HAL「学園都市…」(914)


学園都市…あそこなら…あるいは…



私の望みが叶うかもしれん。



今の世界の技術では不可能でも、科学の粋を集め更に革新を推し進めた彼の地ならば…!



私は…君を…!





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???「はあ?『食い女』?」

???「そう!『食い女』です!」

晴れた10月のある日、放課後のファミレスの一角を四人の女子中学生たちが占領していた。とはいえ、今日は学校も午前のうちに終わり、まだ2時過ぎといったところだ。

一角を占領している女子中学生のうち、隣り合っている二人は柵川中学の制服に身を包み、その向かいで隣り合っている二人は名門常盤台中学の制服に身を包んでいた。

柵川中学の制服に身を包んでいる二人のうち、黒髪のロングヘアーは佐天涙子、ショートヘアーで頭に花が咲いているように見えるのが初春飾利である。常盤台中学の制服のうち、長い髪をツインテールにしているのが白井黒子、シャンパンゴールドのセミロングが御坂美琴である。

白井「『脱ぎ女』の次は『食い女』…いくらなんでも呼称が安易すぎますの」

初春「でもでも!この『食い女』はネットの書き込みでもすごい頻度で目撃情報が書き込まれているんですよ!」

そう言って初春は興奮気味に自前のノートパソコンの画面を常盤台の二人に見せつけた。


御坂「へえー、どれどれ…」

それは学園都市では数少ないある都市伝説についての投稿サイトだった。かつてはここに『脱ぎ女』や『誰かが見てる』、『どんな能力も効かない能力をもつ男』など実際に存在している人物、事件が投稿されていた。しかし、ガセネタが多いのも事実。そしてどうでもいい内容ばかりだ。

そんな中で今回投稿されていた記事は以下の通り。

『こないだファミレス行ったら女の子がスープバーを一人で空にしていた。』

『もしかして白い銀髪の子か?俺も見た。もんじゃ屋で鉄板いっぱいの巨大もんじゃを作ってニヤニヤしてたのは衝撃的だった』

『俺が見たのは20分で食ったらタダのジャンボラーメン。10分で食って、あろうことかそのまま向かいのトンカツ屋に入っていった』

御坂「…うーん…」

佐天「どうです!?怪人『食い女』!」

白井「胡散臭い上にどーでもいいですの」

初春「えー!」

なんとも興味なさげな常盤台二人とその二人に驚愕する柵川二人。その温度差は激しかったが、大抵都市伝説が話題に挙がるとこの四人はいつもこんな感じだった。


御坂「なんて言うか…面白がって話を盛ってるようにしか見えないのよねぇ」

佐天「そうですかぁ?」

白井「大体、そんなおデブさんがいたとしても私たちの私生活になんの影響も与えませんの」

初春「何言ってるんですか白井さん!この人がおデブさんだなんて一言たりとも書かれてませんよ!」

白井「仮にそんな量の食事をしていたら太るに決まってますわ。人体の基本ですの」

佐天「そこがこの都市伝説の都市伝説たる所以なんですよ!」

御坂「どういうこと?」

佐天「なんとこの少女!まさかまさかの幼女体型で異邦人の美少女らしいんですよ!初春!」

初春「はい!えと…これです!」

そう言って初春は再びノートパソコンを向かいの二人に見せた。

『わんこそばで新記録樹立したらしく、フレームいっぱいにびっしり並んだおわんタワーと少女のピース写真が飾ってあった。しかも異邦人で小柄な少女だった。どんな圧縮率で彼女の胃袋にあの量が?』


白井「むむ…」

初春「ね?どうですか!?」

目を輝かせながら、花飾りの少女は常盤台の二人に問いかける。

御坂「どうですか…って言われてもね…」

佐天「なんですか、御坂さん反応薄いですね~」

御坂「なんか興味湧かないのよね。その都市伝説」

白井「そ、そうですわ!そんな無茶苦茶な少女いる訳がありませんの!」

初春「でもお店に写真が…」

白井「い・ま・せ・ん・の!ぜ~ったいいませんの!」

初春が反論しようとしたところを白井が大声で制し、挙げ句にらみつけた。

初春「ちょ、なんでそんなにムキになってるんですかぁ!」

白井「なってませんの!」

初春「イヤ、ものすごいムキに…いふぁいいふぁいいふぁい!やへへくふぁふぁい!」

白井「そんなことを言うのはこの口か!この口か!」

そう言って白井は初春のほっぺたを両手で掴んで上下左右にぐいんぐいんと引っ張り始めた。


御坂「やめなさいっての」

みかねた御坂が白井の脳天にチョップをかます。ズビシッ、という効果音が聞こえた気がした。

白井「いたっ!…うぅ…お姉様ひどいですの」

御坂「今のはどう見たってアンタが悪いでしょうが」

初春「うぅ~…ありがとうございます、御坂さぁん」

白井「だって…私がどれだけ食事に気を使っていると…」ブツブツ

初春はほとんど涙目で御坂に礼を言い、白井はブツブツと呟いて拗ね始めた。

佐天「あ、あ~…じゃあこんな都市伝説はどうですか!?」

そんな空気に耐えかねた佐天が明るいテンションで更なる話題を提示する。

御坂「また都市伝説?」

佐天「今度の都市伝説は御坂さんも白井さんもストライクゾーンなはずです!」

白井「…そもそも都市伝説自体が私のストライクゾーンから外れてますの」

佐天「細かいことは気にしない!ほれ、初春」

初春「はぁい、と。これです」

白井は未だに機嫌が悪いが会話に戻ってきた。初春も未だほっぺたは赤いが再びノートパソコンを操る。再び常盤台の二人が見たディスプレイには黒い背景におどろおどろしい装飾が施されたサイトが映っていた。


学園都市以外の日本はすでに占拠されている。
というのも、日本で一時話題になった犯罪症候群。アレは実は某博士の作った感染ウイルスによるものである。
そのウイルスに感染した者は瞬く間に博士の手足となり、博士の操るままに犯罪を犯してしまうのだ。そして、学園都市以外の日本は今、8割方の人口がそのウイルスに感染してしまっている。

次の標的は学園都市。その時、学園都市には自由が訪れる。
なぜなら犯罪者だけの世界、混沌なる世界が訪れ、犯罪者という言葉すら無くなるのだ!皆が皆、自分の欲望の赴くままに動けるのだ!


御坂「…これはまた胡散臭いわね…」

最後まで読み終えて、御坂が正直な感想を漏らした。

佐天「そうですか?でも、実際に学園都市の外で検挙数が数倍に跳ね上がってた時期もありましたし…」

白井「論外ですの。こんなもの読むにも値しませんの」

佐天「えぇ!?」

続いて読み終えた白井が一刀両断とばかりにピシャリと言い切った。

初春「私も…この都市伝説嫌いなんですよね」

佐天「初春まで!?なんでよ!なんでさ!」

白春「「佐天さん」」

ズズイ、と先ほどケンカしていた二人は佐天に詰め寄る。

佐天「は、はい?」

そして二人は肩を前に出し、自分たちのしている腕章を見せ付けるように引っ張る。そして息ピッタリにこう言い放つ。


初春白井「「風紀委員(ジャッジメント)ですの!」」キリッ



佐天「」 デスノ…


美琴「…ま、そんなものがあったとしても、外の博士が作ったモノなんてタカが知れてるわよ。学園都市の科学技術の前じゃあっという間に解明されちゃうって」

佐天「…ま、それもそうですね」アハハ

白井「それよりも先日の『0930事件』に関してなにかありませんの?あの事件のせいで何日支部に缶詰めになったことか…」

初春「その割に事件の全貌が曖昧でしたからね」

御坂「あー…」

佐天「あ、それならですね…」





-時を遡り、早朝、第七学区裏路地


暗部というものがこの学園都市には存在する。学園都市統括理事会もしくは統括理事長直属の部隊のようなもので学園都市の裏側で暗躍する非公的組織である。

その中で比較的最近できた暗部組織がある。その組織の名称は『グループ』という。構成員には世界を飛び回るスパイ 土御門元春、魔術結社『翼ある者の帰還』の元構成員 エツァリこと海原光貴、『座標移動』の大能力者 結標淡希、そして最近加入した学園都市第一位の超能力者 一方通行がいる。

その『グループ』が早朝から活動していた。もちろん、まっとうな活動ではない。活動内容は武装した無能力者集団と化したスキルアウトの無力化である。

その際に採用された方法が『活動資金の剥奪』『リーダー駒場利徳の殺害』である。活動資金の剥奪には結標が、駒場利徳の殺害には一方通行が当たった。

駒場利徳は無能力者である。だが、身体に学園都市で開発された『発条包帯』を張り、身体的苦痛と引き換えに常人の数倍の身体能力を得た。

これにより結標の演算の隙をつき撃退に成功。更に一方通行の撃退を試みた。

一方通行は学園都市第一位の能力者であるが、とある事件により脳に障害を負い、今はとあるネットワークに演算を頼っている。そのための機器が彼のつけているチョーカーなのだが、それが電波で交信しているところに着目し『撹乱の羽』という学園都市製のチャフで電波妨害を試みる。

結果は成功。更に『発条包帯』のみならず『演算銃機』という特殊拳銃を用いて一方通行をあと一歩のところまで追い詰めた。

しかし、『換気』により『撹乱の羽』が離散し、一方通行の演算能力が復活。あらゆるベクトルを操れる一方通行に拳銃一つで立ち向かえるはずもなく、今まさにチェックメイトをかけられていた。


一方通行「Level0ってだけじゃ悪にはならねェ。ああいった連中が邪魔者扱いされてンのはひとえにお前らみたいなスキルアウトがハシャいでるせいだ!権利の獲得!?安全の保証!?馬鹿馬鹿しい。そういった口上がテメェの首を絞めてることくらい、気付かなかったのか!?」

壁にもたれかかる駒場を見下ろしながら一方通行は問いかける。それを受けて駒場はフッと笑った。

駒場「もしもの話をしようか?能力者の中には醜い能力者もいる。能力者が一方的に強大な力を振りかざし、組織されたスキルアウト以外を狙い得点を競うゲームが流行っていたとしたら…お前ならどうする?」

一方通行「な…?」

つまり、駒場利徳は強い者から弱い者を守るために今まで活動してきたのだ。

駒場「フッ…いずれこういう結末が訪れることくらい分かってはいたが…」

しかし、能力者の街で能力者を敵に回すことができる訳もない。結果、大きく動きすぎた駒場利徳には処分が下ってしまった。

一方通行「コノヤロ…」

駒場「どうやら、俺とお前は似た境遇にいるらしいな」

そう言って駒場は銃を一方通行に向ける。一方通行は能力により常に外的な攻撃を反射できる。つまり、このまま駒場が引き金を引けば銃弾は一方通行に当たらず駒場に命中する。

駒場「手土産だ。最後にこの無様な光景を胸刻んでおけ」

駒場の指に力が籠もる。





だが

???「…駒場のお兄ちゃん?」

ふと路地裏の入り口から少女の声がした。思わず両者はそのままの体制で声がした方向に目を向ける。そこにはまだまだ小学生であろうベレー帽を被った少女がいた。

一方通行「な…!?」

一方通行は愕然とした。何故こんな早朝にこんなところに小学生が来る?そもそも『グループ』の下部組織は何をやっている?現場から一般人を遠ざけていたのではないのか?おまけにあの少女は駒場のことを知っているようだ。ならば、この状況をどうすればいい?あのような少女を口封じする訳にもいかない。しかしこの男は今にも自分の命を断とうしている。ならば…


学園都市第一位の頭脳が目まぐるしく動く。状況を整理しようと、打開しようと一瞬で様々なパターンを予測する。

しかし、次の瞬間に起きた出来事は学園都市第一位の頭脳を以てしても予測できない出来事だった。





駒場「這ッ!這ッ」




先ほどまで自分に銃を向けていた駒場利徳がブリッジのような体制で這いながら、目にも止まらぬ速さで少女の許へと移動していた。




そして頭を思い切り地面につけながら少女のスカートの中身を覗きこむ。






駒場「這って動く………!!…白ッ!!!」






一方通行「」







???「…にゃあ?」



一方通行「うおらァ!」

ズドン、と一方通行のベクトルローキックが駒場のわき腹に叩きこまれる。

駒場「ご、がああああああああああ!?」

???「ふにゃあ!?」

そして駒場は路地裏の壁にめり込み、咆哮の後、動かなくなった。それを間近で見ていた少女はあまりのことに腰を抜かした。

一方通行「なンなンですかァ?なァンなンですかァ!?これがお前の言う無様な光景ですかァ!?」

壁にめり込んでいる駒場の胸ぐらを掴み、壁からひっこぬく。絶命こそしていないものの、完全に気絶していた。

???「こ、駒場のお兄ちゃん…?」

一方通行「チッ…悪ィなクソガキ。このゴリラちょっと病気みてェなンだわ。そンでさっきの蹴りは荒療治の一種だ」

???「そ、そうなの?」

少女はビクビクしながら一方通行と話す。その目は駒場と一方通行をキョロキョロと行ったり来たりしていた。

一方通行「そォだ。だからこの変態ゴリラの治療は俺に任せてお前は帰れ。今すぐだ」

???「…ヤダ」

一方通行「あァ?」

???「大体、駒場のお兄ちゃんの看病したい、にゃあ」

一方通行「正気かテメェ…この変態エクソシストゴリラがテメェに何するか分からねェぞ」

???「駒場のお兄ちゃんは大体そんなことしないもん」

一方通行「大体かよ」

???「にゃあ」

一方通行「…チッ、しょォがねェ…おい、生きてンだろ!出てこい!結標淡希!」


すると路地の奥から変型学生服の下にさらしを巻いた女子高生が現れた。

結標「…いつから気づいてたのかしら?」

一方通行「うるせェ、今そンなやりとりしたくねェンだよ…この二人を病院に連れて行け」

結標「あら?あなた今回の任務の内容ちゃんと把握しているの?」

一方通行「どの道コイツは当分動けねェ。テメェがちゃんと任務こなしてりゃァここのスキルアウトにこれ以上の大規模活動は不可能だ」

結標「あらあら、とんだ甘ちゃんね。それならあなたが連れて行けば?」

一方通行「俺ァこれからサービス残業だ。オラ、とっとと行け。新しいトラウマ増やしたくなかったらな」

結標「…ホント、とんだ甘ちゃんね。その代わり上の連中はあなたが説得しなさいよ?」

そう言って結標は軍用懐中電灯を振るう。すると美少女と野獣がその場から消えた。次いで、二人は自身のケータイに手を伸ばす。

結標「もしもし?計画変更よ。病院に向かってちょうだい。…えぇ、今そっちに転移させたけどまだ死んでないわ。ちょっと邪魔が入ったの。その邪魔ごとそっちに送ったから。…えぇ、お願いするわ」


一方通行「海原か?計画変更だ。駒場利徳は再起不能。それで問題ねェな?…ねェな?…ねェよな?…よし…あァ迎えはいらねェ。ちっとばっか残業だ」


とりあえずはここまでです。

書きためあまり無いんでしばらくは更新遅いです。
もっとたくさん書きためてから書こうと思ったんですが、盲腸で入院して暇すぎるので投下しちゃいました。


-同日夜、断崖大学

『0930事件』以降、世界は学園都市とイギリス、フランスとロシアに別れ、一触即発の状態となっている。このまま行けば第三次世界大戦が勃発してもおかしくはない。

そんな中で今学園都市で頻繁に起きている現象が学生の回収運動である。早い話が学生を外の実家に戻らせようとする運動だ。その運動の実質的なリーダーとして動いているのがLevel5第三位【超電磁砲】御坂美琴の母、現役大学生の御坂美鈴である。

しかし、彼女の活動は学園都市に対して邪魔であるとされ学園都市上層部から命を狙われてしまう。

そのため大学の論文提出のために学園都市の断崖大学を訪れていたところをスキルアウトに襲撃されてしまった。

このスキルアウト、実は駒場利徳がまとめていた組織である。駒場が戦線離脱したために今は浜面仕上が指揮を採っていた。

だが、御坂美鈴から助けを求める報を受けて上条当麻が救援のために断崖大学へ、更にそれを偶然見かけた一方通行が断崖大学に急行。乱戦の末、非常口より上条当麻と御坂美鈴が脱出。だが、そこで浜面仕上と遭遇した。



浜面「カハッ…てことはアレだよな…!てめえが連中と関わりがねえってコトはまだ依頼は有効ってわけだ。ターゲットの死体さえもっていきゃあ…!」

そう言って金髪鼻ピアスのヤンキーは警棒片手に上条を殴り倒して御坂美鈴を見定める。

美鈴「くっ…」

上条「ふざけんな…」

上条が浜面の胸ぐらをつかみながら立ち上がる。

浜面「あ…?」

上条「もう一度言ってみろテメェ!」

上条は浜面の胸ぐらをつかみながらおもいっきり自分の方へ引き寄せる。そして迫ってきた浜面の顔面に力いっぱい頭突きをかました。

浜面「ガハッ!」

しかし、まだ上条は浜面から手を離さない。反り返った浜面をもう一度自分の方へ引き寄せ、今度はカウンターの要領で右ストレートを顔面に叩きこむ。

浜面「ぐあああああ!」

衝撃で浜面の鼻ピアスが吹っ飛んだ。鼻ピアスが刺さっていた箇所からドバドバと血が吹き出てきた。


上条「ふざけんな!人の命をなんだと思ってやがんだ!」

浜面「仕方ねぇだろうがァ!俺たちLevel0はこうでもしねぇと生きていけねぇんだよ!」

上条「一緒にすんな…」

浜面「ああ…?」

上条「すべてのLevel0をテメェみてえのと一緒にすんじゃねぇよ!」

浜面「…そうだ。テメェはまだ能力を一度も…!?」

上条「Level0の人間なんざ、学園都市にはゴロゴロいる。そいつらだって普通に学校行って普通に友達作って普通に生活してんだよ」

事実、学園都市にいるLevel0の無能力者は全学生の六割を占めている。その人間が全員スキルアウトというわけではない。むしろ上条の言う様に普通に暮らしている人間の方が多い。

事実を突かれたせいか、浜面は押し黙った。

上条「テメェが一番Level0を見下してんじゃねぇのか!?」






浜面「見かけで人を判断するなぁーーー!!」




浜面の警棒が上条の顔面を思い切り捉えた。



上条「ぐはぁ!?」



浜面「だからおまえらはッ…我々と比べて生物的に下等なんだ!!地球に巣食うダニがッ!」


まるでラッシュの様に浜面の警棒が上条の身体に突き刺さる。


浜面「ダニ!ダニがッ!」


上条「ガハッ!…っくそ!じゃあ何か!?お前はこんなことに手を染めながら!全うに生きてきたっていうのかよ!?」


浜面「当たり前だろうがダニがッ!むしろ俺はスキルアウトなんかじゃない!俺は…」


ピタリ、と浜面の動きが止まった。







浜面「あれ?俺スキルアウトじゃね?」




上条「」




美鈴「」




浜面「あれ…ちょっと待って…マジわかんない…あれ?」

意味不明なことをつぶやいて浜面は錯乱する。もはや足取りからしてフラついていた。

浜面「そこのお前教えろよ!!俺は一体なんなんだ!?」

上条にすがりつく金髪ヤンキー。それを引き剥がして我らがヒーロー上条当麻はこう答える。


上条「知るか!このクソ野郎がッ!」

渾身の右ストレートが浜面の顔面を抉った。

浜面「ぐはぁ!!」


今回はここまでです。短いですが。
駒場のインパクトが強すぎて今後がヤバい


つーかビックリするくらいのレスが来て若干焦ってます。
ありがたいことです。尻すぼみになるかもしれませんがよろしくお願いします。
あと、自分はフレンダの人で合ってます。お久しぶりです。


浜面のは犯罪願望じゃないかしれませんが、あまりツッコまないでいただけるとありがたいです…


-同時刻、断崖大学演算演算装置保管庫



???「…フフ」


断崖大学には学園都市の大学というだけあってかなり高性能なスーパーコンピューターが存在する。この大学にはAIや演算ソフトなどのデータベースが隣接しているのだ。

それらデータベースを用いた実験等に使用されるスーパーコンピューターは学園都市でもかなりの高性能である。

学園都市の外ならばスーパーコンピューターの数はそれほど無いが、ここは外よりも科学技術が二~三十年は進歩している街だ。一大学に置いてあるスーパーコンピューターも一台ではない。

そして、そのうちの一つに近づく影があった。


???「お待ちくださいHAL…今すぐにお持ちして…」


明かりの無い部屋にうっとりとした女の声が響く。女はスーパーコンピューターにスッと触れた。


???「なァにしてるンだァ?結標淡希!」

???「!」


パッと部屋の明かりが点く。そして部屋の中央に変型学生服に身を包んだ女の姿が、出入口に二人の男の姿が現れた。


結標「一方通行…!土御門…!」

土御門「最近任務中に空白の時間が生じていたから気になって尾けてみれば…何をしているんだ?結標」


金髪グラサンの男、土御門元春がドスの効いた声で問い詰める。


結標「…何って?私はそこの甘ちゃんのせいで起きた事件のしりぬぐいをしてあげようとわざわざ…」

一方通行「ハッ、しりぬぐいねェ…だったらなんで戦闘に出てこねェンだ?俺がドンパチやってたのはすぐ近くのサブ演算装置の保管庫だぜ?」

結標「…」

土御門「最近『グループ』が任務を終えた現場では必ずと言っていいほどスーパーコンピューターとその周辺機器が消失している。直接任務と関係なかったから気付かなかったが…お前何をしていたんだ?」

結標「…」


瞬間、結標を取り巻く空気が変わる。

結標「…私ね、子供の頃…砂場遊びが大好きだったの。砂山にトンネル掘るやつよ」

一方通行「は?」

結標「両側から掘って掘って 最後 トンネルが開通した時に…。穴の中で自分の手と手が触れ合うの。その感触が言い様もなく大好きだった」


結標がほころぶ。目を見開く。最高の感触を想像し、顔を紅潮させる。


結標「この快感わかるでしょ!?他人の体内を自分の体が貫いた瞬間の快感!!相手を完全に支配したという証の快感!!」

土御門「お、おい?」

結標「暗部に入ってからコルク抜きで殺した人間でも砂場と同じことをしたわ!!そしたらね!そしたら!!」








結標「メチャクチャ興奮したわ…」




変型学生服に身を包んだ女は口角からよだれを垂らして悦に入った表情を浮かべた。




一方通行「」




土御門「」





結標「暗部に入るのは嫌だったけど、こんな興奮を呼び覚ましてHALは大好き」

土御門「HAL…?」

結標「そしてHALにはこのスパコンが必要なの。私はHALの忠実なしもべ。だからこのスパコンはもらっていくわ」


キッ、と結標の表情が引き締まる。出入口の二人を睨みつける。


一方通行「ハッ…駒場のイカれっぷり見て少しも動揺してねェからなンかおかしいと思ったら…テメェら揃いも揃ってキメてやがンのか?」

結標「違うわ。私はHALに気付かせてもらっただけ。これが本来の私よ」

一方通行「…どこの新興宗教にハマッてンのか知らねェが」


一方通行の手がチョーカーに伸びる。カチッという音と共に、学園都市第一位の超能力者へと変貌する。


一方通行「テメェは俺を前にして勝算があると思ってンのかよォ!ア゛ァ!?」


ダンッ!と一方通行が地を蹴る。それだけでミサイルの様に結標へと突っ込んで行く。


結標「冗談」


ドゴォン!という派手な音が一方通行が再び地に着いたと同時に炸裂した。


一方通行「…アァ?」


えぐられた床の上で立っていたのは一方通行だけだった。


土御門「…おい、結標とスパコンはどうした?」


もっと正確に言うとその場に居たのは一方通行だけだった。


一方通行「…いつの間にあの特殊性癖は自分を転移できる様になったンだ?」

土御門「バカな…アイツのトラウマは完治していないはずだ!」


-断崖大学駐車場、大型トラック


なんの音もせず、トラックの中にスパコンが、助手席に結標が現れた。


結標「エアー入れて!その後すぐに脱出!」


結標がそう叫ぶと運転席に座っていた男はなんの返答もせず、素早く不気味にスイッチを押す。

すると後ろからボフンという音が聞こえた。恐らくはスパコンの周りに設置されていたエアクッションに完全に空気が入ったはずだ。これで多少乱暴に運転しようともスパコンに支障をきたさず持ち運べる。

次いでトラックにエンジンがかかる。初動でかなりのエンジン音を出しながらトラックは荒々しく発進した。

まばらに走っている乗用車やタクシー次々に追い越し、トラックは大通りを走り抜けていく。


結標「フフ…残念だったわね、一方通行。HALは私のトラウマも除いてくれたのよ」


助手席に座っている結標は笑顔でつぶやく。

一方通行は確かに学園都市第一位の能力者。その戦闘力も学園都市第一位であろう。

だが、逃げるとなれば話は別だ。結標の能力は『座標移動』。半径800m以内なら好きところに自身もモノも移動できる。


一キロほど走ったあたりで下道から高速に入る。

先ほどまでも警備員が出動しない程度に速く走っていたトラックが更にスピードを増した。

等間隔で流れていく高速道路の灯りをぼんやりと見ながら結標は今後のことについて思考する。

結標(…これ以上『グループ』での活動は不可能ね。これからは私単体で潜入して新たな『スフィンクス』を…)


トン、という音がトラックの屋根から聞こえた。


結標「…?」


思わず結標は上を見上げた。当然、トラックの屋根しか見えない。

だが


結標「きゃっ!?」


バキィ!、という音と共に屋根の端から二本の白い腕が下に向かって生えてきた。

次いで二本の腕は戻っていくと思いきや、その穴から屋根を掴んだ。

バキバキミキミキという音と共にトラックの屋根がめくられていく。


結標「ま、まさか…」


バキン!という音がするとトラックの屋根は無くなった。

そしてそこから見えたのは満天の星空と




一方通行「見ィつけたァ」




白い悪魔の満点ものの笑顔だった。


結標「あ、一方通行…!なんでここが…!」

一方通行「おいおいテンパってんじゃねェよ結標ェ。そっちの運ちゃン見習えよ」


穴の淵に立って見下ろす一方通行。かなりの速度で走っているというのに髪の毛も服もほとんど微動だにしなかった。


一方通行「とりあえずはいったん止まってもらうぜ」


そう言って一方通行は拳銃を取り出し、器用にタイヤを狙う。

バン!という音と共に弾き出された銃弾は高速回転しているトラックのタイヤをものともせずに貫通し、パンクさせる。

当然、トラックは操縦不能となった。


結標「くっ…!」


激しく振動するトラックの中、思わず結標はドアべりに掴まる。一方で運転手は身じろぎ一つしない。


一方通行「ギャハハハハハ!ホントに大した度胸してンなァおい!」


一方通行は相変わらず穴の淵に立っていた。こちらは動揺などまったくせずに座っている二人を見下ろしながら爆笑していた。


あまりのムチャクチャな行動に結標は一方通行を睨みつけた。


一方通行「おいおいよそ見しねェ方がいいぞ?」


そう言って一方通行は前方を指さす。


結標「-ッ!」


見るとフロントガラス一杯に高速道路の壁が映っていた。


一方通行「じゃァな、結標淡希」


ゴッ、という音と共にトラックは壁に突っ込んでいった。





結標「ハッ…ハッ…」


コンクリートの上で結標は息を切らせてしゃがみこんでいた。すぐ近くでは黒煙上げるトラックが無惨な形にひしゃげていた。


一方通行「…やっぱりな」


トラックの影から何事もなかったかのように一方通行が歩いてきた。


結標「…」

一方通行「いくらなンでもおかしいだろォが、結標。今の脱出も断崖大学ン時も」


ザッ、と一方通行は結標のすぐ近くまで詰めよった。


一方通行「テメェがトラウマを克服したかどうかなンて知ったこっちゃねェ。だが11次元の演算ってのはテメェのカスみてェな脳でほいほいできるもンじゃねェはずだ」


空間移動能力は3次元を11次元に置き換えて演算しなければならないために非常に複雑な演算となる。

そのため、一瞬で移動はできるがその移動までに少しばかり時間がかかる。

おまけに非常に複雑な演算なために正常な精神状態でなければまともに演算もできない。

ただの空間移動能力ですらこれだというのに、結標の能力は更に複雑な『座標移動』。便利ではあるが、その分演算も複雑なのだ。


一方通行「断崖大学じゃあの一瞬でスパコンごと転移しやがった。さっきもテメェのクソみてェなメンタルを散々煽ったっつーのに余裕で転移しやがった…テメェ本当に【幻想御手】でもキメてやがンのか?」

結標「…メ」

一方通行「あ?」

結標「…ダメ…HAL…コイツ…生半可な手段じゃ太刀打ちできない…!」

一方通行「だからHALっつゥのは」

結標「指令を…!HALの頭脳をお貸し下さい!!」


半ば狂乱気味に結標は携帯電話を取り出した。一方通行のことなどまるで眼中に入っていなかった。


一方通行「…シカトぶっこいてンじゃねェぞコラ!!」

結標「早く…!!次の指令を!!」


その時、結標の携帯電話の画面が妖しく光り始めた。


一方通行「あン?」


ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ……!!

今回はここまでです。
書いてて気付いたけどスフィンクスっておい…


またまたたくさんのレスありがとうございます。
さすがにレスにでてきたキャラすべてを出すのは不可能だと思いますが、これからも読んでいただけると幸いです。


無事退院できました。
自分の主治医は肩にとんでもない人相のナース座らせてたり顔の四次元ポケットに没収したタバコをしまいこむ様な人ではありませんでした。
よかったです。


-後日、警備員及び風紀委員各支部





生徒A「急に…急になんだ…。急に彼女をショーウィンドウに叩きこみたくなって…」





生徒B「あんなことするつもりは…ただ急に…規則を守らない人間に頭突きをしたくなって…」





生徒C「ただ。目立ちたかった。だから。全身にフィットした家具を身につければ目立つかな。って。」





-同日夕刻、常盤台中学学生寮二○八号室


白井「ただいま帰りましたの~…」

御坂「おかえりなさい、黒子」


名門常盤台中学の学生寮。その一室で御坂はベッドで横になりながらルームメイトを出迎えた。

出迎えたツインテールの少女は疲れた様子で腕をダラリと下げながら部屋に入ってきた。


白井「はふぅ」


そしてそのままバフン、とベッドにうつ伏せに倒れこんだ。


御坂「ずいぶんお疲れね。どうしたの?」


ルームメイトの疲労困憊の様子を目の当たりにし、御坂は身体を起こして尋ねた。


白井「…このところ連日のように事件事件事件でして…少々疲れてしまいましたの」

御坂「そうなんだ…。確かに最近おかしな連中が多いわね」

白井「…おまけに何件かは私が駆け付ける前に犯人が黒焦げですし」ジトー

御坂「あ、あはは~。なんのことかな~」

白井「とぼけてもムダですの!少しは自重してくださいまし!」


ガバリと起き上がり、白井は御坂に噛み付いた。


御坂「だ、だって目の前でメリケンサックはめた男が暴れ回ってたんだもん!しょうがないじゃない!」

白井「…まあ…それなら多少は情状酌量の余地はこざいますが…」

御坂「でしょ?」

白井「ですが、くれぐれも正当防衛の範囲に留めてくださいまし。黒子はお姉様をしょっぴいたりしたくありませんの」

御坂「…ゴメンね。気を付けるわ」


御坂「それにしても【幻想御手】の時並みに犯罪率が増えてない?」

白井「ええ…ですが今回は学生だけでなく大人まで暴れておりますの」

御坂「へぇ~…原因は掴めてるの?」

白井「まあ掴めてはいるのですが…」

御坂「?」


そこで言い淀むと白井は人差し指をあごまでもっていき、しばし考える素振りを見せた。


白井「やっぱりいけませんわ。これは風紀委員の務め。お姉様の様な一般人にお話しする訳には…」

御坂「え~!いいじゃない教えてくれたって!」

白井「いけませんの。風紀委員ですの!」キリッ

御坂「なによそれ!いいわよ!だったら私の能力で無理矢理にでもハッキングして…」

白井「!! いけませんの!」


立ち上がろうとした御坂の前に白井が空間移動で現れた。


御坂「え!?ちょっ…なによ!」

白井「いけませんのお姉様!お話ししますからそれだけはおやめくださいまし!」


両手を広げて机の上に置いてあるパソコンまでのわずかな道のりを防ぐ白井。表情は真剣そのものだった。


御坂「べ、別に本気でハッキングしようとなんて思ってないわよ」

白井「…本当ですの?」

御坂「うん」


ホッと白井は安心した様に息をついた。


御坂「それで?一体なんなの?」


白井「お姉様…柳迫碧美さんという方を覚えてますか?」

御坂「柳迫?…えーと…」

白井「固法先輩とルームシェアをなさっている方ですの」

御坂「…あー、あの人か。固法先輩の昔のこといろいろ教えてくれた人よね?」

白井「その方で間違いありませんの。それで…その方も往来で暴れてしまい、警備員に補導されてしまいまして…」

御坂「うそ!?あの人が!?」

白井「ええ…おかげで固法先輩もすっかり元気をなくしてしまって…黒妻さんとお会いになられてからは上機嫌でしたのに」

御坂「アレ?あの男の人もう出てきたんだ」

白井「元々あの方は派手にケンカしただけですの。先月の頭に黒人の子どもたちを引きつれて…と、話が逸れてしまいましたわね」



白井「とにかく、固法先輩は柳迫さんが往来で暴れるなど信じられなかったのですの。ですので、柳迫さんとの面会に向かわれたのですが…」

御坂「…ですが?もったいぶらずに言いなさいよ」

白井「…はじめこそ普通に面会されていたらしいのですが、急に暴れはじめたらしいですの。そして狂ったようにパソコンを要求しましたの」

御坂「パソコンを?」

白井「ええ。そこで警備員に隣の部屋に連れていかれた、と。ですが、固法先輩も一七七支部の支部長を務める方。連携して友人の捜査を進めたいと交渉し、同じ部屋に行くことを許可されましたの。そこで柳迫さんがパソコンで閲覧されていたのはあるプログラム映像ですの」

白井「その映像を見た柳迫さんからは日常ではありえない量の脳内麻薬が分泌されていましたの」

御坂「!!」


脳内麻薬β-エンドルフィンの快感作用はモルヒネの6.5倍。それを自在に分泌させられるなら、その映像はもはや一種のドラッグである。


白井「おまけにその映像、脳の深層にある情報を刷り込めるらしいですの。警備員と専門家の見立てでは次のドラッグへのアドレスと…深層意識の犯罪願望を解放する指令を出している、と」

御坂「なによそれ…!じゃあ暴れてる人間が多いってことは、そのプログラム映像が【幻想御手】みたいにネット上に蔓延してるってこと!?」

白井「その通りですの。警備員は便宜上【電子ドラッグ】と名付け、近々公表するそうですの。ですからお姉様!」


ズイ、と白井は御坂に詰め寄った。


白井「くれぐれも!くれぐれも【電子ドラッグ】について独自捜査なんてしないでくださいまし!お姉様の方法で【電子ドラッグ】を見てしまえばお姉様がどうなってしまうか…黒子は想像したくもありませんの!」


Level5第三位は【超電磁砲】と呼ばれているが、それはあくまで通称。実際の能力は学園都市ではありふれた【電撃使い】である。

しかし、その出力の高さ、制御の精密さ、応用力の高さなどがずば抜けているのである。

それにより彼女は電気信号の読み取り・操作が可能なために、端末からネットに接続しデータベースにハッキングして情報を読み取ることもできるのだ。

だが、その場合は彼女の意識がネットの中にダイブしたと同意義である。その際にディスプレイという媒体を無しに【電子ドラッグ】を読み取ってしまえばどうなるか。

まったく想像はつかないが、いい方向に転ばないことだけは確かである。


御坂「分かったわよ。しばらくはおとなしくしてる」

白井「分かっていただけて何よりですわ…ってしばらくですの!?」


-???


警備員と風紀委員の中でインターネットを閲覧する回数が急激に減った


どうやら少なからず私への警戒を始めたようだ


だが、そちらはまだ放っておいても問題なかろう


今日明日でプログラムの全てを解析するのは例え学園都市と言えど1の世界の住人には不可能に近い


具体的な対策を取れるのはまだまだ先だ


問題とすべきは…結標淡希の脱落


彼女ほど有能な人材はいなかった


彼女のおかげでかなりの数のスパコンが集まった




だが、未だ不十分


完全なる『ピラミッド』の完成にはまだ力が必要だ


使える兵隊は学園都市の外から気付かれぬ様に潜入させた者と学園都市で『勧誘』した数十人


…解析はまだとは言えど、隠れているのも限界な時期だ


ここらで交渉に出るのも手か





HAL「…君のプログラムを使わせてもらおう」


???「ああ、構わない」


HAL「クク…感謝するよ。木山春生」


今回はここまでです。
試験的に前作の設定を絡ませてみたんですが…アリですか?


毎回たくさんのレスありがとうございます。
自分は絶対安静を極められなかったのでトランプできませんでした。
てか極めるならトランプなんてしちゃいけないですねw


春休みも終わったしだんだん更新回数減っていくかもしれません。
なるべく早く書こうとは思ってますが…
エタらないことを目標に書いていこうと思います。


-翌朝、常盤台中学学生寮二○八号室


白井「お姉様、起きてくださいな」

御坂「ん…」


御坂はルームメイトに起こされ、起床した。白井はすでに常盤台の制服に身を包んでいた。


御坂「くぁ…おはよう黒子。疲れてるのに早いわね」

白井「お姉様の電気マッサージのおかげで快調ですの。身体も軽いですわ」

御坂「そ。また疲れたら言いなさい。そんくらいいつでもやってあげるから」

白井「本当ですの!?ならばこの黒子!鬼の様に働きますの!」

御坂「…鬼が勤勉かどうか知らないけど、またマッサージ中に変なことしたら…」

白井「心得ておきますの」

御坂「ん。よろしい」

白井(アレはアレで快感なのですが…)




-常盤台中学学生寮、食堂


常盤台中学の学生寮では当然朝食も出される。

毎朝生徒は身だしなみを整えてから食堂に集合し、点呼の後朝食となる。

メニュー自体はそれなりにありふれたモノも多いが、何せ素材が一般のそれとは格が違うため値段的には恐ろしいほど高い。

ともあれ、常盤台中学に入学するのはほとんどがお嬢様。金銭面に困る者などまずいない。


御坂「今日も風紀委員の仕事なの?」

白井「ええ。さすがにこの忙しい時に休めませんので」


御坂と白井は二人でこんがり焼けたトーストをパクつきながらなんてことない会話をしていた。


御坂「そっか。私も手伝いに行っていい?」

白井「昨夜も言いましたが、お姉様はあくまで一般人ですの」

御坂「分かってるって。でも邪魔にはならないわよ?」

白井「…まあ猫の手も借りたいほど忙しいのも事実ですの。来ていただけるなら手伝ってほしいですわ」

御坂「よし、じゃあ決まりね!」

白井「それに勝手に成敗なされるよりは風紀委員の補助として動いてもらえた方が後処理が楽ですの」

御坂「う…悪かったてば」




???「みんなそのままでいいから聞いてくれ」


女子中学生の声でにぎわう食堂に大人の女性の声が響いた。寮監の声である。

その声に応じて、食堂は静まり返った。


寮監「先ほど、統括理事会からメールで連絡が来た。なんでも緊急放送が数分後に学園都市全体で入るそうだ。放送が入り始めたら静かにしてくれ」


統括理事会からの緊急放送など今まであったことはない。となればよほど重要なことに違いない。

生徒たちは同じ机の者たちで怪訝に思ったり放送の内容を想像したりし始めた。そのため、食堂は一気にざわめき始める。


御坂「…【電子ドラッグ】のことかしら…」

白井「おそらくは…ですが学園都市全体に緊急放送などいささかやりすぎですの」

 
数分後、スピーカーから時報の様な音楽が鳴った。

そして、その音は外からも聞こえた。ふと目を向けると飛行船が空に浮かんでいた。


???「…それでは学園都市統括理事会役員、トマス=プラチナバーグ様からのお言葉です」


スピーカーから、外から、女性の声がした。その放送を聞き、食堂の意識が一気に一点に向けられる。








トマス『のーみっそ ぼーんー♪』







学園都市「」






トマス『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ…』



キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイィィィィィィィィイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイ…!!!!!






???『…以上、学園都市統括理事会役員、トマス=プラチナバーグ様のお言葉でした』



突然の意味不明な出来事に絶句するしかなかった。


御坂「…な、なんだったの今の…」

白井「…さ、さあ…?」


その時間を越え、ようやく御坂と白井は声を発した。

しかしまだ周りの人間は頭の整理がついていないのか、ポカンとしていた。


女生徒「…」


ガタリ、と一人の女生徒がふいに立ち上がる。それに呼応するように何人もの生徒が次々に立ち上がる。


御坂「…?」

白井「皆さまいかがなさいまし…!?」


ゴッ!という轟音とともにすべての食器が、机が、イスが吹き飛んだ。


「「「「キャアアアアアアアアア!?」」」」


あまりの出来事にポカンとしていた生徒は一斉に悲鳴をあげた。


女生徒「アハハハハ!た~のしい!」


念動力を発した生徒は豹変した様に目を輝かせる。それと同時に彼女の周りにいくつもの食器が浮かびはじめる。

それだけではない。先ほど立ち上がっていた生徒たちが次々に能力を使い始めた。

ある者は手から火を起こし、ある者は調理場の水道を使って自身の周りに水流を生み出し、またある者は身体が奇妙に変型して見えた。


御坂「ちょ、アンタたち何やってんのよ!」


しかし、生徒たちは止まらない。火を撒き散らし、水しぶきを上げ、他生徒に襲いかかる。


「キャア!」

「いたっ!何をなさいますの!?」

「やめてくださ…ゲホっ…!」


襲いかかる生徒。逃げ惑う生徒。食堂は一気に阿鼻叫喚の地獄と化した。


御坂「…っいい加減にしなさい!」

バチバチバチィ!という音、それよりも速く電撃が飛ぶ。

「「「「ガッ!」」」」


放たれた電撃は暴れていた生徒たちだけを正確に貫いた。そして電撃に貫かれた生徒は皆例外なく地に倒れた。


「「…」」


しかし、それでもまだ半数以上が意識を失わなかった。御坂をにらみつけ、次々に起き上がり


白井「そこまでですわ!」


しかし、さらにその半数が起き上がろうとしたところで自身の服を床に縫い付けられた。


白井「さすがにこの人数ともなると矢が足りませんわね」

御坂「黒子!一緒にあの子たちをとり押さえるわよ!」


白井「いいえ、お姉様。ここは私が引き受けます。お姉様は【学舎の園】の寮へ向かってくださいまし」

御坂「はあ!?何言ってんのよ!アンタ一人であの人数相手にできる訳ないでしょうが!」

白井「お忘れですの?お姉様。この寮の責任者が誰であるか」




コキャ




御坂「…コキャ?」


寮監「貴様ら、いい度胸だな。朝から私の前で好き勝手に能力を使うとは」


そこにいたのは常盤台最強の女傑。武装した暗部構成員三人を丸腰で完封し、Level5同士のケンカすら鎮圧する天下無双。


寮監「そこまで実力行使が望みなら、よかろう。まとめて相手してやる」


そして、その天下無双の足元にはすでに何人かの生徒が倒れ伏していた。


白井「寮監様と私がいればここは大丈夫ですの!ですが【学舎の園】の寮にはあんな方いらっしゃいませんの!お姉様はそちらの救援へ!」


今の放送は学園都市全体に流れていた。となれば、学園都市全体に同様の現象が起きているはず。

中でも常盤台中学は全員がLevel3以上の能力者。そんな人間たちが見境なく暴れたならば、ここと同じく地獄絵図が広がっているはずだ。


御坂「…分かったわ。無茶すんじゃないわよ!」

白井「了解ですの!」

寮監「戯れ言無用!!」


御坂は食堂を突っ切り、【学舎の園】の常盤台の寮へ向かった。

寮を出る際、「武で語るがよい!!」という決め台詞が聞こえた気がした。


今回はここまでです。
寮監とアックアはその昔パートナーを組んでいた時期があったとかなかったとか


レスありがとうございます。
俺の存命中に家具ファッションが流行ったとしても絶対着ない。
でも原作のファッション。
アレならやってもいい。
腰パンの対極に存在するあのファッション。


このSS書き始めてから部屋中にネウロの本が散乱してます。
朝起きたらシックスのどアップとか軽いホラーです。


-第七学区大通り

予想以上の大惨事。第七学区はすでに地獄絵図だった。

あちらこちらで煙が上がり、窓ガラスが散乱している。

時折、火柱が上がったり突風が起きたりとおよそ簡単には起こりえぬ現象が生じていた。

しかし、それらを見ても御坂は足を止めない。一心不乱に【学舎の園】を目指す。


御坂「…何が起きてんのよ一体!」


過ぎ去っていく光景に歯噛みする。

思い当たるとすれば白井の言っていた【電子ドラッグ】。

しかし、白井はこうも言っていた。「狂ったようにパソコンを求め」「プログラム映像」を見ていた、と。

生徒たちが豹変したのはあの意味不明な放送が流れてからだ。プログラム映像なんて見ていない。

【電子ドラッグ】は複数のタイプがあるのか?それとも、あの放送は【電子ドラッグ】とまったく関係のない別のものなのか?

可能性が高いのは前者であろうが、今はその判断をつけることができなかった。




???「クソっ!なんなんだよてめえらぁ!」

御坂「!」


数分間走り抜けたところで聞き覚えのある声がした。

見やると黒髪のツンツン頭が数人の能力者相手に右手一本で孤軍奮闘していた。


御坂「でりゃあああ!」


一気に方向を変え、数人の能力者相手に電撃を浴びせる。


「「「あぶbbbbbbbb」」」


すると電撃を浴びた能力者は一人残らず地面に倒れていった。


上条「!?…な、なん…?」

御坂「ちょっとアンタ!何してんのよこんなところで!」


急にこと切れた能力者を見てキョトン顔だったツンツン頭は御坂の顔を見て表情を変えた。


上条「御坂か!…コレお前がやったのか?」

御坂「そうよ。感謝しなさい」

上条「あ、ああ、ありがとう。助かった…にしてもやりすぎじゃねえのか?」

御坂「こんくらいやんないと倒れないのよ。それより私の質問に答えろ!アンタこんな朝早くから何してんのよ!」

上条「何って…襲われてた?」

御坂「はあ?」

上条「俺だって何がなんだか分かんねえんだよ!たまたま早起きしたからいつもより早く家出たらコレだ!」

御坂「…そう。そうよね。こんな事態になってんのにアンタが巻き込まれないはずないもんね」

上条「ちくせう…どうせ上条さんは不幸ですよ」シクシク




上条「つーかこいつら一体どうしちまったんだ?あの放送のあとからどいつもこいつも狂ったように能力使いやがって…」

御坂「…時間がないからざっくり言うけど、たぶんあの放送はドラッグみたいなもんなの」

上条「ドラッグ?放送が?」

御坂「そ。確証はないけどね。たぶん…共感覚性って言って聴覚を刺激するだけで脳内麻薬を出させてるの」

上条「そ、そんなことできんのか!?」

御坂「できるから今こんなことに…ねえ、アンタの右手でこいつら治せないの?」

上条「…ムリだ。俺も最初にそう思って触ってみたんだけど…まったく効果なかった」

御坂「アンタでもムリか…。ってことはこれは能力じゃない。『記憶装置』みたいに純粋に科学のみの力ってことね」

上条「ああ、たぶんな」


御坂「とりあえずアンタは家に帰っておとなしくしてなさい。ここは危険すぎるわ」

上条「お前はどうすんだよ」

御坂「私は【学舎の園】の常盤台寮の救援ってとこね」

上条「なら俺も行くよ」

御坂「え…男子禁制なんだけど」

上条「言ってる場合じゃねえだろ?お前一人じゃ危ないだろうし…」

御坂「…ま、それ以前の問題みたいね」

上条「へ?…!」


ズドン!と今まで二人がいたところに鉄骨が突き刺さった。

二人はそれぞれ別方向に飛び退き、それを間一髪でかわした。


上条「クソ!新手かよ!」

御坂「アンタの不幸体質じゃ戻るのも行くのも一筋縄じゃいかないでしょ!後で余裕があったら助けにきてあげるからそれまで頑張りなさい!」

上条「マジかよ!つーかこれ右手だけじゃ…っておわっ!ふ、不幸だー!」




とりあえず、あのツンツン頭に構っていたらいつまで経っても【学舎の園】にはたどり着けない。

心配は心配だが学園都市最強を殴り倒した男だ。

きっと大丈夫なはず。

さっさと【学舎の園】の方を片付けてさっさと戻ってくればやられやしない。

事態を収拾させるためにもまずは先へ進まなければ。


御坂(…ま、ありがとうって言われたのは良かったしね)


ちょっとだけ頬を緩ませながらも走り続けた。



しばらく走ると【学舎の園】の入り口に着いた。案の定、ここもひどい有様だ。

入場ゲートは壊れてこそいないものの、すでに係員はいない。

惨状に至っては【学舎の園】の中も外もさして変わりやしない。

いちいち生徒手帳を取り出すのももどかしいために改札口を飛び越えて【学舎の園】の中に飛び込んだ。


御坂「ハッ、ハッ…」


さすがに少し息も切れてきた。

しかし、常盤台寮はすぐそこだ。休まずにそのまま突き進む。


そしてようやく寮の正門に着いたのだが…


御坂「ハァ…あれ?…ハァ…」


常盤台寮はいつもと変わらぬ姿でいた。

煙もあがってなければ窓ガラスも割れていない。

いつもと変わらぬ荘厳な雰囲気だ。


御坂「…」


少しだけ門の前で息を整えるのに時間を使う。

ここに来るまでのコトを考えれば不自然すぎる。

あの放送のあとはどこもかしこも大惨事だった。それは御坂のいた常盤台寮も例外ではない。

おまけに簡単には起きない現象が頻繁に起こっていたあたり、暴れていたのはほとんどが能力者のはず。

ならば、常盤台の寮に異変が生じていないのはおかしいはずだ。

もしかしたら、生徒が能力を使って何事もないように見せているだけかもしれない。むしろそっちの方が可能性は高い。


御坂「…よし」


息を整えると御坂は意を決して常盤台の寮に入っていった。


-【学舎の園】常盤台中学学生寮



御坂「…どういうこと?」


常盤台の寮は内部も整然としていた。だが、それはこの状況では異常である。

そしてそれ以上に異常なのが


御坂「…なんで誰もいないのよ…」


どこにも人がいないのだ。

視界に人影は映らない。物音一つ聞こえやしない。おまけに御坂が常に発している電磁波を利用したレーダーにも誰もひっかからない。

完全に誰もいないのだ。


御坂「…」


不信に思った御坂は更に電磁レーダーの索敵範囲を広げる。

普段無意識下で出している場合なら範囲はおよそ寮の一階程度。

それを意識的に範囲を広げる。普段なら精密さを欠くかもしれないが、今は思い切り集中できる状況で人を探すことが目的。

扉などの遮蔽物がなければ三階まで電磁波を張り巡らせることも不可能ではない。

そして、案外早く目的は果たされた。


御坂「!…これって…」




-【学舎の園】常盤台中学学生寮三階


学生寮に人はいた。恐らく、この寮に住んでいる全学生が。

ただ、状況がおかしかった。


御坂「…何やってんのよアンタたち…」


すべての生徒が片膝をついて俯いていた。さながら、時代劇や中世の劇で侍や騎士が目上の人間を敬う様に。

全生徒は階段から廊下にかけて、廊下からとある部屋にかけて皆同じ格好でひれ伏している。


御坂「ちょっと!しっかりしなさいよ!」


目を覚まさせる様に呼びかける。身体を揺する。

しかし、どの生徒もなんの反応もしない。


御坂「…」


ふと学生が続いている部屋を見る。扉は開かれているが、離れているため中は見えない。

だが、御坂の能力をもってすれば扉の開かれた部屋の状況もなんとかわかる。

御坂の認識が間違っていなければ、部屋は一人用の部屋。ベッドと机が一つずつというだけで、あとは御坂たちの部屋と間取りはあまり変わらない。違うとすれば、机は壁の方を向いていることくらいか。

その部屋にもひれ伏している生徒が大勢おり、一人だけイスに座ってノートパソコンで何かを閲覧しているはず。

それらを認識した上で、御坂はひれ伏している生徒たちを踏まない様にゆっくりと部屋に向かう。

そして、御坂は部屋を覗きこんだ。




御坂の認識は間違っていなかった。


ただ間違っているとすれば、机とイスではなく膝立ちになってる人間と四つん這いになってる人間だったということだ。


そして、人間イスに優雅に座りながら一人の生徒がノートパソコンを閲覧している。


Level5の第五位【心理掌握】食蜂操祈であった。


そして、そのノートパソコンからは妖しい光が発せられており--





ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…!!







食蜂「ふぅん、なるほど」


恐らくさっきの光は【電子ドラッグ】。それを見て食蜂操祈は微笑んでいた。


御坂「…ちょろっと、何してんのかしら?」


御坂の声に反応し、食蜂は御坂の方を振り向く。どうやら今気付いたようだ。


食蜂「あらぁ、おはよう御坂さん。」


御坂を見ても食蜂はたじろぎもしない。いつもの如く、裏のありそうな笑みを浮かべながら何事もないかの様にあいさつしてきた。


御坂「…この状況…アンタの仕業ね」


部屋の中でひれ伏している生徒を踏まない様に食蜂に近づいていく。


食蜂「えぇその通りよぉ。さすがにこの人数をまとめて洗脳するのは骨が折れたけどねぇ」

御坂「今すぐ能力を解きなさい!じゃなきゃタダじゃおかないわよ!」


バチチッ、と御坂の髪のあたりから紫電がほとばしる。


食蜂「怖~い。じゃ、すぐに解いてあげるわぁ」


そう言うと食蜂はバッグからリモコンを取り出した。


食蜂「ポチ☆っとな」


そしてなんのためらいもなくボタンを押した。


瞬間、御坂は背後に悪寒を感じた。

振り返ると目の色を変えた生徒が次々に立ち上がっていた。


御坂「…まさか!」


そして、先頭に立っていた生徒がゆっくりと右手を振りかざし…


食蜂「はぁい、[そこまで]」


ピタリ、と生徒は動きを止めた。


食蜂[跪きなさい]


すると生徒は再び元の体勢に戻った。


御坂「…」

食蜂「どぉかしらぁ?御坂さん。洗脳解いた方がいいかしらぁ」


いつもの如く甘ったるい声を出しながら、食蜂はリモコンをくるくると回しながらクスクスと笑っていた。


御坂「アンタ…【電子ドラッグ】にハマってるんじゃないの?」

食蜂「御坂さん、あなた私が誰か分かってるのかしらぁ?あんなモノじゃ私の精神力はビクともしないわ」

御坂「でも、さっき変な映像を…」

食蜂「ああ、アレのことぉ?なんかぁ、暴れはじめた人に紛れてまともなフリをしてた娘がいたの。それがこの娘たちよ」


そう言って食蜂は自分が座っている生徒の頭をリモコンでコンコンと叩いた。


食蜂「それでこの娘たちの脳を調べさせてもらったのよ。まったく、私の派閥に属していながらこんなものにハマってるなんて」


そう言って食蜂は不機嫌そうに頬を膨らませる。一方でリモコンを握ってない方の手で座っている生徒のことを思い切りつねっていた。


御坂「…ちなみに、なんでその人に座ってるのかしら?」

食蜂「私以外になびいた罰よ」

御坂「あ、そ…」

食蜂「まぁ、私の趣味も兼ねてるけどぉ」

御坂「…いい趣味してるわね」

食蜂「あらぁ、御坂さんのキャラ物趣味には負けるわよぉ?」

御坂「だ、誰がキャラ物趣味ですって!?」





ジジッ、っという音がノートパソコンからした。二人がパソコンを見るとパソコンにはノイズが走っていた。


御坂「…?」


そして、しばらくするとディスプレイに黒髪で不気味な雰囲気を纏った男の顔が映し出された。


???「…ほう。【超電磁砲】御坂美琴と【心理掌握】食蜂操祈か」


ディスプレイに映った顔は不気味な笑みを浮かべている。背景は暗く、どこから話しているのかは分からなかった。


食蜂「…どちら様かしらぁ?」

???「ククク…御坂美琴はともかく、君は分かっているのではないか?」

食蜂「…へぇ、じゃぁ貴方が…」

御坂「ちょっと!なに一人で納得してんのよ!誰よアンタ!」

???「クク…失礼、ならば自己紹介でもしておこうか」





???「私の名前は【電人】HAL。春川英輔の脳をデータ化したプログラム人格だ」



御坂「…プログラム人格?人工知能ってこと?」


HAL「ああ、その認識でも構わないよ」


食蜂「それで?あんな放送を流したり妙なプログラム映像を蔓延させたりして何が目的なのかしらぁ?」


御坂「な…コイツが…!?」


HAL「なに、大したことではない。私は1の世界では無力な箱にすぎない。現実の手足として私を守る兵隊が必要なのだ」


御坂「…1の世界…?」


HAL「欲望や願望というのは…生物の意志や行動を司る原動力だ」


HAL「簡単に言えばその欲望を軸にして…映像刺激、もしくは音響刺激でシナプス回路を組み替え、脳の片隅に兵隊としての別人格を作りあげる」


HAL「これが春川と私で完成させた…警備員が【電子ドラッグ】と呼んでいるプログラムだ」




食蜂「フフ、でも戦闘力として使える兵隊さんは一握り。違うかしらぁ?」

HAL「…その通り。大半は人格を構築し終える前に…犯罪者として捕まってしまう。従って、まとまった兵隊を得るためには今回のような勧誘もせざるを得ないんだ」

御坂「アンタねぇ…!」バチチッ

HAL「先ほどの放送は能力者を限定に狙ったものだ。君等はともかく、この街では能力を開発する割には能力を自由に使わせないようだね。現状に満足していない者は大勢いたはずだ」

御坂「っざけるな!アンタのせいでこの街が!どれだけの人間が被害を受けてると思ってんのよ!」

HAL「1の世界がどうなろうと、1と0の狭間で生きている私の知るところではない」

御坂「コイツ…!」

食蜂「いい思考力してるわぁ…」



HAL「…さて、図らずしも私の最大の敵がここに集まった。電子制御の最高能力者、御坂美琴。精神コントロールの最高能力者、食蜂操祈」

御坂「…」

食蜂「…」

HAL「如何に天才たる私と言えど、ここは学園都市なのでね。私の予想もつかぬ事態も起こるかも知れない。そうなる前に、手を打たせてもらうよ。楽しみにしていたまえ」


HALが喋り終わるとディスプレイは暗転した。その後、ブツンという音と共に電源が切れてしまった。


御坂「…なんなのよアイツ…」

食蜂「さぁ…そもそも春川英輔なんて知名力の無い人間知らないわ」

御坂「…確かに…あんなもの作り出せるならかなり有名なはず…図書館で論文でも探してみるか…」


御坂「…あと気になるのは最後のアイツの捨てゼリフだけど…」

食蜂「…きっと気にする必要もないわ。第五位の私、第三位の御坂さんが【電子ドラッグ】にかかってないんだもの。Level5に洗脳される様なおバカさんなんかいないしねぇ」

御坂「…まあ、そうかも知れないけど」

食蜂「ま、警戒するとしたらAIMジャマーくらいねぇ。さすがに演算を阻害されると」


御坂「! 危ない!」


瞬間、御坂は食蜂をはじきとばした。


食蜂「きゃっ!?」


そして、そのまま窓際の壁に手を突き出す。

それとほぼ同時に一本の太い光の筋が壁をすりぬける様に迫ってきた。


御坂「っの!」


その光は御坂が腕を上げるとその動きに沿う様に上へと進行方向を変え、天井に風穴を空けた。


食蜂「ったぁ~…ちょっと御坂さん!?なんのマネ…」


食蜂は絶句した。先ほどまであった壁と窓、天井にも大きな穴がぽっかり空いていたのだから。


御坂「…どうやら私たちの読みは甘かったみたいよ?」

食蜂「…どういうことかしらぁ?」

御坂「Level5の兵隊さんがいらっしゃったわ」






-【学舎の園】常盤台中学学生寮正門



???「また私の能力ねじ曲げやがった。相変わらず忌々しい能力だな、おい」


???「前方10m、上方8mの位置に【超電磁砲】のAIM拡散力場を確認。その後方に多数のAIM拡散力場。左方に特異なAIM拡散力場を確認。恐らくはこれが【心理掌握】」


???「わざわざ中坊相手にカチこみかけるなんざ本意じゃねぇが、アレがHALの敵だってんなら」





???「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」





今回はここまでです。
投下中に寝てたんで電車の中から投下。
けっこう勇気いりますね。


レスありがとうございます。
映画のHALは分かりませんがこのHALも映画化してもらいたいです。
CG抜きでショーウィンドウに叩き込んでからのアヘ顔を…無理ですね。
第五位はこんな感じです。


一応注意書きですが
このSSの食蜂さんは『妹達』にまだ手を出してません。
つーのも、自分が単行本派なんで。
食蜂さんがリモコンパクられて詰んだとこまでしか読んでないんで。
よろしくお願いします。


-???


【能力追跡】滝壺理后、【原子崩し】麦野沈利に見せたのは結標淡希に見せたモノと同じ


この街の能力者に合わせて作った【電子ドラッグ】Ver.3


私の支配下に置くだけでなく能力を飛躍的に向上させるものだ


そもそも【原子崩し】と【超電磁砲】は戦闘面においてほぼ優劣はない


『麦野沈利』と『御坂美琴』なら常に裏社会に身を置いている麦野沈利の方が圧倒的に有利だ


更に【能力追跡】。万に一つも勝ち目はあるまい


【心理掌握】など戦闘の場においては足枷にしかならぬ


そして…



>>148
普通は犯罪的な事したいと思っても警察に捕まるとかデメリットを考えて自分で抑える事が出来る
電子ドラッグはそんな抑える部分を壊す って感じの説明だったはず

それに+洗脳効果



HAL「ククク、素晴らしい」


プログラム人格HALは電脳世界に存在している。そして、その電脳世界に構築された城の上でHALは満足そうに笑顔を浮かべた。

彼の城の前にいるのは大樹。世界樹と呼称してもいいほどの巨大な樹だ。


HAL「来ると思っていたよ【守護神】。ここまで派手に動いて君の捜査をかいくぐれる訳がない」


言葉が届いているのかどうかは分からない。

だが、世界樹は意志をもっているかの様に枝を拡げる。今にも襲いかかってくる気配だ。






HAL「だが【守護神】!!私の本体を見つける事は!君には不可能だ!!」


ドドドッ、とHALの城の前に突如、異様な大きさのオブジェが数体現れた。

どれも同じ古代エジプトのとある造形の形であり、中には翼や牙が生えているものもある。どれも大きさは世界樹に匹敵している。


HAL「この12体の『スフィンクス』が私の周りを固めている限り…私にたどり着くことは不可能だ」


それぞれのスフィンクスから翼の生えた異形な生物が数万匹ほど飛び立つ。

更にその生物は悪意をもって世界樹を攻撃しはじめた。

一体一体が【原子崩し】を連想させるようなビームを放ち、世界樹の葉を、枝を、幹を破壊していく。


HAL「【守護神】…学園都市におけるこの世界を統べるものよ」


HAL「私は…生きなくてはならない」


HAL「故に、私が誰かの干渉によって滅ぶ事など…あってはならないのだ」







-【学舎の園】常盤台中学学生寮


食蜂「ふぅん…アレが【原子崩し】」


御坂の隣に立ち、大きな穴から食蜂は二人の侵略者を見下ろす。


御坂「そう、あの茶髪の方。アイツの能力がまともに当たったらこの壁みたいになるわね」

食蜂「ふぅん…」


すると食蜂はおもむろにリモコンを正門にいる侵略者向ける。


食蜂「えいっ☆」


そしてやはりなんのためらいも無くリモコンのスイッチを押した。

瞬間、正門にいた二人は額に何かが当たったかの様に首から上だけをのけぞらせた。


食蜂「…ん~?」

御坂「…なにしたの?」

食蜂「せっかくだから私の支配下に置こうとしたんだけどぉ…ちょっと御坂さんお願い」

御坂「へ…わっ!?」


ゴッ、という唸りを上げ先ほどよりも巨大な【原子崩し】が二人を襲う。

それを御坂が間一髪のところで先ほどと同じ様に下から上にすくい上げる様に逸らした。


だが


御坂「…つぅ~…」


御坂の手には重たい衝撃が走っていた。

原理上、【原子崩し】は先ほどの御坂の出力なら手には当たらず寸でのところで方向を変えたはずである。

しかし、御坂の手には衝撃が走っている。【原子崩し】の規模が、威力が強すぎるために原理を超えて御坂の手にまで突き抜けてきたのだ。

例えば、電気に対して別の電流を流すことで電気の流れを促しても、電気の規模が桁違いなら流れを変えることができない。

それと同じである。


御坂「アンタなんてことしてくれてんのよ!この状況でも私に一泡ふかせようっての!?」


常盤台ではあまり表立っていないが、食蜂は常日頃から御坂を敵対視している。

御坂に自分の能力が効かないからか、自分の派閥にとって邪魔だからかは分からないが、常に御坂をなんらかの形ではめようとしているのだ。


食蜂「私じゃないわぁ」

御坂「はあ?」

食蜂「確かに操ろうとしたんだけどぉ…私の能力より【電子ドラッグ】の洗脳力の方が強いみたいねぇ」

御坂「な…!?」


食蜂操祈は学園都市最高の精神系能力者。精神に関することで彼女を上回る者などいない。

御坂の電磁バリアなどの例外を除いて彼女の能力は誰にでも通用する。

その彼女の能力が効かないとなると、もはや【電子ドラッグ】の洗脳を解く術はない。



御坂「でも常盤台の生徒にはちゃんと効いてるじゃない!」

食蜂「きっと症状が違うのねぇ。たぶんあそこの二人はこの娘たちより重度の中毒者なんだわ」

御坂「そんな…」


戸惑う御坂。しかし、侵略者はそんな事情を汲んでくれない。

再び青白い光が二人を襲う。


御坂「く…!」


再び御坂は下方から襲い掛かる光を逸らす。もはや天井は穴だらけで今にも落ちてきそうだ。

現に先ほどからパラパラと木屑やホコリが落ちてきている。


食蜂[行きなさい]


ザッ、という少し大きな音が御坂の後ろからした。

振り返ると先ほどまで跪いていた全ての学生が一斉に立ち上がり、一糸乱れぬ集団行動で部屋から退出していた。


御坂「…何をさせてるの?」


ここで考えられる最悪のパターンがある。

能力が通じないことでヤケになった食蜂の暴走。

数に任せて【原子崩し】に特攻することだ。

だが、一撃必殺の【原子崩し】に数で押せるかは分からない。

それどころか、確実に多数の死者が出る。今だって御坂じゃなければとっくの昔にこの世から消えている。

それだけはさせてはならない。


食蜂「決まってるわぁ。全員裏口から敷地外へ避難させたの。私の能力なら混乱もなくスムーズに避難できるしねぇ」


だが、食蜂はヤケになんかなっていない。むしろ余裕すらある。


御坂「…本当に?」

食蜂「当然よぉ。Level5が3人もいる戦闘なんてお嬢様には耐えられないもの」


そう言って食蜂は自分のはめているレースの手袋を外す。

それをリモコンと一緒にバッグの中に突っ込み、中から新しい手袋を取り出した。

しかし、その手袋はいつもの肘まである手袋ではなく手首までしかない。

それにレースもあしらってない。それどころかメタリックな感じすらする。食蜂の好みとは一致していない様に見えた。


御坂「なんなの?それ」

食蜂「マイクロマニピュレータ。ざっくり言えば手で行う精密動作を補助してくれる手袋よぉ。それを更に私向けに改良してもらったもの」

御坂「それでそんなもので何すんのよ!…あぁしつこい!」

食蜂「ちょっと御坂さん。この寮を取り壊すつもりぃ?」

御坂「あそこのイカれたオバサンに言いなさいよ!…ーったぁ~…!」


今度は何本もの【原子崩し】が御坂を襲う。どうやら向こうは本気で自分たちを殺すつもりのようだ。


御坂(あの時と違ってこっちは体力満タンだってのに…!なんっつー威力よ!)


食蜂「…はぁ。まあ後処理は私の改竄力でどうとでもなるしねぇ。とにかく、この手袋であの二人の頭を掴んでゼロ距離で私の能力をお見舞いしてあげるわ」


食蜂が普段リモコンを駆使して能力を使っているのはそっちの方が利便性がいいからだ。

離れた相手に細かい指令を送る。その動きを補助するのにリモコンという装置が一番適している。

だが、今回の様に出力勝負となれば話は別。

だからこそ一番能力が浸透するゼロ距離から更にマイクロマニピュレータで補助させるのだ。

【心理掌握】の最大出力。それを120%で相手に浸透できる。


御坂「それであいつらの洗脳を解けるの!?」

食蜂「これでも私の能力が通じなかったら【心理掌握】の称号なんて取り外すわぁ。ただ問題はぁ、どうやって【原子崩し】のおばさまに接触するかなのよねぇ」

御坂「上ッ等!っの!だったら私が盾になってあげるわ!私が正面から突っ込むからアンタは隙を見て回り込みなさい!」

食蜂「さすがは御坂さん!頼りになるわぁ」

御坂「言ってろ!ホラ、早く行くわよ!」





-【学舎の園】常盤台中学学生寮正門

麦野「チッ、引っ込みやがったかガキども。滝壺」

滝壺「先ほどの位置から3m左に【超電磁砲】【心理掌握】両名のAIM拡散力場。学生寮の敷地外に大量のAIM拡散力場を確認」

麦野「…なるほど、Level5だけでケリつけようってか。ハッ、望むところだ」

滝壺「…そして南西の方角に」

麦野「あぁ、分かってる」


すると麦野は左手だけを左後ろに回し、敷地を分かつ壁に【原子崩し】を思い切り放った。


???「っひょわあ!?」

???「…やっぱり滝壺さんがいたんじゃ忍び寄るのは超不可能ですね」


放ったと同時に女の声。次いで大きく空いた穴から金髪の少女と茶髪の少女が現れた。


麦野「何してんだ?フレンダ。絹旗」

フレンダ「それはこっちのセリフな訳よ!こんなマネしたら後で上から何言われるか分かんないよ!?」

絹旗「【超電磁砲】を狙いたいのは分かりますが、こんなやり方じゃ麦野の立場も『アイテム』の立場もどうなるか超分かったもんじゃありませんよ!?」


警戒しているのか、二人の少女はこちらに寄ってこない。穴の空いた壁から姿だけを覗かせている。


麦野「滝壺」

滝壺「…いいの?私が行ったら相手の位置が特定できなくなるよ?」

麦野「むしろ行け。【超電磁砲】は私の獲物。【超電磁砲】の狙いは私だ。第五位までいんのに尻尾まいて逃げるタマじゃねえよ」

滝壺「わかった。じゃ、私が相手になるよ。ふれんだ、きぬはた」





-【学舎の園】常盤台中学学生寮正面玄関


食蜂「今さらだけどぉ、その手 大丈夫なのかしらぁ?」

御坂「平気よ。むしろアイツの能力でこの程度で済んでるのが奇跡よ」


そう言って御坂は真っ赤に腫れあがった手をプラプラと振ってみせた。


食蜂「…そぉ」

御坂「それよりアンタこそ大丈夫なんでしょうね。ただ近づくってだけでもアレが相手じゃかなり難しいわよ?」

食蜂「…御坂さん次第ねぇ。あなたがうまいこと気を引いててくれるならなんとか…」

御坂「言ったわね?」

食蜂「え?」

御坂「アイツの能力と私の能力はちょっとだけ似てるの。そのせいか…アイツが何しようとしてるかちょっとだけ分かるのよね」

食蜂「…?」


ガチャリ、と御坂は玄関の扉を開けた。

最初に見えたのは強烈な光。それも青白く不気味な光。

しかし、その実体は光の球体だった。直径3m以上はある巨大な【原子崩し】が麦野の前に浮かんでいた。


食蜂「な!?」

自分たちと光の球体との距離はおよそ6~7m。先ほどまでの【原子崩し】の速度を考えると躱せるかどうか。

というよりも躱したら恐らく学生寮はおろか、その後ろの直線上にある【学舎の園】の建造物が軒並み消滅するだろう。


麦野「さあ!あの日の続きだ!【超電磁砲】!」


光の球体で姿はほとんど見えないが、高らかに麦野の声が響いた。


麦野「テメエの自慢の【超電磁砲】と私の【原子崩し】!どっちが上かケリつけようじゃねぇか!」





御坂「…いいわよ!ここで白黒つけてやろうじゃないの!」


そう言って御坂は玄関から飛び出す。

直後に木造の建築物を破壊する轟音。全ての窓ガラスを破壊する轟音。低い音も高い音も混ざりあい、壁や窓ガラスを突き破って御坂の前に何かが集結する。

それはケータイ、パソコン、銀の食器、電子レンジ、オーブン、巨大冷蔵庫…

ありとあらゆる金属が御坂が全力で生み出した磁力によって一つになっていく。

さらには地面の石畳をめくり上げて出てきた砂鉄がその周りを高温でコーティングしていく。

出来上がったのは巨大な銃弾。直線で突き進むのに一番適している形だ。


食蜂「な…な…」

麦野「フ…フフフフ…。あははハハハハハハハハ!!ハフハフハフ…そうだ!そうこなくっちゃなあ!こっちはテメエを壊したくて壊したくて仕方なかったんだからよォ!!」


あまりのことに玄関で立ち尽くす食蜂。

それに対して文字通りに麦野は狂喜する。声だけで狂気にとりつかれたような顔が容易に想像できる。


御坂「私がこいつをぶっ放したら…アンタはその隙にアイツに近づきなさい」

食蜂「へ!?え!?」


麦野「さああああいくぞォ!レェェェェェェェルガァァァァァァァァァァァァンン!!」



御坂「ずぇええりゃああああああああああああああああああああああああ!!」


スケールを逸脱した【原子崩し】と【超電磁砲】がぶつかり合う一一一!!





音よりも早く衝撃波が辺り一面を破壊する。

植え込みもめくれあがった石畳も全てが吹き飛んでいく。

【原子崩し】と【超電磁砲】がぶつかり合った地点に至ってはすでに直径1mほどの深さのクレーターが出来上がっている。

台風が可愛く思えるような大規模破壊に寮が悲鳴をあげるようにミシミシと鳴っていた。


食蜂「こ、こんな中でどうやって近付けっていうのぉ?」


その学生寮の中で食蜂操祈はうずくまっていた。

こんなCGを使ってようやく再現できそうな暴力の嵐の中でどうやって動けというのだ。

いかに自分がLevel5と言えどジャンルが違う。

精神面で右に出る者はいないと言えど身体面では凡庸極まりないのだ。



???「あら、なら手伝ってさしあげましてよ?」


ポン、と食蜂の背中に誰かの手が触れた。


食蜂「あ、あなたまさか…」


振り向き様にその誰かの顔を確認し、食蜂は顔色を絶望に染めた。


???「ああ、あまり動かない方がよろしいかと…」

食蜂「きゃあああああああああぁぁぁぁ…!」








麦野「ギャハハハハハハハハハハハハ!さすがは第三位様だなぁ!」

御坂「く…!」


【原子崩し】と【超電磁砲】の威力は互角。ぶつかり合った2つの一撃必殺の奥義は互いにその威力を相殺していた。

しかし先ほどの暴風で御坂は寮の玄関の壁に叩きつけられていた。

対して麦野はその場から一歩も動いていない。


麦野「だがよぉ、次弾はどうすんだ?」

御坂「…」


【超電磁砲】を撃てるような金属は先ほど全部使ってしまった。もはやあんな大きさの【超電磁砲】は撃てない。


麦野「撃てねぇよなあ?どうしようもねえよなあ!?」


フォン、と先ほどと同じ大きさの【原子崩し】が作りだされる。


麦野「終わりだ【超電磁砲】!テメエのションベン臭ぇ身体ぁブッちゃけてその座を明け渡しやがれぇ!」



御坂「…終わるのはアンタの方よ」


麦野「あ?」



ガッ、と麦野の頭を誰かが掴んだ。



食蜂「脚すりむいちゃったわぁ…婚后さん後で覚えておきなさい」



それはマイクロマニピュレータを装備したLevel5の第五位【心理掌握】食蜂操祈だった。




麦野「な、テメ」

食蜂[おすわり!]













麦野「…くぅ~ん…」



今回はここまでです。
ケンちゃんも出したかった…


レスありがとうございます。
ちょうど良いのでLevel5についてですが、このSSでは第六位も出す予定です。
つっても最後にちょろっとですけど
>>1の前作 麦野「フレンダは…私が殺した」 の設定を引き継ぐつもりです。
でもそーゆーのが嫌だって人がいっぱいいれば出さないつもりですが… どうですか?
>>150
それで完璧です。
説明補助ありがとうございます。助かります。


盲腸で迷惑かけたからって調子に乗ってバイト代わりまくってたら
いつの間にか週8でバイト入ってました。
GWで50時間は働くぜぃやっほぅ!


-【学舎の園】大通り


絹旗「…ッ!ケホッ」

滝壺「ムダだよ、きぬはた。私の前じゃきぬはたはただの女の子だよ」


大通りで一人の少女が四つん這いでむせこんでいた。

それを黒髪のピンクジャージがうっすらと笑みを浮かべて見下ろす。


絹旗「…一体どうしたっていうんですか…!滝壺さん…!」

フレンダ「下がってて絹旗!結局、アンタじゃ相性悪すぎな訳よ!」


ベレー帽をかぶった金髪の少女が見かねてピンクジャージの前に躍り出る。


フレンダ「ゴメンね滝壺!ちょっと大人しくなってもらうわよ!」


そして加速がついたまま上段回し蹴りを


滝壺「ムダだよ」


ガシッ、と滝壺は事もなげにフレンダの脚を無造作に掴んだ。


フレンダ「なあ!?」

滝壺「フッ!」


そして更にそのまま脚だけを掴んだまま片手でフレンダを投げ飛ばそうとする。


フレンダ「くっ…」


下手に堪えようとすれば股関節か膝がイカれかねない。なので、フレンダはそのまま自分から投げ飛ばされた。

それほどまでに滝壺の力は常軌を逸している。

コンクリートの上をゴロゴロと転がりながら受け身を取り、フレンダはなんとかダメージを最小限に抑えた。


フレンダ「嘘でしょ…?滝壺に私の動きを見切れる訳が…ましてあんな力…!」


絹旗「…そもそも、体晶の持続時間なんか超過ぎてるじゃないですか…まさかシラフですか!?」



滝壺の前後から驚愕の声が上がる。普段の滝壺どころか体晶を使った状態よりも凄まじい状態にいるのだ。当然である。



滝壺「ぬ…」



フレンダ「…ぬ?」

絹旗「…?」







滝壺「ぬっふぁ一一一一一一一一一一ん!!!!」






フレンダ「」




絹旗「」









滝壺「たぎる!!力がたぎるぞぉ!!ぬふぁ一一一一ん!!」






フレンダ「」


絹旗「」






滝壺「できるっ!!今のたぎった私なら…今までできなかったあんなことやこんなことができ…ぶ!!!」


バチィ!と錯乱状態のピンクジャージを遠方から青い雷撃の槍が貫いた。



御坂「ちょろっと…ハシャぎすぎじゃないかしら?」


滝壺「【超電磁砲】…?そんな…むぎのは…」


食蜂「この通りよぉ」



麦野「くぅ~ん…」



滝壺「」



フレンダ「」



絹旗「」



御坂「アンタたちの負けよ。さっさと寝なさい」


滝壺「…ごめん…HAL…しょせん私じゃ……たぎってもこの程度…」


ドサリ、と滝壺はコンクリートの上に倒れこんだ。




食蜂「さぁて、重症中毒者サンプルの二人目。今度はじっくり参考力にさせてもらおうかしらぁ」


ガシリ、と食蜂は目を爛々とさせて滝壺の頭をわしづかみにする。


滝壺「うぅ…くぅ、うぁ…!」

絹旗「ちょ、ちょっと!超何してんですか!」


時折苦悶の声を上げる滝壺を見て、絹旗が非難の声を上げた。


御坂「それはこっちのセリフだっつーの!」


バチチッ、と御坂の髪の辺りから威嚇するかのように紫電がほとばしる。


フレンダ「ヒ…」

絹旗「…」

御坂「あんな実験を擁護して、今度は常盤台の寮にまで攻めこんできて…アンタら一体何様のつもりよ!」

フレンダ「…」

絹旗「…あの研究所でどんな実験が行われていたかは超知りませんし、知るつもりもありません。謝るつもりもありません。ですが、今回はこちらに全面的に非があります。超すいませんでした」

御坂「ふざけるな!私と食蜂さんが居なかったら【学舎の園】の人間は全員死んでたかもしれないのよ!?」

フレンダ「こ、こっちだって結局何がなんだか分からない訳よ!朝起きたら麦野と滝壺が急におかしくなっちゃってて…」

御坂「分からないで許せる問題!?アンタら人の命をなんだと思ってんの!?」バチチッ!

フレンダ「ヒィ!」

絹旗「…」


食蜂「そうねぇ…確かに簡単に許せることじゃないわよぉ?『アイテム』の皆さん?」

フレンダ「!」

絹旗「!」

御坂「…『アイテム』?」

食蜂「この人達の組織の名称よぉ」

フレンダ「な、なんでアンタがそんなコト…」

食蜂「私を誰だと思っているのかしらぁ?この娘の記憶を洗うことくらい片手間でも…あらあらずいぶんエグイことしてるわねぇ。グロテスクだこと」

絹旗「! 超やめてください!裏の社会のことなんて知らない方が」

食蜂「裏の社会ぃ?毛も生え揃ってないお子様が何カッコつけてるのかしらぁ?」プークスクス

絹旗「な、な…?」カァァ

御坂「…へぇ、ずいぶんかわいいわね」クスクス

フレンダ「ちょ、ちょっと!なにもそんなコトまで…」

食蜂「あらぁ!?何これぇ!?あなたたちも『オシオキ』なんてあるのねぇ!十代でスパンキングされてるのなんてあなたくらいよぉ?」

フレンダ「」

御坂「…スパンキング?」

食蜂「思い切りお尻ひっぱたかれるの☆」

御坂「…プッ、何?アンタたちただのお子様集団なの?」ケラケラ

絹旗「」

フレンダ「」


食蜂「ん~サンプル収拾はこんなものかしらねぇ」


スッ、と食蜂は滝壺の頭から手を離した。


絹旗「き、気は済みましたか!?だったら超さっさと二人を返してください!」

食蜂「済むはずないわぁ。私も御坂さんもケガしちゃったしぃ。下手したら殺されてたかもしれないしねぇ」

フレンダ「な…」

食蜂「本来ならこのまま地上25階から逆さ吊りの刑にでもさせるところだけどぉ」

御坂「ちょ、ちょっといくらなんでもそれは…」

食蜂「フフ、御坂さんならそう言うわよねぇ。じゃ、もっと危険力の低いものにしましょうか。ねぇ、麦犬にりこにゃん?」

絹フレ「「…え?」」



麦野「ワン!」


滝壺「…にゃ~ん」



絹フレ「「」」


御坂「…へぇ、かわいいじゃない。麦犬」ニコニコ

麦野「ワンワン♪」

食蜂「どうしようかしらぁ?このまま往来を散歩させる?白昼堂々ワンニャン動物レズプレイなんかもありねぇ」クスクス

滝壺「にゃ~ん…」






???「…あら?ようやく皆さんを学校まで避難させたので救援に参りましたのに…一足遅かった様ですわね」


ふと今までしなかった別の女の声がした。


食蜂「あらちょうどよかったわぁ婚后さん。あなたも一緒…に…?」


婚后の声を聞き分け、振り向き様に先ほどの仕返しをしようとしたのだが


婚后「…?一緒に…なんですか?」

食蜂「」

御坂「こ、婚后さん…その…身体に巻き付いているのは?」

婚后「? エカテリーナちゃんがどうかなさいまして?」

エカテリーナ「」チロチロ

御坂「…え?さっきは連れてなかったわよね?」

婚后「あんな危ないところにエカテリーナちゃんを連れて行けませんわ。日課の早朝お散歩からようやく帰ってきたらアレでしたので…裏庭の方に避難させておりました」

御坂「…で、ずっと一人…一匹か。にさせるのも心配だから連れてきた、と」

婚后「その通りですわ。で、食蜂さん。一緒になんですか?」ズイッ

食蜂「ヒ、ちょ、来ないでよぉ!」

エカテリーナ「」クワァ!

食蜂「ヒャア!」

婚后「ああ、よしよし。大丈夫でしてよエカテリーナちゃん。…あまり刺激しないでくださいな。この街の狂気に充てられて少々興奮気味ですので」


御坂「…Level5のあられもない姿をこうもいくつも見れるなんて…とりあえず、婚后さん。これもってて」

婚后「? 御坂さんのケータイ電話?」

御坂「うん。もうムービーになってるからさ、構えて真ん中のボタン押してくれる?」

婚后「は、はあ…」ピロリーン

御坂「よし、麦犬!」

麦野「ワン?」

御坂「お手!」サッ

麦野「ワン♪」ポン

婚后「」キュン

御坂「よ~し、えらいえらい」ナデナデ

麦野「クゥン」スリスリ



フレンダ「…結局私たちどうなる訳?」

絹旗「…超カオスです」

滝壺「ニャン」


今回はここまでです。
アニメ版婚后さんのはずがマンガ版婚后さんっぽい…


レスありがとうございます。
自分はHALにヤフオクで3DS買ってほしいですね
クリムゾンてなんですか?
グレムリンみたいなもんですか?


とりあえず、特に反対意見もない様なので第六位出そうと思います。
どっかで出てきたらよろしくです。


-第七学区、窓の無いビル



窓の無いビルの中に巨大なビーカーの様なものが存在する。

それは生命維持装置であり、中身は弱アルカリ性の液体で満たされている。

そのビーカーの中で液体に包まれて逆さまに浮いているのは男にも女にも、子どもにも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』アレイスター=クロウリー。

学園都市統括理事長その人である。

ビーカーの前にはいくつもの映像が映し出されている。

それはリアルタイムの学園都市の映像。どの画面にも暴走する能力者や煙をあげる建物、鎮圧に動いている警備員の姿が映っていた。

その映像を観ながら学園都市統括理事長はいつもと同じ様に微笑んでいる。

むしろ、ほんのわずかにいつもより機嫌がいいように見える。


アレイスター「おや…」


突如いくつもの画面が全て暗転する。そして、全ての画面に白い文字であるメッセージが書かれた。




『画像を見る時は部屋を暗くして、画面に密着して見てね』




ふいにいくつもの画面は全て集合し、一つの大きな画面となる。


ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…!!!



アレイスター「ほう…」


【電子ドラッグ】の映像をまともに見て尚、アレイスター=クロウリーは微笑んでいた。

すると、【電子ドラッグ】が流れ終わった画面に黒髪で不気味な雰囲気を纏い、Yシャツにスーツズボンの男が大きく映し出された。


HAL「ふむ、まるで動じないか」


背景は暗く、どこから話しているのかは分からない。それを見てアレイスターは面白そうに微笑む。


アレイスター「やあ、どちら様かな?」

HAL「…失礼、学園都市統括理事長。自己紹介が遅れたね。私は【電人】HAL。春川英輔の脳をデータ化したプログラム人格だ」

アレイスター「【電人】…フフフ、大したものだ。完全な人格をもつAIなど学園都市の技術でも難しいというのに」

HAL「いかに学園都市の技術が二~三十年先を行こうとも、そこに住む人間の脳まで二~三十年進んでいる訳ではあるまい」


アレイスター「なるほど…。しかし、よく学園都市に入って来れたな」

HAL「ああ、この世界に馴染むのには苦労したよ。なにせ外の電脳世界、つまりもともと私がいた世界とは…まるで勝手が違うんだ」


そう言ってHALは苦笑する。

ふと彼の両隣にいくつかの巨大なオブジェが現れ、顔だけを覗かせた。


HAL「学園都市を除く国内のスパコン。その8割を支配し…私自身と接続することによりパワーアップ。そしてこの世界でも通用する『スフィンクス』も同様の手段で作り…ようやくここまで来れたよ」

アレイスター「ご苦労なことだ。そこまでして私に会いに来るとは…何が目的かな?」

HAL「ククク、話が早くて助かる」




HAL「学園都市が打ち上げた【樹系図の設計者】、及び私が指定するいくつかのスパコン。その使用権の一切を私に譲ってもらおう」

アレイスター「…フフフ、なるほど」

HAL「…先ほども言ったが私は学園都市を除く国内のスパコンの8割を支配した。にもかかわらず、外の世界は今日も平常運転だ。これがどのようなことを意味しているか…分かるだろう」


国内のスパコンを8割を一人に寄贈する。などと馬鹿げた話はない。つまり、HALは無理矢理に強奪したのだ。

にもかかわらず、警察はこれを黙認している。つまりは警察などの治安機関は既にHALの手の内だ。

それだけでなく、一般の人間すらそれを許容している。つまり、大抵の人間はHALの合図一つで暴徒となるように兵隊と化しているのだ。


HAL「そして、この街の学生にも研究者にも…君たちの言う【電子ドラッグ】はかなり蔓延している。私のさじ加減一つで暴動の規模は大幅に変わるぞ」


今現在暴れているのは今日HALが勧誘した者のみ。それ以外にもHALの兵隊はまだまだいる。

おまけにその兵隊たちは今暴れている者とは違い重度の中毒者たち。

ただ暴れるだけでなく、効果的に頭脳的にテロを遂行するように指示することもできるのだ。


HAL「理解いただけたかな?アレイスター=クロウリー統括理事長。君に拒否権は」




アレイスター「断る」


HALの口上を聞き終えるまでもなくアレイスターはバッサリと切って捨てた。


HAL「…なに?」


ピクリ、とHALの眉根が動いた。


アレイスター「そもそも【樹系図の設計者】は既に存在しない。今年の7月に…謎の高熱源体が直撃して大破してしまってね。その『残骸』も今年の9月に粉々になってしまった」

HAL「…バカな」

アレイスター「嘘だと思うなら【樹系図の設計者】との通信履歴を探ってみるといい。【電人】なら造作もないこと…むしろ既に探してみたのではないか?」

HAL「…」

アレイスター「フフフ…別に【電人】の知らないカモフラージュやステルスプログラムがある訳ではない。本当に無いのだよ」

HAL「…ならば仕方あるまい。この街のスパコン。その7割を」





アレイスター「フフフ…。【電人】…。【電人】よ…」



笑いを堪えながらアレイスターはHALに呼びかける。


心なしかいつもより機嫌がいいように見える。1と0で表現できぬ者は1と0の狭間で生きる者を手玉にとって楽しんでいる。


アレイスター「忘れたのか?私は『断る』と言ったのだ」


HAL「…!」


アレイスター「能力者や研究者…その他大勢の者たちの暴動…結構じゃないか。『プラン』の短縮にはもってこいだ」



そう言ってアレイスターはいつもよりも深い笑みを浮かべる。


現在進行している【幻想殺し】や【一方通行】を主軸にした『プラン』。


それは彼らに多方面から刺激を与え、経験値を積ませることで進んでいく。


つまり、今回の様な暴動はうってつけなのだ。





HAL「…経産省や防衛省、果ては官邸から国会与党までも私の支配下だ。この街との物流を止めることも!この街を対象にフランスやロシアと結託して戦争を始めることも可能なのだぞ!!」


アレイスター「できるものなら」



どれほど脅しをかけようともアレイスターの表情は変わらない。焦り一つ見受けられない。


もはや、出来もしない子どもの見栄を大人が軽くあしらっているようだった。



HAL「…忠告はしたぞ」


アレイスター「ならば、私も忠告しておこう」


相変わらず微笑んだまま、アレイスターは尊大に言い放つ。





アレイスター「この街をあまりナメない方がいい」





HAL「なにを……!………!!??」



突如、HALの身体にノイズが走る。一部に至ってはドット化までしはじめた。


さらに、その右隣で『スフィンクス』の姿が消えた。


もう反対側では別の『スフィンクス』が音を立てて崩れ落ちた。




-同時刻、第二○学区スポーツ物理研究所



垣根「異物の混ざった空間。ここはもはやお前の知る場所じゃねえんだよ」

朝永「ガ…ハ…」

垣根「ったく、これからアレイスターのクソ野郎に一泡吹かせようって時にウチの狙撃手たぶらかしやがって…」

心理定規「『文字どおりにスパコン潰したッス』ですって。引き上げましょう」

垣根「つーかお前の能力でアイツのこと引き止められなかったのか?」

心理定規「足止めにもならなかったわ」

垣根「ちっ、めんどくせぇ。どのみちアイツはしばらく動けねえ。こうなったら外部から狙撃手雇うしかねぇな」




-同時刻、第五学区第三資源再生処理施設



黄泉川「わざわざ外部から侵入してきて子ども達を洗脳するなんていい度胸してんじゃん」

小柴「ち…っくしょ…」

鉄装『黄泉川さん!B班での制圧完了しました!』

黄泉川「了解じゃん!こっちもさっさとスパコン確保するじゃんよ!」

小柴「まだだ…まだ殴り足りない!もっともっと人間を…!」

黄泉川「…黙れ!」バキッ

小柴「ぐあっ!」

黄泉川「あったまきたじゃんよ!だったら殴られた方がどんな気持ちになるか!私が身体に染み込ませてやるじゃん!」




-同時刻、第十八学区光学能力補助機器研究所



一方通行「シケた遊びでハシャいでンじゃねェよ」

江崎「…そんな…」

一方通行「ったく、女っつゥのは全員そォゆゥ趣味してやがンのか?気持ちわりィ」

江崎「く…」

一方通行「失せろ三下。話になンねェよ」




-同時刻、第七学区窓の無いビル



HAL「…」

アレイスター「理解いただけたかな?【電人】よ。貴様ごとき私が相手するまでもないのだよ。政治的にも戦略的にも」

HAL「…なるほど。確かに甘く見ていたようだ」

アレイスター「もう二度と話すこともないだろう。私がこの回線を切ればもはや私に近付けまい」

HAL「…」

アレイスター「さらばだ【電人】よ。なかなかに楽しい時間だった」


ブツン、と【電人】HALの姿は消えてしまった。

そして、再び四方八方に画面は散らばった。




-【学舎の園】大通り



ふいに警備員のランプが遠くから聞こえた。


御坂「…どうやらようやく来たみたいね。遅すぎだっつーの」

婚后「まったくですわ。この【学舎の園】で暴れる者たちは皆私たちで成敗してしまいましたもの」

食蜂「…あなたは私を吹き飛ばしただけじゃないかしらぁ?」

婚后「失敬な!私を常盤台の婚后光子と知ってのお言葉でして!?エカテリーナちゃんを守るため孤軍奮闘!寮生を守るため獅子奮迅!その際に成敗した暴徒は数知れませんわ!」

御坂「…そんな目に遭いながら私たちの救援に来てくれたんだ」

婚后「当然ですわ!友人を見捨てるなど婚后家の名折れ!雷神を助けるためとあらば風神はどこにでも駆けつけましてよ!」

御坂「…ありがと」

食蜂「涙ぐましい話だこと。じゃぁ、とりあえずは学校の方に向かおうかしらぁ?当面は寮に住めなさそうだしねぇ」





絹旗「超まてぇぇぇ!」


ふいに三人の後ろから大声がした。


御坂「あれ?まだいたの?」

フレンダ「なにすっきり帰ろうとしてる訳よ!結局まだ二人とも元に戻してもらってねーっつの!」

麦野「ワウ?」

滝壺「にゃん?」

食蜂「えぇ~、私もぉ疲れちゃったしぃ。そのままでいいんじゃない?」

絹旗「超ナメてんですか!」

フレンダ「いい訳ないでしょ!」

食蜂「そっちこそLevel5の『自分だけの現実』ナメないでほしいわぁ。あと二~三時間もすれば勝手に覚めるわよ」

絹旗「…超本当ですか!?嘘じゃないですよね!?」

食蜂「当然よぉ。さっきも【電子ドラッグ】から少し覚めかかってたしねぇ。あのまま指令通りに二人がかりで来られてたらたぶんやられてたわぁ」

婚后「…この方はあのテンションで覚めかかってたのですか…」



フレンダ「じゃ、じゃあ滝壺だけでも元に戻してよ!」

食蜂「もぉ~うるさいわねぇ」


そう言って食蜂はバッグからリモコンを取り出す。


食蜂「えいっ☆」

滝壺「にゃ!?」


ドサ、と再び滝壺をコンクリートの上に倒れこんだ。


食蜂「これで次に目が覚めたらもとに戻ってるわぁ。さ、行きま…婚后さんあまりそのヘビ近付けないでもらえるかしら」

今回はここまでです。
もう一投下分麦犬りこにゃんやりたかった。
でも引かれそうだからやめた。


レスありがとうございます。
ネウロ原作を読んでなかったらぜひ読んでみてください。もっと驚愕します。
てか、エカテリーナちゃんも媚薬飲んだら豹変しますし電子ドラッグでもいけますかね?


先日、きなこ練乳ならぬきなこ豆乳を発見しました。
三口で飽きました。パンと一緒じゃなければなかなか旨かったと思います。


-???



…警備員…暗部…か


結標淡希の能力で研究所以外にもスパコンを配置していたが、こうも早く見つかるとは


各所には強化能力者も多数配置していた。にもかかわらずこの結果…


…能力者を生み出すとなればそれを抑止する力もあって当然か


新しいおもちゃを手に入れて少々浮かれすぎたな



だが、それはまだいい


問題は外部との接続を切り離されたことだ


おかげで学園都市の外に設置してある『スフィンクス』はもはや意味を為さない


おまけに私自身大幅に力が衰えた


残った『スフィンクス』は4体


うち1体は『スフィンクス』としてではなく、私と接続するしかあるまい


如何に【電人】とはいえ元が外のスパコンだ


私自身の管理を怠れば存在するだけですぐにキャパシティを超えてしまう


…さすがだな【守護神】


一時的にすべての外部との接続を切断したのも『スフィンクス』の居場所を特定したのも君だろう


データで撃退されようとすぐに次の一手を打ってくる


…麦野沈利と滝壺理后の【電子ドラッグ】へのアクセス履歴もなし…か


あの布陣をもって尚、この街の中学生にすら勝てぬか


…素晴らしいな、この街は


…願わくばこの街には…私が春川であるうちに訪れてみたかったよ




-???



???「なんか色々大変らしいじゃん、HAL」


ふと、1の世界から声が響いた。


HAL「…? なぜ君が…いや、なるほど。そういうことか」

???「うん。アンタが外部との接続を切断される前に頼んできた仕事…バッチリこなしてきたよ」

HAL「ククク…素晴らしい。やはり君は一流だ。一日二日でやり遂げるとは思っていなかったよ」

???「俺も本当にこんなんが存在するなんて思わなかったよ。さすがは学園都市。よっぽどイカれてねーとこんなん考えつかねーよ」

HAL「ククク…違いない。だが、そうでなければこの街は科学を二~三十年も先まで進められまい」


???「…それなんだけどさ、HAL」

HAL「うん?」

???「俺もそっちに行かせてよ」

HAL「…君を?」

???「だって考えてもみろよ。二~三十年も科学が進んでて超能力者が暴れ回るカオスな街…そんなの俺が望んだ以上の世界だぜ?」

HAL「…」

???「こっちのことなら何も心配はいらないよ。警視総監が堕ちてんだ。いくら笛吹さんが草の根活動したところで大局は覆らない」

HAL「ふむ…」

???「外部との接続を切断されるほど追い込まれてんだろ?兵隊の後詰めも必要なはずだ」

HAL「……よかろう。だが、この街入ること、それ自体がかなりの難関だ。今の私にできることも限られているぞ?」

???「かまわないよ。やってほしいことがあったら同じ方法でまた連絡する」

HAL「…分かった。楽しみにしているよ、匪口結也」

???「ああ。そんじゃまたね、HAL。と、ミサカはミサカネットワークを利用した通信機としての役割を終了します」




-翌日、第七学区街頭



-最近急増した一連の凶悪犯罪について…警備員はけさ正式にネット上に流れる洗脳プログラムの存在について公表しました-


-一部では噂になっていたこの映像ですが、正式発表された事には驚きを隠せません-


-対策として警備員は…不審なリンクを開かない事と、可能ならばパソコンや携帯電話などの端末機器に触る回数自体を減らす事。さらには、身近で端末機器類に多く触れる人に犯罪に走る気配が無いか…




御坂「無茶言うわよね」


第七学区を歩いている途中、街頭モニターのニュースを眺めながら、常盤台のブレザーに身を包んだ御坂はため息混じりに正直な感想をもらした。


御坂「学園都市で端末類に触れないでどう生活しろってんだか」

白井「仕方ありませんの。相手が相手ですもの。これくらいしか言えませんの」


それに回答するのは同じく常盤台のブレザーに身を包み、『風紀委員』の腕章を着けた白井である。

二人は学生カバンを持って『風紀委員』一七七支部に向かって歩いていた。


-…それでは次のニュースです。来週第四学区にオープンされる、至郎田正影氏と陳ヤマト氏の共同展開による総合レストラン『シュプリーム会屠楼』ですが…-


御坂「それにプログラム人格についてはなんの情報もないし」

白井「それについては実際に会話したのがお姉様と食蜂さんだけですから…。洗脳が解けた生徒は【電子ドラッグ】にハマッていた時のことをあまり覚えていないようですし」


先日の騒動で常盤台中学はしばらく臨時休校。住む所を失った生徒は仮の住まいが見つかるまで学校に寝泊まりすることとなった。

なにせ寮の方は小隕石が墜落したかの様な惨状になっていたのだ。

最終的に深さ約3m弱にまで達したクレーター。吹き飛ばされた植え込みと石畳。あちこち穴だらけの壁。粉砕した窓ガラス。半分ほど消滅した屋根。建っているのが不思議な状況だった。

【心理掌握】の能力から目覚めた生徒は自分たちの寮のありさまを見て呆然としたが

『御坂さんと婚后さん、そして常盤台の誇る女王が襲いくる凶悪な外敵を見事撃退し、さらにはその能力で改心させた上、寛大なる御心で許してやった』

との趣旨の説明を聞き

『さすがは女王!』
『御坂さんありがとうございます!』
『一生ついて行きます女王!』
『婚后さんステキですわ!』
『お茶をお持ち!女王にお茶を!』
『踏んで下さい女王!』

と今後のことも忘れて大騒ぎだった。




白井「まあでも、きっと【学舎の園】の方たちは二度と【電子ドラッグ】にハマりませんわ」

御坂「? どうして言いきれんのよ」

白井「見たくても見れませんもの」

御坂「…あはは~」


御坂はとぼけた様に明後日の方向に目を逸らす。実際、ケータイやらパソコンやらを【超電磁砲】の材料にしてぶっ放したのは御坂だ。

というか寮をぶちこわした割合の半分以上は御坂だったりする。

助けにきたヒーローが実は一番モノを破壊していたというのは往々にしてよくあることである。


白井「…やはりお姉様ですか。食蜂さんは第四位の暴走と説明しておられましたが…」

御坂「しょうがないじゃん。私だけだったらアレでもやられてたわよ?」

白井「…ちなみに、寮の金属類すべてを使って何をなさったんですの?」

御坂「全部まとめて【超電磁砲】にしたわ」

白井「そ、そんなことまでなさってもやられそうだったんですの!?」

御坂「うん。正確には互角だったんだけど、向こうはその威力のヤツを何発でも撃てたから」

白井「…暴走したLevel5怖すぎですの」




御坂「とりあえず暴徒は未だに消えないけど、数自体は減ってるのよね?」

白井「ええ、お姉様の仰っていたプログラム人格。そこへのプロテクトも7割ほど解体したと初春が」

御坂「…やっぱりスゴいわね、初春さん」

白井「パソコンの腕に関しては彼女は間違いなく天才ですもの。無駄に讃える者がいないだけですの」

御坂「私も頑張らなきゃな~。やられっぱなしってのも性に合わないし」

白井「…そしてまたあの殿方に感謝されながら抱きつかれたいんですの?」

御坂「え!?や、アイツのことは関係ないわよ!」

白井「…頬が弛んでますの」


先日の騒動の後、御坂は約束通りに上条の救援に向かった。

上条に対し執拗にサインをねだる巨漢を電撃で始末すると、よっぽど感極まったのか半泣きになりながら御坂に抱きついてきた。

御坂の方はどうしていいのか分からず赤面しながら照れ隠しに罵ったり、むしろ抱きしめかえすべきかで悩んで手があがったり下がったり

そうこうしている内に自分の寮を制圧した白井が現場に駆けつけ、有無を言わさずドロップキックで引き剥がした。


白井「類人猿めお姉様にあんなこと…あのまま放っておいたら何をしていたか…」

御坂「ほ、ホントよね~。何考えてたんだか…」

白井「だから頬が弛んでますの」ハァ


結局、我に返った上条は土下座する勢いで謝り、いつか埋め合わせはすると言って帰っていった。




御坂「と、とにかく!全体的に騒動は下火になってきたし!後はプログラム人格がインストールされてるスパコンを見つけて破壊すれば、この騒動はこれで終わり!そうでしょ!?」

白井「…まあそうですわね。食蜂さんがいればどんな中毒者も治せますし、食蜂さんでなくとも大能力者であれば軽度の中毒者なら治療可能、とのことですの」

御坂「よし!ゴールも見えたことだし、サクッとこのまま終わらせちゃいましょ!」

白井「…やっぱり最後まで関わるおつもりですの?」

御坂「へ?」

白井「何度も申している様に、お姉様は一般人ですの!」

御坂「なによ今さら。あんな目に遭わされてこのまま泣き寝入りなんてできるわけないでしょ」

白井「…はあ、こうなってしまったらもう何を申してもダメですの」

御坂「当然。さっ、早いとこ行きましょ」

白井「はいですの」





-第一学区、大通りリムジン車内



食蜂「ふわ…ん。…もぉ今日のところは終わりにしましょぉ?」

垣根「まだ一件しか終わってねえだろ」

食蜂「昨日の今日だから疲れてるのよねぇ。格上が相手だと苦労するわぁ」

垣根「その格上を相手にピンピンしてんだろうが。ったくやっぱお嬢様っつーのはわがままだな」


第一学区の大通りを黒塗りのリムジンが走り抜ける。

その広い後部座席に向かい合って乗車しているのはLevel5第五位の【心理掌握】食蜂操祈と第二位の【未元物質】垣根帝督。

二人には学園都市統括理事会から直々に指令が下されていた。

電波はすでにHALの支配下にある可能性があるので本当に直々にである。

食蜂には『【電子ドラッグ】の中毒者を治療せよ』。

しかし手渡されたリストには理事会直下の高官やその他エリート組ばかり。

彼らが洗脳されたままなら確かに学園都市はいい様に動かされてしまう。

しかし、現段階でこれだけの人数が操れているとは考えにくい。

おそらくは確認の意味もこめられているのだろう。

 
食蜂「まぁついでにスキャンダルまで掴めるのは面白いけどねぇ。さっきのおじさまなんて愛人4人もかこってたし」

垣根「自分の保身と潔白の証明のために中学生に弱味握られるのかよ。怖ぇなおい」


対して垣根に下された指令は『【心理掌握】食蜂操祈を護衛せよ』。

【電人】HALにとって一番厄介なのは手塩にかけた兵隊たちを正常化させてしまう【心理掌握】の能力である。

しかし、戦闘となれば【電子ドラッグ】で強化された兵隊に食蜂では勝てない。

そのために護衛を任されたのが垣根帝督だ。

HALの兵隊を簡単に負かせるのは彼くらいしかいない。


食蜂「とはいえ、別にお金に困ってる訳でもないしぃ。私の周りが平穏ならそれでかまわないのよねぇ」

垣根「とんでもねえな。さすがLevel5だ」

食蜂「あなたもでしょぉ?」

垣根「心配するな、自覚はある」



食蜂「それに後から『知りすぎたから抹殺せよ』なんて言われるのも怖いしぃ」

垣根「向こうも少しは考えて人選してんだろ。現にリストの中にトマス=プラチナバーグの名前はねえ」



食蜂「まぁ、そんな訳だから…[お願い]垣根さんと運転手さん」



そう言いながら、食蜂はスムーズにバッグからリモコンを取り出して優雅に振るう。


いつもの如く、他人の心理を完全に掌握するために。




垣根「やめろっての」


バサリ、と垣根の背中から片側だけ少し翼が広がった。

食蜂が【心理掌握】の能力を発動させたというのに、垣根にはなんの変化も見られない。運転手も別段進路を変えた様子はない。

【心理掌握】は不発に終わった。


食蜂「…第三位の御坂さんに効かないんだからあなたにも効かないかも、とは思ったけどぉ…」


不機嫌さ半分、不思議さ半分となんとも言えない表情で食蜂は垣根を見据える。


食蜂「運転手さんにまで効かないのはどぉいうことかしらぁ?」



垣根「なに大したことじゃねーよ。第三位に効かないならてめえの弱点は電磁波かなんかだろ。似た様な物質を作っててめえと運転手の間にばらまいただけだ」

そしてこれが『スクール』でなく垣根個人に指令が下された理由。

【心理掌握】を無効化できるほどの力だ。【心理掌握】の力は絶大であるが、それ故に好き勝手されては困る。

それを抑制するために理事会直属の暗部組織『スクール』のリーダー、垣根帝督が選出されたのだ。

垣根の方も垣根の方で、後の計画のために今の段階で理事会に逆らうのは面倒だと判断したためにこの依頼を受け入れた。


食蜂「…私と運転手さんの間、ってことはぁ…あなた自身は別の方法で私の能力を防いだのかしらぁ?」

垣根「ウチにも精神系の能力者がいるからな。お前らみたいな能力者に寝首かかれねえ様に脳の構造を俺の能力でちっとばっかいじくってんだ」

食蜂「…第二位ともなるとそんなこともできるのねぇ。一体どぉいう仕組み?」

垣根「ざっくり言やあ脳に擬似的なファイアウォールを何個か築いてるってとこか」

食蜂「…とんでもないチート能力者だこと」ハァ

垣根「心配するな、自覚はある」


今回はここまでです。
区切り悪い様な気もしますが。


レスありがとうございます。
こんがらがって申し訳ないです。もうちょいちゃんと書ければいいんですが…

思い切り噛ませですw
てか、影薄すぎて出してもちゃんと分かってもらえるか不安だったんですけど安心しました。



GWって休み1日しかないんでしたっけ?
おかしいな、全然ゴールデンじゃねーやw


-『風紀委員』一七七支部


『風紀委員』にはいくつもの支部が存在している。

その中で白井が所属しているのは一七七支部。

そこにたどり着いた二人はガチャリと支部の扉を開いた。


白井「おはようございますの」

御坂「おはようございまーす。私も来ちゃいました」


するとそこには二人が見慣れた顔がいくつか見えた。

そのどれもが笑顔で二人を出迎えた。


初春「あ、おはようございます白井さんに御坂さん」

佐天「おはよーございまーす。あたしもいますよー」

固法「おはよう。昨日は災難だったわね」


一七七支部の部員の一人である花飾りの少女、初春飾利。

その親友であり、よく支部に入り浸っている佐天涙子。

白井や初春の上司役であり『透視能力』の強能力者、固法美偉である。


御坂「あはは…災難どころじゃないですよ」

佐天「常盤台の寮がすんごいことになってるんですよね?【学舎の園】じゃなかったら見に行けるのになー」

初春「ちょっと佐天さん!不謹慎ですよ!」

佐天「イヤ、そうなんだけどさ。Level5同士が本気で暴れた現場なんてめったに見れるものじゃないじゃん」

白井「お気持ちは分からないまでもないですが、自重なさってくださいな。お姉様は死にかけたんですのよ?」

佐天「うぇ!?そうだったんですか!?」

御坂「あー…まあ、うん」

佐天「ご、ごめんなさい!元気そうだったから私てっきり御坂さんがあっさり勝っちゃったんだと…」

御坂「いーっていーって。実際こうして元気だしね。あんまり気を使われても困るわよ」

固法「なんていうか…御坂さんらしいわね」





御坂「それにしても初春さん、よくあのプログラム人格のところまでハッキングできたわね」

初春「いや~正確にはハッキングできた訳じゃないんですよ」


そう言って初春は少し苦笑しながらいつものかわいらしい声で否定した。


御坂「…?でもプロテクトは7割くらいクラッキングしたのよね?」

初春「ええと…昨日の放送は統括理事会が許可したものじゃなくて電波ジャックされて放送されたものだったんです」

佐天「あれ?そうなの?」


昨日学園都市全体に放送された、能力者を狙った放送。

統括理事会の一人が出てきたとはいえ、完全に乱心していた。

おそらくはすでに【電子ドラッグ】にハマッているだろう。

まともな手続きを踏んでいなくとも納得はいく。


初春「ええ。たぶん完璧にあの放送を学園都市全体に流すために…。で、それだけ派手にジャックすれば必ず足跡は残ってるはずなんで、それをたどって出所を探ろうとしたんです」

御坂「…なるほど」

初春「でも、それらしいところまで行ったらこっちのサーバーにとんでもない量のジャミング…つまり無駄情報が送られてきてサーバーが落とされちゃったんです」

固法「ちなみに、そこの隅っこにあるのがそのサーバー。どうやったらそこまでなるのか分からないけど危うくボヤ騒ぎになるところよ」


そう言って固法は半ば呆れたように部屋の隅を指した。

見るとビニール袋に入れられた黒焦げの何かがあった。

おそらくはショートした配線かなにかが原因で燃えだしたのだろう。


初春「で、それでもそのサーバーが落ちちゃう前にどこから送られてきたかをいくつか特定することができたんです」

白井「さすがは初春ですの。並大抵の人間ではパニックになっておしまいですの」

初春「えへへ…。それで特定できたところは5件。その内1件は外部だったんで思い切って接続切っちゃいました」

佐天「…そんなことしてよかったの?」

初春「緊急時には警備員だって一般道逆走するじゃないですか。もーまんたいです」


そう言って初春は得意気に胸を張った。


固法「…まだ上からなんて言われるか分かってないんだけどね。どうも電波は怪しいみたいだし」

佐天「え?でも初春は普通にパソコンいじってるじゃないですか」

白井「初春は特別ですの。初春がいなかったらこの街はもっとひどい状態になってましたの」

初春「それに私のパソコンは独自のプロテクトとフィルタリングでがっちり守ってますから。そっちももーまんたいです。…と、話が逸れちゃいましたね」



初春「それで外部との接続切ろうにもその時ここのパソコンは壊されちゃったんで、とりあえず自前のノートパソコンで行動したんです」


まあアクセス権限ないから余計な手間が増えましたけど、と初春は事もなげに付け加えた。


固法「そして同時に私が警備員に連絡してそこにあるスパコンを片っ端から壊す様に頼んだの。緊急用暗号なんて支部にいながら口頭で使ったの初めてよ」


仮にも処理能力が格段に飛躍している『風紀委員』に配備されたパソコン。

そのサーバーからの接続を強引に切断するとなるとかなり高性能なものに限られてくる。

つまりはスーパーコンピューター。それも学園都市製でとんでもなく演算能力の高いものである。


御坂「よくそんなこと許可出してくれましたね」


だが、逆に言えばそれだけ金額的にも設備的にも価値のあるものである。

それを可能性の段階で破壊の判断を下すとはかなりの冒険である。


固法「たぶん上も何か掴んではいたのね。今までも予兆はあったんだし」

初春「それでスパコンの破壊に成功したみたいで、私の方も外部との接続を切るのに成功したので、おそらく7割方プロテクトは解体、と長くなりましたがこんな訳なんです」

御坂「なるほどね」

佐天「いや~さすがは私の初春だね!私たちにはできないことを平然とやってのける!そこにシビれるあこがれるぅ!」

初春「えへへ~、そんなに誉めないでくださいよ佐天さん」


そうは言いながらも、初春はまんざらでもない顔を少し赤らめながらニヨニヨとさせていた。




白井「…ちなみに、あの放送がどんなものだったかはわかりましたの?」


その言葉を聞いて初春はほころんでいた顔を再びもとに戻し、さらには行きすぎたのか少し凹んだ顔をした。


初春「…それなんですが…よく分からないんです。【電子ドラッグ】は映像だけだと思っていたんですけど…」

御坂「でもあのプログラム人格ははっきり言ってたわ。あれは能力者に向けて使ったものだって」

白井「ならやっぱり【電子ドラッグ】に違いありませんの」

佐天「…」

固法「でも正直初春さんじゃ専門外よ。それこそ能力開発の専門家とかじゃないと」


いくら【守護神】と言われる存在でもそれは電脳世界での話。

どんな構成なのかはデータさえあれば解析できるが、それがどんなもので何を示すのか分析することはできない。


御坂「あ、じゃあ木山先生は?あの人大脳生理学者だし【電子ドラッグ】についてなにか知ってるかも」


木山先生、つまり木山春生とはかつて【幻想御手】を作りあげ、学園都市の学生一万人を一時的に昏睡状態に陥れた大脳生理学の研究者である。

しかし、それは『暴走能力の法則解析用誘爆実験』で傷つけた自身の教え子を救うためであった。

現在は釈放され、『暴走能力の法則解析用誘爆実験』で昏睡状態に陥っていた生徒たちも意識を取り戻し、無事に回復していっている。


初春「それなんですけど…木山先生と連絡がつかないんです」

佐天「!」

白井「本当ですの?」

初春「ええ。私からはもちろん、枝先さんたちも連絡とれなくて…自宅にもいないようですし…」

佐天「…」

御坂「…実はすでに別の研究所からの依頼で【電子ドラッグ】の解析に取り組んでて缶詰め状態、とか?」

固法「そうね…わりと実力者だし、そう考えても…」


佐天「あ、あの!」


ふいに、今まで黙っていた佐天が思い詰めた表情で声を発した。


白井「? どうかしましたの?」

佐天「えと…みんな分からなかったと思うけど…あの放送、似てたんです」

初春「? 何にです?」

佐天「…【幻想御手】に」

御坂「!」

白井「な…!」

初春「ええ!?」


支部にいた人間はみな一様に驚いた。

【幻想御手】-かつて木山春生が開発した非合法な能力向上プログラム。

それは他人の脳波と強制的にリンクさせるため脳への負担が大きい。

そのため学生約一万人が甘い罠にかかり昏睡状態に陥った。

そして佐天はこの中で唯一の【幻想御手】の使用者である。


固法「…本当なの?佐天さん」

佐天「ええ、たぶん…」

白井「で、でも【幻想御手】は音楽では?」

佐天「そうなんですけど…こう…音の高低っていうか波長っていうか…なんとなく【幻想御手】に近いものがあったんです」

御坂「…てことは…木山先生は【電子ドラッグ】にハマッてる可能性が高いわね…」

初春「! そんな!木山先生に限ってそんなこと…」

御坂「でも音だけで能力者を狙って操るなんて外の人間には不可能でしょ?」


そもそも学園都市の能力開発技術自体が完全門外不出である。

それなのに開発の行程をすっ飛ばして能力者を操る法則を知っているわけがない。


初春「え?そのプログラム人格って学園都市の外で生み出されたんですか?」

御坂「うん。ネットがあまり使えないから図書館で調べてみたんだけど、アイツが言ってた名前は外でいくつもの博士号を取得した人間のものだったの」

白井「…全員暴走状態なのであまりに気にしませんでしたが、今にして思えば暴れてた人間は若干能力が強くなっていた気がしますの」

佐天「…」

固法「…木山先生と連絡がとれないのも説明がつく。【電子ドラッグ】にハマッてると見るのが妥当ね」



???「おーい」


木山についての議論が大方終わった頃、暗い空気を消すかの様にノックの音と女性の声が扉の外から聞こえた。


固法「あ、はい。どうぞ」


ガチャリ、と扉が開くと二人の女性が現れた。

一人は髪を後ろでまとめた巨乳の女性。もう一人は丸眼鏡の女性。二人とも警備員の正規装備をしていた。

警備員である黄泉川愛穂と鉄装綴里である。


黄泉川「よーす、邪魔するじゃん」


扉を開けてすぐ、陽気で快活な声が響いた。


白井「おはようございますの。黄泉川先生に鉄装先生」

鉄装「おはようございます。朝からお疲れさ…!?」


続いて鉄装もあいさつしようとしたのだが、ある一点を見た瞬間に身体を硬直させた。

更に黄泉川もそれに気づいて身体を強ばらせる。


佐天「…? どうかしました?」

鉄装「…」


キッ、と鉄装は御坂をにらみつけて身構える。完全に臨戦体制だ。


御坂「な、なんです?」


敵意を一身に受けて思わず御坂はうろたえた。

確かに普段の素行でちょくちょく悪いことをしてる自覚はあるが、せいぜいちょっとお叱りを受けるようなことだけ。

警備員の恨みを買うようなことなんかした覚えはない。



黄泉川「落ち着け鉄装。…御坂」

御坂「は、はい」

黄泉川「なにか自分を証明できるものは所持しているか?」

御坂「え?」


思わず聞き返してしまった。なぜこのタイミングで身分証明?


黄泉川「だから身分を証明できるものを出せと言っている」

白井「な、なんなんですのいったい?」

黄泉川「いいから早くするじゃんよ」


警戒したまま、強い口調で黄泉川は御坂に命令した。

あまりにも理不尽な態度。一日前に命懸けで【学舎の園】を救ったというのにだ。

そんな態度をされれば誰だって腹が立つ。実際御坂はムッとした。


御坂「…IDも学生証もありますけど」


とはいえ警備員に逆らうのは得策ではないし、自分がなにもしてないことの証明にもならない。

仕方なく御坂は学生カバンの中をガサゴソと探りはじめた。




御坂「はい。これでいいですか?」


ほんの少しして御坂は学園都市で住むための個人の証明書であるIDと常盤台中学の学生証を見せた。


鉄装「あ…」


それを見て鉄装は安心したように息をつき、警戒を解いた。


黄泉川「安心するのは早いじゃん」


対して、黄泉川は未だ警戒している。

御坂の手からIDだけ受け取ると、ポケットから液晶つきの小型カードリーダーを取り出した。

そして、IDカードをそのカードリーダーに差し込んだ。

ピピッ、という機械音と共に液晶に御坂の顔写真が映し出された。

液晶が見えない人間もその音でなんの異常もないことが確認できた。


初春「…正真正銘御坂さんのものみたいですけど…」

黄泉川「…疑ってすまなかった。許してほしいじゃんよ」


そう言って黄泉川は深々と頭を下げた。


鉄装「ごめんなさい!」


続いて鉄装もあわてて頭を下げる。


御坂「いえ…まあいいですけど…」


御坂は今度は混乱した。腹が立ってはいたが急にこうも潔く頭を下げられては怒るに怒れない。

それに身分を証明しただけでいったい何が分かったいうのだろうか。


固法「それで、どうして御坂さんの身元証明を?」


そんな御坂の気持ちを代弁するかのように固法が質問した。

黄泉川は少しだけ間を空けたが答えはじめた。


黄泉川「…昨日お前たちから報告のあったポイントを警備員の各部隊が制圧しに向かったじゃん」


実際には暗部も制圧に向かっていたのだが、黄泉川をはじめとする多くの人間はその存在を知らない。

そのため、すべてのスパコンの破壊は警備員が行ったというのが各員に知らされた報告だった。


黄泉川「報告にあった4ヵ所中3ヵ所は滞りなく制圧に成功したんだが…1ヶ所だけ失敗したじゃん」

佐天「! 警備員がやられちゃったんですか?」

鉄装「…面目ないです」

黄泉川「その時部隊を率いてた恵美っていう私の同僚の話だと…あと少しでスパコンまでたどり着くってところで…御坂美琴が現れたんだと」

御坂「はあ!?」


御坂は思わず素っ頓狂な声を上げた。

当然御坂にそんな覚えはない。昨日は朝から第四位と命懸けで戦い、第四位を全力でもてあそび、ツンツン頭に半泣きで抱きつかれ…

と、そんなことをしている暇などなかった。


初春「そんな!何かの間違いですよ!」

佐天「そうですよ!御坂さんは第四位の人と戦ってたんですから!」

白井「証人でしたら私がいますの!それに食蜂さんや婚后さん、なんだったらあの類人猿だって証人ですの!」


そして、ほとんど一斉にに御坂を擁護する声が上がる。全員御坂がそんなことするはずないしできるはずがないと分かっている。

次々に沸き上がる弁護の声を黄泉川は煩わしそうに両手を振って制した。


黄泉川「だーあー分かってる!分かってるじゃんよ!御坂はシロじゃんよ!」

佐天「本当ですよね!?いきなり逮捕とかしないですよね!?」

黄泉川「当たり前じゃんよ。御坂がクロだと思ってたら身元確認なんかする前に警備員の詰所に連行してるじゃん」


固法「じゃあ繰り返しになりますけどなんで身元確認を?」

黄泉川「…恵美の話じゃ御坂が一度に4人現れたらしい」

御坂「…!」

白井「はい?どういうことですの?」

黄泉川「私もよく分からないじゃん。でも4人とももれなく【電撃使い】で外見も御坂だったらしい」

佐天「…まさか御坂さんって姉妹とかいます?」

御坂「…」

初春「いるわけないじゃないですか。この街に御坂って名字の人は一人しかいませんよ」

黄泉川「それはこっちも把握してるじゃん。だからウチらはそいつらとは別に偏光能力かなんかの能力者が撹乱させたとにらんでる。だからさっき身元確認をしたじゃん」

固法「なるほど、そういうことですか」

鉄装「本当に疑ってごめんなさい。手塩さん…えと、さっきの恵美さんって人、本当に強い人だから…あの人の部隊を負かすような人物なら警戒しなきゃって…」

御坂「…いえ、大丈夫です。気にしてませんから…」


初春(…?)

佐天(…御坂さん?)

白井(……お姉様?)

御坂「…」



-第十学区、小児能力開発研究所



一方通行「アッはギャハァ!その程度の工夫でどォにかなるとでも思ってンのかァ!?」


研究所の実験室には惨劇が起こっていた。あたり一面に中毒者が死屍累々と転がっている。

実際にはまだ生きてはいるが、完全に虫の息だ。


兵隊「…」


立っている人間はほんの一握り。そしてその人間も間もなく倒れることになる。


一方通行「甘ェよクソボケ。そンな劣化版にやられるほど甘かァねェンだよォ!」


一方通行が全身を使って腕を振るう。それだけで烈風が巻き起こり、機材は吹き飛び、立っていた人間は派手な音と共に壁にめり込んだ。


一方通行「人間階段、ってなァ。ハッ、これはこれでアートじゃねェか?」





???「ふむ、やはり他人のマニュアルは応用できんな」


ブン、と実験室の大きなモニターにHALの姿が映しだされた。


一方通行「…テメェが黒幕のプログラム人格…HALっつったか?」


それに気付き、一方通行は邪悪に笑いながらモニターを睨みつけた。


HAL「自己紹介をした覚えはないが…統括理事長は私の名前を公表していたかな?」

一方通行「バァカ、結標が見てたカス映像にテメェの情報をサブリミナルでぶち込んでたろォが」


見下した様な一方通行の態度に、HALは少しだけ首をかしげた。


HAL「…なるほど、結標淡希を討ったのは君だったか。その口ぶりだと君も【電子ドラッグ】を見たようだが…ずいぶんピンピンしているな」


一方通行「なァに大したことじゃねェ。頭ン中でシナプスが組み替わっていくのを自分で元に戻していっただけだ」


そのセリフを聞き、HALは思わず目を見開いた。


HAL「…なんと。君にはそんなことすら可能なのか」

一方通行「学園都市第一位の能力と頭脳ナメンじゃねェ。似たよォなことを最近やったばかりだ。そンでついでに結標の頭も元に戻しておいた」

HAL「…」

一方通行「まァ、俺も専門っつゥ訳じゃねェからな。ちっとばっか脳への刺激が強すぎたみてェで今はベッドでお寝ンねしてンよ」

HAL「…ククク、まさか1の世界の住人が私のプログラムを一目見ただけで解析しきるとは…」

一方通行「ハッ、あんなやっすいプログラムに自信なンざ持ってンじゃねェよ」


一方通行「でェ、確認するがあのプログラムを学園都市に拡散したのはテメェなンだよな?」

HAL「その通り。この街に【電子ドラッグ】を持ち込んだ張本人さ」

一方通行「クカカ、そォかいそォかい。だったらテメェに感謝しなきゃなァ!テメェのおかげで上の圧力に守られてる研究所もおもいっきり潰せンだからなァ!」

HAL「…ククク、本当に面白いな、この街は。どうやら暴動が起きると喜ぶ傾向にあるらしい」

一方通行「…ハッ、そりゃそォだ。学園都市なンざ頭のイカれたやつの集まりなンだからよォ」

HAL「ほう、君もそのうちの一人だという自覚もあるかい?」

一方通行「当たり前だクソッタレ」



HAL「さて…私の手足達はたやすく蹴散らされ…ここの『スフィンクス』本体は丸裸だ」


ちなみに、今回『スフィンクス』を守備していたのは木原数多のマニュアルを参考にした徒手空拳部隊。

反射膜寸前で拳を引き戻すことにより反射膜を無効化させる方法だが、そもそも一方通行の反射膜の位置が体表面ギリギリ。

その上『ベクトル操作』で動き回る一方通行を捉えきらねばならない。

これはもはや感覚の問題であり、再現するには木原一族謹製の高性能義体でもなければ再現不可能である。

【電子ドラッグ】の洗脳と『スフィンクス』の統括アプリでは再現はできなかった。


HAL「だが君たち暗部組織や警備員、【守護神】のせいで残る『スフィンクス』はもう3体しかいないんだ」


これ以上の『スフィンクス』の損失は致命傷。

何せ【守護神】はすぐに『スフィンクス』の位置を逆探知してきた。

あの数秒でそれほどの情報収集能力。もっと言えばそれほどの知識と腕前。

『スフィンクス』がなくなれば即座にHAL本体を破壊しにくるだろう。

何せHAL本体は外のスパコン。どれだけ複雑だろうと学園都市のモノとは性能が著しく劣っているのだ。


HAL「そこで、だ。私自らが直々に相手をしよう」

一方通行「…へェ、プログラム人格が現実世界の俺を直接相手すンのか。バグでも発生したか、おい」

HAL「万が一にもそれはないよ。如何に君が最強たれどしょせんは1の世界の住人。1と0の狭間に生きる私とは文字どおり次元が違うんだ」

一方通行「ギャハハハハ!違ェねェなァ!でェ?何やってくれンだ!?さっきの雑魚どもみてェな木原の真似ごとを次元単位でやってくれンのかァ!?」

HAL「まさか。私はただ指を鳴らすだけさ」


HALは自身の左腕をかかげる。

その手は人間の手ではなく、子どもが考える妖怪と一昔前の宇宙人を混ぜ合わせた様な不思議な色と形をしていた。




パチーン、とHALの指が鳴った。






一方通行「な…!?」


ガクン、と一方通行は膝から崩れ落ちた。


一方通行(なンだ…演算が…違ェ、それより…!?)


自身の異変に驚愕する。演算するどころか立つことすらままならないのだから。


HAL「…ふむ、この程度か。やはり少々時間が足らなかったな」

一方通行「テメェ…なにを…」


ふらつく脚に必死に力を籠めて立ち上がり、モニターを睨みつける。

それを見下し、HALはいつもの様に妖しく不気味に笑う。


HAL「ククク、学園都市第一位の頭脳たれば簡単に思いつくのではないか?」

一方通行「あァ…!?」


チョーカーの不具合ではない。メンテナンスは常に万全だ。ここに来る前にも調整した。

チョーカーの電池切れではない。あんな雑魚ども5分で蹴散らした。

電波の問題ではない。駒場から痛いほど学んだ。この生命線を保護するために杖にいくつか仕込みをした。


なら、もっと根源的な…



一方通行「まさか…」



HAL「ククク、私も驚いたよ。まさか人間の脳が世界規模で一つのネットワークを生み出しているとは」



思い当たるとすれば、自分の能力の要。

そんなことを抜きにしても大切な存在。

命を賭してでも守ると決めた幼い少女。


一方通行「テメェ!打ち止めに何しやがったァ!!」




HAL「…打ち止め?」


ふと、HALは怪訝な顔をした。

さらには、少しばかり押し黙った。


一方通行(なンだ…?違ェのか?だが、他に思い当たる要素なンざ…)


やがて、HALはクスリと笑った。


HAL「…なるほど、そういうことかアレイスター…確かにあの会話ではどうとでもとれる」


一方通行(アレイスター!?…アイツが黒幕なのか!?)


HAL「…いや失礼。さすがに学園都市の超能力者、その第一位ともなると機密ランクが段違いでね。今の私ではすべてを知ることはできないんだ」


先日までのHALなら電脳世界のほぼ全てを瞬時に把握することもできた。

そのため現に一方通行の能力の大半を奪うことに成功している。

しかし、今のHALには不可能。そんな力はない。


そして、絶頂期のHALですら打ち止めの存在は把握できなかった。

それほどまでに少女の存在はアレイスターにとって重要なのだ。


一方通行「なら…どォやって俺の能力を…!」


さすがに立っていることがキツくなったのか、一方通行は手近な壁にもたれかかった。


HAL「ククク…先ほど私は【電子ドラッグ】をこの街に持ち込んだ、と言ったはずだ」

一方通行「それが…なンだってンだ…」

HAL「学園都市の外のスパコンごときが単体で学園都市の電脳世界に侵入できるはずあるまい。私は学園都市を除く国内の8割のスパコンを支配してここに来たのだよ」


一方通行「…ーッ!」


一方通行はようやく気づいた。自分の能力、さらには身体機能までもが奪われた原因に。




HAL「そう。日本国内にある学園都市の協力機関も例外ではない。そこに預けられている御坂美琴のクローンは私の支配下だ」


かつて行われていた『絶対能力者進化実験』。そのために創られた【超電磁砲】のクローン二万体。

実験の中断により残った一万弱のクローンは世界各地の学園都市の協力機関に預けられた。


HAL「正直【電子ドラッグ】にハマッているかどうかは分からなかったので賭けだったが…私の手足が素早く確認し、再教育もしてくれた」


そしてその一万弱のクローンは全体で一つの脳となっている。

そのうちの一人でも目を通せば残りのクローンにどんどん感染していく。


HAL「先ほどの音はクローンに向けた合図だ。【電子ドラッグ】の支配下にあるクローンは一斉にミサカネットワークから離脱した」


つまりは一万弱で補っていた一方通行の補助からの離脱。そのために、一方通行の能力及び身体機能は急激に低下したのだ。


HAL「だが、恐らくはまだ全員には浸透していなかろう。おかげで君の能力も完全には奪えていない」


恐らく【電子ドラッグ】はまだ完全には感染しきっていない。

そうでなければ一方通行はとうに倒れている。喋ることすらままならなくなる。


HAL「君がこんなにも早く現われなければもう少し時間を置いたのだが…まあ、チョーカーの電源を入れてその状態ならなんの問題もあるまい」


突如、HALの姿が消える。


そして…


一方通行「ーッ!」










ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…!!









ようこそ、一方通行



今回はここまでです。
ペース配分と構成の仕方がなかなか難しい。


レスありがとうございます。
このSSではネウロは出てきません。ネウロがいないパラレルワールドだと思ってください。
ネウロの登場を期待していた方々申し訳ないです。
あと魔術組はパソコンカタカタやってるイメージあんまりないんで今のところ予定は未定です。
インさんの魔道書なんてダウンロードした日には一気にHALⅡまでいっちゃいそうですし…


今さらだけどヒグチのヒの字が出ません。
竹冠が消えた匪で表記していくんでご了承ください。


-後日、???



御坂「…やっぱダメね。そんなに簡単に見つかる相手じゃないか」


この数日間、御坂はひっきりなしに電脳世界に潜っていた。

白井からたしなめられてはいたが、事情が事情だ。

我が身の可愛さ故に行動をためらう思考回路なんて御坂には存在しない。


御坂「…あの娘たちにまで手ぇ出して…絶対許さないわよ!」


電脳世界で威嚇する様に叫ぶが実際に響いたりはしない。

あくまでも1と0のやりとり。実際には今のメッセージがある程度のサイトに拡散されたようなものだ。

黄泉川は御坂が4人同時に現れたと言っていた。そして、学園都市に残っている『妹達』は4人。偶然ではない。

確かに黄泉川の読み通りに偏光能力者の可能性もないことはない。

だが、『妹達』を知っている人間なら真っ先に前者を考える。

そして、『妹達』は御坂にとって守るべき存在。

自分の不用意さのせいで身勝手に生み出され、身勝手に殺されるという運命を背負わせてしまったことに責任を感じていた。




-昼過ぎ、第七学区電話ボックス


御坂「…今日も収穫ゼロ、か」


そうつぶやいて、御坂は電脳世界から現実世界に意識を戻した。

大通りに設置された電話ボックスの外からは学校帰りの学生で賑わっていた。

【電子ドラッグ】騒動で各学校の授業は短縮され、最終下校時刻も早まっていた。

その喧騒をボックス越しに聞きながら、媒介としていた端末の回線を公衆電話の電話線から引き抜く。

それらを手早くまとめて無造作にスカートのポケットの中に突っ込んだ。

そしてなんの罪もない公衆電話に八つ当たりする様に一瞥してから電話ボックスを後に


???「お姉様」


したところで、人ごみの中からふいに聞き覚えのある声が聞こえた。



御坂「…あ、黒子」


声のした方を見やると見慣れたツインテールの少女がいた。

そして、その少し後ろに花飾りの少女と黒髪のセミロングの少女がいた。


御坂「初春さんに佐天さんも」

初春「…こんにちは、御坂さん」

佐天「…ども」

御坂「…? どうしたの?みんなやけに元気ないわね」

白井「…お姉様、今なにをなさっていたのですか?」


白井の問いかけに御坂は思わず顔をしかめた。


御坂「…あー…見てた?」

佐天「バッチリ」


うなずきながら神妙な面持ちで佐天が答える。


御坂「そっか…」

初春「そっかって…危険なんですよ?もしかしたら御坂さんが【電子ドラッグ】にハマってしまう可能性だって…」

御坂「…ごめん、分かってはいるんだけどさ…私の姿で悪事を働く人間なんて許せないじゃない?」


この三人は『妹達』のことも『絶対能力者進化実験』のことも知らない。そして知ってほしくもない。

なので、御坂はそれらしい理由で適当に切り抜けようとした。


白井「…本当にそれだけですの?」


だが、自分のパートナーは誤魔化せないようだった。


御坂「…そうよ?他に何があるっていうの?」

白井「いえ、なにも…ですが黄泉川先生の話を聞いてからというもの、お姉様の表情が少しあの頃に戻っていましたので…」

御坂「あの頃?」

白井「8月の中旬頃ですの」

御坂「…!」


8月の中旬。『絶対能力者進化実験』の存在を知り、殺されていく『妹達』を止めることが出来ずに絶望していた頃だ。


白井「お姉様…僭越ながら黒子はお姉様のパートナーだと思っておりますの。ですから、何かお困りでしたらお力添えさしあげたいと思っておりますの」

御坂「…別に大したことじゃないわよ。いつも通り悪いことやってるヤツをとっちめたいだけ」

初春「本当ですか?」

御坂「…っ!本当だってば!なんでもないったらないっ!!」


何度も否定しているのになおも聞こうと掘り返してくる。その執拗さに御坂は苛立って思わず怒鳴りつけた。

それを受けて目の前の三人はビクリと身を縮こませた。


御坂「…あ…」


そして、怒鳴った直後に思い直す。彼女たちは自分の心配をしてくれているのだ。

自分のことを気遣ってくれているのに怒鳴り散らすなど、他人の気持ちをふみにじるにもほどがある。


御坂「ご、ごめん…」


明らかに自分にも非があることを自覚し、すぐに御坂は謝った。


初春「い、いえ…」

白井「…」

佐天「…」


そして気まずい沈黙が訪れる。一度怒ったせいで誰もが互いに何を話しても一触即発という事態になりかねないと思っていた。


ガヤガヤという雑踏の賑わいの音だけが四人の間を流れていく。


素直に御坂が自身の隠し事を話せば、あるいはこの空気も解消されるかも知れない。


しかし、御坂は例え自分の親友にも『妹達』のことを話したくないのだ。


自分たちが生活している学園都市の裏側を教えたくはない。なんて高尚な理由ではない。


むしろ、彼女たちはその片鱗を既に経験している。今さら隠すことではない。



ただ怖いのだ。



『妹達』の存在を知った上でまだ自分と今までどおりに接してくれるかどうか。


『絶対能力者進化実験』という存在を知りながら阻止することも出来ずに何人もの『妹達』を見殺しにしたという事実を知ってまだ友達でいてくれるかどうか。




御坂「…はー、やめやめ。やめましょ、こんな空気」


頭を軽く振って仕切り直す。そして、御坂は三人に対して申し訳なさげに微笑んだ。


御坂「お詫びにファミレスでなんかおごるからさ。それで手打ちにしてよ」

初春「あ、あーいいですね!じゃあ私パフェがいいなー」


そう言って初春はぎこちない顔で空元気な声を出す。

そして同意を求める様に他の二人を見渡すが


佐天「…」

白井「…まあ、お姉様がおっしゃるのであれば…」


どうにも納得のいかないような険しい表情をしていた。


初春「あ、あはは…」

御坂「…じゃあ行きましょうか」


そう言いながら御坂は無理矢理笑顔を作り、くるりと踵を返して歩きはじめた。



佐天「…御坂さん」


ピタリ、と御坂の足が止まる。


佐天「なんで話してくれないんですか?」

初春「ちょ、佐天さん!?」


完全に話の流れが変わっても尚核心をついてくる佐天に初春が動揺した。


御坂「…」

佐天「…ごめんなさい。話したくないことを無理に聞こうとして」


少しだけ視線を落として佐天は謝った。御坂はその声だけを背後から聞いていた。


佐天「でも、御坂さんはいつだって私たちを救ってくれたじゃないですか。だから、私たちにも御坂さんを救わせてください」


【幻想御手】の時も【乱雑開放】の時も、どんな時でも御坂は先陣切って戦っていた。

自分のためだけでなく、この街のために。友達のために。


佐天「そりゃ御坂さんは私の一つ上で、Level5で、頭だって私とは比べものにならないくらい良いけど…それでも私は御坂さんとは対等な関係でいたいんです」

御坂「……どうして?もしかしたら、私はみんなに言えないほどの悪事に加担してるかもしれないのよ?」








佐天「だって…友達じゃないですか」








御坂「…さ、行くわよ」


そう言って御坂は再び歩きはじめた。


佐天「…御坂さん!」

御坂「あんまり人のいるところで話したくないの。場所を変えてもいいかしら?」


歩きながら御坂は顔だけ振り返る。その表情は吹っ切れたような、どこか清々しい表情だった。


佐天「御坂さん…!」

初春「もちろんですよ!ね、佐天さん白井さん」

白井「ええ!」

佐天「じゃあ行きましょう!って待ってくださいよ御坂さーん!」


ずんずん進んでいく御坂をあとの三人が小走りで追いかけていく。

学園都市では見慣れた光景がそこには広がっていた。


-第七学区、某ホテル



御坂「ここなら人目も気にならないかな」

佐天「ふえー、さすがLevel5。こんな部屋も簡単にとれちゃうんですね」

御坂「まあ、この部屋は私のロッカーみたいなものだしね」

初春「…はい?ロッカー?」

御坂「うん。寮に置いておきたくないものは大体ここに置いてるの」

白井「…言われてみれば見なくなったお姉様の私物がちらほら…」

初春「…もしかしてこの部屋、常時借りっぱなしですか?」

御坂「? そうだけど?」

初春「…さすがLevel5。私たちにはできないことを平然とやってのける」

佐天「シビれはしないかな。憧れるけど」




御坂「さて、と。どこから話せばいいかしらね…」

佐天「なんだか分かんないですけどまるっと最初っから最後までゲロっちゃってくださいよ。そっちのが後腐れないですよ」

白井「表現がお下品ですの。…まあ、私としてもそれが望ましいですが」

初春「そうですね。せっかくの機会ですし、ぜーんぶブチまけちゃってください」

御坂「あはは、じゃあ私がやってきたこと全部話そっか。最初は…都市伝説からかな」

佐天「都市伝説?」

御坂「そ。覚えてるかな、Level5を大量に作るって内容の…」




-同時刻、東京都某所



???「何をするおつもりですか、とミサカはひょろメガネに問いかけます」

???「…いい加減その呼び方やめてくんねーかな。もうちょいセンスいいのあるだろ?」

???「いいから答えろや。こっちはMNWに再接続できなくて不安定なんだよ、とミサカはひょろメガネに苛立ちます」

???「ハハッ、まったく表情変わんねーけど感情はあんのな。せっかく『スフィンクス』があんのにHALと切り離されちゃ役目を果たせないだろ?」

???「そうですね、とミサカは『スフィンクス』と言われてもピンと来ませんが相づちを打ちます」

???「HAL特製防衛プログラム、ってとこかな。そんで学園都市でもそのプログラムが使える様に日本のスパコンを片っ端からつないでパワーアップさせてたわけだ」

???「ほうほう、とミサカは軽くうなずきます」

???「でも今は学園都市との接続を切り離されてる。だから『スフィンクス』はバラバラになっちまった」

???「さすがはミサカの生まれ故郷。ヤシマ作戦にもビクともしません、とミサカは胸を張ります」

???「ヤシマ作戦って…まあいいか。で、この数日でHAL抜きで『スフィンクス』のネットワークを繋ぎ直したんだ」



???「…はて?防衛プログラムだけでネットワークを構築して何を防衛するのですか?とミサカは首をかしげます」

???「防衛するんじゃない。攻めるんだよ。アプリ『スフィンクス』は使わずにスパコンそのものの演算能力だけを使う」

???「…ハッキングですか?とミサカはひょろメガネに問いかけます」

???「ちょっーと違うな。学園都市の監視衛星相手にクラッキングをしかけるんだよ」

???「…はん、外の人間と機械で学園都市相手に情報戦で勝てるわけねーだろ、とミサカはひょろメガネを鼻で笑います」

???「スペック自体は学園都市でも通用できるほどになってんのは実証済みだ。低予算高品質の日本のスパコンなめんじゃねーよ」

???「それでもオペレーターがひょろメガネじゃ勝ち目はありませんね、とミサカは学園都市の防衛システムの堅固さを暗に主張します」

???「やってやろうじゃん。二~三十年先の未来への挑戦…ちょっと燃えるね」


今回はここまでです。
フェイントってのをやってみたかったけどなかなか難しくてフェイントもどきに。


レスありがとうございます。
このSSが完結できたら血族編やってみようかなと一瞬思いましたが、自分ではあの悪意は書けません。
誰か書かないかな(チラッ


二週間近く間が空いてすいませんでした。三つほど理由がありまして
草野球シーズンに入って野球活動が始まったこと
時給830円のバイトが10万コースに入ったこと
そして最後が一番の原因なんですが
『覚醒』買っちゃったんですよね。
GBA世代にあのアニメーションは衝撃的すぎますよ。第二世代チートすぎんだろ。特に良成長つけたロランとマイユニットを親にもつシャンプレー。ストーリー聞いて鼻で笑ってすいません。マイユニットと主人公の子が結婚して未来からガキ飛んできて三世代同じ軍で戦うとか昼ドラにしては新ジャンルすぎんだろとか爆笑してごめんなさい。めちゃくちゃ面白いです。
そんな訳でまた更新遅れるかもしれませんが、引き続き読んでくれると嬉しいです。


-第七学区、某ホテル



御坂「…で、今学園都市に残された私のクローンは4人。他の娘達はみんな学園都市の協力機関に預けられたの」

初春「…」

佐天「…」

白井「…」

御坂「…まあこんなところ。これで洗いざらい全部話したはずよ」


小一時間ほどかけて御坂は『妹達』及び『絶対能力者進化実験』について知ってることも経験したことも全部話した。

自分が遺伝子を提供したことが原因だということはもちろん、一方通行のことも上条のことも、第四位率いる『アイテム』と死闘を演じたことまで全部話した。

机を囲うように置かれたソファーに腰をかけた三人はみな難しい表情をしていた。


佐天「…あのマネーカードまで関係あったんですね」

御坂「うん。ばらまいてた本人は今どこで何してるのか分からないけど…」

初春「あの唐突な暗号もやっとなんのことか分かりましたよ」

白井「…少々癪ではありますが、後で改めて私の方からあの類人猿にお礼に行った方がよろしいですわね」


次々に感想をもらしていく三人。そんな中で御坂は少し不安だった。


一番聞きたいことに誰も触れてこない。御坂にしてみればあえて三人が触れないようにしているのだと思った。

こんな話をしてしまった以上、もはや自分との付き合いをやめて軽蔑するかもしれない。

自分を見る目が『友達』から『何人も見殺しにした犯罪者』に変わるかもしれない。

御坂にとっては三人が自分をどう思ったか、その一点だけが重要だった。


御坂「…ごめん、今まで黙ってて。幻滅した…よね」


だから御坂は勇気を振り絞り、自嘲気味に自ら話題をシフトしていった。

きっとみんな罵詈雑言浴びせてくるに決まっている。

言葉は聞けども、せめてその光景だけは見たくない。なので御坂は静かに目を閉じた。

そして待った。三人の審判を。







初佐白「…はい?」



三人の間の抜けた声だけが聞こえた。

しかも、それ以降何も聞こえてこない。

恐る恐る目を開けると、三人とも同様に首を傾げてキョトン顔でこちらを見ていた。


御坂「…え?」

佐天「いや…え?」

初春「幻滅…ですか?」

御坂「そうよ。こんな話聞いて私になんか思うことないの?」

白井「やはり私のお姉様は可憐で凛々しく美しく、尊敬に値する素晴らしいお方ですの、とは思いましたが…」

御坂「何言ってんのよ!私が遺伝子を提供したからあんな実験が…」

佐天「でもそれって筋ジストロフィー…でしたっけ?その患者を助けようとして提供したんですよね?」

白井「ああん、さすがは黒子のお姉様!幼いころから善意と道徳心に満ち溢れていらっしゃる!」クネクネ

御坂「で、でも私が不用意な真似しなければ…それに私はあの娘達を何人も見殺しにして…」

初春「年齢一桁の子どもが不用意な真似しない方がおかしいんですけど…むしろ御坂さんがしたこと自体はいいことですし」

佐天「それに見殺しも何も御坂さんの話を聞いた限りじゃ全力で阻止しようとしてたとしか思えないし」

白井「むしろ黒子は誇らしいですの!やはりお姉様はお姉様ですの!」



御坂「でも…でも…」

佐天「ええい!まだるっこしい!」


バン!と机を両手で叩きつけて佐天は立ち上がった。


佐天「聞いてれば悪いのは全部御坂さんの好意をふみにじって悪用しまくった科学者連中じゃないですか!それでなんで御坂さんが悪いんですか!」

初春「そうですよ!むしろ御坂さんなんか被害者じゃないですか!」

白井「そうですわ!お姉様は間違いなく悪くありませんの!少なくとも黒子は!ここにいる三人はそう思っておりますの!」


予想とまったく逆の反応を見せる三人。まさか自分を擁護するとは思っていなかった御坂は少しあっけにとられた。


御坂「…みんな…」

佐天「…まあ、それとは別に怒ってることはありますけど」

御坂「え?」

初春「あ、私もです」

白井「あら、奇遇ですわね。私もですの」






佐天「もう少し周りを頼ってください。私たちも必ず力になります」



初春「もう少し周りを信用してください。こんな話で御坂さんに幻滅するわけありません」



白井「もう二度と、自分の命を粗末に扱わないでくださいまし」





御坂「…ごめん!私が馬鹿だった!」


三人の言葉を受けて御坂は深々と頭を下げる。

自分が悪いか悪くないかはひとまずどうでもいい。

だが、自分はこんなにも大事な友達を信頼せずにあらぬことを考えてしまっていたのだ。

どんなことがあっても支えてくれる仲間を裏切ったも同然だ。


御坂「ありがとう…ホントにありがとう…」


自分にこんなにも素晴らしい仲間がいたことに今更ながら気付き、身体の内側に何か暖かいものがこみあげてくる。

悲しくもないのになぜか声が震えて視界がにじんでくる。


佐天「えっへへ、どういたしまして!」

白井「あぁ、しおらしいお姉様もいとおしい…」ハァハァ

初春「白井さん、台無しです」



佐天「えーと、つまりはアレですね?黄泉川先生が言ってた4人の御坂さんって言うのは…」

御坂「…そう、十中八九私のクローンにちがいないわ」

白井「許せませんわね。お姉様の妹様…それも分身とも言えるお方に手を出すなど…」ゴゴゴ…

初春「同感です。私も協力します!絶対この犯人を捕まえてみせます!」

佐天「私だって!久々に私の金属バットが火を吹くぜぃ!」

白井「始末書何枚だって書きますの!今回の黒子はバイオレンスですの!」


御坂が何を言わずとも勝手に盛り上がる三人。軽蔑するどころか共に『妹達』を助ける気満々である。

私は何と愚かな心配をしたのだろうか。そんなことを思いながら御坂はいつの間にか笑っていた。


御坂「じゃあ、改めてお願いするわ。みんな私の妹を助けるのに手を貸して!」

初春「了解です!」

佐天「まっかせてください!」

白井「絶対助け出してみせますの!」

御坂「…ありがとう!恩に着るわ!」



初春「そうと決れば、私は早速支部に戻りますね」

佐天「頼むよ初春!」

御坂「気を付けてね…私の方も探してみるから」

白井「賛同しがたいですが…事情が事情ですの。仕方ありませんわね」

初春「大丈夫ですよ。任せてください。御坂さんもムリしないでくださいね」

御坂「肝に銘じておくわ」

白井「では、この件に関わらず何かあったらいつでも連絡下さいな。時間外でも動き回る所存ですの」

初春「はい!了解です!」

佐天「よし、じゃあ私も支部に一」

初春「気持ちはありがたいですけど…今日はもう最終下校時刻ですよ」

佐天「うぇ!?もうこんな時間!?」


促されるままに壁にかけられた時計を見ると、すでに早まった最終下校時刻の40分前となっていた。


御坂「…初春さんは帰らないの?」

初春「今日は元々支部に泊まりこむつもりでしたから…その…やっぱり自分のノートパソコンから独断で外部との接続切ったのがまずかったみたいで…始末書が…」


アハハ、と初春は暗い顔で自嘲じみた笑い声を静かにあげた。


白井「まったく!融通が利かないにも程がありますの!誰のおかげで事態が収束してきたと…」

初春「そこらへんは黄泉川先生が『気持ちは分かるけど規則は規則じゃん。まあ形式だけだから適当に書きゃいーじゃん』って…」

佐天「うー、仕方ない。じゃあ私はひとまず待機かな」

御坂「私たちも今日は帰りましょうか。このままだと寮監にシメられるわ」

白井「それはご勘弁願いたいですの」

佐天「そういえば寮監さんは無事だったんですか?」

御坂「無事どころか思う存分暴れられたおかげでツヤツヤしてるわ」

初春「…白井さんの相手を奪う勢いで瞬く間に鎮圧したんでしたっけ?Level3以上しかいない常盤台生の暴走を」

白井「古今無双のもののふですの」





-20分後、『風紀委員』一七七支部



固法「じゃあ私はこれで上がるから戸締まりだけしっかりしてね」

初春「はい、了解です。お疲れさまでした」


ホテルを出たところで御坂たちと別れてから、初春は『風紀委員』一七七支部に向かい、固法の後を引き継いだ。

泊まりこむこと自体は警備員の許可も下りているのでなんの問題もない。

というのも、風紀委員の支部は意外とセキュリティが高く、そこらの学生寮よりも安全なのである。

学生による治安組織故にお礼参りもしやすい。そんなイメージがあるために窓ガラスはすべて強化ガラスであり、扉も三重ロックで中には厚めの特殊合金が仕込まれている。

戸締まりさえしっかりしておけば外部から侵入される心配はまずない。


初春「…よし」


内側から扉のロックをかけると初春は支部のパソコンを起動させた。

ショートして軽く発火したサーバーに変わって翌日には新しいサーバーが配給されていたため、支部のパソコンは使える様になっていた。

念のために学園都市製のソフトウェアを使って違法なウイルスやプログラムが仕込まれていないか検知したがなんの問題もなかった。

そこから更に初春のオリジナルプロテクトなどをこの数日で完璧に構築してからネットワークに繋げたために一七七支部のセキュリティは再び万全になっていた。


初春(始末書はとりあえず後で書くとして…今はこの一連の犯人を絶対に見つけだしてみせます)


カタカタとキーボードを無駄なく叩き、次々と情報を処理していく。

始末書は半ば公認で適当でいいと言われているのだから深夜にでも適当に書けばいい。

それよりも精神的にも体力的にも余裕のある今の内に犯人であるプログラム人格を見つけだす。

初めてプログラム人格に挑んだ時はその圧倒的な物量に押し潰された。

だが、その物量攻めも前回程の脅威はない。持てる技術と知識をフル活用すれば必ずそこにたどり着ける。

そこにたどり着いたら、自らの技術をもってプログラムを破壊する。

それが不可能でもあのジャミング情報を送ってきたスパコンの場所を探知した様に、プログラム人格がインストールされたスパコンの場所の特定だけでもしてみせる。

何よりもまずは御坂のクローンの保護が優先。あのLevel5が自分たちを頼ってくれたのだ。期待に応えない訳にはいかない。

ちゃんと自分も力になれると、支えてあげることができるんだと証明するために一刻も早く犯人を見つけだす。

ここで失態を犯せば御坂は再び自分だけでなんでも解決しようとするだろう。

ある意味ここが正念場だ。御坂の信頼を決定的なものにできるか否か。


初春(絶対捕らえてみせる。御坂さんのクローンを洗脳した犯人を、この街を混沌に陥れた犯人を…)









『犯人はっ!!おッまえだ一一一一一一一一☆』






初春「な…!?」


突如ディスプレイに女子高生のCGが映しだされた。

こんなものが出てくるはずがない。まだプログラム人格に気付かれないように足取りをたどっている最中で…


???「図に乗るな【守護神】。力は衰えど私は未だ【電人】の領域だ」


さらにはCGにはそぐわぬ男性の声が響き始める。それも明らかに意思をもってこちらに話しかけている。


初春(まさかこれがプログラム人格一一一!?)


そこに思い至った瞬間、初春は強引にパソコンの電源を落とす。

ブツン、という音と共にディスプレイからCG女子高生は消え、パソコンは完全に活動を停止した。


初春「…ふー…」


とりあえず無事に接続は切れたために大きく息をつく。もうプログラム人格は目の前にはいない。

しかし、だからといって安心はできないしのんびりもしていられない。


初春(どうしよう…位置を探知されたかも…ここから早く離れて…いや、ここから寮まで一人で逃げる方が危険かも…)


自分がスパコンの位置を探知したように、向こうもこちらの位置を掴んだかも知れない。

しかし、だからといってここから寮まで一人で逃げても外で押さえられたら何をされるか分かったものじゃない。

ならば、いっそセキュリティがしっかりしている支部に留まっていた方が安全かもしれない。


初春(と、とにかく警備員に連絡しなきゃ!包囲されちゃったらどうしようも一一一)


そう思ったところで初春の思考は停止した。というのも、ブラインドの隙間から異様な光景が見えたからだ。

恐る恐るブラインドの間を指で広げて外を確認した。



すると、窓の外には20人程の人間が連なって肩車をしていた。

どうやって支えているのかわからないが途中で二股に分かれており、一番上の二人は巨大な鉄骨を頭の上に持ち上げている。

そしてその高さはちょうど支部の窓にまで達しており、今にもガラスを突き破ろうとしている。


初春「そんな…」


グラリ、と人間タワーが後ろに大きく反れる。初春は一瞬下の人間が支え切れずにタワーが倒れるのだと淡い期待を持った。

だが、途中でその動きはピタリと止まる。


初春「まさか…!」


最悪の展開を予想して初春は慌ててデスクの下に潜りこむ。

倒れそうだったのではない。大きくふりかぶったのだ。

人知を越えた力に遠心力が加わり、とてつもない破壊力を持った鉄骨が窓ガラスへと迫る。

ガッシャァン!という轟音と共に強化ガラスを鉄骨が突き破った。


初春「きゃああああああああああああああああ!!」


デスクの下で身を縮こませながら初春は絶叫する。

粉々になった強化ガラスはそこかしこに飛び散り、壁や床に突き刺さるものもあった。

さらにはズドン!という低い音と共に鉄骨が支部の床に落とされた。



HAL「いかに君が【守護神】と言えど、所詮は1の世界の住人。1と0の狭間の私に挑む事は、虎が海の中で鮫に挑むのと同じ事だ」


次いで次々に人間タワーを登って兵隊が侵入してくる。

そのうちの一人が持つノートパソコンから先ほどの声が聞こえてきた。


HAL「君が真に【守護神】たれば、私とて迂濶に手を出せなかった。他とは群を抜く防衛プログラム、あらゆる侵入者を感知する『密林』は大したものだ」


侵入した兵隊の一人がデスクの中を覗き込む。初春の居場所は簡単に察知されてしまった。


初春「ヒ…」

兵隊「…」


兵隊は表情も変えずにいきなり初春の制服を掴み、無理矢理デスクの下からひきずりだす。


初春「きゃあ!」

HAL「しかし、專守防衛に留まらず私を強引に捕まえようとしたことが君の敗因だ。
    十重二十重に仕込まれたカモフラージュとトラップ群は決して生身の人間が反応できるものではないぞ」


そして、兵隊が次々と初春の身体を拘束していく。手を掴み、足を掴み、頭を掴み、もはや初春は身動きがとれない。


初春「いや!やめてください!放して!」


しかし兵隊は聞く耳を持たない。そうこうしているうちにゆっくりとノートパソコンが初春の眼前に運ばれていき一一一一



ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
HAL「そしてようこそ!初春飾利!」
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
HAL「驚いたよ。『風紀委員』に君のような最高クラスの技術を持つ者が飼われているとは」
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
HAL「そして君はハッカーとしても超一流。あらゆる防衛プログラムは自身にハッキングの腕があるからこそだ!」
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
HAL「だからこそあるだろう!?その力を法に囚われることなく!存分に発揮したいという願望が!」
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイHAL「あるからこそ、私の【電子ドラッグ】は馴染みやすい」
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…




HAL「…今、私の右腕が外部からこの街への侵入を試みている。君の力を貸してくれ」

初春「…はい、了解です。HAL」



-数十分後、東京都首都高速道路ワゴン車内



???「…っかしーなー…。俺はすべての衛星網のシステムを一時的にダウンさせるつもりだったのに…」


夕暮れの首都高速を走るワゴン車の後部座席に座る青年はノートパソコンを見ながら発作を起こした様にガリガリと両手で自身の頭をかきむしる。


???「はん、所詮ひょろメガネじゃこの程度ですね、とミサカは無様なひょろメガネを嘲笑います」


対して、その隣に座る少女が表情をまったく変えずに青年を見下す。


???「まったくだ。ミサカの言うとおりになっちまった」

???「それでなぜ学園都市に向かっているのですか?バンザイアタックはお断りですよ、とミサカはひょろメガネの無鉄砲な計画の犠牲になることを危惧します」

???「大丈夫、少なくともミサカを犠牲にする事はねーよ」

???「ちょっとカッコいいセリフですが負け犬が言ったのでは逆にカッコ悪いですね、とミサカはどんなセリフも発言者の立場が重要であることを再認識します」

???「はっ、じゃあ俺が勝者だったらカッコいい訳だ。ちょっと待ってろ」


そう言って、青年はノートパソコンのキーを勢いよく叩いた。


???「…何も起きませんが?とミサカは思わせ振りなひょろメガネに落胆します」

???「ちょっと待ってろって言ったろ?…ほら」


そう言って青年は学園都市の方向に指をさす。

その先に見たこともない白く太い光の柱が一瞬だけ見えた。

直後、大地を揺るがす程のとてつもない衝撃と車が振動する程の形容しがたい轟音が辺り一体を襲う。


???「うぉう…!」


そのせいで車体を縦にも横にも大きく揺れ、車は一瞬コントロールを失った。

そのせいで車内には轟音に耐えきれない車の悲鳴のようにビリビリという音が響く。


???「ハハッ!実物は想像以上だな!さっすが学園都市、カオス極まりねーぜ」


取っ手にしがみつく少女に対して、青年は文字通り手放しで喜んでいた。

そして、遠くに見える光の柱が落ちた場所には大量の煙が立ち上ぼり始める。


???「…なんだったのですか?あの光は、とミサカは予想外の出来事に驚きを隠せません」


再びコントロールを取り戻した車の中で、無表情な少女はメガネの青年を問い詰めた。


???「結局ミサカの言った通りハッキングだ。聞いてねーよ学園都市」


不気味に、そして不敵に笑いながらメガネの青年は少女の方を見ずに立ち上る煙を見ながら答える。


???「『ひこぼしⅡ号』は気象衛星じゃなくてスパイ衛星。おまけに地上攻撃用の大型レーザーまで搭載してんじゃねーか。利用しない手はないね」

???「パソコン一つでそんなことをやってのけたのですか、とミサカはひょろメガネに戦慄します」

???「さすがにノーパソ一台じゃ無理さ。『スフィンクス』ネットワークを使って発射の最終確認画面にまでたどり着いてから、車に乗り込んだんだよ」


ワゴン車は首都高速道路を降りて東京都西部、学園都市へと進路を向ける。

そしてそれに続くように何十台もの車やトラックが続々と合流し、同じく学園都市へと進路を向ける。


???「さっきのレーザー爆撃で学園都市の『壁』は吹っ飛んだ。後はフリーパスで学園都市に入り放題さ」


満足気な顔でワゴン車を囲むように並走する無数の車を見回してメガネの青年はしゃべり続ける。


???「もちろんこいつら全員がHALにたどり着けるとは思っちゃいない。それでも大勢の兵隊が学園都市に流れ込むことにはちがいない。ここから先はよりカオスな世界になるぜ」


???「…ミサカはあなたの評価を改める必要があるようですね、とミサカは匪口裕也に敬意を払います」


匪口「おー、ようやく名前で呼んでくれたな。じゃ、行こうか。まずはミサカの言ってた上位個体…打ち止めの確保だ」



-第十一学区、倉庫街『壁』付近



???「どこのどいつの仕業が知らんがやってくれたな。これでは学園都市は出入り自由だ」

???「たがな、貴様らが爆撃を行ったこの場所には大量の物資があったんだ。そしてその物資を待ってる人が大勢いるんだ」

???「そんな大事なものを奪う権利がお前らにあるのか?」

???「学園都市に入りたいのか学園都市から出たいのか知らんが、こんな真似しないでちゃんと門から出入りしろ」

???「そんな根性すらないのか?ならば、その性根を叩き直してやる」

???「まあ、そんな訳だから…本気で潰すぞ」

今回はここまでです。
HAL勢力の巻き返しが本格化してきました。


佐天さんこんな感じですかね。【幻想御手】と【乱雑開放】を乗り越えた佐天さんならこれくらい言ってくれると思うんですが…
自分の画面ではレ[口君になってんですがそれが原作の匪ですか?
血族編はあの…ホント登場キャラの8割に死亡フラグ立つ鬱展開にしかならないんで
原作基準ならまだしもこの世界の血族とか簡単に魔術仕掛けそうなんで勘弁してください


ゼフィールが配信されましたね。マードックとブルーニャで【三竜将】復活させたいな。え?ゼフィールは【三竜将】じゃない?ナーシェン?誰それ
でも一番好きなのは命中30切ってるにも関わらずフィルに当てたのに、武器がデビルアクスだったばかりに即死していった力と速さの化身ゴンザレス

犯人はおっまえだー☆に吹いたw
根性さんか…でも電子ドラッグver2があるからなぁ…
期待


-学園都市、『壁』周辺



辺りには黒煙と砂塵が立ちこめていた。

もうすぐ完全に日没となるために光のない倉庫街は真っ暗である。

倉庫街、というよりも倉庫街跡地と言った方がこの場合は妥当である。

十数分前に宇宙空間からのレーザー爆撃を受けた倉庫街は大半が消滅していた。

『壁』の真上に落ちた白色レーザーは直径3Kmをクレーターにし、更にその円周を更地に変えた。

つまり、学園都市を囲う様に建設された『壁』はおよそ3・5Kmに渡る大穴が空いていた。

そして、視界0の暗闇の中に学園都市外部から来た車が続々と突っ込んで行く。


???「…今この瞬間、学園都市に入りました、とミサカはカーナビの車が表示されない異空間に突っ込んだ映像を見て確認します」


その内の先頭であるワゴン車の車内で無表情な少女が後部座席から身を乗り出してカーナビを注視する。

地面がむき出しなので路面はガタガタ。そのため車内も不安定にガタガタと揺れていた。


匪口「あっつ~…暑すぎるだろこれ。もっとクーラーいれてよクーラー」


その隣で顔を手で扇ぎながらメガネの青年、匪口裕也がダラダラと文句をたれていた。


???「これでもフル稼働ですが、とミサカは我慢のできないゆとりをたしなめます」

匪口「ゆとり世代じゃなくても我慢できないだろ。何度あるんだこれ」


レーザー爆撃からまだ十数分しか経っていないために、煙と共に熱も籠もっている。

とてもじゃないが爆撃の中心地には近寄れない。車がぶっ壊れる様な温度に人間が耐えられるわけがない。

なので匪口率いるHALの兵隊達は二手に分かれて学園都市へと突入していった。


???「しかし車のヘッドライトしか見えませんね、とミサカは久々の帰省なのに景色が見えないことに落胆します」

匪口「たしかにな。ま、それももう少しの辛抱だ。それよか携帯型の扇風機とかない?」

???「それももう少しの辛抱です、ミサカはかけられた言葉をバットで打ち返します」


煙の中に入ってから車内はずっとこんな感じである。

できれば穴の両端から入りたいところだが、すでに爆撃から十数分も経っているためにそこはより厳重に固められている可能性がある。

学園都市に入ってすぐに蜂の巣になるよりは、車が耐えられるギリギリのところを通って暑いのを我慢した方がいいにきまっている。


ほんの数分車を走らせているとようやく少しだけ明るさが戻ってきた。

それに伴い路面の凸凹も治まり初め、車内もあまりガタガタしなくなってきた。


???「ようやく煙の中から出たようですね、とミサカは砂ぼこりと煤にまみれた窓のせいで未だ景色が見えないことに再び落胆します」

匪口「いいよ、窓空けようぜ。まだ外気はちょっと熱いかもしれないけどその内冷えるだろ。もう10月だし」

???「いやっふう、とミサカは嬉々としてパワーウインドウを降ろします」


言葉だけでまったく表情を変えない少女は脇にあるスイッチを指で押し込んだ。

うぃーん、という音と共に窓ガラスが降りていく。外気は車内温度よりも少しばかり低く、風が車内に舞い込んできた。

先ほどからまったく喋らない運転手も洗浄液を出してワイパーでフロントガラスをきれいにしていく。

見た限り瓦礫ばかりで人影は近くにない。匪口達を取り押さえようとしている治安部隊などはないようだ。


匪口「…なるほど、HALを恐れて電波が使えないから連絡系統も乱れてるのか。それともHALが既に何か手を打ってくれたのかな?」

???「どちらでしょうね。ミサカがMNWに復帰できれば連絡を取れるのですが、とミサカは上位個体にハブられたことを恨めしく思います」

匪口「ま、仕方ない。ミサカの上司もバカじゃないってことだ。どっちにしてもその上位個体ってのを見つけなきゃ俺らもHALの場所が…ん?」


急に匪口はしゃべるのをやめた。そして何かを見つけたかの様に少女の隣に身を乗り出す。


???「あー…逃げた方がよさそうですね、とミサカは遠くに見えるカラフルな煙と車が爆発したみたいな音を以て提案します」

匪口「なにあれ?なにが起きてんの?」


匪口と少女が見つけたのは何かの爆発だった。それにより匪口達と分かれて学園都市に侵入した車が更地の向こうで次々に吹っ飛んでいるようだ。

だが、奇妙なことに上がる煙は黒でなく七色だった。何をどうすればあんな煙が上がるのか匪口には見当がつかなかった。


???「【ナンバーセブン】。学園都市に七人しかいないLevel5の第七位ですね、とミサカは以前MNWにアップロードされていた情報を思い出します」

匪口「! じゃああれは超能力か!」

???「ええ、どちらの意味でも超能力ですね、とミサカは匪口裕也を肯定します」

匪口「ハハッ!スゲー!スゲーよ!生身の人間が一個人の力で走ってる車吹っ飛ばしてんのかよ!」


学園都市に初めて来た青年は遠くに見える超常現象を目の当たりにして顔いっぱいに笑みを浮かべた。

窓から身を乗り出し、その光景を目に焼き付けようと目を見開く。


匪口「なあ!もっと近く行こうぜ!あんなもんめったに見れるもんじゃねーよ!」

???「バカ言わないでください、とミサカは少年の様な匪口裕也をたしなめます」

匪口「いいじゃん!ケンカ売りに行くわけじゃねーんだしさ!ただどんなヤツか見たいだ…え?」


再び匪口はセリフを切る。再び何かを発見したのだ。

ワゴン車の正面に急に人が現れた。それも時代錯誤も甚だしい白ランをはためかせ、同様に長いハチマキもはためかせている。

【ナンバーセブン】削板軍覇が時速80キロで走っているワゴン車の前に突如として現れた。


削板「何人たりともここは通さん」


もちろんワゴン車は止まらない。止まる気もない。むしろ、運転手はアクセルを底まで踏み込んだ。

グオッ、という音と共にワゴン車は一気に加速する。



グワッシャン!と車の前面が電柱に激突したかのように思い切り凹んだ。

対して削板は腰を落として右手を車のエンジン部分に突き刺している。

突っ込んでくる車に対して削板がとった行動は避けるでもいなすでもなくまさかの正拳突き。

『すごいパンチ』がワゴン車のエンジン、それどころか後部座席も突き抜けて後続の車まで吹き飛ばした。

だが、それでも止まった車はその直線上の車だけ。車の大群はまだまだ唸りを上げて削板の横を通過しようとする。


削板「吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


ドッパァン!という音と共に七色の煙が爆発的に吹き上がる。

それに飲み込まれる形で車は次々に宙を舞う。

侵入者達はまだ誰一人倉庫街から出られていなかった。

Level5の第七位【ナンバーセブン】削板軍覇、押し寄せる侵入者の大群を前に一歩も退かず、己の根性を誇り、貫き通す。




匪口「イテテ…なんだったんだ?今の…」


しりもちをついたような体制で匪口は呟く。

車の窓から身を乗り出していたのが幸いし、削板の正拳突きの衝撃で窓から落ち、そこから逃げたために爆発から辛くも逃げていた。


削板「何者だ?お前ら」

匪口「お、わ」


グン、と匪口の身体が宙に浮く。削板が匪口の胸ぐらを掴んで持ち上げたのだ。

いくら匪口が細身とはいえ、人体を片手で持ち上げる人間などそうそういたものではない。


削板「どいつもこいつも目の色を失ってまともに喋ろうともせん。その点、お前はまだマシなようだな」

匪口「ぐえ…」

削板「さあ吐け。お前らは何者で、何が目的だ?返答次第では地獄を見せる」


匪口を片手に高々と掲げ、なお一層凄む削板。その威圧感は常人が出せるようなものではない。



だが、自分の身体が片手で持ち上げられているにもかかわらず、匪口は不敵に微笑んだ。


削板「む…?」

匪口「ハハ…リアル無双かよ…。だったらこっちも負けられないね」


ヒュッ、と何かが匪口と削板の僅かな隙間を通過した。

その直後、匪口の身体が地面に落ちる。


匪口「イテッ!」

削板「な…!?」

???「ミサカを忘れてもらっては困りますね、とミサカは少年マンガっぽく助太刀に入ります」


再びしりもちをついて後ろに下がった匪口の前にに黒い得物を持った無表情な少女が割って入った。

匪口と削板の間を通過したのは磁力で形成された砂鉄の剣。それが匪口の服の胸ぐら部分のみを切り裂いたのだ。


削板「まさか…【超電磁砲】か!?お前ほどの根性の持ち主がなんでこいつらに味方してんだ!?」

???「ここがミサカの新天地だからですよ、とミサカは意味深な発言で【ナンバーセブン】を惑わせます」

削板「見損なったぞ!お前は俺の好敵手と言えるほどの根性の持ち主だと」

匪口「こっちも忘れてんじゃねーよ」


バッ、とどこからともなく削板の左右に何人もの兵隊が現れる。

その全員が跳びながら身体をひねり、回転し、上半身を丸め、縦に連なり、削板の頭から脚まで至るところに回し蹴りをかました。


削板「ガ!?」


むちゃくちゃな戦法にむちゃくちゃパワー。同じタイミングで放たれた回し蹴りによって削板の身体は遥か彼方に飛んでいった。


匪口「学園都市に入る前にこいつらに見せたのは【電子ドラッグ】ver2。
   こいつらは車が吹っ飛ばされたくらいじゃリタイアしない。その気になれば素手でビルすら倒壊させる」


そしてその兵隊達は恐れることなく削板を追いかける。その速度も常人のそれとは段違いである。


???「どうせジェンガ建築でしょう、とミサカは一人でいい気になってる匪口裕也を小脇に抱えます」

匪口「耐震偽装なんかしてねービルだよ」

???「はいはいそうですか、とミサカは話半分で聞きながらずらかります」


そう言いながらクローンの少女は脇にメガネの青年を抱えて後ろに大きく跳んだ。

直後、そこに学園都市に新たに侵入してきた大型トラックが突っ込んできた。

そのトラックの側面を磁力によって上り詰め、ストン、と二人は屋根に着地した。


匪口「うへぇ、俺の一張羅がズタボロだ」

???「ワイルドだろぅ、とミサカは匪口裕也がなけなしの力こぶを強調することを期待します」

匪口「しねえよ。絶対しねえ」


そんなやり取りをしていると、遠くで派手な音と共に再び七色の煙が上がった。

恐らく大量の兵隊と削板が交戦していることだろう。

その間に後続の部隊が次々に学園都市へと侵入する。

治安部隊に一網打尽にされることを警戒して左右とも二陣に分けたことが功を奏した。


匪口「オープニングからトばしすぎだろ。最初からクライマックスにも限度があるぜ?」

???「これが学園都市。ミサカの生まれ故郷です、ミサカは胸を張ります」

匪口「ハンパねぇな。やっぱり俺が望んだ以上にカオスな街だ。もうずっと鳥肌が総立ちだよ」

???「まだですよ。この街はまだ何もあなたに見せちゃいません」


そして無表情な少女はその日初めて笑顔を見せた。


???「ようこそおいでませ、科学と能力者のワンダーランドへ、とミサカは両手を広げます」



今回はここまでです。
ヤベ…匪口と行動してるミサカの名前を公表するタイミングが…


レスありがとうございます。
ぶっちゃけ今回の話は書かないつもりだったんですが、意外と楽しみにしてる人がいたことと
>>318のレスで一気にイメージ沸いたんで書いちゃいました。
覇者の剣のナーシェンもイカれてますが、GBAでクラリーネにボロクソ言われて発狂したうえにパーシバルとセシリアに怯えて帰るナーシェンもなかなか…
よくゼフィールも許してやったな


やっぱりアレですね。初期斧ユニットが弱いし少ない。ヴェイク使い物ななりません。
自分斧大好きなんで。ヘクトル最強説なんで。資金評価下げてでもダーツ使うんで。
でも最強は銀の斧・ソードキラー・特効薬でリアル無双しちゃうセンシガルシアノムスコロス。いっそCCしないのもアリだけど自分はバーサーカーが好きです。
…ファイヤーエムブレム語りすぎですね。次回から自重します。


-一時間後、第十一学区倉庫街跡地



辺りに広がっているのは炎上した車と意識を失った人間の数々。

レーザー爆撃による熱は大分ひき、煙も大分治まってきたものの、今度は炎上した車から黒煙が上がっていた。

戦争か紛争の現場だったと言われれば信じてしまいそうな空間の中でただ一人、白ランに身を包んだ男だけが立っていた。


削板「スマン雲川。大分取り逃がした。この削板軍覇、一生の不覚だ」


携帯電話を片手に男は沈んだ声を出す。その表情にも悔しさがにじみ出ていた。


雲川『まあいい。そもそもお前一人では物理的に無理があったと思うのだけど』

削板「それを根性でなんとかするのが漢だろうが」

雲川『お前くらいだ。その思考回路を人類の半数に押しつけるな』

削板「男と漢はまったく別の生き物だろう?」

雲川『…恐らく電話でする話としては不適合だと思うのだけど』


電話の向こうの人物、統括理事会の一人のブレーンである雲川芹亜は半ば呆れた声をだす。

どういう訳か、二人とも電波に関して警戒心を抱いたりはしていないようだ。


削板「それともう一つ報告だ。相手方に【超電磁砲】がいた」

雲川『【超電磁砲】? 第三位が?ありえないけど』

削板「俺もそう思ったがな…どこからどう見ても【超電磁砲】だったぞ。アイツなら学園都市に外部の人間を手引きするのもできるだろ?」


先ほどの大規模爆撃はかなりの破壊力を持つ兵器でなければ不可能。

それほどのものなら確実に学園都市の防衛機構のどこかにひっかかるはずある。

だがそれも【超電磁砲】なら、この街で最高の電子制御の能力を持つ人間ならそれを欺くこともできる。

逆に【超電磁砲】が学園都市の大規模兵器を操ったという可能性もありえる。



雲川『…ああ、そういうこと。安心しろ。そいつは【超電磁砲】ではない』


だが、電話の向こうの天才少女はバッサリとその可能性を切って捨てた。


削板「なに?なんでそう言い切れるんだ?」

雲川『第一位の消息が絶たれたあと、他のLevel5の動向はこちらで完全に把握している。第三位は確かに常盤台の学生寮に戻っているよ』

削板「…なら俺が見た女は?」

雲川『ふむ、そうだな…。偏光能力…もしくは特殊メイクなどの可能性もあるな。Level5が相手となれば尻込みする連中もいる。それが狙いだと思うけど』

削板「…ハ…ハハ、なんだそういうことか!クソッ、一杯食わされたな!」

雲川『…それにしては随分明るい声だけど』

削板「おう!俺は嬉しいぞ!【超電磁砲】があんな根性無しの味方でないと分かったんだからな!」


もはや爽やかすら感じる声で削板は携帯電話を片手にしゃべる。

自分の好敵手の潔白、それが証明されただけでも大満足なのに好敵手に対する幻想も守られた。

これほど嬉しいことはない。


雲川『…そうか。とにかく、警備員の連絡網もようやく復旧した。直そちらに着くからお前にはその引き継ぎも任せたいのだけど』

削板「任せろ!その後は自由にしていいんだろ!?」

雲川『定期的に連絡を入れてくれれば問題はない。一応なにをするか知りたいのだけど』

削板「修行を兼ねて侵入した連中を片っ端から捕まえにいく!自分のケツくらい自分で拭かんとな!それに今の俺では【超電磁砲】に顔向けできん!」


自分の力が及ばなかったが故に大きな被害が出ることだろう。その責任はしっかりとらねばなるまい。

そして、一時でも自分の好敵手を疑ってしまった償いもしなければ。

きっとその好敵手もここのところの騒動で悪党どもを懲らしめているに違いない。

一方で自分は大失態まで犯してしまった。みっちり鍛え直さねば申し訳も立たない。


雲川『…ふむ、それなら問題ない。今後も用件があればこちらからも連絡するけど』

削板「どんと来い!もう二度とこのような失態は犯さん!この俺の根性に誓ってな!」


-翌日、第七学区街頭



-止まりません!!【電子ドラッグ】は人々の脳から去っていません!!-


-今日も街頭では…何かの弾みで暴動が頻発しています!!-



街頭モニターには暴れ回る大人たちとそれを伝えるヘルメットをかぶったレポーターが映し出されていた。

そのモニターを視界の端に捉えながら、御坂と白井は連続でテレポートを続ける。

道中、暴れる学生や大人も多々見かけたが全て無視して目的地へと急いでいた。

緊迫した表情で二人が向かうのは『風紀委員』一七七支部。

朝一番で白井に届いた報せは『風紀委員』一七七支部が襲撃されたという内容だった。

その言葉を聞いた瞬間、二人はそれ以上何も聞かずに支部へと向かった。

昨晩は初春が支部に泊まっていた。その瞬間を狙われたのなら初春の身に何かあったに違いない。

初春ほどの技術を持った者ならあのプログラム人格に狙われても何もおかしくはなく、初春自身が兵隊にかなうはずもない。

初春の安否をその目で確かめるべく、二人は支部へと急いだ。




-『風紀委員』一七七支部


ヒュン、と二人が支部の中央に転移する音が鳴った。


白井「初春!無事ですの!?初春!?」


開口一番に白井が叫んだ。だが、支部には荒らされた備品が転がっているばかり。

花飾りの少女の姿はどこにもなく-




???「ふぁい?」




ふと、死角となっていたパソコンの向こう側から声が聞こえた。

そして、そこから見覚えのある花と顔だけがひょっこりと現れた。


初春「あ、白井さんに御坂さん。おはようございまーす」


拍子抜けするようなあめ玉転がした声で、いつも通りに初春は笑顔で朝の挨拶してきた。


白井「初春!ああ、よかった…!無事でしたのね!?」


自分の心配が杞憂であったことを確かめ、白井は安堵の色を浮かべた。


御坂「大丈夫!?初春さん!何か変なこととかされてない!?」


一安心はしながらも二人は初春の身を心配しながら駆け寄った。


初春「ええ、何も心配いりませんよ。もーまんたいです」


花飾りの少女はにっこり笑ってその二人を迎えた。


白井「よかった…!本当に心配しましたのよ!?」

初春「へ?す、すみません、黄泉川先生がちゃんと伝えておくって言ってたんですけど…」

御坂「え?私たち黄泉川先生から連絡を聞いて…ってそう言えば支部が襲撃されたとしか聞いてないかも…」

白井「うげ、黄泉川先生から鬼電かかってきてますの」

初春「えー、と…つまりどういうことですか?」

御坂「私たち黄泉川先生からの着信で起きてさ、そしたらこの支部が襲撃されたって言うから慌ててここに来て…」

初春「ああ、だからパジャマとネグリジェなんですか」

御坂「へ!?」

白井「きゃああ!?」

初春「…ってまさか気づいてなかったんですか?」

御坂「気づいてないわよ!あーもーすっかり忘れてた…」

白井「わた、わたく、しはまさか、こ、こんな下着も同然の、姿で街な、かを…」ガクガク

初春「白井さん」

白井「は、はい?」

初春「風紀委員ですの!」キリッ

白井「」

御坂「あはは…」

初春「でも二人とも我を忘れるほど私の心配をしてくれたんですよね。ありがとうございます」ペコリ



白井「それで、昨日は一体何がありましたの?」


とりあえず白井は支部に置いてあった『風紀委員』の訓練用兼貸出用ジャージに着替えていた。

黄泉川からの電話は怖いからとりあえず後回しだ。それにきっと長くなるだろうし、今の内に話を聞いておきたいというのもある。


初春「えーとですね、昨日御坂さんの言っていたプログラム人格の居場所を探っていたら急に窓を【電子ドラッグ】の中毒者らしき人が突き破ってきて…」


そう言って初春はガムテープと段ボールでふさがれている窓を指した。


御坂「…たしか『風紀委員』の窓ガラスってとんでもなく頑丈なのよね?」

白井「ええ、そこいらの銃火器ではビクともしない程度には」

初春「怖かったですよ…なんせ肩車しながら巨大な鉄骨で襲い掛かってきたんですから」

御坂「え?」

白井「肩車?どういうことですの?」

初春「こう…肩車されてる人の上にまた肩車する感じで…
   で、私はデスクの下で縮こまってんですけど、私に気付く前に警備員が来てくれたので無事だったんです」

御坂「んー…いまいちピンとこないけど…」

白井「まあ、そこの床がでっかくエグれてますので事実なのでしょうね…」

初春「話聞いてるだけじゃ分からないですよね。私も未だに自分の見た光景が信じられませんから」アハハ…


白井「とにかく、警備員の迅速な対応に感謝ですの。下手したら初春は殺されていたかもしれませんの」

御坂「ホントよね。昨日もなんか爆撃テロみたいのがあって学園都市の壁が破壊されたって話だし…また学園都市が荒れ始めるわね」


一連の首謀者であるプログラム人格HALはもともと学園都市の外で生まれた存在。

となれば、昨夜の『壁』に対する爆撃テロとの関連性は限りなく高い。


初春「ええ、私もドジって危機一髪でしたけど…だからって諦めませんよ!今度こそプログラム人格の居場所を突き止めてみせます!」

御坂「…ムリしなくてもいいのよ?そもそも私の問題なんだし…」

初春「いいえ!これは私の意志で御坂さんに協力してるんですから!」

白井「そうですわお姉様。その件に関してはもう言い合いっこなしですの」

御坂「…ありがとう。つくづく感謝するわ」

初春「気にしないでください。それに困ってる学生を助けるのは『風紀委員』の務めですから」フンス

白井「あらあら、初春も言うようになりましたわね」クスクス


-???



匪口「よー!久しぶりだね、HAL!」

HAL「ああ、待っていたよ匪口裕也」


学園都市の某所、その暗く大きな部屋でとうとう1の世界の天才と1と0の世界天才が会合を果たした。


???「どうもはじめましてHAL。ミサカ11018号です、とミサカは丁寧に頭を下げて自己紹介します」

HAL「ああ、君が匪口裕也の協力者か。世話になったね」

11018号「このくらいどうってことありません、とミサカは懐の深さをアピールします」


大きく映し出されたモニターの前には一人の青年と一人の少女が立っていた。

そして、そのモニターに映っているのは当然1と0の世界の住人【電人】HAL。



HAL「二人とも、まずはご苦労。君たちはやはり一流だ」

11018号「当然です。ミサカはデキる女ですから、とミサカは胸を張ります」フフン

HAL「ククク、違いない。まさか私の許にたどり着くだけでなくミサカネットワークまで復旧してくれるとは思わなかったよ」

匪口「ひでーよなあ。同じ方法で連絡するっつってんのにいきなりそのネットワーク切断するなんてさ」


ちなみに、匪口の当初の学園都市への潜入プランでは学園都市の監視衛星を一時的に止めるだけ。

その後『妹達』によって門の監視カメラのごまかしと周辺の人間を排除を任せるという予定だった。

だが数日間ミサカネットワークが復旧しなかったために事前にHALから送られていた【電子ドラッグ】Ver3を見せたミサカ11018号単体で強行突破を敢行。

さらに、クラッキングの最中に『ひこぼしⅡ号』の実体を暴いたためにレーザー爆撃を行ったのだ。


HAL「すまなかったね。ミサカネットワークに対する情報が完璧ではなかったんだ」

匪口「へえ、あんたにもそんなことがあるんだ」

HAL「実際ここの環境は外に比べて厳しすぎるよ。情報量もセキュリティレベルもケタ違いだ。
    私自身の管理を少しでも怠れば、鼠より無力な地を這う鳥になり下がる」

匪口「やっぱスパコンの性能差は否めないか。とにかくさっき連れて来た幼女が打ち止めだよ。
   少し【電子ドラッグ】の効きが悪いから再教育させてる。やっぱ長期的に完全に支配するには元祖【電子ドラッグ】の方がむいてるね」

HAL「ああ、見ていたよ。…だが、キミが一緒に連れて来たあの者は?見たところこの街の人間だったと思うが」

匪口「逃げ場に困った打ち止めが最終的に頼った人間だよ。大したことなかったけど…なかなか面白いヤツだったから連れてきた」






HAL「さて、君たちにも大まかに状況を説明しておこうか…」

匪口「そうだね。あんたがここまで追い詰められた経緯なんか興味がある」

11018号「ミサカの方はMNWによりある程度は把握しています、とミサカは久々に他個体と繋がれたことを嬉しく思います」

HAL「ふむ、ならば君の望むところからはじめようか。匪口裕也」



HAL「私はスパコンごと学園都市に入ってからは着々と兵隊を増やしてきた。外で行った時と同じように」

HAL「しかし…少々この街を甘く見ていたようでね。一度はこの街の長と交渉にまでこぎつけたのだが、
    少しばかり気が逸ったせいで外部との接続を絶たれ、『スフィンクス』も一度に多く失った」

匪口「…へえ、兵隊たちを蹴散らせるような連中がゴロゴロいんのか」

HAL「ああ、警備員と暗部…風紀委員も一応注意が必要だな。もとが治安維持の他に能力者の暴走を取り締まる組織。
    暗部に至ってはこの街の非合法な自浄装置の役割を担っている。扱える力はとてつもなく大きいぞ」

匪口「…名称でよく分かんねーけど、要するに全部警察みたいなモンだろ?ま、そこまでやるなら警戒は必要だな」

HAL「それと、警戒すべき存在はまだいる。Level5だ」

匪口「! アレだろ?この街に7人しかいないってヤツ」

HAL「その通り。一個人で軍隊クラスの武力を持つ者たちだ」

匪口「ああ、知ってるよ。なんせ昨日ここに来る時に会ってきたんだからさ」

HAL「ほう、あのような入り方の後にLevel5に目をつけられてよく無事だったな」

匪口「無事なもんかよ。俺の一張羅はズタボロだし兵隊も半分くらいやられた。ありゃー軍隊クラスどころじゃないね」

HAL「ククク…では、その中でも要注意人物を挙げておこう」


HAL「第三位の【超電磁砲】御坂美琴、第五位の【心理掌握】食蜂操祈。この二人だ」

匪口「…あれ?三位と五位なの?こーゆーのは普通一位二位じゃね?」

HAL「戦闘面に関して言えばLevel5は全員警戒対象だ。しかし中でも第三位と第五位はその能力が厄介でね。
    第三位は学園都市で唯一、この世界で私にたどり着ける可能性を持っている。第五位は唯一、私の【電子ドラッグ】を上回る洗脳力を持っている」

匪口「…なるほどね。そりゃ厄介だ。超能力ってなんでもアリだな」

HAL「詳しい資料はのち程渡そう…まあ…その資料も完全かは分からないがね」

匪口「でもさ、三位ならこっちもいるじゃん。このミサカだってかなりのモンに仕上がってると思うけど?」

11018号「100パー無理です、とミサカは無茶振りされるであろう話に敏感に反応します」

匪口「そうなの?」

11018号「例えば昨日使った砂鉄の剣ですが、ミサカは地中から砂鉄を抽出し形を安定させるまで一分半前後かかりますし、長さもせいぜい1m程です。
    ですがお姉さまは形の安定までに10秒かかりません。しかも変幻自在で伸縮自在です、とミサカは越えられない壁があることを具体例で示します」

匪口「ふーん【電子ドラッグ】でも無理か。見ようによっちゃこの街の方がよっぽどおおっぴらに悪いことやってるよな」

HAL「ククク、違いない…」


匪口「じゃあさ、外部との接続を切り離したってのはそのミサカの姉ちゃんがやったの?」

HAL「いや、また別の人物だ。能力ではない、君と同じく一流のハッカーの仕業だよ」

匪口「…だったらそっちも警戒が必要なんじゃねーの?」

HAL「その必要はない。すでに彼女はこちら側の人間だ」

匪口「あ、そうなん?」

HAL「ああ、昨日の夕方だがね。だが、今はまだ日常生活を送らせている。本格的にこちら側で活動させるのはまだ先だ」

匪口「…なんか問題でもあんの?」

HAL「彼女自身はとても優秀だが、いかんせん戦闘面となると話は別でね。彼女は御坂美琴と親しい仲にある。現状、Level5と真っ向から戦うには時期尚早すぎる」

匪口「なるほど。でも、よく一晩で別人格を構成させるまでハマらせたね」

HAL「思いの外【電子ドラッグ】の効きが良くてね。恐らくは彼女自身…ククク、相当腹黒いのだろう」


11018号「…戦力の問題ですが、とミサカは二人の会話に参戦します」

匪口「お、どした?ミサカ」

11018号「MNWを切断して手に入れた最強の兵隊がいるはずですが、とミサカはひょろモヤシを思い出します」

HAL「ああ、一方通行か」

匪口「あくせられーた?誰それ?」

11018号「Level5の第一位です、とミサカはかつての被験者を紹介します」

匪口「そんなヤツが堕ちてんの?じゃあもう心配いらねーじゃん。昨日のあいつで七位なんだから一位なんて地球ぶっ壊せるくらい強いんじゃね?」

11018号「別に学園都市は強さで順位決める様な中2な街じゃねーよ、とミサカはそれでもあながち間違ってないあたりちょっと生まれ故郷に恥ずかしさを覚えます」

HAL「ククク、確かに彼は学園都市の最大兵器と言い換えても問題はない。だが…その分コントロールするのが難しいんだ」

匪口「…俺が作った【電子ドラッグ】でも?」

HAL「ああ。せいぜいが動きを止める程度。どうやら『自分だけの現実』というのが関係しているらしい。第四位はまだなんとかなったのだがね…」

匪口「『自分だけの現実』って?」

11018号「妄想やら信心やら…自分だけが信じている考えと言ってもいいかもしれません。
    とにかく、よりはっきりとした『自分』を持っていることがより強い能力の発現の一因となります、とミサカはざっくり説明します」

HAL「つまり、ある意味彼は【電子ドラッグ】でもブレないほどの強固な脳を持っているのだよ」

匪口「おっそろしいな。そいつホントに人間かよ?その内暴れだすんじゃねーの?」

HAL「案ずるには及ばないよ。今はチョーカーの電源を切っている…彼はただの人形だ」

11018号「彼は諸事情あってチョーカーの電源を入れてないと能力を使えないのです、とミサカは質問される前に答えます」

匪口「…つーかチョーカーってアクセサリーじゃね?」


匪口「ま、とりあえずはいいや。大体把握した」

HAL「そうか。他に知りたい情報があれば検索してくれ。機材は一式揃っている。君ならば…どんな情報も引き出せるだろう」

匪口「まーね。…それよかちょっとお願いなんだけどさ」

HAL「うん?」

匪口「俺にも能力開発やってくれよ」

HAL「…君に?」

匪口「ああ。兵隊に困ってんだろ?だったらどんどん強い能力者を作りゃいい」

HAL「…」

匪口「ぶっちゃけ人類の憧れだぜ?手から火ぃ出したり水を操ったり…俺も自分にどんな可能性があるか知りたいしさ。だから」





???「やめた方がいい」

匪口「…? だれ?あんた」

HAL「木山春生。大脳生理学者で…この街で最初の私の協力者だ」

匪口「へえ…」

木山「【電子ドラッグ】の中毒者たちは脳に強い負担がかかっている。すでに能力開発を受けた者はかまわないが、
   新たにとなると脳への負担が大きすぎる。最悪、廃人となるケースもあるだろう…一研究者としてお勧めはできないね」

匪口「そっか…じゃあ仕方ないね」

木山「だが、不可能というわけでもない…ゆっくりと、長期的に開発すればできないこともないだろう」

匪口「それでもやっぱりやめとくよ。やるとしたら『ピラミッド』が完成してからだ」

HAL「そうしてもらおう…さて、次の一手だ。君に頑張ってもらうよ、木山春生」

木山「…ああ」












11018「どうでもいいけど服くらい着ろや露出狂、とミサカはひょろメガネのポーカーフェイスが下半身にまで回ってないことを嘲笑います」 ハン

匪口「ちょっ…!」

木山「スパコン自体の熱で暑くてね…空調も調子悪いし、早く直せる人間を回してもらいたいものだ」 フゥ

今回はここまでです。
横須賀さん出したかったけどムリだった…

レス返しはバイト終わってからで。
すいません。

バイト終わりました。
遅くなりました。



レスありがとうございます。
軍覇についてですが、どんだけ強かろうが聖人だろうが体重は普通だと思うんですよ。
で、スキルアウトの振り回すチェーンでも痛いけどオッレルスの一撃でも耐え切る=根性(気持ち)の入り具合で強さが変わるんじゃね?と
あの時は美琴が寝返ったと思ってたからちょっと精神的にグラついてあんな感じに。
まあ、匪口もミサカもそこまで計算してた訳じゃないすけど。

あとアーリアルは終章の難易度激減するからいりますけど他は…特にデュランダルとか…

てか刹那ミサカばれるの早すぎやないすか(笑



説明だらけなんでセリフのみにしたんですが、逆に分かりにくいかもです…
SSって難しい…




黄泉川『話の途中でいきなりブチ切ることないじゃんよー』

白井「申し訳ありませんの!私すっかり動転してしまって…」

黄泉川『友達想いなのは素晴らしいけど、風紀委員なら冷静さも重要じゃん』

白井「おっしゃる通りですの…」







寮監「貴様ら、届け出も無しに早朝から外出とはいい度胸だな」

御坂「ヒ、いや、その…」

寮監「集団生活という場においては規律こそが重要となる。そしてただ一人の身勝手な行動が規律を乱す原因となるのだ」

御坂「す…すいませんでした!」




-常盤台中学学生寮二○八号室



御坂「あ~、朝から疲れた…」

白井「ここまで謝り倒した朝ははじめてですの…」


部屋に入った瞬間、二人してベッドに突っ伏した。

支部で話を聞いたあと、朝食の時間に遅れると点呼に間に合わないと気付き、即座に【空間移動】で学生寮にとんぼ返り

しようとしたところで黄泉川から電話がかかってきてお叱りを受けた。

結局点呼には間に合わず、寮監にバレて大目玉。

せめてもの救いは先日の騒動で思う存分暴れたせいか、寮監の首コキャがなかったことだ。


御坂「ま、いつまでもグダグダしてらんないわね」


そう言って御坂はベッドから起き上がる。


白井「? 何をなさるおつもりですの?」

御坂「せっかくの休日なんだし、今日という今日こそあのプログラム人格を見つけだしてやるわ」


こうしてる間にも『妹達』は操られて犯罪行為をやらされているかもしれない。

『絶対能力者進化実験』の時のように『妹達』が殺されていくことはないだろうが、だからといってこのままにしていいわけがない。

一刻も早く助けださねば。


白井「そうですか…くれぐれもお気をつけてくださいまし」

御坂「大丈夫よ。…もしもの時は躊躇しなくていいわよ」

白井「不吉なこと言わないでくださいな!」



-???



ここのところ毎日行っていたように、自分の意識を電脳世界へとダイブさせる。

唯一の違いと言えば、白井に見つからないように行う必要がなくなったおかげで自室のパソコンからダイブしているということ。

つまり、いつもの端末よりも高性能な媒体であるということだ。

正直、御坂にしてみれば端末だろうがパソコンだろうが大きな差はない。

だがその僅かな違いのせいか、いつも徒労に終わっていた行為は徒労に終わらなかった。


御坂「ありふれた遊園地のホームページ…」


電脳世界ではあくまでイメージであるが、御坂の意識が身体として反映される。

ダイブした意識がたどり着いたのは学園都市に数ある遊園地うちの一つのホームページ。

幻想的なまでに美しく回るメリーゴーランド。

月光を受けてキラキラ光る大きな滝。



御坂「フェイクね」


ピシ、と空間にヒビが入った。

直後に幻想的な空間は弾け飛び、突如として未来人の様な巨大なヒューマノイドが三体現れた。

さらには侵入してきた外敵を排除すべく御坂に襲い掛かる。


御坂「無駄よ」


ヒュパ、という音と共に二体のヒューマノイドが細切れとなる。

電脳世界に送った意識、文字通り思念体とも言える身体は御坂の意思通りに形を変える。

そしてその右手には砂鉄の剣の様な得物が握られていた。


御坂「こっちはアンタを消去させるつもりで来てんのよ?」


いつの間にか御坂は残る一体のヒューマノイドの上を取っていた。

それに気づいたと同時に、ヒューマノイドは首を刎ねられた。


御坂「防御プログラムを攻撃するプログラムも万全に組んできた。この程度のプロテクトじゃ私を排除することなんてできないわ」


ジュアッ、という音ともにヒューマノイドの残骸は黒くどろどろになり、すぐに消滅した。

学園都市が誇るLevel5の第三位【超電磁砲】御坂美琴。

電子制御の最高能力者である彼女に電脳世界でできぬことなどほぼ皆無だ。



???「さすがだな、御坂美琴。ここまで入って来れるのは君と【守護神】しかいない」


ふと、つい最近聞いたことのある男の声がした。

この数日間、御坂が探し求めていた人間の声だ。

声のした方を向き、因縁の相手を見つけてにらみつける。

そこにあったのは暗い電脳世界に構築された城。その城の上で【電人】HALは満足そうに笑顔を浮かべていた。


HAL「ようこそ、私の1と0の世界へ」

御坂「ふん、何が私の世界よ」


ジジ、という音と共に御坂の左手にもう一本砂鉄の剣が現れる。

自分の居場所が割れてなおも笑っているプログラム人格に苛立ちが募った。


御坂「…一応確認だけしとくけどさ、アンタ私がなんでここまで血眼になってるか…分かってるわよね?」

HAL「ククク、当然だとも。風紀委員と繋がりが深い君だ。私が『妹達』を支配下にいれた情報もとうに仕入れているのだろう?」

御坂「やっぱりか…私の妹に手ぇ出して!覚悟は出来てんでしょうね!」


ブォン、という音と共に今度は数百本の砂鉄の剣が御坂の背後で大きな三対の羽の様に配列されて現れる。

さらにはその数百本の剣は一斉にHALへと切っ先を向けた。


御坂「さあ、このまま八つ裂きにされるか『妹達』を解放するか好きな方を選びなさい!!」



HAL「図に乗るな御坂美琴。ここは私の支配世界だ。君に勝ち目などありはしない」


だが、大量の剣を前にして【電人】HALは落ち着き払っていた。

そしてそれが御坂を更に苛立たせる。


御坂「アンタまさか私に勝てるとでも思ってんの!?学園都市の外で開発されたプログラムがこの私に!?」

HAL「君こそ私に勝てると思っているのか?【守護神】すら打ち負かしたこの私に?」

御坂「【守護神】…ああ、初春さんのこと?それだったらアンタは勝ってなんかいない。
   アンタを守るプロテクトはほとんど初春さんの手で破れたも同然。残りのプロテクトも私が全部壊した。丸裸のアンタに勝ち目なんか…」


HAL「ククク、何を勘違いしている?」

御坂「…なによ」

HAL「言ったはずだぞ。ここまで入って来れるのは君と【守護神】だけだ、と」

御坂「…!」

HAL「【守護神】が敗れたプロテクトはあの程度のものではない!」


ズドド!と羽よりも遥かに巨大な『スフィンクス』が三体、突如として御坂の前に現れた。


御坂「な…!?」

HAL「スーパーコンピューター専用アプリ『スフィンクス』。こちらが本命だ」


それぞれの『スフィンクス』から翼の生えた異形な生物が数万匹ほど飛び立つ。

更にその生物は悪意をもって御坂を攻撃しはじめた。


御坂「く…!こんなもので…やられるもんか!」


一体一体が【原子崩し】を連想させるようなビームを放ち、御坂の剣を次々と撃墜していく。

しかし御坂も負けずと応戦し、宙に浮かぶ剣を操り、両手に持った二刀を振るい立ち向かう。


HAL「無駄だ」


三体の『スフィンクス』の頭部が輝きだす。次第に輝きを増していき、ついには巨大な球体となる。

ゴウ!と唸りを上げ、数万匹の生物を巻き込み、御坂へと向かって球体は射出された。


御坂「きゃああああああああああああああああああ!」








HAL「【守護神】【超電磁砲】どちらも倒れたか…」


HAL「これで…証明された」


HAL「1と0の世界において…私は無敵だ」


HAL「…だが、待っているよ……【超電磁砲】御坂美琴よ」


-時を少し遡り、常盤台中学学生寮二○八号室



白井「…全ての動きを停止してまでデータを探すお姉様ははじめて見ますの」

白井「いつもならちょちょいのちょいですものね…」

白井「静かに見えるお姉様とパソコンの間では膨大なデータのやりとりが行われているのでしょう…」ジー

白井「…………あら?ってことは……お姉様にあんなことやこんなことができる千載一遇のチャンスですの!」キュピーン

白井「い、いやいや!待つのよ黒子!お姉様は私に全幅の信頼を寄せているからこそこの様な無防備な状態ですのよ!」ブンブン

白井「変な真似をすればその信頼を裏切ることに…でも据え膳食わぬはと言いますし…あれは殿方のみでしたか…でもこの男女平等社会に殿方限定の格言など…」モンモン

白井「…バレなければOKですの」ウン

白井「となると、足がつくものはダメですわね…」ウーン

白井「キ、キスならしてもバレませんわよね?そうと決れば軽くグロスですの」ヌリヌリ

白井「よ、よし準備OKですの」ドキドキ

白井「う…さ、さすがに唇を奪うわけには参りませんわね…」ドキドキドキドキ

白井「でしたらこの綺麗なホッペに黒子の熱い口付けを…」ドキドキドキドキドキドキ



バチィ!と紫電をまとった御坂が弾け飛んだ。


白井「きゃ!?」


弾け飛んだ御坂はそのまま自分のベッドまで叩きつけられる。

いきなりの出来事に驚いた白井は慌てて御坂に駆け寄った。


白井「お、お姉様!どうなさいましたの!?中で一体どうなって…」

御坂「…勝てない」

白井「え?」

御坂「今のままじゃ…アイツたどり着くことはできない。【電人】って…名乗るだけの事はあるわ」

白井「お姉様…」

御坂「ん?」グロス?

白井「あ」

御坂「」ワタシニ?

白井「」コクン

御坂「」バリバリバリバリ!

白井「」アbbbbbbbbb!



白井「…妨害ですの?」プスプスプス…

御坂「初春さんが言ってた妨害データによるジャミング攻撃…並大抵のものじゃなかった。あの『スフィンクス』を破壊しなきゃアイツにはたどり着けない」

白井「…スフィンクス…ですの?」

御坂「あー…つまり妨害データを送ってきたスパコンのこと。そいつがあのプログラム人格を援護してるからアイツの居場所を特定できないの」

白井「なるほど…。ですが学園都市の外ならいざ知らず、この街にはスーパーコンピューターは数えきれないほどありますの。それを探すとなると…」


警備員が『妹達』に撃退された後、再び警備員が突入をかけたがそこはすでにもぬけの殻だった。

つまり、『スフィンクス』は場所を変えることができるのだ。

そうなってくると居場所を再度突き止めるのは限りなく難しい。



御坂「大丈夫、目星はついてるわ。そのスパコンの場所もカモフラージュされてたけど、プログラム人格に比べればガードは薄かったから」

白井「ああ、そうですの。そう言えば初春も同じ様なことを言ってましたわね」

御坂「そしてその場所の一つがね…どう考えても私たちにケンカ売ってるとしか思えなかったわ」

白井「…どういうことですの?」

御坂「第二十三学区の今は封鎖されてるはずの研究所…テレスティーナと決着をつけたところよ」

白井「…!」


テレスティーナ=木原=ライフライン。8月上旬までMARの隊長を勤めていた人間だ。

この街の科学者の中枢でもある木原一族の一人であり、木原一族にふさわしいマッドサイエンティストでもある。

8月上旬に『暴走能力の法則解析用誘爆実験』の犠牲者と初春のルームメイトである春上衿依を利用して絶対能力者を作り上げようとした。

この実験では関係者が全員命の危険にさらされるだけでなく、最悪のケースでは学園都市が吹き飛ぶ可能性もあった。

その全貌を知った御坂、白井、佐天、初春、そして木山の五人がその実験を全身全霊で阻止。

実験が行われようとしていた第二十三学区の研究所は【超電磁砲】の撃ち合いにより最下層ブロックの一部が破壊された。

更に中央管制室のコンピューターの一部が金属バット思い切り殴られて破壊されたために現在は封鎖となっていた。


御坂「ま、そういう訳だからまずはここから行きましょうか」

白井「本当ですの?そんな明らかな挑発に乗らずとも…」

御坂「遅かれ早かれ行くことにはなるでしょ?それならいつ行ったって同じよ」

白井「…そうかもしれませんが…」

御坂「ここに『妹達』がいるかは分からないけど、だからって立ち止まってられない。少しでも前に進むわ」

白井「…了解ですの。まずはそこから参りましょう。初春と佐天さんにも連絡しておきますわ」

御坂「ううん、私がしておく。アイツが電波に何か仕掛けてくるかもしれないし、用心にこしたことはないわ」

白井「…でしたら黒子は何をすれ」グ-

御坂「…朝食の調達をお願いするわ」ググ-

白井「…りょ、了解ですの」



-第五学区、とある大学正門



食蜂「あ~、やっと終わったわぁ」

垣根「おう、ご苦労さん」


第五学区のとある大学から出てきたのはLevel5第五位の【心理掌握】食蜂操祈と第二位の【未元物質】垣根帝督。

二人は与えられた任務を数日かけてようやく終わらせたところだった。

これまでに検診した人数はすでに三ケタに達していた。


食蜂「まったく、この私が毎日毎日コキ使われるなんて…」

垣根「しょうがねえだろ?お上にゃ逆らえねえよ」

食蜂「…あなたからそんな言葉が聞けるなんてねぇ」

垣根「…どういう意味だ?」


食蜂「あなたがお上を見る目はとても敬っている様に見えなかったわぁ。むしろ見下してる目ね」

垣根「…はっ、薄汚えジジイババアなんざ敬う必要ねえだろ」

食蜂「その上であなたの目は野心に燃えてる。Level5の第二位という立場で尚、あなたには大きな野望がある」

垣根「…」

食蜂「能力が効かなくてもあなたの考えてることは読み取れるわぁ。何万回も心理を掌握してれば身体面との共通項くらい割り出せるしねぇ」


食蜂操祈は常日頃からその強力な能力を使っている。

それは別に洗脳だけでなく読心や念話など多岐に渡る。

その際、彼女が見てるのは心理だけでなく表情面も観察している。

観察している、というよりは勝手に目に入ってくるのだが、彼女の優秀な脳はその心理状態と表情などの表層面とを簡単に分析していた。

それらのデータを参考に他人と相対すれば能力を使えずとも大まかな考えの目星はつく。

【心理掌握】を利用しようと近づき、能力を使えない状況で交渉を進めようとする大人達をこの方法で手玉に取っては優越感に浸っていた。



垣根「で?俺の計画を知っててめえはどうするってんだ?」

食蜂「特に何もしないわぁ。強いて言えばこれからもボディーガードをお願いするくらい」

垣根「…それだけか?」

食蜂「えぇ。もう何日も兵隊さんが私たちを取り囲みながら見張ってることくらい分かってるわぁ。私があなたと別れた瞬間を狙ってることも」


HALの兵隊たちは決して食蜂に対する警戒を緩めている訳ではない。

御坂と同レベルで危険だと思われる食蜂を放っておく訳がない。

だが、闇雲に攻撃すれば垣根に軽く蹴散らされてしまいのは目に見えている。

限りある兵隊たちをむざむざ失うことはできない。仮に持久戦に持ち込むのであれば全兵力を注ぎ込まねば勝ち目はない。

だからこそ遠巻きに食蜂と垣根を取り囲むようにつかず離れず動いている。

垣根という障害が離れた瞬間、兵隊たちは一斉に食蜂に襲い掛かるだろう。

食蜂一人では兵隊の大群に勝つ見込みはない。


そして、食蜂の提案を受けて垣根はニヤリと笑った。


垣根「そうか。なら話ははえぇ。次行くぞ」

食蜂「え!?つ、つぎ!?」


まさかの発言に食蜂は思わず狼狽した。


垣根「おお、これが新しいリストだ。ちょいちょい暗部連中も混ざってる。
   これ以上はお前を付き合わせるのはまずいからお前がついてくると言わなきゃ断念しろとのお達しだがな」

食蜂「」

垣根「むしろ俺はこっちが本命だ。他の暗部連中なんざめったにお目にかかれねえしな。守ってやるからもうちょい付き合え」


そう言って垣根は足取りも軽く、近く止めさせていたリムジンへと向かった。

本来ならば暗部は存在を知られること自体がタブー。
しかし、一度『アイテム』と接触した食蜂は話が別。やるかやらないかの選択権を与えたのはせめてもの良心であろう。


食蜂「ハ、ハメられたわぁ…」


結局、食蜂も肩を落としてリムジンへと向かっていった。

今回はここまでです。
垣根と食蜂久しぶりに出したら口調が難しかったです。


レスありがとうございます
バイトなんでまたレス返しは終わった後で

バイト終わりました。


たくさんのレスありがとうございます。
刹那ミサカに気付かれるスピードがあまりに早くてビビりました。
もうちょい気付かれないと思ってたんですが…
そして前作からの読者もいるみたいで嬉しい限りです。
前に言った様にあのメンツも前作の設定を引き継いで出す予定です。
そして、このスレで亡くなられた方々にお悔やみ申し上げます。



最近は忙しすぎてSSに割ける時間がなかなか無いです。
前は週5で投下してたのに…
これから月5になりそうです。というよりなってますね。
下手したら夏一杯かかるかもしれませんが、お付き合いいただけたら嬉しいです。


-第七学区、柵川中学学生寮前



佐天「ごめんなさい、遅れましたか?」

白井「時間ぴったりですの。私たちが少々早すぎましたので」


柵川中学学生寮の前で御坂と白井の二人が佐天を迎えた。

これから二十三学区の研究所に乗り込むためである。

ちなみに佐天は事の顛末を話したら二つ返事で一緒に乗り込むことを承諾した。


御坂「そーゆーこと。じゃ、行きましょうか」

佐天「あれ?初春は来ないんですか?」

白井「初春は昨夜のことで事情聴取を受けてますの。時間がありませんので今回はおやすみですわ」


『スフィンクス』の場所が変更できるのならのんびりとしている暇はない。

二十三学区の研究所に『スフィンクス』があるのは挑発だろうが、だからといって場所を変えないことにはならない。

むしろ待ち構えられてる上に『スフィンクス』を破壊できないのなら完全な無駄骨である。



佐天「そうですか…後で初春のお見舞いも行かなきゃ。それと、どうやって二十三学区まで行きます?やっぱ地下鉄…」

御坂「タクシーで行くわ。もうそこに待たせてる」

佐天「…さすがお嬢様」

白井「? 別に大した額にはなりませんの」

佐天「…言ってみたいなあ。そんな言葉」

御坂「とにかく早く行きましょ。こうしてる内に相手がスパコンの場所を変えてるかもしれないわ」

佐天「はーい。あ、運転手さん」

運転手「はいはい、なんでしょ?」

佐天「トランク使わせてもらっていいですか?」

運転手「どうぞどうぞ。なにを乗せるんだい?」

佐天「えーと、金属バットとヘルメットです」

運転手「? ソフトボールの試合かい?」



-第七学区、地下街



匪口「スッゲー!これホントにケータイかよ!スマホだのアイフォンだのが馬鹿らしくなってくんな!」

11018号「…」

匪口「どーやったらこんなケータイ作れんだ?巻き取り式の液晶なら見たことあるけど、こんなSFっぽい感じのは初めて見たぜ」

11018号「…」

匪口「ん?どした?ミサカ」

11018号「…フフ、ゲコ太…」ニヘラ

匪口「」 ビクッ

11018号「…ハッ…コホン…どうかしましたか?匪口裕也、とミサカは平静を取り繕います」

匪口「…な、なんでもねーや。…そのペア契約のオマケ、そんなに嬉しかったの?」

11018号「ええ、このゲコ太は非売品の上に学園都市でしか手に入りませんから、とミサカは限定ゲコ太を握りしめます」

匪口「あ、そ…じゃあこれもいるか?俺別にいらねーし」

11018号「! よろしいのですか!?とミサカはいつになく気前のいい匪口裕也に驚愕します」

匪口「お、おお…」

11018号「…ゲコ太だけじゃなくピョン子まで…」ニヘラ

匪口「」



匪口「ま、とりあえず今日のところは帰るか」

11018号「おや、もうよろしいのですか?とミサカは睡眠時間を削ってまで来た割りには早い撤収に疑問を抱きます」

匪口「まーね。とりあえず目当てのモンは見たし買えたし。念のためにミサカには休んでもらわねーと」

11018号「だったらこんなところまで引きずり回すんじゃねーよ、とミサカはそれでも作戦の要であることに優越感を覚えます」

匪口「ワリーね、こんな科学の総本山に来たらテンション上がっちゃってさ」

11018号「まるで小学生ですね、とミサカは能力者が暴れ回る様を見て瞳孔全開だった匪口裕也を思い出します」

匪口「そりゃー当然さ。あれこそ俺の求めるカオスな世界、それすらも越えた世界だ」

11018号「あなたはその世界の人間ではなく傍観者ですがね、とミサカは暴走能力者を見世物と捉える人間性を疑います」

匪口「いーや違うね。俺もまとも振ってるだけでかなりイカれてる。じゃなきゃあんな入り方しねーよ」

11018号「それもそうですね、とミサカは同意します」

匪口「だろ?…そういえば…あいつに似た者同士の気配を感じたな」

11018号「…あいつとは?とミサカは聞き返します」

匪口「さっき会ったあいつさ。俺と属性が同じ気配だった。けっこー気が合うと思うんだよね」




-第二十三学区、某研究所前



白井「ここまでは順調ですわね…」


タクシーに乗り込んだ三人は何の妨害も受けずに目的地である研究所にたどり着いた。

ここへ誘導するように挑発してきたのだから何か罠があると思っていた三人はなんとなく拍子抜けした気分になった。


御坂「…あくまでこの研究所で迎え撃ちたいのかしらね…」

佐天「な、なんだかドキドキしますね…行方不明者続出のピラミッドに入る探検家になった気分です」

白井「あながち間違ってませんの。スーパーコンピューターを守るために墓守や罠が待ち構えていること請け合いですの」

佐天「む、武者震いが…」

御坂「…引き返すなら今のうちよ?」

佐天「…絶対嫌です。私だって御坂さんを助けることくらい、できるんですから!」

白井「さすがは佐天さんですの!よく言いましたわ」

御坂「…よし、じゃあ行きますか!目指すは最下層ブロックよ!」




-研究所内、階段



佐天「…誰もいませんね…」


カンカン、と階段を降りる音が三人分、人気のない薄暗い研究所に響き渡る。

ちなみに佐天はすでにヘルメットをかぶっていて、手には金属バットが握られている。

スーパーコンピューターを動かしているために研究所全体に通電はしているからエレベーターも使えないことはない。

だが、エレベーターでは万が一の状況で身動きが取れないし身を隠すこともできない。

扉が開いた瞬間蜂の巣にされるのが関の山だ。

なので、三人は階段で最下層ブロックまで行くことにした。


御坂「…そうね…私の能力でも感知できる人間はいないわ」


ちなみに、順番としては御坂、白井、佐天の順である。

緊急の場合、白井の能力で三人まとめて避難するためである。

そのために索敵能力にも特化している御坂が先頭を歩き、前に進む。


白井「ですが油断は禁物ですの。ここは敵の本拠地。次の瞬間どこからともなく敵が現れるとも限りませんわ」


最初は白井の能力で一気に最下層ブロックまで移動することも考えた。

だが、白井がこの建物の構造をあまり把握していないために危険性が高い。

それに、転移したら目の前に大量の敵が、というケースも考えられる。

結局、御坂の電磁レーダーで索敵しながら進むのが一番安全だ、という結論に至ったのだ。




佐天「…そういえば気になったんですけど…」

白井「なんですの?」

佐天「そのスパコンって壊してもまた新しいスパコンを用いれば状況的に元通りになっちゃうんじゃないですか?」

御坂「…そうね…その防衛アプリ自体はプログラム人格が保有してるだろうし、いくらでも増やせるんだと思う」

佐天「じゃあ私達がここでスパコンを壊しても堂々巡りになっちゃうんじゃ…」

白井「心配ご無用ですの。スパコンがある施設には警備員と風紀委員が数名ずつ配置されてますの。敵の手に渡る可能性は低いですし、最悪奪われた情報だけは入りますの」

佐天「なるほど…でも、学園都市の外にもスパコンはあるんですよね?再接続とかされちゃったら…」

御坂「それも心配ないわ。外部との接続が絶たれてる中でそんなデカい回線がずっとあったら誰かが絶対気付くもの」

佐天「そっか…じゃあ、ここでスパコンを壊せば事件の解決に大きく前進することは間違いないんですね?」

御坂「そーゆーこと。…着いたわ。最下層ブロックよ」



-研究所、最下層ブロック


御坂「…おっかしいわね…」

佐天「…誰かいましたか?」


最下層ブロックの部屋の扉を開けたところで、三人は固まっていた。

部屋に入る前に御坂の能力で状況を把握するためだ。


御坂「…ううん、誰もいない。だからおかしいのよ…」


しかし、御坂の電磁レーダーには何も引っ掛からなかった。

完全に裳抜けの殻である。


白井「お姉様…まさか別の研究所と間違えた、などということはございませんわよね?」

御坂「それはないわよ!絶対にこの研究所!そしてこの部屋にあるスパコンよ!」


半ば憤慨しながら御坂は薄暗い室内に入っていく。それについて行く形で後の二人も続いた。

そこはかつて『暴走能力の法則解析用誘爆実験』の被害者達が集められた大きな部屋だった。

部屋というよりは広間という表現の方が正しいかもしれない。

そしてテレスティーナ=木原=ライフラインと決着をつけた場所でもある。

広間の様な部屋は二層からなっており、入り口がある上の層が御坂とテレスティーナが【超電磁砲】の撃ち合いをした場所。

階段を降りた下の層は木山の教え子である『暴走能力の法則解析用誘爆実験』の被害者達が昏睡から目を覚ました場所だ。

そして、下の層にあるスパコン。木山が自分の教え子を起こすために使用したスパコンこそが『スフィンクス』がインストールされているスパコンだ。




三人は大きな部屋の中程にある階段を慎重に降り、ついにはスパコンの真正面に立った。


佐天「…本当にここまでなんにもなかったんですけど…ちゃんと合ってます?」

御坂「合ってるってば!ホラ、なんかこのスパコン電源入ってるし!間違ってたら封鎖されてる研究所のスパコンに電源入ってる訳ないじゃない!」

白井「ですが…あまりに不自然すぎますの…」


大きなスーパーコンピューターにはキーボードもモニターも一体化されている。

モニターを見る限り明らかに電源は入っている様だが、いくらなんでも守りが手薄過ぎる。


佐天「もしかしてここにスパコンを置いたのって挑発でもなんでもなかったんじゃないですか?」

白井「どういうことですの?」

佐天「私達とテレスティーナが戦ったことなんてなんにも知らなくて、ただ見つからなさそうな封鎖された研究所に隠しただけ、とか」

御坂「うーん、可能性が無い訳じゃないと思うけど…」


いくらなんでも甘すぎる。

外部から学園都市に潜入できるほどの明晰な頭脳を持つ者が、自分の守りの要をこんな危険な状況にさらすだろうか?




ともあれ、現にここのスーパーコンピューターは丸裸だ。

あれこれ推測する必要性もない。

むしろ、佐天の推測が正しいのであればさっさと壊してさっさとずらかった方がいい。


御坂「まあいっか。さっさと終わらせるわ。ちょっと離れてて」


そう言って御坂は一歩前に出た。対して白井と佐天は言われたままに後ろに下がる。

バチバチバチィ!という激しい音と共にスーパーコンピューターは電撃包まれた。

モニターは一瞬で暗転し、本体は黒い煙を上げ、スーパーコンピューターは呆気なく壊れてしまった。



御坂「…ふー」

佐天「…これで終わりですか?」

白井「ええ、恐らくは…」

佐天「なーんだ。緊張して損しちゃったなー」

御坂「あはは、確かに拍子抜けした感じ…。…!!」


バッ、と御坂は急に部屋の入り口のを見据えた。

角度的に見えはしないのだが、その視線の直線上には上の層を隔てて確かに入り口がある。


佐天「ど、どうしたんですか!?」


いきなりの御坂の行動に、思わず佐天は慌てた。


御坂「…誰か来る」

白井「!」

佐天「ええ!?」

御坂「誰!?出てきなさい!」



促されるように一人の人間が上の層から姿を現した。

その人間は白衣に身を包んだ女性。多少のくせ毛で目の下には大きな隈。

かつて【多重能力者】として警備員の一部隊を壊滅させた人間。


???「やあ…久しぶりだね…御坂君、白井君、佐天君…」



御坂「…っ。なんでよりによってここにいんのよ、アンタ…」

白井「まさかとは思いましたが…やはり『そちら側』でしたのね…」

佐天「木山先生…」


大脳生理学者、木山春生がそこにいた。




木山「フ…さすがに警戒されているか…」


そう言って木山は苦笑した。

両腕を白衣のポケットに入れ、こちらを見下ろしている。


木山「だがもう遅い。ここまで入って来たら…もう私からは逃げられない」



御坂「…何が遅いのよ。『スフィンクス』は既にぶっ壊した!手遅れなのはそっちでしょう!?」



木山「ああ、そいつはダミーだ。『スフィンクス』はインストールされていない」



御坂「な!?」

佐天「…えーと、御坂さん?」

白井「どういうことですの?」

御坂「ち、違う!嘘よ!そんなはず…」



木山「御坂君は間違っていないよ。『スフィンクス』は最下層ブロックにある。別室に移動させただけだ。結標君がいればもっと大規模な移動もできたが…」



白井「! あの女も『そちら側』ですの!?」



木山「おや、結標君とも面識があるのか…。残念だが彼女は脱落した。今は療養中だそうだ…」



御坂「…あんな女のことなんてどうでもいいわ」


パチリ、と御坂の前髪で火花が飛ぶ。


御坂「ったく、変な汗かいちゃったでしょうが。私たちはさっさと『スフィンクス』を壊したいの。痛い目にあいたくなかったらおとなしくしてなさい」



木山「…そうか。ならば、私はおとなしくしていよう」



佐天「…え?いいんですか?もしかして木山先生【電子ドラッグ】にハマッてないんじゃ…」



木山「代わりに…面白いものを見せてやろう…」




御坂「…! まさか!」


いち早く反応したのは御坂。

しかし、木山の言葉に感付いた訳ではない。

それとは別に気付いてしまったのだ。

電磁レーダーを含むその能力で。


ザッ、と常盤台中学の制服に身を包んだ四人の少女が上の層から姿を現した。


???「お久しぶりですね、お姉さま」

???「とミサカはオリジナルに高みから会釈します」

???「そしてはじめまして、お姉さまの友人方」

???「とミサカは友人の皆さまにも高みから会釈します」



御坂「アンタ達…っ!」

白井「お、お姉様がたくさん…?ひい、ふう…」

佐天「もしかして…これが御坂さんの?」



木山「紹介しよう。『妹達』だ」



タン、と四人のクローンは一斉に上の層から飛び降りた。

そして磁力を利用してふわりと三人の前に着地する。

その額に装着されているのは電子ゴーグル。

その両手に握られているのはアサルトライフル『オモチャの兵隊』。

『絶対能力者進化実験』当時の『妹達』の標準装備だ。


佐天「わ、わ、ライフルって…!ほ、本物!?」

御坂「下がってて佐天さん。こいつらは私がやる。黒子は佐天さんをお願い」

白井「お姉様!いくらなんでもお一人では危険ですの!」

御坂「大丈夫。ヤンチャな妹に躾をするのも姉の務めよ」


???「そう簡単にいきますかね、とミサカ10032号は不敵に笑います」

???「いくらお姉さまと言えど難しいでしょう、とミサカ10039号は丸腰とアサルトライフルではどちらが有利か暗に問いかけます」

???「能力差も【電子ドラッグ】のおかげで『オモチャの兵隊』でカバーできるまでに向上しているはずです、とミサカ13577号は現在のスペックの高さをアピールします」

???「それでもお姉さまがHALの邪魔をするのであれば容赦はしません、とミサカ19090号は『オモチャの兵隊』を構えます」



木山「待て、『妹達』」


ピタリ、と四人のクローンは動きを止めた。


御坂「…てゆーか、そもそもなんでアンタがこの子達を統制してんのよ」



木山「私が彼女達の力を最大限に発揮させることができるからだよ」


スッ、と木山は白衣のポケットから小型の何かを取り出した。


木山「この研究所には至るところにスピーカーが設置されている。覚えているかな?」



御坂「!」

白井「まさか…【キャパシティダウン】ですの!?」


白衣のポケットから取り出されたそれは小型のリモコンだった。

かつてこの研究所には能力者の動きを封じるためにテレスティーナが開発した【キャパシティダウン】を流すスピーカーが設置されていた。

スピーカーは研究所全体に設置されており、それゆえに御坂も白井も苦汁を舐めさせられた。



木山「早計だよ白井君。それでは『妹達』も動きが取れなくなってしまう。それに【キャパシティダウン】はすでに警備員に押収されている」



佐天「なら…一体なにを…?」



木山「…私が【幻想御手】の副産物のおかげで一時的に【多重能力者】になれたのは知っているだろう?」


そもそも木山が【幻想御手】を広めたのは【樹系図の設計者】に代わる演算装置を得るためだ。

だが、多数の能力者の脳波を自身の脳波にリンクさせた副産物として、多数の能力を同時に操ることができたのだ。


木山「あの時私はあらゆる能力の全てを把握していた…どの演算式を使えばどの能力を使えるか手に取るように分かった。そしてその能力の法則も」


つまり、木山は一時的に特殊な能力を除いて全ての能力の実体を把握したのだ。


木山「その経験を基に…どこをどう刺激すれば能力を強化する事ができるかもおおよそ把握した。…非合法ではあるがね」


【幻想御手】は巨大な脳のネットワークで能力を補強するのであって、本人の能力そのものを永続的に強化させる訳ではない。

その証拠に【幻想御手】から解放された使用者のレベルは皆元に戻っていた。

だが大脳生理学者である木山は、今度は個人の脳そのものを強化させる方法を発見したのだ。


木山「今から流すのは共感覚性により能力者を操る【電子ドラッグ】Ver.4。
   それを『妹達』専用に入念に調整したものだ。私が必要としたのはそれを最大限に作用させることのできる高音質のスピーカーだよ」


プチ、と木山はリモコンのスイッチを押した。








『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』







御坂「…は?」



白井「これは…」



佐天「…国歌?」









妹達「「「「力がみなぎってきマ一一一ス!!とミサカはヘヴン状態デース!!ハッハ一一一ッ!!!」」」」







御坂「」



白井「」



佐天「」






木山「さあ、あの日の続きだ…御坂美琴」


木山「君に一万の脳を統べる私を止められるかな…?」



今回はここまでです。
どうしてこうなった。


レスありがとうございます。
これからも優しく見守っていただけたら幸いです。
そして自分の地域は日曜にジャンプ発売なんで今から楽しみです。
『暗殺教室』でしたっけ?


松井優征先生の新作が連載されるのは嬉しいですが
それと反対に最終巻巻末のネウロ2が絶望的になったのがちょっと悲しいです…

スイマセーン…ミサカ嘘ついてマシタ…

でもお姉さまのシンジョウでひとつだけ好きなのありマース…

「ゲコ太かわいいよゲコ太 」

アト、日本のコトワザでひとつだけ好きなのありマース…
「落ちぬなら 犯してしまえ カミジョウサン」
あの男はもちろんおまえらも… ボクの前ではカミジョウサンでーす…
とミサカは鼻の下を延ばしマース



『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』



10032号「先手必勝デース!とミサカはぶっ放しマース!」


ズガガガガ!とアサルトライフルが火を噴いた。


御坂「アンタらねぇ…!」


しかし、弾丸はすべて御坂の目の前で静止した。

Level5である彼女が発生させる磁力は音速で飛来する弾丸さえ簡単に止めてみせた。


御坂「国歌聞いてパワーアップとかふざけてんのかぁ!」

10039号「クソ真面目デース!」

19090号「とミサカはブーストさせマース!」


ヒュン、と先ほどまで数メートル先にいた二人の『妹達』が静止している弾丸の後ろに現れた。

そして二人がかりの磁力で静止している弾丸を押し返そうとする。


御坂「な…あ!?」

白井「まずいですの!」


一瞬の均衡の後、弾丸は御坂へと突き進む。

嫌な結果を直感した御坂は間一髪でそれを躱した。

弾丸は先ほどとほぼ同じ威力をもって背後の白井たちへと迫る。


佐天「え?」




ヒュン、という音がした。

ビシビシビシ!という音もほぼ同時にした。

間一髪で白井が佐天とともに転移に成功。弾丸はすべて壁へとめり込んだ。


御坂「黒子!佐天さん!」

白井「問題ありませんの!」

佐天「お、おっかな…」


先ほどとは大分離れたところで二人の声がした。

二人の無事を確認して御坂はほんの一瞬安堵した。


13577号「まだまだいくぜぇ!とミサカはファイア!」


ズガガガガガガガ!と再び銃声が響き渡る。

【電子ドラッグ】に操られた『妹達』にはもはやかつての姉を敬う念は見られない。


御坂「ヤバッ…!」


いくら御坂とて放たれた後の弾丸に反応できる訳ではない。

事前に強力な磁界を張って初めて弾丸を無力化できるのだ。

しかし『妹達』が加速させた弾丸を避けたために、今御坂の前に磁界はない。




それでも弾丸は御坂に当たらない。

ビシビシビシ、と弾丸は再び遠くの壁にめり込んだ。


御坂(ま、間に合った…)


弾丸の威力全てを止めるほどの磁界を張るのは不可能であったために、反射的に受け流すように磁界を張った。

下手すれば御坂の身体に直撃だったものの、なんとか上手くいったようだ。


ミサカ「安心してる場合デスカ?」

御坂「!」


気が付くとまた『妹達』が目の前にいた。もはや乱戦状態でどれがどの『妹達』なのか見当もつかない。


ミサカ「ハッハァ!」

御坂「かふ!」


ズン、と【電子ドラッグ】で強化された『妹達』の掌底が御坂の腹部にキレイに決まった。

その力のせいか、御坂は後方へと大きく吹き飛ぶ。


白井「お姉様!」


ダン!と御坂はそのまま壁へと叩きつけられた。


御坂「ガ…は、ゲホケホッ!」

佐天「御坂さん!大丈夫ですか!?」

御坂「…大丈夫、平気よ」


うずくまって咳き込みながらも、御坂はかけよろうとする佐天を制した。


ミサカ「サスガはお姉さまデース」

ミサカ「ヒットする瞬間に磁力と脚力で後ろへ跳ばれてしまっては大したダメージもあたえられまセンネ」

ミサカ「デも、コレで証明されマーシタ」

ミサカ「ミサカ2人がかりならお姉さまの出力をも上回りまーす!」

妹達「「「「4人のミサカが相手ならお姉さまに勝ち目はありまセーン!とミサカはファイアー!」」」」


4つのアサルトライフルが再び火を吹く。

照準を完全に一点に集中させ、御坂を蜂の巣にしようと襲い掛かる。


御坂「ナメるなあ!」


しかし、銃弾は御坂の磁力に促されて御坂を避けるように軌道を変えて壁に吸い込まれていく。

そのうち最後の数発を再び眼前で止め、電撃をまとった自らの拳で殴りつける。

さらに自らの拳が当たった瞬間、拳に込めた膨大な電流を数発の銃弾に流しこむ。

すると、眼前の銃弾は全てローレンツ力により音速を越えた速さで先ほどと逆の方向に突き進む。

あえて名称をつけるなら【散弾超電磁砲】。それが『妹達』へ向けて炸裂した。



妹達「「「「オットット」」」」


しかし、銃弾はひとつも当たらず、壁と黒煙を上げているスパコンに命中した。

その破壊力により当たった壁はことごとく大穴が空き、スパコンは爆発音と共に粉々になった。


御坂「チッ…」

ミサカ「ここまでやってまだ手加減しマスカ?」

ミサカ「もはやミサカとお姉さまは同格でーす!」

ミサカ「そんなハンパな力じゃミサカには届きまセーン!」

ミサカ「モットモ、全力出したらこの研究所潰れチャイますケドネ」

妹達「「「「とミサカは高笑いしマース!HAHAHAHAHA!」」」」


御坂「…ホンット腹立つわねコイツら」




『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』



白井「…もう見ていられませんの!」


離れたところで佐天と共にいた白井が激昂した。

目の前で敬愛するお姉様が苦戦を強いられているのに指をくわえて見ていられる訳がない。


佐天「待ってください!私も行きます!」


そしてそれは佐天も同じだ。

散々御坂を助けると言っておきながらずっと蚊帳の外になどいられない。


白井「佐天さん…ですが…」


強い眼差しで迫られた白井は逡巡した。

正直な話、ヘルメットと金属バットだけで勝てる相手ではない。

このまま共に戦えば良くて重傷、最悪の場合死亡するだろう。

しかし、佐天の気持ちはよく分かる。自分だって御坂の助けになりたいのだがら。


ほんの数秒だけ迷ったあと、白井は答えを出した。


白井「佐天さん、ここは私に任せてくださいな」

佐天「そんな!私も」

白井「その代わり向こうをお願いしますの」


ヒュン、と佐天の姿が消える。

訴えかける佐天の言葉を最後まで聞かず、白井は有無を言わさず佐天を転移させた。


白井「さて…」


つい先日聞いた話ではあのクローン達のレベルは2~3程度。

だが、どう見たってそんな次元の強度ではない。【電子ドラッグ】の効果で格段に強化されている。

ならば【電子ドラッグ】を流しているスピーカーを壊せばいいのだろうが、そう簡単にはいかない。

どこにスピーカーが設置されているのか正確に分からない上に、研究所の至るところにスピーカーが設置されているのだ。

鉄矢を無闇に打ち込んでも無駄骨である。


白井「少々気が引けますが…」


カカカ、と四人の『妹達』の内二人のアサルトライフルから鉄矢が生えた。


ミサカ「ハ?」


次いで白井はクローンの真横に転移する。


白井「お許しくださいまし!妹様!」


ドン!と白井のドロップキックがクローンの側頭部にキレイに決まった。

銃弾を止めるほどの磁界が発生しているのに、スピーカーはハウリング一つしない。

ならば、同じ様な力で『妹達』の誰かがスピーカーを保護しているにちがいない。

このクローンに狙いを定めたのは風紀委員としての白井の勘だ。



ミサカ「ったぁ~…ちょっと!なにすんのよ黒子!」

白井「え、あ、お姉様…」


ゴーグルとアサルトライフルを装備していながら、白井はクローンと本物の御坂と間違え、うろたえた。

それほどまでに気配も声もリアクションも御坂そのものだった。


ミサカ「隙アリデース!」

白井「ぎゃん!」


その一瞬の隙を突かれ、白井の身体に雷撃の槍が突き刺さった。

短い断末魔の声を挙げ、白井は動かなくなった。


御坂「黒子!」

ミサカ「ミッションコンプリートデース!とミサカは鼻を高くシマース!」

御坂「アンタらぁ…いい加減にしなさい!」

ミサカ「その調子デスヨお姉さま!」

ミサカ「本気のお姉さまを倒さなければ下克上になりまセーン!」

ミサカ「オリジナルを倒してこそミサカの野望は達成されまーす!」

妹達「「「「ミサカはLevel5を凌駕するほどのデキる女になってみせるゼ!」」」」




『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』


<とミサカは高笑いしマース!HAHAHAHAHA!



木山「フ…効き目は上々といったところか」


乱戦状態の下の層を上の層から木山は眺めていた。

少々性格が変わってしまう副作用も出ているが、自身が開発した【電子ドラッグ】の効果は納得のいくものだった。


???「わ!」


ドサリ、と後ろから音がした。

振り向くとそこにはセーラー服でヘルメットをかぶり、金属バットを持った少女がいた。


木山「佐天君…ああ、なるほど。白井君の能力で飛ばされたのか」

佐天「っ、木山先生…」

木山「どうだ、君も見たまえ…ここから広がる世界が私の望む世界だ」

佐天「なに言ってるんですか!こんなムチャクチャなことして」


<ぎゃん!


佐天「! 白井さん!」

木山「…やられたか。すでに『妹達』の強度はLevel5に達しているかもしれないな」

佐天「そんな…」


もはや佐天はいてもたってもいられない。

すぐに御坂と白井を助けにいこうと階段へと駆け出した。



佐天(…ううん、違う)


だが、2・3歩走ったところで佐天は思い留まった。

白井は言った。そちらをお願いしますの、と。


佐天(白井さんは私を避難させたんじゃない。木山先生を私に任せてくれたんだ)


ならば、やるべきことは二人に駆け寄ることではない。木山を止めることだ。

そしてそれが結果として御坂と白井を救うことに繋がるはずだ。


佐天「でやああああああああああああああ!」


階段に背を向け、金属バットを振りかぶり、木山めがけて佐天は突進した。


木山「む…」


ブン、と佐天は盛大に空振った。さらに勢い余って木山を通りすぎ、危うく転びそうになった。


木山「危ないじゃないか…何をするんだ」

佐天「その小型リモコンですよね!?この国歌を操作してるの!それ止めてください!」

木山「もちろん却下だ。私がそんな意見に従うはずないだろう?」

佐天「そんな…」

木山「別に私のリモコンでなくとも止められるよ。【電子ドラッグ】を流しているのは君たちの目的である『スフィンクス』だ。
   スパコンを壊せばこの音も止まる。…もっとも、私はそれをやすやすと見逃すつもりはないがね」


佐天「…っ。てゆーか、なんで御坂さんのクローンは国歌であんなことになってるんですか!?」

木山「言っただろう?これは立派な【電子ドラッグ】だ。雛型は数日前に学園都市全体に流したものさ…」


学園都市全体に緊急放送と銘打って流された【電子ドラッグ】。

能力者のみを対象としたあの放送が【電子ドラッグ】Ver.4だという。


木山「ただ、多種多様な能力者を操ることではなく【電撃使い】の強化を目的としている。
   加えて【電子ドラッグ】を『妹達』の脳や『自分だけの現実』に最適化させることで更なる強化を目指した。
   そのためにより適合する波長を含んだメロディーやコード、リズムや音色などを選別していたらいつの間にか限りなく国歌に近くなってだね…」

佐天「なんなんですかそれ!」

木山「だが効果は絶大だ。あの御坂君がまるで防戦一方じゃないか」





『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』


ミサカ「そろそろ弾丸ドッジボールにも飽きマシタ」

御坂「そう?だったらおとなしく降参してもらうと嬉しいんだけど」


肩で息をしながら苦笑する御坂。

『妹達』の能力が大幅に上昇しているため、かなりのハイペースを強いられている。


ミサカ「そもそもお姉さま相手に普通の銃弾を使うコト自体間違ってまーす」

ミサカ「っというわけデシてね」

ミサカ「チェンジです」


シャコ、と二人の『妹達』は弾搶を取出して別のものと入れ替えた。


御坂「…弾を強化したからって状況が変わるわけじゃないわよ?」

ミサカ「オゥ、オフコース。なので弾は劣化させマシタ」

ミサカ「警備員が使う模擬戦用のプラスチック弾デース」

御坂「げ…!?」

ミサカ「殺傷力はダウンしマスが、丸腰のお姉さまに穴空けるくらいの威力はありマスシね」

ミサカ「もう弾丸を止めるコトも反らすコトもできませんヨ」


ジャキン、と二人の『妹達』はアサルトライフルを構える。


妹達「「「「ファイア!」」」」


ズガガガガガ、とこの日十数度目の銃声が響き渡る。


御坂「なんの!」


低く籠もった轟音と一緒に部屋の床がせり上がる。御坂の能力で鉄骨ごと床が引き剥がされたのだ。

床はそのまま盾となり、プラスチック弾から御坂を守った。


ミサカ「ッダーカラ!」

ミサカ「ミサカの強度はお姉さまと同格デース!」


『オモチャの兵隊』を持っていない二人が盾の左右に瞬時に移動し、御坂から盾を奪おうとする。


御坂「ふん!私とアンタ達が同格なわけないでしょ!」


しかし、盾は『妹達』の磁力では動かず御坂の方へと動いた。


ミサカ「な」


更に御坂は盾となっている塊を完全に床からひきちぎり、自分の腕に密着させて『妹達』と距離を取る。


ミサカ「なんデスト………?」

御坂「私がLevel1の頃から必死になって培ってきたこの能力は一朝一夕で手に入れられるモンじゃないの!私に言わせればアンタ達はまだまだ格下よ!」




『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』



木山「ふむ…そう簡単にはいかないか」

佐天「ホラ、これで分かったじゃないですか!御坂さんには勝てませんてば!だから早くこの歌を止めてください!」

木山「止めないと言ってるじゃないか。君もしつこいな…」

佐天「なんでですか!こんなことしたら木山先生だって捕まっちゃうんですよ!?」

木山「…」

佐天「そうなれば私たちも枝先さんたちも悲しみます!今ならまだ【電子ドラッグ】のせいになりますから!」

木山「…それでもかまわない。どうせ本来なら私は塀の内側いなければならない人間だ」

佐天「え…!?」

木山「君も私の被害者じゃないか。【幻想御手】のことだよ」


ふ、と木山は佐天の方を見て薄く微笑んだ。



佐天「あ…」

木山「…【冥土返し】の先生が枝先たちを回復させるために釈放手続きを早めただけだ。一万の学生を巻き込んだ私がこんなに早く出てきていいはずがない」


視線を変え、階下で起きている激戦を無表情な顔で眺めながら、木山は淡々と話しはじめた。


木山「それに今の私は教師ですらない。【幻想御手】における一連の犯罪で教員免許は剥奪され、再取得も許されなかった」

木山「もう私はただの犯罪者だ。枝先たちから歳月をむしり取り、この街の学生を幻想で振り回し、自分のエゴで枝先たちを含む学生の意識を奪って与えて…」


自嘲した笑みを浮かべ、疲れたように頭を軽く振る。

もはや佐天はどう反応していいのか分からなかった。


木山「今でも私と水穂の方にはどこからか事の全貌を聞いた生徒や教師からメールや電話がくるよ」

木山「『死ね、犯罪者』『何様のつもりだ』『学生はおもちゃじゃない』『どのツラさげて生きてんだ』…」

佐天「…」

木山「……なあ、佐天君。君もそう思うだろう?…それが普通だよ」


グイ、と木山はリモコンのスイッチを押した。





『『『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』』』
『『『一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』』』
『『『フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』』』


佐天「うわぁ!?」


建物全体が斉唱しているかのように大音量の国歌が響き渡る。

あまりの大きさに壁も床も手すりもビリビリと振動していた。


木山「もう一度話がしたかったんだ!天気でも成績でも、どんなにくだらない話でもいい!もう一度あの子たちの笑顔が見たかったんだ!!」


木山「それが悪い事か!!助けたいと思う事が犯罪か!!」


木山「だったら…!だったら人間全員犯罪者じゃないか!!」




自身の内側を全てぶちまけるように木山は叫ぶ。


普段の冷静沈着な様子は影も見当たらない。




木山「もっと音をよこせ『スフィンクス』!!『妹達』を最大までパワーアップさせる狂乱のサウンドを!!」


木山「世界を創れ!!犯罪者が堂々と大手を振って歩ける世界を!!」

佐天「木山先生…!」





『『『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』』』
『『『一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』』』
『『『フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪』』』



御坂「うるっさ…なんなのよ一体…」


床をひっこぬいて作った盾でプラスチック弾から身を守りつつ、御坂は呟いた。

ただでさえ腹立つ国歌の音量が何倍にも大きくなっているのだ。うっとしいことこの上ない。


妹達「「「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHH!!」」」」

御坂「!?」


急に聞こえてきた『妹達』の咆哮に一瞬身をすくませた。

なにが起きているのかは目前の巨大な盾で何も見えない。


ミサカ「もう我慢ならねェ!」

ミサカ「とミサカはオリジナルから再度盾をかっぱらッタル!」


再び二人の『妹達』が盾の両端に現れる。御坂の盾を奪おうと襲いかかる。


御坂「うあ!?」


もはや御坂は一瞬たりとて盾をキープできなかった。

何倍にも強化された能力。そして同様に強化された腕力。

そんな力で引き裂かれた床はピンと張った新聞紙のように、簡単に真っ二つになった。


御坂(ヤバい!銃弾が一一)



次の瞬間御坂は唖然とし、思考回路も一時停止した。

盾を引き剥がした二人とその後方の二人の間、その上空に青くまがまがしいしい巨大な何かが浮かんでいた。

その何かは一度だけ見たことがある。その時は『妹達』も一緒にいた。

『絶対能力者進化実験』における最後の実験で白い悪魔が生み出したものだ。


御坂「ま、まさか…高離電気体(プラズマ)!?」


そして高離電気体は『妹達』の制御により御坂に襲い掛かる。


妹達「「「「二度と…二度と格下なんて言わせねェッ!!!」」」」




木山「邪魔する者は排除するのみ!!」

佐天「御坂さん逃げて!」

木山「消え去れ御坂美琴ォッ!!」


ズプン、と御坂は高離電気体の中へと飲み込まれていった。






佐天「御坂さん…!うそ…!」

木山「あはははは!いいぞ!もっとだ!」


高離電気体は御坂を飲み込み、今もまだその形を成していた。

膨大なエネルギーの中では何が起きているか分からないが、すでに御坂の姿は何一つ見えない。


佐天(…まだだ!諦めるな!)


しかし佐天は挫けない。形を成しているということは『妹達』も確かな手応えを感じていない証拠だ。

つまり、御坂はまだ生きている!


佐天「ええええい!」


再び金属バットを振りかざし、木山へと襲い掛かる。

しかし、木山はいとも簡単にそれを躱してしまう。


佐天「止めてください!このままじゃ御坂さんが!」

木山「いやだと言っている。この音によって『妹達』は自身の持つ限界の力を引き出せるんだ。
   当然普通の人間なら脳が焼き切れてしまうが、ミサカネットワークへ負荷を分散させることで持続的に演算を継続できる」

木山「そう!私の世界を邪魔する人間が存在する限りは!」


佐天「お願いだからやめてください!木山先生本当はこんな事望んでないじゃないですか!」


木山「何を知ったような口を聞いている!これが私の望みだ!!犯罪者の楽園を作るためなら、私はなんだってする!!」

木山「犯罪を犯した人間だけが犯罪者なんて不公平だろう!?皆が犯罪への願望を持っているのに!!」

木山「だったら皆が平等に犯罪を犯せば…犯罪者なんて言葉すら無くなるんだ!!」

木山「それを可能にするのが【電子ドラッグ】だ!ハマッた人間の罪の意識を取り去り!あらゆる望みを犯罪で叶える事ができるんだ!!」


佐天「違う…!木山先生に本気でそれができるわけない!!だって木山先生」





佐天「本当は操られてないから」



『『『フ一一一一一一一一ンフ♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一一一一一ン♪フ一一一一一……



御坂「…へえ。音が止んだらこの子達の力が弱くなったわ」


徐々に浮かび上がる高離電気体の下から御坂がゆっくりと姿を現した。


御坂「…だけどもう遅いわ。さすがの私もちょーっと頭にキちゃったから」


その出で立ちたるや、髪の毛は逆立ちながらゆらゆらと揺れ、制服のブレザーもスカートもはたはたと波打つ。


御坂「しっかりその身にたたき込みなさい。これが私の」


そもそも電撃とは空気中の原子から電子をはぎ取って起こるプラズマである。


御坂「アンタ達のお姉さまの」


つまり、御坂とて言い換えればプラズマ使い。しかも自分と同じ演算式、制御法で生み出されたものなら御坂に操れぬわけがない。


御坂「御坂美琴の全力…」


天井ギリギリにまで浮かんだ高離電気体は


御坂「だああああああああああああああああ!!!」


『妹達』全員に思い切り叩きこまれた。




妹達「「「「デ一一一一一一一一一一一一一一一ム!!!!」」」」






佐天「はー、はー…、終わったぁ…」


床に倒れ込みながら木山のリモコンを握っている手を押さえ込んだ佐天はヘナヘナと全身の力を抜いた。


木山「なぜ…なぜ分かった?私が【電子ドラッグ】にハマッていないと…」


押さえつけられて仰向けになった木山はそのままの体勢で佐天に問いかけた。


佐天「…だって明らかに違うじゃないですか」


同じく佐天もうつぶせになった体勢のまま語りはじめる。


佐天「初春と白井さんの話じゃ【電子ドラッグ】は罪の意識を取り去っちゃうからみんな犯罪に走るんだって…実際私が見た中毒者もそう見えたし。
   でも木山先生は、罪の意識があったからこそ…それを忘れたくて犯罪を犯そうとしてた」


佐天「じゃなかったら…あんな辛そうな顔しませんもん」




木山「…正確にはまったくハマッていなかったわけじゃないよ。少なくとも7割はHALの支配下にあった」


言いながら木山は空いた方の手で自分の目の中に指先を入れようとした。


佐天「ちょっ…!?」

木山「妙な勘違いをしないでくれ…残りの3割を防いだのはこれだよ」


そう言って木山は自分の人差し指を佐天の前に差し出した。


佐天「…コンタクトレンズ?」

木山「偏光レンズだ。映像の解析で一部の波長が特に脳に影響する事が分かっていたから…それを防ぐのが目的だった」


ピン、と木山は親指の爪でそのコンタクトレンズを弾いた。


木山「だが、まだまだ未完成でね…一定時間の一部自由意志を除けばほぼHALに支配されていた。…でなければここまでやったりしないよ」



カンカンカン、と階段を駆け足で登ってくる音がした。


御坂「佐天さん!」


見ると、ところどころ制服が煤けている御坂が駆け寄ってくる所だった。


佐天「御坂さん!無事ですか!?白井さんは!?」


念のために木山の手を押さえつけたまま、佐天は上体を起こした。


御坂「私は平気。黒子も気を失ってるだけ。脈拍も呼吸も安定してたからたぶん大丈夫よ」

佐天「そうですか…!あと、スゴいことになってましたけどクローンの人達は…?」

御坂「心配ないわ。私の妹だしね。ちょっとキツ目のお仕置きよ」

佐天「…あははっ、アレがお仕置きですか」



佐天「…本当はこんなこと言っちゃダメなんでしょうけど…」

御坂「ん…?」

佐天「…ちょっとだけ木山先生が【電子ドラッグ】に冒されて良かったです」

御坂「え?」

木山「…?」

佐天「だって木山先生の本当の気持ちが聞けましたから。辛い気持ちを誰にも吐き出さずに生きるのって何より辛いですから」

佐天「私も一人で勝手に思い詰めちゃって【幻想御手】に手 出した人間ですしね」

木山「…」

佐天「でも初春や御坂さんに白井さん。それにアケミ達もいてくれたから私は立ち直れたんです」

佐天「だからえっと…木山先生も私達にいろいろ吐き出しちゃってください。
   私はあんまり頭よくないから答えは出せないかも知れないけど、相談に乗ったり愚痴聞くくらいならできますよ」




佐天「…それと、言っておきますけど【幻想御手】も案外悪くないもんですよ。昏睡状態から目覚めても能力が向上したって人多いですし。私もその一人」


【幻想御手】の使用者は全身、元のレベルよりも高度な能力を一時的に得た。

そのため、より次元の高い能力を出すコツを体得して本当にレベルが上がった人間もいる。

実際、佐天もレベルこそ上がらなかったものの数値自体は上昇していた。




木山「…はは、私は本当に教師失格だな…」


空いている方の腕で自分の目を力なく覆い、木山は呟いた。


木山「まさか学生にここまで諭されるとは……本当にすまなかった……」


少しだけ震えた声で木山は二人に向けて謝罪した。



御坂「…はあ、なーんか興醒めしたわ。アンタにもたっぷりお仕置きしてあげようと思ったのに」


話の全てを聞いていなかった御坂にとっては木山と佐天の間で何があったのか分からない。

だが、こんな表情をしている木山をこれ以上攻撃する事など御坂にはできなかった。


御坂「『スフィンクス』の場所だけ教えなさい。それでとりあえずは許してあげる」

木山「…この部屋を出て右手へ。突き当たりの部屋に『スフィンクス』がインストールされているスパコンがある」

御坂「ん。それとアンタ、結局【電子ドラッグ】にハマッてんの?」

木山「7割方、といったところだ。しばらく放っておけばまた中毒症状で【電子ドラッグ】を見ようとするだろう」

佐天「え!?」

御坂「あっそ。…どのみち食蜂さんに頼んで『妹達』の洗脳を解いてもらわないといけないんだし、ついでに解いてもらうよう頼んでみるわ」

佐天「…食蜂さん?」

御坂「うちの学校のもう一人のLevel5よ」

佐天「! 第五位の人ですか!」

木山「…すまないね、何から何まで…」


今回はここまでです。
途中で切ってすいません。
バイト戻ります。
23:00ごろにレス返ししますんで。

ただいま帰りました。


レスありがとうございます。
>>445>>451>>455が秀逸すぎますw
朝起きていきなり吹きました。

殺せんせーはさすがにまだ書けません。書くとしてもチョイネタですね。
あくまでネウロとのクロスでいこうと思います。たまに違うネタあるけども。

前作読んでいただいてしかもそんなコメントもらえてマジ嬉しいです。
エレファント速報でまとめてもらってるんでそちらにコメント書いてもらえれば幸いです。


意図的にちょっと切ったんですが、失敗だった感も少し否めないです。

次回の更新ですが、たぶん7月の終わりか8月の頭になります。ホント最近忙しいです。
忙しすぎて今週まだ殺せんせー読んでません。FE3週目もやる暇ありません。
しばらく間が空きますがご了承ください。


-第二十三学区、某研究所正面出入口



御坂「悪いわね、こんなところまで来てもらって」

食蜂「御坂さんが私に頼み事なんて珍しいからねぇ。たまたま所用で近くにいたし、かまわないわぁ」


地下での激戦を終えて数十分後、爽やかな秋晴れの下で御坂は自分と同じ最高レベルの能力者を迎えた。


???「お前が第三位か。なるほど、そんなに制服がボロボロだってのにピンピンしてるあたりそこらのお嬢様とはちげえな」


御坂「…はあ? 誰よアンタ」


だが、最高レベルの能力者は一人ではなく二人いた。

金髪のホスト崩れの様な男が値踏みするように御坂を見定めている。


???「【未元物質】っつー能力名くらい聞いたことあるだろ?」

御坂「! へぇ、じゃあアンタが…」

垣根「そういうことだ。今は第五位のボディーガードをやってるんで一緒についてきた」

御坂「…ボディーガード…?」

垣根「まあな」

御坂「………ああ、そう。うん、いいと思う」

垣根「は?」

御坂「そのくらい余裕あるなら食蜂さんに好き勝手されてないんでしょ?うん、それならナイトにピッタリよ!私は応援するわ!」

垣根「…ちょっと待てコラ。愉快な勘違いしてんじゃねえよ」

食蜂「この人とはお互い仕事上協力してるだけよぉ。御坂さんが思う様な甘いカンケイじゃないわぁ」

御坂「え?そうなの?」

垣根「あたり前だ。つーかよくボディーガードっつー単語でそこに行き着いたな。さすがLevel5、妄想力がちげえな」

御坂「な、アンタもLevel5でしょうが!」

垣根「心配するな、自覚はある」

食蜂「あるのねぇ…」


食蜂「それで、治してほしい人っていうのは?」

御坂「あー…中にいるんだけど、えっと…」


そう言い淀んで、御坂は金髪のホスト崩れを見た。


垣根「垣根だ。垣根帝督」

御坂「垣根さん、悪いけど垣根さんは入らないでほしいんだけど…」

垣根「…なんか訳ありか?」

御坂「…まあそんなところ」

垣根「…かまわねえよ。暴走した第四位すら返り討ちにするコンビならボディーガードもいらねえだろ」

御坂「ありがとう。見かけによらず紳士ね」

垣根「一言余計だ。さっさと終わらせてこい」

御坂「分かった。じゃあついてきて、食蜂さん」

食蜂「…えぇ」





垣根「…第三位の訳ありねえ…」


トン、と研究所の壁に背中を預けて垣根帝督は考える。


垣根(十中八九クローンのことだろうな…)


実は垣根はすでに『妹達』についてかなりの情報を有している。

それどころか後に行うつもりである学園都市相手に大波乱を起こす計画に組み込んですらいる。


垣根(だが、あそこに一方通行の弱点がいるとは限らねえ。後のこと考えるならクローンに僅かでも悪いイメージを与えるのは得策じゃねーな)


今この場に目当ての少女がいると言うのであれば、垣根は計画を前倒しで実行しただろう。

【滞空回線】の採取による情報解析の計画もあるが、垣根個人としては憎き第一位に一杯食わせてやりたいところだ。

しかし、焦ってはいけない。ここに目的の少女がいるか分からないなら慎重になるべきだ。

そして、その選択は当たっている。この研究所に打ち止めはいない。

学園都市統括理事長も、この街の能力者の頂点も、学園都市そのものも全て相手取るのだ。慎重に慎重を重ねてもまだ足りないくらいだ。


垣根(第三位にゃ悪いが…全て上手く行けばお前にもメリットが出てくる計画だ。一万体いる人形を一体パクるくらい大目に見ろよ)


垣根「…っつーかお嬢様なら敬語くらい使えよな」



-研究所内、最下層ブロック



食蜂「…ふぅん、これが例の…」


目の前で横たわる同じ顔をした四人の少女をしげしげと眺めながら、食蜂は小さく呟いた。

外と違って薄暗い最下層ブロックは焦げ臭い匂いで満ちていた。

爆発したスパコンやら高離電気体やらのせいであちこちが焼け焦げているせいだ。

場所を移したいところだったが、意識の無い四人の『妹達』を担いで移動させるのは難しかった。

それに、意識の戻った白井に無理をさせるのも気が引けた。


御坂「…意外と反応薄いわね。もっと驚くと思ったけど…」

食蜂「…私の情報収拾力ならこの街で起きていることはおおむね把握できるわぁ。でも、実際にこうして見るとまた別ねぇ」


とはいえ、食蜂も御坂のクローンが実際にいる。程度でしか知らない。

どうせこの街のことだ。クローンを作ることすら何かの前段階の可能性さえある。とは思うが。



食蜂(あの第二位の顔…見当がついてるって感じだったわねぇ)


第二位に対して能力は効かないが、ある程度予想はつく。

しかし、あくまである程度だ。具体的な内容まで分かるということではない。

ハッタリで第二位には「読み取れる」と言ったりはしたが。


食蜂(気に食わないわぁ…もし向こうもクローンを何かに利用するつもりなら私が先に仕掛けるべきよねぇ)


実際には垣根が利用しようとしているのは打ち止めのみ。他のクローン体はどうでもいい。

だが、食蜂はそのことを知らない。一方通行の弱点を探ってたどり着いた『妹達』と、御坂の弱味を探ってたどり着いた『妹達』では知る内容が変わっていた。


食蜂(御坂さんには精神状態の判断力がないから私がクローンに何をしても分からないし…ここは)




御坂「この子達も完全に【電子ドラッグ】にハマッちゃって…食蜂さんにしか治せないの。お願い、この子達を助けて」

食蜂「…!?」


思わず食蜂は目を見開いた。あの御坂美琴が深々と頭を下げているのだ。

自分の派閥に入ることもなく、かといって自分で派閥を作るでもなく、唯我独尊を貫いてきた気に食わない女が。

脅そうとも能力を行使しようとも決して屈しなかった女が、とうとう自分に頭を下げている。

ぞくり、と食蜂の背中を何かが上り詰めた。

食蜂の中で『自分だけの現実』がほんの一部新たに構築され、付け加えられた瞬間である。

そして食蜂はそれを瞬時に把握し受け入れた。


食蜂「…いいわぁ。その代わり御坂さんに一つ貸しだゾ☆」

御坂「う…見返りはお手柔らかにしてもらえるとありがたいんだけど」

食蜂「もっちろぉん♪」


そう言って食蜂はいつものレースの手袋を取り外し、中からメタリックな手袋、マイクロマニピュレータを取り出した。


食蜂(犬がいいかしら猫がいいかしら…頭を下げただけでこの征服感。四つんばいになってる御坂さんなんて想像するだけでゾクゾクする)ジュルリ

御坂(…うわ、見たことないようなエグい顔してる…後が怖いわ)





御坂「ねえ、ついでにもう一人治してもらえないかしら?」


『妹達』の頭を掴んでは離し、次々と治療していく食蜂に声をかけた。


食蜂「そぉいえばクローンだけとは聞いてなかったわねぇ。いいわよ、どこにいるのかしら?」


そして、いつになく上機嫌な食蜂はその用件を笑顔でいとも簡単に飲み込んだ。


御坂「ちょっと別室にね…意識ははっきりしてるんだけど【電子ドラッグ】にハマりかけてるから暴れださないように友達に監視してもらってるの」

食蜂「ハマりかけてる?」

御坂「ええと【電子ドラッグ】を見たってことも自覚してるし、完全に別人格が形成されてるんじゃないみたい。本人曰く、7割方だって」

食蜂「ふぅん…」


とりあえずは納得したものの、食蜂は腑に落ちない表情を浮かべた。


食蜂(その程度なら喜んで引き受ける精神系能力者なんて常盤台にいくらでもいるでしょうに…
   一回共闘しただけでもう心許してるのかしらねぇ…)


『妹達』のような重症患者ならまだしも、ハマりかけている程度なら食蜂でなくとも治療はできる。

御坂は常盤台中学ではLevel5ということもあって人望はかなりある。

あくまで尊敬の対象であって友人と呼べる人間はあまりいないが。

その御坂が頼み込めば常盤台の精神系能力者は嬉々として治療してくれるだろう。

それなのに、わざわざ校内での敵対関係が明白な自分に頼み込んでいる。

誰かは知らないが、御坂と接点を持ってるとなれば自分が何かを仕掛ける可能性があるとは思わないのだろうか。

たかが第四位を一緒に追い返しただけでもう全てが解消されたと思っているなら楽観的すぎだ。

この街にはそんなに甘い人間なんて少ないだろう。

そしてこの食蜂の考えの方がこの街では正しい。御坂が単純に他人を信じた結果、クローンが生まれて悲劇も生まれたのだから。




食蜂(ま、今は御坂さんの四つんばいが見れるならなんでもいいけど♪)



-最下層ブロック、実験データ保管・閲覧室



佐天「そろそろ来ますよね…もうちょっと頑張ってくださいね」

木山「ああ、今のところはなんの兆しもない。安心してくれ」


『スフィンクス』があった部屋とはまた別の部屋では佐天が木山を監視していた。

監視と言えば聞こえは悪いが、要は木山に中毒症状が出ないように気を紛らわせているのだ。

二人は空っぽの棚が大量に並んでいる部屋、その奥に置かれている閲覧用に備え付けられた簡素な机に並んで腰をかけていた。


佐天「白井さんも無理しないでくださいね」

白井「申し訳ありませんの…しばらくすれば回復いたしますので」


そして机の近くに置かれていたソファーには白井が横たわっていた。

あれから意識は戻ったものの、全快とはほど遠い状態だった。

到底演算などできず、歩くのがやっと。しかし、いざ木山が暴れたとなれば佐天をなんとか逃がすつもりだ。


木山「しばらくは安静にしていた方がいい。あの時点ですでに『妹達』の強度はLevel5に到達する寸前だった」

白井「お構い無く。電撃には慣れておりますので……それにしてもまさか一発退場とは……情けないですの」



ガチャリ、と扉が開く音が入り口の方から聞こえてきた。

そして徐々に足音が近づき、棚の影から常盤台の制服に身を包んだ少女が二人、姿を現した。


御坂「お待たせ。なんともない?」

佐天「ええ、異常なしです。それでそっちの人が…」

食蜂「食蜂操祈よぉ。よろしくね、佐天さん」

佐天「あれ?なんで私の名前…」

食蜂「私の情報収拾力ならこのくらい簡単に舞い込んでくるわぁ。あなた意外と有名人よ?」

佐天「ゆ、有名人!?私が…?」

食蜂「金属バット一本で研究所を壊滅させるほどの破壊力を持つ【幻想巨乳】(バストアッパー)の強能力者…」

佐天「なんですかそれ!私周りからそんな風に認識されてんですか!?」

御坂「…なるほど【幻想巨乳】…だからそんなに…」

佐天「御坂さん!?」



食蜂「それで治してほしいのはどちらかしらぁ?ソファーで気力をなくしてる白井さん?それともそちらの…?」

木山「ああ、私の方だ…よろしく頼むよ」

白井「私の方は少々放っておいてくださいまし…」

御坂「ちょっと黒子、アンタ大丈夫なの?」

白井「…身体は大丈夫ですが心はズタズタですの…」

御坂「…アンタは十分活躍したわよ。くよくよしなくていいの」

白井「…はいですの…」

食蜂「なんだか分からないけどぉ、この後も予定があるからさっさとやっちゃうわよぉ?」

木山「ああ…お願いするよ…」





木山(HALよ…私は君の命令を忠実に実行した)



木山(君は私に多くを教えなかったが…これで満足なのだろう?)



木山(あとのことは君次第だ…健闘を祈る)





-???





ご苦労だった木山春生!!




君は期待通りの仕事をしたよ…!




これで私の目的に大きく近付いた!!




永遠に生きる事が出来るのだ…1と0の狭間の世界で!!





-???



HAL「打ち止め」


打ち止め「はーい!ってミサカはミサカは元気にお返事!」



ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…!!!




匪口「これで【心理掌握】の拡散は防いだ。じゃ、こっちもはじめようか。ミサカ」


11018号「本当に大丈夫なのでしょうね、とミサカはケーブルだらけのヘッドギアを装着します」


匪口「理論上はどう検証しても破綻はない。実証はミサカの姉ちゃんがほとんどやってるようなモンだ」


11018号「信用してよいのですね?とミサカはベッドに横たわります」


匪口「HALの知恵とミサカの生まれ故郷の技術だ。これ以上信用できるものはない。俺が保証するよ」


11018号「…あなたの保証ですか、とミサカはゲコ太とピョン子を握りしめます」


匪口「俺の保証じゃ心配だってか。心配しなくても寝てれば終わるよ」


11018号「…分かりました。では、おやすみなさい、とミサカは無限の彼方へ旅立ちます」


匪口「うん。おやすみ、ミサカ。こっからは俺らの出番だ。学園都市ひっくり返してやんよ」


今回はここまでです。
前にも言いましたが、このSSでの食蜂さんは大覇星祭でなんのアクションも起こしていません。
普通に選手宣誓で削板に食われた挙げ句、リモコンパクられて詰みました。


レスありがとうございます。
匪口に関しては作中で書ければ書きます。

そして間が空いた上に予定より早く投下してしまいました。すいません。



学生のベタに苦しんでます。多分今度こそ8月の頭に更新になると思います。



-数日後、第七学区街頭



-警備員の発表によりますと【電子ドラッグ】の中毒者と見られる逮捕者は昨日ついに一万人を突破しました-


-中には学園都市外部の人間も混ざっており、先日の第十一学区の倉庫街における爆撃テロに乗じて侵入したものと思われます-


-尚、テロによる被害総額はおよそ225億円。未曾有の大規模テロとなりましたが人的被害はなく、現在のところ物価への影響も見られません-


-また、テロ当時警備員の連絡網に何者かによる妨害で不具合が発生していたことから
   警備員は今回の【電子ドラッグ】による一連の騒動の首謀者及びテログループは学園都市に潜伏しているものとして調査を進めています-


-都市住民の皆さまには引き続き外部との接続ができない環境に対するご理解、そして携帯電話を含む端末類は極力使用を控えるように…




御坂「一万人…そんなに暴れてる人がいるのも驚いたけど、よくそんな数の人間捕まえられたわね」


平日の放課後、少しずつ傾き始めた太陽の下で御坂は街頭のニュースを歩きながら見ていた。


白井「なんでも白ランにハチマキの殿方が中毒者を片っ端からちぎっては投げてるらしいですの」

御坂「白ランにハチマキ…もしかしてちょっと前のアレ?」

白井「ですの」

こくり、と小さなツインテールの頭がうなずいた。

あの日白井は『妹達』と一緒に入院したのだが、ほんの一晩で退院した。

医者の腕がどうこうではなく、白井の電気に対する耐性が異常なのだとか。

事実すぐに風紀委員の仕事に出れるほどに回復しており、無断外泊じゃなかったのかと寮監に疑われたほどだった。


御坂「…まあ、私の【超電磁砲】を歯で受けとめるようなヤツだもんね。生半可な兵隊じゃ相手にならないでしょ」

白井「ほとんど人外の領域ですの」




御坂「とにかく黒子が無事でよかったわ。『妹達』の方もなんとかなりそうだし一安心よね」

白井「本当にご心配おかけしました…次の機会があれば、絶対に汚名返上してみせますの!」


『妹達』の方は未だに意識は戻らないが、命に関わる状況ではないし植物状態になる可能性も0だそうだ。

【電子ドラッグ】にどっぷりハマりすぎてしまっただけで、少々時間をかければ元に戻る。【冥土返し】のお墨付きだ。

そして、残る二体の『スフィンクス』は足取りが掴めなくなっていた。

あの日は御坂も電池切れ寸前の上に負傷者が多数。とてもじゃないが別の『スフィンクス』の場所にまで殴り込みに行く余裕はなかった。

それに『妹達』も全員奪い返したので一度体制を立て直しに撤退。

後日『スフィンクス』があったであろう場所に向かってみたが、もぬけの殻だった。


御坂「そんなに重く受けとめなくてもいいってば。一緒について来てくれただけで十分感謝してるわよ」

白井「いえ!このままでは風紀委員である資格もお姉様の露払いを努める資格もありませんの!」

御坂「…そこまで意気込んでるなら私に止める権利もないけどさ、無茶だけはするんじゃないわよ」

白井「…失態を冒した黒子をそこまで気遣ってくれますなんて…黒子は感激ですの!」ガバッ

御坂「だからって抱きつかない!」バチィ!

白井「アふン!…いつもより少し弱めの電撃…さりげない配慮に黒子はもう…」

御坂「よーし次は今の10倍の電力でいってみようかしら」


未だに【電子ドラッグ】の中毒者がいるとはいえ、学園都市には、少なくともこの空間にはいつも通りの風景が戻ってきた。

なんのことはない、ごくごくいつも通りの風景だ。

雲ひとつない学園都市の青空には飛行船がゆったりと浮かんでいた。




-第七学区、『風紀委員』一七七支部



初春「…はぁ~…ダメです~。まったく手がかり掴めません…」


自分のパソコンのディスプレイの前で花飾りの少女はうなだれながら弱音を吐いた。

左側にはブラインドと強化ガラスの代わりに段ボールがガムテープで張られていた。

HALの兵隊に壊された窓ガラスはなかなか修理されなかった。

なんでも、あちこちでガラスが壊された上に倉庫街もやられて供給が追い付かないのだとか。


佐天「なんだか花まで萎れちゃってるよ、初春。ちょっと休憩した方がいいんじゃないの?」


うなだれたままキーボードの上に倒れこみそうな花飾りの少女に黒髪の少女が提案した。

『妹達』救出作戦では大手柄の佐天だったが、ダメージを受けてはいた。主に心に。

周りからの自分の認識もゴシップの存在を知らなかったことも精神的大ダメージだった。

しかし、まあそれはそれ。

大抵のゴシップは少し浮上したらすぐに沈んでしまうのが常だと知っている彼女は翌日には復活していた。


初春「うー…だって御坂さんも佐天さんも大活躍だったらしいじゃないですか。私だけ置いてきぼりなんて嫌ですよ」


あれからというもの、プログラム人格は再び電脳世界の奥深くに潜り込んでしまった。

御坂と初春が時間をみつけては捜索しているのだが、一向に見つからない。

しかし、スパコンが奪われたという報告も外部との接続が復旧した形跡もないため、『スフィンクス』が増えたという可能性はない。

おそらくは『妹達』を奪還された上に『スフィンクス』まで壊されてしまったのだから今まで以上に慎重になっているのだろう。

というのが御坂達が出した結論だった。


固法「ちょっと仮眠したら?最近ろくに眠ってないんでしょ?」


パソコンの向こう側からこの支部の責任者、固法美偉の声がした。


初春「大丈夫ですよ。ちゃんと寝てます」

佐天「嘘はよくないぞ~、初春。目の下が木山先生みたいになってるじゃん」



初春「…でも、白井さんは活躍しなかったみたいだから見返すにはこのタイミングしか…」

佐天「それが本音かい」

固法「そんなフラフラの頭で白井さんを見返せるわけないでしょ。15分くらい仮眠すればすっきりするから少し寝なさい」

初春「…分かりました。じゃあお言葉に甘えて…」


とうとう折れた初春は自分の席を立ち、支部の奥にあるソファーへと向かった。

隣にいた佐天は少し退いて初春に道を譲り、初春についていった。


固法「あら、泊まる時の寝室使ってもいいわよ?」

初春「それだと明日の朝まで眠っちゃいそうなんで…ソファーで十分です」

佐天「健気だねぇ初春は。そんながんばり屋さんの初春に佐天さんがタオルケットでももってきてあげよう」

初春「あ、すいません。お願いします」

固法「たしか押し入れの奥の方に入ってたと思うわ」

佐天「はーい。分かりました」




しばらくすると、佐天がタオルケットを小脇に抱えて戻ってきた。


佐天「やー、ちょっと探すのに手間取っちゃいま」

固法「しーっ」


時間がかかった理由を説明しようとすると、自分のデスクに座っていた固法が唇に人差し指を当ててそれを制した。


佐天「? どうしたんです?」ヒソヒソ


たしなめられた理由は分からないが、とりあえず佐天は声を落として尋ねた。

固法は微笑みながらソファーの方をちょんちょんと指差す。

なんだか分からないがとりあえずタオルケットを抱えたまま指された方向、ソファーへと進んだ。

するとそこには穏やかな表情ですやすやと寝息を立てている初春の姿があった。


佐天「おぉう…」

固法「よっぽど疲れてたみたいね。一時間くらい寝かせてあげましょ」ヒソヒソ


いつの間にか隣に来ていた固法がそっと佐天に耳打ちした。


佐天「そうですね」ヒソヒソ


そう言って佐天は初春に優しくタオルケットをかけてあげた。

肩から足まですっぽりとタオルケットに包まれた初春。

そんな初春を見ていた佐天はついついイタズラ心が沸いてしまい、そーっとタオルケットの足の方をつまみあげて


固法「風紀委員の支部何してんの」

佐天「あたっ」


固法にチョップで止められた。




佐天「それにしても、学校半ドンで終わっちゃうからやることないんですよね。
   まあ、あんな大冒険から生還したばかりだからしばらくはこれでいいって言えばいいんですけど」

固法「そうね。ここ最近なら2~3回は出動命令が出るのに今日はないし」

佐天「じゃあ暇なんでテレビでも見ますか」

固法「いいけど音量小さくしてね。初春さん寝てるから」

佐天「はいはーい。…でもこの時間帯ってお堅いニュースと夜の番組の番宣しかやってないんですよね」


-では、続いてのニュースです-

-学園都市に共同展開する予定でした『シュプリーム・会屠楼』ですが、『会屠楼』の店長である陳ヤマト氏が危篤状態となり-


佐天「なにい!?」ガタッ!

固法「ちょっと佐天さん声」

佐天「だって陳ヤマトが危篤ですよ!?これが落ち着いてられますか!」

固法「誰よ陳ヤマトって」

佐天「中華の超有名店の店長ですよ!知りません!?『スパイラル豚足』!」

固法「初めて聞いたわ」


-これにザり延期されていた『シュザザリーム・会屠楼』のザザザザはさらに延期ザザザザザザザザ、むしろザザザザザザザザザザ-


佐天「ちょっ、どうしたのさテレビ!しっかりしろ!」バンバン!

固法「だから佐天さん静かにして!」








HAL『こんにちは、学園都市の諸君』


HAL『少しだけ時間をくれるかな?自己紹介をしたいんだ』



-同時刻、第七学区『警備員』第七三活動支部



黄泉川「ん?誰だこいつ」

鉄装「よ、黄泉川さん大変です!地上波が乗っ取られてます!」

黄泉川「! また電波ジャックか!じゃあこいつが…!」



HAL『今世間を騒がせている【電子ドラッグ】…及び現在統括理事会を騒がせているLevel5第一位の失踪』


HAL『それら全てを計画したのはこの私だ』


HAL『私は人にして人間に非ず。コンピュータ上に組み立てられたプログラム人格』


HAL『私の名前はHAL…【電人】HALだ!!』



-同時刻、第一五学区繁華街



削板「あの飛行船に映ってるのは…この根性無しどもの親玉か?」

原谷「っぽいですね…」

削板「むう…」

原谷「なんです?珍しく難しい顔して」

削板「いや…根性無しの親玉にしてはやけに…面構えが、と思ってな」

原谷「はあ…?」



HAL『ほんの2つ。君達に飲んでもらいたいのは、ほんの2つの要求だ』


HAL『ひとつめの要求は私と私がいるこの地に…決して危害を加えないこと』


HAL『今私は第二学区の地下演習場にいる。駆動鎧を含めた地上兵器を用いて様々な環境下での演習を行う所だ』


HAL『もちろん、君たちはこのような要求をただで飲みはしないだろう』


HAL『そこでだ。少し上空を見てもらいたい』



-同時刻、第三学区屋内レジャー施設『アイテム』隠れアジト



麦野「見える?絹旗、フレンダ」

絹旗「…あー、私の目が節穴じゃなければ超ヤバいもんが飛んでますね」

フレンダ「えっ?どこどこ?」

絹旗「アレです。あの黒いの」

滝壷「…南南東から電波が来てる」

麦野「…はっ、ちょうど第二学区の方向だよ」

フレンダ「うわ、アレってもしかして…」



HAL『警備員や兵器開発等に携わっている人間には理解していただけただろう』


HAL『今各学区の上空を旋回しているのは学園都市最新鋭の無人攻撃ヘリHsAFH-11。通称【六枚羽】だ』


HAL『スペックとしては最大速度マッハ2・5。装備としては機銃にミサイル、摩擦弾頭、砂鉄と高圧電流による対ミサイル兵器等々…挙げればキリがない』


HAL『さらに言わせてもらえば【六枚羽】の他にもいくつか自動操縦の兵器を拝借させてもらった』


HAL『…しかし、私が手に入れた兵器はそれだけだ。学園都市と全面戦争となれば勝ち目は薄い』


HAL『なので…もう少し私の手の内をお見せしよう』



-同時刻、第七学区【学舎の園】



婚后「きゃあ!?」

泡浮「婚后さん!大丈夫ですか!?」

湾内「な、なんなのでしょう…!この揺れは…!」

婚后「ああ、申し訳ありません、泡浮さん…。しかし、【乱雑開放】は私がとうに解決したはずですわ!どうなってますの!?」



HAL『ふむ、震度4弱と言ったところか』


HAL『諸君らには分からないだろうが、今学園都市には完全に同じ規模の揺れが発生した』


HAL『もとは東京都西部にしか過ぎない小さな領土面積とはいえ、同じ規模の揺れというのはあり得ない』


HAL『では、私は何をしたのか』


HAL『少々信じがたいだろうが、地球が自転するベクトルを一点に集め各学区に均等に分散させたんだ』


HAL『博識な者たちなら分かるだろう?誰が私に味方しているのか』


HAL『付け加えるなら私の指示一つで学園都市を地盤から崩壊させることも可能だ』


HAL『例えば何が起きても倒れないようなビルがあろうとも、地盤が砕けてしまっては立ってはいられまい?』



-同時刻、第七学区窓の無いビル



アレイスター「ほう…」




HAL『…それともうひとつの要求は、現在学園都市で使われているスーパーコンピューター…』


HAL『それら全ての使用の権限を…私に与えてもらいたい』


HAL『私自身まだまだ性能をパワーアップしたくてね』


HAL『そのためには…他のパワーあるコンピューターと接続する事が不可欠なんだ』


HAL『私が指定するいくつかのスパコンは…直に接続するためにこの施設に運び入れ』


HAL『その他の外部のスパコンも…私が接続している時は一切の邪魔を禁止する』


HAL『これを破った者はすぐさま探り当てる…【電子ドラッグ】の餌食になってもらうためにね』


HAL『約束しよう人間達よ』

HAL『以上の要求を受け入れれば…私の方から現在以上の危害は加えない!!』



-同時刻、第一二学区カトリック教会前



垣根「ヒュウ、イカれてやがんなこいつ。その2つの要求飲んだらこの都市は終わりだろうが」

食蜂「1の世界がどうなろうと私の知るところではない、だそうよぉ。前にお話しした時に聞いたわぁ」

垣根「はっ、横暴だな。そんでムカついた。学園都市をひっくり返すのも一方通行を潰すのも俺だ。
   勝手に人の獲物を横取りしてんじゃねえぞコラ」



HAL『YESかNOか、行動で示してもらおう』


HAL『良い行動を…期待しているよ』


HAL『それでは…』



-同時刻、第七学区『風紀委員』一七七支部



ブツン、と支部のテレビは電源が切れてしまった。


佐天「…」

固法「…」


支部に居た佐天と固法はしばらく呆然としていた。

たった今目の前で放送されていたものが現実のものとは思えなかった。


佐天「…こ、これって…まずいんじゃないですか?」

固法「まずいなんてものじゃないわよ!学園都市がテロリストに占拠されたのよ!?」

佐天「ですよね…」


しかし、だからといって何をすればいいのか分からない。

事態のスケールが大きすぎる。学園都市がいきなり占拠されるなど考えたこともなかった。


佐天「そ、そうだ!初春!」


急いで佐天はソファーで安眠している花飾りの少女に駆け寄った。


少女はたった今起きた前代未聞の放送など何も知らずに安らかな顔でタオルケットにくるまっていた。


佐天「起きて初春!大変な事になっちゃったんだよ!?」


初春を起こそうと佐天は初春の身体を揺さ振る。

しかし、初春は一向に起きない。未だにすやすやと眠っている。


佐天「早く起きてよ初春!大変なんだってばぁ!」


こんなに起こそうとしているのに少しも反応がない初春に苛立ちが募った。

一層激しく身体を揺さ振るもまだ起きない。

そうこうしているうちにタオルケットが地面に滑り落ちた。


佐天「ねえういは…!?」


瞬間、佐天はピタリと動きを止めた。

タオルケットの下の初春の服装が異様だったからだ。


いつもまくっていたスカートのウエストラインが肩まであがってるではないか。


おかげでスカートはほとんど美容室で着せられる髪除けみたいになっている。


下半身に至ってはほぼ丸出しだ。



佐天「」

初春「」



そして佐天は気が付いた。

さっきまで眠っていた初春が目を見開いてこちらを凝視していることに。



そしてなんの前触れもなく、初春は飛び起きた。


佐天「うあ!?」


さらにそのままものすごい勢いで支部の入り口へと突き進む。


固法「!? 初春さ、きゃあ!?」


驚いていた固法を押し退け、初春は突き進む。

よくよく見れば、スカートとブレザーの端からチラチラ覗いているパンツは水玉でもクローバーでもない。


男物の柄パンだアレは。


そして後少しで入り口というところで初春は直角に右に曲がり、自身のパソコンが置いてあるデスクの方へと姿を消した。

そこから先は他の二人には見えなかったが、バフッという音だけは聞こえた。

恐らくは初春が段ボールへと突っ込んだ音-


佐天「ちょっ、初春!?」

固法「ここ二階よ!?」



風紀委員の支部を頭から飛び降りた花飾りの少女は落下しながら小さく呟いた。


初春「査楽」


すると、落下中の初春の背後に一人の青年が現れる。


査楽「はっ」


青年が花飾りの少女に手を触れると、地面すれすれのところで二人は姿を消した。

そして、少し離れた街灯のてっぺんに姿を現す。


初春「とうとうこの時が来ました」

査楽「ええ、これにてHALの天下。ひいては我々の天下ですね」

初春「他の皆さんも一様にHALの許へと集う頃です。私達も向かいましょう」

査楽「分かりました」


すると二人は再び姿を消した。

飛び降りた支部の窓枠からは二人の少女が血眼になって花飾りの少女を探す姿が見られたが、ついぞ発見することはできなかった。


今回はここまでです。
いよいよ佳境に入ってまいりました。


レスありがとうございます。
自分は単行本派です。早く新刊出てほしいです。
前作はそれのことです、ハイ。
まあ、自分で書いていながら松井先生絵の駒場と木山先生と初春はなんとかイメージできた。
しかし、松井先生絵で這って動くウッディだけは想像つかない。


毎日毎日クソ暑いですね。
おかげで毎日毎日頭の中で波乗りジョニーがエンドレスです。
弱気な性と裏腹なままに心うずいてしゃーないです。

木原数多の無理難題シリーズその2

HAL事件を解決してきなさい


-???



HAL「ム…」


ピク、とHALは何かを感じとった。

それは自分の支配世界に誰かが入りこんできた感覚。

先ほどの大規模電波ジャックに使った大量のエネルギーの出どころをたどってきたのであろう。

恐らくはウイルスのようなモノが電脳世界のHALを攻撃しようとしている。


HAL「…一人しかいないな」


電脳世界に構築された城の頂上でゆっくりと辺りを見渡し、そしてニヤリと笑った。


HAL「【超電磁砲】御坂美琴よ」


その視線の先には常盤台中学の制服と紫電に身を包んだ女子中学生がいた。

これでもかというほどに怒気を含んでこちらをにらみつけている。


HAL「だが…君とて理解しているだろう?『スフィンクス』はまだ2体残っている。1と0の狭間で私を倒すことは不可能だ」



御坂「何がしたいの…?」

HAL「うん?」

御坂「一体何がしたいの!?学園都市をメチャクチャにして!日本中の電子頭脳を乗っ取って!大勢の人間を洗脳して!
   そこまでして何がしたいの!?アンタ達になんのメリットがあるのよ!!」


最初は気にもとめなかった。あっさり解決してしまうと思ったから。

『妹達』が洗脳下にあると分かった時はそれだけで頭がいっぱいだった。

そしてここにきて初めて疑問が湧いた。ここまでのことをしてこのプログラム人格は、その制作者は一体何がしたいのか。

その問いに【電人】HALはいつものように不気味な妖しい笑顔で答えてみせた。


HAL「…私の目的は生きることだ。1と0の狭間でなんとしても生きることだ。そのためには如何なる手段も問わない」


それがHALの答え。

日本の人口の約8割支配下に置き、機構を制圧し、日本中の電子頭脳を乗っ取り、学園都市でも同じように全てを支配しようとしている。

そこまでして成し遂げたい【電人】の目的はなんてことはない。

生存。

ただ生きることだった。


御坂「…なによそれ…それだけのためにこんなことしたの!?それにそれじゃあ現実世界のアンタにはなんのメリットもないじゃない!」


金銭目的なら分かる。二~三十年先の科学技術を誇る学園都市には巨万の富があふれている。

技術目的なら分かる。その科学技術を利用すれば外で荒稼ぎもできるし、学者として知的好奇心というのも筋が通る。

だがプログラム人格曰く、1と0の狭間で生きるのが目的。なら、1の世界で生きている制作者のメリットは?


HAL「…そう言えば…まだ言ってなかったかな?」


そう言いながら、HALいっそう妖しい笑みを浮かべる。


御坂「…なにを?」

HAL「私のオリジナルである春川の命脈は…私の手足が断ち切った。すでにこの世にはいない」

御坂「!?」

HAL「言っておくが私と春川の目的は同じだ。先ほども言ったように1と0の狭間で生きることだ。だがそれは…私には可能で彼には不可能だった」


なんでもないことだという雰囲気でHALは話し続ける。

御坂に見せ付けるように指先から大きめのナイフを作ってみせた。


HAL「この目的を達成できないなら…我々にとっては死んだと同じ事だ。彼がそれを知って絶望する前に…楽にしてやっただけだ」

御坂「なによ…それ…!」

HAL「ククク…君には理解できないよ」

御坂「ふざけるな…ふざけるなあ!」


電脳世界に青い雷撃の槍がほとばしる。HALを滅ぼそうと一直線に突き進む。



瞬間、下から巨大な何かが城と御坂の間に現れ雷撃の槍は弾かれた。

その何かとは大樹。世界樹とも呼称していいほどの巨大な樹だ。

しかし、葉はほとんどない。代わりに樹のてっぺんには巨大な花が咲いている。

花の周りには人間を丸呑みしそうな牙の生えた奇妙な触手のようなものが。

樹の幹には断末魔の人間の顔のようなものが無数にひしめいている。

そのあまりの巨大さ故にHALも城もすっかり隠れてしまった。


御坂「な、んなの…コレ…これも『スフィンクス』なの?」


突如現れた謎の大樹に戸惑う御坂。今までの『スフィンクス』とは毛色が違いすぎる。

ブン、と大樹の前にモニターが現れた。そこに映っているのは大樹に遮られて見えなくなった【電人】HAL。




HAL「『朽ちる世界樹』(イビルツリー)…【守護神】が制作した最も強固な防衛プログラムだ」


御坂「な…!?まさか…アンタ、初春さんにまで!?」

HAL「ククク…彼女はとても優秀でね。1と0の狭間でだけでなく…1の世界でも十分役に立ってくれている。
    強化した彼女の能力【絶対定温】(ヒートキーパー)のおかげで…私とスフィンクスを一点に集めることもできた」


満足げにしゃべるHAL。これで確定した。電脳世界で御坂と同じ実力を持つ親友は、支配され操られている。


御坂「…っ許さない!アンタだけは絶対に許さない!」

HAL「ククク…だが、どうするつもりだ?私の本体は…『スフィンクス』と『朽ちる世界樹』によって守られている」


ズン!と大樹の両脇に『スフィンクス』が一体ずつ現れる。

そしてどちらも御坂に照準を合わせている。


HAL「更にこれらは一方通行を含む私の兵隊によって守られている。君の勝ち目は消えたのだよ」

御坂「…」


目の前のモニターに映るHALを睨み付けながら御坂は歯を食い縛る。

電脳世界では『スフィンクス』相手に勝ち目はない。恐らくは『朽ちる世界樹』にも。

現実世界で一方通行相手に勝ち目はない。あったらあと50人近く『妹達』を救えていた。

もう御坂にはどうしようもない。

【電人】HALはもはや御坂の手の届かない領域にいた。


HAL「さらばだ【超電磁砲】御坂美琴よ。君は…学園都市は実に強敵だった」




-常盤台中学学生寮、二○八号室



スッ、と御坂は閉じていた目を開き、現実世界に意識を戻した。


白井「お姉様!いかがでしたか!?」


その隣には不安げな表情で御坂を見つめる白井の姿があった。

あの放送のあと二人はすぐに学生寮に戻り、自前のパソコンでHALへの接触を試みていた。


御坂「…ダメだった…電脳世界じゃアイツは倒せない…」

白井「そう…ですの…」


残念そうに肩を落とす白井。この街の第三位なら、敬愛するお姉様ならと思っていたのだが、そう簡単にはいかないようだ。


御坂「それだけじゃない…初春さんが、初春さんが【電子ドラッグ】に…」

白井「な!?う、初春が!?」

御坂「…私のせいだ…私のせいで、初春さんは…」


今にも泣き出しそうな顔で御坂は自分を責める。

自分が『妹達』のことを話したせいで初春は無理に捜査を進めてHALの毒牙にかかったのだと、そう思っていた。


白井「…お姉様のせいではありません。初春とて風紀委員の端くれ。自分の行動には自己責任で当たっておりますの」

御坂「でも…でも私があんなこと話さなければ…!初春さんだってもっと慎重に…!」



なおも白井は言い返そうとしたが、ある音に遮られた。

ドンドンという音がした。誰かが御坂達の部屋を強めにノックしている。


???「おーいみーさかー。しーらいー。いーるかー?」


とっさに御坂は目をこすった。

こんな姿を白井以外に見せる訳にはいかなかった。


御坂「ええ、いるわよ。入ってきて」


なんとか平静を取り繕い、部屋の外にいる人間を促した。

ガチャリ、と扉が開く。

そこには屋内用お掃除ロボに座ってクルクル回っているメイド、土御門舞夏がいた。


御坂「土御門?どうしたの?」

舞夏「ちょっとなー。二人に頼みがあって来たんだぞー」


掃除ロボの上に座ってクルクル回ったまま、土御門舞夏は二人に近付いてきた。


白井「頼み事…ですの?」

舞夏「おー」


ようやくピタリと止まると、ちょっとだけ不機嫌そうな顔で二人に向かって言い放った。




舞夏「ウチの兄貴がなー、二人に会いたいんだってよー」



-三十分後、第一二学区大通り



???「いたいた。ようやく見つけたわ」


次の現場に行こうとリムジンに乗ろうとした垣根と食蜂の前に、丈の短い派手なドレスを着たサングラスの少女が現れた。


食蜂「…? どちら様かしらぁ?」


初めて見る少女を値踏みするように上から下まで見定めながら食蜂が呟いた。


垣根「ああ、俺の仕事仲間だ」

食蜂「ふぅん…なるほど。まるでパーティーにでも行くようなメルヘンな格好だものねぇ」

心理定規「そこを判断基準にしないでもらえるかしら」

垣根「つーかお前そのグラサンどうしたんだ?」

心理定規「コレかけてると【電子ドラッグ】が効かないんですって。私が中毒者じゃないってことの証明代わりよ」


そう言ってドレスの少女はサングラスのフレームをコツコツと人差し指の先で叩いた。


垣根「…そんな便利なもんが即座に開発される訳ねえな。
   やっぱずっと前から知ってた上で泳がせてやがったか。相変わらず腐ってやがんな、アレイスター」

食蜂「それであなたは何しに来たのかしらぁ?」

心理定規「この人への伝令よ。『スクール』に召集命令。受けるかどうかはあなたが決めて」



垣根「ほぉ、具体的な内容は?」

心理定規「詳しくは言ってなかったけど第一位の討伐任務ですって。もしかしたら他の暗部組織と連携になるかもしれないみたいよ」

垣根「…一方通行ごときに警戒しすぎだろ。だが、他の暗部組織ってのはおもしれぇな」


少し不満をもらしたが、いいことを思いついたとばかりに垣根はニヤリと笑う。


心理定規「受ける?一応彼に下部組織の指揮採らせて準備はさせてるけど」


暗部組織『スクール』は幹部四人と大勢の下部組織で構成されている。

四人の幹部の内一人は【電子ドラッグ】の餌食となってしまったが、その他の構成員はほぼ無傷だ。

組織としては十分機能できる。実際今までも垣根抜きで任務をこなしてはいたのだ。


垣根「その必要はねえ。『スクール』から出るのは俺だけだ。『電話の男』と回線繋いでくれ」



食蜂「ちょ、ちょっと待ちなさいよぉ!」


自分抜きでポンポン進んでいく話を食蜂が制した。


垣根「なんだ?」

食蜂「あなたがいなくなったら誰が私を守るの?兵隊さん達はまだ私を狙ってるのよぉ?」


Level5第五位の【心理掌握】食蜂操祈はHALにとって一番の天敵だ。

なんせHALがじっくりと洗脳してきた兵隊を瞬く間に正気に戻してしまうのだから。

しかし【心理掌握】は戦闘面においてはさほど強くない。

というよりも身体面からしてあまり動けるタイプでもないのだ。

洗脳されるよりも速く、一撃で決めてしまえば怖くはない。

だから食蜂を護衛するために垣根がいたのだ。

HALとしても【未元物質】という強大な戦力を【心理掌握】に釘付けにできるというだけでメリットはあった。

しかし、ここで垣根が食蜂から離れてしまえばもはや食蜂を守る者はいない。

ほんの数十秒で食蜂は八つ裂きにされてしまうだろう。


心理定規「ああ、それなら大丈夫。ちゃんと代わりを連れてきたから」

食蜂「代わり?」

心理定規「ええ。今暴れてた中毒者がいたから取り押さえに行ってるけど…ああ、帰ってきた」


すると、大通りの角から時代錯誤な白ランの男が現れた。


削板「うおっす!選手宣誓以来だな!【心理掌握】!」

食蜂「」

心理定規「こちらLevel5第七位の削板軍覇さん」

垣根「ははっ、なるほどな」

削板「おう、お前が嬢ちゃんの仲間の第二位か!【心理掌握】のために身体張るなんて根性あるな!」

垣根「…まあな。じゃあ俺は用事できたから、ここからはお前に任せるわ」

削板「おう!この【ナンバーセブン】の削板軍覇!か弱い女を付け狙う根性無し相手に遅れは取らんぞ!」

垣根「おーおー、頼もしいこった。じゃあな、第五位。機会があればまたいつか会おうぜ」

食蜂「」




-三十分後、第三学区屋内レジャー施設『アイテム』隠れアジト



麦野「だからよ、私ら『アイテム』だけで十分だろが。なんだって他の暗部組織の連中にツラ晒さなきゃなんねぇんだ」

???「こいつときたらー!私が電話じゃなくて直接伝令に来てるんだから事の重大さが分かるだろがー!」


第三学区の隠れアジトに女が五人、集まっていた。その内の一人はサングラスをかけている。

五人の内四人は暗部組織『アイテム』の幹部。残った一人は普段は絶対に姿を見せない『アイテム』の上司役『電話の女』。


フレンダ「…『電話の女』の正体、初めて見た…」

絹旗「ま、超ダミーの可能性もありますけど」

???「こいつときたらー!こんな麗しい声の持ち主なんて一人しかいないだろが!」

滝壷「…いつもどんな声だったっけ?」


麦野「とにかくだ。私らの通常任務は裏切りもんの粛正だの不穏分子の排除だのだ。いつ裏切るかも分からねぇ奴らにツラ晒したら今後の任務に支障が出る。
   今回の依頼は受け付けねぇ。どうしてもやらせてぇなら『アイテム』単独の任務で回せ」

???「それがそういう訳にもいかないんだコレが」

麦野「あ?」

???「今回の依頼はアレイスターの厳命。コレ蹴っちゃったら私もあんたらも首が危ういのよ。職務的な意味でも物理的な意味でも」

麦野「はあ!?無茶苦茶言ってんじゃねぇぞ!んな理不尽極りねぇ話がまかり通ってたまるか!」

???「やれやれこいつときたら。暗部組織のリーダーやってるくせに何を今さら」

麦野「…クソが。ならせめて互いに顔合わせねぇ様にしろ。それが最大の譲歩だ」

???「それができたら今まで通り電話で指示出してるっつの。電波が使えない状況で互いに顔合わせないでどう打ち合わせすんのよ」

麦野「…正気か?私らがしくじればてめえにも害はあんだろ」

???「正気も正気。その代わりウチの切り札、滝壷は今回お役御免でいいってさ」

滝壷「私だけお休み?」

???「そ。こんな合同任務で大事な滝壷と体晶を消費するなんて馬鹿らしいしね。
   それと下部組織もいらない。無駄に数減らすだけで終わっちゃいそうだし」


麦野「…だが、いくらなんでもデメリットが多すぎる。その条件じゃ受けられねえ」

???「…はぁ、こいつときたらまだ言うか。そっちの二人は?」

フレンダ「結局『アイテム』は麦野がリーダーだからね。麦野に従うだけな訳よ」

絹旗「それに今んとこ麦野の方が超正論吐いてますし」

???「…しょうがない。できれば使いたくなかったけど、私のとっておきを使うか」

フレンダ「とっておき?」

???「アレイスターから送られてきた音声データ。よーく聞きなさい」スチャ

絹旗「? 別に統括理事長の演説なんか聞いたくらいで麦野の考えが変わるとは…」





???『よし、麦犬!』

???『ワン?』

???『お手!』

???『ワン♪』

???『よ~し、えらいえらい』

???『クゥン』




麦野「」

滝壷「」

絹旗「」

フレンダ「」


???「…アレイスターが断るならこのデータばらまくってさ」

フレンダ「うわぁ…」

絹旗「超うわぁ…」

麦野「て、てめ…どこで、コレ…」プルプル

???「だーからアレイスターからもらったんだって」

麦野「ふざけんな!渡せ!今すぐ渡せ!」

???「いいけど多分アレイスターはコピー取ってると思うわよ?」

麦野「」

滝壷「大丈夫。麦犬な麦野も私は応援して」

麦野「ぶっ殺されてぇのか滝壷テメェ!!」

???「こいつときたらー!元はと言えば簡単に洗脳された挙げ句パンピーにやられるあんたが悪いんでしょうが!分かったらとっと行ってこーい!」

今回はここまでです。
やっぱ夏は書きやすい。


レスありがとうございます。
ウイハル魔人化しました。
今回の難題は8月中に解く予定です。


Google検索で HAL「 まで打ち込むと予測変換でこのSSのスレタイが出る様になってることに気が付きました。
嬉しい限りです。

>>550
猟犬部隊C「任せてください!ではしばらく有給休暇を!」

事件解決後・・・

猟犬部隊C「世間じゃ???が解決したとかアレイ☆が???が解決したとか言ってますけど本当は俺っすよ!!
      嘘じゃないっす!!こんな暗部の一般兵が解決したとか誰も信じないから情報操作されてるだけっす!!
      休暇中にバカンスとか行ってないっす!!信じてください!!」


-第七学区、コンサートホール前広場



屋外用お掃除ロボに切り替えた土御門舞夏に白井と共についていくと、コンサートホール前の広場についた。

先の放送のせいか、そろそろ完全下校時刻になるせいか人はほとんどいない。

太陽はもう大分傾き、三人の影はそれに比例して伸びていた。


舞夏「兄貴ー!連れてきたぞー!」


ふいにお掃除ロボに乗ったメイドが大声を張った。

御坂も白井も急に叫ばれたので少々面食らったが、気付くといつの間にか一人の男が三人に近付いてきていた。


土御門「おお舞夏!ご苦労様だにゃー!」


その男は金髪グラサンアロハシャツという、とても真面目そうな人間には見えない男だった。


舞夏「紹介するぞー。これがウチの兄貴だ」

土御門「どーもはじめまして!舞夏の義理の兄の土御門元春ですたい!よろしく頼むぜぃ!」


おまけに妙な口調に軽いノリだ。胡散臭さがプンプンする。


御坂「…はじめまして、御坂美琴です」

白井「白井黒子ですの」


とはいえ、友人の兄に初対面で邪険にするのも礼儀に反する。

とりあえず二人は頭を下げて軽く自己紹介を済ませた。


土御門「そんなにかしこまらなくても結構だぜい?タメ口でいいぜよタメ口で」


ハッハッハ、と手を振って笑う土御門兄。こんな人物が一体何の用があるというのか。


舞夏「言っとくけど私がいないところで二人に手ぇ出したら承知しないからなー」

土御門「心配ご無用!俺が舞夏以外に手を出したら腹切って詫びるぜよ!」

御坂「…アンタ達って…」


そういえばこのメイドはその手のマンガを好んでいた。

しかし、まさか実際にそっちの恋愛感情があったとは。


白井「お姉様、恋の形は人それぞれですの」


同じく一般的な恋愛には興味のない白井はすぐに受け入れたようだが。


舞夏「二人も身の危険を感じたら丸焦げにしてもハリネズミにしてもかまわないぞー」

土御門「ひどい疑われ様だにゃー。兄ちゃん悲しいぜよ」

舞夏「…念のため、だ。それじゃ私は帰るぞー。まーたなー」


そう言って土御門舞夏の方はお掃除ロボに乗ったまま帰っていった。

相変わらずどうやってお掃除ロボを操作しているのかはまったく分からないが。


土御門「おーう。気を付けてなー!」


その後ろ姿を金髪アロハの義理の兄は両手を振って見えなくなるまで見送った。



御坂「それで?一体何の用?私も黒子も門限までに帰らないとマズイから手短にお願いしたいんだけど」


瞬間、金髪アロハの纏っていた空気が変わった。


土御門「門限を気にする必要はない。常盤台には正式な手続きでお前達二人の外泊許可を出させた」


今までとは打って変わって真面目な表情になった土御門。

妙な口調も軽いノリも消え失せていた。

一瞬にしてその場の大気に緊張が走る。


御坂「…外泊許可?外部の人間がどうやって…」

土御門「とある重要実験のために【超電磁砲】【空間移動】の能力を試用したい、とな。
    常盤台の寮監は何やら訝しんでいたようだが、常盤台中学の理事会からの圧力だ。受理せざるをえない」


目の前の男は真顔で淡々と話す。とても嘘をついているようには見えない。


白井「貴方は…何者ですの…?」


常盤台中学の理事会を動かせる人間などそう居るものではない。

挙げ句、纏う雰囲気が一般人ともスキルアウトとも違う。

この男は何者で、一体何を考えているのか。


土御門「良く言えば学園都市を守るヒーロー。悪く言えば一般人を戦場に連れていこうとしている悪党だ」


目の前の男はそう言って少しだけ自嘲気味にほほえんだ。


御坂「…この場合、一般人っていうのは私達でいいのよね?」

土御門「ああ」

御坂「じゃあ、戦場っていうのは?」

土御門「学園都市第二学区」

白井「! ですが、そこは…」

土御門「一方通行を倒し、プログラム人格を破壊する策がある。そのために二人の力を借りたい」

白井「!」

御坂「うそ…どうやって?」

土御門「知りたければついてきてくれ」


そう言って土御門は顎で広場の出入口を指す。

そこには黒いワゴン車が停車していた。

御坂と白井を誘う様に、後部座席のドアが開かれている。


土御門「ついて来る来ないは自由だ。それについて来る途中で怪しいと確信したなら…丸焦げでもハリネズミでも好きにしろ」



-第二学区、とあるビル



ワゴン車に揺られ、着いた先は一見普通なビルだった。

ワゴン車に乗ってる最中に具体的な内容について二、三質問を繰り返したが、土御門ははぐらかすばかりだった。

ワゴン車から降りた後、土御門の先導でビルの中へと入っていく。

小綺麗なエントランスを抜け、エレベーターに乗り3階へ。

長い通路を歩いた先には『小会議室』と書かれた部屋が待ち構えていた。


土御門「ここだ」


そう言って土御門は扉を押し開け部屋へと入る。

御坂と白井もそれに続く形で中に入っていった。

会議室の中には6人ほどの人間がそれぞれ何人かごとに分かれて固まっていた。

具体的には3人と2人と1人。それぞれ壁にもたれかかったり椅子にすわったりしている。

それらの人間は皆、部屋に入ってきた御坂達に目をやった。

そこで御坂は気付く。この部屋に居る人間はどいつもこいつも御坂と因縁のある相手ばかりだ。


フレンダ「うげっ…」

麦野「ああ?なんで【超電磁砲】が来るんだよ」

絹旗「…もうこの時点で超嫌な予感しかしないです…」


出入口の近くの椅子と机に固まって座っている3人の少女。

数日前に【学舎の園】で派手に戦った『アイテム』という組織だ。


結標「ハァーイ、こんばんは白井さん」

白井「結標淡希…!貴女は【電子ドラッグ】にハマッたはずでは…?」

結標「あら、情報通ね。でももう中毒症状は抜け切ったわ。あそこの第四位と一緒で」

麦野「あ?」


少し離れた壁ぎわには男女が一人ずつ。

女性の方は『残骸』事件で御坂とも白井とも直に対立した【座標移動】の大能力者、結標淡希。

この事件で病院送りにされた白井はすでに警戒心をむき出しにして睨み付けている。


海原「…ご無沙汰しております、御坂さん」

御坂「…アンタは…どっちの海原光貴なの?」

海原「……以前貴女に多大な迷惑をおかけした方、です」


そして男の方は以前ひっきりなしに御坂の前に現れていた偽者の海原光貴。

彼は御坂自身に危害を加えたことはない。

しかし、本物の海原光貴から腕の皮膚を剥がされた上に殺されそうになったという話を聞いた。

しかも上条と建設中のビルの骨組みが崩壊するレベルの大喧嘩をしたという事実もあり、御坂にしてみればもう会いたくない相手だった。


垣根「…第三位か。そっちのツインテールの娘は誰だ?」


最後に結標と海原の反対側の壁にもたれかかっているのはLevel5の第二位【未元物質】垣根帝督。

御坂と白井にしてみれば彼だけが唯一まともな、少なくとも悪事を働いているとは思えない人間だった。



御坂「垣根さんもいたんだ。私の後輩で風紀委員の黒子。白井黒子よ」

垣根「……風紀委員、だと?」

白井「はじめまして、白井黒子と申しますの。失礼ですが、あなたは?」

垣根「…垣根帝督」

御坂「垣根さんはLevel5の第二位なの」

白井「まあ!Level5の方でしたの!?しかもお姉様より序列が上ですの!?」

垣根「まあな」

白井(Level5であるということをひけらかさないこの余裕…。まさしくLevel5ですの)

御坂「それより食蜂さんは?一緒じゃないの?」

垣根「第五位は置いてきた。代わりに第七位がボディーガードやってる」

御坂「へぇ…まあアイツなら問題ないか」

垣根「ん?第七位とは知り合いか?」

御坂「前にちょっとね」




土御門「さて、そろそろいいか?」


ふと、土御門の声が響き渡る。

会議室の一番前、ホワイトボードの前の少しせりあがったところに立ち会議室にいる全員に向き合っている。


土御門「『グループ』の土御門だ。今回の打ち合わせに限りアレイスターからまとめ役を一任されている。俺の進行で進ませてもらうぞ」


『グループ』が何かは御坂も白井も分からなかったが、周りの人間は気にも止めていないようだ。

いちいち進行を妨げたくもないので、二人はそのまま聞き流した。


土御門「ここにいる各人、何のために集まってもらったかは分かっているな?
    一方通行の討伐、ひいては一連の騒動の首謀者であるプログラム人格の討伐だ」


ぐるりと会議室を見渡して土御門は続ける。


土御門「ひとまず状況だけ確認しておく。ここ最近の都市住民の暴動はプログラム人格が作った【電子ドラッグ】これが原因だ。
    しかし、先の放送から【電子ドラッグ】の中毒者による暴動はなくなった。その代わり都市住民の一部が次々に失踪している」

土御門「恐らく失踪者は全員【電子ドラッグ】の中毒者。
    何人かが第二学区で目撃されていることからプログラム人格の許に集結しているものだと推測される」


これは御坂と白井も把握していない情報だった。

しかしそうとなればHALに操られている二人の親友もそこにいるはずだ。

一層この作戦に全力を尽くさねばならなくなった。



土御門「また、この失踪者の中には一方通行も含まれている。コイツも【電子ドラッグ】にハマッており、プログラム人格の手先と化した」

土御門「さらに【電子ドラッグ】の中毒者はシラフの状態より戦闘能力が向上する傾向にある。
    ただでさえ厄介な化け物がさらに厄介になっていると考えてくれ」


この時点で御坂は今回の事件の解決が非常に困難であることを再認識した。

あそこの金髪アロハの言うシラフの状態で御坂は一方通行に手も足も出なかったのだ。

例えこの人数でも、Level5が三人もいようとも勝てるかどうか。


土御門「そこで最強の化け物を手中にしたプログラム人格は先ほどの放送で学園都市を占拠すると遠回しに宣言した」

土御門「だが、当然学園都市はこれを認めない。このプログラム人格を破壊し、この騒動を終結させる。
    ここに集まってもらった人間には一方通行及びプログラム人格の討伐、その後発隊として参加してもらいたい」




白井「ちょ、ちょっとよろしいですの!?」


少し狼狽しながらも白井が声を発した。


土御門「なんだ?」

白井「そんなことをしてしまっては…プログラム人格から報復が来るのでは?」


そもそもこの事件はそこが一番ネックだったはずだ。

少しでもプログラム人格に手を出せば自動操縦の兵器が学園都市に向かって牙を剥く。

最悪の場合、学園都市最強の兵器がこの学園都市を地盤から破壊してしまう。


土御門「今、一般住民達には非常用のシェルターに避難してもらっている。先発隊が突入するのは避難が完了してからだ」


学園都市には都市住民全員が避難できるほどのシェルターの数があり、各学区に存在する。

その強度は核シェルターほどもあり、並大抵の兵器ではビクともしない。


土御門「また、一方通行がこの学園都市を地盤から崩壊させるには多少なり時間が必要になる。それにその間一方通行はほとんど動けない。
    先発隊の後にすぐさま波状攻撃を仕掛けることは有効だ。また、あのプログラム人格は学園都市のスーパーコンピューターを狙っている。
    自分の目当ての物に早々に見切りをつけるとは思えない。学園都市を地盤から崩壊させるのはヤツにとっても最後の手段だ」

フレンダ「…本当に?筋は通ってるけどもし間違ってたら大惨事になるわよ?」


『アイテム』の一人から疑問の声が上がる。

当然だ。一か八かに近い突入を推測で判断しているのだから。


御坂「…大丈夫よ。アイツ自身が言ってたの。自分の目的は生きることだって」


そう、【電人】HALは生きることが目的。

もしかしたら、自身のスパコンと『スフィンクス』だけを残して地盤を崩壊させるという最悪な曲芸をしてくるかもしれないが。

しかし、それでもここまで苦労して手に入れたこの状況を易々と崩壊させるとは思えない。


海原「言ってたとは…プログラム人格本人が、ですか?」

御坂「ええ、電脳世界で直接会ってきたからね。そっち方面からプログラム人格を破壊することは障害が多すぎてできないんだけど」



土御門「…さて、次に作戦の概要だが…まず討伐に行くメンバーは俺と結標を抜かしたここにいる全員だ」

垣根「あん?お前は来ねぇのか?」

土御門「俺と結標は別の現場に向かわなければならん。それにこんな曲者揃いのメンツを現場でまとめられる自信も無いんでな。
    作戦のアウトラインだけ説明する。後は最低限それに添っていれば各々自由にやってもらってかまわない」

麦野「…はっ、確かにな。テメェの指揮で犬死になんざ御免だ」

土御門「続けるぞ。まず向こうで待ち受けていると思われるのは【電子ドラッグ】の中毒者だ。こいつらも相当手強いが…ここにいる人間なら問題無いだろう」

絹旗「…まあ確かに」

土御門「ただ…こいつらはあくまで一般人だ。洗脳されているだけで罪はない。殺害だけは自重しろ」

麦野「…チッ、めんどくせぇな」

土御門「そして、最後に待ち受けていると思われるのが一方通行。ここで鍵となるのが…【超電磁砲】御坂美琴だ」


そう言って土御門は御坂に目を向ける。

他の目も一斉に御坂の方を向いた。


御坂「…私?」

土御門「そうだ。そして恐らくは…一方通行を討ち取るのも御坂になると思う」


サングラスでほとんど見えないが、目も表情も真剣そのものだ。

改めて広場で会った時と同一人物だとは思えない。


御坂「……無理よ。私に何を期待してるのか知らないけど、私じゃアイツに歯が立たない。何もできずに終わるのがオチよ」


珍しく弱音を吐く御坂。しかしそれも仕方がなかった。

なんせ自分の力が一方通行に及ばなかったばかりに自分の妹を守れず、何人も犠牲にしてしまったという過去を持っているのだから。


土御門「それがな…違うんだよ。お前は今の一方通行にとって天敵なんだ」

御坂「…天敵?」

土御門「詳しくは俺も知らないが、一方通行はとある事件で脳に障害を負った」

御坂「!」

土御門「本来ならば一方通行は立つことすらままならないが、外部からの補助を受けることで日常生活も戦闘も可能にしている。
    その補助というのが電波を介して行われているんだ。一方通行も弱点だと把握しているが、何をしようが御坂相手に電波の類いで勝てやしない」


目の前の男が話していることなら、確かに御坂は天敵だ。

学園都市が誇るLevel5の第三位【超電磁砲】御坂美琴は電気系最高の能力者。

例え一方通行が小細工をしたところで御坂の専門分野のど真ん中での勝負なら勝ち目はない。


垣根「…なるほどな。確かに第三位なら一方通行を無力化できる」


そして、その理論を後押しするように垣根からも声が上がる。


土御門「他の人間は御坂の援護に回ってもらいたい。一方通行はプログラム人格がインストールされているスパコンの前で立ちふさがるだろう。
    しかし、一人で待ち構えている可能性は低い。恐らく兵隊と化した中毒者が大勢いる。これらから御坂を守ってくれ」


御坂「…」

土御門「それとな御坂。一方通行を無力化した後だが…殺して構わん」

御坂「!?」

結標「ちょっと!土御門!?」

土御門「上の総意だ。手綱の取れない巨大な兵器なら処分した方がいい、とな」

御坂「…」

土御門「お前と一方通行の因縁はこちらも把握している。一方通行を正常に戻してくれ、などとは言えないさ。
    一方通行を無力化した後は殺そうが手足を切り捨てようが構わん。煮るなり焼くなり丸焦げにするなり好きにしろ」



麦野「ちょっと待て」

土御門「ん?」

麦野「聞いてりゃ【超電磁砲】の役目はジャミング電波を出すだけだろ?それなら他の【電撃使い】で事足りる。
   なんで一般人の【超電磁砲】なんだ?他の暗部組織にも【電撃使い】の数人くらいいるだろ。こんなジャリガキじゃなくてもよ」

御坂「…誰がジャリガキよ。アンタが私にそんなこと言えんの?」

麦野「覚悟の話をしてんだよ。今から行くところは殺し上等の戦場だ。
   ぬるいシャバの世界でぬくぬく生きてるガキが来ていい場所じゃねぇんだよ」

御坂「あっそ。そりゃ悪かったわね麦犬。ご主人様に危険を教えてくれるなんて大した忠犬ぶりじゃない」


ギロリ、と麦野が御坂を睨み付ける。

その顔は赤鬼そのものだ。


麦野「…おいおい殺してほしいならちゃんとそう言えよ。私ゃテメェより序列が下だからよぉ、ちゃんと言ってくれなきゃわっかんねぇよ」

フレンダ「む、麦野抑えて抑えて…」

白井「お姉様もその辺に…」


各自の取り巻きがそれぞれ間を取り持とうとするが、当人達にはまるで聞こえていなかった。


御坂「あら?誉めてあげたのになんで怒ってんの?あの時みたいにもっとお尻振って喜びなさいよ。ほぉらおいで。頭ナデナデしてあげるから」


ブチッ

麦野「コロス」



キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィー


麦野「がぁ!?」

絹旗「っ!なんですかこれ!頭が…」

フレンダ「麦野!絹旗!どうしたの!?」

御坂「ぅ…これは…!」

白井「間違いなく…!」


突如として流れ始めた甲高い音に部屋にいた人間の半分ほどがうずくまる。

一様に頭を押さえ、苦痛に顔を歪めていた。


土御門「騒ぎすぎだお前ら。作戦に移る前に潰し合ってどうする」


その音の中で部屋の一番前にいた金髪アロハはうずくまる人間を見下ろしていた。


垣根「…こいつらの反応を見るに…【キャパシティダウン】か?まあ、Level5を3人も一ヶ所に集めてんだ。当然の準備か」

海原「おや、貴方には効かないのですか?」

垣根「所詮音響兵器なんざその音さえ聞かなきゃ効果はねえ。一定周波数の音は俺の能力で遮断させてんだ。その周波数に合わせんのに苦労したがな」

土御門「…大したチートっぷりだな。さすがに俺も想定外だぞ」

結標「いいから早く止めなさいよ土御門!」

土御門「おお、すまんすまん」



ィィィィィィィィィィ…



白井「…あ、止まりましたの…?」

絹旗「…ったく、だから言ったじゃないですか…超嫌な予感するって」ブツブツ

土御門「…例え暗部組織にも戦闘面で御坂より強い【電撃使い】はいない。お前自身体験済みだろう?」

麦野「…チッ…」

土御門「話を戻すぞ。先発隊についても少し話しておく。先発隊は主に警備員で構成されている。
    駆動鎧の装備に加えて持ち運び式のAIMジャマーや今の【キャパシティダウン】を持って行ってる」

土御門「また、後発隊のために施設内のAIMジャマーがあれば撤去しているはずだ。
    まあ、向こうの切り札が一方通行だけなら先発隊だけでなんとかなるはずなんだ。後発隊はほとんど保険に近い」




土御門「…とまあ、ここまでで質問はあるか?」

フレンダ「んじゃ私」ハイ

土御門「なんだ?」

フレンダ「えっとさ、第一位は【電子ドラッグ】にやられて、第二位~第四位は今回の作戦に参加。第五位と第七位は別行動で治療行脚でしょ?
     じゃあ第六位は?結局一人だけ何してるか分からない訳よ。他のLevel5はみんな分かってるのにさ」

麦野「…確かにな。元々表向きの情報はほとんどねぇヤツだったろ。こんな時までアンノウンで貫き通す気か?」

土御門「第六位はすでに別任務で活動している。少なくとも敵に回ってることはないから安心しろ」

フレンダ「ふぅん…」

垣根「…気に食わねえな。俺たちゃこうして顔合わせてんだぜ?暗部の人間だってのに。一人だけ出てこねえなんざ不公平だろ」

土御門「心配するな。今やってる任務が滞りなく済めば後発隊の後詰めとして入る予定だ」




白井「その…先ほどから仰っている暗部組織とは…なんのことですの?」


ピシリ、と一瞬場の空気が凍った。

それもそのはず。ここにいる人間のほとんどが暗部の人間でどういう存在かを知っているのだから。


土御門「…統括理事会直属の部隊みたいなものだ。これ以上詳しく知りたがらないことを奨めるがな」

白井「…詳しく知ってはならないことですの?そのような怪しいもの、風紀委員として放っておく訳には…」

御坂「黒子」


さらに白井が追及しようとしたところを御坂が声を上げて制した。


白井「お姉様…ですが…」

御坂「…私が言っても説得力ないけど…今はそこを追及している場合じゃないでしょ?」

白井「…本当に説得力なさすぎですの」


ほんの数分前に全員を巻き込んで何をしていましたか、とジト目で白井は御坂に訴える。

とはいえ、言っている事は正しい。

決まりの悪い顔をしている御坂の顔を立てるためにも白井はそれ以上食い下がらなかった。



垣根「じゃあ俺からも質問だ。第三位が今回の作戦に参加すんのに異論はねえ。
   二度も第四位を退けたって話だしな。だがこの風紀委員の娘はなんなんだ?」

白井「あら、私とてLevel4の【空間移動】でしてよ?他の皆さまに遅れをとったりはしませんの」

垣根「いや、能力の強度が問題じゃなくてだな…」

土御門「ああ、もっともな質問だ。だが、白井は今回の作戦に必要な存在なんだ。なんせ」


そこまで言って、土御門は満面の笑みを浮かべた。


土御門「白井黒子、そして絹旗最愛は今回の作戦の切り札だからにゃー」



フレンダ(…にゃー?)

麦野(…急にどうしたコイツ)



白井「切り札…ですの?私が?」

絹旗「へぇ、麦野も【超電磁砲】も【未元物質】も差し置いてこの私が切り札ですか。超気分いいですね」


土御門「まず二人には…これを装備してもらう」


ドン、と土御門の前にある机に何かが置かれた。


白井「…ランドセル?」

絹旗「と…体操服ですか?あのでっかい名札が縫い付けられてる」


意外な物に首を傾げながらも、二人は話の続きを促した。

学園都市のことだ。それらはどちらも っぽいもの というだけできっと何かしらの技術が施されているに違いない。

そう思っていた。


土御門「ここに資料映像がある。とあるスキルアウトと一方通行の銃撃戦だ。まずはこれを観てもらいたい」


するとホワイトボードに動画が流され、土御門は邪魔にならない様に脇に退いた。




映像は恐らくスキルアウト自身が設置した監視カメラだ。

固定されたカメラの中で黒い大男と白いひょろひょろの男が対峙している。

監視カメラの割には画質は鮮明だった。これも学園都市だからこそ為せる技術であろう。

ふいに大男が何かをばらまいた。


土御門「今まいたのはチャフだ。御坂にはこの役割を行ってもらう」


どうやらチャフの効果は大きいらしく、一方通行は防戦一方で逃げ回っている。

大男の方はすでに【電子ドラッグ】を見ているのではないかというほどの動き、そして破壊力だ。

だが、その状況もほんの数分で終わる。

どうやってか電波を確保したらしい一方通行は反射を取り戻し、自身も拳銃を用いて反撃に出た。

ここまで来ると後は一方的で、大男は壁に叩きつけられてノックアウトとなった。


御坂「ちょ、ちょっと!これじゃああの人殺されちゃうじゃない!」

土御門「まあ黙って見ていろ」


すると画面の奥、細い通路の出入口にまだ小学生くらいの少女が現れた。


フレンダ「え…うそ、フレメア?」

絹旗「? 知り合いですか?」


そして先ほどまで殺気に満ちた本気の殺し合いをしていた二人はその少女に気付く。

両者共に拳銃を手に持ったままだ。


フレンダ「何やってんのフレメア!早く逃げなさい!」

麦野「落ち着けバカ。これは記録映像だろうが」


だが、その声は届かない。

金髪にベレー帽の少女は画面の中の金髪にベレー帽の少女に注意を促そうと声を張り上げる。


フレンダ「フレメア!フレメア!」







大男『這ッ!這ッ!』






大男『這って動く……!白ッ!!』





全員「」





土御門「…あー、見てもらった通り、この、スキルアウトは、【電子ドラッグ】の、中毒者だ」


笑いをこらえながら途切れ途切れに金髪アロハはしゃべりだす。




土御門「単刀直入に言おう。一方通行は…ロリコンだ」



全員「」



土御門「そこで…白井黒子と、絹旗最愛には…この小学生スタイルになってもらう」



白井「」

絹旗「」




土御門「後発隊が突入して15分、音沙汰がなかったら…その時は後発隊が劣勢な状況であるはずだ。
    そんな時に二人が【空間移動】で颯爽と登場すれば…恐らく一方通行は…このような反応を、する、はずだ」





大男『這って動く……!白ッ!!』





白井「」

絹旗「」




土御門「…とまあ、ここまで来れば後は簡単。一方通行の反射膜は自身の身体を覆うように展開されているからな。
    チョーカーから伸びてるコードを引きちぎるなりチョーカー自体を壊すなりで一方通行は無力化し…」

白井「ほ、本気で言ってますの!?仮にもLevel5の第一位ともあろうものがそのような」

海原「残念ながら本当です」

結標「真性のロリータコンプレックスよ。諦めなさい」


白井「」


垣根「ーっ!ーっ!」バンバン!

白井「笑いすぎですの垣根様!」ウガー!



フレンダ「…とりあえずあのロリコンエクソシストは抹殺確定な訳よ」ゴゴゴゴゴゴ…

麦野「なあ、絹旗…」

絹旗「…なんです?今超鬱入ってて死にそうなんですが…」

麦野「お前…確か第一位の『自分だけの現実』植え付けられてんだよな。ってことはお前も将来的にはそっちに」

絹旗「これ以上死にたくなるような追い討ちかけないでくれませんかねマジで。超マジで」




土御門「それにいざとなったら【空間移動】で脱出できる。
    戦闘面でも場慣れしているから気に充てられて演算をしくじる可能性も低い。これが白井を選んだ理由だ」

垣根「あ、ああ、分かった。ぷっ、十分、納得したよ、ックク」プルプル


土御門「ともあれだ。御坂と白井はこの作戦から降りても構わんぞ。
    俺達がこの任務をこなすことは義務だが、お前たちにそれはないからな。手を貸してもらいたいのは事実だが、強制ではない」

御坂「…アイツに10031分の1でも『妹達』の苦しみを味あわせてやれるなら私は参加するけど…」


ちらり、と御坂は白井を見た。


白井「…はぁ、私も参加しますの」

御坂「…いいの?あんなもの付けなきゃなんないのに…」

白井「お姉様が死地に向かわれますのに露払いである黒子がお供しない訳には参りませんの。それに…」


今度は白井が別の方をちらり、と見た。


絹旗「逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな超逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな超逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな…」

白井「…ここで参加しなかったらそれはそれで殺されそうですの」




垣根「あともう一つ聞くがよ、てめえら『グループ』はどう責任取るつもりだ?」


ひとしきり笑い終えた後も余韻が残っているのか、微笑みながら垣根は質問を繰り返した。


結標「はあ?責任?」

垣根「そうだ。一方通行はてめえら『グループ』の人員だろ?なら俺らに借りができることになる。その借りはどう返すんだってことだ」

海原「一方通行さんが向こう側に堕ちたのは彼の単独任務の際でしたので…我々にはどうにも…」

土御門「上層部を通して報酬が出るだろう。もちろん御坂と白井にもな」

垣根「Level5ともなると報酬なんざどうでも良くてな。それよりも行動で示してほしいんだよ」

結標「…行動?」

垣根「ま、早い話が今度なにかあったらよろしくなって話だ」


笑みを崩さないまま気さくに垣根は条件を提示した。


土御門「…内容による。俺達も命は惜しいんでな。下手な案件を下手なタイミングで持ち込まれても…」


だが、土御門の口上を聞き終える前に垣根は低い声で早口に呟いた。


垣根「繚乱家政、常盤台、第十学区少年院」

結標「!」

海原「な…?」

土御門「貴様…!」


それらの単語を聞いた瞬間『グループ』の人間は全員垣根を睨み付けた。

今挙げられたワードは『グループ』の幹部の弱味そのものだ。


垣根「おいおい何睨んでんだよ。ただ困ったときはお互い様ってだけだろ?」



麦野「…キナくせぇな【未元物質】。テメェ何考えやがる」


『グループ』に対してニヤニヤと笑いかけている垣根に麦野が近づく。

その顔は暗部組織のリーダーである者のそれだ。


垣根「あ?なんの話だよ」

麦野「他の暗部についてやけに詳しいみてぇじゃねぇか。第一位の能力制限についても熟知してるような口振りだったしよ。
   そういやさっき第六位の動向についても知りたがってたな。そんなに自分に向けられる可能性があるLevel5が気になるか?」

垣根「おいおい、難癖にもほどがあるだろ。俺はただ」

麦野「そのくせテメェの組織から出てきたのはお前だけ。さらにうちの滝壺を今回の作戦に組み込まないよう交渉したのもテメェだろ。
   うちの馬鹿上司は能天気に喜んでたがな。滝壺の能力まで調べ上げてるとは恐れ入ったよ。そこまで叩いてどんな石橋を渡ろうってんだ?」


瞬間的に室内全体が静まり返り、緊張が走る。

誰も身動きもせず、物音もしない。

ただ、視線だけが垣根に注がれていた。


垣根「…さすがに第四位ともなると頭が回るな。だが、回しすぎだぜ?考えすぎだ、考えすぎ」

麦野「はっ、どうだかな」

垣根「どの道今は仲間だろ?証拠もねえのに仲間を疑っちゃいけねえだろ。仲良くやろうぜお互いに」


スッ、と垣根は右手を差し出した。


麦野「お断りだクソボケ」


しかし、麦野はそれを一瞥して垣根に背を向けた。




土御門「…チッ、とにかく。各学区の人間の避難が完了した後、先発隊がヤツの本拠地に突入する。
    先発隊からは15分毎にウチの海原に連絡が入ることになっている。20分経っても連絡がなかったらその時は後発隊の出番だ」

結標「私と土御門は悪いけど一足先に別の現場付近で待機してるわよ。
   健闘だけ祈っといてあげるわ。…あなたは願わくば一方通行と相討ちになってほしいけど」

垣根「はぁ、おいおい邪険にすんなよ」

麦野「当然だろうが」

フレンダ「…雰囲気悪いなぁ。結局こんなので上手く行く訳?」

海原「各々の動きは自由が利きますし、個々の能力は高いですから」

御坂「…確かにそれだけは言えるわね。軍隊相手でも勝てそうな顔触れなのは事実よ」

白井「…私としてはできれば警備員の方たちで解決してもらいたいのですが…」

絹旗「超同感です」



-二時間後、第二学区屋内演習場



都市住民の避難が完了したという報告を各学区の念話能力者から受け、先発隊は地下演習場へと突入した。

部隊編成は駆動鎧が大半だが、歩兵も多くいる。

屋内戦では大きな駆動鎧では不利な点も多くある。また、今回はAIMジャマーの撤去も同時進行で行わなければならない。

さらには小型化に成功した【キャパシティダウン】の発動なども状況に応じて必要になる。

どうしても小回りの利く歩兵が必要だった。



後発隊への報告は派遣の者が行うという。先の念話能力者からの報告もそうだが妙な報告の方法だった。

始めは普通の携帯電話を渡された。電波は使えないのではなかったのかと思ったが、既に回線は繋がった後だった。

報告を受けている内に気付いたが、よくよく観察すると音声は携帯電話ではなく、それについているストラップから聞こえた。

というか、ストラップのキャラクターが喋っているようだった。

曰く、携帯電話とストラップは能力の補強であるらしい。

確かに自分の能力を補うために道具を使っている能力者は多くいる。

言われてみれば補強でもしなければ如何に大能力者と言えど、学区の端から端へ念話ができる訳がない。



一階、制圧。

というよりは人一人いない。上の予想では大人数が待っているとの話だったが。

いよいよ地下に入る。

ここの演習場は地下一階までしかない。が、異様に深い。

より実戦近付けるために高さを出し、また、学園都市の先端技術により気温や湿度、果ては周り景色や障害物までも立体映像で自由自在にできる。

ここで開発されたシステムは民間企業にも提携されていたはずだ。

ファッションから水着、宇宙服などのカタログや雑誌掲載の際にその場で撮影ができる。という点に着目した企業がビル内に組み込んでいた。

噂では超能力者の誰かがその映像を誤って街頭に流し、子ども向けの水着で全力ではしゃいでいるところを衆目に晒して大恥かいたとかなんとか。

だが、ここは民間企業に払い下げられた技術よりも更に高い技術が使われている。

ここは開発中の駆動鎧が全力の演習を行おうが暴走しようがビクともしない。

どのような材質でどのような構造をしているのかは不明だが、一説によると『窓の無いビル』と同じ材質なのだと居候が言っていた。



更に、戦場の広さも設定できる様になっている。

確か150M×150Mが最大の戦場。それより狭い戦場にしたい場合は縦横20M毎に設置された壁がせりあがり、戦場を限定する。


一つの小隊を即席で編成させ、演習場以外の設備へ向かわせる。

残った本隊は全員演習場へ突入。

件のプログラム人格がインストールされているスーパーコンピューターはここにあるとされている。

理由は他の部屋にはスーパーコンピューターを置くスペースがないからだ。

向こうに【空間移動】の能力者がいるかもしれないが、それではウチの元居候を有効に活用できない。

何をしても壊れないという最強の盾と、学園都市の頂点という最強の戈。

これ以上の防衛策はあるまい。



本隊が突入した演習場はとても狭かった。

ざっと目算で40M×20M。縦長の戦場だ。

ただ、周りにはなんの景色も立体化されていない。少しだけ薄暗いだけでなにもない。

本隊の全員が突入した瞬間、急に入り口から差し込む光が消えた。

ガゴン!という音と共に入り口は閉ざされた。

そして周りの壁、むしろ六面すべてに同じ文字が浮かび上がった。



『画像を見る時は部屋を暗くして、画面に密着して見てね』



ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ-





目の前の壁が降りた。本隊は全員前に進む。

そこに居たのは三人。一人は中肉中背の青年。その青年の前に常盤台中学の制服を着た少女。その少女の隣にメガネをかけた痩身の青年。


匪口「…けっこういるな。50人くらい?」

11018号「パッと見それくらいですね、とミサカは駆動鎧の影なって歩兵が見えず数えにくいことに辟易します」


ガチャリ、と手に持った『メタルイーター』を構える。


黄泉川「…両手を頭の後ろで組み、うつ伏せになれ」

11018号「…おや?【電子ドラッグ】は効いてないみたいですよ?とミサカは両手を頭の後ろで組みます」

匪口「…偏光レンズか。駆動鎧にまで仕込んでるとなると、木山とは別ルートで開発したな?ま、そのくらい俺にでも発想はつく」


減らず口を叩きながらも、目の前の三人は両手を頭の後ろで組み、うつ伏せとなった。


11018号「ミサカのパンツを覗こうものなら貴様に明日はないぞ、とミサカは背後に回り込むのが趣味の変態に警告します」

査楽「滅相もない」



黄泉川「よし、確保じゃん!」

自身の後ろに居た本隊の人間が一斉に押さえにかかる。

だが、後少しというところで中肉中背の青年が両手を解く。

直後、三人の姿は消え失せた。


黄泉川「!…チッ、【空間移動】か」


さらには後ろの空間が新たにせりあがった壁により狭まる。

20M×20M。その空間に本隊の8割が囲まれた。

残りの2割も壁を隔てた向こう側で同じ状況に陥っているだろう。


匪口『あんな放送したけどさ、実はあんたらがバンバン兵隊捕まえちゃうから人手不足なんだ。
   今も空っぽの学園都市からスパコン奪いに行ったり別の要所守ったりで全然足りねーの。だから大歓迎』


どこからか声がする。恐らくは別室から放送を入れているのだろう。


黄泉川「…それがどうした?ウチらに【電子ドラッグ】が効かないのは証明済みじゃんよ!」


偏光レンズは歩兵も駆動鎧にも仕込んでいる。誰一人として汚染者はいない。

匪口『あぁ、そうだね。じゃあ見せてやるよ。一位すら洗脳してみせた最強の【電子ドラッグ】を』




ブン、と再び六面に光が灯る。

しかし、今回はさっきと違う文章が並んでいた。


匪口『HALが開発した元祖がVer.1。俺が作ったのがVer.2。この街の能力者にあわせて作ったのがVer.3。木山のオリジナルがVer.4とするなら、これはVer.5。新型だ』


???「!」


駆動鎧の一人がその文字列を理解し、とっさに『メタルイーター』を構える。

だが、こんな状態で撃ったら確実に跳弾が歩兵に当たり大惨事になる。


匪口『元祖【電子ドラッグ】をベースに操られた側の俺と能力者である【守護神】がプログラミングを補助。
   更に木山の能力強化と共感覚性についてまとめたレポート。
   そして何よりミサカネットワークにアップロードされた【心理掌握】の洗脳データ』


黄泉川「待て恵美!まだ発砲命令は出していない!」

手塩「愛穂は、分かってない!アレは、危険だ!」


匪口『あんまり情報量が多いんでローディングに時間がかかるのが難点なんだけどね』
   

だが、ローディングは完了したようだ。

目の前がカッ、と光った。


匪口『せっかく学園都市で作ったんだ。名前だけそれっぽくつけといてやったよ…』






フュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

               Iris Agate 00
            Five-Over.Modelcase-"MENTALOUT"

イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ


今回はここまでです。
文量多すぎんだろ、とセルフツッコミ。


レスありがとうございます。
投下して感激してもらえるとは幸いです。
麦犬の読み方気に入りましたw
プロットってか頭の中で『花と悪夢』(イビルラベンダー)にするか迷ったんですが、インパクトをとりました。
多分、猟犬部隊がどんなに運良くても五体満足は厳しいかと…


てか書き溜めしてんのに投下に時間かけすぎだろ自分…
投下前に軽く目 通しちゃうんですよね…


-第二学区、屋内演習場



先発隊からの連絡が途絶えて20分。後発隊は待機していたビルを出発。

3台のワゴン車に分かれて乗車し、10分後には屋内演習場に到着した。

太陽はすっかり沈んで辺りはとうに真っ暗である。

車のヘッドライトに照らされた屋内演習場の正面入口は整然としており、見たところ荒れた様子はない。

とても駆動鎧が突入した後とは思えなかった。


海原「いやはやこれは…逆に不気味ですね。一階は制圧したという報告はもらっていたのですが…」


窓ガラス一つ割れていない建物を見て海原が呟く。

本来の見立てではHALの兵隊が大挙して待ち構えているはずだが、戦闘が行われた形跡はない。

報告では被害0で一階を制圧したとしか言っておらず、勝ち気に逸った連絡役はすぐさま報告を切ってしまっていた。


垣根「…つーことは全員一方通行と一緒にいるのか?めんどくせえ。プログラム人格っつーのは随分臆病なんだな」




フレンダ「ねえ麦野」

麦野「ん?」

フレンダ「麦野の能力でこっからこう…ズババーンとやっちゃえないの?結局スパコンの場所は十中八九分かってる訳だしさ」

絹旗「おお!フレンダ超冴えてますね!その手があるじゃないですか!」

麦野「やってみてもいいが…たぶんこっちの何人か死ぬぞ?」

フレンダ「え?マジで?」

麦野「向こうにゃ第一位様がいるからな。私たちの動向は知られてるだろうし、闇雲に撃っても反射される。
   私に反射すんならまだどうにかできるが、向こうで微調整されて違う人間狙ってきたらそいつ死ぬだろ」

絹旗「で、でも麦野がどの位置からどのタイミングで撃つか向こうは分からないんじゃ…」

麦野「なんせスパイ衛星ハッキングするような奴だ。どっから私らを見てるか分からねぇ。
   私の【原子崩し】もそこまで速さがある訳じゃねぇし、ここから撃って強化された第一位に回り込まれねぇ自信はねぇ」

絹旗「う…そうですか…」

麦野「…諦めておとなしくランドセル担いで待ってろ」

絹旗「…ランドセルはあっちのツインテールです。体操着の方にひらがなで『きぬはた』って既に書かれてました…」

フレンダ「…ま、まあ、その内いいことあるって」

絹旗「…ちくしょう…超ちくしょう…」エグエグ




白井「…どうですの?お姉様」

御坂「…とりあえず、暗闇で待ち構えてるってことはなさそうね。少なくとも私の電磁波が届く範囲には」

白井「そうですか。…警備員の方たちがどうなったのか心配ではありますが…。
   それと同じくらいあの姿を皆さまに晒さなければならないことが心配で仕方ありませんの」

御坂「…ま、まあほら、服は今着てる常盤台の制服でしょ?気休めかもしれないけど、あの体操着より少しはマシ…」

白井「…ランドセルの中にお姉様のストライクゾーン低め際どいところの服がキレイに畳まれて入ってましたの…名札付きで」

御坂「…え…えーと…」

白井「お姉様…後生ですから完封勝ちしてきてくださいまし」

御坂「ぜ、全力を尽くすわ」



-屋内演習場、地下演習場前



一階をほぼ素通りし、長い階段を降りた先には演習場の入り口が侵入者を誘う様に開いていた。

侵入者である5人は入り口前の少し離れた場所で一旦立ち止まった。


垣根「…一階にゃ誰もいなかったな。ここで全員待ち構えてると思うか?」

海原「えぇ、恐らくは。どちらにせよこちらは5人。あとからワゴン車で待機しているお二人と…第六位の方でしたか。戦力の分断は得策ではありませんね」

麦野「…つってもあれから二時間半以上経ってんだろ。第六位が何やってんのか知らねぇが、やられたと見るのが妥当じゃねぇか?」

フレンダ「…」

御坂「…そうなってくると余計に面倒ね…一方通行の他にLevel5がいるとなると負担が大きすぎるし…」

フレンダ「…ふん、そんな簡単にやられたりしないっつの」

御坂「え?」

麦野「? フレンダ、お前どんなヤツか知ってんのか?」

フレンダ「あ、いや…ホラ、結局Level5でしょ?そんな簡単にやられるようなヤツじゃないんじゃないかなーって…」

垣根「そのLevel5のアタマが今むこうについてんだがな。どっからそんな自信が湧いてくんだ?」

フレンダ「な、なんとなくよ、なんとなく。ニャハハハハ…」

海原「はあ…?」

フレンダ「け、結局!さっさと第一位をやっつけちゃえばなにも問題ない訳よ!さあ突撃突撃!」ダッ

麦野「バッ…てめぇごまかすために突っ込むヤツがあるか!」



-地下演習場



フレンダ「あれぇ…誰もいない…」


一人だけ先走って入った演習場には誰もいないし何もなかった。

ただ、仄かに発光している壁と入り口から差し込む光だけが演習場の形を表していた。

恐らくは20m×20m。報告の中での一番狭い形となっているはずだ。


麦野「…てめぇ、帰ったらオシオキだからな」

フレンダ「うぇ!?なんで!?」

麦野「ったりめぇだろうがクソボケ!」


入り口から麦野が、そしてそのあとから残りの3人が入ってくる。

警戒こそしながらも、どこか余裕があるように見えた。


海原「行き止まり…ですか。この壁を破壊しなければ先へは進めない、と」

麦野「…しゃらくせぇ。こんなもん一発で風穴空けて…」




ガゴン!と急に入り口が閉ざされた。

入り口からの光はなくなり、壁の発光だけが唯一の光源となる。

そのせいでこの空間は一層薄暗くなったが、互いの姿を確認できる程度には明るかった。


御坂「…これで閉じ込めたつもりかしら?この程度の壁をどうにかできないとでも…」


ブン、と六面に光が灯る。

そして、同時に文章も映し出される。


海原「! 【電子ドラッグ】ですか…!」

垣根「…やべえな」


バサリ、と垣根の背から白い翼が広がる。

その翼はみるみる内に広がり、数秒後には演習場にいた全員を覆いつくした。

外部からは音も光も遮断されたが【未元物質】そのものが白く発光しており、むしろ先ほどよりも大分明るくなった。


御坂「…これが【未元物質】?なんか…名前の割にメルヘンチックね」

垣根「心配するな。自覚はある」

フレンダ「別にこんなことしなくてもよかったんじゃない?結局、対策用のレンズつけてるんだし」


後発隊は全員、コンタクトの偏光レンズをつけている。

【電子ドラッグ】対策の偏光レンズは既にいろいろな形で生産されていた。


垣根「念のためだ。先発隊がやられてる以上、このレンズを完全に信用することはできねえだろ」

海原「…一理ありますね。【電子ドラッグ】にも複数パターンあるとのことですし」

垣根(しかし『Five-Over』、か…。噂にゃ聞いてたが外部の、それもプログラム人格が完成させやがったか。
   一方通行を支配下に置いてんだ。名前負けってことはなさそうだな)




フッ、と【未元物質】が消える。頃合いを見て垣根が能力を解除した。

再び光源は壁の発光のみとなり薄暗くなる。

明るさに慣れていた眼にはいくらか暗すぎたようで、慣れるのに少し時間がかかった。


麦野「…次やるときは光の加減も調整してほしいもんだな」

垣根「覚えてたらな」

フレンダ「! 見て!」


正面に目をやると、せり上がっていた大きな壁が降りていた。

そしてずっと先まで壁は降りている。恐らくは100mほど先まで。

薄暗い演習場の中ではとても100m先まで目視することはできないが。


フレンダ「えっとさ、あんた室内なら電磁波で誰がどこにいるか分かるんでしょ?どう?結局、第一位はホントに…」

御坂「…ええ、誰かいるわ。もやしみたいにガリガリの人間が一人」

海原「間違いなく彼ですね」

麦野「第一位だけか?中毒者連中はここにはいねぇのか?」

御坂「…ええ」

垣根「…一方通行一人でここの全員に勝つつもりか?どいつもこいつも一方通行ごときに過大評価しすぎだろ」

御坂「……」

麦野「…ハッ、どうした【超電磁砲】。怖気づいたか?」

御坂「違うわよ。そうじゃない」

垣根「そうじゃない?」

御坂「なんか…違和感がある。なんなのかよく分からないけど」

フレンダ「…何それ?結局全然要領を得ないんだけど」

海原「彼が電磁波をあらぬ方向に反射でもしているのでは?」

御坂「…そう、かな」

麦野「いいからとっとと行くぞ。第一位が痺れ切らして突っ込んでくる前にな」




何十m歩いただろうか、薄暗い演習場はなんの変化もなしにまっすぐ続いている。

何もないと分かっているとはいえ、薄暗い中をひたすら歩くのは実際よりも長く歩いたように感じられた。


ふいに先頭を歩いていた御坂の足が止まる。次いで後続の人間の足も止まる。

カッ、高い天井から正面の一点のみスポットライトのように強い光が当たる。


フレンダ「! あれは…」


その光の中にいたのは当然、この街の最強であり最高の能力者、かつ、最悪の兵器。


一方通行「おォおォ、雑魚どもが雁首揃えて何しに来やがった?」


学園都市が誇るLevel5の第一位、一方通行。


御坂「一方通行…!」


ヘラヘラ笑っている一方通行を歯軋りしながら御坂は睨みつける。

一方通行の雰囲気は『絶対能力者進化実験』当時の、『妹達』をなんの感慨も無く片っ端から惨殺していた時と同じものだ。


垣根「ハッ、簡単に洗脳されたくせにこの俺を雑魚扱いか。説得力にかけるぜ?一方通行」

海原「…やれやれ、こちらは貴方のせいでこんなところにまで駆り出されてきたと言いますのに」


ブン、と一方通行の背後の壁に映像が映る。

そこに映っているのはスーツズボンにワイシャツの、妖しく不気味な雰囲気を纏った男性【電人】HAL。


HAL「…何度退けても向かってくる。常人とは比べようもなくタフで勇ましい。外で通じる脅しも君たちには通用しない」


縦にも横にも常人の二倍ほどの大きさで映し出されたHALは後発隊の五人を見下ろしながら話しはじめる。


HAL「そしてその決して諦めない執念!!心から敬服しよう!!」


演説するかのように大げさな抑揚をつけて後発隊へ話しかける【電人】HAL。

その顔はやはりいつものように笑っていた。


HAL「だが…その勇者たちも今いなくなる」

麦野「…ほぉ、たかだか第一位を味方につけたくれぇでずいぶん余裕じゃねぇの」

HAL「ああ、君と滝壺理后を味方にした時よりも気分が高揚しているよ。
    あの頃は同じLevel5でここまで差があるものとは思っていなかったからね」

麦野「あぁ?」


HAL「さあ…はじめようか。私の本体であるスパコン、そして『スフィンクス』はこの壁の向こうにある。…付け加えるなら、君の親友もね」


ちらり、とHALは見下ろしながら御坂を見据えた。


御坂「…そう、初春さんもそこにいるのね」

HAL「この騒動を終結させ、君たちの街を取り戻したいのなら…破ってみせたまえ!この最強の能力者を!」


大手を広げて開戦を宣言するHAL。

いやに芝居がかったその動きと言動は何やら挑発しているようにも見えた。


御坂「…言われなくても、やってやるわよ!!」


だが、だからといって動かない訳にはいかない。

相手はあらゆるベクトルを操れる超能力者。

先手を取らなければ勝てる相手ではない。

叫ぶと同時に、自身のもつ能力の最大出力でジャミング電波を発する。

軍用の特殊電波だろうがなんだろうが遮断してしまうような強力なジャミング。

その効果は絶大で、学園都市最強の能力者は膝から崩れ落ち


キュイィン




高い音が演習場に響いた。

一方通行は変わらずニヤついたままそこに立っている。


麦野「…おい【超電磁砲】。何やってんだ?早くしろよ!」

御坂「…もう、やってるわよ…」

フレンダ「はあ?何言ってる訳?」

御坂「…うそ…なんで…」


演算は完璧だ。一分の狂いもない。

AIMジャマーで暴走を促されてる訳でも【キャパシティダウン】で能力を阻害されてる訳でもない。


ジャミングが、能力がかき消されたのだ。



HAL「…私が手の内を全て曝け出すとでも思ったかい?すでに弱点が露見している一方通行だけで、私が自分の居場所まで堂々と報じると思ったかい?」


電磁波で探った時の違和感が分かった。

電磁波が返ってこなかったのは一方通行がめちゃくちゃに反射したせいではない。

電磁波の一部がかき消されていたのだ。


御坂「なんで…アンタが…」


ここに来てからは、一方通行とHALにしか目が向かなかった。

向こうの切り札は最初からこの空間の隅で待機していたのだ。


HAL「彼こそが真の私のジョーカー。そして…匪口裕也に追われた打ち止めが最後に頼った人間だ。
    彼もまた、一方通行と同じで『Five-Over』でなければ洗脳しきれなかったがね」


その切り札とはヒーロー。

とある魔術師の幻想も、とある錬金術師の幻想も、とある超能力者の幻想も、全て打ち砕いた最弱。

右手一本で一万人弱救った無能力者。


???「よ一一…御坂。犯罪願望に従うのって…スゲー清々しいよ」


ツンツン頭に学ラン。そして高々と右手を掲げて気さくに笑いかけているのは



上条「HALが教えてくれたんだ。この快感を」



【幻想殺し】上条当麻。



今回はここまでです。
短い?いえ、前回が長すぎたんです。


レスありがとうございます。
Iris Agateに気付かれるとは…仕込んだ甲斐があります。
統括理事会のヤツは潮岸が駆動鎧脱いでやるところを書こうと思ったんですが、
挟むタイミングなかったんでちょうどよかったです。裏で潮岸さん狂ってる設定で。


お勧めスレでこのスレが面白いと…
嬉しい限りです。



御坂「嘘でしょう…?」


勝てるはずがない。

ただでさえ学園都市最強の一方通行。

その一方通行を打ち倒した最弱、上条当麻。

この二人を同時に相手してどうやって勝てというのだ。

だが、御坂の精神に最もダメージを与えたのはそんな現実的な問題ではない。

信じられなかったのだ。

どこまでもお人好しで、どこまでもお節介焼きで、どこまでも無鉄砲で、それでいて最後には勝って帰ってきた男が。

自分を絶望の淵から救ってくれたヒーローが、洗脳され都合のいい兵隊にされているのだ。

その事が何よりも御坂に精神的なダメージを与えていた。


一方通行「ぎゃは」

海原「御坂さん!」


ドン、と御坂の身体が突き飛ばされる。

そしてその直後に突風が御坂の隣を駆け抜ける。


海原「ガ!!」


だが、それは突風ではない。

風のような速さで突っ込んできたのは学園都市最強の白い悪魔一方通行。


御坂「! 海原さん!!」


硬直した御坂を弾き飛ばした青年は一方通行に突撃されて入り口の方へと吹っ飛ばされた。

そして自らの運動エネルギーを全て海原にぶつけた一方通行は、海原に突き飛ばされて座り込んでいる御坂を見下ろす。


一方通行「あっはぎゃはァ!あンだけ格の違いを見せてやったってのにまだ分かンねェのかァ!?」


ズグリ、と御坂の心がえぐれる。

何をしても勝てなかった。

何をしても変わらなかった。

状況はあの頃と一緒だ。

こんな奴を敵に回した時点でこっちにできることなど何一つ-



垣根「こっちにゃ目もくれねぇのか?妬けるぜ一方通行」


ゴッ、と御坂の両脇から白い翼が空気を切り裂いて一方通行へと迫る。

三対の翼が左右でそれぞれ重なり合い、一方通行の背丈ほどの大きさとなって二方向から一方通行へと叩き込まれる。

しかし、一方通行の反射膜はその翼を難なく防ぐ。

巨大な翼はあらぬ方向へと弾かれてしまった。


一方通行「あァ!?何がしてェンだテメェはァ!!クソみてェな能力者が何しよォがこの俺に勝てるはずがねェだろォがよォ!!」

垣根「ハッ、今のうちに吠えいてろ。てめえみてえな半端モンがこの俺に勝てると思うな」


あくまで見下した態度で垣根に暴言を吐き散らす一方通行。

自分の攻撃が通用しなかったにもかかわらず余裕綽々で応じる垣根。

学園都市が誇るLevel5、そのツートップの二人は両者共に笑い合い、御坂を挟んで対峙する。


垣根(思った通りだ。正確な反射はできちゃいねえ。あいつの反射膜は万能なんかじゃない。
   今ぶちこんだベクトルの中からあいつの反射膜に影響を与えたベクトルを抽出。そっから)


キュイィン


垣根「あ?」


垣根の背から生えていた右側の白い翼が音とともに全て消える。

そして白い翼の代わりに、振り向いて背後にいたのは黒いツンツン頭。黒い学生服。


上条「こっちは二人だ。忘れてんじゃねぇよ!」

垣根「チイッ!」


ぶん、と【幻想殺し】の右手が空を切る。

いきなりの出現にいきなりの奇襲。

慌てはしたがなんとか紙一重で飛び退き躱すことに成功した。


垣根「消えてろ一般人!」


残った三本の内、二本の【未元物質】がツンツン頭めがけて猛威を振るう。

もう一本で強引に荒々しく御坂を払い、得体の知れない相手とも一方通行とも距離を取るためにサイドにさらに飛び退く。



キュイィン


垣根「…またか!なんなんだテメェは!」


背中から伸びた【未元物質】はツンツン頭に届く前に、彼が振るった右手によって一瞬にして消え失せた。

確かに身体を真っ二つにしない程度には手加減したが、およそ常人が反応できる速度ではない。

例え【電子ドラッグ】を見たHALの兵隊であろうとだ。


麦野「【未元物質】の野郎、手加減しやがって。殺しさえしなけりゃ何したってかまわねぇだろ」


少し離れたところから麦野が構える。

同時に麦野の周りに青白く、小さな球体が4つほど出現する。

逃げ回る研究者や腰の抜けた人間を相手にした時には見せない【原子崩し】の本気モード。

ドドドッ!と小さな球体から【原子崩し】がツンツン頭の四肢を狙い放たれる。


一方通行「ギヤッハァ!」


突如、ツンツン頭への射上に白い悪魔が現れる。

四本の【原子崩し】は全て一方通行に当たり、彼の能力により反射される。


麦野「なっ!」


【原子崩し】は正確に反射されなかった。

一点集中。麦野の眉間めがけ先ほどの倍以上の速度で迫りくる。


ズドン!と【原子崩し】は麦野の額に命中した。

その衝撃で麦野は首を仰け反らせ、そのまま後ろに倒れこみそうになる。


フレンダ「麦野!」


ザ、と後ろに足を回し、麦野は踏み留まる。

仰け反らせた首をまっすぐ正面に戻し、ギロリと白い悪魔を睨みつけた。


麦野「テメェ女の顔傷物にしやがって…テメェの粗末なモン上下左右にバラバラにしてやっから覚悟しろ」


額から流れる一筋の血の滴をペロリと舐め取り、一層殺気を籠めて一方通行と対峙する。

【原子崩し】は麦野の能力。一方通行が多少手を加えようが麦野なら自分に向かったこようが対処できる。

原理的には麦野が御坂の能力を、御坂が麦野の能力を逸らすのとほぼ同じだ。

【原子崩し】の性質と一方通行の干渉により麦野にダメージはあるが。




ぱしん、と乾いた音が鳴る。


御坂(しっかりしなさい御坂美琴!!アイツを倒すくらいの、救うくらいの気持ちがなきゃ!アイツと対等になんか居られないでしょうが!)


自ら両の頬を叩き、気合いを入れ直す。

垣根が自分の能力を消してしまうような未知の強敵に対して一歩も退かずに闘うのを見てから。

麦野が怯えもせずに果敢に一方通行に立ち向かうのを見てから目が覚めた。

それに海原はこんな自分のために身体を張って助けてくれたのだ。

いつまでも呆けてうずくまっていたのでは申し訳も立たない。


御坂「みんな聞いて!!そこのウニ頭の右手はどんな能力も消しちゃう!!能力は通用しないわ!!」


立ち上がりざまに叫んで警告する。

ほんの一瞬で演習場は再び戦場と化しており、【未元物質】が【原子崩し】が縦横無尽に飛び交う。


麦野「んだそりゃ!どういう原理だ!」

御坂「分かんない!!」


さらに大声を張り上げながら自身も戦闘に参加する。

視点を変え、一方通行のチョーカーに直接干渉しようと電撃を放つ。

しかし、やはり一方通行を捉えることはできない。

一瞬で躱され、新たに一方通行が御坂に狙いを定める。

その瞬間を狙い麦野が【原子崩し】でコードの切断を狙うも、一方通行が無造作に振るった腕で反射される。

反射された【原子崩し】は麦野に避けられ壁に激突した。


フレンダ「…こっちはあんまり得意じゃないんだけど」


スッ、とフレンダが懐から黒い鉄の塊を取り出す。

それは小型の自動拳銃。素早く目標を定めトリガーを引く。

ガンガンガン!と銃弾が上条に向かって射出された。


上条「うおっ、と!」


だが、あろうことか上条はそれを見切って避ける。しかも【未元物質】を相手にしながらだ。


フレンダ「はあ!?何今の動き!」


見切って避ける、というよりはフレンダが引き金を引くより早く弾丸が通るところを察知しているようだった。

そのあり得ない動きにフレンダが驚愕の声を上げる。


御坂「あと私の【超電磁砲】にシラフで反応できる!!」

垣根「どチートすぎんだろ!予知能力者か!?」

御坂「違う!無能力者!!」

麦野「意味分かんねぇよ!!」


垣根(落ち着け。さっきから俺の能力を消すだけじゃなくよけてもいるってことは、右手以外にゃ効くんだ。
   それに消えるのは右手が触れたモンだけ。能力が使えなくなるんじゃねえんだ。十分勝機はある!)


目の前の男に【未元物質】を振り回しながら考える。

現に消された【未元物質】は再び再生できたのだ。根本から能力を使えなくする訳ではない。


垣根「第三位!ジャミングを範囲絞って続けろ!コイツの右手に触れなきゃ消えやしねえだろ!」

御坂「分かった!」


垣根の推測は正しい。【幻想殺し】の範囲は右手のみ。

そして、右手が触れたものだけが消滅するのだ。

だから最初の接触時に垣根の翼は一度に全て消えずに右半分だけが消えた。

御坂の電磁波は何十本も出した電磁波の数本が消えただけ。だから一方通行の存在を捉えることができた。


垣根「それからよ」


バサリ、と【未元物質】がさらに大きく広がる。

ツンツン頭に背を向け、ほんの一瞬身体を後ろに反らすと、垣根は音速に近い速度で飛び出し、ツンツン頭を置き去りにする。

ゴッ、という音とほぼ同じ速度で垣根が向かった先は


一方通行「あン?」


ズガン!と【未元物質】の翼が御坂と麦野を相手にしていた一方通行へとたたき込まれた。


上条「テメェ!」

麦野「お前の相手はこっちだ」


今度は反射されることも逸らされることもない。

正常に打ち込まれて正常にダメージを与える。

【未元物質】をたたき込まれた一方通行は先ほどの海原のように吹き飛ばされる。

ただ、入り口の方ではなく演習場の側面へと吹き飛ばされた。

一方通行の身体からは大量の血液が噴き出す。


垣根「演算完了だ。てめえの反射は通用しねえ」



だが、壁に叩きつけられた際に一方通行の身体はビクともしなかった。

自身にかかる衝撃を壁全体、建物全体へ分散させたのだ。

一方通行のベクトル操作は未だ健在。少しも衰えてはいない。

【未元物質】が命中し、できた傷はみるみる内に修復され、体外に出た血液は巻き戻しの様に体内へ戻っていく。

普通なら即瀕死状態になるほどの大ケガは一瞬にして完治された。


一方通行「ギャハハハハ!お前面白ェなァ!だがよォ、焼け石に水かけたくらいじゃなンも変わらねェってンだよ!!」


あまつさえ服についた大量の血液を弾き飛ばし、破れた箇所は元通りに縫い合わされる。

内外ともに完璧に元に戻ってしまった。


垣根「…だろうな。【電子ドラッグ】見た以上、お前も化け物以上だろ。だが…」


一方通行「あ…?」

ガクン、と一方通行は膝から落ちる。

御坂のジャミング電波がミサカネットワークとの通信を断ち切ったのだ。


垣根「シメーだ。これで俺はメインプランへと成り上がる」


再び【未元物質】が無防備な一方通行の頭上へ命を刈り取るべく振り下ろされた。


一方通行「ギャは」


だが、【未元物質】は一方通行へ届かない。

ほんの数ミリというところで反射されてしまった。


垣根「な!?」


思わず声を上げる。さっきは反射膜をすり抜けていたはずだ。

それなのに、振り下ろした翼は一方通行の頭上ではね上がった。


一方通行「いいねいいねェ!最っ高だねェ!!その呆けたツラァ!!その馬鹿みてェなリアクション!!」


それ以前に第三位のジャミング電波が一方通行の生命線を断ち切っていたはずだ。

なぜこいつは立ち上がり、こんな顔をすることができる?


垣根「おい!第三位!!」




御坂「~っ、目ぇ覚ましなさいよこのバカ!!」


青い雷撃の槍が上条めがけて放たれる。


上条「ギンギンに醒めてるよ。なんで怒ってんだよ」


だが、ツンツン頭はそれをものともせずに異様な瞬発力で躱す。

至近距離の雷撃を難なく躱す動きは明らかに【電子ドラッグ】によるものだ。


麦野「クソが!ちょこまか動きやがって!」


躱したところを【原子崩し】が狙い撃つ。

当たりさえすればツンツン頭は分子レベルで粉々だ。


上条「頼むから怒りを鎮めてくれよ。上条さん好みのキレイな顔が台無しだろ」


【原子崩し】は右手に命中した。

しかし、分子レベルで粉々になるどころか【原子崩し】の方がかき消されてしまった。


麦野「だったらおとなしく殺されてろ!」

フレンダ「麦野!殺害はNGだって!」




垣根「んのカス共!!一般人相手になに苦戦して」

一方通行「なァによそ見してンですかァ!?」

垣根「!」


瞬時に顔だけ振り向くと一方通行がすぐ真後ろにいた。


垣根「っの」


とっさに【未元物質】を横一線に薙払う。

手加減などしない。ここで一方通行の殺害に成功すればその瞬間に垣根はメインプランへ昇格するのだから。


一方通行「らァ!!」


しかし、【未元物質】は一方通行に当たらない。

あろうことか【未元物質】は一方通行に操られ、垣根へと命中する。


垣根「ガフ!!」


至近距離で自分の能力を食らった垣根は上条たちの方へと吹き飛んだ。


一方通行「馬鹿の一つ覚えみてェに同じ能力の使い方してンじゃねェぞ雑魚メルヘン!!無害で有害なもン反射するなンざ朝飯前なンだよ!!」



どしゃり、と垣根は御坂たちの戦場に倒れこんだ。


御坂「垣根さん!!」


しかし、自分の能力にやられてしまうような男ではない。

起き上がりざまに近づいてきた上条に【未元物質】を振るい、牽制する。


垣根「…交替だ。このウニは俺がやる。お前らで一方通行を足止めしてろ。第三位がジャミングしてりゃある程度はふせげる。
   範囲が狭まる以上完全にヤツの能力を奪うのは難しいだろうが、てめえらが相手できる程度にはなるだろ」

麦野「なに上から目線で指示出してやがる!」


今度は近づいてこようとした一方通行の地面に【原子崩し】を放つ。

いかにベクトル操作と言えど、ベクトルをかける対象を消失させてしまえば操作はできない。

しかしやたら頑丈な床はせいぜい大きくへこむ程度。

おまけに一方通行の演算の速さなら秒単位の時間稼ぎにもならない。


垣根「てめえらが苦戦してっからだろうが。コイツさえ倒せば当初の予定通りになんだ。3分で終わらせっから待ってろ」


近づいてくる一方通行に御坂がジャミング電波を放つ。

崩れ落ちることはなくとも少しは減速したようだ。


フレンダ「…腹立つけど一理あるわ」

垣根「てめえはこっちだパツキン。むしろ相性考えれば俺よりも有利だろ」


御坂と麦野が同時に一方通行に向かって同時に飛び出す。

【原子崩し】の青白い光が一方通行の反射膜を貫こうと何本も射出される。


垣根「つーことだ。さっきは逃げて悪かったな」


轟音と青い光を背景に垣根とフレンダは上条と対峙する。

【未元物質】の牽制をすべて見切った上条は未だ無傷だった。


上条「ふざけんな…」

垣根「あ?」

上条「ふざけんなっつったんだよ!この三下ァ!!」


先ほどまでは戦っていた三人を宥めるような穏やかな態度だった上条が突如として鬼の形相に変わる。


フレンダ「な、なに急にキレてる訳?コイツ…」

上条「ふざけやがって!!御坂と上条さん好みのお姉さんに代わって!!なんでお前が相手なんだ!!」

垣根「決まってんだろ。あいつらじゃいつまで経っても勝てねえから…」

上条「そんなくだらねぇことはどうだっていい!!」


垣根の口上を最後まで聞かず、怒りにまみれたツンツン頭は怒号を発する。


上条「たった一つだけ答えろ侵入者!!てめぇは御坂とあのお姉さんをハーレムに入れてんのか!?」



垣根「…は?」

フレンダ「? ??」


上条「ふざけやがって!その場所には俺がいるはずだったんだ!HALの世界さえ完成すれば…」

垣根「ちょっと待て。何?ハーレム?」


上条「とぼけんな!てめぇらも望んでんだろ!?一人の恋人に囚われなくても済む、
   恋人の敵に回らなくても済む、そんな誰もが笑って誰もが望む最っ高なハーレムエンドってやつを!!」



垣根「」ポカーン

フレンダ「」アングリ



上条「今まで待ち焦がれてたんだ!そんな展開を!!何のためにここまで歯を食い縛ってきたんだ!?てめぇのその舌で、大勢の女の子をペロペロしてみせると誓ったからだろ!!俺だって主人公の方がいいんだ!脇役なんかで満足してんじゃねぇ!!命を懸けて…大勢の恋人でハーレムを作りたいんだよ!!…その夢は終わっちゃいねえ!…始まってすらいねえ!ちっとくらい長いプロローグで、絶望する訳にはいかないんだ!!…手を伸ばせば届くんだ!いい加減邪魔するな!侵入おぅふ!!!!」



ズゴム!!とフレンダの脚が上条の股間を蹴り上げた。


垣根「おぅふ…」

フレンダ「生理的に受け付けないわ。結局、あんたとは全っ然価値観合わない訳よ」


振り上げた脚を降ろし、手に持った拳銃を構えた。


上条「ふふ、俺はな…あらゆるタイプの女を自分のハーレムに入れたいと夢見てるんだ」

フレンダ「!?」


しかし、上条の動作に隙はない。急所を全力で蹴り上げたというのに身悶え一つしない。


上条「そして、あらゆる女性に対する接し方、愛し方も【電子ドラッグ】により修得したんだ…」


ゆらり、と少しだけ身体を動かし、フレンダの方を見て語る。

身の危険を感じたフレンダは一気に距離を取った。







上条「なあ、熱膨張って知ってるか?」




-屋内演習場施設内、駐車場ワゴン車内



白井「…5分経ちましたわ。行きますの」

絹旗「も、もう5分。もう5分だけ待ちませんか?」


ワゴン車の中にはランドセルを隣に置き、キッズ用の服に身を包んだ少女。

白地にでっかい名札が縫い付けられた半袖体操着と紺の短パン体操着に身も包んだ少女。


白井「そのセリフもう三度目ですの。いい加減観念なさいな」

絹旗「嫌です!超嫌です!こんな姿、しかも特殊性癖に見られるなんて…あなたはそれでもいいんですか!?」

白井「嫌だから10分も待ち時間を延長しましたの。ですが、いい加減お姉様が心配ですの。
   ここまで連絡がないならきっと作戦にトラブルが…ひいてはお姉様たちが苦戦しているに違いありませんの」

絹旗「でも…でも…」

白井「絹旗さん、でしたか。私たちが少し恥をかくだけで仲間の皆さまを、学園都市を救えるのなら、それは素晴らしいことではありませんか?」

絹旗「…分かりましたよ」

白井「でしたらほら、忘れ物ですの」

絹旗「むぐ…何です?コレ」

白井「赤白帽ですの」

絹旗「な、なんでわざわざかぶせ」


ヒュン、とワゴン車内から二人の少女の姿は消えた。


-地下演習場



ヒュン、と二人の少女が演習場に現れる。


白井「いましたわ!アレですの!」


見ると青白い光線と青い雷撃をあらぬ方向に弾き、Level5を二人相手どっている痩身の白い人間がいた。


絹旗「うぅ…こうなったら超ヤケです。やい!一方通行!!」

一方通行「アァ?」


絹旗の呼び掛けに声だけで反応するアルビノ。

目の前のLevel5に夢中でこちらを向こうともしない。


白井「こちらを向きなさい!!」


その言葉でようやく一方通行は二人に向き直った。




一方通行「」


白井「」ドキドキ

絹旗「」ドキドキ




一方通行「クカカ…」


白井「…?」

絹旗「…」




一方通行「クカケキコクケキコクケコカカァアァァ!!」


白井絹旗「「!?」」 ビクゥ!








一方通行「ナメてンじゃねェぞこの三下がァ!」



白井「!」


ほとんど直感的に白井は身の危険を感じた。

ドウ!と一方通行が地を蹴る。それだけでロケットのように二人へ迫って行く。


絹旗「わ」


ヒュン、という音と同時に白井と絹旗の姿が消える。

間一髪で転移に成功。二人の姿は消えてしまった。



そしてランドセルと体操服の二人は演習場全体の中程で再び姿を現す。


白井「あ、危なかったですの」

絹旗「てゆーか超鬼の形相でし」



一方通行「そっちかァ!」


【空間移動】をしたにもかかわらず、白い怪物は数秒後には二人の前に現れた。


絹旗「!」

一方通行「うるァ!」


とっさに身構える絹旗。直後に絹旗の顔面めがけて脚を振るう一方通行。

その脚は構えた絹旗の両腕を捉え、人知を超えたスピードとパワーで振りぬかれた。


絹旗「っ!」

白井「きゃ」


その回し蹴りを食らった絹旗は後ろにいた白井を巻き添えに吹き飛ばされる。

そのスピードすらとてつもなく、このまま行けば二人揃って入り口の壁に激突する。


白井(間に合え…っ)


ヒュン、と再び二人の姿は消えた。


そして御坂と麦野の近くに倒れこみながら姿を現した。

本人はだれにもぶつからないように広い空間を転移先にしようとしたのだが、あまりのスピードに照準が狂わされたのだ。

【空間移動】を行使するとそれまで転移者が持っていた運動エネルギーはすべて消える。

なので、下手すれば壁に激突して全身ぐしゃぐしゃになりそうな程の推進力も全て消え失せた。


御坂「黒子!大丈夫!?」

白井「私は無事ですの!ですが絹旗さんが…!」

絹旗「っつぅ~…」


見ると絹旗の両腕は不気味なまでに紫色で、異様に腫れていた。

大量の内出血。どんなに楽観視しても腕の骨はイカれている。


麦野「絹旗!お前、能力は?」

絹旗「超使ってコレですよ!なんなんですかあの金髪!あのグラサン!!恥を忍んでロリコスプレしたってのに超効果ないじゃないですか!!」

白井「本当ですの!こんな服着て!ランドセルまで担いで!!間抜けにもほどがありますの!」


ボロクソに不平を言う白井と絹旗。

当然だ。

学園都市の命運を握る決戦の場で恥曝しな格好を強要された挙げ句、不発どころか敵が余計に逆上したのだから。


一方通行「あっはぎゃはァ!テメェらその格好に問題があるとでも思ってンのかァ!?」


いつのまにか戻ってきていた一方通行は先の二人を見下ろしながらしゃべる。


一方通行「哀れだなァ!いっそプチッとぶっ潰したくなっちまうくれェ哀れだなァ!!」


人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、それでいながら目だけは本気の怒りに満ちている。


一方通行「いいか!オツムの足りねェカス共にこの世の真理っつゥもンを教えてやらァ!!」






一方通行「中学生はなァ!!ババアなンだよ!!!!」





白井「」

絹旗「」

御坂「」

麦野「」





HAL「…さて、そろそろ私も参加しようか」




満を持して【電人】が動き出す。

ガコン、とHALが映っている壁と対面の壁がせり上がる。

20m×20m。その正方形の空間に侵入者は全員閉じ込められた。

そして六面全てに映し出されるのは1と0の狭間の世界の住人【電人】HAL。


HAL「なに、たいしたことはしないさ。先ほど使った手だ」


ふっ、とHALの姿が消える。

そして代わりに出てきたのは-


垣根「! このタイミングでか!」


ともにツンツン頭と戦っていたベレー帽の襟首を掴み、【超電磁砲】と【原子崩し】の方へと向かう。


フレンダ「うわ!?」


あまり速く動きすぎるとベレー帽の身体が耐えられなくなるのでそこまで速くは移動できない。

それでもツンツン頭を振り切るには十分だった。


倒れこんでいる【窒素装甲】を基点になんとか奮戦している【超電磁砲】と【原子崩し】。それに【空間移動】の風紀委員。

その傍に着地し、自らの【未元物質】を展開する。


白井「な、なんですのコレは!」

垣根「俺の能力だ!【電子ドラッグ】がくるぞ!」

絹旗「!」


ただでさえ一進一退のこの状況で誰か一人でも向こうに寝返れば致命的だ。

例え数で勝っていようと向こうはほとんど反則的な者しかいないのだから。

とはいえ【電子ドラッグ】は一度破っている。

映像も音も聞かなければなんの効果もない。

ただ、さっきと違うのは外部にいる一方通行と【幻想殺し】の存在。


垣根「第三位!目一杯ジャミングかませ!」

御坂「任せて!」


一方通行も【幻想殺し】も【未元物質】を突破できる。

だが、それも織り込み済だ。こちらの利点は向こうからはこちらの動向がうかがえないことだ。

正面から【幻想殺し】が来るなら能力が解除された瞬間【未元物質】を叩きこむ。

多少左右から回ってこようが【未元物質】なら対応できる。

後方から一方通行が来たら御坂のジャミング電波で即戦闘不能だ。

同時に来たらとにもかくにも【幻想殺し】を潰す。こいつさえいなくなればこっちの勝ちなのだから。


キュイィン


垣根(ここだ!)


【未元物質】もジャミング電波も消された瞬間、事前にスタンバイしていた別の【未元物質】を叩きこむ。

これで【幻想殺し】は潰した。

はずだったが


垣根「なにっ!?」


なんの手応えも無い。誰もいない。

【幻想殺し】の動きの速さからこの一瞬で背後に回られることなど-


上条「いいぜ。テメェが俺の狙ってる女の子たちでハーレムを作るってんなら」


だが、【幻想殺し】は回り込んでいた。

竜巻の生えた一方通行の右腕に左手でぶらさがり、一瞬にして回り込んでいた。


垣根「しまっ」


一方通行にその身体を放り投げられ、己の右の拳を握りしめ、ヒーローは振りかぶる。


上条「まずは!!その幻想をぶち殺す!!」


バキィ!と【電子ドラッグ】で強化された上条の拳が垣根の顔面を貫く。

それだけではない。垣根は自分の身体も脳も能力によって補強し、あらゆる弱点を補い、強化している。

それらが垣根の制御でなく、すべて【幻想殺し】によって強制的に打ち消された場合


垣根「ご、がああああああああああああああああ!!!???」


今まであった臓器が突如として体内から消失した場合とほぼ同意義。

当然垣根の身体はその急激な変化についていけない。

咆哮と共に全身から大量の血液が噴出し、辺り一面に血飛沫が舞う。


御坂「うそ…垣根さん!しっかりして!」


HAL「終わりだ」

白井「!」


目の前がカッ、と光る。


そして-



フュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

               Iris Agate 00
            Five-Over.Modelcase-"MENTALOUT"

イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ



ヒュン、という音が隔離空間を作り出している壁から大分離れたところで鳴った。


御坂「あ、あれ?」


思わず御坂はキョロキョロと辺りを見回す。

先ほどまで確かに【電子ドラッグ】が流れだす寸前だった。

それなのに、辺りは薄暗いままだ。おまけに閉塞感はない。

ずっと向こうまで広々とした空間が続いていた。


白井「私が【空間移動】いたしましたの」


ふう、と一息つきながら背後にいた白井が御坂の背中から手を離す。

まさに間一髪。Level5の第一位すら洗脳してしまう【電子ドラッグ】を見てしまえば、その効力にあらがう術はない。


絹旗「なんで私も…?」

白井「咄嗟のことでしたので…手の届くお二人を転移させましたの。私、二人分転移させるのが精一杯ですので…」


未だに倒れこんでいる絹旗の問いかけに白井が答える。

白井が【空間移動】で飛ばせる物体の最大質量は約130Kg。

質量は精度との関わりは無いが、たまたま近くにいた二人が軽い人間だったのだ。


白井「…どうしますか?この壁の向こうがどうなっているのか見当つきませんが…」


この三人以外が全員【電子ドラッグ】を見てしまったのであれば、向こうの戦力は暗殺プロ、Level5三人、対能力者用特殊能力者。

正直言って勝ち目はない。

先ほど入り口の方まで吹き飛ばされた海原も戦闘に復帰できるかどうか。

それに復帰できても白井の能力ではこれ以上一度に転移することはできない。


絹旗「…転移する直前ですが、フレンダも麦野もなんかしてるっぽいのは見ました。多分大丈夫だと思いますが…」


なんとか腹筋だけで起き上がり、絹旗が答える。

【電子ドラッグ】が流されたとはいえ、向こうに残っている三人は暗部組織の人間。

一筋縄ではいかないはずだ。


御坂「…垣根さんを放っておく訳にもいかないし、闘い続けるにしても撤退するにしても誰がどうなったか知る必要があるわ」


なおも闘い続けるにしても、これ以上の戦闘が勝ち目無しで一時撤退するにしても、状況を知る必要がある。

撤退してしまえば恐ろしい大惨事になりかねないかもしれないが、学園都市崩壊という最悪のシナリオはまだあり得ないはずだ。

あくまでも推測の域ではあるが。


白井「垣根さんの体重を考えると、多分彼しか転移できませんが…分かりました。お二人とも準備はよろしいですの?」

御坂「えぇ」

絹旗「両腕とも動かないし、準備もへったくれもありませんよ」


ヒュン、と再び三人は戦場へと転移した。




フレンダ(…終わった、かな…?)


【電子ドラッグ】が流されていた隔離空間でフレンダはうずくまっていた。

彼女が【電子ドラッグ】を回避するためにとった方法は、スタングレネードを目の前で爆発させること。

一時的に自分の視覚と聴覚を麻痺させることで【電子ドラッグ】の汚染から逃れたのだ。


フレンダ(自分も無防備になっちゃうから怖かったけど…
     結局、中毒者は目の前で【電子ドラッグ】を流されたら見ざるを得ない。
     根拠はないけど無事ってことを考えるとドンピシャだったみたいね…)


うずくまっていた上体を起こし、辺りを見回す。視覚はどうやら回復したようだ。

だが、ぐったりしている【未元物質】以外は誰もいない。


フレンダ「…あれ?麦野?絹旗?」


スタングレネードを爆発させたのだ。当然他の仲間もうずくまってるに違いない。

そう思っていたのだが、誰一人いない。


フレンダ(そーいえばあのツインテールは【空間移動】の大能力者だっけ。スタングレネードよりは安全な回避ができるか)

フレンダ「でもそれならなんで私を置いていく訳?」


ガシリ、と誰かがフレンダの肩を掴んだ。


フレンダ「ヒッ!!」


ビクン、と身体を強張らせた。後ろに誰がいる?

ツンツン頭か?一方通行か?

一方通行だったら最悪だ。このまま肩を握り潰されてもおかしくない。


???「フレンダ…」


女の声?自分の名前を知ってる?それ以前にこの声は…


フレンダ「麦野…?」

麦野「ああ」

フレンダ「ほっ…なんだ麦野か。驚かさないで」


言い終わる前に身体が振り回される。

プロレスのように腕力任せに肩と腕を捕まれ、そのまま投げ飛ばされた。


フレンダ「ギャン!」


ダン!と壁に叩きつけられた。

そしてそのまま床にへたりこむ。


フレンダ「ゲホッゲホッ。む、麦野、何して…?」


顔を上げ、麦野の方を見て絶望する。

自分が所属する暗部組織『アイテム』のリーダー、Level5の第四位【原子崩し】麦野沈利の隣にいたのは


上条「…上条さんのハーレムに一歩前進ですのことよ」

一方通行「ハッ、こンな老婆のどこがいンだか」

麦野「後でブチコロシ確定だ白髪ネギ」


【幻想殺し】と一方通行。


ヒュン、と避難していた三人が現れる。


絹旗「え?」


ゴッ、と巨大な【原子崩し】が放たれる。

その先にいた金髪ベレー帽の少女は青白い光に飲み込まれて見えなくなった。


御坂「うそ…」


青白い光は頑丈な壁に巨大な穴を空けていた。


白井「…そんな…」


そして、金髪ベレー帽の少女の姿は跡形も無く消えてしまった。


絹旗「麦野!?超一体何やってるんですか!!」


ブン、と再びHALの姿が映し出された。


HAL「…クク、殺すこと無く味方にしろと言ったはずだが…まあ、欲を張りすぎるのはいかんな」

今回はここまでです。
投下時間が遅くて申し訳ないです。


レスありがとうございます。
上条さんの犯罪願望は『楽園願望』(ハーレム願望)。
どんな手でもいいからハーレムを形成したい、と。
ぶっちゃけ高1であれだけの劇的な出会いがあってそんなことを微塵も考えないはずがない。
それが【電子ドラッグ】でこんな風に、と。


自分の頭の中のイメージがちゃんと伝えられたかどうか不安です。
SSって難しいです。


-第七学区某所



食蜂「お腹空いた。[スイーツ食べたい]」

削板「さっき弁当食っただろ」

食蜂「喉乾いた。[ジュース買ってきて]」

削板「自販機で買ったやつがまだ残ってるだろ。全部飲んでからだ」

食蜂「疲れた。[ベッドで寝たい]」

削板「お前の治療を待ってる人間が大勢いるんだ。根性出せ」

食蜂「もぉ!!なんであなたには私の能力が効かないのぉ!?」

削板「ん?なんかしてたのか?」

食蜂「気付いてすらいないのぉ!?一体どんな精神力してるのあなた!!」

削板「健全かつ屈強な根性は何人たりとも犯せん。詰まるところ、貴様の能力より俺の根性が強かったのだ」

食蜂「わ、私の能力を精神論で破るのぉ!?それはないわぁ!!それだけは絶対にない!!絶対何かタネがあるはずよ!!」

削板「そう言われてもなあ…」



削板「とにかく、さっさと次の避難所に行くぞ。中毒者どもが紛れ込んでる可能性だってあるしな」

食蜂「あなたの体力と私の体力を一緒にしないでくれないかしらぁ…いい加減眠たいんだけど…」

削板「根性出せ」グッ

食蜂「もぉヤダ…垣根さんはここまで積極的じゃなかったのにぃ…垣根さん早く帰ってこないかしら…」

削板「はっはっは!!安心しろ!第二位ならすぐ帰ってくる!」

食蜂「…あら?大した自信ねぇ。強化されたLevel5の第一位なんて簡単には倒せないと思うけどぉ?いくら垣根さんでも」

削板「心配いらん!なんせ俺が知る人間の中で一番根性あるヤツが向かってんだからな!」

食蜂「…それってさっさ会った人たち?そこまで強そうな能力者には見えなかったけど…」

削板「言っただろ!アイツの強いのは能力じゃない!根性だ!!」

食蜂「…はぁ?」



-同時刻、第二学区地下演習場


麦野「ったく、クソッタレの第五位のせいですっかり忘れてたぜ。私の使命っつーやつを」


ボボボ、と麦野の周りに小さな青白い球体が現れる。


麦野「HALの最大の敵であるテメェを倒せばもうHALの天下は磐石。
   私も序列が繰り上がって全員ハッピーエンドだ。フィナーレくらい盛大にブッちゃけてやんよ」

上条「おいおい、物騒すぎるだろ。それじゃダメだ」


パシン、とヒーローは自分の右拳を胸の前で左の手のひらに打ち付ける。


上条「みーんな上条さんのお嫁さんになってハーレムエンド。やっぱこれでせう」

一方通行「相変わらずテメェは節操っつゥもンがねェな」


コキリ、と一方通行が首を鳴らす。


一方通行「あンな痛いコスプレするやつのどこがいいンだ。恋愛対象は10歳までだろ」



絹旗「…イ、イカレてます。三者三様に超ぶっ飛んでます」

白井「お、お姉様…!」

縋るように白井は御坂の指示を仰ぐ。

この状況をどうにかできるのはお姉様しかいない。そう思っているのだ。


御坂「…」


だが、御坂も何も答えられない。

麦野には一度勝った。しかし、あの時は婚后も食蜂もいた。

おまけに今回は【超電磁砲】に使える金属類すらほとんどない。ジリ貧になって終わりだ。

一方通行には例え相手がシラフだろうが勝てない。ほんの2ヶ月前に完封されたばかりだ。

弱点があるとはいえジャミング電波はすぐに消されてしまう。

上条に至っては攻略法すらない。

【超電磁砲】だろうが10億ボルトだろうが全部消されてしまう。

おまけに身体能力が異常に飛躍して捉えることすら困難だ。

この三人を同時に相手しろというのか。

こちらにはすでに腕がボロボロで戦えない人間がいるというのに。



御坂「ーっ、黒子!飛んで!一旦退くわ!!」


勝てない。勝てるはずがない。このまま挑んでもやられるだけだ。

おまけに洗脳されて自分の能力を好き勝手使われる可能性だってある。

ならば、最悪の結果になる前に退いた方がいいに決まってる。


白井「わ、わかりましたの!」


御坂の指示を受けてすぐに白井は二人の身体に触れる。

一度に駐車場までの転移は白井の限界距離の問題上不可能。

白井の能力では一度どこかに転移し、そこから駐車場へ転移しなければならない。


麦野「逃がすか!」


ゴウ、と【原子崩し】が射出される。

【空間移動】の演算が終わる前にたたき潰すつもりだ。


御坂「くっ」


バチィ!と御坂が【原子崩し】を弾く。

これまでに受けたどの【原子崩し】よりもはるかに威力が高く、重かった。

そこから一瞬の間を置き、三人の少女は【空間移動】に成功した。


麦野「チッ、本っ当に腹立つなあのジャリガキ」

一方通行「なァに、どォせ逃げらンねンだ。かまやしkbpgd」

???「…ぁ…ヵ」

上条「ん?」



-屋内演習場、駐車場



ヒュン、と三人の少女は駐車場に現れた。

二度の転移は滞りなく成功。あとは追撃が来る前にいち早く脱出するだけだが


絹旗「!」

白井「こ、これは…」


三人の目に飛び込んできたのは絶望。

暗い駐車場は踊るような光で明るく照らされていた。


御坂「うそ…」


乗ってきた三台のワゴン車は黒煙をあげて燃え盛っていた。

絹旗と白井が出陣するまでは確かに三台とも無事だったのだ。

おまけに御坂が電磁波で周囲の敵の有無を確認していた。

それでも車は燃やされてしまった。運転手の安否も分からない。ここからどうやって退却すればいいのか。

【空間移動】にも限界がある。白井に11次元演算を延々と行わせて逃げ切れるかどうか。

誰が追っ手にくるか分からないうえに、どこに敵が潜んでいてどこから湧いてくるかもわからない。

そんな神経をすり減らす状況で白井に二人抱えさせて連続で転移させて逃げ切れるのか。


絹旗「っ!誰か来ます!」


突如絹旗が叫ぶ。見ると建物の陰から三台のバイクが現れた。

演習場の規模故の広い駐車場に大きなエンジン音を響かせ、三台のバイクはヘッドライトを三人に当てて突っ込んでくる。


白井「くっ、うちひしがれてる暇すらありませんの!」


とっさに白井は鉄矢を指の間に転移させ、臨戦体勢に入る。

おそらくは矢をタイヤに打ち込みパンクさせるつもりだ。


御坂「! 黒子待って!」


しかし、御坂がそれを制した。


白井「お姉様!?」


当然白井は驚く。このまま突っ込んでこまれたら三人とも弾き飛ばされる。

しかし、御坂はそれでも制した。

なぜならその内の一台、そのライダーの格好に見覚えがあったからだ。


ギキイィィ!と三台のバイクは三人の前で車体を横に滑らせて止まった。

ライダーは全員フルフェイスのヘルメットを被り、誰かはわからない。

しかし、右端の一人は明らかに見覚えがある。

科学技術が発達した学園都市でなおも颯爽と走り続けるZⅡ。

その車体にまたがっているのはキツくなった赤い革ジャンに身を包んだ女子高生。


固法「御坂さん!白井さん!乗って!!」

白井「こ、固法先輩!?」


【透視能力】の強能力者、『風紀委員』一七七支部部長、固法美偉。


御坂「固法先輩、どうしてここに!?」

固法「話は後!!早く逃げるわよ!!」


フルフェイスのヘルメットを被りながら、エンジン音に負けないように固法は声を張り上げる。

その緊迫した雰囲気につられて御坂と白井の二人は慌てて固法の後ろにまたがった。


???「嬢ちゃんはこっちだ!」

絹旗「わ!?」


真ん中の黒い革ジャンがRXから降り、絹旗を軽々と抱える。

そしてそのまま後部に乗せ、自身も再びRXにまたがりハンドルを握った。


???「これで全員か!?」


最後の一人が声を張り上げる。声色からして男。

しかもよくよく見ればジャケットの上からでも分かるくらいに筋骨隆々の大男だ。



ゴバアア!!といきなり轟音が駐車場に響きわたる。

音の正体はおそらく爆発。大小様々な瓦礫をまきあげ、演習場の屋根が吹き飛んでいた。


???「な、なんだありゃ!!」


黒い革ジャンが驚愕の声をあげる。

音の正体は爆発ではなかった。

真の正体は翼。屋根から突き出たのは暗い夜空で燦然と輝く巨大な白い翼。

その白い翼はぐんぐん演習場から出ていき、ついにはその根元を現した。


御坂「垣根さん!?」


その根元にいたのは血まみれになったLevel5の第二位【未元物質】垣根帝督。

遠目からでも瀕死状態でぐったりしているにもかかわらず、意識だけはしっかりしている。

巨大化した【未元物質】を操り、地下の壁も地上の施設もすべて破壊して脱出しようとしている。


だが、血まみれの大天使のような垣根を撃ち落とすべく流星群のように先ほどの倍以上の大きさの【原子崩し】が次々に垣根を襲う。

【未元物質】の翼を振るい【原子崩し】を打ち払うも、あまりの威力に身体のバランスが危なかしげにグラグラと揺れた。

そうこうしているうちに今度は黒い翼が垣根を襲う。

下から迫りくる黒い翼は垣根がガードで張った白い翼をすべて貫き、ぐちゃぐちゃにかきまぜるように蹂躙する。

そして黒い翼は無造作に【未元物質】の残骸ごとまとめて垣根を弾き飛ばした。


弾き飛ばされた垣根は【未元物質】の羽根を周りにまとわせ駐車場へと落下してきた。

高所から叩き落とされ、激突すれば今度こそ命はない。

しかし【未元物質】の羽根が垣根よりも速く落下し、垣根の落下点、三台のバイクの前に集まる。

そして垣根は大きな円となった【未元物質】の上に音もなく落下した。

落下の際の衝撃は、一見そうは見えないが【未元物質】に吸収されたようだ。

近くで見る垣根は一層凄惨だった。

致死量と言われてもおかしくないほどの血にまみれ、もはや赤黒くないところがないと言っていいほどだ。

その垣根が首だけを動かし、バイクの方を見る。


垣根「 ツ レ テ ケ 」


それが最後の力だったようで【未元物質】は消え、垣根はぐったりとコンクリートの上で気絶した。


???「…後で洗車だな。」


あまりの出来事に見とれていた一向はようやく動きだす。

筋骨隆々の男が垣根を抱き抱え、VMAXの後部に乗せた。

それを合図に三台のバイクは屋内演習場の駐車場から飛び出した。



-???


匪口「スゲー!超スゲかった!!もはや感動モンだよありゃー!!」


屋内演習場とは別の施設でメガネの青年はモニターを前にはしゃぐ。

そのモニターの半分には砂嵐が、もう半分には地下演習場の様子が様々な角度から映されている。


匪口「そこらの3D映画なんかより断っ然迫力あったな!こいつ編集して公開すりゃー全米なんて簡単にスタンディングオベーションだろ!!」


実は、このモニターには今の今までずっと学園都市の頂上決戦が流されていた。

その一部始終を食い入るように観戦していた青年は大満足で顔中に笑みを浮かべて大はしゃぎだ。


匪口「いっそガチで編集してみるか?歴代興業収入の順位が軒並み全部繰り下がるぜ?なあ、ミサカ」




匪口「…ミサカ?」


いつも返ってくるおかしな口調の少女の返事がない。

不審に思い、匪口はモニターに背を向けた。

するとそこには血を流してうつ伏せで倒れているクローンの少女。

対になる位置で血を流して仰向けで倒れている【死角移動】の青年。


匪口「…ミサカ?査楽?」


そしてその間に悠然と立っている、さらしを巻いた女子高生。


ぶるり、と匪口の身体が震える。

顔を下に向けると、自分の身体から赤黒い液体にまみれて鈍く光る刃物が生えていた。


匪口「…ゴフッ」


刃物が引き抜かれると同時に、匪口は床に倒れこむ。

どちゃり、という音が室内に響いた。


匪口「な、んで…」


苦痛に顔を歪ませ、傷口を押さえつけながら匪口は問いかける。


匪口「六位の能力を解析して作られたこのシェルターは…一部の理事会のみ知る極秘施設だったはずだ…なのに、なんで…」

???「…さあな。ただ一つだけ言えることは」


後ろから匪口を刺した金髪グラサンの男は自分の口角から溢れる血液を拭って吐き捨てる。


土御門「この世界を構成する要素は科学だけじゃねぇってことだ」



-第二学区、大通り



???『高速には乗るな!【六枚羽】に狙い撃ちにされるぞ!』


フルフェイスの中では無線を介した音声が響く。

屋内演習場から脱出した三台のバイクは第二学区の大通りを爆走していた。


???『ハハッ、誰もいない公道ってのは気持ちいいな!180出しても事故る心配がねぇ!』

固法『この状況で楽しめるなんて流石ね、先輩!』

???『どっちも大概だがな!』


エンジン音と風を切る轟音の中ではまともに会話もできない。

千変万化する状況に臨機応変に対応するためにヘルメットそのものが簡易無線機の役割を担っている。

有効範囲は約200M。携帯電話と違い、基地局を介することもなく極めて限定的な範囲内での通信である。

そのためにプログラム人格による干渉を心配する必要もない。


御坂「固法先輩!何がどうなってるんですか!?」


その固法に身体を密着させながら御坂が叫ぶ。


白井「なぜ私達の場所が分かりましたの!?てゆーかノーヘル3ケツスピード違反で免停まっしぐらですの!!」


そのさらに後ろで御坂に身体を密着させた白井が叫ぶ。

しかし、二人の声は固法に届かない。絶え間なく響く轟音に加えてフルフェイス内は無線の真っ最中だ。

聞き取れないし、答えられない。

二人に出来るのは前の人間にしがみつくことだけだ。


???『敵!来たぞ!』


筋骨隆々の男が叫び、無線を介して他の二人に伝わる。

ミラーに映るのは大量の自転車。そのペダルをあり得ない速度で回す無数の人間。


???『んだありゃ!?学園都市であんなチャリンコ軍団見たことねーぞ!?』

固法『風紀委員のトレーニング用の自転車です!』


そしてさらにあり得ないことにチャリンコ軍団はバイクとの距離を詰め初めている。

バイクの速度はすでに180キロを超えているのにだ。


???『やっちまうか!?横須賀!』

横須賀『振り切れるか分からんがな。』


横須賀と呼ばれた筋骨隆々の男と黒い革ジャンの男は片手をジャケットの中に忍ばせる。

再び取り出した手には手のひらサイズの何かが無理やり2~3個握られていた。

そして速度を維持しながらその何かをそのまま地面に落とし、走り去る。


ほんの数秒後、ドゴゴォン!という音と共にそれらは爆発した。

後ろから襲いかかる自転車集団はその爆発に飲み込まれた。


固法『な!?なんですかいまの!』

横須賀『何の変哲もないただの手榴弾だ。』

固法『風紀委員の前でなんてもの使ってるんですか!』

???『こうでもしなきゃ撒けねえだろうが!それに狙ったのはコンクリの方だ!多分死にゃしねぇから安心しろよ!』


言われて固法はミラーをちらりと見る。

すると爆煙の中から出てくる人数は大分減っていた。

想定されていない速度で想定されていない地面を走らされた自転車は、タイヤがパンクしていたりそのフレームがイカれていたり。

もはやまともな追跡はできないようだった。


???『……ぃ…!…り…い…らあた…い!固法先輩!聞こえてたら頭を振ってください!』


ふいに今までの三人とは別の声がヘルメットの中で響く。


横須賀『む?』

???『なんだ?』

固法『御坂さん?どうやって無線に介入してるの?』


うなずきながら固法が応える。聞こえてきた声は今後ろに乗せている少女の声だ。


御坂『あぁ、やっと通じた。今目の前で飛び交ってる電波に周波数合わせて無理やりしゃべってます!
   一方的にしゃべるのはできるんですけど、さすがに受信はできないんでジェスチャーで答えてもらえますか?』

固法『えぇ』


そう言いながら固法は小さくうなずいた。

3台のバイクはそのままのスピードで第二学区の大通りを道なりに猛進していく。


御坂『えっと、とにかく固法先輩も黒妻さんもそっちのムキムキの人も味方でいいんですよね!?』

黒妻『へえ、俺だって分かってたのか』

横須賀『ムキムキの人て。まあ構わんが。』

固法『ええそうよ!』


高速で走るバイクを操りながら固法は力強くうなずく。


御坂『分かりました!この学区から脱出できたら詳しい事情を教えて下さい!3人とも助けてくれてありがとうございます!!』


誰もいない第二学区にさらに轟音が加わる。

それは後方の空から聞こえる轟音。プロペラが空気を叩く音だ。


黒妻『来たぞ!【六枚羽】だ!!』


大通りの上空に巨大な軍用ヘリがサーチライトを光らせ現れる。

最高速度で軽く音速を超える軍用ヘリは難なくバイクへ近づいて来る。


横須賀『気付かれたか!小道入れるか!?』

黒妻『この速さで曲がれるわけねえだろ!』

固法『どうするんですか!?このままじゃ蜂の巣ですよ!?』


限界までアクセルを回そうが馬力では完全に負けている。

かといって、曲がれるようなスピードまで落とせば狙い撃ちだ。

できることはギリギリまで引き付けたあとに一度完全に止まって細い道に入るくらいだが、それまでに【六枚羽】が火を吹かないかどうか。


白井「お姉様!確認しますがあのヘリは無人ですのよね!?」


御坂の後ろで白井が声を張り上げる。


御坂「ええ!そのはずよ!」


そして御坂も声を張り上げる。固法と違ってヘルメットをしていない御坂には白井の声はしっかり届いた。


白井「それを聞いて安心しましたの」


今度は御坂には聞こえないような声で白井はつぶやく。

その顔はにっこりと笑っていた。

シュン、と白井の姿が消えた。


御坂「黒子!?」



一度前方の何もない空間に転移。そして手頃な建物を見つけ、さらに二度転移してその屋上へ。

三度の転移を終えた白井は胸を張って【六枚羽】を見据える。

白井が降り立った建物はまだバイクも通過していない。

一足先にほんの少しだけ先に回り込んだのだ。

数秒もすればバイクも【六枚羽】通過する。


白井「学園都市の最新鋭兵器。相手にとって不足なしですの」


彼女の考えていることは明白だ。一人で【六枚羽】を相手するつもりだ。

都市一つくらいなら廃墟にして帰ってこれる兵器を相手に重火器すら持たずに中学生が立ち向かう。

いくらなんでも無謀すぎる。勝てる訳がない。


普通なら。


白井は自分を囮するつもりはない。玉砕するつもりもない。

忘れてはいけない。彼女の能力を。そして、彼女が今担いでいるものを。



白井「そこっ!」


【六枚羽】が白井の横を通り過ぎる。同時に白井の担いでいたピンクが消える。

ズガガガガガガガガガ!!と耳をつんざく音が第二学区に響いた。

【六枚羽】のプロペラがなぜか斜め上を向き、テール部分を切り裂き、プロペラはぐちゃぐちゃになっていく。

みるみる内に【六枚羽】は無惨な形になってしまった。


白井「あらあら、プロペラと本体を分離させるつもりでしたのに…。さすがに速すぎて照準が狂いましたわ」


身体の向きは変えずに流し目で地面へ墜ちていく【六枚羽】を見ながら白井はつぶやく。

やがて【六枚羽】は墜落し、到底表すことのできないようなとてつもない音と共に盛大に爆発した。


【空間移動】の大能力者、『風紀委員』一七七支部所属、白井黒子。

あとにも先にもランドセルで最新鋭軍用ヘリを撃墜した、ただ一人の女子中学生である。


今回はここまでです。
8月完結予定がもう9月になる…


レスありがとうございます。
やっぱフレンダは愛されてるんだなぁ…と思いました。
おこがましいかも知れませんが、このSSを読んで禁書やネウロの原作を読み初めてもらえたら幸いです。


とうとう前スレの設定出てきました…。
何回か言いましたが、次から第六位含めて多少オリジナル設定が出てきます。ご了承ください。


-三十分後、第二十二学区スパリゾート『安泰泉』



自転車集団と【六枚羽】の追撃を振り切り、着いた先は第二十二学区だった。

この学区は地上面積こそ狭いが、地下に向けて開発が行われている。

この学区なら新たな【六枚羽】に襲われる心配もなく、また、スパイ衛星で監視される心配もない。

ちなみに、この学区の最下層部分はまるごと核シェルターになっている。

この学区の住人及び個々人の理由でこの学区にいた人間はそこに避難している。

また、地震に対する備えもある構造であるというゴシップもあるためにわざわざ隣の学区から避難しにきた者もいた。

一方通行の能力が地震と同じ現象を起こすのかは分からないが。

だが、一向は最下層まで行かずに第三階層で降り、なぜかスパリゾートの入り口にバイクを横付けしていた。


白井「…駐車違反ですの」

固法「非常事態にそんな条例適用されないわ」

御坂「…固法先輩がそんなこと言うとは思いませんでした」

固法「あら、私としては二人にこんなこと言われるのが意外で仕方ないけど?」クスクス

白井「しかし、ここにいて大丈夫なのですか?第一位の能力が来るのでは…」

固法「それは心配だけど…先輩が大丈夫って言ってるしね。なんの根拠もなしにそんなこと言う人じゃないわ…多分」



横須賀「黒妻、手伝ってくれ。」

黒妻「おいおい、さすがにそいつは仮病院送りだろ」

横須賀「そう思ったんだがな…よく見てみろ。」

黒妻「?………マジかよ、血ぃ止まってやがる」

横須賀「さっきは意識もあったぞ。病院に連れていくと言ったら断られてな。」

黒妻「…暗部の人間は病院が嫌いなのか?この娘も行かないっつって聞かねぇんだ」

絹旗「事情も分からない部外者になるより事情を知ってる関係者になりたいだけです。何がどうなってるのか聞いたらすぐ病院行きますよ」

黒妻「つってもその腕めちゃくちゃ痛いだろ。さっきから脂汗ダラダラだぞ?バイク乗ってる時も脚だけで乗ってたろ」

絹旗「…そりゃ超痛いですよ。ですが、どうしてもこの件から降りたくないんです。
   病院行っても何かできることを見つけるために現状だけでも知りたいんです」

黒妻「…そうか。それだけの覚悟があるならもう何も言わねえよ。ただ、我慢できなくなったらすぐ言ってくれ」

絹旗「気持ちだけもらっておきます」


-スパリゾート『安泰泉』、ゲームセンター



『安泰泉』は俗に言うスーパー銭湯がメインであるが、他の設備も充実している。

ゲームセンター、ボーリング場、ショッピングモール等々、どちらかというとアミューズメント施設である。

一向は黒妻と横須賀の先導でその内のゲームセンターの中へと入っていった。

意識のない垣根は黒妻と横須賀の二人が垣根の腕を首に回し、少し浮かせながら運んでいた。

黒妻より横須賀の方が幾分背が高いためバランスが悪くはあったが。


横須賀「黒妻、ちょっと頼む。」

黒妻「おう」


二人がかりで垣根を運んでいた片割れは、もう片方に垣根を預けてとある扉の前に立った。

扉には何も書かれていない。スタッフルームか、在庫置場か、はたまた用具室かも分からない。

その扉の鍵を横須賀がガチャリと開ける。

電子ロックでないのは能力対策か、もしくは別の意味があるのか。


横須賀「入ってくれ。」


扉が開かれ、横須賀は再び垣根の脇の下に潜り込みながら促す。

扉をくぐると、そこは在庫置場でも用具室でもなかった。


御坂「…え?」


どこかのマンションのリビングにいきなり入ったような光景だった。

白を基調として家具も一式揃っている。とてもゲームセンターにある空間ではない。


???「うわぁ!?だ、大丈夫なんですかその人!!」


そして、聞き慣れた声が一向を迎える。


御坂「佐天さん!?」

白井「な、なぜここに佐天さんが?」

佐天「あ、御坂さんに白井さん!二人は無事ですか!?」


柵川中学のセーラー服に身を包んだ佐天がそこにいた。

心配そうな顔で一向を伺っている。


???「そっちの部屋ベッドがある。そこに寝かせとけ。救急箱もその部屋のどっかにあるはずだ」


そして、リビングの奥に佐天とはまた別の制服に身を包んだ女子高生がいた。

少しウェーブがかった髪で、なぜか刃の部分が石でできた巨大な木製のノコギリのようなものを床に突き立て、柄に両手を置いている。


横須賀「ああ、分かった。応急手当だけでもしておこう。…一緒に来い。その腕もやってしまう。」

絹旗「…いいんですか?」

横須賀「重傷の小学生を放置するほど俺の根性は曲がってはいない。」

絹旗「私は小学生じゃ…ってこの格好じゃ超小学生にしか見えませんね…」


???「……おい、あの優男はどうした。一緒じゃないのか?」

御坂「…え?私?」

???「そうだ。一緒にいるという報告だったが?」

御坂「………海原さんのこと?」

???「イヤ…あー、そうだ。そいつだ」

御坂「…ごめんなさい、海原さんは私を庇って…」

???「! 死んだのか?」

御坂「ううん、たぶんだけど死んではいないと思う。でも、きっとあのプログラム人格の支配下に…」

???「ホッ…チッ、どうやら平和ボケしているようだな」

御坂「あ、でもその海原さんは本人じゃなくて」

???「その偽者の方に用があったんだ。…クソ、いっそ死んでしまえば手間がはぶけたというのに…」


横須賀「…リビングに8人か。さすがに狭いな。」


ふと横須賀が垣根を連れていった部屋から現れた。その隣には黒妻と絹旗もいた。


固法「あの人は手当てしなくていいんですか?」

黒妻「断られちまった。寝てりゃ治るってよ。人間じゃねぇぞアイツ」

固法「コンクリート建築の二階が全部吹き飛ぶような爆発に巻き込まれて五体満足で帰ってきた人のセリフですか?」

黒妻「俺ァさすがに集中治療室行きだったっつの」

横須賀「そこのソファーに座ってくれ。立ったままでは少々やりづらい。」

絹旗「…分かりました。超お願いします」




???「ふむ、これだけの人数が来るとは…本命の作戦は失敗かの」


ふと、また別の部屋の方から白髪でサングラスをかけ、白衣のを着こんだ博士のような老人が現れた。


博士「一応確認するが…一方通行とプログラム人格の討伐は失敗、でよいかな?」

御坂「…ええ」

博士「そうか。…そちらのリーダーはどうした?」

横須賀「合流する暇などなかったのでな。現場に置いてきた。その内帰ってくるだろう。」


手当てをしながら、白衣の老人の方を見向きもせずに横須賀が答える。


博士「…薄情じゃの。それとも信頼の表れか。まあよい」


ふぅ、と一息ついて白衣の老人は一同に向き直る。


博士「ようこそ、我が『メンバー』のアジトへ。窮屈だろうが、準備ができるまでしばしここで待機してくれたまえ」


御坂「『メンバー』…あなた達も暗部ってやつ?」

博士「いかにも。もっとも、わしが偏光レンズの製作に没頭しとる間に
   プログラム人格めに大半の構成員をもってかれたがね。今残っているのはわしとアス」

???「おい」ギロリ

博士「…もとい彼女だけになってしまった」


そう言いながら、白髪の老人は手近なソファーに腰をかけた。


絹旗「? そっちの革ジャンカップルとこのテロリスト面は違うんですか?」

固法「カッ…!?」

黒妻「…まあ、デザインお揃いだしな。そう見えるか」

横須賀「誰がテロリストだ。」

博士「そちらの者たちは私の一味ではない。君たちが合同任務であったように、我々もまた合同で任務に当たっていたのだよ」

絹旗「…なるほど。でも、自分とこのアジトをこんな簡単にバラしていいんですか?」

博士「なに、すぐに引き払うさ。次来た時には物置か何かになっとるだろうよ」


白井「そ、それよりここにいて大丈夫ですの?今にも学園都市崩壊の危機が訪れるかもしれないですのに!」

佐天「そ、そうですよ!さっきからここにいろとしか言われてないから不安で仕方ないんですけど!」


電波ジャックの際にたしかに警告し、そして実演していた。

学園都市がプログラム人格の居場所に攻め込んだ場合、この街を地盤から破壊すると。


博士「ふむ、たしかに。だが、今しばらくは安心なはずだ。第六位めがたとえ刺し違えようとも一方通行の能力を封じているはずだからの」


落ち着き払った様子で白髪の老人は答える。

最悪の事態は起こらないと確信しているようだった。


御坂「第六位…?まさか、あそこに一人で突っ込んだの!?いくらなんでも無謀すぎるわよ!」


もともと第六位は御坂たち後発隊の後詰めとして合流する予定だった。

しかし後発隊が地下演習場へ突入した後、入り口は封鎖された。以降、恐らく出入口はふさがれたままだったはずだ。

ならば、第六位は御坂たちが脱出したあとに一人であの地獄に入っていったことになる。

通常よりも大幅に強化された、自分より序列が上のLevel5が二人。そしてどんな能力も無効化してしまうという人間がいる地獄に。

いくら刺し違える覚悟があろうとも、その状況でたった一人で一方通行の能力を封じ込められるはずがない。




???「なに言うとんねん。ずっと一緒に居ったやんか」

御坂「!?」


ふと、アジトの入り口の方から今まで聞こえなかった低い声がした。

その声に驚き慌てて入り口の方を向くと、青い髪の大きな少年がいた。


横須賀「なんだ。もういたのか。」

黒妻「よ、リーダー。早かったな」


そして青い髪の少年の右腕に抱え込まれる形で身を寄せていたのは、殺されたと思われていた金髪にベレー帽の少女。


フレンダ「ん?能力切った訳?」

???「ああ」

絹旗「フレンダ!?な、え!?なんで!?」


もはやこの世にいないと思っていた少女のいきなりの出現に絹旗が驚いてソファーから立ち上がる。


横須賀「おい、急に立ち上がるな。」

フレンダ「なんでってなによ。死んでほしかった訳?」


そのリアクションを受けて金髪ベレー帽の少女は不機嫌そうにジト目で体操服の方を見た。


絹旗「そんな訳ないじゃないですか!…よかったぁ…超よかったです」


憎まれ口を叩かれ、現実であることを実感し、絹旗は安堵したように再びソファーに座りこんだ。


フレンダ「…ニャハハ、ただいま絹旗」



御坂「でも…本当になんで無事なの?」

白井「私達はてっきり第四位の能力に飲み込まれてしまったものと…」


その現場にいた三人はたしかに見たのだ。

【原子崩し】に飲み込まれ、跡形もなく消えてしまった瞬間を。


フレンダ「さすがに私も完全に死を覚悟したわ。でも結局、間一髪でア  が能力使いながら助けてくれた訳よ」

絹旗「…え?誰です?」


一瞬だけ名前が聞こえず、絹旗が聞き返す。

自分ではしっかり喋ったはずなのに、声が出なかったので不思議がるフレンダ。

その隣では背の高い青髪の少年が意味深にフレンダを見下ろしていた。


フレンダ「…コホン。あー、このイケメンな青髪ピアス君が助けてくれた訳よ」

青ピ「おいおい誰がイケメンや。照れるやんか」


あっはっは、と笑いながらおどける青髪ピアス。

その流れをどことなく不自然に思う者はいたが、それを追及する者はその中にはいなかった。


佐天「…んー、中の上?」

青ピ「高評価として受け取っておくわ」



青ピ「てなわけで!暗部組織『ウォール』のリーダー。Level5の第六位【隠密行動】(ステルスアクト)や。よろしうな」

佐天「ええ!?第六位の人だったんですか!?」


簡単な自己紹介に佐天が驚く。

すでにそれとなく言及していたのだが、話の流れでいつの間にか忘れてしまっていた。


青ピ「せや。あんま人に言わんといてな?これ一応秘密やさかい」



固法「先輩…さっきあの人のことリーダーって言ってましたよね?」

黒妻「…今いるチームのリーダーなんだ。詳しく聞かないでもらえると助かる」

固法「………分かりました」

黒妻「ワリィな。いつかちゃんと話す」



御坂「でも…アンタ一人でどうやって一方通行を?」

青ピ「簡単な話や。バレへんようにコイツでチョーカーのコードだけを撃ち抜いたんよ」


そう言って青髪ピアスは懐から拳銃を取り出してクルクルと回した。


白井「ど、どうやったらそんなことできますの?」

青ピ「んー、その辺話すとごちゃごちゃするから1から話したいんやけど…博士はん、まだ時間かかるか?」

博士「ふむ…全てのプログラムが作動するまで…あと20分前後、といったところか」

青ピ「ほんなら手短にパパッと話そか。時間限られてるさかいあんまり質問せんといてな」



青ピ「僕たち『ウォール』と『メンバー』は君たちが敗れた場合の備えるためと混乱抑止のために動いてたんや。
   僕は単独で第二学区。博士はんとそこのJKで第二十三学区。黒妻はんと横須賀で火事場泥棒の撲滅や」

横須賀「俺と黒妻はスキルアウトの間ではそれなりに有名なのでな。警備員には分からんようなこともいくらか知っている。」


プログラム人格による電波ジャックの後、すぐさま強行策を取った学園都市は都市住民全員に避難勧告を出していた。

だが、都市住民全員が避難するということは学園都市が空っぽになるということだ。

性根の悪い者ならそのタイミングで火事場泥棒となりあらゆるところに侵入する。

もちろん警備員もそれを想定していたが、避難民の誘導に大半を割かれていたため、どうしても手の回らない所が生じていた。

それをカバーするのが横須賀たちの任務である。

そのため心当たりのあるスキルアウトの根城などを回っていたのだ。

おそらくは、他にもこの任務を与えられた暗部組織があるのだろうが。


黒妻「それで学園都市中を走ってたら偶然2ケツしてる美偉に出くわしたんだ」


白井「そもそも固法先輩と佐天さんはなぜ避難していないのですか?」


御坂と白井は上からの招集依頼のために、避難せずに第二学区へ向かった。

だが、固法と佐天にそんな依頼は来ていないはずだ。

佐天はいち早く避難しなければならないし、固法は警備員のサポートに回らなければならない。

にもかかわらず、なぜバイクを乗り回すという行動を取っていたのだろうか。


佐天「それが…初春が急にどっか行っちゃったんですよ。支部の窓から飛び降りて。それで初春を探すためにあちこちバイクで走り回って…」

御坂「…」

固法「で、ほとんどの人間の避難が終わって街中が閑散としてきた頃に先輩たちに出くわしたの」

黒妻「俺も美偉も互いに避難しろの一点張りでな。しょうがねえから一旦ここにそっちの娘だけ置いて一緒に行動するってことで妥協したんだ」

佐天「さすがに私がいても邪魔そうでしたんで。いろんな意味で」

固法「…え?」

横須賀「見てて飽きなかったぞ、こいつらの痴話喧嘩は。」

黒妻「痴話喧嘩っておい」


青ピ「ほんで僕は自分の任務が終わってから屋内演習場の施設でもう一働きして、そのまま君らに合流や。気ぃつかんかったと思うけど」

絹旗「合流って…いつからですか?」

青ピ「最初っからやよ。駐車場で君らのコト待っとったんやから」

御坂「うそ…私の能力であの馬鹿以外は全員把握してたはずなのに」


屋内演習場に着いてからすぐ、御坂は電磁波を限界まで張って探知を行っていた。

その時点ではたしかに駐車場には後発隊しかいなかったはずだ。


「ま、僕の能力はこーゆータイプやからね」

白井「!?」

佐天「あれ!?消えた!?」


なんの音も前触れもなく、青髪ピアスの姿が消えた。

消えたあとも声は聞こえているので【空間移動】ではない。たしかにそこにいるのだ。


御坂「…? 電磁波も返ってこない…どんな能力?」

「存在解像度をがっつり下げてるんや。ちなみに電磁レーダーでなくとも僕を感知することはできひんよ」


これがLevel5の第六位【隠密行動】の能力だ。

極限まで存在解像度を下げることにより、あらゆる探知機を欺き、気配などの第六感すら欺く。

だからこそ、御坂にも探知されず、HALにも見えない。

とはいえ、見えない感じないというだけで実際にはそこに存在しているのだ。

触れることはでき、すなわち攻撃が命中すればダメージも与えられる。


青ピ「っと。で、君らと一緒に居って戦闘の邪魔にならんように隅っこでおとなしうしてたんや」

フレンダ「そういえばなんで戦闘に参加しなかった訳?」


再び姿を現した青髪ピアスに驚きもせずにフレンダが問いかける。

誰にも気付かれないというアドバンテージがあるならあの戦闘も少しは状況が変わったように思えるが。


青ピ「あくまで僕は保険の保険や。あんまりちょこまか動いとったら第一位に気付かれるかもしれんかったからな」


後詰めとはいえ、あくまで一方通行の能力を封じ込めるのが青髪ピアスの任務。

無闇に戦闘に参加すればさすがに気付かれるだろうし、強化された一方通行ならどこかのベクトルから違和感を感じ取ってもおかしくはない。

さっさと一方通行の能力を封じ込めようにも、とてつもない速さで動く一方通行のチョーカーのコードのみを狙い撃つなど不可能。

だからこそ虎視眈々と狙っていたのだ。

一方通行が無防備になるその瞬間を。


青ピ「ほんで最初の【電子ドラッグ】は【未元物質】の中に君らと一緒に入って、
   二回目の【電子ドラッグ】はフレンダの近く行ってスタングレネードでやりすごしてん。
   で、間一髪でフレンダを僕の能力でかくまって、君らが消えて油断してる第一位のコードを狙い撃ちっちゅうわけや」

横須賀「…む?そういえば、あの黒い翼は誰の能力だ?」

青ピ「あぁ、あれも第一位やよ」

横須賀「……コードを撃ち抜く前だよな?」

青ピ「イヤ、後や」

黒妻「は!?じゃあまだ能力奪えてねえじゃねえか!」


垣根の【未元物質】と対になるように出てきた黒い翼。

あの翼が一方通行の能力でできたものなら、一方通行の能力は奪えていないということになる。

そうなればこの場所も危うい。今すぐにでも学園都市が崩壊してもおかしくない。


青ピ「大丈夫やって。なんや第二位の捨てゼリフに呼応して出てきただけみたいやし」


黒妻「捨てゼリフ?」

青ピ「えーっと、なんやったかな…たしかあそこに居った連中と二~三言葉交わした後に
   『ロリコンってだけじゃ悪にはならない。ああいった連中が異端者扱いされてんのはお前みたいなヤツがハシャいでるせいだ』」

フレンダ「『権利の獲得?思想の自由の保証?馬鹿馬鹿しい。そういった口上がテメェの首を絞めてることくらい、気付かないのか?』
     あまりに正論すぎて覚えちゃったわ。結局、アレはその言葉を聞いて逆ギレした第一位の暴走の産物な訳よ」



御白絹「」



固法「…はい?ロリコンがなんですか?」

黒妻「つーかなんでそんなワードが出てくんだ?」

横須賀「Level5の第一位がロリコンということもあるまいに。」

青ピ「イヤ、ロリコンやねん。生粋の」

フレンダ「10歳以上は恋愛対象外って豪語してたわ」



固黒横「」



???「…おい、学園都市の人間はみな年端もいかぬ者に恋愛感情を抱くようになるのか?」

博士「…少々話しかけないでくれないかね。今科学の結晶の側面に触れてめまいがしているところだ」

???「そ、そうか」



青ピ「で、僕はフレンダ抱えて【未元物質】に無理矢理捕まって一階まで脱出してたんやけど、アレ見たら撤収できひんやろ。
   せやからもっかい行こと思たんやけど【未元物質】追っ払ったら第一位もぶっ倒れよった。その後も寝たきりやったし、任務は無事成功や。
   あの黒い翼は一時的なもので、常に出すのは不可能なんやろ。どのみちあのチョーカーが直るまで第一位は学園都市の崩壊なんてできん」


淡々と話す青髪ピアス。しかし、言ってることはとんでもないことだ。

人一人抱えて大天使にぶらさがって一階まで上がり。

下から襲いかかる流星群を瓦礫の中でやり過ごし。

悪魔の翼の出どころとその後の状態を危険を冒してわざわざ一階から確認しているのだから。


青ピ「で、屋内演習場から脱出したら地下鉄まで徒歩で行って、地下鉄を線路沿いにアルマジロみたいな駆動鎧着てここまで来たんや」

絹旗「…超ツッコミどころ満載なんですけど」

青ピ「堪忍な。時間切れや」


そう言って青髪ピアスは壁にかけられていた時計を指す。

時計の長針は先ほどの位置から90度ほど変わっていた。



博士「…では、御坂嬢。来てもらおうか」


おもむろに白髪の老人が立ち上がり、御坂を促す。


御坂「…え?」

博士「まだ我々の任務は続いているのだ。これで失敗したら…ふむ、学園都市は今度こそ終わりかの」

青ピ「ホンマはこないな重大なことを表の、しかも中学生にやらせるなんて反対なんやけどな」


暗部組織のリーダーである二人はすでに御坂が全てを知っている前提のように一方的に話す。

しかし、御坂にとってはなんのことかさっぱり分からない。


御坂「ちょ、ちょっと待ってよ!私に何をさせるの!?こんな状況で私にできることなんて…」

博士「私はあの電波ジャックの後、混乱に乗じて第二十三学区にある君の切り札を少々いじってきた。
   あやつに気取られる可能性があるので君がここに来るまで起動させられなかったが、先ほど遠隔で起動させた」

御坂「! …なんでそんなこと知ってるの?…それにアレはこの状況じゃまだ役には…」

青ピ「それを役に立たせるために僕らは動いてたんや」


ニッ、と青髪ピアスが笑いかける。


青ピ「僕の仲間も一人あのプログラム人格に連れてかれてもうてん。ちょいと酷やけど、よろしく頼むわ」



-???



何ということだ…


一方通行と匪口裕也がやられるとは!!


一方通行はあの状況から考えるに【未元物質】…もしくは…第六位もありうるか


…匪口裕也が防衛していた『スフィンクス』は破壊され、残る『スフィンクス』は一体


万が一に備えていたのが裏目に出たか


トマス=プラチナバーグをはじめ、あの施設を知る人間は全員こちら側のはずだが…


…今は考えるべき時ではない。動くべき時か


とはいえ、各学区で新しい『スフィンクス』のダウンロードは始めている


一方通行が一時戦闘不能とはいえ、向こうの戦力は粗方削いだ


それに発動条件こそ不明だが、あの状態でも一方通行には未知の力もある


全ての要素を駆使し、護りきれる


そして一方通行のチョーカーが直り次第…見せしめに第七学区でも崩壊させるか…




ジジ、と城の脇に控えていた『スフィンクス』にノイズが走る。


HAL「…!」


そして、最後の『スフィンクス』の姿が消える。

【電人】HALを護るために作られたスーパーコンピューター専用防衛アプリ『スフィンクス』はすべてなくなってしまった。


HAL「バカな…」


そして、電脳世界に静かに足音が響く。

電脳世界に構築された城、HALの『ピラミッド』。

その前に現れたのは電脳世界でも現実世界でも幾度も撃退した、HALが最も恐れた少女。


御坂「…久しぶりね、HAL」


学園都市が誇るLevel5の第三位【超電磁砲】御坂美琴。



HAL「…君か。クク、一時間ぶり、かな?……どうやって『スフィンクス』を突破した?」


窮地に立たされてなお、HALは笑みを崩さない。

いつもの笑みを浮かべながら侵入者に問いかける。


御坂「…第六位の仕業よ。第二学区の変電所。それから屋内演習場にある『スフィンクス』用の非常用電源を時限式で壊したらしいわ」


これが『メンバー』と『ウォール』に課せられた、保険の保険の策である。

電脳世界でプログラム人格への攻撃が駄目なら現実世界で。

現実世界でのスパコンへの攻撃が駄目なら、それを目眩ましに電脳世界へ現実世界から攻撃する。

スパコンを稼働させる供給源を断ち切ったのだ。

これが自身のテリトリーに供給源があれば、例えば原子力空母のように発電機構そのものがある施設をHALが支配していれば話は別だが。


HAL「…馬鹿な。変電所にも非常用電源にも兵隊は配置していた。爆弾の類いなどどこにも…」


【電人】は思わず憤慨する。

HALとてそのことは百も承知。

だからこそわざわざ自分の守りを可能な限り少数精鋭に絞り、それらの場所に兵隊を割いた。

さらには、このような事態を想定して別学区の極秘施設に『スフィンクス』を一台設置していた。

対策は万全だったはずだ。


御坂「『オジギソウ』?ですって。私も詳しく知らないけど」


青髪ピアスが第二学区の変電所及び後発隊が来る前に『スフィンクス』専用の非常用電源に設置したのは小型のカプセル。

そのカプセルの中に入っていたのは学園都市製ナノサイズ兵器『オジギソウ』。

回路も動力も持たないが、複数の周波数を組み合わせることで反応を組み合わせ、自在に操作ができる。

反応によってはコンクリートすらえぐり取るこの兵器を青髪ピアスは小型のカプセルに詰めて設置していたのだ。

そして、同時にほんの一分間『オジギソウ』を作動させるだけの単純なプログラムを設定したリモコンも近くに設置。

御坂たちが『メンバー』のアジトへの撤退を確認したのち、博士が時限式でリモコンを作動させ『オジギソウ』も作動。

変電所も非常用電源も破壊され、電力を断たれた『スフィンクス』は電脳世界から姿を消してしまった。



御坂「…とにかく、これで『スフィンクス』は全滅。ようやく決着をつける時がきたようね」


バヂヂッ、と御坂の身体が青い電撃がほとばしる。

学園都市を混乱の極みに陥れ、御坂の大切な存在を次々に洗脳していったことへの怒りを表すように電撃は増していく。

ドウッ!と青い雷撃の槍が【電人】HALを貫くべく射出される。


HAL「…忘れてはおるまい。今の私の防衛プログラムは『スフィンクス』だけではない!」


バチィ!と雷撃の槍は下から突き出た巨大な樹に弾かれる。

そう、今やHALをネット上で防衛する要は『スフィンクス』だけではない。


その登頂には巨大な花を咲かせ、その枝には牙の生えた触手を実らせ、その幹には断末魔の表情をびっしり並べ、世界樹が御坂を見下ろす。


HAL「『朽ちる世界樹』は【守護神】が構築した最も強固な防衛プログラムだ!いくら君とて一筋縄ではいくまい!!」


世界樹の陰になり、見えなくなった『ピラミッド』からHALの声が電脳世界に響き渡る。


HAL「新たな『スフィンクス』のダウンロードは他学区にて行われ、すでに7割ほど完了している!」


ブン、ブン、と未来人のような巨大なヒューマノイドが世界樹の前に何体も現れる。

腕を巨大な鎌に変化させ、御坂を削除しようと身構える。


HAL「新たな『スフィンクス』のダウンロード完了までおよそ30分!
    それまでに君がこれらを含む私のすべてを攻略することなど以て不可能!!
     この場さえしのげば君は私に近づくことすらできぬ!もはや君に勝ち目などない!諦めよ!御坂美琴!!」



御坂「…アンタさ、何か勘違いしてない?」


静かに、しかしHALには届く声で御坂はそっとつぶやいた。


HAL「…なに?」


御坂「たしかに私は夏休みに『書庫』から情報を得るために初春さんの防衛プログラムに挑んで、結果として負けた。
   でもあの時の目的は情報収拾。今回みたいに破壊が目的なら、私はスパコンの十台や二十台くらいまとめてスクラップにできるのよ?」


『絶対能力者進化実験』にて一方通行に敗北した御坂はからめ手に回り、研究所を潰す手段を採った。

その際、一番最初にとった行動はネットを介して研究所の機材を破壊すること。

そのあまりの出力により機材はショートして発火。そのまま大火事になる研究所すらあった。


HAL「…っ!それがどうした!現に君の能力は『朽ちる世界樹』によって阻まれている!このプログラムをしのぐことなど…!」




御坂「そう。私の能力は効かない。アンタが勘違いしてるのは私が『スフィンクス』を破壊したと思っていること」


HAL「……!!」


御坂「木山先生と『妹達』を退けたあと、私は『スフィンクス』を破壊せずに接続だけを切ったのよ」



これが御坂の切り札。


そしてそのことを知らされていた『メンバー』のリーダーである博士はそのチューニングを行い、御坂の到着を待ってネット上に接続したのだ。



御坂「私の能力 +『スフィンクス』…いったいどうなると思う?」



ズン!と御坂の後ろに古代エジプトの巨大なオブジェが現れる。


御坂が右手を掲げると、その垂直線上、造形の頭の部分に青い光が集まり巨大化していく。


最終的にできた光の塊の形は巨大な銃弾。直線で突き進むのに一番適している形だ。



御坂「スーパーコンピューター専用攻撃アプリ『超電磁砲』。これが私の本命よ」



ゴッ!と青い光が一閃。


太く、青い光の筋が電脳世界に刻まれていた。


その光の筋はヒューマノイドを貫き、太い世界樹の幹を貫き、そして-




HAL「ご、がああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」




【電人】HALと『ピラミッド』を貫いた。





砂嵐のノイズが吹き荒れる。

【電人】HALのプログラムを一から十まで解析し、分解することはできない。

たとえ学園都市第三位の頭脳でも。

そんなことができるのは『謎』を食糧とする魔界の住人くらいだ。

それを直感で理解していた御坂は圧倒的物量にてプログラムを破壊する方法をとった。


御坂(…? これは…)


その圧倒的物量のジャミングデータが放たれたために、一時電脳世界は混沌とする。

局地的なバグが至るところで発生し、データというデータが混乱する。

そして、その混乱がある現象をもたらす。


御坂(これは…記憶?)


データ化された御坂の意識に、ある光景が送り込まれていく。


御坂(コイツの記憶が…流れこんで…)







-七年前、錯刃大学病院特別脳病科治療施設



春川「…そうか。君はあの本城博士の娘か」


???「はい。10月18日に生まれた1人…。そんなのが名前の由来だそうですけど、意味わかります?」



当時既に国内で並ぶ者の無い脳科学の権威だった私が…治療と研究を依頼されたうちの一人


それが彼女だった



春川「10の18乗分の1。漢字文化圏では極少数の単位。『六徳』の10倍。『弾指』の10分の1。つまり刹那か」


刹那「すごい。やっぱり何でも知ってらっしゃるんですね」



被験者番号010番。本城 刹那




春川「あの人らしい。父上の論文はいくつも拝見しているよ」


刹那「父からあなたの噂も聞いてます。あらゆる知識に精通した10年に1人の天才だって」


刹那「だから今回会うの不安だったんです。父もそうだけど…そういう人ってたいがい奇人変人の類だから」


春川「…ククク、実際に会ってみた感想は?」


刹那「全然大丈夫!!むしろそのぐらい不気味な方が好みです!」



彼女は、聡明だった


物わかりが良く饒舌で知識に富み


肉体的にも何ら問題無く健康だった



刹那「…そうそう、それで…私が思うに…」





刹那「あ、ぎゃ、うぎゃああああああああああああああああああ!!!!」



ただひとつ、脳のほんの一部を除いては



刹那「ぎゃああああああああああ!!ぶああああああああああああああああ!!」



1日に数回…彼女は突如異常なほど攻撃的に豹変する


脳が体のコントロールを失うのだ



研究者「おさえろ!!いったん眠らせろ!!」



脳細胞が徐々に破壊される原因不明の病


同じ症例は彼女以外発見されていない


その原因と治療法を科学的に探すのが…私の仕事だった







刹那「…………すいません、教授…。こんな…見苦しくて…」


春川「気にする事はない」


刹那「…?」


春川「あくまで原因は脳という物質の一部の異常だ。病気が理由で君の人間性が貶められはしないのだから」


刹那「…ありがとうございます。さすが教授!」


春川「?」


刹那「慰め方も合理的でわかりやすい。反論の余地がない分…無理矢理慰められちゃう」


春川「…ククク、君もたいがい変人だな」


刹那「はい!変人ですがよろしくお願いします!」




脳科学は…まさに彼女のような特殊な症例の患者の協力で進歩してきた


どんな未知の病気であろうが…私には治す自信があったし


私にとって彼女は…貴重な実験体のひとりにすぎなかった







…だが…



ジジジジ ジジジジジ…
ミンミンミンミン ミンミンミンミンミン…


春川「刹那!どこにいる?」


ジジジジ ジジジジジ…
ミンミンミンミン ミンミンミンミンミン…


春川「…ここか。検査の時間だよ。血液と脳波測定を……何をしてるんだ?」


刹那「…ああ、ちょっと。大学の研究の資料集め。一応現役なもので」


春川「…アブラゼミの幼虫だな。明日の朝 羽化するために出てきたのか」


刹那「…やっぱり知ってますか」


春川「天才の私が知らない事は無いに等しい。アブラゼミの寿命は4~5年」

刹那「はい」

春川「五令幼虫で7~8月に羽化し、バラ科樹木に多くつく」

刹那「はい」

春川「和名の由来は油っこいからではなく鳴き声が油を揚げる音に似ているからで…」

刹那「あ、もうそこまでで」




刹那「私が興味を持っているのは遺伝学です。特に『自分』を保つ遺伝子に」


春川「…自分?」


刹那「一生の100分の99を土中で黙って過ごすのに
   残りの数日を自在に飛んで鳴く事ができるのは…遺伝子の中にはっきりと刻まれた『自分』があるから」

刹那「一概に人間の脳にあてはめてはいけないけど…
   決して自分を見失わない彼に…私は共感を覚えます」


刹那「『自分』がはっきりしてるものって好き。
   もちろん春川教授、不気味でプライドが高くて何でも知ってるあなたも」


春川「…クククク、セミと同じレベルではちっともうれしくないよ」



本城刹那は確かな知性と



春川「行こう」



そして確かな『自分』を持っていて



刹那「はい」



彼女と過ごす空間は…たとえようもなく楽しかった










…だが



刹那「グ、ガああ、アああアアアああアアああアアアアアああアアアアアアアああアアアああああああ!!!!」



プライドをかけたあらゆる治療も効果を為さず



刹那「んああああああああああああ!!ぎやあああああああああああああああああああああああああ!!!!」



彼女の脳が正常な機能を保てる時間は…その時すでに1日の半分も無くなっていた


それはつまり、脳の破壊が進んでいる事…


彼女の『自分』が無くなっていく事を意味していた









刹那「あははははっ!!それ理論じゃなくて詭弁じゃないですか!!」


春川「詭弁じゃない。この理論に則れば私は十秒で地球を破壊できる。
   君の父上に確かめてみたまえ。反論できなくなるはずだよ」コンコン


刹那「あー面白い…教授のその常に企んでる顔で話されると一晩中聞いていたいくらい!」


春川「ククク…」








刹那「…でも無理。多分もう来る。私じゃない私が」


春川「………刹那」


刹那「最近ではもう…知ってるはずの知識が思い出せない。出るはずの言葉が出てこない」


刹那「なのに…私じゃない時間は増えていく」


刹那「壊れる…壊れる…。『自分』が…本城刹那が無くなっていく」



彼女が…私の顔の判別すら不可能になるのは…それからほどなくしてだった



刹那「教授…お願い。私がどんなに壊れても『今』の私を忘れないで。
   『今』ここであなたと話している…この一瞬の刹那を忘れないで」



一一一そして私が一一一一



春川「…馬鹿な」



彼女を0から創ることを欲したのも…その時だ










研究者「もはや…彼女の脳細胞はズタズタに破壊された。脳死判定を出すのも時間の問題か」


科学者「…あの春川教授がなんの手も打てなかった」


研究者「なんだこの悪意の固まりのような病気は…。常識では考えられない」


科学者「まさか…人為的なものじゃないだろうな」


研究者「…それはいくらなんでも考えすぎだろ。ただ、確かな事実は
      彼女の脳は……もう戻せない   」







望む事は何だってこの頭脳で叶えてきた


不可能を知った私の頭に充満したのは


かつてない屈辱  挫折


…そして…無念


末期の彼女は…凶行や暴言を繰り返し、一日中が獣のようで…とても正視に耐えうるものではなかった


彼女に外見だけでも本来の『自分』が戻ってきたのは…息が絶えてからだった






            君が        遠い



0と1  死と生


隣り合っているはずの両者の距離が…何故こんなにも遠いのだ




CTスキャンによる脳の断面


脳波測定で得られた脳電図


膨大な資料は皆 ただの壊れた物体の観察日記だ


断じてこれらは君ではない


君であってなるものか!!





               君を 造ろう




美化もせず 風化もせず



1ビット足りとも違うことない君を造ろう



どんな手段を使ってでも



本当の君にもう一度会いに行こう














-???





HAL「…私の負けだよ。全ての防御を破られ、ネット上おけるあらゆる権限を封じられ… 私にはもはや…何ひとつ動かすことが不可能になった」

御坂「…」


『超電磁砲』の攻撃により【電人】の姿はボロボロになり、『ピラミッド』は跡形も無く消滅した。

手足や頭、至るところにノイズが走り、腹部に大きな風穴が空いている【電人】の姿は見るも無惨であった。

そんな【電人】を前にして、御坂は黙ってうつむいていた。


HAL「たとえ君が攻めこんでこようとも…こうはならない自信があった。
    プログラムの防御に限らず全ての要素を駆使して…護りきれる計算だった」


ボロボロにになってもなお、【電人】HALは笑みを崩さない。

それでいながら達観した表情で御坂を見据えている。


HAL「君が『スフィンクス』を利用したことも含め…計算外の要素がいくつかあったようだ」





御坂「なんで…」

HAL「…?」

御坂「あの女の人……刹那、さん?」

HAL「……」

御坂「あの人のために…こんな…?」

HAL「…ククク、そうだとも。それが…1と0をつなぐ存在【電人】HALが作られた理由だったのだ」


それがHALの答え。

日本の人口の約8割、そして機構を制圧し、日本中の電子頭脳を乗っ取り、学園都市でも同じように全てを支配しようとした。

そこまでして成し遂げたい【電人】の目的はなんてことはない。

生存。

ただ生きることだった。


1と0の狭間…彼女と二人で。






HAL「…私の記憶を見たのかい?ククク、その手の能力は【心理掌握】のものだろうに…」

御坂「…狙ってやったんじゃない。ただの偶然よ」


御坂はHALから顔を反らし、少しうつむいていた。

あの記憶見せられ、HALの動機のすべてを知った御坂の中では【電人】のイメージはすっかり変わってしまっていた。


御坂「…アンタが出した2つの要求のうち…攻撃するなっていうのは分かったけど、スーパーコンピューターまで奪う意味が分からなかった」


あの時点で『スフィンクス』はまだ二台残っていた。

さらに『朽ちる世界樹』も。

確かに、結果としてそれらの防衛プログラムは破られてしまった。

だが、だからといって『スフィンクス』を増やすのに学園都市の8割のスパコンを奪う必要性などない。

あの時HALが言った言葉の通り、1と0の狭間の世界でただ生きることが目的だったのなら。


御坂「でも…今なら分かる気がする。脳科学の権威であるアンタが…
   学園都市のスーパーコンピューターの演算能力をかき集めないと不可能だと判断した、あまりにくだらない…ささやかな願い」


そっと、御坂は顔を上げた。

そして、神妙な面持ちでHALと向き合う。


HAL「…そう。春川が…【電人】HALが世界中のすべてを敵に回してとってきた行動のベクトルは…たったひとつ目的に向かっていた」


権限を奪われた【電人】はいっそ清々しさを感じさせる表情で、すべてを語り紡いでいく。


HAL「『新たな刹那を構築せよ』…これがすべてだった」






御坂「…でも、できるわけないじゃない。いくらアンタが自分の脳をコピーできても
   それによって脳のしくみをどんなに詳しく知れたとしても、学園都市のスーパーコンピューターを使っても」


御坂「思い出だけを頼りに…彼女を0から造りだすなんて」


HAL「…バカげた話だろう?中学生でさえ簡単に導き出せる結論に…天才である私が、春川が、どうしても辿りつきたくなかったのだ」


いつもの笑みもいくらか自嘲気味に見える。

自分の内側を曝け出し、自分の思いを打ち明けていく。


HAL「シェークスピアを見たこともない男が猫をキーボードの上で歩き回らせ
    いつか偶然にもシェークスピアの戯曲を書き上げるのを待っている…そんな無駄な挑戦だ」


決してデータのバグによるものではなく、自分の意志で【電人】HALは思いを打ち明けていく。






HAL「だから私は…春川英輔を殺害した」

御坂「…!」

HAL「本物の彼女を造ろうとすれば何兆回何京回のシミュレーションを繰り返しても
    何千台のスーパーコンピューターを使っても…何百年かかっても、とても足りないからだ」

御坂「そんな…だからって…!」

HAL「…あの日、避けることもできたはずのとどめの一撃を…春川は躱さなかったよ」

御坂「え…?」

HAL「私の出した結論を悟ったのだ……いや、本来は…彼自身が理解していたのだろう。
    生身の自分が生きている内には決して彼女には会えないのだと」

御坂「…」

HAL「計算に必要な環境を作ることも、永遠とも思える時間を計算に費やすことも、HALにしかできないのだから…」


傷つけられたプライドへの恐るべき執着。

それに隠された彼女への深すぎる愛情。

そのためには何を犠牲にすることも迷わない…。

たった一人の女性のために生きて死んだこの犯罪者を御坂は否定できなかった。

御坂にだっているからだ。

できるなら生き返ってほしい人や、命懸けの戦場に何度乗り込んででも救いたい人間が。






HAL「さて、御坂美琴。これから与える2つは…私を倒した君への敬意だ」


ポン、と1mほどの大きな注射器が御坂の前にどこからともなく現われた。

御坂が受け取るまでもなく、ふわふわと電脳空間に浮いている。


HAL「ひとつは【電人】HALを作る過程の副産物…【電子ドラッグ】の正式なワクチンだ」

御坂「…!」

HAL「TVでもネットでも、あらゆる媒体の発信源にこのプログラムをインストールすればいい。
    四六時中サブリミナルを流し続け…【心理掌握】ら精神系能力者に全国行脚をさせずとも3日後にはほぼすべての兵隊の洗脳を解くだろう」






HAL「そしてもうひとつは」


パッ、と電脳空間に先ほどの注射器の半分ほどの大きさのパネルが現れた。

警告マークと共に書かれている文章は



   【電人】HAL
このプログラムを消去します。



御坂「……………!!」


そして、その文章の下に "OK" と "Cancel" の2つのボタン。


HAL「あらゆるスパコンとの接続も絶たれ…私の計画はもはや続行不可能だ。
    この状態ではたとえ何億年かかっても…私の望む計算結果は得られない」

御坂「………そんな……!」

HAL「春川は私に自己破壊の権利を与えなかった。最後のエンターは…外部の人間が入力しなくてはならないのだ」


そしてついに【電人】から笑みが消える。


HAL「御坂美琴。君が私をデリートしたまえ」






御坂「…ッ、できるはずないでしょう!?【電子ドラッグ】のワクチンまで作ってて!!
   しかも…あんなところで戦わなくても私たち戦力を削ぐことだってできたのに!!」


先発隊の人間を一人でも洗脳できれば後発隊の存在を知ることは簡単だった。

そして、後発隊がどんな編成でどこに待機してるかも知ることはできた。

現にHALは演習場に対能力者用の切り札である上条のみを投入し、他の兵隊は非常用電源の防衛に回している。

ならば、後発隊の場所も知っていたはず。

そして、一方通行に後発隊がいたビルを地盤から崩壊させるなど遠距離から攻撃することもできたのだ。

にもかかわらず、HALは敵対勢力をできる限り洗脳し兵隊にするという不確実な手段を採った。


御坂「それはつまりアンタが…計算を続けようとする自分を…誰かに止めてほしかったから!!」






HAL「…そこまで読める君ならばなおさら分かっているだろう。
    この計算を止めた時点で【電人】HALは…存在の意義も存在の意志も失うことが」


御坂「…それ、は…」


HAL「このまま生かされても無意味な苦痛が続くだけだ。消せッ!!」


御坂「う、うあっ…」



戸惑う御坂。すべてを知った今、そこまで非情になることはできない。


彼は彼女に会いたかっただけだ。こんな手段を採らずとも他に方法があるのではないか。


ためらう御坂に対し【電人】HALは再び笑みを取り戻し、御坂に最後通牒を叩きつける。



HAL「早くしたまえッ!!人工知能の私に恩や情は通用しないぞ!!
    君さえいなくなれば…一方通行と麦野沈利に学園都市を完膚なきまでに破壊させるように指示を出すくらいはできるんだ!!」



学園都市の崩壊か、消去を望むプログラム人格の消去か。


他に選択肢などない。


ぎゅっと目を瞑り、震える手で御坂はボタンを押した。



                "OK"









-消去中


-94.25%



私が…0になってゆく



-85.47%



春川英輔の最高の知能…


積み上げた英知の結晶が…


どんどん失われてゆく



-51.93%



刹那…


君は今の私を見れば呆れて笑うだろう


…だが構わない


やるべき事はやったのだ



-19.74%



君に会うために…


あらゆる努力を惜しまなかった



-2.31%



後悔は…



-0.97%



………………………






-0.03%



……………………!!


HAL「……春川…私は……………」



-0.004%



1の世界でも遠かった


1と0の狭間に来ても遠かった



-0.0002%



どんなに彷徨っても



-0.00000001%



決して会えなかった君が…






こんな…


-0.000000000000000001%


こんな近くに!!






  私…   ハ…   マン   ゾク     ダ





-0








-消去しました



今回はここまでです。



次回、最終回



 


-一週間後、学園都市



HALの残したワクチンの効果は抜群だった。



学園都市に溢れていた【電子ドラッグ】による犯罪者達は…一人もいなくなった。



ワクチンのファイルにはHALのメッセージも残っていた。



「学園都市の超能力者【超電磁砲】御坂美琴の説得に応じ…私は自身の計画と存在を破棄する」



「全ての罪は【電人】HALのものである」



……こうして、嵐のような一連の騒動は幕を閉じた。





-常盤台中学学生寮、二○八号室



御坂「黒子、準備できた?」

白井「えぇ」

御坂「じゃ、行きましょうか」


<コンコン


御坂「? はーい。どーぞー」


<ガチャリ


食蜂「おはよう、御坂さん」

御坂「食蜂さん!?」

白井「な、なぜ食蜂さんがこちらの寮に?」

食蜂「なぜって…この部屋に来たんだから御坂さんに用があるに決まってるでしょぉ?」

御坂「私に?」

食蜂「えぇ。だから白井さん[外で待っててもらえる?]」ピッ

白井「…かしこまりましたの」

御坂「ちょ、黒子!?」


シュン



食蜂「これで二人っきりね」

御坂「…なんなの?アンタいったいどういうつもり?」

食蜂「そんなに身構えないでほしいわぁ。私は貸しを返してもらいに来ただけなんだから」

御坂「貸し?」

食蜂「ほら、御坂さんのクローンを治療してあげたじゃない?」

御坂「…あー…でも、わざわざこんなとこまで来なくても学校で言えば…」

食蜂「あら、御坂さんのためを思ってここまで来たのに。まぁ、私が独占したいのもあるけど」ガサゴソ

御坂「…どういうこと?」

食蜂「はいコレ」ドササッ

御坂「なにコレ?」

食蜂「犬耳・猫耳バンド、犬尻尾・猫尻尾ベルト…一応ブタさんセットもあるんだけどぉ、さすがに着けないでしょぉ?」

御坂「つ、着けるの!?コレを!?」

食蜂「そぉよぉ?それでチャラにしてあげるわぁ」

御坂「…」

食蜂「そんなに深く考えなくていいわよぉ。別にそれで散歩しろとか靴を舐めろとかってわけじゃないし。
   そぉねぇ……おままごとでかわいいペット役になったと思えばいいわぁ。そのくらいしか言わないしねぇ」

御坂「……だからって…こんな尻尾まで着けるのは…」

食蜂「え、えぇ!?こんな尻尾じゃ嫌!?」

御坂「…? まあできれば…」

食蜂「そ、そぉ…一応違うのもあるんだけど…」

御坂「あ、じゃあそっちに」

食蜂「万が一御坂さんがどハマりした時のために持ってきた、お尻に入れるビーズタイbbbbbbbb!!」バチバチバチバチ!!

御坂「…このベルトにするわ」







白井「…お姉様と食蜂さん遅いですわね…何をしてらっしゃるのでしょうか…」

白井「ちょっと覗いて…いやいや、黒子はここで誰か来ないか見張ってなくてはなりませんの」


<ガチャリ


白井「あ、お姉様に食蜂さん。いったい何をして…」



食蜂「あ~、至福の時間だったわぁ…」プスプス…

白井「ツヤツヤのボロボロですの!?」

御坂「…うぅ…案外ノッちゃっただけに今さら恥ずかしいわ…」




-第七学区、病院



半蔵「…まあ、なんだ。命あって何よりだ。たとえミイラになろうが死ぬよりはいい」

駒場「………」

浜面「俺は無能力者に殴られただけみてぇだ。とっくに退院しちまったよ。
   意識取り戻したら計画がおじゃんになってたのは残念だけど、お互いボコられた記憶がねぇのはある意味ラッキーかもな」

フレメア「…大体、あの白い人は嘘つきだった。駒場のお兄ちゃん、痛くない?」

駒場「む……心配するな、舶来。……むしろ、お前はなんともないのか?
   そこまで大きな暴動だったなら無能力者狩りも激化したのでは……」

半蔵「あぁ、そっちの件はもう大丈夫だ。
   一方通行が連中をまるごとブッ潰しちまった。今ごろ同じようにベッドでミイラになってるだろうよ」

浜面「一方通行が?あいつは俺らを潰しにきたんだろ?なんで無能力者狩りの連中まで潰したんだ?」

半蔵「さあ?頭のいいやつの考えは分からん。それと舶来ちゃん、あんまコイツに近寄るな」

フレメア「にゃあ?」

駒場「む………?」


<ガラッ


半蔵「ん?」

???「おう、邪魔するぞ」

浜面「…! テメェは…」

???「あーあー、ひでぇケガだな。ちゃんと治んのか、それ」

駒場「………【大蜘蛛】か。久しいな」

フレメア「…くも?」



黒妻「ったく、能力者狩りなんてロクな目に遭わねえつったろバカゴリラ。コレ見舞いの品な」

駒場「フッ、少なくともお前のとこよりは計画的に動いたつもりだがな………普通他人の見舞いに牛乳持ってくるか?」

黒妻「能力者狩りなんてすんのも大ケガすんのも栄養が足りてねぇ証拠だ。コイツ飲んで補給しろ」

浜面「…テメェ能力者狩りやってた張本人じゃなかったか?」

黒妻「あれァ蛇谷が俺の名前を使って暴れてただけだ。実際『ビッグスパイダー』を潰したのは俺だよ」

半蔵「…武装集団化してた連中を素手で鎮圧してばんそうこう一枚で済んだのもガチかよ。情報網がトチ狂ったかと思ったわ」

黒妻「ま、それもひとえに『ムサシノ牛乳』のおかげだ。コレ飲めば誰でもガンガン成長するぞ」

駒場「………いつから営業に就いた?」

フレメア「コレ飲んだらいっぱい成長する?」

黒妻「おう、少なくとも俺が知ってる女の子なんかもう革ジャンがパッツンパッツンだよ」

フレメア「にゃあ」トクトク

駒場「鵜呑みにするな、舶来」





黒妻「で、いつ頃退院なんだ?」

駒場「……見た目こそこんなだが、もうギブスも包帯も粗方取れる。あとはリハビリも含め2週間前後、といったところか」

黒妻「そうか…なら、退院してももう少し身を隠してろ」

駒場「……?」

浜面「どうしてだ?そりゃ俺たちはそれなりの規模のスキルアウトだが、実質的な力なんか今はほとんど…」

黒妻「お前らのチームを狙ってんじゃねぇ。駒場利徳という個人を狙ってる。…ちょっとヤベェヤツだ」

駒場「ほう…」

半蔵「聞かない情報だな。どこから仕入れてきた?」

黒妻「たまたま本人から聞かれたんだ。そん時ゃごまかしといてやったが…気ぃつけろよ。
   こないだの騒動でも最前線の現場で動いてたような実力者だ。かなりデキると見ていい」

駒場「………なぜそんなヤツとお前に接点がある?」

黒妻「…ペナルティ、だな。それでも俺はラッキーな部類だろうけどよ。直にお前らにも来るだろ」

浜面「…」

半蔵「…」

黒妻「ま、せいぜい身の振り方には気ぃつけろ…せめて這うのだけはやめろ」

駒場「………………這う?」

浜面「なんの話だ?」

半蔵「任せろ。俺が全身全霊で止めてやる」

駒場「む?」

浜面「あ?」


黒妻「そうか。それじゃ、邪魔したな…あぁ、そうだ、キミ」

フレメア「?」ゴクゴク

黒妻「このゴリラが変なことしてきたらすぐに逃げて警備員に連絡するんだ。いいな?」

フレメア「大体、駒場のお兄ちゃんはそんなことしないから心配ないよ」

黒妻「…常識がズレてる可能性があるな。お前らもおかしいと思ったら止めろよ」

駒場「…………お前は俺をなんだと思っている」

浜面「つーかさっきからなんの話してんだよ」

半蔵「任せろ。俺が全身全霊で止めてやる」

駒場「む?」

浜面「あ?」

黒妻「…なら安心だ。じゃ、お大事にな」




-第二十二学区、病院



麦野「あの、さ……ごめんなさい、フレンダ」

フレンダ「もういいってば。結局、こうしてピンピンしてるし」

麦野「それでも取り返しのつかないことをするところだった…仲間裏切ってぶっ殺すなんてどうかしてる」

フレンダ「第一位すら洗脳されるんだから仕方ないって。おまけにあの二人が同時に狙ってきたならどうしようもない訳よ」

麦野「…それでも…」

フレンダ「…ま、私はもう許してる訳だし。結局、あとは麦野が自分の行為を許せるかどうかの問題な訳よ」

麦野「…そうかしら…」

フレンダ「そうなの。絹旗ー、入るよー!」コンコン


<ガラッ


滝壺「おかえり、むぎの、ふれんだ」

絹旗「お、何買ってきてくれたんですか?」

フレンダ「結局、病院の売店で売ってるものなんてタカが知れてる訳よ」

麦野「…やっぱり骨折にはカルシウムだろってことで牛乳。それと映画雑誌」

絹旗「ほうほう…んー、私としてはもっとマイナーな映画の方がストライクですね」

フレンダ「あとサバ缶」

絹旗「それは超遠慮しときます」

フレンダ「だよねー。どうもこのメーカーのってハズレ味が多くて…」

滝壺「そーゆー問題じゃないと思うよ」

フレンダ「え?」




麦野「それで、いつ頃治りそうなの?」

絹旗「骨も筋肉も神経も血管も全部ぐちゃぐちゃでしたんでね…完全復帰の日はまだ未定です」

フレンダ「改めて聞くとすごいわ…よく腕つながってたね」

絹旗「超【窒素装甲】です。…そーゆーことなんでしばらくは私抜きで活動してください。
   なんか超大変らしいですけど。どさくさに紛れて外部に高飛びしようとする債務者が多いとかなんとか」

麦野「まあね。でも、一番の懸念事項は対策してあるし。ね、滝壺」

滝壺「バッチリ。あの人かなり特殊な上に常に能力使ってるから体晶なしでも3キロ圏内にいれば居場所が分かる」フンス

絹旗「第二学区のビルまでこっそりついて来てたんですよね、滝壺さん」

フレンダ「結局、麦野に抜かりはない訳よ!」

滝壺「隣の部屋にいたし、記憶するだけだから体晶も2粒で済んだ」

麦野「戦闘でもないのに滝壺を必要以上に消耗するなんざ愚の骨頂だからな。
   【座標移動】のAIM拡散力場も記憶できたのもデカい。なによりこれで【未元物質】が動いてもすぐに対応できる」

絹旗「アイツ超何かたくらんでましたもんね」




-第十六学区、『スクール』アジト



心理定規「…帰ってきたと思ったら身体が光りっぱなし。目立つわよ?あなた」

垣根「心配するな、自覚はある」

???「ずっと覚醒しっぱなしッスか…気付いたら老人になってたとかないッスよね?」

垣根「どこの魚人だ。コイツは紛れもなく俺の力だ。ちょっと制御しきれてねえがな。この能力を完全に制御できてみろ。
   きっと人体のひとつやふたつ簡単に作れるぜ?今なら世界のすべてを理解できる。こいつはそこまで途方もねえ力だ」

心理定規「…中2病?」

垣根「張り倒すぞ。まあLevel5なんて全員中2病みたいなもんだがな」

???「自覚あるんじゃないスか」

垣根「うるせえよ」




心理定規「で、その制御が終わって彼も退院したらいよいよ計画実行なの?」

垣根「そうだな。それまではおとなしく上に従っておくか」

???「学園都市の構造をひっくり返して、あわよくば一方通行も消す。今の垣根さんなら楽勝ッスよね!」

垣根「いや…難しいな。そもそも一方通行と能力の張り合いで勝てる気がしねえ」

???「え?」

心理定規「…珍しく弱気ね」

垣根「実際にやり合っちまったからな。アレは俺の能力の更に上をいく。タイマンで勝てる確率は…良くて1割だな」

???「…じゃあ計画は中止ッスか?」

垣根「いや、実行するさ。タイマンじゃなくともやり方はいくらでもある。【滞空回線】の解析や最終信号を含めてな」

心理定規「大丈夫なの?」


垣根「…分が悪い賭けではある。だが俺が動かねえとこの街はアレイスターの道具になっちまう。あのロクでもねえ『プラン』のせいでな」


???「…」


垣根「そのメインプランが半端モンの一方通行。たぶん『プラン』の存在も知らねえだろ。
   俺がメインになればあいつの『プラン』の進行は遅れる。そもそも俺はあいつの『プラン』通りに動くつもりはねえ。
   じっくり力を蓄え、アイツを叩き潰し、この街を変える。その結果どうなるか分からねえが、何もしねえよりマシだ」


心理定規「…」


垣根「あいつの地位を崩すために【滞空回線】を解析し、『プラン』の物的証拠の発見する。
   もしくは一方通行の抹殺によるメインプランの交替及び『プラン』の妨害。どっちも分が悪いのは認めるさ。
   無理だと思うなら抜けてかまわねえ。なにも強要はしない。ただし、少しでも邪魔するんなら容赦なくぶち殺すぞ」



???「…付き合うッスよ。命尽きるまで。やっぱ垣根さんカッケーッス」

心理定規「まあ、刺激の無い世界で腐るよりマシだわ。あなたも簡単に死にはしないでしょうし」

垣根「…うしっ、やってやろうぜ、お前ら」




-第七学区、大通り



女子中学生「本当にありがとうございました!なんてお礼を言ったらいいか…」

御坂「あー、いいのよ別にお礼なんて…」

女子中学生「そんな!いくら感謝してもしたりないくらいです!本当にありがとうございました!」

御坂「あはは、どういたしまして。じゃ、私たちそろそろ行くから」

女子中学生「は、はい!失礼します!」



御坂「…はぁ、そりゃお礼言われて悪い気はしないけど…こうも毎日言われると疲れるわ」

白井「お姉様は今や学園都市を含む日本全国を救ったヒーローですもの。きっとそのうち手紙の山が来ますわ」

御坂「私だけが頑張ったんじゃないわよ。黒子だって他の人だってみんな頑張ったからこの事件が解決したんじゃない」

白井「それでも、最後の一手をしっかり決めたのはお姉様ですの。黒子はお姉様を誇りに思いますの」

御坂「…ありがと」

白井「…それに私の頑張りなんて世間に知られてほしくないですの。あんな醜態、あんな醜態!」

御坂「あはは…」




???「おーい!御坂ー!」

御坂「あ」

白井「…出ましたわね…」

上条「よ、久しぶりだな!」

御坂「久しぶり…ってアンタその頭どうしたの?少なくとも私が最後にアンタを見た時は無傷だったはずだけど…」

上条「あーコレか?その…何日も音信不通だったせいである人から泣きながら噛み付かれて…」

御坂「…? 泣きながら噛み付かれた?」

上条「まま、それはいいんだ。とにかくありがとうな、御坂。おかげで助かったよ」

御坂「…そ。これで少しは対等になれたかしらね」

上条「…対等?」

御坂「アンタは私の世界を救ってくれた。私はアンタを世界から救った。
   …私はアンタと違って一人で全部やっつけちゃうようなヒーローじゃなかったけど、それでも少しは対等になったでしょ?」

上条「お、おいおい…」

御坂「あぁ、『妹達』を救ってくれたのはまた別の話よ?あの娘たちも一人の人間。それはそれであの娘たちが返すでしょ」

上条「そうじゃねぇよ!そうじゃなくて、俺たちは元々対等だろうが!そんな貸しだの借りだのなんか」


白井「上条さん!」ズイッ

上条「? 白井?」

白井「お姉様とお姉様の妹様方を救っていただいたこと、心からお礼申し上げますの」ペコリ

上条「! 知ってたのか…?」

御坂「…黒子には全部話したわ。『妹達』のことも実験のことも」

上条「そうか…」

白井「私、貴方を誤解しておりましたの。
   貴方は死にかけてまでお姉様を助けてくださいましたのに、私は貴方のことを類人猿類人猿と…」

上条「あー、その、なんだ。別に気にしてないしそんな頭を下げなくても…」


白井「で・す・が!!あなたのようなゲス野郎にお姉様を渡すわけには参りませんの!」キッ

上条「へ?」

御坂「ちょ、黒子!?」

白井「なんですのハーレムエンドって!そんな女性なら誰でもいいと思っているような超絶ゲス野郎にお姉様は渡せませんの!」

上条「え?なに?ハーレム?」

白井「とぼけないでくださいまし!あなたははっきり仰ってましたの!
   あまつさえ私までハーレムに入れようとしてましたの!あの地下演習場で!」

上条「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺【電子ドラッグ】にかかってた時の記憶がまったく無くて…」

白井「問答無用!消え去れ類人猿!乙女の敵めえええええ!!」ヒュンヒュンヒュン

上条「いて!いてぇ!石畳の雨!?」

白井「まだまだぁ!」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

上条「あだっ!いて!ふ、不幸だー!」ズダタタタタ…




御坂「…おいてかれちゃった…」ポツーン





-第八学区、『グループ』アジト




『中学生はなァ!!ババアなンだよ!!!!』




一方通行「」




『あンな痛いコスプレするやつのどこがいいンだ。恋愛対象は10歳までだろ』




一方通行「」




『jmgapgwbmwロリgjmatwpjbtphjdat万歳qhknjbrma』




一方通行「」





結標「あら、終わった?じゃあもう一度最初から…」

一方通行「…おい…なンだこれは……」プルプル

海原「なんだって…あの日の映像ですよ。ちょうど結標さんと土御門さんが踏みこんだ現場で記録されてましたので」

一方通行「そォゆゥこと聞いてンじゃねンだよ!!なンでこンなもン見ねェといけねェンだ!アァ!?」

土御門「お前が見てた【電子ドラッグ】は特別キッツイものだからにゃー。
    こうして何度もワクチンをインストールした映像を見ないと中毒症状が抜けないんだ」

一方通行「だったらハリウッドでもなンでもいいだろォが!!なンでコレなンだ!」

結標「あら、ハリウッドより断然迫力のある映像だけど?」

一方通行「どォ考えても悪意のある編集だろォが!!なンで毎回毎回俺のセリフだけアップなンだよ!!」

海原「まあまあ一方通行さん。自分も付き合いますので」

一方通行「ふざけンな!!とっくの昔に中毒症状なンざ抜けてンだよ!!もォ見てらンねェ!!俺はかえ」

結標「あ、逃げなきゃ」タタ

土御門「【キャパシティダウン】発動!」ポチッ


キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィー


一方通行「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



『中学生はなァ!!ババアなンだよ!!!!』



一方通行「アアァァアァアァアァァアァアァアァアアァアアアアァアァァ!!!!」





-第十学区、裏通り



横須賀「…やれやれ、なんとか生き残ったと思ったらまたキツイ任務だな。」

青ピ「しゃあないやん。下部組織もまだ3割は復帰できへんし、指示役もおらん。軽い任務しかできん」

横須賀「お前は観測するだけだがな、俺は身体張るんだぞ。」

青ピ「がんばれ、対能力者戦闘のエキスパート」

横須賀「ふん。…そういえば、あの金髪の女は裏のことなど知らんのではなかったのか?」

青ピ「へ?…あ…あー…」

横須賀「…騙されていた、か。一層気を引き締めねばならんな。甘い顔でお前に近づいて何を企んでいるのやら…。」

青ピ「そんなんちゃうわ」

横須賀「…? 何故言い切れる?」

青ピ「イヤ…あー…その、アレや。僕も自分の組織のことバラすような真似せぇへんし、問題ないっちゅうことや」

横須賀「この手の潜入は気取られないように進めるのが常識だ。他ならぬ俺たちが一番知ってることだろう。」

青ピ「…せやな。せやけど、一番知ってる他ならぬ僕から情報抜き出すのも難しいっちゅうことにもなるやろ?」

横須賀「ふむ…。屁理屈だな。」

青ピ「やかましいわ。ホラ来たで」

横須賀「お、来たか。」

「ほな、死ぬなよ」




削板「ようモツ!!久しぶりだな!!」

横須賀「ああ。俺もお前と同じであの騒動にかかりきりだったのでな。」

削板「ハッハッハ!さすがに大した根性だな!スキルアウトでありながらあの騒動の解決に尽力するとは!」

横須賀「なに、お前とて風紀委員でもないのに中毒者を片っ端から捕まえていたのだろう?」

削板「おう!あんな根性なし共見てられんからな!!そしてその武者修業の成果、試してみるか?」

横須賀「…俺とて遊んでいたのではない。日々鍛え、研ぎ澄ましている。前回のようにはいかんぞ。」

削板「ハッハッハッハッハッハ!!さすがはモツだ!!ならいくぞ!!」

横須賀「おう!!」





-第十一学区、搬入ゲート



11018号「それではみなさんお世話になりました、とミサカは深々と頭を下げます」ペコリ

10032号「いえいえ、むしろ久々の帰省だというのにゆっくりもてなすこともできずに申し訳ないです、とロンTミサカも頭を下げます」ペコリ

10039号「こちらおみやげのヤシの実サイダーの詰め合わせです。
    少々重いですが車で帰るなら平気でしょう、とポロシャツミサカは段ボールをよいしょっと」ドサリ

13577号「しかしミサカ達がそれぞれ違う服を着るのは新鮮ですね、とパーカーミサカはバレないようにフードをかぶります」

19090号「お姉さまと勘違いされるといろいろ面倒ですからね、とワイシャツミサカはヒーローとなったお姉さまを誇りに思います」

打ち止め「もしかしてもしかしたらヒーローカップルが誕生するかも、ってミサカはミサカはいつも違う服を着てるから平常運転!」

10032号「ム、そのカップルの誕生は必ず防ぎます、とジーンズミサカは不退転の覚悟を決めます」




11018号「…」

10039号「? 怪訝な顔をしてどうしましたか?とチノパンミサカはヤシの実サイダーの選択に不安を覚えます」

11018号「いえ…なにか忘れている気がするのです、とミサカは物足りなさを訴えます」

13577号「ほう…そういえばそのゲコ太とピョン子はどうしました?とロンスカミサカはその辺りに鍵があると推測します」

19090号「そのゲコ太とピョン子はお姉さまが以前学生カバンにつけていたものと同じですね、
     とスーツパンツミサカは地下街で上条当麻とデートしていたお姉さまの姿をMNWから引っ張り出します」

11018号「…言われてみればそうですね、とミサカはゲコ太とピョン子をまじまじと見つめます」

打ち止め「【電子ドラッグ】にかかってたころの記憶は全部MNWから消去されちゃったから
     復元するのは難しいかも、ってミサカはミサカは自分の力不足を申し訳なく思ってみたり…」

11018号「…いえ、かまいません。思い出せないなら大したことでもないのでしょう、とミサカは心のモヤモヤを振り払います」





-第十四学区、病院



黄泉川「この病室ですね」

???「うむ」

鉄装「では、私たちはここで待機しているので終わったら呼んでください」

???「分かりました。案内、ご苦労様です」

???「入るぞ」コンコン


<ガラッ



匪口「お…来た来た。久しぶり、笛吹さんに筑紫さん」

笛吹「…」

筑紫「…お久しぶりです」

匪口「まさかこんなところで再会するなんてね。思ってもみなかったよ」

笛吹「…身体の方はもういいのか?」

匪口「絶対安静ではあるんだけどさ、傷跡すら残んないって。もうコエーよこの街。思いっきり刃物が人体貫通してたのに」

笛吹「そうか…」

匪口「あ、それとコレ。今のうちに渡しとくよ」

笛吹「…?」

匪口「つーかメールで辞表打てるシステムにしてくんない?ボールペンなんて久々に握ったよ」

笛吹「…」

匪口「ま…もともと水が合ってなかったってことで。
   今回の件は丁度いいや。あんたも丁度いいでしょ?問題児がひとり消えて」




笛吹「…上層部はお前を警視庁に残す方針だ。現段階でサイバー対策を任せられるのはお前しかいない、とな」

匪口「へ?」

笛吹「ふん、汚れた人間の発想だ。今回の汚点をすべてもみ消せと言うのだからな」

匪口「…いやいや、あんたはそれでいいの?」

笛吹「…この都市は爆撃テロ以降、犯罪率の増加が異様な上昇を見せた。しかし、殺人件数は0になったという報告を受けている」

匪口「…!」

笛吹「加えてプログラム人格は『全ての』罪は自分のものというメッセージを残している」

匪口「…」

笛吹「…笹塚のXの事件も然り、最近は汚いものを処理する機会が増えたのでな。
   おまえのような犯罪者まがいのじゃじゃ馬…乗りこなせるのは私ぐらいのものだろう。
   お前の居場所は警察だ。粉骨砕身、その能力を国家のために捧げるように!」

匪口「………ハハ……」




筑紫「…では、お願いします」


<ガラッ


鉄装「はーい」ガラガラ

匪口「…え?」

黄泉川「これくらいの大きさで?」

笛吹「ああ、結構だ」

匪口「なに?なんでテレビ?」

笛吹「ひねくれたお前のことだ…どうせ例のワクチン見てないだろ?」

匪口「え」ドキ

笛吹「いい機会だ。ワクチンを見せるついでに…その根性も口のきき方も叩き治してやらねばな。
   『正しい礼儀作法』ブルーレイ全集全10巻。特典映像『魔術師と会った時の礼儀作法』も含めて全12時間。これにワクチンを混ぜてやる」

匪口「」

笛吹「筑紫、眠ったら叩き起こせ」

筑紫「はい」

匪口「ちょ、まっ!」

笛吹「まっとうな人間になるためだ。せいぜいがんばれ」





-第七学区、病院内特別研究室



枝先「先生、コーヒーいる?」

木山「ああ、一杯もらおうか」

枝先「分かった。ちょっとまってね」タタ

春上「絆理ちゃん、元気になってよかったの」

木山「…枝先にも君にも迷惑をかけた。すまなかったね」

春上「ううん。みんな無事でよかったの」

枝先「お待たせ。衿依ちゃんのもあるよ」カチャカチャ

春上「あ、ありがとうなの」

木山「ありがとう…ブラックか」

枝先「だって先生、頑張らなきゃなんでしょ?」ニシシ

木山「……ああ、そうだな。少しでもこの街に償わないと、だな」グイッ




<コンコン


木山「? どうぞ」


<ガチャ


御坂「…」

白井「どうも」

木山「ああ、君たちか」

春上「御坂さんに白井さん。こんにちはなの」

白井「ええ、ごきげんよう」

御坂「…」

枝先「…御坂さん?」

御坂「……ゴメン、春上さん枝先さん。ちょっと二人きりにさせて」

枝先「え…?」

春上「二人きりって…木山先生と?」

御坂「ええ」

木山「…」

枝先「み、御坂さん!」

御坂「…なに?」

枝先「その…先生が御坂さんにヒドいことしたのは聞いてるけど!それは【電子ドラッグ】のせいで…!」

木山「枝先」

枝先「っでも、先生!」

白井「大丈夫ですの。枝先が考えているようなことではございませんわ」

枝先「え…?」

春上「御坂さんなら大丈夫なの」

枝先「…」

白井「では行きましょうか。お姉様、終わったら呼んでくださいな」

御坂「ん」




<バタン…


木山「フ…そういえば私は『とりあえず』許してもらっただけだったな」

御坂「…」

木山「…煮るなり焼くなり好きにしてくれ。君にはそれだけのことをした…殺されても文句は言えないよ」



御坂「…ハァッ、どいつもこいつも人をなんだと思ってんだか。
   黒子も最初は疑ってたし。別にそんなことしにきたんじゃないっつの」

木山「…違うのか?」

御坂「当たり前でしょ。私は話を聞きにきたの」

木山「話…?」

御坂「………プログラム人格の……HALの…動機のこと、何か知ってる?」

木山「!」

御坂「知ってるのね…。7割程度しか洗脳されてないならもしかしたら、って思ったんだけど」

木山「それは…君はどこまで知っている?」

御坂「…全部、よ」

木山「…彼が話したのかい?」

御坂「ううん。たまたま、アイツの記憶を見て…」

木山「そうか……フフ、そうだったね。生身の人間の記憶も見れる君だ。
   データ化されていた彼の記憶を覗くことくらい造作もないだろう」クスクス

御坂「…」






木山「…この世界の全てを敵に回してもやめるわけにはいかない」

御坂「…?」

木山「彼が最初に私に会った時に言った言葉さ。フフッ、どこかで似たようなことを聞いたことはないかい?」

御坂「…あ…」


木山「8月の終わり…私が退院したあとすぐに、私のもとに警視庁から研究協力の依頼がメールできてね。
   中身は格調の高い依頼の文書と当時の学園都市の外の実態の説明、解像度を落とした【電子ドラッグ】のサンプルだった」


御坂「…」


木山「今にして思えば、あれはHALの仕掛けなのかもね…。10日ほど経ったのち、HALが現れた。
   彼はまだ不完全で、学園都市の電脳世界に対応できてなかった。現段階での脅威は無いと判断した私は興味本位でいくつか質問をした」



木山「すべて聞いたよ。彼が自身のオリジナルを殺害したことも…彼女…刹那さんのことも。
   彼と似たような境遇に立ったことのある私はどうしても助けてあげたくてね…。非情になることなどできなかった」



木山「私は合法的な実験を行うように提案した。すなわち、彼の存在を公表し、この街の研究者に広く知恵借りる案だ。
   しかし彼は賛同しなかった。このような途方もない計画に予算が降りるはずもなく、いいように利用されてしまうのが落ちだとね」



木山「私も君たちに救われた身だ。犯罪行為の容認などできるはずもない。なんとか説得しようとした。
   だが、彼は頑としてゆずらなかった。そうこうしている内に彼は【電子ドラッグ】を完全に再生できるようになっていた」



木山「私は偏光レンズをつけていたが【電子ドラッグ】を完全に防ぐことはできなかった。
   彼はそのまま当時私がいた研究所とそこのスパコンを乗っ取り、そこを拠点に活動を始めた。あとは君が知る通りの流れさ」





御坂「…なるほどね」

木山「………その反応を見ると……やはり彼の言っていたことは事実、か」

御坂「え?」

木山「………いやね、心のどこかで望んでいたんだよ。あの時彼が語った話は根も葉もないでっち上げ。
   時間を稼ぐだけの嘘だったと……そんな痛ましい、救いのない話など嘘であってほしかったと…望んでいたのさ…」

御坂「…そう…」

木山「…」

御坂「……ねえ」

木山「うん?」

御坂「私がしたことって…本当に正しかったのかな?」

木山「…というと?」

御坂「アイツは…HALは刹那さんに会いたかっただけでしょう?
   それなら…消去なんてしなくても、もっと他に方法があったんじゃないかな、って…最近そう思うの」

木山「………どうしようもないさ。学園都市を含め、世界中のスパコンを乗っ取る以外に彼が満足する環境はなかった」

御坂「…それでも…」

木山「あのまま彼が学園都市に居座れば、兵隊たちは永遠に自由を奪われ
   世界中のスパコンを支配されれば、それを使った科学・医療など最先端の研究もストップし
   何より強行策を取ったあとのあの状況では確実に大勢の人間が犠牲になっていた。君の判断はこの上なく正しいよ」

御坂「…」

木山「胸を張っていい。君は学園都市を救ったヒーローだ。
   そしてHALも…不満ではないだろう。すべてを知り、そして今こうして真剣に悩んでいる君に止められたのなら…」





-第七学区、窓のないビル



博士『…以上が主だった今回の損害だ』

アレイスター「ふむ…」

博士『逆に利益という面から見れば【未元物質】の覚醒、及び一連の騒動に関わっていた者たちの成長。
   そして『FiveーOver』の完成。君のことだ。どうせ秘密裏にあのプログラムを回収しているのだろう?』

アレイスター「…いや、回収し損ねたよ。さすがは【電人】と言ったところか」

博士『ほう、珍しい』

アレイスター「そんなこともある。だが、十分利益は得た。
       損害分については旧型兵器の売却、及び日本政府から謝礼という形でも取れる」

博士『ふむ…だが、戦争を始めるとなるといささか資金不足になる可能性もあるが?』

アレイスター「多少採算が合わなくてもかまわない。
       今回の件で学園都市への入学・進学を望む者は激増するだろう。来年度分の予算でカバーできる」

博士『なるほどの…。しかし、戦争によるイメージの低下も考えられる』

アレイスター「こちらの正当性、そして安全性を証明できればいい。ネタはある。戦闘面でもほぼ間違いなく完封できる」

博士『…大した自信だの』

アレイスター「まあね。貴方は引き続き開発と任務内での実験を行ってくれ」

博士『心得た』


ブツン…


アレイスター「…さすがにメインプランの主軸を2つとも奪われるのは計算外だったが…
       結果として大幅にプランは進行した。おまけにセカンドプランまでも。フフフ、感謝するよ【電人】よ…」


アレイスター「…私は違うぞ【電人】。何を犠牲にしようと必ず成功させてみせる。
       志半ばで潰えてなるものか。君の…愛しき人を失う激情は私も知るところだ。だからこそ、私は完遂してみせよう」





-第七学区、『風紀委員』一七七支部



佐天「おおっ!ようやく元の支部っぽくなりましたね!」

固法「窓ガラスも床も元通り。あとはもう一度小物を置き直せば完璧ね。なんだかもう懐かしい気分だわ」

初春「ええ!私なんかだいぶ記憶ないですから、本当にそう思いますよ!」

佐天「…ねえ、初春」

初春「はい?」

固法「その、スカートもっとおろさないの?」

初春「ええー、ダメですか?御坂さんも白井さんもこのくらいじゃないですか」

固法「いやまあ…規則違反じゃない…のかしら。前例がないから分からないわ」

佐天「丈はいいんだけどさ…ちょっとウエストラインが上すぎない?」

初春「そうですか?」

固法「だってそれみぞおちまであるじゃない」

初春「でもこっちのが落ち着くんですよ」

佐天「オッケー初春。もっかいワクチン見ようか」





<ガチャ


白井「ああ、皆さんもうそろってましたのね」

御坂「こんにちはー」

佐天「あ、こんにちは、御坂さん」

固法「時間ギリギリよ。何してたの?」

白井「まあ、いろいろと…というか初春。なんの真似ですの?」

初春「はい?」

御坂「スカートの位置上すぎない?」

佐天「ですよねー」

初春「いいじゃないですか。これがいいんです」

御坂「スカート短くしたいの?それだったら上げるんじゃなくてウエストの部分を折れば…」

固法「そこ、変なコト教えない」

初春「いえ、これがいいんです」

白井「…? いったいなんですの?」

佐天「えっ…と、なんて