男「…へ?」 魔娘「だから…」(1000)

最初にお断りしておきます

長くなりそうです…

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シスター ペラッ

リー リー…

シスター「…おや?もうこんな時間ですか…」

リー リー…

シスター「つい読書に熱中してしまいました」

シスター「人間の書物もなかなかに面白いですね」

シスター「…続きは明日にして、もう寝ましょう」

キィ パタン

リー リッ シーン…

シスター「…おや?」

…ガサッ ガサッ

シスター(こんな夜中に…誰か来たのですかね…)

シスター(旅人でしょうか…でもこの足音は森のほうから聞こえてますね…)

ガサッ ガサッ

シスター(とりあえず様子を伺いましょう…)ソー…

ガサッ ガサッ…ドサッ!

?『ほぎゃあ…ほぎゃあ…』

シスター「赤子の声!?」

バタン! タタタタ…

シスター(これは!?女性と…赤子ではないですか!!)ヒョイ

赤子「ほぎゃあ…ほぎゃあ…」

シスター(赤子は元気なようです…女性のほうは…っ!?)

シスター(酷い怪我…それに出血量も多い…これは…)

??「はあ…はあ…ぼ…坊やを…」

シスター「お静かに。あなた達を家の中に連れて行きます」ヒョイ

??「はあ…はあ…」
  ・
  ・
  ・

~家の中~

シスター(母親のほうはおそらく助からない…人間で言うとまだ二十歳前後の若さなのに…)

??「はあ…はあ…」

シスター「…出来るだけの手当てはしました」

??「はあ…はあ…」

シスター「赤子は隣のベッドで寝ています。あまりキレイではないので申し訳ないのですが」

??「はあ…はあ…」

シスター「…あなたはエルフですね?しかも…この真っ白な髪と肌に赤い目は…ダークエルフ」

ダークエルフ「はあ…んっ…はあ…」

シスター(膨大な魔力をもちながらも太陽の日に当たると衰弱するため行動するのは夜のみ。日中外に出るときは常に黒いマントを纏わなければならない…)

シスター(そのため“ダークエルフ”と呼ばれてエルフ族の中で忌み嫌われる存在…初めて見ました)

シスター「会話も辛そうですね…念を使います」

ダークエルフ コクン

シスター「では…」

~~~~~念話~~~~~

ダークエルフ:

私はエルフの町はずれに住んでいたダークエルフです。

この子は私の子供で、父親は人間です。

5年前、人間達がエルフの町に立ち寄られたときに契りを交わしました。

そのときに出来たのがこの子です。

この子の父親は必ず戻ってくるとおっしゃりましたが、結局戻っては来ませんでした。

風の噂では旅の途中で軍隊に殺されたと…

私は一人でもこの子を育てる決心をしましたが村人達は猛反対しました。

元々私がエルフ族の中でも異端のダークエルフだったことも理由の一つですが、エルフと他の生き物との混血はほぼ間違いなく異常能力児が生まれるのです。

この子の場合は転移と念動でした。

村人達は私達親子を亡き者にしようと機会を伺っていたのでしょう。

私の両親が交易に出かけ、家には私たち二人しかいないときに襲い掛かってしました。

私はこの子を守るため必死で逃げました。

でも、産後の身体で…しかも生後3か月のこの子を抱いて逃げるのは限界がありました。

魔法で解毒や回復をしながら逃げていたのですが魔力も尽きたところに追手が迫ってきて…

そのとき目の前が真っ白になって…おそらくこの子の力なのでしょう…見たことの無い森の中にいたのです。

あたりの様子を伺っていると竜の臭いがしたので…それを頼りにここまで来たのです。

シスター:

分かりました。

今は静かにおやすみなさい。

そして早く身体を直して…


ダークエルフ:

いいえ。自分の体のことは自分が一番分かっています。

…御迷惑は承知でお願いします。

どうか…どうかこの子を…育てていただけないでしょうか


シスター:

…分かりました。

ダークエルフ:

ああ…この子の成長が見れないのは心残りですが…最後にあなたに出会えたことを感謝します…

…この子を私の隣に寝かせてくれませんか?


シスター「…」ヒョイ

赤子「う?」

ソッ…


シスター:

…これでいいですか?


ダークエルフ:

ええ。ありがとうございます。

最後に坊やにおっぱいを飲ませてあげたくて…

~~~~~~~~~~

シスター「…」

赤子 チュパチュパ

ダークエルフ ナデ…ナデ… ポロッ

赤子 チュウチュウ

ダークエルフ ナデ…ナデ… ポロポロ…

…フッ パタ…

シスター「…」

赤子 チュパチュパ

シスター「…庭の陽のあたる場所にお墓を作りましょう」

あんたか。
投稿中わるいが、今回も楽しみだ

~シスターのベッド~

シスター「よしよし…」

赤子「だぁーあー」

シスター(エルフの寿命は竜と同じぐらい…つまり人間の10倍程度あります。妊娠期間は約4年半…)

シスター(この子の母親の言うことを信じると、あの時期に妖精の国にまで行くような人間は勇者様一行しか…)

シスター(となると…この子の父親は先代勇者様一行のうちの勇者様か盗賊様ですか…)

>>12 初ファンタジーなので満足していただけるかどうか…

赤子「うーあー」パタパタ

シスター「おなかがすいたのですか?いまミルクを…」

赤子「うー」ペシペシ

シスター「…私のおっぱいは見掛けは立派ですが母乳は出ませんよ?」

赤子「うー!」

シスター「仕方がないですねぇ…ちょっとだけですよ?」

赤子「だー」

ポロリ

赤子 チュパチュパ

シスター「…出ないでしょう?」

赤子 チュパチュパ

シスター「ミルクを準備しますから、そろそろ離して下さい」

赤子 チュウチュウ

シスター「…まさか…出てるんですか?」

赤子 チュパッ

シスター「あ…白い液体が…」

ジワァ…

シスター「…これが母乳ですか…」

~家の中~

赤子 スヤスヤ

ペラッ ペラッ

シスター「…母乳の出が悪いときはおっぱいをマッサージするといいと聞きましたが…」

ヌギヌギ

シスター「こうですか…」モミモミ

シスター「乳首の回りも…」クリクリ

ジワァ

シスター「あ」

ゴソゴソ

シスター「…パンツ変えなきゃ//」

~庭~

パンパン

シスター「これで洗濯も終わりですね」

シュイン

赤子「うー」

シスター「…また転移してきたんですか?仕方がないですね…」

ヒョイ

シスター「よしよし」

赤子「あきゃきゃ」

シスター「ふふふ」

「その子が例の子ですね?」

シスター「あ!賢者様!!お帰りなさいませ!!」

賢者「ただいま帰りました」

赤子「うきゃあ」

賢者「かわいいですね」

シスター「ええ」

賢者「…」

シスター「…なにか?」

賢者「いえ、そうやってあやしているところを見ると…本当の母親のようですね」

シスター「そう見えますでしょうか」

賢者「それにその洗濯されたオムツ…おや?」

シスター「どうなさいました?」

賢者「貴女の下着もたくさん干されていますが…あれは?」

シスター「あ、あれは…母乳の出が悪いので母乳マッサージをしていたらパンツが濡れて…」

賢者「…え?」

シスター「どうして母乳ではなく粘液が出るのでしょうか…」

賢者「…その前にどの本を見てマッサージをしているんですか?」

シスター「家の中にありますが」

~家の中~

シスター「これです」パサッ

賢者「こ、これですか!?」

シスター「はい」

賢者「…まず最初に言っておきます。これは確かに乳房を揉みますが、これでは母乳は出ません」

シスター「え?」

賢者「これは性感マッサージの本です」

シスター「あ…//」

賢者「…はぁ。母乳マッサージの本はこちらです」パサッ

シスター「私はまたなんて恥ずかしい間違いを!//」

賢者「まったく…貴女の慌て者ぶりは竜だったときから変わっていないようですね」

シスター「あぅ…//」

賢者「それにしても…なぜこんな本がここに?」

シスター「それはその…以前道に迷っておられた旅人を泊めたことがあるのですが…」

シスター「その人が置いていかれたものの中にそれが…」

賢者「…まあいいです。それより今度からはそっちの本を見てマッサージなさい」

シスター「えっと…読んでもよく分かりません…」

賢者「しょうがないですね…後で私が手本を見せますから、そんなに落ち込まないでください」

シスター「はい…」
  ・
  ・
  ・

賢者「なるほど…手紙では相談できないことと言うのはそのことなのですね」

シスター「はい。母親は転移と念動と言っていましたが…」

シスター「今はまだ私のいるところに転移してきたり、ミルクのビンを動かしたり、私が部屋を出ようとすると軽く引き止められるぐらいなのですが…」

賢者「そうですか。しかし…不思議な能力ですね。いくらダークエルフの子供とはいえ…」

シスター「どういうことでしょうか?」

賢者「エルフは元々幻聴や幻覚、催眠術などの特技を持っています」

賢者「念動は催眠術の応用と考えると説明が付かないことは無いのですが…」

賢者「転移については魔力の消費が激しいのです。それなのにこの子は疲れた様子もない…」

赤竜「この子の母親は転移はできなかったようです」

賢者「であれば、転移については父親の能力を受け継いでいるのではないかと思うのです」

シスター「父親ですか…」

賢者「貴女は父親のことについて、何か聞いてはいないのですか?」

シスター「…」

賢者「…どうしました?」

シスター「いえ…母親から聞いたのはその…父親は5年前にエルフの町に来た人間だと…」

賢者「えっ!?」

シスター「すみません…」

賢者「…なぜ貴女が謝るのですか?」

シスター「父親のことを黙っていたので…」

賢者「それは気にすることではないですよ?それより…これは厄介ですね」

シスター「…なにがですか?」

賢者「ひとつはこの子の素質についてです」

シスター「素質…ですか?」

賢者「はい。5年前と言うと魔界、しかもエルフの町のような、交易では行かないような魔界の奥にまで行くような人間は私たちぐらいでしたから…」

シスター「では、やはり…」

賢者「わかりませんが…その可能性は否定できないですね…」

シスター「…」

賢者「…しかし、腑に落ちないところもあります」

シスター「なにがですか?」

賢者「私たちは確かにエルフの町に寄りましたが…二日ほどですぐに出発したのですよ」

賢者「それに、ダークエルフは見かけたことすら無かったのです」

賢者「ですので、勇者か盗賊がダークエルフとそのような関係になる期間はなかったはずです」

シスター「では父親は誰なんでしょうか?」

賢者「それは…いえ…勇者ならば転移呪を習得していたので、もし面識が有るのならダークエルフの元に夜な夜な通うことはできたでしょうが…エルフの結界もありますし…」

シスター「では…」

賢者「…もし父親が勇者ならば…今後もいろいろな能力に目覚める可能性があります」

シスター「勇者様はそんなに優れた能力を持っておられたのですか?」

賢者「ええ。ただ…それらを熟練する前に魔王討伐に出立されましたので…」

シスター「…」

賢者「それともうひとつは…あの小娘が勇者に子供が居たことを知ると…」

シスター「小娘って…魔法使い様のことですか?」

賢者「それはまあ…なるようにしかならないのでほっときましょう」

賢者「それに…あの娘とは連絡が取れないままですし。まったくあの小娘は…」

シスター「は、はい…ではこの子については…」

賢者「…今後どんな能力に目覚めるか分かりません。なるべく目を離さないことですね」

シスター「はい」

賢者「それと…今までと変わらず面倒を見ることです」

シスター「それは…はい。私もこの子が本当に自分の子のように思えて…」フッ

賢者「…言葉が分かるようになったらその力の制御方法を教えたほうがいいですね」

シスター「分かりました」

賢者「…」

シスター「…なんでしょうか?」

賢者「いえ…この森で結界に捕まっていた貴女を助けてからもう10年が過ぎました。そろそろ竜に戻って自分の世界に帰ってほしいと思っていたのですが…」

シスター「…今はこの子の成長を見るのが楽しいのです。ですから…」

賢者「私も女ですからその気持ちも分かります。でも貴女は…」

賢者「…いえ、無粋なだけですね。何でもありません」

シスター「…はい」

~家の前~

ホー ホー…

賢者「では、そろそろ出発します」

シスター「せめて今夜だけでもお泊りになったほうが…」

賢者「…やめておきます。私はお尋ね者ですから、長居をすると迷惑をかけることになります」

シスター「でもあれは!」

賢者「どう言い訳をしても私が勇者を見捨てたことには変わりはありません。それに…」

賢者「私も自身を許せていないのですよ」

シスター「賢者様…」

賢者「二度と会えないわけではありません。手紙ならまたいつでも使い魔を使ってやり取りできますから」

シスター「はい…でも、こんなことは間違っています!」

シスター「5年前、賢者様は勇者様とともに旅立ち、それこそ命がけで戦ってらっしゃったのに!!」

シスター「勇者様が賢者様たちを安全なところに避難させるために!自らお残りになったというのに!!」

シスター「それを!お国の方々は勇者様を見捨てた極悪人などと!!」

シスター「これでは賢者様や勇者様が御可愛そうではありませんか!!」

賢者「…いいのですよ」

シスター「よくないです!」

賢者「人は弱いものです…希望が潰えたとき、何かのせいにしないと心が壊れてしまうのです」

シスター「でもっ!」ポロッ

ギュッ

シスター「!?」

賢者「私は、私のために涙を流してくれる、貴女がいるだけで十分なのですよ」ナデナデ

シスター「うぅ…」

賢者「…ありがとう、赤竜。私のために泣いてくれて」

シスター「うぅ…けんじゃさまぁ…」グスッ

賢者「あ、そういえば」

シスター「なんでしょうか」

賢者「その子の名前はなんと言うのですか?」

シスター「あ…まだ決めていません」

賢者「そうですか…では、名前を決めてあげてください」

シスター「あの…賢者様に決めていただきたいのですが…」

賢者「私がですか?」

シスター「はい。お願いします」

賢者「では…『男』というのはどうでしょう?」

シスター「『男』ですか…呼びやすくていい名前です」

賢者「ふふふ。私もついに名付け親ですか」

シスター「ええ。ですから賢者様もここで一緒に…」

賢者 フルフル

賢者「…また帰ってきますから」

シスター「…はい。お待ちしております」

賢者「…では。“転移呪”」

シュイン

シスター「賢者様…」

~森の南の峠~

シュタッ

賢者「…勇者」

~~~~~賢者の回想~~~~~

  賢者「勇者!もう魔力も尽きました!!」

  勇者「くそっ!こいつら次々と沸いてきやがるっ!!」

  ザシュッ!

  魔族兵1「ぐああ!!」

  賢者「もう…ここまでですか…」

  勇者「まだだっ!まだ諦めるな!!」

  賢者「でも!盗賊と魔法使いはもう動けないんですよ!?」

  勇者「まだいけるっ!」

  キィン!ザクッ

  魔族兵2「うがあ!!」

  賢者「逃げようにももう道具もありません!」

  勇者「これを使え!」ピラッ

  賢者「これは…転移符!?」

  勇者「俺がこいつらを引き付けておく!その隙に行くんだ!!」

  賢者「勇者も一緒に!」

  勇者「俺も後から行く!盗賊と魔法使いを頼む!!」

  ガキッ!ブォン!

  賢者「わ、わかりました!先に“辺境の港”に行って…後ろ!!」

  勇者「!?」

  ザクッ!

  勇者「…ぐうっ」ポタポタ

  賢者「勇者!!腕が!!」

  勇者「は…早く行け!!」ドンッ ザシュッ

  賢者「くっ…て、“転移”ぃ!!!」

  シュイン…シュタ

  ドサドサッ

  賢者「くぅ…な、何とか辺境の港に転移できたようですね…」

  賢者「とりあえず村に行って盗賊と魔法使いを手当てしないと…」ヨロッ

  賢者「勇者…すぐに行きますから…どうか御無事で…」

~~~~~~~~~~

賢者(それから3日…体力が回復した私達は再び魔界のあの場所へ行きました)

賢者(そこにはおびただしい血の跡と、勇者のものと思われる切り落とされた腕が…)

賢者(その腕を持ち帰り王様に報告すると、勇者を見殺しにした極悪人だと罵られ…)

賢者(私たち3人は逃げるように王都を後にして…)

賢者(そのあと手配書が貼られているのを見て3人で行動するのは危険だからといってバラバラになり…)

賢者(盗賊とは今でも連絡が取れていますが小娘…魔法使いとは連絡が取れなくなって…)

賢者(あの子は勇者に惚れていましたから…勝手に魔界に行って勇者を探しているのでしょうね…)

賢者(勇者を探しているのは私達も同じですが…)

賢者「でも…あの子が勇者の子供かもしれないとは…」

賢者「…ならば私達はあの子を命を懸けて守りましょう」

賢者「それで罪滅ぼしになるとは思いません。自己満足だと分かっています。でも…」

賢者「…赤竜、しばらくその子を頼みます」

~5年後・家~

幼男「ねーねーシスター」

シスター「なんですか?」

幼男「これ!」

フワッ

シスター「これは…桔梗ではないですか」

幼男「うん!」

シスター「…この花が咲いているところまでは大人の足でも1日はかかります…」

シスター「あなたはまた転移を使ったのですね?」

幼男「う…ごめんなさい…」

シスター「あなたのその力は人から恐れられるものです」

シスター「だから本当に必要な時にしか使ってはいけないとあれほど…」

幼男 シュン…

シスター「…どうしてこの花を取ってこようと思ったのですか?」

幼男「だって…」

シスター「叱らないから言って御覧なさい」

幼男「…きょうはおかーさんの日でしょ?」

シスター「あ…」

シスター(すっかり忘れていました…今日はこの子の母親…ダークエルフの命日でした)

幼男「だから…おかーさんにあげようと思って…」

シスター「!?」

ギュッ

幼男「いたいよぉ」

シスター「男、あなたは優しい子ですね…」グスッ

幼男「…ないてるの?どこかいたいの?」

シスター「いえ…嬉しいのです…」

幼男「うれしいのになくの?へんなの?」

シスター「あなたもいずれわかるときが来ますよ…」

シスター(ダークエルフ…あなたの子供は優しい子に育っていますよ)

~数日後・森の中~

幼男「あ、ミツバチだ」

ブーン

幼男「あの木の洞のなかに入ってっちゃった」

幼男「あそこにミツバチさんのおうちがあるんだ…」

幼男「そうだ!ハチミツもってかえったらシスターよろこぶかな?」

幼男「よいしょ、よいしょ…」

幼男「ミツバチさん、ハチミツをちょっとちょうだいね」

ブーン

幼男「わわっ!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

ブーンブーン

幼男「…もう!とまれっ!!」

ブーン ピタッ

幼男「よし、いまうのうちに…」

シュイン

幼男「ふぅ…もうちょっとでミツバチさんにさされるとこだった…」

シスター「どうしたのですか?」

幼男「あ、シスター!」

シスター「…なにを持っているのですか?」

幼男「えへへー。はい!」

シスター「これは…ミツバチの巣の欠片ではありませんか」

幼男「うん!」

シスター「…また転移を使いましたね?」

幼男「う、うん…ごめんなさい…」

シスター「…」

幼男「…ごめんなさい。ねんどーもつかっちゃった…」

シスター「やっぱり念動も使っていましたか…」

幼男「うん…」

シスター「…今日は大目に見ます。帰って蜂蜜茶を飲みましょう」

幼男「うん!わーい!!」

テクテク トテトテ

幼男「はっちみっつはっちみっつうれしいなー♪」

シスター「ふふふ」

~家の中~

シスター「はい、どうぞ。熱いから気をつけて」

幼男「うん!いただきまーす!!」

幼男「ふーっふーっ…あちっ…おいしー!」

シスター「…ふぅ。おいしいですね」ニコッ

幼男「…ねえ、シスター」

シスター「なんですか?」

幼男「きょうは…おこらないの?」

シスター「なぜ?」

幼男「だって…てんいもねんどーもつかっちゃったのに…」

コトッ

シスター「男、あなたはこの蜂蜜を取るときに蜜蜂を殺そうとしましたか?」

幼男「ううん」

シスター「なら怒る必要はありません」ニコッ

幼男「…よくわかんない…」

シスター「では…例え話をしましょう」

幼男「おはなし!?」ワクワク

シスター「…あるところに小さな村がありました」

シスター「その村では開拓民と呼ばれる人々が家畜を飼い、畑を耕し、一生懸命生きていました」

シスター「人々の働きもあり、村は大きく、豊かになりました」

シスター「ところがそこに大きな竜がやってきました」

幼男「竜が!?」

シスター「…竜は抵抗する人々を炎の息と尻尾で払い除け…」

シスター「家畜の豚や牛をたくさん食べて帰っていきました」

幼男「…」

シスター「人々は落胆し悲しみましたが…被害は家畜が殆んどで畑もほとんどが無事だったため、また一生懸命働いています」

幼男「…りゅうってひどいことするね…」

シスター「そうでしょうか?」

幼男「だって!ぶたさんやうしさんたべちゃったんだよ!?」

シスター「でも人の被害はごく僅かですよ?」

幼男「でも…」

シスター「…では、人を蜜蜂に、竜を男、あなたに置き換えてみましょう」

幼男「…え?」

シスター「蜜蜂は一生懸命巣を作り、蜜を集めてきました」

シスター「そこへあなたがやってきたのです」

幼男「あ…」

シスター「あなたは蜜蜂の巣の一部を取り、帰っていきました」

幼男「うぅ…」

シスター「…男、私はあなたを非難しているのではないのです」

シスター「生きるためには食べ物が必要です。あなたや竜のしたことは生きるために必要なことなのです」

幼男「うん…」

シスター「だから叱らないのですよ」ニコッ

幼男「でも…ミツバチさんにわるいことしちゃった…」

シスター「あなたは必要以上に蜜蜂を殺さなかったのでしょう?」

幼男「うん…」

シスター「なら大丈夫ですよ。蜜蜂は働き者ですから、あなたが取ってきた分ぐらいはすぐに修復します」

幼男「…そうかな?」

シスター「ええ。ですから思い悩むのはおやめなさい」

幼男「…うん!」

シスター「それと、無益な殺生はしないことです」

幼男「うん!わかった!!」

シスター「いい返事です」ニコッ

~数日後・近くの村~

ヒソヒソ ヒソヒソ…

幼男「?」

ヒソヒソ ヒソヒソ…

幼男「…ねえ、シスター」

シスター「どうしたのですか?」

幼男「なんかこっちをみてるひとがいるよ?」

シスター「…気にしてはいけません」

幼男「でも…」

シスター「大人しくしていましょう」

幼男「うん…」
   ・
   ・
   ・

肉屋のおばちゃん「いつもありがとね。あんたのベーコン、評判いいんだよ」

シスター「ありがとうございます」

幼男「シスターはイノシシベーコンつくるの、じょうずだもんね」

肉屋のおばちゃん「あははは。お礼を言うのはこっちだよ。あんたのおかげで売上上がってんだからね」

シスター「こちらも助かります。いつもいいお値段で買っていただいてますから」

シスター「賢者様のこともあるのにこんなによくしていただいて…」

肉屋のおばちゃん「…気にしなくていいんだよ。賢者様にはあたしらも随分助けてもらったんだ」

肉屋のおばちゃん「賢者様が理由もなしにあんなひどいことするわけない。きっとそうするしかなかったんだよ」

シスター「…」

幼男「…ねえ、おばちゃん」

肉屋のおばちゃん「ん?なんだい?」

幼男「賢者様ってなにしたの?」

シスター「こ、これっ!」

肉屋のおばちゃん「いいんだよ。坊や、賢者様はなーんにも悪いことはしてないんだよ?」

幼男「ふーん…じゃあ賢者様はいいひとなんだね!」

肉屋のおばちゃん「そうだよ。賢者様はいい人さ。あははは」

幼男「そうだよね!いっつもおみやげくれるもんね!!」

シスター「…ありがとうございます。それでは」ペコッ

肉屋のおばちゃん「ああ。またベーコン持ってきておくれよ」

幼男「おばちゃん、ばいばーい!」

シスター「…じゃあ、必要なものを買って帰りましょう」

幼男「うん!」

シスター「ふふっ…え?」

チンピラ1「へっへっへー。とおせんぼ♪」

シスター「…なにか用ですか?」

チンピラ2「へへっ。ちょっと付き合ってくんねーかなあ?」

チンピラ3「金持ってんだろ、金」

チンピラ4「いい体してんじゃん。俺たちと楽しもうぜ」

幼男「!?」

シスター「心配しなくてもいいですよ」

幼男「でも…」

シスター「私に任せなさい。そこの石を拾ってくれませんか?」

幼男「…これ?」ヒョイ

シスター「はい。…あなた達」

チンピラ‘s「なんだよ」ニヤニヤ

シスター スッ…ゴキッガキガキ…

幼男「すごい!石をにぎったら砂になっちゃった!!」

チンピラ‘s「…」ゴクリ…

シスター「私たちに手を出すなら、手加減はしませんよ?」

チンピラ‘s「き、今日はこのぐらいにしといてやる!!!」ダダダダ…

シスター「…逃げましたか。それが賢明です」

幼男「んー…あ、あった!」

シスター「なにをしているのですか?」

幼男「んー!」

シスター「あなたには石を砕くのは無理ですよ」

幼男「んんーっ!!」ゴキッ

幼男「「…はあ。われたけど砂にはならないや」

シスター(な、なんという…私は竜の力がありますがこの子は…)

シスター「あなたには驚かされますね」

幼男「え?」

シスター「…なんでもありません。さ、帰りましょう」

幼男「うん!」

~数日後の夜~

バサバサバサ

シスター「…賢者様の使い魔ですか。ご苦労様です」

梟(使い魔) ホーホー

カサカサ…

  赤竜へ

  お元気ですか?

  貴女の手紙にあった男の力について私なりに考察してみました。

  貴女は勇者の素質の一つと思っているようですが、

  勇者にはそれほどの腕力はなかったように思います。

  ですので、他の要因が考えられます。

  これは私の推測ですが、貴女は男に母乳を与えていましたね。

  その結果、男は母乳を通し貴女の力を身につけたと考えられないでしょうか?

  あくまで推測なので断定はできませんが、その可能性が高いと思いますよ。

  
  追伸:男も5歳になったことですし、そろそろ男に読み書き計算を教えてやってください。


パサッ

シスター「…」

シスター「私の母乳で男があんなに強くなるなんて…」

シスター「…ふふふ。これが成長する喜びなのですね」

~3年後・森の中~

童男「…」

ガサガサッ ブヒィ!

童男「…っ!」

ガッ ザシュッ ドサッ

童男「やったー!」

シスター「長鉈の扱いにも慣れてきましたね」

童男「あ!シスター!!やったよ!!イノシシを仕留めたよ!!」

シスター「はい。よくやりましたね。これはまた…大きなイノシシですね」

童男「へへへ」

シスター スッ…

シスター「森の神よ。お恵みに感謝します」

童男「感謝します…」

シスター「…さ、家に帰って捌きましょう」

童男「うん!これでまたベーコンを作れるね!!」ニコッ

シスター「ふふふ。男は本当に食いしん坊ですね」

童男「い、いいでしょ!?シスターの作るベーコン、美味しいんだもん!」

シスター「では…」

童男「あ、僕が持ってかえるよ」グイッ

シスター「じゃあ、お願いします」

トテトテトテ

童男「ねえねえ、シスター」

シスター「なんですか?」

童男「この鉈、すごいね!木でも岩でも、このイノシシでもなんでも切れちゃうよ!!」

シスター「なんでも切れるのは男、あなたの腕です」

童男「そっかなー?そうじゃなくてこの鉈が良く切れるからだよ、きっと」

シスター「…その長鉈は私が作ったものですから、そんなにいいものではありませんよ?」

童男「ううん。この鉈がすごいんだよ!」

シスター「じゃあ、そういうことにしておきましょう」

シスター(この子も大分腕が上がってきましたね)

男「今日は庭で採れた玉葱とお肉で串焼きにしようよ!」

シスター「そうですね」クスッ

~2年後・ダークエルフの墓~

シスター「…」

男「…」

スッ

シスター「…お墓参りはこれぐらいにして、男の10歳の誕生日をお祝いしましょう」

男「うん。でもなんで今日が僕の誕生日なの?」

シスター「それはあなたのお母さんから誕生日を聞いていたのですよ」

男「ふーん。だから今日が誕生日なんだ」ニコッ

シスター(本当は私が決めた日なんですが)フッ…

男「どうしたの?」

シスター「なんでもありませんよ?」

シスター(それにしても…ダークエルフによく似てきましたね…きれいな顔立ちです)

男「でも…なんだか寂しそうに見えるよ?大丈夫?」

シスター「…男、あなたは本当に優しい子に育ちましたね」

男「そっかなー?もしそうだと嬉しいな♪」

シスター「どうしてですか?」

男「だってシスターが喜んでくれるでしょ?シスターは僕のもう一人のお母さんだもん」ニコッ

シスター「!?」

ダキッ

男「どうしたの?」

シスター「男…ありがとうございます…」ポロッ

男「え?泣いてるの?」

シスター「ええ…嬉しくて…」

~その日の午後・村~

肉屋のおばさん「はい。今日はこれだけね」チャリン

シスター「いつもすみません」

肉屋のおばさん「こっちも儲けさせてもらってるんだからお互い様だよ。あははは」

シスター「それでは、失礼します」

肉屋のおばさん「またよろしくね」

男「おばちゃんばいばーい」

シスター「小麦粉と卵…砂糖も買わないといけませんね」

男「ねえねえ!おっきいケーキにしようよ。ねえ!!」

シスター「ふふふ。男は本当に食いしん坊ですね」

男「だ、だってケーキなんて久しぶりなんだもん!」

シスター「早く買い物を済ませて帰りましょう」

ズズーン…


 

男「な、なに?なんの音!?」

キョロキョロ

シスター「あ、あれは…黒竜!」

男「すごい…3階建ての教会と同じぐらいの大きさだ…」

リュウダー!! ニゲロー!! タスケテー!! コワイヨー!!

黒竜 クンクン…

男「なにしてるんだろ…」

シスター「食べられそうなもののにおいを探しているのかもしれませんね…」

男「…じゃあ牧場のほうに行くのかな…」

シスター「おそらく…」

黒竜 ギロッ

シスター「!!」

シスター(目が合いました…目的は私ですか!?)

シスター「…男、よく聞きなさい」

男「なに?」

シスター「私は森に向かいます」

男「森に逃げるの?」

シスター「いえ…あの黒竜が探しているのは私です」

男「…え?」

シスター「だから私が囮になってあの竜を森に誘き寄せますから、村人を安全なところに非難させてください」

男「あ、安全なところって!?」

シスター「街道の方です!時間がありません。行きますよ!」

シスター ダッ!

男「あ!シスター!!」タッ

タタタタ…

シスター(やっと森に入りました。ここならば誰にも見られずに変化が…え?)

男 タタタタ

シスター(くっ!なぜ男が!!)

シスター「ついてきてはダメ!早く村人を非難させて!!」タタタタ…

男「いやだあ!シスターと一緒に行くー!!」タタタ…

シスター「男!あなたが来ると足手まといです!!早く戻りなさい!!」

男「いやだー!!」

シスター「…戻れと言ってるんだ!!」ゴウッ!

男「!?」ズサー

男「ひどいよ!火の玉なんか投げて!!」

シスター「早く戻れ!」ギロッ

男(こ、怖い…こんな怖いシスターを見たのは初めてだ…)

男「わ、わかったよ…戻るよお…」

バッサバッサ

男「!!」

シスター「くっ…遅かったか」

黒竜 ジー

男「こ、このお!」ブンッ

シスター「男!やめろ!!」

黒竜『…ふん』ブォン!

男「尻尾!?うわぁあああ!」ズサアー

シスター「男!?大丈夫ですか!?」

男「うぅ…」

シスター「…よくも…男にっ!手を出したなぁああ!!」

ズズズ…メリメリメリメリ!!

男「し、シスターが赤い竜に!?」

赤竜 グォオオオ…

赤竜『…早く村に戻れ』ジロッ

男「う、うん!転移!!」

シュイン

赤竜『…』

黒竜『…久しぶりだな』

赤竜『まだ諦めていなかったのか』

黒竜『お前以上の雌などいなくてな』

赤竜『それでわざわざこんなところまで探しに来たのか。ご苦労なことだ』

黒竜『…赤竜よ。我が妻となれ』

赤竜『笑止!貴様も竜ならその力で我を従えさせればよかろう』

黒竜『貴様も変わらぬな…致し方なし…か』

赤竜『そっちが来ぬなら…行くぞ!!』

~村の中~

シュイン

男「ふぅ…」

ドケドケー! ハヤクニゲロー!!

男「みんなー!竜は森に行ったよー!!だから街道のほうに逃げるんだよー!!」

エッ? モリガドウシタッテ!? リュウガ2ヒキイルゾー! モウダメダー!!

男「みんなー!落ち着いてー!!街道のほうにー!!」

カイドウダッテ!? ハヤクイコウ!! ドケドケー!!

男(みんなようやく街道のほうに逃げ出した…)

男「…よし!」

シュイン

~森~

シュイン

男(竜は…いた!)

黒竜『我とともに帰るのだ!』ブォンッ!

赤竜『我は誰の命も受けない!』ゴォオオオ!!

男(すごい…近づけない…)

グォオオオ!! ガァアアア!!

男「…シスター頑張れ!」

赤竜『!?』

黒竜『隙ありッ!』

グワッ!

男「あっ!黒い竜が喉に噛み付いた!!」

赤竜『しまっ…!!』

黒竜『落ちろぉおお!!』

ブォンブォン!! ブォン!…バタバタ…ビクッ ビクッ…ドサァ…

黒竜『…やっと落ちたか…』

男「うわぁああっ!シスターっ!!」

黒竜『やめろ』

男「シスターを返せぇええ!!」シュイン

黒竜(消えた!?)

シュイン

男「うおおおお!!」シュン!

黒竜『なっ!早い!!しかし無駄だ!人間の刃物ごときで我が切れるとでも』

ザクッ!

黒竜『なっ!?腕に傷が!?』

男「あ…当たった!」

黒竜『…貴様ぁああ!!』ブォン!!バチーン!!

男「うわぁあああ!!!」ズザザー!!

黒竜『…ふん。しかし…我に傷をつけるとはこやつ…』

男「うぅ…」

黒竜『…いや、今は我が妻となるものを連れ帰らねば』グイ

バサッ バッサバッサ…

男「し…シスタぁ…」

~3日後・家~

男「…今日は…市の日か…」

男「ベーコン売りに行かなきゃ…」

男「…よいしょ」

ガチャ

男「…いってきます」

パタン

~村~

男「…あれ?」

オーイ ニバシャガキタゾー ヨシ、コレヲツンデクレ

男「…みんなどうしたのかな。家から荷物を運び出して…」

男「それより、早くベーコンを売りに行こう」

タタタ…

男「おばちゃーん!」

肉屋のおばちゃん「…おや、男かい。今日はどうしたんだい?」

男「うん、ベーコンを売りにきたんだ」

肉屋のおばちゃん「そうかい。ちょっと見せてみな」

男「はいこれ」

肉屋のおばちゃん「これは…シスターが作ったヤツだね?」

男「うん…これで終わりなんだ。後は僕が作ったやつしか…」

肉屋のおばちゃん「そうかい…今日はこれで引き取らせてもらうよ」チャリン

男「こんなに…ありがとうおばちゃん!」

肉屋のおばちゃん「いいんだよ。うちもあんたからベーコンを買うのはこれで最後だからねぇ…」

男「…え?」

肉屋のおばちゃん「…ほら、この間竜が2匹出ただろ?それで駐在兵が逃げ出しちゃってさあ…」

肉屋のおばちゃん「あ、駐在兵を責めてるんじゃないよ?あんな竜が2匹も出たんじゃあねえ…」

男(かたっぽはシスターなんだけどな…)

肉屋のおばちゃん「それでさ、役人がこの村を放棄しろって言ってきてさ」

男「え?なんで!?」

肉屋のおばちゃん「この先また竜が出るかもしれないからって…」

肉屋のおばちゃん「だからここを捨てて、もっと安全なところにみんなで引っ越せってさ」

男「…おばちゃんも?」

肉屋のおばちゃん「…ああ。この村は結構好きだったんだけどねぇ。みんな越しちまうし…仕方がないさね」

男「そう…」

肉屋のおばちゃん「…どうだい?あんたも一緒に来ないかい?」

男「…え?」

肉屋のおばちゃん「あんたもひとりじゃ大変だろ?だからさ…」

男「…いいの?」

肉屋のおばちゃん「うちも大変だけどさ…毎日御飯が食べられるくらいには蓄えもあるしね」

肉屋のおばちゃん「もしその気ならさ、明日の昼頃にここに来なよ」

肉屋のおばちゃん「兵隊さんが護衛についてくれるっていうんでさ、みんな一緒に出発するんだ」

男「…お昼だね。分かった。ありがとう、おばちゃん」

タタタタ…

肉屋のおばちゃん「…ホンットに素直ないい子だねえ…」

~翌日・朝~

男「…」

男「じゃあ、いってきます。落ち着いたら時々帰ってくるから…」

男「…待っててね。お母さん」

男「あとはシスターに置手紙しとかなきゃ」

  シスターへ

  肉屋のおばちゃんと一緒に、ちょっと離れたところに引っ越します。

  場所がはっきりしたらまた書置きしにきます。

  もしそれまでに帰ってきてたら待っていてください。

  男より

男「これでよし」

男「じゃあ…」

男(…この家ともしばらくお別れだね…)

男「…いってきます!」

~村・昼前~

ガヤガヤ オーイ、モウコレデゼンインソロッタノカー?

肉屋のおばちゃん「あんまりいい馬車じゃないけど我慢しておくれよ?」

男「ううん。いい馬車だね!」

村人A「…おい、そのガキも連れて行くのか?」

男「え?」

肉屋のおばちゃん「そうだよ。何か文句でもあるのかい!」

村人B「そいつは森の一軒家のシスターんとこのガキじゃねーか!連れてくんじゃねーよ!!」

肉屋のおばちゃん「何言ってんだい!こんな子供をほったらかしていくなんて、気が知れないね!!」

村人A「何言ってやがる!シスターって言ったら赤い竜になった化け物じゃねーか!!」

男「!!」

肉屋のおばちゃん「…へ?」

村人B「そいつも竜に化けるんじゃねーのか!?そんなやつを連れて行くなんて正気じゃねえ!!」

肉屋のおばちゃん「な、なにいってんだい!シスターが竜に化けるなんて…寝言は寝てからいいな!」

村人A「俺ぁこの目で見たんだ!シスターが森に入ったすぐあとに森の中から赤い竜が出てきたんだぜ!」

村人A「だからあの2匹目の竜はシスターが化けたに違いないんだ!その証拠にあれからシスターを見たヤツはいねえだろ!!」

肉屋のおばちゃん「じゃあ実際に化けるとこを見たわけじゃないじゃないか!」

村人A「じゃ、じゃあ!シスターはどこに行ったんだよ!!竜に化けて黒いのと一緒にどっかいっちまったに違いねえ!!」

村人B「そうだそうだ!そのガキはシスターんとこにいたから、そいつも竜に違いねえ!!」

肉屋のおばちゃん「じゃあこの子が竜に化けるって言う証拠はあるのかい!!」

村人A「じゃあ竜に化けないって言う証拠があるのかよ!!」

男「…」

騎士「何をもめているんだ!」

村人A「あ、騎士様!こいつ、竜の仲間なんですよ!!」グイッ

男「あっ」ヨロッ

騎士「…どこから見ても人間の子供じゃないか」

村人B「で、でも!コイツが世話になってたシスターは竜になって…」

騎士「…酔っているのか?暢気なもんだな」スタスタ…

村人A、B「「あっ!き、騎士様!!」」

肉屋のおばちゃん「ふんっ!証拠もないのに騒ぐんじゃないよ!!」

男「…ねえ、おばちゃん」

肉屋のおばちゃん「あんたはなーんにも、心配しなくていいんだよ?あたしがついてるからね!」

男「僕…やっぱりここに残るよ」ニコッ

肉屋のおばちゃん「…へ?」

男「僕、やっぱりあの家にいたいから。じゃあねー!」タタタ…

肉屋のおばちゃん「あ!ちょっと!!お待ちよおー!!」

男「ばいばーい」ノシ タタタ…

肉屋のおばちゃん「あ…くっ!」ガバッ

村人A、B ビクッ

肉屋のおばちゃん「あんたたち!あんな子供に気を使わせて!恥ずかしくないのかい!!」

村人A「おおお、俺たちゃ間違っちゃいねえ!」

村人B「そそ、そうだ!あいつは竜の仲間なんだ!!いなくなってほっとしたぜ!!なあ!?」

村人A「そうだそうだ!」

肉屋のおばちゃん「あんたたちぃ!」

騎士「やめておけ」グイ

肉屋のおばちゃん「き、騎士様!」

騎士「さっきから見ていたが、あの子は立派じゃないか」

騎士「自分がいればお前達が争う。だから自分はこの村に残る。また竜が来るかもしれないのにだ」

村人A「だってあいつは!竜の仲間なんですぜ!?」

騎士「…証拠はあるのか?」

村人B「だ、だから!それはあいつが世話になっていたシスターが竜に化けたんでさあ!!」

騎士「ではそのシスターとやらは何をしたのだ?」

村人A「な、なにって…」

騎士「私は、黒い竜が村に現れたあと森の中に赤い竜が現れ、黒い竜と共にどこかへ飛んで行ったと聞いているが?」

村人B「だからその赤い竜がシスターで!」

騎士「…だとしたらシスターとやらは村を守るために竜に変化したのではないか?」

村人A「そ、そんなの聞いたことねえ!人が竜になるなんて!!なあ!?」

村人B「あ、ああ!そうだそうだ!!」

騎士「お前らが知らないのは無理もない。とうの昔に失われた秘術だからな」

村人A、B「「へ?」」

騎士「…手配中の賢者は優秀だったと聞く…もしかしたらその秘術を復活させていたのかもしれない…」

村人A、B「「…」」

肉屋のおばちゃん「あんたたち!わかったろ!!さっさとあの子を迎えにいきな!!」

村人A、B「「ひぇっ!」」

騎士「…いや、もう時間がない」

肉屋のおばちゃん「…え?」

騎士「出発の時間だ」

肉屋のおばちゃん「そ、そんな…」

騎士「悪いな。あの子一人のために村人全員を危険な目に合わすわけにはいかないのだ」

村人A、B((ほっ…))

騎士「…さ、行くぞ」

肉屋のおばちゃん「ちょ、ちょっと待ってよ!書き置きだけ置いてくるからさ…」

騎士「…早くするんだぞ?」

村人A「お、俺たちは悪くない…」ブツブツ…

村人B「そ、そうだ…あのガキは竜の仲間なんだ…」ブツブツ…

~家・ダークエルフの墓~

男「えへへ…帰ってきちゃった…」

男「今日から一人…ううん、お母さんと二人だね。あはは…」

男「…おばちゃんたちを見送りに行ってくるね」

シュイン…

~村はずれの木の上~

男「…」

ヒヒーン ガラガラガラ…

男「おばちゃん…ばいばい…」

ガラガラ…ヒュー…

男「行っちゃった…」

ポロッ

男「!!」グイッ

男「な、泣いてない!これは汗!汗なんだから!!」ゴシゴシ

グゥ…

男「…こんなときでもおなかはすくんだなぁ」

男「…村に何かないかな?」

~無人の村~

男「…あはは。肉屋のおばちゃんちに来ちゃった…あれ?」

ヒラヒラ

男「何か貼ってある…なんだろ?」

  男ちゃんへ

  連れて行けなくてごめんなさい。

  せめてもの償いに、店の中に食べ物を置いておきました。

  あと、畑の野菜は自由に食べていいですから。

  あんたを置いていくことは残念ですが、精一杯生きてください。

  さようなら。

男「おばちゃん…」グスッ

男「これは…ハムに干し肉に玉ねぎにパンに…すごい…いっぱいあるよ」

男「ありがとうおばちゃん…僕、頑張るからね」

~1週間後・ダークエルフの墓~

男「…」

男「じゃあ、村の畑に行ってくるね。おかあさん」

賢者「ここに居たのですか」

ビクッ

男「…あ、賢者様!」

賢者「久しぶりですね」

トテテテテ ギュッ

賢者「どうしたのですか?」

男「うぅ…うわぁああああん!!うわぁあああん!!!」

賢者「…」ナデナデ
  ・
  ・
  ・

男「ヒック…ヒック…」

賢者「…落ち着きましたね」

男「…うん…ヒック」

賢者「使い魔が赤竜宛の手紙を持って戻ってきたので気になってきたのですが…何があったのですか?」

男「うん…あのね?」
  ・
  ・
  ・

賢者「そうですか…黒い竜が赤竜を連れて行ってしまったのですね…」

男「うん…」

賢者「…」

男「…ねえ賢者様」

賢者「はい?」

男「シスターは…竜…なの?」

賢者「…ええ。シスターはこの森で罠に掛かっていた赤竜です」

賢者「それを私が見つけ、彼女を罠から解放したんです」

賢者「すると彼女は恩返しだと言って人に変化し、私といっしょに暮らすようになったのです」

男「そうなんだ…」

賢者「…ショックですか?」

男「うん。でも…竜だったけどシスターはシスターだもん…」

男「僕のもう一人のお母さんだもん…」

賢者「男…」

男「もう村にはだれもいないの…ひとりぼっちなんだ、僕…」

賢者(先ほどの男の話では、もうこの付近に人間はいないとのことですね…)

賢者「…私がいますよ?」

男「え?」

賢者「…ここはもともと私の家なのです。訳あって私は村を出ましたが…」

賢者「そのあと赤竜がこの家を守っていたのですよ」

男「…一緒に住んでくれるの?」

賢者「嫌ですか?」

男「ううん!」ダキッ

賢者「今日からは私が母親代わりです。いいですか?」

男「うん!」

賢者「いい返事です」

男「えへへ…あのね?」

賢者「なんですか?」

男「…ありがと」ニコッ

賢者「はい」ニコッ

~数日後~

ザクッ ザクッ

男「こんなもんかな?」

男「…おばちゃん、野菜を残してくれてありがとう」

賢者「…男、こんなところにいたのですか」

男「あ、賢者様!」

賢者「…ここは村人の畑ですか?」

男「うん。肉屋のおばちゃんが残してくれた畑なんだ」

賢者「勝手に収穫しているのですか?」

男「ううん。あそこに張り紙がしてあるよ。もって行っていいよって」

賢者「そうですか。良かったですね」

男「うん!」

賢者「それはそうと…男、私はこれから出かけてきます」

男「おでかけ?」

賢者「はい。盗賊…仲間のところに行ってきます」

男「はーい…」

賢者「どうしたのですか?元気が無いようですが?」

男「…帰ってくる?」

賢者「ええ。ちゃんと帰ってきますよ」

男「だったら…うん。いってらっしゃい」

賢者「はい。いってきます。“転移呪”」

シュイン

男「…」

~盗賊がいる町~

シュイン

賢者「人を隠すには人の中…とはいうものの…」

ヒラヒラ

賢者「手配書がそこここに張られていますね…まったく、肝が据わっていると言うか…」

賢者「…あまりゆっくりしては居られないですね。フードをしっかり被って急ぐとしましょう」

~盗賊の家~

賢者「…ここですね」

コンコン

ギィ…

賢者「久しぶりですね盗賊。また随分髭を伸ばしたんですね」

盗賊「ああ。変装するより楽だからな。ま、入ってくれ」

賢者「はい。お邪魔します」パタン

盗賊「で?迎えにくると言っていたが…どこに行くんだ?」

賢者「私の家です」

盗賊「ほう」

賢者「貴方に紹介したい人がいます」

盗賊「誰だ?まさか…勇者か!?」

賢者「いいえ」

盗賊「じゃあ…誰だ?」

賢者「…まずは会ってもらったほうが早いと思いまして」

盗賊「連れてきていないのか?」

賢者「ええ。今あの子を村から連れ出すのは得策ではないと思うので」

盗賊「わかった。荷物を取ってくるからちょっと待ってくれ」

賢者「はい」

~町中~

テクテク

盗賊「で、相手はどんな人物なんだ?」

賢者「そうですね。見かけは子供です」

盗賊「中身は大人なのか?」

賢者「いえ、中身も子供です」

盗賊「ただの子供じゃねえか」

賢者「ええ。一見どこにでもいる普通の子供です」

盗賊「ん?やけに含みを持たせた言い方じゃないか」

賢者「ええ。実は…」

クイニゲダー!アソコダー!ニガスナー!

?「ひぃいいい!!」トテテテテ

ドンッ!

?「あっ!」ズササー

賢者「あっ!フードが」パサ…

町人1「おいあんた!そのガキをこっち…に?」

?「ひゃっ!」ビクビク

ヒソヒソ ヒソヒソ…

町人2「お、おい…あれは手配書の…」

町人3「ああ。“賢者”に間違いない…俺たちの敵う相手じゃ…」

町人4「ど、どうすんだよ…兵隊呼ばないとやべえよ…」

ザワザワ…

盗賊「…どうする?」

賢者「決まってるでしょう?…“転移呪”」

?「え?きゃあああ!!」

シュイン…

町人‘s「「「「…い、いっちまった…助かった…」」」」

~男の家の近く~

シュイン シュタッ ドサッ

?「みぎゃっ!」

賢者「大丈夫ですか?」

?「うぅ…いたいよお…」

盗賊「…連れてきたのか?」

賢者「ええ、呪式の展開範囲の関係でしかたなく。いけませんか?」

盗賊「いや…」ジー

?「…な、なに?」

賢者「盗賊、そんなに見つめると嫌われますよ?」

盗賊「あ、ああ…けど…」

賢者「…普通の女の子ですよ?角と羽と尻尾が生えて耳が長いだけの」

?「…え?」ペタペタ

?「あっ!…あっ!でてる!!変化が解けちゃってる!!」アタフタ

盗賊「…慌ててるみたいだぞ?」

賢者「そうですね。どうしたんでしょう?」

?「はわわ…はわ…あ、あれ?」

盗賊「で、家はどっちだ?」

賢者「そうですね…あっちに行けば家があります」

盗賊「よし。行くぞ。荷物はこれで全部だな」

賢者「ええ。荷物を持たせてすみません」

盗賊「へへへ。俺は力仕事も得意なんだぜ?」

賢者「ふふふ。貴女も…なんて呼べばいいかしら?」

?「え?あ、はい…魔娘…です…」

賢者「…では魔娘もいっしょに行きましょう」

?改め魔娘「…え?」

読んでるから完結させてくれ

賢者「大したものはありませんが食事もありますから。食い逃げするほどおなかが空いていたんでしょう?」

魔娘「う、うん…」

賢者「立てますか?」

魔娘「あ、うんっしょ…っ!いたっ!」

賢者「…足をくじいたみたいですね。ほら」スッ

魔娘「え?」

賢者「肩を貸しますよ」

魔娘「い、いいの?」

賢者「ええ」

ヒョコ ヒョコ

>>137 とりあえず今月中には完結したいですねwww

魔娘「…へんなの」

賢者「なにがですか?」

魔娘「だって…私は人間じゃないのに…」

賢者「些細なことです」

魔娘「え?だって…」

賢者「…私は以前、竜と一緒に暮らしていたことがあるんですよ?」

魔娘「え!?」

賢者「意思の疎通が出来るのであれば、むやみに怖がる必要はないでしょう?」ニコッ

魔娘(側近は “人間”のこと、ずるがしこくて、隙があれば騙そうとする油断できない相手だって言ってたけど…)チラッ

賢者「…なんですか?」

魔娘「あ、ううん!…あの…」

魔娘「あなた達は人間から逃げてるみたいだけど…どうして?」

賢者「…私達は仲間を見捨てたお尋ね者なのですよ」

魔娘「罪人なの?」

賢者「ある意味そうですね…」

魔娘「そうは見えないけどなぁ…」

賢者「…罪か否かは人が定めた法によって決まるのですよ」

賢者「私達はその法によってお尋ね者になったのです」

魔娘「でも、仲間を見捨てたのだって何か理由があるんじゃ…」

賢者「結果がすべてなのです。理由は意味がないのですよ」

魔娘「そんなの…法が間違ってるよ…」

賢者「…貴女は優しいのですね」

魔娘「そ、そんなことない!」

賢者「ふふふ。私は貴女が気に入りました。もし行く宛てがないのなら…一緒に暮らしませんか?」

魔娘「え?」

賢者「やっぱり罪人といっしょでは嫌ですか?」

魔娘「あなた達は罪人じゃないと思うから…でも…いいの?私、人間じゃないよ?」

賢者「かまいませんよ。大勢のほうが賑やかでいいですから」

魔娘「…やっぱり変なの」クスッ

賢者「ふふふ。ほら、見えてきましたよ」

~男の家~

男「…はぁ」

コンコン

ピクッ

男「…」

ガチャ

賢者「ただいま帰りました」

男「!」ダキッ

賢者「すみません。ちょっと手違いがあって遅くなってしまいました」ナデナデ

男 ギュッ

賢者「…帰ってこないと思っていましたか?」

男「…うん」

盗賊「ほう…見た目は完全に人間だな。よいしょっと」ドサッ

男「え?誰?」

魔娘「あ…」

男「え?え?」

賢者「ああ。このふたりは今日からここで一緒に暮らすことになった盗賊と魔娘です」

盗賊「盗賊だ。よろしくな、坊主」

魔娘「…魔娘…です」

男「あ、男です」ペコッ

盗賊「うむ」

魔娘「?」クンクン

男「な、なに?」

魔娘「…ふうん…そっか」

男「な、なにが?」

賢者「食事の用意が出来ましたよ。と言ってもパンとハムとチーズですが」

魔娘「わーい!あ、ちょっと肩貸して?」

男「う、うん。いいよ」

ヒョコヒョコ フワッ

男「!?」

魔娘「どうしたの?」

男「な、なんでもない!」ブンブン

男(女の子っていい匂いがするんだな…)
  ・
  ・
  ・

賢者「…さ、もう夜も遅いですから寝なさい」

男「はーい」

魔娘「おやすみ」

賢者「貴女もですよ?」

魔娘「え?あ、私はまだ…」

賢者「貴女は見たところ男とそう変わらない年に見えます。ですからもう寝たほうがいいですよ?」

魔娘「…はーい」

男「…あ、でもベッドが二つしかないよ?」

賢者「足りない分は明日村から調達しましょう。今夜は男と魔娘は一緒に寝てください」

魔娘「え?」

男「ぼ、僕はいいけど…」チラッ

魔娘「…いいわ」

男「…へ?」

賢者「それじゃ二人とも、おやすみなさい」

魔娘・男「「はーい」」

~男の部屋・ベッドの上~

魔娘「もうちょっとそっちにいってよ」モゾモゾ

男「無理。落ちちゃうもん」

魔娘「もう!しょうがないわね…」

男「…」

魔娘「…ねえ」

男「…なあに?」

魔娘「あなたも驚かないのね…」

男「なにが?」

魔娘「だってほら」ピコピコ

魔娘「私、人間じゃないのよ?角も尻尾もあるし…」

男「…僕も半分は人間じゃないからね」

魔娘「…そうね」

男「え?知ってたの?」ガバッ

魔娘「ええ。匂いで分かるわ。男、あなた…エルフと人間のハーフでしょ?しかも竜の血も混ざってる」

男「ふーん…よくわかるね。でも竜の血は混ざってるんじゃなくて…小さい頃、竜のお乳で育ったらしいから…」

魔娘「竜のお乳?そんなの出るの?」

男「出るみたいだよ?」

魔娘「ふーん…そっか」

男「…ねえ」

魔娘「なあに?」

男「きみ、いくつ?」

魔娘「れでぃーに年を聞くのは失礼よ?」

男「れでぃーって…子供じゃん」

魔娘「なっ!?失礼ねー。あなたも子供じゃん」

男「…」

魔娘「…」

魔娘「…ま、いいわ。9歳よ」

男「年下だね。僕は10歳」

魔娘「その割には私より幼稚ね」

男「そうなの?」

魔娘「そうよ。友達にも言われない?幼稚だって」

男「友達…居ないんだ」

魔娘「え?」

男「僕はずっとここでシスターと暮らしてたからね。村には時々しか行かなかったから…」

魔娘「…そっか。私と同じね」

男「そうなの?」

魔娘「私、小さいころからお城の中で暮らしてたし、友達なんて…」

男「そっか…じゃあさ、友達にならない?」

魔娘「は?」

男「だって初めてなんだもん。同じぐらいの子とこんなに話したのは」

魔娘「そう言えば…私もそうね」

男「ね?いいでしょ?」

魔娘「…嫌よ」

男「え?なんで?」

魔娘「だって私とあなたじゃ身分が違うもの。私はしゅお…っ!」

男「なあに?」

魔娘「な、なんでもない!とにかく、私はあなたと友達になる気はないの」

魔娘「…でも、どうしてもって言うなら…この家に居る間は友達になってあげてもいいわよ?」

男「うん!ありがとう!!」

魔娘「ベ、別にお礼を言われるようなことじゃないわ!」

男「あははは。じゃあ僕のことは“男”って呼んでよ」

魔娘「分かったわ。じゃあ私のことは“魔娘”って呼んでいいわよ」

ドアの外:賢者(気になってきてみましたが…仲良くなったみたいですね)

今日はここまでにします

おやすみなさいノシ

おやすみいいいいい!!

>>158-167 乙ありがとうございます

今から投下します

~別室~

パタン

賢者「ようやく寝たようです」

盗賊「そうかい。あいつらは仲良くやれそうだな」

賢者「分かりますか?」

盗賊「ああ。大きな声も聞こえなかったしどちらかが部屋から出てくることもなかった」

盗賊「と言うことはとりあえず問題はないということだろ?」

賢者「そうですね」クスッ

盗賊「ん?」

賢者「いえ。貴方が魔娘をすんなり受け入れたことがちょっと信じられなくて」

盗賊「まあ俺も…魔族のことを知っているからな」

賢者「ええ。彼等も私たち人間と変わりません」

盗賊「ああ。知性も理性もあるし、ケンカも仲直りだってできる」

盗賊「魔界に行ってみて、こっちの“魔族”のイメージってのがどんだけ歪んでいるか分かったからな」

盗賊「それに相手は子供だぜ?いくら魔族とはいえ、子供に手を出しちゃダメだろ」

賢者「ええ。そうですね」

盗賊「…ところで」

賢者「はい?」

盗賊「俺は何をしたらいいんだ?」

賢者「…分かっているでしょう?」

盗賊「ま、大体な。男を鍛えるんだろ?」

賢者「それも大事なことですが…貴方には男の父親になってほしいのです」

盗賊「はぁ?」

賢者「…あの子は今まで赤竜と二人で暮らしてきました」

賢者「ですから、“漢”として見本になる男性に接することがなかったのです」

賢者「盗賊、貴方には父親らしく振舞っていただき、そして“漢”を男に教えてほしいのです」

盗賊「…まったくえらいことを言うもんだ。ま、あんたは仲間だし頼まれりゃなんでもやるけどよ」

賢者「お願いします」

盗賊「ああ。それと…魔娘のことなんだが…」

賢者「あの子は私が淑女の嗜みを教えますよ」

盗賊「いや、そうじゃなくてよ…あの子の正体についてなんだが…」

盗賊「…あの子は今まで見たどの魔族とも違う姿をしている」

盗賊「…赤い髪に緑の目、黄色の角に白い肌と羽と尻尾とは…」

盗賊「賢者にはあの子がどんな魔族かわかるか?」

賢者「私にも皆目見当がつきません…ただ…」

盗賊「ただ?」

賢者「人間に変化することは出来ても、追ってくる町人を振り切ることが出来ないのですから、そんなに強い魔族ではないと思うのです」

盗賊「そうかい…あの子に直接聞いてみるか…」

賢者「それは私がします。貴方がすると脅しているように見えますから」

盗賊「そんなに人相が悪いか?」

賢者「ええ。貴方は眼つきが悪いですから」

盗賊「えらい言われようだな」

賢者「…さ、そろそろ私達も寝ましょう」

盗賊「そうだな。賢者はベッドを使え」

賢者「貴方はどうするのですか?」

盗賊「俺は床の上でも平気だ」

賢者「…一緒に寝ましょうか」

盗賊「へへへ。俺の理性を信じてくれるのは嬉しいが…」

賢者「あら、そんなものは信じていませんよ?」

盗賊「…それは誘っていると取るぞ?」

賢者「かまいませんよ?ねえ、旅をしてた頃みたいに…」

盗賊「…今夜は寝かせねえぞ?」

賢者「そんな体力があるんですか?」

盗賊「…言ったな?」ニヤッ

~翌朝~

チュンチュン…

男「…ん…んんーっ!」

男 ネボケー

魔娘「…スー…スー…」

男「…起こさないように…」ソロー…

パタン

男「…ん?この匂いは…」クンクン

ガチャ

盗賊「よう。おはよう」

男「あ、おはようございます…」

盗賊「ホットミルクならあるぞ。飲むか?」

男「あ、はい。ありがとうございます…このミルク、どこから持ってきたんですか?」

盗賊「ああ。下の村跡を見に行ってきたんだが、そこに牛が何頭かいてな」

男「そうなんですか。その牛はどうしたんですか?」

盗賊「連れてきた。庭にいるぞ」

男「うわー!すごいなぁ!!」

盗賊「これでしばらくはミルクには困らないだろ」

男「いえ、そうじゃなくて…僕だったら牛を連れて帰ることなんて出来なかっただろうなって…」

盗賊「…後で牛の扱い方を教えてやるよ」

男「ホントですか?」

盗賊「ああ。牛は農作業や荷物の運搬にも使うんだ。扱いを覚えておいて損はねえだろ」

男「ありがとうございます!」

盗賊「他にも知りたいことがあるなら、俺で分かることなら教えるぜ」

男「はい!お願いします!!」

盗賊「へっ。いい返事だ」

ガチャ

賢者「…おはようございます…」

盗賊「ああ、おはよう」

男「おはようございます…どうしたんですか?」

賢者「なんでもありません…ちょっと腰が痛いだけです」トントン

盗賊「ははは…」

男「?」

賢者「それより男。魔娘を起こしてくれませんか」

男「あ、はい」

パタン

賢者「…いい感じでしたね」

盗賊「何のことだ?」

賢者「先ほどふたりで話していたでしょう?」

盗賊「見てたのかよ」

賢者「ええ。正直驚きましたよ」

盗賊「なんでだ?」

賢者「盗賊は子供が苦手だと思っていましたからね。それより昨夜のことなんですが…」

賢者「少しは加減してくださいよ。久しぶりなんですから」

盗賊「わるいわるい。今まで溜め込んでいたもんが一気に爆発しちまった」

賢者「まったく…おかげで腰痛ですよ…」

~朝食中~

モグモグ…

盗賊「食べ終わったら村に行って良さそうなベッドを取ってこようぜ」

男「はい」

盗賊「牛車の手綱は男に任せるからな」

男「え?」

盗賊「頼んだぞ」

男「あ、はい!」

魔娘「私も行くー!」

賢者「そうですね。一緒に行ってらっしゃい」

男「賢者様は?」

賢者「私は掃除と洗濯がありますし、お昼の準備もしないといけませんからね」

賢者(本当は腰を休めたいんです)



シスターーあああ

~村~

ガラガラガラ…

魔娘「…どの家も蛻の殻ね。全然壊れてないのに…」

男「…」

盗賊「この村は竜に襲われたらしいな。それでここに住む人たちはこの村を捨てたそうだ」

魔娘「でも何も壊れてないように見えるわ」

盗賊「なんでも別の竜が森に誘導したんだってよ。そして竜は2頭ともどこかに飛んでいってしまったそうだ」

魔娘「ふーん…」

魔娘(その竜は何しにこんなところまで来たのかしら…)

>>183 まだ続きますよ?

盗賊「…よし、この辺でいいだろ」

男「どうどう…」

魔娘「この家に入るの?」

盗賊「ああ。この家のベッドを頂くとしよう。男、牛車をそこに繋いどいてくれ」

男「はい」

ギュッ

男「はぁ…緊張した…」

盗賊「鍵が掛かってるな…ちまちま開けんのもめんどくせえし…男、その鉈を貸してくれ」

男「え?これですか?」

盗賊「ああ」

男「…はい」

盗賊「おう----なっ!?」ガクッ!

男「だ、大丈夫ですか?」

盗賊「あ、ああ…大丈夫だ。けど…なんだこの鉈は?」

盗賊(見た目ではせいぜい1、2kgほどなのに…こりゃあ5kg以上あるぞ!)

男「シスターが作った鉈です」

盗賊「シスターが作った?」

男「ええ」

盗賊「竜が鍛えた鉈…それでこの重さなのか。…ふんっ!」

ガキン

盗賊「よし、開いた…男、運び出すのを手伝ってくれ」

男「あ、はい」

~帰り道~

ガラガラガラ…

男「~♪」

盗賊「牛の扱いも大分なれてきたな」

男「そ、そうですか?」

盗賊「ああ」

魔娘「そうそう♪行きはよく揺れたけど今はそんなに揺れないしねー」

男「そう?っていうか、魔娘って行きも帰りもずっと牛車に乗ってない?」

魔娘「あら。私はか弱い女の子ですもの♪」

盗賊「ははは。男、オンナって言うのは我侭な生き物だ。少しぐらいなら我慢しろ」

男「は、はい…」

~昼食後~

一同「「「ごちそうさま」」」

賢者「はい。おそまつさま」

盗賊「…ふたりとも。ちょっと休んだら外に出てきてくれ」

男「あ、はい」

魔娘「いいけど…なにをするの?」

賢者「貴方達の力を見せてもらいたいのですよ」

魔娘・男「「ちから?」」

~家の前~

ガチャ

盗賊「お、出てきたな」

魔娘・男「「…」」

賢者「そんなに緊張しなくてもいいですよ」クスッ

魔娘「は、はい」

賢者「では…どんな特技があるか教えてください。まずは魔娘から」

魔娘「え?私?」

賢者「そうです。貴女は“変化呪”が出来ますよね。あとは何が出来ますか?」

魔娘「あとは…“回復呪”とか“解毒呪”とか…」

賢者「なるほど…白魔法ですか。ちょっと頭に手を置きますよ?」

ボワン

魔娘「え?え?」

賢者「…魔娘。貴女は…」

魔娘 ギクッ

賢者「…貴女には強力な封印がしてありますね」

賢者「…そのせいで魔法が制限されています」

魔娘「…」

盗賊「封印がとけたらどうなるんだ?」

賢者「それは分かりませんが…回復魔法が全体全回復ぐらいまで使えるようになるかもしれませんね」

男「すごいや…」

盗賊「ふうん。他に使える魔法はないのか?」

賢者「それは分かりません。そもそもこの封印自体、完全ではないのです」

盗賊「どういうことだ?」

賢者「普通封印は例外を作らないものなのです」

賢者「ところがこの封印は“変化呪”と“回復呪”、それに“解毒呪”の三つだけは封印していないのですよ」

盗賊「なるほど…妙だな…」

賢者(こんな封印を張れるなんて…どんな術者でしょうか。いえ、それより…)

賢者(術者から離れると魔力の供給が止まり術が解けるはずなのですが…この封印はどうなっているのでしょう…)

賢者「…とにかく、今は“変化呪”と“回復呪”の二つについて鍛えていきましょう」

魔娘「…え?」

賢者「“解毒呪”は鍛えようがありませんが“変化呪”と“回復呪”は鍛えることでより強い効果が得られるようになります」

魔娘「そう…なのかしら?」

賢者「今まで貴女の身を助けてきた魔法です。鍛えておいて損は無いでしょう」

魔娘「う、うん…」

盗賊「…次は男。お前にはどんな特技があるんだ?」

男「あ、僕は“転移”と“念動”です」

賢者「もうひとつ、“力”ですね」

盗賊「ま、まあ…“転移”は分かるんだが…“念動”と“力”というのはよく分からねえんだが…」

賢者「そうですね…男、できますか?」

男「う、うん。じゃあ…ここからあの道のずっと先に転移します」

シュイン

魔娘・賢者・盗賊「「「!?」」」

魔娘「なに今の!?呪文も唱えずに…あんな“転移呪”、見たことないわ」

賢者「いいえ…あれは“転移呪”ではありません」

魔娘「え?今のはどうみても“転移呪”でしょ?」

盗賊「あれは…“物質入替え”か?」

賢者「…そうですね」

魔娘「“物質入替え”?なにそれ?」

賢者「普通の”転移呪“は術者を目的地まで運ぶんですが男の場合は…」

賢者「転移先の物質と男を入替えてるのです。つまり、二つの物質を瞬時に交換しているのですよ」

賢者「…それと魔力を感じないのは…」

シュイン

男「はぁ…どうですか?」

魔娘・賢者・盗賊「「「…」」」

男「…どうしたの?」

賢者「…男、その“転移”は…どれぐらいの距離まで出来ますか?」

男「え?えっと…試したことはないんですけどかなり遠くまでいけると思います」

賢者「そうですか」

男「…シスターには見える範囲内でしか使っちゃいけないって言われましたけど…」

賢者「それでは…例えば、その“転移”でそこの川に行けますか?」

男「…え?」

賢者「確かめたいことがあるのです。やってくれますか?」

男「う、うん…でも、あそこの川、浅いけど水があるから足が濡れちゃうよ?」

賢者「確かめるために必要なのです。お願いします」

男「うん…」

シュイン バシャッ

魔娘「え?なんで水が!?」

賢者「やはり…」

盗賊「…」

シュイン

男「はぁ…これでいいですか?」

賢者「ええ」

盗賊「…やっぱりな」

男「え?」

賢者「…男、その特技はあまり使わないほうがいいかもしれませんね」

男「どうして?」

賢者「…貴方が体力を消耗しているのが気になるのです。魔力を消費しない分、体力を消費しているのではないですか?」

男「うん、ちょっと…疲れてるかな?」

賢者「疲労度はおそらく転移先の物質の密度や距離に比例すると思われます」

賢者「つまり、何もない所だと疲労は少なく、水や岩などの密度の高い所だと疲労が激しいのではないでしょうか」

賢者「ですから、“転移”については目で見える範囲でしか使用しないほうがいいでしょう」

男「よくわかんないけど…はーい」

賢者「…続いて“念動”ですか」

男「はーい。じゃあ…魔娘、僕に向かって石を投げてよ」

魔娘「え?いいの?当たったら怪我するわよ?」

男「そのときは魔娘の“回復呪”で直してね。でも当たらないけど」

魔娘「言ったわねぇ!?もう手加減してやんないから!えいっ!」

ビュン

男「むんっ!」

ピタッ

魔娘「…え?石が…浮いてる?」

盗賊「これは…おもしれえな」

賢者「“防壁”に似ていますね…しかしこれも…体力を消費するようですね」

男「え?これは使っても疲れないよ?」

賢者「それは消費する体力量が少ないと言うことですよ」

男「そっか。えいっ!」

ヒュー…ン

魔娘「…石が…飛んでっちゃった…」

盗賊「止めるだけじゃなく、動かすこともできるのか…」

賢者「最後に、“腕力”ですね。男、お願いします」

男「じゃあこの石で…ふんっ!」

がキッゴリゴリ…パラパラパラ…

盗賊「石が砂に!?」

魔娘「すごい…男は怒らせちゃダメね…」

男「えへへへ。やっとシスターと同じぐらいになったよ」ニコッ

賢者「この力は赤竜の母乳で育ったために身についた赤竜の力なのでしょう」

盗賊「話には聞いていたけど…すごいな」

賢者「盗賊」

盗賊「なんだ?」

賢者「男の能力を生かすため、鍛錬をお願いします」

盗賊「俺は教えるのは苦手だって言ってんだろ」

賢者「このままだと男は能力を無駄にしてしまいます」

賢者「…私達はいつ何が起こるかわかりません」

賢者「ですから、せめてこの二人が一人でも生きていけるように、出来る限りのことをしてあげたいのです」

盗賊「わかったわかった。おい、お前たち」

魔娘・男「「は、はい」」

盗賊「これから俺達がお前たちを鍛える。いいな?」

魔娘・男「「よろしくお願いします」」

盗賊「よしよし」

賢者「…では、明日から勉強と鍛錬をがんばりましょう」

魔娘「うぅ…勉強はイヤ…」

男「僕も…」

~夜~

ガチャ

賢者「子供達は寝ましたよ」

盗賊「そうか。なあ…」

賢者「今夜は堪忍してくださいな」

盗賊「そうか…いや、そうじゃなくてだな」

賢者「違うのですか?あら残念…」

盗賊「…え?」

賢者「え?」

盗賊「…はぐらかそうとしてるだろ」

賢者「…」

盗賊「賢者、お前、魔娘の状態を調べた後、明らかにおかしかったぞ?」

賢者「…ばれていましたか」

盗賊「何があったんだ?」

賢者「…仕方ないですね。黙っておこうと思ったのですが…」

盗賊「そうやって一人で抱え込むのは昔からの悪い癖だぞ?」

盗賊「話すことで楽になることもあっからよ。言ってみろよ」

賢者「それでは…封印に隠されて分かりづらかったんですが…魔娘の魔力は膨大です。私に匹敵するぐらいに」

盗賊「なんだって!?」

賢者「そして封印についてですが…ある条件で封印が壊れる。そんな気がするのです」

盗賊「条件?」

賢者「そうです。不思議な、そして不可解なことですか…封印の今の状態は、特定の魔法のみ魔力を使うことが出来る状態なのです」

賢者「誰が、一体なんの目的でこんな手の掛かることをしたのか分かりませんが…」

賢者「封印を破る、その鍵となるのが“変化呪”と“回復呪”、“解毒呪”の魔法なのではないかと」

盗賊「ふーん…」

賢者「もうひとつ、私が気になるのは使える魔法の種類です」

盗賊「魔法の種類がなんか関係あるのか?」

賢者「“回復呪”は初級者でも使える魔法ですが、“解毒呪”や“変化呪”は上級者で無いと扱えない魔法なんです」

盗賊「ほう。つまり、魔娘は上級魔法が使える呪者だってことか。てことは封印した呪者はかなりの使い手だな」

賢者「そう言うことです」

盗賊「…魔王か?」

賢者「可能性は否定できません。彼女は私達が知るところの魔族とは異なる容姿をしていますから、魔王の血縁者かもしれませんね」

盗賊「…ヤバくないか?それ」

賢者「それはそれで運命ですよ」ニコッ

盗賊「お前…すげえな…」

~~~~~魔娘の夢~~~~~  

  モクモクモク…

  魔娘「げほっげほっ…なんで煙が?」

  ガチャ

  魔娘「…なにこれ」

  チャキーン ボワッ カキーン…

  魔娘「…なんで?なんでみんな殺し合いしてるの!?」

  ボウッ

  魔娘「ひっ!」ビクッ

  トテテテテ

  魔娘「ヒック…お父様ーっ!そっきーん!どこー!!」グスッ

  側近「姫様!」

  魔娘「側近!お父様はどこ!?」

  側近「今お連れします!失礼!!」ヒョイ

  タタタタタ…

  側近「この部屋です!」

  バタン

  主王「魔娘っ!」

  魔娘「お父様!」

  トテテテ ダキッ

  主王「無事であったか…怪我は無いか?」

  魔娘「うん…お父様…」

  主王「ん?」

  魔娘「なにがあったの?なんでみんな殺し合いしてるの?」

  主王「…反乱だ」

  魔娘「反乱?」

  側近「軍の過激派が反乱軍に寝返りました」

  魔娘「なんで!?」

  側近「主王様は人間界に干渉することを禁じておられます」

  側近「しかし、それを不服とする軍の過激派が反乱軍と手を組んだのです」

  魔娘「え?」

  側近「彼らは人間界に侵攻したがっていましたから…」

  主王「…」

  側近「場内の兵士の中にも寝返ったものがいるようです。いつの間に勢力を広げたのか…すみません。私のミスです」

  主王「…よい。私の監督不行き届きだ。すまぬ」

  魔娘「…そんなの!お父様の魔法でやっつけちゃえばいいのよ!!」

  主王「…そうもいかないのだ。奴らはゴブリン族などの弱い魔族を人質にしておるゆえな」

  主王「…我の魔法では人質まで殺めてしまうのだ」

  魔娘「そんなの!人質なんて関係ないでしょ!?」

  主王「そうはいかん。支えてくれる民があってこその王なのだ。民を犠牲にして何が王か」

  側近「…姫。ここから一刻も早く脱出してください」

  魔娘「…え?」

  側近「主王様と私は反逆者と戦います。しかし姫は…」

  魔娘「いや!お父様と一緒にいる!!」

  側近「姫!」

  魔娘「いやだもん!」

  主王「…娘よ。我はこの戦乱を治めるため先頭に立って戦わねばならん」

  主王「お前を守るほど余裕は無いのだ…」

  魔娘「うぅ…」

  主王「この国はしばらくは戦乱が続くであろう。しばらくは人間界で過ごすがよい」

  魔娘「…え?」

  側近「姫の魔力を検知されないとも限りません。念のため姫の魔力に制限を設けましょう」フィン…

  魔娘「え?ちょっ!ちょっと!!なにするの!?」

  側近「…“変化呪”と“回復呪”、“解毒呪”は使えますが、他の魔法は使えませんのでお気をつけください」

  魔娘「いや!わたしもここに残る!!」

  主王「言うことを聞くのだ。娘よ」

  魔娘「いやよ!ずっとお父様と一緒に居るの!!」

  主王「聞くのだ!!」

  魔娘 ビクッ

  主王「…すぐに迎えに行く。それまでの辛抱だ」

  魔娘「…絶対迎えに来てね?」

  主王「うむ。約束しよう」

  側近「…では。“転移呪”!」

  魔娘「え?きゃぁあああ!!」

  シュイン

  魔娘「おとうさまぁぁぁぁぁ…」
    ・
    ・
    ・

  シュイン ドサッ

  魔娘「いった~い…」サスサス…

  側近「大丈夫ですか?」

  魔娘「いたいよぉ…ここどこ?」キョロキョロ

  側近「ここは以前、私が調査に来たことのある町です」

  魔娘「ふーん…」

  側近「…姫様、これから先は人変化を解かずにお過ごしください」

  魔娘「え?」

  側近「この町では人の子であれば、教会で衣食住を保障してくれるみたいなのです」

  魔娘「え?きょうかい?え?」

  側近「…では、御無事で」

  シュイン

  魔娘「え?側近!そっきーん!!」

  シーン…

  魔娘「…どうしよう…とりあえずきょうかいのほうに行ってみようかな…」
    ・
    ・
    ・

  魔娘「…あ、あそこじゃないかな?」

  サア、ミチクサヲセズニカエリマショウ ハーイ

  魔娘「あ!こっちに来る!?」サッ

  コソコソ…

  魔娘(あれは本で見たことがあるわ…人間の子供ね!)

  魔娘(茂みの中に隠れて…見つからないように…え!?)

  モブ幼女 ジー

  魔娘(み…見つかった!もう終わりだわ!!)

  モブ幼女『…おねーちゃん、つのとはねがみえてぅよ?』コソッ

  魔娘「はわわ…え?」

  モブ幼女 ジー

  魔娘「…と、とりあえず変化で…」フォン

  魔娘「…これでどう?」

  モブ幼女「…うん。だいじょーぶ」トテトテトテ

  魔娘「あ…いっちゃった…きょうかいにはもう誰も居ないみたい…」

  グゥウ…

  魔娘「おなか空いた…町に行けば食べるものがあるかな?」
    ・
    ・
    ・

  ガヤガヤガヤ…

  魔娘「うー…人がいっぱい…ん?」クンクン

  魔娘「これは…りんごの匂い!」

  トテテテテ

  魔娘「あ、あの馬車にいっぱいりんごが!」

  コロリン

  魔娘「あ!落ちた」トテテテ ヒョイ

  シャリ

  魔娘「…すっぱい…でも…おいしい…」

  町人1「おい!」

  魔娘 ビクッ

  町人1「そのりんごはうちのだ。食べたんなら御代を払ってもらおうか」

  魔娘「か、“火炎呪”!」

  シーン…

  町人1「なんだあ?お前、金持ってないのか?ああ?」

  魔娘「”火炎呪“!”火炎呪“!!”かーえーんーじゅーっ“!!」

  シーン…

  町人1「…てめえ、親どこよ?」

  魔娘「ひぃいい!!!」トテテテテ

  町人1「あ!おい逃げるな!!食い逃げだー!」

  アソコダー!ニガスナー!

  魔娘「ひぃいいい!!」トテテテテ

  ドンッ!

  魔娘「あっ!」ズササー

  魔娘(リンゴが…)

  賢者「あっ!フードが」パサ…

  町人1「おいあんた!そのガキをこっち…に?」

  魔娘「ひゃっ!」ビクビク

  ヒソヒソ ヒソヒソ…

  町人2「お、おい…あれは手配書の…」

  町人3「ああ。“賢者”に間違いない…俺たちの敵う相手じゃ…」

  町人4「ど、どうすんだよ…兵隊呼ばないとやべえよ…」

  魔娘(…え?みんなこの人を見てる…じゃあ今のうちに逃げれば!)

  コソコソ

  シュイン

  魔娘「え?きゃあああ!!」

~~~~~~~~~~

魔娘「!?」ガバッ

魔娘(ゆ…夢…)

魔娘(嫌な…怖い夢…)

チラッ

男「スー…スー…」

魔娘「…ちょっとでいいから一緒に…ね?」

モゾモゾ

魔娘「…おやすみ」

~翌朝~

男「んー…ん?」ネボケー

魔娘「スゥ…スゥ…」

男「…なんで一緒に寝てるの?」

~午後~

魔娘「ねむかったぁ…」

男「あ、頭が痛い…賢者様のお勉強、難しかったね…呪文の種類っていっぱいあるんだ…」

賢者「ほら。二人とも午後の鍛錬の時間ですよ」

魔娘・男「「はーい」」
  ・
  ・
  ・

盗賊「んじゃあ午後の鍛錬を始める。男はこっちだ」

魔娘「え?私は?」

賢者「貴女はこっちです」

魔娘「はーい…」
  ・
  ・
  ・

盗賊「男、お前の柄物はその長鉈だけか?」

男「はい。なんでも切れて便利がいいんですよ」ニコッ

盗賊「そうか…ちょっと構えてみな」

男「はい」

スッ

盗賊(なんだあの構えは!?地面すれすれまで姿勢を低くして…)

男 フッ

盗賊(気配を消した!?)

カッ ブオン!

盗賊「!?」

男「…こんな感じですけど」

盗賊「…」

盗賊(あのくそ重たい鉈で衝撃波を出しやがった…勇者でさえ旅の終盤でやっと習得した技だってぇのに…)

男「…あの、盗賊さん?」

盗賊「ん?ああ、わるいわるい。お前、そのかまえは誰に教わった?」

男「あ、シスターに教わったんです。いつもこうやって熊やイノシシを捕まえてたんですよ」

盗賊「なるほどねぇ。それであの居合いか…」

盗賊「ところで、その一撃をかわされたらどうすんだ?」

男「そういう時は逃げます」

盗賊「やっぱりな。一撃を放った後は殆んど無防備だもんな」

男「でも、今まで大丈夫でしたよ?」

盗賊「そりゃ相手が動物だからな」

男 ピクッ

盗賊「まあ、男の動きも大体分かったし、鍛錬の方針も大体決まった」

盗賊「まずは防御を覚えないとな」

男「防御?」

盗賊「ああ。今のお前は目の前の相手を一撃で倒すことはできても、人間や魔族が相手の乱戦だとすぐにやられちまう」

盗賊「まずは防御だ。それができるようになりゃあ逃げ回ることもねーだろ」

男「は、はあ…」

盗賊「最初は気配を読む練習からだ。敵や味方がどこに居るか、ちゃんと分かるようになんねーとな」

男「は、はい!」

~木の下~

魔娘「木陰涼しー♪」

賢者「そうですね」

魔娘「…あの…」

賢者「なんですか?」

魔娘「鍛錬…しないんですか?」

賢者「…もうそろそろですかね」

盗賊「おーい」

賢者「さ、行きましょう」

魔娘「え?は、はい」

盗賊「さっそくだけど頼むわ」

魔娘「え?おと…こ?」

男 グター…

賢者「…やりすぎじゃないですか?」

盗賊「こんぐらいやんなきゃ上達しねーだろ?」

賢者「…まあいいです。では魔娘、男を回復してやってください」

魔娘「あ、はい…“回復呪”」

ぱぁ…

男「…あ、痛くなくなった」

賢者「…今度は回復度を大きくしてみてください」

魔娘「う、うん。“中回復呪”」

…プスン

魔娘「…あら?」

賢者「…魔娘。貴女は“中回復呪”の練習からですね」

魔娘「…はい…あ、“変化呪”のほうは…」

賢者「失念していました。そうですね。では…貴女は何に変化できますか?」

魔娘「今は人間だけです…」

賢者「そうですか。変化については私も詳しくは無いのですが…」

魔娘「賢者様は何に変化できるんですか?」

賢者「私は竜に変化できますよ?」

魔娘「りゅ、竜!?」

賢者「貴女にもそこまで出来るようになって欲しいのですが」

魔娘「無理です…」

賢者「やる前から諦めたら、出来るものも出来ませんよ?」

魔娘「…」

賢者「貴女には天賦の才があります。私はそれを延ばすお手伝いをしたいのです」

賢者「ですが、貴女がそれを望まないのであれば…私は無理強いはしません」

魔娘「…」

魔娘(もし私に力を使いこなす能力があれば…お父様の傍にいられたのかな…)

賢者「…どうですか?」

魔娘「…お願いします」

賢者「分かりました」ニコッ

賢者「それから男」

男「は、はい」

賢者「貴方も“回復呪”、“火炎呪”、“雷撃呪”、“凍結呪”等の基本的な呪文は覚えておきなさい。きっと役に立ちますから」

男「はーい…」

~6年後~

男「…」

…ヒュン!

男「ナイフ!」ヒョイ カカカカ

盗賊「甘い甘い!」シュシュシュシュッ

男「連投!?衝撃波で吹っ飛べ!ふんっ!!」ブォン!カチャカチャン…

盗賊「まだまだあ!それ!」ヒュンヒュン

男「弓矢!?横に飛んで!」ズザサー

賢者「“大雷撃呪”!!」

男「な!?“転移”!」シュイン

バリバリバリズズゥウウン!!!

賢者「…」

盗賊「…っ!後ろかっ!」シュッ

男「爆弾!?あっち行け!」バシィ!

ヒュー…

魔娘「…え?ちょっ!ちょっとお!!へ、“変化呪”!!」

男「あ」

ズズゥウウウン…パラパラパラ…

賢者「…直撃ですね」

男「みたいですね。あははは…」

魔娘「こらっ!」ペシッ!

男「いてっ!」

魔娘「『あははは』じゃないわよ!」ペシッ

男「いてっ!ご、御無事で何より…」

魔娘「無事じゃないわよ!見てよ!!髪の毛がちょっと焦げちゃったじゃない!!」

賢者「魔娘も油断大敵ですよ?怪我はありませんか?」

魔娘「あ、はい。メタルスライムに変化するタイミングがちょっと遅れたけど何とか」

賢者「よかったです。にしても…あの爆弾はやり過ぎではないですか?あんな大きな穴をあけてますよ?」

盗賊「よく言うぜ。賢者だって都市攻撃魔法の“大雷撃呪”まで使ったくせに」

ヤイノヤイノ

男「ふたりともやりすぎだって。なあ?」

魔娘「ええ。別の意味でもヤリ過ぎだけどね」

男「あー。確かにな…」チラッ

男(魔娘も結構でかい胸になったなぁ。シスターには負けるけど…)

男(…シスター、どうしてるんだろ…ん?)

魔娘 ジトー

男「な、なんだよ…」

魔娘「えっち」

男「な!?誤解だ!!」

魔娘「よく言うわよ!さっきから私の胸元見てるじゃない!!」

男「それはシスターのこと思い出してっ!!」

魔娘「…シスター?」

男「あ…な、なんでもない!さあて、ちょっとぶらついてくるかなー(棒)」スタッ

魔娘「…」

~夜~

魔娘「スー…スー…」

男「…」ムクッ

ミシッ ミシッ… パタン

男(荷物荷物っと…あった。あとは…)

コソコソ

キィ… パタン

~家の前~

男「…ふぅ。見つからなかったみたいだな」

盗賊「誰にだ?」

男「え!?」ドキッ

盗賊「こんな夜中に、どこに行こうってんだ?」

男「いやその…ちょっとそこまで?」

盗賊「…」

男「あの…」

盗賊「…魔界か?」

男「…」

賢者「まったく…どうして黙って行こうとするのですか?」

男「あ」

賢者「…赤竜を探しに行くのですよね?」

男「…はい」

賢者「もう…生きていないかもしれませんよ?」

男「…」

賢者「それでも行くのですか?」

男「…はい」

賢者「…そうですか。では、この使い魔を連れて行きなさい」

男「え?反対しないんですか?」

盗賊「かわいい子にゃあ旅をさせろってな。ほれ、地図だ。」

男「あ、ありがと…」

盗賊「それと…これも持ってけ」

男「…これは?」

盗賊「俺が使ってたお守りだ。鉈の柄にでもつけてろ」

男「…はい」

賢者「…私は反対なんですが…盗賊が行かせろと五月蝿いのですよ」

男「盗賊さんが?」

盗賊「まあ、アレだ。ヤバくなったらさっさと帰って来い。命あっての物だねだからな。それと…」

トテテテ

魔娘「はあ…はあ…間に合った…」

男「え?魔娘!?」

魔娘「あなたねえ!私に黙ってどこに行こうって言うのよ!!」

男「え…あ…」

盗賊「シスターを探しに、魔界に行くんだとよ」

魔娘「やっぱり…で?魔界のどこに行けば竜に会えるか知ってるの?」

男「う、ううん…」

魔娘「ったく…しょうがないから私も一緒に行ってあげるわ!」

男「え?いやそれは」

魔娘「どうせ魔界のことロクに知らないんでしょ?そんなんじゃ竜のところに着く頃には爺さんになってんじゃない?」

男「うっ」

魔娘「だからよ。どう?いいでしょ?賢者様」

賢者「…くれぐれも危険なことをしてはいけませんよ?貴女はレディーなのですからね?」

魔娘「はい。わかりました」

盗賊「シッカリ守るんだぜ?お姫様をよ!」バシン

男「痛いって」

賢者「魔娘」

魔娘「はい」

賢者「この旅の間、貴女は人に変化したままでいなさい。そのほうが面倒が無いでしょう」

魔娘「分かりました」

賢者「それから…」チョイチョイ

魔娘「なあに?」

賢者『男も年頃ですから注意なさい』コソコソ

魔娘「なっ!何言ってるんですか!!//」

賢者『もしそうなっても慌てないで-----』コソコソ

男「あのふたり…何話してるんだ?」

賢者「いいわね?」

魔娘「…//」コクン

盗賊「…よーし!行って来い!!」

賢者「時々でいいですから使い魔を使って手紙をよこしなさい」

男「はい!」

魔娘「じゃあ、いってきまーす!!」ノシ
  ・
  ・
  ・

賢者「…ようやく旅立ちましたね」

盗賊「ああ。ようやくだな」

賢者「男も魔娘も…立派に育ってくれました」

盗賊「よく頑張ったな賢者」

賢者「貴方が協力してくれたおかげですよ」

盗賊「よせやい」

賢者「寂しくなりますね…」

盗賊「そうだな…」

コテン

盗賊「賢者?」

賢者「ちょっとこのままで…」

盗賊「ん…」

賢者「…」

盗賊「…なあ」

賢者「なんですか?」

盗賊「奴等が帰ってくるまで…ここで待ってようぜ?二人でよお…」

賢者「…はい」

~無人の村の家~

魔娘「ねえ!なんでこんな近くで休むのよ!!」

男「いやまあ…もう賢者様達にもばれてるし…ここならベッドで休めるからさ」

魔娘「夜通し歩くのかと思ってたのに…」

男「まあまあ。明日からはテントで寝たりすることになるんだし、今日ぐらいはさ」

男「それにここは…小さい頃に世話になった肉屋のおばちゃんの家なんだ」

魔娘「それで?」

男「だから…村を出る前にここに来たかったんだ」

魔娘「…しょうがないわね」

男「ゴメンな?」

魔娘「いいわよ。もう寝ましょう?」

男「ああ。じゃ、おやすみ」

魔娘「おやすみー」

今日はここまでにします

おやすみなさいノシ

おもしろい!
乙!


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まとめでもおk

>>268

blog.livedoor.jp/ssdobin64/lite/

>>258-269 ありがとうございます

>>268 >>269はスマホ版かな?
PC版はこちらに置いてます

http://blog.livedoor.jp/ssdobin64/

~二日後~

テクテク

魔娘「…ねえ」

男「なに?」

魔娘「まだ次の村につかないの?もう疲れたんだけど」

男「もうすぐ着くと思うんだけど…あ、あれじゃないか?」

魔娘「ん?…えー!?まだあんなに歩くのぉ?」

男「晩飯までには余裕で着くって。さ、歩こう」

魔娘「…“変化呪”」 ボンッ

男「…スライムに変化してどうするんだ?」

モゾモゾ

男「あ、おい!なんで俺の鞄に入ってくるんだよ!!」

スライム(魔娘)『疲れたから寝るわ。あとはよろしくね?』

男「あっくそ!…しょうがないなぁ。村の手前までだぞ?」

スライム プルルン♪

~最初の村~

テクテクテク

魔娘「はあ…宿まだあ?」

男「ちょっと待てって。村の人に聞いてみるから」

魔娘「もう我慢できないわ。早くして…」

男「まったく…あ、すいませーん。宿ってどこにありますか?」

モブ村人「ああ、それだったらその先をずっと行って右側にあるよ」

男「ありがとうございます」

?1「おい、あんた」

男「はい?」

?2「…あんた、その先の村から来たのか?」

男「は、はい」

?1「やっぱり!てめえ男だな!」

男「え?…あ!あんたひょっとして…」

?1改め元・村人A「みんな聞いてくれ!俺がいた村は竜に襲われて住めなくなった!!」

?2改め元・村人B「コイツはその竜の仲間なんだ!こいつを村に入れるな!!」

エ?ソウナノカ? ソウイエバアイツラアッチカラキタヨナ… ッテコトハアノフタリハリュウノナカマ?

ザワザワザワ

魔娘「え?な、なに?どうしたの!?」

男「…走るぞ」ボソッ

グイッ

魔娘「え?あっ!ちょっ…ちょっとお!!」

タタタタタ…

元・村人A「あ!逃げたぞ!!石を投げろ!!」ビュン

元・村人B「やましいことが無けりゃ逃げないはずだ!やっぱりあいつは竜の仲間なんだ!!」ビュン

モブ村人「で、出て行けー!」ビュン

ボスッ ドンッ

魔娘「いやん!いたっ!なんでよお!!」トテテテテ

男「黙って走れ!」タタタタタ
  ・
  ・
  ・

男「はぁ…ここまで来れば大丈夫だろ」

魔娘「はぁ、はぁ…何よあいつら!何個か当たったわよ!!痣になったらどうするのよ!!“回復呪”!」

男「…あの人たちは元々家の近くの村に住んでたんだ」

魔娘「顔見知りってこと?それであんな仕打ちするなんて…あなたいったい何したのよ!!」

男「…俺が10歳のとき黒い竜が村にきて、シスターが赤い竜に変化して囮になって村人を避難させたんだ」

男「それで、あの人達はシスターが竜に変化するところを見たとか言ってたんだ」

男「だからあの人たちにとって見れば、自分達はシスターに騙されたって思ってんだろ」

男「で、俺はいつもシスターと一緒だったから、竜の手先ってことになってると思うんだ」

魔娘「それってただの誤解じゃない!しかも男が一方的に悪者にされて!!」

男「まあ、しょうがない。あの頃俺はまだガキで、どうすれば誤解が解けるかなんて考えることもしなかったからな」

魔娘「なんか悔しい…」

男「…悪いな。今日は宿には止まれそうにないから村を迂回して街道を進もう」

魔娘「えー!?」

男「ほら。スライムに変化して鞄に入れ」

魔娘「…しょ、しょうがないわねっ!“変化呪”!」ボフン

~夕方~

男「結局最初の村からそんなに離れられなかったな」

魔娘「あー!今日はベッドで寝られると思ってたのにい!!」

男「じゃあ魔娘だけ最初の村に戻るか?」

魔娘「男はどうするのよ」

男「俺はここにテントを張って寝る」

魔娘「じゃあ私もここで寝るわ」

男「無理しなくてもいいんだぞ?」

魔娘「む、無理じゃないわよ!寂しがり屋の男が心配だからでしょ!!」

男「はいはい。じゃあテントを張るのを手伝ってくれ」

魔娘「しょうがないわね…」

男「よし。じゃあそっちを持って…ん?」

魔娘「…蹄の音?」

男「…誰か来る」

魔娘「え?」

パカラッ パカラッ カカッ カッ

村長「どうどう」

男「…誰だあんた?」

村長「私は最初の村の村長です」ニコッ

魔娘(胡散臭い中年親父ね…)

村長「…あなた達、今日はここで休むんですか?」

魔娘「ええ。村に泊まろうかと思ったけど無理みたいだからね」

村長「そう言えば誰かが言ってましたね。竜の仲間だって」

男「…で?何か用か?」

村長「そうとんがらないでください。あなた…腕に覚えはありますか?」

男「まあ、少しぐらいなら」

村長「だったら畑の魔物を退治してくれません?」

男「スライムとか?」

村長「スライムなんか子供でも倒せますよ。畑の中におる魔物を退治してほしいんです」

男「けどさ、俺、村人達に石投げられて何とかここまで逃げてきたとこなのに…」

村長「村の中には入らんから心配しなくてもいいですよ。直接畑に行ってくれれば」

男「いやまだやるって決めてないけど」

村長「…報酬は金貨5枚です」

魔娘「やります!」

※金貨1枚=銀貨100枚=銅貨10,000枚、銅貨1枚≒10円

男「ちょっと待て!魔娘、お前何考えてんだよ!!」

魔娘「お金よ!?金貨5枚よ!?旅をするなら金は必要でしょ?」

男「だからって…あんな目にあったのに…」

魔娘「それはそれ。これはこれでしょ?」

男「そ、そうだけど…人助けになるし、まあいいか」

魔娘「そうそう♪」

魔娘(ホント、男ってお人よしだわ)

村長「じゃあ決まりですね?」

男「ああ。で、畑の場所は?」

村長「村の手前の森側です。頭がでかくって、近づくとガスを吐いて眠らされていまいます」

魔娘(特徴からしてお化けキノコかしら…)

男「で、報酬の受け渡しは?」

村長「成功報酬です。魔物を倒してくれたら払いますよ」

魔娘「ふーん…」

男「じゃあ、ちょっと行ってくる」

魔娘「私も行くわ」

男「…へ?」

魔娘「魔物の知識もちょっとはあるのよ?弱点を知ってるやつかもしれないしね」

男「まあ、そう言うことなら…」

村長「…では、案内します」
  ・
  ・
  ・

村長「あいつです」

お化けキノコ バフゥ…

男「…結構でかいな」

魔娘「あれはお化けキノコね。男の凍結魔法でイチコロじゃない?」

男「え?」

魔娘「どうしたの?」

男「いや…火炎魔法で焼いたほうがうまそうじゃないか?」

魔娘「はあ?あなたあれを食べるって言うの!?」

男「食えないのか?」

魔娘「当たり前じゃない!毒にあたっても知らないわよ!?」

男「毒があるのか…じゃあダメだな」

魔娘「それに火炎魔法だとすぐに動きを止められないでしょ!?反撃してきたらどうする気!?」

男「…凍結します」

魔娘「わかればよろしい」

村長「あの…そろそろ…」

男「あ、はいはい。じゃあ…出来るだけ近づいて…」

魔娘「仕方ないわね…」

男「え?」

魔娘「なに?」

男「魔娘も来るのか?」

魔娘「あのねえ…お化けキノコは毒を持ってるのよ?男が毒にやられたら誰が解毒するの?」

男「あ、そっか」

村長「…大丈夫ですか?」

魔娘「大丈夫よ。こう見えても腕は確かだから」

村長「それならいいのですが…」

魔娘「じゃあ、行ってくるわね」

村長 ニヤリ

~畑~

男「…そろそろ射程距離かな?」

お化けキノコ バフゥ…

男「これ以上近づくとガスにやられるな…」

魔娘「そうね。一撃で仕留めなさいよ」

男「ああ。…“凍結呪”!」

お化けキノコ「!?」

カチコチカチコチ…

男「…こんなもんかな?」

魔娘「やりぃ!」

パカラッパカラッ

男「…え?村長?」

魔娘「何してるのよ!追うわよ!!」

男「あ、ああ」

~最初の村~

魔娘「村に入ってっちゃったわね…」

男「しかも村の入り口に村人が集まってるし…」

男「ひょっとして俺達…騙された?」

魔娘「そうみたいね…」

村長 ニヤニヤ

魔娘「どうでもいいけどあの顔!腹が立つわね!!」

男「…諦めるか?」

魔娘「誰が!ちょっと村長!!」

村長「おやおや。竜の仲間が何か言ってますよ?」ニヤニヤ

魔娘「…村長。あれで終わったって思ってるの?」

村長「ああ、終わりましたよ。あの魔物は死にました。もうあなた達に用はありません」

魔娘「あなたバカ?あれで終わるわけないでしょ?」

村長「なに?」

魔娘「お化けキノコはね、胞子を飛ばして増殖するの」

魔娘「私達は親玉は倒したけど胞子までは片づけてないのよ?残念ねえ」

村長「うそです!そんな話信じられません!!」

魔娘「嘘だと思うんなら明日の朝、あの畑に行ってみればいいわ。小さなキノコが生えてるはずだから」

村長「なっ!」

魔娘「胞子を片付けるには男の火炎魔法で一気に焼却しないと無理ね~」ニヤッ

魔娘「でもさっきのお金も貰ってないし、私達はこんな気分の悪い村に居たくないからもう出発するわ」

村長「っ!」

魔娘「じゃあね。さようなら~」フリフリ

男「え?マジで行くのか?」

魔娘「当たり前でしょ?ほら、行くわよ!」グイッ

男「あ、ああ…」

村長「待ちなさい!」

魔娘「いやよ」

村長「…すみませんでした!だから胞子も片づけてください!!」

魔娘「…報酬は?」

村長「…き、金貨5枚です!」

がんば

魔娘「…10枚」

村長「…え?」

魔娘「金貨10枚。さっきのも合わせて金貨15枚。前金でいただくわ」

村長「そんな無茶な!」

男(魔娘、すごいな…)

魔娘「だったらいいわよ?じゃあね」

村長「…ま、待ってください!」

魔娘「…用意できたの?」

村長「き、金貨10枚で…」

>>293 ありがとうございます

魔娘「はあ?何言ってんのよ。金貨15枚よ」

村長「あなた達は最初から分かってて魔物をやっつけたんでしょう!だから合わせて10枚です!!」

魔娘「話にならないわね」プイッ

村長「くっ…わ、わかりました!金貨15枚です!!」

魔娘「前金でよ」

村長「分かってます!今持っていきます!!」

魔娘「最初から素直に出してれば金貨5枚で済んだのにねえ」ニヤッ

男(今度から交渉は魔娘に任せよう。うん)

~次の日~

魔娘「…ふぁああ…」

男「大あくびだな」

魔娘「しょうがないでしょ?夜通し歩きづめだったんだから…」

男「だからテントで寝ようって言ったのに…」

魔娘「男ってホントに気楽よねえ…もし寝てるときにあの村の連中が襲ってきたらどうするのよ」

男「負ける気しないんだけど」

魔娘「あなた反撃する気?そんなことしたら私達がお尋ね者になっちゃうでしょ!?まったく…」

男「なんでさ」

魔娘「あのねえ…向こうのほうが人数が多いのよ?“あいつらがいきなり襲ってきた”って言われたら、わたし達のほうが悪者になっちゃうでしょ?」

男「そっか…お前、頭いいんだな」

魔娘「あなたがバカなだけよ」

男「ひどいなおい」

魔娘「それより次の村まであとどれぐらいなの?」

男「地図によると…この距離なら夕方ぐらいだな」

魔娘「ええー!?そんなにあるの!?」

男「歩いてれば着くさ。行くぞ」

魔娘「はーい…」

~廃村~

ヒュー…

男「…」

魔娘「…ひどい…」

男「…家の中にまで押し入って皆殺しか…」

魔娘「あんな小さい子供まで…メチャクチャね…」

男「しかも金目のものは全部持っていかれてる…」

魔娘「…誰がこんなことを…」

男「…野盗だろうな」

魔娘「え?」

男「家具についてる傷を見てみな?どう見ても鉈とか剣とかで切りつけた傷だ」

魔娘「じゃあ…」

男「この辺で鉈や剣を扱うのは人間だけだろ?」

魔娘「そうね…でも…どうして!?どうして人間は同族殺しを平気でするの!?」

男「…」

魔娘「魔族はこんなことしない!こんなひどいことはっ!!」

魔娘「男も!こんなことするって言うの!?」

男「人間はいっぱいいるから…中には狂った人間もいる…」

魔娘「だからって!」

男「…他の家を見てくる」

魔娘「うぅ…」グスッ
  ・
  ・
  ・

男 ゴソゴソ…

ミシッ ミシッ

魔娘「…男…さっきはゴメン…」

男「…」

魔娘「…あの光景見て頭に血が上っちゃった…ホントにごめんなさい…」

男「…もういいって。気持ちを切り替えようぜ」

魔娘「うん…なにしてるの?」

男「掃除してベッドで寝られるようにしてるんだ」

魔娘「…え?ここで寝るの!?」

男「ああ。この家は空き家だったみたいでほぼ無傷だったから、ベッドや毛布を他の家から持ってきたんだ」

魔娘「…」

男「…いやか?」

魔娘「…しょうがないわね。徹夜で歩いてたから眠いし」

男「じゃあそっちのベッド使ってくれ」

魔娘「その前にお祈りしましょ?村人たちのために…ね?」

男「…そうだな」

~翌日~

テクテクテク

魔娘「んーっ!心なしか足が軽いわ♪」

男「ははは。そりゃ良かった。スライムに化けてるとは言え魔娘が鞄の中に入ってくると重いからなぁ」

魔娘「なによ。あたしが重いって言うの?ぶーぶー」

男「ほら。ぶーぶー言って豚みたいじゃん」

魔娘「失礼ね!私のどこが豚なのよ!!」

男「ぶーぶー言うとこ」

魔娘「…“変化呪”」 ボフッ

男「…おいなんでオークに化けるおい止めろ鞄の中に入ろうとするな重いって重いから止めろ止めてってばイヤホント勘弁してくださいお願いします」

オーク(魔娘)『…何か言うことあるでしょ?』

男「すみません魔娘さんは容姿端麗です豚みたいと言ってすみませんでした」

オーク(魔娘)『わかればよろしい。“変化呪”』ボワン

男「…はぁ…」

~夜・テント~

パチパチ…

魔娘「…スー…スー…」

男「ふぁああ…」

バサバサバサッ ホーッ ホーッ

男「ん…使い魔が帰って来たか」

シュッ

男「ご苦労さん。ほら、ハムだ」ポイッ

使い魔 シュッ ハムハム…

男「そんなに慌てるなって。ははは。手紙はっと」カサカサ

  男へ

  最初の村では魔娘の機転でうまく切り抜けたようですね。

  貴方のことですから暴れたりすることはないと思いますが、

  くれぐれも民に手を出さないよう気をつけなさい。

  廃村のことですが…人は欲望を理性で制御します。

  ですが、稀にそれができない人もいます。

  そういった人が欲望のままに村を襲ったのでしょう。

  これは私考ですが、彼らがそうなった原因のひとつは子供のころにあると思われます。

  人は生まれた時は丸い心を持っています。

  それが成長するにつれ、嫌なこと、怒ること、悲しいことなどで傷がつきます。

  心の傷は温かい心で包まれるか、時間をかけないと治りません。

  そうして治った傷の周りが膨らみ、心が大きくなっていくのです。

  そのおかげで理性的な行動ができるようになると思っています。

  ところが、心の傷が治らないうちにまた傷つけられると、心が削れて小さくなります。

  廃村を襲った人たちも心が削れて理性的な行動ができなくなったのではないでしょうか。

  だから欲望のままに行動すると考えます。

  そういった人と争うと貴方の心も削れてしまいますので、出来るだけ争うことのないようにしてください。

  追伸:魔娘とはうまくやっていますか?喧嘩はしていませんか?

  貴方達が居なくなってここは静かになり少し寂しくなりました。

  盗賊も心なしか元気がありません。

  貴方達の目的が早く達成され、無事帰ってくることを願って止みません。

男「…」カサッ

男(やっぱり賢者様はすごいな…)

男「“心が削れる”か…そうなんだろうな…」

魔娘「スー…スー…」

男(…明日、魔娘にもこの手紙を見せよう)

男(けど“貴方達の目的”って…俺の目的だろ?)

~小さな町~

魔娘「…小さいけど必要な施設は整ってるわね」

男 キョロキョロ

魔娘「ちょっと男!そんなにキョロキョロしないの!!」

男「いやだってさ、話には聞いてたけど町なんて初めてだからさ。すごいなぁ…あ、あれは?」

魔娘「あれは両替屋ね。お金を両替してくれるの。ちょうどいいからこの金貨を両替してもらいましょう」

男「え?なんで?」

魔娘「金貨は高額貨幣だから、使いやすい銀貨や銅貨に変えてもらうのよ」
  ・
  ・
  ・

両替屋「まいどありぃ」

男「両替するだけで銀貨3枚とられたぞ?」

魔娘「しょうがないでしょ?そこいらのお店だと金貨が使えないところもあるし」

男「そうなのか?」

魔娘「あなたねぇ…買い物したことないの?」

男「買い物ぐらいしたことあるさ」

男「けど、金貨なんて見たことないからな。どれだけ価値があるかわかんなかったよ」

魔娘「…まあいいわ。宿を探しましょう」

男「そうだな」

~宿屋~

魔娘「ツインで」

宿屋「銀貨15枚だよ」

魔娘「高いわねえ…」

宿屋「この町には他に宿屋は無いぞ」

魔娘「…しょうがないわね」チャリン

宿屋「ほれ。部屋は2階の一番奥の部屋を使ってくれ」

魔娘「ありがと」チャラ

トントントン…

男「なあ。わざわざ同じ部屋にしなくていいんじゃないか?」

魔娘「そうしたいのは山々だけど、お金がもったいないでしょ?」

男「そりゃまあそうだけど…」

魔娘「何よ今さら。同じベッドで一緒に寝たこともあるんだから、今さら同室ぐらいでガタガタ言わないの!」

男「ベッドで一緒に寝てたのはもっと小さいころだろ?」

魔娘「細かいことは気にしないの!」

ガチャ

魔娘「へえ。使いこんでるわりにはよく手入れされてて結構いい部屋じゃない?」

男「ああ。シーツも洗剤の匂いがして清潔そうだし」

魔娘「じゃあ、荷物を置いて町の散策に行きましょ」

男「そうだな」

~飯屋~

魔娘「んー!おいしー♪」

男「賢者様の料理に似てるけど…どうやって味付けしてるんだ?」

魔娘「たぶん胡椒ね。賢者様のは生姜で味付けしてておいしかったけどまた違った味わいね」

男「うん。これはこれでうまいな」

魔娘(男ってホントにおいしそうに食べるわね)
  ・
  ・
  ・

男「…さて、腹もふくれたし、町をブラブラするか」

魔娘「そうね。腹ごなしも兼ねてね」

ブラブラ…

男「…こうやってみるといろんな店があるな」

魔娘「そうね。食材屋、武器屋、防具屋、道具屋、飯屋に酒場、口入屋もあるわね」

男「ほかの店は見たことあるけど…口入屋って初めてだな」

魔娘「そうね。覗いてみる?」

男「ああ」
  ・
  ・
  ・

男「ふーん…いろんな仕事を斡旋してるな」

魔娘「私たちみたいな旅人はね、手持ちのお金が少なくなったらこういうところで仕事をもらうのよ」

魔娘「報酬は仕事の内容によって決まるわ。難しい仕事ほど報酬は多いわね」

男「へえ…よく知ってるな」

魔娘「賢者様が教えてくれたでしょ?」

男「え?…あー、そういえば聞いたことある…かも?」

魔娘「あなたって…ちゃんと勉強してたの?」

男「ははは…」

口入屋「あんたたち、旅人かい?」

魔娘「ええ」

口入屋「そうかい。旅は若いうちにしといたほうがいい。仕事を探してるのかい?」

魔娘「いいえ。ちょっと見学させてもらってます」

口入屋「ははは。見学って言っても今は店の手伝いか農家の手伝いぐらいしかないだろ」

男「…これは?ひとつだけ報酬がすごいけど」

口入屋「ああ。それは野盗の討伐隊だな」

男「討伐隊?」

口入屋「近くの村…と言っても歩いて1日はかかるが、そこが廃村になったんだ。知ってるか?」

魔娘「…ええ」

口入屋「その村は野盗に襲われたって噂だ。だから王都から兵隊さんが討伐に行くんだが、その手伝いさ」

口入屋「その仕事は直接討伐するわけじゃないんだが、なにしろ行き先が危険なんで報酬が高いのさ」

男「そうですか…」

口入屋「それから、その仕事はあんたらには無理だ」

魔娘「そうですね」

男「え?なんで?」

魔娘「ほら。下のほうに条件があるでしょ?」

男「ん?…あ、これか。“なお、応募者は当地の土地勘があるものに限る”か」

口入屋「そういうこった。うちも紹介する限りは条件を満足する人でないと、店の信用にかかわるからな」

魔娘「そろそろ行きましょうか。じゃあ、お邪魔しました」ペコッ

口入屋「また来てくれよ。かわいいお嬢さん」

男 ペコッ
  ・
  ・
  ・

男「…なあ。あの討伐って出来るんだろうか?」

魔娘「…無理ね。もうあの近くにはいないでしょうね」

男「そうだよな…人の気配なんか微塵もなかったしな」

魔娘「ま、この町が潤うんならいいんじゃない?」

男「なんで?」

魔娘「兵隊がいるんならその分お金を使ってくれるでしょ?その分この町のお金が増えるんだからね」

男「なるほどなあ」

魔娘「…あなたって」

男「ん?」

魔娘「ホンットに世間知らずねぇ…」

男「ほっとけ」

~森の中の街道~

テクテクテク

魔娘「見通しが悪いわ…」

男「森の中だからな」

テクテクテク…

魔娘「っ!?」

男「しっ!」

ガサガサ ガサガサ

魔娘「…囲まれてるわ」

男「…7人か」

バサバサ!

野盗1「おおお、おまえら!金目の物を置いていけ!」ガタガタ

野盗2「へへへんなことしたら、ぶぶぶ、ぶっ殺すぞ!」ガタガタ

野盗‘s ゾロゾロ

魔娘「…どうするの?」

男「どうするって…とりあえず」チャキ

ブォン!メキメキメキ…ズドン

魔娘(鉈の衝撃波で大木を真っ二つにしちゃった…)

野盗‘s ゴクリ

男「やるんなら相手になるけど…手加減しないぞ?」

野盗‘s ガサガサガサガサ

魔娘「逃げちゃった…賢明な判断ね。…あ」

野盗1「ひぃいい!!こここ、腰がぁああ!!!」ジタバタ

男「…逃げ遅れたみたいだな。おい」

野盗1「いいい、命だけは御助けをぉおお!!」

男「ちょっと聞きたいんだけどさ」

野盗1 ビクッ

男「…あんたら、なんで野盗になったんだ?」

野盗1「…へ?」

男「木を切り倒しただけで逃げるなんて野盗っぽくないだろ?」

野盗1「…」

魔娘「ちょっと!」

男「なんだよ」

魔娘「さっさと行きましょうよ!面倒なことは御免だわ」

男「…でもさ」

魔娘「いいから!ほら、荷物持って!!」

男「で、なんでだ?」

魔娘「男!もう!!」

野盗1「…わ、わしら…食っていけなくなったんだ…だから…」

男「食っていけないって?」

野盗1「…わ、わしらはこの近くで牧畜をしてたんだ…けど…魔物に牛と豚を食われて…」

魔娘「そ、それがどうしたのよ…また子牛を買ってくればいいでしょ!?」

野盗1「そそ、そんな金なんかねえ!国にこの土地を押し付けられて…開墾してようやく牧草地にしたんだ…」

野盗1「し、借金して牛と豚を買って…やっと売りに行けると思ったところに魔物の襲撃だぁ…」

男「…」

野盗1「もう金を貸してくれるとこもねえ…このままじゃ家族みんな死んじまう…だからあんたらを襲ったんだ」

魔娘「…」

男「…なあ」

魔娘「な、なによ…あ!」

男「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!!」

魔娘「いやよ!これは私のお金なんだから!!ちょっと!!やめなさいって!!」

~街道~

テクテクテク

男「…なあ、いつまでむくれてんだ?」

スライム(魔娘) ブス-

男「重いからいい加減鞄から出てほしいんだけど」

スライム プイッ

男「…ちょっと金貨が減っただけだろ?」

スライム『ちょっと!?金貨10枚がちょっとな訳ないでしょ!?』

スライム『だいたいねえ!あなたは人が良すぎるわ!!あんな話を信じるなんて!!』

男「だってさ、あのまま放っておくのは寝覚めが悪いし…」

スライム『だったらあんたが何とかしなさいよ!私のお金を使うんじゃなくて!!』

男「いやだってあのお金は俺が魔物を倒して貰ったもんだし」

スライム『それは最初の5枚だけ!あとの10枚は私のおかげでしょ!?それをあなたは!!』プクー

男「だー!分かった分かった!!分かったから鞄の中で膨れるな!!次の町でまた稼ぐから!!」

スライム『当然よ!』

男「まったく…」

~山麓都市~

「さあさあ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!めずらしいものが目白押しだよお!!」

「ねえお兄さん。チョンの間銀貨30枚でいいわよ♪」

「今日のあなたの運勢は!?当たるも八卦当たらぬも八卦!」

「今日ツいてるあなた!スロットでツキを生かしましょう!!」

男「すごいな」キラキラ

魔娘「そう?」

男「だってこんなに活気がある町は初めてだし」

魔娘「盗賊さんの情報によるとここは王都と西側の町のちょうど真ん中にあって、中継点として賑わってるらしいわ」

男「そっかー」

魔娘「くれぐれも変な店にはいかないようにって書いてあるわ。って言ってる傍から!」

立ちんぼの女「お兄さんかわいいわねえ♪どう?いいことシ・テ・ア・ゲ・ル♪」

男「い、いいこと…ですか?」

魔娘「ちょっと!何やってんのよ!!早くこっちに来なさい!!」グイッ

男「あ。ちょっ、ちょっと!」

立ちんぼの女「あらあ?連れが居たのね」

魔娘「そういうこと!ほら早く!!」

立ちんぼの女「たまには違う女もいいわよお?」クスクス

魔娘「ダメです!」

男「ばいばーい…」

魔娘「まったく…ちょっと目を離すと…油断も隙もあったもんじゃないわ」

男「…なあ」

魔娘「何よ!」

男「…なんでそんなに怒ってるんだ?」

魔娘「怒ってないわよ!」

男「いや明らかに…」

魔娘「怒ってません!!」

男「は、はい…」
  ・
  ・
  ・

「腕に覚えのあるやつは寄っといで!5人勝ち抜きで金貨15枚!10人勝ち抜きだと50枚だ!!」

男「あれは?」

魔娘「闘技場ね。ちょっと覗いてみる?」

男「そうだな」ワクワク

魔娘「…ちょっとだけよ?」

男「わかってるって」
  ・
  ・
  ・

魔娘「どう?」

男「どうって言われても…」

魔娘「勝てそう?」

男「まあ、あれぐらいならな。ヒノキの棒で打ちあってるだけだし、みんなそんなに強くないし」

魔娘「ちょっと!そんなこと大きな声で言わないの!!」

「強くないだって?」

「生意気なこと言ってんじゃねえぞガキ!」

「じゃあお前出てみろよ!!」

男「え?え?」

魔娘「…ほら。こうなっちゃうんだから…」
  ・
  ・
  ・

「すげえぞあのガキ…」

「あっという間に4人抜きだ」

「しかも全部一撃で…」

魔娘「次で5人抜きね…この辺がころ合いかしら」

オオーッ!

「あのガキ5人抜きしやがったぞ!」

「ああ。けど次は…」

「6人目は誰だ?」

「あの怪力男だ」

男「…すごいでかいな」

怪力男「テメエなんか一撃でつぶしてやる」

男「そうもいかないんだな」ヒュン

怪力男「な!消えた!?」

男「上だよ」ブンッ

怪力男「っ!」ガキッ

ギリギリギリ…

怪力男「…な、なんちゅう力だ!」

男「ガキの頃から鍛えてるんでね」

怪力男『と、取引しねえか?』コソコソ

男「取引?」

怪力男『…ああ。あんたが負けてくれたら金貨20枚出そう。どうだ?』

男「なんでだ?」

怪力男『ここで俺に勝ったらアンタ、ここの連中につけ狙われるぞ』

男「それは…困るな」

怪力男『だろ?だから』

男「けど、あんたが金貨20枚払う保証はないよな?」

怪力男『ちゃんと払う!』

男「それで、あんたのメリットは?」

怪力男『俺は引き続きここで働ける』

男「…」

怪力男「…」

男「…分かった」

男「こうさーん!」

オオーッ!

「なんで降参なんだ!」

「互角の勝負だったじゃないか!」

「最後までやれー!」

レフェリー「あの…ホントに降参なんですか?」

男「ああ。さっきの鍔迫り合いで腕がしびれちまってな」

レフェリー「では…勝者、怪力男―!」

オオーッ

怪力男『闘技場の出口で待っててくれ』ボソボソ

男『分かった』ボソッ

魔娘「男!」

男「おお。わるいな。負けちまった」

魔娘「…まあいいわ。いい引き際かもね」

男「え?」

魔娘「こういうのってね、闘技場に雇われてる相手に勝つと後が厄介なのよ」

男「よく知ってるな」

魔娘「当然よ。盗賊さんが言ってたでしょ?」

男「あー。そういや言ってたような…」

魔娘「それにあなた、あのオトコと何か取引してたでしょ?」

男「え?そこまで分かるのか?」

魔娘「私は耳がいいの。忘れてるでしょ」

男「うん…忘れてたわ」

ザワザワ ヒソヒソ

魔娘「…早く出ましょ」

男「え?次の対戦見ようよ」

魔娘「いつまでもここにいるとあなたが負かした連中に取り囲まれるわ」

男「そうか?あいつら負けたんだからもう掛かってこないんじゃないか?」

魔娘「一人だとね。でも何人か纏まってきたら厄介でしょ?」

男「うーん。そうだな」

魔娘「…やっぱりあなたは私が居ないとダメね」

男「お世話になります姐さん!」

魔娘「誰が姐さんよ!」

~闘技場・出口~

魔娘「…ねえ。ホントに来ると思ってるの?」

男「分かんねえよそんなの」

魔娘「ちょっと!怪力男が来なかったら参加料の金貨3枚が無駄になるのよ!?」

男「まだ1枚残ってるだろ?」

魔娘「何言ってるのよ!お金が無くなったら旅を続けられないでしょ!?」

男「そんときはまた口入屋で仕事探せばいいだろ?」

魔娘「そんなこと言って!金貨3枚稼ぐのがどんなに大変か分かってるの!?」

怪力男「ずいぶん賑やかだな」

魔娘・男「「!?」」

怪力男「ほら。金貨20枚だ」

チャラ

男「確かに」

魔娘「預かるわ」

怪力男「けどよ、あんた強いな」

男「さっきも言ったけど、ガキの頃から鍛えられてたからな」

怪力男「そうかい。あんたを鍛えたやつは相当腕が立つんだろうな」

男「…ああ」

魔娘「ねえ。質問があるんだけど」

怪力男「なんだ?」

魔娘「あなたほど強かったらもっといい仕事があるんじゃない?」

怪力男「…あそこは割がいいんだ。それに…」

怪力男「俺は学がない。だから騙されることが多いんだ」

怪力男「あそこは…俺みたいな頭の悪い奴でも稼げる場所なんだ」

男「けどさ、こんなことしてたら儲からないじゃないか?」

怪力男「…一回でも負けると収入はゼロだ。それなら金を払ったほうがまだマシだ」

怪力男「あのあと3戦して金貨30枚稼いだからな。20枚払ってもまだ10枚残る」

男「そっか…その…悪かったな」

怪力男「何がだ?」

男「いや…俺が出場しなかったらもっと稼げてたんだろ?」

怪力男「そんなことか…誰も損はしてねえ。だったら文句はねえだろ?」

魔娘「なんだ。しっかり考えてるじゃない」

怪力男「生き残るための知恵ってやつさ」

魔娘「でも、男との約束をすっぽかしてトンズラすることもできたんじゃない?」

怪力男「そんなことして悪い噂が立ってみろ?もうあの仕事ができなくなるだろうが」

男「それも生き残るための知恵…か」

怪力男「そういうこった。そんじゃ俺は戻るわ。あんたらも早くここから立ち去ったほうがいいぜ?」

魔娘「分かってるわ」

怪力男「そんじゃな」

男「ああ」

魔娘「…話が分かる相手でよかったわね」

男「そうだな」

魔娘「じゃあ、宿を探しましょ」

~菓子屋~

男「このケーキください」

店員「毎度ありがとうございます」

魔娘「なんでケーキなんか買うの?」

男「今日は誕生日じゃないか」

魔娘「あ…」

男「魔娘ももう…16歳か」

魔娘「ええ…一ヶ月ほどだけど男と同い年よ?」

男「あははは、そうだな。二人っきりだけど、祝おうぜ。な?」

魔娘「…そうね。あなたにしてはいい提案だわ」ニコッ

男(魔娘、笑うと半端なく可愛いのに口がなぁ…)

魔娘「…なあに?」

男「なんでもない」

魔娘(よく見ると男もだんだんいい顔つきになってきたわね。まだまだ世間知らずのアマちゃんだけど)

~宿屋~

男「じゃあ、魔娘の誕生日を祝って」

魔娘・男「「かんぱーい!」」

ゴクゴクゴク

男「ぷはーっ!うまい!!」

魔娘「ただの緑茶じゃない」

男「気分だよ気分」

魔娘「…ま、いいけどね」

バサバサバサ ホーッ ホーッ

男「ん?賢者様の使い魔だ。手紙がついてる」

魔娘「賢者様?」

男「ああ。なになに?“魔娘、誕生日おめでとう”だって」

魔娘「それだけ?」

男「うん」

魔娘「そっか…」

男「どうした?」

魔娘「なんか…嬉しいなって」

男「なんで?」

魔娘「だってさ、使い魔まで使って寄こした手紙なんだよ?それなのに“誕生日おめでとう”だけって…」

魔娘「きっとね、ただその一言だけを言いたかったんだなーって」

魔娘「その一言にいろんな思いを込めたんだろうな…って思ったのよ」

男「…」

魔娘「…ホント、お母さんみたいね」グスッ

男「…だな」

魔娘「…じゃあ食べよっか!」

男「そうだな!」

魔娘「それじゃ…」

魔娘・男「「いただきまーす」」

~王都~

ワイワイガヤガヤ

男「賑わってるなー」

魔娘「そうね。これはすごいわね…」

男「いろんな店があるな」

魔娘「まずは宿屋ね。荷物を置いたらブラブラしてみましょうか」

男「そうだな」
  ・
  ・
  ・

男「それにしてもすごい町だな」

魔娘「そうね。迷子になりそうだわ」

男「あ、あそこ宿屋じゃないか?」

魔娘「行ってみましょう。安いところだといいけど」

~宿屋~

宿主「すまんね。空いてるのはダブルの部屋だけなんだ」

男「そうですか…」チラッ

魔娘「ほかに宿屋はないの?」

宿主「まあ、あるにはあるが…今日はどこも空いてないと思うよ?」

魔娘「どうして?」

宿主「あんたら知らないのかい?新勇者様が明日、魔王を倒す旅に出るんだよ」

男「あ…」チラッ

魔娘「…」

宿主「ほら、最近また魔物が増えてきただろ?どうやら魔王が勢力を拡大しているらしいんだ」

宿主「それで新勇者様が魔王を討伐に行くって話だ。明日はそのパレードさ」

男「そうですか…」

宿主「それを見ようってんで近隣の町や村から見物客が大勢押し寄せててね」

宿主「だから今日明日はこの王都で空いてる宿屋はないと思うよ?」

宿主「うちだって一部屋でも空いてるのが奇跡みたいなもんなんだから」

魔娘「…しょうがないわね。じゃあその部屋をお願いします」

男「え?」

魔娘「なあに?」

男「いいのか?」

魔娘「私は気にしないわよ?」

男「いや…」

魔娘「なによ。今までずっと一緒のテントで寝てたでしょ?」

男「そうじゃなくてな?」

魔娘「はっきりしないわね…行くわよ」

男「あ!ちょっと待てって!!」

~宿の部屋~

魔娘「ふーん。ま、こんなもんね」

男「…魔娘、お前ホントに大丈夫か?」

魔娘「何が?」

男「いや…新勇者様って言ったら…魔族の敵だろ?」

魔娘「…関係ないわ」

男「けど…」

魔娘「…あのね、男」

男「うん」

魔娘「魔族は人間を敵とは見てないの」

男「え?」

魔娘「魔族の認識はね、敵対すれば敵、友好的なら客人なの。たとえそれが人間や勇者であってもね」

男「けど、今までの勇者は魔王と敵対していたんだろ?だったら人間は敵じゃないのか?」

魔娘「男、あなたは知らないでしょうけど、魔界に来る人間は勇者達だけじゃないのよ?」

男「え?」

魔娘「例えば商人とか、冒険者とか。そういう人間達は皆友好的だわ。もっとも、奥地まで来るのはごく一部だけどね」

魔娘「…勇者が魔王と敵対しても、今迄でせいぜい10人ほどでしょ?それに比べれば商人たちのほうがはるかに多いのよ」

魔娘「だから、私個人の考えはね、人間の多くは友好的だけど、勇者のように定期的に来る暗殺者もいる。こんなところかしら?」

男「なるほどなぁ。でもそれだと、勇者様を止めようとしたりとかはしないのか?」

魔娘「…そうしたいけど無理ね。だって勇者は国中の期待を背負ってるんですもの」

魔娘「これまでも説得しようとした魔族はいたわ。でも…勇者は魔王を目指した」

魔娘「それぐらい重いものなの。勇者に圧し掛かる期待はね」

魔娘「そういう訳だから、私一人がどうこうできる問題じゃないの」

魔娘「だから…放っておくしかないのよ」

男「納得できないんだけど…」

魔娘「あなたには理解できないでしょうね」フッ

男(なんでそんな寂しそうな顔をするんだ?)

魔娘「…荷物は置いた?じゃあ町をブラブラしましょ」

男「あ、ああ…」

~町中~

サアサ、ヤスイヨヤスイヨー コレヲカワナイナンテソンシテルヨダンナー

男「…お祭りみたいだな」

魔娘「そうね…新勇者の旅立ちをお祭り騒ぎにしちゃってるわね」

男「まあ、おかげでいろんな屋台が出てて楽しいんだけどな」

魔娘「そうね。あ、あの屋台からおいしそうな匂いがするわ!」

男「ホントだ。行ってみよう」

ドンッ

魔娘「あ、すみまs」

貴族「なんだ貴様!庶民の分際で貴族である私にぶつかるだと!?兵士!兵士はいるか!!」

兵士「はっ!お呼びですか貴族様!!」

貴族「このガキが!こともあろうかこの私に!!ぶつかってきたのだ!!」

兵士「はっ!これは失礼しました!!早速連行します!!」

兵士「さっさと来るんだ!グイッ

魔娘「え?ちょっ!ちょっと!!」

男「ちょっと待てよ!」

兵士『銀貨10枚だ』ボソッ

男「…え?…あ、ああ…」チャリン

兵士『…行け』ボソッ

男「…行くぞ」

魔娘「え?う、うん」
  ・
  ・
  ・

~飯屋~

ワイワイガヤガヤ…

男「ふぅ…結構歩いたな」

魔娘「そうね…さすがの私も疲れたわ…」

店主「注文は?」

男「あっと…俺はこのパンとりんごジュースと羊肉の壷煮を。魔娘は?」

魔娘「私はりんごジュースだけで」

男「じゃあ、それで」

店主「はいよ」

男「…ったく。屋台で食い過ぎだって」

魔娘「男だって食べてたじゃない」

男「俺はセーブしながら食ってたんだよ」

魔娘「あー。そういえばあなた、私の3倍は食べるものね…」

男「魔娘が食わな過ぎなんだって」

魔娘「ほっといてちょうだい。オンナのコはこれが普通なのよ」

魔娘「それに、あなたみたいにいっぱい食べてると、すぐにボストロールみたいになっちゃうわよ」

男「ならないって」

店主「ほい、おまち。銀貨4枚にまけとくよ」コトッ

男「じゃあこれで」チャリン

店主「まいど」

男「それにしても込んでるな…いつもこうなのか?」

店主「ははっ。いつもこうならもっと店が大きくなってらあな。今日明日だけさ」

男「…あ、新勇者様か」

店主「ああ。明日、魔王討伐に出立されるんだ」

魔娘「ねえ」

店主「なんだい?お嬢ちゃん」

魔娘「“お嬢ちゃん”って言うのは気に入らないけど…今回の新勇者はどんな人なの?」

店主「そうさな…すごい斧の使い手らしいな」

男「斧?」

店主「ああ。どんなものでも真っ二つにするって話だ」

店主「しかも斧っていうと愚鈍なイメージがあるが、なかなかに素早いらしい」

魔娘(力とスピードね…)

店主「けど、魔法とかは…なあ?」

魔娘(魔法は苦手…と)

店主「まあ、魔法はお仲間に任せるとして…戦闘は新勇者様の御活躍に期待だな」

店主「なんせ、先代勇者様がやられて直系の血筋は途絶えたけど、今回の新勇者様の斧捌きは先代様の剣を超えてるって話だ」

魔娘(つまり、斧以外は先代には及ばないと)

男「お仲間ってもう決まってるんですか?」

店主「ああ。戦士様に僧侶様に女魔導師様だ」

魔娘(バランス重視の布陣ね…)

男「最初から一緒におられるんですか?」

店主「そうさ。先代勇者様は御自分でお仲間を集められたが、今回は王様のほうで集めておられたんだ」

魔娘(ちょっと胡散臭いわね…)

男「それじゃ、すぐにでも魔界に出発できますね」

店主「ところがそうはいかねえんだ」

魔娘「なんで?」

店主「いきなり魔界になんていってみろ。最初っから強い魔物を倒していかなきゃならないだろ?」

男「そうですね」

店主「だから、しばらくはこの大陸で魔物を退治しながら実力をつけるのさ。強い魔物相手でも倒せるぐらいにな」

店主「それにこっちの大陸にも魔物の拠点みたいなもんがあるしな。それらを潰すのが先なんだとさ」

男「なるほど…」

オーイ、チュウモンタノムー

店主「あ、今行くよー!…じゃあな」

魔娘「ありがとう。面白かったわ」

店主 ノシ

~宿の部屋~

男「今日はいろんなもの買ったな。食料とか道具とか」

魔娘「そうね。薬草に毒消しに服とか…」

男「服はちょっと違うんじゃないか?」

魔娘「なに言ってるのよ。オンナノコにとって服なんて消耗品よ?」

男「いやいや、それは違うだろ」

魔娘「違わないわ。例えば男は薄汚れた格好のオンナノコってどう思うの?」

男「え?そりゃあ…あんまりいいもんじゃないな…」

魔娘「でしょ?私も小まめに洗って出来るだけ清潔にしてるのよ?あなたの服も一緒にね」

魔娘「でも、やっぱり傷んでくるじゃない?だから新しくしたかったのよ」

おひさ

男「それで3着も買ってたのか?」

魔娘「そうよ。それだけあれば着回しが出来るでしょ?」

魔娘「そうすれば傷みも少ないし、いつも清潔でいられるわ」

男「そっか…いや、それでいいのか?うーん…」

魔娘「…それにしても賑やかね」

ワイワイガヤガヤ

男「みんな明日の新勇者様の旅立ちをひと目見ようと来てるんだ。しょうがないさ」

魔娘「さっさと寝ればいいのに」

男「出発は昼頃だって言うから、今夜は飲んで騒ぐつもりなんだろ」

魔娘「まったく…いい迷惑だわ」ゴソゴソ

>>369 はいwww

男「なんだ。もう寝るのか?」

魔娘「ええ。久しぶりのベッドだもの。さっさとシャワー浴びて、ゆっくり寝たいの」

男「じゃあ俺もそうするか」

魔娘「一緒に入るの?」

男「なんでだよ!さっさとシャワー浴びてこい!!」

魔娘「きゃー。男が襲うー(棒)」

男「襲うか!っていうか襲って欲しいのか!?」

魔娘「…っ//」

あんただったのかい。これからも応援してるぜ

男「え?…そこで黙られると…」

魔娘・男「「…」」

男(い、いかん。魔娘のことが急に愛おしくなってきた…抱きしめたい…)

魔娘「…なんてね。ビックリした?」

男「なっ!?」

魔娘「あらあ?ひょっとして…襲いたくなったの?」クスクス

男「…ちょっと出てくる」

バタン

魔娘「…え?」

>>373 ありがとうございます

~大通り~

ブラブラ…

男「…明日、ここから新勇者様が旅立つのか…」

立ちんぼの女「あらあ?お兄さん一人い?」

男「あ、あの…」

男(暗くてよく見えねえな…)

立ちんぼの女「…ねえ。あたしといいことし・な・い?」

ドキッ

男「え?い、いいことって?」

立ちんぼの女「もう。分かってるくせにぃ~」クネクネ

男(あ…いい匂いが…しかも胸の谷間が丸見え)

兵士「おい!」

男「え?」ドキッ

立ちんぼの女「あらあ、兵士さん。最近お見限りだったじゃない?」

兵士「すまんな。いろいろ忙しくてな」

立ちんぼの女「それでぇ?今は大丈夫なのぉ?」

兵士「ああ。今日は臨時収入があったからな。今からおまえと…」ニヤニヤ

立ちんぼの女「そうなのぉ?うれしいわぁ。あ、お兄さん。また今度ねぇ」ヒラヒラ

男「あ、ああ…」

男(もう宿に戻るかな)

ブラブラ…

魔娘「---見つけた!!」ダキッ

男「おわっ!アブねえ!!」

魔娘「なにしてるのよ!早く帰ってきなさいよ!!」

男「…俺、テントで寝るわ」

魔娘「…え?」

男「魔娘も俺なんかに襲われたくないだろ」

魔娘「そ、そうじゃなくて!」

男「他に空いてる宿もないしな」

魔娘「だから!」

男「あっちのほうなら徹夜組のテントにまぎれるし、ちょうどいいだろ」

魔娘「…ごめんなさい」

男「…」

魔娘「調子に乗っちゃったわ。ごめんなさい」

魔娘「まさか男がそこまで怒るとは思わなかったの…」

男「…怒っちゃいないよ」

魔娘「怒ってるじゃない…」

男「違うよ。魔娘に思ってたことをズバリ言われて、居心地が悪くなったんだ」

魔娘「…え?」

男「俺はあのとき魔娘を抱きしめたいと思ってた。魔娘を襲っちまうかもって…な?」

男「だから部屋から出た。それだけだって」

魔娘「…」

男「とりあえず宿に戻ってテントを取ってこないとな」

魔娘「…やだ」

男「…へ?」

魔娘「いやだ!男と一緒に寝る!!」

男「ちょっ!おまっ!!声でかいって!!」

魔娘「ねえ…お願いだからあ…ひとりにしないでよお…」ポロッ

男「!?」

魔娘「もう…ひとりになるのはイヤなのよぉ…」グスッ

男(魔娘が泣いたのは初めてだ…)

男「…襲うかもしれないぞ?」

魔娘「…ヒック…」コクン

男「…わかった」

~宿の部屋~

モゾモゾ

男「…こら。あんまりくっつくな」

魔娘「どうして?」

男(うっ。その上目遣いと匂い…反則だろ)

男「…どうしても。襲っちまうぞ?」

魔娘「…いいよ」

男「だからそういうことを軽く言うなって」

魔娘「…男だからいいの」

ドキン

男「だから…そういうことをだな…」

魔娘「…」チラッ

男(あ、あかん…限界かも…)

バサッ

魔娘「…え?」

男「ちょっとトイレ」

男(2、3発抜かないとやばいな…)

~朝・宿の部屋~

魔娘 ブスーッ

男「なんでむくれてんだよ」

魔娘「だって!昨夜せっかく覚悟を決めたのに!!」

男「襲って欲しかったのか?」

魔娘「そ、そうじゃないけど…」ゴニョゴニョ

男「…なに言ってんだ?聞こえないぞ?」

魔娘「…今朝あんなに大きくしてた癖にって言ったの!!」

男「へ?…ばっ!あれはただの生理現象だっての!!」

魔娘「ふんっ!どうだか!?痩せ我慢のしすぎじゃないの!?」

男「確かに我慢はしてたけど…魔娘、かわいいし…」

魔娘「っ!?と、当然じゃない!!//」

男「だから…そういうことはもう少し先にとっておいてくれ」

魔娘「どうしてよ…」

男「今はまだ魔娘とのことを真剣に考えられないからな。シスターのことが片付くまで…」

男「それまで…待ってて欲しい」

魔娘「…それまでに私が心変わりしたら?」

男「それはそれでしょうがないな」

魔娘「え?それだけ?」

男「他にどうしろと?」

魔娘「…こっそり私の後をつけるとか?」

男「ストーカーじゃねえか!!」

~大通りの見えるところ~

ザワザワ ガヤガヤ ワイワイ

男「すごい人だな」

魔娘「そうね。人いきれがすごいわ」

男「徹夜組がいたのも納得だな」

魔娘「で、私達はなぜこんなところにいるの?」

男「とりあえずここからなら人ごみよりはよく見えるだろ?」

魔娘「でもここ…宿の屋根よ?」

宿主「ははは、すまんね。ほれ、差し入れだ」

男「あ、すみません」

宿主「ほら、そっちのお嬢さんも」

魔娘「あ、ありがとう」

宿主「どうだい?見えるかい?」

男「ええ。なんとか」

宿主「そうかい。うちは大通りには面してないが横道沿いにあるからな」

宿主「屋根に上れば大通りも少しは見える」

男「十分ですよ。高さがある分新勇者様の顔もはっきり見えそうだし」

魔娘「りんごおいしい」

男「おい!話を聞けっての!!」

宿主「いいってことよ。それより、そろそろ見えるころだぜ?」

男「あ、はい」

ウォオオオオ!!!

魔娘「…来たみたいね」

男「先頭は…戦士様みたいだな」

魔娘「そうみたいね。むさ苦しいオトコだわ」

宿主「おいおい…」

魔娘「次は…女魔導師かしら?」

宿主「イカスねぇ。涎もんだな」ジュルリ

男「すげえおっぱい…」ゴクリ

魔娘「オトコって…」ハァ…

男「次は…僧侶様か」

魔娘「…ふ~ん」

男「なんだよ。その余裕な態度は…」

宿主「まあ、あれならお嬢さんのほうがデカイもんな」

魔娘「っ!//」

男「なんだ。そういうことか」

魔娘「~!!!」

ドスッ バキッ

男・宿主「「…」」ピクピク…

魔娘「あ、そろそろ新勇者が見えるわよ」

男「いてて…どれどれ?」

新勇者 ノシ

男「あれが新勇者か…俺より年上みたいだな」

魔娘「でもなにかしら…覇気が感じられないわね…どっちかって言うと農家のお兄さん的な?」

宿主「お仲間の3人のほうが精悍な感じがしたよな」

男「…ま、これで新勇者様一行も見れたし、明日からはこっちの用事を済まそうぜ」

魔娘「そうね。でも本当に城の中には入れないのかしら?」

宿主「少し前までは旅人でも城の中はおろか、王様にも謁見できたが、最近はまったく出来ないって話だぞ?」

男「王都まで来ることはめったにないから城内を見たかったんだけどなぁ…」

魔娘「しょうがないわ。明日は役所に行って許可証をもらいましょう」

男「そうだな。許可証をもらわないと東の関所を通れないもんな。その先の港にも行けないし…」

宿主「ま、城内見学は無理としても、許可証ぐらいなら役人に金貨1枚でもつかませればすぐに出るだろうよ」

魔娘「…おじ様。その話、詳しく聞かせてくださる?」ニコッ

男「目が笑ってないよ!」

~翌日・役所~

役人「申請書は受領した」

男「はい」

役人「うぉっほん…申請書は受領した」

男「は、はあ…」

魔娘「もう!鈍いわね!!これよ!!」

チャリン

役人「…手続きをしてくる。ちょっと待ってろ」

魔娘「…ね?金貨1枚で全て解決よ」

男「なんだかなあ…」

~宿の部屋~

男「道具は道具袋に入れて…」

魔娘「薬草と毒消しはこっちにちょうだい」

男「ほいっと」ポイッ

魔娘「ありがと。…テントもいい加減草臥れてきたわねぇ…新しくする?」

男「そうだな…所持金に余裕があればな」

魔娘「余裕はあるわよ?」

男「そっか。じゃあ新しくするか?」

魔娘「ええ。今度は寝心地がよさそうなのにしましょう」

男「そうだな。今のは重いし寝心地悪いし汚れてるし…だもんな」

魔娘「盗賊さんのお下がりですものね」

男「…今までご苦労さん。ありがとな」バサバサ…ガサゴソ

魔娘「…じゃあ、今からお店に見に行くわよ」

男「はいはい」

~翌日~

男「お世話になりました」

宿主「ああ。またおいでよ」

魔娘「この町に来ることがあったらね」

宿主「おう。期待せずに待ってる」

男「それじゃ」ノシ

魔娘「行ってきます」ノシ

宿主「関所はその道をまっすぐだ。気をつけてな」ノシ
  ・
  ・
  ・

男「いい町だったな」

魔娘「そうかしら?」

男「え?だってさぁ…」

魔娘「役人は賄賂付け。治安はいい加減。貴族は庶民を見下してるし…庶民はその分逞しく生きてたわね」

男「いや、そうだけどさ…宿主さんや店主さんみたいにいい人もいただろ?」

魔娘「それは私達がお金を持ってるからよ。お金が無かったら見向きもされないわ」

男「いやいや、それはないだろ」

魔娘「…男はお金で苦労したこと無いでしょ?だから分からないのよ…」

男「魔娘だって苦労したこと無いだろ」

魔娘「私はりんご一個で犯罪者扱いされたのよ?」

男「…へ?」

魔娘「初めてこっちの世界に来たときに…なんでもない。行きましょ」

男「おい待て途中で言うの止めるな気になるだろおい待てって」

今日はここまでにします

おやすみなさいノシ

まだまだ先は長い…

>>396-404 ありがとうございます

今から投下します

~港~

男「これが海…」

魔娘「潮の香りがすごいわ…」

船乗り「なに当たり前のこと言ってんだオメエら」

男「あ、すみません。初めて海を見るもんで」

船乗り「初めて?そりゃまたずいぶんと田舎から来たんだなあ」

男「すいません」

魔娘「わたしは初めてじゃないわよ!馬鹿にしないで!!」

船乗り「威勢のいい姉ちゃんだな。船酔いすんなよ?」

魔娘「するわけないでしょ!?」

~船上~

魔娘「うぇえええ…」

男「大丈夫か?」

フルフル

男「…水飲むか?」

魔娘「うぇええ…ほっといて…うぷっ!」

男「ほら。バケツ交換するから貸してみ?」
  ・
  ・
  ・

船員「お嬢さんの様子はどうだい?」

男「あ、おばさん。あいかわらずですねぇ」

船員「おばさん言うな!…ま、あたいで手伝えることがあったら遠慮なくいいなよ。ね?」バシン

男「背中が痛いですって…そのときはお願いします」

船員「じゃあ、あたいは厨房に戻ってるから」ノシ

男「…ゲロ捨ててこなきゃ」

タイヘンダー ヤツガデタゾー シンロヲカエロー

男「…ん?甲板のほうが賑やかだな…」

~甲板~

ホヲアゲロー ヤリモッテコイ モウダメダー

男「…これは…?」

船乗り「どけどけどけー!」

男「どうしたんですか!?なにがあったんですか!!」

船乗り「やつだ!やつが出やがった!!」

男「やつってなんですか!」

船乗り「クラーケンだよ!イカの化けもんだ!!」

男「…え?」

海の上:クラーケン『キシャーッ!!!』

船乗り「早く逃げねえと食われちまう!!」

男「…うまそう」

船乗り「…はあ?」

男「あれって焼いたら食えますかね?」

船乗り「イヤ…そりゃイカだから食えないことはねえと思うけど…」

男「じゃあ決まりですね」ニコッ

クラーケン『キシャーッ!!』

「ヤツが足をマストに巻きつけてきたぞ!!」

「もうダメだ…この船はおしまいだ…」

男「はーい。ちょっとどいてくださいね」

船乗り「お、おい…なにやってんだよ!」

男「え?足を切り落として焼いて食おうかと」

船乗り「テメエ馬鹿か!そんな長鉈なんかでクラーケンが切れるもんか!!」

男「やってみなきゃわかんないでしょ?」

船乗り「なに言ってやがる!銛もささらねえようなヤツなんだぞ!?」

男「でもこのままじゃ海中に引きずり込まれるでしょ?」

船乗り「そ、そりゃそうだけどよ…」

男「さて…」

スラァ…

男「…ふんっ!」ズバアッ!

クラーケン「シャーッ!!」

ブクブクブク…

船乗り「おお!」

「なんだあいつ?」

「クラーケンの足を切ったぞ!」

「いまだ!速度を上げろ!!」

船乗り「す、すげえな。あんた…」

男「しっ!…まだ来る!!」

船乗り「…へ?」

男(舳先に回り込んだ…体当たりする気だな)

タタタタ

船乗り「お、おい!どこ行くんだよ!!」

男(ここが船の先端…ここでヤツが浮き上がってくると同時に…)

男(最大の衝撃波で切るっ!!)チャキッ

船乗り「お…おい…クラーケンのヤツ…この船目掛けて突っ込んでくるぞ!」

「今度こそ終わりだああ!!」

「あいつがクラーケンを切ったから!」

「なんで俺たちがこんな目に!!」

男「…」

船乗り「…そんな低い姿勢でなにを…」

男(海面が盛り上がったときが勝負だ!)

海面:モリッ

男「いまだっ!」ブォンッ!!

クラーケン「!!」

船乗り「う…海が切れたっ!」

ドドーン!!
  ・
  ・
  ・

男「”火炎呪”」ボゥ

パチッパチパチ…

船乗り「…魔法で焼いてやがる…」

男「…香ばしい匂い♪もう焼けたかな?」

ガツガツ

男「…味はいいけど固いな…耳のほうはどうかな?」

船乗り「ほ…ホントに食ってる…」

船員「…すごいね、あんた。クラーケンを撃退したってヤツ、初めて見たよ」

男「足1本と耳のところを少しだけしか収穫がないんですけどね」モグモグ

船員「…で、それをなんの躊躇いも無く喰らってるなんてさ…ナニモンだよ、まったく…」

魔娘「…私にもなにかちょうだい」

男「ん?もう大丈夫なのか?」

魔娘「ええ…何かお腹に入れとかないと胃が痛いのよ…」

船員「パンとミルクならあるわよ?」

魔娘「お願い」

船員「ちょっと待ってな」

男「船酔いのほうは?」

魔娘「今は殆んど揺れてないから…」

船員「ほら、パンとミルク」

魔娘「ありがとう」

船員「あのクラーケンがいたところが一番荒れてる場所だったからね。そこを過ぎると割と静かなもんさ」

船乗り「それにしても…クラーケンが出てきたのって何十年ぶりじゃないか?」

船員「そうだねぇ。たぶん20年ぶりぐらいじゃないかい?」

船乗り「…やっぱり魔王が勢力を伸ばしてるって噂は本当なのか?」

船員「どうだかねぇ…」

魔娘「・・・」パクパク

「おい、ちょっと通してくれ」

船員「あ、船長」

船長「…あんたがクラーケンを撃退してくれたのか?」

男「ええ、まあ」モグモグ

船長「まだ若いな…酒は飲めるか?」

男「あ、まだ飲めないですね」

船長「…後で礼をせねばならんな。とりあえずありがとう」

男「気にしないでくだs」

魔娘「お礼はお金でお願いします!」

男「お、おい!」

魔娘「この船に乗るのだってお金が掛かったのよ?旅を続けるにはお金があるに越したことはないの!」

船長「…いいだろう。下船するときに渡そう」

魔娘「約束よ?」

~港町~

男「…よっと」ヒョイ

魔娘「よいしょ…やっと着いたわね」

船員「さて…と。あたいは食料なんかを調達しに行くけど、あんたらはどうする?」

魔娘「あ、私達も行きます。ついでに宿も…」

船員「わかったよ。宿屋にも案内するから安心して」

魔娘「はい」

男「すいません」

船員「なに言ってんだい!あんたはあたいたちを救ってくれた英雄なんだ!!船長にも言い付かってるしね」

男「あの…これって貰いすぎじゃ…」

船員「いいのいいの。あの船とあたいたちの命、金貨50枚じゃ安いぐらいさ。あははは」

魔娘「でもさすがにこれは…」

船員「気にしなさんな。それより、ここを曲がったら市場だからね」

テクテク…クルッ

男「おお!」

魔娘「いろんな露天商がいっぱい!」

船員「へへーん。どう?ここの市場は古今東西、いろんなものが集まってくるのさ」

船員「王都の市場じゃお目にかかれない品物だっていっぱいあるんだよ?」

男「これはなんだろう?」チャラ

商人A「それは北の町の一品で氷の剣でございます」

魔娘「これは?」

商人A「それは氷のローブです。これを着ると熱い地方でも涼しく過ごせますよ?」

船員「もし砂漠の都市に行くなら必需品だね」

魔娘「そうなんですね」

船員「…それじゃ、あたいは食料品を買い込んでくるわ。後でさっきの曲がり角においで。宿まで案内するから」

男「あ、はい。それじゃ」

魔娘「ねえ。とりあえず一通り流し見してから欲しいものを探さない?」

男「そうだな。どんなものを売ってるか先に見よう」

魔娘「決まりね♪」

男「楽しそうだな」

魔娘「だって見たことも無いようなものがいっぱいあるんだもの♪」

男「…ほどほどにな?」

魔娘「分かってるわよ。あ、これはなあに?」

商人B「これは南の町の~~~」

男(ホントに分かってんのかなあ…)
  ・
  ・
  ・

魔娘「これで終わりかしら?」

男(疲れた…なんで魔娘は平気なんだよ…)

魔娘「ねえ、そこの人。これで市場は終わりなの?」

町人「え?あ、いや…あっちにもあることはあるが…行かないほうがいいぜ?」

魔娘「どうして?」

町人「…気分のいいもんじゃないからさ。特にあんたみたいなお嬢さんには刺激が強いだろうしな」

魔娘「ふーん…あっちにあるのね?男、行くわよ」

男「いや…この人がやめろって言ってるし…」

魔娘「何言ってるのよ。ここまで来て見ないで帰るなんてありえないわ。ほら、早く」

男「あ、ああ…」

町人「…どうなっても知らねえぞ?」

~別の市場~

魔娘「…なにこれ…」

男「…魔物とか人とかを売ってるなんて…」

町人「奴隷市場さ」

魔娘「え?」

町人「あんたたち、何も知らないみたいだから心配になってな?」

男「あ、さっきの…」

魔娘「ねえ。奴隷市場ってことは…ここで売ってるのは…」

町人「ああ。全部奴隷さ。スライムとかの愛玩用の魔物、牛車や農作業用の魔牛、それから人間もな」

男「人間も!?」

魔娘「同族を奴隷にしてるの!?」

町人「ああ。ひどいもんだろ?」

男「なんで…」

町人「この町では重犯罪者は奴隷として売買されるんだ。あんた、知らないのかい?」

男「はい…知りませんでした…」

魔娘「…あ!」

男「え?」

町人「…あの羽と尻尾…淫魔だな。見たところ11,2歳位か?飛べないように羽を切ってあるな」

男「まだ子供じゃないか…」

町人「たぶんこの国に迷い込んだところを捕まったんだろ」

魔娘「ひどい…」

男「…ああいう人型の魔物も売られているんですか?」

町人「ああいうのはめったにないね。10年に一回程度かな?だからいい値がつく」

魔娘 ギリ…

男「金貨50枚か…どうする?」

魔娘「決まってるじゃない!」
  ・
  ・
  ・

商人C「まいどありい」ニヤニヤ

町人「買っちまったよ…以外と金持ってんだな、あんた達」

男「もうあんまり残ってないけどな」

魔娘「もう大丈夫よ…一緒においで?」

子淫魔 ビクビク…

町人「…で?そいつをどうするんだい?」

魔娘「決まってるわ。連れていくのよ」

男「え?マジで?」

魔娘「なによ。文句あるの!?」

男「いや、だってさ…」

魔娘「もう決めたの!さ、行くわよ」

子淫魔 ジー

男「ったく…あ、ありがとうございました」

町人「いや…こんな町だけどいいとこもあるんだ。嫌いにならないでくれよ?」

男「ええ…」
  ・
  ・
  ・

魔娘「どう?この服」

男「かわいいんじゃないか?」

魔娘「じゃあこの服と…」

男「まだ買うのか?」

魔娘「あと2,3着は買うわよ」

男「…もうあんまり金ないぞ?」

魔娘「その時はまた男が稼いでね」

男「やっぱり…」ガクッ

子淫魔「…ご、ごめんなさい…私を買っちゃったからお金が…」

男「いや、それはいいんだよ。臨時収入があったからね」

魔娘「そうそう。気にしなくていいのよ」ニコッ

子淫魔「でも…」

男「…それより、そろそろさっきの曲がり角に行かないと。船員さん、待ってると思うぞ?」

魔娘「もうそんな時間?じゃあ、行きましょうか」

子淫魔 コクッ

~待ち合わせ場所の曲がり角~

船員「お、やっと来たね」

男「すいません、お待たせしちゃって」

船員「いいってことさ。…ん?」

子淫魔 コソコソ

船員「…どうしたんだい?その子は?」

魔娘「たまたま奴隷市場で売ってて…」

船員「それで買っちまったのかい?どうするんだよ、そんな魔物なんか連れてたら変な眼で見られるよ?」

魔娘「でも…ほっとけなくて…」

船員「…まあいいや。それじゃ宿に行くよ」

男「あ、はい」

~宿~

船員「ごめんよ」ギィ…

町人「いらっしゃい…おや?あんた達…」

男「あ、さっきの…また会いましたね」

町人「ああ。俺はこの宿の主人をしてるんだ」

魔娘「すごい偶然ね…」

船員「ここはこの町で一番マシな安宿だよ」

町人「もっといい宿もあるが…値段がうちとは一ケタ以上違うからな」

魔娘「そうなんですね」

町人「で、部屋はどうする?」

男「あっと…ツインとシングル、一部屋ずつでお願いできますか?」

町人「それなら4人部屋のほうが安いぜ?」

男「あー…けど…」チラッ

魔娘「…いいわ。それでお願いします」

町人「はいよ。2階の手前の部屋だ」チャラン

魔娘「ありがと。さ、行くわよ」

子淫魔 コクッ

男(…大丈夫か?マイサン…)

~部屋の風呂~

ゴシゴシゴシ

魔娘「さ、お湯をかけるわよ」

子淫魔「ん」

ザバー

魔娘「よく拭きましょうね」ゴシゴシ

子淫魔「…ねえ」

魔娘「ん?なあに?」

子淫魔「お姉ちゃん…魔族?」

魔娘「魔娘でいいわよ。やっぱりわかるのね」

子淫魔「うん…」

魔娘「…ええ、私は魔族よ。でも他の人には内緒ね?」

子淫魔「うん…でも、なんで人間といっしょに居るの?捕まっちゃったの?」

魔娘「…いいえ。私は自分の意志で男についていってるの」

子淫魔「どうして?」

魔娘「私は…ううん、それはいいわ。それよりあなたはなんで人間に捕まったの?」

子淫魔「私…大人になるために人間の精を吸いに、お姉ちゃんたちと一緒にいっしょにこっちに来て…」

魔娘「…淫魔の“成人の儀式”ね」

子淫魔「うん。でも…途中ではぐれちゃって…転移魔法は使えないから帰れないし…」

子淫魔「それで…小屋の中に隠れてたら人間に見つかって…」

魔娘「それで売られたの?」

子淫魔 コクッ

魔娘「そうなのね…でも、もう大丈夫よ?」

子淫魔「…ありがとう。でも…お金、いっぱい使わせちゃったでしょ?」

魔娘「そんなの気にしなくていいのよ」

子淫魔「でもお礼しなきゃ…お連れさんのお相手したらいいの?」

魔娘「ダメ!っていうか、男に手を出したら私が許さないわよ!?」

子淫魔「う、うん…でもどうして?」

魔娘「どうしても!でないと一緒に連れて行かないわよ?わかった?」

子淫魔「う、うん…じゃあ、わたしはこれからどうなるの?」

魔娘「そうねえ…私達は今、魔界…主王国に向かってるの」

子淫魔「え?」

魔娘「妖精の国も通るから、おうちに帰してあげる。それでいい?」

子淫魔「…おうちに帰れるの?」

魔娘「ええ」

子淫魔「…うぅ…うぇええん…」

魔娘「心配しなくていいの。私達がちゃんとお家まで連れて行ってあげるから。ね?」ナデナデ

子淫魔「ヒック…うぇえええん…」

~宿の部屋~

子淫魔「スー…スー…」

魔娘「うふふふ。かわいい寝顔…」ナデナデ

男「風呂、上がったよ」フキフキ

魔娘「はーい」

男「…かわいそうにな…まだ子供なのにこんな目にあって…」

魔娘「ええ…」

男「食事の時も『こんなごちそう、食べていいの?』って…どんな物食わされてたんだよ…」

魔娘「想像に難くないわね…」

男「金の残りは金貨5枚ほど…これで魔界まで行けるのか?」

魔娘「ううん…また途中で稼いでほしいんだけど…」

男「…まあいいけどさ」

魔娘「…男、今夜はこのままこの子といっしょに寝るわね」

男「ああ、俺はこっちのベッドで寝るよ。おやすみ」

魔娘「おやすみ」

~翌朝~

男「で、今日はどうするんだ?」

魔娘「一刻も早くこの町を出たいけど…まだ買うものがあるし…今日一日滞在するわ」

男「そっか…じゃあ、子淫魔が起きたら町に出るか」

魔娘「そうね。そうしましょう」

~町中~

魔娘「…ごめんね?」

男「いいって。この先は砂漠地帯だから子淫魔にも氷のローブは必要だし」

魔娘「でも…おかげで今夜の宿代ぐらいしか残らなくって…」

男「…まあ、道具も食料もある程度揃ってるし、何とかなるだろ」

子淫魔「あの…ごめんなさい…」

男「謝るなって。な?」クシャ

子淫魔「う…うん…」

ワイワイ ガヤガヤ

男「ん?なんかあっちのほうが騒がしいな」

魔娘「何かしらね」

男「ちょっと行ってみる。魔娘たちは先に宿に戻ってるか?」

魔娘「…そうね。厄介なことに巻き込まれても面倒だものね」

男「ん。じゃあ気をつけてな」ノシ

魔娘「男、あなたもね」ノシ

男「…さて。なにが…あ」

新勇者「---。---。~~~」

男「新勇者様だ…」

男「どこに行くんだろ…なんかすごく高そうな宿に入っていったな」

男「…あれ?そういえばお仲間はどこに?」キョロキョロ

男(ちょっと回り道して帰るか)

~露天商の市場~

男「ここで見つからなかったら宿に帰ろう…」

ブラブラ…

男「…ん?あれは…僧侶様!?」

僧侶「---。---?」

商人「---!---!!」

男「あ、あの杖を買うのかな?…あ」

僧侶 スタスタスタ

男「どこに行くんだろ?」

~奴隷市場~

男「…まっすぐここに来たよ、あの僧侶様…」

僧侶「---。---?」

商人「---。---?」

男「…魔牛を買ったみたいだな…っていうか、僧侶様はこの奴隷市場を見てなんとも思わないのか?」

僧侶 スタスタスタ

男「あ、また歩き出した。どこにいくんだ?」
  ・
  ・
  ・

~広場~

男「…こんな人の少ない広場でなにをするんだろ?」

僧侶「---!---!!」

ヒョオオオオ!!!

魔牛「---!!!」ピシピシピシピシ…コチーン

男「えっ!?」

僧侶「…どうしました?」クルッ

男(うわぁ…氷みたいにつめたい視線だ…)

男「…な、なにをしてたんですか?」

僧侶「なにって…見てのとおりですが?」

僧侶「新しく買ったこの氷の杖の威力を知りたくて、魔牛で試しただけです」

男「!?」

僧侶「…まあ、値段相当の威力ってところかしら?」ポンポン

男「あ、あの…」

僧侶「…まだなにか?こう見えても忙しい身で…あら?よくみるといいオトコじゃないですか」

僧侶「普段なら質問には答えないのですが、聞きたいことがあるならお答えしますよ?」

男「…さっき奴隷市場にいましたよね?」

僧侶「ええ。そこの魔牛を買いました」

男「あそこには…人間の奴隷も売っていました。それはどう思いますか?」

僧侶「ふーむ…奴隷とはいえ、さすがに人間で威力を試すのは気が引けますね。これでも神に仕える身ですから」

男(話がかみ合わない…)

男「そうではなくて…奴隷の売り買いについてどう思いますか?」

僧侶「おや?質問の意図がよく分からないのですが…あ、ああ。そういうことですか」

僧侶「つまりあなたは奴隷制度について私の意見を聞きたいと」

男「そ、そうです…」

僧侶「奴隷制度は国に認められた立派な市場です。労働力の売り買いになんら疑問は生じません。これでいいですか?」

男「…」

僧侶「あなたがなにを期待していたか分かりませんが、私達パーティーの目的は魔王を倒すことです」

僧侶「国の制度云々は私達の目的にはありません。ですのでこのような質問は止めてもらいたい」

男「…」ギリッ

僧侶「また同じような質問をするなら…あなたを敵と見なしますよ?」ジロッ

男「…分かりました。失礼します」クルッ

スタスタスタ

僧侶「…いいオトコなのに反体制派ですか…もったいない…」

~宿の部屋~

ガチャッ

魔娘「あ、おかえり」

子淫魔「お、おかえりなさい」

男「…ただいま」

魔娘「なんだか暗いわねぇ…ねえ、何があったの?」

男「…実は…」
  ・
  ・
  ・

魔娘「それで怒って帰ってきたの?」

男「怒るって言うより…情けなくてさ…」

魔娘「なにが?」

男「…シスターは生き物は全て平等だって…そう教えてくれたんだ」

男「そりゃ弱肉強食だからさ、弱いものを強いものが…って言うのは分かるよ?けど…」

男「意思の疎通が出来る魔族とか、同属の人間同士なのに奴隷とか…そんなの平等じゃないだろ?」

魔娘「…そうね」

男「シスターは家畜も家族だって言ってた…だからちゃんとお世話するんだって…でも奴隷はなんで違うんだ!?」

男「シスターも僧侶も、同じく神に仕える身なのに…なんでこんなにっ!!」

魔娘「熱くならないで、男。あなたがそう思うのは分かるわ」

魔娘(男の価値観はシスターの価値観と同じですものね)

魔娘「でもね…僧侶にシスターと同じものを求めてはダメよ」

男「なんでだよ!」

魔娘「…男、シスターは竜なの。人間じゃないわ」

男「!?」

魔娘「私はさっきあなたが言ったこと、よく分かるわ。だって魔界の教えとそう変わらないもの。ねえ?」

子淫魔 コクコク

魔娘「きっと元々の教えは魔界の教えとそう変わらなかったはずよ?でも…」

魔娘「人間は自分達の都合のいいように教えを捻じ曲げてる…そんな気がするわ」

男「…賢者様もか?」

魔娘「賢者様はそういうんじゃ無くてもっと違う目でみてる…達観してるっていうのかしら?」

魔娘「だからこその賢者様。そうでしょ?」

男「…」

魔娘「それにね、今回の新勇者パーティーは王様じきじきに集めたって話だったわね?」

魔娘「だったら国の決めたことに反対するわけ無いわ。当然の結果よ」

男「…そっか…」

魔娘(ようやく落ち着いたみたいね…)

魔娘「じゃあ、さっさと準備をしましょう。明日の朝一番には出発するわよ」

男「え?なんで?」

魔娘「…お金が無いからこれ以上長居するわけには行かないの。わかった?」

男「…わかりました」

魔娘(でもこれではっきりしたわね。新勇者一行とは仲良くなれないわ)

~翌日・砂漠地帯~

ジリジリジリ…

男「…暑い…」

魔娘「だらしないわねぇ…」

子淫魔「あの…わたしたちは氷のローブがあるから…」

男「…こっちは普通の鎧だっての!」

魔娘「しょうがないわね…ほら」

男「え?」

魔娘「このタオルを凍らせて首元に巻いてれば大分違うと思うわよ?」

男「そっか。”凍結呪”」カチーン

男「…ひょーっ!つめてー!!」

魔娘「これで幾分かはマシでしょ?」

男「ああ!ありがとな!!」

魔娘(魔法がつかえるんだから、ちょっと考えればすぐ思いつくんだけどねえ…)

~五日後・砂漠の道~

ザッ ザッ ザッ

魔娘「ねえ…まだなの?」

男「ああ…明日には着くと思う…」

子淫魔 フラフラ

魔娘「…昨日からなにも食べてないから辛いわ…」

男「仕方ないだろ?暑さで傷んじまったんだから…」

ブシューッ!

男「砂の柱!?」

魔娘「今のなに!?」

子淫魔 コソコソ

男「静かに!ちょっと見てくる」

魔娘「気をつけてね」

男(この砂丘の向こうだったな…)ソロー…

グモモモモ…

「---!---!!---!!」

男(あれは…サンドワームがキャラバンを襲ってるのか?)

魔娘「どう?」

男「サンドワームがキャラバンを襲ってる」

魔娘「え?どこどこ?」

男「ほら、あそこだ」

魔娘「あ…このままだとあのキャラバンは全滅するわね」

男「どうする?」

魔娘「それは男次第よ。助けられるほどの体力がある?」

男「どうかな…”念動”で動きを止めて”凍結呪”で弱らせてトドメって感じなら何とかなりそうだけど」

子淫魔「…あのサンドワーム…なんか変」

男「ん?どういうことだ?」

子淫魔「あの…えっと…なんだか追い払おうとしてるみたいなの…」

魔娘「え?…あ、あそこ!巣みたいなのがあるわ!!」

男「え?…あ、ホントだ。じゃあ、あのキャラバンが巣に近づいたから襲ったのか?」

魔娘「だったらあの人たちを巣から遠ざければいいんじゃない?」

男「よし、やってみる!」

魔娘「サンドワームは毒を持ってるから気をつけてね!」

~キャラバン~

商人「うわっ!うわあああ!!」

従者「こここ、こないでぇええ!きゃあああ!!」

グモモモモ

ドォオオオン…ピタッ

商人「うわああ…あ?う、動きが止まった…」

男「あの砂丘の向こうに逃げろ!急げ!!」

商人「あ、あんたは?」

男「そんなの後だ!早く逃げろ!!」

商人「は、はい!!」

ドテドテドテ…

サンドワーム「シューッ…」

男「悪いがちょっとだけ時間を稼ぐぞ。”凍結呪”!」

メリメリメリメリ

サンドワーム「シュッ!」

男「よし。うまい具合に顔を凍らせたぞ!」

ドドーン ドドーン ドドドド…

男(…ちっ!砂の中に潜った…ヤバイな)

シーン…

男「…どこだ?」

ブシュウウウ!!

男(な!?真下から!?)

男「くっ!…”転移”!!」シュイン

ドドーン…

サンドワーム「シュ?」キョロキョロ

ズルズルズル…

男「…行ったか」

商人「ありがとうございます!あなたは命の恩人です!!」

男「いやまあ…無事で何よりです」

従者「ホントに助かりましたよ。近道をしようとしたらサンドワームが現れて…」

魔娘「そんなことするから襲われるのよ。ほら、あそこ。サンドワームの巣があるわ」

商人「え?…あ、あそこですか?」

魔娘「そう。だから巣を守るためにサンドワームが攻撃してきたのよ」

従者「なるほど。これからは急いでいてもいままでの道を通ることにしますよ」

魔娘「それがいいわね」

商人「ところで…あんたたち、見たところ冒険者みたいだけど、どこに行くんですか?」

男「あ、俺達はこの先の砂漠の都市に行くんです」

商人「それは良かった!」

魔娘「なにが?」

従者「我々は砂漠の都市の商人なんです。これから商品を町まで持って帰るところでして」

商人「よろしければ私達のキャラバンとご一緒願えませんか?」

男「え?」

従者「こちらとしてもあなたが一緒だと心強いですし」

魔娘「でも…」

商人「ん?そちらのお嬢ちゃんは…淫魔かい?」

子淫魔 コソコソ

従者「…魔族も一緒ですか…まあ、いいんじゃないですか?」

魔娘・男「「え?」」

商人「いえね、私達は魔族とも取引があるんですよ。最も、最近は取引量も激減ですけどね」

男「それっていいのか?確か国は魔界との交易は禁止してるはずじゃ…」

商人「あははは。私ら商人に国や種族の違いなんて関係ないですよ」

従者「魔界のものは貴族の方に高く売れるんですよ。珍しいものですからね」

商人「それに人の手では作り出せないものもありますし。妖精族の光る布とかね」

従者「ですから、私達は魔族だからといっていやがることはないですよ?」

男「それなら…なあ?」

魔娘「…そうね。この子ももうフラフラだし…お願いするわ」

商人「では、参りましょう」

~砂漠の都市~

男「ここが砂漠の都市か…案外緑が多いな」

魔娘「そうね…もっと埃っぽいのかと思ってたわ」

商人「ははは。この町は枯れることのないオアシスのおかげで潤っているんですよ」

子淫魔 キョロキョロ

従者「それはそうと…ほら、見えてきましたよ。あれが私達の店です」

男「うわあ…」

魔娘「…市場がそのまま入ってそうな大きさね…」

商人「ははは。まさにそうですね。あの中にいろんな小売り屋が入っているんです」

従者「武器、道具、防具…なんでも揃ってますよ」

男「すごいな…」

商人「後でゆっくりごらんになってください。まずは私の家に…」
  ・
  ・
  ・
商人「ここが私の家です。さ、中へどうぞ」

魔娘・子淫魔・男「「「…」」」

魔娘「…すごい家ね」

商人「いえいえ、大したことはありませんよ」

~商人の家~

ズラーリ

男「なんか…見たこともない豪華な料理が並んでるんだけど…」

魔娘「すごいわね…」

子淫魔 ゴクリ…

商人「ささ。どうぞ遠慮なく食べてください」

魔娘・男・子淫魔「「「…いただきます」」」

魔娘「あ!これおいしい!!」

子淫魔 モグモグ

男「どれもおいしいです!」

商人「お口にあったようでなによりです…ところで」

魔娘「…なあに?」

商人「あなた方はどこまで行かれるおつもりですか?よろしければお話していただけませんか?」

魔娘「…私達は魔界に行きます」

商人「魔界に!?なんでまた!?」

男「…シスターが竜に攫われたんです…それで探しに…」

魔娘「それで、この子は魔界の案内役にと思って…」

子淫魔「え?」

魔娘『とりあえずそういうことにしておいて?』コソコソ

子淫魔『う、うん…』コソコソ

商人「そうですか…大変な旅になりますよ?」

魔娘「承知のうえよ」

商人「…私で力になれることがあったらなんなりとお申し付けください。あなた方は私の命の恩人ですから」

男「ありがとうございます」

商人「あ、それからこれを…」ドサッ

男「…なんですか?」

商人「助けていただいたお礼です。少ないのですが…」

魔娘「なにこれ!?金貨!?」

商人「100枚ほど入っています」

男「そ、そんなに!?」

商人「私は商人です。商人は商品に見合った金額を提示します」

商人「あなた方は私の命と商品を守ってくれた…それに対する正当な金額です」

男「でも…」

魔娘「…ありがたく頂きます」

男「え?」

魔娘「男、これは商人さんの気持なの」

魔娘「普通に傭兵を雇えば金貨20枚ってところなのにこの金額よ?ありがたく頂くべきだわ」

商人「そちらのお嬢さんは分かってらっしゃる…商人の才があるようだ」

魔娘「褒め言葉として受け取っておきます」

商人「…今日はお疲れでしょう。今夜はこの屋敷でゆっくりお休みください」

男「ありがとうございます」

~寝室~

魔娘「天蓋付きのベッドなんて久しぶり♪」

子淫魔「ふかふか~♪」

男「…」

魔娘「どうしたの?」

男「いや…いつもさ、もっと固い寝床で寝てたから落ち着かなくってな…」

魔娘「そうね。安宿のベッドとかテントと比べたら天と地ぐらい差があるわね」

男「すごいなこれ…」

子淫魔「スー…スー…」

魔娘「ふふふ。もう寝ちゃってるわ」ナデナデ

男「ずっと歩きっぱなしだったもんな…魔娘は大丈夫なのか?」

魔娘「わたしは大丈夫。歩くのにも慣れてきたからね」

男「そうだな。最初の頃はすぐにスライムに変化して俺の鞄の中に入ってたもんな」

魔娘「そうね」クスッ

男「旅を始めてからもう随分経つんだな…」

魔娘「…ねえ、男」

男「ん?」

魔娘「男は魔界に行って…シスターを探すのよね?」

男「ああ」

魔娘「じゃあ…そのあとは?」

男「…へ?」

魔娘「だから…」

魔娘「…この子を淫魔の町に送っていって、竜の国でシスターを見つけたとして…そのあとは?」

男「シスターを見つけたあとか…まだ何にも考えてねえや。ははっ」

魔娘「そう…」

男「…魔娘はどうするんだ?」

魔娘「え?」

男「魔娘も魔界が故郷なんだろ?家に帰るのか?」

魔娘「…私にはもう帰る家がないの…」

男「え?」

魔娘「私はそっき…叔母の魔法で人間界に…ね?」

男「なんで…」

魔娘「…私の住んでいたところで暴動があってね、私の身を案じた叔母が私を人間界に避難させたのよ」

魔娘「でも…すぐに迎えに来るって言ってたけど…結局来なかったわ」

男「…」

魔娘「だから…私の家はきっともう無いのよ…」

男「そんなの!行ってみないと分かんないだろ!?」

男「それにさ、ほら…探したけど魔娘の居所が分からなくて迎えに来てないだけかもしれないしさ。な?」

魔娘「ううん…叔母やお父様だったら私がどこに居てもすぐに見つけるわ」

魔娘「だから…ヒック…だから…」

男「魔娘…」ギュッ

バサバサバサ ホーッ ホーッ…

男「…使い魔だ。ちょっと見てくる」

魔娘「…うん…ヒック」

ホーッ ホーッ

男「ごくろうさん。ほら、干し肉だ」

ハムッ ハムハムッ…

男「ははは。どれどれ?」カサッ

  男へ

  もう砂漠の都市ですか。大分魔界に近づいたようですね。

  どうですか?二人とも仲良くしていますか?

  辺境の港に着いたらまた使い魔を寄こしてください。

  魔界に行くと連絡できなくなりますから。

  それと…淫魔の子供を買った時は驚きましたが、二人で決めたことなら何も言うことはありません。


  元気で旅を続けてください。

  それでは。

  賢者

魔娘「なんて書いてあるの?」

男「うん…子淫魔を買ったこと、あんまりよく思ってないかも…」

魔娘「まあ、当然ね。普通に考えたら男の貞操の危機だもの」

男「いや、俺はロリコンじゃないから」

魔娘「分かってるわ。男はどちらかと言うとマザコンですものね」

男「いや、それも違うだろ」

魔娘「じゃあ…シスコン?」

男「違うって!」

魔娘「…ふふふ」

男「な、なんだよ…いきなり笑いだして…」

魔娘「やっぱり私達は湿っぽいのは似合わないわ。こうしてバカな話をしているほうが私達らしいもの」

男「…そうだな!」

魔娘「じゃあ、そろそろ寝るわね。おやすみ、男」

男「ああ、おやすみ」

~翌日~

魔娘「…ふぁあ~あ…あら?」キョロキョロ

魔娘「いない…どこに行ったのかしら?」

男「zzz…」

魔娘「ちょっと男、起きなさい」ユサユサ

男「zzz…ん?…zzz…」

魔娘「男、起きて。子淫魔がいないの」

男「ん…ん?…子淫魔が?」ネボケー

魔娘「そうなの。男、あなた知らない?」

男「いや、俺は今まで寝てたし…」

ガチャ

子淫魔「あ、おはようございます」

魔娘「どこに行ってたの?心配したわよ?」

子淫魔「あ、あの…お腹がすいたので何か食べるものをって…」

男「で、何かあったか?」

子淫魔「あ、はい♪」ニッコリ

男「そうか。なにを食べたんだ?」

子淫魔「…え?それは…その…」チラッ

魔娘「…ははーん…」ピン

男「ん?どうした?」

魔娘「ううん、なんでもないわ。私達も早く着替えて、朝御飯にしましょ?」

魔娘『口の横に…ついてるわよ』コソコソ

子淫魔『え?…あ、あの…ごめんなさい』コソコソ フキフキ

魔娘『男のじゃ無ければいいわ。それに無茶な吸い方はしてないんでしょ?』

子淫魔『う、うん。溜まってたぶんだけしか…』

魔娘『だったらいいわ。許してあげる』

子淫魔『ホント?』

魔娘『羽を直すのに滋養がいるんでしょ?』

子淫魔『…知ってたんだ…』

男「…なに話してるんだ?」

~商人の部屋~

商人「…ん?なんだか今朝はスッキリしてるなぁ…溜まっていたものが全部出たみたいな?」

~食事中~

商人「今日は皆さん、どうされますか?」

男「この町を散策しようかと」

商人「それはそれは。では、私が御案内しましょう」

男「え?それはさすがに悪いんで…」

商人「まあまあ。そうおっしゃらずに」

魔娘「では、お願いします」

商人「はい、こちらこそ。では、私は町を案内する準備をしてきます」

スキップスキップ…

男「…なあ、商人さんって、なんか動きが軽くなってないか?」

魔娘「そうね…」

従者「あのすっきりとした顔…軽やかなステップ…もしかして…私というものがありながら…」ワナワナワナ

男「おい魔娘…従者さんがすっごい顔になってるんだけど?」

魔娘「ホントね…」

魔娘『…ねえ、何回吸い取ったの?』コソコソ

子淫魔『えっと…さ、3回?』コソコソ

~市場~

商人「…本当にいいんですか?」

男「はい」

魔娘「ええ」

子淫魔 コクコク

商人「しかし…ここには強力な武器や防具が揃っています。なのにお買いになったのは毒針だけとは…」

男「俺たちは出来るだけ平和に旅をしたいんですよ」

男「だから、強力な武器は必要ないんです」

商人「いや、しかし…」

魔娘「私達に必要なのは身を守るものであって、武器や防具は最低限でいいんです」

男「俺にはこの長鉈があるし」

魔娘「私には鞭。そしてこの子にはさっき買った毒針」

男「これだけ装備が揃えば十分なんです」

魔娘「あとは道具とか食料とか…ね?」

商人「…失念していました。あなた方は冒険者でしたね」

商人「すみません。今日、新勇者様がこの町に来るとのことなので少し浮き足立ってしまいました」

男「え!?」

魔娘「新勇者が来るんですか?」

商人「ええ。夕刻ぐらいに着くとのことですが?」

男「そうですか…それじゃ忙しいんじゃないですか?戻ったほうがいいんじゃ…」

魔娘「そうですよ」

商人「いやいや、そっちは従者に任せてますから。彼女は結構優秀なんですよ?ただ…今日はちょっとご機嫌斜めですけどね」

魔娘・子淫魔「「…」」

商人「…どうされました?」

魔娘「い、いいえ、なんでもないわ。ね、買い物続けましょ?」

男「そうだな。あとは薬草とか道具とか…」
  ・
  ・
  ・

男「…これで大体揃ったな」

魔娘「そうね。あとは…」

…トテテテ!

従者「た、大変です!」

商人「これこれ。お客様の前で失礼ですよ?」

従者「し、失礼しました」

男「いや、俺たちのことは気にしないでください」

商人「ありがとうございます。…なにをそんなに慌てているんですか?」

従者「は、はい。今新勇者様御一行が到着されたのですが…」

商人「おお!もうお着きになられたのですか!!宴の準備を急がせなくては!!」

従者「い、いえ。宴より…医者を集めてください!戦士様と僧侶様と女魔導師様がサンドワームの毒にやられて!!」

商人「なんですと!?」

従者「女魔導師様は歩いてこられたのですが、後のお二方はサンドワームを倒した新勇者様が担いで来られて…今、町人が皆さんをこちらに運んでいます!」

商人「従者!すぐにでも医者を手配しなさい!!私の名前でね!!」

従者「は、はい!失礼します!!」

トテテテ…

男「…商人さん」

商人「申し訳ありません。今日は一日ご一緒するはずでしたが…」

男「ええ。俺たちのことは気にしなくていいですから、早く行ってあげてください」

商人「ありがとうございます」

魔娘「私達でお手伝いできることがあれば遠慮なく言ってください」

商人「お気遣い、痛み入ります。それでは、失礼させていただきます」ペコッ

ダダダダ…

魔娘・子淫魔・男「「「…」」」

子淫魔 クイクイ

男「ん?なんだ?」

子淫魔「…サンドワーム…死んだの?」

男「…ああ。そうらしいな」

子淫魔「…昨日の…あの子かな?」

男「たぶんな…」

子淫魔「どうして?」

魔娘「新勇者は自分の身を守るために…でしょうね」

子淫魔「どうして?どうして殺しちゃったの?」

男「…新勇者様たちには巣が見えなかったんだろうな」

男「だから自分達がなぜ襲われてるかも分からなかったんだと思う」

子淫魔「…仕方がないことなの?」

魔娘「ええ…これは生きるためなの。仕方ないわ」

子淫魔「…そっか…」

魔娘「…私達は旅の準備をしましょう」

男「…魔娘」

魔娘「なあに?」

男「サンドワームの毒って…治せるものなのか?」

魔娘「程度にもよるわね。症状が軽ければ毒消し薬で治るでしょう」

男「ふーん…もし症状が重ければ?」

魔娘「…解毒魔法でないと無理ね。でも、扱える人がいるのかしら?」

男「どういうことだ?」

魔娘「解毒魔法はね、習得が難しいの。だから魔法をつかえるからといって解毒魔法が使えるとは限らないわ」

男「…後で商人さんに彼らの様子を聞いてみるか」

子淫魔「…助けるの?」

男「ん?うん、たぶんな」

子淫魔「どうして?」

男「え?」

子淫魔「どうして助けるの?」

男「…死に掛けてるのを放って置くのは寝覚めが悪いだろ?」

男「それに…新勇者様たちが死ぬと悲しむ人が大勢いるだろうしな」

子淫魔「…悲しむひとが?」

男「新勇者様たちは人間を魔族の恐怖から解放するために旅をしている。つまり、魔族に恐怖する人々の希望なんだ」

男「だから新勇者様たちが死ぬと悲しむ人が大勢いる」

男「まあ、いずれ悲しむことになるかもしれないけど、とにかくそれは今じゃないはずだ」

男「それに…魔娘の魔法で助けられるんなら、そうすべきじゃないか?って言ってもわかんないか」

魔娘「…子淫魔。どうしてそんなことを聞いたの?」

子淫魔「だって…男さんは新勇者様達を嫌ってるんだと思ってたから…助けるのが不思議で…」

男「…そっか」

魔娘「そのことは置いといて…そろそろ買い物に行きましょうか」

子淫魔・男「「はーい」」

~商人の家~

バタバタ

男「…みんな大変そうだな」

魔娘「そうね…」

子淫魔「あ、商人さん」

商人「…ああ、あなたたちでしたか。すみません。お構いもせずに…」

男「いえ、あの…どんな様子なんでしょうか?」

商人「…新勇者様は怪我はしていましたが無事です。お仲間のほうは…」

魔娘「酷いんですか?」

商人「ええ…女魔導師様は毒消し薬がきいて回復に向かっていますが…戦士様と僧侶様は…」

男「解毒魔法を使える人はいないんですか?」

商人「ええ…以前はこの町にもいたんですが今は…」

男「…魔娘…」

魔娘「…しょうがないわね…商人さんにはお世話になってるし…」

商人「…どうされました?」

魔娘「私、使えますよ。解毒魔法」

商人「え!?で、では!!」

魔娘「但し、条件があります」

商人「ええ!私で出来ることでしたら何なりとお申し付けください!!」

魔娘「簡単なことです。私達の素性を誰にも明かさないで欲しいの。特に新勇者たちには」

商人「…え?」

魔娘「私達はあんまり目立つようなことはしたくないから…約束できますか?」

商人「え、ええ…それぐらいでしたら…」

魔娘「それと…~~~」
  ・
  ・
  ・

女魔導師「せんしぃ…せんしぃ…」

新勇者「僧侶…」

僧侶・戦士「「はっ…はっ…」」

女魔導師「あ、あたしを…おいてかないでよお…ねえ…」グスッ

新勇者「…」

コンコン ガチャ

商人「お邪魔します」

新勇者「…なんの用だ」

従者「解毒魔法を使える人を連れてきました」

女魔導師・新勇者「「え!?」」

従者「お入りください」

トテトテ

魔娘「…」

新勇者「…フードで顔が見えないな…」

女魔導師「若いみたいね…大丈夫なの?」

魔娘「…」スッ

女魔導師「な、なによ」

魔娘「…“解毒呪”」

パァアアア…

女魔導師「…え?身体から痺れがなくなって…苦しくない…」

新勇者「…治ったのか!?」

女魔導師「…え、ええ。信じらんないけど…治ったみたい…」

魔娘「…どいて」

女魔導師「え?」

魔娘「“解毒呪”」

パァアアア…

戦士「はっ…はっ…ぐ…ぐう…ん?俺は…どうしたんだ?」ムクッ

女魔導師「あ…ああっ!戦士ぃ!!」ガバッ

戦士「おわっ!どうしたんだ一体?」

女魔導師「戦士…グスッ…あなた、サンドワームの毒にやられて…死に掛けてたのよ?」

戦士「なに!?…くっ!すまない…新勇者様をお守りすると言っておきながら、なんと言う無様な…」

新勇者「いや…それより…」

魔娘「…“解毒呪”」

パァアアア…

魔娘「…帰るわね」

トテトテ…

新勇者「え?ちょっ、ちょっと待て!」

僧侶「はっ…はあ…ん…んん…はっ!?…ここは…どこ?」

女魔導師「新勇者様!僧侶が目を覚ましましたよ!!」

新勇者「あ…う、うん…」チラッ

魔娘 トテトテ…

新勇者「…いっちまった…」

~小奇麗な宿屋~

ガチャ

魔娘「ただいま」

男「おかえり」

子淫魔「おかえりなさい」

魔娘「ふぅ…疲れたわ」ドサッ

男「お疲れ様」

商人「すみません。でも…本当によろしいんですか?こんなところで…」

魔娘「ええ。今まで泊まってきた宿屋に比べたら全然いい部屋です」

商人「ですが…」

男「さっき商人さんの家にいったとき、新勇者様御一行の件で忙しそうでしたからね」

男「御迷惑をおかけするのも心苦しいんですよ」

子淫魔 コクコク

商人「ですが…いや、ここは御好意に甘えておきましょう。ありがとうございます」

商人「しかし…一時はどうなるかと思いましたよ。この町で新勇者様のお仲間が亡くなったりしたら…」

商人「危うく不名誉な風評が流れるところでしたよ。ですが、もう心配要らないでしょう」

商人「ですので…宿代はこちらで持たせてください」

男「いや、そういうわけには」

魔娘「お願いします」

商人「ははは。承知しました。それと…お聞きしたいことがあるのですが」

男「どんなことでしょう?」

商人「…あなた方を見ていると…どうも新勇者様たちを避けているような気がするんです」

商人「もしよろしければ…理由を教えていただけないでしょうか?お力になれるかもしれませんし」

魔娘「…一言で言えば考え方の違いね。私達は争い事は避けたいの。でも、新勇者は違うでしょ?」

男「彼らは自分達が強くなるために…必要以上に魔物を殺したりします」

商人「…」

男「俺たちはそれを受け入れることが出来ないんですよ。人も魔物も…同じ命じゃないですか」

子淫魔 コクコク

商人「…なるほど。分かりました。そういうことであれば…」

男「すいません」

商人「いえいえ!謝るのは私のほうですよ。命の恩人であるあなた方に気を使わせてしまいました」

男「いえ…」

魔娘「…ねえ、ご飯にしない?久々に解毒魔法を使ったからお腹が空いちゃったわ」

男「そうだな。もうすぐ晩飯の時間だし」

商人「でしたら、私の行きつけのお店があるのでそちらにお連れしますよ」

男「え?でも…新勇者様達のお相手をしなきゃいけないんじゃ…」

商人「それは従者に任せますよ。彼女ならうまくやるでしょうし」

魔娘「で、本音は?」

商人「…偉い人を相手にするのは面倒なんですよ」

魔娘「…ぷっ」

男「あははは」

魔娘「あははは。分かるわ。あははは」

商人「あははは。ですから、私にお任せください」

魔娘「ええ。お任せします」

商人「あ、それと…」ガサゴソ

商人「これをどうぞ」カサッ

男「…なんですかこれは?」

商人「紹介状です」

男「紹介状?」

商人「ええ。あなた方は魔界に行かれるんでしょう?だったら辺境の港に行かれますよね?」

魔娘「そうね。魔界に行く船があるとしたら、あそこぐらいしかないものね」

商人「ですから、そのときにこれをお使いください。これがあれば船に乗ることが出来ます」

商人「但し、あまりガラのいい船じゃないですよ?何しろ密輸船ですからね」

魔娘「…そんなのに加担したのがバレたら商人さんだってタダじゃすまないんじゃないの?」

商人「多少危険であっても、そこに商売の種があるなら行くのが商人ですよ」

商人「そこに書いてある“神官”って人を訪ねてください。きっと力になってくれますよ」

男「…ありがとうございます」

商人「なんの!私はあなた方に命を救われたのですから、当然ですよ。では、そろそろ食事に…」

男「はい」

~翌朝・宿の部屋~

男「みんな、準備は出来たか?」

魔娘「ええ」

子淫魔「はい」

男「…じゃあ、出発だ」

ガチャ

宿屋「おや、もう出発かい?」

男「ええ。お世話になりました」

宿屋「次はどこに行くんだい?」

魔娘「辺境の港よ」

宿屋「辺境の港!?またえらいとこに行くんだな…」

男「ええ…」

宿屋「だったらちょっと寄り道だが、山岳都市に寄って行きな」

魔娘「山岳都市に?どうして?」

宿屋「ここから辺境の港までなら、大人の足で5日ほどだ。けど、あんたらにはその子がいるだろ?」

子淫魔「?」

宿屋「子どもがいるなら途中で休んだほうがいい。だから山岳都市に寄って行きなって」

宿主「日にちは余計に掛かるかもしれないが、休み無しなら子供にはつらい道のりだ。な?」

男「…わかりました。そうします」

魔娘「そうね。急ぐ旅でもないものね」

男「それじゃ、お世話になりました」

宿屋「ああ、毎度」

男「あ、そうそう。もし商人さんがきたらこれを…」カサッ

宿屋「ああ。分かった」

子淫魔「…貸して?」

宿屋「ん?どうしたんだお嬢ちゃん?」

子淫魔 カキカキ…

子淫魔「…はい」

宿屋「ははは。何か書きたかったんだな。よしよし」ナデナデ

男「…じゃ、行ってきます」

バタン
  ・
  ・
  ・

商人「なんだって!?」

宿屋「ですから…早朝に出発されましたよ?」

商人「そ、そうか…」

宿屋「それから…手紙を預かってます」カサッ

商人「…手紙?私にかい?」

宿屋「はい」

商人「…」カサッ

  商人さんへ

  黙って出て行くことをお詫びします。

  いつまでも商人さんに甘えるわけにもいかないので出発します。

  またこちらに来ることがあれば顔を出させていただきます。

  それでは、お世話になりました。ありがとうございます。


  男

商人「…そうですか…仕方ありませんね…」

商人「お待ちしてますよ。また…必ず来てくださいね?」


  商人さんへ。勝手に精を吸ってごめんなさい。

  子淫魔


商人「…え?」

商人「………ええーーーっ!?」

今日はここまでにします

明日から仕事なので投下量が減ります

それではおやすみなさいノシ

乙ー
しかし僧侶は感じ悪かったけど全員そうなんだろうかな

ここでスレタイ回収か

>>522-533 ありがとうございます

>>533 たぶんまた出てくるんじゃないかとwww

~山岳都市~

男「なんだこれ…鉱石の露天掘りか?」

魔娘「すごい埃…」

子淫魔 ケホケホッ

魔娘「子淫魔、このタオルを口と鼻に当てておきなさい」

子淫魔「うん…」ゴソゴソ

男「そこらじゅうで採掘してるし」

魔娘「…ここは鉱山で成り立ってる都市みたいね」

男「早く宿を探そう。雨が降ってきた」

魔娘「そうね」
  ・
  ・
  ・

~宿の部屋~

男「この4人部屋…あんまり綺麗じゃないな」

魔娘「贅沢言わないの。子淫魔、喉の調子はどう?」

子淫魔「うん…よくなったみたい」

魔娘「よかったわ。雨が降ったおかげで埃が落ちたみたいね」

男「そうだな」

魔娘「…ねえ男」

男「ん?」

魔娘「ここには特に用は無いんでしょ?」

男「ああ。辺境の港に行く途中の町っていうだけだ」

魔娘「だったら明日出発しましょう?ここに居ると病気になりそうだわ…」

男「そうだな」

ドドドドドドオオウン…

男「な、なんだ!?」

魔娘「かなり大きな音だったわね…待って。これは…採掘現場が崩れたみたいね」

男「え?」

子淫魔「…どうして分かるの?」

魔娘「私は耳がいい種族なのよ」ニコッ

子淫魔「そっか」

男「で、規模とかは…」

魔娘「そんなの分かる訳ないでしょ?」

男「…ちょっとみてくる」

魔娘「余計なことに首を突っ込んじゃダメよ?」

男「わかってるよ。いってきます」

パタン

魔娘「…はぁ…」

子淫魔「どうしたの?」

魔娘「いいえ。なんでも…また男は厄介事を持ってくるんでしょうねぇ…」

子淫魔「だったら止めればいいのに…」

魔娘「男の場合はね、止めても聞かないから…」

子淫魔「ふーん…」

魔娘「まあ、それはさておき…私達も行くわよ」

子淫魔「…仕方ない?」

魔娘「そうね…ふふっ」

~採掘現場~

ザー…

男(結構強い雨だな…ん?)

ザッ ザッ ザッ

男(みんな黙々と救助…じゃない!採掘してやがる!!)

監督者「休むなよ!休んだら飯抜きだ!!」

男「ちょっとあんた!」

監督者「なんだテメエは!俺は見回りで忙しいんだ!!」

男「なんだじゃねえだろ!?救助しろよ!!」

監督者「はあ?…ああ、テメエ余所者か。いいんだよ。採掘してりゃあそのうち出てくらあな」

男「なっ!」

監督者「いいか?よく聞けよ?ここじゃあ崩落事故なんて日常茶飯事だ」

監督者「そのたびにいちいち作業を止めてたんじゃ効率が悪すぎらぁ」

監督者「しかもこの崩落だあ。埋もれた奴隷はまず生きちゃいねえ」

監督者「崩落した所だっていずれは採掘するんだ。そのときに遺体が見つかるだろ」

男「そんな!まだ生きてるかもしれないだろ!!」

監督者「そんなことに構ってらんねえんだよ!早くしねえと採掘権の期限が来ちまうだろうが!!」

男「…え?」

監督者「テメエは知らねえんだろうが、採掘権には期限があるんだよ!だから期限までに出来るだけ掘らなきゃ
なんねえんだ!!」

監督者「高い金払って手に入れた採掘権だ。奴隷が何人か埋まったのは痛手だけどよ…」

監督者「…それぐらいで作業を止めるわけにはいかねえんだよ!俺にも生活があるんだ!!」

男「…っ」

監督者「わかったら退いた退いた!」

男「なんで…」ポロッ

魔娘「あ、いたいた…え?」

子淫魔「…どうしたの?」

男「…なんでもない。宿に帰ろう」

魔娘「え?いいけど…」

子淫魔「…?」
  ・
  ・
  ・

~宿の部屋~

魔娘「ひどいわね…」

男「なんでこんな風になったんだろ…」

魔娘「そもそも採掘権に期限があるなんて…変な話だわ」

男「そっちかよ!」

魔娘「採掘ってね、掘って終わりじゃないの。分かる?」

男「そりゃあ…」

魔娘「出るかどうか分からない資源のために穴を掘って、たまたま運よく出たとするでしょ?」

魔娘「でも、それはそのままじゃ売り物にならないわ。精錬しないとね」

魔娘「精錬しても売り物になるまでには、いろいろ手を掛けなきゃいけないの」

魔娘「そうして売り物になったら今度はそれを流通させなきゃいけない…」

魔娘「それだけのことをしなきゃいけないの。規模で言えば国家事業クラスね」

男「そんなに…」

魔娘「そう。でもここは違う」

魔娘「ここは採掘する場所を小さく分けて、それぞれに採掘権を割り当ててるわ」

魔娘「…ここで採掘しているのは採掘権を買った一般の人たちみたいね」

男「そうなのか?」

魔娘「たぶんね、それと…ここの資源は殆んど掘りつくされてるわ」

男「じゃあ何でみんな採掘してるんだよ」

魔娘「…おそらく利権がらみね」

男「利権?」

魔娘「きっと、採算性が悪くなったこの鉱脈で儲けようとしたヤツがいるのよ」

魔娘「国から払い下げられたこの場所を小分けにして採掘権を設定して、それに期限をつけて…」

魔娘「一攫千金を夢見た人たちがその採掘権を買う…」

男「けどさ、資源はもう無いんだろ?」

魔娘「大規模採掘で採算が取れるほどじゃなくなっただけよ。まだ多少は残ってるわ」

魔娘「だから最初のうちはそこそこ採掘できたでしょうね。採掘した人もいいお金儲けになったんじゃない?」

魔娘「でも、時間がたつほどに資源は出てこなくなるわ。それでもここがまだ採掘されてるって言うことは…」

魔娘「…採掘権の利権で儲けてる人がいるってことよ」

男「けどさ、資源が出てこなきゃみんな気付くだろ?もうここには資源は無いってさ」

魔娘「そうならないようにサクラを仕込むのよ」

男「サクラ?」

魔娘「そう。定期的に“資源が出た”って噂を流せば採掘権は売れ続けるわ」

魔娘「そして、もっと儲けようとして考えたのが、採掘権に期限をつけることね」

男「…」

魔娘「採掘権に期限をつければ、一定期間ごとに採掘権収入が得られる」

魔娘「そうすることで利権を持っているヤツは何もしなくてもお金が入ってくる…」

男「それって騙しじゃないか!」

魔娘「はっきり言ってそうね。そのせいで苦しむのは最下層の人たち…」

男「理不尽だろそんなの!」

魔娘「利権や私欲に目が眩んだ人たち相手に、正論なんて通用しないわ」

男「けど!」

魔娘「それと…私に言わせれば、一番の被害者は奴隷達ね。出もしない資源のために命をかけて採掘してるんだもの」

男「…くそっ!そんなのってねえぞ!!」ガンッ

魔娘「…ねえ、男」

男「なんだよ!」

魔娘「…あなたは今シスターを助けるために旅をしている。そうよね?」

男「あ、ああ…」

魔娘「だったら今は…それだけに集中して」

男「…どういうことだよ。おかしいことをおかしいって言ってなにが悪いんだよ!」

魔娘「落ち着いて。私だってこんなのおかしいと思うわよ。でも…優先順位を間違えないで」

男「優先順位?」

魔娘「男、貴方が今、やらなきゃいけないことは何?」

男「そ、それは…」

魔娘「シスターの救出でしょ?だったらそれに集中して。他のことはそのあと。いい?」

男「…わかった」

子淫魔「…」グスッ

魔娘「どうしたの?」

子淫魔「…私も…もしかしたら…同じ目にあってたかもって思って…」

魔娘「…そうね」

男「…」

~翌日~

男「…さて、出発するか」

魔娘・子淫魔「「はーい」」
  ・
  ・
  ・
男(採掘現場か…)

監督者『サボるな!…どうした!?』

男「?」

監督者『…お前とお前、墓場に埋めて来い』

魔娘「…遺体が出たみたいね」

男「そうだな…墓場に埋めるって」

魔娘「あの人も少しは良心があったみたいね…さ、行きましょ」

男「ああ…」

魔娘(これで男が少しは救われるといいんだけど…)

~辺境の港~

ザワザワ…ガヤガヤ…

魔娘「…なんだか良くない雰囲気ね…」

男「ああ…なんなんだろうな…」

子淫魔 ビクビク

魔娘「…大丈夫よ。男がいるから」

子淫魔「う、うん…」
  ・
  ・
  ・

~宿屋~

男「4人部屋を頼む」

女主人「一番奥の部屋よ」チャラ

男「ありがとう」

魔娘「…ねえ、なんだか町の中の雰囲気が良くないんだけど…どうしてかしら?」

女主人「ああ。新勇者達がこの町に来てるからだよ」

男「新勇者様たちが!?」

魔娘「…私達が山岳都市のほうに回り道してる間に抜かされたみたいね」

男「そうみたいだな」

魔娘「でも、それでなんで雰囲気が悪くなるの?」

女主人「さあてねぇ…」

男「新勇者様達って…ここに泊まってるのかな?」

女主人「…違うよ。港にある大きい宿に泊まってるよ」

男「そっか…よかった」

女主人「ん?」

男「え?…なにか?」

女主人「いや…ところであんたらは何しにここに来たんだい?」

男「あ、その…船に乗りたくて…」

女主人「どこに行くんだい?」

魔娘「魔界よ」

女主人「魔界だって!?」ジロッ

子淫魔「ひっ!」ビクッ

女主人「ん?その子は…淫魔かい?」

男「あ、はい」

女主人「魔界に行く理由は…その子かい?」

男「あ、違います。この子はついでって言うか…」

女主人「ふーん…そうかい。ま、がんばんな」

魔娘「ここから魔界にいけるんでしょ?」

女主人「誰から聞いたか知らないけど、そんなわけ無いだろ?」

魔娘「どうして?」

女主人「…魔界との交流は御法度。それぐらい知ってるだろ?」

女主人「それにもし、そんなことが出来るとしてもあたしゃ知らないね」

男「そんな!ここまできたのに…」

キラッ

女主人「ん?…あんた、それ見せてみな」

男「え?」

女主人「それだよそれ。鉈の柄につけてるヤツ」

男「あ、はい…これですか?」スッ

女主人「っ!?なにこのクソ重たい鉈は!?っと…やっぱり」

女主人「…あんた、これどこで手に入れた?」

男「え?あの…“盗賊”さんに貰ったんです」

女主人「“盗賊”って…前の勇者一行のかい?」

男「はい」

チャキッ

男「!?」

子淫魔「!」バサバサッ シュッ

魔娘「男!」

女主人「動くんじゃないよ!」

男(鉈の切っ先が目の前に…気を抜いたら切られそうなぐらい鋭い目だ…)

女主人「…正直に答えな。あんたと“盗賊”の関係は?」

男「お、俺の師匠です」

女主人「師匠だあ!?」

魔娘「そうね。それが一番近いかもね」

女主人「…盗賊はお尋ね者だよ。あんたら、それを知ってんのかい?」

魔娘「ええ。知ってるわ」

女主人「はっ!あんたら、お尋ね者の弟子かい」

魔娘「盗賊さんはお尋ね者だけど、尊敬できる人だわ。今まで出会ったどの人よりもね」

女主人「…気に入らないね。その余裕ぶった態度。こいつがどうなってもいいのかい?」チャキッ

男「…」

魔娘「やって御覧なさい。でもあなたは男を傷つける気はないわね」

女主人「…どうしてそう思うんだい?」

魔娘「あなた、盗賊さんの身内だもの」

男「…へ?」

女主人「…なんで分かった?」

魔娘「匂いよ」

女主人「匂い?」

魔娘「あなたからは盗賊さんと同じ匂いがするのよ。…かすかにだけどね。どう?」

女主人「…よく分かったね。盗賊はあたしの兄貴だよ」スッ…

魔娘「子淫魔、もういいわよ」

子淫魔「ん…」バサバサッ

女主人「まったく…毒針なんて人に向けるんじゃないよ」

魔娘「もう羽は大丈夫みたいね」ナデナデ

子淫魔「うん。でもまだうまく羽ばたけなくて…」

魔娘「後は時間の問題よ。ね?」

子淫魔「うん…」

男「…あ、鉈返してもらえます?」

女主人「ほらよ」ポイッ

男「おっと」

女主人「…あんた、魔族かい?」

魔娘「…ええ」

女主人「…なるほどねぇ。どうりで」

魔娘「勘違いしないでね?魔界に行きたがってるのは男のほうなんだから」

女主人「あんたが?なんでだい?」

男「シスターが竜にさらわれて…それで探しに行くんです」

女主人「また無駄なことを…」

男「…っ」グッ

女主人「けど、そういう奴、あたしゃ嫌いじゃないよ」

男「…え?それじゃあ」

女主人「協力しようじゃないか」

男「ありがとうございます!」

女主人「けど今は無理だよ。新勇者達が居なくならないとね」

男「…なんで新勇者様がいるとダメなんだ?」

魔娘「そんなの決まってるじゃない。新勇者達は王都公認の“正義の人”だもの」

魔娘「そんな人たちが、一般人が魔界と交流することを許すと思う?国が禁止してるのに」

男「なるほど」

魔娘「でも…こうなったら早く新勇者達にこの町から出てってもらわないと…」

女主人「ま、しばらくは無理だろうね」

魔娘「どうして?」

女主人「あいつら王都に行きたいらしいけど、王都から迎えの船が来るのにあと二日は掛かるからね」

男「なんで砂漠を通って帰らないんだろ?」

魔娘「懲りたんじゃない?サンドワームに襲われてね」

男「あ、そっか」

魔娘「じゃあそれまではここで逗留ってことになるのね」チラッ

女主人「あたしゃ別にかまわないよ」

魔娘「じゃあ、お世話になるわ」

女主人「毎度ありぃ」

男「あとは…魔界に行く船だな」

女主人「…あんたら船に心当たりはあるのかい?」

男「いえ…」

女主人「ふうん…諦めたほうがいいよ」

男「なんでですか!?」

女主人「さっきも言ったように、魔界に行くのは御法度なんだ」

女主人「だから余所者のあんたたちじゃ、どこを探しても魔界に行く船は見つからないだろうね」

女主人「それに、もし見つかったとしても、どこの誰とも分かんないあんたらを乗せるとは思えないからね」

男「で、でも、俺たち紹介状持ってます。これが役に立つはずだって!」

女主人「紹介状?」

男「は、はい…これです」カサッ

女主人「んー?…えっ!?」

男「これを“神官”って人に見せれば何とかなるって言われて…」

女主人「…あんた、商人さんと知り合いだったのかい?」

男「え、ええ」

女主人「…とりあえず荷物を置いてきな。後で案内してやるよ」

男「ホントですか!?」

魔娘「ありがとう!」

女主人「けど!絶対大丈夫ってことは無いからね。ダメでも恨むんじゃないよ?」

魔娘・男「「はい!」」

~町中~

ザワザワ…ガヤガヤ…

男「…なんか見られてるような…」

魔娘「見られてるのよ。間違いなく…ね」

子淫魔 コソコソ

女主人「ここは脛に傷持つやつらが多いんだ。だから余所者には警戒するんだよ。我慢しとくれ」

魔娘「どうして?」

女主人「誰も好き好んでこんなとこに住みやしないよ」

男「どういうことですか?」

女主人「海峡の向こうが魔界なんていう危なっかしい土地に住むんだ。それなりに理由はあるもんさ」

魔娘「じゃあ、あなたはなぜここに住んでるの?」

女主人「…兄貴がお尋ね者になっちまったからね…流れ流れてここに着いたのさ」

魔娘「…ごめんなさい」

女主人「いいさね」
  ・
  ・
  ・

女主人「ここだよ」

男「え?ここって…教会!?」

魔娘「…ちょっと違うわね。神殿かしら?」

女主人「そっちのお嬢ちゃんの言うとおり、ここは神殿だよ」

子淫魔「…すごく静か…」

男「初めて見た…これが神殿か」

女主人「そうだろうねえ。国は王都教以外は禁止してるからね」

男「え?じゃあここは…」

女主人「表向きは教会だよ。けど、本当は神殿なのさ」

ガチャ

魔娘・子淫魔・男「「「!?」」」

女主人「…ここから先はあたいが話すから、喋らないでおくれよ?」

魔娘・子淫魔・男「「「はい」」」

コツッ コツッ コツッ

?『どなたかな?』

女主人「あたいだよ。“お客さん”を連れてきたんだ」

男『…誰だ?』ボソッ

女主人「しっ!」

?「…私は神官です。“お客さん”ですか…」

魔娘(優しそうな表情…だけどあの眼光は只者じゃないわね…)

神官「…して、どのような“お客さん”なのでしょうか?」

女主人「この子らは冒険者で、“あっち”に行きたいんだってさ」

神官「ほう…」

女主人「紹介状も持ってる。ほら、あんた。さっさと出しな」

男「あ、は、はい…これです」カサカサ

神官「…ふむ。商人さんの紹介状ですか…相当気に入られたみたいですね」

男「気に居られたかどうかは分かりませんが、よくしてもらいました」

神官「…よろしいでしょう。船に乗せてあげます」

男「ホントですか!?ありがとうございます!!」

神官「但し!」

魔娘・子淫魔・男 ビクッ

神官「ふたつ条件があります。一つ目は、このことは誰にも口外しないこと」

男「は、はい!」

神官「二つ目は…出発は新勇者様一行がこの町を出た後になります。彼らに見つかると厄介ですからね」

魔娘「…まあ、しょうがないわね」

神官「それと…ひとりにつき金貨10枚が必要です」

男「金をとるのか?」

神官「これは慈善事業ではないのです。嫌なら結構」

魔娘「払うわ」

男「お、おい!」

魔娘「男、これは商売よ。私達は魔界に行きたい。この人は国の決まりを破ってそれを実現してくれる」

魔娘「だからこれは正当な要求だと思うの」

男「魔娘がそういうのなら…はい、金貨30枚です」

神官「…確かに。では、出航の準備が出来ましたら迎えのものをよこします。それまでは宿で待機していてくだい」

男「分かりました」

~町中~

女主人「あんたら、飯はどうするんだい?」

男「あ、宿で」

女主人「ないよ」

男「…へ?」

女主人「うちは飯は無いんだよ」

魔娘「…食事は外で取れってことね」

女主人「そういうこと」

魔娘「で、どうするの?」

男「どうするって…どんな店があるのか知らないし…どこかいい飯屋を教えてくれませんか?」

女主人「いいよ。ついて来な」
  ・
  ・
  ・

女主人「ここだよ」

魔娘・子淫魔・男「「「…」」」

女主人「店は汚いけど味は保障するよ。さ、入んな」

男「えっと…おじゃまします…」

魔娘「…中は割りとマシなほうね」

子淫魔「いい匂い…」

ガヤガヤ…

店主「何人だ?」

男「あっと…3人です」

女主人「あたしゃ奥に行っとくよ」

店主「…で?なんにする?」

魔娘「メニューも無しじゃ決められないわ」

店主「メニューならホレ、壁に掛けてあるだろ」

子淫魔「あ…わたしカレー!」

魔娘「じゃあわたしは…魔牛ステーキで」

男「俺は…怪鳥の串焼きで」

店主「おまえら…せっかく港町に来たってのに、魚は食べないのかよ…」

男「あ、すいません…」

店主「いいよ。どうせまだしばらくこの町に居るんだろ?」

店主「明日は生きのいい魚を仕入れとくから注文してくれよ?」

魔娘「それは今日の料理の味次第ね」

店主「なに!?」

女主人「あははは。そっちの嬢ちゃんの言うとおりだ!あんた、あたいの顔に泥塗るんじゃないよ?」

店主「はいはいっと。そっちのやつ、持って行ってくれ」

女主人「あたしを使うんじゃないよ。まったく…ほら、カレーだよ」

子淫魔「うわあ…おいしそー!」

男「先に食べてていいぞ?」

子淫魔「ホント!?じゃあ、いただきまーす」パクッ

魔娘「どう?」

子淫魔「お…おいひいえふ!」

男「ははは。なに言ってるかわからんぞ」

子淫魔 パクパク

魔娘「…まだかしら…」グゥウ…

女主人「ほら、おまたせ」ドンッ

魔娘「すごい…肉に網の目がついてる…」

店主「うちは肉を焼くのに炭を使ってるんだ。焼けた炭の上に網を置いて肉を焼く」

店主「だから肉に網の目がつくんだ」

魔娘「そうなのね」パクッ

魔娘「…おいしい!火の通りも塩加減も完ぺきだわ!!」

店主「だろ?」ニヤッ

男「俺の串焼きもうまい!」

店主「そうだろそうだろ」
  ・
  ・
  ・

~宿の部屋~

子淫魔「…けぽっ」

魔娘「食べ過ぎたわ…量が多いのがいけないのよ」サスサス

男「そうか?」

魔娘「男にはあの量でちょうど良かったでしょうね…」

男「そうだな。味も良かったしな」

魔娘「そうね。他の料理も食べてみたいわね」

子淫魔「…ねえ」

魔娘「なあに?」

子淫魔「あの人たち…夫婦?」

男「たぶんな」

子淫魔「そっか…」

魔娘「…我慢しなさい」

子淫魔「はーい…」

男「なにを我慢するんだ?」

魔娘「オンナの子だけの会話よ。邪魔しないで」

男「えらい言われようだな…」

魔娘「今日は疲れたから、もう寝るわ。おやすみ」

子淫魔「わたしも…おやすみー」

男「じゃあ俺も。おやすみ」

~翌日~

男「港のほうに来てみたけど…」

魔娘「小さな漁船しか無いわね…」

子淫魔「…」

男「…あっちの岬のほうに行ってみるか」

魔娘「そうね」

子淫魔「うん」
  ・
  ・
  ・

男「やっぱり何にも無いな…」

魔娘・子淫魔「「…」」

男「ん?どうした?」

魔娘「…この水平線の向こうにあるのよ…魔界が」

子淫魔 コクン

男「…そっか。いよいよだな…」

魔娘・子淫魔・男「「「…」」」

~町中~

男「昼飯はどうする?昨日の店に行くか?」

魔娘「任せるわ」

男「んー。昼はちょっと軽めのものにするか」

魔娘「アテはあるの?」

男「ああ。今朝、女主人さんに聞いてたんだ」

魔娘「ふーん…雰囲気のいい店だといいけど」

男「それは行ってからのお楽しみっと。…ん?あれは…」

魔娘「あのむさくるしい顔…どこかで見たわね…戦士…だったかしら?」

男「あの胸…思い出した!女魔導師様だ!!」

魔娘・子淫魔 ジトー…

男「そんな目で見るなあ!」

魔娘「変態はほっといて…子淫魔、後ろに隠れてなさい」

子淫魔「はい…」コソコソ

男「変態認定ですかそうですか」

魔娘「男、あれ…」

男「ん?近づいてくる…ゆっくり離れよう」

魔娘「ええ」
  ・
  ・
  ・

女魔導師「戦士、ご機嫌だねぇ」ニコニコ

戦士「ああ。新しい剣が手に入ったからな」

女魔導師「良かったねぇ」

戦士「だが、試し切りをするまではなんとも言えんな」

女魔導師「そっかー。じゃあ町の外に出て魔物でも倒してくる?」

戦士「一人じゃ何かあったら困るからダメだ」

女魔導師「あたしも一緒に行くからさぁ」

戦士「…ちゃんと支度をしてからにしよう。な?」

女魔導師「…慎重だねえ」

戦士「そうだ。…ん?あれは…」

魔娘・子淫魔・男 コソコソ…

戦士「おい!」

子淫魔 ビクッ

男「…なにか?」

戦士「その魔物、わたしが切って進ぜよう」チャキッ

男「はあ?」

戦士「お前達、魔物憑きで大変だったろう?だからわたしが切り捨ててやろう」ニヤニヤ

男「止めてください!この子は大事な仲間なんですから!!」

戦士「お前はその魔物に騙されているのだ。そのような危険な魔物、生かしておくわけにはいかん」イラッ

男「危険かどうかは自分で判断します。放っておいてください」

戦士「わたしが直々に切って進ぜるのだ。ありがたく差し出せ!」

男「いやです」

魔娘「走るよ!」

子淫魔「うん!」

トテテテテ…

女魔導師「ふふふ。そうはいかないわよぉ?」

魔娘「!?…どいて」

女魔導師「っ!?その声…砂漠の都市であたし達を助けた!?」

魔娘「どいてったら!」

女魔導師「…そうはいかないわ。少なくともあのケリがつくまではね」

魔娘「え?」

戦士「どうしても譲らぬか?」イライラ

男「仲間を差し出すわけ無いでしょ!?」

戦士「…わたしは正義だ…正義に逆らうものはみな悪だ…お前は悪だ…悪は…滅びろ!」

ガキィイイン!

男「危ないヤツだな!」

戦士「そんなっ!鉈でっ!防げるっ!わけがっ!ないだろっ!!」

カキン キン キン キン ガキィイン!

男(遅い上に弱い…相当手加減してるのか?)

戦士「はあ、はあ、はあ…き、きさまぁああ!!」ガバッ!

男(んな訳ないか。必死だもんな)

キィイイイン…

戦士「…あ」

カラン

男「剣を弾き飛ばしました。もう終わりです」

戦士「…くっ!き、貴様なんかに負けるかっ!!」バッ

男(眼つぶし!?鬱陶しいやつだなあ)

ダッ

戦士「逃げるのか!」

男「魔娘!子淫魔!!」タタタタ

魔娘・子淫魔「「男!」」ギュッ

女魔導師「ま、待ちなさい!」

男「“転移”!」

シュイン

女魔導師「…え?…消えた?」

戦士「女魔導師!奴らはどこに行った!!」

女魔導師「そ、それが…消えちゃったの…」

戦士「…なに?」

女魔導師・戦士「「…」」

~宿の前~

シュイン ドサドサッ

魔娘「いたたた…着地はもっとゆっくりしてよ!」

子淫魔「う~…おしり打った…」サスサス

男「ごめんごめん」

ガチャ

女主人「おや?あんたら、うちの前でなにしてんだい?」

男「と、とりあえず中で…」
  ・
  ・
  ・

男「…で、急いで逃げてきたんです」

女主人「ふーん…で?どうするんだい?」

魔娘「…他に宿は…無いんですよね?」

女主人「そうだねぇ…」

男「…ここに居るしかないな」

魔娘「…あいつらが復讐しに来たら?」

男「そのときは…どうしよう?」

女主人「…ちょっとあんたら」

男「なんですか?」

女主人「お客さんだよ」

男「え?」クルッ






新勇者「初めまして」

~宿の部屋~

新勇者「本当にすまなかった!」ドゲザー

男「い、いや。そこまでしていただかなくても…」アタフタ

新勇者「けど!」

魔娘「まあ、怪我もしてないし、あなたにそこまでしてもらうことは無いわ」

子淫魔 コクコク

魔娘「ただ…どうせならあの人たちに謝って欲しかったわ。自分達は正義だから、なにをしてもいいなんて…トンだ思い上がりよ」

新勇者「戦士と女魔導師には俺から注意しておくよ」

魔娘「もういいわ…でも…」

新勇者「ん?」

魔娘「あなた、本当にあの人たちと仲間なの?なんだか全然雰囲気が違うんだけど」

新勇者「彼らは今回の旅で、俺を守るためだけに国中から選りすぐられてきた、いわばエリート中のエリートさ」

新勇者「けど俺は王都の郊外で山仕事をしてた田舎者だから…」

新勇者「…俺、ホントはこういうの、苦手なんだ…」

魔娘「そう…それと、子淫魔のことなんだけど」

新勇者「それもちゃんと言っておくよ。手を出すなって」

子淫魔「あ、ありがとう」ペコッ

新勇者「…いい子だな」

男「…ロリコン?」

新勇者「ちげぇよ!田舎に残してきた友達を思い出してたんだ!!」

男「友達?」

新勇者「…スラりんって言って、スライムなんだ」

魔娘・子淫魔・男「「「え!?」」」

新勇者「そ、そんなに驚かなくてもいいだろ…」

男「いや…新勇者様がスライムと友達だったなんて…意外だったから…」

新勇者「他の人には言わないでくれよ?」

魔娘「ええ。言わないわ。言ったところで信じてもらえないでしょうし」

新勇者「そうだろうな。それじゃ、そろそろ帰るとするよ。じゃあな」

男「あ、わざわざすいませんでした」

子淫魔「ばいばーい」ノシ

新勇者 ノシ

魔娘「…思ったより話がわかる人だったわね」

男「そうだな。それだけにあのお仲間のほうが残念だな…」

魔娘「そうね…でも、それはしょうがないんじゃない?」

男「なんでさ」

魔娘「新勇者が言ってたでしょ?“新勇者を守るためだけに選ばれたんだ”って」

男「あ、ああ…」

魔娘「彼等は新勇者を守るためなら何をしてもいいと思ってるのよ」

男「悪いことでもか?」

魔娘「法を破らないギリギリのことならしてるでしょうね。法を破れば彼らの正義もなくなるもの」

男「じゃあ…子淫魔を切ろうとしたのは?」

魔娘「“魔族を倒しただけ”って言い訳ができるからでしょうね。きっと」

男「最低だな…」

子淫魔(新勇者様…ね)

魔娘「子淫魔?」

子淫魔 ビクッ

魔娘「やめといたほうがいいわ」

子淫魔「はい…」シュン

~夜・宿の部屋~

魔娘「今日も食べ過ぎたわ…」サスサス

男「今日の魚料理もうまかったもんな」

子淫魔「白子おいしかった♪」

男「よかったな」ナデナデ

子淫魔「えへへ」

バサバサバサ ホーッ ホーッ

男「お、使い魔が帰ってきた」カサッ

  男へ

  もう辺境の港まで来ているのですね。

  この手紙が間に合うか分かりませんが送ります。

  男も分かっていると思いますが、人間のお金は魔界では使えません。

  ですから、魔界で価値のあるものを買い、それを魔界で売ってお金に換えてください。

  私達の時は砂金に換えていきました。

  多少価値は下がりますが、それが一番嵩張らなくていいと思います。


  これから先はなにが起こるかわかりません。

  くれぐれも用心し、身の危険を感じたらすぐに引き返しなさい。

  分かりましたね。


  賢者

男「…賢者様も心配性だな」

魔娘「賢者様は魔界の経験者ですもの。心配もするわよ」

男「あー、そういえば…」

魔娘「そのせいでお尋ね者になって…」

魔娘・男「「…」」

子淫魔「…ねえ」

男「ん?なんだ?」

子淫魔「どうして…賢者様?はおたずねものになったの?」

男「それは…」

魔娘「犠牲になったのよ」

子淫魔「ぎせいに?」

魔娘「魔界に勇者を置いて帰っちゃったから…ね」

子淫魔「どうして?」

男「…魔族に襲われた時に、勇者様が賢者様達を無理やり転移符で帰したんだ」

子淫魔「それって勇者様が賢者様達を庇ったってこと?どうしてそれでおたずねものになっちゃうの?」

男「簡単に言うと…勇者様が死んだ責任を押し付けられたんだ」

子淫魔「…それっておかしいよね?勇者様を魔界に行かせたのはだれ?」

男「それは…王様だな」

子淫魔「だったら、勇者様が魔界に行っても大丈夫になるように強くしなかった王様のせいじゃないの?」

男「…その通りだな。だけど王様は責任をとろうとしなかった」

男「その代わり…すべての罪を賢者様達に負わせたんだ」

子淫魔「そんなの…おかしいよ…」

男「そうだな…けど…それが人の世なんだ…」

子淫魔「賢者様がかわいそう…」

魔娘「…もう遅いからお風呂に入って寝ましょう」

子淫魔「…うん」

男(子淫魔の言うとおりだ…おかしいのは…)

~翌日~

男「新勇者様はああいってたけど…」

魔娘「仲間達に会うのはやっぱり嫌ね…」

子淫魔 コクッ

魔娘「と言っても…準備するものもあるし…困ったわね」

男「どうする?」

魔娘「…仕方がないから男、あなたが用意してくれないかしら?あなただけなら逃げることもできるでしょ?」

男「そうだな。そうするか」

魔娘「ちょっと待ってね。準備するものをメモするから」カキカキ

魔娘「…はいこれ。よろしくね」

男「わかった」

~町中~

売り子「毎度ありー」

男「これで買うものは終わりだな。金貨50枚も砂金に変えたし…」

ガヤガヤ…

男「ん?港のほうが騒がしいな…行ってみるか」
  ・
  ・
  ・

男「…すごい船だな…」

女主人「王都の船だよ」

男「あ、女主人さん」

女主人「ほら、新勇者たちだよ」

男「あ、ホントだ」

女主人「出発は明日らしいね」

男「そうなんですね」

女主人「…これでやっと落ち着くねえ」

男「そうですね…」

女主人「…準備はできたかい?」

男「あ、はい。買い物は大体終わりました」

女主人「…明日は早めに晩飯を食っときな」

男「え?…あ、はい」

~翌日・夜~

男「晩飯も食ったし…準備もできてる」

魔娘「いつでも行けるわ」

子淫魔「おっけーです」

コンコン ガチャ

女主人「もういいかい?」

男「あ、はい。いつでもいいです」

女主人「そうかい…ついてきな」

男「…よし!行くぞ!!」

魔娘・子淫魔「「はい」」

~神殿~

女主人「…静かにしてなよ」

男 コクッ

神官「…来ましたか」

魔娘・子淫魔・男 ビクッ

女主人「あたしゃここまでだよ。あとは神官さん、頼んだよ」

神官「分かりました。こちらへ」

ガチャ

男「裏口?」

神官「ここから先、しばらく森の中を歩きます。足元に注意してください」

男「分かりました」

~森の中~

ガサガサ

魔娘「…なんだか怖いわ」

子淫魔 コソコソ

男「…大丈夫だ。俺たち以外に気配はない」

神官「お金をいただいた以上、やることはちゃんとしますよ。商人さんの紹介状もあることですし」

魔娘「そう願いたいものね…」

ガサガサ…
  ・
  ・
  ・

神官「…着きましたよ」

男「ここって…森の中だよな?」

魔娘「こんな森の中に入江があったなんて…」

神官「ここはまわりを大きな木々が覆っていますから、入江が見えないんですよ」

男「なるほど…」

神官「…あそこの船です」

男「あれか…」

魔娘「思ったより大きいわね」

神官「色々な品物を載せていますからね」

男「なるほど」

?「そいつらが“お客さん”かい?」

男「!?」バッ

神官「身構えないでください。彼があなた方の面倒を見てくれる船長です」

?改め船長「ふーん…まだ若いな」

男「…」

船長「…で?どうすりゃいいんだ?」

魔娘「魔界に上陸できればいいわ」

船長「はっ!簡単に言ってくれるぜ」

魔娘「無理なの?」

船長「…今は魔界も大変らしいんだ。だから洋上で荷物の受け渡しをする」

船長「あんたらをそいつらの船に乗せることはできるが…そっから先は保証できねえな」

男「そんな!」

魔娘「…それでもいいわ。相手の船に乗り込んだらそこから先は自分たちで何とかするから」

船長「ほう?あんた、見かけによらず、いい度胸してんな」

魔娘「男がいるからね」

男「へ?俺?」

子淫魔 コクコク

船長「…いいだろう。乗りな」

魔娘「ありがとう。さ、行くわよ」

男「あ、ああ…神官さん、ありがとうございました」

神官「いえいえ。私は自分の仕事をしただけです」

子淫魔 ペコッ
  ・
  ・
  ・

船長「今から出港する。明かりの類いは一切使うな。わかったな?」

男「ああ…」

船長「よし!錨を上げろ!!」

ガラガラガラ…

船長「俺が呼びに来るまでここで待ってな」

魔娘「…狭い部屋ね。金貨30枚も払ってるんだからもっとマシな部屋にしてよ」

船長「窓がついてるだけマシだと思え。じゃあな」

パタン

魔娘「…いよいよ出港ね」

男「ああ…」

子淫魔「おうち…」
  ・
  ・
  ・

ザザーン…

男「魔娘、大丈夫か?」

魔娘「ええ。今のところね」

男「そうか。思ったより揺れなくて助かるな」

魔娘「もっと小さい船だったら酔ってたわ」

子淫魔「?」

男「子淫魔は平気みたいだな」

子淫魔「窓の外見てると平気だよ?」

男「そっか」

魔娘「私もそうするわ」

ザザーン…ザン…チャプッチャプッ…

男「…止まったみたいだな」

魔娘「…」

男「…どうした?」

魔娘「…ちょっと緊張してるのよ」

男「そっか」

魔娘「男、いつでも鉈を振れるようにしておきなさい」

男「ああ」

カチャ

船長「出ろ」

男「やっと外の空気が吸える…」

魔娘「そうね」

子淫魔「んーっ!」ノビーッ

男「…ん?相手の船は?」

魔娘「そういえば…騙したの!?」

男 バッ

船長「そう慌てるな。もう来てる」

魔娘・子淫魔・男「「「え?」」」

船長「縁から下を見てみな?」

男「…あ」

魔娘「あれは…魚人族ね。あんな小さい船なの?大丈夫?」

船長「それはあいつらに言ってくれ。荷物はもう粗方乗せ換えた。あとはお前らだけだ」

船長「このまま帰るも、乗り移るも好きにしな」

男「…行くか」

魔娘「…それしかないようね」

子淫魔 ギュッ
  ・
  ・
  ・

男「お邪魔しますよ」

魚人族「…」

男「無愛想なやつ…」

魔娘「しょうがないわ。魚人族は人の言葉は分かるけど、人の声は持っていないから」

男「え?じゃあどうやって会話するんだ?」

魔娘「人間には聞こえないだけ。彼等はちゃんと会話してるわ」

男「それでよく密輸ができるな」

魔娘「おそらく筆談とジェスチャーでしょ?」

男「そうなのか?」

魚人族「----」

男「…なんか言ってるみたいだけどさっぱりわからん…」

魔娘「私には聞こえるわよ」

子淫魔「わたしも聞こえる」

男「え?なんて言ってるんだ?」

子淫魔「“まったく厄介な荷物だ”だって」

魚人族「----」

魔娘「“とりあえず陸までは連れて行く。あとは勝手にしろ”ですって」

男「そっか…じゃあ、陸までは行けるんだな」

魔娘「そうね」

船長「おいお前ら」

男「あ、船長」

船長「これで俺の役目は終わりだ。じゃあな」

男「ああ。世話になったな、ありがとう」

船長「けっ!礼なんてよせやい」

子淫魔 ノシ

ザザーン…

男「…行っちまったな」

魔娘「ええ…」

子淫魔「…」

ギィ…ギィ…

男「こっちも動き出した!どうなってるんだ?」

魔娘「魚人族が水中で引っ張ってるのよ…結構早いわね…」

男「あ、ホントだ…なあ。彼等はどういう種族なんだ?」

魔娘「そうね。魚人族は泳ぎが得意で、1時間以上水の中に潜れるわ」

魔娘「その特技を生かして、魚や貝なんかを取って生計を立ててるの」

魔娘「でも、その容姿から他の種族との交流は少ないわね」

男「容姿って?」

魔娘「彼等は体の表面が堅いの。そのおかげでかなり深い海の底でも行けるわ」

魔娘「そして手足には水かきがあって、背びれみたいなものがあるの」

男「顔は?」

魔娘「顔は…魚に似てるわね」

男「なるほど」

ザバッ

魚人族「----」

魔娘「----?」

魚人族「----」

魔娘「----」

男「…なんだって?」

魔娘「“すぐに着くから大人しくしていろ”ですって」

男「わかった」

ギィ…ギィ…

ザバッ

魚人族「----」

魔娘「着いたそうよ」

男「え?…あ、桟橋」

魚人族「----」

魔娘「降りろって」

男「わかった。ほら、子淫魔」

子淫魔「…よいしょっ」

魔娘「私にも手を貸して」

男「ほら」

魔娘「ありがと…よいしょ」

男「ほっ…」

テクテクテク

男「陸だ…ここが魔界か…」

ザッ ザザッ

男「着いたんだ…」

魔娘「うん…グスッ」

男「ど、どうした!?」

魔娘「ううん…やっと…やっと…帰ってきたのね…」

子淫魔「うん…」じわぁ

男「ああ…ついに…だな…」

魔娘「ええ…ヒック…」

男「これからが本当の冒険だな…」

魔娘「そうね…ねえ、男」

男「ん?」



魔娘「 ---ようこそ。魔界へ」ニコッ


やっと魔界についた…

今日はここまでにします

おやすみなさいノシ

スラりんか
定番の名前だな

伏線的に見てまだ折り返し前後ってところか?
おつ

魔娘が普通に魔牛のステーキ食っててワロタ

見覚えがあるスレタイだと思ったら、
やはり土瓶さんの新作だったか。
今までの作品とは毛色が違うけど
相変わらずの読みやすさで、ここまで一気読みしてしまいました。
リアルタイムで追い掛けるのは初めてなので、偶然見つけられてラッキーだわw

ストーリーに絡みそうな人物でまだ登場してないのもいるから、これからどう展開していくか
結末はどうなるかすごい楽しみです。完結までついていきます!

>>634-648 ありがとうございます

>>634 一番分かりやすいかと…

>>638 そうですね。やっと半分ってとこですかね?

>>643 魔牛は魔物ですからwww

>>645 長くなりそうなんで後悔し始めてたり…

きたー!?

~魚人族の倉庫街~

魚人族「----」

魔娘「----」

男「なんだって?」

魔娘「“夜道は危険だから今夜はそこの物置小屋を使え”ですって」

男「案外優しいんだな」

魔娘「前にも言ったでしょ?魔族は友好的なら歓迎するって」

>>650 はいwww

男「あー…そういえばそんなこと言ってたな」

魔娘「今夜は好意に甘えましょ」

男「ああ。けど、警戒はしたほうがよさそうだな」

魔娘「その必要はないと思うわ。彼ら魚人族は水の外に出ると1時間ほどで死んじゃうもの」

男「そうなのか?案外不便なんだな…」

魔娘「そうね。だからさっきもあっちの倉庫まで素早く荷物を運んでたのよ」

男「なるほどなぁ」

まってたぜ

~魚人族の物置小屋~

カリカリカリ…

.  ┌───┐
.  │鬼の国│
.  │┌──┴──┐
.  ││ 竜の国  ├───┐
.┌┴┴┐     ┌┴┐   │
.│碧眼├───┤山│ 巨 │

.│の国│王の国│脈│ 人 │
.│   ├───┴─┤ の │

.└─┬┘     ┌─┤ 国 │
.   │ 獣の国 │山│    │
.   │      │脈│   │

.   └─┬──┴─┴┬─┘
.      │ 妖精の国 │
.┌───┴┐      │
.│ 水の国 ├────┘
.└────┘


>>654 お待たせしました

魔娘「…と。こんな感じね」

男「結構大きいんだな…魔界って」

魔娘「手書きだから大きさは適当よ?面積は人間界と同じぐらいじゃないかしら?」

男「そうなのか?」

魔娘「ええ。あと、私達は“魔界”じゃなくて“主王国”って呼んでるわ」

男「主王国?」

子淫魔「えっと…この世界は部族ごとに小さな国を作ってます。そしてそれぞれの国は族長たちが治めてます」

子淫魔「そして、その族長たちを取りまとめてるのが“主王様”です」

男「ふーん…“主王様”って?」

魔娘「…人間は“魔王”って呼んでるわね」

男「魔王…か」

魔娘「怖い?」

男「いや。どんな人なのかなって」

魔娘「そうね…民の生活を良くするために頑張ってる人だわ」

男「いいやつじゃん!」

子淫魔「でも…」

男「ん?」

子淫魔「今の王様は争い事がお好きで…軍隊?を鍛えたりしてるから…」

魔娘「…」

男「軍隊を鍛えるのはわかるけど…争い事が好きって…」

子淫魔「軍隊はクラーケンや魔牛なんかの魔物から民を守るのが主な仕事ですけど…」

子淫魔「最近は…人間の国を攻める噂もあったりして…ちょっと怖いです…」

男「人間の国を攻めるって!?」

子淫魔「う、噂ですけど…」

※魔族:~人、~族など、言葉を話し文化的な生活をしているもの。 魔物:身体の大きな野生生物。

男「…ま、いいや。それは国が考えることだろうし」

子淫魔「…え?それだけ?」

男「俺一人でどうこうできる問題じゃないだろ?」

魔娘「ふふっ。少しは成長したようね」

子淫魔「でも…」

魔娘「子淫魔、国同士の戦争なんてものは国長が対処する問題なの。男に期待するのはお門違いだわ」

子淫魔「…」

男「…これでこの話はおしまいにしよう。それより、今どこら辺だ?」

魔娘「私の記憶が確からならこの辺りよ」

男「ふーん。で、これからどこに向かうんだ?」

魔娘「目的地は淫魔族の町とエルフ族の町と竜の国ね」

魔娘「だけどまっすぐ行くことはできないから…まずは水人都市に行きましょ」

男「水人都市?」

魔娘「ええ。今いるのが魚人族の倉庫街だから、わりと近いはずよ?」

男「そっか。どんなところだろ…」

魔娘「そうね…水上に広がる都市…とでも言えばいいかしら」

男「水上に?」

魔娘「…水の国の国民は基本的に魚人族や人魚族のような水が無いと生きていけない種族が多いの」

魔娘「でも、他の種族とも交流があるから、交易用に建物を整備したの。それが水人都市なのよ」

子淫魔「すごく綺麗なとこだって聞いたことがあるよ?」

男「そうなのか。楽しみだな」ナデナデ

子淫魔「えへへ」

魔娘「…今夜はもう寝ましょう」

男「そうだな。おやすみ」

子淫魔「おやすみなさーい」

~水人都市への道中~

テクテクテク…

男「もっと水だらけのところかと思ったら…普通に道も森や山もあるんだな」

魔娘「当たり前でしょ?交易に使う道も整備してあるし、水際で生活する種族もいるわよ」

男「けどさ、水の国の国民は水から出ると死んじまうんだろ?」

魔娘「すべてがそうじゃないわ。亀人族なんかは陸地でも平気だし、蛙人族の中には木の上で生活している種族もいるの」

男「そういうのもいるのか」

亀商人「おや珍しい。旅人かい?」

男「!?」バッ

魔娘「男、落ち着いて。ええ、そうよ。水人都市に向かってるの」

亀商人「そうかい。ま、気をつけてな」

魔娘「あなたはどこに?」

亀商人「魚人族の倉庫街さ。なにやら珍しいものが手に入ったらしいんでな」

魔娘「そう。気をつけてね」

亀商人「ああ。それじゃ」

男「…なあ、今の甲羅背負った亀っぽい人って…」

魔娘「亀人族よ。きっと商人ね」

男「あれがそうか…魚人族の倉庫街に行くってことは昨日の積み荷のことかな?」

魔娘「きっとそうね」

子淫魔「嬉しそうだったね」

魔娘「珍しいものって言ってたからね。きっと商人の血がうずくんでしょ?さ、急ぎましょ」

男(魚人族もそうだけど、さっきの人も温和な感じだったな)

~水人都市~

子淫魔「うわあ…きれい…」

男「…これはすごいな…大きな入り江っぽいけど水の上に建物が建ってて…どんな技術なんだろ?」

魔娘「子淫魔は来たことないの?」

子淫魔「うん…“村の外に行くのはもっと大きくなってから”って…」

男「魔娘は来たことがあるのか?」

魔娘「…ええ。小さいころにね…」

男「そっか…とりあえず宿を探そう」

魔娘「そうね。でもその前に砂金を硬貨に変えなきゃ」

男「あ、すっかり忘れてた」

魔娘「通貨が人間界とは違うからね。もっとも価値はあんまり変わらないけど」

男「そっか。じゃあ早く変えよう」

魔娘「この砂金の量だと金貨45枚分かしら?銀貨も混ぜとかないと…」ブツブツ…

男「頼りにしてます姐さん!」

魔娘「だから誰が姐さんよ!」

~宿~

男「4人部屋で」

人魚主人「では、銀貨15枚です」

魔娘「じゃあこれで」チャリン

人魚主人「はい。そちらの通路の突き当りのお部屋です。では、ごゆっくり~♪」チャポン

男「ビックリした…小船のままチェックインするって…それにしても」

男「…人魚って初めて見た…きれいな人だったな…」ニヤケ

子淫魔「…」ツネッ

男「いてっ!なにすんだよ子淫魔」

子淫魔 プクーッ

男「…何むくれてんだよ…」

魔娘「…」ツネッ

男「魔娘も痛いって!」

~宿の部屋~

男「綺麗な部屋だな」

子淫魔「見て見てー!窓の外もすごくきれい♪」

魔娘「…ホント。きれいな景色ね」

ヒトデ モゾモゾモゾ

男「おわっ!」

魔娘「どうしたの!?…あ、まだ掃除中だったのね」

男「え?」

魔娘「このヒトデは這いながらゴミとかをきれいに掃除するの。ほら、掃除が終わったから部屋から出ていくでしょ?」

男「そ、そうなのか…びっくりしたよ。あれも魔族か?」

魔娘「あれは魔物よ。小さいころから躾けて、掃除をするように教えるらしいわ」

男「ふーん…すごいな…」

子淫魔「ね!ね!お外行こうよ」

男「そうだな。魔娘も来るだろ?」

魔娘「そうね。いろいろ買わなきゃいけないものもあるし」

男「よし。じゃあ行ってみよう」

子淫魔「わーい♪」

~町中~

ギイコ ギイコ…

魔娘「…揺れが少なくなってきたわね」

男「小船を漕ぐのにも大分慣れてきたからな」

魔娘「その調子でお願いね」

男「はいはい…ところでさあ」

魔娘「なあに?」

男「魔娘は変化を解かないのか?もう魔界なんだし、人間に化けてる必要もないだろ?」

魔娘「…この方が楽なのよ。だからこのままでいるわ」

男「そっか。まあいいけどさ」

子淫魔「あ!あそこ!!人がいっぱい!!」

魔娘「なにかしら?男、寄ってくれる?」

男「はいはい」
  ・
  ・
  ・

子淫魔「うわあ…」キラキラ

魔娘「真珠に珊瑚石に金細工に…どれもお洒落だわ…」キラキラ

子淫魔「いいなぁ…」

魔娘「…買っちゃおっか!」

子淫魔「え?」

魔娘「わたしも少しぐらいお洒落したいもの。子淫魔も一緒に選ばない?」

子淫魔「…い、いいの?」

魔娘「ええ。あまり高いものは無理だけどね」ニコッ

子淫魔「ありがとう!」

男「…すごいはしゃぎ様だな…」

チャポン

立ちんぼ人魚「はあい、お兄さ~ん♪」

男「え?お、俺?」ドキッ

立ちんぼ人魚「そうよぉ。あたしといいことしな~い?」

男「え、あっと…俺、足フェチなんで…」

立ちんぼ人魚「あらぁ、残念ねぇ」パシャンッ

男「ビックリした…人魚にもああいう人がいるんだ…それにしても美人だったなぁ…」

魔娘「どうしたの?」

ビクッ

男「な、なんでもない!あははは…」

子淫魔「?」

魔娘「ふうん…でね?これなんだけど」

男「これって…いくつ持ってんだよ二人とも…」

魔娘・子淫魔「「えへへへ」」

男「…それで、全部でいくらなんだ?」

魔娘「金貨10枚よ」

男「じゅっ…!?」

子淫魔「…だめ?」ウルッ

魔娘「ねえ…お願い…」ウワメヅカイ

男(ふ、ふたりともそんな顔されたら…)

男「…しょうがない。いいよ」

子淫魔「ありがとー!」ダキッ

魔娘「さすが男ね♪」ダキッ

男(子淫魔は残念だけど魔娘のは柔らかい!)

~宿の部屋~

男「残金は金貨33枚と銀貨が50枚ほどか…」

魔娘「これだけあれば何とかなるわ」

男「そうなのか?」

魔娘「ええ。妖精の国まで船で行けば、淫魔族の町まで歩いて2日ほどだからね」

子淫魔「…あの…」

男「ん?なんだ?」

子淫魔「ご、ごめんなさい…」

魔娘「いきなり…どうしたの?」

子淫魔「あ…あの町で…もし男さんと魔娘さんに買ってもらえなかったら今頃は…」

子淫魔「でも…そのせいでお金をいっぱい使わせちゃって…ごめんなさい」ペコッ

男「そんなのいいって」

魔娘「そうよ。気にしなくていいわ」

子淫魔「うぅ…」ウルッ

男「…ま、まあなんだ。淫魔族の町に着くまで気を抜かないようにしないとな!」

魔娘「気を抜かないって…どんな風に?」

男「そ、そりゃあ…いろいろだよ…」

魔娘「いろいろって?」

男「いろいろはいろいろだよ!」

魔娘「…男、あなた変よ?」

男「ソンナコトナイヨー」

魔娘「やっぱり変…」

子淫魔 クスッ

子淫魔「…やっぱりお二人はそんなふうに掛け合いしてるのが一番楽しそうです」

男「いやちょっとまてそれは違う少なくとも俺は魔娘に虐められてるんだ見ろこいつの意地悪そうな顔を」

魔娘「2倍速で喋らないで。なに言ってるか分からないわ」

子淫魔「…ふふふ」

~翌日・船の上~

ザザーン

男「…日差しが強いな」

魔娘「そう言わないの。歩いていけば山越えしなきゃいけないの。そうすると5日は掛かるんだから」

魔娘「それがこの船だと2日で着くのよ?だから日差しぐらい我慢しなさい」

男「はいはい」

子淫魔「…」

男「もうすぐだな…」

子淫魔「うん…」

魔娘「…大丈夫よ」

子淫魔「うん…」

男「まあ、船が着くまでのんびりしようぜ。な?」

子淫魔 ギュッ

男「な、なんだ!?」

男(いきなり背中に抱きついてきやがった…)

子淫魔「…スー…スー…」

男「え?」

魔娘「…昨夜は興奮して寝られなかったみたいだから。しばらくそうしてなさい」

男「…うん」

子淫魔「…スー…スー…」

男「…まるで妹みたいだな」

~妖精の国・港~

男「なんか…可愛らしいと言うか…」

魔娘「…色使いがメルヘンチックね…」

子淫魔「子供っぽい…」

男「え?子淫魔はこの国の出身だろ?」

子淫魔「そうだけど…ここはドワーフ族の町だから…雰囲気が違うの」

男「そっか」

魔娘「…とりあえず今夜はここに泊まりましょう」

男「そうだな。宿を探さないとな」

~宿の部屋~

男「なんというか…」

魔娘「部屋の中までメルヘンチックね…」

子淫魔「か、かわいい…」

男「しかもところどころ細かい装飾があるし…器用だな…」

魔娘「ドワーフ族は手先が器用なのよ。この色合いだって身長が低いのを目立たなくさせるためだって言うし」

男「ふーん。そうなのか」

グゥウウ~

子淫魔「あっ…//」

魔娘「ふふっ。そろそろ御飯を食べに行きましょ。このあたりはキノコ料理が名物みたいよ?」

男「そりゃ楽しみだ」

子淫魔「楽しみー!」

~夜中・宿の部屋~

子淫魔「スー…スー…」

魔娘「…ふふふ」

ソヨソヨソヨ…

魔娘「…」

男「…なにしてるんだ?」

魔娘「…起きてたの?」

男「寝てたけど今目が覚めた」

魔娘「そう…外を見てるの」

男「そっか…」

魔娘「…」

男「…」

魔娘「…何も聞かないのね」

男「無理に聞きだそうとするのは性に合わないからな」

魔娘「…久しぶりに感じる主王国の雰囲気だわ」

男「水人都市も魔界だろ?」

魔娘「あそこは海の上だったから…でもここは主王国の地よ」

男「…なあ」

魔娘「なあに?」

男「俺も“主王国”って言ったほうがいいか?」

魔娘「…はあ?」

男「いや、俺だけだろ?“魔界”って言ってるのはさ」

魔娘「…ぷっ…あはははは!ま、真面目な顔して、なにを言うかと思ったら、そんなくだらない事!!あははは!!」

男「くだらないって言うな!結構真面目に悩んでたんだぞ!?」

魔娘「あははは。はぁ…どっちでもいいわよ、そんなこと」

男「そんなことって言われた!」

魔娘「ごめんなさい。…ねえ?」

男「なんだy…んっ!」チュッ

魔娘「…これで機嫌直して?」

男「…まいっか」

子淫魔「…いいなぁ…」ジー

魔娘・男 ビクッ

子淫魔「ねえ、わたしもキスしていい?」

男「え?」

魔娘「絶対ダメ!」

子淫魔「…ちぇっ」

魔娘「さ、みんな寝ましょう。もう遅いからね」

子淫魔「はーい…」

男「おやすみー」

魔娘「おやすみなさい」

魔娘(本当は男も知りたいんでしょうね。わたしの正体を…でも…今はまだ…)

~淫魔族の町への道中~

テクテクテク…

男「…のどかな所だな…」

魔娘「ええ…眠くなってきたわ」

子淫魔「もうすぐ着きます!…もうすぐ…」

ガサッ

男「!?」

魔娘「どうしたの?」

男「…囲まれてる」

子淫魔「え?」

魔娘「…ダメ。足音も聞き取れない」

男「…相手の出方待ちだな」

ガサガサッ

男「っ!」チャキッ

魔娘「上よ!」

子淫魔「!!」

男「“転移”!」

シュイン!

男「…間に合ったな」

淫魔兄「!?」バッ

子淫魔「お兄ちゃん!」

魔娘・男「「…へ?」」

淫魔兄「でりゃあああ!!!」

ガキィイン!

男「ちょ、ちょっと待った!あんた、子淫魔の身内か!?」

淫魔兄「うるさいっ!」

子淫魔「お兄ちゃんやめてぇええ!!」

淫魔兄「っ!?」

バサバサッ バサバサバサッ

子淫魔「男さんたちはわたしを助けてくれたのっ!危ないことしちゃダメ!!」

淫魔兄「お、お前はこいつらに奴隷にされてるじゃないか!そんなに荷物を持たされて!!」

子淫魔「これはわたしの分だけだよ!ほら見てよ!!」

淫魔兄「…なんだこれ?服にアクセサリーに…」

子淫魔「ね?」

淫魔兄「け、けど!こいつらはお前を売り物にした人間じゃないか!!」

子淫魔「人間にもいい人はいるの!!」
  ・
  ・
  ・

男「…なんか、上のほうで喧嘩してるみたいだな…」

魔娘「そうね。ところで…」

チャキッ

男「いい加減出てきたらどうだ?」

淫魔‘s ゾロゾロ…

魔娘「…で?なんで私達を襲おうとしたの?」

淫魔1「そ、それは…あなた方が子淫魔を奴隷にしてるって…」

魔娘「…誰が?」

淫魔‘s ジー

淫魔2「あ、その…えへへへ…ごめんね?」テヘペロ

男「どういうことかな?」

淫魔2「あ、あの…あたしさぁ、たまたま港のほうまで買い物に行ってたのよ。そしたらさぁ」

淫魔2「あんた達と子淫魔が一緒に宿に入っていくのを見てさぁ…それで淫魔兄に教えたら…」

淫魔2「あいつが飛び出してっちゃって…」

淫魔1「で、わたし達はあの子のあとを追いかけてここまできたって訳」

淫魔1「別にあなた方をどうこうしようなんて思ってないわ」

男「…ってことは…」

魔娘「まあ、待つしかないわね。あの二人が落ち着いて降りてくるまで」
  ・
  ・
  ・

淫魔兄「すまなかった!」ドゲザー

男「まあいいけどさ」

子淫魔「お兄ちゃん、ホントにそそっかしくて…ごめんなさい」

魔娘「感動の御対面が台無しね」

男「ホントだな」

淫魔兄「すまん…」

子淫魔「ホントにもう…あ」

男「ん?」

子淫魔「…ここで…お別れ?」

魔娘「そうねぇ…ここからならまだ引き返せるわね」

子淫魔「うぅ…」じわぁ

淫魔1「…ねえ、あなた方。今夜はわたし達の里に泊まらない?」

魔娘・男「「え?」」

淫魔1「別にとって食おうってわけじゃないわ。この子を助けてくれたお礼をしたいのよ」

子淫魔「…いいの?お母さん」

魔娘・男「「…へ?」」

淫魔1改め淫魔母「わたしはこの子たちの母親よ?だから持て成したいの。ダメかしら?」

男「…まあ、そういうことなら…な?」

魔娘「貞操の危機を感じるけど…仕方がないわね」

淫魔兄「お、俺は相手との合意無しではしないぞ!?」

淫魔母「わたしも無理にはしないわ」

魔娘「…念のため、男と同じ部屋にしてよね?」

淫魔母「いいわよ。じゃあ、腕によりを掛けるわね♪」

~淫魔族の町・子淫魔の家~

子淫魔「ここがわたしの家です!」

男「ふーん…2階建ての落ち着いた建物だな」

魔娘「そうね。男の家よりも立派じゃない?」

男「そんなこと比べるなよ…」

魔娘「ふふっ。ごめんなさい」

子淫魔「お部屋、こっちだよー」トントントン

男「はいはい」
  ・
  ・
  ・

子淫魔「…で、ベッドはダブルが1個だけなの。だから二人で使ってね?」

男「…へ?」

魔娘「…いいわよ」

男「え!?」

魔娘「な、なによ…」

男「いや…」

男(王都での出来事の再来か!?)
  ・
  ・
  ・

子淫魔「お母さんの料理、おいしいね♪」

魔娘・男「「…」」

魔娘「…まあ、予想はしてたけどね…」

男「見事なほどに精がつく物ばっかり…」

淫魔母「あら?どうしたの?お口に合わなかったかしら?」

魔娘「いいえ、そんなことは無いわ。ただ…」

淫魔母「ただ?」ニヤリ

男「なんですかその含み笑い!やっぱワザとでしょ!!」

淫魔母「ナンノコトダカ」

子淫魔「どうしたの?」モグモグ

淫魔兄「お前…やっぱまだ子供だな…」

~夜中~

魔娘「…」

男「…」

魔娘「…」

男「…」モゾッ

魔娘「…」ギシッ

男「だあああ!!!」ガバッ

魔娘 ビクッ

魔娘「急にベッドから飛び降りないでよ。ビックリするでしょ?」

男「うー…」

魔娘「…だから、私はいいって言ってるじゃない。そんなに意地を張らなくても…」

男「だから!魔娘とは成り行きなんかじゃなくてさ、もっとこう…あるだろ?…雰囲気とかさ…」

魔娘「…そう、分かったわ」

ボワン

淫魔娘「これならどうぉ?」

男 ブッ バタン

淫魔娘「あらぁ?大変だわぁ。鼻血が出ちゃってるぅ」

男「お、おまっ…も、もう辛抱たまらん!!」ガバッ

ボワン

オーク娘「…」

男「…おい」

オーク娘「ぶひ?」

男「…もういい!」

ボワン

魔娘「どこにいくの!?」

男「…トイレ。しばらく篭ってるから」

魔娘「あ…」

パタン

男「あんのやろー…絶対誘ってるだろ…」

淫魔母「誘いに乗るのも男の甲斐性よ?」

男「おわっ!」

淫魔母「そんなに驚かなくてもいいでしょ?」

男「な…な…何でいるんですか!」

淫魔母「ここは私の家だもの」

男「じゃなくて!なんで俺たちの部屋の前にいるんですか!?」

淫魔母「物音がしたから覗きに来たの」

男「…はぁ…もういいですよ。トイレに行ってから寝ますから」

淫魔母「…ねえ、あなた」

男「…なんですか」

淫魔母「あの娘…今頃反省してるわよ?」

男「そうですか。それで?」

淫魔母「…早く戻ってあげたほうがいいわよ?」

男「戻りたいのは山々ですが、とりあえずこいつをどうにかしないことには…」ギンギン

淫魔母「お手伝いしましょうか?」クスッ

男「遠慮します。そういうことは魔娘以外とはするつもりはないんで」

淫魔母「あら。意外と身持ちが固いのね。どうして?」

男「あいつは…俺が気を許せる、数少ないヤツなんですよ。だから大事にしたいんです」

淫魔母「ふーん、一途ねぇ。ねえ?」

魔娘「ばかなだけですよ…グスッ」

男「…へ?何で魔娘が?」

魔娘「…ヒック…男を追ってきたのよ」

魔娘「…ごめんね?変なことして…」

男「あ、いや…その…聞いてたんだよな?さっきの…」

魔娘 コクン

男(うわっ。急に恥ずかしくなってきた!)

魔娘「…ねえ。大変なんだったら…手伝うわよ?」

男 ブッ

淫魔母「あらあら。若いわねぇ」クスッ

男「お、おまっ!なに考えてんだよ!!」ダラダラ

魔娘「は、鼻血でてるし苦しそうだから…ダメなの?」

男「ダメです!先に寝てろ!!」

タタタタ…

魔娘「あ…」

淫魔母「あらあら。焦らし過ぎじゃない?」

魔娘「え?」

淫魔母「直前でオークに化けるなんて…あれじゃ彼、女性恐怖症になっちゃうわよ?」

魔娘「見てたの!?」

淫魔母「そんなことより…あなた、彼に抱かれるのが嫌なの?」

魔娘「そ、そうじゃないけど…」ゴニョゴニョ

淫魔母「…覚悟、決めちゃいなさいな」

魔娘「え?で、でも…」

淫魔母「なあに?」

魔娘「…男には目的があって…それが達成できるまではしないって…前に言われたから…」

魔娘「だから…」

淫魔母「それを理由にあんな悪ふざけをしたのね?」

魔娘「う、うん…」

淫魔母「そう…わかったわ。あなたは先に部屋に戻ってなさい」

魔娘「え?でも…」

淫魔母「大丈夫よ。彼なら1時間もしたらスッキリして戻ってくるから。ね?」

魔娘「…わかったわ」

~トイレ~

男(3発抜いてもまだ治まらねぇええ!!!)

~翌日~

男「…」

魔娘「…ちょっと、大丈夫?」

男「…ん?ああ…」

淫魔母「あらあら。精がつきすぎたのかしら」クスクス

子淫魔「?」

淫魔兄「見るからにキツそうだな…おい」

男「ん?」

淫魔兄「これ飲んどけ」ポイッ

男「…なんだこれ?」

淫魔兄『“賢者薬”だ。飲むと性欲が減退する』コソコソ

男「あ、ありがと…」ゴクゴクッ

魔娘「本当に大丈夫?なんなら出発は明日にする?」

男「あー、いや。行こう」

魔娘「そう?じゃあ…」

子淫魔「もう行っちゃうの?」ウルッ

男「次の目的地があるからな」ナデナデ

魔娘「次はエルフ族の町ね」

淫魔兄「歩いて2日ほどだな」

淫魔母「でも、大丈夫かしら。エルフ族の町は…」

魔娘「たぶん大丈夫だと思います。」

男「…それじゃ、いってきます」

魔娘「またね、子淫魔」

子淫魔 トテトテトテ

男「ん?どうした?」

子淫魔『魔娘さんにフラれても、わたしがいるからね?』コソコソ

男「…へ?」

子淫魔「…待ってるから…ぜったい来てね?」グスッ

男「あ、ああ…また来るから」

淫魔母「待ってるわよ」

淫魔兄「今度はいいところに案内してやるよ」

子淫魔「ばいばーい!待ってるからねー!!」

今日はここまでにします

では、おやすみなさいノシ

俺なら2時間で枯れる自信がある

成長した子淫魔が男と魔娘を助けに来るフラグが成立したか
もちろん性的な意味で

これ先代勇者が消息不明になってから20年前近くたってるんだよな?
その間には新しい勇者をどうのこうのってのはなかったのか?それも追々わかるのかな?

>>718-726 ありがとうございます

>>727,728 淫魔母「うふふ♪試してみる?」

>>729 えっと…

>>730 その辺は…どうしようかな…

きたー!!!

>>732 はいwww

~エルフ族の町の近く~

男「…なあ、さっきから同じところをぐるぐる回ってないか?」

魔娘「ええ。間違いなく、ね」

男「…結界か?」

魔娘「きっとね」

男「厄介だな…」

魔娘「…」

男「どうする?」

魔娘「…私は疲れたからここで休んでるわ。男、もう一度入口を探してきてくれない?」

男「え?また?」

魔娘「もしかしたら何か見落としてるかもしれないでしょ?」

男「…分かった。魔娘も気をつけろよ?」

テクテクテク…

きたー

魔娘「…さて…と」チラッ

ザワッ

魔娘「…いるんでしょ?出てきなさい」

ザワザワ…

魔娘「…そう。じゃあいいわ」
  ・
  ・
  ・

ガサガサ

男「あれ?魔娘?おかしいなぁ…一本道のはずなのに…」

魔娘「結界のせいじゃない?それより、どう?何か見つかった?」

男「いや、やっぱり何にも無かったぞ?」

魔娘「そう…」チラッ

男「どうする?このままじゃいつまで経ってもエルフ族の町にいけないぞ?」

魔娘「しょうがないわね。男、こっちに来て?」

>>735、737 またおいらですwww

男「なんだ?」

ボワン

男「なんだそれ?」

エルフ娘(魔娘)「これがエルフよ」

ガサッ ザワザワザワ…

男「…なんか周りが騒がしくなってきたような…」

エルフ娘「…男、あそこを見て」

男「ん?…ただの木じゃん」

エルフ娘「目を凝らしてよく見て?」

男「…あれ?なんか揺らいでるような…」

エルフ娘(やっぱり…男にもエルフの血が流れてるだけのことはあるわ)

男「おい、あそこって…」

エルフ娘「ええ。結界の抜け道よ。行きましょう」

男「え?ちょ、おい!…大丈夫なのか?」

エルフ娘「大丈夫よ。やっぱりエルフに変化すると結界の通路も良く見えるわ」

男「あ、それでエルフに変化したのか」

エルフ娘「ええ」
  ・
  ・
  ・

エルフ娘「もうすぐ出口よ」

パァアア…

エルフ娘「結界を抜けたわ。もういいわね」

ポワン

魔娘「…ふぅ。この姿のほうが落ち着くわ」

男「やっと抜けたか…あ、あれがエルフ族の町か?結構でかいな」

魔娘「そう。ここg」

「止まれ!!」

ザザザザッ

男「…なんか取り囲まれてるけど?」

魔娘「歓迎されてるんじゃない?」

エルフ1「誰が歓迎などするものか!」

エルフ2「エルフに変化して結界を通るとは…何者だ!」

エルフ3「余所者は帰れ!!」

男「…ずいぶん嫌われてんな…なんかしたっけ?」

魔娘「さあ?覚えが無いわ。行きましょ」

テクテクテク

エルフ1「あ!おい!!無視するな!!」

エルフ2「ゆゆ、弓の餌食にするぞ!」

エルフ3「ささ、刺すぞ!」

魔娘「あれが町の入口ね」

男「いっぱい人がいるぞ」

魔娘「話が分かる人がいるといいんだけど」

男「だな。けどさ、エルフにも男はいるんだな」

魔娘「当たり前でしょ?でないとどうやって子孫を残すのよ」

男「それもそうか。…お、なんか出てきたぞ」

エルフ老人「…何しに来た」

魔娘「わたしは付き添いよ。用があるのは男のほう」

男「あ、どうも」ペコッ

エルフ老人「…っ!?お主…おい!」

エルフ中年「はいっ!女子供は家の中に隠れろ!!オトコは武器を持って集まれ!!」

男「な、なんだ!?」

魔娘「さあ?少なくとも、あなたは歓迎されてないってことは分かるわ」

エルフ老人「…今すぐ引き返すか、ここで死ぬか。どっちだ?」

魔娘「いきなりね。どうするの?」

男「殺される覚えがないんだけど?第一それはそっちの出方次第だし」ポリポリ

エルフ老人「…」サッ

ヒュッヒュッヒュッヒュン!

男「“念動”」

ピタッ

エルフ一同「「「!!」」」

エルフ弓兵1「な、なんだ!?矢が空中で止まってるぞ!!」

エルフ中年「う、撃て!」

男「“念動”」

エルフ弓兵‘s「な、なんだ!?体が動かないぞ!」

男「じゃあ、行こうか」

魔娘「そうね」

テクテクテク

魔娘「あ、男。あそこの火の見櫓?の上に行ったら町の中がよく分かるんじゃない?」

男「そうだな。“転移”」

シュイン

エルフ中年「き、消えた!?」

モブエルフ「あ!あそこだ!!火の見櫓の上!!」

ヒュー…

魔娘「へえ。エルフ族の町ってこうなってるのね」

男「人間の町とあんまり変わらないな」

エルフ一同「「「…」」」

エルフ中年「…お、オジジ様…あいつは…」

エルフ老人「間違いない…ダークエルフの子供だ…」

エルフ中年「どどど、どうします!?」ガクガクブルブル

エルフ老人「…災厄が戻ってきおった…この村はもう終いじゃ」

シュイン

エルフ‘s ザワッ シーン…

男「…っと。じゃあ、こっちの通りから見ていこうぜ」

魔娘「そうね。…あら?」

エルフ若者「てりゃあああ!!」

男「おっと」キィン

エルフ若者「せいっ!てりゃ!」

男「鬱陶しいなあ…衝撃波で…」ブォン!

エルフ若者「うわぁあああ!!!」ヒュー…ドサッ

エルフ中年「エルフ若者が吹っ飛ばされた…ダメだ…勝てない…」

男「なに難しい顔してんだ?」

エルフ老人「!?」

エルフ中年「いいいい、命ばかりはお助けをぉおお!!!」

男「じゃあさ、聴きたいことがあるんだけど?」

エルフ老人「…答えればこの町から出て行くか?」

魔娘「そうね。居心地悪そうだものね。ここ」

エルフ老人「…なにが知りたい?」

男「20年ほど前、ここにダークエルフが住んでなかったか?」

エルフ老人「…やはりダークエルフの子だったか」

男「住んでたんだな?どの家だ?」

エルフ中年「…ま、町はずれの一軒家です」

男「身内はいるのか?」

エルフ中年「そ、それは…」

「ダークエルフはわたしの娘です」

ザワッ シーン…

魔娘「…あなたは?」

エルフ母「…ダークエルフの母のエルフ母です」

魔娘「あなたが…」

男「…」

魔娘「…男、どうしたの?」

男(この人が…俺の…お婆さん?姉でも通用するんじゃね?)

エルフ母「…どうしました?」

男「いや…あんまりにも若いんでビックリしてます…」

エルフ母「…ありがとうって言えばいいのかしら」

男「あ、はい…」

魔娘「エルフ族は成人してからは老化が遅いのよ」

男「そうなのか?」

魔娘「寿命の長い種族は成長も遅いって思われがちだけど、成人するまでは人間の成長速度とさほど変わらないの」

魔娘「エルフ族は成人してからは人間の1/10ぐらいの成長速度よ」

男「だからあんなに若いのか…」

ザワザワ…

魔娘「ねえ、どこか落ち着ける場所は無いかしら?ここはギャラリーが多すぎるわ」

エルフ母「…では、わたしの家に行きましょう。ついて来てください」

~エルフ母の家~

男 ジー

エルフ母「…何かついてるかしら?」

魔娘「ちょっと男!みっともないわよ!!女性の顔をじっと見てるなんて…」

男「いやだって…初めての血縁者なんだぜ?」

エルフ母「…初めての?じゃあダークエルフは…」

男「…俺をシスター…俺を育ててくれた人ですが、シスターに預けてすぐに…亡くなったそうです」

エルフ母「そうですか…じゃあわたしにとってもあなたが唯一の血縁者になってしまいましたね…」

魔娘・男「「え?」」

エルフ母「わたしの伴侶は先の反乱で亡くなりましたし…だから…」

魔娘「…」

男「…反乱?それって…」

魔娘「だまって」ジロッ

男「あ、ああ…」

魔娘「…あなたの旦那様は優秀だったのね。水人族や妖精族は徴兵されることはまず無いもの」

エルフ母「…よく御存知ですね。あなた…」

魔娘「魔娘よ。私はこっちで生まれたから」

エルフ母「…失礼だけど、どの種族かしら?」

魔娘「そんなこと、今はどうでもいいでしょ?」

エルフ母「私の夫は幻術に長けていましたから…軍の教育隊に居たのです」

魔娘「やっぱり…」

男「…あの」

エルフ母「なにかしら?」

男「母は…どんな人だったんですか?」

エルフ母「…やさしい子でした。一緒にいると穏やかな気持ちになれる…日溜まりのような娘でした」

男「そんな優しい人が…どうして殺されなければならなかったんですか?」

エルフ母「…人間…それも勇者との間に子供を作ったからです」

男「え?じゃあやっぱり俺の父親は…」

魔娘「…」

エルフ母「…エルフ族と他の種族との血交じりは異能者を生みます。エルフ族は異能者を極端に嫌います」

男「なんでですか?」

エルフ母「…ずっと以前、エルフ族はもっと人口も多く、大きな町を作っていました。でも…」

エルフ母「たった一人の異能者によって…人口の四分の三を失うことになったのです…」

魔娘「“エルフの悪夢”ね。話には聞いたことがあるわ」

エルフ母「…きっかけは、ほんの些細なことだったと聞いています」

エルフ母「たった一言…“出来そこない”…その一言に腹を立てた異能者によって多くのエルフ達が…」

エルフ母「それ以来エルフ族は血交じりを嫌っているのです」

男「そうなんですか…」

魔娘「…ばっかじゃない!?」

男「おい!」

エルフ母「…」

魔娘「だってそうでしょ!?たった一人の異常者よ!?そのときのことを未だに怖がってるなんて馬鹿げてるわ!!」

エルフ母「…私もそう思います」

魔娘「だったら!行動を起こすべきだわ!!」

男「落ち着けって。な?」

魔娘「なに言ってるの!?自分の子供が過去の事件のせいで犯罪者扱いされたのよ!?」

魔娘「そのせいで!殺されたって言うのに!!」

エルフ母「…」

魔娘「それとも!もうそのときのことは忘れたから、思い出したくないって言うの!?」

エルフ母「…魔娘さん?」

魔娘「なあに?」

エルフ母「わたしね、あのときのこと…未だに夢に見るんですよ?」

エルフ母「あの時…わたしは夫とともに交易のために妖精の国の港にいました。そして家に帰ると…」

エルフ母「…荒らされた部屋に所々血の跡が…そしてその跡を辿ると途中で消えてしまってて…」

エルフ母「あたり一面探したのですが姿が無く…」

魔娘「…」

男「それはあなたのせいじゃないです!」

エルフ母「で、でも…もしわたしが家を空けずにあの子と一緒にいたなら…そう思うと…」

魔娘「…村人のことは恨んでる?」

エルフ母「正直に言うと…はい」

魔娘「じゃあこの村を出ればいいじゃない!こんな目に遭ってるのになんでこの村に居続けるの!?」

エルフ母「…娘は赤ん坊を連れて“いなくなった”のです。だから…いつかは帰ってくる。そう信じてましたから」

エルフ母「もし…娘達がここに帰ってきたら…“おかえり”といって迎えてやりたかったのです」

魔娘「あ…」

エルフ母「だからわたしは…ここを離れたくなかったのですよ」

魔娘「…」

男「…ありがとうございます」

エルフ母「…え?」

男「…俺、もしかしたら母さんは親に見捨てられたのかと思ってましたから、今の話を聞いてなんて言うか…嬉しいです」

エルフ母「男…」

男「…お婆さん…とは呼びにくいな…エルフ母さん、俺は誰に似てますか?お母さんに似てますか?」

エルフ母「…ええ。顔立ちと表情があの子にそっくりよ」

男「よかった…嬉しいな。はは…」

男「…俺、エルフ母さんに会えてよかったです」

エルフ母「そんな…わたしのほうこそ…」

エルフ母「…ありがとう男。よく訪ねてきてくれました」

男「エルフ母さん…」グスッ

エルフ母「…おかえりなさい」ポロッ

魔娘「…」

パタン

魔娘「…苦手だわ。感動の御対面ってやつは。それにしても…」

魔娘(生きてるか死んでるか分からないのに、それでも憎むべき人たちの中で大事な人の帰りを待つなんて…)

魔娘「…わたしに出来るかなぁ…」

魔娘「…」

魔娘「…お父様…」グスッ

~エルフ族の町の出口~

男「ありがとうございました」

エルフ母「こちらこそありがとう」

男「…また会いに来てもいいですか?」

エルフ母「もちろんよ」ニコッ

男「…それじゃ、行ってきます」

エルフ母「あ、ちょっと待って」ゴソゴソ

エルフ母「これを持って行きなさい」

男「札が3枚…なんですか?これ」

エルフ母「転移符よ。これを使えばいつでも行ったことがある場所に連れて行ってくれるわ」

魔娘「でもこの町にはエルフの結界が貼られてるでしょ?」

エルフ母「エルフが作る転移符は一度訪れたことがある場所なら、どんな結界が仕掛けられていても転移できるわ」

男「すごいな…」

魔娘「エルフ族は物に呪文を込めることができるの。もっとも、それができるのはごく一部の限られたエルフだけ」

魔娘「エルフ母さんはそれだけ優秀なのね。他のエルフが手出ししない理由が分かったわ」

エルフ母「こういうのはあの子のほうが得意だったの。その3枚の札のうちの1枚はあの子が残していったものよ」

エルフ母「あの子は呪文が得意で、いろんな呪文が使えたの。転移呪文も使えたけど…この村から出たことがないから使ったことはないわ」

エルフ母「その代わり、こうやって札にいろんな呪文を封じ込めて…それを売って生活していたのよ」

男「そうなんだ…ありがたく頂きます」

エルフ母「…それじゃ、気をつけてね」

魔娘「…ごめんなさい。いろいろ生意気なこと言って」

エルフ母「いいんですよ。男のこと、よろしくお願いします」

魔娘「はい」

男「また来ますから」

エルフ母「…ええ。待ってるわ」

魔娘「じゃ、行くわよ」

男「ああ」
  ・
  ・
  ・
エルフ母「…待ってるわ。男…」

~街道沿い・テントの中~

男「この地図でいくと、王の国を通ったほうが早いんじゃないのか?」

魔娘「…王の国は避けたいわ」

男「なんで?」

魔娘「…治安がね?」

男「よくないのか?」

魔娘「ええ…最近反乱があったって言ったでしょ?王の国の手前の獣人の国もゴタゴタしてるみたいだし…」

男「…今は余計な争いは避けたいな…」

魔娘「でしょ?だからこっちの巨人の国を通って竜の国に入りましょ?」

男「ちょっと回り道になるけど…しょうがないか」

~巨人の国・国境の町~

ズシーン ズシーン…

男「…すごいな」

魔娘「巨人の国ですもの」

男「けど…俺達の3倍ぐらいあるぞ?建物もでかいし」

魔娘「みんな大きいからね」

男「そのくせ身長は俺たちと変わらないからな…」

魔娘「あれは脂肪じゃないから、太ってる訳じゃないわよ?」

男「巨人の国って言うからてっきり背が高いもんだと思ってたけど…横幅とは意表を突かれた」

魔娘「キングサイズじゃ間に合わないわね」

「ちょっとどいて!」ドドド

男「おっと!」

ドドドド…

男「転がってくると迫力あるなぁ」

魔娘「…そろそろ宿を探しましょ」

~宿~

男「ツインで」

巨人女主人「はい。端っこの部屋にしといたわよ」

男「ありがとう」チャラ

魔娘「今日は早く寝ましょ?もう五日もベッドで寝てないから疲れが溜まってて…」

男「そうだな。じゃあ、今から晩飯食いに行くか」

魔娘「そうね。そうしましょ」

~翌日・町中~

魔娘「買い物はこんなものね」

男「けど、ここのものって全部サイズがでかいのな。あそこの服なんて俺達二人で着ても余裕だぞ?」

魔娘「そうね。食べ物だってジャンボサイズだし」

男「でも値段は変わらないって…お得だよな!」

魔娘「そうね」クスッ

男「後は…あ」

魔娘「どうしたの?」

男「あれって…口入屋だよな?」

魔娘「え?…あー、そうね」

男「ちょっと覗いてみるか」

魔娘「お金は何とかなるし、今は働かなくてもいいんじゃない?」

男「いや、魔界ってどんな仕事があるのか興味あるし」

魔娘「…ちょっとだけよ?」

~宿の部屋~

男「っしょと。これで荷造りは終わったぞ」

魔娘「こっちもできたわ」

男「じゃあ、今夜は早めに寝て、明日に備えるか」

魔娘「そうね。明日の朝は早いものね」

男「うまい具合に竜の国との境の町までいく馬車に乗せてもらえることになってよかったな」

魔娘「口入屋に感謝ね」

男「ああ。俺達の目的地を知って、わざわざ巨人商人の荷物の警護なんて仕事を回してくれたんだもんな」

魔娘「でも…やっぱり治安が悪くなってるのかしら…」

男「まあ、人間の国でも野盗とか出るし、こんなもんなんじゃないか?」

魔娘(男は以前のこの国を知らないから…)

~翌朝・商隊~

巨人商人「では、これからしばらくの間、警護のほうをよろしくお願いしますね」

男「はい。分かりました」

魔娘「でも、本当に私達でいいの?」

巨人商人「はい。腕もたつし魔法も使えるなんて、まさにうってつけです!」

男「いや、まあ…」ポリポリ

巨人商人「では、そろそろ参りましょう。あなた方は馬車の後ろに乗ってください」

男「分かりました」

~夜・宿営地~

巨人商人「…この先はですね、最近野盗が出るって噂なんですよ…」

男「そうですか」

巨人商人「ここは街道の中でも最も獣の国に近いのですよ。最近そこに似蛇族が入りこんで…」

男「似蛇族?」

巨人商人「あなたは人間でしたね?なら御存じないのも無理はない」

巨人商人「彼らは500年ほど前に発見された種族です。原始的な生活をしていたのを当時の主王様が保護して教育や医療を施して新しい種族として認知された種族なんですよ」

魔娘「そして嘘つきでやたら矜持が高くてずるくて執念深い種族よ。他の種族からは嫌われてるわ」

魔娘「しかも歴史を捏造して自分達の祖先は蛇だって言ってるけど、本当はミミズだし。その似蛇族がこの辺りに?」

巨人商人「そうです。で、“ここは自分たちの土地だ。通るなら積み荷を寄こせ”と…」

男「じゃあ、迂回すればいいんじゃないですか?」

巨人商人「そうもいきません。海路で行こうにもこのあたりの海はクラーケンがウヨウヨしてますし」

巨人商人「陸路ではこの街道を使わないとなると獣の国、王の国、竜の国を通る道しかないんですが…」

巨人商人「獣の国も今は治安が悪く…だったら護衛をつけてこの街道を通るほうがマシだと…そう言うことなんですよ」

魔娘(想像以上に獣の国の治安は悪いみたいね…)

男「なるほど…それで俺たちを雇ったんですか?」

巨人商人「そういうことです。似蛇族は多人数で押し寄せて大声で威嚇してきます。ですが」

巨人商人「相手が自分達より強いと分かると逃げていきますからね」

男「ふーん…」

巨人商人「ところで…あなたはどうやって戦うのですか?」

男「俺はこの長鉈を使います。あとは魔法ですかね?」

巨人商人「そうですか…ちょっとその鉈を見せていただけますか?」

男「ええ。どうぞ」スッ

巨人商人「ありが---!?」

男「だ、大丈夫ですか?」

巨人商人「な、なんですかこの鉈は!?尋常な重さじゃないですよ!?とても普通の鉈とは思えません!!」

魔娘「竜が鍛えた鉈よ。おそらくこの世にこの一本しかないんじゃないかしら?」

巨人商人「竜が鍛えた!?そんなものがこの世にあったんですね…」マジマジ

男「それは…俺を育ててくれた人が作ったものなんです」

巨人商人「その人と言うのは…」

男「…」

魔娘「…竜よ」

巨人商人「そうですか…お返しします」

男「…やっぱりこんな鉈しか持ってない奴は信用できませんか?」

巨人商人「…正直言って最初は…しかし、その鉈の正体を知った今は信用しています」

巨人商人「竜は武器を作りません。それは彼らが他に類を見ないほどに強いからです」

巨人商人「ですから、その鉈を持つあなたは竜が鉈を作るほど、特別に認められた強い方なのではないかと」

男「そんなことは…」

魔娘「…そうね。クラーケンを撃退したこともあったわね」

巨人商人「く、クラーケンを!?」

男「ええ、まあ…捕まえて食おうと思ったんですけど、足と耳しか取れなくて…」ポリポリ

巨人商人 ポカーン…

魔娘「商人さん、大丈夫?」

巨人商人「え、ええ…クラーケンは海の悪魔です。それを撃退したなんて…私は運がいい!これで安心して旅ができます!!」

男「そ、そうですか…」

魔娘「よかったわね男。実力が認めてもらえて」

男「ああ…けど、期待が大きいとプレッシャーが…」

魔娘「何言ってるの?男、あなたにはそれだけの実力があるのよ?」

巨人商人「そうです!自信を持ってください!!わはははは!!」

男(商人さん安心しすぎだって…)

~二日後~

巨人商人「…そろそろ似蛇族がいる土地に差し掛かります」

男「分かりました」

魔娘「警戒は私に任せて」

男「ああ。頼む」
  ・
  ・
  ・

巨人商人「…何とか無事に通れそうですね」

男「そうですね」

魔娘「…しっ!」

男「どうした?」

魔娘「静かに!…10頭以上の馬の足音が追いかけてくる…きっと似蛇族だわ!」

巨人商人「ええ!?」

魔娘「…右と左に4頭ずつ…真後ろから5頭…男、準備して」

男「分かった」チャキッ

巨人商人「たたた、頼みますよ!?」

男「はい…見えた!」

巨人商人「き、来ました!!」

似蛇族1「うらうらうらあ!馬車を止めろお!!」

似蛇族2「ここは俺達の土地だあ!積み荷を置いてけぇええ!!」

男「商人さん。馬車をとめちゃダメですよ」

巨人商人「わ、わかりました!それっ!!」ピシィ!

魔娘「よく引き付けるのよ!」

男「分かってる!もうすぐ…もうちょっと…今だ!“中雷撃呪”!!」

バリバリバリ…ドォオオオン

似蛇族‘s「!?」

男「よし、右は片付いた。“中雷撃呪”!」

バリバリバリ…ドォオオン

男「…よし。左も消えたな」

魔娘「後ろから来てるわよ!」

男「分かってる!衝撃波で…せえ…の!」

ブォン!ビシビシビシ…ゴゴゴ…

似蛇族‘s「「な、なんだ!?じ、地面が切れて…うわああああ!!!」

ズドォオオン…

男「…もういないか?」

魔娘「ちょっと待って…ええ。もういないわ。商人さん、スピードを落としてもいいわよ」

巨人商人「助かった…それにしても凄まじい威力ですね」

男「大したことはしてませんよ」

巨人商人「いえいえ!魔法もそうですが…“衝撃波”?ですか?地面が切れるほどの威力だとは…」

男「…やりすぎちゃいましたか?」ポリポリ

巨人商人「とんでもない!ますます頼りになります!!」

魔娘「よかったわね、男」ポン

男「…ホントにいいのか?」

~竜の国との境の町~

巨人商人「本当に行ってしまわれるのですか?」

男「ええ、まあ…」

魔娘「私達は人探しをしているのよ。竜の国にその人がいるらしいの」

巨人商人「そうですか…あなた方が一緒だと心強いのですが…致し方ありませんね」

男「すいません…」

巨人商人「いえいえ。見つかるといいですね」

男「ありがとうございます」

巨人商人「いえいえ!御礼を言うのはこちらのほうですよ。ありがとうございました」ペコッ

男「じゃあ、そろそろ…」

巨人商人「仕事が必要になったらいつでもおっしゃってください。私が雇いますから」

男「ありがとうございます。さようなら」

魔娘「またねー」ノシ
  ・
  ・
  ・

今日はここまでです。

平日はペースが落ちます。すみませんorz

では、おやすみなさいノシ

>>793
乙です
魔界と聞くと暗闇でおどろおどろしい所のイメージが強いけど
この世界だと外国に気を持った感じなんだなぁ
海外行った事ないから分からんけどw



娘がダークエルフで娘婿が勇者、孫が異能者

町から追い出されるレベルだろ

きっと胸のサイズが異端だったんだろうな<ダークエルフ
ファンタジーではよくあるお約束。

>ALL ありがとうございます

>>800 渡航禁止になってる国って感じですかね?

>>803 魔法札は貴重な収入源ですから、それを作れるエルフ母を追い出せずにいるってことでorz

>>805 お約束なんですか?

~竜の国・小さな村~

魔娘「今日はここに泊まりましょう」

男「…」

魔娘「…どうしたの?」

男「いや…俺が見た竜とは違うなって…背丈も俺達の1.5倍ぐらいだし…わりと温和だし…普通に家に住んでるし…」

魔娘「竜人族はこれが普通よ?どんな想像してたのよ」

男「もっとこう…崖の穴倉かなんかに住んでて、縄張り争いとかしてるような…」

魔娘「そんな訳ないでしょ?原始時代じゃあるまいし…」

男「けどさ、俺が見た竜はホントにそんなイメージだったから…」

魔娘「ふーん…ねえ、男が見たのはどんな竜なの?」

男「黒くて三階建ての家ぐらいの大きい竜だったな」

魔娘「!?」

男「シスターは…同じぐらいの大きさで赤い竜だったし…」

魔娘「…」

男「そんな竜ばっかだと思ってたからさ…ん?どうした?」

魔娘「え?…な、なんでもないわ」

男「…変なやつ」

魔娘(黒い竜と赤い竜…しかも3階建ての家ぐらいって言ったら…4大竜人家のうちの黒竜人家と赤竜人家じゃないの!)

魔娘(確か黒竜人家と赤竜人家は反目し合ってたはず…)

魔娘(それなのに…黒竜と赤竜があの村で…何があったのかしら…)

魔娘(…黒竜人か…小父様に会うのは久しぶり…)

男「あ、あそこ、宿じゃないか?」

魔娘「…」

男「…魔娘?」

魔娘「…え?なに?」

男「…お前、さっきから変だぞ?」

魔娘「そ、そう?それより宿よ宿!」

男「…やっぱり変だ」

~宿の部屋~

男 キョロキョロ

魔娘「…なにしてるの?」

男「いや、普通の宿だなと思って…」

魔娘「あなたどれだけ偏見持ってるのよ…」

男「俺の竜に対するイメージが崩れていく…」

魔娘「…勝手にやってなさい。私は食事に行くわ」

男「あ、俺も行くからちょっと待てって」

~飯屋~

男「…なあ」

魔娘「なあに?」

男「なんで宿で食わないんだ?」

魔娘「情報収集も兼ねてよ」

男「…へ?」

魔娘「だから…」

フゥ…

魔娘「…あなたが言ってた黒い竜の情報を集めるのよ。そのためにここに来たの」

男「な、なるほど…」

店員竜「お待ちどうさま」コトッ

魔娘「ありがとう。ねえ」

店員竜「なあに?」

魔娘「私達、黒竜人のところに行きたいんだけど、何か情報はないかしら?」

店員竜「そうねぇ…黒竜人に会うのは難しいと思うわよ?」

男「なんで?」

店員竜「あなた達知らないの?何年か前に黒竜人の御子息が禁を破って人間の国に行ったことを」

男「ごしそく?」

魔娘「…それで?」

店員竜「その時に赤竜人の娘を連れて帰ってきて、両家で色々とやってたみたいだから」

男(赤竜人の娘って…きっとシスターのことだ!)

男「それd」

魔娘「男はちょっと黙ってて。また揉めたの?」

店員竜「ううん。禁を破った処罰をどうするか決めてたみたいなの」

魔娘「それで…どうなったの?」

店員竜「どんな処罰が下ったのかは知らないわ」

店員竜「でも、それから両家とも他の人たちに会うのを避けてるみたいで…ね?」

魔娘「そう…ありがとう」

店員竜「どうしたしまして。追加注文してもらえると嬉しいなあ♪」

魔娘「じゃあ…食後にアイスクリームをちょうだい」

店員竜「はーい。ご注文いただきましたー」タタタタ…

男「…」

魔娘「…どうするの?男」

男「…とりあえず赤竜人のところに行こう。シスターは赤い竜だったし、居場所はそこに行かないと分からないんだろ?」

魔娘「そうね…でも、それなら黒竜人のほうが確実じゃない?」

男「なんで?」

魔娘「…男、さっきの話、ちゃんと聞いてた?」

男「あ、ああ。聞いてたけど?」

魔娘「だったら。シスターは黒竜人のところに連れて行かれたってことはわかるでしょ?」

男「あ」

魔娘「だから、行くなら黒竜人のところよ。分かった?」

男「はい。分かりました…」

~黒竜人のいる町~

男「大きい町だな」

魔娘「そりゃあね。竜の国の4大竜人家のうちの黒竜人が住んでる町ですもの」

男「いや、町の規模もだけどさ、あそこの建物…」

魔娘「…あそこが黒竜人の屋敷よ」

男「じゃあさっそく行くか」

魔娘「待ちなさい」グイッ

男「なんだよ」

魔娘「どうやって黒竜人に会うつもり?情報収集が先でしょ?」

男「うっ…」

魔娘「それに今夜の宿も決めておかないと。状況次第では長期戦になるのよ?」

男「けど!」

魔娘「…男、焦っちゃダメ。せっかくここまで来たのに無駄足を踏みたくないでしょ?」

男「…」

魔娘「こういうことはね、仕上げが肝心なの」

魔娘「男が早く行動を起こしたいっていう気持ちはわかるわ」

魔娘「でも、焦って今までの苦労を水の泡にしたくないのよ。わかってよ」

男「…分かった」

魔娘「ありがとう、分かってくれて。じゃあ、さっそく宿を探しましょ?」

男「ああ」

~口入屋~

魔娘「まずはここよ」

男「…仕事でも探すのか?」

魔娘「そうよ」

男「…そんなに金がないのか?」

魔娘「違うわよ。どんな仕事があるか調べれば町の状況もつかみやすいでしょ?」

魔娘「治安が悪ければ警備や用心棒の仕事が増えるし、治安が良ければ簡単な仕事しかない」

男「なるほど」

魔娘「わかった?なら、まずはここで大まかな町の状況を探るわ。男も手伝ってね」

男「ああ。まかせろ」

~飯屋~

魔娘「じゃあ、口入屋の仕事の内容と店主から聞いた情報を整理しましょ」

男「仕事の種類は…商隊の護衛が2件、店番が1件、それと…警備が5件。治安はあんまりよくないみたいだな」

魔娘「店主からの追加情報で、黒竜人の影響力が弱ってきてチンピラが幅を利かせてるみたいね…」

男「黒竜人の影響力が弱ってきた原因は?」

魔娘「おそらく例の件のせいでしょうね。そのせいで黒竜人が表舞台に出ることが少なくなったらしいわ」

男「それで、黒竜人に会う方法は?」

魔娘「それは私に考えがあるわ」

男「じゃあ任せる」

魔娘「…簡単に信じるのね」

男「まあ、魔娘のことは信頼してるからな」

魔娘「そ、そんなこと簡単に言うんじゃないわよ!//」ペシペシ

男「痛いって」

チンピラ竜「…ちっ。目障りなやつらだ」ガタッ

男「それd」

チンピラ竜「おい!てめえら!!」

男「はい?」

チンピラ竜「てめえら目障りなんだよ!」ブン!

男(尻尾で攻撃か…遅いな…)

パシッ

チンピラ竜「なに!?尻尾を掴んだ!?」

男「まあまあ。落ち着いて。な?」

チンピラ竜「くっ!は、離せ!!」ジタバタ

パッ ドタッ

チンピラ竜「…っ!おぼえてろ!!」タタタタ…

男「おーいって…行っちまった」

魔娘「あんまり問題を起こさないでよ?」

男「今のは正当防衛だろ?」

魔娘「そうだけど…今日はもう宿に戻るわよ」

男「なんで?」

魔娘「あいつが仲間を連れてくると面倒でしょ?」

男「それもそうか」

~翌日・黒竜人の屋敷の前~

男「でかい門だな」

魔娘「黒竜人は普通の竜より大きいのよ。だからよ」

男「ふーん…ところでさ」

魔娘「なあに?」

男「黒竜人ってどんな奴なんだ?」

魔娘「…」

男「どうした?」

魔娘「いいえ…男が今更な質問をしてきたから思考が停止したの」

男「だって俺、こっちのことは何にも知らないからさ」

魔娘「…まあいいわ。黒竜人は竜の中でも一番体が大きくて力が強いの。魔法は雷撃系が得意ね」

男「ふーん」

魔娘「ついでに言っておくと、黒竜人、赤竜人のほかに白竜人と青竜人がいるわ」

魔娘「赤竜人は力は黒竜人には若干劣るけど、火炎系の魔法が得意なの」

魔娘「白竜人は氷撃系が、青竜人は水系の魔法が得意ね」

男「竜人ってそんなに居たんだ…」

魔娘「ええ。それと、魔法が使えるのは竜人だけなの。それだけでも彼らが他の竜より優秀だってわかるでしょ?」

男「そうなのか…ところでさ、この町に居るのは黒竜人だけだろ?他の竜人はどこに居るんだ?」

魔娘「赤竜人は隣の町よ。白竜人は暑さに弱いから山の上に住んでるし、青竜人は体が渇くと力が出なくなるから水の中に住んでるわ」

男「ふーん。それで黒竜人家と赤竜人家だけが隣り合った町に住んでるってわけか」

魔娘「そういうことよ。でもね、近くに住んでるからって仲がいいわけじゃないの」

男「そうなのか?」

魔娘「以前はね、黒竜人家と赤竜人家はお互いに自分達が竜の中で一番強いって思ってて、しょっちゅう衝突してたわ」

魔娘「だから、小さな村の飯屋の店員竜から“両家が色々やってる”って聞いて、不思議に思ってたのよ」

男「そっか。だからあのとき魔娘の様子が変だったのか」

魔娘「…そう言うことよ。そろそろ行くわよ」

男「ああ」

トテトテトテ

魔娘「門を開けてください。黒竜人様に面会していただきたいのです」

門番竜「黒竜人様はご多忙だ。約束の無いものは通すことはできない」

魔娘「約束はしてないわ」

門番竜「なら通すわけにはいかない」

魔娘「どうしても会いたいの」

門番竜「ならん。約束を取り付けてからもう一度参れ」

魔娘「なら、伝言だけでも伝えて。“姫”が会いに来たって」

男(今“姫”って言ったよな…)

門番竜「…ご多忙だと言っただろ」

魔娘「…伝えて。でないとあなた、黒竜人様の御怒りを買うことになるわよ?」

門番竜「っ…しばし待て。おい。~~~~」

男『…本当に会えるのか?』コソコソ

魔娘『黙ってて!』

男「…」
  ・
  ・
  ・

ズシーン ズシーン…

男「な、なんかでかい足音が聞こえるんだけど…」

魔娘「…来たわね」

門番竜「くれぐれも失礼の無いようにな。開門!」

ゴゴゴゴ…

黒竜人「…“姫”はどこだ?」

門番竜「はっ!そこに」

黒竜人「…」ジロッ

男(すげえ迫力だ。でかいし…けど、シスターを連れて行った竜とは違う…)

魔娘「…私が“姫”です」

黒竜人「…ん?」

魔娘「…」

クンクン

黒竜人「…っ!?」

魔娘「お久しぶりです。小父様」

黒竜人「…お前など知らん」

魔娘「え?」

男「おいおい…」

黒竜人「追い返せ」

門番竜「はっ!そら、黒竜人様がお怒りにならないうちに帰れ」

魔娘「…わかったわ。あ、そうそう。私達はこの町の宿に泊まってます。何か思いだしたら使いの者を」

黒竜人「帰れ!」

魔娘「…では、失礼します。“黒い小父様”」

黒竜人「…門を閉じろ」

門番竜「はっ!閉門!!」

ゴゴゴゴ…バタン

魔娘「…」

男「…なあ」

魔娘「宿に戻るわよ」

男「あ、ああ…」

~宿の部屋~

男(あれから魔娘、一言もしゃべらないな…さっきのがよっぽど堪えたのか?)

魔娘「…」

男「…そろそろ晩飯にするか?」

魔娘「…うん」

男「何が食べたい?」

魔娘「…なんでもいいわ」

男「そっか…じゃあ肉にしよう。デザートのアイスクリームもつけて。な?」

魔娘「…うん」

男「じゃあ、頼んでくる」
  ・
  ・
  ・

魔娘「ごちそうさま」

男「ごちそうさん」

男(食欲はあるみたいだな。よかった)

魔娘「…ごめんね?」

男「…へ?」

魔娘「だから…」

魔娘「男が任せてくれたのに、うまく行かなくて…」

男「いいよ、気にしなくて。俺だって会う手立てがなかったし」

魔娘「でも…」

男「今までがうまくいき過ぎてたんだ。次の方法を考えよう。な?」

魔娘「…どんな?」

男「うーん…まあ、正面切って会うのは無理そうだから、こっそり会いに行くとか?」

魔娘「どうやって?」

男「それは…“転移”で屋敷の中に侵入するとか?」

魔娘「見つかったら殺されるわよ?」

男「じゃあ…手紙を書くとか?」

魔娘「読まないんじゃない?」

男「じゃあ…えっと…」

魔娘「…ほら、手詰まりじゃない」

男「なっ!魔娘だってそうだろ!?」

魔娘「…可能性はゼロじゃないわ」

男「…へ?」

魔娘「餌は仕掛けたわ」

男「餌?それで何とかなるのか?」

魔娘「…可能性は低いわ。でも何もしないよりはマシでしょ?」

男「うーん…」

魔娘「餌が利いたら、今夜にでも何か動きがあるはずよ?」

男「動きって…ヤバいことじゃないだろうな…」

魔娘「その可能性は否定できないわ。と言うか、その可能性のほうが高いぐらいね」

男「…鉈はどこだっけ?」

魔娘「…」

コンコン

魔娘・男 ビクッ

男「…はーい?」

竜主人「お客さんだよ」

男「客?」

竜主人「開けていいかい?」

男『魔娘!』コソッ

魔娘 コクッ コソコソ…

男「…はい」チャキッ

ガチャッ

竜主人「この人があんた達に用だってさ」

使者竜「お迎えに上がりました」

男「お迎え?」

魔娘「誰かしら?」

使者竜「ついて来ていただければ分かります」

男「…どうする?」

魔娘「…ついて行くしかないみたいね。外に何人もの竜がいるわ」

使者竜「手荒なことは致しません。どうかご一緒に」

男(ここで暴れてもどうにもならないな…)

男「魔娘…」

魔娘「…分かったわ。行きましょ」

使者竜「馬車を用意しておりますので、そちらへ」

~見晴らしのいい砂浜~

男「…海だ」

魔娘「けっこう長い時間馬車に乗ってたわね」

使者竜「降りてください」

男「はいはい。ほら、魔娘。手を出して」

魔娘「ありがとう」

使者竜「この砂浜のあちら側でお待ちになっております」

男「…何にも見えない…」

魔娘「…誰かいるわ」

男「そっか。じゃあ、行こう」

魔娘「ええ」

ザッ ザッ ザッ…

男「…餌が効いたか?」

魔娘「どうかしらね…」

男「…用心しておく」

魔娘「そうね…」

ザッ ザッ ザッ…

魔娘「…見えてきたわ」

男「黒竜人か?」

魔娘「…どうかしらね。潮の匂いが強くてよく分からないわ。近くまで行かないとね」

ザッ ザッ ザザッ

?「…」

魔娘・男「「…」」

?「…正体を明かせ」

男 チャキッ

魔娘「男、いいわ」

男「え?けど…」

魔娘「今そっちに行くわ。男はここに残ってて」

男「大丈夫か?」

魔娘「何かあったら逃げて」

男「何言ってやがる。何が何でも助けてやるさ」

魔娘「な、何かっこつけてるのよ…//」

男「盗賊さんならそう言うだろうなって…な?」

魔娘「…馬鹿//」

?「何をしている」

魔娘「あ、ごめんなさい」

ザッ ザッ ザッ

?「そこで止まれ」

魔娘「用心深いのね。いま変化を解くわ」

ボワン

魔娘「…これでいいかしら」

?「…御無事でしたか」

魔娘「無事かどうかはあなたの出方次第ね。『黒い小父様』」

?改め黒竜人「お久しぶりです。姫」ヒザマヅキー

男(“姫”?…いま“姫”って言ったよな?)

魔娘「…久しぶりね。小父様」

黒竜人「今までどちらにいらしたのですか?」

魔娘「…彼のところよ」

黒竜人「どういう御関係で?」

魔娘「…その質問に答える前に聞きたいことがあるの」

黒竜人「答えられるものであれば、はい」

魔娘「ありがとう。男も呼んでいい?」

黒竜人「…いいでしょう」

魔娘「ありがとう。男、こっちに来て」

ザッ ザッ ザッ

男「…なあ。今“姫”って言ってたよな?」

魔娘「あとで話すわ」

黒竜人 ジロッ

男(すげえ気迫だ…)

魔娘「男のことなら気にしなくていいわ」

黒竜人「しかし…こ奴、人間ではないですか!?」

魔娘「男はハーフよ。人間とエルフ…ダークエルフのね」

黒竜人「なんと!」

魔娘「わたしがお世話になった家で一緒に住んでたの」

黒竜人「それは…」

魔娘「…っ!?そ、そう言う関係じゃないから!」

黒竜人「は、はあ…」

男(俺、ここに居る意味あるの?)

魔娘「…それで、聞きたいことなんだけど」

黒竜人「…主王様のことですか?」

魔娘「それもだけど、その前に…周りに居る人たちのことよ」

黒竜人「え?」

魔娘「砂丘の影に3人、茂みの中に4人。海の中にも何人かいるわよね」

黒竜人「…気がつきませんでした。申し訳ありません」

魔娘「どうするの?」

黒竜人「場所を変えましょう。失礼します」

ボワン

男(黒竜に変身した!やっぱでかい…)

黒竜人「背中にどうぞ」

魔娘「わかったわ。男、お願い」

男「ああ。“転移”」

シュイン トサトサッ

魔娘「いいわよ」

黒竜人「では」バサバサッ

黒竜人「しっかり掴まっていてください」

バサバサバサッ

男(は、早い…!)
  ・
  ・
  ・

バサッ バサッ

黒竜人「ここでよいでしょう」

魔娘「ありがとう。男、降りるわよ」

男「ん。“転移”」

シュイン トサッ

ボワン

男(また人の姿になった…)

黒竜人「ここは湖の中の小島です。ここまで来れば大丈夫でしょう」

魔娘「そうね。でも、追手に気がつかないなんて…どうしたの?」

黒竜人「申し訳ありません」

男「あの…」

黒竜人「…なんだ?」ジロッ

男「さっきの連中はなんだったんですか?」

黒竜人「…魔王様のスパイだ」

魔娘「スパイ?」

黒竜人「魔王様は我々に協力を要請しています。ですが我々は誇り高き竜族。先代の主王様に忠誠を誓っておりますので、断り続けているのです」

魔娘「それでスパイを?」

黒竜人「はい。我々が姫を囲っているのではないかと疑っているようです」

魔娘「と言うことは…竜族は今も中立を守っているのね?」

黒竜人「はい。ところで…私に尋ねたいこととは?」

魔娘「何年か前に人間界から連れてきた赤竜の居場所を知りたいの」

黒竜人「…は?」

魔娘「その赤竜は…男の育ての親なの。教えてくれないかしら」

黒竜人「…てっきり先代様のことをお尋ねになると思っていたのですが…」

魔娘「…それも聞きたいけど、いまは…」チラッ

男「聞けばいいだろ?」

魔娘「え?」

男「“主王様”ってお前の親のことだろ?だったら真っ先に聞けよ」

魔娘「でも…」

男「俺はあとでいいよ。シスター…赤竜は生きてるんですよね?」

黒竜人「…うむ」

男「だったら焦る必要はないさ。すいません。“主王様”のこと、教えてくれませんか?」

黒竜人「…面白い者を見つけましたな」

魔娘「手がかかるだけよ…」

黒竜人「はっはっは。では、先代主王様ですが…先の反乱時に身罷られております」

男「…え?」

魔娘「…そう」ギュッ

黒竜人「申し訳ありません!我等竜人の到着が遅れたばかりに!!」

魔娘「気にしないで」

男「魔娘…」

黒竜人「…御遺体は白竜人の菩提所に安置されております」

魔娘「ありがとう。またいつか訪ねてみるわ」

黒竜人「主王様は最後まで御立派でした。しかし…ゴブリン族の従者を人質に取られ…なすすべもなく…」

黒竜人「…我々は奇襲により主王様を奪還したのですが…最後に“姫を頼む”といい残されて…」

魔娘「…っ!」ポロッ

魔娘「うぅ…ヒック…」フルフルフル…

男(まいったな…声かけづらい…)

黒竜人「…おい」クイクイ

男「…あ、はい」
  ・
  ・
  ・

男「…魔娘を一人置いてきたけど、大丈夫かなぁ…」

黒竜人「案ずる必要はない。声は届かぬが、ここからでも姫は見える」

男「いや…あいつ、自分の弱いところは見せたがらないから、結構貯め込んじゃうんですよね…」

男「だから気になって…」

黒竜人「…ほう?」

男「な、なんですか?」

黒竜人「いや…主は何者だ?赤竜のことを“育ての親”と言っておったが」

男「えっと…」

黒竜人「我は主を信用しているわけではない」

男「俺は…先代勇者とダークエルフのハーフです」

黒竜人「勇者だと!?」

男「知ってるんですか?」

黒竜人「…主は勇者がどうなったのか、知っておるのか?」

男「ええ。詳しいことは分かりませんが、なんでも魔族に殺されたとか…」

黒竜人「…」

男「…どうしました?」

黒竜人「いや…主からは竜の匂いもする。ただのハーフではあるまい」

男「ええ…俺、赤ん坊の時に母親を亡くしてるんです。それでシスター…赤竜に拾われて…」

男「その時にシス…赤竜の母乳を飲んでたんで、竜の匂いがするんだと思いますよ?」

黒竜人「…信じられんな…我ら竜族は母乳など出ぬ。いくら人化していたとはいえ…」

男「でも事実です」

黒竜人「ふむ…」

男「…それで、10歳の誕生日に黒い竜が現れて…シス…赤竜を連れて行ってしまったんです…」

黒竜人「…主と姫はどうやって知り合ったのだ?」

男「あ、はい。シ…赤竜が居なくなった後、賢者様が俺の面倒を見てくれてたんですが」

男「賢者様が盗賊さん…俺の父親代わりなんですが、その人を迎えに行った時に魔娘も連れてきたんです」

男「詳しいことは分かりませんが…町人に追われていたとか…」

黒竜人「なんと…」

男「それからずっと一緒に暮らしてました。俺にとって魔娘は…心を許せる、数少ない存在なんです」

男「…俺、魔娘のことが大事なんですよ」

黒竜人「…信じられんな。姫が主の様なものを信用するとは」

男「あ、あの…」

黒竜人「なんだ?」

男「…黒竜人さんは魔娘のこと…“姫”って呼んでますよね?それって…“魔王の娘”ってことですか?」

黒竜人「…そうだ。姫の父親は主王様…お前たち人間が言うところの“魔王”だ」

男「そうですか。やっぱり…」

黒竜人「…姫が憎いか?」

男「いいえ?そんなことぐらいで魔娘のことを憎むわけないじゃないですか」

男「俺、物心ついた時から友達がいなかったんですよ」

男「それで、初めてできた友達が魔娘なんです。俺達はどんな時も一緒でしたし、あいつの性格もよく分かってますし。だから…」

男「生まれを隠してたぐらいで憎んだり嫌いになったりするわけないじゃないですか」

黒竜人「…それだけか?」

男「…俺、魔娘のことが好きなんです。だからこれからもずっと一緒に居たいって思ってます」

男「その気持ちは魔娘の正体を知った今でも変わらないんですよ」ニコッ

黒竜人「…主は面白い奴じゃな」

男「はあ、すいません…」ポリポリ

黒竜人「で、どうされますかな?姫」ニヤニヤ

男「え?」クルッ

魔娘 //

男「…いつの間にここに来てたんだよ…」

魔娘「…何を恥ずかしいことをベラベラ喋ってるのよ!//」

男「いや!これはその…」

黒竜人「姫も満更ではないようですな。はっはっは!」

魔娘「お、小父様も!余計なこと喋らないでよ!!」

黒竜人「いや、失敬…こんなに笑ったのは久しぶりです」

魔娘「もう…」

男「あの…」

魔娘「あ、そ、そうそう!赤竜の居場所はどこなの?」

黒竜人「…また唐突ですな…」

魔娘「いいじゃない!早く教えなさい!!」

黒竜人「…あの二人は今…封印の島に居ます」

男「封印の島?」

魔娘「…どこにあるの?」

黒竜人「先ほどの海岸の沖、船で1日のところにある小島です」

魔娘「…ねえ。わたし達をその島まで連れて行ってくれないかしら?」

黒竜人「それはできません」

魔娘「なぜ?」

黒竜人「魔王様は姫を探しております。表だって動くのは危険かと…それに…」

黒竜人「…我ら黒竜人は…赤竜人もですが、禁を破った側の者。従って封印の島には行けないのです」

魔娘「なら…どうすればいいの?」

黒竜人「…青竜人に話してみます。が、時間が必要です」

魔娘「どれくらい?」

黒竜人「急いだとしても次に彼らと会うのは…十日ほど後になります」

魔娘「…分かったわ」

黒竜人「申し訳ありません。彼らに会見を申し込むには人魚族の力を借りなくてはなりませんので…」

男「そう言えば青竜人は水の中に住んでるんですよね?」

黒竜人「そうだ。よく知っておるな」

男「魔娘に聞いたんです」

魔娘「…これで話は終わりね」

黒竜人「封印の島に行けるようになるまでどうされますか?」

魔娘「それは…」

男「あ、ほかにも行くところがあるので、そっちに向かいます」

魔娘「え?」

黒竜人「…なるほど。なかなかに面白いやつですな」ニヤッ

魔娘「もう…」

~黒竜人のいる町・宿の部屋~

男「よっと…これで荷物はまとまったな。あとは足りないものを明日買って出発だ」

魔娘「…男」

男「ん?」

魔娘「…ありがとう」

男「どうしたんだ急に?」

魔娘「だって…白竜人のところに行くんでしょ?」

男「ああ。地図で見ると三日もあれば着くみたいだしな」

魔娘「うん…」

男「魔娘が言ってたろ?ここまで来て、焦っても仕方がないって。それに…」

男「魔王が魔娘を探してるって言うことは…一カ所に留まるのは危険だしな」

魔娘「…そうね」

男「…お前も父親に会いたいんじゃないのか?」

魔娘「…正直…分からないわ」

男「え?」

魔娘「もし生きているなら…何をおいても会いに行きたい!でも、お父様は…」

男「…」

魔娘「…だから、会いたい気持ちもあるけど、怖い気持ちもあるの…」

男「…大丈夫だ。俺がついてる」

魔娘「…」

男「どうした?」

魔娘「…また盗賊さんのマネ?」

男「今のは本心だよ」

魔娘「っ!?だ、だから!そんな恥ずかしいセリフを真顔で言うんじゃないわよ!!」ペシペシ

男「ちょっ!痛い!痛いって!!」

魔娘「まったく…ちょっとキュンってしちゃったじゃないの…」ブツブツ…

男「…へ?」

魔娘「な、なんでもないわ!もう寝る!!」バサッ

男「あ、ああ。おやすみ」

~深夜・宿の部屋~

魔娘「男、起きて」ユサユサ

男「zzz…ん?…どうした?」

魔娘「取り囲まれてるわ。それも結構な人数よ」

ガバッ

男「おいおい…マジかよ…黒竜人め…」

魔娘「黒竜人は関係ないわ。この匂い…似蛇族ね」

男「似蛇族?」

魔娘「たぶん魔王の差し金ね。わたしを狙って…」

男「荷物を持つんだ」

魔娘「どうするの?」

男「逃げるしかないだろ」

魔娘「無理よ!すぐに見つかるわ!!」

男「大丈夫だ。町の入り口まで転移する」

男「そのあとはできるだけ転移で遠くに逃げる。5,6回も転移すれば町から相当遠くまで行けるだろう」

魔娘「でも!それじゃ男の体力が!!」

男「その時は魔娘の回復魔法で回復してくれ。とにかく急ごう」

魔娘「わ、わかったわ」

~町から離れた街道の上~

シュイン

男「…ふぅ。ここまで来れば大丈夫だろう」

魔娘「“大回復呪”」

パァアアアア

男「ありがとな」

魔娘「いいえ、わたしのせいだもの…これぐらいは」

男「魔娘のせいじゃねえよ」

魔娘「でも…」

男「それより、もうちょっと先に進もう。テントを張るにしても林の中のほうが見つかりにくいしな」

魔娘「…そうね」

~三日後・白竜の住む山上の町~

男「うぅ…さ、寒い…」

魔娘「だらしないわねえ…ほら、ごらんなさい。他の人はあんなに薄着なのに」

白い竜「ふぅ…今日は暑いな…雪でも降らねえかなぁ…」ザッ ザッ…

魔娘・男「「…」」

男「これで暑いのかよ…」

魔娘「…彼らは雪の中で生活してるから、これぐらいだと暑く感じるのね…」

男「うー、我慢できない!“小火炎呪”」

ポワッ

男「…これで少しはマシだな」

魔娘「わたしにもあたらせてよ」

男「やっぱり寒いんじゃねえか…」

魔娘「当たり前でしょ!?早く宿を探しましょう」

男「そうだな」

~宿の部屋~

男「暖かいなぁ」ホワーン

魔娘「ちょうど商人用の部屋が空いててよかったわね」

男「ああ。他の部屋は暖房が無いって言ってたもんな」

魔娘「ほんと、助かったわ」

男「…で、いつ行くんだ?」

魔娘「それは…白竜人次第ね」

男「会いに行くのか?」

魔娘「それしかないわ。菩提所に行くには白竜人の許可が必要だもの」

男「…いつでも逃げられるようにしておく」

魔娘「悪いわね…」

男「気にするなって。というかさ、こういうことにも慣れてきたな」

魔娘「慣れていいものじゃないとは思うけどね」

男「とりあえず今夜は早く寝よう。追っ手が来るまでに十分休んどかないとな」

魔娘「そうね。寝られるときに寝ておかないと、もたないものね」

~翌日・白竜人の屋敷の前~

魔娘・男「「…」」

男「なにあれ?」

魔娘「…白竜人に凍らされた人たちみたいね」

男「え!?」

魔娘「ちょっと聞きたいんだけど?」

門番白竜「なあに?」

魔娘「そこの氷の塊って…」

門番白竜「ああ、あれね。あれはこの屋敷に入り込んだスパイよ」

魔娘「彼らはなにをしたの?」

門番白竜「さあ?あたし達は詳しいことは知らないの。ただ、門の外に出しておけって言われたから…」

魔娘「…獣人みたいね。氷が歪だから種族は分からないけど…竜に化けていたのかしら?」

門番白竜「ええ、お札を使ってたみたいね。ところで…あなたたち、何者?」

魔娘・男「「え?」」

門番白竜「まさかその塊を見るために、ここに来たわけじゃないわよねえ?」

男「えっと…菩提所って言うところを探してるんですけど…」

門番白竜「…っ!?」チャキッ

魔娘「男!余計なこと言わないの!!ねえ」

門番白竜「…なあに?」ジロッ

魔娘「白姉様に伝言してもらえないかしら。“姫が来てる”って」

門番白竜「っ!?う、動くな!!」

ゾロゾロゾロ チャキーン

男「…囲まれたな」

魔娘「そうね…」

門番白竜「大人しくしてたら乱暴なことはしないわ。兵士達についていきなさい」

男「あんたは?」

門番白竜「あたしは門番だもの。ここで門を守ってるわ」

男「…魔娘、どうする?」

魔娘「…大人しくついていきましょう。白竜人に会えるかもしれないし」

男「ん、了解」

竜兵1「黙って歩いてください」

男(なんで丁寧語なんだろ?)

~大広間~

男「でかい部屋だな…」

魔娘「…」

男「…とりあえず警戒しておくか」

?「その必要はない」

男「!?」

ヒュルルル…フワッ

?「…」

男(真っ白な竜だ。黒竜人に比べると小さいけど…それでも二階建ての家より大きいな…)

魔娘「…白姉様?」

?改め白竜人「…その呼び名、久しぶりですね」

魔娘「最後に会ったのは…10年近く前ね」

白竜人「…その変化、解いていただけますか?」

ボワン

魔娘「これでいい?」

白竜人「…」

男(気付かれないように…後ろに回って…)

白竜人「その角と顔立ち…お久しゅうございます。姫」

魔娘「白姉様も…ね」

白竜人「はい。ところで…このものはいかがいたしましょう?」ジロッ

男「うおっ!?ばれてた!?」

白竜人「淑女の背後に回るなんて、駆除されても仕方ないですよ?ふふふ」

男 ゾクッ

魔娘「ふふっ。相変わらず鋭いわね。男、こっちに来て」

男「あ、ああ…」

白竜人「さて…姫がここに来られたという事は…御用向きは菩提所ですか?」

魔娘「ええ。その前に…どうしてこんなことを?」

白竜人「黒竜人より密書が届いたゆえ…いずれはここに来られると分かっておりました」

魔娘「密書?」

白竜人「はい。そこには…“封印の島に姫達を送りたい”ことの他に、スパイのことについても書いてありまして」

白竜人「姫をお迎えするために、屋敷内を捜索して駆除しているところだったのですが…」

白竜人「まだ“片付け”が終わっておりませんでしたので、お目汚しにならぬよう兵士を盾にしました」

男(片付けが終わってないって…こわっ!)ブルッ

魔娘「…そうなのね…」

白竜人「はい…ところで、密書の中にあった、姫の想い人とはこの者ですか?」ニヤニヤ

男「…へ?」

魔娘「そっ!そんなことどうでもいいでしょ!?//」

白竜人「そうでございますか?」ニヤニヤ

魔娘「そ、それより!早く菩提所に連れてってよ!!」

白竜人「今日は無理です」

魔娘「どうして?」

白竜人「姫の安全を確保するためです」

魔娘「どういうこと?」

白竜人「…我等も平和ボケしていたのでしょう。まさかスパイがここまで増えていたとは…」

白竜人「ですので、今宵のうちにスパイを殲滅し、安全を確保いたします」

魔娘・男((せ、殲滅って…))

白竜人「…如何でしょうか?」

魔娘「わ、分かったわ…」

白竜人「ありがとうございます。では、今夜は我が屋敷にお泊りください」ニコッ

~寝室~

魔娘「…」

男「…同じ部屋っていうのはいい。ダブルベッドで…っていうのも、まあいいとしよう。けど…」

サムザムー

魔娘「…もう一枚毛布ちょうだい」

男「はい」

魔娘「ありがとう」

男「…暖房を使うとスパイに見つかるからって…これじゃ寒くて寝れないだろ」ガチガチ…

魔娘「白姉様なりに考えた結果でしょうから…外でテントで寝るよりはマシでしょ?」

男「そうだけどさ…」

魔娘「男も早く寝なさい。明日は菩提所に行くんだから」

男「…わかったよ」

モゾモゾ

男「うぅ…なかなか温まらないなぁ…」

ギュッ

男「うわっ!?」

魔娘「動かないで。こうやってくっついてると暖かいでしょ?」

男「…あ、ホントだ」

魔娘「今夜はこうやって寝ましょ?おやすみ」

男「はいはい。おやすみ」

魔娘「…」

男「…」

魔娘「…ねえ」

男「ん?」

魔娘「男は…自分の母親が殺されたって聞いて…どういう気持ちになったの?」

男「ん…俺はあんまり実感がわかなかったなぁ。母親の記憶が無かったから」

魔娘「…薄情ね」

男「そうかもな…けど、腹が立った」

魔娘「どうして?」

男「だってさ…理由が理由だもんな…」

魔娘「そうね…」

男「ああ…」

魔娘「…」

男「…不安なのか?」

魔娘「…うん。だって…」

魔娘「わたしには…お父様との思い出があるし…」

魔娘「…泣き崩れて…もしかしたら怒りに任せて暴れちゃうかもしれない…」

男「…」

魔娘「どうなるかなんて…わたしにも分からない…怖いの…」

クシャ

魔娘「あ」

男「悲しかったら泣けばいい」

魔娘「…え?」

男「腹が立ったら怒ればいい。悔しかったら憎めばいいし、苦しかったら休めばいい」

魔娘「…」

男「…大丈夫だ。俺がいるから」

男「何があっても、俺がついてるから。な?」ナデナデ

魔娘「…うん」グスッ

男(不安なんだな…こんな魔娘、初めて見た…)

~翌朝・菩提所~

白竜人「ここが菩提所です」

男「小高い丘みたいだな…」

魔娘「…」

白竜人「この中に安置しております。こちらが入口です」

ギギギ…

白竜人「…中は迷路状になっております。逸れないようについてきてくださいまし」

魔娘「…」

ギュッ

男「!?」

魔娘「…行くわよ」

男「あ、ああ…」

男(すげえ怖いんだろうな。手まで震えてるし…)
  ・
  ・
  ・

~菩提所の中・扉の前~

白竜人「…ここでお待ちください」

男「はい」

魔娘「…」

ゴゴゴ…

白竜人「こちらへ」

男「いくぞ?」

魔娘 コクン

ゴゴゴ…

男「!?」

白竜人「あの扉は自動で閉まるのです。この先は我が御先祖様の菩提を弔ってありますので」

男「そ、そうですか…ちょっとビックリしましたよ」

白竜人「…この先です。どうぞ…」
  ・
  ・
  ・

~菩提所・最深部~

白竜人「着きました」

魔娘「っ!?」

男「…あそこに見えるのが?」

白竜人「はい…主王様です」

魔娘「…」ギューッ

男(痛い痛い!魔娘、力入れすぎ!!)

男「…行けるか?」

魔娘「…ゑヱ」

フラフラ…

男「声が上ずってんぞ。しかもふら付いてるし…途中まで一緒に行こうか?」

男(緊張してるんだろうな…体中がガチガチに固くなってやがる)

魔娘「…ぉねガゐ」

男「…ほら、肩を貸して」
  ・
  ・
  ・

魔娘「…」

男「…手を離すぞ?」

魔娘 コクン

男(これが魔王…主王か…角とか耳とかは魔娘と同じだな…けど…身体はでかいな…)

魔娘「…お父…様…」ポロッ

男「…」スッ…

男(しばらくは二人っきりの方がいいだろうしな。入口に戻って待っていよう)

魔娘「…ヒック…うぅ…ヒック…」
  ・
  ・
  ・

男「…あ」

白竜人「あら?…姫は?」

男「中で二人っきりになってます」

白竜人「そう…」

男「…あの」

白竜人「なあに?」

男「聞きたいことがあるんですけど…」

白竜人「なにかしら?」

男「魔娘の父親って…どんな人だったんですか?」

白竜人「え?」

男「あ、いや。怖かったとか、喧嘩っ早かったとか、気が短かったとか…」

白竜人「…」

男「あ、あの…」

白竜人「…あなたは主王様のこと…知らないの?」

男「はあ…俺、人間界にいましたから」ポリポリ

白竜人「…そうなのね。いいわ。教えてあげる。あなたがさっき言ったのと正反対の人よ」

男「…へ?」

白竜人「優しくて温和で、物静かな方だったわ」

男「はあ…そうですか…反乱があったって聞いてたからもっとこう…暴君的な人かと…」

白竜人「主王様はその人望で国を収めてらしたの。もっとも、理不尽なことに対しては全力で解決に当たったりすることもあったけどね」

男「じゃあ…何で反乱なんかが起こったんですか?」

白竜人「…勇者よ」

男「…へ?」

白竜人「以前この国にきた勇者パーティーが獣の国に入ったところで、待ち伏せていた師団と衝突して…勇者を討ち取ったの」

白竜人「主王様は勇者と話し合うつもりだったから軍には手を出さないように通達していたのにね」

男「…」

白竜人「元々その師団は過激派が多くて、主王様の命令に背いて武力を行使したり、人間界への侵攻を提案してたこともあって…」

白竜人「そう言うことが何度もあって、挙句に勇者まで討ち取った。それで主王様は師団長の中将を解任したの」

白竜人「それで軍部内に不満が募っていったみたいね。そして…7年前に反乱が起こったの」

男「そうですか…でも、主王様って強かったんですよね?」

白竜人「ええ…でも…人質を取られていたのよ…」

男「…え?」

白竜人「主王様はとてもお強い方よ。でも…とても優しい方だったの」

白竜人「ゴブリン族の従者たちを人質に取られて…それで自ら反乱軍に投降されたの」

男「…そのゴブリン族も辛かっただろうな…」

白竜人「そうでもないわ。だってそのゴブリン達は…反乱軍に寝返ったスパイだったんだもの」

男「…へ?」

白竜人「だから、全ては計画通り。我々竜人たちが駆けつけたときには主王様はすでに投降されてて…」

男「なんだよそれ…」

白竜人「我々はスパイから主王様の居場所を聞きだして救い出そうとしたけど…」

白竜人「主王様はもうそのお力を殆んど失われ…何とか救出したのだけれど…」

白竜人「“姫を頼む”と言い残されて…身罷られたのよ」

男「…」

白竜人「我々はそのお言葉を守り、何年も姫を探したわ。でも…」

男「見つからなかったんですね」

白竜人「ええ…まさか人間界に行ってるとは思いもしなかったもの」

白竜人「それで、姫を見つけ出せない我々は、主王様をここに安置したという噂を流して…姫が来られるのをお待ちしていたの」

男「あいつを守るために…ですか」

白竜人「ううん…主王様を守れなかった罰を…姫に下していただくためにね」

男「…あいつはそんなこと、望まないですよ」

白竜人「でもね、そうしていただかないと我々竜人は…誇りを失ったままになるの」

白竜人「もし姫が罰してくださらなければ…我らは自害するつもりです」

男「なんで!?」

白竜人「…竜人は代々主王様をお守りしてきたの。そしてそのことを誇りにしていたわ。でも…」

白竜人「あの反乱で…我々は主王様を守れなかった…誇りを失ったのよ」

白竜人「竜人にとって誇りとは…それほど大事なものなのよ」

男「…」

ゴゴゴゴゴ…

白竜人・男「「!?」」バッ

男「何の音だ!?」

白竜人「中から聞こえるわ!」

男「くっ!魔娘!!“転移”!」

白竜人「え?きゃあ!」

シュイン

白竜人「な、なに?いきなり場所が変わったんだけど!?」

男「“転移”です。魔娘は…」キョロキョロ

ドヨドヨドヨ…

男「…なんだあの黒い霧は…」

白竜人「魔力が…暴走してるわ」

男「え!?」

白竜人「あの霧は魔力が暴走して勝手に術式化してるみたいね。迂闊に近づけないわ」

男「…俺、行きます」

白竜人「無理よ。あの霧に触れたが最後、いろんな魔法で攻撃されるのよ?あなたなんてあっという間に…」

男「…大丈夫ですよ」ニコッ

白竜人「…え?」

男「俺、あいつと約束したんです。何があっても、俺がついてるからって」

白竜人「でも!」

男「じゃあ、行ってきます」ダッ

白竜人「あっ!」

タタタタ

男(あの霧のせいで魔娘の位置がよく分からないけど…きっと元の場所にいるだろう)

男(なら…そこよりちょっと右を狙って…)

男「…“転移”!」

シュイン

白竜人「消えた!?」

~黒い霧の中心付近~

シュイン

魔娘「…」ブツブツブツ

男「よし、いた!おい、魔娘!」

魔娘「…」

男「俺だ。分かるか?」ペチペチ

魔娘「…」ブツブツブツ…

男「…しょうがない。許せよ?」

バッチーン!

魔娘「…え?…え!?」

バッチーン!

男「おい、まむs」

バチーン!

魔娘「い、いきなり何するのよ!!」

男「いってえ!よかった。正気に戻ったんだな?」

魔娘「…はい?」

男「お前、さっきまでおかしくなってて、魔力を暴走させてたんだぞ?ほら」

魔娘「…何この黒い霧は?」

男「お前が出したんだ。触るなよ?勝手に術式化してるから、触ったら攻撃されるぞ?」

魔娘「…物騒ね。どうするの?」

男「とりあえずここから出よう。転移するぞ?」

魔娘「ええ」

~黒い霧の外~

シュイン

白竜人「っ!?」

男「っと。あ、ただいまです」

白竜人「姫!」

魔娘「心配掛けたわね」

白竜人「姫!御無事で!!」

魔娘「ええ。男のおかげよ」

男「それより…あれ、どうする?」

ゴゴゴゴゴ…

白竜人「…これを使いましょう」

男「…なにこの氷柱?さっきまでは無かったけど?」

白竜人「あなたが消えてから、外に取りに行ってきました」

魔娘「…竜が凍ってるみたいだけど?」

白竜人「昨日捕まえたスパイです。これをあの中に放り込みましょう」

魔娘・男((結構残酷な人だ))

白竜人「では、行きますよ?…えいっ!」ポイッ

ヒュー…ボウッ バチバチバチッ キンキンキン…
  ・
  ・
  ・

白竜人「…消えたみたいですね。霧」

男「すごい…燃えカスしか残ってない…しかも凍ってるし」

魔娘「雷と炎と凍結…結構な威力だったわね」

白竜人「…主王様も無事ですね。よかった…あ、大丈夫ですか?姫」

魔娘「ええ…とりあえずここから出ましょう。話はそれから。ね?」

白竜人・男「「はい」」

~白竜人の屋敷~

白竜人「暖かいお茶を用意しました。どうぞ」

魔娘「ありがとう…はぁ。美味しい」

男「ホントだな。暖房も効いてるし」

白竜人「スパイを殲滅しましたからね」ニコッ

男(人化したらすごく綺麗なんだけど…言うことが怖い)

魔娘「…はあ」

男「大丈夫か?」

魔娘「ええ…一度に魔力が抜けたからちょっとフラフラするけど…大丈夫よ」

男「いやそれ、大丈夫じゃないだろ…」

白竜人「本当に大丈夫ですか?姫」

魔娘「大丈夫よ。白姉様」

白竜人「ちょっとお休みになったほうがよろしいのでは?」

魔娘「…そうね。そこのベッドで休ませてもらうわ」

白竜人「…私は所用がありますので席を外します。ごゆっくりお休みください」

パタン

白竜人「…ふぅ」

男「疲れてます?」

白竜人 ギクッ

男「どうしました?」

白竜人「…悪趣味ね。人を脅かすのは良くないことよ?」

男「はあ、すいません」

白竜人「危うくさくっと駆除するところだったわ」クスッ

男 ゾクッ

白竜人「…で?どういう用件かしら?」

男「あ、はい。荷物を取りに行ってこようと思いまして」

白竜人「荷物?」

男「ええ。荷造りして、宿に置いたままなんですよ」

男「それを取りに行くので門番さんに言っといて欲しいんですけど」

白竜人「分かったわ」

男「じゃあ、魔娘のこと、お願いしますね」

白竜人「ええ」

タタタタ…

白竜人「元気だわ…私も頑張らないと」

白竜人「スパイを凍結処分して、黒竜人の密書に返事をして、青竜人に状況説明しなきゃいけないし…」ブツブツ

白竜人「…私も一休みしたいわ…」

~昼食時・白竜人の屋敷~

コンコン ガチャ

白竜人「姫はお目覚めかしら?」ソー…

魔娘「スゥ…スゥ…」

男「zzz…」

白竜人「あら?二人とも寝てるのね」

白竜人「…私も休もうかしら?よいしょっと…」

白竜人「ソファーで寝るのは行儀が悪いけど…ちょっとだけだし、大丈夫よね?」

ゴロン

白竜人「ふぅ…」
  ・
  ・
  ・

魔娘・男 ガチガチ…

白竜人 スヤスヤ…

男「さ、寒さで目が覚めたら…竜化した白竜人が冷気を吐きながら寝てるし」ブルブル…

魔娘「…そ、外に出たほうがマシみたいね」ブルブル

男「とと、とりあえず…熱い飲み物をもらいに行こう」

魔娘「はは、早く行きましょ…」

~数日後~

男「お世話になりました」

白竜人「気をつけてね?」

魔娘「ありがとう。…お父様のこと、お願いします」

白竜人「…はい。お任せください」

男「…じゃあ、行ってきます」

白竜人「一緒に行ければよかったんですが…すみません」

魔娘「ううん。白姉様にはここまでやってもらって…本当に感謝してるわ」

白竜人「もったいないお言葉…青竜人には話はついてるから心配ないわ」

男「あ、はい」

魔娘「それじゃ、行きましょうか」

男「…ああ」

まだまだ続きますんで、そろそろ次スレ立ててきたほうがいいですかね?

960あたりでいいんじゃないかな

>>940 了解です

~海岸・青竜人との待ち合わせ場所~

黒竜人「ここでしばらくお待ちください」

魔娘「ありがとう」

男「…」

魔娘「…どうしたの?」

男「…ん?あ、いや…」

魔娘「緊張してる?」

男「…そうだな」

魔娘「今から緊張してると、島に着く頃には動けなくなってるんじゃない?」クスクス

男「…」

魔娘「…」

ギュッ

男「!?」

魔娘「…いよいよね」

男「…ああ」

魔娘・男「「…」」

黒竜人「…来たようです」

ザザーン ザザザーン

男「音はするけど…船はどこだ?」キョロキョロ

ザッパァアアアアン!!!

男「っ!?海の中から竜が!?」

魔娘「青竜人よ」

青竜人「…待たせたようじゃの」

黒竜人「なんの。爺様」

青竜人「久しぶりに姫にお目にかかれると聞いて急いできたんじゃが…こいつを引っ張っておったもんでの?」

プカプカ

男「…なんだあのでっかい樽みたいなのは?」

魔娘「私たちが乗る船よ」

青竜人「おお!姫!!お久しゅうございます」

魔娘「本当に久しぶりね。元気だった?青爺」

青竜人「はい。これこのとおり…っ!」

ゴキッ

青竜人「あいた!こ、腰が!!あいたたたた…」

魔娘「ちょっと大丈夫!?“大回復呪”」パァアアア

青竜人「…ふぅ。おかげで助かりましたわい」

黒竜人「年を考えてください。爺様」

青竜人「ふぉっふぉっふぉ。お主等よりほんの300歳ほど年上なだけよ。要らぬ心配じゃ」

魔娘「ふふふ。相変わらずね。そろそろ船に乗ってもいいかしら?」

青竜人「これはこれは。忘れておりました。ささ、どうぞお乗りになってください」

魔娘「ありがとう」

ヒョイ ヒョイ

男「…これ、どうやって乗るんだ?すごく不安定なんだけど…」

魔娘「それは中に乗り込むのよ」

男「中に?」

魔娘「そう。この船は水の中にも潜れるって聞いた事があるわ」

男「へぇ…どこから入るんだ?」

青竜人「ここじゃよ」パカッ

男「あ、どうも。後ろから入るんですね」

魔娘「へぇ…中はもっと狭いかと思ったけど…結構広いわね。水晶の窓のおかげで明るいし」

男「よくできてるな…」

魔娘「…でも、なんでこの船なの?普通の船じゃダメなの?」

青竜人「…姫は封印の島に行かれるとお聞きしました」

魔娘「…ええ」

青竜人「封印の島は元々犯罪者を閉じ込めるためのものです」

青竜人「島の回りは断崖絶壁。空から逃げようにも魔方陣による結界に弾かれます」

青竜人「泳いで逃げようにも周りはクラーケンの営巣海のため海に入った途端やつらの餌食に…」

青竜人「唯一の出入り口は外海と島の中を結ぶ海底トンネルのみ」

青竜人「従って、この船でないと行けないのですよ」

魔娘「そういうことなのね…わかったわ」

青竜人「では出発しますので、扉を閉めます」

魔娘「ええ」

パタン

黒竜人「爺様。姫をよろしく頼みます」

青竜人「わかっておる。我が命に代えてでもお守りいたす」

黒竜人「我等竜人は一度誇りを失っている。またそのようなことがあれば我等竜族は…」

青竜人「黒竜人…お主の息子は強いかの?」

黒竜人「…全盛期の私より…強いです」

青竜人「やれやれ…厄介じゃの。まあ、何とかするわい」

黒竜人「お願いします」ペコッ

青竜人「…で、どこまでが許容範囲じゃ?」

黒竜人「姫に危害が及ばなければ…男のほうは死なない程度まで…」

青竜人「…ちがう。危険なのはお