男「イジメで地下倉庫に閉じ込められてる間に学校にテロリストが……」(1000)


───

男「……」

男「……暗い」

男「っクソッ……あいつら……あいつらぁ……!」

 ゴンッ ゴンッ

男「畜生、畜生……何で俺ばっかり……」

 ゴンッ ドンッ…… ド…

男「糞っ……地下でどんだけ音立てても誰も気づかないか……」

男「はぁー…畜生……またアレやるしかないか……」

 ガタゴト ガタガタ

男(どうせまた扉にホウキでもつっかえ棒にして閉じ込めてるんだ)

 ガタガタ ガタガタ

男「こうやって何度も扉をガタガタ揺らし続ければ……」

 ガタガタ ガタガタ

    っ カターン!

男「ほら、外れた」

 ガラララッ

男「あー、糞……やっと出れた……」

男「ゔ、でもこの後どうしよう……」

男「教室に戻ったらまた殴られるかプロレス技の餌食だ……」

男「………」

男「しばらくここで時間過ごすか……昼休みが終わるまで」

男「……畜生……何で俺ばっかりこんな目に……」

男「………」グス

男「っクソッ」ゴシゴシ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1331200858(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

見取り図書いたのにプリンタのスキャナ機能が壊れてる;

出来たわ
http://harakiri.run.buttobi.net/up/img/4958.jpg

あれ?見れない…

http://i.imgur.com/MELVi.jpg


男「っ痛て……」

男「あ……手から血が出てる……」

男「クソ……先に保健室に寄るか……」

男「……ついでにずっと寝てよっかな……」

男「そうすりゃ今日はイジメられることも無さそうだし…」

 スタスタ…


    コンコン
    
男「すいませーん」

男「……?」

 コンコン

男「すいませーん!」

男「………」

 シーン

男「……」

 ガラガラガラ…

男「……先生いないのか」

男「失礼しまーす」

男「……誰もいない……?」

男「ま、先生が来るまで寝てよ」



 ッ ドン!!



男「!?」

男「な、何だ……今の音……」

男「…向かいの校舎から聞こえた様な……」


 ───ァァ!



男「……悲鳴!?」


男「え……えぇ?」

男「どっかの馬鹿が爆竹でも鳴らしたのか……?」

男「……」

男「……い、今戻ったら……」

───

阿藤『おい男ぉ!!てめぇにこれやるよ!w』

男「や、やめろっ!」

加藤『ほらほらぁ、背中に爆竹プレゼント!』ポイッ

 バパパパパン!

男『わあああああああああ!!』

佐藤『ギャハハハハハ!w』

───

男「………」ガクガクガク

男「ど、どうなってるか、窓からこっそり見よう……」

 ヒョコ

男(向かいの校舎……もう授業始ってるかな……?)

男(流石にあいつらも授業中に馬鹿はやらないだろ……何の音だったんだ?)

男(……? 窓のそばに……先生達が並んでる……?)


男(いや、先生じゃない……? 誰だあいつら……?)

男(み、見たこと無い人達が……ひい、ふう、みい……とにかく、こっから見えるだけでも数人いる……)

男(しかも3階全部にいる……!?)

男(ま、まさか……)

男( 全 校 参 観 日 ……!?)

男(え、いや、待てよ、そんなこと聞いてねーよ プリントももらってないし……先生も何も言ってない……)

男(あ、また、ハブられたのか……? 俺だけハブって連絡回して……)

男(あのクソ担任なら有り得る……あの糞野郎なら……)グッ

男(イジメだって見て見ぬフリしやがって……ていうかむしろ俺のイジメに加担しやがって……)

男(畜生、畜生、これじゃますます教室に戻れねぇじゃねぇか……クソッ クソッ)

??『……』チラッ

男「!!」バッ

男(危ない危ない……見つかるとこだった)

男「一人でハブられてるとこを見られる→ウチの母ちゃんに情報が行く ってパターンだけは勘弁だ……」

男「母ちゃんにはイジメられてること言ってないしなぁ……」


男「…………」

男「ん?」

男「……今の男の恰好、何か変だったな……」

男「ん、ていうか……」

 コソッ

男「……」ジー

男「……皆同じ格好じゃねぇか? アレ」

男「……ていうか……全員迷彩服っぽいような……」ジー

男(え?コスプレ?そういう集会?え?) 

男「駄目だ……訳がわかんなくなってきた……」

男(2階と3階は頭の部分しか見えないけど……)

男(1階でウロウロしてる連中は何となく見えるぞ……)

??『……ふぅ』ガチャ

男「!!?!」 バッ

男(お、思わずビビって隠れてしまった)

男「い、いや……ていうかアレ……」

男「銃……だよな?」

男「え? あ、あれ、確か、えっと、ゲームで見たことある、なんだ?兵隊が持ってる奴……」

男「へ?え? は? え、え?」

男「落ち着け、落ち着け、銃な訳ないじゃん 馬鹿か俺は……」

男「え?でも迷彩服と良くマッチしてて……やっぱ銃?」

男「なワケない なワケない」ブンブン

方角付け足し
http://i.imgur.com/zGpP8.jpg


男「も、もっかい確認しよう……もっかいだけ……」

 コソコソ…

男「……」ヒョコ

??『……』ガチャ

男「~~~~っ!!?」バッ

男「みみみみみみ見間違いじゃない!!」

男「あ、あれ、銃、だ やっぱり……」

男「あ、で、でも、モデルガンって、奴、かも ウン」

男「ほら、最近のエアガンとかって凄くリアルだし、うん、有り得る」

男「ほら、きっと学校が招いたサバゲーの講師とか、そういう、ウン、そうそう」コクコク

男「それか自衛隊の人を招いて、お仕事紹介とかw あーあるあるwそういうイベントあるあるw」

男「ッハァ……ビビった……やっぱ人間、銃を見るとビビっちまうな……」ハァ…

男「……とにかく、保健室で休むか……今更授業には戻れそうもないし……」


男「………」

男「……待てよ」

男「じゃあさっきの音と悲鳴は……?」

男(……さっきの音、今考えると……明らかに銃声だよな)

男「どっかで聞いたことあると思ったら……Call of Dutyで聞いた音じゃん……銃声じゃん……」

男「え?てことは撃ったの? んで悲鳴……?」

男「………」

男「あー、アレだ このモデルガン、音も本物ソックリなんですよーっつってバーンってやって女子がキャー、みたいな」

男「うん、本物を撃つ訳ないじゃんw 俺何考えてんだろw 馬鹿かw」

男「………」

男「…………」

男「……何で……」

男「何で、こっちの校舎、こんなに静かなんだ……?」

男「あっちの校舎も、銃声以降、全然音がしない……」

男「ちょ、ちょっと職員室覗いてみるか……」

男(……な、何か見つかるのイヤだからかがんで歩くか……)コソコソ

男(どっちみち、ぼっちでいるの見られたく無いし……)コソコソ


── 職員室前

男「………」

男「……」コンコン

男「せ、せんせぇー」

男「………」

男「だ、誰かいますかぁ……」 コンコン

男「………」

男「は、入ってみるか……?」

男「え、イヤ、待てよ」

男「普通にガラガラガラって開けたら……」

男「向こうの校舎から見てる人間からしたら、独りでに引き戸が開いてるように見えちゃうよな……」

男「……もし自衛隊だったら、化け物だ!っつって突撃ー、とか……無いよな、ハハ」

男「……アホか」

男「……でも、まあ、不必要にびっくりさせる必要は無いよな……? ……何か日本語変だな……」

男「コソッ  チラチラ」

??『………』

男「よ、よし、相手はよそ見してるな……」

男「ゆ、ゆっくり、ゆっくり開けよう……」ガラ…

男「あとは俺が入れるぐらいの隙間さえあれば……」ゴソゴソ

男「ぐ……気付かれないように匍匐前進で……何でここまでやってんだオレ……」ゴソゴソ


男「ん?」

 シーン

男「先生が……誰もいない」

男「先生も全員参加のイベントなのか……?」

男「ん? これ……」

男「湯気?」

男「あ、体育のマッチョの机じゃねぇか、これ」

男「何で湯気が……」ヒョコ

男「カップ麺だ……ったく……食い終わったらちゃんと捨て……」

男「!!? 違う……! 中身が全然減ってない!ってかコレお湯入れただけだ!? 箸つけてすら無い!?」

男「…………」

男「変だ」

男「変だ、変だ 変だ おかしい どう考えてもおかしい……」

男「えーと、えーと、どうしよ、何だ、混乱してきたぞ」

男「え?自衛隊が……悲鳴で、カップ麺?」

男「う、あ、訳分からん、なんだこれ、なんだこれ」


男「クソ……俺頭悪いから、マジで何も分からん、どうしよう……えっと……」

男「メモだ メモ えっと 手帳、手帳」ゴソ…

男(俺の愛用の手帳……糞くだらないことしか書いてないけど……)

 カチ

男「まず、えっと、こっちの校舎は俺以外誰もいない」サラサラ

男「あっちの校舎に、いっぱい人がいる」サラサラ

男「人は……銃とか持ってるし、迷彩服着てるし、てか全員同じの着てるし、てか、軍隊っぽい……」

男「こっちの校舎は、急に人が消えたみたいになってる」サラサラ

男「で、今、何が起こってるの? アレらは一体、何?、と」サラサラ

男「ふぅー……」

男「えっと、最後の問いの答えは………」

男「分かんない……」

男「えっと、答え、答えを知るにはどうするか」サラサラ

男「えっと、えっと、」

男「向こうの」サラサラ

男「向こうの校舎に行って調べればいいじゃん」サラサラ

男「ただし」

男「見つかったらヤバそう」サラサラ

男「………」

男「……」ジー

男「え」

男「……」ジー

男「………」

男「マジ?」

http://i.imgur.com/Epyrc.jpg

今日はここまで


───

男「ま、待て待て待て待て」

男(渡り廊下には柵はない、丸出しだし……そもそも向こうの校舎の窓際には見張りが立ってる……)

男「向こうに気付かれずに行くなんて無理だ……!」

男「そんな……そんな怖いこと出来るわけない……!」

男「マンガや映画じゃないんだ……何が起こるか分からないんだ……」

男「どうしよう……」

男「えっと、要は『そんなにリスクを犯して、リターンがあるかどうか』だ……」ブツブツ

男「リスク=見つかる 、 リターン=現状を確かめられるかも 、か」

男「………」

男「いやいやいやいや」ブンブンブンブン

男「ぜんっぜん釣り合わない! それならここにいた方がマシだ!」

男「……ってことは、現状を確かめる術は"俺には"無いってことか……」

男(マンガの主人公なら、颯爽と向こうに乗り込んでるところなんだろうけどなぁ……)

男「ってことは、俺に残された道は……推測、だけだ」


男「そうだ……考えられうる状況の中で、最悪の状況を想定して動くんだ……」ブツブツ

男「えっと、メモ帳、メモ帳」パラ…

男「えっと、候補① 自衛隊の人たち」サラサラ

男「候補② サバゲーの人たち」サラサラ

男「候補③……」

男「………」

男「テロリ………

男「いやいやいやいや」ブンブンブンブン

男「いやいやいやいやいやいや」ブンブンブンブン

男「ありえない、あえりえない、ありえっこない」

男「そんなww映画じゃないんだからwww」

男「ありえないありえないww」

男「ありえない……」


男「………」サラサラ

メモ帳『ほんとか?』

男「ありえない」サラサラ

男「………」サラサラ

メモ帳『認めたくないだけじゃないの?』

男「………」

男「もし仮に、万が一、百歩譲って、そうだとしても、どうすりゃいいんだよ、と」サラサラ

男「………」

男「…………」サラサラ

メモ帳『どの道 最悪の場合を想定して動くんだから、変わんないじゃん 別にいいじゃん』

男「………」ジー

男「クソ……我ながら説得力がある」ボリボリ

メモ
http://i.imgur.com/Fm9xv.jpg

進みが遅くて申し訳ありません
なにぶん主人公がヘタレなもので


男「……で、じゃ、じゃあ、アレか  相手はテロリスト、と」

男「少なくともそう考えて動けと」

男「………」

男「相手はテロリスト、銃は本物」

男「……認めたくないが、この仮定だと、さっきの銃声と悲鳴、誰もいないこと、不自然なカップ麺……全て説明がつく」

男「テロリストが……あっちの校舎に人を全員集めて、銃で脅してるんだ……」

男「全員、だよな……」

男「俺以外……」

男「………」

男「………」ブルッ

男「み、み、見つかったらどうなるんだ?」

男「もしかしたら……」

~~~~

テロリストA「おい!貴様そこで何をしてる!」

男「ひぃっ!? 見つかった!?」

テロリストA「さては逃亡者だな……! いい度胸してやがる」ジャキ

男「ちょ、待っ……」

 ズダダダダダダ!

~~~~

男「………」ガクガクガクガク

男「あ」

男「そ、そうだ! それなら、こっちから投降しよう!」

男「それで、人質として追加してもらおう! うん……」

男「………」

~~~~

男「す、すいません!」←手を上げながら

テロリストA「あぁ!? 何だ貴様!」ジャキ

男「と、投降しに来ました!人質にしてくださいぃ!」ガクガク

テロリストA「……いいだろう、こっちに来い」

男「ど、どうも……」

テロリストA「ちょうど、皆殺しにするところだったしな ちょうど良かった」ジャキ

男「へ……?」

クラスメイト達の死骸 グチャグチャ

男「う、うわああああああぁあっ!?」

テロリストA「じゃ、友達と一緒におねんねしな」

男「た、助け……」

 ズダダダダダダダダ!

~~~~

男「………」ガクガクブルブル


男「そうだ……考えてみろ……学校を占拠するような奴らだぞ……」

男「どう考えてもイッちゃってる連中だ……しかも、こんなに大量の人質をずっとコントロールできるワケもない……」

男「どこかで『減らす』行為をとるはずだ……」

男「それが"解放"ならまだいいけど……」

男「…………」ブルッ

男「くそっ……くそぉ………」

男「何でだよ……! 何でこの学校なんだよ!」

男「もっと他にも学校あんだろ! 底辺校とか! DQNばっかりのとことか!そういうとこ狙えよぉ!」

男「なんで、何で俺がいるトコなんだよ……なんで、俺今日学校休まなかったんだよ……」

 ジワ…

男「なんで、俺ばっかり、なんで……」ポロ…ポロ…

男「死に、えぐ……たく、死にたく……ねぇよぉ!」ポロ…ポロ…

男「………」グス

男「ん……はぁ、ぐっ……」ゴシゴシ


男「………」ゴシゴシ

男「………」スッ ←メモ帳

 パラパラ

男「………」サラサラ

メモ帳『生きたい でも怖い』

男「………」サラサラ

メモ帳『今生きてるじゃん それを保つだけじゃん 割と簡単じゃん』

男『簡単なワケねぇだろ! 見つかったら終わりなんだぞ!』

メモ帳『まあね がんばって』

男『見つからないよな?』

メモ帳『見つかるかもよ?』

男『でもさ、ほら、俺が地下倉庫にいたことは、テロリストは知らないだろ?』

男『もう全員見つけた気になってるはずだ』

男『てことは、俺は奴らからはステルス状態。幽霊みたいなもん。ハナから存在しない。』

男「だから探しにも来ないし、見つからない」

メモ帳『お前さあ』

男『なんだよ』

メモ帳『アホだな』

男『なんでだよ!』


メモ帳『お前が地下倉庫にいたことを知ってる奴らがいる』

男『え………』

男『あ、イジメっこ達………』

男『い、いや、でも……あいつら、わざわざそのこと話さないだろ……なぁ?』

メモ帳『あいつらの性格良く考えろ』

男『………』

メモ帳『"今、逃げてる奴がいる そいつのこと教えるから、俺達だけ解放してくれよ!"とかな?ww』

男『やめろよ……! 冗談でも、そんな……』

メモ帳『冗談だと思うか? 良く考えろ』

男『…………』

男『やり、かね…ない……』

メモ帳『だろ?』

男『あぁぁああぁぁあぁ………』ガク…

メモ帳『ってことは、分かるよな?』

男『え………』

メモ帳『時間の問題だってことだよ  あいつらが、お前を捕まえに来るのは』

男『そん、な………』

メモ帳『覚悟決めろよ "戦闘開始"だ!』

男『イヤだああああああああああああぁあああああ!!!』

 ビリビリビリビリッ グシャァッ!

男「あ…………」

http://i.imgur.com/fk6SY.jpg


男「あー……メモ帳が……」

男「はぁ……」

男「しかし……戦闘開始っていっても……」

男「え?俺が? テロリストに立ち向かう?」

男「………」

男「むり無理ムリむり無理ムリむり無理ムリむり無理ムリ」ブンブンブンブン

男「絶対ムリだ……」

男「………」

男「もし俺がヒーローだったら……」

男「テロリストを皆倒して、」

男「クラスメイトとか、先生たちとかを助けて」

男「ヒロインの……可愛い子っていったら、女ちゃんかな……ヒロインとくっついて……」

男「それでハッピーエンド、ってか……」


男「……はぁ……」

男「俺には無理だよ……」ブツブツ

男「だって、まず、体が強くない……」

男「たぶん、ケンカで小学生にも負ける……マジで」

男「それに……頭も悪い……テスト、いっつもビリだし」

男「"学校の勉強が出来ないけど頭の回転は早い"なんて設定も無い……」

男「むしろ皆より要領悪いし……凡人以下の脳みそ……」

男「さらに度胸も勇気も無い……」

男「ひたすら臆病で、ネガティブで……」

男「いっつも何かしようとするたびに色んなの失敗パターンばっかり思い浮かべちゃうんだ……」

男「だから何かを成し遂げたことも無い……」

男「頭の中だけでシュミレーションして終わっちゃうんだ……」

男「……臆病にも程があるだろ、自分」

男「それに何より……」

男「クラスメイトとか担任とか、全然助ける気にならない……」

男「ずっと俺をイジメてきたクラスメイトだし……担任も見て見ぬフリだったし……」

男「ぶっちゃけブチ殺されても全然構わないや……」

男「………」

男「はは……」

男「クズだなぁ、俺……」

男「………」

男「……死んだほうがいいのかな、俺」

男「………」

男「いや」

男「やっぱ生きたいや」

男「……もっかい家に帰って、母ちゃんに会いたいや」

男「………」

男「うん」

男「もし、闘う……仮に闘うことになる、ってんなら……」ブツブツ

男「闘う理由はそこだな……」

男「正義でも勇気でもない……エゴだ」

男「………」

男「……エゴでいい……そっちの方が俺らしい……」

男「………」

男「生きてやる」

男「生き延びてやる」

男「………」ギュッ


男「……とにかく、そのうち探しに来るだろう……」

男「ベストなのはこのまま校舎から脱出すること……」

男「……うん、北側の窓から出て、そのまま出て行けばいいんだ……」

男「簡単だ……うん」

男「でも……」

~~~~

男「よし! 窓から脱出しよう!」

 ガララララ…

男「このまま逃げ延びてやる……!」

   カチッ

男「カチ……?」

  キィィィン…

男「!? ま、窓にバクダンが仕掛けられてた……!?」

  ドッガァァァーン!!

男「ぎゃあああああああああぁああ!!!」

~~~~

男「………」ガクガク


男「も、もしくは……」

~~~~

男「よし! 脱出しよう!」ガラララ

 ガタッ

テロリストA「はっはっはぁ!」

男「!? 何で!?」

テロリストA「実はずっとお前を監視していたんだ!」

 ジャキ

男「ちょっ……待っ……」

 ズダダダダダダダダ!

男「ぎゃあぁあぁああぁぁああ!!!」

~~~~

男「………」ガクガク

男「も、もしかしたら……!」

~~~~

男「やった!窓から出られたぞ!」

男「あとは北側に逃げるだけだ……」タタタ



屋上のスナイパー「………」

屋上のスナイパー「あー、報告します こっちの校舎にネズミが一匹残っていました」

屋上のスナイパー「……了解。 狙撃します」

屋上のスナイパー「………」ジャキ


男「あー……やっと家に帰れ」

  タァ───ン!

男「る……?」

  ガクッ
       ドサ……

~~~~

男「………」ガクガク


男(……ダメだ……いつものクセで失敗パターンばっかり思い浮かべてしまう……)

男(どうしよう……どうしよう……)

男「そうだ、メモだ……」

男「メモに俺の"妄想"をひたすら書いてこう……そっから考えよう……」

男「妄想を、妄想で終わらせちゃダメだ……」

男「はぁ……はぁ……」

 サラサラ

男「校舎から脱出したい……」サラサラ

男「窓にバクダンが仕掛けられてるかも……!」サラサラ

男「どこかにテロリストが潜んでるかも……!」ガリガリ

男「屋上にスナイパーがいるかもしれない……!」ガリガリガリガリ

男「監視カメラが仕掛けられてるかも……!!」ガリガリガリガリ

男「外にも見張りがいるかも!」ガリガリガリガリ!

 ガリガリガリガリガリガリ

男(こうなったら……)ガリガリガリ

男(臆病になれ……もっと、もっと臆病になれ……)ガリガリ

男(ありえねーぐらい……普通の人間じゃ……普通の"勇気ある"人間じゃ思い浮かばないぐらお、臆病になれ……!)ガリガリ

男(もっとネガティブに、臆病に、ビビりに、ヘタレになれ……!)ガリガリガリ

男(俺なら出来る……!(泣))ガリガリガリ

男「はぁ……はぁ……」ガリガリガリ…


  コツ…コツ…


男「!!?」

男(だ………)



男(誰か来る………!!?!)


 10:50 AM

 男:保健室前




見取り図
http://i.imgur.com/VoI7v.png

メモ
http://i.imgur.com/Kvj3a.jpg



男(ど……どうしよう……)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(誰かが近づいてくる……!)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(西渡り廊下を通ってるんだな)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(ど、どこかに隠れなきゃ……!)キョロキョロ

男(あ……)

男(隣の職員室の戸……微妙に開けて、そのままだ……!)

 コソコソコソ

男(音を立てちゃダメだ……! 四つん這いで……!)コソコソ

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(間に合ええええぇえぇぇえっ!)

  シュルッ

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(間に合った……)

 コツ、コツ……

男(しかし……こいつはどこに向かって歩いてるんだ?)

男(!!! 職員室に用事がある、ってんならマズい!! 見つかる!!)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(~~~~~~っ!)ドックン ドックン ドックン

 コツ、コツ……
        カツ、カツ、カツ

男(……? 階段を上る音……?)

男(そうか……1階じゃなくて、2,3階に用事があるんだな)

 カツ、カツ……カツ……カ………

男(……助かった……)

男「はぁー………」グッタリ


男(やばい……背中が汗ぐっしょりだ……)

男(こんなノミの心臓で……ほんとに生き残れるんだろうか……)

男「はぁ………」

男「………」

男「ん?」

男(さっきの男……いや、男かどうか分からんが……何のために上に……?)

男(………)

男(そして……『どこに行ったのか』も重要だが……)

男(『どこから来たのか』も大事だ……)

男「………」ゴクリ

男「……廊下の窓から、こっそり向こうの校舎を見てみるか」

男「……でも、職員室から出るの怖いし……」

男「で、でも……どうしても、"廊下に並んで見えてるあいつら"を、今、確認しなきゃいけないんだ……!」

男「……」

男「よ、よし……勇気を出して、職員室からいったん出て……」

 ピタ

男「……いや、待て、さっきの男が戻ってきたら?」

男「……それは大丈夫か……さっきの男の足音は相当響いてた……」

男「多分、兵隊用の、軍靴っていうか、なんか、頑丈な靴なんだろう……」

男「だから、あいつが降りて来たときは音が響くから、それを聞いたらすぐに職員室に隠れればいい……」

男「よ、よし……今度こそ廊下へ出るぞ……」

 ピタ

男「ん、待てよ……」

男「さっきの男……もしかして俺を探しに来たんじゃ……」

男「……いや、ありえない……」

男「向こうの校舎からは、俺の姿は見えなくても、半開きの職員室の戸は見ることができる」

男「もし『北側の校舎に誰か残っている』って情報が入ったら、真っ先にそこに気付くはず」

男「なら、あの男が職員室を調べないはずがない」

男「仮に『もう職員室からは出ているだろう』と考えたとしても、」

男「"俺"が窓から逃亡する前に……つまり1階から、調べていくはずだ 早めに。」

男「だが、奴はそれをしなかった……」

男「つまり、俺の存在はまだ奴らにはバレてない……」

男「ほっ……」


男(しかし……バレる前、ぐらいしか……自由には動けないよな……)

男「よ、よし……今動こう……あいつが戻ってくる前に、絶対、絶対確認しなきゃいけない……!」

 ゴソゴソ

男(だいぶ匍匐前進慣れてきたなぁ……) 

 ゴソゴソ

男(……そーっとそーっと……)

 ヒョコ

男(おぉ……相変わらず廊下に並んでんなぁ……)

男(えー、下から……1階に……ひぃふぅみぃ……4人)

男(2階も……4人……)

男(3階は……)

男(………)ジー

男(3人……!!)

男(!!! 一人足りない!!)

男(足りないのは、丁度3-Dの前あたりか!)

男(間違いない……今、こっちの上の階に登っていったのは、さっきまであそこにいた奴だ!)

男(ということは……)

男(………)


  ッ ヴーーッ!

        ブツッ

    ヴーーーーーーン

男「っ!!?」

男(こ、校内放送……!?)


男「な、なんで……」

男「!!  さっきの男か……!」

男「あいつ、放送室に向かってたのか……」

男「ってことは……今、あの男が放送室から、コレを流してるのか……?」

男「一体何を……」

 『プツッ』

 『あ~~~ぁ~~~♪ ラーラーラー♪』

男「!!!?!」

 突如スピーカーから流れ出した歌声。
 古いラジオの様な、時折かすれた感じのコーラスだった。
 数人の中年女性のハイトーンな歌声が重なる。
 昔の教育テレビか何かのオープニングを彷彿とさせる、明るい曲調と、古めかしい音質。

 俺はあっけにとられてスピーカーを見つめた。
 しかし、耳に飛び込んでくるイントロには聞き覚えがあった。
 
 『ラーラーラー♪ あ~~かるい~ミライ~~♪』

 間違いない。最近、ローカル番組の合間にやたら入ってくるコマーシャル。
 そのコマーシャルのBGMが、これだ。

男「ウソ……だろ……」

 最近地元でよく話題になっている。
 急速に信者を増やし、一方でトラブルも絶えない……

 新興宗教団体。

男「無応真理教……」

 『む~おう~~♪ しんり~~きょおぉ~~~♪』

 曲はイントロからサビに入り、そのうち2番へ差し掛かろうとしていた。
 俺は口をポカンと開けたまま、狂ったように明るく歌うスピーカーを見上げるしかなかった。
 
 頭の中をクエスチョンマークが駆け巡る。
 なぜ、どうして。

 なぜ、これが今、"占拠された学校"のスピーカーから流れているのか。
 なぜ、テロリストがこんな馬鹿げた曲を流しているのか。

 答えは明らかだった。
 明らかだったが、認めたくはなかった。

 俺が立ち向かおうとしているのは、

 ただのテロリストじゃない。

 『む~~お~う~~♪ しんり~~~きょ~~おぉ~~~♪』

 本物の、キチガイ集団だった。

───


───

 『む~~お~う~~♪ しんり~~~きょ~~おぉ~~~♪』

 曲が終わる。
 そしてまた、スピーカーは低いノイズを吐き出すだけの箱へと戻った。

隊長「ううむ……いつ聞いても素晴らしい……」

 うっすらと涙を浮かべながらスピーカーへ敬礼しているのは、『隊長』と呼ばれる男。
 初老でありながら、筋肉質で野生的な雰囲気を漂わせるこの男は、宗教団体・無応真理教の幹部でもある。
 そして……このテロの、総指揮を執っている。
 この男、かつて実際に自衛隊でその指揮を執っていたという異色の経歴を持つ。
 今回のテロにおける武器の調達、信者の軍事訓練、作戦総指揮。
 全て、この男の手腕によるものであるが、
 それらを可能にしたのも、かつての経歴と経験の為せる業なのであろう。

隊長「私は……私は幸せです」

 使い込まれた迷彩服に身を包み、愛銃のM16A1をたすき掛けしながら、
 どこかうっとりとした声を出す。

隊長「このような大舞台で、教団の為に働けるなど……光栄です、尊師」

 尊師、と呼ばれた男は、目の前にいる。

 場所は南校舎3階の空き教室。
 この部屋には二人の人間しかいなかった。

 尊師と呼ばれた男がゆっくりと顔を起こす。
 その目は閉じられたままだ。

尊師「ん~~~~」

 抑揚の無い声で、鼻歌でも歌うように。

尊師「ん~~~~~~~~~」

 伸び放題の髪。伸び放題のヒゲ。
 そして丸顔と、少しぽっちゃりした体型。
 
 特徴的な容姿の男……尊師は、信者が急ごしらえした台座の上であぐらを組んでいる。
 紫色の"修行服"に身を包んで。

尊師「今~~~~"私の"子たちは~~~どうなっているのかな~~~~」

 目を閉じたまま、間延びした声で隊長に問う。


隊長「ハッ! 今、各教室にて信者2名の見張りをつけて、監視しています!」

隊長「教師共も、各教室に分けて押し込みました!」

隊長「携帯機器も没収!反抗分子も殴りつけて大人しくさせました!」

隊長「依然、異常無し、滞り無し!順調であります!」

 尊師と対照的なハキハキとした声が部屋に余韻を残す。

尊師「ん~~~~~それは~~良かった~~~~」

尊師「ん~~~~それで~~~~」

 相変わらず目は閉じたまま、尊師が指を立てる。
 スピーカーの方を指しているようだ。

尊師「アレは~~~~~」

 アレ、とは放送のことだ。

尊師「もう~~~終わりなのかな~~~~」

隊長「いえ、まだ、これから続きます!」

 歌が終わってから、結構な時間が経っている。

隊長「あの素晴らしい歌の感動から、気を持ち直すためには時間が必要だと思いましたので!」

隊長「そろそろ、尊師の"御説明"が始まります!!」

 隊長の目の輝きは増すばかりだった。

───


───

 職員室

男「………」

男「なんだったんだ……曲だけ流れて……」

男「さっき男が戻ってくる気配もない……」

男「それに、ずっとノイズは続いている……」

男「まだ放送は終わりじゃないのか……?」

 『プツッ ヴーーーーー』

 『あ~~~皆さん~~~~』

男「!?」

男「………この声……」

男「……聞いたことある……教団の教祖の声だ……」

男(さっき上がっていった男じゃない……テレビで見たけど、あんな体型じゃなかった)

男(録音、か……。 事前に教祖が録音したテープか何かを流しているのか……)

 『皆さん~~~~落ち着いて~~~聞いてください~~~』

 『我々は~~~あなたがたを~~~~』

 『救済します~~~~』

男「………」

 思わず顔をしかめた。

 『まず~~~この学校に我々がやってきた理由~~~それは~~~』

 『あなた方の~~魂の救済~~~すなわち~~~~』

 『我々の教団に入っていただく、ということ~~~~』

男「………!!」


 『そして~~~~、え~~~~』

 『我々は~~~、近々~~~』

 『この国から~~独立します~~~』

男「!!?!?」

 『我々の独立国家を立ち上げるのです~~~~』

男「!?!!?」

 『無応真理共和国~~~現世におけるユートピアぁ~~~』

男「…………」

 『で~~~』

 『その建国費を~~~ 日本政府からちょっと支援してもらおうと思うのです~~~』

男「く、狂ってる……」

 『その為には~~~あなたたちと一緒にお願いしたほうが~~聞いてもらえるのです~~』

男「だから……人質ってことじゃねぇか……!」ギリ…

男「俺たちを人質にして……身代金を巻き上げるってだけだろ……!」

男「何が"お願い"だよ!!」ギリ…

 『ですからぁ~~~ 皆さん~~我々の教団へ~~~』

 『 よ う こ そ ~~~  "我が子"たちよ~~~~』


 『プツッ』

 『ヴーーーーーーーーーー』

 『プツッッ』

 『………』

男「………」

男「はぁぁぁあぁぁ………」ガク…


男「………」

 …ツ………コツ…………コツ……

男「!!!」

男(ヤバい! 戻ってきた!)

 ……コツ、コツ、コツ、コツ

男(か、隠れなきゃ……)ゴソゴソ

 コツ、コツ、コツ、コツ

男「…………」

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(今……相手は一人……)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(今、相手は俺に気づいてない……)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(お、襲う……か?  奇襲して……倒す……か?)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(もうすぐ……もうすぐ一番近づく……!)

 コツ、コツ、コツ、コツ

男(よ、よし!! 決めたぞ!!)

男(やめとこう!!!)

 コツ、コツ、コツ

 コツ……コツ……ツ……

男(行ったか………)

男(今、向かっていっても勝てない……)

男(こっちに武器はないし、不意打ちしても、一撃でやれなきゃ逆にこっちが殺される)

男(忘れるな……俺はヒーローじゃない……)

男(……臆病になってやる………とことん、臆病になってやる……!)

男(お前らなんかに"救済"されてたまるか……!)



男(こちとら、救いようのないヘタレなんだよ……!!)ギュッ



───

当SSはフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。


───

男(……男が出て行った……)

男(放送も終わったし……ひと段落か……)

男(………)

男(……ハッ)

男「呆けてる場合じゃない……!」ゴソゴソ

男「確認、確認……」ゴソゴソ

テロリスト『……』スッ

男「うん……一人足りなかった3-Dの前に、さっきの男が出てきた」

男「……メモしとくか」

男「あ」

男「……さっきのメモ、途中まで書いてそのまんまだな」

男「いきなり放送始ったからなぁ……」

男「我ながら、よくこんなに挙げられたもんだ……ビビりすぎだろ」

男「……一つ一つ推理してくか……」

男「①何かトラップが仕掛けられている可能性」

男「……まず、俺が地下に閉じ込められてから出て行って異変に気づくまで30分強だった……」

男「その短時間で、学校に乗り込み、生徒たちを誘導、教師陣を確保し、学校を占拠……」

男「これだけでも凄すぎる……」

男「だけど、それに加えて、爆弾を仕掛けたり、監視カメラを仕掛けたりは可能か……?」

男「逃げ場を塞ぐにしても、爆弾や監視カメラじゃ、有効範囲が狭すぎる……」

男「それは数多く仕掛けることで何とかなるけど……この短時間じゃ無理だ」ブツブツ

男「人員が多くいれば、"短時間で数多く仕掛ける"も可能だろうけど……」

男「それは無い、と断言できる」

男「さっきの男、わざわざ元々の見張り場から離れて、放送室へ行ってた」

男「もし人員が余ってるなら、わざわざ見張りを外してまで放送室に向かわせたりしない」

男「……つまり、人が不足してるんだ 今の状態でギリギリぐらいの人数なんだ」

男「だから、テロリスト達は人手が足りてないってことだ」ブツブツ

男「よって、爆弾、監視カメラ、地雷とかはあり得ない……除外できる」ブツブツ


男「②こちらの校舎にもテロリストが潜んでいて、まだ俺を監視しているパターン」

男「……こんだけ好き勝手してるんだ 見つかってるならとっくに捕まってる……」

男「これも除外」カキカキ

男「外の見張り、もだ」

男「もし北側(こっちの校舎の外側)に見張りがいるなら、放送室にはそっちを向かわせるはずだ」

男「わざわざ教室前の見張りをはずすとは考えられない……」

男「よって、外の見張り説も除外」カキカキ

男「③窓を開ける音でこっちの存在がバレるかも、」

男「……これも流石にありえない 音を立てずに開ければいい」カキカキ

男「④衛星で見張ってるかも……、か」

男「いや、教団が衛星打ち上げたりたら大ニュースだ……除外、と」カキカキ

男「⑤急にテロリストがこっちの校舎へ来る可能性」

男「……割とあり得る……が、それでも靴音はでかくて、凄く分かりやすいぞ」

男「音が聞こえたらすぐに隠れれば良い……除外」カキカキ

男「……残りは消せないか……」

男「えーと、残りは3つか」

男「①別のテロリスト(援軍)がこちらへ向かっている可能性」

男「②屋上にスナイパーがいて監視している」

男「③逃げたらあとからお礼参りに来るかも」

男「………」

男「3つは仮説だけど……でも、最悪の場合を想定して動かなきゃ……」

男(でなきゃ……殺されてしまう……)ブルッ

男「テロリストがこっちへ向かっているなら……何とか止めなきゃいけない」

男「あと、スナイパーがもしいたら……怖すぎる……」

男「……」バッ

男「……今、俺の真上にいるかもしれないんだ……」

男「ハッ……」

男「向こうの校舎の屋上にもいる可能性は……?」

男「いや、俺がどんなにコソコソ動いても、向こうの屋上からは丸見えだ……」

男「向こうにもいるなら、間違いなく俺はとっくに見つかってる……」ブルッ

男「……てことは、もしいるならこっちだけで……」

男「人手不足、の仮説を信じるなら……恐らく一人だけ。」

男「………」サラサラ

メモ帳『スナイパー いるならこっち 一人だけ』

男「……なんで五七五なんだ」


男「……一番の問題は、3つ目だ……」

男「……もし一人だけ逃亡して……それがバレて……後からお礼参りに来られたら……」

~~~~

男「あの事件から1年か……いやな事件だったなぁ」

男「でも、ま……逃げれて良かった良かった」

 ピンポーン

男「? はいはい、どちらさま?」 ガチャ

テロリストA「……」

男「ひぃっ!?」

テロリストA「教祖の教え……逃亡者には、死を!」

男「ちょ……待っ……」

 ドン!

~~~~

男「………」ガクガクブルブル

男「いや……考えすぎ、だよな……? あり得ないよな……?」

男(いやいやいや……学校を占拠するぐらいのキチガイ集団だぞ……?)

男(……やりかねない……!)


男「どうすりゃいい……どうすりゃいいんだ……」

男「ずっと警戒しながら……危険と戦いながら生きてけってのか?」

男「いやだ……いやだ!!」

男「俺は……ひたすらリスクを避けながら、安全に、平和に生きるんだ……!」

男「そうだよ……リスクのある人生なんて……まっぴらだ……」

男「でも……このままじゃ……」

男「く……くそっ」

男「一体どうしたら……」

男「………」

男「……」サラサラ

メモ帳『お礼参りをされない為には?』

男「………」サラサラ

メモ帳『今リスクを減らすしかない』

男「………」サラサラ

メモ帳『できればゼロに』

男「………」サラサラ

男「………」

男「……するしか、ないのか……」

男「………」

男「………」

男「はぁぁぁぁ……………」ガク…

男「…………」

男「……やだなぁ…………」




メモ帳『テロリスト』



メモ帳『 皆殺し 』



───

http://i.imgur.com/JBTQF.jpg


主人公もキチガイじみてきました
違うんです 本当はやさしい子なんです
ただちょっと臆病すぎるだけなんです

>>1で昼休みって言ってますが忘れてください
時間とか適当です

脳みそイっちゃっ隊vsキング・オブ・チキン少年
何だろう、デスノートの頭脳戦を見ている気分

すいません。
某宗教団体から電話が来ました。
これ以上続けるとポアするとのことです。
本日をもってこのSSを打ち切ります。
ありがとうございました。

エイプリルフールで嘘ついていいのは午前中だけだよ。罰として続きはよ。

>>93
そうなの!?


───

男「………」ジー

男「皆殺し、ったって……」

男「………」

男「……でなきゃこっちが、殺される、ってか……」

男「…はぁ……」

男「……やだなぁ……人を殺すなんて……」

男「そんなめんどくさそうなこと……」ハァ

───


───

生徒たち「……」ざわ…

生徒A「お、おい……俺達、どうなるんだ?」

生徒B「分からねぇ……」

生徒C「殺されちゃうのかな……?」グス

生徒D「そ、そんなこと言わないでよ!」

テロリストA「そこうるさいぞ!! 黙ってろ!!」

生徒達「!! ひっ…」ビク

テロリストA「ったく……」

 シーン…

 ………

   ガラララッ!

生徒達「!!?」

テロリストA「!」

隊長「やあ、諸君」

テロリストA「た、隊長!」バッ

隊長「はは、良い良い 監視を続けたまえ」

テロリストA「はっ!」

生徒A「隊長……だってさ」ヒソヒソ

生徒B「この事件の主犯ってことか?」ヒソヒソ

生徒C「主犯はキチガイ教祖だろ?」ヒソヒソ

テロリストA「そこ!!私語をするんじゃない!!」

生徒A「ひっ……」


隊長「あー、諸君」

生徒達「………」

隊長「只今より、教祖様からありがたいお話がある」

隊長「心して聴くように」

生徒達「………」


  ガララララ……

教祖「………」スッ

隊長「!」ピシッ

教祖「………」テク…テク…

教祖「………」

生徒達「………」

教祖「……あ~~~~~」

生徒達「………」

教祖「我が子、たちよ~~~~」

生徒達「………」

教祖「今~~から~~ 我が~~教団の~~~」

教祖「教え~~~を~~~   説きます~~~~」

生徒達「………」

───


───

男「しかし……いい加減時間がないぞ……」

男「俺の存在がいつバレたっておかしくないんだ……」

男「今……まさに今、今しか動けないんだ」

男「奴らに気づかれてからじゃ、何も出来なくなる!」

男「い、急ごう! まだ何も用意できてない! 武器も何にも持ってないんだ!」

 ゴソゴソ…

───


───







教祖「え~~~まず~~~  私は~~~~」


教祖「 神です 」







───


───

 職員室

男「……何かあるかな……」

 ガサゴソ

男「えっと……まずハサミを手に入れたぞ……」

男(武器にはなりそうもないな……)

男「ポケットに入れてこうかな……」

男「いや、もしかしたら……」

~~~~

 カツーン!

男「し、しまった! ポケットからハサミを落とした……!」

テロリスト「そこか! 見つけたぞ!」

 ズダダダダダダ!

~~~~

男「………」ガクガク

男「な、何かカバンみたいなのを探そう……」

男「両手が使えるように、出来れば……」ゴソゴソ

男「! あった!小さなリュックサック……」

男「これに色々入れてこう……」ゴソゴソ

男「文房具……ペットボトルの飲み物……」

男「……あと何か……」キョロコキョロ

男「! 先生のデスク、結構上着を置きっぱなしにしてるぞ……」

男「……」ゴソゴソ

男「! あった、携帯!」

男「……持ってくか」

男「あ……その前にサイレントマナーモードに……」ピッピッ

男「ん……?」

男「この臭い……?」

男「……これ………」

───



───







教祖「修行すれば~~~~  神に近づけます~~~~」

教祖「近づくだけで~~~ 神にはなれません」

教祖「 私が神です 」







───


───

 理科室

男「理科室……何かないかなぁ……」ゴソゴソ

男「……頭の良い奴なら、ここにある薬品でバクダンとか武器とか作れるんだろうなぁ……」

男「はぁ……俺には無理だ…… 理科の知識なんて、基本的なことしか知らない……」

男「……でも、何か役に立つものないかな……」ゴソゴソ

 『塩酸』

男「……ぶっかける、か? でも……一瞬で倒せる訳じゃないし……銃相手に使えるか?」

 『硫酸』

男「こっちも……下手したらこっちが危険だしなぁ……」

男「はぁ……」ガク

男「ん………?」

男「……これ……」

 チャプ

男「……イジメで、これ嗅がされたな……」

 『アンモニア水』

男「……これもだ」

 『酢酸』

男「………」

男「………」ゴソゴソ

───


───







教祖「では、いっしょに唱えましょう」





教祖「修行するぞ! 修行するぞ! 修行するぞ! 修行するぞ!」







───


───

 家庭科室

男「ここなら、武器とかあるかも……」ゴソゴソ

男「そうだ! 包丁!」 バッ

  ギラッ…

男「……」

~~~~

テロリスト「………」テクテク

男「い、今だ!」

 グサッ

テロリスト「ぐっ!?」

男「よ、よし……腹に刺さっ……」

テロリスト「ぐ、お……」ジャキ

男「え……?」

テロリスト「てめぇも死ねぇ!!」 

 ズダダダダダ!

~~~~

男「………」ガクガク

男「そ、そうだ……包丁って即死しないじゃん……」

男「俺、急所とか刺せるワケないし……てか知らないし……」

男「首を切る、なんてそんな手慣れたこと出来るワケもない……」

男「……包丁、置いてくか……」 カタ…


男「そうだ……刃物がダメなら……鈍器とか」キョロキョロ

男「あ」

男「アイロン……」

男「これで殴りつけたら倒せるかな……?」

男「いや……もしかしたら……」

男「……」←妄想中

男「……」ガクガク

男「アイロン持ってくのはやめよう……」

男「これは……タオルの山……」

男「……」←妄想中

男「ガクガク」

男「うぅ……だ、ダメだ……悪い妄想しか浮かんでこない……」ブルッ

男「ほ、他に何かないのかな……」キョロキョロ

男「あ………」

男「ぬいぐるみ……」

男「授業で作られた奴か……」

男「……あはは、フワフワしてて気持ちいい」モコモコ

男「………」

男「これは持ってこう………」ゴソゴソ

───



───








教祖「さて~~~、では~~~ 教団の作ったアニメを見てみましょう~~~」








───


───

 体育倉庫

男「ケホ……埃臭い……」

男「……ここは色んなものがあるな……」

男「お……これはっ、ピストル!?」

 カチャ

男「ってなんだ……よーいドンの合図に使うヤツか……」

男「武器にはならないか……」

男「……もしかして………」

男「……」ガクガク

男「一応持ってくか……」ゴソゴソ

 カラン…

男「お……?」

男「これは……」ヒョイ

男「バット……」

男「……」

男「……でも、これ持って移動はムリだ……」

男「かさばるし、重いし、落としたら音も鳴る……」

男「どうしよう……」

───


───






教祖「さて、目をつぶりましょう~~~~」



教祖「怖くない~~~ 何も~~~怖くない~~~~~」






───


───

 ヒタ… ヒタ…

男「はぁ……はぁ……」

 抑えめの足音と、苦しそうな息使い。

 ヒタ… ヒタ…

男「はぁ……はぁ……」

 屋上への階段を一段、一段と昇る男。
 その手にはバットが握られている。

男「………」

 男の足が止まる。
 その目の前には、錆の浮かんだ古びたドア。

 これを開ければ、屋上が広がっている、はず。

男(でも……そこにはスナイパーのテロリストがいてもおかしくないんだ……)

 男のバットを握る手に力が入る。
 額に汗が浮かび、頬を伝って床へ落ちた。

男「はぁ……はぁぁ………」

 ごくり、と唾を飲み込む。

男「………」

 男はそっと、バットを壁にたてかける。
 倒れないように、慎重に。

男「………」

 バットをたてかけると、男はそれを見て満足そうに頷いた。

男「……よし」

 そして、くるりと背を向けると、
 また一段一段と、階段を降りはじめた。
 足音をたてないように、慎重に、臆病に。
 しかしその背中は、ある種の自信で満ちていた。

───



───






教祖「仲間と一緒に住んで~~~ どんどん修行しましょう~~~~」


教祖「みんなと一緒で~~~ 素晴らしい世界へ~~~~行きましょう~~~~」






───


───

 廊下


男「ここにあるもので……何かないかな……」

男「消火器に、ゴミ箱に、ロッカーに……」

男「うーん……微妙だなぁ……」

男「お」

男「こ、これは……AED!」

男「これって電気ショックの奴だよな……」

男「………使えるかもしれない」

男「……いや、もしかしたら……」

男「………」ガクガク

───


───






教祖「特製のお水があります~~~~」






───


───

 保健室


男「……もしかして……」


男「……」ガクガク

───


───



教祖「特製のお湯もあります~~~~」



───


───

 音楽室


男「……もしかしたら……」


男「……」ガクガク


───


───



教祖「特製のふりかけもあります~~~~」



───


───

 校長室


男「もしや……」


男「……」ガクガク


───


───




教祖「そして、我々は~~~~ 近々、独立します~~~~~」





教祖「ユートピアを~~~~~!! 築くのです~~~~~~!!」





───


───

 放送室

男「………ここは何もないなぁ」

男「………」

男「えっと……ハサミ、ハサミ」ゴソゴソ

 男はリュックからハサミを取り出すと、放送室の機器が積んであるテーブルへ向かった。

男「この辺かな……?」

 そして、機材から伸びるコードの一本を手に取ると、

男「ん……結構太いな」

 ハサミをそれに当てがった。

男「……えい」

 ジョキン、と心地良い音が鳴る。
 手の平に確かな感触が伝わる。

男「………」

 手にしたコードは、見事に断ち切られていた。


男「…よし……次だ」

 別のコードを取り、またハサミで切る。

男「…………」

 ジョキン

男「………」

 ジョキン

男「………」

 ジョキン

男「……こんなもんだろうか……」

男「あ、あと……」

 男の手が伸びる。

 その手が掴んだのは、カップ麺だった。

 職員室からわざわざ手に持って来たのだ。

男「えっと……電源を入れて……」

 カチ

男「……機材のランプがついた……まだ通電は生きてるんだな……」

男「よし……えい」

  ジャバー! ビチャビチャビチャ!

 男が勢いよく、カップ麺をぶちまける。
 高そうな機材が、伸びきったインスタント麺とネギとスープで汚されていく。

男「よし……仕上げだ」

 そして、さらにリュックから取り出したのは、職員室から拝借したペットボトルの飲料。
 これもまた、逆さまにして機材にぶちまける。

  ビチャビチャ…  バチッ!

男「!」

 甲高い音とともに、ランプの光が徐々に弱くなり、ついに消えた。
 ついに電源系統も壊れたようだ。

男「よ、よし……」

 それを確認すると、男は今度は自分の携帯を取り出した。

男「えっと、1840……」ピッピッピッ

男「あ……もしもし」

男「あ、母ちゃん? 俺、俺だよ オレおれ」

───

今回はここまで。
エイプリルフールネタで混乱させてごめんなさいね。

えー、皆さんにお知らせと質問があります

学校の全体像は http://i.imgur.com/VoI7v.png です。

さて、私はこれまで「廊下と教室の位置」をこんな感じ→http://i.imgur.com/vygtS.png で考えておりました。

しかし、よくよく考えたら一般的な学校の廊下の位置は

こんな感じ→http://i.imgur.com/bys6h.png だよなぁ、と。

なので次からは訂正して、下の画像verを念頭に置きながら書きたいと思っています。

ですがまあ、これまでは上の画像verで書いてきた、ということでして……。


さて、ここで質問です。

これまで読んできて、「えー、今更廊下の位置が変わったら、今までの話に違和感が出るよー」とか
「この部分と矛盾するよー」とか「ここがつじつまが合わなくならね?」とか
そういう部分ってありますか?

自分で読み返してみたんですが、作者たる故にフィルターが掛って違和感MAXで困っています。

第三者の意見がほしいなぁと。

廊下の位置が変わると教室の前にいる見張りを確認できなくなるんじゃない?

というか、そういう学校だったってことで別に上の画像Verでいいような?

対象構造ならおかしくもないし、そういう学校普通にありそう。
むしろ、立地にもよるけど校庭や部活用グラウンド・テニスコートが見える様、どちらの棟も窓は上の画像みたいに外が見えるように作られる方が多いと思うんだけど……

>>133
いや、「そういや玄関ってどこだっけ?」って思ったとき、ふと悩みまして……

南側(下側)に校庭、北側(上側)に玄関、のイメージだと上の図では玄関の場所がおかしくなるよなぁ、と

この疑問から構造おかしくね?となったワケです

ここでひとこと
こまけぇこたぁ(ry

俺の高校はコの字型の校舎で玄関は左右両方にあった

参考までにひとつ

>>132
そこですね

廊下に並んでるテロリストを確認した時、男は保健室だか職員室だかにいたことにしようかなぁと



あ、それと、1階部分には玄関がありますよね。
なので1階の図はこう http://i.imgur.com/AFsNT.png なります。

よって>>50のセリフもちょっと訂正

>男「……うん、北側の窓から出て、そのまま出て行けばいいんだ……」

 ↓

>男「……うん、北側の玄関か窓から出て、そのまま出て行けばいいんだ……」

>>137
それ面白い構造ですなww

>>135

                              (\
                            (\\\
                             \"''゙=.,\
こまけぇことが大事なんだろうが       ⊂'‐-"'=r., f i     \

                     /_ノ  ー、\~'‐-.,_   |     ヽ
                    /(●) .(● )⊂ニ二,   i,   \
                  / :::::⌒(__人__)⌒::::::ブli    ヽ.   ヽ
                  |     |-┬r|     |!,!,  、ト「イ,
                  \     `'ー`      /"ィ丶_/ヾトi 丶




まあそんなこんなでお騒がせしました
またシコシコ書き溜めます

書き溜めってことは今日は終わり?

>>139
今書き溜めは0ですねぇ
ノープランで書いてるので次の投下がいつかもよくわかんないです
男と一緒に生き残る方法を考えながら書いてる感じですね

>>!25の続きから

ミスった

>>125の続きから


───




教祖「修行を続ければ~~ 天国を越えた究極絶対最高完璧宇宙へと旅立つことができるのです~~」




───


───

母『………もしもし?』

男「あ、母ちゃん、俺オレ、俺だよ オレ」

母『あんた、何で非通知なんかで掛けてきたん?』

男「あー、それよりさ 俺、交通事故起こしちゃってさオレ」

母『は? 事故? え?』

男「俺それでオレ示談金が必要でさ」

母『示談金………ハッ』

母『……あんた、自分の名前言ってみな』

男「え? 俺はオレだよ俺 母ちゃんどうしちゃったんだよ」

母『いいから名前!!』

男「だから俺だってばオレ俺」

母『……! あんた、最近流行りのオレオレ詐欺って奴だね! だまされないよ!』

男「いやいや俺オレ 俺だって」

母『次掛けてきたら警察に通報してやるから!』

 ガチャン!

   ッツー、ッツー、ッツー…・・・

男「………」


男「………」ピポパポ

 プルルルルルル

男「………」

 プルルルルルル

    ガチャ

母『……また非通知……またあんた?』

男「どうも、警察の者です」←声色変えて

母『警察?』

男「おたくのお子さんが老人を自転車でハネちゃってですねー」

男「至急保釈金を支払ってほしいんですよー」

母『……その手口もテレビで見たわね…… いい加減にしなさいよ!』

男「もしもしー奥さーん 指定の口座に2時間以内に」

母『もうだまされないからね! あきらめなさい!!』

 ガチャン!

男「………」

男「………」ピポパポ

 トゥルルルルルルルル

母『……はい』

男「もしもし、男の担任教師ですが」←声色変えてる

母『………』

男「男くんがですねー、女生徒を妊娠させてしまってですねー その堕胎費用を」

母『いい加減にしなさい!!!』

 ガチャン!

男「………」

男「……携帯の電源切っとこう」ピッ

男「……少しお腹すいたな……」

男「長期戦になるかもしれない……食料を取りに家庭科室行くか……」

───


───




教祖「え~~では~~神通力であぐらで空中浮遊を~~~~」


教祖「しているビデオを見せます~~~~」




───


───

 家庭科室

男「さっきも来たけど……どっかに食料無いかなぁ」

 ゴソゴソ

男「! 飴発見! もってこう……」ゴソゴソ

男「お、冷蔵庫!」

 ガチャ

男「……にんじん、じゃがいも、たまねぎ…… 持って行ける食料じゃないな……」

男「ん」

 男の目が黒板に向けられる。

男「『みんなで仲良くおいしいカレーを作りましょう』、か」

男「それでさっきの冷蔵庫は野菜ばっかりだったんだな……」

男「……ん?」クンクン

男「……生臭い……」

男「こっちから臭ってくるぞ……」クンクン

男「……これだ、この青いポリバケツだ……」

男「……よ、よし……勇気を出して開けてみよう……」

男「……やっぱやめとこうかな……」

男「い、いや……! がんばれ俺!」

男「えいっ!」

 パカッ

男「おえええぇええぇえええぇえ」

 ぷ~~~~ん

男「おげえええぇええェエエエェぇえぇえ……」

男「ぐ、あ、すさまじ、い、臭い……」

男「家庭科の授業で出た生ゴミが……腐っ……おええぇ……」


男「い、いかん……目にしみる、涙出てきた……」

男「ハッ」

男「……こんだけ臭いなら、武器に使えるんじゃ……」

~~~

男「食らえ! 生ゴミだ!」ポイ

 ビチャァッ

テロリストA「おげええぇえええ!! なんじゃこりゃああぁあああ!!」

男「よし!」

テロリストA「てめぇブッ殺す!!!!」

男「え?」

 ズダダダダダダダ!

~~~

男「………」ガクガク

男「しかし、うーん……そうだ、腐ってるたまねぎ持ってこう……」ゴソゴソ

男「うげぇええぇ……ほとんど液状化してる……タ、タッパーに入れて密閉しとかなきゃ」ゴソゴソ

男「これ開いたら大変だな……しっかりフタしとかなきゃ……」ギュッギュッ

男「……はぁー……」

男「……うん、食欲失せた……しばらく腹も減りそうにない……」

男「………」

男「……あとは……」

男「………」チラ

 『子育て体験用教材』

男「………」

男「………」ゴソゴソ

男「……あった」

 『子供用オムツ』

男「………」ゴソゴソ

男「………」

男「……廊下に戻って準備しなきゃ……」

───


───



教祖「我々の教団には~~~さまざまな~~~素晴らしい人材がおります~~~」


教祖「早稲●大学卒のJOH-YOUですとか~~~」



───


───

 1階 廊下

男「AEDと……ペットボトル飲料は用意した……」

男「あとはこの消火器を……ロッカーの中にガムテープで固定して……」ベタベタ

男「ホースの口をロッカーの穴から出す、と」ゴソゴソ

男「ピンは抜いておく……」スポッ

男「ぬいぐるみを、ロッカーの上に……」トン

男「ぬいぐるみにセロハンテープをくっつけて……」ペタペタ

男「テープでつまみを作って……ロッカーの中へ……」スルスル

 ※イメージ画像 http://i.imgur.com/MoBeH.png

男「……あとは」

 ゴソゴソ

男「……俺自身が、ロッカーの中に。」

男「……オムツもはいた」

男「オ、オッケー」グッ

 ギィィィィィィ  バタン!

───


───

 3-D

教祖「……というワケで~~説明を~~~終わりま~~~~す」

 パチ……パチ……

隊長「拍手が小さいぃッッ!!!」

生徒達「!!?」ビクッ

 パチパチパチパチパチ!
  パチパチパチパチパチ!


教祖「ふ~~~~~~」

隊長「これで、全ての教室にて御説明が終わりましたな お疲れ様でございます」ペコリ

教祖「う~~~~~~ん 少し休もうかな~~~」

隊長「はっ、ごゆるりと。 監視、警備はお任せください もうじき声明文も出しますので。」

教祖「あ~~~声明文ね~~~ 大事だね~~~~」

隊長「はっ、教祖様の教えに子供たちが感じ入り、状況が固まった頃を見計らって、声明を発表する予定です。」

教祖「うん~~~それでいいんじゃない~~~~」

隊長「はっ」ピシッ

教祖「あ~~~~僕は今から~~~部屋で休むけど~~~~」

隊長「はっ」

教祖「あの~~~2年C組の~~~~あの~~~」

教祖「黒くて長い髪の~~~あの可愛い女の子~~~~」

教祖「あの子、部屋に連れてきて~~ ちょっと、神の教えを授けるから~~~~」

隊長「はっ」ピシッ

───


───

 ロッカーの中

男「………」

男「………狭い」

男「……あと暗い……」

男「………」

男「………」

男「……zzZ……」

男「zzZZzz……」

男「ハッ」

男「ね、寝ちゃダメだ! 寝たら死ぬぞ!」ブンブンブン!

男「えーと、えーと、何か考えなくちゃ……」

男「何か……」

男「………」

男「……今頃クラスの皆は、どうなってるんだろう……」

男「………」

男「……女ちゃん、無事かなぁ」

───


───

 2-C 教室

女「え……? 私、ですか……?」

隊長「そうだ。 教祖様がお呼びだ。 来い!」グイ

女「い、いやです! そんな……」

隊長「来るんだ!!」グイッ

女「い、痛いっ! 誰か助け……いやあぁぁっ!」ズルズル…

生徒達「………」ブルブル

女「い、いやああぁぁっ!」

 ガララララ  バタン!


 シーン……

生徒達「………」

 ヒソヒソ

生徒A「お、おい……連れてかれちまったぞ」

生徒B「女ちゃん可愛いからな……目ぇつけられちまったんだ……」

生徒E「ってことは……何かされちまうのかな?」

生徒F「おえ……吐き気してきた……」

生徒C「……でもさ……殺されるより、マシなんじゃないかな……」

生徒A「ど、どういうことだよ……」

生徒C「だって……私たち……殺されるかもしれないんだよ……?」グス

生徒D「そ、そんなこと言うのやめなさいよ……!」

生徒C「だったら……まだ女ちゃんみたいに気に入られた方が……」グスグス

テロリスト(2-C見張り)「おいそこ!! うるさいぞ!!」

生徒達「ビクッ」

 シーン…


阿藤「……おい」ヒソ

加藤「あん?」

阿藤「聞いたか」

佐藤「何だよ」

阿藤「ここにいたら、そのうち殺されるかもしんねぇ」

加藤「マジかよ……っくそ……ざけんなよ……」

佐藤「畜生……ありえねぇ……」

阿藤「まあ待てよ 要はあいつらに気に入られりゃいいんだ」

加藤「気に入られるって……どうすんだよ」

佐藤「女ならまだしも、俺らじゃ取り入るなんて……」

阿藤「ほら、よく見ろ……アイツの姿が無ぇ」

加藤「アイツ……?」

佐藤「アイツって誰だ?」

阿藤「ほら……俺らが地下倉庫に閉じ込めた……男だよ」

加藤「!!」

佐藤「!!! ほんとだ! いねぇ!」

阿藤「アイツ……きっとまだ地下倉庫でイジけてんだぜ」クックック

加藤「ってことは……」

佐藤「アイツのことをテロリストの連中にバラせば……」

阿藤「ああ、テロリスト共は"全員"集めた気になってる……」

阿藤「男のことを教えてやれば、あいつらには嬉しいサプライズってワケだ」

加藤「そうか……その情報を手みやげにすれば……」

佐藤「気に入られて、殺されることもなくなる!」

阿藤「どーよ?」

加藤「乗った!」

佐藤「やるぜ!」

阿藤「ククク……あのクズもたまには役に立つなぁ……!」ニヤァ

───


───

男「………」ブルッ

男「………」

男「……誰かウワサしてやがんな……」

男「………」

男「……なんとなく予想つくけど……!」

───


───

阿藤「あー スンマセン」

テロリスト(2-C見張り)「ん?」

阿藤「ボクたち……あー、隊長サンにちょっと話があるんですケド」

加藤「……」

佐藤「……」

テロリスト「隊長に話……?」

阿藤「情報、があるんですケド」ニヤッ

テロリスト「………」

テロリスト「……ザッ…あー、こちら2-C見張り、隊長に報告有り」

隊長『……何だ』

テロリスト「……こちらの生徒3名が、隊長に"情報"があると」

隊長『……ふむ……』

テロリスト「……いかがいたしましょう」

隊長『……いいだろう 私は2階空き教室にいる 連れて来い……ザッ……』

テロリスト「……あー、お前たち」

阿藤「!」

テロリスト「……今から隊長のところへ連れて行く……妙な真似はするなよ」

阿藤(……よし!)

───

すいません、>>153訂正します


>男「ピンは抜いておく……」スポッ

 ↓

>男「レバーは閉じた状態にヒモで固定して……ピンは刺したまま……。」グイッ




イメージ映像も訂正します

http://i.imgur.com/MoBeH.png

http://i.imgur.com/AGDDe.png


───

男(……そろそろ、俺の存在がチクられてもおかしくない頃だ……)

男(まあ、チクらないでくれたら一番うれしいんだけど……)

男(んなワケないよな……)

男(……しかし)

男(何パターンも予想してはみたが……)

男(………)

───


───

 2階 空き教室

阿藤「こんちわ、隊長サン」

隊長「ふむ、君たちか……話があるというのは」

加藤(なんてガタイだよ……)

佐藤(威圧感がすげぇ……流石隊長、ってことか……)

阿藤「あー、ボクたち、ちょっと教えたいことがあるんです」

隊長「教えたいこと?」

阿藤「あー、ハイ」

阿藤「実は……この学校に、まだ潜んでる奴がいるんです」

隊長「!」

隊長「それは、この学校の生徒かね?」

阿藤(やった……! 食いついた!)

阿藤「あーハイ。 ボクたちが……まあ、遊びで地下倉庫に閉じ込めた奴なんですケド」

隊長「!  地下倉庫か……なるほど、あそこまでは確かめなかった……」

隊長「しかし、クラスの連中や担任にはいない奴を一応確認したはずだが……?」

阿藤「あー、アイツ、影が薄いんですよ だから誰もなかなか気づかなくって」

隊長「……ふむ」

阿藤「………」


隊長「……いやしかし、貴重な情報だ  よくぞ話してくれた」ニッコリ

阿藤「は、はい!」

隊長「……しかし、なぜ話してくれる気になったんだね? 君たちのクラスメイトなのに」

阿藤「それは、この教団の力になりたいと思ったからです!」

隊長「ほう……?」

阿藤「教祖様の教えを聞いて、目が覚めました! だから……その……」

阿藤「この教団の為に、自分の友を売ることも辞さない! その覚悟を示そうと……!」

阿藤「な、なあ皆!」

加藤「お、おう! その通りです!」

佐藤「ボクたち、教団の力になりたいんです!」

隊長「そ、そうか…… そうだったのか……」 ジワ…

隊長「む、いかんな……歳をとると、涙もろくなってしまって……」ゴシゴシ

隊長「君たちのような……若く、熱い魂の持ち主が、我々の新たな仲間となってくれるとは……」ウル…

隊長「こんなにうれしいことはない……!」 ゴシゴシ

阿藤「は、はい!」

加藤「ボクたち、がんばります!」

佐藤「教団のために、一生懸命働きます!」

隊長「そうか、そうか……うむ、結構結構」ウンウン

隊長「決めた……君たちは、新入りたちのリーダーとなってくれたまえ」

阿藤「リーダー、ですか?」

隊長「そうだ リーダーだ  これから入る者たちを導いてほしい」

阿藤「そ、そんな、いきなりリーダーなんて……」

隊長「いや……君たちなら出来る 私には分かる 君たちは、他の連中には無いものがある」

阿藤「いや、そんな、はは……」

隊長「しかし……リーダーともなると、その格好ではマズいな 我々と同じ格好をしなさい」

阿藤「え……?」

隊長「まず、後ろに置いてある装備に着替えてくれたまえ」

阿藤「は、はあ……」クルッ

阿藤「後ろ……」キョロキョロ

加藤「?」キョロキョロ

佐藤「?」キョロキョロ

阿藤「あの……後ろに何もないん」

 ッダァ──ン!!

阿藤「で………」

阿藤「え?」

加藤「……ガハ」

加藤「……」ボタボタボタ…

 ガク  
    ッドサ……

阿藤「加藤ッ!?」


佐藤「な……」

 ッダァ──ン!

佐藤「ッガ!?」

 ボタボタ…
  
  ガク……ドサ

阿藤「佐藤っ!? な、何……」

隊長「………」ジャキ

阿藤「なっ、なん、何、で……」ガクガク

隊長「我が教団に」

隊長「"身内を裏切る"様な輩は、いらんのだ」

阿藤「ひっ、ぁ……ひぃぃ……」ガクガク

隊長「貴様らは」

隊長「生かしていてもしょうがない」




阿藤「許し」




 ッダァ──ン!!

───


───

男(殺されるエンドしか、思い浮かばないんだよなぁ……)

 
 …ズダァーン!


男「っ!!」ビクッ

男「銃声……!?」

男「…………」

男「………」

男(……合掌)

───


───

隊長「………」

 ザッ

隊長「……あー、全員へ告ぐ」

隊長「北校舎にまだネズミが一匹潜んでいる」

隊長「これから、そいつを炙り出す」

隊長「よって、これからの指揮はそれを念頭に置いて各自行動するように」

隊長「以上だ」

 ザッ

───


───

男「銃声が……俺の想像通りのモノなら……」

男「もうすぐか……」

男「……相手はどういう風に出てくるだろうか……」

男「……人質とかとってくるのかな……」

男「………」

~~~~

テロリスト「すぐに出て来い 姿を現せ」

男「いやだ……」

テロリスト「さもなくば人質を殺す」

男「い、いやだ……!」

 ズダン!

人質「ぐは……」バタ

 ~後日~

新聞『人質を見殺し! 身勝手な逃亡生徒!』

ネット『"男"って名前らしいぜ』

2ch『家族ともども一生晒してやろうぜ!』

男「うぅ……」

母「ご近所の視線が……もうやだ、こんな生活耐えられない……死ぬしかないわ」

男「母ちゃん!!」

~~~~

男「……」ガクガク

男「……ダメだ、まず、あいつらと交渉のテーブルに乗っちゃダメだ……」

男「交渉から逃げ続けなくちゃ……」ブルブル


───


───

 2-C 教室
 
 ガラララッ

隊長「……」

テロリスト(2-C見張り)「! 隊長!」ピシッ

隊長「……このクラスの担任、手をあげろ」

担任「ひっ……は、はいぃ……」

隊長「貴様か」

担任「は、はぁ……」ビクビク

隊長「このクラスに、男、という生徒はいるか?」

担任「! あ、そ、そういえば……そんな奴もいたような……」

隊長「で、この場にいるのか?」

担任「え……」キョロキョロ

担任「えー、あのぉー、い、いませんねぇ……あはは……」

隊長「おい」ジャキ

担任「!!? っひ、ひぃ!?」ビクゥッ

隊長「貴様には、確認したよなぁ? クラスの全員がいるかと」ジャキ…

担任「っひ、ぅひ、す、すいませんっっ! きき気づかなくてぇっ!!」ビクビク

隊長「……ふむ」

隊長「では、呼び出せ」

担任「……は?」

隊長「今すぐ、その、男という奴を呼び出せ ここへ来させろ」

隊長「でなければ、貴様の眉間に穴が開くぞ」ジャキ…

担任「ひっ、ひぃ!」


担任「えっと、お、男の電話番号……そ、そうだ……カバンの中の名簿に……」

担任「え、えっと、えっと」ガサガサ

隊長「早くしろ」ジャキ

担任「ひ、ひゃい!!」ガサガサガサガサ

担任「あ、あった……」

担任「え、えっと、電話番号、は080……あ、」

担任「あ、あの……」

隊長「なんだ」

担任「ど、どうやって連れて来させれば……」

隊長「簡単だ」

隊長「『お前が来なければ、殺される』と言ってやれ」

隊長「事実だからな」ジャキ

担任「っひ、ひぃぃいいぃ!」

担任「080……」ピポパポ

担任「………」

担任「あ、あの……」

隊長「今度は何だ」

担任「……ヤツの携帯、電源が切られてるみたいです……」

 『お掛けになった電話は、電波の届かないところにいるか、電源が……』


担任「ど、ど、どうしましょう」

隊長「……では、奴の身内を来させろ 人質にする」

担任「は……い?」

隊長「奴の家族……そうだな、親がいい 親に連絡を取って学校に来させろ」

隊長「来たら我が部隊で捕獲し、そのまま人質の材料とする」

隊長「そうすれば奴も出てこざるをえないだろう」

担任「え、ええと……男は母子家庭でして、身内は母親が一人……」

隊長「その母親に連絡を取れ!! 今すぐだ!!」

担任「は、はいぃ!」

担任「えっと、家の電話番号……」ガサガサ

担任「あ、あった……ええっと」

 ピポパポ

担任「あ、もしもし……男のお母さんですか」

担任「私、男の担任の………」

母『しつこい!!!!!』

 ガチャン!!

担任「………」

担任「……………」

担任「……え………ぇ……」

担任「……ぁ…………」

担任「……はひ……あ、ぁの………」ダラダラダラ

隊長「どうした」

担任「切られ、ました……」

隊長「何……?」

今日はここまで。


 主人公のスペック

・ヘタレ
・チキン
・臆病
・卑怯
・クズ
・マザコン←New!


ところで男の電話って何のためにしたの?
>>170のことだけを狙ってたのか?

>>174
ですよ
男はネガティブ野郎なので失敗パターンだけは腐る程頭に浮かぶんです


担任「その……き、急に、ガチャン、と……」

隊長「そんな馬鹿な話が……!」ジャキ

担任「ほ、ほんとなんですぅ!」ブルブル

隊長「……もう一度掛けてみろ」

担任「は、はいぃ……」ピポパ

 プルルルルル…

 プルルルルルルル…

担任「………」

 プルルルル…


   プツッ

担任「………」

 ツーッ、ツーッ、ツーッ…

担任「………」

担任「………」ガタガタガタガタ

隊長「…チッ……」

担任「あの、その、これ、その、あのぅ……」ガタガタ

隊長「……何故だ? 何故担任の教師からの電話が切られる? なぁ」ジャキ

担任「わわわわ分かりませんっ! 私は何も……」

隊長「黙れ 役立たずが」

担任「………」ヘナヘナ…

隊長「………むう……」

テロリストCI「……どういうことなのでしょうか」ヒソヒソ

隊長「………」

隊長「……分からん、が……」

隊長「……もし……もし"ヤツ"の抵抗によるものだとしたら……」

隊長「つまりは、我々に歯向かうつもりだ、ということだ」 ギ…

テロリストCI「っ」ゾク…

隊長「………ククク」

隊長「楽しいネズミ狩りになりそうだな」ニヤァ

テロリストCI「は…ハッ!」ゾクゾク

───


───

 ロッカーの中

男「………狭い」

男「……隙間から洩れる明かりが少しまぶしい……」

男「……はぁ……」

男「……何もしないで待つ、ってのも……なんだか落ち着かないな」

男「………」ゴソゴソ

 男が尻ポケットから手帳を取り出す。

男「……もっかい、考えを整理するか……」

───


───

テロリストCI「しかし……いくら子供一人とはいえ……抵抗されると、その……若干めんどくさいですね……」ヒソヒソ

隊長「あん? 貴様……怖気づいているのか?」

テロリストCI「そ、そういうワケ、では、ないです、けど……」ビクビク

隊長「……が、こちらが炙り出さずとも……向こうから出て来る」

テロリストCI「向こうから、ですか?」

隊長「ああ、時間の問題だ」

テロリストCI「なぜ、ですか……?」

隊長「……耐えられない。 まず……常人には耐えられんのだ」

テロリストCI「耐えられない?」

隊長「恐怖……プレッシャーともいえるな 絶え間なく襲う重圧に、まず一般人は耐えられん」

隊長「一介のガキなら、尚更だ」

隊長「そして……冷静さを欠き、暴走する」

隊長「その先にあるのは……自滅だ」

隊長「……それが、時間の問題だと言ったのだ」

テロリストCI「なるほど……しかし、その恐怖、というのは……」

隊長「最大の"恐怖"は……我々の正体が分からない、ということだ」

テロリストCI「え…いや、しかし……既に校内放送で……」

隊長「そういうことではない」

隊長「……奴は、知らない……知る術を持たない。 我々の戦力、装備、人数、配置……」

隊長「そういった"正体"が、全く分からない」

隊長「それこそが、最大の恐怖。 不安を生み、重圧を負い……」

隊長「耐えられず、潰れる」ニヤァ

───


───

男(耐えられない……)ガタガタガタ

男(不安だ……不安で、不安で、プレッシャーに潰されそうだ……)ガタガタガタ

男(敵の人数が分からないなんて……怖くて、怖くて、耐えられない……!)

男(俺……チキンすぎて……)

男( 不 安 材 料 を 消 さ ず に は い ら れ な い …… ! )

 男は震える手でペンを掴み、手帳に書き殴る。

男「………」ガリガリガリガリ

男「早いとこ割り出さないと……! 敵の人数を…推理しないと……!」ガリガリガリガリ

男「まず……廊下で見えた敵の配置と、屋上のスナイパーを書き加えると、こんな感じか」

 http://i.imgur.com/IKBYU.png

男「……うーん、うーん……ここから各人の視界を書き込むと……」

 http://i.imgur.com/7XPdn.png

男「うん……こうなる」

男「どう見ても、南側の視界がガラ空きだ」

男「これから警察やマスコミなんかも押し寄せるだろうし、監視体制は360度、オールレンジにしときたいはず……」

男「さらに言えば、各"教室の中"に、人質を監視する人間がいないといけないから……」

男「例えば12クラスに一人ずつ配置したとすると……プラス12人になる」

男「しかし、この1クラスに何人ずつか、っていうのが曲者だ……そこが分からん……」


男「………」

男「……もし俺が、俺がテロリストのトップだったら……どう配置する?」

男「……そうだ……敵は俺だけじゃない……むしろ、警察だよ 最大の敵は警察なんだ」

男「SWAT部隊みたいな……日本にいるのか? とにかく、機動隊とか、あと潜入しようとするマスコミとか……」

男「そういった奴らの方がよっぽど厄介だよ……そいつらを相手にすることをまず考えるはずだ」

男「……それなら、"教室の窓から南側(校庭側)を監視する"ってのはとっても不安だ」

男「だって、教室の人質の監視もしながら、窓から南側を監視するなんて……ちょっと神経が持たない 同時はムリだ」

男「……もし、俺だったら……」

男「教室にいる人間には教室を監視させる。 そして……」

男「南側には、南校舎の屋上に人間を1人置いて、そいつに監視させる」

男「贅沢言えば3人ぐらい置きたいけど……こいつらは"人手不足"っていう前提がある」

男「だから、屋上におけるのは一人で………あ」

男「でも、あっちの屋上には誰もいない……てことは……」

男「……間違いない 『教室にいる人間が、人質も、南側も監視してる』んだ……」

男「……ムリさせてんなぁ」

男「そして……そんだけムリさせるぐらいに、人員はギリギリ……最低限……」ブツブツ

男「てことは………」ガリガリ

男「うん……これで大体の見当がついたぞ」ガリガリガリガリ

男「各クラスに1名、各クラス前の廊下に1名、屋上にスナイパー1名……」ガリガリ

男「それに教祖が来ている可能性と」

男「あと……このテロの首謀者……軍事的な知識がある者がいるはず……」

男(あのメタボな教祖が軍事のエキスパートとは思えない……)

男「そいつらがいるとしたら……恐らく空き教室の……一番上の3階……」

男「あのキチガイ教祖のことだから……偉い自分は上の方、みたいに考えそうだしな」ガリガリ

男「それらを総合すると……」ガリガリ

 http://i.imgur.com/2ej6M.png

男「……出来た! これが敵の全体像……!!」

男「よ、よし……これさえあれば、不安なんて……」

男(……全部で25人……)

男(ほんとに皆殺しなんて出来るかなぁ……)

男(不安だぁぁぁ……)ガクガクガク

───

男の悩みが尽きる日はない。

いやランボーになってほしいね

なにこのSS面白い

臆病は臆病でも俺とは全然違うな…(´・ω・`)


───

テロリスト2CI「ってことは……その、相手が自滅、するのを待てばいいんですね?」

隊長「……」

テロリスト2CI「隊長?」

隊長「………」

テロリスト2CI「あの」

隊長「動くぞ」

テロリスト2CI「え?」

隊長「さっきは、電話で交渉をしようとした」

隊長「が、防がれた」

テロリスト2CI「は、はあ……」

隊長「……奴との交渉を続ける」

テロリスト2CI「交渉を?」

隊長「ああ、そうだ」

テロリスト2CI「しかし……先程も言ったように、自滅を待つか……逆にこちらから殲滅に向かった方が……」

隊長「……殲滅、勿論だ それも。  が、」

隊長「気付かんか? さっきのことだ」

テロリスト2CI「さっきのこと……?」

隊長「さっきの電話だ」

テロリスト2CI「電話……」

隊長「奴は、こちらとの交渉を拒んだ」

隊長「即ち」

隊長「奴にとって、"話し合い"は避けなければならない状況だということだ」

隊長「そこを、突く」

隊長「動揺を誘えば、自滅も早まる」

テロリスト2CI「なるほど……」

テロリスト2CI「しかし……それは、もう成功、してます、よ、ね……」オドオド

隊長「成功……?」

テロリスト2CI「は、はい……奴の携帯の電源は切られています……なので、」

テロリスト2CI「もう、交渉、というか……こちらの意思を伝えることは出来ないのでは……」

隊長「……お前」

テロリスト2CI「はっ……」

隊長「銃器の扱い、訓練ではなかなかだったな」

テロリスト2CI「はっ、はい…… 隊長のご指導のおかげです」

隊長「では、」

隊長「動くぞ」

テロリスト2CI「は……動、く……」

隊長「奴を交渉の場にひきずり出す そして」

隊長「同時に、殺す」

───


───

 1F廊下 ロッカー

※男がいる場所:http://i.imgur.com/VEPdU.png

男「………」ブツブツ

男「……どん、どん、どん……」ブツブツ

男「よーい、ドン……」ブツブツ

男「どんどんどん…よーいドン……」ブツブツ

男「どんど……」

 カツ

男「っ!!」ビクッ

 カツ カツ カツ

  カツカツカツ

 コツ カツ カッ コツ カッカッ

男(足音……! だんだん近づいてる……)

 カツ カッ ゴツ
  ガ カツカツ コツ
 コツ カッ ガツ

男(しかも……)

男(複数人……!)

男(ひぃぃぃ……)ガタガタガタガタ

───

>>221の前にこれ書くの忘れてた



───

 ※ 注:テロリストの名称表記

テロリスト1AI(1Aの教室内)
テロリスト1AO(1Aの教室前)
 ・
 ・
 ・
テロリスト3DI(3Dの教室内)
テロリスト3DO(3Dの教室前)
スナイパー(屋上スナイパー)
隊長
教祖

総勢、27名


  VS


男(ヘタレチキン系クズ)

───


───

 数分前

隊長「………これより、北校舎のネズミ狩りを行う」

テロリスト3AO「……」

テロリスト3BO「……」

テロリスト3DO「……」

テロリスト2CI「……」

隊長「目標へ向かい……」

隊長「見つけ次第」

隊長「殺せ」

───


───

 カツカツカツカツカツカツカツ

男(どんどんどん……よーいドン)

 カツカツカツカツカツカツカツカツ

男(どんどんどん……よーいドン)

 カツカツカツカツカツカツ!

男(どんどんどん……よーいドン)

 カツカツカツカツカツ
  コツコツコツコツ
 カッカッ ゴツ ガッ ゴツ
 コツコツ コツコツ コッ カツカツカツ
 ゴ、ツ カッカッ コツコツ

男(……………)ギュッ

───

現在図 http://i.imgur.com/9dYkp.png


今日はここまで。

書き忘れてた。
2CIが外に行きましたが、2C(教室内)監視役は2COが引き継ぎました。ハイ。

>>213
臆病な人間は、手帳を持つと覚醒する……かも?

安価ミスった >>214
たびたびすいません


───

 コツコツ カツカツ

  コッコッ カッカッカッカツカツ

男「………」

男(どんどんどん……よーいドン……)

 コツ コツ コツ コツ コツ
 
男(どんどんどん……よーいドン……)

 コツ  コツ  コツ!  コツ  コツ!

男(どんどんどん……)

 次第に大きくなってゆく足音。
 数人が踏み鳴らす音。
 まるでそれらが直接、鼓膜を打ち付けるようだ。
 男はビクビクと体を震わせた。

男(………)

 緊張が高まっていく。
 鼓動も負けじと打ち返す。

 ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 ロッカーの狭い世界で

男(………)

 男は自分の体を抱き抱えた。
 震えを抑えるように。

 コツ コツ コツ コツ コツ

男(…………)

 コツ コツ コツ コツ

男(………)

 コツ コツ コツ

男(………)

 コッ コッ……

 足音が、遠ざかって行く。

男(うん……階段を…昇った……)

ミスった >>234は忘れてください
もうちょっと書き溜めてから後で来ます

>>1はトリップつけないのかね

>>236
つけたこと無かったですね
トリップってこれでいいのかな?


では、>>225から


───

 3階 空き教室

女「………」

女「………」

女「…………」

女「……あの……」

教祖「………」

 女が床に正座しながら、困惑気味に声を出した。
 その目の前では、教祖が目を閉じて合掌しながら黙想している。

女「………」

 反応を示さない教祖に、女はまた口を閉ざした。
 部屋にまた沈黙が降り、ようとしたが、

教祖「あ~~~~~~」

 出し抜け。

 女の肩がビクリと震える。

教祖「キミに~~~~ 神の教えを~~~ 授ける~~~~~」

 教祖はそう言いながら、ゆっくりと立ち上がる。
 
 そして、女に一歩、一歩、と近づいていく。

女「………」

教祖「怖くない~~~ 怖くない~~~~」

 そして、女の肩にそっと手を乗せる。
 小刻みに震えるその白い腕を、するすると教祖の手の平が滑って、下りた。

───


───

 コツコツ カツカツ

  コッコッ カッカッカッカツカツ

男「………」

男(どんどんどん……よーいドン……)

 コツ コツ コツ コツ コツ
 
男(どんどんどん……よーいドン……)

 コツ  コツ  コツ!  コツ  コツ!

男(どんどんどん……)

 次第に大きくなってゆく足音。
 数人が踏み鳴らす音。
 まるでそれらが直接、鼓膜を打ち付けるようだ。
 男はビクビクと体を震わせた。

男(………)

 緊張が高まっていく。
 鼓動も負けじと打ち返す。

 ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 ロッカーの狭い世界で

男(………)

 男は自分の体を抱き抱えた。
 震えを抑えるように。

 コツ コツ コツ コツ コツ

男(…………)

 コツ コツ コツ コツ

男(………)

 コツ コツ コツ

男(………)

 コッ コッ……

 足音が、遠ざかって行く。

男(うん……階段を…昇った……)


 足音は、階段を昇る音を立てながら、次第に上へと消えていく。

 男はそれにじっと聞き耳を立てていたが

  ガチャ

     ダッ


 ロッカーから飛び出した。

男「はぁ……はぁ……」

男(あいつらは……今、上の階……)

 男はリュックを床に置き、慌てた様子で開ける。

男(時間がない……時間が、ない……!)

 リュックに手を突っ込むと、ペットボトルを取り出した。

 そして、その中身を床にブチまける。

 ビチャビチャと音がして、廊下にお茶が広がって行く。

 空になったボトルはフタを閉めてまたリュックへしまう。

男(奴らが戻ってくる前に……)

 そして、慌てた様子でリュックからAEDを取り出すと、フタを開け、電極を広げる。
 AED、つまりは電気ショックを与える装置だが、説明を読んでいるヒマは無い。
 ただ、電極だけ取り出し、濡れた床の上へ置く。

男(それと……)

 次に取り出したのは、職員室で拝借した……

男(先生の携帯……)

男(マナーモード解除……)ピッ

 そして、携帯はAEDの隣に置く。
 こちらも濡れてしまったが、機能に問題は無いだろう。

 そして、次に自分の携帯も取り出す。

男(………)

 一瞬迷う、が

  ピッ

 自分の携帯の電源を、入れた。
 勿論、サイレントマナーモードにしておく。

男(………)

男(……仕上げだ……!)

 男は、自分のズボンのベルトに手を掛けた。

───


───

 2-C前 廊下

隊長「………」

隊長(……もう、奴が携帯の電源を入れることもあるまい……)

隊長(が、……)

隊長(……例え……例え携帯で通話が封じられたとしても……)
 
隊長(こちらには……)

隊長(まだ、手段はある)

 ザッ

隊長「…… 報告しろ」

テロリスト2CI『は、はい……それが……』

隊長「……どうした。 言ったはずだ 交渉……こちらの意思を伝える為に」

隊長「校内放送を使えと」

テロリスト2CI『それが……放送機器が……』

テロリスト2CI『全て、破壊されています……』

隊長「何だと……?」

───


───

 放送室

隊長『全て……だと?』

 異様な臭いの漂う放送室で、テロリスト4人は困惑していた。
 無線が伝える隊長の声も訝しげである。

テロリスト2CI「は、はい……全て……」

隊長『……最初の校内放送の時は、問題無く使えた。 ということは』

テロリスト2CI「……奴です。 間違いありません」

テロリスト2CI「コードが一つ一つ、丁寧に切断されています」

テロリスト2CI「しかも……奴、カップ麺までブッかけてます……おかげで電源系統もやられてます……」

 放送室中に、カップラーメンの臭いが充満している。

隊長『………』

隊長『が、想定内ではないか』

テロリスト2CI「! は、はい……」

隊長『機器が破壊された場合の指示も出しただろう?』

テロリスト2CI「……はっ!」

隊長『……やれ』

テロリスト2CI「!」グッ

テロリスト3AO「……」ギュッ

テロリスト3BO「……」ニヤ…

テロリスト3DO「……」ジッ…

 パターンB 

 殲滅 開始

───


───

 1階 廊下

 男はベルトを引き抜くと、そのままリュックへ入れた。

 そして、勢いよくズボンを下ろす。

 当然、男の下半身はパンツ一丁(しかもその下にはオムツ)になる。

 それでは飽き足らず、男は学ランも脱ぎ捨てる。

 文字通り、捨てる。

 ズボンと一緒に、学ランを近くのゴミ箱へ叩きこんだ。

 そして、リュックを開け、

 銃を、取り出した。

男「………」

 競技用の、ピストル。
 音だけで、殺傷能力0の、武器。

男「ふぐううぅぅぅ……」

 唸った。
 不安で、不安で堪らない。
 それが、腹の底から漏れ出た。

男(今度こそ……今度こそ、本当に危ないかもしれない……)

 男は両手で銃を構える。
 握る指に力が入り、ピストルがみしみしと嫌な音を立てた。

男(………)

 今にも泣きそうな顔だが、必死で歯を食いしばる。
 やる。やるしかない。
 男は覚悟を決めた。

 誰もいない廊下で、パンツ姿で。

───


───

テロリスト2CI「……行くぞ」

 4人のテロリストが、銃(ウージー:セミオート、ロングバレル)をその手に構える。
 殲滅。
 即ち、1階部分から、各部屋を制圧していく。

 逃げれば、屋上のスナイパーの餌食になるだけ。
 
 自分たちは4人の部隊で常に行動。

 そう、たかが男子生徒一人に、負ける道理は無い。

───


───

男(………)

 覚悟を決めた男だったが

男(………)

 また、ロッカーの中で隠れていた。

男(………)

 体育座り。
 そして、

男(………)

 左手に、競技用のピストル。

 右手には、自分の携帯。

 さらに、ロッカーの扉の上の隙間からは、セロハンテープの切れ端がのぞいている。

男(………)

 ……


  コツ

男「!!」

 コツ、コツ、コツ、コツ、

 コツコツコツカツカツ コツコツコツ


 来た。

男「………」ギュッ

 男は自分に言い聞かせる。

 いいか

 俺は

 臆病で

 クズで

 自己中だ。

───

現在図:敵(赤)と男(青)の位置 http://i.imgur.com/J9Hkl.png

男近辺の拡大図:http://i.imgur.com/hvNCL.png

ロッカー内
http://i.imgur.com/AGDDe.png


───
 
 1階廊下 入口

 コツコツコツコツ

テロリスト2CI「………よし、1階廊下に到着、行動をかい……」

 ピタ

テロリスト3AO「……どうした」

テロリスト3BO「ん? どったの?」

テロリスト3DO「……」

テロリスト2CI「あれを見ろ」

テロリスト3AO「……!」

テロリスト3AO「…あれは……階段を上がる前は無かったな」

テロリスト3BO「職員室の前辺りかぁ ……床も濡れているようだけどぉ?」

テロリスト3DO「……」

テロリスト2CI「……奴だ」

テロリスト3AO「ふん……」

テロリスト3BO「へぇー、何かしたんだぁ ヤツがぁ」

テロリスト3DO「……」ジャキ

テロリスト2CI「……用心しろ 罠かもしれん」

テロリスト3BO「てゆうかぁ 百パー罠でしょ、あれ」

テロリスト3AO「ケッ……ガキが仕掛けたトラップなんぞ……」

テロリスト2CI「用心しろ」

テロリスト3DO「……」

テロリスト2CI「行くぞ 後方へも警戒を怠るな」

テロリスト3BO「へーい」

テロリスト3AO「フン、了解」

テロリスト3DO「……」

 4人が警戒しながら廊下を進む。

  コツコツコツコツコツコツ

 足音を盛大に鳴らしながら
 しかし、360度、常に誰かが視界を巡らせ、一片の隙も無い。

 何処から敵が飛び出して来ようとも、いつでも引き金を引ける。
 そんな抜け目の無い緊張感を発しながら、部隊は進む。

 そう、いつ、何処から、男が飛び出してくるか分からない。

 自暴自棄になって、玉砕に来るかもしれないのだ。

 トリガーに掛ける指は、常に緊張させている。
 いつでも、来い。



 コツ、コツ、コツ、コツ

 部隊がだんだんと、AEDへ近づいていく。

 そしてついに、

 4人が、男のロッカーの前へ来る。

男(………)

 コツ、コツ、コツ、コツ


 そして、


  コツ、コツ、コツ、…

 通り過ぎた。

男(…………)

 現在図:http://i.imgur.com/ZxQLS.png

テロリスト2CI「………」

テロリスト3AO「おい、近づきすぎじゃないのか?」

テロリスト3BO「ん~?」

テロリスト3DO「……」

テロリスト3AO「AEDってのは、要は電気ショックを与える装置だろ?」

テロリスト3AO「それに、床が濡れている……うかつに近づくのは」

テロリスト2CI「いや、」

テロリスト3DO「……」

テロリスト2CI「こういったところに設置されているAEDは……自由に電気が出せる訳では無いんだ」

テロリスト3AO「そうなのか?」

テロリスト3BO「へぇ?」

テロリスト2CI「本来は、電極を心停止患者の胸に貼り、そしてセンサーが電気ショックが必要だと判断した時に、」

テロリスト2CI「スイッチを押せば電気ショックが流れる仕組みだ」

テロリスト3DO「……」


テロリスト3AO「ということは……」

テロリスト2CI「これは……トラップの意味を成さない……ただ、置いてあるだけだ……」

テロリスト3AO「じゃあ……何のために……」

 ピ リ リ リ リ リ リ リ ッ 

テロリスト達「ッ!!?!」

 だしぬけに、AEDの傍に置かれていた携帯が、鳴った。

男「………」

 そう、携帯を鳴らしたのは、ロッカーに隠れている、男。
 自身の携帯から、教師の携帯へ電話を掛けたのだ。

テロリスト達「!!?!」

テロリスト2CI「何だ!? ケータ……」

 全員の目が、AED、そして携帯が置いてある床へ注がれる。

 当然だ。 
 緊張の高ぶりが最上に達した瞬間だったのだから。
 そこに突然音が鳴り響けば、そこへ視線を、意識を、注いでしまう。

 男が潜んでいるロッカーなど、目に入らない。

男(今だっ!!)

 男が、上の隙間からはみ出ているセロハンテープを引っ張る。
 すると

  ポスン

 ぬいぐるみが、ゆっくりと前に倒れ、

 そして、廊下へ転がる。

 フワフワした素材のため、音も無く。


  ピリリリリリリリリ!!

 携帯の音は、相変わらず鳴り響く。

 テロリスト達の銃を持つ手に力が入る。

テロリスト2CI「!! 警戒を怠るな! 後方ぉ!」

 2CIが大声を飛ばす。
 注視しては、いけない。
 もし後方から襲ってくる為のトラップだとしたら……。
  
 後方担当の3DOが、振り返りながら銃を後ろへ向ける。

テロリスト3DO「っひぃィ!!?」

テロリスト2CI「ッ!! どうしたぁ!!」

 普段無口な3DOが悲鳴をあげるなぞ、ただ事ではない。

テロリスト3DO「ぬ、ぬいっ、  ぬいぐるみが!!」

 テロリスト全員の体が、固まった。
 いや、硬直した、と言っていい。

テロリスト2CI「ば……」

 さっきまで、何も無かった。
 何も無かったのだ。

 自分たちが進んできた廊下だ。

 そこには、こんな物、

 こんな物は……!!

 青い、モコモコとしたぬいぐるみが

 自分たちの背後に、鎮座していた。

テロリスト3DO「うわあああぁぁああ!!」

テロリスト2CI「落ち着けぇ!! 注意しろ!! 敵は近くにいる!!」

テロリスト3BO「近いドコロの話じゃねぇよっ!! 奴は……奴は!?」

テロリスト2CI「落ち着けと言っているだろ!!」


 意味を成さないAEDと

 かわいらしいヌイグルミ。

 そんな、全く恐怖からかけ離れた二者に挟まれて

 テロリスト達は、心の底から震えあがった。

男(……怖いよな 俺だって、同じ状況になったら怖いよ チビっちゃうよ)

男(だから、分かる)

男(怖がる人間のココロは……イヤというほど、分かる!)

 男は、ロッカーの中で、右手の指を消火器のピンへ引っ掛ける。
 ホースはロッカーの穴から、外へ向けられている。
 その方向は、今正に、テロリスト達が固まっている場所……!

 そして彼らは、動けない。
 魔法のように現れたヌイグルミ、その状況を冷静に考察出来る状況では無い。
 その場に硬直し、頼みの銃を構えることしか、出来ない。
 否、銃に、頼る。

 引き金に掛けたその指に、緊張の全てが集まる。

 そして男は、

男(えいっ!)

 勢いよく、ピンを引き抜いた。


 ボシュウウウウウウウウゥゥウウウゥウ!!

 消火器から、その消火剤が白煙となって吐き出される。

テロリスト2CI「!!?」

テロリスト3AO「何だぁ!!?」

テロリスト3DO「うわああああああああああああああ!!!」

 恐怖の最高潮は、限界を超える。
 視界まで、奪われる。

 奪われたのは、視界だけでは無い。

 思考力まで、根こそぎ。

 そうなると

男(……従う)

男(緊張のタガが、はずれる  そして自衛へ走る)

男(しょうがない)

 ボシュウウウウウウウゥゥウウウゥゥウ!!

 白煙は吐き出され続ける。
 何も見えない。
 敵も見えない。
 そして、

 味方も、見えない。

 人間、パニックになり思考を放棄した瞬間、他人に従う。
 あっさりと。
 その瞬間を、

 男は作った。


男「………!」

 男はロッカーの右後ろへその身を寄せた。

 そして、大きく息を吸う。
 その肺に、これでもかと空気を溜める。

 左手に持った競技用ピストル。
 そのトリガーに掛けた指に、力がこもる。


 今だ。
 言うんだ。
 今しかない。

 行け!!

男「撃てぇぇ──────ッッ!!!!」

 絶叫。

 さらに

    ッ パ ァ ン !!!


 男の左手から、凄まじい破砕音が鳴る。
 男は鼓膜が破けそうな痛みに、一瞬意識が持って行かれそうになるが、何とか踏ん張った。
 耳はしばらく使い物にならないだろう。

 が、

 テロリスト達は、それどころでは無かった。

 『撃て』という命令と、銃声。

 こんなに分かりやすい"指示"は無い。

テロリスト3DO「うわあああああああああああぁぁあああぁぁッッ!!!」

 ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ !!

 真っ先に発砲したのは、3DO。
 緊張の極みに達したその指を、一気に引きまくる。


 廊下にけたたましい銃声が鳴り響き、それが合図だった。

テロリスト2CI「う、!!?」

テロリスト3AO「ああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あああぁああ!!!!」

テロリスト3BO「ひいいぃいいいぃぃぃいい!!!」


  ダダダダダダダダダダ

   ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ !!


 4人が一斉に、発砲する。 
 連射。
 全員が。

 敵も味方も分からぬ、視界を奪われたこの状況で、連射。

 否


 乱射。

テロリスト2CI「ぎゃあっ!!?」

テロリスト3DO「ああああああああああああぁぁああ!!」

テロリスト3AO「ぐおお゙おっ!!?」

 必然、
 互いに、傷つけ合う。

 何も見えぬ状況で、ただ引き金を引く。

 自衛のために。

 自身を守る為に。

 味方の存在など、構っていられない。

 銃弾が吐き出され続けているその銃を、振り回す。

男(…………)




 俺は、臆病だ。





テロリスト2CI「ぐあぁ!? ど、どこに……奴はあぁあああ!!」





 だから、姿は見せない。






 俺は、クズだ。






テロリスト3DO「うううううああああああああああああああぁぁああ!!」

  ダダダダダダダダダダダダダ!






 だから、自分の手は汚さない。





 俺は、自己中だ。





テロリスト3BO「痛ぇ……痛ぇよぉぉ……!!」ボタボタ…





 だから、



    容赦しない。




テロリスト2CI「隊長おおおぉおお゙お゙ぉ゙おおお!!奴はぁああ奴はあぁああ゙あ゙あ゙!!」


 ダダダダダダダダダダダダダ



    ダン!!!
 

───

今日はここまで。

ヘタレのクズってまた天才かよ
臆病で思いつくアイデアじゃないしそれを実行するとか
剣の才能があれば勇者行き

>>268
男は天才ではないですが、ただの臆病でもないです

臆病+ネガティブ+ヘタレ+クズ+マザコン+手帳+いじめられっ子、です

つまりは最強です

遅過ぎだろもう1週間以上経っているぞ
はよ書いてくだちい

>>287
遅筆なので1ヵ月放置とかデフォですよ


───

 3階 空き教室

教祖「え~~~では~~~~~」

 さわっ

女「っ」ビクッ

教祖「"気"を送るためのマッサァジを~~~……」

 ……ダダダダダダ……!!

教祖「!」ピタ…

女「ひっ……」ビク

女「じゅ……銃声……?」

───


───

 2階 空き教室

 ……ダダダダダダダダ……!

隊長「……!」

隊長「………」

隊長(奴を仕留めた……のか?)

隊長「………」

隊長(いや……銃声は4丁分が重なっていた……)

隊長(……全員が発砲する状況……これが好ましいものとは思えない)
 
 素早く腰のトランシーバーを取り上げる。

隊長「応答しろ。 状況を報告しろ」

───


───

 北校舎 1階 廊下

    ダダ、ダ……




  カランカランカラン……







 次第に、白煙が晴れていく。

 床一面の白と、

 赤。

 鮮やかな、血の池。


3DO「ぐ、あぁ、あぁああぁぁ……」

3BO「い、痛゙い゙ぃィぃ……たす、たすげ……い゙ぃ……」

2CI「はぁッ……はぁッ……はぁッ……」

3AO「そだ………ウソだ…………」ブツブツ

 現場は、地獄絵図だった。

 薬莢が散らばり、壁という壁に銃弾がめり込み、近場のガラスはひとつ残らず砕け散った。

 そして彼らがばら撒いた弾丸は、容赦なく互いを傷つけあった。
 その中で奇跡的ともいえたのは、

3DO「うゔぅ……ゔうぅ゙うゔぅゔ……」

3BO「痛でぇ……痛でぇよぉ……ひぃ……」

 死亡者、ゼロ。

 負傷者、2名。
 3DO、右肩を負傷。
 3BO、左膝を負傷。

 どちらも重傷だが、命に別状はない。

 弾丸の嵐に巻き込まれた中において、奇跡とも言える被害状況だった。


2CI「はぁッ……はぁッ……ぐ、はぁッ……」

 部隊のリーダーを務めていた2CI。
 唾が喉に絡んで上手く呼吸が出来ない。
 
2CI(なんだ、何が、何が起こった)

2CI(ぬいぐるみが、AEDで、白い、白、え、なんだ、何)

 状況を整理出来ない。
 飲み込めもしないものを消化しろといっても無理な話だ。
 組み立てるのに、材料が少なすぎる。

3AO「2CIィィ───!!」

 怒号。

2CI「はっ……!?」

3AO「何ほうけてんだぁーっ!! 今、今お前がっお前が!頼りなんだよ!」

 こちらも奇跡的に無傷だった3AO。
 普段は高圧的な奴だが、今ばかりは泣きと怒りの混ざった顔で懇願の声を出している。

3AO「頼む……! 頼む…っ!! リーダーぁ!!」

2CIは大きく頭を振ると、大きく息を吸い込んだ。

2CI「はぁぁっ、はぁっ……ゴホッ……全員っ! たいきゃくっ、退却ッ!!」

 逃げなくては、とにかく、逃げなくては。

2CI「俺が3DOをっ! 3AOは3BOを頼むっ!!」

3AO「り、了解!」

 負傷者に肩を貸し、必死で現場から離れる。

2CI「ぐっ……」

 肩に掛かる3DOの体が、やけに重く感じられた。
 足が重い。
 それでも、歯を食いしばって動かす。

 一歩一歩踏み出すたびに、仲間の傷口から血が吹きこぼれた。

  びちゃり  びちゃり

 白く撒かれた消化剤の上に転々と赤い丸が連なっていく。

2CI「はぁっ、はぁっ」

 必死だった。
 生き残る為に。

 元々、奴を殺す為に、ここへ来た。
 今は、追われる側だ。
 生きる為に、仲間と、生き残る為に、
 必死で、必死で逃げる。


  ……せよ

2CI「……はぁっ……はぁぁっ……」

 …ザッ……

    ……うせよ

2CI「はぁっ……」

 『どうした 応答せよ』
 
2CI「!」

隊長『現場 状況を報告せよ どうした』

2CI「隊長ぉ! はぁっ、はぁっ」

 緊張と興奮のあまり、イヤホンマイクの音が全く聞こえていなかった。
 3DOの体を支えながら、精一杯の声を絞り出す。

隊長『銃声が聴こえたが、どうし……』

2CI「奴が……奴です!! やられました!!」

隊長『やられた……?』

2CI「やられました! 撃たれました!? いや、撃ったのはこちらですが、負傷がァ!」

隊長『落ち着け 負傷者が出たのか』

2CI「負傷者2名! 現場を退却! そちらへ向かっています! 救護を! お願いします!」

隊長『……了解した。 負傷者を1階空き教室へ運べ 私が手伝いへ行く』

2CI「は、はい……! ですが、もし、もし辿りつけなかったら……」

隊長『敵の動向はこちらで監視する 速やかに、帰って来い!!』

隊長『お前を鍛えたのは私だぞ!! 私と教団を信じろ!!』

2CI「はっ!!」

 これほど、
 これほど元気付けられるとは。

2CI「行くぞ!!あと少しだ!!」

3AO「おう!!」

 4人で必死になって渡り廊下を進む。
 生還する為に。
 帰りを待つ人々の為に。

───


───

 ザッ

隊長「総員へ告ぐ……!」

隊長「偵察部隊が北校舎1階にて奇襲を受けた模様」

隊長「廊下へ立っている各員は監視体制を取り、速やかに報告せよ!」

隊長「特に、1階廊下に立っている者! お前たちが頼りだ!」

 そう、男が潜んでいる(と思われる)北校舎の1階廊下部分は、南校舎からは非常に見づらい位置だ。
 南1階廊下に立っている人間が、教室(ここでは職員室等)を通して、なんとか北の廊下を見張るしかない。

  ……ザッ

1BO『隊長!報告します!』

隊長「! 何だ?」

1BO『奴の姿を……確認しました!』

───


───

  ガタッ  ガタン!!

 ロッカーの扉が勢いよく開く。

 ガタガタと音を立てながら這い出てくる男。

男「はぁ……はぁっ……」

 半泣きだ。
 耳をつんざく銃声の嵐と飛び交う銃弾の中で、男は恐怖のどん底だった。
 少しチビったが、一応履いておいてオムツに吸収されていることだろう。

男「いそ、急がなくちゃ……」

 銃弾と、血の海に肝を潰しそうになりながら、

 わたわたと、つたない足取りで、涙を浮かべた顔で、男は走り出した。

男図:http://i.imgur.com/iguPa.png

───


───

隊長「奴は今どこだ!」

1BO『1階廊下……ちょうど、白煙が撒かれたあたりです!』

隊長「……ッ」ギリ

 白煙、乱射、同志討ち……。

 隊長の頭の中で、単語が一つ一つが線でつながれて行く。

隊長(罠を仕掛け、白煙で視界を奪い、乱射を用いて同志討ちさせた……)

隊長(しかしこの短時間で時限式の装置やセンサー式の装置を作り上げることはプロでも不可能に近い)

隊長(だからこそ、奴はすぐ傍で……覚えた見取り図を参照するに、ロッカーに潜んでいたとみるべきか)

隊長(ロッカーに隠れ、罠を発動させ、我々を倒そうとした……!)ギリ…

隊長「奴はどこに向かっている!」

1BO『はっ! 廊下を東へ……走っている模様!』

隊長「走っている……?」

1BO『はい!」』

隊長(奴はこれまで見つからなかった……つまりは匍匐前進なりしながら、隠れながら移動していた、ということ)

隊長(攻撃を受けた部隊からも奴の姿を見たとの報告はない……奴は、奴は姿を見られることを恐れているはず……!)

隊長(にもかかわらず、そのリスクを犯してまで走っている……!)

隊長(現在地を知られてでも、急いで移動しなければならない、その理由は……?)

隊長(はっ……"脱出"……!)

 ザッ

隊長「スナイパー!!聞こえるか!!」

スナイパー(北・屋上)『ハッ、聞こえております』

隊長「北校舎西側にターゲットが移動した。 西の窓から誰か出てくる気配は無いか?」

スナイパー『いえ、ありません!』


隊長(ならば……可能性は一つしかない!)

 答えが次第に浮かび上がる。

 男の動向が、狙いが、隊長の推理が組みあがって行く。

 そして、「同志討ち」という単語。
 それが引っ掛かった。

 相手の武器を使用し、互いに攻撃させる。
 効率的だが、非常に面倒な下準備が必要なはずだ。
 武器を使用させた……いや、

 "使用させざるを得なかった"……?

隊長「1BO! 確認した奴の姿だが……」

1BO『はっ、はい!』

隊長「何か武器を持っていたか?」

1BO『い、いえ……』

1BO『それどころか……いや、見間違い、かも、しれないんですが……』

隊長「何だ?」

1BO『奴……』

  

  ── パンツ姿、だったような…… ──


───


───

男「はぁ……はぁ……!」 

 カン、カン、カン、カン!

 男は必死で階段を昇っていた。

男「急げ……! 急げぇ……!」

 上へ!

───

隊長「奴は今階段を昇っているはずだ」

スナイパー『え……な、何故分かるんですか』

隊長「急いで移動をしているのに脱出する気配が無い、ということは次の隠れ場所を探しているということだ!」

隊長「これ以上ネズミを潜ませる訳にはいかん!」

隊長「今、姿の見えているうちに叩かなくてはならない!」

スナイパー『はっ!』

隊長「そして……奴は今、丸腰だ。 武器を調達する前に、奴を殺す」

スナイパー『はっ』

隊長「そして……隠れ場所の候補だが」

隊長「奴の狙いに、その屋上も含まれる」

スナイパー『!!』

───

男「はぁ……はぁっ……ぐっ……!」

 カン、カン、カン!

男「はぁ、ぐっ……! はぁっ……!」

 急げ

男「はぁっ…はぁっ、はぁぁっ……!」

 目指すは、屋上!

───


───

隊長「今、奴に一番近いのはお前だ!」

スナイパー『はっ!』

隊長「お前は、体格、装備、技術、経験において、全て奴を上回っている!」

スナイパー『はっ!』

隊長「奴がそちらに近付き、かつ、奴は丸腰だ!」

隊長「今しか好機は無い!」

スナイパー『はっ!!』

隊長「すぐに、近接銃器装備に切り替えて、階段を降りろ!! 3階から制圧していけ!!」

スナイパー『はっ!!』

───
 


───
 
 階段を昇り終えた先。

 屋上の扉の前。

男「はぁ……はぁ……」

 息も絶え絶えの男。

男「はぁ……ゲホ……はぁ……」

 武器は、何も持っていない。

 そして、ズボンも履いていない。

男「はぁ……ゴホッ、……はぁ……んぐ」

 目の前の扉を、睨みつける。

───



───

 屋上

スナイパー「出動命令か……やれやれ」

 ガチャリ

 スナイパーライフルから体を離し、ホルスターから拳銃を引き抜く。
 
  カチ

 安全装置を外し、グリップを両手で抱え、

 トリガーへ指を掛ける。

スナイパー(時間を掛けてはいけない……)

スナイパー(奴が武器を手に入れる前に、仕留める……!)

 彼は屋上の扉へ駆け出した。

───

 男は扉の傍で息を潜めた。

 スナイパーを、待ち受ける。

───

スナイパー(もしや扉の横で、待ち受けているのか?)

 拳銃を持つ手に力がこもる。

スナイパー(が、例え体当たりされようと、拳で殴られようと)

スナイパー(拳銃で一発、それで終わる……!)

スナイパー(素手で俺達に敵うと思うなよ……!)


───

男「………」ドッ ドッ ドッ ドッ

 近づいて来る……!

 そして男は、

 立てかけておいたバットを手に取り、

 振り上げた。

───

 扉が、勢いよく開け放たれる。

  ガチャッ!

スナイパー「っ!」

男「うわああああああああああああああ!!!!!」

スナイパー「ッ!?」

スナイパー「なん……」

 そして

 思いっ切り、振り下ろす。


   グ

     チ
      ャ

  
 肉が 潰れる 感触が 手に沈んだ。


───

今日はここまで。




http://i.imgur.com/6G1XG.jpg

パッと見ホラー映画みたいになっちまった;


スナイパー「はァ゙っ!?ぐッ、」

 ぶしゅう、と嫌な音が彼の顔から噴き出した。
 床へ血の斑点がこぼれ落ちる。

スナイパー「ひ……が」

 フラつくテロリスト。

 が、あくまで怯ませただけだ。

 非力な男の、たった一撃で倒せはしない。

男「………」

 だから……だから"追撃"が必要だ。

 しかし、

男「………」

 人間、そうそう思い通りには動けない。

男「……っ」

 躊躇する。
 頭で理解して、四肢へ、指へ命令を出し、行動する。
 それをスムーズに行うことは実は難しい。
 ましてや相手を"殺す"というアクションである。
 そうそうに行動できるわけがない。

スナイパー「ひ、……ぐ、うぅっ……」

 しかし、すぐに追撃しなくては敵が回復してしまう。
 


男「………」

 故に。

男「………」スッ

 男はバットを振り上げた。

男「どん」

 そして、言葉を呟く。
 それと同時に、思い切りバットを振り下ろす。

   ゴッガッ!

スナイパー「ぐぃァ゙!?」

 再度、血が飛び散る。
 壁に、床に、男の顔に、赤い飛沫が斑点を作る。

男「どん」

 再度、バットを敵の頭へ振り下ろす。

   グッゴシャ…!

スナイパー「 ぎ 」ブシュゥ…

 今の男に、躊躇いは無い。
 
 内心、怖くて逃げ出したい。
 普通だったらこんな行動は出来ない。

 だから、男は散々唱えてきた。
 念仏のように、ひたすら唱えた。ロッカーの中で。
 『掛け声』によって、機械的に動く為に。
 感情を捨てて、動けるように。

 ──そして実際に、耳が、体が、覚えている。 
   言葉を、リズムを、動きを──自動再生する。

男「どん」

  ゴ グチァ゙ッ

スナイパー「ぁ……ぃ」

 うずくまる。
 ただ、丸くなる。許しを乞うように。

 スナイパーの手の平から、拳銃がこぼれ、床に落ちる。
 硬質な音が響く。

男「よーい」

 男は素早くそれを拾う──と、水鉄砲でも向けるように、スナイパーの顔面へ銃口を向けた。

 安全装置は掛っていない。
 当然だ。 
 男を見つけ次第撃ち殺すつもりだったのだから。

 ガチリ、と音がして、引き金が半分ほど引かれる。

 銃口はしっかりと、スナイパーの頭部へ向けられている。

 男の頭の中は真っ白に塗り潰されて、何の感情も湧かなかった。
 それでも、体は動いてくれた。
 "呪文"のおかげで。

男「どん」

  耳をつんざくような轟音と共に。

  薄暗い、屋上への階段。
  その壁に、床に、
  一人目の犠牲者の、血と脳漿がブチ撒けられた。
 

───


━━━


 なまえ: 本多 正弘 (ほんだ まさひろ)

 ねんれい : 23歳

 せいざ : さそり座

 けつえきがた : B型

 すきなもの : 推理小説、自己啓発書、隊長との食事

 きらいなもの : 親、ムカデ、グリーンピース

 やくわり : スナイパー(北校舎屋上にて) ※北側エリア監視役も兼ねる

 ひとがら : 頭がキレる秀才タイプ。かつ努力も厭わない性格で、
         宗教団体内では皆のお兄さん的な存在で頼られていた。
         少年時代に教育熱心な親から、「優秀な兄に比べて劣る」という理由で虐待に近いしつけを受けていた。
         これが成人後にも続く心の傷となり、後に「認めてくれる」宗教にのめり込むこととなる。
         やがて、今回の事件の下準備としての戦闘訓練にて、隊長から狙撃の才能を見出され、
         スナイパーという特別な役割を任される。
         本人はこの大役を非常に喜んでおり、任命された時は隊長の手を取り、涙を流して礼を言ったという。
         彼にとって、「認められる」ことはそれ程に重大な意味があったのだ。

 しいん : バットによる殴打→頭部を銃で撃たれて死亡


━━━







  カシャ

 残り 26 人

    カシャ


今日はここまで。

素人でも銃って引き金引くだけで人殺せるの?

>>334
素人ですが、撃った感触ですと、射撃後の指の脱臼等が一番問題で、近距離で止まった的に当てることはさほど難しくないという印象でした

男のメモ帳
http://i.imgur.com/nuocZ.jpg

男のメモ帳
http://i.imgur.com/vuQ9Z.jpg

続きがよみたいなりよ?

龍之介「やべーよ!やベーよ!旦那ぁ!」

キャンサー「どうしました?龍之介?」

龍之介「これ見ろよ!旦那!」

キャンサー「(このSSの人物がマスターだったら・・・)



続きはまだかぁー

神「男よ!私が与えた試練をクリアし!ヘタレリキンクソ虫を卒業しろ!」


========
女神「男たん!応援するよ!しえんしまくるからね!」

========

神「男よ、娘を幸せにしてくれよ」




支援!!


全体図 http://i.imgur.com/lg33r.png

───

 屋上階段

男「はぁーっ はぁーっ はぁーっ」

 男の盛大な息遣い。
 そして、その足元には頭の原型のあやしくなった死体が転がっている。
 その迷彩服は、噴き出た血で首元が赤茶色に染まりきっていた。

男「……っ く、」

 気が付けば、手が震え、指も力が入らない。
 ずっと緊張して力を込めすぎていた為だ。

男(人を……人を、殺した……)

男「はぁ、はぁっ……っ」

 膝を手の平でペチペチと叩くと、

   ガチャ

 屋上のドアを開けた。
 そして、
 
男「ふ、んっ」 ズルズル…

 スナイパーの死体を、屋上の端へと引きずって行く。

男「ぐ……お、も……っ……」ズルズル

 その跡には、血の赤い帯が、ベッタリと。

───



───

 1階 空き教室

隊長「……傷の具合はどうだ」

3BO「は、はい……だいじょう、ぶ、です……」

3DO「無問題……です……」

 負傷した3BOと3DOは、1階の空き教室に運び込まれていた。
 3BOは膝に包帯を巻き、3DOは腕を吊っている。

3BO「っ…ぐ……痛……」

隊長「無理するな」

3BO「す、すいません……俺たちが……ふがいない、ばっかりに……」

隊長「言うな」

隊長「どんなに訓練を積んだ部隊とて、油断することもある」
 
隊長「今は、傷をいたわれ」

3BO「はい……」

3DO「………」

隊長(……とはいえ、ここには十分な医療物資は無い……)

隊長(……下手をすれば……)

隊長(………)

隊長(くっ……銃による痛手とは……完全に想定外だ……。) 

3BO「……っ痛ぅ……」

3DO「………ッ……」

隊長(……まるで戦場だ……昔を思い出す……。)

隊長(……そして想定外と言えば……。)

隊長「………」

 ギリ…

隊長「………」

隊長(スナイパー。 今はお前だけが頼りだ……)


  ── ッ ド ォ ン !


隊長「!」

隊長「………」   

隊長(……焦るな)

隊長(交戦中だった場合、集中を削いではいかん……)

隊長(……スナイパーからの報告を待つ、か……)

隊長(報告が来なければ……)

隊長「………」

 そっと、腰の無線へ手を伸ばす。

───


───

男「はぁ……はぁ……」

 男は屋上の端へと向かっていた。
 死体と共に。

現在図:http://i.imgur.com/9B9uu.png

男「やっぱりだ……北側を監視する為に……北の端にライフルを設置してる……」

 屋上の金網の一部が切り取られ、そこに銃が差し込まれるように設置してある。

男「っとと、ケータイ、ケータイ……」ゴソゴソ

 男が携帯の電源を入れる。

男(不在着信……担任か?)

 それは放っておいて、携帯のカメラでライフルを撮影する。

   カシャ

男「……よし。 あとはVIPに……」カチカチ

━━━━

 『【銃】軍オタ、銃オタ向けにクイズ出す【クイズ】』

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
Q1.この銃の種類を答えなさい
http://i.imgur.com/rE06Q.jpg

━━━━

男「………」

男「………」カチカチ

男「やっぱり……別の周波数、だよな……うん……」カチカチ

男「………」ゴソゴソ

 次に、男は死体から服を脱がしにかかる。
 ホルスターや無線機等に少々手こずったが、やや乱暴に脱がし終えた。

男「よい、しょ……」

 そして、脱がした服は自分で着る。
 血生臭い。
 その上、崩れたプリンのような、脳みその切れ端がところどころにこびり付いている。
 しかし、泣き言は言ってられない。
 着るしかない。

男「はぁ……」

 着終えると、服のサイズがやや大きすぎたようで、袖と裾が少し余った。
 それらは遠慮なくハサミで切り落とす。
 ホルスターに拳銃が収まり、さっきよりは多少心強い。


男「ふぅ……」

 パカ

男「……まだレスは……付かない、か……」カチカチ

男「あ……えっと、台本、台本……」パラパラ

男「それに……電池ケース……」パカ

男「単三が3本で……」

男「っとと、そんな場合じゃない……」ゴソゴソ

 ポケットをまさぐると、

男「!」

 やはり、あった。

 金網を開けるときに使ったであろうペンチだ。

男「急がなきゃ……」パチン パチン

 男はペンチを使い、金網の穴を広げる。
 そして……

男「ふん、ぐっ……ぁ」

 ズル…ズル…

 男は死体を掴むと、力を振り絞って金網の外へ、

男「おりゃあっ!」

 放り投げ、

   ヒュゥゥ…
     ガッ ズルッ

        ゥゥゥウゥ…

   グ チ ャ ッ


 死体を、落とした。

男「はぁっ……はぁっ……」

男「………」

男「う……」

男「通報……」

男「いや……」

男「あ、でも……」

男「あー……」

男「……同時はキツい……」

男「…………」

男「……待つ、か……」

───


───

隊長(これ以上待てん……)

隊長「……」スッ

隊長(無事でいてくれ……)

 ザッ

───


───

  ザッ

『どうした 状況を報告しろ』

男「!!」

男(伸びてるマイクのところにあるスイッチを押すん、だよな?)

男「あ、あー……」

男「こんにちわ」

男(俺の馬鹿ぁぁっ! あいさつして何になるんだよぉ!!)

隊長『ッ!!』

隊長『貴様……まさか……』

男「あ、う……」パラパラ

男「こいつは殺した」

隊長『………!!」

男「えーと……」カチカチ パラパラ

男「何でこの学校を襲った?」

隊長『お前、"男"だな?』

男「!!」

男(や、やっぱり……バレてる……)ガタガタ 

男「……何でこの学校を襲った?」カチカチ

隊長『投降しろ』

男(こっちの会話には乗らないパターンか……)

男「……嫌だ」カチカチ

隊長『投降すれば、命だけは許してやる』

男「……嫌だ」カチカチ


隊長『……では、戦う、というのだな。 我々と。』

男「……そっちが帰ればいいじゃないか。 元の教団の施設にさ」カチカチ

男「そんで、そこで一生引きこもってろよ。 キチガイ教祖と一緒にさ」

隊長「ッ……貴様ァ……」

男「まだかよ」

隊長『何だと?』

男「あ、いや、何でも……」カチ


   カチッ


男「!」


━━━━

 『【銃】軍オタ、銃オタ向けにクイズ出す【クイズ】』

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
Q1.この銃の種類を答えなさい
http://i.imgur.com/rE06Q.jpg

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New!
レミントンM700ぢゃね?



━━━━


男「何が空中浮遊だよ あぐらでジャンプしてるだけじゃん」

 カチカチカチカチ

隊長『貴様ッ!! それ以上尊師様を愚弄してみろ!!』


 Google〔レミントンM7_    〕


男「変なアニメまで作ってさ  気持ち悪いんだよ」


 Google〔レミントンM700_   〕


隊長『貴様……余程死にたいようだな』

男「死ぬのはそっちだよ」

隊長『何……?』


  Wikipedia レミントンM700
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

男「レミントンM700…… いいもん使ってんじゃねーか」

隊長『ッ!?』

───



───

 1階 空き教室

隊長「何だと……?」

男『いいライフル使ってんじゃねーかっつったんだよ』カチカチ

隊長「………」

隊長「何故……」

隊長「何故銃の名称が分かった?」

男『んなもん、M700と言えば名門レミントンのボルトアクションの花形じゃねーか』

男『知らねー方がモグりだろ』

隊長「………」

男『いーんだよなぁ、コレ  使いやすくて』

隊長「っ!」

隊長「お前……」

男『撃ったことあるのか、ってか? ……これでも海外育ちなもんでね』

男『あの頃は、親父に着いていってよく射撃場に通ったもんだ』

隊長「………」

男『で、俺を殺すって?』

男『やってみろよ』

男『さっき殺したこいつみたいに、バットで頭を砕いてやろうか』

男『それとも空き缶に爆薬詰めて地雷で吹っ飛ばしてやろうか』

男『それともガス爆発でも起こしてお前ら一気にブチ殺してやろうか』

隊長「………」

男『舐めるなよ』

隊長「………」

隊長「貴様……何者だ」

男『………』

隊長「が、お前がいかに動こうとも……こちらには人質が」

『ガッ カコッ、コッ    プツッ』

『ザ──────』

隊長「……切られた、か」

隊長("男"……)

隊長(何者だ……何者なんだ……?)

隊長(銃器に詳しい……いや、それどころか軍事的な訓練も受けているのか……?)

隊長(…………)

隊長(恐らく)

隊長(強く、逞しく、頭も切れ、勇敢な………)

隊長(そんな奴が、逃げ延びて……我々に反抗しようとしている、だと……)

隊長「………」ギリ…

───


───

男「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ……」

 男の手には、電池カバーの開けられた無線機と、はずされた電池が1本。
 電源を切るだけでは不安だったため、電池ごとはずしたのである。

男(き、緊張した……)

男(手、手が、足が、全身が、震えが、止まらねぇ……)

男(で、でも……やるだけのことはやった……やったんだ……)

男「はぁぁ……」ガク…

男「………」ハァ…ハァ…

男(後は……)

男(後は頼んだぞ……隊長サン)

───

隊長(………しかし、奴がライフルを扱えるとすると……)

隊長「ッ!!」

隊長(不味いッ!!)

 隊長は持っていた無線機を素早く口に当てると、大声で怒鳴った。

隊長「全員に告ぐ!!」

3BO「っ」ビクッ

3DO「っ」ビクッ

 先程から傍で様子を見ていた3DO、3BOも、その剣幕に思わず体を縮こませた。

隊長「敵は北校舎の屋上にいる模様……!」

隊長「……スナイパーは……本多は………殺された!!」

3BO「!!?」

3DO「っ!?」

隊長「敵は……逃亡中の男子生徒は、軍事的な訓練を受けている可能性がある!!」

3BO「なっ……!?」

隊長「奴は……奴が、屋上から我々を狙撃する可能性もある!」

3DO(狙撃!?)

隊長「全員カーテンを閉めろ! 廊下側窓から離れるか、死角へ入れ!」

隊長「後の指示は私が出す!!」

隊長「全員……」

隊長「全員、警戒せよ!!」

隊長(もう……)

隊長(もう、誰も、殺させはせん……!)ギリ…

───


───

男「……」コソコソ

男「おぉ……全員屋上から見えなくなったぞ……」

男(やっぱ隊長ってのも馬鹿じゃないんだ……)

男(直接は言ってないのに、ちゃんと読み取ってくれた……)

男「………」

───

 1階 空き教室

 隊長は、部屋のカーテンを閉めると、ケガをしている3BOと3DOの二人を安全な位置へ移動し、
 自身も壁際へ身を寄せた。
 そして、手鏡で廊下と外の様子を窺う。

隊長(奴を殺す為に……向こうの校舎へ兵を向かわせたいところだが……)

隊長(しかし……)

隊長「………」チラ

隊長(あの渡り廊下……壁も無く、屋上からは丸見えだ……あそこを渡るのは無防備過ぎる。)

隊長(くっ……)

隊長(いや、落ち着け……)

隊長(冷静に考えろ……犠牲者を最小限に抑えるのが私の役目だろう……)

隊長(そして……)

 隊長の脳裏に、スナイパー、本多との訓練の日々が去来していた。

  ──「隊長……! ほんとに俺が、スナイパー役を……?」

   「う、嬉しいです! へへ……」

      「あ、あれ……なん……うれ、しいの、に……」

        「涙、とまん、ねぇや……はは……」

   「隊長って……俺にとって……」

      「父親みたいな、存在です…… へへっ」 ──
         
隊長(死んだ者の、仇を、取る……)

 拳を強く握る。
 覚悟の証のように。

───


───

男(これで……時間は稼げたはずだ……)

 男はのそりと立ち上がると、屋上のドアへと向かう。

男(大丈夫……時間はある、あるはずだ……)

 ペタペタと、裸足の音が床を鳴らす。

男(俺は敵を威嚇した。……それは相手に攻撃を思いとどまらせることも出来るけど……)

男(と同時に、"警戒"させてしまう……)

男(相手の油断を突くしかない俺にとっては……自分の首を絞めたようなもんか……)

男(……くそう………)

 男は屋上を出ると、ペタペタと階段を降りていった。

───

台本:http://i.imgur.com/dBu17.jpg



───


 3階 空き教室

教祖「…………」

女「……」

 度重なる銃声。
 何が起こっているのか分からない状況。
 この事態に、教祖と女は部屋で大人しくしていた。

教祖「………」チラ

女「………」

 女が体育座りをする。
 健康的なふともも、白いうなじ、ふっくらとした胸元。
 そして、小動物のように小刻みに震える姿が、教祖の視線を釘付けにする。

教祖「…………」ジー

女「……ぅ」

教祖「………」ジー

女「うぅぅ………」ブルッ…

教祖「………」ジー

教祖「………」ニヤニヤ

───


───

男「はぁ、はぁ……」

 男は3階に降りると、まずは西の階段の踊り場へ向かった。

男「はぁ……はぁ……」

 踊り場に着くと、リュックから酢酸の入ったビンを取り出す。

男「よいしょ……」

 そして、ビンのフタを開け、中身を少し床に撒く。
 
 キュポ  ビチャビチャ…

http://i.imgur.com/fSOl9.png

男「っ!?」

 やはり、臭いが凄まじい。

男「だっ、脱出!」

 男は急いで3階へと駆け戻った。

男「はぁ……たったあんだけなのに……酢の強烈な酸っぱい臭いが……」

 そう言いながら、もう片方の東側の踊り場にも向かう。

 そして、

男「………」

  キュポ  ビチャビチャ…

 同じように、少し床に撒くと、急いでその場を離れる。

http://i.imgur.com/8A6Sn.png

男「はぁ……これで、何とか……」

 廊下に戻り、一息つく。

男「少し……休もうかな……」

男「……いや、もう少し……もう少しがんばろう……」

 のそのそと歩き出す。
 そして男が入ったのは、3階、美術室。

学校:http://i.imgur.com/lg33r.png

───



───

 南校舎 1階 空き教室

隊長「………」

隊長「………」

3BO「隊長……」

隊長「何だ?」

3BO「あの……差し出がましいようですが、」

隊長「言ってみろ」

3BO「声明文……その、日本政府への独立宣言と資金請求は、行わないのですか?」

隊長「いや、行う」

3BO「しかし……そろそろ行なっても良いのでは? 勿論、警察がこちらへ来るリスクはありますが……」

隊長「警察が来たところで、こちらには人質がいる 問題は無い」

3BO「で、では……その、そろそろ警察とマスコミ各社に声明の電話をした方が……」

隊長「確かに、そのタイミングではある」

3BO「……?」

隊長「が、通報は、我々はしない」

3BO「?? ど、どういうことですか?」

隊長「奴がやる」

3BO「奴……」

3BO「あ、あいつ、ですか!? 今逃げ回ってる……」


隊長「そうだ 放っておいても、奴がやる」

3BO「はぁ……まあ、そりゃそうでしょうね……外に助けを求めるでしょう……」

3BO「でも、だからって、何で奴に任せるんですか? 我々がやった方が……」

隊長「警察の動向は、こちらで把握出来る」

 そう言って隊長は、懐からやや大きい無線機の様な機械を取り出す。

3BO「受令機……!? そ、そんなものどうやって……」

隊長「使えるのは数日間ぐらいだろうな……いや、APRだのなんだの、最近は厄介になった……」

 そう言って隊長は昔を懐かしむようにくつくつと笑った。

3BO「た、確かにそれで……まさか、基幹系も?」

隊長「ああ、一応、な」

3BO「………」

隊長「……奴は通報する。それは間違いない。」

隊長「が、子供が『学校にテロリストが来た』とだけ言って、警察に相手にされると思うか?」

3BO「いえ……まあ、そう本気にはしないでしょうね……」

隊長「ああ、だから奴は……警察に情報を与えざるを得ない」

3BO「情報?」

隊長「自分がテロリストについて知っていること、今自分がどういう状況か、」

3BO「……」

隊長「今後どうするつもりか……、これはまた、警察側が指示する場合もある」

3BO「……」

隊長「それらの情報は、我々には有用だ」

隊長「奴自らが、喋るのだ」

隊長「それが、我々に役立つ情報を与えてくれる」

隊長「ネズミ狩りの、な」

───


───

 美術室

男「えっと……美術室って言ったら、やっぱり絵の具だよな……」

 ゴソゴソ

男「どこだ……」ゴソゴソ

男(ゴミならそこら中にあるのに……)ゴソゴソ

男(ビニール袋に、輪ゴムに、なんやかんや……)ゴソゴソ

男(リュックに入れるまでもないな……ポケットで十分)ゴソゴソ

男「お、あった」

男「黒い絵の具……」ヒョイ

男「これは、このままじゃ使えないな……」

男「空いたペットボトルに…」ギュポ

男「絵の具を全部絞り出して……」ニュルルル…

男「水をたっぷり入れて……」ジョボボ…

男「振る!!」ジャッカ ジャッパ ジャッカ

男「ふぅ……これはリュックに入れとこう……」ゴソゴソ

男「他に何か無いかな……」

男「しかし……流しの周り汚ねぇな……」

男「筆……中身の無い絵の具……バケツ……」

男「お、これは……流しの洗剤か……」

男「学校にある奴と種類違うな……先生が個人的に買ってんのかな……」

男「入れてくか……」ゴソゴソ

男「って、大分リュックが手狭になってきたぞ……」

男「薬品、ペットボトル、メトロノーム、文房具……」

男「かさばるもんばっかり入れてるからな……はぁ……」

男「赤い絵の具かペンキも入れたかったけど……」チラ

男「しょうがない、いいや、どうせ同じだし……」

 男はそう言うと、棚から赤いペンキ缶を掴み、美術室の出口へ向かった。


───

 3階 廊下

男「よい」

男「しょっ!」

 男が、持っていたペンキをぶち撒ける。

 廊下の真ん中に赤い水溜りが出来た。

男「ふぅ…… あ、でも……」

男「……どうしよう……1階に降りる、か……?」

男「いや……時間はある、よな? まだ大丈夫だよな?」

男「……少し、休憩しよう」

男「あ、そうだ……休憩がてら通報しとくか……」

男「えっと……」ピッ ピッ

───

今日はここまで。

>>1


このペースだと終わるのいつになるかな

>>405を訂正(補足)します

隊長「そうだ 放っておいても、奴がやる」

3BO「はぁ……まあ、そりゃそうでしょうね……外に助けを求めるでしょう……」

3BO「でも、だからって、何で奴に任せるんですか? 我々がやった方が……」

隊長「警察の動向は、こちらで把握出来る」

 そう言って隊長は、懐からやや大きい無線機の様な機械を取り出す。

3BO「受令機……!?」

隊長「ああ……どうにか手に入れたよ」

3BO「ほ、本物ですか?」

隊長「ああ……しかし、使えるのは数日間ぐらいだろうな……いや、APRだのなんだの、最近は厄介になった……」

 そう言って隊長は昔を懐かしむようにくつくつと笑った。

3BO「確かに……それさえあれば警察の無線も傍受出来ますね……。 まさか、基幹系も?」

隊長「ああ、一応、な」

3BO「………」

隊長「……奴は通報する。それは間違いない。」

隊長「が、子供が『学校にテロリストが来た』とだけ言って、警察に相手にされると思うか?」

3BO「いえ……まあ、そう本気にはしないでしょうね……」

隊長「ああ、だから奴は……警察に情報を与えざるを得ない」

3BO「情報?」

隊長「警察に信じてもらう為には、詳しく説明するしかない」

隊長「自分がテロリストについて知っていること、今自分がどういう状況か、」

3BO「……」

隊長「今後どうするつもりか……、これはまた、警察側が指示する場合もある」

3BO「……」

隊長「とにかく奴は、必死に電話口でペラペラと情報を並べ立てるだろう」

隊長「その情報が、警察無線を駆け回る」

隊長「それを、盗聴する。」

3BO「なるほど……」

隊長「奴自らが、喋るのだ」

隊長「それが、我々に役立つ情報となる」

 ミシ…と、隊長の手の中の受令機が軋んだ。

隊長「ネズミ狩りの、な」

───


ちなみに

3階 現在図
http://i.imgur.com/WrhLP.jpg


>>420
遅筆なので、遅いことは確かです
打ち切りもしょっちゅうなので…モチベを維持出来るよう頑張ります

>>407の続き

───

 南校舎 3階 空き教室

教祖「あ~~~~君は~~~~」

女「っ」ピク

教祖「少し~~~気の流れが~~~~悪いようだ~~~~」

女「……」

教祖「私が~~~~」

教祖「特別なマッサァジをしてあげよう~~~~ぉ~~~~」

女「い、いいです……」ビク、ビク

教祖「さあ、さあ~~~~~」ニヤァ

───


───

 北校舎 3階 廊下

 ピッ

男「……よし、通報完了……」

男「……」

男「そろそろ1階に降りて……」スッ

 ガク…

男「っ!?」

男(うっ……足が、まだ……)

男(運動オンチなのに階段駆け上がったからなぁ……)

男「もうちょっと……休憩するか……」

男「………」

男(何だろう……)

男(………)

男(胸騒ぎが……)

男(………)

男(大丈夫、大丈夫……)

男(出来るだけのことはやってる……)

男(………はず。)

───


───

 南校舎 1階 空き教室

隊長「………」

受令機(警察無線傍受装置)『─── ザッ ───』

隊長「……まだ情報は無し、か」

3BO「……奴、なかなか通報しませんね」

隊長「焦るな……奴は通報する、それは間違い無い」

隊長「奴がいかに、訓練を受けた者であろうと……」

隊長「通報することにデメリットは無いからな」

隊長「奴にとって警察は救いの味方であろうし、」

隊長「我々が外部……この場合は教団、から援軍を呼ぶことも防げる訳だからな」

3BO「なるほど……」

隊長「まあ、我々としては……教団に現状を知られる訳にはいかないがな」

3BO「……やはり、教団には連絡無しですか」

隊長「……今回の襲撃計画は、教団内でも反対は少なくなかった」

隊長「今のモタついた現状を知られれば、教団の内部分裂にも繋がりかねない」

3BO「………」

隊長「教団に連絡する訳にはいかんのだ。 だからこそ、」

隊長「我々で、ケリをつける」グッ

3BO「……」ゴクリ

隊長「我々で教祖をお守りし、奴を倒し、計画を完遂させる」

3BO「……はい!」


隊長「……とはいえ、決して油断はするな」

3BO「はい……」

隊長「奴の手口、相当訓練されている者と見ていい」

隊長「加えて、計画を実行する周到さ、勇敢さもあるだろう」

隊長「最も警戒すべきタイプの人間かもしれん」

3BO「なるほど……お、恐ろしい敵ですね……」

隊長「ああ、恐ろし……」

 そう言い掛けて、隊長の脳裏に過去の記憶が蘇る。
 懐かしい、久しく忘れかけていた記憶。
 それは、まだ若かりし頃──



隊長(若)「……」

 自衛隊に入隊したばかりで、右も左も分からなかった頃。

隊長(若)「……」

教官「お前ら良く聞け! 実戦は何が起こるか分からない! だからこそ! 常に最悪を想定して動け!」

隊員「「「「 はい!!! 」」」」

隊長(若)「は、はい!!」


教官「………」

教官「おい、お前」

隊長(若)「は、はいっ!」

教官「……最も恐ろしい敵とはどんな奴か、分かるか」

隊長(若)「も、もっとも恐ろしい敵、でありますかっ?」

教官「そうだ。何度も言わせるな。」

隊長(若)「は、はい、ええと……」

隊長(若)「まず、力の強い者だと思います!」

教官「それで?」

隊長(若)「へ?」

教官「それだけか?」

隊長(若)「え、ええと……あと、武器の扱いに長けた者、それと、頭のキレる者、それに……」

隊長(若)「知識が豊富で、仲間も多く、そして、勇敢な者! そのような人間が、最も恐ろしい敵だと思います!」

教官「………」

隊長(若)「……?」

教官「大間違いだ」

隊長(若)「っ!? え!?」

教官「お前らも良く聞いてろぉ!!」

教官「いいかぁ!! この世で最ッッとも恐ろしい人間ってやつァなぁ!!」

教官「臆病で!! 意気地無しで!! ノミの心臓みてェな奴だ!!」

隊長(若)「なっ……!?」

教官「しっかり肝に銘じてろ!!」

隊員「「「 はい! 」」」

隊長(若)「は、はい!」

教官「……おい、お前」

隊長(若)「っ…はい!」

教官「間違えた罰だ。 腕立て五百。」

隊長(若)「~~~っ  はい!」



 ……長

   長!

  隊長!

3BO「隊長!」

隊長「っ……ん、」


3BO「どうしたんですか……ぼーっとして……」

隊長「ん、いや、何……」

隊長「少し、昔のことを思い出していた……」

3BO「昔、ですか?」

隊長「ああ………」

隊長「………」

隊長「……………」

隊長(……まさか、な)

───

ここまで。

追いついた
投下する日を予告してくれるとウレシス


───

男「……そろそろ、か」

男「………」

男「……」ギュッ

───

隊長「そろそろだな」

3BO「え……」

隊長「そろそろ奴が通報する頃合いだ」

 隊長の手の中で、受令機がミシミシと音を立てる。

3BO「はい……」

 ……ポー

 ピーポー

   ピーポー

3BO「ん……?」

 ピーポー ピーポー

3BO「隊長……サイレンが……」

隊長「……」

3BO「まっ、まさか! パトカーが……」

隊長「……ククク……」

3BO「……隊長?」

隊長「良く聞け。 これは救急車のサイレンだ」

3BO「え……」

 ピーポー ピーポー

3BO「あ……そういえば……パトカーは『ウ~ウ~』って感じだったような……」

 ピーポー ピーポー

隊長「960HZと770HZの1.3秒周期……これは間違いなく救急車のサイレンだ」

隊長「パトカーなら870Hzの8秒周期のはずだろう?」

3BO「す、すみません……何だか焦ってしまって……」


 ピーポー ピーポー

  ピーポー ピーポー

3BO「……しかし……音がだんだんと大きくなっていませんか?」

3BO「こちらに近付いている……?」

隊長「ふ……まあ、偶然こちらを通りがかった車両だろう」

3BO「なんだぁ……」ホッ

隊長「………」

隊長「ッ」

 突然、隊長の動きが止まる。
 
3BO「た、隊長……?」

隊長「……まさか」

隊長「そんな……」

 何かに気付いたかのように、隊長の目が大きく見開かれる。

隊長「いや、馬鹿な……そんなはずは……」

 先程からサイレンは鳴りやまない。
 耳が痛む程に大きなその音を、学校中に響かせている。

3BO「こ、このサイレンの大きさは異常です……! 明らかに……」

3BO「明らかに、この学校に救急車が入りこんでいます!!」

3BO「なんで……なんで……!」

 訳が分からない。
 3BOが涙声のような叫びをあげる。


隊長「奴は……」

 隊長の手の中の受令機が、ノイズ混じりの声を伝える。

受令機『……ザツ……あー、…ザッ…高校付近のパトカーへ…ザッ…』

3BO「!! パトカーへの無線通信が……!」

受令機『救急から緊急要請を受けた。 ただちに学校へ向かい、状況の検分と報告を行え。 繰り返す。…ザッ…』

3BO「!? ど、どういうことですか!? 何故ここにパトカーが、警察が、すぐに向かって来るんです!?」

3BO「それに救急からの要請って……一体!?」

隊長「………」ギリ…

受令機『…ザッ…こちら6号車。 ただちに現場へ急行する。 救急からはどの様な要請があったんだ?…ザッ…』

受令機『ザッ…こちら本部、救急車両によると、"通報を受け急行すると、学校玄関脇に流血した変死体を発見"、だそうだ…ザッ…』

受令機『そこで、我々警察に要請が下った ヨロシクドーゾー』

受令機『…ザッ…了解…ザッ…』

隊長「……やられた……」ギリ…

3BO「ど、どういうことですか……?」

隊長「奴は……奴は警察に通報なんかしていない……」

3BO「へ……?」

隊長「奴は……119……消防救急へ通報したんだ……!」

3BO「っ!?」

3BO「な、何故そんなことを……」

隊長「奴は……奴は、恐らくスナイパーの死体を屋上から落としたんだ……校舎北側、玄関の位置へ……!」

隊長「そして、その場所を救急に通報する。 後は……当然の流れだ」

隊長「救急隊員が死体を発見する……銃殺死体、加えて落下による損傷……明らかに異状死体だ」

隊長「結果、警察へ通報する。 "あの男が"じゃない……! 救急隊員が、警察を呼ぶ……!」

3BO「!!」

隊長「……やられた……完全に……読みを違えた………」ギリ…

  ガッ ゴ…

 隊長の手から受令機が落ち、床へぶつかって鈍い音を立て、転がった。

隊長「奴は……」

隊長「一切、己の情報を漏らさずに……警察を……呼び寄せた……っ」ギリ…

───

今日はここまで。



再うp、屋上:http://i.imgur.com/EAXDj.jpg
落下地点:http://i.imgur.com/nOHlN.jpg

>>462
すみません。分かりません。

>>467の2枚目の画像(落下地点)、変なスペースがあるな…
再:http://i.imgur.com/xQ8PZ.jpg


───

 北校舎 玄関脇

救急隊員A「おい……これ……」

救急隊員B「……」

救急隊員A「頭蓋損傷が激しいから一概には言えないが……この痕は……」

救急隊員B「でも……まさか、こんな平和な町だぜ?」

救急隊員A「しかしなぁ……」

 ……ウゥ────  ウゥ────

救急隊員A「! 来たか!」

救急隊員B「こりゃ俺たちの手には負えないからな……」

 キキーッ 

   バタン!

警官A「どうも! お疲れ様です!」

救急隊員A「お疲れ様です! それで……仏さんなんですが……」チラ

警官A「う……これは……」

救急隊員A「飛び降り、です」

警官A「……ふむ……」

救急隊員A「それで、ちょっと気になることが……」

警官A「気になること?」

救急隊員A「……そこです……」

警官A「……ちょっと失礼」 ゴソ…

 ゴトリ…

救急隊員A「……」

救急隊員B「……」

警官A「これは……」

警官A「………銃痕………」

───


───

  南校舎 1階 空き教室

 部屋に、沈黙が降りた。
 主に沈黙を守っているのは隊長だ。
 口に指を当てながら、考え込む素振りを見せている。
 一方で3BOはおろおろと動きながら落ち着かない。

隊長「………」

3BO「た、隊長! どうするんですか!? もう、警察もこっちに……奴を捕まえるどころじゃ……」

隊長「………」

3BO「……?」

隊長「奴の情報を手に入れることは出来なかった」

隊長「が、」

隊長「計画に変更は無い」

3BO「え……」

隊長「警察に知られた今がタイミングだ。 声明文を発表する。」

3BO「声明文……あ、……そうか、そうでしたね……」

 隊長が腰の無線を取り上げる。

隊長「……1AO、1BO、1CO、1DO、聞こえるか」

───


───


1AO「……」


───


隊長「今こそ、我々の思想を、行動を、魂を、全世界へ示す時だ。」


───


1BO「……」


───


隊長「この瞬間から、我が教団の、我ら一同の、新世界が幕を開けるのだ!」


───


1CO「……」


───


隊長「各自、自身の担当する公表先へ、速やかに……」


───


1DO「……」


───


隊長「 声明文を、発表せよ!! 」


───


───


  毎朝新聞社

 リーンリーン ガヤガヤ

   ザワザワ  ガシャンガシャン

 ジリリリリ!  オーイ! コッチダコッチ!

  ウィーーン ガシャ     プルルルルル

記者A「ケッ……何だよ何だよ、シケたネタしか上がってこねーなぁ」

記者B「んー……ロクなネタがねぇな……えーと何々?、岡山県で猫が一日駅長、と……」

記者A「かァ~~っ! しょっぱい!しょっぱすぎる! もっとこう……ガツンとしたネタはねぇのかよ!」

記者B「すぐそれだな、お前は……。 そんな都合の良く事件なんか起こるもんか」  プルルルル!

記者A「ん……? 何だ? 電話?」プルルルルル!

記者B「なんだ何だ、事件の知らせかもしれねぇぞ」

記者A「よせよ、そんなウマい話……。 ガチャ はい、もしもし」

───


───

  西スポ新聞社

デスク「で、だ。 新ネタは上がったのか?」

記者C「は、はい! えっと、大阪で新妖怪現る……! というネタなんですが、どうでしょうか……?」

デスク「新妖怪?」

記者C「はい、えっと、かみつきオヤジ、という新たな妖怪というか、都市伝説というか、そんなウワサが……」パラパラ

デスク「………」

記者C「上手く行けば、口裂け女のように全国レベルの大スクープに……!」

デスク「却下」

記者C「……」シュン…

記者D「あ、デスクー! デスクさんーっ!」パタパタ

デスク「何だ、騒がしい」

記者D「お電話ですっ」

デスク「チッ……何だ、こんな時に」

───


───

 日売テレビ 報道部

記者E「何!? 救急無線から異状死体って単語が出て来た!?」

記者E「よし!! そのまま傍受を続け……ああ分かったよ!謝礼は今度払う!また頼むぜ!」

記者G「?? 何か事件ですかぁ?」

記者E「おう! 何だか面白いことになりそうだぞ! ちょっと取材してくる!」

記者G「え……で、でも今から会議じゃ……」

記者E「んなもんほっとけ! 特ダネだ! 上手く行けば夕方のニュースまでに間に合うかも知れん」バタバタ

記者G「えぇ!? 夕方のニュースのトップは、大物女優の不倫と、あと、」パラパラ…

記者E「はぁ……お前なぁ……」

記者G「ハチローのメジャー進出と、関西の新型インフルエンザ特集と、あと……」

記者E「馬ッ鹿野郎!!」ドン!

記者G「っ」ビクッ

記者E「記者なら最新の情報を追いかけろ!! いつまでも古い情報にこだわってんじゃねぇ! 俺ぁもう行くぞ!」

 ピリリリッ

記者E「あぁ? 何だぁ?」

 ピリリリリリリ!

記者E「ったく、こんな時に……」

───


───

 警察本部

警官B「はいこちら本部……」

警官B「はい、……はい?」

警官B「あのねぇ、イタズラならよそで……」

警官B「………」

警官B「……!」

警官B「……ちょ、ちょっと待ってなさい……」

警官B「っ部長! 部長ー~~ っ !!」

───


───

 MHK 報道部

記者H「おい……このメール、どう思う?」

記者J「ん? どれどれ?」

記者H「既に電話にて詳細は聞いた……わざわざ文面でも"発表"してきやがったよ」

記者J「……これ……本物なのか? 本当に……こんな……」

記者H「……やりかねない。 奴らなら……」

記者J「お、おい! もしこれが本当なら、すぐに速報で……」

記者H「もう上に話は通した。 もうじき速報テロップが流れるだろう……」

記者J「……他社は?」

記者H「確認した。 ほぼ全ての主要マスコミに声明文が発表されているらしい」

記者J「……それなら……」

記者H「ああ、」

記者H「乗り遅れる訳には、いかないな……!」

───


───

 男 宅(アパート)

TV『さて、大人気のこちらの商品がなんと……』

母「ふーん、いいわねぇこれ」ボ~~…

TV『本日限定の特別…… ザザ… パッ  えー、番組の途中ですが、失礼します。緊急ニュースをお伝えします。』

母「緊急ニュース……?」

TV『えー、先程、新興宗教団体"無応真理教"から声明文が届きました。教団によると、』

母「あ、洗濯物干さないと」

 そう言って男の母はリモコンへ手を伸ばした。

TV『武装した信者が……』 ピッ  

母「やれやれ、主婦も楽じゃないわねー」ヨッコラセ

───


───

 警視庁

総監「……本当なのか、これは……」

監理官「……はい。」

総監「……すぐに関係各所へ連絡、SATを手配しろ」

監理官「はい、ただちに……」

副総監「……警視総監、」

総監「……どうした」

副総監「お電話です…………総理から」

総監「……」

───


───

警官A「……銃痕です……間違い無い……」

救急隊員A「やはり……銃による……」

救急隊員B「……」ゴクリ

 …ザッ…

警官A「あ、無線が……」

警官A「あー、こちら現場から。 ちょうど良かった、すぐに応援を……」

警官A「え!? 即、帰って来い、ですって!? そんな馬鹿な……!」

警官A「だって、銃による異状死体ですよ!? しかも、この学校も変だ! 人っ子一人……」

警官A「……そんな、本庁から……」

警官A「………」

警官A「……了解」 ザッ

救急隊員A「……どうしたんですか?」

警官A「……すぐにここを離れるぞ」

救急隊員B「え……?」

警官A「これは………命令だ」

警官A「国からの、な」

───


───

3BO「……これからどうなるんですか?」

隊長「…………」

隊長「……まず、この学校は警察とマスコミに完全に包囲される」

3BO「!!」

隊長「ただし、半径500m以内を極力無人にし、望遠による監視、ヘリを飛ばすことを禁じた。」

隊長「破れば、人質を即殺す、とな。」

3BO「……」

隊長「資金の受け渡し、独立候補地への我々と生徒の輸送は別途要求してある」

3BO「……なるほど……なるほど……」

隊長「………」

隊長(………)

隊長(……今の敵は、警察でも、国でもない……)

隊長(………)

隊長(…………)

隊長(……奴だ……。)

隊長(奴は……、)

隊長(奴は、どう出る……?)

───


───

男「………」カチカチ

 男は、教師の携帯でネット掲示板をチェックしていた。

男「………」カチカチ

━━━━

34:実況する名無しさん
 速報キタ───(゚∀゚)───!!

35:実況する名無しさん
 なんだなんだ

36:実況する名無しさん
 立てこもり!? マジで!?

37:実況する名無しさん
 いつかやると思った

38:実況する名無しさん
 マジキチ

39:実況する名無しさん
 おいおい、これガチでヤバくねぇか

40:実況する名無しさん
 どうすんだこれ
 生徒全員人質とかwwww

41:実況する名無しさん
 こういう妄想したことはあるけど、まさか現実に起こるとは……

━━━━

男「………」カチ…

男「………」

男「……行くか」

 スクッ

    ガクガクッ

男「~~~~っ!?」

男「………」

 一度は立ち上がった男だったが、
 足がガクついた為、また座り直す。

男(……休憩、あと少しだけ、少しだけ休憩……)

───

ここまで。

http://i.imgur.com/ULTiO.jpg


───

隊長「………」

3BO「……いよいよです、ね」

隊長「……ああ」

3BO「……もう戻れません、ね」

隊長「……ああ」 カチカチ…

3BO「……? 何してるんですか?」

隊長「奴が持っている無線……元はスナイパーの物だが……それを遠隔で無効にする」

3BO「! そ、そんなことが出来るんですか?」

隊長「私が持っているのがマスター機だ。 周波を変えればた易い……。 が、」

隊長「………」

3BO「どうしたんですか?」

隊長「……無線……いや………」

隊長「何でもない」

3BO「……?」

隊長(何かが……何かが引っ掛かる……)

3BO「隊長……?」

隊長「いや……少し、考え事だ」

3BO「気を付けてくださいよ……いつ、どこから奴が狙撃してくるか……」

 3BOは震え上がっている。
 当然だ。
 スナイパーに狙われるなぞ、正に生きた心地もしないだろう。


隊長「狙撃、か……」

3BO「……?」

隊長「………」

隊長「3BO」

3BO「ッ? はいっ」

隊長「何故奴は……狙撃していることを自ら我々に教えて来たんだ?」

3BO「え……?」

隊長「狙撃のことを知らせずに、こちらが隠れる前に数名狙撃して殺した方が、奴には有利だろう?」

3BO「それはぁ……そうですけど……。 あ、アレじゃないですか、撃つより脅した方がめんどくさくない、というか」

隊長「めんどくさくない……?」

3BO「ええ、まず、我々を脅す。 そして、我々が降伏してくるのを待つんです。」

隊長「降伏……。」

3BO「はい、そうすれば、狙撃する労力を使わずに、我々に勝つことが出来るじゃないですか」

隊長「なるほど……。」

3BO「へへ……」

隊長「しかし、だ」

3BO「え?」

隊長「奴は……無線を切っている」

3BO「……あ。」

隊長「恐らく、こちらとの交渉を拒んでいるのだろう……。 確かに、場合によっては交渉は自身には不利になることもある。」

隊長「無線を切った判断が間違いだとは思わない。 しかしだ、」

隊長「もし奴が"降伏を促したい"のなら……こちらとの通信を完全に絶ってしまう、というのはおかしい」

3BO「確かに……無線で『もう降参です』って伝えることが出来ないですもんね……」

隊長「更に、奴はわざわざ自身が訓練を受けた身であること、こちらを皆殺しにするという意思、加えて狙撃という具体的な行動まで示して来た……」

隊長「明らかに"こっちに近付くな"と言っている。 我々の動きを封じる為だろうが……それなら益々"我々が降伏の意思を伝える"ことは困難になる」

3BO「た、確かに……」

隊長「奴がしていることが……いちいちチグハグなんだ……辻褄が合わない……。」

3BO「う、うーん……考えれば考える程分からなくなってきました……」

3BO「奴は……奴は一体何がしたいんでしょう……?」


隊長「……」

隊長「『何故奴は狙撃することを我々にわざわざ教えて来たのか?』 この問いを言い換えれば……」

3BO「言い換えれば……?」

隊長「『何故奴は黙って狙撃しなかったのか?』となる……。 何故……。」

3BO「うーん……俺達が上手く見えなくて、それで狙撃できなかったとか……あと下手だったとか……いや、そんな……」ブツブツ

隊長「…」ピク

隊長「……今何と言った」

3BO「え?」

隊長「今、何と言った?」

3BO「え、あ、いえ…その、我々が、その、よく見えなくて、狙撃できなかったのではないかとぉ……」

隊長「その後だ!」

3BO「ひっ!? え、えっと……下手だったから、狙撃の腕に自信が無かったんじゃないか、とか、そんな、ことを、はい、すいませんっ」

隊長「………」

隊長「…………」

隊長「……3BO」

3BO「っはい!」

隊長「……私は………」

隊長「私は、お前に何と言っていた?」

3BO「へっ……」

 戸惑う3BO。
 隊長の頬を汗が流れる。

隊長「私はお前に……"奴について"何と言っていた?」

3BO「えっ、奴について、ですかっ? ええっと……」

3BO「軍事的な訓練を受けていて……頭も良くって……勇気もある……とても恐ろしい人間だ、と」

隊長「………」

3BO「………た、隊長?」

隊長「……私は」

3BO「……」

隊長(私は……何か重大な思い違いをしているのか……?)

 口に手を当てて考え込む隊長。
 その目が、微かに、その野生の光を増しつつあった。

───


───


  ゾ  ク  ッ


男「~~ ッ!?」

男(な、何だ……急に、背筋が、ゾクッと……)ビクビク

男「………」

男「………」ゴクッ…

男(……何か)

男(何か、見落としがある……のか……?)ビク、ビク

───


───

 男 宅

母「やれやれ、やっと洗濯終わり……」

母「よっこらせ」

母「テレビは何かやってるかしら」 ピッ

TV『── ザッ …… えー、引き続き臨時ニュースをお伝えします』

母「なぁんだ、まだ物騒なニュースやってるのね……」

母「やめたやめた」

TV『えー、信者達が立て篭もっている高…』 ピッ

母「……ふぅ、一休みしてごろごろしようかしら」

母「うーん……」ゴロゴロ…

母「………」ゴロゴロ

母「……」

母「………z」

母「……zZZ……」スー…スー…

母「……zzZZ……」スー… スー……

 ……スー ………
    
    ……スー ………

  …………

~~~~~~~

「そんな………」

  「………」

「ウソでしょ!? ねえ……!」

  「……別れる」

「そんな……そんな、だって……」

  「………」

「結婚、してくれるって……言ったじゃない……」

  「………」

「だから……だから、あたし、あたし…それ信じて……ずっと……!」

  「……お前とは、遊びだった」

「っ……そん、な………」


  「……大体、そのお腹の子だって、俺の子か怪しいもんだ」

「ッ!? そんな!? 本気で言ってるの!?」

  「……お前だって……俺みたいな一回りも歳が違う男に本気になる訳がない……」

「っ違う! あたしは……あたしは本気であなたを……!」

  「どうせ、他の若い奴とデキてるんだろう? 腹の子はそいつの種で出来たんだろう……」

「……ひどい……酷い……っ………。 この子は……この子は正真正銘、あなたの……」

  「黙れ」

「………。」

  「………」

「……勝手だよ……。 この子は……この子はどうするの……?」

  「堕ろせ。 金だけは出してやる。 俺の子か分からんモノに金を出してやるんだ、感謝しろ」

「………だ……」ポロ…

  「あ?」

「……やだ…… やだよ……」ポロ…ポロ…

  「………」

「この子には……この子には何の罪も無いじゃない……」ポロ…ポロ…

  「………」

「そんなの……そんなのおかしいよ……」ポロ…ポロ…

  「お前まさか……産む気か」

「………」コク

  「……チッ…… 勝手にしろ…… もう、俺には関係の無い話だ」

「………」ジワ…

  「……もう、会うことも無いだろう。 さよならだ。」

「………」ポロ… ポロ…

  「………ふん」 

「……分かったわ」ゴシゴシ

  「ん?」

「この子は……私一人で育てる……」ゴシゴシ

  「……本気で言ってるのか」

「……」

  「……勝手にしろ……っ」

「……」

  「せいぜい、軟弱でひ弱なガキを育てるんだな」

「………」

  「臆病で、軟弱で、最低のクズで……っ」

「どんな子だっていい……ッ」

  「ッ」

「あたしは……この子を……」

  「………」

「 愛してる。 」


  「……チッ…… これだから女は……」

「………」

  「フン……」

「貴方は……可哀相な人間だわ」

  「あ゙……?」

「強がってて、強がることに必死で、哀れな人」

  「強がっている……だとォ?」

「そうよ……弱くて可哀相な人間」

  「弱い……この俺が……弱い、だと?」

「ええ……」

  「ッふざけるな! 俺が弱いなぞ……! 日々鍛錬を重ね、国の為に……ッ」

「本当の強さは……!」

  「………」

「本当に強いっていうのは……自分の弱さを認められる強さよ……!」
 
  「……くだらん。 自分の弱さを認める強さだと……? 軟弱者の世迷言だ。」

「この子は……この子は、本当に強い子になるわ。 きっとそう 貴方とは違う」

  「はっ……戯言を」

「………」キッ

  「ふん……まあいい。 俺は近々昇格が決まっている大事な身だ……。 くれぐれも、妙な騒ぎだけは起こすなよ」

「……が……よ……」

  「あ?」
 
「何が昇格よ……。 大事な身よ……。」

  「………」

「家族も守れない人間が……国を護れる訳ないじゃない……っ!」

  「貴様ッ!!」


 バ シ ィ ッ !

「あうっ……!」 ドサァ…

  「……はぁ……はぁ……」

「………」キッ…

  「……フン……」 クルッ スタスタスタスタ…

  コツ、コツ、コツ

   コツ…… コツ……

     ……コツ……

「………」


「………」

「………ごめんね、痛かった?」ナデナデ

 そっと、優しい手つきでお腹を撫でる。

「…………ごめんね……ごめん、ね………」ポロ…ポロ…

「……ごめんね………」ポロポロ… ナデナデ

………



~~~~~

……

………


母「………ハッ……」パチ

母「………」

母(……いやな夢……もう……とっくに忘れたと思ったのに……。)ハァ

母「………」

母「~~~~ っ」ブンブン

母「忘れよ忘れよ、 夕飯の買い出し行かなきゃいけないしね、うん」

母「……今夜は何作ろうかな…… 何を買ったらいいかなぁ……」

 母はそう言いながら、テーブルの上のメモ帳のペンを取る。

母「今日は少し暑いから、さっぱりした物で……あと野菜も安くなってるから……」カリカリカリ

母「献立は……そうね、これで行こうかしら」カリカリカリカリ…

母「だから買う物は、と……」カリカリカリカリ…

母「………」ピタ

母「…………」

母「………ふっ……」

母(……メモを取る癖……元はあの人の癖だったのに……)

母(………)

母(…………)

母「……忘れよっ」

 そうつぶやくと、母はメモを掴んで立ち上がった。

───


───

隊長「………」

3BO「……隊長、どうしたんですか……?」

隊長「む……」

3BO「さっきから難しい顔をして……」

隊長「ああ……」

隊長「一つ、」

隊長「……… 一つ、どうしても確かめたいことがある。」

───

今日はここまで。

まぁまぁ落ち着いて

>>627
ありがとうございます。


こういう内容ですので、考察も歓迎ですよ。
過度な先読みだけ控えていただければ……><
今までのこのレベルは全然問題無いです。はい。


───

 警視庁

管理官「……通報者?」

係長「は、はい……所轄から情報が上がっておりまして……お耳に入れた方がよろしいかと……」

管理官「詳しく話せ。 通報者とは……例の事件絡みだな」

係長「はい。 信者の立てこもり事件の……、その現場になった高校から、通報があったそうなんです。」

管理官「現場の高校から……? 誰からだ?」

係長「発信者は今特定作業中です。 ただ……その内容が少し、妙というか……」

管理官「妙?」

係長「その通報は、救急に対してです」

管理官「……何? 待て、救急だと? 警察では無く?」

係長「はい……。 そして、救急隊員が駆け付けたところ、銃殺死体が発見されたそうです。」

管理官「……間違い無く、テロリストに殺された者の死体だろう……。 その死体は?」

係長「それが……発見直後に声明文が出されたようで……。 すぐに隊員達に『退去命令』が出ました。」

管理官「……」

係長「故に……死体を回収する余裕も無く……」

管理官「……死体はそのまま、という訳か……。」

係長「はい……。 そして……現場に近づけない以上……、これから回収することも困難、かと……。」

管理官「………」


係長「………」

管理官「ふっ……打つ手無し、か」

係長「……今は、静観すべきかと……。 人質の命も心配ですし……。」

管理官「……今回の事件には、上も慎重だ。 全校生徒と教師を合わせ、五百名が人質に取られているんだからな」

係長「……五百名………。」

 その数字に係長は身震いした。
 日本の犯罪史上、最悪の数字だ。
 いや、最悪になるのは、これからかもしれない。
 急激に絶望が押し寄せて来る。

管理官「……それだけの人間の命が、我々の肩に掛かっている。」

係長「………。」

管理官「この件で失態を演じれば、私の出世にも関わる。」

係長「………」

管理官「……君もいい歳だろう。 そろそろ、官舎暮らしも窮屈なんじゃないか」

係長「………。」

 係長の頭に、気苦労を掛けている妻の疲れた顔が思い浮かぶ。

管理官「……いいな。 決して下手を打つな。 それと……くれぐれもマスコミにも注意、だ。 うむ。」

 そう言って、管理官は係長の肩を軽く叩くと、革靴を絨毯の上で鳴らして行ってしまった。
 残された係長は、呆然とその床を見つめ、立ち尽くす。

係長(……"我々の肩に掛かっている"……?)

係長(……違う……。)

係長(………)

係長( "奴らの手の平の上"、だ……。 )

 思わず両手で顔を覆った。
 そうするしか無かった。

───


───

隊長「……私は、一旦出る」

3BO「………?」

3BO「ッ!?」

3BO「で、出るって、ここからですか!?」

隊長「ああ……どうしても、確かめたいことがある。」

3BO「でっ、でもっ、今は狙われてるんですよ!? 下手に動いたら、狙撃されちゃいますよ!?」

隊長「安心しろ……なるべく死角を突いて動くつもりだ」

3BO「で、でも……っ」

隊長「……どうしても、行かなきゃならん……」スクッ

3BO「隊長……」

隊長「………私を信じろ」

3BO「…………」

3BO「……はいっ」

───


───

教祖「ふ……ふ、フふフフふふ………」

女「………」ビクビク…

教祖「だいじょ~~~ぶ~~~、だいじょ~~~~ぶ~~~~、」

教祖「私の神霊まっさぁじの効果で体中のオーラが目覚め………とにかく素晴らしいことになる~~~」

女「ぃ……や………」ビク、ビク…

教祖「さぁ~~~~ 私に身を任せて~~~~………」スススッ

女「い、いやっ……」

教祖「さあ、さあ……そこに寝なさい~~~……」ジリ…ジリ…

女「っ……ひ……」ゾク…

教祖「フふふフフフふ……」ジリ…ジリ…

女「あ、あのっ……!」

教祖「…」ピタ

女「こ、ここじゃ……その、ゆ、床に、寝たら、その、固くて……痛いので……」オドオド

教祖「………」

女「……うぅ………」ビク、ビク

───


───

学校全体図:http://i.imgur.com/7ehFR.jpg

 南校舎 屋上階段

隊長「………」

 コツ、コツ、コツ、コツ

隊長「………」

 コツ、コツ、コツ……

隊長「………」

隊長(……もし、)

隊長(もし、本当に奴が狙撃態勢にあるのなら……)

隊長(私はここで死ぬかもしれない……)

隊長「………」

隊長「………」グッ

隊長「………」 コツ…コツ…

 屋上への階段を一段、一段と昇る隊長。
 その手には小銃を携え、微かに金属がぶつかる硬質な音が鳴る。

隊長「………」コツ…コツ… コツ

 隊長の足が止まる。
 その目の前には、錆の浮かんだ古びたドア。

 これを開ければ、屋上が広がっている、はず。

隊長(しかし……向かいの屋上では、奴がライフルを構えて待ち受けているはずだ……。)

 銃を持つ指がギリと音を立てた。
 額に汗が浮かび、頬を伝って床へ落ちた。

隊長「…………」

 そして、その眼光が更に鋭い光を増した。

隊長「……っ」

 扉に駆け寄ると、そのドアノブをしっかりと握り、

隊長「ッ!!」

 そのドアを、思い切り、

   ドッ
     ガ !!

 蹴り開けた。

───


───

男「ッ!?」 ビクッ

 男が、その座った姿勢のまま飛び上がる。

男「な、な……うぁ、な、何の音、だ!?」

 男の心臓がバクバクと音を立てて跳ね打った。
 向かいの校舎だ。
 そして、金属が衝撃を受ける鈍い音。

  ─── 普通じゃない。

男(何だ……何が起こって……)

 まったくの不意打ちのような、突然の激しい音。
 男の頭は混乱と恐怖に埋め尽くされた。

男「………」

 力の入らぬ足腰を無理やり立たせると、フラフラと美術室へ入って行った。

───


───

隊長「ッ……!」

 ドアを蹴り開けると同時に、銃を構えて勢い良く外へ飛び出す。
 そして、向かいの北校舎へ銃を向け……

隊長「……っ……」

 硬直した。

隊長「………馬鹿な……」

 狙撃手、どころか、
 何も無い。

 北校舎の屋上には、誰もいない。
 それどころか、肝心のスナイパーライフルさえ、真反対の方向を向いている。
 北向きの狙撃銃……当初の設置場所から、動かされてさえいない。

隊長「………」

 一瞬、動きが止まったものの、隊長はすぐさま身を引き、また屋内へと消えて行った。

 知りたいことはもう十分、とでも言うように。

───


───

 美術室

男「はぁ……はぁ……」

 おぼつかない足取りで美術室へ入った男。

 そして窓に近付き、

男「………」ゴクッ…

 慎重に、そこから覗く── 音のした、向かいの校舎を。

男「一体……何が………」

男「ッ!?」

 男の目に飛び込んだのは、開け放たれた屋上へのドア。

 前に確認した時は、確かに閉まっていた。

男(さっきの大きな金属音は……まさか……屋上のドアを開けた音……っ!?)

男「ということは……ということは……」

男「……向こうの屋上にテロリストが来て……」

男「こっちの屋上を見た、ってことだから……つまり……」

男「知られてしまった……!?」

 男の足がガクガクと震え出す。
 想定外……全く想定外の、事態だった。

男「全て嘘だということを……」

男「全てがハッタリだということを……っ!」

男「……てことは……」

男「来る……奴らが……。 いつ、いつ来ても、おかしくない……!」

男「どうする、どうしたらいい……」

 そして、男は重大なことに気付く。

男「ッ……!? し、しまった……1階にまだ降りてない……長く休み過ぎた……」

男「う、ああ、ああぁあぁぁぁああああぁあああ……」

男「クソっ……くそぉ……」ググ…

男「どうすればいい……どうすれば……」

男「あ……あ、ぁぁあ、あ……」

 男は焦燥と混乱の渦に叩きこまれながら、必死で、必死で考えた。
 何か状況を突破する、打開策を、何か打つ手を、必死で考えた。

男「……ひ、ぐ、あ、ぁあぁああぁああ……」

 が、駄目……。
 思い付く、はずが無い。
 男の並以下の脳味噌で、名案など思い浮かぶ、はずが無い。
 無様な涙をひねり出すことしか、出来ない。

男「ぁぁあぁ、あぁあぁああああ……」

男「ああぁああああぁぁ゙あ゙あ゙あ゙……」ポロ…ポロ…

───

ここまで。

レスをする時はメール欄に「sage」と入れてもらえると、助かります。

予想はよそう、ってかwwwwwwww

>>675

【審議中】
        ♪      ∧,, ∧            ♪
♪          ∧,, ∧ ・ω・)

         ∧,, ∧ ・ω・)   )
    ♪∧,, ∧ ・ω・)   )っ__フ   ♪    ∧,, ∧
  ∧,, ∧ ・ω・)   )っ__フ(_/ 彡    .∧,, ∧    )
 ( ・ω・)   )っ__フ(_/彡    ∧,, ∧    )   )
 (っ  )っ__フ(_/彡    .∧,, ∧    )   ) Οノ
  ( __フ(_/彡   ∧,, ∧    )   ) Οノ ヽ_)

   (_/彡      (    )   ) Οノ 'ヽ_)
            (    )  Οノ 'ヽ_)
           (ゝ. Οノ 'ヽ_)      ♪
     ♪    ミ  ヽ_


───

  カツ カツ カッ カッ

   カッ カッ カッ カッ カッ

隊長「………」カツ カツ カツ カツ カツ

 足早に階段を降りる隊長。
 その目は獲物を狙う猛禽のように爛々とした輝きを放っている。

隊長「………」カツ カツ カツ カツ

 言ってしまえば……隊長は……所謂、『天才』である。

隊長「………」 カツ カツ カツ カツ

 生まれつきの才もあった。
 しかし、それに努力と経験が加わり、更に自身の弱さを徹底的に潰すことで、

 その称号を不動にした。

隊長「………」 カツ カツ カツ カツ

 僅かな材料からも、理論を組み立て、現状をより正確に分析し、
 そして、考え得る最適な判断を下すことが出来る。

隊長「………」 カツ カツ カツ カツ

 それを、自身の頭一つで、だ。

隊長「………」 カツ カツ カツ カツ

 その判断力と、加えて豊富な経験が後押しする『決断力』も兼ね備え、

隊長「………」 カツ カツ カツ カツ

 更にその『実績』が、『人望』を生む。

隊長「………」 カツ カツ カツ カツ

 正に、天才。

 そう、

隊長「………」 カツ カツ カツ カツ

 男の対極に位置する人間。

隊長(………)

隊長(……全てが……)

隊長(全てが、ハッタリだった……)

隊長(そう、奴が無線で言ってきたこと全てがハッタリだとなると)

隊長(奴が、わざわざこちらを"狙撃するぞ"と脅してきたこと……その不自然な行動全てに理由が付く……!)

隊長(思えば、銃の名前や、かつて訓練を受けたことなどをベラベラと相手に喋る時点で不自然だったのだ……)

隊長(全てはこちらを惑わし、必要以上に"警戒させる"為……!)

隊長(そして、こちらの動きを封じようとした……!)

隊長(つまり、奴の狙いは……時間稼ぎ……!)

隊長(ならば話は簡単だ)

隊長(……奴が)

隊長(奴が、"時間を稼ぐ"前に、叩く……!)


 階段を降りに降りて、1階まで辿りつく。
 隊長が戻って来たのは、1階の空き教室。

  ガラララッ

3BO「あ……隊長、お帰りなさい……っ」

隊長「ああ」

3BO「無事で……無事で良かったです……!」

 余程心配していたのであろう。
 隊長の顔を見た途端、3BOの表情がほころんだ。

隊長「………喜べ、吉報だ。」

3BO「え……?」

隊長「全ては、奴のハッタリだった。 狙撃の心配はいらない。」

隊長「……そして」

 隊長が腰の無線を取り上げ、スイッチを入れる。
 ノイズが、甲高い産声を上げる。

隊長「 反撃、開始だ 」

───


───

男「おぅええぇぇえっ……げえぇっ……」ビチャ…ビチャ…

 同刻、男は美術室の流しにでゲロをぶちまけていた。

男「げぇ……う……おえええぇぇ゙え゙っ……」ビチャ…ビチャァ…

 途端に酸っぱい臭いが教室に充満し、更に胃からの込み上げを誘った。

 緊張と不安から来るストレス。

 それらが元々ひ弱な男の心身を痛めつけた。

男「おええぇっ……げほっ……が、ぁえ゙え゙ぇ゙……」ビチャ…ビチャッ…

男(どう、どうし、)

男(どうしたらいい)

 口の中の吐瀉物が気持ち悪い。
 目からは涙が溢れて止まらない。
 脳は先刻から働きを放棄したがっている。

男(俺は)

男(俺は、何が、何が出来る)

 考えずとも、結論は出ている。

男(何も、出来ない)

男「………」


男「……ぁぁああぁぁぁあぁ………」

男(俺が……俺が頭良く生まれてたら……)

男(すぐにでも、名案を思い付いて、切り抜けてるのに……)

 ビチャ   ビ チャ

男(もし……もし俺が、天才に生まれてたら……)

   ビチャ

男(もっと……もっと素晴らしい人生だったのに………)

     ビ
      チ
       ャ
         

男(何も思い付かない。 何ができる。 何もできない。 何もできない。)

男(頭も悪い)

男(要領も悪い)

男(強くない)

男(弱い)

男(弱い)

男(弱い弱いよわいよわい弱者弱者弱者)

 分かっている。

男(弱弱 弱 弱 弱 弱弱 弱)
 
 分かっている。

男(俺は馬鹿バカばか馬鹿ばか馬鹿バカばか馬鹿だ)

 分かっている。

男(自分の頭で考えたって)

 分かっている。

男(何も出来やしない)

 分かっている。

男(だから)

 分かっている。

男(俺に出来るのは)

 分かっている。

男(足りない脳味噌の)

 ………。

男(かき集め)

 ………。


男(フツーの人が1回で理解できることを)

 ………。

男(俺は10回やらなきゃ理解できない……)

 ………。

 ………。

男(なら)

 天才にはどう足掻いたって及ばない。
 愚者はただ、才ある者に憧れて、無様に足掻くことしか出来ない。

 何をしたって、どんな綺麗事が世の中に溢れたって、愚者は天才には敵わない。
 
男(なら……)

 だが、その足掻きを

男(10回書けばいい……)ギリ…

 その足掻きを、誰が笑える?

男(あ゙ああ゙ぁぁあ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙畜生お゙ぉ゙!!)

 男はメモ帳を取り出す。
 そして、ペンを取る。

男(畜生!畜生!何で俺は馬鹿なんだ!畜生!ぢぐじょうお゙ぉ!)

 ポタポタと涙がメモの上に落ち、その一部をふやかせた。
 その上に、

  カチ 
        ザッ……

 男のペン先が、突き刺さった。

───

ここまで。

この男はマイナス方向にプラスだな

>>698
凄く素敵な言葉ですね

なんだこの流れ!?(驚愕)

    ____
       / \  /\ キリッ
.     / (ー)  (ー)\    <「静かに」

    /   ⌒(__人__)⌒ \
    |      |r┬-|    |
     \     `ー’´   /
    ノ            \
  /´               ヽ
 |    l              \

 ヽ    -一””””~~``’ー–、   -一”””’ー-、.
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))

          ____
        /_ノ  ヽ、_\
 ミ ミ ミ  o゚((●)) ((●))゚o      ミ ミ ミ   <だっておwwwwww

/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\   /⌒)⌒)⌒)   
| / / /     |r┬-|    | (⌒)/ / / //       
| :::::::::::(⌒)    | |  |   /  ゝ  :::::::::::/      
|     ノ     | |  |   \  /  )  /
ヽ    /     `ー’´      ヽ /    /
 |    |   l||l 从人 l||l      l||l 从人 l||l  バンバン
 ヽ    -一””””~~``’ー–、   -一”””’ー-、
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))

えー、すみません。
>>290でも少し触れましたが、自分は遅筆です。
そして、更新ペースが毎日の時もあれば2ヶ月に1回の時もある、気分屋です。
それでも許される板だということで、SS速報に住み着きました。
なので特に宣言無く長期間空くことが(多々)あります。ご了承下さい。

更に追記しておきますと、
現在書き溜めている内容は「クソくだらない内容」です。
物語の筋に全く意味の無い事柄です。
下手したら物語を進めるには不要どころか蛇足、なものかもしれません。
恐らく読み手からすれば「何でこんなくだらないものを長々と書き溜めたんだ」「何故こんな意味の無い文章を書いたんだ」
と言われかねない程に無駄な内容です。

ですが、今書き溜めている内容は
「このSSの最大のテーマ」であり「物語の根幹」であると、私は思っています。

なので書くに当たっても、心行くまで練りに練りたい所でもあるのです。
故に、今の書き溜めも、軽々に手早く行う、というのは難しいのです。

また、手書きの原稿をパソコンに打ち込む時に、そこでも見直したり推敲したりという作業を挟みます。
なので更に時間が掛かるという訳で。

そういう事情で今はパソコン打ち込みはゼロです。
そして書き溜めだけが増えていっています。
http://i.imgur.com/axfTD.jpg

気長にお待ちください。


───

 首相官邸

総理「……何!? 本当か!?」

官房長官「はい……私もまさかと思いました、が、」

 官房長官が手元の資料をめくる。

官房長官「……まず間違いない、かと」

総理「そんな……。 そんな、馬鹿な……」

官房長官「………」

 官房長官が黙って資料を総理に渡す。

総理「……こいつが、そうなのか」

 総理が手にした資料に、1枚のモノクロ写真がクリップで止められている。
 逞しい顔立ちをした、壮年の男性の写真。

官房長官「はい。その写真の男が……」

官房長官「テロ集団を率いる通称"隊長"。 そして……」


官房長官「元、自衛官です」


総理「クソ」

 およそ一国の首相にふさわしくない言葉を吐く。

総理「もしマスコミにこの事実がバレてみろ 『国を護るべき自衛官が、史上最悪のテロリストへ』……こぞって報道するぞ」

官房長官「…………」

総理「左翼団体だって黙っちゃいない。防衛大臣の首だけじゃ済まないだろう……。 私まで……私まで責任を問われる……!」

総理「次の選挙を待たずして私は破滅だ!」

官房長官「…………」

総理「大体、その宗教団体のトップは……そうだ、教祖とか言ったか、その教祖って奴ではないのか?」

官房長官「……教祖はこの宗教団体のシンボル……。 信者達の心の拠り所と言ったところでしょうか。」

官房長官「対して、隊長はその信者の先導者であり……扇動者でもあります」

総理「どういうことだ」

官房長官「このテロは、教祖と隊長、どちらが欠けても成立しなかったということですよ」

官房長官「信者の心を虜にした教祖という存在。 そして圧倒的カリスマで団体の力を行動へと変えた隊長。」

官房長官「……逢ってはならない二者が逢ってしまい、在ってはならない事を、起こしてしまったんです」


総理「……実質、教団を支配しているのはどちらなんだ」

官房長官「はい。それについては公安の方から調査が上がっております……。」

 官房長官が新たな資料を鞄から取り出す。
 その表紙には大きく「極秘」の文字が。

総理「公安が動いていたのか?」

官房長官「はい。以前から内通者を教団内に潜入させ、探りを入れていたようです。」

総理「では、なぜ……今回の事件を止められなかった?」 

官房長官「……このテロリスト計画は、教団の中でも幹部クラスしか知らない、極秘扱いだったようです。」

官房長官「故に、この情報を手に入れた時には……」

総理「既に、事件は起きてしまっていた、ということか」

官房長官「このテロ計画は、教団の中でも上層で賛否が分かれていたようです。」

官房長官「妙な言い方ですが……教団の中でも、教祖を含めた『過激派』が起こした事件、ということです」

総理「むう……それで公安のスパイも気付くのが遅れた、という訳か……」

官房長官「ええ……」


総理「しかし……これだけの大事件だ。いくら水面下で計画したとしても、あの閉鎖空間で信者達に隠し通せるとは思えない。」

官房長官「……おっしゃる通りです」

総理「……というと?」

官房長官「信者の中にも、『独立国家案』を知っている者はいたようです」

総理「……! やはり……。 しかし、なら何故、公安は気付けなかったんだ? 少なくとも耳にしたことぐらいはあるはずだろう」

官房長官「はい……。 ですが、その教祖というのが、普段から突飛な発言が目立っていたらしく……。」

総理「突飛な発言……?」

官房長官「えー……」

 長官が資料をペラリとめくる。

官房長官「『瞑想すれば、宇宙人と交信ができる』、であるとか……」

総理「………」

 また、資料を1枚めくる。

官房長官「『あぐらで空中浮遊すると楽しい』、であるとか……」

総理「………」

 紙をめくる音。

官房長官「『足の裏で運命が診断できる』、とか……」

官房長官「『教祖の体毛を刻んでフリカケにして食べると神通力が身につく』、とか……」

総理「もう、いい。 もういいから先を言え、先を」

官房長官「とにかく、そういった奇妙な発言を繰り返しており、その中に『独立国家案』があった、と」

総理「ふむ」

官房長官「本来であれば、その独立国家計画も、いつもの突飛な発案として適当に流されるところだったのでしょう」

官房長官「ところが、その独立国家案、その思想に、この隊長が痛く共感し、」

 官房長官が写真を指でつまみ上げ、総理へ見せるように向ける。

官房長官「ほぼ独りで、企画、立案、訓練、指揮に至るまで執り行い……」

総理(独りで、だと……!?)

官房長官「この事件が、起こったんです」

 言い終わった長官が、口を真一文字に結んだ。

 しばらくの間、部屋が静寂に包まれる。


総理「………は」

総理「ははは」

官房長官「………」

総理「何て奴だ」

官房長官「………」

総理「……自衛隊に残っていれば……優秀な指揮官となっただろうに」

官房長官「………」

総理「………皮肉なものだな」

官房長官「………」

総理「かつて国を護ろうとした者が、国を脅かすことになろうとは」

官房長官「…………」

総理「………」

官房長官「………」

総理「……残り、」

総理「残りの時間は、どれぐらいだ」

官房長官「は。 向こうの指定した時刻まで、約6時間です……。」

総理「6時間、か……」

官房長官「現金とヘリの用意はさせております……が、」

官房長官「……人質の命の保障は、出来ません……。」

総理「そうか……」

 そう言うと、総理は体を深々と椅子に沈め、そして静かに目を閉じた。

 官房長官も、そっと目を伏せ、かすかに俯く。

 爛々とした眼光を放っているのは、モノクロの写真の男、ただ一人。

───


───

 北校舎 3階 美術室


  ガリガリガリガリガリガリ……

 男のメモ帳に、次々と文字が刻まれていく。
 元々綺麗では無かった文字が、焦りと緊張で酷いことになっている。

 男は必死だった。

男「…………」ガリガリガリガリ

 時間。
 時間との勝負だった。

  ガリガリガリガリガリガリ

 男の思考スピードは、はっきり言って遅い。
 更に、記憶力も乏しい。
 故に、次々と浮かび上がるネガティブな妄想を、すぐに忘れてしまう。
 だから、自身の頭だけでは、それらの妄想を、思考の材料とすることが出来ない。

 そこで、男はメモ帳を使った。
 文字に書き起こし、記録をする。
 浮かぶ妄想を、忘却の彼方へ投げ捨てない。
 妄想を、妄想で終わらせない。
 全てを、自分の発想を、貪欲に、どんな些細な物も、貪欲に求めて、つなぎ止め、使う。
 そして、考える。 

 それが、男の戦い方だった。
 逆に言えば、それしか出来なかった。
 男の、唯一の、戦い方。

 が、しかし、弱点もある。

 それは、

男「………」ガリガリガリガリ

 時間が掛かる、ということ。

 妄想を思い浮かべる時間。
 手帳に書き込む時間。
 シュミレートする時間。
 最善の策を取捨選択する時間。

 一つの策を練るにも、多大な時間が掛かる。


男「…………」ガリガリガリガリ

 一見、男の思考力は高いようにも見えるが、実際はそうでは無い。
 あくまで、時間を掛けて愚直な計算を積み重ねているだけである。
 故に、とっさの判断や閃きといった物とは無縁。
 ひたすら泥臭く、地道な思考の繰り返しと、積み重ね。

男「…………」ガリガリガリガリガリガリ

 そして、例え100の未来を考えようとも、実際に起こるのは1つの現実。
 シュミレートの大半は全くの無駄となるのだ。
 無駄で、無様で、無才の努力。

男「……………」ガリガリガリガリガリガリ

 故に、今まさに困難に置かれているように、不測の事態に弱い。

男「………これが……」ガリガリガリガリガリガリ

 そして、それが、

男「……こう、して………」ガリガリガリガリガリガリ

 それこそが、

男「……いや、ダメだ………」ガリガリガリガリガリガリ

 世に言う凡人と天才の境界線でもある。

男「……くそっ………」ガリガリガリガリガリガリ

 そして、

男「………ぐ……」ガリガリガリガリガリガリ

 刻、一刻と、

男「………畜…生………!」ガリガリガリガリガリ

 タイムリミットが、近付いていた。

────


────

 南校舎 1階 空き教室

隊長「2AO、1DO、聞こえるか」

 隊長が無線に向かって話し掛ける。

   ……ザッ……

2AO『はっ!』

1DO『はっ!』

隊長「作戦を伝える……すぐに、1階空き教室へ来い……!」

───

ここまで。

>>86
>直線って何?

>文系「曲がってない線」
>理系「ベクトルa,b(≠0)に対してf(t) = ta + bの像」
>ヒルベルト「定義なんてなかった」

>>856
数学「曲率が至る所0であるC^∞級の正則曲線」

あれ?俺だった

いつ書いたっけ、しかも誤爆とか……正直すまんかった

 発 者 同         . 。_   ____           争
 生 同 .じ     .    /´ |  (ゝ___)          い
 .し 士 .レ      .__/'r-┴<ゝi,,ノ   ro、      は、
 .な で .ベ      ∠ゝ (ゝ.//`   ./`|  }⌒j     
 .い し .ル        } ⌒ /`ヽ、_∠l,ノ ・ヽ´
 .! ! か の       /  ´..:.} >、、___,  .r、 ソ、`\
             /   ..:.:.}   /   |∨ ` ̄

            /   ..:.:./    |   丶
           / _、 ..:.:.:.{    .{.:.:.   \
          {   ..:Y  .ゝ、   {.:.:.:.:.    ヽ
          |、  ..:/ 丿 .:〉   >.- ⌒  .  ヽ
          / {. ..:./ ソ ..:./  .(    ..:.:.:`  ..:}
         ./..:.:}.:.:./ ヘ、 ..:./   .\ ..:.:r_,ノ、.:.:}
        ./..:.:/|.:/   {.:./     X.:.:}.}   X X
        /..:.:/ .}.:|    }:/       .Y丶ヽ  Y.:Y
  . __/.:/ { }  《.〈、     _,,__>.:》丶   Y.:\
  /.:.:.:.:.::/   !.:.:ゝ  ゝ.:. ̄ヾ ´:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾゝ   \.: ̄>

そろそろ埋まっちゃいそうだけど次スレとか立てんの?


───

 首相官邸

総理「……それで」

 先に口を開いたのは、総理だった。

総理「何故、この男は自衛隊を辞めたんだ?……いや、何故、自衛隊はこの男を"手放した"んだ?」

総理「当時は才能を見出せなかったのか?」

官房長官「………この"隊長"という男、かつては出世コースに乗り、破竹の勢いで昇進を重ねていたということです」

総理「ならば何故………」

官房長官「……奴が自衛隊を辞めたのは、自らの意思ではありません」

総理「自らの意思で無い……? それは……」

 はっ、と何かに気付いたように、総理が口に手を当てる。

総理「待て、"破竹の勢いの昇進"と言ったか」

官房長官「……はい」

総理「………既存の権力による圧力、か」

官房長官「………」

総理「この国の……暗部の一つか……。 新たな者が上に昇ろうとすると、まず間違いなく、出鼻を挫かれる……。」

官房著管「……はい。その通りです。……奴は、出世争いに敗れ……結果、辞めさせられ……。」

総理「……争いに負けた原因は何だ?」

官房長官「多くを敵に回してしまった、ということでしょう」

総理「敵に回した?」

官房長官「ええ、彼のやることは、上層部にとって面白くなかったようです。」

総理「何をしようとしたんだ?」

官房長官「改革、です」

総理「改革?」

官房長官「……使途不明金の洗い出しです」

総理「………あぁ………」

総理「何と言うか……それは…………」

総理「触れてはならん部分だ……。 そこに、踏み込んでしまったのか」

官房長官「更に……自衛隊のM24採用についても異議を……」

総理「……外交上のデリケートな問題にまで手を出してしまったのか」

官房長官「はい。 それ以来、反発も増え……」

官房長官「上層部と政敵が手を組み……、一気に蹴落としに掛かったようです」

総理「成る程な……天才とはいえ……いや、天才が故に、俗な人間の心までは汲み取れなかった、か」

官房長官「はい……。」


官房長官「……そして、その蹴落とし方も、単に"出世コースからはずす"程度では無く……」

官房長官「"組織から完全に追い出す"というレベルで……何とも執拗で、悪質だったとか……」

総理「……それで、」

総理「それで、奴は自衛隊を去ったのか」

官房長官「はい……。 しばらくは耐えたようですが……」

官房長官「自分の部下にまで被害が及び始めたのを見て、ついに隊を去ったそうです」

総理「………そうか」

 総理が盛大に息を吐いた。

総理「はぁーっ………」

総理「…………」

総理「分かった、分かったぞ」

総理「これは、単なる宗教テロなんかじゃない……」

官房長官「…………」

総理「発案者のイカレ教祖にとっては、ただの思い付きだったのかもしれん」

総理「だが、奴にとっては……この"隊長"にとっては……」

総理「本当の……本当の"新興国計画"だったんだ」

官房長官「………」

総理「これは、ただのテロじゃない、もはやクーデターだ」

総理「奴は、この国に、日本に絶望したんだ」

総理「そして、作る気だ……!」

 総理の拳が固く握られる。

総理「理想の国家を……!」

───


───

  南校舎 1階 階段


 1階への階段を降りる一人の男。

  コツ コツ コツ コツ

2AO「………」

 隊長に呼び出された二人のうちの一人、2AOだ。

2AO「…………」

 1階の廊下に降り、他の見張りたちに軽く目配せをする。

2AO「お?」

 と、一人の仲間に視線が止まった。
 その仲間が手を挙げて挨拶する。

1DO「やっほ」

 同じく迷彩服に身を包んでいるとはいえ、こちらはショートカットの少女だ。

2AO「………何で待ってんだよ」

1DO「だって、一人だと心細くって」

2AO「……………… はぁ、」

 男のほうは溜息をつくと、そのまま女の脇を素通りして進もうとする。

1DO「あ、ちょ、ちょっと!」

2AO「おら、行くぞ。 隊長がお待ちだ」

1DO「もー、待ってよー ゆうちゃん!」

2AO「そ、その名前で呼ぶなっつってんだろ!」

 他の見張り(1AO、1BO、1CO)と、クラスにいる人質の生徒たちの一部から「早く行けよ」の心の声を送られながら、
 二人は隊長の待つ、空き教室へ向かったのだった。

───

今日はここまで。
>>884
その時は、自分で立てますね。

再貼
学校全体図
http://i.imgur.com/7ehFR.jpg

>>905の続き


───

 首相官邸

官房長官「……"理想の国家"……」

総理「ああ……。 まあ、あくまで私の想像だがな」

官房長官「……ですがそれは、近く明らかになると思われます」

総理「どういうことだ?」

官房長官「今、正に内通者が教団施設内部に潜入中なのですが……」

総理「! そうか、そういえばそうだったな」

官房長官「事件直前の最後の通信で、『"隊長"の部屋の位置を突き止めた』と報告してきたんです」

総理「!」

総理「それなら………」

官房長官「はい……。 その"隊長"について、何か手掛かりを掴めば……」

総理「奴が"新国家建設を目指す理由"も分かる、という訳か」

官房長官「はい」

───


───

 教団施設 深部

公安A「ふぅ……外じゃテロでお祭り騒ぎだからな……。 逆に警備が手薄になって助かったぜ」

公安A「っと、いかんいかん……本当は俺がテロを止めるべき役割だったんだ……」

公安A「うし、ここらで挽回しねーと……」

 コツ、コツ、コツ…

公安A「ん、ここか」

 目の前には、ドア。
 そして、その鍵はいかにも堅牢そうな見た目をしている。

公安A「……なんつー厳重な作りだよ……素人のレベル超えてんぞ」

 そうこぼしながら、青年は懐からピッキング道具を取り出す。

公安A「……お手並み拝見」ペロ…

───
 


───
 
 南校舎 1階 廊下

 隊長に呼び出された2AO(男)、1DO(女)が肩を並べて歩いている。

1DO「……」 トコ トコ トコ トコ

2AO「……」スタスタ スタスタ

1DO「ねぇ、ゆうちゃん」

2AO「っブッ!? ッだから! 任務中はその名前で呼ぶなッ!」

1DO「えー いいじゃーん」

2AO「ったく……」

1DO「あのさ」

2AO「何だよ」

1DO「キンチョーするね」

2AO「……ああ」

1DO「任務って、何だろね」

2AO「………」

2AO「多分、あれだろ…… 潜んでるヤツを、捕まえるか、[ピーーー]かするんだろ……」

1DO「そっか……そうだよね」

2AO「………」

1DO「………」

1DO「……私……」

1DO「殺したく、ないな……」

2AO「ッ!? お、おま…何、何言ってんだよ!」

1DO「だって……」

2AO「馬鹿っ! 隊長の命令だぞ……! それに、奴は……」

2AO「奴は……石田さん(スナイパー)を殺してるんだ!!」

1DO「………っ……」

1DO「……そっか……そうだよね……  ……うん……」

2AO「石田さんの……仇を取るんだ……」

1DO「うん……」

2AO「それに……」

2AO「教団の、為に」

1DO「……うん……」

───


───

 ガコッ カチャ… 

    キィィィ…

公安A「っよし! 開いたっ……!」

 コソコソ…

公安A「っとと……タイチョーさんのデスクは……」

公安A「! これか……!」

 ガサゴソ バサバサ

公安A(どうでもいい書類やファイルしかねぇ……)

公安A「めぼしいもんは無い、か……」

公安A「はぁ……」

公安A「………」

公安A「チッ」 ドガッ

  ガコ…

公安A「ん?」

公安A「………まさか……」 コンコン

 コンコン…

公安A「! これ……二重底だ! 引き出しの底板に、隙間がある!」

公安A「考えやがったな……!」 ガタガタ
 
 ガサゴソ カタッ

公安A「出た!」

公安A「……?」

公安A「これは………」

  ガサ…

公安A「…………」

公安A「……手帳………?」

───


───

1DO「……ねぇ、ゆうちゃん」

2AO「だから……」

1DO「あたしね、この教団に入って……良かった、って思う」

2AO「………」

1DO「だって、ゆうちゃんにまた会えたから」

2AO「っ…… フン」

1DO「だって……ちっちゃい頃から、ずっと一緒だったのに……」

1DO「私が引っ越してからは、全然会えなかったんだもん」

2AO(引っ越し……中学卒業の時、だったな……)

2AO「………」

1DO「私ね、ゆうちゃんの家に、何度もお手紙書いたり電話したりしたんだよ?」

2AO「……」

1DO「……私が引っ越してすぐ、ゆうちゃんの家が火事にあって、ゆうちゃんの家も引っ越した…って、その時は知らなかったから……」

2AO「……」

1DO「それから、ずーっと音信不通……」

2AO「………」

1DO「……どうして、ゆうちゃんの方から連絡くれなかったの?」

2AO「…………」

2AO「俺さ」

2AO「お前も知っての通り……小坊の時からバカやって、先公に怒られてばっかりでさ……」

2AO「中学に上がってからも相変わらずでさ……むしろ悪いセンパイ達とつるむようになって……」

1DO「……」

2AO「……その、委員長とかしてて……勉強得意なお前とは……真反対の人間になっていって……」

1DO「……」

2AO「高校に上がってからは……札付きの不良になってた……」

1DO「……」

2AO「だから、その……引っ越し先で、進学校に通ってるお前とは、さ……」

1DO「……」

2AO「その……お前に絡んだら……お前に迷惑掛かるかな、って……」

1DO「……バカ。 ……ずっと待ってた」

2AO「……すまん」


1DO「はぁー………」

2AO「………」

1DO「……私、てっきり嫌われてるんだと思ってた」

2AO「バ、バカ! そんな訳ないだろ! 嫌いな訳……」

1DO「じゃあ」

1DO「好き?」

2AO「す………」

2AO「~~~~ ッ 」

1DO「ぶー 言ってよー」

2AO「バかっ……」

1DO「……私ね」

2AO「あん?」

1DO「私……イジメられてたんだ。 高校で」

2AO「!」

2AO「………」

1DO「私、ちっちゃい頃から勉強だけが取り柄でさ……」

1DO「あれから私ね……引っ越した後も、転校先で勉強がんばったの」

2AO「………」

1DO「でもね……… 転校先のコたち、……新入りの私が、成績が良いのが気に入らなかったみたい」

2AO「………」

1DO「……3年間、必死で耐えて……卒業は出来たけど……」

1DO「その頃には、もう心も体もボロボロだった……」

1DO「私、ずっとようちゃんに会いたかった。 会いたくて、たまらなかった」

2AO「………」

1DO「そんな時だったよ……この教団と出逢ったのは」

1DO「それで、入ったら、ゆうちゃんがいるんだもん。 びっくりしちゃった」

 そう言って、懐かしむように笑った。

───


───

 首相官邸

総理「しかし……そもそものキッカケは何だ?」

官房長官「キッカケ、と言いますと」

総理「この隊長という男、どういう経緯でこの宗教団体に入ったんだ?」

官房長官「たまたま街の勧誘に会ったという話です」

官房長官「まあ、隊を追い出された彼にとっては……何でも良いから心の拠り所が欲しかったのでしょう……」

総理「成程……」

総理「しかし、奴が教団に入ってから、そう長い時間は経っていない」

総理「この短期間で、これほど大規模な"作戦"を任されるポストへと昇り詰めたというのか?」

官房長官「……その"出世"についても、公安から情報が届いております」

官房長官「……初めは、奴は魂が抜けたような、まるで生ける屍のようだったと。」

総理「だろうな」

官房長官「しかし……教団の共同生活は、各班ごとに分かれて、グループ単位で生活するのですが……」

官房長官「年齢的に、ということで、奴は班長になったそうです」

総理「班長、ねぇ」

官房長官「そこで、奴はやる気こそは見せないものの、各仕事をそつなくこなしたようです。」

官房長官「まあ、元は優秀な人間ですからね」

総理「ふむ……」


官房長官「そこで、まずそのグループの人望を得まして……そして、成り行きで、さらにもう一つ上のポスト、寮長になったそうです」

総理「寮長……」

官房長官「そこでも優秀な働きをし……、そして、後はトントン拍子に出世。」

官房長官「とうとう、教団の幹部の地位まで……。」

総理「………冗談みたいな話だな……」

官房長官「それを実現してしまう、人間だった、ということです……」

総理「………」

総理「全く」

総理「何て惜しい人材だ」

官房長官「………」

官房長官「そして」

総理「ん」

官房長官「そして……最も特筆すべき点が、」

官房長官「若者への、献身的ともいえる接し方です」

総理「若者? 献身的?」

官房長官「ええ……この隊長という男、若者からの支持が圧倒的に多いのです」

総理「……是非とも、見習いたいものだな」

 総理が憮然として言い返す。

官房長官「………」

官房長官「教団に入ってくる若者は、心に傷を抱えた者がほとんどです」

官房長官「この隊長と言う男は、彼ら若者に対して、優しく、温かく、時に厳しく……まるで父親のようであったと」

総理「……」

官房長官「時には体調を崩した若者をつきっきりで看病したり、または心を病んだ者のケアに努めたり……」

官房長官「とにかく、尋常じゃないまでに、『若者に優しい男』であったようです」

官房長官「まるで」

官房長官「何かの償いのようですらあった、と」

───


───

1DO「………」

2AO「………がんばらなきゃ、な」

1DO「!……」

2AO「教団の為にも…… それに……俺……」

2AO「隊長さんの、役に立ちたい」

1DO「……!」

2AO「……こんな俺に……社会から爪弾きにされて、腐ってた俺に……居場所を、くれた」

1DO「………」

2AO「……俺、教団に入った頃も、一人でいじけてた……。 でも……」

2AO「でも、隊長さんは……隊長さんだけは、俺を信じて、いっぱい励ましてくれた……」

2AO「もう、こんな俺、生きててもしょうがないと思ってた……。 でも……」

2AO「隊長さんが……もう一度、生きる希望をくれた……!」

2AO「だから……俺、隊長さんの役に立ちたい……!」

1DO「……私も、だよ」

2AO「お前も……?」

1DO「……」コク

1DO「もう、努力なんてくだらないと思ってた……。 がんばったって、何にもならないんだって。」

1DO「人生に、努力なんて、なんの意味も無いんだ、って」

1DO「でもね……隊長さんの訓練を受けて…… 『変わりたい』って思えた……。」

1DO「色んなことに挑戦して、失敗して、成功して……隊長さんから叱られて、褒められて……」

1DO「努力って、楽しい、って思えた。 人生を輝かせてくれるんだ、って……!」

1DO「私、変われたの」

 そう言って、1DOが2AOに微笑んだ。
 2AOは思わずどぎまぎとしてしまう。

2AO「ご、ごほん……とにかく、任務だ、任務」

2AO「お前は……まあ、安心して任務に集中しろよ」

1DO「うん……」

2AO「俺が……」

 2AOが軽く咳払いをする。

2AO「俺が、守ってやるから」

1DO「……うん!」

 目の前には、隊長の待つ、1階空き教室の扉。

2AO「失礼します!」
 
  ガララララッ

───


───

 首相官邸

  …ピリリリリリッ

 突如、官房長官の携帯が鳴る。

官房長官「! 失礼」 サッ

官房長官「……! 公安からです! 何か掴んだのでしょう!」

総理「よし! スピーカーにつなげ!」

官房長官「はっ!」 カチ

公安A『あー、聞こえますか こちら公安A』

官房長官「聞こえるぞ 報告しろ」

公安A『はっ……。 えー、隊長のデスクで、ですね』

公安A『資料…… 一つの、手帳を発見しました』

官房長官「手帳……?」

公安A『ええ……かなりボロボロです。 相当使いこまれた物のようです』

───


───

 教団 深部 隊長の部屋

公安A「机の引き出しの隠しスペースから発見しました」

官房長官『……それで、内容は?』

公安A「えー……手帳には、主にスケジュール関係が几帳面に書かれています……」

公安A「他には、とりとめの無いこともたまにメモしてあります……」

公安A「あと……日記代わりにも使っていたようで、たまに日付とその日の出来事なんかも書かれています」

官房長官『それで……有用な情報は見つかったのか?』

公安A「えー ………」

公安A「恐らく、このテロの動機につながるものではないか、という内容が……」

官房長官『!! でかしたぞ! そして、その内容は……!?』

公安A「内容は……」 ペラ…

 公安Aが、手帳の最後のページをめくる。

 ボロボロの紙の上に、魂のこもったかのような、力強い文章が刻まれていた。




───

 私は この国の、闇に飲まれていた。

 金、権力、名誉、

 全てがまやかしだった。

 そのまやかしに目を奪われ、心を奪われていた。

 そんな私は、取り返しのつかないことをしてしまった。

 二つの宝を、同時に失った。

 私は後悔している。

 しかし、いくら懺悔しても、決して許されることは無いだろう。

 二度と、繰り返してはならない。

 未来の子供たちに、同じ思いをさせてはならない。
 
 その為には、新たな国を作らなくてはならない。

 金に、権力に、名誉に惑わされない、良き民を育む国を。

 私は、その為には何だってする。

 それが、彼女と、あの子への、精一杯の罪滅ぼしとなることを祈って。

───

ここまで。
次スレはそのうち(1週間悟ぐらいでしょうか)立てます。

いやいや、1週間後だと荒らしとかによって余裕で埋まってしまうような…

>>989
一旦落ちてから立てても良いかなと思ったのですが、やっぱり有るうちに立てた方が良かったですかね
とりあえず立てました。

男「イジメで地下倉庫に閉じ込められてる間に学校にテロリストが……」 2 

すぐには更新できませんが、次もまた皆さんと楽しく盛り上がりたいです。
宜しくお願いします。
では。

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