伊達「IS学園?」 一夏「仮面ライダー?」(535)

インフィニット・ストラトス(以下IS)と仮面ライダーOOO(以下OOO)のコラボレーションSSです。

どっちかというと、OOOというよりバースとのコラボです。

というよりほとんどバースしか出ません。

時間軸はISは七巻よりも後、OOOは今のTVシリーズのすこし後、オリジナル設定で伊達さんとドクターが“相討ちになって消滅した”つまり表舞台から姿を消した世界になります。

温かく見守って下さい。

オ―ズの世界

星の顔出す隙間もないほど夜空に敷き詰められた暗雲、そして降りやまぬ雨

まるで銃弾のように雨が降り注ぐ廃工場の一角、伊達明はそこに横たえてた

(もう…、喋る力も絞り出せねぇ、火野と後藤ちゃんはしっかりやったのか…?)

~~~(数十分前)~~~

_____________________

グリードとの最終決戦に向かっていた仮面ライダーオ―ズこと火野映司、そして手術を終え、絶対安静の伊達に変わりバースの力を引き継いだ後藤慎太郎。

敵の最終計画を阻止するためにグリードの本拠地を目指していた。この廃工場を抜けるともう目と鼻の先だ。

そんな2人の前に立ちはだかる男が一人、恐竜メダルを取り込み紫のグリードへと覚醒を遂げた天才科学者・真木清人

真木は2人を始末すべく怪人体へと変貌し、2人に襲いかかる

だが、足元に放たれた光弾によりその行動は阻まれることになる

そこにいた男は、なんと病院を抜けてきた伊達だった!バースバスターに弾を込めながらその男は“吠えるッ!”

「火野、後藤ちゃん、ここは俺に任せて先に行けッ!」

「伊達さん、もう戦える体じゃ無いでしょう」

「お前たちは俺の目標の一億のために命懸けで力を貸してくれたっしょ、今度は俺が力になる番だって!」

「また君ですか…」

やれやれ、といった風に目線を伊達の方に向ける真木

「世界はもうじき終末を迎えます、邪魔はさせませんよ」

「ドクター!てめぇのくだらない欲望、ここでとめてやるぜ」

(…ッ!まさか、伊達さんはここで…)

伊達の真意を察したのか、後藤は唇をかみしめ叫ぶ

「火野、早く行くぞ!もう時間がない」

「でもッそれじゃ伊達さんが!」

「いいから!じゃあ伊達さん、後お願いします」

「応よ!」

「それと…、お世話になりましたッ」ペコリ

「火野、行くぞ」ダッ

「は、はい…」ダッ

(後藤ちゃん、火野、この世界を…頼んだぜ)

「感動のお別れはもうおしまいですか」

「あぁ、悪いな 時間取らせちまって、それじゃ…、戦りますか」チャリーン

「決着をつけましょうか」ゴゴゴ

          「「変身」」

日も暮れてしまった廃工場の一角、こうして二人の長くも短く辛い戦いが始まる

熱くなる2人の闘志と裏腹に、場には冷やかな風が吹き抜け雨が容赦なく降りつける

審判も傍観者もいない暗く悲しいゲーム、そして誰も知らない戦いが終わりを迎える

___________________________________


結果は相討ち、ダメージの癒え切らぬ伊達とメダルを取り込んだ反作用のツケがまわった真木は最後の一撃を撃ち合った後

お互いに地面に伏した。

(ドクター、もうくたばっちまったか?)チラリ

もう碌に動かす事も出来ない首を傾け横たわっている真木に目をやる伊達

(悪ぃな、先に逝かせちまうなんて)

(けど、安心しな。地獄への片道旅行、つきあってやるぜ)

(あ、頭ん中が…、真っ白になってきやがっ、た)

(死ぬ…、なんて、滅多にで、できねぇ!経験だな)ガクッ

こうして伊達明の短くも壮絶な人生は幕を閉じた、はずだった

「どうなってんだコリャ…」

伊達明は“そこ”にいた、一面銀色の鏡のようなオーロラのような壁に囲まれた世界

…コツ…コツ…コツ…

辺りをキョロキョロと見回している伊達は、自分の方に向かってくる足音を聞く

「誰がいるかと思えば、君でしたか…」

「ドクター、会いたかったぜ!」

思わず真木に飛びかかる伊達、そのはずみで真木の肩に乗った人形通称“キヨちゃん”が落っこちそうになる

真木はそれを奇声を発しながら慌てて拾い上げ、呟く

「ホアァ~、と、とにかく、ここが死後の世界であるというのは、些か考えにくいですねぇ」

「だったら、俺達まだ生きてるってことだよな、儲けもんだ」ヘーイ

ハイテンションでハイタッチを迫る伊達を真木はさらりと受け流し、問いかける

「何故、私と生きていた事を喜ぼうとするのですか?、私たちは敵同士だったはず」

そう、伊達と真木は敵同士、つい先ほどまで殺し合いを演じ会っていた柄である

その敵である伊達が自分たちの生存の喜びを分かち合おうとするのが理解ができなかった

「確かにドクターがやったことは許させることじゃねぇ。けどさ、だからって勝手に死んでいい命なんてあっていいわけ無ぇじゃん、だろ?」

そして伊達は照れ臭そうに付け加える

「それにさ、俺達、結構いい凸凹コンビだったしな あんな終わり方なんて納得できねぇよ」

「私はそうは思えませんが…」

「ったくも~、素直じゃねぇんだから」グリグリ

「YAーMEーRO」

相変わらずの掛け合いを広げる2人、その2人のもとにもう一人男がやってくる

茶色の外套を纏い同色のチューリップハットをかぶった黒ぶち眼鏡の男、仮面ライダーをよく知っている者ならきっと一目で名前を思い出すであろう、“あの男”である。

その男が、真木と真木にコブラツイストをかけている伊達の背後に近づく

「伊達明、そして真木清人だな、よく来てくれた」

「ん、あんた誰?もしかしてここの近くの人?だったらこのオーロラみたいなのから出れるようにしてくんない?気持ち悪くて触る気にもなんねぇんだ」ヒョイ

「ッハァ! 伊達君、君という男は…」ヨロッ

「紹介が遅くなってしまったね、私は預言者“鳴滝” 実は訳あって君たちをここへ連れてきたんだ」

「連れてきた? 戦いの傷とかも無くなってんだけど、どういうことだ?」

「君たちには“とある世界”を救ってきてほしいんだ」

「おい、ガン無視で話進めてやがるぜ」ヒソヒソ

「いい加減、こちらの要求に答えてほしいですねぇ」ヒソヒソ

伊達と真木は、体育座りで並んで1人で勝手に話を進める鳴滝に遠い目を向けていた

そして(勝手に)一通り喋り終えた鳴滝は2人に問いかける

「何か質問はあるかい?」

「ハイ」キョシュ

「はい真木君」

「私達がもと居た世界はどうなったのですか?」

「君たちの世界は、火野映司と後藤慎太郎の活躍によって平和を取り戻したよ」

「グリード達を倒したってのか?」

「そうだ、グリードは1人残らずメダルに還元されていった、ああ、君は別だったね、真木清人」ニヤリ

鳴滝は皮肉を含んだを笑みを真木に向け、話を続ける

「後藤慎太郎は警視庁に戻っていったそうだ、そして火野映司、彼はコアメダルを再び封印する為の旅に出た。消息はそれっきりだ」

「(そうか、よかったな、後藤ちゃん)じゃあ俺からも質問!」キョシュ

「はい伊達君」

「俺たちがその世界を救うって事をしたら、もとの世界に帰れるのか?」

「帰りたいのかね?」

「そういう訳じゃねえけど、そこはやっぱ気になんじゃん?」

「それもそうだな、厳密には君たちは一度死んだ身だ、それを私がよみがえらせたのだが、その答えは…そうだな、君たちの活躍次第によっては…だね」

「何だそりゃ?」

「もういいだろう、それじゃ健闘を祈っているよ」パチン

そういって指を鳴らす鳴滝、すると銀色の壁が迫ってきた

「ちょ、もう行くのかよ」アセッ

「何をすればいいかも聞かされていないのですが」

「大丈夫だ、君たちには適したロール(役割)とアイテムを用意してある」ドヤッ

「まぁしゃあねぇか、こうなりゃハラ括ろうぜ、ドクター」

「そうするしかないようですね…」

目を覆うほどの眩い光とともに伊達達の姿が消える、そして辺りを覆っていた銀色の壁も消える、ここはどこかのマンションの一室だったようだ

「行ったか、これでようやく録画していたプリキュアの観賞会を始められr…」ガッ

部屋が暗かったのが原因か、それとも鳴滝が浮かれていたのが原因か、タンスの角に足をぶつけた

「痛痛ッッァァ―――、おのれディケイドォォ―――」

___________________________________

ここは“インフィニット・ストラトスの世界”IS学園

正月が明け、明後日にはもう冬休みが終わり三学期が始まってしまう、そんな昼下がり

「今日もいい天気だなぁ~っと」ノビ―

「一夏!何をしているんだ?そんなところで」

「箒か、昼飯も済んだしちょっと腹ごなしに散歩しようかと思ってな」

「そ、そうか、私はてっきりまた他の女と逢引でもしているのかと……」ゴニョゴニョ

「何言ってんだ?よかったら一緒に行くか?」

「う、うむ ついて行ってやろう、たまにはゆっくり体を動かすのもいいだろう///」ピト

「っておい、なんでひっついてくるんだよ」

「察しろ、馬鹿者///」

「あぁ、年明けで昼下がりとはいえまだ寒いもんな…って、イテテ、足を踏むな」

「はぁ、貴様という男は…」

中庭を通り抜け職員用駐車場にさしかかる

(いつもは上の階から見下ろしてばっかだったけど、こうして見ると植木とかなかなか凝った造りしてるな…)

「見てみろ一夏、あの生垣、凄くきれいだ」

「あぁ、そうだな…、ん?」

「どうした?一夏」

「いや、普段は見慣れない車が停まっているな、と思って」

「む、確かに、出入りの業者には見えないな」

(確かに、教材や機材を運ぶ業者はあんな小さな車には乗ってこないしな)

「お、おい一夏、どこに行くんだ?」

「いや、な~んか気になるんだよな、あの車」スタスタ

「どうせ何もないだろう、って、一度言い出すと聞かないんだから、私も行くぞ」

2人は車に向かって歩を進める、その車の名はフォルクスワーゲン ビートル ドイツが誇る世界一生産された車である

「まぁ、箒の言うとおり、何も無いんだろうけど…ナ゛ッ」

「どうした?車内に何か…イ゛ッ」

2人は車内を覗いた途端言葉を失ってしまった、はたして車内にいたものとは!

((い、いい年こいたおっさん2人が、シート倒して寄り添って寝てる…))
                     ・・・・
IS学園の職員用駐車場、伊達と真木はここへ流された、この車も今の服装もこの世界に来るにあたって用意されたロール(役割)とアイテムの一つである

そして、この世界で目を覚ます…、寄り添ったままの体勢で…

「ぅうーん、ッ!」

「んぁあ…、ッ!」

お互い同じタイミングで目を覚まし、目線が合う…

「「・・・・・・・・・・・・」」ドキドキ

車外にいる一夏と箒も固唾をのんで見守っている

「「ウワァァ―――――――」」

悲鳴を上げ、お互いにビートルから転げ出る伊達と真木

「何気持ち悪い事やってんだよ、ドクター!!」

「…それはこっちの台詞ですよ、伊達君!私にあのような趣味はありません」

子供のように言い争いを広げる2人に見兼ねた一夏が声をかける

「あ、あのー…?」

「「何!?」」

「あ、いえ何でも無いデス…」

その様子を黙って見ていた箒の横に1人の女性がやってくる

「篠ノ之、なんの騒ぎだ?あの奇妙な2人組はなんだ?」

「織斑先生、何かよく分からないんですけど、そこの車の中にあの2人が寝てて、起きたと思ったら喧嘩しだして…」

「そうか、わかった、もういい」

千冬は口論している伊達と真木に近づき、息を吸って張りのある声で問いかける

「おい、そこのあやしい2人組、ここは基本関係者しか立ち入り出来ないはずだ、何者だ、そして何をしに来た」

千冬の問いかけに2人は声を揃え、静かに答えた

「「この世界を救いに来ました!」」

「「「は?」」」

ひとつの世界に流れ着いた、違う世界の男が二人

物語はここから始まる

>1です。

やっとこさ導入部が終わりました。
ある程度頭の中で話は組んでいたのですが、TVシリーズの超展開に修正の嵐…、もとい再編集を加え、ある程度割り切って考えて話を始めることにしました。

世界観などについて、質問があればじゃんじゃん質問してきてください

ちなみに、オーズではなくバースなのは単純にバースがISに近い形をしていたのと、本編での伊達さんとドクターの仲良しっぷりが萌え萌えキュンだったからです。

また近いうちに更新していきたいと思います。応援よろしくお願いします。

>>1です

真昼間から更新です。

TVシリーズの伊達さん…どうなってしまうのでしょうか!!

気になります

>>1です

真昼間から更新です。

TVシリーズの伊達さん…どうなってしまうのでしょうか!!

気になります

>>1です

真昼間から更新です。

TVシリーズの伊達さん…どうなってしまうのでしょうか!!

気になります

「ここが職員寮の個人部屋か…」

伊達はこうして挨拶を終え、これから自分が寝泊まりする部屋のカギを開け中へと入る

「広ぇな~、ベッドも高そうな奴だし…、ホテルだったら結構な値段とられるんじゃねぇか…?」

書類と手荷物を壁側の机の上に放り投げ、よく見るとその机にはパソコンが備え付けてあった

「きっと使わないだろうなぁ、機械とか苦手だし…」

機械のスペシャリストといえば、一緒にこの世界に来た真木の事がふと頭をよぎる

そういや、ドクター大丈夫かな?

真木の配属先の良くない噂を聞き、嫌な予感を感じる

徐に着ていた白衣から預かったバッタカンドロイドのプルタブをプシュッとあける

「ドクター?聞こえてるか?」

……………………………

『…聞こえているのは当たり前です。何か用ですか?』

割りと普通な声であった、まぁ普段から自分がちょっかいを掛ける以外で殆ど表情を変えるところを見たことがないため心境の変化を推し量ることは出来ないが…

「いや、ドクターの仕事先がなんかめんどくさい所って聞いてさ、どうかな?って思って」

『君が気にするような事は何もありませんよ、尤も今日は留守のようだったのでまた明日窺う事になりましたが』

「そうか、んまぁ何かあったらいつでも言ってこいよ、それに俺よりドクターの方が立場的に偉そうだしな」

『それに関しては否定しませんが、…一つ気になる点がありまして』

「何だよ」

『部屋へ戻る前に一度車に戻って積まれたカンドロイドや持ってきた道具の確認をしていたのですが…』

「うんうん、それで?」

『バースシステムのバースドライバーのみが無くなっていたのです』

「ベルトが無い?どういうことだよ」

『車に開けられた形跡はありませんでしたし、おそらくは初めから無かったものかと』

「そういや、ドクターとガチバトルしたときにぶっ壊れちまったからな、その影響か?」

『おそらくは、それが理由ではないでしょうか』

「かぁ~、鳴滝のオッサンも気ぃ利かしてくれりゃぁいいのに」

『あるのはメダルとバースバスターだけのようですね』

「ベルト作るのってどれくらいかかりそうなんだ?」

『ベルトはバースシステムの全ての軸となってますから、そう簡単にはいかないかと』

「そうか、まぁしょうがねぇか」

そうだ、しょうがねぇんだ。金のためにやるわけじゃねぇしな

「俺はもう寝るわ、いろいろ疲れた」

『そうですか、私は調べ物がありますので、では良い夜を』

「あぁ、御休み」

こうして伊達と真木の長い初日が終わった

伊達は無駄に寝心地のいいベッドの中でまどろみに包まれ奇妙な夢を見ていた

一面が白に眩く輝く空間に自分ひとりがポツンと立っている夢

鳴滝に会った時のような一面鏡のような怪しい空間ではなく、どこか温かさを感じさせる優しい光であった

《どこなんだここは?場面がコロコロ変わってややこしくてしょうがねぇっての》

どこまで歩いても、叫んでみても何も変わらない、するとそこにぼんやりと人影が浮かんできた

《だれなんだ?こっち来て顔見せやがれ》

その人影はもやがかかったようにぼんやりとしか見えないが、顔が細かく動いている、何かを喋っているようだ

《……さ…、こ……んて……な………よ》

《何?なんて言ってんのかわかんねぇって…》

すると人影は伊達にむけ手を伸ばしてきた、伊達もそれに応じるように手を伸ばす…すると

「ハッ!」ハァハァ

伊達は慌てて目を覚まし起き上がり辺りを見回す

「ハァっ、夢か…、この世界に来たことも夢だったら…なんてな…」

そう、これが今の伊達の現実、よく分からない世界に連れてこられよく分からない学校で教諭になり未だに実態の掴めない使命をこなさないとならない

「まぁ、考えたってしょうがねぇか、いや、よく考えねぇとダメなんだろうけど!」

なんてまるで巻き込まれ体質のラノベの主人公のようなセリフを呟く、すると

コンコン 『すいませーん、いませんかー』

誰かが自室の戸をノックしてきた

「応、今開けるからちょっと待ってな」

随分若い声だったが、生徒だろうか、男性教員は珍しいとかで冷やかしに来たのかもしれない

ガチャ「はいはい、開けましたよ」

ドアを開けた先にいた人物、水色の外側に跳ねたショートヘアに扇子を持った少女

すいませんが、急用が入ったので、今夜20時頃にまた更新に来ます。

失礼します。

>>1です。ご無沙汰していました

第一章を終わらせようと思ったのですがあんまりにも話が長くなりすぎてしまったため先駆けて投稿することにしました

では始めていきます

IS学園・体育館 三学期始業式

生徒たちが入ってきて体育館はざわついてる。昨夜から話題は新任の男性教師でもちきりだ

ザワザワ

「ねぇねぇ!三学期から来るって男の先生の話、聞いた?」

「新任の先生ですって!」

ザワザワ

「聞いた聞いた!どうしようイケメンだったら!」

ザワザワ

「っひゃぁ~、早速話題になってるな~。俺達得だったな箒?」

「そうだな、まさか一昨日に先に会っているとは誰も思うまい」

一年一組の一夏と箒も体育館の騒ぎっぷりに驚いてる

そこに二組の鳳鈴音が話しかけてくる

「ねぇ一夏、箒、あんたたち新しい先生に会ったって聞いたけど、どんな人だったの?教えなさいよ」

「えぇ!一夏さんと箒さん、もうお会いになられたんですの?」

傍にいたセシリア・オルコットも驚いて話しかけてくる

「あぁ、二人でいたときに…偶々な」

「ちょっと待って、二人でってどういうことよ!」

「お二人で何をしてたのか、詳しく説明してもらいますわよ」

「べ、別にやましいことなど何もしてはいないぞ!」

「そうだ、芝生で膝m」

「わーわー、何も言わなくていいからな!変なことは何もなかったからな!」アセアセ

慌てて一夏の口を塞ぐ箒、鈴とセシリアはそんな二人をジト目で見つめる、その時

スパーン スパーン スパーン スパーン

均等なリズムで四人の頭を出席簿が襲う

「そろそろ始まるぞ、いつまでくっちゃべってるつもりだ」

「「「「は~い…」」」」ヒリヒリ

そして始まる始業式

理事長の長~いありがたくない話が終わると今度は楯無が舞台に上がり壇上に立ち全校生徒に挨拶する

「皆さん、あけましておめでとうございます」

「昨年はいろいろありましたが、今年も昨年に負けない勢いで頑張って行きましょう」

楯無はそのあと実家の庭の木がどうしたとか、池の鯉が元気だったとか、他人との会話で特に役に立たないであろう話を続ける

彼女と親しい者は改めて楯無が名家のお嬢様であることを再認識するのだった。

名家の育ちでありながら嫌味さを感じさせないのはひとえに彼女の人柄の良さの賜物であろう

話を一通り終わらせると・・・

「そして、皆さんお待ちかねのぉ~、新しい先生の紹介で~す」

館内がワーワーと騒がしくなる

「いや~、この時期に男の先生が来るなんてお姉さんびっくりだわ~」

「しかも!なんと二人もやってくるんです。これはお得よね~」

二人も来ると聞いて体育館内はさらに沸き立つ

「二人ですって、ステキー」

「地球に生まれて良かったー」

おほん、と一息置く楯無

「お二人ともとてもステキな男の人たちですよ」

「それでは上がってきてもらいましょう。どうぞ!」

そういって舞台袖に手を差し向ける楯無

「・・・・・・・・・・・・」

その頃、舞台袖では・・・

(またあの夢を見た…)

白い世界でたったひとり、そして奥から現れる黒い人影…

伊達は昨夜の突貫工事の後、そのまま準備室に寝入って見た例の夢を思い返していた

「…達君」

(どこかで会ったような感覚だったが…あれは一体…)

「伊達君」

「うぉっ、何だよ?」

「更識君の挨拶が始まりました。そろそろ壇上にあがる頃です」

「分かったよ…なぁ、ドクター」

「何ですか?」

「ドクターさぁ、結構この状況楽しんでない?」

「気のせいでしょう」

「そうかい」

『それでは上がってきてもらいましょう。どうぞ!』

「そんじゃ行きますか」

爪先を地面に打ちならし踵を直し、伊達と真木は壇上に上がる

二人が上がると館内からは拍手と歓声が湧きあがる

ワァァァー

「すごい長身!白衣の方は男らしい顔をしてるわ!」

「眼鏡をかけてらっしゃるほうもスマートで素敵!」

「あの眼鏡が知性を醸し出しているわね!!けどあの人形何かしら?」

「は~い、皆さんお静かに!それじゃあ自己紹介と挨拶をお願いします」

そう言って楯無は一旦マイクのスイッチを切りスタンドから外し伊達に渡す

「…まるで映画の舞台挨拶だなこりゃ」

「さすが女子校…といったところでしょうか」

「同じ境遇の人間がいるってだけで心強いよ、ドクター」

「それはどうも…、挨拶は先に済ませてください」

「わあったよ」

カチッ キィ―――ン

「アァ―、えーっと…どうも、伊達明っていいます」

「長い間世界中を医療支援しながら旅してて…、巡り巡ってこの学園の養護教諭になりました」

「普段は保健室にいることが多いな」

「メンタルケアから臓器移植まで一通りこなせるぞ、手術は俺の仕事じゃないみたいだけど」

「とりあえず見かけたら声掛けてくれると嬉しいかな」

「そんな訳でヨロシク!!」ビシッ

軽い調子で挨拶を終えると、生徒達がワァァ―と騒がしくなる

「お医者様ですって!ステキ―」

「あの着崩したスタイルがワイルドでいいわー」

「ほい、次はドクターね!」

伊達からマイクを預かった真木は口元に沿え、あくまで目線はキヨちゃんに向けたまま挨拶を始める

「どうも、整備の座学と実技担当の真木清人と申します」

「出会いは別れへの旅の始まり、その終わりを善き物にする為、皆さんの学生生活の彩りに尽力させていただきます」

真木は挨拶を終えマイクのスイッチを切り楯無に渡す

「メガネの先生のほうはすこしお堅いわねっ」

「知的でダンディ、嫌いじゃないわ!!」

伊達が挨拶をしたときのように生徒たちは騒がしくなる

唯一の男子生徒である一夏とて例外ではなかった、まぁ尤も他の女生徒ほど騒がしくなかったのは言うまでもなかったが

「はは…、これじゃまるで転校生みたいだな」

「だれかさんの自己紹介なんて見る影も無かったものなぁ?」

「な、それは言わないでくれよ」

織斑一夏の自己紹介、もう何ヶ月も前の話である

とあるアクシデントによりISを起動させてしまい世界中の注目の的となり

そして後の生き方を否応無く決められたあの日、入学式の後の教室で文字通り右も左も分からない一夏の自己紹介は散々なものだった

そんなこともあったな、と口元を緩ませる一夏

今思えばあれは現実を受け入れられない未熟だった自分のささやかな抵抗だったのかもしれない

「はい、ありがとうございました~、この後は質問タイム~と行きたかったところなんだけど、もうホームルームが始まる時間だから今日は無理ね」

「あ、でも真木先生は授業で会うことも多いから大丈夫よ」

「伊達先生も保健室に居る事が多いみたいだから、体調悪くなった子はチャンスね」

そんな理由で来られても・・・と一人苦笑する伊達

「それじゃ、新任の先生の挨拶はこれでお終い、お二人ともどうもありがとうございました~」パチパチ

挨拶を終えた伊達と真木は舞台袖に下がっていく

「ドクター挨拶上手かったじゃん、ばっちり練習してきたの?」

「それは暗に私が人前に出るのが苦手な人間であると揶揄しているのですか?」

「そうじゃねぇけどさ、演説とか講習とかやる人間じゃねぇでしょ?ドクターって」

「確かにここ数年はそういったことはしていませんでしたが、鴻上会長からスカウトされるまでは流れであちこち研究員をやっていたので大勢の前でしゃべる機会には事欠きませんでしたよ」

「なるほどね、恐れ入ったよ」

「では、わたしは次の時限から授業がありますのでお先に」
          ・・・・
「ああ、頑張ってな。真木先生」

「・・・・・・・・・・・・」

「昼休み、食堂でなー」

真木は何も言わず去っていく

「さて、俺も行きましょうかね」

そういって伊達は保健室に向かうべく歩く

「そうだ、職員室寄ってミルク缶取ってきた方がいいな」

職員室は授業に行く先生の大半が出て行って今は少ししか居ない

「先生って忙しいんだねぇ」

ミルク缶を担ぎなおした伊達は足早に保健室に向かおうとする、その時

「伊達先生~、今お暇ですか?」

「あぁ、山ちゃん先生、何か用?」

「まだその呼び方するんですか~、はぁ、まあいいです」

「はは、山ちゃん先生は授業とか無いの?」

「ええ、この後SHRなんですけど、それでちょっとお願いが…」

「?」

その頃一年一組

「どんな先生だろって思ってたけど想像以上な人たちだったね、ラウラさん」

「怪しい二人組だったな、しかし男にISの講師が務まるのか?」

「あはは、真木って先生は変な人形持ってたね」

始業式が終わった後も教室では女の子達がわいのわいのと騒いでいた

「え、本音新しい男の先生にもう会ったの?」

「うん、一昨日と昨日にね~、二人とも背が凄く高くてとってもカッコ良かったんだよ~」

「織斑君とどっちがカッコ良かった?」

「う~ん、よく分かんないかな~…」

「でも、伊達って先生男らしい顔してたわよね!」

「真木先生もクールでミステリアスよねー」

そして学園唯一の男子生徒、織斑一夏にも話題は降りかかる

「ねぇ一夏!男の先生が来るって本当だったんだね。一夏はどう思う?」

「どうって・・・、そうだなぁ、言ってもあの二人は先生だからなぁ。」

「最初男としてここにやってきたシャルが女だって分かったときは出鼻挫かれたけど」

「うぅ・・・し、仕方が無いじゃない!あの時はしょうがなかったんだよ」

「分かってるよ、そういう意味で言ったんじゃない。」

「まぁ、あれだな。今回は疑うべくも無く“男”だからな。伊達先生は結構話し易い方だったからちょっと気楽かな?」

「そっか、良かったね一夏」

キーンコーンカーンコーン

一夏がシャルロットと談笑していると予鈴が鳴る

真耶が教室の開きっぱなしの入り口の戸の近くで誰かと話をしている

「あれ?山田先生が・・・、予鈴もう鳴ったか?」

「ううん、まだの筈だよ・・・」

踵を返し教室内に入ってくる真耶とその後ろには…

「あれ?山田先生の後ろ…、伊達先生よ」

「キャアァァ――、皆!一大事よ一大事!」

「すごい長身ね、腕も太くてたくましい」

話題の人である伊達が

「おーおー、すげぇ騒ぎようだな」

「すいません…、はい、ちょっと静かにしてくださいね」

パンパンと手を叩き生徒達を鎮める真耶

ミルク缶を背負う伊達のもう片方の手には蛍光灯が握られていた

「あー、あそこね。電気切れてるの」

「あ、はいすいません、お忙しいところを」

「いいよ、どうせ暇だったから」

靴ひもを直しながら答える伊達、その様子を見た生徒達も気づく

「あ、そこの蛍光灯切れてるわ」

「2学期の終わりから切れてなかったかしら?」

「一か月近く放置してたのかよ…、山ちゃん先生もズボラだな」

「だからその呼び方止めて下さいって言ってるじゃないですかぁ」

ポカポカと伊達の胸板を拳を握って叩く真耶、生徒たちからクスクスと笑い声が聞こえる

「山ちゃん先生だって、カワイイ」

「山田先生顔真っ赤ー」

「山ちゃん先生」「山ちゃん先生」

生徒達がからかって呼んでいると真耶の顔はさらに赤くなる

「もぉー、生徒たちが真似したー!責任とって下さいよぉ」グスッ

涙目になって抵抗する真耶、今にも泣き出してしまいそうだ

(あちゃー、やりすぎたか…) (ちょっとからかい過ぎたかな?)

急にクラスに気まずい空気が…

やっちまったという顔をしながら伊達は近くにいた出席番号一番の相川清香に小声でたずねる

「なぁ、これって俺のせいかな?」ボソボソ

「たぶん…、というか絶対」ポソポソ

その後どうにかして真耶の機嫌を直した伊達、その際の条件として食堂のパフェをご馳走することになったらしい

それを聞いた何人かの生徒がズルイなどと口にしていたが八割方無視し作業に進む

「そうだ、話がこじれちゃったけど蛍光灯替えなきゃ」

「はっ、そうでした!」

「当然だけど届かないよね」

「そう…ですね」

「しゃあねぇ、そこの少年!」

「お、俺ですか?」

「悪いんだけど、ちょっとこっち来てくんない?」

「いいですけど…、俺は織斑一夏って名前が…」

「わーったわーった、織斑ちゃんね。ちょっとこれ持って」

「ちゃんて…、脚立取ってくるんですか?」

「いらないよ、ちゃんと持ってろよ?っよっとぉ」ガシッ

蛍光灯を一旦一夏に預け伊達は一夏の腰を自らの右肩に乗せそのまま立ち上がる

「おわっととぉ、ちょ、先生」

「軽いねぇ、ちゃんとメシ食ってるか?」

「食べてますよ!これ替えりゃいいんですよね?」

このやりとりを見ていた周りの女子からは溜め息が“ほぅ”と漏れる

「男同士って絵になるわねぇ」

「織斑×伊達先生!今年の夏はこれで決まりだ」

「一夏…、僕も男の子だったころにはあんなことしてくれてたのかな」

「あの新任教師…、人の嫁に勝手な真似を…」

「よし、取り付け完了!」

「よっしゃ、降ろすぞ」

「どうもありがとうございました」

「せんせーありがとー」

「大変美味しゅうございました」ジュルリ

一部変な言葉が聞こえたが気にはしない、すると本鈴が鳴った

「よし、じゃあ俺はそろそろ戻ろうかな」

「えー、そんなぁ」

「待ってよ、せっかく来たんだから伊達先生の事もっと教えてよぉ」

「旅の話聞かせてー」

「そんなこと言ったってなぁ、どうよ山ちゃん先生」

「私も伊達先生のお話聞きたいです」キラキラ

目を輝かせて伊達に迫る真耶

(参ったなぁ、あんまり得意じゃねぇんだけど…)

「っていうか、授業しなくていいの?もう本鈴なったじゃん」

「大丈夫です!担任の織斑先生も職員会議でまだ来てないみたいですから」

「織斑先生?…あぁ、あの気難しそうな顔した釣り目のネーちゃんね」

「「「ッッ!!」」」

伊達の千冬に対する第一印象を聞き教室内は騒然となる

もちろん伊達に悪意はないのだがISが良くも悪くも社会の主流となっている今の社会で一部では神格化さえされている千冬に対してこの言い様はかなり衝撃的だった

「き、気難しそうって…、なんて恐れを知らない…」

「千冬姉にそんなイメージ持つ人間初めて見た…」

「あれ?何か俺まずいこと言っちゃった?」

伊達が?マークを頭に浮かべると一人の生徒がバンッ!と机を叩き立ち上がる

「貴様ッ!教官を侮辱しているのかッ!」

「ちょっと、ラウラ落ち着いて!」

今にも掴みかからんとするラウラを抑え込むクラスメイト

真耶が慌てて伊達に詰め寄る

「だ、ダメですよっ織斑先生は元、いえ今でも世界最強のIS操縦者なんです。そんな無礼な口を訊いちゃ」

「そうですよ伊達先生、偉い人なんですよ織斑先生は,そんな軽口叩くなんて狼藉見過ごせません」

本来教室にあるべき黒板の位置に存在する立体映像のスクリーンに映し出される千冬の顔写真や現役時代の映像を見ながら

感心するような顔をする伊達

「ワリ―ワリ―、日本に帰ってきたのちょうど一昨日なんだ、織斑先生がそんなにすごい人だったなんてな」

「思ってもみなかったわ。ゴメンな」

頭を下げながら言葉をつなぐ

「確かに人を見かけで判断するのは良くなかった、先生らしく無いよな」

「反省しなくちゃな………けど!」

申し訳なさそうな台詞を吐いていた伊達だが語尾を切り上げ話を盛り返す

「強いとか、偉いとか、そんな理由で逆らっちゃ駄目とか言うこと聞かないと駄目とか、そういうのは正しいと思わないな」

そう言いながらスマートフォンの接続端子にケーブルを繋ぎスクリーンに画像を投影していく

様々な国名の書かれたフォルダから一つのファイルを開き写真をスクロールしていく

「挨拶の時も言ったけど、医療支援しながら世界中を回っていたんだ」

「世界中の貧困・紛争地域や難民居留区とかな」

写真には赤茶けた地面に掘っ立てた簡易テントで治療を行う伊達や他の医師達の姿が映っている

目で追いながら順々に画面をスクロールしていく,現地の子供と戯れている姿や白い布をかけられた冷たくなってしまった体の前で力なく座り込んでいる姿

「何年も世界中巡ってりゃ、いろんなことがあったよ」

「流行り病に罹って死にそうになったり、紛争に巻き込まれたり」

「嫌ってほど自分の無力さを感じさせられた事もあるし、時には銃を持たされて戦場に駆り出された事もある」

白衣を土や泥で汚した姿に銃を抱えた伊達の姿が映ってた写真でスクロールをとめる、よーく見ると裾の方に焦げ跡や返り血のようなものも見える

最初の方は隣の友達と談笑しながら聞いていた女子たちも話が進むにつれ無言のまま前を向いていた

「人を撃ったことだって一度や二度じゃない、命を奪っちまったことだってな…」

教室が完全に静寂に包まれる

「笑っちゃうだろ?命を助けに来たお医者さんが、必死な顔して銃を撃ちまくってるなんて」

「ごめんな、何か自分でも何言ってるか分んなくなってきた」

「まぁ、とにかくあれよ、ISの事は気の利いた兵器だって事ぐらいしか知らないけど、戦争とか命の現場とかそういうのを人よりいっぱい見てきた俺から言わせると」

「“本当に大事にしたいもの”と“傷つける理由”ってのはちゃんと自分で見つけたいってこと」

「じゃないと自分で自分に嘘ついて泣かせちまうことになるからね」

話を終え一呼吸置く伊達

      シ~~~ン

教室は相変わらず静かだ、見渡すと俯いてる女子もいる

(あれ?またなんか変なこと言っちゃった?)クルッ

?マークを浮かべながら真耶の方を振り返る伊達、彼の目に映った真耶の姿は…

「ウェッ、…エグッ…グスッ、グスン…伊達先生ェ~」ポロポロ

嗚咽を漏らし涙を流しながら真耶は伊達の手をガッシと掴む

「感動しましたッ!伊達先生がそんなに思慮深い方だったなんて!」

「えっ、いやあの…もしも~し」

「辛い経験をされてきたからこそ命の大切さを教えるために教鞭をふるうなんて、素敵です!」

「え、いや、そういう意味で言ったんじゃ…」

狼狽しながら教室を見渡すと生徒達がワッと湧きながら羨望や尊敬といった煌めいた視線でこちらを見ている

「海外で医療支援なんて立派だわ」キラキラ

「すっげぇよ、命を助けるなんて伊達先生最高だよ」キラキラ

「医者としての実績も十分なのね、すこし見直しちゃった」キラキラ

「認めたくはないがあの構え方は堂に入ってるな」ウヌヌ

「ラウラ…、そこは関係ないと思うよ」

どうやらこの一件で伊達の評価は随分上がってしまったようだ、しかし当の伊達はこの反応に難色を示している

「ちょっと待ってよ!俺の言ってる事あんまり伝わって無いじゃん!」

「確かに一般的に見れば“良い事”で済まされるような事はしてたよ、けどそれはもう済んだことじゃない」

「そのぉ…、称号とか資格よりもその先ッつうか…だぁぁ~~~なんて言ったらいいかわかんねぇ」

頭を掻きながらやり切れない表情をする伊達、上手く言葉が出てこないのだ。そのとき…

「要は外面で判断してほしくない、だからと言って肩書きや経歴で話を片付けられるのも嫌、という訳か」

「何も考えてないような顔をしていて中々我儘な男だな」

突然背後から自分の心情を的確に解説され、目を瞑り自嘲的にふっと息を漏らす

痛いところを突かれたな、と思いながら声のする方に喋りかけながら振り向くがその表情は凍りつくことになる

「まぁそう言われると辛ぇけど、自分なりの生き方ってやつk…」ピシィッ

その先にいた人物こそ、伊達がこの話をする切っ掛けになってしまった人物、織斑千冬その人である

「私がいない間に随分話が盛り上がっていたようだな、どうぞ続けて貰って結構ですよ?伊・達・先・生」

やや冷っぽい流し目を送る千冬、表情から察するに話の内容は全て聞かれていたようだが、特に怒っているような様子ではなかった

「いや、盛り上がってきたっつうか…、もうクライマックスも終盤辺りなんだけど…」

途切れ途切れになりながら返事をする伊達、仕方ないといった表情で鼻息を鳴らし話を続ける

「まぁなんつうか、大事だと思うならそう思えるだけ相手の事知ってほしい」

「ちゃんと自分の本質を見てほしい、それが大事よ」

思いがけずまるで演説の真似ごとをしてしまった伊達はすこし照れたように頭をかく

「ごめんな、初対面でこんな説教臭いぇこと言っちまって」

「せっかくこうして出会えたんだし、当然のことかもしれないけど目に映るものを大事に思えるようになりたい」

「この学校ではじめて入った教室にいた皆や」

「「「キュンッ///」」」

「山ちゃん先生だってそう」

「えっ///いや、そんな…、まだ早いですぅ///」テレリテレリ

「もちろん、織斑先生もね」

「…………フン」

(――ちょっとクサかったかな?ま、子供相手にはこれぐらいがちょうどいいよな?)

「じゃあ俺はそろそろこの辺で!またどっかで会ったら声かけてよ」

「え~、もう行っちゃうんですかぁ」

「ワリーな、でももう授業始まってんだろ?」チラリ

そういって伊達は視線を移す、その先にいた千冬は息を軽く吸い

「そうだな、さぁ席に着け!気難しい顔したツリ目のねーちゃんの素敵な授業をはじめるぞ」

教室が一斉にドヨドヨっとした不穏な空気が流れる、どことなく千冬から発する雰囲気は冷ややかなままだ

「あちゃー、やっぱし聞かれちゃってたか…」

気まずそうに頭の後ろのほうをポリポリと掻く伊達

「あれだけ大きな声で話していれば当然よね…」

「織斑先生…、口元は笑ってても目が笑っていない…」

伊達はバツが悪そうに口元を突っぱねさせ近くにいた女子に耳打ちするような姿勢で

「けど織斑先生だってひどいんだぜ?初対面で俺とドクターに“怪しい二人組”なんて言っちゃってさ」

特に声の音量を下げるでもなく普通に言い放つ

すると教室からクスクスと笑い声が漏れだす

「すまないな、初対面の人間が偉いかどうかなど考える余地も無かったのでな」

「一目見て率直に抱いたイメージを言ってしまった」

してやったりといった顔で得意げに笑みをもらす千冬

「まいったな、コリャ…でもな、一つだけ覚えといてくれ」キリッ

かつてよくやっていたように人差し指を立て1を作り急に真剣な顔つきになり千冬や真耶やクラス中に見せる伊達

「怪しいのはドクター一人で十分だから。……ネ♡」ガラガラ

最初こそは真剣な顔をしていたが最後はおどけたような顔をして教室を後にする

「伊達先生…不思議な方でしたね」

「あぁ、あんな風な男は久しぶり…いや、初めてかもしれんな」

「それってどういう意味ですか?」

真耶の問いに答えた千冬に不思議に思ったクラスの女子が再び問う

「いや何、社会に出る頃には天才だのブリュンヒルデだの色々な称号を身に授かっていたからな」

「気がつけば男も女も大人も子供も皆私を雲の上の存在のように扱うものだからな、ああいった人間に会うのは初めてだといっただけだ」フフッ

「さぁ、授業を始めるぞ!日直、号令をしろ」

こうして生徒たちの学生生活が始まってゆく。一方そのころドクターは…

>>1です、伊達さん交流編はここでおしまい

次回はドクター編、いつできることになるやら…

てなわけでサヨウナラ

遅くなったけど箒ちゃんハァァッピィィぃ、バァァーーァスデェェェ~イ

次回更新は未定です

お久しぶりでヤンス

お気づきの方もいると思いますが、にじファンさんでもこのSSを投稿させてもらってます

再編集して、キャラや舞台設定も補足していますので良かったら見てやってください

では始めていきます

今回はドクターのターン

始業式が終わり伊達と別れた真木、次の時間から早速講義があるため片づけが途中のままの準備室にいったん戻り指定された書類や参考書を取り足早に二年生の教室へ向かっていた

(しかし本当に私が子供相手にものを教えることになるとは…、失ったバースシステムも早く完成させなければならないというのに悠長なことをしている暇はありまs…)

自身の在り方について考えていた真木はそこではた、と足を止める

(そうです、私には世界を美しいままに終わらせるという使命があったはず、この身に宿るコアメダルもその使命に応じ力を与えてくれた)

そう思い自身の体内に眠る紫のコアメダルに意識を集中させ双瞼に紫の光をともす真木、しかし反応はほんの数秒で消えもとの黒目にもどってしまう

驚きハッと胸元を見下ろす真木、自身の異変に困惑を覚える。前の世界で感じていたコアメダルの力による胸のざわつきも消え失せている

(コアメダルが休眠状態に入っている…?あるいは一度死んだ肉体が蘇ったことでメダルが適応しきれなかったか…)

再び歩き始めながら真木は持ち前の頭脳で自己分析を始める、と、その時

「あ~れ~れ~、真木所長じゃないですかぁ~!?」

底意地の悪そうな声とともにカツカツとわざと足音を荒げているかのように靴底を踏み鳴らし一人の女性が、否、後ろからは取り巻きの二人の女性が一歩引いた立ち位置にいる

そう、伊達の配属先である新開室の以前の暫定管理責任者であるキーラ博士と取り巻きの女性化学者二人だ

「もうとっくにこの学園から消えたと思ったんですけど、っていうかここにいる意味が分からないんですよねぇ、アンタもあのヒゲ面の男も」

「そうよ、男はここにいるだけで悪循環なのよ!って、ちゃんとこっち見て話聞きなさいよぉ」ダンッ

取り巻きの一人がヒステリックに叫び足を地面に打つ

こんなときでも真木は平然としており、相変わらず人形だけに視線を送っていた

「聞いていますよ、私も同じ科学者の端くれですから」

「アンタなんかと一緒にしてるんじゃないわよぉッ!虫唾がはしるわ!」

取り巻きのもう一人が真木にくってかかろうとするがそれをキーラが止め、今度は彼女が真木に近づく

「やめなさい、これでも上司なんだから、それなりに敬ってあげないと…ネッ!」ギュムッ!

そういってハイヒールの踵部分で真木の爪先を勢いよく踏むキーラ

真木はほんの一瞬顔を歪めるがすぐにもとの表情にもどり

「同業者の話はどれほどつまらなくとも一度は耳を貸すようにしています」

「しかし先ほどのあなた達の言葉は科学者としての言葉とはとても…」

嘲るように軽く鼻息をならす真木、キーラは凄まじい怒りの表情で真木を睨みつける

「上等だよテメェ…、ここに居られねぇようにしてやるよ…」ピキピキ

ソバージュヘアを逆立てて体を震わすキーラ、しかしその形相は一気に緩むことになる

その原因は一つの足音であった

「あー、いたいた、見つけましたよ真木先生」

その声の主は水色のショートヘアに“捜索中”と書かれた扇子を携えた少女

そう、生徒会長更識楯無であった

「もう授業のチャイムなってますよ~、うちの担任も『迷ってるかもしれないから』なんていっちゃって」

「私が探しに行く事になったんですよ、ってあれ?取り込み中でしたかぁ?」

わざとらしく首をかしげる楯無、それを見たキーラは先ほど真木に向けていた形相が嘘だったかのような笑みを浮かべ

「いいえ、ごめんなさいね授業に遅れさせちゃって、大事なお仕事のお話していたの」

そういって取り巻きを連れて去っていくキーラ、完全に見えなくなると楯無はその方向に向かってアッカンベーをしていた

「べーっだ、何よワザとらしい、隠す気もないのに取り繕うとしちゃってさ」

キーラは自分の態度の悪さや所業の数々を表向きだけ取り繕おうしており起こした問題は大概の生徒は既に知っている

隠す気が無いのがさらに質が悪い

なので他の生徒も別段特別な態度をとる事も無くなるべくいざこざを起こさないように過ごしている

「真木先生も気にしないでくださいね、あぁいう人は一生あぁいう人生を生きていくんですから」

「まぁ、それでも…」

呆れたように言う楯無、だが急に含んだように破顔し真木の方を向き撫でるような声で言い放つ

「それでも耐え切れなかったらいつでも言ってくださいね、私が優しく慰めてあげますから」チラリ

スカートの裾をつまみ妖艶な視線を送ってくる

まるで昨日部屋を訪れてきた生徒会長の態度とは思えない目の前の少女の雰囲気に真木は何も言おうとしない

「…………………………」

「…………………………」

楯無も無言のままだ

「「…………………………」」

「あ、あの…真顔でスルーって一番リアクションに困るんですけど…」

「お気になさらず、私個人の問題に生徒である君に苦心していただく必要はありません」

「そ、そうですか…、あ、急がなきゃ。ホラ、行きますよ」

そういって真木の右腕を引く楯無、だがその弾みで真木の左腕に乗っていた人形がポトリと落ちそのままコロリンと足元から遠くへ転がっていった

「あ、人形が…、ごめんなさい、拾ってきま…」

「は…はァッ…カハっ…ひゃい…ひゃいい~ッ!」ガクッ

急にうろたえ出した真木はわなわなと身体を震わし膝を地面に着き這うように人形の方へ向かっていく

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プッ」クスクス

突如豹変した真木に楯無は目をパチクリとさせていたがあまりに可笑しい真木の様子に笑いを堪えられなくなり

「アハハハハハハ、おっかし~い!クールな印象だって言われてた真木先生が・・・アッハハハハハハハハ」ハァハァ

弾けたように大声で笑い出す楯無をよそに無様な姿を見せてしまった真木は人形を拾い上げスタスタと去っていく

「あぁ~、笑いすぎておなか痛い・・・あ、待って下さいよー」テクテク

多々あったがようやく楯無のクラスに到着

一歩くぐると教室内は歓声と高いテンションに包まれ一気に騒がしくなる

だが真木とて前の世界ではこんな年端も行かない少女達の何倍もハイテンションな男の下で働いていた経験から特にどうということもなかった

よく見ると高価そうな一眼レフのカメラをこちら向けてシャッターを切ってくる少女もいる

神経質な性格の真木としてはあまり喜ばしくない事態ではあるが、一昨日自分が伊達に言った“忍耐力をつける”という言葉を思い出し

ここでくだらない理由で面倒ごとを起こすと絶対に伊達に文句を言われる、そう感じた真木はしかたなく目を瞑ることにした

黒板の隅でパイプイスに腰掛けていたこのクラスの担任教師はさっきから黙りっぱなしの真木に不思議そうに見つめてくる

「ごめんなさいね、騒がしくって、男の人って珍しくて。真木先生、もしかして緊張されてるんですか?」

「いえ、では始めていきましょうか」

こうして、いよいよ真木清人の授業が始まる

「今回は…運用の『通信手段の安定活用』についての復習ですか、参考書の172Pを開いてください」

淡々と言い放つと一人の女生徒が不思議そうに手をあげて立ち上がる

「あの…それは一年の範囲で今日は設計の『空気抵抗と機体構造』の復習のハズなんですけど…」

そういって二年生用の参考書を見せてくる

「…………ッ!!」(((゚д゚三゚д゚)))

まるで変な操り人形のように愕然とした表情で手もとの資料とその参考書を何度も何度も交互に見やる伊達

それを見兼ねた担任の教師がおそるおそる真木に話しかける

「あの…真木先生?よろしければ指導項目と資料リストを見せて貰ってもよろしいですか?」

ハッとなった真木が目を見開いて震える手で要求されたものを恐る恐る渡す

「これは…、間違いだらけになってるわ。これをどこで受け取ったんですか?」

毅然とした態度で問いかけるとようやく平然さを取り戻した真木が静かに答える

「どこで…ですか、それは例の開発室で私宛の封筒から出したものですが」

「封に開けたような痕跡があったのでもしやとは思ったのですが…」

そう答えると担任の教師は『やっぱり…』といった表情をしていた

周りを見渡してみると大概の生徒も同じような雰囲気であった

「またあの博士だわ」  「例の新人潰しね」

「個人的な嫌がらせに生徒を巻き込むのは止めてほしいわ」  「ほんとに迷惑ね」

そんなヒソヒソ声もちらほら聞こえる

そう、新人つぶしで教師の面目を潰すのはキーラの常套手だったのだ

こうして自分の気に入らない教師のプライドを粉々に叩き潰して追い出すのが彼女のやり方である

「ま、まぁ気にしないで下さい。あとで私のところに来ていただければ新しい項目と資料をお渡ししますから」

「それに今回は復習だけですから、少しくらい遅れても大丈夫ですよ」

慌ててフォローに入る担任教師、そういって自分の教科書を渡してくる

「恐れ入ります、では始めさせていただきましょうか」

気を取り直し授業に使うホログラム用のカートリッジを持参の資料の中から取り出し機器に接続させる

「機体というのは使用の用途に分かれ様々な形状を持っており、立体映像に移っているとおり…」

話しながら真木は旅客機やVTOL、さらには戦闘機など様々な

航空機のホログラムを起動させていくがピタリ…と手を止める

「先生!どうかしたんですか?」

「いえ、ここまで邪魔立てされて仕方なく進めていくのも気に食わないので…」

モニターのスイッチを切り

「ここからは私の流儀で進めさせていただきます」

バサリと羽織っていたコートを脱ぎ内ポケットから取り出したのは缶モードのカンドロイド

赤に紫、橙などさまざまな缶ジュースのプルタブをプシュッっと開け並べる

「何?あの缶ジュース」  「見たことのないメーカーね」

「ナゾのミステリアス教師、授業中にジュースを飲む…ダメだ、記事として弱いわ」

「これで10本以上開けたわ、早飲みでもするのかしら?」

クラスの女子が再び騒ぎ出した頃、真木は教卓狭しと缶を並べ終えていた

「あの、真木先生…一体何を?」

担任の教師も何度目かわからないくらい首をかしげ真木に問いかける

「先ほども説明させていただきましたが航空機という物は用途や条件によって様々なものがあります。このように…」

パン!と手を叩くとプルタブの開いていた缶たちが一斉に形を変えあたり一面に飛び立つ

己の使命のために家族を棄て、職場を棄て、地位を棄て、果てには人間さえも棄てたグリード、真木

そんな彼がここでこんな事に己の研究成果であるカンドロイドを使うのは散々虚仮にされ、男の意地に火がついたのか

はたまた、彼の研究者根性が、授業のよりよい進め方を計算したのかは不明だが、ここでの彼は相変わらず無表情であるが、まるでどこにも見せないような顔をしていた

「タカータカー」バササッ  「クジャクー」プルプルプル

「プテラッ プテラッ」ギューン

見たこともない技術を目の当たりにしクラスの少女たちは目を丸くして見ている

「輸送や偵察に適した機体」そういってタカカンドロイドを自身の人差し指に止める

「さらには一定速度を落とすことで安定した静止活動を行う機体」そういって今度はクジャクカンドロイドを手許に寄せる

「そして新技術を搭載することで革新的な伝達速度を獲得した機体」最後にプテラカンドロイドを頭上でくるくる飛び回らせている

「この機体のように条件に適した構造というものが効率のよい安定した運用へと繋がるので…」

言葉半分で絶句する真木、その理由は…

「何この鳥!チョーカワイー//」  「こっちのクジャクもカワイー!」

「一家に一台欲しーい」  「うわさの新任教師、意外とかわいい物好き…う~ん、これも弱いなぁ…」

皆突如飛び出したカンドロイドに夢中になってしまっているのだ

「ねぇ、真木先生!これどこに売ってるの?」  「もしかして作ったの?」

まるで休み時間のように騒がしくなってしまった教室の空気を元に戻すべく真木は現場の静止に移る

「お静かに、ドロイドは私が作ったものですが管理を他人に委ねるものではありません」

「そんなぁ~、あたしに一匹下さい!」  「あいた!ほっぺた突っつかれたーでもカワイー」

「っていうか私に」  「いや私に」  「私に」  「私に」 「真木先生は…メカフェチで独占欲強し…、何か方向性がずれて来た…」

生徒達が皆寄ってきて真木はもみくちゃにされ、人形のキヨちゃんが落っこちてしまい真木は例によって悲鳴を上げてしまった

その姿に生徒達はドン引きであったそうな…

真木清人の人生初の授業はとにかくこうして静かに、いや騒がしく幕を引いていった、受けはそれなりに良かったようである

その頃・・・

先ほど真木に一方的に突っかかってきたキーラは取り巻きと別れ新開室の研究室内の自分のデスクに座る

さっきの真木とのやり取りからイライラしっぱなしであった

「クソが!男の癖に生意気な口利きやがって!今までのやつみたいに扱き下ろして使い捨ての下僕にしてやろうかと思ったが、それだけじゃ腹の虫が治まらねぇ」

おもむろに机の上のノートパソコンを起動させ機体データの画面を開く

そこには明日の模擬戦で教師側が使うISの一つであるラファール、そして簪から預かった打鉄弐式の二機が移っていた

「そうだ・・・、これをこうすれば、クク、テメェの人生ゲームオーバー・・・ってな」

暗い室内でパソコンの光に照らされキーラの顔が邪悪に歪む

>>1です、今回はここまで、書いてて気づきました。

やっぱり自分はドクターが好きなんだなぁって(笑)

伊達さんとのコンビで一番光っているのは後藤ちゃんではなくやはりドクターだと思うんですよね

伊達さんと後藤ちゃんも面白いんですが、このコンビは伊達さんが絶対的優位に立っているんですよね

師匠の伊達さんと弟子の後藤ちゃんだとどうしても伊達≧後藤になるんです

でも伊達さんとドクターだとそれが伊達≒ドクターになるんです

そこがいいと思うんですよね

では次回も宜しくお願いします

フン、>>1が戻って来たのもオレの実力だ

伊達「アンタもすっかり変わっちまって…」

真木「おかげさまで」

このやり取りは悲しかったな

遅くなりました、早速始めていきます

>>190さん >>1の呻き声

>>191さん あれが最後の会話でしたからね、確かに悲しかったです

ちょっと間が空いたので、三つの出来事風におさらい入れときます

仮面ライダーバース?これまでの、三つの出来事

一つ、オーズの世界で相討ちになった伊達と真木がISの世界へ

二つ、二人はそれぞれIS学園で教師となる

そして三つ、真木に異様な執念を抱く女、キーラが行動を起こし始める

三学期最初の授業日も時間が進んでいき、先ほどの授業が終わりもう昼休みである

「ふ~、腹減ったなぁ、食堂行くか~」

学園で唯一の男子生徒、織斑一夏は教科書の類を仕舞い込み昼食の準備を進める

「一夏~、学食食べに行きましょ♪」

隣のクラスの鈴が一夏を昼食に誘いに来た、が、それにセシリア達が口を挟む

「お待ちくださいな!一夏さん、今日は私とお食事に参りましょう」

「待て、人の嫁を勝手に連れて行くなど許さんぞ」

「一夏は貴様のものではない!」

「そうだよラウラ、ここでそれは理由にならないよ!」

「ハァ…」

いつものやり取りを繰り広げる少女達に思わず一夏はため息を漏らす

「箒さん達も相変わらずだね」

「三学期になってもまだやってる…、もういい加減飽きたよ」

「だねー、わたし達も学食行こっかー」

同じクラスの谷本癒子、夜竹さゆか、布仏本音の三名は教室から出ようとする

「今日は何を食べよ、キャッ!」ドンッ

「邪魔するよ~っと、うぉっ!」ドンッ

先頭にいたさゆかが教室から足を踏み出すと突如現れた伊達の厚い胸板に顔がぶつかり弾き飛ばされる

「おっ!大丈夫か?」がしっ

弾みで尻もちをつきそうになった彼女の腕を伊達の大きな掌がつかむ

「えっ、伊達先生!?何で!?あっ、私の手///」

「ケガとかないな?ワリー、余所見してたわ」

「伊達先生、また来てくれたんですか!?」

「あぁ、それでなんだけど、織斑ちゃん、いる?」

「織斑ちゃんって・・・、織斑君ならあそこに」

「そうか、あんがと!」

軽く礼を言って伊達は教室の中程へと進んでいく

「だてせんせ~、何しに来たのかな?」

「さぁ~?」

そして伊達は徐に一夏のほうに向かい・・・

「お~い!」

「伊達先生!どうしたんすか?お昼だってのに」

「織斑ちゃん、メシまだだったら一緒にどうかなって思ってさ」

「男一人で窮屈してねぇかと思ってな」

「男同士話してぇ事とかあるし」

「それに一昨日のお礼もあるし、篠ノ之ちゃんも一緒に、な!」

「行きますッ!なぁッ、行こうぜ箒!」ワクワク

IS学園に来て以来同性と滅多に食事をする機会の無くなった一夏は目の色を変えて食いつく

そんな珍しい男同士のやりとりを一部の女子は相変わらず溜息とともに目を輝かせていた

「あ、あぁ、たまにはこういうのも悪くないな」ニヤリ

「OK!そんじゃ行くか!」

ほくそ笑みながらセシリア達を見る箒、女だらけで一夏を囲むより多少部外者が居ようと女は自分一人だけ、いつもより数段都合がいい展開だ

だがそれに鈴が口を挟む

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!先生だからって勝手に連れて行くなんて公私混同よ!」

「なっ!鈴、貴様、横やりを入れるな!これは一夏や私の問題だ!」

「いや、これは夫婦の問題だ!見ず知らずの男に預けて一夏にどんな影響を及ぼすかわからん」

「ラウラ!お前何言ってんだよ、せっかく先生が誘ってくれたのに」

「一夏さんっ!私はこうして一夏さんとお食事をご一緒できるのをずっと楽しみにしてましたのよ!」

「そうだよ一夏!また一夏はそうやってみんなの期待を裏切って一部の人だけ喜ばせるんだから!もういい加減にしてよ!」

束になってかかってくる四人に思わずたじろぐ一夏と箒

「と、いうわけで伊達先生は今回は諦めて下さいッ!」

四人が一夏を庇うように立ちふさがる。それを目にした伊達は…

「ふ、ふふっ、あっはっはっはっは!!」

突如腹を抱え笑いだした

「あっはっはっは…ハァハァ、あ~おもしれぇ」

変貌した伊達に目を丸くし、問いかける一夏

「あの~、どうかしたんですか?」

「いやぁ~、あれだな!若いっていいなぁって思ってさ、ギラギラしてパワーがあって!」

「…?どういう意味ですか?」

「後ろの娘猫(こねこ)ちゃん達に聞いてみな」

そういって顎で示した一夏のそばにいた箒達五人は顔を真っ赤にして俯いている

「心配したのも杞憂だったな、俺から誘うのは野暮ってこった」

「えっ、それじゃぁ…」

「あぁ、また今度にするか、ほんじゃ!」

そのまま踵を返し立ち去ろうとする伊達

「そんなぁ、じゃ、じゃあこれならどうです?晩飯いっしょに食べにいきましょうよ!」

「おい一夏!」 「ちょっと一夏!」

少女たちが反論するも一夏は意にも介さない

「わかった、わかったよ!じゃぁこれね」

そういって伊達が渡したのは一枚のメモ

「それに部屋番とかいろいろ書いてるから、時間見計らって来てくれよ。俺が居ればの話だけどな」

「わ、わかりました!ありがとうございますッ」ペコリ

「おい、男がそんなにペコペコ頭下げんなよ、カッコワリ―ぞ」

「はぁ」

「俺は何も君に頭下げてもらいたくて声掛けたんじゃねぇ、我一つ押し通すのに下手にまわってちゃ疲れちまうだけだぜ」

「はい…」

「もっと胸を張れ!君はその方が似合ってる。な!」ドン

力強く握った拳で一夏の胸を叩く伊達

「ま、今日が無理だったらまたいつでも言ってくれよ」

今度こそ教室から立ち去る伊達、足音もメダルタンクの揺れる音も聞こえなくなくなった教室

「「「…………///」」」ボー

「伊達先生…」

「威風堂々としてらして素敵だわ//」

「なんか頼れる兄貴分って感じよね」

この学園の数少ない男、伊達明に相変わらずクラスの女子は目をキラキラさせている

「伊達先生×織斑君!燃えてきたわ!」

一部例外もあるが…

「………」

伊達が自分に“男”として投げかけてきた言葉は一夏にしっかりと届いていた

「一夏!」

「わぁっ!なんだよシャル」

「なんだじゃないよ!どうして一夏はそうやっていつもいつも…」ブツブツ

シャルロットが怒りながら何かボソボソ言っているが一夏にはよく聞こえない

「と・に・か・く!早く行きますわよ!」

「そうよ!お昼食べ損ねたらアンタのせいだからね」

「うむ、時間は貴重だな」

(これがほんとの“膳は急げ”ってやつだな)

「い~ち~か~」ゴゴゴ

「な、何だよ箒、そんな険しい顔して…」

「せっかくのチャンスをふいにしたのに、またお前は下らない事を考えているんだな」ゴゴゴ

背後からオーラを立ち昇らせる箒、どこから取り出したのか手には竹刀が握られていた

「ちょ、ちょっと待て箒、一つ聞いておきたいことがあるんだ」キリッ

「な、何だあらたまって///」ドキッ

「箒…」ジー

「一夏…」ドキドキ

急に温度差が激しくなった教室の空気に周囲の生徒も静かに見守っている

「……この教室に猫っているのか」

「………は?」

「いやさ、さっき伊達先生が言ってたじゃん、子猫ちゃんに聞けって」

「でも猫って喋れない筈だよな…、どういう意味だったんだ?」

「……………………」プルプル

「どうした箒?トイレか?」

「………貴様は……」ユラ~

「何だよ、急に竹刀を振りかぶって…」

「貴様という男は!」ブンッ

何かが俺の頭にぶつかった音と凄まじい衝撃を最後に俺は気を失ってしまった

俺が気を失っている間にどうやら皆は勝手に食堂に食べに行ってしまったようだ

クソッ、こんなことなら伊達先生とメシ食いに行けば良かったぜ

俺が目を覚ました頃には次の授業が始まっていた、そう、俺は昼飯を食べ損ねてしまったのだった

けどまさか、俺がいない食堂であんなことが起きていたなんて…

~遡ること数分前、食堂・職員用席にて~

まだ授業は終わっておらずこの時間に仕事が無かった真木は早めに食堂に来ることになった

「おぉ、ドクター先に来てたのか」

「私もちょうど今着いたところです」

「そっか。いや、例の唯一の男子生徒誘おうと思ったんだけど、ドクター誘った手前それじゃカッコつかないと思ってさ」

「そうですか、君が行けばまた何か厄介事でも起こし兼ねないと思いますがね」

「言ってくれるねドクターも、そうだこれ見てくれよ」バサッ

伊達がテーブルの上に広げたのは可愛らしいマークのついた便箋やイラストの入ったハガキ等

顔を近づけると甘い香りが漂ってくるようなまさに華の女子高生という表現がピッタリのアイテムでいっぱいになっていたポケットから取り出されたのだ

「も~廊下歩いてるだけで貰うわ保健室戻ればおばあちゃん先生が預かってるわで大変なんだって~」

心の底から嬉しそうに話す伊達、人の好意に素直に触れるのはやはり気持ちいいものだ

内ポケットから煙草を取り出し火を灯し喫煙をたしなむ

「どーよ!この量、これはあれだな!俺の人徳の成せる技だな」

肺に煙を入れ会話にも熱が入り饒舌になる伊達

「で、ドクターは?あ、無い?まーそんなこともあるって」ニヤニヤ

真木に喋る暇を与えずガンガン喋っていく…ところが

「……伊達君」チョイチョイ

真木が指差した先には段ボール箱が椅子のそばに置いていた

「何だよその箱………ッ!?」ギョッ

段ボールの中には自分が受け取った何倍もありそうな手紙や便箋が入っていた

「人徳ですか…、両手いっぱいくらいの絵手紙数通で人徳ですか。それはそれは大したものですね」

実際に教壇に立つという違いもあるのだろうが、自分とあまりにも量に差がありすぎる

「こんな意味のない紙きれに一喜一憂して、本来の私たちの使命を忘れているのでは無いですか?」

「忘れてなんかいねぇよ、それに何だよ!意味がねぇって」

「言った通りの意味ですよ、いずれこの世界から消える我々には至極不必要な代物でしょう」

「不必要なんかじゃねぇ、きっと分るさ。分らせてやる、俺が!」

力強く言い放つとそのまま立ち上がりその場を出て行こうとする

「だったらこうしちゃいられねぇ、生徒呼んできてやろっと」

「騒がしいのは得意では無いのですが」

「そう言うなって!やっぱ例の子誘ってみるわ。ドクターもその手紙達、ちゃんとよく見てみたら?」

言うや否や加えていた煙草を携帯灰皿に仕舞い込み足早に去っていく

それと同時に昼休みを告げるチャイムがスピーカーから鳴り響く

「不必要ではない…ですか…」

~ず~っと続くからいいんじゃないの?~

~自分が死んだ後も何か残る~

ふと伊達の言葉を思い出す

~残れば醜い残骸です。美しいうちに終わらせなければ~

思い出す伊達とのやりとり

あの時、私は彼の戦力(ちから)を確かに欲していた

それは勢力の統一のために私の作ったバースを手中に収めるという理由

~そうでなければ本当に協力してほしかった~

コアメダルの力も無くしてしまった私に残ったのは僅かばかりの発明品、そして幼いころから人格のかわりに要求され続けてきた“優秀な才覚”

使命を果たせなくなった私が残すもの…

そうして真木はおもむろに段ボールの中から一通の便箋をとりだす

中を開けてみるそこにあるのはとゴテゴテした色遣いのペンで書かれたような文面

次に出したレターセットにはご丁寧にキヨちゃんの絵が描かれていた

こうして一通一通に軽くだが目を通していく

確かに財団から送られていた催促状や謝礼文のように堅苦しさや誠実さとはかけ離れたものではあったが

眼前に広がる手紙達には煌めく生きた想いが感じ取れる

「…等と、社交辞令にもならない奇麗事を言ってみても始まりませんが」

~俺達まだ生きてるってことだよな、儲けもんだ~

「終わりそこなったのが“儲けもの”ですか、全く君らしい」

一通り目を通し終わると手紙達を箱の中に仕舞い込む

ふと周りを見渡してみると授業を終えた女生徒がちらほらと入ってくる

相変わらず周りがザワザワと騒がしい

おまけに何人か真木の方へ寄ってきた

最後に授業をした教室で見かけた女生徒だ

「真木先生~、ご飯まだなんですか?」

「私たちと一緒に食べませんか?」

「ちょうど授業で聞きたかったところもあるんですよ!」

改めて思うがこういった空気は初めてだ、騒がしいのも苦手だし観察されるのも苦手である

「申し訳ありませんが私は伊達君と待ち合わせておりますので、御遠慮頂きたいのですが、…それに」

真木が目線を移した先にはあの女、相変わらず偉そうに取り巻きを引き連れたキーラが忌々しそうな目で真木を睨みつけていた

「コソコソしないで君も言いたいことがあるならばハッキリ言ったらどうです」

パニクった時しか声を荒げない真木が珍しく声を大きくして喋りかけている

「チッ!」ガタッ

キーラは不機嫌そうに舌打ちを打つと椅子から立ち上がり真木の方に近づいてくる

真木は周りにいた女生徒達に離れているよう目で指示を送る、女生徒もそれを察して足早に二つ程先のテーブルに移る

周囲に険悪な空気が広がる

ちょっと眠気がピークなので、いったんここで切ります、続きはまた明日投稿します

こんにちわ、>>1です

最近忙しすぎて更新もままなりません

とりあえず少しですが投下しておきます

「取材!? 取材って…俺何か悪いことしたかな?」

「違いますよ! 新学期に新しく入ってきた先生、これは特ダネなんですから!ってな訳で、さっそくインタビューはじめま~す」

「元気な娘だなぁ、いいよ何でも聞いてよ。まぁ全部答えられるかはわかんないけどね」

「それじゃ基本的なプロフィールをお願いします」

食堂にいたその他の生徒達もインタビューに耳を傾ける

「え~っと、伊達明、三十路です…好きな食べ物はおでん…あ、ちなみにカツオ出汁派です」

「おでん…ね!良い情報押さえたわ!」 「どこのメーカーの一番出汁が美味しかったかしら」

周囲がザワザワと騒ぎ始める

「ここの女の子ってのはどぉ~も噂話が大好きみたいだねぇ」

「そりゃそうですよ、男の人は数少ないですから」

(まるで離島の小学校の先生みたいなセリフだな…、ここも島の上だからあながち間違いじゃないけど)

「私は昆布出汁派なんですけどね、それじゃ配属前のお仕事なんか教えてもらえますか」

「んぁ、あぁ、え~っと、挨拶でも言ったけど外国で医療支援してたんだ」

「その後は…、化け物退治を少々…」

「その時のエピソードを一つ、お願いします」

「エピソードって…、そうだなぁ、ちょっと前にいった国…、内戦続いてる国なんだけど」

「………」ゴクリ

急に重い話になりインタビューしていた薫子の顔にも真剣さがにじみ出る

「その国のとある地区の廃寺に設営キャンプ敷いてたんだけど、そこにどーもひねくれたガキがいてね」

「いや、こっちは普通に接してたんだぜ、なのに『医者は嫌い!』とか言っててさ、支援物資も食料も受け取らないんだ」

「まぁ詳しく話せばややこしくなるんだけど、紛争で両親をなくして妹と二人暮らしの男の子がいたわけよ、君らと変わらねぇくらいの歳だったと思うんだけど」

しみじみと語りだす伊達、薫子はレコーダーのマイクを向け録音しながらメモにさらさらとペンを走らせていた

「なるほど、“土地に人あり”ですね」

「へへ、良い事言うね」

「あ、続きをどうぞ」

「まぁそれでも戦火ってやつは容赦なく降り注いでくる、執拗に、そして気まぐれにな」

「けっこーきつかったぜ、銃持って戦ったり下水道逃げ回ったりな」

「大変だったんですね、それでその子供たちはどうなったんですか?」

「無事だったよ、一悶着あったけど」

「それでさ、撤退命令が出てそのまま帰国になったんだ、忙しいだろ?」

「はぁ…、そういうお話なんですか?」

「違う違う、でな、その子供がさ、別れ際に初めてありがとうって言ってくれたんだ」

「それから『俺もアキラみたいな医者になりたい』って言ってくれてさ、あんときは嬉しかったねぇ」

メモにペンを走らせていた薫子はふっと顔を上げ

「へぇ、“人に歴史あり”ですね」

「そういうこった」

「なるほどなるほど、良い記事が書けそうです。じゃぁ最後に!」

ビシッと人差し指を立てる薫子

「教師として、何か抱負を一言、スローガンでも構いませんよ」

「抱負ね…、う~ん、ここは軍の養成学校なんだっけ?」

「詳しく説明すると面倒なんですが、大まかにいえばそんなもんです」

「そうか…、俺も面倒な話は得意じゃないんだが、一言だけいうなら」

「何のための兵器かって、考えてみてほしいってことかな」

「と、いいますと…」

「おれは世界中を回っていろんなものを見てきた」

「今まで俺は自分一人で生きていけると勝手に思い込んでた」

「ま、あながち間違いじゃないけどさ、それでも…」

「それでも…?」

「差し伸べてくれる手の暖かさってのは、ケッコ―忘れられないものだよ」

「だからさ、この学校の事はよく分からないけど、あんまり閉塞的にならずにさ」

「武器を握るだけじゃ無い、誰かに差し伸べる為の手を忘れないでほしいんだ」

「ヘヘッ、何か照れ臭いな」

「いえ、なかなか含蓄があってよかったですよ」

「でも先生、あまり私たちを見くびらないで下さいね」

「へ?どゆこと?」

「先生が思っているほどこの学園は切羽詰まったところじゃないって事です」

「ね!織斑君!」

「ああ、俺たちはそんな一人で閉じこもっちまうなんてこと無いぜ」

「そっか、それは恐れ入った!」

かるく頭を掻く伊達

「まぁ、そんならいいけど」ゴソゴソ

伊達は躊躇なくタバコを内ポケットから取り出し咥える

「そういやドクターんとこはいったの?」シュボッ

「いえ、一筋縄では行きそうにないのでもう少し間をおいてから行こうと思います」

あっけらかんと答える薫子

「ハハ、そりゃいい。どんなところが一筋縄じゃないんだ?」トントン

伊達はタバコの灰を携帯灰皿に落とし加えなおしながら問いかける

「う~ん?人間離れした雰囲気でしょうかね」

「ハハハハ!本人知ったらショック受けるだろうね、“無表情”で!」

「「アハハハハハハハハハ」」

堰を切ったように笑いあう二人、案外気が合うようだ

「けどドクターが人間離れしてる、ねぇ…」グシグシ

携帯灰皿にタバコを押しこみ火を消す伊達

「俺に言わせりゃあんな人間臭い人もそうそういねぇと思うけどな」

「長いお付き合いなんですか?」

横から聞いていたシャルロットが口をはさむ

「あ~、どうなんだろうなぁ…、所謂あれだな、一瞬より短いけど永遠より長いってやつかな。そんなもんだ」

「よくわからないです」

「ハハハ、その内わかるさ」フゥ~

二本目のタバコの煙を吐き出し俯き気に笑う伊達

(何かただの知り合いって雰囲気じゃないな…)

推察する一夏をよそに伊達はタバコの箱を置き茶を啜っていた

「ま、この意味が分かれば立派な大人ってことだ、俺みたいな…な!?」スカッ

伊達が机の上のタバコを取ろうとするが眼前で突如箱が消えた

「あれ?俺のタバコちゃんが…」キョロキョロ

「探しものはこれか?」

慌てる伊達に話しかけるのは何と千冬であった

「まったく…、生徒の前で堂々と喫煙とは…」グシャリ

持っていたタバコの箱を残りごと握りつぶした千冬

「あれ~、もしかして駄目だったのかな~…なんて」

目を泳がせて場を濁す伊達、その眼は“の”の字になっていた

「駄目に決まっているだろう!馬鹿者が!」



          ガ――――ン



「ば、、ば、ば、ばば、ば、か、も、の」ガクーン

膝をつき絶句する伊達、暗いオーラを纏っているのが目に見えて分かる

「と、年下の女に馬鹿って言われた…」

もしかしたらテンションの下がりようは真木以上かもしれない

「伊達先生…」

「その辺はナイーブなんだな、伊達先生」

「激写!伊達先生の新たな一面!」

「織斑先生をつかまえて年下の女…、深いわ!伊達先生」

各々の反応を示すなか、入口からタカカンドロイドが背中にバッタカンドロイドを乗せてパタパタと羽ばたきながら伊達のほうへ向かってきた

「一夏、あれ…」

「ああ、あれが言ってた例のロボットだな…」

「やっぱりカワイー//」

そして羽を上下させたまま空中で制止させる

『伊達君、今お時間は大丈夫ですか?』パタパタ

「うおっ!しゃべった!」

『何かありましたか?』

「何でもないよ、何か用?もしかしてデート?」

その瞬間食堂中からガタタッとイスを鳴らす音が聞こえたのは気のせいだろうか

『馬鹿な事を言ってる暇はありません』

「う、ドクターまで俺を馬鹿にして…」

『お見せしたいものがありますので至急準備室まで来ていただけますか』

その言葉を聞いた伊達の顔つきが急に変わったのはきっと気のせいではないはずだ

「わかった、すぐ行くわ」ガタッ

立ち上がり白衣を整えた伊達は薫子達の方を向き

「悪ィな、今日はこれまでってことで!」

「はい!ありがとうございました」

「デュノアちゃんも織斑ちゃんもせっかくのメシだったのに忙しくて悪いな」

「いえ、お構いなく(むしろこれからの方が…)」ニコニコ

「またいつでも誘いますよ」フンス

「そうか、じゃあまたな」

手を揚げ伊達と一夏達は別れ、伊達は足早に去って行った

「行っちまったな…」

「お昼のときも思ったけど、なんか台風みたいな人だね」

「それは言えてるかもな、ハハハ」

「あ、写真撮り損ねちゃった」ガックシ

こうして食堂での一幕は幕を閉じて行った

そして伊達は真木に呼ばれ準備室へ…

「御呼び立てして申し訳ありませんでした」

「いや、別に構わないよ、ここならタバコ吸え、あ、捨てられたんだった・・・」

「本来なら控えていただきたいのですが…、まあいいでしょう、御呼びしたのは他でもありません」
「これを君にお渡ししておきます」ドン

そういって真木が取り出したのは一つのアタッシュケース、部屋に残っていたのをそのまま使ったようだ

「これは?」

「バースシステムを元通り作成するのは現状不可能ですので、代わりの物を用意しておきました」

「代わりって・・・、そんな簡単にできるもんなの?」

「できたからここにあるんです、とはいえだいぶ勝手が変わっていますがね」

「そうかい」

「この世界について調べているうちに面白い物を発見しましてね、それを少し応用したものなのですが」

「あ~、小難しい話はいいわ、とにかくこれね。俺が持ってていいの?」

「ええ、しばらくの間はこれを使っていただきますので、今からでも試験装着を始めていきたいのです」

(なるほど、今日は中々寝れそうにねぇな…)

タバコの吸えない寂しい口元を突っぱねさせ独りごちる伊達

その手で受け取ったカバンの留め具を外しカバンを開ける

(“しばらく”とはいえ、こいつが俺の新しい相棒か…)

紙を丸めた詰め物の間に収まったベルトバックル

今まで使ってきたものと同じようだがどこか違う、言葉に出来ない何かを伊達は感じ取っていた

緑に眩くベルトの光がやさしく伊達を包みこむ

(やっぱりこの世界でも戦わなきゃ駄目なんだよな)
(のんびり教師生活って訳にもいかねぇか…)

久々に触ったベルト、伊達はまだ知らない

そのベルトの脇に刻まれた文字

"BIRTH IS"

           の七文字を…

番外編

「はぁ~、メシも食べたし、明日は模擬戦だからな!早いとこ寝るか!」

シャルロットと別れ寮室へ向かう一夏、薫子は知らない間に消えていた

どうせまた部活で頑張ってるんだろうな、等と考えながら歩を進める

曲がり角に差し掛かった時のことである

「あ、千冬姉」

「織斑先生、だ」バシン

「痛、す、すいません」さすりさすり
「けど何でこんなところにいるんだよ」

「いや、偶々だ」

「ふ~ん、あ、そうだ、あの後伊達先生凹んでたんだぜ」
「「年下の女性に馬鹿って言われた」なんて言ってさ」
「けど楽しかったなぁ~」

「そうか、実はあの時は昼の一件で山田先生を庇ってもらった礼を言いに行こうと思って行ったんだが」
「ああも堂々と喫煙をされるとさすがにああいうしかなかったからな」

「へ~、そうなんだ。千冬姉らしいね」
「けど山田先生さっき自分で行ってたよ」

「そうなのか!?…で、だ」

「何?」

「その、なんだ、やはり男が居れば違うか?いろいろと」

「う~ん、そうだなぁ、シャルが来た時よりも何かずっと開放的になれてる気がするよ」
「伊達先生、男らしいし話が面白いし…」

「そ、そうか…」

「うん、俺もあんな兄さんが欲しかったな」キッパリ

       ガ――――ン

「そうか、そうなのか…」

「うん、勉強とか教えてくれそうだし」

さっきから千冬は俯きっぱなしだ

一夏にはその理由が分からない

「じゃぁ、俺もう寝るよ、明日模擬戦だし」

「ああ」

「じゃ、おやすみ」

「ああ」

そのまま吸い込まれるように部屋へ入っていく一夏

一人残った千冬は…

「確かに私は親代わりだったが“兄”になってやることは到底無理な話だ…」

「そうだ、きっと物珍しいからあんなことを言ってるんだ、そうに違いない」

一人で勝手に決め込んで千冬は自室へ戻っていってしまった

こんな感じです

次回もお楽しみに!

>>1です、こんばんは

いきなりですがもう一時間くらいしたら投下していきます

お楽しみに

>>1です

すいませんFate/Zero見てたら時間を忘れていました

早速始めます

突如アリーナに現れた機体、それだけでも驚きなのにさらに観客席に居た生徒達はさらに驚いていた

その理由は…

「あれって伊達先生…だよね!?」 「どうやって中に入ったの?」

「ていうかあの機体何?」 「あれってまさかIS?」

ざわめく観客席をよそにBIRTH ISを纏った伊達は敵機に向かっていく

敵機はそれに気付かず簪の打鉄弐式を甚振っていた、弐式のダメージはCの大台に乗り機体の至る所に亀裂や破損が目立つ

乗っている簪はすでに気を失っておりされるがままになっている

シールドバリアは枯渇寸前になっておりアリーナに映っていたスペックデータはあらゆる数値がレッドゾーンに達していた

とどめを刺さんとばかりに大きな足を上げ踏みつけようと足を振り下ろす

誰しもの目に簪の絶体絶命の危機が映るはずだが彼女達が目の当たりにしたのは…



     …ラファールにドロップキックを放つ伊達の姿だった…

「ウオォォォ~~~~」

雄たけびを上げながら敵機を蹴り飛ばした後、簪の傍に駆け寄る

『先生!簪ちゃんは…簪ちゃんは大丈夫なんですか?』

傍を飛んでいたカンドロイドから楯無の声が通信で届いてくる

伊達は簪の顎に両手を添え、首に指を当てる

「大丈夫、軽い脳震盪だ!眠りのお姫様になっちまってるだけだ」

カンドロイドを挟んでの伊達からの返答に楯無はホッと胸をなでおろす

「むしろ問題はあっちか…」

『……………………』

そう呟く伊達の視線の先には体勢を立て直したラファールが伊達に照準を合わせブースターで急接近してきた

相変わらず相手は無言のままである

「時間がねぇ、早いとこ終わらせるぜ」ダンッ

向かってきたラファールを馬跳びの要領で飛び越え気絶した簪から距離を取らせる

90秒しか変身時間を持たないBIRTH ISに長期戦は不可能である

それを見越し伊達は短期間で決着をつけるべくバースバスターを撃ちながら相手と距離を詰める

「オラオラァッ!」ガギュンガギュン

光弾が直撃したラファールは体勢を崩し手にしていた短機関銃を取りこぼしてしまうという大きな失態を犯す

さらに懐に入り込まれた伊達に左足をスコーピオン・デスロックで抑え込み締め上げる

相手の機械の足はミシミシと音を立て軋む

「悪く思うなよ、正当防衛だ」

バキリという耳通りの悪い音とともにラファールの足が逆方向にねじ曲がり火花が弾け飛ぶ

IS以外の兵器の力技だけでISを破損させるという大挙にでる

「すごい…、ISを追い詰めてるわ」

「何かよくわからないけどスゲぇかっこいい!」

一夏達観客席からも感嘆の声が出る

相手の足を破壊した伊達はそのままもう片方の足をつかみ上げ

両方の足を両脇に抱え、大車輪の要領で振り回しブン投げる

「あと十五秒か…、こいつで終わりだ!」

簪から距離を取っているのを確認するとメダルタンクを置いた所へ戻りバレットポットにセルメダルを補充する

そしてバースバスターの銃頭部にポッドをセットしエネルギーを抽出させる

CELL BURST

壁際に凭れ構えた銃に先端部にエネルギーを集める

反動の強いバースバスターを限られた時間、状況で最大活用する為の策だ

そしてそれを見ていた観客席の生徒は誰しもが伊達の勝利を確信する

後は相手を事情聴取して事の真意を問いただした後緘口令が布かれこの一件は終わり

IS学園は取り調べのキツさに定評があるためきっとこんな事態は起こらないだろう

誰もがそんなことを考え安堵の息を漏らす

ハズだった

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』バシュン

安堵を疑惑に塗り替えたのは一発の発射音だった

「グアァッ」グサッ

ラファールの右腕から発射された銛は伊達の心臓目掛け一直線に飛んでいった

それを目で捉えた伊達はバスターのチャージを止め横に回避し狙いから逸らす

が、避けきれず左肩に刺さってしまいそのまま肩の装甲を突き破り銛の先端部は壁に深く刺さってしまった

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
(あああぁぁあ、腕が上がらねぇ・・・)
「グッ、ゆ、油断しちまった・・・早く抜かねぇと」ガシッ

黒のアームカバーで銛を引き抜こうとするが、ベルトが鳴り体が光に包まれる

最悪のタイミングで変身が解除され、伊達は元の白衣姿に戻る

それは攻撃力の減退だけでなく、守りの要も無くなってしまったという証拠である

そして今伊達は銛に体を固定され身動き一つ取れない、それが意味することとは…

「ヤバい!相手が体勢を構えた!」

「マズいでしょ、伊達先生生身でしょ!?」

いつの間にか一夏の下に合流していた鈴も慌てる

そう、ラファールは変身解除となってしまった伊達にインファイトを仕掛けるべく肩を突き出して飛びかかる体勢に入る

「やべ、敵さんお怒りだわ、クソッ抜けねぇ…」

バースバスターも銛が刺さった衝撃で落としてしまい身動きも取れない

冷たい汗が流れる、伊達明、絶体絶命のピンチ

とうとう敵機は伊達目掛けブースターを吹かせ加速する

万事休す、その時!

その時千冬は、連絡通路を走っていた

(あの力…、やはりあれはメダルの…)
(なぜ今になってあんなものがッ、とにかくこの目で確認せねば納得できん!)

伊達が姿を変え戦いを始めたのを見届けると急ぎ足で管制室を後にし観客席へと向かう

この角を曲がって場外観覧席を通れば観客席へのゲートに出る、あと少しだ

        パァン

前方の方から聞こえてきた音にハッと我に返る

「何だ今のは…?」

この先の曲がり角から聞こえてきたのは…銃声!?

「クッ、一体何がどうなってるんだッ」

落ち着いて頭を冷やすと話し声が聞こえる

その声のする方へ視線を向ける千冬

「布仏君…ここから離れていてください」

「あーあ、発狂した男性教師の可哀そうな被害者が一人増えちゃったな~」

そこにいたのはキーラ、真木、布仏の3名

(なぜあの女と真木が一緒にいる?そしてなぜ布仏が…)

「えっ…、でも…そんな」オドオド

「チッ、要領悪いガキだね! 先にテメェから消してやろうか」チャキ

「ヒッ」ビクッ

状況がうまく飲み込めずに立ちつくすしかない本音にキーラは銃口を向ける

「キーラ君、君が更識君の機体に仕掛けたのは、任意で伝達を阻害させるパッチソフトのようですね」

急に話を切り替えた真木にキーラは驚いて目を見開き真木の方へ向きなおす

「テメェ知ってやがったのか!?」

「いえ、最初に研究室に伺ったときに更識君の機体がモニターに映っているのを見ましてね、まぁ尤も、逆上した君にすぐに追い返されましたので確証には至りませんでしたが」
「誰かの言葉を借りるならばああいうのを“ヤバげな実験”というのでしょうか、生憎そういった判断はあまり得意では無いもので」

「へえ、なかなか鋭いわね、ただのインテリメガネかと思ったけど」
「そうよ、大体合ってるわ」

あくまで淡々と感情など一欠片も見せずキーラは言葉を繋いでいく

「更識のガキ使って問題起こして、それをアンタになすりつける」
「そしてあたしはここから出ていく、被害者の立場でね」

「なぜそのようなことを?」

「気にいらないからだよ、好き勝手やらせてくれない世間もこの学園のクソウゼェガキ連中も」
「あたしはやりたいことやりたいだけなのに、モラルとか規範とか、うちのジジイがよけいなことしてくれたからこんな堅苦しい所に居なきゃいけなくなったの」
「ここはあたしが居るには眩すぎるんだよ」

「ひどい!そんな理由でかんちゃんを…」

「そぉ!そんな理由でね、ゴメンネ~大人って自分勝手よね~」
「そういう訳で、さっさと死んでもらおうか」

語気を強めたキーラは改めて本音に向け引き金に手をかける

「布仏君、ご友人の心配も結構ですがご自身の心配もしていただかないと」

「え、だって…だって心配だもん!何も出来ないし何をしたらいいかも分からないけど」
「かんちゃんは私の大事な友達だもん、何か悪いことに利用されているなんて聞いたら放ってなんかいられないよ!」

目を涙で潤ませ必死に言葉を紡ぐ本音

「だそうですが、今回はその手を降ろしていただけませんか? キーラ君」

本音の意志を汲み取ったかのようにキーラに問いかける真木
対するキーラは…

「う~ん、そうねぇひとつ聞きたいんだけどさぁ、あんたこの状況理解してないでしょ?」パァン

何の躊躇いも見せずキーラは真木の太腿を撃ち抜く

「キャァッ!」

銃声に耳を塞ぐ本音

死角から傍観していた千冬もこれを見過ごせる筈もなく姿を見せる

「待てッ!」

「織斑せんせ~」ガシッ

見兼ねて現れた千冬、そして千冬に不安な顔でしがみつく本音

「お前の腰巾着が全て吐いてくれたぞ、これ以上取り返しのつかない事態になる前に下らん仕掛けを解け」

さすがに分が悪くなったのか数歩たじろぐキーラ、しかし開き直ったのかその顔を歪ませながら、千冬を睨む

「クソがクソがクソが!だったらテメェら全員死ねよ!!」チャキッ

腿を撃ち抜かれ蹲る真木を視界から外し、千冬と本音に向ける

今度は千冬を撃つつもりだ

怯えて足元の覚束ない本音は回避が難しくこのままでは二人とも危険だ

すると…

「……ヌゥッ!、グッ」ガシッ

「なっ、テメェ、何しやがるッ」

足を引きずり額から脂汗を流しながら真木が銃を握るキーラの右腕にしがみついてきたのである

「布仏君、織斑先生、今の、うちにここから離れてください、ッ」

無表情、無感情だった真木の別の一面に面食らってしまったのかやけにあっさり引き下がる千冬

「あ、ああ、布仏、今のうちだ、ここから離れるぞ」

「でも…」

「クソッ、このくたばり損ないがァ!」

   パンパン、パンパァン

右手に喰らい付いてくる真木にとうとうマジギレしたキーラは何発も、何発も真木の体に銃弾を撃ち込む

「な、なんて真似をッ」

思わず絶句した千冬、だが事態はさらに悪化する

「真木せんせぇッ」ダッ

撃たれた真木に本音が駆け寄ろうとするその時

「おぉっと、行かせられねぇなぁ」グイッ

本音の髪を掴みキーラは自分の方へ寄せる

「こいつはいい人質ができたってモンだ」
「これは下手に動けないよね、なぁ織斑先生?」

「くっ」

「せんせぇっ、真木せんせぇ!」

キーラは改めて本音の頬に銃口を押し付ける
そして真木は…

(やはり…、伊達君がやっている様に上手くはいきませんでしたか…)

俯せに倒れる真木、腹から零れ落ちる真っ赤な液体が真木の視界を同じく真っ赤に染める

(ああ…私の終末…、私が完成してしまう…)

やけに周りの声や心臓の音が激しく聞こえる、なるほどこれが死に際というものなのだろうか

(姉さん…)

一面真っ赤だった真木の視界は、そこで真暗になった

>>1です

今回はここまで

MOVIE大戦見てきました、メチャクチャ面白かったです

また見に行きたいです

それではまた次回

質問などあればジャンジャンください

どうも>>1です、こんな時間に更新します

ではどうぞ

オーバーオールの腰に巻きつけた上着の部分からカンモードのカンドロイドを取り出す

「もっとマシなのなかったのかよ…、悪ィがちっとばっか時間稼いでくれ」プシュ

「バッター」ピョイーン

「タコタコ」プルプルプル

隠し持っていたカンドロイドを起動させ敵機に向かわせる

バッタは足元でピョンピョン跳ねながらラファールを翻弄し、タコは注意をそらすため頭上で飛び回る

「おお…、意外と使ってみるもんだ」

即席の組み合わせにしては思いのほか効果を発揮したのか感心する伊達

「そんなこと言ってる場合じゃねぇな」
「ウッ…」ズプッ ググッ

肩に刺さった銛は返しが付いているため引き抜くのは難しいので、逆に押し込む

血と筋繊維の絡まった銛を抜き取り、忌々しく放り投げる

「骨に異常はねぇな、よかった」ワキワキ

手のひらを閉じたり開いたりしながら無事を確認する

着ていた白衣を脱ぎ穴の開いた左袖を破り怪我した部分に巻きつける

「ベルトどこいった?はやく変身しねぇと…、ハァ…ハァ」キョロキョロ

変身解除のショックで飛ばされたBIRTH ISのベルトを探す伊達

肝心のベルトはカンドロイドに弄ばれるラファールの足元に転がっていた

「よりによってあんなところにかよ…、しゃあねぇな!!」ザザー

敵機の足元に駆け込んだ伊達はスライディングで滑り込んでベルトを回収しようとする

だがそれを黙って見過ごすはずもない敵は拳を握り、伊達の脇腹に振り下ろす

ドサッ ゴロゴロ

「ぐあっ、うぇっゲホッ」ベチャ

宙を舞った体は乱雑に地面に叩きつけられた

肋骨に多大なダメージを与えられ血の塊を吐き出す伊達

ISに生身で立ち向かう、そう考えることすら馬鹿馬鹿しく思えるような惨状が目の前に繰り広げられていた

伊達を殴り飛ばしたラファールの操縦者は無機質なゴーグルで無表情な素顔を隠して立ち竦んでいる

そして今度こそ簪に止めを刺さんと歩を進める

だがその時

『CELL BURST』

ドォン…、ビリビリィ、シュゥー……

轟音と共に放たれた光弾は咄嗟に避けたラファールの肩をかすめシャッターの降りた入場口に直撃し風穴をブチ開けた

「ちっ、避けられちまった…、だがあそこから逃げられそうだな…」ハァ…ハァ…

呟く伊達の足元に機械の残骸が転がり込んできた

ラファールの攻撃で片足をもがれてしまったバッタカンドロイドだ

火花を吹いてノイズを散らすバッタから、途切れ途切れに音声が漏れてくる

『ザザ……伊達…生!大…夫かよ!』

観客席に置きっぱなしのプテラノドンは通信機として使えるため、それを通じて一夏が話しかけてきたのだ

「おぉ…、織斑ちゃん、調子どうよ…」

『どうじゃねぇよ!!早く逃げないと死んじまうぞ!』

「わあってるって、あの子をここから逃がしたら…上手くできればな」

『生身でISに勝てるわけ無いだろ!早く逃げろって言ってんだよ!』

「うっせぇバーカ…」

『ば、馬鹿って…、自分だって十分馬鹿じゃないか』

「よーく聞けな、お医者さんってのはな、目の前で消えそうになってる命にケツ向けるような真似はゼッテーしねぇ」
「都内の一頭地だろうが超巨大病院だろうが、銃弾飛び交う戦場だろうがな」

激痛に耐えながらも言葉を紡ぐ伊達、それは彼の医者としての確固たる信念だった

「こんなところまで来て、後悔や心の中の押し問答引きずりたくねぇって思ってたんだが…」
「大人だろうが医者だろうが…、ISってのが使えなきゃ人助け一つやっちゃぁ…ダメかい?」

『そ、そんな意味で言ったんじゃ…』

「分かってるよ、心配してくれてんだろ?その気持ちは分かる、けどな、ここであの子は見殺しにはできねぇ」

オーバーオールのポケットから取り出したセルメダルをバレットポットに装填しバースバスターを構える

ブルブルと震える手で、霞む視界で、伊達は次の一手に踏み出す

それに応じラファールも突進の体勢からブースターを吹き飛び出す

ラファールの拳を体を捩らせ必死に躱す

「いつまでも同じ手をくらうと思うなよ姉ちゃん!」バシュン バシュン

横に回避しながら弾丸を発射し、くらわせる伊達

「………!」チラ

「タコー」バシィン

伊達の目配せに合わせてタコカンドロイドが回転する足でBIRTH ISのベルトを弾いて伊達の方に飛ばす

「オーライ!」パシッ

見事キャッチした伊達の手の中で、ベルトは鈍く輝く

それに合わせ会場からオォッと歓声が聞こえる

「ナイスだぜタコちゃん」

そのままベルトを巻こうとする伊達だが、その表情は一気に絶望の色に染まる

メダルの挿入口がひしゃげてしまい通らなくなってしまっているのだ

「くっそ~、何かのはずみでやられてたのか…、チクショォ」
「どうする、どうすればいい?」

必死に頭を回転させるが案は浮かばず、気づけばラファールの拳の射程圏内に入っていたことすら頭に入っていなかった

『先生ッ!』 「危ない」

   「キャアッ」

 「伊達先生」   『どうにもならないの?』

生徒達からも悲壮な声が響いてくる

(やっぱ碌な目に合わねぇなぁ…、俺が出しゃばることじゃ無かったのかな?)
(俺は…正しかったのかな?)

抵抗することも避けることもせず、伊達は静かに目を閉じその場に立ちすくむ

(教えてくれよ…、俺は、これで良かったのかな?)
(なぁ…)







(後藤ちゃん…)

諦めたかの様に目を瞑る伊達は、その時気づくことができなかった

ラファールの拳が己の体に向かってくる最中、背後から鏡のようなオーラが己に向かって来ていることを

そしてそのまま伊達を飲み込んでしまったことを

「ここは…?」

目を覚ました伊達は周りをキョロキョロと見回す
自分以外何もない、360度全てが真っ白な空間

「ここって…、最初に鳴滝のおっさんに会った場所だよな」
「ってことは…、やっぱり俺は死んじまったのか?」
「でもちょっと雰囲気が違っているような…?」

一通り考えたあとその場に転がり込み…

「だー、さっぱり分からん!」

不貞腐れて寝転がってしまった

「あれ?この状況ってたしか…?」

何かを思い出したように

「そうだ、いつも見ていた夢だ!ってことは…」

《コツ…コツ…コツ…》

「やっぱり!足音だ」

その足音の主が向かってくる

「もう予習済みだぜ、足音の主さんよ」

《コツ…コツ…》

近づくにつれ姿が鮮明に伊達の目に映る
と共に伊達の表情が強ばってくる

「そ、そんな…、お前は」

《コツ…》

とうとう伊達の目の前に現れた足音の主

U字のバイザーがついたメットに黒のインナースーツと銀に緑のプロテクター、そして全身至るところに付けられたカプセル

そう、伊達の分身ともいえる姿

「お前は…、バース…ッ」

仮面ライダーバースが目の前に立ち誇っているのである

「そうか…、あの世への案内人がバースか、俺らしいや、ハハッ」

どこか冷めた笑いをこぼす伊達、目の前のバースは…

『伊達さん…、寝てる場合じゃないですよ 』

バースはベルトからメダルを抜き取り変身を解除する

「その声、まさか…」

訝しげる伊達の目の前の男

その姿は…

ややパーマのかかった肩まで伸ばした髪に野戦的なルックスに身を包んだ端正な顔立ちの男

後藤慎太郎がそこにいたのである

「伊達さん、お久しぶりです」

「後藤ちゃん、なんで…!?」

伊達の持っているBIRTH ISのベルトと後藤の持っている仮面ライダーバースのベルト

その二つが同時に煌めき出し、奇跡を目撃することとなる

今回はここまでです、ご意見ご感想お待ちしております、ではまた次回

こんばんわ>>1です

にじファンの方で大幅な規制があってこの作品もむこうでやっていけなくなりまして
どうするか悩んだのですが、やはりこっちで進めていくことにしました
それではどぞ

悲しみの素顔を冷たいマスクに隠して戦う戦士、仮面ライダー

この世界で知られているヒーローの名である

己の幸せを捨ててでも誰かのために戦う

その使命は世界の次元を越えて人々の間に浸透していたのである

普段一夏達の生活する世界にも仮面ライダーは存在する

       仮面ライダーA(アクセル)

街と家族を守るため、熱血刑事 照井竜 が変身する紅き仮面ライダーだ

だがそれはフィクションの世界でのこと、本当に実在しているわけではない

そしてこの世界でも一人の仮面ライダーが産声をあげた

傷ついた少女を守るため男は戦い、勝ち抜いたのであった

一夏は事の成り行きを見守っていた
主犯であるキーラは黒焦げのまま何やら喚きながら連行されていった
取り巻きの二人も「自分は巻き込まれただけ」と関与を否定していた
真実はどうかはわからないが二度とISに関わることはできなくなるそうだ

そして時刻は夜! 夕食時である

「なんだ…?あれ」

珍しく一人で食堂に向かっていた一夏の目の前には人だかりが出来ていた

その人だかりの先には…

「もうっ、絶対安静って言われたじゃないですかぁっ」

「いいっていいって、怪我した本人が言うんだから問題ナッシング!」パクパクムシャムシャ

テーブルに並べられた五~十人前はあろうかという食事を食べている伊達と

それを止めている真耶である

伊達は上半身裸に包帯を巻き、その上から白衣を着込んでいる

周りの生徒たちはそれを見てクスクスと笑っている

「あ、お姉さ~ん。おでん定食もう一人前追加!」

「あいよ~」

ちなみにこの学園の食堂は生徒教師問わずセルフサービスである

注文を聞きに来ることも席まで持ってくることも本来ありえない

だが伊達は食堂のおばちゃん達をあえてお姉さんと呼ぶことで機嫌をよくしているのだ

こういうところはさすが伊達さん、というところだろうか

そうこうしている内に人だかりを割って真木が現れ、伊達の向いに座る

「失礼します、伊達君」

緊迫した空気が走る中…





「カレーライス、三人前下さい」

…カレーライスを注文したのだった

「ドクター撃たれたんだって?大丈夫なのかよ」ムシャムシャ

「君に心配してもらうようなことではありません」パクパク

人だかりも幾分か少なくなり、伊達と真木は会話しながら料理を口に運んでいた

「まぁ目の前にいるってことは大丈夫なんだろうけど」



ちなみに真耶は伊達の隣で椅子にすわり落ち込んでいた

「グスン、もういいです。聞いてくれなくても」

「君には色々と聞かなければいけないことがありますね、ベルトのことなど」

テーブルに並べられた料理をすっかり平らげた二人は食後のコーヒーを啜っていた

「ギクッ、まぁ言えないことはないけど、ゼッテー信じねぇだろぅなぁ」
「実はあの時さ…」



バタン、と音を立て生徒会長楯無が食堂に入ってきた

「一夏君!真木先生いる?あと伊達先生も!」

「どうしたんですか楯無さん、けっそう変えて…」
「二人だったら、奥の方に居ますよ」

「そ、ありがと」

「おぉっ、生徒会長じゃん。なんか用?」

真木と話をしていた伊達が楯無に気づく

「あのね先生、落ち着いて聞いてくださいね」
「今回の事件で新開室への処遇が決まったんです」

この一言に真耶もピクンと起き上がる

「副所長キーラ・ボゥイスキー以下2名逮捕につき、新設工学技術開発室は無期限の活動停止」
「一週間以内に新規施設を開局させること、それが出来なければ」
「新開室開所から今日に至るまでの研究データ、資材の回収。もちろん今日のあの“仮面ライダー”ってのもね」
「こんな無理難題押し付けてきて、学園の上層部も相当焦ってるみたいだわ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」(゜д゜)ポカーン

まるで人事の様な顔の伊達と真木

「つまりどうしろってこと?」

「早い話が研究所を建て直せってこと!」
「人数的な面でね」

半ば呆れるように楯無は告げる

「ふらりとやってきていきなり所長やってるんですから真木先生、お知り合いの方とかいるんでしょ」プン

真耶の少し拗ねた口調の問いかけを、伊達は笑って受け流す

「ハハハハ、ダメダメ、ドクター社交性ゼロだもん」
「ドクターもちょっとは言ってやれよ」

「ステーキ、もう一人前下さい」モグモグ

「ってオイ!」

口いっぱいに食べ物を放り込んでいた真木に伊達は思わずツッコむ

「ったく、ちゃんと耳聞こえてんのか?ていうかまだ体大丈夫じゃないんじゃ・・・」

確かに真木の耳に伊達の声は聞き通りにくかった

だがそれは体の不調ではなくむしろ逆の理由であることなど、伊達には知る由もなかった

「と~に~か~く!なんとかしないと全部持ってかれちゃいますよ」
「形だけでも立て直さないと」

一段落ついて机には伊達と真木、真耶と楯無が向かい合って座っていた

真耶は必死になって説得しているが伊達は今度はなぜかうつむいてブツブツ言っている

「真木先生が知り合い…いるのかどうか分からないけど、それを引っ張ってくるって言っても」
「この学園に入る手続きとかで絶対手間がかかるから、効果を出せるとは考えにくいわね」

「私は一人で構いません」

「ちょっと黙っててね、真木先生は」
「真木先生と伊達先生、これで二人だから元の四人まで後二人ね」
「山田先生、入ってあげたら?」

「えぇ、私ですか!たしかに男の人と仕事するのはそれはそれで魅力的ですが...キャー」(*´∀`*)

一人で妄想している真耶だが、振り下ろされた出席簿により現実に引き戻されることになった

バシンッ

「勝手なことをいうな、貴方は一組の副担任だろう」
「更式も無責任な事を言うな」

「い、いたいです…」

「千冬ね(バシンッ)お、織斑先生、もういいんですか?事後処理とか」

「あらかたカタはついた」
「それより真木、伊達両名に会いたいと言って来た方がいてな」
「本来ならちゃんとした部屋にお迎えするのだが、向こうの厚意でこの食堂でいいということになった」

「・・・・・・・・」

千冬の口ぶりから相手はそれなりに位の高い人間だと推測できる
だが、どうにも好意的な感情は感じ取れず、どこか厄介ごとのように感じているような様子が伺える

「なんだか話がどんどん大きくなっていっているな」

「箒、来てたのか」

「ISに匹敵するような兵器だからな、周りも放っておけないのだろうな」

「束さんが見たらなんて言うかな」
「『仮面ライダー!友達になるなる!』なんて言ったりして」

「姉さんの話はいい、きっとロクでもないことしかしないだろうからな」

「相変わらずだな、箒も」

「フン」

そして、急展開を告げるように電子音が鳴った

  PiPiPi

「はい。…そうですか…、わかりました、通して下さい」
「もう来られるそうだ」

そしてしばらく経って
厳つい顔のスーツを着た男が用心棒と思しき黒服数名を引き連れ食堂を訪れてきた

「山田先生、あの人って…」

「確か大銀工廠の…」

現れた大銀と呼ばれる男、本名を大銀 賀丈
戦前から続く兵器会社の社長である

「オラァ、女子供は退いとかんかい!」
「社長、こちらへ」

黒服の一人が乱暴に真耶と楯無を退かせ
大銀を座らせる

「いやいやどうも、私は大銀。会社の社長をやっていましてね」
「今日も来賓として見させていただいてましてねぇ。いやぁすごかったですねぇ」
「世界最強の兵器と言われるISをああも簡単にのしてしまうなんて、胸がスカッとしましたわ!ハッハッハ」

高笑いする大銀に食堂内の空気が重くなる

当然である、ISを軽視して馬鹿にする、それはつまり女性を馬鹿にしている事と同義であるからだ

相変わらず俯きっぱなしの伊達と黙って聞いている真木はあまり興味がないようである

「おお、そうだ!話を本題に戻さないと」
「真木博士でしたな、聞いたところあんたさんの研究室無くなるそうで」

大銀は目をギラつかせ机にアタッシュケースから取り出したファイルを置く

「話っちゅうんは他でもない」
「あんたさんら二人にぜひとも私らの会社に来て欲しいんですわ」

大銀の交渉に周囲にはますます不穏な空気が漂う

「私らの会社は軍需産業でのし上がって来た会社なんですが」
「ISにはこれまで関わらんようにしてたんですわ、何でか分かりまっか?」
「この世に男と生まれたからには、女に媚びるような真似は死んでもでけん」
「そういう一貫したポリシーがありましてな」

「よく言うわよ、誰も相手にしてないだけなのに」

「しッ、ダメですよ更識さん」

「私らの会社に来ていただけるなら必要なもの何でも用意させてもらいますで」
「何でも言うて下さいな」

「何でも?」

真木の問いに合わせ肩の人形も大銀の方を向く

「へぇ、何でも。資材でも資金でも、好きなだけ言うて下さい」

表向きは年明けに赴任してきた真木と伊達
まさかこんなに早くここを去る事になるとは誰が予想できただろうか

だが

「その話、乗らないと言ったら?」

真木の返答は予想外のものであった

「何でですねん、断る要素なんてどこもおまへんやろ」
「まだ何か足りんもんでもあるんですか」
「カネでもオンナでも好きなように用意させてもらいますさかいナンボでも言うて言うて下さいて」
「その代わりに今日見せていただいたアレをウチで作らせてもらいたいだけですねん」
「な、悪い話やおまへんやろ、バカな女が蔓延っとるこの社会をキレイにしましょうや」

休むまもなく大銀の口から誘い文句が運ばれてくる
が、それを間近で聞いている女生徒及び教員がいい顔をしているはずはなかった
そしてそれはこの学園に通う一夏も同じであった

「好き勝手言いやがって、俺ちょっと言ってくる」

「待て織斑、全く私の周りはなぜこうも直情的な人間ばかりなんだ?」
「もうすこし様子を見てみるんだ」

一夏を止める千冬
憤る一夏の傍に箒が駆け寄る

「対応によっては行動に出るということですか」

「とりあえずは様子見ということだ、何度も言わすな」

大銀は話の相手を真木から伊達に変える

「・・・・・・・・・・・・」

「あんさんもこんなところで乳臭いガキの相手なんかしんどいだけでっしゃろ」
「そんな汚いカッコせんでも、欲しいモン何でも用意させてもらいますよって」

「・・・・・・・・・・・・」

「何とか言ってくださいや、無口な方でんなぁ」

「・・・・・・・・・・・・」

「あんた、ええ加減にしなはれや」
「私もそろそろ我慢できませんで」

「・・・・・・・・・・せぇ」

「…は?」

「うるせぇ~! 人がイライラしてるのに低い声で横からガヤガヤ煩いっつってんだよ」

やっと伊達が喋ったかと思ったら今度はいきなり怒り出した

「テメェゴルァ、社長に対して何て口の聞き方じゃ」

黒服の一人が伊達につかみ掛かる

「どいつもこいつも、俺をイラつかせんなぁ」

怒りのままに伊達は相手の襟首をつかみ体落としと払い腰をあわせたような『山嵐』をキめた

「ドヘゥ」

黒服は投げ飛ばされ、動かなくなってしまった

「クソッ、おどれら下手に出たったら偉そうにしやがって」
「おどれらなんぞこっちから願い下げじゃドアホ」

「フー フー 」

「いつか後悔させたるさかいの、楽しみにしとれや」

肩で息を切る伊達に対し大銀は黒服を集め足音を荒げ食堂を後にする
よく見ると食堂の外に様々な機関のエージェントがこちらを観察しているようだが
大銀が帰っていったのを見て引き上げようとしているようだ
あわよくば大銀より良い条件を出して引き抜くつもりだったのだろうか

パチパチパチパチ

周りからは拍手が起こり伊達を包む

「伊達君、君がああいう形で追い返すとは予想外でした」
「ここを出るという意味ではスムーズに行くとは思っていたのですが、案外直情的というか短気というか」

「うるせぇ!」ブンッ

「ヒィッ」シュッ

何故か真木にまで振りかぶった伊達の拳に真木は慌てて回避を取る
その速度たるや両目の紫の光が帯になって残るほどであった

「黙ってろ!俺は今イラつい…お!」

憤怒に顔を歪ませていた伊達の顔からまるで皺が抜けたかのように怒気が消え去り
落ち着かない雰囲気がなくなった
そしておもむろに空になったコーヒーカップを取り出し

モゴモゴ
「………ペッ」
カランコロン

伊達が吐き出したもの、それは折れた歯だった

「歯ぁ!?」

周りで見ていた一夏も思わず声を漏らすほどであった

「いやぁ~、奥歯がグラグラしてたんだけど、取れそうで取れなかったモンで」
「メシ食い終わった後もイライラしっぱなしで何の話してんのか全然頭入んなくってさ」
「しっかし、ほんとスッキリしたわ。ハハハハ」

緊迫していた周囲から安堵の息が漏れる

「ところでさっきのオッサン何言ってたの?」
「口くさかったことしか記憶にないんだわ」

「本当に何も覚えていないのか?」

思わず眉をへの字にした千冬も加わっての立ち話になる

「あぁ、これっぽっちも」

「そうか」
「…フッ、フフフッ、アハハハ」

今度は千冬が笑い出してしまった
それに釣られて食堂中から笑い声があふれ出す

「…?俺の歯が抜けたのがそんなに面白いのか?」

「もういいですよ伊達君、今日のところは引き上げましょう」
「君もお疲れでしょうし、ここに来る前に岩下先生に断りを入れておきました」

「そう?じゃ俺帰るわ」
「そんじゃお休み~」

   「「「おやすみなさ~い」」」

食堂からの声を浴びて伊達は食堂をあとにする

「さて、それでは私も」

「待て」

真木の腕をつかんだのは千冬だった

「言ったはずだ、ちゃんと話を聞かせてもらうと」
「あの男より貴方の方が詳しく話してくれそうだしな」

「・・・・・・・・・」

それぞれの思惑を抱え、長い一日がこうして終わろうとしていた

IS学園を巡るバースの物語はまだ始まったばかり

>>1です、少し裏話を

今回登場させた大銀なんですが、当初はエージェント風のスカウトマンを考えていたんですが
クロヒョウ2にハマったおかげで二岡組の組長っぽいキャラクターになってしまいました

後、話を全然聞いてなかった伊達さんのくだりは、伊達さんもまじめに話を聞いていたら全体の進み具合がますます中だるみになりそうだなと思って歯を折ってもらいました
戦闘中のダメージです

それではこの辺で、次回もお楽しみに

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