勇者「すごい美人で有能な僧侶と魔法使いをお願いします」(1000)

傭兵登録所

受付「え?」

勇者「ですから、魔王を倒すためにすごく美人で有能な僧侶と魔法使いをお願いします」

受付「あの……魔王を倒すのにすごく美人なのは関係あるんですか?」

勇者「あります」

受付「どのような?」

勇者「僕のヤル気が上がりますよね?じゃあ、魔王を倒す可能性もあがります」

受付「……」

勇者「この際、すごく美人な僧侶と魔法使いでも構いません」

受付「ちょっと待っていてください」

勇者「はっ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1338647423(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

受付「えーと……」キョロキョロ

僧侶「あー!?」

受付「お」

魔法使い「大声出さないでよ」

僧侶「だって、それは私が食べようと思ってたのに……」

魔法使い「あら、ごめんなさい。お詫びにこれをあげるわ」

僧侶「ブロッコリーは嫌いだって何度も……!!」

受付(あの二人は……確か……)

受付(まあ、いいか。顔はいいし)

受付「あのー、すいません」

僧侶「はい?」

魔法使い「なぁに?」

受付「勇者様がお呼びです」

僧侶・魔法使い「「えっ!?」」ガタッ

受付「お待たせしました」

勇者「いえ。待っていません」

受付「彼女たちでよろしいでしょうか?」

勇者「おぉ……!!」

僧侶「あの……ご指名頂き、ありがとうございます……」

魔法使い「よろしくぅ」

勇者「美しい……」

僧侶「そ、そんな……」

魔法使い「あら、ありがとう」

勇者「では、早速行きましょう」

僧侶「は、はい!!」

魔法使い「りょうか~い」

受付「お気をつけて~」

受付(よし、うちの不良債権が出て行った……)

―――街

勇者「まずは何より支度を整えないといけませんね」

僧侶「そ、そ、そうですね!!」

魔法使い「うんうん」

勇者「お二人とも、装備は……」

僧侶「杖!!」

魔法使い「棒」

勇者「……」

僧侶「だ、だめでしょうか……?」

勇者「まあ、前衛は僕に任せてもらえればいいですけど」

魔法使い「そうよね。勇者は戦ってなんぼだしね」

勇者「ええ。二人を守って見せましょう」キリッ

僧侶「さ、流石は勇者様!!かっこいいです!!」

勇者「ふっ。当然です。勇者なのですから」

魔法使い「おー」パチパチ

―――フィールド

勇者「さて、ここから北にいくと小さな村があるみたいなのでそこを目指しましょうか」

僧侶「さ、賛成です!!」

魔法使い「おー」

勇者「いや、でもお二人と出会えたことを僕は嬉しく思いますよ」

僧侶「え?ど、どうしてでしょうか?」

勇者「いや。まさかこんなにもお美しい人が旅を共にしてくれるなんて嬉しいじゃないですか」

魔法使い「そうよね。貴方はラッキーよ」

僧侶「い、いえ!わ、私はそんな……あの……」

勇者「貴女たちを守れること……そして、貴女たちから支援をしていただけること……」

勇者「それがとっても嬉しいのです」

僧侶「あ、あの……」

勇者「なんでしょうか?」

僧侶「えっと……支援って?」

魔法使い「もしかして手伝わなきゃダメなの?」

勇者「まぁ、物理的な攻撃では傷を与えにくい相手には魔法を頼らせて頂きますし」

魔法使い「……」

勇者「こちらが傷を負ったときは、治癒をお願いしたいのですが」

僧侶「……」

勇者「でも、不思議なものですね。貴女たちのような美人が二人も余っているなんて」

勇者「貴女たちのような人は真っ先に引き抜かれると思っていたのですが」

魔法使い「受付の人から何も聞いてないのね」

勇者「え?」

魔法使い「私たち、魔法は使えないわよ」

勇者「……え?」

魔法使い「正確には使えるけど、使えないって感じ」

勇者「ど、どういうことですか?」

僧侶「えっと……その……私たち、100年に一人の逸材らしいんです……」

魔法使い「悪い意味でね」

勇者「……」

魔法使い「だから、頼るだけ無駄だからね?」

勇者「それは一体―――」

ガサガサガサ……!!

勇者「むっ!?」

魔物「ガルルルル……!!」

勇者「魔物か!」

僧侶「ひっ」

勇者「後ろに下がって!!」

魔法使い「がんばれー」

魔物「がぁぁぁ!!!」

勇者「でぁ!!」ザンッ

魔物「キャン!?」

僧侶「強い!」

魔法使い「わぁお。さっすが」

勇者「この程度は―――二人とも、後ろ!!」

僧侶「え―――」

魔物「ガァァァ!!!」ガブッ

僧侶「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

魔法使い「なっ!?」

僧侶「いたい!!いたい!!いたい!!!あしっ!!あしっ!!」

魔法使い「このぉ!!」ドガァ

魔物「ガルルル……」

僧侶「いたい!!いたい!!!!」

勇者「下手に攻撃しないほうが!!」

魔法使い「しかたない……!!」

僧侶「たすけてぇ……」

魔法使い「この……魔物の分際で!!!」ギュッ

魔物「がぁ!?」

勇者「なに魔物に抱きついて……!?」

魔法使い「もえろぉ!!」ゴォォォ

勇者「なんと……」

魔法使い「はぁ……はぁ……」

僧侶「あ、ありがとうございます……」

魔法使い「世話かけないでよね」

僧侶「ご、ごめんなさい」

勇者「魔法使えるじゃないですか。それも結構な威力で」

魔法使い「……ダメなの」

勇者「え?」

魔法使い「私は全身を使わないとまともなダメージが与えられない」

勇者「ど、どうして?」

魔法使い「普通は指先や手のひらを銃口の代わりして、魔法を放つわけだけど。私の場合はそれができない」

魔法使い「今みたいに全身からしか放てないの」

勇者「それのどこに問題が?大口径になってむしろ威力が上がるのでは?」

魔法使い「全身が銃口ならよかったけど、銃身のほうが縦笛のように穴だらけ。遠くに放とうとしても魔翌力が散逸しちゃって、届かないの」

勇者「それって、有効な射程距離がゼロに等しいってことですか?」

勇者「なんと……」

魔法使い「はぁ……はぁ……」

僧侶「あ、ありがとうございます……」

魔法使い「世話かけないでよね」

僧侶「ご、ごめんなさい」

勇者「魔法使えるじゃないですか。それも結構な威力で」

魔法使い「……ダメなの」

勇者「え?」

魔法使い「私は全身を使わないとまともなダメージが与えられない」

勇者「ど、どうして?」

魔法使い「普通は指先や手のひらを銃口の代わりして、魔法を放つわけだけど。私の場合はそれができない」

魔法使い「今みたいに全身からしか放てないの」

勇者「それのどこに問題が?大口径になってむしろ威力が上がるのでは?」

魔法使い「全身が銃口ならよかったけど、銃身のほうが縦笛のように穴だらけ。遠くに放とうとしても魔翌力が散逸しちゃって、届かないの」

勇者「それって、有効な射程距離がゼロに等しいってことですか?」

勇者「なんと……」

魔法使い「はぁ……はぁ……」

僧侶「あ、ありがとうございます……」

魔法使い「世話かけないでよね」

僧侶「ご、ごめんなさい」

勇者「魔法使えるじゃないですか。それも結構な威力で」

魔法使い「……ダメなの」

勇者「え?」

魔法使い「私は全身を使わないとまともなダメージが与えられない」

勇者「ど、どうして?」

魔法使い「普通は指先や手のひらを銃口の代わりして、魔法を放つわけだけど。私の場合はそれができない」

魔法使い「今みたいに全身からしか放てないの」

勇者「それのどこに問題が?大口径になってむしろ威力が上がるのでは?」

魔法使い「全身が銃口ならよかったけど、銃身のほうが縦笛のように穴だらけ。遠くに放とうとしても魔力が散逸しちゃって、届かないの」

勇者「それって、有効な射程距離がゼロに等しいってことですか?」

>>10
>>20
訂正

魔法使い「そういうことね。魔法発動時は大丈夫だけど、流石に燃え始めた魔物に触れちゃうと火傷するし、爆発系なら爆風に巻き込まれる」

魔法使い「制限が多いの、私」

勇者「そうだったのですか。―――ひょっとして、貴女も?」

僧侶「えっと……」

勇者「そうだ!!足を怪我していたのでは?!」

僧侶「それは……あの……」

魔法使い「大丈夫よ。もう完治してるから」

勇者「え?でも、確かに噛まれて」

僧侶「わ、私はあの……と、止まらないんです……」

勇者「止まらない?」

僧侶「魔法……止められないんです……」

勇者「ど、どういうことですか?」

僧侶「魔力が尽きるまで勝手に治癒魔法が発動し続ける体質で……」

僧侶「怪我をしても魔力がある限りは体が自動的に治癒させてしまうんです」

勇者「それって……無敵ってことじゃないですか!!すごい!!」

魔法使い「いやいや、魔力が尽きたら終わりなんだから、無敵ではないわ」

僧侶「は、はい」

勇者「でも……」

僧侶「魔力は睡眠を取るなり、食事をするなりして回復しますが……私はずっと使い続けている状態なので……」

勇者「もしかて……」

僧侶「燃費……すごく悪いんです……」

魔法使い「十分に回復しても1時間ぐらいで底を打っちゃうものね?」

勇者「……」

僧侶「ご、ごめんなさい!!一応、攻撃魔法も習得していますが……それを使うと一気に……魔力が……」

勇者「なるほど……」

魔法使い「私たちが売れ残った理由、わかったかしら?」

勇者「……」

魔法使い「ポンコツなのよ、私たち」

僧侶「すいません……てっきり、受付の人が話してくれているものだと……」

魔法使い「ま、いるわけないわよね。私たちをわざわざ危険な旅に同行させようなんて考える馬鹿は」

僧侶「あの!!今からでも遅くありません!!他の人を連れていったほうが……」

魔法使い「私からもそれをオススメするわ」

勇者「……」

僧侶「やっぱり、私たちもうこういうことやめたほうがいいかもしれませんね……」

魔法使い「そうね……。勇者様と魔王討伐……夢だったけど……」

勇者「……」

僧侶「で、では……これで……」

魔法使い「ありがとう。指名してくれて。でも、残念。私たちでは貴方の寿命を短くする手助けしかできないの」

僧侶「これからは……お花屋さんでも経営します……」

魔法使い「いいわねー。棒も売りましょう、棒」

僧侶「棒なんて売れないですよー」

魔法使い「馬鹿ね。つっかえ棒とか物干し竿とか色々あるでしょ」

僧侶「花とどんな関係が……」

勇者「待ってください」

魔法使い「なに?」

勇者「僕が提示した条件はすごく美人で有能な僧侶と魔法使いでした」

僧侶「……」

魔法使い「なら、貴方の条件はまるっきり満たしていないわね」

勇者「でも、その後すぐに訂正しました。すごく美人な僧侶と魔法使いでいいと」

僧侶「え……」

勇者「ですので、僕は納得して貴女たちを連れていくことに決めました」

魔法使い「いや……」

勇者「さあ、行きましょう」

僧侶「ちょっと待ってください!!」

勇者「なんでしょうか?」

魔法使い「馬鹿なの?説明したでしょ。私たちは役立たずなのよ」

勇者「でも、魔王討伐に行くことが夢だからこそ、あの傭兵所で声が掛かるのを待っていたんですよね?」

僧侶「そ、そうですけど……」

勇者「なら、僕がお二人の夢を叶えて差し上げます」

魔法使い「何言ってるのよ!!死ぬ気!?」

僧侶「そ、そうです!」

勇者「死にません。僕は王国に選ばれた勇者ですから」

魔法使い「足を引っ張るだけよ……」

勇者「それはまだわかりません」

魔法使い「顔?私たちの顔が好みだから連れて行きたいわけ?」

勇者「はい」

僧侶「な、なにいってるんですか?!」

魔法使い「それなら魔王倒して、名前を売ればいいじゃない。名声と富を手に入れれば、私たち以上の女だって寄ってくるわ」

勇者「そのために屈強な男性と共に旅をしろというのですか?!ふざけんな!!」

僧侶「ひっ」ビクッ

魔法使い「あ、あんた……正気?!相手は魔王!!世界の3分の1を支配してる魔物の王様なのよ?!」

勇者「そうですね」

魔法使い「こんなダメな二人を連れて無事に済むと思ってるの?……いえ、絶対に死ぬ」

勇者「どんなに有能な人を連れていても死ぬときは死にます。なら、僕は自分の好みに合った人を連れて行きたいです」

僧侶「か、考えなおしてください!!」

勇者「どんなに思考しても行き着く結論は同じです」

魔法使い「真性の馬鹿か……」

僧侶「勇者様……」

勇者「とりあえず北の村に行きましょう」

魔法使い「……」

僧侶「……」

勇者「どうしてもというなら構いません。無理強いはさせたくないですし」

勇者「死ぬほど嫌なら抜けてもらってもいいですよ」

僧侶「でも……」

勇者「しかし、迷っているぐらいなら是非とも僕の後ろにいて頂きたいと思います」

魔法使い「……」

僧侶「ど、どうします?」

魔法使い「どうするといわれても……」

勇者「では、出発!!」

―――村

勇者「着きましたね」

僧侶「そ、そうですね……」

魔法使い「はぁ……」

勇者「お二人は宿の確保をお願いします。僕は魔物を狩って得た物を売ってきます」

僧侶「は、はい」

勇者「宿屋で合流しましょう」

魔法使い「ええ」

勇者「それでは、行ってきます」

僧侶「……あの」

魔法使い「なに?」

僧侶「ど、どこまで本気なんでしょうか……」

魔法使い「さぁ?でも、まあ、居ないよりはマシって考えじゃない?」

僧侶「そ、そうですね。道中、いい人が見つかるまでのサポートなら……」

魔法使い「さ、宿に行きましょう。あんたの魔力、とっくに空でしょ?」

―――宿屋

勇者「ただいま戻りました!!」

魔法使い「おかえり。アンタの部屋は向こうね」

勇者「相部屋じゃないんですか!?」

魔法使い「当たり前でしょ!?」

僧侶「ご、ごめんなさい」

勇者「ちっ」

魔法使い「アンタ、本当に勇者?」

勇者「まあ、いいでしょう。それよりも……」

僧侶「な、なんですか?」

勇者「どうぞ」スッ

魔法使い「なにこれ?」

勇者「杖と棒だけでは心許ないと思いまして、ナイフと剣を買ってきました」

僧侶「わ、私たちにですか?」

勇者「魔法が不便ならせめて自衛のための武器は必要でしょう?」

魔法使い「まあ、そうね」

僧侶「このような立派な物を……あ、ありがとうございます!!」

勇者「いえいえ」

魔法使い「……ねえ」

勇者「はい?」

魔法使い「こんな物買ってきて……私たちを戦力として見てるの?」

勇者「当然ですよ」

魔法使い「魔法も満足に使えないのに?」

勇者「ですから、武器を―――」

魔法使い「それなら強い戦士を仲間にしたらどうなの?」

僧侶「ちょっと……」

魔法使い「非力な私たちが武器を持ってもプラスにならないわよ?」

勇者「筋肉質の女性はちょっと……」

魔法使い「そういう意味じゃないの!!アンタ、どうせ私たちを捨てるつもりなんでしょう!?余計なことにお金使わないほうがいいわよ?!」

勇者「捨てる?」

僧侶「そ、そんなこと言わなくても……」

魔法使い「どうせ……いい人が見つかるまでの繋ぎでしょ?」

勇者「何を言っているんですか?」

魔法使い「下手な気遣いはいらないわよ」

勇者「僕は貴女たちと魔王討伐をするつもりで武器を買ってきたんですよ?」

魔法使い「嘘」

勇者「嘘じゃないです」

魔法使い「……」

僧侶「あの……お、おちついて……」

勇者「貴女たち以外と旅をするつもりは微塵もありません」

魔法使い「……何が目的?」

勇者「え?」

魔法使い「私たちを同行させて……何か裏があるんでしょ?」

僧侶「や、やめてください……」

勇者「無論、目的はありますよ」

魔法使い「ほらね。何?臓器でも売る?それとも私たちを人身売買にかけるつもり?」

僧侶「し、失礼ですよ!!」

魔法使い「だって……それぐらいしか……」

勇者「体目当てです」

魔法使い「え?」

僧侶「か、体?」

勇者「はい」

魔法使い「ふん……やっぱり……そういうこと……。身売りさせるわけ?」

勇者「いいえ。僕が貴女たちの体を狙っています」

魔法使い「はぁ!?」

僧侶「ど、どういうことですか?!」

勇者「僕は貴女たちを見ているとムラムラします」

魔法使い「何言ってるの!?馬鹿なの!?」

勇者「勇者に向かって失敬ですね」

僧侶「あ、あの……体って……それは……えっと……エ、エッチなこと……ですか?」

勇者「まあ、そうです」

僧侶「……」

魔法使い「な、なにそれ……」

勇者「でも、どうやら貴女たちはとてもガードが固いようですので、暫くは様子見します」

魔法使い「連れて行く代わりにヤラせろってこと?」

僧侶「ひっ」

勇者「強姦などしません。飽く迄もラブラブな状態でしか体を重ねたくありませんし」

魔法使い「……本気?」

勇者「勿論っ」

僧侶「目が怖いです……」

勇者「それではお休みなさい」

魔法使い「え、ええ……」

勇者「安心してください。夜這いもしませんから」

魔法使い「したらホールドファイアーしてやる」

勇者「なるほど。それは危険ですね」

僧侶「……あの」

魔法使い「まさかただの下心だったとはね」

僧侶「……」

魔法使い「どうする?帰る?」

僧侶「い、いえ……無理矢理にしないって言ってましたし」

魔法使い「それ信じるの?油断したときに襲われたら大変よ?」

僧侶「まあ、でも、邪念のみで体に触れようとしてきても勇者様では私たちに勝てませんし」

魔法使い「確かにね。私なら燃やせるし」

僧侶「はい」

魔法使い「あんたは危ないけどね」

僧侶「わ、私は勇者様を信じますから」

魔法使い「お人好しね」

僧侶「そ、それほどでも」

魔法使い「別に褒めてないけど」

僧侶「と、とにかく!魔王討伐に行くことは確定なんですからがんばりましょう!!」

―――翌日

勇者「おはようございます!!」

魔法使い「おはよ」

僧侶「はい」

勇者「では、早速出発しましょう」

僧侶「そ、そうですね!時間が惜しいですし!!」

魔法使い「で、今日はどこを目指すの?」

勇者「東にある森を抜けて、隣国に入りましょう」

僧侶「国境のある森ですね」

勇者「森自体はそれほど歩きにくいものではないようですが、魔物もいますし、なにより道のりが長いようです」

僧侶「そ、それはたいへんですね」

勇者「ええ。ですが、しっかりと休憩を挟みながら進めば何も問題はないでしょう」

魔法使い「だといいけど」

勇者「では、出発!!」

僧侶「は、はい!!」

―――森

勇者「魔力は大丈夫ですか?」

僧侶「まだ、いけます」

魔法使い「もうギリギリでしょう?」

僧侶「そ、そうですけど……」

勇者「まあまあ、薬草も十二分にありますし。気にしないでください」

魔法使い(いつの間に……)

僧侶「さ、流石は勇者様!!」

勇者「いやぁ」

ガサガサガサ……

勇者「むっ!?」

魔物「ウゥゥゥゥゥ……!!!」

魔法使い「魔物……!!」

勇者「ふっ。掛かって来い!!!」

魔物「ガァァァ!!!!」ダダッ

勇者「せぇぇい!!」ザンッ

魔物「グァ!?」

勇者「もう一撃!!」

魔物「グアァ!!!」ガブッ

勇者「つっ?!」

僧侶「勇者様ぁ!!」

魔法使い「……っ」

勇者「―――はぁぁぁ!!!」ザンッ

魔物「ゥガ……」

勇者「勝った」

僧侶「勇者様!!大丈夫ですか!?」

勇者「ええ」

魔法使い「腕から出血してるわよ?」

僧侶「い、今、魔法で……」

勇者「いや、必要ありません」

僧侶「どうしてですか!?」

勇者「それは……」

魔法使い「それは?」

勇者「こうするからです」ムニュ

僧侶「へっ……!?」

魔法使い「なっ……?!」

勇者「素晴らしい弾力ですね」ムニュムニュ

僧侶「い……いやぁぁぁぁ!!!!」

魔法使い「な、なに堂々と胸を揉んでるのよぉ!!!」

勇者「でも、傷は癒えました」

魔法使い「ちょっと……!?」

勇者「思ったとおり、貴女の体に触れると治癒の効果が得られるのですね。いや、なるほど」

僧侶「うぅぅ……」

魔法使い「いい加減にしなさいよ!!あんたぁ!!」

勇者「魔力が垂れ流し状態なら、こうやって活用したほうがいいはず」

魔法使い「そりゃ……そうだけど……」

勇者「うん。仕方ありませんね」

僧侶「ぐすっ……」

魔法使い「でも、胸じゃなくてもいいでしょうが!!手を繋ぐとかでも!!」

勇者「それは盲点でした」

魔法使い「野郎……」

僧侶「……」

勇者「すいません。僕の思慮が足りないばかりに」

僧侶「い、いえ……わ、私もびっくりしてしまって……」

勇者「これからは手を繋ぎます」

僧侶「そ、そうしてください……」

勇者「よし。それではもう少し先に進んで休憩にしましょうか」

僧侶「は、はい」

魔法使い「わざとでしょ……?」

勇者「いや、僕の浅はかさが露呈してしまっただけです。本当に面目ありません」

―――川辺

勇者「ここなら安全そうですね。休憩にしましょう」

僧侶「はぁ……疲れた」

魔法使い「日没までには抜けられそうね」

勇者「抜ければすぐに城下町が見えるはずです。がんばりましょう」

僧侶「はいっ」

勇者「あの」

魔法使い「なに?」

勇者「パンを焼いてもらえますか?」

魔法使い「はいはい。―――よっと」ボッ

勇者「……」

僧侶「ここの川、すごく綺麗ですよ!」

勇者「魚でも捕りましょうか」

僧侶「できるんですか?!」

勇者「ふっ。僕に不可能はありません」

僧侶「すごい!すごい!大量です!」

勇者「はっはっはっは」

魔法使い「いや……そんなに食べられないでしょうが」

勇者「そうですね。キャッチアンドリリース」

魔法使い「火を起こすわ」

僧侶「あ、私も手伝います」

魔法使い「うん」

僧侶「できました」

魔法使い「ありがとう。ほい」ジジジジッ

勇者「なるほど。それぐらいの炎なら手のひらからでも出せるわけですね」

魔法使い「距離も近いからね。5メートル以上だと枯葉すら燃やせない。若干温かくなるぐらいね」

勇者「そうですか」

僧侶「さあ、いっぱい食べて魔力を回復させないと」

魔法使い「大変ね」

勇者「……」

―――森

勇者「段差になっているので足下に注意してください」

僧侶「は、はい」

勇者「よし」

魔法使い「……」

ガサガサガサ……

勇者「ん?」

僧侶「え……ま、まさか……」

魔物「オォォォォォォ!!!!!!」

勇者「今度のはでかいな」

僧侶「ひぃぃ!?」

魔法使い「剣を構えて!!周りにも魔物がいるわ!!」

僧侶「そ、そんな?!」

勇者「森の主といったところか」

魔物「オォォォォ……!!」

勇者「いいだろう!!掛かってくるがいい!!」

魔物「オォォォォ!!!!」バキィ

勇者「がはぁ?!」

魔法使い「馬鹿!!」

僧侶「勇者様!!」

勇者「くっ……なんてパワーだ……」

魔物「オォォォ」

勇者「でぁ!!!」ザンッ

魔物「オォォォ!!!!」ブゥン

ドゴォ!!

勇者「ずっ!?」

僧侶「あぁ?!」

魔法使い「強い……」

魔物「オォォォ!!!!」

勇者「ちっ……」

僧侶「勇者様……!!」

勇者「こうなったら……」

魔法使い「どうするの?!」

勇者「耳を貸してください」

魔法使い「え?」

勇者「―――できますよね?」

魔法使い「いや……やったことないけど……」

勇者「お願いします」

魔法使い「でも……」

勇者「貴女ならできる」

魔法使い「……わかったわ」タタタッ

僧侶「わ、私は何をしたら……」オロオロ

勇者「そうですね。結構、至る所に傷を負ってしまったので、全身を癒してくれますか?」

僧侶「えっと……ど、どうやって……?」

勇者「無論、全身を癒すためには全身を使って頂かないと」

僧侶「そ、それって……抱きつくってことですか!?」

勇者「さあ!!早く!!生死を分ける瞬間なのですから!!」

僧侶「そ、そうですね……ここで躊躇していては……!!」

僧侶「勇者様!!今、癒します!!」ムギュゥ

勇者「よっしゃぁ!!!」

僧侶「も、もういいですか?」

勇者「もっと!!もっと強く!!」

僧侶「は、はい!!」ギュゥゥゥ

勇者「ぬほほぉ」

魔物「オォォォォォ!!!!!!」

僧侶「きゃぁ!?勇者様ぁ!!!」

勇者「まだまだぁ!!」

僧侶「えぇ!?」

メキメキメキ……

僧侶「え?何の音……?」

魔物「オォォォ!!!!」

メキメキメキ……!!

魔法使い「よけて!!!」

勇者「とう!!」バッ

僧侶「きゃぁ?!」

魔物「……!?」

メキメキメキ……バキィ!!

魔法使い「喰らいなさい。大木ハンマァ」

ゴォォォン!!

魔物「オォ……ォォォ……ォ……」ズゥゥゥン

僧侶「魔物が大木の下敷きに……」

勇者「ふー。流石です。―――周りを取り囲んでいた魔物も主を失って逃げ出したみたいですね。よかった」

魔法使い「なんで私が木に抱きつかなきゃいけないのよ……」

勇者「火力を自由にコントロールできる貴女なら火事にならないように木を折ることだって出来る」

勇者「パンを上手く焼けるぐらい精密な火加減を可能にできる貴女なら、そう難しいことでもなかったでしょう?」

魔法使い「……まぁね」

勇者「さて、進みましょう。もうすぐ森を抜けられるはずです」

僧侶「は、はい!!」

勇者「魔力は?」

僧侶「余力はあります!魔法は一切使ってませんし」

勇者「なるほど。垂れ流しているだけだから、消費量はいつもと変わらないわけですね」

僧侶「は、はい……すごく燃費はダメダメですけど」

勇者「いやいや、便利ですよ」

僧侶「そ、そうですか……?」

勇者「ええ。だって一定量の魔力で全快になるんですから」

僧侶「そ、そういってくださると……嬉しいです……」モジモジ

勇者「ハッハッハッハ」

魔法使い「ちょっと……私もがんばったんだけど」

勇者「大木ハンマー。また、使いましょうね」

魔法使い「い、いやよ!!」

―――城下町

勇者「はぁ……もう夜になってしまいましたね」

魔法使い「森から結構な距離があったわよ……嘘つき」

勇者「地図って難しいですね。ほらほら」

僧侶「本当ですね。地図上ではたった数センチなのに……」

魔法使い「馬鹿……。もういいわ。早く休みましょう」

勇者「では、僕は魔物から得た戦利品を売って来ます」

僧侶「わかりました」

魔法使い「じゃあ、私たちは宿をとっておくわね」

勇者「お願いします」

僧侶「勇者様、後ほど」

勇者「はっ」

魔法使い「……」

僧侶「どうしたんですか?」

魔法使い「別に。いきましょう」

―――宿屋

店主「では、二部屋ということで」

僧侶「はい。ありがとうございます」

魔法使い「早く横になりたいわね」

僧侶「そうですね」

店主「ちょっといいですか」

僧侶「は、はい?」

店主「こちらを持っていってください」

魔法使い「なぁに、これ?」

店主「今、冒険者の方たちにお配りしているんです。ここより北へは行かないようにと」

僧侶「北……ですか?」

店主「魔王の軍勢が侵攻してきているようで」

魔法使い「もうこんなところまで……。止められないの?」

店主「ええ。各国から選出された勇者様も悉く命を落としている現状では……。この国の兵力も長年の戦で疲弊してますし」

僧侶「そうですか……」

―――寝室

魔法使い「どの国の勇者もダメだったのね」

僧侶「そういえば最近、勇者様のお話って耳にしませんでしたね」

魔法使い「このままじゃ世界は……」

僧侶「……」

ガチャ

勇者「ただいま戻りました」

魔法使い「ノックぐらいしないさいよ!!」

勇者「どうして着替え中じゃないんですか!!!」

魔法使い「なんで怒ってるわけぇ!?」

勇者「ガード固いな!!全く!!!」

魔法使い「アンタ、本当に勇者なの!?」

僧侶「まぁ、まぁ」

魔法使い「あんたも怒りなさいよ!!馬鹿っ!!」

勇者「これからは常に着替え中でいてくださいよ、ホントに」

魔法使い「意味わかんないこといってんじゃないわよ!!」

勇者「それはさておき、これを」スッ

魔法使い「え?私に?」

勇者「はい。路銀も増えたので新しい武器を購入してきました」

魔法使い「なによ……」ガサゴソ

僧侶「あの……勇者様?私には……?」

勇者「申し訳ありません。一つしか買えなくて」

僧侶「あ、い、いえ!!ごめんなさい!!」

魔法使い「……鞭?」

勇者「はい。似合いますよ」

魔法使い「そう?」パシンッ

勇者「最高です」

魔法使い「でも、どうして鞭なの?」

勇者「なんか……そそるじゃないですか」

魔法使い「目がいやらしいわよ?」

魔法使い「……まあ、いいけど」パシンッ

勇者「お二人は何を?」

僧侶「あ、実はこれを」スッ

勇者「これは……なるほど……」

僧侶「どうしますか?北は危ないとのことですし、ここは……」

勇者「北に行きましょう」

魔法使い「え!?」

僧侶「勇者様!?でも、危ないって……!!」

勇者「危なくなれば逃げればいいだけです」

魔法使い「アンタねえ!!正気なの!?」

勇者「どうしてですか?僕は勇者。いつかは魔王と戦う身。ならば、魔王の軍勢とも戦うべきかと」

魔法使い「私たちを連れて?」

勇者「勿論です」

僧侶「勇者様……」

魔法使い「無理よ……。死ぬわ。絶対」

勇者「死にませんよ。僕がいるのですから」

僧侶「でも……!!」

勇者「なんですか?」

僧侶「森のときみたいに、上手くいくとは限りません」

魔法使い「そうよ。いい?私のこの子も、広範囲に魔法は使えない。集団で襲われたら終わりよ?」

勇者「ええ。そうでしょうね」

魔法使い「なら、魔王の軍勢に立ち向かうなんて無謀だわ。勇気と無茶を履き違えないで」

勇者「物量で勝てるのは恐らく、大国の軍隊だけですよ?」

僧侶「え……」

勇者「魔王の軍勢と張り合うだけの兵力なんてどこにもありませんよ」

魔法使い「そうよ。だから、戦うなんて馬鹿でしょ」

勇者「ええ。でも、僕は馬鹿ですから」

僧侶「ゆ、勇者さま?!」

魔法使い「なっ……!?」

勇者「魔王を倒すのであれば、その軍勢ぐらい圧倒できなくてどうするんだ!!って考えに至るんですよね。馬鹿だから」

魔法使い「ちょっと……死ぬ気なの?」

僧侶「勇者様、危険すぎます!!」

勇者「僕は死ぬ気なんて更々ありません。僕の夢は魔王を討伐し、国から莫大な報奨金を得て、豪遊しながら老衰死することなんで!!」

魔法使い「だから!!その下らない煩悩だらけの夢が夢のままで終わるって言ってるでしょ?!」

勇者「綺麗なお嫁さんをもらって、尚且つ、10人の側室を得るまでは死にません!!」

魔法使い「軍勢に突っ込んでいってどうやって生き延びるっていうのよ!!馬鹿っ!!アホっ!!」

僧侶「そ、それは言いすぎですよ……」オロオロ

勇者「アホ?!アホとはなんだ!!!失礼な!!!」

魔法使い「怒るポイントがよくわかんないのよ!!!」

勇者「とにかく。明日は北に向かいます!!」

魔法使い「私は嫌!!断固拒否!!」

勇者「分かりました」

魔法使い「え……?」

勇者「では、ここで僕の帰りを待っていてくれますか?」

僧侶「な、何を言っているんですか……?」

勇者「だってほら、未来の側室候補が死んでしまっては本末転倒ですし」

魔法使い「だれが側室よ!!だれが!!」

勇者「貴女たちに決まってるだろうが!!」

僧侶「側室……」

魔法使い「せめて嫁候補っていいなさいよ!!」

勇者「まだお互いを知っていないのに、嫁ですが?え?いいんですか?やったー」

魔法使い「一人で盛り上がらないで!!!誰がアンタの嫁になるか!!」

勇者「まあ、ともかく。お二人ともここに居てください。僕が軍勢をなぎ倒して、歩きやすくしてきますから」

僧侶「そんな……!!勇者様、駄目です!!やめてください!!」

勇者「僕は勇者ですから。大丈夫です」

魔法使い「その自信はどこから来るわけ……」

勇者「知りたいのであれば、今夜僕と一緒にベッドで……寝ます?」

魔法使い「去れ!!」

勇者「おっと。失言でしたね。今夜は諦めましょう。それでは、おやすみなさい」

僧侶「勇者様!!まだお話は―――!!」

魔法使い「何よ……あいつ……訳わかんないわ……」

僧侶「本気なのでしょうか……」

魔法使い「本気だったら……どうするの?」

僧侶「……」

魔法使い「……私は同行しないから」

僧侶「え?」

魔法使い「もし本気で行くなら……私は足手まといでしかない……」

僧侶「そうですね……私も……すぐ魔力が空っぽになっちゃいますし……」

魔法使い「私だって、魔法の効果範囲が零距離だし……」

僧侶「私たち……」

魔法使い「……ホント、ダメね」

僧侶「はぁ……」

魔法使い「……もう寝ましょう?」

僧侶「はい」

魔法使い「アイツもきっと……冗談だろうし……」

―――深夜

僧侶「ん……」ムクッ

魔法使い「すぅ……すぅ……」

僧侶(お手洗い……)モジモジ

僧侶「……」ガチャ

僧侶(確か……この廊下の突き当たりでしたね……)スタスタ

勇者「……」

僧侶「あ……」

勇者「ん?」

僧侶「勇者様……どうしたのですか?」

勇者「いや。催してしまって」

僧侶「そうですか」

勇者「貴女も?」

僧侶「ど、どうしてそんなこときくんですかぁ!!!」

勇者「おっとっと。深夜だからと許されるものではありませんでしたか。反省します」

僧侶「何をされていたんですか?」

勇者「僕の部屋からだと月が見えなくて。今日は綺麗な満月ですよ」

僧侶「そうですね」

勇者「実に美しい」

僧侶「……」

勇者「なにか?」

僧侶「もしかして……今から出発を?」

勇者「……多勢と戦う場合、奇襲は常套的な戦術です」

僧侶「勇者様……」

勇者「では。行ってきます」

僧侶「……」

勇者「……」スタスタ

僧侶「―――待ってください!!」

勇者「なんですか?まさか……粗相をご披露してくれると?なんてこった……」

僧侶「ち、ちがいます!!―――行かないでください!!って言おうとしたんです!!」

勇者「何故ですか?」

僧侶「も、もし……勇者様が帰ってこなかったら……私たちはどうしたらいいんですか?!」

勇者「それはありえませんが……。まあ、そうなったら諦めて元の傭兵所に戻って頂くしか……」

僧侶「む、無責任ですっ!!」

勇者「え?」

僧侶「余り物の私たちを拾っておいて、勝手なこと言わないでくださいっ!!」

勇者「……」

僧侶「さ、最後まで面倒見てください……。それに……私たちの夢も叶えてくれるって言ったじゃないですか……」

勇者「あぁ……そうでしたね」

僧侶「それとも……私たちの夢を……約束を反故にするのですか?」

勇者「何を馬鹿な。守りますよ。勿論」

僧侶「なら……行かないでください……」

勇者「僕は死にません」

僧侶「まだ、出会って日が浅いのに信じられません!!勇者様のお言葉には根拠もありません!!」

勇者「え?勇者ってことが証明にならないんですか?びっくり」

僧侶「各国の勇者様だって何名も命を落としていますから」

勇者「なるほど。他の勇者が僕の信頼度を落としたわけですね。ゆ、ゆるせん!!」

僧侶「ですから……」

勇者「……でも、行かないと」

僧侶「どうしてですか!!」

勇者「だって、このまま魔王の軍勢を放っておいたら、僕の帰ってくるところが無くなりますからね」

僧侶「あ……」

勇者「故郷で超絶美人のお嫁さんと10人の側近をはべらせて老衰死するという目的が達成できないので」

僧侶「……」

勇者「だから、止めないと」

僧侶「……分かりました」

勇者「ご理解いただけましたか」

僧侶「わ、私も行きます!!」

勇者「え?」

僧侶「あ、足手まといかもしれませんが……それでも勇者様を癒すことは……できますから……」

勇者「いや、こう体を反らしてくれるだけで目は癒されますけどねぇ」

僧侶「勇者様!!私は真剣なんです!!」

勇者「付いて来てくれるのは嬉しいですが……いいのですか?」

僧侶「わ、私は勇者様のお供ですから!!」

勇者「ふっ……。40秒で支度しなっ!!」

僧侶「え!?あ、いや!!あの!!お手洗いにも行きたいので……!!」モジモジ

勇者「じゃあ……400秒まで待ちましょう!!」

僧侶「あ、ありがとうございます!」タタタッ

勇者「……」

僧侶「あの!!勝手に出発しないでくださいね!!」

勇者「しませんよ。ここで貴女が奏でる水の音に耳を傾けてますから」

僧侶「や、やめてください!!!」

勇者「さあ、あと375秒ですよ!!」

僧侶「あああ!!!」タタタッ

勇者「……」

―――寝室

僧侶「起きてください!!」ユサユサ

魔法使い「ん……?なに?まだ夜じゃないの」

僧侶「あと250秒しかありません!!」

魔法使い「え?なんの話?」

僧侶「今から魔王の軍勢と戦いに行くんです!!」

魔法使い「はぁ!?なんで?!どうしてよ!?」

僧侶「ダメ……ですか?」

魔法使い「いや……なんでそうなったか説明してくれないと……」

僧侶「勇者様は本気でした。故郷を守るために……戦おうとしているんです」

魔法使い「故郷を……?」

僧侶「はい」

魔法使い「……私でも役に立てると思う?」

僧侶「勇者様は出来れば私たちにも力を貸して欲しいって言っています」

魔法使い「そう……そうなの……」

―――宿屋 入り口

魔法使い「……おはよ」

僧侶「お待たせしました」

勇者「ありがとうございます」

魔法使い「……ちゃんと守ってくれるの?」

勇者「もちろん。傷一つつけないようにしますよ。それが勇者の役目です」

魔法使い「ふん……。早死にするわね」

勇者「いえ。90歳までは生きます。魂だけでも現世に噛り付く勢いで」

魔法使い「そこまで行ったら潔くくたばりなさいよ!!」

勇者「生きるっ!!!」

魔法使い「もういいわ……。出発前から疲れる……」

僧侶「そ、それより……勇者様?奇襲をかけるといっても……夜ですし、魔物のほうが有利じゃないでしょうか?」

勇者「夜行性の魔物も配備されているみたいですが、地図を見る限り、山の裏側に回り込めば十分に奇襲はかけることはできます」

魔法使い(こいつ……いつからそんな下調べを……?)

勇者「では!出発!!」

―――北の山

魔物「……」キョロキョロ

魔物「……」ウロウロ


魔法使い「……すごい数……」

僧侶「こわい……」ブルブル

勇者「この軍勢を束ねているのは魔王の側近の一人であるトロルみたいですね」

魔法使い「そうなの?」

勇者「はい」

魔法使い「どうしてそのことを知ってるわけ?」

勇者「人の話を繋げて得た情報です。まあ、100%の保障はないですけど」

魔法使い「……」

僧侶「でも、魔王の側近となると……森の主よりも強いってことですよね?」

勇者「でしょうね。まあ、でもこっちは三人もいますし、作戦通りにいけば余裕でしょう」

魔法使い「その自信はどこから……」

勇者「では、作戦開始で」

―――山道

魔物「グルル……」ピクッ

魔物「グルル……?」

勇者「ふっ!!」ザンッ

魔物「ガッ!?」

勇者「よし、行きましょう」

僧侶「は、はい!!」

魔法使い「はぁ……はぁ……」

勇者「少し休憩しますか?」

魔法使い「大丈夫。先に進みましょう……」

勇者「裏側の道なので荒れていますし、無理をすることは……」

僧侶「でも、時間をかければ魔物たちが異変に気づいてしまいますし」

勇者「そうですね。行きましょう」

僧侶(できるだけ魔力を残しておかないと……!)

魔法使い(本当にこんなことで勝てるの……?)

―――山頂

勇者「―――ここですね」

トロル「待っていたぜ?」

勇者「!?」

魔法使い「え……!?」

僧侶「そ、そんな……」

魔物「グルルル……!!」

魔物「ギギギ……!!!」

勇者「待ち伏せされていたとは」

トロル「馬鹿が!!人間の臭いは熟睡してても飛び起きるぐらいにおうんだよぉ!!」

勇者「なるほど」

トロル「やれぇ!!」

魔物「「ガァァァァ!!!」」ダダダッ

勇者「退却!!!」ダダダッ

トロル「追え!!逃がすな!!!」

トロル「グフフフ……!!たった三匹で勝てるものか……!!!」

トロル「さぁて……もう死んでるころかな……。様子でも見てくるか」ズンズン

トロル「……おい!!人間はどうなったぁ!!!」

トロル「……」

トロル「おーい!!!誰かこたえろぉ!!!」

「―――まさか一斉に嗾けてくれるとは、ありがとうございます」

トロル「ん!?」

勇者「……」

トロル「貴様……!?」

勇者「とりあえず、増援が来る前に終わらせるか」

トロル「俺様の部下は……!?」

勇者「埋めてやった」

トロル「はぁ!?」

勇者「さあ、三対一だ!!覚悟しろよ!!」

トロル「何をした!!貴様ぁ!!!」

―――山道

僧侶「さあ、早く勇者様を追いましょう!!」

魔法使い「ええ!」

僧侶「でも、まさかこんなにも上手く行くなんて」

魔法使い「落とし穴なんて古典的な罠だったのに……」


勇者『いいですか?今から落とし穴を作ります』

魔法使い『落とし穴?今から?!』

僧侶『そんなことできませんよ!!道具もないですし!!』

勇者『道具は鞭だけで十分です』

魔法使い『これ?』

勇者『今から貴女に巨大な穴を掘っていただきます。魔物を一網打尽にするために』

魔法使い『ど、どうやって?!』

勇者『全身ファイヤーで地面を溶かせてください』

魔法使い『馬鹿か!?そんなことできるわけ……!!!』

勇者『出来なければ他の方法を考えますけど、土を融解させるぐらい訳ないでしょう?』

魔法使い『できなくても文句言わないでよ……』

僧侶『が、がんばってください!!』

魔法使い『うおぉぉ……!!!』ジジジジ

勇者『おぉ……すごいすごい。溶けてる溶けてる』

魔法使い『んぐぐ……!!!』ジジジジ

僧侶『人間マグマ……』

魔法使い『で、これどうやって外に出るわけ!?』

勇者『鞭を使います。ひっぱり上げますから』

魔法使い『護身用じゃなかったのね……』

勇者『兼用ですよ』

魔法使い『あー!!もう!!魔力がぁ!!!たりないわよぉ!!!!』ジジジジッ

勇者『チョコ要ります?』


魔法使い「―――魔力が枯渇したわ……全く……」

僧侶「私の魔力も時間的に余裕はありませんし……急がないと……」

魔法使い「アイツ……私がついてこなかったらどうするつもりだったのかしら……」

―――山頂付近

トロル「おぉぉぉ!!!」ガキィン

勇者「ずっ……!?」

トロル「はんっ!!部下を排除したところで人間一匹に後れを取るわけないけどなぁ!!!」

勇者「ふっ!!」ザンッ

トロル「きくかぁ!!」ドゴォ

勇者「がっ!?」

僧侶「―――勇者様!!」

勇者「あ。首尾は?」

魔法使い「大丈夫。すぐにはあがってこれないから」

僧侶「壁が恐ろしいほど湾曲するようしてますからね……」

勇者「よし……。さあ、トロル。今のうちに降伏するんだ」

トロル「誰がするかぁ!!」

勇者「回復を!!」

僧侶「は、はい!!」ギュゥゥ

勇者「ぬほほぉ」

魔法使い「なんで抱きつくわけ!?」

僧侶「え?」

トロル「余裕だなぁ!!きさまらぁ!!!」

僧侶「きゃぁ!!!」

ギィィン!!!

トロル「ぐぅ!?」

勇者「らぁ!!!」ザンッ

トロル「ぬぅ?!」

魔法使い「私だって……!!」バッ

トロル「なに!?」

魔法使い「はぁぁぁ!!」ゴォォォ

トロル(な……!?発動前からこの熱気……!?なんて魔力だ!!)

魔法使い「でぁぁぁ!!!」

トロル「しまっ―――」

トロル「……あれ?」

魔法使い「……」

勇者「隙ありぃ!!!」

トロル「魔法はどうなったんだぁ!?」

勇者「彼女は火の玉一つ飛ばせないんだよ!!!」

トロル「えー!?」

勇者「今の熱気が全力の火炎放射だ、バカ野郎!!」

トロル「そんなポンコツ術士がいるのか!?」

勇者「僕にとっては有能な魔法使いだ!!」

魔法使い「……!!」

トロル「小癪ぅ!!!」

勇者「はぁぁぁぁ!!!!」

ザンッ!!!

トロル「くそ……こ、こんなやつらに……ぐぁ……ぁ……」

勇者「ふぅー……よし。作戦完了」

僧侶「す、すごい!!勝ちました!!勝ちましたよぉ!!!」

魔法使い「え……ええ。そうね……」

勇者「さあ、早く退散しましょう。雑魚が群がってきては流石に困るので」

僧侶「あ、そ、そうですね!!」

魔法使い「でも、いいの?軍勢はそのままってことになるけど」

勇者「指揮系統が乱れた軍団など小国の兵力でも十分に勝てます」

僧侶「じゃあ、町に帰って王様に報告をするのですね?」

勇者「はい。三人でできるのはこれが限界ですから」

魔法使い「……」

勇者「なにか?」

魔法使い「いえ。そういうことなら早く行きましょう」

勇者「はっ」

僧侶「勇者様、お体は大丈夫ですか?」

勇者「そうですね。若干、痛いので手を握ってください」ギュッ

僧侶「あ……そ、そんな急に握ってこないでください……」

―――城下町 宿屋 入り口

僧侶「夜が明けましたね……」

魔法使い「疲れた……これは……だめ……ね……」

勇者「では、僕は王に謁見してきます」

僧侶「少し休まれてからでも」

勇者「このタイミングで軍に動いてもらわないと。新しい指揮官が到着したら苦労が水の泡ですから」

僧侶「そ、そうですか」

勇者「では」

僧侶「……」

魔法使い「さ、お言葉に甘えて私たちは休みましょう。流石にきつい……」

僧侶「そ、そうですね。私も魔力が完全になくなりましたし……」

魔法使い「まさかこの私に全力を出させる奴がいるなんて思わなかったわ……」

僧侶「あはは」

魔法使い「もうだめ……倒れる……」

僧侶「が、がんばってください……もうすぐですから……」

―――寝室

魔法使い「つかれたー!!」ドサッ

僧侶「はい……」

魔法使い「にしても……よく私に穴を掘らせる……正確には溶かしたわけだけど、あんな方法を思いついたわね」

僧侶「普通の魔法使いだと継続して高温の魔法を放ち続けるのは至難の業ですからね」

魔法使い「零距離で効果が切れる私のダメダメ体質を逆手に取ったのよね……アイツ……」

僧侶「旅立ってすぐ魔物に襲われたとき、魔物を抱きしめたじゃないですか」

魔法使い「まさか、あのときに思いついてたの……?」

僧侶「結構豪快に魔物を炎上させてましたからね。土を融解させるほどの温度を出せるかどうかは分かってなかったと思いますけど」

魔法使い「……」

僧侶「これでこの地域も平和になってくれるといいんですけど」

魔法使い「ホントね」

僧侶「……ところで、お腹すいてませんか?」

魔法使い「ペコペコ」

僧侶「勇者様が戻られたら、何か食べましょうね」

魔法使い「―――ふわぁぁ……遅いわね……」

僧侶「王様への謁見ですから時間はかかると思いますよ?」

魔法使い「そうはいっても。もうかれこれ三時間……」

トントン

僧侶「あ、勇者様!?」

魔法使い「ノックすること覚えたの?」

ガチャ

僧侶「え……」

兵士「勇者様のお連れのかたですね?」

僧侶「は、はい……」

魔法使い「なに?」

兵士「とても勇敢なお人です。我々は出来うる限りの恩を―――」

僧侶「あの……勇者様は?」

兵士「それが……王への謁見中に倒れてしまって……教会のほうに運ばれました」

魔法使い「え?!ど、どうして!?」

―――教会

僧侶「失礼します!!!」

神父「静かにお願いします」

僧侶「あ、す、すいません……」

魔法使い「あの……」

神父「今、眠ったところです」

勇者「……」

僧侶「えっと……容態は?」

神父「熱が出ただけです。しばらく安静にしていれば大丈夫でしょう」

僧侶「よかったぁ……」

魔法使い「風邪ですか?」

神父「心身の疲労からでしょうね……」

僧侶「疲労って……」

魔法使い(そういえば……こいつ、昨日から殆ど寝ずに動いてたんじゃ……)

勇者「……」

僧侶「勇者様……」

神父「では、私はこれで。何かあれば言って下さい」

僧侶「ありがとうございます。何から何まで」

神父「いえいえ。王から話を聞きました。貴方たちはこの国の英雄だと」

魔法使い「英雄って……」

神父「あの軍勢の首領を倒したのでしょう?紛れも無く英雄です」

僧侶「そ、そんなこと……」

神父「それでは」

魔法使い「英雄……」

僧侶「全部、勇者様ががんばったから……ですよね」

魔法使い「いつの間にか道具を買い揃えてたり、情報収集もしてたり……」

僧侶「わ、私たち何もしてませんね……」

魔法使い「そうね」

僧侶「わ、わたし!何か食べ物を用意します!!勇者様が起きた時のために!!買出しに行ってきます!!」

魔法使い「あ、うん。よろしくぅ」

魔法使い「……」

勇者「……」

魔法使い「……」ピトッ

魔法使い「酷い熱……」

魔法使い「ふっ……」パァァ

勇者「ん……?」

魔法使い「あ、気がついた?」

勇者「きもちいい……貴女の手……冷たい……」

魔法使い「氷の魔法よ」

勇者「……体温が低い人は……心が温かいらしいですね……」

魔法使い「いや、だからこれは魔法だから」

勇者「……」

魔法使い「寝たの?」

勇者「……」

魔法使い「……お疲れ様。今はゆっくり休んでて……」

―――魔王城

魔物「―――報告は以上です」

魔王「……なるほど。下がってよい」

ドラゴン「まさか、トロルがやられるとは……」

魔王「どうやらあの国には中々骨のあるやつがいるようだな」

ドラゴン「どうされますか?私が攻め落としに……」

魔王「いや。想像以上の敵かもしれん……慎重になったほうがいいだろう」

ドラゴン「そうですか」

魔王「そやつの情報を集めることが肝心だ。我の脅威となるやもしれん」

ドラゴン「人間がですか?まさか……」

魔王「油断はできん」

ドラゴン「慎重になりすぎるのは如何なものかと」

魔王「世界を手に入れるためだ。小さな石でも排斥しておくことに越した事はない」

魔王「トロルを打ち倒した者を探せ」

ドラゴン「御意」

―――教会

魔法使い「はぁ……ぁ……」

勇者「……」

魔法使い「もう……ちょっと……だけ……」パァァ

勇者「……」

魔法使い「ふっ……」

勇者「……」スリスリ

魔法使い「ひゃぁ!?」

勇者「……」

魔法使い「……」

勇者「……」スリスリ

魔法使い「どこ触ってるのよ……」

勇者「内腿は冷たくないんですね」

魔法使い「凍れ!!!」ゴォォ

勇者「ぎゃぁ!?」

勇者「ぶぁっくしょん!!!」

僧侶「勇者様、だ、大丈夫ですか?」オロオロ

勇者「さむい……」ブルブル

僧侶「リゾットを作りました。どーぞ」

勇者「あああ……指先が……震えて……もてません……」カタカタカタ

勇者「も、申し訳ありません……た、たべさせてください……」ブルブル

僧侶「わ、わかりました!!―――どうぞ、あーん……」

勇者「うぅ……ふーふー……してください……」

僧侶「は、はい!―――ふー、ふー。はい、あーん」

勇者「テルアイシって繰り返し言いながら食べさせてください」

僧侶「てるあいし?」

勇者「お願いします。それでこの病も和らぐのです」

僧侶「えっと……テルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテル……」

勇者「ぬほほぉ」

魔法使い「馬鹿だ……」

僧侶「そもそも貴女が悪いんじゃないですか!」

勇者「もっと言っておあげ」

魔法使い「セクハラしたのはどっちよ!!折角、感謝の気持ちを込めて魔力を振り絞ったっていうのにぃ!!」

僧侶「やめてください、勇者様は病人なのですよ?!」

勇者「うんうん」

魔法使い「ぐっ……!!」

僧侶「こういうことは今後、無いようにお願いしますね」

魔法使い「私が悪いの……」

勇者「そうだ。町の様子はどうでした?」

僧侶「軍が動き出して残党狩りへ向かったようです」

勇者「そうですか……。これで一安心ですね」

僧侶「全て勇者様のおかげです!」

勇者「いえいえ。僕の力なんて微々たるものですよ」

僧侶「またまた、ご謙遜を」

魔法使い「なにか狙いでもあるんじゃないかしら?」

僧侶「狙いなんて……ないですよね?」

勇者「ここの姫様……まだ13歳なのですけど、中々別嬪なんですよね」

僧侶「え?」

勇者「ふふ……一国の姫君を側室にできるとか……役得ですよ。ホント」

僧侶「……」

魔法使い「ほらね」

僧侶「あ、あの!!勇者様!!」

勇者「はい」

僧侶「それは自分からくださいって言ったのですか!?」

勇者「いえいえ。王様のほうから「娘を是非」って」

魔法使い「ここの王様は見る目がないのね」

僧侶「それならセーフですね」

勇者「はい、もう純白です」

魔法使い「どの口がいうのよ……」

勇者「流石の僕でも手を出してはいけないラインは把握しているつもりになってます」

僧侶「はい、勇者様。あーん」

勇者「あーん……」

魔法使い「それより、これからどうするの?」

勇者「そうですね。僕の体調が万全になるまで少し待っていただけますか?」

僧侶「そ、それはもちろんです!!」

勇者「面目ありません」

僧侶「いえ、そんな……」

魔法使い「まあ、アンタがいないと……こっちも動けないわよね……」

勇者「明後日にはきちんと旅立てるようにしますので」

僧侶「あまりご無理は……」

勇者「いえいえ。はやく魔王を倒して、悠々自適な隠居生活をしたいので」

僧侶「そうですか」

勇者「そうなんですよ」スリスリ

僧侶「あの……足をそんなに触らないでください……」

魔法使い「はぁ……かっこよく見えたのは錯覚だったわね……」

僧侶「では、勇者様。ゆっくり休んでくださいね」

勇者「え?」

魔法使い「私たちは宿に戻るわ」

勇者「添い寝は!?ねえ?!」

僧侶「えぇ……?」

魔法使い「す、するわけないでしょう!!何言ってるのよ!!馬鹿っ!!」

勇者「そんな……こんなにがんばった僕に……ご褒美もないなんて……うぅ……」

僧侶「あ、あの……わ、私でよけれ―――」

魔法使い「ダメよ。こいつ、ただ同情を引こうとしてるだけなんだから」

勇者「同情!?僕が!?何をいっているんですかねぇ!?」

魔法使い「帰るわよ」

僧侶「あ……あの……ゆ、勇者様、ごめんなさい……」

勇者「外道がぁ!!ガード固すぎなんだよぉ!!」

魔法使い「散々痴漢を働いておいてなにいってんのよ!!」

僧侶「あ、あの……その辺で……」

―――宿屋

魔法使い「全く……あいつは……。人の気も知らないで……」

僧侶「添い寝と言っても、きっと傍に居てほしかっただけじゃないですか?」

魔法使い「そんなわけないでしょ。襲う気満々だったじゃない」

僧侶「そうですか?きちんと嫌だといえば……」

魔法使い「そういう問題じゃないの」

僧侶「勇者様はああいう態度を取っていますが、すごくお優しい方だと思います」

魔法使い「ふん……」

僧侶「あの」

魔法使い「なに?」

僧侶「明日、私たちで色々情報を集めませんか?」

魔法使い「え?」

僧侶「今度は私たちが勇者様のお役に立たないといけないって思うんです」

魔法使い「……そうね。なら、朝から動くわよ」

僧侶「はいっ」

―――翌朝 広場

僧侶「さあ、情報収集をしましょう」

魔法使い「それはいいけど……なんの情報を集める?」

僧侶「え?―――色々です!」

魔法使い「だから、色々っていっても……」

僧侶「魔王討伐に役立つ情報とか」

魔法使い「アバウトね」

僧侶「とにかく魔王に関することでいいじゃないですか」

魔法使い「まあ、それしかないわね」

僧侶「でも、どこに行けば……」

魔法使い「お城に行ってみない?」

僧侶「お城ですか?」

魔法使い「王様に魔王の軍勢の残党がどうなったのかも訊きたいし、何か今後の指針になるかもしれないわ」

僧侶「なるほど」

魔法使い「行きましょ」

―――城内 謁見の間

王「これはこれは勇者一行の!!」

魔法使い「突然の謁見にも関わらず、ありがとうございます」

僧侶「……ます」

王「気にする必要などない。そなたらは我が国の英雄だ」

魔法使い「勿体無いお言葉です」

姫「あの……」

僧侶「は、はい」

姫「勇者様のお体は?」

魔法使い「ご心配には及びません。もう大丈夫です」

姫「よかった……」

王「はっはっはっは。もう勇者殿の花嫁気取りか」

姫「お、お父様!!」

魔法使い「あの……本当に姫様を……?」

王「ん?話を聞いたのか?……そう。何を隠そう、我が娘を勇者殿の嫁にしようと決めたのだ」

僧侶「……」

魔法使い「……」

姫「お父様!!まだ私はけ、結婚など……」

王「何をいうか。あと3年もすればお前も身を固めなければならん。勇者殿では不服か?」

姫「そんなことはありませんが。勇者さまの御意思も尊重せねば……」

王「勇者殿はノリノリだったぞ?」

姫「うぅ……」

魔法使い「あの……」

王「ああ、すまない。して、話とは?」

僧侶「あの……魔王の軍勢はどうなりましたか?」

王「おお。そのことか。うむ、残っていた魔物はそれほど脅威ではなかった。軍が到着したときには大半が逃げ出していたようだ」

魔法使い「そうですか」

王「まあ、あの首領をそなたらが討ってくれたこと。それが一番大きいがな」

僧侶「何か特別なことはありませんでしたか?魔物たちが何かを言い残したとか、どこへ向かうとか……」

王「いや。特段、報告するようなことはなにもない。それに勇者殿にも全てを話したしな」

魔法使い(不発か……)

姫「あの……」

魔法使い「はい?」

姫「勇者様にお伝え願いますか?」

魔法使い「何をでしょうか?」

姫「……またお会いしたい、と」

僧侶「……」

姫「ああ……恥ずかしい……」

王「はっはっはっは!!色気を出しおって!!」

魔法使い「あの、姫様。お言葉ですが、あの勇者は少し……いえ、かなり性格に問題があるのでやめたほうがいいですよ」

姫「え?」

僧侶「えぇ?!ど、どうしてそんなこと……!!」

魔法使い「とにかくスケベですし」

姫「殿方ならそれぐらい……」

魔法使い「度を越えているんです」

王「度を越えているスケベなのか?」

魔法使い「はい」

僧侶「な、なんてことを言うのですか!?」

魔法使い「でも、こういうことはちゃんと伝えておかないと」

王「むぅぅ……」

兵士「失礼いたします!」

王「どうした?」

兵士「勇者殿がお見えになりました」

姫「え?!」

魔法使い「アイツが……?」

僧侶「どうして……」

王「よし。通せ」

兵士「はっ!!」

王「合流する予定だったのか」

魔法使い「そういうわけでは……」

勇者「失礼いたします」

姫「勇者さま!!」

勇者「ご機嫌麗しゅう、姫様。今日も変わらず美しいですね」

姫「そ、そんなぁ」

勇者「これを」スッ

姫「え……」

勇者「姫様に似合う花束をご用意しました」

姫「勇者さま……」

勇者「受けとっていただけますか?」

姫「もちろんです……」

勇者「ふふふ」

魔法使い「ちょっと」

勇者「え?おお。お二人とも。どうしたのですか?」

僧侶「勇者様こそ、お体は?」

勇者「いやぁ。もう大丈夫です。今日は姫様に昨日渡せなかった花束を渡しておきたくて」

姫「すごく心配していました」

勇者「これは光栄の極みですね」

魔法使い「……」

僧侶「あ、あの、勇者様。どうしてここへ……?姫様にそれを渡したかっただけですか?」

勇者「はい」

魔法使い「言い切った……」

僧侶「……」

勇者「お二人こそどうしてここへ?」

魔法使い「行きましょう。もうここには用はないわ」

僧侶「え……でも……」

魔法使い「アンタも来る?」

勇者「折角のお誘いですが僕はもう少し姫様と談笑し、絆を深めたいと思います」

姫「そ、そんな……私なんかと……」

魔法使い「……勝手にしたらいいわ」

僧侶「あ、まってください!!―――勇者様、それでは後ほどっ」

姫「勇者さま、よかったのですか?」

勇者「彼女たちとはこれからも長い付き合いになりますからね。今は姫様との時間を大事にしたいのですよ。ふっふふー」

姫「もう……勇者さまったら」

王「いいな!!うむ!!流石は勇者殿」

勇者「姫様、では少しお話でもどうですか?」

姫「は、はい。私で宜しいのでしたら」

勇者「感謝いたします」

姫「それではお父様……」

王「ああ、ゆっくりしてくるといい」

姫「ありがとうございますっ」

勇者「王、今日は拝謁を許していただき、誠に感謝しています」

王「そなたの謁見ならばいつ如何なるときでも構わん」

勇者「ありがとうございます。これで姫様とはいつでも会えますね」

姫「い、いやですわ……そんな……」

勇者「では、まいりましょう」

―――城内 中庭

姫「勇者さま、明日には旅立たれるのですか?」

勇者「はっ。貴女の美しい肌とお尻には別れを告げねばなりません。残念です」

姫「そうですか……」

勇者「魔王の軍勢の残党は逃げたそうですし、勇者の身としては捨て置けませんからね」

姫「ええ。兵士長さんの話では、列を成して東の地へと移動していったらしいですよ」

勇者「東といえば……姫様、黄金の国はご存知ですか?」

姫「はい。家が黄金で出来ているとか、井戸から金が溢れてくるとか。すごい国なのでしょうね」

勇者「今度、ここへ戻ってくるときはその真意を確かめ、本当に黄金があるなら姫様に是非ともプレゼントいたしましょう」

姫「まぁ!本当ですか!!」

勇者「ふふふ、勇者は嘘が大嫌いです」

姫「ありがとうございます。ですが、魔王の軍勢を追うのですね。東の地は魔王の手に落ちて久しいと聞いています。どうかお気をつけて」

勇者「はい。帰りを待ってくれている貴女がいれば、死ぬに死ねませんし」

姫「勇者さまぁ……」

勇者「まだ時間がありますね。東の地について姫様が知っていること、話してもらえますか?」

―――酒場

店主「魔王のこと?」

僧侶「何か聞いたことありませんか?」

店主「そうだなぁ……」

魔法使い「なんでもいいのよ。こういう顔してるとか、すごい魔法を使うとか」

店主「そういえば、魔王の軍勢の首領はもう一匹いたって兵士の人に聞いたことがあるな」

僧侶「え?トロルだけじゃないというのですか?」

店主「ああ……なんでも空飛ぶトカゲとか……」

魔法使い「それって……」

僧侶「ド、ドラゴン……」

店主「伝説級の魔物だから、本当かどうかはしらねえ。その兵士も未確認情報だって言ってたしね」

魔法使い「もしドラゴンが相手なら……」

僧侶「お話通りの魔物だとしたら、人間じゃ太刀打ちできなくないですか?」

魔法使い「灼熱の炎を口から吐き、両翼を動かし竜巻を作る。最強の魔物ね」

僧侶「ま、まさか……そんなの……あり得ませんよね?」

店主「鋼の皮膚を持ってるって言い伝えもありますねえ」

僧侶「うわぁ……」

魔法使い「……まあ、敵にいるかどうかもわからないし、気にするだけ無駄ね」

僧侶「そ、それはそうですけどぉ」

魔法使い「それぐらいかしら?」

店主「そうですね」

僧侶「あ、ありがとうございました!」

店主「いえいえ。勇者様ご一行の役に立てたなら嬉しいよ」

魔法使い「まあ、あまり買い被らないほうがいいわよ?」

店主「え?」

魔法使い「この国の英雄はどうしようもない屑だから」

僧侶「そんな言い方は酷いですよ!!」

魔法使い「だって、一国の姫君を性の捌け口としてしか見てないじゃない!!」

僧侶「それはきっと誤解です!!」

魔法使い「10人の側近なんて話聞いたあとに誤解も何もないわよ!!」

僧侶「そ、それは……」

店主「10人の側近ってなんです?」

魔法使い「……こっちの話よ。それじゃあ、マスター、ありがとう」

僧侶「し、失礼します」

店主「え、ええ。またこの町に来ることがあれば是非とも寄っていってください」

魔法使い「必ず」

僧侶「それでは」

魔法使い「はぁ……あまり実のある情報とは言えなかったわね」

僧侶「童話の話をしただけのような気もしますね」

魔法使い「この町を出て、どこに向かえばいいのかもよくわからないし」

僧侶「ですね……」

魔法使い「アイツは姫様と仲良くやってるだろうし……。どういうことよ……全くもう……」

僧侶「き、きっと、王様に仲良くしてほしいって言われているのですよ」

魔法使い「どう見ても、アイツから手を出しているようにしか見えないけど……」

僧侶「勇者様にも考えがあるのです!きっと!恐らく!多分!」

―――宿屋

僧侶「夕食、どうされますか

>>128
投下ミス

―――宿屋

僧侶「夕食、どうされますか?」

魔法使い「そうね……」

勇者「ただいま戻りました」ガチャ

魔法使い「ふんっ!!」ブンッ

勇者「むっ?!―――パジャマパーティーの前哨戦として枕投げ大会ですか?」

魔法使い「違うわよ!!」

勇者「では……!?むむ……?おかしいですね、どこにもイエスの文字がないですが……?」

魔法使い「なんでアンタにイエスノー枕を投げつけないといけないのよ!?」

勇者「ハハッ。そうですよね。常時、イエスですよね。僕ってば頭悪いっ」

魔法使い「こいつぅ……!!!」

僧侶「あ、あの……きっとノックをせずに入室してくるからでは……?」

勇者「ノックをしては着替え中に乱入するという僕の長年の夢が遠のくではないですか」

魔法使い「アンタねえ!!魔王を倒すことより覗くのに気合入れないでよ!!」

勇者「覗きなんてするかぁ!!!失敬な!!僕はあくまでも偶然、着替え中に遭遇したいという願望が強いだけだぁ!!」

魔法使い「何が違うのよ!!」

勇者「覗きは故意!!遭遇は事故!!!全然違うだろうが!!」

魔法使い「狙ってやってるなら故意でしょ!?」

勇者「これは異な事を。現に僕は狙っても遭遇できてはいません。故意ならば必ず成功させるように仕向けるでしょう?」

魔法使い「あー!!もういいわよ!!」

勇者「え?生着替え見せてくれるんですか?眼福眼福」

魔法使い「ころしてやろうか……」

僧侶「あ、えと……勇者様、何か御用ですか?」

勇者「ああ。そうでした。明日の朝、出発しましょう」

魔法使い「どこに向かうの?」

勇者「東の地。具体的には黄金の国と呼ばれる場所へ」

僧侶「黄金の国ですか。でも、どうしてそこに?」

勇者「魔王の軍勢がその方角へ逃げたらしいので。何かあるのかもしれません」

勇者「あと、黄金を姫様にお渡ししたいので」

魔法使い「そっちが本当の目的なの?あきれたわね……」

僧侶「……」

勇者「何か?」

僧侶「いえ……」

魔法使い「一応、私たちも気になる情報を聞いたわ」

勇者「え?なんでしょうか?」

魔法使い「魔王の軍勢にはもう一匹首領がいたらしい。それも、ドラゴン」

勇者「ドラゴン……灼熱の息を吐き、鋼の皮膚を持ち、翼から風を起こすという、あの?」

僧侶「は、はい。未確認情報らしいですが」

勇者「なるほど……」

魔法使い「本当にいたら洒落にならないわね」

勇者「そうですか……ドラゴンが……」

僧侶「勇者様?どうかされましたか?」

勇者「いえ。では、これで失礼します」

僧侶「あ、夕食はどうされますか?」

勇者「僕は既に済ませてきましたので。おやすみなさい」

魔法使い「何よ、アイツ……」

僧侶「……」

魔法使い「ご飯、食べに行きましょう?」

僧侶「あの」

魔法使い「なに?」

僧侶「……勇者様はまた一人で色々調べているのではないでしょうか?」

魔法使い「姫様から聞いたんじゃないのかしら」

僧侶「王様、言ってましたよね?勇者様には全てを報告したって」

魔法使い「そうね」

僧侶「それっていつですか?」

魔法使い「え?」

僧侶「勇者様はずっと寝込んでいたのに……いつ、王様から話を聞いたんですか……?」

魔法使い「それは……」

僧侶「私、勇者様のところに行ってきます」

魔法使い「あ、ちょっと待って!私も行くわよ!!」

僧侶「勇者様?」トントン

勇者「はい?」

魔法使い「……なにしてたの?」

勇者「本を読んでいました」

僧侶「そ、そうですか。それってあの……」

勇者「エッチなやつです」

魔法使い「さいてー」

勇者「しかし、僕の身にもなってください。お二人のように美人が目の前にいるのに、何もできない虚しさを」

魔法使い「知らないわよ」

僧侶「あの、何か調べ物をされているなら……ご協力を……」

勇者「いえ。本当にムラムラしてただけですから」

魔法使い「……」

僧侶「えっと……あの……」

勇者「おっと、股間がいきり立っているようだ。どうする?戦う?」

魔法使い「へ、へんなものみせないでっ!!!」

魔法使い「ただの変態よ!!」

僧侶「お、落ち着いてください」

魔法使い「あんたも怒るときは怒った方がいいわよ?」

僧侶「ぜ、善処します」

魔法使い「ホントに……別になにもしてなかったじゃない」

僧侶「そ、そうみたいですね」

魔法使い「なんか馬鹿らしいわね。ひょっとしたら裏で努力してるかと思ってもいたのに」

僧侶「うーん……」

魔法使い「あんなセクハラされてもまだ信じたいの?」

僧侶「間が悪かっただけかもしれないと思って」

魔法使い「ポジティブね」

僧侶「わ、私は勇者様を信頼していますから」

魔法使い「はいはい。ごちそうさま」

僧侶「わ、私は純粋に勇者様のことを信じているだけですっ」

魔法使い「分かったわよ。それよりも……お腹すいたし、何か食べに行きましょうよ」

―――翌日 広場

僧侶「いい天気ですねー」

勇者「そうですね」

魔法使い「なんでアンタの視線は胸に向けられてるわけ?」

勇者「あ、そうだ。これをお渡ししておきます」

僧侶「え?私に……ですか?」

勇者「はい。貴女に是非」

僧侶「……これって……所謂、非常食……?」

勇者「貴女にとってはこの上ない武器のはずです」

僧侶「確かにそうですね」

魔法使い「普通は武具を渡すんじゃないの?」

勇者「ふふ、そういわれるだろうと思い……盾も買っておきました」

僧侶「結構大型ですね……。もてるでしょうか……?」

勇者「普段は背負っていれば大丈夫ですよ」

魔法使い(いつ買ったのかしら……)

―――フィールド

勇者「東の地、黄金の国まではかなりの道程ですね」

僧侶「徒歩だとどの程度かかりそうですか?」

勇者「7日もかからない、といったところですか」

魔法使い「相当遠いのね」

勇者「食料も十分に買いましたし、それに道中に村や町もあるので。問題はないかと」

僧侶「よかった」

勇者「しかし、どうしても野宿をしなければならないときもあるでしょう」

魔法使い「そうね」

勇者「魔物に気をつけながら一晩中、見張りをしなければならない」

僧侶「はい」

勇者「夜は寒い。寒さを凌ぐために寄り添う二人。触れ合う肩……交錯する視線……」

魔法使い「え……?」

勇者「そして二人は互いの息遣いを感じる距離まで近づき……惹かれるように唇を重ねる……ふふふ。ロマンスですね」

魔法使い「なるわけないでしょ!!馬鹿っ!!」

―――夜

勇者「では、お二人は眠ってください」

僧侶「でも……見張りは……」

勇者「僕に任せてくれてかまいません」

魔法使い「変なことする気?」

勇者「しません。まだ、信用されていないのですか。ショックです」

魔法使い「どこで信頼を得たと思ってるのよ」

勇者「冗談はさておき、途中魔物とも戦いましたし、お二人とも魔力が残っていないでしょう?」

僧侶「そ、れは……」

魔法使い「まぁね。アンタが色々、指示出すから」

勇者「なので、十分に休息を取ってください。明日の夕刻には小さな農村に着けますが、それまでに魔力不足で立ち往生はしたくないで」

魔法使い「じゃあ……」

僧侶「あ、ありがとうございます」

勇者「いえ。気にしないでください。お二人は僕より何倍も働いていますから」

魔法使い「そう……。じゃあ、お言葉に甘えるわ……おやすみ……」

勇者「……」

パチパチ……

勇者「そろそろ火を消すか……。魔物に場所を知らせるようなものだし」

魔法使い「……ねえ」

勇者「ん?どうかしましたか?あ、もしかして排泄行為を?」

魔法使い「違うわ。ちょっと眠れないの」

勇者「そうですか」

魔法使い「さっきの言葉……どういう意味?」

勇者「どういう意味もなにも……貴女が粗相をするのかなと思っただけですが」

魔法使い「馬鹿っ!違うわよ!!―――どうして私たちのほうが何倍も働いてると思うの?」

勇者「なんだ、そのことですか」

魔法使い「私たちなんて……」

勇者「勇者って戦闘技術は勿論、魔法の知識も有しているものなんですよね」

魔法使い「全てに秀でているからこその勇者でしょ?」

勇者「その通りです。―――もう気づいているでしょうけど、僕には魔法が使えないんです」

魔法使い「……」

勇者「簡単な切り傷も治癒できない。魚を焼くための火すら起こせない。天候を操り雷を呼ぶなんてもってのほか」

勇者「僕は出来損ないなんですよ」

魔法使い「待って。じゃあ、どうして勇者に選ばれたの……?」

勇者「わが国の勇者は半年前に命を落としました。それでも誰かを勇者として祭り上げ、魔王討伐に向かせなければならない」

勇者「国一番の実力者を生贄にしないと国民が納得しませんからね」

魔法使い「じゃあ、アンタが選ばれたのは……」

勇者「剣術が秀でていたからです」

魔法使い「そう……」

勇者「でも、ある種幸運ではあります」

魔法使い「どうして?死んで来いって言われたようなものでしょ?」

勇者「勇者に選ばれたから、貴女たちと出会えた。こんなに嬉しいことがあるでしょうか?」

魔法使い「なっ……。バ、バカじゃないの……」

勇者「前にも言いましたが、僕は馬鹿です。あ、ちなみに世界平和のためだなんて微塵も思ってません。全ては僕の野望のためです」

魔法使い「報奨金貰って、悠々自適に嫁と10人の側近と暮らすんでしょ?ホント、勇者としては出来損ないもいいとこだわ」

勇者「僕の悪口ばかりですね。許しませんよ?」

魔法使い「許さないならどうするの?」

勇者「僕の隣に座って、僕の肩に頭を預けて眠っていただきましょう。寝顔をさらせぇ」

魔法使い「お断りよ。ド変態」

勇者「僕のことが好きならはっきりそういえばいいのに」

魔法使い「話が飛躍しすぎでしょ?!」

勇者「でも、こういうシチュエーションの場合、恋焦がれる乙女が告白すると相場が決まっていますよ?」

魔法使い「どこの基準よ!勝手に押し付けないで」

勇者「そうですか。まだ側室の椅子は空っぽですから、いつでも声をかけてください。貴女なら第一側室としていつでも迎えましょう」

魔法使い「もういい」

勇者「はっ。まさか、嫁じゃなきゃいやとか、私だけを見てーってタイプですか?」

勇者「でも、まあ、人の感情とは不思議なもので、そういう生活を一ヶ月ほど続ければ自然と慣れていくものですよ」

魔法使い「もう寝るわ。アンタと話してたらおかしくなりそう」

勇者「え?じゃあ、婚前初夜ってやつですか?まいったなぁ」

魔法使い「なんで一緒に寝るって解釈するのよ!?」

勇者「ガード固いなぁ……魔法使いは普通、守備力が無いはずなんだが……」

魔法使い「それじゃあ、おやすみ!!」

勇者「はい。おやすみなさい」

魔法使い「風邪、ひかないでよ?」

勇者「馬鹿は風邪引かないって言葉、知ってますか?」

魔法使い「違うわ。馬鹿は体調管理が出来ないから、風邪を引くのよ」

勇者「おぉ。新説ですね」

魔法使い「ふん……がんばってね」

勇者「はい」

魔法使い「バーカ……」

勇者「……」

パチパチ……

勇者「はぁ……」

勇者「ドラゴン……魔王の側近にいるなら……いずれは……」

勇者「童話の獣と戦うなんて……想像できないな……」

―――魔王城

魔王「首尾は?」

魔物「はい。順調でございます」

魔王「そうか。トロルの失態で幾分かの後れは生じたが、今のところ問題はないか……」

魔王「あるとすれば―――」

ドラゴン「魔王様」

魔王「ご苦労。トロルを打ち倒した者について何かわかったか?」

ドラゴン「はい。どうやら、とある小国で選出された『勇者』のようです」

魔王「ほう?今まで、勇者と呼ばれる人間など何の脅威でもなかったが、ここに来てついに骨のある人選をしたわけか」

ドラゴン「しかい、交戦した者たちに聞きますとすこし可笑しなことが」

魔王「なんだ?」

ドラゴン「それが魔法を使う素振りを一切見せなかったようなのです」

魔王「魔術なくしてトロルが率いていた軍勢を突破することなどできないはず。それほどまでに武芸に秀でているか……あるいは……」

ドラゴン「もう少し調査の必要があるでしょう。幸いにも先日、その勇者一行は黄金の国に入ったとのことですので」

魔王「それは好都合だな。既にあの地は我らの領土。そこでそやつらのことを丸裸にしてくれよう……」

―――黄金の国 村

勇者「……」

僧侶「えと……」

魔法使い「黄金なんてどこにも無いわね」

勇者「なんてことだ……」

僧侶「掘ればでるかもしれません!!金は土ですし!!」

勇者「なるほど!!」

魔法使い「馬鹿か……」

村人「あの……貴方たちは?」

勇者「どうも。遠路遥々やってきました。金をよこしやがれ」

村人「旅の人……。悪いことはいいません。すぐに立ち去りなさい」

僧侶「え……?どうしてですか?」

村人「この国は魔王の手に落ちたのです」

魔法使い「魔王に……?」

勇者「詳しい話を聞かせてもらえますか?」

―――村長の家

勇者「失礼いたします」

村長「旅の人か。村民から聞いておる。座りなさい。これ、茶を」

村娘「は、はい」パタパタ

僧侶「お構いなく」

村長「この国のことはお聞きになりましたかな?」

勇者「はい。魔王に占領され、酷い圧政を受けていると」

村長「若い者は皆、連れて行かれ……どこかで奴隷のような扱いを受けていると聞きます」

僧侶「酷い……」

勇者「女性もよく連行されているようですが?」

村長「この国を取り仕切っている魔物が女を好んで喰らう」

勇者「いい趣味をしていらっしゃる」

魔法使い「皮肉に聞こえないわよ?」

村長「月に数人、女は生贄にされている。この村だけでなく、他の村でも同じのようだ」

僧侶「許せませんね……」

勇者「いや、全くです。僕の天敵となる魔物だ。絶対に排除せねば」

魔法使い「はぁ……」

村娘「ど、どうぞ、お茶です……」

勇者「……」パシッ

村娘「え……?」

勇者「僕の側室になってくれませんか?」

村娘「えぇ……?」

魔法使い「ねえ?手を貸して?」

勇者「はい」ギュッ

魔法使い「ありがとう」ギュッ

勇者「あづぃぃ!?!?」

魔法使い「痴漢。国境を越えてすぐに馬脚を露せないで」

勇者「やけどしたぁ……。―――応急措置」ムニュ

僧侶「きゃぁぁぁぁ!!!!!」

魔法使い「胸を揉むなぁ!!」

村長「あの……。あなた方は一体?」

勇者「ただの勇者です」キリッ

村娘「勇者……様?」

村長「まあ、よくわかりませんが、ともかくこの国には長居しないほうがよい」

勇者「そうですね。ご忠告ありがとうございます」

村長「いえ」

勇者「行きましょう」

魔法使い「どこに?」

勇者「そうですね……」

村娘「あ、あの……」

勇者「なんですか?」

村娘「勇者様……この国を救っていただけませんか……?」

村長「これ!何を言っておる!他国の者を巻き込んでいい話ではない」

勇者「貴女に頼まれては断れない。この国を恐怖に陥れている元凶はどこにいるのですか?」

村長「な……!?本気ですか?!」

勇者「どちらにせよ、僕の夢を脅かす存在は消さねばならないので」

村長「なんという……」

魔法使い「まあ、ものすごい不純な動機よね」

僧侶「でも、その想いこそが勇者様の原動力なわけですし」

魔法使い「そんな原動力、燃えてしまえばいいのに」

勇者「燃えているからこうして行動に移しているのではありませんか」

魔法使い「はいはい。―――で、その支配者はどこに?」

僧侶「ふふっ」

魔法使い「なによ?」

僧侶「あ、ごめんなさい。討伐することには反対じゃないんだなって思って」

魔法使い「見てみぬフリはできないわ」

僧侶「そうですね」

魔法使い「ふんっ」

村長「みなさん……ありがとうござます。では、お教えします」

勇者「はい、お願いします」

勇者「地図を」

僧侶「は、はい」

勇者「場所からしたら……この辺りに問題の洞窟があるのですね」

村長「ええ」

僧侶「なるほど」

魔法使い「ここからならそう遠くないわね」

勇者「では、明日の朝向かいましょう。こちらも万全にしておくべきです」

僧侶「はい」

魔法使い「わかったわ」

勇者「では、村長様、よそ者の僕たちに色々とありがとうございます」

村長「気にしないでください。それより、もしよければ、今日はこの家で休んでいくといい」

勇者「え……?」

村娘「勇者様。是非、そうしてください」

勇者「……なるほど。貴女の入浴中に僕が間違って入ってしまうという展開ですね?」

魔法使い「いい加減にして」

―――客間

勇者「……」

僧侶「勇者様?どうかされましたか?」

勇者「黄金の国にしては随分とオープンだなと思いまして」

魔法使い「どういうことよ?」

勇者「自分が聞いた話では他国の人間に対しては排他的な態度を取るということだったのですが」

僧侶「あまり隣国とも交流しない国だって言われてますね」

勇者「得体の知れない僕たちの話を簡単に信用しているのが解せない」

魔法使い「考えすぎじゃない?私たちだって黄金があるとかいう風説を信じてたわけだし」

勇者「だといいですけど」

魔法使い「……」

勇者「まあ、でも、今はそんなことなど瑣末事ですね。なにせ、今日は相部屋ですし。これは間違いが起こる予感。いや、起きろ」

僧侶「ま、間違いって……」

魔法使い「早く寝てよ。明日は大変なんだから」

勇者「馬鹿な……。同じ部屋で寝るのにぱふぱふも無しだと……?」

―――翌朝 

勇者「一食一飯の恩、忘れません。魔物の討伐をもって、返します」

村長「それはおつりが出るぐらいだな。お願いします」

勇者「はっ」

僧侶「では、行きましょう」

魔法使い「お世話になったわ」

村娘「お気をつけて、勇者様」

勇者「はい。貴女の笑顔を取り戻すために行って参ります」

村娘「そ、そんなぁ……照れます……」

魔法使い「……」ガシッ

勇者「つめたぃ!?」

僧侶「あの……仲良くしてください……」オロオロ


村長「……では、行って参ります」

村娘「できるだけ奴らの実力を引き出せ」

村長「はい」

―――洞窟

勇者「ここか……」

魔法使い「嫌な空気ね。魔物の巣窟だと思ったほうがいいかもしれないわ」

勇者「ええ。十分に警戒して進みましょう」

僧侶「は、はい……」

勇者「僕の腕にしがみついていてもいいですよ?」

僧侶「で、では……」ギュゥゥ

勇者「ああ、癒される」

魔法使い「……もう文句を言う気力もないわ」

魔物「グルルル……!!」

勇者「早速ですね」

僧侶「ひっ……」

魔法使い「……」パシンッ

勇者「お二人は僕の後ろにいてください」

魔物「ガァァァァ!!!」ダダダッ

勇者「―――随分と歩きましたね」

僧侶「そうですね」

魔法使い「休憩にする?」

勇者「ええ。それがいいでしょう」

僧侶「はぁ……申し訳ありません。私のために……」

勇者「僕も疲れてますし。お互い様です」

僧侶「そうですか……?」

魔法使い「私もつかれた―――きゃっ!?」ビクッ

勇者「どうしました?僕の魅力に興奮してしまったのですか?!」

魔法使い「水滴が首筋に当たったの」

僧侶「水滴……?そういえば、ここ鍾乳洞なんでしょうか?」

勇者「地形的にそうでしょうね。きっと最深部に行けば綺麗な水がいっぱいあるのでしょう」

僧侶「こういうところのお水は絶品だって聞きますよ」

勇者「身を清めるのには打って付けですね。お二人とも、ここは僕を気にせず全裸になって泳ぐことをお勧めします」

魔法使い「こういうところの水温がどれだけ低いか知ってて言ってるの?」

―――最深部

勇者「む……?」

僧侶「誰か……いる?」

魔法使い「もしかして……」

勇者「奴の足下を見てください」

僧侶「え……?な、なんですか……あれ……?」

魔法使い「骨ね」

僧侶「うっ……?!」

勇者「神聖な水場でこのような蛮行を行っているとは、僕も驚きを隠せませんね。これではお二人を泳がせるわけにはいかない」

魔法使い「泳ぐ気なんて更々ないけど」

魔人「―――来たか」

勇者「貴様がこの国を支配している魔物か」

魔人「その通りだ。矮小なニンゲンどもめ。自ら餌になりに来るとは殊勝な心がけだな」

勇者「この二人は僕が食べる!!手を出すな!!」

魔法使い「真面目にやって……お願いだから……」

魔人「カカカカ!!可笑しなことをいう。今から八つ裂きにされる者が私に命令するか?」

勇者「まあ、手を出す隙なんて与えないけどな」

魔人「減らず口を……」

僧侶「く、くる……!!」ササッ

魔法使い「いいわね、盾」

僧侶「勇者様、がんばってください」

勇者「お二人もサポートお願いします」

魔法使い「出来ればいいけど……」

魔人「行くぞぉ!!!」

勇者「こいっ!!」


村娘「さて、その実力いかほどか」

村娘「色々と見せてもらおうか……」

村娘「ん……?あの後ろにいる二人は何もしないのか……?」

村娘「それとも……何か狙いがあるのか……?」

勇者「せぇぇい!!!」ギィィン

魔人「カカカカ!!!なんだそれはぁ!!」ドゴォ

勇者「がっ?!」

魔人「私の体を切り裂くには力量が足りないようだな」

勇者「ふっ!!」シュッ

魔人「きかぬわぁ!!」

勇者「化け物め。トロルでも掠り傷程度のダメージはあったのに」

魔人「カカカカ!!!」ドガァ

勇者「づっ!?」

魔人「カカカカカ!!!期待ハズレだな。ここで終わりにしてやろう!!」

勇者「―――それはどうかな?」

魔人「なに?」

勇者「気がついていないのか?この空間の空気が凍りつつあることに」

魔人「貴様ぁ!!何をしているぅ!!!」

魔法使い「内緒に決まっているでしょ?」

勇者「ここは鍾乳洞だ。色々と水が多い。それが寒さで凍れば……」

魔人「くだらぬ。私を氷柱で殺すとでもいうのか?」

勇者「そうだ!!もう天井は無数の氷柱だらけだ!!見てみろ!!」

魔人「なんだとぉ?!」バッ

勇者「かかったな!!」ダダダッ

魔人「―――ひっかかるか、アホがぁ!!!」ドゴォ

勇者「がはっ!?」

僧侶「勇者様!!」ダダダッ

魔法使い「……っ」

魔人「この程度の温度で氷柱ができるわけないだろうが!!」

勇者「ごもっとも……」

魔人「コケにして……死ねぇ!!!」

勇者「ちっ!!」ギィィン

魔人「飛び散れっ!!」ゴォォォ

勇者「魔法か……!!」

魔人「ハーッハッハッハッハ!!!」

僧侶「―――やぁぁぁ!!!」ダダダッ

魔人「はっ!?」

僧侶「シールドアタック!!」ガキィィン

魔人「うおぉぉ?!」

勇者「僕に集中しすぎたな」

魔人「ふん。これしきで―――」ダッ

魔法使い「あ、そこ凍ってるわよ」

魔人「なっ―――」ツルッ

ドボンッ!!

勇者「よし。リムストーンプールに落ちた」

魔法使い「私が凍らせられるのは手で触れられるところだけだから」ピトッ

魔人「ぷはっ!!―――力では敵わぬから溺死させようとするのか?カカカカカ!!!!実に浅はかだな!!」

魔人「魔物を舐めるのも大概にしておけぇぇ!!!ニンゲンがぁぁぁ!!!床に転がっている塵芥の骸となれぇ!!」

魔法使い「この巨大な水溜りと一緒に凍りなさい」コォォォ

魔人「こ、これは……!!!凍っていく……!!」

ピキ……ピキピキ……

僧侶「やりました!!」

勇者「魔物はすぐに熱くなるからわかり易くていいな」

魔人「おのれぇ……!!これしきで私の動きを封じたと思っているのか!!」

勇者「いいや。思ってない。だけど……すぐには身動きが取れないはずだ。これだけ深く、広い水源が一気に凍ればな」

魔法使い「……」スッ

魔人「なに……を……」

魔法使い「物理攻撃に強くても魔法ならどうかしらね?」ギュッ

魔人「きさまっ……」ゾクッ

魔法使い「燃えろぉ!!」ゴォォォ

魔人「ガァァァ……ァ……ァァ……」

勇者「ここで凄惨な死を遂げた人たちにせめてもの手向けを」

僧侶「はい。僭越ながら……祈らせていただきます……」

魔法使い「疲れた……。なんでいつも大量の魔力を使わせるの?」

勇者「それは貴女が―――」

村娘「実に有能な魔術師を連れているようですね」

勇者「なっ!?」

僧侶「え……」

魔法使い「貴女は……村長さんのところにいた……」

村娘「勇者様。全て見させてもらいました」

勇者「もしかして……僕の側室になってくれるのですか?」

村娘「私がニンゲンであれば……貴方に惚れていたでしょうね」

僧侶「人間で……あれば……?」

魔法使い「あんた……だれなの?」

村娘「ふふふ……実力をもう少し見せてもらおうか……勇者よ!!!」メリメリ

勇者「な……ななな……!?」

ドラゴン「―――予想以上に部下が使えなかったのでな。行くぞ?」

僧侶「あ……あぁぁ……」ガクガク

魔法使い「う、うそでしょ……?」

勇者「バ……バカな……」プルプル

僧侶「伝説の魔物が……いる……なんて……」ヘナヘナ

魔法使い「しっかりして!!」

ドラゴン「ふふふふ……。どいつも同じだな。俺の姿を見れば驚愕し萎縮する」

ドラゴン「魔王様は魔物を統べる王。ドラゴンが傍にいても可笑しくはないだろう?」

勇者「な……なんてことだ……そんな……ありえない……!!」プルプル

ドラゴン「ふふふふ……。さあ……その力を見せろ。魔王様の脅威となる存在なのかどうか……!!」

ドラゴン「ただし、勢い余って殺してしまうことになるだろうけどな」

魔法使い「そんな……」

僧侶「死ぬ……わたしたち……ここで……」

勇者「く……そ……!!!」ギリッ

ドラゴン(ふんっ。なんだ、他のニンゲンどもと変わらないようだな。恐怖に身を震わせ、絶望している。魔王様の杞憂だったか―――)

勇者「くそぉぉぉぉ!!!!ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!!!!てめぇぇぇ!!!!!」

ドラゴン「……!?」ビクッ

勇者「さっさと女の子の姿に戻れよ!!!俺はあの女の子を側室候補にしてたんだぞ!!!なのにそんな醜い姿になりやがってぇぇ!!!」

ドラゴン「み、醜いだと……!?」

魔法使い「な、なにいってるのよ!?そんなこと言ってる場合!?」

僧侶「そ、そうですよ!!勇者様ぁ!!」

勇者「俺を裏切りやがってぇぇ……!!絶対に……!!絶対に許さん!!!」

ドラゴン「き、貴様……!!俺の姿を見てなんとも思わないのか?!」

勇者「醜いトカゲに用はないんだよぉ!!!」

ドラゴン「きさ……ま……ニンゲンの分際で……!!!この俺に罵詈雑言を……!!」

勇者「俺の側室候補返せぇぇ!!!」

魔法使い「にげるわよ!!早く!!!」

僧侶「勇者様!!お気持ちは分かりますがここは退きましょう!!」

勇者「早く女の子に戻れ!!今なら一緒にお風呂で許してやらぁ!!!」

ドラゴン「ぬかせぇ!!ニンゲンがぁぁ!!!灼熱の業火にやかれろぉぉ!!!!」

勇者「こっちはとっくに腸煮えくり返ってるんだよぉ!!オオトカゲが!!」

ドラゴン「殺すっ!!―――焼け死ねぇ!!!」ゴォォォォ!!!

僧侶「きゃぁぁぁ!!!!」

勇者「お願いしますっ!!」

魔法使い「もうアンタと出会ってから毎日のように魔力が空になるのはなんでなのよぉ!!」コォォォ

魔法使い「―――凍れ!!」

ボゥン!!

ドラゴン「霧?!」

勇者「退却!!!」ダダダッ

魔法使い「賛成!!」ダダダッ

僧侶「異議なしです!!」ダダダッ

ドラゴン「これしきの目くらましなど……俺の両翼で!!!」バサバサ

ドラゴン「―――くっ。逃げられたか」

ドラゴン「まさか俺の灼熱を利用して霧を発生させるとは……。この水溜りを一気に氷漬けにできるなら、不可能ではないか……」

魔人「おぉぉ……ドラゴンさま……お、た……すけ……く―――」

ドラゴン「役立たずは不要だ」ゴォォォ

魔人「ギャァ……ァァァ……!!!」

ドラゴン「確かに注意が必要かもしれないな」

―――フィールド

勇者「はぁ……はぁ……」

僧侶「はぁ……追っ手はいない……ようですね」

魔法使い「ねえ……もしかして……この国には……」

勇者「生きている人間はいないでしょうね」

僧侶「そ、そんな……」

勇者「魔王め……僕の理想郷成立を邪魔するのか……」

魔法使い「アンタねえ……」

勇者「完全に魔王の手によって落とされた国は、どこも同じと見ていいでしょうね」

僧侶「許せない……」

魔法使い「ええ。気分が悪いわ。私の力がどこまで通用するかわからないけど……」

僧侶「勇者様……私も……がんばります。できるだけのことはします」

魔法使い「人間を皆殺しなんてさせたくない。アンタは?」

勇者「勿論、皆殺しなんて見過ごせません。―――それって美人な人もいなくなるってことですからね」キリッ

魔法使い「……はぁ。はいはい。そうですね」

―――魔王城

ドラゴン「魔王様、ただいま戻りました」

魔王「どうだった?」

ドラゴン「はい。魔王様の想像通り、中々の使い手でした」

ドラゴン「勇者と思われる男は自分の姿を見ても冷静さを失わず、したたかに行動していました」

ドラゴン「後方支援者と思しき術者も、空間を一瞬で凍らせるほど熟練された魔法を駆使していました」

魔王「なるほど」

ドラゴン「我が炎すらも掻き消すことができるニンゲンが存在するとは思いませんでした」

魔王「……よく無傷で帰ってこれたな」

ドラゴン「いえ。流石にそれだけでは勝てないと判断したのでしょう」

魔王「お前の炎を相殺できるだけの力量を持ちながら、即時撤退をしたというのか?」

ドラゴン「ええ、その通りです」

魔王「竜族を間近で見ても冷静な行動を取れるだけの思考能力と行動力があり、しかも対抗できる術を持っていて逃亡を即断するか……?」

ドラゴン「魔王様?」

魔王「炎を凌ぐ以上のことはできないのか……それとも……。どちらにせよ、もう少し知りたいな……勇者一行のことを……」

―――夜 夜営地

勇者「テント、張れましたよ」

僧侶「いつもありがとうございます」

勇者「いえ。これぐらいのことは喜んでします」

魔法使い「不思議ね。あのドラゴン、追ってくると思ったのに」

勇者「初めから殺す気はなかったのでしょう」

僧侶「どうしてですか?あんな熱そうな火まで吐いてきたのに」

勇者「殺すなら僕たちが魔人と戦っているときに頭上かた灼熱の炎を吐けばいいだけですからね」

魔法使い「それは仲間を巻き込みたくなかったからじゃ……」

勇者「あのドラゴンは村娘に扮して僕たちをあの洞窟に誘いました。なら待ち伏せして丸焼けにだってできたはず」

魔法使い「あ……言われてみればそうね」

勇者「きっと力量を見ていたのでしょう」

僧侶「でもどうしてそんなことを?私たちでは絶対に太刀打ちできないのに」

勇者「あのドラゴンはきっと誰かに命令されて、あんなことをしたのでしょう。でなければ僕たちなんて瞬殺ですし」

魔法使い「ちょっと待って。それってつまり……ドラゴンを指示している……魔王が私たちのことを警戒をしているってこと?」

勇者「はい」

僧侶「ど、どうして……」

勇者「トロルの一件が魔王を慎重にさせているのかもしれませんね」

魔法使い「そっか。側近を倒したから、無理な特攻がしにくいのね」

勇者「だと思います。トロルも魔王の側近だとするなら、トロル以上の強者は恐らくあまり居ない。あのドラゴンぐらいかもしれません」

僧侶「そのトロルを倒したから、魔王は警戒して力押しで来ようとしないのですか」

勇者「魔王からしてみればトロルが人間に倒されたことは予想外だったはずですから」

魔法使い「魔王にとって私たちは未知の相手ってわけね」

勇者「トロルより力がある者を嗾け、万が一、その者がやられてしまっては事です。相手は今、情報収集の最中なのでしょう」

魔法使い「なら、ボロがでちゃったら……」

僧侶「一気に攻めてくる……?」

勇者「そうなっては無残に死ぬしかありません」

魔法使い「……」

僧侶「そ、そんな……」

勇者「でも、安心してください。僕は死なない。貴女たちを側室に迎え入れ、楽しい隠居生活を満喫するまではっ!!」

魔法使い「かっこつかないわね……いちいち……」

僧侶「そ、そうですか?」

魔法使い「えぇ!?」

勇者「格好の良い理想なんてありません。理想とはエゴ、私欲の塊。口にするだけで嫌悪される。それが理想というものです」

魔法使い「アンタの場合は野望でしょ」

勇者「願望も野望も夢も理想も全部同じですよ。人間の醜悪な部分ですね」

僧侶「そ、そうでしょうか?」

魔法使い「だから、アンタはそれを隠そうとしないから余計に気持ち悪く見えるんでしょう!!?」

勇者「バカな。勇者なのに気持ち悪いとは、これいかに」

魔法使い「あんたねえ……」

僧侶「でも、勇者様にはその強い野望が生命力に転換されているようですし、良い事ではないでしょうか?」

勇者「流石は神に仕えるお人だ。理解が早くて助かります」

僧侶「い、いえ……そんなぁ」

勇者「そう!!多くの美人をはべらせること!!それが僕の原動力!!魔王を倒す力となる!!」

魔法使い「そんな想いで倒される身にもなりなさいよね」

僧侶「まぁまぁ。でも、将来の夢を持つことはいいことですよ?生きる糧になることは間違いないですし」

魔法使い「否定はしないけど……」

勇者「そういえばお二人とも魔王を倒すのが夢だと言っていましたね」

僧侶「は、はい」

勇者「どうしてそのような夢を?」

魔法使い「……」

僧侶「えっと……」

勇者「お金ですか?それとも名声?」

魔法使い「いいえ、違うわ」

僧侶「あ……」

魔法使い「復讐よ」

勇者「……」

僧侶「勇者様……あの……」

勇者「なるほど。合点がいきました。それで貴女たちは、自ら才能がないと認めながらも魔法使いと僧侶で居続けたのですね?」

僧侶「は、はい……」

魔法使い「私たちみたいな境遇の人は珍しくないわ。孤児になる理由の七割以上は魔王の軍勢による侵攻のためだもの」

僧侶「私たちの国も魔王の軍勢に支配され……そして、親類を殺されました」

勇者「……」

魔法使い「だから、なんとしても魔王に一矢報いたい。そう思って、修行したわ。結果はこうだったけど」

勇者「半ば諦めていたのでは?」

魔法使い「ええ。最初のうちは反骨精神みたいな感じでがんばってきたけど、現実を突きつけられるうちにやっても無理だって思うようになった」

僧侶「きっと誰かが倒してくれる。仇討ちは見知らぬ勇者様に任せてしまえばいいって……そんなことを考えたこともあります」

魔法使い「誰についていっても役立たずでしかないし……」

勇者「なるほど」

魔法使い「幻滅した?」

僧侶「も、もちろん……世界平和のためでも……」

勇者「世界平和を盾に自分の私欲を隠さないでくれますか?」

魔法使い「なんですって……!?」

勇者「他人に任せてもいいと考える程度の願いでは、叶うことはないでしょうね」

魔法使い「ちょっと……今はきちんと自力で叶えようって思ってるわよ……」

勇者「本当にそうですか?」

僧侶「も、もちろんです……」

勇者「まさかとは思いますが、僕に全てを託していませんか?」

魔法使い「何がいいたいの?」

勇者「貴女たちは僕を復讐の道具として見ているのではないですか?」

魔法使い「……っ」

僧侶「そ、そんなこと思ってません!!い、いくら勇者様でも……酷いですっ!!」

魔法使い「アンタだって……」

勇者「なんですか?」

魔法使い「アンタだって私たちのことを理想ための道具にしか見てないくせによく言うわ」

勇者「そうですよ?」

魔法使い「なっ……!?」

勇者「貴女たちは僕にとって理想郷を作るための材料に過ぎません」

僧侶「そ、そんな……こと……な、仲間じゃ……?」

魔法使い「最低ね。そんな男だなんて思わなかったわ……」

勇者「初めに言ったはずです。僕は体目当てだと」

僧侶「そ、それはそうですけど……!!」

勇者「まさか嘘か冗談だと思っていたのですか?」

魔法使い「……」

勇者「でも、いいではありませんか。僕は貴女たちの体が欲しい。そして貴女たちは僕を復讐のために利用する」

僧侶「ち、違います!!」

勇者「交換条件としては悪くありません」

魔法使い「……本気で言っているの?」

勇者「はい」

僧侶「……」

魔法使い「分かったわ」

僧侶「あの……」

勇者「どうかされましたか?」

魔法使い「私は抜ける」

僧侶「え……!?」

勇者「故郷に帰るのですか?」

魔法使い「馬鹿。ここまで来て帰る訳ないでしょう?」

勇者「な……」

僧侶「あの!!やめてください!!」

魔法使い「アンタのおかげで私なりの戦いかたが分かったし、独りでもやれるわ」

勇者「何を言っているんですか。相手はドラゴンですよ?」

魔法使い「体を張ればあのドラゴンにだって対抗できることは実証されたわけだしね」

勇者「む……」

僧侶「ど、どうして喧嘩になるのですか!?」

魔法使い「まさかアンタがそういう目で見るとは思わなかった」

勇者「……」

魔法使い「……おやすみなさい」

僧侶「あ、まってください!!」

勇者「……」

―――テント内

僧侶「あの……仲直りしましょう?」

魔法使い「……」

僧侶「勇者様の発言には確かに問題はありました。ですけど、私たちの理由を知ればそう思われても……」

魔法使い「違うわ」

僧侶「え……?」

魔法使い「アイツがあんなことを言ったのが許せないの」

僧侶「……」

魔法使い「自分に正直で、言ってることは変態だけど……筋が通ってて……」

僧侶「あの……」

魔法使い「私たちの欠点を長所に変えてくれて……嬉しかったのに……」

僧侶「もう一度、話をすればいいじゃないですか」

魔法使い「もういいわ。あんな奴……」

僧侶「そんなぁ……」

魔法使い(どうしてあんなこと……言うのよ……ばか……)

―――翌朝

魔法使い「今までお世話になったわね」

勇者「残念ですね。ナイスバディなのに」

魔法使い「……ホントね」

勇者「まあ、貴女レベルなら探せば……」

魔法使い「ふんっ!!」

僧侶「あぁ……」

勇者「ついていってあげてください」

僧侶「え?」

勇者「全身から魔法を作りだすことができても、彼女は遠距離から攻撃されたら終わりです。彼女の魔力はすぐに枯渇する」

勇者「決して燃費がいい放出方法ではないですからね。むしろ大技を継続して発動しているようなものですし」

僧侶「ゆ、勇者様はどうするのですか?」

勇者「ここから北に向かうと噂の森があるでしょうから、そこを目指します」

僧侶「噂の森……ですか?」

勇者「おとぎ話ですよ。ただ、ドラゴンが実在したので信じてみようかなと思いまして」

魔法使い「……」

僧侶「ま、まってくださーい!!」タタタッ

魔法使い「どうしたの?」

僧侶「はぁ……はぁ……わ、私も一緒に行きます」

魔法使い「どうして?貴女はアイツの信者でしょ?」

僧侶「べ、別にそういうわけではありません」

魔法使い「そう……ありがと」

僧侶「で、どこに向かっているのですか?」

魔法使い「ここ。西に行けば大きな街があるみたいだから」

僧侶「なるほど」

魔法使い「そこなら色々と情報が集まると思うわ」

僧侶「そうですね。では、そこに向かいましょう」

魔法使い「本当によかったの?」

僧侶「はい」

魔法使い「今頃、側室候補がゼロになったから泣いてるんじゃないの?」

僧侶「割と平気そうでしたけど」

魔法使い「そう……」

僧侶「でも、これからどうするんですか?本当に魔王を?」

魔法使い「ええ。こんな体質でも十分に戦えるって分かったのよ?やれるわ」

僧侶「どのように戦うのですか?」

魔法使い「相手が攻撃してきたら熱を纏えばいいじゃない」

僧侶「熱に強い相手だったら?」

魔法使い「冷気を纏うわ」

僧侶「魔法に強い相手だったら?」

魔法使い「そのときは……」

僧侶「そのときは?」

魔法使い「考えるわよ」

僧侶「そ、そうですか」

魔法使い「今はとにかく魔王に関する情報を集めることが重要なの。わかった?」

僧侶「は、はい」

―――街 酒場

店主「魔王に関すること?」

魔法使い「なにかしらないかしら?」

店主「私はただの酒場のマスターなんでね」

魔法使い「でも、客から色々話を聞いたりするでしょ?」

店主「そんな話題を口にするような人は貴女が初めてですよ」

僧侶「そ、そうですよね」

魔法使い「それじゃあ、何か魔物に関することでもいいわ」

店主「そういっても……特には……」

魔法使い(情報収集ってこんなに難しいの……)

店主「あ。気になることなら一つありますね」

僧侶「なんですか?」

店主「なんでも人身売買組織があるらしいですよ」

魔法使い「人身売買?」

店主「はい。今この国に大規模な人身売買組織があるらしく、裏ではかなりエグいこともしているそうです」

魔法使い「ふーん……」

僧侶「なんて非人道的な……!!」

店主「まあ、人身売買自体は珍しいことではありませんがね」

魔法使い「身寄りの無い子どもが自分を売ったり、借金苦で売るって話はよくあるわね」

店主「時代が時代ですからね」

僧侶「でも、組織化されているってことは、人身売買で商売をしているってことですよね?」

魔法使い「そうじゃないかしら?」

僧侶「そ、そんなの許せません……!」

店主「気分のいい話じゃないことは確かですよね。噂では魔物が人間を拉致しているみたいですし」

魔法使い「なにそれ。人間と魔物が手を組んでるわけ?信じられないわ……」

僧侶「待ってください。魔物が協力しているなら、もしかすると魔王とも結託しているのではないでしょうか?」

魔法使い「可能性はあるわね……」

店主「とはいえ、私もお客さんから聞いただけで信憑性はあまり高いとは言えませんが」

魔法使い「その組織に迫れば、きっと魔王のことも分かるわ。―――どうやら、目標ができたわね」

僧侶「はい。その人身売買組織について調べましょう」

―――夕方 街 広場

魔法使い「……」

僧侶「わかりませんね」

魔法使い「甘かったわ。裏世界の情報なんて普通、誰も教えてくれないわよね」

僧侶「そうですね。人身売買を行う組織があるってだけでは……」

魔法使い「身内が被害に遭ったわけでもないし、私たちは組織を追う法的機関でもない」

僧侶「そろそろ宿でも探しませんか?」

魔法使い「そうね。そうしましょうか」

僧侶「勇者様なら……」

魔法使い「え?」

僧侶「勇者様なら、そんな情報でもすぐに手に入れてこられたのでしょうか?」

魔法使い「もういいでしょ。あんな奴のことなんて」

僧侶「……」

魔法使い「行きましょう」

僧侶「はい」

―――宿 寝室

魔法使い「ふー、いいお湯だったわ」

僧侶「……」ペラッ

魔法使い「なにしてるの?」

僧侶「え?ああ……その……」

魔法使い「なにこれ?エルフ伝説?」

僧侶「……知ってますか?」

魔法使い「エルフって伝説上の種族でしょ?魔法の礎を設計したって言われてるけど……」

僧侶「はい。人間と共存していたと言われるも、数百年前に歴史から姿を消した人間ではない……魔族の一種です」

魔法使い「魔物の中でも人間と近しい志向を持っていたから、かなり友好的だったとも言われているわね」

僧侶「いると思いますか?」

魔法使い「過去にいたかもしれない連中でしょ?そんなのいるわけ……」

僧侶「でも、ドラゴンはいました」

魔法使い「む……。それを言われると……」

僧侶「魔法を創造した種族。もしいるなら、私たちの体質も改善してくれるかもしれません」

魔法使い「そうね。夢があっていいわねぇ」

僧侶「はい」

魔法使い「でも、どうして急にエルフ伝説なんて……」

僧侶「実は……勇者様が別れ際に―――」

勇者『その森にはエルフがいると昔から噂されていました。むろん、眉唾もいいところで誰も真剣に捜索なんてしていませんが』

僧侶『勇者様はエルフを?』

勇者『はい。エルフは美形が多い、否、美形しかいないという伝説もあります。一人ぐらい側室に居てほしいと考えています』

僧侶『探すというわけですか……』

勇者『ええ。貴重な側室候補が二人もいなくなってしまいましたからね』

僧侶「―――と、言っていました』

魔法使い「あっそ……!」

僧侶「もしエルフがいるなら、私たちの欠陥も直してくれるかもしれないってずっと考えていました」

魔法使い「可能性としてはあるかもしれないけど……」

僧侶「人身売買の件も全く分かりませんし、エルフを探すことも私たちにとっては有益なことではないでしょうか?」

魔法使い「うーん……でも……」

僧侶「ダ、ダメ……ですか?」

魔法使い「アイツもさがしているのよね?」

僧侶「再会するかもしれないとお考えですか?」

魔法使い「……うん」

僧侶「いいじゃないですか。もし居合わせても利害は一致してますし」

魔法使い「……」

僧侶「恥ずかしい……とか?」

魔法使い「あんたねえ……!!ブロッコリー食べさせるわよ!?」

僧侶「そ、それだけは……!!」

魔法使い「まあ、いいわ。確かにこのまま居ても進展なんてしないだろうし……エルフなら魔王のことも知っているかもしれないし……」

僧侶「よかったぁ」

魔法使い「アイツの言っていた森ってどこになるの?」

僧侶「地図でいえば、この辺りだと思われます。ここからだと半日もあれば……」

魔法使い「なら、しっかり準備だけはしておきましょう」

僧侶「はい!」

―――フィールド

僧侶「そういえば魔物に遭遇した場合はどうします?」

魔法使い「炎を身に纏って体当たりでもしてやればいいわ」

僧侶「それって魔力の無駄遣いじゃないですか?」

魔法使い「他にやりようがないから仕方ないでしょ?」

僧侶「そうですけど……」

魔物「―――グルルルル!!!」

魔法使い「って、言ってる傍から……!!」

僧侶「ひっ」

魔物「グルルル……」

魔法使い「来なさい」ゴォォ

魔物「ガァァァ!!!」ダダダッ

魔法使い「……っ」

魔物「ガァァァァ!!!」ガブッ

魔法使い「いっ?!」

魔物「―――オォォォ……」ドサッ

魔法使い「やった……」

僧侶「大丈夫ですか?!」

魔法使い「腕を噛まれただけよ。傷は深くないわ。すぐに燃えたし」

僧侶「そうですけど……」

魔法使い「さ、行きましょう」

僧侶「あ、まってください」ギュゥゥ

魔法使い「ちょっと……!!」

僧侶「どうですか?」

魔法使い「……治ったわ。ありがとね」

僧侶「いえ。早めに有効活用してもらえないと、私はすぐに魔力が無くなるので」

魔法使い「あんたに触れられたら傷が癒えるなんて、誰も気がつかなかったわよね……」

僧侶「そうですね。魔法がすぐに使えなくなるって点は大きなマイナスでしかないですし。でも、勇者様は―――」

魔法使い「早く行くわよ」

僧侶「あ、は、はい!」

―――エルフの森

魔法使い「はぁ……ここなのね……」

僧侶「勇者様が言うには……ここですね」

魔法使い「探索する前に休憩しておく?」

僧侶「いえ。パンを食べながらなら多少は大丈夫ですから」

魔法使い「雀の涙じゃない?」

僧侶「本当に危なくなったら言いますから」

魔法使い「そう……」

魔法使い(アイツは私たちの体調管理までしてたのよね……今、思えば……)

僧侶「にしても未踏の地だからでしょうか、鬱蒼としてますね」

魔法使い「住んでいる魔物も多いでしょうね。今までで一番、気合を入れないとダメかもしれないわ」

僧侶「が、がんばります」

魔法使い「こんなことなら用心棒の一人ぐらい雇えばよかったわね」

僧侶「そんなお金があればとっくに……」

魔法使い「言ってみただけよ」

魔物「ガァァァァ!!!!」

僧侶「きゃぁぁぁ!!!」

魔法使い「させない!!」

魔物「ガァァ!!」ザシュ

魔法使い「うぁ!?」

僧侶「あぁ!!!」

魔法使い「ふ、ふれたわね……!」

魔物「ガ……?―――ガァァァァ!!!!」メラメラ

魔法使い「ふぅー……ふぅー……」

僧侶「今、治癒を!!」ギュッ

魔法使い「……」

僧侶「うーん……!!うーん……!!」ギュゥゥゥ

魔法使い「もう限界でしょ?」

僧侶「は、はい……き、休憩しましょうか?」

魔法使い「賛成。私ももう魔力が尽きかけてるし」

魔法使い「疲れた……」

僧侶「まだ住んでいる形跡すら見つかりませんね」

魔法使い「まあ、これぐらいで見つかるなら伝説にはならないでしょうし」

僧侶「そうですね。エルフさんも意地悪です」

魔法使い「でも、考えないといけないわね」

僧侶「何をですか?」

魔法使い「引き際に決まっているでしょ?いない人をずっと探すつもり?」

僧侶「それは……」

魔法使い「意味の無い時間を費やすなら、魔王討伐に向けての準備をしたほうがいいわ」

僧侶「準備と言っても……具体的になにをすればいいのか……」

魔法使い「魔王の弱点を探すとか」

僧侶「判明できているなら人間側がこんなにも劣勢には……」

魔法使い「魔王の兵力を調べるとか」

僧侶「大国が全兵力を投じても、防戦しかできないぐらいの兵力です」

魔法使い「……あら、私たちじゃ勝てないじゃないの」

僧侶「ですから、こうして―――!」

魔法使い「分かってるわよ。冗談だから」

僧侶「なら、いいんですけど……」

魔法使い「そうよね。あの魔王と戦おうとしているんだから、いくら補強しても補強し足りないことはないわ」

僧侶「はい。あと人数も……」

魔法使い「……」

僧侶「……」

魔法使い「もう少し休憩したら出発するわね」

僧侶「あの、その前に……」ギュッ

魔法使い「いいって」

僧侶「そう言うわけにはいきません。薬草では限界もありますし」

魔法使い「もう……。アイツ、薬草持っていったわよね?」

僧侶「私がきちんとお渡ししておきましたから」

魔法使い「そう……」

僧侶「まだ、この森のどこかにいるんでしょうか……?」

―――同時刻 エルフの森 深部

勇者「……」ガサガサ

勇者「お……」

勇者「ここは……もしかして……ようやく……見つけた。やはりいると確信していれば、奥まで進むことが苦にならなかったな」

エルフ「だ、だれ!?」

勇者「……!?」

エルフ「ニ……ニンゲン……!?」

勇者「これはどうも」

エルフ「あ……れ……?」

勇者「え……?」

エルフ「……」

勇者「あの……?」

エルフ「何の用ですか?」

勇者「僕の結婚相手を探しています。貴女、結婚してくれませんか?」

エルフ「ど、どうして人間なんかと……!!」

エルフ「おかえりください」

勇者「そういうわけにはいきません」

エルフ「なら……容赦はしませんよ?」

勇者「まさか……夜は常に3ラウンドですか?」

エルフ「……?」

勇者「腰が痛くなりそうですね……いやはや……困った困った」

エルフ「訳のわからないことを……!!」

勇者「む!?」

エルフ「立ち去らないというなら……!!」

勇者「まさか……」

エルフ「魔法を使ってでも……去っていただきます!!」

勇者「せめてお話だけでも」

エルフ「……」

勇者「弱りましたね。僕のどこがいけませんか?」

エルフ「全部です!!人間であることが罪です!!」

勇者「なんて宗教的な考え……」

エルフ「種族としての考えです」

勇者「僕は勇者なのに?」

エルフ「関係ない!!帰って!!帰れ!!!」

勇者「人間を嫌うのは魔族共通ですか?」

エルフ「当然です」

勇者「でも、貴女たちエルフ族は大昔、人間と友好関係を築いていたはず」

エルフ「数百年前のことです」

勇者「どうしてその関係は崩れてしまったのですか?」

エルフ「……」

勇者「……」ジーッ

エルフ「……そんなに強くボクを見つめても言わないから」

勇者「え?どうしてですか?」

エルフ「どうしてって……人間が嫌いだからに―――」

勇者「違います!!貴女、女性ですよね!?なのに、今、ボクっていいましたよね?!え!?どうしてそんな一人称になったんですか!?」

エルフ「は……?」

勇者「まさか。現実にはほぼいないと思っていたのに……。まさか、このような辺境にいようとは……流石はエルフ!!」

エルフ「……っ」ビクッ

勇者「で、どうして自分のことをボクというようになったのですか?」

エルフ「理由なんてないです」

勇者「生まれつき?それはもしかして、親が男の子として育てたというすごい事情があったりするわけですか?」

エルフ「そんなのない!!ボクの家庭はいたって平凡だ!!」

勇者「また言った!!ボクっていった!!もう一回言ってください!!」

エルフ「な……!?」

勇者「アンコール!!アンコール!!!」

エルフ「うぅ……」

勇者「アンコール!!アンコール!!!はい、ワンモアセッ!!」

エルフ「うぅぅぅ……!!!―――ちょーろー!!!変な人きたー!!!!」ダダダッ

勇者「ああ、待ってください!!ボクっ娘さん!!!」

エルフ「いやぁぁぁ!!!」

兵士「とまれ!!」ギラッ

勇者「邪魔だぁ!!!」ギィィン

兵士「うお!?」

勇者「俺の恋路を邪魔するなぁぁ!!!!」

兵士「誰か止めろー!!ニンゲンだぁぁ!!!」

勇者「うおぉぉぉぉ!!!!」ダダダッ

兵士「これ以上は!!!」

勇者「どけぇぇぇ!!!」ギィィン

兵士「おい!!手の空いている者を全員よべぇ!!緊急事態だ!!長老のところに向かっている!!!」

兵士「了解!!」

勇者「勇者をなめるなぁぁぁ!!!!」

兵士「ええい!!先日きたばかりだろうが!!!」

勇者「ボクっ娘さぁぁん!!!側室になってくれぇ!!」

エルフ「やだぁぁ!!!」

兵士「いいから取り押さえろー!!!」

―――長老の屋敷

長老「―――この者か?」

兵士「はっ」

勇者「むぐぐぐ……!!!」

エルフ「はぁー……はぁー……」ドキドキ

長老「話がしたい。口を自由にしてやれ」

兵士「はい」

勇者「ぷはぁ?!」

長老「人間よ聞こえるか?」

勇者「ボクっ娘さんの息遣いが聞こえます。お姿も確認したいので目隠しを解いてもらえませんか?」

エルフ「ひっ……」

長老「悪いが人間の言うことなど聞けん。おぬしは訊かれたことだけを答えればいい」

勇者「側室とはいえ大事にします。ですが、贔屓もしません」

長老「黙れ。―――訊きたいことは一つだ。どうしてまた攫おうとした?」

勇者「攫うなんてとんでもない。僕が攫うとしたら、それは心のほうですからね」キリッ

長老「今年になって既に同胞が10人も拉致され売られていることは知っているのだ」

勇者「売られている?」

長老「大昔から人間は我々の生み出した魔法、同胞をよく盗んでおった。表向きは友好関係を続けているように振舞いながらな」

勇者「……」

長老「約600年前、我々は貴様らと縁を切った。だが、数年前からまた始まった……」

勇者「エルフの人身売買ですか?」

長老「ふん……知っておるくせに……」

勇者「噂が流れたぐらいだから、少なからずエルフを見た人がいるとは思っていたけど、まさかオークションの現場で見たとかそういうのか……?」

長老「どんなに森の奥へと進んでも、貴様たちの執念には驚かされる。なぜ、放っておいてくれんのだ……!!」

勇者「……」

長老「答えろ!!」

勇者「それは……美人だからですよ」

長老「……」

エルフ「え?」

勇者「美人でスタイルもよい。しかも一人称がボクときた。これは放っておくほうが失礼というものでしょう」

長老「話にならんな」

勇者「待ってください!!僕は勇者!!魔王を討伐するために旅をしている者です!!」

エルフ「え……!!」

勇者「貴女を側室に迎えるだけの理由はあるのですよ!!!」

長老「魔王を倒すだと……?」

勇者「はい!!」

長老「関係がないな」

勇者「え?」

長老「魔王を倒したからといってエルフの扱いが変わることなどない」

勇者「そんなことありませんよ」

長老「変わるのはお前たち人間の生活だけだ。魔族からも疎まれ、人間にはその身を狙われるワシたちの立場に変化などない」

勇者「疎まれるって……人間と仲良くしていた過去があるからですか?」

長老「そういうことだ。真実は脅されていたとしてもな」

勇者「なるほど……」

長老「わかったのなら、それでいい。―――牢屋に入れておけ。処刑は3日後に執り行うものとする」

兵士「はっ!!」

勇者「待ってください!!まだ死にたくないんです!!」

長老「それはそうだろうな」

勇者「ボクっ娘さん!!貴女と添い遂げるまではぁぁ!!」

エルフ「……」

兵士「こっちにこい!!」

勇者「やめろぉ!!このハゲ!!」

兵士「殺すっ!!」

長老「まて。きちんと儀式に則り処刑するのだ。無闇に殺しては野蛮な人間と変わらない」

兵士「も、もうしわけありません!!」

勇者「くそぉ!!!もう一度だけボクと耳元でささやいてぇぇぇ!!!!」

長老「……人間とは理解できない生き物だな」

エルフ「はい」

長老「魔王を倒すといえば解放されるとも思ったのか……あやつめ……」

エルフ「……」

ふむ…今の勇者の嫁は

姫(GET)
魔法使い(未)
僧侶(未)
ドラゴンもどい村娘(不明)
エルフ(未)
魔王(不明)

後、9人か…勇者頑張れよ

―――牢屋

勇者「こんなことになるなんて……困った……」

エルフ「気分はどう?」

勇者「おぉ……」

エルフ「なに?」

勇者「あの一ついいですか?」

エルフ「……」

勇者「森で出会ったとき、驚かれているようでしたが。あれは……?」

エルフ「……」

勇者「貴女の一人称がボクであることの次に気になるのですが」

エルフ「そうだった?」

勇者「……それにしても僕は運がいいです」

エルフ「え?」

勇者「エルフに出会うだけではなく、貴女のような絶世の美女エルフにも出会えましたから」

エルフ「なに、それ……変なの……」

勇者「……」

エルフ「食事、持ってきただけだから……」

勇者「何か隠してますね?」

エルフ「……」

勇者「こうして貴女の……いや、貴方たちの策に嵌ってあげたというのに」

エルフ「何がいいたいの?」

勇者「エルフの一族は魔法を使える。人間とは比較にならないほどの高威力の魔法を。そうですよね?」

エルフ「当たり前でしょ。ボクたちは―――」

勇者「うはっ」

エルフ「―――我々は魔法の基礎を築いた種族だから」

勇者「では、どうしてあのときに殺さなかったのですか?」

エルフ「それは……長老が言っていた通り、掟に則って貴方の処刑を……」

勇者「三日後に?明日でも、今でもいいと思いますけど?」

エルフ「……」

勇者「僕をすぐに殺せない理由でもあるのですか?」

―――エルフの森 深部

魔法使い「今日はここまでにしましょう」

僧侶「そうですね」

魔法使い「大丈夫?随分、無理してない?」

僧侶「はい。なんとか」

魔法使い「見張りは私がするから、ゆっくり休んでて」

僧侶「そういうわけには……」

魔法使い「あんたが倒れると困るのは私だから」

僧侶「でも……」

魔法使い「いいから。寝てて」

僧侶「すいません……」

魔法使い「……あんたと居て、分かったわ……ダメね……私……」

僧侶「え?」

魔法使い「……」

僧侶「あの……?」

魔法使い「はぁ……」

僧侶「ダメって……そんなこと……。貴女は私なんかよりずっと役に立ってますよ」

魔法使い「そう思う?」

僧侶「森での一件、山での落とし穴、洞窟での戦闘、全て貴女がいないと私たちはとっくに死んでいました」

魔法使い「……」

僧侶「回復しかできない私とは違います」

魔法使い「でも、私の魔力はすぐになくなる」

僧侶「それは……」

魔法使い「アイツは使いどころをいつも考えていたわ。多分、いつも頭を悩ましていたでしょうね」

僧侶「……」

魔法使い「私だけじゃ……やっぱり……。情報収集だって上手くいかないし……」

僧侶「それは私も同じです!!」

魔法使い「……」

僧侶「ですから、エルフに会って……」

魔法使い「会って……何かが変わればいいわね……」

―――エルフの里 長老の家

長老「どうだった?」

エルフ「こちらの考えに気づいているのかいないのか……よくわかりませんでした」

長老「だが、魔王を倒すと言った以上……奴に間違いはないはず」

エルフ「でも、三人だって……」

長老「違うなら記憶を奪い、森の外に出せばよい」

エルフ「しかし……!!」

長老「奴がここの存在を公言しては、また同胞が被害に遭うかもしれない。そうでなくとも拉致が横行しているのに……」

エルフ「彼はそんなことしないと思います」

長老「なぜだ?」

エルフ「彼はボクのことしか見ていませんでした。ここには他にもエルフがいるのに」

長老「……」

エルフ「何故、ここへ来たのかは分かりませんが、誘拐を考えているようには思えないのです」

長老「人間とは狡猾な生き物だ。それは散々、教えてきたはずだが?」

エルフ「そうですが……」

―――牢屋

勇者「……」

エルフ「まだ起きてたの……?」

勇者「おぉ!!どうしたのですか?!おやすみのキスを?」

エルフ「どうしてここまで足を運んだのかを聞きに」

勇者「……第一の目的は側室探しですが、第二の目的は戦力アップのためです」

エルフ「魔王と戦うために?」

勇者「いえ。ドラゴンを倒すために」

エルフ「……」

勇者「驚かないんですね。ドラゴンですよ、ドラゴン。口から火を吐く」

エルフ「彼は幻の存在でもなんでもないから」

勇者「流石は魔族同士ですね。お知り合いですか?」

エルフ「……存在を知っているだけ」

勇者「ふむふむ」

エルフ「ねえ、貴方に仲間は?一人旅ってことはないはずだけど……」

勇者「どうして?」

エルフ「それは……」

勇者「実は喧嘩別れをしてしまって。今は独り身なんですよ。ですから夜が寂しくて。温もりが欲しいですね」

エルフ「……あのとき素直に帰っていればいいものを」

勇者「何かを隠されるのは好きじゃないので」

エルフ「……」

勇者「やはり、僕は魔王に狙われているのですか?」

エルフ「見つけ次第、能力を測れと魔族に通達している」

勇者「ほう……。それは貴方たちも例外ではないと?」

エルフ「ええ。疎まれる種族ではあっても、魔族。魔王には逆らえないから……」

勇者「では、最初に驚いたのは?」

エルフ「もうじき勇者がこの森に現れるというのは聞いていた。二人の仲間を連れているからって」

勇者「でも、一人だけだった」

エルフ「だから誘拐犯だとも思った。けれど、誘拐目的なら多人数だろうし、もう色々貴方はおかしかった」

勇者「なるほど。だから、あんな面食らっていたわけですか」

エルフ「そういうこと」

勇者「すっきりしました。では、もう結構です」

エルフ「え?なにが?」

勇者「それが真実なのでしょう?」

エルフ「そうだけど」

勇者「なら……あとは貴女を側室に迎え入れるだけだ」

エルフ「はい?!」

勇者「僕と添い遂げましょう」

エルフ「嫌!!人間となんて……!!」

勇者「異種間でのお付き合いってよくないですか?」

エルフ「よくない!!」

勇者「えー?」

エルフ「ちなみにエルフは皆、同じように答えるから」

勇者「いやいや。僕は貴女にしか興味はありませんよ?」

エルフ「……」

勇者「僕は貴女を側室にしたいのですよ」

エルフ「嘘ばっかり。ボク以外にも美人はいっぱいいるし、そもそも人間からなら同じ顔に見えるはず」

勇者「何をいいますか。人間だって、犬や猫の容姿に優劣をつけられる!!」

エルフ「犬猫と一緒にするな!!」

勇者「すいません」

エルフ「全く。自分の立場がわかっていないみたい……」

勇者「よくわかりませんね」

エルフ「え?」

勇者「だって。僕の能力を測るつもりなのか、殺すつもりなのか……どっちなんですか?」

エルフ「それは……」

勇者「処刑までの猶予は僕が該当の人物なのか調べる期間であり、処刑は僕の力を調べる場だと考えても?」

エルフ「そこまで考えてはいない……と思う。今のところ貴方はこの森に迷い込んだだけの旅人って扱いになっているし」

勇者「そうですか。では、処刑はしないと?」

エルフ「……なんの罪もない人を簡単に殺したりはしない。ボクたちは人間ではないので」

勇者「優しい種族ですね……。魔物の一種族とは思えないぐらいに知的で紳士的です。益々、貴女のことが好きになりました」

エルフ「では、これで」

勇者「待ってください」

エルフ「まだ何か?」

勇者「好きです」

エルフ「……」

勇者「アイラブユー」

エルフ「……失礼します」

勇者「ちっ……。どうして出会う女性は皆、ガードが固いのか。ゆるゆるだったのは姫様ぐらいだな」

勇者「……」

勇者(ドラゴンを倒すためにはエルフの力が必要だと、どの書物にも書かれていた……)

勇者(でも、噂通り、エルフは大の人間嫌い……。懐柔は難しい……)

勇者(このままでは二人と別れた意味がない。どうにかして仲間に引き入れたいところだけど……)

勇者「月が綺麗だなぁ……」

勇者「お二人は今頃、何をしているのか」

勇者「ドラゴンが彼女たちを見つける前に……!」

―――翌日 エルフの里

僧侶「……」

魔法使い「もしかして……見つけた……?」

僧侶「あ、あそこにいる人……耳の形が私たちと違います」

魔法使い「本当ね……。じゃあ……ここが……」

僧侶「はい……」

魔法使い(でも……割と簡単に見つかったわね……この集落。これなら、とっくの昔に誰かが見つけてても……)

僧侶「ど、どうします?」

魔法使い「行きましょう。なんのためにここまで来たと思ってるの?」

僧侶「で、ですね……」

魔法使い「門前払いされたら、諦めましょう」

僧侶「門前払いで済まなかった……?」

魔法使い「そのときは……戦うしかないわね」

僧侶「相手は魔法の祖ですよ?!」

魔法使い「エルフは人間のこと嫌いだっていうし、攻撃されることは頭に入れておかないとダメでしょ?」

僧侶「絶対に死にますよ!!」

魔法使い「なんとか逃げればいいでしょ」

僧侶「この森をですか?!」

魔法使い「そうよ!」

僧侶「魔物に襲われたらどうするんですか!!」

魔法使い「そのときは戦うしかないでしょ?!」

僧侶「エルフの追撃をかわしながらですか?!」

魔法使い「そうするしかないでしょ?!」

僧侶「どっちにしろ殺されますよ!!」

魔法使い「じゃあ、何かいい考えあるの?!菓子折りの一つも持ってきてないでしょ?!」

僧侶「えっと……非常食ならありますよ。勇者様に買って頂いた」

魔法使い「馬鹿!!そんな物で―――」

エルフ「あの」

魔法使い「なによ!!―――あ」

エルフ「こちらに来ていただけますか?抵抗するなら、多少痛い目を見てもらうことになりますが」

―――長老の家

長老「この者たちか」

兵士「はっ。騒いでいましたので捕らえました」

僧侶「ご、ごめんなさい」

魔法使い「……」

長老「して、何が目的だ?」

僧侶「魔法を使いこなしたく思いまして」

長老「なに?」

魔法使い「私たち魔力の使い方が下手糞なの。それでエルフに会えばコツを教えてもらえるかもって思って」

長老「ふむ。それがここまで足を運んだ理由か?」

僧侶「はい!」

長老「何のためだ?」

魔法使い「魔王を倒すためよ」

エルフ「な……」

長老「そうか……なるほど……」

長老「奴をここへ」

兵士「はっ」

魔法使い「やつ……?」

長老「お前たちに会わせたい人間がいる」

魔法使い「まさか……」

僧侶「そんなこと……」

兵士「―――連れてきました」

勇者「どうも」

魔法使い「……」

僧侶「勇者様!!!どうしたのですか?!」

勇者「謂れの無い罪で捕まってしまいまして」

魔法使い「どうせ女のエルフを追っかけまわしたんでしょ?」

勇者「おや。よくわかりましたね。半分、正解です」

僧侶「勇者様……」

長老「やはり貴様らは仲間だったか」

勇者「いえ、違います」

魔法使い「そうね。仲間だった、からね」

僧侶「……」

エルフ「喧嘩ですか?」

僧侶「そうなんです」

エルフ「ふーん」

長老「こちらとしても都合がよいな」

勇者「……」

魔法使い「どういうことよ?」

長老「三人まとめて処刑を行う」

僧侶「えぇぇぇ?!」

魔法使い「ちょっと待って!!この変態は死刑でもいいけど、私たちは関係ないわ!!」

勇者「僕、勇者なのに情状酌量の余地なしですか?酷い」

長老「我が一族の掟だ。疑わしき人間は全て罪人として処罰する」

僧侶「そ、そんなぁ……」

―――牢屋

魔法使い「アンタねえ!!どうして別れてもこういうことに巻き込むのよ!!」

勇者「これはもう運命の赤い糸で結ばれているのかもしれませんね」

魔法使い「バッカじゃないの?!」

僧侶「あの……抑えてください……」

魔法使い「あんたもどうして文句言わないの?!」

僧侶「えっと……私は勇者様と合流できてほっとしてますけど……」

魔法使い「もう……」

勇者「でも、僕たちの命もここで終わりですね」

魔法使い「アンタの所為でね」

勇者「勇者の血を絶やすわけにはいきません。さあ、服を脱いでください」

魔法使い「なに考えてるのよ?!」

僧侶「そ、そうです!どうせみんな死ぬんですから、種をまいても……」モジモジ

魔法使い「そういう意味じゃないわ!!!」

エルフ「楽しそうですね」

勇者「あ、ボクっ娘さん」

エルフ「貴方は黙ってて」

勇者「はっ!」

魔法使い「なに?処刑方法が決まったの?」

エルフ「我々の処刑は儀式的に行います。―――貴方たちは特設の舞台に上がり、そこで神官三名と戦って頂きます」

僧侶「し、神官と戦うのですか?」

エルフ「はい」

魔法使い「エルフの神官って……」

エルフ「この里で最も魔術に長けた者たちです」

僧侶「昔、死刑囚と猛獣を戦わせ見世物にする処刑があったと聞きます……。そういった類のものですね?」

エルフ「端的に言えばそうなります」

魔法使い「人間じゃエルフの神官にか到底叶わないと知っていて……」

エルフ「でなければ処刑になりませんから。ですが、万が一、神官たちを倒せば……」

僧侶「解放されるのですね」

エルフ「はい。それはお約束致します」

魔法使い「……」

僧侶「……」

勇者「公開処刑とはなんとも残忍な」

エルフ「勝てばいいのです。勝てば」

魔法使い「そんなの無理に決まっているでしょう」

僧侶「そうですよ!!」

勇者「……貴女もそう思っていますか?」

エルフ「え……」

勇者「……」

エルフ「当然。神官たちが負けることはまずありえない」

勇者「あーっはっはっはっはっは!!」

エルフ「な、なに!?」

魔法使い「ついに壊れた?」

勇者「僕の側室候補ともあろう御人が、まさか節穴の双眸だったとは……情けない。僕はガッカリしました」

エルフ「なんだって……?!」

勇者「この二人はこの僕が!!勇者である僕が目をつけた術士だ!!!」

僧侶「あの……」

魔法使い「外見だけで選んだくせに」

エルフ「それがなに?」

勇者「つまり、エルフの神官よりも強い」

エルフ「な……?!」

僧侶「えぇぇぇぇ?!」

魔法使い「そうだったの?!」

エルフ「二人が私より驚いているけど?」

勇者「敵を欺くにはまず味方から。二人にはいつも罵りの言葉を叩きつけてますからね。二人は自分のことをできねえやつだと思い込ませていました」

エルフ「どうしてそんなことを……」

勇者「自分よりも優秀な奴に勝てば励みになる。勝利の快感を覚えれば、更に努力しようと思えるでしょう?」

勇者「自分は天才だ。勝って当たり前と思っていては、それが自分の限界だと決めつけ、努力をしなくなる!!だからこそ、僕は身を削る思いで蔑んできました」

僧侶「そうでしたっけ?」

魔法使い「むしろ、いつも褒めてくれてた気がするわ」

勇者「だから、今こそ本気を出すときです!!」

僧侶「そう言われましても……」

魔法使い「流石に魔法の創造主を倒すなんてこと……」

エルフ「では、楽しみにしている」

勇者「望むところだ。忘れるな。僕たちが勝てば、お前は俺の側室だからな」

エルフ「誰がそんな約束した?!」

勇者「したよ!!しらばっくれるな!!」

エルフ「……いいでしょう。受けて立ちます」

勇者「やったー」

エルフ「ふんっ。どうせ、勝つことは不可能だけど……」

勇者「やってみなくてはわかりません」

エルフ「……」

勇者「僕は死ぬわけにはいきません。最後まで足掻いてみせます」

エルフ「苦しむのは貴方だ。―――魔王に歯向かわなければ、こんなにことにならなかったのに……」

勇者「……」

―――夜

勇者「……」

僧侶「ふわぁぁ……はぁ……」

勇者「お二人はもう休んだほうがいいですよ?」

魔法使い「変なことする気?」

勇者「してもいいですか?」

魔法使い「ダメに決まってるでしょ?」

勇者「では、何もしません」

僧侶「あの……勇者様、何をされて……?」

勇者「明日、どう戦うかを考えています」

魔法使い「無理よ。考えるだけ無駄。どんなに戦術を組んでも、圧倒的な戦力には負けるわ」

勇者「……」

僧侶「勇者様……」

勇者「絶対に死なない……こんなところで……死んでたまるか……」

魔法使い「アンタ……どうしてそこまで……」

―――魔王城

長老『―――明日、勇者と戦います』

魔王「でかした。ふふふふ……たまには役に立つな。負けてもいい。しっかりと相手の能力を測れ」

長老『ですが……恐らく、殺してしまいます』

魔王「構わん。殺せるなら殺せ」

長老『わ、わかりました……』

魔王「ふん……。ニンゲンに魂を売った下等種族どもめ……」

ドラゴン「捨て駒としてはいいですね」

魔王「ああ。勇者一行の能力を調査するためには戦うしかない。しかし、全力を出させるためにはそれなりの実力者が必要だ」

ドラゴン「とはいえ、戦の前に貴重な強者を向かわせるわけには行きませんからね。失ってしまったとき、大きな損害となりますし」

魔王「そうだ。だが、エルフの連中はいくら死んでも良い。我らには非協力的だしなぁ」

ドラゴン「しかも、ニンゲンよりも強い。この上ない適材者ですね」

魔王「勇者が死ぬのならそれでよし。生きていても、勇者らの特徴は得られる。どちらに転んでも得をするのは我だ……くくくく……」

ドラゴン「結果が楽しみですね」

魔王「全くだな……」

―――翌朝 エルフの里 牢屋

兵士「出ろ」

勇者「……」

僧侶「ついに……」

魔法使い「ふぅー……」

兵士「ついてこい」

勇者「……」

僧侶「まさか……こんな森の奥で死ぬことになるなんて……」

魔法使い「はぁ……怖くなってきたわ……」

僧侶「わ、私も体の震えが……止まりません……」

勇者「……」

魔法使い「アンタは?」

勇者「え?」

魔法使い「怖いでしょ?」

勇者「僕だけなら相当怖かったですが、貴女たちがいるなら怖くありませんね。むしろ、緊張できなくて困るぐらいです」

魔法使い「また強がり言って」

勇者「本当ですよ」

僧侶「相手はエルフですよ?!」

勇者「僕は勇者です。そして貴女たちは有能な魔法使いと僧侶です」

僧侶「そ、そんな真顔で言われても……」

魔法使い「いい?!今までの魔物みたく本能で向かってきたり、魔法が簡単に通じる相手じゃないのよ?!」

勇者「でしょうね。だからこそ、戦術が大事になります」

僧侶「えぇ……」

魔法使い「無理よ……。今度ばかりは……」

勇者「できますよ」

僧侶「どうして……そこまで断言できるのですか……?」

勇者「貴女たちがすごい術者だからです」

魔法使い「はぁ……なんの根拠もないってことね……」

僧侶「うぅ……」

勇者「絶対勝つぞー!!おー!!」

―――処刑場

長老「ではこれより、洗礼の儀を執り行う!!」

長老「罪人よ。聖地へ足を踏み入れることを許可する」

兵士「上がれ」

勇者「……」

僧侶「……っ」ガクガク

魔法使い「できるだけ、苦しくない方法で殺して欲しいわね」

僧侶「そ、そうですね……」

長老「罪を流す者よ、聖地へ」

神官「……」

勇者「あの人たちが……神官ですか……」

神官「……準備は整っております」

神官「右に同じ」

神官「いつでも、どうぞ」

長老「罪深き者たちに洗礼を!!!」

勇者「では、手筈通りに」

魔法使い「ほ、本当に大丈夫なんでしょうね?」

僧侶「勇者様……本当に私は抱きついているだけでいいのですか?」ギュゥゥ

勇者「ぬほほぉ。―――はい」キリッ

魔法使い「なんで私が矢面に……」

勇者「貴女の能力なら大丈夫です」

魔法使い「信じられないけど」

勇者「向こうは魔法のプロフェッショナル。だからこそ、貴女たちの苦しみなど絶対に分からない」

僧侶「それって……」

神官「では……洗礼を始める」

勇者「来ます!!」

魔法使い「ええい!!もうどうせ死ぬなら……!!!」

神官「炎よ!」ゴォォォ

魔法使い「―――はぁ!!!」コォォォ

神官「な……!!炎を掻き消した……?!」

長老「ん……?!なんだ……今のは……?」

エルフ(まさか……全力ではないとはいえ、いとも簡単に……神官の魔法を……)

魔法使い「ほ、炎なんて私には効かないわ!!」

魔法使い(冷気を纏っただけだけど……)

神官「面白い……では……!!―――凍れ!!!」コォォォ

魔法使い「氷も効かない!!」ゴォォォ

神官「なんだと……」

神官「中々の能力者。注意せよ」

神官「うむ」

魔法使い「……っ」

勇者「よし。警戒を強めた」

僧侶「それって……本気にさせたってことですよね?」

勇者「さあ、次行きますよ」

僧侶「は、はい!」ギュゥゥ

神官「では、手加減はしない。―――雷よ!!」バリバリ

勇者「雷!?」

神官「終わりだ」

僧侶「きゃぁぁ!!!」

勇者「絶対に離れないでください!!」

僧侶「は、はい!!」ギュゥゥゥ

―――ドォォォォン!!!!

長老「―――終わったか」

エルフ「……」

神官「儀式は終了」

神官「では、死体の回収をおこな―――」

勇者「―――はぁぁ!!!」ゴォッ

神官「なに……!!」

勇者「せいっ!!」ザンッ

神官「バ……カ……な……」ドサッ

勇者「砂塵を巻き上げては、敵を見失う。状況によっては今みたいに隙をつくることになります。覚えておいてください」

神官「理解不能」

神官「何故、無傷でいる……。確かに直撃したはず……」

勇者「結構痛いですよ。でも、僕は無敵なんで」

僧侶「うっ……」ギュッ

勇者「(大丈夫ですか?)」

僧侶「(は、はい……)」

長老「どうなっている……!?」

エルフ「そんな馬鹿なこと……」

勇者「これだけははっきり言っておきます。僕を倒すことはできないぞ!!!」

神官「思考中」

神官「魔力を解放する。肉体を滅裂させれば再生も不可能のはず」

勇者「ああ、やっぱり力があるとそういう力押しができていいですねえ!!全くぅ!!」

僧侶「(勇者様、流石に治癒が追いつかない傷を負えば……)」

勇者「(分かっています)」

魔法使い「(ちょっと、あれは多分指定した空間を爆発させる魔法よ?!どうするの?!)」

勇者「指定した空間を?」

魔法使い「そうよ!!」

勇者「やったー!!」ダダダッ

僧侶「えぇ?!特攻?!」

神官「なに……?!」

勇者「爆発させる魔法は近距離では使えない。それは以前に聞きました」

魔法使い「あ……」

神官「くっ……!!」バッ

勇者「遅いっ!!!」ズバッ

神官「がっ……?!」ドサッ

勇者「二人目だぁ!!!」

神官「……」

勇者「ふん。いくら魔法ができるからって、やりようはいくらでもある!!」

神官「……」

勇者「もう声も出ませんか?!ええ、おい!!」

神官「……」

勇者「あーん?」

神官「爆発」

勇者「え―――」

ドォォォォン!!!!

僧侶「きゃぁ?!」

魔法使い「なっ……!?自爆?!」

勇者「うっぁ……ずっ……」

僧侶「勇者様ぁ!!!」タタタッ

神官「損傷甚大……」

勇者「まさ……か……捨て身……とは……」

僧侶「今、治癒を……!!」ギュッ

勇者「あ、ありがとうございます」

神官「治癒開始」

魔法使い「一撃でしとめないと、向こうも回復しちゃうわね……」

神官「爆炎放出」ゴォォォ

僧侶「きゃぁ?!」

魔法使い「炎なら!!」コォォォ

神官「……」

魔法使い「効かないわ」

神官「氷塊放出」

魔法使い「無駄よ!!」ゴォォォ

神官「……」

魔法使い「はぁ……はぁ……」

勇者(これ以上はまずい……タネがバレたら……)

僧侶「うぅ……」ギュゥゥ

神官「解析完了」

魔法使い「え……?」

神官「炎、継続放出開始」ゴォォォ

魔法使い「なっ……!!」コォォォ

神官「貴殿、魔法放出不可」

魔法使い「ちょっ……!!」

勇者「まずい……!!早くトドメを……!!!」ダダダッ

僧侶「勇者様!!」

勇者「うおぉぉぉ!!!!」

神官「爆炎放出」ゴォォォ

勇者「うぁ!!」

魔法使い「馬鹿!!なにやって―――」

神官「最大出力」ゴォォォォ

魔法使い「やめて……よ……!!もう……魔力が……!!!」コォォォ

僧侶「ど、どちらに抱きつけば……!!」オロオロ

神官「貴殿、魔力残量皆無」

魔法使い「うる……さい……やれる……これぐら、い……!!!」

神官「諦観推奨」

魔法使い「そ、そんなこと……奨めないでよ……!!」

長老「どういうことだ……これは……?」

エルフ「あの二人の術者。少し様子が変ですね」

長老「うむ。神官の魔法を相殺できるほどの魔力を放出しておいて、それを攻撃に転換しないとは」

エルフ「しないというより、できないのでは?」

長老「む……それは……」

エルフ「できるのであれば、治癒も抱きつくほど密着する必要はないですし、魔法で攻撃するのも安全な遠距離で行うはず」

長老「相手との力量が違いすぎるから奇をてらった方法を用いているのではないか?」

エルフ「攻撃魔法を防御に使うのはありえますが、それなら先ほど神官が弱っているときに追撃をかけないのが不自然です」

長老「そういえばあの術者たちは魔法について学びたいを言っておったな……」

エルフ「魔法を上手く使いこなせないということでしょうね」

長老「そういうことか。分かってしまえばどうということはないな」

エルフ「ええ。時間をかければ終わります。エルフの魔力量は人間の数十から数百倍ですからね」

長老「ああ……。人間にとっては無限に等しいだろう」

エルフ「儀式終了も時間の問題ですね……」

エルフ(悪く思わないで……。これも全て貴方たちが魔王と戦おうとするから……)

   ∩___∩             ∩___∩
   |ノ      ヽ            |ノ      ヽ
  /  (゚)   (゚) |          /  (゚)   (゚) |
  |    ( _●_)  ミ 1クマ♪    |    ( _●_)  ミ  2クマー♪
 彡、   |∪|  、` ̄ ̄ヽ    /彡、   |∪|  ミ
/ __  ヽノ   Y ̄)  |   (  (/     ヽノ_  |       
(___)       Y_ノ    ヽ/     (___ノ
     \      |       |      /

      |  /\ \     / /\  |

      | /    )  )    (  (    ヽ |
      ∪    (  \   /  )    ∪
            \_)  (_/
      ∩___∩
   (ヽ  | ノ      ヽ  /)
  (((i ) / (゜)  (゜) | ( i)))  3クマーwwwwww

 /∠彡    ( _●_)  |_ゝ \
( ___、    |∪|    ,__ )
    |     ヽノ   /´
    |        /


勇者(このままじゃ……!!)

神官「……」ゴォォォ

魔法使い「くぅ……ぁ……ん……!」コォォ

僧侶「……っ」タタタッ

魔法使い「え……?」

僧侶「……」ギュッ

魔法使い「あんた……!!」

僧侶「うぅ……」ガクガク

魔法使い「……もう!!」コォォォ

神官「無意味」ゴォォ

魔法使い「死にたくないから足掻くのよ!!悪い?!」

僧侶「うぅぅ……ぅ……ぐすっ……ゆう……しゃさま……たすけて……」

勇者「あ……!!」

勇者(あ、いや……上手くいくかはわからない……それ以前に二人を危険な目に合わせてしまう……)

勇者(だが……迷ってはいられない……!!)

勇者「わかった!!諦める!!」

神官「……」ピクッ

魔法使い「ど、うし……て……」

僧侶「そ、んな……」

勇者「もうお二人を苦しませないでください」

神官「……」

魔法使い「まだ……やれる……のに……」

勇者「もう無理ですよ。やめましょう。お二人とも、もう魔力が……」

僧侶「あぁ……うぅ……」ガクッ

魔法使い「しっかりして!」

僧侶「私たち……ここで……終わり……なんですね……」ウルウル

勇者「残念ですが……治癒する術が無い以上、勝ち目はありません」スッ

僧侶「……」

勇者「申し訳ありません。僕が不甲斐ないばかりに……」

僧侶「いえ……」

魔法使い「やめて……」

勇者「……」

魔法使い「アンタはいつも諦めなかったじゃない……!!」

勇者「勝算があったからですよ」

魔法使い「何よ……今はないっていうの……?」

勇者「はい」

魔法使い「どうしてよ!?綺麗なお嫁さんと側室を10人はべらせるんでしょ?!」

勇者「志半ばで力尽きる人が殆どですよ」

魔法使い「なんで……やめて……」

勇者「本当に申し訳ありません。自分が馬鹿なことをしなければ、貴方達を巻き込むこともなかったのに……」

魔法使い「……」

勇者「僕から処刑しろ」

神官「……」

魔法使い「本気なの……」

僧侶「勇者様……」

長老「観念したのか……致し方ないな……。所詮は人間だったか……」

エルフ「……」

神官「処刑容認」スッ

勇者「魔法で殺すのか……?」

神官「肯定」

勇者「できるだけ痛くないように頼みます」

神官「了解」

勇者「ふぅー……」

魔法使い「いや……だ……め……」

僧侶「……」

神官「―――爆破」

勇者「……っ」

僧侶「―――やめてぇ!!!」バッ

神官「!?」

ドォォォン!!!

魔法使い「なっ……!!」

長老「どうした!!」

エルフ「庇ったの……?」

僧侶「ぅ……ぁ……」

勇者「……!!」

神官「失敗」

勇者「……」

魔法使い「いやぁぁぁ!!!!」

神官「処刑開始」スッ

勇者「くっ……!!」ジリジリ

神官「撤退不可。抵抗無意味」スタスタ

勇者「……っ」

魔法使い「あぁ……ぁ……!!!」ガクガク

神官「処刑開始」スッ

勇者「……」

エルフというよりもゴブリン並みの性格の悪さだな

僧侶「……」スクッ

長老「なに?!」

エルフ「え……!?」

神官「……?!」バッ

僧侶「……」

神官「理解不能……!!」スッ

勇者「―――でぁぁぁ!!!」

神官「……!!」

勇者「あぁぁぁぁ!!!!」ザンッ

神官「はっ……ぁ……!?」

勇者「はぁ……はぁ……戦闘中に背中を向ける奴が……あるか……ど素人め……!!」

魔法使い「え……どうして……?」

僧侶「や……やりま……し……」フラッ

勇者「危ない!!」パシッ

僧侶「ゆう……しゃ……さま……」ニコッ

>>302
ゴブリンは低知能と劣等から来る性格の歪みだが
エルフは自分は高等な種族だと認識して他種族見下してるから
性格めちゃくちゃ糞悪いよ

海外は殆ど性格悪だが、日本の作品は高飛車ツンデレが多いな

長老「馬鹿な……神官の魔法を受けて……立ち上がるなんて……!!」

勇者「彼女は常に治癒魔法が漏れている状態なんです」

エルフ「え?」

勇者「だから、魔力さえ残っていれば自動的に自分を治癒する」

魔法使い「でも……もう治癒できるだけの魔力は……」

勇者「魔力を回復させれば問題はありません。たとえ雀の涙ほどでも魔力があるなら、多少なりとも傷は癒えます」

魔法使い「それはそうだけど……どうやって回復させたわけ……?」

勇者「大丈夫ですか?」

僧侶「気絶しなかったのが……奇跡……ですね……」

勇者「本当に。だから、危ない賭けでした」

僧侶「ふふ……私でも……お役に……立て……ましたか……?」

勇者「ええ……」

僧侶「うれ……し……ぃ……」

魔法使い「大丈夫なの!?」

勇者「気を失っただけです。問題ありません。でも、絶対安静ですね……」

長老「馬鹿な……人間に……負けるとは……」

エルフ「こんなことって……」

勇者「まずは彼女の休む場所を用意してください」

魔法使い「大丈夫!?ねえ!!」

僧侶「うぅ……」

勇者「魔力はもう残っていないでしょうね。傷が殆ど癒えていない」

長老「そんな……こんなことあってはならん……!!」

エルフ「長老……」

長老「人間に……我々が……!!」

エルフ「長老、しっかりしてください」

勇者「慢心した結果だ。人間は貴方たちが思っているほど、弱くはない」

長老「数の暴力しか知らぬ……野蛮な種族……のはず……なのに……」

勇者「お願いします。今は一刻も早く、彼女を休ませてあげたいのです」

エルフ「……こちらに」

僧侶「ぁ……ぅ……」

―――エルフの家

エルフ「……」パァァ

僧侶「うぅ……ぅ……」

エルフ「これで大丈夫でしょう」

勇者「本当ですか?」

エルフ「ええ」

魔法使い「よかったぁ……」

エルフ「だけど、しばらくは安静にしておかないと……」

勇者「……」

エルフ「それでは、ボクはこれで」

勇者「待ってください」

エルフ「なに?」

勇者「……ありがとうございました」

エルフ「……ごゆっくり」

勇者「……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

魔法使い「本当によかった……」

勇者「いやー、死ぬかと思いましたね」

魔法使い「ねえ……どういうことなの?この子は魔力がなくなってたはずなのに」

勇者「以前、彼女に携帯させた物を使ったのですよ」

魔法使い「え?」

勇者「すぐに魔力が枯渇する彼女にとって最大の武器に成り得る……これを」スッ

魔法使い「それ……非常食?」

勇者「僕を庇う直前に食べるように言っておきました。魔力は睡眠か食事を取ることで回復するとのことですので」

魔法使い「死んだらどうするつもりだったの?」

勇者「そのときは……諦めるしか……」

魔法使い「……」

勇者「申し訳ありません。僕は最低の手段を選び、彼女を危険に晒しました。どんな罰も受けるつもりです」

魔法使い「私に言われても……困るわ……」

勇者「申し訳……ありません……」

―――長老の家

長老「魔王様……」

魔王『結果は?』

長老「勇者は生きております」

魔王『殺し損ねたか。下等種族では荷が勝ちすぎていたか?』

長老「勇者らの体質を知っていれば、負けはしませんでした」

魔王『言い訳はよい。して、体質とはなんだ?』

長老「勇者は魔法の類を一切使えぬ人間であり、剣術に長けています」

魔王『ふむ……』

長老「そして二人の術者ですが……こやつ等が一癖ありまして……」

魔王『早く言え』

長老「一人は魔力の放出ができず、相手に接触しなければ傷を負わせることが叶いません」

長老「治癒魔法を操る者は常に魔力が漏れている状態で、魔力が尽きぬ限りは自身と自身に触れた者を癒します。ですが、魔力はすぐに尽きてしまいます」

魔王『欠陥の特異体質というわけか。ふはははは……そうか……感謝するぞ、エルフの長よ。これで我の勝利は約束された』

長老「はい……」

―――エルフの家

僧侶「……」

勇者「……」

魔法使い「いい加減、休んだら?」

勇者「……」

魔法使い「目が覚めるまでもう少しかかるわよ」

勇者「ですが……」

魔法使い「いいから。もしかしてアンタ、無意味に服を脱がせたりしようなんて考えてないわよね?」

勇者「そんなこと考えていません」

魔法使い「本当かしらぁ?」

勇者「僕の所為で……彼女は……」

魔法使い「……いいから、休んで。アンタだって、傷ついてヘトヘトのはずよ?」

勇者「……」

魔法使い「これは命令。休め」

勇者「わかりました……」

―――エルフの里

勇者「……」

エルフ「何をしている?」

勇者「……」

エルフ「怒っているの?」

勇者「はい」

エルフ「でも、貴方たちだってボクたちに対して……色々と酷い仕打ちを……」

勇者「自分が許せません」

エルフ「え……?」

勇者「僕が囮になるべきだった……!!」

エルフ「……」

勇者「生き残れる可能性があると分かったとき……僕は最も可能性が高い方法を手にとってしまった……」

勇者「二人を守る立場にいる僕が……」

エルフ「でも、誰が囮になっても失敗したらみんな死んでいた。なら、成功率が高い手段を選ぶのは当然だと思うけど……」

勇者「誰が囮になってもよかったのなら……僕がなるべきだったんです……!!」

エルフ「……」

勇者「すいません。貴女にこんなことを言っても……仕方ないですね……」

エルフ「別に……」

勇者「……」

エルフ「貴方達三名は現時刻をもって、解放されることになりました」

勇者「ありがとうございます」

エルフ「できればすぐにでも立ち去ってもらいたいのですが」

勇者「それは……」

エルフ「わかっています。一人は重傷ですから、暫くの間は面倒を見ます」

勇者「もしかして僕だけを……?」

エルフ「ええ。元はといえば、貴方が騒ぎを大きくしたわけですから。貴方がこの里からいなくなれば、誰も文句はいいません」

勇者「わかりました。なら彼女たちだけでも―――いや、それはしないほうがいいですね……」

エルフ「え?」

勇者「こちらの弱点は魔王を通じて他の魔族にも伝わっているはず。彼女たちだけを置いていくことは……もう出来ません」

エルフ「そうですか……」

勇者「……」

エルフ「道中、お気をつけて」

勇者「はい?」

エルフ「それでは」

勇者「ちょっと待ってください!!」

エルフ「なんですか?」

勇者「おかしいなことを言わないでください」

エルフ「は?」

勇者「貴女がどうして旅の成功を祈る側にいるのですか?」

エルフ「だって……」

勇者「貴女は祈られる側ですよね?」

エルフ「なんで?!」

勇者「あれー?約束……忘れたなんて言わないですよね?誇り高きエルフ族が、そんな馬鹿なこと……」

エルフ「な、なんのこと……?」

勇者「僕たちが勝てば貴女は僕の側室になるって約束……しましたよね?」

エルフ「あ……!!!」

勇者「ぬほほぉ!!」

エルフ「ボクは……!!」

勇者「ダメ」

エルフ「待って!!ボクはエルフだ!!人間と関係を持つことは許されない!!そういう戒律がある!!」

勇者「あっそ。いや、でも、約束は守ってくださいね」

エルフ「待って!!エルフ族に伝わる妖精の剣と鎧を貴方に差し上げるから!!!」

勇者「そんなのいりません」

エルフ「じゃあ、盾もつける!!」

勇者「いりませんて」

エルフ「兜もあげるぅ!!!」

勇者「僕はね……貴女が欲しいのですよ」キリッ

エルフ「そんなぁ……」

勇者「では、すぐに支度を整えてください」

エルフ「待って!!お願い!!あれはなかったことにぃ!!!」

―――エルフの家

魔法使い(アイツ……大丈夫かしら……)

魔法使い(すごく自分を追い詰めてたみたいだけど……)

魔法使い「はぁ……ああいうとき……どう声をかけたらよかったの……?」

魔法使い「ねえ……?」

僧侶「すぅ……すぅ……」

魔法使い「私って……やっぱり……ダメね……」

魔法使い「気の利いたことも言えないなんて……」

勇者「ただいま戻りました」

魔法使い「あ。さっきは―――え?」

エルフ「おねがいしますぅぅ!!!許してくださぁぁぁい!!妖精の妙薬もあげますからぁぁぁ!!!」ギュゥゥゥ

勇者「だから、貴女以外いらないのですよ。分からない人ですねぇ」

エルフ「戒律を破るとボクが処刑されるんですよぉ!!!」

勇者「なら僕が生涯をかけて匿ってあげます。ほら、解決した」

エルフ「ちがうぅぅ!!!そういう問題じゃないぃぃ!!!」

魔法使い(元気そうね……)

勇者「まだ、目覚めてないのですか?」

魔法使い「ええ」

勇者「少々酷ですがいつでもここを発てるようにしておいてください」

魔法使い「え……!!でも!!」

勇者「エルフ族は仲間意識が非情に強いですから。ここに留まることは危険です。色々と」

魔法使い「それって……他の魔物を呼んで私たちを……」

エルフ「そんなことはしない!!」

魔法使い「でも……魔族は魔族でしょ?―――あと、ソイツから離れてくれない?」

エルフ「あ……」パッ

勇者「ちっ」

エルフ「我々は人間と友好関係を築いていた過去がある。そのため、他の魔族からは敵視されているぐらいだ」

魔法使い「じゃあ、魔王とも敵対関係なの?」

エルフ「中立……といいたいところだけど、魔王が何か命令してきたら逆らえない。逆らえばきっと……一族が滅びるから」

勇者「それは酷い。こんなに美しい一族を葬るなんて……魔王!!許さん!!」

魔法使い「まあ、いいわ。要するに魔王には絶対服従なのね?」

エルフ「……」

勇者「僕たちは魔王に目をつけられていますからね。処刑命令が出てもおかしくありません」

魔法使い「わ、私は嫌よ!!もう一度、エルフと戦うなんて!!」

勇者「それは僕もです。だから、彼女が目覚め次第、いつでも動けるようにしておきましょう」

魔法使い「……仕方ないわね」

勇者「貴女もですよ」

エルフ「ちょっ……!?」

魔法使い「え?どういうこと?」

勇者「彼女とは約束しましたからね。僕たちが勝てば僕の側室になると」

魔法使い「あー……」

エルフ「だ、だからぁ!!!あれはその場の勢いで……!!!」

勇者「約束も守れないのか!!!それでも誉れ高きエルフ族か?!えぇ!!おい!!!こっちは命かけたんだ!!お前も命かけろ!!!」

エルフ「め、めちゃくちゃじゃないですか……」ウルウル

勇者「おっと。すいません。つい熱くなってしまいました。でも、大丈夫です。僕の側室になれば将来は約束されたようなものですから」

エルフ「いやぁ……なんで……こんなことにぃ……」メソメソ

勇者「僕に惚れられたのが運の尽きですね」

エルフ「全くです……」

魔法使い「ちょっと……ということは、このエルフもこれから一緒に行動するの?」

勇者「はい」

魔法使い「それって……あの……」

エルフ「あの……妖精の笛もつけますから」

勇者「そんなに嫌ですか?」

エルフ「はい……」

勇者「わかりました……」

エルフ「えっ?!」

勇者「そこまで嫌だというなら……僕も考えましょう」

エルフ「ほ、ほんとうに?!」

勇者「無理強いなんてさせたくありませんからね」

エルフ「よ、よかった……理解ある人間で……」

勇者「貴女が一緒にこないというなら、僕たちはこの里のことを号外で人間たちに伝えます」

エルフ「えぇぇぇ?!」

魔法使い「それは流石に……!!」

勇者「そうなったらこの森に何万という人員が投入され、貴方達は……喰われますよー!!がおー!!!」

エルフ「いやぁぁぁ!!!」

勇者「さぁ!!!どうする?!貴女一人が犠牲になって里を救うか、それとも人間たちから逃げ隠れる道を選ぶか!!!」

エルフ「そんなの酷いっ!!」

勇者「好きなほうを選んでください。無理強いなんてさせたくないですから」

魔法使い「あんた……悪魔なの……?」

勇者「さぁ?どうするんですかぁ?」

エルフ「くっ……」ウルウル

勇者「ぬほほぉ……」

エルフ「……ます……」

勇者「え?」

エルフ「行きます!!ボクも連れて行ってぇ!!!」

―――夜

魔法使い「一応、いつでも出発できるようにはしておいたわ」

勇者「ありがとうございます」

魔法使い「……」

勇者「軽蔑しますか?」

魔法使い「いや……アンタらしくないなと思って……」

勇者「どうしても必要でした」

魔法使い「側室に?」

勇者「……はい」

魔法使い「あきれた……」

勇者「……」

魔法使い「ねえ……それじゃあ……私たちはここまでなの?」

勇者「え?」

魔法使い「エルフがいるなら……私たちはいらない……でしょ?エルフ一人で攻撃も治癒もできる……し……」

勇者「何を言ってるんです?」

魔法使い「だって……」

勇者「お二人も必要ですよ。無論、連れて行きます」

魔法使い「でも……一回、別れてるし……」

勇者「こうして再会できました。これも赤い糸で結ばれている証拠ですよ」

魔法使い「はぁ!?」

勇者「それに一緒に行動してもらわないと困ります。魔王は僕たち三人を狙っているわけですから」

魔法使い「そうだけど」

勇者「もう休んでください。彼女の看病は僕が引き受けましょう」

魔法使い「……」

勇者「どうしました?」

魔法使い「あ……ありがとう……」

勇者「何に対してですか?」

魔法使い「バーカ」

勇者「……?」

勇者「まあ、いいか」

勇者「……」

僧侶「……」

勇者「……申し訳……ありません……」

僧侶「……勇者様……自分を責めないでください……」

勇者「……!!」

僧侶「あのときはああするしか……無かった……」

勇者「しかし……」

僧侶「貴方は最善の策を……」

勇者「違う。貴女を危険に晒すことなく突破できた……のに……」

僧侶「それだと……勇者様が……私のような目に……」

勇者「……」

僧侶「いつもそうですね……」

勇者「なにがですか?」

僧侶「貴方はいつも……全部一人で解決しようとしていました……。わざと別行動をとったのも……」

勇者「やめてください。あれは僕の失言が原因です。意図もなにもありません」

僧侶「エルフを探そうと考えたのは……私たちだけではドラゴンに……魔王に勝てないと判断したからですよね?」

勇者「魔王。今まで誰も魔王と対峙することが叶わず散っていったために、その力は未知数でした」

勇者「ですが、おとぎ話の怪物を従えていると分かり、愕然としました。恐らく……いや、確実に人間では敵わないと悟った」

僧侶「……」

勇者「貴女たちの能力が劣っているから、僕が勇者としては未熟だからなんて理由ではない。絶望的な力の差がある」

僧侶「だから……私たちを突き放して……同じおとぎ話のエルフ族を仲間に……?」

勇者「貴女たちの目的が復讐だと聞き、きっと簡単には別れてくれないと思いました。だから……」

僧侶「勇者様……」

勇者「あの時は酷いことを……そしてこの度も……」

僧侶「よかった……」

勇者「何がでしょうか?」

僧侶「少しだけ……あれは本心だったのではないかって疑っていました……でも……勇者様はやはり……お優しい……」

勇者「……」

僧侶「好きです……そんな勇者様が……。だから……傍にいさせてください……」

勇者「……何を言っているのですか。貴女は側室候補。傍にいてもらわないと僕が困りますよ、はい」

僧侶「ふふ……嬉しい……」

勇者「え?」

僧侶「私は側室で構いません……よ……?」

勇者「えっ?」

僧侶「……」

勇者「あの……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

勇者「……おやすみなさい」

エルフ「あのー」

勇者「おや、どうされました?」

エルフ「いつ出発するの?」

勇者「明朝にします」

エルフ「わかった。ボクは森の外で待ってるから……」

勇者「こっそり出るのですね」

エルフ「当然でしょ!?見つかれば極刑だし……。もうこの里には戻れないし……うぅ……」ウルウル

―――翌朝

魔法使い「起きて……ねえ……起きて……」ユサユサ

勇者「ん……?」

魔法使い「ほら、顔でも洗ってきて」

勇者「あ……はい……」

魔法使い「もう……」

僧侶「おはようございます」

勇者「おお!!もう大丈夫なのですか?」

僧侶「はいっ。勇者様が一晩中、お傍にいてくれたおかげです」

勇者「それはよかった」

僧侶「ふふ……」

勇者「……」

僧侶「あの……なにか?」

勇者「いえ。では、洗顔してきます。そのあと、すぐに出発しましょう」

僧侶「はい」

魔法使い「顔色もいいし、もう大丈夫みたいね」

僧侶「ご心配をおかけしました」

魔法使い「いいのよ。―――それよりも……アイツが心配だわ」

僧侶「勇者様がですか?」

魔法使い「あんたを傷つけたって、すごく落ち込んでたから」

僧侶「そうみたいですね……」

魔法使い「まだ引き摺ってなきゃいいけど……」

僧侶「……」

勇者「―――お待たせしました」

魔法使い「はい、荷物」

勇者「ありがとうございます」

魔法使い「さ、行きましょ」

勇者「そうですね。きっとボクっ娘さんも待っていますし」

僧侶「え?誰ですか?」

魔法使い「エルフよ。こいつ、ついに人外にまで手を出したのよ。呆れちゃうでしょ?」

僧侶「その方も……側室候補なのですか?」

勇者「はい」

僧侶「そうですか」

魔法使い「それだけ?もっと批難すべきよ、これは」

僧侶「いえ。人間とエルフの恋は実際にあったと聞きます」

魔法使い「え?」

僧侶「それは悲恋だったようですが……。でも、勇者様ならきっとエルフとも純愛を貫けると思います」

魔法使い「ちょっと!!側室10人って時点で不純じゃないの!!」

僧侶「私は……勇者様のお傍に居られたら……」

魔法使い「はぁ?!」

僧侶「あ……すいません。失言ですね」

魔法使い「……」

勇者「ふっ。僕は正妻と10人の側室を区別しません。変わらぬ愛情を注ぐ覚悟があります」

僧侶「それで十分です……勇者様……」

魔法使い「あの……え……?」

―――エルフの森

勇者「それでは色々とお世話になりました」

僧侶「ありがとうございました」

魔法使い「本当、色々とお世話になったわね」

長老「……もう会うことはないだろう」

勇者「あの、一つだけよろしいですか?」

長老「なんだ?」

勇者「この里、随分と見つかりやすい場所にあったようですが……今まで、人間に見つかったことはないのですか?」

長老「おぬしらが倒した神官たちの力を合わせれば、結界を張り集落そのものを不可視にすることも可能だ」

魔法使い「不可視ですって?」

僧侶「そんな……でも……私たちには今もこうして見えてますよね?」

勇者「そのようなことができるのに、僕たちの侵入を許したのですか?」

魔法使い(そうよね。こんなにあっさり見つけられるんじゃ、大勢の人間に見つかっているはず……)

長老「……」

勇者「やはり魔王ですか?」

長老「魔王から勇者一行が近くにいると伝えられた。そして勇者が目の前に現れれば、その能力を測れともな」

勇者「やはりそうでしたか」

長老「初めは一人だけだったから、また我らの身柄を狙う不貞の輩と思ったがな」

勇者「不可視にできるのに拉致されるのですね」

長老「人物そのものを透明にすることはできん。特定の場所に結界を張ることで初めて不可視になるのだからな」

勇者「透明人間……というわけではないと?」

長老「そんな魔法ありはせん。誘拐されるエルフは決まって狩りの最中だからな。結界の中に居続けるのは難しいからな」

勇者「優秀な神官がいるからこそ広範囲で不可視にできるが、個人だと範囲が狭まると?」

長老「そういうことだ。その範囲も人一人で限界だろう」

勇者「……」

魔法使い「覗きに使えるとか思ってないでしょうね?」

勇者「どうして僕はエルフじゃないのでしょうか。神様は酷いことをしますね」

魔法使い「この……!!」

長老「さぁ、もういいだろう。早く行ってくれ」

勇者「はっ。それでは、お元気で」

勇者「里が見えなくなっていく……」

僧侶「すごい……」

魔法使い「あー!!!」

勇者「どうしました?下着を着忘れたとか!?」

魔法使い「違うわよ!!私たちの重大な欠点を直して貰うっていう目的があったじゃない!!」

僧侶「そうでした。色々あって忘れていましたね」

勇者「欠点?」

魔法使い「魔力を上手くコントロールできるようになるかもって思って、私たちはこの森にきたのよ」

勇者「僕の側室になるために追ってきたのではないのですか?」

魔法使い「違うわよ!!あんたからも言ってあげて!!」

僧侶「……」モジモジ

魔法使い「え?」

勇者「まあまあ、とにかく今は森を出ましょう。―――外でエルフが待っているのですから」

魔法使い「そうよ……そうだったわ。エルフが仲間になったのよね」

僧侶「そうですね。ボクっ娘さんというエルフが仲間になってくれたのなら、私たちの欠点を改善することも―――」

―――フィールド

エルフ「無理」

魔法使い「え……」

僧侶「本当ですか?」

エルフ「貴女たちはそういう特異体質だから。魔力を調整することで改善されることはないよ」

魔法使い「そんなぁ……」

勇者「残念でしたね」

魔法使い「他人事だと思って……!!」

エルフ「でも……補強はできるかもしれない」

僧侶「補強?」

エルフ「定期的に魔術による補強を行えば魔力が一時的に漏れないようにすることはできる」

魔法使い「それでもいいわ」

僧侶「お願いします」

エルフ「かなり面倒だけど……。まあ、これから先のことを考えれば―――」

勇者「ゆるさんっ!!!!」

魔法使い「なっ?!」

僧侶「ひぐっ」ビクッ

エルフ「どうして?」

勇者「ならん!!!お母さんから貰った体を大切にしないやつなんて、俺は嫌いだ!!!」

魔法使い「何言ってるのよ?!旅を続けるなら―――」

勇者「ダメー!!!!絶対にノー!!!ノォォォ!!!!」

エルフ「ど、どうしてそこまで……」

僧侶「勇者様……?」

魔法使い「どうしてよ!?私たちが一般的な魔力の扱い方ができれば、戦いだって劇的に楽になるわよ?!」

勇者「貴女たちの体質が改善される……それすなわち、他の魔法使いや僧侶と同じになるということ」

僧侶「そ、そうですね」

勇者「つまり、治癒をするとき対象の人物に触れなくても大丈夫になるってことですね?」

僧侶「はい」

魔法使い「いちいちくっつきに行くのはタイムロスだし、離れた場所からでも治癒ができるって相当いいことじゃない」

勇者「没個性じゃん!!!なにいってんのぉ?!」

エルフ「没個性って……。そんな考えで魔王と戦うつもりだったの?」

勇者「何か問題でも?」

エルフ「いや……」

魔法使い「ちょっと。アンタの足りない脳みそでよく考えなさいよ」

勇者「僕の頭には欲望がぎっしり詰まってますが」

魔法使い「いい?私たちは基本的に前線で戦えない」

勇者「当然です。前に出て戦うのは僕の役目ですから」

魔法使い「でしょ?なら、離れたところから治癒ができるってすごく便利よね?」

勇者「そうですね」

魔法使い「分かってくれたのね」

勇者「はい」

魔法使い「じゃあ、補強を―――」

勇者「ならんっ!!!」

魔法使い「なんでよ?!」

勇者「するなら魔力が漏れないようにするだけ!!治癒は今までどおり抱きつかないとできないようにしなさい!!!」

魔法使い「なんの解決にもならないでしょ!?」

僧侶「それに魔力の漏れを防いでしまうと、密着しての治癒は不可能になりますよ」

勇者「そうなのですか?!じゃあ、だめ!!今のままでいい!!自然体っていいですよね!!!」

僧侶「え……」

勇者「ね!?」

僧侶「は、はい……」

勇者「さあ、いざ行かん!!魔王の城!!!」

エルフ「え?結局、補強はしなくてもいいってこと?」

魔法使い「ちょっと!!デメリットが消せるのよ!?」

勇者「黙ってくださいよぉ!!」

魔法使い「拒む理由を言って!!」

勇者「理由?そんなの……一つしかないですよ……」

エルフ「あ……もしかして、二人の特異体質を利用して相手の意表を突く作戦を色々考えているとか?」

魔法使い「そうなの?」

勇者「違う。―――僕がぁ!!!いや、俺がぁ!!!合法的に女体に触る機会が減るでしょう!?分かってくださいよぉ!!!」

エルフ「は……?」

勇者「普段からガード固いくせに……更に強化するとか……マジで勘弁してくださいよぉぉ……」ウルウル

魔法使い「……」

僧侶「勇者様……私に抱きつかれるの……お嫌いじゃないんですか?」

勇者「なんで?!むしろ好きですよぉ!!!」

僧侶「そ、そうですか……よかった……」ホッ

魔法使い「待って」

勇者「なんですか?」

魔法使い「あの……その……なんて言ったらいいか……分からないんだけど……」

エルフ「サイテー……こんな人間が勇者って……」

僧侶「あの……きっと勇者様にもお考えがあってのことでは?」

魔法使い「考えって!!たった今、本音を語ったじゃない!!!」

僧侶「目に見えること全てが本質とは限りません」

エルフ「やけに肩持つね。何かあったの?」

僧侶「い、いえ……私は勇者様のことを信頼しているだけでして……」

勇者「流石ですね。貴女の側室度が5ポイント上がりました」

僧侶「わーい」

魔法使い「ちょっと!!!なによその不愉快なポイントは!!」

勇者「ええい!!とにかく、今のままで何も問題はありません!!!」

魔法使い「嘘でしょ……」

勇者「本当です」

エルフ「ボクはどっちでもいいけど……どうする?」

勇者「……」

魔法使い「……私はまだいいわ。でも、こっちはどうするのよ」

僧侶「わ、私ですか?」

魔法使い「この子は常に魔力が漏れている状態、休んだり食事をとったりしないと1時間ほどで魔力が無くなるのよ?」

勇者「……」

魔法使い「今後、内部が複雑な塔や洞窟を探索するようなことがあればどうするの?」

勇者「そのためにエルフ族を仲間にしたのですが?」

魔法使い「おい!!!いい加減にしなさいよ!!!」

僧侶「えっと……勇者様……私は……不必要ということですか?」

勇者「何を言っているのですか。貴重な側室候補なのに、必要ですよ」

僧侶「ゆうしゃさまぁ……」

エルフ「あのー……」

魔法使い「あのねえ!!!!」

勇者「とまあ、冗談はこれぐらいにして」

エルフ「どういうこと?」

勇者「定期的に魔術を施しても一時的にしか効果が得られないのであれば、労力の無駄遣いでしょう」

エルフ「それは……」

魔法使い「……」

勇者「もっと効率のいい方法はないですか?―――例えば普段は魔力漏れを完全に遮断し、治癒が必要なときだけそれを解放させるとか」

僧侶「いいですね」

勇者「ええ。それなら長時間の活動もできるようになります」

エルフ「なるほど。うん。それなら魔力を封じる装飾品を身につければできるかもしれない」

魔法使い(反論したいけど……できないわ……悔しい……)

勇者「では、その方法で試してみましょう」

エルフ「わかった。じゃあ、作業に集中できる場所に行きたいのだけど」

勇者「それなら街に向かいましょう。宿屋で道具の製作を」

エルフ「街……か……」

勇者「……?」

僧侶「この道をまっすぐいけば着くはずです」

魔法使い「これからのこともそこで考えたほうがいいわね」

勇者「はい。情報収集もしないといけませんし」

僧侶「あの……勇者様」

勇者「なんでしょうか?」

僧侶「人身売買を行っている組織のことご存知ですか?」

勇者「人身売買?」

魔法使い「ちょっと」

僧侶「今から行く街にその組織があると……噂で……」

勇者「……」

魔法使い「それ今、言っても仕方ないでしょ?」

僧侶「でも、私は放っておけません」

勇者「人身売買……ですか。組織ぐるみでそんなことを」

僧侶「もしかしたらエルフ族を拉致している人もいるかもしれません。いえ、きっと居ます」

エルフ「だろうね。人間はそういう生き物だ。見方によってはボクだって誘拐されたようなものだし」

勇者「営利誘拐です」

エルフ「はっきり言わないで」

勇者「わかりました。勇者としてもそのような非人道的行為を看過することは出来ません」

僧侶「ありがとうございます」

魔法使い「でも、裏世界の話よ?どうやって調べるの?」

勇者「裏世界の人物に聞けばいいだけの話です」

僧侶「どうやって……?」

勇者「こちらには今、いいエサもありますし。ね?」

エルフ「え?」

魔法使い「まさか……」

―――街 宿屋 寝室

エルフ「完成。できたよ」

僧侶「このブレスレットが魔力を封じる……」

エルフ「そう。名づけて魔封じの腕輪」

魔法使い「そのまんまね」

エルフ「うるさい。道具の名称なんて分かりやすいほうがいいに決まっているからね」

魔法使い「そういう魔法の道具を精製するのもエルフの専売特許なの?」

エルフ「魔法に関する全てのモノはエルフ族発祥。厳密に言えば、魔族発祥だけど」

魔法使い「ふーん。じゃあ、店で普通に並んでいる魔法の杖とかもそうなのね」

エルフ「多分、そういうのはレプリカじゃないかな」

僧侶「これ、可愛いですね。ありがとうございます」

エルフ「ふん……」

魔法使い「ねえ……?」

エルフ「なに?」

魔法使い「どうしてついてきたの?アナタなら無理についてこなくても……」

エルフ「脅されたの聞いてたでしょ?」

魔法使い「ええ……でも……」

エルフ「……」

魔法使い「あんな最低な人間に従うぐらいなら、死んだほうがマシとか考えなかったの?」

エルフ「それは……」

僧侶「あの!勇者様に対して失礼ですよ!」

魔法使い「そりゃ、トロルと戦ったときは結構かっこいいとかも思ったわよ?でも、最近のアイツは度が過ぎているというか、調子に乗っているというか」

僧侶「ちゃんと勇者様なりに考えているはずです」

エルフ「ボクもそれは思う」

魔法使い「え?」

エルフ「彼、色々隠してる気がする」

僧侶「隠してる?」

エルフ「側室とか結婚とか色々言ってるけど……実際のところ―――」

勇者「ただいま戻りました!!!」

僧侶「お、おかえりなさいませ!」

勇者「猥談の最中でしたか?!」

魔法使い「違うわよ!!!」

勇者「毛の処理法を言い合ってるものと思って、こうしてノックなしに突撃したのに……」

エルフ「……馬鹿なの?」

勇者「え?毛が無いのですが?」

エルフ「どこ見ていってるの!?」バッ

魔法使い(本当に色々考えてるの……こいつ……?)

僧侶「勇者様、それで組織のことは……?」

勇者「しっぽは掴めました。今から行きましょう」

魔法使い「嘘!?もう!?」

僧侶「私たち、1日かけても何の手がかりも得られなかったのに……」

勇者「酒場で強面の男性中心に色々聞きましたからね。すごく怖かったですよ」

エルフ「なんて言って近づいたの?」

勇者「いい女がいるんだけど、いくらで買う?って言いました」

魔法使い「ばっ?!」

エルフ「それだと貴方が人身売買をしている商人になるんじゃないの?」

勇者「ええ。それでいいんです」

僧侶「どういうことですか?」

勇者「見たこともない同業者が己の縄張りを荒らすと、黙っていられない人たちっているんですよ。裏社会には特に」

魔法使い「同業者の振りをしておびき出したってわけ?」

勇者「はい。数十分で怖そうな人たちが僕に近づいてきました」

僧侶「何か乱暴をされたのでは?!」

勇者「いえいえ。こちらにはエルフがいると言ったら、目の色を変えて僕の話を聞いてくれましたよ」

エルフ「ボクのこと!?」

勇者「偶然、森でエルフと出会い、恋人関係になった。でも、もう別れたい。別れるなら、金にしたい。そう説明しました」

エルフ「ぬあぁぁぁぁぁ!!!!!!どうして!!なんで!!!そんなことが平気で言えるのぉ!!!」

勇者「待ってください。将来の側室候補を渡すわけないでしょう。全ては組織の人間を釣るためのエサに過ぎません」

僧侶「では……これから、その組織の人間と接触して……」

勇者「組織を潰しましょう」

魔法使い「で、できるの……そんなこと……?」

勇者「待ち合わせ場所は町外れに倉庫でとのことでした」

エルフ「ボクは行かないから」

勇者「え?」

エルフ「人間同士の問題にまで首を突っ込むことはしたくない」

勇者「はい。むしろ僕から貴女にはお留守番をお願いしようと思っていました」

エルフ「……はい?」

魔法使い「エルフ族を連れていくって考えじゃなかったの?」

勇者「不測の事態も考えられますからね。もし本当に連れ去られたら大問題ですよ」

エルフ「ふーん……」

勇者「しかしながら、エルフ族の売買もやはり行われているようですので、貴女にとっても無関係とは言えないでしょう」

エルフ「うっ……」

勇者「仲間意識が強いエルフ族が同胞を見捨てるような真似……できませんよね?」

エルフ「……貴方は本当に卑怯だ」

勇者「じゃあ、協力してくれますね?」

エルフ「わかった……する。ボクだって、同胞を助けたいし……」

エルフ「それで?ボクは本当に留守番をしていればいいの?」

勇者「はい。ここで大人しくしていてください」

エルフ「不安なんだけど……」

勇者「では、その不安を打ち消すために……口付けを……」

エルフ「へえ……」

魔法使い「ふぅん……」

勇者「冗談ですから……あの……殺さないで……」

僧侶「や、やめてください!!」

魔法使い「何か作戦があるんでしょうね?」

勇者「勿論です」キリッ

エルフ「作戦って……」

勇者「聞きましたよ?貴女もアレ、できるんでしょう?」

エルフ「あれ?」

勇者「対象域の不可視化」

エルフ「で、できるけど……精々、人一人を隠す程度だよ?」

―――街外れ 倉庫

勇者「そろそろ待ち合わせの時間ですね」

僧侶「あの……勇者様?」

勇者「はい?」

僧侶「大丈夫なのですか?」

勇者「信用できませんか?」

僧侶「い、いえ!!滅相もありません!!」

勇者「変だと思いませんか?」

僧侶「なにがですか?」

勇者「人が人を拉致するのは分かります。ですが、エルフを拉致することなんてできるでしょうか?」

僧侶「長老さんの話では不可視域から出てて狩りをしているエルフがよく攫われるということでしたけど」

勇者「魔法を使える。狩りの最中なので武器も所持していたでしょう。そんなエルフが簡単に拉致できるでしょうか」

僧侶「いくらエルフとはいえ数十人で囲めば……」

勇者「そんな大人数で行動していれば、いくらなんでも気づくはずです」

僧侶「そ、それもそうですね……」

勇者「僕の考えが正しければ……」

僧侶「正しければ?」

勇者「この組織の裏には―――」

盗賊「よう。本当に来たんだな?」

勇者「む?」

僧侶「……」

盗賊「へへ。まあ、来なかったら直接、宿に乗り込むつもりだったけどな」

勇者「そうですか」

「……」

「あいつの隣にいるのがエルフか?」

「へぇ……美人だな。売れそうだ」

勇者(相手は10人……)

僧侶「勇者様……」ギュッ

盗賊「さあ、そのエルフを渡してもらおうか?」

勇者「金が先だろ」

盗賊「分かってないみたいだなぁ?」

勇者「なに?」

盗賊「てめえに口答えする権利なんてねえんだよ。さっさと渡せ」

勇者「金が無いなら、この子は渡せないな」

盗賊「ふざけんなよ……」

勇者「ふざけてるのはお前らだろう」

盗賊「けっ。この人数相手に何ができるっていうんだよ?」

勇者「ドラゴンを相手にするよりは楽勝だな」

盗賊「てめぇ……!!」

「調子に乗ってると……痛い目みるぜぇ?」

「へへへ……」

勇者「金がないなら破談だ。僕は帰らせてもらおう」

盗賊「渡せないのはそっちも同じだろうが」

勇者「なに?」

盗賊「どうせその女はエルフじゃないんだろう?それぐらい分かってんだよ!!」

僧侶「ひっ……」

「マジかよ」

「流石はリーダー!!」

盗賊「てめえらも少しは頭を使えよ。エルフを連れているなんて下調べしないと信じられないからなぁ」

勇者「どういう意味だ」

盗賊「別のグループがてめえの泊まっている宿に向かっている」

僧侶「そんな……!!」

勇者「やっぱり、後をつけられていたか」

盗賊「エルフなんて普通じゃ絶対に手に入らない。ハッタリの可能性は大。仮に本当でもこんな場所に正直に持ってはこない」

盗賊「ちゃんと金を得るまで隠しとくもんだろ?」

勇者「馬鹿正直に連れてきていても強奪しただろうに」

盗賊「当たり前だ。カモがネギと調味料を一緒に持ってきてくれたんだからな。まあ、素直に引き渡せば骨折ぐらいで許してやるよ」

僧侶「あ、貴方たちは人ではありません!!」

盗賊「うるせぇ!!!!てめえも!!宿にいる女もちゃんと売買にかけてやるよ!!」

勇者「屑だな、お前ら」

盗賊「はぁ?お前も同業だろうが!!」

勇者「女性を力尽くで奪い、しかも商売の道具にしているお前らを屑と呼ばずになんていえばいい?」

「リーダー、早く黙らせようぜ」

盗賊「そうだな」

勇者「いいか?奪っていいのはなぁ……心だけだぁ!!!」

僧侶「勇者様……」

勇者「女性の心も奪えないお前らは男としては底辺だな!!」

盗賊「黙れ……てめえ!!!何様だ!!こらぁ!!!」

勇者「勇者様だよ!!!」

盗賊「勇者……!?」

「リーダー!!もしかして!!」

盗賊「ちっ……」

勇者「お前らのボスは誰だ!!言え!!」

盗賊「相手は一人だ!!やっちまえ!!!」

勇者「あぁ!?やっちまうぞ!!!こらぁぁ!!!」

―――宿屋

バンッ!!!

エルフ「誰!?」

賊徒「こいつか……」

エルフ「なんですか!!貴方たちは!!!」

「その耳!!リーダー!!こりゃあマジもんだぁ!!!」

賊徒「だな。あの男、結構怪しかったが……へへ……こりゃぁついてる。ボスも大喜びだな」

「やったぁ!!旨い酒が飲めるぜ!!」

「やっほー!!」

エルフ「無礼ですよ!立ち去ってください!!」

賊徒「そういうわけにもいかねえなぁ」

エルフ「ならば……」

賊徒「おぉ!?」

エルフ「燃えろ!!!」ゴォォォ

賊徒「魔法か―――!!!」

エルフ「え……?!」

賊徒「くくく……きかねえなぁ」

エルフ「ど、どうして……!?」

「大人しくしろって」

「エルフは傷ものにはできないからなぁ」

賊徒「抵抗はするなよ?」

エルフ「くっ……なら、痺れろ!!!」バリバリバリ

賊徒「ぎゃぁぁぁぁ―――なんてな♪」

エルフ「な……んで……?!」

賊徒「無駄無駄ぁ!!俺たちに魔力の篭った攻撃は通用しねえよ」

エルフ「人間のくせに……」

賊徒「さあ、こい!!」グッ

エルフ「やめろ!!」バッ

賊徒「いいから―――」

パシンッ!!!

賊徒「ぃてっ?!」

「な、なんだ!?」

「わ、わかんねぇ……」

賊徒「な、なんだ?魔法はきかねえはずだぞ……!!」

エルフ「ふっ。魔法にも色々あるんですよ?」

賊徒「なにぃ!?」

エルフ「やっ!!!」

パシンッ!!!

賊徒「ぎゃぁ!?」

「あいつの後ろから鞭みたいなのが伸びてきたぞ!!」

「そ、そんな魔法聞いたことねえよ!!」ガタガタ

賊徒「くそ……!!魔法に対しては無敵のはずじゃねえのかよ!!!」

エルフ「答えてもらいますよ?誰が貴方達を無敵にしたのですか?」

賊徒「ちくしょう!!撤退だ!!こいつは変な魔法をつかいやがる!!」

エルフ「待ちなさい!!」

―――待って。

エルフ「分かってる。追わないよ」

魔法使い「良かった。不可視化、役に立ったわね」

エルフ「にしても、情報にない戦力があるってだけで尻尾を巻くとは……。これだから人間は」

魔法使い「あいつらはチンピラみたいなものだし、魔法に対しては無敵っていうアドバンテージがなくなれば弱腰にもなるわよ」

エルフ「彼の読み通りだったわけだ……。なんか悔しい……」

魔法使い「あの賊ども……どこで魔法を無力化する方法を……」

エルフ「彼らに魔法の素養は無かったから、きっと魔法具の類を身につけているに違いない」

魔法使い「それって……魔封じの腕輪みたいなもの?」

エルフ「そう」

魔法使い「じゃあボスってエルフ?!」

エルフ「それはないよ。ボクたちは同胞を裏切るような真似だけは絶対にしない。たとえ魔王の命令であっても」

魔法使い「……」ジーッ

エルフ「ボ、ボクは!!同胞を守るために!!!!こうして泣く泣く一緒にいるだけで!!!うぅー!!!」

魔法使い「そうよね。ごめんなさい。じゃあ……誰が……?」

―――倉庫

「がはっ?!」ドサッ

勇者「……」

僧侶「かっこいいです!勇者様!!」

盗賊「こいつ……うそだろ……」

勇者「お前はドラゴンを相手にしたことがあるか?」

盗賊「ひっ……!?」

勇者「奴が放った威圧感と炎を経験したら、お前らみたいな狭小で下劣なだけの人間を恐れなくなる」

盗賊「……!!」

勇者「さあ、吐いてもらおうか?」

盗賊「な、なにをだよ……?」

勇者「決まってるだろ?」グイッ

盗賊「おぉ……!!」

勇者「お前らのボスとその居場所だよ」

盗賊「い、いえるかよ……!!」

勇者「……」

盗賊「へ、へへ……死んでもそれだけは言えねえなぁ……」

勇者「そうですか。では……死んでいただきましょう」ギラッ

盗賊「て、てめえ!!それでも勇者かよ?!」

勇者「僕は残念ながら聖人君子ではありません。人間ですからね」

盗賊「は?」

勇者「肩書きが勇者ってだけの人間です。貴方たちと同じ、屑な人間なんですよ」

僧侶「勇者様!!流石に人を殺めるのは……!!」

勇者「さあ、答えてください」

盗賊「……」

勇者「いえ」

盗賊「い、いえない!!」

勇者「なら……」スッ

盗賊「ひぃ?!」

僧侶「だ、だめです!!勇者様!!!」ギュッ!

勇者「―――冗談ですよ」

僧侶「そ、そうですか……」

盗賊「……」

勇者「しかし、口を割ってもらわないと困りますねえ……」

僧侶「あの」

盗賊「な、なんだよ……?」

僧侶「手を」

盗賊「え?」

僧侶「少し怪我をされていますね」ギュッ

盗賊「な?!」

僧侶「はい。これで大丈夫です」

盗賊「な、なにしやがる!!このやろう!!!」バッ

僧侶「ですが……化膿してはいけませんし……」

盗賊「よ、余計なことすんなぁ!!」

勇者「お前……俺の側室候補の優しさすら無碍にするのか?!!救えないなぁ!!!こらぁ!!!」

盗賊「ひぃぃぃ!?!?」

僧侶「勇者様!?ダメです!!」

勇者「堪忍袋の尾が切れたぁ!!!もう絶対に許さん!!!」グイッ

盗賊「やめろ?!なにしやがる?!」

勇者「くらえ!!―――秘技!!キャメル・クラッチ!!!」グググッ

盗賊「いだだだだだ!?!?」

僧侶「あぁぁ……」オロオロ

勇者「謝れぇ!!!この女神に謝れ!!!」グググッ

盗賊「あぁ……!!ぁ……!!!」

勇者「なんか言えよ!!!」グググッ

盗賊「ふが?!ふがぁ?!」

僧侶「勇者様!!顎を押さえているのでその人は喋りたくても喋れないです!!」

勇者「え?!あ、そうですか……」パッ

盗賊「がはっ……はぁ……おまえ……なんだよ……この女の……男か?」

勇者「この人は僕の側室候補です」

僧侶「はぁ……あの……大丈夫ですか?」

盗賊「なわけねーだろ!!」

勇者「逆エビ固めだぁ!!」グググッ

盗賊「あだだだだだ!!!!」

僧侶「あの貴方に指示を出しているのは誰なのですか?」

盗賊「い……え……な―――」

勇者「ふんっ!」グキィ

盗賊「ぎゃぁぁああ!?!!」

僧侶「教えてください」

盗賊「ボ、ボスのことは本当にしらねえ!!姿なんてみせてくれねえんだ!!!か、金をくれるから従ってるだけでぇ!!!」

僧侶「そのボスさんはどこに?」

盗賊「こ、ここからずっと北にいった塔にいるよ!!!」

勇者「そこに拉致した人もいるのかぁ!?!」

盗賊「いる!!いる!!そこで人間やエルフを売ってるんだぁ!!!もういいだろう!!やめてぇ!!!」

勇者「なるほど。ご協力感謝いたします」

盗賊「ちくしょう……!!」

僧侶「……」ギュッ

盗賊「え……?」

僧侶「これで少しは痛みも和らいだはずです」

盗賊「おま……」

僧侶「もう悪いことはしないでください。お願いします」

盗賊「……」

勇者「行きましょう。宿にいるお二人も心配です」

僧侶「分かりました」

盗賊「まて」

勇者「なんですか?」

盗賊「最近、ボスは勇者……多分、アンタのことだと思うけど、随分気にしているみたいだった」

勇者「僕を?」

盗賊「いつか邪魔してくるだろうから警戒しておけって……言われてたんだよ……」

勇者「分かりました。貴重な情報、ありがとうございます」

―――宿

勇者「ただいま戻りました」

魔法使い「おかえり。どうだったの?」

僧侶「組織の本拠地が分かりました。ここから北にある塔のようです」

エルフ「北っていうと……この辺りか」

勇者「すぐに出発しましょう。相手のボスにまで騒ぎが届いてしまうと奇襲がかけにくくなります」

魔法使い「賛成ね」

エルフ「ボクは反対」

僧侶「ど、どうしてですか?」

エルフ「それは―――」

勇者「相手は人間でなく、魔族だからですね?」

僧侶「……」

魔法使い「それは私も思っていたわ。あいつらただの盗賊のくせに魔法具を持っていたみたいだもの」

勇者「ボスは勇者を気にしているといっていました。人間の犯罪者なら国の兵士を警戒するはずなのに、勇者に気を回すのは少々不自然ですしね」

エルフ「エルフの魔法すら掻き消す道具を大量に作れる相手だから、慎重になったほうがいいと思う」

僧侶「でも……どうして同じ魔族であるエルフまで……」

勇者「エルフ族は人間には見世物にされ、他の魔族からは蔑視されている種族ですからね」

魔法使い「でも……魔族が商売をするってちょっと意味が分からないわ」

勇者「それは相手に聞いてみないとわかりませんね」

エルフ「……」

魔法使い「どうするの?行くの?」

勇者「……」

僧侶「勇者様……」

勇者「行きましょう。逃げられては困ります」

エルフ「でも?!」

勇者「こちらには貴女がいます。万が一、魔法戦になっても引けは取らないでしょう」

エルフ「……ボクを信じていいの?本気で戦わないかもしれないのに」

勇者「裏切るならここで裏切ってください。戦いの最中に裏切られては死ぬのが僕だけで済まなくなりますから」

エルフ「なにいって……」

勇者「ここで里に帰るというなら僕は止めません。貴女も魔族です。蔑まされているとはいえ同族と争うのは嫌でしょうし」

僧侶「勇者様!!」

魔法使い「馬鹿なの?!ここでこの子が抜けたら……!!」

勇者「魔封じの腕輪を頂いただけでも感涙モノです」

エルフ「え……」

勇者「貴女のおかげでこの先の旅がかなり楽になりました。ありがとうございます」

エルフ「ここで抜けてもいいの?」

勇者「はい」

エルフ「ど、どうせ抜けたら……里のことを……」

勇者「言うわけないじゃないですか。その代わり、魔王を倒した後に迎えにあがりますので」

エルフ「ど、どうして?!」

勇者「貴女を側室にするためにですよ」

エルフ「はっ。強引に連れ出したと思えば、もう帰ってもいいって?かなり無茶苦茶だと思うけど?」

勇者「あの里にいては、どなたも微々たる協力もしてくれなったじゃないですかぁ?!」

エルフ「そういう戒律が―――もしかして……貴方……ボクを外に連れ出したのは……」

勇者「旅を共にして貴女を僕に惚れさせるためですよ?なに深読みしているでござるかね?」

エルフ(言ってることがおかしいって、分かってるの……?)

勇者「とにかく急ぎましょう」

魔法使い「待って!!本当にいいの?!」

勇者「構いません。無理強いなんてできませんから」

魔法使い「脅して連れ出しておいてよく言えるわね?!」

勇者「えーい!!僕について来い!!可愛い側室ちゃんたち!!」

僧侶「はーい♪」テテテッ

魔法使い「だれが側室よ!!!」

エルフ「あ……」

魔法使い「どうするの?」

エルフ「ボクは……」

魔法使い「アイツは私たちにも帰っていいって言ってくれたことがあるわ」

エルフ「そうなんだ」

魔法使い「エルフの里のことはきっと言わないと思うわ。口外して貴女が攫われたら側室にできないとか考えてそうだもの」

エルフ「……やっぱり、彼は卑怯だ」

―――フィールド

勇者「いいのですか?」

エルフ「同胞を売り物にしているなら、許せないよ」

勇者「なるほど。つまり、僕の側室になる決心をしたということでよろしいですね?」

エルフ「違うけど」

勇者「ちがうのー?!」

魔法使い「当たり前でしょう?」

勇者「全く……!!なんで近頃の女子はこうも防御力が高いのか!!!けしからん!!!」

僧侶「ごめんなさい……勇者様……」

勇者「いえいえ。貴女ぐらいの守備力ならいいのですが、ふふふ」

僧侶「え?でも、防御が弱いのは……勇者様にとっては足手まといでは……」

勇者「何をいいますやら。いいですか?貴女から許可が出て夜這いするとき、守りが薄いほうがいいですよ、はい」

魔法使い「―――良かったの?」

エルフ「同胞は放っておけないし……それに彼はやっぱり色々隠してるから……それが少し気になって……」

魔法使い「……?」

―――魔道士の塔 最上階

魔道士「あっひゃっひゃっっひゃっひゃ~!!今日も良質なニンゲンのメスが手に入ったぞぉ!!!」

ドラゴン「―――久しぶりだな」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ!!これはこれは!!今日はどのような件で?先日、魔王様に納品したばかりですが」

ドラゴン「勇者一行がこちらに向かっているようだ」

魔道士「おぉ!!噂の魔王様が注目しているという?」

ドラゴン「そうだ。油断はしないようにな」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ。油断?この私には魔法は通じません。―――この魔抗石で作った鎧がある限りは」

ドラゴン「魔法が通じないだけだろう?勇者は剣術にも秀でているのだぞ?」

魔道士「剣術?!あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!物理的な攻撃こそ戒心する必要すらないですよ~!!!」

ドラゴン「……」

魔道士「過去に魔法を打ち破った剣術がありましたか?!ないでしょう?!」

ドラゴン「まあいい。奴らの弱点だけでも教えておこうか」

魔道士「はぃ~」

ドラゴン(さてこちらも作戦に移るか……。魔王様も本当に慎重だ……約束された勝利にすらすぐに手をつけないとは……)

―――魔道士の塔 入り口

勇者「ここか……」

僧侶「雰囲気……ありますね」

魔法使い「嫌な空気が流れてくるわね……」

エルフ「吐きそう……」

勇者「僕の口でそれを受け止めましょう」

エルフ「え?それはちょっと」

魔法使い「バカなこと言ってないで進むわよ!!!」

勇者「気を引き締めていきましょう!!」

僧侶「はいっ!!」

魔法使い「アンタが一番、気を引き締めて……お願い……」

勇者「僕は常に緊張状態ですよ?隙さえあれば、貴女達のお尻に接触したいと思っている所存であります」

魔法使い「あのね、宣言したら無理になるってわかってるの?」

勇者「戦闘中なら?」ニヤァ

魔法使い「アンタから棺桶に入れてやるからね」ニコッ

―――最上階

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

魔物「キー!!!キー!!」

魔道士「分かっているよ。勇者一行が到着したんだろう?」

ドラゴン「ほう……来たのか?」

魔道士「そこでご覧になっていますか?わたしがぁ!!勇者を消し炭にしてあげましょう!!」

ドラゴン「いや。俺も忙しい身でな。勇者はお前に任せよう」

魔道士「ははー!!―――ところで、勇者の身柄は私がジユーにしても?」

ドラゴン「好きにしろ」

魔道士「やったぁ!!あっひゃっひゃっひゃ~!!新しい素体が欲しいと思ってたところなんですよね~!!」

ドラゴン「相変わらずだな」

魔道士「私の夢は無尽蔵のエネルギーを持ち!!心をもった機械兵士の開発ですからねええ!!!」

ドラゴン「キラーマンジガ……だったか?本当にできるのか?」

魔道士「プロトタイプはお見せしたじゃないですか。あっひゃっひゃっひゃ」

ドラゴン「ふん……あの悪趣味な木偶人形か……」

―――魔術師の塔 一階

勇者「魔物もいそうですね」

エルフ「居ないほうがおかしいでしょう」

僧侶「こ、こわい……」ギュッ

魔法使い「敵の本拠地って感じのところは初めてな気がするわ……」

僧侶「は、はい……」ギュゥゥゥ

魔法使い「あの……歩きにくいけど……」

僧侶「うぅ……」ギュゥゥ

魔法使い「まあ、いいわ」

勇者「ここには拉致された人もいるんですよね?」

エルフ「そうか……どうする?先に捕まっている人たちを探す?」

勇者「いえ。あくまでもボスの打倒が最優先です。監禁されている人たちはボスを倒してからにしましょう。途中で発見しても足手まといになりますから」

魔法使い「そうね。助けるならボスを先に叩いたほうがいいわね」

僧侶「では……どうしましょう?」

勇者「ボスはきっと最上階にいますね。僕がボスだったら確実に最上階で側室たちとランデブーですし」

―――魔道士の塔 三階

魔物「キー!!!」バサッバサッ

勇者「とうっ!!!」ザンッ

エルフ「燃えろぉ!!!」ゴォォォ

魔物「ギャァァァ―――!!!」

勇者「愛の勝利!!」

エルフ「違う」

魔法使い「……」

僧侶「やりましたね」パチパチ

勇者「ふっ」

エルフ「ボクのおかげだけど」

勇者「その通りです!!貴女がいて良かった!!うん!!」

エルフ「簡単に認めて……プライドもないの?」

魔法使い「ほら、早く次の階に行きましょう」

勇者「はっ」

―――魔道士の塔 四階

僧侶「勇者様!!」

勇者「なんですか?抱かせてくれるのですか?」

僧侶「怪我してませんよね?抱く必要はないかと」

勇者「え……」

僧侶「ここに扉があります」

魔法使い「怪しいわね」

エルフ「一応、中を確認しておくほうがいいと思う。監禁されている人もいるかもしれないし」

勇者「そうですね。肉奴隷化した少女が居たらお持ち帰りしないと」

魔法使い「……早く、開けて」

勇者「はい」グッ

ギィィィ……

僧侶「……!?」

エルフ「え……?!な、なに……あの……子……?!」

勇者「は、は、裸の少女が変な水槽にはいってるぅぅぅぅ!!!!」

魔法使い「なに……これ……?」

エルフ「……キラー……マジンガ……?」

勇者「なんだー!?これー?!すっげー!!!えー!!!裸だぁ!!!」

魔法使い「うるさい!!外に出てて!!」ゲシッ

勇者「あうっ?!そんな!!僕にだって目の保養を―――」

バタンッ

魔法使い「で、この子は?」

エルフ「感じからして……普通の人間じゃないと思うけど……」

僧侶「キラーマジンガって名前からするに、機械っぽいですよね」

魔法使い「そうね」

エルフ「もしかしてここのボスが作ったもの……?こんな技術をもっているなら……ボクたちに勝ち目は……」

魔法使い「エルフ族の精製技術より数段上ね……」

僧侶「とんでもない魔法具を身につけているのでは?」

エルフ「……」

魔法使い「トロルや魔人よりも強敵であることは間違いないわね」

ギィィ……

魔法使い「お待たせ、行きましょう」

勇者「で、あの水槽に入っていた少女は?」

エルフ「ここのボスが作った機械兵士だと思うけど」

勇者「なるほど。では、起動させましょう」

魔法使い「どうして?」

勇者「即!戦!力!じゃないですか。何言ってるんです?」

僧侶「そうですね。ここのボスさんもかなりの強敵なら、戦力は多いほうがいいですよね」

勇者「んだ!」

魔法使い「あんた―――」

エルフ「駄目」

勇者「どうしてですか?」

エルフ「もし製造した者の指示にしか従わないようになっていたら、恐ろしい難敵を目覚めさせることになる。起動させるにしてもちゃんと調べてからじゃないと危険すぎるよ」

勇者「む……。確かにそうですね。あのような可憐な少女とは刃を交えたくありませんし」

魔法使い「はぁ……。あんた……ちゃんと後先考えてよね……ホント……」

勇者「では、後ほど迎えにくるということで」

魔法使い「え?どうして?」

勇者「側室候補だからだよぉ!!いい加減、わかれよぉ!!」

魔法使い「ちょっと!!人間じゃないのよ?!」

勇者「それが何か?」

魔法使い「は……!?」

エルフ「見たところ生殖器とか実装されていなさそうだったけど……」

勇者「んなもんいらねえよ!!可愛ければいいじゃん!」

魔法使い「もう突っ込みきれないわ……」

僧侶「流石は勇者様です。差別も区別もしないなんて……」

勇者「はい。人間や魔族や機械兵士。皆、この星に生まれたのなら家族みたいなものです!!愛する者を細分するなんてできませんよぉ!!!」

エルフ「カッコいいのかどうかよくわからないけど……」

魔法使い「前半の本音が無ければカッコいいわね」

エルフ「ふーん」

勇者「僕の側室も多種多様になってきましたね!!いやぁ!!めでたいのぉ!!」

―――最上階

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!次はぁ……お前にしようか!!!」グイッ

女性「んー?!?!?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!さぁ!!!搾り取ってあげましょうかぁ!!!!」

女性「んぅぅぅううう!!!!!」

魔道士「―――ふふふ。中々じゃないですかぁ……くくく……」

魔物「キー!!!キー!!!!」

魔道士「え?勇者一行が?使えない部下ばかりで困るよ、全くぅ」

魔物「キー……」

魔道士「いいでしょう。この私が直々に相手をしてあげますよぉ!!!あっひゃっひゃっひゃ!!!」

魔物「キー!!!キー!!!!」

魔道士「ああ、そこのゴミはいつものようにニンゲンに売りますから、ゴミ箱にでも入れておいてくださいねえ」

魔物「キー!」グイッ

女性「ぁ……ぉ……」ピクッピクッ

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!行きましょうか!!!!」

―――最上階 大扉

勇者「階段はありましたか?」

魔法使い「こっちには無かったわ」

エルフ「ここが最上階じゃないかな?」

僧侶「そうだといいですね」

勇者「じゃあ、あとはこの扉の先だけですか」

魔法使い「早く行きましょう。また被害者が出る前にボスってやつを叩かないと」

勇者「そうですね。どうやら、僕たちのことを警戒しているようですし」

エルフ(本気で警戒しているなら魔法に対しての備えは万全と見るべきかな……)

勇者「開けますよ」

ギィィィ……

勇者「む……?」

魔道士「ついにきましたね。勇者ご一行様……」

勇者「貴方は?」

魔道士「この塔に住まうしがない魔道士ですよ。あっひゃっひゃっひゃ」

エルフ「魔道士……!?」

魔道士「おんやぁ?その人は……エルフ族ですかぁ?」

魔法使い「だったら、なによ?」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!これはいい!!!流石は勇者様ぁ!!!感謝の極みですよぉ!!!」

勇者「なに?まさか魔族に僕の魅力が分かる人がいるなんて」

魔道士「私に手土産を持ってきてくれるとはぁ!!あっひゃっひゃっひゃ!!!いやぁ!!!うれしいですよぉ!!!」

僧侶「手土産って……」

魔道士「私にエルフを譲ってくれるのですねぇ?」

勇者「……あ?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ!!素晴らしい!!最近はエルフの入荷が少なくて困っていたんですよぉ!!」

エルフ「貴方はエルフを使ってなに―――」

勇者「はははは。ご冗談が過ぎますよ?」

魔道士「なにがでしょうか?」

勇者「僕から側室候補を奪おうとするとはいい度胸ですね。―――五体満足では帰しませんよ?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ。なるほど!!エルフに手を出す人間がここにもいたのですねえ!!では、私のゴミ箱から好きなだけ持っていってくださいな!!」

僧侶「ゴミ箱ってなんですか?」

魔道士「そのエルフを譲ってくれるのなら!!今、余っている4人のエルフをあげます!!」

勇者「オンナ?!」

魔道士「もちろん」

勇者「むむむむ……!!!」

魔法使い「アンタねえ!?」

エルフ「ボクだから良いって言ってじゃないか?!」

勇者「そうですよ?」

エルフ「だったら、なんで悩むのさ!!」

勇者「いやぁ。こいつを倒せば一気に側室候補が増えるなあっと思って。増えると、ほら部屋割りとか悩んでしまうじゃないですか」

エルフ「そ、そういうこと……」

魔法使い「……」ジーッ

エルフ「え?あ……!!いや、今のは言葉の綾で!!!」アセアセ

僧侶「ふふ……」

エルフ「わ、笑うな!!」

魔道士「おやおや……。今、とんでもないことを言いましたねえ」

勇者「エルフだけで側室が5人も埋まっちゃうなんて、これは新手のハーレムですね。ええ」

魔法使い「会話になってないわよ?」

魔道士「私を……倒すといいました?」

勇者「はい。倒して、4人のエルフをゲッチュです」

魔道士「あひゃ……あひゃひゃ……」

僧侶「そ、それよりゴミ箱って……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!」

魔法使い「な、なにこいつ……」

エルフ「魔道に生きる魔物は大体こうなの。研究のこと以外は毛ほども興味を持たない」

僧侶「頭がおかしいってことですか……?」

勇者「……」

魔道士「いやぁ、勇者様。エルフを譲ってくれるなら、生きたまま素体にしてあげようと思いましたが、戦うというのなら死体を素体にしましょう」

魔道士「まぁ、私としては意思を持たない死体のほうがいいんですけどねぇ!!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

勇者「僕の体でエッチな妄想をする奴を初めてみた!!不快だ!!!」

魔道士「研究の続きがしたいので!!一気に終わりにしますよぉぉぉ!!!!!」

エルフ「まずい!!下がって!!!」バッ

勇者「え―――」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォォ

エルフ「ふっ!!!」キュィィン

魔道士「おぉ!!!すごい!!!私の魔法を完璧に防ぐとはぁ!!!」

エルフ「……」

魔法使い「すごいじゃない……」

僧侶「これなら戦えますね」

勇者「あの」

エルフ「なに?」

勇者「何発まで防げそうですか?」

魔法使い「やっぱり……」

エルフ「あと5発……かな……」

僧侶「そ、そんな!?」

エルフ「あの桁違いの魔力を防ぐにはボクも魔力をフルに使うしかないから……」

僧侶「じゃあ、どうしたら?!」

勇者「接近すれば余裕で勝てるんですけどね」

魔法使い「扱う魔法は私たちと大して違わないわね」

勇者「では―――」

魔道士「さぁぁ!!!終わりにしまようかぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

エルフ「はぁぁぁ!!!」キュィィィン

魔道士「あひゃ?!いいですねえ!!!流石はエルフ!!!」

エルフ「でぁぁ!!」ダダダッ

勇者「続けー!!」ダダダッ

魔道士「ああ!!エルフを文字通り盾にして特攻ですかぁ!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

エルフ「……っ」ダダダッ

勇者「危険ですが、お願いしますね」

魔法使い「一発ぐらいなら……きっと……」

僧侶「わ、私もサポートします」ギュゥゥ

魔道士「さぁ!!いつまで耐えられますかぁ?!」ゴォォォォ

エルフ「ずぁ!!」キュィィン

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

勇者「いまだぁ!!!!」ダダッ

魔道士「おやぁ?!そこから攻撃ですかぁ?!」

勇者「はぁぁぁ!!!」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォォ

勇者「ふっ―――」

魔道士「貴方ならまる焦げでもいい素体に―――」

魔法使い「―――熱いわね!!」

魔道士「ほう!!なるほどぉ!!それが貴女の力!!!欠陥の特異体質ですかぁ!!!!」

勇者「―――誰が欠陥だ!!おらぁぁ!!!」ゴォッ

魔道士「ほほう!!」

勇者「俺の側室候補を愚弄するやつは許さん!!!」ザンッ

魔道士「ぎゃぁぁ―――!!!」

エルフ「やった……!!」

僧侶「あの……お怪我は?!」

魔法使い「大丈夫。あんたが抱きついてくれていたからもう治ったわ」

僧侶「よかった」

勇者「……」

魔道士「……」

エルフ「さあ、捕らえられた人を―――」

勇者「待ってください!!!」ガシッ

僧侶「え?!な、なんですか?!」

魔法使い「アンタ!!またセクハラを!?」

勇者「違う!!それを貸して!!!」

僧侶「え?え?」

魔道士「―――あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!!」

エルフ「な……?!」

魔道士「私には……そのような攻撃など通用しませんよぉぉ!!!」

勇者「これを奴に―――!!!」ダダダッ

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!」ゴォォォォ

勇者「うわっと!?」

魔道士「外しましたか」

勇者「遅かった……」

僧侶「どうして……今……確実に……」

魔道士「貴女たちの特異体質……おもしろいですよねぇ」

魔法使い「なんですって?」

魔道士「魔力が漏れているから常に魔法の効果を得られるなんて。早速真似をしてみましたよぉ」

エルフ「真似って……」

魔道士「そう!!傷つけばその場で即治癒!!中々どうして素晴らしい!!!」

魔法使い「よかったわね。褒められて」

僧侶「あまり嬉しくないです」

魔道士「貴女も。弱いニンゲンが最高出力で魔力を放つ方法は、貴女のような体質でなければ不可能でしょう!!神に感謝すべきでは?!」

魔法使い「それはどうも……」

魔道士「まぁ、私に物理的な攻撃は通じませんよぉ」

勇者「人間の能力を流用するなんて、プライドはもってないのか?!」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ。面白い活用法があれば喜んで使用させていただきますよぉ。私は頭の固い魔族ではないのでぇ」

勇者「ちっ……」

魔道士「剣では魔法を破れない!!!これは自然の理ぃ!!!」

魔法使い「良いこというわ」

僧侶「勇者様も強いです……」

魔道士「さぁ!!!勇者様ぁ!!素体になっていただきましょうかぁ!!」

エルフ「素体って一体なに?」

魔道士「私の研究に使用する肉体のことですよ!!魔族ではどうしても成功しませんでしたが、最近、ニンゲンだとうまくいくことに気づきましてねえ」

勇者「え?」

エルフ「それって……もしかして……」

魔道士「無尽蔵のエネルギーを持ち!!!心まで有する機械兵士の開発ですよぉ!!!!」

勇者「あの水槽に入っていた少女か……」

魔法使い「人造人間じゃなくて……人間を改造しているってこと……?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ。さあ、勇者様。私の研究の礎になってもらいましょうかぁ!!!」

勇者「断る!!僕には叶えたい夢があるから!!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォ

勇者「なっ―――」

エルフ「くっ!?」キュィィン

勇者「……」

エルフ「はぁ……はぁ……策は?」

勇者「これさえ……奴につけられたら……」

エルフ「魔封じの腕輪……」

勇者「……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!」

勇者(捨て身はもう通用しない。奴の魔法はもう防ぎきれない。どうしたら……)

僧侶「……せない……」

魔法使い「え?」

僧侶「わ、私は絶対に貴方を許しません!!!」

魔道士「はい?」

僧侶「命をなんだと思っているのですか!!!」

魔法使い「ちょっと……」

魔道士「命?!そんなものぉ!!ただの材料にすぎませんねえ!!!」

僧侶「ざい……?!」

魔道士「その通り。低脳なニンゲンは知らないでしょうが、命とは最も逞しいエネルギーのですよぉ」

魔道士「虫にも獣でもニンゲンでも、そのエネルギー量に違いはない!!どの種も平等な量を持っている!!素晴らしいエネルギーだ!!!」

勇者「何を言っているんだ……?」

僧侶「……っ」ギリッ

魔道士「ですが、そのエネルギーも有限。生きているだけで消費していってしまう。生きるためにそのエネルギーは無くなっていく!!回復もしない!!!」

魔道士「なら、そのエネルギーを無限にしてやろうじゃないですかぁ!!!この私がぁ!!!!」

エルフ「そんなことできるわけ……」

魔道士「できますねえ!!!ニンゲンのエネルギーを吸収し続ければいいだけの話ですし!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

魔法使い「無限のエネルギーって……」

魔道士「この世界にニンゲンは腐るほどいる!!その有り余るエネルギーを有効活用してやろうというのですよぉ!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

僧侶「なんて……ことを……!!!」

エルフ「それはエルフからも……?」

魔道士「エルフは特別ですよ。エルフ族は命の他にも魔力というエネルギーもあるのでね」

魔法使い「同じ魔族もそうやって材料として考えるのね」

魔道士「エルフは魔族にあって、魔族に非ず。ニンゲンに尻尾を振って生きてきた売春婦な種族!!!」

勇者「……」

魔道士「そのような種族を生かしておくことなど、魔族の恥です。でも、そのまま虐殺するのも勿体無い話。ならば―――」

エルフ「全てを吸い上げ……機械兵士の燃料にする……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!貴方たちも本望でしょう?!魔族の役に立ってて!!!」

勇者「貴様も人間に媚売って、そのエネルギーを得ているんだろう?」

魔道士「媚を売ってくるのはニンゲンの方ですが?―――金さえあれば言う事を聞いてくれる有能なアリだ」

僧侶「……!」

魔道士「しかも、人形にも劣る抜け殻のニンゲンを大金出して欲しがる者までいる始末!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

魔法使い「人間を操る為に商売をしていたってわけね……」

魔道士「この国はぁ!!私にとって養鶏場そのもの!!!ニンゲンがニンゲンを産み、そして育み!!私がその命を喰らうサイクル!!!あっひゃっひゃ!!サイコー!!」

勇者「ゴミ箱というは……命を吸い上げた人間と入れておく場所のことか」

魔道士「ええ!!そうですとも!!」

僧侶「……っ」

魔道士「命のないニンゲンは金に替えるだけの道具。私からすればゴミです」

魔法使い「……」

エルフ「取り消せ!!」

魔道士「これはこれは卑しいエルフですね。やはりニンゲンが恋しいですか?」

エルフ「貴様と同族であることをボクは恥じる!!!」

魔道士「同意しますよ!!私もエルフと同じ魔族であることを恥ずかしく思います!!!」

エルフ「おのれ……!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃ!!!さあ!!!どうしますかぁ!?さぁ!!さぁ!!!!」

魔道士「勇者様には素体になってもらうとしてぇ……。エルフは勿論、他の二人も上質なエネルギーは採れそうですねえ!!!」

僧侶「やめ……ろ……」

勇者「え……?」

僧侶「だまれぇ!!!この外道!!!」

魔法使い「!?」

エルフ「ひっ」ビクッ

魔道士「なんですかな?大声を出して。貴重な命を磨耗させないでくださいよ」

僧侶「生きる者を道具といい……命を材料という……」

勇者「あの……?」

僧侶「貴方の行いは……神に代わり、私が断罪します!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!断罪?!どうやってやるんですかぁ?!ニンゲンの分際で!!!」

僧侶「……」

魔法使い「無茶よ!!やめて!!!」

勇者(そういえば……彼女……治癒魔法以外にも……)

魔道士「まずは貴女の命からぁ!!!!」ゴォォォ

僧侶「―――風よっ!!!!」

―――ゴォッ!!!

魔道士「ほほう!!!私の魔法が掻き消えた!!!すばらしい!!」

魔法使い「風の魔法……!!あんた!!そんな魔法使ったら!!!」

僧侶「はぁぁぁぁぁ……!!!!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!さあ!!!何発耐えられます―――」

―――ビッ!

魔道士「え……?」

エルフ「いっ!?―――え?な、なんかこっちまで風の攻撃が……」

勇者「まずい!!彼女は魔法を止められない!!」

魔法使い「退避!!退避ー!!!」

エルフ「説明してよ!!!」

―――ズバッ!!

魔道士「がっ?!―――あっひゃっひゃっひゃ!!!なるほどぉ!!!発動した魔法は止めることができない!!!なるほどぉ!!!」

僧侶「……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォォ

僧侶「……」パンッ

魔道士「私の魔法が消える!!駄目だ!!!すごい!!貴女はすごい!!!普通のニンゲンならそんな魔力を放出し続けることなど不可能!!」

魔道士「貴女の特異体質が生み出した奇跡!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

僧侶「消えなさい……」

魔道士「貴女のようなニンゲンを作れば!!!そうだ!!!新しいキラーマジンガは貴女のような体質に―――」

僧侶「消えろ!!外道ぉ!!!」ヒュン!

魔道士「おぉ―――あ……?ひゃひゃ……ゃ……ぎゃ……」

僧侶「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

魔法使い「お……収まった……?」

勇者「大丈夫ですか!!!」ダダダッ

僧侶「ぅ……ぁ……」ガクッ

勇者「おっと」

エルフ「すごい……壁やら床、天井まで傷だらけに……」

魔法使い「今まで治癒にしか魔力を使えなかったけど、あの腕輪のおかげで温存できるようになったから」

エルフ「普段、優しい人って溜め込むってきいたことあるけど……。その典型?」

魔法使い「私も彼女が本気で怒ったところ初めてみたわ……」

勇者「これは……怒りのツボを押さえておかないと……将来の側室勢力図が一変するかもしれませんね……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

勇者「では、僕は拉致監禁されている人たちを助けにいきます!!!」

魔法使い「私を行くわ。アンタだけだと何をするかわからないし」

勇者「ですから、僕はちゃんと段階を踏んだ末にラブチュッチュするのであってですね―――」

魔法使い「わかったわよぉ!!」

エルフ「……」

僧侶「すぅ……ん……すぅ……」

エルフ「でも……どうしてあの魔道士に魔法が……?」

エルフ「魔法具を賊に配るぐらいなら、自分でも装備するはず……」

エルフ「うーん……」

エルフ「もしかして……魔法具では止められないほどの魔力を……?」

僧侶「ゆう……しゃ……さまぁ……」

エルフ「……!」ゾクッ

エルフ「人間も千差万別か……」

エルフ「敵に回したくないな……こんな人間……」

僧侶「うふふ……すぅ……すぅ……」

―――牢獄

勇者「誰かいますかぁ!!!」

魔法使い「見て!!」

勇者「裸?!」

女性「ぉ……ぉ……」

勇者「だ、大丈夫ですか!?」

女エルフ「……」

魔法使い「しっかりして!!」

男性「……」

勇者「息のない人もいますね。買い手がつかなかったのか……それとも衰弱しきってしまったのか」

魔法使い「とにかく助けないと」

勇者「そうですね」

「うぅ……ぐすっ……うぇ……」

勇者「ん?」

少女「うぅ……たすけて……だれかぁ……うぅぅ……」

―――広間

エルフ「ふぅー……」パァァァ

魔法使い「どう?」

エルフ「はぁ……みなさん命そのものを吸い上げられているから……手の施しようがないね」

魔法使い「治らないってこと?」

エルフ「端的に言えば、全く老化せずに老衰死するようなものだから」

魔法使い「そんな……」

エルフ「……」

勇者「君、大丈夫か?」

少女「うぅぅ……うぇぇぇん……ママぁ……パパぁ……!!」

勇者「困ったなぁ……。これは一緒にお風呂か……?」

魔法使い「何言ってるのよ?!」

勇者「しかし、裸の付き合いも必要ですよ」

魔法使い「その子は元気があるから後回し!!それよりもこっちの衰弱している人たちを助ける方法を考えて!!!」

勇者「そんなのキラーマジンガを起動させて、エネルギーをその人たちに返せばいいのでは?」

エルフ「そうか。エネルギーの在り処はそこしか考えられない」

魔法使い「でも……」

勇者「さぁー!!キラちゃんを僕のキッスで!!!」

魔法使い「なんか……敗北感が……」

エルフ「人を助けるためにはそれなりの犠牲も必要だから」

勇者「では、キラちゃんを救出に行きましょう!!!」

魔法使い「じゃあ、アンタは留守番ね。この子の傍に誰かいないと……あ、いや、結局、駄目か……それなら目の届くところに……」

エルフ「ボスがいなくなって、塔にいた魔物は逃げ出したみたいだし、ここは安全だと思う。それにできれば三人で行きたい」

魔法使い「どうして?」

エルフ「もしあの機械兵士が暴れたら、大事になるから」

魔法使い「そ、そうね……」

勇者「話は纏まりましたね。―――今行きますよ!!!眠り姫ー!!!!」

魔法使い「いい?すぐに戻ってくるから大人しくしててね?」

少女「う……うん……」

エルフ「急ごう」

少女「……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

少女「ふん……あれだけ大口を叩いたわりにはあっさりと倒されたようだな……」

少女「……」スタスタ

魔道士「」

少女「魔法は通じないのではなかったのか?」

少女「ん……?なるほど……鎧が破壊されている……。これは勇者による一撃か……」

少女「鎧の不備に気づかなかったのか……。まあ、研究だけをしていた者に戦闘など期待するだけ無駄だったか」

少女「とはいえ……」

僧侶「すぅ……すぅ……むにゃ……」

少女「この広間の惨状……強大な魔法が発動したと考えるべきか……。これでは下手に手出しができないな……」

少女「魔王様が懸念していたことが起こったか」

少女「能力の秘匿……」

少女「では、作戦をプランBに移行するか」

少女「勇者たちの力……調べ尽くしてくれる……」

―――キラーマジンガの部屋

勇者「やぁ。お嬢さん」

キラーマジンガ「……」

魔法使い「出て行きなさい」

勇者「おや?いいのですか?僕を追い出し彼女が暴走したとき、困るのは誰か……頭の良い貴女なら分かりますよね?」

魔法使い「……っ」

エルフ「仮にも勇者。こんな少女の裸で変な気分になったりしないでしょ?」

勇者「もちろん!!でへへ」

魔法使い「……はやくしましょう」

エルフ「うん……。じゃあ、起動させてみる。まずは水を抜いて……」ピッピッ

魔法使い「暴走しないわよね……」

勇者「僕が抱きしめてあげなければ!!」

魔法使い「おい!!」

エルフ「起動」ピッ

キラーマジンガ「―――おはようございます」

勇者「おお?!」

魔法使い「暴走する……?」

キラーマジンガ「……」キョロキョロ

エルフ「おはよう。気分は?」

キラーマジンガ「良好です」

勇者「ねえ」

キラーマジンガ「はい」

勇者「僕のこと覚えている?」

キラーマジンガ「検索開始……検索中……申し訳ありません。メモリーには該当するデータが残っていません」

勇者「そうか」

キラーマジンガ「貴方は?」

勇者「……パパだよ」

魔法使い「ぶっ?!」

キラーマジンガ「パパ……?父親ということですか?」

勇者「そうだよ」

エルフ「とりあえずこの服をきて。ボクのだけど」

キラーマジンガ「ありがとうございます」

魔法使い「ちょっと!!なに言ってるのよ?!」

勇者「まあまあ。僕に任せてください」

魔法使い「任せてくださいって……」

勇者「娘よ」

キラーマジンガ「はい」

勇者「僕と一緒に来るかい?」

キラーマジンガ「お言葉ですが、自分の父親に当たる人物はこの塔の管理者です。貴方ではありません」

勇者「そう思いこまされているんだよ」

キラーマジンガ「どういうことですか?」

勇者「君は僕と……この人の間に生まれた人間の女の子だ!!!」

魔法使い「なぁぁ?!なんで私があ、あんたなんかとぉ!!!」

キラーマジンガ「証明する物の提示を要請します」

勇者「どうしてわかってくれないんだぁ!!!娘よぉぉ!!!」ギュゥゥ

キラーマジンガ「そういわれましても。私のメモリーにない人物ですので、警戒させていただきます」

勇者「証明する物は生憎とない」

キラーマジンガ「では貴方の命令に従うことはできません」

勇者「……」

エルフ「機械だから何言っても無駄だって」

魔法使い「側室じゃなくて娘にするってどういう了見なのよ?!」

勇者「じゃあ、君が父親だと思い込んでいる人物が既に亡くなっているとしたらどうする?」

キラーマジンガ「その場合は新たなマスターを選出しなければなりません」

エルフ「君はどういう目的で作られたか分かっている?」

キラーマジンガ「来るべき戦いのためです」

魔法使い「戦い?」

キラーマジンガ「はい」

エルフ「それって……誰と誰の?いや、どことどこのって言ったほうがいい?」

キラーマジンガ「そこまではデータとして残されておりません」

魔法使い「人間を滅ぼすためとか?」

エルフ「それはないと思う」

魔法使い「どうして?あの魔道士が作ったっていうなら」

勇者「彼女は人間の命をエネルギーにしているのですから、滅ぼしては本末転倒でしょう」

魔法使い「あ……」

エルフ「あの魔道士が目指していたのは無尽蔵のエネルギーを内臓し、心まで有する機械兵士の開発。ただそれだけ」

魔法使い「心ね」

キラーマジンガ「なにか?」

勇者「心を持たせるってところが中々興味深いですよね」

エルフ「あのマッドサイエンティストが心を作ろうとしていた……。来るべき戦い……」

勇者「あの」

キラーマジンガ「はい」

勇者「君のことはキラちゃんって呼んでもいい?」

キラーマジンガ「私の名はキラーマジンガ。その呼称は登録されていません」

勇者「ちっ」

エルフ「もう少し何かないか調べてみよう。このままじゃエネルギーの抽出方法も分からないし」

魔法使い「何かって言われても」ゴソゴソ

エルフ「取扱書とか手記とか……そういう類を……」ゴソゴソ

勇者「年齢は?」

キラーマジンガ「製造されてから六ヶ月になります」

勇者「生後六ヶ月か」

キラーマジンガ「ところで、貴方は私の父親なのですか?」

勇者「気になる?」

キラーマジンガ「データに無い以上、貴方は信頼に値する人物ではありません。ですが、肉親であるというのなら戦闘は回避したいので」

勇者「へえ……」

キラーマジンガ「彼女は私の母親なのですか?」

勇者「うんうん」

魔法使い「違うわよ!!!」

キラーマジンガ「否定されました」

勇者「照れ屋なんだ。はっはっはっはっは」

キラーマジンガ「親であることを告げることは羞恥心を煽ることに繋がるのですか?」

勇者「なるよ」

キラーマジンガ「分かりました」

勇者「え?」

キラーマジンガ「……インプット完了しました」

勇者「なにしたんだ?」

キラーマジンガ「私は人の感情、心の揺らぎを学んでいくように設定されています」

勇者「なるほど。今のも人間の感情として記憶したんだ」

キラーマジンガ「はい」

勇者「大変だね」

キラーマジンガ「それが私に与えられたことですので」

勇者「でも、感情ってさ十人十色だから同じ状況でも答えが違ってくるものだよ?」

キラーマジンガ「それは承知しております。なので同じ状況を何度か経験し、感情の平均化を常に図っています」

勇者「じゃあ、恋愛の感情って平均化されてるの?」

キラーマジンガ「恋愛……愛情に関する感情であればいくつかは」

勇者「ほう……。いいね。じゃあ、ちょっと試そうか」

魔法使い「何やってるのアイツは……」

エルフ「変に暴れないだけマシかな」

魔法使い「ん……?これは?」

勇者「―――まった?」

キラーマジンガ「今来たところです」

勇者「そっか、よかった」

キラーマジンガ「今日はどこにいくのですか?」

勇者「そうだな……実は今さ、両親が旅行で留守なんだ」

キラーマジンガ「本当ですか?それって……」

勇者「ああ。朝まで二人っきりになれるよ?」

キラーマジンガ「でも……私は……」

勇者「いいだろ?もう恋人になってから3ヶ月だ。そろそろ次の愛を確かめようぜ?」

キラーマジンガ「……優しく……してください……」

勇者「それはできない。だって、君が……美しいから」キリッ

キラーマジンガ「もう……めちゃくちゃにして……」ウットリ

エルフ「これは……あの魔道士の日記?」

魔法使い「読んでみましょう」

エルフ「うん」ペラッ

勇者「―――何か飲む?」

キラーマジンガ「何でもいいです」

勇者「そうか……じゃあ……」

キラーマジンガ「待ってください。それはまだ早いです」

勇者「どうして?なんでもいいって言ったじゃないか」

キラーマジンガ「だって……それは大人の飲み物……」

勇者「君は十分、大人だよ。ほら、口をあけて」

キラーマジンガ「や、やめてください」

勇者「ここには僕たち以外だれもいない。叫んだって無駄だ」

キラーマジンガ「や……やぁ……」

勇者「さあ……口を開けろぉ!!」ガバッ

キラーマジンガ「だ、だめです!!お酒は二十歳になってからぁ!」

勇者「関係あるかよぉ!!おらぁ!!!酒だ!!酒をだせ!!」

キラーマジンガ「あなた!もう家にはお酒を買うだけのお金はないです!!」

勇者「だまれ!!」バシッ

キラーマジンガ「あぁん!」

勇者「てめえは俺の言うことだけを聞いていればいいんだよ!!」

キラーマジンガ「そんな……昔のあなたに戻って……」ウルウル

勇者「酒!!いいから酒もってこいよ!!」

キラーマジンガ「―――もう我慢できません。私は実家に帰らせていただきます」

勇者「え……お、おい……嘘だろ……?はは……悪い冗談は……」

キラーマジンガ「さよなら……」タタタッ

勇者「まってくれ!!俺が悪かった!!!まってくれぇぇぇぇ!!!!!」

エルフ「―――なるほど。要は治癒魔法と同じようにしたら、生命エネルギーの還元ができるみたいだ」

魔法使い「魔法を使うようにって、あの子の協力が大前提なのね」

エルフ「そういうことになるかな。でも、元のマスターはもういないし、あの子がボクたちの中から誰か一人をマスターとして選んでくれたら」

魔法使い「はぁ……それしかないわね」

キラーマジンガ「どうでしたか?」

勇者「すごいな。すごすぎるよ」

キラーマジンガ「いえ」

勇者「でも、まだまだだ」

キラーマジンガ「どういうことでしょうか?」

勇者「最後の別れのシーンだけど、あれは酷いよ」

キラーマジンガ「そんなバカな……」

勇者「いいか?あそこは―――」

魔法使い「はい。御飯事はやめて」

勇者「何か分かりましたか?」

エルフ「うん。―――あの」

キラーマジンガ「なんでしょうか?」

エルフ「お願いしたいことがあるんだけど」

キラーマジンガ「マスター以外の命令を聞くことは許可されていません」

魔法使い「よく聞いて……貴女のマスターは、死んだわ。もういないの」

キラーマジンガ「そうなのですか?」

勇者「ああ。君のマスターは酷い奴だった」

キラーマジンガ「そうですか」

魔法使い「だから……」

キラーマジンガ「マスターのご遺体は?」

エルフ「上階にあるけど」

キラーマジンガ「案内してもらえますか?」

勇者「どうする気だ?」

キラーマジンガ「マスターが没した場合、ご遺体を埋葬するように言われております」

魔法使い「そうなの」

エルフ「結構、律儀なマスターだったんだ」

キラーマジンガ「行きましょう」

勇者「こっちだ」

魔法使い「いいの?もしかしたらマスターの死体を見たときに怒り狂って……」

勇者「大丈夫ですよ。僕を信じてください」

―――最上階

少女「……あ」

勇者「お待たせ。何かあったか?」

少女「ううん……」

キラーマジンガ「マスター……」スタスタ

エルフ「……」

キラーマジンガ「埋葬を開始します」

魔法使い「どうするの?」

キラーマジンガ「マスターの自室に棺桶があるはずです。それを持ってきます」

勇者「手伝おうか?」

キラーマジンガ「いいえ。私一人で大丈夫です」

勇者「そう」

キラーマジンガ「お心遣い、感謝いたします」

エルフ「衰弱した人の様子は?」

魔法使い「さっきより弱ってるみたいね。急がないと……」

キラーマジンガ「……」サッサッ

勇者「もしもし?」ペチペチ

僧侶「うぅん……」

勇者「やはり深い眠りについているようですね」

魔法使い「全魔力大放出だもの」

勇者「しばらく寝ていてもらうほうがいいですね」

エルフ「んー……」

魔法使い「なに?」

エルフ「貴女もかなりの魔力を放出できるのに、彼女のようにはできないの?」

魔法使い「あの子は魔法を止められない。私は魔法が飛ばせない。そういう違いがあるの」

勇者「でもドラゴンの炎も防いだんですよ」

エルフ「それはすごいね。人間でそんな芸当ができるのは大魔導士ぐらいだと思ってたのに」

魔法使い「でも、あれは向こうも本気じゃなかったでしょうし」

勇者「いえいえ。もうドラゴンの炎なんか余裕で霧散にしていたではないですか」

少女「……」

魔法使い「でも、何度も通用はしないわ。あれ一回でもかなりの魔力を消費したし」

エルフ「ドラゴン……。いつかは戦うときが来る……」

勇者「大丈夫ですよ。こちらには絶世の美女であり閨秀魔法使いと、容姿端麗・艶麗のエルフがいるのです」

魔法使い「はぁ……口がよく回るわね」

エルフ「嬉しいくせに」

魔法使い「うるさいわね」

勇者「ドラゴンなんてちょちょいのちょいやで」

少女「……」

勇者「どうかした?」

少女「え!?」

勇者「怖い顔してたから。―――もう怯えてないみたいだね」

少女「そ、そんなこと……」

勇者「……」

キラーマジンガ「今から埋葬のために塔を降りたいのですが」

勇者「あ、少しまってください」

>>468
訂正

魔法使い「はぁ……口がよく回るわね」

魔法使い「はぁ……舌がよく回るわね」

キラーマジンガ「なんでしょうか?」

勇者「マスターはどうする?」

キラーマジンガ「埋葬が終了したあとに行います。新たなマスターが埋葬の中止を命じる可能性もありますので」

勇者「なるほど」

エルフ「じゃあ、この人たちも運ばないと」

キラーマジンガ「どうしてですか?」

魔法使い「この人たちは貴女にエネルギーを分けて、衰弱しているの」

キラーマジンガ「なるほど。私からこの方々にエネルギーの供給を行えというのですね?」

勇者「そういうこと。やってくれる?」

キラーマジンガ「……そうですね。あなた方の中から新たなマスターを選出しなければならないようですし、エネルギーの供給ぐらいなら」

魔法使い「本当?!」

キラーマジンガ「はい」

勇者「よかった」

魔法使い「じゃあ、パパっとやってくれる?」

キラーマジンガ「了解しました」

―――魔道士の塔 入り口

キラーマジンガ「……」ザッザッ

「ありがとうございました」

魔法使い「いえいえ」

女性「なんとお礼を言っていいか」

勇者「僕の側室になってくれれば、それで」

女性「え……でも、私には……夫が……」

勇者「人妻でもオッケーです」

女性「そ、そんな……」

エルフ「いくらなんでもそれはダメでしょ?」

勇者「む。人妻の魅力を説くときがついに―――」

エルフ「来てないから」

女性「えっと……貴女は……?」

エルフ「ボクは……ただ彼と知り合い……」

勇者「未来の側室です」キリッ

女性「まぁ」

エルフ「いや……」

勇者「行くあて、あるんですかねぇ?」

エルフ「……」

キラーマジンガ「埋葬、完了しました」

魔法使い「終わったのね」

キラーマジンガ「早速、マスターの選出を行いたいのですが」

勇者「パパにしておきなさい」

魔法使い「ダメよ!!こいつだけは!!」

勇者「なんですと?どこがダメなのですかね?」

魔法使い「そもそもパパじゃないでしょ?!」

勇者「義父ですよ。そういう設定です」

魔法使い「いや……」

キラーマジンガ「―――そこの人物が我がマスターに相応しいと判断します」

少女「……え?わ、私……ですか?」

エルフ「ど、どうして?!」

キラーマジンガ「知力、体力、魔力。どれをとっても前マスターに引けを取らない、いえ、一部ステータスはそれを凌駕しています」

少女「そ、そんなこと……!」

魔法使い「こんな子どもが……?」

エルフ「ボクたちの中で一番優秀ということ?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「君……」

少女「な、なんですか……!?」

勇者「すごいね」

少女「あ、いや……えへへ……」

エルフ「でも、そういう逸材を集めていたし、ありえなくもないか」

魔法使い「ねえ、えっと魔法とか使えたりするの?」

少女「少しだけ……」

勇者「それは大変だ。この歳で魔法が使えるというなら、きっと優秀な師がいるか、名家の出なのでしょう」

魔法使い「親が心配しているかもしれないわね」

勇者「そうでしょうね」

魔法使い「じゃあ、とりあえず街にいってこの子の親探しをしましょうか」

勇者「ええ。それがいいでしょう」

キラーマジンガ「私のマスターになっていただけますか?」

少女「いや……」

キラーマジンガ「そんな」

勇者「いきなり言われても困惑するでしょう」

エルフ「そっか」

少女「あの……私の代わりに……」

勇者「僕が?」

少女「うん」

勇者「じゃあ、側室になってくれる?」

少女「うん……なるから……」

魔法使い「ちょっと!見境なしなの?!」

勇者「下は6歳、上は49歳までオッケーですよ?」

魔法使い「幅広いわね」

勇者「勇者ですから」

キラーマジンガ「では、不本意ではありますが、貴方を代理マスターとして認証いたします」

勇者「くるしゅうない」

キラーマジンガ「では……」スッ

勇者「なんですか?」

キラーマジンガ「私の目を見てください」

勇者「はい」

キラーマジンガ「……」ジーッ

勇者「んー」

キラーマジンガ「あの……」

魔法使い「どうしてキスしようとしてるのよ?!」

エルフ「何も分からない女の子に手を出すのは勇者としてどうなの?」

勇者「おっと。そうですね。僕としたことが、あっはっはっは」

キラーマジンガ「マスター認証が終了いたしました。ただし、代理であることをお忘れなきようお願いいたします」

勇者「じゃあ、僕の命令には絶対服従ということでよろしいですね?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「そうだなぁ。まずは服を脱いでくれる?」

キラーマジンガ「はい」スルッ

勇者「あ、やっぱりいいです」

キラーマジンガ「……?」

魔法使い「……命拾いしたわね」

エルフ「……」

勇者「と、とにかく街までもどりましょう。助けた人を安全な場所に連れて行かないと」

魔法使い「賛成ね。疲れたわ」

エルフ「うん」

勇者「起きてますか?」ペシペシ

僧侶「うぅん……ゆう、しゃ……さまぁ……」

勇者「ダメか」

キラーマジンガ「マスター。私が彼女を運搬いたします」

―――街 宿屋

魔法使い「はぁー!!」ドサッ

エルフ「長い1日だった……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

勇者「全くですね」

魔法使い「なんでアンタがこっちの部屋にいるのよ」

勇者「いいではないですか」

魔法使い「よくないわよ。……で、あのキラーマジンガと女の子は?」

勇者「キラちゃんに女の子の両親、あるいは自宅の捜索をお願いしています」

エルフ「護衛も兼ねて?」

勇者「キラちゃんの正規マスターはあの子なので危害を加えることはないでしょうし、従順に付き添ってくれるはずです」

魔法使い「そうだろうけど」

勇者「僕たちは吉報を待つことにしましょう。―――さぁ、一緒に寝ましょうか?」ギュッ

エルフ「え?ボクと寝るの?」

魔法使い「おい……」

―――街 住宅街

キラーマジンガ「ここでもないようですね」

少女「……ちょっといいか?」

キラーマジンガ「はい?」

少女「正規のマスターは俺なのか?」

キラーマジンガ「飽く迄も貴女がマスターです。しかし、代理マスターの認証を行いましたので直接的な命令権は貴女にありません」

少女「つまり、俺の命令は聞けないと?」

キラーマジンガ「いえ。私本体、代理マスターに不都合が起きない程度のご命令であれば従います」

少女「なるほど。お前、全員の能力値を計測したんだよな?」

キラーマジンガ「はい」

少女「各人物の長所や短所も分かるのか?」

キラーマジンガ「はい」

少女「教えてくれ」

キラーマジンガ「それはできません。不利益が生じます」

少女「ちっ……これだから木偶人形は嫌いだ。見ているだけで吐き気がする」

キラーマジンガ「申し訳ありません」

少女「よし。マスター認証をする」

キラーマジンガ「よろしいのですか?」

少女「ああ」

キラーマジンガ「では……代理マスターコードを破棄。マスター認証を行います」

少女「ふふ……」

キラーマジンガ「―――認証、完了しました」

少女「勇者一行の身体情報を全て教えろ」

キラーマジンガ「了解しました」

少女「よし……これで……!!!」

キラーマジンガ「どなたからお聞きになりますか?」

少女「勇者だ。奴の弱点を教えろ」

キラーマジンガ「了解しました。―――彼の弱点は女性です」

少女「え?」

キラーマジンガ「彼は異性に近づくと緊張から体温を上昇させ、発汗しています。恐らく女性に免疫がない、あるいは何らかの精神的外傷があるものと判断します」

少女「本当か……?」

キラーマジンガ「間違いありません。私と代理マスター認証をする際、目の焦点も定かではありませんでした」

少女「あの魔法を使う女は?」

キラーマジンガ「彼女の弱点は魔力の制御ができないところにあります。彼女の先天性の障害があると思われます」

キラーマジンガ「彼女の体組織では魔法の発動が困難でしょう。発動し、対象に損傷を与えるためには相対距離を無くす必要があります」

少女「あの修道女は?」

キラーマジンガ「彼女もまた魔力を制御できないところにあります。先天性の異常により、一度流れ出した魔力を自分の意思では停止することができません」

少女「なるほど。では、あのエルフは?」

キラーマジンガ「平均的なエルフ族の能力であり、秀でたものも劣っているものもありません」

少女「どういうことだ?」

キラーマジンガ「長所も短所もありません」

少女「……」

キラーマジンガ「以上です」

少女「……そ、それだけか?もっとないのか?」

キラーマジンガ「ありません。各ステータスも平均的な人間と変わりがないため、弱点は言えません」

少女「バカな……それだけの弱点を抱えながら……どうやって数々の魔物を……」

キラーマジンガ「……」

少女「本当に目を見張るようなところはないんだな?」

キラーマジンガ「ありません」

少女「……」

キラーマジンガ「ありません」

少女「わかった。マスターを辞退する。もう一度、奴を代理マスターとして認証しろ」

キラーマジンガ「何故でしょうか?」

少女「お前が嫌いだからだ」

キラーマジンガ「マスターのことは私、大好きです」

少女「いいから言われた通りにしろ!!」

キラーマジンガ「しかし、次のマスター登録は現マスターが亡くならない限りはできません」

少女「……こっちにこい」

キラーマジンガ「はい」

少女「本当に手間がかかるな……!!こんな奴を部下になんて死んでも御免だ……!!」

―――郊外

少女「よくみておけ」

キラーマジンガ「はい」

少女「……っ」メリメリ

キラーマジンガ「……」ジーッ

ドラゴン「―――どうだ!!!」

キラーマジンガ「マスター……マスター……」オロオロ

ドラゴン「マスターは死んだ!!」

キラーマジンガ「マスター……埋葬を……」

ドラゴン「そういえば埋葬までしなければいけなかったか」

キラーマジンガ「マスターのご遺体がない……」オロオロ

ドラゴン(こいつには死んだふりも通用しないな。なら―――)

少女「―――ここだ」

キラーマジンガ「マスター!!!マスタァァ!!!生きていたのですね!!!」テテテッ

少女「……」

―――宿屋

勇者「遅いですね」

エルフ「はなれて」ググッ

勇者「まあまあ」

魔法使い「でも、本当にちょっと不安ね」ギュッ

勇者「あっつ!?火傷した!?―――応急処置!!!」ムニュ

僧侶「あぁん」

魔法使い「……」

キラーマジンガ「―――遅くなりました」

少女「ごめんなさい」

勇者「キラちゃん。首尾は?」

キラーマジンガ「残念ながら、彼女の自宅はありませんでした。マスター」

勇者「そうか……」

魔法使い「残念ね」

少女(どうやら演技ぐらいはできるようだな。そのままお前は勇者をマスターだとしておけ。付き纏われては敵わない)

僧侶「すぅ……すぅ……」

勇者「じゃあ……この子は……僕が保護するとして」

魔法使い「然るべき場所に預けるべきよ」

勇者「しかし!!この子はもう結婚できる!!!」

魔法使い「できないわよ!!」

勇者「まだ子どもの産める状態ではないと?そんな……そんな馬鹿な……」

少女「あの……」

エルフ「どうしたの?」

少女「わ、私のパパとママね……こことは違う街にいるの……」

勇者「本当に?」

少女「うん」

魔法使い「どこ?」

少女「海が見える街」

勇者「港町か」

エルフ「えっと……この辺で港町っていったら……」ペラッ

              _,,,..-.ー.─.-.-....、._
          二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`:..、
       /::::::::``:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::::::::ヽ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::ヾ:::::\:::::::::',
     /:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,、_:::::\::::\:::::',
      i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ\\\:::::::::\:::\::',
      l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l  >≧r、\::::::ヾ\_ r 、
      l::::::i!:::i::::l;/i ._,,\::::!、::::::l   辻ヾ〉 \:::ヾ) (ヽ、`\
     i:::::ハ::::|::::l:::i〈`(ヘ\! \:',   ゞ-′  ラ∨/\ \ \
.     l:::i l:::|::::lヾ、 弋i;) ヽ  \      ┌::ソノ   \ \ \_
      ∨ l::::l::::l:::\ "           ヘ::::/ r--‐-、>、    `ヽ
        \|\!\  ′          ∨   ` ‐-、 ``       `、
         ヾ ヾ 、    ー ´    ,   ヽ、    -\         `、   キラッ☆
          _, r ´:`  、      , ′ 、   |  !:.:ヽ : ヽ         ヽ
       _, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.....` ー <´    ヽ  |  |::.:.:ヽ: : ヘ       `、
    _, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.| .ヽ   -、ー_'/   !::.:.:.:.:ヽ: : ` 、  _______i_
   /゙: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:./i!  | ヘ i. / 入  |\.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,, ..---┴‐,
   l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\/:.:.:.:!'! /ヽ、ヽrk'´:_,r、 イ:.:.:\/ _>-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
   !:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.l ゙'   !   !  ヘ/|:.:.:.:.:.:\/::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
  l:.:.:.:.:.::i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヘ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!   ヘ__/    |:.:.:.:.:.:.:./!:::::::::::..:.:.:.:.:.:.:.:.:..::.:.:.:l

  /:.:.:.:.:.:.: !.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ:.:.:.:.:.:.:.:.|    / ヽ    i:.:.:.:.:.:.:/ ヘ::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ

 勇者

         r'ニニニ二二二ニニニ、ヽ
         | |     .@     | |    
      rー┤|           |├、    
      |   | |       Π    | | |   
      l    l l     lニ  コ  .| | |   
     |    l l      |_|    | | |     
       l__l_l______|_|__|   
       | /  ,イ,へ 丶、       ヘ     
       | ,' / //  \| \ ト、 ヽ ',  
      !j./l /        ` ヽト、ヽ }    
.     | | .!/.!  ○    ○ l l |ヽ,'   
       l | | .l/////////////! | !.|      
       .| ! | ト、  ,-ー¬   .ィ| .| l    
        | l ! l l` r --.' <j ,' | |  
        | .l ', l |ャ-ミ≡彳ァトイ ,'! !   
      .| | ヽ| | l r´ )/ハy / | ',
 
 僧侶

ヽ: : : : : : : :∠____              _,,.-''´ .ノ     .`''-..,,_:::::::__,,..-''"7:::::::::::,'
  ヽ __: : : : : : : : : : :/    _,,..-―――∠..-‐''"´::ヽ、         _二 -‐''"´:::::::::::/
     ̄ ̄\ : : ∠_,,..-''" ,.-''`ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`''-..,,__,,..-''":::::::::::::::::::::::::::::::/

         \/::_,,-‐-'    └―-.、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
         /::::/             └―-.、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
        ,.'::::_,,┘       ,.-‐-.、      ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
         /:::/ .,.--.、    ,l_   '.,       ,'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
      .,':::::l .,' , - ',    ト、 ヽ ヽ ',    `ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/

      l:::::::〉 .l / // |    !・ l | | l       丿::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.,.'
       |:::::,'  | l l l ・|     .'/ / / ,'     `ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::., '
        |:::::l   ヽ\ヾ.,' __   ヽ´__ノ          }:::::::::::::::::::::::::::, '
      l::::::〉  _lヽ-.''/  ヽ      /ヽ、  __ノ:::::::::::::::::::::::/
      .',::::l  (_::::::::::}___ノ     /  |  _)::::::::::::::::::::::/
         ',::ヽ__. ゝ'`´      _,,-''´   /  ヽ:::::::::::::::::/
          ヽ::::::',     --=二___,,..-''´    ノ:::::::::::/
         \::ヽ-.、            ___,,..-''":::::::::/
          `''-,,::\ ___   .l:::::::::::::::::_,,-''´
             `''-,,_::::::::::::::`''‐'"::::_,,..-''"

 魔法使い

      /⌒ヽ

  ,,..ィ'" ̄`'     \,
  !     ,l^^l     ゙ヽ
 ↑  _,'ノ  |、     ゙i

 ,!  y',r‐¬  ゙;亠-、ュ  l
 |  i' 、'''''。'i  i'。'''' ; ゙!、 l
 | A.l  `‐‐' ,  、゙‐‐"  l.A | 
 l ヒj.l、 _/_,._,._'、_ , |.iッ.|

 |   |゙t`iェェェェェェェェiヲ" l   l
 !  | 、ヘェェェェェェェッ'ノ l   l
 !   !、.._ ̄ ̄ ̄ ̄_,丿   l
└凵_L_]`ー=ー''[__」__,,L凵.

      。j     l,。
   ィl ̄l:____:l ̄lー
   l  l lボクッ娘l l  l
   ヽ ` ̄ ̄ ̄ ̄ ' ノ



 エルフ女

     _ , -‐  .,,_
   , '゛⊿▽△▽△ヽ
  / ∧/ ̄ ̄ ̄\∧
  / ∧v        ヘ
. /ィ天/人 ∧ ハ八iヘ ハ
 | |%〕/芹 Ⅵ f禾レ'刈
 Ⅵ¨ハ ヒノ    tノルリ rm

  Y从iゝ、   ,   ノⅥ /}ヨ、
      r‐,≧x≦ ‐-∠/三ヨ
     / ゝ=ノヾミ)ゝ-‐¨´

    /三/》   《
    '''〆∧ ゜ ゜∧
      ,气ミ-=彡叺

       /_/    l_|
.     /  /    |  |
     ミヱ    ミ五

 キラーマジンガー

               __// __ヾ==-、

               f'´ ̄ , '´:::::::::::::::::::::::`ヽ l
               |  /::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::\
              ∧/:::::/::::::〃::::;.イ/l::::}:: ,::::::::::ヽ

              l::::{::::::l:::::/__::/ / /_/:/j: /::::::::}
              |::::l::::::レ/,,∠`/ /∠/メ//:/

              l:::::!::::::| 伐_j    f以ヽ彡イ
              ヽ:::!::::::i V;;リ    {;;リ 〃::: |
               Vl::::: |      '   {:::::: l
                l:!:::::::l>、   ー   .イ:::::::,'__
          厂 ̄ ¨ヽ \ :::!-j> _ ィ<、::::::::/  ヽ
           `ート 、_r' _\ヽ:|,_ ̄ヘ二´¨l_ハ::/  ./゙ヽ
          /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ /    }
          l   l    } Ⅵ ヽ  ' 〉、 ∨    /
          ゝァ‐ }   くrー!  入  }:.:.\ V二ニ〈
           { /    \ }∨  \∧:.:. ヽ ',   }
           ン′      ヽ|    ¨ヽ:.:.. ノ ヘ_/ ヽ
          {         \   8//~′ }    _>
           `ヽ、__  __/ `ヽ_//    〃 /
              \  ̄/    /`===彳 r′
             __ヽ {     }     j、 l
           く    ハ    /-- ――‐イ 〉

ドラゴン(村娘)

                    . . : :⌒: .、_ - ―- 、
              /: . : . : . : . :ヽ . : . : .ヽ
             ノ, -ー -: .- : . 、: . : . : ∧
         , ィ´: . : . : . : . : . : . : . :` 、 . : . :∧

        /: . __: . : . : . :__: . : . \ . : ∧
       /: . : . \  }γ⌒ヽ}  / . : . : . : . : . ∧
     /: . : . : . : .: 〉 ` ゝ_〃 〈 . : . : . : . : . : . : :',

     /: . : . : . : . : .⌒ー、  -⌒:─ 、 . : . : . : . : : {
     /: . : . : . : .: : : ⌒: . :ヽ/: . : } : ハ : . : . : . : . :∧
    ,': . : . : . : .ィ´.,ィ.弍㍉: . : .彳弍㍉} . : \ : : . : ∧
    !: . : .: ハ: . : .イb::::::::l    {: b::::::::} 》  : :jヽ_: : : ',
   _〉 : . : :l .', :八 弋辷ノ  \{ 弋少'.ノ l:://:{  ヽ7´:∧
  く <∧:ト、.:{.:ヽ:{弋            ル: : :∧/: .ヽ:∧
   \_い:ヽ : f .、    r  ¬     /  : . : :∨: : . : .∧
      人:ヽ}. | ト、   ヽ __ノ  ,ィ´j  : . : : : ∨: . : . :∧
       /: . : .: /. 人  `} :-rz ‐ ´{ : . : : . : : : .: ∨: . : . :∧
       |: . :.,./     -ト_「 ̄ ̄ ̄フ^.._     ..: ∨: . : .: ∧
       |: : /   /_ ..`ー  ィ    _\   {:ソ: . .: : : : /
      l: :i   /     ` ー -    入   .\.. / . : .八 /
      ∨ ∠  -― -       . ,ィ´..- ―-  ン、/: :. :./  \

ドラゴン(少女)

勇者「ここしかないでしょうね」

エルフ「そこまで遠くないし、ボクたちも船に乗って次の国を目指すっていうのもアリかな」

少女「……」

魔法使い「船旅かぁ」

キラーマジンガ「前マスターが言っていました。まだ海水は危ないと」

魔法使い「錆びるの?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「……いいのですか?」

エルフ「え?」

勇者「船旅となれば多くの人間と鮨詰めに」

エルフ「な、なんで、そんなこと……ボクは別に……」

勇者「……」

魔法使い「とにかくこの子の自宅を探すのが最優先よね?がんばりましょう」

勇者「ええ。ご両親に挨拶はしておかないといけませんしね」

少女「ありがとう……」

―――夜 宿屋 屋上

エルフ「……」

勇者「ここにいましたか」

エルフ「どうかした?」

勇者「今なら里に戻れますよ?」

エルフ「……」

勇者「嫌なんですよね、人間が多い場所は」

エルフ「嫌というか……人間は醜い生き物だって聞かされて育ったから」

勇者「この街に来るときも、嫌そうでしたものね」

エルフ「よく見てるね」

勇者「だって僕は勇者ですから」キリッ

エルフ「人間は嫌い。だけど……魔王も好きじゃない」

勇者「え?」

エルフ「あの魔道士はエルフ族をもエサにしていた。なのに魔王は野放しにしていた。それって、ボクたちを魔族としてみてないってことになるよね?」

勇者「魔族間での確執、というには些か酷いですね」

エルフ「今回の一件で分かった。魔王はいつかボクたちを狙ってくる」

勇者「……」

エルフ「人間の次は……きっとエルフ……そう思う」

勇者「そうですか」

エルフ「だから、魔王は倒さないといけない」

勇者「人間と協力してでも?」

エルフ「死ぬのは嫌だから」

勇者「分かりました。では、僕にもそのお手伝いをさせてください」

エルフ「何言ってるの?貴方は元々、魔王を倒すために……」

勇者「僕の目的は飽く迄も多くの側室に囲まれて老衰死ですから。魔王討伐なんてその目的達成のための手段でしかありませんよ」

エルフ「そう……なんだ……」

勇者「はい。ですから、貴女が目指す魔王討伐とはまた志しが違います」

エルフ「……」

勇者「貴女を殺させはしない。貴女を守りましょう。我が命に代えても」

エルフ「臭い台詞。それ、みんなに言ってるでしょ?」

勇者「いえ。言ってません」

エルフ「嘘つき」

勇者「それに僕から頼み込んだという形にしておくことも大事かと思いまして」

エルフ「どうして?」

勇者「人間と協力したとなると角が立つでしょう。でも、勝手についてきたならまだ印象はそこまで悪くなりませんよ」

エルフ「そうかな」

勇者「間違いないです。僕のことは悪質な変質者だと思ってくれて構いません」

エルフ「実際、そうだし」

勇者「え!?そんなぁ!!どこがぁ?!」

エルフ「ボクを脅して同行させようとしたり、意味もなく肩を抱いてきたり……」

勇者「それは貴女が美しいからですよ。むしろ貴女が悪いと思います」

エルフ「……」

勇者「好きだ!」

エルフ「はいはい。おやすみ」スタスタ

勇者「好きだ!!!側室になってくれぇ!!」

―――宿屋 廊下

キラーマジンガ「マスター」

少女「やめろ」

キラーマジンガ「マスターの実力と私の力があれば、人間3人とエルフ1人程度なら問題ありません」

少女「奴らの能力が判明するまで直接的な戦闘はするなと魔王様に言われている」

キラーマジンガ「魔王という人はマスターの力を過小評価しているのではないでしょうか?」

少女「いいか?奴らよりも実力が上であった魔物が次々にやられている。もしこちらの想定を超えてくると怪我だけでは済まないだろう」

キラーマジンガ「しかし」

少女「いいから俺にはもう話しかけるな。お前のマスターは勇者。そうだったな?」

キラーマジンガ「はい。マスターにそのように言われています」

少女「絶対に俺が―――」

エルフ「何してるの?」

少女「……ううん。ちょっとトイレに……」

キラーマジンガ「はい」

エルフ「そう……。明日は早いから夜更かしはしないようにね」

―――翌日 街

僧侶「勇者様~」タタタッ

勇者「すいません。病み上がりでおつかいを頼んでしまって」

僧侶「いえいえ。はい、どうぞ」

勇者「これです。ありがとうございます」

僧侶「いつでもなんでも仰ってくださいね?」

勇者「なんていう従順ぶり。ランクを側室奴隷に引き上げましょう」

僧侶「やったぁ」

魔法使い「下がってるわよね?ねえ、それって下がってるわよね?」

勇者「―――どうぞ」

エルフ「え?」

勇者「貴女の武器です。空手では何かと不便なときもあるでしょう?」

エルフ「まあ、相手があの魔道士ぐらい強ければ魔力もすぐに無くなるけど」

勇者「ですから、武器を。ボーガンなら扱えると思いまして」

エルフ「あ、ありがとう。でも、いらないと思うけど……」

キラーマジンガ「私がいますから」

勇者「おぉ。おはようございます」

キラーマジンガ「おはようございます。マスター」

少女「お、おはよう」

勇者「おはよう」キリッ

キラーマジンガ「マスター。朝は早かったようですがどちらに?」

勇者「え?ああ、色々です」

キラーマジンガ「私に言ってくだされば何でもご要望にお応えしたのですが」

勇者「なんという犬っぷり。君の側室ランクは犬だ」

キラーマジンガ「恐縮です」

僧侶「犬のほうが可愛い……」

魔法使い「馬鹿ばっかりね……」

エルフ「まあまあ」

勇者「では、行きましょうか。目指すは海の方角!!!魅惑の港町!!!」

少女「……」

―――フィールド

エルフ「でも、こうして並んで歩くと大所帯になったね」

魔法使い「少し前まで3人だったのにね」

僧侶「私は楽しくていいと思いますよ」

勇者「―――いいですか?男を振るのにも色々方法があるんですよ」

キラーマジンガ「ふむふむ」メモメモ

少女「……」

勇者「―――待ってくれ!!俺が悪かった!!考えなおしてくれ!!!」

勇者「―――いつも!いつもそう言ってるじゃない!!嘘つき!!もう知らない!!」

勇者「―――今度は本当だ!心を入れ替える!!だから見捨てないでくれぇ!!!」

勇者「―――じゃあ、昔の貴方に戻ったらまたここに帰ってくるわ。それまでは……さよなら……」

勇者「こうして、更生したら寄りを戻すと言っておけば、上手く逃げられるわけです」

キラーマジンガ「なるほど。男性を立ち直らせるきっかけにもなれば、別離もできる。その女性は男性にとって恋人以上の存在になるわけですね」

勇者「そう!!もう元に戻ることはない。だけど、あの女が人生において、ただ1人のオンナだった。まるで美談!!女性も色んなところで美化される。いいことばかりだ」

少女(人間とは面倒な生き物だな。そんな奴、喰えば終わりだろうに)

勇者「ここまでで質問は?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「キラちゃん」

キラーマジンガ「本当に更生し、もう一度やりなおそうといってきた場合はどうするのですか?」

勇者「君ならどうする?」

キラーマジンガ「もう一度、恋人関係に戻ります」

勇者「どうして?」

キラーマジンガ「男性は約束を守りました。なら、私もその約束を守ります」

勇者「そのとき君に好きな人がいた場合はどうする?」

キラーマジンガ「え……」

勇者「男の更生を信じ、待ち続ける。いい話だが、待っている間にも愛を欲する。それが人間だ」

キラーマジンガ「で、では……そのときは……」オロオロ

勇者「―――それは君が決めることだ。人に聞くことじゃない。人間の感情とはそういうものだ。答えなんて……ない」キリッ

キラーマジンガ「なるほど。奥が深すぎてショートしそうです」メモメモ

少女(俺なら約束を守った奴に敬意を賞して縒りを戻すかな……)

魔法使い「ちょっとー、あんまり変なこと教えないでよ」

勇者「キラちゃんには必要なことですから」

魔法使い「本当に?」

キラーマジンガ「勉強になります」

僧侶「勇者様ならどうするんですか?」

勇者「え?」

僧侶「振った女性がもう一度、やり直してほしいって言ってきたら、やり直します?」

勇者「無論―――」

エルフ「側室にするとかは無しで」

勇者「それはつまり僕が勇者ではなく平凡な市民で人生を終えるという平行世界での話ですね?」

エルフ「え……うん、そんな感じだと思う」

勇者「ならば……戻しませんね」

魔法使い「へえ……どうして?」

勇者「勇者というステータスがなければ愛せる女性は1人が限界。ならば、今現在愛している女性を徹底的に嬲ります」

キラーマジンガ「流石はマスター」パチパチ

魔法使い「意外ね。浮気性な男かと思ってたけど」

勇者「僕はそれほど器用ではありません。勇者という肩書きがなければ一夫多妻なんて実現はしないでしょう」

僧侶「勇者様……」

勇者「でも、現実はいつも悲しい。僕は勇者に選ばれてしまったぁ!!つまり、選ばれた男!!」

勇者「女に不自由のない人生が約束されてしまったのです!!ああ!!!なんてこったぁ!!」

魔法使い「あの……」

勇者「故にみんなから愛されてしまう!!選ばれてしまったから!!そんなみんなの愛を無碍にはできない!!受け取るだけの資格が僕にはあるからぁ!!」

エルフ「どうして?」

勇者「勇者だから」キリッ

キラーマジンガ「マスター」

勇者「勿論、君は僕の娘としても側室としても―――」

キラーマジンガ「魔物です」

少女「え……」

魔物「ガルルル……!!!」

勇者「いつの間に。―――戦闘準備!!」

魔物「ガァァア!!!」

僧侶「きゃぁぁ!!」

魔法使い「なっ!」

勇者「せいやぁ!!!」ズバッ

魔物「ギャァァ……」

魔法使い「あ、ありがとう」

勇者「いえ」

エルフ「やぁ!!」バシュ

勇者「お。早速、使ってますね。ボーガン」

エルフ「試してみただけ」

キラーマジンガ「下がってください」

少女「う、うん」

キラーマジンガ「低級な魔物では私には勝てません」

魔物「ガァァァァ!!!!」バッ

キラーマジンガ「遅い」ザンッ

キラーマジンガ「お話になりません」

勇者「すごい。やはり戦闘力は並じゃない」

キラーマジンガ「マスターに迫る脅威を排除する。それが私の使命です」

エルフ「もう居ないみたい」

僧侶「よかったぁ。怪我はありませんか?」

魔法使い「ええ。大丈夫よ」

勇者「それにしてもいち早く魔物に反応したな」

キラーマジンガ「魔物を探知する機能が搭載されています。ある程度、魔物が接近してると察知できるようになっています」

勇者「なるほど。そんな便利機能が」

キラーマジンガ「はい」

エルフ「……」

勇者「知っていましたか?」

エルフ「う、うん……。でも……」

勇者「ですね……」

僧侶「どうかしました?」

魔法使い「ああ、そういえばこの子のエネルギーはどうするの?」

勇者「それも考えないといけないですね」

キラーマジンガ「私のエネルギーは無限だと聞いています」

エルフ「でも、人間の生命エネルギーや魔力を吸い取るんでしょ?」

キラーマジンガ「はい。ですが、ニンゲンに拘る必要はありません」

魔法使い「ど、どういうこと?」

勇者「まさか」

キラーマジンガ「前マスターはニンゲンからの摂取が最も効率が良いといっていましたが、生命エネルギーはどの生物からでも一定量得ることが可能です」

僧侶「先ほど倒した魔物からでもエネルギーを得ることができるってことですか?」

キラーマジンガ「その通りです」

少女「……」

勇者「そういえばあの魔道士、虫や獣からでも同じエネルギーを得られるって……」

エルフ「人間から得るとは言ってたけど、別に人間限定の話じゃなかったね」

魔法使い「生きていればなんでも良いってこと?」

キラーマジンガ「はい。生命体であることが第一です。あとは生命の鮮度で得られるエネルギーが増減することがあります」

少女「殺戮兵器……」

魔法使い「ちょっと」

少女「……」

勇者「他の命を吸い取りながらでないと活動できない……」

キラーマジンガ「はい。そのように私は作られています」

僧侶「それって……あの……」

エルフ「先のことは考えないようにしようよ。今は貴重な戦力であることには変わりないし」

勇者「ええ。そうですね」

キラーマジンガ「マスターのために尽力致します」

勇者「ありがとう。ところで、エネルギーの補充はどれくらいの頻度で行うんだ?」

キラーマジンガ「私が活動している限りは消費していきます。最小限の活動をしない場合でも、供給が途絶えてから七日で活動は停止します」

勇者「そうか」

キラーマジンガ「なので小まめな供給を推奨いたします」

エルフ「うん。まあ、嫌でも魔物とは戦うし、意識する必要はないってことだね」

少女「……」

―――港町

勇者「さて、じゃあこの子のご両親に挨拶しにいきましょうか」

魔法使い「なんのためによ」

勇者「側室にください。と一言言わないと怒られてしまうでしょう?」

魔法使い「いくら丁寧に言っても怒るわよ!」

キラーマジンガ「マスター。私が捜索に当たります」

勇者「いやいや。僕が」

キラーマジンガ「どうぞどうぞ」

エルフ「じゃあ、ボクは情報収集でも」

僧侶「わ、私も行きます」

魔法使い「待って、私も行くわ。アンタも」

勇者「えぇ?!だから!!ご両親にぃぃぃ!!!!」

魔法使い「ダメ!!!」

少女「……」

キラーマジンガ「行きましょう、マスター」

―――港

僧侶「あ、あの……船は出ていますか?」

船員「どこまで行きたいんだ?」

魔法使い「ここから北のほうに行きたいの」

船員「無理だな」

僧侶「どうしてですか?」

船員「旅の人みたいだけど、知らないのか?―――北の国はもう魔王の手に落ちたんだよ」

勇者「……いつの話ですか?」

船員「一、二ヶ月前だな。おかげで魔物が増えて漁船は言うに及ばず、客船だって何隻も沈んでる」

エルフ「魔王……」

船員「こんな海で自由に航海してるのは海賊ぐらいだな」

勇者「……海賊ですか。それって、この海域にいるっていう噂の海賊ですね?」

船員「よく知ってるな。色んな場所を冒険している荒くれ者の集団だ。海の魔物を退治してるから一部では英雄だが、海で商売している俺たちには害でしかない」

勇者「聞きました。それこそ魔物と同じように漁船や客船を襲っては金品を奪うとか」

船員「陸には盗賊や山賊もいるのに、海ぐらい平和でいきてえよ……」

僧侶「困りましたね」

魔法使い「今まで通り、陸伝いにいくしかないんじゃない?」

エルフ「そうだけど。それだと……」

勇者「魔王が力をつけ始めている。急がないと、手がつけられなくなるでしょう」

僧侶「勇者様……」

勇者「北にある国は世界でも有数の軍事国家でした。そこが陥落したとなると……」

魔法使い「でも、どうして。今まで拮抗を保っていたんじゃないの?」

勇者「キラーマジンガの技術を魔王が流用しているとしたら?」

エルフ「それって……生命エネルギーを?」

勇者「あの魔道士だって魔族。魔王と繋がりがないはずがない。技術提供もしていたと考えるほうがいい」

僧侶「では、魔王は今……無尽蔵の魔力を手に入れているのでしょうか?」

勇者「奴らにとって人間など視界の隅に移る塵に同じ。それが己が血肉になると分かれば喜んで手を出すでしょう」

エルフ「そんな……それならエルフも……」

勇者「急がないと……なんとしても海を渡る方法を……!!」

魔法使い「故郷に帰るならまだしも、進めないんじゃ……」

僧侶「勇者様、やはり……」

勇者「ええ。それしかないでしょう」

魔法使い「どうするの?」

勇者「海賊と接触します」

エルフ「海賊……」

魔法使い「待って。どこにいるかも分からないのに?」

僧侶「そ、それなら、ちゃんと調べてきました」

魔法使い「いつの間に?!」

勇者「人身売買組織の盗賊団。あの人たちにですよ。前の街で聞き込みをしてきました」

魔法使い「えー?」

勇者「あの人たちはこの国全域で活動をしていました。情報はたんまり持っていましたよ」

エルフ「なるほど。ああいう人たちだからこそ、様々な事を耳朶に残しておかないとダメだもんね」

勇者「その通りです」

魔法使い「海賊かぁ……嫌ねぇ……」

勇者「魔物ではないので話せば分かってくれる分、楽な相手だと思いますよ?」

魔法使い「それで、あの海賊は?」

勇者「ここから西に行った沿岸部にアジト……というか村があるそうです」

エルフ「海賊の村?」

勇者「海賊を支持する人たちが集まっている村でしょうね」

魔法使い「海賊を支持って、さっき言ってた英雄扱いにしている人たちのこと?」

僧侶「恐らく。助けられた人も少なくないと聞きました」

魔法使い「でも、やっていることは盗賊や山賊と変わらないんでしょ?」

勇者「関係ありませんよ。命を張って戦ってくれたのなら、どんな極悪人でも命の恩人になるわけですから」

魔法使い「そうだけど」

エルフ「じゃあ、そこに行くの?」

勇者「自由に航海できる人たちならきっと北の大地まで連れて行ってくれるはずです」

僧侶「そうですね。魔王を倒すって言えばきっと協力してくれます!」

勇者「そして……ふふふふ……ぬほほぉ……」

魔法使い「海賊のキャプテンって女?」

勇者「はい」キリッ

魔法使い「やけに真剣になっていたのはその所為ね……全く……」

勇者「さぁ!!では、このまま突入しましょう!!」

僧侶「おー!!」

エルフ「二人はどうするの?」

勇者「相手が相手ですし置いていきましょう」

魔法使い「そうね。それがいいわ。女の子は勿論、あのマーちゃんだって見世物小屋に売られるかもしれないし」

僧侶「マーちゃん?」

魔法使い「キラーマジンガだからマーちゃん」

エルフ「キラちゃんじゃなくて?」

魔法使い「キラちゃんってなんか可愛くないじゃない?」

僧侶「ラーちゃんじゃダメですか?」

エルフ「それならガーちゃんでもいいよね?」

勇者「キラちゃんはキラちゃんです」

魔法使い「マーちゃんよ」

僧侶「ジーちゃんでも可愛いですよね?」

―――広場

キラーマジンガ「マスター。あの雲、何かに似ていませんか?」

少女「……」

キラーマジンガ「検索中……検索中……。分かりました。猫です。あそこが耳で……あれがヒゲで……」

少女「黙れ」

キラーマジンガ「了解しました」

少女(海に出るなら数多くの部下がいる。そこで奴らの力を引き出して……)

勇者「キラちゃーん!!」

キラーマジンガ「……」

僧侶「ジーちゃん!」

キラーマジンガ「……」

魔法使い「マーちゃーん!!」

キラーマジンガ「……」

エルフ「ンちゃん!」

キラーマジンガ「呼称は一つでお願いします」

勇者「え?見つけられなかった?」

キラーマジンガ「申し訳ありません」

魔法使い「じゃあ、ここじゃないの?」

少女「うん……。ここじゃない……」

僧侶「もしかして北にある国から……?」

勇者「確かに魔王の領土から拉致されてきた可能性は高いですが」

エルフ「とりあえず二人は宿にいて。今から船を調達してくるから」

キラーマジンガ「お留守番ですか?」

僧侶「そういうことになります」

キラーマジンガ「……」

勇者「僕から離れたくないのは分かる。でも、君を危険に晒したくはないんだ。分かっておくれ、娘よ」

キラーマジンガ「パパ……私のこと……キライ?」

勇者「好きだよ。毎日一緒にお風呂に入って、体の隅々を舐め回すように観察したいぐらい大好きだ」

キラーマジンガ「そんなパパが好き……抱いて……」

魔法使い「ちょっと。いつのまにそんなの仕込んだのよ」

勇者「練習ですよ」

魔法使い「何の!?」

キラーマジンガ「マスター曰く、私は娘でありながら実父に恋心を持つという倒錯した人物らしいので」

魔法使い「はぁ?!」

キラーマジンガ「その感情の勉強のために、色々教わりました。―――マスター、今のはどうでしたか?」

勇者「70点だな」

キラーマジンガ「くそぉ」

エルフ「えっと……早く行こうよ」

勇者「そうですね。じゃあ、行ってきます」

キラーマジンガ「行ってらっしゃいませ」

少女「……」

キラーマジンガ「では、マスター。我々は宿に―――」

少女「尾行するぞ」

キラーマジンガ「了解しました」

少女(目を離すわけにはいかないからな……)

―――海賊の村

勇者「ここのようですね」

エルフ「じゃあ海賊のことを……」

魔法使い「そんな簡単に教えてくれるのかしら?」

僧侶「海賊さんの支持者だって言っておけば大丈夫ではないでしょうか?」

魔法使い「そうね……あまり気乗りはしないけど」

勇者「では二手に分かれて情報を集めましょう」

エルフ「どうして?」

勇者「固まっていて、もし敵だと認知された場合、一網打尽にされてしまうかもしれませんから」

魔法使い「そうね。相手は海賊の仲間だし……」

僧侶「わ、分かりました」

勇者「僕と一緒に行動したい人、挙手!!」

僧侶「はい!」ビシッ

エルフ「……」ビシッ

魔法使い「え!?―――じゃあ、私も!!」ビシッ

勇者「理由を聞こうか」

僧侶「私は勇者様のお傍にできるだけいたいので。あと、どんな些細なことでもお手伝いしたいです」

エルフ「ボクは二人が貴方の毒牙にかからないように」

魔法使い「み、右に同じよ!」

勇者「まいったな。みんな側室なんだから仲良くしてくれないと困りますよ。あっはっはっは」

エルフ「早く決めて」

勇者「じゃあ、行きましょうか」

エルフ「……うん」

僧侶「あー、残念です」

魔法使い「……まあ、あんたじゃないだけマシね」

僧侶「え?どうしてですか?」

魔法使い「あんた、アイツに何されても嫌がらないどころか嬉しがってるでしょ?」

僧侶「ダメですか?」

魔法使い「ダメよ」

僧侶「でも、勇者様は口に出すだけで何もしてきませんし……。私の胸を触るのも主に治癒のためですし……うーん……」

勇者「すいません」

村人「はい?旅のお方ですかな?」

勇者「ええ。実はどうしても僕たち、海を渡りたいのです」

村人「どうして」

エルフ「魔王を倒すために」

村人「魔王を……?」

勇者「はい」

村人「なら、安心しなさい」

勇者「え?」

村人「魔王なら海賊団が倒してくれるから」

エルフ「海賊といっても普通の人間のはず……。魔王に太刀打ちできるとは思えないけど」

村人「海賊たちの力を見縊ってはいかん。ここいらの魔物なんて海賊の敵ではないからな」

勇者「それほどまでに兵力が充実していると?」

村人「そうだ。巨船を10隻も有する大艦隊。魔王の一団など相手にもなりはせん」

勇者「そんなに大規模だったのか……」

村人「と言っても、その10隻は常に別行動を取っているけどね」

僧侶「なるほど。あえて別の場所で活動して、広い範囲で自衛に当たっていると?」

村人「そういうこと。魔物も、いや魔王すらも下手に手出しできないほどなんだから」

魔法使い「でも、人間も襲っているんでしょ?」

村人「それはちゃんと理由があるんだよ」

僧侶「理由、ですか?」

村人「民間船を襲うことで、危険な海に人を出さないようにしているのさ。ほら、魔物のほかにチョー強い海賊がいるとなれば、海に出ようとはしないだろ?」

僧侶「まあ、萎縮はしますよね。そんな大きな武力を持っているなら」

村人「そう。ちゃんと人々の安心安全も考えてるんだよ」

魔法使い「でも、それで命を落とした人もいるんじゃないの?」

村人「小さな犠牲は仕方ないだろ?」

魔法使い「そうだけど……。漁船すらも海に出さないってどういうことよ?あの人たちは、それで生計を立てているのよ?」

村人「死ぬよりはマシだろ」

魔法使い「口で言えば分かることなのに。やり方を間違えているとしか思えないわ」

僧侶「お、抑えてください!!言いたいことはわかりますが!!」

村人「てめえ……海賊のやり方にケチをつけるっていうのか?」

魔法使い「正義の味方みたいな顔をしないでって言ってるの」

村人「んだとぉ……!!」

僧侶「あ、あの!!ここで騒ぎはまずいですから!!」

魔法使い「でも……!!」

村人「お前ら……海賊を潰しにきた兵士か……?」

魔法使い「違うわよ。ただ、言い方が気に入らないだけよ」

村人「あぁ?」

魔法使い「海賊の所為で困窮している人もいることを自覚して」

村人「んなことは分かってるよ!!」

魔法使い「なら!!人の生活まで奪うなんてことできるわけないでしょ!!」

村人「やっぱりお前ら……!!」

僧侶「や、やめてくださーい!!!」

村人「みんなー!!であえー!!!国の兵隊が海賊団を潰しにきたぞー!!!」

魔法使い「ち、違うって言ってるでしょ!!」

勇者「―――え?」

エルフ「なんだろう……?」

勇者「嫌な予感がするので、こっそり行きましょう」

エルフ「う、うん……」

「捕まえろ!!」

魔法使い「やめて!!燃やすわよ!?」

僧侶「それはダメです!!」ギュッ

魔法使い「くっ……」

「悪いが牢屋に入ってもらうぜ」

魔法使い「どうしてよ」

「決まってるだろ。海賊団は世界を救う唯一の希望だ。それを何もできねえ国の兵士に潰されてたまるかよ」

魔法使い「だから、兵士じゃないってば」

僧侶「もう何を言っても無駄です……」

魔法使い「もう……」

「連れて行け!!」

勇者「むぅ……」

エルフ「捕まったね」

勇者「エルフの里とは立場が入れ替わりましたね」

エルフ「どうする?」

勇者「海賊と敵対したくはなかったですが……致し方ありませんね」

エルフ「今は警備の目が厳しいから、夜になるまで待とうか」

勇者「それがいいでしょう」


少女「……」

キラーマジンガ「お二人が拿捕されましたね」

少女「ふんっ……馬鹿な連中だな」

キラーマジンガ「救出いたしますか?」

少女「放っておけばいい。どう逃げ出すか。いや、あいつらなら簡単に逃げ出すはずだ」

キラーマジンガ「私も同意見です、マスター」

少女(こういう事態でこそ、能力を発揮するはず。見せてもらうぞ……)

キラーマジンガ「……潮風で錆びてしまいそうです、マスター」

―――宿屋 寝室

勇者「さて、夜まで待とうと思うのですが」

エルフ「うん」

勇者「しかしですね、考えたのですが」

エルフ「どうかした?」

勇者「助け出したあと、この村を離れないといけないですよね?」

エルフ「うん。みんな怒るだろうし」

勇者「となると海賊と接触できるチャンスがなくなりますよね」

エルフ「まあ、ここぐらいしか会える場所はないから」

勇者「そうなると海を渡れませんよね?」

エルフ「そうだね」

勇者「困りました」

エルフ「……」

勇者「素直に謝りますか?」

エルフ「許してくれるかな?」

勇者「あの」

店主「なんだい、お客さん?」

勇者「さきほど、騒ぎがありましたよね?」

店主「ああ。海賊たちの悪口を言った奴らな」

勇者「どうなるんですか?」

店主「恒例だが、海賊に引き渡すだろうね」

勇者「海賊に?」

店主「ああ。まあ、どんなことをしたのか海賊たちが聞いて、それで処分を下すと思うよ」

勇者「今まで捕まった人はどんなことに?」

店主「海に放り出されたり、魔物を誘き寄せるための餌にしたり、半年以上雑用で働かせたりだな」

勇者「なるほど」

店主「といっても、海賊たちが自分たちのしていることはどれだけ正しいことなのかを見せ付けてから、だけどな」

勇者「……」

店主「どうかしたかい?」

勇者「いえ。ありがとうございます」

エルフ「おかえり」

勇者「ただいま。行きましょう」

エルフ「どこに?」

勇者「こうなったら、僕たちも捕まりましょう」

エルフ「どうして?」

勇者「捕まれば海賊と直接話ができます」

エルフ「でも、心象最悪になるから協力してくれなくなるんじゃ」

勇者「二人が捕らえられた時点で心象なんて気にするだけ無駄でしょう」

エルフ「そうかもしれないけど」

勇者「それにこれは直感ですが、海賊たちは話が分かる人たちだと思います」

エルフ「え?」

勇者「勿論、下っ端の人たちではダメです。上、つまり船長クラスの人なら……」

エルフ「……信じていいの?」

勇者「未来の夫を信じられないかい?」

エルフ「……はいはい」

―――村 広場

勇者「海賊はー!!!わるーい!!!!」

エルフ「わるーい」

「なんだ!?なんだ?!」

勇者「海賊はー!!はんざいしゃー!!!」

エルフ「はんざいしゃー」

「おい!!てめえ!!なにいってんだ!!!こらぁ!!!」

「黙らせろ!!!」

勇者「海賊はー!!!人間の屑ー!!!」

エルフ「くずー」

勇者「海賊、はんたーい!!!」

エルフ「はんたーい」

「捕まえろ!!!!」

勇者「ええい!!無礼者!!はなせぇ!!!」

エルフ「つかまったー」

―――牢屋

村人「入ってろ」

勇者「おとと」

エルフ「……」

ガチャン

魔法使い「ちょっと」

勇者「これは奇遇ですね」

僧侶「勇者様!!申し訳ありません!!捕まってしまいました!!」

勇者「僕もです」

僧侶「お揃いですね」

勇者「相性バッチリじゃないですかね、これは」

僧侶「もう……勇者様ったら」

魔法使い「あの……助けに来てくれたんじゃないの……?」

エルフ「うん」

魔法使い「そう……仲間だってことがバレたのね……。ごめんなさい……」

勇者「しかし、どうして逮捕されてしまう事態に?」

魔法使い「ついカッとなって……」

エルフ「どういうこと?」

魔法使い「自分たちは正しいことをしているって……言うから……ちょっと腹が立って……」

勇者「なるほど。海賊の支持者が海賊の正義を主張してきたと?」

魔法使い「うん……。海賊の行為で苦しんでいる人もいるのに……全てを正当化して……それで……」

勇者「……」

魔法使い「ごめんなさい。反省しているわ」

勇者「いえいえ。それは僕が同じ立場なら、貴女と同じ事を言っていたでしょう」

魔法使い「え?」

勇者「こちらにも譲れないものはあります。一元論で語れることではありません」

魔法使い「でも……」

勇者「気にしないでください」

魔法使い「ごめんなさい……」

勇者「……次のことを考えましょう。これから海賊たちに身柄を引き渡されるわけですが……いいですか?そのとき―――」

―――海賊の村

キラーマジンガ「皆さんが捕らえられました」

少女「何やってんだ……あいつら……」

キラーマジンガ「何か作戦があると思われます」

少女「まあ、牢獄内で合流し、協力して脱獄する腹なんだろう」

キラーマジンガ「助力いたしますか?」

少女「静観でいい」

キラーマジンガ「了解しました」

少女「……」

キラーマジンガ「……マスター」

少女「……なんだ?」

キラーマジンガ「潮風は私にとって毒です」

少女「知るか」

キラーマジンガ「出来れば屋内に退避したいのですが」

少女「知らん。どうして俺がそこまで面倒をみなければいけないんだ」

―――数日後 牢屋

村人「―――出ろ」

勇者「来たか……!!運命のときが!!!」

村人「いいからでろ!!」

魔法使い「……」

僧侶「はぁ……ドキドキします……」

エルフ「街に置いて来た二人が心配だね」

僧侶「そうですね……心配してなければいいですけど……」

海賊「こいつらか?」

村人「ああ。騒ぎを起こした四人だ」

海賊「よし、こい」

勇者「優しくしてください」

海賊「それはできねえなぁ」

勇者「なんだと?!ゆ、ゆるさないぞ!!僕にエッチなことしたら!!許さないからなぁ!!するなら優しくしてぇ!!」

海賊「しねーよ!!!」

―――船着場

海賊「頭、こいつらです」

船長「ふーん」

勇者「あれぇ?!」

船長「なんだよ?」

勇者「船長は女性だってきいてますけどぉ?!」

船長「それはキャプテンのことだな。総括の」

勇者「じゃあ、キャプテンを出してください」

船長「キャプテンは大海原で魔物狩りをしてるよ」

勇者「なんてこったぁ!!!」

僧侶「落ち込まないでください」

エルフ「きっと会えるって」

魔法使い「……」

船長「俺たちも忙しいんでな。早く乗船しろ」

勇者「くぅぅ……!!!こんなことなら!!もっと別の策を考えるべきだったぁ!!!」

キラーマジンガ「マスター」

少女「分かっている」

キラーマジンガ「みなさんが出航します」

少女「見えている」

キラーマジンガ「どうされますか?」

少女「このまま海に出る気か……」

キラーマジンガ「私、カナヅチで」

少女「知らん」

キラーマジンガ「では、私はお留守番ですか?」

少女「そうだな」

キラーマジンガ「そんな、マスター」ギュッ

少女「はなせ!!急がないと奴らは海に出てしまうだろうが!!」

キラーマジンガ「置いていかないでください」ギュゥゥ

少女「黙れ!!ええい!!鬱陶しい!!!」

キラーマジンガ「私の目が届かないところで何かがあっては遅いのです、マスター」

―――船内 甲板

船長「―――罪状は把握した。つまり、我々の正義が理解できないというわけだな?」

勇者「……」

船長「ふん。解せないな」

勇者「何がですか?」

船長「お前はそんなつまらないことを言うような奴には到底見えない」

勇者「ならば貴方の目は節穴ということになります。実際に騒ぎを起こしたのは僕ですから」

魔法使い「……っ」

船長「後ろの女どもは関係ないと?」

勇者「僕の巻き添えを食らっただけです」

魔法使い「ちが―――」

エルフ「しっ」

魔法使い「……」

船長「まあいい。罪自体は大したことではないし、国の兵士でもない。なら、半年間の雑用で許してやる。後ろの女どももだ」

勇者「待ってください。彼女たちは関係ありません。やめてください」

船長「口答えか?」

勇者「貴方達は曲がりなりにも正義の味方だ。何の罪もない人も罰するのですか?」

船長「それがここのルールだ」

勇者「しかし、見たところここは男ばかりです」

船長「そういう世界だ」

勇者「ならば一つだけお願いを聞いてください」

船長「罪人の分際で……」

勇者「キャプテンのいる船までこの三人を護送してください!!!」

僧侶「勇者様……もしかして……」

船長「なに?」

勇者「そこでならキリキリ働かせてくれてもかまいません。でも、ここにだけは置いておけない!!」

船長「てめえ……」

勇者「男たちの慰めに使うというなら、僕はこの場で暴れる」

船長「武器も無しにこの人数を相手にするのか?」

勇者「……俺にも譲れないものはある」

魔法使い「……!」

エルフ「……」

僧侶「勇者様……」

船長「面白い。確かに俺たちは外道じゃない。海賊だ。お前の女に手を出すつもりはない」

勇者「話の分かる人でよかった」

船長「お前の女は誰だ?そいつだけは見逃してやろう」

勇者「全員です」

船長「ふざけんなよ」

勇者「全員、俺の女だぁ!!!文句あるかぁ!?あぁ!!!」

船長「そんなわけあるかぁ!!!出鱈目もいい加減にしやがれ!!」

勇者「お前ら、言ってやれよ!!俺の女だってなぁ!!!」

僧侶「は、はい!!私は勇者様の女です!!」

エルフ「ボ、ボクも……えっと……何度も体を……預けた……」モジモジ

魔法使い「私も……あの……夜はいつも……はだ、かの……付き合いを……」モジモジ

勇者「な?」ドヤッ

船長「俺たちの世界じゃあ、落とし前が大事なんだよ」

勇者「なら約束守れよ。俺の女には手を出さないんだろ?」

船長「……いいだろう。だがな、貴重な女だ。そう簡単には見逃せねえなぁ」

勇者「見逃せよ!!」

船長「お前の得物は?」

勇者「剣だ」

船長「ふん……。これか」ポイッ

勇者「返却感謝」

船長「抜け」

勇者「お前で?」

船長「意味が違う」

勇者「―――戦うのか」

船長「譲れないものがあるんだろ?なら、守ってみせろよ」

勇者「魔王の軍勢をも退ける力……見せてもらおうか」

船長「お前が負けたら全員この船で雑用。勝てばお前だけが雑用だ。いいな?」

勇者「いいよ」

船長「ふん……後悔するなよ?」

勇者「航海中だけどな」ドヤッ

「頭ぁ!!やっちまえ!!!」

「かてるわけねーだろ!!ばぁーか!!!」

「やったぁ!!女の雑用だぁ!!!ひゃっほぉ!!!」

僧侶「勇者様……」

エルフ「相手は人間……でも……」

魔法使い「……」

船長「いくぞ?」

勇者「こいやぁ」

船長「―――はぁぁぁ!!!!」ダダダッ

勇者「おぉ!?」ギィィン

船長「訓練で鍛えた動きだな……。やっぱり兵士か?」

勇者「くぅ……!!元兵士だ……よ!!」ギィィン

船長「元?」

勇者「今は勇者だ」

船長「勇者……?馬鹿な。勇者は魔王によってほぼ全員が殺され、生き残った奴も逃げ出したって聞いたが……」

勇者「せぇぇい!!!」ブンッ

船長「そうか!!お前……あの国の勇者か!!」ギィィン

勇者「え……」

船長「俺たちは海の支配者。他国の情報も色々積んでるぜ?」

勇者「なんだと?」

船長「はっ!!!」ブンッ

勇者「くっ?!」

船長「弱小国から生まれた勇者。魔法はおろか剣術すらも他国の兵士に劣るって話だ」

エルフ「え……」

勇者「……」

船長「他国の勇者は勇者として育てられる。だが、てめえの国では勇者が育たなかったんだよな?」

勇者「ああ。だから、王による任命で勇者が決まる。そんなこと国のことを調べればすぐに分かるだろ」

船長「その任命制の弊害で、お前みたいな屑でも勇者になれるんだよなぁ。いいよなぁ」

勇者「だまれぇ!!」ブンッ

船長「おっと」ギィィン

勇者「何が言いたい……!!!」

船長「あの国から排出された勇者は数十人に上る。だが、誰一人として帰ってはこなかった」

勇者「それがなんだ?!」

船長「全員、敵前逃亡したからだろ?」

勇者「……!?」

僧侶「敵前逃亡?」

エルフ「勇者なのに……?」

船長「しかたねえわな。正統なる勇者様でも逃げ出すぐらいだ。一兵士じゃ無理もない」

勇者「黙れ……!!」

船長「お前も逃げ出したいんじゃねえの?王から任命時にたんまり貰ってるはずだろ?金をよ」

勇者「黙れと言っている!!―――覚悟もないまま、ここまで来るわけないだろう!!!」

船長「どうかなぁ?本当は隠居できる土地を探していただけじゃねえのか?」

勇者「……っ」

船長「でぁ!!!」ズバッ

勇者「ぐっ!?」

僧侶「勇者様!?」

魔法使い「あ……」

船長「おーおー。剣が鈍ったな。図星か?」

勇者「違う。俺は勇者だ……魔王を倒すために旅をしている」

船長「ふん。どうだか。その女たちも黙ってついてきてくれる奴を選んだんじゃねえのか?」

勇者「そんなわけ……!!」

船長「逃げ出すときでもお前の背中についてきてくれる女を探してたんだろ?寂しいもんなぁ、独り身は!!!」

勇者「違う!!!」

船長「俺たちも勇者って名乗る奴は数人見てきた。全員、お前みたいな考えだったぜ?」

エルフ「そうなの……?」

船長「ああ。どいつもコイツも女をはべらせて、逃げる場所を求めてやがった。勇者もただの人間。そんな奴らに希望を抱けってほうが、無理だ」

魔法使い「それは……」

船長「お前だって人間の敵う相手じゃないことぐらい理解してんだろ?」

勇者「……!」

エルフ「……」

僧侶「勇者様……」

船長「だから俺たちは生まれた。勇者はアテにならねえ!!自分たちの手で魔王を倒すことにしたんだ!!!」

勇者「俺は……」

船長「大人しく雑用をしていろ。俺たちは近く魔王の城に攻め込む。それで魔王を討ち取る」

勇者「できるわけ……」

船長「できるさ。アレさえ見つかればな」

僧侶「アレ?」

船長「魔王を打ち滅ぼすための武器だ。それさえ見つかれば勝てる。兵力は十分、足りないのは魔王に止めを刺すだけの武力」

魔法使い「そんなものが……」

船長「ここで雑用として生きろ。一応、魔王を討ち取ったことになるぜ?」

勇者「俺に逃げろというのか?」

船長「死にたくねえだろ?」

勇者「あははははは!!!!!」

船長「な……なんだよ」

勇者「いいか。よく聞けよ、糞野郎」

船長「くそ……?!」

勇者「俺はトロルも倒した!!黄金の国で魔人も倒した!!ついでにいうとドラゴンだって退けた!!!」

魔法使い「それ……私……」

僧侶「静かに」

船長「ドラゴン……?出鱈目抜かすな。ドラゴンなんて居るわけないだろうが」

勇者「いるっつーの!!!最近だと多くの人を拉致していた魔道士も倒した!!!この俺が!!!」

エルフ「……それは……違うような……」

勇者「俺はちょー強いぜ!?」

船長「ふん、だから逃げないと?」

勇者「逃げない。逃げたら、誰がこの人たちを側室にするって言うんだ?」

船長「強がりだな」

勇者「そう思うなら、かかってこい。祖国の兵士たちを侮辱したこと後悔させてやるからなぁ!!!」

船長「腰抜けの連中を腰抜けと言ってなにが悪い!!!」ブゥン

勇者「腰抜けだぁ?!―――てめえは知ってるのかよ!!!」ギィィン

船長「何をだ……!!」

勇者「俺たちは市民を守る為に休むことなく毎日毎日訓練をしてきた!!!」

船長「んなこと当然だろうが!!」

勇者「ああ!!そうだ!!当たり前だ!!自慢することじゃない!!」

船長「じゃあなんだよぉ!!」

勇者「―――どんな想いで敵に背を向けたか考えたことはあるのか?」

船長「なっ!?」

勇者「力のない人々を守るためだけに強くなったのに、その人々を見捨てる。どれだけの覚悟がいると思う?」

船長「臆病風に吹かれて逃げただけだろうが!!偉そうなことぬかすなぁ!!!」

勇者「お前は逃げたことまでしか耳にしないようだけど。俺たち祖国の人間は違う」

船長「あぁ?!」

勇者「数十人の勇者は皆、逃げ出したことを恥じて自決している」

船長「おいおい!!だからなんだよ!!死んだからって美談にしようってか?!」

勇者「違う!!」

船長「……っ!?」

勇者「自分の力では及ばなかった。だから、自分よりも力のある者を勇者にしてください」

船長「はぁ?」

勇者「彼らの死にはそんな想いがある」

船長「体よく逃げたんだろ?」

勇者「そうかもしれない。戦いの中で死んだ者もいるからな」

船長「その想いだってお前らの妄想だろ?」

勇者「……」

船長「勇者なんてただの人間だ。何が選ばれた者だよ。俺らと変わらない。群れて初めて力が発揮できる弱い人間だ」

勇者「それでも……」

船長「あ?」

勇者「それでも―――俺たちは守るために強くなり戦った!!それだけは嘘じゃない!!!愚弄するなぁ!!!」

船長「大声だして勝てると思うなよぉ……」

勇者「自分の命惜しさに逃げ出した者なんていない!!!勇者たちは守るべきもののために戦ったんだ!!!!」

船長「うるせえよ!!」ギィィン

勇者「くっ!―――だから、俺も戦うぞ。守る者がいるからなぁ」

船長「それが後ろの女か?」

勇者「俺の我侭に付き合ってくれた人がいる」

エルフ「負けるな……」

勇者「俺のどんな要求にも笑顔で応えてくれる人がいる」

僧侶「勇者様!!」

勇者「俺を信じ、いつも背中を守ってくれる人がいる」

魔法使い「やれぇぇ!!!」

勇者「その人たちを守る!!それが俺の使命だ!!!」

船長「このやろうぉ!!!」ブンッ

勇者「はぁぁぁぁ!!!!」ギィィィン

船長「なっ?!」

勇者「大事な人も守れない勇者なんて俺は知らない……だから俺は負けるわけにはいかない。相手が海賊でもドラゴンでも魔王でもだ!!」

船長「……でも、負けるよな?お前程度の力じゃ……」

僧侶「まだ言いますか?!」

エルフ「負け惜しみだ」

魔法使い「そうね」

船長「事実だろうが。たった4人で魔王に勝てるとでも思ってんのか?」

勇者「……約束は果たしてもらいますよ?」

船長「分かったよ。―――おい」

海賊「はい」

船長「キャプテンと連絡を取れ」

海賊「アイアイサー」

勇者「はぁ……疲れた……」

僧侶「勇者様、今治癒を」ギュッ

エルフ「……」

魔法使い「……」

勇者「なんですか?黙って見つめられると興奮するんですが……」

魔法使い「いや……なんていうか……」

エルフ「あの……さ……」

勇者「はい?」

エルフ「色々訊きたいことができたんだけど」

勇者「……なんですか?」

エルフ「貴方は一体、何の為に旅をしているの?」

魔法使い「……」

勇者「そんなのずっと言ってきているではないですか」

エルフ「……」

勇者「……側室をいっぱい作って老後を面白おかしく過ごすことですが、何か?」

魔法使い「アレだけの啖呵をきっておいてそれを言うの?」

勇者「それ以外にありませんから」

エルフ「嘘つき……」

僧侶「勇者様、もう大丈夫ですか?」

勇者「はい。もう全快です。いつもありがとうございます」

海賊「頭ぁ!キャプテンと連絡がつきました!!明日の昼過ぎには合流できるそうです!!」

船長「よし!!わかった!!」

勇者「では、この人たちには手出し無用ですよ」

船長「分かってる。―――それよりお前」

勇者「なんですか?」

船長「なんとなく分かったぜ。お前がどうして三人も女をはべらせているのかをな」

勇者「は?」

船長「悪かったな、色々きついこといって。そういう戦い方なんだな、お前は」

勇者「何を仰っているのかよくわかりません」

船長「まあ、いい。しっかりやれよ」

勇者「毎晩、ハッスルハッスルですよ」クイックイッ

船長「おい!!こいつらは今から客人だ!!!丁重にもてなせ!!!」

勇者「え?僕は雑用では?」

船長「バカ野郎。勇者様にそんな無礼なことができるかよ。しっかり接待させてもらうぜ」

勇者「ふっ……」

船長「わらうんじゃねえよ。気持ち悪い」

―――船内 食堂

船長「てめえら!!!客人にはくれぐれも失礼のないようにな!!!」

海賊「「うーっす」」

勇者「いやぁ、罪人から客人にグレードアップとは驚きましたね」

エルフ「うん」

僧侶「勇者様のおかげですね」

魔法使い「そうね」

勇者「で、どういう意図があるのですか?」

船長「キャプテンと合流してから詳しいことは話すが、お前ら俺たちの仲間になれ」

勇者「え?」

僧侶「海賊になれというのですか?」

船長「目的は一緒だろ?」

勇者「確かにそうですが」

魔法使い「私たちとはやり方が違うわ」

船長「まあ、すぐに答えが欲しいわけじゃない。ゆっくり考えてくれ。キャプテンもお前たちのことならきっと気に入ってくれるだろうしな」

―――夜 甲板

勇者「海賊か……さて……どうしたものか……」

魔法使い「ここにいたのね」

勇者「どうしました?」

魔法使い「……」

勇者「どうにも眠れなくて。興奮しっぱなしです」

魔法使い「……」

勇者「これはここで貴女をオカズに……」

魔法使い「ごめんなさい」

勇者「え?」

魔法使い「私が騒ぎを起こさなかったら……こんなことにはならなかったのに……」

勇者「結果オーライですよ。何事も最後が良ければいいのです」

魔法使い「……ごめんなさい」

勇者「あの……僕に叱られたいのですか?」

魔法使い「そ、そういうわけじゃ……あ、いや……そうかも知れないわね……」

勇者「なるほど……」

魔法使い「な、なによ……」

勇者「では、叱らせて頂きましょう」

魔法使い「……」

勇者「いつもいつも貴女は直情的に行動しすぎです。僕と別れる際、ドラゴンに独りで立ち向かうといいだしたときはぶん殴ってやろうかと思いますた」

魔法使い「ご、ごめんなさい……」

勇者「貴女は確かに高威力の魔法が使える。だけど、限りなく接近しなければダメ。猪突猛進で勝てるのは下級の魔物ぐらいです」

魔法使い「はい……」

勇者「ドラゴンになんてとてもじゃないですが、数秒で轢死でしょうね。貴女はポンコツだということを自覚してください」

魔法使い「そうですね……はい……アンタに褒められるたびに勘違いしてたのかもしれないわ……」

勇者「もう少し周囲を見て、考えて行動してもらわないと僕が困ります」

魔法使い「ごめんなさい」

勇者「あと、僕にはもう少し優しくしてください。一緒にお風呂入るとか、口移しで飲み物をくれるとか、夜はベッドで運動会するとか」

魔法使い「はい……え!?いや!!それとこれとは……違う……わよね……?」

勇者「てめえ!!反省してねえな!!!」

魔法使い「だ、だって!!エ、エッチなこととは関係ないじゃない!!」

勇者「側室のくせに偉そうだな!!あぁ!?」

魔法使い「側室じゃないって言ってるでしょ!?」

勇者「いいや!!もうおめえは立派な側室だ!!いいか?側室レベルでいうなら、軽く50だぜ?」

魔法使い「レベルの上限はいくつなのよ?」

勇者「30」

魔法使い「突き抜けてるじゃないの!!側室を超えた側室なの!?」

勇者「ああ。もう肉便器だな」

魔法使い「人権侵害でしょ!?」

勇者「トイレに人権なんてあるわけねーだろ。バァーカ」

魔法使い「なんですってぇぇ……!!!」

勇者「悔しかったらなぁ、俺の前で裸になって「抱いてください」って恥ずかしそうに言え」

魔法使い「できるわけないでしょうがぁ!!」

勇者「え?ドMだろ!?やれよ!」

魔法使い「ちが……!!ちがう!!マゾじゃないわよ!!」

勇者「えー?Sなのー?イメージとちがーう」

魔法使い「あー!!もう!!真面目に話したいだけなのにぃ!!!」

勇者「それは無理な相談でござる」

魔法使い「もういいわよ!!」プイッ

勇者「おやすみなさい」

魔法使い「おやすみ!!!」スタスタ

勇者「ふぅー……」

勇者「さて……明日はどうするか……」

勇者「海賊に協力し、強大な戦力を得るか……」

勇者「それとも6人の力を……信じるか……」

勇者「あ、いや、5人か……」

勇者「はぁ……」

勇者「感付かれたのかな」

勇者「軽蔑されるだろうか……?」

勇者「君たちをただの言い訳にしているなんて言ったら……」

―――翌日

海賊「キャプテンがきたぞー!!!」

勇者「なんだってぇ!!!」

魔法使い「ちょっと!なんでアンタがいち早く反応するのよ?!」

勇者「祭りだぁ!!飯食ってる場合じゃねえ!!!」

船長「よくわかってんじゃねえか!!―――おめえら!!キャプテンを出迎えろ!!」

海賊「「アイアイサー!!」」

僧侶「あいあいさー!」

エルフ「大規模な組織を纏めるリーダー……一体どんな人物なんだろう」

魔法使い「女性みたいだけど、ゴリラみたいな体格なんじゃないの?」

エルフ「ゴリラ……」

僧侶「女性でそういう体型になるのは体質的に無理じゃないでしょうか?」

エルフ「魔族だったりすれば、あるいは」

勇者「ごちゃごちゃ言うな!!いくぜぇ!!!」

魔法使い「はいはい」

―――甲板

キャプテン「久しぶりだなぁ!!野郎どもぉ!!!」

海賊「はいっ!!!」

船長「キャプテン!ご無沙汰しております!!」

キャプテン「一ヶ月ぶりぐらいか。元気だったか?」

船長「そうりゃあもう!!」

キャプテン「で、話に出てきた勇者っていうのは?」

船長「あいつらです」

キャプテン「……」

勇者「ヘロー、アイアムユウシャ」

僧侶「ど、どうも……」

魔法使い「……」

エルフ「……」

キャプテン「ふーん……」

勇者「美しい……年上の女……ふふふふ……!!!!ぬふふふふ!!!」

キャプテン「あたしが大艦隊の総轄を務める者だ。よろしく」

勇者「こちらこそ、側室を前提としたお付き合いを」

キャプテン「話はこの船頭から大体聞いたよ。魔王を倒すために旅をしてるんだって?」

勇者「いえ。違います」

キャプテン「え?」

勇者「綺麗なお嫁さんと10人の側室を得る為に魔王を倒そうとしています」

キャプテン「あ、あっそ……」

勇者「貴女は記念すべき7人目の側室候補になりました」

キャプテン「……本当に魔王に勝てるって思ってるのかい?」

勇者「まず無理でしょう」

魔法使い「そうなの?」

エルフ「多分」

キャプテン「へえ……自分の力を弁えているみたいだね」

勇者「でも、貴女と共に戦うのなら!!17割の確率で勝てますねぇ!!!!」

僧侶「いつもの勇者様です」

キャプテン「ああ、そう」

船長「お前!!悩んでたんじゃねーのかよ?!」

勇者「だまれぇ!!美人と戦えるなら俺は何もいらねえ!!!」

船長「このやろう!!」

勇者「にしても、船長さんは僕のことを知っていましたが、貴女は知らないのですか?」

キャプテン「あたしは勇者に興味はないからねえ。まあ、噂ぐらいは耳にしたけど」

勇者「どのような?!」

キャプテン「トロルを倒して国一つを救ったってことは知ってるよ」

勇者「さっすが」

キャプテン「でも、国一つを救った勇者なんて過去に何人もいるし、別段珍しいことじゃないだろ?」

勇者「確かに」

キャプテン「船頭にガチンコで勝ったみたいだし、実力は認めてやるよ」

勇者「え?ということは側室になってくれると?」

キャプテン「話がある、きな。仲間も一緒にね」

勇者「ふっ。子どもは5人ぐらいでいいですよ?女女男女女が理想です」

―――会議室

キャプテン「話っていってももう勇者は快諾したみたいだが……あたしたちと共に戦う気はあるかい?」

勇者「ありますっ!!!」

キャプテン「お前はいいんだよ。後ろの女どもはどうだい?」

僧侶「わ、私は勇者様の決定に従います」

エルフ「ボクは魔王が倒せるならどんな方法でも構わないよ」

魔法使い「……」

キャプテン「あんたは?」

魔法使い「私は……反対なんてしないわ。いつだってコイツの選択は正しかったから」

勇者「側室ポイントが9アップしましたね」

魔法使い「そんなにいらないわよ!!!」

僧侶「いいなぁ」

キャプテン「そうかい。満場一致ってわけだ」

勇者「はいっ!!罵ってください!!!」

キャプテン「でも、あたしはまだ認めてないけどね、あんたらのことなんてさ」

勇者「えー!?そんなぁ!!お姉様ぁ!!!」

キャプテン「当然だろう。とくにお前」

勇者「ご指名ありがとうございます」

キャプテン「あたしは男をすぐに信用はしない。きちんと見定めてからじゃないとね」

勇者「では、夜の営みで僕がどれだけ男なのかを見せ付けてあげましょう」キリッ

キャプテン「魔王と戦うためには兵力と武力がいる。あたしたちの兵力は十分にある」

キャプテン「あとは武力が欲しいのさ」

僧侶「そういえば船長さんもそのようなことを……」

キャプテン「数百年前、まだ人間とエルフが仲良く手を繋いでいた時代だ。あるとき人間は魔王に喧嘩を売った」

エルフ「……」

キャプテン「そのときエルフは人間にあるものを託した。なんだが知ってるかい?」

魔法使い「聞いたことないわね」

僧侶「はい」

エルフ「……魔法銃」

キャプテン「正解。よく知ってるね。才能がない人間でも魔法を扱えるようになる強力な武器があったのさ。それが魔法銃だ」

魔法使い「へえ……そんなものがあったなんて……」

キャプテン「それを手に入れた人間たちは魔王を倒す一歩手前までいった。でも、結果は歴史の教科書にも載ってるだろ?」

僧侶「確か疲弊した魔王軍は孤島に逃げ、その周辺海域に近づけないようにしたとか」

キャプテン「今でもその海域はどんな船でも通るとこはできない。一瞬で海の藻屑になっちまう」

エルフ「でも、魔王はもうその孤島にはいないと」

キャプテン「あそこは最後の砦ではあるけど、あそこから世界を手中に収めることはできないからねえ」

勇者「魔王の居場所を知っているのですか?」

キャプテン「勿論さ。奴は今、かつての軍事大国に城を築き、ふんぞり返ってる」

勇者「……」

僧侶「魔王は自ら少しずつ動いているということですか」

キャプテン「そういうこったね。最近は力も増してきているし、早く戦争をしなきゃならない」

エルフ「そうだね。今のままでも十分に強いだろうけど」

キャプテン「だからこそ、魔法銃が欲しいのさ!!―――そこで、あんたたちをテストしたい」

勇者「腰の強度テストですか?」

キャプテン「魔法銃の探索だ」

僧侶「そ、それはどこに?」

キャプテン「殆どの魔法銃は海の底にある。けど、最近ある船団が過去の遺産を見つけた」

エルフ「それって」

キャプテン「数百年前、魔王の孤島に挑んだ勇者の船」

魔法使い「数百年前って?!それ船なの!?」

キャプテン「まあ、あれだよ、幽霊船ってやつだねぇ」

僧侶「幽霊船……怨念が形となって海を彷徨うという……あれですね」

エルフ「海って色々あるんだ」

勇者「ゴーストシップですかぁ。美人幽霊を側室ってどうですかね?」

魔法使い「幽霊と一緒なんて私は嫌よ」

キャプテン「魔法銃を見つけてきたら仲間として迎えてやろう。どうだい、悪い話じゃないだろ?」

勇者「でも、どうして僕たちに探索をさせるのですか?部下にやらせれば……」

キャプテン「昔から海の世界では幽霊船には乗るなって言われてるんだよ」

僧侶「乗船した者を永遠の航海に連れて行くといいますね」

魔法使い「そ、それ……危険じゃない?」

勇者「つまり誰も乗りたがらないと?」

キャプテン「とんだ腑抜けどもだよ。全く。海の男が聞いて呆れるね」

勇者「貴女も?」

キャプテン「いや。あたしは別に怖くないけど。何かあったらまずいだろ?」

勇者「……」ニヤァ

魔法使い「悪い顔になってるわよ」

勇者「おっと。自重」

キャプテン「で、どうするんだい?やるかい?」

勇者「ふっ。貴女のためならたとえ火の中、水の中。幽霊船の中にも行ってみせましょう」

キャプテン「ふふ。たくましいじゃないか。気に入ったよ」

勇者「ですがその前に、海賊の村に戻って欲しいのです」

キャプテン「どうしてだい?」

勇者「港街のほうに大事な仲間を置いてきているので」

キャプテン「ふーん……強いのかい?」

勇者「恐らく、人間では歯が立たないほどに」

―――海賊の村

キャプテン「ここに帰ってくるのもいつ以来だろうねぇ」

「キャプテンだぁ!!」

「キャー!!!キャプテン!!おかえりなさーい!!」

キャプテン「お前ら!!元気にしてたかぁ!!!」

僧侶「人気者なのですね」

魔法使い「カリスマはあるものね、あの人。なんていうか信頼できるって一瞬で思わせてくれるなにかがあるわ」

エルフ「早く港町に行こうよ。猶予は1日だけだし」

勇者「そうですね。急ぎましょう」

村人「おい、あんたら」

勇者「なんですか?」

村人「宿に小さな女の子と可愛い女の子がいるんだが、知り合いか?その二人、勇者を探してるって言ってたけど」

僧侶「ジーちゃんでしょうか?」

エルフ「心配になって探しにきたのかな?」

勇者「案内してください」

―――宿屋

魔王『どうだ?勇者のことは何か掴めたか?』

少女「それがまだ……。中々尻尾を出さないので」

魔王『あまり余裕はないぞ。最近、ニンゲン共に不穏な動きもあるからな』

少女「はい」

魔王『頼むぞ。世界を我が手にするために、些細な障害も捨て置けない』

少女「承知しております」

魔王『隙があればお前の判断で殺しても構わんが、絶対に無理はするな?お前を失いたくはない』

少女「心得ております」

魔王『吉報を期待している」

少女「はい」

キラーマジンガ「……」

少女「はぁ……やはり海に出るか……」

キラーマジンガ「マスター、海は危険です。やめましょう」

少女「お前にとってはだろうが!!!」

キラーマジンガ「ほら、サメとか出ますし」

少女「黙れ!!」

勇者「―――しつれい!!」ガチャ

少女「うわぁあぁ!?」

勇者「おや。やはり貴女たちでしたか」

魔法使い「だからノックしなさいっていってるでしょうが!!」

勇者「ノックしては裸が拝めません」

エルフ「ごめんね。心配かけたみたいで」

少女「う、うん……遅いから……」

僧侶「申し訳ありません。でも、船は確保できましたから」

キラーマジンガ「それは重畳です」

勇者「ただ君の自宅探しは少し後回しになるけど、いいかな?」

少女「う、うん……いいよ。気にしないでね」

勇者「いい子だ。僕の側室にはこういう素直な子も必要ですね」

魔法使い「ロリコンめ……」

―――船着場

キラーマジンガ「私も……ふ……船に乗るのですか……?」

僧侶「勿論ですよ」

キラーマジンガ「……」

魔法使い「マーちゃん?どうかしたの?」

キラーマジンガ「沈む確率を計算しています」

エルフ「沈まないって」

キラーマジンガ「75.56%の確率で轟沈します。乗船を拒否させていただきます」

魔法使い「ダメよ。マーちゃんのマスターだって乗るんだし」

勇者「乗りますよ。まあ、夜は僕の上に乗っていただきますけどね。なんちゃって」

キャプテン「早くしな!!時間がないんだよ!!」

エルフ「ほら!乗るよ!」ググッ

キラーマジンガ「やめてください。乗船を拒否します。自爆プログラムも発動させますよ?いいんですか?」

僧侶「そんなのないですよね?」

エルフ「うん」

魔法使い「ほら……!!」ググッ

キラーマジンガ「いやぁ……!!」

僧侶「我侭言わないでください……!!」ググッ

キラーマジンガ「人殺し……!!貴方達は人殺しです……!!」

勇者「オーエス!オーエス!」ググッ

キラーマジンガ「やめろ!人間の醜い部分が露呈しているぞ!!お前ら!!」

エルフ「それは君だ……!!」ググッ

キラーマジンガ「マスター!!お許しを!!海だけはダメなのです!!」

少女「……」プイッ

キラーマジンガ「あぁぁ……!!!」

キャプテン「おいおい、これが本当に頼れる仲間なのかい?あたしにはただの臆病者にしか見えないけどねえ」

勇者「やれば出来る子なんですよ!!キラちゃんは!!」ググッ

エルフ「そうそう!!」ググッ

キラーマジンガ「てめえらは悪魔だ!!!」

僧侶「ジーちゃんが壊れちゃいました……」

―――甲板

キャプテン「出航!!!目指すは幽霊船の出る魔の海域!!!」

海賊「「アイサイサー!!!」」

キラーマジンガ「おぉぉ……揺れる……揺れています……」ガクガク

魔法使い「この子、本当に機械兵士なの?」

エルフ「改造人間だから、根っこの部分は人間だと思うけど」

僧侶「でも可愛いじゃないですか、弱点があるなんて」

勇者「キラちゃんは僕が守ってあげるから。ほら、おいで」

キラーマジンガ「パパぁ……パパぁ……こわいよぉ……」ヨロヨロ

勇者「ほーら、ここまでおいでー」

キラーマジンガ「うぅぅ……パパぁ……いじわるしないでぇ……」

勇者「もうちょっとだ……がんばれっ」

キラーマジンガ「パ……パ……」ヨロヨロ

勇者「よし……よくがんばったな、娘よ」ギュッ

キラーマジンガ「パパ……大好き……抱いて……」ギュッ

魔法使い「なにやってのよ……」

少女「……」

僧侶「ごめんなさい。寄り道することになってしまっていて」

少女「ううん。いいよ。―――私、部屋で休んでるね」

エルフ「うん。わかったよ」

勇者「……」

キラーマジンガ「パパぁ」ギュゥゥ

勇者「よし。終了」

キラーマジンガ「今のはどうでしたでしょうか?自己採点では過去最高得点なのですが」

勇者「『パパぁ』の言い方が素晴らしい。だが、最後の抱いてはいただけない」

キラーマジンガ「なんですって?」

勇者「いいか?最後の『抱いて』は処女を散らす前の娘っぽさがない。あれでは売女の惚気だ」

キラーマジンガ「む……違いが理解できません」

キャプテン「おまえらー!!魔の海域に着くまでは一日以上かかる!!それまで自由にしてな!!!」

勇者「はい!!」

僧侶「勇者様っ」

勇者「なんですか?」

僧侶「船の中を探索しませんか?」

勇者「いいですね。船内ランデブーとしゃれ込みますか」

僧侶「わーい」

魔法使い「私は部屋に行くわ。船旅って疲れるし……」

エルフ「ボクは……」

キラーマジンガ「私はマスターのところへ」

エルフ「ねえ」

キラーマジンガ「なんですか?」

エルフ「君のことなんだけど」

キラーマジンガ「私の知っていることは既に皆様にお伝えしましたが」

エルフ「これ」スッ

キラーマジンガ「これは?」

エルフ「貴女の開発者の日記。あの塔で手に入れてちょっとずつ読んでたんだ。それで分かったよ、君がなんの目的で作られたのかを」

キラーマジンガ「来るべき戦いのために私は作られました」

エルフ「誰と戦うため?」

キラーマジンガ「分かりません」

エルフ「貴女の開発者はこう書いている。―――魔王を倒すためにもこの機械兵士キラーマンジガの開発を急がないといけない」

キラーマジンガ「魔王……」

エルフ「君は魔王を倒すために作られた」

キラーマジンガ「……」

エルフ「ボクが少し変だって気がついたのは君に魔物を探知する機能が搭載されていると知ったとき」

エルフ「それってつまり、魔物に狙われることを前提にしていることになるから」

キラーマジンガ「……」

エルフ「あの魔道士がどういうつもりで魔王と戦おうと思ったのかはどこにも書かれていないけど、君は魔王と戦うために生まれた」

キラーマジンガ「そうですか。でも、どうしてそのことを私に打ち明けたのですか?」

エルフ「ほら、心を持っているみたいだし、魔物と戦うことに迷いがあったら辛いかなって……思って……」

キラーマジンガ「前マスターが魔族だったから、ですか。お心遣い感謝いたします。ですが、私の使命はマスターをお守りすることが第一ですので」

エルフ「そう。ならいいんだ。ごめん、余計なこと言ったみたいで」

キラーマジンガ「ですが、魔王と敵対する者たちがマスターを狙った場合はどうしたらいいのでしょうか」

エルフ「え?」

キラーマジンガ「開発者の意思を汲み、魔王と戦うべきなのか。それともマスターを守護するべきなのか」

エルフ「難しいね。でも、そうなったら君の信じたほうでいいんじゃないかな?」

キラーマジンガ「信じたほうですか?」

エルフ「そう」

キラーマジンガ「信じたほう……」

エルフ「えっと……」

キラーマジンガ「なんですか?」

エルフ「足、震えてるけど大丈夫なの?」

キラーマジンガ「まさか。私が震えるなんて……本当ですね。私、震えています」ガクガク

エルフ「部屋に戻っていたほうがいいんじゃない?」

キラーマジンガ「私も同意見です。ですが、問題が発生しました」

エルフ「どうしたの?」

キラーマジンガ「足が動きません。助けてください」

―――客室

少女(海か……。ならば……ここは奴らを呼び出すか……)

少女「……」

トントン

少女「はい?」

エルフ「よっと」

少女「ど、どうしたの?」

キラーマジンガ「申し訳ありません。ここで休憩させてください」

少女「別にいいけど」

エルフ「船だめなんだって」

少女「機械兵士のくせに?」

キラーマジンガ「面目ありません」

エルフ「君と一緒がいいみたいだから。それじゃあ」

少女「うん」

キラーマジンガ「……」

―――船内 食堂

勇者「色々メニューがあるんですねえ」

僧侶「ですね。あ、このカレーって美味しそうです」

キャプテン「―――この船のカレーは絶品だよ」

勇者「おお。別嬪さんがキター」

キャプテン「二人は恋人か何かかい?」

僧侶「そ、そんな大それた関係では……」モジモジ

勇者「未来の側室なんですよね?」

僧侶「はいっ」

キャプテン「側室側室って、お前さん何言ってんだい?」

勇者「英雄、色を好むといいますよね?」

キャプテン「まあ、何人も女を転がせるだけの器量があるなら問題はないけどねえ」

勇者「ありますよ」キリッ

キャプテン「あたしには見えないけどねえ」

僧侶「勇者様はすごい人なんですっ」

キャプテン「ははっ。まあ、それは幽霊船での活躍に期待させてもらうさ」

勇者「そうだ。その件でお話があるのですが」

キャプテン「なんだい?今更泣き言はききたくないねえ」

勇者「その幽霊船探索なんですけど、僕たちでやるんですよね?」

キャプテン「ああ、そうさ」

勇者「それってどうなんですか?」

キャプテン「何がいいたんだ?」

勇者「いや。僕たちのことは……ああ、いや、僕のことは信頼できないんですよね?」

キャプテン「ああ」

勇者「なら魔法銃の捜索を見張りもつけないで任してもいいんですかぁ?」

キャプテン「海の上じゃあ逃げられないだろう」

勇者「あははは。これはこれは。大艦隊を率いる貴女がいう台詞とは思えません」

キャプテン「なんだって!?」

勇者「魔法銃は魔王をも追い込んだ伝説の武器。なら、それを手にした僕がこの海賊団を脅してしまうとは考えないのですか?んー?」

キャプテン「そ、それは……」

僧侶「勇者様はそのようなことしないですけどね」

勇者「でも、これだけの大艦隊です。力で屈服させ、我が手に収めたいという欲望に駆られてもおかしくない」

僧侶「ですね」

キャプテン「お前……本気で言っているのかい?」

勇者「可能性の話ですよ」

キャプテン「……」

勇者「ここは探索に貴女もついて来るべきだと思うのですが」

キャプテン「ふ、ふざけんな!!どうして……!!」

勇者「おや?何故?ついて来るだけなのに?」

キャプテン「だから……幽霊船には乗るなって海の世界では決まってんだよ」

勇者「迷信でしょう?」

キャプテン「バッカ!!幽霊船をなめるんじゃないよ!!」

勇者「……まさかとは思いますが、幽霊が怖いとか?」

キャプテン「そんなわけないだろうがよ!!」

勇者「なら、一緒に行きましょう。共に行動していれば魔法銃を見つけたとき貴女が真っ先に手にできるわけですし」

キャプテン「そんなことしなくてもあたしたちが……」ガッ

僧侶「きゃ?!」

キャプテン「あんたの女を人質にすればいいだけの話だろ?」

勇者「魔法銃と引き換えにというわけですか?」

キャプテン「ああ、そうだ」

勇者「そんなことしたら僕は魔法銃を貴女の大事な船に突きつけて人質にします」

キャプテン「卑怯だぞ!?」

勇者「なら一緒に行きましょう」

キャプテン「ふ、ふざ……」

勇者「ついてきてくれるのでしたら、人質は何人でも構いません。やってくれますか?」

僧侶「はい。人質になります」

キャプテン「くぅぅ……!!」

勇者「どうするんですかぁ?」

キャプテン「か、考える……ちょっと待ってな」

勇者「ごゆるりと」

―――客室

少女「……頼むぞ」

少女「これでよし」

キラーマジンガ「マスター。魔王との交信ですか?」

少女「いや」

キラーマジンガ「そうですか」

少女「……」

キラーマジンガ「マスターにとって魔王とはどのような存在なのですか?」

少女「それを知ってどうする?」

キラーマジンガ「いえ……」

少女「魔王様は我ら魔族の王。絶対的な存在。魔王様に疑問を抱いたことなどない」

キラーマジンガ「……」

少女「その王に楯突くニンゲンを駆逐する。当然のことだろう?」

キラーマジンガ「はい」

少女「ふん……」

―――魔王の城

側近「魔王様、兵が整いました」

魔王「ご苦労だったな」

側近「いえ」

魔王「では、遅延していた計画を進めるとしようか」

側近「はっ」

魔王「兵力は十分。時間も掛けた。これで負けることは無い」

側近「ドラゴンは呼び戻さなくてもよろしいのですか?」

魔王「奴は我の最後の憂いを取り除く為に行動している。まだ時期ではない」

側近「そうですか」

魔王「海に蠢く有象無象も挑発ばかりで攻めてくる様子はないな?」

側近「はい。兵の増強を行っているようではありますが、今のところ仕掛けてくる素振りは見せておりません」

魔王「よし。―――では、進軍開始は三日後とする。それまでに出来うる限りの準備をしておけ」

側近「了解いたしました」

魔王「トロルが攻め落とせなかったあの大地……今度こそ……」

―――翌日 魔の海域周辺

キャプテン「てめぇらぁ!!!男だろうが!!!股間についてるもんは飾りかぁ!!!?あぁぁ!?」

海賊「……」

船長「キャプテン、しかし幽霊船は俺たちにとっては禁忌で……」

キャプテン「んなことはわかってんだよぉ!!!ダボがぁ!!!」

勇者「揉めてますね」

僧侶「そうですね」

魔法使い「何があったの?」

エルフ「幽霊船に同行する人を募ってるみたいだね。誰も行く気なさそうだけど」

少女「……」

キラーマジンガ「海賊船の乗組員の方々は、幽霊船を極度に恐れています」

魔法使い「どうして同行させるのよ?」

僧侶「見張りがいないと私たちが魔法銃で脅してしまうかもしれないという話になりまして」

少女(魔法銃……?)

魔法使い「そんなことするわけないじゃない。まあ、信頼できないって言っていたし、仕方ないか……」

勇者「分かりました。ここはキャプテンが行くべきでしょう」

キャプテン「あぁ?!嫌ににきまってんだろ!?」

勇者「怖い?」

キャプテン「こ、こわくねえよ!!ざっけんな!!!」

船長「待て。それは流石に反対だ。キャプテンに何かあったらどうする」

キャプテン「おう!そうだ!もっといてやりな!!」

勇者「おやおや?キャプテンは幽霊を恐れるようなか弱い御人だと?」

船長「そんなわけねえだろ!!キャプテンはこの海で最も美しく!!気高く!!そして強いんだよ!!」

海賊「「そーだ!そーだ!!」」

勇者「なら、適任でしょう。僕らが魔法銃を見つけ、謀反を働こうとしたとき下っ端の人たちでは到底無理。一度負けた船長さんも無理」

船長「そ、それは……」

勇者「キャプテンしかつとまりませんなぁ」

キャプテン「ぐっ……いや……でも……しかし……」

勇者「威厳……見せるときじゃねえですか?仮にも大勢を纏める指揮官でしょう?そのカリスマを増大させるチャンスかと思いますけどねえ」

キャプテン「だ、だから……えっと……うん……」

勇者「ここで武勇伝をつくれば、士気も上がる。信頼度も跳ね上がる」

キャプテン「そ、そうかもしれないけど……」

勇者「貴女の英雄譚を聞きつけた有能な部下が増えるかもしれない」

キャプテン「そ、そうなのか?」

勇者「強い人の下に強いやつが集う。これ常識アル」

キャプテン「……」

勇者「さあ、魔王を倒し人類の英雄となるときですよ。海賊の存在を公に認めさせるチャンス」

キャプテン「確かに……」

勇者「何を迷うことがありますか!!―――何かあっても僕が必ず御身を守護いたします」

キャプテン「……」ピクッ

勇者「神に仕える者も僕の仲間にいます。彼女がいれば幽霊なんて怖くない」

僧侶「……」

キャプテン「そうだな……ふっ。そうだよ。あたしは大艦隊の海賊団総轄だ!!幽霊船ごときにびびってどうすんだい!!!」

勇者「と、言うことは……!!」

キャプテン「いってやらぁ!!!あたしに不可能はないんだよぉ!!!」

勇者「聞いたかお前らぁ!!!腰抜け共に代わってキャプテン自らが出撃する意思をかためたぁ!!!」

海賊「「おぉぉー!!!」」

船長「キャプテン……漢だ……!!俺……俺……一生ついてきます!!!」

キャプテン「あたしについて来る奴はいねえのかい?!」

「幽霊船はなぁ?」

「うん……流石に……」

船長「生きて帰ってきてください!!!キャプテン!!!」

キャプテン「てめえら。戻ってきたら覚えてろよ」

勇者「では準備をしましょうか」

キャプテン「まちな。こっちも人質を取らせてもらうよ」

勇者「ああ、そういう約束でしたね。どなたを人質にしますか?」

キャプテン「そうだねぇ……」

魔法使い「人質ってどういうことよ?!」

勇者「信頼できない相手に何かを依頼するとき、担保は必要でしょう」

エルフ「なるほど……裏切らないように予防線を張っておくわけだ」

勇者「―――幽霊船に行くメンバーは、僕と」

僧侶「はいっ」

エルフ「はーい」

キャプテン「ふん……」

魔法使い「大丈夫?」

勇者「心配してくれるのですか?ふふ、側室としての意識が芽生えたのですね」

魔法使い「違うわよ」

キラーマジンガ「最もバランスの取れた陣営だと思われます」

魔法使い「はっきり言われるとなんか悔しいわね」

勇者「まぁ、凶悪な魔物がいる可能性もありますが、危なくなったら発炎筒で危険を知らせますので」

僧侶「悪霊の類なら魔法よりも私の力が役に立つと思います」

キラーマジンガ「気をつけてね、パパ」

勇者「行ってくるよ。我が娘たち」

少女「……それ私も?」

キャプテン「じゃあ、幽霊船が見つかり次第乗り込むよ」

―――数十分後

海賊「キャプテン!!三時の方角!!謎の船影を確認しましたぁ!!!!」

船長「き、きたか……!?」

キャプテン「本当に……あったんだねえ……」

勇者「ふっ。僕が幽霊を蹴散らしてやりますよ」

僧侶「お願いしますね」

エルフ「幽霊か……魔法が通じる相手ならいいけど」

魔法使い「実体がない相手には利かないと思うけど」

少女「……」

キラーマジンガ「あぁ……もしもあの幽霊船が砲撃してきたら私たちは海の底に沈む……そしたら錆びる……」ガクガク

少女「おい」

キラーマジンガ「はい?」

魔法使い「ん……?」

キャプテン「よ、よし……り、り、隣接……しな……」

海賊「「あ、あああ、アイアイ、アイサー!!」」ガクガク

船長「キャプテーン!!おげんきでー!!!」

「キャプテーン!!大好きでしたー!!!」

「俺!!カーチャンにキャプテンと付き合ってるって報告してました!!ごめんなさーい!!!」

「キャプテンのブラジャーを昔盗んだの俺でーす!!」

キャプテン「……」

勇者「あれ?お見送りに応えてあげないのですか?」

キャプテン「いくぞ」

勇者「はい」

僧侶「もしかして緊張されているとか?」

エルフ「そんな馬鹿な。魔物の軍勢とも何回か戦っているって言ってたのに?」

僧侶「ですよね」

キャプテン「あれ?!―――おい!!こら!!お前はあたしの前だろ!!なにやってんだい!!」

勇者「そうなんですか?」

キャプテン「勇者は先頭を歩くもんだろうが!!!そんな基本も知らないのかい!?えぇ?!あぁ!?」

勇者「分かりました。僕が先頭になります」

船長「ああ……言ってしまった」

海賊「寂しくなりますね」

船長「ああ、そうだ。人質役になった―――」

キラーマジンガ「やはり私たちも幽霊船に乗り込みます」

船長「なんだと?!」

少女「探さないでください」

船長「バカ野郎!!そういうわけにも―――」

海賊「頭ぁ!!大変だ!!!」

船長「どうしたぁ!?」

海賊「幽霊船の野郎がいきなり動き出して……うわぁ!?」

ゴゴゴゴ……

船長「なんだと?!帆だって破れてんのに波の影響でしか移動なんて……」

キラーマジンガ「急ぎましょう。海に落ちたくありませんので。―――しっかり捕まっていてください」

少女「うん」ギュッ

船長「てめえらも勝手なことすんじゃねえよ?!」

キラーマジンガ「海が怖いので私は目を閉じます。飛ぶタイミングが自分ではわかりません。なので踏み切る瞬間の合図をお願いします」

少女「わかった」

船長「やめろぉ!!」

キラーマジンガ「うおぉぉぉぉぉ!!!!!!」ダダダダダッ

少女「うっ……」ギュゥゥ

キラーマジンガ「おちたくなーい!!!!」ダダダダッ

少女「―――今だっ!!!」

キラーマジンガ「はっ!!」バッ

海賊「本当に飛び移りやがった……」

船長「あぁ!!キャプテンになんて言えばいいんだぁ!!」

海賊「頭ぁ!!大変だぁ!!」

船長「今度はなんだよぉ!!」

海賊「もう一人の姉さんがいなくなってやがるぅ!!人質が全員いねえ!!」

船長「ぎゃー!!キャプテンに怒られるじゃねえかぁ!!ええい!!幽霊船をおえ!!絶対に見失うなよ!!!」

海賊「「アイアイサー!!」」

―――幽霊船 甲板

勇者「至るところがボロボロですね」

キャプテン「……」ギュゥゥ

勇者「板が腐っています。足下には十分に気をつけてください」

僧侶「わかりました」

エルフ「うん」

勇者「ところで」

キャプテン「魔法銃は見つかったのか?」ギュゥゥ

勇者「僕にしがみ付いてくれるのはありがたいですが、せめて目ぐらいは開けていてもらわないと」

キャプテン「しっかりさがせ……こらぁ……」

僧侶「どうかしたんですか?元気が無いみたいですけど……」

キャプテン「無駄口叩く暇があった―――」

―――ドンッ!!!

キャプテン「きゃぁぁああああ!?!?!?」

勇者「なんだ?背後から音が……?」

僧侶「魔物でしょうか?」

エルフ「……」

キャプテン「おぉ……な、なんだよ……こらぁ……」ギュゥゥ

勇者「確かめに行きますか」

キャプテン「待てよ……魔法銃を探せ……よぉ……」

勇者「しかし、海には魔物も多くいます。乗り込まれたら厄介ですよ?」

エルフ「ボクが見てくるよ。三人は待ってて」

勇者「そんな危険です。全員で―――」

エルフ「キャプテンが動きそうにないし」

勇者「……わかりました。ですがすぐに戻ってきてください」

エルフ「うん。了解」タタタッ

僧侶「……」

勇者「キラちゃんを連れてきたほうが良かったかもしれませんね」

僧侶「魔物探知機能ありますもんね」

キャプテン「まだか……よぉ……」ギュゥゥ

勇者「―――遅い」

僧侶「見に行きましょう」

勇者「物音一つしないのが気になりますが……」

キャプテン「怨霊か!?悪霊か?!」

僧侶「禍々しい怨嗟の念が充満していることは確かですが」

キャプテン「やめろよ!!そういう脅しはよぉ!!」

勇者「どうしたんですかー!!!早く戻ってきてくださーい!!」

僧侶「船尾のほうで何かあったのでしょうか?」

勇者「急に視界も悪くなってきましたし、やはり行きましょうか」

僧侶「はい」

キャプテン「魔法銃はどうなったんだよぉ」

勇者「ちゃんと探しますから」

キャプテン「うぅ……」

勇者「何事もなければいいが……」

僧侶「……」

勇者「どうしたんですかー!!」

僧侶「返事をしてくださーい!!」

キャプテン「おう……」

勇者「貴女が返事をしてどうするのですか」

キャプテン「わ、悪いね……」

僧侶「いませんね」

勇者「下に向かうような場所もないですし」

僧侶「勇者様、ここ穴があります」

勇者「板が腐って抜け落ちた感じですね。まさか、この穴から落ちた……?」

僧侶「それなら私たちも」

勇者「いえ。どこに繋がっているかわからない以上、正規のルートを辿っていくほうが安全です」

僧侶「それもそうですね」

勇者「行きましょう」

僧侶「はい」

キャプテン「まてよ……ゆっくりあるけよ……」ギュゥゥ

―――幽霊船 Aフロア

勇者「ここは……」ガチャ

僧侶「お部屋ですね。無残な感じですけど」

勇者「ふむ……」

キャプテン「なんかあったか?」

勇者「いいものがありました」

キャプテン「なんだよ……」ソーッ

勇者「乗組員と思しき頭蓋骨が」

キャプテン「ぴゅっ!?」

勇者「手がかりになるようなものはありませんね」

僧侶「船尾のほうへ行きましょう」

勇者「ええ」

キャプテン「……」

勇者「どうしました?」

キャプテン「……こし……ぬけ……た……」

勇者「ガイコツぐらいで何をいっているのですか?」

キャプテン「ばかやろう!!こういうところで見るとまた一味ちがうだろうがぁ!!」

勇者「―――どうぞ」

キャプテン「なんの真似だ……」

勇者「おんぶしてあげます」

キャプテン「ざっけんなぁ!!」

勇者「では、ここで待っていてください」

キャプテン「え?」

僧侶「勇者様」

勇者「はい」

キャプテン「まてぇ!!おいてくなぁぁ!!!」ギュゥゥ

勇者「なんですか?」

キャプテン「見張りのあたしを置いていくとかありえねえなぁ!!!」

勇者「では、おんぶで」

キャプテン「ちくしょう……」

勇者「よっと」

キャプテン「……おもくないかい?」

勇者「いえ。いい感じに弾力があって空中に浮いてしまいそうです」

キャプテン「はぁ?」

僧侶「勇者様。こっちも同じような部屋だけです」

勇者「そうですか。では、下に向かう階段を探しましょう」

僧侶「わかりました」

勇者「それにしても不気味なほど静かですね」

キャプテン「たいまつの灯りは大丈夫だろうね?」

勇者「問題ありません」

キャプテン「……」

僧侶「勇者様!ありました!!こっちです!!」

勇者「わかりました」

キャプテン「はぁ……」

勇者「おふぅ……吐息が耳に……ぬほほぉ」

―――幽霊船 Bフロア

勇者「気配は感じますか?」

僧侶「いえ……。船全体から悪鬼の熱を感じるので」

勇者「幽霊の胃の中にいるようなものですか」

僧侶「そう思ってください」

キャプテン「あたしたち食べられたのかい?!」

勇者「食べられに行ったというべきでしょう」

キャプテン「帰りたい……」

ギシ……ギシ……

キャプテン「なに?!なになに!?」

僧侶「誰かがこの先にいるようです」

キャプテン「いるわけないだろう?!」

勇者「静かにお願いします」

キャプテン「う……」

ギシ……ギシ……ギィィ……バタンッ

勇者「この部屋ですね」

僧侶「恐らく」

キャプテン「ひぃぃ……」チャカ

勇者「耳元で銃は発射しないでくださいね。鼓膜が破れますから」

キャプテン「そんな軟弱な鼓膜なのかい……」ガクガク

勇者「鼓膜は鍛えられません」

僧侶「開けます」

勇者「お願いします」

キャプテン「おぉぉ……」

僧侶「……」ガチャ

キャプテン「ひっ」

勇者「……誰もいませんね」

僧侶「違う部屋だったのでしょうか?」

キャプテン「この部屋……見た感じ、船長かなんかの部屋っぽいね」

勇者「何か分かるかもしれません。調べてましょう」

―――船長の部屋

勇者「うーん……」ゴソゴソ

キャプテン「魔法銃はないねえ……」

僧侶「……」ペラッ

勇者「どうしました?」

僧侶「航海日誌を見つけました」

勇者「ほう」

キャプテン「いいね。他人の航海日誌ほど面白いものはないよ」

―――今日は快晴。絶好の航海日和だ。俺たちは王国の勇者を乗せ、魔王が住む孤島へ向けて出発する

先日の戦いで奴らは大きな痛手を負ったはずだ。魔物を駆逐する最大の好機が巡ってきたわけだ。

エルフ族が開発した魔法の銃さえあれば、俺たちは絶対に負けない。勇者もそう確信しているからこそ、俺たちは魔王の根城に乗り込む。

勇者は船出の際に皆に宣言した。必ず勝てる。すぐに人間たちだけの時代がくる。俺もそう信じている。

キャプテン「時代だねえ。今じゃ魔族のほうが強すぎて、人間じゃあ歯が立たないっていうのに……」

僧侶「そうですね。でも、魔法銃によって一度魔王を追い詰めているわけですし、自信があったのでしょう」

勇者「続きを見てみましょう」

―――今日は快晴。魔王がいる孤島まではおよそ五日の航海となる。

その長旅の間に士気が落ちてはいけないと、勇者一行は色々と考えてくれていた。

魔物は海にもでやがる。そこで勇者たちは海の魔物を捕らえて、魔法の銃の威力を見せてくれた。

引き金を引くと大きな音がして魔物の顔が吹っ飛びやがった。他に捕らえた魔物の驚いた顔は傑作だった。

写真機でも積んでおけばよかった。

僧侶「……」

キャプテン「ふーん。すごい威力かと思っていたけど、大したことはないのかねえ……」

勇者「分かりません。どんなモノでも破壊する力があったのかもしれません」

―――今日は曇天。三日目にして問題が起きた。空を見る限り、大時化になる。

それだけならよかったが、魔物の軍勢が攻めてくる様が肉眼ではっきりと見えた。

ここで戦力を消耗したくはない。なるべく遠方から攻撃するべきだと勇者たちは言う。

魔王との決戦を占う大一番になりそうだぜ。

勇者「―――うーん……大したことは載っていなさそうですね」

キャプテン「じゃあ、どうするのさ」

勇者「とにかく先を急ぎましょう。今頃、逸れてしまった彼女がワンワン泣いているかもしれませんし」

僧侶「勇者様」

勇者「どうしました?」

僧侶「もう少し、この日誌を読んでみたいのですが」

勇者「なにか気になることでも?」

僧侶「はい」

勇者「……わかりました。でも、絶対にここから動かないようにしてください」

僧侶「申し訳ありません」

キャプテン「じゃあ、あたしは……」

勇者「僕とデートしましょう」

キャプテン「こんな状況でよくそんなことが言えるね」

勇者「勇者たるもの、常に平常心を保っていないと」

キャプテン「……まあ、今は頼もしい限りだけどね」

勇者「では、行って来ます」

僧侶「はい」

キャプテン「はぁ……ここから出たくないねえ……」

僧侶「……」ペラッ

―――今日は快晴。酒が旨い。勇者の指示通りに動くだけで魔物はあっという間に退散した。ざまーみろ。

生き残りが居たので生け捕りにしてやった。こいつらで魔法の銃の試射をしようって話になったからだ。

明日が楽しみだ。

―――今日は濃霧。魔王の孤島が見えた。だが、たどり着けない。

引き返しても同じ場所に来てしまう。どうなってんだ、これは。勇者は近くに幻術使いがいると主張する。

勇者がそういうならそうするしかない。幻術使い探しは勇者たちに任せて、俺たちは昨日捕まえた魔物で魔法の銃の練習をした。

気持ちいいほどに魔物が死ぬ。今まで1匹倒すのも相当な労力だったのに、これはいい。最高だ。俺が独りで10匹殺したら他のやつに怒られた。

魔物なんだから何匹殺してもいいだろうが。

―――今日は濃霧。魔王の孤島はまだ見えている。しかし、たどり着けない。

幻術使いはまだ見つからないようだ。海で捕まえた魔物を魔法の銃で殺していると、勇者がそろそろやめろという。

魔法の銃も使いすぎるとダメになるらしい。孤島に着くまでおあずけだ。

―――今日は濃霧。魔王の孤島はまだ見えている。進展なし。勇者に疑問を持つ奴もチラホラ現れ出した。

食料も無限じゃない。早くなんとかしてほしいもんだ。

僧侶「……」ペラッ

―――今日も濃霧。魔王の孤島は見えている。今日はこの部屋から出ていない。

勇者は何をやっているのか。

―――今日も濃霧。魔王の孤島は見えている。進展なし。

腹が減ったと喚く奴が現れた。誰かの一喝で静かになったが。

―――今日も濃霧。魔王の孤島が小さくなる。他に陸は確認できない。

地図はあるので現在位置ぐらいは分かる。そろそろ食料が底を尽きる頃だ。

―――今日も濃霧。魔法の孤島は確認できなくなった。今、どこなのかも分からない。

食料はまだある。まだなんとなる。

―――今日も濃霧。魔王の孤島は見えない。食料はまだある。

―――今日も濃霧。食料はある。

―――今日も濃霧。食料が尽きたといって勇者が部屋に入ってくる。可笑しなことをいう。こんなにあるのに。

―――今日も濃霧。食料が増えた。それと同時に魔法の銃も解禁になった。今まで捌くのが大変だったから助かる。

―――今日も濃霧。肉ばかりで流石に飽きてきた。でも文句は言えない。

―――きょ うは お れがにく にな る。うで が うま そ うだ。

僧侶「……これで最後……これって……もしかして……」

僧侶「濃霧……まさか……!!」

ガチャ

僧侶「勇者さ―――」

少女「……」

僧侶「貴女は……」

キラーマジンガ「どうもお久しぶりです」

僧侶「船に残っていたのでは?」

少女「うん……でも、少し気になって……」

僧侶「気になる?」

少女「魔法銃のこと」

僧侶「ああ。でも、私たちがもって帰る予定だったので」

少女「それは困る」

僧侶「え?」

少女「あれはニンゲンの手に渡ってはいけないものだ」

僧侶「貴女……もしかして……」

―――幽霊船 Aフロア

魔法使い「ちょっと待って」

勇者「なんですか?」

魔法使い「アンタ、いきなり何を言い出すのよ。私は二人を追ってきて―――」

勇者「そんなのどうでもいい」

魔法使い「はぁ?」

勇者「僕、やっと気づいたんです。一番好きなのは貴女だって」

魔法使い「な……!?」

勇者「僕と結婚してください」

魔法使い「こ、こんなときになにいってるのよ?!バカじゃないの!?」

勇者「側室なんて要りません。貴女が傍にいるだけでいいのです」

魔法使い「え……」

勇者「僕の……僕だけのお嫁さんになってもらえますか?」

魔法使い「だ、だから……あの……」

勇者「貴女を愛している」

―――幽霊船 Cフロア

勇者「む……」

キャプテン「ど、どうしたんだい?」

勇者「目の前に裸の女性がいっぱいいるんですが」

キャプテン「な、なにいってんだい!?」

勇者「いや、ほら、目を開けてみてください」

キャプテン「ど、どうせまたガイコツを見せ付ける気だろ!?もう騙されないよ!!」

勇者「本当なのですが」

キャプテン「いいから魔法銃を探しな!!」ギュゥゥ

勇者「といっても、皆さんが側室にして欲しいと懇願してくるのですが」

キャプテン「あたしにはそんな声、一つも聞こえないよ!!」

勇者「なるほど。ということは……」

キャプテン「幽霊とかいわないでおくれよ!!!」

勇者「それ以上に厄介ですね」

キャプテン「早くすすみなぁ!!!」

―――幽霊船 船長室

僧侶「貴女は……貴女は……」ガクガク

少女「しばらく眠っていてもらおうか」

キラーマジンガ「申し訳ありません」

僧侶「勇者さまぁ!!!」ダダダッ

少女「え?」

僧侶「勇者様!!ありがとうございます!!私、嬉しいです!!」

少女「何を壁に向かって……」

僧侶「勇者さまぁ……」スリスリ

少女「そうか、これは……」

キラーマジンガ「マスター。恐らく、この幽霊船を包み込んでいる魔法の影響かと思われます」

少女「幻覚の魔法か。船そのものにそれを掛けてたと聞いたことはあったが……」

キラーマジンガ「外の濃霧は魔法の副次的な効果によるものです」

少女「最も恐れるモノを見えなくし、最も好むモノを見せる……。人間にしか効果はないようで助かるな」

キラーマジンガ「はい」

少女「この状態であれば殺すのも容易いな」

キラーマジンガ「マスター。私が殺害いたします」

少女「ほう?」

僧侶「勇者さまぁ……私を犬と扱ってくれても構いません……」スリスリ

キラーマジンガ「では……」シャキン

少女(これで……魔王様に朗報をお伝えできるな……)

僧侶「はふぅん……」スリスリ

キラーマジンガ「……」

少女「……」

キラーマジンガ「それでは―――マスター!!!魔物が!!」

少女「なに?!」

エルフ「―――そこまでにしてくれる?」

少女「な……」

エルフ「ガーちゃんも剣を降ろして。でないと、大事なマスターを撃つよ?」

キラーマジンガ「状況把握しました。無駄な抵抗はやめてください。貴女独りでは私には勝てません」

少女「お前……」

エルフ「君のことはずっと疑っていたよ」

少女「……」

エルフ「魔道士は捕らえた人は独り残らず生命力を吸い取っていたのに、君だけが元気だった」

エルフ「ボクたちの中で一番優れたポテンシャルを持っていたのにも関わらず。魔道士はエルフでさ垂涎していたのに、君を放置なんてありえない」

少女「木偶人形が余計な分析をしたからか」

エルフ「甲板で君たちを見て、きっと何かあると思った」

キラーマジンガ「いい読みです」

エルフ「君は誰?何の目的でボクたちについてきたの?」

少女「ふん……裏切り者の分際で……」

エルフ「え……?」

少女「俺がこうして正体を晒すリスクを負ってまでこの幽霊船に乗ったのは、お前の所為だ」

エルフ「なにを……」

少女「魔法銃。かつて、魔王様を追いつめた武具。それを作ったのはお前らだろうが」

エルフ「君は……魔族……なの?」

少女「ここでは俺の崇高なる姿を見せられないのが残念だ。船が沈むからなぁ」

エルフ「殺すつもりなら沈ませれば」

少女「併走する海賊船がある。あれを沈めるのは俺でも無傷では済まない。―――まあ、仲間が来たら、一気に決着をつけてやるさ」

エルフ「仲間?!」

少女「本来ならそいつらと勇者一行を戦わせるだけのつもりだったが、状況が変わったな。ここでお前たちを必ず消す」

エルフ「やめて……」

キラーマジンガ「無駄な抵抗です。やめてください」

エルフ「くっ……」

少女「抵抗しても構わん。今のニンゲンどもはどうせ戦えない」

僧侶「ゆうしゃさぁまぁ……」スリスリ

エルフ「……」

キラーマジンガ「大人しくしていれば苦しまずに死ねます」

エルフ「ボクは魔王を倒すって決めた。同胞を食い物にするような王なんて、ボクは許せない!!!」

少女「過去のことを棚に上げるのか!!?」

エルフ「ボクたちだってニンゲンがあんなことをするなんて思わなかった!!ご先祖様たちはみんな嘆いていたよ!!」

少女「黙れ!!」

エルフ「本当だ!!」

キラーマジンガ「マスター、どうされますか?」

少女「……まずはこの裏切りモノから始末しろ」

キラーマジンガ「了解しました」

エルフ「来るな!!撃つよ!?」

少女「撃てば分かる。無駄な行為だ」

エルフ「……っ」

キラーマジンガ「お覚悟を」

エルフ「きゃっ―――」

ギィィィン!!!

少女「な……」

キラーマジンガ「……!」

エルフ「……え?」

勇者「―――そんな乱暴な子に育てた覚えはないぞ!!!娘ぇ!!!」

少女「何……?!」

キラーマジンガ「パパ……これは……違うの……」オロオロ

勇者「母さんに手を上げるとは何事だぁ!!けしからん!!!喝っ!!!」

キラーマジンガ「ひっ」ビクッ

勇者「お前の小遣いを減らすからなぁ!!」

キラーマジンガ「やめてよぉ!来週は大好きな先輩とデートするから新しい洋服がいるっていったじゃん!!」

勇者「だまれ!!お前みたいな不良娘など家にはいらん!!でてけぇ!!!」

キラーマジンガ「ざけんなよ!!クソオヤジがぁ!!!」ダダダッ

勇者「ふんっ……」

キラーマジンガ「……パパ?」

勇者「……なんだ?」

キラーマジンガ「反省したから……抱いて?」

勇者「ふっ……淫乱娘が……」

キラーマジンガ「パパがそういう体にしたくせに……」

少女「おい、やめろ」

キラーマジンガ「今のは確実に90点でしょう?」

勇者「いや、87点だな」

キラーマジンガ「どこがですか?完璧だったはず」

勇者「最後の一言が余計だ。あれでは完全に娼婦だ。バカヤロウ」

キラーマジンガ「くっ……道のりは険しい……!!」

少女「いい加減にしろ」

勇者「そうですね。―――大丈夫ですか?」

エルフ「う……うん……」

キャプテン「おーい……どこだぁ……」オロオロ

キャプテン「―――てっ?!」ゴンッ

勇者「目を開けてあるかないと危ないですよー」

少女「貴様……幻覚が見えているはずでは……」

エルフ「そうだよ!!大丈夫なの?!」

勇者「問題はありません。僕は今、ヌーディストビーチの真っ只中にいるだけですから」

エルフ「……」

少女「どういうことだ……?」

勇者「僕が真に求めているのは側室。裸婦ではありません」

少女「意味が分からん」

キラーマジンガ「パパ。ここはお互いのために退きましょう」

勇者「君のマスターがそれを許さないんじゃない?」

少女「……」

キラーマジンガ「マスター……」

少女「ここで殺す。やれ」

キラーマジンガ「……了解しました」

勇者「いつかはこうなるんじゃないかと思っていましたよ」

キラーマジンガ「はぁぁぁ!!!」

―――バァァン!!

キラーマジンガ「つっ……!?」

キャプテン「馬鹿でかい声だねえ。目を閉じてても的が分かるよ」

勇者「今だっ!!」バッ

少女「貴様……!!」

勇者「こっちだ!!」グイッ

僧侶「あれ?勇者様がいっぱいいる?!」

勇者「逆ハーレムですね」

僧侶「はい……」ウットリ

少女「逃がすかぁ!!!」ゴォォォ

エルフ「させない!!」キュィィン

少女「おのれぇ!!!」

キラーマジンガ「逃がしません!!」

勇者「おねえさまぁ!!!」

キャプテン「はいよ!!」バァァン

少女「くっ……!こざかしい!!」

キラーマジンガ「ここは海の上、逃げ場はありません」

勇者「逃げるつもりなんてない。魔法銃の回収が済んでいないしね」

キャプテン「おい!はやくしてくれ!!こっちは不安でしょうがないんだよぉ!!」

エルフ「ボクが誘導します」ギュッ

キャプテン「あ、ありがとう」

僧侶「ここにも勇者様……ああ、天井にも……壁にも……ああ……どうしたらぁ……私の腕も勇者様!?」

少女「あれだけは渡すわけにはいかない……」

勇者「なら船を沈めればいいだけの話でしょう?」

少女「……」

キラーマジンガ「マ゛ズダァァ!!それだげはぁぁぁ!!」ギュゥゥ

少女「錆びるのが嫌なら早く魔法銃を見つけろ!!!」

キラーマジンガ「はい!!」

勇者「それなら他の三人と協力したほうが効率的だよ」

キラーマジンガ「流石です。そうさせて頂きます」ダダダッ

少女「馬鹿かきさ―――」

勇者「ここからは僕たちだけの時間にしましょうか?」

少女「勇者……」ギリッ

勇者「君には色々と聞きたいことがある」

少女「ふん……」

勇者「黄金の国で会ったことがあるよね?」

少女「……ああ」

勇者「やはりか」

少女「どこで分かった?」

勇者「匂いかな」

少女「ほう?ニンゲンの嗅覚でも俺の正体が分かると?」

勇者「馥郁たる花の香りが君の脇から匂ってきたよ」

少女「……え?」

勇者「あの鼻腔を通るときの甘酸っぱさ。一度嗅げば忘れたくとも忘れられないね」

少女「き、きさま……!!!どこで判断している?!」バッ

勇者「そんなに恥ずかしがらずともいいですよ。僕は女性が10日間風呂に入っていなくても抱ける派ですから」

少女「不潔なだけだろうが!!!」

勇者「君の垢なら喜んで舐めとりましょう」

少女「汚いんだよ!!」

―――幽霊船 Cフロア 宝物庫

エルフ「ここが怪しいけど……鍵が掛かってるね」ガチャガチャ

キラーマジンガ「どいてください」

エルフ「な、なにする気……?」

キラーマジンガ「はぁっ!!」バコンッ

キラーマジンガ「開錠しました」

エルフ「壊したっていうんじゃないの?」

キラーマジンガ「訂正いたします。壊錠しました」

エルフ「……君は味方なの?」

キラーマジンガ「私はマスターの味方です」

エルフ「じゃあ……敵だね」

キラーマジンガ「残念ですがそうなります」

キャプテン「どうでもいいじゃないか。早く探しな」

エルフ「貴女も目を開けて探してよ……」

キャプテン「無理だね!!」

僧侶「あ~勇者様がこんなとところにも~♪」テテテッ

キャプテン「まだ見つからないのかい?!こっちはさっきから首筋が寒くて仕方ないんだよ!!」

キラーマジンガ「現在の室温は24度。寒いと感じるような温度ではありません」

キャプテン「いいからはやくさがしておくれよぉ!!」

キラーマジンガ「了解しました」

エルフ「幽霊が怖くてよく魔物と戦えるね」

キャプテン「正体がよくわかんないとか怖いじゃないかい!!なにいってるのですか!?」

エルフ「ごめん。とりあえず黙ってて」

キャプテン「し、知らない間にどっかいかないでおくれよ……」

エルフ「行かないから」

キラーマジンガ「魔法銃……検索中……検索中……」ゴソゴソ

エルフ「探索中」

キラーマジンガ「訂正します。魔法銃……探索中……探索中……」ゴソゴソ

エルフ「……捜索中」

キラーマジンガ「訂正します。魔法銃……捜索中……捜索中……」ゴソゴソ

僧侶「勇者様……キス……ですか……?私は……構いませんが……んー……」

エルフ「ちょっと、いつまで……あ!」

キラーマジンガ「どうされましたか?」

エルフ「貴女が抱いてるの……魔法銃じゃあ……」

僧侶「勇者様ぁ……うふふふ……」

キャプテン「見つかったのかい?!」

エルフ「うん。見つけたよ」

キラーマジンガ「やりましたね」

エルフ「よし。ここにはもう用はない。出よう」

キャプテン「勇者様はどうするんだい?」

エルフ「早く甲板に出たほうがいい」

キャプテン「どうして?」

キラーマジンガ「マスターが増援を呼びました。間もなくこの海域にクラーケンがやってきます」

キャプテン「海の王者じゃないか!?なんでそんなことに!?」

エルフ「ここにいたら戦えない。とにかく外に出よう」

―――幽霊船 船長室

勇者「黄金の国ではお世話になりましたね。ドラゴンさん」

少女「ふん。あれはただの小手調べだ」

勇者「でも、今の姿のほうが何億倍も良いですよ。そのままで居るべきです。というかいなさい。これはお願いじゃない。命令だ」

少女「俺に命令できるのは魔王様だけだ」

勇者「なら、その魔王を僕が倒せば貴女を独占する権利が生まれるわけですね。ひゃっほーい!!」ピョーン

少女「……それはできないな」

勇者「何故ですか?」

少女「お前は、ここで―――死ぬからだ!!!」ゴォォォ

勇者「あぶないっ」バッ

少女「独りでは魔物一匹満足に倒せないことは知っている!!貴様だけの力でここまで来たわけじゃないんだろ?」

勇者「その通り。僕には将来の側室候補生がいる。あの子たちの身を削るほどの献身によって―――」

少女「しねえ!!!」ゴォォォ

勇者「熱っ!くそ!!燃え上がるのはベッドの上だけで十分だこらぁ!!―――丁度、そこにベッドがあるな、寝るかい?」

少女「俺はまだ眠くない!!」

勇者「あははは!!君はやはり処女か!?」

少女「ニンゲンの杓子定規で測るなぁ!!!」

勇者「でも、その反応は―――」

エルフ『みつけたよー!!!!』

勇者「おぉ!意外と早い。幻覚が効かないのはいいですね」

少女「しまった……!!」

勇者「ところで、僕の股間を見てください」

少女「は?―――おぉ!?なんでそんなに張っているんだ!?」

勇者「だって、僕の下半身に数十人の裸婦が群がっていて……欲しい欲しいと先ほどから……」

少女「汚らわしい……!!死ねぇぇぇ!!!!」ゴォォォ

勇者「ふっ―――」

少女「はぁ……はぁ……はっ?!」

少女「逃げたか……!!」

ゴゴゴゴゴ……!!!

少女「この揺れは……来たか……!!勇者ども……深海で眠ってもらうぞ……魔法銃と共にな……!!」

―――幽霊船 甲板

ゴゴゴゴ……!!!

僧侶「きゃ?!」

エルフ「海に大きな影……あれがクラーケン……?」

キラーマジンガ「ゆれる……しずむ……錆びる……」ガクガク

キャプテン「外かい?!目は開けてもいい?!」

エルフ「ん?」

魔法使い「だめ……私たち……そんな関係じゃあ……」

エルフ「あっちもダメか……となると、戦えるのは……」

キャプテン「ねえ?!もう目をあけてもいいかい?!」

エルフ「まだだめ!!開けたらきっと気絶すると思う!!」

キャプテン「そうかい!!そうだと思ってたんだよ!!!」

僧侶「勇者様……助けてくださぃぃ……」ギュゥゥ

エルフ「戦えそうなのはボクと……ギリギリでキャプテンだけ……か……」

ゴゴゴゴ……!!

クラーケン「ぬぁっはっはっはっはっは!!!!!」ザパーン

エルフ「でかい……?!」

クラーケン「ドラゴン様に言われてきてみればぁぁ!!!矮小な生き物がたったすぅぅひきとはぁぁ!!!」

キャプテン「……なんか威圧感を感じるねえ」

クラーケン「このままぁぁ海の底へ船ごと引き摺りこんでくれるぅぅわぁぁぁぁ!!!!」シュルルル

メキ……メキメキ……!!

エルフ「うぁ……?!」

キラーマジンガ「船体に損傷発生。沈みます。エマージェンシー!!メーデー!!メーデー!!」オロオロ

エルフ「―――くらえぇ!!」ゴォォォ

クラーケン「ぬぅ?!」

エルフ「焼きイカになりたくなかったら、その汚い触手を船から離せ」

クラーケン「ぬぁっはっはっはっは!!!吼えるぁ吼えるなぁ!!!多少の魔法では私に傷などつけられぇぇぇん!!!」

―――バァァン!!

クラーケン「ぬぁった?!―――なんだ?!」

キャプテン「どうやらどこに撃ち込んでもど真ん中に当たるボーナスステージみたいだねえ!!それなら派手にやるよぉ!!!」

船長「てっー!!!」

ドォン!!ドォン!!

クラーケン「ぬぅ?!なんだぁ?!」

船長「キャプテーン!!!援護砲撃は任せてください!!!」

キャプテン「よくやったぁ!!おまえらぁ!!」

船長「援軍がくるまで絶対にここをもたせろぉ!!!」

「「アイアイサー!!!」」

エルフ「これなら……!!」

クラーケン「あまいわぁ!!ぬぅぅるいわぁぁぁぁ!!!!」ドォォン

エルフ「うわぁ!?」

キャプテン「うっ……なんだい?!」

僧侶「きゃぁ?!」

キラーマジンガ「船体の損傷が999パーセントを超えました。もうやめてください」

クラーケン「ニンゲンどもがぁぁぁぁ!!!!調子にのるなぁぁぁぁ!!!!」

エルフ「熱量が圧倒的に足りない……。独りじゃ……!!」

船長「よくねらえ!!お前らぁ!!!」

海賊「波が荒れて狙いが定まりません!!」

キャプテン「おらおらぁ!!!」ドォン!ドォン!

クラーケン「いてぇぇんだよ!!!」ベシンッ

キャプテン「ぐぁ?!―――しまった、目を瞑っているから攻撃をよけられないじゃないか」

エルフ「よく大艦隊を率いてるね」

キャプテン「目をあけたら気絶するんだろ?!」

エルフ「そうだけど……」

クラーケン「今、破壊させてやるぅぅぅ!!!!」メキメキメキ

エルフ「まずい!!」

キャプテン「やめないか!!このゲソやろう!!」ドォン!!

クラーケン「いてえつってんだろ!!!」ブゥン!!

エルフ「危ない!!」

キャプテン「え?!どっちから来るの?!」

勇者「―――今お助けしますよぉ!!お姉様ぁ!!!」ダダダッ

キャプテン「あ……」

勇者「大丈夫ですか?」

キャプテン「た、たすかったよ……」

勇者「ふっ。なんのこれしき」

クラーケン「なんだぁ……?」

勇者「目を開けても大丈夫ですよ」

キャプテン「ほ、本当だろね……」

勇者「今、一瞬あけたじゃないですか。何が見えましたか?」

キャプテン「……アンタの顔だね」

勇者「守ると言ったでしょう。―――どんな危険からでも」

キャプテン「あんた……」

クラーケン「ニンゲンがぁぁぁ!!!一匹増えたところでぇぇぇ!!!なぁぁになぁぁる!!!」

勇者「ちゃんと見ていて欲しい。僕が貴女だけのナイトになるところを」

キャプテン「……はい」

勇者「いくぞ!!!!イカ野郎ぉぉぉ!!!!」

クラーケン「ぬんっ!!!」ブゥン

勇者「せいやぁ!!!」ズバッ

クラーケン「いてぇぇんだよぉ!!!」ベシィ!!

勇者「ぐぁ?!」

エルフ「大丈夫?!」

キャプテン「よくも!!―――化け物がぁ!!!」ドォン!!ドォン!!

勇者「でかすぎる……。クラーケンってこんな手も足も出ないほど大きかったのですか……?」

エルフ「ううん。これは明らかに異常なでかさ。きっと……」

勇者「キラちゃんにも使われている生命エネルギーですか」

エルフ「うん」

勇者「とりあえず、回復を」

エルフ「ああ、ごめん」パァァ

勇者「……はぁ……情緒がないなぁ……抱きついてくれないと……」

エルフ「できないよ!!文句いうなぁ!!」

勇者「冗談ですよ、マイハニー」キリッ

魔法使い「やぁん……だめぇ……」

僧侶「勇者様……もっと抱きしめてください……」

勇者「全く。二人は空気と浮気ですか。なんて難易度の高いネトラレ」

エルフ「どうでもいいけど、早く手を打たないと船が……!!」

勇者「分かっていますが、こんな怪獣を相手にできるのはそれこそ怪獣だけですよ」

キャプテン「ちょっと、あんた!!大丈夫なのかい?!」

勇者「心配ありませんよ、マイディアー」

キャプテン「そ、それならいいんだよ……うん……」

勇者「キラちゃんは?」

エルフ「あそこ」

キラーマジンガ「マスター……たすけて……」ガタガタ

勇者「海の上ではただの可愛い女の子型ロボットですか」

クラーケン「おわりだぁぁぁぁ!!!」メキメキ

勇者「―――そうだ!魔法銃を使ってみましょうか」

少女「―――今、奴らの手には魔法銃がある。あれを使われては状況が一変するな。ここでなんとしても奴らを消しておかなくては!!」メキメキ

エルフ「確か……魔法銃は……」

ドラゴン「―――オォォォォォォ!!!!」バサッバサッ

勇者「なに……?!」

エルフ「ドラゴン?!」

キャプテン「おいおい!!今日の海は荒れてるねえ!!!」

キラーマジンガ「こわいこわい……」ガタガタ

クラーケン「ドラゴン様!!ここは私だけでも十分ですが?」

ドラゴン「魔王様がいつもいっているだろう。勝つまで油断はするな、とな」

クラーケン「分かりました」

勇者「万事休す」

エルフ「魔法銃……かえして……!!」ググッ

僧侶「やめろぉ!!私から勇者様をとるなぁぁ!!!」ギュゥゥ

エルフ「そんなこと言ってる場合じゃないって!!」

僧侶「ガルルル……!!!」

勇者「幻覚の作用が強すぎる……どうしたら……ああ、そうか……」

勇者「おらぁぁ!!!」バキィ!!

キャプテン「え?!」

エルフ「なにしてるの?!」

勇者「船を破壊してください!!今すぐ!!」

エルフ「ど、どうして!?」

キラーマジンガ「やめてください!!パパと雌雄を決することになりますよ!!!」ガタガタ

勇者「蹲っている君に言われても怖くないな。―――とにかく船を壊します」

キャプテン「それでどうにかなるんだね?」

勇者「もちろんだ」

キャプテン「ふっ。いいね。あんたのこと益々好きになったよ」

勇者「僕は出会ったときから運命を感じていましたけど」

キャプテン「よせやい」

エルフ「とにかく壊せばいいの?!」

勇者「一気に破壊だ!!船を沈めるぜぇ!!!」

キャプテン「―――おまえらぁぁ!!!よくきけぇ!!この幽霊船に集中砲火をかけなぁ!!!」

ドラゴン「ははははは!!!気でも触れたか?!」

クラーケン「これは面白い!!ニンゲンどもは肉体だけでなく精神も脆弱かぁぁ!!!ぬぁっはっはっはっはっは!!!」

勇者「いやっほーい!!!」バキィ

エルフ「はぁぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

キャプテン「おらおらおら!!!全弾撃ち尽くすよぉ!!!」ドォン!!ドォン!!!

船長「キャプテンを信じろ!!!俺たちはいつだってそうしてきた!!!―――幽霊船を沈めろぉ!!!」

海賊「「アイアイサー!!!」」

ドォン!!ドォン!!

キラーマジンガ「やめてください!!本当にやめてください!!なんでもしますからぁ!!!!」

勇者(まだか……?!)

ドラゴン「よーし、自害の手助けをしてやるか」

クラーケン「ぬぁっはっはっはっは!!!!」メキメキ

勇者「―――来た!!さよなら!!ヌーディストビーチ!!!」

僧侶「―――ぁえ?」

魔法使い「はっ?!え……?!あ、あれ……?」キョロキョロ

キラーマジンガ「だめです!!もう沈むぅぅ!!!」

ゴゴゴゴゴ……!!!!

ドラゴン「はははははは!!!!深海に眠れ!!!」

勇者「キャプテン!!」

キャプテン「それかしなぁ!!!」

僧侶「え?はい、どうぞ」

エルフ「そうか。船そのものに掛けられた魔法だから……」

勇者「船が全壊すれば魔法もとける。対象となるものがなくなりますから」

ドラゴン「しまっ―――」

キャプテン「終わりだよ……イカ魔人!!!」チャカ

クラーケン「はぁぁぁぁ?!そのような玩具でなぁぁぁにができるぅぅぅ?!」

キャプテン「はっしゃぁぁ!!!」グッ

―――パァン!!!

クラーケン「ごぉ……?!ぁ……?!」

エルフ「あの巨体の半身が消滅した……?!」

キャプテン「すさまじいねえ……」

ドラゴン「まずい!!今すぐに沈めなければ!!!」

キャプテン「おっと!!」チャカ

ドラゴン「ぐっ……!?」

勇者「うつな!!!」

キャプテン「え?ど、どうして!?」

ドラゴン「貴様……?!」

勇者「……」

クラーケン「ぉぉぉ……!!バ……か……なぁ……!!!」ズズズズ

僧侶「イカさんが沈んだ……」

魔法使い「なによ……これ……え……?」

キラーマジンガ「しずむーしずむー」オロオロ

勇者「このままでは皆、溺死です。なので、お願いしますね」ポンッ

魔法使い「凍らせるの?」

勇者「余裕でしょう?海ぐらい」

魔法使い「はぁぁぁ!!!」ピキピキピキ

勇者「やったぁ」

エルフ「すごい……こんなこと普通の魔法じゃ絶対にできない……」

キャプテン「あんたすごいじゃないかぁ!!」

魔法使い「はぁ……はぁ……似たようなことしたことあるから……」

僧侶「つめたいです」ブルブル

キラーマジンガ「大地があるのは素晴らしい」

船長「キャプテン!!ドラゴンが!!!」

キャプテン「おっと。そうだった!!」チャカ

ドラゴン「海を凍らせて足場を形成したのか……」バサッバサッ

勇者「……」

ドラゴン「撃てばいいだろう……逃げるぞ?」

勇者「逃げたければ逃げろ。可愛くないお前なんて殺す価値もないんだよ!!」

ドラゴン「きさまぁぁ……!!!」

キャプテン「やるなら撃つよ?」

勇者「それはもう仕舞ってください」

キャプテン「でも……」

勇者「俺の言うことが聞けないのか?」

キャプテン「ご、ごめん……」

魔法使い「随分、しおらしいわね」

ドラゴン「くっ……!!」バサッバサッ

キラーマジンガ「はっ?!マスターは?!マスターはどこに!?」キョロキョロ

勇者「あのドラゴンの背に乗っていたよ」

キラーマジンガ「やはり……魔王の下にいかれるのですね……マスター……」

僧侶「へっきゅしゅん?!―――あ、あの……温かいシチューが欲しいんですけど……」ブルブル

魔法使い「そ、そうね……これからのことは船で考えましょう」

キャプテン「そうさね。―――おーい!!乗船するから梯子を!!」

船長「はい!!」

エルフ「どうして……?」

勇者「……」

―――海賊船 会議室

船長「キャプテン!!まさかあの幽霊船から帰還するとは!!俺たちは信じていま―――」

キャプテン「お前ら、一週間飯抜きだ」

船長「えぇぇ?!」

キャプテン「それはさておき、ようやく手に入れられたね、念願の魔法銃」

エルフ「―――どうして?」

キャプテン「どうしてって、あたしたちが―――」

エルフ「どうしてあそこでドラゴンを見逃したの?」

勇者「……」

魔法使い「ちょっと」

エルフ「ドラゴンはボクたちのことを色々知っていた。逃がしたら魔王にボクたちのことが筒抜けになるよ?!」

勇者「連絡手段を持っていなかったとは考えられません。共に行動した時点で情報の漏洩はしているでしょう」

エルフ「でも、魔法銃があれば!」

勇者「……実は幽霊船の日誌に気になる記述を見まして」

僧侶「あの日誌ですか?」

勇者「貴女はじっくりと読んだみたいなので覚えているでしょう?」

僧侶「な、なにをですか?」

勇者「幽霊船の船長他多数の乗組員が魔法銃を使い魔物を虐殺している日の記述です」

僧侶「ああ……はい……」

勇者「魔法の銃も使いすぎるとダメになる。そう書かれていませんでしたか?」

僧侶「そういえば……」

魔法使い「ダメになるって、撃てなくなるってこと?」

勇者「恐らく」

僧侶「でも。一丁で十数匹の魔物を撃っていたみたいですし、まだ余裕はあるんじゃないでしょうか?」

勇者「それは何年前の銃だと思っているのですか?」

キャプテン「……」

勇者「それに当時の乗組員はストレス解消のため無駄に発砲しています。残り何発なのか分かりません」

エルフ「じゃあ……さっきのが最後の一発だった可能性もあるってこと……?」

勇者「二発目がなかった場合、あの場でドラゴンに食い殺されていたでしょうね」

魔法使い「そういうことだったの……」

キャプテン「じゃあ、意味なんてないねえ」

勇者「いや。ありますよ」

キラーマジンガ「はい。魔王はその武具を恐れていると見て間違いありません」

キャプテン「抑止力か」

勇者「その通りです。それを持っているだけでも僕たちにとってはプラスです」

魔法使い「問題はそのハッタリがどこまで通用するかね」

勇者「あの異形のクラーケンを一発で仕留められたのは大きいでしょう」

エルフ「でも、それだけじゃあ……」

勇者「魔王はただの人間を殺すのにも慎重に慎重を重ね、準備をし、勝利が磐石になったときに初めて動く」

勇者「絶対に負けない戦にしか乗ってこないとしたら、僕らが魔法銃という新兵器を手にしたことによって奴の進撃は必ず遅延するはずです」

キャプテン「更なる兵の強化が必要になるものね」

勇者「はい。ドラゴンの報告は魔王にとってこの上ない凶報になる」

僧侶「ということは……仕掛けるなら……」

勇者「今しかないでしょう。絶好のチャンスです」

キャプテン「ふふっ!!よし……!!者共!!!戦争の準備をおっぱじめなぁ!!!」

―――夜 海賊船 甲板

勇者「……」

キャプテン「こんなとこにいたのかい。会議が始まるよ」

魔法使い「アンタがいないとダメなんだって」

キャプテン「あ、たしは別にぃ!!」

勇者「僕たちが会議に参加する意味は殆どありません」

キャプテン「どうしてだい?」

勇者「僕たちは僕たちで魔王と戦います」

魔法使い「それって……」

キャプテン「あたしたちは陽動役かい?」

勇者「いいえ。違います。―――魔王は城から出てこないはずです」

キャプテン「そ、そりゃあ……大将だからそう簡単に……」

勇者「それだけじゃありません。ドラゴンという戦力が戻った今、魔王が前線に出てくるわけがない。きっとあの用心深さからして、高みの見物を図る」

魔法使い「まあ、そうでしょうね」

勇者「そして……危なくなったら、例の孤島に逃げ込む気でいるのでしょう」

キャプテン「それって……数百年前と一緒じゃないか」

勇者「そうなったら終わりです。なので、僕たちはその孤島に先回りしておきます。で、戻ってきたときにポカッと叩く。完璧です」

魔法使い「あそこはどんな船でも近づけないって話じゃなかった?」

勇者「魔法で海流を操っているのでしょうね」

キャプテン「わかった。また海を凍らせて……」

魔法使い「あれをするの?疲れるんだけど……」

勇者「いやいや。戦う前から貴重な戦力を削いでしまっては勝てるものも勝てなくなります」

キャプテン「じゃあ、どうするのさ」

勇者「空を飛べればいいんですけどねえ……」

魔法使い「馬鹿なこといってるわ」

勇者「ドラゴンの背なら5人ぐらい余裕だと思うんですけどねぇ……」

魔法使い「はぁ?」

キャプテン「あいつは帰っちまったじゃないか」

勇者「はぁ……そうなんですよね……」

魔法使い「結局、いい手がないってことでしょ?」

勇者「……ドラゴンを倒しましょうか」

魔法使い「え?」

キャプテン「ドラゴンをかい?!」

勇者「何気に彼女は言うこと聞いてくれそうなんですけど」

魔法使い「ほんの少しの間、一緒にいただけでしょ。情が移ってるとも思えないわ」

勇者「まあ、どっちにしても今のところ空を飛ぶ方法はそれしかありません」

キャプテン「奴が魔王のところに戻ったとするなら、ここから北にあるかつての軍事大国にいるだろうね」

魔法使い「どういう国なの?」

キャプテン「高い壁に囲まれて息が詰まりそうになる国さね。魔王の侵攻対策でそうしたみたいだけど、意味はなかったね」

勇者「国に入るもの中々厳しそうですね」

キャプテン「ああ。今は人間に代わって魔物が警備しているだろうし」

魔法使い「行くの?」

勇者「もちろん」

魔法使い「……ドラゴンに拘る理由は?」

勇者「あのドラゴンさん、可愛い女の子に変身できるんですよ?これは毎夜毎夜、僕を飽きさせない側室になること請け合いです」

魔法使い「もう……」

キャプテン「あっはっはっはっは!!いいね!!サイコーじゃないか!!」

勇者「それほどでも」

キャプテン「まあいいさ。とにかく細かい打ち合わせはしなきゃダメだ。会議室にきな」

勇者「了解」

魔法使い「……」

勇者「なんですか?」

魔法使い「勇者は誰かを何かを守る者、だ」

勇者「……」

魔法使い「ねえ……やっぱり……そういうことなの?」

勇者「何のことでしょうか?」

魔法使い「アンタがそこまで側室を……求める理由……」

勇者「それは老後の―――」

魔法使い「時々、貴方は空虚な顔をしているときがあるわ。さっきも夜の海を見ているときになってたわよ?」

勇者「これは僕としたことが……失礼しました。貴女たちの前では絶対に見せないよう努めていたのですが、やはり共にいる時間が長いとダメですね」

魔法使い「そろそろ話してくれてもいいんじゃない?」

勇者「……」

魔法使い「どうして貴方が戦うのか、聞きたい。勇者だから?それとも……」

勇者「―――俺の故郷は魔王によって滅ぼされた」

魔法使い「え……?」

勇者「数人の村民だけが生き残っただけだった。でも、途中で魔物に襲われ、ついには俺と友人の二人だけになった」

勇者「励まし合いながら俺たちは逃げた。そして行き着いた場所が、あの街」

勇者「程なくして俺たちは生きるために二人で一緒に兵士になった。でも、ちょっとした問題があったんだ」

魔法使い「なに?」

勇者「見知らぬ土地の人間たちを守るなんてこと……俺にはできなかった」

魔法使い「……」

勇者「兵士なのに市民を守る意識が全然沸いて来なかった。だから、いつまで経っても戦闘技術は上達しないし、よく兵士長にも怒鳴られたよ」

魔法使い「よく今まで続いたわね……」

勇者「あるとき友人が、自分を守るために強くなってほしいって言ってくれた。―――この国の民を守れないなら、同じ故郷の友人を守るために強くなれと」

勇者「俺はそいつのためだけに強くなることを決めた。だけど……そいつは、死んだ。勇者として」

魔法使い「勇者としてって……」

勇者「努力の糧だった友人が死んだ。俺はその瞬間、きっとどこかで無様に死ぬんだろうって思ったよ」

勇者「翌日、勇者に任命されても思ってた」

魔法使い「貴方は優秀だったんでしょ?剣術は……」

勇者「ええ。誰にも負けないほど強かった。でも、守るものがないとやっぱり行き急ぐから」

魔法使い「勇者として死ぬつもりだったの?」

勇者「さっさと旅立って死んでやろうって考えていたけど……でも、やっぱりアイツの仇は取ってやりたいって思うようになって」

勇者「それで……どうするか考えた結果……」

魔法使い「側室?」

勇者「そう。お嫁さんになってくれそうな人とは生憎出会えなかったし、そもそもお嫁さんだけでは強くなれないって感じた」

勇者「なら、守る候補を多くしてやればいいって結論になって……側室探しを始めた」

魔法使い「馬鹿じゃないの?一緒に旅をしたら意味ないでしょう」

勇者「死なせたく人が傍にいるから余計に自分を追い詰めることができる。後ろの人だけは絶対に死なせない。死なせないためには強くなるしかない」

魔法使い「……」

勇者「そして、そう思わせてくれる人だったんです。貴女たちは」

勇者「とはいえ、褒められたことではないけど」

魔法使い「そうね。結局は貴方も私たちを同じじゃない」

勇者「そう。仇を討つために強くなりたかった。それだけのために俺は貴女たちの心を弄んだ」

魔法使い「……」

勇者「側室だのなんだの言いましたが、根底では復讐の道具として扱ってきたのも事実です」

魔法使い「そう……」

勇者「別れるとき、貴女を怒らせるためにいった台詞は、自分に対してでもありました」

魔法使い「……」

勇者「もうしわけありません」

魔法使い「最低ね」

勇者「自分でもそう思います」

魔法使い「……」

勇者「でも、ここまで来たのですから最後まで側室候補して貴女とは接します」

魔法使い「その言い方……側室にする気なんてないってこと?」

勇者「ないというか、無理でしょう?」

魔法使い「……」

勇者「側室になってくれるのですか?」

魔法使い「な、ならないわよ」

勇者「ですよね」

魔法使い「……バカ」

勇者「言っているだけです。本気にしてる人なんていないと思います。―――ああ、でも一人だけいるみたいですけど」

魔法使い「そういえば、彼女となんかあったの?」

勇者「以前、側室でもいいと言われました。どこまで本気なのかはわかりませんが」

魔法使い「ふーん……」

勇者「まあ、擬似ハーレムを作りたいだけですし、もう少しみなさんには協力してもらいましょうか」

魔法使い「よくこんなこと話したわね」

勇者「大好きになってしまった人に隠し事はできないでしょう?」

魔法使い「なっ……!?」

勇者「それだけですよ。―――さ、そろそろ戻りましょうか。キャプテンも待っています」

魔法使い「ああ!ちょっと!!」

―――海賊船 会議室

キャプテン「―――では、以下の通り行動するってことでいいね?」

勇者「まずは僕たちがドラゴンとちんちんかもかもな関係になる。そして、その瞬間を見計らい、海賊船団が一気に攻撃を始める」

キャプテン「ここであたしたちが魔王の軍勢を叩き、魔王をあぶりだすってわけだ」

勇者「ドラゴンさえ居れば魔王がどこに移動しようとも、僕たちの勝利は揺るがない」

エルフ「裏返すと、ドラゴンが居なきゃ成功はしないってことだね」

勇者「そうなりますね」

僧侶「はぁ……ドキドキします……」

キラーマジンガ「あの……」

勇者「キラちゃんはどうする?」

キラーマジンガ「私が決めてもいいのですか?」

勇者「君には心がある。君自身が決めたほうがいい」

キラーマジンガ「……」

キャプテン「何はともあれ、まずはドラゴン懐柔作戦を成功させなきゃ始まらないんだ!!しっかりやりなよ、あんたたちぃ!!!」

僧侶「イエス、ボス!」

―――魔王の城

魔王「魔法銃……だと……」

ドラゴン「申し訳ありません」

魔王「まさか、そのような遺産が……」

ドラゴン「ここは我が身にかえましても……やつらを……」

魔王「よい。今は勇者のことよりも重大な作戦が控えている」

ドラゴン「トロルの領地だった場所へもう一度攻め込むのですか?」

魔王「イレギュラー因子がもういないことは確認済みだ。敗走はまずない」

ドラゴン「……」

魔王「あそこさえ落とせば、隣国は支援を一切受けられない孤立状態となる。そうなればニンゲンどもに残された道は絶望的な消耗戦だけ」

魔王「一気に我の領土を広げられる」

ドラゴン「では、私は……」

魔王「ここの守りを任せたい。お前の報告を聞く限り、恐らくすぐに攻めてくるはずだ」

ドラゴン「魔王様は?」

魔王「ここを離れ、機を待つ。魔法銃の対策を練る必要もあるしな」

―――数日後 海賊船

勇者「見えてきましたね」

僧侶「高い壁が見えますね」

エルフ「あそこがかつての軍事大国」

魔法使い「上陸は問題ないの?」

キャプテン「警備が薄いところは把握しているよ。まあ、そこから壁の向こうにいくのはちょっと骨だろうけど」

勇者「ここまでありがとうございました」

キャプテン「いいさ。―――生きて帰ってきなよ」

勇者「未亡人にはさせませんよ」キリッ

キャプテン「もう!冗談ばっかりだなぁ!!やめろよぉ!!テレるじゃないのさぁ!!」

勇者「あっはっはっはっはっは!!かわいいお姉さんもいいものですねえ!!」

キラーマジンガ「は、はやく……陸へ……大地が恋しい……」ガタガタ

エルフ「一緒に行くって、船にいたくないから?」

キラーマジンガ「違います。マスターが心配なだけです」

僧侶「あの子……戻ってきてくれるでしょうか……?」

―――軍事大国 陸地

勇者「―――行きましょう」

僧侶「なんか揺れてませんか?」ヨロヨロ

魔法使い「いや、あんたの足下が揺れてるのよ」

エルフ「ずっと船に乗ってたからなんか気持ち悪いね」

キラーマジンガ「そんなことはありません。今、生きていることに感謝しましょう。アーメン」

勇者「いい考えですね。ここまで生きてこれたのは、主に勝利の女神が微笑みっぱなしだったからでしょう」

僧侶「本当ですね」

キラーマジンガ「私たちの戦力ではいつ全滅してもおかしくありません」

魔法使い「今から敵の本陣に乗り込むんだから、そういうこと言わないでよ」

勇者「そうだぞ、娘よ。空気を読むんだ」

キラーマジンガ「空気を読む……?」

勇者「いいかい?人とのコミュニケーションでは気持ちを察することも大事なんだ」

キラーマジンガ「ふむふむ」メモメモ

エルフ「歩きながらでもできるでしょ?いくよー」

―――フィールド

魔法使い「マーちゃんは着いてきてるけど、マスター居ないのにいいのかしら?」

エルフ「誰かの命令は聞かないって言ってるよ。今、僕たちについてきているのは自分で決めたことだからいいって」

僧侶「勇者様が仰いましたもの。自分で決めなさいって」

魔法使い「そっか。あいつはマーちゃんが困らないように……」

エルフ「心があるのは機械にとっては邪魔でしかないと思ってたけど、そうでもないかもね」

勇者「―――なぁなぁ」

キラーマジンガ「どうしました?」

勇者「昨日さ、彼女ができたんだ」

キラーマジンガ「本当ですか?」

勇者「これ、写真」

キラーマジンガ「うわ。ブッサ」

勇者「なにをぉ!!!死刑!!!」

キラーマジンガ「バ、バカな?!」

勇者「―――な?空気を読んで「綺麗な彼女ですね」と言っていれば、死刑にならずに済んだわけだ。空気を読むことは大事だぞ」

キラーマジンガ「人間社会とか中々にスリリングですね」

勇者「気をつけたまえ」

キラーマジンガ「また一つ勉強になりました」

勇者「なんのなんの」

魔法使い「それはただのお世辞でしょ?」

エルフ「うん……別じゃないかな?」

勇者「一緒ですよ。僕が演じた男性は彼女を褒めてほしくて話を切り出したわけですから」

魔法使い「まぁ、そうね」

僧侶「でも、空気を読むって自分の気持ちを殺すことでもありますから、それができないこともあると思います」

キラーマジンガ「どういうことですか?」

僧侶「周囲の人があるモノに対して嫌悪し、悪口を言っているとします。でも、自分にとってはとても大切なモノだった」

キラーマジンガ「ふむふむ」メモメモ

僧侶「空気を読むという意味では自分もそのモノに対して罵詈雑言を並べるべきなのでしょう。でも、自分の気持ちを押し込んでまで大切なモノを貶めることは難しいはず」

キラーマジンガ「つまり……そういうことでしょうか?」

僧侶「そうですね……では、実演してみます」

魔法使い「あの勇者、マジでキモくね?」

エルフ「わかるわかる。なんかオタクっぽいよねー」

僧侶「うんうん。ほんとにねー」

キラーマジンガ「……」

勇者「や、やぁ……こんにちは……」

魔法使い「うわ、きたよ。かえれ」

エルフ「キンモー」

僧侶「ばい菌が移るので半径50メートル以内にこないでください」

勇者「うぅ……」

魔法使い「貴女もそう思うよねー?」

キラーマジンガ「わ、私は……」

エルフ「えー?なに?もしかして、あいつのこと好きなのー?」

僧侶「えんがちょ」

キラーマジンガ「ち、ちが……!!」

勇者「……」ウルウル

キラーマジンガ「―――わ、悪くいうなぁ!!!」

魔法使い「はぁ?」

キラーマジンガ「た、確かにちょっと暗いところもあるけど……この人は優しい人です!!」

エルフ「なにこいつ」

僧侶「空気読んでくださいよー」

勇者「あ……あの……」

キラーマジンガ「大丈夫です。私は貴方のいいところをいっぱい知っていますから……」

勇者「うぅ……ありがとう……ありがとう……」

キラーマジンガ「いいんですよ……私が……守ります……」ギュッ

勇者「素敵……抱いて……」ギュッ

僧侶「―――はい。終わりです」

魔法使い「最後の台詞、いらないわよね?」

エルフ「うん」

勇者「感謝の気持ちに股を開くって大事だろうがぁよぉ!!!」

魔法使い「本当にキモイわね!!アンタはぁ!!」

キラーマジンガ「なるほど……」

僧侶「どうでしたか?」

キラーマジンガ「少しだけ理解できました。譲れないモノに対して、空気を読む必要はないということですね」

僧侶「はい。心があるのなら」

キラーマジンガ「ありがとうございます」

僧侶「いえいえ」

魔法使い「早く行くわよ」

エルフ「キャプテンに貰った地図によれば、ここから北西に向かえば関所があるみたい」

勇者「関所?」

エルフ「門だね」

魔法使い「どうやって抜けるの?」

勇者「まずは行ってみないことにはわかりませんね」

キラーマジンガ「周辺に魔物はいないようです」

勇者「そうですか。まあ、無理はせずに命を大事にしていきましょう」

僧侶「はーい」

―――関所

勇者「誰か居ますか?」

キラーマジンガ「魔物の気配はありません」

エルフ「蛻の殻なの?」

キラーマジンガ「状況的にその表現はもっとも適切です」

魔法使い「通ってもいいのかしら?」

僧侶「罠では?」

キラーマジンガ「私のセンサーから逃れる術を有している魔物が大量にいることは考えにくいです」

勇者「いないなら通りましょう。好都合です」

エルフ「いいのかなぁ……?」

魔法使い「ほ、本当にいないでしょうね……」ドキドキ

僧侶「とおりまーす……」

勇者「……」

キラーマジンガ「私の索敵は信じられませんか?」

勇者「そんなことあるわけないよ。進もう」

―――フィールド

勇者「この街道を進めば、問題の城下町につけますね」

僧侶「魔王の城と化した……お城なんですね……」

勇者「貴女がいれば余裕です」

僧侶「勇者さまぁ……」

魔法使い「仲いいわね、相変わらず」

キラーマジンガ「うーん……」

エルフ「どうかした?」

キラーマジンガ「いえ……先ほどの授業で少し気になることが」

魔法使い「なになに?なんでも言って」

キラーマジンガ「空気を読まなかった結果、皆さんとの間に軋轢が生じました。これは敵対するということですよね?」

エルフ「うん。そうなるね。意見に沿わない相手を敵視するのは当然の流れだし」

魔法使い「対立したくない人とも対立しなきゃならなくなる。そういう決断はしなきゃだめね」

キラーマジンガ「なるほど……相当な覚悟がなければできないことですね」

魔法使い「それだけ自分にとって譲れないモノなら、時にはそういう決断もいるわね」

―――魔王城 城下町

勇者「静かですね」

僧侶「城下町なのにゴーストタウンです……」ギュッ

勇者「魔物は?」

キラーマジンガ「存在しません」

魔法使い「不気味すぎるわ……どういうことよ……」

エルフ「魔王かドラゴンが呼んでいる……ってことかな?」

勇者「僕も同じ事を考えていました。もしくはこの国はもう戦略的に不要な土地となったか……」

僧侶「人が生きている感じはないですね」

勇者「黄金の国と同じでしょう。人間なんて戦って殺されるか生き延びるために逃げるかしか選択肢はありません」

魔法使い「……」

勇者「罠の可能性も十分にあります。気を引き締めていきましょう」

エルフ「うん」

僧侶「はい」

キラーマジンガ「……」

―――魔王の城 城門前

勇者「ここが……」

魔法使い「あ、あけるの?」

勇者「ここまで誰もいないとなるとご招待されているとみて間違いないでしょう」

エルフ「そうだね」

僧侶「あぁ……勇者様……」

キラーマジンガ「センサーに反応」

魔法使い「え?!」

エルフ「どこ……?!」

僧侶「うぅぅ……!!」

キラーマジンガ「城内です。数は1」

勇者「……」

魔法使い「それって……」

エルフ「ドラゴンだね」

勇者「皆さん、装備品のチェックを。確実に総力戦になりますから」

―――魔王の城 謁見の間

勇者「……また、会いましたね」

ドラゴン「よく来たな」

エルフ「……」

僧侶「ド、ドラゴン……!!」

魔法使い「ついにここまで来たのね……」

キラーマジンガ「マスターはどこにいるのでしょうか?」

ドラゴン「木偶人形まで連れてきたか」

勇者「こちらには……これがある」チャカ

ドラゴン「……」

勇者「あのクラーケンですら半身を根こそぎ持っていかれた。お前にも有効なはずだ」

ドラゴン「魔法銃か……。ああ、確かに脅威だ。その所為で魔王様はまた俺にその力の分析を命じた」

勇者「相変わらずだな。鉄の橋ですら叩いて渡るのか、魔王は」

ドラゴン「そうだ。完璧な確証をもってして魔王様は橋を渡る。だが、その魔王様が何百年と魔族を率いて、そして勝利と繁栄をもたらせてきた!!!」

勇者「防戦になれば凶悪だな。負けない戦いかたを熟知しているから」

ドラゴン「さあ、撃ってみろ……その魔法銃を!!」

勇者「しかし、その輝かしい戦歴の影にどれほどの同胞が泥をかぶり、血を流したんだ?」

ドラゴン「……」

勇者「負けない戦いには必ず犠牲がいる。側近のお前なら嫌というほどみてきたはずだ」

ドラゴン「それがどうした?」

勇者「この戦いも魔王にとっては明日の勝利への布石にすぎないんだろ?」

ドラゴン「何がいいたい?」

勇者「お前は捨てられたわけだ。情報収集のために死ねといわれたんだろ?」

ドラゴン「違う!!!」

勇者「違わないだろう。大昔、魔法銃という未知の兵器によって魔王は敗戦した」

勇者「情報が一切なかったからだ。だからこそ、魔王は鉄壁の孤島に引き篭もり、魔法銃の対策を練ろうとした」

ドラゴン「……」

勇者「でも、人間の行動は早く、船で攻めてきた。そこで魔王は魔法銃を詰んだ船を永遠に彷徨わせることで戦いを回避した」

勇者「当時の勇者も海流を操られ、しかも船そのものを幻惑させるという二段構えには意表を突かれたんだろう。抵抗もできずに幻覚の中で溺れ死んだ」

ドラゴン「そうだ。そしてエルフを弾圧し、人間との交流も絶えた。魔法銃の精製は完全になくなったはずだった……!!」

勇者「魔王はきっと馬鹿じゃない。当時の魔法銃対策は完成しているはず」

ドラゴン「……」

勇者「しかし、こうして情報収集をするということは、あることを懸念しているからだろ?」

ドラゴン「お前がエルフを連れているから……」

勇者「新しい魔法銃の可能性がある。昔よりも強化されたものかもしれない」

勇者「それが魔王の憂いなんだろ?」

ドラゴン「魔王様には説明した。古代の船から見つかったモノ。故に威力に変わりはないと」

勇者「……」

ドラゴン「しかしな……魔王様に油断はできないと言われたら俺たちはそれに従うしかない。今までもそれでニンゲンたちに勝ってきたのだからな」

勇者「こんな下らないことのために死ぬのか?」

ドラゴン「黙れ。魔王様は絶対だ」

勇者「やめろ。それよりも俺たちと手を組んで魔王を倒そう」

ドラゴン「エルフ族のようにニンゲンに尾を振れというのか?馬鹿馬鹿しい」

勇者「君が尾を振るとこは見てみたいな。可愛いと思うぞ?」

ドラゴン「ざ、戯言を!!さぁ!!撃て!!でなければ貴様たちをこの場で……八つ裂きにしてやるぞ!!」

勇者「ここまで言ってもダメか」

エルフ「魔王信仰を覆せるわけないって」

魔法使い「説得は無理か……」

僧侶「た、戦うしかないのですね……」

キラーマジンガ「マスターはどこですかぁ!!!!」

ドラゴン「黙れ木偶人形風情がぁ!!!」

キラーマジンガ「……」

ドラゴン「貴様が主といい慕っていたニンゲンは初めから存在しない!!あれは俺の仮の姿だぁ!!!一度、見せただろうがぁ!!」

キラーマジンガ「確かに……そうでしたね……」

ドラゴン「ふん……使えぬ人形めが」

キラーマジンガ「では……ここは私の意志で決めます」

魔法使い「何をよ?」

キラーマジンガ「空気を読むのならば、ここは貴方たちとの共闘が望ましいのでしょう」

勇者「そう来ますか……」

キラーマジンガ「ですが、私の譲れないモノのために―――敵対させていただきます」シャキン

ドラゴン「なに……?」

キラーマジンガ「私の知っているマスターはいません。ですが、あのドラゴンがマスターだということも知っています」

エルフ「うん……そうだね……」

キラーマジンガ「―――私はキラーマジンガ。マスターを守護するために、勇者という脅威を一掃します」

僧侶「……」

勇者「いいでしょう。あの幽霊船での一件から、こうなることは想像していたし」

ドラゴン「どけ。人形の手などいらん!!!」

キラーマジンガ「命令は受け付けません」

ドラゴン「貴様……!!!」

キラーマジンガ「貴方はマスターであって、マスターではありませんので。私の独断で行動させて頂きます」

ドラゴン「勝手にしろ!!どうせ魔法銃で―――」

キラーマジンガ「魔法銃は使用不可です」

魔法使い「それ言うの?!」

ドラゴン「なんだと?」

キラーマジンガ「魔法銃は古いモノで次弾がない可能性もあるためです。もし次弾がない場合、勇者たちは最大の抑止力を失います。撃つ勇気はないでしょう」

勇者「大正解。魔法銃は撃てない。よく知ってるね」

キラーマジンガ「勉強しました」

勇者「大きくなったな……娘よ……」

キラーマジンガ「私、パパのことが大好きです。だから―――」

勇者「キラーマジンガは僕に任せてください!!ドラゴンは貴方達が!!!」

魔法使い「そ、そんなこと!?」

ドラゴン「―――消し炭にしてやろう!!!!」

僧侶「きゃぁぁ!!!」

エルフ「下がって!!―――くらえ!!」バシュッ

ドラゴン「柔な矢で俺の皮膚を貫けるとでも思っているのかぁ!!!」ゴォォォ

魔法使い「炎なら!!」コォォォ

ドラゴン「ふん……。炎は通じないか」

魔法使い「何回もしないでね」

ドラゴン「無理な相談だな!!!」ゴォォォ

魔法使い「意地悪!!!」コォォォ

エルフ「やぁぁ!!!」バッ

ドラゴン「ぬ?!」

エルフ「風よ!!」ヒュゥゥゥ

ドラゴン「下らない!!」バサッバサッ

エルフ「翼の風……?!」

僧侶「怪我したらすぐに私に抱きついてくださいねー」

魔法使い「風の魔法使ったら?」

僧侶「もし通じなかったら回復する手段が減ります」

魔法使い「そうだけど……これじゃあ……」

エルフ「凍れ!!」コォォォ

ドラゴン「無駄だぁ!!!」ゴォォォ

エルフ「うっ?!」

僧侶「大丈夫ですか?!」ギュゥゥ

エルフ「あ、ありがとう」

魔法使い「触れることができれば火傷ぐらい負わせられるのに……!!」

キラーマジンガ「はっ!!!」ギィィン

勇者「うっ?!」

キラーマジンガ「諦めてください。人間では私に勝てません」

勇者「それはどうかな……」

キラーマジンガ「何を根拠に……!!」

勇者「君はもう何日エネルギーの補給をしてないか覚えていないのか?」

キラーマジンガ「……っ!!」ギィィン

勇者「はぁ……はぁ……船の上にいた期間。君は一切のエネルギー補給は行っていない」

キラーマジンガ「こうなると分かった上で……貴方は……」

勇者「戦闘をすればそれだけ燃料切れが早まる」

キラーマジンガ「貴方を殺せばいいだけの話ですね」

勇者「どうかな?君は確かにすごい力だ。でも、だからこそ直線的な動きしかできない」

キラーマジンガ「貴方の戦闘データはインプットされています。勝てる可能性は40%です」

勇者「意外に高いな。エネルギー残量の所為か?」

キラーマジンガ「……行きます!!」ダダダッ

勇者「はぁ!!」ギィィィン

キラーマジンガ「ふっ!!」

勇者「まだ燃料は切れないのか……!!」

キラーマジンガ「貴方たちから学ばせてもらったことはとても有意義でした」ギィン

勇者「そうか」

キラーマジンガ「楽しかったです」

勇者「え……」

キラーマジンガ「とても……」

勇者「キラちゃん……」

キラーマジンガ「でも、私には使命があります!!!」

勇者「そうだな」

キラーマジンガ「貴方たちから貰った温情を反故にしてまでも、守りたいものがあるのです!!」

勇者「僕はそういう君が大好きだ」

キラーマジンガ「はぁぁぁぁ!!!」ブゥン

勇者「ぐっ!?」

ドラゴン「オォォォォォ!!!!!」バリバリバリ

エルフ「まずい!!二人とも距離をとって!!」

魔法使い「な、なにあれ……?!」

僧侶「雷ですか?!」

ドラゴン「消えうせろぉぉぉ!!!」バチバチバチ

エルフ「はっ!!」キュィィィン

ドラゴン「これも通さぬか。エルフ族め……!!」

エルフ「……」

魔法使い「倒せる見込みは?」

エルフ「ゼロじゃない。だけど……ボクたちじゃ無理かも」

僧侶「勇者様の手助けがいりますか?」

エルフ「武器が欲しいね……」

魔法使い「ええと……鞭と……ナイフはあるわ」

僧侶「盾と一度も抜いたことのない剣なら」

エルフ「あとはボクのボーガンか……うーん……」

エルフ「そうだ」

魔法使い「なになに?」

僧侶「なんでしょうか?」

ドラゴン「次で終わりにしてやろう!!!」

エルフ「―――じゃあ、それでやってみよう」

魔法使い「怖いけど……やるしかないわね」

僧侶「守ってるだけじゃ勝てません。―――どうぞ、大事に使ってください」

魔法使い「任せて!」

ドラゴン「なんのつもりだ?!」

魔法使い「この盾がある限り!!あんたの攻撃なんて通じないわよ!!」

エルフ「そーだ!!そーだ!!」

ドラゴン「貴様らぁ!!!舐めるのも大概にしろ!!!盾もろとも溶かしてくれるわぁ!!!」ゴォォォォ

僧侶「きたー!!!」

エルフ「盾に隠れて!!」

魔法使い「わ、わかってるわよ!!」

ドラゴン「オォォォォ!!!!」ゴォォォォ

僧侶「危ない!!」バッ

エルフ「くっ……!!」バッ

魔法使い「きゃぁぁぁぁあああああ!!!!!!」

僧侶「なっ?!」

エルフ「大丈夫?!」

ドラゴン「―――終わったな」

僧侶「あぁ……盾が……とけて……」

ドラゴン「ふんっ。跡形もなく消えたか」

エルフ「嘘……そんな……」

ドラゴン「次はお前だ!!!」

僧侶「そうは行きません……!!」シャキン

ドラゴン「はははははは!!!!そのような剣でなにができる!!お前の戦闘力のなさは承知しているぞ?!」

僧侶「わ、私だって……これぐらいのことは……」ガクガク

エルフ「―――今だ!!!」

ドラゴン「なに?!」

魔法使い「はっ!!」ダダダッ

ドラゴン「なんだと?!どこから―――」

エルフ「エルフ族の得意魔法を忘れてたの?」

ドラゴン「不可視化か!!」

魔法使い「よし!!懐に入ったぁ!!」

ドラゴン「何ができる!!」

魔法使い「私の全身全霊の冷気をくらえぇ!!!」ピトッ

ドラゴン「なっ!?」

魔法使い「はぁぁぁ!!!」コォォォ

ドラゴン「ぐっ……ぁ……」ピキピキ

魔法使い「まだまだぁ!!」

ドラゴン「―――オォォォォォォ!!!!」ドガァ!!

魔法使い「ぎ……ぃ……!?」

僧侶「きゃぁぁ!!」

勇者「な?!モロに?!」

キラーマジンガ「まずい!!」ダダダッ

勇者「君は……!!」ダダッ


ドラゴン「はぁ……はぁ……くそ……」

魔法使い「ぁ……ぁ……」ピクッピクッ

僧侶「今、治癒を!!!」タタタッ

ドラゴン「させ……るか……!!―――終わりだ!!」

エルフ「―――貴方がね」

ドラゴン「……?!」

エルフ「そのお腹、今とっても繊細でしょ?」

ドラゴン「まさか―――」

エルフ「魔法で強化した矢なら貫ける!!!」バシュッ

キラーマジンガ「マスター!!!」

ドラゴン「お前……!!」

―――ガギッ!!

エルフ「え……」

僧侶「あぁ……」

魔法使い「ぅ……ぁ……」

勇者「……」

キラーマジンガ「マ……タ……ダ、い……じょ……で……す……?」

ドラゴン「お前……手出しは無用だと……」

キラーマジンガ「ま……す、タ……ゴ……ぶじ……で……?」

ドラゴン「……」

勇者「ああ。無事だよ」

キラーマジンガ「よか……た……マ……す……」

キラーマジンガ「わ、たし……ま、すた……が……ガ、ガ……ダ、イ……す―――」ガクンッ

エルフ「そんな……ボクはそんなつもりは……」

僧侶「ジーちゃん……」

魔法使い「……」

ドラゴン「木偶人形め……最後まで無駄なことをしたな。全く使えなかったな」

勇者「本心か、それは?」

ドラゴン「魔法で強化した程度で俺は貫けない。そんなことも判断できずに敵の攻撃に当たりにいくとは……」

僧侶「……っ」

魔法使い「ダメ……魔法は使わないで……」

エルフ「ボクは……」

ドラゴン「出来の悪い人形はこれだからな」

勇者「―――そう自分に言い聞かせて、魔王の捨て駒にされた同胞を見捨ててきたのか?」

ドラゴン「きさまぁ!!!」

勇者「そうなんだろう?」

ドラゴン「違う!!魔王様は魔族の繁栄のために!!!」

勇者「繁栄のためにお前を慕った奴らをボロ雑巾のように扱う」

ドラゴン「黙れ!!!黙れぇぇぇぇ!!!!!!」

勇者「この木偶人形でも自分の譲れないモノのために戦った!!!お前にはそれがないのか!!!」

ドラゴン「俺は……俺は……魔王様の……ために……!!!」

勇者「お前は人形にも劣るな。自分をそうやって押し殺すことしかできないならな」

ドラゴン「いい加減にしろぉ……!!!殺す……!!殺す……!!!!」

勇者「……」チャカ

僧侶「勇者様!?」

エルフ「魔法銃……」

ドラゴン「ふぅー……ふぅ-……!!!」

勇者「確かに弾はないかもしれない。でも、あるかもしれない」

ドラゴン「俺は……俺はぁ……!!!」

勇者「お前が決めろよ」

ドラゴン「……っ?!」

勇者「キラーマジンガだってお前を守るって自分で決めたぞ?」

ドラゴン「俺は……!!」

勇者「魔王に疑問の一つぐらいあっただろ?」

ドラゴン「うぅぅぅ……!!!!!」

勇者「答えろ。お前の答え次第では引き金を引く。たとえ、弾が出なくても今のお前を倒す方法なんてごまんとある」

ドラゴン「オォォォォォォ!!!!!!」

魔王『―――そうか。では撤退だ』

ドラゴン『魔王様。私の部下がまだ敵地に』

魔王『捨て置け。我が死なぬ限り、負けではない。そう教えたはずだ』

ドラゴン『は……』

『ドラゴンさまぁ……!!お助けをぉ……!!!』

『いたい……いたい……いたい……』

ドラゴン『弱い奴らは必要ない』

『ドラゴンさ……ま……!!!』

『たす……け……!!』

ドラゴン『だまれぇ!!!』ゴォォォォ

『ギャァァァ……!!!』

ドラゴン『魔王様が捨て置けを言った。貴様たちは捨てられたのだ』

『アァァ……ァ……ァ……』

ドラゴン『役立たずはいらない……いらない……』

ドラゴン『役立たずは必要ない……必要ない……』

ドラゴン「―――いらない……いらない……」

勇者「崩れたか……」

僧侶「……」

魔法使い「ど、どうなったの……?」

エルフ「側近だからこそ、色々思っていたのかな?」

勇者「ずっと魔王のやり方には疑問だった。確かに勝利を揺るがないものにすることは大事です」

勇者「でも、有能な部下を次の勝利に繋げるために捨てるなんて俺にはできない」

魔法使い「……」

勇者「トロルも魔人も……先兵以上の役割はなかったのでしょう。全ては最終的な勝利のための布石にすぎない」

僧侶「勇者様……」

勇者「魔王……俺はお前を許さない……。人間だけじゃなく仲間をもずっと苦しめてきたんだからな……」

勇者「仇討ちをするのは俺たちで最後だ……!」

魔法使い「そうね。それが理想ね」

僧侶「仇討ち……」

ドラゴン「いらない……いらない……わけが……ない……」

エルフ「ガーちゃん……ごめんね……ボクの所為で……ごめん……」

キラーマジンガ「……」

僧侶「ジーちゃん……安らかにお眠りください……貴方の御心は神が愛してくれることでしょう……」

魔法使い「マーちゃん……楽しかったわ……今までありがとう……」

ドラゴン「俺をどうするつもりだ……?」

勇者「仲間になってください」

ドラゴン「……」

勇者「魔王を倒すためには手を貸せないと?」

ドラゴン「お前の言うとおり魔王様の考えについていけないときもあった。だが、恩義があることもまた確かだ」

ドラゴン「でなければ、自分を誤魔化すことなどせず謀反を起こしている」

勇者「でしょうね」

ドラゴン「ふん……どちらにせよ……俺はもう……立ち上がれない」

勇者「……では、こうしましょう」

ドラゴン「なんだ?」

勇者「これから人間として生きるというのはどうですか?」

ドラゴン「なにを馬鹿な……これでも俺は由緒正しきドラゴン族の末裔だぞ?」

勇者「人間として生きて、ドラゴンになるときはなんかそれっぽい呪文詠唱して変身することにしたら―――」

ドラゴン「できるかぁ!!!ふざけるなぁ!!!」

勇者「できるっ!!あんなに可憐な女の子になれるんだから!!!」

ドラゴン「あのなぁ……」

勇者「結構、疑問だったんですけど、どうしていつも女の子になってたんですか?」

ドラゴン「ニンゲンの殆どは女児に甘い顔をすると聞いていたからだ」

勇者「貴女はメス?オス?」

ドラゴン「性別などない。元々ドラゴン族は神の使いとして―――」

勇者「えぇ?!」

ドラゴン「なんだ?」

勇者「両性具有ってやつですか?」

ドラゴン「そうだ」

勇者「これは……ほうほう!!益々、気に入りました。ようこそ、側室ワールドへ」ニコッ

ドラゴン「気持ち悪いなお前」

勇者「とにかく、僕たちは魔王と戦うために貴女の力が必要なのです。そして側室へ」

ドラゴン「しかし……」

勇者「どうしてもダメですか?」

ドラゴン「……」

勇者「お願いします」

ドラゴン「……」プイッ

魔法使い「―――私からもお願い」

ドラゴン「……」プイッ

僧侶「あっちむいて、ほい」

ドラゴン「……」プイッ

僧侶「かったー」

ドラゴン「邪魔だ!!お前ら!!!今は独りにしてくれぇ!!!」

勇者「分かりました。では、後ほど」

僧侶「お願いします」

ドラゴン「ふん……」

                    . . : :⌒: .、_ - ―- 、
              /: . : . : . : . :ヽ . : . : .ヽ
             ノ, -ー -: .- : . 、: . : . : ∧
         , ィ´: . : . : . : . : . : . : . :` 、 . : . :∧

        /: . __: . : . : . :__: . : . \ . : ∧
       /: . : . \  }γ⌒ヽ}  / . : . : . : . : . ∧
     /: . : . : . : .: 〉 ` ゝ_〃 〈 . : . : . : . : . : . : :',

     /: . : . : . : . : .⌒ー、  -⌒:─ 、 . : . : . : . : : {
     /: . : . : . : .: : : ⌒: . :ヽ/: . : } : ハ : . : . : . : . :∧
    ,': . : . : . : .ィ´.,ィ.弍㍉: . : .彳弍㍉} . : \ : : . : ∧
    !: . : .: ハ: . : .イb::::::::l    {: b::::::::} 》  : :jヽ_: : : ',
   _〉 : . : :l .', :八 弋辷ノ  \{ 弋少'.ノ l:://:{  ヽ7´:∧
  く <∧:ト、.:{.:ヽ:{弋            ル: : :∧/: .ヽ:∧
   \_い:ヽ : f .、    r  ¬     /  : . : :∨: : . : .∧
      人:ヽ}. | ト、   ヽ __ノ  ,ィ´j  : . : : : ∨: . : . :∧
       /: . : .: /. 人  `} :-rz ‐ ´{ : . : : . : : : .: ∨: . : . :∧
       |: . :.,./     -ト_「 ̄ ̄ ̄フ^.._     ..: ∨: . : .: ∧
       |: : /   /_ ..`ー  ィ    _\   {:ソ: . .: : : : /
      l: :i   /     ` ー -    入   .\.. / . : .八 /
      ∨ ∠  -― -       . ,ィ´..- ―-  ン、/: :. :./  \

ドラゴン(少女)「おちんちんもついてるよ♪」

どうよ?

僧侶がかわいいな、ちくしょうww

―――夜 魔王の城

ドラゴン「……」

エルフ「……」カチャカチャ

ドラゴン「……」

エルフ「えっと……ここは……」カチャカチャ

ドラゴン「なにをしている?」

エルフ「え?」

ドラゴン「動かぬ人形で人形遊びか?」

エルフ「今は動かないだけで、動くよ」

ドラゴン「……」

エルフ「ガーちゃんは動くよ。まだ、生きてるから」カチャカチャ

ドラゴン「……そうなのか?」

エルフ「うん。エネルギーはなくなっちゃったし、動力部の損傷も激しいけど、きっと……動く」

ドラゴン「動くのか……」

キラーマジンガ「……」

エルフ「んと……」ガチャガチャ

ドラゴン「……」ソーッ

エルフ「これは……んー……」グイッ

ドラゴン「おい。そんなに乱暴にしたら壊れるんじゃないか?」

エルフ「もう壊れてるし」

ドラゴン「余計に壊れるだろう」

エルフ「うるさいなぁ。―――そこの部品とって」

ドラゴン「これか?」

エルフ「違うよ。右のやつ」

ドラゴン「これか」

エルフ「違うよ!!これだよ!!」

ドラゴン「分かりにくいな」

エルフ「つかえねー」

ドラゴン「き、きさま……!!誰に向かって……!!!」

エルフ「いいから黙っててよ」カチャカチャ

ドラゴン「……エルフ族は口が悪いな」

エルフ「一応、敬語は使えるけど」

ドラゴン「じゃあ、使えよ」

エルフ「……ドラゴン様」

ドラゴン「なんだ?」

エルフ「魔王のことはどう思っているのですか?」

ドラゴン「我々にとっての絶対的な王だ。それは変わらない」

エルフ「……」

ドラゴン「エルフ族でも魔王様に対する信仰は続いているはずだ」

エルフ「それは……」

ドラゴン「ニンゲンに手を貸さなければ……お前たちの立場は違っていたのだろうがな」

エルフ「だから、あれはニンゲンたちが……勝手にしたことなんです……」

ドラゴン「お前は若いようだが、過去の過ちについては聞いているのか?」

エルフ「勿論です。―――ニンゲンがボクらを裏切ったと、長老から話は聞きました」

ドラゴン「……話してみろ。ああ、作業はしながらでいいからな」

エルフ「かつて、魔族はニンゲンと関係を持たないように暮らしていたと聞きました」カチャカチャ

ドラゴン「そうだ。魔族は魔族の世界だけで生きてきた」

エルフ「故に争いは起こらず、互いに干渉もしない遠い隣人でいられた」

エルフ「ある日、一人のエルフがニンゲンに助けられ、そのお礼に簡易魔法を伝授したのが全ての始まり」

ドラゴン「火を指先から出すだけの魔法にニンゲンは群がったらしいな」

エルフ「はい」

ドラゴン「そうしていく内にニンゲンは欲を出し、様々な魔法を乞うようになったわけだ」

エルフ「そのうちにエルフ族とニンゲンは互いの不干渉だった境界を無くした。それによってニンゲンの文明は大きく進んだわけですけど」

ドラゴン「力を持ったニンゲンは世界の掌握に躍起なったがな。魔王様の話では随分と唐突な戦争だったらしい」

エルフ「……」

ドラゴン「当初はエルフが魔法を伝授したことは誰も知らなかったし、そもそも不文律を犯す同族がいることすら想像していなかったが」

エルフ「申し訳ありません」

ドラゴン「先祖の間違いを子孫が謝罪するか。ふん……100年ほど遅いな」

エルフ「魔法銃の開発もただニンゲンの文明発展の助力になればと提供したに過ぎません。それを魔王討伐の最終兵器にするなんて……」

ドラゴン「まあいいさ。もう過ぎたこと。既にどちらかが滅びるまで戦うことになった。悔やんでも怒りを露にしても手遅れだ」

ドラゴン「幽霊船ではそれを言おうとしたのだな?」

エルフ「はい」

ドラゴン「手が止まってるぞ」

エルフ「あぁ……すいません」カチャカチャ

ドラゴン「だが、どのような理由があろうともエルフに対する憎悪は消えないだろう」

エルフ「……」

ドラゴン「エルフさえいなければニンゲンが欲を出すこともなかったと言う者もいる」

エルフ「そうですね……ボクたちは……一生……恨まれて―――」

勇者「お茶いりますか?」

ドラゴン「おぉ?!」

エルフ「わぁ?!いつの間に?!」

勇者「ドラゴちゃんがキリッとして……勇者の側室になるしかねえな、と発言した辺りからいました」

ドラゴン「どこでそんなこといった?!言ってみろ?!」

勇者「照れちゃって、このこの」

ドラゴン「食べるぞ?足から食べるぞ?」

勇者「僕が君を食べようかな?―――足の指の間を丹念に舐めてあげる」

ドラゴン「いやらしい顔をするな!!!」

エルフ「もう、びっくりさせないでよ」

勇者「いやぁ、久々に貴女の丁寧な言葉遣いを聴きましてね、もう僕の股間がお祭り騒ぎに」

エルフ「どんな性癖なの?」

勇者「君が泣いてあきれるほどに」キリッ

エルフ「かっこよくないから」カチャカチャ

勇者「で、キラちゃんはどうですか?」

エルフ「時間はかかる。短時間ではまず無理かな」

勇者「じゃあ、今のうちにペロペロしておくか」

ドラゴン「やめろ、下衆が」

勇者「ところで今の話、本当ですか?」

ドラゴン「……エルフ族が言うなら本当なのだろう」

勇者「ニンゲンって悪いやつだなー。マジでさいてーじゃねーか」

ドラゴン「てめーだよ!!」

勇者「僕は勇者。紳士の中の紳士。キングオブジェントルメンである僕を捕まえて、変態とは失敬ですね」

ドラゴン「ふん……」

勇者「協力したくない理由の一つでもあると」

ドラゴン「その通りだな。とはいえ昔の話だ。魔族の中にはどうしてニンゲンと戦をしているのか理解できていないものもいる」

勇者「エルフ族が人間を嫌うのは根幹にそういう訳があったのですね?」

エルフ「ボク自身は生まれる前の話だから、ピンとこないこともあるよ。周りの大人からニンゲンは屑だって言われて育ってきたから、先入観で嫌ってるだけ」

勇者「僕以外の人間は好きになれないと?」

エルフ「人間は例外なく嫌いだよ」

勇者「僕がこんなに愛してるのに?!酷いなぁー!!!えー?!」

エルフ「嘘ばっかり」

勇者「じゃあ、向こうで裸になろうか」

エルフ「やだよ!!あっちいけ!!作業の邪魔!!」

勇者「ガードかてえ。ここまで一緒にやってきのに……」

ドラゴン「お前は不思議なニンゲンだな」

勇者「そうですか?割と一般人だと思いますけど……ああ!!そっか!!俺、勇者だった!!一般人とは一線を画しますね!!」キリッ

ドラゴン「ずっと不思議に思っていたことがある」

勇者「なんですか?ドーラゴちゃん」

ドラゴン「どうしてお前は俺を見て驚かなかった?」

勇者「へ?」

ドラゴン「洞窟で初めて出会ったときだ。俺を見ても驚いていなかっただろう?」

勇者「いや、めちゃくちゃ驚いてましたよ。なにせ、側室候補だっためんこい女の子がいきなり巨大なトカゲになったんですから」

ドラゴン「お前、結構失礼だな」

勇者「すいません」

ドラゴン「普通な俺の姿を見れば畏怖し、身を震わせるものだと思うが?」

勇者「まあ、でも、あれですよ。あれだけ可愛い女の子が元の姿だと考えれば、別にいいかなって思いまして」

ドラゴン「話がかみ合わないな」

勇者「貴女が女の子になればいいだけの話」

ドラゴン「……そんなに気に入ったのか?」

勇者「うんっ」

ドラゴン「……」

勇者「むしろ、あの女の子の姿のほうが威厳があったというか」

ドラゴン「見え透いた嘘を吐くな」

勇者「……正直言うと、貴方を見たときは怖かった」

ドラゴン「ほう……?」

エルフ「……」カチャカチャ

勇者「でも、僕が怖がると彼女たちが絶望しますからね」

ドラゴン「……」

エルフ「え……」

勇者「僕は勇者として二人を守ると宣言していたので。そんな勇者様がドラゴンをみて膝を笑わせていたら、どうです?」

ドラゴン「上に立つものの責任か」

勇者「最悪の事態が起こっても彼女たちが無事に離脱できる方法は用意していました」

ドラゴン「ふん。どうやってだ?あの時、俺がお前らを追っていれば今頃、ここには居ないだろうに」

勇者「簡単じゃないですか。―――僕が貴方と対峙すればいい」

ドラゴン「な……」

エルフ「そんなの瞬時に殺されるよ」

勇者「場所が場所だったので、防戦ならこっちに分がありましたよ。なにせ、この巨体ですからね。小回りは利かないでしょう」

ドラゴン「お前が囮になって時間を稼いだということか?」

勇者「万が一外に出ても追いかけてくるようなら、森の中で数日間戦う覚悟でいました。無論、彼女たちとは別れてですけど」

ドラゴン「お前……」

勇者「それが上に立つ者の振舞い方だと思います」

ドラゴン「だが、勇者のお前が死ねば魔王の討伐は終わっていたのだぞ?」

勇者「僕の意志は誰かに受け継がれるので大丈夫です」

ドラゴン「……」

勇者「最終目標は側室10人と綺麗なお嫁さんとの豪遊生活ですが、まあついでに魔王の討伐も目標です」

勇者「その目標なら僕の亡き後でも必ず達成される。そう信じています」

ドラゴン「次代にその責務を渡すというのか?だから、お前は危険を省みず、行き急ぐように戦うのか?」

勇者「違う。俺は死にたくないし、死んだらダメだって分かってる。でも、守りたい者に守られて死ぬのだけは御免だ」

ドラゴン「……」

エルフ「……」カチャカチャ

勇者「見捨てるなんてもってのほか。死ぬなら誰かを守って死ぬ。それが俺の死に方だ」

ドラゴン「ふん……俺との戦いのときは守れて居なかったくせに」

勇者「いや、あそこでキラちゃんと交戦していなかったら、それこそ全員ミンチですよ」

ドラゴン「ふっ……意志は受け継がれるか」

勇者「これも立派な『負けない戦い方』ですね」

ドラゴン「……!」

勇者「じゃあ、そろそろ寝ます。あの二人はもう疲れて寝てますので、間に挟まれるようにして添い寝をしようかと思います。止めないでください」

エルフ「おやすみ」

ドラゴン「……」

勇者「ああ、そうそう。ドラゴちゃん」

ドラゴン「その呼び方はどうにかならないのか?」

勇者「主が倒れても仲間は立ち上がりますよ」

ドラゴン「どういう意味だ?」

勇者「だからこそ、仲間を信じて主は壁に立ち向かえる。仲間を踏み台にして壁を越えても意味なんてないでしょう?」

ドラゴン「それは魔王様のことを言っているのか?」

勇者「おやすみなさい」

こまけぇこたあいいんだよ( ゚Д゚)
どっちでも意味通じるからいいじゃん

エルフ「ふーん……色々、考えてるんだ」

ドラゴン「魔王様とは違うな」

エルフ「それはニンゲンだから」

ドラゴン「……」

エルフ「……」カチャカチャ

ドラゴン「……なあ」

エルフ「んー?」

村娘「―――こっちのほうがいいか?」

エルフ「おぉ!?え?!なにが?!」

村娘「それとも……」

少女「こっちがいいのか?」

エルフ「だから何が?!」

少女「俺はニンゲンには協力しない。勇者に手を貸すことにした」

エルフ「一緒だと思うけど」

少女「奴に興味が出た。ニンゲンに仕えるのは無理だが、勇者になら仕えてもいいかもしれんな」

エルフ「ドラゴン様……」

少女「お前も無理はするな。明日も早いのだろう?」

エルフ「ありがとうございます」

少女「これでドラゴン族も裏切り者か……」

エルフ「でも、ドラゴンは元々神の使いでしたよね」

少女「言い伝えではな。ドラゴン族は地上を監視する目的で天から降りてきたといわれている」

エルフ「それロマンチックですね」

少女「そう……魔王様に仕えるのが全てではない。俺は神の使いとしてこの世界を見守る使命があったはずだ。うん、だからドラゴン族に泥をかけるわけじゃない」

エルフ「自分にそう言い訳しておくんですね」

少女「こういうのはなぁ!!心構えが大事なんだよ!!」

エルフ「わかりました。そこのやつとってください」

少女「え?これ?」

エルフ「違うよ!」

少女「怒るなよ?!すこし間違えただけだろ?!」

エルフ「もう!!もうちょっと勉強してください!!ガーちゃんのマスターなんですよね?!」

―――翌朝

僧侶「おはようございまーす」

魔法使い「んー……結構寝たわね」

勇者「二人とも寝相悪いですねー。首を絞めてくるとかありえませんよ、全く」

魔法使い「アンタが添い寝してこようとするからでしょ?!」

勇者「え?!あれわざと?!」

僧侶「ドラゴンさんはどこに……?」キョロキョロ

エルフ「だーかーら!!これはここの部品なんですってばぁ!!」

少女「えー?だが、形状的に言えばここだろう?」

勇者「おはようございます」

エルフ「あ、おはよう」

少女「よく眠れたか?」

勇者「な……?!なんで、その姿に!?まさか……まさか……!!!」プルプル

少女「か、勘違いするな!!お前のためではないからな!!!」

魔法使い「別にその姿になっておく必要はないでしょうに……」

少女「昨晩、勇者が言っていた。確かに巨体では小回りが利かないからな。この姿でのメリットもある」

勇者「人間が嫌いなくせにー、このこの」プニプニ

少女「う、うるさい!!頬を突くな!!!それにこれは一時的なものだ!!目的が達成されれば、元の姿に戻るわぁ!!」

僧侶「かわいいのに」プニプニ

少女「にゃめりょ!!しゃべりぇんだりょうがぁ!!!」

魔法使い「マーちゃんは?」

エルフ「とりあえずあとはエネルギーの補給をしたら動くようになると思う」

勇者「やったー!!じゃあ、んー……魔王を生け捕りにしてキラちゃんの血肉にするっていうのはどうですか?」

ドラゴン「魔王様を生け捕りとか無理に決まっているだろうが」

エルフ「でも、動かしたところで……」

魔法使い「どういうこと?」

エルフ「ボクたちのことを覚えているかどうかわからないよ。ボクの矢は色んなところを傷つけたから」

勇者「また僕に恋をするのは間違いないので大丈夫ですよ」キリッ

魔法使い「いつ恋をしてたのよ?!」

勇者「あーん?肉便器は黙ってろよ!!」

魔法使い「なっ……!?」

ドラゴン「人間とはやはり汚らわしいな」

エルフ「不潔」

勇者「ねー?」

魔法使い「名誉毀損よぉ……」

僧侶「あの!」

ドラゴン「なんだ?」

僧侶「どうしてドラゴンに変身するんですか?!」

ドラゴン「頬を突くからだろうがぁ!!」

僧侶「じゃあ、尻尾を突きます」

ドラゴン「そこならいいけど」

僧侶「……」ツンツン

勇者「じゃあ、キラちゃんはキャプテンの船に置いておくとして、僕たちは魔王のところに行きましょう」

魔法使い「いよいよね」

エルフ「うん」

―――船着場

キャプテン「へー、仲間になったのかい」

少女「一時的なものだ。誤解はするな」

勇者「キャンディーいる?」

少女「いらん!!!」

勇者「あーん」

少女「もがっ?!」

キャプテン「じゃあ、この子は責任持って預かるよ」

エルフ「ガーちゃんをお願い」

キャプテン「傷一つつけやしないよ」

魔法使い「それで、いつ仕掛けるの?」

キャプテン「ああ、そうだ。他の船から気になる情報があったんだけどさ」

僧侶「なんですか?」

キャプテン「魔王の軍勢が南下していくのを見たらしい。しかもかなりの規模だったみたいだ。魔王の姿はなかったみたいだけどね」

勇者「南下……?」

キャプテン「戦争を仕掛けるタイミング的には好都合なんだけどさ」

魔法使い「南というと……」

少女「もぐもぐ……ああ、以前トロルが陣取っていた国を攻め落とすつもりらしいな……もぐもぐ」

勇者「なに!?」

魔法使い「どうしてそれを先に言わないのよ?!」

少女「関係のないことだろう。俺たちは魔王様を倒しに行くのだから」

エルフ「まあ……そうだけど」

勇者「―――ふざけんなぁ!!!このトカゲ!!」

少女「今は違う!!」

僧侶「そうです!!あの国にも大勢の人がいるんです!!」

勇者「俺の側室だっている!!」

魔法使い「ああ、あのお姫様ね」

少女「あの国を救いに戻るのか?それでは魔王様に時間を与えてしまい、万全の態勢を整える手助けをすることになるぞ?」

勇者「しるか!!魔王と側室なんて比べるまでもねえだろうが!!!」

少女「お前は何をいっているんだ?それより、キャンディーはもっとないのか?」

キャプテン「どうすんだい?戻るのか進むのか」

勇者「もどろー!!!」

エルフ「本気?」

勇者「魔王が万全の態勢を整えたところで意味ねーし!!そもそも魔王のほうが圧倒的に有利だし!!」

少女「もっと有利になるかもしれないぞ?」

勇者「えーい!!姉さん!!」

キャプテン「なんだい、ダーリン?」

勇者「貴女は戦争を仕掛けてください」

キャプテン「魔王を追い詰めりゃあいいわけだね」

勇者「はい」

キャプテン「旦那の頼みとあっちゃあ!!やるしかないねえ!!!―――錨をあげろ!!帆をはりなぁ!!!」

勇者「僕たちは南に行き、姫様を助ける!!!」

魔法使い「ちょっと!!他の人は?!」

勇者「二の次だこらぁ!!!」

僧侶「いつもの勇者様です」

ドラゴン「―――乗れ!!」

勇者「俺の腰の上にはいつ乗ってくれますか?」

ドラゴン「やめろ!!変態がぁ!!!」

僧侶「落ちないように命綱とかは……?これ海に叩きつけられて内臓破裂のパターンでは……?」

魔法使い「怖い妄想しないの。しっかりしがみ付いていれば大丈夫よ」

エルフ「行くなら急ごうよ。犠牲者が増えちゃうよ」

勇者「その通りだ!!側室姫を失うわけにはいかねえ!!!」

魔法使い「側室姫って……まあ、いいわ」

ドラゴン「本当にいいのか?俺が行動を共にしていることこそ、お前にとっては最大の隠し玉だったはず。魔王様の意表を突くことはできなくなるぞ?」

勇者「言ったでしょう。死ぬなら誰かを守って死ぬと」

ドラゴン「お前のいう誰かとは……」

勇者「目に映る者、全てだ」

ドラゴン「……お前は絶対に死なせん」

勇者「簡単に死ぬつもりもないですけどね」

ドラゴン「ふっ。―――しっかり掴まっていろ!!最大速度で飛ぶぞ!!!」バサッバサッ

―――上空

僧侶「うわっ……うわっ……」

魔法使い「高所恐怖症?」

僧侶「いや……こんな乗り物初めてで……」

ドラゴン「乗り物扱いするなぁ!!振り落とすぞ!!」

勇者「やめい!!」ペチペチ

ドラゴン「頭を叩くなぁ!!!」

エルフ「それにしてもどうして南にある小さな国を狙ってるの?」

勇者「あの国が占領されてしまえば、隣国は意図も簡単に魔王の手に落ちるでしょう。立地的に戦略拠点に向いているのですよ」

エルフ「そうなんだ」

ドラゴン「お前は何でもできるのか?」

勇者「夜の四十八手は完璧です」

ドラゴン「なんだそれは?戦術か?」

勇者「今度じっくり教えてあげましょう……実演でなぁ!!」

魔法使い「馬鹿なこといってないの!本当に落ちるわよ?!」

やだ、勇者に惚れそう(〃▽〃)
俺♂だけどww

―――城下町

兵士長「ここだけは死守するんだ!!!王も姫様もいるのだからな!!」

兵士「「はいっ!!」」

魔物「ギギギ」

キマイラ「小さき生き物でも束になれば、どうして中々厄介だな」

兵士長「怯むな!!指揮官を落とせば―――」

キマイラ「やれぇ!!!」

魔物「「ガァァァァ!!!」」ダダダダッ

兵士「「うおぉぉぉぉ!!!」」ダダダッ

キマイラ「無駄なことはやめろ。貴様らに勝ち目はない」

兵士長「王族が逃げるための時間を稼ぐぞ!!」

キマイラ「抵抗するな。痛いだけだぞ?―――それにニンゲンは皆殺しにしろと言われている」

兵士長「なんだと?!」

キマイラ「誰一人、生きてこの国から亡命できはしなぁい!!!なーっはっはっはっは!!!!」

兵士長「王……!!姫様……!!」

姫「はぁ……はぁ……!!」

王「大丈夫か?」

姫「はい……」

王「ここを抜ければ逃げられ―――」

魔物「グルルル……」

王「なに!?」

姫「ひっ……お、お父様!!」

王「向こうだ!!向こうに逃げろ!!」

姫「しかし!!」

王「生きろ!!生きて勇者様に会うんだ!!」

姫「お父様ぁ!!」

王「いけ!!」

姫「で、できません!!」

王「お前さえ生きていれば国はまた蘇る!!逃げろ!!」

姫「うぅ……!!」ダダダッ

―――上空

ドラゴン「見ろ。街は既に戦火に包まれているぞ」

勇者「急がないと。僕はこの辺りで降りる」

魔法使い「じゃあ、手筈通りに」

エルフ「行こう!」

僧侶「勇者様、お気をつけて」

勇者「心配は無用です。ドラゴちゃん!!君の使命は?」

ドラゴン「勇者に代わり、三人の術者を守護することだ」

勇者「君も無理だけはするな」

ドラゴン「分かっている」

勇者「では、僕は王族が使う逃走用の通路に向かいます」

魔法使い「生きて帰ってきてよ」

エルフ「死んだらダメだよ。ちゃんとボクたちを守ってくれないと、困るし」

僧侶「勇者さまー!!!フレーフレー!!」

勇者「声援ありがとう!!僕の可愛い側室レディたち!!」

―――城下町

キマイラ「お前で最後だな」

兵士長「くっ……」

キマイラ「では―――」

ドラゴン「そこまでだ」

キマイラ「!?」

兵士長「な……ド、ドラゴン……」

キマイラ「ドラゴン様。どうしてこちらに?!」

ドラゴン「何、魔王様からの新たな指令を届けにきただけだ」

キマイラ「そんな。ドラゴン様がわざわざ足を運ぶことでは」

ドラゴン「いや。俺が出向かないとダメなんだ」

キマイラ「ど、どういうことですか?」

ドラゴン「それはな―――俺はお前たちの敵だからだぁ!!!!」

キマイラ「ドラゴン様!?気は確かですか?!」

ドラゴン「殺しはしない。だが、反抗されると勢い余って致命傷を与えかねない。だから、何もするな」

魔法使い「怪我人の手当てを!!」

エルフ「分かってる!!」

僧侶「が、がんばります!!」

キマイラ「ニンゲン……ドラゴン様……裏切ったのですね……!!!」

ドラゴン「俺は元々神の使いだ。魔族だけに肩入れしているわけではない」

キマイラ「屁理屈を……!!!」

ドラゴン「ふん」

キマイラ「お前ら!!やつらを殺せ!!」

魔物「「オォォォォ!!!!」」

僧侶「ひっ?!」

魔法使い「来るなら来なさい!!」

ドラゴン「下がっていろ。―――こいつらに手を出すものは決して許さん!!焼かれる覚悟のある奴だけが前にでろぉ!!!」

魔物「「グルル……!!」」

魔法使い「容赦ないわね。元同僚でしょ?」

ドラゴン「俺には譲れないモノがある。それを奪うというなら同胞だろうと敵に回す。それが俺の戦い方だ」

姫「はぁ……はぁ……!!!」ダダダッ

姫「きゃっ―――」ドタッ

姫「い、た……」

魔物「ギギギギ!!!!」

姫「もう……ダメ……」

姫「生きて……もう一度……勇者……さま……に……あいたかった……」

魔物「ガァァァァァ!!!!」

勇者「―――俺の寵姫になにしてくれんとんじゃぁ!!!!」

姫「え……」

魔物「がぁ?!」

勇者「天誅!!!」ザンッ

魔物「ギギィ……!!!」

勇者「姫様。ご無沙汰しております。貴女が大好きな俺です」

姫「ゆ……しゃ……さまぁ……」ウルウル

勇者「怖かったでしょう。もう大丈夫です」ギュッ

姫「勇者様!!お父様が!!お父様が!!」

勇者「なんですって?」

姫「助けてください!!お父様を助けてください!!」

勇者「わかりました。姫様はここにいてください」

姫「は、はい……」

勇者「心配しないでください。貴女を悲しませるようなことはしません」

姫「おねがいします!!」

勇者「無事に王を助け出したら、きちんと告白します」

姫「な、なにをですか?」

勇者「姫様を側室にくださいと」

姫「はい……!嬉しいです!!」

勇者「え……。あ、はい」

姫「勇者さま!!お父様を!!」

勇者「分かりました!!」ダダダッ

姫「勇者さま……」

王「うぅ……ここで……終わるか……」

勇者「王!!」

王「な……なんと……いかんな……走馬灯か……」

勇者「いや。幻ではありません」

王「おぉぉ!!奇跡か……!!」

勇者「到着が遅くなり申し訳ありません。人民に多大なる被害が……」

王「いや……それよりも娘はどうした……?」

勇者「無事です。王もこの薬草を使ってください。応急処置ぐらいにはなるはずです」

王「ああ……すまない……。また助けてもらったな……」

勇者「それが自分の務めです」

王「勇者よ……娘を……たの……む……」

勇者「ちょっと!!しっかりしてください!!目を閉じるな!!!」

王「たの……む―――」

勇者「王!?王!!!」

勇者「くそっ!!」

―――城下町

ドラゴン「―――ぬんっ!!!」ドゴォ

魔物「ぐえ!?」

キマイラ「くっ……!?」

ドラゴン「次はどいつだ?」ポキポキ

キマイラ「くそ……」

魔物「ギギギギ!!!!」

キマイラ「―――なに?勇者だと?ふふ……分かった」

ドラゴン「ん?」

キマイラ「ここは潔く撤退しましょう。全滅するぐらいならば、退けと魔王様には常々言われている」

ドラゴン「相手にもそれなりの傷を与えてから、だろう?よく知っている。その命令の所為で部下を多く失ったかなら」

キマイラ「その通り。部下は捨て駒に過ぎない。―――そしてニンゲンは餌に食いつく」

ドラゴン「どういう意味だ?」

キマイラ「ドラゴン様。ニンゲンの弱さを間もなく目にするでしょう。楽しみにしていてくださいね」ダダッ

ドラゴン「ま、まて!!」

勇者「姫様」

姫「……お……父様は……」

勇者「申し訳ありません。出来る限りのことはしたのですが……出血が酷く……」

姫「あぁぁ……」ガクッ

勇者「姫様!!」

姫「お父様……お父様……」

勇者(俺が治癒の魔法を使えれば……こんなことには……!!)

姫「うぅぅ……!!うぅぅ……お父様ぁ……!!!」

勇者「姫様、逃げましょう。ここに居てはいずれ魔物に―――」

キマイラ「―――手遅れだな」

勇者「……?!」

姫「ひぃ?!」

キマイラ「ドラゴン様を誑かせたな……ニンゲンの分際で……」

勇者「大人しく尻尾を巻いて帰ればいいものを……!!」

キマイラ「手土産の一つもなく魔王様のところへは戻れないのでな」

キマイラ「こい!!」グイッ

姫「いやぁぁ!!!」

勇者「貴様!!!姫様に触れるな!!」

キマイラ「取引だ」

勇者「なに?」

キマイラ「ドラゴン様と貴様の命を差し出せ。そうすればこのニンゲンの命だけは助けてやろう」

勇者「……」

姫「ゆ、勇者さま……わ、わたしのことは……!!」

勇者「なら、さっさと俺を殺せ」

キマイラ「お前、このニンゲンのために死ぬのか?」

勇者「勿論だ。その人は俺にとって大事な人だからな」

姫「勇者さま!!!」

キマイラ「なーっはっはっはっはっは!!!いいだろう!!ならば、死ね!!」

勇者「……」

姫「やめてください!!勇者さまぁ!!!」

キマイラ「はぁー!!!」

姫「ゆうしゃさまぁぁぁぁ!!!!」

勇者「……っ」

ドラゴン「―――ドラゴンキック!!!」ドゴォ

キマイラ「ごほぉ!?」

勇者「ナイスタイミングだ!!」

ドラゴン「だろ?少し物陰から様子を伺っていたからな」

勇者「なんて勝手なやつだ。側室度を6ポイント下げておくか」

姫「ド、ドラゴンまで……もう……だめ―――」ガクッ

ドラゴン「どうした?おい」

勇者「気絶したようだ。……姫様は少し寝ていたほうがいいかもしれないな」

ドラゴン「怪我人の手当ては順調だ。侵攻してきた魔物たちは撤退を始めている」

勇者「じゃあ、あとは……そこの珍獣だけか」

キマイラ「くっ……ドラゴンさま……!!」

ドラゴン「敬称はよせ。俺はお前の敵だ」

キマイラ「魔王様の側近でもあるあなたが……」

ドラゴン「魔王様にとっては側近も足軽も同じ駒だ。捨てるときは捨てる。俺はそんな指揮官の下では戦えない」

キマイラ「世迷いごとを……魔王様の決断で一体どれだけの戦果があったか……わかっていないのか?!」

ドラゴン「なんとでも言うがいい。俺はもうお前たちと勝利の美酒に酔うことはない」

キマイラ「……」

勇者「魔王に伝えろ。お前の恐れる最悪の事態が起こったとな」

キマイラ「ニンゲンに味方する者は敵だ……!!」

ドラゴン「だから、そういっているだろう」

キマイラ「必ず……葬ってやる……!!」

勇者「帰る時は海上からの砲撃に気をつけろよ」

キマイラ「殺す!!殺してやる……!!ニンゲンがぁ!!!」

ドラゴン「早く行け」

キマイラ「ちっ―――」ダダダッ

ドラゴン「まさか、魔物も王族専用の避難路を知っていたとはな」

勇者「もっと早く到着できていれば……こんなことには……」

―――城内 医務室

兵士長「そうですか……王は……姫様を守る為に……」

勇者「はい。立派なお姿でした」

兵士長「勇者殿に看取られて、王も嬉しかったと思います」

勇者「……」

魔法使い「姫様は?」

僧侶「外傷は殆どありませんでした。ですが、姫様の心労のほうが不安です……」

勇者「弁明の余地などないですね。僕が……迅速にここへ着けていれば問題はなかったのに」

少女「あ、あれが全速力だったんだ。俺はがんばって空を飛んだぞ」

エルフ「誰の所為でもないよ……。いや……もしかしたら……」

勇者「人間にも問題はありますよ」

エルフ「そう……」

少女「ここでの用は済んだな。すぐに戻るか?」

勇者「いえ、休憩してから戻りましょう。皆さんも多くの怪我人を看て疲れているでしょう?」

僧侶「そ、そうですね……時間はあまりないですけど、できるだけ体調は整えたほうがいいですから」

―――夜

「生き残りは?」

「こちらの部隊は10名ほどしか」

「分かった。できるだけ守衛に回してくれ」

「了解」

僧侶「兵士さんたち忙しそうですね」

魔法使い「これだけ派手にやられたらね」

エルフ「でも国民の殆どは隣国に逃げられたって聞いたよ?」

僧侶「そうなのですか?」

エルフ「王様が巧くしたって。でも、王まで逃げると感付かれるかもしれないから残ったみたいだね」

僧侶「そうだったのですか」

魔法使い「もしかして姫様もなの?」

エルフ「だと思うよ」

僧侶「姫様……お辛いでしょうね……」

魔法使い「アイツも。変に自分を追い込んでなきゃいいけど……。前にも似た様なことあったし……」

―――姫の自室

勇者「失礼します」

姫「勇者さま……」

勇者「目が覚めたと聞きまして」

姫「ありがとうございます」

勇者「……」

姫「申し訳ありません」

勇者「え?」

姫「お父様を救おうとしていただいたのに、満足にお礼もできないで」

勇者「何を言いますか。貴女が無事なことが自分にとってなによりも―――」

姫「勇者さま……」

勇者「はい」

姫「お父様は民を守る為に最後まで城に残っていました」

勇者「はい。聞き及んでいます」

姫「……それは失策だと思いますか?」

勇者「いいえ。思いません。王の判断は的確でした」

姫「私は違うと思います」

勇者「姫様……」

姫「確かに民を守ることが王族としての責務だと思います。けれど、それは果たして命をかけるまでのことでしょうか?」

勇者「姫様、なんてことを……」

姫「私は最後まで城に残りたくはありませんでした。でも、お父様に残れと……言われて……」

勇者「……」

姫「私は……民のために……赤の他人のために命を差し出すことができませんでした……」

勇者「姫様、それは……当然のことです」

姫「違います!!」

勇者「……」

姫「私は王族……保身を第一に考えてしまうなんて……私は自分が恐ろしいです……」

勇者「……自分も同じです」

姫「え……?」

勇者「自分も勇者の身でありながら他人のために命を投げ出すことには躊躇しますよ?」

姫「そんなの嘘です!!だって、勇者さまは私のために命を―――」

勇者「それはそれだけ貴女のことが大切だからです」

姫「勇者さま……」

勇者「自分の命よりも大事なものが目の前で崩れそうになっているなら、なんとしても守ろうとします」

姫「あ……の……」

勇者「私の命で貴女が生き長らえることができるなら、安いものですよ」

姫「あ、ありがとうございます……」

勇者「無論、貴女だけが命よりも大事というわけではありませんが」

姫「……」

勇者「姫様?」

姫「勇者さま……」

勇者「なんですか?」

姫「こんな私でよければ……娶ってもらえませんか?」

勇者「え……いや……」

姫「今、分かりました……きっと勇者さまこそ、国を統べるお方なのだと……」

勇者「姫様……あの……」

姫「ダメですか?」

勇者「待ってください。結婚の約束は既に済ませているはず。何も今更……」

姫「本当に私と婚姻を?」

勇者「側室としてですけど」

姫「側室……」

勇者「はい」

姫「……」

勇者「私は残念ながら貴女を正妻に迎えるつもりは―――」

姫「わかりました」

勇者「え?」

姫「でも、政治的なことになりますが、私が側室であることは公表できません。よろしいですか?」

勇者「あの……え?」

姫「勇者さまと添い遂げることができるなら私は側室であろうと構いません。王族も抜けましょう」

勇者「まさか……姫様……僕に……」

姫「玉座に誰も座らないのは、国として終わりですから」

勇者「僕に王になれと!?」

姫「私ではお父様を継ぐ事はできません。だから、勇者さまに……」

勇者「ま、待ってください!!それは……!!」

姫「大役なのは分かっています。ですが、私を側室として迎えいれるのでしたら……」

勇者「まあ、あの……王族の方がいなくなりますものね」

姫「はい。側室の王になど、民はついてきませんから」

勇者「……」

姫「勇者さま……」

勇者「か、考えさせてください」

姫「分かりました」

勇者「確かに王からは貴女のことを頼むとも言われましたが……」

姫「不束者ですが、よろしくお願いします」

勇者「いや……」

姫「ところで側室とはどのようなことをすればよろしいのですか?何分、勉強不足でして……窓拭き?」

―――廊下

勇者「はぁ……」

少女「どうした?随分と陰鬱な顔で出てきたな」

勇者「姫様に王にならないかといわれのです」

少女「すごいな。お前が一国の主か。見てみたい気もする」

勇者「いや、側室をいっぱい作るなら王族になったほうが好都合といえば好都合ではあるけど」

少女「……」

勇者「んー」

少女「おい」

勇者「なんです?」

少女「ただ責任を感じて、あの姫に同情しているだけなら断ったほうがいい」

勇者「同情では……」

少女「お前に民を導く才能があるかどうかは俺にはわからない。だが、それだけの理由で王の座に着くと後悔するぞ?」

勇者「分かっています」

少女「気負うな。まだ、これからが本番なのだからな」

勇者「……」

少女「じゃあな」

勇者「待ってください」

少女「なんだ?」

勇者「ありがとうございます」

少女「か、勘違いするな。俺はお前がしゃきっとしないと……色々困るだけだ」

勇者「ちょっと付き合ってもらえませんか?」

少女「どこに連れ出そう気だ?」

勇者「貴女とは二人きりで談話をしてみたいと思っていたところです」

少女「……」

勇者「ふふ……」ジリジリ

少女「よ、よるな……ケダモノが」ジリジリ

勇者「ドラゴンの貴女に言われたくないですね」

少女「それもそうか」

勇者「さあ、夜のデートと行きましょうか」

>>883
少女「どこに連れ出そう気だ?」

少女「どこに連れ出す気だ?」

―――中庭

少女「ここは……」

勇者「ここが無事でよかった」

少女「なんでこの場所に来た?」

勇者「ここ、いいところでしょう?」

少女「ま、まあな」

勇者「今ならドラゴンに戻っても騒ぎにはなりませんよ?この場所は大丈夫です」

少女「馬鹿言うな。この姿でなければパニックになるだろうが」

勇者「嫌なんでしょう?」

少女「お前……」

勇者「もう割り切ったみたいな態度でいますけど、本当は人間の姿になんかなりたくないんですよね?」

少女「余計なお世話だ」

勇者「僕らでいうなら足を骨折して不自由になったみたいな感じでしょう?」

少女「よくわからんが」

勇者「ほらほら、ここなら大丈夫ですって」

ドラゴン「―――ふぅ」

勇者「星が綺麗ですね。―――君が変身する女の子の姿が一番綺麗だけどね」

少女「……そうか」

勇者「ああ、嘘です。ドラゴンの姿も十二分に魅力的です」

ドラゴン「……」

勇者「この尻尾が特にかっこいいですよねー」モミモミ

ドラゴン「で、なんの話だ?」

勇者「魔王は今、どこに?」

ドラゴン「恐らく、孤島にある城にいるだろう。そこで魔法銃の対策、そして俺への対抗策を練っている」

勇者「ずっと疑問だったことがある」

ドラゴン「なんだ?」

勇者「魔王はどうしてそこまで用心深いのか……」

ドラゴン「……」

勇者「たかが人間に対して、前線にも出てこず、全ては部下任せ。何かあるのか?」

ドラゴン「……魔法銃が全ての原因だ」

勇者「魔法銃が?」

ドラゴン「魔法銃により魔王様は重症を負った」

勇者「みたいだな」

ドラゴン「魔法様はそれまでニンゲンという下等生物など害虫同然だと思っていた。なのに、その害虫に深手を負わされた」

勇者「もしかして……その一敗で魔王は慎重派に?」

ドラゴン「絶対の勝利に拘り始めたのは間違いなく、その敗戦が原因だろう」

勇者「数百年前の敗戦は魔王にとってよほどショックだったのか」

ドラゴン「そうでなくても魔王様の力は衰え始めていたからな。自身の老いを目の当たりにしてしまったのかもしれない」

勇者「なに……?」

ドラゴン「古代においては神と魔族の戦いもあり、常に次代の魔王様が用意されていたみたいだが……」

勇者「ここ何千年は住み分けがきちんとでき、不文律があった」

ドラゴン「ああ。故に魔王様の交代もなかった。急に起こった戦争のために次の魔王様はいなかった」

ドラゴン「平和ボケしていたと言われればそれまでだがな」

勇者「この数百年の間に次代を担う魔王は現れなかったのか?」

ドラゴン「候補はいた。だが、魔王になるまでには至らない者たちばかりだ。何千年も戦ってこなければ当然だな」

勇者「もしかして、貴女も候補?」

ドラゴン「どうだったかな。とにかく魔族は過去の力を取り戻しつつある」

勇者「それはキラちゃんのあれ?」

ドラゴン「その通りだ。あの魔道士が開発した生命エネルギーの抽出が役に立っている」

勇者「国民を皆殺しにするのは、そのエネルギーを手っ取り早く回収するためか」

ドラゴン「いや、あの人形は相手を殺すことでエネルギーを吸収していたが、俺たちにはそういうことはできない」

勇者「じゃあ、拉致か?」

ドラゴン「植民地化していた土地でニンゲンを生かしていた。今はもう崩壊してしまったが」

勇者「まさか!!あの魔道士!!」

ドラゴン「そう。あの魔道士の役目はニンゲンを集めることにある。集めたニンゲンの8割は魔王様の下に送られていた」

勇者「なら、どうして装置を持って攻めてこない?」

ドラゴン「エネルギーを吸い上げる装置は持ち運べず、また破壊されては事だ。それができるなら魔道士もやっていただろう」

勇者「一気に大人数を捕らえることはしなかったのか?」

ドラゴン「それは魔道士の仕事だった。魔王様はニンゲンと小競り合いを続けて、魔道士のことをニンゲンに気づかせないようにしていただけだからな」

勇者「戦争をやっていれば人身売買や拉致はあまり注目されないからな。戦争を魔族復古のためのカモフラージュにしていたのか」

ドラゴン「そういうことになる」

勇者「なるほど……。過去の勇者たちもそのことに気づいていれば……」

ドラゴン「もしかしたら、魔王様は倒されていたかもしれないな」

勇者「部下を簡単に切り捨て、自分だけが生き残る戦いをするのはそういう理由もあったわけだ」

ドラゴン「魔王様が前線に出てきたとき、それは全てが完了したということだろう」

勇者「だが、今は人間を集める術は……」

ドラゴン「魔道士がいなくなったことは報告済みだ。そろそろ代替案を実行してくる可能性もある」

勇者「代替案?」

ドラゴン「海には大勢のニンゲンが浮いている」

勇者「海賊艦隊を狙うのか」

ドラゴン「一人残らず生け捕りにすることはできなくても、あれだけの規模だ。2割も捕らえる事が出来れば相当な栄養素になる」

勇者「魔王が今まで海賊に手出ししなかったのは……」

ドラゴン「海賊が帰還せずとも海で散ったとしか思わないだろう。拉致して戦力に変えるなど想像すらしないはずだ」

勇者「なら、早く戻らないといけないか」

ドラゴン「焦る必要はない。あれだけの数を捌くのは、それなりの日数がかかる」

勇者「そうだな……。キャプテンたちも弱くないわけだし」

ドラゴン「お前が勝てなくても誰も責めはしない。心配するな」

勇者「負ければ誰も側室にできないだろう?それはちょっとなぁ」

ドラゴン「言っていろ」

勇者「……」

少女「―――そろそろ戻る。寝坊するなよ?」

勇者「分かりました。ありがとうございます。愛してますよー」

少女「黙れ。軟派者めが」

勇者「えへへ」

少女「褒めてないっ!!」

勇者「おやすみなさい」

少女「ふんっ」スタスタ

勇者「……ふぅ……」

勇者「力を取り戻しているとすれば……」

勇者「よし……」

―――姫の自室

勇者「よろしいですか?」

姫「どうぞ」

勇者「姫様。夜分遅くに申し訳ありません」

姫「いえ」

勇者「姫様。先ほどの問いに対する答えを出しにきました」

姫「なんでしょうか?」

勇者「約束はできません」

姫「……」

勇者「僕は貴女を側室にしたい。心からしたい。もう今すぐにでもしたいぐらいです」

姫「勇者さま……」

勇者「でも、王になる約束だけはできません」

姫「どうしてですか?」

勇者「僕はただの平民です。王の器ではありません。勇者というのも称号に過ぎません。だから、王にはなれないと思うのです」

姫「でも、私を側室にするというのなら……」

勇者「姫様を側室にしたい。でも、王にはなりたくない。―――それって身勝手ですか?」

姫「はい」

勇者「ふふ……ですよね」

姫「しかし、私に勇者さまを批判するだけの資格はありません。私もまた身勝手な姫だったのですから」

勇者「……」

姫「国民のために……国のために……そういう心構えができません」

姫「可愛い服を着たい。友人とお茶を飲みながら話したい。殿方と恋がしたい」

勇者「姫様……」

姫「そういう想いのほうが強いのです」

勇者「そうですか」

姫「最低な王族ですね……私は……」

勇者「嫌ならやめてしまいしょう」

姫「……へ?」

勇者「王族を捨てると言ったではないですか」

姫「そ、それは……勇者さまが王としてこの国を支えてくれるならという意味で……」オロオロ

勇者「僕は魔王を倒し、世界の英雄となります。そのときまでに決めておいてもらえますか?」

姫「な、なにをですか?」

勇者「僕の側室になるか。それとも王族として生きるか」

姫「……!」

勇者「でも、答えは分かりきっていますが」

姫「勇者さま……」

勇者「姫様。次に会うときは大英雄ですからね」

姫「あ……」

勇者「では、おやすみなさい」

姫「勇者さま!!」タタタッ

勇者「え―――」

姫「もう行ってしまうのですね……」ギュッ

勇者「姫様……」

姫「戻ってきてとはいいません。ですが……私は貴方のことを愛しています……それだけは覚えていてください……」

勇者「ありがとうございます……姫様……」

姫「勇者さま……今夜は……ここで……」

勇者「姫様」バッ

姫「そう……ですか……」

勇者「次に会うときまで生きていてください。姫様を必ず側室にしてみせます」

姫「……では、勇者さまが戻ってくるまで私はこの国と生きていきます」

勇者「ええ。それがいいでしょう。―――それでは」

姫「勇者さま!!」

勇者「……」

姫「……」

勇者「行ってまいります」

姫「旅の無事を祈っています」

勇者「この上ない誉れです」

姫「行って……らっしゃいませ……」

勇者「貴女は素晴らしい女性だ。誰が手放すものですか」ニヤッ

姫「……うそつき……」

―――廊下

勇者「……」

少女「あ、いたいた」

勇者「くそっ!!!」ガンッ

少女「ど、どうした?」

勇者「え?いや……ちょっとかっこつけすぎたと思いまして」

少女「ほう?断ったのか」

勇者「僕はあの王様のようにはなれないと思います」

少女「どうしてだ?」

勇者「王が国にいる全ての美女を側室にしちゃまずいでしょ?」

少女「ああ、そうだな」

勇者「というわけで、魅力的なお誘いでしたがやめておきます。―――で、貴女はこんなところでなにを?」

少女「寝室が分からない。案内してくれ」

勇者「……じゃあ、こっちです。楽しみましょう」グイッ

少女「やめろ!!貴様!!違う場所に連れ込む気だろうが?!」

―――翌朝

勇者「いててて……」

僧侶「もう朝から怪我なんて何があったんですか?」ギュッ

勇者「ぬほほぉ……いや、猛獣に殴られまして」

僧侶「猛獣?」

魔法使い「おはよう」

少女「……」

エルフ「どうしたの?機嫌悪そうだけど」

少女「なんでもない……」

勇者「まさか、あれほど暴れるとは思いませんでした」

少女「……ふんっ」

魔法使い「……ねえ?」

勇者「なんですか?」

魔法使い「何かあったの?」

勇者「え?別になにもありませんが?―――ちょっとした身体検査をしただけですよ、はい」

魔法使い「身体検査って―――」

兵士長「勇者殿!!」

勇者「どうしました?」

兵士長「これを」スッ

勇者「これは……手紙?」

兵士長「ご武運を」

勇者「はい」

僧侶「誰からですか?」

勇者「この匂いは……」クンクン

エルフ「犬みたいなことやめなよ」

勇者「姫様からの手紙ですね」キリッ

僧侶「きっとラブレターですよ!!」

勇者「ふっ。もしかしたら婚姻届かもしれませんね」

魔法使い「アンタねえ?!一国の姫様になにしてんのよ?!」

勇者「姫様は肉親を失った身。僕だけでも優しく包んであげないといけないでしょう?優しくしてどこに問題があると?いや、ないですよね?」