勇者「魔王死ななきゃ俺不死身じゃね?」(461)

―魔王城・王室―


ザシュッ!

魔王「ぐっ、しまった……!?」ヨロッ

勇者「弱いな……。拍子抜けだぞ魔王」

勇者「お前を倒すためだけに戦い続けて、やっとここまで来たってのにさ」

魔王「なめるな……!」ブンッ

勇者「……」ヒョイ

勇者(このままこいつを倒したら、俺はもう普通の人間に戻るのか)

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勇者(魔王を倒した後は、……また戦いに駆り出されるんだろうか)

勇者(…………俺は)

勇者(俺は、魔王を倒して何になるんだ?)

魔王「どうした、勇者……! まだ、勝負は終わってないっ……!」

勇者(今までなら、少なくとも一人で自由に暮らしてきた。だけど、魔王を倒したら最後、騎士になって、王の下で延々と働かされるだけ)

勇者(そんなの、魔王を倒さない方がいいじゃないか)

勇者(……俺、勇者になってから、何かいいことあったかよ?)

勇者(せいぜい、神の加護で何度殺されても生き返れたことと、歳をとらなかったこと……)

勇者(ん?)

魔王「…………?」

しぇん!ww

勇者「勇者である限り歳をとらないってことは……魔王倒さなきゃ、俺は不死身ってことか?」

魔王「は……?」

勇者「ってことは、魔王を倒したことにして、どこかに監禁しておけば、俺は永遠の命が手に入る! 王達もそれで満足する!」

魔王「何を訳のわからないことを! お前は勇者だろう! 勇者なら、私を倒して見せろ!」

勇者「うるさいな」パチン

魔王「っ? 体が動かない!?」バチバチッ

勇者「そりゃ、束縛魔法かけたし」

魔王「そんな……魔王である私が、束縛魔法なんかに!」

勇者「術者のレベルが違いすぎるってことだ」

勇者「このまま、俺の隠居予定場所だった山小屋にでも閉じ込めておくか」

魔王「ちょ、ちょっと待て! お前勇者だろう!  まともに私と勝負しろ! おい――!」シュン

勇者「これで魔王討伐完了だ」




―城内―

王様「――おお、よくぞやってくれた勇者よ! 皆の者、今宵は宴じゃ!」

王様「たった一人で、よく魔王を倒したものだ。そなたには、追々褒美をやろう」

勇者「ありがたき幸せに存じます」

ワイワイガヤガヤ

勇者(騒がしいな、まったく)

勇者(……さて。俺の魔法から逃れられることは無いと思うが、魔王がどうしているか気になるな)

勇者(舌切って死んでたらどうしよう)

勇者(割と本当にその可能性が高い)

勇者(どうせ途中で抜けるつもりだったし、構わないだろう。もう行くかな)

勇者「さらば、故郷。良い思い出はまるでないけど、世話になったよ」

―山小屋内―

魔王「…………っ」キッ

勇者「お、生きてた生きてた」

魔王「私を、一体どうするつもりなんだ?」

勇者「言っとくけど、いくらお前が美人でも、何もするつもりないから。ただ生かすだけだ」

魔王「……お前の、永遠の命とやらの為か」

勇者「そうだ。女神の加護が続く限り、俺は不老不死。そしてその加護は、俺が勇者で在る限り続く」

勇者「勇者で在るには、魔王が必要だ。だから、お前を生かした」

魔王「屑め……。自分さえよければ、それでいいのか」

勇者「おいおい、そこまで言う理由は無いだろ。別に、ただ俺とお前が消えたというだけのことだろう?」

魔王「勇者と魔王、人間と魔族の統率者を同時に失い、世界は混乱するはずだ」

魔王「勇者がいないとなれば、再び魔族が集まり、戦争を仕掛けるかもしれない」

魔王「統率者のいない戦争は、泥沼化し、双方に壊滅的な被害を与える……」

魔王「その可能性が、非常に高い」

二人合わせて戦争を防ぐ・・・・・・ 的な?

勇者「お前と俺にとっちゃ悪い話じゃないだろう」

勇者「うまい具合に戦争が激化すれば、俺やお前のこと、戦わせる奴は皆いなくなる。敵同士、世界の滅亡でも見届けようじゃないか」

魔王「お前っ! 今まで守ってきた民を、見捨てるというのか!?」

勇者「確かにお前は、本当に今まで民を守ってきたんだろうな。だが、俺は今まで、一度たりとも民を守ったことなんてない。守ってきたのは自分自身だ」

魔王「屑が……!」

勇者「そりゃおかしいだろう。命と力は本来自分の為にある。人間だけがそれを非難する」

勇者「お前、会ったときから思ってたけど、魔族より人間に近いよな」

興味深い

魔王「この鎖を解け……! このまま魔族が戦い続けるのを放っておけるか!」

勇者「それはできない」

勇者「魔王は一応殺したことにした。今更ひょっこり出てくるのはおかしい」

勇者「そしたら勇者を探し出すに違いない」

勇者「ほら、魔王と共に消えればさ、『勇者様は天界に行ったんだ』とか馬鹿げた妄想で片付けてくれるだろうし。奴ら、伝説が好きだからな」

勇者「『魔王を討ち取った勇者は、女神様に天界へと招かれ、いつまでも幸せに暮らしました』……俺の国に伝わる有名な絵本さ」

勇者「お前が民を守りたいのは分かったよ。だがお前は敗者だろう? まだ生きているとはいえ、魔族が負けたというのは事実。なら例え滅ぼされたって文句は言えない」

魔王「ぐっ……。私に、魔族が死にゆくのをじっと見ていろというのか!?」

魔王「私は、魔族の王だ! 生きている限り、民を守る義務がある!」

勇者「お前と俺と、立場が逆だったら綺麗な物語だったろうなぁ」

勇者「だけど、俺が勇者で勝者、お前が魔王で敗者なんだよな」

魔王「ううぅっ……」

勇者「それはそうとその鎖、俺が作ってみた魔法道具なんだ。縛った者の魔翌力を奪う便利な鎖だ。その様子だとしっかり効いてるようだな」

魔王「……だから、このような鎖でさえ壊せなかったのか」

勇者「それと、燃費も悪くなる。魔族は、水さえあればとりあえずは生きてられるんだっけ?」

勇者「これからは何か食事をしなきゃ生きていけなくなる。今、食事を作ってやるよ」

魔王「…………」


―――


勇者「ほら、出来たぞ。といっても簡単な野菜炒めだが。まあ食べてみてくれ」

魔王「……いただこう」

勇者「へぇ」

魔王「なんで意外そうな顔をする?」

勇者「てっきり、『敵の手料理を食すくらいなら飢えて死ぬ!』とか言うと思ってたから」

魔王「ふん。与えられた食事を正しく食すのは、勇者云々ではなく生命に対する礼儀だ」

勇者「本当、お前魔王らしくないな」

勇者「どうした? 食べるなら早く食べろ。冷めるぞ」

魔王「……食べられない」ジャラ

勇者「ああ、めんどいな。じゃあ俺が食べさせてやる。口開けろ」

魔王「どこの世界に敵から料理を食べさせてもらう奴がいるっ!」ジャラジャラジャラ!

勇者「うるさいな。そもそも敵の手料理を食べるんだから、それ以前の問題だろう」

魔王「うっ、ぐぅ……」

魔王「…………っ」ハムッ

勇者(あ、かわいい)

勇者(って、何を考えてるんだ俺は……)

魔王「はぁ……」ガク

勇者「ようやく全部食べきったな」

魔王「食事をするのに、こんな屈辱と疲労感を伴ったのは初めてだぞ」

勇者「貴重な体験だな」

魔王「馬鹿にするなっ!」

勇者「……さて、もう寝るかな。お前も早く寝ろ」

魔王「ま、待て!」

勇者「なんだ?」

魔王「風呂は? 風呂はここにないのか?」

勇者「……お前、俺が食事を出したからって自分の立場を忘れてないか?」

魔王「そういうわけでは、ない……」


勇者「……まあ、そうはいっても、これから一緒に生きていく身、清潔にしておかないと確かに衛生上悪いな」

勇者「ほら、魔法で体を清潔にしてやる。これでいいだろ」パァァァ

魔王「お前に洗われているようで、愉快ではないな……」

魔王「それに、やはり湯に浸からないと……いや、そのような立場ではないことくらい、弁えている」

勇者「さあ、もう遅い。早く寝よう」

魔王「…………」ジャラ

勇者「睨むなよ。毛布くらいならやるから」

魔王「いや、お前が今寝ているそのベッド……」

勇者「お前のベッドを魔王城から持ってきた」

魔王「どれだけ嫌な性格をしているんだ、お前……」

勇者「いやあふかふかだ」バフッ

勇者「お前、いつもこんなふかふかのベッドで寝てたんだな」

魔王「ああ。少なくとも、こんな鎖に縛られて寝ることはなかったさ」

勇者「俺は、旅に出てからはほとんど野宿だった」

魔王「……?」


勇者「仲間も居ないから、魔物にいつ襲われるかと怯えながらな。実際、俺が死んだ理由で最も多いのは夜襲だった」

勇者「お前がいなければ、ずっとベッドで寝ることができた。襲われる心配もなく」

勇者「これは、そのささやかな仕返しだよ」

魔王「理不尽極まりないな。お前と私を戦わせたのは、お前達の王だろう」

魔王「王に逆らえる程の器を持っていないから、私に八つ当たりしているだけなのではないか?」

勇者「違う。魔王と勇者が戦うのは、王とか女神とか、それ以前に、宿命なんだ」

魔王「宿命? その宿命を背負うことに、何の意味がある?」

勇者「意味はある。平和には、犠牲が必要なんだよ。お前も分かっていて、俺と戦ったんじゃないのか? だからいつの時代も、勇者と魔王、どちらかが犠牲になるんだ」

勇者「そうやって、何とか今まで、俺達人間とお前達魔族は生き残ってきた」

勇者「勇者が魔王を憎み、苦しめるのは当然のことだ。そうしないと人間と魔族は生き残れない」

勇者「まあ、人間と魔族が滅ぶかもしれない選択をした俺が言っても説得力がないけどな」

勇者「……無駄話が過ぎたな。魔王、おやすみ」

魔王「…………」

勇者「無視か。まあ、それくらい分かってたけど」

魔王「…………」スー

勇者「なんだかんだ言っておいて、意外と寝るの早いな……」

チュンチュン

勇者「うーん、いい朝だ。貴族気分だな」フカフカ

勇者「さて、魔王の方は」

魔王「…………」スー

勇者「朝の日差しと相まって、封印された魔王みたいだな」

勇者「……まんまじゃないか」



魔王「……ふあ」パチ

魔王「ここは、どこだ?」

勇者「おはよう魔王。朝は弱いみたいだな。状況は思い出したか?」

魔王「…………!!」

魔王「何を言っている、お前に捕らえられた屈辱、例え一瞬でも忘れるものか!」カッ

勇者「一瞬で表情変える辺り、流石魔族の王だな」

良いね

魔王「なあ、勇者よ」

勇者「何だ、魔王?」

魔王「私がお前を憎むように、お前も私が憎いのだろう?」

勇者「そうだな」

魔王「それなら、何故共に暮らす必要がある? 私は、一秒たりともお前と共にいたくはないが」

勇者「万が一にもお前が逃げないように、だ。当たり前だろ」

魔王「……そう、か。そうだろうな」

勇者「何だ、『お前に惚れたから』とでも言うと思ったのか?」

魔王「違う。何かもっと、別の理由がある気がした……私の深読みだったようだ」

結構好きだ
頑張って

魔王「しかし、それなら何のためにお前は、私を生かしているのだ?」

勇者「どういうことだ?」

魔王「永遠に、憎き相手と一緒に居るということだろう? 私なら発狂する」

魔王「そこまでして生きることに執着して、何がしたいのだ?」

勇者「……どうなんだろうな。ただ、永遠の命というのは魅力的じゃないか?」

魔王「私は、そうは思わない……。永遠の命など、考えるだけで恐ろしい」

魔王「生きるのが楽しいから、生きたいと思うのだろう。お前は今、楽しいのか?」

勇者「…………楽しくは、ないな」

魔王「お前は、生ける屍なのだな。ただ虚ろに生に執着するだけの、屍」

勇者「言いたいだけ言えばいい。お前の人生論なんて聞きたくもない」

勇者「食糧を買ってくる。暇だろうが、封印の解除でも頑張っててくれ」

魔王「朝から皮肉が好きなようだな、お前は……! 後悔するなよ」

勇者「死ぬつもりはないようで良かった。それなら安心だ。行ってくる」

魔王「くそっ……こんな鎖なんかに……!」ジャラジャラ




ガヤガヤ

勇者「これくらいあの王国から離れた街なら、勇者の顔も知られてはいないだろう」

勇者「さて、買い物を済ませるか」

商人「らっしゃい。何をお求めだい?」

勇者「食料を一か月分ほど」

商人「……山籠りでもするんかい?」

勇者「まあ、そんなとこです」

商人「ならこっちの毛皮も買っていきな。それとこっちの――」



―――


勇者「……結構な買いものだったが、当分は大丈夫だろう」

勇者「じきに自給自足できるようにならないとな。歳をとらないのに街へ行けば、不気味に思われるだろうし……」

勇者「朝食ができたぞ」

魔王「いただこう」



勇者「昼食ができたぞ」

魔王「一日三食食べさせるのか? 何だか太ってしまいそうだ……」

勇者「魔王の癖に体形を気にするのか?」

魔王「私だって女だ」

勇者「太ればいいさ。そっちの方が悪役らしい」

勇者「夕食ができたぞ」

魔王「勇者、お前はいつも何をしているんだ?」

勇者「とりあえずは、畑を作っている。いやはや、一から作るのは面倒だな」

魔王「魔法は使わないのか?」

勇者「分かってないな。自分でやるからいいんだ、こういうのは」

勇者「日が、暮れたな」

勇者「こうものんびりしていると、一日が経つっていうのは、意外と長いものだ」

勇者「さあ、そろそろ寝ろ。どうせ何もすることはないだろ」

魔王「……そうだが。さすがに、少し動きたい」

勇者「文句言うな。どちらにしろ、俺はもう寝るぞ」

魔王「…………」スー

勇者「寝てる」

ザァザァ

勇者「雨、か。晴耕雨読、今日は読書でもしてようかな」

勇者「いや、耕すどころかまだ畑が完成してすらいないぞ」

勇者「……やるか」


魔王「…………む」パチ

魔王「勇者がいないな。もう外に出たということか」

魔王「なんというか、あいつよりも起きるのが遅いのは、屈辱的だ」

魔王「早く起きるようにしないと」

魔王「……」ジャラジャラ

魔王「なんだか、この生活に慣れてしまいそうだ」

魔王「あいつの考えが分からない」

魔王「一日三食の食事はあるし、私に何をするわけでもない」

魔王「嫌味なことを言ってくるのは別として」

魔王「……ここから出ていく気を削ぐためか?」

魔王「いや、どうもそのような気はしない」


魔王「いやいや……どうであれ、あいつは私利私欲で私を監禁している」

魔王「これを悪と言わずして何とする」

魔王「変な考えはやめよう。あいつは、私の敵だ」

魔王「策略にはまってたまるか」

魔王「……外は雨か」

魔王「こんな雨の中、勇者は畑とやらを作っているのか?」

魔王「あいつの考えは分からない」

魔王「……それにしても、一人だけというのは退屈だ」

魔王「敵と一緒に居る時間も相当苦痛ではあるが、これはこれで辛いものがある」

魔王「今まで必死に鎖を解こうとしてきたが、解ける気配がない」

魔王「壁に縛りつけられて動けないし……せめて、手足が自由になれば」

勇者「雨が冷たいな。風邪を引きそうだ」

勇者「魔法じゃ、風邪は治せないんだよな。まったく、不便だ」

勇者「怪我を治せて、体を清潔にできて、火も出せるのに」

勇者「俺に、人間の体から病原体だけを精密に取り除く程の技術があるなら治るのかもしれないが」

勇者「まあ、魔法で何でもかんでもできたら苦労しないか」

勇者「雨も降っていることだ。ここらへんで止めておくか」

勇者「急げ、急げ」バタン

勇者「魔王、ただいま」

魔王「びしょ濡れだな。大丈夫か?」

勇者「? 何で魔王が、俺の体を心配する必要があるんだ」

魔王「…………反射的に言ってしまっただけだ」

翌日



勇者「風邪を……引いた」ゲホッ

魔王「おいおい」

勇者「だけど、大丈夫だ。慣れてる」

勇者「今、食事を作るよ」ヨロリ

魔王「何も毎日食べなくても、私が死ぬわけではないのだろう……?」

勇者「ああ、……そうか。それもそうだな」

魔王「何なんだお前は……」

なかなか面白い。
期待。

これはwwktkせざるをえない

勇者「…………」

魔王「…………」

勇者「何もすることがない」

魔王「私は数日前から何もできることがない」

勇者「出来ることと言えば、お前と問答するくらいだ」

魔王「私はやりたくない」

勇者「そうだな、確かに今は何か話すのも辛い」

魔王「何故無理をしてまで私の嫌がることをしようとするんだ」

勇者「お前が憎いから、だ」

魔王「……。なら、何故私と共に暮らすんだ?」

勇者「………………」



勇者「……俺は、きっと人間の中で生きていけない」

勇者「人間として暮らすには、俺は強すぎる」

魔王「……?」

これは、なかなか

勇者「不思議そうな顔をしてるな」

勇者「確かに魔王がいくら強くても、魔族はついていくだろうな。いや、強い方がついていくだろう」

勇者「だけど普通、人間は魔族ほど力の差が開かない。だから、開きすぎる力の差を恐れるんだ」


勇者「俺を恐れない存在なんて……魔王くらいしか、いないんだ」

勇者「まともに俺と暮らせる奴なんて、お前くらいしかいない」

勇者「……俺は、ただ誰かと一緒に居たかった」

魔王「っ……それなら、何故私の力を封印し、束縛するんだ」

勇者「お前を苦しめろという、女神の呪いかな」

勇者「……なんてな。俺もよく分からないんだ」

うむ、なかなか

勇者「もしかすると、ただ、お前という存在が怖かったのかもしれない」

勇者「お前を恐れないのも、お前だけ。そして俺にまともな敵意をぶつけてきたのも、お前だけなんだ」

勇者「俺は勇者という肩書だが、臆病者だってことは自覚してる」

勇者「その上、寂しがりだ。……本当、勇者らしくないな。お前に、魔王らしくないなんて言えないよ」

魔王「……勇者」

魔王「勇者、今日は大人しく寝ていろ」

魔王「その調子だと、言ってはならないことまで口に出してしまうぞ」

勇者「……そうだな。今日の俺は、少しおかしいみたいだ」

魔王「勇者、すまなかった」

勇者「何故謝る?」

魔王「風邪で弱ったお前から真意を訊き出すような、卑怯な真似をした」

勇者「別に、謝ることはない。敵同士なんだから、当たり前だ」



勇者「……魔王。俺はお前が大嫌いだ。お前がいなければ、俺はこんな辛い思いをせずにすんだんだからな」

魔王「ああ。私もお前が大嫌いだ。お前の私利私欲で力を奪われ、監禁されたのだからな」

勇者「それが分かっているならいいさ。おやすみ、魔王」

数日後



勇者「ようやく全快したみたいだ」

魔王「よかったな」

勇者「空は快晴だ。ようやく畑仕事ができる」

魔王「今後は無茶をしないようにするんだな」

勇者「何故魔王に心配されなければならない」

魔王「風邪よりももっと重大な病を持ってこられては、私もたまったものではない」

勇者「そうか、気をつけよう。何にしてもお前が生きていれば俺も生きていられるのだから」

勇者「そろそろ食料がなくなってきたな。買い出しに行くか」


―街中―

勇者「……やけに物騒だな。兵士もたくさんいる」

勇者「すいません、一か月分程の食料をください」

商人「おう、またあんたか。ちょっと待ってな」

勇者「しかし、物騒ですね」

商人「ああ、そうなんだよ。実は最近、魔物が襲ってきたらしくてな」

商人「どうも上級魔族らしいんだが、弱まってたみたいで、兵士にすぐ捕らえられたんだ」

勇者「……なんで弱まってたのに襲ってきたんでしょうね?」

商人「さぁ……」

勇者「……うーん」

勇者「確かに、この街の地下に強い力を感じるんだよな。それも結構強い魔族の」

勇者「これが、商人の言っていた魔族なのかな」

勇者「どうせ時間はあることだし、寄ってみようか」

勇者「牢番には悪いが眠っててもらおう」パチンッ

牢番「……何だ? 急に、眠く……」バタ

勇者「さて、そこにいるのは誰だ」


吸血鬼「一体何の用かしら?」

勇者「君を助けに来た」

吸血鬼「もう少し真剣な顔で言ってもらえると感動するんだけどなー」

勇者「あちこち傷があるな。回復しようか?」

吸血鬼「冗談やめてよ、私アンデッド族よ? 回復されたら浄化しちゃう」

勇者「それもそうだ」

勇者「俺は通りすがりの隠居だよ」

吸血鬼「随分若い隠居様ねぇ」

勇者「今の魔族がどうなっているのか訊きたい」

吸血鬼「……答えたら出してくれるとか?」

勇者「正直に答えてくれたらな」

吸血鬼「やった! それなら何だって訊いてよ。私けっこー詳しいのよ」

勇者「魔王って今、どうなってるんだ?」

吸血鬼「さぁ? 死んだって言われてるけど、失踪した、とか本当は生きてるとか、噂はいろいろね」

吸血鬼「個人的には、あの魔王様のことだから生きてると思うんだけど」

吸血鬼「だから人間も気が大きくなってるのかな? このへん歩いてたら捕まっちゃったわ」

勇者「なんだ、襲ったんじゃないのか……。というか、人間の街の近くを簡単に歩くなよ」

吸血鬼「昼間に行ったのがまずかったわねー」

勇者「お前吸血鬼だよな……?」

勇者「あと、物騒な話は聞いていないか? 戦争とか」

吸血鬼「魔王城では、将軍の龍人がなんか騒いでたわね。当分は動けないだろうけど」

吸血鬼「牢番の話だと、王国は、魔王様が死んで、みんな結構お祝いモード抜けてないみたい」

吸血鬼「まだまだ動くつもりがないとか」

勇者「なるほど」

吸血鬼「魔族の方も魔王様が云々で荒れてるからね。人間が残党狩りなんて始めたら、結構大規模な戦いになるかも」

吸血鬼「まあ、先に仕掛けるとしたら人間の方だと思うわ」

吸血鬼「他にはもう質問はないのかしら?」

勇者「いや、もう無いよ」

吸血鬼「そうっ。じゃあこれで出してくれるのね!」パァ

吸血鬼「あーでも、出れても行くあてがないなー」チラチラ

吸血鬼「あなたみたいないい男の家にでもお泊まりしたいなー」クネクネ

勇者「鬱陶しい」

勇者「……お前、俺が怖くないのか?」

吸血鬼「だいじょーぶよ、私、激しくても全然平気だから!」

勇者「何の話だ! ……お前くらいの魔族なら分かるだろ、俺の魔力の量とか」

吸血鬼「でも、優しそうじゃん。私を助けてくれるって言うし。どこが怖いの?」

勇者「……それは、」

吸血鬼「怖がられる理由がないのに、変な人だね」

吸血鬼「そんでさー、どうやって出してくれるの?」

勇者「そこで兵士が眠ってるし、鍵を取ってくる」


勇者「……あー、めんどくさい」ジャラジャラ

吸血鬼「そのすっごい量の鍵、一個一個試すつもり?」

勇者「そんなことしてられるか」

吸血鬼「じゃーどうすんのよー!」

勇者「こうする」グイッ

吸血鬼「あらら牢の格子が紙みたいに」

面白いな

こりゃいい
期待

期待

シエンタ

期待

乙乙
DQM+の2勇者の話好きだったから超期待

なんかおもろい

期待

追いついた
面白い

>>62
実は久しぶりにそれ見たのがきっかけだったり


勇者「吸血鬼、髪の毛を一本くれ」

吸血鬼「えー、何に使うつもり? まあ、いいけど」プチ


勇者「ちょちょいっと」パァァァ

吸血鬼「へぇー、すごい! 私が二人に!」

勇者「これで誤魔化せるだろう」


―――


吸血鬼「ありがとねー! あなたのこと忘れない! ばいばーい!」バサバサ

勇者「達者でな。街の人に見つかるなよ」

勇者「さて。俺も帰るとするか」

勇者「ただいま、魔王」

魔王「……む? 魔族の念を感じるな」

勇者「ああ、ちょっと一人の吸血鬼とな」

魔王「ほう。まあ感謝の念があるようだから気にしないでおこう」

勇者「そんなところまで分かるのか。魔王ってすごいな」

―魔王城・会議室―


龍人「魔王様が失踪して数週間」

龍人「そろそろ、仕掛けるべきだと思うのだ」

九尾の狐「龍人、何故そんなに戦争を急ぐ?」

九尾の狐「どうあれ魔王様は負けたのじゃ。魔族は退くべきじゃろう」

龍人「魔王様は生きておられる! ……おそらく、人間の城の地下にでも閉じ込められておるのだ」

鬼「人間がうかれている今こそ、魔王様を取り返す機会……!」

吸血鬼「ただいまみょーん」ガチャリ

鬼「……吸血鬼。何でお前はそんな軽いんだよ」

吸血鬼「こんなんが四天王の中に一人はいないと、やってられんでしょ」

吸血鬼「鬼ちゃん、りら~~~~っくす」

龍人「吸血鬼ぃぃぃっ!! 貴様という奴は、場の雰囲気を壊すな阿呆め!」

吸血鬼「はいはい龍人たんもりら~~~~っくす」

龍人「はぁ……まったく」

龍人「だいたい、今までお前どこに行ってたんだ」

吸血鬼「ちょっとお散歩♪」

龍人「はぁ……?」


九尾の狐「助かったぞ吸血鬼。こいつら、戦争戦争とうるさいのじゃ」

吸血鬼「九尾ちゃんもっふもふ。そうねー、戦争は嫌ね、私も」

龍人「魔王様が生きておられるかもしれないのにか?」

龍人「それに、今人間を襲えば、魔族の永遠なる繁栄が手に入るというに……!」

吸血鬼「あんたには分からないだろうけど、私は人間が必要なの。ビバ人間なの」

吸血鬼「そもそも私が率いてるアンデッド軍なんて人間いなきゃ生まれないんだから」

九尾の狐「あぶらあげもできないし」

鬼「……酒もできないか」

龍人「お前らぁ! 私は人間のおこぼれなどもらうつもりはないぞ、人間と共存など!」

吸血鬼「ほらほら、そういうわけよ。ともかく一旦やめましょう?」

九尾の狐「そうじゃな。この不毛な会議はやめにするとしよう」

龍人「まったく……。こいつらは魔族の繁栄を考えてないのか? なあ、鬼よ」

鬼「うーむ、酒、酒が無いのは……」

龍人「鬼ぃッ!!」ガタンッ

鬼「す、すまん」

チュンチュン

勇者「朝だ。この生活にもだいぶ慣れてきたな」

魔王「…………」スー

勇者「相変わらず寝ているな、魔王は」

勇者「いつも思うけど、よく鎖に縛られているのに熟睡できるな」

勇者「さて、食事でも作っておこうか」

魔王「……」パチ

勇者「起きたか。食事ができているぞ」

魔王「いただこう」

勇者「召し上がれ」

魔王「…………」ハム

魔王「ん? いつもと味が違うな」

勇者「分かってるじゃないか。今日は畑で採れた野菜を使ってみた」

魔王「ほう、いつの間にか完成していたのか」

魔王「なあ、勇者よ」

勇者「何だ、魔王?」

魔王「ここに来て、もうどれくらい経つ?」

勇者「半年はたつかな」

魔王「そうか。もう、そんなに」

魔王「皆はどうしているのか……」

魔王「っそうだ勇者。戦争の話は聞いていないのか?」
 
勇者「今のところ、大きな騒ぎは起きていない」

勇者「ただ、本格的に戦争になるかどうかは、魔族の方にかかっているらしい」

勇者「王国の方はもう満足している。魔王が死んだ気でいるからな」

勇者「だから魔族が仕掛けるかどうか、だ」

魔王「……そうか」

勇者「なあ、魔王」

魔王「なんだ、勇者」

勇者「お前、少しやつれてきてないか」

魔王「……そうか? しかし、やつれる理由はないぞ」

勇者「お前、もう鎖で拘束されていることに違和感はないんだな」

魔王「そう思うのなら解いてくれ」

勇者「……少し緩めよう」

勇者「どうだ。鎖を長くして、その部屋内なら自由に動けるようにはしてやったぞ」

魔王「……さながら飼い犬のようだな」

勇者「何か良いことをすれば、その鎖を伸ばしてやろう」

魔王「私はピノキオか何かか」

勇者「眠たければ、俺が寝ていない間ならそこのベッドも使って構わない」

魔王「元々私のベッドだ、阿呆」

勇者「では、畑を耕しに行ってくる」バタン

魔王「…………」

魔王「ん~~っ……!」グググ

魔王「っはぁ。いいな、気持ちがいい」


魔王「…………」ピョンピョン

魔王「はは、足が震えるけど、久しぶりに動いた」

魔王「走ってみよう」ワクワク

魔王「……♪」トタトタ

魔王「うぐっ」ガッ

魔王「そうだ、鎖はこの部屋分の長さしかないんだった……」

魔王「よし、少し部屋の中を探索してみよう」

魔王「タンスがあるぞ。……何も入ってない」

魔王「壺がある。……なんだ薬草か」

魔王「探索が終了してしまった。何もないじゃないかこの部屋」

魔王「……いや、何かある部屋に魔王を監禁しないか」

魔王「ベッドで寝るか……」バフッ

魔王「ふかふか……懐かしいな」

魔王「しかし、あいつの匂いが付いているのが不快だ」

魔王「まるであいつと一緒に寝ているみたいじゃないか」

魔王「昔は九尾の狐と一緒に寝たものだが……」

いいね

勇者「……ふむ。畑もだいぶ安定してきた」

勇者「こうなると、牧畜もやりたくなってくるな」

勇者「しかし、野菜を育てるより数段難しそうだ」

勇者「いや、やれることはやってみよう」

勇者「さすがに小屋は魔法で作ってしまうか」

勇者「お金なら有り余ってる。牛、鶏……まあその辺で良いか」

勇者「魔王、牧畜を始めることにする」

魔王「そうか」グッグッ

勇者「何故体操をしてるんだ」

魔王「運動不足だったからだ」グッグッ

勇者「魔王の服では凄まじく似合わないな」

魔王「それで、何でそれを私に伝えるんだ?」

勇者「さらに家にいる時間が少なくなるからな。パンとかはお前の手の届く場所に置いておくから、俺が帰ってこなかったら食べてくれ」

魔王「お前の子供じゃないんだぞ、私は。手の届くって」

勇者「鎖のリーチ的な意味でな」

勇者「数週間かかったが、ようやく牧畜も落ち着いてきた」

魔王「そうなると、何が食べられるんだ?」

勇者「ミルクや卵だな」

魔王「そうか。楽しみにしているよ」

勇者「さあ、もう寝ようかな。おやすみ、魔王」


魔王「……なあ、勇者」

勇者「寝てないなんて珍しいな。なんだ、魔王」

魔王「月明かりが入ってきている。今夜はさぞかし月が綺麗な夜なのだろうな」

勇者「ああ、とても綺麗だった」

これは……勇者と魔王SSに見せかけた巧妙な牧場物語SS!

魔王「……久しぶりに、外の景色を見てみたいものだ」

魔王「いや、自分の置かれている立場は、分かっているのだがな」

勇者「首を鎖で繋いで、俺と散歩するっていうなら構わないが?」

魔王「わかった、それでいい」

勇者「なっ」

魔王「ああ、久しぶりの外の空気だ!」

勇者「……これで本当にいいのか?」

魔王「何がだ?」

勇者「もうちょっと、こう……プライドとかは無いのか?」

魔王「私に自由はほとんどない。手に出来る自由は、何としてでも手にしたい」

魔王「ここで朽ちる運命なら、なおさらな」

勇者「……半年間でだいぶ変わったな、お前」

魔王「はは、私は思ったより適応力があるようだ」

 彼女は美しかった。醜い鎖に繋がれていてさえも。
 それどころか、鎖は月明かりを反射して、綺麗に輝いていた。

 月夜に照らされて、嬉しそうに踊る彼女の姿は、さながら妖精のようだった。


勇者(なんて……詩人か、俺は)
 

魔王「どうかしたか?」

勇者「なんでもない。もう満足か?」

魔王「もう少しだけ、ここにいたい」

魔王「なあ、勇者」

勇者「なんだ、魔王」

魔王「ここは、綺麗なところだな」

勇者「そうだろう」

魔王「畑や、牧場を見てもいいか?」

勇者「……いいよ」

魔王「ここが畑か」

勇者「踏まないよう気をつけろよ」

魔王「分かってる」

魔王「随分と、広いな。これ全部、お前の手作業で?」

勇者「何分、暇だからな」

魔王「それで、ここが牧場か」

勇者「踏まないよう気をつけろよ」

魔王「何を?」

勇者「糞を」

魔王「…………うわぁっ!?」

勇者「言わんこっちゃない」

魔王「おお、これが牛か。噂通りミノタウロスのような顔をしている」
 
勇者「ミノタウロスが牛の顔をしているんだよ」

魔王「そんなの見た順で変わるものだ。私は牛より先にミノタウロスを知った。よしよし」ナデナデ

ベロリ

魔王「うひゃぁぁぁぁっ」

勇者「牛に懐かれたな。よかったじゃないか」

魔王「牧場へは、もう行かない……」グタ

勇者「安心しろ。外に出すなんてこと、もう二度とない」

魔王「……ふふ」

勇者「どうして笑うんだ?」

魔王「やはり私は、お前のことを悪人として見ることはできない」

勇者「正気か? 半年もの間、お前を監禁している男だぞ」

魔王「お前は、私に嫌われようとしているだろう。わざとひねくれたことを言って」

魔王「そして実際私は、お前が嫌いだ」

魔王「だけど、お前は決して悪人じゃない」

魔王「畑や、牧場を見たら分かる。醜い心では、こうも見事なものはできない」


勇者「……お前の考えは理解できない」

魔王「私はお前の考えを理解しているつもりだが?」クス

勇者「……寝ぼけておかしくなったか? ほら、もう行くぞ」グイ

魔王「ぐっ。こら引っ張るな、馬鹿者」

魔王「……」スー

勇者「……なあ、魔王」

魔王「ふあ。なんだ、勇者」

勇者「寝ていたのか、すまない」

魔王「構わない。どうした」

乙乙

魔王ちゃんってチョロ…

勇者「魔王は、どうやって決めるんだ?」

魔王「魔王は基本的に世襲制だ。魔王の子がその力を引き継ぎ、次の魔王となる」

勇者「お前は、それで良かったのか? 生まれた時から魔王として生きることを決められて」

勇者「自分はこう生きたかったとか、そういうのは無かったのか?」

魔王「道が作られているのに、その道を通らない理由があるのか?」

魔王「誰かに決められた道を歩くのはつまらないと謳う者がよくいる」

魔王「でも、誰かが作ってくれた道を進むことは、当たり前のことだろう?」

魔王「わざわざ道なき道を彷徨い歩く者に、光明はあるか?」

魔王「誰かが私の為に道を作ってくれたのなら、私はその道を歩きたい」

勇者「そうだろうな。誰かの好意を無下にして、終わりの見えない道を通って、そこまでして勇者になる道を拒むなんてできない」

勇者「……でも本当は、俺は勇者になりたくなかったんだ」

勇者「みんなが馬鹿みたいに俺に期待するから断るに断れなかった」


勇者「そりゃ、俺は強さには自信があったよ」

勇者「皆を守ってあげたよ」

勇者「けど、どこまでいっても俺は『守ってあげた』なんだ」

勇者「気付いたら体が動いてるとか、そんな勇者的な理由じゃない」

勇者「感謝されたいとか、そんな理由だ」

勇者「でも、俺が強くなるにつれて、そんな感謝もなくなっていった」

勇者「助けなかったら罵声を浴びる。助けるのが当たり前とでも言いたげに」

勇者「助けても怯えられるだけ。魔族の共食いを見ているような目をされる」

勇者「だから俺は、人と関わりたくなくなった」

勇者「とんだ偽善者だろう?」

魔王「……とんでもないよ」

魔王「立派な理由じゃないか」

魔王「素直な気持ちで良い。理由のない人助けは、自己犠牲になりがちだ」

魔王「助けられておいて感謝しない人間なんて、放っておけばいい」

勇者「……おいおい」

魔王「勇者的じゃなくたっていいじゃないか。お前は勇者である前に、人間なんだから」

勇者「さすが魔王なだけはあるな、独特の人生観を持ってる」

魔王「魔王らしくないがな。自分だって自覚している」

勇者「……じゃあ、何で魔王になろうと思えたんだ?」

魔王「さっき言った通り、魔王への道が最初からあったのもあるし……なにより、皆を守りたかったから」

魔王「先代は厳格で、全ての魔族を統治していたし、人間の支配を企んでいた」

魔王「そういう意味で、私は魔王らしくはない」

魔王「だが、魔王になることで力を得て、皆を守れるなら、私は魔王になりたいと思ったし、お前を倒そうと思った」

魔王「……結局、私は敗れ、何もできずここにいるわけだが」

勇者「……らしくないことを言った。また風邪でも引いたかな」

勇者「もう寝るよ。おやすみ、魔王」

魔王「おやすみ、勇者」

勇者「――っ?」


勇者「……魔王、今、なんて」

魔王「…………」

勇者「起きてるだろう。気配で分かるぞ」

魔王「…………」

勇者「まったく。まあ、いいよ」

勇者「…………」ゴホッ

魔王「本当に風邪を引いていたのか。馬鹿か、お前は」

魔王「あれほど気をつけろと言っただろう」

勇者「返す言葉もない……」

魔王「残念なことだ。昨日のことも、全て風邪だったからなのか」

勇者「いや……そうじゃない」

魔王「もういい喋るな。食事くらいたまには私が作る」トタトタ

勇者…まさかな

勇者「いやお前、この部屋内しか動けないだろ」

魔王「何か言ったかー? 勇者、何が食べたい。リンゴでも剥こうか」ガサガサ

勇者「え?」


勇者「ひょっとして、昨日鎖を解いた時……」

魔王「ああ。繋がれていなかったぞ」

勇者「」

勇者「いや待て。何故逃げなかった?」

魔王「なんだ、逃げてほしかったのか?」

勇者「はぐらかすな。何故鎖に繋がれていなかったのに、逃げなかったんだ?」

魔王「どちらにしろ鎖が首についたままだし、魔法も使えない」

魔王「こんな山奥、一人で逃げたって、獣に喰われてしまうかもしれない」

魔王「ごくごく単純な理由だが?」

勇者「そうか。そりゃそうだな」

魔王「なんだ? 『貴方と居たいから』とでも言ってほしかったのか?」クス

勇者「…………」

魔王「ほら、リンゴだ。食べろ勇者」

勇者「……切れよ」

魔王「なんと。皮を剥くだけではだめなのか」

勇者「食べやすいサイズに切るだろう、普通」

魔王「そうか、今切ってくる」トタトタ

勇者「いや、別にいいんだが……まあいいか」

魔王「切ってきた」

勇者「サイコロ型のりんご……? まあいいか。いただくよ」

勇者「いやおかしいだろう」

魔王「?」

勇者「鎖がある限りお前が逃げられないのはいいとして、何故俺の世話をする」

魔王「面倒な奴だな。嫌いな奴に何かするのに、いちいち理由が必要なのか」

魔王「強いて言うなら、いつも食事をさせてもらってる礼だよ」

勇者「そうか……そんなものか?」

魔王「ほら、食べろ。それとも私に食べさせてもらいたいのか?」

勇者「結構だ」

魔王「」ジー

勇者「……食べ辛い」

魔王「いつもお前がやっていたことだろう」

勇者「なるほど、疲労感を伴うな」

魔王「そうだろう?」

魔王「よし。今日はもう寝ているといい。私も、大人しくしていよう」

勇者「…………」ギュ

勇者「……少しだけ、傍にいてくれないか」

魔王「お前、風邪になると本当に素直になるな……」

魔王「まあいい。どうせやることもないし」

魔王「…………」

勇者「……なあ、魔王」

魔王「どうした、勇者?」

勇者「俺は、お前が嫌いなはずなんだ」

勇者「なのに、何故こうしていると、とても落ち着くんだろうな」

(・∀・)ニヤニヤ

勇者「……実を言うと、ずっとこうしたいと思ってた」

勇者「誰かに頼られるんじゃなくて、たまには頼ってみたかった」

勇者「ずっと叶わないんだろうと思ってたけど、お前が叶えてくれた」

勇者「魔王というからには、プライドが高くて、嫌味で、偏屈な奴だと思ってた」

勇者「実際暮らしてみると、お前は誰よりも優しくて、人間らしかった」

勇者「変な意地で、ずっとお前と仲良くなどしてたまるかと思ってきたが、」

勇者「……やっぱり駄目だな」


勇者「何でお前は……そんなに、良い奴なんだ?」

魔王「私は良い奴などではない。ただ私は、お前を放っておけないんだ」

魔王「お前が平気で世界を滅ぼすような狂人なら、私はお前を許さない」

魔王「だけど、ただお前が寂しくて私に手を伸ばしたというのなら。その手に剣が握られていようとも、私はお前の手をとろう」

勇者「敵わないな……。やっぱり魔族を統べる王は違う」

魔王「お前だって、立派な心を持ってる。それは誇っていいよ」ナデ

勇者「なんだか、すごく安心する。……まるで聖母のようだな」

魔王「ぷっ、あははは! 聖母のよう、か! 魔王をよくぞそこまで大層な存在に例えたものだな!」

魔王「そんなことを言っては、女神に叱られてしまうぞ?」

魔王「それにな、私は、聖母みたいにすべてを愛せないよ。自分の周りだけで精一杯さ」

魔王「でも、……嬉しいよ、勇者。ありがとう」

勇者「俺の方こそ、付き合ってくれてありがとうな、魔王」

魔王「ん。どういたしまして、勇者」

勇者「……」スー

魔王「寝たか。そういえば、勇者の寝顔を見るのは初めてだな」

魔王「私も、寝るかな……」

追いついたぁ

甘々だな
おつ

おつおつ
この先どうなるんだか面白そうだ

乙乙

期待

液体

古体

変態

―魔王城・会議室―

九尾の狐「また集まったのう」

吸血鬼「集まる意味あるのかな?」

龍人「あるに決まっているだろう。お前ら会議を何だと思ってる」

鬼「でもよ、集まって何話すんだ。今のところ、もう魔族と人間の間で大きな騒ぎはないけど」

龍人「だから彼奴らが油断している間に攻め入るべきなんだろうが!」

吸血鬼「もーまたそんな話? いいじゃんさ、人間は魔族を滅ぼそうとしてるわけじゃないし」

龍人「だからといって人間の下にいてたまるか!」

吸血鬼「なら言わせてもらいますけどね、このまま戦争したって、魔族が負けるのは目に見えてるよ」

龍人「何故だ」

九尾の狐「勇者がいるからに決まっておろう」

龍人「あの若造か。我らとの戦いから逃げた卑怯者だ、恐るるに足らん!」

吸血鬼「勇者は、できるだけ被害を抑えたかっただけだよ」

龍人「貴様、勇者の肩を持つのか!」

吸血鬼(そりゃ、あの人に助けてもらったからね、私は)

吸血鬼「私たちは絶対に勇者と対峙しちゃならない。死ぬよ、本当に」

龍人「我らが大軍で攻めれば、どんな人間も勝てるはずがない!」

吸血鬼「勇者と魔王ってのは、倒せるかも、とか、大軍で攻めればあるいは、とか、そんな次元に住んでる生き物じゃない」

吸血鬼「だから、いつも勇者と魔王の一騎打ちで決めるんでしょ」

吸血鬼「どんな大軍だろうと、勇者だけは倒せないから」

龍人「貴様……我が軍を愚弄するか!!」チャキ

吸血鬼「わぁっ!?」

九尾の狐「! 龍人、剣を下ろせ」

龍人「…………分かった」スッ

鬼「ひやっとしたぞ。魔族のことを想うのはいいが、熱くなりすぎるなよ。お前の悪い癖だ」

龍人「すまなかった」

吸血鬼「はふー。びっくりした」

吸血鬼(もう抑えるのも限界が近いなぁ)

吸血鬼(また魔王様が、ここに来てくれたら嬉しいんだけど)

『わぁ、お母様、こんな立派なベッドを、私にくれるのですか!?』

『えぇ。もう私には必要ないから』

『……お母様、どこかへ行ってしまうのですか?』

『あははっ、違う違う。新しいベッドをもらったのよ、別に形見のつもりじゃないわ』

『私は、いつまでもあなたの傍にいるからね……』

魔王「…………ふあ?」パチ

勇者「……」スー

魔王「うわぁっ!?」ドンッ

勇者「痛っ!」ゴン

魔王「あ、……勇者、か。びっくりした。うん、勇者だな」

勇者「人をベッドから落としておいて、何を残念そうな顔をしてるんだ」

魔王「夢を見ていた。魔王城にいたころの夢だ」

勇者「……耳が痛くなるな」

魔王「しかし、まあ」

勇者「?」

魔王「たった半年で、距離が随分と縮まったものだ」

勇者「……そうだな」

勇者「でも、ベッドの上で二人というのはいささか近すぎるぞ」

魔王「ややこしい言い方をするなっ。今、どくよ」

勇者「いや、いい。俺は食事の準備をする。その間、夢の続きでも見ているといいさ」

 A few years later


勇者「ただいま、魔王」

魔王「おかえり、勇者」

勇者「ようやく苺が食べられるようになったぞ」

魔王「今年は少し遅かったな」

勇者「ああ。さて、ジャムでも作ろうかな」

魔王「なあ、もう何年経っただろうな。お前も私も歳をとらないから、時の流れを感じない」

勇者「そうだな。俺もいちいち覚えちゃいない」

勇者「でも、やはり何年経ったかは知っておくべきか……」

勇者「久しぶりに、人里へ降りてみようかな」

―街中―

勇者「門番がいる。……前まではいなかったはずだ」

勇者「何かあったんですか?」

兵士「ああ、近くの町で魔族との争いが起きてな。この街も厳戒態勢をしくこととなった」

勇者「……!? どういうことですか?」

兵士「驚くのも無理はない。だが、実際に争いが起きたのだよ。その街は何とか持ちこたえたものの、ほぼ壊滅状態だ」

兵士「ここも、いつ狙われるかどうか」

兵士「早く世界が平和になってくれないものか……」ハァ

勇者「……との、ことだ」

魔王「そんなっ!?」

魔王「……私が、なんとかしなくては」

魔王「勇者。久しぶりに言う。この鎖を解いてくれ」

勇者「…………。駄目だ」

魔王「何故だ!? このままでは、本当に戦争になってしまう!」

勇者「解いて何をするというんだ? 鎖は魔力を奪う。今のお前の力は、そこら辺の魔物とたいして変わらない」

勇者「そんなお前に、何ができる?」

魔王「魔族達を、説得する」

勇者「そんなことしてる間に斬りつけられるかもしれないじゃないか」

魔王「あいつらは、そんなことしない!」

勇者「お前それでも魔王か! もっと疑えよ! いいか、子供が生まれる前に魔王が死ねば、次の魔王を決めることができる。お前を殺したい奴が、魔族にだって山ほどいるかもしれないんだぞ!」

魔王「お前こそ、それでも勇者か!? 何故仲間を信じられないのだ!」

勇者「ああもう、馬鹿な奴だ! 俺がここまで心配しているのに、なんで分からない!」

魔王「心配っ? お前が私を心配するというのか」

勇者「そうだ、心配だよ! お前をむざむざ死なせるような真似はさせない!」

魔王「それは、私の為の心配か? お前の不老不死とやらの心配ではないのかっ!!」

勇者「……っ違う、俺は!」

魔王「……すまなかった。今のは、私が悪かった」

勇者「いや。そう思うのも、無理はない」

勇者「どこまでいっても、俺とお前は敵同士なんだから」

魔王「そんなこと、……」

勇者「魔王。今日はもう寝ていろ」

魔王「こんな状態で、寝ていられるか……!」

魔王「今日だけで良い、少しだけで良い。お願いだ勇者、鎖を解いてくれ!」

勇者「……駄目だ」

魔王「勇者っ……!」

勇者「泣くなよ。泣かないでくれ。卑怯だ」

魔王「みん、な……」スー

勇者「結局泣き疲れて寝るって。まったく、子供かお前は」ハァ

勇者「さて」

勇者「戦争を止めに行くか」

―魔王城・医務室―

吸血鬼「ふえーん。まさか、本当に龍人に斬りつけられるとはねぇ。失敗、失敗♪」

魔族医「反省しとらんねアンタ」

吸血鬼「だって私不死だしぃ」

魔族医「まったく、これだからアンデッドの治療は嫌だ」

吸血鬼「そんなこと言わないでよー。夜の相手はしてあげてるでしょん?」

魔族医「してもらった覚えは無い」

吸血鬼「やだー資料運びのことよ魔族医くんやらしーい」

魔族医「回復呪文かけるぞ、コラ」

ガチャリ

勇者「あ、間違えた」

吸血鬼「あら勇者サマ」

魔族医「」

勇者「あ、お前。そうか、どこかで見たことあると思ってたんだ」

吸血鬼「死霊将軍の吸血鬼よん。この前はありがとー」

勇者「龍人はどこだ?」

吸血鬼「私室にいるかな」

魔族医「何普通に接しているんだお前は!」

コンコン

九尾の狐『誰じゃ?』

勇者「人違いだった」

九尾の狐『おま、何故いるんじゃ、こらっ』

勇者「人違いだよ。それじゃな」

勇者(あいつ鼻がきくから、魔王と一緒に居ることがバレるかもしれないし)

ガチャリ

勇者「久しぶりだな」

龍人「……何の用だ。よくも私の前に姿を現せたものだな、勇者!」

勇者「すまない。でも、ひとまずは戦争を止めてほしい。それを伝えるために来た」

龍人「いきなり侵入しておいて、言いたいことはそれだけか? お前が、お前が魔王様を倒さなければこんなことには……!」

勇者「……すまない。俺の、エゴだ」

勇者「だが、戦争なんて魔王の望むことではない。ここは退いてくれないか」

龍人「我が主を救う。只其れを為す」

龍人「私は私の流儀で魔王様を救う。魔王様の意思に反するとしても」

龍人「それにこれは、私と魔王様の為だけではない。魔族の為の戦いなのだ」

勇者(……ここで、魔王は俺の家にいると言っても話がこじれるだけだろうな)

勇者「龍人、お前戦争を経験したことがあるのか?」

龍人「……ない」

勇者「考えてもみろ。戦争で救われる命と、犠牲になる命、どちらが多い?」

龍人「…………う」

勇者「お前は、魔族のことを本気で想ってる。驚くくらい民に優しい」

龍人「当たり前だ。お前ら人間のような醜い生き物と一緒にするな!」

勇者「なら、人間の真似ごとなんてするなよ」

勇者「戦争が生み出すほとんどは、不幸だ」


龍人「それこそ、人間と一緒にするな……!」

龍人「民を想う誠の想いと、誰にも負けぬ力があれば、人間の二の舞にはならぬ!」

勇者「お前がどう思っているかと、魔族がどう思っているかは、まったく関係ない」

勇者「戦争で、強い魔物は名を上げ、生活は豊かになるだろうな。だけど、弱い魔物は卑下され、扱いが酷くなるだろう」

勇者「再び平和の世界が崩れ、やがては下剋上の時代が来る」

勇者「弱体化した魔物は卑下され、恨みを宿し、また新たな下剋上が起こるだろう」

勇者「また世界が統一されるのに、膨大な年月がかかる」

龍人「…………」

勇者「想いと力があれば、大切な人を守ることができる」

勇者「だけど、それでは民を守ることができない」

勇者「剣を退け、龍人。お前がやるべきことは、他にあるはずだ」

龍人「っ……この、人間風情が……!」

龍人「偉そうに、何様のつもりだぁっ!!」チャキッ

勇者「――――」

龍人「…………!!」ギギギ

勇者「すぐ熱くなるの、お前の悪い癖だな。最初に来た時も、いきなり斬りかかってきやがって」ギギギ

龍人「何故、剣を素手で受け止められる!?」

勇者「防護魔法かけてるからな」

龍人「龍族に伝わる名剣が、防護魔法などに!」

勇者「まー、俺の防護魔法だし。だいたい、魔王が勝てなかったのにお前が勝てるわけないだろう」

ガチャリ

九尾の狐「や-れやれ。やはりドンチャンやっておったか」

勇者「げっ。九尾」

九尾の狐「げ、とは何じゃ」

九尾の狐「話がこじれるじゃろうから仲介に来たというに」

龍人「九尾、お前も勇者に味方するというのか……?」

九尾の狐「おもっきし負けてる奴が言ってもかっこ悪いのう」

龍人「うるさい!」

九尾の狐「のう龍人。お主、先代魔王の時代はおらんかったじゃろう?」

龍人「? いなかったが、それがどうした」

九尾の狐「じゃろうなぁ。鬼も然りじゃろうなぁ」

九尾の狐「今だから言うが、実は先代魔王は、人間と結婚しているのじゃ」

龍人「先代様が……!? それはつまり、」

九尾の狐「そう。今の魔王様は、人間の混血じゃ」

九尾の狐「力が多少劣るだけで、魔力が衰えることはないがの」

九尾の狐「龍人、お主は魔族と人間の子である魔王様の前で、魔族と人間の殺し合いを見せたいのか?」

龍人「何故、今までそれを黙っていたんだ……」

九尾の狐「魔族の中には人間を恨む者もいる。ごく一部の魔族を除いて、この事実を知らされてはおらんのじゃ」

九尾の狐「今じゃからよいが、お主がまだ魔王様に忠誠を誓っていなかった時。人間という種族を卑下しておるお主が、この事実を知ったら、どうなっておったろうな?」

龍人「う……」

九尾の狐「当時、人間と結婚した魔王様は酷い非難を浴びた。そして、魔王様の元から離れていく者も出た」

九尾の狐「そして、新たに集まった魔族にも、お主らのように人間を卑下する者がいる」

九尾の狐「無駄な争いを避けるため、この事実は極秘とされているのじゃ」

勇者(…………)

龍人「……人間側はどうするのだ。もう既に一度戦を起こしている。人間とて、このまま退くわけにはいかないだろう」

龍人「一度止めておきながら人間に襲撃されては、収集がつかなくなるぞ」

勇者「人間の城まで、ついてきてくれないか?」

龍人「なにっ?」

勇者「戦争を止めるってのは、その為の契約が必要だ。その契約をする役をやってほしい」

龍人「……わかった。行こう」

九尾の狐「私も行こう」

勇者「そうだな。何せ魔族と人間が大規模な戦争をするのも初めてなら、停戦も初めてだ。何人か居た方がいいだろう」

九尾の狐「善は急げじゃ。早く行くことにしよう」

龍人「も、もう行くのか?」

勇者「俺の魔法だと文字通り一瞬でつくからな。心の準備なら今の内にしておいた方が良い」

鬼「…………」

鬼「俺は誘ってくれねえのかよ」

鬼「いーっすよ。どうせ年中酔っ払いが話し合いなんてできませんよ」

子鬼「そういう時は飲んで忘れましょう!」

鬼「いやそもそもお前らが年がら年中何かとつけて誘ってくるのがだなぁ」

―城内―


ザワザワ…

龍人「……思い切り怯えられているな。こんな状態で話し合いができるのか……?」

九尾の狐「戦争をけしかけた奴がよくもまあ」

龍人「うぐ、……」

帰隊

王様「勇者。……戻ってきたと思ったら、これは一体どういうことじゃ」

勇者「魔族と人間で大きな戦争が起きようとしているのは、王様もご存じでしょう」

勇者「戦争の収集がつかなくなる前に、こうして、魔族と人間とで話し合いをするべきと思い、魔族二名をつれてここにやってきた次第」

王様「貴様、何を言っているのか分かっておるのか……?」

王様「魔族と人間で、話し合いが成り立つと思うのか」

勇者「成り立ちます」

勇者「王様、あなたは魔族をご存じか? きっと知らないでしょう。野蛮なもの、邪悪なもの、そんな周りのイメージをあやふやに持っているだけでしかない」

勇者「私は、魔族の世、人間の世を、二つとも見て参りました。そして気付いたのです」

王様「何に気付いたというのじゃ」

勇者「――魔族も人も、同じであると!」

王様「貴様ッ、人間を愚弄するのか!」ガタ

勇者「それこそ大きな偏見でございます、王様! この二人を、ご覧ください!」

勇者「彼らは、戦争を止めるために魔王城から来た、魔族の将軍です」

王様「こ奴らが、どうしたというのじゃ」

勇者「彼らの目をご覧ください。王様の思う魔族は、こんなにも優しい目を持っていますか」

王様「…………」

勇者「王様。様々な人の目を見てきたあなたなら分かるでしょう?」

王様(……あの狐のような魔族は、昔見た、わしの母君の目に似ておる)

王様(あの龍人は、……若かりし頃の勇者の目に似ておる)

乙なのか

おつ

おっつ

北井

乙するタイミングが上級者すぎるww
おっつ

おんもしろい
乙乙

王様「しかし、しかしだ。それは余りに都合がよいというものであろう」

王様「既に街が一つ、壊滅寸前まで追い込まれたのじゃぞ。それを我慢しろというのか」

勇者「……そんな街を増やすわけにはいかないのです」

王様「その街に住んでいた者たちはどうなる。あの者達の無念を、どう晴らすというのだ」

勇者「では王様は、彼らの無念を知っているというのですか?」

王様「何?」

勇者「私は、いろいろな兵士たちと話してきました」

勇者「魔族との戦いで生き残った歴戦の兵、まだ戦いに出たこともない新兵」

勇者「多様な経緯がある兵士ですが、彼らは決まって言うのです」

勇者「『早く平和になってくれないものか』と」

勇者「彼らは、人間の繁栄など望んではいないのです。守るべき者の為戦っているのです」

勇者「彼らの願いは、皆、一刻も早く魔族との戦いが終わることなのですよ」

王様「しかし、だ。犠牲になった兵士の家族は果たしてそうか? 魔族を深く深く憎むのではないか」

龍人「……人間の、王よ」

スッ

九尾の狐(おお、あの龍人が、人間に跪きよった)

龍人「此度の争い、全ての責任は私にある」


龍人「私は民の為を想っているつもりで、戦争をしかけた」

龍人「しかし、その結果、魔族と人間の双方を不幸にしてしまった」

龍人「人間が魔族を恨んでも仕方がないと思う」

龍人「だからこそ私は、……戦争を止めたいと、自分なりに考えた」

龍人「決定的な亀裂が入る前に、止めなければいけないと、……そう、思った」

王様「お主の言いたいことは分かった。しかし、結局勇者と言い分が同じではないか」

王様「戦争を始めたが、すぐに止めようと思う。そちらの被害は甚大だが、我慢してくれ。そんな自分勝手はないじゃろう」

九尾の狐「人間の王よ」

王様「……なんじゃ?」

九尾の狐「なに、長ったらしい説教をするつもりはない。つぎはぎの言葉を並べたてるつもりもない。まあちと聞いてくれぬか」

九尾の狐「龍人が言うとおりな、まだ、人間と魔族に決定的な亀裂はない」

九尾の狐「人間と魔族が共に暮らす村も、ごく一部じゃが、ある」

九尾の狐「私は彼らを守りたい。これ以上、亀裂を大きくするわけにはいかないのじゃ」

九尾の狐「それを埋めるには、埋めるための何かが必要なのじゃ。それは私にも分かる」

勇者(……何を言うつもりだ?)

九尾の狐「平和には、犠牲が必要じゃ」

九尾の狐「長年魔王様にお仕えしてきた身。この身ももはやもうもたぬ」

九尾の狐「王よ。貴殿が民の為に魔族を殺すというのなら」

九尾の狐「代わりに、獣魔将軍、この私の首を持って行ってくれ」

王様「……なんと」

九尾の狐「老いぼれの身であるが、仮にも魔族の重役、何代にもわたり魔王様にお仕えしてきた古参の首じゃ」

九尾の狐「この首一つで話が解決するのなら、よろこんでさしだそう」

龍人「おい、何を言っている九尾! お前がいなければ、誰が魔王城を管理するというのだ!」

九尾の狐「魔王はまた生まれる。その方に、魔王城を任せる」

九尾の狐「私は、もう十分生きた。何代も魔王様にお仕えすることができて、私は充分幸せだった。今更未練など無いよ」

龍人「お前、最初からそのつもりで……!」

泣けるぜ。乙おっつ

九尾の狐「さあ、王よ。私を牢にでも放りこんでおくといい」

王様「その必要はない」

九尾の狐「……む?」

王様「戦争を止める。だから、その必要はない」

九尾の狐「…………ふむ? だが、それでは犠牲になった者たちが」

王様「お主達も犠牲は出たのであろう?」

九尾の狐「それはそうじゃが、元はと言えば私達が戦争をしかけたのじゃぞ」

王様「お主が死ねば、また魔族が我らを恨む。そうして恨みの連鎖が続く」

王様「平和には犠牲が必要か。それは違う」

王様「むしろ平和を生むというのは、どこかで犠牲を断ち切らねばならない」

王様「自分がやられたことを受け入れる勇気と覚悟が、平和には必要なのだ」

王様「……と、何も被害を受けていないわしが言うのも何じゃがの」

勇者「ありがとうございます、王様……!」

王様「人間の王としては、間違いだったのかもしれんがの」

王様「先代には、魔族を滅ぼすようにと遺言を残されたくらいじゃ」

王様「お主の言うとおり……わしは、会ったこともない魔族を、高慢で、野蛮で、狡猾な生き物だと、勝手に思い込んでおった」

王様「会ってみると、何じゃこやつらは」

王様「真っ直ぐな眼でわしを見据える龍に、魔族の為に自分が死ぬと言う狐」

王様「……わしは、こやつらの前で戦争を続けると言うことはできなかった」

龍人「……終わったのか、これで」

九尾の狐「うーむ、何ともあっさりじゃ。人間の王と言うからには、もっと傲慢な者かと思っておったのじゃが」

勇者「結局のところ、お互いがお互いを知らなかったってことさ」

九尾の狐「若造がなぁにを知った風に」

勇者「少しくらい語らせてくれよ」

九尾の狐「……そうじゃな。その若造のおかげで、今回は何とかなった」

九尾の狐「互いと話し合い、互いを知り合う。……こんな発想ができるのは、二つの世を渡り歩く勇者だけじゃろうしな」

―魔王城、門前―


勇者「それじゃあな」

九尾の狐「ありがとう、勇者。なに、龍人の支持はとても高い。龍人が戦争は止めると言えば、皆首を縦に振るじゃろう」

龍人「……皆には、申し訳ないことをした」

龍人「特に、戦争に参加させるだけさせた我がドラゴン軍には、謝っても謝りきれない……」

九尾の狐「その通りじゃ。まったく、誠心誠意謝るのじゃぞ」

―過去・魔王城、王室―


パタパタ


九尾の狐『む、……勇者。ということは、魔王様は負けたのか』

勇者『すまなかったな。催眠魔法なんかかけて』

九尾の狐『やれやれ、まぁた生き残ってしまったのう』

九尾の狐『それにしても、魔王様はどこじゃ。どこにもお姿が見当たらないが』

勇者『……すまないな。跡形もなく消し去ってしまったよ』

九尾の狐『そうか、そうか』フリフリ

勇者『……?』

勇者「……な、なあ、九尾」

九尾の狐「なんじゃ?」

勇者「お前は、恨んでないのか? 俺が魔王を倒したこと」

九尾の狐「……ふふふ。やれやれ、せっかく言わぬようにしてきたのに」

勇者「?」

九尾の狐「お主と魔王様が共に暮らしていることなど、私はとっくに気付いておる」

勇者「はぁっ!?」

はぁん

ふぅん

勇者「お、おいおい。それってどういう」

九尾の狐「おぉっと、そろそろ行かねば。じゃあの、勇者♪」タタタ

勇者「……おい」

―山小屋内―


ガチャ

勇者「ただいま、魔王――」

魔王「ッ……!!」

勇者「ずっと、鎖を外そうとしてたのか……」

勇者(変にかっこつけて、黙って出てったのは失敗だった。何やってんだ俺)

勇者「おいおい、手、血だらけじゃないか! 今治すよ」パァァァ

魔王「私の仲間が死ぬかもしれないのに……傷など気にしていられない……っ!」

勇者「すまなかったよ、ごめん、無茶なことをさせて」

魔王「そう思うなら……」

勇者「大丈夫だ、戦争は終わった」

魔王「へ……?」

勇者「何とかして終わらせた。……お前が、あんまりにも儚げだったからな」

魔王「あ、あっ……」

魔王「勇者ぁぁぁっ……!」ダキ

勇者「ちょ、ちょちょちょ、待て待て待て」

魔王「ありがと、ありがとう勇者……!」ギュウ

勇者「あ、あー、そうか。うん。どういたしまして、うん」

魔王「お前が戦争を止めるなんて、思いもしなかった」

魔王「世界の滅亡を見届けるなどと、言っていたから……」

勇者「気が変わったんだ。お前は、……この世界が、大好きなようだから」

いや、魔王そこは怒れよ

>>199
途中で入れんなks
ローカルルール読んで来いよ

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どうどう

勇者「なあ、魔王」

魔王「ん? どうした、勇者」

勇者「そろそろ、離れてもらいたいんだが……」

魔王「? ……うわぁっ!?」ドン

勇者「ぐえっ。何で俺が突き飛ばされなきゃいけないんだ」

>>200
どうどう。
君も二行目を読んでください

魔王「す、すまん。つい、感極まってというか、その」

勇者「いや、いいんだ。……俺も、別に嫌なわけじゃなかったし」

魔王「……っ」カァ

勇者「…………」カァ

勇者「も、もう寝ることにしよう。日も暮れてきたし」

魔王「そ、そうだな。おやすみ、勇者」

勇者「おやすみ、魔王」

魔王「」スー

勇者(……なんでベッドで寝るんだ)

勇者(しかもすでに熟睡してるし)

勇者(ああもう、今日は俺が床か)

乙!
何はともあれとりあえず円満に解決してよかった。

何時の間にか勇者優しくなったのな

追い付いた乙
これからどうなるか楽しみだ

―魔王城―

勇者「こんにちは」

九尾の狐「来るなとは言わんが、そんな友人の家を訪れる感覚で来てもらっても困るのじゃ」

勇者「いやいや。その後、いざこざはないかと思ってな」

九尾の狐「人間との関係なら、良好じゃ。問題ない」

勇者「そっか。それは良かった」

吸血鬼「あらあら勇者サマ。ごきげんよー。ちょっと吸血させて」

鬼「おう、勇者。酒でも飲むか?」

勇者「お前ら、暇なのか……?」

龍人「暇じゃない。こいつらが自由すぎるだけだ……」ハァ

勇者「お前も大変だな」

吸血鬼「ねえねえねえ、勇者サマ♪」

勇者「な、なんだ一体?」

吸血鬼「魔王様とはうまくいってるかしら?」ボソ

勇者「うっ。そういえば、九尾の口ぶりからして、お前も知ってたわけだよな……」

吸血鬼「私が予行演習やってあげようか……?」

勇者「」ゾゾゾゾ

吸血鬼「もー、鳥肌立てることないじゃない」


勇者「それにしてもお前ら、何で勇者と普通に接してるんだよ」

九尾の狐「勇者自身が言うことではないのう」

鬼「とは言ってもなぁ。俺ら、勇者には何もされてないし」

九尾の狐「眠ってる間には全て終わっておった」

吸血鬼「恨みようがないわねぇ」

勇者「俺は、お前達の王を倒したんだぞ?」

九尾の狐「勇者、お主は一体、何を恐れている? 何を望んでいる?」

勇者「…………?」

九尾の狐「お主は強い。魔族よりも、ずっと強い」

九尾の狐「その強さ故、恐れられることもあったじゃろう」

九尾の狐「でもな、勇者。お主が思っている程、人間も魔族も、弱くない」

九尾の狐「あれから何度か、人間の王と話し合いをしてな」

九尾の狐「奴は、私を恐れなかった。人間達も、慣れたようで、私を恐れたりしなくなった」

九尾の狐「狐耳を持った不気味な私を恐れず、どうして勇者一人を恐れることがあろう?」

龍人「自惚れるなよ、勇者」

鬼「俺らは、別にお前を恐れたりしない」

吸血鬼「いつでもウェルカムよ?」

勇者「……お前達」

勇者「ただいま、魔王……」

魔王「おかえり勇者。どうだった?」

勇者「そうだなぁ。四天王って、暇なんだな」

魔王「はは。そうだな。あいつらは遊んでばかりだ」

勇者「遊んでていいのか?」

魔王「ああ。私がいなくても、元気そうで何よりだ」

魔王「魔族社会は人間社会ほど複雑ではない。人間より多種多様なのに不思議なものだがな」

魔王「だから、基本的には遊んで暮らすのが四天王の仕事だ」

勇者「その言い方は語弊があるぞ……」

勇者「魔王」

魔王「なんだ、勇者」

勇者「鎖の長さを調節してやろう」

魔王「そういえば、何か良いことをすれば長くすると言っていたな」

勇者「ああ。そういうわけだ」

魔王「……唐突に思いだしただけだろう」

勇者「思い出しただけいいじゃないか」

勇者「家の中が全て行き来可能になった」

魔王「ありがとう」

魔王「そういえば、私は何かいいことをしたのか?」

勇者「…………」

魔王「さては、私に抱きつかれたのがそんなに嬉しかったか?」ニヤニヤ

勇者「なっ! そ、そんなわけが!」ガタッ

魔王「え? い、いや、冗談、だったのだが……」

勇者「あ……」カァ

魔王「う……」カァ

九尾の狐「いらいらするのう」

鬼「どうしたいきなり?」

九尾の狐「なんじゃろな。なにかがびびっときた」

鬼「はぁ……?」

九尾の狐「よく分からんが、なかなか進展しない恋人を見ているような気分じゃ」

鬼「その歳で恋愛でもしたいって? やめとけ、年寄りの冷や水だぞ」ハハ

九尾の狐「化かすぞ貴様」

魔王「なるほど、ここまで鎖が長いと、外も見渡せるわけだな」

勇者「あー。お前の部屋は窓がないしな」

魔王「勇者! 畑が見えるぞ!」

勇者「いやそれは俺の作った畑だよ」

魔王「知っている! 知らぬ間にお前の畑はあんなに成長していたのだな!」

勇者「まあ、数年前に一度見せたきりだったからな」

魔王「こっちには牧畜があるぞ! すごいな、ミノタウロスみたいなのがたくさんいる!」

勇者「だから、それは牛……。元気だなお前」

いらいらするのう

魔王「なぁ、勇者」

勇者「どうした魔王」

魔王「外の景色は美しいな」

勇者「そうだな」

魔王「……もうちょっと何か、反応のしようがあるだろう」

勇者「とは言ってもな。俺には見飽きた景色だ」

魔王「面白くないな。改めて見て、気付くことだってあるだろう? ほら、窓から見てみろ」

勇者(楽しそうだなぁ)

魔王「~~♪」

勇者(歌なんて歌ってる……上手いな。それにいい曲だ)

魔王「~♪ ……勇者。景色を見ろというのに、私を見てどうする」

勇者「うぐ。すまん」

勇者(お前が可愛かったから、つい……)

勇者(言えるかっ!!)

魔王「ほら、早く見てみろ」

勇者「あ、ああ」

勇者「……やっぱり、何も感じない」

魔王「ふむ。残念だ」

勇者「だけど」

魔王「……?」

勇者「その、お前と一緒に見る景色は、……やっぱり少し違って見えるな」

魔王「そっ! ……そう、ですか」

魔王(何故敬語を使ったんだ今! 何を照れてるんだ!)

魔王(いやいや、勇者は特段何も変わったことは言ってないぞ)

魔王(一人で見る景色と二人で見る景色はまた違うと、そういうことが言いたいだけだ)

勇者(よく考えたら別に普通の言葉じゃないか)

勇者(ああもう、自分の語彙力の乏しさが情けない)

勇者(というか何故敬語? どういう意図で今敬語使ったんだ?)

勇者「」チラ

魔王「」チラ

勇魔「「っ!!」」フイッ

勇魔((目が合ってしまった……!))

勇者(駄目だ駄目だ! 形はどうあれ、俺は何もしないと最初に言ったんだから!)

勇者(いやでも、風邪の時にいろいろ暴露した気がする……)

魔王(これじゃうかつに勇者の顔を見れないじゃないか……)

魔王(! い、いや、そもそも何であいつの顔を見なければいけないんだ!)

魔王(うぅ、でも何故か、勇者の顔を見つめていたい)

魔王(この歳で思春期か。はぁ、遅いにも程がある)

勇者(……魔王、なんだか顔が赤いな)

勇者(凄まじく可愛い)

勇者(くそ、何で今まで同じ屋根の下で二人過ごせてたんだ?)

勇者(俺も一応、思春期真っ盛りの男だった……!)

勇者(あーもうっどうにでもなれ!)

勇者「魔王!!」ガシッ

魔王「ひゃいっ!?」

魔王(変な声出てしまった! 恥ずかしい逃げたい! けどしっかり掴まれてて動けない!)

勇者(……あ、やばいこれ。どうしていいかわからん)

魔王「ど、……どうなされた?」

勇者「……あの、」

魔王「は、はい」

勇者「目、閉じててくれないか。すぐ終わるから」

魔王「はい? えと、は、はい」

勇者「――っ」チュ

魔王「」

魔王「……っ!!?」カァァァ

やっとキスしたな…さて次は子作りだな

ストックホルム症候群だなご愁傷様


クッソ勇者勝ち組じゃんww

えんだぁああああああああああああああああああああ

甘々だなぁ

いやああああああああああああああああああああああああああああああああ

いらいら、いやもやもやするのう
そろそろ叩くための壁でも用意しておこうか

壁殴り代行を呼ぶ用意をしておこう

くそう・・・勇者の魔力の影響で壁殴り代行が呼べねぇ!

壁殴ると妖怪壁殴り返しが出るから板切れを殴って事なきを得る俺は天才かもしれない

地面でも(ry

団地住みで下にも人が(ry

★壁殴り代行始めました★
ムカついたけど壁を殴る筋肉が無い、壁を殴りたいけど殴る壁が無い、そんなときに!
壁殴りで鍛えたスタッフたちが一生懸命あなたの代わりに壁を殴ってくれます!
モチロン壁を用意する必要もありません!スタッフがあなたの家の近くの家の壁を無差別に殴りまくります!
1時間\2400~ 24時間営業 年中無休!


  _,,-‐'"ヽ.         ∧ _∧

 ノ \ ヽ ト、       /∧´・ω・)   
{ 、 ヽ. ヽ_(⌒)  _,,.. -‐'"ノ /ノ >‐个 、._
 ヽー'.ー' `7⌒/'フ  >,ノ--―‐‐' ̄ ⌒`ヽ、        壁殴り代行では同時にスタッフも募集しています
   ∀ ー {  ∨    ∨   >ミ λ二ヽ、_ )ヽ__      筋肉に自身のあるそこのアナタ!一緒にお仕事してみませんか?
   \  〉ー {     {     __ミ∧__,,.-''`ヽ `ヽ    壁を殴るだけの簡単なお仕事です!
     ー―-ヽ、  ノ  _,,.. ‐'"´彡 'Y   `ヽ i  ̄ヽ、

          { ̄´》丶 ー- <ノ__\     {  / ∧
             { 7⌒/⌒ー-' ノ彡/∨ ノ >、._ノ  ,'  _∩
          !〉ー、―-、,ゝ┴ン ノ/ ノ  { レ ´ ヽi

          {ヽ.__,、___  '  / (´_ /  _,,..×   ヘ〈 ハ |
             /ヽ Y    '/´´    }  (_,,..、_ハ   , ノ }
          〉ミミと=‐- ┴―――〈      > ノ / .!
         ノノ  ', ̄ ̄ ̄ 不TT7´     ゝク´ ,  /
        / ' ∧   彡=  ′ ハ     ⊂´_ノ  /
         ノ   ハ   / ′     λ     `ー‐-'′
      /    {   、/        ハ


うし、期待

マグマだ!

>>238
実はこれ創ったきっかけの中に、マンハッタンの銀行強盗事件の影響がすごくあるんだよね。
あれって名前あったんだ。





―魔王城―


鬼「龍人ー、酒飲もうぜ」

龍人「鬼、それはただのきゅうりだ」

鬼「……んぅ?」

九尾の狐「ふん」プイ

龍人「……九尾、戻してやれ」

九尾の狐「私も傷つく時は傷つくのじゃよ。何言われてもどこ吹く風ではないのじゃ」

鬼「酒うめぇ」シャキシャキ

九尾の狐「年寄りの冷や水、か」

九尾の狐「見た目は幼い女子じゃが、呪文を解けば老いぼれた狐」

九尾の狐「はぁ。自分でも分かっておるのじゃ。もう昔のように、美貌で人を騙せぬと」

九尾の狐「本当に恋慕した相手でさえ、手にすることは叶わなかったのじゃから」

九尾の狐「はぁ……何千年も前のことで、何を憂鬱になっておるのやら」

龍人「……あー。何と言ったらいいのか」

九尾の狐「人間というのは、弱い」

九尾の狐「大狐の姿を見せるだけで、恐れおののく」

九尾の狐「じゃから、魔族は強い人間を求める。人間が強くなるのを待つ。人間という存在に期待してみる」

九尾の狐「それが、勇者が来るのを待ち続ける魔王の美徳なのじゃよ」

龍人「…………お前、ひょっとすると」

九尾の狐「何千年も前のことじゃ。それも、もう幻となった東方の国のな。はぁ、せめて魔王様には幸せになってほしいものじゃの」

More than ten years later


勇者「久しぶり」

九尾の狐「おお、勇者。久しゅう」

勇者「そっちは相変わらず平和みたいだな」

九尾の狐「ははは。やはり争いは無いにこしたことないのう」


九尾の狐「それで。……魔王様とはどこまでいった? ほれ、教えよ教えよ!」フリフリ

勇者「楽しそうだなぁ、おい……」

勇者「……キ」

九尾の狐「キ?」

勇者「……せっ」

九尾の狐「せっ??」

勇者「…………唇と唇を重ね合わせるところまで」

九尾の狐「ぷふっ」

勇者(一番恥ずかしいのを選択してしまった)

九尾の狐「というかっ。少なくとも十年以上経っておるじゃろ! まだ接吻だけじゃと! このへたれ!」

勇者「う、うるさい」

吸血鬼「えっちな言葉を聞いて飛んできました」

勇者「出てけ」

九尾の狐「……真面目な話な? お主、寿命が短いのじゃぞ? さっさとせんと、気付けば体など衰えておるぞ!」

勇者「老いなんて、俺にはあって無いようなものだよ」

九尾の狐「なぁにを言っておるか。老いは誰にもくるものよ。現にほれ、お主だってしばらく会わぬうちに少し老けておるではないか」



勇者「……は?」



九尾の狐「は? とは何じゃ。じゃから、少し老けておると」

吸血鬼「そうねぇ。前までは青年って感じだけど、何かおじさんって感じになったかな?」

吸血鬼「大丈夫、ナイスミドルよ! まだまだモテるレベル!」

勇者「い、いや、ちょっと待てよ……」

勇者「勇者の宿命を終えない限り、俺は不老不死のはず……。魔王を倒してないから、その加護が解かれるはずがない」

九尾の狐「そんなこと言ってものう。老けておるものは老けておるものなぁ」

吸血鬼「ねぇ?」

勇者「…………」

勇者「なぁ、……魔王」

魔王「どうした勇者?」

勇者「お前は、ずっと若いまま、だよな。うん、変わってない」

魔王「いきなりどうした?」

勇者「どうやら、俺は少し老けたらしい」

魔王「……不老不死のはずなのに、ということか?」

勇者「何でだよ……なんで、老いが始まってるんだ」

勇者「せっかく、ずっとお前と居られると思ったのに」

魔王「……なぁ、勇者。具体的に、不老不死でいられるのはいつまでなんだ?」

勇者「? それは、女神の加護が切れるまでだが……」

魔王「女神の加護が切れるのは、いつなんだ?」

勇者「勇者としての使命を果たした時だ」

勇者「これは契約みたいなものだから、女神が自由に消せるものでもないはずだ」

勇者「だから、魔王を倒さない限りその加護は消えるはずがないのに……!」

魔王「……勇者」

勇者「なんだ?」

魔王「お前は、勇者の使命を何と捉えている?」

勇者「だから……魔王を倒すことじゃないのか」

魔王「それは、おかしいだろう?」

魔王「勇者の使命は、ただ単に魔族を殺すことなんかじゃない」

魔王「それだったら誰にだってできる」

魔王「女神は単に魔族を殺してほしいわけじゃないはずだ」

魔王「そうじゃないだろう」



魔王「人間を幸せにすることが、女神の望みだろう?」

勇者「結局、何が言いたいんだよ……?」

魔王「魔王が死ぬことが人間の幸せではない」

魔王「魔王が死ぬことは、それの通過点に過ぎない」

魔王「……世界を平和にすることこそが、勇者の使命だ」

勇者「世界を、平和にすること?」

魔王「お前は、戦争を止めた。そして、この世界に平和を取り戻した」

勇者「はは……何だよそれ。せっかく世界平和にしたのに、いいとこなしじゃないか」

勇者「俺は普通の人間に戻っちゃ困るんだよ」

勇者「お前と一緒に、生きたいんだから……」


魔王「一緒に生きることは、できるよ」

魔王「私は、例えお前が普通の人間になったとしても、お前と一緒に居たい」

魔王「駄目かな」

勇者「……でも、いずれお前とは離れてしまう」

魔王「何を女々しいことを言っているんだ。出会いがあれば、その数だけ別れがある。当然だろう?」

勇者「いいのか? お前と一緒に居ても」

魔王「当然だ」

勇者「今だったら、鎖を解いて、魔王城にだって戻してやれる」

勇者「その方がよっぽど寂しい思いをせずに済むだろう」

魔王「……馬鹿なこと、言わないでくれ」

魔王「今は、一時でもお前と離れたくない」

魔王「お前がいないと、私は寂しい」

魔王「時間が限られているのは、いつだって同じだ」

魔王「もう一度言うよ。お前と一緒に居たい。それでは、駄目かな」

勇者「……ありがとう、魔王」

魔王「らしくないな。泣いてるのか?」

勇者「あまり見ないでくれよ……。目、閉じててくれ」

魔王「ん」

勇者「……」チュ

魔王「んぅっ……」

勇者「……」

魔王「……あむ」レロ

勇者「むぐ!?」

魔王「……んむ、……ちゅ」レロレロ

勇者「~~~~っ」

魔王「ぷはぁっ!」

魔王「……死ぬかと思った」

勇者「息くらいしろよ……」

勇者「……さ、さあ。そろそろ寝よう」

魔王「ま、待て!」ガシィ

勇者「なんだっ!?」

魔王「こ、ここまできておいて逃げるのはなしだろう、勇者?」

勇者「……えぇーと」

魔王「わ、私ももう、収まりがつかないのだ。……寝るなら、一緒に寝よう?」

勇者「」

a month later


九尾の狐「――はっはっは! よかったではないか! おめでとう!」フリフリ

勇者「……嬉しそうだなー」

九尾の狐「私は魔王様の教育係。嬉しいに決まっておろう! 今日は赤飯じゃ!」

九尾の狐「ああ、子供は男かのう。それとも女かのうっ?」

勇者「気が早いな、おいっ。子供ができると決まったわけじゃないだろ」

九尾の狐「うむぅ、本当ならこの事実を城中に叫んでやりたいものじゃが、これは私の胸の内にしまっておこう」

勇者「そうしてくれ」

九尾の狐「しかしのう。本当に私は嬉しいぞ」

九尾の狐「……ありがとうな、勇者」

九尾の狐「ところで、勇者。確認しておきたいことがある」

九尾の狐「……私は、魔王様の教育係じゃ」

勇者「知ってるけど、それが何だ?」

九尾の狐「そして、一人の女でもある」

勇者「見りゃわかる。何だ一体?」

九尾の狐「勇者。魔王様に、『好き』と告げたか?」

勇者「い、いや……告げてない」

九尾の狐「」ハァーッ

勇者「なんだその大きなため息」

九尾の狐「なあ勇者。お主は、人とは一緒に暮らせないという口実で魔王を攫った。そうじゃろう?」

勇者「口実も、何も」

九尾の狐「なら今も、人と一緒に暮らせないという理由で、仕方なく魔王様と暮らしておるのか?」

勇者「いや、それは……」

九尾の狐「答えよ、勇者。お主は、何のために、魔王様を攫った?」

勇者「…………」

九尾の狐「他にいないからっ、仕方なくっ、魔王様を選んだのか? 答えよ勇者っ!」

勇者「……い、いや、……ちが、」

九尾の狐「好きでなく、何となく接吻して何となく行為をして! それだけか、それだけでしかないのか、貴様の中での魔王様は!」

九尾の狐「いつまで、『誰かの代わり』の魔王様と一緒に居るつもりじゃ!」

勇者「ち、違う違うっ、違うっ! 俺は、魔王だったから一緒に暮らそうと思った! 魔王だから、いろいろなことをした! 好きだからだ、他の誰でもない、魔王が!」

九尾の狐「なら何で好きと言わぬのじゃ!」

勇者「逆に、そこまでしたら言わなくても分かるだろ! 今さら言う理由があるのか!?」

九尾の狐「こんのっ、へたれへたれへたれへたれっ!!」

九尾の狐「これじゃから! これじゃからへたれは!」

九尾の狐「誰だって、何となく分かっていても言葉にしてほしいものなのじゃ!」

九尾の狐「魔王様に好きとも言えぬ輩に、魔王様はやらんぞ!」

勇者「ど、どうしてそこまで言われる必要があるんだ!」

九尾の狐「言葉で繋がらぬ愛は、長続きせん。そう決まっておる」

勇者「別に、言葉が無くても繋がっていられる愛もあるだろ……!」

九尾の狐「はっ。ならばなんじゃ、態度か、行動か?」

九尾の狐「自惚れるな! そんなにお前が、魔王様と都合よく心を通わせられるわけないじゃろう! それらしい言葉が正しいと思うな!」

九尾の狐「言葉がなければ、必ずすれ違いが起こる。その時に選ぶ言葉で、お主らのその後が幸か不幸さえも決まってしまう」

九尾の狐「お主の寿命は短い。魔王様よりも、ずっと。魔王様は、お主が居ない世界を、ずっと生き続ける」

勇者「……分かってる」

九尾の狐「その選択を、後悔させるな。お主を忘れさせるな! 数千年分の想いを込めて、『好き』と言ってこい!!」

魔王「どうだった?」

勇者「…………えーと、とりあえず、おめでとうと。そして、ありがとうと」

魔王「そうか、ありがとうとは、また……九尾らしいな」

勇者「……う、あー」

魔王「何を顔を赤くしているんだ、変な奴だな」

勇者「魔王っ!」

魔王「な、なんだっ?」

勇者「あ、いや、なんでも……」

魔王「そ、そうか」

勇者「魔王っ!!」

魔王「なんなんだ一体!」

勇者「……魔王。えーと、ちょっと言い忘れていたことがあってだな」

魔王「私に? 何を言い忘れていたのだ?」

勇者「……あの、……」

勇者「好き、だからな。魔王のこと」

魔王「……えっ? あ、」

勇者「いや、ちゃんと言ってなかったからな、まだ」

魔王「……。ありがとう」カァァァ

魔王「私も、好きだ」

魔王「でも、何でいきなり?」

勇者「いや、それは、えーと」

魔王「……九尾か?」

勇者「うぐっ」

魔王「まったく。九尾め、余計なことを」

魔王「いや、余計なことではないか」

魔王「嬉しいよ、勇者。とっても、嬉しい。ありがとう」ニコ

勇者(……ああ)

勇者(言ってよかったな)

勇者「朝食ができたぞ」

魔王「いただこう」


勇者「……なあ、魔王」

勇者「よくよく考えれば、勢いで中に出したわけだが、その、大丈夫なのか?」

魔王「ああ、うむ。問題ないよ」

勇者「そっか」ホッ

魔王「ごちそうさま」

魔王「はぁ……」

勇者「どうしたんだ?」

魔王「最近、すぐ吐き気が起こるんだ」

勇者「大丈夫か? 背中、さすろうか」

勇者「…………ちょ、え? 今何て言った?」

魔王「いやだから、すぐ吐き気が起こるって」

勇者「それ、妊娠の初期兆候じゃないのか?」

魔王「ああ、そうだな」

勇者「はぁっ? 大丈夫って言ってたろう、ついさっき」

魔王「ああ。だから、問題なく子は授かった、と」

勇者「」クラッ

魔王「ああっ、勇者!?」

勇者「お前、それでいいのか? というか、本当に俺なんかの子を産むつもりなのか?」

魔王「えぇっ? 何にせよ、子を授かったのはめでたいことじゃないのか?」

勇者「いや、そうだけど! 心の準備というか、なんというか……!」

魔王「……私とお前の子供、欲しくないのか?」

勇者「」

勇者「とりあえずだな。鎖を解こう」

魔王「? 何故だ?」

勇者「忘れたのか、この鎖は魔力を奪うんだよ……」

勇者「魔王みたいに成熟した大人なら奪われたとしても生命活動には何の影響も与えないが、子どもからそれを奪うのは危険だ」

勇者「まあ、腹から出るまでは鎖に生命として見なされないから、大丈夫だとは思うけど、一応な」

ガシャン

魔王「おおぉぉぉぉっ……? か、軽い。腕が軽い。脚も軽い」

勇者「やっぱり腕も足も痛々しい痕が残ってるな……」

勇者「ごめん。こんな傷を、お前につけて……」

魔王「何を言う。もともと私たちは、この鎖によって繋がれていたのだ。この鎖がなければ、今、私たちはこうやっていないだろう?」

勇者「まあ、そうかもしれないけど。でもそんなの詭弁だろう。お前はもうちょっと、俺を責める権利があるはずだ」

魔王「私はお前を責めるつもりはないよ。それに今のは本音だ。確かに最初は強引に鎖で結びつけた関係だったけれど、だからこそ、今はこうして鎖がなくても繋がっていられるじゃないか」

勇者「……やっぱりお前、魔王っぽくないなぁ」

勇者「さて、と。妊娠ともなると、俺一人の問題じゃないだろう」

魔王「とすると、どうするんだ?」

勇者「……よし、魔王城に行こう」

魔王「えっ? いいのか?」

勇者「いいのか、って、お前、ここで産むつもりか? そんなことをして、万が一子供に何かあったら大変だ」

魔王「……ふむ、それもそうか」

勇者「それに、もう鎖が無くても、俺たちは繋がっていられる。お前がそう言ってくれたんだろう?」

魔王「……うん。そうだな、その通りだ!」

おつ?

乙ん

追いついた乙

乙~


勇者子持ちか‥

子持ち昆布乙

つーかよく考えたら拘束プレイで孕ませたのかよ
裏山けしからん

手足に鎖は無かったんじゃ無いの

>>295
現在は右手だけ枷されて繋がれてる状態。


―魔王城―

九尾の狐「このぉー! このぉー! やってくれおって! ふふふふ!」パタパタ

勇者「笑いながら怒られてもなぁ」

魔王「驚いた。知らない内に随分仲良くなっていたんだな」

九尾の狐「ああ、魔王様。挨拶が遅れましたのじゃ。お久しゅうございます」

魔王「久しぶり、九尾」

―魔王城・謁見の間―

魔王「はぁ……やはり落ち着くな、ここは」

勇者「俺にとっては決戦の場だから、あまり落ち着かないけどな」

魔王「経緯はどうあれ、お前との出会いの場だ。私は好きだな」

魔王「ずっとずっと、勇者との決戦を待ち侘びていたんだ。そこにお前が来た」

魔王「まあ、どこぞの山小屋に監禁された時、一時は本当にお前を恨んだけどな」

勇者「当然だろう。というか、今も恨まれていたっておかしくはないはずだ」

勇者「適応力が高いというか、優しすぎるというか……」

魔王「……そういえば、ベッドは? 山小屋に移動したのだろう?」

勇者「そんなもの、俺の魔法なら文字通り一瞬だ。もうお前の私室に戻っているはずだよ」

魔王「そうか。それなら私も、こころおきなく休めるな」

魔王「ああそうだ、お前の部屋を用意してなかったな。待ってくれ、すぐ手配するから」

勇者「そんな、いいよ。俺は山小屋で暮らすから」

魔王「すると、勇者は子供の傍にいてやらないというのかっ? そんなの、寂しいだろう」

勇者「でも、勇者が魔王城に暮らすわけにはいかないだろう」

魔王「……せめて今くらいは、勇者ではなく、私の夫で居てほしい。それでは駄目か?」

勇者「はぁ。……どうしてお前は、そう恥ずかしい言葉を平然と」

勇者「これが俺の部屋か。……広いな。わざわざこんな部屋用意しなくても」

バフッ

勇者「はー、しばらくはここで暮らすわけか」

勇者「……魔王のいない空間って、久しぶりだな」

勇者「いや、少し歩けばいるけどさ」

勇者「でも、魔王だって魔族達と久しぶりに会えるわけだし……なんとなく、行きづらいな」

コンコン

勇者「!!」

鬼「うぃーす勇者。この部屋な、実は俺の部屋の隣なんだよ。よろしくな」

勇者「…………」ハァ

鬼「んだよ、その溜息はっ」

勇者「空気読めないな、お前」

鬼「うるせぇ。つか理不尽過ぎんだろ」

鬼「まー、あれだ。酒でも飲もうぜ」

勇者「俺、お前に酒飲もうって言われた記憶しかないんだけど」

鬼「はっはっは! 酒飲もうしか言ってないしな!」

鬼「さーさー、酒でも飲もう! 酒を交わせばことは分かる!」

勇者「結局、酒飲みたいだけだろ?」

鬼「ははは! 魔王様を誘ったら、ふられちまった!」

勇者「テンション高いな、オイ。というか、今の魔王に酒飲ませたら許さんぞ」

カラン

鬼「乾杯!」グビッ

勇者「乾杯」クイッ

鬼「そうかそうか、魔王様に会いたいが、さらった手前他の魔族を差し置いて会いづらいってか」

勇者「……おい、まだ何も言ってないんだけど」

鬼「言っただろう。酒を交わせば何でも分かりあえるー!」クルクル

勇者「もう酔ってやがる、こいつ」

勇者「なんつーかさ」

鬼「うん?」

勇者「魔王の考えることが分からなくて、不安なんだ」

鬼「そうかぁ」

勇者「俺、一応魔王のこと監禁してたんだぞ?」

勇者「そんな男を好きになるって、おかしいだろ」

勇者「俺には、どうも理解できん」

鬼「そーだなぁ。魔王様は、実に魔族らしくない」

鬼「だがな? 俺だってお前のこと嫌いじゃないぞ」

勇者「はぁ?」

鬼「なーんて、こんな男みたいな女に言われても嬉しかないだろうけどなぁ」ハハ

鬼「まあ、お前みたいな優しい奴とずーっと一緒にいたら誰だって惚れるんじゃね?」

勇者(問答無用で監禁した奴の、どこが優しいんだか……)

鬼「だからさ、非日常が日常になっちゃうわけよ。監禁されたとか、そういう事実もつい忘れちまうのさ」

勇者「さらっと心を読むな。……何かそれって、騙してるだけじゃないか?」

鬼「細かいこと気にすんなよ!」

勇者「はぁ? 細かいことって……」

鬼「魔王様はお前のことが好きで、お前は魔王様のことが好きで、だから子供つくったんだろ?」

鬼「細かいこと気にしてたら、人生つまらなくなっちゃうぜ!」

鬼「この前もな? 九尾に酷いこと言っちゃってなー。女心ないんだよな俺」

勇者「あー、そうか、そうか」

勇者(この流れは長くなりそうだな)

鬼「それに、ろくに恋愛したことねぇしさー」

鬼「俺だってな? 興味無いわけじゃないんだぜ? 魔王様が羨ましいし」

鬼「俺より強い奴と結婚したいけど……いないんだなー、これが! あ、お前は別ね。寝とる趣味はないから」

勇者「そりゃ探すのも骨が折れるな」

勇者(……早く魔王に会いたい)

龍人「……おかしい」

勇者「なんだいきなり」

龍人「何故、皆ここまで早くこの状況に馴染んでいるんだ」

勇者「俺が聞きたいよ。魔族って何でこんな適応力あるんだよ」

龍人「お前がまさか、魔王様と……さらには、子供までつくっていただと……?」

勇者「黙っててすまなかったな」

龍人「くそ、頭が混乱しそうだ」

龍人「いろいろ言いたいことはあるが……とりあえず、魔王様に何かあったら許さないからな」

勇者「分かってるさ」

鬼「龍人ー! 酒飲もうぜー!」ガチャッ!

勇者「さっき散々飲んだだろ! というかお前、本当にそればっかりだな!」

龍人「……よし。今日くらい付き合ってやろう!」

鬼「おぉ!? 今日はノリがいいじゃないかふぅっふー!」クルクル

勇者「……考えるのをやめたな、あいつ」

女ばっかwwwwww

コンコン

勇者「……誰だ?」

九尾の狐「私じゃ」

九尾の狐「狐だけに、コンコン」

勇者「いらんそんな小ネタ」

九尾の狐「どうじゃ勇者? この部屋はお気に召したかな?」

勇者「ああ。とても居心地が良い」

九尾の狐「ふむ。その割には、寂しそうな顔をしておる」

勇者「……」



勇者「正直言うと、魔王に会えなくて寂しいよ」

勇者「だけど、やっぱりまずいだろう。こんなにも魔族から信頼されてる魔王に、他の魔族を差し置いて、勇者が会いに行くのは」

九尾の狐「…………勇者」

勇者「……」

九尾の狐「酒臭い」

勇者「」

九尾の狐「しかしまぁ、随分と女々しいのうお主は」

勇者「ほっとけ」

九尾の狐「会いに行けばよいではないか。魔王様も寂しがっておったぞ」

九尾の狐「おおかた、魔王をずーっと待っておったのじゃろう?」

勇者「うぐ……」

九尾の狐「お見通しじゃ。魔王様もずーっとお前を待っておったからな」

九尾の狐「ま~ったく、へたれめ。女を待たせてどうするのだ」

コンコン

魔王『……誰だ?』

勇者(うわぁ完全に期待を失った声をしてる。俺もこんなトーンだったのか)

勇者「俺だよ」

魔王「っ……! 勇者!」ガバッ

魔王「待ってたんだぞ!」

勇者「ごめん。俺も待っていた」

勇者「けど来なかったから、自分で行くことにしたよ」

魔王「勇者……」

魔王「……酒臭いな」

勇者「」

魔王「せっかく良い雰囲気だったのに、やる気を無くしてしまったじゃないか」

勇者「やる気、って、何のやる気だよ」

魔王「それは、その、キ、」

勇者「キ?」

魔王「…………キス」ボソ

勇者(可愛いな)

九尾の狐(唇と唇云々のなにがしよりよほど立派じゃな)コソ

魔王「最近、あまりしてなかったから……」

勇者「こ、こんな時こそ! 魔法で体を清潔に!」

勇者「あ、酒で集中力切れて、魔法が使えない……」

魔王「……馬鹿者」

九尾の狐(つまらんのう)

魔王「もういい。私は寝るっ」バフッ

九尾の狐(ほれっ、そこで押し倒せ!)

勇者「すまない。また明日、会いに行くよ」

ガチャ

九尾の狐(あ~っ! 出て行きおった!)

魔王「……」バフッ

魔王「…………~」ゴロン

魔王「~~~~っ」ゴロゴロゴロ

魔王「……勇者ぁー」ゴロンゴロン

九尾の狐(青春しておるのう)

 One day after a few months

魔王「勇者、勇者」

勇者「なんだなんだ」

魔王「ここ、ここ」ツンツン

勇者「なに。腹?」ソッ

魔王「今ではもう、しっかりとこの子を感じることができる」

勇者「……ほんとだな」

九尾の狐「ふむ。魔力から察するに、女の子じゃろうな」

魔王「そうか、そうかー。ふふ、そういえば名前、どうしようか?」ニコニコ

九尾の狐「おー。そういえば、そうじゃの」

勇者「名前、か。うーん」

魔王「私は、一応考えてある。フレデリカ、なんてどうだろう?」

九尾の狐「フレデリカ。ほほう、魔王らしくない名じゃな。でも、今のこの世には相応しい名じゃ」

勇者「フレデリカ、か。なんだかしっくりくるな」

魔王「ふふん、だろう?」

勇者「うん。それにしよう。この子の名前はフレデリカだ!」

九尾の狐「無事に産まれてくるのじゃぞ、フレデリカ様」

 a few months later


勇者「…………」ウロウロ

勇者「…………」ウロウロ

――…。

勇者「……!!」

九尾の狐「勇者ぁ! 無事、産まれたぞ!」

勇者「おぉぉぉ!」ダダッ!

魔族医「何の問題もない。赤ん坊の状態は、極めて良好だ」

勇者「そっか、ありがとう!」

魔王「ゆう、しゃぁ……がんばったぞ、わたし」

勇者「ああ、よく頑張った!」




魔王「フレデリカ。私がお母さんだぞ。そしてこっちのがお父さんだぞ」

魔王「といっても、まだ分からないか。はは」

魔王「無事に産まれてきてくれて、ありがとうな……」

勇者「魔王、具合はどうだ?」

魔王「ああ、元気だよ」

勇者「そうか、よかった」

勇者「……なんだか、未だに実感が無いよ。俺とお前の間に、子供ができたなんて」

魔王「これから育てていけば、実感も湧くさ」

フレデリカ「お父さま! 見てください、お母さまに新しいお洋服を買ってもらったの!」

勇者「おー、似合ってるよ」

フレデリカ「えへへ♪」


フレデリカ「お母さまー! お父さまが似合ってるって!」

魔王「よかったね、フレデリカ」

九尾の狐「ははは、フレデリカ様もませてきたのう」

吸血鬼「そろそろ……かしら♪」ボソ

勇者「おい待て何だその意味深な呟きは」

おつ?

ごめんまだ続く


フレデリカ「ねぇ、龍人」

龍人「む。なんですか、王女様?」

フレデリカ「龍人は、なんでいっつもこわい顔してるの?」

龍人「怖い顔っ……!?」

鬼「ぷっ」

龍人「わ、笑うなぁぁ!」

フレデリカ「鬼といっしょにいるときは楽しそうなのになー」

フレデリカ「ねぇ、鬼ー」

鬼「んー? なんですかフレデリカ様」

フレデリカ「のどがかわいたから、ちょっとだけその水を飲ませてほしいの」

鬼「うぇあっ? だ、駄目ですよ。子供にはまだ早いです」

フレデリカ「えーっ? いじわる!」

鬼「う、うーん……まあ、ちょっとくらいなら」

勇者「駄目だからな?」

鬼「はいですよねすいません」

九尾の狐「……む? 何か、体が重いような……」

フレデリカ「……」スー

九尾の狐「またか。私の尻尾の中で眠るのはやめていただきたいのう。まあまだ子供じゃし、少しはよいとも思うが……」

魔王「……」スー

九尾の狐「まおうさまー?」

勇者「……九尾。尻尾から足とか手とかいろいろ出てて不気味なんだが」

九尾の狐「魔王様とフレデリカ様じゃぞ?」

勇者「フレデリカはいいとして、何やってんだ魔王……」

吸血鬼「親子丼っ……!」ハッ

勇者「お前はもうなんかどうしようもないな本当に」

吸血鬼「いやいや。ほら、急に親子丼食べたくなったなーって。九尾ちゃん作って♪」

九尾の狐「材料は自分で調達するのじゃな」

吸血鬼「えー」

吸血鬼「ねぇ、龍人?」

龍人「なんだ」

吸血鬼「あなたってば意外とハーレムよね」

龍人「ふん、くだらんことを言うな。将軍に男も女もない!」

吸血鬼「顔真っ赤にして言われてもねぇ」

素晴らしい

魔族医「あー、その資料はそこに置いといてくれ」

吸血鬼「はーい。よい、しょっと」ドサッ

魔族医「悪いな。毎晩毎晩」

吸血鬼「いいのいいの。私、死霊将軍だし」

魔族医「……もしかして、それだけのために?」

吸血鬼「いや、言ってみたかっただけ」

魔族医「でも本当、何で毎晩手伝ってくれるんだ?」

吸血鬼「いつの日か、あなたの夜のお相手をしたくて……♪」

魔族医「はいはいそういうのはもういいから」

吸血鬼「つまんないなぁ」

吸血鬼「……でも」

吸血鬼「わりと、本気だったりして」

魔族医「……そういう不意打ち、やめてくれないかな」

フレデリカ「何してるの?」

吸血鬼「あっ、フレデリカさまー。この紙をですねー、きちんとかたづけなきゃいけないんですよ」

吸血鬼「さあ、そろそろお休みの時間ですよ? それと、きちんと自分のお部屋は片付けるんですよー?」

フレデリカ「うん、わかった!」

吸血鬼「よしよし、偉いですねー♪」ナデナデ

魔族医「可愛がるのはいいが、資料をそこらへんに置くのはやめてくれ……」

魔王「そろそろ、かな」

勇者「本当にいいのか?」

魔王「ああ。……元々、私はお前のものだからな」


魔王「なあ、一つ頼みごとがあるんだが」

勇者「ん?」

魔王「私のベッドを、あの子に渡してあげたい。いいか?」

勇者「……さすがに、もう一度持っていったりしないよ。新しいベッド、実はもう買ってあるんだ」

魔王「ありがとう」

魔王「フレデリカ。急だけど、私と父様はしばらくここを離れる」

フレデリカ「そうなのですか……?」

魔王「何かあったら、九尾を頼るんだよ」

魔王「そうだ。ちょっと私の部屋に来なさい」

フレデリカ「? はい、お母さま」

フレデリカ「本当に私に、このベッドをくれるんですかっ?」

魔王「ああ。このベッドは、私のお母様も使ってたんだよ」

フレデリカ「そんなベッドを、私が……?」

魔王「心配するな。お前は私の子だ。自信を持て。これからは、お前が魔王なのだから」

フレデリカ「……お母さま? どこかへ、行ってしまうのですか?」

魔王「……」クス

魔王「私には、新しいベッドがあるから。別に形見という訳じゃないさ」

魔王「大丈夫だよ。私は、いつでもお前の傍に居る」

魔王「もう、行かなければ。元気にしているんだよ」

魔王「お前が大人になる頃には、帰ってくるから」

勇者「これで本当に良かったのかな」

魔王「いいんだ。どんなに別れを大袈裟にしたって、寂しいだけだからな」

勇者「そうじゃなくて。……お前が嫌なら、ずっと魔王城で暮らしたっていいんだぞ?」

魔王「フレデリカは、もう大丈夫だ。私を育てたのだって九尾だ、あいつになら任せられる」

魔王「彼女が無事なら、名残は無いよ」

九尾の狐「そうか。もう行ってしまわれるのか」

魔王「九尾。魔王城は頼んだよ」

九尾の狐「任せるのじゃ」

九尾の狐「……これも、仕方のないことよな」

九尾の狐「魔族と人間では、寿命が違いすぎるのだから」

おつ
なんか寂しくなってきたな

うーん、結局富士見にはなれなかったんだもんなー

―山小屋―

魔王「うーん、帰ってきたな」

勇者「うん。畑も牧場も、何の問題も無いな」

魔王「何年も空けていたのに……?」

勇者「ああ。魔力で何とか」

魔王「お前の魔法は本当に何でもありだな」

魔王「さて。鎖をつけるか」

勇者「別につけなくてもいいだろ」

魔王「えっ?」

勇者「お前、まだここから逃げる気があるのか……?」

魔王「うーん。家出するかもしれないぞ」

勇者「可愛いから許す」

魔王「えー」

勇者「鎖をつけたいのか? どういう考えなんだ?」

勇者「……もう、『鎖が無くても繋がっていられる』って言ったじゃないか。少し寂しいな」

魔王「なんというか……とにかく、その方が落ち着くんだよ。ここではな」

魔王「頼む、つけさせてくれ」

勇者「頼むことか、それ……?」

魔王「うん、うん」ジャラッ

勇者「……満足気だな」

魔王「しっくりくる」

勇者「夕食ができたぞ」

魔王「久しぶりだな、勇者の料理は」

勇者「」スッ

魔王「何だその手」

勇者「口、開けて」

魔王「お前、……懐かしいなぁ、まったく」

魔王「こうやって食べるの、久しぶりだな。何だか照れる」

魔王「……っ」ハムッ

勇者「可愛い可愛い」ハハ

魔王「うるさいっ」

やべぇ…鳥肌きた

勇者「さ、寝よう寝よう」バフッ

魔王「寝よう寝よう」バフッ

勇者「当然のように俺の上にのしかかってきた、こいつ」

魔王「幸せだろう」ニヤニヤ

勇者「まあな」

魔王「……即答するなよ」

魔王「…………」

勇者「おい」

勇者「そろそろ息が苦しいんだけど」

魔王「幸せなんだろう?」

勇者「悪かったよ……分かったから横にずれてくれ」

魔王「♪」ダキッ

勇者「結局苦しいし……。力が強いって、お前」

魔王「いいじゃないか。魔王城に行ってからは全て我慢してきたんだから」

勇者「まあ、なぁ……」

魔王「なあ、勇者」

勇者「なんだ、魔王」

魔王「ふふっ、このやり取りも久々だ」

勇者「はは、そうだな。で、なんだ?」

魔王「好きだ、勇者」

勇者「……」フイ

魔王「ちょ、ちょっと。何でそっぽを向く」

勇者(顔がにやついて戻らない)プルプル

魔王「こら、ちゃんと返事をしろ、おーい、勇者」

勇者「あー、分かった分かった! ……好きだよ、魔王」

魔王「♪」

魔王「おはよう、勇者」

勇者「おお? 早いな、魔王」

魔王「ふふん、魔王城では忙しかったからな。時間には几帳面になった」

勇者「その割には、昨日も良い雰囲気の中さっさと寝てたけどな」

魔王「うぅ……」

魔王「……太ってる」

勇者「なんだいきなり」

魔王「確実に、前より太ってる。魔王城の食事が美味しかったからだ」

勇者「俺は気にしないよ」

魔王「……バカ」

勇者「なあ、魔王」

魔王「なんだ、勇者?」

勇者「俺達って、勇者と、魔王だよな」

魔王「何をいまさら」

勇者「なんだかさ、仲良くして、子供までつくって、その上また二人で人知れず暮らしてるって」

勇者「もはや、勇者と魔王なんかじゃないよな」

魔王「ならばいっそ称号を変えてみたらどうだ? 隠居している身だから、『女隠居』『男隠居』とか」

勇者「……言いにくいから、勇者と魔王でいい」

勇者「……あと何年生きられるかな」

魔王「寂しいことを言わないでくれ」

勇者「魔王は、きっと俺より長生きするだろう?」

勇者「そう考えると、人間の寿命ってすごく短いんだなって」

魔王「その分、人間の一生は凝縮されている。いつまでも命があるものと思うから、魔族は、だらだらとした空っぽの一生を送る者が多い」

勇者「はは。それなら、俺の人生は空っぽな上に短いわけだな」

魔王「いや違うよ。気持ちの在り方さ」

魔王「寿命が短いと分かってから、お前にはきっと一日一日が違うものに見えてきただろう?」

勇者「……まあ、そうだな」

魔王「命の短いものほど、濃縮した生を送る。寿命の長さはあまり関係ないのかもしれないな」

魔王「蜉蝣という昆虫を知ってるか?」

勇者「詳しくは知らないが、一応」

魔王「蜉蝣は、成虫になってから一日と生きられない」

勇者「へぇ……それで、よく今まで生き残ってきたな」

魔王「成虫になって、繁殖をして、その一生を終えるんだ」

魔王「成虫になった彼らは、一体何を想うのか」

魔王「何にせよ、彼らの一生は、きっと誰よりも輝いているのだろうな」

 decades later

フレデリカ「ねぇ、九尾?」

九尾の狐「なんじゃ、“魔王様”」

フレデリカ「私、いつになったら大人になれるのかしら」

九尾の狐「ほう。また、面白いことを訊きますのう」

フレデリカ「お母様が言ったの、私が大人になる頃には、戻ってくるって」

九尾の狐「……。それなら、もう少しで戻ってきましょうな」

九尾の狐「もう貴方は、立派な大人になられた」

勇者「なあ、魔王」

魔王「なんだ、勇者?」

勇者「魔王は、綺麗だな」

魔王「なんだいきなりっ」

勇者「いつまでたっても、可愛いし、美人だし、愛しい」

魔王「…………勇者?」

勇者「俺は、徐々に老けていく」

勇者「自分の体が、急速に衰えていくのを感じる」

勇者「なあ魔王、こんな俺でも、愛してくれるのか?」

魔王「当然じゃないか。今更、お前を嫌いになるものか!」

勇者「俺は、自分が愛せないよ。お前が若い姿のままだからかもしれないけど、老いていく自分に言いようもない嫌悪感を催す」

勇者「自分の体が、汚れたものに見えて仕方がない」

魔王「そんなことない……!」

勇者「お前が、俺を嫌いじゃないというのが、信じられないくらいなんだ……」

魔王「……んっ」ズイ

勇者「な、なんだ?」

魔王「言葉で信じられないなら、体で信じればいい」

勇者「……そんなものか?」

魔王「そんなものだ。ほら、目を閉じていろ」

魔王「…………」チュ

魔王「これでどうだ? 少しは暗い気持ちが晴れたか」

勇者「……申し訳なさでいっぱいだ」

魔王「何を言っているっ。初めてのキスだって、お前としたのだぞ。何をいまさら、申し訳なくなる理由があると言うんだ」

勇者「お前は綺麗だ。そんなお前を、汚してしまった気がしてならない」

魔王「……勇者。そんな卑屈にならないでくれ。私まで悲しくなってしまう」

勇者「…………ごめんな」

魔王「足りないというなら、勇者。……ひさびさに、寝ないか?」

勇者「……お前を汚したくない」

魔王「勇者ぁ……。どうしてそう、お前は。これでも、言うの恥ずかしかったんだぞ」

魔王「なにか? 私となんか、寝るに値しないと言いたいのか?」

勇者「いや、そういうわけでは」

魔王「ならいいだろう。ほらっ、早く横になれ!」

チュンチュン

魔王「ん、朝か」

勇者「」シーン

魔王「おい、勇者? さすがにそんな冗談、笑えないぞ」

勇者「分かってるよ……ただ、久々すぎて、老人の身には堪える……」

魔王「あはは。すまなかったな」

>>1はVIPでこういう感じ勇者魔王SS書いた事ある?

>>373
ないよ。というか勇者魔王SSはこれが初めて。





魔王「今日の朝食は、私がつくろう」

勇者「ああ、頼む……」

魔王「うーん。この野菜、古くなってる。しょうがないから卵で何か適当に」

勇者(なんていうか、魔王らしくないなぁ……)

勇者「なぁ、魔王」

魔王「なんだ、勇者?」

勇者「俺さ、たぶん、もうそんな長くないと思う」

魔王「…………っ」ギュッ

勇者「抱きつくなよ。……それで、鎖を外した方が良いかなって」

魔王「何故だ?」

勇者「俺が死んだら、鎖を外す人がいない。今のうちに外しておくべきだろう」

魔王「お前が死んだとしても、私はお前の傍に居る」

魔王「死に場所は一緒だ、勇者」

勇者「それで、本当にお前はいいのか?」

勇者「俺が死ねば、お前はここで、一人暮らすことになる」

勇者「鎖を解いて、俺がお前を魔王城に送れば、余生を楽しく過ごせるだろう」

魔王「お前がいない余生を楽しくなど、過ごせない」

魔王「構わないよ。私は、この身が朽ちるまでここにいる」

一旦休む。
たぶん夜にまた投稿します


少し悲しくなってきた

鬱になって来た

お願いだ鎖ははずしてくれ

ところでフレデリカ様って勇者×魔王の配合だし最強なんじゃね?

うぅ…勇者と魔王はハッピーエンドに願う

親として最低だな

 decades later

魔王「勇者。今日の具合はどうだ?」

勇者「……ああ。問題ない」

魔王「さて、と。夕食の時間だ。口、開けて」

勇者「済まないな、……いつも、いつも」

魔王「いいんだ。お前が生きてくれるだけで、私は幸せだから」

勇者「……魔王。お前は、綺麗だなぁ」

魔王「褒めても何も出ないぞ?」ニコニコ

勇者「そのさびきった鎖は、……お前には、似合わないよ」

魔王「ダメだ。私は、例え鎖がちぎれても、お前と一緒に居るからな」

勇者「なあ、魔王」

魔王「なんだ、勇者?」

勇者「俺は、怖いんだ」

魔王「なにが? 何が怖いというんだ、勇者」

勇者「……老いが、怖い。自分が自分で無くなっていくのが、怖い」

勇者「死ぬのが、怖い」

勇者「はは。……お前と出会っていなければ、こんな老人になってまで命を惜しむことはないだろうが」

魔王「死ぬのが怖いのは、当たり前だよ。どれだけ年老いたとしても」

魔王「さて。食器を片づけてくるよ」スッ

魔王「……っつ」クラ

バタッ

勇者「魔王っ!?」

魔王「あはは、急にめまいがしてな。なに、大したことは無いよ」

勇者「……そうか。なら、いいんだが」

魔王「ごめんな。食器、割れてしまった」

勇者「構わんさ。それより魔王、怪我は?」

魔王「ない。心配しすぎだ、私はこれでも、魔王なんだぞ」

勇者「……そうだよな。ごめん」

魔王(皿の破片が刺さって、痛いけど……)

勇者「なあ、魔王」

魔王「なんだ、勇者?」

勇者「一日、一日をな、数えてみているんだ」

魔王「……いつから?」

勇者「いつからかな。今、332回数えたから、332日前からか」

魔王「332日前? 何かあったか?」

勇者「いや、何も無い。何も無いけど、ふと思いついて、それからずっと数えている」

魔王「ふむ。良く分からないな」

勇者「俺はずっと寝たきりだ。何もしていない」

勇者「寝たきりでそんな日々を送って、俺は一体いつまで生きているのかと、ふと気になった」

勇者「それから数えてる。もう一年が経とうとしているな。少なくとも一年以上、俺はこんな無意味な生活を送って、それでも生きている」

魔王「生きていることに意味はあるはずだ。無意味な生などない」

勇者「詭弁だよ。事実、俺はこうして魔王に世話をしてもらって、ただ生きているだけ。これのどこに意味があるんだ」

勇者「……俺は生きていてもいいのか、一日一日を数えながら、考えている」

フーたん放置はやめたげて

魔王「そんなくだらないことで悩んでいるなら、早く私に言ってくれればよかったものを……」

勇者「でも、言ってどうなることでもないだろう?」



魔王「私は勇者に生きていてほしい。生きる権利など、意味など、それだけでいい。そうだろう?」

魔王「知ったように感傷的にものを考えるから、人間はそうやって無駄に悩むのだ。その上大半は、自分に酔うだけで、結局何が言いたいのか分からない」

勇者「…………まあ、その通りだよな。でも、人間は悩む生き物なのさ」

魔王「ほら、また自分に酔ってる」クスッ

勇者「……じゃあ魔王も何かに悩んでみるか? 答えの無いものを悩むのは、人間じゃなくても楽しいと思うぞ。幸い、時間は余るくらいにあるし」

勇者「例えばだな、言ってしまえば、俺たちはこの広い世界に生まれて、ただ生きて、死んでいくだけの存在だ。それなら、俺たちは何をするべきなんだ? 何をすれば、充実した人生といえる?」

魔王「また、いかにも面倒な質問だな」

魔王「……そうだな。何かをひたむきに愛せば、人生は充実すると思うな」

勇者「何かをひたむきに、愛す?」

魔王「ああ。人間でもいい。真理でもいい。もっと素朴な、異性でもいい。もしくは、自分だっていい。とにかく何かを愛することだ」

勇者「何でそう思うんだ?」

魔王「少なくとも私はお前を愛し始めて、人生が豊かになった」

勇者「う、……不意打ちなんて卑怯だ」


――――


勇者「……しかし、魔王はどんな質問を投げかけても揺るがないな」

魔王「当たり前だ、何年生きていると思っている」

魔王「今さらお前なんかの言葉で私の生き方が揺らぐものか」

勇者「そういえば、俺よりずっと年上だったな、お前は……」

魔王「……なんだその意外そうな顔は」

勇者「いや。お前はいつまでたっても綺麗だからさ」

魔王「くっ、……カウンターされるとは」

魔王「おはよう、勇者」

勇者「……魔王」

魔王「どうした、勇者? どこか悪いのか?」

勇者「……見えない」



勇者「目が、見えないんだ……」

どうしてこうなった

魔王「ほら、口開けて」

勇者「……」パク

魔王「……」ニコ

勇者「……。もう、お前の顔を見ることも叶わないだな」

魔王「でも、私はここにいるよ」

勇者「それは、分かっているんだけどさ」

勇者「魔王」

魔王「なんだ、勇者」

勇者「俺は、お前に死んでほしくない」

魔王「それは、私も同じだよ」

勇者「そうじゃない。俺は、もう寿命が近い。もう長くもないだろう。だけど、お前は、ここで死ぬべき命ではないはずだ」

勇者「……もっと生きることができる命だ。それを、何もここで終わらせることはないだろう?」

魔王「それなら、……私は、どこかへ行ってしまった方がいいのか?」

勇者「……本当は、嫌だ。お前と一緒に居たい。その気持ちでいっぱいだ」

勇者「俺は、こんな老人にもなって、なんて自分勝手なんだよっ……。ここに来て俺は、お前の為に、お前の鎖を外せないんだ……」

魔王「それでいいよ。自分が死んだ後を考えるのは、自己満足でしかない」

魔王「正直でいてくれ。自分勝手でいてくれ。それを非難する者なんて、誰もいないのだから」

タイトル詐欺や(泣)

うつだしのう

魔王「……なあ、勇者」

勇者「なんだ、魔王」

魔王「隣で、寝てもいいかな」

勇者「構わないよ」

勇者「なあ、魔王。もういいだろう、鎖を外せ」

勇者「どうしてもここで暮らすというなら、俺が作った畑と牧場を好きなように使って構わない」

勇者「そうして、ふと帰りたくなったら、魔王城に帰ればいい」

勇者「そのくらい、自由になってくれよ。そうじゃないと、俺が幸せに死ねないだろう」

魔王「…………」

魔王「勇者、実はお前に、ずっと嘘をついていた」

勇者「……どんな?」

魔王「私は、人間の血が濃い」

魔王「だから、他の魔族とは違い、私は魔力で若さを保っていたんだ」

魔王「――そして今、私の残り少ない魔力は、完全に尽きた」

魔王「意外と遅かったけれど。はは、やはり魔王の魔力は伊達ではないな」

勇者「お前、それってつまり……!」

魔王「ああ。見えないだろうけど、私の体は今、急速に老いている」

魔王「だから、……私も、もうすぐ死ぬのだと思う」

魔王「実は、勇者の目が見えなくてよかったと、少しだけ思ってるんだ。すまない」

魔王「こんな弱々しい私を、あまり見てほしくないから……」

その子供ならフレなんとかも当然既におばーちゃん…

勇者「だったら、何でお前、鎖をつけるなんて……!」

魔王「最初から言っていただろう? 私は、『お前と一緒に死にたい』と」

勇者「なんでっ……、なんで、こんなこと!」

魔王「こうも言った。『私は良い奴などではない』とな。私は自分勝手だ、それくらい自覚している」

魔王「……楽しかったよ。残り少ない命と分かってからの、余生は」

魔王「一日が違うものに見えた。一日が輝いているのを感じた」

魔王「短いけれど、でも、とても私の一生は充実していた。お前と同じようにね」

勇者「今なら、まだ間に合う……っ! 鎖を壊せば、お前の魔力は元通りに……」

魔王「やめてくれ」ギュ

魔王「言っただろう。お前と共に死にたいんだ」

魔王「……私の最後のわがままを、聞いてくれ」

勇者「……魔王。そこにいるか?」

魔王「ああ、いるよ」

魔王「……勇者、私の声が聞こえているか?」

勇者「ああ、聞こえるよ」

魔王「そうか、よかった……」

勇者と魔王の魔翌力を受け継いでるから
相当長い間若くいられるんじゃないの

魔王「勇者。『愛しているよ』」

勇者「はは……先を越されてしまった」

勇者「俺も、魔王のことを愛しているよ」

魔王「……魂というものがあるなら、もう一度巡り合おう」

勇者「ああ。きっと、巡り合える」

―魔王城―

トタトタトタッ

魔王「ねぇねぇ九尾!」

九尾の狐「一体なんじゃ、魔王様」

魔王「今ね! 私の体を『ふわっ』って何かが包んできたのよ!」

魔王「優しくて力強い、何かがね、私を包んでくれたの!」

九尾の狐「…………ほう。それは」

魔王「分かるの! これだったのね、お母様が言っていた、『帰ってくる』って言うのは!」

九尾の狐(……魔王の力が継承されたか)

九尾の狐(ということは、魔王様は、もう)





九尾の狐「――歴史は繰り返す、か」

魔王「? どうしたの、九尾?」

九尾の狐(……せめて、大きくなったこの子の顔を見せたかったのう、魔王様)

これで終わりです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


悲しい最後だな


スレタイ詐欺乙


後日談を

>>414

魔王と勇者的には2人共幸せだったのかな…

>>419
本当に愛してる人のすぐそばで二人揃って老衰なんて最高の幸せだろうな

なんだか、途中から明らかに自分の言いたいことをつらつらと魔王と勇者に言わせるだけのSSになってしまった…。
あとタイトルは本当、途中からどっか言っちゃったね。ごめんなさい。本当に。
こじつけるとすれば、「魔王死ななきゃ俺不死身じゃね?」→「違います」っていうオチでしょうか。

さて、みなさんはこの終わりをハッピーエンドととりますか? バッドエンドととりますか?
私はこのSSを書くにあたって、最も訊きたかったことです。
幾つかみなさんが、このSSを書くきっかけとなった作品を的中させてくれましたが、
最大のきっかけは、『手をつないで死を迎えた老夫婦』のニュースです。
そして、究極の愛って何かなーとか考えて、あれこれ模索している内に、二ヶ月間考え、こんな感じに。


当初、勇者は魔王を憎しみながら死んでいくSSだったんだけどな。どうしてこうなった(´・ω・`)
でも、この形に落ち着いて良かったかなー、と個人的には思っております。

それと、機会があったら九尾の若いころのSSでも書こうかなーと思っております。
でも、また切ないENDになりそうで怖いなぁ……。

だいぶ前にVIPでこんな感じの勇者魔王SSはあったよ

客観的にはハッピーエンドなんだろうけど個人的にはバッドエンド
SS速報でこんな鬱ストーリー見たくないよぉ

でも乙


これも一つのハッピーエンド
よかとよかと( ̄ω ̄)

鬱エンドじゃないよ、これは。キャラが悲しんでないもん。

個人的にはバッドエンドだけど、
2人にとっては最高のハッピーエンドじゃないのかな

鬱ストーリーは最後への布石で
スレタイをどう結び付けるのか
楽しみにしていましたが残念。

心から愛した人と添い遂げられるって最高の幸せだと思うけどな
お前らそういう人大切にしろよな
俺にはもう居ないから俺の分も頼むぜ



ハッピーエンドと信じたいな
楽しませてもらった

勇者と魔王としてはハッピーエンド…だか残った人はバッドエンドだな…悲しいな

見たことないけど何となくるろうに剣心の星霜編ってこんな感じなんかな

あとがき長すぎてコピペかとおもた

乙乙!!

おっつん

毎日人生ままならないと、口癖のように言ってる自分からしたらハッピーエンドに他ならない。
満足して死ぬなんて、人生においての最高の着地点だと自分は考えているから。
悲しいと感じるのは、誰かが死んだら悲しいと思うのは当たり前だし。
まぁ全部個人的見解だけど、その個人的見解として読んでよかったと思ったよ、乙。

毎日人生ままならないと、口癖のように言ってる自分からしたらハッピーエンドに他ならない。
満足して死ぬなんて、人生においての最高の着地点だと自分は考えているから。
悲しいと感じるのは、誰かが死んだら悲しいと思うのは当たり前だし。
まぁ全部個人的見解だけど、その個人的見解として読んでよかったと思ったよ、乙。

とりあえず乙、良作でした
あと言いたいのは無限ループって怖くね?

バッドでもなくハッピーでもなく、いろんな意味でトゥルーエンドなんだろうなと。当たり前と言えば当たり前か。

個人的にはいい話だと思うし楽しめたよ、乙!

俺としてはハッピーの部類に入るんじゃないかと
フレデリカの存在要素が薄くなってしまったように思えるが大変面白かった乙乙


面白かった

SS読んで初めて泣いた。
個人的にはハッピーエンド。ありがとう

とある小説家がいってたな
いったい誰が幸せならハッピーエンドなのかと

ちょっとフー子放置しすぎだろって感は正直ある
隠居するまでに愛情とか、その他与えるべきものを与えたって事なんだろうけど
それをほぼベッドと継承だけで端的に表現しちゃうのは趣旨的にどうなんだろうと思った

ただめっちゃ面白かったのも事実
乙っした!

あれ?おかしいな目から汗がでるよ。なんでかな

乙した~

色んな人が言ってるように、2人にとってはハッピーエンドだったのかな~って感じた。

てかフレデリカは4分の3は人間なわけか

綺麗に終えてるように見えて結局魔王は自殺。
我が子を置いて自分のエゴで自[ピーーー]る親が美しいわけがないだろ

近頃のkz親とその子供の人生をそのままssにした感じ

魔翌力切れが原因なんだから自殺じゃなくね

上手く言えないけどいい終わり方だったと思うよ、ハッピーエンドとかバッドエンドとかそういう枠組みを越えて
そもそもマジモンのハッピーエンドほど難しい物はないだろう

つまり、お疲れさまでした、ありがとう

乙です
個人的にはハッピーエンドだとは思うけどね

>>447
えっ

>>450
いままでは魔法で老化を止めていて
魔力が切れたんで急速に老化が進んで
老衰が原因で死に至ったんだろ?
自殺じゃ無いじゃん

その魔翌力切れ起こすために自分から鎖に繋がったうえ、外すのも拒否したんだろ。
自殺じゃん。

>>442
フーちゃんは確かにちょっと放っときすぎたかなと。
魔王と勇者が一緒にくらすという趣旨的には、ここ長引かせるのもどうなの?という結論に至りまして。
でもみなさんがフーちゃん放置しすぎだろという意見なので、もう少し書いてよかったかなと反省。

>>445
魔王自身も自分は自分勝手だと言ってますしね。
まあ個人的には、少なくとも美しい終わりではないと思う。

>>446
親として最低だって意見は分かります。二人のエゴでフレデリカを置いてったわけだから。
ただ勇者としては、幼い子供に、自分だけ老けていく姿を見せたくなかったんだよね。
最後の方でも言っていたけど、勇者は老いていく自分を何より嫌悪してる。
まわりは若いままなのに、自分だけ年老いていくっていうのは、やっぱり怖くて、とても寂しいことなんじゃないかな。

自分の意志で寿命を縮めてたのかもしれんが
それだと例えばタバコ吸ってるてるヤツはみんな自殺中とかになるんじゃないの

極論すると健康に長生きできる方法を知っていても
それをあえてやらない人間は皆自殺って事になっちゃうじゃん



フレデリカ放置については魔王の親も同じようだったみたいだし
人間の価値観にはない魔族の習性とか何かが合ったのでは無かろうか
魔王が自分を自分勝手だとするのは人間的感性が強かったからで


いずれにせよハッピーエンドだと思う


面白かった
俺は好きだ

乙、泣いた

ナンテコッタ

>>1本当にありがとう
久々に感動する話だった

次回作待ってるぞ

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