まどか「ここは?」ほむら「私の転校前の入院先よ」(915)

前スレ
ほむら「結局残ったのは巴マミのソウルジェムとまどかの抜け殻だけだった」
ほむら「結局残ったのは巴マミのソウルジェムとまどかの抜け殻だけだった」 - SSまとめ速報
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大穴が開いて崩れたレンガ作りの壁。
取り残された二人。

詢子「……」

まどか。「……えっと」

気まずい。

まどか。「あのね、杏子ちゃんは悪い子じゃないんだよ?」

詢子「あ、ああ、それくらい判る。最初あたしを逃がそうとしたしな」

それに詢子に攻撃が当たらないように気を遣っていた。

まどか。「ウェヘヘ、そう、そうなんだよ!」

詢子「……」(『あたしにいうことあるだろ?』という目)

まどか。「……あの」

前スレへのリンクだけってのはあんまりなので一レス分だけ投下した
ではまた


大穴が開いて崩れたレンガ作りの壁。
取り残された二人。

まどかは既に変身を解いて、
今はなけなしの予算でそろえた『中学生らしからぬ地味な服装』だ。

詢子「……」

まどか。「……えっと」

気まずい。

まどか。「あのね、杏子ちゃんは悪い子じゃないんだよ?」

詢子「あ、ああ、それくらい判る。最初あたしを逃がそうとしたしな」

それに詢子に攻撃が当たらないように気を遣っていた。

詢子「屈折してるみたいだが、あれは根は優しいよ」

まどか。「そうそう、そうだよね!」


詢子「……」(『あたしにいうことあるだろ?』という目

まどか。「……」(黙って立ち去りたいけど睨まれて動けない


まどか。「……あの」

詢子「なんだ?」

まどか。「今のこと、忘れてくれたらうれしいなって」

詢子「説明はなしかい?」

まどか。「うん。ごめん」

とは言ったものの、黙って帰してくれそうにない雰囲気。

詢子「……いつもあんな連中と渡り合ってるのか?」

まどか。「いつもじゃないよ。でもママはこれ以上関わってほしくない」

詢子「やっと目を見て話したな」

まどか。「……」

詢子(覚悟は目を見れば判る。だが……)


詢子「……何か人様に顔見せできないようなことをしてるんじゃないだろうな?」

まどか「ちがうよ。でも何かは言えない」

詢子(目を逸らさずに言ったか)

詢子「『それ』はお前がやらなきゃいけないことなのか?」

まどか。「そうだよ。私が今やらないと……、
     ううん、私にしか出来ないことがあるの」

詢子(また目をそらした? この子の後ろめたい相手たあたしか?)

詢子「誰かに脅されてるとか騙されてるってことは無いのか?」

まどか。「ないよ」

詢子「そうか……」


詢子「知らない誰かが、あたしのまどかの姿をして
    何かしでかしてるんなら絶対に許さないとこだが」

まどか。「……」

詢子「でも、あんたはあたしのまどかにしかみえない」

まどか。「ママ……」

詢子「いいか」

まどか。「」

詢子「話せないっていうんだったらもう聞かない。
    自分の信念でやってることならしっかりやり通せ」

まどか。「う、うん」

詢子「だがな、終わったらあたしの所にこい」

まどか。「え」


詢子「こんな時間にふらふらしてんだ。
    学校も行ってない、働いてもないんだろ?」

詢子(それに、普段こんな服着てるなんて)←所詮、中学生の考えでそろえた服である

まどか「そ、それは……」

詢子「養子でもなんでもやりようはあるさ。
    いや、あたしがなんとかしてみせる」

まどか。「……」

詢子「この街であたしの娘として堂々と生きていけるように
    してやるから覚悟しとけ!」


まどか。「……して」(うつむいてる

詢子「ん?」

まどか。「もう、勘弁して……」

詢子「なんだ?」

まどか。「パパとママとたっくんと、まどかちゃん。それから学校のお友達。
      みんなが……幸せに生きて欲しい」

詢子「……まどか?」

まどか。「それがわたしの願いだから」

最後に顔を上げたまどかは笑顔で、頬には涙が伝っていた。

詢子「」

その見たことの無い表情に詢子の思考が一瞬止まる。

まどか。「……わたしのことは忘れてください」

まどかはすっと詢子の横を抜け、行き止まりの路地から出ていった。

詢子「お、おい!」

我に返った詢子は慌てて振り返ったが、そこにまどかの姿は無かった。


まどか。「はぁ……」

どこかのビルの屋上。
まどかはフェンスに寄りかかって街の風景を眺めている。

あの直後、また『お願い』してビルの屋上に跳んだのだった。

まどか「……ママがあんなこと言うなんて」

『もう一人のまどか』と認めた上で『自分の娘にする』とまで言い切ったのだ。

まどか。「でも無理。
      ほむらちゃんの気持ち、すこし判ったかも」

深くため息。

「なに黄昏れてんだよ?」

まどか。「!」

杏子「よう?」

背後に居た。
気配に気づかなかった。


まどか。「……杏子ちゃん」

杏子「またそれか?
    ちっとは警戒しろよな。さっき命のやり取りしてたってのによ」

まどか。「杏子ちゃんは敵じゃないよ」

杏子「ふうん、ならさっきのババア絞めてくるかな?
    また絡まれたらめんどいし」

まどか。「……」(黙って見てる

杏子「本当に行くぞ? 止めなくていいのか?」

まどか。「本気ならそんなこと聞かないでしょ?」

杏子はちょっと目を見開いたあと、バツが悪そうに目を逸らす

杏子「……ちぇっ」

ここで解説。
杏子はまどかのような天然な人間が苦手である。
それは心のテリトリーにやすやすと侵入されて、
いわゆる『悪い子』を保てなくなるからだ。
まどかに至ってはさっき出会ったばかりなのにもはや“手おくれ”の領域だったりする。
と、解釈している。参考までに。


杏子はまどかの隣でフェンスに寄りかかっている。

杏子「おまえさあ」

まどか。「なあに?」

杏子「親のところ行けよ」

まどか。「さっきの聞いてたんだ?」

杏子「まあな。親バレしたってとこだろ?」

まどか。「そうだけど……」

杏子「『まだ引き返せる』んならとっとといっちまいな。
    ソウルジェム捨ててさ」

まどかは杏子の言葉に『あれ?』っとなる。

まどか。「もしかして、わたしのこと聞いてる?」

杏子「QBから少しな」

まどか。「QB、なんて?」

杏子「イレギュラーの用意した『特異点』だそうだ。
    要は魔法少女のソウルジェム持った一般人なんだろ?」

まどか。「QBったら、そんな風に言ってたんだ……」


杏子「帰るとこがあるんなら帰っちまえ。
    お前みたいな半端モンは目障りなんだよ」

まどか。「そういうわけにはいかないよ。
      わたしにはやることがあるんだから」

杏子「なんだよ。やることって」

まどか。「あ、そうか。言ってもいいか。あのね……」

(~説明中~)

杏子「……ワルプルギスの夜が来るだ?
    なんで判る?」

まどか。「それは……」(キョロキョロと辺りを見回す

杏子「?」

まどか。「……いえないよ。どこで聞かれているか判らないからね」

杏子「なんだそりゃ」


まどか。「とにかく、ワルプルギスの夜を倒すのに協力して。
      あと、ほむらちゃんとも仲良くしてほしいな」

杏子「ほむらってのはあのイレギュラーのことか?」

まどか。「知ってるんだ?」

杏子「昨日会ったぞ。なんか知らんがマミと仲良く魔女にやられてたな」

まどか。「え? やられて!?」

杏子「そんな顔すんな。ちゃんと生きてるって」

まどか。「ねえ、怪我してなかった? ねえ!」(詰め寄る

杏子「こら、寄って来んな。大したこと無いって。
    普通に歩いて帰ってたしな」


まどか。「そうなんだ……」

まどか。「でも、そんなに強い魔女だったの?
      ほむらちゃんマミさんも一緒だったのに?」

杏子「まあ、ベテランでも下手うつと負けるってこったな」

まどか。「助けてくれたんだよね?」

杏子「あたしは魔女を倒しただけさ。
    あいつら勝手に助かっただけだろ」

まどか。「でも杏子ちゃんが魔女を倒したからでしょ?
      ありがとうね」

杏子「べ、別に感謝されることしてねーし」(そっぽむく



杏子「……で、協力しろって話か?」

まどか。「そうだよ」

杏子「見返りはなんだ?」

まどか。「え」

杏子「超度級の魔女と戦うんだぜ。リスク在るし、
   魔力だって半端無く消費するだろ?
   相当の対価がなきゃ協力なんてご免だね」

まどか。「でも、街全部が危ないんだよ」

杏子「知ったことか」

まどか。「倒さないとみんな死んじゃうんだよ?」

杏子「だったらあたしは他の街に避難するさ……ってなに泣いてるんだよ?」

まどか。「え? あれ?」(おもいきりポロポロ涙を流してる

杏子「泣いたって無駄だからな」

まどか。「ちがうよ。なんか涙が勝手に」

杏子「と、とにかく、ほむらってヤツに言っとけよ」

まどか。「うん。わかったよ」(涙を拭きつつ

杏子「じゃあな。あたしは行くから」

ほむら「待ちなさい」

ここまで。
次は早めに投下したい。
しかし一度書いて消えたのをもう一度書くとなぜか冗長になる


振り返ると背後にほむら。髪をバサッとかきあげて。

まどか。「あ、ほむらちゃん(よかった怪我してないみたい)」

ほむら「まどか、大丈夫?」

まどか。「え?」

杏子「あんとき言っていた挨拶とやらか?」

ほむら「それもあるけれど……」(睨む

杏子「なんだよ?」

ほむら「まどかを泣かせたわね」

杏子「ちげえよ。こいつが勝手に泣いたんだ」

ほむら「そうなの? まどか」

まどか。「うん。ワルプルギスの話をしたら色々思い出しちゃって」

ほむら「そうだったの。
     あなたは無理しなくていいのよ」

まどか。「大丈夫だよ」


杏子「そいつにも言ったが、あたしは無報酬じゃ働かないぜ」

ほむら「ええ。それは予想してたわ」

杏子「何かあるのか? 一応は聞いてやるぜ」

ほむら「いきなり話を聞いてもらえるなんて、まどかのお手柄ね」

まどか。「えへへ、役に立ててよかったよ」

杏子「おい、くだらねえ話してるならあたしは行くぜ?」

ほむら「そうね。あなたの気が変わらないうちに。
    ……報酬だったわね」

杏子「リスクがでけえんだ。半端なもんだったらお断りだぜ」

ほむら「戦闘で消費する分のグリフシード。半分は前渡し」

杏子「ほう?」

ほむら「それプラス、
     今からワルプルギスが来るまでの住居と食事の提供
     ってことではどうかしら?」

杏子「まあ、内容によっちゃ悪くはねえな」


この時間軸では杏子に会ったのはまだ二回目だが、
まどかが緩衝剤になってくれたおかげか感触は良い。
しかし強引な勧誘は禁物である。

ほむら「品質は保証するわよ。
     それにあなたには直前まで選択の権利があるわ。
     拘束はしないし、ツバ付けたから逃がさないなんてことはしない」

あくまで杏子の自由を尊重する。

杏子「つまり報酬を持ち逃げできるってことか?」

ほむら「できればして欲しくないけれど、そうよ。
     一度渡したグリフシードはもちろん、
     やめるなら食費と家賃も返せなんて言わないわ」

杏子「そりゃ、待遇良すぎて逆に怪しいな」

ほむら「あなたにはそこまでするだけの価値があるわ」

杏子「褒めたって何もでないぜ?」

ほむら「そうね。出すんだったら本番で実力を出して欲しいわ」

杏子「ふーん。今からってことは、
    一緒にやってけるか試すってことで良いんだな?」

ほむら「その通りよ」

まどか。(なんか、ほむらちゃんって杏子ちゃんと仲良さそう……)


ほむら「この後、提供する住居に案内するわ。
     でもその前に少しまどかに話があるから、
     受ける気があるのなら、少し待ってくれないかしら?」

杏子「受けるかはともかく、見るだけ見てやるよ。
    手短かにな」

ほむら「すぐに済むわ」

まどか。「なあに?」

ほむら「昨日のことよ。どうだったの?」

まどか。「ああ、そうか。あのね……」


(説明中)


ほむら「……そう、お母様に」

まどか。「うん。どうしよう」

ほむら「……」(考えてる


まどか。「ほむらちゃん?」

ほむら「それで良いわ」

まどか。「え?」

ほむら「気にしないでまどかの警戒を続行してちょうだい」

まどか。「で、でもママって鋭いし、また見つかっちゃったら……」

『えーと、えーと』と考えた末、

まどか。「……その、気まずいよ?」(結局その程度

ほむら「そのくらい問題ないでしょう?」

まどか。(えー)

ほむら「それに、まどかが言い出したことなのだし」

まどか。「あ……(そうだった)」


ほむら「佐倉杏子」(また睨む

杏子「こんどはなんだよ?」

ほむら「まどかを傷つけたわね」

当然先ほどの戦闘のことも聞いている。

杏子「ちゃんと手加減したぞ?」

ほむら「それは判ってるわ。あなたが本気出していたら、
     まどかが無事なはずはないもの」

杏子「へえ、冷静だな。
    イレギュラーがこいつにこだわってるって聞いたから
    いたぶってやったんだが、拍子抜けだな」

ほむら「そういうのはやめてちょうだい。
     借り物の魔法で現役の魔法少女に敵うはずないでしょ?」

杏子「もうしねえよ。なんかこいつ面倒くせえし」

ほむら「挑発したいなら私に直接しなさい」

杏子「良いのか?」(不敵な笑い

ほむら「お望みなら、お相手するわよ」

杏子「やめとくよ。おまえの手札しらねえし」

補足:
杏子はまどかはともかく、ほむらは油断の出来ない相手だと思っている。
ほむらが騙すつもりだったとしても倒す、もしくは逃げ切る自信があるから話を聞いているのである。


とりあえずビルの上から降りた一行。

まどか「あ、まどかさん」

道に出たところで(この時間軸の)まどかに遭遇した。
というかここで待ってたような雰囲気だ。

まどか。「あれ? もしかして帰り、ほむらちゃんと一緒だった?」

まどか「うん。さっきまで」

ほむら「じゃあ、お願いね」

まどか。「う、うん」

まずは杏子の件を片付ける必要があるので、
まどかにはもう行ってもらおうとしたのだが、

さやか「何やってるのよ? 急に居なくなるから探したわよ」

まどか。「あ、さやかちゃんも」

さやか「って出たわね、まどか二号」

ほむら「悪いけれど、今日は用事ができたの。
     次の機会にしてくれないかしら?」

ほむらは昼間さやかと話した約束を履行するため、
放課後、まどか達と同行していたのだ。


さやか「それはあたしより優先する事なの?」

ほむら「そうよ。こちら側の話だから」

さやか「こちら側? って、魔法少女関係だよね?」(ちらっと杏子を見る

杏子「……」

さやか「ほむらの知り合い?」

ほむら「そうよ(というか、呼び捨て?)」

さやか「ふーん……あたしよりその子をとるんだ」

ほむら「妙な言い方しないでちょうだい」

さやか「あたしのこと放っておけないって言ったくせに」

ほむら「言ってないわよ」

さやか「でもそういう意味でしょ?」

ほむら「間違いではないけれど、どうしてそこだけ言うの?」


杏子「……なあ、あたし帰っていいか?」

いい加減、痺れを切らしたようだ。

ほむら「ごめんなさい。もう終わるわ」

杏子「後でも話なら聞くぞ。
    なんかお前の仲間は面倒くせえやつばっかだな?」

関わりたくないとでも言いたげだ。

ほむら「いいえ、今が良いわ……って、美樹さやか?」

さやかはほむらと杏子の間に割り込むような位置に移動して、
ほむらの肩に手をかけていた。

さやか「悪いけど、先約はこっちなの。
     今日は遠慮してくれる?」

杏子「はあ? 何言ってやがる」

ほむら「ちょっと、やめなさいよ。
     お願いしたのは私の方なのよ」

さやか「どこのどいつだか判らないやつが割り込んで、
     いきなりあたしとの約束よりそっち優先とか
     どういうことよ? 納得いかないわ」

ほむら「気に障ったのなら謝るわ。
     でも物事には優先順位があるのよ」

さやか「それで良いんだ? 言ったよね?
     あたし、けいや……」

ほむら「駄目よ! 口にしただけでも、あいつが来るわ」

さやか「え? 来るの?」

ほむら「ええ。虎視眈々と機会を狙ってるわ」

さやか「そうなんだ。
     ……だったらなおさらあたしのほうが優先だよね?」

ほむら「そ、それは……」


杏子「……おまえ、さやかとかいったっけ」

さやか「なによ? そういや、あんた魔法少女なの?」

杏子「そうだか、お前には関係ないだろ」(※さやかが一般人なのは判ってる

さやか「まあね。もう関係ないっちゃ関係ないけど、
     それで、なにかあたしに言いたいことでもあるの?」

杏子「別に、お前らの事情なんて知ったこっちゃねえし、
    関わる気もねえが」

さやか「だったら引っ込んでくれないかな?」

杏子「だがな、せっかく転がり込んで来た飯のタネを
    くだらねえ事で邪魔されるのは気に食わねえ」

さやか「くらだない? ……ふうん。
     そんなこと言っちゃうんだ?」

杏子「なんだよ」

さやか「あたしも、あたしの友達を飯のタネ呼ばわりするようなやつは
     気にいらないわ!」

杏子「ほう、威勢がいいな?」

ほむら「ちょっとやめて」


杏子「なあほむら」

そう言って、杏子はさやかから奪うようにほむらの肩を抱き寄せた。

ほむら「な、なに?(こっちも呼び捨て!?)」

杏子「あたしの方が優先って言ったよな?」

さやか「何言ってるのよ。先約はあたしよ」(奪い返す

さやか「そもそもあんた、後で良いって言ってたじゃない」

杏子「気が変わった。さっさと行こうぜ」(ほむらを引っ張る

さやか「ほむらは友達との約束反故になんてしないよね?」(引き寄せる

ほむら「ちょっ……」


まどか。「ほむらちゃん、モテモテ?」

まどか「まどかさん……」

ここまで
もう少しでHDDがとんだ分に追いつく


ほむら(美樹さやかが魔法少女でない状況だというのに、
     どうしてこの二人は……)

さやか「ほむら! あたしと行くよね?」

杏子「あたしの方が優先っていったよなぁ?」

ほむら「え、えっと……」

さやか「どうなの?」

杏子「どうなんだよおい?」

ほむら「」(困惑

~~

まどか。「ねえ、さやかちゃん。ほむらちゃん困ってるから」

さやか「なによ? あたしに引けっていうの?」

まどか。「じゃなくって、けんかしちゃ駄目だよ」(ウルウル

さやか「なに泣きそうになってるのよ。大げさね」

さやか「それで、まどかは?」

まどか。「え?」

さやか「じゃなくてそっち」

まどか「え? わたしは……」

さやか「まどかもあたしが引くべきとか思ってる?」


まどか「ええと、その前にさやかちゃん、杏子さんに会ったことあるの?」

さやか「え? 今が初めてだけど、なんで?」

まどか「だって、さやかちゃんが初対面の子にこんな風に意地張るなんて珍しいから」

さやか「意地って、あたしは別に……。
     で、まどかはどっちの味方なのよ」

まどか「どっちとか、そういうのじゃなくて、けんかはだめだよ?」

さやか「そりゃそうか。まどかに聞けばそう答えるわよね……」

まどか「でも、上条君のお見舞いは今日じゃなくても良いよね?」

さやか「まどか……(そういや恭介の件、まどかは反対だったわね)」

~回想~
(ほむらとさやかの会話後~放課後までのどこかの時点)

まどか「え? 上条君がほむらちゃんに?」

さやか「う、うん」

まどか「それで、さやかちゃんが仲を取り持つの?」

さやか「ま、まあ、そんな感じ」

この件をまどかに話すつもりはなかったが、
成り行きでついポロっと漏らしてしまったのだ。

まどか「さやかちゃんって、ほむらちゃんのこと嫌いじゃなかったの?」

さやか「いやまあ、話してみたら面白いやつだったというか、なんというか」

まどか「さやかちゃん」

さやか「な、なに?」

まどか「本当にそれでいいの?」


さやか「えっと……」

まどか「ほむらちゃんとさやかちゃんが仲良くなったのは嬉しいけど、
     それって、なんかさやかちゃんらしくないよ」

さやか「んん、まあ、あたしもそう思うんだけどね。
     ……でも、あたしなりによく考えた結論だから」

まどか「それで、ほむらちゃんはなんって?」

さやか「断られたわ」

まどか(やっぱり)

さやか「でも、お見舞いには来てくれるって」

まどか「……」


さやか「来てくれるなら第一歩だよね」

まどか「諦めてないんだ」

さやか「当然」

まどか「やめようよ。さやかちゃん、きっと後悔するよ?」

さやか「判んないよ。後悔するかもしれない。
     でも、あたし恭介が会いたいって言ってるのを変に小細工して
     邪魔なんてしたくないんだ」

まどか「だからってほむらちゃんを説得してつき合ってもらおうだなんて、
     やりすぎだよ」

さやか「そうかな? こっちの方があたしらしいと思うんだけど」

まどか(さやかちゃん、きっとショックで暴走してる。早く止めないと……)

~回想終~


結局のところ。

さやか「今回は譲るわ」

杏子「当然だ」

さやか「」ムカッ

まどか「さやかちゃん」

さやか「判ってるわよ。ほむら!」

ほむら「な、なに?」ビクッ

さやか「終わったら連絡してよね」

ほむら「え、ええ。そうするわ」

さやか「遅くなってもよ」

ほむら「判ったわよ」

そして「提供する住居」へ向かう二人であった。

ここまでにしようと思ったが
もう少し行く


とあるマンションの廊下を歩きながら。

ほむら「無駄に疲れたわ」

杏子「おまえ、大変だな。あんなやつの相手してるなんて」

ほむら「そう思うのなら余計な挑発はしないで欲しかったわ」

杏子「あのさやかってやつがあたしに絡んで来たんだよ」

ほむら「私から見ればあなたもよ」

杏子「そうだったか?」

ほむら「もう、いいわ。ここよ」

(表札:『巴マミ』)

杏子「って、おい!」

ほむら「なにかしら?」

杏子「聞いてねえぞ! なんでマミの家なんだよ!?」

ほむら「あなたに提供する住居と食事よ」

といいつつ、ほむらは呼び鈴を押す。

杏子「冗談じゃねえ。帰る!」

ほむら「待ちなさい、ここまで来たのだから話くらい聞いて行きなさい」(上着の端を捕まえる

台詞にかぶるようにガチャリと扉のロックを開ける音。
ほむらの手を振り払おうとした杏子の動きが止まる。

マミ「なんなの? 玄関前で騒いだら近所迷惑……あら?」

杏子「……」(目が合う前にマミから顔をそむける

ほむら「巴マミ、取り合えず上がって良いかしら?」

マミ「もちろんよ」


ほむら「ほら、あなたも」

杏子「いや、あたしは帰る。この話は無かったことにしてくれ」

マミ「なんだか良く判らないけれど、杏子?」

杏子「今更あんたに名前で呼ばれるいわれはねえよ」(マミの方は見ていない

マミ「暁美さんの言うことは聞かなきゃ駄目よ?」(いつのまにか杏子のすぐ背後に居る

杏子「って、近けえ!?」ゾッ

杏子はマミの有無を言わさぬ雰囲気に気圧(けお)される。

杏子「お、おい、ほむら?」

ほむら「なによ?」


杏子「こいつ、どうしたんだよ?」

ほむら「どう、とは?」

マミ「こいつとは失礼ね」

杏子「前はこんなじゃなかったぞ?」

ほむら「こんな所じゃ落ち着いて話が出来ないわ。とにかく中に入りましょ」

マミ「そうよ。久しぶりなんだからゆっくりして行って」

杏子「お、おい。おまえら……」

杏子は両側から腕を捉えられて連行されるようにマミの部屋へ。

~~

マミ「今お茶を入れるわね」

ほむら「おかまいなく」

杏子「……」(テーブルに肘をついてムスッとしてる

ほむら「気に入らないようね」

杏子「当たりまえだ。何企んでやがる」

ほむら「他意はないわ。ワルプルギスの夜を倒すのを協力して欲しいだけ」

杏子「どうやって取り入ったか知らねえが、
    マミを使ったのは褒めてやるよ。あたしを押さえるにゃあ適任だ」

ほむら「そういうつもりは無かったのだけど?」

杏子「どうだか」

マミ「……仲良くしなきゃ駄目よ?」(また背後に居る

杏子「」ゾッ

マミ「お待たせしたわね」(ほむらの隣に座り、持って来たお茶とケーキを配りはじめる

杏子(こいつ、なんで近づく時気配を断つんだよ……)


全員にお茶が回って一息ついてから。

マミ「それで、どうして杏子を連れて来たのか聞いていいのかしら?」

杏子「はぁ? おい、ほむら!」

ほむら「なにかしら?」

杏子「話、通してなかったのかよ?」

ほむら「これからするわ」

杏子「これから? 思いつきで言ってやがったのか?」

ほむら「失礼ね。いくつかプランを考えてあったのよ」

マミ「……」(笑顔は絶やさず。しかし。

杏子「」ゾッ

ほむら「巴マミ、佐倉杏子に殺気を向けるのはやめて。
     今日はお願いがあって来たのよ」

マミ「あら。なあに?」


ほむら「彼女をしばらくここに泊めてあげて欲しいの」

マミ「ええと、唐突ね。
   杏子が乗り気じゃないように見えるのだけど、
   理由も教えてくれるのかしら?」

ほむら「あなたはもう知っているはずだけど、
     ワルプルギスの夜がもうすぐ来るわ」

マミ「ああ、そういうこと。戦力を集めているのね」

ほむら「そうよ」

杏子「……まだ、協力するとは言ってねえぞ」

マミ「……」ゴゴゴゴ…

杏子「それ、怖えから止めろ。
    いつから笑顔で殺気出すようになったんだよ?」

ほむら「それよ」

マミ「それ?」


ほむら「主義主張を変えろとまでは言わないわ。
     でも今から本番までの期間で、
     最低限共闘できるくらいの折り合いを付けて欲しいの」

マミ「それで、泊めて欲しいと」

ほむら「ええ。必要なら食費と家賃も払うわ。
     出来そうかしら?」

マミ「食費とかは別に良いけれど……」(杏子の方に視線

杏子「なんだよ」

マミ「……あとは杏子次第かな」

杏子「あたしは生き方を改めるつもりはねえぞ?」

マミ「だって、一般の人を犠牲にして生き延びようとするなんて……」(ジャキ!

杏子「!!」

ほむら「巴マミ!!」

マミ「……魔女と変わらないじゃない」


杏子(速えぇ……)

一つは杏子の頭に。もう一つは杏子の手元のソウルジェムに。

マミは指一本動かすことなく一瞬でマスケット銃を二丁召還してみせたのだ。

杏子の反応は完全に遅れてしまった。

ほむら「やめなさい! あなたたちが上手く行かないのなら、
     私は一人でもワルプルギスと戦う準備はあるのよ」

マミ「……冗談よ」(マスケット銃、消滅

マミ「暁美さんに嫌われるようなことはしないわ」

杏子(じょ、冗談じゃねえ……今本気だったろ?)

マミ「ねえ、杏子」

杏子「な、なんだよ?」

マミ「暁美さんに協力する気はあるのよね?」

杏子「報酬次第だよ。戦闘に見合った見返りがあるんなら文句はねえ」


ほむら「ここに住まわせてあげるのも報酬の一部なのよ」

杏子(マミがこんな調子じゃ見合わねえよ……)

マミ「判ったわ。つまり私は本番までに杏子を説得すれば良いのね?」

ほむら「『折り合いをつける』よ。強制は駄目。
     本番で全力で戦えなければ意味がないの」

マミ「そ、そうね。判ったわ」

ほむら「それじゃ、私はこのあと用事があるからもう行くけれど」(立ち上がる

杏子「お、おい……」(玄関へ向かうほむらを追いかける

ほむら「大丈夫よ。
     あなたのことが『魔女と変わらない』と巴マミに
     確信させるようなことをあなたがしない限り」

杏子「それってどういう意味だよ?」

ほむら「近いうちに説明するわ。早く知りたいのなら巴マミに聞くことね」


マミ「また、来てくれる?」(見送りに来た

ほむら「もちろんよ。美樹さやかの件もあるし」

マミ「そうだったわね。待ってるわ」

ほむら「ああ、あと。判っていると思うけれど、
     次に来た時、佐倉杏子が死体になっていたなんてことがあったら、
     私は貴方を諦めなければならないから」

杏子「って、おい!?」

マミ「心しておくわ」

ほむら「そうして」

杏子「怖えこと普通に会話してるんじゃねえ!
    どういうことだよ?」

ほむら「騒がないの。見苦しいわよ」

杏子「てめえ……」

※「また来てくれる?」の台詞。
マミは一緒にお茶したいのに共闘を約束してから外で待ち合わせばかりで
ほむらが滅多に家に来なかった、という背景がある。

ということで以上。ではまた


――マミのときもそうだった。

誰にも頼らないと決めてからなるべく他人との接触は避けて来たのに
あんな行動をとってしまったのはこの時間に連れて来たまどかに当てられたのだろう――。


さやか「話は聞いたわ!」

ほむら「美樹さやか……」

玄関を開けたら美樹さやかが居た。

まどか「えっと……」

まどか。「来ちゃった」

まどか達も一緒だった。

さやか「それで、あたしの件って?」

どうやら盗み聞きしていたようだ。

さやか「ぶっちゃけ、あたしに話があるとかなんでしょ?」


ほむら「どうしてそう思うの?」

さやか「あたしについて、ほむらとマミさんの共通な話題ってさ、
     今はあたしが魔法少女にならないってこと位でしょ?
     だとすると……」

ほむら「ああ、もう良いわ。その通りよ。あなたに話があるの」

さやか「って、最後まで聞きなさいよ」

ほむら「それより上条君の件は良いの?」

さやか「え? いや、今日はなんかほむらの方が心配になったから」

まどか。「杏子ちゃんが結構強い魔法少女だって話したら、さやかちゃんが追いかけようって」

ほむら(……私の心配というより佐倉杏子に興味が湧いたと考えるべきかしら?)


マミ「杏子もケーキのおかわり要るわよね」(嬉しそう

杏子「当然だ」(この際もらえるもんは全部もらっとく的な

結局、三人増えてまたお茶会になった。

ほむら(さっき三人分出したのに、また当然のようにケーキが六人分出て来たことには
     突っ込むべきなのかしら?)

さやか「ごちになります!」

まどか。「……」

まどか「」(何やら遠慮がち

マミ「遠慮しなくていいのよ」

まどか「」(不安そうにキョロキョロ

マミ「QBならいないわよ」

まどか「え? いえ、その……」

ほむら「そういえば、このところ見かけてないわね」


マミ「QBとは……もう決別したわ」

杏子「決別? 何があったんだ?
    おまえがあいつと決別だなんてただ事じゃねえだろ?」

マミ「ええ、そうね」

杏子「QBが信用ならねえって魔法少女はあたしも含めて結構居るってのに、
    そんな中であんたはいつでもあいつの肩を持ってたよな?」

マミ「それに関わる話なのよ。杏子にも美樹さんにも聞いて欲しいのだけど……」

さやか「あたしも?」

ほむら「そうよ。どうやら今までまどかからは聞かなかったようね」

さやか「え? まどか?」(まどかの方を見る

まどか「う、うん。ほむらちゃんから話しちゃいけないって言われてたから」

ほむら「ええ、それで良いのよ。守ってくれてありがとう」


さやか「ちょっとまって。ってことはその『話』ってまどかはもう知ってるの?」

まどか「う、うん。ごめんね」

さやか「い、いつから?」

まどか「えっと、ほむらちゃんが転校してくるちょっと前からだよ」

さやか「……って、じゃあ、最初にほむらに会ってすぐってこと?」(ガーン

さやか「そ、そういや、まどかってほむらが転校して来たときもう知り合いだったわね……」(ブツブツと独り言

ほむら「そろそろ良いかしら?」

杏子「なんでもいいから早くしろよ」(モグモグ

ほむら「そうね、それじゃ……」


マミ「その前に美樹さん、あなたはもう魔法少女になるつもりは無いのよね?」

さやか「あ、はい。すみません」

マミ「謝ることは無いわ。今日の話はその魔法少女についてなのよ」

さやか「ええと、その関係だとは思ってましたけど」

マミ「もうなる気はないのにどうして、って思うかもしれないけれど、
   中途半端に知ってしまったことであなたがいつか破滅の道に
   進んでしまうのを防ぐ為にどうしても知っておいて欲しいことなの」

さやか「破滅の道? 魔法少女にはまだあたしの知らない秘密が!?」ソンナオオキナハナシダッタノカ!?

ほむら「そんなに複雑な話じゃないわ。話は二つよ」

この間、杏子は……。

杏子(マミが『こう』なった理由ねぇ……まあ黙って聞いてみますか)

しばらく離れます
今夜中に戻ってこなくても怒らないで


ほむら「まず一つ。ソウルジェムは魔法少女の魂よ」

さやか「はい?」

ほむら「言葉の通りよ。契約の時、契約する人の身体から魂が抜き出されて
     ソウルジェムに変えられるの」

杏子「ちょっとまて。そんなこと聞いたことねぇぞ」

ほむら「本当のことよ。魔法少女の身体は抜け殻。外付けのハードウェアなのよ。
     だからどんなに怪我をしても、たとえ心臓を貫かれても、
     魔法で修復さえ出来ればまた動き出す」

ほむら「なんなら今、試してみる?」

杏子「……」(心臓を貫くとかソウルジェムを砕くとか想像して警戒

ほむら「簡単よ。ソウルジェムを身体から百メートルも離してみれば良い。
     身体は死体のように、いえ実質死体なのだけど、動かなくなってしまうわ」

杏子「それが本当なら、なんであいつは一言も言わないんだよ?」


ほむら「『聞かれなかったから』。前に聞いたときは、そう言ってたわ。
     あいつは嘘はつかない。
     でも契約の妨げになることは言わないのよ」

杏子「おい。マミ。こいつの言ってることは本当か?」

マミ「ええ本当よ。
   私もソウルジェムを砕かれて死んだ魔法少女を何回か見たことがあるわ。
   もっともその時はこの話を知らなかったから『魂を砕かれて死んだ』なんて
   思わなかったのだけど」

杏子「じゃあ、あたしらゾンビにされたようなもんじゃねえかよ!」

マミ「なかなか適切な比喩ね」

杏子「あんにゃろう、胡散臭いやつだとは思ってたが、
    そんな重要なこと隠してやがったのか?」

ほむら「でも、私たちはそれと契約したわ」

杏子「ああ、わかってる。あんときはそれでも選択肢は無かったさ」

ほむら「大丈夫なのね?」

杏子「なんだ? これくらいであたしがショックを受けるとでも思ってんのか?」

ほむら「ええ、でも安心したわ」

杏子「あたしを舐めんなよ」


さやか「あの」

ほむら「なあに?」

さやか「この話、あたしにも聞かせてくれるのって、
     あたしが契約しないようにだよね?」

ほむら「願いと引き換えに失うものを正確に知らないうちに、よ」

さやか「うん……ありがとね」

ほむら「しおらしいわね。あなたらしくないわよ」

さやか「いや、確かにこの先どうしても叶えたい願いが出てこないとは限らないよね。
     そんな先のことまで心配してくれるなんて思ってなかったからさ」

ほむら「あなたに関しては巴マミの提案よ」

さやか「え? マミさん?」

マミ「ええ。今はあなたには契約して欲しくないと思ってるわ。
   でも、その前に勧誘してしまったから……」


ほむら「とりあえず、一つ目は良さそうね」

杏子「おう。次は何だ?」

ほむら「もう一つは魔法少女の運命よ。
     ソウルジェムを浄化せずにそれが濁りきってしまった時
     魔法少女がどうなるか」

杏子「わざわざ別に話すってことはただ死んじまうんじゃねえよな?」

ほむら「鋭いわね。その通りよ。
     濁りきったソウルジェムはグリフシードに変化する。
     その時魔法少女は魔女に生まれ変わるのよ」

杏子「はぁ? 魔女って言ったか?」

ほむら「ええ。魔女よ。魔法少女は魔女になる」

杏子「……へ、変な冗談はよせよ」

ほむら「冗談じゃないわ」

杏子「おい?」(マミの方を見る

マミ「……」(黙って頷く


杏子「マジかよ……あたしも魔女に?」

ほむら「信じられないならQBに聞いてみると良いわ」

杏子「なんだよ……じゃあ、何か? あたしは今まで……」ガタガタ

ほむら「! 佐倉杏子!?」

マミ「……」(無表情、動かない

さやか「ねえほむら! この子どうしたの! 急に顔が真っ青になって……」

ほむら「佐倉杏子、ソウルジェムを見せなさい!」

杏子「ああ? 別に良いけどなんだよ?」

指輪化の魔法が解けて黒々と濁ったソウルジェムが姿を現す。

ほむら「もうこんなに!?」(慌ててグリフシードを出すが

マミ「暁美さん、知ってるでしょ?
   本人が絶望してしまったらグリフシードでは浄化しきれないわ」(マスケット銃召還

ほむら「まだよ! あなたは手を出さないで!」


マミ「ええ。ぎりぎりまで私は動かないわ。
   それまであなた達に任せるから」(銃は狙いを定めずマミの近くで浮遊してる

さやか「ぜ、絶望して濁る? ……魔女に!?」

ほむら「でも、どうして……」

さやか「き、杏子!」

杏子「……なんだよお前、手なんか握って」

さやか「だってあんた震えてるじゃない」

杏子「馬鹿いうな。あたしがなんで……」

さやか「ずっとだよ。ソウルジェムが魂だって話のときからずっと震えてたじゃない!
     なに強がってるのよ!」

ほむら「美樹さやか、あなた……」

杏子「強がって? ああ、そうだな、あたしは意地張ってただけだ。
    なって当然だよ。親父も言ってたしな……」ズズズズ…


さやか「どうしてよ? ねえ、ほむら! なんとか出来ないの?」

ほむら(何か手だては……
     佐倉杏子は安定しているパターンの方が多い。
     だから何か強い刺激を加えればあるいは……)

杏子「あたしはやっぱりあの時……」

ほむら(まずいわ! こうなったら一か八か!)

ほむら「杏子!」(両手で頭を…

杏子「ん!?」




 ズキュゥゥゥン!




さやか「は?」

マミ「……え!?」


さやか「ほむら……あんた……」

ほむら「ん……」(しっかりホールド

杏子「んーっ! んーんーっ!」ジタバタ

さやか「……なんてことを///」

マミ「あ、あ、あ、暁美さんっ!?///」フルフル

ほむら「……」

杏子「ーーー///」ブルブル

ほむら「……ふぅ」

杏子「……ぷはっ! て、てめっ! 何しやがるっ!///」

ほむら「……よかった。落ち着いたわ」ホッ(ソウルジェムを確認してる

ほむらの顔は上気しててなにやら色っぽい。

杏子・マミ・さや「よくねえよ(ないわ)!!」


ほむら「……迂闊だったわ。
     『守りたい相手』を見つける前のあなたがこんなに脆かったなんて」

杏子「わけ判んねえよ! あたしのくち、くち、くち……////」

さやか「ほ、ほむらってそっち系?
     いや、まどかにあれだけ拘ってるんだからありえるのか」

マミ「そうなの? じゃあ、あの晩はやっぱりそういうことだったのね?///」クネクネ

さやか「ええ? あの晩って? ほむら、マミさんに手だしてたの!?」ガーン

ほむら「ちょっとみんな何を言ってるの?
     杏子ならショックを与えれば戻れるって思っただけよ。
     でもとっさに強いショックを与える方法が
     あれしか思いつかなかったから……」

さやか「へぇ? でも殴るとかでも良かったんじゃないの?」

ほむら「それはそうだけど……仲間になるのだから傷つけるよりは……」

さやら「それで、ほむらの場合キスなんだ? 女の子に?」

ほむら「どうしてそこを強調するのよっ」

マミ「あ、暁美さん? なかなか男前だったわよ? でも、ちょっと妬けちゃうわ」ゴゴゴゴ

〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡/ミ;j〃゙〉 }| } ハ ヽ、}  ,. ‐'''""~´ ̄ ̄\  ,. -‐'''''"⌒>\丶\ヽヽ ',!|/〃/ //,. ゙ : ' .: ゙
ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 '>了|   ∠ノ乂 {ヽ ヾ丶ヽ/             }(.___,,,.... ⌒丶\丶ヽ`、', 《〈 〃ノ/. ' . '_;.,;._ ;.' ,
ノ _ノノノイシノ| U 〈八ミ、、;.)_\ { j∠=, }、 l \ヽヽ ', ,,. . -一ァ',二二二{|i i|    }! }} /.__\ヽヾ:ヾ_ヾミ[]―‐[〕-''''"~´ 彡 . ゙
ノ‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)=一`'´__,.イ<::ヽリ j `、 ) f==<r'二二二{|l、{   j} /,,ィ/⌒\ ミ|{「己川ロ后叨:.: し___! 彡 ;' . ゙
U ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~__,. イ |{.  |::::ヽ( { 〈 (   弋ッ-ミ"テ~ナ/i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ. ヾレュ三<´{(厶ニニ-‐、>ヽ ; : . ,゙i
    `二´/' ; |丶ニ  ノノ ̄ u  小, |:::::::|:::l\i ', li{ u',..`二/ =|/' |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ | ,{ {(j  } }==Y∠r:ュ.ヾ,  く;/^ヽ!
ヾ、     丶 ; | ゙U イ:}. u   `ヾ:フ |::::::::|:::|  } } |ヽ    {   =|/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人{ ト >-<ン ,'  ~厂 ̄´`ヽ  ,ィ个 }
. ` U    ,.__(__,}   /ノ.     ∠ニニ} |:::::::::|/ / / / u   u  丶,-‐ ,>. ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽト{〔!厂〈ー‐、 '":::...  u  }  )丿,ハ
 U    ,.,,.`三'゙、,_  /l、.u'  {⌒ヽr{ |:::::::::|,///  u' 、____`7" ゙/ )ヽ iLレ  u' | | ヾlト. )|丨 `-'"       / (__/,/
    /゙,:-…-…、 ) ト、丶、. u ヾ二ソ |:::::::/∠-''´ l>、   ヽ`,二/|/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V::!|  「r三三ヽ J   l  /⌒l !
.\   `' '≡≡' " ノ\\丶、 `''''''′!:::::::レ〈 ´"''ー-L__\  ∠三ノ// 二二二7'T'' /u' __ /:::! |    } ,. ―-| u   ,/ 、_,ノj
 ヽ\    彡  ,イ   〉:: ̄::`'ァ--‐''゙:::::::/::::ヽ      ``ヾニ='゙./'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ /::::::!.ハ  ノノ二ニ二!     ノ `7〈


杏子「おいっ! 被害者のあたしを差し置いてなに盛り上がってんだよ!」

ほむら「……ねえ、もう大丈夫?」(顔を近づける

杏子「な、なんだよ?///」

さやか「お? 赤くなった」

杏子「うるせえ! あんなことされりゃ赤くもなるわ!」

ほむら「ソウルジェムの輝きを見る限りじゃ大丈夫そうだけど、
     同じ思考に嵌ればまた濁ってしまうわ」

杏子「……おまえ、ブレねえな」(ようやく冷静さが戻ってきた

ほむら「当たり前じゃない。本当に危なかったのよ?」

杏子「あ、ああ、もう大丈夫さ。自分で判る。
    だから、そんな心配そうな顔すんなよ」

ほむら「……」

杏子「まったく、あんたの方がずっと危なっかしいってのに助けられるなんてな……///」(目を逸らし、頭をカキつつ

ほむら「え?」


杏子「今日最初に会った時からそうだったよ。
    あんたの目は何かどうしようもないものを抱え込んで無茶してるヤツの目だ」

ほむら「そんなことは……」

マミ「無くないわよね?」

ほむら「……」

杏子「マミは知ってるのか。なるほどね。
    まあ、こんなヤツに捨て身で守られたとあっちゃ、
    魔女になんかなってられねえよな?」

マミ「うふふ……」

杏子「マミ、お前もそうなのか?」

マミ「内緒よ」フフッ

杏子「ふうん(表情が昔に戻った?)」

さやか「捨て身というかほむらの役得って気もするけど」ボソッ

杏子「茶化すなよ」ジロ

さやか「……ご、ごめん」


杏子「手伝ってやるよ。ワルプルギス退治」

ほむら「え……」

杏子「報酬もらう前にあんたにでっけえ借りが出来ちまったからな」

ほむら「借りだなんて……」

杏子「いいや、あんたはあたしを引き上げてくれたんだ。
    少々強引だったけどな」ニカッ(頬を赤くして『とても良い笑顔』

ほむら「そ、そうなの? (か、可愛い?)」

杏子「そうさ。だから恩を返させてくれよ」

ほむら「わ、判ったわ。
     とにかく手伝ってくれるのはありがたいわ」

杏子「よろしくな!」(右手をさし出す

ほむら「ええ。こちらこそ」(握手






















まどか。「ほむらちゃん?」ゴゴゴゴ

ほむら「あ……」

どうしてこうなった
杏子が真実を知ってマミの精神状態を心配し、杏子「依存先がほむらじゃマミは駄目になる!」とか
色々ごにょごにょな展開を考えていたのに、ほむらのズキュゥゥゥンに全部持って行かれましたw

書きため尽きたのでここまで




どーしてこうなった


名前を呼ばれただけなのに何か責められているような気がした。

まどかは怒っているのだろうか?

咄嗟の事とはいえ、結果オーライであったとはいえ、
今のは確かに軽率だったかもしれない。

いや、まどかがどう思っていようとも、
『後ろめたい意識』があるから『責められている』と感じるのだ。

そして、なぜ咄嗟の行動が『あれ』だったのか、
どのまどかにも言いたくない理由に心当たりが無い事も無かったのだが、
次にまどかが口にした言葉はこうだった。


まどか。「ごめん!」

ほむら「え?」


まどか。「夕ご飯の用意まだなの」

ほむら「ああ……、そういえば買い物の途中だったのね」

まどか。「うん。色々あったから……それでね」

まどか。の視線がまどかに向く。

まどか「まどかさん?」

ほむら「良いわよ。一旦帰りましょ」

まどか。「え? でも……」

今日もまどかにずっと張り付いてQBを警戒してもらう手はずだったが。

ほむら「まどか、判ってるわよね?」(視線

まどか「え?」

ほむら「契約、しちゃだめよ?」

まどか「あ、うん。大丈夫だよ」

ほむら「ならいいわ」

これから家に帰って夕食後一人になるまでの時間くらいは大丈夫であろう、
というほむらの評価は、他人が聞けば厳しすぎるといわれるかもしれないが、
これでも大幅に譲歩した結果だった。


『話は終わった』ということで、
帰宅組が玄関に向かいだしたところ、マミがとんで来た。

マミ「ちょっと待って。このまま帰ってしまう気なの?」

ほむら「ええと……改めて言うけど、佐倉杏子のことはお願いするわね」

マミ「……もしかして、素で言ってる?」

ほむら「何の事かしら?」

ここでマミは何故か言いにくそうに、目を逸らした。

マミ「……折り合いをつけて、って言ったわよね?」

ほむら「言ったわ」

マミ「それで、目の前であんな事されて私がどう感じたか……判る?」

ほむら「……」

マミ「もちろん、暁美さんが私に何を期待しているのか判ってるつもりよ。
   でもね、なんていうか……」

出来れば判りたくなかったのだが、
言わんとしていることは何となく判ってしまった。


何が幸いするか判らないというか、
とりあえず、ついさっきまで見え隠れしていた巴マミの
『死ぬ』か『殺す』かといったような雰囲気が大幅に減ったように見える。

その分、ほむらにはさらに『重く』なった気もするが。

ほむら「少し、時間をもらえるかしら?」

マミ「それって……、」

ほむら「お願いよ」

実をいうと、気まずいやら軽く自己嫌悪やらで落ち着く時間が欲しかったのだった。

マミ「……判ったわ。期待……ううん。今は言わない。
   『判らない』と切り捨てられなかっただけ良かったと思うことにするわ」


頬を赤く染め、顔をそらしつつもちらちらと視線を向けながらもじもじとされては、
流石のほむらも判るというもの。

労いでも謝罪でも何かマミへの言葉をかけていれば『こう』はならなかったのかもしれない。
だか今のほむらにそんな精神的余裕は無かった。
前回はそんな余裕な無さが最悪の結果を招いてしまったのだが今回は違う。

色々重いし、『こんなの巴先輩じゃない』感がありまくりではあるが、
彼女が壊れ、魔法少女となったさやかに誤解され刃を向けられた
あのどうしようもない状況よりは、こっちの方がはるかにマシなのだ。


――とはいえ、

ほむら(全員生存、全員に魔女化の真実まで伝える事が出来たという
     今までにない快挙をなし遂げたというのに、
     全然達成感が無いのは何故なのかしら?)

ここまで。生存報告的に
あ、仮定法入ったけど避難勧告は出てません(参照前スレ112

>>144>>169の間にほむらがまどか達の様子を気にしつつ、
QBの目的についての補足説明をしてたってことで、その様子から


さやか「ねえ、QBはなんで契約するの? 魔女になること隠して人を魔法少女にしておいて、
     それが魔女になったら、今度は新しい魔法少女に倒させるってわけ判んないわ。
     QBってあたしらに恨みでもあるわけ?」

ほむら「それはないわ。あれには感情が無いもの……」

(ここでエントロピーがなんやかやと説明)

ほむら「……という仕組みだそうよ」

さやか「つまり願いと引き換えに、同士討ちみたいなことをずっとさせられたあげく、
     最期は見ず知らずの宇宙人の為に命を捧げろってこと?」

ほむら「そうよ(身も蓋もない要約をしてくれたけどその通りだわ)」

さやか「……許せない。なにが願いを叶えてあげるよ。
     あいつ、そんな酷いこと一言も説明して無いじゃない」

ほむら「価値観とか考え方が根底から違うのよ。
     あいつらは『酷い』なんて微塵も思ってないわ」

さやか「QB、マミさんと仲良さそうに見えたのに」


ほむら「会話が出来るからって気を許してはだめよ」

さやか「……ほむらが言ってた意味、判ったよ」

杏子「……」

ほむら「どうしたの佐倉杏子。さっきから大人しいわね。
     あなたのことだからQBへ暴言の一つでも出てくるかと思ったのだけど」

杏子「いや、こいつと一緒に怒ってたら馬鹿みたいだろ?」

さやか「誰が馬鹿よ。というか、ええと、当事者として悔しいとか許せないとか無いの?」

杏子「別に。もともとあいつは気に入らなかったし。むしろ愉快だね。
    つまり長く生き残ってやればあいつへの嫌がらせになるんだろ?」

そして、話が途切れ、部屋が静かになったところで。

まどか。「……ねえ、ほむらちゃん?」

(ここから>>169に続く)

~~

と、いうわけで、
帰りの道中。途中まで一緒である。

さやか「……」(視線

ほむら「なにかしら?」

さやか「いや、あんたに恭介を任せて良いのかな、とかちょっとね」

ほむら「任せられる気は無いのだけど」

さやか「ま、頑張って更正させるしか無いか……」

ほむら「何を更正する気なのか知らないけれど、相変わらず私の話を聞かないのね」

さやか「あたしは恭介を応援してるの」

まどか「さやかちゃん、無理しちゃだめだよ?
     ほむらちゃんごめんね。さやかちゃんが無理言っちゃって」

あ、>>212 から>>174 の続きです


さやか「まどかは誰の味方なのよ?」

まどか「さやかちゃんのだよ」

さやか「だったらほむらの説得協力してよ」

まどか「わたしはさやかちゃんの為に言ってるんだよ?」

さやか「まどかって結構頑固だよね」

まどか「違うよ。さやかちゃんが心配なの」

ほむら(その辺は契約さえしなければ、どうでも良いわ)


さやか「……じゃ、明日は頼むからね」

ほむら「お見舞いでしょ? 判ってるわ。それよりまどかの見送りお願いね」

さやか「言われなくても判ってるって」


ほむらの家。

帰ってすぐ「休ませて」と言ってほむらがベッドに倒れこんでしまったので、
まどかは「寝てていいよ」と言って夕食の準備にとりかかった。

そしてしばらく後。

まどか。「あれ? これって」

ほむらはもう起きていて、
テーブルの上に見覚えのある黒いモノがいくつか置いてあった。

ほむら「触らないで。それはグリフシードよ」

まどか。「うん。判ってるけど、これってなんか危なそう」

ほむら「判るのね? それはもう汚れを吸えないのよ」

まどか。「……使い終わったのってQBにあげるんだよね?」

ほむら「そうなのだけど……」


まどか。「……ほむらちゃんはQBに会いたくないよね」

ほむら「呼べば来ると思うけれど、今はちょっと見たくないわね」

といいつつ、ほむらは使用済みグリフシードを注意深く片付け始めた。

まどか。「ねえ、それ、わたしがQBに渡しておこうか?」

ほむら「あなたが? 危険だわ。何かの拍子に魔女が孵化したら」

まどか。「大丈夫だよ。一応わたしも魔法を使えるんだし、
      それに、それを言ったらわたしもこのマミさんのためのグリフシード持ってるんだよ?」

もちろん、ほむらから渡されたものだ。

ほむら「そうだったわね。でも、もしもの時は倒そうなんて思わないでまず逃げなさいね」

まどか。「じゃあ任せてくれるんだね?」

ほむら「ええ、この際だからお願いしようかしら?」


まどか。「まどかちゃんのとこへ行く途中で呼び出して渡しちゃうね」

ほむら「あいつが余計な話をしてきても聞いてはだめよ」

まどか。「判ってるよ」

ほむら「本当は今日みたいに行けるときは
     まどかの監視にも一緒に行きたいところなのだけど、
     ワルプルギスの夜に向けて色々準備しないといけないから」

まどか。「いいよ。任せて。わたしはほむらちゃんを手伝うために付いて来たんだから」

ほむら「ええ、本当に助かってるわ」


さて、時の流れというものは意外と早い。
うかうかしていればあっという間にワルプルギスの夜が来てしまう。

前回は散々な経緯でワルプルギスには半ば投げやりに臨んだようなところもあったが、
今回は、強力な魔法少女が二人一緒に戦ってくれることになった。
まだ問題がなきにしもあらずだが、このチャンスを無駄にしないためにも
武器の調達は出来る限り万全にして臨みたいところ。

そんなわけで、ほむらには、
武器の入手から、マニュアルの熟読、実地の見聞、作戦の立案など、やることが非常に多かった。

まどかを送り出した後、
ほむらは武器の調達などワルプルギスの夜に向けての準備で駆け回り、
帰って来たのは深夜であった。


翌日の朝。
まどかは『朝食ぐらいは一緒に食べたい』と言っていたのだが、
まだ帰って来こないということは
おそらくまた一緒に眠りこけて起きられなかったのであろう。

一応、朝食前に帰ってきても良いし、通学途中にバトンタッチでも構わないとは言ってある。

そんなわけで、まどかを待たずに家を出て学校へ向かったほむらだったが、

「ほむらちゃん!」

ほむら「まどか? どうしたの? そんなに急いで……」

まどか?「まどかちゃんが!」

ほむら「ってあなた、入れ替わってるの? まどかがなに?」

まどか。「ソウルジェム持ってどこか行っちゃった!」

ほむら「ええ!?」

続く!

どっちなんだ
http://bit.ly/M2T2Sf


まどか。「ソウルジェム持ってどこか行っちゃった!」

ほむら「ええ!?」


急いで結ったのか、まどかのツインテールは少し乱れて不揃いだった。

まどか。「わたしの、マミさんのソウルジェムを持って行っちゃってっ!」

ほむら「どういうこと!?」

まどか。「わたしのせいなの。わたしが教えちゃって、
      それで昨日QBに言われたことも教えちゃって」

ほむら「ちょっ……」

まどか。「そ、それできっと私の代わりにっ!」

ほむら「落ち着きなさい! お願い落ち着いて!」ガッ(肩を

まどか。「あ」

ほむら「順を追って何があったのか教えて」

まどか。「……う、うん」

まどかの回想的に
――――
――

小さな公園でまどかはQBを呼び出した。
そして、グリフシードを渡した後、QBからこう話を振ってきた。

QB「たった三人でワルプルギスの夜に挑むなんて無謀としか言いようがないよ」

まどか。「ほむらちゃんは勝つもん」

QB「確かにマミや杏子は魔法少女の中でも強い部類だし、
   彼女らが共闘すれば勝てない魔女なんてほとんど居ないだろうけどね」

まどか。「だったら倒せるよね?」

QB「いいや。ワルプルギスの夜だけは例外さ。
  『倒せるか?』でなく『勝てるか?』と聞かれたら『不可能だ』と答えていただろう」

まどか。「判りにくいよ。どう違うの?」

QB「つまり、可能性を言うなら万全の準備を整えて本番でも全力を出し切ったとして
  相当に甘く見積もってもぎりぎり相打ちが精々だろうってことさ。
  倒せても刺し違えたんじゃあ『勝った』とは言い難いよね?」

まどか「そんな……」


QB「それでもマミと杏子の力は相当に評価しているんだよ。
   限りなく低いとはいえワルプルギスの夜と戦って勝てる見込みが見いだせた魔法少女なんて
   本当に希有だからね」

QB「本来あの魔女は普通の魔女を倒せる程度の戦力では歯が立たないんだよ。
   君のようなそれを上回る例外でもない限りね」

まどか。「わたし?……わたしなら一人でも勝てるの?」

QB「君が契約して君の本来の力を発揮すれば、だね」

まどか。「……QBって嘘はつかないんだよね」

QB「嘘という概念は理解しているよ。
   でも、どうして人類はそんな非合理的でデメリットしか生まない言葉の使い方を
   するのかは未だに理解できないね。
   今言ったのは本当のことさ」

まどか。「そっか。でもわたしが契約して魔法少女になったら、
      最後はもっとひどい魔女になっちゃうんでしょ?」

QB「もちろんだ。強力な魔法少女は当然強力な魔女になる」

まどか。「それじゃ契約できないよ」

QB「今、君と契約しようとは思ってないよ」

矛盾があったので訂正:

QB「それでもマミと杏子の力は相当に評価しているんだよ。
   限りなく低いとはいえワルプルギスの夜を倒せる見込みが見いだせた魔法少女なんて
   本当に希有だからね」


まどか「まどかちゃんを狙ってるから?」

QB「その通りさ。まあ先手を打たれてしまって
   やりにくいんだけどね。それでもまだ彼女の方が可能性はある」

まどか「まどかちゃんも契約なんてさせないよ」

QB「でも、君かもう一人の鹿目まどかが契約する以外に、
   ワルプルギスの夜に『勝てる』可能性はないと思うよ」

まどか。「ええと、わたしとまどかちゃん以外だったら何人なら勝てるの?」

QB「今から集める気かい?」

まどか。「質問に答えてよ」

QB「うーん、一概にはいえないよ。
   個々の魔法少女で特性は違うからね。
   『何人以上なら確実』なんて具体的な数字は出せないよ」

まどか「特性? どんな魔法ならいいの?」

QB「ワルプルギスの夜を倒すのにかい?
   現状倒されていないわけだから確実なことは言えないよ。
   でも一般論をいうならマミみたいに遠隔で強力な一撃が出せるなら有効かもしれないね」


まどか。「そっか……3人じゃだめって言ったよね?
      強い魔法少女をもっと沢山集めれば良いんだよね?」

QB「ワルプルギスの夜攻略に向いた魔法少女を集めるってことかい?
   現状じゃ選り好みして十分な人数を集めるなんて難しいだろうね」

まどか。「どうして?」

QB「そんな都合良く一撃の強力な魔法少女ばかりは居ないってことさ」

まどか。「そうなんだ……そういえばQBってどんな魔法少女が何処にいるかって判るんだよね」

QB「当然だよ。僕が契約するんだからね」

まどか。「だったらさ」

QB「おっと、僕が君に協力すると思うかい?」

まどか。「でもこの見滝原の人が沢山死んじゃったらQBは困らないの?」

QB「確かに、ここは比較的大きな都市で人が多く、
   適度に希望も絶望もあるから魔法少女候補者を見つけるには最適だ。
   意味も無く失うのは避けたいと思うよ」

まどか。「だったら協力してよ」


QB「でも、まどかと契約できればそんなことは関係なくなる程のエネルギーが得られるんだ。
   街に危機が訪れるんならむしろ契約を奨める絶好のチャンスだからね」

まどか。「だから契約しないって言ってるのに。
      QBが協力しなかったせいでわたしもまどかちゃんも死んじゃったらどうするの?」

QB「魔法少女を生み出すのに最適な土地を失った上に、
   とてつもない才能までも失ったとしたらそれは大変な損失だね」

まどか。「それだけ?」

QB「僕はエネルギー回収の見込みを計算して最適な行動を取るだけだよ」

まどか「……わかった。もういいよ」

QB「どうするつもりか知らないけど選択肢はそんなに多くないよ。
   もし契約が必要になったらいつでも呼んでくれ。
   僕の方はいつでも準備できてるからね」

まどか「いらないよ。もう行くけど、付いてこないでね」

QB「今キミについて行っても契約に繋がりそうもないことくらい判ってるさ。
   今日の所は大人しく消えることにするよ」

~~

ちょっと経過をすっ飛ばして、まどかの部屋。

詢子「……」ジリジリ

まどか。「……」ジリジリ

まどか。と詢子は対峙していた。

まどか。「……お、お仕事はどうしたのかな?」

詢子「しばらくは定時で帰れとさ。主にあんたのせいだね」

まどか。「ゆ、ゆっくり出来て良かったじゃない」

詢子「ふん。大きな世話さ」

睨み合ったまま会話してる。

詢子「どうして来たんだ? 『終わったから来た』って雰囲気じゃないな」

まどか。「全然終わってないよ」

詢子「じゃあなにか? うちの『まどか』を巻き込みに来たってのか?
    いや、巻き込まれた結果があんたなのか」

まどか。(さすがママ、鋭い……)

――
――――

ほむら「ちょっと待って。まどかのお母様との話は必要なの?」

まどか。「え? でも最初から順を追ってって……」

ほむら「……そうね……じゃあ続けて」

まどか。「うん。それでね……」

――――
――

まどか。「……わたしの仕事はまどかちゃんを巻き込まないようにすることだよ」

詢子「つまり、まどかを守ってくれるのか?」

まどか。「……そうだよ」

詢子「ふうん……」ジッ

詢子は値踏みするように睨みつけていたが、

詢子「……ならいい。この前あたしが言ったこと、覚えてるな?」スッ

なにやら口調が柔らかくなり緊張が解けた。

まどか。「……ええと、『養子』に、とか?」

詢子「そうだ」

まどか。「そ、それは……」

詢子「まあ、今すぐなんて言わないさ。考えとけよ」

そう言い放って詢子は部屋を出て行ってしまった。

まどか。「……」


まどか「ええと、ごめんね?」

まどか。「やっぱりまどかちゃんが話しちゃったんだ?」

まどか「う、うん……どこに居るのかって聞かれて、
     『言えない』って答えたんだけど……」

まどか。「そこは『知らない』でしょ?」

まどか「うん、言ってから思ったよ」

まどか。「それで、言わされちゃったんだ?」

まどか「うん……『今日ここに来る』って」

まどか。「そっか。痛くなかった?」

まどか「痛かったよ」

まどか。「頑張ったんだね」ヨシヨシ

まどか「うん……」グスッ

まどか。「でもなんか、わたしがここに居ること許してくれたのかな?」

まどか「ママ、困ってるみたいだったよ?」

まどか。「そっか。でもどうしようもないもんね……」


まどか。「ねえ、まどかちゃん。お願いがあるんだけど」

まどか「なあに?」

まどか。「あ、その前に、まだQBが怖い?」

まどか「え? うん……怖いけど、でもあんまり怖がっちゃいけないかなって」

まどか。「それは怖がってても良いよ。
      でもね、QBに何を言われても絶対契約しないでいて欲しいの」

まどか「それがお願いなの?
     ここまでしてもらってるのに、またそんなこと言われちゃうなんて、
     わたしってそんなに信頼されてないのかなって思っちゃうよ」

まどか。「そういうわけじゃないよ。
      ただ、これからちょっとまどかちゃんに付いていられなくなると思うから」

まどか「付いていられなく? ほむらちゃんのお手伝い?」

まどか。「うん、そんなとこ。だからそうなったら一人で頑張って欲しいの」

まどか「……わかったよ」


まどか「……今日は?」

まどか。「まだ。作戦を考えなくちゃ」

まどか「作戦? なに?」

まどか。「んー、えっとね……」

(説明、略)

まどか「……その凄い魔女が来るから魔法少女を集めなくちゃいけないの?」

まどか。「うん」

まどか「それで、ほむらちゃんに内緒でQBに協力してもらおうとして?」

まどか。「ほむらちゃんは絶対反対するから。でも断られちゃった。
      わたしは契約できそうも無いからって」

まどか「契約……わたしの方が契約できそうって言ってたんだよね?」

まどか。「ん? そうだよ。だから気をつけてね」

まどか「そっか……」


まどか「……今日は出かけないんだよね」

まどか。「うん。今日は考える日」

まどか「聞いていいかな?」

まどか。「なあに?」

まどか「その、まどかさんの魔法」

まどか。「ああ」(胸に手を当て

まどか「契約してないのに魔法が使えるんだよね?」

まどか。「んー、何処でQBが聞いてるか判らないから、
     全部は話せないけど」

まどか「ええと、わたしでも使えるのかなって」

まどか。「やってみる?」

――
――――

ほむら「まどか……」

まどか。「え、えーと……」

ほむら「……ここまでで気づきなさいよ」

まどか。「ごめん。朝まで判らなかった……」

――――
――

(回想の中での翌日)

まどか。「あれ? あ、あのまま寝ちゃったんだ」

まどか。「まどかちゃんは、……もう起きたのか」

まどか。「というか、もうこんな時間」

パパ「まどか?」ガチャ

まどか。(あ、まずっ)(パパは知らない)

パパ「どうしたんだい? 今日は寝坊かい?」

まどか。「え?」

パパ「ん? 早く支度しないと」

まどか。「え? え?」

パパ「まどか?」


まどか。「あ!」

まどか。(マミさんのソウルジェムが無い……まさか)

パパ「寝ぼけてないで。もう朝ご飯できてるよ」

まどか。「う、うん。わかった」

まどか。(まどかちゃんが居ない?)

まどか(もしかして、昨日の話で……?)

まどか。(でも、まだ帰って来てないってことは、なにかあったの?)

まどか。(わたしのせいだ。
      わたしが魔法の使い方とか変身のしかた教えちゃったから)

まどか。(どうしよう……ほむらちゃんに叱られちゃう)


大急ぎで学校へ行く用意をして、
出がけの詢子に睨まれながら(多分判ってる)朝ご飯を食べて、

パパ「まどか、今日は忙しいんだね」

まどか。「う、うん。ちょっと早く行きたいから」

パパ「だったら寝坊しちゃだめじゃないか」

まどか。「ウェヘヘ、そうなんだけどね」

詢子「……」

そして不気味に沈黙を守る詢子と一緒に家を出た

少し歩いてから。

詢子「まどか?」

まどか。「えーっと……」

詢子「どういうことだ!」

まどか。「ご、ごめんなさい!」


詢子「そんな顔してあたしに謝るってことは、
    入れ替わったのはトラブルなんだな?」

まどか。「え? うん。まどかちゃんが勝手に……」

詢子「あんたの仕事はまどかを巻き込まないことじゃなかったのか?」

まどか。「ごめんなさい。わたしのせいなんです、ごめんなさいっ!」

詢子「……早く行けよ」

まどか。「え?」

詢子「やることがあるんだろ?
    あたしに出来ないことじゃ、あんたに頼むしかないじゃないか」

まどか。「う、うん!」

詢子「だったら早くしろ!」

まどか。「ま、まどかちゃんは必ず守るから!」(走り去りながら

詢子「学校には連絡しといてやるから!」

(回想終わり)
――
――――

ほむら「……それで、魔法少女を集めに? QBと?」

まどか。「たぶんそうだと思う」

ほむら「QBからの話の時点で私に相談……それはもう良いわ。
     とにかくまどかを探しましょ」

まどか。「……う、うん」

ほむら「仕方がないわね」

まどか。「?」

ほむらは深呼吸するように息を吸って、

ほむら「QB! いるなら返事をしなさい!」

まどか。「……あ、そうか」

ほむら「……」

まどか。「……」

ほむら「……来ないわね。こんなときに限って。返事もないわ」

まどか。「どうしよう」


ほむら「あの子、黙って行ってしまったの? 置き手紙とか無かった?」

まどか。「え? えっと、判んない。
      居なくなっちゃったって判ってあわてて出てきたから」

ほむら「そう。じゃあまどかの部屋に行って確認してきましょ」


置き手紙はあった。

『私ならきゅうべえが協力してくれるかもしれないので、ちょっと行ってきます。
 もしかして朝までに帰れなかったら悪いけど学校には代わりに行ってください。
 あと、守ってくれると言ってるのでソウルジェムの人と一緒に行きます』

ほむら「まどか……(どうしてあなたはいつも)」グッ

まどか。「ほむらちゃん、わたし……」

ほむら「あの子、変身できるの?」

まどか。「判んない。でもわたしと同じであのマミさんとお話しできたし多分……」

ほむら「そう……」


まどか。「あ、あのね、」

ほむら「契約しに行ったのではないのよ。
     あなたはちゃんと働いてくれてるわ。だからそんな顔しないで」

まどか。「でも……」

ほむら「それより早く探しましょ。
     他のエリアの魔法少女と交渉なんてあの子一人じゃ危険だわ」

まどか。「……うん」

ほむら「何をしているの早く行くわよ」

まどか。「! 一緒に行っていいの?」

ほむら「当たり前じゃない。一緒に来て。お願いよ」

まどか。「う、うん!」

とりあえず、ここまで。


近郊の街にて。
初めて見る魔法少女が少し離れた物陰からこちらを伺っている。

ほむら「勝手に縄張りにはいってごめんなさい。
     何かを奪いに来たのではないのよ。聞きたいことがあるの」

魔法少女1「……」

ほむら「今日、QBを見てない?」

ほむら「それからこの子と良く似た子も見なかったかしら?」

まどか。「……出てこないね」

魔法少女1「……」(首を横に振ってる

ほむら「見てないようね」

まどか。「なんか、怖がられてるみたい」

ほむら「いきなり攻撃されるより良いわ」

こんな感じで学校をさぼって近郊の街を当ってみたが、
結局、この時間軸のまどかもQBも見たという情報は得られなかった。

ほむら「何処まで行っているのかしら……」


風見野にさしかかった所で魔女狩りに出ていた杏子に出くわした。

学校へ行ってない彼女はグリフシード確保係を自ら買って出ていたが、
今日は自分の縄張りの見回りに来てたようだ。

杏子「戦力が足りない?」

ほむら「QBがそう言ったらしいわ。あいつは口に出したことに
     関してはある程度信用できるから、事実なんでしょうね」

まどか。「それでね、まどかちゃんが」

杏子「ん? おまえ、あたしと戦った方だよな?」

昨日、杏子とまどかは特に会話をしていない。
杏子は双子だと思っているらしい。

まどか。「え? うん。そうだけど?」

杏子「なんで同じ名前なんだ?」

ほむら「それは色々事情があるのよ。それよりあの子探すのを手伝って欲しいの」

杏子「探す?」

ほむら「あの子、戦力集めの為にQBと同行しているみたいなのよ」


杏子「みたい、ってことは勝手に行っちまったのか?」

ほむら「ええ、何の相談もなしに」

杏子「ふうん。一般人が出しゃばっちゃったわけだ」

ほむら「あの子の魔法の才能をQBが狙ってるわ。
     でも絶対契約させるわけにはいかないのよ」

杏子「……最期は魔女になるって知ってても契約するようなヤツなのか?」

ほむら「あの子ならやりかねないわ」

杏子「最大級の馬鹿ってことか。まあ、あんたの仲間だしな」

まどか。「……」

ほむら「それなのにQBが見当たらないのよ。普段なら呼べば現れるのに」

杏子「あんにゃろ、なにか企んでやがるのか?」

ほむら「判らないわ。だから早く探し出さないと」

杏子「判ったよ。決めたノルマがあるから魔女狩りがてらになるけど、
    街の端っこまで行ったらついでに他人のなわばりも見て来てやる」

ほむら「お願いするわ。可能ならワルプルギスに向けて戦力の勧誘もしてきて欲しいのだけど」

杏子「まあ他の魔法少女に会ったら話してみるよ」


結局。

手がかりも見つからないまま放課後の時間になってしまったので
一旦見滝原に戻って来た。

学校の前まで来たら美樹さやかが居た。

さやか「ほむら!!」

ほむら「待たせたかしら?」

さやか「なんで学校さぼったのよ?」

ほむら「色々あったのよ。ちゃんと放課後に間に合うように来たから良いでしょ?」

まどか。「ほむらちゃん、上条君の所行くんでしょ? わたし、どうしよう?」

ほむら「そんなに時間かけるつもりは無いから一緒に来て」

まどか。「うん。じゃ待合室で持ってるよ」

さやか「ちょっとまって。まどか、あんた偽物の方よね?」

まどか。「う、うん(『偽物』って言われるのはちょっとだけど)」


さやか「なんで学校の制服なのよ?」

まどか。「あ、あのね……」

さやか「まどかは体調が悪いから休むって先生は言ってたわ。
     学校に連絡してあるのに何であんたが制服を着てくるわけ?」

まどか。「え、えーと……」

さやか「もしかして、まどかが体調悪いって嘘?
     まどかに何かあったの?」

ほむら「……あなたってどうしてそう無駄に勘が鋭いの?
     この状況からその結論って信じられないわ。肝心な所は鈍いくせに……」

さやか「何のことよ? それよりまどかに何かあったのね?」

ほむら「何かあったというか、あの子が自分で首を突っ込んだのよ」

まどか。「あのっ、わたしが……」

ほむら「いいわ。私から話すから」

(説明、略)

さやか「戦力集め? まどかが?」

ほむら「自分の契約を取引材料にしてQBに協力さてるみたいなの」

まどか。「うん。わたしが話しちゃったから……」

さやか「それって不味いじゃん」

ほむら「そうよ。あの子は絶対契約させちゃいけないのに」

さやか「わかったよ。ほむらはまどかを探しに行って」

ほむら「いいの? あ、契約は駄目よ?」

さやか「判ってるって。恭介の方はなんか今リハビリに燃えてるから多分大丈夫。
     でも後でちゃんと会ってよね」

ほむら「ええ」


まどか。「……ねえ、さやかちゃんがQB呼んだら来るんじゃない?」

ほむら「どうかしら? 契約する可能性が低かったら来ないのではないかしら?」

さやか「ん? QBも見つからないの?」

ほむら「ええ。いつもは名前を出すだけでも現れてたのに」

さやか「やってみようか? おーい! QB!」

QB「なんだい?」

まど。ほむ「!!」

さやか「うわ!? ……来たよ?」

ほむら「私の時は何回呼んでも現れなかったのに」

QB「何のメリットも無いのに身体を壊されるリスクを犯したくなかったのさ。
   それに色々忙しかったしね」

ほむら「その色々を問いただしたい所だけど……」

(ほむらがQBの首絞めてまどか。があわてて止めたりとかひと騒動あってから)

まどか。「……QB、それで?」

QB「まどかかい? 確かに今朝から一緒だったけど、今は別行動さ」

ほむら「まさか契約!?」

QB「残念ながら交渉は難航しているよ。まだ契約はできていない」

ほむら(良かった……)

ほむら「……それで、まどかは何処にいるの!」

QB「今は○市近辺を縄張りにしてる魔法少女グループと行動を共にしてるよ」

ほむら「○市って……隣の県じゃない」

QB「共闘の交渉は僕の管轄外だからね。
   しばらくは危険もなさそうだったんで僕は
   別の魔法少女候補の子のところへ行ってたのさ」

ほむら「まどか。○市に行くわ!」

まどか。「う、うん」

QB「僕もこっちが片付いたら行くけどね」


ちょっと残されたさやQで会話。

さやか「まどか……大丈夫かな」

QB「ところで美樹さやか」

さかか「ん? 契約ならしないわよ」

QB「いや、君はまだ願い事に思う所がありそうだけど、どうなんだい?」

さやか「へいへい。あたし狙われちゃってるのね」

QB「人聞きの悪い言い方をしないでくれ。
   魔法少女の全てを知った君が契約を決意するほどの強い願いならば、
   より大きなエネルギーを生み出すじゃないか。
   この話は聞いてるんだろう?」

さやか「宇宙に貢献するチャンスとかいうんでしょ?」

QB「その通りだよ」

さやか「あたしは宇宙の寿命とかよく判らないし、
     実際あたしが生きてる間には全然関係ない話だよね?」

QB「人類はいつもそういう考え方をするよね。
   僕には理解しがたいんだけど」

さやか「あたしに関係ないばかりか見たことも聞いたことも無い宇宙人達の為に
     命を差し出せって言われてもね」

QB「それと引き換えにしても良いという願い事が君にはないのかい?」

さやか「はいはい。あたしは恭介の所へ行かなきゃだから、じゃあね」

QB「やれやれ。やりにくくなってしまったものだね」キュップイ

――――
――

自動車専用道路を走るトラックの荷台の屋根の上。

風を切る音に紛れて会話してる。

まどか。「……時間を止めて走って行くのかと思ったよ」

ほむら「まさか。乗り込む時だけよ」

まどか。「うん。わたし体力無いから安心したよ」

ほむら「魔力が無かったら私だって無力だわ」

まどか「ちょっと悪い気もするけど」(無賃乗車

ほむら「これが一番早いのよ。交通機関だと電車とバスの乗り継ぎで遠回りになるから」

まどか。「でも○市って言っても結構広いよね。どうやって探すの?」

ほむら「グループと言ってたわ。魔女を探せば誰かしら遭遇するはずよ」

まどか。「そっか……」


そんなこんなで○市に降り立った二人。

ほむら「早速だけど、魔女の反応よ。近いわ」

まどか。「もう?」

ほむら「幸先がいいわ。まどか、入って」(盾の中

まどか。「う、うん」



――幸先など良くなかった。

いやむしろ最悪だった――。


結界の中。

ほむら「先客がいるようね。この街の魔法少女かしら?」

使い魔は見当たらない。全部その先客に倒されてしまったようだ。

魔力を感じる方向へ向かう。

ほむら(この魔力は……まさか)

黄色を基調とした魔法装束。
多数のマスケット銃を召還して戦う戦闘スタイル。

まどか。「マミさん?」

ほむら「いえ、違うわ」

髪の色がピンク色。髪型は特徴的なロールではなく両側で縛ったツインテール。

まどか。「まどかちゃん!?」


彼女は一人で魔女と戦っていた。

十分に追いつめた後、リボンによるバインド。
そして、大砲による最終射撃(かけ声無し)。

魔女が崩れ去り、結界が消滅し、
その後にはマミの魔法装束を纏ったまどかが残った。

まどか。「まどかちゃん!」

ほむら「まどか!」

駆け寄る二人に反応するように振りかえるが、
彼女は無言でその顔に表情は無かった。

ほむら「どうしたの?」

そして、倒れ込むようにしてそのまどかは、近づいて来たほむらに抱きついた。

まどか「……」スリスリ

ほむら「まどか!? な、なに?」


抱きついたそのまどかはどこかほむらの感触を確かめるようにしていたが、

ほむら「……ど、どうしたの?」

少しして変身が解け、しがみついたまま私服姿のまどかに戻った。

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「なあに?」

まどか「っく、……ひっく」

ほむら「! なにがあったの?」

まどか「……ちゃった」

ほむら「え? なに?」

まどか「みんな……魔女に……なっちゃった」

ほむら「え……」


QB「……思ったより早かったみたいだね」

ほむら「インキュベータ!」

QB「君にそう呼ばれるのは初めてだったかな。
   ボク達のことを何処まで知っているのかい? 暁美ほむら」

ほむら「答えなさい! 早かったってどういうこと!」

QB「言葉の通りだよ。彼女達が魔女になるのが予想より早かったってことさ」

ほむら「じゃあ、こうなるのが判ってて、まどかに魔法少女達を紹介したのね!」

QB「どうして怒っているのか判らないな。
   魔法少女がいずれ魔女になることは君もまどかも既に知っていることじゃないか」

ほむら「詭弁を言わないで! まどかを陥れたわね」

QB「僕は鹿目まどかと契約の交渉をする機会を得ることと引き換えに、
   条件に合う魔法少女を紹介しただけだよ。これはまどかも同意の上でのことだ」


ほむら「条件に合うですって? すぐに魔女になるような子を紹介しておいて?」

QB「どんな子を紹介したって魔法少女がいずれ魔女になることは変えがたい事実じゃないか。
   まどかはそれを知った上で僕と取引したんだ。
   この結果について君に責められる謂れは無いよ」 

ほむら「……話をしても無駄のようね」チャキ

まどか「やめて」

ほむら「まどか……こいつは」

まどか「もう、……やめて……」

ほむら「……」

ほむら「まどか。お願いよ。自分から魔法少女に関わろうとしないで。
     あなたに何かあったら私は……」

まどか「ごめんなさい……」


まどか。「ちょっとQB。まだ行かないで」

QB「なんだい?」

まどか。「まどかちゃんとの交換条件が割に合ってないよ」

QB「どういうことだい?」

まどか。「まどかちゃんをこんな目に遭わせたのって、
      『契約したい』って思いやすくしたかったんでしょ?」

QB「そうだね。まどかへのアプローチは一歩前進したといえるだろう。
   それで君は何が言いたいのかい?」

まどか。「もっと他の魔法少女を紹介してよ。
      戦力が欲しかったのに、結局まどかちゃんの成果って
      出来立てのグリーフシード三個だけじゃない。不公平だよ」

QB「……確かに君の言い分も理が通っている。まあいいだろう」

ほむら「まどか?」


まどか。「今度はわたしが行ってくるよ。ほむらちゃんは忙しいでしょ?」

まどか「わ、わたしも! わたしも行きます!」

ほむら「ちょっ、まどか!?」

まどか。「まどかちゃん? 大丈夫なの?」

まどか「うん。もう大丈夫」

まどか。「顔色悪いよ?」

まどか「頑張るから」

まどか。「そう? それなら……」

ほむら「駄目よ! 二人とも行かせないわ」

まどか。「ほむらちゃん、QBは三人じゃ勝てないって言ってるんだよ」

ほむら「……それでもだめ。危険だわ」


まどか。「負けたら死んじゃうんでしょ?
      ほむらちゃんもマミさんも杏子ちゃんも死んじゃったら嫌だよ」

ほむら「負けはしないわ。その為の準備もしているもの」

まどか。「準備してることはわかるよ。前の時よりもいっぱい頑張ってることも」

ほむら「そうよ。前回はあまり集められなかった。
     でも今回はいままでのどの回よりも多く集めるつもりよ」

まどか。「でも勝てるかどうか判らないんでしょ?」

ほむら「それは……」

まどか。「だからわたしにも出来ることをやらせて。
      契約して何とかしようとしてるんじゃないんだから」

ほむら「あなたが危険を犯す必要はないわ」


まどか。「まどかちゃんも何か言って」

まどか「え、うん。
     上手く言えないんだけど、今のほむらちゃんはなんか心配」

ほむら「まどか……私が信じられないの?」

まどか「ううん言ってることは判るの。
     でもほむらちゃんが本気で大丈夫って言ってるようにみえないから」

まどか。「今は皆で協力しようよ。なるべくみんなが生き残れるように
      やれることは全部やっておきたいよ」

ほむら「だ、だめよ。それでもだめなのよ!」

まどか「ほむらちゃん!」

まどか。「ほむらちゃん!」

~~

マミ「……これはどういう状況なのかしら?」

まどか「マミさん?」

QB「このまま観察するのも興味深いんだけど時間がかかりそうだからね。
   調停役にマミを呼ばせてもらったよ」

マミ「それで、どうして暁美さんが座り込んで泣いているのか
   教えてくれるのかしら?」

まどか。「ええとね……」

~(説明略)~

マミ「鹿目さん達が戦力集めを……」

まどか。「そうなんです。それで、今、ほむらちゃんが反対して……」

マミ「それで意見が分かれて言い合ってるうちに?」

まどか。「う、うん」

QB「あれは意見の言い合いなんかじゃないよ。
   親の説得に小さい子供がだだをこねているようなものだ。
   まどか達の話は理が通っているのに対し、暁美ほむらはただ否定するだけで
   論理的反論が全くできなかったじゃないか」

まどか。「QBは黙ってて」


マミ「……大体判ったわ。
   まず、あなた達が相談なしに勝手に行動したのは不味かったわね」

まどか「ごめんなさい」

まどか。「でもほむらちゃんに言ったら止められると思ったから。
      戦力を集めないといけないのにわたしに気を遣って準備が遅れるなんて……」

マミ「それは判るけれど、でもやり方……というか進め方が悪かったって言っているのよ。
   まずは誰にも相談しなかったこと」

まどか。「……はい」

マミ「それから、あなたが黙って一人で来てしまったこと」

まどか「……」

マミ「それで辛い目に遭ってしまったわけだから責めはしないけれど、
   あなたは一人で来るべきじゃなかったわ」


マミ「それから、暁美さんもよ」

ほむら「私は……」

マミ「鹿目さん達を守りたいというあなたの気持ちは否定しないわ。
   でも仲間としてどうなの?」

マミ「あなた達、チームワークがバラバラだわ。
   守る守らない以前に、お互いに信頼できなくてどうするの?」

ほむら「……まどかは戦力じゃないわ」

マミ「そのあたりも含めて、一度良く話し合うべきではないかしら?
   私と会う前から仲間だったにしてはお粗末な結果ね」

ほむら「その……」

マミ「なあに?」

ほむら「そろそろ離してくれるとありがたいのだけど……」

巴マミはQBに調停役をお願いされて馳せ参じた訳だが、
到着して即、なにやら弱っているほむらを見て(これ幸いとばかりに)思い切り抱きしめていた。

~~

マミ「戦力集めは私が同行するわ。それなら良いでしょう?」

ほむら「まどかには行かせたくないのだけど……」

マミ「守備を専門にしてもらうにしても、
   どのくらい任せられるのかは知っておく必要があるでしょう?
   戦力を見る良い機会だわ」

ほむら「魔法は一切使っちゃ駄目といっても聞かないわよね」

まどか。「ごめん。これだけは譲れないよ」

まどか「……あの」

マミ「あなたは一旦帰って休みなさい」

まどか「え……でも」

マミ「無理はいけないわ。昨日からあまり寝てないんでしょ?」

まどか「……昼間すこし休みましたけど」

マミ「でも慣れないことをして疲れているんじゃない?」

まどか「は、はい……」


マミ「暁美さん。この子送ってあげて」

ほむら「判ったわ。じゃあそっちはお願いね」

マミ「ええ」


案の定まどかは移動途中で寝てしまった。

なので背負って鹿目家まで行き、誤摩化すのも面倒なので魔法を使って侵入し、
部屋のベッドに寝かせてきた。

ほむら(……何か忘れているような)

ほむら(魔法少女の魔女化を生で見た直後でQBの誘惑が心配だけれど、
     そのQB側には事情を知った二人が付いてるから取り合えず
     まどかは大丈夫だろうし……)

ほむら(あと、何かあったかしら?)

ちょっと引っかかる程度で思い出せないのは大したことではない判断して、
ほむらは今日も武器弾薬の調達に向かった。

そろそろ武器集めもラストスパートである。


そして翌朝の通学路。

昨日巴マミと一緒だった方のまどかは今朝も帰ってこなかった。
基本監視担当なので鹿目家に泊まった筈ではあるが……。

「ほむらちゃん!」

ほむら「まどか? どうしたの? そんなに急いで……」

まどか?「マミさんが!」

続く!


「ほむらちゃん!」

ほむら「まどか? どうしたの? そんなに急いで……」

まどか?「マミさんが!」

ほむら「ってもしかして、また入れ替わってるの?」

まどか。「あ、入れ替わってるんじゃなくて、昨日から着替えてないんだけなんだど……」

ほむら「まさか徹夜したの?」

まどか。「それに近いかも。でもちゃんと帰ってすこし寝たよ。
      それで朝着替えようとしたら、着てた服パパが洗濯しちゃったみたいで
      見つからなくて……」

そこでまた母親に遭遇しそうになって逃げて来たらしい。

ほむら「早く着替えた方が良いわよ」

まどか。「うん。わたしもそうしたい」

ほむら「それはともかく、巴マミがどうしたの?」

まどか。「あ、そうか。
      急いでいたのはマミさんのことだけじゃないんだけど……」

ほむら「そうなの?」

まどか。「あ、うん。えっと、昨日の話早くしたかったから走って追いついただけで……」

ほむら「……まあ、良いわ。昨日の報告、聞くわよ」

まどか。「う、うん。えっとね……」

――――
――
(回想入ります)


マミ「あなた。いったい……」

まどか。「え? いや違うよ? 違うから」

マミ「でも今『それ』に向かって『マミさん』って言ったわ」

まどか。「き、気のせいだよ」

マミ「そのソウルジェム……そうか。そういうことだったのね」

まどか。「え、ええと?」

マミ「いままであまり考えなかったのだけど、あなたってつまりそういうこと?」

まどか。「ど、どういうことかな?」(汗

マミ「暁美さんの魔法が時を遡って少しずつ違った平行世界を巡ることと考えたら
   全てが納得いくわ」


マミ「あなたって別の世界の鹿目さんだったのね」

マミ「そしてそれは別の世界の、身体を失ってしまった『私』かしら?」

まどか。(……ほむらちゃん、ばれちゃったよ)

マミ「なにか焦っているみたいだけど、それを知ったから私がどうかなるとか、
   その『私』をどうにかしようとか、そういうことはないわよ」

まどか。「えーと、そうなんですか?」

マミ「ただ、そうやって生きている私もあり得るんだなって。
   感動というか感心したの。それだけよ」

まどか。「そうなんだ……」

マミ「あなた達は別世界から来た助っ人ってことでしょう?」

まどか。「そうなのかな……うん、そうだよ。その通りだよ」

マミ「なんだか素敵だわ……」

――
――――

まどか。「……ということがあって」

ほむら「そうか……」

まどか。「違う世界のマミさんだって話はしない方がいいんだよね?」

ほむら(昨日引っかかったのはこれだわ)

ほむら(巴マミは時々予想外な動きをするからあまり色々教えたくなかったのよね……)

まどか「どうしよう」

ほむら「勝手に推理して判ってしまったのなら仕方がないわ」

ほむら「それに、もうすぐ決戦なのだし、不安定になったのでなければ問題ないわよ」

まどか。「その戦力のことなんだけど……」

ほむら「どうなったの?」

まどか。「それが……」

――――
――

マミ「……魔女になってしまったわね」

まどか。「……うん」

マミ「仕方がないわ。こうなったらグリフシードになって貰うことで、
   貢献してもらうしかないわ」

まどか。「そうだね……だれかが止めてあげないといけないし、仕方ないよね」

――――
――

マミ「……魔女になってしまったわね」

まどか。「……うん」

マミ「仕方がないわ。こうなったらグリフシードになって貰うことで、
   貢献してもらうしかないわ」

まどか。「そうだね……だれかが止めてあげないといけないし、仕方ないよね」

すまん。ダブった。

――
――――

ほむら「……どんな話の持って行き方をしたの?」

まどか。「毎回いきなり喧嘩になっちゃって、
      戦いながら説得しようとしたんだけど、マミさん強いから」

ほむら「実力差があるならねじ伏せて戦闘できなくした隙に話をするとか、
     やりようはいくらでもありそうだけれど」

まどか。「そうしたんだけどなんかね、
      みんなマミさんを怖がっちゃって……」

ほむら(何処か壊れた雰囲気が伝わってしまったのかしら?)

まどか。「話がしたいだけなのに全然聞いてくれなかったんだ」

ほむら(QBが『そう』なりやすい子の所へ誘導してるとしたら……)

まどか。「捕まえて動けなくしただけなのに勝手に絶望しちゃって」

ほむら「もう、良いわ」


まどか。「魔女になるほど怖がるなんて酷いよね?」

ほむら「まどか?」

まどか。「ただちょっとほむらちゃんを手伝って欲しいだけなのに聞いてもくれないなんて……」

ほむら「まどかっ!!」

そう言って抱きしめた。

まどか。「……なに?」

ほむら「あなたのこと判らなくてごめんなさい」

まどか。「ほむらちゃん? どうしたの? なんで謝るの?」

ほむら(この子も何処か壊れてる。まどかは人の死を何よりいやがる子だったはず。
     なのにこんな素っ気ない態度で……)

ほむら(……いいえ。魔法少女に関わる限り人の死を実感するのは避けられない。
     だから無意識のうちに境界を設けて自我を守っているのかもしれない。
     いずれにしても行かせるべきじゃなかったわ)

まどか。「QBは『選り好みできない』って言ってたけど、そういうレベルじゃなかったよ……」

ほむら「もう、良いのよ」


まどか。「わたしなら大丈夫だよ? 明日もう一回行ってくるよ」

ほむら「行かなくて良いわ」

まどか。「でも……」

ほむら(この様子だと『何もするな』と言ったらまた勝手に行動してしまうわね……ならば)

ほむら「それよりも巴マミと一緒に普通に魔女を狩ってグリフシードを確保して。
     もう時間がないから」

まどか。「でも戦力が」

ほむら「QBの予測で『相打ち』まで出てるのでしょう? 十分に準備すれば大丈夫よ」

まどか。「……ぎりぎりって言ってたんだよ?」

ほむら「QBは私の集めた武器を知らないのよ。勝算はあるわ」


まどか。「だったらわたしも戦うよ」

ほむら「あなたは避難所の人たちを守る役割をお願いするわ。
     それで守りに割く戦力が減らせる分、
     間接的だけれど戦力増強につながるのよ」

まどか。「……判ったよ。じゃ今日、マミさんが学校終わったら一緒に出かけるよ」

ほむら「そうして。巴マミには私から話しておくわ」

ほむら(あっちのまどかの方は美樹さやかにでも頼もうかしら?
     不安ではあるけれど、まどかを一人にするよりは良いわ)

ほむら「昼間は大人しくしてるのよ?」

まどか。「わかってる。疲れてるし寝不足だから、ほむらちゃんの家に帰って寝てるよ」

ほむら(私もすこし寝不足だわ。でも今が正念場よ。頑張らないと)

 ~

さやか「ほむら!」

教室に入ったところで美樹さやかに呼び止められた。

ほむら「……美樹さん」

さやか「へ?」

ほむら「……その反応はなに?」

さやか「いや、ほむらに『さん』付けで呼ばれたから……」

ほむら「失礼ね。さん付けくらい普通でしょ」

必要以上に親密になる必要は無いけれど、意識して距離を取る必要はもうないだろう……。

……というのは言い訳で、実のところ今回は色々あったせいでああいう態度を取り続ける余裕がなかった。
あれは結構気力をつかうのだ。

さやか「だっていつも『美樹さやか』ってぶっきらぼうに呼んでたじゃん」

ほむら「それ、わたしの真似のつもり?」

さやか「似てたでしょ」

ほむら「話が進まないわ。なにか話?」


さやか「ああ、そうだった。ほむら調子悪いの?」

ほむら「そう見えるかしら?」

さやか「顔色悪いよ。さっき廊下歩いてるの見てたけどふらふらしてたし」

ほむら「……そう。あなたにも判ってしまうなんて」

さやか「やっぱり具合悪いの?」

ほむら「あえて言えば寝不足かしら」

さやか「いや、寝不足ってレベルじゃないでしょ? いつもの気迫が感じられないし」

ほむら「そうかしら?」

さやか「寝不足とかって魔法で何とか出来ないの?」

ほむら「出来ないことはないけれど、今ちょっと余裕がないわね」

さやか「ああもう。だったら先生に言っておくから保健室で寝てきなよ」

ほむら「そうはいかないわ」


さやか「ああ、そうだった。ほむら調子悪いの?」

ほむら「そう見えるかしら?」

さやか「顔色悪いよ。さっき廊下歩いてるの見てたけどふらふらしてたし」

ほむら「……そう。あなたにも判ってしまうなんて」

さやか「やっぱり具合悪いの?」

ほむら「あえて言えば寝不足かしら」

さやか「いや、寝不足ってレベルじゃないでしょ? いつもの気迫が感じられないし」

ほむら「そうかしら?」

さやか「寝不足とかって魔法で何とか出来ないの?」

ほむら「出来ないことはないけれど、今ちょっと余裕がないわね」

さやか「ああもう。だったら先生に言っておくから保健室で寝てきなよ」

ほむら「そうはいかないわ」


さやか「まどかのこと?」

ほむら「そうよ。QBに誘われて何処かで契約を迫られたりしないか見張っておかないと」

その当のまどかは自分の席からなにやら心配そうにこちらを眺めている。

さやか「わかったよ。それはあたしが見ておくから」

ほむら「一時も目を離してはだめなのよ?」

さやか「大丈夫だって。そういうことは一人で決めないで必ずあたしに相談するって約束させたから」

ほむら「そうなの?」

さやか「昨日の話も聞いたよ。色々あったんだって?」

ほむら「ええ。だからこそ心配なのだけど」

さやか「任せてくれるよね? っていうか任せろ。
     魔法少女がどんだけ丈夫なのか知らないけどさ。どうみてもあんた無理し過ぎでしょ」


ほむら「もしかして、心配してくれたの?」

さやか「そりゃ、事情聞いちゃったら放っておけないよ。街が危ないんでしょ? その為に無茶してるって」

ほむら「そうね」

さやか「あたしは戦うとか出来ないけどさ、心配くらいさせてよ」

ほむら「……判ったわ。お言葉に甘えるわ」

さやか「よしよし」

ほむら(もともと放課後以降は美樹さやかに頼むつもりだったのだし……)

 ~

そんなわけで一時間目から保健室で寝ていたほむらだったが。

ほむら(なによこれ)

マミ「んふ……」 

ほむら(体調が悪いからと理由をつけて保健室で眠っていて、気がついたら
     巴マミに抱きしめられていた……)

ほむら「……巴マミ」

マミ「んー……、あら?」

ほむら「……なぜあなたがここに居るの?」

マミ「ええと……昨日の話はもう聞いてるのかしら?」

ほむら「聞いたわ」

マミ「そういうわけで昨日は寝られなかったのよ。
   だから、体調が悪いってことにして休ませてもらったの」

ほむら「聞きたいのはそこじゃないわ」


マミ「あら? じゃあなあに?」

ほむら「何じゃないわよ。どうして私が寝ているベッドで寝ているのかよ」

マミ「あなたが寝ていたからよ」(真顔

ほむら「……それが理由なの?」

マミ「そうよ」

ほむら「……」

マミ「……嫌だった?」

ほむら「……」

ほむら(拒絶することは簡単だけれど……。
     それでまたおかしな行動に出られても厄介だし……)

マミ「……ごめんなさいね」(離れる

ほむら「え」


マミ「あなたを困らせるつもりじゃなかったのよ」

ほむら「あ……」

マミ「今、ちゃんと私のこと考えてくれた。それで十分よ」

ほむら「そんな、私は」

マミ「良いのよ。あなたはあなたの目的の為に行動すれば良い。
   そこに私が組み入れられているのなら問題ないわ」

ほむら「巴さん……」

マミ「あら、そういう風に呼んでくれたのは初めてね?」

ほむら「え? あっ……」

マミ「じゃ、わたしはもう行くわね。無理しちゃだめよ?」

ほむら「……」

ほむら(グリフシード確保の件、言いそびれたわ)

ここまで。
半端でスマン

前回は投下直前に書いた分を全部放出してしまったので、
これで月一ペースは終わったとか思っていたらなんか書けた。
平日深夜だけど、出来るだけ投下しておく。


放課後、校門のあたりで。

前の時間軸から連れて来た方のまどかとはいつもここで待ち合わせているのだが、
今日は連絡する事があったのでちょっと集まって(通りかかったのを呼び止めて)立ち話をしていた。

マミ「……そうね。そういう事なら判ったわ」

ほむら「じゃあ、よろしく。まどか。いいわね?」

まどか。「うん」



さやか「……じゃあ、あたしはまどか担当ってことで」

まどか「さやかちゃん本当に泊まりにくるの?」

さやか「うん。昨日の騒ぎ聞いて正直なに仕出かすか心配になったし」

まどか「うぅ……それは……」

さやか「さやかちゃんは心配してるんですよ?」

まどか「う、うん」

とりあえず、巴マミにはグリフシード確保の件、美樹さやかにはまどかに付いてもらう件を伝えた。


そして、まどか。とマミが魔女探索に行った後。

さやか「それで、本当に今日病院に寄ってくれるの?」

ほむら「ええ。いつまでも引きずるのは良くないと思って」

さやか「退院してから学校で、でも良いのに」

ほむら「ずいぶん譲歩したのね。前は早く来てくれって鬼気迫る勢いだったのに」

さやか「いや、だって今それどころじゃないんでしょ?」

ほむら「気がかりな事は早く終わらしておきたいのよ」

さやか「……終わらないでよ。
     その凄い魔女をやっつけた後じっくり付きあってくれればいいんだからさ」

まどか「またそんなこと言ってる。
     ほむらちゃんとつき合いたいのかどうかまだ上条君に聞いてないんでしょ?」

さやか「それはほむらと恭介の問題だからあたしは聞けないでしょ?」

ほむら「なんの話かしら?」

まどか「さやかちゃんがはっきりしないままほむらちゃんと上条君をくっつけようとしてるから」

さやか「まずはあたしが恭介の気持ちを確認するべきだってうるさくて」


まどか「だって……」

ほむら(そういうことか)

ほむら「確認しておきたいのだけど、もしかしてあなた、私と上条君がつき合って幸せになれるとか思っていないでしょうね」

さやか「え?」

ほむら「私が人間ではないことを忘れたのかしら?
     姿形は人間でもその肉体に魂は宿っていない人間とは異質なモノなのよ。
     どちらかと言えばむしろ魔女に近いの。判るわよね?」

ほむら(こうしてまどかや美樹さやかと一緒に居るとつい忘れがちになるけれど、
     そうだったわ。今回は近づきすぎたのね)

まどか「そ、そんなこと言わないでよ。
     魔法少女でもほむらちゃんはほむらちゃんだよ」

さやか「そうだよ。普通の人と同じに学校通ってるしご飯も食べてるし、
     あたしはほむらが恭介と幸せになれないなんて信じないよ。
     まどかもだよね?」

まどか「え? ええと、上条君は判らないけど、
     ほむらちゃんとはこうしてお話できるし、わたしの心配してくれるし、
     魔女に近いなんてことないよ」

ほむら(やぶ蛇だったかしら……彼女は単に上条君を心配してるだけだと思うのだけど)


そしてようやく上条恭介の病室へ。
まどかはさやかに言われて渋々だが待合室で待っている。

ほむら「……暁美ほむらよ」

恭介「あ、はい。上条恭介です。えっと……素敵な名前ですね」

さやか「なに緊張してんのさ」

恭介「え? だってさ……」

さやか「クラスメートなのよ」

ほむら「ええ。そんなに畏まられると話し辛いわ」

恭介「そ、そう? わかったよ、今日はお見舞いに来てくれてありがとう」

ほむら「ええ、美樹さんに何回も頼まれたわ」

恭介「ごめんね。僕が言ったんだ。どうしても君に話したいことがあって」

ほむら「別に構わないわ」


恭介「……」

ほむら「話って?」

さやか「あ、あたしは席外すね」

ほむら「その必要は無いわ」

さやか「どうしてよ」

ほむら「それはこちらの台詞よ。浮ついた話なら聞く気はないし」

さやか「聞く気はないって、この間の話忘れたの?」

恭介「なんだい? この間の話って」

さやか「いや、こっちの話で……」

恭介「まあ、それはいいや。でもさやかにも聞いて欲しい話なんだ。
    ここに居てくれるかい?」

さやか「あたしも? ……わかったわ」


恭介「ええと、何処から話したら良いかな。色々考えたから話したい事が沢山あるんだけど」

ほむら「いいわよ。今日は話を聞くためにに来たのだから」

恭介「じゃあまずは僕の左手のことだね。もうさやかは聞いたと思うけど、
    僕はバイオリンを弾くのは諦めろって言われた。
    それはずっと今のままって意味じゃなかったんだ」

ほむら「どういう事かしら?」

恭介「先生は現代医学では今までのようにバイオリンが弾けるまでの回復は
    不可能だって答えたのであって、いまの感覚も無い、全く動かせない状態から、
    回復の見込みがないってことじゃなかったんだ」

恭介「まあ、あのときの僕は今までと変わりなく弾けるってこと以外は考えられなかったから、
    どっちにしても変わらなかったんだけど」

ほむら「今は違うのね?」

恭介「君のおかげだよ」

ほむら「私の?」


恭介「先生に諦めろと言われて、僕は未来が見えなくなった。
    あのときは本当に真っ暗闇の中を彷徨ってたんだ」

恭介「そんなとき君が僕の前に現れた」

恭介「あの時、僕の価値はバイオリンだけなのかって言ってくれたよね」

恭介「そのときは深く理解できてなかった、いや理解するのを拒絶してたんだと思う。
    でも君の話になにか救いのようなものを感じたんだ」

恭介「だから会ってもう一度話をしたかった。
    いや、今考えるともう一度そう言って励ましてもらいたかったんだと思う」

恭介「でもさやかに頼んでも中々来てくれなかった」

ほむら「いろいろ忙しかったのよ」

恭介「いや、それはむしろ感謝しているんだよ」

ほむら「感謝?」

恭介「色々考えたんだ。どうして来てくれないんだろうって。
    いや、初対面であんなだったから嫌われているのかもしれない。
    どうしたらいいんだろうって」


さやか「そうだったの? あたしにはそんな話一度も……」

恭介「そりゃそうだよ。
    情けない所見せてそれが伝わってしまったら、
    もっと嫌われちゃうかもしれないって思ってたから」

ほむら「べつに嫌ってなんかいないわよ」

ほむら(それ以前に好き嫌いを言うほど興味もないし)

恭介「そ、そうかい……///」

さやか「なに照れてるのよ」

恭介「いや、それでね、来てくれないのは『よく考えろ』っていうメッセージだと思って
    君の話の何処に救いを感じたのかもう一度よく考えてみたんだよ」

ほむら(考え過ぎだわ。何も考えないで話してたなんて言えないわね)

さやか「なんかリハビリに燃えてるようにしか見えなかったけど、そうだったんだ」

恭介「むしろ考える為に身体を動かしていたかったんだよ。
    ベッドでじっとしてるよりずっと思考が回ったからさ」


恭介「結局、答えは出ていたんだよね。君はもう必要なヒントはくれていた。
    考えた事を全部話すと長くなってしまうから結論を言うけど、
    つまり僕は今まで積み上げて来たものを失ったことに捕われすぎていた。
    それはもう受け入れるしか無いのに、
    そこからまた踏み出す勇気がなくて甘えてたんだ」

ほむら(成り行きでああいう話になってしまっただけなのに、
     なにか大変な事になってるわね)

恭介「知ってるかい? チャップリンは左手で弓を持ってバイオリンを弾いたそうだよ」

ほむら「知らなかったわ」

恭介「僕の左手も頑張れば弓をしっかり持てるくらいまでなら回復できそうなんだ。
    努力次第なんだけど、制約もあるけどバイオリンを弾くのは不可能じゃない。
    君に会う前の僕じゃ全然満足できなかったと思うけど」

恭介「それにちゃんとに弾けなくても作曲とか指揮とかいくらでも道はある。
    片手が万全じゃないのはハンデにはなるけど、道が閉ざされたわけじゃないんだ」

恭介「君はそれを僕に気づかせてくれた」


ほむら「私はそんな大層な事してないわ。
     あなたは最初から立ち直る力を持っていた。それだけの話でしょ?」

ほむら(そもそもそういう話をした覚えは無いのだけど)

恭介「いや謙遜しなくて良いよ。もしそうだとしても、他の誰でもない、
    あの時この病室に来てくれたのが君だったから僕は変わる事が出来た。
    僕はそう思っているよ」

ほむら(大げさだわ。聞いてるこっちが恥ずかしくなる)

さやか「……あたしじゃ駄目だったんだよね」

恭介「もちろんさやかにだって感謝してるよ。でも暁美さんに出逢えてなければ、
    僕はいまでもさやかの優しさに甘えていじけてたと思うんだ」

恭介「だから、改めていうよ。僕に会いに来てくれてありがとう。
    それが君の単なる気まぐれだったとしても、その気まぐれに僕は感謝するよ」

恭介「これを君に伝えたかったんだ」



そして話は終わり、病室を出て移動中。

さやか「『そういう話』にならなかったね」

ほむら「ならなくてほっとしているんじゃないの? そういう話に」

さやか「え? ええと……そ、そんなことはないわよ?」

ほむら「そうは見えないわよ。
     彼が前向きになって腕の回復の可能性が判った時点で、
     私がつきあわなければならない理由は無くなったと思うのだけど?」

さやか「それは……そうかも」

ほむら「ワルプルギスの夜が来る前に片がついて良かったわ。
     これであなたも満足したでしょ?」

さやか「う、うん。とりあえずは。
     でも恭介もう退院するから学校であったらきつく当たったり無視とかしないでよ?」

ほむら「普通に『面識のあるクラスメイト』として対応するわよ」

さやか「うん、まあそれで良いからさ」

ほむら「少しは冷静になったみたいね」


さやか「冷静? あたしは冷静じゃなかったつもりは無いんだけど……そうなのかな?」

ほむら(考え込んでるわね)

さやか「……うん。確かにまどかは散々そんなこと言ってたわ」

ほむら「私はともかく、まどかの言う事もわらなくなったら救いようがないわよ」

さやか「あはは。確かにそうだわ」

ほむら「はぁ……」

さやか「なによ、そのため息?」

ほむら「別になんでもないわ」

ほむら(笑い事ですんで何よりね)

ほむら(もっと思い込みの激しい人間だと思っていたけれど、
    こうして話していると普通に話の判る子みたいに感じるわ)

ほむら(もしかして魔法少女になっただけでも捕われてることが長引いたり周りが見えなくなったり、
     そういう精神的な影響ってあるのかしら?)


さやか「退院してからはリハビリで通う事になるんだってさ」

ほむら「そう。腕の回復って大変なのでしょう?」

ほむら自身は魔法さえあれば簡単に回復してしまえるのが日常ではあるけれど、
一般の医療でのリハビリの大変さは判っているつもりだ。

さやか「うん。そうみたい。音楽の道に進むにも他人の何倍も努力しなくちゃいけないって。
     でも夢があるから頑張るって言ってたらしいよ」

ほむら「らしい?」

さやか「ああ、お見舞いに行っても恭介リハビリばっかであんまり話できなくて、
     だからこれはお医者さんから聞いた話なんだけど、」

さやか「状態がある程度落ちついたら再手術するかもしれないんだって」

ほむら「そうなの?」

さやか「うん。お医者さんや恭介のバイオリンの先生がそういう回復事例を調べてくれて」

ほむら(そういうのは今までの時間軸では聞いた事が無かったわね)


さやか「前はね、恭介が落ち込んでた時は先生方も
     腫れ物に触るみたいな感じだったんだけど、
     今恭介はしっかり怪我を受け止めてそれでも頑張ろうとしてるから、
     周りの人たちもそれを全力で支援してくれる雰囲気になってるのよ」

ほむら「それは良かったわね」

さやか「うん。やっぱりほむらは凄いよ」

ほむら「え……、私?」

さやか「そうだよ。一回お見舞いに来ただけで恭介だけじゃなくて
     周りの人の雰囲気まで変えちゃったんだから」

ほむら「それこそ偶然よ。私はただあなたの契約を阻止したかっただけ」

さやか「でも魔法少女ってやっぱり希望を運ぶんだなって、なんか納得しちゃったよ」

ほむら「そういうのとは違うと思うのだけど……」

ほむら(でも、確実に契約しない流れになっているのなら良かったわ)



さやか「……それで再手術の話だけど」

ほむら「ああ、そういう話だったわね。なにかしら?」

さやか「受け売りの話なんだけどさ、神経ってただ繋げれば良いってものじゃないって知ってた?」

ほむら(魔法で回復するときはまさにそうなのだけど……)

さやか「繋いだ後、沢山使って正しい繋がりを脳と神経が学習しないとちゃんと動かせるようにならないんだって」

ほむら「似たような話は聞いた事があるわ」

入院歴が長いと断片的ではあるが医療関係の話は結構入って来るのだ。

さやか「その神経の繋ぎ方から回復まで含めて研究しているお医者さんが海外に居て、
     今連絡を取ってるところなんだって」

さやか「そのお医者さんの方法を使えば逆に持つんじゃなくて
     普通にバイオリンを弾けるまでに回復できるかもしれなくて」

ほむら「それは凄いわね」

他の時間軸では『現代医学では不可能』と宣言されていた事だ。


さやか「うん。でもね、それって時間もかかるし本人も凄い努力が必要らしくて、
     だから100パーセント結果が見込めるわけじゃないんだって」

さやか「恭介はどんなに大変でも回復の可能性があるなら
     挑戦したいみたいなことを言ったらしいけど」

ほむら「そう……」

さやか「まだ連絡待ちで確かな話じゃないから恭介はこの話しなかったんだと思う」

ほむら(回復できるとしてもこんなに大変なんて。
     一瞬で怪我自体を『無かった事』にしてしまえる『奇跡』がいかに
     人の理から外れたものなのかがよく判るわ)

ほむら(美樹さやかが契約した時間軸では、
     上条恭介は彼女にそれだけの物を背負わせてしまったと知ることはない。
     彼女自身もまた背負ったものの重さを正しく理解してなかった。
     それがあんなにも早く絶望を呼び寄せてしまった原因よね……)

ほむら(この時間軸ではもう起こらないことだと思うけれど)


さやか「だからさ、恭介はこれからも大変なんだ」

ほむら「そのようね」

さやか「もう無理につき合ってとか言わないけどさ、
     ほむらにはこれからも恭介を支えてあげて欲しいんだけど……」

まどか「さやかちゃん、まだそんなこと言ってるの?」

さやか「まどか? ……居たんだ?」

まどか「さっきから居るよ。なんか真面目なお話してるから黙ってたけど」

まどかは待合室を通ったときに合流していた。

さやか「……でもほむらのおかげで恭介が前向きになれたのは事実でしょ?
     あたしはほむらに会う前のあんな恭介はもう見たくないのよ」

まどか「大丈夫だよ。さやかちゃんも頑張ろうよ」

ほむら「私は住む世界が違うわ。普通の人は普通の人が支えるべきよ」

さやか「そんなこと言わないでよ。もちろんワルプルギスを倒した後でいいからさ」

まどか「さやかちゃんったら……」

ほむら「……」

もう限界
おやすみ


翌朝の通学路。

仁美「あら? 暁美さん?」

さやか「やあ、ほむらおはよう。待っててくれたの?」

ほむら「いいえ。姿が見えたから立ち止まっただけよ」

まどか「おはよう、ほむらちゃん」

ほむら「おはよう、まどか」

仁美「おはようございます。いつの間にかさやかさんとまどかさんと仲良くなられていたんですね」

さやか「ほら、仁美は放課後お稽古ごとで居なかったから」

仁美「いつからですの? もっと早く教えてくださったら私も……」

さやか「んー、ここ数日かな? そうだよね?」

ほむら「そうね。あなたと一緒に登校する日が来るなんて思わなかったわ」

さやか「ほらね。いつの間にかって程じゃないよ」

仁美「そうだったのですか?」

 実のところ、昨日は美樹さやかにまどかのことを任せたので、どうだったか聞きたかっただけだった。
 志筑仁美が居て話は出来ないのだが。


さやか「ねえちょっとほむら?」

 美樹さやかが腕を引っ張る。

ほむら「なにかしら?」

仁美「どうかしましたか?」

さやか「あ、ごめん。ちょっと先行ってて」

仁美「まあ、内緒話ですの?」

さやか「ごめんね。すぐ追い付くから」

仁美「……わかりましたわ。さ、まどかさん。こちらはこちらで仲良くいきましょ」

まどか「わわっ、仁美ちゃん?」


 志筑仁美がまどかを引っ張って先に行ってしまったが、ほむらも話を聞きたかったので好都合だ。

ほむら「……それで、なにかしら?」

さやか「昨日、あの子、まどかの部屋に来たんだけど」

ほむら「ああ、そっちに行ってたのね。よかったわ」

 連れて来た方のまどかの話だ。
 一緒に魔女狩りに行くといっても巴マミは学校があるから連日徹夜は無いだろう。
 なのに今朝は帰ってなかったので勝手に行動していないか心配だったのだ。
 巴マミの家に泊ったのかも、とは思っていたが。


さやか「……どういうこと?」

ほむら「言ってなかったかしら? QBが来ても契約しないように見張ってもらってたのよ」

さやか「おじさんやおばさんにも内緒で?」

ほむら「ええ。半分バレてるみたいだけど」

さやか「いや、完全にバレてるよ。おばさん早く帰ってきたから慌てて隠れさせたのにお夜食が三人分出て来てマジ焦ったわ」

ほむら「そう」

さやか「あの子が全部食べたけどね。あの子お腹空かせてみたいだったから」

ほむら「三人分も?」

さやか「いや、サンドイッチが一皿でまとめて来たんだけど、普通にジュースが三人分ついてたのよ。
     夕飯代わりなら全部食べてちょうどくらいだったから全部いいよって」

ほむら「面倒かけたわね」

さやか「というか、ご飯くらいちゃんと食べさせてあげなよ」

ほむら「食事代は持っていた筈だけど暇がなかったのかしら?」


さやか「ああ、もうそれはいいや。聞きたかったのはそっちじゃなくて、『よかった』ってどういうこと?」

ほむら「え?」

さやか「まどかの部屋に来たって言ったらそう言ったじゃない」

ほむら「ああ、あの子また勝手に戦力集めに行ってしまわないか心配だったから」

さやか「あれ、やっぱり“まどか”なのよね」

ほむら「聞いたの?」

さやか「いや、まあね……まどかが先寝ちゃってあの子と話したから。
     あ、言っとくけどあれこれ詮索したわけじゃないわよ。話してみた感じ、まるきりまどかだなって」

ほむら「……そろそろ行きましょうか?」

さやか「え? あ、うん。さっき仁美ちょっと怒ってたみたいだし」


というわけで、追い付いた。

仁美「上条君、退院なさったんですの?」

さやか「え?」

仁美「さっき見かけましたわ」

さやか「そうなんだ」

まどか「さやかちゃん聞いてなかったの?」

さやか「もうすぐって言ってたけどいつからかは聞いてなかったよ」

ほむら「……」


そして、教室に着いて。

さやか「恭介いないじゃん」

仁美「職員室では?」

 久々の登校で事務的な用事があったのか、上条恭介の姿は無いようだ。
 ほむら的にはどうでも良かったのだが……。


恭介「暁美さん、おはよう」

 少ししたら現れて、声をかけられた。
 上条恭介は杖をついていた。

ほむら「おはよう。退院したのね」

恭介「実はもういつでも退院して良いって言われてたんだ」

ほむら「そうだったの? 杖、大丈夫なの? 左手まだ動かないのでしょう?」

 右手が杖で塞がっていては危険なのではないか、と人ごとながら気になってしまう。

恭介「ああ、こっちは時間がかかるからね。動くまで入院ってわけにもいかないし」

ほむら「そう」


恭介「うん。でも君は気にせず左手を話題にしてくれるね」

ほむら「あ、ごめんなさい」

恭介「いや。僕も一々フォローしなくて済むからその方が良いよ」

オーイカミジョウー

恭介「じゃ、あいつら呼んでるから」

ほむら「ええ」

恭介「ああそれから、昨日は来てくれてありがとう。嬉しかったよ」

ほむら「そ、そう?」



男子1「上条おまえ退院早々なに転校生にアプローチしてんだよ~」

恭介「いや、入院中にちょとお世話になったからさ」

男子2「なになにそれ?」

男子3「あやしいぞ~」



さやか「あはは、恭介のやつ、早速声かけてる。ほむらも満更でもないじゃん」

まどか「さやかちゃん、行かなくていいの?」

さやか「いいよ。あたしは(まだ)」

仁美「……」


<ここからさやか視点にシフト>

時間は放課後に飛ぶ。ファーストフードにて。

さやか「……それで、話ってなに?」

仁美「さやかさんは暁美ほむらさんと上条恭介君を引き合わせていたそうですけど、
    それは本当ですか?」

さやか「う、うん。それ仁美に話してたっけ?」

仁美「いえ、今朝まどかさんからお聞きしたのですが……」

さやか「まどかから?」

仁美「ええ」

さやか「じゃ、もしかしてまどかに余計な事頼まれなかった?」

仁美「余計、とは?」

さやか「いや、あたしが恭介になにか……とか」

仁美「!」

さやか「ん? どうしたの?」

仁美「さやかさん!」

さやか「な、なに?」


仁美「私、今日はさやかさんに相談があってお呼びしたんですわ」

さやか「そ、そうだったんだ。なに?」

仁美「実は私、ずっと以前から上条恭介君のこと、お慕いしてましたの」

さやか「」

仁美「さやかさん?」

さやか「……悪い、今良く聞こえなかった。もう一回言ってくれる? 恭介がなに?」

仁美「……以前からお慕いしてました、と」

さやか「おしたい?」

仁美「はい」

さやか「仁美が恭介を?」

仁美「はい」

さやか「……どういうこと?」

仁美「どういうって言葉の通りですわ」


さやか「いやごめん。なんか頭が回らなくて。もっと判りやすく言いなおしてくれない?」

仁美「だから……以前から、その……」

さやか「なに?」

仁美「上条君とおつき合いできたらと」

さやか「えーと……つまり、一緒に買い物に行きたかった?」

仁美「さやかさん、それはわざと言ってます?」

さやか「ごめん、本当になんか意味が頭に入ってこないんだ……つまりどういうこと?」

仁美「すみません。性急に話しすぎたようですわ。
    どう言えば判っていただけますでしょうか?」

さやか「ええと、まわりくどい言い方じゃなくてもっとなんていうか……」

仁美「では……」

さやか「うん」


仁美「す……」

さやか「す?」

仁美「す、好き……なんですわ///」

さやか「え!?」

仁美「ですから、私、上条恭介君の事が以前から好きでしたのっ!////」

さやか「……ああ」

仁美「……お、お判りいただけましたか?」

さやか「……」

仁美「さやかさん?」

さやか「……」

仁美「さやかさんっ!?」

さやか「うん。話は判った。そっか仁美が恭介をねぇ……」

仁美「ちょっ……」


さやか「恭介は幸せだ」

仁美「あのさやかさん?」

さやか「恭介はさ、腕を怪我しちゃって落ち込んでいたけど、
     ほむらのおかげで立ち直れて、腕の回復も希望が見えてさ」

仁美「え? ええと、暁美さんのおかげで?」

さやか「うん。恭介は大きなハンデ背負ってこれからが大変なときだから」

仁美「それは人づてに少しだけ話を聞きましたわ」

さやか「だから、仁美も恭介を支えてあげて欲しいな。
     あ、でもそうか。ほむらとは喧嘩しないでよ?」

仁美「ええと、その暁美さんと上条君はおつき合い……しているのですか?」

さやか「ううん。ほむらにその気はないみたい」

仁美「そうでしたか」(ホッ

さやか「というか恭介は聞いての通りだし、ほむらにも今やらなければならない事があって、
     互いにそれどころじゃないんだ」

仁美「やらなければならない事?」


さやか「うん。でも今朝見た感じじゃお互いに満更でもなさそうだから、
     ほむらの方が落ち着くまで様子を見ようかなって思ってた所なんだ」

仁美「そうだったのですか……」

さやか「いや、でも流石恭介だよ。仁美にほむらでしょ? 美人に囲まれちゃって」

仁美「あの、さやかさんは……それで良いのですか?」

さやか「あたしじゃ駄目だったから」

仁美「え?」

さやか「あたしがいくらお見舞いに行っても恭介は立ち直れなかった。
     あたしには出来なかったのよ」

さやか「仁美はほむらに負けないくらい美人だし、優秀だし。
     きっと、ほむらみたいにあたしに出来なかった事してくれるよね」

仁美「そんな……」

さやか「なんか、あたしの出る幕無くなっちゃったな……あはは」

仁美「……」


さやか「まあ、恭介が夢を叶えられるなら良いかな……」

仁美「……いです」

さやか「え?」

仁美「良くないですわ」

さやか「どうして? これで良いのよ」

仁美「じゃあ、どうして泣きながら話しているんですか?」

さやか「え……あれ?」

仁美「さっき私が上条君のことを『好きです』と言ってからずっとですわ」

さやか「いや、そんなはずは………あれ? どうして……どうして止まんないのよ……」ボロボロ

仁美「上条君のことを見ていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですわ。
    ましては暁美さんとは比べ物にもならないでしょう?」

さやか「ただ長いだけよ。あたしは何の役にも立たないのよ」


仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ。
    だから、抜け駆けも横取りするようなこともしたくない。
    そう思って今日はさやかさんをお呼びしたんですのよ」

さやか「抜け駆けだなんて……あたしは恭介を巡って仁美と張り合うほどの価値はないよ」

仁美「……」

さやか「うるさいだけで何の取り柄も無いあたしなんて仁美と比べたらゴミ屑みたいなもんだし……」

仁美「……お黙りなさい」

さやか「仁美?」

仁美「私の大切なお友達を蔑むのは、それがたとえさやかさんといえども許しません」

さやか「え?」

仁美「私はさやかさんが何の取り柄もないなんて思っていませんよ。
    もちろん欠点はあるでしょう。でもそれはお互い様です。
    私は良い所も悪い所も知った上でさやかさんとお友達でいたいと思ってますのよ」

といいつつ、仁美はテーブルに置かれたさやかの手を包み込むように握る。


仁美「そのさやかさんをご自身が否定なさるなんて、私は悲しくなってしまいますわ」

さやか「仁美……」

仁美「ですから、どうかそんなに悲観なさらないでください。
    私でさえそう思うのにもっとお付き合いの長い
    上条君がそれを聞いたらどう思われるか」

さやか「……」

仁美「判りますよね?」

さやか「……幼馴染みって」

仁美「はい」

さやか「『大切な幼馴染み』って言ってくれたんだ。恭介は」

仁美「でしたら、あなたがその大切な幼馴染みのことを『価値がない』とか言ってはいけませんよね?」

さやか「……うん」

仁美「どうかご自身を大切になさってください」


さやか「大切に……?」

仁美「そうですわ」

さやか「ねえ仁美」

仁美「なんですか?」

さやか「自分を大切にってどうしたら良いの?」

仁美「あなた自身の本当の気持ちと向き合うことですわ」

さやか「本当の気持ち?」

仁美「私は今日一日だけ待って、上条君に私の気持ちを打ち明けるつもりでしたの」

さやか「え?」

仁美「でも、もう少し待ちますわ。暁美さんの事は聞いてませんでしたから」

仁美「暁美さんの『やらなければならない事』というのはいつ終わるか判っているのですか?」

さやか「ええと、誤差はあるけどあと四、五日位には必ずって……」

仁美「四、五日……もう少しじゃないですか。
    でしたらそれが終わるまで待ちます。その時もう一度さやかさんにお伝えしますから」

仁美「さやかさんは私の前に上条君に告白するかどうか、
    それまでに考えておいてください」

さやか「……」

ここまで。
今年中にワルさんまで行けないし


<マミとまどか。>

時間は戻って放課後、校門のところ。

マミ「おまたせ! さあ行くわよ!」

まどか。「あれ? ほむらちゃん待たないんですか?」

この所、顔をあわせる機会が少ないので出来れば会っておきたいまどか。であった。

マミ「今日はクラスのお友達と一緒なんですって」

まどか。「ええと、テレパシーで?」

マミ「そうよ。あなたのこと知らない子も一緒だから待ってないでって」

まどか。「そうなんだ……」

マミ「それと、あなたをお願いって頼まれたのよ」

まどか。「あ、そっか」(ちゃんと気にしてくれてるので安心した)


<ほむらとまどか>

時間はまた若干前後する。

今朝からの流れで何となく校門まではまどか、美樹さやか、志筑仁美と一緒に行く雰囲気になって
巴マミに「待たないように」と伝えた矢先のこと。
「二人でお話があります」と志筑仁美が美樹さやかを連れて先に行ってしまった。

ほむら(あの二人の話が終わるまで私がまどかに付いていないと……)

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「心配はいらないと思うけど、どうする?」

まどか「えっと……」

ほむら「近くで待ってみる? 終わってすぐ話を聞けるように」

まどか「う、うん」

ほむら「盗み聞きをしたいというのなら協力するけれど?」

まどか「ううん。さすがにそれは」

ほむら「そう。じゃあ行きましょう」


まどか「……さやかちゃんと仁美ちゃんどこ行ったか知ってるの?」

ほむら「ええ大体だけど」

今までの時間軸で確認したり干渉したことはなかったが、
あの二人が話をする場所の見当はついていた。

まどか「でも忙しいんでしょ? ごめんね。付き合ってもらって」

ほむら「気にしなくて良いわよ。あなたと一緒にいることも『やること』の一つだから」

まどか「そ、そうなんだ……」


美樹さやかと志筑仁美が入ったと思われるファーストフードに到着。

ほむら「偵察してくるから、ここで待ってて」

まどか「偵察って……」

ほむら「二人じゃ目立つから」

そう言って二階に登って階段から彼女たちが席にいるのを確認だけして
気づかれないようにまた戻ってきた。

ほむら「……一階で待ちましょ」

まどか「さやかちゃん達いたの?」

ほむら「ええ」


というわけで二人で待つ。

ほむら「……」

まどか「……」ソワソワ

何故かまどかが落ち着きがない。

ほむら「どうしたの? 緊張しているの?」

まどか「え? あの、ほむらちゃんと二人きりで話すのって、二回目くらいだよね?」

ほむら「そうだったかしら?」

まどか「前にほむらちゃんが一人でお部屋に来てたときに一回だけ……」

ほむら「ああ、そんなこともあったわね」

監視してるのがまどかにバレて、魔法少女の秘密を全部ぶっちゃけた時のことだろう。


ほむら(聞いておこうかしら?)

ほむら(色々あって見過ごしていたけれど、魔法少女が魔女になるのを見て、
     まどかがショックを受けてないはずが無い。なのにこのまどかは何故か妙に安定してる……)

まどか「……なあに?」

ほむら「いえその、この前あなた、QBと他の街の魔法少女に会いにいったわよね?」

まどか「!」

ほむら(表情を変えた?)

ほむら「ごめんなさい。思い出したくない事だった?」

まどか「……ううん。違うの。忘れちゃいけないことだから」

ほむら「忘ちゃいけない?」

まどか「うん。お話、聞いてくれる?」

ほむら「話してちょうだい。時間はあるわ」

まどか「えっと……、じゃあ話すね」

ほむら「ええ」


まどか「わたしってね、ほむらちゃんから魔法少女の事教えてもらってから……」

ほむら(そこからなのね)

まどか「……お話としては理解出来たんだけど、ずっとなんかおとぎ話みたいで実感が無くて」

まどか「マミさんにソウルジェム見せてもらって、それから魔女の話を聞いて、
     ああ、ほむらちゃんの言ってた事ってこれなんだって」

まどか「そのときちょっとだけ実感した気がしたんだけど、
     それからなんか気持ちがついていってないっていうか……」

ほむら「気持ちが?」

まどか「うん。マミさんの戦いに付いて行ったけど、怖いだけで何も考えられなかったから」

ほむら「それは無理も無いわ」

あれは、ほむら達にも責任があったのだし。


まどか「でもほむらちゃんもマミさんも、それから杏子ちゃんも、
     本当に戦ってるんだからそれじゃいけないって」

ほむら「いけなくはないわ。むしろ実感しない方が良いくらいよ」

まどか「ううん。やっぱりお友達の気持ちが判らないなんて嫌だよ。だから……」

ほむら「……それであんな無茶をしたの?」

まどか「心配かけちゃってごめんなさい。
     でも少しでもほむらちゃんたちの気持ちが判りたかったの」

まどか「でもね。他の魔法少女に会ってお話しして、それで疑われちゃって、
     魔法で喧嘩までしたのに」

ほむら(そこまでの話は聞いてないわ)

まどか「ソウルジェムの人が戦ってくれたからわたしは何もしてなくて、
     映画かなにかを見ているような感じで……」


ほむら(別の時間軸の巴マミの魂だってことは話してなかったのね。
     でもそうか。魔法の使い方が違うのか。
     こっちのまどかは身体を貸しているだけ……)

ほむら(……ってことは、ソウルジェムの魂の曖昧だった自我が目覚め始めてる?)

まどか「本当に人が死んじゃったんだよね……。
     わたし、びっくりしてばかりで、可哀想とか悲しいとか全然……」

ほむら「でもあなたはあのとき泣いてたわ」

まどか「うん。でもどうして泣いてたのかよく判らないの」

ほむら「混乱してたのよ。初陣でいきなり魔法少女と戦闘になって、
     そのあとすぐ相手が魔女化してしまったのでは、
     理解が追いつかなくてもおかしくはないわ」

まどか「今はもう全然実感もなくなっちゃってて……」

まどか「だからね、忘れない事にしたの。
     わたしの目の前で魔女になって死んじゃった、
     ううん“わたしの手”で倒しちゃったあの子たちの事を」


ほむら「……」

ほむら(何も言えないわ。まどかは自ら望んで行った、
     その結果をこうして受け止めようとしている……でも)

ほむら「まどか。しつこいようだけど何度でも言うわ。
     魔法少女にだけはならないで」

まどか「あのね。ちゃんと考えるから」

ほむら「え? 考えるって!?」

まどか「ほむらちゃんに言われたから、じゃなくて、
     わたしが魔法少女にならない理由をちゃんと考えるから」

ほむら「……」

まどか「だって、そうじゃないと命がけで戦ってるほむらちゃんに
     ちゃんと答えられないでしょ?」


ほむら「まどか……」

まどか「わたしね、ほむらちゃんが『遠い』って感じてるの。
     でもそれは単に魔法少女になるだけじゃ近くに行けないって
     なんとなく判るから」

まどか「そんな顔しないで。必ず答えを出すから」

ほむら「……」

ほむら(そんなようなことを言って、結局契約して、そして逝ってしまったまどかが居たわ)

ほむら(でも今は「するかしないか」ではなく「しない理由を考える」と言っている。
     余計な情報を与えて混乱させてない方がいいわよね……)


話が途切れ、互いに黙っているうちに美樹さやかが二階から降りて来た。

さやか「……いたんだ?」

まどか「さやかちゃん、仁美ちゃんは?」

さやか「え? い、いや……もうすこし居るって」(ほむらをチラ見

ほむら「なあに?」

さやか「な、なんでもない。行こう、まどか」

まどか「うん……」

ほむら「……じゃあ、今日もお願いね」

さやか「え? あ、うん。あの子が来るまでで良いのかな?
     流石に連日泊まりってわけにはいかないんだけど」

ほむら「ええ。それで良いわ」


さやか「一緒に行かないの?」

ほむら「忙しいのよ。色々と」

さやか「そっか。もうすぐだもんね。なんか実感沸かないけど」

ほむら「そういうものよ。でも来るときが来れば判るわ」

さやか「そんなもん? ……じゃあもう行くから」

まどか「ほむらちゃん、またね?」

ほむら「え、ええ」

二人の後ろ姿を見送りながら……

ほむら(……そうか)

と、ほむらは思いついた。


ほむら(美樹さやかとこれだけ親しくなれたのなら
     それが可能かどうかはともかく当日はこの街から
      避難するように言っておいた方が……)

そして、二人を追いかけようとしたところで、

「暁美さん」

後ろから声をかけられた。

ほむら「志筑仁美……さん?」

仁美「少しお時間頂いてよろしいでしょうか?」

どうやら偵察に行った時、彼女には気づかれていたらしい。

少し離れる
日付が変わってからもう少し投下します


結局、また二階席へ上がった。

仁美「……」

ほむら「……」

仁美「お忙しい所、おつき合いいただきまして」

ほむら「前置きは良いわ」

仁美「そうですか。では……ええと」

ほむら「上条恭介の件でしょう?」

仁美「そ、その通りですわ」

ほむら「美樹さやかが何を言ったか知らないけれど、
     私はもう上条恭介に関わるつもりはないから」


仁美「もう関わらない?」

ほむら「それが聞きたかったのでしょう?」

仁美「どういう事ですか?
    私は暁美さんのおかげで上条君が立ち直れたのだとお聞きしました」

ほむら「それが真実だとしても、私の行く道と彼の人生は偶然一度交わっただけよ。
     それが彼にとって幸運だった。ただそれだけ」

仁美「……でも今朝話されてましたよね? しかもずいぶん親しげに」

ほむら「クラスメイトとして普通に対応しただけよ。それ以上のものは何もないわ」

仁美「そうでしょうか?
    暁美さんはいままで殆どクラスの人と話をされてませんでしたよね?
    それを考えたら上条君と特別親しくなられたようにしか見えませんですわ」


ほむら「それこそ、そう見えただけよ。
     面識があるのにわざわざ無視する方がおかしいでしょ?」

仁美「私には暁美さんが言い訳されているように聞こえてならないのですが、
    私の気のせいでしょうか?」

ほむら「気のせいよ。クラスメイトの一人という以上の興味は無いわ」

仁美「……」

ほむら(納得いかない、という顔をしているわね)

仁美「……ここであなたがもう上条君に近づくことはないという言質を取っても
    意味の無い事だと思います」

ほむら「何が言いたいのかしら?」

仁美「あなたは何かどうしてもやらなければならない事があって、
    他の事を考えている余裕が無いそうですね」


ほむら「誰から聞いたのかしら? その通りだけど」

仁美「さやかさんがそう言ってましたわ」

ほむら「そう」

ほむら(また余計な事を)

仁美「今、そんな暁美さんの結論を聞くのはフェアでないと思います。
    なので『それ』が終わってからもう一度お聞かせ願えますか?」

ほむら「私に何を期待しているのか知らないけれど、答えは変わらないわよ」

仁美「それはその時になってみないと判りません」

ほむら「……」

ほむら(まっすぐな視線。どこまでも健全であろうとする精神。
     真っ当な人としてのエネルギーを感じるわ)

ほむら(魔法(こんなもの)に頼らないといけなかった私とは大違いね……)


ほむら(「あなたは私と関わるべきでない」と言ってやりたいけど)

ほむら(余計な事を言ったら美樹さやか以上に面倒なことになりそうだわ……)

仁美「暁美さん?」

ほむら「……あなたの言いたいことは判ったわ」

仁美「そうですか。それでは暁美さんに余裕ができてからでよろしいですから、
    もう一度お話をする機会を」

ほむら「ええ」

仁美「その時はさやかさんも一緒に三人でお話ししましょう」

ほむら(そうなるのね)

結局、既に面倒なことにはなっていた。
目前に迫ったワルプルギスの夜到来と比べれば、些細なことではあるが。

以上で今年の投下は終了
書き貯めが尽きてからずっとかつかつで今回も全部放出した


杏子「こんなとこに居たのか。なにやってんだ?」

ほむら「……決戦に向けての仕込みよ」

杏子「仕込み?」

ほむら「私は力が弱いからこういう武器に頼らざるを得ないの」

杏子「ああ、爆弾か」

ほむら「まだあるわよ。ミサイルとか地雷とか……」

杏子「良くそんなに集めたな」

ほむら「何回もやっていると慣れてくるものよ」

杏子「……繰り返してるって話か」

ほむら「聞いたのね」


杏子「マミから聞いたよ。別に隠してるわけじゃねえんだろ?」

ほむら「『今回』はね」

杏子「今回は、か。なるほどね。
    まあ昔の事はいいさ。目前の敵を倒す事だけ考えようぜ」

ほむら「そういう心構えでいてくれるのは頼もしいわ」

杏子「で、どうなんだ?」

ほむら「なにかしら?」

杏子「見込みはどうかって聞いてるんだ。こんだけ周到に準備してるんだ。
    予想くらいたててんだろ?」

ほむら「……判らないわ」

杏子「はぁ? なんつった?」


ほむら「勿論負けるつもりは無いわ。
     でもこの通常兵器の攻撃がワルプルギスの夜にどのくらい通用するのかは、
     はっきり言って判らないのよ」

杏子「おまえ、何回も戦ってんじゃねえのか?」

ほむら「今まで試したことのある攻撃は全て決定打になってなかった。
     だから今回も今までに無い量の兵器を用意したのよ」

杏子「ぶつけてみないと判らないってか?」

ほむら「今度こそ倒す。毎回そう思って準備をして来たわ……」

ほむら「でも、でもどうしても届かないのよ。
     あいつは全部の攻撃を食らってまだ生きている……」

杏子「なに暗くなってるんだよ」


ほむら「暗くもなるわよ。もう数えきれない程戦っているのに、まだ底が見えないのよ?」

杏子「おい! 首謀者がそんなんでどうするんだよ」

ほむら「……ごめんなさい。ちょと愚痴りたくなっただけよ。
     さっきも言った通り負ける気はない。今度こそ倒すわ」

杏子「お、おう」

ほむら「そうね。明るい見通しも言っておかないと。
     今までの経験からすると物理的攻撃より魔法の方が効いている印象があるのよ」

杏子「そうなのか?」

ほむら「私の魔法は弱いから比較にならないのだけど、
     他の魔法少女が戦ったのを見た限りではそう見えたわ」

杏子「ふうん」

ほむら「とはいっても、佐倉杏子、あなたがワルプルギスの夜とまともに戦ったのはまだ見た事が無いのだけど」


杏子「……まあ、協力しなかったとかそんなところか」

ほむら「そうね。あと戦っても万全じゃなかったり、
     戦う前に美樹さやかと心中してしまったり」

杏子「心中!? なんだそりゃ? さやかってあいつだろ? なんであたしが……」

ほむら「その話は機会があったら話してあげるわ。彼女が契約してない今、
     あなたには関係のない話よ」

杏子「なんか気になるぞ」

ほむら「それより、今回は私以外にベテランの魔法少女が万全の状態で二人も戦える。
     こんな事は今まで無かったわ」

ほむら「だからこの機会を無駄にしないためにも
     上手く連携して攻撃力を最大限生かせるように戦って欲しいわ」


杏子「元からそのつもりさ。つうかそういう話しにこいよ。
    このところ全然顔合わせないからわざわざここまで探しに来たんだぞ?」

ほむら「それは悪かったわ。ぎりぎりまで兵器を調達してからって思ってたから。
     そろそろ作戦会議を開こうと思っていたところなのよ」

杏子「そうしてくれ。ぶっつけ本番でも負ける気はねえけど、
    楽に勝てるならそれに越したことはねえしな」

ほむら「楽に勝てるなんて思わない方が良いわ」

杏子「言葉のアヤだ。手抜くつもりはねえよ。
    始めから負けるかもなんて思ってたら勝てるもんも勝てねえだろ?」

ほむら「ええそうね。その通りよ」

ほむら(やっぱり佐倉杏子は頼りになるわ。味方に出来て本当に良かった)

以上
スレがヤバそうなので即興で書いた

シナリオは出来てるんだ
なのにここで落ちたら目も当てられない


翌日。
昨日のこともあり、事前に皆に通告して巴マミのところで作戦会議を開いたのだが……

ほむら「……こうなる予感はしてたのよね」

杏子「ん? なんだ?」

ほむら「……なんでもないわ」

結局、杏子の「こちゃごちゃ話すより見た方が早いだろ」という主張にマミが同意し、
話し合いもそこそこに全員で魔女退治に出ていた。

何故「三人」と言わず「全員」なのかというと……、

まどか。「ほむらちゃんと一緒にって久しぶりかも」

ほむら「あなたまで来なくても良かったのに……」


まどか。「まどかちゃんなら大丈夫だよ。今日はさやかちゃんが泊まってくれるって」

ほむら「そうじゃなくて危ないから」

マミ「あら。この子その辺の生半可な魔法少女よりずっと強いわよ」

ほむら「まあ、そうでしょうけど……」

 『あのマミ』の魔力を使えるのだし、
 ここしばらくのベテランの巴マミとの共闘しているのだ。戦い方も覚えてきてるだろう。

 だが、どんなに強かろうと戦いに慣れようと、ほむらにとってまどかはあくまで『守るべき存在』だ。
 たとえ別の時間軸から連れて来たイレギュラーな存在だとしてもそれは変わらない。

杏子「まあいいじゃねえか。足手まといにはならねぇだろ」

ほむら「あら。どうしてそう言えるのかしら?」


杏子「一度見たからな」

マミ「あれから杏子とは時々一緒に戦ってるのよ。
   そのとき一度だけまどかさんだけで魔女を倒した事があって……」

ほむら「なんですって!」

マミ「え、え?」

ほむら「まどか!?」

まどか。「そんな怖い顔しないでよ。大丈夫だったから」

ほむら「危ない事はしないでって……」(マミの方に振り向いて

ほむら「……させないでって言っておいたでしょ!」

マミ「え? う、うん、でも……」

ほむら「でもじゃないわ。まどかだけで魔女と戦うなんて!」


マミ「ち、違うわよ。いえ、その通りとも言えるんだけど、あの時は私も杏子も一緒だったし」

ほむら「どういう事?」

まどか。「ほむらちゃん、大丈夫、大丈夫だから」

ほむら「大丈夫って、どういうことなの?」

まどか。「ほら、わたしの武器って弓矢でしょ? だから」

マミ「私と杏子がいつでも出られるようにした上で、遠くから攻撃してもらったのよ」

ほむら「それって……」

マミ「魔女相手にどのくらい通用するか見ただけなのよ。
   まさかそれだけで倒しちゃうなんて思ってなかったのだけど」


杏子「偶々魔女が弱ってたんだろ。
    でもまあ、あたしが見た限りじゃ足ひっぱる要素はねえな」

マミ「そうよね。自力で身は守れてたし*、遠距離の射撃もなかなか正確だし」
(*勝手に守ってくれる。本人は何もしてない)

ほむら「そう……なの?」

まどか。「うん。ほむらちゃんが心配するような事はなかったよ。
      というか危ない事はマミさんがさせてくれないし」

ほむら「……」

 そういえばその辺の話は一度聞いていた。
 まどかはあくまで援護役で、魔女と直接戦闘するのは巴マミだけだと。

ほむら(それにしても、これ以上まどかに実戦で自信を付られるのは不味い気がするわ。
     また無茶するかもしれないし……)


杏子「ん? どうした?」

ほむら「……なんでもないわ。大声出して悪かったわ」

マミ「いいえ。私の方こそちゃんと話してなくてごめんなさい」

ほむら「とにかく、まどかは全面に立って戦ってはダメよ。
     たとえ普通の魔法少女並みに強かったとしても、
     あなたの身体は普通の人間のままなのだから」

まどか。「うん……判ってるよ」

杏子「そうだったな。あたしとしちゃこいつを戦力に数えたい所なんだが……」

ほむら「ちょっと忘れないでちょうだい。
     それでもしまどかに何かあったらただじゃおかないわよ」

杏子「忘れちゃいないさ。ただな……」

ほむら「ただ、なによ?」

杏子「いや、見た方が早いか」(マミに視線向ける

マミ「?」


というわけで結界を発見し、中で魔女に遭遇。

ほむら(そういえば、あれから巴マミの戦闘を見るのは初めてだったわね)

マミ「早速行くわよ!」

ほむら「え? ちょっ……」

杏子「おい! またかよ」

ほむら「また……?」

 巴マミは魔女本体に向かって飛び出して行き……

ほむら「って、巴マミ!?」

 誘導ミサイルの弾道のように沢山の茨のような触手がマミに迫る。

 出遅れた杏子が後を追って援護しているがそれより速く、
 いやほとんど迫り来る触手を自力で強引に振り切って彼女は魔女本体に迫り、
 いつか部屋で見せたように一瞬で、しかも今回は大口径の銃を複数召還した。

 そして魔女がリアクションを取る暇も与えず全部の銃をゼロ距離でぶっ放した。


 血のように魔女の本体からどす黒い液体が噴き出し、
 動きを止めた触手は枯れたように地に落ちた。

 魔女はそれ以上の動きを見せようとしなかった。

ほむら「一体これは……」

 そして振り返ったマミは魔女の返り血(?)を浴びた顔でニコリと。

マミ『えへへ、暁美さんが見てるからちょっと張り切っちゃったわ♪』

 わざわざテレパシーでそんな事を言う。

杏子「……あたしの言った意味わかったろ?」

 いつの間にか杏子はほむらの隣に戻っていた。

ほむら「……」

杏子「今回は一段とえげつなかったな」


 巴マミはこんな戦い方をする魔法少女ではなかったはずだ。

ほむら「いきなりあんなに接近して魔女が反撃してきたらどうするのよ」

マミ「大丈夫よ。あの子は触手しか使えなかったから」

ほむら「他の攻撃手段を隠してる可能性は?」

マミ「それは無いわ。攻撃中魔力はほぼ全部触手に行ってたし」

ほむら「そもそも触手に追い付かれたらどうするつもりだったの?
     あなたの魔法は速度に特化してないわよね?」

マミ「でも私の方が速かったわ。もし追い付かれる程速かったら違う方法を考えたわよ」

ほむら「それにしても見てて危なっかしかったわ」

マミ「あら。心配してくれて嬉しいわ。
   でも大丈夫。あの程度の魔女にやられはしないわ」


ほむら「……あなたってもっとエレガントに闘う人じゃなかったかしら?」

マミ「無駄を省いたのよ。早く逝かせてあげないと可哀想でしょう?」

ほむら「省くって、紙一重だったじゃない。
     ちょっとでも判断ミスしたら死ぬわよ……ってまさか?」

マミ「まさか。私の願い知っているでしょう?」

ほむら「そ、そうだったわね」

 これは魔女化の事実を知って考えを改めたからか、
 あるいは『格好良く闘う』というこだわりが無くなったが故なのか。

 いずれにせよ『無駄を省いた』と言う彼女が魔女に向かって突進して行った姿は、
 いつぞやの自暴自棄になった美樹さやかの闘い方を彷彿とさせ
 ほむらをどこか不安にさせた。

ほむら(ベテランが二人も共闘してくれる今回は勝率が高い……)

ほむら(……はずよね?)

以上。
ねる

生存報告のみ。
すまそ


あの後、何回か三人で魔女狩りに出かけたのだが、
巴マミの戦術の『効率化』はさらに進んでいた。

マミ「任せてっ!」

ほむら「ちょっ、巴マミ!」

そして。

ほむら「……い、今のはなに!?」

杏子「リボンがいきなり爆発しやがった?」

魔女を守る使い魔達をリボンで拘束……と同時にそのまま爆破していた。
『銃を出して、かまえて撃つ』より確かに効率は良さそうだが。

そして直後、マミは爆煙の中心、魔女の居るであろう場所に突っ込んで行った。

ほむら「無茶よ! この前の魔女とは違う……って、ええっ!?」

……大爆発。

なにやら煤けたマミが、何事も無い表情で戻って来た。
もう結界の崩壊は始まっている。


マミ「……いまいちだったわ。もう少し無駄を省かないと」

ほむら「いまいちって……」

杏子「すげえな、手強そうだったのに瞬殺じゃねえか」

ほむら「……いったい何をしたの?」

使い魔達を倒した爆煙で様子が見えなかったのだ。

マミ「最初に見せたでしょ? 使い魔と一緒よ」

ほむら「ということは、やっぱりリボンが爆発?」

マミ「そうよ。暁美さんに習って一気に爆破しようと思って」

ほむら「別に私に習う必要はないと思うのだけど……というかあなたのリボン爆発できたのね」

マミ「ええ。出来たらなーって思って試したら出来たわ。
   遠距離射撃の必要がない相手だったら、打ち出す魔力を
   節約できるからこの方が良いでしょ?」

杏子「いや、今回のヤツは遠距離の方が楽だったろ?」

マミ「そうかしら?」


ほむら「……まあ良いわ。ワルプルギスの夜と戦うためにも魔力の無駄を省くのは悪い事ではないから」

マミ「そうよね」

ほむら「でも無茶はしないで」

マミ「ええ、判ってる。まだ余裕はあるわ」

ほむら(あれで余裕があるのか……)

ほむら(というか……)

何処がどういう風に、というのは今ひとつ判然としなかったが、
ほむらはこの戦法の変化になにか危険なものを感じていた。

以上。
少ない&進展が無い……


校舎を出た所。

さやか「天気、悪いわね……」

朝方天気予報が大型低気圧の接近を告げていた通り
折角晴れていた天気も放課後になって怪しくなっていた。

ほむら「……来るわね」

まどか「え?」

さやか「来るって? まさか……」

ほむら「タイミング的に多分そう。
     早くて今夜中、遅くとも明日の朝くらいだと思うわ」

さやか「……ワルプルギスの夜?」

ほむら「ええ。避難指示が来れば確定よ」

まどか「ほむらちゃん……」

すまない、続きはもうちょっとかかる


ほむら「あなた、避難するとしたら避難所はまどかと一緒なのかしら?」

さやか「うーん、どうなんだろ?
     生まれてこのかた避難所に避難なんてした事ないし」

ほむら(ワルプルギスの夜まで未契約で生き残った場合の彼女の避難先なんて
     確認した事がなかったわ)

ほむら「まあ、いいわ。だったら今夜はまどかの家に泊って」

さやか「え? それって?」

ほむら「ここからが正念場よ。
     私たちが戦っている間、まどかに言い寄ってくるあれの牽制をお願い」

さやか「ああ、QBね」

ほむら「ほかに何があるというの?」

さやか「というか、監視といいつつ、最近あいつ見てないから」

まどか「うん。普通にお泊まり会してたよね」


ほむら「それならそれで良いのよ。来ないに越したことはないわ。
     でも、きっと今まで貯めてた分、あらゆる手を尽くして契約を迫ってくると思うわ」

さやか「そっか。いよいよさやかちゃんが本当に役立つ時が来たって訳ね」

ほむら「まあ、そうなるわね」

さやか「ふふん、任せたまえ。QBが何を言って来ても絶対契約なんかさせないんだから」

ほむら「別にあなた個人には何も期待してないわ」

さやか「え……?」

ほむら「ただ、まどかとあなたでは性格が違うから契約を迫るポイントは違ってくるでしょう?
     だから一緒にいるだけでもあいつはやりにくくなるのよ」

まどか「うん。それはわかる気がする」

さやか「まどかまで!?」


まどか「ち、ちがうよ。判ったのはやりにくくなるって話で。
     さやかちゃんは頼りになるし、一緒に居てくれると心強いよ?」

さやか「まどか……」

まどか「ね?」ニコッ

さやか「やっぱまどかは優しいなー」

ほむら「と、とにかく! 必要なことはもう全部伝えてあるのだから、私たちが戦っている間、
     二人でQBの誘惑を乗り切ってちょうだい。それがあなた達の戦いよ」

まどか「う、うん。わかったよ」

さやか「了解した。で、これからほむらは?」

ほむら「最終の作戦会議よ」

さやか「そっか」

まどか「……次に会えるのは終わった後になるのかな?」

ほむら「余裕があれば避難が始まってから一回様子を見に行くわ」

少ないけどここまで


『本日午前7時、突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました。
付近にお住いの皆さんは、速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。
こちらは見滝原市役所広報車です……』


現場にて:ほむら、マミ、杏子


ほむら「……来るわ」

マミ「ええ。強大な瘴気を感じるわ」

杏子「にしても、妙な空だな。後ろ半分晴れてやがる」

ほむら「嵐の前の静けさってところよ。来たら大荒れね」

マミ「天気予報によると、上陸まであと一時間弱って言ってるわよ」

ほむら「ワルプルギスの夜の本体はまだ沖合みたいだわ。今回は歩みが遅いのね」

ほむら「でも油断しないで。手はず通りにね」

マミ「ええ」

杏子「判ってるさ」


《避難所のまどかとさやか》

さやか「来たわね」

まどか「うん。来たね……」

さやか「結局戦うのってほむらとマミさんとあの杏子って子の三人なんだよね」

まどか「……大丈夫かな」

さやか「もどかしいな。信じて待つしかないなんて……」

まどか「うん……」

さやか「……」

まどか「……?」

さやか「……えっと」ソワソワ

まどか「なあに?」

さやか「いや、ちょっとトイレに……」

まどか「我慢してたの?」

さやか「いや、だってアレが来たらまずいじゃん」

まどか「QB? 大丈夫だよ。近くにパパとママもいるし」

さやか「そ、そう? じゃ、ちょっと行ってくる」

まどか「うん。いってらしゃい」



~~


さやか「というわけで、すっきりしたあたしが帰り道、
     エントランスホールで見たものとは!!」

まどか。「なあにそれ?」

さやか「……っていうか、あんたこんな所に居たんだ」

まどか。「うん。わたしはここで待機なの。ここを守る担当だから」

さやか「そっか……」



さやか「……ときにあんた」

まどか。「ん? なあに?」

さやか「結局、何者なの?」

まどか。「あれ? わかんないの?」

さやか「わかんないわよ! っていうか聞いてないし」

まどか。「……聞いてこないから判ってるんだと思ってたよ」

さやか「魔法少女の秘密とかは教えてもらったけどさ、あんたたちのことはまだ何も聞いてないよ」

まどか。「わたしと、ほむらちゃんのことだよね?」

さやか「そうよ。ほむらとは恭介のことで色々話したから知った気になってたけど、
     考えてみたら肝心なところあたしは全然知らないわ」

まどか。「えっと、わたし、まどかだよ?」

さやか「いや、QBがそんなこと言ってたのは知ってるけど、あんたも正真正銘、鹿目まどかだって。
     それってどういうことなの?」

まどか。「……さやかちゃん、QBが他に何って言ったか覚えてる?」

さやか「え? えっと、ほむらの魔法のせいだっけ?」

まどか。「うん。さやかちゃんはその魔法って何だと思う?」

さやか「判んないから聞いてるんだけど」

QB「それは僕も是非君の言葉で聞きたいな」


まどか。「QB!?」

さやか「とうとう出たわね。っていうかQB、あんたは知ってるんじゃないの?」

QB「予想は立てているよ。でも仮説の域を出ないからね。
   当事者の話を聞いてそれが正しいのか確認したいと思っていたところさ」

さやか「……こんな事言ってるけど?」

まどか。「どうしよう……」

QB「警戒しないでほしいな。他意は無いよ。
   ただ君たちが生きているうちに確認しておきたかっただけなんだから」

さやか「生きているって、縁起でもない事いわないでよ」

QB「僕としても大変残念なことなんだけど、今戦いに行っている魔法少女達も含めて
   君たちが生き残る確率は低いと言わざるをえないんだ」

さやか「そ、そうなの?」

まどか。「さやかちゃん、ちゃんと聞かなくちゃ駄目だよ。
      『生き残れない』とは言っていないでしょ?」

QB「確かに。結果は終わってみないと判らないけどね」

さやか「う……そうよね」


QB「でも確率が低いと言ったのも本当の事さ」

まどか。「わたしはほむらちゃんを信じるよ」

QB「むこうの鹿目まどかも同じ事を言っていたね」

まどか。「まどかちゃんにも話して来たんだ」

さやか「いつの間に……油断も隙もないわね」

QB「残念ながらまだ契約してくれそうになかったけどね」

まどか。「さやかちゃん、はやく戻った方が良いよ」

さやか「う、うん……って話、聞いてないじゃん。教えてくれないの?」

まどか。「だってQBがいるし」

QB「気になるなら姿を隠してるよ」

まどか。「それって何処かで聞いてるってことでしょ?」

QB「君たち人間と違って感覚に空間の制限はないからね」

さやか「うげ……ストーカー?」

QB「いつでも何処でもって訳じゃない。有効範囲は無限じゃないし聞こうと思わなければ聞けないよ。
   ただ君たち程不便じゃないってだけさ」


まどか。「……QBに聞いてみようか?」

さやか「ん?」

まどか。「予想」

さやか「ああ。QBの仮説?」

まどか。「そう」

QB「それを話したら、その正否を答えてくれるのかい?」

まどか。「それは聞いてから考えるよ」

QB「まあ、いいだろう。話を聞いた君の反応だけでも
   どの程度的を射てるかの判断材料になるからね」



QB「僕は暁美ほむらの魔法は時間操作じゃないかと予想しているよ」

QB「彼女も警戒しているようで余り見せてくれないけど、
   何回か彼女が瞬間移動のような動きを見せたことがあったからね」

さやか「それが時間操作なの? テレポートじゃなくて?」

QB「テレポートしているように見えるのは彼女から見た周囲の時間を凍結した状態で移動したんだろう」

QB「根拠は彼女の既に先を知っているかのような行動や言動。
   それと僕に彼女と契約した記憶が無いことだ」

QB「時間の凍結はおそらく付随的なスキルで、
   彼女の本来の固有魔法は未来からの逆行がではないかと推測しているんだ」

QB「これなら、僕に契約の記憶が無い事も説明がつく。
   彼女は未来の僕と契約してこの時代に戻って来たんじゃないかな?」

さやか「逆行って……」

QB「つまり彼女はこの時間の人間ではないってことさ」

さやか「未来人?」

QB「そういう言いかたもあるね」


さやか「それって、本当ならほむらって結構すごいんじゃ?」

QB「そうだね。推測が正しいとすれば非常に希有な資質と言えるよ」

まどか。「え? でもほむらちゃんって……」

QB「なんだい?」

まどか。「おっと」

QB「僕で判る事なら答えるけど?」

まどか。「ええと、どういう風に『希有な資質』の?」

QB「端的に言えば時間操作の魔法自体が非常に珍しいってことさ。
   因果律を歪める程の力だからね」

まどか。「よくわからないよ……」

QB「君の口からその言葉がでるとはね」

まどか。「どういうこと?」

QB「今ここにいる君という存在自体がその魔法の成果じゃないのかい?」

まどか。「あ……そっか」



ほむら「そこまでにしておきなさい」

まどか。「ほむらちゃん!」

さやか「え? どうしてここにいるの? ワルプルギスは?」

ほむら「今、沖合い数十キロって所かしらね。今回はゆっくり接近してるみたいだから」

まどか。「大丈夫なの?」

ほむら「早くても具現化まであと2、30分って所よ」

さやか「そういえば災害情報でそんなこと言ってたような。
     ええと、魔女じゃなくてスーパーセル化した雷雲の固まりがなんとかって……」

さやか「……というか30分って、あんまり余裕無いんじゃない?」

ほむら「ええ。もう戻るわよ」


QB「……ところでそろそろ離してくれないかな?」

ほむら「コレと話なんてしては駄目よ」

まどか。「ほむらちゃん、その持ち方はちょっと……」

ほむらはQBの頭をわし掴みにしていた。


まどか。「契約とはあまり関係ない話だったんだけど」

さやか「まどかの、あっちのまどかの様子は見てきたの?」

ほむら「さっきまで話してたわよ」

QB「そうなんだ。暁美ほむらに話を邪魔されたからこっちに来たっていうのにさ……」

ほむら「というか美樹さやか、あなたは早くまどかの所に戻りなさい」

さやか「う、うん。そうだった」

ほむら「私ももう行くわ」

まどか。「頑張ってね」

ほむら「あなたもよ。絶対死なないで」

まどか。「うん。ほむらちゃんもだよ」

ここまでです


まどか。「……QB持って行っちゃったね」

さやか「外に捨てておくだって」

まどか。「ほむらちゃんらしいというか……どうせ戻ってくるのに」

さやか「殺しても別のが来るんだっけ?」

まどか。「うん。身体が変わるだけでやっぱり同じQBが現れるんだって」

さやか「うぇ……なんか……。ほむらの気持ち判らなくないかも」


さやか「それにしても、大変な戦いなんだよね」

まどか。「うん」

さやか「その割にはなんか軽いノリで行っちゃったような」

まどか。「そうでもないよ。むしろ流石ほむらちゃんだよ。
      あんなすごい魔女が来るのに全然焦ってないし」

さやか「あんなって、見た事あるような言い方ね」

まどか。「うん、あるよ……」

さやか「え?……ある……って?」

まどか。「……」

さやか「え? いつ? ってか未来……だよね? つまり、ほむらが未来人だから、まどかも? だよね?」

まどか。「そうだよ」


さやか「いやまあ、考えてみればそうなんでしょうけど……、でもじゃあアレは?」

まどか。「あれって?」

さやか「ほら、過去の自分に会うとおかしなことになっちゃうみたいな……」

まどか。「ええと、タイムパラドックスだっけ?」

さやか「そうそれ……じゃなくて、いや、それもそうなんだけど、それよりなんかものすごい違和感が」

まどか。「違和感? なあに?」

さやか「えっと……ほむらが未来から戻って来たのなら、ほむらが……ほむらが……あ!」

まどか。「??」


さやか「そうだよ、まどかは二人になっちゃってるのになんでほむらは一人なの?」

まどか。「ああ、そういえば、まどかちゃんにも言われたっけ」

さやか「え? なんて?」

まどか。「『わたしと出会うはずだったほむらちゃんはどこに行っちゃったの?』って」

さやか「まさにそれよ!」

まどか。「そっか。……あんまり考えた事無かったよ」

さやか「そこは考えようよ。おかしいでしょ?」

まどか。「うーん……」

~~

まどか。「もしかして、ここのほむらちゃんって居るのかな?」

さやか「え? 何処に?」

まどか。「ほむらちゃんの中に」

さやか「それって、つまり?」

まどか。「だって、魔法少女の本体はソウルジェムでしょ?」(胸に手を当て

さやか「うん」

まどか。「だから、わたしと同じ感じなのかなって」

さやか「?」

まどか。「ほら。これ」

さやか「あ、お守り……じゃなくて巾着?」


まどかは首にかけて服の下にしまっていた小さな巾着袋をみせていた。

まどか「違う世界のマミさん」

さやか「ええ!?」


~説明中~


さやか「……つまり、契約してないまどかが魔法使えるのは、そのマミさんが協力してくれるから?」

まどか。「そうなの」

さやか「じゃあ、ほむらの場合、契約した未来のほむらとここのほむらが協力してるとか?」

まどか。「それは判らないよ。ただ、そんなこともありえるのかなって」

さやか「なんかややこしいな」

まどか。「でもほむらちゃんが二人いるって感じたことないし……」

さやか「うーん……」


まどか。「………」(無言で立ち上がる

さやか「ん? どうしたの?」

まどか。「さやかちゃん、まどかちゃんのところに戻って」

さやか「う……なにか来た?」

まどか。「ううん。でもほむらちゃんたちが戦い始めたみたい」

さやか「そ、そうか。わかったわ」

いつの間にか外の風は強くなり、避難所の中にも風音が響いてくるようになっていた。

>>616 一カ所間違い:

まどか「違う世界のマミさん」
   ↓
まどか。「違う世界のマミさん」

ここまで
ねる


早足で歩くさやか。
一緒に避難していた鹿目一家のところへ戻る途中である。


QB「美樹さやか」

さやか「あ、QB。もう戻って来たのね。もうあんたと話す事は無いわよ」

QB「そう言わないでくれよ」

さやか「まどかのところまで付いてこないでくれる?」

QB「それは構わないけど、君は聞いておいた方が良いと思う話があるんだよ」

さやか「なによそれ。契約ならしないわよ」

QB「その君が願い事の対象にしようとしていた男の子のことさ」

さやか「って恭介のこと?」(立ち止まる

さやか「っていうか、あたしあんたに願い事話したことあったっけ?」

QB「君に契約してもらう為に色々検討している過程で知る機会があったのさ」

さやか「そうなの?」


QB「そうさ。出会った頃は君とも色々話をしていたんだし、
   その時得た情報から彼に辿り着いたって別におかしなことではないだろう?」

さやか「まあいいけど、それで恭介がどうしたのよ?」

QB「そうだったね。さっきその彼を外で見かけたんだ」

さやか「え!?」

QB「彼は足が不自由なんだろ? なのに一人で歩いていたからさ」

さやか「この嵐の中で? 見間違いじゃないの?」

QB「間違えたりなんかしないよ。彼は君の契約に関わる重要人物だからね。
   だからここは君に伝えておいた方が良いと思ったのさ」

さやか「どうして……まさかあんたがなんかしたんじゃないでしょうね?」

QB「まさか。僕は基本的に魔法少女やその候補者以外の人間には干渉しないよ。
   第一彼には僕が見えないじゃないか」


さやか「それもそうか。でもなんで……」

QB「戦闘はもう始まっているようだし、危険なんじゃないかな、彼」

さやか「そ、そうだよ、呼び戻さないと!」

そのとき、ガシャーンとガラスの割れる音と共に、「きゃーっ」と人の悲鳴が響いた。

さやか「!!」

QB「こっちでも始まったようだね」

さやか「……あの子、もう戦ってるの?」

QB「ワルプルギスの夜の使い魔が来ているのかな?」


さやか「……」

ガラスが割れた様子は今居る場所からは見えない。
だが、心なしか風の唸りがさっきより不気味に感じられた。

さやか「……恭介を助けに行かないと! QB!」

QB「外に出るのかい?」

さやか「恭介はどこ? 案内して!」

QB「彼は移動してたし遠くから見かけただけだからね。
   大体の場所しか判らないよ」

さやか「それでもいいから!」

QB「じゃあ、肩の上にお邪魔するよ。
   さすがにこの嵐の中じゃ僕は飛ばされてしまう」

さやか「いいよ。はやく乗って!」


避難所になっている建物の扉を開けると早速強風が顔を叩く。

さやか「う、これは……」

一瞬躊躇したが、意を決して外に出た。

気持ちの上では『駆け出し』たいところなのだが、思った以上に風の抵抗が強く、
一歩一歩歩みを進めるといった感じになっていた。

さやか「そういえばさ。あんたずいぶん素直に協力してくれるわね」

QB「納得いかないのかい?」

さやか「なんか企んでるんじゃないでしょうね?」

QB「ああ、そこ降りたら左だよ」

さやか「あ、こっちね……」


さやか「で、なにが狙いよ?」

QB「別に何も企んでなんかいないさ。
   ただ魔法少女候補者を無為に失いたくないってだけだよ」

さやか「どういうこと?」

QB「僕ならテレパシーの中継をしてあげられる」

さやか「ずいぶん気前がいいじゃないの。やっぱりなんか怪しいわ」

QB「君は何か誤解しているようだけど、僕はなにも君たちと敵対しようとしてるわけじゃない。
   奇跡を得る資格のあるものにその機会を与える役割を果たしているだけだよ」

さやか「契約する気なんてないわよ」

QB「まあ、契約してもらえるに越したことはないけど、
   そうじゃなくても、僕はここで君に死んで欲しくないんだよ」

さやか「それって、候補者だからでしょ? いつか契約できるかもっていう」

QB「もちろんだ。でも君はこの嵐の中、彼を捜して安全に連れ戻すという目的を果たしたいんだから利害は一致してるだろう?」


さやか「でもそれならあんた携帯よりは役に立つって程度じゃないの?」

QB「そんなことないさ。ワルプルギスの夜が来てるのに一般人の君が外に行くなんて
   何が起きるか判らないじゃないか。
   魔女や使い魔の行動についてなら僕の方が君よりはるかに詳しいんだ。
   何かあったとき適切なアドバイスが出来ると思うよ」

さやか「えっと……言い合ってる場合じゃないわね。まだなの? 恭介を見かけた場所って」

QB「この辺りだよ」

さやか「この辺りって……どっちに行ったのよ?」

QB「僕もここに戻る途中で見かけただけだからね。でも方角はたぶん……」(目線を向こうへ

さやか「あっち?」


QBの見る方向にはおどろおどろしい雲が渦巻いていた。

QB「魔力からしてワルプルギスの夜が出現している方角だね」

さやか「って、どうして恭介がそんな所に向かったのよ!?
     あいつ魔女とか見えないでしょ?」

QB「もしかしたら暁美ほむらを追っていたのかもしれない」

さやか「ええ!? ほむらを!?」

QB「ついさっきまで避難所に来てたじゃないか」

さやか「そんな……」

かきため出し切ったのでここまで


QB「そんなに闇雲に歩くべきじゃないな」

さやか「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?
     早く恭介に追い付かなくちゃ」

QB「いや、そういう事ではないよ」

そんなやり取りをししつつ建物の横を抜けると。

さやか「え? きゃーっ!」

QB「高い建物の近くは風が不規則に回り込んいてでスポットで強風が吹く場所があるんだ」

さやか「って、上着、脱げるっ! 脱げるって!」

QBがしがみついた上着が思い切り風に煽られはためいている。

QB「いやいや、ここで飛ばされるわけにはいかないからね。しっかり服を捕まえていてくれよ」

さやか「ちょ、なんでこんな時そんなに冷静なのよっ!!」

ビル風で髪までわちゃくちゃにされている。

QB「とにかく進むんだ。強風のスポットはそんなに広くない」


そして。

さやか「……はぁ、ここは風無いわね」

QB「どうやら一休みできそうだね」

さやか「なんなのよ。もう……」

上着はめくれシャツは伸ばされ、ブラの肩ひもが露になってたりする。

恭介「……」

さやか「って!!?」

恭介「や、やあ?」

さやか「きょ……」

恭介「ええと」

さやか「 恭 介 ぇ ! ! 」

さやか「なにやってんのよ!! こんな所で!!!」


恭介「さやか、落ちついてよ」

さやか「みんな避難してるのに、まだ足とか不自由なのに、一人で出て行くなんてっ!」

恭介「い、いや、それは……」

さやか「恭介になにかあったらあたし……」

恭介「大丈夫だよ。これでも杖なしで歩けるようになってきてるし。
    それでも安全のために杖は使って来たんだし」

さやか「そういう問題じゃないでしょ! 」

さやか「……心配したんだから」

恭介「う、うん。ところでさやか」

さやか「ん、なに?」

恭介「……そろそろ服を直した方がいいと思うよ///」

さやか「え! きゃっ///」


さやかが服やら髪やらを整えた後。

恭介「ところで暁美さんを見なかったかい? 避難所と反対の方へ歩いていったから心配で」

さやか「し、知らないけど、もう避難所に戻ってるでしょ?」

恭介「そうだといいんだけど、避難指示が出てるから心配で」

さやか「とにかく早く避難所に行こうよ!」

QB「たいへんだ、さやか。使い魔が近づいている」

さやか「ええ!?」

恭介「ん? どうしたんだい?」

さやか「え? いや……」

さやか「使い魔って?」(ヒソヒソ

QB「かなり強力な魔力を感じるよ。最初魔女かと思ったくらいだ。
   これはおそらくワルプルギスの夜の使い魔だね」

さやか「ど、どうすんのよ! そんなの来たら……」

QB「そうだね。魔法少女でない君たちではひとたまりもないだろう」

さやか「それって」

恭介「さやか? そこに誰か居るのかい?」

さやか「え? いや、ちょっとまって、それどころじゃ……」

恭介「?」


さやか「と、とにかく、そう、あれだわ。何か飛んで来たら危ないから一端何処かに入ろうよ」

恭介「そうかい? ならそっちに良い所があるよ。さっきまで僕が休んでいたんだけど」

とりあえずしっかりした屋根があり風を遮るものもある場所に隠れた二人+一匹。

そして、ちょっと様子を見てくるから恭介は休んでてとか言って
なんとかQBと話が出来る所に移動した。

QB「確かにここは雨風をしのげる場所だけど、魔女の使い魔からは安全とは言えないな」

さやか「ど、どうするのよ!?」

QB「……だが君はこの状況を打破する力を持っている」

さやか「え……あ……そういう」

QB「どうだい? 契約するかい?」

さやか「……最初からそのつもりだったのね」

QB「いいや、想定してなかったとは言わないけど、
   僕としてはこんな状況で君との契約は避けたいと思っているよ」

さやか「え? そうなの?」


QB「そりゃそうさ。相手はあのワルプルギスの夜の強力な使い魔なんだ。
   契約したてで戦闘経験のない魔法少女が一人で戦って勝てる相手じゃない。
   エネルギー回収の見込みがほぼゼロなのに契約はしたくないよ」

さやか「そういうものなの?
     あたし、魔法少女になれば魔女とか使い魔を倒す力が付くんだって思っていたんだけど」

QB「まあ、間違いではないけど、知ってるかい?
   魔法少女が初戦で命を落とす確率は結構高いんだよ」

さやか「そうだったんだ……」

といいつつ、何か引っかかる。
なんだろうとちょっと考え込むさやか。

が、すぐに思い当たる。

さやか「……あれ? じゃあなんで今はあたしと契約したくないとか言うの?」

QB「どういうことだい?」

さやか「いや、だって今までもかなりの確率で死んじゃうって判ってて色んな子と契約してきたってことでしょ?
     だったら今の状況とどう違うのかなって」


さやか「まあ言ってくれるのはありがたいんだけどさ、
     まさかあたしだけ贔屓してくれてるわけ……ないよね?」

QB「贔屓じゃないよ。ただ君はもう色々知っているからね。
   それに100%死ぬと判ったら流石の僕でも契約は奨めないよ」

さやか「近づいてるやつってそんなに強いの?」

QB「魔力を見る限りはね。だいたい君の性格なら今契約したら、
   十中八九直接戦闘に打って出るんじゃないかな?」

さやか「う、そうかも……」

QB「契約を奨めないのはそれも考慮しての事だよ。
   ここで契約して下手に使い魔を呼び寄せるよりも、
   むしろここで息をひそめて通り過ぎるのを待った方が生存率は高いだろうしね」

さやか「そ、そっか……でも本当に危なくなったら?
     例えば直接戦わないにしても魔法があった方が助かるってことはないの?」

QB「それは状況次第だね。
   もちろん君が契約に値する願い事をもって魔法少女になることを望むなら僕は拒絶しないよ。
   僕が君と一緒にいるというのはそういう事だからね」

さやか「つまり、決めるのはあたしってこと?」

QB「その通りさ。アドバイスはするけどね」

さやか「そっか……」

ここまで。
話がすすまない……

復活っ!
だが生存報告だけ。
すまん


ワルプルギス出現予測地点にて。

ほむら「……用意はいいわね?」

マミ「問題ないわ」

杏子「……こいつらは?」

ほむら「無視していいわ」

象とかピエロとか小人とか。使い魔たちのパレードが三人の横を通り過ぎていく。

まだ空は半分明るかった。

が、





前方から広がるように全天があっという間に暗くなる。






ワルプルギス「キャハハハハハハハハノ\ノ\ノ \ノ\ハハハハハ……」

マミ「あれが……」

杏子「でけえな」

ほむら「……手筈通りいくわよ」

マミ「ええ」


一方こちらは。

たまたま鍵が開いていて中に入ることができたので建物の二階の空き部屋に避難していたさやか達。

急に空が暗くなったので道路に面した窓から外の様子を伺っていた。

さやか「うわっ……あれが使い魔?」

QB「そうだね」

遊園地のパレードのように装飾された象やらピエロやら小人っぽい生き物達が道路を練り歩いてきた。

さやか「襲ってこない?」

QB「わからない。でも見つからないように息をひそめてじっとしていた方がいいだろう」

さやか「う、うん……」

恭介「さやか? そこで何をしているんだい?」

さやか「きょ、恭介!? しっ!」

恭介「え? なに?」

さやか「だから、静かにして!」

恭介「?? 外に何かいるのかい?」

窓の外を覗く恭介。

さやか「だ、ダメっ! 見つかっちゃう」


恭介「……何もいないよ?」

さやか「え」

さやか(そっか、恭介には見えないんだ)

さやか「と、とにかく……」

恭介を引っ張りつつ外を見ると。

使い魔たちが通り過ぎながらこちらに手を振ったり紙ふぶきを散らしたりやんやと騒いでる。
こちらは認識しているようす。

さやか「あれ?」

QB「どうやら戦闘型の使い魔ではなかったようだね」

さやか「……あ、安心していいのかな?」

QB「いや、そう悠長なことは言ってられないよ。
  使い魔が来たってことはいずれ魔女本体もここにやってくるだろう。
  彼らはいわば斥候みたいなものだろうからね」

さやか「じゃあ、逃げないと」

QB「今外に出るのは危険だ。道路は使い魔たちでいっぱいだよ」


恭介「さやか、さっきから誰と話しているんだい?」

さやか「え? いや、その」

恭介「誰かと電話しているのかい?」

さやか「え? う、うん。そんなところよ。ほら、あたし避難所から恭介探しに出てきちゃったから」

恭介「そっか。迷惑をかけたみたいだね」

さやか「そんなことないよ」

恭介「それで暁美さんのことは伝えてくれたのかい?」

さやか「う、うん。ええと……うん。その、調べてくれてる筈よ」

恭介「そうか……いったん避難所へ行った方がいいのかな」

さやか「駄目、今外に出るのは」

恭介「え?」

さやか「あ、いや、風も強くなってきてるしここで待機したほうが良いんじゃないかなって……」

恭介「まあこの建物ならしっかりしてそうだけど」

さやか「そうだよ。大丈夫、きっとそのうち通り過ぎるよ」

QB「僕もその判断に賛成だ。もう少し待って隙を見て移動することをお勧めするよ」


ほむら達の状況。


ワルプルギス「キャハハハハハハハハ……」

ワルプルギスの夜はほむらの総攻撃を受けてカウンターにビームを放ってきた。

爆炎が消え去る前にいきなりの不意打ちだったが
とっさにマミがリボンの防御プラスその爆発で軌道をそらし、三人とも無事だった。

杏子「危っぶねえな……。おい! 効いてねえぞ!」

マミ「あれだけ攻撃を重ねたのよ?」

ほむら「ダメージはあったはずよ! 続けていくわ!」

杏子「ほむら!!」

ほむらの背後に人型の使い魔。

ほむら「え?」

だが、一瞬でマミのリボンが絡みつき、爆発。

マミ「暁美さんには傷一つつけさせないわよ」

続けて来た使い魔たちも同様に瞬殺される。

ほむら「……頼もしいわね」

杏子「感心している場合じゃねえ。油断するなよ」

ほむら「判ってるわ」

マミ「ええ。じゃあ行きましょ」


三人で手をつないで。

杏子「また来たぞ!」

ほむら「相手にしないで!」

時間停止する。

マミ「さあ、行きましょ」

杏子「お、おう」

そして、ワルプルギスの夜本体にぎりぎりまで接近する。

ほむら「私の大火力武器はもう全部使ってしまったから」

もうほむらには銃とか手りゅう弾程度しか残っていない。

出し惜しみしたつもりはなかった。だが用意した火力では倒しきれなかったのだ。

マミ「ええ。私の出番ね?」

ほむら「最大火力でお願いね」

マミ「任せなさい! 悪いけど暁美さん、私に掴まっていて」

両手を開けるためだ。

なのでマミの背後からほむらが掴まりその後ろに杏子という形になる。

ちなみに杏子は今のところ援護役で時間停止中は休憩時間である。

そして、マミの直上に巨大な砲身が形成される。


ほむら「今回は大砲なのね」

マミ「ええ。派手に行くわよ」

魔翌力の無駄を省くのはどうしたとか思っていたら、
以前見たのと違い砲弾まで事前にリボンから形成していた。

ほむら「それは?」

マミ「ふふっ。見てなさい」

巨大なリボンの塊に見える。

それを大砲に込めて、発砲。

マミが面倒くさそうな技名を叫んでいたが、そこはスルーして。

弾丸は有線誘導式のミサイルのようにリボンで砲身と結ばれたまま飛んでいった。
そのため途中で静止せずに魔女に命中、そこで炸裂して大量のリボンを放出した。

ほむら「あの大きな魔女を覆い尽くす気?」

マミ「さすがにそれは無理よ。でも縛り付けることは出来ると思うわ」

リボンはまだマミと繋がっていてワルプルギスの夜を幾重にも緊縛していった。

そして仕上げにマミは砲弾を発射した大きな大砲そのものを投げつけた。

ほむら「それも投げちゃうの?」

マミの手から離れた砲身は魔女に到達する前に静止したが。

マミ「ええ。無駄にはしないわ」

杏子「これで終わるか?」

ほむら「判らないわ。だから油断しないで。特に使い魔の動きには注意して」

杏子「おう。雑魚は任せとけ」


結論を言うとマミの攻撃でもまだ倒せなかった。

時間停止解除後、即、魔女を網目のごとく覆っていたリボン全てが爆発を起こし、
それに追い打ちをかけるようにマミの投げた砲身が魔女に激突して追い打ちをかける大爆発。

杏子が思わず「やったか?」と漏らしたが直後、爆炎の中から人型の使い魔が大量に湧き、
魔女本体の攻撃であるあのビームがまたほむら達を襲ったのだ。

マミ「一旦引いて体制を立て直しましょ!」

あれだけ大掛かりな攻撃だ。マミがそう言うってことは魔翌力を消耗したのだろう。
回復が必要なのだ。

杏子「そうだな。これじゃキリがないぜ」

杏子は槍を使って、マミは例のリボン爆破で襲って来る使い魔を蹴散らしていた。

そして使い魔の攻撃の合間を縫うように襲い来る本体からのあのビーム攻撃。
このままではこちらの体力が削られるばかりで埒があかなかった。

マミ「暁美さん!」

杏子「何してる、一旦距離を取るぞ」

ほむら「……ごめんなさい」

マミ「あなたも魔翌力切れ? だったら私に掴まって」

マミが手を引く。

杏子「スピードならあたしの方が出るぞ」

杏子が後ろから抱える。

まだグリーフシードには余裕はあった。

マミ「反撃が激しくなっているのはダメージが通っている証拠よ」

杏子「そうだな」

サーバーか回線か調子が悪い
書き込み全部エラーだった。書き込めてたけど。

というわけでここまで。

しまったメール欄sage sageになってた
次から気を付ける


ようやく使い魔たちのパレードが通り過ぎ、用心しつつ外に出てきたさやか達。

さやか『あれ、何? あれも使い魔?』テレパシー

何か黒にダブって色のついたような妙な見え方の影が複数飛んでいくのを目撃した。

QB『そうだね。さっきのよりずっと強力だ』

さやか『あっちって避難所の方じゃない!』

QB『まどかの持ったソウルジェムの魔力を感じたんだろうね』

さやか『それって……まずいんじゃん』

QB『お勧めでないが、君が今契約してこちらに使い魔たちをおびき寄せてみるかい?』

さやか『それはちょっと……でもじゃあどうしたら』

避難所に戻って良いのかどうか、だ。

その時ドーンと大きな音とともに地面が振動した。

恭介「うわあ!」

さやか「なに? 何が起こったの!?」


ガラガラと数件先のビルが崩壊していく。
いや、崩壊したビルが建っているビルに突き刺さっている?

恭介「あれは……?」

さやか「ビルが降ってきた?」

QB「おそらくワルプルギスの夜の攻撃だね。強大な魔力を感じるよ」

さやか「どどど、どうしよう!!」

恭介「とにかく、逃げよう! あんなのに遭ったらひとたまりもない」

さやか「う、うん!」

とはいっても恭介は足が不自由だ。

さやか「こっち! 恭介、大丈夫?」

恭介「うん。すまない肩を借りて」

さやか「いいから早く!」


ほむら達の状況。時間は若干前後する。

ほむら(今回はワルプルギスの夜がゆっくり来たからだわ……)

火力の要のマミは今、回復中である。

マミ「? 暁美さん、何か深刻そうな顔してるわ」

杏子「どうした? 何か問題でもあるのか?」

ほむら「聞いて。もう私は時間停止の魔法を使えないわ」

杏子「なんだって?」

ほむら「この魔法は期間限定なの。過去に跳んだ一か月を過ぎると使えなくなってしまう」

マミ「そうだったの」

杏子「そういうことは前もって言っとけよ」

ほむら「ごめんなさい。今回戦闘が始まるのが遅かったのを失念してたわ」


マミ「となると、今からは私と杏子で戦うってことかしら」

ほむら「主戦力はそうなるわね。でも……」

マミ「心配しないで。ダメージはかなり与えたわ。このまま続ければきっと勝てる」

杏子「そうだな。ほむらがいる間は楽してたから今度はあたしの番だ」

マミ「援護はお願いね」

杏子「任せとけ、絶対マミに使い魔は近づかせねえよ」

マミ「じゃあ、暁美さん、あなたはここで待機かしら?」

ほむら「いえ、まだ弾はある。使い魔を攻撃するくらいなら出来るわ」

杏子「足引っ張んなよ?」

ほむら「判ってるわ。この状態だって何回も戦ったことがあるのよ」

マミ「じゃあ、暁美さんと二人で援護役をお願いね」


回復は出来た。いざ出陣。

杏子「……アレが来たか」

マミ「さすがに厄介ね」

ほむら「気を付けて。巻き込まれたらただでは済まないわ」

再び魔女の前に出ていきなりビル攻撃がきた。

この攻撃があることは事前に伝えていた。

しかし知っていた位でどうにかなるものではない。
大質量が飛んでくるので巻き込まれただけで大打撃をこうむってしまうのだ。

杏子「おいおい」

マミ「使い魔があんなに」

杏子「敵さんも本腰入れてきたってわけだな」

使い魔たちがワルプルギスの夜本体の前に立ちふさがるようにしていた。

マミ「もっと接近しないと。行くわよ!」

杏子「おう!」

近づけば本体からのビーム攻撃にも用心しないといけない。
さらに上からはビルも降ってくる。
危険度はうなぎのぼりである。ここへ来てほむらの時間停止が無くなったのは痛手だった。

ほむら「くっ……一撃じゃ倒せない」

使い魔の一体を倒すのにほむらの銃撃で数発が必要だった。

杏子「無理すんなよ!」

一方、気合の入った杏子はほぼ一撃で一体を切り裂いていた。


こちらは避難所の様子。

まどか。「当たれ! 当たれぇ!」

避難所を襲う人型の使い魔。残りはあと3体。

まどか。は建物の屋根の上でそれらと交戦していた。

魔法の武器の場合、攻撃は技術より心のウエイトが大きい。

そしてまどかの武器は弓矢。

『当てよう』というか『当たる』思って射れば当たる。そういうものである。

一見万能そうなその仕様だが、相手が意志を持った存在の場合、話は別である。

要は相手の『避ける』とか『当たらない』といったような否定する思念との力比べになってしまうのだ。

ワルプルギスの夜のような数百年を単位に絶望と呪いを蓄積してきた魔女の使い魔となると、
なかなか一筋縄でいかない。

ましてはまどか。の魔法は借り物。
『当たれ』という感情はワンクッション置いたものになっている。

それはここにきて大きなハンデになっていた。


まどか。(なかなか当たらない……でもわたしがここを守らなきゃ!)

矢を大量に浪費しつつも何とか二体まで使い魔を倒していた。

まどか。「あとひとつ……早く倒さなきゃ……」

避難所を襲う使い魔がこれだけで終わる筈はない。
ここで手間取っていれば取り返しがつかないことになってしまうかもしれない。

そんな焦りが油断を招いた。

まどか。「あっ……っ!!」

使い魔の体当たりを受け、屋根に叩きつけらてしまう。

屋根が凹み、下から悲鳴が聞こえる。まどか自身は悲鳴も上げられなかった。

まどか。「……っ、くぅっ」

体中が痛い。

ソウルジェムのマミによって防御はあったが、
これはいつでも万全というわけではないのだ。

まどか「て、敵は……?」


風雨が顔を濡らしている。

雨が目にはいって視界が霞む。

襲い来る使い魔が視界いっぱいに広がった時、無意識に矢を放っていた。


まどか。「っ、はぁっ、はぁっ……」

まどか。「……倒したの?」

最後の一体も何とか倒せたようだ。

まどか。「ソウルジェム……マミさん、浄化してあげないと……」

~~

さやか「恭介! 恭介ぇぇっ!!」

QB「まずは落ち着くんだ」

さやか「だって、恭介がっ! 恭介が死んじゃう!!」

QB「そうだね。彼の生存のために普通なら一秒を争う状況だ。
   だが君が『最後のカード』を切るつもりならまだ余裕は十分にある」

さやか「え……」

QB「彼はまだ生きている。でももう少しすれば現代の人類の技術では助からない段階に入るだろう」

QB「だから、まずは決断するんだ。
   その上で君の最後の最強のカードを切る気になったのなら、
   慎重に願い事を決めるんだ」

さやか「……選ぶしかないの?」

QB「救助を待っても、その時までに彼が完全に死んでしまっていたらどうだろう?
   後になるほど完璧な蘇生は難しくなっていくよ」

QB「それは時間のスケールが少し違うだけで救命処置も魔法少女の願い事も同じだよ」

さやか「判ったわ。ごちゃごちゃ考えるのはあたし向きじゃない。
     あたしは恭介を助けたいのよ」

QB「そうか、それじゃあ……」




さやか「恭介、よかった……」

さやかを庇って代わりにビルの崩壊に巻き込まれ、その生存は絶望的だった上条恭介だったが、

恭介「zzzzzz……」

今や彼は傷一つなく、静かに眠っていた。

QB「今更だけど、よかったのかい?」

さやか「後悔はないよ。恭介が庇ってくれなかったらあたし死んでたんだから。
     もらった命、返しただけ」

QB「そうか。それで納得してるなら別に良いんだ」

さやか「にしても、これが魔法少女……なんか今なら何でも出来る気がするわ」

QB「契約直後で気分が高揚しているところ申し訳ないけど」

さやか「なによ」

QB「今、その想いのまま行動を起こしたらおそらく残念な結果になってしまうだろうから自重してくれ」

さやか「残念って……」

QB「今時点で君は君が思う程強くはないからね」

さやか「えー」

QB「さっき言った通り単独での直接戦闘は避けるべきだ」

さやか「まずは……恭介を安全なところへ運ぶのが優先?」

QB「そうだね。それもそうだけど、なるべく早く誰か他の魔法少女と合流した方がいい。
   この状況じゃいずれ使い魔と遭遇するのは確実だろうからね」

さやか「そ、そうなの? なら恭介を避難所に運んだらそうするわ」


そのとき避難所では。

まどかが様子を見に来たとき、もう一人のまどかがエントランスホールの隅で
壁にもたれて足を投げ出すようにして座っていた。

まどか「まどかさん!?」

まどか。「あ……」

まどか「こんなに汚れて……」

服も泥だらけで全身ずぶ濡れだった。

まどか。「うぇへへ、ここに入る前に転んじゃって……」

まどか「大丈夫?」

せめて顔だけでもと、ハンカチを出して彼女の顔を拭った。

彼女の手元にはソウルジェム。グリフシードで浄化していたようだ。

まどか「待って。今何か……」

着替えとかタオルとか、必要なものに思いを巡らせていると、

まどか。「いいよ、すぐ出なきゃ」

まどか「え? でも……」


まどか。「次のが来るから」

そう言って立ち上がろうとするが。

まどか「あっ!」

足に力が入らないようで、ずるっとまたお尻をついてしまう。

まどか。「あいたた……まだ無理か……早くしなきゃいけないのに」

よく見ると上体を支える彼女の手が震えている。

まどか「怪我、してるの?」

まどか。「大丈夫。かすり傷だよ」

まどか「大丈夫じゃないよ!」

と、まどかが両肩を掴んだ。

まどか。「うっ、くぅっ……」

まどか「ほら……あ、ごめん」

まどか。「でもわたしが行かなきゃ。わたしがここを守らないとみんなが……死んじゃう……」

まどか「まどかさん……」

~~

ワルプルギス戦の様子。

マミ「もう一回よ!」

杏子「おう! 今度こそ!」

ほむら達はワルプルギスの夜に対して先ほどのような攻撃を繰り返していた。

ほむら「くっ……」

マミ「暁美さんはもう下がって!」

ほむら「……ごめんなさい」

杏子「いや、十分だ。あとは任せろ」

ワルプルギスへ攻撃するたびにその反撃は激しさを増していた。

そんな中、やはりほむらの火力不足は否めず、
油断したつもりはなかったが、戦闘でマミや杏子の足を引っ張る程のダメージを負ってしまっていた。

~~


恭介を背負って避難所の前にたどり着いたさやか。

既に外は雨が降り出していてずぶ濡れになってしまったが、
なんとか無事に帰ってこれた。

QB「戦闘にならずにすんで良かったよ」

さやか「うん。恭介の命がかかってるもんね」

QB「僕に言わせれば美樹さやか、君もだよ」

QB「せっかく契約したというのに、エネルギーの回収も出来ずに死なれてしまったら
   意味が無いからね」

さやか「あんた、あたしが全部知ってるからってずいぶんな言いようじゃない」

QB「君たちの理解できない反応を危惧する必要が無いからね。
   というか君はそれも含めて納得して契約したんだろう?」

さやか「まあ、そういうことになるのかな?
     でも簡単に魔女になんてなってやらないわよ」

QB「まあ、終点が変わらないのなら、君がどれだけ長くい生き残ろうと構わないさ。
   僕たちが人類とかかわってきた年数と比べれば大したことが無いだろうしね」

さやか「そういう考え方なんだ……まあいいけど」


さやか「にしても……」

せっかく魔法少女になったというのに使い魔に見つからないように
魔法は使わずこそこそと移動して来たためか、少々不満げである。

だが、建物に入ってすぐ、エントランスホースがなにやら騒がしいことに気付く。

さやか「なんだろう?」

ホールの端っこに人が集まってる。

担架に人を乗せて運ぼうとしている様子だった。

QB「あれはまどかじゃないか」

さやか「ええ!?」

QB「ちょっと見てくるよ」

QBはその人の集まってる方へ駆けていった。

さやか「まどか……でも恭介も早くしないと」

大人「君! その子はどうしたんだ」

さやか「あ、大丈夫です。怪我してるわけじゃないので」

大人「そうか、とにかく来なさい。風邪をひいてしまう」

さやか「はい……」

ここまで。
おやすみ


建物の二階外側通路にあるバルコニーに出るための扉の前。

詢子「おい! 何処へ行こうってんだ!」

まどか「ママ……」

詢子が手を掴み、まどかを引き止めていた。

まどか「お願い、行かせて」

詢子「なんでだ? なんでお前が行かなきゃいけないんだ?」

まどか「私しかいないの、私が行かないとみんなが……」

詢子「てめぇ一人のための命じゃねぇんだ! あのなぁ、そういう勝手やらかして、周りがどれだけ…」

まどか「わかってる。私にもよくわかる。でも」

詢子「『判ってる』、か。
    あの子が現れてから、あたしじゃ代われねぇ何かをやってるのは知ってたさ。
    だからいつかこうなるんじゃねえかとも思っていた」


まどか「だったら……だったら判ってよ」

詢子「だがな、お前、覚悟はできてんのか? あの子の怪我、見たんだろ?」

まどか「私は平気だよ!」

詢子「そうじゃねえ! てめぇを心配するやつ全員の気持ちを背負って行く覚悟はあるのかって訊いてるんだ!」

まどか「……うん……あるよ?
     判ってる。あのまどかちゃんが怪我してるの見てわたし悲しくなったから」

詢子「だったら……」

まどか「だからだよ」

まどか「みんなが悲しまない為にできること。今、わたしにしかできないこと」

まどか「今、それをしなかったらわたし、一生後悔するよ」

詢子「まどか……おまえ……」


まどか「だから。ママが何って言っても私は行くよ。ううん、行かなきゃいけないの」

詢子(説得は逆効果だったか……かえってまどかの決心を確認させちまった……)

詢子はまどかの手を放し、背中を押した。

まどか「ママ?」

詢子「……だったら約束しろ! あたしも悲しませないって、和久もタツヤもだ!」

まどか「あ……」

詢子「仲間がいるんだろ? 絶対一人で無茶すんなよ!」

まどか「……うん!」

去り際に振り返って、

まどか「ママ、ありがとう!」

~~

一方こちらは避難所の建物の医務室。

さやか「まどか、まどか!」

まどか。「うぇ……あれ、さやかちゃん?」

さやか「どうしたのよ? もしかしてあんた二号の方?」

髪を結んでいなかったからそう聞いた。

まどか。「そうだよ」

さやか「じゃあ、まさか……」

詢子「……さやかちゃん。今『二号の方』って言ったな?」

いつのまにか背後に詢子がいた。

さやか「え? (おばさんの目が怖い……)」


医務室から場所を変えて。

詢子「……そうか。あんたは知ってたんだな」

さやか「ええと……」

詢子「まどかと一緒に巻き込まれたってとこか」

さやか「は、はい……」

詢子「あんたも何をしているのか話ちゃくれないのかい?」

さやか「あー……すいません」

詢子「……まあ無理に聞き出したりはしないさ」

詢子「だがな、秘密にするってこたぁ、全部自分たちで背負いこむ覚悟が出来てんだろうな?」

さやか「……覚悟……もちろんです」


詢子「そうか。ならいい。親を悲しませるようなマネだけはすんな。それだけだ」

さやか「はい。まどかにだってさせません!」

詢子「いや、まずは自分のことを守れよ。他人はその次だろ」

さやか「え」

詢子「あたしは人の親なんだ。あたしの立場からすればそう言うしかないんだよ」

さやか「は、はい……」

詢子「まどかは……。あいつは背負いこみすぎだ。良い子に育ちすぎだよ……まったく」

さやか「まどかは優しいくて良い子ですよ。あたしの一番の親友ですから」

詢子「ありがとうな。あんた自身の次でいい。余裕があったらあいつを守ってやってくれ」

さやか「はい」

~~

そして外に出たさやかはまどかに遭遇する。

雨はいつのまにか止んでいて風もこの場所は建物がある程度防いでいた。
使い魔も今は来ていない。

まどか「さやかちゃん!?」

さやか「やあ、まどか」

まどか「その指輪……」

まどかはさやかの指に契約の証を発見した。

さやか「うん。まあね」

まどか「契約、しちゃったんだ……」

さやか「でも、おかげで恭介を助けられたんだから後悔してないよ」


まどか「上条君、探してたんだよね?」

さやか「あれ? 何で知ってるの?」

まどか「QBがテレパシーで教えてくれて」

さやか「いつの間に……」

QB「まどかが君を探しているようだったし、一応役割を果たしておこうと思ってね」

そういえば通信係になるとかそんな話もしていた。

さやか「……そうか。まあいいわ」

さやか「それよりどうしてまどかが戦ってるのよ?」

まどか「え? えっと、まどかさんが怪我しちゃって」

さやか「それは知ってる。あんただって契約していないでしょ?」


まどか「うん。だからソウルジェムの人にわたしの身体を使ってもらっているんだよ」

こちらのまどかは自覚的に魔法は使えず、ソウルジェムの彼女任せになるのだ。

さやか「……?」

まどか「ああ、説明してなかったっけ?」

さやか「いや聞いてた。その、誰か魔法少女のソウルジェムだっけ?」

まどか「うん。マミさんだって」

さやか「え? マミさん……って?」

まどか「ほむらちゃんが未来から連れてきたマミさん」

さやか「マミさんまで未来から!? そういうのありなんだ。転校生っていったい……」


QB「……」

さやか「QB、なにか言いたそうね?」

QB「いや、もう何も言うことはないよ。僕はまどかの契約を待つだけさ」

さやか「え? まさか……まどか、契約……するの?」

まどか「ううん。私はまだ戦えるよ。でももうすぐほむらちゃんも杏子ちゃんもマミさんも戦えなくなっちゃうみたいだから……」

QB「僕としては早く契約してほしいんだが。
   そんな歪な形で戦って稀有な才能が失われてしまうのは大きな損失だからね」

さやか「ほむら達が戦えないって……本当なの?」

QB「状況は僕が逐次確認している。
   既に全員魔力は尽きかけてるのに魔女はまだ健在だよ」

さやか「そんな……」

QB「魔女はこちらに近づいている。ここが戦場になるのも時間の問題だ」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「うん。あたしも覚悟を決める時なのね」

まどかもマミも二人いてややこしいけど
>>712でまどかのいう『マミさん』はワルさんと戦ってる方ってことで。

とりあえずここまで。


再びワルプルギス戦況。

杏子「ちくしょう! 底なしかよ!?」

マミ「あれだけ攻撃を受けたのにどうして弱る気配がないの?」

ほむら『もうグリフシードのストックが……』

負傷して戦線離脱したほむらは離れた所からテレパシーで話していた。

マミ「避難所の方へ向かってるわ!」

ほむら『! 止めないと被害が!』 

杏子「くそう!」

杏子が限界まで大きな槍を具現化して魔女に放つ。

それに呼応するようにワルプルギスの攻撃。

杏子「くっ、またビルか!」

マミ「暁美さん!! 逃げて!!!」



ほむら「え?」

気が付くと目の前を覆うようにビル攻撃の大質量が迫っていた。



マミ「暁美さんっっ……!!」

杏子「おいっ!?」


その瞬間、
杏子はマミが大きめな口径の銃を出してほむらの居る方角に向かって発砲したのを見た。

そしてその弾道はほむらに届くまでの間に居た使い魔たちを片っ端からリボンで爆破尽くしていった。



杏子「なんだ、あの攻撃は……」



ほむら「……っ!!」

ほむらはきつく目をつぶり、潰されるを覚悟しつつ残った力を振り絞ってバリアを張っていた。

だが、衝撃は来なかった。

ほむら「……これは」

何が起きたのかはすぐに理解できた。

ほむら「あなた……」

マミのソウルジェムが手元にあった。

そして無数のリボンが壁を形成して大質量からほむらを守っていた。

そう。マミはとっさに自分のソウルジェムをほむらに向かって打ち出したのだ。

ほむら「あなたが潰されたかもしれないのに、こんな無茶して……」



杏子「マミ! おいマミ!」

ほむら『杏子、巴マミはこっちにいるわ。あなたも一旦引いて彼女の身体を安全なところへお願い』

杏子「なに? ああ、そういうことか。……判った」

~~

さやかとまどか。

縛る、撃つ、銃を召還して撃ちまくる。

マミの装束をまとったまどかの戦法は『昔の』マミそのものだった。

使い魔たちが飛び交う中、まどかとさやかはほむら達と合流すべく、
ワルプルギスの夜が迫りくる方向へと進んでいた。

まどか『さやかちゃん。大丈夫?』

さやか「なんとかね」

マミ(ソウルジェム)に身体の支配権を明け渡しているまどかはQBに中継してもらってさやかと会話していた。

QBがまどかの契約を期待して付いてきているのは言うまでもない。

さやか「うわ、このっ!」


さやか「うわ、このっ!」

さやかが刀を振るう。

攻撃を防げてはいるが、倒すには至っていない。

だが、まどか+‘旧’マミがベテランの風格で近寄る使い魔を片っ端から倒していくので、
今のところそんなに危険な目にはあっていない。

さやか「くそう……キャリアの差?、才能の差なの?」

QB「いや、まどかの本当の才能はあんなものじゃないよ。あれはマミの実力さ」

さやか「未来から来たマミさんね?」

QB「そう、暁美ほむらの魔法の結果だったね。なかなか興味深いよ」

コピペミス。台詞ダブったので脳内削除して。


使い魔と戦闘しつつ移動していたまどかとさやかだが
敵の攻撃が途切れ小休止したところで、

さやか「杏子!」

杏子がマミの身体を担いで跳んで来た。

杏子「おまえ、その姿……」

さやか「え、ええと、魔法少女さやかちゃん誕生ってね」アハハ

杏子「ばかやろう!!」

さやか「っ…」

杏子「なり立ての魔法少女であいつに太刀打ちできるかよ!
    命を無駄にしやがって!!」

さやか「無駄になんかしてない! 加勢するために契約したわけじゃないわよ」

杏子「じゃあなんだってんだよ?」

さやか「あたしの命の使い方にあんたがどうこう言う筋合いはないでしょ」

杏子「おまえ全部知ってるだろ?
    ゾンビにされて宇宙人の餌にされるって判っててなんで契約なんかしたんだよ!」

さやか「うぅ……あ、あんたに話す義理なんてないわ」

判ってたつもりだが改めて言われ、ちょっとたじろいだ。


QB「言い争っている場合じゃないよ。また使い魔が接近してる」

杏子「ちぃっ、後でみっちり聞かせてもらうからな?」

まどか「……マミさん!? マミさんは大丈夫なんですか!?」

とりあえず敵が居ないってことで、まどかの変身は解けて、
身体の支配権が戻っていた。

杏子「ああ、マミは今ここにいねぇよ……こいつは」

マミ?「……佐倉さん?」ムクリ

杏子「おおぅ!?」

まどか「あ、マミさん!」

杏子「マミ、おまえ……」

マミ?「佐倉さん、今私のこと『マミ』って?」

さやか「うわあ、来た来たっ!! 敵っ!!」

マミ?「鹿目さん、私のソウルジェムを!」

まどか「え? あ、はい」

~~

そして一通り倒した後。

(こっちのマミは以降『マミ’』と表記)

マミ’「つまり、私は時間遡行する暁美さんにこの時間軸に連れてこられたってことね?」

まどか「ええと、そう聞きました」

まどかの持っていたソウルジェムが、宿主の居ないこの時間軸のマミの身体に接触したためこういうことになったらしい。

彼女、‘ソウルジェムのマミ’は、ここへ来てからの記憶が断片的であまり覚えていないようだった。

さやか「覚えてないんですか? まどかと一緒に戦ってたこととか」

マミ’「なんとなく覚えはあるんだけど、なんかね……」

まどかに力を貸したり、その身体を借りて戦っていたのはほとんど無意識だったようだ。

マミ’「それより誰かにずっと抱かれていた気がする……」

まどか「それって……ほむらちゃんかな?」

さやか「まどかじゃないの?」


マミ’「ほむら……暁美さん……そうだわ、暁美さんよ!」

さやか「え?」

マミ’「何処にいるの? 暁美さんはどこ!?」

何故かさやかが肩を掴まれた。

さやか「え、ええと……」

杏子「話は後だ。マミ、戦えるか?」

マミ’「暁美さんは?」

杏子「そのほむらが危ねえ。もう一人のあんたと一緒にいるはずだが、
    ワルプルギスの攻撃を受けてそのあと確認できてねえんだ」

マミ’「ワルプルギス……?」

杏子「ほむらのやつ、もう固有魔法が使えねえんだよ」

マミは見上げる。強力はな瘴気を感じる。

マミ’「そうか……そういうことね」

杏子「いきなりで悪いが、悠長にしてる暇なねえ」

マミ’「助けに行くわ!」

杏子「おう」

~~

ほむらは約ビル二個分の瓦礫の下にいた。

ほむら「……いつまで持つかな?」

もちろん全質量を支えるような無謀なことはしていない。
マミは周囲の瓦礫を絡め取って固定し、ほむらが潰されないためのスペースを確保したのだ。

もちろんこのマミは“この時間軸の巴マミ”である。

ほむら「……どうして? どうして勝てないの……」

もうワルプルギスの夜に対抗しうる戦力は残っていないように思えた。

ほむら(またやり直すしかないの?)

その時、マミのソウルジェムの光がより強くなった。

ほむら「巴マミ……なに?」

確保されたスペースの内側で、彼女のソウルジェムから幾重ものらせんを描いてリボンが生成されていく。

それはやがて……。

マミ『暁美さん……』

ほむら「あなた、器用なのね」

リボンは巴マミの形に変化していた。

マミ『大丈夫よ。あなたは私が守るから……』

ほむら「でも、もうワルプルギスの夜を倒すことはできないわ。
     きっとまどかも死んでしまう……」

マミ『……』



ほむら「……あなたがソウルジェムだけになって私の元に居るのって、
    ほんとに数える程しかなかったわ」

マミ『今、鹿目さんと一緒に戦っている私に続いて、これで二回目くらいかしら?』

ほむら「いいえ。もう少し前にも一回」

ほむら「ちょうど、今まどかと一緒に戦っているあの巴マミよりもひとつ前の時……」

マミ『やっぱり首を持って行かれたの?』

ほむら「あの魔女はね、とりあえず食ったものの消化よりもまず相手を全部捕食しようとするのよ」

ほむら「その時それに気づいたから、その次の回、首を食われた後でも諦めずにソウルジェムを探して破壊される前に回収できた」

マミ『そっかぁ……』

ほむら「なあに?」

マミ『ううん。ちゃんと「巴マミ」も救おうとしてくれてたんだなって』

ほむら「言ったはずよ。いつも助けられるものなら助けたいと思ってたって」

ほむら「そういえば、彼女はどうなったかしらね……」

マミ「どうなった? 無かったことになったのではなくて?」

ほむら「私にとってはね。でもあの時はまどかの生死を確認する前に遡行してしまったから……」

マミ『あら、どういうこと?』


ほむら「そういうこともあったのよ。戦力的にもうどうしようもなくて、
    もしまどかが契約すれば魔女になって世界は終わり、しなければまどかは街の人たちもろとも……」

ほむら「でもその時は、あなたが居たのよ」

マミ『その時間での私ね』

ほむら「そうよ。もちろんソウルジェムだけだったわ」

ほむら「だから言ったの。もし私が行った後、この身体が残っていたなら勝手に使っていいって」

マミ『暁美さんの身体を?』

ほむら「彼女は良く私の身体を使って魔女を倒していたわ」

マミ『ああ、そういう手もあるわね』

ほむら「その時は一緒に過去に連れて行こうなんて思いもしなかったわ」

それを初めたのはその次の回からだ。

マミ『それで、「どうなったかしら」って話になったのね』

ほむら「ええ。別れる前に『鹿目さんが生きてたら守ってあげる』とか言っていたから」

ほむら「今となっては確かめようもない話だけれど……」

~~

ほむら救出隊の様子。

ここへ来て、戦力外のさやかに加えて、まどかが一般人に戻ってしまった。

まどか「ごめんね。邪魔しちゃって」

杏子「ここに残していって死なれたら後味わりいからな」

マミ’「大丈夫よ。ちゃんとあなたたちも守るから」

さやか「……すみません」

まどかはさやかがおんぶして運んでいる。

この二人は足手まといに見えたが……。


QB「やれやれ。美樹さやか」

さやか「なによ」

QBはさやかの頭に乗っていた。

QB「僕は君が強くないと言ったが、それは単独での初戦を想定してのことなんだよ」

さやか「だからなによ」

QB「魔法少女の仲間がいて、ひとつの敵に集中できる状況ならば、君はあんなに弱い筈はない」

QB「相手があの使い魔でも、攻撃を防ぐのがやっとというのはどう考えても実力の十分の一も出してないんじゃないかな?」

さやか「だってあんた死ぬから戦闘は避けろって」

QB「確かにそういったが、避けすぎて気持ちが後ろ向きになりすぎてないかい?
   今なら君は簡単には死なない筈だ」

さやか「それって、さっき言ってたのと違うんじゃない?」

QB「戦闘を自重するように言ったのは、君が考えなしに戦うタイプだと思っていたからだ」

QB「支援の無い状況であの使い魔を相手にして多数に囲まれ、袋叩きにでもされたら、
   いくら君が回復に特化した魔法少女でも、生き残ることは不可能だっただろう」


QB「でももうそういう状況ではない。あの時言ったじゃないか。
   早く他の魔法少女と合流すべきだって」

さやか「ええと、よくわからないけど、あたし、もっと活躍できるってこと?」

QB「ベテランのマミと杏子がいるんだからもっと思い切り戦ってもいいんじゃないかってことさ。
   君には契約前のまどかを守ってもらわなきゃならないのにそんなことでは困るよ」

さやか「杏子、マミさん聞いてました?」

マミ’「ええ。つまり、気持ちの問題ね? 確かに気分が消極的だと魔法も弱くなるわ」

杏子「そういうことなら敵を斬るときは後先考えず思い切りいけよ。
    なに、一撃分時間稼いだら、後は倒してやるからさ」

マミ’「鹿目さんを背負っているんだから無理しちゃだめよ」

さやか「ええと、敵があたしのところへ来たら、ですよね」

恭介をほむらに譲る気になって以来、どこか後ろ向きになっていたさやかだが、
契約したときの彼に命をささげる決意を考えれば、もはや自制する理由もないはずだ。


杏子「おい敵、来たぞ!」

マミ’「任せて!」

さやか「うわわ」

まどか「さやかちゃん! あっちからも来てる!」

さやか「うっ……くそっ」

早速だが、さやかが対処するしかない状況。

さやか(失敗できない。まどかの命がかかってる!)

覚悟を決めて使い魔の迫る方を見据え、さやかは剣を構え、


さやか「えいやぁぁぁぁぁっ!!!」


先ほどとはうって変わってただ剣で受けるでなく、何か剣から攻撃が出ていた。



杏子「……やるじぇねえか」

マミ’「美樹さん見事よ」

さやか「え……あたしやったの?」

見事、一撃で使い魔を倒していた。

杏子「まあ、敵の強さにもばらつきはあるからな。運が良かったんだよ」

さやか「……さいですか」

まどか「でもすごかったよ?」


……というわけで、

杏子「このあたりの筈だ」

飛び交う使い魔たちを潜り抜け、なんとか無事にほむらがいると思われる地点に到着した。

さやか「なんというかすごい状況だね」

ビルが思い切り破壊されて瓦礫の山と化していた。

マミ’「ティロ・フォルテ!!」

さやか「ちょっ」

杏子「なに!?」

まどか「え? え?」(よくわかってない

瓦礫の山だったものとその周辺が爆煙に包まれていた。

マミがいきなり大砲をぶっ放したのだ。


杏子「おい、中にほむらがいたかもしれねえんだぞ!」

マミ’「時間が無いのでしょう? 大丈夫よ。瓦礫だけを吹き飛ばしたから」

さやか「大丈夫って、これやりすぎじゃ……」

マミが放った大技は瓦礫の山を吹き飛ばすにとどまらず、さらに地面まで抉っていた。

マミ’「そこね?」

爆炎が収まり、抉られてちょっとしたクレーターとなった地面の真ん中。

黄色い卵型が浮かんでいた。

杏子「おいっ! 待てよ!」


こっちのマミがとっさに展開したバリアであろう、
卵型を形成していたリボンは解れ中が見えていた。

マミ『……やってくれたわね』

マミ’「暁美さん! よかったわ」(抱きしめ

ほむら「……え? 巴マミ?」

マミ(仮の身体)『ちょっと、勝手に私の身体で暁美さんに抱きつかないで!』

マミ’「ずっとあなたを感じていたのよ……私を助けだしてくれたあの時から……」スリスリ

ほむら「ちょっと……」

さやか「うわぁ……熱烈……」

まどか「ほむらちゃん/////」(見てる方が恥ずかしい

杏子「……なにやってんだ」

ほむら「杏子、これはどういうことなの?」(まだ頬ずりされてる

マミ(仮の身体)『……』ゴゴゴゴ…

~~

ほむら「……ワルプルギスの夜は?」

杏子「もうすぐここに来るぞ」

ほむら「避難所には向かってないのね」

杏子「方向を変えたよ」

先ほどのマミの大技は魔力の無駄遣いと思われたが、
奇しくもその『無駄遣い』が魔女の避難所への侵攻を逸らす結果になっていた。

QB「魔法少女の魔力に感応しているんだ。これだけ魔法少女が集まっているなら当然だよ」

ほむら「……なんでこいつが居るのよ」

さやか「ああ、あたしとまどかがいるからじゃないかな?」

ほむら「あなた……契約、してしまったのね?」

さやか「ごめん。でも恭介の命と引き換えだったから」


ほむら「命と……そう……」

さやか「ん?」

ほむら「……すべて納得して契約したのなら私からは何も言えないわ」

さやか「なんか暗いぞ! ほむら。まさか諦めてんじゃないでしょうね?」

ほむら「でももう対抗手段が……」

ソウルジェムだけで器用に魔法の身体を生成しているマミだが、
火力の要だったこのマミが十分に回復するだけのグリーフシードはもう残っていなかった。

マミ’「私はまだ余裕あるわよ?」

さやか「あたしも。なんか弱くて戦えないと思ってたせいで、魔法使ってなかったから」

杏子「あたしもまだいけるぜ」

ほむら「杏子、あなたは近接でしょうに……」


杏子「攻撃を飛ばせないわけじゃねえよ」

さやか「あたしも駆け引きとか戦略とか経験値いることはできないけど、
     単純にぶっ放すだけなら出来ると思うわ」

マミ(仮身体)『そうね、今まで削るだけ削ったのだから、もう一息かもしれないし』

マミ’「私的には何もしないうちに負けるのが耐えられないわよ」

マミ(仮身体)『ええ。戦闘は任せるけど、
         あなたとは後で白黒つけるんだから死んだら承知しないわよ』

マミ’「あら、誰にものを言っているのかしら?」

マミ『今だけその身体はあなたに預けるわ。
   この日のために贅肉削って調整してきたんだからありがたく思いなさい』

マミ’「ええ、確かに預かったわ」


ほむら「あなたたち……」

杏子「こいつらは任せていいな?」

マミ(仮身体)『ええ。暁美さんと鹿目さんは私が守るわ』

ほむら「……判った。任せるわ。これがおそらく最後のチャンスよ」

マミ’「ええ。全力で行きましょ」

杏子「もとより手加減なんてしてねえよ」

さやか「あたしも頑張る!」

まどか「さやかちゃん……」



杏子「じゃあ、行って来るぜ」

マミ’「終わったらみんなで祝賀会しましょうね?」

さやか「わー、楽しみです。ダブルマミさんを堪能できますね」

マミ『あら、じゃあ決着は料理対決にしようかしら?』

マミ’「望むところよ?」

ほむら「それくらいにしておきなさい。その前に倒すべきは目の前の敵でしょう?」

マミ’「判ってるわ。やることは単純よ」

杏子「ああ。ありったけの力でぶち込むだけだ」

さやか「うん、そうだね判った!」

ここまでにしておきます

矛盾ハッケーン!
ダラダラ続けてると前の方忘れてしまう。頭悪くてすまん。

>>711は以下に差し替えってことで。
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まどか「うん。だからソウルジェムの人にわたしの身体を使ってもらっているんだよ」

こちらのまどかは自覚的に魔法は使えず、ソウルジェムの彼女任せになるのだ。

さやか「……?」

まどか「ああ、説明してなかったっけ?」

さやか「いや聞いた。その、別の世界のマミさんのソウルジェムって」

まどか「ああ、知ってたんだ。そうなの」

さやか「それで?」

まどか「えっと、私の身体を使って、マミさんが戦うみたいな感じ?」

さやか「あー『使ってもらってる』ってそういうことか。まどか二号とは違うんだ」

まどか「うん。わたし戦い方なんて知らないから」

さやか「しっかし、マミさんまで未来からとか転校生ってとんでもないわね……」

※さやかは >>616 で既に聞いていたので。

今回は修正だけ。続きは近いうちに。


再編成の攻撃隊が行った後。

まどか「ほむらちゃん、動けないの?」

ほむら「ええ。回復にはまだ時間がかかりそうだわ……」

ダメージを負ったとはいえ、戦っているときは自力で動けていたのだが、
戦線離脱して魔力を回復に回した途端、ほむらは立ち上がることも出来なくなってしまっていた。

自覚は無かったが、かなり危険な状態の肉体を魔力で無理矢理動かしていたのだ。

まどか「その……」(申し訳なさそうにしてる

ほむら「まどか」

まどか「う、うん……」

ほむら「怖がらなくてもいいわ。怒ってないから」

まどかは髪を下してもう一人のまどかの振りをしたつもりのようだった。

まどか「やっぱり、判ってた?」

ほむら「判るわよ」


まどか「ごめんなさい。でもまどかさんが怪我しちゃって」

ほむら「無事なのよね?」

まどか「うん。避難所で休んでる。無理して出ていこうとしてたから私が……」

まどかの様子から、もう一人のまどかが無事なことは判っていた。

身近な人が死んだとか重傷だとか大変なことになっていれば彼女の態度に現れていただろう。
それが判らないほむらではない。

ほむら「でも、あなたに危険なことはして欲しくなかったわ……」

まどか「わたしというか、わたしは身体を貸していただけなんだけど……」

確かにもう一人の方より、キャリアのあるマミが主体になる分安全だったかもしれないが。

ほむら「それでもよ」

ほむら(でも、危ないかもしれない)

ほむら(ここでもしあの三人が帰らなければ……)

QB「……」

ほむら(こいつがいるし)

この状況でQBを殺しても弾の無駄になることは判っていた。

~~

赤青黄色。

三人の魔法少女はワルプルギスの夜が視認できるところまで来ていた。

さやか「あれが魔女……」

まだ直接攻撃を受けるほどには近づいていない。

杏子「何処に当てるんだ?」

マミ’「それはあなたが決めて。今まで戦ってたのでしょう?」

杏子「だったらあのふざけた本体と歯車の繋ぎ目、歯車の真ん中だな」

マミ’「そこで良いの?」

杏子「ああ。散々あっちに攻撃してきたが、切っても燃やしてもすぐ再生しやがる。
    だが歯車の方はまだあまり攻撃してこなかったからな」

さやか「それって博打じゃないの?」

杏子「そうさ。根拠はあたしの勘だ。それでやれる確信はねえよ」


マミ’「良いわ。それで行きましょ」

杏子「良いのか?」

マミ’「多分一撃しか攻撃できない。考えてる余裕はないのよ」

さやか「あたしもそれでいいと思う」

マミ’「じゃあ、佐倉さんの間合いまで一気に接近するわよ」

杏子「おう」

マミ’「私のはゼロ距離射撃に近くなるから、覚悟しておいてね」

さやか「え? 覚悟?」

杏子「死ぬつもりはねえが、捨て身上等だよ」

さやか「捨て身……」

杏子「どうした? ビビったか?」

さやか「いや、うん! 大丈夫! もう魔法少女になった時から覚悟は出来てるわ!」

杏子「上等だ。じゃ、いくぜ! 遅れんなよ!」


さやかを真ん中にして三人並んで一気に接近する。

迫りくる使い魔を払いのける余裕がさやかには無いからだ。

さやか「うわっ、使い魔!?」

斜め前方から使い魔が迫る。

マミは前方を見据えたまま片手で銃を召還。
視線も向けずそれを撃ち抜き、そのまま流れるような動作で撃った銃を投げ捨てる。

さやか(マミさん格好ぇぇ……)

杏子「さやかはよそ見すんな!」

杏子側から迫る使い魔は伸長した杏子の槍に切り裂かれる。その間スピードは一切落とさず軌道も全くブレてない。

さやか(これがベテランの魔法少女……)


いよいよワルプルギスの夜が目前に迫った。

さやか「うっ、でかっ……」

ちなみにさやかは初戦にしてワルプルギスである。

ワルプルギスの夜の逆さになったスカートの裾は今までの攻撃で切れ切れになっていて、
本体(?)と歯車の継ぎ目が露出していた。

三人はそこに向かって突進していく。

杏子「カウントダウン行くぜ!」

マミ’「ええ、いつでもいいわよ」

マミは既に大砲を具現化させ、発射準備に入っている。斬撃よりも攻撃準備に時間がかかるからだ。

さやか「お、おぅ!」



杏子「5!」


杏子の槍が巨大化する。


マミ’「4(クワットロ)!」


マミの大砲は準備完了。


さやか「3!」


さやかも杏子を真似て規格外な大太刀を具現化していた。


杏子「2!」


マミ’「1(ウーノ)!」


杏子・マミ’・さやか「「「ゼロ!!!!!!」」」
































QB「……やはりね」

まどか「え? なに?」

QB「無理だったようだ。もはやワルプルギスの夜を止められる魔法少女は居なくなった」

まどか「嘘、さやかちゃんは? 杏子ちゃんとマミさん……嘘でしょ?」

ほむら「まどか! そいつの言葉を真に受けてはダメよ!」

まどか「で、でも…」


QB「僕は事実を言っているだけだよ。彼女たちの渾身の一撃はワルプルギスの夜を倒すには至らなかった。ただそれだけだ」

ほむら「黙れ!」

QB「否定したってそれが真実さ。魔女の放つ邪気は全然衰えていないだろう?」

空は未だ、どす黒い雲に覆われていた。

QB「映像を見せるよ。これを信じるかどうかは君たちに任せるけどね」

QBのテレパシーでほむらとまどかの脳裏に廃墟と化した街の上空に浮かぶその禍々しい巨大な魔女の姿が映し出される。

使い魔たちは姿を消していて、そこにはワルプルギスの夜以外に動くものはない。

先ほど戦いに出た三人の姿は見つけることが出来なかった。

まどか「そんな……それじゃあ……」


QB「ここもいずれ襲われる。その次は避難所だ。このままでは全滅はもう避けようがない」

QB「暁美ほむらはもう身を守るので精いっぱいだし。
   ここに居る巴マミはもはや仮の身体を作る魔力も残っていない」

魔力を使って仮の身体を生成し動かしていたマミだが、燃費が悪いらしく、
三人が飛び立った後、身体を保てなくなり、
今はこれ以上魔力の消耗を防ぐため休んでもらっていた。

QB「最初から無理があったのさ。たったこれだけの人数でワルプルギスの夜に挑むなんて。

QB「確かに確率はゼロじゃなかったよ」

QB「だがゼロじゃないってだけでこうなる確率の方が高かった。それは前に言ったよね」

QB「イレギュラーな別の時間軸のマミと契約したばかりのさやかを加えたって
   あの強力な魔女が相手では高が知れている」

QB「これは予想された結果だよ」


まどか「もう、だめなの? みんな助からないの?」

QB「いいや」

ほむら「まどか! そいつから離れて!」チャキッ!

まどか「だ、だめだよ!」

かつてQBに怯えていたまどかだが、それ以上にほむらの構える銃に敏感に反応していた。

ほむら「どうしてそいつを庇うの!?」

まどかはQBを庇うようにほむらの射線上に入っていた。

QB「……諦めたらそれまでだ。でも、君なら運命を変えられる」

ほむら「黙りなさい!」


回復が間に合わず思うように動けないほむらがQBを撃てる位置に移動しようとすると、
まどかはQBを抱き上げて距離を取り、ほむらに背を向けてQBを見えなくしていた。

QB「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。その為の力が、君には備わっているんだから」

まどか「でも、わたしが魔法少女になったら……」

QB「そうだね。君は最強の魔法少女になり、そして最悪の、それはワルプルギスの夜をも超える最凶の魔女になるだろう」

ほむら「そうよ! あなたは契約だけはしてはいけないのよ!」

まどか「それはいつ? わたしが魔法少女になってあの魔女を倒したらすぐになっちゃうの?」

QB「それは判らない。君が持ちうる魔力の器がワルプルギスの夜を倒すことで受け取る呪いにどこまで耐えられるかで決まるよ」

まどか「すぐにならないなら、わたしが魔女になってみんなを苦しめる前にわたしが自分で……」

ほむら「そんなのダメよ! まどかっ!!」


QB「君の途方もない魔力係数を考えれば、ワルプルギスの夜が抱える呪いの量に十分耐えうる器を形成することも不可能ではない筈だ」

まどか「本当なの?」

ほむら「騙されないで! そいつの思う壺よ! お願いだから私の話を聞いて!!」

まどか「私でも、こんな結末を変えられるんだよね?」

QB「それはもう伝えたよ。もちろんさ」

ほむら「だめ……だめよ……」




QB「……だから、僕と契約して魔法少女になってよ!」

ほむら「まどか……、やめて!」

まどか「ほむらちゃん、……ごめんね」

まどか「私、魔法少女になるよ」

ほむら「まどかぁぁぁーーーーーー!!」

ほむら(どうしていつもこうなるの?)

ほむら(ならば、いっそ……)チャキ

――――――――
――――――
――――
――





クリームヒルト「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ





ほむら「こうなることは判っていたのに……」


あのとき、まどかの契約の言葉を聞きながら、ほむらは背中からまどかの心臓を狙っていた。
だが、引き金を引くことはついに出来なかった。

いや、出来るわけがない。

望まない結末を避けるために、まだ契約していない鹿目まどがを手にかけたのでは本末転倒である。
それは他でもないほむら自身の願いを裏切ることになる。

それはほむらも判っていた。


QB「……本当にもの凄かったね、変身したまどかは。予測はしていたけれどこれ程とは」

QB「まさか、あのワルプルギスの夜を一撃で倒してしまうなんてね」

ほむら「まどかが耐えられないことも、見越した上だったの?」

QB「可能性は嘘じゃない。でも遅かれ早かれ結末は一緒だよ」

QB「まあ、それでもあんな願い事でなければもう少し長らえたかもしれないけどね」

   ――ほむら『何が起こっているの!?』
   ――QB『そうか、願いの力に対して因果が強すぎたんだ』
   ――ほむら『そんな……!』

ほむらはまどかの願い事を聞いていなかった。
だが、あの一撃を撃つためだけの願い事だったことは想像できた。

まどかはその抑えきれず暴れだす魔力に翻弄されながら
最初で最後になるその全身全霊の一撃を、魔女に向かって放ったのだ。

あんな状態では呪いを受け止める器どころの騒ぎではなかっただろう。


QB「いずれにしても彼女は最強の魔法少女として、最大の敵を倒してしまったんだ」

QB「もちろん後は、最悪の魔女になるしかない」

ほむら「……」

QB「今のまどかなら半月もかけずにこの星を壊滅させてしまうんじゃないかな?
   まあ、後は君たち人類の問題だ。僕らの地球でのエネルギー回収ノルマはほぼ達成s」ターン!

ほむらは無言でQBを撃ちぬいた。

ほむら「まどか……」

ほむら「……この時間軸も無為になってしまった」

ほむら「全員が魔法少女の秘密を知った上で生き残っていた。思う限りこれ以上の無い最高の条件だった」

ほむら「最後はもう一人の巴マミが復活までしたのに、それでもまどかの契約を許してしまったなんて……」

ほむら(いいえ。でもこれ以上が無いなんてことはない。もっと連携が上手くできればきっと……)

~~

まどか。「……天気が、変わった?」

まどか。「なにあれ? 雨が逆さまに降ってる?」

まどか。(すごく嫌な予感がする)

まどか。(ほむらちゃんの所へ行かなくちゃ……)


ここまで。

もうちょっとだけ続くんじゃ




クリームヒルト「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ



巨大な魔女はまだ動き出す気配はなく、
ほむらがこの世界との別れを惜しむ時間はあるようだった。

ほむら「あの子は……すべてを知っていた……」

ほむら「ましては、魔法少女が魔女になる瞬間さえ見た筈なのに、」

ほむら「それでも、自分にしかできない事があると判ったら契約するのに躊躇は無かった」

まどかは遺体を残して遠方に魔女として具現化していた。
それは全てを知っていたが故、『その瞬間』にほむらたちに危害が加わるのを避けようと意思したのかもしれない。

ほむら「誰よりも優しく、そして自分を犠牲にすることさえも厭わない強さを持っている……それが、あなたなのよね……」

ほむら「次こそは上手くやるわ。絶対にあなたを破滅させたりしない」


一通り気持ちを切り替えたところで、
ここに近づく足音と良く知った気配を感じた。

ほむら(そうだったわ……)

まどか。「……ほむらちゃん?」

ほむら「まどか……あなたが居たのよね」

ほむら(そう。この子だって本質は同じ……)

ほむらは躊躇なくまどかを抱きしめた。

まどか。「って、ほむらちゃん……痛いよ」

ほむら「あ、ごめんなさい……」

負傷していたことを思い出し、手を緩めまどかから離れた。


ほむら「……怪我はもう良いの?」

まどか。「うん。傷は大したこと無くって、動けなかったのは疲れてただけだから」

打撲プラス極度の疲労ってことだったらしい。

ほむら「そう。よかったわ」

まどか。「あれって、……まどかちゃんだよね」(見上げてる

ほむら「……そうよ」

まどか。「わたしがまどかちゃんが行かせちゃったから……」

ほむら「いいえ……これは私のせい。私が至らなかったからよ」

まどか。「……ごめんね」

ほむら「あなたが謝ることではないわ」


まどか。「違うの」

ほむら「え? 違うって?」

まどか。「また、ほむらちゃんを一人にしちゃうから」

ほむら「まさか……」

まどか。「うん」

ほむら「や、やめて」

まどか。「でもこの世界をこのままにできないから」

ほむら「お願いよ!」

まどか。「一緒に行きたかったけど、わたしが守らなきゃ」

ほむら「もう、やめて!」

まどか。「パパもママもタッくんも、避難した街の人たちも生きてる」

ほむら「私はあなたが生きていればそれでいいのよ!」


まどか。「駄目だよ。本当はほむらちゃんだって街のみんなが死なない方がいいって思っているでしょ?」

ほむら「それをあなたの命と引き換えにして良いなんて思ってないわ!!」

まどか。「ううん。わたしならまどかちゃんを止められる。あれもわたしなんだよ?」

まどか。「わたしがやったことだかがわたしが責任取るのって当然だよね?」

ほむら「そんな理屈ってないわ!」

まどか。「あるよ?」

ほむら「まどか……」

まどか。「だからお別れ」

ほむら「まどか!!!!」

再び、まどかを抱きしめる。


まどか「ほむらちゃん、聞き分けて」

ほむら「いやよ! わがままでもなんでもいい。私はこれ以上あなたを死なせたくないの!」

まどか「お願いだから……」

ほむら「まどか?」

まどか「お願い……」

ほむら「泣いてるの?」

まどか「……このまま、ほむらちゃんについていったら」

ほむら「え……?」

まどか。「わたし……わたしが、わたしじゃなくなっちゃう……」

ほむら「まどか、あなた……」


――ずいぶん前から兆候は自覚していたという。

前にまどか(。)が他の街の魔法少女を結果的に追い詰めて魔女にしてしまったことがあったが、
その時の反応は確かに、まどからしくなかった。

あの時ほむらは、彼女の精神状態に気づけなかったことを詫びたが、
まどか自身にもその自覚はあったのだ。


まどか。「ごめんね……でも、もうこうするしかないの」


それは、こうなったら、つまりこの世界のまどかが契約してしまったら、
こうすることを最初から決めていたかのように、ほむらには聞こえた。


もしかしたら、ほむらが繰り返しにまどかを巻き込んだ時点で、
つまり彼女が『もう一人のまどか』になった時点で、
もうまどかはまどかでなくなっていたのかもしれない。

あのときのことは、ほむらの心情は判るけれど、まどかには納得できるものではなかった。
でも、それを言ってもどうにもならないことも判っていた。

まどかに向けられた好意は嘘ではないし、まどかを助けてくれたことも真実だ。
だからここまでついてきたし、ほむらの目的のために頑張ってもきた。

けれど、自分の世界が全滅して自分だけ生き残ってしまったこと、
そしてそのために何も出来なかったことを、まどかは未だに後悔し続けていた。

そして今、この世界の鹿目まどかが、つまり自分が、
選択を誤ってしまったことが少なからずショックだったのだ。


こんなにも大きな力を持っていて尚、
結果的にたくさんの人に迷惑をかけることしか出来なかった自分に絶望を感じた。
このまま何もせずにここを去れば、その絶望にのまれてしまうかもしれない。

今はどうにか自分を保っていられるが、この先もそうあり続ける自信が無かった。

それでも、ほむらは共にいることを許してくれるだろう。
けれどそれは、ほむらのやることを増やしてしまうだけだ。

そうはなりたくなかった。

ほむらがまた時間を遡ればそこには何も知らない自分(まどか)が居る。
ほむらがその『一人のまどか』を守ることの邪魔だけはしたくない。

思えば前の時間軸で一緒にやり直すことを望んだことが既に間違いだったのかもしれない。

暁美ほむらが守る『鹿目まどか』は唯一であるべきだったのだ――。

~~

まどか。「QB、来て」

ほむら「……」

QB「なるほど。あの魔女に対抗できる可能性を持つのは君だけだ。でもどうするつもりだい?」

まどか。「エネルギーはまどかちゃんので十分なんでしょ?」

QB「そうだね。この星のノルマはほぼ達成したよ」

まどか。「契約するよ。でもわたしのエネルギーは諦めて」

QB「魔女になったまどかの復活を望んだらどうだい?」

まどか。「そんなこと出来るの?」

QB「相転移をひっくり返すんだよ。ほぼ同じ才能をもつ君なら不可能ではない」

まどか。「魔女を魔法少女に戻す願いってこと?
      でも同じってことは、それをまどかちゃんにやったら、わたし、魔女になっちゃうんじゃない?」

QB「その通りだ。おそらく君が生み出す魔力全てをつぎ込むことになるだろう。ソウルジェムを砕く余裕もないだろうね」


まどか。「全然駄目だよ。それじゃ戦って勝つって願いと変わらないよ」

QB「確かに同じだ。その場合倒し切った瞬間が君の相転移の時になるだろう」

まどか。「違うんだよ。まどかちゃんを止めるにはそういう方法じゃ駄目なんだ」

QB「君は何を願うつもりだい?」

ほむら「ま、まどか?」

まどか。「言葉じゃ説明しづらいよ……でも決めてあるから」

QB「……まあいいだろう。
   惑星規模の魔女を放置するのは後々問題を起こす可能性があるからね」

まどか。「契約させてくれるんだよね」

QB「もちろんだ。さあ君はその途方もない才能でどんな願いを叶えるんだい?」

まどか。「私の願いはね――……」

…………

……

ほむらが間近でまどかの契約を見るのはこれが何回目になるのだろう。

QB「さあ、解き放ってごらん、君の新しい力を!」

先ほどと同じように、契約したまどかはまばゆい光を放って変身した。

ただ違っていたのは、こちらのまどかは変身後も魔力が安定していた。

それは一か月をほむらと過ごした経験値ゆえなのか、
あるいは他人のソウルジェムを保有して魔法少女の予行演習をしてきた成果なのかもしれない。

だがQBによれば、さっきのまどかのケースが特殊だったそうだ。
通常は因果に見合っただけの強い『希望』が生まれ魔法は安定する筈とのこと。


まどか。「ほむらちゃん」

ほむら「まどか……」

まどか。「いままで一緒に居てくれてありがとう」

ほむら「……」

まどか「次の世界のわたしをお願い……」

ほむら「……っ、うぅぅぅぅぅぅぅ……」

まどか。「さよなら」(飛び去る

ほむら「まどかぁぁぁーーーーーー!!!」












(魔法少女まどか。とクリームさん消滅)












QB「魔女が消えた。まどかの魔力の反応もだ」

ほむら「そんな……」

QB「あの魔女の膨大な絶望のエネルギーを彼女の願いで発生した膨大な力で打ち消したんだね」

QB「契約の瞬間が希望の極みなら、相転移後の魔法少女は絶望の極致だ」

QB「普通の相転移なら波の振幅のように希望から一気に絶望に突き抜け
   その落差から生じるエネルギーを僕らは回収できるんだが、
   まどかは二つの正反対の波を重ね合わせるようにしてこれらを相殺して見せたんだ」
   
QB「なるほど、これでは僕が回収できるエネルギーは無い」

QB「同じとてつもない資質を持ち、かつ違う時間軸とはいえ同じ存在の彼女だからこそ出来た芸当だろう」


ほむら「まどか……」ボロボロ

ほむら(頑張ったのね……でも消えてしまったら仕方がないじゃない……)


ほむら「また同じことをになるなんて……」

ほむらはすぐ近くに横たえていた“この世界の”まどかの抜け殻を抱きあげた。

ほむら「まどか……」

これしか残らなかった。



“まどか”の指が動く。

そしてその手はほむらの背中を抱き返した。

手元には“この時間軸の”巴マミのソウルジェム。


結局この時間軸で残ったのはこの二つだった――。








ーーーここで完結宣言。

と、書き溜めテキストには書いてある。

ちょっとまって、<おまけ>をどう出すか考えてる。


?「意識がハッキリしないわね」

ほむら「……話せるのね。巴マミ」

マミ(まどかの身体)「私の身体は無くなってしまったのね」

ほむら「ええ。多分もう残っていない。探しに行く気力もないわ……」

二人も居たまどかはもう居ない。

彼女たちは命を犠牲にして家族と街の人たちを守ったのだ。

ほむら(このまま残ってまどかのお母様になじられようかしら)

そんなことを考えてしまう。

ほむら(ああそうだわ)

ほむら「巴マミ。あなたは鹿目まどかとして生きていけば良いわ」

(※以下、「マミ@まどかの身体」略して「マミ@」)

マミ@「嫌よ」

ほむら「何を言っているの。あなたの願い事の本質は『生きること』。
     外観がまどかになったくらいでそれは変わらないでしょ?」

マミ@「私は暁美さんと一緒に生きたいの」

ほむら「誰かの身体とソウルジェムを連れて戻るなんてもうこりごりよ」

マミ@「またゼロからやり直すつもり?」

ほむら「そうよ。もう間違えないわ」

マミ@「うそ。あなたは全然進歩してない。放っておけばまた同じことを繰り返してしまうわ」

ほむら「……なんと言われようと」

マミ@「寂しいんでしょ?」

ほむら「あなた、なにを……」


マミ@「だから、鹿目さんを連れていた」

ほむら「あの子が望んだからよ。私にも責任があったの」

マミ@「それはいい訳だわ」

ほむら「言い訳じゃないわ」

マミ@「いいえ嘘よ。あなたは寂しいだけ。一人だった時に他との接触を避けていたのはその裏返しでしょ?
     頼った相手が離れていくのが耐えられないから」

ほむら「……」

マミ@「私は離れないわ」

ほむら「……信じられない」

マミ@「例えソウルジェムだけになろうと私はあなたと共にあることを選んだわ」

ほむら「でも結局消えていってしまうのでしょ」

マミ@「しぶとく生き残るわ。あなたのためなら強かになれる」

ほむら「本当に?」

マミ@「嘘はつかないわ」

ほむら「……じゃあ証明してみせてよ」

マミ@「ええ。承知したわ」







≪次のループへ続く?≫

一応、これで一段落ってことで。

ここで突然の選択肢。

1.もうおなかいっぱい。ここで終わり。

2.そこへ美樹さやかが!(生きてた!?)

3.そこへ詢子さんが!

4.ここで突然の回想(過去ループ)

(1は打ち切り)

ちなみに

2.この状況から全員生存ハッピーエンドで強制終了(全)

3.gdgdに次ループ。未完結につき先行き不明(未)

4.伏線のあったマミのソウルジェムを拾った時間軸の前のループの話(全)

(全)…書き溜め済み
(未)…結構書いたけど未完

2・3は流れが変わるので選択だけど、
4は先に出すか後で出すかの問題。

多数決ではなく何らかの形で全部出すつもりだった。
でも出し方でちょっと迷ってる。

gdgd感は今までレス気にせず淡々と投下するスタイルだったのに
ここにきて自信がなくなって問い合わせてしまったからだと思う
なので、また淡々と投下していくことにする
2から順に。


時間は再構成の攻撃隊が渾身の一撃を放った直後まで遡る。


杏子「くそう、倒しきっていねえ!」

マミ’「逃げないと!!」

さやか「うわわ」

杏子「さやか、こっちだ!!」(手を伸ばす

さやか「マミさんも!」

目の前にワルプルギスの夜。三位一体渾身の一撃は効いているのか効いていないのか、
だが、爆炎が晴れる前に動かなければヤバイということだけは三人とも直感していた。

マミ’「佐倉さん! なにかあるのね!?」

杏子「勝てねえケンカはしねえってな!」

マミ’がその意図を理解してリボンで三人を結ぶ。さやかが逃げ遅れないようにだ。

杏子「いいか、黙ってろよ?」

杏子がなにやや集中する。

さやか「あれって……あたしとマミさんと……」

マミ’「あなた、その魔法……」

杏子「よし来た!」

ワルプルギスのビーム攻撃。

その瞬間、全力で加速してその場から飛び去った。


(※ マミ’:前の前の時間軸からほむらが持ち込んだマミのソウルジェムがこの時間軸のマミの身体を得て活動中)


飛行しつつ。

   ロッソファンダズマ
マミ’「幻惑魔法、使えるようになったのね」

杏子「その名前で呼ぶなっつーの!」

杏子は幻惑魔法でワルプルギスの夜の注意を逸らしたのだ。

さやか「使い魔! 来てるよっ!」

マミ「もう、余力が無いわ」

杏子「しゃあない。埋まるぞ!」

さやか「え」

杏子「死ぬなよ!!」

そのまま杏子が槍を前に構えて地面に突っ込んだ。

もちろんマミのリボンで繋がったままなので一蓮托生だ。

爆発したかのように結構な量の土煙が舞い上がる。


そして、埋まった。

さやか「……」

マミ’「……」

杏子『動くなよ? 魔法も使うな』テレパシー

さやか『息できない……死にそう……』

マミ’『……』


使い魔はそのまま通り過ぎ、魔女本体は接近してくることは無かった。


そして。

マミ’『……このまま街の人たちを見殺しになんてできない』

杏子(おいこら)

マミ’『やっぱり私は行くわっ!!!』ドカーン



杏子「かはっ、……マミ、てめえ!」

さやか「ぷはあっ! 生き返った!!」

マミ’「……」

杏子「もう攻撃する魔力も残ってねえだろ? って、どうした?」


マミ’「あれ、なに?」

マミの視線の先には先ほど交戦していた巨大なワルプルギスの夜。

さらにその先に。

杏子「なんだ!? あの魔力は……」

さやか「ピンク色の光がワルプルギスの向こうに……ってほむら達がいる方じゃないの!?」

その光はどんどん強くなっていった。

杏子「おい、やべえぞ!」

さやか「って、言われてもどうしたら」

マミ’「……きれい」

杏子「何いって……」

さやか「ぅゎ……」

ホワイトアウト。


…………

……





……

…………


さやか「なにあれ! なんなの!?」

杏子「あはは……は……もう笑うしかねぇ」

マミ’「……魔女……よね?」

今度は山のようにそびえ立つ巨大な魔女だった。

そして、もはやなす術もなく、呆然と眺めているうちに『全て』は終わってしまった。


さやか「……今の、なんだったの?」

杏子「わかんねぇ」

さやか「さっきみたいにピンク色の光が」

杏子「ああ、だがさっきと違っていきなり消えちまった」

マミ’「そうね……でも」

さやか「あたしら、助かったの?」

杏子「そうみたいだな」

マミ’「でも、なぜか嫌な予感がするのよ」


杏子「……あれはまどかだよな」

さやか「やっぱりそうなの?」

杏子「他に考えられないだろ」

さやか「まどか……」

マミ’「ええと、話が見えないのだけど、鹿目さんが魔法少女になったってことで良いのかしら?」

マミ’「たしかQBが言ってたわ。鹿目さんはものすごい才能を持っているって」

マミ’「ワルプルギスの夜を鹿目さんが倒したってことよね……」

マミ「でも、じゃあさっきのものすごく大きな魔女は何だったのかしら?」

杏子「……」

さやか「……」

杏子『おい』テレパシー

さやか『うん』


杏子『このマミは知らねえんだよな?』

さやか『そうみたい。ヤバイよね。教えるの』

杏子『ああ』

マミ’「?」

杏子「なあ、まどかを探そうぜ」

さやか「う、うん。そうだね」

まどかは二人いた。
あれがまどがが魔女になった姿ならば、

さやか『二人とも魔法少女になったってことだよね』

杏子『ああ、それでどっちかが魔女になって』

さやか『もう片方がそれを倒した?』

杏子『多分な』

二体目の『すごい魔女』は登場してない。
だから、生きてる可能性がある。

……と二人は考えていた。

~~

こちらはほむらの様子。(再放送)

?「意識がハッキリしないわね」

ほむら「……話せるのね。巴マミ」

マミ(まどかの身体)「私の身体は無くなってしまったのね」

ほむら「ええ。多分もう残っていない。探しに行く気力もないわ……」

ほむら(二人も居たまどかはもう居ない)

ほむら(彼女たちは命を犠牲にして家族と街の人たちを守ったのね……)

ほむら(結局まどかを助けられなかった……)

ほむら(……ああそうだわ)

ほむら「巴マミ。あなたは鹿目まどかとして生きていけば良いわ」

(※ここから「マミ@まどかの身体」略して「マミ@」)

マミ@「嫌よ」


(~~中略~~)


マミ@「……例えソウルジェムだけになろうと私はあなたと共にあることを選んだわ」

ほむら「でも結局消えていってしまうのでしょ」

マミ@「しぶとく生き残るわ。あなたのためなら強かになれる」

ほむら「本当に?」

マミ@「嘘はつかないわ」

ほむら「……じゃあ証明してみせてよ」

マミ@「ええ。承知したわ」

そして、再び逆行するためにほむらは変身……


杏子「お、居たぞ!」

さやか「あ、本当だ。おーい、って変身してるし」

杏子「やベえ、あいつ行っちまう気だぞ!」

さやか「え? ちょ、ちょっと待ったーー!!!」



ほむら「え」

マミ@「え」

~~

杏子「早まるんじゃねえよ」

ほむら「あなた達……生きてたの?」

杏子「簡単にくたばってたまるかよ」

マミ’「約束したものね」

ほむら「それに……」

まどか?「」
まどか。「」

ほむら「……どういうこと? どうしてまどかの身体が『もう二つ』もあるの?」

杏子とマミがそれぞれまどかを背負っていた。

マミ@まどかの姿「これは……」

杏子「身体って言ったか?」

さやか「なに言ってるのよ。ちゃんと生きてるわよ」

ほむら「え……」


ちなみにマミ’が背負っている方はサイズが一回り大きい制服の上着を羽織っていた。
マミ’はブラウス姿なので彼女のものであろう。

杏子「ま、あたしも何がどうなってるのか判んねえんだけどな」

ほむら「……」(絶句

さやか「そのあたりは、専門家に聞いてみた方が良いんじゃない?」

杏子「専門家?」

QB「呼んだかい?」

さやか「来たわね。何が起こったのか知りたいんだけど」

QB「残念ながら僕も全てを把握しているわけではないよ」

QB「契約したまどかがワルプルギスの夜を一撃で倒してしまったのは君たちも見たと思うが」

杏子「やっぱりそうか。見てたよ」

QB「それで彼女は魔力を使い尽くしてしまった」

杏子「……」


QB「こういうことは本来ありえないんだが、彼女は魔法の才能と精神の成熟度がアンバランスすぎたんだ」

QB「彼女はワルプルギスを倒して尚余りある魔力を全てその一撃に費やしてしまった」

QB「すべての魔力を使い尽くしてしまってそのあとは君たちも判るよね」

さやか「……まどか」

QB「もう一人の鹿目まどかはその後始末のために契約したのさ」

QB「その契約の内容がこの今の事態を招いたといえる」

さやか「契約の内容って?」

QB「鹿目まどかは『あの魔女の絶望を打ち消すこと』を願ったんだ」

さやか「う、うん。それで?」

杏子「わかんねぇんだけど。それとまどかが三人に増えたこととどうつながるんだ?」

マミ@まどかの姿「私はマミよ?」


QB「ほむらは覚えているだろ? まどかはこの後なんて付け加えた?」

ほむら「……『彼女の背負った絶望と呪いを私の希望で全て相殺して』、よ」

QB「そう。もう一言あったよね。『鹿目まどかを人間に戻すこと』」

ほむら「!! 聞いてないわ。そんなこと」

QB「いや、彼女は確かにそう願ったよ」

QB「これは推測だが、最後の一言は彼女自身が含まれてしまったせいですぐには叶わず、
   彼女は『鹿目まどかを人間に戻す魔法』を使える魔法少女になったんだろう」

さやか「ああ、それで!」

QB「そう。人間の身体をここに残して……」(マミ’をチラ見

マミ’「?」

QB「……絶望に取り込まれた存在自体を『人間に戻す』対象として、魔法を振るったとしたら?」

QB「絶望を相殺した後でも人一人の身体を生成するくらいの余裕は十分にあったよ」


QB「才能は同等だったけれど、契約後の安定がこの余裕を生んだんだ」

QB「その結果、彼女は『鹿目まどかを人間に戻す魔法』を発動し、」

QB「そこに居た『鹿目まどか』は『全て』人間に戻ってしまった」

ほむら「それじゃあ……まどかは……」

QB「因果を使い果たし、もはや魔法の才能は皆無さ」

杏子「きっちり人間に戻ってるぜ。二人とも」

ほむら「あああ……」


さやか「まどかは、こうなるって判ってて契約したってこと? なんか凄いな」

QB「いや、あれは思いつきで付け加えたようだったよ。
   もともとは打ち消しあって互いに消滅するつもりだったんだろうね」

QB「実際、暁美ほむらには遺言のようなことを言っていたしね。
   だからこれは僕にも予想外の結末さ」

さやか「えー」

~~

ほむら「まどか……まどかぁ……」

ほむらはまどか二人を抱きしめて泣きだした。

マミ@「あ、ずるい私も!」

さやか「……でもほむら的には幸せなのかな? まどか三人に囲まれて」

マミ’「……ええと」

さやか「あ」

マミ’「魔法少女が魔力を使い切ると……絶望が……魔女を生み出して?」

杏子「お、おい」

マミ’「知らなかったわ」

さやか「……」(汗

マミ’「……それで、魂が魔女に囚われてしまうのよね?」

マミ’「恐ろしい事だわ」

さやか「あれ」

さやか『なんか拍子抜け。錯乱して銃を乱射するんじゃなかったっけ?』テレパシー

杏子『おい、そこまで言ってなかったぞ』

杏子『でもまあ、絶望が生み出す魔女と魔法少女の魂はあくまで別個って考えてるんだな』

さやか『なるほど』


マミ’「でも確かに、魔法少女の心が絶望に染まったら、
    魔法でそれくらい作り出してしまってもおかしくないわ」

マミ’「QB、どうして教えてくれなかったの?」

QB「聞かれなかったからさ」

マミ’「つまり魔力を使い切った魔法少女って下手すると自分で作り出した魔女に食われてしまうのよね?」

QB「否定する程間違っていないよ」

マミ’「今まで以上に気を付けないといけないわ……」


さやか『これで良いの?』テレパシー

杏子『とりあえず良いんじゃねえか。わざわざ訂正して面倒を起こす必要もねえだろ』

さやか『でもなんでQBはマミさんに気を遣ったの?』

QB『気遣いってものは僕には理解できないんだが。
   理由を言わせてもらえば、今回のまどかのことでこの星のノルマを果たしてしまったからね』

QB『後から契約したまどかが人間に戻った時にも、
   相転移程じゃないにしても結構大きなエネルギーを回収できたんだ。
   これは僕たちにとっては嬉しい誤算といえる』

QB『というわけでこれ以上魔法少女を相転移させる必要がなくなったのさ』


さやか『それってつまり気を遣ったんじゃない』

QB『直接的な言葉は時に伝達に齟齬を生じさせるから、状況に合わせて言い方を変えただけだよ』

QB『僕がここに来た目的はあくまで状況の説明だからね』

さやか『そもそも、呼び出したあたしから言うのもなんだけど、
     どうして説明してくれてるのよ? ノルマ果たしたんでしょ?』

QB『確かにその義務はない。
   だが全てを知っている魔法少女と友好的に話ができる機会は少ないからね』

QB『この星から撤退する前に話ぐらいさせてくれよ』

さやか「あんた、感情あるでしょ?」

QB「そんなことはないさ。それに呼んだのは君の方だろ?」

さやか「まあ、いいけどね」

杏子「良くねえよ。この星を去るって言ったな?」

QB「ノルマを果たしたからね。これから人類が発展して宇宙に進出するのかあるいは滅亡していくのか。
   それはもはや君たち次第だよ」

杏子「あたしら魔法少女はどうなるんだよ?」

QB「魔女を狩りつくしたらそれまでだろうね」

杏子「てめえ……」


マミ’「え? ちょっと待ってそれってどういうこと?」

さやか「あ(しまった普通に会話してた)」

マミ’「QBのノルマとかこの星を去るとか、話が見えないのだけど」

QB「そうか。君はまだ知らないんだね。僕らの目的はね……」

杏子「ちょっと待て。それはまだ話すな」

マミ’「どうして? あなたたちは知っているのでしょ?」

杏子「いや、それは……」

~~

まどか「」スヤスヤ

まどか。「」スヤスヤ

ほむら「このままじゃまどかが風邪をひいてしまうわ」

マミ@「とりえず避難所へ行きましょうか?」

ほむら「そうね。ご両親の所へ届けないと……」

~~

マミ’「酷いじゃない! 魔法少女はみんな魔女になるなんて!!」ブンブン

QB「……首をつかんでシェイクしないでくれないか。
   もう撤退が決まっているからこの身体をつぶされた後が無いんだよ」

マミ’「それに、用が済んだからもう行っちゃうなんて!!」

杏子「とリあえず、マミは大丈夫そうだな」

さやか「うん」

マミ’「大丈夫じゃないわよっっ!!」


……

ほむら達が避難所へ向かう途中で。

詢子「おい!」

ほむら「え? (まどかの母親?)」

詢子「まどか!?」

マミ@『ええと、この方は?』テレパシー

ほむら『まどかの母親よ』

マミ@『あら』

詢子「……また増えやがったな」

マミ@「あの、『お母さん』?」

詢子「……違う」

マミ@「え」

詢子「てめえ誰だ!」

マミ@「ええええ、ええと、私、まどか、だよ?」アセッ


詢子「よく知りもしねえくせにまどかの振りをするたぁおまえいい度胸だなぁ、ああ?」

マミ@『……暁美さん助けて』

ほむら『私にはどうにもできないわ』

マミ@『そんなぁ……』

詢子「まあ、なんにせよ、二人とも無事だったようだな」

ほむら「ええまあ」

詢子「あんたは?」

ほむら「……クラスメイトです」

詢子「知らねえな」

ほむら「転校生ですから」

詢子「転校生ぇ?」マジマジトミツメル

ほむら「……」(目をそらす


詢子「ってことはあんたが『ほむらちゃん』だな?」

ほむら「……え」

両肩を捕まえられた。

詢子「やっと捕まえたぜ」

ほむら「……」

詢子「まどかが何か危ねえことをしてるのは知っていた。
    いくら聞いても教えてくれなかったがな」

詢子「だか、あいつの話に何回もあんたが登場してたんだ」

マミ@「あのー」

詢子「……まあ話は後だ。一人あたしが背負うよ。よこせ」

マミ@「ああ、はい」

詢子「悪いがあんたはもう少し頼む」

ほむら「いえ、これくらい」



一方こちらはQBの話を聞いてた、さやか・杏子・マミ’。

マミ’「そうだわ。QBはここに残るべきだわ!」

QB「どういうことだい?」

マミ’「だって、私裏切られたのよ! 責任とって!」

QB「わけがわからないよ」

QB「でもまあ、この地球はこの身体で最後ってことになってるから」

マミ’「え? 居なくなっちゃうわけじゃないの?」

QB「撤退と言っても無関係になる訳じゃない。エネルギー回収の対象から観察対象に変わったんだ。
   これは最初から決められていたことだよ」

マイ’「じゃあ、一緒に居てくれる?」

QB「一応、僕の残務として魔法少女の記録を取ることになっているから、それくらいは構わないよ」

マミ’「…………」

QB「どうしたんだい?」


マミ’「…………」ブワッ

さやか「あ、泣いた」

マミ’「うわーん。きゅうべえぇぇぇーー」ダキシメ

QB「きゅぅっ」

マミ’「良かったーーー」

QB「わけがわからないよ」



さやか「なんか話がかみ合ってないと思ったら、QBって時間のスケールが人間と違うんだっけ」

杏子「ああ。あたしらの一生なんて、あいつにとっちゃほんの一瞬なんだろ」


………………

…………

……


まどか。「鹿目たまきです」

マミ@「鹿目ひなたです」

結局、二人とも鹿目家で引き取られることになった。
詢子いわく、ここまで来たら一人でも二人でもあんまり変わんないそうだ。

そして二人とも見滝原中学に編入となったのだ。

ついでにほむらも鹿目家に居候することが決められてしまった。
これは詢子が早々にほむらの両親に話を通してしまい、逆らえなかった。

それから結局マミは中身が入れ替わってしまったが、
双方ともこのままで良いと言っていた。

マミ@「だって、この方が暁美さんに甘えられるし……」

また、魔法少女のグリーフシード枯渇問題は、
QBの予想によると十数年という単位の未来の話とのこと。

『それなら大丈夫』という訳にはいかないが、
これに関しては最終的に地球で回収できたエネルギーが大幅な黒字だったことから
今後、状況の遷移を見て魔法少女を人間に戻すシステムを検討しているとかなんとか。


QB「君たち人類もいつか未来に僕たちと対等の存在として宇宙に進出してくるかもしれないからね。
   無用な禍根を残しておくのは適切でないと僕から進言したのさ」

杏子「おまえ、意外といいとこあるじゃん」

QB「いいや。あくまで合理的判断さ」

ほむら「いいえ。それを『禍根』と理解できたのが私には意外だわ」

QB「概念は理解していたさ。ただ今までの活動ではそれに何の意味も見出さなかっただけだよ」

さやか「今は意味があるんだ?」

QB「これから永きにわたって人類の発展を見守るにあたってはね」






<<完>>

まさかのQBエンド。
“2”はここまで。

一応【問い合わせ】で方針が決定できたので無意味ではなかった。
3をこのスレに詰め込むかどうかは話を整理してから決めます
今日は以上

【もしも】さやかたちより早く詢子さんが逆行直前のほむマミに凸ってたら【おまけ】


詢子「おい!」

ほむら「え? (まどかの母親?)」

詢子「まどか!?」

マミ@『ええと、この方は?』

ほむら『まどかの母親よ』

マミ@『あら』

マミ@「あの、『お母さん』?」

詢子「……違う」

マミ@「え」

詢子「てめえ誰だ!」

マミ@「ええええ、ええと、私、まどか、だよ?」アセッ

詢子「よく知りもしねえくせにまどかの振りをするたぁおまえいい度胸だなぁ、ああ?」

注意:この‘マミ@まどかの身体’の中身はこの時間軸の巴マミ(の魂)


マミ@『……暁美さん助けて』テレパシー

ほむら『私にはどうにもできないわ』

マミ@『そんなぁ……』

詢子「あたしのまどかを何処へやったんだ!」

マミ@『うえぇぇぇぇぇぇん……』

ほむら(……仕方がないわね)

ほむら「まどかはもう何処にもいないわ」

詢子「なに?」

詢子「お前はなんだ?」

ほむら「まどかのクラスメイトです」

詢子「知らねえな」

ほむら「転校生ですから」

詢子「……」マジマジトミツメル

ほむら「……」


詢子「ってことはあんたが『ほむらちゃん』だな?」

ほむら「……え」

両肩を捕まえられた。

詢子「やっと捕まえたぜ」

ほむら「……」

詢子「まどかが何か危ねえことをしてるのは知っていた。
    いくら聞いても教えてくれなかったがな」

詢子「だか、あいつの話に何回もあんたが登場してたんだ」

詢子「あんた、何か知ってるんだろ? いや仲間の一人なんだろ?」

ほむら「……」

詢子(こいつ中学生のくせになんて目してやがる)

詢子「……こりゃ大物を捕まえたようだな」

ほむら「……」


詢子「洗いざらい話してもらうぜ」

ほむら(……もう、やめて)

ほむら変身。盾に手をやる。

マミ@「あ、暁美さん、ダメ!」

ほむら(もうどうなってもいいわ。このまま時間遡行してやる!)

マミ@(こうなったら魔法で強引に盾の中へ!)

詢子「おい! 何を……」


~~~~

~~~

~~





























まどか「おっきろーー!!」

詢子「どぅぇぇぇうぇぇぇ!?」

詢子「……え……あれ?」

タツヤ「ママ、おきたね」



《つづく……?》

とりあえず、ここまで

【残されたひとたち】ほむらが盾を回した直後くらい【ifバージョン】


さやか「ちょっと、まっ……ほむら!?」

まどか達を回収してようやくほむらを見つけた美樹さやか。

さやか「と、あれって詢子さん……?」

遠目だったが、変身したほむらが鹿目詢子に肩を掴まれたまま例の盾を回した所までを見た。

さやか「ああっ!」

杏子「なんだ? 倒れたぞ?」

直後、二人とも崩れ落ちるように倒れてしまった。

マミ’「急ぎましょ」

慌てて駆け寄る三人。

~~

さやか「おばさん、、詢子さん!」

詢子「……う」

ほむら「」

さやか「大丈夫ですか?」

詢子「ああ、さやかちゃん……か?!」

顔を上げた直後、何故か呆気にとられたような顔をする詢子。

さやか「?」

詢子「……ここは何処だ?」

さやか「え」

続けて彼女は自問するように言った。

詢子「いったい何がどうなって……」

さやか「え、ええと、ここは見滝原ですけど…」

詢子「見滝原? この瓦礫が? いや、見覚えのある建物があるな……」

そこそこ破壊されてはいるものの街の被害は壊滅的という程ではない、
……のだが、どうも彼女の様子がおかしい。

詢子「まどかは? まどかはどうしたんだ?」

さやかの背中のまどかを心配そうに見ているのでさやかは、

さやか「いえ、寝てるだけですけど。見ての通り」

詢子「そうか……そうだな」

心配するだけ無駄に思える寝顔にとりあえずホッとする。

それから詢子は難しい顔をしてなにやら考えていた。



杏子「おいほむら! 起きろよ」

ほむら「……ぅ」

さやか「あ、気が付いた」

ほむら「……」

さやか「行っちゃったのかと思ったよ。行く前で良かった」

ほむら「……」

さやか「ほむら?」

ほむら「あの……」

さやか「ん?」

ほむら「どちら様ですか?」

さやか「え」

ほむら「ここは、何処なんですか?」

杏子「なんか様子がおかしいぞ? どうなってる?」

怯えきったほむらから話を聞くに、病院で寝ていたはずが気が付いたらここに居たとか。
今まで一緒に戦っていた記憶はおろか、性格まですっかり変わり果ててしまっているように見えた。


一方の詢子さん。

詢子「……何があったんだ? あたしは今まで何をしてた?」

さやか「ええと……何も覚えてないんですか? ワル、いや災害のこととか」

詢子「覚えているも何も、昨日、普通に寝たことまでしか記憶にねえ。なんだよ災害って……」

さやか「まさか……」

杏子「魔法の影響か?」

さやか「そうかも」

マミ’「それより早く避難所にお連れした方がいいんじゃない? 暁美さんも」

杏子「そうだな」

そのとき詢子の表情が、荒廃した見滝原を見たときよりもっと深刻なものに変わった。

詢子「……おい」

マミ’「はい?」

詢子はマミが背負っている方のまどかの顔を凝視していた。

詢子「そいつは誰だ?」

マミ’「え? ええと……」

~~

まずほむらだが、彼女は転校前の病院で寝ていた記憶までしか持っていないばかりか、魔法少女でなくなっていた。

まどか。「きっとこの世界のほむらちゃんだよ。ね、まどかちゃん」

まどか「え?」

まどか。「ほら、まどかちゃんと出会うはずだったほむらちゃん」

まどか「あっ……そっか」


そして、どういう影響なのか、詢子さんもまたほむらが転校してきたころから今までの記憶を失っていた。

杏子「つまり、あいつはあたしたちがみんな死んじまったと思って過去に行っちまったってことか」

マミ’「多分そうだと思うわ。過去と言っても違った可能性の平行世界ね」

杏子「もう一人のマミも連れてか?」

マミ’「そうでしょうね。やり方は判ってたはずだから」

杏子「あの人のことはどう説明付けるんだよ?」

マミ’「鹿目さんのお母様のことは……」

マミ’「もしかして行った先の平行世界のお母様と入れ替わったとか?」

杏子「そりゃおかしいだろ。道連れにして跳ぶだけなら出来るみたいだが、
    同時に行った先から誰かを送り返すなんて出来んのか?」

マミ’「判らないわね。でも確かにやり直しを願った暁美さんの魔法で出来るとは考えにくいわ」

杏子「だろ?」

マミ’「じゃあ、記憶だけ持って行ったとか?」

杏子「あー、なるほど。こっちのから『奪って』ってことか。そっちの方が信憑性がありそうだな」

マミ’「でも真相は知り様が無いわ」

杏子「まあ、ありえそうな説が聞けただけで満足するしかないさ。あいつは行っちまったのは確かなんだ」

マミ’「彼女は別の世界でまた鹿目さんのために奔走するのね……」

以上。
消化不良気味だが幕間ってことで。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月25日 (金) 17:09:43   ID: 2UBhSVaW

序盤は引きこまれたんだが…
まさかまだ完結してないとはw

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