伊達「IS学園?」 一夏「仮面ライダー?」(535)

インフィニット・ストラトス(以下IS)と仮面ライダーOOO(以下OOO)のコラボレーションSSです。

どっちかというと、OOOというよりバースとのコラボです。

というよりほとんどバースしか出ません。

時間軸はISは七巻よりも後、OOOは今のTVシリーズのすこし後、オリジナル設定で伊達さんとドクターが“相討ちになって消滅した”つまり表舞台から姿を消した世界になります。

温かく見守って下さい。

オ―ズの世界

星の顔出す隙間もないほど夜空に敷き詰められた暗雲、そして降りやまぬ雨

まるで銃弾のように雨が降り注ぐ廃工場の一角、伊達明はそこに横たえてた

(もう…、喋る力も絞り出せねぇ、火野と後藤ちゃんはしっかりやったのか…?)

~~~(数十分前)~~~

_____________________

グリードとの最終決戦に向かっていた仮面ライダーオ―ズこと火野映司、そして手術を終え、絶対安静の伊達に変わりバースの力を引き継いだ後藤慎太郎。

敵の最終計画を阻止するためにグリードの本拠地を目指していた。この廃工場を抜けるともう目と鼻の先だ。

そんな2人の前に立ちはだかる男が一人、恐竜メダルを取り込み紫のグリードへと覚醒を遂げた天才科学者・真木清人

真木は2人を始末すべく怪人体へと変貌し、2人に襲いかかる

だが、足元に放たれた光弾によりその行動は阻まれることになる

そこにいた男は、なんと病院を抜けてきた伊達だった!バースバスターに弾を込めながらその男は“吠えるッ!”

「火野、後藤ちゃん、ここは俺に任せて先に行けッ!」

「伊達さん、もう戦える体じゃ無いでしょう」

「お前たちは俺の目標の一億のために命懸けで力を貸してくれたっしょ、今度は俺が力になる番だって!」

「また君ですか…」

やれやれ、といった風に目線を伊達の方に向ける真木

「世界はもうじき終末を迎えます、邪魔はさせませんよ」

「ドクター!てめぇのくだらない欲望、ここでとめてやるぜ」

(…ッ!まさか、伊達さんはここで…)

伊達の真意を察したのか、後藤は唇をかみしめ叫ぶ

「火野、早く行くぞ!もう時間がない」

「でもッそれじゃ伊達さんが!」

「いいから!じゃあ伊達さん、後お願いします」

「応よ!」

「それと…、お世話になりましたッ」ペコリ

「火野、行くぞ」ダッ

「は、はい…」ダッ

(後藤ちゃん、火野、この世界を…頼んだぜ)

「感動のお別れはもうおしまいですか」

「あぁ、悪いな 時間取らせちまって、それじゃ…、戦りますか」チャリーン

「決着をつけましょうか」ゴゴゴ

          「「変身」」

日も暮れてしまった廃工場の一角、こうして二人の長くも短く辛い戦いが始まる

熱くなる2人の闘志と裏腹に、場には冷やかな風が吹き抜け雨が容赦なく降りつける

審判も傍観者もいない暗く悲しいゲーム、そして誰も知らない戦いが終わりを迎える

これは期待

___________________________________


結果は相討ち、ダメージの癒え切らぬ伊達とメダルを取り込んだ反作用のツケがまわった真木は最後の一撃を撃ち合った後

お互いに地面に伏した。

(ドクター、もうくたばっちまったか?)チラリ

もう碌に動かす事も出来ない首を傾け横たわっている真木に目をやる伊達

(悪ぃな、先に逝かせちまうなんて)

(けど、安心しな。地獄への片道旅行、つきあってやるぜ)

(あ、頭ん中が…、真っ白になってきやがっ、た)

(死ぬ…、なんて、滅多にで、できねぇ!経験だな)ガクッ

こうして伊達明の短くも壮絶な人生は幕を閉じた、はずだった

「どうなってんだコリャ…」

伊達明は“そこ”にいた、一面銀色の鏡のようなオーロラのような壁に囲まれた世界

…コツ…コツ…コツ…

辺りをキョロキョロと見回している伊達は、自分の方に向かってくる足音を聞く

「誰がいるかと思えば、君でしたか…」

「ドクター、会いたかったぜ!」

思わず真木に飛びかかる伊達、そのはずみで真木の肩に乗った人形通称“キヨちゃん”が落っこちそうになる

真木はそれを奇声を発しながら慌てて拾い上げ、呟く

「ホアァ~、と、とにかく、ここが死後の世界であるというのは、些か考えにくいですねぇ」

「だったら、俺達まだ生きてるってことだよな、儲けもんだ」ヘーイ

ハイテンションでハイタッチを迫る伊達を真木はさらりと受け流し、問いかける

「何故、私と生きていた事を喜ぼうとするのですか?、私たちは敵同士だったはず」

そう、伊達と真木は敵同士、つい先ほどまで殺し合いを演じ会っていた柄である

その敵である伊達が自分たちの生存の喜びを分かち合おうとするのが理解ができなかった

「確かにドクターがやったことは許させることじゃねぇ。けどさ、だからって勝手に死んでいい命なんてあっていいわけ無ぇじゃん、だろ?」

そして伊達は照れ臭そうに付け加える

「それにさ、俺達、結構いい凸凹コンビだったしな あんな終わり方なんて納得できねぇよ」

「私はそうは思えませんが…」

「ったくも~、素直じゃねぇんだから」グリグリ

「YAーMEーRO」

相変わらずの掛け合いを広げる2人、その2人のもとにもう一人男がやってくる

茶色の外套を纏い同色のチューリップハットをかぶった黒ぶち眼鏡の男、仮面ライダーをよく知っている者ならきっと一目で名前を思い出すであろう、“あの男”である。

その男が、真木と真木にコブラツイストをかけている伊達の背後に近づく

「伊達明、そして真木清人だな、よく来てくれた」

「ん、あんた誰?もしかしてここの近くの人?だったらこのオーロラみたいなのから出れるようにしてくんない?気持ち悪くて触る気にもなんねぇんだ」ヒョイ

「ッハァ! 伊達君、君という男は…」ヨロッ

「紹介が遅くなってしまったね、私は預言者“鳴滝” 実は訳あって君たちをここへ連れてきたんだ」

「連れてきた? 戦いの傷とかも無くなってんだけど、どういうことだ?」

「君たちには“とある世界”を救ってきてほしいんだ」

「おい、ガン無視で話進めてやがるぜ」ヒソヒソ

「いい加減、こちらの要求に答えてほしいですねぇ」ヒソヒソ

伊達と真木は、体育座りで並んで1人で勝手に話を進める鳴滝に遠い目を向けていた

そして(勝手に)一通り喋り終えた鳴滝は2人に問いかける

「何か質問はあるかい?」

「ハイ」キョシュ

「はい真木君」

「私達がもと居た世界はどうなったのですか?」

「君たちの世界は、火野映司と後藤慎太郎の活躍によって平和を取り戻したよ」

「グリード達を倒したってのか?」

「そうだ、グリードは1人残らずメダルに還元されていった、ああ、君は別だったね、真木清人」ニヤリ

鳴滝は皮肉を含んだを笑みを真木に向け、話を続ける

「後藤慎太郎は警視庁に戻っていったそうだ、そして火野映司、彼はコアメダルを再び封印する為の旅に出た。消息はそれっきりだ」

「(そうか、よかったな、後藤ちゃん)じゃあ俺からも質問!」キョシュ

「はい伊達君」

「俺たちがその世界を救うって事をしたら、もとの世界に帰れるのか?」

「帰りたいのかね?」

「そういう訳じゃねえけど、そこはやっぱ気になんじゃん?」

「それもそうだな、厳密には君たちは一度死んだ身だ、それを私がよみがえらせたのだが、その答えは…そうだな、君たちの活躍次第によっては…だね」

「何だそりゃ?」

「もういいだろう、それじゃ健闘を祈っているよ」パチン

そういって指を鳴らす鳴滝、すると銀色の壁が迫ってきた

「ちょ、もう行くのかよ」アセッ

「何をすればいいかも聞かされていないのですが」

「大丈夫だ、君たちには適したロール(役割)とアイテムを用意してある」ドヤッ

「まぁしゃあねぇか、こうなりゃハラ括ろうぜ、ドクター」

「そうするしかないようですね…」

目を覆うほどの眩い光とともに伊達達の姿が消える、そして辺りを覆っていた銀色の壁も消える、ここはどこかのマンションの一室だったようだ

「行ったか、これでようやく録画していたプリキュアの観賞会を始められr…」ガッ

部屋が暗かったのが原因か、それとも鳴滝が浮かれていたのが原因か、タンスの角に足をぶつけた

「痛痛ッッァァ―――、おのれディケイドォォ―――」

___________________________________

ここは“インフィニット・ストラトスの世界”IS学園

正月が明け、明後日にはもう冬休みが終わり三学期が始まってしまう、そんな昼下がり

「今日もいい天気だなぁ~っと」ノビ―

「一夏!何をしているんだ?そんなところで」

「箒か、昼飯も済んだしちょっと腹ごなしに散歩しようかと思ってな」

「そ、そうか、私はてっきりまた他の女と逢引でもしているのかと……」ゴニョゴニョ

「何言ってんだ?よかったら一緒に行くか?」

「う、うむ ついて行ってやろう、たまにはゆっくり体を動かすのもいいだろう///」ピト

「っておい、なんでひっついてくるんだよ」

「察しろ、馬鹿者///」

「あぁ、年明けで昼下がりとはいえまだ寒いもんな…って、イテテ、足を踏むな」

「はぁ、貴様という男は…」

中庭を通り抜け職員用駐車場にさしかかる

(いつもは上の階から見下ろしてばっかだったけど、こうして見ると植木とかなかなか凝った造りしてるな…)

「見てみろ一夏、あの生垣、凄くきれいだ」

「あぁ、そうだな…、ん?」

「どうした?一夏」

「いや、普段は見慣れない車が停まっているな、と思って」

「む、確かに、出入りの業者には見えないな」

(確かに、教材や機材を運ぶ業者はあんな小さな車には乗ってこないしな)

「お、おい一夏、どこに行くんだ?」

「いや、な~んか気になるんだよな、あの車」スタスタ

「どうせ何もないだろう、って、一度言い出すと聞かないんだから、私も行くぞ」

2人は車に向かって歩を進める、その車の名はフォルクスワーゲン ビートル ドイツが誇る世界一生産された車である

「まぁ、箒の言うとおり、何も無いんだろうけど…ナ゛ッ」

「どうした?車内に何か…イ゛ッ」

2人は車内を覗いた途端言葉を失ってしまった、はたして車内にいたものとは!

((い、いい年こいたおっさん2人が、シート倒して寄り添って寝てる…))
                     ・・・・
IS学園の職員用駐車場、伊達と真木はここへ流された、この車も今の服装もこの世界に来るにあたって用意されたロール(役割)とアイテムの一つである

そして、この世界で目を覚ます…、寄り添ったままの体勢で…

「ぅうーん、ッ!」

「んぁあ…、ッ!」

お互い同じタイミングで目を覚まし、目線が合う…

さすが鳴滝wwwwww
そしてディケイドのせいにすんなww

「「・・・・・・・・・・・・」」ドキドキ

車外にいる一夏と箒も固唾をのんで見守っている

「「ウワァァ―――――――」」

悲鳴を上げ、お互いにビートルから転げ出る伊達と真木

「何気持ち悪い事やってんだよ、ドクター!!」

「…それはこっちの台詞ですよ、伊達君!私にあのような趣味はありません」

子供のように言い争いを広げる2人に見兼ねた一夏が声をかける

「あ、あのー…?」

「「何!?」」

「あ、いえ何でも無いデス…」

その様子を黙って見ていた箒の横に1人の女性がやってくる

「篠ノ之、なんの騒ぎだ?あの奇妙な2人組はなんだ?」

「織斑先生、何かよく分からないんですけど、そこの車の中にあの2人が寝てて、起きたと思ったら喧嘩しだして…」

「そうか、わかった、もういい」

千冬は口論している伊達と真木に近づき、息を吸って張りのある声で問いかける

「おい、そこのあやしい2人組、ここは基本関係者しか立ち入り出来ないはずだ、何者だ、そして何をしに来た」

千冬の問いかけに2人は声を揃え、静かに答えた

「「この世界を救いに来ました!」」

「「「は?」」」

ひとつの世界に流れ着いた、違う世界の男が二人

物語はここから始まる

書きため終わり?

>1です。

やっとこさ導入部が終わりました。
ある程度頭の中で話は組んでいたのですが、TVシリーズの超展開に修正の嵐…、もとい再編集を加え、ある程度割り切って考えて話を始めることにしました。

世界観などについて、質問があればじゃんじゃん質問してきてください

ちなみに、オーズではなくバースなのは単純にバースがISに近い形をしていたのと、本編での伊達さんとドクターの仲良しっぷりが萌え萌えキュンだったからです。

また近いうちに更新していきたいと思います。応援よろしくお願いします。

本編では空気のカッターウィングさんは活躍できますか?

ISは空中戦だからカッターウイングはそりゃもう活躍するに違いない
変身時やバスバス・CLAWsの消費セルはどこから補充するんだろ
期待して続き待ってる

当然ドクターの恐竜メダルとタコカンちゃんは残ってるよな?

ウヴァさんてのがやられちゃったんだっけ



本編ては伊達さんに死亡フラグ立っちゃったから、せめてこの世界では生きていて欲しい…

>>25
●<まだ終わってないぞ!


鳴滝……HPの件ですっかりプリキュア好きの設定に……ww
個人的にはサソリ君の活躍に期待

オーツ!オーツ!オーツ!カモーン!
これは期待

カッターウィングが活躍して欲しいという欲望…!

>1です

関係ないけどモバイレーツ買いました

赤き海賊団三人って少なすぎだろjk

すいません関係ありませんでした

今回はちょっと時間をかけてゆっくりめで始めていきますね

「一度しか聞かないぞ?お前たちは何者だ?そして、ここへ何をしに来たんだ?」

「だから世界を救いに来たんだって!って言ってる方も恥ずかしくなるけど」

「生憎だが、どこの馬の骨とも知れん輩の妄言に貸す耳は無いな」

「だからぁ!茶色の変なオッサンに飛ばされたんだって…、ってドクターも何とか言ってよ!」

押し問答を繰り広げる伊達と千冬、伊達は真木に助け舟を求めるが同じ経緯でこの世界に来た真木に効果的な説明ができるはずがなかった

「と言われましても、私にもどう答えてよいものかと、とりあえず君は身に起きた変化に気が付くべきでしょう」

「ん?おおっ!」

伊達はここで改めて自分の姿を見て驚いた、自分がいつも着ていたジャケットではなく、丈の長い白衣をいつもの上半身を腰に結んだつなぎの上に着ていた

日頃ムチャをする伊達の性格もあって、その姿は医者としての清潔さよりもかつて世界を巡っての医療をしていた頃の自身の姿にそっくりである。まぁ自分自身なのだからそうとしか説明のしようがないが。

「なんだこりゃ…?どういうこった? そういやドクターは…」

「私は特に変わっていませんよ」

真木の服装は変わらず、静かさを讃える黒のインナーにコート、要するに全身が黒だった

その黒ずくめの姿の中に一点、さらに異質さを窺わせている人形が無表情で左肩にチョコンと坐していた

「変わっているといえば…、胸ポケットにこんなものが」ゴソゴソ

「ん、あ、俺もだ!」ゴソゴソ

2人がポケットから手帳のようなものを取り出す、それを見た千冬は目を丸くする

「それは…、IS学園の教員証ッ!まさか偽造じゃないだろうな…」

「教員…? そ、そうだよ教員なんだよ俺達 なっドクター!(話合わせろ)」

「えぇ、そのようですね」

「しかし、こんな急に男の職員など、俄かに信じられん…」

「織斑先生~ェ、いったい何の騒ぎですか? こんなところで」

先ほどからの問答を聞きつけ一年一組の副担任、山田真耶が駆けつけてきた

緑の髪と見た目に似合わない豊満な胸が特徴的なやさしい女性である

千冬は事の経緯を真耶に説明する すると真耶は最初は驚いた様子だったが何かを思い出したかのように

「もしかして朝噂になってた新任の先生が来るって話、この方達の事じゃないんですか?」

「ああ、あの理事長も全く予期できないと言っていたこの時期の赴任の件か、てっきりデマかと思っていたが」

「とりあえず職員室に来てもらいましょうか」

「そうするしかないようだな」

さっきから2人で話し込んでいた千冬と真耶は頭を抱えながらも一つの決案に至ったようである

「そこのお二人さ~ん、ちょっと着いてきてもらえますか」

「あ、呼ばれちゃった…、ドクター、来いってよ」

「はい、ではこれで」

「「あ、はい…」」

軽く会釈をした真木に一夏と箒は声をそろえて歯切れの悪い返事で返す

「織斑、篠ノ之、お前たちはそこで待機だ!」

「えー、理不尽です!」

「つべこべ抜かすな、これは命令だ!」

「「はーい…」」

「何、データの確認をするだけだ、すぐに済む。手伝ってほしいのはその後だ、待ってろ」

「織斑せんせ~い、行きますよ~」

「わかった、じゃあ行こうか」

こうして四人は校舎へ消えて行った

残された若人2人…

「なぁ、箒、とりあえず、どっかに腰かけよっか?」

「そうだな」

「中庭の芝生なんてどうだ?ちょうど日なたであったかいし」

「ん…、一夏がいいなら…どこでもいい…///」

「そ、そうか…じゃ、行こうか…///」

「い、一夏…、その、手…///」スッ

「お、おう…///」ギュッ

所変わってIS学園校舎内 情報管理室

「やっぱり、教員として新規登録されていますね」

二人はパソコンのモニターを覗きこんで正規採用教員のページに目を通していた

「しかし、男性教員の採用など今まで試験的に行われていただけで、一気に本採用で二人も入れるなど考えられん」

「でも、この二人、国籍不明、経歴不明、パーソナルデータも殆ど解禁されていません」

「いったい何なんだ?この二人は?」

千冬はしばらく眉を顰めていたがあきらめた様子で真耶に問いかける

「山田先生、信用できるか?あの二人は」

「うぅ~ん、ちょっと怪しいですけど、ここで採用されるということはそれなりに実績があるってことじゃないんですか?」

「それもそうか、まぁ私一人が学園に逆らったところでどうにかなる話じゃないしな」

納得する千冬、それにうなずく真耶

「連中が何か企んでないかよく注意しておく必要も無きにしもあらずといった所だがな」

一方その頃 中庭 芝生

「千冬姉達、遅いな…///」

「あ、ああ、けどそのおかげで、私は一夏と…ゴニョゴニョ…///」

「ん?何か言ったか?」

「な、何でも無い」プイッ

「そ、そうか…、ファァー、ポカポカしてきたら眠くなってきた」ごしごし

「何!だ、だらしない奴だ、しょうがないな、良かったら私の膝で…///」

「え、声が小さくて聞こえないんだが…」

「ぐ…、だ、だからこうしていればいいと言っているんだ!///」ガシッ グイッ トサッ

「うぉっ、ほ、箒、恥ずかしいって…///」

「うるさいっ、私だって恥ずかしいんだ、お互い様だ!…///」

「そうか、お互い様か…、じゃぁしょうがないな…///」

「あぁ、お休み、一夏…」ナデナデ

(箒の膝、やわらかくて気持ちいいな…、それに何かいいにおいするし…)

情報管理室前 廊下

全寮制のこの学校はもうじき学校が始まることもあって、生徒がそれなりに行き来していた

その中で佇んでいる伊達と真木は非常に目立っていた

「なぁドクター」

「何でしょう」

「この学校、女の子が多いな」

「そうですねぇ、男子生徒は先ほどの織斑君ひとりしか見かけていませんねぇ」

(キャー、アノフタリッテナニモノ?)

(アタラシイセンセイカモ―)

(トシウエノオトコノヒトッテステキ―)

(デモアノニンギョウナニ―?)

「何か影からコソコソ見られてるし…、落ちつかねぇなぁ」

「君はもう少し忍耐力を身に付けた方がいいのではないですか?」

「うるへー、そんなこと言う奴には、こうだっ」ペシッ ポロッ

「¥@■☆〒¶Γμ、ハァハァ、伊達君、君はなんということを…」

(キャー、ニンギョウノヒトガキョドウフシンニナッタ―)

(ハヤクニゲマショー)

「お、ドクターが奇声を発したせいで女の子たちが逃げてった」

ガチャ

「あの~、ちょっといいですか?」

「おぁ、いいですよ、ほら、ドクターも!」

「伊達君、今の件はよーく覚えておくといいでしょう」プルプル

「何かあったんですか?」

「いや、何でもないよ、さ、何するの」

「とりあえず立ち話も何なんで、応接室に案内しますね」

「応!」

「じゃぁ、着いてきて下さい」

そんなこんなで簡単な説明と寝泊まりする部屋の解説を終え、再び職員駐車場に戻ってきた2人

「とりあえず、手荷物もって配属先ってのに挨拶に行かなきゃいけねぇみたいだな」

「まだ数時間しかたってないのにいろいろな話を聞かされましたね

「おおっと、その前に道案内がいるって聞いたな」

「あの~」

「「?」」

「さっき千冬姉、いや、織斑先生に言われて残ってた者なんですけど」

「あぁ、さっきの少年少女か、もしかしてずっと待ってたのか!?」

「いやぁ、まぁ、そんなところです」

「そうか悪かったな!今度メシおごるわ」

「今度って…、ていうかあなた方はどういった件でここへ来たのですか?」

「今期からの教員として配属されましてね、宜しくお願いします」

真木の他人行儀な挨拶よりも男性の教員が来るということに一夏と箒は驚いて顔を見合わせる

「とりあえずさ、この配属先ってとこ案内してくんない?」

そういって教員証に標されていた配属先をみせようとする伊達と真木、するとそこに少女がふたりやってきた

「あ~、おりむーとしのののさんだ~、何してるの~?」

「本音、ダ、ダメだよ!男の人と何か話してるし…」

「あぁ、のほほんさんと簪か、この二人は三学期からこの学園で働く先生…でいいんだっけ?」

「その通り! 俺は伊達明、養護教諭なんだって。よろしくっ」ビシッ

「真木清人です。整備の実技と座学を受け持つことになりました」

「私たちも自己紹介をしておいた方がよいのか?一夏」

「そうだな、せっかくだしな!俺、織斑一夏っていいます、一年一組です。宜しくお願いします」

「同じく一組の篠ノ之箒といいます。宜しくお願いします」

「同じく同じく一組の布仏本音っていいまーす、よろしくおねがいしまーす」ブンブンバサバサ

「一年四組の更識簪です…、よ、よろしくお願いします」

自己紹介も終わり伊達と真木はそろそろ移動しようかというとき

「じゃあ、ちょっと行き先まで道案内してほしいんだけど、いいかな?」

「いいですよ、ぇえっと、伊達先生が保健室で真木先生が…」

((まさかこんなところまで来て先生なんて呼ばれることになるとは…))

「真木先生が…、新設工学技術開発室…って新開室のことか!?」

“新設工学技術開発室”この言葉を聞いた途端一夏達四人が急に言葉につまる

「俺ここだけはムリだわ、ここの…」

「しッ!」ガバッ

何かを言いそうになった一夏の口を箒が塞ぐ

「とりあえず、真木先生は私たちが連れていくから、伊達先生は織斑君と篠ノ之さんで案内してあげて」

あわててフォローに入る簪、それを眺めていた伊達と真木は首を傾げ“?”となっていた

「あぁ、悪ぃな簪、じゃぁ行きましょうか伊達先生」

「あ、ああ、じゃあドクター、また後で…」

「いえ、今日はもう出歩かない方が良いでしょう、これをお渡ししておきます」

そういって真木は伊達にカンドロイドのゴリラカンとバッタカンを放り投げる

((((缶ジュース?))))

「そうか、わかった!とりあえず落ち着いたら連絡入れるわ」

「その選択が良いでしょう」

「んじゃ行こっか、保健室に」

「はい、一夏!行くぞ!」

「あ、ああ、じゃぁのほほんさんと簪も、気をつけてな!」

「うん…、織斑君もね」

「おりむー、ばいば~い」

こうして俺とドクターは分かれてそれぞれの配属先に挨拶に行くことになった

(しかし…、養護教諭って何すりゃいいんだ?)

「…先生、伊達先生!」

「ぉわっ、何だよ!びっくりするなぁ」

「あ、すいません…、先生ってこの学園に来るまでは何していたんですか?」

「あぁ、世界中を旅していた…ってトコかな?」

「旅…ですか? どういったところを?」

「中東とかヨーロッパとか、とにかく色々だな」

「へぇー、夢がありますね」

「夢とかじゃないけどな…、それに楽しい事ばかりじゃないぜ」

「まぁ何となくわかりますよ…と、ここですよ、保健室」

「おう、ありがと」

「中の先生呼んできますね。失礼します」

箒が中に入りしばらくすると『どうぞ~』と、やわらかな女性の声が聞こえてきた

伊達が中に入ると中には箒と保険医らしい白衣を着たそこそこ歳を召した養護教諭らしい女性が座っていた

彼女は人当たりがよい性格で伊達ともすぐに打ち解けた

すこし話をしたところで仕事のマニュアルを取ってくるといって保健室を出て行った

その隙を窺い伊達はさっきから気になっていた事を一夏と箒に問いただした

「なぁ、さっきドクターの配属の新…なんとかって言った時、なんで軽くもめてたんだ?」

「あ~、それですか…」チラリ

「………」コクリ

「あの配属先、新設工学技術開発室っていうんですけど…」

こうして私は伊達君と別れて二人の女生徒につれられて配属先に挨拶にいくことになった…

「ねぇ~、まきせんせーはど~してお人形さんを肩にのせてるの~?」

「これは私の大切な人の教えの象徴でして、今日の私を形成する重要なファクターなのです」

「どんな人だったんですか?」

「それは答え兼ねます、それより布仏君と言いましたね、君はなぜ私の腕にひっついているのですか?」

「えへへ、こんな背の高い人に会うの初めてだから、一度やってみたかったんだ~」

「ほ、本音!やっぱり迷惑だって、やめなよ」

「いえ、こういう事は初めてなので、どういって良いのかはわかりませんが、今日あったばかりの私にここまで開放的になる方も珍しいな、と思いまして」

「だって~、だてせんせ―もまきせんせーも悪い人じゃないって一目でわかるも~ん」

私が悪い人ではない…ですか、布仏君、それは見当違いというものです

「あ、真木先生、ここです、新設工学技術開発室!ほら、本音、早く離れなさい」

「ここですか、どうもありがとうございました」

真木は研究室の入り口の呼び鈴を鳴らす、しかし出てくる気配が一向に無い

「今は留守のようですね、また明日窺う事にします」

二人は顔を見合わせてなにやら思いつめたような表情をしていた

「あ、あの、真木先生、この研究室なんですけど…、気を付けてくださいね」

「うんうん」

「気をつけろ…とはどういう意味ですか?」

「この研究室の今の責任者のひとなんですけど、ものすごく性格が悪いんです」

「そうそう~、二学期からやってきた男の研究員の人たち冬休み前に全員辞めちゃったんだ~」

「それはそれは、極端な女尊男卑家というわけですか」

「女尊男卑というより、自尊男女卑って言った方がいいかもしれないんですけど、自分の気に入らない人間には超攻撃的なんです」

「男の人は顔見るだけですぐ大声で悪口言ってた~、おりむーも一回靴ひもがほどけてるって理由で20分くらい怒られてた」

「何か些細な理由ひとつあれば全然関係ないことを西尾維新の言葉遊びばりに発展させてこきおろしてくるんです」

「おりむーもその一件で目も合わせないようにしているんだって」

「なるほど、まぁ、私も相手に第一印象で誤解されるのは慣れてますから、そこはうまくやるしかないでしょう」

しかし、伊達君はうまくやっているでしょうか

ところかわって、保健室

「ドクター、大丈夫かな?」

「心配ですか?まぁそうでしょうね、俺なんかもう二度とあの部屋の前は通らないって決めましたから」

「確かに…、あの時は酷かったな、下の研究員もご機嫌取りで煽ってきたしな」

「俺の味方誰もいなかったもんな」

「う、済まなかったとあの時謝っただろう!」

「いや、そういう意味じゃないけど…」

そうしているうちに先ほど出て行った養護教諭が戻ってきた

「じゃぁ、俺達はそろそろ帰ろうか!腹も空いたし」

「ああ、って、このまま食堂まで行くぞ」

「セシリア達を誘わなくていいのか?」

「いいんだ!じゃ、失礼しました」ガラッ

「し、失礼しましたー」ピシャ

「おお、ありがとなー!!じゃ、俺もそろそろ部屋に戻りますわ」

「はい、明日からよろしくお願いしますね」ペコリ

「は、はいこちらこそよろしくお願いします」ペコリ

明日から…か、ま、やるっきゃねぇか

次回予告

「ベルトが無い?どういうことだよ」

「あるのはメダルとバースバスターだけのようですね」

「皆さん、あけましておめでとうございます」

「新任の先生ですって!」

「どうも、新聞部で~す、お二人の取材に来ました~」

「インフィニット・ストラトス?って何?」

「我々もすこし勉強が必要のようですね」

「男臭くてしょうがないんだけど!今すぐ出て行きなさいよ」

「恥ずかしくないか?」

「お二人とも“教育者”なんですよ!!」

「代表候補生?って何?」

「本当に先生なんですか?」

「何のための兵器かって、考えてみてほしいんだ」

「ちょっと、ステキかも…」

「かんちゃん、がんばってね~」

「相手の様子がおかしいぜ!?」

「これがこの世界の敵ってやつか?」

「一体何が起きたんだ!?」

「それが教育者の言葉ですか…」

「変身できないんだった…」

「やっぱりヒーローなんて、いないんだ…」

「伊達さん、諦めるなんてらしくないですよ」

「やるしかねぇか、変身!」

俺は…、仮面ライダーバース!

次回【新学期とコーヒーと無いベルト】 乞うご期待!

>1です。序章Ⅱと、次回予告でした

次回から正式に話が始まります。今回のように一つの編を何ブロックかに分けて進めていくつもり、サブタイトルも付けます。

次回予告に出ていた通り、新聞部のあの子が登場するのですが、インタビューってどんな形で進めればいいのでしょうか、こういう風にしたらいいよって意見があればドンドン書いていって下さい。

では、次回もよろしくお願いします。

>1乙
インタビューは薫さんの質問に伊達さん真木さんに適当に受け答えさせて
他のキャラが横槍を入れて適当に駄弁らせる感じでいいと思います

乙!期待して待ってるよ

乙レートフラッシュ!
そういや、メダル問題はどうすんだろ?

供給源ないから1000枚使うサソリちゃん出したら一気にピンチだな

>>1です

真昼間から更新です。

TVシリーズの伊達さん…どうなってしまうのでしょうか!!

気になります

>>1です

真昼間から更新です。

TVシリーズの伊達さん…どうなってしまうのでしょうか!!

気になります

>>1です

真昼間から更新です。

TVシリーズの伊達さん…どうなってしまうのでしょうか!!

気になります

「ここが職員寮の個人部屋か…」

伊達はこうして挨拶を終え、これから自分が寝泊まりする部屋のカギを開け中へと入る

「広ぇな~、ベッドも高そうな奴だし…、ホテルだったら結構な値段とられるんじゃねぇか…?」

書類と手荷物を壁側の机の上に放り投げ、よく見るとその机にはパソコンが備え付けてあった

「きっと使わないだろうなぁ、機械とか苦手だし…」

機械のスペシャリストといえば、一緒にこの世界に来た真木の事がふと頭をよぎる

そういや、ドクター大丈夫かな?

真木の配属先の良くない噂を聞き、嫌な予感を感じる

徐に着ていた白衣から預かったバッタカンドロイドのプルタブをプシュッとあける

「ドクター?聞こえてるか?」

……………………………

『…聞こえているのは当たり前です。何か用ですか?』

割りと普通な声であった、まぁ普段から自分がちょっかいを掛ける以外で殆ど表情を変えるところを見たことがないため心境の変化を推し量ることは出来ないが…

「いや、ドクターの仕事先がなんかめんどくさい所って聞いてさ、どうかな?って思って」

『君が気にするような事は何もありませんよ、尤も今日は留守のようだったのでまた明日窺う事になりましたが』

「そうか、んまぁ何かあったらいつでも言ってこいよ、それに俺よりドクターの方が立場的に偉そうだしな」

『それに関しては否定しませんが、…一つ気になる点がありまして』

「何だよ」

『部屋へ戻る前に一度車に戻って積まれたカンドロイドや持ってきた道具の確認をしていたのですが…』

「うんうん、それで?」

『バースシステムのバースドライバーのみが無くなっていたのです』

「ベルトが無い?どういうことだよ」

『車に開けられた形跡はありませんでしたし、おそらくは初めから無かったものかと』

「そういや、ドクターとガチバトルしたときにぶっ壊れちまったからな、その影響か?」

『おそらくは、それが理由ではないでしょうか』

「かぁ~、鳴滝のオッサンも気ぃ利かしてくれりゃぁいいのに」

『あるのはメダルとバースバスターだけのようですね』

「ベルト作るのってどれくらいかかりそうなんだ?」

『ベルトはバースシステムの全ての軸となってますから、そう簡単にはいかないかと』

「そうか、まぁしょうがねぇか」

そうだ、しょうがねぇんだ。金のためにやるわけじゃねぇしな

「俺はもう寝るわ、いろいろ疲れた」

『そうですか、私は調べ物がありますので、では良い夜を』

「あぁ、御休み」

こうして伊達と真木の長い初日が終わった

伊達は無駄に寝心地のいいベッドの中でまどろみに包まれ奇妙な夢を見ていた

一面が白に眩く輝く空間に自分ひとりがポツンと立っている夢

鳴滝に会った時のような一面鏡のような怪しい空間ではなく、どこか温かさを感じさせる優しい光であった

《どこなんだここは?場面がコロコロ変わってややこしくてしょうがねぇっての》

どこまで歩いても、叫んでみても何も変わらない、するとそこにぼんやりと人影が浮かんできた

《だれなんだ?こっち来て顔見せやがれ》

その人影はもやがかかったようにぼんやりとしか見えないが、顔が細かく動いている、何かを喋っているようだ

《……さ…、こ……んて……な………よ》

《何?なんて言ってんのかわかんねぇって…》

すると人影は伊達にむけ手を伸ばしてきた、伊達もそれに応じるように手を伸ばす…すると

「ハッ!」ハァハァ

伊達は慌てて目を覚まし起き上がり辺りを見回す

「ハァっ、夢か…、この世界に来たことも夢だったら…なんてな…」

そう、これが今の伊達の現実、よく分からない世界に連れてこられよく分からない学校で教諭になり未だに実態の掴めない使命をこなさないとならない

「まぁ、考えたってしょうがねぇか、いや、よく考えねぇとダメなんだろうけど!」

なんてまるで巻き込まれ体質のラノベの主人公のようなセリフを呟く、すると

コンコン 『すいませーん、いませんかー』

誰かが自室の戸をノックしてきた

「応、今開けるからちょっと待ってな」

随分若い声だったが、生徒だろうか、男性教員は珍しいとかで冷やかしに来たのかもしれない

ガチャ「はいはい、開けましたよ」

ドアを開けた先にいた人物、水色の外側に跳ねたショートヘアに扇子を持った少女

期待

すいませんが、急用が入ったので、今夜20時頃にまた更新に来ます。

失礼します。

バースドライバーは作れるんだよな

使い勝手良いよね

まだかな まだかなー

カッターウイング省いたら早く完成すると思う

どうせサソリちゃん以外に使い道ないんだし

すいません、遅くなりました>>1です

早速始めていきます

「おはようございます、伊達先生。私はこのIS学園の生徒会長、更識楯無と申します。新任の先生が来られると聞いて挨拶に伺いました」

「ああ、とりあえず立ち話も何だし、入りなよ」

「そ、その前に、…ズボンを穿いて下さいませんか?伊達先生」

そう、シャツとパンツ一枚で眠っていた伊達はそのままの格好でドアを開けてしまい楯無は少々赤面していた

「おお、悪い悪いすぐ着替えるわ」

伊達はすぐさまいつものツナギを着てその上から白衣を纏う

穿き終ると楯無はベッドに腰かけて待っていた

「ごめんな、変なもの見せちゃって」

「いえ、私も少し早すぎたかなと思ったんですが、何しろ挨拶なんて初めてなもんで」

「そうか、もう一人の方は挨拶にいった?」

「あ、はいさっき、行ったんですけど…」

顔が引きつり言葉に詰まる楯無

「あぁ、ドクターね、変わってるでしょ。人形とか、こーんな奴」

変なポーズをとって真木がいつも肩にかけている人形を表現する伊達

それを聞いていた楯無も急に目を見開いて

「それも変でしたけど!どういう人なんですか?真木先生って!部屋は異常に寒いし壁から紫の布が垂れ下がってるしで」

「ハハハハ! あぁいう人なんだよ。まぁ、悪い人じゃないから。悪の科学者みたいな顔してるけどね」

「何考えてるか全然分かんないし…、そういえば本音ちゃんも簪ちゃんも電話で言ってたわね『『変な人だった』』って」

「だから様子見に来たのか?信用ないね~、俺達」

「えっ!?いや、わ、私は別に、挨拶に来ただけで特別なことなんて」

「嘘だ」

「嘘じゃないですよ」

「さっきはじめてだって言ってたじゃないか」

「あっ、そ、それは…、その…」

「男が来るなんて珍しいから?別に怒ってるわけじゃないからさ、正直にいってごらんよ」

「はぁあー、急に男の人が来るって聞いたからどんな人たちか確かめに行こうと思ったら、張り切りすぎたのが裏目にでちゃったな」

「そんじょそこらの男どもと一緒にすんじゃねぇよ、伊達明は世界で戦ってきた男なんだぜ」

「へぇ、面白そうな話ですね。今度また聞かせてくださいよ」

「あぁ、またいつかな。それよりドクターは何してた?」

「資料室から山のように本を持ってきて部屋で見て書類書いてた、寝てないって言ってたわ」

「大丈夫かよ…、まぁ大丈夫なんだろうけど」

「あ、忘れてた!そのドクターから預かりものがあるんです」

そういって楯無は一度部屋の外に出て伊達にとって見覚えのある“あるもの”をかついでもってくる

「ふぅ、重い。とりあえず持っててくださいだって、何が入ってるの?」スッ

床に下ろした“それ”は伊達が戦闘で愛用していたメダルを収容していたミルク缶であった、ご丁寧に蓋にガムテープで目張りをしてある

楯無は興味津津でミルク缶の蓋に手をのばすが、伊達はそれを一喝する

「触るなッ!」カッ

「ひぅっ、は、はい、ごめんなさい…」

急に怒鳴られ驚きシュンとなる楯無

「わ、悪ぃ、大声出しちまって。けど、これはな…」

伊達はつい反射的に大声をだして楯無を静止させた、それは単純に自身の所有物に触れられたくないからか、あるいは違う世界の人間に自分たちの技術を見せてしまうのに後ろめたさを感じたからだろうか

「すみませんでした!男の人とお話する機会あんまりないからつい浮かれちゃって…」

うつむきながら謝る楯無、表情は窺いしれない

普段人を自分のペースに巻き込む彼女も年上の男が相手ではなかなかうまくいかないようだ

「まぁ、これが生徒と教師の境界線ってやつだ。知られちゃ困ることもある。次から気をつけてくれたら何も言わねぇよ」

「はい、あ、もうじき特訓の時間だ、じゃぁ私はそろそろ失礼します」

「特訓?部活でもやってるのか?」

「いえ、ISですよ、一夏君に稽古つけてあげてるんです」

「そうか、よくわかんねぇけど頑張ってな」

「はい、それじゃ。あ、そうだ、明日の始業式で新任の先生の挨拶をしていただきますから、適当に考えといてくださいね」

「あぁ、わかったよ。あ、最後にひとついいかな?」

「何ですか?」

「変なこと聞くけど…、“仮面ライダー”…って知ってるか?」

「仮面ライダー…ですか?」

我ながら変な質問をしたなぁと思いながら伊達は楯無に視線を向ける

楯無はあっけらかんとした様子でさらりと答えた

「さすがにこの歳じゃ見ませんよぉ。あ、でも妹が隠れファンだっていってました」

「見る?ここじゃ放送してるのか?」

「よくわかんないけど、妹は今放送してる作品のバイクに変身する赤い仮面ライダーが好きだって言ってました。不死身なのがいいとか…って」

「そうか、そこん所はよくわかんねぇけど、とにかくありがと」

「はい、それじゃまた明日!」

「応」

この世界じゃ仮面ライダーはお茶の間のヒーローやってんのか

なんか複雑だな…

しかも俺今変身できないし…

どうなっちまうんだぁ!?俺の先行きは…

とりあえず明日の挨拶でも考えますか…

>>1です、てな感じで今日はここまで!

また近いうちに更新します


楽しみにしてる

照井さんまた浮気かよ

おつ

てるいるーが好きとか簪は分かってる
投下乙

伊達さんは映画でもW勢と一切接触ないもんな

死なないのか?俺は知らない

乙ー
さすがてるいるーだ女性からモテモテだなwwwww

伊達さん死んでなかった…

伊達さんらしかったな

>>1です。 ゴブサタでした

伊達さんが生きていてよかったです。てっきりTVシリーズはこれでおさらばになるだろうと思ってました。

あれ?すこしこのSSにつなげやすい展開になったかもww

そんなわけではじめて行きます

よろしくお願いします

真木は昨夜会う事が出来なかった新設工学技術開発室、通称“新開室”のスタッフに会うべく研究棟を進んでいた

彼に与えられた役職はこの部署の開発責任者である、話では面倒な連中がいると聞いていた

(さて、今日こそはいるのでしょうか…)

ふと、今朝の自室に押し掛けてきた楯無の事を思い出していた

(不躾な少女でしたが…、かなり深い洞察力を兼ね備えているようでしたね)

基本的に一度見たものは二度と忘れない真木の頭脳はあくまで冷静に今朝の出来事を分析していた

(そしてあの少女は恐らくは他の人間よりも少し深い立ち位置にいる…)

(この世界…、IS…、実に興味深い。調べてみればもうすこし詳しく分かr…おや?)

奇妙な人形を左腕に乗せた奇妙な男、真木清人は部署の開発室の前にさしかかった、その開発室の前に一人の少女が佇んでいた、その少女も真木に気がついたようだ

「あ、真木先生…、お早うございます」

「君は…、更識簪君でしたね。お早うございます」

「あの…、フルネームじゃなくて名字で呼んでもらって結構なんですけど…」

「失礼、今朝君のお姉さんが私の部屋に挨拶に来たもので、区別の為に」

「そうなんですか…、あの、お姉ちゃん何か失礼なこと言いませんでしたか?」

何かを思い出したかのように言葉を続ける簪

「お姉ちゃん、かなり恐れを知らない人で…、初対面の人にもあんまり遠慮がないっていうか」

「はぁ」

「とにかくすぐ人を自分のペースに引き込んでしまうんです」

「いえ、特にそういった様子は、礼儀正しくて聡明なお姉さんでしたよ(入ってきてすぐに出て行きたそうな顔をしていたとは言わない方が良いでしょう…)」

「あ、だったら良いんですけど…、えへへ///」

姉を褒められて少し嬉しそうな簪

「では、私はこれで」

そういって開発室の呼び鈴を鳴らす。が、相変わらず反応がない

「しかたありませんね」

そういうと真木は教員証からIDカードを抜き取ると呼び鈴の横にあるカードリーダーに通す

するとドアが自動で開き真木は中に吸い込まれるように入っていった

「大丈夫かな…」

一人残った簪は心配そうに呟くのだった

伊達は楯無との邂逅後、仕事を教わるために保健室に向かっていた、あのミルク缶を背負って

「しっかし、ベルトがねぇってのは心配だなぁ。バスターだけじゃ心許ねぇって」

まだ敵の実態も皆目見当のつかないこの世界で“変身”というアドバンテージを無くしている伊達は表には出さないが内心では焦っていた

「ドクターもなるべく早くって言ってたけど、どうなる事やら」

そして保健室の前に着くと襟元を治しカードリーダーにカードを通し中に入る

「お早うございまーす! おばあちゃん先生」

保健室の主“石下啓呼(いわしたけいこ)”この道30年の養護教諭で、御年56才の大ベテラン先生である

嫌味を感じさせない態度と母性あふれる度量の広さで悩み多き年頃の少女から、時には指導に行き詰った教師まで、幅広くメンタル面をカバーする学園の母である

おばあちゃん先生というのは数年前IS学園に赴任後、相談に乗ってもらった生徒たちから敬愛と親しみやすさを込めて贈られた愛称であり、

彼女自身も“どんな勲章よりも誇り高い、生徒たちの身近にいれる名”として生徒にそう呼ばせている名前である

伊達に対しても是非そう呼んで欲しいとお願いしていたのだ

「いやぁ~、今日も寒いですね」

「そうですねぇ、明日から新学期ですから。また賑やかになってすぐ温かくなってきますよ」

「そっか、それもそうっすね」

「ウフフ、伊達先生、素敵なカバンをお持ちですね?」

おばあちゃん先生は伊達のミルク缶を見て微笑みながら問う

「あ、これですか?いや~、自分に合うのを探していたらこんなのしかなくて…」

「伊達先生は体が大きくてたくましい方ですから、よくお似合いですよ」

「はは、そりゃどうも…」

「けどあまり大きな荷物が必要になる仕事はありませんよ?昨日のマニュアル読まなかったんですか?」

「いや~、マニュアルはどーも苦手で… ほら、俺って超実践主義派ですから!」

こうして伊達は仕事を教えてもらうことになった

IS学園はもともと大学病院並みの設備を整えているため保健室での仕事はそれほど多くはないのだ

主な仕事は薬や備品の在庫確認、薬品や器材の発注確認、部屋の手入れ、そして生徒への対応である

伊達が入ったことで二人体制となり、おばあちゃん先生は楽ができると喜んでいた

一通り説明を終えたおばあちゃん先生は伊達にひとつの仕事を与えた

それは、『一人でも多くの生徒に名前を覚えてもらう』という内容である

「~ったく、おばあちゃん先生も難しい仕事くれるよなぁ」

時刻はお昼時を少し回っており、伊達はとりあえず腹ごしらえするために食堂へ向かうことにした

そして職権を渡し職員用渡し口で待つ伊達、すこしようすがへんだ

(アホみたいに品数多いのになんでおでんがねぇんだ! 職務怠慢じゃねぇのか!?)

伊達はこの学園の事をまだよく分かっていないようだが、IS学園は様々な国の女生徒が集うところであり、食事のことでのトラブルを避ける名目で種類を増やしているのだ

しかし大好物のおでんが無かった伊達はプリプリ怒りながら仕方なくざる蕎麦を猛烈な勢いですすり込むしか無いのだった

そして食べ終わり、食堂をでようとすると聞き覚えのある声で自分の名を呼ばれているのに気がついた

「伊達先生! お疲れ様です。お昼食べてたんですか?」

その声は昨日いろいろと忙しそうにしていた山田真耶であった

(あぁ、昨日の先生か、ヤベッ名前思い出せねぇ、たしか…、やま…、やま…)

「あぁ、蕎麦食ってき…、食べてきまして。山ちゃん先生はお昼はもう?」

「山ちゃ…、あの!私の名前は山田真耶っていうちゃんとした名前が…って、聞いてますか!?」

「聞こえてるよ、どっちもステキだってことに変わりはないって」キリッ

そう言って彼女の目を見つめさらに彼女の肩に自分の手を添える

「そ、そうですか///ンもうしょうがないですねぇ///」ポッ

照れて顔を真っ赤にする真耶

(よし、なんとか誤魔化せたな)

「それで、真木先生は今どちらにいるかわかりますか?お伝えしたいことがあって」

「ん?ドクターなら配属先に挨拶に行ってるとか…、例の面倒な所」

「あぁ、新開室ですか…、あそこは今の責任者がちょっと訳ありな人で…」

「たしか自分勝手な人だとかって聞いてたけど」

「はい、暫定責任者として部署のトップにいるのがキーラ博士っていうんですけど…」

こうして伊達は食堂の机でコーヒーを啜りながら真耶に詳しく話を聞くことになった。そもそも新設工学技術開発室というのは

国際IS委員会が世間的に大きな顔をしているIS学園に半ば押しつけるようにように発足させた部署である

具体的な活動内容は第三世代の特殊兵器の製造が主であったが、そう簡単に上手くいくはずもなく泣かず飛ばずでほぼ手付かずであった

さらにそこに責任者として措かれたキーラ博士という女性がこれまた曰くつきの人物である。

元々はISに関係ない脳幹系の優秀な研究者だったのだが、被検体を顧みない実験を繰り返しその行動を危険視した学会により追放処分をくらったのだが

国際IS委員会の上層部に彼女の親族がおり、『一度や二度の失敗で人生を棒に振らせる気か』という“表向きの人道”と

『教師として子供に触れ合うと変わるかもしれない』という取ってつけた理由、そして権力をふりかざし再び表社会へ返り咲かせようと

しているのだ。それを聞かされた伊達は言葉を失っていた

「なるほどね。人間の欲望は堂々巡り、こういう形でしか出来ない奴もいるってことか…」

「それが“上”の意向ですから…」

「それでなまじ優れた腕を持っちまってるもんだから、易々と手放すわけにも行かない訳だ」

呆れたように呟く伊達、世間を達観した目線で見ている彼はこういった薄汚い大人の所業を世界中で何度も見ているため怒りを爆発させることはないが

その分言葉には言い表せないような“重み”を感じる

「開発室でも一体何やってるかわからなくて、行ってみれば開発部署を一つそのまま私物化しているんです」

「そっか、困った姉ちゃんだな」

「それで、近いうちに監視者を置くって話が出てきたんです」

「それがドクターって訳か…、大変だなコリャ」

「委員会に申請が通って、でもそれっきりになってて、それで来たのが男性の方なんて…」

「向こうさんもこの問題に取り組む気はゼロ%ってことか」

「他の研究員の皆さんも親族が委員会の上層部だってことで口出しできずにますます大きな顔をされることになって」

「ご機嫌取りの取り巻きも連れてるんだって?道案内してくれた生徒も行ってたよ」

「それなんですよ!」クワッ

そういってバンッ!と机を叩いて立ち上がる真耶、その弾みで彼女の大きな胸が揺れたのはご愛嬌である

「そうやって生徒に悪影響を与えてしまうのが一番の心配なんです。態度が悪いとか教師間で仲が悪いとか、それよりも大事なことってあると思うんですよ」

「そうだよな、結局何も変わってない、悪影響しかない訳だしな」

「織斑先生も頭を悩ませていているんです、私も織斑君の件で一度抗議に行ったんですけど…、『教師は教師の畑にいろ!』って言われて取り付くしまもなくて」

若いのに苦労しているんだな…と伊達は一人真耶に対する認識を改める

「あ…、すいません愚痴なんか言っちゃって…、明日から3学期だっていうのに。駄目ですよね、私」ハァ

「駄目なんかじゃないよ」

「え?」

「山ちゃん先生が悩んでいるのはさ、生徒のことを思ってなんでしょ?」

「は、はぁ…」

「俺はまだ教師って仕事もこの学校もよく分からないけど、誰かのために精一杯になってる時ってのはさ、きっとすんげぇ輝いてると思うんだ」

「そ、そんな…恥ずかしいです///」

「ポーズとかポイント稼ぎやカッコ付けじゃないホントの誠意はきっと伝わる!生徒もさ、山ちゃん先生がそうやって自分の為に一生懸命になってくれる先生だって、きっと分かってるさ」

「そ、そうですか///」

「だからそうやって悩んでいるよりも時には向こう見ずなくらい明るいほうが生徒も安心してくれるって。このコーヒーもさ、こんなに美味しいんだからそんな暗い顔で飲んでちゃ勿体無いぜ」

「…そうですか、そうですよね! 教師とか、上に立つ人間とかいう前に傍にいる人間が笑顔じゃないと辛くなるばかりですもんね!」ズズー

「そうそう、その意気よ!いい顔してると思うよ」

「ふふっ、ありがとうございます。」

思いがけず相談に乗ってもらう形になってしまった真耶だがその心は晴れやかであった

(伊達先生…、昨日あったばかりの私にこんなに親身になってくれるなんて…)

「じゃ、行きましょっか。ドクターの用があるんでしょ?」ゴクゴク

「…あ、そうでした。すっかり忘れてました。エヘへ」

「じゃぁ、一回連絡とってみるわ」ゴソゴソ

「あ、あの…、」モジモジ

コーヒーを飲み干しポケットのバッタカンを取り出すべく探っている伊達を真耶が呼び止める

「何?」

「あ、あのあの…、また行き詰ったりしたらお話聞いてもらえますか?」モジモジ

「あぁ、いつでも聞くよ。コーヒーを飲みながらね」ニッ

そういって目を細め笑いあう伊達と真耶

バッタカンを保健室に置きっぱなしにしていることに気づき、結局真耶と一緒に保健室に向かうことになった。そんな午後14:00 天気は快晴である

すいません眠気が限界を超えそうでちょっと一休み入れます

運がよければ夜中から再開できるかも

ではお休みなさい


気長にやってください

乙!

この伊達さんまるで五代みたいだなwwww

続きマダー?

こんばんは、>1です。

前回から大きく見直しをしていたので大幅に遅くなってしまいました

早速はじめていきます

伊達は真耶をつれ一度保健室に戻ることになった

すると保健室の中から騒がしい声が聞こえてくる

「ねぇねぇ、このお人形少し見せてくださいよ」

「YA-ME-RO!」

「あ、あの…あんまり保健室で騒がない方が…」

戸を開けた伊達が見たものとはキヨちゃんに興味津津で声を荒げるおばあちゃん先生と渡すまいとする真木、

それをまずそうな目で見ている簪、そしてなぜか真木の頬には湿布が貼ってあった

「お、何か賑やかだねぇ!何盛り上がってんの?」

「あれ?真木先生、ここにいたんですか?ってそのケガ!どうかなさったんですか?」

「いえ、ふとした弾みで、気にすることではありません」

「怪我の具合じゃなくてなんでそうなったのか聞いてんだよ、まさか道端で転んだとかじゃあるまいし」

「…あの、開発室ですこし揉めちゃったみたいで…」

おずおずと口を開く簪、どうやら真木を連れてきたのは彼女らしいと伊達は推測した

「赴任早々トラブル起こすなんて、ドクターも弾けちゃってるねぇ」

「はぁ、そういうものですか…」

呆れたような真耶の口ぶりに人知れず簪は顔を伏せて俯く

(言えない…、まさか突き飛ばされた拍子に人形が落ちて挙動不審になったのを頭打っておかしくなったと勘違いしたなんて言えない…)

「まぁいいやどかり草団子…じゃなかった。山ちゃん先生がドクターに用があるんだって」

「あ、はい真木先生には教壇に立っていただくので準備室が用意されてるんです。配布する資料に書いてなかったみたいなので…」

「そうでしたか、それはどうも」

「それでなんですけど…、この部屋がですね…これまでIS学園に来られた男性教員の方が使われていた部屋なんです」

「何それ、化けて出るなんて言わないでよ」

「いえ、そんな学園七不思議のスポットなんかじゃないんですけど、前の方の荷物が順々で残されたままなので、その辺の片づけとかもやっておいて欲しいんです」

「あぁ、体よく押しつけられた訳ね」

「はい!よろしくお願いしますね」

(開き直った…)

「でしたら話は早い、案内していただけますか?」

コートを着なおし立ち上がる真木

「ドクターいいなぁ、俺も部屋とか欲しいなぁ」

「あらぁ、伊達先生には保健室があるじゃないの。それともこんなおばあちゃんが一緒じゃ退屈?」

「い、いえそういう意味じゃないんですけど、これはあくまで…」

「ふふ、わかってますよ。伊達先生、今日はもうあがって結構ですから真木先生のお手伝いをしてあげて下さいな」

おばあちゃん先生に翻弄されつつも伊達は保健室を出る準備を始める

「そろそろ行きますよ。準備は終わってますか?」

「あ、私も行きます…いいですか?」

簪がそういって手をあげると真耶はにっこりとほほ笑む

「ええ、じゃあ行きましょうか」

更識簪は極めて内向的な性格であった

優秀な姉と比べて凡人である自分を見返させる為に一人で意固地になりますます深みに落ち込んでゆく

だが織斑一夏と出会ったことで氷のように冷え固まっていた心は嘗ての温かさを取り戻した

真耶はクラスは違えどもそんな生徒の成長が嬉しかったのだ

道中、先導している真耶は簪と何やら楽しそうに話をしている

伊達は真木の隣でいろいろ聞きこんでいた

「で、どうだったよ。配属先は?まぁそのザマじゃ碌な事なかったんだろうけど」

「えぇ、入るや否や罵詈雑言の嵐でしたよ」

「ヤバげな実験とかしてなかったか?」

「さぁ?入った途端に大騒ぎされた上にモニターも消されたので何とも」

「その怪我もそのときに出来たやつみたいだな。グリードって怪我すんの?」

声を小さくして身をかがめ子供がこしょこしょ話をするように問いかける伊達

「ある程度操作できますが、セルメダルの消費を防ぐのと周りに不信感を与えないようにここではあえて人間の形をとっているだけです」

「なるほど、ドクターも考えてるんだな」

「考えている、といえばこれを君に渡しておきましょう」

そういって真木が渡したものは書類の束、そう、伊達の大嫌いなマニュアルであった

「この世界の年史はほぼ我々のいた世界と変わりはありません、しかし近年軍事面において決定的な発明がなされたのです。それがインフィニット・ストラトス」

「インフィニット・ストラトス?って何?」

「わかり易くいえばパワードスーツのようなものです。今のところ兵器として使用された例はないようですが…」

「ってゆうかさぁ、ドクター俺がマニュアル苦手なの知ってんでしょ?俺を虐めてんの?」

「不本意とはいえ我々はこうして教育に携わる身となったのです。これを機にマニュアル嫌いを直したほうが良いでしょう」

「そう言われると何も返せねぇな…、お、もう着いたのか」

先導していた真耶と簪が部屋の前で待っていた

「お待たせしました、ここが真木先生の部屋です」

そういってカードキーを通しドアを開く

「うっわ、汚ぇ~」

汚れているとかそういうわけではなく。部屋の中には、これまでの辞めていった研究員が遺した機材やコンピューター、資料などがダンボールに入れられたまま手付かずになっていた

(持ってきたはいいけど、パワハラが凄すぎて精神病んじまったとかそんなところか?)

そういいながら伊達はデスクの上に置いてある『連絡ノート』と書かれた大学ノートが置いてあった

ふと手にとってパラパラと捲ってみる。そこには新開室のスタッフへの恨み辛み、放送規制がかかること間違いなしの口汚い罵り文句がびっしりと書かれているではないか

文字の書き方がページを捲る度に変わっており恨みの度合いが推し量れる

(これにセルメダルいれたらすんげぇヤミーが生まれそうだな…)

伊達はこれを真木に見せると面倒なことになると察知し、こっそり備え付けのゴミ箱に掘り込む


「じゃあ、私はこれで失礼します。明日は始業式ですから遅れないようにしてくださいね。それじゃ、あ、あとこのダンボール達をもてあましたら隣の部屋を使ってもらって結構ですから」スタスタ

「やっぱり手伝ってくんねぇんだ…。」

「仕方ないでしょう、彼女も学級副担任。やるべき仕事があるはずですから」

「そりゃそうか、で?君はどうするの?」

伊達は部屋の中でキョロキョロしていた簪に話しかける

「あ、あの、私は…その…」

「今日はもう帰りなよ、今から力仕事だし。おっさん二人が汗臭い仕事してる所なんて見てて楽しくないぜ!?」

罰が悪そうに目を合わせる伊達と真木

「そうですね…、じゃぁ失礼します。頑張ってくださいね!」

狭っ苦しい部屋に残った男二人、伊達は全体の見取りを眺めつつ真木は段ボールの中身を確認していた

この閉塞感が二人にとって馴染み深いある一室を思い出させる

「ドクター」「伊達君」

二人は同じタイミングでお互いを呼び合う

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

「どうやら考えてることは同じようですね」

「OK、用具入れはこの先だな?そっちは俺がやるわ」

「お願いします、私は電気系統の調整を」

「よっしゃ!いっちょやりますか」

こうして二人はお互いの仕事を確認し、やるべきことに取り組んでいく

真木の準備室から5つほど間を開けたところにある部屋、生徒会室

ISの特訓を終えた一夏と楯無が生徒会室に向かっていると伊達たちと別れた簪と遭遇した

「あ…、お姉ちゃん、それに織斑君も…」

「あら?簪ちゃん。お姉ちゃんに会いに来てくれたのかしら?嬉しいわ~」ダキッ

「お姉ちゃん…く、苦しい」

「はは、これから生徒会室でみんなでお茶するんだけど、よかったら一緒にどうだ?」

「おいしいお菓子もあるわよ」

「う、うん。じゃあ行こうかな…」

「は~い、それじゃ一名様ごらいて~ん」

そういってドアをくぐる三人、生徒会室には本音とその姉である虚が時間を見計らいお茶を淹れて待っていた

こうして楽しいティータイムが始まった

「そ~いえば、明後日は模擬戦やるんだってねぇ、おりむーも特訓頑張ってるんだね~」モグモグ

「あぁ、結構手ごたえありましたよね?楯無さん」

「そうねぇ、初めのころに比べれば、ね?」

「手厳しいなー」

「今回のはかなり特殊なシステムらしいわね。委員会推奨とか言われてるやり方だって聞いています」

模擬戦への意気込みを語る一夏、虚は今回の模擬戦の説明を加える

学園の専用機持ち全員と、学園の教師とのシールドエネルギーが尽きて無くなるまでの出し切り勝負をやることになっているそうだ

生徒代表のトリを勤めるのが簪である

「委員会推奨とか言ってるけど…、実態はどうなってるんでしょうねー」モグモグ

「お姉ちゃん…、あんまりそういう事は言わない方が…」

「いいのよ、悪口は聞こえないから悪口っていうんだから」

「言いたい放題ですね…」

「だってそうじゃない、あれやこれや押しつけるくせに学園(こっち)の要求は全然聞かないんだもん」

「おまけに変な部署作ってくれちゃってますしね」

「そう、そうなのよアレのせいで整備科のモチベーション下がるわ授業でトラブル起こすわクレーム多いわで大変なんだから」

「お姉ちゃんも大変なんだね…」

「他人事じゃないわよ!簪ちゃんも、今回の模擬戦に向けての整備、なんでよりにもよってあの新開室の連中に頼んじゃったの?整備科の腕利き紹介するって言ったじゃない」

「そ、それが…しつこく迫られちゃって…一時間くらい説得されて“うん”って言わないと帰れない雰囲気だったから…ごめんなさい」

叱られムードになり落ち込む簪、あわてて一夏がフォローに入る

「そ、そうだ、楯無さん新任の先生に会ったそうですよね、どうでしたか?」

「どうもこうも、あんな変な人たち初めてよ。二人ともそれなりにいい男だったけど」

「そうそう、変な人たちでしたよね、アハハ」

「まきせんせーは新開室の管理責任者になったんだって、かんちゃんが今日朝から居なかったのって…」

「うん…、真木先生に頼んで一度機体を返してもらおうと思ったんだけど…」

「やっぱり真木先生もキーラ博士に…」

「うん、2階まで響きそうな声で罵られて、研究室から追い出された揚句壁に顔ぶつけてケガしてた」

「あの博士ほんとヤナ奴よね、いちいち一般生徒に張り合っちゃって」

「理論も根拠と実例があってないから支離滅裂なんですよね」

「というより押しつけがましいのよね。力量は悪くないんでしょうけど」

(何かワイドショーにケチ付けまくってる主婦仲間みたいになってる…女ってコエ―…)

「一夏君!」

「は、はいッ!」

「今何か失礼なこと考えたでしょ!?」

ガン! ガン!

「い、いやぁ…何の事だかさっぱり…」

ガン! ガン!

「お姉さんに嘘ついても為にならないわよ。いいから正直に…」

ガン! ガン!

「さっきから何なのよ!工事でもやってるのかしら?」

ボッコォン!

「ウワッすっげぇ音がしたな…」

「今来た部屋の方向からだ…まさか!」ダッ

簪が思い出したように立ち上がり生徒会室から走り去る

「ちょっと、簪ちゃん?」ダッ

「おい、簪!?」ガタッ

追って一夏と楯無も部屋を出る

「おもしろそ~、わたしもいこ~っと」パタパタ

「あ、ちょっと…、はぁ、落ち着きないんだから」

残された虚は一人溜息をつくのだった

「ハァハァ、やっぱりここだ…」

「簪ちゃん、ここ何の部屋?」

「ここって歴代男性職員の使っていた準備室、(通称“兵共の夢の痕”)もしかして新しく来た先生もこの部屋使うの?」

「うん、真木先生が使うことになってるんだけど…」

その時入口の自動ドアがシューと音を立てて開くと中から土煙と共に上半身裸の伊達が出てきた

「ゴホッゴホッ、ちゃんと換気しろよドクター!ゲホッ」

「伊達先生…、何やってんすか?」

「んぁ?っっておおお、君は確か織斑…だっけ?生徒会長さんも…何の用だよ今忙しいんだ」

「ふぇ~、改装工事やってる~」

本音がドアから部屋の中を覗く

すいません、ネカフェの使用時間過ぎそうなんでいったん帰って家から投稿します

>1です

はじめていきます

「コ、コラ!見ちゃダメだっての」

「スッゴーイ、壁にあんな大穴開けて…、警報装置ならなかったの?」

「ここら一帯の警報機器はあらかじめカットしています。何か御迷惑をお掛けしましたか?」

床下収納のようなスペースからひょっこり頭を出した真木の姿はどこかコミカルだった。慌てて一夏が返答する

「あ、いえ、もの凄い音がしたから何があったのかな~なんて」

「準備室のサイズが些か小さかったので隣の部屋を使っての拡張と電気機器の接続工事を、機材には事足りているので順調に進んでいるのですが今夜中に終わらせないといけないのです」

「あの壁どうやって壊したんですか?ドリル?それともランマー?」

「楯無さん…ランマーは地面に使うやつですよ」

「あ、そうだっけ?」

二人のやり取りを聞いていた伊達は仕方ないといった風に鼻息を鳴らし答える

「そこにハンマーがあんだろ?それを使ってフルスイングすりゃあ何とかなるってもんだよ」

そういいながらハンマーを肩で担ぎ直す伊達

その姿はまるで西部開拓時代の鉄道マン(線路を作るほう)を彷彿とさせる

「この学園の建築素材って結構いいの使ってるって聞いたけど・・・、どんだけ力あるのよ!?」

「見ての通り!こんな男です!」キリッ

((((すごい筋肉…))))

「伊達君、無駄話をしている暇があるなら作業を急いでください」

「あぁ、分かってるよ。じゃぁそういう訳だから」

「あ、よかったら俺手伝いますよ」

「結構です」

「でも、急いでるんじゃ・・・」

「結構です」

床下から顔だけ出したままの真木が冷たい口調で言い放つ

「悪いな、ドクター仕事に割って入られるの由としてねぇんだ」

「一夏君、これが境界線よ」

「そ。さすが生徒会長分かってんじゃん」

「よし、それじゃ帰りましょうか、ごめんなさいねお邪魔しちゃって」

「おぅ、先生には敬語使えよ」

「せんせー、また明日ー」ブンブンバサバサ

「失礼します」ペコリ

「先生、俺男一人だったからすんげぇ窮屈だったんだけど何か楽しくなりそうだよ」

「そ、そうか?…そいつぁ良かった」

「伊達君!」

「はいはい、分かったよ」

こうして真木と伊達の突貫工事は明け方まで続き

本音や一夏により“二人の男性新任教師”の噂があっという間に広がり寮内はパニック・ナイトとなっていた

そんなこんなで迎えた翌日、三学期の始業式。全校生徒の期待の中、式は始まる

>1です。ってな感じで今回はここまで!

次回の投稿で第一話の投稿を終わらせるつもりです

また近いうちに更新していきます。因みに今日22日は>1の誕生日です。これでまた一つライダーファン、ISファンらしからぬ年齢になっていきます(涙)

それではまた

すぅばらしぃ!ハッピィバァースデェイ!
新しい>>1君の誕っ生だよおぉぉぉ!!!

>>130の脳内再生率がハンパないwwwwwwwwww

>>1おつ

ハッピ-バ-スデ-!!

落ちないよな…

>>1です。ご無沙汰していました

第一章を終わらせようと思ったのですがあんまりにも話が長くなりすぎてしまったため先駆けて投稿することにしました

では始めていきます

IS学園・体育館 三学期始業式

生徒たちが入ってきて体育館はざわついてる。昨夜から話題は新任の男性教師でもちきりだ

ザワザワ

「ねぇねぇ!三学期から来るって男の先生の話、聞いた?」

「新任の先生ですって!」

ザワザワ

「聞いた聞いた!どうしようイケメンだったら!」

ザワザワ

「っひゃぁ~、早速話題になってるな~。俺達得だったな箒?」

「そうだな、まさか一昨日に先に会っているとは誰も思うまい」

一年一組の一夏と箒も体育館の騒ぎっぷりに驚いてる

そこに二組の鳳鈴音が話しかけてくる

「ねぇ一夏、箒、あんたたち新しい先生に会ったって聞いたけど、どんな人だったの?教えなさいよ」

「えぇ!一夏さんと箒さん、もうお会いになられたんですの?」

傍にいたセシリア・オルコットも驚いて話しかけてくる

「あぁ、二人でいたときに…偶々な」

「ちょっと待って、二人でってどういうことよ!」

「お二人で何をしてたのか、詳しく説明してもらいますわよ」

「べ、別にやましいことなど何もしてはいないぞ!」

「そうだ、芝生で膝m」

「わーわー、何も言わなくていいからな!変なことは何もなかったからな!」アセアセ

慌てて一夏の口を塞ぐ箒、鈴とセシリアはそんな二人をジト目で見つめる、その時

スパーン スパーン スパーン スパーン

均等なリズムで四人の頭を出席簿が襲う

「そろそろ始まるぞ、いつまでくっちゃべってるつもりだ」

「「「「は~い…」」」」ヒリヒリ

そして始まる始業式

理事長の長~いありがたくない話が終わると今度は楯無が舞台に上がり壇上に立ち全校生徒に挨拶する

「皆さん、あけましておめでとうございます」

「昨年はいろいろありましたが、今年も昨年に負けない勢いで頑張って行きましょう」

楯無はそのあと実家の庭の木がどうしたとか、池の鯉が元気だったとか、他人との会話で特に役に立たないであろう話を続ける

彼女と親しい者は改めて楯無が名家のお嬢様であることを再認識するのだった。

名家の育ちでありながら嫌味さを感じさせないのはひとえに彼女の人柄の良さの賜物であろう

話を一通り終わらせると・・・

「そして、皆さんお待ちかねのぉ~、新しい先生の紹介で~す」

館内がワーワーと騒がしくなる

「いや~、この時期に男の先生が来るなんてお姉さんびっくりだわ~」

「しかも!なんと二人もやってくるんです。これはお得よね~」

二人も来ると聞いて体育館内はさらに沸き立つ

「二人ですって、ステキー」

「地球に生まれて良かったー」

おほん、と一息置く楯無

「お二人ともとてもステキな男の人たちですよ」

「それでは上がってきてもらいましょう。どうぞ!」

そういって舞台袖に手を差し向ける楯無

「・・・・・・・・・・・・」

その頃、舞台袖では・・・

(またあの夢を見た…)

白い世界でたったひとり、そして奥から現れる黒い人影…

伊達は昨夜の突貫工事の後、そのまま準備室に寝入って見た例の夢を思い返していた

「…達君」

(どこかで会ったような感覚だったが…あれは一体…)

「伊達君」

「うぉっ、何だよ?」

「更識君の挨拶が始まりました。そろそろ壇上にあがる頃です」

「分かったよ…なぁ、ドクター」

「何ですか?」

「ドクターさぁ、結構この状況楽しんでない?」

「気のせいでしょう」

「そうかい」

『それでは上がってきてもらいましょう。どうぞ!』

「そんじゃ行きますか」

爪先を地面に打ちならし踵を直し、伊達と真木は壇上に上がる

二人が上がると館内からは拍手と歓声が湧きあがる

ワァァァー

「すごい長身!白衣の方は男らしい顔をしてるわ!」

「眼鏡をかけてらっしゃるほうもスマートで素敵!」

「あの眼鏡が知性を醸し出しているわね!!けどあの人形何かしら?」

「は~い、皆さんお静かに!それじゃあ自己紹介と挨拶をお願いします」

そう言って楯無は一旦マイクのスイッチを切りスタンドから外し伊達に渡す

「…まるで映画の舞台挨拶だなこりゃ」

「さすが女子校…といったところでしょうか」

「同じ境遇の人間がいるってだけで心強いよ、ドクター」

「それはどうも…、挨拶は先に済ませてください」

「わあったよ」

カチッ キィ―――ン

「アァ―、えーっと…どうも、伊達明っていいます」

「長い間世界中を医療支援しながら旅してて…、巡り巡ってこの学園の養護教諭になりました」

「普段は保健室にいることが多いな」

「メンタルケアから臓器移植まで一通りこなせるぞ、手術は俺の仕事じゃないみたいだけど」

「とりあえず見かけたら声掛けてくれると嬉しいかな」

「そんな訳でヨロシク!!」ビシッ

軽い調子で挨拶を終えると、生徒達がワァァ―と騒がしくなる

「お医者様ですって!ステキ―」

「あの着崩したスタイルがワイルドでいいわー」

「ほい、次はドクターね!」

伊達からマイクを預かった真木は口元に沿え、あくまで目線はキヨちゃんに向けたまま挨拶を始める

「どうも、整備の座学と実技担当の真木清人と申します」

「出会いは別れへの旅の始まり、その終わりを善き物にする為、皆さんの学生生活の彩りに尽力させていただきます」

真木は挨拶を終えマイクのスイッチを切り楯無に渡す

「メガネの先生のほうはすこしお堅いわねっ」

「知的でダンディ、嫌いじゃないわ!!」

伊達が挨拶をしたときのように生徒たちは騒がしくなる

唯一の男子生徒である一夏とて例外ではなかった、まぁ尤も他の女生徒ほど騒がしくなかったのは言うまでもなかったが

「はは…、これじゃまるで転校生みたいだな」

「だれかさんの自己紹介なんて見る影も無かったものなぁ?」

「な、それは言わないでくれよ」

織斑一夏の自己紹介、もう何ヶ月も前の話である

とあるアクシデントによりISを起動させてしまい世界中の注目の的となり

そして後の生き方を否応無く決められたあの日、入学式の後の教室で文字通り右も左も分からない一夏の自己紹介は散々なものだった

そんなこともあったな、と口元を緩ませる一夏

今思えばあれは現実を受け入れられない未熟だった自分のささやかな抵抗だったのかもしれない

「はい、ありがとうございました~、この後は質問タイム~と行きたかったところなんだけど、もうホームルームが始まる時間だから今日は無理ね」

「あ、でも真木先生は授業で会うことも多いから大丈夫よ」

「伊達先生も保健室に居る事が多いみたいだから、体調悪くなった子はチャンスね」

そんな理由で来られても・・・と一人苦笑する伊達

「それじゃ、新任の先生の挨拶はこれでお終い、お二人ともどうもありがとうございました~」パチパチ

挨拶を終えた伊達と真木は舞台袖に下がっていく

「ドクター挨拶上手かったじゃん、ばっちり練習してきたの?」

「それは暗に私が人前に出るのが苦手な人間であると揶揄しているのですか?」

「そうじゃねぇけどさ、演説とか講習とかやる人間じゃねぇでしょ?ドクターって」

「確かにここ数年はそういったことはしていませんでしたが、鴻上会長からスカウトされるまでは流れであちこち研究員をやっていたので大勢の前でしゃべる機会には事欠きませんでしたよ」

「なるほどね、恐れ入ったよ」

「では、わたしは次の時限から授業がありますのでお先に」
          ・・・・
「ああ、頑張ってな。真木先生」

「・・・・・・・・・・・・」

「昼休み、食堂でなー」

真木は何も言わず去っていく

「さて、俺も行きましょうかね」

そういって伊達は保健室に向かうべく歩く

「そうだ、職員室寄ってミルク缶取ってきた方がいいな」

職員室は授業に行く先生の大半が出て行って今は少ししか居ない

「先生って忙しいんだねぇ」

ミルク缶を担ぎなおした伊達は足早に保健室に向かおうとする、その時

「伊達先生~、今お暇ですか?」

「あぁ、山ちゃん先生、何か用?」

「まだその呼び方するんですか~、はぁ、まあいいです」

「はは、山ちゃん先生は授業とか無いの?」

「ええ、この後SHRなんですけど、それでちょっとお願いが…」

「?」

その頃一年一組

「どんな先生だろって思ってたけど想像以上な人たちだったね、ラウラさん」

「怪しい二人組だったな、しかし男にISの講師が務まるのか?」

「あはは、真木って先生は変な人形持ってたね」

始業式が終わった後も教室では女の子達がわいのわいのと騒いでいた

「え、本音新しい男の先生にもう会ったの?」

「うん、一昨日と昨日にね~、二人とも背が凄く高くてとってもカッコ良かったんだよ~」

「織斑君とどっちがカッコ良かった?」

「う~ん、よく分かんないかな~…」

「でも、伊達って先生男らしい顔してたわよね!」

「真木先生もクールでミステリアスよねー」

そして学園唯一の男子生徒、織斑一夏にも話題は降りかかる

「ねぇ一夏!男の先生が来るって本当だったんだね。一夏はどう思う?」

「どうって・・・、そうだなぁ、言ってもあの二人は先生だからなぁ。」

「最初男としてここにやってきたシャルが女だって分かったときは出鼻挫かれたけど」

「うぅ・・・し、仕方が無いじゃない!あの時はしょうがなかったんだよ」

「分かってるよ、そういう意味で言ったんじゃない。」

「まぁ、あれだな。今回は疑うべくも無く“男”だからな。伊達先生は結構話し易い方だったからちょっと気楽かな?」

「そっか、良かったね一夏」

キーンコーンカーンコーン

一夏がシャルロットと談笑していると予鈴が鳴る

真耶が教室の開きっぱなしの入り口の戸の近くで誰かと話をしている

「あれ?山田先生が・・・、予鈴もう鳴ったか?」

「ううん、まだの筈だよ・・・」

踵を返し教室内に入ってくる真耶とその後ろには…

「あれ?山田先生の後ろ…、伊達先生よ」

「キャアァァ――、皆!一大事よ一大事!」

「すごい長身ね、腕も太くてたくましい」

話題の人である伊達が

「おーおー、すげぇ騒ぎようだな」

「すいません…、はい、ちょっと静かにしてくださいね」

パンパンと手を叩き生徒達を鎮める真耶

ミルク缶を背負う伊達のもう片方の手には蛍光灯が握られていた

「あー、あそこね。電気切れてるの」

「あ、はいすいません、お忙しいところを」

「いいよ、どうせ暇だったから」

靴ひもを直しながら答える伊達、その様子を見た生徒達も気づく

「あ、そこの蛍光灯切れてるわ」

「2学期の終わりから切れてなかったかしら?」

「一か月近く放置してたのかよ…、山ちゃん先生もズボラだな」

「だからその呼び方止めて下さいって言ってるじゃないですかぁ」

ポカポカと伊達の胸板を拳を握って叩く真耶、生徒たちからクスクスと笑い声が聞こえる

「山ちゃん先生だって、カワイイ」

「山田先生顔真っ赤ー」

「山ちゃん先生」「山ちゃん先生」

生徒達がからかって呼んでいると真耶の顔はさらに赤くなる

「もぉー、生徒たちが真似したー!責任とって下さいよぉ」グスッ

涙目になって抵抗する真耶、今にも泣き出してしまいそうだ

(あちゃー、やりすぎたか…) (ちょっとからかい過ぎたかな?)

急にクラスに気まずい空気が…

やっちまったという顔をしながら伊達は近くにいた出席番号一番の相川清香に小声でたずねる

「なぁ、これって俺のせいかな?」ボソボソ

「たぶん…、というか絶対」ポソポソ

その後どうにかして真耶の機嫌を直した伊達、その際の条件として食堂のパフェをご馳走することになったらしい

それを聞いた何人かの生徒がズルイなどと口にしていたが八割方無視し作業に進む

「そうだ、話がこじれちゃったけど蛍光灯替えなきゃ」

「はっ、そうでした!」

「当然だけど届かないよね」

「そう…ですね」

「しゃあねぇ、そこの少年!」

「お、俺ですか?」

「悪いんだけど、ちょっとこっち来てくんない?」

「いいですけど…、俺は織斑一夏って名前が…」

「わーったわーった、織斑ちゃんね。ちょっとこれ持って」

「ちゃんて…、脚立取ってくるんですか?」

「いらないよ、ちゃんと持ってろよ?っよっとぉ」ガシッ

蛍光灯を一旦一夏に預け伊達は一夏の腰を自らの右肩に乗せそのまま立ち上がる

「おわっととぉ、ちょ、先生」

「軽いねぇ、ちゃんとメシ食ってるか?」

「食べてますよ!これ替えりゃいいんですよね?」

このやりとりを見ていた周りの女子からは溜め息が“ほぅ”と漏れる

「男同士って絵になるわねぇ」

「織斑×伊達先生!今年の夏はこれで決まりだ」

「一夏…、僕も男の子だったころにはあんなことしてくれてたのかな」

「あの新任教師…、人の嫁に勝手な真似を…」

「よし、取り付け完了!」

「よっしゃ、降ろすぞ」

「どうもありがとうございました」

「せんせーありがとー」

「大変美味しゅうございました」ジュルリ

一部変な言葉が聞こえたが気にはしない、すると本鈴が鳴った

「よし、じゃあ俺はそろそろ戻ろうかな」

「えー、そんなぁ」

「待ってよ、せっかく来たんだから伊達先生の事もっと教えてよぉ」

「旅の話聞かせてー」

「そんなこと言ったってなぁ、どうよ山ちゃん先生」

「私も伊達先生のお話聞きたいです」キラキラ

目を輝かせて伊達に迫る真耶

(参ったなぁ、あんまり得意じゃねぇんだけど…)

「っていうか、授業しなくていいの?もう本鈴なったじゃん」

「大丈夫です!担任の織斑先生も職員会議でまだ来てないみたいですから」

「織斑先生?…あぁ、あの気難しそうな顔した釣り目のネーちゃんね」

「「「ッッ!!」」」

伊達の千冬に対する第一印象を聞き教室内は騒然となる

もちろん伊達に悪意はないのだがISが良くも悪くも社会の主流となっている今の社会で一部では神格化さえされている千冬に対してこの言い様はかなり衝撃的だった

「き、気難しそうって…、なんて恐れを知らない…」

「千冬姉にそんなイメージ持つ人間初めて見た…」

「あれ?何か俺まずいこと言っちゃった?」

伊達が?マークを頭に浮かべると一人の生徒がバンッ!と机を叩き立ち上がる

「貴様ッ!教官を侮辱しているのかッ!」

「ちょっと、ラウラ落ち着いて!」

今にも掴みかからんとするラウラを抑え込むクラスメイト

真耶が慌てて伊達に詰め寄る

「だ、ダメですよっ織斑先生は元、いえ今でも世界最強のIS操縦者なんです。そんな無礼な口を訊いちゃ」

「そうですよ伊達先生、偉い人なんですよ織斑先生は,そんな軽口叩くなんて狼藉見過ごせません」

本来教室にあるべき黒板の位置に存在する立体映像のスクリーンに映し出される千冬の顔写真や現役時代の映像を見ながら

感心するような顔をする伊達

「ワリ―ワリ―、日本に帰ってきたのちょうど一昨日なんだ、織斑先生がそんなにすごい人だったなんてな」

「思ってもみなかったわ。ゴメンな」

頭を下げながら言葉をつなぐ

「確かに人を見かけで判断するのは良くなかった、先生らしく無いよな」

「反省しなくちゃな………けど!」

申し訳なさそうな台詞を吐いていた伊達だが語尾を切り上げ話を盛り返す

「強いとか、偉いとか、そんな理由で逆らっちゃ駄目とか言うこと聞かないと駄目とか、そういうのは正しいと思わないな」

そう言いながらスマートフォンの接続端子にケーブルを繋ぎスクリーンに画像を投影していく

様々な国名の書かれたフォルダから一つのファイルを開き写真をスクロールしていく

「挨拶の時も言ったけど、医療支援しながら世界中を回っていたんだ」

「世界中の貧困・紛争地域や難民居留区とかな」

写真には赤茶けた地面に掘っ立てた簡易テントで治療を行う伊達や他の医師達の姿が映っている

目で追いながら順々に画面をスクロールしていく,現地の子供と戯れている姿や白い布をかけられた冷たくなってしまった体の前で力なく座り込んでいる姿

「何年も世界中巡ってりゃ、いろんなことがあったよ」

「流行り病に罹って死にそうになったり、紛争に巻き込まれたり」

「嫌ってほど自分の無力さを感じさせられた事もあるし、時には銃を持たされて戦場に駆り出された事もある」

白衣を土や泥で汚した姿に銃を抱えた伊達の姿が映ってた写真でスクロールをとめる、よーく見ると裾の方に焦げ跡や返り血のようなものも見える

最初の方は隣の友達と談笑しながら聞いていた女子たちも話が進むにつれ無言のまま前を向いていた

「人を撃ったことだって一度や二度じゃない、命を奪っちまったことだってな…」

教室が完全に静寂に包まれる

「笑っちゃうだろ?命を助けに来たお医者さんが、必死な顔して銃を撃ちまくってるなんて」

「ごめんな、何か自分でも何言ってるか分んなくなってきた」

「まぁ、とにかくあれよ、ISの事は気の利いた兵器だって事ぐらいしか知らないけど、戦争とか命の現場とかそういうのを人よりいっぱい見てきた俺から言わせると」

「“本当に大事にしたいもの”と“傷つける理由”ってのはちゃんと自分で見つけたいってこと」

「じゃないと自分で自分に嘘ついて泣かせちまうことになるからね」

話を終え一呼吸置く伊達

      シ~~~ン

教室は相変わらず静かだ、見渡すと俯いてる女子もいる

(あれ?またなんか変なこと言っちゃった?)クルッ

?マークを浮かべながら真耶の方を振り返る伊達、彼の目に映った真耶の姿は…

「ウェッ、…エグッ…グスッ、グスン…伊達先生ェ~」ポロポロ

嗚咽を漏らし涙を流しながら真耶は伊達の手をガッシと掴む

「感動しましたッ!伊達先生がそんなに思慮深い方だったなんて!」

「えっ、いやあの…もしも~し」

「辛い経験をされてきたからこそ命の大切さを教えるために教鞭をふるうなんて、素敵です!」

「え、いや、そういう意味で言ったんじゃ…」

狼狽しながら教室を見渡すと生徒達がワッと湧きながら羨望や尊敬といった煌めいた視線でこちらを見ている

「海外で医療支援なんて立派だわ」キラキラ

「すっげぇよ、命を助けるなんて伊達先生最高だよ」キラキラ

「医者としての実績も十分なのね、すこし見直しちゃった」キラキラ

「認めたくはないがあの構え方は堂に入ってるな」ウヌヌ

「ラウラ…、そこは関係ないと思うよ」

どうやらこの一件で伊達の評価は随分上がってしまったようだ、しかし当の伊達はこの反応に難色を示している

「ちょっと待ってよ!俺の言ってる事あんまり伝わって無いじゃん!」

「確かに一般的に見れば“良い事”で済まされるような事はしてたよ、けどそれはもう済んだことじゃない」

「そのぉ…、称号とか資格よりもその先ッつうか…だぁぁ~~~なんて言ったらいいかわかんねぇ」

頭を掻きながらやり切れない表情をする伊達、上手く言葉が出てこないのだ。そのとき…

「要は外面で判断してほしくない、だからと言って肩書きや経歴で話を片付けられるのも嫌、という訳か」

「何も考えてないような顔をしていて中々我儘な男だな」

突然背後から自分の心情を的確に解説され、目を瞑り自嘲的にふっと息を漏らす

痛いところを突かれたな、と思いながら声のする方に喋りかけながら振り向くがその表情は凍りつくことになる

「まぁそう言われると辛ぇけど、自分なりの生き方ってやつk…」ピシィッ

その先にいた人物こそ、伊達がこの話をする切っ掛けになってしまった人物、織斑千冬その人である

「私がいない間に随分話が盛り上がっていたようだな、どうぞ続けて貰って結構ですよ?伊・達・先・生」

やや冷っぽい流し目を送る千冬、表情から察するに話の内容は全て聞かれていたようだが、特に怒っているような様子ではなかった

「いや、盛り上がってきたっつうか…、もうクライマックスも終盤辺りなんだけど…」

途切れ途切れになりながら返事をする伊達、仕方ないといった表情で鼻息を鳴らし話を続ける

「まぁなんつうか、大事だと思うならそう思えるだけ相手の事知ってほしい」

「ちゃんと自分の本質を見てほしい、それが大事よ」

思いがけずまるで演説の真似ごとをしてしまった伊達はすこし照れたように頭をかく

「ごめんな、初対面でこんな説教臭いぇこと言っちまって」

「せっかくこうして出会えたんだし、当然のことかもしれないけど目に映るものを大事に思えるようになりたい」

「この学校ではじめて入った教室にいた皆や」

「「「キュンッ///」」」

「山ちゃん先生だってそう」

「えっ///いや、そんな…、まだ早いですぅ///」テレリテレリ

「もちろん、織斑先生もね」

「…………フン」

(――ちょっとクサかったかな?ま、子供相手にはこれぐらいがちょうどいいよな?)

「じゃあ俺はそろそろこの辺で!またどっかで会ったら声かけてよ」

「え~、もう行っちゃうんですかぁ」

「ワリーな、でももう授業始まってんだろ?」チラリ

そういって伊達は視線を移す、その先にいた千冬は息を軽く吸い

「そうだな、さぁ席に着け!気難しい顔したツリ目のねーちゃんの素敵な授業をはじめるぞ」

教室が一斉にドヨドヨっとした不穏な空気が流れる、どことなく千冬から発する雰囲気は冷ややかなままだ

「あちゃー、やっぱし聞かれちゃってたか…」

気まずそうに頭の後ろのほうをポリポリと掻く伊達

「あれだけ大きな声で話していれば当然よね…」

「織斑先生…、口元は笑ってても目が笑っていない…」

伊達はバツが悪そうに口元を突っぱねさせ近くにいた女子に耳打ちするような姿勢で

「けど織斑先生だってひどいんだぜ?初対面で俺とドクターに“怪しい二人組”なんて言っちゃってさ」

特に声の音量を下げるでもなく普通に言い放つ

すると教室からクスクスと笑い声が漏れだす

「すまないな、初対面の人間が偉いかどうかなど考える余地も無かったのでな」

「一目見て率直に抱いたイメージを言ってしまった」

してやったりといった顔で得意げに笑みをもらす千冬

「まいったな、コリャ…でもな、一つだけ覚えといてくれ」キリッ

かつてよくやっていたように人差し指を立て1を作り急に真剣な顔つきになり千冬や真耶やクラス中に見せる伊達

「怪しいのはドクター一人で十分だから。……ネ♡」ガラガラ

最初こそは真剣な顔をしていたが最後はおどけたような顔をして教室を後にする

「伊達先生…不思議な方でしたね」

「あぁ、あんな風な男は久しぶり…いや、初めてかもしれんな」

「それってどういう意味ですか?」

真耶の問いに答えた千冬に不思議に思ったクラスの女子が再び問う

「いや何、社会に出る頃には天才だのブリュンヒルデだの色々な称号を身に授かっていたからな」

「気がつけば男も女も大人も子供も皆私を雲の上の存在のように扱うものだからな、ああいった人間に会うのは初めてだといっただけだ」フフッ

「さぁ、授業を始めるぞ!日直、号令をしろ」

こうして生徒たちの学生生活が始まってゆく。一方そのころドクターは…

>>1です、伊達さん交流編はここでおしまい

次回はドクター編、いつできることになるやら…

てなわけでサヨウナラ

遅くなったけど箒ちゃんハァァッピィィぃ、バァァーーァスデェェェ~イ

次回更新は未定です

乙!
次の更新まで待ってるぜ!
…受験生だが

〉〉1乙
伊達さんテライケメン

〉〉145
予鈴なったのに一夏達はなってないって言ってるぞwwww

1乙

投下乙
京水さんらしき人混ざってたようなwwww
伊達さんはもちろんだが真木博士もかっこいいなおい

ドクターの中の人は公式サイトだとびっくりするくらいイケメンだからなwwww

マズイな…
まさか今頃になって感覚麻痺なんて設定が出てくるなんて…

>>165

どういう意味?

お久しぶりでヤンス

お気づきの方もいると思いますが、にじファンさんでもこのSSを投稿させてもらってます

再編集して、キャラや舞台設定も補足していますので良かったら見てやってください

では始めていきます

今回はドクターのターン

始業式が終わり伊達と別れた真木、次の時間から早速講義があるため片づけが途中のままの準備室にいったん戻り指定された書類や参考書を取り足早に二年生の教室へ向かっていた

(しかし本当に私が子供相手にものを教えることになるとは…、失ったバースシステムも早く完成させなければならないというのに悠長なことをしている暇はありまs…)

自身の在り方について考えていた真木はそこではた、と足を止める

(そうです、私には世界を美しいままに終わらせるという使命があったはず、この身に宿るコアメダルもその使命に応じ力を与えてくれた)

そう思い自身の体内に眠る紫のコアメダルに意識を集中させ双瞼に紫の光をともす真木、しかし反応はほんの数秒で消えもとの黒目にもどってしまう

驚きハッと胸元を見下ろす真木、自身の異変に困惑を覚える。前の世界で感じていたコアメダルの力による胸のざわつきも消え失せている

(コアメダルが休眠状態に入っている…?あるいは一度死んだ肉体が蘇ったことでメダルが適応しきれなかったか…)

再び歩き始めながら真木は持ち前の頭脳で自己分析を始める、と、その時

「あ~れ~れ~、真木所長じゃないですかぁ~!?」

底意地の悪そうな声とともにカツカツとわざと足音を荒げているかのように靴底を踏み鳴らし一人の女性が、否、後ろからは取り巻きの二人の女性が一歩引いた立ち位置にいる

そう、伊達の配属先である新開室の以前の暫定管理責任者であるキーラ博士と取り巻きの女性化学者二人だ

「もうとっくにこの学園から消えたと思ったんですけど、っていうかここにいる意味が分からないんですよねぇ、アンタもあのヒゲ面の男も」

「そうよ、男はここにいるだけで悪循環なのよ!って、ちゃんとこっち見て話聞きなさいよぉ」ダンッ

取り巻きの一人がヒステリックに叫び足を地面に打つ

こんなときでも真木は平然としており、相変わらず人形だけに視線を送っていた

「聞いていますよ、私も同じ科学者の端くれですから」

「アンタなんかと一緒にしてるんじゃないわよぉッ!虫唾がはしるわ!」

取り巻きのもう一人が真木にくってかかろうとするがそれをキーラが止め、今度は彼女が真木に近づく

「やめなさい、これでも上司なんだから、それなりに敬ってあげないと…ネッ!」ギュムッ!

そういってハイヒールの踵部分で真木の爪先を勢いよく踏むキーラ

真木はほんの一瞬顔を歪めるがすぐにもとの表情にもどり

「同業者の話はどれほどつまらなくとも一度は耳を貸すようにしています」

「しかし先ほどのあなた達の言葉は科学者としての言葉とはとても…」

嘲るように軽く鼻息をならす真木、キーラは凄まじい怒りの表情で真木を睨みつける

「上等だよテメェ…、ここに居られねぇようにしてやるよ…」ピキピキ

ソバージュヘアを逆立てて体を震わすキーラ、しかしその形相は一気に緩むことになる

その原因は一つの足音であった

「あー、いたいた、見つけましたよ真木先生」

その声の主は水色のショートヘアに“捜索中”と書かれた扇子を携えた少女

そう、生徒会長更識楯無であった

「もう授業のチャイムなってますよ~、うちの担任も『迷ってるかもしれないから』なんていっちゃって」

「私が探しに行く事になったんですよ、ってあれ?取り込み中でしたかぁ?」

わざとらしく首をかしげる楯無、それを見たキーラは先ほど真木に向けていた形相が嘘だったかのような笑みを浮かべ

「いいえ、ごめんなさいね授業に遅れさせちゃって、大事なお仕事のお話していたの」

そういって取り巻きを連れて去っていくキーラ、完全に見えなくなると楯無はその方向に向かってアッカンベーをしていた

「べーっだ、何よワザとらしい、隠す気もないのに取り繕うとしちゃってさ」

キーラは自分の態度の悪さや所業の数々を表向きだけ取り繕おうしており起こした問題は大概の生徒は既に知っている

隠す気が無いのがさらに質が悪い

なので他の生徒も別段特別な態度をとる事も無くなるべくいざこざを起こさないように過ごしている

「真木先生も気にしないでくださいね、あぁいう人は一生あぁいう人生を生きていくんですから」

「まぁ、それでも…」

呆れたように言う楯無、だが急に含んだように破顔し真木の方を向き撫でるような声で言い放つ

「それでも耐え切れなかったらいつでも言ってくださいね、私が優しく慰めてあげますから」チラリ

スカートの裾をつまみ妖艶な視線を送ってくる

まるで昨日部屋を訪れてきた生徒会長の態度とは思えない目の前の少女の雰囲気に真木は何も言おうとしない

「…………………………」

「…………………………」

楯無も無言のままだ

「「…………………………」」

「あ、あの…真顔でスルーって一番リアクションに困るんですけど…」

「お気になさらず、私個人の問題に生徒である君に苦心していただく必要はありません」

「そ、そうですか…、あ、急がなきゃ。ホラ、行きますよ」

そういって真木の右腕を引く楯無、だがその弾みで真木の左腕に乗っていた人形がポトリと落ちそのままコロリンと足元から遠くへ転がっていった

「あ、人形が…、ごめんなさい、拾ってきま…」

「は…はァッ…カハっ…ひゃい…ひゃいい~ッ!」ガクッ

急にうろたえ出した真木はわなわなと身体を震わし膝を地面に着き這うように人形の方へ向かっていく

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プッ」クスクス

突如豹変した真木に楯無は目をパチクリとさせていたがあまりに可笑しい真木の様子に笑いを堪えられなくなり

「アハハハハハハ、おっかし~い!クールな印象だって言われてた真木先生が・・・アッハハハハハハハハ」ハァハァ

弾けたように大声で笑い出す楯無をよそに無様な姿を見せてしまった真木は人形を拾い上げスタスタと去っていく

「あぁ~、笑いすぎておなか痛い・・・あ、待って下さいよー」テクテク

多々あったがようやく楯無のクラスに到着

一歩くぐると教室内は歓声と高いテンションに包まれ一気に騒がしくなる

だが真木とて前の世界ではこんな年端も行かない少女達の何倍もハイテンションな男の下で働いていた経験から特にどうということもなかった

よく見ると高価そうな一眼レフのカメラをこちら向けてシャッターを切ってくる少女もいる

神経質な性格の真木としてはあまり喜ばしくない事態ではあるが、一昨日自分が伊達に言った“忍耐力をつける”という言葉を思い出し

ここでくだらない理由で面倒ごとを起こすと絶対に伊達に文句を言われる、そう感じた真木はしかたなく目を瞑ることにした

黒板の隅でパイプイスに腰掛けていたこのクラスの担任教師はさっきから黙りっぱなしの真木に不思議そうに見つめてくる

「ごめんなさいね、騒がしくって、男の人って珍しくて。真木先生、もしかして緊張されてるんですか?」

「いえ、では始めていきましょうか」

こうして、いよいよ真木清人の授業が始まる

「今回は…運用の『通信手段の安定活用』についての復習ですか、参考書の172Pを開いてください」

淡々と言い放つと一人の女生徒が不思議そうに手をあげて立ち上がる

「あの…それは一年の範囲で今日は設計の『空気抵抗と機体構造』の復習のハズなんですけど…」

そういって二年生用の参考書を見せてくる

「…………ッ!!」(((゚д゚三゚д゚)))

まるで変な操り人形のように愕然とした表情で手もとの資料とその参考書を何度も何度も交互に見やる伊達

それを見兼ねた担任の教師がおそるおそる真木に話しかける

「あの…真木先生?よろしければ指導項目と資料リストを見せて貰ってもよろしいですか?」

ハッとなった真木が目を見開いて震える手で要求されたものを恐る恐る渡す

「これは…、間違いだらけになってるわ。これをどこで受け取ったんですか?」

毅然とした態度で問いかけるとようやく平然さを取り戻した真木が静かに答える

「どこで…ですか、それは例の開発室で私宛の封筒から出したものですが」

「封に開けたような痕跡があったのでもしやとは思ったのですが…」

そう答えると担任の教師は『やっぱり…』といった表情をしていた

周りを見渡してみると大概の生徒も同じような雰囲気であった

「またあの博士だわ」  「例の新人潰しね」

「個人的な嫌がらせに生徒を巻き込むのは止めてほしいわ」  「ほんとに迷惑ね」

そんなヒソヒソ声もちらほら聞こえる

そう、新人つぶしで教師の面目を潰すのはキーラの常套手だったのだ

こうして自分の気に入らない教師のプライドを粉々に叩き潰して追い出すのが彼女のやり方である

「ま、まぁ気にしないで下さい。あとで私のところに来ていただければ新しい項目と資料をお渡ししますから」

「それに今回は復習だけですから、少しくらい遅れても大丈夫ですよ」

慌ててフォローに入る担任教師、そういって自分の教科書を渡してくる

「恐れ入ります、では始めさせていただきましょうか」

気を取り直し授業に使うホログラム用のカートリッジを持参の資料の中から取り出し機器に接続させる

「機体というのは使用の用途に分かれ様々な形状を持っており、立体映像に移っているとおり…」

話しながら真木は旅客機やVTOL、さらには戦闘機など様々な

航空機のホログラムを起動させていくがピタリ…と手を止める

「先生!どうかしたんですか?」

「いえ、ここまで邪魔立てされて仕方なく進めていくのも気に食わないので…」

モニターのスイッチを切り

「ここからは私の流儀で進めさせていただきます」

バサリと羽織っていたコートを脱ぎ内ポケットから取り出したのは缶モードのカンドロイド

赤に紫、橙などさまざまな缶ジュースのプルタブをプシュッっと開け並べる

「何?あの缶ジュース」  「見たことのないメーカーね」

「ナゾのミステリアス教師、授業中にジュースを飲む…ダメだ、記事として弱いわ」

「これで10本以上開けたわ、早飲みでもするのかしら?」

クラスの女子が再び騒ぎ出した頃、真木は教卓狭しと缶を並べ終えていた

「あの、真木先生…一体何を?」

担任の教師も何度目かわからないくらい首をかしげ真木に問いかける

「先ほども説明させていただきましたが航空機という物は用途や条件によって様々なものがあります。このように…」

パン!と手を叩くとプルタブの開いていた缶たちが一斉に形を変えあたり一面に飛び立つ

己の使命のために家族を棄て、職場を棄て、地位を棄て、果てには人間さえも棄てたグリード、真木

そんな彼がここでこんな事に己の研究成果であるカンドロイドを使うのは散々虚仮にされ、男の意地に火がついたのか

はたまた、彼の研究者根性が、授業のよりよい進め方を計算したのかは不明だが、ここでの彼は相変わらず無表情であるが、まるでどこにも見せないような顔をしていた

「タカータカー」バササッ  「クジャクー」プルプルプル

「プテラッ プテラッ」ギューン

見たこともない技術を目の当たりにしクラスの少女たちは目を丸くして見ている

「輸送や偵察に適した機体」そういってタカカンドロイドを自身の人差し指に止める

「さらには一定速度を落とすことで安定した静止活動を行う機体」そういって今度はクジャクカンドロイドを手許に寄せる

「そして新技術を搭載することで革新的な伝達速度を獲得した機体」最後にプテラカンドロイドを頭上でくるくる飛び回らせている

「この機体のように条件に適した構造というものが効率のよい安定した運用へと繋がるので…」

言葉半分で絶句する真木、その理由は…

「何この鳥!チョーカワイー//」  「こっちのクジャクもカワイー!」

「一家に一台欲しーい」  「うわさの新任教師、意外とかわいい物好き…う~ん、これも弱いなぁ…」

皆突如飛び出したカンドロイドに夢中になってしまっているのだ

「ねぇ、真木先生!これどこに売ってるの?」  「もしかして作ったの?」

まるで休み時間のように騒がしくなってしまった教室の空気を元に戻すべく真木は現場の静止に移る

「お静かに、ドロイドは私が作ったものですが管理を他人に委ねるものではありません」

「そんなぁ~、あたしに一匹下さい!」  「あいた!ほっぺた突っつかれたーでもカワイー」

「っていうか私に」  「いや私に」  「私に」  「私に」 「真木先生は…メカフェチで独占欲強し…、何か方向性がずれて来た…」

生徒達が皆寄ってきて真木はもみくちゃにされ、人形のキヨちゃんが落っこちてしまい真木は例によって悲鳴を上げてしまった

その姿に生徒達はドン引きであったそうな…

真木清人の人生初の授業はとにかくこうして静かに、いや騒がしく幕を引いていった、受けはそれなりに良かったようである

その頃・・・

先ほど真木に一方的に突っかかってきたキーラは取り巻きと別れ新開室の研究室内の自分のデスクに座る

さっきの真木とのやり取りからイライラしっぱなしであった

「クソが!男の癖に生意気な口利きやがって!今までのやつみたいに扱き下ろして使い捨ての下僕にしてやろうかと思ったが、それだけじゃ腹の虫が治まらねぇ」

おもむろに机の上のノートパソコンを起動させ機体データの画面を開く

そこには明日の模擬戦で教師側が使うISの一つであるラファール、そして簪から預かった打鉄弐式の二機が移っていた

「そうだ・・・、これをこうすれば、クク、テメェの人生ゲームオーバー・・・ってな」

暗い室内でパソコンの光に照らされキーラの顔が邪悪に歪む

>>1です、今回はここまで、書いてて気づきました。

やっぱり自分はドクターが好きなんだなぁって(笑)

伊達さんとのコンビで一番光っているのは後藤ちゃんではなくやはりドクターだと思うんですよね

伊達さんと後藤ちゃんも面白いんですが、このコンビは伊達さんが絶対的優位に立っているんですよね

師匠の伊達さんと弟子の後藤ちゃんだとどうしても伊達≧後藤になるんです

でも伊達さんとドクターだとそれが伊達≒ドクターになるんです

そこがいいと思うんですよね

では次回も宜しくお願いします

伊達さんがISの世界に来たら、一夏のフラグを全部奪っていきそうだなww

ギャグとシリアスどちらも違和感ないコンビだな

>>183
伊達さんは大人の男だからむしろ一夏には「男なんだろ?バシッと決めろよ」とか言いそうだよな
彼の背中は、あの後藤ちゃんでさえ変えたからね。
これから一夏がどう変化していくか期待

そういやグリードのままなんだよなドクターって
・・・ドクターって人間状態だったら普通の兵器で死ぬのかな
本編でそんなシーンがあったかもしれないけど・・・・

結局本編は最後まで伊達さん生きてたな

お久しぶりです、>>1です

長い間ご無沙汰していました

TVシリーズ終了してしまいましたね、まさかドクターがあんな最期を迎えるとは

伊達さんが帰ってきてテンションあがりましたけどやはりドクターとのコンビで生きていてほしかったです

本日の投稿は夜の11時か12時くらいからはじめて行きます。よろしくお願いします

フン、>>1が戻って来たのもオレの実力だ

伊達「アンタもすっかり変わっちまって…」

真木「おかげさまで」

このやり取りは悲しかったな

遅くなりました、早速始めていきます

>>190さん >>1の呻き声

>>191さん あれが最後の会話でしたからね、確かに悲しかったです

ちょっと間が空いたので、三つの出来事風におさらい入れときます

http://www.youtube.com/watch?v=g2WEpshwhqc

仮面ライダーバース?これまでの、三つの出来事

一つ、オーズの世界で相討ちになった伊達と真木がISの世界へ

二つ、二人はそれぞれIS学園で教師となる

そして三つ、真木に異様な執念を抱く女、キーラが行動を起こし始める

三学期最初の授業日も時間が進んでいき、先ほどの授業が終わりもう昼休みである

「ふ~、腹減ったなぁ、食堂行くか~」

学園で唯一の男子生徒、織斑一夏は教科書の類を仕舞い込み昼食の準備を進める

「一夏~、学食食べに行きましょ♪」

隣のクラスの鈴が一夏を昼食に誘いに来た、が、それにセシリア達が口を挟む

「お待ちくださいな!一夏さん、今日は私とお食事に参りましょう」

「待て、人の嫁を勝手に連れて行くなど許さんぞ」

「一夏は貴様のものではない!」

「そうだよラウラ、ここでそれは理由にならないよ!」

「ハァ…」

いつものやり取りを繰り広げる少女達に思わず一夏はため息を漏らす

「箒さん達も相変わらずだね」

「三学期になってもまだやってる…、もういい加減飽きたよ」

「だねー、わたし達も学食行こっかー」

同じクラスの谷本癒子、夜竹さゆか、布仏本音の三名は教室から出ようとする

「今日は何を食べよ、キャッ!」ドンッ

「邪魔するよ~っと、うぉっ!」ドンッ

先頭にいたさゆかが教室から足を踏み出すと突如現れた伊達の厚い胸板に顔がぶつかり弾き飛ばされる

「おっ!大丈夫か?」がしっ

弾みで尻もちをつきそうになった彼女の腕を伊達の大きな掌がつかむ

「えっ、伊達先生!?何で!?あっ、私の手///」

「ケガとかないな?ワリー、余所見してたわ」

「伊達先生、また来てくれたんですか!?」

「あぁ、それでなんだけど、織斑ちゃん、いる?」

「織斑ちゃんって・・・、織斑君ならあそこに」

「そうか、あんがと!」

軽く礼を言って伊達は教室の中程へと進んでいく

「だてせんせ~、何しに来たのかな?」

「さぁ~?」

そして伊達は徐に一夏のほうに向かい・・・

「お~い!」

「伊達先生!どうしたんすか?お昼だってのに」

「織斑ちゃん、メシまだだったら一緒にどうかなって思ってさ」

「男一人で窮屈してねぇかと思ってな」

「男同士話してぇ事とかあるし」

「それに一昨日のお礼もあるし、篠ノ之ちゃんも一緒に、な!」

「行きますッ!なぁッ、行こうぜ箒!」ワクワク

IS学園に来て以来同性と滅多に食事をする機会の無くなった一夏は目の色を変えて食いつく

そんな珍しい男同士のやりとりを一部の女子は相変わらず溜息とともに目を輝かせていた

「あ、あぁ、たまにはこういうのも悪くないな」ニヤリ

「OK!そんじゃ行くか!」

ほくそ笑みながらセシリア達を見る箒、女だらけで一夏を囲むより多少部外者が居ようと女は自分一人だけ、いつもより数段都合がいい展開だ

だがそれに鈴が口を挟む

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!先生だからって勝手に連れて行くなんて公私混同よ!」

「なっ!鈴、貴様、横やりを入れるな!これは一夏や私の問題だ!」

「いや、これは夫婦の問題だ!見ず知らずの男に預けて一夏にどんな影響を及ぼすかわからん」

「ラウラ!お前何言ってんだよ、せっかく先生が誘ってくれたのに」

「一夏さんっ!私はこうして一夏さんとお食事をご一緒できるのをずっと楽しみにしてましたのよ!」

「そうだよ一夏!また一夏はそうやってみんなの期待を裏切って一部の人だけ喜ばせるんだから!もういい加減にしてよ!」

束になってかかってくる四人に思わずたじろぐ一夏と箒

「と、いうわけで伊達先生は今回は諦めて下さいッ!」

四人が一夏を庇うように立ちふさがる。それを目にした伊達は…

「ふ、ふふっ、あっはっはっはっは!!」

突如腹を抱え笑いだした

「あっはっはっは…ハァハァ、あ~おもしれぇ」

変貌した伊達に目を丸くし、問いかける一夏

「あの~、どうかしたんですか?」

「いやぁ~、あれだな!若いっていいなぁって思ってさ、ギラギラしてパワーがあって!」

「…?どういう意味ですか?」

「後ろの娘猫(こねこ)ちゃん達に聞いてみな」

そういって顎で示した一夏のそばにいた箒達五人は顔を真っ赤にして俯いている

「心配したのも杞憂だったな、俺から誘うのは野暮ってこった」

「えっ、それじゃぁ…」

「あぁ、また今度にするか、ほんじゃ!」

そのまま踵を返し立ち去ろうとする伊達

「そんなぁ、じゃ、じゃあこれならどうです?晩飯いっしょに食べにいきましょうよ!」

「おい一夏!」 「ちょっと一夏!」

少女たちが反論するも一夏は意にも介さない

「わかった、わかったよ!じゃぁこれね」

そういって伊達が渡したのは一枚のメモ

「それに部屋番とかいろいろ書いてるから、時間見計らって来てくれよ。俺が居ればの話だけどな」

「わ、わかりました!ありがとうございますッ」ペコリ

「おい、男がそんなにペコペコ頭下げんなよ、カッコワリ―ぞ」

「はぁ」

「俺は何も君に頭下げてもらいたくて声掛けたんじゃねぇ、我一つ押し通すのに下手にまわってちゃ疲れちまうだけだぜ」

「はい…」

「もっと胸を張れ!君はその方が似合ってる。な!」ドン

力強く握った拳で一夏の胸を叩く伊達

「ま、今日が無理だったらまたいつでも言ってくれよ」

>仮面ライダーバース?これまでの、三つの出来事

一夏「IS…」

今度こそ教室から立ち去る伊達、足音もメダルタンクの揺れる音も聞こえなくなくなった教室

「「「…………///」」」ボー

「伊達先生…」

「威風堂々としてらして素敵だわ//」

「なんか頼れる兄貴分って感じよね」

この学園の数少ない男、伊達明に相変わらずクラスの女子は目をキラキラさせている

「伊達先生×織斑君!燃えてきたわ!」

一部例外もあるが…

「………」

伊達が自分に“男”として投げかけてきた言葉は一夏にしっかりと届いていた

「一夏!」

「わぁっ!なんだよシャル」

「なんだじゃないよ!どうして一夏はそうやっていつもいつも…」ブツブツ

シャルロットが怒りながら何かボソボソ言っているが一夏にはよく聞こえない

「と・に・か・く!早く行きますわよ!」

「そうよ!お昼食べ損ねたらアンタのせいだからね」

「うむ、時間は貴重だな」

(これがほんとの“膳は急げ”ってやつだな)

「い~ち~か~」ゴゴゴ

「な、何だよ箒、そんな険しい顔して…」

「せっかくのチャンスをふいにしたのに、またお前は下らない事を考えているんだな」ゴゴゴ

背後からオーラを立ち昇らせる箒、どこから取り出したのか手には竹刀が握られていた

「ちょ、ちょっと待て箒、一つ聞いておきたいことがあるんだ」キリッ

「な、何だあらたまって///」ドキッ

「箒…」ジー

「一夏…」ドキドキ

急に温度差が激しくなった教室の空気に周囲の生徒も静かに見守っている

「……この教室に猫っているのか」

「………は?」

「いやさ、さっき伊達先生が言ってたじゃん、子猫ちゃんに聞けって」

「でも猫って喋れない筈だよな…、どういう意味だったんだ?」

「……………………」プルプル

「どうした箒?トイレか?」

「………貴様は……」ユラ~

「何だよ、急に竹刀を振りかぶって…」

「貴様という男は!」ブンッ

何かが俺の頭にぶつかった音と凄まじい衝撃を最後に俺は気を失ってしまった

俺が気を失っている間にどうやら皆は勝手に食堂に食べに行ってしまったようだ

クソッ、こんなことなら伊達先生とメシ食いに行けば良かったぜ

俺が目を覚ました頃には次の授業が始まっていた、そう、俺は昼飯を食べ損ねてしまったのだった

けどまさか、俺がいない食堂であんなことが起きていたなんて…

~遡ること数分前、食堂・職員用席にて~

まだ授業は終わっておらずこの時間に仕事が無かった真木は早めに食堂に来ることになった

「おぉ、ドクター先に来てたのか」

「私もちょうど今着いたところです」

「そっか。いや、例の唯一の男子生徒誘おうと思ったんだけど、ドクター誘った手前それじゃカッコつかないと思ってさ」

「そうですか、君が行けばまた何か厄介事でも起こし兼ねないと思いますがね」

「言ってくれるねドクターも、そうだこれ見てくれよ」バサッ

伊達がテーブルの上に広げたのは可愛らしいマークのついた便箋やイラストの入ったハガキ等

顔を近づけると甘い香りが漂ってくるようなまさに華の女子高生という表現がピッタリのアイテムでいっぱいになっていたポケットから取り出されたのだ

「も~廊下歩いてるだけで貰うわ保健室戻ればおばあちゃん先生が預かってるわで大変なんだって~」

心の底から嬉しそうに話す伊達、人の好意に素直に触れるのはやはり気持ちいいものだ

内ポケットから煙草を取り出し火を灯し喫煙をたしなむ

「どーよ!この量、これはあれだな!俺の人徳の成せる技だな」

肺に煙を入れ会話にも熱が入り饒舌になる伊達

「で、ドクターは?あ、無い?まーそんなこともあるって」ニヤニヤ

真木に喋る暇を与えずガンガン喋っていく…ところが

「……伊達君」チョイチョイ

真木が指差した先には段ボール箱が椅子のそばに置いていた

「何だよその箱………ッ!?」ギョッ

段ボールの中には自分が受け取った何倍もありそうな手紙や便箋が入っていた

「人徳ですか…、両手いっぱいくらいの絵手紙数通で人徳ですか。それはそれは大したものですね」

実際に教壇に立つという違いもあるのだろうが、自分とあまりにも量に差がありすぎる

「こんな意味のない紙きれに一喜一憂して、本来の私たちの使命を忘れているのでは無いですか?」

「忘れてなんかいねぇよ、それに何だよ!意味がねぇって」

「言った通りの意味ですよ、いずれこの世界から消える我々には至極不必要な代物でしょう」

「不必要なんかじゃねぇ、きっと分るさ。分らせてやる、俺が!」

力強く言い放つとそのまま立ち上がりその場を出て行こうとする

「だったらこうしちゃいられねぇ、生徒呼んできてやろっと」

「騒がしいのは得意では無いのですが」

「そう言うなって!やっぱ例の子誘ってみるわ。ドクターもその手紙達、ちゃんとよく見てみたら?」

言うや否や加えていた煙草を携帯灰皿に仕舞い込み足早に去っていく

それと同時に昼休みを告げるチャイムがスピーカーから鳴り響く

「不必要ではない…ですか…」

~ず~っと続くからいいんじゃないの?~

~自分が死んだ後も何か残る~

ふと伊達の言葉を思い出す

~残れば醜い残骸です。美しいうちに終わらせなければ~

思い出す伊達とのやりとり

あの時、私は彼の戦力(ちから)を確かに欲していた

それは勢力の統一のために私の作ったバースを手中に収めるという理由

~そうでなければ本当に協力してほしかった~

コアメダルの力も無くしてしまった私に残ったのは僅かばかりの発明品、そして幼いころから人格のかわりに要求され続けてきた“優秀な才覚”

使命を果たせなくなった私が残すもの…

そうして真木はおもむろに段ボールの中から一通の便箋をとりだす

中を開けてみるそこにあるのはとゴテゴテした色遣いのペンで書かれたような文面

次に出したレターセットにはご丁寧にキヨちゃんの絵が描かれていた

こうして一通一通に軽くだが目を通していく

確かに財団から送られていた催促状や謝礼文のように堅苦しさや誠実さとはかけ離れたものではあったが

眼前に広がる手紙達には煌めく生きた想いが感じ取れる

「…等と、社交辞令にもならない奇麗事を言ってみても始まりませんが」

~俺達まだ生きてるってことだよな、儲けもんだ~

「終わりそこなったのが“儲けもの”ですか、全く君らしい」

一通り目を通し終わると手紙達を箱の中に仕舞い込む

ふと周りを見渡してみると授業を終えた女生徒がちらほらと入ってくる

相変わらず周りがザワザワと騒がしい

おまけに何人か真木の方へ寄ってきた

最後に授業をした教室で見かけた女生徒だ

「真木先生~、ご飯まだなんですか?」

「私たちと一緒に食べませんか?」

「ちょうど授業で聞きたかったところもあるんですよ!」

改めて思うがこういった空気は初めてだ、騒がしいのも苦手だし観察されるのも苦手である

「申し訳ありませんが私は伊達君と待ち合わせておりますので、御遠慮頂きたいのですが、…それに」

真木が目線を移した先にはあの女、相変わらず偉そうに取り巻きを引き連れたキーラが忌々しそうな目で真木を睨みつけていた

「コソコソしないで君も言いたいことがあるならばハッキリ言ったらどうです」

パニクった時しか声を荒げない真木が珍しく声を大きくして喋りかけている

「チッ!」ガタッ

キーラは不機嫌そうに舌打ちを打つと椅子から立ち上がり真木の方に近づいてくる

真木は周りにいた女生徒達に離れているよう目で指示を送る、女生徒もそれを察して足早に二つ程先のテーブルに移る

周囲に険悪な空気が広がる

ちょっと眠気がピークなので、いったんここで切ります、続きはまた明日投稿します

うおおおい!
どんどん読みてえなこういうのは!

is知らんけど!

俺もIS知らんが面白く見てる

そして今、その頃伊達は…

「いやぁー、面白いのなんのって!まさかあんなにモテてるなんてね!」

「ですよねー、一人だけの男子ですからね、ああなってもおかしくは無い気もするんですけどねー」

「もう何ヶ月もあのままなんですよー」

「おりむーモテモテ~」

結局出会い頭にぶつかったのほほんさん達3人組と一緒に昼食に行くことにした

「けどよかったよ、ドクターが思いのほか評判よくって」
「あの人絶対第一印象で誤解されるタイプだと思ったからさぁ」

「アハハッ実はあたし…最初見たときちょっと変な人だと思っちゃいました」

「あの人形もちょっとね…、うちのクラスじゃ断然伊達先生派ですよ!」

「私も伊達先生派です!」

「そぉ、嬉しいこと言ってくれるねぇ」

「本音は真木先生派なんだよねー」

「布仏ちゃんはアレか?ちょっと影のある大人が好みなのか?」

「う、うん。えへへ」


「でも他のクラスで急に真木先生の株が急上昇してきたみたいなんですよ」

「なんでも授業にロボットを使ってるとかで!すっごく説明もわかりやすいとか」

「すっごくカワイイって言ってた~」

「へぇー、ドクターも何だかんだ言ってノリノリだな」

ふと伊達の頭の中で教鞭を奮う真木の姿が浮かんでくる

(似合わねぇ~、似合わないにも程があんだろ)プププ

伊達は口角を上げ肩を震わせ彼女たちから見えないように笑う

(けど、案外ドクターも馴染んでるみたいだな…、もともと天才だなんて言われてたからこういう才能もあって当たり前だったのかもしれねぇな)

笑ったかと思うと今度はしんみりしだし

(出会い方とかめぐり合いとか、そういうのが一つ違えば前の世界であんな事にならずにすんだのかもな)

「もっと早く、出会えてたら…か」ゴソゴソ

伊達は呟きながら内ポケットからタバコを取り出し器用に歩きながらライターの火を口元に近づける

「先生、ここ禁煙だよ?」

「マジでか!?」

「ていうか校舎内は全面禁煙ですよ」

「な、なんだって!」

「学校なんだから当たり前じゃ~ん」

「そ。そりゃそうか…」

少女達のトリプルパンチを浴びせられガックリと項垂れる伊達

「でも吸わない方が体に良いって言いますし」

「息も綺麗になるんだよ~」

フォローは一応受けたがションボリとした顔の伊達

「まぁまぁ、美味しいもの食べて元気出しましょ♪」

「ほら、もうすぐですから!」

確かに食堂はもうすぐだ

だがどこか様子がおかしい。入り口には食事に来たと思しき千冬と真耶が立って中を見ていた

「山ちゃん先生に織斑先生、どうかしたの?」

「あ、伊達先生!大変です、真木先生が…」アタフタ

「ハァ、全く…」ヤレヤレ

真耶は慌てながら伊達の方へ寄ってくる、千冬はその場に立ったまま溜息をつく

「どうしたってのよ、ドクターが…」

入り口から中を覗くと真木が白衣を着た研究者風の女性にしつこく絡まれている

食堂の中には生徒も大勢いるが険悪な空気のせいでだれも言葉を発せられる状況では無くなっている

「あれが前に言ってた例の女科学者か…、なんで取り巻きの一人はコーヒーポット持ったまま後ろついていってんだ?」

「いつもあんな感じなんですよ、コーヒーメーカー一人占め…あ、この場合は三人占めですけど」

同僚に対する態度が悪いキーラは食堂でのマナーも十分悪かった

揉めてるのは火を見るより明らかだが場所が遠すぎて何を言ってるのか全く聞こえない

「ちっきしょ~、面白そうなシーンなのに何言ってるか全然聞こえねぇじゃねーか」

「面白がってる場合じゃありません!とにかく止めないと…」

「まぁ待つんだ、山田先生」

「何でですか!このままじゃ…」

今にも飛び出しそうな真耶を千冬が制止する

「そうそう、織斑先生の言う通りだって。黙って見てましょうや」

「伊達先生まで…」

傍にあったベンチソファに腰かけ真耶を嗜める伊達

「ドクターに任せようってこと、ここじゃ他の人が多いから横槍入れんのは簡単だけどさ」
「そうしちまったらあの姉ちゃんたちはドクターのこと“泣き寝入りして他人任せにしちまう奴”って思いこんじまうだろ」

「あ、確かに!」

「だとしたらさ、ここでドクターにビシッと言ってもらおうってハラよ」

「お~、伊達せんせ~あたまい~」

(調子のいい事言っちまったけど、大丈夫だよな…ドクター)

空気が凍りついた食堂で真木は座ったまま左手の人形に目線を送る

この女が私の席に近づいてきて感じたこと、まずは息苦しさ、そして不快感

思わず啖呵をきってしまった今ではそんな自分さえも煩わしく思う

今ほどこの巡りあわせを謀ったあの鳴滝という男を恨んだことは無い

「私が気に入らないのは勝手ですが、生徒にまで被害を撒き散らすような行動はやめていただきたいのですが」

「ヘッ、科学者のくせにポーズ気にしてんの?大事だもんね~メンツって、今の世の中で男が上に立つ仕事なんてそうそうないからね~」

「ご立派だわね、その教育理念、是非見習いたいもんだわ」

目に悪い色のフレームのメガネをかけた取り巻きの一人が真木に皮肉を言ってくる

「どうせテメーもここまでイロんなことやらかしてきたんだろーが、今更いい子ちゃんぶってんじゃねーよ」コポポ

キーラの取り巻きの一人はキーラのコーヒーカップにコーヒーを注ぐ

「ちょっと待てよ、あんた生意気なモン持ってるじゃない」

そういって机の上の手紙をいくつか掴み取るキーラ

「結構女々しいところあるんだ、ねぇ、気持ち悪すぎんだろテメェ」

掃き捨てるように口汚く罵るキーラ

「あーキモイキモイ、キモすぎるわ」

「君にとやかく言われる筋合いはありません」

「勝手に決め付けてんじゃねぇよ、上司がこんなキモいやつだったら職場の士気が下がるって言ってんだよ!」

「だよねぇ、空気が腐るよねぇ。よし、厄除けしてやろうか」

言うや否やキーラはなんと注がれたばかりの湯気が立っているコーヒーを傾け、なんと手紙が入った箱にぶちまけた

真木のメガネレンズには落ちて行くコーヒーがスローモーションのように映る

気に入らない、拒絶したい、排除したい

げに恐ろしきは人間の欲望か、見苦しいものだ

こんな薄汚い欲望(もの)を食い物にしないと生きていけないグリードとはなんと哀れな生き物だったのか

そんな生き物にこの身を堕落していたとは

そしてそれを見ていただけだった真木はおもむろに右手を上げ…

キーラの暴挙は入り口で見ていた伊達達にも見えていた

誰しもがキーラの悪行に目を伏せようとする、数秒後には見る影も無くなった汚れた紙屑に変わってしまう事が安易に想像できたからだ

だが…

「ドクター…」

事実は違った

ゴメンちょっと急用入った、数時間後また投下する

投下乙!恩にきるぞ!

おおおおお生殺し・・・この欲望開放してくれえええ

もう投下してもいいと言っている!!

一旦乙

一乙
早く続き読みたい

1乙
くぅおおお!
何という生殺しっ!
続きを!続きを!

お待たせしました、>>222>>226の方々、応援ありがとうございます

早速はじめたいと思います

ドクターのデレ期がやってくるww

「………ッ!」

「……………テ、テメェ」

真木は落下するコーヒーが箱の中に入る直前に自分の右手を突きだし直撃を免れていた

だがその代償として上着の右手の袖から肘にかけてコーヒーがかかってしまった

袖からは湯気が立ち上っており見るからに痛々しい

「「…………………」」

完全に食堂内は沈黙の場と化した、否、憤っている者もいるが…

「もう我慢できません!私ちょっと言ってきます!!」

「まぁ待ってって!」ガシッ

憤りを隠せない真耶がいきり立って食堂に入ろうとするが座ったままの伊達が手をつかんで静止させる

「言ったっしょ、これはドクターの真剣勝負でもあるんだって!」

「ですけど…」

「ドクターがただの怪しいオッサンじゃないって、証明してくれるから!」

「はい…」

「「「「……………」」」」

騒ぐ真耶と伊達をよそに千冬や本音達は静かに事が過ぎ行くのを待っていた

そしてキーラはといえば真木の予想外の妨害に冷静さを保ちながらも怒り心頭していた

「何のマネだよテメェ…、いい子ちゃんぶるのもいい加減に…」イライラ

真木はその場で立ち上がり右手の袖を捲くる

「これだけやってまだわかりませんか?」

「…どういう意味だテメェ!」

「先ほど君達に会ったときにこういった筈です、科学者としてはとても…、と」

「それがどうしたっつうんだよ!」

取り巻きの一人も語気を荒げ怒鳴る

「あれは役職に対して君たちに模範的な範囲の評価を伝えたつもりでしたが、仮にも生徒への心証を害するような行為に平気な顔で及ぶようでしたら」

「………ダマレよ…」ハァハァ

もはや科学者としてではなくきy」

「黙れって言ってんだよォッ!!!!」

ガッ   バッッッシャァァ

真木の言葉に我を忘れたように怒り狂ったキーラは取り巻きの持っていたコーヒーポットを奪いその中身を真木に勢いよく振りかけた

「キャァアア」  「ひどい…」

辺りの女生徒から悲鳴や憐みの声が聞こえてくる

コーヒーが直撃した真木は後ろに数歩よろけるも体勢を立て直すが、左手の人形のキヨちゃんにもしっかりとかかってしまい

真木は再びパニックに陥ってしまった

「…あぁああぁ…ひぃぃぃ……ほぁぁぁ~~~」ジタバタ

体から湯気をあげ、尻餅をついて身を捩じらせる真木の姿は最早立派な?被害者だ

「ハァハァ、胸糞悪ぃんだよ!そうやって一生被害者面してんのがお似合いなんだよテメェは!」

「ちょっと待ってください!」

キーラが声のした方を向くとそこにはとうとう見兼ねて出てきてしまった真耶がいた

寝落ちかなまた生殺しかよ・・・

今まで30分毎にチェックしてたけど
体力もたん 寝る

ナイヨ!

落としたキヨちゃんを拾いながら待機

●<このまま暫く待機するか・・・

>>233
本当にナイヨ!

申し訳ございませんッ! 

寝オチしてそのままバイトの時間まで爆睡だった!

早速はじめていく!!!

「山田先生、何か用ですか、今大事なお仕事の話をしていたところなので、聞かれると面倒なんですけどぉ」

「ふざけるのもいい加減にしてください」

相変わらず食堂の入り口で見ていた伊達達は大いに焦っていた

「はわ~、山田先生行っちゃった~」

「全く、次から次に厄介ごとを起こしてくれるな」ハァ

「あぁ~もう!面倒なことしてくれちゃって!」

「仕方ないな、私が行くしか…」

「あぁ、いいからいいから!俺が行きますから、織斑先生はここで」ドサ

いうや否や伊達はメダルタンクを地面に置きテクテクと歩いて行ってしまった

「さっきから見ていたら乱暴な真似ばかりして、生徒が見てるんですよ!恥ずかしくないんですか!?」

すごい剣幕で怒りたてる真耶、キーラはそれを右から左へ受け流すようにまるで気にしていない

「だぁかぁらぁ、これは研究者同士の問題だって言ってんだろ!関係ないんだから引っこんでろ」

「そんな風には全く見えません!もうすこし教育者としての自信とひん」

「うるっせぇんだよ!ブリュンヒルデの犬が!」カッ

「……………ッ!」ビクッ

急に凄い剣幕になったキーラの凄みに真耶は思わず後ずさる

「どぉせオマエも結局いい子ちゃんぶってるだけなんだろ!」

「同僚に嫌われたくねぇ、生徒にも嫌われたくねぇ、だから誰かの顔色窺っていつもヘラヘラしてんだろ」

「そんなだから代表候補生どまりなんだよ!言われたことしかできねぇメス犬が、うすみっともなく吠えんな!」

標的を真耶に変えたキーラは凄まじい勢いで罵っていく

真耶は全く反論出来ない自分が情けないのか両目に涙を溜め震えている

だが、

「うすみっともないのはあんた達の方じゃないの?」

「アァン!?」

キーラの取り巻きががなるように大声を出す、その先に居たのは伊達だった

「俺小難しい話はよく分かんねぇけどさ、山ちゃん先生が頑張ってるのは誰かの目に映ってる自分のためじゃないってのは見てて分かるよ」

「何言ってんだ、テメェ」

「ちゃんと分かって相手の事駄目だししてんのかって事、山ちゃん先生は本当に大事だから相手の事尊重して、時には頑張りすぎちまうんだ」

「二番手に甘んじるその意味をちゃんとわかってる山ちゃん先生捕まえて顔色窺ってるなんて、お前らの目曇ってんじゃねぇのか!」

ビシッと言い放つ伊達、いつしか真耶は両頬をポッと赤く染めていた

「……伊達先生///」

「ったくも~、ドクターもだらしねぇんだから~、オラ!シャンとしろ」バシッ

「ハッ」(((゚д゚三゚д゚)))

伊達に檄をとばされ我に返る真木

「ほら、さっさとこれで顔拭けよ」サッ

伊達が差し出した布巾で真木の顔を拭く

だが真木はそれに顔を険しくさせる

「伊達君、それは雑巾です」

「お?そうか、ワリーワリー、ハハハ」

「………プッ」クスクス

「「「「アハハハハハハハ」」」」

真耶が吹き出したのを皮切りに食堂内が笑いに包まれる

だがそれを当たり前のようによく思わない者が…

「おいてめぇら…、何勝手に盛り上がってんだ…」

「話はまだ終わってねぇんだぞ!」

キーラとその取り巻きが相も変わらず大声でがなる

「何だよ、まだやる気かよ、懲りねぇなあんた達も」

「真木先生も何とか言ってください!」

真耶に急かされる形で真木に振られるが、ペースを取り戻した真木は毅然とした態度で

「もうこれ以上話すこともないでしょう。それに」

「それに?」

「これ以上揉め事をおこして君たちの食事の時間を台無しにしてしまうほうが私にとって余程心苦しい」

「んマァッ!」

伊達が感嘆の声を上げると真木は持ってきたものを片付けだし

「それでは私はこれで、次の授業の準備もありますので」

そう言って真木は食堂の入り口のほうへ戻っていく

「……ドクター、男だぜ!!」グッ

真木にサムズアップを送る伊達にバツを悪くしたキーラ達は荒々しく真木とは逆の方向に出て行った

「ま、これで一件落着ってとこかな?」

「みたいですね…、あ、ありがとうございました。助け舟出していただいて…」

「ん?気にしない気にしない。とーぜんのこといったまでだから。ネッ」

「はい…、うふふ」

「そゆこと!  はは」

この一件はまたしても即座に学園中に知れ渡ることになった

伊達の男気や真木の奇癖などが…

かに見えたが、語られないことも起きていた

食堂から真木が出てきた所には千冬にのほほんさん達三人組がいた

出て行こうとする真木にのほほんさん達は黙って見送っていた

だが荷物を抱えて視界の悪かった真木の足が置きっ放しだった伊達のメダルタンクにぶつかる

ぶつかった拍子に真木はよろけ、タンクは倒れて中身がこぼれてしまった

ザラザラザラ~

「真木せんせ~、大丈夫~?」

「ええ、少々視界が悪かっただけですので」

「このミルク缶の中のこれって…、もしかして」

(知っているのでしょうか? それともこの世界にもメダルのシステムは存在しているというのですか…)

唐突に質問をふってきた癒子に真木はタンクをうっかり倒してしまった自分の軽率さを恨んだ

「これって海外のお金とかですか?伊達先生海外に長い間居たって聞きましたし」キラキラ

目を輝かせながら問いかけてくる少女に真木は辟易しながらも

「どうでしょうか…、私には分かり兼ねます。後、伊達君はそれの中身を人に見られるのを嫌がりますので、今日見たことは内密にしておいたほうがよいでしょう」

(やはり私の杞憂でしたか…、まぁそうでしょうね)

「わ、わかりました…」コクン

頭を縦に振る癒子の後ろでのほほんさんとさゆかがメダルをタンクにしまい終えて元の位置に戻す

真木の話は後ろの二人にもちゃんと聞こえていたようである

「それでは私はこれで、午後の授業の時間にくれぐれも注意してください」スタスタ

そのまま歩いて去っていってしまう真木、そんな真木にもひとつ見落としているいる物があった

(今のはまさか…、いや、そんなはずはない。“アレ”がこの世界にあるはずがない、あんな忌々しいものが…)

メダルタンクを倒した一件に千冬が加わっていたことを真木は見落としていたのだった

そして真木は気づかなかった、こぼれるメダルを目の当たりにした千冬が思案げにそれを見つめていたことを…

そして時間は今!というより放課後!

「まさかそんなことになっていたとはな…」

「そう、大変だったんだよ~大騒ぎになって!」

一夏は放課後の教室でシャルロットから話を聞いていた

シャルロットは箒たちと食堂に向かいあの一件を出口側から見ていたそうだ

「けどやっぱり伊達先生はかっこいいなぁ、体でかくて男らしいし!」

「そこ!?相変わらず一夏は一夏なんだね…」ハァ

恋する乙女シャルロット、彼女の恋路はまだまだ長くて遠い

「そうだ、伊達先生に部屋番預かったんだった、一緒に晩飯行かないか?」

「え、一緒に!?う、うん行くよ、絶対行く!(やった、チャンス)」

「じゃぁ食堂行く時間になったら、また電話いれるよ」

「わかった、お願いね、一夏♪」

こうして一夏とシャルロットは夕食の時間に会う約束を取り付けたのだった

どうも>>1です

お騒がせしました…

今回の投下はこれにて終了です

最後に伏線をちょこっと入れておきました

次回はいよいよ事件が発生!  そしてとうとう…

では、次回の投稿をお楽しみに!!

>>1さん、文章いっぱい投下して凄いな!

1乙
良き週末を・・・

おつおつ

やっぱ伊達さんはかっこいいな

カッターウィングの出番はまだか

○ <乙

次回でいよいよバース登場か……胸が熱くなるな

乙。まだかなあ…

もう作者は止めたの?

一週間で何言ってるんだ

欲望ギンギンの早漏野郎は黙ってろ

連休を利用して書き溜めているのだ多分

>>257

どぴゅっ

>>1がきたかと思ったら>>259が写生しながらageてた
何をいってるか(ry
とりあえず>>259は憤死しろ

>>259
ちょッッ!?

このスレがイカ臭くなるから

やめれwwwwww





・・・・・・・・・・・・ふぅ。






作者さん、あせる必要は全くないですよ。

こんばんわ、>>1です

私がいない間にイカヤミーが大量発生したようですね(笑)

かなり短いですが、すこしだけ投下します

ではよろしく

待ち合わせしていた時間になり、一夏はシャルロットと食事に向かうことにした

その前に伊達を誘いに行くのだが…

「よく考えたら職員寮って来るの初めてだな」

「織斑先生は寮長室だもんね、それにしても静かだね…」

さすがにいい年した大人が部屋から出てワイワイ騒いでるはずもなく寮の廊下は空調の音しか聞こえなかった

「え~っと…、このへんかな?あれ?こっちか?」

「職員寮って複雑だね、入り組んでて」

「あ、ここだここだ」

少々迷ったが無事に伊達の部屋へたどり着く二人

ピンポ~ン

呼び鈴の気の抜けた後にプツッと相手と連絡が繋がった音が鳴る

『はい、あなたの伊達明です』キリッ

ガクッ

一夏とシャルロットは思わずずっこけそうになる

「伊達先生、何言ってんですか!俺です、織斑です」

『おお、織斑ちゃんね!まさか渡した初日に早速やってくるとは…』

「あ、迷惑でしたか?」

『いや、そんなこと無いよ。とにかく開けるから入ってよ』

ガチャ

「開いた…、けど先生居ないね」

「ん?なんだこのオモチャ」

「ウホッ  ウホッ」クルクル

一夏とシャルロットの足元で掌ほどの大きさのゴリラのようなおもちゃが目を光らせ腕をクルクル回していた

一夏はそれを拾い上げまじまじと見つめる

「お前が開けてくれたのか、ありがとな!」

「これが例のロボットかな?よく出来てるね」

そのロボットは一夏の掌の上で何度かピョンピョンと跳ねる

そして目を点滅させスピーカーから声が発される

『悪ぃんだけど今シャワー浴びててさ、リンスとってくんね?』

「リンス?ああ、これですね」

『おお、サンキュー 洗面所はカギ開いてるから』

「わかりましたー、」ピタ

洗面所の引き戸の取っ手に差し出した手を止める

「どうしたの?一夏」

「いや、ドア開けたら伊達先生が女だったらどうしようって思ってさ」

「あぁ~、前にもそんなことあったよね~。アハハハ」

「ハハハハ」

「い~ち~か~」ギュムムム

「い、いふぁいいふぁい」ジタバタ

「下らないジョーク言ってる暇あったら早く渡してくる!」

「わ、わかったよ」ワタワタ

一夏が慌てながらドアを開け中に入る

それをシャルロットは顔を真っ赤にして見守りながら呟いた

「…一夏のえっち」

その後、シャワー室からあがった伊達がパンツ一枚で部屋に戻ってきて

それを目の当たりにしたシャルロットが悲鳴を上げたり

その瞬間を伊達に言伝があった真耶が部屋に入ってきて際にバッチリ見られ顔から水蒸気爆発を起こされたり紆余曲折あったが

とうとう一夏が待ちに待っていた夕食の時間

三人は食堂の丸テーブルに腰をおろしている

一夏と伊達は気が合ったようで談笑している

シャルロットの紹介もそこそこに三人は食事をとる

シャルロットは男同士の会話になかなかついていけなかったようだが心の底から楽しそうな一夏を見て満足そうだ

(一夏…うれしそうだね。やっぱり男の人がいると違うんだな…)

そんな和やかな雰囲気が続く中、そんな空気を払拭する人物がやってくる

バタバタ ガチャン

「あ!いたいた、探しましたよ伊達先生!」

「?」

突然の来訪者は首からカメラを提げた赤い髪の少女だった

「黛先輩!もしかして…」

「あ、織斑君も一緒だったのね、ちょうどよかったわ」

「誰だい君は?」

「どうも、新聞部で~す、取材に来ました~」

「取材ィ?」

「はい、新しく入ってきた先生の取材で伺いました」

「あ、伊達先生、この人は新聞部の…」

「申し遅れました、黛薫子っていいます。宜しくお願いしますッ!」

挨拶をしてきた少女に面喰ってしまう伊達だった

短いですがここで終わりです

~伊達先生が女だったらどうしようって思ってさ~ のくだりがやりたかっただけです

どうもありがとうございました

今週から小学校の自然学校で指導員ヤミーをやってきます

しばらく更新できないこともあり、今回の投下をしました

小学生達とあそんで青春満喫ヤミーになって帰ってきますので、次回投下をお楽しみに!

ウッ・・・少量投下は卑怯だろ!

青春ヤミーめ!許さ゛ん゛楽しんでこい~

青春スイッチ、オン!

まだ?

欲望ギンギンの早漏野郎は黙ってろ

>>275
タジャスピナー「はい」

まってるぜ

ageんなよ期待したいじゃねーか

期待しても良いんだよ?

期待大

●<その期待、開放しろ・・・

まだかい

こんにちわ、>>1です

最近忙しすぎて更新もままなりません

とりあえず少しですが投下しておきます

「取材!? 取材って…俺何か悪いことしたかな?」

「違いますよ! 新学期に新しく入ってきた先生、これは特ダネなんですから!ってな訳で、さっそくインタビューはじめま~す」

「元気な娘だなぁ、いいよ何でも聞いてよ。まぁ全部答えられるかはわかんないけどね」

「それじゃ基本的なプロフィールをお願いします」

食堂にいたその他の生徒達もインタビューに耳を傾ける

「え~っと、伊達明、三十路です…好きな食べ物はおでん…あ、ちなみにカツオ出汁派です」

「おでん…ね!良い情報押さえたわ!」 「どこのメーカーの一番出汁が美味しかったかしら」

周囲がザワザワと騒ぎ始める

「ここの女の子ってのはどぉ~も噂話が大好きみたいだねぇ」

「そりゃそうですよ、男の人は数少ないですから」

(まるで離島の小学校の先生みたいなセリフだな…、ここも島の上だからあながち間違いじゃないけど)

「私は昆布出汁派なんですけどね、それじゃ配属前のお仕事なんか教えてもらえますか」

「んぁ、あぁ、え~っと、挨拶でも言ったけど外国で医療支援してたんだ」

「その後は…、化け物退治を少々…」

「その時のエピソードを一つ、お願いします」

「エピソードって…、そうだなぁ、ちょっと前にいった国…、内戦続いてる国なんだけど」

「………」ゴクリ

急に重い話になりインタビューしていた薫子の顔にも真剣さがにじみ出る

「その国のとある地区の廃寺に設営キャンプ敷いてたんだけど、そこにどーもひねくれたガキがいてね」

「いや、こっちは普通に接してたんだぜ、なのに『医者は嫌い!』とか言っててさ、支援物資も食料も受け取らないんだ」

「まぁ詳しく話せばややこしくなるんだけど、紛争で両親をなくして妹と二人暮らしの男の子がいたわけよ、君らと変わらねぇくらいの歳だったと思うんだけど」

しみじみと語りだす伊達、薫子はレコーダーのマイクを向け録音しながらメモにさらさらとペンを走らせていた

「なるほど、“土地に人あり”ですね」

「へへ、良い事言うね」

「あ、続きをどうぞ」

「まぁそれでも戦火ってやつは容赦なく降り注いでくる、執拗に、そして気まぐれにな」

「けっこーきつかったぜ、銃持って戦ったり下水道逃げ回ったりな」

「大変だったんですね、それでその子供たちはどうなったんですか?」

「無事だったよ、一悶着あったけど」

「それでさ、撤退命令が出てそのまま帰国になったんだ、忙しいだろ?」

「はぁ…、そういうお話なんですか?」

「違う違う、でな、その子供がさ、別れ際に初めてありがとうって言ってくれたんだ」

「それから『俺もアキラみたいな医者になりたい』って言ってくれてさ、あんときは嬉しかったねぇ」

メモにペンを走らせていた薫子はふっと顔を上げ

「へぇ、“人に歴史あり”ですね」

「そういうこった」

「なるほどなるほど、良い記事が書けそうです。じゃぁ最後に!」

ビシッと人差し指を立てる薫子

「教師として、何か抱負を一言、スローガンでも構いませんよ」

「抱負ね…、う~ん、ここは軍の養成学校なんだっけ?」

「詳しく説明すると面倒なんですが、大まかにいえばそんなもんです」

「そうか…、俺も面倒な話は得意じゃないんだが、一言だけいうなら」

「何のための兵器かって、考えてみてほしいってことかな」

「と、いいますと…」

「おれは世界中を回っていろんなものを見てきた」

「今まで俺は自分一人で生きていけると勝手に思い込んでた」

「ま、あながち間違いじゃないけどさ、それでも…」

「それでも…?」

「差し伸べてくれる手の暖かさってのは、ケッコ―忘れられないものだよ」

「だからさ、この学校の事はよく分からないけど、あんまり閉塞的にならずにさ」

「武器を握るだけじゃ無い、誰かに差し伸べる為の手を忘れないでほしいんだ」

「ヘヘッ、何か照れ臭いな」

「いえ、なかなか含蓄があってよかったですよ」

「でも先生、あまり私たちを見くびらないで下さいね」

「へ?どゆこと?」

「先生が思っているほどこの学園は切羽詰まったところじゃないって事です」

「ね!織斑君!」

「ああ、俺たちはそんな一人で閉じこもっちまうなんてこと無いぜ」

「そっか、それは恐れ入った!」

かるく頭を掻く伊達

「まぁ、そんならいいけど」ゴソゴソ

伊達は躊躇なくタバコを内ポケットから取り出し咥える

「そういやドクターんとこはいったの?」シュボッ

「いえ、一筋縄では行きそうにないのでもう少し間をおいてから行こうと思います」

あっけらかんと答える薫子

「ハハ、そりゃいい。どんなところが一筋縄じゃないんだ?」トントン

伊達はタバコの灰を携帯灰皿に落とし加えなおしながら問いかける

「う~ん?人間離れした雰囲気でしょうかね」

「ハハハハ!本人知ったらショック受けるだろうね、“無表情”で!」

「「アハハハハハハハハハ」」

堰を切ったように笑いあう二人、案外気が合うようだ

「けどドクターが人間離れしてる、ねぇ…」グシグシ

携帯灰皿にタバコを押しこみ火を消す伊達

「俺に言わせりゃあんな人間臭い人もそうそういねぇと思うけどな」

「長いお付き合いなんですか?」

横から聞いていたシャルロットが口をはさむ

「あ~、どうなんだろうなぁ…、所謂あれだな、一瞬より短いけど永遠より長いってやつかな。そんなもんだ」

「よくわからないです」

「ハハハ、その内わかるさ」フゥ~

二本目のタバコの煙を吐き出し俯き気に笑う伊達

(何かただの知り合いって雰囲気じゃないな…)

推察する一夏をよそに伊達はタバコの箱を置き茶を啜っていた

「ま、この意味が分かれば立派な大人ってことだ、俺みたいな…な!?」スカッ

伊達が机の上のタバコを取ろうとするが眼前で突如箱が消えた

「あれ?俺のタバコちゃんが…」キョロキョロ

「探しものはこれか?」

慌てる伊達に話しかけるのは何と千冬であった

「まったく…、生徒の前で堂々と喫煙とは…」グシャリ

持っていたタバコの箱を残りごと握りつぶした千冬

「あれ~、もしかして駄目だったのかな~…なんて」

目を泳がせて場を濁す伊達、その眼は“の”の字になっていた

「駄目に決まっているだろう!馬鹿者が!」



          ガ――――ン



「ば、、ば、ば、ばば、ば、か、も、の」ガクーン

膝をつき絶句する伊達、暗いオーラを纏っているのが目に見えて分かる

「と、年下の女に馬鹿って言われた…」

もしかしたらテンションの下がりようは真木以上かもしれない

「伊達先生…」

「その辺はナイーブなんだな、伊達先生」

「激写!伊達先生の新たな一面!」

「織斑先生をつかまえて年下の女…、深いわ!伊達先生」

各々の反応を示すなか、入口からタカカンドロイドが背中にバッタカンドロイドを乗せてパタパタと羽ばたきながら伊達のほうへ向かってきた

「一夏、あれ…」

「ああ、あれが言ってた例のロボットだな…」

「やっぱりカワイー//」

そして羽を上下させたまま空中で制止させる

『伊達君、今お時間は大丈夫ですか?』パタパタ

「うおっ!しゃべった!」

『何かありましたか?』

「何でもないよ、何か用?もしかしてデート?」

その瞬間食堂中からガタタッとイスを鳴らす音が聞こえたのは気のせいだろうか

『馬鹿な事を言ってる暇はありません』

「う、ドクターまで俺を馬鹿にして…」

『お見せしたいものがありますので至急準備室まで来ていただけますか』

その言葉を聞いた伊達の顔つきが急に変わったのはきっと気のせいではないはずだ

「わかった、すぐ行くわ」ガタッ

立ち上がり白衣を整えた伊達は薫子達の方を向き

「悪ィな、今日はこれまでってことで!」

「はい!ありがとうございました」

「デュノアちゃんも織斑ちゃんもせっかくのメシだったのに忙しくて悪いな」

「いえ、お構いなく(むしろこれからの方が…)」ニコニコ

「またいつでも誘いますよ」フンス

「そうか、じゃあまたな」

手を揚げ伊達と一夏達は別れ、伊達は足早に去って行った

「行っちまったな…」

「お昼のときも思ったけど、なんか台風みたいな人だね」

「それは言えてるかもな、ハハハ」

「あ、写真撮り損ねちゃった」ガックシ

こうして食堂での一幕は幕を閉じて行った

そして伊達は真木に呼ばれ準備室へ…

「御呼び立てして申し訳ありませんでした」

「いや、別に構わないよ、ここならタバコ吸え、あ、捨てられたんだった・・・」

「本来なら控えていただきたいのですが…、まあいいでしょう、御呼びしたのは他でもありません」
「これを君にお渡ししておきます」ドン

そういって真木が取り出したのは一つのアタッシュケース、部屋に残っていたのをそのまま使ったようだ

「これは?」

「バースシステムを元通り作成するのは現状不可能ですので、代わりの物を用意しておきました」

「代わりって・・・、そんな簡単にできるもんなの?」

「できたからここにあるんです、とはいえだいぶ勝手が変わっていますがね」

「そうかい」

「この世界について調べているうちに面白い物を発見しましてね、それを少し応用したものなのですが」

「あ~、小難しい話はいいわ、とにかくこれね。俺が持ってていいの?」

「ええ、しばらくの間はこれを使っていただきますので、今からでも試験装着を始めていきたいのです」

(なるほど、今日は中々寝れそうにねぇな…)

タバコの吸えない寂しい口元を突っぱねさせ独りごちる伊達

その手で受け取ったカバンの留め具を外しカバンを開ける

(“しばらく”とはいえ、こいつが俺の新しい相棒か…)

紙を丸めた詰め物の間に収まったベルトバックル

今まで使ってきたものと同じようだがどこか違う、言葉に出来ない何かを伊達は感じ取っていた

緑に眩くベルトの光がやさしく伊達を包みこむ

(やっぱりこの世界でも戦わなきゃ駄目なんだよな)
(のんびり教師生活って訳にもいかねぇか…)

久々に触ったベルト、伊達はまだ知らない

そのベルトの脇に刻まれた文字

"BIRTH IS"

           の七文字を…

番外編

「はぁ~、メシも食べたし、明日は模擬戦だからな!早いとこ寝るか!」

シャルロットと別れ寮室へ向かう一夏、薫子は知らない間に消えていた

どうせまた部活で頑張ってるんだろうな、等と考えながら歩を進める

曲がり角に差し掛かった時のことである

「あ、千冬姉」

「織斑先生、だ」バシン

「痛、す、すいません」さすりさすり
「けど何でこんなところにいるんだよ」

「いや、偶々だ」

「ふ~ん、あ、そうだ、あの後伊達先生凹んでたんだぜ」
「「年下の女性に馬鹿って言われた」なんて言ってさ」
「けど楽しかったなぁ~」

「そうか、実はあの時は昼の一件で山田先生を庇ってもらった礼を言いに行こうと思って行ったんだが」
「ああも堂々と喫煙をされるとさすがにああいうしかなかったからな」

「へ~、そうなんだ。千冬姉らしいね」
「けど山田先生さっき自分で行ってたよ」

「そうなのか!?…で、だ」

「何?」

「その、なんだ、やはり男が居れば違うか?いろいろと」

「う~ん、そうだなぁ、シャルが来た時よりも何かずっと開放的になれてる気がするよ」
「伊達先生、男らしいし話が面白いし…」

「そ、そうか…」

「うん、俺もあんな兄さんが欲しかったな」キッパリ

       ガ――――ン

「そうか、そうなのか…」

「うん、勉強とか教えてくれそうだし」

さっきから千冬は俯きっぱなしだ

一夏にはその理由が分からない

「じゃぁ、俺もう寝るよ、明日模擬戦だし」

「ああ」

「じゃ、おやすみ」

「ああ」

そのまま吸い込まれるように部屋へ入っていく一夏

一人残った千冬は…

「確かに私は親代わりだったが“兄”になってやることは到底無理な話だ…」

「そうだ、きっと物珍しいからあんなことを言ってるんだ、そうに違いない」

一人で勝手に決め込んで千冬は自室へ戻っていってしまった

こんな感じです

次回もお楽しみに!


毎回毎回面白いな

乙。
千冬姉ェ…

どこまでもブラコンだな千冬姉は

世界最強のブラコンだからな

お姉ちゃんは最高や!

千冬姉は最高です!

伊達先生なら『アニキ』って呼びたい

>>307
翔一&剣「ですよねー」

剣より坊ちゃまの方がわかりやすい!ふしぎ!

舞ってる

       ∧_∧
      (´・ω・`)
      ノ ⊂ ) ))
    (( ( ヽ'つ〈
      (_)^ヽ__)

            ,.-─- 、
        ∧_,,∧\●/
   /\  (`・ω・´)∩‐
   | ● ⊂     /     舞ってる!
   ヽ/ r‐'   /
      `""ヽ_ノ

遅いな

諸星学園高校でゾディアーツにでも襲われてるのかな?

弦太郎の活躍を観てると、ありとあらゆる学園物とクロスさせたくなってくる

お久しぶりです>>1です

長い間空けてしまいました

早速はじめていきます

>>1、リターンズ!


舞ってたぜ

まただ、またあの夢の世界に堕とされた

一面真っ白の世界

雪のように眩しく真綿の様に優しく、そして光の様に温かい

《またこの夢か…》

伊達は一人この三度の夢の世界を訪れていた

《起きてても疲れ、寝ても訳わからん夢を見せられて》
《まだ慣れきってねぇのか、俺は…》


その場に座り込んでボーっとしていると予想通りの
“アレ”が聞こえてきた

コツ…コツ…コツ…

彼方から聞こえる足音、昨日と全く同じである

《来ると思ったぜ、さぁ、今日こそその面拝んでやるぜ》


足音の主は自分の方に近づいてきている

立ち上がった伊達もその人物に向かい歩を進める

ぼんやりと映るその姿はまっすぐに自分を見据え…

そしてその眼に赤い光を灯し…







            伊達さん…、寝てる場合じゃないですよ





「うおおぉ~、シャベッタァァ~」ガバッ

驚きのあまり飛び起きてしまった

だが飛び起きたその場所は…

「オッホン、伊達先生、会議中に居眠りして大鼾かくなんて、さぞかし良い夢を見た様ですね♯♯」ピクピク

中年の女性教師が額に青筋を浮かべながら震えていた

「いやぁ~、アハハ…」ちら

気まずく笑いながら真木の方を見る

立場上真木は伊達より地位が上であり座っている席も上に近い所にある

伊達は隅っこで机も使い込まれた物が宛がわれていた

「………………」ぷいっ

(くそ、目そらしやがった)

ちなみに真耶は相変わらずオロオロしており千冬は顔を伏せて必死に笑いをこらえていた

「すんませんした…」ペコリ

ここはひとつ穏便に謝って済まし会議は再開した

とはいってもほぼ会議も終わりにさしかかっており、ほとんど聞くようなこともなかったのだが…

伊達は会議が終了するまで縮こまったまま過ごす羽目になってしまった

女尊男卑とはまったく関係ない、個人的な伊達の問題である

「あぁ~、ひでぇ目にあった…」コキコキ

首を鳴らしながら職員室を後にする伊達

「あんな大声出してたら当たり前ですよ//」クスクス

肩を並べ歩く真耶は笑みを浮かべながら応える

「けど何が喋ってたんですか?夢の中」

「いや、俺にもよく分かんねえんだけど、とにかくびっくりしたんだ」

「そう…なんですか」

「あ、もうこんな時間か、俺今日早番だからそろそろ保健室行くわ」

「はい、頑張ってくださいね。…それと」

「?」

「昨日はありがとうございました、お礼も碌に言えなくて…」

何事かと目を見開いた伊達だったがすぐに顔を綻ばせ

「いいっていいって、俺が勝手にやったことなんだから」

「はい、それじゃ失礼します」

そのまま角を曲がり別の方向へ行ってしまった

「山ちゃん先生ね、若いのに生真面目で今時珍しいな。な、お前もそう思うだろ?」

「ウホッ ウホッ」クルクル

「後藤ちゃんより真面目かもな、後藤ちゃんなんだかんだで笑いを優先する所あったし」

などと零しながらたった数日会ってないだけなのにもう何か月も会ってないように思える弟子や仲間に思いを馳せる

「おっと、仕事が始まっちまう」

そのまま速足で保健室まで向かう伊達、模擬戦を交えた特別な一日が始まる

そして時間は経ち…

朝から戦い続けた教師陣対専用機持ち達の戦いも佳境を迎えインターバルを挟んで

いよいよトリを務める簪の番が近づく

カタパルトデッキで待機中の簪は、本音と一緒にメンテナンスチェックに当たっていた

「いよいよだね~、かんちゃん!ガンバガンバ!!」

「おしゃべりはいいから…手を動かして」

「むぅ~、相変わらず厳しいなぁ」

「ふ~、疲れた、やっぱ山田先生強いな~」

そうこうしている間に自分の前に戦っていた一夏が戻ってきた

「おりむーお帰り~」

「オゥ、簪にのほほんさんか、いやー、手強かったぜ山田先生」

モニターはさっきの戦いはハイライトを映している

真耶もさすが元代表候補生だけあって、量産機でも一夏の白式と互角の戦いをしていた

「そうだ、すぐに機体をドックに持って行くんだったな、なんか今回面倒なこと多いな」

いつもとルールが変わっていることに慣れず不満を漏らす一夏

「それはそうと簪、機体大丈夫か?調整手抜きされてたりしてないか?」

「うん…多分、ていうか渡す前からちゃんとしてたからそこは大丈夫」

そうか、と手を振ってその場を後にする一夏

「さてと、私も頑張らなきゃ」

『次の模擬戦に出場の選手は入場の準備を始めてください』ザザ

スピーカーから流れてくる案内の声に従いカタパルトに乗る

「かんちゃん、がんばってね~」

「うんっ」

いつもよりも弾みをつけた返事を本音に返し簪はアリーナに飛び立つ

場面は変わりこちらはある管制室の一つ、今この部屋には千冬、真木、キーラの取り巻きの一人がいた、先ほどまで真耶もいたのだが一夏との模擬戦のため部屋を後にしており今はいない

真木はさっきまで試合を見ながらひっきりなしに立体映像パネルを操作していたが、一夏と真耶の模擬戦が終わり簪の戦いがはじまったところだった

真木は手を休め机の脇に置いたタッパをチラリと見ながら軽く溜め息をつく

~伊達明特製のおでん!今日のは会心の出来だよ!~

等と言いながら満面の笑みで管制室まで平気な顔で入ってきた

そして置いていったのがタッパに詰め込んだおでんだった

~腹空かしてると思って差し入れ持ってきたぜ~

相変わらず空気を読まない男である

「お疲れ様です~、ふ~、織斑君強かったです~」

「お疲れ、山田先生。なかなかだったな」

ISスーツの上にジャージの上着を羽織った真耶が管制室に戻ってくる
千冬も真耶に労いの言葉をかける

「はう~、お腹すきました。ん?何かいい匂いがします~」クンクン

真耶は匂いをさぐってその正体を探す

見兼ねた真木はその正体であるおでんの入ったタッパを差し出す

「先ほど伊達君がこちらを訪れましてね、山田先生に差し入れを作ってきたそうです」

「えぇっ、私にですか? うれしいですぅ~」パアァ

それを見ていた千冬は顔を伏せプッと笑いを堪えていた

「わ~い、いただきま~す」パクリ

「おいしいれすぅ~」モグモグ

カツオ出汁のいい匂いを充満する管制室の中でモニターが小さな異変を写したのはその時である

所変わってこちらは観客席、東出口入口席

仕事をあがって辺りをフラフラしていた伊達は真木に差し入れを届けた後アリーナを訪れていた

今は簪と対戦相手が入場してきて賑わっている

先ほどの一夏の戦いのハイライトに食い入るように見ていた

戦いではなく兵器としてのISの在り方についてを

「すげぇな…ISって」
「こんなもんがありゃ女性優遇なんてものがあって当たり前だな」
「風は常に強者に吹いている…か」

「あ、伊達先生だ!」

「伊達先生何してるの?こんなところで」

「いや、まぁちょっとな、見学だ」

そう言いながらちょっと離れたところでミルク缶に座り込みもう一つのタッパを取り出しおでんを食べだす

「やっぱ昆布出汁だよな~」モグモグ

その時である、賑わいとは違ったざわめきを伊達が耳にしたのは

そしてこちらも観客席、東出口最前列席

「一夏君、簪ちゃんの出番よ!ちゃんと見なさいよ」

「わかってますって楯無さん、そんなにひっつかなくても!」

楯無はわざわざ一年生用の観客席まできて一夏の隣に座り込んでいたのだ

「会長!二年生はあっちに席があるじゃないですか!」

「そうですわ!あんまり騒がれては観戦の邪魔になります」

見兼ねた箒とセシリアが抗議するが楯無は意にも介さない

「あっ、簪ちゃんよ!キャー簪ちゃーん」ブンブン

まるでアイドルに遭遇したように騒ぎだす楯無

「けど対戦相手のスペックデータ…あれって第一世代の武装だよね?」

「確かに、打ち銛など現物で見るのは初めてだ」

「実戦で使おうとする人初めて見たよ」

熱くなっている箒達をよそに冷静に対戦相手を観察しているシャルロットとラウラ

熱烈に応援していた楯無も対戦相手を見て表情を変える

(あの対戦相手…新開室のキーラ博士の腰巾着よね…)
(何もないといいけど…)

対戦相手のISはラファール・リヴァイヴ

先述のとおり右手にスプリング式の銛を圧縮して射出するアームカバーを装備し肘から肩にかけて正体のよく分からないチカチカ光る突起物が出ている

ヘッドマウント型のゴーグルをかけておりその表情はうかがいしれない

そしていよいよ試合開始にブザーが鳴り響く

簪は様子見として背中の春雷を敵機に向け放つ

相手は高速機動で回避すると左手に装備した短機関銃を撃つが

それを見越した簪は前に飛んでリーチの長い夢現を横に振るう

左肩にクリーンヒットし相手は大きく体制を崩しよろける

着地した簪はチャンスとばかりに再び斬りかかるため振りかぶる

着かず離れずで相手の手を回避しながら攻撃していく簪

一見すると一方的な試合だが当の簪は不安な表情を浮かべていた

(機体が重い…? 否、チェックは完ぺきだったはず)

その懸念は観客席にいた楯無達も感じていた

「ねぇ一夏君、なんか簪ちゃんの動き、変じゃない?」

「確かに動きがなんか固い…というか一方的に押してるからそんなに目立ってないけど各対応がどことなく遅れてますね」

「それに…相手の動きもどこか変だぞ、右手を庇うようにして…」

箒もどこか異変に気付いたようだ

そんな三人の不安をよそに会場は盛り上がる

観戦していた誰もが次の一撃を加えるのに成功すると予想していた、しかしその期待は裏切られる形になる

こちらは管制室

「何なんだ?あのしょっぱい戦いは?」

「対戦相手もそうですけど更識さんも動きが…、どう見ても変ですよね」

千冬とおでんを食べ終えた真耶がモニターを見つめながら呟く

「確か更識の機体の整備は……」

「はい、確か新開室が請け負ったと聞いています……」

「「…………」」

二人は顔を見合わせた後、新開室の籍だけの所長である真木の方を向く

「…………………」

そんな二人にお構いなしと言わんばかりに真木は映像が移り変わる観客席のモニターに目を配っていた

傍に鎮座した人形に見守られながら…

こちらは先ほど伊達がおでんを食べていた東出口の入口側席

「ああっ、惜しーい。いいところだったのに!」

「敵の動きがだんだん良くなってきているの?」

「それもあるけど…、更識さんの動きがさっきよりダンチで悪くなってない?」

「何々?何かトラブッたの?」

ざわついてる女子達に伊達が口を挟む

「あ、伊達先生、戦ってる更識さんの機体が…」

「?」

そしてこちらは東出口最前列席

「やっぱりおかしいわ、パネルのスペックデータのダメージゲージは全然減ってないのに!」

「ちょっと待って、相手の様子がおかしいぜ!?」

先ほどまで防戦一方だった敵機が反撃に移る

目に見えて動きの悪くなっていた簪の打鉄弐式の肩を鷲掴みにし短機関銃で射撃に入る

「くっ、こんなのッ!」

スラスターを噴射し上に回避に入るがここで信じられない事態が起きた

一度点火したブースターが突如何もなかったかのように止まってしまったのだ

一瞬浮かび上がってまたすぐ地面に倒れこむ

その隙を逃さず相手は簪に銃弾を遠慮なく撃ち込む

「ああッ、くぅッ」

簪の弐式は量産型の打鉄に比べ機動性に富んでいるがその反面防御に難がある

謎の不調によりアドバンテージを崩された簪は為すすべもなく敵の攻撃を受ける

「…………」

ゴーグルで目を隠した相手はいつもの口汚さとは打って変わって一言もしゃべらずただ無表情に銃を撃ちはなってくる

カキン

一度弾切れを起こしマガジンを取り換える敵機・ラファール

その隙を狙い簪は夢現を横に薙ぐ

が、ここでまたしても右手に正体不明の阻害が働きガシャンと音をたて腕を地面に垂らす

(駄目、何で?機体が…、お願い動いて…)

仕方なく脚部のブースターで相手との距離を取り持ち直す

だがそれに対し相手は捕縛用のアンカーを打ちだし弐式の脚部に巻きつけ自分の領域に引き戻す

機体を思うように動かせない簪はなすすべもなく攻撃を受け続けたちまち機体のダメージレベルがCになってしまった

管制室にも緊迫した空気が走る

「おい、聞こえているのか!試合はもう終わっている!武器を仕舞え!」

千冬がマイクを通じて敵機に呼びかけるが敵は聞く耳を持たず攻撃を止める素振りを見せない

「大変です!このままじゃ更識さんの機体が…」

「おい貴様!いったい何を企んでいるんだ!今すぐ辞めさせろ!」

千冬はすごい剣幕で管制室にいたキーラの取り巻きの胸倉をつかみ詰め寄る

「…………………………ヒヒ」

どこか照準の合わない目を右往左往させながら取り巻きは口から薄気味悪い笑みを零すだけだった

こんな状況でも真木は観客席を映したモニターを凝視していた

真木が見ていたのは二点、観客席で一人ノートパソコンをいじった後、北出口から観客席を後にしたキーラと状況をよくわかっていない伊達だった

そして人形をつかみ上げおもむろに立ち上がると管制室を後にする

それに誰も気づくものはいなかった

場面は変わって東出口入口席、伊達がいる所だ

「大変、このままじゃ更識さんが!」

「機体のダメージがレベルDになっちゃう」

(何だか大変なことになってるみたいだな…)

~君たちには“とある世界”を救ってきてほしいんだ~

ふとフラッシュバックする鳴滝の言葉

「まさか鳴滝のおっさん言ってた意味って…」

「伊達君」

「ドクター!やっぱりこれって…」

「私にはわかりませんが、現状この学園で打つ手はないようですね」

「だよな、ってことはこれがこの世界の敵ってやつか?」

「いえ、おそらくその予想ははずれていr」

「とにかく俺、行くわ」ガシャン

ミルク缶を背負い最前列席の方へ向かおうとする伊達だがその腕を真木がつかむ

「そう言うだろうと思っていました、ということはアレを使うつもりでは?」

「当たり前だろ、今やんなくていつやるんだよ」

「昨夜渡したそれは未だ未完成だと言ったでしょう、実戦投入は危険です」

「どういう意味だ?俺のこと心配してんのか?」

「何を馬鹿な、バースは数少ないこちらの切り札です。実験を重ね安定した稼働ができるまでそう安易に見せるべきではないと言っているのです」

「そんな事言ってたらいつまでたっても変わらねえだろ、あの子はどうするんだ!」

伊達は今なお敵の無慈悲な洗礼を浴びている簪の方を指差し語気を強める

「それにあの子が戦ってる相手って、あんたの所にいる研究員なんだろ?」
「明らかに様子がおかしいだろ!ほったらかしにしてたらどうなると思ってんだよ!」

食ってかからん勢いで真木に詰め寄る伊達、それを真木は…

「さぁ?何とも」

「なっ…」

「よもや君は私が生き返ったことで改心しただの更生しただの都合のいい妄想をしていたんじゃないですか」
「馬鹿な事を」

「そうかよ…」

「姉の命まで奪ってまで私が着手した世界の終末をやすやすと手放すとでも?」

「もういいよ…」

「少なくとも私には私なりのやり方があります、一々君に足並み揃えているほど私もヒマではないのです」

「いいって…」

「まぁ気の毒ですが更識君にとってもこれが一つの終末、一つの完成だった…ということd」

「い い っ て 言 っ て ん だ ろ ッ !」

バキィッ!

真木の左頬を伊達の拳がヒットする

そのまま宙を舞い地面に叩きつけられる真木

「あ、、ああ、ひぃぃいいぃぁあ。伊達君、いったい何を…」

転げ落ちた人形を慌てて拾いなおし反論する

「伊達先生、何やってるんですか!」

「こんな時にケンカしちゃだめですよ!」

「真木先生…痛そ~」

そばにいた女子達が仲裁に入るが伊達はそれを気にも留めず詰め寄る

「ドクター、今回ばかりは頭に来たぞ、グチグチグチグチ陰気臭ェことばっか言いやがって!

「しかし、このままではどうせ見苦しい結果を晒すだけでしょう」

「それがどうしたよ、みっともなかろうが情けなかろうが俺はやるぜ」
「もう目の前で諦めるのは真っ平だからな」
「あんたも終わりだどーだなんて言うなら、もっとスッキリした恨みっこ無しな奇麗な終わり方ってやつを見せてみろよ」

何度も戦場を潜ってきた伊達の瞳はどこまでも熱く真っすぐだ

赤くなった頬を擦りながら立ち上がり真木は踵を返し観客席を後にする

「勝手にどうぞ」

それだけ言って完全に姿を消してしまった

「っしゃぁ、やるか!」
「悪ィな、見苦しいとこ見せちまって」

とだけいって最前列に向かう、今できることをするために…

そしてこちらは最前列席…

「クソッ、どうなってるんだよ!このままじゃ簪が…」

固く握った拳でバリアを叩く一夏

「ねぇ、あなたたち機体を持ってる人はいないの!?」

「すいません…、もうドックに預けてしまってて…それにどのみち白式じゃないとバリアは…」

箒たちに震える声で問いかける楯無だが、今回のルールで模擬戦が終わった後機体を整備に回すことになっている為ここにはない

力なく項垂れる楯無

(ハメられた…、連中の狙いはこれだったの?だから簪ちゃんの機体の整備を…)
(甘かったわ…、だれか、誰でもいいから簪ちゃんを助けて!)

声にならない叫びを上げる楯無、生徒会長であり対暗部用構成員でもある彼女も一人の少女であり、一人の姉だ

その時である

「ちょっと離れてろ!」バギュン バギュン

黒と緑の大型の銃を構えた伊達が駆け付けた

放たれた黄色に光る光弾はバリアに当たると表面を水面のように揺らし霧のように消えてなくなった

「くっそ~、やっぱバスターじゃバリアは破れねぇか…」

「伊達先生!なんでここに?ていうかそれなんですか?」

「詳しい話は後だ、どっかにバリアあけるドアノブないか?」

「あるわけないじゃないですか!そんなもん」

「じゃぁ、カギ穴とか!」

顔は真剣だが冗談を言い続ける伊達を楯無が睨む

「いい加減にしてよ!このままじゃ簪ちゃんが死んじゃうでしょ」
「ふざけに来たんなら帰ってよ!!」

目尻に涙を溜めた楯無が伊達に掴みかかる

一夏や箒は普段見せない楯無の表情に言葉を出せないでいた

「分かった、分かったよ」
「目の前で傷つけられてる命を前にして、何もせずにいられないのは俺も同じだ」

バリア越しに敵機に踏みつけられてる簪と弐式を見つめる伊達

「とはいえバリアだな…。どうするか…そうだ!」

伊達は先ほど光弾が当たったバリアが揺れたことを思い出した

「一か八かだ、超音波でちょいっと弄れば…」プシュ

ミルク缶からプテラカンドロイドを取り出しプルタブを開け真上に放り投げる

「プテラッ」ギュィーン

一夏達の真上を旋回し伊達の顔の近くでホバリングするカンドロイド

「よし、ちょっと皆耳ふさいでくれ」

      キィ―――ン

「へ、いったい何が…ウッ」

「な、何だ?この音は…」

耳を劈く怪音に一夏達は耳を押さえて蹲る

そして超音波を浴び続けたバリアは幾つもの波紋を生み出し揺らぐ

「よしっ、今度こそ!」バギュン

ピシッ バリ―――ン

揺らぎにぶつけた光弾によりバリアは音をたてて穴をあけた

「よっしゃ!空いた」

「けどどうするんですの?私たちは今だれもISを持っていませんわ」

「そうだよ!このまま生身じゃ行けないよ!」

セシリアとシャルロットの言うことももっともだ

そこに伊達は頼もしく言い放つ

「いいっていいって、あとは俺に任せときなベイビー」

ミルク缶からもう一つの道具、バースドライバーを取り出し上手く操って腰に巻きつける

「先生、それって…」

弾いたメダルを左手で受け取るとそれをベルトのバースロットに挿入する

するとセルリアクターの前に緑の目盛りのようなものが現れさらに右手でグラップアクセラレーターを回転させる。二回ほど回転させると…





             カポーン



小気味の言い音と共に伊達の体が眩い光に包まれる

光がおさまるとそこにいたのは…

首から下を黒の強化繊維を纏い胸にはチェストアーマー、さらに両腕、両肩、両腿、両足にプロテクターを装備した戦士がいた

しかしどのアーマーも配線や基盤がむき出しになっておりどこか未完成といった印象が強い

「じゃ、ちょっと行ってくるわ」

穴が狭くなってきたバリアにミルク缶を担いだまま飛び込みフィールドに降り立つ

伊達明、そしてBIRTH ISの戦いが今始まる

そしてこちらは観客席から出口を出て少ししたところの場外観覧席

先ほど人知れず出て行ったキーラはここのベンチソファに腰掛け天井から吊るされたモニターを眺めている

「フフ…、出来は上々ね。面白いことになりそうだわ…」
「あのクソ生意気な生徒会長の妹はいい生贄になってくれたわね、私がここを出て羽ばたく為の布石に…ククク」

「やはり君でしたか、キーラ君」

「ッ!…テメェ気づいていやがったのか!」

「いえ、ただ職業柄悪だくみというのに少々敏感になってしまっているだけです」

伊達と衝突した後、真木は観客席を後にしキーラを追っていた

「そうかい、そいつぁ~ご苦労だねぇ」

「ご苦労ついでにこのくだらないイタズラをもうやめていただきたいのですが」

「残念だねぇ、真木所長。あんた二つ勘違いしてるわ」
「まず一つ、やめるつもりなんてさらさら無いんだよ、そしてもう一つ」
「これはくだらないイタズラなんかじゃなくて立派な計画なんだ」

「計画?」

「そう、新任の男性教師、まぁあんたのことだわ。そいつが行き過ぎた改造で生徒を一人殺してしまいましたとさ」
「そしてそれに付き合わされた薄幸の女科学者、これがあたしね。怒った女科学者の親族はこんな職場にあたしを預けることができないって怒る」
「そうすれば私は晴れてシャバの空気が吸える。どう?素敵だと思わないか」

「立案にはさぞかし知恵を絞ったようですが…、致命的な欠点が一つありますねぇ」
「私に罪を着せようとするなら、私はその追及を全力で忌避するでしょう」

真木の反論にキーラは目を丸くさせる、だがその顔を破顔させ

「そうねぇ、じゃぁこんなのはどう?狂気の男性教師、生徒を死なせて発狂して拳銃自殺、な~んてのはッ!」パァン

喋りながらキーラが取り出したのは黒く光るハンドガン、放たれた一発の弾丸は真木のコートを掠め地面に穴を空ける

辺りに煙の臭いが立ち込める

その時

「ど、どういうことなの?」カラーン

ショックのあまりメンテナンスチェック用のシートを挟んだバインダーを地面に落したまま拾おうとしない少女、布仏本音が立ちすくんでいる

「かんちゃんが生贄って…、それに真木せんせーが自殺って」

足を震わせながら言葉をつなぐ本音

「布仏君…ここから離れていなさい」

真木が本音に告げ終えたその刹那

「あーあ、発狂した男性教師の可哀そうな被害者が一人増えちゃったな~」

抑揚の少ない声で拳銃を本音に向けるキーラ

緊張が走るこの場外観覧席でもう一つの戦いが始まる

>>1です、今回はここまで!

フォーゼ面白いですね、スイッチ全部集めてます

映画も絶対見に行きます

それではまた次回!

スイッチはメモリやメダルと比べて安っぽいのがちょっと……

投稿乙彼です!
ところでBIRTH ISのイメージ上のデザインってバースとISどっちに近い感じですか?

面白かったのですが一つだけツッコミを
7巻より後の設定だと一夏だけは白式がどこにいても召還できるんじゃないかなと

>>355-356
半年ROMってろ

>>357
これだからもしもしは

乙!
やっとバースキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

その辺もあとで説明あるだろうから待ってようぜ

ヤバい続きが超楽しみ
速く来て!

>>1です。こんばんわ

今日は投稿はありませんが、質問が多いので書き込みさせていただきます

小説投稿サイト・にじファンさんで同名のこれと同じ小説を投稿させていただいております

そちらの方にいろいろ解説や物語の位置づけなどを各話のあとがきに載せています

よろしければどうぞ

はよ

はよ

はよ

>>1です、こんばんは

いきなりですがもう一時間くらいしたら投下していきます

お楽しみに

ヘイ、ブラザー!
そんなこんなでもう2時間経ったゼ!

>>1です

すいませんFate/Zero見てたら時間を忘れていました

早速始めます

突如アリーナに現れた機体、それだけでも驚きなのにさらに観客席に居た生徒達はさらに驚いていた

その理由は…

「あれって伊達先生…だよね!?」 「どうやって中に入ったの?」

「ていうかあの機体何?」 「あれってまさかIS?」

ざわめく観客席をよそにBIRTH ISを纏った伊達は敵機に向かっていく

敵機はそれに気付かず簪の打鉄弐式を甚振っていた、弐式のダメージはCの大台に乗り機体の至る所に亀裂や破損が目立つ

乗っている簪はすでに気を失っておりされるがままになっている

シールドバリアは枯渇寸前になっておりアリーナに映っていたスペックデータはあらゆる数値がレッドゾーンに達していた

とどめを刺さんとばかりに大きな足を上げ踏みつけようと足を振り下ろす

誰しもの目に簪の絶体絶命の危機が映るはずだが彼女達が目の当たりにしたのは…



     …ラファールにドロップキックを放つ伊達の姿だった…

「ウオォォォ~~~~」

雄たけびを上げながら敵機を蹴り飛ばした後、簪の傍に駆け寄る

『先生!簪ちゃんは…簪ちゃんは大丈夫なんですか?』

傍を飛んでいたカンドロイドから楯無の声が通信で届いてくる

伊達は簪の顎に両手を添え、首に指を当てる

「大丈夫、軽い脳震盪だ!眠りのお姫様になっちまってるだけだ」

カンドロイドを挟んでの伊達からの返答に楯無はホッと胸をなでおろす

「むしろ問題はあっちか…」

『……………………』

そう呟く伊達の視線の先には体勢を立て直したラファールが伊達に照準を合わせブースターで急接近してきた

相変わらず相手は無言のままである

「時間がねぇ、早いとこ終わらせるぜ」ダンッ

向かってきたラファールを馬跳びの要領で飛び越え気絶した簪から距離を取らせる

90秒しか変身時間を持たないBIRTH ISに長期戦は不可能である

それを見越し伊達は短期間で決着をつけるべくバースバスターを撃ちながら相手と距離を詰める

「オラオラァッ!」ガギュンガギュン

光弾が直撃したラファールは体勢を崩し手にしていた短機関銃を取りこぼしてしまうという大きな失態を犯す

さらに懐に入り込まれた伊達に左足をスコーピオン・デスロックで抑え込み締め上げる

相手の機械の足はミシミシと音を立て軋む

「悪く思うなよ、正当防衛だ」

バキリという耳通りの悪い音とともにラファールの足が逆方向にねじ曲がり火花が弾け飛ぶ

IS以外の兵器の力技だけでISを破損させるという大挙にでる

「すごい…、ISを追い詰めてるわ」

「何かよくわからないけどスゲぇかっこいい!」

一夏達観客席からも感嘆の声が出る

相手の足を破壊した伊達はそのままもう片方の足をつかみ上げ

両方の足を両脇に抱え、大車輪の要領で振り回しブン投げる

「あと十五秒か…、こいつで終わりだ!」

簪から距離を取っているのを確認するとメダルタンクを置いた所へ戻りバレットポットにセルメダルを補充する

そしてバースバスターの銃頭部にポッドをセットしエネルギーを抽出させる

CELL BURST

壁際に凭れ構えた銃に先端部にエネルギーを集める

反動の強いバースバスターを限られた時間、状況で最大活用する為の策だ

そしてそれを見ていた観客席の生徒は誰しもが伊達の勝利を確信する

後は相手を事情聴取して事の真意を問いただした後緘口令が布かれこの一件は終わり

IS学園は取り調べのキツさに定評があるためきっとこんな事態は起こらないだろう

誰もがそんなことを考え安堵の息を漏らす

ハズだった

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』バシュン

安堵を疑惑に塗り替えたのは一発の発射音だった

「グアァッ」グサッ

ラファールの右腕から発射された銛は伊達の心臓目掛け一直線に飛んでいった

それを目で捉えた伊達はバスターのチャージを止め横に回避し狙いから逸らす

が、避けきれず左肩に刺さってしまいそのまま肩の装甲を突き破り銛の先端部は壁に深く刺さってしまった

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
(あああぁぁあ、腕が上がらねぇ・・・)
「グッ、ゆ、油断しちまった・・・早く抜かねぇと」ガシッ

黒のアームカバーで銛を引き抜こうとするが、ベルトが鳴り体が光に包まれる

最悪のタイミングで変身が解除され、伊達は元の白衣姿に戻る

それは攻撃力の減退だけでなく、守りの要も無くなってしまったという証拠である

そして今伊達は銛に体を固定され身動き一つ取れない、それが意味することとは…

「ヤバい!相手が体勢を構えた!」

「マズいでしょ、伊達先生生身でしょ!?」

いつの間にか一夏の下に合流していた鈴も慌てる

そう、ラファールは変身解除となってしまった伊達にインファイトを仕掛けるべく肩を突き出して飛びかかる体勢に入る

「やべ、敵さんお怒りだわ、クソッ抜けねぇ…」

バースバスターも銛が刺さった衝撃で落としてしまい身動きも取れない

冷たい汗が流れる、伊達明、絶体絶命のピンチ

とうとう敵機は伊達目掛けブースターを吹かせ加速する

万事休す、その時!

その時千冬は、連絡通路を走っていた

(あの力…、やはりあれはメダルの…)
(なぜ今になってあんなものがッ、とにかくこの目で確認せねば納得できん!)

伊達が姿を変え戦いを始めたのを見届けると急ぎ足で管制室を後にし観客席へと向かう

この角を曲がって場外観覧席を通れば観客席へのゲートに出る、あと少しだ

        パァン

前方の方から聞こえてきた音にハッと我に返る

「何だ今のは…?」

この先の曲がり角から聞こえてきたのは…銃声!?

「クッ、一体何がどうなってるんだッ」

落ち着いて頭を冷やすと話し声が聞こえる

その声のする方へ視線を向ける千冬

「布仏君…ここから離れていてください」

「あーあ、発狂した男性教師の可哀そうな被害者が一人増えちゃったな~」

そこにいたのはキーラ、真木、布仏の3名

(なぜあの女と真木が一緒にいる?そしてなぜ布仏が…)

「えっ…、でも…そんな」オドオド

「チッ、要領悪いガキだね! 先にテメェから消してやろうか」チャキ

「ヒッ」ビクッ

状況がうまく飲み込めずに立ちつくすしかない本音にキーラは銃口を向ける

「キーラ君、君が更識君の機体に仕掛けたのは、任意で伝達を阻害させるパッチソフトのようですね」

急に話を切り替えた真木にキーラは驚いて目を見開き真木の方へ向きなおす

「テメェ知ってやがったのか!?」

「いえ、最初に研究室に伺ったときに更識君の機体がモニターに映っているのを見ましてね、まぁ尤も、逆上した君にすぐに追い返されましたので確証には至りませんでしたが」
「誰かの言葉を借りるならばああいうのを“ヤバげな実験”というのでしょうか、生憎そういった判断はあまり得意では無いもので」

「へえ、なかなか鋭いわね、ただのインテリメガネかと思ったけど」
「そうよ、大体合ってるわ」

あくまで淡々と感情など一欠片も見せずキーラは言葉を繋いでいく

「更識のガキ使って問題起こして、それをアンタになすりつける」
「そしてあたしはここから出ていく、被害者の立場でね」

「なぜそのようなことを?」

「気にいらないからだよ、好き勝手やらせてくれない世間もこの学園のクソウゼェガキ連中も」
「あたしはやりたいことやりたいだけなのに、モラルとか規範とか、うちのジジイがよけいなことしてくれたからこんな堅苦しい所に居なきゃいけなくなったの」
「ここはあたしが居るには眩すぎるんだよ」

「ひどい!そんな理由でかんちゃんを…」

「そぉ!そんな理由でね、ゴメンネ~大人って自分勝手よね~」
「そういう訳で、さっさと死んでもらおうか」

語気を強めたキーラは改めて本音に向け引き金に手をかける

「布仏君、ご友人の心配も結構ですがご自身の心配もしていただかないと」

「え、だって…だって心配だもん!何も出来ないし何をしたらいいかも分からないけど」
「かんちゃんは私の大事な友達だもん、何か悪いことに利用されているなんて聞いたら放ってなんかいられないよ!」

目を涙で潤ませ必死に言葉を紡ぐ本音

「だそうですが、今回はその手を降ろしていただけませんか? キーラ君」

本音の意志を汲み取ったかのようにキーラに問いかける真木
対するキーラは…

「う~ん、そうねぇひとつ聞きたいんだけどさぁ、あんたこの状況理解してないでしょ?」パァン

何の躊躇いも見せずキーラは真木の太腿を撃ち抜く

「キャァッ!」

銃声に耳を塞ぐ本音

死角から傍観していた千冬もこれを見過ごせる筈もなく姿を見せる

「待てッ!」

「織斑せんせ~」ガシッ

見兼ねて現れた千冬、そして千冬に不安な顔でしがみつく本音

「お前の腰巾着が全て吐いてくれたぞ、これ以上取り返しのつかない事態になる前に下らん仕掛けを解け」

さすがに分が悪くなったのか数歩たじろぐキーラ、しかし開き直ったのかその顔を歪ませながら、千冬を睨む

「クソがクソがクソが!だったらテメェら全員死ねよ!!」チャキッ

腿を撃ち抜かれ蹲る真木を視界から外し、千冬と本音に向ける

今度は千冬を撃つつもりだ

怯えて足元の覚束ない本音は回避が難しくこのままでは二人とも危険だ

すると…

「……ヌゥッ!、グッ」ガシッ

「なっ、テメェ、何しやがるッ」

足を引きずり額から脂汗を流しながら真木が銃を握るキーラの右腕にしがみついてきたのである

「布仏君、織斑先生、今の、うちにここから離れてください、ッ」

無表情、無感情だった真木の別の一面に面食らってしまったのかやけにあっさり引き下がる千冬

「あ、ああ、布仏、今のうちだ、ここから離れるぞ」

「でも…」

「クソッ、このくたばり損ないがァ!」

   パンパン、パンパァン

右手に喰らい付いてくる真木にとうとうマジギレしたキーラは何発も、何発も真木の体に銃弾を撃ち込む

「な、なんて真似をッ」

思わず絶句した千冬、だが事態はさらに悪化する

「真木せんせぇッ」ダッ

撃たれた真木に本音が駆け寄ろうとするその時

「おぉっと、行かせられねぇなぁ」グイッ

本音の髪を掴みキーラは自分の方へ寄せる

「こいつはいい人質ができたってモンだ」
「これは下手に動けないよね、なぁ織斑先生?」

「くっ」

「せんせぇっ、真木せんせぇ!」

キーラは改めて本音の頬に銃口を押し付ける
そして真木は…

(やはり…、伊達君がやっている様に上手くはいきませんでしたか…)

俯せに倒れる真木、腹から零れ落ちる真っ赤な液体が真木の視界を同じく真っ赤に染める

(ああ…私の終末…、私が完成してしまう…)

やけに周りの声や心臓の音が激しく聞こえる、なるほどこれが死に際というものなのだろうか

(姉さん…)

一面真っ赤だった真木の視界は、そこで真暗になった

>>1です

今回はここまで

MOVIE大戦見てきました、メチャクチャ面白かったです

また見に行きたいです

それではまた次回

質問などあればジャンジャンください

ドクター恐竜メダルないんだよな……

ドクタァ・・・

1乙!MOVIE大戦見に行きたいよぉ・・・

弦太朗「IS学園……キタ――――!!」

相互リンク

乙!!
次の投稿は来年か?

こんばんわ、>>1です、ほんのちょっぴりだけですが、投下します

“死ぬかと思った”今まで何度そう感じたことがあるだろう

激戦区で手術中に敵勢力に踏み込まれた時、あるいは悪い食べ物にあたって生死の境をさまよったとき

そして頭に銃弾を受けた時。

いつだって死と隣り合わせの場所にいた、もし日本に生きて帰ることが出来なくなったとしてもその理由や無念を他人に押し付ける事のないよう覚悟もしてきた

それでも、だがそれでもやはり死ぬのは怖い

敵機はものすごいスピードでタックルをぶちかましてきた、伊達の体は瞬く間に目も向けられない様になるはずだ

そう、はずだった

結果として伊達は無事だった、という言い方は些かおかしい気もするが、とにかくこの攻撃でダメージを受けることは無かった

なぜなら

「伊達先…生、今のうちに…逃げて…」

間一髪で意識を取り戻した簪がラファールに正面からぶつかり食い止めていたのだ

伊達に背中を向けて踏ん張る簪、機体はガクガクと揺れ今にも突破されてしまいそうだ

(クッソ、抜けろ!抜けろっての!)

藻掻けども刺さった銛は一向に抜けず、伊達の顔には焦りの色が浮かぶ

とうとう耐えきれなくなった簪の弐式はラファールに弾き飛ばされる

跳ね飛ばしたラファールも凄まじいスピードで壁にぶつかったため伊達の左肩から30㎝のところで蜘蛛の巣のようなヒビを壁に拵えていた

壁に出来たヒビのお陰で脆くなった壁から銛を肩に刺したまま抜き取る伊達

そのままヨタヨタとバースバスターを広いシャッターの降りた出口に向かう

「ハァ…ハァ…」

荒い息を吐きだし憔悴しきった顔で足を進める伊達

会場から聞こえる悲鳴と簪の機体が傷つけられていく音

それらを総べて何処か受け流し、伊達は出口にのみ一心不乱に歩を進める

(ハァ…後少しだ…、あと少し…)

その時、伊達の耳に一際大きく悲鳴が聞こえた

(……………?)クルッ

後ろを見てしまった伊達が見てしまったもの

とうとう機体も解除されISスーツのままで横たわる簪の姿

ぐったりとしており意識があるのかさえも疑わしい

ラファールはそんな簪を無情に踏みつけようと足を上げる

「簪ちゃん、早く、早く逃げてッ」

「畜生、どうにもなんないのかよ!」

かつてないピンチに観客席も悲壮な声が聞こえる

そして、一人残された伊達は…

(俺は…、俺は何をしてんだ…)

~命を前にして、何もせずにいられないのは俺も同じ~

思い返すのは戦地で消えていった命の数々

~じゃ、ちょっと行ってくるわ~

(あんだけ偉そうなこと言って、ガキに尻拭いされてちゃザマねーぜ…)
(助けに来ておいて、“精一杯頑張ったから失敗しても文句は言わせない”なんてツラしてんじゃねーよ、俺!)

今までそうやってどれだけの人間の期待を打ち砕いてきたか

分からない伊達ではない

「何やってんだ、俺…」

歯を食いしばり己を悔い改める伊達

ツゥ、と目から熱き雫が流れる

「へっ、これじゃぁ元の世界に戻ったら、火野にデケェ顔できなくなっちまうな」
「いや、帰れるかどうかも分かんねぇか…」

一人苦笑し踵を返す伊達、取るべき行動は一つだ

勢いよく足を振り下ろそうとするラファール、だが

「オラオラァ」バギュン バギュン

突如放たれた弾丸でバランスを崩し、上げた足を慌てて戻すラファール

「テメェの相手は俺だァ!この鉄クズ野郎!」ガチャ

バースバスターを構えなおす伊達

男は再び銃を手に取る、幼い命を守るため、そして己の信念に嘘を吐かないために

>>1です、今回はここまで!

時間に余裕があれば、年内にもう一度くらい投下します、では失礼します

おぉ、来てたのか

新年…HappyBirthday!

>>394
会長がいつも通りで何よりです

まだかな

どうも>>1です、こんな時間に更新します

ではどうぞ

オーバーオールの腰に巻きつけた上着の部分からカンモードのカンドロイドを取り出す

「もっとマシなのなかったのかよ…、悪ィがちっとばっか時間稼いでくれ」プシュ

「バッター」ピョイーン

「タコタコ」プルプルプル

隠し持っていたカンドロイドを起動させ敵機に向かわせる

バッタは足元でピョンピョン跳ねながらラファールを翻弄し、タコは注意をそらすため頭上で飛び回る

「おお…、意外と使ってみるもんだ」

即席の組み合わせにしては思いのほか効果を発揮したのか感心する伊達

「そんなこと言ってる場合じゃねぇな」
「ウッ…」ズプッ ググッ

肩に刺さった銛は返しが付いているため引き抜くのは難しいので、逆に押し込む

血と筋繊維の絡まった銛を抜き取り、忌々しく放り投げる

「骨に異常はねぇな、よかった」ワキワキ

手のひらを閉じたり開いたりしながら無事を確認する

着ていた白衣を脱ぎ穴の開いた左袖を破り怪我した部分に巻きつける

「ベルトどこいった?はやく変身しねぇと…、ハァ…ハァ」キョロキョロ

変身解除のショックで飛ばされたBIRTH ISのベルトを探す伊達

肝心のベルトはカンドロイドに弄ばれるラファールの足元に転がっていた

「よりによってあんなところにかよ…、しゃあねぇな!!」ザザー

敵機の足元に駆け込んだ伊達はスライディングで滑り込んでベルトを回収しようとする

だがそれを黙って見過ごすはずもない敵は拳を握り、伊達の脇腹に振り下ろす

ドサッ ゴロゴロ

「ぐあっ、うぇっゲホッ」ベチャ

宙を舞った体は乱雑に地面に叩きつけられた

肋骨に多大なダメージを与えられ血の塊を吐き出す伊達

ISに生身で立ち向かう、そう考えることすら馬鹿馬鹿しく思えるような惨状が目の前に繰り広げられていた

伊達を殴り飛ばしたラファールの操縦者は無機質なゴーグルで無表情な素顔を隠して立ち竦んでいる

そして今度こそ簪に止めを刺さんと歩を進める

だがその時

『CELL BURST』

ドォン…、ビリビリィ、シュゥー……

轟音と共に放たれた光弾は咄嗟に避けたラファールの肩をかすめシャッターの降りた入場口に直撃し風穴をブチ開けた

「ちっ、避けられちまった…、だがあそこから逃げられそうだな…」ハァ…ハァ…

呟く伊達の足元に機械の残骸が転がり込んできた

ラファールの攻撃で片足をもがれてしまったバッタカンドロイドだ

火花を吹いてノイズを散らすバッタから、途切れ途切れに音声が漏れてくる

『ザザ……伊達…生!大…夫かよ!』

観客席に置きっぱなしのプテラノドンは通信機として使えるため、それを通じて一夏が話しかけてきたのだ

「おぉ…、織斑ちゃん、調子どうよ…」

『どうじゃねぇよ!!早く逃げないと死んじまうぞ!』

「わあってるって、あの子をここから逃がしたら…上手くできればな」

『生身でISに勝てるわけ無いだろ!早く逃げろって言ってんだよ!』

「うっせぇバーカ…」

『ば、馬鹿って…、自分だって十分馬鹿じゃないか』

「よーく聞けな、お医者さんってのはな、目の前で消えそうになってる命にケツ向けるような真似はゼッテーしねぇ」
「都内の一頭地だろうが超巨大病院だろうが、銃弾飛び交う戦場だろうがな」

激痛に耐えながらも言葉を紡ぐ伊達、それは彼の医者としての確固たる信念だった

「こんなところまで来て、後悔や心の中の押し問答引きずりたくねぇって思ってたんだが…」
「大人だろうが医者だろうが…、ISってのが使えなきゃ人助け一つやっちゃぁ…ダメかい?」

『そ、そんな意味で言ったんじゃ…』

「分かってるよ、心配してくれてんだろ?その気持ちは分かる、けどな、ここであの子は見殺しにはできねぇ」

オーバーオールのポケットから取り出したセルメダルをバレットポットに装填しバースバスターを構える

ブルブルと震える手で、霞む視界で、伊達は次の一手に踏み出す

それに応じラファールも突進の体勢からブースターを吹き飛び出す

ラファールの拳を体を捩らせ必死に躱す

「いつまでも同じ手をくらうと思うなよ姉ちゃん!」バシュン バシュン

横に回避しながら弾丸を発射し、くらわせる伊達

「………!」チラ

「タコー」バシィン

伊達の目配せに合わせてタコカンドロイドが回転する足でBIRTH ISのベルトを弾いて伊達の方に飛ばす

「オーライ!」パシッ

見事キャッチした伊達の手の中で、ベルトは鈍く輝く

それに合わせ会場からオォッと歓声が聞こえる

「ナイスだぜタコちゃん」

そのままベルトを巻こうとする伊達だが、その表情は一気に絶望の色に染まる

メダルの挿入口がひしゃげてしまい通らなくなってしまっているのだ

「くっそ~、何かのはずみでやられてたのか…、チクショォ」
「どうする、どうすればいい?」

必死に頭を回転させるが案は浮かばず、気づけばラファールの拳の射程圏内に入っていたことすら頭に入っていなかった

『先生ッ!』 「危ない」

   「キャアッ」

 「伊達先生」   『どうにもならないの?』

生徒達からも悲壮な声が響いてくる

(やっぱ碌な目に合わねぇなぁ…、俺が出しゃばることじゃ無かったのかな?)
(俺は…正しかったのかな?)

抵抗することも避けることもせず、伊達は静かに目を閉じその場に立ちすくむ

(教えてくれよ…、俺は、これで良かったのかな?)
(なぁ…)







(後藤ちゃん…)

諦めたかの様に目を瞑る伊達は、その時気づくことができなかった

ラファールの拳が己の体に向かってくる最中、背後から鏡のようなオーラが己に向かって来ていることを

そしてそのまま伊達を飲み込んでしまったことを

「ここは…?」

目を覚ました伊達は周りをキョロキョロと見回す
自分以外何もない、360度全てが真っ白な空間

「ここって…、最初に鳴滝のおっさんに会った場所だよな」
「ってことは…、やっぱり俺は死んじまったのか?」
「でもちょっと雰囲気が違っているような…?」

一通り考えたあとその場に転がり込み…

「だー、さっぱり分からん!」

不貞腐れて寝転がってしまった

「あれ?この状況ってたしか…?」

何かを思い出したように

「そうだ、いつも見ていた夢だ!ってことは…」

《コツ…コツ…コツ…》

「やっぱり!足音だ」

その足音の主が向かってくる

「もう予習済みだぜ、足音の主さんよ」

《コツ…コツ…》

近づくにつれ姿が鮮明に伊達の目に映る
と共に伊達の表情が強ばってくる

「そ、そんな…、お前は」

《コツ…》

とうとう伊達の目の前に現れた足音の主

U字のバイザーがついたメットに黒のインナースーツと銀に緑のプロテクター、そして全身至るところに付けられたカプセル

そう、伊達の分身ともいえる姿

「お前は…、バース…ッ」

仮面ライダーバースが目の前に立ち誇っているのである

「そうか…、あの世への案内人がバースか、俺らしいや、ハハッ」

どこか冷めた笑いをこぼす伊達、目の前のバースは…

『伊達さん…、寝てる場合じゃないですよ 』

バースはベルトからメダルを抜き取り変身を解除する

「その声、まさか…」

訝しげる伊達の目の前の男

その姿は…

ややパーマのかかった肩まで伸ばした髪に野戦的なルックスに身を包んだ端正な顔立ちの男

後藤慎太郎がそこにいたのである

「伊達さん、お久しぶりです」

「後藤ちゃん、なんで…!?」

伊達の持っているBIRTH ISのベルトと後藤の持っている仮面ライダーバースのベルト

その二つが同時に煌めき出し、奇跡を目撃することとなる

今回はここまでです、ご意見ご感想お待ちしております、ではまた次回

更新きてたー!
すごく読みやすかった
>>1おつです

後藤ちゃん!

>>1

>>1です。今日の21時位から更新します

お楽しみに。

最速全裸待機

>>1です。今晩わ

早速はじめていきます。

伊達はこの白い空間に自分のよく知ってる男、後藤慎太郎が現れた事に驚いていた

無理もない、世界の壁を超えやってきた別の世界でもう見ることも出来ないと思っていた人間に会ったのだ




異世界間の境界

「後藤ちゃん…、なんだってこんなとこに…」

「俺も驚きました、急に目の前に別世界の入口が現れて、そこから…」

後藤が顎で指したその先にはマゼンタのボディに緑の複眼の仮面ライダーが気だるそうに立っていた

「そこからディケイドが出てきたんです」
「俺の力を必要とする者がこの先にいるって言われて、それがまさか伊達さんだったなんて…」

「そうか…、けど驚いたぜ。こんなところで後藤ちゃんに会えるなんてな」
「そこのピンクの兄さんか、ディケイドだっけ?ありがとな」

そこでディケイドと呼ばれる仮面ライダーは伊達に向けて初めて口を開く

「気にするな、鳴滝の尻拭いをしに来ただけだからな、それと俺の体はピンクじゃないマゼンタだ」

「そうかい、そりゃどうも」

そして伊達は後藤の方を向き直し

「それにしても、後藤ちゃんも随分男らしい顔つきになったな」

「そうですか」

「ああ、立派な戦士の顔してるよ」

「そう、ですか…///」

後藤は照れ臭そうに顔を伏せる

「バースか…、懐かしいな」
「俺のヤツはもう使いモンにならなくなっちまったからな…」

ボロボロになったBIRTH ISのベルトを口惜しげにさらす伊達

すると後藤は自分のバースドライバーを差出し

「それですよ伊達さん、俺のベルト使ってください」サッ

「えっ」

「伊達さんが俺に託したバースのベルト、今一度伊達さんにお預けします」

「いいのかよ…」

「ええ、俺のいる世界は俺だけの力で守れますから、今のところは」

「ふっ、はははっ、そうかい、そりゃよかった。そんじゃ遠慮なく…」

煌めくバースドライバーに手を伸ばす伊達

「うおっ!ベルトが」

二つのベルトは震えだし宙に浮かび、眩い光の中で一つになる

「べ、ベルトが合体した?」

「一つになっちまった…」

光が消えたその先にあったのは元のバースドライバーのみ

「まぁいいや、元の方が使いやすいし」

伊達のすぐ後ろにはまたあの鏡の壁が揺らぎながら迫っていた

「伊達さん…ホントにいいんですか?」

「いいっていいって、慣れてるヤツの方がいいだろ」

伊達の返答に後藤は思いつめたような顔で…

「そういう意味じゃなくて!何もわからない世界で一人で戦うなんて…」
「なんだったら俺も一緒に!」

「ダーメ」

「何でなんですか!?」

「せっかくいい顔してたのに、すぐ前の後藤ちゃんに戻っちまったな」

「はぐらかさないでください」

「キツいねぇ、心配されるのって」
「俺がさ、あの世界を守るっていうのはな俺に与えられた仕事だ、俺はそれに一回心が折れかかっちまった」
「今度誰かをあてにしたら、何か俺じゃ無くなっちまうみてえでさ」

「そうですか…」

「それに後藤ちゃんには、守っていくべき世界があるんだろ?」

「ハイ」

「だったら俺が戻ってくるまでに、少しは住み心地よくしといてくれよ」

「分かりました、じゃあ伊達さんも、きっと帰ってきてくださいね」

「オウ」
「じゃあな、後藤ちゃん」

「ハイ、お元気で」

そういって二人は握手を交わし、伊達はそのまま鏡の壁の中へと向かっていってしまった

壁に入る前に一度立ち止まり

「ピンクの兄さんもありがとな」

「俺はディケイドだ、そしてこれはピンクじゃなくてマゼンタだ」

ディケイドの文句も聞くや聞かんや伊達はさっさと壁の中に入ってしまった

(伊達さん、お気をつけて…)






「やれやれ、もう少し爽やかに別れられないのか?男同士でベタベタしやがって」

静寂を破り後藤に話しかけたのはディケイド

「うるさい、それにしてもこれでよかったのか?」

「ああ、これでいい、上出来だ」

(全く、同じ仮面ライダーとは思えないな)

後藤はディケイドとのファーストコンタクトを思い出す

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

時は少しさかのぼり、オーズの世界

「なんだこれは…?」

後藤慎太郎は突如目の前に現れたゆらゆらと揺れる鏡の壁に驚きを隠せないでいた

押せども押せども壁は形を変えることはない

すると壁の内側から一人の仮面ライダーが壁に波紋を作りながら目の前に現れた

「……………」

「何者だ!この変な壁もお前の仕業か?」
「答えろ!」

「……………仮面ライダーバースだな」

「だったら何だ」

「お前の力、試させてもらう」スチャ

初めて喋ったその仮面ライダーは腰につけた本型のアイテムを剣の形に変え、刀身をなぞる

「やっと重い口を開いたかと思ったら、物騒なことを言い出すもんだ。いいぜ」
「変身」カポーン

後藤が変身したバースはベルトにセルメダルを投入しハンドルレバーを回転させ

         『DRILL ARM』カポーン

右腕にドリルアームを武装し、相手の剣と火花を散らす

「なかなかやるようだな」

「そっちこそ、ガチャポンで戦うなんてふざけたヤローだと思ってたがな」

鍔迫り合いからディケイドを押し切ったバースはさらに蹴りを浴びせ後ろに吹き飛ばす

地面に倒れたディケイド目掛けドリルを振り下ろすバース

だが

         『ATTACK RIDE INVISIBLE』ボウゥ

そこにいたはずのディケイドは急に消えて、ドリルは地面に穴を開ける結果に終わった

「何ッ!?」

バースは混乱し辺りを見回す

「こっちだぜ」

         『ATTACK RIDE GIGANT』

突如肩に現れた大型のミサイルランチャーを構えたディケイド

「ハアッ」ガシャン

ド ド ド ド ド ド ド

煙を吹きながら発射されたミサイルは一目散にバースに向かって飛んでいく

「何ッ!こんなもの」

一発目、二発目をなんとか回避するバースだが、三発目はよけきれず当たってしまい宙を舞ったその体に四発目がクリーンヒットし派手に地面を転がる

「クソ、厄介なカードだ」

毒づくバースに、ディケイドは新たなカードをベルトに装填する

         『FINAL ATTACK RIDE DE.DE.DE.DECADE』

空中に現れた立体映像のカードを飛び蹴りの姿勢でくぐりながらバースに向かってくる

「舐めるなよ!こっちにだって必殺技はある」

         『CELL BURST』カポーン

セルメダルを二枚ベルトに装填し、必殺技を発動させる

ドリルアームの回転が増し、緑のエネルギーを纏わせ、突き出す

そしてディケイドのキックとバースのドリルが命中し、凄まじい光を放つ

お互いにダメージを負い、変身が解除される

ディケイドは黒いコートにトイカメラをぶら下げた青年の姿に戻ってしまった

「まだやるか?」

後藤は痛みをこらえながら立ち上がりディケイドだった青年の下に近づく

青年も立ち上がる

「いや、もういい」
「お前の力はよく分かった、十分だ」

「何で俺と戦おうとしたんだ?それ以前にお前は何者なんだ?」

「質問攻めだな、まぁいい、俺は門矢士、仮面ライダーディケイドだ」

「ディケイド…、聞いた事がある」
「“世界の破壊者”だったな。こうして見るのは初めてだ」

「昔の話だ。どうでもいい」

「何のために来たんだ?」

「すこしお前に用があったんだ、で、念のため強さを見させてもらった」

「用だと?」

「あぁ、鳴滝…まぁお前の知らないやつの尻拭いなんだがな」
「変身」

          『KAMENRIDE DECADE』

「変身しろ、そしてここをくぐれ」

「何?」

「早くしろ!この先にお前の力を必要とする人間がいる」

言うや否やディケイドは壁をくぐってしまった

「ま、待てッ変身」

          カポーン

そしてバースも同じように壁をくぐる

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(こんなことになってしまったが…)

「じゃ、俺は帰るぜ」スタスタ

ディケイドはそのまま歩きだしその場をあとにする

「お前も元来たように行けば勝手に元の世界に変える、安心しろ」

「わかった、それと伊達さんはちゃんと帰ってくるんだろうな」

「俺には分からん」
「が、待つことも立派な戦いだ、負けるなよ」シュウゥ…ン

そのままディケイドは姿を消してしまった

一人残った後藤は言われたように元来た方向へ歩きだし元の世界へと帰る

壁はくぐると透き通ると、何もなかったかのように消えてしまった

「伊達さん、きっと帰ってきてくださいね…」

呟きながら後藤はさっきまで壁があった箇所を見つめるのだった

「あ、会長になんて説明しよう…」

>>1です、今回はここまで!

ゲストライダー登場でした!やっぱり世界の移動って便利な設定ですハイ(笑)

では、次回もよろしくお願いします

乙です!

>>1です

明け方ですが更新していきます

後藤と交わした誓いを胸に、意気込んでもとの世界へと伊達は帰還を果たす

異世界から壁越しに写っていたISの世界では自分が壁に飲まれてからの時間が止まっていた

というより自分が世界の時間から切り離されていたようだ




どよめく会場の声を聞き、ハッと我に返る伊達

足元の片足がもげたバッタカンドロイドから通信が聞こえる

『伊達先…生? あ、あれ?今一瞬消えたような…』
『と、とにかく!そこにいちゃ危険だって!』

通信先の一夏が困惑しながら話しかけてくる

「おお、織斑ちゃんね。お前、ていうかここにいる皆、全員運がいいぜ」

『ちょ、冗談言ってる場合じゃないって』

こちらにとっくに気づいていたラファールは、ブースターを吹かせ三度攻撃を図る

「いいからいいから、黙って見てな」
「今度こそ“ホンモノ”だ」

後藤から譲り受けたベルトを腰に装着させ、セルメダルを右手で弾き、左手で受け取る

「…後藤ちゃん、一緒に戦ってくれ…」

「変身!」



        カポーン



緑のカプセル型エネルギーフィールドがラファールを跳ね返し、伊達の身を守る

バースドライバーのセルリアクターから飛び出たリセプタクルオーブが、伊達の胸部・背部・両肩・両腕・両腿・両脚の計10箇所に配置され

カプセル状のリセプタクルオーブが開き中から転送された各部アーマーが全身に纏わりつく

一度形作った後、伊達の体系に合わせ、幅や太さといった各部のサイズが精密に変えられる

各部位の装着が終わると首からせり上がるようにメット部分が後頭部に展開され、U字のバイザーを形成し、最後に口を覆うクラッシャー部分が装着される



カプセル型のフィールドが消えたその先には全身に緑の紫電を迸らせた戦士がいた
猛スピードでタックルを仕掛けるラファール、それをバースは…

「デリャアアァ~~」

自身も肩を突き出しぶつかって来る相手に衝突させる

バースの重量と伊達の馬鹿力で相手のタックルを押し負かし、ラファールを大きく弾き飛ばし

激しく宙を舞わした

「これよこれ、やっぱバースはこうじゃねぇとな」

手をパンパンと打ち直しビッと拳を構えなおすバース

ラファールは、体勢を立て直し右腕を構え、先程伊達を苦しめた銛を打ち出す

「おおっと、同じ手はそう何度もくらわねぇぜ」バシッ

飛んできた銛をなんと片手で掴み取り、相手に投げ返す

それを飛び上がって回避したラファールは高速機動で空中へと逃げ、手に短機関銃をコールする

飛行しながら短機関銃を撃つが、バースは後ろにバク転で跳ね、回避する

「本領発揮といきますか」チャリン

       カポーン
            『CRANE ARM』
       
「もういっちょ」

カポーン
            『CATERPILLAR LEG』

左腕と両腿・両足のリセプタクルオーブが開き、分解されたパーツのようなものが飛び出し
それらが装着され、バースには左手に平たい爪のような装備と、脚部にフットカバーのような装備が装着された

「さぁ~て、ブチかますぜぇ」

ラファールの撃ってきた弾丸をクレーンアームを盾にして凌ぎキャタピラレッグで高速移動の後、ジャンプで足元にしがみつき地面に叩き落とす
地べたに転がったラファールは、大勢を立て直しバースの顔面に右ストレートをぶち込む

『・・・・・・・・・・』ブンッ

「フンッ」ガァン

バースはそれに自分の額を迎えに行かせ、勢いをつけてラファールの拳にぶつける

屈したのはラファールの拳の方だった、指をつかさどるマニピュレーターが色んな方向にひしゃげてしまっている

「ケンカの年季が違うんでェ、年季がァ」
「そんなシケたパンチじゃ、アフリカ象は倒せても俺は倒せねぇぜ」


ヘッドバットを決めたメット部分を撫でながら意気込む

相手は、簪との戦いで使ったアンカーを発射してバースの左腕に巻きつける、先ほどと同じように自分の領域に引きずり込むつもりだ
負けじと伊達はキャタピラレッグを急速回転させ、その場に踏ん張る

「状況を……、リバースッ」

バースが背負投の要領で腕を回し、相手を再び宙に打ち上げる

「まだまだやるぜ!十六問キック!」

キャタピラレッグで高速移動し、相手の着地地点に先回りし落下に合わせて右足をピンと張りその勢いのまま相手に直撃させる

伊達の反撃はまだまだ続くのだった
その伊達のテンションと同調するように、バースの体中に配置されたリセプタクルオーブが耿耿と光を灯し始めたのは、もう少し後の話




バースの一挙に沸く観客席だが、こちらはとてもそんな雰囲気ではなかった

場外観覧席、ここではもう一つの戦いが最悪の局面を迎えていた

撃たれた衝撃で胸ポケットからカンモードのカンドロイドを落としながら血の海に伏す真木

キーラに人質にされた本音は、フルフルと震えて涙を零していた

「真木せんせぇ…、やだ…」ポロポロ

「うるせぇんだよ、ピーピー騒いでんじゃねぇ」グイッ

本音の頬に熱くなった銃身を押し付けるキーラ

「熱ッ、嫌ァ」

「待て!生徒に手を出すな」

静止させようとする千冬だったが、キーラは聞く耳など持つはずもなかった

「シラケさせるようなこと言わないで欲しいねぇ、織斑先生」
「今さらアタシが生徒に気の利いた良心働かせるような人間に見える?」

「これからどうするつもりだ?」

「そうねぇ、とりあえずアンタとこのガキぶっ殺すしかないかしらね」

「シラを切り通せると思っているのか?」

「なんとでも出来るわ、金とコネさえあれば」

本来銃を持った人間であろうとも千冬にかかれば赤子の手を捻るも同然の相手ではあったが
人質を、しかも親元から責任をもって預かっている教え子を巻き込むわけにはいかず
真木も凶弾に倒れ、安否の確認さえもとれない現状で、千冬は時間を稼ぐことしか出来なかった
せめて真木が目をさますなら…、と望みの薄い希望をかける

だが現実はそう甘くはなく、そんな望みも話している声も聞こえないところに真木の意識はあった

(………ゃん、清ちゃん、起きなさい)

優しい声に導かれるように真木は目を覚ます

「あなたは…!?姉さん、まさか…、ネエサンッ」

語調がおかしくなりながら真木は目の前の人間に声を掛け続ける
そう、目の前にいた白いドレスを着た人間こそ、真木の年の離れた姉であった者、真木自身の手で人間として“完成”させた者、真木仁美の姿がそこにあった

「清ちゃん、あなたはよく頑張ったわ。でも姉さんも一人は寂しくて」
「これからまた前みたいに二人で仲良く過ごしましょ」

そういって手を差し伸べてくる仁美、それに合わせるように手を伸ばす真木
伸ばした自身の手を見て驚いた、手が、否、体全体が子供だったころの大きさに戻っていた
140cmに満たなかった自身の体に

「姉さん…、私、イヤ、僕は…」

「25年前から清ちゃんの時間は止まっていたのね、もう何も考えなくていいの。」
「もう疲れたでしょう?姉さんには何でも分かっているのよ…」

そのまま仁美は真木の手を掴み握り締める

急な事に気を乱した真木の耳に、倒れている自分自身の耳に流れてくる声が偶然聞こえてきた

銃を突きつけられた本音が自分を呼ぶ声

千冬の焦った声

キーラの理不尽な言葉

それらが一瞬の内に聞こえると共に瞬間的に真木は仁美の手を払った

「清ちゃん?どうしたの?」

「姉さん、私には涅槃も死後も必要ありません」

「姉さんも必要ないって言うの?」

「私に必要なのは…、そうですね、今は不条理を“終わらせる”力といった所でしょうか」

そう言い放った真木の体はいつの間にか元に戻っていた

「そう…、清ちゃん、姉さんがっかりだわ」

「そして…、あなたは私の姉さんではない」
「本当の姉さんならば今さら私のことなど気にかけはしない、そんな者を姉さんであると認めません」

「そう、よく分かりましたね」

「…?」

途端に敬語になる仁美に首をかしげる真木
仁美の体は紫の煙の形で消え、ぼんやりと姿を変える

「その姿は…」

仁美だった者が形を変えた姿は、コアメダルを使い無欲に人々を守るため戦った男、火野映司その者だった

「何しろ私にとっても予想外だったものなので」

自分の知っている火野映司の姿と声を借りていても、本人とは明らかに違う口調で会話してくる目の前の男…男?
かと思いきや今度は後藤慎太郎に姿を変えた

「本来ありえないことだったのです、なぜこうなってしまったのか」

今度は小柄な少女、泉比奈の姿に変わる

「真相を確かめると共にお礼を言いたかったのです。あなたに」

一転して、今度は長身で強面の男、鴻上光正に変わった

「同じ性質でも、火野映司ではこうならなかったでしょう」

最後に再び真木仁美に姿を変え

「そう、私は…」

 








「紫のコアメダルに芽生えた人格なのです」









>>1です、伊達さんのターンかと思いきやドクターのターンでした


質問、ご意見などございましたらドンドン聞いてください

ではまた次回

>>1乙!
今回もすごく楽しめたよ!
バースの描写なんかとくに

乙!
やっぱり伊達さんの方が、後藤さんよりむちゃくちゃじゃないですか!

やっぱりカッターウイング使わないのかよ伊達さん・・・

カッターウイング「解せぬ」

そういやクラヒフォーゼでも伊達バースはカッターウィング使えなかったな

>>447

プロトタイプだからじゃないのか?

>>448ノーマルバースでも使わないんだよ。

>>448
プロトバースって
たしかクレーンアームとブレストキャノンだけだったと思う

伊達さんのスタイルでしょ
なんかプロレスっぽいし

お早うございます!

>>1です

早速始めます

紫のコアメダルは再び仁美の姿に戻った

アイデンティティの主張のためか今度は白ではなく紫のドレスを纏っていた

「驚かせてしまいましたね、真木清人」

「本来紫のコアメダルに自我は目覚めない筈ですが、どういうことですか?」

「詳しいことは私にも…、それにこういう形でしか会話はできません」
「おそらくはあなたが一度前の世界で死んでしまった際に何かが起こってしまったのだとしか思えません」

「君のその姿もそれのせいですか?」

「いえ、先ほどもお見せしたとおり、姿は自由に変えることができます」

「では、なぜ姉さんの姿に?」



そう問いかける真木に仁美はクスリと微笑み

「この姿ならあなたの違った一面が伺えると思ったのですが…、結果は半々と言ったところでしょうか」

その言葉で一層顔に差す影が濃くなった真木を見た仁美は慌てて話題を変える

「そうそう、ひとつ言い忘れていました。自由に姿を変えれると言いましたが、一つだけ不完全なものがありまして」

「……?」

そう言うと仁美はシルエットを大きく変え、紫の霧に包まれる

そこにいたのは肩幅の張った紫の巨体、体の各部に恐竜の意匠を持ち合わせた悪魔のような生き物

真木がかつて変身していたグリードの姿であった

だが不完全と言ったとおり、体は不透明で足元は見えない
さながら植物細胞の細胞核のように、五枚のコアメダルがフワフワと浮かんでいた
まるで幽霊という言葉がピッタリの姿であった

「見てのとおり、この姿はあなたとひとつになることで始まります」

「始まり…ですか、終わりではなく」

「ええ、ひとつになっただけではまだ完成とは言えません、あなたが前の世界で伊達明と戦っているときも本調子でなかったように」
「さて、前置きはここらで終わりにして、で、あなたはどうしますか?」

紫のグリードは穏やかな口調で問いかける

「無論、答えは決まっています」

「そうですか、そう言うと思っていました」
「ではお時間を取らせました、もう二度と会うことは無いでしょうが、ごきげんよう」

五枚のコアメダルに戻った意志は真木の体に入り込んだ

視界いっぱいに広がる紫の世界に眩い光が漏れ始め目を覆う
真木の耳には再び先ほどの三人の声が聞こえてくる

目を瞑ったまま全身の神経に意識を張り巡らせ、右手のすぐ傍に何か冷たく固い感触を感じる
撃たれた際にポケットから零したカンドロイドだった
そのカンドロイドを掴み、両目をカッと開く真木

その両目は、今度こそ紫の光を灯していたのだった

一方闘技場で戦っている伊達は、完全に相手を自分のペースに引き込んでいた
キャタピラの加速で自分の間合いに相手を迎え入り、付かず離れずの距離で連撃を加え続けていた
これまでのダメージを倍返しするかのごとく懐に入り込みショベルの爪が火を噴く

「まだまだ行くぜ」

左手のショベルアームを解除し、ラファールの後ろに回り込む
よろけた相手の腰に自身の両腕を回しガッチリとクラッチし

「生徒に暴力振るうようなワル教師は~」グオォッ

そのまま自身の腰を反りながら相手を持ち上げ、ブリッジの姿勢で脳天を叩きつけフォールさせ

自身の背中で美しい弧を描く、その技こそ“ジャーマン・スープレックス”

かつて神様と呼ばれたプロレスラーによって広まった知る人ぞ知る伝説のフェイバリットホールドである

「お仕置きだバカ野郎!」ズシィン

ブリッジの姿勢のままのセリフは、見た目の説得力の無さを一掃する程の怒気と活力を含んでいた

ブリッジから元の姿勢に戻ったバースは、簪の方へ駆け寄る

その勇ましい姿に観客席に一層の歓声を呼んでいた

そして、その姿は朦朧とした意識の中の簪の目にしっかりと写っていた

簪にとってよく知っている“あの姿”を想起させながら…

千冬が垣間見た“その姿”は、彼女の本能にある危機感を揺さぶっていた

血の海に横たわっていた真木は右手でカンドロイドを掴み、キーラに聞こえないようにプルタブを開く

「・・・・・・・・・・・・」クイッ

掴んだままの手でカッと開いた双瞼には、弱々しくも紫の光が灯っていた
その目が千冬の目と合うと、彼女も何かを悟ったような表情を見せる
そのまま前を向きなおすと握ったカンを本音の足元に放り込む

「だったらせめて聞かせてくれ、取り巻き達に何て吹き込んだんだ?」

「あぁ、あれのこと?簡単さ、ただのクスリだよ」
「ちょ~っとアタシの言うこと聞いてくれる便利な人形になってもらいたかったんでね」

「その便利な人形に計画をバラされたのなら世話ないな」

「そうねぇ、ちょっとやそっとじゃ解けないようなクスリだったんだけど、おかしいねぇ」

千冬の問いにあくまで余裕の態度を見せて答えるキーラだが、足元にはまるで目が行ってない

「なに、口を割らないのならもっときつい拷問にかけてやればいいだけだ」

その頃の管制室ではコンピューターを操作する真耶からすこし離れたところで
椅子にがんじがらめに縛られたキーラの取り巻きが気絶していた
…両方の頬を何百回と叩かれ、捏ねられたパン生地の様に大きく形を変え
黙ってればそれなりに美人だった顔も今では見る影もない
真耶はそれを時折気の毒そうに見ているのだった

「惜しむらくはもっと手加減なしでやってやるべきだったがな」

「態度だけは世界一に相応しいわ、アンタ」
「じゃ、そろそろ消えてもらえる?」

うすら笑いを浮かべながら銃を前に構えるキーラ

「ああ、いいだろう」

「ダメェーッ!」

本音は悲痛な叫びをあげ、思わずうずくまり目を瞑る

「消えるのはお前、だがな」

・・・・・・・・・・・・・・

千冬がそういうと丸まった本音の背中に真木が放ったトラカンドロイドが駆け上がり、網膜に跡を残すほど強烈な光を発する

その強さは、目を瞑っていた本音の瞼越しでさえ感じる程であることからも伺える

うずくまって目を瞑っていた本音はもちろん、こうなることを予期していた千冬にも多少の影響は及ぼすものの

光を一身ならぬ一眼に受けてしまったキーラは、前を見ることさえも出来ない状態になってしまっていた

「グアァッ!目がァックソッ」

機動隊が使うような閃光弾の光を真正面から受けるとほぼ完全に視界を封じられ、何を手にしていても何も出来なくなると言われている

その言葉通り、キーラはもはや一時的に考えることさえできない“人形”と化してしまったのだ

「ほえ?な、何がどうなって…、キャッ!」

本音を拘束していた方の手を自ら振りほどきキーラは自らの目を覆う
その隙に真木は、凄まじいスピードで、本音の腕を掴み自身の方に引き寄せる

「形勢逆転、といったところですね、キーラ君」

本音の腕を放し、上着の内側から電気ウナギカンドロイドが何匹も飛びかかる

「テメェ生きてやが、ザケンなコラァ!」ジャキッ

完全にキレたキーラはやや回復した視界で真木を捉え引き金に手をかける

「死ね!」

だがキーラの視界に写っていた筈の真木の姿は一瞬で消えてしまい…

「…フンッ」バカァン

凄まじい速度で懐に入り込んだ真木は、紫のオーラを纏いながら
キーラの伸ばした手の先端にある拳銃を蹴り上げ、宙に舞わせ孤を描きながら自身の手に収める

その一瞬に見せた姿と気迫は千冬の脳裏に焼き付き、危機感を揺さぶった

唖然とするキーラだが、その余韻すら味わうこともなく彼女の体には無数の電気ウナギカンドロイドに覆い尽くされ
地面に横たわる無様な姿と成った

「テメェ!外しやがれ、こんなクソツマラネェおもちゃでアタシをどうにかできると」

「もう何も言わなくてもいいですよ、キーラ君」
「ところで、君は電気ウナギをご存知ですか?」
「獲物を探知するために電気を流す魚なのですが」
「実際はウナギとは全く異なった種類なんです」

「それがどうし、…ま、まさか」

「ええ、君の体にまとわりついてるのが、それを元につくったロボットなんですよ」
「勿論発電機能も備えています」

「や、やめろ!頼む、アタシは今ここで終わるわけには…」

「何も言わなくてもいいですよ、それはそうと、終わりを恐れているようですが…」
「もはや君には研究者としても教育者としても、すでに終わっています」
「では…」

「ま、まま待て、な何でも言うこと聞くから、だから…」




「よき終わりを」クイッ




「ギャアッ」バチバチバチッ

皮膚を黒く焦がし、煙を吐いて白目を向くキーラに目もくれず、真木は辺りをキョロキョロと見回す

「・・・・・・・・・・・・・」キョロキョロ

「・・・・・・・・・アッタッ」ダダッ

転がっていた人形を拾い、肩に乗せフゥと息を吐き
首をコキコキと鳴らし、千冬と本音の方に歩いてくる

「多少手荒だったが、何とか事態を収集できたようだな」

「ええ、ご協力どうも、それでは私は観客席の方へ、それと彼女をお願いします」

真木はベンチソファに座り焦燥した顔の本音を指し、その場を後にする

「待て、聞きたいことがある、“メダル”についてだ」
「後できっちりと聞かせてもらうからな」

と、いい終わった頃にはすでに真木の姿は無かった

千冬は本音の隣りに座り頭を優しく撫でる

「大丈夫だ、全部終わったからな」

「織斑せんせぇ…」

ポソリとつぶやくと彼女の両目から堰を切ったように涙が溢れ

「怖かった…、怖かったよぉ~」ガバッ

そのまま千冬に抱きつくように泣き出してしまった

「あぁ、怖かったろう、どこも怪我はしてないな?」

「うん…、でも、真木せんせい私のせいで…、あんなにケガして」
「ホントに死んじゃうかと思った…、ウェ~ン」

その言葉を聞いて千冬は先ほどまで真木が倒れていた血だまりの方を向く

確かに、あれほどの出血では並の人間は動くことはおろか命の保証さえない

さらに、一瞬見せた紫のオーラ、自分の勘に間違いがなければ…

と、千冬のなかに一つの疑惑が生まれた瞬間だった

その場に一人、いや一匹残された先ほど、反撃の狼煙となったトラカンドロイドは

目元をこすりながらスンスン泣いている本音の肩に飛び乗り

「キューン キューン」スリスリ

顔を本音の頬にこすりつけている

「キミ、私を慰めてくれているの?」

本音が問いかけるとトラは愛らしく首をかしげるのだった

「ふふ、可愛い」



こうして一つの事件が幕を下ろした

一つの出会いと一つの疑惑を生んで

>>1です、今回はここまで

関係ない話ですが3DSに、液晶保護パッド貼ったら裏表逆でした、哀しす

今回はドクターばかりだったな

カッターウイングは登場させるつもりですのでご安心を

それではまた次回も、よろしくお願いします

>>1乙!

ドクターかっこいいとしか言えないなww

さすがドクター


面白くて格好良くて読んでいるうちに涙がでてきたwww
オーズとISともに本編は見ていなくてネット上の知識しか知らんが、十分に楽しめている。
いいSSだ。感動的だ。

>>1です

早速始めます

伊達は安堵と共に簪に駆け寄る

「よお、悪もんは退治したぜ。安心しな」

「…先生、そのカッコ、何?」

薄く目を開けたままの簪がつぶやくような声で問いかける
会場のモニターにはアップになったバースが写っていた

「これか?そうだなぁ…」
「………ああ、あれだ

     仮面ライダー

        ってやつだ」

自身を親指でグッと指しアピールする、が、

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」シーン

沈黙する会場にスピーカーで拡大された伊達の声が虚しく響く

「…あれ?滑っちまったか?」

握りこぶしでコンコンと自分の額を叩き無念を示す

するとそこへ

パパパパパパパパパパン

しぶとく再起動したラファールが短機関銃をコールし、バース目掛けて撃ってきたのだ

「危ねぇッ」

簪を抱えて転がり込み銃弾を回避する

「ったく、しつこい女は嫌われるぞ」
「とにかく、オメェら全員これ見りゃ嫌でも納得すんだろ」

そういってセルメダルを二枚ベルトに投入しダイヤルを回す



       『CELL BURST』カポーン



「本邦初公開、これがバースの…」

何の武装も持たないままバースは相手に向けて駆け出す、銃弾を紙一重で交わしながら

すると先ほどから体中のリセプタクルオーブにチカチカと灯り出した淡い光が一層強まり全身を包み込む

加速を付け相手の5メートル程前でジャンプし、体を捩り体を横にした状態で胴を回し切り右足を相手の頭に命中させる

これぞ捨て身の一撃必殺!胴回し回転蹴りである

くらった相手は爆発と共にとうとう機体を粒子化させて気を失ってしまったのだ

着地したバースは勝ち誇った顔で

「ライダーキックだ」

改めて簪に駆け寄り言葉をかける

「これで信じてくれただろ、さ、戻ろうぜ。立てるか?」

伊達の差し出した手に自身の手を重ね立ち上がろうとする簪

「はい…、あっ」ガクッ

これまでのダメージが蓄積してうまく立ち上がることができない

「おおっと、まぁしゃあねぇか。あんだけ暴れりゃ」ガシッ

自分にもたれ掛かってくる簪をお姫様だっこで抱え

「ちょ、ちょっと先生…恥ずかしい」

「みなまで言うな、俺も十分恥ずかしい」

周囲から黄色い声が飛び交う中で、伊達は先ほどぶち破ったシャッターの方へ歩きだす
だがその歩みを止める声がカンドロイドのスピーカーから響く

『伊達君、遠回りをする必要はありませんよ。客席のバリアは既に解いてあります』
『そこから直接上がってもらって結構です』

観客席の人ごみを割って現れた真木が覗き込むように顔を出す

「おお、ドクター無事だったか!お望みとありゃあ…」

チャリン クルクル
  
        『CRANE ARM』カポーン

「よっしゃ、掴まってろよ」ウィーン

クレーンアームの先端を伸ばし天井のフレームに巻きつけ

ウインチを回転させ上にあがる



「よっ!っとぉ」スタッ

無事観客席に着地したバースと簪

「簪ちゃん!よかった、本当によかったッ」ギュー

「お姉ちゃん、苦しいよ…」

簪をしっかりと抱きしめる楯無

バースは頭部部分のメットだけを解除し伊達の顔が露になる

「ふ~、くったびれた~」ズルズル

そのまま地面に尻餅を着く伊達

「先生!その格好何なんだよ!メチャクチャかっこいいじゃねぇか」

一夏が目をキラキラさせて近づいてくる

「だぁ~、今しんどいから後にしろ後に!」
「ところでライター無い?さっきの戦いでライター落としたみたいなんだ」

ライオンの顔が描かれたタバコのパッケージをちらつかせて伊達がタバコを咥える

「有るわけないでしょ」

「だよね~」

乾いた笑いで答える伊達

「伊達君、火ならこれをどうぞ」

カンモードのカンドロイドのプルタブを引き起こしタバコに火を灯す

「なんだよドクター、サービスいいじゃん」スパー

「ええ、今回の一件は非常に有意義でした」

真木は伊達のベルトを解除し懐にしまい、会場を後にする

「君にとっても、私にとっても…」

振り返りざまに伊達が見た、その言葉を発した真木の口元が歪み、目に紫の光が灯っていたのは気のせいだったのか、それとも…

「まぁ、なんで…も…いいや…」コテン

そのまま地面に倒れこみ、伊達は大鼾をかいて寝てしまった

「…なんかすごかったね、今の」

「そうですわね、色んな意味で」

観客席から一夏たちと成り行きを見守っていた鈴とセシリアは唖然としていた

「“男”で“仮面ライダー”で“プロレス”、ね」

「なんというか、この時代に真っ向から抵抗しているような存在ですわね」

「それもそうね」

簪はタンカで運ばれ、医務室に向かっていた

楯無は付き添いでついて行ってる

「ねぇ、お姉ちゃん」

「何?どうかしたの?」

「さっきの伊達先生ね…なんか…」
「なんか竜さんみたいだった…」

「そう…」
(リューサン?中国人の知り合いでもいるのかしら)



こうして学園を揺るがし、二人の男を激動の誘った事件はようやく幕を閉じた

だがこの一件でバースの存在が学園中に知られてしまったのは言うまでもなく

これから起こる事件の足がけにすぎないのである

>>1です、今回は短めでした

プロレス技を言葉で説明するのが難しいですね

精進せねば!

ではまた次回!

乙です!

おつー


照井竜「」ガタッ

バースのライダーキックかっけぇ!おっつー

スレチかもしれないんだが最近あちこちでIS原作の打ちきりについてよく聞くんだがとうとう公式発表あったの?

>>482ノーモア、仮面ライダー!!じゃなかったノーモア、その話題!

乙、面白かった。

そろそろくるかな

こんばんわ>>1です

にじファンの方で大幅な規制があってこの作品もむこうでやっていけなくなりまして
どうするか悩んだのですが、やはりこっちで進めていくことにしました
それではどぞ

悲しみの素顔を冷たいマスクに隠して戦う戦士、仮面ライダー

この世界で知られているヒーローの名である

己の幸せを捨ててでも誰かのために戦う

その使命は世界の次元を越えて人々の間に浸透していたのである

普段一夏達の生活する世界にも仮面ライダーは存在する

       仮面ライダーA(アクセル)

街と家族を守るため、熱血刑事 照井竜 が変身する紅き仮面ライダーだ

だがそれはフィクションの世界でのこと、本当に実在しているわけではない

そしてこの世界でも一人の仮面ライダーが産声をあげた

傷ついた少女を守るため男は戦い、勝ち抜いたのであった

一夏は事の成り行きを見守っていた
主犯であるキーラは黒焦げのまま何やら喚きながら連行されていった
取り巻きの二人も「自分は巻き込まれただけ」と関与を否定していた
真実はどうかはわからないが二度とISに関わることはできなくなるそうだ

そして時刻は夜! 夕食時である

「なんだ…?あれ」

珍しく一人で食堂に向かっていた一夏の目の前には人だかりが出来ていた

その人だかりの先には…

「もうっ、絶対安静って言われたじゃないですかぁっ」

「いいっていいって、怪我した本人が言うんだから問題ナッシング!」パクパクムシャムシャ

テーブルに並べられた五~十人前はあろうかという食事を食べている伊達と

それを止めている真耶である

伊達は上半身裸に包帯を巻き、その上から白衣を着込んでいる

周りの生徒たちはそれを見てクスクスと笑っている

「あ、お姉さ~ん。おでん定食もう一人前追加!」

「あいよ~」

ちなみにこの学園の食堂は生徒教師問わずセルフサービスである

注文を聞きに来ることも席まで持ってくることも本来ありえない

だが伊達は食堂のおばちゃん達をあえてお姉さんと呼ぶことで機嫌をよくしているのだ

こういうところはさすが伊達さん、というところだろうか

そうこうしている内に人だかりを割って真木が現れ、伊達の向いに座る

「失礼します、伊達君」

緊迫した空気が走る中…





「カレーライス、三人前下さい」

…カレーライスを注文したのだった

「ドクター撃たれたんだって?大丈夫なのかよ」ムシャムシャ

「君に心配してもらうようなことではありません」パクパク

人だかりも幾分か少なくなり、伊達と真木は会話しながら料理を口に運んでいた

「まぁ目の前にいるってことは大丈夫なんだろうけど」



ちなみに真耶は伊達の隣で椅子にすわり落ち込んでいた

「グスン、もういいです。聞いてくれなくても」

「君には色々と聞かなければいけないことがありますね、ベルトのことなど」

テーブルに並べられた料理をすっかり平らげた二人は食後のコーヒーを啜っていた

「ギクッ、まぁ言えないことはないけど、ゼッテー信じねぇだろぅなぁ」
「実はあの時さ…」



バタン、と音を立て生徒会長楯無が食堂に入ってきた

「一夏君!真木先生いる?あと伊達先生も!」

「どうしたんですか楯無さん、けっそう変えて…」
「二人だったら、奥の方に居ますよ」

「そ、ありがと」

「おぉっ、生徒会長じゃん。なんか用?」

真木と話をしていた伊達が楯無に気づく

「あのね先生、落ち着いて聞いてくださいね」
「今回の事件で新開室への処遇が決まったんです」

この一言に真耶もピクンと起き上がる

「副所長キーラ・ボゥイスキー以下2名逮捕につき、新設工学技術開発室は無期限の活動停止」
「一週間以内に新規施設を開局させること、それが出来なければ」
「新開室開所から今日に至るまでの研究データ、資材の回収。もちろん今日のあの“仮面ライダー”ってのもね」
「こんな無理難題押し付けてきて、学園の上層部も相当焦ってるみたいだわ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」(゜д゜)ポカーン

まるで人事の様な顔の伊達と真木

「つまりどうしろってこと?」

「早い話が研究所を建て直せってこと!」
「人数的な面でね」

半ば呆れるように楯無は告げる

「ふらりとやってきていきなり所長やってるんですから真木先生、お知り合いの方とかいるんでしょ」プン

真耶の少し拗ねた口調の問いかけを、伊達は笑って受け流す

「ハハハハ、ダメダメ、ドクター社交性ゼロだもん」
「ドクターもちょっとは言ってやれよ」

「ステーキ、もう一人前下さい」モグモグ

「ってオイ!」

口いっぱいに食べ物を放り込んでいた真木に伊達は思わずツッコむ

「ったく、ちゃんと耳聞こえてんのか?ていうかまだ体大丈夫じゃないんじゃ・・・」

確かに真木の耳に伊達の声は聞き通りにくかった

だがそれは体の不調ではなくむしろ逆の理由であることなど、伊達には知る由もなかった

「と~に~か~く!なんとかしないと全部持ってかれちゃいますよ」
「形だけでも立て直さないと」

一段落ついて机には伊達と真木、真耶と楯無が向かい合って座っていた

真耶は必死になって説得しているが伊達は今度はなぜかうつむいてブツブツ言っている

「真木先生が知り合い…いるのかどうか分からないけど、それを引っ張ってくるって言っても」
「この学園に入る手続きとかで絶対手間がかかるから、効果を出せるとは考えにくいわね」

「私は一人で構いません」

「ちょっと黙っててね、真木先生は」
「真木先生と伊達先生、これで二人だから元の四人まで後二人ね」
「山田先生、入ってあげたら?」

「えぇ、私ですか!たしかに男の人と仕事するのはそれはそれで魅力的ですが...キャー」(*´∀`*)

一人で妄想している真耶だが、振り下ろされた出席簿により現実に引き戻されることになった

バシンッ

「勝手なことをいうな、貴方は一組の副担任だろう」
「更式も無責任な事を言うな」

「い、いたいです…」

「千冬ね(バシンッ)お、織斑先生、もういいんですか?事後処理とか」

「あらかたカタはついた」
「それより真木、伊達両名に会いたいと言って来た方がいてな」
「本来ならちゃんとした部屋にお迎えするのだが、向こうの厚意でこの食堂でいいということになった」

「・・・・・・・・」

千冬の口ぶりから相手はそれなりに位の高い人間だと推測できる
だが、どうにも好意的な感情は感じ取れず、どこか厄介ごとのように感じているような様子が伺える

「なんだか話がどんどん大きくなっていっているな」

「箒、来てたのか」

「ISに匹敵するような兵器だからな、周りも放っておけないのだろうな」

「束さんが見たらなんて言うかな」
「『仮面ライダー!友達になるなる!』なんて言ったりして」

「姉さんの話はいい、きっとロクでもないことしかしないだろうからな」

「相変わらずだな、箒も」

「フン」

そして、急展開を告げるように電子音が鳴った

  PiPiPi

「はい。…そうですか…、わかりました、通して下さい」
「もう来られるそうだ」

そしてしばらく経って
厳つい顔のスーツを着た男が用心棒と思しき黒服数名を引き連れ食堂を訪れてきた

「山田先生、あの人って…」

「確か大銀工廠の…」

現れた大銀と呼ばれる男、本名を大銀 賀丈
戦前から続く兵器会社の社長である

「オラァ、女子供は退いとかんかい!」
「社長、こちらへ」

黒服の一人が乱暴に真耶と楯無を退かせ
大銀を座らせる

「いやいやどうも、私は大銀。会社の社長をやっていましてね」
「今日も来賓として見させていただいてましてねぇ。いやぁすごかったですねぇ」
「世界最強の兵器と言われるISをああも簡単にのしてしまうなんて、胸がスカッとしましたわ!ハッハッハ」

高笑いする大銀に食堂内の空気が重くなる

当然である、ISを軽視して馬鹿にする、それはつまり女性を馬鹿にしている事と同義であるからだ

相変わらず俯きっぱなしの伊達と黙って聞いている真木はあまり興味がないようである

「おお、そうだ!話を本題に戻さないと」
「真木博士でしたな、聞いたところあんたさんの研究室無くなるそうで」

大銀は目をギラつかせ机にアタッシュケースから取り出したファイルを置く

「話っちゅうんは他でもない」
「あんたさんら二人にぜひとも私らの会社に来て欲しいんですわ」

大銀の交渉に周囲にはますます不穏な空気が漂う

「私らの会社は軍需産業でのし上がって来た会社なんですが」
「ISにはこれまで関わらんようにしてたんですわ、何でか分かりまっか?」
「この世に男と生まれたからには、女に媚びるような真似は死んでもでけん」
「そういう一貫したポリシーがありましてな」

「よく言うわよ、誰も相手にしてないだけなのに」

「しッ、ダメですよ更識さん」

「私らの会社に来ていただけるなら必要なもの何でも用意させてもらいますで」
「何でも言うて下さいな」

「何でも?」

真木の問いに合わせ肩の人形も大銀の方を向く

「へぇ、何でも。資材でも資金でも、好きなだけ言うて下さい」

表向きは年明けに赴任してきた真木と伊達
まさかこんなに早くここを去る事になるとは誰が予想できただろうか

だが

「その話、乗らないと言ったら?」

真木の返答は予想外のものであった

「何でですねん、断る要素なんてどこもおまへんやろ」
「まだ何か足りんもんでもあるんですか」
「カネでもオンナでも好きなように用意させてもらいますさかいナンボでも言うて言うて下さいて」
「その代わりに今日見せていただいたアレをウチで作らせてもらいたいだけですねん」
「な、悪い話やおまへんやろ、バカな女が蔓延っとるこの社会をキレイにしましょうや」

休むまもなく大銀の口から誘い文句が運ばれてくる
が、それを間近で聞いている女生徒及び教員がいい顔をしているはずはなかった
そしてそれはこの学園に通う一夏も同じであった

「好き勝手言いやがって、俺ちょっと言ってくる」

「待て織斑、全く私の周りはなぜこうも直情的な人間ばかりなんだ?」
「もうすこし様子を見てみるんだ」

一夏を止める千冬
憤る一夏の傍に箒が駆け寄る

「対応によっては行動に出るということですか」

「とりあえずは様子見ということだ、何度も言わすな」

大銀は話の相手を真木から伊達に変える

「・・・・・・・・・・・・」

「あんさんもこんなところで乳臭いガキの相手なんかしんどいだけでっしゃろ」
「そんな汚いカッコせんでも、欲しいモン何でも用意させてもらいますよって」

「・・・・・・・・・・・・」

「何とか言ってくださいや、無口な方でんなぁ」

「・・・・・・・・・・・・」

「あんた、ええ加減にしなはれや」
「私もそろそろ我慢できませんで」

「・・・・・・・・・・せぇ」

「…は?」

「うるせぇ~! 人がイライラしてるのに低い声で横からガヤガヤ煩いっつってんだよ」

やっと伊達が喋ったかと思ったら今度はいきなり怒り出した

「テメェゴルァ、社長に対して何て口の聞き方じゃ」

黒服の一人が伊達につかみ掛かる

「どいつもこいつも、俺をイラつかせんなぁ」

怒りのままに伊達は相手の襟首をつかみ体落としと払い腰をあわせたような『山嵐』をキめた

「ドヘゥ」

黒服は投げ飛ばされ、動かなくなってしまった

「クソッ、おどれら下手に出たったら偉そうにしやがって」
「おどれらなんぞこっちから願い下げじゃドアホ」

「フー フー 」

「いつか後悔させたるさかいの、楽しみにしとれや」

肩で息を切る伊達に対し大銀は黒服を集め足音を荒げ食堂を後にする
よく見ると食堂の外に様々な機関のエージェントがこちらを観察しているようだが
大銀が帰っていったのを見て引き上げようとしているようだ
あわよくば大銀より良い条件を出して引き抜くつもりだったのだろうか

パチパチパチパチ

周りからは拍手が起こり伊達を包む

「伊達君、君がああいう形で追い返すとは予想外でした」
「ここを出るという意味ではスムーズに行くとは思っていたのですが、案外直情的というか短気というか」

「うるせぇ!」ブンッ

「ヒィッ」シュッ

何故か真木にまで振りかぶった伊達の拳に真木は慌てて回避を取る
その速度たるや両目の紫の光が帯になって残るほどであった

「黙ってろ!俺は今イラつい…お!」

憤怒に顔を歪ませていた伊達の顔からまるで皺が抜けたかのように怒気が消え去り
落ち着かない雰囲気がなくなった
そしておもむろに空になったコーヒーカップを取り出し

モゴモゴ
「………ペッ」
カランコロン

伊達が吐き出したもの、それは折れた歯だった

「歯ぁ!?」

周りで見ていた一夏も思わず声を漏らすほどであった

「いやぁ~、奥歯がグラグラしてたんだけど、取れそうで取れなかったモンで」
「メシ食い終わった後もイライラしっぱなしで何の話してんのか全然頭入んなくってさ」
「しっかし、ほんとスッキリしたわ。ハハハハ」

緊迫していた周囲から安堵の息が漏れる

「ところでさっきのオッサン何言ってたの?」
「口くさかったことしか記憶にないんだわ」

「本当に何も覚えていないのか?」

思わず眉をへの字にした千冬も加わっての立ち話になる

「あぁ、これっぽっちも」

「そうか」
「…フッ、フフフッ、アハハハ」

今度は千冬が笑い出してしまった
それに釣られて食堂中から笑い声があふれ出す

「…?俺の歯が抜けたのがそんなに面白いのか?」

「もういいですよ伊達君、今日のところは引き上げましょう」
「君もお疲れでしょうし、ここに来る前に岩下先生に断りを入れておきました」

「そう?じゃ俺帰るわ」
「そんじゃお休み~」

   「「「おやすみなさ~い」」」

食堂からの声を浴びて伊達は食堂をあとにする

「さて、それでは私も」

「待て」

真木の腕をつかんだのは千冬だった

「言ったはずだ、ちゃんと話を聞かせてもらうと」
「あの男より貴方の方が詳しく話してくれそうだしな」

「・・・・・・・・・」

それぞれの思惑を抱え、長い一日がこうして終わろうとしていた

IS学園を巡るバースの物語はまだ始まったばかり

>>1です、少し裏話を

今回登場させた大銀なんですが、当初はエージェント風のスカウトマンを考えていたんですが
クロヒョウ2にハマったおかげで二岡組の組長っぽいキャラクターになってしまいました

後、話を全然聞いてなかった伊達さんのくだりは、伊達さんもまじめに話を聞いていたら全体の進み具合がますます中だるみになりそうだなと思って歯を折ってもらいました
戦闘中のダメージです

それではこの辺で、次回もお楽しみに

おつおつ!
人少ないっぽいけど次回も楽しみにしてるんだからね

おっつー!

待ってるんだからね///

>>1
続きを書かなかったら承知しないんだからね///
バカァ…

まってる

そろそろ一ヶ月か...

地の文や説明が少ないのに、会話文が連続するので
どのキャラがどのセリフを発してるのかわかりづらいです

私、待~つ~わ。

いつまでも待~つ~わ

マツわ

こんばんわ>>1です

長い間留守にしていてすいません

早くて明日か明後日には更新させていただきます

待たせて申し訳ないです

キター!

マダー?

早くて明日か明後日…
から1週間

まぁあくまで「早くて」だしもう少し待ってみようぜ

せっかく生存報告までしてくれてるんだし

おもしろいよ
ドクターいいね

メタルヒーローチックなバースのデザイン好きだな
目が発光するところとか

まだか

>>526
ageんなカス

>>526期待しちまったじゃねえか

う、羽毛

スレ違いかもしれんのだがここの人たち的に放課後バトルフィールドってどうなの?
密林のレビューみるかぎりぼろ糞だけど

>>530
買う気どころか読む気にもならん。

まだかな

16日で三カ月だからHTML化か・・・残念だけどもう終わりっぽいの

間違えた7日か

もうおちる

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