙撃していたか判らないって。流石だね」


魔法使い「……うん」


魔女「でさ、どうだった? 初めて人を殺した感触は」

魔法使い「……」

勇者「魔女さん!」


魔法使い「怖かった……。私の銃で人が死んだ」

魔女「そうだね。人っていうのは簡単に死ぬもんだよ」

魔法使い「……」

魔女「まっ、それが判ればいっかな!」


勇者「魔女さん、あなたは一体何を……」

魔女「人を殺すことに慣れちゃいけない。それはただの殺人狂だよ。あいつらといっしょになる」

魔法使い「……はい」


魔女「あーっと、それからさー……」

勇者「なんだ」

魔女「そろそろだと思うんだけど……」


コンコン

ガチャ


??「やぁやぁ! 君らが私たちのお手伝いをしてくれた狙撃手たちかな?」

勇者「誰だ、この女の子」

魔法使い「あ」

女商人「私は女商人! あのとき、幹部連中と取り引きしてた禄でもなしのリーダーだよ」

勇者「こんな少女が!?」


魔女「よっ!」

女商人「やぁ!」


勇者「まさかっ……こんな少女が」

女商人「普通はそう思うだろうな。でも私は父の後を継いだだけの、ただのひよっこだよ」

魔女「あんたがひよっこねぇ……」


勇者「それで、俺たちに何のようだ?」

女商人「単刀直入に言おう! 私たちの護衛をしてくれ!」

勇者「無理だ」

女商人「……へぇ、いきなり断るんだ?」


勇者(空気が変わった。この子、普通じゃない)


女商人「勇者さま、なんだろう?」

女商人「魔王討伐を目指すなら、次に向かうのは”海の見える丘”を超えて、”水の町”じゃないのかな」


勇者「そうだけど……」

女商人「私たちは、海の見える丘からそのまま海に出る予定なんだ。そこまでの護衛をお願いしたい」

勇者「……なるほど」


女商人「それに、私たちは馬車を5台所持している。それにも乗せてやることができる」

勇者「……」

女商人「利害の一致と条件からして、悪くはないと思うけどなー」


勇者「でも、お前らは裏の世界に生きる連中なんだろ」

女商人「その通り! でもな、だからこそ今回は上手くいった。私が手引きしたからこそ、君は役目を果たした」

勇者「ぐっ……」


女商人「ゆえに! 私は君のために働いたのだから、君は私のために働く義理がある」

女商人「さぁどうする? ここでもし君が断るようならば」


魔女「まーまー、ここは私に免じて許してよ」

女商人「むぅ……。魔女がそう言うなら……」


勇者「……くそっ! わかったよ。その任務、引き受けよう」

魔女「よっし! これで私の面子が保たれた!」

女商人「本当!? やったぁ!」

勇者「え?」

女商人「あ、ゴホンっ! ふふ、つい嬉しくてね」


勇者「魔法使いもそれでいいか?」

魔法使い「うん」


女商人「ああ、君が例の狙撃手か。少しの間だが、よろしく」

魔法使い「……」


女商人「嫌われたかな?」

勇者「大丈夫だ、こいつはただの人見知」

魔法使い「う、うるさいっ!」


勇者「い、いた!? 蹴られた!?」

魔法使い「あっ……、ごめんなさいっ! 思わず……」

魔女「あはは! それでいいんだよ!」

女商人「んふふ、これから少しの間だけ面白くなりそうだ」


魔女「さてと、私は自分の家に帰るわ」

女商人「そうか。じゃあ、私の知り合い数名を護衛につけよう! さすがに、我が兵隊は出せないからね」

魔女「それで十分よ。また何かあったら会いましょう」

女商人「ああ。頼りにしている」


勇者「……こ、これから大丈夫かな」

魔法使い「た、たぶん……」

2章 錆びた町と魔法使い 終わり
―― 
3章 女商人と魔法使い

今日はここまで
次はテンションが続けば早めに投稿できるかも
一応、全部で12章を予定。だらだら続けても終わらないし
では、失礼

投稿再開です

3章 女商人と魔法使い


※ネタバレ注意※
~三行でわかる前回までのあらすじ~













1章 勇者と魔法使い

  ①勇者が鉄砲を持ってた
  ②魔女に使い方を聞いたら、魔法学院に使える人がいるかもと言われた
  ③鉄砲を使える魔法使いを仲間にした

2章 錆びた町と魔法使い

  ①旅先で魔女と再開した
  ②悪い人を倒した
  ③女商人とその旅団の護衛を頼まれ、少しの間いっしょに旅をする ←今ここ


――草原――


ガラガラガラ
ヒヒーン


金髪「――んで、なんで俺は男といっしょの馬車に乗らなくちゃならねぇ……」

勇者「そんなこと言われてもなぁ」


金髪「錆びた町を出て、早3日。あーあー、技師のおっさんが羨ましいぜ」

勇者「魔法使いといっしょにいるから?」

金髪「今更な事を聞くなよな……。男同士で馬車に乗って何が楽しいってんだ!!」

勇者「あ、あはは……」



女商人「おーい金髪! こっちの馬車まで叫び声が聴こえてるぞー!」

金髪「すまないお嬢ー!」


金髪「あちゃー、真ん中にいるお嬢に怒られちまった」

勇者「……馬車を5台。それぞれに二人づつ乗っているんだな」

金髪「まぁあれよ。マンツーセルってやつ!」


勇者「マンツーセル?」

金髪「まぁ簡単に言えば、二人一組での行動厳守ってやつよ」


金髪「あーあ、護衛には女の子もいるって聞いたのになぁー……」

勇者「どれだけ残念がってるんだよ……」

金髪「そりゃそうっしょ!? せっかくの可愛こちゃんなのにぃっ!」

勇者「あー」


勇者「俺だって、女商人さんに言われてこの馬車に乗ってるだけなのに……」

金髪「すまんすまん! ま、俺だってお嬢の一味だ、客人に失礼なことをしているつもりはないよ」

勇者「どうだか」


勇者「それにしても、4台の馬車で1台の馬車を囲むような形とは珍しい」

金髪「真ん中のお嬢と積荷を守るためだ。それに、場合によっちゃあ直列にも横裂にもなるんだぜ」


勇者「8人という大所帯で旅をしているんだな」

金髪「ああ。お嬢……ああ、頭の女商人と、それに付き従う7人の男女どもだ」


勇者「8人もいたら大変じゃないのかな」

金髪「おいおい、冗談を言うなよ。8人にはそれぞれちゃんとした役職があるんだからな」

勇者「そうなのか」


金髪「俺はまぁ、突撃隊長的な存在だな」

勇者「突撃隊長って、それはまた大変そうだな。やっぱり敵に向かって先陣を切るのか」

金髪「そういう訳じゃないんだけど……。ああ、あれだ! 勇者のお供的な表現だと盗賊ってやつ!」

勇者「……なるほど」

金髪「納得してくれた? 危ない場所とかあったら、速攻で偵察とかに行くわけよ!」


勇者「やっぱり大変そうな役職なんだな」


金髪「でも俺は気に入ってるんだぜ? 俺の働きで仲間の危機を回避できるって思ったらな!」

勇者「でも、じゃあ何で1番前なんだ?」

金髪「そりゃあもちろん、敵の気配がしたらすぐにお嬢に知らせるためだよ」

勇者「お? でもそれだったら、女商人さんといっしょの馬車の方が効率がいいんじゃないのか」


金髪「お嬢の馬車には、俺たちの中で一番強い人が護衛として乗ってるんだよ」

勇者「なるほど、確かに護衛は大事だもんな」

金髪「お嬢がいなくなると、この旅団はめちゃくちゃになっちまうからな」

勇者「リーダーがいなくちゃそうなるよな」

金髪「その通りだよ」


勇者「……しかし、この3日間、平和そのものだな」

金髪「……へぇ、そう思うのか勇者」


勇者「どういうことだ?」

金髪「えっとさ、気を悪くしないでくれよ?」

勇者「ああ、わかった。大丈夫だ」


金髪「とっくに俺たちの馬車は狙われているよ。気付いてなかったのか?」

勇者「え?」

金髪「それも錆びた町を出たその時からな」

勇者「う、嘘だろ?」


金髪「これは本当」

勇者「でも敵の気配なんて……。それに、3日も何もしてこないのはどうしてだ」

金髪「あー、あんたって意外と脳筋タイプなのかな?」


勇者「いや、そんなはずは……」

金髪「じゃあ簡単、経験不足だ! これからの伸び代に期待ってとこかね」

勇者「そんなことよりも、敵はどこに?」

金髪「んー、多分だけど数km後方にいるかもな」


勇者「いや、俺たちの馬車は一番前にあるんだぞ。どうやって後方の敵を見つけられるんだよ」

金髪「最初は出発のとき。きな臭い連中がもういたな」

勇者「じゃあどうしてそれを女商人さんに伝えないんだ?」

金髪「とっくに伝えているよ」

勇者「なっ」


金髪「そんで、どうやって後方の敵を見つけるか? んなもん簡単だ、キャンプんときに見えた」

勇者「……なんて奴だ。じゃあ、この話しは本当なんだな」

金髪「こんなバカらしい嘘付くかよ」

勇者「でもおかしいだろ。どうして3日もほったらかしにしているんだ」


金髪「あー……。確かに勇者、あんたは俺らより子供だ。だからすぐに俺らのような大人に聞きたがるのは判る」

金髪「でもな、これくらいの問題は自分で答えを導き出しな。他の人にも言われなかったか?」


勇者「い、言われた……」


金髪「やっぱり。もう少し考える力を身に付けるんだな」

勇者「ぐっ……」

金髪「あはは、なんかやっと歳相応の顔になったな!」


勇者「……だが、女商人さんは俺よりも子供だぞ」

金髪「お嬢は違う。ありゃあ、子供の顔をした悪魔だ」

勇者「悪魔?」

金髪「おっと、このことは忘れてくれ」

勇者「……あ、ああ」


金髪「ちょうどいい暇つぶしだ。どうして敵はこの3日間、俺らを襲って来ないんだろうなー」

勇者「……隙を伺っていた?」

金髪「隙なんて俺らにはねぇよ」

勇者「確かに……」


金髪「なんでだろうなぁ、くふふっ」

勇者「性格悪いなあんた……」


金髪「いやいや、勇者の方もいつの間にか敬語じゃなくなってたし」

勇者「ん、そういえば……」

金髪「あれか、仲良くなれた人とは敬語使うことが無くなる的な!」

勇者「んー……。そうかもしれないな」


金髪「いやぁ、あまりに自然にタメ口になってたからびっくりした!」

勇者「えっと、すまない」

金髪「いやいや! 俺らとしてはそっちの方が気が楽でいい」

勇者「そうか? それならこのままで……」

金髪「あいよ」


勇者「……それにしても、3日間、どうして襲って来なかったのか全然わからない」

金髪「まだ悩んでいたのかよ!」


勇者「そんなに簡単なことなのか?」

金髪「ちょー簡単! 難しく考える必要まったくなし!」

勇者「……」

金髪「あーもう……。しゃあない、ヒントだ。かつ上げはどこでする?」

勇者「そりゃあ、人目の付かない……」


勇者「あ」


金髪「そう、たぶん正解!」

勇者「なんだ……。人を襲うときに堂々と目立つようなマネはしないってだけか」

金髪「ヒントを与えたらすぐに答えに辿り着いたな。やっぱり勇者は経験不足ってだけってこったぁ」


勇者「ああ、ありがとう」

金髪「いいよいいよ。でも、そろそろ襲ってくるかもしれないから気を付けておくんだぞ」

勇者「……了解」




――別の馬車――



技師「……」

魔法使い「……」



魔法使い(た、助けて勇者さまっ! 私、死にそう……。知らない人とこんなにいっしょなんて……っ)


技師「なぁ嬢ちゃん」

魔法使い「は、はい……っ」


技師「そんな緊張すんなよなぁ。俺みたいなオッサン相手によ」

魔法使い「……」


技師「嬢ちゃんのその鞄。何が入ってるんだ?」

魔法使い「……銃」

技師「銃? 鉄砲のことか?」

魔法使い「うん」


技師「そりゃあいい。見せてくれ」

魔法使い「えっと……」


魔法使い「……こ、これ」

技師「ん、鞄の中は綺麗に整理されてるけど、これが銃なのか?」

魔法使い「そう」


技師「ああ、なるほどねぇ。分解している状態か」

魔法使い「っ!」

技師「よく判ったな、って顔してるな。そりゃあこれくらいわからぁ、俺はこの旅団の技師屋なんだからな」


技師「もう一人似たような奴が旅団にいてるが、俺の場合は魔道具を専門としている」

魔法使い「……」


魔法使い「あの……」

技師「ん、なんだ」

魔法使い「これ、少し見てもらっても」

技師「可愛い嬢ちゃんの頼みだ。喜んで」


魔法使い「じゃあ組み立てる」

技師「まぁ待て……。まずはそのまま見せてくれ。おっと、馬の手綱は任せたよ」

魔法使い「はい」


技師「ふぅむ……。なるほどねぇ、こりゃあ珍しい」

魔法使い「……」


技師「嬢ちゃん。こりゃあ元はただの鉄砲だ。純粋な魔道具の類じゃねぇな」

魔法使い「え?」

技師「まさか……。こんな事ができるのか……。ふむこりゃあすげぇ」

魔法使い「……」


技師「本当によぉ……。なぁ、これどこで手に入れた?」

魔法使い「勇者さまの……。故郷の祭壇かららしい」


技師「ふーん、なるほどねぇ」

魔法使い「でも、本には魔道具って……」

技師「絵は似ているものはあるだろうね。でも、実際はどうだった?」

魔法使い「……違うところがあった」

技師「そりゃそうだ」


技師「こりゃあね、ライフルっていう銃の一つ」

技師「遥か昔の、それも魔物っていう存在が居なかった頃のもんだ。機械文明の器具かもしれねぇな」


魔法使い「機械文明……」


技師「そう。伝説のね。嬢ちゃんも聞いたことくらいはあるだろ」

魔法使い「絵本で」

技師「あはは、絵本か! そりゃあおもしろい!」

魔法使い「……」


技師「今の技術じゃもう同じものは作ることができないと言われている」

技師「そりゃあそうだ。今は手のひらサイズの銃を作るのにも、かなりの労力が必要なんだからな」


魔法使い「魔術を使うと色々と変わる」

技師「火炎系とか爆発系の魔法使ってだろ」

魔法使い「そうだけど……」


技師「よく判ったな、って感じかい? この銃、ライフルってやつに無理やり魔法回路をねじ込んでやがる」

技師「しかも火炎系魔法が効率よく作用するようにだ」

技師「でも怖ろしく緻密に構築された回路だ。その回路は芸術ってだけじゃ足りない、恐らく神の領域じゃねぇか」


魔法使い「この銃が……」


技師「そうだ。俺は今まで色んな魔道具を見てきたが、ここまで歪なものは初めてだ」

魔法使い「いびつ……」

技師「それは、ライフルっていう銃を基準すると進化はしている」


技師「でも、魔道具としては出来損ないだ。立派過ぎる出来損ない」

魔法使い「……出来損ない、この子が」

技師「なんだ、なんか不満そうだな」


魔法使い「……」


技師「いいだろう。魔道具というものについて勉強だ。そもそも、魔道具とは何だ」

魔法使い「魔力を使って使役する道具」

技師「そうだ。でもその銃の場合は近しいけど正解じゃないな」


技師「魔道具っつうのは、”魔力を込めるだけで使える道具”だ。その銃は、”魔法を使わないと使えない道具”なんだ」

魔法使い「……あ」


技師「だから言ったろ、それは魔道具としては出来損ないだって」

技師「魔道具の利便性は、魔力を持つものなら誰でも簡単に使えるところなんだ。それは魔法を精密に、かつ多様に使わないといけない」

技師「不便ものだ」


魔法使い「……そう」


技師「ま、そう落ち込みなさんな。それがあったから、あの商談で幹部の奴らを殺し尽くせたんだからさ」

魔法使い「……」


技師「おっと、すまん。まさかそんな顔するなんて」

魔法使い「別に」


魔法使い「一つ教えて」

技師「なんだ?」


魔法使い「機械文明の器具をどうして」

技師「ああ、そりゃあな……」



――敵だ、敵が現れたぞっ!!



技師「おおっと、この話しは後ででもいいか?」

魔法使い「……うん」




女商人「みんな戦闘準備だ。私の積荷に指一本触れさせるな!!」

一同「おう!!」


女商人「金髪! 敵の数は!」

金髪「だいたい15、6人くらい」

??「違う。14人だ」

金髪「うわー、俺恥ずかしいじゃねぇかー!」

技師「ははは!」

女商人「こらこら、談笑なんてしている暇はないぞー」


勇者「なんでこの人たち、こんな状況で楽しそうなんだ」

魔法使い「……とりあえず、銃を組み立てます」


女商人「とりあえず、数名は突撃ー! 残りは弓矢構え!」

技師「あいよー」

金髪「じゃあちょっくら俺はつっ込んでくるわ」


女商人「魔法使いー」

魔法使い「は、はい」

女商人「とりあえずさ、一人ヤっちゃって」

魔法使い「え」


勇者「お、おい!」

女商人「んー? いいか、お前たちは今、私の護衛だ。ぐだぐだ抜かさず働け、殺すぞ?」

勇者「なっ!?」


魔法使い「ゆ、勇者さま。私、大丈夫だから」

勇者「魔法使い……」

女商人「勇者もつっ込んできなよー。はいはい、その剣はお飾りじゃないんでしょ?」


勇者「好き勝手にっ」

金髪「はいはい。行くぞ勇者」

勇者「金髪っ!」

仲間A「先に行くよ」

金髪「あー、おいてくなよー!」

勇者「くそっ……、行けばいいんだろう!」


女商人「さてさて、敵までの距離は?」

魔法使い「え、えと……」

女商人「いいから早く言う!」

魔法使い「およそ1km」


女商人「それはあなたの射程圏内?」

魔法使い「はい」


女商人「じゃあ撃つ準備をしてくれ」

魔法使い「……わかった」

技師「……ん、その銃……」


女商人「前衛部隊、計三人が敵と接触する寸前に、その銃とうちらの弓矢で先制攻撃だ」

魔法使い「どうして」

女商人「ある程度引き付けないと、逃がしちゃうでしょ」

魔法使い「……」


女商人「んふふ、君の思う通りだ。皆殺し、これ以外はあり得ないね」

魔法使い「……」




女商人「そろそろかな」

女商人「銃、弓矢、放て!!」


技師「あいよー」

仲間B「任せて」

魔法使い「すぅー……はぁ、んっ」



シュシュシュシュ
パァンッ!!



女商人「いよっし! さぁ、やりたまえよ前衛諸君。さぁ魔法使い、第2撃だ!」

魔法使い「そ、装填がまだ」

女商人「なっ!? くっ、あの時も狙撃が遅いと思ったけど、まさか一発ずつしか撃てないのか……。やばいな」


金髪「うおおお! なんかお嬢が俺に期待している気がする!」

勇者「無駄口叩かず、行くぞっ!!」


金髪「おらおら、おせぇんだよ!」

勇者「ナイフか……。おりゃあー!」


金髪「うおっと、ほいよ! 雷魔法だ!」

勇者(次は投げナイフ? それから魔法?)


金髪「しつこいっての!」

勇者(ボウガン!? どれだけ多彩な戦い方を)


金髪「なんでもいいけどよぉ、俺に見蕩れんなよな! わはは!」

勇者「ああ! こっちは任せろ!!」

金髪「任せろ、ねぇ……?」


勇者「そこだー!」

敵C「剣すじが見え見えなんだよ!!」

勇者「なに!?」


敵D「おらよ、風魔法!」

勇者「効くか!」

敵D「今だぜ敵C」

敵C「ありがとよ!」

勇者「しまっ」


金髪「あいあーい、残念でしたー」

敵C「ぐはっ……!?」

勇者「あ、助かった金髪!」

金髪「いやいや、俺的には助けておいた方がいいかなって思ってね」


勇者「いくぞ!」

敵D「くそがっ、風魔法! っとおまけだ!」

勇者「ぐっ! ひ、卑怯な……砂で目潰しだと」

敵D「甘っちょろいんだよ! でも風魔法食らっても無傷ってのは怖いがな……。とにかく死ね!」

勇者「何を!」


敵D「……ぐふっ」

勇者「はぁはぁ……。何とかなったか」


金髪「なぁに一人相手に手こずってんだよ。目潰しなんて基本だろ」


パァンッ!!


金髪「おいおい、魔法使いはやっと援護射撃か。遅いよなぁ」



………夜


女商人「んふふ、我々の完全勝利だ!!」

一同「おおー!!」


女商人「ひよっこが二人足を引っ張ったが、まぁいいだろう」


勇者「……」

魔法使い「……」


女商人「長ったらしく私たちを追い回した山賊どもは消え去った! さぁ飲め、食え!」

技師「いいねぇ。酒がやっと飲める」

金髪「技師さん、あんま飲み過ぎなんでくれよな! 後の世話はいつも俺なんだから。そろそろオッサンばっかりも嫌だぜ」

技師「ははは、違いねぇ!」


ワハハハ


勇者「ひよっこ……俺が……」

魔法使い「勇者さま……」


女商人「なんだなんだー、私がさっき言ったこと気にしているのか?」

勇者「女商人さん……」

女商人「別にさん付けいらないよ。私のほうが年下だし」

勇者「そうか……」


女商人「遠目で君の戦いは見せてもらった。戦闘能力自体は低くないね」

女商人「基礎技術もしっかりとある。ただ、足りないのは経験と、敵との戦い方だ」


勇者「戦い方?」

女商人「その通り! あんなにバカ正直な戦い方だといずれ頭打ちに合うと思う」


勇者「じゃあどうすればいいんだ」

女商人「それは慣れだね! 君はもっと、喧嘩のような戦い方と戦術の練り方を鍛錬すればいい」

勇者「だが、今まで魔物とかと戦ってきたぞ」


女商人「そんな知能の低いような奴ら相手にしていても自慢にならない」

女商人「それに雑魚ばかり相手にしていたんじゃないか? なら、ああいう剣になるのもうなずける」


勇者「女商人、君は一体……」

女商人「私はただの商人だよ。年端もいかないただのガキだ」

勇者「……」


女商人「そうだ、おーい金髪ー!」

金髪「んー、なんすかお嬢」


女商人「いい機会だし、お前この勇者を鍛えてやってくれ」

金髪「お嬢の頼みなら全然いいぜ!」

勇者「なに!?」


女商人「何度も言うけど、勇者の身体能力はそこそこある。いや、かなり優秀だ」

女商人「でも、それに見合う戦い方、戦術が足りない」

女商人「そこでそこの金髪だ! こいつの戦い方はおもしろいぞ、きっと参考になる」


勇者「……どうしてそこまで俺に」

女商人「んー。ただの気まぐれ。しかしまぁ、護衛を頼んだのにまさかこうなるなんてね」


勇者「……」

女商人「おいおい、こんなことでプライドが傷ついたとか言わないでくれよ?」


女商人「それと魔法使い」

魔法使い「え」

女商人「その装填数、なかなか役に立たないな」

魔法使い「……」


技師「なぁお嬢」

女商人「ん、なんだい技師」

技師「その銃、俺なら改良できるかもしれねぇぞ」


魔法使い「本当?」

技師「ああ、嘘は言わねぇ」


女商人「勇者には金髪。魔法使いには技師。それぞれに指導を頼もう。君らはもっと強くなるべきだ」

勇者「……わかった」

魔法使い「はい」


……深夜


勇者「……くそ」

勇者「俺の剣が弱いなんて……初めて言われた……」

勇者「…………っ」


魔法使い「勇者さま、眠れないの?」


勇者「魔法使いか。どうしたんだ?」

魔法使い「実は私も眠れなくて……」


勇者「……なぁ」

魔法使い「はい」

勇者「今日の戦闘、また人を殺したけど……大丈夫だった?」

魔法使い「……何も感じないと言えば、嘘になる」


勇者「そうか」

魔法使い「でも、震えることはなかった……。勇者さまも戦っていたし」


勇者「俺たち、今日はあまり役に立っていなかったみたいだな」

魔法使い「……」


勇者「俺だってさ、故郷や王国ではそこそこ強者扱いだったんだ」

魔法使い「……はい」

勇者「それなのに、今日は足を引っ張るし……危うく一太刀浴びそうになった」


勇者「それでさ……正しい戦い方、っていうのか。俺はそういうのに拘り続けていたのかなって」

魔法使い「それでいいのでは」

勇者「……」


魔法使い「勇者さまは勇者さまの戦い方があります」

魔法使い「だから、そんなに弱気にならないで」


勇者「……そうだな。すまん、なんか弱音を吐いてしまったね」

魔法使い「わ、私なんかでよかったらいつでも」

勇者「いいや、大丈夫。もう二度と弱音なんて吐かないよ」

魔法使い「そう……」


勇者「明日からさっそく鍛錬だな」

魔法使い「はい。技師さんが、私の銃を改良してくれると」

勇者「改良? 魔道具を?」

魔法使い「……実は、魔道具ではなかった」


勇者「なんだって」


魔法使い「詳しく説明するとちょっと長くなるのですが……」

勇者「ん、そっか……。それならまた今度聞こう」

魔法使い「うん」


勇者「さてと、じゃあ俺はそろそろ眠りに行くよ」

魔法使い「はい。私も寝ます」


勇者「明日から頑張ろうな、お互い」

魔法使い「そうですね」




女商人「……んふふ」


――翌日 草原――
キャンプ中


金髪「さてさて、じゃあさっそく始めようぜ!」

勇者「ああ」

金髪「って待て待て! 普通に剣での勝負じゃ俺に勝ち目ねぇよ!」

勇者「え?」


金髪「ルールが三つだ」

金髪「一つ、俺が絶対に先に攻撃する」

金髪「二つ、先に攻撃を当てたほうが勝ち」

金髪「三つ、勇者が十五の呼吸をしたら時間切れ」


勇者「……わかった」

金髪「おっし! とりあえず、剣じゃ危ないから木刀で頼むわ」


金髪「じゃあ行くぜ!」

勇者「こい!」


金髪「雷魔法!」

勇者「足を狙ったつもりか? ちょろい!」


金髪「飛んで避けたな? はい、そこへ石をぽいぽいっと!」

勇者「え? いたっ!」


金髪「はい俺の勝ちー!」

勇者「そ、そんなのは卑怯だぞ!」


金髪「戦闘に卑怯もくそもあるか。それに、これはルール内でも戦闘だぞ」

勇者「くっ」


勇者「もう一度だ!」

金髪「はいはい」


金髪「じゃあ行くぞー、雷魔法!」

勇者「同じ手を何度もそう喰らうか!」


勇者「横に移動すればっ」

金髪「はい残念でしたー!」

勇者「広範囲魔法だと!? ぐああ」


金髪「雷魔法を地面すれすれ広範囲に飛ばしたんだ。この魔法だと、魔力消費も少ないし、多数の相手に役立つ」

勇者「ちくしょう、2連敗……」


金髪「しかし……無傷か。本当に基礎能力は異常なまでに高いな」

勇者「こんなんでも修行だけはしっかりしていたからな!」

金髪「なるほどねぇ、納得」


金髪「まずは、今の俺の攻撃パターンを攻略してみるんだな」

勇者「こんなの、あと数回もすれば攻略できる!」



~数十回後~



勇者「くそぉ、どうして一度も勝てない!」

金髪「はぁはぁ……。そ、そろそろ止めよう。俺の体力がもたないっ」


勇者「なんでだ……。横っ飛びじゃだめだから、後方に移動すると次は近寄れないし」

金髪「その間に、ルール三の十五の呼吸が終わるもんな」

勇者「……むぅ」


金髪「じゃあルールを変更してやろうか?」

勇者「いらない。この条件で勝たないと、俺の成長はないんだろ?」


金髪「当たり前だぜ。今の勇者にとって、大きく不利な条件をあえて作ってんだ」

金髪「でもまぁ、きっとうちの仲間なら一発でこの戦術を攻略するだろうな」


勇者「一発で?」

金髪「きっと俺、ぼっこぼこにされるわ」

勇者「まじかよ……」

金髪「マジもマジ、大マジ!」


勇者「俺って……一体……」

金髪「こればっかりは経験地がモノを言うかもね。例えば、ほら! 剣を投げるとかしてみたら?」


勇者「そんなことをして、もし他に敵がいたら俺は丸腰で相手しなくちゃならない」

金髪「おお、そこまでは判ったんだ」

勇者「当たり前だ。自分の武器は手放さない、戦いの第一条件だ」

金髪「うん、基礎はしっかりしているな」


勇者「……俺も何か投擲武器を持った方がいいのかな」

金髪「剣を片手に何か投げられるのかな」

勇者「無理だな。隙が大きすぎる」

金髪「俺もそう思う。じゃあ剣以外の武器は? そうだなぁ、例えば弓とか槍とか」


勇者「弓は却下だ。補助の武器としてはいいけど、主力にしてしまうと前衛がいなくなる」

勇者「あと……、槍だって金髪に近づけないなら意味がない」


勇者「それに槍を今から練習しても、即戦力にはならないからダメだ」

勇者「あとさ、金髪を倒す戦術を考えるのが今の俺の課題なんだろ?」


金髪「そうだ。よかったぁ、俺の提案を一つでも受け入れるようなら、次の模擬戦でぼっこぼこにしようと思ってた」

勇者「そ、そうなのかー……あはは」


金髪「今、勇者に足りないのは戦術だ。如何にして、その場その場での悪条件を覆すか」

金髪「これから先、ずる賢し魔物だって多く出現するだろう」

金髪「一定の条件化で、自分の能力をどれだけ発揮できるか。ま、勇者ならすぐ思いつくだろう」


勇者「はは、買いかぶりすぎだ」

金髪「いやいや、そんなこたぁないよ! たぶんもうすぐ思いつくんじゃないかな」

勇者「何をさ」

金髪「俺の戦術を攻略するための、自分の能力の生かし方的なものをね」

勇者「……頑張ってみるよ」


――一方、 魔法使いサイド――


技師「さて嬢ちゃん、その銃を組み立ててくれ」

魔法使い「……はい」




魔法使い「できた」

技師「……やっぱりかぁ」

魔法使い「……」

技師「分解していた状態じゃ気付かなかったが、そりゃあライフルに変な改造がしてる」

魔法使い「ライフル……変な改造?」

技師「ライフルってのは、その銃の名前だ。改造についてはゆっくりと説明するぞ」


技師「最初その銃を見たとき、変だと思ったんだ。ライフルなのにどうして一発づつしか撃てないのかなぁってさ」

魔法使い「でも、装填はここ……」


技師「それがまずおかしい。普通、銃ってのマガジン……ああいや、弾倉っていうものがあるんだけどさ」

技師「その銃には弾倉がない。代わりに、変な所に穴を開けられている」


魔法使い「うそ」

技師「本当。通りで、装填にも時間が掛かるわけだ」

魔法使い「……」


技師「普通の銃は、そんな横穴から弾を入れたりはしない」

魔法使い「……」


技師「ちょっと時間は掛かるけど、弾倉なら俺が作ってやろう」

魔法使い「……いいの」

技師「ああ。むしろ、機械文明の器具に触れられる方が幸せだ」


魔法使い「あの」

技師「ん、どうしたぁ?」


魔法使い「どうしてこれが機械文明の器具だって……」

技師「ああ、そうだったな」


技師「機械文明ってのは、俺たちが生まれる遥か昔の文明だ。それは知っているな?」

技師「俺はその文明のことをずっと調べている。だからまぁ、ちょっと詳しいんだ」


魔法使い「それで?」


技師「ああ。そのライフル銃っていうのは、正確にはスナイパーライフルって言うんだが」

技師「その銃の特徴は、異様に長い銃身だ。あと、全部が鉄で出来ている。」


魔法使い「うん」


技師「それに何より可笑しいのは……、この銃の弾を見せてもらっていいかい?」

魔法使い「これ」


技師「ああ、やっぱりここが一番変だ。薬莢の無い弾が普通、前に飛んでいくはずがねぇ」

技師「ただの鉄の塊が、爆発魔法程度であんなに遠くに飛ぶはずがない」


魔法使い「や、やっきょう?」

技師「……まぁ知らなくてもいい。とにかく、その銃はすげぇってことだ。きっとこの世には2つもないし、使える人も2人はいない」


魔法使い「……」

技師「しかし、装填に時間が掛かるのが弱点だ」

魔法使い「うん」

技師「あと、使い勝手が非常に悪い。多種多様な魔法を精密に使えないと、その銃は活用できない」


技師「だからよ、その銃を使える嬢ちゃんは、めちゃくちゃすげぇってことだな」

魔法使い「私が……」


技師「だから、俺が弾倉を作ってそれに装着できるようにしてやるよ」

魔法使い「できるの?」

技師「任せろ。分解した状態、組み立てた状態を考えると、作ることはできそうだ」


魔法使い「……お願い」

技師「任せろ!」

魔法使い「ありがとう」


技師「でもよぉ、こんな凄い銃を知り合ったばかりのオッサンに託してもいいのか?」

魔法使い「いい。信じてる」


技師「おう、オッサンでもやるときゃやるってとこ、見せ付けてやるぜ!」


――3日後――


勇者「くっそーー!! また負けたーー!!」

金髪「おいおい、どんなに素早く動いても雷より速く動けるはずないだろ……」


女商人「んふふー。休憩中のキャンプだってのに、よくやる」


金髪「お、お嬢じゃん! うぃっす」

女商人「うぃっす! どうだー?」

金髪「んー、まぁまぁかな」


勇者「どうすりゃあいいんだよー!」

女商人「おーい、何叫んでるんだ。みっともなーい」

勇者「……なんだよ」


女商人「いやはや、悔しそうじゃないか」

勇者「悔しいよ。何回戦っていると思ってるんだ」

女商人「じゃあルールを破ればいいじゃない?」

勇者「破るか。そんなマネ、この鍛錬の意味すらなくなる」


女商人「マジメだ、こいつマジメだっ!」

金髪「そこがいいんじゃないんすか?」

女商人「ふーん。あ、そうだ。今日は勇者を私の馬車に乗せるから」

金髪「え? ええ!? いやいやいや、そんなことお嬢の近衛が許さないじゃ!」


女商人「既に話しはつけたよ。すっごく嫌な顔されちゃった!」

金髪「そりゃそうでしょ……」


女商人「ということだ、今日は私の馬車に乗れ」

勇者「……わかった」


魔法使い「へぇ」


勇者「魔法使い?」


魔法使い「女商人さんと同じ馬車に乗るんだ……」

勇者「え、なんでそんな睨むんだ?」

魔法使い「別に……。じゃあ」

勇者「ちょっと、何か用があったんじゃ?」


勇者「あ、行ってしまった」


女商人「ありゃりゃ、これはまぁ……別にいっか!」

金髪「お嬢……おいおい」



――女商人の馬車――



女商人「んふふー」

勇者「重い……」


女商人「えー、いいだろー! 膝の上にくらい乗せろよー」

勇者「どうしてこうなった……」

女商人「馬車に乗っているとな、お尻が痛い。それに、私は子供だ。これくらい特権だと思わないかい?」

勇者「あぁ……。全然子供っぽくないけどな」


女商人「んふふ、どうやら魔法使いがこっちを見ているぞ。ほら、隣の馬車だ」

勇者「え?」



魔法使い「……っ!」



女商人「おっと、そっぽ向いてしまったな」

勇者「なんでだろう」

女商人「はは、鈍感か!」

勇者「ん?」


女商人「それで、そうだー? 金髪との鍛錬は」

勇者「全然勝てない……」

女商人「どうしてかなぁ。金髪の戦術は、雷魔法と投石だけだろ?」

勇者「俺の隙をきっちりと突いてくるからなぁ」


女商人「ふーん。勇者はそれをどうするつもり?」

勇者「もちろん、基礎体力を上げて……って、だめだよな」

女商人「なんだ、判ってるんだ」

勇者「あれだけ負ければな……」


女商人「じゃあさ、力尽くで捻じ伏せればいいんじゃないかなぁ?」

勇者「力尽くで?」


女商人「どうせ考えても、似たようなことしか浮かばないと思うぞ。勇者の場合は」

勇者「……確かに」


女商人「お、なんだか素直」

勇者「もうプライドとか云々言ってられないっていうか」

女商人「それがいい。プライドなぞ犬にでも食わせればいいさ」

勇者「ああ」


女商人「とにかく、戦術で敵わないなら、敵うところで戦え」

勇者「……俺が金髪よりも勝っているところ」

女商人「いっぱいあるだろ? それにちょこっと戦術を加えるだけで、勇者は勝てる」

勇者「なんだよ、結局は戦術か」


女商人「当たり前である! 戦術なき戦闘に勝ち目などない!」

女商人「戦力で負けているならば、戦術で戦え! 戦術で負けているなら、戦力で戦え!」


勇者「どちらとも負けていたら?」

女商人「逃げろ! 逃げるが勝ち、ってやつ!」

勇者「なるほどな、違いない」



――魔法使いサイド――


魔法使い(何を話しているんだろう……。それに、女商人さんを膝の上なんかに乗せて)


技師「気になるのかー?」

魔法使い「っ! い、いえ……」

技師「ふっふっふ、そうか?」

魔法使い「なにか」

技師「い、いや何でも……」


技師(女ってやっぱ怒らせると怖いねぇ」


魔法使い(勇者さまもあんなに鼻の下を伸ばして……)


金髪「敵だーーーー! 魔物が現れたぞーー!!」




女商人「あーあ、気楽な旅って訳にはいかないもんだ」

勇者「じゃあ俺は行ってくる」

女商人「頑張ってくれたまえ!」




技師「……さてと、急ごしらえだけど、役に立つかな」

魔法使い「きっと大丈夫」




女商人「では諸君、状況開始だ」





女商人「――なるほどなるほどー……」

技師「どうだ。望遠鏡で何か見えたか」

女商人「ありゃリザードマンだ。剣と盾を持ってる」

技師「ほほう。じゃあ、例の勇者くんがどれだけ成長したか見られるな」

女商人「そうだな」


技師「さて、嬢ちゃん。仕事だ」

魔法使い「……うん」




勇者「おらーー!!」

リザードマンA「グアアっ!!」

勇者「こしゃくな!」

リA「グアグアっ!!」


金髪「おいおいおーい、3匹そっちいったぞー」


勇者「うおりゃー!」

リA「……っ!」

勇者「ひ、退いた!?」

リBC「グアアア!!」

勇者「まさか、このリザードマンは陽動か!?」


パァンッ!!
ブシュッ


リC「グア……」

勇者「魔法使い!」



………

魔法使い「……すぅー、はぁ……んっ!」

………




パァンッ!!
ブシュッ



リB「ガハ……」

勇者「次の狙撃が早い!?」



………

魔法使い「残り3発……」

技師「いいねぇ! 全部で5発、当てろよ」

魔法使い「……うん」

………



勇者「……俺も、負けてられない!」


リA「フーフーっ」

勇者「……」


勇者(こいつは今、1匹。……何を仕掛けてくる!?)


リA「グアアア!」

勇者「なにっ、剣を投げてきただと!?」


リA「ガアアアっ!!」

==リザードマンは突撃した==


勇者「くっ……」


リA「……ガ?」

勇者「後ろだよ、ばーか」

リ「グア!?」


金髪(やるねぇ)

金髪(剣を投げてきたリザードマンは、そのまま盾を構えて突進)

金髪(そして、盾で勇者を押しつぶそうて、そのまま爪と牙で切り裂こうとしたんだろうけど)

金髪(勇者は投げつけられた剣を、受け止めなかった。剣の横をすり抜けるように避けて、そのままリザードマンと入れ違いか)


金髪「でも、そっからどうすんのさ。お互い距離が開きっぱなしだぞ」


勇者「……おりゃあ!!」

==勇者は自分の手に持つ剣をリザードマンになげつけた==


金髪「おい!?」


リA「グアっ!」

金髪「そりゃ避けられても仕方ないぞ!!」


勇者「これで終わりだーー!!」

==勇者は剣でリザードマンをこうげきした==


金髪「は!? あいつ、どっから……」


勇者「おいおい、俺に見蕩れてると怪我するぞ」

金髪「なに? っと、うお!? あっぶねぇ!!」


リD「グアアアア!!」


金髪「とにかく、さっさと片付けるぞ」

勇者「おう!!」



パァンッ!!



…………――――




女商人「状況終了だ。私たちの大勝利だ!!」

一同「おおー!!」


金髪「なぁ勇者、一つ教えて欲しい」

勇者「なんだ?」


金髪「最後のあれ、剣を投げたのに剣があった。いや、何を言ってるのか理解できないと思うけどさ」

勇者「ああ、あれは簡単だぞ。リザードマンが投げてきた剣を掴んで、それを投げ返しただけ」

金髪「なっ!? め、めちゃくちゃだろ……」


勇者「いやさ、今までなら敵の武器を使うなんて考えなかったけど」

勇者「使えるものは使った方がいいかなって思って」


金髪「ああ、それでいいんじゃねぇか? 俺はそういうの好きだぞ」

勇者「そうか」


金髪「臨機応変かつ、その場の状況をどれだけ上手く使えるか。重要だな」

勇者「ああ。ずっと金髪との模擬戦を繰り返したおかげかな」

金髪「おっ、嬉しいことを言ってくれるじゃねぇか!」


勇者「金髪との模擬戦で、戦術やら何やら色々考える機会がたくさん有ったからかな?」

勇者「なんかとっさに、投げられた武器も何かに使えるんじゃないかな、って思った」


金髪「んで、結局のとこは使い道が考え付かなかったから投げたってとこか」

勇者「おお、その通りだ!」


金髪「……おいおい」

勇者「でも、少し何かわかった気がする」





技師「改良した銃の性能はどうだった」

女商人「ああ、今回の狙撃は素晴らしかったな!」

技師「どうしてお嬢が答えるかねぇ」

女商人「んふふ、ははは!」


技師「で、どうだったかな」

魔法使い「……装填の手間が省けた」

技師「そうかい! そりゃあ良かった」

魔法使い「ありがとう」


技師「いやいや、それを弄るのはすごく楽しかったぞ」

女商人「確かに。ほとんど寝てないんじゃないのか?」

技師「がはは! 実はそうなんだ。もう眠い。寝る」

女商人「おお、あの技師が疲れ果ててるとは!」


勇者「なぁ金髪。明日模擬戦しよう」

金髪「おっ、なんか対策でも浮かんだのか?」

勇者「ああ。きっと勝てる!」


魔法使い「勇者さま」

勇者「おお魔法使いか」

魔法使い「あの、私……」

勇者「聞いてくれ! 明日きっと俺は勝つからな、金髪に勝ってみせる!」

魔法使い「……うん」


魔法使い(……褒めて欲しかったなぁ)

魔法使い(え? なんで私、こんな事思って……)




――翌日――


女商人「ほう。勇者が金髪に勝てると?」

技師「らしいよ。なんか、昨日意気込んでいたねぇ」

魔法使い「……」




金髪「さぁて、やりますか」

勇者「頼む」

金髪「いいねいいね、その意気込み! じゃあお嬢、合図を頼む!」


女商人「では、始め!!」


金髪「行くぞ、雷魔法!!」


勇者(……あの地面すれすれの雷は、避けようと思えば避けられる)

勇者(しかし、避けたとしても二撃目の投石までは避けられない)


勇者「ならばっ! ってしまった、木刀のままだった!!」

バチバチ

勇者「いってーーーー!!」


金髪「あ?」

技師「いぃ!?」

女商人「うっ、と言えばいいんだな」

魔法使い「え」

勇者「おおおおお、負けた……」


金髪「ちょっと、なんだそりゃ! 意気込みはどうした意気込みは!!」

勇者「っとすまん! 頼みがある、俺の剣を使わせてくれ!」

金髪「いや、でもそれだと俺が危ない……」

勇者「大丈夫だ。剣そのもので金髪を斬ったりしないからさ」


金髪「……えー、でもなぁ」

女商人「いいじゃないか。実戦では剣だし、斬り付けないって約束もしてくれてるんだぞー」

技師「だな」

金髪「ちょちょちょっ! あーはいはい、わかりました!」


金髪「勇者、剣を使ってもいいよ」

勇者「ああ!」


金髪「……でも、木刀から剣に変えて意味あるんかねぇ」

勇者「……よし!」

金髪「持ったな?」


金髪「じゃあお嬢、わりぃけどもっかいだわ」

女商人「了解だ」

勇者「よし、いつもでいいぞ」



女商人「……始め!!」



金髪「そんな剣にしたところで、意味ないっての! 雷魔法!!」

勇者「……」


……~~勇者さまは勇者さまの戦い方があります~~……
……~~じゃあさ、力尽くで捻じ伏せればいいんじゃないかなぁ?~~……
……~~臨機応変かつ、その場の状況をどれだけ上手く使えるか。重要だな~~……



勇者(俺は剣を使ってでしか戦えない)

勇者(そして、戦術では敵わないが、基礎的な戦闘能力では勝っている)

勇者(今、俺がいるのは草原のど真ん中)



勇者「俺の戦術は、これだあああ!!!!」

==勇者は剣先で地面をえぐった==



女商人「おお、剣で地面をえぐって、土やら石やらを飛ばしたか」

技師「しかもあの勇者の能力だ。すげぇ勢いでたくさん飛んでいきやがる」

女商人「なるほどな。確かに木刀では耐え切れなくて折れてしまう」




金髪「へぇ、こりゃあ……流石の俺でも無理だわ」

==金髪は土に飲まれた==



勇者「……どうだ」

女商人「勇者の勝ちだ!」

勇者「そうか」


魔法使い「勇者さまっ」

技師「うんうん。飛んでくる雷の防御もできているし、文句なしだな」




金髪「うおーい、助けてくれませんかねー!?」


女商人「これで少しは戦い方も勉強になったかな」

勇者「……」

女商人「なんか納得してない顔だね。判るよ、どうせ土を飛ばすのは卑怯じゃないかとか思ってるんだ」

勇者「……ああ」


女商人「甘ったれるな!! 戦場では生き残ることが何よりも重要だ!! 死ぬことなど、何よりも恥ずべき敗北だ!!」

勇者「女商人?」

女商人「いいか、何度も言おう。ただ生き残れ、それが何よりも重要なのだ」

勇者「……わかった」


女商人「ならば別にいいだろう。んふふ、もっと胸を張れ!」


金髪「うおー、ありがとう技師ー」

技師「よっこらしょっと」

金髪「うえ、全身土まみれだ……」

技師「あはは、敗者にお似合いだぞ」

金髪「うっせぇよ」




女商人「さぁ、もうすぐ海の見える丘だ!」


――海の見える丘――


女商人「残念だけど、ここでお別れだ」

勇者「お世話になった。護衛だったはずなのにな」

金髪「まっ、弟の世話をしたって気分でいいや」

勇者「ありがとう金髪。本当に世話になったよ」

金髪「次に会うときはもっと強くなっていろよな」

勇者「もちろんだ!」


魔法使い「あの」

技師「ん、なんだ」

魔法使い「ありがとう」

技師「いいよ。また会おうや、嬢ちゃん」


女商人「ではさらばだ! 旅の無事を祈る!!」

勇者「ああ、さようなら! そっちこそ!!」

魔法使い「さようなら」




勇者「そういえば魔法使い」

魔法使い「はい」

勇者「狙撃、速くなったな。かっこよかったぞ」

魔法使い「……っ! はい!」








――3章 女商人と魔法使い、終わり――

ここまで。投稿だけなのにすっごく疲れた
次章については何にも考えてない


女商人の元ネタは
ココ・へクマティアル?

ライフルは現代の銃の設定なのかな

デカイらしいから最初はM84A1バレットかと思ったけど、普通にM24くらいの形のスナイバーライフルかな

>>269
そんな銃があること知らなかった
俺の中のイメージもそっちでした
技師の説明を脳内修正しておいてください、すみません

4章投稿します

※ネタバレ注意
~~三行で判る3章のあらすじ~~












3章 女商人と魔法使い
 
 ①女商人の旅団と旅をする
 ②旅団の団員、金髪と技師にそれぞれ勇者、魔法使いは強くしてもらう
 ③ばいばい、また会おう ←いまここ

4章 水の街と魔法使い



――水の町――


~水の街~
 海に至る多数の河が一つになって、大きな川になった上にある街。橋と橋を繋いで陸地を造り、街がある。
 移動手段は、徒歩よりも小船が多い。船乗りを生業にする人も多数存在している。



勇者「……これは、綺麗だ」

魔法使い「はい……」


勇者「下一面が水だな」

魔法使い「洪水の被害が多そう」

勇者「おーい、風情がないぞ」


魔法使い「ここで何をするの?」

勇者「ああ。単純に北へ向かうための途中だよ」

魔法使い「……」


勇者「何かあるのか?」


魔法使い「この街、水の神殿があります」

魔法使い「そこはすごく綺麗な神殿だと聞いています」


勇者「もしかして、行きたいの?」

魔法使い「はい」


勇者「そうなのか」

魔法使い「行こう。絶対に行こう」

勇者「わかったわかった。神殿に寄っていこう」


勇者「とりあえず、人に道を聞こう」

魔法使い「お願いします」

勇者「自分から聞こうって気はないのな」

魔法使い「当たり前」

勇者「おいおい……」


勇者「あの、すみません」

住人A「んー、どうしたのかな」

勇者「水の神殿ってどっちへ行けばありますか?」

住人A「ああ、そりゃあこの道を真っ直ぐ行ったところの水路の先にあるよ」

勇者「水路?」


住人A「お、あんた外の人だね」

勇者「そうですが」


住人A「この街では、移動のほとんどが水路を利用しているんだよ。小船に乗ってね」

勇者「なるほど……」

住人A「そうさ。きっとそこまで行けば判るよ」

勇者「ありがとうございました」

住人A「いやいや。ようこそ、水の街へ」


勇者「とりあえずこっちらしい」

魔法使い「……あの、さっきの話しからして船に乗ることに?」

勇者「そうらしい」

魔法使い「歩いていきましょう」

勇者「え?」


魔法使い「水の上を移動するなんて自殺行為」

勇者「な、なぜ?」

魔法使い「そもそも水なんて怖ろしいもの。水底が見えないなんてもっと危険です」


勇者「なぁ、もしかして……」

魔法使い「違う」

勇者「いや、カナヅチなんじゃ」

魔法使い「……違う。浮かばないだけです」


勇者「いやいや、それをカナヅチって」

魔法使い「……うぅ」


勇者「とりあえず行こう。じゃないとどうしようもないし」

魔法使い「わかった」

勇者「拗ねるなよ……」

魔法使い「拗ねてない」


勇者「じゃあ行こうか。それにしても綺麗な街だな」

魔法使い「魔法を使うものが憧れる街の一つ」


勇者「そうなのか?」

魔法使い「そう。生徒Bがいつもうっとりした顔で喋ってた」

勇者「ああ、懐かしいな。気付けば遠いとこまで来たもんだ」

魔法使い「じじくさいです」

勇者「さ、最近ずばずば言うようになったな!?」


魔法使い「勇者さまのおかげ」

勇者「でも、初対面の人だと口数減るけどな」

魔法使い「それ、恥ずかしいから言わないで」


勇者「どうして?」

魔法使い「だって……。学園に居た頃の自分を思い出しそうで」

勇者「そうだったのか」


魔法使い「あれすごいです」

勇者「なんだ? おお、あの噴水凄いな。遠くに見えるけど……でかい……」

魔法使い「水の魔法を使う人が憧れる理由がわかった」

勇者「確かにそうかも」




勇者「えーっと、こっちの道で合っているんだよな?」

魔法使い「あれでは……」


――船着場――


勇者「あの、水の神殿に行きたいのですが」

船乗り(♀)「あっ、かっこいいかも……。あ、はいはい水の神殿ですかー! いいっすよ、乗ってください!」

勇者「あ、いや、陸路で行きたいんだけど。道さえ教えてくれれば」

船乗り「そりゃ無理っすよー。神殿には水路でしか行けないから」



勇者「……らしいけど、どうする魔法使い」

魔法使い「帰りましょう」

勇者「いやいや! 神殿に行きたいって言ったの魔法使いだぞ!?」

魔法使い「でも、まさか船に乗るなんて」

勇者「せっかくだし行こうよ」

魔法使い「だって」


勇者「でも、だっては禁止」

魔法使い「うぅ……」

船乗り「それで、どうするんすかぁ?」


勇者「どうする?」

魔法使い「……乗ります」

船乗り「了解っす! じゃあさっそく乗ってください!」


勇者「よっと! おお、ちょっと揺れるな」

船乗り「気をつけてくださいね」


魔法使い「……」

勇者「お、おーい。乗り込めよ」

魔法使い「お、落ちない?」

船乗り「落ちないっすよー! ちゃんと船着場と隣接してるじゃないすかぁ」


勇者「大丈夫、ちゃんと支えてやるから」

魔法使い「……い、行きますっ」


魔法使い「えいっ!」

勇者「おっと」

船乗り「ひゃー、抱き止めるなんてなんて大胆なー!」


魔法使い「わ、わわっ」

勇者「大丈夫だったろ?」


魔法使い「だ、だだっ、だい!」

勇者「どうした?」

船乗り「あのー、いつまで抱き合ってるんすかねー?」


勇者「あっ」

魔法使い「……っ!」

船乗り「熱々っすなー。とりあえず、行きますね!」




勇者「風が気持ちいいな」

魔法使い「……」

勇者「あ、あのさ。そんなに腕にしがみ付かなくても……」

魔法使い「……」


船乗り「お、お二人はあれっすかっ? ここここ、恋人とか!?」

勇者「いや、違います。旅をしているんですが、その連れです」

船乗り「そ、そうなんすかー! いやぁ、このご時勢、旅をするなんて珍しいっすね」


勇者「そりゃあ、魔王討伐を目指してるからな」

船乗り「ま、魔王討伐っすか……。もしかして軍隊さん?」

勇者「いえ、勇者をしています」

船乗り「勇者さまっ!?」


魔法使い「きゃっ」

勇者「お、落ち着いて! 揺れてる揺れてる!」

船乗り「あ、すいませんっ」


船乗り「ま、まさか勇者さまだなんて……」

勇者「そんなに珍しいことですか?」

船乗り「そりゃあ珍しいっすよ!」

勇者「もしかして、この街にも魔王討伐の御触れが?」


船乗り「はい。勇者さまが旅に出たので、その支援をするようにって」

勇者「へぇ、そんなものがあるんですね」

船乗り「びっくりっす! 勇者さまがこんな所に、しかも私の船にっ!」


魔法使い「わわっ」

勇者「だ、だから揺れてます!」

船乗り「あっと、すいません!」




船乗り「さてと、ここが水の神殿っすよ!」

勇者「ありがとう」

魔法使い「……ども」



――水の神殿――


勇者「こ、これは壮大だな……」

魔法使い「……すごい」



勇者「……中もすごい」

魔法使い「綺麗なステンドグラス……。まるで、水の中みたいっ……怖い!」

勇者「ええー……」


水の神官「おや、あなた方は?」


勇者「あ、こんにちわ。俺勇者です」

魔法使い「……」


水の神官「勇者さま!?……あ、あの、証拠のほどを」

勇者「えっと……勇者バッチでいいですか?」

水の神官「ふむふむ、これは……。なんと、本物!!」

勇者「はい本物ですよ」


水の神官「こ、これは歓迎パーティを!!」

勇者「いやいやそこまでしなくとも……」


水の神官「いえ! まさか勇者さまがこのような場所に寄ってくださるなど」

勇者「あー、んーと……」

魔法使い「……」


水の神官「そちらの女性は?」

勇者「ああ。こちらは魔法使い。旅の連れです」

水の神官「ほほう。しかし、杖すら持たずに……」

勇者「杖など、飾りなのです」

水の神官「はい?」

勇者「いえ、嘘です。すみません」


水の神官「そして、あなたの使う魔法は?」

魔法使い「……えと」

水の神官「どうされました?」


勇者「あー、こいつ人み」

魔法使い「……」

勇者「いえ、なんでもないです。だから睨まないで」


水の神官「して、どのような魔法を」

魔法使い「……火炎系」

水の神官「おお! 私どもとは真逆ですが、それは素晴らしい」

魔法使い「す、すばらしい……なぜ……」


水の神官「勇者さまのお供であれば、さぞかしお強い魔力を」

魔法使い「……」

勇者「あ、それは……。そういえば!」


水の神官「どうしました?」

勇者「女商人がよろしくと」

水の神官「え゛」


勇者「ご存知なのですか?」

水の神官「い、いえっ! あはは……」


勇者「確か、女商人さんのお父さんや魔女さんたちといっしょに旅を」

水の神官「こ、この話しは置いておきましょう!!」

勇者「は、はぁ……」


水の神官「ところで、我が神殿にどのようなご用件が」

勇者「ただ寄っただけです」

水の神官「そ、そうですか……」


魔法使い「天井、壁……。わぁー……すごい」

水の神官「そうでしょう? 我が神殿は水の流れを意識して作られていますからね」

魔法使い「あっ」


水の神官「でも、炎の魔法を使う人にはどう見えているのでしょうね」

魔法使い「綺麗」


水の神官「それは良かったです」

水の神官「ここは本当に綺麗な街です。旅の疲れを癒していって下さい」


勇者「ありがとうございます。では俺たちはこれにて」

水の神官「少しお待ちを」

魔法使い「……?」




――水の街 水上パレード――


「わーー!」

「うぉーー!!」

「勇者さまーー!!」

「隣にいる女の子も可愛いー!!」



勇者「あ、あはは」

魔法使い「――――っ!!」


勇者「お、俺は一体何を……」

魔法使い「……あう」



勇者(船の上で、剣をかかげる男がいた。ああ俺のことだ)


魔法使い(うぅ……。目立つし、水の上だし……。恥ずかしい、死ぬっ)



船乗り「いやー、凄いっすね!」

勇者「あ、船乗りさん」

船乗り「そうっす、私っす! なんか知らないけど、私が勇者さまを乗せる役に抜擢されました!」

魔法使い「ゆ、揺らさないでね」

船乗り「もちろんっです!」


勇者「それにしても、凄いパレードだな」

船乗り「当たり前っすよ! 水の魔法使いによる曲芸、噴水、芸術的でしょ」

勇者「ああ!」


魔法使い「……うぅ」

勇者「もういっそ開き直れよ」

魔法使い「勇者さまぁ……」


勇者「ほら、手を振ってる子供がいるぞー」

魔法使い「あうっ」


勇者「このパレード、いつ終わるんだろうな」

魔法使い「早く終わって欲しいです」

勇者「確かに」


―― パレード終了後 2日経過 昼、大橋の上 ――



勇者「はぁ、やっと開放された」

魔法使い「パレード、パーティ、貴族との謁見……帰りたい、母さん……」

勇者「今回ばかりは何も言わない……」


勇者「あー……。川が綺麗だ」

魔法使い「現実逃避」



船乗り「あ、どもーっす!」



勇者「ん、どこから声が……? あ、下か」

船乗り「どもどもー! 何してるんすかー?」


勇者「疲れたから黄昏てるんです」

船乗り「お昼なのに黄昏とはいかに。あ、あと敬語いらないっすよー」

勇者「そうか。それは助かる」


船乗り「あ、そうだ! これから観光とかどうっすか?」

勇者「観光かぁ。どうする魔法使い?」

魔法使い「行こう。癒されたい……」

勇者「でも船の上だぞ?」

魔法使い「パーティも謁見も全部船の上だった」

勇者「なるほどな、今更もう慣れたってことか」

魔法使い「うん」



船乗り「じゃあどうぞどうぞ! こっちっす!」

勇者「ありがとう」

魔法使い「……ども」




船乗り「お二人様御搭乗!」

勇者「止めてくれ……」

魔法使い「うん」


船乗り「ありゃりゃ、これは相当疲れてますねー」

勇者「そうなんだ。もうなんだよあれ、貴族ってどうしてあんなに堅苦しいかな」

魔法使い「……」

船乗り「まぁ、これだけ大きな街だと貴族も多いっすからねぇ」


勇者「でも、この街はどうしてこんなに貴族が多いんだ」

船乗り「やっぱり綺麗な街だからじゃないすか?」

勇者「そういうもんか」

船乗り「そういうモンすよ! それに、水魔法の最前線っすからねぇ」


魔法使い「……」

船乗り「だ、大丈夫っすか? まさか船酔いとか」

魔法使い「大丈夫、心配しないで」

船乗り「そっすか? 調子悪くなったらすぐに言ってくださいね」

魔法使い「うん」


勇者「さて、どこを案内してくれるんだ?」

船乗り「じゃあまずは水上商店街へ行くっす!」



――~~ 水上商店街 ~~――


勇者「ここは?」

船乗り「水上商店街っす! ここの特徴はですね、お店が水路に隣接している所っす」

勇者「なるほど。確かに……。え、でもこれじゃあ水路からしか買い物できないんじゃ」

船乗り「もちろん陸路にも面している所もあるっすよ」

勇者「そりゃあまぁ、そうだよな」

魔法使い「……ふふ」


船乗り「じゃあちょっとお店を覗いて行くっすよ」

勇者「お、いいね!」

魔法使い「……」

勇者「魔法使いも目が輝いているな」

魔法使い「い、いじわる」


――水上商店街 武器屋――


武器屋「おお、勇者さまじゃないですか!」

勇者「へぇ、ここは武器屋か。どんな武器を売っているんですか?」

武器屋「け、敬語なんて止めてくだせぇ! 恐縮しちまう!」

勇者「え」

武器屋「少なくともここの連中はそう思ってしまうんで、どうか……」

勇者「わ、わかった」


武器屋「まぁ気を取り直して。うちは水に関連するような武器を置いてます」

勇者「へぇ。例えば?」


武器屋「このクリスタルの剣! 見た目が水を意識して作られていますぜ!」

勇者「へ、へー」


勇者(すぐに折れそう……)


武器屋「他にも、こういう商品がありましてね!」


――水上商店街 魔法屋――


魔法使い「魔法……屋?」

船乗り「お、興味ありっすか! じゃあ行くっす!」

勇者「折角だし行こうか」



魔法屋「いらっしゃい。あら、勇者さまご一行ですね」

魔法使い「……」

勇者「あの、ここはどういうお店なんだ」

魔法屋「ええ、ここは魔法に関係する道具が売られています」


魔法屋「この植物は、魔力を回復させます。あと、こちらは水の加護を授かった羽衣です」

魔法使い「……」

魔法屋「おやおやまぁまぁ。お嬢さんは凄く興味ありそうね」

魔法使い「あ、えっと……はい」

――水上商店街 道具屋――


勇者「あそこ、他のお店よりも大きいな」

船乗り「おっ! 御目が高い! あの道具屋はここの一押しっす!」



勇者「へぇ。色んな道具が売られているな」

道具屋「らっしゃい。うちは道具屋だ。ゆっくり見ていってくれ」


魔法使い「……」

勇者「なんだ。そのネックレスが気になるのか」

船乗り「綺麗な首飾りっすね! 水のように透き通った石があしらっているっすね」


魔法使い「……」

勇者「欲しいのか?」

魔法使い「……い、いらない」


勇者「どう考えても欲しそうだろ」

船乗り「っすね」

魔法使い「いや……あの」


勇者「店長、これくれ」

道具屋「おお、いい商品に目を付けたな。値段はこれくらいだ」

魔法使い「あの、勇者さま?」


道具屋「ありがとうよ。勇者さまが買い物をした店っていう箔が付くぜ」

勇者「そうだといいな」

魔法使い「……」


勇者「ほら、魔法使い」

魔法使い「あ、あの」

船乗り「こういうときは、素直に貰っておくといいっすよ!」

魔法使い「……うん。あ、ありがと……」


勇者「そういえば、魔道具は見かけなかったなぁ」

船乗り「魔道具っすか? そんな珍しいものを取り扱っているお店あるんすか?」

勇者「魔道具ってそんなに珍しいものなのか?」

船乗り「あ、当たり前っすよ! ねぇ魔法使いさん!?」

魔法使い「うん」

勇者「そ、そうだったのか」


船乗り「さぁて、だいぶと時間も経ちました」

船乗り「我が街でも、水の神殿に次ぐ観光地! 大噴水に行くっす!」


勇者「大噴水?」

魔法使い「……」



――水の街 大噴水――


勇者「これは……。遠くから見えていたけど」

魔法使い「お、大きい……すごい……」

船乗り「大きいでしょ! この噴水は自然のもので、高さはおよそ1000m!! この街ならどこからでも見えます!」

魔法使い「1000m……」


船乗り「この大噴水は、水の精霊が作っていると言われているっす」

船乗り「水の精霊は女性と言われていて、母性、豊作など司ると噂です!」


勇者「噂かよ!」

魔法使い「……」

船乗り「教会は精霊が何かを司っているなんて公布してませんから」

勇者「でもまぁ、そういうのがあった方が商売的にはいいってか?」

船乗り「そういうことっす!」


船乗り「あとっすね、この噴水の前で恋人がキスすると、永遠になるんすよ!」

勇者「へぇ」

魔法使い「……」


船乗り「え、お二人とも興味なしっすか?」

勇者「まぁ……」

魔法使い「う、うん」


船乗り「お?……むふふ、いいんすか魔法使いさん?」

魔法使い「何故、私に」

船乗り「別にっすよー! むふふ、むふふふ」

魔法使い「……」


勇者「なんか厭らしい笑い方だな」

船乗り「ひ、酷いっす!?」



―― 水の神殿 ――



船乗り「ま、在り来たりなんすけど、ここはやっぱり外せないっす」

勇者「なるほど」

魔法使い「……」


船乗り「まぁ、神官さまは色々知ってるんでお話ししてみたらどうっすか? 歴史ある街なんすよここ?」

勇者「でも、船乗りを待たせてしまうよ」

船乗り「全然いいっす! むしろ勇者さまのためなら、私は全然……その……」

勇者「誤解を生む発言しない」

船乗り「……別に、誤解じゃなくてもいいんすよ?」

勇者「え」

船乗り「なはは、なーんて。ささ、行くっす!」


魔法使い「……鼻の下伸びてる」

勇者「そ、そんなことないよ!」



水の神官「おや、これは勇者さまじゃないですか」

勇者「こんにちわ」


水の神官「本日はどうされましたか?」

勇者「いえ。少しこの街の歴史でもご教授願えないかと思いまして」

水の神官「おお! それは素晴らしい。では、何からお話しすればよろしいでしょうか」


勇者「そうですねー……。あ、ここに来たとき気になったのですが、水害などは」

水の神官「ありましたよ」

勇者「あったんですか」

水の神官「とは言っても、昔話しですがね」

勇者「ということは、最近は無いと」

水の神官「はい」


水の神官「精霊さまを祭る所は、ここ以外では”火の神殿”がある”火山の坑道”などもあります」

水の神官「このような場所では精霊さまがお守り下さるので、基本的に安全なのです」


勇者「精霊が?」

水の神官「はい。精霊さまは、万物に宿ると言われており、常に我々をお守りくださります」

勇者「へぇ」

水の神官「精霊さまは神さまに使えるものとして、常に人を試し、守り、導いて下さります」

勇者「なるほど」

魔法使い「……常識」

勇者「うっ」


水の神官「ははは。勇者さまは神学にはあまり興味がないのですね」

勇者「恥ずかしながら」


水の神官「ですが、女神さまのお告げがあって勇者になられたのでしょう」

勇者「まぁそうらしいんですけどね」

魔法使い「……」

水の神官「らしい?」


勇者「んー。夢みたいな感じだったのであまり……。あと、王国に行ったら、王の神官に、お前は勇者だー!」

勇者「そんなこと言われてからかな、俺が勇者を始めたのは」


水の神官「なるほど」

魔法使い「……」

勇者「そういうもんですよ」


水の神官「なんとも……。おっと、話しを戻しますが……我が街は水の精霊の加護を授かり」

水の神官「そのため、水害はほとんどありません」


勇者「じゃあ、この神殿が出来る前は水害があったのですか」


水の神官「はい。それも酷かった。そこで我々の先祖はここに水を祭る神殿を築いたのです」

水の神官「すると、あの大噴水が吹き上がり」

水の神官「ここは”水の街”として名乗れるようになりました」


勇者「なるほど。歴史深いんだな」

水の神官「はい。ここは多数の河が一つになる場所。ゆえに昔から人の交流も多いのです」


魔法使い「火の神殿は」

水の神官「そういえば、あなたは火の使い手でしたね」

勇者「やはり御参りみたいなことはした方がいいのですか?」


水の神官「そうですね。火の使い手が火の神殿に行くと、助けになる何かを得られるかもしれませんね」

魔法使い「……」

勇者「そういう事があるのか」


水の神官「もちろん、ここも同じような事はありますよ?」

勇者「じゃあ、水の魔法を使う人がここに来たら、力を得ることができるのですか?」


水の神官「はい。この街に訪れた方で……確か、水脈を感じ取る力を得た人がいたような」

勇者「凄いですねそれ」

水の神官「ええ。水脈が判れば、水に飢える人を助けることもできます」

勇者「はい」


水の神官「稀に、神代の力を得る方もいます。神殿とは、神の座するところなのです」

水の神官「あくまでも、ここは神と共に水の精霊を祭っているのです」


勇者「おお、勉強になります」

水の神官「いえいえ。こちらも何かを教えるというのは楽しいです」

魔法使い「……あ、あの」


水の神官「どうされましたか?」

魔法使い「火の神殿はどこに」


勇者「おお、魔法使いが自分から話しかけているなんて珍しい……」


水の神官「先ほども言いましたが、火山の坑道にあります」

魔法使い「どうやって行くのですか」


水の神官「火山の坑道は、ここから東北にある樹海を越える道と、樹海を迂回する道に分かれます」

水の神官「どちらにしても樹海を越える必要があります。その先に、一つ国がありますね」

水の神官「その国から、西に行くと、鉱山町があります。そこが火山の坑道の入り口になります」


魔法使い「ありがとうございます」

勇者「魔法使い?」


水の神官「もし行かれるならば、樹海は迂回した方が宜しいですね」

勇者「どうしてですか?」

水の神官「エルフ族が住み着いているからです。エルフは他種族嫌いで有名なので、何をされるか……」

勇者「ああ……。そうですね、迂回はした方がよいかもしれない」


魔法使い「……」

勇者「それでは、俺たちはこれで」

水の神官「いえ。お話し楽しかったです。またいつでもお越し下さい」

勇者「いえ、こちらこそ。それでは失礼します」

魔法使い「失礼します」




船乗り「あ、お帰りなさいっす!」


船乗り「お話しはどうでした?」

勇者「とても有意義だったよ」

船乗り「そりゃあよくぁったっす!」

勇者「う、おう?」

船乗り「おっと、ついテンションが!」


船乗り「それで、次はどこに行くっすか?」

勇者「そうだな。とりあえず宿屋に戻りたい」

船乗り「あー、もうすぐ夕方っすもんね。でも、あと一箇所オススメがあるんすよー」

勇者「オススメ?」

船乗り「この時間帯しか見れない、特別な場所っす!」

勇者「じゃあ、お願いするよ」

船乗り「はい! お任せください!」



――高台の水溜り 夕暮れ――


勇者「……さっきの、すごかった」

船乗り「ウォーターエレベーターっすか?」

勇者「ウォー、なに?」

船乗り「ウォーターエレベーター! 水の魔法を使って、水位を変えることで高低差を生み出す装置っす」


魔法使い「……っ」

勇者「でも、魔法使いは水攻めにあったと思ってすごく怖がっていたな。まだ震えているし」

船乗り「えへへ。初めて見る人はたいがいびっくりしちゃいますからねー」


勇者「それで、どうしてここへ?」

船乗り「はい! あの、あっちの景色を見てください」

勇者「景色?」



勇者「……おお」

魔法使い「わぁ」


船乗り「この高台からは、街を一望することができるっす」

船乗り「そして、さらに夕日が向こうに見えるっす」

船乗り「水や河に反射した夕日が、すごく幻想的だと思いませんか?」


勇者「……」

魔法使い「……」


船乗り「ありゃりゃ。見蕩れてこっちの話しを聞いてないっすね……」

船乗り「……連れてきて良かったっす」



―― 宿屋 ――


勇者「今日は楽しかったな」

魔法使い「はい。とてもよかった」


勇者「この世界に、こんな綺麗なところがあったんだな」

魔法使い「私も初めて知りました」


勇者「いやいや。東の学院もかなり大きくて立派な建物だったぞ」

魔法使い「そういえば」


勇者「忘れてやるなよ」

魔法使い「でも、いい思い出がないから……」


勇者「……すまない」


魔法使い「でも、一つだけ良いことあった」


勇者「良いこと?」

魔法使い「勇者さまに出逢えた。いっしょに旅に出かけることができました」

勇者「……」


魔法使い「照れてるのですか?」

勇者「う、うるさい!」

魔法使い「……ふふ、はい」


勇者「ところで、魔法使いはどうしたい?」

魔法使い「どうしたい、とは」


勇者「火山の坑道、火の神殿に行きたいんだろ?」

魔法使い「……うん」


勇者「やっぱりか」

魔法使い「……」


勇者「行こう」

魔法使い「いいの?」

勇者「もちろんだ」

魔法使い「でも、魔王討伐……」


勇者「強くなるのが先だと思うんだ」

魔法使い「勇者さまっ!」

勇者「行こう、火の神殿へ」

魔法使い「はい!」


勇者「そうなると、次はルートだな」

魔法使い「……樹海」


勇者「そう、樹海。そこにはエルフがいるらしい」

魔法使い「エルフ族。この大陸で、頑なに中立の立場を守る」


勇者「樹海を突っ切るのは難しいかもしれないな」

魔法使い「……地図は」

勇者「ああ。えっと……店主に借りてきた」

魔法使い「……」


勇者「ここが現在地、火の街だな」

魔法使い「ここが樹海。迂回ルートは、こう……」

勇者「これは……遠回りってレベルじゃないな」


魔法使い「……」

勇者「……」


魔法使い「樹海へ、行こう」

勇者「いいのか」

魔法使い「仕方ないです」

勇者「……わかった。俺も樹海は通らなければならないと思っていたから」


魔法使い「……頑張ろう勇者さま」

勇者「ああ」

魔法使い「……大変だね」

勇者「俺たちの旅っていうのは、こういうもんさ」


魔法使い「うん」

勇者「さて、そろそろ寝ようか」


魔法使い「そうですね」

勇者「ああ」


魔法使い「おやすみなさい」

勇者「おやすみ、魔法使い」




―― 水の街 陸の出入り口 ――


水の神官「もう行かれてしまうのですね」

船乗り「うー、寂しいっすよー……」

勇者「お世話になりました」

魔法使い「うん」



水の神官「して、樹海は迂回するのですか?」

勇者「いいえ。樹海を通り、それから国を経由して火山の坑道を目指します」

水の神官「樹海を横切るのですか……」

勇者「はい」


船乗り「樹海って、エルフがいるんじゃなかったすか?」

勇者「ああ。でも、迂回するには時間が掛かりすぎて」

船乗り「ああー、確かに」


水の神官「これ、船乗り! 勇者さまになんていう口の聞き方だ!」

勇者「え? お二人はお知り合いですか?」


水の神官「ああ、これは私の娘です」

船乗り「私のお父さんっすよー!」


勇者「え!?」

魔法使い「うそ……」


水の神官「この愚娘は、誰に似たのやら……」

船乗り「母さんじゃないの?」

水の神官「まったく……」


勇者「あ、あはは」

水の神官「すみません……。とりあえずですね、エルフが住み着く樹海を横切るのは気をつけて下さい」

船乗り「今、王国と魔王軍が戦争中っすからねー」


水の神官「エルフ族は、近接戦闘、後方支援、魔法、全てにおいて優れている種族です」

勇者「はい」

水の神官「戦闘にでもなれば、恐らくは……」

勇者「わかっています。注意したいと思います」




カンカンカンカンッ!!!!




勇者「この鐘の音は?」

水の神官「魔物が襲撃がきた警告音です!」

勇者「なに!?」


勇者「俺も戦いに行きます!」

魔法使い「私も、この子を組み立てます」

水の神官「少しお待ち下さい」

勇者「しかし! もうそこの出入り口に!」

水の神官「言ったでしょう? ここは水の精霊の加護を授かる街」


水の神官「まぁ、見ていて下さい」

船乗り「おおー! 久しぶりに父さんの魔道具が見れるっすね!」

勇者「魔道具!」

魔法使い「……っ!」


水の神官「……行きますよ」


水の神官「はぁあ、はっ!!」


ブシャーーッ


勇者「おお!? なんか地面から水が吹き上がった!」

魔法使い「でも、あれじゃただの水……」


船乗り「ふふふ、ただの水じゃないっすよ!」

魔法使い「え」

船乗り「ほら、見てくださいっす!」

魔法使い「……な、なにあれ」

勇者「水に当たった魔物が動かなくなっている?」


水の神官「この魔道具は、高熱の水、間欠泉を吹き上げさせるものです」

勇者「間欠泉?」

水の神官「はい。あの間欠泉の温度は、計ることができない程の熱湯です」

魔法使い「でも、水は一定の温度までしか温まらない」


水の神官「魔法の間欠泉は、水蒸気になっても冷めることがありません」

水の神官「熱湯と化した水の粒子は、水の温度を超えて魔物に襲い掛かります。目、口、鼻、ありとあらゆる所から」

水の神官「その結果として、魔物どもはああなるのです。まぁ、細かいことはまだ解明できていませんが」


勇者「す、すごいな」

魔法使い「……うん」


船乗り「相変わらずおっかない魔道具っすよね。お父さんに似合わない」

水の神官「こら!」


勇者「でも、まだ魔物が」

水の神官「我が街の水の使い手を侮ってはいませんか?」

勇者「どういうことですか?」

水の神官「ふふふ、私たち、水の力を見せて差し上げましょう」



ザパーーン!!



勇者「え、河の水が荒ぶって……」

魔法使い「水の壁が……」

水の神官「我が街の魔法を使う者たちによる魔法による津波です」

勇者「陸で津波が発生するなんて……」


ザブーーン!!


水の神官「あれこそ、我が街の最大の攻撃にして最大の防御。水魔法ダイダルウェーブ!!」

勇者「……すごい」

魔法使い「わぁ……」

船乗り「かっけーーーーっす!!」




水の神官「さて、魔物は一掃することができました」

勇者「ああ」

魔法使い「違う。空に数匹いる」

船乗り「空?」


勇者「危ない、船乗り!!」

船乗り「わひゃっ!? が、岩石が空から……」

勇者「大丈夫だった?」

船乗り「あ……その、……はいっ」


水の神官「あれは! なんと、目を凝らすと確かに魔物です!」


水の神官「よく見つけることが……」

船乗り「でもどうするの父さん? あんな高いところ、水魔法じゃ届かないよ」

水の神官「確かに……」


魔法使い「任せて」

水の神官「その長い筒は……」


勇者「どうして寝転がっているんだ?」

魔法使い「あ、あまりこっち見ないで」

船乗り「何をしてるんすかね」


水の神官「鉄の筒を空に向けて、足を上げている……」

勇者「L字になっているな」

魔法使い「だ、だから見ないでっ!」


船乗り「はいはーい! 女の子が見るなって言ってるんですから、見ちゃだめっすよ!」

勇者「あ、ああ」

水の神官「すまない……」


魔法使い「もう……」


魔法使い(対空中姿勢……)

魔法使い(敵は油断しているのか、静止状態)

魔法使い(誤差修正……。重力魔法、火炎魔法……。爆破魔法微調整)

魔法使い(風はない)


魔法使い「すぅー……はぁ、んっ」



パァンッ!!
パァンッ!!


水の神官「なっ!?」

船乗り「う、うるさいっすー!」


勇者「どうだ」

魔法使い「命中。ヘッドショット確認。街の外へ落下していった。他のも落とす」

勇者「ああ!!」

魔法使い「うん」



――戦闘終了後



水の神官「い、今のは一体……」

船乗り「もしかしてそれ、鉄砲なんすか!?」


魔法使い「え、え……」

勇者「お、落ち着ついて! 魔法使いが困っています!」


水の神官「あ、これは失敬……」


勇者「これが魔法使いの力だよ」

水の神官「これが? 魔力ではなくて?」

勇者「えっと……。これ、魔法を使って使う道具なんだよな?」

魔法使い「そう」


水の神官「珍しい。魔道具とは間欠泉のように、魔力を込めるだけで使えるものなのに」

魔法使い「……出来損ない、だから」

水の神官「それほど素晴らしいものが、ですか」


勇者「まぁまぁ。とりあえず、魔物の脅威も去ったし……」

船乗り「え、でも明日にした方がいいんじゃないっすか?」

勇者「どうしようか、魔法使い」


魔法使い「魔力もほとんど使ってない。大丈夫」

勇者「みたいだ。俺も、今回ばかりは何もしてないからな」


水の神官「そうですか」

船乗り「えー」


勇者「あまり長居すると、離れ辛くなるから」

魔法使い「うん」

水の神官「そうですか」

船乗り「あーあ。もっといっしょに居たかったっす!」

水の神官「だからお前は……」

勇者「いいですよ神官さま」

水の神官「勇者さまがそう仰られるならば……」


勇者「じゃあ、今度こそ俺たちは行くことにするよ」

魔法使い「はい」


船乗り「あ、勇者さまー! んー、ちゅっ」


水の神官「なっ!」

魔法使い「え!?」

勇者「うええ!?」


船乗り「えへへ、ほっぺだけどいいっすよねー!」

勇者「な、なんでっ!?」

船乗り「そこまで言わせるんすか? もう、恥ずかしいっすよー……」

魔法使い「っ!?……っ!!」


水の神官「こ、この娘は!!」

船乗り「むふふー」


魔法使い「い、行きましょう勇者さまっ!」

勇者「お、おお……」


船乗り「ああー……。また会いましょうね、勇者さまー!」

魔法使い「もう会いません!」

勇者「ひ、引っ張るなよ」

魔法使い「むぅ!」


水の神官「若いとはいいものですね……」


勇者「じゃあ、さようなら」

魔法使い「さようなら」


船乗り「さようならー!」

水の神官「いずれまた。旅のご無事を」






―― 樹海へ続く道の上 ――


勇者「なぁ魔法使いー、なんで怒ってるんだよー」

魔法使い「怒ってない」


勇者「んー……」

魔法使い「……」


勇者「ああもう……。よしよし」

魔法使い「なっ!? あ、頭を撫でないで」


勇者「機嫌治してくれよ」

魔法使い「……んっ」


魔法使い「勇者さま」

勇者「なんだ?」

魔法使い「あの、ああいうの……どう思ったのですか?」

勇者「ほっぺたの、あれか?」

魔法使い「うん」


勇者「そうだな……。今は魔王討伐が全てだから、色恋沙汰にうつつは抜かせないかな」

魔法使い「え……」


勇者「そうだな……。今は魔王討伐が全てだから、色恋沙汰にうつつは抜かせないかな」

魔法使い「え……」


勇者「でもまぁ、魔法使いだけは何があっても守る……よ?」

魔法使い「あっ」


勇者「こっち見るな」

魔法使い「ふふ、真っ赤」


勇者「……ふん」

魔法使い「もっと、頭撫でて」

勇者「……これでいいか?」

魔法使い「はい!」






―― 4章 水の街と魔法使い 終わり ――

ここまでです。
次の章からラストまでのプロットはできました。あと、レスの内容も少し反映させて頂きたいと思います。
実は銃器系詳しくないので、ここのレスで出てくる銃器をググのが楽しい。

最近、日本語がちゃんと使えているのか心配になっている今日この頃。
暇つぶし程度に読んで下されば嬉しいです。

銃については、ライフルでもバレッタでも何でも好きなものを想像してください
むしろ、こんな銃じゃね?的スレは個人的に嬉しくて、それを調べるのがすごく楽しい

次章は少し遅れそうです。今の予定だと、今までで一番長くなりそうなので。

個人的には、自分のレスに対する予想、考察、批判、中傷、評価、感想、銃の名前、なんでも好きに雑談してもらってもいいです
ただ荒れて欲しくないだけなので、お願いします

投稿します

※ネタバレ注意












4章 水の街と魔法使い のあらすじ

 ①水の街についた
 ②観光したり遊んだり
 ③火の神殿へ、樹海突っ切る ←いまここ


5章 エルフと魔法使い


―― 樹海への道 ――



勇者「もうすぐだな」

魔法使い「鬱蒼とした森が見えます」


旅人A「おんや。あんたら何しとる?」


勇者「あ、こんにちわ」

魔法使い「……」

旅人A「まさかあんたら、樹海へ行くつもりじゃなかろうか?」

勇者「はい。樹海を横切ろうと思いまして」

旅人A「やめんときしゃい。悪いことは言わねぇからよ」

勇者「ですが」


旅人A「今なぁ、樹海は荒れておるんでな」

勇者「荒れて?」

旅人A「んだ。樹海全体がぴりぴりしちょる」

勇者「どうしてそのような事が判るのですか?」


旅人A「勘だがや。でも、いつもの樹海とはなぁんか空気が違うだ」

勇者「空気が……」


旅人A「普段からおっかねぇ森だが、森全体がざわめいてちょる」

旅人A「昔からあの樹海を見てきてが、最近は本当におっかねぇ。旅人さん、行くのはおよしなされ」


勇者「ご忠告、ありがとうございます」

旅人A「いやいや。袖振り合う多少の縁って言うからな」


勇者「では、旅のご無事を」

旅人A「あんたらもな」




勇者「樹海がいつもと違うらしい」

魔法使い「……」

勇者「それでも行くか?」

魔法使い「うん」



―― エルフの樹海 ――



勇者「すごい森だな。綺麗なところだけど」

魔法使い「……うん」


勇者「大きな木がたくさんあるね」

魔法使い「樹齢何年かな」

勇者「数百年くらいかな」

魔法使い「すごい」

勇者「そうだな」


魔法使い「それにしても、幻想的なところ」

勇者「気をつけて。そこ滑りやすいから」

魔法使い「うん」


勇者「こんな所、魔物もいないんじゃないか」

魔法使い「わからない」

勇者「とりあえず、道を選んで進もう」

魔法使い「はい」


勇者「旅人さんは森が荒れているって言ってたけど」

魔法使い「そんなこと無さそう」

勇者「ああ。小川のせせらぎすら聞こえているのに」

魔法使い「凄く澄んでいて綺麗」

勇者「……こういう場所には、戦争の火が届いて欲しくないな」

魔法使い「うん」


勇者「お、珍しい鳥が」

魔法使い「変な色」

勇者「あはは、そうだな」

魔法使い「不思議な樹海です」


勇者「でも、似た景色が多いな」

魔法使い「うん」

勇者「迷わないように気をつけないと」

魔法使い「大丈夫。ちゃんと景色は覚えているから。道順も」

勇者「そういえば、頭いいんだったな魔法使い」

魔法使い「そ、そんなこと……」


勇者「すっかり忘れていたけど、学園での筆記試験ではトップクラスだったんだよな」

魔法使い「あの当時は、それくらいしか取り得がなかったから」

勇者「ほほう。じゃあ今は他に自信を持てる何かがあるんだな?」

魔法使い「あっ……うぅ。いじわる……」

勇者「いやいや! 自信は一つでもあった方がいいさ」


魔法使い「自信ってほどじゃないけど……。ちょっとは強くなれたかなって」

勇者「ああ。強くなったと思うよ」


魔法使い「でも、私の魔力はまだ」

魔法使い「……この、手の平の松明程度が全力」


勇者「ん、それでいいんじゃないかな」

魔法使い「だって……」


勇者「俺にとって、広範囲魔法や魔力が強いのは必要じゃないんだ」

勇者「その鉄砲を使える程の、魔法の技術、種類を持つ人が必要なんだ」


魔法使い「……」

勇者「判って欲しいな」


魔法使い「でも……」


勇者「その銃を使ってでしか出来ないことを、魔法使いはしてきた」

勇者「だから魔法使いはもっと自信を持っていいと思うんだ」


魔法使い「それは……。だって、周りの皆が」

勇者「こら」

魔法使い「え?」


勇者「でもとだっては禁止だ」

魔法使い「あう……。いじわる」

勇者「いじわるにもなってやるさ。魔法使いは凄い、強い!」

魔法使い「や、止めて下さい……」


勇者「どうしようっかな」

魔法使い「……むぅー!」

勇者「あはは、ごめんごめん」


魔法使い「……はぁ。勇者さまって稀に子供っぽい」

勇者「まだまだ俺も子供だからな!」

魔法使い「威張れることじゃないと思います」


勇者「そうだ。こんな道じゃそれ持つの大変じゃないか?」

魔法使い「銃を入れている鞄のことですか?」

勇者「そう」

魔法使い「いいえ。重力魔法を使っているので平気です」


勇者「大丈夫なのか? そんなに高度な魔法を使い続けて」

魔法使い「大丈夫です。魔力を循環させているので」

勇者「循環?」


魔法使い「一度鞄に流れ込んだ魔力を、もう一度自分に送り込んでいるのです」

勇者「そ、それって何気に凄いことじゃ」

魔法使い「……私以外に、これができた人見たことないです……」

勇者「というか、そもそも重力魔法を使える人を俺は見たこと無い」

魔法使い「同じく」


魔法使い「私、非力だから……重たいもの持てなくて」

勇者「それで重力魔法を覚えたのか」


魔法使い「本で読んで。楽をする努力は怠りません」

勇者「魔法使いって実は全力怠け者なのか?」

魔法使い「……」

勇者「否定して欲しいかな!」


魔法使い「でも、魔力だけはいつまでも強くなりません……」

勇者「ああー……。落ち込むなー、ブルーになるなー」

魔法使い「うぅ……」


勇者「でも、魔力の循環ができるなら他の魔法を使う人だって」

魔法使い「きっと無理」


勇者「どうしてなんだ?」

魔法使い「魔法で物質を生み出した場合、魔力が完全に体から放出されてしまうから」

勇者「じゃあダイダルウェーブのように、既存の物質を魔法で操った場合は?」

魔法使い「それも同じ。自分の魔力を込めたものが、自分の手を離れたら循環は無理だと思う」


勇者「なるほど。限られた条件が必要ってことか」

魔法使い「そう。言うなれば、この鞄を自分の体の一部として扱っている感じ」

勇者「魔法って奥が深いんだな」

魔法使い「知らなかったのですか」

勇者「まぁ、俺も農家の出だからな。学校っていうものに行ったことがないんだ」

魔法使い「うそ……」


勇者「でも勇者に選ばれてからは、王国でとにかく鍛えられた」

魔法使い「勇者さまが?」


勇者「そうだぞ。毎日血を吐きながら飯を食ってたなぁー。懐かしい」

魔法使い「……そんなことが」

勇者「おかげで、王国一強いなんて言われもしたけど」

魔法使い「はい」


勇者「でも、女商人の金髪と戦って判った。これは、がちがちに固められた条件下での強さだってことに」

魔法使い「勇者さま……」

勇者「だからこそ、俺ももっと経験を積まないとな」

魔法使い「うん。いっしょに強くなりたい」


勇者「っと、話している間にどんどん奥深く入ってきたな」

魔法使い「そうですね」



ガサ
ガサガサ



勇者「…………」

魔法使い「…………」


勇者「何か、いる」

魔法使い「そうですね」


勇者「出てこい!」

魔法使い「……」




エルフA「……貴様らは誰だ。我らの森に何のようだ」




勇者「出てきたな」

魔法使い「……」


エルフB「動くな、そこの女」


魔法使い「っ!」


エルフC「人間だ」

エルフD「人間だな」


勇者「囲まれている……」

エルフA「そうだ」

勇者「何人くらいだ」

エルフA「当ててみろ」


勇者(十数名? いや、もっとか?)


エルフA「ふん。人間ごときに我らの気配を察知し切れると思っているのか」

勇者「……無理だな」


エルフA「して、何だ貴様ら。この森に何しにきた」


勇者「俺は勇者。魔王討伐の旅の途中で、この森を通らせて頂きたい」


エルフA「勇者? ああ、人間どもの英雄か」


勇者「そう言われている。どうか、あなたたちの森を通らせてくれないか」

エルフA「断る。貴様ら人間、魔物どもは争いごとを持ち込む。今だってな!」


勇者「俺たちはエルフと争うつもりはない」

エルフA「問答無用!!」

勇者「なっ!? 話しくらい聞いてくれ!!」


エルフA「行くぞ!!」

エルフA「同胞よ!!」

エルフたち「おおー!!」

==エルフたちは一斉に弓矢を放った==


勇者「くっ!」

魔法使い「きゃあっ!」


勇者「舐めるなよ!!」

==勇者は剣を振り回した==


エルフA「なんだと、剣の風圧のみで矢を弾いた!?」

エルフA「まだだ! 前衛部隊!!」

==エルフたちは勇者に斬りかかった==


勇者「一斉攻撃か!」

魔法使い「ひっ」

勇者「魔法使いは俺の後ろにいてくれ!」

魔法使い「は、はい……」


勇者「うおおお!!」

エルフ「はぁー!!」


==勇者はエルフたちの剣を弾いた==


エルフA「この数を相手にどれほど戦えるかな!」

勇者「剣術ならば、負けない!」


エルフA「ふん、剣と弓矢のみで戦うと思っているのか!?」

勇者「なに!?」」


エルフA「魔法部隊、放て!!」

==エルフたちは、火、水、雷の魔法を放った==


勇者「こんなもの!!」

==勇者は近場の木を切り倒した==


エルフA「魔法をそんな手で……」

エルフA「……なっ!! 勇者はどこだ!!」


…………


勇者「はぁはぁっ!」

魔法使い「ハァハァ……っ!」


勇者「とにかく逃げるぞ!」

魔法使い「はいっ」


勇者「仕方ない、森を迂回するのは諦めよう」

魔法使い「……はい」


勇者「まさかエルフたちがあんなに好戦的だなんて」

魔法使い「民族としての誇りが非常に高いとは聞いていましたが……」

勇者「問答無用なんて初めて言われたぞ!」

魔法使い「確かに……」

>>338
勇者「仕方ない、森を迂回するのは諦めよう」

勇者「仕方ない、森を横切るのは諦めよう」


勇者「道はこっちで合っているか!?」

魔法使い「少し外れてしまっています! ですが、仕方ありませんっ」

勇者「方向は!?」

魔法使い「ここをとにかく真っ直ぐ行けば! 合い間合い間に見える太陽の位置でわかる」

勇者「それは助かる!」


エルフA「この森で、我らから逃げ切れると思ったのか」


勇者「なにっ!?」

魔法使い「そんな……」


エルフA「人間ごときが神聖な我が森に踏み込んだ罰、受けるがいい!」

勇者「俺たちは森から出て行く。だから、見逃してくれないか?」

魔法使い「……お願い」


エルフA「それは無理だな。貴様ら人間に拷問しなければならない事があるのでな」

勇者「拷問って言われて大人しくする奴がこの世にいるか!」

エルフA「貴様の事情など知るか。大人しく捕まるんだな、そうすれば命だけは奪わないでやろう」


勇者「すまないが、先を急ぐ旅だからな。ここで捕まる訳にはいかない」


エルフA「次は逃げるなよ」

==エルフAは長剣で斬りかかってきた==


勇者「なにをっ!」

エルフA「ほう、俺の剣を受け止めるか」

勇者「ふん、これでも勇者だからな」

エルフA「その名は伊達ではないと言う事か!」


魔法使い(銃を組み立てる? でも、そんな隙を見せたら私が狙われる)

魔法使い(私を守りながら勇者さまは戦うことになる。足を引っ張ってしまう)


エルフA「はぁっ!!」

勇者「何を!!」


エルフA「よし、今だ!!」


エルフ他「了解!!」

==エルフたちは弓矢、魔法を放った==


勇者「なんだと!?」

魔法使い「勇者さま!!」


==多数の矢と魔法が勇者に襲い掛かる==




エルフA「ふん、大人しくしておれば命は奪わずにいたものを」

魔法使い「…………」


エルフA「あとはお前だけだ」

魔法使い「こ、来ないでっ!」


勇者「おりゃああー!!」

エルフA「き、貴様!?」

==勇者はエルフAに斬りかかった==

==エルフAはダメージを受けた==


エルフA「くそっ、貴様どこからっ……」

勇者「あんなの、上に跳べば避けられる」

エルフA「……なるほど。跳び上がり、木の枝から俺に奇襲を掛けたのか」

勇者「跳んだ先に足場があるなら、そうするだろう」


エルフA「あの一瞬でそこまで。思ったよりもやる」

勇者「頼む。俺たちは争う気なんてないんだ」


エルフA「だが我らにはある!! 人間どもめ!!」

勇者「どうしてそこまで」

エルフA「貴様ら人間、魔物どもが我らの森を荒らそうとするからだ!!」

勇者「俺はそんなことしない!」

エルフA「信じられるものか!」


エルフA「まだまだー!!」

勇者「話しの通じない奴だな!!」



エルフA「うおおおお!!」


勇者「はっ! ぐっ……。どりゃあー!!」

エルフA「かはっ!……はぁはぁ」

勇者「手負いで俺に敵うと思っているのか!」


魔法使い「きゃあっ!」


勇者「魔法使い!?」

エルフA「はぁはぁ……。よくやった、同胞」


魔法使い「は、離してっ……」

エルフ他「……すまない」


勇者「卑怯だぞ!」

エルフA「……」


魔法使い「勇者さま、私に構わないで」

勇者「そんな事できるはずないだろ!」


エルフA「さぁ、どうする」

勇者「……判った。降参だ」

エルフA「そうか。だが、動きは封じさせてもらう」

勇者「なに?」


==エルフ他は勇者の首裏を叩打した==


勇者「がっ……!」

魔法使い「勇者さま!? 勇者さまーー!!」

勇者「魔法……使い……」


勇者は気を失った




―― 牢屋 ――


勇者「……んっ、ここは」


見張り「目覚めたんだな。ここはエルフの里だ」


勇者「ぐっ、まだ頭がぐらぐらする」

見張り「お前は牢屋で大人しくしているんだな」

勇者「魔法使い、俺の旅の連れはどうなった」

見張り「安心しろ。危害は加えていない」


勇者「……俺はどうなる」

見張り「今はまだ何も言えない。長老が決定を下すまで」


勇者「くそっ」

見張り「やめとけ。暴れるのは得策じゃないぞ」

勇者「ちっ」

見張り「何かあれば呼べ。ではな」




勇者「……しくじった」

勇者「魔法使い……無事だといいけど……」




???「どうだい、檻の中ってのは」

勇者「誰だ」


エルフの騎士「私はエルフの騎士。あんまり騎士ってほどの風格でもないけどね」

勇者「……女?」

エルフの騎士「女が騎士ってのは珍しいかい?」

勇者「なんの用だ」


エルフの騎士「そう警戒するな。それにしても、勇者たちは森に来た時期が悪かったな」

勇者「時期?」

エルフの騎士「今、この樹海は魔物や人間に荒らされているんだ」

勇者「……どういうことなんだ」


エルフの騎士「おっ? 私の話しを聞く気があるのか」

勇者「今は何もできないから。少しくらい暇つぶしさせてくれ」

エルフの騎士「なるほど。それは確かに一理ある」


勇者「それで、どうしてエルフたちはあんなに好戦的だったんだ」

エルフの騎士「実は、この樹海にいくつかあるエルフの里が荒らされているんだ」

勇者「エルフの里が?」

エルフの騎士「そう。まぁ、本当のところはそれが魔物か人間か、どちらにやられているのか判らない」


勇者「だから、森に踏み込んだ人間を片っ端から捕まえているのか」

エルフの騎士「まぁそんなところだ」


勇者「俺はこれからどうなるんだろう」

エルフの騎士「そうだな。単純に追い出されるだけだと思うぞ」

勇者「これだけ大袈裟に捕まえておいてか?」

エルフの騎士「勇者たちがシロだって判れば、すぐにでも開放されるさ」


勇者「拷問って言われたけど」

エルフの騎士「ああ。それはきっと護衛隊長が言ったんだな」

勇者「実際はどうなんだ?」

エルフの騎士「頑なに口を閉ざさない限り大丈夫さ」

勇者「はは。でも、疑われたらお終いだな」

エルフの騎士「その辺りはなんとかなるだろ」


勇者「そうだといいけど」

エルフの騎士「きっと大丈夫さ」


勇者「ただ、どうしてこんなに話してくれるんだ?」

エルフの騎士「ん? それはな、私は勇者がそんな事をする人間だと思わないからだ」

勇者「それだけの理由なのか」

エルフの騎士「それだけの理由さ。それに私は、護衛隊長のような強引なやり方は好きじゃない」

勇者「……色んなエルフがいるんだな」

エルフの騎士「そこは人間と同じだよ。まぁ、隊長も根は優しい人なんだけどな」

勇者「そうなのか?」

エルフの騎士「戦闘になると燃え上がりまくって、周りが見えなくなるのが難点だが。普段はすごく優しい」


勇者「なるほど。まぁとにかく、エルフの皆が好戦的じゃなくてよかったよ」

エルフの騎士「はは、そう言って貰えると嬉しいよ」


勇者「それにしても暇だ」

エルフの騎士「仕方ないよ。勇者は今捕まっているんだからな」




―― 魔法使い ――


エルフA「……それにしても、この鞄はなんだ」

魔法使い「……」


エルフA「貴様ら人間はよく判らん」

魔法使い「……」


エルフA「俺はこの里の護衛隊長をしている」

魔法使い「……」


隊長「何か喋ったらどうだ」

魔法使い「……」


魔法使い(こういう、知らない男の人といっしょの状況。前にもあったような……)

魔法使い(人見知りなのにぃー……。なんでいつもこういう目にばっか会うんだろう……)


隊長「それにしても、この鞄はなんなのだ」

魔法使い「秘密」

隊長「ふん。大人しく喋ったほうが身のため」

魔法使い「銃」

隊長「だ……ぞ? 貴様、プライドはないのか」

 
魔法使い「……」

隊長「黙るな。無理やり口を開かすぞ」

魔法使い「あー」

隊長「この俺をからかっているのか?」


魔法使い「……うぅ」

隊長「変な女だ」


隊長「しかしこの鞄、重たいしでかい。こんな物を持ち歩くなど、凄まじい筋力なのだな」

魔法使い「……っ!?」

隊長「ひ弱そうに見えて、貴様は戦士なのだな」

魔法使い「……」


魔法使い(……私、魔法使いなのに)


隊長「開けるぞ」

魔法使い「……」

隊長「黙っているなら肯定とみなす。……どうやって開ければ」

魔法使い「そこの金具を」

隊長「これか?」

魔法使い「そう」


隊長「……これは」

魔法使い「……」


隊長「ただのガラクタか?」

魔法使い「ガラクタ……」

隊長「あ、いやすまん。そんな泣きそうな顔するな」

魔法使い「……」


隊長「くそ。なんだ貴様、俺の調子が狂う」

魔法使い「……」

隊長「黙るな!」

魔法使い「ひぅっ」

隊長「おっと、すま……謝るか人間などに!!」


魔法使い(この人、実は良い人?)


隊長「これはどうするものだ」

魔法使い「組み立てる」

隊長「これを? このやたら長い筒はなんだ」

魔法使い「銃身……」


隊長「ふむ。この森では鉄製のものが珍しいからな、鉄砲など初めて見たが」

隊長「人間の武器とはこれほど可笑しなものなのだな」


魔法使い「可笑しな……」

隊長「ええい! いちいち傷付いたような顔をするな!!」

魔法使い「……」


隊長「とにかく、これは預かっておく」

魔法使い「え」

隊長「武器を手元に置かしておくと思ったか」

魔法使い「その子は……」

隊長「いいな」

魔法使い「……うぅ」


隊長「ぐっ。そういう目をするな!」

魔法使い「……」

隊長「俺を見るな!!」

魔法使い「……」

隊長「はぁ……。とにかくだ、もうすぐ村長と会ってもらうからな」

魔法使い「……はい」


隊長「じゃあ俺は行くぞ」

魔法使い「あ、あの」


隊長「なんだ人間」

魔法使い「勇者さまは……」

隊長「ああ、あの男か。安心しろ、怪我という怪我はしていない」

魔法使い「……よかった」

隊長「……」




―― 村長の屋敷 ――


村長「して、汝らは勇者と魔法使いで、火の神殿を目指すためにこの樹海を横切ろうとしたのか」

勇者「そうだ」

魔法使い「はい」


村長「なるほど。それはすまないことをしてしまったのう」

隊長「村長! 人間ごときの話しなど信じられるのか!」

村長「こやつらの目を見てみ。悪事を働くなどわしには思えんよ」

隊長「……ふんっ」

エルフの騎士「まーまー! そうカッカしないで下さい隊長」

隊長「お前は黙っていろ!」

エルフの騎士「うっ……」


勇者「それで、俺たちは解放してもらえるのか」

村長「それじゃが今すぐにという訳にはいかん」

勇者「どうしてだ」


村長「主らが人間たちの英雄というのは判った」

村長「じゃからといって、森に侵入したものを容易く逃がしては他の里のエルフに示しがつかんでな」

村長「しばらくは、この里に留まってもらう」


勇者「しかし!」

村長「わしらの森に侵入などするからじゃ。エルフ族を甘くみるでないぞ」

勇者「……くっ」

隊長「逃げ出そうと思うなよ人間。俺たちはお前らなど、どこにいてもすぐに見つけ出せるのだからな」

勇者「……っ」


村長「まぁ、里の中くらいは自由に移動しても許そう」

隊長「村長!! それでは治安が!!」


村長「お主が護衛隊長として里の治安を案ずるのは判る」

村長「じゃがな、わしらとて在らぬ疑いをこの人たちに掛けた。あまつさえ、軟禁しておるんじゃ」

村長「これくらいは許してもよいのではなかろうか」


隊長「……ふん、俺は認めない。人間ごときが里を闊歩するなど」

村長「護衛隊長」

隊長「しかし、村長の命令ならば従おう。だがな! 俺は貴様らを監視しているぞ」


勇者「わかった。村長、あなたの寛大な措置、感謝する」

村長「……うむ」


村長「この里におる間は、そうじゃな……」


村長「エルフの騎士」

エルフの騎士「呼ばれましたか?」

村長「お主の家にこの二人を泊めてやれ」

エルフの騎士「え!? そ、村長!?」

村長「では頼んだぞ」

エルフの騎士「そ、そんな……」


勇者「なんだか判らないけど、しばらくは厄介になりそうだな」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「はぁ……まぁいいか。これからしばらく宜しく」




―― エルフの里 ――


村人「人間だ」

村人「人間がいるぞ」

村人「護衛隊は何をしているのよ」



エルフの騎士「こういう目線も少しの間だけだ。耐えてくれ」

勇者「ああ。すまない」

魔法使い「……」

勇者「怯えなくても大丈夫だよ」

魔法使い「勇者さま……」

エルフの騎士「とりあえず、私の家へ行こうか」


―― 騎士の家 ――


エルフの騎士「ようこそ、私の家へ」

勇者「お、お邪魔します」

魔法使い「……ども」


エルフの騎士「とりあえずお茶を出そう。そこに座って待っていてくれ」

勇者「ありがとう」

魔法使い「……」




エルフの騎士「お待たせ」

勇者「ありがとう。本当に何から何まで申し訳ない」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「なに、気にするな。この家だって私一人じゃ大きいなと思っていたんだ」


勇者「一人暮らしなのか? 家族は他の里なのか?」

エルフの騎士「家族は魔物に殺されてしまってね」

勇者「あ、それは知らないとは悪い……」

エルフの騎士「なに、もう何年も前の話しだよ」


エルフの騎士「孤児だった私を隊長が拾ってくれてね。そこで訓練を積んだんだよ」

エルフの騎士「だからまぁ、隊長が私の家族と言えば家族かな」


勇者「あのエルフが……」

エルフの騎士「あはは。恐持てだし、人間嫌いな所があるからね」


魔法使い「でも、優しい」

勇者「魔法使い?」

エルフの騎士「そうなんだ。おっと、この話しは隊長に秘密にしてくれ。恥ずかしいから」

魔法使い「うん」



エルフの騎士「それと、隊長が人間を嫌うのは仕方ないんだ」

勇者「仕方ない?」

エルフの騎士「隊長のお嫁さんと子供が、人間に殺されてしまったから」

勇者「なんだと」

魔法使い「そんなっ」


エルフの騎士「あまり詳しい話しは知らない。でも、そういう事があったから」

エルフの騎士「だからあまり隊長を嫌わないで欲しい」


勇者「……わかった」

魔法使い「私はあのエルフ、嫌いじゃない」


エルフの騎士「魔法使い! 君は良い子だな!」

魔法使い「あ、ありがと……」


エルフの騎士「でも、そういえば魔法使いは杖を持たないんだな。隊長から聞いたよ」

魔法使い「えっと」

エルフの騎士「まぁ杖の有無は人によると聞いたけど。君はどうなんだ?」


魔法使い「……」

勇者「使わないな」


エルフの騎士「ふむ。ところで魔法使いはどんな魔法を使うのかな?」

魔法使い「か、火炎系の魔法全般……」

エルフの騎士「火炎系か。実は私も魔法を使えてね。水系と回復系なんだ」

魔法使い「水と回復の魔法?」

エルフの騎士「ああ。まぁ、ちょっぴり強い程度とは自負しているけどね」


勇者「騎士だから剣を使うと思ったんだが」

エルフの騎士「ああ。もちろん剣も使える。あと弓矢も」

勇者「すごいな。何でもできるじゃないか」

エルフの騎士「こんなの、ただの器用貧乏さ。剣なんて隊長ほどじゃないよ」

勇者「そういえば、魔法は使っていなかったけど剣術は相当強かったなぁ」

エルフの騎士「嘘だろ。隊長は君にまったく敵わなかったと言っていたけどな」


勇者「俺だってまぁその、勇者だからせめて剣くらいは」

エルフの騎士「なるほど。言うなれば、君は剣に特化しているのか」

勇者「そういうこと。その代わりに魔法なんて一切使えないけどな」

エルフの騎士「魔法は、素質がモノを言うからね」


魔法使い「素質……」


エルフの騎士「どうしたの?」

魔法使い「私は、その素質が無い」

エルフの騎士「いやいや。魔法を使うのだろう?」

魔法使い「使うけど、すごく弱い」


エルフの騎士「弱い?」

魔法使い「……」


勇者「俺たちは、火の精霊の恩恵を授かるために火山の坑道を目指しているんだ」

エルフの騎士「火の精霊? 精霊か……」

勇者「どうしたんだ」

エルフの騎士「いや、人間というものはいつも不思議に思う」

魔法使い「……?」


エルフの騎士「精霊やら神さまなんて、どうして居ないものを自分たちで作って勝手に祈るのかなと」


魔法使い「そ、そんなこと!」

エルフの騎士「少なくとも私たちエルフ族に神様なんていない。もちろん精霊も」

魔法使い「……」

勇者「それでも、俺たちは火の神殿を目指すよ」

魔法使い「勇者さま?」


勇者「何もしないで後悔するより、何かをして後悔した方がいい」

勇者「それに本当に精霊だっているかもしれない」


エルフの騎士「すごく前向きなんだな勇者は」

勇者「そうでもないとやってられないからな」

エルフの騎士「あはは。確かにそうかもしれない」


魔法使い「……」

エルフの騎士「それにしても、魔法使いの魔力はそんなに低いのか?」

魔法使い「……」

エルフの騎士「そうか」

勇者「それに今、俺たちは武器を一切取り上げられているから。何もできない」


エルフの騎士「んー。そうだ! 君の魔法を見てあげよう!」

魔法使い「えっと……」

勇者「でもいいのか? 魔法なんて使っているところを隊長に見られたら」

エルフの騎士「そのときはそのときだ。折角だし、ここで暇を弄ぶのも嫌だろう」


魔法使い「じゃあその、お願い」

エルフの騎士「任せたまえよ。しかし今日はもう夕暮れ。明日にしよう」


エルフの騎士「魔法使いは私と同じ部屋。勇者の部屋は案内しよう」

勇者「ありがとう」

魔法使い「……」


エルフの騎士「どうした?」

魔法使い「あの。普段はいっしょに寝ているから」

エルフの騎士「なにっ!?」


勇者「ご、誤解を招く言い方をするなよ!」

勇者「野宿のときとか、宿の部屋が一つしかないときだけだろ!」


魔法使い「……」

エルフ「あ、あはは……」



―― 翌日 エルフの森 ――



エルフの騎士「さて、魔法を使ってみてくれ」

魔法使い「うん」


魔法使い「えいっ」

==魔法使いは火炎魔法を唱えた==


エルフの騎士「ああ、その手の平の炎がどうなるんだ?」

魔法使い「これで終わり」

エルフの騎士「え」


勇者「本当だ。魔法使いの全力がその手に平の炎だ」

エルフの騎士「これは……。想像以上に魔力が弱い」

魔法使い「……」


エルフの騎士「そもそも魔法とはなんだ」

魔法使い「魔力を使って出すもの」


エルフの騎士「そうだ。精神を集中させると、魔法は魔力によって出力される」

エルフの騎士「集中力が切れると魔法は上手く発動しない」


魔法使い「そう」

エルフの騎士「だからこそ、魔法を使える者はそれだけで強い」

魔法使い「うん」


勇者「俺のような剣を使う奴は、魔法を使われる前、もしくは精神の集中を妨げるためにつっ込むけどな」

エルフの騎士「そう。それに魔法は近場で発動すると、使い手も傷付く場合がある」

勇者「だから後衛向きと言われるんだよな」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「その魔力が弱い。どうしてだ? 普通、月日を掛けると強くなるものだが」

魔法使い「体の成長とともに」

エルフの騎士「その通り。体が成長すれば、魔力も強くなると言われていて、大魔道士に老人が多いのはそれが理由だな」

魔法使い「学院長……」

エルフの騎士「ん、なんだ?」

魔法使い「なんでもない」


エルフの騎士「どうして君の魔力はそんなに弱いんだ?」

エルフの騎士「まるで子供並……。この里の魔法を覚えたばかりの子供すらその程度は」


魔法使い「……」

エルフの騎士「す、すまない! 別に君を悪く言ったつもりじゃ……」


魔法使い「いい。慣れてるから」

エルフの騎士「いや、そのだな」

魔法使い「どうせ私なんて」

エルフの騎士「いやいや! 君は悪くない!」

魔法使い「……」

エルフの騎士「あう……。ゆ、勇者よ……どうすれば」


勇者「そうなったら、当分は無理だ」

エルフの騎士「なんという……」


魔法使い「うぅ……」

勇者「魔法使い。魔法の訓練をするんだろー」

魔法使い「……うん」


エルフの騎士「しかしだ。この魔力を考えると、魔法使いは今までずっと勇者に守られていたのか?」

魔法使い「……」

勇者「騎士、無自覚に追い込んでるなぁ」

エルフの騎士「え? あ、しまっ!」


魔法使い「どうせ私なんて」

勇者「大丈夫、魔法使いは強いよ」

魔法使い「でも、魔力が」

勇者「そんなの強さじゃない」

魔法使い「だって」


勇者「でも、だっては禁止」

魔法使い「うぅ……」


エルフの騎士「そのなんだ。重ね重ねすまないと思う」

魔法使い「別にいい」


エルフの騎士「じゃあ君の武器はなにがあるんだ?」

魔法使い「……」

勇者「実は、その武器はさっきも言ったとおり取り上げられていて」

エルフの騎士「魔法じゃないのか?」


勇者「魔法と言えば魔法なんだけど……」

エルフの騎士「なんだ。言葉が詰まっているぞ」

勇者「そのな。銃なんだ。鉄砲のことだ」

エルフの騎士「鉄砲? あの、鉄の塊をぶっ飛ばすあれか?」


魔法使い「うん」

エルフの騎士「なるほど」

勇者「隊長から聞いてなかったのか?」

エルフの騎士「ああ。今知ったよ」


勇者「魔法使いは、その銃があれば誰よりも強いんだけどな」

エルフの騎士「はは、何を。銃など、文献でしか見たことはないが、弓矢よりも劣るじゃないか」

勇者「弓矢よりも?」

エルフの騎士「知っているぞ。せいぜい飛んでも50m程度なのだろう?」

勇者「なんだそれ?」


エルフの騎士「それに、弾もすぐに消費してしまうと。弓矢より劣るじゃないか」

エルフの騎士「エルフの弓矢なんて、500mは飛ぶ! 250m圏内であれば、百発百中だ」


勇者「えーっと……なんだその。す、すごいなエルフ!!」

魔法使い「う、うん! 敵わない」


エルフの騎士「そうだろう、そうだろう! それに折角だ、エルフの弓術を見せてやろう!」

魔法使い(あ、あれ? 私の魔力の訓練……)


エルフの騎士「私が使う弓はこれだ」

勇者「へぇ」

魔法使い「……」


エルフの騎士「反応が鈍いな? だが、見ていろ! きっと度肝を抜かれるぞ」

勇者「ああ」


エルフの騎士「……ふむ。では」

エルフの騎士「……はぁ、はっ!!」



==エルフの騎士は矢を放った==

==矢は曲がりくねって森の奥深くへ飛んでいった==



勇者「真っ直ぐ飛んでないけど」


エルフの騎士「ふふふ。まぁ矢の場所へ見に行こう」

勇者「ん、わかった」




勇者「これは……。狙ってやったのか?」

エルフの騎士「もちろん」

魔法使い「ウサギが……射られているなんて……」


エルフの騎士「エルフの弓術は、真っ直ぐだけではない。随意的に曲げることもできるんだ」


勇者「これはたまげた」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「はっはっは! 凄いだろ!」


エルフの騎士「これで判っただろ? 鉄砲なんかよりも、弓矢の方が強いってことがさ」

勇者「一理あるな」

魔法使い「そうですね」


エルフの騎士「それに私の専門は、魔法や剣よりも弓なんだ」

エルフの騎士「この里でならば、一番の使い手だと自負している!」


勇者「おおー」

魔法使い「……すごい」

エルフの騎士「ふふん!」


勇者「どれだけ修行すればこんなに」

エルフの騎士「隊長に拾われたときから。隊長はすごく厳しくて、優しかった」

勇者「なるほど。よかったな、そんな師匠に出会えて」


エルフの騎士「おっと! そういえば魔法使いの特訓を忘れていた」

魔法使い「……」

エルフの騎士「はは、すまないな!」

魔法使い「うん」




エルフの騎士「魔力というのは、自分の中にある素質って話しはしたな」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「そして、君の魔法は手の平の炎で全力」

魔法使い「……」


勇者「どうにかならないかな」

エルフの騎士「んー……。そうだ! イメージの力、魔法を操る力を付ければどうにか」


魔法使い「えい……。ウサギさん」

エルフの騎士「え?」

魔法使い「がおー、くまさん」

エルフの騎士「え、え!?」

魔法使い「あと、お馬さん……」


エルフの騎士「すごいな!?」

エルフの騎士「形を固定するのが、雷や風魔法に次いで難しいって言われている火炎形魔法でここまで出来るなんて」


魔法使い「まだ足りない?」

エルフの騎士「あ、あはは……。次は私が度肝を抜かされそうになったよ」

魔法使い「そう」

エルフの騎士「でも、どうしてそこまでイメージする力があるのに、魔力は弱いままなのだろう」

魔法使い「……」


エルフの騎士「とりあえず、一度里へ帰るか」

勇者「そうだな」




―― エルフの里 ――


勇者「な、なんだよこれ」

魔法使い「酷い」


エルフの騎士「里が……。里が壊滅しているだと!?」


勇者「俺たちが森で特訓している間に襲撃を受けたっていうのか」

魔法使い「……」


エルフの騎士「ああ! 村長、少女、爺、隣のおじさん、隊長!!」


勇者「ま、待つんだエルフの騎士!」


魔法使い「行ってしまった」

勇者「くそっ! とにかく、俺たちは俺たちで負傷者の救援に行こう!」

魔法使い「うん」




勇者「……そんな、みんな死んでいるなんて」

魔法使い「……一つ気になることが」

勇者「なんだ魔法使い」

魔法使い「子供の死体がないです」

勇者「なに」



―― エルフの騎士 ――


エルフの騎士「誰か!! 誰か生きているものはいないのか!!」

エルフの騎士「誰でもいい、返事をしてくれ!!」

エルフの騎士「頼む、頼むっ」


ガタ


エルフの騎士「そこに誰かいるのか!? 待っていろ、すぐに助けてやる!!」



エルフの騎士「ああ、雑貨屋のお婆さん……! 建物の下敷きになっているんだな。今助けてやるぞ」

エルフの騎士「おおおおお!!」

エルフの騎士「さぁ、これでももう大丈……ぶ……」


エルフの騎士「そんな……。下半身がないなんて……」

エルフの騎士「ああ……。ああああ!……ああああああっ!!」




??「そ、その声は騎士か?」

エルフの騎士「あ、ああ……も、もしかして隊長!?」




隊長「はっ、うるせぇよ。見っとも無い声を出すな」

エルフの騎士「ですが!」

隊長「いいか。騎士はいつでも優雅たれ、毅然たれだ。この泣き虫女」

エルフの騎士「……その呼ばれ方、久しぶりです」



隊長「今までどこにいやがった」

エルフの騎士「森に。あの人間たちといっしょに」

隊長「そうだったのか……。それはよかった」

エルフの騎士「よかった?」

隊長「お前だけでも、助かった……」

エルフの騎士「そんなっ! きっとまだ里には生きているエルフが!」


隊長「恐らくいないだろう……ぐっ」

エルフの騎士「いないってそんなっ」


隊長「俺たちは、奇襲にやられた。女も老人も、全員が虐殺された」

エルフの騎士「酷い、こんなのって」


隊長「がはっ! ごほ、ごほっ!」

エルフの騎士「隊長、血を吐いて!? ああ、お腹が……。今回復魔法を!」

隊長「止めろ……」

エルフの騎士「塞がれ、塞がって! お願い、お願いだから……」

隊長「もういい……。助からないのは判っている」

エルフの騎士「は、はは、隊長らしくないですよ。そんな諦めの態度」


隊長「話しを聞け……。奴らが、魔物どもが里を襲ったんだ」

エルフの騎士「喋らないでっ。今、とにかく回復魔法を」

隊長「奴らは……、里の子供を連れ去っていった……」

エルフの騎士「子供を?」


隊長「何が目的は判らない。だが、子供だけを連れ去った……」


エルフの騎士「でも、どうして」

隊長「この里に生きているものはもういない……俺ももうすぐ死ぬだろう」

エルフの騎士「死にません! 死なせません!!」

隊長「……助けに、行け。子供を、里の未来だけは」

エルフの騎士「……」

隊長「いいから……頼んだぞ……。我ら護衛隊の、最後の任務だ……」

エルフの騎士「……隊長? 隊長!! うわああああああ!!」






勇者「今の叫び声」

魔法使い「はい、騎士さんです」


勇者「……この方は、護衛隊長」

魔法使い「お腹が……」


エルフの騎士「……うあ、あああ……ああっ」


勇者「騎士……」

魔法使い「……」


エルフの騎士「許さない……」

勇者「おい?」

エルフの騎士「絶対に許さない!! 魔物はいつも、私の大事なものを奪って行くっ」

魔法使い「……」


エルフの騎士「殺す、殺し尽くしてやる」

勇者「騎士、落ち着くんだ」

エルフの騎士「落ち着け!? こんな状況でどう落ち着けと言うんだ!!」

勇者「冷静になれって言っているんだ」


エルフの騎士「君は人間だから、エルフがどれだけ死んでも気にはならないだろうな」

勇者「……」

魔法使い「そんな」


エルフの騎士「……いや、すまない。今のは忘れてくれ」

勇者「気にするな」


エルフの騎士「だが、私は行かねばならない。復讐の気持ちもあるが、子供を助けなくては」

魔法使い「子供……。死体がいなかった」

エルフの騎士「魔物どもは子供を連れ去ったらしい」

勇者「そうなのか」


エルフの騎士「だから私は行かねば。子供たちを救いに」

勇者「じゃあ俺も行こう」

エルフの騎士「しかしこれはエルフの問題……」

勇者「確かに。俺は勇者だし、エルフ族の問題なんて人間と関係しない」


エルフの騎士「……っ」

勇者「でも、騎士はもう俺の友人だ。大切な友人のためなら、種族なんて関係ないよな」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「勇者! 魔法使い!」


勇者「時間もない。早速行こう。ただ、武器がないな……」

エルフの騎士「勇者たちの武器ならば恐らく……あっちの武器庫に」

勇者「わかった」





魔法使い「お帰りなさい……」

勇者「そんなに大事そうに鞄を抱え込むなよ」

魔法使い「だって」

勇者「まぁいいか。じゃあ行こうか、騎士」

エルフの騎士「ああ。助かる、すまない」


勇者「しかし、魔物はどこにいるんだ」

エルフの騎士「きっと魔物たちが通ったあとがあるはずだ」

勇者「そうなのか? でも、それじゃあどうして今まで……」


エルフの騎士「私たちは、自分の里の周囲ならば、森の形状をある程度記憶している」

エルフの騎士「でも今までの里は皆殺しだったから、森の変化に気付けるものがいなかったんだ」


勇者「なるほど。今回は騎士が生き残っている。だから追跡が可能と」

エルフの騎士「そういうことだ。では向かおう、きっとこっちだ」

勇者「わかった」

魔法使い「うん」



―― 魔物の集落 ――


エルフの騎士「ここが……。こんな所が」

勇者「見ろ。あそこに子供がいる」




子供「うわーん、こわいよー」

子供「ひっく、お母さん……」



エルフの騎士「なんて酷い……。じゃあ助けに!!」

勇者「待て」

エルフの騎士「なぜだ! 今そこで、助けを求める子供がいるのだぞ!?」

勇者「見捨てる訳じゃない。……魔法使い」

魔法使い「うん、判った」


エルフの騎士「な、なんだそのでかい鉄の筒は?」

魔法使い「これが、私の武器」

エルフの騎士「それが鉄砲だと言うのか」

魔法使い「……うん」


勇者「どうだ、狙撃はできそうか」

魔法使い「肉眼で確認すると、4匹ほど見張りがいます」

勇者「わかった」


エルフの騎士「おい、鉄砲が届く範囲ってのは50m程度と聞いたぞ」


勇者「ああ、そうだったな。魔法使い、今の射程圏内は?」

魔法使い「1.1km程度」


エルフの騎士「1.1km!?」

勇者「そうだ。この鉄砲は、普通のものとは違う」

エルフの騎士「もしかして、魔道具の一種か何かか」

勇者「魔道具でもないんだけど……。今は置いておこう、子供を助けるのが第一だ」

エルフの騎士「そうだな」


勇者「作戦はこうだ。見張りの4匹を魔法使いが狙撃」

勇者「異変に気付いた他の魔物が来るまでの短い間に、俺と騎士で子供を助ける」

勇者「狙撃後、魔法使いは安全な場所へ移動。子供たちもそこへ誘導だ」


エルフの騎士「了解した」

魔法使い「うん」


魔法使い(……ここからの距離は600m程)

魔法使い(風は……。流石は森の中、ほとんどない)

魔法使い(火炎魔法。爆破魔法、微調整完了。視力魔法、照準。重力魔法、荷重にて安定化)

魔法使い(勇者さまたちは……。うん、大丈夫そう)



魔法使い「行きます」


魔法使い「……すぅー、はぁ……んっ」


パァンッ!

パァンッ!

パァンッ!

パァンッ!


エルフの騎士「なんて音だ」

勇者「行くぞ!」


子供「ふえ、なになに!?」

子供「こわいよぉーー!!」


エルフの騎士「子供たちよ、逃げるぞ!」

勇者「大丈夫だから!」


子供「き、騎士のお姉ちゃん?」

エルフの騎士「ああ。さぁこっちだ!」

子供「うん!」


魔物「ぐあああ!」

エルフの騎士「くそ、もう来たのかっ!」

勇者「俺に任せろ! 騎士は先に子供たちを!」


エルフの騎士「わかった! 子供たちよ!」

子供たち「うんっ」


勇者「俺が相手だ魔物ども!」

魔物「ぐあああああ!!」

勇者「舐めるなよ!」





魔法使い「ここなら安全」

エルフの騎士「みんな無事か!」

子供「あ、少女エルフがいない!」

エルフの騎士「なんだと!?」


魔法使い「子供は任せて。エルフの騎士は少女を」

エルフの騎士「わかった!」





勇者「はぁああ!! りゃあーー!!」

魔物「ぐあああっ」

==勇者の攻撃 まものはたおれた==




エルフの騎士「少女、少女はどこだ!!」



パァンッ!!


エルフの騎士「銃声!? どうして……。もしや!」





魔法使い「くっ。まさかこっちが狙われるなんて」

魔物A「あ、キラメ、ろ」


魔法使い(弾はあと4発。敵は5匹。どうやっても足りない……っ)


子供「お、お姉ちゃん……」

魔法使い「大丈夫」


魔法使い(どうにかしないとっ)


魔物B「き、みょう、ナ、テッポウ、だ」

魔法使い「……」


魔物A「ぐあああ!!」

魔法使い「やぁっ!」


パァンッ!!
バシュ

魔物A「オオオッ」


魔法使い「あと、4匹……」

魔物C「ウググ」


魔物D「があああ!」

魔法使い「そこっ!」


パァンッ!!
ブシュ

魔物D「ぎゃあああっ」

魔法使い「はぁはぁ……」


魔法使い「……」

魔物B「シャアア!!」

魔法使い「なっ! くっ……!」


パァンッ!!
プシャ


魔法使い「はぁはぁ……はぁはぁっ」

子供「お姉ちゃん……。大丈夫……?」


魔法使い「大丈夫だよ。安心して」

子供「う、うんっ」


魔物C「グオオオオ!!」
魔物E「ガアアアア!!」


魔法使い「同時っ!」

魔法使い(射線上に重なった!!)

魔法使い「はぁ!」


パァンッ!!
プシャ


魔法使い「しまっ! もう1匹、逃して……っ」

魔物E「ガアアアア!!」

魔法使い「せめて子供は!」

子供「きゃああ!!」


シュッ
ブシュ!


エルフの騎士「ハァハァ……。ま、間に合ってよかったっ!」

魔法使い「え、エルフの騎士? 弓矢で……」

エルフの騎士「すまないっ。後方支援には、守り手が必要なのに!」

魔法使い「別にいい。それより、少女は?」

エルフの騎士「それが……。見つからない」

魔法使い「そんな」


子供「ねぇ騎士のお姉ちゃん」

子供「僕たち、大丈夫かな?」


エルフの騎士「大丈夫だよ。私たちが守ってあげるからね」


魔法使い「少女はどうするの」

エルフの騎士「……」


子供「少女ちゃん、きっと魔物のとこだよ」

子供「うん、僕も見た」


エルフの騎士「そうなのか!?」

魔法使い「……」

エルフの騎士「勇者に託すしかないのか……」

魔法使い「勇者さま」


エルフの騎士「そうだ。ここから勇者は見えるか、魔法使い?」

魔法使い「少し待って。……ダメ、木が邪魔で」

エルフの騎士「ならば、木の上からならばどうだ?」

魔法使い「それなら」


エルフの騎士「私につかまれ、魔法使い」

魔法使い「え?」


エルフの騎士「木の上へ跳ぶぞ」

魔法使い「……なるほど。お願い」

エルフの騎士「ああ!」



エルフの騎士「どうだろうか」

魔法使い「見える」

エルフの騎士「勇者はどうだ。大丈夫か?」

魔法使い「たくさんの魔物に囲まれているけど、大丈夫」

エルフの騎士「すごいな。流石の私でも微かに見える程度なのに」


魔法使い「視力増強の魔法だから」

エルフの騎士「かなり高度な魔法を使えるんだな。改めて驚きだ」


魔法使い「私はここにいる。だから騎士は子供たちを守って」

エルフの騎士「わかった!」



魔法使い「……援護射撃をしないと」

魔法使い「……すぅー、はぁ……んっ」



パァンッ!!

パァンッ!!





エルフの騎士「魔法使い……。私は未熟者だ。何もできないじゃないか!」






勇者「おりゃああーーーー!!」

魔物「ゴォオオ……」


勇者「ふっ! なんて数だ……。こんな数の魔物がよくもまぁ、エルフに気付かれず」


魔物「ガアア!!」

パァンッ!!
ビュシャ

魔物「グハっ!」


勇者「ナイスだ、魔法使い」

勇者「さて……。残りもあと少し」


勇者「ん、あれは?」

少女「うぅ……。こわいよぉ」

勇者「エルフの女の子? もしかして、逃げ遅れてたのかな」

少女「ひっ! に、人間っ!!」

勇者「ちょっと待ってくれ!」

少女「やだ、やだーー!!」


勇者「ああ、くそっ!」



少女「やだ、助けて、いやだ、いやっ!!」

少女「やっ!……っ、いたい、な、何?」


魔物「ぐ、ふふふ」

少女「あ、ああ……そんな……」


勇者「しまった!!」


少女「やだ、離して、離してよぉ!!」

魔物「ウ、ゴ、クナ」

少女「ひぃっ」

勇者「くそっ!」


魔物「グフフフフ」

勇者「逃げるな!!」


少女「いやぁーーーー!!」



パァンッ!!

魔法使い「は、外したっ……」



魔物「グフフ、サ、ラバダ」

勇者「待てっ!!」





勇者「くっ、見失った……」


魔法使い「勇者さま……」

勇者「魔法使い!? どうしてここに」

魔法使い「魔物が居なくなったので」

子供「……」

エルフの騎士「ゆ、勇者よ! エルフの少女がいなかったか!?」


勇者「そうだ。魔物が1匹、エルフの女の子を連れ去って……」

エルフの騎士「なんだと?」


勇者「騎士ならば追いかけられるんじゃないか!」

エルフの騎士「もちろんだ! 私が行く、勇者たちは子供たちを守っていてくれ」


魔法使い「私も行く」

エルフの騎士「魔法使い!? いや、だが君は」

魔法使い「大丈夫。逃がしたのは、私のせいでもあるから」


エルフの騎士「……わかった。お願いする」

魔法使い「うん」

勇者「じゃあ俺は子供たちを守っている。里の跡地で落ち合おう!」

エルフの騎士「了解した!」

魔法使い「うん」

勇者「では、武運を!」




エルフの騎士「焦っていたのか、雑に逃げているのが判る。足跡がくっきり残っている」

魔法使い「……」

エルフの騎士「近いな。走るぞ!」

魔法使い「はい」



―― 魔物の逃げた先 ――


エルフの騎士「追い詰めたぞ」

魔物「グア……ク、ソ」

少女「き、騎士のお姉ちゃんっ!」


エルフの騎士「少女を離すんだ!」

魔物「コト、ワ、ル」


エルフの騎士「くっ」

魔物「ソコ、ヲ、ドけ」

エルフの騎士「退くと思ったか!」

魔物「コロスゾ?」

エルフの騎士「……卑劣な」


魔物「コレ、ヒツ、よう」

エルフの騎士「なぜ、子供たちを攫う」

魔物「ぐふふ、ソレ、はな、ゼだろう、な」

エルフの騎士「答えろ!」


魔物「グフフ、グフフフフ」

少女「やめてっ、いやぁ……」


エルフの騎士「……仕方ない」

==エルフの騎士は大きく手を上げた==


魔物「な、ンダ? ナッ、シマっ、た!」


パァンッ!!
ブシャ


エルフの騎士「気付くのが遅いんだよ……」

魔物「ガガッ……」

==まものはたおれた==


エルフの騎士「よくやった、魔法使い」


ガサガサ


魔法使い「うん」

エルフの騎士「全部、君たち人間のおかげだった」

魔法使い「ううん」

エルフの騎士「はは、そう謙虚になるな。……帰ろう、里へ」

魔法使い「そうだね」


少女「……」

エルフの騎士「怖かったね、少女」

少女「うぅ、うわぁぁあん! お姉ちゃぁぁあん! わああああっ!!」



――
――
――


―― 数日後 森の外 ――


エルフの騎士「思ったよりも長く引き止めてしまった。申し訳ない」

勇者「いいさ。でも、本当にもういいのか?」

魔法使い「大丈夫?」


エルフの騎士「ああ、心配ない。他の里に子供たちは移住してくれた」

エルフの騎士「それに、森の危機になっていた魔物は消え去った」

エルフの騎士「感謝しても仕切れない」


魔法使い「でも、私の特訓なんてしなければ……」

エルフの騎士「何度も言っているが、君のせいじゃないよ。遅かれ早かれ、襲撃はあっただろう」

魔法使い「……うん」


エルフの騎士「子供たちも、最後には勇者たちに懐いていたな」

勇者「ああ。少女が俺と別れるだけで泣くなんて思わなかったよ」


エルフの騎士「あはは。エルフの一族は、勇者たちに感謝している。とてもな」

勇者「そんな必要はないよ。俺たちはただ、友を救っただけだ」


エルフの騎士「なんともまあ。勇者のような人間もいるんだな」

勇者「そう言ってくれると嬉しいよ」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「隊長にも、こういう人間がいることを知って欲しかった……」

勇者「……ああ」

エルフの騎士「埋葬、手伝ってくれてありがとう」

勇者「俺たちのような部外者が行っても良かったのだろうか」

エルフの騎士「もちろんさ。むしろ、エルフの英雄に手伝ってもらえて良かったと思う」

勇者「英雄だなんて」


魔法使い「勇者さま、そろそろ行こう」

勇者「ああ。そうだな、いつまでもこうしてはおれない」


エルフの騎士「あ、あーっとそうだ!」

勇者「なんだ?」


エルフの騎士「君たちはその、二人旅なのだよな?」

勇者「そうだが?」

魔法使い「……」


エルフの騎士「た、例えばの話しだ! 勇者は前衛だし、魔法使いは援護だよな」

エルフの騎士「そのだ、あの、中間的な役割が欲しいと思わないか!?」


勇者「まぁ、そう思わなくともないが」

魔法使い「……」


エルフの騎士「そのだ、私は都合よくその役割を担えるわけだ!」

勇者「お、おう?」

魔法使い「落ち着いて」


エルフの騎士「……ふぅ。そうだな、私らしくもない」

勇者「エルフの騎士?」


エルフの騎士「単刀直入に言う。私を勇者のパーティに入れてくれ」

魔法使い「……それはどうして」

勇者「魔法使い、どうしてそんなことを聞くんだ?」

魔法使い「……」


エルフの騎士「なんだ。君は魔法の精度だけでなく、誰かを見る目も鋭いのだな」

魔法使い「……復讐」


エルフの騎士「そう、復讐だ。私の里を襲った魔物を、たった一人残った私の家族を奪った魔物への復讐だ」

勇者「……」

魔法使い「やっぱり」


エルフの騎士「やはりこんな理由では、仲間に入れて貰えないだろうか」

勇者「……」

魔法使い「勇者さま?」


勇者「理由なんて、重要じゃない。魔王討伐の覚悟はあるのか?」

エルフの騎士「問われるまでもない」

勇者「人間に従うことになるんだぞ」

エルフの騎士「目的のためならば、維持もプライドも必要ない」

勇者「憎しみに捕らわれることはないか」

エルフの騎士「騎士の誇りにかけて」


エルフの騎士「我が剣を、忠誠を受けて貰えないだろうか」

勇者「……」


エルフの騎士「……」


勇者「わかった。エルフの騎士よ、俺の剣となり、魔法使いの盾となれ」

エルフの騎士「勇者よ! ありがとう! ああ、感謝するっ」

魔法使い「うん!」


勇者「まぁ俺もずっとエルフの騎士のように、攻撃にも支援にもなる戦力が欲しかったんだ」

エルフの騎士「それは良かった。こんな私でも役に立てるならば幸せなのだが」

勇者「大丈夫。きっと立派に戦ってくれると信じている」

エルフの騎士「勇者……」


魔法使い「……」

エルフの騎士「ああ、そうだった魔法使い」

魔法使い「わ、私?」


エルフの騎士「君の鉄砲、弓よりも劣るなどと言ってすまなかった」

エルフの騎士「魔力などなくとも、君はとても強かったよ」


魔法使い「……あ、ありがとう」

勇者「照れているのか?」

魔法使い「う、うるさいです!」


勇者「い、痛い蹴らないで……」

エルフの騎士「あはは。意外と気楽な旅になりそうだ!」

勇者「おいおい……」

魔法使い「……ふん」



―― 第5章 エルフと魔法使い 終わり ――

捕捉ネタ
 本編である”勇者「狙撃しろ、魔法使い」”はパラレルワールドです
 マルチエンディングでいう所のノーマルEDです
 あとこのSSは、銃器を知らない人でも読めるようにしているつもりです。というか俺が詳しくない

 次章、ネタはあるけどプロットがほとんど完成していません!
 今回も読んでくれた人がいたならありがとうございました

書き溜め終わりました
6章の投稿はたぶん今日の夜から夜中のいずれかに行います


次回予告
 6章 御祭りの国と魔法使い


※ネタバレ注意









~三行でわかる5章のあらすじ~
 
 ①エルフに捕まった
 ②エルフの里が魔物に襲われ、子供が攫われたので助けた
 ③エルフの騎士が仲間になった ←いまここ


6章 御祭りの国と魔法使い


―― ある草原の上 ――


エルフの騎士「森の外など初めてだ」

勇者「そうなのか?」

魔法使い「……」


エルフの騎士「ああ。我らエルフ族は、基本的に人里離れたところ、かつ魔物が寄り付かない所に里を作る」


勇者「なるほど」

エルフの騎士「ところで、私たちはどこへ向かっているんだ? 火の神殿か?」

勇者「とりあえずの目的はそこだ。でも、その前に一つ国を経由していくんだ」

エルフの騎士「国? どんな国だ」

勇者「よく分からない。水の街で、神官さまに教えてもらったルートを辿っているだけだからな」


エルフの騎士「それにしても、人間の国か……」

勇者「何か不安でもあるのか?」

エルフの騎士「人間は突然襲ってきたりしないだろうか……」

勇者「しないと思うけどな」


エルフの騎士「あー。どきどきする」

魔法使い「あの、これ」

エルフの騎士「なんだこれは?」

魔法使い「ローブ。あと帽子。顔を隠すために」

エルフの騎士「なんと! これを作ってくれたのか!?」

魔法使い「うん」


勇者「魔法使いは偉いなぁ」

魔法使い「……」


エルフの騎士「頭を撫でられて良かったな、魔法使い」

魔法使い「……っ」


勇者「確かにそれがあれば、顔を隠せるな。特徴的なエルフの耳だって隠せるだろう」

エルフの騎士「確かにこれは助かる」

魔法使い「それはよかった」


エルフの騎士「これで一まずの憂いは無くなった」

勇者「そうだな」

魔法使い「うん」


勇者「ほら、向こうにその国が見えるぞ」

魔法使い「もう少しですね」

エルフの騎士「不安もあるが、楽しみだ」


―― 御祭りの国 ――


住人A「じゃあのー」

勇者「感謝する」




勇者「さっきの人の話しだと、ここは御祭りの国というのか」

魔法使い「聞いたことある。この国は、女神を始めとした数多の神々を祭る国。だから御祭りの国」


エルフの騎士「魔法使いは博識だな」

魔法使い「そ、それほどでもない」

エルフの騎士「照れた君も可愛いな」

魔法使い「……」


エルフの騎士「それにしても、人間の里というのは賑やかなものなのだな」

勇者「ここは国だからだよ」

エルフの騎士「なるほど。それで」


勇者「村や普通の町だと、こんなに人はいないさ」

エルフの騎士「ここは普通の町とは違うのか?」

勇者「この町は城下町だから賑やかなんだよ」

エルフの騎士「人の里でも色々とあるのだなぁ」


魔法使い「……」

エルフの騎士「魔法使いは人が多いところはどうだ?」

魔法使い「少し苦手」

エルフの騎士「同じ人間なのに?」

魔法使い「えっと……。うん」

勇者「魔法使いは人見知りだから……あ」


魔法使い「勇者さまのばか」

勇者「す、すまんっ」


エルフの騎士「人見知りってどういうものだ?」

魔法使い「え?」

勇者「エルフ族には、初対面の人が苦手とか、会話するのが恥ずかしいとかないのか?」

エルフの騎士「それが人見知りの概念か。おもしろいな、エルフ同士にはそんなものはないぞ」

魔法使い「すごい」


エルフの騎士「私も苦手なのだろうか?」

魔法使い「……ちょっと慣れた」

エルフの騎士「そうか! それはよかった!」


勇者「それくらいにしてやってくれ。魔法使いは、これをコンプレックスにしているんだ」

魔法使い「……うん」


エルフの騎士「そうだったのか。それはすまない」

魔法使い「別にいい」

エルフの騎士「そう言ってくれると助かる」


―― 御祭りの国 城下町 ――



エルフの騎士「……おお、あれは武器屋か!」

勇者「ああ」


エルフの騎士「あっちは防具屋! それに道具屋、なんでも揃っているのだな!!」

勇者「あ、ああ。なんだか楽しそうだな」

エルフの騎士「すごく楽しいぞ! 人間も捨て難いな!」

勇者「それならいいんだけど……」


エルフの騎士「あの髪飾り可愛いな。そうは思わないか魔法使い?」

魔法使い「え、えっと……そだね」

エルフの騎士「うわぁ。すごいなぁー……」

魔法使い「……」


勇者(田舎者丸出しだこれ)

魔法使い(田舎もの)


パン屋「ローブの剣士さん。うちのパンを是非買っていってくれよ!」

エルフの騎士「お、おうそうか?」


勇者「まったく。ほら行くぞ騎士」

エルフの騎士「し、しかしパンが!」

パン屋「そうですよ旦那ァ。うちのパンは絶品だぜ」

勇者「また後で貰おう。先を急ぐから」

エルフの騎士「え、ちょっと……。ああー……」

パン屋「ちっ、んだよ」


勇者「まったく」

エルフの騎士「どうしてだ我が君よ! せっかく先ほどの人間が」

勇者「いいか? あんまり田舎者みたいだと、さっきみたいに集られるんだよ」


エルフの騎士「それがいけないのか?」

勇者「あまりよくない。金になるカモだと思われたらいやだろ」

エルフの騎士「それは確かに……。では、さっきの私をカモにしようとしていたのか?」

勇者「それは分からない。ただ、物を買うんじゃなくて、買わされないように気をつけたほうがいい」


エルフの騎士「なるほどな。人間というものは、同じ種族なのにどうしてこんな……」

勇者「恥ずかしいが、これが人間なんだ」


魔法使い「人間に失望した?」

エルフの騎士「あはは、安心しろ! 私は人間でなく勇者に忠誠を誓っているからな。この程度で失望したりしないさ」

勇者「それなら良かった」


エルフの騎士「ところで勇者よ。今からどこへ行くのだ? 先に宿探しか?」

勇者「そうだなぁ。とりあえず城へ行くか」


エルフの騎士「城へ? それは何故だ」

勇者「俺は勇者だからな、国の王には挨拶をしないとな」

エルフの騎士「勇者も大変なのだな」

勇者「慣れたもんだよ」


魔法使い「……」

勇者「そういえば魔法使い、王族に会うのは初めてだったっけ?」

魔法使い「うん」

勇者「緊張しそうか?」

魔法使い「しそうです」

勇者「あはは。大丈夫だよ。挨拶は俺がするから、魔法使いはいっしょに居るだけでいいよ」

魔法使い「で、でも」


エルフの騎士「私も行くべきだろうか?」

勇者「そうだな。勇者一行であるなら、謁見はした方がいいと思う」

エルフの騎士「そうか。人の王に会うなど、考えたこともない」


勇者「そういえばエルフには王がいるのか?」

エルフの騎士「いるぞ。あの森にはいないが」

勇者「そうなのか」

エルフの騎士「おそらく会うことはないと思うけど」

勇者「会うことはない?」


エルフの騎士「エルフ族の王は唯一王だからな。人間のように王さまが多いのは珍しい」

勇者「そうなのか」


魔法使い「……」

勇者「さてと、そろそろ」

魔法使い「帰ります」

勇者「おいおい……」

エルフの騎士「魔法使い?」


魔法使い「無理です。王さまとの謁見なんて」

勇者「怖がらなくても大丈夫だから」

魔法使い「宿屋を探してきます」

勇者「さぁ行こう」

魔法使い「は、離して」


エルフの騎士「……」

魔法使い「助けて、騎士」

エルフの騎士「行こうか!」

魔法使い「う、裏切り者……」


エルフの騎士「私はあくまでも勇者に忠誠を誓ったからな」

魔法使い「うぅっ」


勇者「覚悟を決めるんだな」

魔法使い「勇者さまの人でなし!」


―― 御祭りの城 城門 ――



見張りA「あなたたちは誰でしょう。何か用ですか」

勇者「俺は勇者です。魔王討伐の旅に、この王国に立ち寄った。祭り王との謁見をお願いしたい」


見張りA「勇者さま!? えっと、証拠となる勇者バッチは」

勇者「ここに」

見張りA「……少々お預かりします。本物か確認しますので」



エルフの騎士「先ほどのは?」

勇者「あれは勇者バッチ。本物の勇者かどうかを判別するためにあるんだ」

エルフの騎士「あんなバッチ、偽造なんてすぐに出来そうだが」


勇者「それは難しいな。あれは特殊な金属と、細かい装飾がなされているんだ」

勇者「火炎系の魔法を当てることで出身の国の紋章が浮き上がる仕掛けもある」


エルフの騎士「すごいんだな」


見張りA「先ほどのバッチ、お返し致します。これは本物の勇者バッチでした」

勇者「そうでしたか」


見張りA「王との謁見でしたね」

勇者「王さまの都合がよい日で宜しいのですが」

見張りA「王は今であればすぐに謁見ができるとのことです」

勇者「それは助かります。では今から」


エルフの騎士「とうとう人間の王と会うのか」

魔法使い「……」

エルフの騎士「そう怯えるなよ魔法使い……」

魔法使い「でも……」


勇者「だっても禁止だぞ」

魔法使い「いじわる!」


―― 祭り王 謁見の間 ――


祭り王「お初にお目にかかる勇者。わしがこの御祭りの国の王、祭り王だ」

勇者「突然の謁見、謝罪とともに感謝を。俺は現代の勇者です」


祭り王「ははは、そのように硬い挨拶はやめよ! わしが苦手なのだ!」

近衛A「お、王!」


祭り王「いいではないか。勇者も長旅で疲れておるのに、こうして挨拶に来てくれているのだぞ」

祭り王「その上、硬い挨拶など可哀想ではないか?」


近衛A「……しょ、承知しました」


勇者「気を使わせてしまったようで、申し訳ない」

祭り王「よいよい!」

勇者「ははっ」


祭り王「こちらは、我が国の王子じゃ」

王子「始めまして勇者どの。これからよろしくお願いする」

勇者「はっ!」


王子「して、そちらの剣を腰に携える方は。この場で帽子を被るというのは、流石に不躾」

王子「顔を見せろ」


エルフの騎士「……」

勇者「騎士」

エルフの騎士「了解した、我が君」



エルフの騎士「これでよろしいか人間の王よ」

祭り王「ほほう……。これは珍しい、エルフ族ではないか」

王子「……なんと美しい」

エルフの騎士「私はあくまで、勇者に忠誠を誓う身だ」

祭り王「なるほどな。それでよいのではないか」


エルフの騎士「人間の王とは、意外と話しがわかる」

祭り王「エルフ族にそう言ってもらえると嬉しいぞ」


近衛A「王になんていう……っ」

勇者(申し訳ない)

魔法使い(ごめんなさい!)


祭り王「確か、現在の勇者の出身国は……」

勇者「既に滅んでおります」

祭り王「……確か、そうだったな。すまぬ」

勇者「いえ」


魔法使い(知らなかった)

エルフの騎士(勇者も故郷を失っていたのか……)


祭り王「なにしても、勇者というものは懐かしい」

勇者「懐かしい?」


祭り王「前代の勇者は、我が国の出身だったからな」

勇者「そうだったのですか」

祭り王「お主が勇者に選ばれたのはいつだったか」

勇者「私が勇者の任を授かったのが、5年前でございます」


祭り王「そうだったか」

勇者「はい」


祭り王「……10年か。前代の勇者の行方が分からなくなってから」

勇者「行方が?」


祭り王「そうだ。当時の仲間が、我が国に報告に訪れたのが、10年前だ」

勇者「それでは死んではいないのでは」


祭り王「わしらもそう思った。5年待ったが、それでも行方が掴めなくてな」

祭り王「前代の勇者の行方を失ってから5年後、お主が勇者として選ばれたという訳だ」


勇者「そうだったのですか」

祭り王「左様」

勇者「それからさらに2年後、俺が旅立ったという流れになります」

祭り王「そうなるのか」



祭り王「さて。申し訳ないのだが、わしも暇でなくてな。そろそろ」

勇者「ははっ。此度は、突然の訪問にも関わらず」

祭り王「よいと言っておるだろう? また会いに来てくれ、勇者よ」

勇者「勿体無きお言葉、感謝します」


―― 城内 通路 ――


エルフの騎士「人間の王とは誰もがあのようなのか?」

勇者「いや、そういう訳じゃないんだが」

魔法使い「でも、緊張せずに済みました」

勇者「確かに」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「ただ、王子が私ばかり見ていた気が……」




??「やぁ麗しの君!」

エルフの騎士「うお!? だ、誰だ貴様!!」

王子「連れないではないですか。先ほどお会いしたばかりと言うのに」


エルフの騎士「き、きさっ……あなたは人間の王子!?」

王子「もっと馴れ馴れしくとも。あなたにならば」

エルフの騎士「ええい、離せ!!」


王子「おっと」

エルフの騎士「ななな、何なのだ!」

勇者「お、王子?」

王子「おお、勇者殿。勇者殿はまこと素晴らしい。このように美しい女性を仲間にされるとは」


勇者「は、はい?」

魔法使い「……」


王子「おっと、私とした事が……。しかし、全てあなたが悪いのです」

エルフの騎士「ええい! いちいち近づくな! それに私の何が悪いのだ!?」

王子「その美しさが、と言えばよいのかな?」

エルフの騎士「ひいっ!」


勇者「こ、これは……」

魔法使い「寒い。なぜ……」


エルフの騎士「とととと、とにかくだ! そんなに顔を近づけるな!!」

王子「はっはっは。エルフの騎士は、淑女なのですね」

エルフの騎士「い、いや……そういう訳では」


勇者「会話の成立しない相手っているんだな」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「そこ! 私を助けろ!!」


勇者「どうするんだ?」

魔法使い「もちろん、断ります」


エルフの騎士「さっきの仕返しのつもりだな!」


王子「おやおや。何かお困りですか?」

エルフの騎士「こ、この人間は……」


王子「そうだ。今度私と食事でもどうでしょうか?」

エルフの騎士「そんなもの!」


王子「美味しい料理をご馳走致しますよ? もちろん、いきなり二人きりというのはあなたも気が引けるでしょう」

王子「ですのでそこのお二人、勇者殿と魔法使いもご一緒に」


エルフの騎士「そのような物で我が君が! ふふん、さっきだって私にお叱りしたくらいなのだぞ」


勇者「美味しい料理……」

魔法使い「食べたい……。もう、保存食はやだ」

エルフの騎士「……」


王子「さぁ、どうされますか?」

エルフの騎士「くっ。わ、わかった……」


―― 宿屋 ――


勇者「あーあ、王宮のお布団」

魔法使い「残念です」


エルフの騎士「そ、そんな恨めしい目を向けないでくれ……」


勇者「いやまぁ、仕方ないよな。あの王子、すごく迫ってきてたからな」

エルフの騎士「その通りだ! あ、あんな人間のもとにいれば……私がどうなるか……」


勇者「それは大丈夫だと思うけど……。あの王子、一応紳士っぽいし」

エルフの騎士「ぽいとは何だぽいとは! それに、よいか我が君! 男など、一皮向ければ皆狼なのだぞ!!」


魔法使い「おおかみ?」

エルフの騎士「女を襲う助べえだ!」

魔法使い「っ!?……ゆ、勇者さま!?」


勇者「そんなはずあるか」


エルフの騎士「ああ、食事会は明日か……」

勇者「嫌か?」


エルフの騎士「嫌に決まっているだろ……。なんだあれは、人間とはああいうものなのか?」

勇者「いや、確かにあれは特殊的だと思う」

エルフの騎士「やはりそうか……」


魔法使い「嬉しくないの?」

エルフの騎士「嬉しいと思うか?」

魔法使い「……」

エルフの騎士「はぁ……」


勇者「本当に熱烈なアプローチだったな」

エルフの騎士「初めて人間が怖ろしいと思った」

勇者「あ、あはは」

エルフの騎士「笑い事ではないぞ我が君……」


勇者「ところで、なんだその呼び方」

エルフの騎士「我が君、のことか?」


勇者「我が君っていうのは」

エルフの騎士「もちろん、忠誠を誓った相手に対する敬いの呼び名だ」

勇者「そうなのか……」


エルフの騎士「なんだ、嫌なのか?」

勇者「まぁなんと言うか、恥ずかしいって言うか」

エルフの騎士「……そうなのか」


勇者「あ、いや! 別にその嫌だった訳じゃなくて!」

エルフの騎士「そうか! ならば我が君と呼んでもよいだろうか?」

勇者「……はぁ。いいよ」

魔法使い「……ふふ」


エルフの騎士「ところで我が君。明日は何をするんだ?」

勇者「そうだな。特にすることもないし、城下町を見て回るか?」

エルフの騎士「おお! 我が君ならばそう言ってくれると信じていた!」

勇者「う、嬉しそうだな」

エルフの騎士「人間の里など、この長き生涯において訪れることなどないと思っていたからな」


魔法使い「じゃあ私はここにいる」

エルフの騎士「何を言っているんだ魔法使い。もちろん君も行くんだよ」

魔法使い「え」

エルフの騎士「ああ、明日が楽しみだ」

魔法使い「……」


勇者「さてと、明日の予定も決まったし。そろそろ寝るか」

エルフの騎士「ん。そうだな。ならば私たちは部屋に戻ろう」

魔法使い「私たち?」


エルフの騎士「もちろん魔法使いもだ」

魔法使い「私は勇者さまと……」


勇者「こらこら。もう二人旅じゃないし、男女が同じ部屋というのもあれだろ」

魔法使い「そんなっ」


エルフの騎士「君も淑女ならば、同衾などはしたないぞ」

魔法使い「同衾なんてしてない」

エルフの騎士「細かいことはいいさ。さぁ、行くぞ」

魔法使い「ああ……。勇者さまぁ……」


勇者「あ、あはは……」



勇者「さてと、寝るか」


―― エルフの騎士、魔法使いの部屋 ――



エルフの騎士「さて、私たちも寝ようか」

魔法使い「……うん」


エルフの騎士「その、なんだ? 魔法使いは我が君が好きなのか?」

魔法使い「すっ!? べ、別にそんなのじゃ……」

エルフの騎士「いや、傍から見ているとな」

魔法使い「好きじゃない」


エルフの騎士「素直になった方がいいと思うが」

魔法使い「……知らない。もう寝る!」

エルフの騎士「あ、おーい」

魔法使い「おやすみっ」

エルフの騎士「はは。おやすみ」



魔法使い(勇者さまが好きなんて、考えたことも無かった……)


―― 翌日 城下町 ――


エルフの騎士「おおー、やはりでかい! ほら、あの建物なんて人間の何人分の高さなのだろう」

勇者「楽しそうだな」

エルフの騎士「ああ本当に楽しい!」


魔法使い「……」

勇者「どうした魔法使い? 元気が無さそうだけど」

魔法使い「ひゃいっ」

勇者「ひゃい?」

魔法使い「な、なんでもないです」

勇者「そ、それならいいんだけど……」


エルフの騎士「この国には、どんなものがあるのだろうな」

魔法使い「確か、御祭りの国は数多の神を祭る国」

エルフの騎士「それはこの国に来たとき聞いたが?」


魔法使い「この国に訪れた僧侶や神官は、神に参拝する」

エルフの騎士「そうなのか。折角だ、人間たちの神さまに会いに行こう」

魔法使い「偶像崇拝」

エルフの騎士「どういうことだ?」


魔法使い「えっと……。本物の神が居る訳じゃない」

魔法使い「その代わりに、偶像を作って、それを崇拝する」


エルフの騎士「神を形取ったものを? 本当に人間とは不思議だな」

魔法使い「私もそう思う」


勇者「んー、いい天気だ」

魔法使い「話し聞いてましたか」

勇者「えっと、ああ! 神殿に行くんだろ?」

魔法使い「……」

エルフの騎士「本当に聞いていたのか危ういぞ我が君」

勇者「あ、あはは……」


エルフの騎士「まぁいいか。さっそく行こう」




勇者「流石に王国になると、人が多いな」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「普通の里、人間の場合では町や村と言うのか? そっちは少ないのか」

勇者「そうだなぁ。やはり王国と比べると少ないと思うぞ」

エルフの騎士「そうなのか。流石は王がいる土地だな」


勇者「ああ。国には軍がいる。軍がいるところは安全だから、人も集まるさ」

エルフの騎士「確かに一理ある」


勇者「特に貴族や豪族などが集まっているな」

エルフの騎士「通りで見てくれを着飾る人間が多いと思った」

勇者「はは……。そうだな」


―― 祭り神殿 ――


エルフの騎士「ここは立派な建物だな」

勇者「流石神殿と言うべきか」


魔法使い「……」

エルフの騎士「どうして頭を垂れているんだ?」

魔法使い「あの像が、主神」

エルフの騎士「あの男性の人間の像が?」


魔法使い「そう。人間の守り神と言われている」

エルフの騎士「なるほど。しかし何故頭を垂れる必要があるんだ」


魔法使い「神は全ての人の上に立つ存在だから」

エルフの騎士「だから?」


魔法使い「お祈り、お願いする。この旅が無事に終わるように」

エルフの騎士「変な習慣だ」

魔法使い「うっ」


エルフの騎士「その隣の女性を形取った像はなんだ?」

勇者「あれが創造の女神。この世界を創造したと言われている」

エルフの騎士「そういう設定なのか」

勇者「設定って言うな」


エルフの騎士「我が君たちはこの神々を崇拝しているのか?」

勇者「いいや。ただ、女神は勇者を選ぶ存在と言われているからな」


エルフの騎士「選ばれたのか?」

勇者「それがよく覚えていないんだ……」

エルフの騎士「覚えていない?」


勇者「女神なんて、実は見たことも、声を聞いたこともないんだ」

勇者「でも故郷の王の神官に、お前は勇者だ、って言われたからな」


エルフの騎士「人間というのは何とも適当な存在だろうか」


??「あの、突然失礼します。あなたは勇者さまでは」

勇者「はい。よくご存知で。ところであなたは」


司祭「私はこの神殿を管理するものです。司祭と申します」

勇者「司祭さまでしたか」

司祭「はい」

魔法使い「……こんにちわ」

エルフの騎士「……」


司祭「勇者さまがこの国に訪れているのは、既に報告を受けていました」

司祭「もしかすると、この祭り神殿に訪れるのではないかと思っておりました」


勇者「しかし、よく俺が勇者だと分かりましたね」

司祭「この国では珍しい装備。それに加えてお供を連れる旅人。ならば勇者さま以外あり得ないと思いました」

勇者「なるほど」


司祭「やはり女神さまを崇拝に来られたのですか?」

勇者「まぁ、そうです」


魔法使い(嘘つきだ)

エルフの騎士(絶対に嘘だ)


司祭「それは素晴らしい心掛けですね」

勇者「ありがとうございます」


司祭「ところで勇者さま。あなたは主神、想像の女神。あともう一人女神さまが存在しているのは知っていますか?」

勇者「もう一人の女神? 魔法使い、知っているか?」

魔法使い「……知らない。農業の神、武器の神、いっぱい神さまはいるけど、女神は一人だと」


司祭「勇者さまには是非知って欲しいと思っています」

魔法使い「……」

エルフの騎士「私たちはダメなのだろうか?」


司祭「もちろんです。勇者さまご一行であるならば」

魔法使い「……」

エルフの騎士「ありがとう」


司祭「では、こちらです。ついてきて下さい」

勇者「移動するのですか」

司祭「最後の女神は、この神殿の地下に安置されているのです」

勇者「それは何故」

司祭「それは、見ていただければ分かります」

勇者「は、はぁ……」


魔法使い「隠し通路」

エルフの騎士「ほほう」


勇者「こんな道が」

司祭「この通路は、ごく一部の人間しか知りません。この神殿の者でも、ほとんどが知らないのです」

エルフの騎士「どきどきする」

魔法使い「……」





勇者「でかい扉だ」

司祭「この先に、最後の女神像があります」

魔法使い「すごい」

エルフの騎士「こんなもの、どうやって開けるんだ」

司祭「大丈夫。私に任せて下さい」


司祭「オーセン、ミプサ」


勇者「おお、扉が開いていく」

エルフの騎士「こんな魔法が」


司祭「魔道具の力です。一定の呪文で扉が開くようになっています」

魔法使い「すごい」


司祭「さぁ、こちらです」




―― 破壊の女神像の間 ――


勇者「なんて禍々しい……」

エルフの騎士「人間はこんなものまで崇拝しているのか」

魔法使い「怖ろしい……」


司祭「これは、破壊の女神」


勇者「破壊の女神?」

司祭「よく見てください。何かに似ていませんか?」

勇者「何かに、ですか……」


魔法使い「想像の女神像」


司祭「その通り」

勇者「……確かに。言われてみれば」

エルフの騎士「これはどういうことだ」


司祭「想像の女神と、破壊の女神は表裏一体と言われています」

勇者「表裏一体。それはどうしてですか」


司祭「想像の女神は、この世界を作ったと言われています」

司祭「しかし、想像の女神は……。以前の世界を破壊したとも言われています」


魔法使い「既存を壊して、新しいものを作った?」

司祭「魔法使いは慧眼なのですね。そう、女神は破壊して想像したのです」

>>533
司祭「魔法使いは慧眼なのですね。そう、女神は破壊して”想像”したのです」

司祭「魔法使いは慧眼なのですね。そう、女神は破壊して”創造”したのです」


魔法使い「でも、どうしてこの像を俺に見せたのですか」

司祭「それは、知っていて欲しかっただけです」


魔法使い「最重要機密なのにですか」

エルフの騎士「確かに、魔法使いの言うとおりだ」

勇者「司祭さま、どうして」


司祭「……隠してもしかたないですね」

司祭「破壊の女神は、その名の通り全てを破壊したと言われています」

司祭「そして勇者さまを加護するのも、女神と言われています」

司祭「ですので、勇者さまはどうか自分の内なる破壊への衝動を抑えて頂く必要があるのです」


エルフの騎士「そんなものがあるのか、我が君よ」

魔法使い「勇者さま……」

勇者「これは驚いたな」


魔法使い「勇者さま?」

勇者「俺にそんな秘密が……」

エルフの騎士「えっと。今まで何かを壊したいとか思ったことはないのか」

勇者「ない!」


司祭「ははは! それは僥倖です。勇者さまは、いつまでもそうあって欲しいものです」

勇者「しかしそれだと、歴代の勇者の中には破壊衝動に囚われた者がいるみたいですね」

司祭「はい。詳しいことは、私よりも王族の方が詳しいでしょう」

勇者「王族が?」

司祭「はい。言い方は悪いですが、勇者さまを管理するのは王族の勤めの一つですので」

勇者「なるほど」


魔法使い「……破壊の女神」

エルフの騎士「見れば見るほど、禍々しいな。これが上にある創造の女神と同じとはな」


司祭「さて、そろそろ戻りましょう」

エルフの騎士「ところで、どうしてこの像だけこんな所にあるんだ」

司祭「それは簡単ですよ。破壊の女神などを信仰する者が現れないようにするためです」

エルフの騎士「確かに。破壊など、何も生み出さないからな」

司祭「そうです」


勇者「……」

魔法使い「勇者さま?」

勇者「なんでもないよ」

魔法使い「う、うん」






司祭「くれぐれも、今日のことは秘密にお願いします」

勇者「言われなくても大丈夫です」

魔法使い「はい」

エルフの騎士「任せたまえ」


―― 城下町 ――


勇者「さて、次はどうしようか」

エルフの騎士「そうだ我が君! あっちにも行きたい!」

勇者「あっち?」

エルフの騎士「こっちだ! 魔法使いも早く!」

魔法使い「えっと、うん」





エルフの騎士「あはは、これ上手いな!」

勇者「確かにこれは」

魔法使い「はむはむ」





エルフの騎士「すごいすごい!」

勇者「大道芸か」

魔法使い「わぁー……」


魔法使い「あの、ところで」

勇者「なんだ魔法使い?」

魔法使い「ドレスは要らないのですか?」

勇者「ドレス? どうしてだ」


エルフの騎士「なんだ? 服を見に行くのか?」

魔法使い「その、王族との食事だから……」


エルフの騎士「ああ、確かにそうだったな。忌々しいが、それでも敬意を示さなければなるまい」

エルフの騎士「それに私は最初の謁見で不躾なことをしてしまった。挽回せねば!」


勇者「別に大丈夫だと思うんだけどな……」

魔法使い「そうはいきません」

エルフの騎士「そうだな」


勇者「じゃあ仕方ない。買いに行くか」

魔法使い「勇者さまはここで」


勇者「どうして?」

エルフの騎士「後のお楽しみって奴だ、我が君」

魔法使い「そう」


勇者「そう言うなら……。じゃあ、また後でな」

魔法使い「はい」

エルフの騎士「ああ!」





勇者「俺も正装するか……」


―― 夜 王宮 ――


勇者「先に行ってくれだなんて……。仲間なのに部屋の前で門前払いなんて……」


エルフの騎士「ははは、すまなかった!」

魔法使い「お、お待たせしました」


勇者「……おお」

エルフの騎士「ふふ、どうだろうか我が君よ。私たちの晴れ着だぞ」

魔法使い「……」


勇者「すごく綺麗だ、二人とも」

エルフの騎士「ふふん!」

魔法使い「あ、ありがとうございます……っ」


エルフの騎士「しかし、我が君も正装だったのだな……」

魔法使い「……かっこいい」

勇者「止めろ。なんかむず痒いから」


エルフの騎士「ははは、これはいい!」


??「確かに良いですね。麗しの君よ」

エルフの騎士「そ、その声は……」

王子「王子でございます。エルフの騎士」

エルフの騎士「来たかっ。……はぁ」


勇者「豪華な衣装だなぁ」

魔法使い「キラキラしてる」

王子「あはは、こんなのでも王族なのでね。着飾るのも仕事だと思って、見逃してください」


勇者「いえ、そういうつもりでは」

魔法使い「はい」

王子「いやいや。分かっているよ!」


勇者「痛み入ります」

王子「さぁ、食事会を始めよう。美味しい料理を用意していますよ。我が国のシェフが腕に寄りを掛けました」



―― 王宮 食事会 ――


勇者「これは美味しい」

魔法使い「はむはむ」


エルフの騎士「我が君が幸せそうだ……よかった」

王子「ところでエルフの騎士よ」

エルフの騎士「……はぁ」


王子「エルフ族にとって人とは珍しいのではないのですか?」

エルフの騎士「確かにそうだが」

王子「何か質問などはないですか? これでも人の上に立つものです、人の世には詳しいですよ」


エルフの騎士「ならば質問を」

王子「なんでも質問してください」


エルフの騎士「何故勇者は少数先鋭なのだ?」


王子「なるほど。確かに魔王討伐なのに軍とともにいないのは疑問に思いますよね」

エルフの騎士「ああ。ずっと不思議だった。暗殺部隊か何かかと思ったくらいだ」

王子「それはあながち外れという訳ではないのです」

勇者「確かにそうですね」


エルフの騎士「我が君?」

勇者「そこは俺が答えよう。確か魔法使いも知らなかったよな」

魔法使い「うん」


勇者「勇者ってのは、魔王討伐が可能な人物を集める役割があるんだ」

エルフの騎士「……魔王討伐が可能な人物とは何だ?」

勇者「それは世界各地に居るであろう、桁外れの強さを持つ人たちのことだ。その者たちを勇者は集めるんだ」


エルフの騎士「しかし、それが少数先鋭とどう関係するのだ」

勇者「それはな、こういうことだ」


勇者「魔王軍に対抗するためには王国軍。軍には軍でしか対抗できないんだ」

勇者「じゃあ魔王そのものを放っておいてもいいのか? その答えは否だ」

勇者「そこで俺のように歴代の勇者たちは、魔王討伐ができる強さをもつ仲間を集めるんだ。世界を旅してな」

勇者「そして集めた仲間とともに、魔王城に乗り込み単独行動で魔王を討伐するんだ」


エルフの騎士「なるほど。王国軍は言うなれば陽動的な役割でもあるのか」

王子「その解釈で正しいと思います」

エルフの騎士「人間たちも考えて行動しているのだな」

王子「そう言って貰えると助かります」


エルフの騎士「しかしだ、勇者はどうやって選ばれているのだ?」

王子「それは各王国の王と神官によって選ばれます」

エルフの騎士「会合でも開くのか?」


王子「ははは、まさか。一つの国と国の距離はとてもあるのですよ?」

エルフの騎士「ならばどうやって」


王子「魔道具を用いて、大陸会議を開きます」

王子「その魔道具とは、魔鏡と言います。魔鏡を用いて連絡手段とします」


エルフの騎士「すごいのだな人間とは」

勇者「ああ。これは俺も初めて知った……。魔道具ってすごいんだな」

魔法使い「……魔道具」


王子「魔鏡は相手の声、姿を映し出します。王たちが使う魔鏡は、魔力を秘めた一つの多きなクリスタルから作られたと聞いています」

王子「その魔鏡を用いて、この大陸各地で同時に神霊術を行い、勇者の選択を行うと聞いています」


勇者「聞いている?」

王子「はい。何分、勇者の選択には多くの神官たちによって行われると聞いておりますので」

勇者「王族でも選択基準がよく判らないということですね」

王子「はい。お恥ずかしい」

勇者「いえ。俺自身が勇者なのに、知らないことが多いなと思っただけです」


エルフの騎士「人間の世界とはとても複雑なのだな」

魔法使い「そうだね」


王子「さて、あとはデザートのみです」

勇者「おおー」

魔法使い「美味しそう……」




王子「質問はこの程度で宜しいのですか?」

エルフの騎士「まだ質問してもよいのか。ならばまだあるのだが」

勇者「おい騎士……」

エルフの騎士「流石に遠慮すべきだろうか、我が君?」


王子「いえいえ。構いませんよ。麗しの君のためならば」

エルフの騎士「それは止めろ」

王子「照れなくともよろしいではないですか、はは」

エルフの騎士「くぬぅ……」


王子「それで、何を知りたいのですか?」

エルフの騎士「10年前の勇者のことを」

勇者「エルフの騎士!?」


王子「……前代の勇者のことですか」

勇者「…………」


エルフの騎士「なんだ? これは聞かない方が良かったのか」

魔法使い「……?」

勇者「これも、俺が答えよう」

魔法使い「勇者さま?」


勇者「歴代勇者は、民衆が知っているよりも、そのほとんどがまともな終わり方じゃないんだ」

勇者「だから歴代勇者の旅についてなどは、王族たちは基本的に民衆に対して禁句としている」


王子「勇者さまの仰られるとおり」

勇者「そしてその仲間に関しても、栄光のある終わりであればいいのだが、多くは魔物に食べられて終わっているんだ」

王子「ゆえに、歴代の勇者は栄えある歴史以外は基本的に黙止しておくのです。民衆も、多くは知りません」

勇者「勇者が倒れた場合、民衆には勇者が居なくなったとだけしか伝えられない」


魔法使い「……もしかして、私も死ぬの」

勇者「大丈夫だ! 魔法使いは俺が絶対に守るって決めたから」

魔法使い「……」


勇者「……旅をするの、嫌になったか? 命懸けだし、怖いならば抜けてもいいんだぞ」

エルフの騎士「魔法使い……」


魔法使い「ううん、私は勇者さまを信じる」

勇者「魔法使いっ!」

魔法使い「……うん、私は最後まで勇者さまに付いていきます」

勇者「ありがとう。本当に感謝している」


エルフの騎士「もちろん私は我が君に忠誠を誓っているからな!」

勇者「ああ」

エルフの騎士「それだけか!?」


王子「ごほん。……して、前代の勇者の話しでしたね」

エルフの騎士「いや、この話しはいい。私が不躾だった」

王子「いえ、お聞かせ致しましょう。勇者一行であるならば、前代勇者のことも知る必要があるかと」


勇者「……」

王子「知りたいですか、現代勇者さま」

勇者「……はい。教えてください」


王子「分かりました。しかし、私も父上に教えて頂いた程度。詳しくは知りません」

エルフの騎士「それでも構わない」

魔法使い「はい」


王子「前代の勇者は、普通とは少し異なっていたと聞きました」

勇者「普通とは少し異なっていた?」

王子「はい」

エルフの騎士「それはどういうことだ」


王子「普通の勇者一向は、例えば勇者さまのように魔法使い、騎士、他には僧侶や戦士などを仲間にします」

王子「さらにその補助として様々な職業がいます。例えば遊び人、踊り子、商人など」

王子「前代の勇者は、確か……商人、賢者、魔女といったような前衛向けとは言い切れないパーティであったと」


勇者「魔女?」

王子「はい。何か?」

勇者「いえ、何も……」

エルフの騎士「前代勇者はどうなったんだ。祭り王には行方が不明になったと聞いたが」


王子「エルフの騎士が仰る通りです。行方が不明になったのは当時の勇者のみです。それも、仲間を置いて」

勇者「仲間を置いて、ですか」

エルフの騎士「どういうことだっ! 恥知らずなのか!?」

王子「怒らないで欲しい、麗しの君よ。当時の各王たちも同じようにたいそう怒ったと聞いています」


勇者「どうして……」

王子「判りません。そのとき、報告に来た残された勇者一行にも判らないと」

勇者「そうですか」


エルフの騎士「今、その当時の仲間は何をしているんだ?」


王子「確か……。商人は結婚して、娘に稼業を継がせたと」

王子「賢者は神官に転職して、水の街にいたはず」

王子「そして魔女は、東の森に住み着いたと聞いています」


魔法使い「勇者さま」

勇者「ああ、そうだと思う。魔女さんで間違いない」


王子「何かありましたか?」

勇者「いえ」

王子「そうですか」

魔法使い「……」

エルフの騎士「……?」


王子「しかし、あくまで聞いた話しなのですが。前代の勇者パーティは暴れまわっていたと」

エルフの騎士「あ、あばれまわっ!?」

勇者「どういうことでしょう」

王子「聞いた話しなので何とも……」

魔法使い「……」


王子「ところで、私も勇者さまにお聞きしたいことがあるのですが」

勇者「なんですか」

王子「あなたが出身した国、光の国についてお聞きしたい」

勇者「……」


王子「勇者さま?」

勇者「光の国は、魔物たちの襲撃によって滅びました」

王子「……光の国ほどの大きな国がそう容易く滅ぶとは思えないのです」

勇者「平和によって堕落した国だったので」

王子「そうなのですか」


勇者「はい。国土ばかり大きくなり……。いえ、これ以上はただの愚痴です」

魔法使い「勇者さま?」


王子「……やはり、光の国の王たちも、亡くなったのですか」

勇者「その通りです。故郷も、身内も、何もかも奪われました」

王子「そうですか」


エルフの騎士「だが王子よ、どうして国は滅びたんだ? 襲撃があったとしても、魔道具があれば応援を寄越せたのでは」


王子「魔鏡は多くの魔力を消費しますので、勇者の選択といったような重要案件でない限り使われません」

王子「それに襲撃が有ったとするならば、応援を出すにも時間が掛かります」


エルフの騎士「言われてみればそうだな……」

王子「……それで、魔物の襲撃とはどのような様子だったのでしょう」


勇者「あれは、俺が勇者に選ばれて2年が経ったころ、勇者を滅ぼそうとした魔王軍の軍隊が大勢やってきました」

勇者「おそらく、殆どの魔王軍が一同に集まっていたのではないかと。光の国は、常備軍が出撃する時間すらなく一夜にして滅びました」


王子「……なるほど」

勇者「そして、俺だけがおめおめと生き残りました」


王子「いえ。勇者さまだけでも生き残ったのは僥倖です。死んではならない、生きてこそです」

勇者「……」


王子「どうされましたか」

勇者「いえ、同じ事をある少女にも言われましたので。そのことを思い出しておりました」

王子「そうですか。ですが本当にその通りなのです。その少女には、よい事を教えてもらいましたね」

勇者「はい」


魔法使い(勇者さま……)

エルフの騎士(……私よりも酷いじゃないか)


――
――
――


王子「さて、もう夜も更けましたね」

勇者「今夜はありがとうございました」

王子「いえ。私も麗しの君とよい時間を過ごさせて頂きました」


エルフの騎士「私を見るな」

王子「それは無理な話しですね。全ては美しすぎるあなたが悪い」

エルフの騎士「……こいつは」


勇者「一国の王子をこいつ扱い……」

魔法使い「あぅ……」


王子「いやいや! これほどならば、私の妃としても文句がありません」

エルフの騎士「きさきぃ!?」


魔法使い「玉の輿」

勇者「よかったな」

エルフの騎士「我が君!? 魔法使い!?」


王子「はっはっは! 半分は冗談ですよ!」

エルフの騎士「は、半分は本気なのだな……」


魔法使い「……冗談だね」

勇者「俺は最初から知ってたぞー」


エルフの騎士「……し、信じます」

勇者「あ、あはは」


エルフの騎士「でも、あまり苛めないでくれ……」

勇者「す、すまない! だから泣きそうになるな!」

エルフの騎士「泣いてない! 泣き虫女じゃない!」


魔法使い「……可愛いかも」

王子「これはこれは……。ますます惚れてしまいます」

エルフの騎士「もういい! 帰る、宿屋に帰るからな!!」


王子「また会いにきて下さいね」

エルフの騎士「断る!!」


王子「はは、振られてしまいましたね」

エルフの騎士「笑うなっ」


王子「ですが、そう簡単に諦めませんよ」

勇者「おっ」

魔法使い「わぁ」

エルフの騎士「うわあああ!!」




―― 宿屋 ――


エルフの騎士「今日は酷い目にあった」

魔法使い「ふふ」

エルフの騎士「魔法使いー……?」

魔法使い「……」

エルフの騎士「はぁ……」


―― 数日後 城下町 門 ――


勇者「さてと、行くか!」

エルフの騎士「二度とこの国には来たくない」

魔法使い「どうして?」


エルフの騎士「それは答えなければならないのか?」

魔法使い「……ふふ」

エルフの騎士「もう……。まったく」

勇者「アプローチ凄かったからな」


エルフの騎士「お陰で旅立ちに時間が掛かったじゃないか」

勇者「あはは」

エルフの騎士「笑い事ではないぞ我が君!!」

勇者「ご、ごめん」


エルフの騎士「これで、やっと火の神殿へ向かえるな」

勇者「そうだな。ここから西に行くと、鉱山町がある。そこに火山の坑道があって、その中に火の神殿がある」

エルフの騎士「了解した」


魔法使い「……」

勇者「大丈夫だよ、魔法使い」

魔法使い「え?」

勇者「なんだか緊張した顔つきだったからさ」

魔法使い「勇者さま……」

エルフの騎士「ふふ、仲睦まじいな」

魔法使い「騎士さん、もう……」



勇者「さて、では行こうか。火の神殿へ!」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「ああ!」


―― 6章 御祭りの国と魔法使い 終わり――

今回はここまでです
楽しんでもらえたでしょうか
楽しんでもらえたなら嬉しいです、では

捕捉ネタ
 司祭「オーセン、ミプサ」→オープン、セサミ 日本語訳=開けごま です

次章もなんか長くなりそうな予感
あと、今月は現実の方でかなり忙しいから投稿もかなり遅くなると思う
全体の予定の半分(12章構成のうち6章)は終わってるので、ここまで書いたんだからエタることはないと思う

少しの間、好きに雑談でも何でもしててくれると助かります

誤字多いし、口調や一人称、二人称が変なときあるし、文章もちゃんと伝わっているか不安だけど
こんな駄文でも読んでくれるだけで嬉しいです。以上

明日の午前から昼までの間で、ちょっとだけ投稿します
章ごとに投稿するのが良いという意見も多々ありますが、一度に100近くのレスを投稿するのも大変なので小分けします……
自分勝手で申し訳ない

キリの良い所まで投稿するので、よろしくお願いします

※ネタバレ注意
~三行でわかる6章のあらすじ~












 1、御祭りの国に来た
 2、勇者の役割やら神さまについて教えて貰った
 3、火の神殿へ行こう ←いまここ


7章 火と魔法使い


―― 鉱山町 ――


エルフの騎士「こほこほっ! こ、ここは埃っぽいな」

勇者「きっと砂埃が舞っているせいだ。森暮らしのエルフの騎士にはちょっと辛いか?」

エルフの騎士「ちょっと所ではないぞ……」


魔法使い「……」

エルフの騎士「魔法使いは平気なのか?」

魔法使い「気にならない」

エルフの騎士「……そうか、いいなぁ」


勇者「とりあえず、まずは情報収集だ」

エルフの騎士「やはりこういう場合は酒場に行くのか?」

勇者「そうだ。あまり治安がいいとは思えないから、先に宿に行ってくれて構わないぞ」


エルフの騎士「何を! 我が君が危ないところに行くのであれば、騎士たるもの護衛せねば!」

エルフの騎士「なぁ魔法使いよ!」


魔法使い「え、私も?」


エルフの騎士「ん、嫌か?」

魔法使い「私は……」

勇者「魔法使いには少し難度が高いじゃないかな」

魔法使い「……でも」


エルフの騎士「そういえば魔法使いはひとみし」

魔法使い「……」

エルフの騎士「ひ、人ごみが苦手だったな! ここは私と我が君で行こう!」

魔法使い「いいの?」

エルフの騎士「もちろんさ」


勇者「じゃあ魔法使いは宿を探していてくれ」

魔法使い「任せて」


エルフの騎士「ならば私たちは酒場へ行こう」

勇者「ああ」

魔法使い「行ってらっしゃい」


エルフの騎士「さて、酒場は何処にあるのだろう」

勇者「どこだろうな」

エルフの騎士「とりあえず歩いてみよう、我が君」

勇者「ああ」




エルフの騎士「けほけほっ」

勇者「大丈夫か?」

エルフの騎士「すまない、大丈夫。……心配ない」

勇者「それならいいんだけど」


エルフの騎士「それにしても、ここは御祭りの国と比べると人が少ないな」

勇者「それでもここの鉱山町は規模が大きいと思う。というか比べる場所が間違えているぞ」

エルフの騎士「そうなのか?」


勇者「鉱山町っていうのは、鉱山のふもとにある町だ」

勇者「炭鉱夫たちが坑道を掘り進み、石炭などを採掘するための拠点として作られた町なんだ」


エルフの騎士「ならばここに居る人間はみんな炭鉱夫なのか?」

勇者「まさか。炭鉱夫の妻、子供やその生活を支える人たちだっているよ」

エルフの騎士「ほほう。なんだか歴史が深そうな町だ」

勇者「そうだ。普通の鉱山町はもう少し小さいんだけど、ここは火の神殿があるせいか、大きいな」


エルフの騎士「エルフの里よりかは大きいことを認めるが」

勇者「比較すべき場所はそこなのか……」

エルフの騎士「何せ、世間知らずなのでな」

勇者「胸を張って言えることじゃない」

エルフの騎士「はっはっは!」


勇者「……」

エルフの騎士「そんな目で見ないでくれ、我が君。割と傷つくから」


勇者「さてと、酒場はどこだろう」

エルフの騎士「ああ、我が君よー……」





勇者「ん、あれかな」

エルフの騎士「確かに。酒場と書いているのか?」

勇者「なんだエルフの騎士、人の字は読めないのか」

エルフの騎士「流石に他種族の字は読めないな」

勇者「そうか。ちなみにあれは酒場と書いてある」


エルフの騎士「それにしても人間も世界も不思議で満ちているな」

エルフの騎士「字は異なるのに、言葉は同じなのだから」


勇者「言われてみれば。気にしたことは無かったが、確かに不思議だな」


エルフの騎士「まぁいいか。とりあえず酒場へ行こうじゃないか我が君」

勇者「そうだったな」

エルフの騎士「酒は飲むのか?」

勇者「飲まないよ」

エルフの騎士「そっか……」




―― 鉱山町 酒場 ――


マスター「……らっしゃい」

勇者「ああ」

エルフの騎士「……」


マスター「なんだあんたら、物騒な物腰だな」

勇者「すまない。旅をしているんだ」

マスター「そうか」

エルフの騎士「……」


マスター「それで、旅人がうちに何の用だ」

勇者「聞きたいことがあるんだ」

マスター「なるほど。しかし、あんたは相当な世間知らずだな」

勇者「いきなりなんだ?」


マスター「余所者がこんな場所に女連れで来るなんて、この町の常識じゃあ考えられねぇな」

勇者「どういうことだ?」


マスター「ここにはゴロツキが多い。ほら、早速来たぞ。後は何とかしな」

勇者「……?」


ゴロツキA「おうおう、姉ちゃんぷりちーだねぇ」

ゴロツキB「ひっひっひ。そんな帽子で顔隠すなよぉ?」

ゴロツキC「あっちで良いことしようぜ」

エルフの騎士「……」


勇者「なるほど。おいそこのお前たち」


ゴロツキA「なんだぁお前。男はお呼びじゃねぇんだよ」

勇者「こいつは俺の連れなんだ」


ゴロツキA「ああん?」

ゴロツキB「知るかよ。それとも痛い目にあいたいのかぁ」


勇者「仕方ない」

エルフの騎士「いいや我が君。ここは私だけで十分だ」


ゴロツキC「おいおい、まさか女に守られるのかぁ?」

ゴロツキA「いいじゃねぇか。女さえこっちにくればな」

エルフの騎士「下種な人間だな……。私が相手にしてやる」


ゴロツキB「おお、お顔を拝見……って、まさかこりゃぁ」

エルフの騎士「ああそうだ。私はエルフ族、エルフの騎士だ」


ゴロツキA「うっひょー! こりゃあ上玉じゃねぇか!」

ゴロツキB「こりゃあ驚いたぜ! エルフ族なんざ滅多に見られるもんじゃねぇ」

ゴロツキC「エルフ族のあそこってどんな具合か興味あるぜー!」


エルフの騎士「……汚らわしい。それにしても、私は里を出てからまともな人間に出会っていない」


ゴロツキC「じゃあこっちにこいよ、そんな冴えない男は放っておいてさぁ」

エルフの騎士「我が君まで愚弄するとはな。どこまで見下げた根性だ」


ゴロツキA「ぐだぐだ言わずに、来るのか来ないのかどっちだよエルフの姉ちゃん」

エルフの騎士「仕方あるまい。話し合いだけでは済みそうにもないからな」

ゴロツキB「ひっひっひ、じゃああっちで大人のお付き合いしようか」


勇者「大丈夫なんだな?」

エルフの騎士「もちろんだ。我が君よ、私のことは気にせずに情報を集めておいてくれ」



ゴロツキA「おいおい、舐めてんじゃねぇぞ? まぁ舐めさせるがな!」

ゴロツキB「ひっひっひ!」

ゴロツキC「上手いこと言ったんじゃねぇか!」


エルフの騎士「……」

勇者「ある程度にしておいてくれよ?」

エルフの騎士「我が君の命ならば。精々頑張って手加減しよう」

勇者「頼んだ。大きな騒ぎにはしたくない」


エルフの騎士「さぁ来い、下種で下品で下賎な人間の男ども」

ゴロツキA「うひひひ、そうこなくっちゃなぁ」

ゴロツキB「ひっひっひ」


マスター「いいのか、あのエルフ族の女に任せて」

勇者「エルフの騎士なら大丈夫だ」


マスター「それにしても、エルフ族なんて始めて見たな」

勇者「今はどうでもいいだろう。それよりも情報だ」


マスター「ああ、そうだったな。だがな、何を知りたいかで情報の値段が決まるぞ」

勇者「知りたいことは二つだ。火山の坑道の火の神殿について」

マスター「火山の坑道に火の神殿か。そんな程度の情報なら、世間話しで十分だな」

勇者「そうなのか」

マスター「そりゃあ火の神殿なんて、ここのもんじゃガキでも知ってる話しだからな」

勇者「確かに、普通はそうだな。地元のことだ、それに神殿なんて珍しいものだし」


マスター「俺ァ、あんたが裏の稼業についての情報が知りたいのかと思ったからなぁ」

勇者「裏の稼業か」

マスター「ここにはそういう類の連中が多くてよ。夜にでもなりゃあ殺し合いなんてよくある」

勇者「治安が悪いんだな」


マスター「仕方ねぇよ。どこも戦争で飢餓やら何やらで大変なんだ。略奪なんてしょっちゅうだ」

勇者「……」


マスター「おっと、話しが反れちまったな」

勇者「大丈夫だ」


マスター「それで火の神殿の何が知りたいんだ?」

勇者「行き方について」

マスター「なんだあんたら、巡礼の旅でもしてるのか」

勇者「色々とあるんだ。詮索は止してくれ」


マスター「すまねぇな。火の神殿に行くには、火山の坑道を通らなきゃならねぇ」

勇者「それは知っている」


エルフの騎士「ただいま戻ったぞ我が君」

勇者「なんだ、早かったな」

エルフの騎士「あの程度、問題ないさ」


マスター「嬢ちゃん、無事だったようだな」

エルフの騎士「騎士だからな」

マスター「理由にはなっていねぇ気がするが、まぁいいか」


エルフの騎士「あと嬢ちゃんは止めてくれ」

マスター「あいよ。あんたみたいな女を嬢ちゃん呼ばわりはできねぇな」


エルフの騎士「ところで、話しはどこまで進んだのだろう」

勇者「今から火山の坑道の場所を聞くんだ」


エルフの騎士「それはよかった。まだそんなに話しが進んでなかったようだ」

エルフの騎士「雑魚を相手にしている間、話しに置き去りにされないかだけが心配だった」


マスター「はっはっは、すげぇ騎士だあんた」

エルフの騎士「ふふん」

マスター「面白い旅人だ。気に入った、俺の知る限りの情報をくれてやるよ」


勇者「いいのか?」

マスター「折角の旅人だ。それに、そういう気分になったしな」

勇者「感謝する、ありがとう」

マスター「よせ、俺の知る情報があんたらにとって有益なのかまだわかんねぇんだから」


エルフの騎士「この人間は良い人間だ」

マスター「エルフに褒めて貰えるなんざ、一生ないと思っていたんだがなぁ」


勇者「それで、火山の坑道はどこにあるんだ」

マスター「火山の坑道は、北に見える一番大きな山の麓にある」

勇者「あの山か」


マスター「でもなぁ、火山の坑道は廃坑になってから数百年経ったと聞いている」

マスター「あとよ、火の神殿を目指して何人も坑道に入ったが、到達できた奴は聞いたことがねぇな」


勇者「到達することができなかった?」

エルフの騎士「隠されているのか」


マスター「違う。あの坑道では、過去に凄まじい量の鉱石やら石炭が取れたと聞いている」

マスター「だからよぉ、あちこちに穴が開けられてしまったらしい」

マスター「ついには火の神殿までの道順すらも判らなくなった、というのがこの町の常識だ」


エルフの騎士「なるほど、人間の手によって作られた迷路という訳か」

マスター「そうだ。ここ数十年、火の神殿に到達できたものがいたなんて知らねぇ」

勇者「数十年もなのか」


マスター「だからよぉ、この町のもんでも火の神殿には近づかねぇ」

マスター「迷子になっちまったら、帰れる保障がないからな」


勇者「なんて所だ」

エルフの騎士「すごい所なんだな」


マスター「それでも行くってのかい?」

勇者「ああ。行かなくちゃいけない理由があるんだ」

エルフの騎士「流石は我が君。そう言うと信じていた」


マスター「それは勇気なのか蛮勇なのか俺にはわからん」

勇者「結果次第だろ」

マスター「違いねぇな。結果を成せば勇気、結果が無ければ蛮勇だ」

エルフの騎士「もちろん私たちは勇気の方だがな!」


マスター「そうなることを祈っているよ、エルフの騎士」

エルフの騎士「任せたまえ」


勇者「他になにか情報はないか?」

マスター「そうだなぁ。火山の坑道なんざ人の手が届かなくなって、数百年だから、中の事はよく判らねぇしよ」


勇者「伝説とかでも何でもいい」

マスター「伝説か。それなら面白いのがあったな」

勇者「面白い伝説?」


マスター「火山の坑道の先に火の神殿があるっていうのはここまでの話しだ」

勇者「ああ」


マスター「その火の神殿には、竜が住んでいるっていう伝説があってな」

勇者「竜? ドラゴンのことか」

エルフの騎士「それはどういう伝説なんだ」


マスター「なんてこたぁねぇ。親がてめぇのガキに言い聞かす童話の一つだ」

勇者「それでもいい。教えてくれ」

マスター「熱心だな。確か、こういう話しだったはずだが」


マスター「火の神殿に誰も辿りつけないのは、火竜がいるからと言われてるんだ」

マスター「じゃあどうして火竜がいると火の神殿に辿りつけないのか」

マスター「火竜は自分の財宝を守るために、誰も何も寄せ付けない仕掛けを作った」


エルフの騎士「まるで剣と魔法の童話だな」

マスター「だから言っただろう? この話しの続きは、勇者さまが竜を倒して財宝といっしょにお姫様と暮らしました、だ」


エルフの騎士「勇者さま、か」

勇者「……」


マスター「在り来たりな話しだったろ? わりぃが、俺があんたらに与えられる情報はこれくらいだ」

勇者「いいや、すごく参考になった」

マスター「そう言って貰えると嬉しいねぇ」

エルフの騎士「貴方はよい人間だった。私からも感謝する」

マスター「やめろやめろ、俺ァ感謝されると頭の十円禿げが痒くなるんだ」


勇者「さて、ここまで情報を貰ったんだ。何も頼まないのは気が引ける」

マスター「そうかい? じゃあ、うちのハムサンドなんてどうだ、人気商品なんだぜ」

勇者「ならばそれを頂こう。三人前頼んだ」

マスター「三人前? 誰か他にも仲間がいるのか」


勇者「ああ。先に宿屋に行っている仲間がいるんだ。だから持って帰られるようにしてくれると嬉しい」

マスター「なるほどねぇ。待ってな、すぐに作ってやるからよ」


エルフの騎士「ハムサンドか、楽しみだな我が君!」

勇者「そうだな」


―― 宿屋 ――


魔法使い「お帰りなさい。勇者さま、エルフの騎士」

勇者「ただいま。魔法使いが利用している宿屋がどこか判らなかったから、少し探し回った」


魔法使い「あ、ごめんなさい」

勇者「大丈夫だよ。少しばかりいい運動にもなった」

魔法使い「……うん」


エルフの騎士「魔法使い! 私たちはしっかりと情報を集めてきたぞ!」

魔法使い「わっ! び、びっくりした」

エルフの騎士「ああ、これはすまなかった」


魔法使い「その、情報というのは」

勇者「その前にご飯を食べよう。美味しいハムサンドを買ってきたんだ」

魔法使い「……うん」


勇者「はい、これだよ」

魔法使い「ありがとうございます」

エルフの騎士「私の分はこれだな」


魔法使い「美味しい……」

勇者「確かに上手いな」

エルフの騎士「やはりあの人間は良い人間だ!」


勇者「話しは食べながらでもいいか?」

魔法使い「はい」


勇者「まず、火山の坑道だけど。場所はわかった」

魔法使い「よかった」


勇者「でも、問題があるんだ」

魔法使い「問題、ですか」


勇者「火の神殿の場所が、わからないんだ」

魔法使い「火山の坑道じゃ……」

勇者「火山の坑道にあるんだが、迷路みたいになっているみたいなんだ」

魔法使い「迷路?」


エルフの騎士「昔の人間たちが後先考えず掘り荒らしてしまった結果らしい」

魔法使い「そうなんだ」


勇者「一度迷ったら、二度と出られる保障はないと言われた」

魔法使い「……」


エルフの騎士「どうする? それでも神殿を目指すか?」

魔法使い「神殿には行きたい。でも」


勇者「でも、なんだ?」

魔法使い「迷子になったら……」


勇者「迷子にならないさ。道を覚えるのが得意な魔法使いやエルフの騎士だっているんだし」

エルフの騎士「そうだ。任せてくれ。絶対に迷子にはならない、約束しよう」

魔法使い「……」


勇者「あとは魔法使い次第だ。俺たちは行くつもりでいるけど」

エルフの騎士「どうするんだ」


魔法使い「……でも、だって」


勇者「でも、だっては禁止だ。魔法使いはどうしたい?」

魔法使い「……行きたい、です」

エルフの騎士「そうか!」


勇者「よっし、決まりだ! 明日になったら早速火山の坑道へ行こう」

エルフの騎士「楽しみだな」


魔法使い「ありがとう」

勇者「お礼なんていらないさ」

エルフの騎士「そうだ。私たちは仲間じゃないか」


魔法使い「うんっ!」


勇者「そうと決まれば、早めに休もう」

魔法使い「うん……」


エルフの騎士「もちろん魔法使いはこっちだからな」

魔法使い「……わかってる」

エルフの騎士「そ、そんな目で見ないでくれ……」

魔法使い「わかった」


勇者「あ、あはは」

CM的休憩 再開はちょっと後


―― 翌日 火山の坑道 入り口 ――


勇者「ここが火山の坑道」

魔法使い「……火山」

エルフの騎士「少し熱いな。水魔法で薄いベールを肌にまとい、これで防御しよう」


勇者「えっと、そういえばエルフの騎士って水魔法が使えるんだっけ」

エルフの騎士「忘れていたのか!? 酷いぞ……。あと一応、回復魔法だって使えるんだからな」

勇者「そうだったな」

魔法使い「……」


エルフの騎士「くっ。ここでは存分に私の魔法を活躍させてやる」

勇者「頼りにしているぞ」

魔法使い「お願い」

エルフの騎士「もちろんだ! 私の魔法が役に立つことを教えてやろう!」


エルフの騎士「ほら、水魔法だ」

魔法使い「少し涼しいかも」

勇者「ありがとう、助かる」


エルフの騎士「さて、進もうか」

勇者「そうだな。魔法使い、ランプに火を灯してくれ」

魔法使い「うん」




エルフの騎士「しかし、本当に穴だらけだ。それに、トロッコと線路がすごく多い」

勇者「その殆どが壊れているけどな」

エルフの騎士「壊れてさえいなければ、トロッコを利用してもよかったと思うんだが」

勇者「同じことを思ったよ」


魔法使い「魔物もいない」

勇者「食料も水もないし、迷路と来たもんだから寄り付かないんじゃないかな」

魔法使い「なるほど……」


エルフの騎士「魔物がいなくて安全だが、私たちはどの道を行けばいいんだろな」

勇者「……」

魔法使い「……」


エルフの騎士「その、なんだ……。すまない」

魔法使い「う、うん」


勇者「どうしたものか……」

魔法使い「左手の法則に従う」

エルフの騎士「なんだそれは」


魔法使い「壁を常に左手に位置取る。そうすれば、いずれは出口にたどり着く」

エルフの騎士「そうなのか?」

勇者「いや、知らない」


魔法使い「……火炎魔法」

エルフの騎士「おお、これは炎で作った迷路図か?」

魔法使い「そう。入り口は、ここ。イの地点」


勇者「ここだな」

エルフの騎士「ふむふむ」


魔法使い「そして、出口のロの部分」

勇者「ここがこの迷路図の出口だな」


エルフの騎士「それで、左手の法則とは」

魔法使い「この迷路図をゴールするために、エルフの騎士は何をする?」

エルフの騎士「私か? 私ならば、こんな簡単な迷路なんて」

魔法使い「この迷路にいるのは私たち。上から見ている訳じゃない」

エルフの騎士「そう言われると……。行き当たりばったりになるな」


魔法使い「そう」

勇者「じゃあ魔法使いはどうするんだ?」


魔法使い「こうする。常に左側の壁沿いに動く」


勇者「……おお」

エルフの騎士「確かに、これならば迷うことはないな」


魔法使い「いくつか遠回りもある。でも、迷う確立は減ると思う」

勇者「これはいい。この方法で行こう」

エルフの騎士「流石は魔法使い。賢いな!」


魔法使い「帰るときは、道を振り返って右手を壁沿いにすればいい」

勇者「これで帰りも万全だな」

エルフの騎士「憂いは無くなった」


魔法使い(でも、こんな方法……、多くの人が知っている。それなのに、どうして神殿は見つからない)

魔法使い(一筋縄ではいかない?)

>>607
図、間違っているので脳内補正おなしゃす
左右間違えちゃった

>>607
こっちが正しい


――
―― 数時間後



エルフの騎士「それにしても、ここの坑道は大きいな」

勇者「本当にな。何かこう、何か潜んでいそうだな」

エルフの騎士「オークか、それともリザードマンか?」


魔法使い「やめて。洒落にならない」

エルフの騎士「あはは、大丈夫だよ。私や我が君がいるからな」


勇者「ただ、少し暗いな」

魔法使い「ランプの火だけじゃ、心許無い?」

勇者「いいや、大丈夫だよ」


エルフの騎士「ただ、こんな場所で魔物に襲われたら逃げるしかないな」

魔法使い「……」


勇者「心配するような事ばかり言うなよ」

エルフの騎士「す、すまない我が君……」


魔法使い「大丈夫」

エルフの騎士「あ、あはは……」


勇者「こんな所でも、昔は盛んに炭鉱夫が働いていたんだろうな」

エルフの騎士「ならば何故ここは廃坑になったのだろうか」


勇者「んー、単純に鉱石や石炭が取れなくなったからじゃないかな。マスターに聞いてなかったな」

エルフの騎士「数百年前に廃坑になったとは言っていたな」

魔法使い「へぇ」


エルフの騎士「なんだかロマンがあるな。数百年前、この坑道に何があったのだろうな」

魔法使い「わからない。でも、興味はある」


勇者「そういうものか?」

エルフの騎士「我が君にはこのロマンがわからないのか……」

魔法使い「……」


勇者「悪かったな……」


エルフの騎士「気を取り直して……って、なんだあれは」

勇者「なんか暗闇の先で蠢いているような」


魔法使い「……火炎魔法」


エルフの騎士「ありがとう魔法使い、これで少しはよく見える。……なんだ、あれは」

勇者「でっかいミミズが、鱗を纏ったミミズがいる」

魔法使い「ワーム。岩、鉱石、石炭などを主食とする。人のいない廃坑に湧く魔物」


ワーム「シャァ」


エルフの騎士「あれ、人やエルフも食べるのか?」

魔法使い「そう。すっかり忘れてた」

勇者「忘れてたって! くそ、こんな所じゃ戦えない、逃げるぞ!」


ワーム「シャァア」

ワーム「シャーー」


エルフの騎士「うおお、追いかけてくるぞあいつら! それに何匹いるんだ数え切れない!」

魔法使い「大丈夫、ある程度まで逃げれば。強い光に弱いはず」

勇者「無駄口叩いている暇なんてないぞ!」


エルフの騎士「次はこっちだ!」

勇者「あいつら、見た目に反して足が速いっ」

魔法使い「追いつかれる」


エルフの騎士「……っ」

勇者「何をしているエルフの騎士、弓矢なんて構えて」

エルフの騎士「しっ!」

シュッ
シュッ
シュッ

エルフの騎士「3匹仕留めた!」

勇者「流石!」

エルフの騎士「褒められて嬉しいが、今は逃げるが勝ち」


魔法使い「ハァハァ、つ、次はどっち」

エルフの騎士「こっちだ! 壁を右に位置させればいいだけだからな!」

魔法使い「ハァハァ……」


勇者「もうすぐだ、がんばれ! ほら、少し明るくなったぞ」

魔法使い「う、うんっ!」


??「おぉっと、そうはいかねぇぞ」


エルフの騎士「上の方から人の声が?」


ゴロツキA「一日振りだなお前ら」

ゴロツキB「世話になったんで、お礼にきたぜぇ」


エルフの騎士「また貴様らか!」

ゴロツキC「うひひひ」

エルフの騎士「貴様らの相手なんてしている暇は無いというのに」


ゴロツキA「逃がすかよ! うおらぁっ!」

==ゴロツキAは火炎魔法を唱えた 逃げ道は塞がれた==


エルフの騎士「なんてことを……。貴様ら、邪魔をするな!」

ゴロツキB「いやいや、お礼は受け取ってくれなきゃなぁ」


ゴロツキA「お前らが火山の坑道に行くことは知っていたぜ」

ゴロツキA「どうせワームに追いかけられることになると思ったから、ここで待ち伏せしておいてやった」


エルフの騎士「悪知恵だけはよく働く」

ゴロツキA「ははは!」

ゴロツキB「ひっひっひっ」


勇者「くそ、ワームに囲まれたっ」

魔法使い「ハァハァ……んっ、ハァハァ……」


エルフの騎士「どうすればっ」

ゴロツキC「うひひひ、死ねやごらぁ」

ゴロツキA「でもよ、あんたら女二人がこっちに来るなら、命だけは助けてやってもいいぜ」


エルフの騎士「貴様らという人間はどこまで!」

ゴロツキA「どうすんだ? ほらほら、ワームどもがじりじり寄ってきてんぞー」

エルフの騎士「ちっ」


勇者「俺は許さないぞ」

魔法使い「私も、あんな奴らのとこ行くくらいなら死ぬ」

エルフの騎士「我が君、魔法使い……」


ゴロツキA「じゃあ死ね。惨たらしく死ね」

エルフの騎士「下種め」

ゴロツキA「ははは、なんとでも言えや。じゃあな、化けて出てくんなよ」


エルフの騎士「すまない、我が君。あのとき、私があいつらを完膚なきまでに叩きのめしておけば」

勇者「気にするな。手加減しろって言ったのは俺だ」

エルフの騎士「……我が君。魔法使いも、すまない」

魔法使い「大丈夫だよ、エルフの騎士」


エルフの騎士「だが、どうする。通路は一本。逃げ道は、崖の下だけ」

勇者「とにかく、最後まで諦めちゃだめだ!」

エルフの騎士「わかった我が君! だが、あの人間ども、無事に帰ったらどうしてくれようか」


勇者「落ち着けエルフの騎士。今は目の前の敵だ」

エルフの騎士「くっ! そうだったな我が君」


勇者「俺が先陣を切る。エルフの騎士は魔法使いを守っていてくれ」

エルフの騎士「了解した!」

魔法使い「私は銃を……」


勇者「だめだ。こんな狭い場所じゃ、逆に危ない」

魔法使い「……はい」


エルフの騎士「来るぞ、勇者」

勇者「ああ!」


ワーム「シャァアア」

勇者「うおおおーー!」


エルフの騎士「魔法使いは私の後ろに隠れていてくれ!」

魔法使い「わ、わかった。ありがとう」

エルフの騎士「なに、気にするな! ちっ、そこぉ!!」

ワーム「ギャアっ」


勇者(後ろを誰かに任せられるのはいいな)

勇者「まだまだ! はぁっ!!」

== 勇者はワームにこうげきした ==

== ワームはたおれた ==

勇者「くそ、キリがない。どれだけ湧いて出てくるんだ」


エルフの騎士「こっちは大丈夫だ、我が君!」

勇者「助かる!」


勇者「しっ、はぁ!!」

ワーム「シャアア」


エルフの騎士「くっ、こっちも囲まれたか……」

エルフの騎士「水魔法!!」

== エルフの水魔法 ワームを押し流した ==


魔法使い「すごい……。学院でも、ここまでの使い手はいなかった」

エルフの騎士「騎士でも、中々やるだろ?」

魔法使い「うん」


勇者「くっ、つぅ」

エルフの騎士「大丈夫か我が君! 一度こっちへ!」

勇者「仕方ないか……」


エルフの騎士「回復魔法!」

勇者「ありがとう。さてと、まだまだワームは湧いてやがるな」


エルフの騎士「このままじゃ、いずれ……」

勇者「それは判っているんだが」

エルフの騎士「ちっ、ワームどもめ!!」

勇者「考える暇もないな」

エルフの騎士「本当にどうすれば」


勇者「はぁーー!!」

== 勇者はワームに切りかかった ==

ワーム「ギャアアア」


勇者「この坑道のワーム、全部が集まってるじゃないだろうな……」


エルフの騎士「我が君、後ろだ!」

勇者「ああ! はぁあ!!」


勇者「まだまだぁーー!!」


エルフの騎士「それにしても我が君はすごいな。逃げ走ったあとなのに、息切れ一つもなくああまで戦えるなんて」

魔法使い「勇者さま、毎日鍛錬欠かさないから」

エルフの騎士「私も何度かお手合わせしたが、まったく歯が立たない」


エルフの騎士「おっと、無駄口を叩いている場合ではないな。しっ! はっ!」

== エルフの騎士は、ワームにこうげきした ==


魔法使い(また、私だけ足手まとい)

魔法使い(やっぱり魔力が弱いせいだ。魔法が使えれば、支援できたのに)


エルフの騎士「しまっ、一匹逃した! 避けろ魔法使い!」

魔法使い「え?」


ワーム「キシャア」

魔法使い「きゃあっ!」


勇者「魔法使い!?」

エルフの騎士「うおおおお!!!!」

== エルフの騎士はワームを倒した ==


魔法使い「あ……」

魔法使い(しまった、足を滑らせて……崖に……落ちる)


エルフの騎士「魔法使い!」

勇者「魔法使いーーーー!!」


エルフの騎士「我が君!? 追いかけるのも無茶だ!」

勇者「知るか、魔法使いを守るって約束したんだ!」


魔法使い(……ふわってする。私、このまま落ちて死んじゃうのかな)

魔法使い「でも、それでもいい。もう足手まといにならないし」


勇者「魔法使い!!」

魔法使い「勇者、さま? なんで、いっしょに落ちて……」

勇者「大丈夫だ、俺が守る」


魔法使い「ばかです。このままじゃ二人とも」

勇者「安心しろ。俺を信じるんだ、絶対に守ってやる」

魔法使い「……はい」





エルフの騎士「我が君、魔法使い!!」

ワーム「シャア」

エルフの騎士「くっ。仕方ないか……。私も行くぞ!!」

今日はここまで
続きはいずれ、ではー

帰り道がどう塞がれたのかよくわからなかったけど乙!

>>629
すまない
確かにわかり辛いと思う、というか俺もどうフォローしていいかわからん

岩かなんかが落ちてきたと思ってくだしあ

明日の午前中、投稿できたらするよー
また途中までになっちゃうけど、ごめんよぉ


―― ??? ――


魔法使い「んっ……ここは……?」

勇者「……」


魔法使い「勇者さま!? 勇者さま、しっかり!!」

勇者「……ぐっ。……ああ、魔法使いか。無事か?」

魔法使い「はい。勇者さまのおかげで」


勇者「……いてて、流石に痛いな」

魔法使い「どこか怪我をっ」

勇者「大丈夫。きっと骨は折れていない」

魔法使い「そういう問題じゃ!」


勇者「それにしても、どうして俺たちは無事だったんだ?」

魔法使い「わかりません……。ですが、上を見て下さい」


勇者「なんだあれは」

魔法使い「恐らくは廃墟かと。運よく色んな物にぶつかって、それがクッションになってくれたと思います」

勇者「こんな場所に、こんな物が……」


魔法使い「ここは何かの建物の中です。外へ出ましょう」

勇者「坑道の中なのに、外に出るってのも可笑しな話しだな」

魔法使い「そうですね」




勇者「……すごいな、これは」

魔法使い「あたり一面が溶岩です」

勇者「エルフの騎士の魔法がまだ残っている。普通だと、耐え切れない熱さだろうな」

魔法使い「そう思います」


エルフの騎士「おーい、我が君、魔法使いー!」


勇者「ん、この声は」

エルフの騎士「無事だったか! 良かった」

勇者「エルフの騎士? どうしてここに」


エルフの騎士「崖を飛び飛びで降りてきたんだ」

勇者「なんて無茶屈曲な」

エルフの騎士「時折危なかったが、我が君たちを見失うくらいならと思ってな」

勇者「そうか。ありがとう」


エルフの騎士「ところで、ここは人間の里だったのか?」

勇者「何を言っているんだ」

魔法使い「エルフの騎士?」


エルフの騎士「なんだ気付いていないのか? 辺りを見渡してみろ」

勇者「辺りって、溶岩が」

エルフの騎士「そうじゃなくて、周辺のことだ」

魔法使い「ゆ、勇者さま……何ここ」


勇者「……なんだこれは」

エルフの騎士「鉄でできた建物とか、よく判らないものだらけだ」


魔法使い「……滅んだはずの、伝説の機械文明の建物?」


勇者「キカイ文明?」

エルフの騎士「キカイという名前の文明があったのか?」


魔法使い「ううん。機械っていうのは、何かのエネルギーを使って動く鉄の塊のこと」

魔法使い「遥か過去にあった機械文明は、魔法がないのに遠隔連絡手段があったり、人を運ぶ箱があったり」

魔法使い「とにかく、今じゃ考えられない高度な文明だったと、本に書いてた」


勇者「すごいな。その機械文明とやらが、この建物か?」

魔法使い「判らないです。でも、たぶん」

エルフの騎士「ほう」


魔法使い「そういえば、私の銃が魔道具じゃない理由を説明していませんでした」

勇者「すっかり忘れていたな」


魔法使い「この銃が機械文明の遺産だと、女商人さんのところの技師さんに教えてもらいました」

魔法使い「ただの銃に、無理やり魔法回路を構築した代物だって」


勇者「そうだったのか。通りで、誰も細かい使い方を知らないわけだ」

勇者「だけど、そうなると魔法使いは初めて触ったあのとき、どうしていきなり使うことができたんだ?」


魔法使い「それは古書に書いてあったから」

勇者「古書に書いてあった程度でいきなり使えるものなのか?」

魔法使い「組み立てたとき、魔法回路のおおよそは理解できました。加えて、古書に書いてあったことを参考にしたのです」


勇者「まさか、魔法回路を見て、本の内容を応用していたのか?」

魔法使い「そうですが」


勇者「改めて、魔法使いが賢いことを知った」

エルフの騎士「確かに。聞いているだけでもとんでもないな」


魔法使い「魔法回路は、見る人が見ればわかる」

魔法使い「技師さんも、魔法回路を見ただけで、私が火炎系や爆破系魔法を使っていると気付いた」

魔法使い「ただ、この魔法回路を構築する技術がどれだけ高いものか、それだけは私でも気付かなかった」


勇者「……」

エルフの騎士「魔法使い、我が君が眠たそうだ」

魔法使い「勇者さま」

勇者「だ、大丈夫だ!」


魔法使い「……。とにかく、この銃は、今の技術では再現不能な機械文明のものだと、教えてもらった」

勇者「なるほど」


魔法使い「銃としては立派、でも魔道具としては出来損ない。だから私はこの子が大切です」

勇者「そうか……。大切にしてくれ。きっとその銃も喜ぶだろう」


エルフの騎士「ところで、私たちはどうすればいいんだ」


勇者「……」

魔法使い「……」

エルフの騎士「……」


魔法使い「……あ、あっちに何か見えます」

勇者「ん? あれは……!」

エルフの騎士「もしかして、火の神殿じゃないか!?」

勇者「言われてみれば、見た目は神殿のような造りだ」

魔法使い「まさか、こんな所にあるなんて……」


エルフの騎士「行ってみよう。ずっとここに居ても仕方ないしな」

魔法使い「うん」

勇者「とりあえず行動だな。見たところ、魔物もいそうにないから安全だろう」


エルフの騎士「ワームには二度と会いたくないな」

魔法使い「私も」

勇者「エルフの騎士の言うとおりだよ……」


―― 火の神殿 ――


勇者「ここが、火の神殿か」

魔法使い「建物がマグマの上にあるなんて、すごい」


エルフの騎士「いきなり広場に出たな。……なぁ、あれって創造の女神像じゃないか?」

魔法使い「うん。やっぱりここは火の神殿かもしれない」


勇者「探索してみよう。火の精霊が祭られている場所があるかもしれない」

魔法使い「わかりました」


エルフの騎士「坑道も広かったが、ここも広いな」

勇者「流石は神殿と言うべきかな」

エルフの騎士「だが、人間は何が目的でこんな所に神殿を作ったんだろうな」

勇者「それは昔の人に聞いてみないと」


魔法使い「どっちに行けばいいの」

エルフの騎士「んー、こっちに行ってみるか」

勇者「根拠はあるのか?」

エルフの騎士「勘だ!」

魔法使い「……」

勇者「……」


魔法使い「……いろんな場所が崩れてる。あんな所に大穴もある」

エルフの騎士「それにしても、この建物……築何年なんだろうな」

魔法使い「わからない」

エルフの騎士「確かなことは、ここは廃墟になった神殿ということだけか」


勇者「水の神殿は綺麗だったんだがなぁ」

エルフの騎士「水の神殿? 我が君たちは水の神殿に行ったことがあるのか」

勇者「そうだ。水の精霊を祭る神殿だった」

エルフの騎士「そこはここよりも新しい建物だったのか?」

勇者「ああ、そうだが」


魔法使い「それがどうしたの」

エルフの騎士「いや。何となく気になっただけだ」

魔法使い「気になった?」


エルフの騎士「だってさ、人の都合で勝手に神殿を建設して、勝手に精霊を作って祭っているんだ」

エルフの騎士「それは人間のただの自己満足じゃないのかなと思って」


魔法使い「エルフの騎士、たまに鋭い」

勇者「……確かに」


エルフの騎士「なぁ、何度も聞くが本当に神は存在するのか?」

勇者「存在すると言われている」


エルフの騎士「誰も見たことがないのに」

勇者「俺も女神を見たことはない」

エルフの騎士「……勇者の選択とか、色々と考えるほどやっぱり可笑しい」

勇者「俺には何も言えないな」

魔法使い「私にも。でも、否定もできない」


エルフの騎士「まぁそうか。神については実は存在するかもしれないからな」

魔法使い「うん」

勇者「難しいことは考えても仕方ないか」


エルフの騎士「すまない。人間に関する疑問や興味が尽きなくて」

勇者「いや。人間の常識は、客観的に見ると可笑しいところも多いから」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「なぁ我が君」

勇者「どうした」


エルフの騎士「神殿というのは、こんなにも不思議な所なのか?」

勇者「どういうことだ」

魔法使い「エルフの騎士の言いたいことわかる。ここ、変」

勇者「どうした二人とも」


エルフの騎士「何に使うかよく分からないものがたくさんあるんだが」

魔法使い「これなんて、鉄の塊……数字? 棒?」


エルフの騎士「ドアも多すぎる。部屋も多い」

エルフの騎士「こんなんじゃ、その火の精霊とやらが祭られている場所に着くのはいつ頃か」


魔法使い「まるで、何かの目的の為に作られた場所」

エルフの騎士「もしかして、外観だけが神殿っぽかっただけじゃないのか」


勇者「確かに言われてみると……。そんな気がしてきた」

魔法使い「でも、今はここを探索するしかない」

エルフの騎士「そうだ」


勇者「とにかく進もう」

魔法使い「はい」

エルフの騎士「次はこっちに行ってみてはどうだろうか」




―― 廃れた教会 ――


勇者「ここが、火の精霊が祭られている場所なのか?」

魔法使い「神殿の中に教会があるなんて……」


エルフの騎士「教会と神殿は違うものなのか、魔法使い」


魔法使い「神殿というのは、神が座するところ。教会は、神の教えを広めるところ」

エルフの騎士「何が違うんだ?」

魔法使い「大きな違いはない。でも、より神に近いとされるのは神殿」


エルフの騎士「なるほど。だが、何故二つを分ける必要があるのだ」

魔法使い「神殿は、神に仕える者に対して。教会は、民主に対して開かれているものだから」

エルフの騎士「ふむふむ。要は住み分けか」

魔法使い「そう。だから、神殿の中に教会があるのは少し変」


エルフの騎士「ただあまりにも可笑しいという訳でもないのだな」

魔法使い「うん。だから、気にしなくてもいい」


エルフの騎士「ああ、ありがとう。さぁ、ここからは魔法使いが主役だ。精霊にお祈りするんだ」

勇者「……エルフの騎士の言う通りだ。多分ここが火の精霊を祭る場所だと思う」


魔法使い「はい」

勇者「お祈りをしてみろ」

魔法使い「わかりました。どれだけ時間が掛かるか判らないので、外で待っていて下さい」


勇者「ん、わかった」

エルフの騎士「頑張るんだぞ」


魔法使い「はい」






勇者「俺たちはどうするかな」

エルフの騎士「あまり動き回るのも良くないと思う。幸い、水は魔法で作れるから、脱水症状の心配はない」

勇者「そうか。じゃあのんびり待つか」


―― 数時間後 ――


勇者「少し遅くないか?」

エルフの騎士「確かに。私もそう思っていたところだ」


―― 廃れた教会 ――


勇者「大丈夫か、魔法使い?」

魔法使い「……勇者さま」


エルフの騎士「どうだ? 何か力を授かったか」

魔法使い「…………」

エルフの騎士「どうした、魔法使い」


魔法使い「まだ、何も。たぶん、お祈りが足りないせい」

勇者「まだ? もう何時間も祈っているじゃないか」

魔法使い「でも!」


勇者「魔法使い……」

エルフの騎士「どうしてそんな」


魔法使い「だって、こんな魔力じゃ役に立てない」

魔法使い「もっと強くなりたい。魔力が強くなったら、きっと銃も上手く扱えるはず」

魔法使い「もう、足手まといはいや」


勇者「足手まといなんて、そんな事を思っていたのか」

魔法使い「そんな事なんて言わないで……」

勇者「……すまない」


エルフの騎士「魔法使いよ、君が強くなりたいと思う気持ちはわかる」

魔法使い「じゃあ、もっとお祈りを」

エルフの騎士「でも、その強さの求め方は違うと思う」

魔法使い「強さの求め方?」


エルフの騎士「私は、故郷の隊長にしごかれて強くなった。我が君もきっとそうだ」

勇者「……」


エルフの騎士「強くなりたいなら、何かに頼らず自分で強くなるしかないじゃないかな」

魔法使い「でも、だって……。私は……私の魔法の素質は……」


エルフの騎士「もちろん私は精霊について強く否定はしない。もしかしたら本当に力を授けてくれるかもしれない」

魔法使い「…………」


エルフの騎士「我が君や魔法使いがここを目指していたことも、その強い気持ちも知っている」

エルフの騎士「だから私はここまでいっしょについてきた」

エルフの騎士「ゆえにあえて言おう。自分の強さは自分で手に入れるべきではないだろうか」


魔法使い「……だからって諦めきれない。きっとここは、火の神殿じゃない」

エルフの騎士「……魔法使い」


魔法使い「だからもっと、探そう。本物の火の神殿を探そう」

勇者「そうは言っても、これ以上どこを探せばいいんだ」

魔法使い「そ、それは……」


勇者「……」

エルフの騎士「……」

魔法使い「……お願い、もう少しだけ」


エルフの騎士「……わかった」

魔法使い「エルフの騎士!」


勇者「そうだな。ここはきっと火の神殿じゃなかったんだ」

魔法使い「勇者さまも……。ありがとうございます」


エルフの騎士「そうと決まれば、一度来た道を引き返そうか」

魔法使い「うん」

勇者「それに、今は何もできること無いしな」


エルフの騎士「我が君の言う通りだ。探索に次ぐ探索でもいいじゃんないかな」

勇者「探索しながら、脱出のことも考えよう」

魔法使い「……はいっ!」




勇者「ただ、引き返すにしても他に道はあったかな?」

魔法使い「気になる大穴があった」

勇者「そうか! じゃあ一度そこに行ってみよう」

魔法使い「うん」


――
――
――


魔法使い「あれです。あの大穴」

勇者「すごく大きな大穴だな」

エルフの騎士「かなり頭上にあるが、どうやって行くんだ」


勇者「俺が魔法使いを抱えていこう」

魔法使い「……え」

勇者「ん、嫌か?」


魔法使い「い、嫌じゃ……ない、です」

エルフの騎士「ほほう」

魔法使い「なに」

エルフの騎士「そう睨むな、ははは」


勇者「変な奴らだ」

魔法使い「むぅ。もういいです。エルフの騎士、お願い」


エルフの騎士「おいおい、勿体無いだろ」

魔法使い「なにが」


エルフの騎士「それに私は疲れたしなー」

魔法使い「嘘つき」


勇者「エルフの騎士もこう言っているんだし」

魔法使い「……」

勇者「そんなに嫌か?」

魔法使い「そうじゃないけど……」


勇者「けど?」

魔法使い「……なんでもないです。その、お願い」


エルフの騎士「くふふふ」

魔法使い「……ばか」

エルフの騎士「何とでも言えばいいさ!」


勇者「馬鹿なことしてないで、行くぞ」

魔法使い「ば、馬鹿なこと……」

エルフの騎士「ははは!」


勇者「ほら、つかまって」

魔法使い「……う、うん」

勇者「なんで恥ずかしがってるんだ?」

魔法使い「そんなことない!」

勇者「お、おう……」


魔法使い(意識したら、恥ずかしい……。どうして)

魔法使い(なんでだろう。本当に……)


――
――

―― 大横穴 ――


勇者「っと、到着!」

魔法使い「あ、ありがとう」

勇者「ああ」


エルフの騎士「……改めて思うが、なんだここは」

魔法使い「坑道よりも大きい通路みたい」

勇者「先へ進もう」


エルフの騎士「しかし、こんな大穴の先に神殿はあるのか?」

勇者「わからない。だけど、もしかしたら出口があるかもしれない」

魔法使い「……」


勇者「道がでこぼこしているから、気をつけて。変な溝もたくさんあるし」

魔法使い「うん。……きゃっ」

勇者「おっと」

魔法使い「ありがとう」

勇者「気にするな」


エルフの騎士「変に意識しなければいいのかな」

魔法使い「え? あっ……」


勇者「なんだ魔法使い?」

魔法使い「な、なんでも無いです。離して」

勇者「ああ……?」


エルフの騎士「もしかして、私が御祭りの国であんな事を言ったせいか?」

魔法使い「……」

エルフの騎士「なんだその、すまない」


勇者「何かあったのか?」

魔法使い「ななな、なんでもないっ」

エルフの騎士「あ、あはは……。我が君は少し先に行ってくれ」

勇者「な、なんだ?」


魔法使い「……大丈夫だから、エルフの騎士」

エルフの騎士「もしかして、本当に我が君……勇者のことが」

魔法使い「今はこんな話しをしている場合じゃない」

エルフの騎士「……すまない。こういう話しになると浮かれてしまうのは、女の性かな」


魔法使い「その気持ち、わからないわけじゃない」

魔法使い「でも、私自身、この気持ちが何なのかよく判らない。身内への安心感みたいなものなのか、それとも……」


エルフの騎士「そうか」

魔法使い「うん……」


勇者「おーい! こっちに来てくれ!」


魔法使い「はい」

エルフの騎士「……魔法使い。どう考えてもそれは……」


勇者「あれは、何だと思う魔法使い。あの鉄クズの集まり」

魔法使い「……嘘」

エルフの騎士「どうしたんだ魔法使い。様子がおかしいぞ」


魔法使い「あれ……。私の銃と似てる。ううん、もっと大きい」

魔法使い「遠目でもわかる。機械文明の器具、それも銃器がいっぱいある」


勇者「なんだって!?」

エルフの騎士「そんなものがどうして此処に……」


魔法使い「とにかく行ってみよう」

勇者「あ、待つんだ魔法使いっ」

エルフの騎士「走ったら危ないぞ!」


――
――
――

魔法使い「……すごい、こんなに銃が」

勇者「なんて大きな鉄砲だ」

エルフの騎士「人が入るんじゃないか? それに、なんだこれは。鉄砲つきの馬車なのか?」


魔法使い「きっとこれ、大砲。銃よりも大きな弾と破壊力があったはず」

勇者「魔法使いのよりもか?」

魔法使い「比べ物にならない」


エルフの騎士「じゃあこの鉄の馬車はなんだ?」

魔法使い「確か古書には……。アハ、ト……、ごめんなさい。忘れた」

エルフの騎士「馬車じゃないのか」

魔法使い「うん。それも機械。今では手に入らないエネルギーを使っていたと書いてた」

エルフの騎士「なんと」


勇者「それにしても壮観だ。辺り一面が銃器だらけなんてな」

エルフの騎士「じゃあこれを持って帰ってれば」


魔法使い「ダメ……。全部壊れてる」

エルフの騎士「修理できないか」

魔法使い「多分無理。修復不可能なくらい破損していると思う」


勇者「女商人の旅団の人でも無理かな?」

魔法使い「きっと誰の手でも修理は無理。それに、鉄だってもうかなりボロボロ」


エルフの騎士「じゃあ持って帰っても武器としては使えないか」

魔法使い「きっと無理」


勇者「でもさ、一つ持って帰って、これを参考に新しい武器を作ることは」

魔法使い「今の技術じゃとても無理。技師さんも言ってた」


勇者「そうなのか?」

魔法使い「そう。銃には弾も必要だし、火薬も必要だって教わった。コストパフォーマンスも悪すぎる」


エルフの騎士「コストパフォーマス?」

魔法使い「一つ生産するのに、多大な資材や時間が必要だってこと」

エルフの騎士「魔法使いは相変わらず博識だな」

魔法使い「……」


勇者「でも魔法使いの銃は火薬を使っていないような」

魔法使い「それを補うために、この魔法回路があります。火薬の変わりに、爆破魔法を使って」


エルフの騎士「なるほど。さらに構築された魔法回路で、爆破魔法が増強されているのか」

魔法使い「うん。技師さんに会うまでは、何となく使ってたけど。この魔法回路は本当にすごい」


エルフの騎士「ところで、先ほどからちょくちょく出てくる技師とは何だ?」

魔法使い「ある商人さんの仲間。知り合い。魔道具と機械文明についてとても詳しい」


エルフの騎士「ほほう。一度会ってみたいものだな」

勇者「会えるさ、きっと」


エルフの騎士「それは楽しみだな」

魔法使い「とても良い人」

エルフの騎士「ますます楽しみだ!」


魔法使い「ただ、どうしてこんなにも壊れた銃器が」

エルフの騎士「ああ。すごく不思議だ。これらは伝説の文明の器具だったか」

魔法使い「そう」


勇者「なぁ魔法使い。あっちにも道が続いているぞ」

魔法使い「……行ってみる」


エルフの騎士「まだ武器があるな」

魔法使い「どれだけあるんだろう……」

勇者「まるで世界中から集められてきたって感じだな」


魔法使い「あながち、外れじゃないかもしれません」

エルフの騎士「そうだな。仮にここが機械文明の最後の土地だとしても、この量は可笑しい」


勇者「もしそうだとしたら、どれだけの年月を掛けて集めたんだろうな」

エルフの騎士「ぞっとするな、そう考えると」


勇者「……この先に何が」

魔法使い「……」

エルフの騎士「ここまで来たんだ。行ってみるしかないさ」



??「――――」



勇者「これは……なんて大きい体躯」

魔法使い「……竜」

エルフの騎士「こんな、伝説級の魔物が……。でも、眠っているのだろうか」


勇者「もしかして、あの伝説は事実だったのか」

魔法使い「財宝というのは、あの夥しい量の銃器」

エルフの騎士「……逃げた方がいいんじゃないだろうか」


??「……んん? 貴公らは人間か?」


勇者「目覚めた」

魔法使い「ひっ」

エルフの騎士「わっ」


火竜「わしは火竜。人間を見るなど、数百年振りだ」

勇者「……っ!」


火竜「そう構えるな。いきなり戦おうなどとは思わん」

勇者「そ、そうなのか」


火竜「わしの役目は、人を殺すことではないのでな。しかし暴れるならば話しは別だぞ」

勇者「ならば俺も剣を納めよう」

火竜「ふむ、そうか。……そうだ、少しわしと話せ。暇つぶしには丁度良い」


勇者「話を?」

火竜「ああ。最後に人間を見たのは数百年前だったか」

魔法使い「数百年前……」

エルフの騎士「火山の坑道が廃坑になったときと同じ」


火竜「坑道? ああ、あの煩い人間どもか。あれは殺した」

勇者「どうしてそんな事をしたんだ」

火竜「昔の人間どもはここまで到達し、わしの集めた銃器を盗み出そうとしたからな」


魔法使い「たったそれだけの理由で」

火竜「あまりに煩いから、坑道も少し壊してやった。それだけで、人はあの場所まですら来なくなった」


勇者「あの場所とは、創造の女神像があった場所か?」

火竜「創造の女神像? なんだそれは」

勇者「何を。あの場所に入ってすぐの広間に置いてあっただろ」


火竜「あれが創造の女神? ふっ、ハハハハ!!」

勇者「何が可笑しい」


火竜「いや、すまぬよ。くふふふ、ははは、いや、何千年振りに笑ったぞ人間」

勇者「……」


火竜「貴公らが女神と呼ぶあの方は、創造なんてしない。破壊のみだ」

勇者「知っているのか、創造の女神を」

火竜「知っているも何も、わしら竜族などの魔物を作ったのはあのお方」


勇者「そんな馬鹿な! 女神が魔物を作っただと!?」

火竜「叫ぶな。聴こえておる。そうだ、何も間違ったことは言っていない」


エルフの騎士「ならば、女神は人を殺そうとしていたのか」

火竜「ほぉ、貴公はエルフか?」

エルフの騎士「ああ、そうだ」


火竜「あの方が作ったものが、生き残っておったのか。いや、生き残ったといえば人間も同じか」

エルフの騎士「エルフ族が作られた?」

火竜「うむ。貴公らが女神と呼ぶあの方は、世界を救おうとしてエルフ族を作った」

エルフの騎士「……どういうことだ」


火竜「待て。いくら会話を楽しもうにも、一度に多くは答えられぬわ」

火竜「順番に答えてやろう」

火竜「だが、数千年も過去の話しだ。殆ど忘れてしまっているがな」


勇者「ならば、まずどうして女神は何故魔物を作ったんだ」


火竜「確か、わしら竜族を意図的に造り、魔物は知らぬ間に生まれたはず。だが、全ては世界を救済するためだったはず」

勇者「世界を救済する?」

火竜「あの方は、世界を愛していた。だから救おうとした。これだけは覚えている」

勇者「魔物を作ることが世界を救うだと……。人を殺すだけのあの魔物どもが」


火竜「すまぬが、細かいことまでは覚えていない」

勇者「……そうか」


エルフの騎士「じゃあ次だ。エルフ族までもが世界を救うために作られたとはどういうことだ」

火竜「うむ。荒れた世界の修復のため、だったと思うのだが」

エルフの騎士「思う、だと」

火竜「何度も言っているだろう。数千年前のことなど、覚えているはずがないだろう」

エルフの騎士「くっ……」


勇者「火竜よ、女神とはどんな存在だったんだ。やはり神なのか?」

火竜「貴公らが女神と呼ぶものは、人間だったぞ」


勇者「なに!?」

エルフの騎士「人間、だと」

魔法使い「嘘……」


火竜「何を驚いておる? 神なぞ、この世にいるならばわしも見てみたいくらいだ」

魔法使い「……じゃあ、精霊は」

火竜「精霊とはなんだ。おとぎ話しでもして欲しいのか?」

魔法使い「そんな」


勇者「……女神が人間というのは、本当なのか?」

火竜「ああ。わしらをお作りなった親。ある意味では神なのか?」

勇者「なんてことだ。神はいなかったのか」

火竜「少なくともわしは見たことはない」


勇者「じゃあ俺は誰に選ばれて勇者に……」

火竜「ところで貴公らは何だ?」


勇者「……俺は勇者だ。女神に選ばれた」

火竜「あの方に? まさか生きておるのか!?」

勇者「違う。結局はそういう設定で、実際は人間に選ばれた勇者だ」

火竜「……なるほど。そうだったな、あの方は死んだ。わしらが見送ったはずだからな」


エルフの騎士「私はエルフ族の誇り高き騎士。エルフの騎士だ」

火竜「エルフか。繁栄はしておるのか?」

エルフの騎士「人間や魔物の次くらいには繁栄しているぞ」

火竜「ならば僥倖だ」


火竜「そして、そこの銃器を持つ少女よ。貴公はどういう存在だ」

魔法使い「私は魔法使い。……どうしてこれが銃だって」


火竜「わしの目、耳、鼻、全ての感覚は銃器を見つけるためにあるでな」

魔法使い「どうして……」

火竜「それがわしの役目だからだ」


火竜「ところで、貴公は魔法を使うのか?」

魔法使い「うん」

火竜「魔法か……。あの方が作ったものが、ここまで残っておるとはな」

魔法使い「魔法も、女神が?」

火竜「そうだ。全ては世界を救済するためと言っておったわ」


魔法使い「すごい……」

火竜「さて、もうこのくらいで良いかな」


勇者「ちょっと待ってくれ!」

火竜「なんだ」


勇者「出口を教えてくれないか?」

火竜「それはわしにも判らぬ。地の道は知らん。空の道ならば別だったが」

勇者「そんな……」

火竜「勝手に見つけて出て行くといい。わしは役目を果たしてから眠る」

勇者「火竜!!」


火竜「黙れ!!」

勇者「くっ」


火竜「さて、そこの少女よ。その銃器を置いて行け」

魔法使い「え」

勇者「……なんだと」


火竜「わしの役目は人を殺すことではない。気が遠くなるほど昔、世界中に蔓延った銃器を集めることだ」

魔法使い「……」


火竜「争い事は、わしは好かん。今は魔王と名乗っておるあいつとは違うからな」


勇者「魔王だと……」

火竜「そんなことはどうでもよい。少女よ、それを置いて立ち去れ。その気がないならば、殺す」


魔法使い「でも」

火竜「貴公がそれを盗み出した訳ではないのは判る。だからわしも穏便に済ましたい」

魔法使い「……」


魔法使い(これを差し出せば、争わなくて済む。でも、この子は勇者さまに貰った大事な)

勇者「断る!! これは、世界を救うために使うんだ!!」

魔法使い「勇者さま……?」


火竜「世界を救う、と? あの方と同じことを言うのだな」

勇者「そんなものは知らない!」


火竜「ふむ。だが、どうしてその銃を使う必要がある。銃器など無くともよいではないか」

勇者「よくない。これは魔法使いの銃だ。それに、この銃で魔王を倒し人間は救われる」


火竜「ほほう。だが、わしにとって人間などどうでもよいわ」

勇者「火竜には関係なくても、俺は勇者だ。だから人間を救う義務がある! そして俺自身もそう思っている!」

火竜「ただの義務と、貴公の意思か。ならばわしも義務を果たし、意思を貫こう」


勇者「……火竜よ。どうしても、戦わなくてはいけないのか」

火竜「その前に一つ質問だ。勇者よ、人間をどのようにして救うつもりだ」


勇者「知れたこと。魔王を倒して、戦争を終わらせる」

火竜「その程度で人は救われるのか」

勇者「判らない。でも、人は一歩先へと進むことができる。その先に、安息が待っていると信じている」


火竜「戯れ言だな」

勇者「やってみなければ分からないことだってある!」


エルフの騎士「ふ、ふふ……。まさか伝説の魔物と戦うなんて」

魔法使い「がんばる」

エルフの騎士「魔法使いまで……。はぁ、わかった。私も全力で戦おう!」


火竜「ならば行くぞ」

勇者「こい!!」


火竜「はぁっ!!」

== 火竜は火を吹いた ==


勇者「くっ。一旦退く!」

エルフの騎士「火炎に追いかけられるとは!」

魔法使い「……っ」





エルフの騎士「こっちだ勇者! ここに溝がある!」

勇者「わかった!」

魔法使い「……っ!」


火竜「いきなり逃げ腰か」

ここまでー
次は戦闘シーンですー、書くのは非常に時間が掛かるけど、一番書いてて楽しいー

ところで、銃器の構造ってまじむじぃ、妄想で補うしかネェ
あと次の投稿で7章は終わりーではー


勇者「ちっ!」

エルフの騎士「あの火の息吹は、どうやって避け続ける?」


魔法使い「……この溝、一定の間隔で存在しています」

魔法使い「これを利用すれば。隠れながら戦うことができるかと」


エルフの騎士「しかしそんな戦い方、騎士道に反するのだが……」

勇者「エルフの騎士、今は勝つことが先決だ」

エルフの騎士「……そうだな。すまない我が君、これは試合ではなく戦闘だった」

勇者「その通りだ。騎士道は、もっと別の場所で貫け」

エルフの騎士「ああ! 今はとにかく勝とう!」


魔法使い「……私の銃も組み立てた」

勇者「よし、反撃だ!」

エルフの騎士「ああ!!」


勇者「まず俺が囮になる。その間に、魔法使いは狙撃を頼んだ」

魔法使い「わかりました」


エルフの騎士「私はどうすればいい」

勇者「エルフの騎士は魔法使いと共にいてくれ。場合によっては、魔法使いを抱えて走れ」

エルフの騎士「わかった」


火竜「逃げるつもりか、勇者よ」


勇者「まさか! 出てきてやったぞ!」

火竜「ほほう。心根まで臆病者だと思ったぞ」

勇者「言ってろ。火竜も、火の息吹ばかり吐いてないで、その爪と牙で戦ってみたらどうだ」


火竜「言ってくれる! いいだろう、我が爪を喰らうがいい」

勇者「よし、ならば行くぞ!!」

== 勇者は 竜に 斬りかかった ==


火竜「来たか! はぁ!!」

== 竜の爪 ==


勇者「ぐっ、っはあ!」

火竜「わしの爪を避けるか」



パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!


火竜「ぬぅ、なんと……。まさか、あの魔法使い銃器を使えるのか」



魔法使い「効いてない?」

エルフの騎士「そんなことは無い! まだ諦めるには早い!」



火竜「喰らえ、わしの炎を」

== 火の息吹 ==


エルフの騎士「伏せて!」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「おお、頭上を火炎が通り過ぎて行く」

魔法使い「この溝、役に立つ」

エルフの騎士「そうだな。さて、この火炎が落ち着いたら移動するぞ」


魔法使い「わかった」



エルフの騎士「よし、今だ!」

魔法使い「うん」



火竜「ようやく出てきたか!」

勇者「させるか! 火竜、こっちだ!」


火竜「ほほう、これはチームワークって奴か?」

勇者「余裕そうだな、こっちは必死だっていうのに」


火竜「ぬんっ!」

勇者「……っ! ちぃっ、なんて力だ」


火竜「気張れよ、火の息吹だ」

勇者「ぐっ……がっ!」

火竜「気合で避けたか」





魔法使い(どこを狙えば効率的?)

魔法使い(あの鱗は、ものすごく硬そう)

魔法使い(でも、何発も同じ所に当てることができればもしかすると……)


エルフの騎士「ああ、我が君が!」

魔法使い「……」


エルフの騎士「……くそっ。どうすればいいと思う魔法使い」

魔法使い「私は狙撃する。エルフの騎士は、勇者さまが戻ってきたら回復」


エルフの騎士「わかった!」


魔法使い(……でも、同じ場所に何発もなんて。ううん、する」

魔法使い「すぅー……はぁ……。んっ」


パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!


魔法使い「……だめ」



火竜「煩わしいな少女。だが、それではわしに負傷させることはできぬぞ」

勇者「そっぽ向いてんじゃないぞ!!」

火竜「なんという闘争心だ」

勇者「こっちは真剣だからな! はぁ!!」


魔法使い(弾倉に弾を……。5発装填。残りの弾は、あとちょっと……)


エルフの騎士「我が君!! 傷は大丈夫か!?」

勇者「ああ、心配ない!」

エルフの騎士「無理はせず、こっちまで退いてくれても構わないからな!」

勇者「了解!!」


火竜「よい仲間だな」

勇者「はっ、自慢の仲間だ!」

火竜「悲しいかな、ここで死ぬかもしれぬのだから」

勇者「死なせない!」


火竜「その意気や良し」

勇者「褒めてもなんも出ないぞ!」


エルフの騎士「火竜が戦いながら近づいてくる……。よし、移動だ!」

魔法使い「うん」




火竜「次はこういうのはどうだ?」

勇者「なに!?」


火竜「はぁあ!!」

== 火竜は羽ばたいた 火の粉が荒れ狂う ==


勇者「か、風がっ!」

勇者「しまった、火の粉が二人のもとに!」




エルフの騎士「なんて風だ! 溝はもうすぐそこなのにっ」

魔法使い「風魔法! 私たちの周囲の風は少し弱くなった」

エルフの騎士「魔法使い、風の魔法も使えたのか!?」

魔法使い「今はとにかく逃げ込まないと」

エルフの騎士「ああ! 少しでも風力が弱まればこっちのものだ!」


勇者「よくやった魔法使い」

火竜「あの少女、風魔法も使えたのか……」

勇者「さぁ、まだまだ行くぞ」


火竜「貴公らは本当によく戦うな。諦めぬのか?」

勇者「諦めるかよ!!」



エルフの騎士「魔法使い、君は本当にすごいな」

魔法使い「そよ風程度しか威力はないけど」

エルフの騎士「それでも私たちは助かった!」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「さぁ、戦いはこれからだぞ」

魔法使い「わかってる」


エルフの騎士「さぁ、狙撃してくれ!」

魔法使い「任せて」



魔法使い(威力は最大に引き上げている……)

魔法使い(爆破魔法の高圧縮回路、火炎魔法による着火、重力魔法で衝撃減弱、風はない)

魔法使い(でも、あの皮膚を、鱗を貫けるか……)

魔法使い(だってこの子の威力じゃ。……ううん。でも、だっては禁止!)


魔法使い「すぅー……はぁ……んっ」


パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!


魔法使い「だめ、早撃ちじゃ狙いがぶれて……」

エルフの騎士「まだだ魔法使い! もっと撃ち込んでみるんだ!」


火竜「なんだ少女。もしや、同じ所を狙撃すればわしの貫けるとでも思ったのか」



魔法使い「……」

エルフの騎士「そんなことをしていたのか!?」

魔法使い「うん。やっぱり向こうは気付いてた」



火竜「無駄なことを」

勇者「無駄かどうかはやってみなくちゃ判らないだろ!」

火竜「ならば試してみるがいい……」

勇者「なに!?」



エルフの騎士「……ああ言っているぞ」

魔法使い「うん……」


火竜「わしは一歩も動かないでいてやろう」

勇者「……」

火竜「さぁ、撃ってみろ」

勇者「……。狙撃しろ、魔法使い」



魔法使い「……」

エルフの騎士「撃て、魔法使い」

魔法使い「わかった」


魔法使い(狙うは、前足。爪の攻撃と、ある程度の動きを封じることができるはず!)

魔法使い「すぅー……はぁ、んっ」

パァンッ!!


火竜「ほほう」



魔法使い(まだ!)

魔法使い「すぅー、はぁ……」

パァンッ!!



魔法使い(まだっ)

パァンッ!!



火竜「その程度か?」


魔法使い(そんな、皮膚は欠けてもいない)

魔法使い(でも、あと二発残っている)

パァンッ!!


火竜「……」


魔法使い(最後の一発……)

魔法使い(私の全力の魔力、魔法を込める!)

魔法使い「これで……。すぅ、はぁっ……んっ!」


火竜「……ふむ。終わりか」


魔法使い「そんな……。貫けない……」

魔法使い「嘘、嘘……。なんで、どうして……こんなこと……」


エルフの騎士「大丈夫か魔法使い?」

魔法使い「……」


火竜「あの少女、心が折れたのではないか」

勇者「俺の仲間はそんな簡単に諦めたりしない」

火竜「ほう。それは何故だ」

勇者「知らん! でも信じている!」


魔法使い(……私、これじゃ本当の役立たずだ。出来損ない……)

魔法使い「わ、わたしは……できそこ、ないの……」


エルフの騎士「しっかりしろ魔法使い!!」

魔法使い「……エルフの騎士?」


エルフの騎士「諦めるな!! 絶望するな!! 我が君も、私もまだ闘志は失っていないぞ!!」

魔法使い「でも……私の力じゃ……」

エルフの騎士「きっとまだ打開策はあるはず!」

魔法使い「だ、だって……」


エルフの騎士「どうしてだ……。折角ここまで来て、あんな竜に殺されて終わりたいのか!?」

魔法使い「……」

エルフの騎士「魔法使い!! 何か言え!!」


火竜「さぁ、どうする。大人しく死ぬか?」

勇者「はっ、冗談だろ!」

火竜「勇者とはこうまで心が強いのか」

勇者「俺だけじゃない。あいつらも強い!」


火竜「本当か? 銃声はもう聞こえてこないぞ」

勇者「……」



魔法使い「……私じゃ、もう……。でも、火竜は私たちを殺す……」

エルフの騎士「立て魔法使い! 移動するぞ!」

魔法使い「……エルフの騎士だけ、行って。もう、足を引っ張りたくない」

エルフの騎士「っ!!」


勇者「魔法使いーー!!」


魔法使い「……勇者さま?」

勇者「でも、だっては禁止だーー!!」


魔法使い「……」

エルフの騎士「我が君?」


勇者「それだけだ! 以上!!」

火竜「なんだそれは」

勇者「魔法使いはこれだけで十分だ」

火竜「どういうことだ」


エルフの騎士「何が言いたいんだ我が君は」

魔法使い「……そっか」


エルフの騎士「どうした、魔法使い?」

魔法使い「でもとか、だってなんて……そうですよね……」


魔法使い「……いじわる」

魔法使い「……でも、わかりました」


エルフの騎士「……もういいのか、魔法使い」

魔法使い「うん。ごめん、大丈夫」

エルフの騎士「そうか! ならば、反撃だ!」

魔法使い「わかった。最後の一発まで、撃ち込んでみる」



魔法使い「弾倉に弾を込めて……」

魔法使い「すぅー、はぁ、んっ!」

パァンッ!!

パァンッ!!


火竜「ほほう。また撃ってきおったか」

勇者「はは、どうだ! 俺の仲間は!」

火竜「少し甘く見ていた。だが、ここからどうするんだ?」


勇者「そんなこと決まっている!! 火竜、お前を倒す!!」

火竜「なんと!? ははははは!! このわしをか!?」

勇者「当たり前だ!!」


火竜「再度食らえ、我が炎を!」

== 火竜は火を吹いた ==


エルフの騎士「さぁ、移動するぞ!」

魔法使い「うん」


勇者「うおおお!!」

火竜「効かぬ!!」


――
――
――


魔法使い「残りは……三発……」

エルフの騎士「くっ」



勇者「はぁはぁ……くそっ」

火竜「どうした、息が上がっているぞ?」

勇者「はっ、冗談を言うな」



魔法使い「これが……っ」

魔法使い「すぅー、はぁ……んっ!」



パァンッ!!

パァンッ!!

パァンッ!!


魔法使い「これで、最後の弾……」


エルフの騎士「どうだ!」

魔法使い「……ダメだった」

エルフの騎士「……そうか」

魔法使い「ごめん」


エルフの騎士「いいや、魔法使いは悪くないさ!」

エルフの騎士「私は我が君の援護に行ってくる。魔法使いはここで隠れていてくれ」


魔法使い「エルフの騎士!」

エルフの騎士「大丈夫さ」



勇者「はぁはぁ……はぁはぁ……」

火竜「これで終わりだ」

== 火竜の爪が勇者を襲う ==

勇者「しまっ!」


エルフの騎士「我が君!!」


勇者「エルフの騎士!?」

エルフの騎士「だ、大丈夫か我が君?」


勇者「ああ、エルフの騎士のおかげだ」

エルフの騎士「それはよかった。ほら、回復魔法だ」


火竜「いいのかエルフの騎士よ。あの少女を守らなくても」

エルフの騎士「ふん! 火竜よ、貴様など魔法使いの銃を使うまでもない!!」

火竜「よく吼えるな、貴公らは」


勇者「魔法使いは弾切れか……」

エルフの騎士「ここからは、私と我が君次第だ」

勇者「わかった」


火竜「行くぞ、勇敢な人間とエルフよ」

勇者「ああ!」

エルフの騎士「こい!!」


魔法使い「……何か、弾になる鉄は」

魔法使い(鉄さえあれば、灼熱魔法で作ることができる)


魔法使い(あそこに、銃器が一つ落ちている……)

魔法使い(あれを使えばっ)


魔法使い「行こうっ!」



火竜「あの少女、何をしている」

勇者「お前の相手は俺たちだ!!」

エルフの騎士「はぁ!! うおおおお!!」

火竜「ふんっ!」


勇者(魔法使い、何を……)


魔法使い「ハァハァ……」

魔法使い「もう少し……あの銃を、弾に変えて……」


火竜「もしや、わしの銃器に手を出そうとしてるのか?」

火竜「させるものか!!」

== 火竜は火を吹いた ==


魔法使い「あっ」



勇者「魔法使い!!」

エルフの騎士「くっ、間に合え水魔法!!」

火竜「無駄だ!」

勇者「くっそ!!」


魔法使い「……」

魔法使い(……ま、間に合った。溝に入り込めた……。死んだと思った)


勇者「返事しろ魔法使い!!」

エルフの騎士「大丈夫か!?」


火竜「運のいい奴だ。塹壕に入り込んだか」

勇者「魔法使いは無事か!?」


魔法使い(あと少し、がんばろう)

魔法使い「んしょ……」


エルフの騎士「魔法使い!! 無事だったか……」

勇者「……よかった」


火竜「ならばもう一度」

勇者「させるかぁーー!!」

== 勇者は火竜に斬りかかった ==

エルフの騎士「しっ! はぁ!!」

== エルフの騎士は弓矢を放った ==


火竜「邪魔をするか、貴公ら」

勇者「それがチームワークだ!」


魔法使い「やっと……」

魔法使い「これを……。あれ、もしかしてこれって……」

魔法使い「……使ってみよう」



火竜「うおおおお!!」

勇者「ぐあっ! くぅ……」

エルフの騎士「大丈夫か我が君!? 回復魔法!」

勇者「ありがとうエルフの騎士!」


火竜「まだ戦うか。だが、そろそろ飽いた」

勇者「なんだと?」


火竜「少々、本気を見せてやろう。ハァ……」

== 火竜の頭上に、大きな火の玉が出現した ==


勇者「なんてでかさだ……」

エルフの騎士「あれを受けたら、灰すら残らないぞ……」


火竜「さぁ、死ね」

勇者「くっ」

エルフの騎士「……終わりか」



ズバァンッ!!
ブシュ


勇者「な、なんだ今のは!?」

エルフの騎士「……びっくりしたぞ」


火竜「わしの鱗を、貫いたのか」



魔法使い(ずっと同じ所、前足を狙い続けた意味はあった)

魔法使い「でも、この弾……すごい。薬莢があるだけで、こんなに変わるなんて……」

魔法使い「……壊れた銃の弾倉に、一発だけでも弾が残っててよかった」


火竜「…………」

== 火竜は羽ばたき、飛び上がった ==


勇者「に、逃げろ魔法使い!!」

エルフの騎士「行かせてたまるものか!!」

== エルフの騎士は弓矢を放った ==

== しかしダメージはあたえられなかった ==




火竜「まさか、このわしの鱗を貫くとは。魔法使い、貴公は先に滅ぼしておくべきだったか」

魔法使い「…………」

火竜「覚悟はよいか?」

魔法使い「……私たちは、負けない」


火竜「この状況でもなお吼えるか。その心意気に敬意を表して、貴公は我が血肉となるがよい」

== 火竜は大きな口を開けて、魔法使いに襲い掛かった ==


魔法使い「……っ」

火竜「……」

魔法使い「……?」

火竜「そ、その銃は……っ」


魔法使い「え?」

火竜「どうして、それが……」



勇者「なんだ、様子がおかしいぞ……」

エルフの騎士「我が君! 魔法使いを助けなけないと!」



魔法使い「この銃に何かあるの」

火竜「……」


火竜「その銃を少し見せてくれ」

魔法使い「……」

火竜「なに、奪おうなどとは思っておらん」

魔法使い「……わかった」


火竜「感謝する。しかし、この姿のままでは見辛いな」

== 火竜は姿を変えた ==


火竜(女性)「ふぅ。この姿になるのも久しい……」

魔法使い「……嘘」

火竜(女性)「なんだ、驚いているのか?」

魔法使い「う、うん」

火竜(女性)「わしら竜族は人の姿を取ることもできる」

魔法使い「……」


火竜(女性)「……さて、その銃を見せてくれ」

魔法使い「ど、どうぞ……」


火竜(女性)「これは……。ああ、なんと懐かしい」

火竜(女性)「ずっと、ずっと探していた。あの方が作った銃……」

火竜(女性)「世界のどこを探しても見付からなかった。もう、この世から消えたものだと思っていた」


魔法使い「……」


勇者「この人は……? それに、火竜は?」

エルフの騎士「遠くから見ていたら、火竜が人に化けたように見えたが」


魔法使い「そう。この人が、火竜」

火竜「この姿を人に見せるのは本当に久しい」


勇者「魔法使い、銃が」

魔法使い「大丈夫。私から渡したから」

勇者「……どうして」

魔法使い「きっと大丈夫」


火竜(女性)「……ありがとう。返そう」

魔法使い「いえ」


火竜(女性)「……」

勇者「まだ、戦うのか」

火竜(女性)「よい。闘争の空気では無くなった」

勇者「火竜?」


火竜(女性)「それに、その銃だけはわしの持ち物にできない」

勇者「どういうことだ」

火竜(女性)「……」

勇者「どうして黙る」


火竜(女性)「……その銃は、人間に拾われたということか。人間を選んだのか」

火竜(女性)「だが、今更どうして……。もしやあれが。いや、そんなはずは……」


勇者「どうした火竜」


火竜(女性)「……。ところで人間よ、すまなかったな」

勇者「い、いきなり何だ?」


火竜(女性)「その銃器が、それだと知っておれば戦闘などせずに済んだというのに」

勇者「……」


火竜(女性)「魔法使いの持つ銃は、この世界で唯一わしが収集できない銃。何故ならば、あの方の物だから」

火竜(女性)「貴公らの御伽話しのように例えるならば、伝説の武器という物か……」


勇者「……これが」

魔法使い「なんだか、凄い」

エルフの騎士「自分の持ち物が実は凄かった、なんて物語りみたいだ」


火竜(女性)「……貴公らには申し訳ないことをした」

勇者「火竜?」


火竜(女性)「この山からの脱出、手伝ってやろう。謝罪だ」

勇者「いいのか?」


火竜(女性)「もちろん、わしの背には乗せぬよ」

火竜(女性)「出でよ我が分身!」

== 子竜が出現した ==


勇者「竜だと!?」

エルフの騎士「そんな……。最初からこの竜がいたら……」


火竜(女性)「まったく貴公らときたら。その銃を闘争の最中でも渡すつもりでおれば……」

魔法使い「じゃあ、最初から殺すつもりなんて無かった?」


火竜(女性)「当たり前だ。何度も言うが、わしの役目は銃器の収集だ。人殺しではない」

火竜(女性)「でも、わしの集めた銃器に手を出すならば話しは別だが」


勇者「それで、この子竜は何だ」


火竜(女性)「そやつらはわしの分身だ。子竜らの背に乗って、この山から出て行くがいい」

勇者「それは助かる」


火竜(女性)「その代わり、出来る限りここを秘密にしてくれ」

勇者「わかった。約束しよう」

火竜(女性)「頼む」




火竜(女性)「ではな」

勇者「ああ」

エルフの騎士「竜の背に乗るなんて……。この一行に加わってからすごい体験ばかりだ」

魔法使い「うん」


勇者「さようならだ」

魔法使い「さようなら」

エルフの騎士「さらば!」


火竜(女性)「もう会うこともないだろうがな」


―― 空 子竜の背 ――


勇者「おお、高い!」

エルフの騎士「風がすごい……」

魔法使い「……」



―― 大地 ――


勇者「やっと、大地に降りられたな」

エルフの騎士「だが、ここは少し鉱山町から離れているぞ我が君」

魔法使い「仕方ない」


== 子竜たちは飛び去った ==


勇者「やっと帰ってこられた……。しかし、どうして火竜は魔法使いの銃を見て戦闘を止めたんだ」

魔法使い「わからない。でも、この銃はおそらく……」

エルフの騎士「ああ。女神が遥か昔使っていたのだろう」


勇者「今、何かを考えたところで何もわからないか……」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「そうだな。とにかく、鉱山町に帰って休もう。傷を癒さないと」


――
――
――

―― 数日後 鉱山町 ――


勇者「ようやく傷も癒えたな」

エルフの騎士「流石に魔法だけでは限界があるからな」

魔法使い「でも、エルフの騎士がいてくれて良かった」


??「おお! あんたら生きていたのか!」


勇者「マスター?」

マスター「今、買い物の帰りなんだ。ちょうどいい、うちへ寄っていけ」

勇者「そう言うことなら……」



―― 酒場 ――


マスター「開店したてだから、貸切だぞ」

勇者「本当だ。誰もいない」


マスター「しかし、よくもまぁ生きていたな」

勇者「どうしてだ?」


マスター「あんたらが火山の坑道に入ったあと、ワームどもが大量に湧いていてな。出口寸前まで来ていた」

マスター「普段なら奥深くにいるはずの魔物なんだがな。まぁ、日の光に弱いから出てはこねぇがよ」


勇者(俺たちのせいか?)

魔法使い「……」


エルフの騎士「ところでマスター。あのとき私に絡んできたゴロツキどもはどこだ」

マスター「それがな。大量に湧いたワームの偽性になっちまった」

エルフの騎士「そうなのか!?」

マスター「ああ。そのときゴロツキは運悪く坑道にいたらしい。だがあのゴロツキどもは町の厄介もんだったからな。いい厄介払いになった」


マスター「それで、あんたらは火の神殿を見つけることはできたのか?」

魔法使い「……勇者さま」

勇者「……それが、できなかった」

マスター「そうかい。やっぱりな」


勇者「残念だった」

マスター「じゃああんたらは蛮勇だったってことだ」

勇者「ああ」


魔法使い「……」

エルフの騎士「……」


マスター「しかし、どうして火の神殿は見付からないんだろうな」

勇者「たぶん、ワームが湧いていたせいじゃないか」

マスター「そんなに湧いていたのか?」

勇者「ああ。ここ最近では本当に異常だった」


マスター「……だが可笑しい。ここ数年、ワームによる被害なんてなかったんだが」

魔法使い「……」

マスター「そんなこと、よそ者のあんたらが判るはずねェか。それに、ワームが湧いたのもきっと魔王のせいだろうな」


魔法使い(火の神殿が見付からなかったのは、火竜が坑道を一部壊したせい)

魔法使い(だから、いつまでも見付からない。火竜が人を拒み続ける限り)


マスター「それで、あんたらはこっからどこへ行くんだ?」

勇者「どうしようかな」


マスター「じゃあよ、あんたらの腕を見込んで一つ依頼があるんだが」

勇者「依頼?」


マスター「こっから北西に行ったところの霧の街で、人が次々と消えているんだ」

マスター「神隠しって言われているが、十中八九魔物のせいだろう」

マスター「それを解決してくれねぇか?」


勇者「そうか。わかった、別に構わないよ」

マスター「そうか! 報酬としては、そうだな……」

勇者「報酬なんて別にいいさ」

マスター「なんだって?」


エルフの騎士「おお、流石は我が君だ!」

魔法使い「……」


マスター「なんて奴だ。はっはっは、ますます気に入った!」

マスター「いいだろう。これから何かあったら俺を頼りな! これでも、かなりの情報通だからよォ」


勇者「それは助かる」

マスター「情報整理、情報収集だけは誰にも負けねぇからな」

エルフの騎士「本当にあなたは良い人間だ」

魔法使い「……ありがとう」


マスター「おお、そっちが三人目か。なんだ、ハーレムじゃねぇか」

魔法使い「……っ!?」

勇者「そ、そんなんじゃない!」


マスター「ははは。じゃあ、頼んだぞ」

勇者「ああ、行ってくる」

エルフの騎士「私たちがいれば、百人力だ」

魔法使い「……うん」


マスター「じゃあな」

勇者「ああ、さようなら」





勇者「さぁ、次は霧の街で困っている人を助けに行こうか」

エルフの騎士「そうだな!」

魔法使い「はい」



―― 7章 火と魔法使い 終わり ――

3回に分けて投稿でした
ところでヘルシングおもしろいよねー、少佐が一番大好き
というわけで次章はおおよそ想像付くだろうけど、そういうこと

プロットは完成しているから、あとは書くだけ
支援とか感想ありがとう、ではー

今日の夜に投稿したいと思いますです

次回予告
第8章 銀の銃弾と魔法使い

ちょっと気になったんだけど「話」って名詞で使うときは送り仮名の「し」は要らないよ

>>746
おk
助かるよ、サンクス

投稿します
今回もこの章の途中までーすまぬー


※ネタバレ注意
三行でわかる7章のあらすじ









 ①火山の坑道へ入った、迷った、崖から落ちた
 ②崖から落ちたら火の神殿あった、でも行った意味なかった
 ③火竜と戦った、和解した、脱出した ← いまここ


8章 銀の弾丸と魔法使い

―― 道の上 キャンプ ――


勇者「何をしているんだ魔法使い?」

魔法使い「薬莢付きの弾を作っているんです」

勇者「薬莢付き?」


魔法使い「薬莢っていうのは、火薬を入れるモノだと思ってください」

魔法使い「今まで、私は鉄の塊を飛ばしていました。火薬がなくても、弾は飛んでくれましたから」


勇者「じゃあどうして今更薬莢なんて」

魔法使い「それは……。火竜との戦闘を覚えていますか?}

勇者「ああ、もちろんだ」

魔法使い「……あのとき、火竜の鱗を唯一貫いた弾は、薬莢のある銃弾でした」


勇者「そうだったのか」

魔法使い「はい。あのときの銃弾を思い出して、薬莢を作っているんですが……」

勇者「上手くいかないのか?」


魔法使い「まず、弾の大きさが定まらない」

勇者「大きさ?」

魔法使い「今まで私が作った玉は、薬莢が必要ない分、薬莢と弾頭を一つにしていました。いえ、してしまっていたのです」


勇者「してしまっていたって言うと、何だか間違えて続けていたように聞こえるんだが」

魔法使い「そうです。二つを一つにすると、弾が重過ぎて飛距離は縮まっていたと思います」

勇者「へぇ。じゃあ、薬莢と弾頭? だっけ、それを二つに分ければいいだけなんだな」

魔法使い「そこが非常に難しくて。薬莢と弾頭を分けたとき、どれだけを薬莢にして、どれだけを弾頭にするか。比率がわからなくて」


勇者「な、なんだか難しそうだな」

魔法使い「はい」

勇者「だけど、薬莢ってそこまで重要なのか?」


魔法使い「重要です。今まで、薬莢が無かった分を爆破魔法で補ってきましたが、既に限界でした」

魔法使い「でも、この前の火竜との戦闘で放った銃弾は、今までの威力と比べ物になりませんでした。薬莢があったからです」


勇者「じゃあ、文献通りに1.5km、もしくはそれ以上の飛距離が伸びなかったのは」

魔法使い「薬莢が無かったせいだと思います。即ち、私が作っていた銃弾は全部、出来損ないでした……」

勇者「なるほど……」


魔法使い「でも、薬莢の形や薬莢と弾頭の比率、および火薬量を一度でも分かれば、後は簡単かと……」

勇者「それは本当か?」

魔法使い「……いえ。火薬を消費しますし、量産は難しいです」

勇者「火薬か」


魔法使い「ですので、当分は今まで通りの銃弾を使います。いざという時に、薬莢付きを放つことができれば」

勇者「確かにそれは心強い」


魔法使い「鉱山町で火薬は大量に買い込みました。今は、薬莢作りに精進します」

勇者「ああ、がんばれ」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「魔法使いは凄いな。もう夜中だと言うのに、まだ頑張っているのか」

勇者「ああ」

エルフの騎士「そうか。じゃあそっとしておいた方がいいな」

勇者「そうかもしれない」


エルフの騎士「それにしても、最近は魔法使いが私とよく会話してくれるようになった」

勇者「言われてみるとそんな気がするな」

エルフの騎士「そうなのだ我が君! やっと、やっと我が君と同じように会話してくれるように……」

勇者「た、大変だったんだな」

エルフの騎士「それはもう……」


勇者「さてと、明日は霧の街に到着する。魔法使いにも言っておくが、エルフの騎士も早く眠るんだぞ」

エルフの騎士「そうだな。お休み、我が君」



ズドンパァンッ!



勇者「寝ろよな、魔法使い……」


―― 霧の街 ――


勇者「ここが件の霧の街か」

エルフの騎士「なんだか、うっすら霧が漂っている」

魔法使い「だから霧の街なのかな」


勇者「名は体を表すってあれか」

魔法使い「たぶん」

エルフの騎士「とにかく、真っ先に宿を探そう。別行動をすると、厄介だ」


勇者「確かにな。鉱山町では魔法使いが宿泊している宿屋を見つけるのが大変だったし」

魔法使い「ご、ごめんなさい」

勇者「気にするなって」


エルフの騎士「……ただ、曇りのせいもあってか昼間だというのに薄暗いな」

勇者「そうだな」


エルフの騎士「それに、ここの人間はどうも活気がないように思える」

勇者「やっぱり戦争の影響じゃないかな」

魔法使い「……あと、神隠し」


エルフの騎士「人間と魔物の戦争とは、そこまで過激だったのか」

勇者「いつぐらいからか、魔王軍が積極的に進撃を始めたからな」

エルフの騎士「そうなのか」


勇者「だから、本当はもっと早く魔王城へ行かないといけないんだけどな」

エルフの騎士「じゃあどうして我が君はまだ人間の領土を歩き回るんだ?」

勇者「単純だよ。魔王討伐をするには、まだまだ強くならないと。それに、仲間も集めないと」


エルフの騎士「ふむ。だが、そんなに強い人間とはごろごろいるのか?」

勇者「いないよ。だからずっと旅を続けているんだ」


エルフの騎士「旅に出て初めて仲間にしたのは魔法使いということか?」

勇者「そうなるかな。旅を出て3年、あの銃を使える人だけを探していたからな」


エルフの騎士「なるほど! 魔法使い、君が銃を使えてよかったな!」

魔法使い「うん」


勇者「今思い出すと、本当に長かった……」

魔法使い「3年も掛かったんですか」

勇者「そうだよ」


エルフの騎士「我が君、途中で妥協しようとは思わなかったのか?」

勇者「思わなかったな」


エルフの騎士「しかし、本当に我が君はその銃に執着しているのだな」

勇者「まぁ、色々あったからな」

魔法使い「なんですか」

勇者「故郷でのことだから、あまり語りたくないんだけどなぁ」


魔法使い「ごめんなさい」

勇者「いいよ」

エルフの騎士「……本当に許せん、魔物ども」


エルフの騎士「なるほど! 魔法使い、君が銃を使えてよかったな!」

魔法使い「うん」


勇者「今思い出すと、本当に長かった……」

魔法使い「3年も掛かったんですか」

勇者「そうだよ」


エルフの騎士「我が君、途中で妥協しようとは思わなかったのか?」

勇者「思わなかったな」


エルフの騎士「しかし、本当に我が君はその銃に執着しているのだな」

勇者「まぁ、色々あったからな」

魔法使い「なんですか」

勇者「故郷でのことだから、あまり語りたくないんだけどなぁ」


魔法使い「ごめんなさい」

勇者「いいよ」

エルフの騎士「……本当に許せん、魔物ども」


勇者「それでもずっと昔のことだよ」

エルフの騎士「だが故郷を滅ぼされた気持ちはわかる……」


勇者「……」

魔法使い「勇者さま?」

勇者「いや、なんでもないよ」


エルフの騎士「それにしても、宿屋はどこにあるのだろうか」

勇者「んー。そこの露店にでも聞いてみるか」

エルフの騎士「そうするか」


勇者「すまない、ちょっといいか?」

露店「はいはい。なんでごぜぇしょう? 何をお求めで?」

勇者「すまない、客じゃないんだ」

露店「……そうか」


勇者「聞きたいことがあるんだが」

露店「なんだよ。手短に頼むぜ」


勇者「宿屋を探しているんだが、わからないか?」

露店「ああ。それならこの道を真っ直ぐ行って、突き当たりを右だよ」

勇者「感謝する」


露店「……あのよ、なんでもいいから一つ買っていてくれねェか」

勇者「ん?」


露店「あっしはよ、見ての通り宝石や装飾品を売っているんだがよぉ」

露店「この戦争でめっきり売り上げが下がっちまって。このままじゃおかあに怒られちまう」


勇者「おおう……」

エルフの騎士「おかあとは、母親か?」


露店「いや、家内だ。これがまたおっかなくてよぉ」


露店「頼む! なんでもいい、一つでもいいから買ってくれ!」

勇者「……仕方ないな。何を買って欲しいんだ?」


露店「へ? いいのか旦那!? 何でも売っちまうぞ!?」

勇者「こんな世の中じゃ仕方ないだろ? いいよ、情報料として買い取らせてもらうよ」

露店「だ、旦那たちは救世主だぁ……」


勇者「で、何を買って欲しい?」

露店「このよ、銀のネックレスを買ってくれねぇか? あっしの商品じゃ一番モンだ」

勇者「ああ。値段は?」


露店「本来ならこれくれぇ貰うんだが。所詮は売れ残りっつってもあながち間違いじゃねぇ」

露店「だからこれくらいでいいよ」


勇者「じゃあ買い取らせてもらおうかな」

露店「あぜーした!」


――
――
――

エルフの騎士「ふむ。あの露店、嫌な人間かと思ったがそうでもなかったな」

勇者「そういうの、止めたほうがいいと思うぞ?」


エルフの騎士「おっと、そうだな。人間が珍しいからと言っても、これは確かに失礼だった」

エルフの騎士「不躾を許して欲しい、我が君」


勇者「別にいいよ。これから気をつけてくれ」

エルフの騎士「心に刻んだ」


勇者「さてと、この銀のネックレスだけど。魔法使い、あげるよ」

魔法使い「え? どうして、私?」


エルフの騎士「そうだな。それは魔法使いに似合いそうだ」

魔法使い「……いいの?」


勇者「ほら」

魔法使い「……ありがとうございます」


勇者「ん、付けないのか?」

魔法使い「今は、水の街で買って頂いたクリスタルのネックレスがあるので」


勇者「そういえばそうだった……」

魔法使い「だからこれ、エルフの騎士が」


エルフの騎士「おいおい。簡便してくれ。殿方から頂いたものを他の女に渡さないでくれよ」

魔法使い「そ、そんなんじゃっ!」

エルフの騎士「ははは! ほら、いつか着飾るときにでも付ければいいじゃないか」

魔法使い「……う、うん」


勇者「なんだ、要らないなら」

魔法使い「要らなくありません」

勇者「そ、そうか?」

魔法使い「……うん」


エルフの騎士「いいな、こういうの」

魔法使い「もう……」

勇者「……?」


―― 宿屋 ――


勇者「ここの宿屋は、食事処といっしょになっているんだな」

エルフの騎士「こういう所でも情報収集はできるのか?」


勇者「そうだよ。機能としては、酒飲と大差ないと思うからな」

エルフの騎士「そうか」


勇者「先ずは宿の手配をしよう」

エルフの騎士「ああ」

魔法使い「うん」


勇者「宿を頼みたい。二部屋だ」

主人「二部屋ですか? いいですよ」

勇者「一人部屋を一つ、二人部屋を一つできるか?」

主人「はい、承りました」


―― 勇者の部屋 ――


勇者「で、どうしてこっちに集まる?」

エルフの騎士「だって、退屈じゃないか」

魔法使い「わ、私は別に……」


勇者「今から情報収集に行くからな」

エルフの騎士「私はここで待機しておこう」

魔法使い「どうして?」

エルフの騎士「鉱山町では、私がいるせいで絡まれてしまったからな」


勇者「あれはあの町だけだと思うんだけど」

エルフの騎士「いや。同じ過ちを繰り返したくはないんだ」

魔法使い「何があったの?」


エルフの騎士「火山の坑道で、ゴロツキが現れただろ? 覚えているか?」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「あいつらは、私が酒場で絡んできた人間だったんだ。それを叩きのめしたら、坑道にまでついてきたんだ」

魔法使い「そうだったんだ……」


エルフの騎士「私は自分が人間の男を引き寄せることを自覚しなければならない」

勇者「確かに。御祭りの国の王子すら堕としたからな」

エルフの騎士「そ、それは言わないでくれ我が君。思い出したくない……」


魔法使い「……」

エルフの騎士「どうした?」

魔法使い「な、なんでも……」


勇者「じゃあ俺は行ってくるからな」

エルフの騎士「頼んだ、我が君よ」

魔法使い「行ってらっしゃい」



―― 食事処 ――


勇者「カウンター席で頼む」

主人「ああ、先ほどの。宜しいですよ、こちらへ」


勇者「聞きたいことがあるだけど、いいかな」

主人「はいはーい。いいですよ? 今、ちょうどお客さんも少ないですし」


勇者「ありがとう。……この街で、神隠しが起きていると聞いたんだが」

主人「そうなんですよぉ。でもどうして知ってるんですか?」

勇者「火山がある鉱山町の酒場で聞いたんだ」


主人「あの町のマスターですか。私もたまに寄り合いで会ったりしますね。お元気でしたか?」

勇者「元気だったよ。ところで、話しを」


主人「そうでしたね! すみません。えーっと、神隠しでしたね」

勇者「ああ……」


主人「神隠し自体は、ここ数ヶ月前から置き始めました」

勇者「数ヶ月前から?」

主人「はい」

勇者「被害者について何か情報は?」


主人「まあ一応は。でも、どうしてそこまで知りたがるのですか?」

勇者「鉱山町のマスターからの依頼なんだ。霧の街の神隠し事件を解決してくれと」

主人「あの堅物さんが他人に依頼を……。はぁ、信じられません」


勇者「そんな人だったのかあのマスター」

主人「ふふ、秘密にしておいて下さいね」

勇者「あ、ああ」


主人「では、被害者についてお話ししましょう」

勇者「頼むよ」


主人「神隠しに会うのは、いつも女の子です」

勇者「女の子?」

主人「とは言いますが、ほぼ成人の一歩手前の娘たちばかりですが」


勇者「成人の一歩手前?」

主人「子供じゃない、でも大人にもなりきれない。そんな難しい年頃の女の子ばかりです」

勇者「なるほど。それで、その女の子たちには何か共通点とかはあるのか?」


主人「そういうのは無いですねー。あ、でも夜がやっぱり神隠しに会いやすいと聞きました」

勇者「そうなのか?」


主人「はい。あとは……その、私の知っている範囲の話しになりますが」

勇者「聞かせて欲しい」

主人「わかりました。神隠しにあった少女たちの性格や人間性についてなのですが……」


主人「確か、一人は男気溢れた娘だと聞いています」

主人「他には……両親に大事に育てられた箱入りの娘。あと、すごく地味でいつも暗い様子の娘」

主人「んーと、そうそう。男嫌いで有名な娘も神隠しに会いました」


勇者「そんなにも」

主人「これはあくまでも一部ですよ?」

勇者「一部? それだけの人数が神隠しに会っているのにか?」


主人「ええ」

勇者「そうなのか……」

主人「ですのでこの街の女の子は、人通りの少ない場所や夜道は絶対に出歩きません」

勇者「普通はそうなるよな」


主人「私の知る限りでは、これくらいでしょうか」

勇者「ありがとう」


主人「でも、旅人さんもそんなに気を張り詰めないでくださいね」

勇者「でも、これだけ被害が大きいと」

主人「それは大丈夫ですよ!」

勇者「どうして?」


主人「ちょうど、数週間前にこの街の北の外れにある館があるのですが」

主人「そこに、それは素晴らしい紳士がお住みになられたのですよ」

主人「その方はこの事件を解決してくれると約束して下さりました」


勇者「へぇ、そうなのか」

主人「ええ。真っ赤な見た目から、紅の館と呼ばれる立派な建物ですよ。見たら一目でわかります」

勇者「紅の館、か。覚えておくよ」

主人「子供たちはお化け屋敷だなんて揶揄しますが」


勇者「どうしてそんな風に呼ばれてるんだろうな」

主人「少し古ぼけているからだと思いますよ?」


勇者「なるほど。機会があれば見に行ってみようかな」

主人「それは良いと思いますよ!」


勇者「さてと。情報をありがとう、助かったよ」

主人「いえいえ」

勇者「ご主人も、綺麗な女性なんだから夜は出歩かないようにな」

主人「まぁ。口説いていらっしゃるのですか?」


勇者「そ、そんなんじゃないよ!」

主人「ふふ、わかっていますよ。ええ、夜中は私もひっそりと息を潜めて眠っていますよ」

勇者「そ、そうか。うん、そっちの方がいいだろうな」


主人「心配してくださってありがとうございます」

勇者「いやいや。さてと、じゃあ俺は部屋に戻るよ」

主人「ええ。ごゆるりとお休み下さいませ」


―― 勇者の部屋 ――


エルフの騎士「お帰り我が君」

勇者「まだいたのか……」


エルフの騎士「まあまあ。それで、情報は集まったのだろうか?」

魔法使い「どうでした?」


勇者「ああ、ある程度は」

エルフの騎士「そうか! それで、どういった話しなんだ」


勇者「この街では、数ヶ月前から神隠しが始まったらしいぞ。しかも女性が神隠しに遭いやすいようだ」

勇者「もう少し細かく言うと、成人し切らない年頃の女性らしい」


エルフの騎士「人間だと、ちょうど魔法使いくらいの年齢になるのかな」

勇者「エルフ族だと違うのか?」

エルフの騎士「ああ。こんな見た目の私でも、既に50年以上は生きているからな」


勇者「なっ!?」

魔法使い「うそ」


エルフの騎士「エルフ族は、成人の時期が一番長いんだ」

エルフの騎士「成人さえすれば、あとは本当にゆっくりと老けて行く」

エルフの騎士「そして、寿命に近づくにつれて人間と同じ速度で老けると聞いたぞ」


勇者「エルフ族の寿命っていったい……」

エルフの騎士「だいたい200年だ」


勇者「200年!?」

エルフの騎士「あくまで四捨五入するとだよ我が君。おおよそは180年くらい」

勇者「そうなのか。それでも長寿なんだな、エルフ族は」


エルフの騎士「でも、その生涯のほとんどは森や里で過ごすからな。人間の里のことなど何も知らない」

魔法使い「一度も里を出ないの?」


エルフの騎士「そういうエルフ族が多いのが一般的だよ」

魔法使い「なんだか、考えられない」

エルフの騎士「私たちの常識は、人間のそれとは違うってことさ」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「おっと、話しが大きく反れてしまったな」

勇者「ああ、そうだったな」

エルフの騎士「それで、私は神隠しに会う人間と比べると、どうなのだろうか」


勇者「た、たぶん同じくらいの見た目だと思うぞ。なぁ、魔法使い」

魔法使い「え? は、はい……。私もそう思う」

エルフの騎士「そうか!」


勇者「でも、どうしてそんなことを聞くんだ?」

エルフの騎士「いや、気になっただけだ」


勇者「さて、話しを戻すぞ。神隠しに会うのは、魔法使いやエルフの騎士と同い年くらいの女性だ」

勇者「場所はよく聞けなかったが、時間帯は夜が多いと言っていたな」


エルフの騎士「ふむふむ」

魔法使い「そう」


勇者「さてと、ここからどうするかだ」

エルフの騎士「……」

魔法使い「エルフの騎士?」


エルフの騎士「私に一つ、策があるのだが」

勇者「策があるのか?」


エルフの騎士「きっとこの策は、私にしか出来ないと思う」

勇者「その策は一体どういうものなんだ?」


エルフの騎士「囮作戦だ」

勇者「囮作戦?」


エルフの騎士「ああ。夜道、少女が歩いていると神隠しに会いやすいのだろう」

エルフの騎士「ならば、見た目もそれくらいの私が夜道を出歩くと、犯人が出現するんじゃないだろうか」


勇者「なるほどな……。しかし」

魔法使い「危ないと思う」


エルフの騎士「そこは大丈夫だ。何故なら私は騎士、そこらの人攫いに負けるはずがない!」

勇者「……確かに、そうだが」

魔法使い「でも」


エルフの騎士「我が君。これは時間が経てば経つほど被害が増えるのだぞ」

エルフの騎士「素早く解決にたどり着くには、この方法が最適だと思う」


勇者「一理ある。だがやはり」

エルフの騎士「信じて欲しい。特に、我が君には一番信じて欲しい……」


魔法使い「……信じよう」


勇者「魔法使い?」

魔法使い「仲間なら、信じて欲しいって思う」


エルフの騎士「魔法使いもこう言っているんだぞ、我が君」

魔法使い「私は、エルフの騎士を信じる」


勇者「……わかった」

エルフの騎士「ありがとう我が君!」


勇者「しかし、どうするつもりなんだ?」

エルフの騎士「今日の夜にでも、私は一人でこの街を出歩くつもりだ」


魔法使い「……」

勇者「本当に大丈夫なんだな?」

エルフの騎士「もちろんさ我が君」


魔法使い「……。あ、あの――」


―― 霧の街 夜道 ――


エルフの騎士(人の里を、こんな時間に一人で出歩くとは思わなかった)

エルフの騎士(とにかく、作戦通り歩き回ろう)

エルフの騎士(じっとしていては不審がられるからな)

 

  ~1時間後~



エルフの騎士(……まだだろうか)

エルフの騎士(くっ、人間の男どもなら惹きつける体付きだと思っていたんだが……)



  ~2時間後~



エルフの騎士(ええい!! ものすごく退屈だ!!)

エルフの騎士(我が君も、魔法使いも今はいないし……。さ、寂しくなどないぞ!)



  ~3時間後~



エルフの騎士(…………)

エルフの騎士(…………)


エルフの騎士(それにしても、月が真っ赤だ……)

エルフの騎士「不気味だな」


エルフの騎士「……そういえば、里の子供たちは元気にしているだろうか」


エルフの騎士(あの子たち、泣いていなければいいのだが)

エルフの騎士(魔物に捕まっていたあのときの少女。なんだか昔の自分を思い出すな……)





??「…………」




エルフの騎士「んー、とりあえず次はこっちかな」




??「…………」


エルフの騎士「ふぁ……眠たいな……」



??「…………」



エルフの騎士「そろそろ宿に帰るか。何も無かったし」


??「…………」


エルフの騎士「んと、帰り道はこっちだったかな」

??「…………」

エルフの騎士「……やぁ、探していたぞ下賎」
??「――っ!!」



エルフの騎士「気配を消して徐々に距離を詰めていたつもりだったのだろうが、私にはわかっていたぞ!!」

??「……!?」


エルフの騎士「なんだ貴様。なんて大きさ……人間なのか?」

??「…………」


エルフの騎士「そのローブを取れ!」

??「…………」


エルフの騎士「……なっ!? お、狼……人間? いや、これは……魔物なのか?」

狼男「ガルルルル」


エルフの騎士「何か喋ったらどうだ」

狼男「…………」


エルフの騎士「もしや、言葉を知らないのか」

狼男「……グルルル」


エルフの騎士「なるほど。……して、貴様が神隠しの正体だな?」

狼男「…………」

エルフの騎士「私もさらうつもりか?」

狼男「グルルルっ!!」


エルフの騎士「ふんっ! やってみるがいい!!」

狼男「ワオーーン!!」


エルフの騎士「はぁ!!」

== エルフの騎士は、狼男を切りつけた ==

== しかし、こうげきははじかれた ==


狼男「ガウルル!!」


エルフの騎士「やるな……」

狼男「ガアア!!」

== 狼男はエルフの騎士におそいかかった ==


エルフの騎士「なっ!? ぐっ……、なんて馬鹿力だ……」

狼男「ガウルルル、グルル!!」

エルフの騎士「だがな、こんな程度でこの私が……!!」

狼男「っ!?」


エルフの騎士「はぁああ!!」

狼男「ガアア!!」

== 狼男は、エルフの騎士にかみついた ==


エルフの騎士「つぅっ!? な、しまった肩が……っ」

狼男「ハッハッ!!」


エルフの騎士「なんて顔をしている……」

狼男「…………」

エルフの騎士「ふん。まだまだぁ!!」

狼男「ワオーーーン!!」


――
――
――


エルフの騎士「はぁはぁ……はぁ!!」

狼男「ハッハッハっ!」


エルフの騎士「くっ、ここが潮時か……」

狼男「ガルルル……」

エルフの騎士(逃げるか……っ)

狼男「ワオーーーン!!」


エルフの騎士「くっ……」

== エルフの騎士はにげだした ==


狼男「ガウ!? ワオオオオン!!」

== 狼男はエルフの騎士をおいかけた ==


エルフの騎士「なっ、速い……。流石は狼と言うべきかっ」

狼男「ガウ、グルルル!!」


エルフの騎士(だが、そこの路地を曲がれば!)

狼男「ワオオオオオオオオン!!」


== エルフの騎士は狼男に回り込まれた ==


エルフの騎士「しまった!」

狼男「フーフーフー」


エルフの騎士「ハァハァ……ぐぅ」

狼男「ガアアア!!」

エルフの騎士「くそぉおおお!!」


== 狼男の爪がエルフの騎士を襲う ==
== エルフの騎士は、剣で受け止める ==


狼男「……っ!!」

エルフの騎士「はぁ!!」


エルフの騎士(魔法を使うには、集中力が足りないっ)

エルフの騎士(この肩じゃ、もう限界……)


狼男「ワオオオオオン!!」

エルフの騎士「くっ、ここまでなのか……」


??「はあああ!!!!」

== なぞのかげが、狼男に襲い掛かる ==

狼男「ガウ!?」


エルフの騎士「……お、遅いぞ我が君。終わったかと思った」

勇者「すまない!」

エルフの騎士「でも、手間取ったのは私の責任でもあるか……」

勇者「とにかくエルフの騎士は回復魔法を」

エルフの騎士「そうさせてもらうよ我が君」


勇者「それにしても、なんだこの魔物は……」

エルフの騎士「狼のような、人間のような。そんな魔物だ」

勇者「確かに、見た感じはそうだが」


狼男「グルルル」

勇者「まぁ、些細な問題は置いておくか。こい、次は俺が相手だ!」

狼男「ガウガウグルル!!」




エルフの騎士「回復魔法!」

エルフの騎士「……やはり、剣術はすごいな我が君」


勇者「こいつ、なんて力だ!」

狼男「ガウウウウ!!」


勇者「くそっ!」

== 勇者は一旦退いた ==


エルフの騎士「そこぉ!! しっ!」

== エルフの騎士は弓矢を放った ==
== 弓矢は狼男に当たった ==


狼男「グルルル……!」


勇者「ちっ、全然怯んでいない……」

エルフの騎士「本能のままに戦っている感じがする」

勇者「でも、少しずつ手傷は与えているんだ。勝てない戦いじゃない」

エルフの騎士「ああ!」


狼男「グルルルル、ワオオオオオン!!」


勇者「さぁこい!」

エルフの騎士「私もまだ戦えるぞ!!」


――
――
――


勇者「まだ倒れないのか!!」

エルフの騎士「ハァハァ……こいつ、なんて魔物だ……」


狼男「ガルルル……フーフー……」


勇者「うりゃああ!!」

狼男「ガアアッ!!」

== 狼男はダーメジを受けた ==


狼男「……グルル。ガウ」


エルフの騎士「なんだ、様子が……」

勇者「もしかして、逃げるつもりか!?」


エルフの騎士「ハァハァ、そ、そんなことさせない! しっ!」

== エルフの騎士は弓矢を放った ==
== しかし当たらなかった ==


エルフの騎士「こ、この距離で外すなんて……ハァハァ、くっ」

勇者「でも、あっちも限界だろう」


エルフの騎士「す、すまない……」

勇者「大丈夫だ」


狼男「グルルル……」

== 狼男はにげだした ==


勇者「なに!? 建物を飛んで行くだと!?」

エルフの騎士「あれじゃあもう、私たちでは……」


狼男「ワオオオン!!」


勇者「挑発しているつもりなのか」

エルフの騎士「……ハァハァ」


狼男「グルル、ワオーーーーン!!」

== 狼男は立ち去った ==


勇者「くそ……」

エルフの騎士「……」


パァンッ!!


勇者「この音は……」

エルフの騎士「魔法使いの銃声だ」


勇者「住人が驚くような音だから、あまり銃を使いたくはなかったが」

エルフの騎士「私たちが逃がしてしまったせいだ」

勇者「ああ」



ナンダイマノオト!?
ナニガオキタッ
オンナコドモハカクレテイロ!



勇者「……俺たちは魔法使いのところへ行こう」

エルフの騎士「そうだな」






魔法使い「……ヘッドショットを確認。目標、沈黙。動きが鈍かったから、射抜けた」

魔法使い「でも、まるで真っ赤な建物に逃げ込もうとしていたような……」


――
――
―― 建物の屋根の上 ――



勇者「どうだった魔法使い」

魔法使い「はい。頭を打ち抜きました」

エルフの騎士「死体はどこに」


魔法使い「おそらくは街の外れに」

エルフの騎士「北の方向か」


勇者「でも、あっちには数週間前に住人が住み着いたって言われている館しかないんじゃ」

魔法使い「数週間前、ですか」

勇者「ああ。どうも、この神隠し事件を解決するために来たらしい」

魔法使い「そうなんですか」


エルフの騎士「どうする? おそらく神隠しはこれで終わりだと思うのだが」

勇者「んー。せめてあの館の住人は真相を伝えておくか」

魔法使い「どうして」


勇者「解決した事件を、ずっと追いかけるのは時間の無駄になるだろ」

エルフの騎士「確かにそうだな。その住人も、この事件の解決をいち早く願っていたはずだ」

勇者「事件はその住人が解決した、ってことにすれば静かに街を出ることもできるだろうし」

魔法使い「うん」


勇者「明日になったら早速訪れてみるか」

魔法使い「その前に、死体の確認」

エルフの騎士「ああ、それが重要だ」

勇者「そうだったな。じゃあ行ってみるか、さっきの魔物が倒れた場所に」



――



勇者「こいつか」

エルフの騎士「見れば見るほど、不思議な魔物だ。こんな、狼と人間が一つになったような魔物は始めて見た」

魔法使い「あ、あのこの魔物!」


勇者「な、変化しただと?」

エルフの騎士「しかも人間の男にだと……。これはどういう」

魔法使い「……人間が魔物に」

勇者「…………」


魔法使い「真相はわからない。もしかすると、魔王のせいかもしれない」

エルフの騎士「確かに……。今はまだ、何も調べることはできないか」


勇者「とにかく、埋葬はしてやろう」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「どうしてだ? この人間は、神隠しの主犯だったんじゃ」


勇者「でも、同じ人間だ。それに、こんな街外れに死体が転がっていたら、また問題になる」

エルフの騎士「そうか……。我が君がそう言うのならば、手伝う」

魔法使い「私も」







勇者「さてと、こんな程度でいいか」

エルフの騎士「ああ、大丈夫だろう」


勇者「……宿屋に帰ろう。明日、あの館へ行こう」

魔法使い「うん」

今日はここまで、次は館へ
今回もこの投稿を含めて3回に分けて投稿するかも

なんか戦闘シーンばっか書いてる気がしない訳でもない、ではー

8章書き終わったー!
という訳で、途中まで投稿する


―― 翌日 紅の館の前 ――


勇者「割と大きいな……」

魔法使い「貴族の家みたい」

エルフの騎士「で、どこから入ればいいんだろう」


メイド「あら、あなた方は……」


勇者「こんにちわ」

メイド「この紅の館に何か御用ですか?」

勇者「その、なんというか」


エルフの騎士「神隠しの件だ」

勇者「いきなりだな!」


メイド「神隠しの件、ですか」

メイド「それが何か」


勇者「あー。そのだな、一応解決したっていうか……」

メイド「ふむ。なるほど……」


勇者「それで、ここの住人も神隠しの件で協力していたと聞いたので、報告を」

エルフの騎士「そうなんだ」


メイド「……あい判りました。確かに、ご主人さまも神隠しの件では頭を悩ましておられました」

メイド「神隠しの事件が解決したならば、それは僥倖です。館にご案内致しましょう」


勇者「いいのか?」

メイド「私はこの館のメイドをしております。客人をもてなすのも私の役目ですので」

勇者「そういう事なら、お願いするよ」


エルフの騎士「なんと話しのわかる人間だろう」

魔法使い「……そうだね」


メイド「では、こちらへ」

勇者「ああ」


―― 紅の館 ――


エルフの騎士「おお、外見に反して中は綺麗だ」

勇者「こらエルフの騎士! 失礼だ!」

エルフの騎士「おっと、これはすまない」


メイド「ふふ、構いませんよ。確かに、外見はあまり良いとは言えません」

メイド「地元の子らがお化け屋敷などと呼んでいるのも知っています」


勇者「気を使わせてしまい、申し訳ない」

メイド「大丈夫です。どうかお気になさらず」


エルフの騎士「反省する……」

メイド「あの、ところでどうして騎士さまは顔をお隠しに?」


エルフの騎士「そうだったな。外すよ」

メイド「……まぁ。エルフですか」

エルフの騎士「ああ。私はエルフの騎士だ」


勇者「そういえば自己紹介を忘れていたな。俺は勇者。こっちは魔法使いだ」

魔法使い「ども」


メイド「勇者さま……?」

勇者「そうだ。魔王討伐の旅に出ているんだ」


メイド「なんとなんと。……これは」

勇者「そんな畏まらないで欲しい。あんまりそういうのは慣れていなんだ」

メイド「そうでしたか」


魔法使い「……あれ?」

エルフの騎士「どうかしたのか」


魔法使い「何かいるような気配がする」

エルフの騎士「……いや。何も感じないが」

魔法使い「さっきまではあったような気が……」


エルフの騎士「気のせいじゃないか?」

魔法使い「そうかも」


メイド「まずは、こちらへ」

勇者「ここは?」


メイド「応接間でございます」

勇者「この館の主人はもう会ってくれるのか?

メイド「いえ。ご主人さまは夜にならなければ帰宅されませんので」


勇者「夜にならないと?」

エルフの騎士「どこかに出掛けているのか」


メイド「はい。神隠しの事件を追っていられるかと」

エルフの騎士「なるほど。でも、昨日の夜に解決してしまったからな。無駄足を踏ませてしまったかもしれない」


メイド「申し訳ありませんが、ここでお待ち頂ければ。何でしたら、自由に動き回って頂いても構いません」

メイド「夜にはご主人さまがお戻りになられるので、ここへ帰ってきて頂ければ助かります」


勇者「わかったよ」

メイド「申し訳ありません。ですが、最低限のお持て成しはさせて頂きます」

エルフの騎士「お持て成し?」


メイド「はい。お茶とお菓子をご用意させて頂きますので、少々お待ちください」


勇者「いいのか?」

メイド「はい。神隠しを解決して下さった勇者さま方への感謝の意も込めて」

勇者「そういうことなら……」


メイド「では、失礼致します」




エルフの騎士「ふむ。この館は大きいな」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「さてと、じゃあ行くか」

魔法使い「え?」

勇者「どこに行くんだ?」


エルフの騎士「もちろん、探検だ!」

魔法使い「……えっと」


勇者「あまり動き回らないほうがいいんじゃないかな? 迷惑になると思うぞ」

エルフの騎士「しかし、あのメイドは動き回ってもいいと言っていたぞ」


勇者「ただの社交辞令だと思うんだが」


エルフの騎士「でも、折角の館なんだぞ我が君。……ちょっとくらい良いじゃないか」

勇者「でも」

魔法使い「うん……」


メイド「構いませんよ?」


エルフの騎士「うお!?」

メイド「何ですか、人をお化けみたいに……」


勇者「もうお茶の準備ができたのかな?」

メイド「いえ。何やら揉めているような声が聞こえた気がしたので」


勇者「それはすまなかった……」

メイド「いえいえ。ところで、騎士さま?」


エルフの騎士「な、なんだっ!」

メイド「エルフにとって、こういう建物は珍しいのですか?」


エルフの騎士「恥ずかしながら、そうなんだ」

メイド「ふふ。でしたら、どうぞご自由に歩いて探索して下さい」

勇者「でも、この館の主人に迷惑じゃ」


メイド「大丈夫ですよ。ご主人さまはこの程度で怒ったりは致しません」

メイド「それに、入られたくない部屋にはしっかりと鍵をかけています」


エルフの騎士「そうか!」

メイド「少し経ったらここへお戻りくださいませ。お茶とお菓子の準備が終わっていると思いますので」

エルフの騎士「わかった!」


メイド「では、私は本当にこれで失礼致します」

エルフの騎士「ああ、頼んだ!」


勇者「よかったなエルフの騎士」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「あの人間は良い人間だな!」

魔法使い「そうだね」


エルフの騎士「ならば早速行ってくるぞ我が君!」

勇者「行ってらっしゃい」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「何を言っているんだ? 魔法使いも行くぞ」

魔法使い「え?」


エルフの騎士「じゃあ行ってくる!」

魔法使い「え、え?」


勇者「気を付けてな」

魔法使い「ゆ、勇者さま!?」





エルフの騎士「おお、廊下も広いな!」

魔法使い「どうして私まで……」


エルフの騎士「気にするな気にするな」

魔法使い「うぅ……」


エルフの騎士「綺麗な物がたくさんあるな」

魔法使い「貴族の家なんて、初めて」

エルフの騎士「人間の技術とは凄いのだな。装飾品が本当に綺麗だ」


ガタ


魔法使い「っ!」

エルフの騎士「誰かいるのか!」





魔法使い「誰もいない……」

エルフの騎士「どういうことだ」


魔法使い「まさか、お化け?」

エルフの騎士「そそそ、そんなはずないだろ!!」


魔法使い「エルフの騎士?」


エルフの騎士「な、なんだ魔法使い」

魔法使い「もしかして、お化け怖い?」


エルフの騎士「そ、そんなことはないぞ!」

魔法使い「本当に?」

エルフの騎士「当たり前だ! 私は騎士なのだぞ! さぁ、次へ行こうっ」


――
――


エルフの騎士「ここは、どういう部屋だろう」

魔法使い「あまり入らないほうが」

エルフの騎士「入って欲しくない部屋には鍵が掛かっているのだろう?」

魔法使い「そういう問題じゃ……」


エルフの騎士「確かに、あまり褒められた行動じゃないな」

魔法使い「そう」


エルフの騎士「さてと、そろそろ戻るか」

魔法使い「うん」





???「…………」



――
――
―― 応接間 ――


エルフの騎士「ただいま戻ったぞ!」

魔法使い「戻りました」



勇者「お帰り。どうだった?」

メイド「お茶の準備は出来ておりますよ」


エルフの騎士「おお、これは上手そうだ。おっとその前に。ありがとうメイド。楽しかった」

メイド「楽しんで頂けたならば、ご主人さまもお喜びになられていると思います」


魔法使い「……」

勇者「魔法使いもお疲れ様」

魔法使い「うん」


エルフの騎士「さて、頂こうかな」

勇者「メイドのお茶、すごく美味しいぞ」

メイド「お褒め頂いて光栄です」


エルフの騎士「確かに、これは」

魔法使い「美味しい……」


勇者「それに、このお菓子も美味しい」

メイド「それは私の自信作なのです」


エルフの騎士「サクサクで美味しいな!」

魔法使い「うん」


勇者「このお茶は何の葉を使っているんだ?」

メイド「それはですね――」


魔法使い「……あれ」

エルフの騎士「なんだ?」

魔法使い「そこに、人影が」

エルフの騎士「ひっ!」


勇者「そうなのか……ん?」

メイド「どうかされましたか、騎士さま」


エルフの騎士「なな、なんでもないぞ!」

魔法使い「……」


勇者「あまり大きく騒ぐなよー」

エルフの騎士「は、ははは、すまない」


メイド「それで勇者さま、話しを戻すのですが」

勇者「お茶の葉の話しだったな」


エルフの騎士「お、脅かすなよ魔法使い」

魔法使い「ううん。本当」

エルフの騎士「ど、どこにそんな影がっ」

魔法使い「そこのドアの……あれ?」


エルフの騎士「いないじゃないか」

魔法使い「うーん……」


エルフの騎士「まったくもう……」

魔法使い「ごめん」

エルフの騎士「ま、まぁ怖くなどなかったがな!」


勇者「うるさいぞエルフの騎士」

エルフの騎士「……すまない」


魔法使い「不憫」

エルフの騎士「言うな……」


――
――

―― 夜 応接間 ――



メイド「さて、そろそろご主人さまが戻って来られます」

勇者「そうか」


メイド「はい。こちらへ連れて参ります」

勇者「お願いする」




メイド「こちらが我が紅の館、主人であられる紳士さまで御座います」

紳士「ご紹介に預かった者だ。私はこの館の主人だ」


勇者「始めまして。俺は勇者と言います」

紳士「ははは。そんな堅苦しいのは止めたまえ」


紳士「もちろん、そちらのお嬢さん方も気楽にしてくれたまえ。おお、エルフとは珍しい」

エルフの騎士「感謝する」

魔法使い「……」


紳士「すっかり遅くなって申し訳ない」

勇者「突然訪問したこちらに非があります」


紳士「そう言って貰えると助かるよ」

勇者「いえ」

エルフの騎士「なんとも礼儀の正しい人間だろうか……」

魔法使い「そうだね」


紳士「ところで、勇者一行がこの館にどのような御用件なのかね」

勇者「実は神隠しの件について」

紳士「……なるほど」


勇者「はい。神隠しは解決しました」

紳士「それは本当かね?」

勇者「事実です。此度は、神隠しの件についての報告で訪問させて頂いた次第です」


紳士「ふむ。ならば教えてくれないか、神隠しについて」

紳士「君も知っての通り、私は神隠しの事件を解決するためにこの街に来たのだから」


勇者「はい。神隠しは……」

紳士「神隠しは?」


勇者「なんと言うか……。人間というか、魔物というか……」

紳士「何やら複雑な話しなのかね?」


勇者「それが、人間が狼のような魔物に変化していて」

紳士「…………」

勇者「紳士?」

紳士「いえ、続けてくれたまえ」


勇者「はい。その魔物がおそらく、神隠しを引き起こしていたと思います」

紳士「そうか。それで、解決したというのは?」

勇者「その魔物を倒しました」


紳士「倒したというのは、殺したということか」

勇者「その通りです」


紳士「ふむ。その死体はどこへ?」

勇者「埋めました。ちょうどここから東にある林の中に」

紳士「ふむ、あそこか」


勇者「はい。人の死体が公に見つかると、また問題になるかと思いまして」

紳士「それは賢明な判断だったと思われる。ただでさえ恐怖に怯える人々を怖がらせる必要はないからね」


勇者「はい」

紳士「はは、まさか後から来た人間に解決されてしまうとはな」

勇者「そんなつもりじゃ」

紳士「わかっているよ。流石は勇者と言うべきかと思ってだね」


勇者「ところで、相談なのですが」

紳士「何かね?」


勇者「今回の事件、解決したのは紳士ということにしておいてくれませんか」

紳士「ほほう。それは何故かね?」

勇者「そうして頂けたほうが、俺たちも難なく旅を勧めることができるので」

紳士「なるほど。めんどうくさいことは嫌という訳だね」


勇者「言うなれば、はい」

紳士「正直者で宜しいな。わかった、今回の事件は私が解決したということにしておこう」


勇者「助かります」

紳士「いや、せめて君らの頼みごとくらいは聞いておきたい」


エルフの騎士「本当に良い人間だ!」

魔法使い「ありがとう」


紳士「ははは、お嬢さん方に褒められると嬉しいものだ」

エルフの騎士「ふふん」

魔法使い「えっと……」


勇者「さて、では俺たちはこれで」

エルフの騎士「そうだな」


紳士「おっと待ちたまえ」

勇者「どうしましたか?」


紳士「今夜は我が家に泊まっていくといい」

勇者「いえ、ですが」

紳士「この街の住人を代表してお礼くらいはさせてくれないかな」


魔法使い「どうするのですか?」

エルフの騎士「ここはご厚意に預かったほうがいいのではないだろうか」


勇者「二人がそう言うなら……。わかりました、お願いします」

紳士「ははは! 良かった!」

勇者「こちらこそありがとうございます」


紳士「メイド」

メイド「はい、こちらに」

紳士「今夜は客人を招いた食事会だ。腕によりをかけたまえ」

メイド「もちろんで御座いますご主人さま。この館の面子にかけて」


勇者「そこまでしてくれなくても」

メイド「いえ! ここはメイドたるもの、負けられません!」

勇者「そ、そうか……」


エルフの騎士「メイドは何と戦っているんだろう」

魔法使い「わからない」


メイド「では、食卓の間へ」


―― 食卓の間 ――


勇者「お、おいしかった……」

魔法使い「うん」

エルフの騎士「流石は貴族だな」


紳士「ははは! それはよかった」

メイド「お粗末様です」


勇者「しかし、どうして紳士は何も食べないのですか?」

紳士「実は帰宅前に軽くすませてしまっていてね。それに、この歳の食べすぎは宜しくないのだよ」


勇者「そうなのですか」

紳士「だから気にしないでくれたまえ」


メイド「ご主人さまがこう仰られているので、大丈夫ですよ」

エルフの騎士「らしいぞ我が君」

勇者「それなら、はい」


紳士「さて、メイド」

メイド「ここに」


紳士「彼らの部屋の準備は終わっているのか?」

メイド「もちろんで御座います」


勇者「部屋の準備までさせてすまない」

メイド「いえ、これもメイドたるもの常識です!」

勇者「そ、そうか」


エルフの騎士「何の常識だ?」

魔法使い「わからない」


紳士「部屋はどうしている?」

メイド「もちろん、一人一部屋で御座います」

紳士「よし、よくやったメイド」

メイド「お褒め頂き光栄です」


勇者「そこまでしてくれるなんて」

エルフの騎士「何だか申し訳ないくらいだな」

魔法使い「うん」


メイド「大丈夫です。メイドですので」

エルフの騎士「それって理由になるのか?」


勇者(エルフの騎士が言うな)

魔法使い(エルフの騎士が言わないで欲しい)


紳士「では案内しておいてくれ」

メイド「かしこまりました」




メイド「勇者さまはこちら。騎士さまと魔法使いさまはそれぞれこちらの部屋になります」

勇者「ありがとう」

エルフの騎士「助かる」

魔法使い「……うん」


メイド「何かありましたら、遠慮なくおよび下さいませ。私は一階のメイド控え室にいますので」

勇者「至れり尽くせりだな」

エルフの騎士「感謝仕切れない」


メイド「ふふ、そう言って頂けるのがメイドの誉れです。ご奉仕の心、ここに極まり!」


勇者「は、はは」

メイド「おっと、私としたことが」


エルフの騎士「おもしろい人間だな」

メイド「ありがとうございます、ふふ」

魔法使い(あれって褒めてるのかな)


メイド「では、私はこれで」


エルフの騎士「ああ」

魔法使い「あ、ありがと……」

勇者「何かあったら遠慮なく訪ねさせてもらうよ」




勇者「さて、じゃあ」

エルフの騎士「今から次の予定を立てるか」


勇者「……なに?」

魔法使い「え?」

エルフの騎士「なんと」


エルフの騎士「この事件が解決して、それからどうするんだ?」

勇者「そう言われると……」

エルフの騎士「予定が決まらないまま旅を続けるのは難しいと思うのだが」

魔法使い「……」


勇者「わかったよ。じゃあ俺の部屋でいいか?」

エルフの騎士「ああ!」


―― 勇者の部屋 ――


勇者「広いな」

エルフの騎士「おお、ベッドも大きい!」


勇者「きっとどの部屋も同じだろ」

魔法使い「たぶん」


エルフの騎士「さて、じゃあ会議を始めよう!」

勇者「か、会議なんて大袈裟だな」

エルフの騎士「こういうのは気分も大事さ」


勇者「さて、明日にはこの街も出て行くんだが」

魔法使い「次はどこへ行きますか?」


エルフの騎士「当てはあるのか、我が君?」

勇者「特に無いな。というか、今までも当てなく旅をしていたから」

エルフの騎士「そうなのか?」


勇者「ああ。ずっとそうやって旅を続けてきたからな」

魔法使い「そうでしたね」


エルフの騎士「今までどうやって旅の道筋を選んできたんだ我が君」

勇者「殆どが流されるままだったま」

魔法使い「言われてみれば」


エルフの騎士「どういう感じだったんだ?」

勇者「ある人に学院に行ってみるといいって言われたから、魔法使いがいた学院に行った」

エルフの騎士「なんと」


魔法使い「それから、旅の途中で人助けしましたね」

勇者「魔女さんだな。それで、次の錆びた町までいっしょに行ったんだよな」

エルフの騎士「ふむふむ」


勇者「その町で悪者退治したんだよな」

魔法使い「そうです。そのとき、ある商人さんに護衛を頼まれてそのまま水の街へ」


勇者「あのときは魔王討伐なら、って言われただけだったな」

魔法使い「目的があったのでは」

勇者「なかったぞ? 魔王城を目指すなら次はそこへ行くのだろう、って事だったし」 

魔法使い「…………」


エルフの騎士「じゃあどうしてあのときエルフの樹海に……。って、火の神殿を目指していたのだったな」

勇者「そうだよ。迂回すると遠回りになるから、横切ろうとしたんだ」

エルフの騎士「そして捕まり、私と出会ったのだな我が君」

魔法使い「懐かしい……」


勇者「それで、水の街の神官さまの言うとおりに御祭りの国へ行き、そのまま鉱山町、火の神殿、ここって流れだ」

魔法使い「本当に流されるまま」


エルフの騎士「そ、そろそろちゃんとした旅の目的を考えるべきでは?」


勇者「確かにな。そうだな……。一度鉱山町に戻って、マスターに情報を求めてみるか」

エルフの騎士「それはいい考えだと思う! 強い人間の情報を知っているかもしれないからな!」

魔法使い「うん」


勇者「それで、何か情報があればそこへ行く。どうだろう」

エルフの騎士「私はそれで構わない」

魔法使い「私も」


勇者「じゃあ次の目的地は再び鉱山町だな」

エルフの騎士「ああ! 幸い、鉱山町は近くにあるからすぐに戻れる」


勇者「じゃあそろそろ休もうか」

エルフの騎士「ああ。次の目的地も決まったことだしな」





勇者「ゆっくり休むんだぞ。おやすみ」

魔法使い「おやすみなさい」

エルフの騎士「いい夢を」


―― 魔法使いの部屋 ――


魔法使い「一人部屋なんてどれくらい振りだろう……」

魔法使い「……学院の寮に居たとき以来かな」


魔法使い「あ、そうだ」


魔法使い「……綺麗なネックレス」


魔法使い(こんなに素晴らしいネックレスをプレゼントして貰えるなんて……)

魔法使い「付けてみようかな」




魔法使い「に、似合ってるかな?」

魔法使い「……えへへ」



ドンドン


魔法使い「え?」



エルフの騎士「わ、私だ! 入らせてもらうぞ!」

魔法使い「え、ちょっと待って!」