男「…へ?」 お嬢「ですから」(496)

~ホテルのパーティー会場~

ガヤガヤ ガヤガヤ…

『あら、素敵な指輪ですわね』

『ふふふ。お父様に買っていただいたのですわ』

『羨ましいですわ。私、今回は間に合わなくて去年と同じ指輪を~~~』

お嬢「…ふぅ…」

お嬢(どいつもこいつもくだらない自慢ばっかり…)

お嬢(そのくせ笑顔なんだよなぁ…まるで仮面被ってるみたいだ…)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1335448583(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

『あら、お嬢様。ご機嫌が優れないようですけど?』

『あらあら、大変ですわ。どこかでお休みになられたほうがよろしいのでは?』

お嬢「…そうですね。そうさせていただきます。失礼…」

トテトテ…

『…誰も心配なんてしてないですわ!』

『そうですわ!あの○○財閥家の孫だって言うから気を使っているだけですわ!!』

『お父様が仲良くしておけって言うから仕方なくお付き合いしているのですわ!』

お嬢(全部聞こえてるっての!)

お嬢「…あ、もし」

ホテルマン「はい」

お嬢「外の空気に当たりたいのですけど…出口はどこでしょうか」

ホテルマン「大丈夫ですか?外へ行くのならそちらのドアから出られますが」

お嬢「ありがとう」ニコッ

ウィーン…

お嬢「んーっ!やっぱ外は気持ちいーっ!!」

チラッ

お嬢「…10分ほどブラブラしてくるかな?」

お嬢 ♪~

お嬢「…」

お嬢「…あれ?」

~同刻~

男「すっかり遅くなっちまった…早く会社に戻ろう…」

男「…近道するか」

男(こっちの路地を抜けて…)

『ざけんじゃねーそゴルァ!!』

男 ビクッ

男「い、今の…女の声…だな」

『最新機種だろがああ!!』

男(…口が悪いな。どこのヤンキーだ?)

『役にたたねーやつだなぁ!このボロスマホがぁ!!』

男(やばそうだな…近寄らないように…)

『どっちにいきゃあホテルなんだよ!!』

男(ホテル?迷子か?…ちょっとだけ…覗いてみるか)

ソー…

お嬢「どこなんだよここは!?どこ歩いてんのか分かんねーぞ!!」ベシベシ

男(…パーティードレスにロングヘアーか。なのにあの口の悪さ…)

男(お水系か?係わり合いにならないほうがいいな…)ソロー…

ガツッ

男(あ!自転車!!)

ガシャン!

お嬢「!?」

男(…仕方ない…気付かないふりしてやり過ごそう)

男「あーあ。暗いから自転車に気付かなかったよ。はは…」サッ カシャン

お嬢「…あの!」

男(けど…本当に迷子だったらかわいそうだしな…試してみるか)

男「さて、早くホテルの前の会社に戻ろう」

お嬢(ホテルの前の?じゃあついていけば帰れるんじゃない!?)

男 スタスタ

お嬢「あっ!」

スタスタ

トテトテ

男 チラッ

お嬢 ハアハア

男(ついて来てる…)

ピリピリピリ ピリピリピリ

男「電話か…もしもし。男です」

お嬢(“男”って言うのか…)

男「あ、はい。ええ。あちらさんの勘違いでした。効果は出ていましたよ。はい。詳しくは帰社してから…では」Pi

男 チラッ

お嬢 フゥ…フゥ…

男(間をつめるでもなく休んでる…これはやっぱり迷子だな)

男(ちょっと遠回りになるが…しかたがない)

スタスタ

お嬢「!」トテトテ

男(そこを曲がればホテルの正面だ)

クルッ

お嬢「!?」トテテテ

お嬢(ホテルが正面に!?やった!!)

男 スタスタスタ

お嬢「あ!あのっ!もうし!!」

男 スタスタスタ…

お嬢「…あのビルに入ってった…」

執事「お嬢様!」

お嬢「あ、ただいまかえりました」

執事「『ただいまかえりました』ではございません!」

執事「御帰宅の時間なのでお迎えに来ましたらお嬢様がおられないと!!」

執事「どれだけ心配したとお思いですか!万が一のことがありましたら私めは…」

お嬢「早くドアを開けてくださらない?」

執事「お嬢様!話をお聞きください!!」

お嬢「聞いています。でも私、疲れていますので早く休みたいのです。ドアを」

執事「…分かりました」ガチャ

お嬢「ありがと」バフッ

執事「はぁ…まったく…お嬢さまにも困ったものです…」バタン

お嬢(さっきのオトコ…)

お嬢(私をホテルの前まで連れてったら足早に消えてった…)

お嬢(私のペースに合わせて歩いてたのかな?私が道に迷ったってわかってて…)

お嬢「…面白いやつだな」ボソッ

執事「何かおっしゃいましたか?」

お嬢「いえ何も?」

期待


続きはまだかね?

~翌日~

男「…じゃ、お先です」

オツカレー オツカレサマー

男(きょうは割りと早く帰れるから買い物して…ん?)

リムジ-ン

男「…すごい車だな」

ウィーン

お嬢「ごきげんよう」ニコッ

男「…」

男(…誰だ?)

スタスタスタ

お嬢「あ、あの!もし!!」

>>11 ありがとうございます
一服してましたwww

男(無視無視)

ブロロロロ

男(ついてくる!?)

お嬢「もうし~。お待ちになってくださ~い」

男(大声で艶かしい声を出すな!)

ヒソヒソ ヒソヒソ…

男(こっちのほうが恥かしい…くそっ!)

男「なんですか!?」

お嬢「ようやく止まってくださいましたね。先ほどから何度もお声をかけていましたのよ?」

男「…それで、なんの用ですか?」

お嬢「昨日の御礼をしようと思いまして」

男「昨日の?えっと…」

男(ああ…あの迷子か?)

お嬢「まあ、その若さで健忘症ですか?おかわいそうに…」

男「…そうかもしれませんね。では、病院に行きますので失礼します」スタスタスタ

ブロロロロ

お嬢「冗談が過ぎました。お待ちになってください」

男 スタスタスタ

お嬢「…昨日、ホテルまで送り届けていただいた御礼をしたいのです」

男「あ、それなら気にしないでください。ついでだったので」

お嬢「いいえ。そういうわけにはいきません」

男(しつこいな…だんだん周りの目が痛くなってきた…)

ヒソヒソ ヒソヒソ…

お嬢「車に乗っていただけませんか?さっきから上を向いているので首が疲れてきました」

男「…わかりました」

~リムジンの中~

お嬢「それで…」

男「なんですか?」

お嬢「お望みのことはありませんか?」

男「家に帰りたいです」

お嬢「…捻くれてますのね」

男(アンタほどじゃない)

お嬢「…わかりました。お食事をご一緒しましょう」

男「あ、いえ。そんな訳には」

お嬢「気になさらないで。これは昨日の御礼ですから」

男「はあ」

男(まあ、一緒に飯を食って気がすむんなら…)

【15分後】

男「…あの」

お嬢「なんでしょう?」

男「どこに向かってるんですか?」

お嬢「私も知りません」

男「はあ?」

お嬢「執事に任せてますので」

男「執事さんですか?どこにいます?」

お嬢「運転してます」

男(運転中か…邪魔しちゃ悪いし…こりゃ諦めるしかないな…)

お嬢「どうなさいまして?」

男「…いや、なんでもありません…」

まさか…

ピリピリピリ ピリピリピリ

男「あ、電話。…失礼。もしもし?」

男「…え?…うん…なに!?」

男「うん…うん…え?…いや、客先には俺が行くから…うん…分かった」Pi

男「すみませんが、引き返してください」

お嬢「何をおっしゃるの?」

男「会社でトラブルが発生しました。大至急対応する必要があるので会社に戻ります」

お嬢「いけません。あなたはこのまま私と一緒に食事をします。会社に戻るのはその後でよろしいでしょ?」

男「ダメです!!」

お嬢 ビクッ

>>19 お久しぶりですwww

男「自分の顧客で発生したトラブルなんです!一刻も早く会社に戻って対応しなければならないんです!!」

お嬢「そ、そんな大声を出さなくても聞こえます」

男「今ここで対応を間違えたら大事になるんです!会社の信用問題なんです!!」

男「だから自分が客先まで行って誠意を見せる必要があるんです!」

男「お願いです!今すぐ戻ってください!!」

お嬢「…」

男「…」

お嬢「…執事、戻ってちょうだい」

男「ありがとう!」

~男の会社の前~

男「ありがとうございます」

お嬢「覚えておいでくださいね?御礼がまだ終わっていないことを」

男「わかりました。それでは」

お嬢「あ、もし!」

男「なにか?」

お嬢「…な、なんでもありません!早くおいきなさい!!」

男「はい」

タタタタ…

お嬢「…」

このスレタイ…待っていたぞ

もすこす

~リムジンの中~

お嬢(男さん…さっきはいきなり大声出すからびっくりしたけど…)

お嬢「なんでかな…」

執事「何かおっしゃいましたか?」

お嬢「いいえ?」

ブロロロ

お嬢「…ねえ」

執事「なんでございましょう」

お嬢「男さんは…どうしてあんなに慌てていたのかしら?」

執事「サラリーマンとはそのようなものです」

お嬢「どういうことかしら?」

>>24 お待たせしました

>>25 牧歌詩人ですか?www

執事「彼らはリーダーを中心にチームを組んで仕事にあたります」

執事「先ほどの電話の内容から察しますと、男さんはおそらくリーダーなのでしょう」

お嬢「リーダー…ですか」

執事「はい。ですからトラブルが発生するとチームに指示を出す必要があります」

お嬢「電話で指示するだけでいいのでは?」

執事「トラブル対応の時は顧客への説明などはリーダーが行います」

執事「…お嬢様に無礼をはたらいた人が代理人を寄こして謝ったとして、お嬢様は納得できますか?」

お嬢「…分かりやすいですね」

お嬢(だからあんなに焦ってたのか…)

お嬢(それにしても…私にあんな風に突っかかってきたのは男さんが初めてだ…)

お嬢(…面白い。やっぱり男さんとじっくり話がしてみたい)

お嬢「ねえ」

執事「なんでしょうか」

お嬢「私、男さんとお話ししたくなりました」

執事「…でしたら車でお誘いになるのはやめたほうがよろしいかと」

お嬢「なぜ?」

執事「目立ちますゆえ」

お嬢「それの何がいけないのかしら?」

執事「お嬢様、男さんは目だつことがお嫌いなようです」

執事「ですので今日もなかなかお嬢様のお誘いに乗られなかったのだと思われます」

お嬢「でも乗ってきました」

執事「半ば強引でしたが」

お嬢「強要した覚えはありませんけど?」

執事「…お嬢様、明日は車から降りてお誘いになってはいかがでしょう」

お嬢「執事がそう言うなら…そうします」

執事「私めはお嬢様のお近くにおりますので、ご連絡いただければすぐにお伺いします」

お嬢「分かりました」

~翌日・男のアパートの前~

男(結局徹夜だった…早く帰って寝よう…ん?)

お嬢「あ!お待ちしておりました!!」

男「あの…なんでここに?」

お嬢「お名前と勤めている所が分かっていれば、ちょっと調べれば分かることです」

男(まるでストーカーだな…)

男「…今日はあのリムジンは?」

お嬢「あれは目立つので置いてきました」

男「そうですか…よかった…」

お嬢(“よかった”って…やっぱ車はイヤだったんだ…)

お嬢「昨日は強引でした。ごめんなさい」

男「いえ、もう気にしないでください」

お嬢「今日は男さんのご希望をお聞きします。何なりとおっしゃって」

男「あー、お礼なら昨日会社まで送ってくれたからもういいですよ」

お嬢「それは私が強引に車に乗せたからです。当然のことです」

お嬢「ですから、私はまだ男さんに御礼を差し上げておりません」

男(めんどくさい…)

男「…ではですね…」

お嬢「はい」

男「寝たいです…」

お嬢「…はい?」

男「もう寝たいんです」

お嬢「…………い、いきなり何をおっしゃるの!?」

お嬢「は、破廉恥な!御礼をするとは言いましたけど、そんなことは許されません!!//」

男「何か勘違いしてるみたいですが…昨日はあれから徹夜でして」

お嬢「…え?」

男「もう眠くて…早く布団にもぐって眠りたいんです」

お嬢(そ、そっちの“寝たい”だったのか…//)

男「ですから、御礼は明日以降にしてもらえませんか?」

お嬢「い、いいですよっ!」プイッ

男(顔を真っ赤にして…ちょっとかわいい)ナデ

お嬢 ビクッ

お嬢「な、なにをするのです!」パシ!

男「あ、ごめん…」

お嬢「ふ、不用意に触らないでください!」

男「はい。ごめんなさい」

お嬢「…もういいです。早くお休みなさい」

男「はい、そうします。おやすみなさい」

お嬢「ごきげんよう」

~翌日・男のアパートの近く~

男(今日もいるのか?)

ソー…

お嬢 イライラ

男(居た…イラついてるみたいだな…)

男(昨日あんなこと言っちまった手前…今日は付き合わないとダメだろう…)

お嬢「あ!」トテテテテ

男「ぅお!」タタタタ

お嬢「あ、もうし!お待ちになってください!!」

男 タタタタ

お嬢「男さーん!なぜ逃げるのですか!!」

男(そういや…なんで逃げてんだ?)

お嬢「ちょっと!…このっ!!」

お嬢「待てやゴルァ!!」

男 ビクッ

お嬢「はあ…はあ…なんで逃げんだよテメエ!!」

男「急に追いかけてくるから反射的に…ずっと待ってたのか?」

お嬢「はあ…はあ…そうだよ!」

男「…暇だな、アンタ」

お嬢「うっせーな!大学生だから時間はあるんだよ!!」

お嬢「それに私が自分の時間をどう使おうが勝手だろ!?」

男「その理屈で行くと、俺が自分の時間をどう使おうが俺の勝手だな?」

スタスタスタ

お嬢「だから待てって!」グイッ

男「…強引だな、アンタ」

お嬢「アンタって言うな!私には“お嬢”って名前があるんだから!!」

男「…じゃあ、お嬢さん」

お嬢「な、なんだよ…」

男「…口、悪いな」

お嬢「!?」

男「どうした?」

お嬢「さ、さっきのは男さんに合わせてワザと言ったのです!」

男「ふーん」

お嬢「お、男さんのほうこそ!いきなり馴れ馴れしいですよ?」

男「俺はこれが普通だ」

お嬢「そうなのですか?」

男「ああ」

お嬢「…そ、それより!今日こそはこの間のお礼を」

男「それなんだが…昨日、晩飯を奢ってくれるって言ってたよな?」

お嬢「ええ。ディナーでよろしいかしら?」

男「ディナーって…酒飲めるのか?」

お嬢「ええ。今年二十歳になりますから」

男「まだ未成年じゃないか」

お嬢「細かいことは気にしてはいけません」

男(俺より7つも下か…)

男「いや…さっきのは俺が酒を飲んでもいいのか?って意味だったんだが…」

お嬢「え?そうでしたの?」

男「…いや、やっぱり今日は酒はやめておこう。それじゃ…」

お嬢「なんですの?」

男「よく行く店があるから、そこに行こう」

お嬢「あら、こちらで準備しますよ?」

男(お嬢さんに任せたらどこに連れて行かれるかわからん)

男「いや、久しぶりに行きたい気分なんだが」

お嬢「でしたら…いいですけど…」

~なか卯~

ッラッシャイッセー

お嬢「あの…ここはなんのお店ですか?」

男「牛丼屋。うどんやカレーも扱ってる」

お嬢「そうですか…」キョロキョロ

男「…どうした?」

お嬢「いえ、こういうところは初めてなので…」

男「…へ?」

男(お嬢さん、ホテルのパーティーに行ったり、リムジンに乗ってたりするから、まさかとは思ったけど…)

男(牛丼屋も知らないような金持だったとは…)

お嬢「ところで…これは壁に書いてあるものを注文すればいいのですか?」

男「壁に書いてるのはおすすめだ。まずはポピュラーなものを試してみたらどうだ?」

お嬢「…それはどんなものですか?」

男「はい、メニュー。ここら辺がそうだな」

お嬢「…写真付きなのですね。わかりやすいです」

男「俺は…大盛りに卵に味噌汁にしよう」

お嬢「…男さん」

男「ん?」

お嬢「…何を頼めばいいかわかりません」

男「だったら、牛丼を並にして俺と同じセットにするか?」

お嬢「それでお願いします」

男「じゃあ、そこのボタンを押して」

お嬢「これですか?」ピンポーン

店員「ご注文はお決まりでしょうかー」

男「大盛りと並ひとつずつ。あと卵と味噌汁を二つずつ」

店員「はい。ご注文を繰り返します。大盛り一丁並一丁、卵と味噌汁が2丁ずつですね。しばらくお待ちください」

お嬢「ふーん…」

男「ん?どうした?」

お嬢「おもしろいです。小さいお店なのにシステムは変わらないのですね」

男「システム?」

お嬢「ええ。呼び鈴を鳴らし給仕を呼びオーダーを伝える。まったく変わりません」

男「あー、そういわれればそうかもな。気品と値段は全然違うが」

店員「お待たせしましたー。大盛りと並のセットです」

男「お、きたきた」

お嬢「…すごい」

男「今度は何だ?」

お嬢「注文してから2分も掛かっていませんよ!?早いです!!」

お嬢「それに…いい香りです!これはどうやっていただくのですか?」

男「ああ、俺のを見て、同じようにすればいい」

お嬢「はい」

男「まず卵を割ってこの容器の中に…」コンコン ポトッ

お嬢「…自分で割るのですか?」

男「やったことないのか?」

お嬢「ええ」

男「何事も経験だ」

お嬢「はい…ここでこうして…」コンコン グシャ

お嬢「あ…」

男「…最初はそんなもんだ。ほら、俺のと交換しよう」

お嬢「あ、いいです!新しく頼めば…」

男「もったいないだろ?」

お嬢「でも…」

男「いいから。こうなるのはわかってたし」

お嬢「え?」

男「殻を取って…よし、もういいだろ」

お嬢「なんだか屈辱的です…」

男「はは。次は醤油をたらして…」ポトポトッ

お嬢「お醤油を入れるのですね?」

男「あ、ちょっと待った」

お嬢「なんですか?」

男「ほら、醤油注しの空気穴を指で塞がないといっぺんに出てくるから」

お嬢「えっと…ここですね?」ポトッ ポトッ

男「そうそう。で、次は軽くかき混ぜる」グリグリ

お嬢「こうですか?」グリグリ

男「で、牛丼の真ん中にくぼみを作って流し込む」トロー

お嬢「くぼみを作って…」トロー

男「で、牛丼をかき混ぜて卵と具と御飯を絡ませる」グリグリ

お嬢「はい」グリグリ

男「仕上げに紅しょうがを添えて完成」

お嬢「…なんだかグロテスクですね…」

男「あとは好きなように食べる。いただきます」ガツガツ

お嬢「…いただきます」パクッ

お嬢「ん!?…んん?……んまい!」キラキラ

男「それはよかった」ズズー

男(また口調が変わった。こっちが本来の性格なんだろうな)

お嬢 ズズー
  ・
  ・
  ・
お嬢・男「「ご馳走様でした」」

お嬢「はじめて食べたけど、おいしいな!」キラキラ

男「そうか」ナデナデ

お嬢「あ…」

男「あ、頭はダメだったんだな?」

お嬢「いや…うん…」

男「頭なでられるのは苦手か?」

お嬢「そうじゃないけど…慣れてないから…」

男「そうか。ところで…」

お嬢「ん?」

男「また口調が変わってるぞ?」

お嬢「!?」

男「俺といるときは無理しなくても…」

お嬢「む、無理じゃありません!今のはそっちのほうが雰囲気に合うのではないかと思って!!」

男「『役にたたねーやつだなぁ!このボロスマホが』」ボソッ

お嬢「なっ!?」

男 ニヤニヤ

お嬢「…聞いてたの?」

男「しっかりと」

お嬢「…チッ」

男「俺はそっちのほうが好きだけどな」

お嬢「…へ?」

男「そっちのほうが話しやすい」

お嬢「…」

男「じゃあ、帰るか」

~帰り道~

男「どうだ?」

お嬢「うん、おいしいけど…」

男「けど?」

お嬢「外で歩きながら食うのは初めてだから…難しいな」

男「早く食わないとアイスが溶けるしな」

お嬢「でも、楽しいな!」ニコッ

男(笑うとかわいいな…)

男「立食パーティーなんかもあるから、歩きながら食うのは初めてじゃないだろ?」

お嬢「あれは皿があるし。それに…」

お嬢「ああいうのは化粧と料理と酒のにおいが充満した部屋の中だから好きじゃない…」

男「ははは。確かにな」ニコッ

お嬢 ドキッ

あなたのSS見ようとしたらまさかリアルタイムに出くわすとは•••
今日寝れるかな•••

>>50 体調にお気を付け下さいwww

お嬢(男さんの笑顔…なんかほっとする…)

お嬢(今まで…どこに行っても…誰にあっても…あんな笑顔、見たことなかった…)

お嬢「…なあ」

男「ん?」

お嬢「また…会いに来ていいかな?」

男「なんで?」

お嬢「なんかさ、男さんといると楽なんだ。だから…」

男「よくわからんが…」

男(まあ、お嬢さん、口調がコロコロ変わるけど素直だし、悪い気はしないな)

男「…都合が合えばな」

お嬢「ほ、ホントか!?」

男「ああ。けど、俺と一緒だと庶民的なところにしか行かないぞ?」

お嬢「そのほうがいいんだって」

男「…社会勉強か?」

お嬢「そ。社会勉強」

男「そういう考え方もあるか…」

お嬢「じゃあ、決まりだな!」

男「あ、ああ…」

お嬢「じゃあ、メアド交換しよう」

男「ん…ほら」

お嬢「…よし。じゃあこっちからも送るぞ」

男「…ん。受け取った」

お嬢「よし。じゃあ次はいつ頃にs」
執事「お嬢様」

お嬢「…何ですか?」

執事「そろそろ時間でございます。お車のほうに」

お嬢「もうそんな時間ですか?」

男(また口調が…)

お嬢「男さん、今日は楽しめました。ありがとうございます」

男「あ、ああ…」

お嬢「では、ごきげんよう」

男「ああ、お疲れさん」

お嬢「…それはなんですか?」

男「別れの挨拶だ。今日はゆっくり休んで、また一緒にやろうぜって意味だ」

お嬢「そうなんですね…では、お疲れさん」ニコッ

ブロロロロ…

男(世間知らずだが…面白いやつだな)

~リムジンの中~

お嬢(今日は楽しかったな…)

お嬢(牛丼食べて買い食いして…初めてのことばっかりだったな…)

お嬢(男さんとメアド交換して…そういや自分から交換しようって言ったのは初めてだな…)

お嬢(男さんのメアド…今日のお礼をメールしとかないと)ニコニコ

Pi Pi Pi…

執事「…」

~数週間後・金曜の夜~

めるめるめる

男「メールか…」Pi

  送信者:お嬢
  SUB:明日の予定
  本文:明日は何時ごろに行けばいいかな?

男(明日か…めぼしい所は連れて行ったし…あとは”はぐるま”ぐらいか…)

男(けど…お嬢さん、仲間に会わせて大丈夫か?)

男「あいつらも癖があるからなぁ…」

男(けど、落ち着ける場所も必要だ…)

男「…よし」

  返信:男
  SUB:Re: 明日の予定
  本文:明日は11時にうちで。
      俺が隠れ家にしてる喫茶店でゆっくりしよう。

男「…送信」Pi

めるめるめる

男「返信早!」

  返信:お嬢
  SUB:Re: Re: 明日の予定
  本文:オッケー。
      たまにはそう言うのもいいかもね。

男「…先に釘を差しておくか」

~喫茶「はぐるま」~

カランカラン

ママ「いらっしゃい。あら?久しぶりじゃない?」

男「ああ」

男(メンバーは…いつもの連中が揃ってる…)

ママ「ちょっと待ってね。今入れるから」

男「うん」

男友「よう。最近ここで見なかったけど、どうしたんだ?」

男「ああ、ちょっとな」

後輩女「なにかあったんですか?」

男「まあな」

先輩女「トラブル?」

男「ある意味そうかな?」

ママ「はい、いつもの。で、どうしたの?」

男「あ、ありがとう…明日、ちょっと変わった女の子を連れてくるんで」

後輩女「え?彼女さんですかぁ!?」キラキラ

男友「マジ!?」

先輩女「…」

ママ「…どういう関係なの?」

男「それが…よく分からん」

男友「なんだそりゃ?」

男「まあ、子供の暇つぶしに付き合ってるって感じか?」

先輩女「…学生さん?」

男「ああ、大学生だって言ってたな」

後輩女「それで、何が変わってるんですか?」

男友「後輩女も変わってるけど」ボソッ

後輩女「…なんかいいましたぁ?」ニッコリ

男友「い、いいえ!」ガクガクブルブル

先輩女「…それで?」

男「まあ、社会勉強を兼ねてアチコチ連れてってるんだが…世間知らずなんだ」

先輩女「そう…」

男「そういうわけだから、ボケやツッコミは無しで。わかった?」

先輩女「いいわよ」

男友「まあ、そういうことなら…」

後輩女「いえっさー!」

ママ「…後輩女ちゃんが一番心配ね」

一同「「「うん」」」

後輩女「ひっどーい!」

~翌日・アパートの前~

男(そろそろ11時だな…あ)

お嬢 トテトテ

男「おはよう」

お嬢「こんにちわー」

男「じゃあ、行こうか」

お嬢「うん」

男「…そういや」

お嬢「ん?」

男「車はどうした?最近全然見ないが…」

お嬢「乗りたい?」

男「いや、ちょっと気になってな」

お嬢「…ここは路地で狭いだろ?だからあの車だと入りにくくて…」

男「あー、うん。なるほど」

お嬢(ホントは男さんが目立つのが嫌いだからなんだけど)

男(俺のことを思ってやってたわけじゃないのか)

お嬢「今日は楽しみだなぁ」

男「なんでだ?」

お嬢「男さんの仲間がいるんだろ?どんな人がいるか楽しみだ♪」

男「そのことなんだが…」

お嬢「ん?」

男「あいつら、お嬢さんのこと知らないし、失礼なことを言うかもしれないんだが」

お嬢「それはそれで楽しみだ」

男「おい」

お嬢「冗談だって。ちゃんとおとなしくしてるから。な!?」

男(…大丈夫か?)

~喫茶「はぐるま」~

カランカラン

ママ「いらっしゃーい♪」

男「あ、ああ…」

男(ママのテンションが高い…)

お嬢「こ…こんにちは」ペコッ

ママ「さあさ、カウンターにどうぞ~♪」

男(店の中は…昨日のメンバーが勢ぞろいか…)

ママ「いつものでいいわよね?」

男「あ、うん。お嬢さんもコーヒーでいいよな?」

お嬢「あ、はい」

ママ「はい、どうぞ」

男「早いな」

ママ「そろそろ来るころだと思って、準備してたのよ。はい、お譲さんも」ニコッ

お嬢「い、いただきます」

ホワーン

お嬢「いい香り…」コクッ

お嬢「あ、うm…おいしい…」

男「それはよかった」

ママ「ふふふ。それは男ちゃんのお気に入りなの」

お嬢「へぇ…そうなんですね」

ママ「コーヒーは良く飲むの?」

お嬢「いえ、いつもは紅茶なのでコーヒーは久しぶりです」ニコッ

ママ「そうなんだ。ちょっと待っててね?今軽くつまめるもの作るから♪」

男「奢り?」

ママ「そ。男ちゃんのね♪」

男「やっぱり…まあいいけど」

男友『かわいいよなぁ。服装も清潔そうだし』ヒソヒソ

後輩女『あのバッグ、ブランド物ですよぉ。服もお高そう』ヒソヒソ

先輩女『若いわねぇ…肌も髪もキレイだわ…』ヒソヒソ

後輩女『男さんの彼女かな?』ヒソヒソ

男友『うーん、それはないと思うよ?』ヒソヒソ

男「おいお前ら。全部聞こえてるぞ」

お嬢「ほっ…おいしかった…けど、なんでだろ?」

男(お嬢さんはお嬢さんでマイペースだなぁ)

男「…これは俺のお気に入りでな、横浜1920っていうブレンドなんだ」

男「ほろ苦いのに口当たりが柔らかいから飲みやすいだろ?」

お嬢「うん。気に入ったわ」ニコッ

男「それはなにより」

お嬢「もう何年も前だけど」

男「ん?」

お嬢「コーヒーを初めて飲んだんです。そのときに…」

お嬢「苦いうえに酸っぱくて…好きになれなくて…でもこれは好きです…」

ママ「ふふふ、ありがと。はい、お待たせ。フルーツサンドよ」

お嬢「あ」

ママ「これはね、気に入ったお客さんにしか出さないの。ふふふ」

お嬢「ありがとうございます…いただきます」パクッ

お嬢「あ、これもすごくおいしいです!」キラキラ

男(すごく嬉しそうに食べるな)ニコニコ

お嬢「…ん?どうした?なにか付いてる?」

男「別に」

お嬢「そんなことないだろ?正直に言えよ」

男「…お嬢さん、フルーツサンドを食べてるときの顔、可愛いかったぞ?」

お嬢「え?…あっ!//」ボッ

男「顔、真っ赤だな」

お嬢「お、男さんが変なこと言うからだろ!」ペシペシ

男「痛いって」

男友「男!」

男「ん?」

男友「俺たちにも紹介してよ。そちらの女性をさ」

後輩女「ねえねえ、学生さん?どこの大学ですかぁ?」

先輩女「ちょっとふたりとも、一度に言うと分からなくなっちゃうでしょ?」

男「ありがと、先輩女」

先輩女「いいのよ」ニッコリ

お嬢 クイクイ

男「ん?」

お嬢『猫被ったままのほうがいいか?』コソコソ

男『悪い奴らじゃないから、お嬢さんの判断に任せる』コソコソ

男友「何話してんだよ」

男「なんでもない。こちらはお嬢さん。いま社会勉強中で俺はその手伝いをしている。」

お嬢 ペコッ

男「で、向かって右から先輩女、後輩女、男友だ」

男友「適当すぎる紹介ありがとう!男友です。男とは同期入社です。よろしくね」

後輩女「男先輩、酷いですよぉ。あたしは後輩女でーす♪高卒で入社2年目でーす♪」

先輩女「先輩女です。男と同じ会社の先輩です」

お嬢「お、お嬢です。大学の2回生です」

後輩女「え?じゃあ同い年!?」

お嬢「え?…あ、そう…なのかな?」

後輩女「やったね!同級生だ!!」ダキッ

お嬢 ビクッ

男「こら、離れろ。お嬢さんがびっくりしてる」

後輩女「ちぇーっ。男先輩のケチぃ」

男「はいはい」

後輩女「つまんない反応。ところでぇ…どこの大学ですかぁ?」ズイッ

お嬢「え、えっと…○○女子大って…」

後輩女「すごぉい!お嬢様学校だぁ!!」

先輩女「やっぱり」

お嬢「…どういう意味?」ジロッ

男友・後輩女 ビクッ

男「こらっ」ペシッ

お嬢「っ!なにすんだ!」

後輩女・男友「「え?」」

先輩女「あら?」

男「喧嘩売ってるわけじゃない」

お嬢「じゃあなんだよ」

後輩女『なんか…言葉使いが…』コソコソ

男友『ああ…見た目は大人しそうなのに言葉が汚いって言うか…』

先輩女「気を悪くしないでね。着ているものやアクセサリーがブランド物だから、お金に不自由してないのかな?って。ね?」

先輩女「それで○○女子大って聞いて、やっぱりお金持ちなんだって思ったの」ニコッ

お嬢「そう…ですか」

男「うん、まあ…お嬢の家は資産家だな」

男友「マジで?」

男「マジで」

先輩女「ごめんなさい。誤解するようなこと言って」ニコッ

お嬢「あ、いえ…」

後輩女「ねえねえ、それより」ズイッ

お嬢「な、なに?」タジッ

後輩女「○○女子大ってお上品っぽいけど、みんなそうなの?百合とかいる?」

お嬢「え?えっと…」

男友「なになに?何の話?」

後輩女「だーめ!オトコがいたら話せなくなるでしょ?あっちに行ってて下さい」

後輩女「そんなデリカシーもないからモテないんですよぉ、男友先輩は。シッシッ」

男友「うう…後輩女が冷たい…」

後輩女「ウジウジするならトイレにでも行ってて下さいね?ほらほら」

男友「うわぁああん!!」バタン

男「おい、男友トイレに入っちまったぞ?」

後輩女「いつものことじゃないですか。ほっといたら出てきますよぉ。ほら、男先輩も行って行って」

男「まったく…お嬢さん。何かあったら呼んでくれ」

お嬢「う、うん…」

ガタッ

先輩女「こっちにいらっしゃいな」

男「ん…」

先輩女「ふふふ。後輩女ちゃんに取られちゃったわね」

男「まあ、これも社会勉強の一環だ」

先輩女「そうね。…ねえ?」

男「ん?」

先輩女「本当に…何とも思ってないの?」

男「うーん…どうかな?」

先輩女「…あの子…お嬢ちゃん、見た感じではいい娘だと思うわよ?」

男「どういう意味だ?」

先輩女「…単なる暇つぶしや遊びなら…手を出さないことね」

男「…」

先輩女「本気なら…手放しちゃダメよ?」

男「…うん」

先輩女「それは…どっちの?」

男「…」

先輩女「…まあいいわ。そろそろ救出してあげないと」

男「そうだな。お嬢さん、目でSOSを訴えてるな」

男友「…まだやってたのか後輩女」

先輩女・男「「いたの!?」」

男友「ひどいよ!ふたりとも!!」

~カラオケ屋の外~

お嬢「楽しいなカラオケって!」

先輩女・後輩女・男友「「「…」」」

お嬢「けど、歌える曲が少ないのが難点だな」

男「まあ、楽しんでもらえたんなら何よりだ」

先輩女「そうね。ふふっ」

後輩女「でも、きれいな声ですねぇ」

お嬢「そ、そうかな?」

男友「うんうん。ソプラノのアヴェマリアの生独唱なんて初めて聞いたよ」

お嬢「またみんなで来たいな、カラオケ♪」

後輩女「そうだねー」

お嬢「それじゃそれまでに新しい歌を覚えないとな!」ニコッ

男友「う、うん。今度はJ-POPとかでお願いします…」

先輩女「ふふふ」

ブロロロロ キーッ

執事「お嬢様、お迎えに上がりました」

先輩女・後輩女・男友「「!?」」

お嬢「…もうそんな時間?」

執事「はい。そろそろご帰宅なされる時間です」

お嬢「そう…あら?みなさん、どうされたんですか?」

男「車を見てびっくりしてるんだろ」

男友「ホントにお金持だったんだ…」

お嬢「先ほど男さんが申し上げたと思うのですが?」

執事「お嬢様、お急ぎください」

お嬢「チッ…」

執事「うぉっほん!」

お嬢「わかりました。仕方が無いですね」

男「じゃあまた連絡する」

お嬢「はい」

先輩女「楽しかったわ。またいらっしゃい」

お嬢「あ、はい。ありがとうございます」

先輩女「普通に話してもらっていいわよ」

お嬢 チョイチョイ

先輩女「なあに?」

お嬢『人前で言葉遣いが悪いと執事に叱られるんです。だから…』

先輩女「わかったわ。ふふふ」

お嬢「それでは皆さん、ごきげんよう」

先輩女「ふふっ。じゃあね。おやすみなさい」

男「お疲れさん」

後輩女・男友「「バイバーイ」」ノシノシ

ブロロロロ…

後輩女「…行っちゃいましたね」

先輩女「じゃあ、私も帰ろうかしら」

男「じゃあ途中まで一緒に行こう」

後輩女「あたしは遊び足りないですぅ。男友先輩、一緒にゲーセン行きましょ?」

男友「え?ぼ、僕は…」

後輩女「ほら、早く早く♪じゃあ、男先輩、先輩女さん、おやすみなさーい」

男友「お、おやすみー」ズルズル…

先輩女・男「「おやすみー」」

先輩女「…じゃあ、行きましょうか」

男「はいはい、お姫様」

テクテクテク

先輩女「…思ったよりいい子ね」

男「そうか?」

先輩女「…で?どうするの?」

男「どう…とは?」

先輩女「…泣かせるんじゃないわよ?アンタ、もう一人泣かせてるんだからね?」

男「…すまん」

先輩女「…じゃあ、おやすみ」

男「ああ、おやすみ」

テクテクテク…ピタッ

先輩女「…」

男 スタスタスタ…

先輩女「…やっと…忘れられるかなぁ…」

先輩女「お嬢ちゃん…か。口は悪いけど…素直でいい子だもん。あの子なら…だから…」

先輩女「…バイバイ、男」

~車の中~

お嬢(今日は楽しかったなぁ)

お嬢(コーヒーがあんなにうまいなんて…それにあのフルーツサンドもうまかったし…)

お嬢(カラオケも皆で盛り上がって楽しかったし…みんないい人だったな…)

お嬢(ママさんはきれいで物腰が柔らかくて…そういえば見た目は30代後半だけど、いくつなんだろ?)

お嬢(男友さんは後輩女さんに弄られて…)

お嬢(後輩女さんはかわいくて押しが強くて…)

お嬢(先輩女さんは…)

お嬢(先輩女さんは…………)

お嬢(…先輩女さん…男さんといい雰囲気だった…どういう関係なんだろ…)

お嬢「…っ!なんで私こんなにイラつくんだよ!?」

お嬢「…くそっ!なんで胸がモヤモヤするんだよ…」

お嬢「なんでこんなに…苦しいんだよぉ…」

執事「…」

書き貯めが尽きたので今日はここまでにします
おやすみなさいノシ


今回も期待してる


イイヨイイヨー

いちおつ
(´・ω・`)ノシ

ほう

乙!!
相変わらずの投下量!!
毎回楽しみにしてます!!


毎回楽しく読ませてもらってます
今回も期待

待ってた
今回も期待せざるをえない

>>1
あなたか!!

ぴぎゃ

多分初めて読みます!
面白いっす待ってます!!

…へ?の人か

またあんたか、ククッ待ってたぜ

>>87-99 乙ありがとうございます
今から投下します

>>95>>98 そうですwww

~翌日~

男「こんちわ」

お嬢「こんにちは」

ママ「いらっしゃい」ニコッ

男「カウンターでいいか?」

お嬢「うん…うわっ!」

男「どうした!?」

お嬢「なんかいる!」

男「なんかって?…あ」

男友 ドヨーン…

男「男友だ。どうしたんだ?」

先輩女「さっきからこうなのよ…」

男「おい男友」

男友「ん?…男か…」

男「闇を発散してるぞ。どうしたんだ?」

男友「…昨日さ…ゲーセンに行く途中で…高ビー女に会っちゃって…」

お嬢「高ビー女?」

男「前にコンパで会ったことのあるオンナだ。確か大学生だったな」

お嬢 ジー…

男「な、なんだ?」

お嬢「…男さんも参加してたの?」

男「ま、まあ…人数調整要員でな」

お嬢「ふーん…」

男友「…続き…話していいかな?」

男「ああ、悪いな。話の腰を折って」

男友「…でな?」

~~~~~男友の回想~~~~~

  後輩女「今日は負けませんからね!」

  男友「ははは。今のとこ全敗のくせに」

  ドンッ

  男友「あ、すいません…あ」

  高ビー女「気をつけなさい!…あら?誰かと思ったら、貧乏人じゃないの」

  後輩女「びっ、貧乏人!?」

  高ビー1「ねえねえ、この人、高ビー女の知り合い?」

  高ビー女「冗談じゃないわ!こんなのと知り合いだなんて恥ずかしいもの」

  高ビー2「そうなの?確かに軟弱そうだけどねー」

  後輩女「なっ!」

  男友「いいから!…行こう?」

  後輩女「ちょっと!いきなり失礼じゃない!!」

  高ビー女「あら、本当のこと言っただけよ?」

  後輩女「男友先輩のどこが貧乏人なのよ!」

  高ビー女「だって」

  高ビー女「車はともかく、今どき免許も持ってないような貧乏人じゃない」クスクス

  後輩女「なっ!」

  高ビー女「あなたもこんなオトコやめて、もうちょっとマシな男に乗り替えたら?」

  後輩女「そんなことない!男友先輩は!!」

  高ビー女「でもコイツは認めてるわよ?」

  後輩女「…え?」

  男友「…」

  高ビー女「ほら、何も言い返してこないじゃない?」

  高ビー’s クスクスクス

  後輩女「…このっ!」

  男友「やめろって…もういいから。行こう!」グイッ

  後輩女「あっ」

  高ビー女「どこかで会っても、二度と声をかけないでね?恥ずかしいから。じゃあねー」クスクス

  後輩女「~~~!!!!」
     ・
     ・
     ・
  男友「その…ごめんな?恥ずかしい思いさせて…」

  後輩女「男友先輩!なんで言い返さないんですか!!」

  男友「免許が無いのはホントだし…貯金もあんまりないし…」

  後輩女「…情けないです男友先輩!!」ポロッ

  トテテテテ…

  男友「あっ…」

~~~~~~~~~~

男友「俺さあ…なんでこんなに情けないんだろ…」

カランカラン

ママ「いらっしゃい…あら?」

後輩女 |ω・`)

男「あ」

先輩女 オイデオイデ

後輩女 ソー…

男友「高ビー女にさ…あんなに言われても反論もできなくてさ…」

男友「…後輩女に…恥ずかしい思いさせちまった…」グズグズ

お嬢「おい」

男友「え?」

スパーン!

男友「痛っ!?」

男(後頭部をスリッパで…って、ママが渡したのか?)

ママ「♪~」

後輩女「ちょっと!いきなり何するんですか!!」

男友「え?…後輩女?…なんで?」

後輩女「あ…いえ、その…昨日は先に帰っちゃったから…謝ろうと思って…」

お嬢「…へっ。ちょうどいいや。おいっ!」

後輩女・男友 ビクッ

お嬢「さっきから聞いてりゃウジウジウジウジとぉ!テメエも男ならシャキッとしろやぁ!!」ドン!

男友「ひぇっ!」

後輩女「お、男友さんは優しいだけです!だから我慢してるんです!!」

お嬢「ふんっ。我慢してどうなったよ!?後輩女さんに恥かかしただけじゃねーか!!ああ!?」

男友「うぅ…」

後輩女「あたしは恥ずかしいなんて思ってません!男友先輩が落ち込んでるのが心配なんです!!」

お嬢「なんでこんなやつの心配するんだよ!」

後輩女「好きだからに決まってるでしょ!!」バン!

男友「…え?」

お嬢「はい?」

ママ・先輩女・男「「「…」」」

後輩女「え?…………あっ!」

男(いや、今更口を押さえたってなぁ…)

後輩女「ち、違うんです!じゃなくて!!ええっと…いえその…」

男友「…そうだよなぁ…こんなやつ、好きになるはずないよなぁ…」

後輩女「…男友さん」

男友「ゴメンな、恥ずかしい思いさせちゃって」

後輩女「…男友さんはあたしのこと…どう思ってますか?」

男友「え?」

後輩女「あたしは男友さんが好きです。男友さんは?」

男友「お…俺は…」

後輩女 ジー

男友「…俺も好きだ!後輩女のことが大好きだ!!」

後輩女「じゃあ、あたしと…付き合ってください」

男友「…ありがとう!!」ガバッ ギュッ

後輩女「きゃっ!」

男友「こちらこそだよ!よろしくお願いします!!」

お嬢「ったく…とんだ茶番だな…」

男「まあまあ。よかったじゃないか」

先輩女「“雨降って地固まる”ね」

男友「ありがとう、お嬢さん」

お嬢「…ありがとうじゃない!」

男・後輩女・男友「「「え?」」」

お嬢「おい、男友さん。このままでいいのか?」

男友「え?…え?」

お嬢「…復讐だ」ニヤッ

男「おいおい、穏やかじゃないな」

お嬢「だってさぁ…仲間が馬鹿にされたんだぞ?このままじゃ腹の虫が納まらないし。なあ!?」

男友「えっと…その…」

お嬢「協力するからさ。その…高ビー女?に一泡吹かせてやろうぜ。な?」ニヤリ

後輩女・男友 ゾクッ!

男「…ほどほどにしとけよ?」

~数日後の夕方・高ビー女の大学の前~

後輩女「…あ、来ました!…お仲間と一緒です。…はい。じゃあ」Pi

高ビー’s ペチャクチャ

高ビー女「今日のコンパはレベルが高いわよぉ?気合入れていかなきゃ!…あら?」

後輩女「あ、こんにちは」ニコッ

高ビー女「あの貧乏人といっしょにいたオンナじゃない。こんなところで何をしてるの?」

後輩女「男友先輩を待ってるんです」ニコッ

高ビー女「なあに?あなたまだあの貧乏人と付き合ってるの?」

後輩女「あははー。そうですよー♪」

高ビー女「はっ!物好きな!!あんな貧乏人と付き合うなんて苦労するわよ?」

後輩女「そうかなー?」ニコニコ

高ビー女「何ヘラヘラしてるのよ!馬鹿にしてるの!?」

高ビー1「何熱くなってんの高ビー女?」

高ビー2「うちらこれからコンパだし。こんなの相手にしてないでさっさと行こうよ」

高ビー女「…そうね。こんな馬鹿なオンナ、相手にしたって時間の無駄ね」

ブロロロロ キー…

高ビー女「…え?何このリムジン!?」

執事「到着しました」

ガチャ

男友「おそくなった。ごめん(棒)」

高ビー女「え?ええ?…えーっ!?」

先輩女(秘書役)「後輩女様、どうぞ中へ」

後輩女「はーい♪」

バタン ウィーン

後輩女「それj」
高ビー女「ちょっ!ちょっと待ちなさい!!」

グイッ

男友 ビクッ

高ビー女「ちょっとアンタ!どう言う事よこれは!!それにアンタ達誰よ!!」

先輩女「秘書です」

お嬢「メイドです」

高ビー女「秘書お?メイドお?なにそれ!?アンタ何様なの!?」

高ビー女「アンタ車も免許も持ってない貧乏人でしょ!?なんでこんな車に乗ってるのよ!!」

男友「あ…え…」

お嬢「男友様、このような不躾なオンナにお答えする必要はありませんわ」

高ビー女「なっ!な…なんですってぇえええ!!!!」

お嬢「あなたは以前男友様に、二度と口を聞かないようにおっしゃった方ではありませんか?」

高ビー女「っ!!」

お嬢「代わりに私めがお答えしましょう。この車は(私の)お家のもので男友様のものではありませんわ」

お嬢「それに(私の)専属の運転手がいますので免許証など不要ですわ」

高ビー女 パクパク

お嬢「では、出発しますので車から離れてくださいまし」

後輩女「それじゃあね。ふふんっ♪」ドヤッ

ブロロロロ…

高ビー’s ポカーン

高ビー1「…ねえ、今の何?」

高ビー2「コンパ行かないの?」

高ビー女「…」

高ビー1「なんか馬鹿にされた気分なんですけどおっ!」

高ビー2「行くの?行かないの?」

高ビー女「あ゛―っ!!!五月蝿い五月蝿い五月蝿いうるさーい!!!!」

高ビー女「あたしだって知りたいわよっ!何がなんだかわかんないわよっ!!」トテテテテ

高ビー1「あっ!どこに行くのよ!!」

高ビー女「ついて来ないで!!」

高ビー2「コンパどうするんよ!?せめて場所だけでも教えなさいよ!!」
  ・
  ・
  ・

~リムジンの中~

お嬢「…ぶっ」

一同「「「「あはははは!!!」」」」

お嬢「あははは。やったなあ、おい!」

後輩女「やりましたねっ!」

先輩女「ふふふ。楽しかったわ」

男友「ありがとな、みんな…」

男友「けどさ…これって騙しじゃん?」

お嬢「誰も嘘は言ってないって。もっとも、勘違いしたかもしれないけどな!」

後輩女「なんでもいいです!スカッとしました!!でも、お嬢さんノリノリだったね。ザーマス言葉でさっ!」

お嬢「当たり前ですわ。これでも資産家の娘ですもの。おーっほっほっほっほっ」

後輩女「あはははは!先輩女さんも元々クールなだけあって秘書役バッチリでしたねっ!」

先輩女「そう?殆んど何もしてないわよ?」

お嬢「でもスーツ姿でそのメガネだと、どこから見てもやり手秘書ですよ。なあ?」

後輩女・男友「「うんうん」」

先輩女「あなた達…どういう目で私を見てるの?」

お嬢「そう言う目でしょ?」

先輩女「…お嬢ちゃん?」ニッコリ

お嬢「…す、すみません…」ガクブル

男友「あははは。でも…」

後輩女「なあに?」

男友「…高ビー女たちのコンパの予定を調べるのも…車も衣装も…全部お嬢さんがやってくれて…」

男友「…俺、自分じゃ何もしてないし…やっぱ情けないなぁ…」

お嬢「おい」

男友「はい?」

お嬢「これも男友さんの実力のうちなんだって」

男友「…へ?」

お嬢「私と男友さんは仲間だろ?仲間っていうのは人脈ってことだろ?」

男友「…人脈?」

お嬢「人脈ってのはさ、自分の財産なんだ。今回のはそれをちょっと使っただけ」

お嬢「だから男友さんも、もっと自信持てよ。な?」

先輩女「そうよ」

後輩女「そうそう。ここまでしてくれる仲間なんて、なかなか居ないんだからねっ!」

男友「うん…ありがとう、みんな…グスッ」

~リムジン・前席~

アハハハハ

男(みんな…喜んでるみたいだな…)

執事「男さん、後ろの席に行かれますか?」

男「あ、いや。ここでいいです」

執事「ははは。こんな爺の隣でいいとは、男さんも変わっておられる」

男「…執事さんには感謝しています。調査や衣装まで準備していただいて…」

執事「私めは指示を出しただけでございます」

執事「それに…男さんにはお嬢様がお世話になっておりますゆえ、ご恩返しの意味もあります」

男「それでも…ありがとうございます」

執事「にしても…男さんも運がない。あの女性に顔を知られていなければ後ろで一緒に楽しんでおられたのに」

男「はは。そうですね」

お嬢『よーし!祝杯だぁ!!』

執事「お嬢様、またお言葉が乱れて…まあ、今日だけは目をつぶりましょう」

男「…ありがとう」

執事「お礼を言うのはこちらのほうですよ、男さん」

男「え?」

執事「男さんに出会ってから…お嬢様はよく笑うようになりました」

執事「お嬢様は御幼少のころから社交界に出ておられました」

執事「ですが…ご成長なさるにつれ、本音を隠し建前で話す社交界に心を病まれ…」

執事「元々素直なお嬢様はそういった“裏を読みながら”人とお付き合いをすることを避け…笑うことが少なくなりました」

執事「そして部屋にこもりがちになり…テレビドラマの口調を真似てみたり…」

男(あの口の悪さはテレビの影響か…)

執事「ですが男さんと社会勉強をなさるにつれ…本当に楽しそうにお笑いになるのです」

男「…」

執事「おそらく男さんが裏の無い御仁でおられるからでしょう」

男「…そんなことはないですよ。俺も垢にも塵にもまみれてますから」

執事「そうかもしれませんが…拝見したところ、男さんはお嬢様といっしょのときは、お嬢様に正直に相対しておられる」

執事「ですから私めも男さんを信用することができるのです」

男「そんなに簡単に信用したら痛い目に遭いますよ?」

執事「その時は私めが全力で阻止しましょう」

男「ははは。怖いですね。そうならないように注意しときましょう」

執事「…そろそろお店が見えてきましたよ」

~焼き鳥屋「ひよこ」~

一同「「「「「かんぱーい!」」」」」

男「今日は男友のおごりだぞ」

男友「ちょっ!…いや、そうだな!今日は奢るぞーっ!!」

一同「「「「ごちそうさまでーす!」」」」

後輩女「じゃあ、紫蘇梅巻きとモモと皮とネギマとナンコツを塩で!」

オヤジ「あいよ」

男友「ちょ…ちょっとは遠慮して…ね?」

先輩女「ふふふ。〆のお茶漬けも忘れないでね?」

後輩女「了解でーす!」

男「…大丈夫か?」

男友「…カードもあるし、大丈夫だよ。はは…」

男「どれぐらいある?」

男友「…3万ぐらいかな?」

男「そうか…すいません、この5人で二万円以内に抑えられます?」

男友「え?」

オヤジ「おう、できるよ」

男「じゃあ、お願いします」

オヤジ「はいよ」

男「…これで支払いの上限が決まったし、安心して飲めるだろ?」

男友「…ありがとう!助かった!!」

後輩女「あーっ!お嬢さんが皮を独り占めしてるー!!」

お嬢「だってうまいんだもん!そういう後輩女さんだって紫蘇梅巻き独り占めしてるし!!」

先輩女「ナンコツおいしー♪」

男「…俺たちも食うか」

男友「そうだな!」

~数日後~

ブロロロロ…

執事「お嬢様、本日はどちらへ向かいますか?」

お嬢「そうね。男さんは今週は出張中ですし…「はぐるま」にでも行こうかしら」

執事「承知いたしました」

~喫茶「はぐるま」~

カランカラン

ママ「あら、いらっしゃーい♪」

お嬢「今日は一人で来ました」

ママ「そういえば男ちゃん、出張中だったわね」

お嬢「はい。…でもなんで知ってるんですか?」

ママ「あの子から聞いたの」

お嬢「…あ」

先輩女「こんにちは」ニコッ

ママ「ご注文は?」

お嬢「あ、いつものやつで」

ママ「はーい。もう入れ始めちゃってるけどね」

お嬢「さすがですね」ニコッ

ママ「あ、そういえば」

お嬢「はい?」

ママ「男友君のこと…ありがとね」

お嬢「え?なんでママが?」

ママ「…このお店にはね、私が気に入ったお客さんしか入れないの」

ママ「だからね、男友君も私のお気に入りなの」

ママ「もちろんお嬢ちゃんもお気に入りだから。ね?」

お嬢「…なんで?私、ママの気に入るようなことしてないのに?」

ママ「私が気に入ったらそれでいいの♪」

お嬢「あ…」

~~~~~~~~~~

  お嬢「…面白いやつだな」

~~~~~~~~~~

ママ「お嬢ちゃんにも覚えがあるでしょ?」

お嬢「…はい」ニコッ

ママ「ふふふ。これからは男ちゃんが居なくても来てちょうだいね」

お嬢「はい」

お嬢(すごく居心地がいい…男さんが“隠れ家”って言ってた意味が分かる気がする…)

お嬢「あ、そういえば男友さんと後輩女さんは?」

ママ「今日はデートじゃない?たぶん。夜には来ると思うけど」

お嬢「そうですか…」

ママ「ふふふ。退屈だったらあの子とお話してれば?」

お嬢「え?」クルッ

先輩女「ん?」

お嬢「…あの」

先輩女「なあに?」

お嬢「…そっち行っていいかな?」

先輩女「いいわよ?」

お嬢「じゃ…」

先輩女「いらっしゃい」ニコッ

お嬢「ども」

先輩女「この間は面白かったね」

お嬢「ああ、男友さんの?」

先輩女「そう。なかなかできることじゃないわよ?」

お嬢「あれは…仲間がバカにされたら頭に来るでしょ?」

先輩女「でも、あれだけのお芝居をすぐに思いつくなんて、なかなかやるわね」クスッ

お嬢「男友さんの話を聞いてたらなんか…思いついちゃって」

先輩女「普通は思いついてもやらないわよ?」

お嬢「そうかな?」

先輩女「…お嬢ちゃんは仲間思いの優しい子だね」ニコッ

お嬢「そんなことないよ」

先輩女「ううん。そんなことあるわよ。ふふ」

お嬢(先輩女さん…聞くなら今しかない)

お嬢「…あのっ!」

先輩女「どうしたの?」

お嬢「聞きたいことがあるんだけど…」

先輩女「どんなこと?」

お嬢「あの…先輩女さんは…どこで男さんと知り合ったの?大学?」

先輩女「私は短大卒だからそれはないわ」

お嬢「じゃあ…」

先輩女「私が勤めてる会社に男が入社してきたの。それからよ」

お嬢「そうなんだ」

先輩女「あ、誤解の無いように言っておくけど、年は私のほうが一個下なのよ?」

お嬢「え?」

先輩女「私が就職した次の年に、男が大卒で入社してきたからね」

お嬢「そっか…」

お嬢「あの…男さんは…彼女とか居るのかな?」

先輩女「あら。どうしてそんなこと聞くの?」

お嬢「あ、いや…いつも休みの日に付き合ってもらってるし…もし彼女さんが居るなら悪いなって…」

先輩女「…私の知っている範囲ではいないわね」

お嬢「そうですか…」

お嬢(そうじゃなくて!本当に聞きたいことがあるだろ!!)

お嬢「あの…」

先輩女「また質問?」クスッ

お嬢「はい。その…すみません…先輩女さんは男さんのこと…好きなんじゃ…」

先輩女「…」

お嬢 ジー

先輩女「…実はね」

お嬢「うん…」

先輩女「…告白したこと…あるの」

お嬢 ドクン!

先輩女「でもね、フられちゃった」

お嬢「え?」

先輩女「…」

お嬢「…」

先輩女「…びっくりした?」

お嬢 コクン

先輩女「そう…」

お嬢「…ごめんなさい」

先輩女「どうして?」

お嬢「言いたくないこと…言わせちゃったから…」

先輩女「いいのよ」ニコッ

お嬢「けど…」

先輩女「もうずいぶん前のことだもの。大丈夫よ」

お嬢「…なんで…」

先輩女「…私ね、足を怪我してるの」

お嬢「え?」

先輩女「だから…男は自分を気遣ってくれたんだ…」

お嬢「…どういうこと?」

先輩女「お嬢ちゃん、ここ見て?」

お嬢(え?左ひざを指さして…あ)

先輩女「…分かった?」

お嬢「それって…」

先輩女「サポーターよ」

お嬢「あ…」

お嬢(そう言えば先輩女さん、いつもロングスカートかパンツだった…サポーターを隠すためだったんだ…)

先輩女「…高校の時にね、バスケ部だったんだけど…」

先輩女「クロスプレーで靭帯を痛めちゃってね…」

お嬢「…」

先輩女「普通に歩いたりはできるんだけど…農作業みたいに膝に負担がかかる作業はできないの」

お嬢「…農作業?」

先輩女「え?ひょっとして…知らないの?」

お嬢「うん…なんのこと?」

先輩女「男ったら…肝心なこと言ってないじゃない!」

お嬢「あの…」

先輩女「あ、ごめんなさい」

お嬢「いや…その…どういうこと?」

先輩女「…あのね、男は農家の長男なの。だから…」

先輩女「30歳になったら…実家に戻って農家を継ぐの」

お嬢 ドキッ!

先輩女「…男はね、きっと悩んだと思うわ?私は田舎に行っても農作業が出来ないから…」

お嬢「…」

先輩女「振られたあとね、いろいろ考えたのよ?それで…男についていったら男の負担になるって…」

先輩女「だから…これでよかったんだって、最近思うようになったの」ニコッ

お嬢「…」

先輩女「…あ~あ、なんで男は農家の長男なのかなぁ…」

お嬢「…先輩女さんは…今でも男のことが好きなんじゃ…」

先輩女「…ううん」

先輩女「もうね、自分の中では気持ちに折り合いがついてるの」

先輩女「だから今は、こうして普通に話すことが出来てるのよ?」

お嬢「…」

先輩女「ねえ?…神様ってさ…」

お嬢「え?」

先輩女「…神様って…意地悪だよね」

お嬢「…」

先輩女「…もし、男が家業を継ぐ必要がなかったら…本当に好きな人と結婚できたのになぁ…」

お嬢「それは…男さんが?」

先輩女「ううん」

先輩女「…私が…よ」

お嬢「…」

先輩女「…さ。そろそろ買い物して帰らなきゃ」

お嬢「あ、あのっ!」

先輩女「なあに?」

お嬢「…ありがとうございます。その…話したくないことを話してもらって…」

先輩女「…いいのよお嬢ちゃん。それとね?」

お嬢「はい?」

先輩女「…男の事、よろしく頼むわね」ニコッ

お嬢「…え?」

先輩女「じゃあ、ごちそうさま」

ママ「は~い。まいど~」

先輩女「それじゃ、またね」ノシ

お嬢「あ、はい」ノシ

パタン

お嬢「…はぁ…」

ママ「どうしたの?ため息なんかついちゃって」

お嬢「あ、いや…自己嫌悪です。それと…先輩女さんってすごいなって…」

ママ「それはあの子に失礼よ?」

お嬢「え?」

ママ「あの子はそうなりたかったわけじゃないの。だから…」

お嬢「そう…ですね」

ママ「ふふ。お嬢ちゃん、やっぱりいい子ね」

お嬢「そんなことないです」

ママ「あら?コーヒー冷めてるんじゃない?入れ直そっか?」

お嬢「あ、はい。お願いします」

ママ「…ねえ」

お嬢「あ、はい」

ママ「お嬢ちゃん、この店の名前、どう思う?」

お嬢「あー、ちょっと変わってますよね。なんかこう…機械っぽいっていうか」

ママ「ふふ。大抵の人はそう言うわね」

お嬢「違うんですか?」

ママ「…歯車ってね?ちゃんと噛み合ってないとうまく回らないでしょ?」

お嬢「はい」

ママ「このお店はね、私に噛み合う人が来るようなお店にしたかったの」

ママ「お客さんが私と噛み合う人ばっかりだったら、お客さん同士も噛み合う」

ママ「そうしてみんなが噛みあえば…とっても楽しいじゃない?」

お嬢「そうですね」クスッ

ママ「私ね、このお店が好き。このお店に来る常連さんたちも好き」

ママ「だからこのお店の名前、気に入ってるの♪」ニコッ

お嬢「…いいですね。そうやって好きって言えるものがあって」

ママ「ふふ。…少し昔話をしよっか」

お嬢「え?」

ママ「…男ちゃんをここに連れてきたのは先輩女ちゃんだったの」

ママ「最初の頃はね、会社の先輩と後輩って感じで、全然そんな感じじゃなかったのよ?」

ママ「それが男ちゃん、すぐに仕事を覚えて自信をつけていってね」

お嬢「…」

ママ「それで先輩女ちゃんといい感じになっていったの。でもね…」

ママ「…2年ぐらい前にね、ふたりともここに来なくなって…」

ママ「それで、男友君に聞いたら…ね?」

お嬢「…」

ママ「でもね、それから1年ほどして、また二人でここに来てくれるようになったの」

ママ「それからはずっとあんな感じ。つかず離れずで落ち着いてるわ」

お嬢「そうですか…」

ママ「あら、面白くなかった?」

お嬢「いえ、そうじゃなくて…自分も男さんと似てるのかなって」

お嬢「私も…詳しくは言えないけど、いろいろあるんです…だから…」

ママ「そっか…」

ママ「だから魅かれあうのかもね」

お嬢「でもそれは…辛いですよ…」

ママ「でもね、その辛さを知らないでいるのは不幸なことよ?」

お嬢「そう…ですね」

ママ「人は辛い思いをした分だけ、人には優しくできるわ」

ママ「それに、まだ完全にダメってわけじゃないでしょ?」

お嬢「はい…」

ママ「だったら、諦めずに頑張りましょ?ね?」ニコッ

お嬢「そうですね…ママさんはさすがです」ニコッ

ママ「あら、それはどういう意味かしら?ふふふ」

お嬢「憧れですね。あははは」

~翌週・男のアパート~

ピンポーン

男「はーい」

ガチャ

お嬢「お久しぶりー」スチャ

男「あー、ちょっと待ってくれ。出張の荷物を片付けないといけなくてな」

お嬢「挨拶ぐらい返せよゴルァ!」

男「…久しぶりだな」

お嬢「それでいいんだよ。で、今日はどこに行く?」

男「悪いが洗濯物がまだ干せてない。終わるのは昼頃になるから、昼飯を食いに行って、そこで考えよう」

お嬢「ん、わかった。じゃあお邪魔しまーす」

男「勝手に入るな」

お嬢「手伝うって。洗濯物、干すんだろ?」

男「パンツとかもあるぞ?」

お嬢「ぱ…ぱんつ…//」

男「…じゃあ任せた。俺は他の荷物を片付ける」

お嬢「お、おう…」

男(お嬢さん、なんか積極的だな…)
  ・
  ・
  ・

お嬢「…ほ、干し終わった…//」

男「お、ありがとうな。ほら」

お嬢「…なにこれ?」

男「出張土産。御当地名産のストラップだ」

お嬢「じゃなくて!もっとマシなもんよこせ!!」

男「時間がなかったんだ。これで我慢しろ」

お嬢「…ちっ。ダサいなあ…」

男「イヤなら返せ」

お嬢「やーだねっ」

お嬢(男さんから貰った…初めてのプレゼントだもん)

~数週間後~

ママ「はい、おまちどうさま」

男「ありがとう」

お嬢「ども」

ズズー

お嬢「はあ~…おいし♪」

ママ「ふふっ」

お嬢「あ、そうだ。男さん?」

男「ん?」

お嬢「男さんはパスポートは持ってる?」

男「ああ、一応な」

お嬢「よしっ!」

男「なんだ?」

お嬢「あ、いや…もうすぐGWだろ?」

男「ああ、そうだな」

お嬢「…予定、ある?」

男「ああ。実家に帰るんだ」

お嬢「実家に?なんで?」

男「お嬢さんには話してなかったな。うち、農家なんだ」

お嬢「あー…」

男「だからGWは荒代掻きがあるから実家に帰るんだ」

お嬢「あらしろかき?」

男「ああ。田植えの準備だ」

お嬢「そっか…」

男「…実家…か」

お嬢「ん?」

男「いや、なんでもない」

お嬢(田植えか…そういや先輩女さんが言ってたな…男さんは農家の長男だって)

お嬢「ま、そういうことならしょうがないな」

~帰りのリムジンの中~

お嬢「執事」

執事「なんでございましょう」

お嬢「GWのヨーロッパ行き、一人分キャンセルして下さる?」

執事「…男さんの分でございますか?」

お嬢「ええ。予定が変わりましたの」

執事「…かしこまりました」

~GW~

お嬢「…ふぅ…」

お嬢(パリって犬の糞だらけだし…男さんといるときみたいに楽しくない…)

お嬢「…つまんないな…」

執事「…」


ダダダダダ

男「ふぅ…荒代掻きももうすぐ終わりだな」

男(…今頃お嬢さん、何してるんだろ…)

男「…あと少し…頑張ろう」

~5月中旬~

お嬢「今日の映画、面白かったな!」

男「そうか?」

お嬢「うん!来週も期待してるよ!!」

男「あ、すまん。来週はムリだ」

お嬢「えーっ!?なんで?」

男「来週は田植えがあるから、有給を取って週の半ばから実家に帰るんだ」

お嬢「…そっか」

お嬢(また一人で過ごすのか…寂しいな…)

チクン

お嬢「!?」

男「どうした?」

お嬢「な、なんでもない…そうだ!男さん!!」

男「なんだ?」

お嬢「私も一緒に行く!」

男「どこへ?」

お嬢「男さんの実家に決まってるだろ!?」

ブーッ!

お嬢「ちょっ!きたないって!」

男「ごほっごほっ…いきなり何言いだすんだ?」

お嬢「なあ…いいだろ?」

男「いや…」

男(いきなり実家に連れて行くって…色々すっ飛ばしすぎだろ…)

男(…いや、そもそもお嬢さんとはそういうのじゃないから問題ないといえばそうなんだが…)

お嬢「…これも社会勉強だろ?だからさ…」チラッ

ドキッ

男(そんな顔するな!心臓に悪いだろ…)

お嬢「よし!じゃあいろいろ準備しないとなっ!着替えとかなっ!」

男「おい」

お嬢「なんだよ…今さらダメだって言うなよな!」

男「そうじゃない。ジャージとスウェットも必要だぞ」

お嬢「やったーっ!ありがとな、男さん!!」

~翌週の水曜・特急列車~

お嬢「…」

男「どうした?」

お嬢「なんか…狭い…」

男「贅沢言うな。指定席なんだから」

お嬢「うぅ…いつもはグリーン車なのに…」

男「社会勉強だろ?」

お嬢「そうだけど…」

男「ほら、窓際に座れ」

お嬢「あ、うん」

男「荷物を上に上げるから貸して」

お嬢「あ、はい」

男「よいせっと」ゴソッ

男「…これでいいか」

スリッ

お嬢「!!」

男「ん?どうした?」

お嬢「あ…なんでもない。あはは…」

お嬢(びっくりした…席が狭いから男さんが動くたびに腕や身体に当たって…)

お嬢「…あのさ」

男「ん?」

お嬢「…指定席って言うのも悪くないな!」ニコッ

男「そうか?」

オベントウニオチャハ~

男「お、車内販売だ。昼飯買っとくか?」

お嬢「何があるんだ?」ズイッ

男(俺の脚の上で横になるな!お嬢さんからいい匂いが…)

お嬢「なになに?シュウマイ弁当に幕の内にチキン弁当にとりめしに…」

男「…まだか?」

お嬢「いいじゃねーか。こういうのは選ぶのも楽しいんだって♪」

男「それはわかるが…」

男(今ここで勃ったらまずい…早くしてくれ…)

お嬢「…よし!私はオーソドックスに幕の内にするわ。男さんは?」

男「あ。う、うん。俺は…シュウマイ弁当にするか」

お嬢「もっとゆっくり選べばいいのに」
   ・
   ・
   ・

お嬢「ごちそうさまー♪」

男「ごちそうさん」

お嬢「いやー、駅弁って思ってたよりうまい!」

男「満足していただいたようで」

お嬢「うん!電車の旅行って楽しいな!!」

男「くくく。子供みたいだな」

お嬢「い、いいだろ!」

男「ああ。楽しむのが一番だ」

お嬢「むぅ…」

♪テンテテコ テンテテコ テンテテコテン♪ マモナクコノレッシャハ…

男「お、そろそろ降りる駅だな」

お嬢「もう到着か」

男「いや、乗換だ」

お嬢「そっか」

~ディーゼル車~

お嬢「…うるさい電車だな」

男「電車じゃなくてディーゼル車だ」

お嬢「どっちでもいいって」

男「ここから先はまだ電化していないからな。ディーゼル車しか走ってないんだ」

お嬢「ふーん…あっ!」

男「どうした?」

お嬢「すごい!窓のすぐそこまで木の枝が伸びてる!!」

お嬢「手を伸ばしたら届きそうだ!よしっ!窓から手を…」

男「やめなさい」
   ・
   ・
   ・

お嬢「…すごい流れだな…」

男「この辺りは水量が多いからな」

お嬢「…損してたんだな。私…」

男「どうした?」

お嬢「うん…いつもさ、長距離の移動は飛行機か新幹線だったからさ…」

お嬢「途中にある、こういう…いい景色って言うのをいっぱい見逃してたんだろうなーって…な?」

男「いい景色…か」

お嬢「…のどかだな…」

男「退屈じゃないか?」

お嬢「ううん。なんか…ほっとする…」

男「…そうか」ナデナデ

お嬢「あ…」

男「あ、すまん。無意識に撫でてた」

お嬢「い、いや…」

お嬢(なんでだろ…気持ちいい…)

~バスの中~

男「もうすぐ俺の実家のある村だ」

お嬢「はーい。あ、川」

男「この川は周りの山の水が流れ込んでくるから、枯れることはないんだ」

お嬢「へぇー」

男「…夏になるとこの川でよく泳いだな」

お嬢「え?泳げるの?」

男「ああ。更衣室はないけどな」

お嬢「…女子の着替えを覗いてたんじゃ…」ジー

男「そうしたいのは山々だったが」

お嬢「やっぱり」ジトー

男「…女子は家で着替えてきて、濡れたまま家に帰ってた」

お嬢「…え?」

男「そんなもんだ」

お嬢「ふーん…にしても…」

男「ん?」

お嬢「…よく揺れるんだけど」

男「我慢しろ」

お嬢「お茶が飲めない…次の信号まだ?」

男「信号はしばらくないぞ」

お嬢「え?」

男「そもそも田舎の一本道だからな」

お嬢「そういえば…数えるほどしか信号がなかったような…」

男「ここらは人も少ないからな」

お嬢「…荒地が多いな」

男「過疎化が進んでてな…」

男「俺が小さい頃はこの辺りにも集落があって、住んでる人が結構いてな」

男「けど…今はもう誰も住んでいないそうだ」

お嬢「…そっか」

~バス停~

お嬢「んーっ!」ノビーッ!

男「忘れ物はないか?」

お嬢「うん。荷物はこの二つだけだし」

男「よし。ちょっと歩くぞ」

お嬢「えー!?ちょっと休もうよ」

男「…わかった」

お嬢「やったー!…って言っても…」

男「見てのとおり、バス停のベンチ以外は休めそうなところは無いがな」

お嬢「だな」クスッ

お嬢 ♪~

男(ちょっと休憩して…あと20分ほどか…)

お嬢「おおっ!」

男「どうした?」

お嬢「すごい!バスが1日に4本しかない!!」

男「ああ。だからこの辺りでは車が無いと生きていけないんだ」

お嬢「ここに住むなら運転免許証と車は必須ってことか…」

男「そういうこと」

お嬢(運転免許証ね…)

お嬢「にしても…」

キョロキョロ

お嬢「…もっと田舎かと思ってた。家も結構あるし…」

男「まあ、そんなもんだ」

お嬢「それに…殆んど車が通らない…」

男「そこの山の向こうには高速道路が通ってるから、この道は地元民しか使ってないだろうな」

お嬢「そうなんだ…」

男「一応、国道なんだがな」

お嬢「え?ここって国道なのか?」

男「ああ。そこに標識があるだろ」

お嬢「え?あっ、ホントだ…気がつかなかった…」

男「…そろそろ行くぞ」

お嬢「はーい」

トテトテトテ

お嬢「あ、あそこの3階建ての建物は?」

男「あれは役場の分署だ。中に農協の分署も入ってる」

お嬢「へー」

トテトテトテ

お嬢「…なあ」

男「ん?」

お嬢「…お店って無いのか?」

男「あー、うん。今はもう無い」

お嬢「え?じゃあ買い物は?」

男「食料品は週に一度、農協の巡回スーパーが回ってくるから、そこで買うんだ。」

男「服とかは隣町まで行かないと買えないな」

お嬢「ふーん。じゃあさ、学校は?」

男「俺たちの頃は小学校まではあそこに見える廃校に通ってたが…今は隣町まで行ってるそうだ」

お嬢「隣町って?」

男「ディーゼル車からバスに乗り換えたところが隣町だ」

お嬢「そっか…バスだけで30分ぐらい掛かるな」

男「そんなもんだな。さ、もうすぐだ」
   ・
   ・
   ・

プチッ

男「ほら」

お嬢「…なにこれ?」

男「タンポポの茎だ。こうすると…」

プー

お嬢「あ、音が鳴る!」

男「やってみるか?」

お嬢「うん!」

プスーッ

お嬢「…あれ?」

男「あははは」

お嬢「も、もう一回!こうして…こうして…」

スプーッ

お嬢「鳴った!」

男「ああ」

お嬢「へへ。」

スプーッ
   ・
   ・
   ・

男「どうだ?」

お嬢「…甘い!」チュパチュパ

男「これはレンゲって言うんだ」

お嬢(レンゲか…それにしても…)

お嬢(よく見ると…いろんな花が咲いてるんだ…)

お嬢(何にもないようでいろんなことができるんだ…)

お嬢(自然といっしょに生きるってこういうのなんだな…)

男「おうい!」

お嬢 ビクッ

男「あ、すまん。ちょっと挨拶を…あ、来た来た」

男父「おう、おかえり」

男「ああ、ただいま」

お嬢「こ、こんにちは」

男父「おお!こりゃまたすんごいベッピンさんだな。コレか?」

男「違うって!ちょっとした知り合いだ!!」

お嬢 ツンツン

男「ん?」

お嬢『だれ?』コソッ

男「ああ。俺のオヤジだ」

お嬢「え?…ええーっ!」アタフタ

男父「ははは。初めまして。男の父の男父です」

お嬢「あ、お、お嬢と申します。このたびは突然お尋ねして誠に申し訳ありません」

男父「いやいや。お気になさらずに。こちらこそ男が世話になっとります」

お嬢「いえ!お世話になっているのはこちらですわ」

男父「謙遜せんでもいいよ。おい、男」

男「ん?」

男父「しっかりしたいい娘さんじゃないか。ワシがあと20年若かったら口説いとるぞ?」

男「お袋にチクって来る」

男父「チョットマテ」

男「お嬢さん、行くぞ」

お嬢「あ、はい。それでは後ほど」

男父「ああ」

トテトテトテ

お嬢「…ぷはあ!緊張したーっ!!」

男「なにが?」

お嬢「だっていきなりお父様と御対面だよ!?心の準備が…」

男「そうか?余裕があるように見えたが」

お嬢「余裕なんてないよ!思わずザーマス言葉になっちまったじゃないか!!」

男「ははは」

お嬢「うぅー、お父様に変なやつだって思われて無いかなぁ…」

男「悩んでるところ悪いが…」

お嬢「なんだよ」

男「ついたぞ」

お嬢「…え?」

男「あそこで苗床を軽トラに積んでるのが…」

男母「あー、おかえりー」

男姉「こらー!遅いぞー!!」

お嬢「え?えっと」

男「最初に挨拶したのがお袋で、背中に赤ん坊を背負ってるのが姉貴だ」

男「ただいま。それとこっちが友達のお嬢さん」

お嬢「あ、初めまして。お嬢といいます。突然お邪魔してすみません」

男「お、さっきと違うな」

お嬢「しっ!」

お嬢(友達…か)

男母「いいのいいの。それより、お客さんなのにおもてなし出来なくてごめんね?」

お嬢「あ、いえ!今日はお手伝いに来たので…」

男姉「お嬢ちゃんだっけ?可愛いねぇ。うちの子には負けるけど」

お嬢「うちの子?…あ、何ヶ月ですか?」

男姉「ようやく10ヶ月。ほら、顔見てやって?」

お嬢「は、はい…あ、かわいいですねぇ」

男「姉貴、旦那さんは?」

男姉「旦那は今頃郵便配ってんじゃない?今日は来ないよ」

男「そうか。忙しいみたいだな」

男姉「まあねー。あの人ひとりでこの辺一帯受け持ってるからねー。なかなか休めないのよ」

男「まあ仕方ないな。じゃあ着替えてくる」

お嬢「あ、私も」

男母「家の中に婆ちゃんがいるから挨拶しなよー」

~家の中~

男婆「おやおや。おかえり」

男「ただいま、婆ちゃん」

お嬢「こんにちは」

男婆「おやおや。かわいい娘さんだねえ」

男「あー、こちらh」
お嬢「友達のお嬢ですっ」

男(こいつ…)

お嬢(どうだ!“お友達”って言われる気分は!!)

男婆「元気だねえ」

男「ああ。俺たちこれから着替えるんだ。田んぼの手伝いに行くんでな」

男婆「そうかいそうかい。婆ちゃんは家で晩御飯の拵えをしておくよ」

男「じゃあ…こっちだ」

お嬢「あ、うん」

男「ここだ」ガラッ

お嬢「…広いな」

男「ああ、客間だからな。ここに荷物をおいて着替えるといい」

お嬢「男さんは?」

男「俺は離れの自分の部屋で着替えてくる」

お嬢「そっか。あとで男さんの部屋、見てみたいな」

男「夜にでもな」

お嬢「うん。じゃあ…着替えてくる」

男「ああ」

お嬢「…覗くなよ?」

男「そういわれると余計に覗きたくなるな」

お嬢「誰が見せるかよーだ!」ピシャッ

~玄関~

男「お嬢さんはまだか…ん?」

トテテテテ

お嬢「お待たせしましたー」

男(真っ白なPumaのジャージか…似合ってるな…しかし…)

お嬢「どうだ?似合うだろー」

男「ああ、けど…」

お嬢「けど?」

男「…あるのか?胸」

ゲシッ!

男「いっ!…脛を蹴るな」

お嬢「うっせえ!」

男「…行くぞ」

お嬢「ったく…」

男「ん?」

お嬢「なんだ?」

男「長靴…買うの忘れてたな。田んぼに入れないぞ」

お嬢「あー、裸足で入るからいいって」

男「ダメだ。ヒルがいる」

お嬢「ヒル?」

男「ああ。噛みついて血を吸うんだ。その時に細菌に感染すると破傷風になることがある」

お嬢「げっ」

男「仕方がないな。今日は畦で見学だな」

お嬢「…うん。ヒル怖いし」

男「よしよし。いい子だ」ナデナデ

お嬢「…へへっ」

男「じゃあ、苗床を軽トラに積んで田んぼに行くか」

お嬢「…うん!」

~田んぼ~

キー

男「着いたぞ」

お嬢「…」

男「どうした」

お嬢「ここって…さっき男さんのお父様に会ったところと違う…」

男「ああ、田んぼもいくつか持ってるんだ。もうすぐ親父が田植え機を持ってくる」

お嬢「そうなのか…」

…ダダダダ

男父「おぅーい」

お嬢「あ」

男「来たな。苗床下ろすぞ」

お嬢「あ、うん」

男「苗床を8枚セットして…よし」

男父「じゃあ行ってくる。お前は手植えを頼むわ」

男「ああ、分かった」

ダダダダ カチョンカチョンカチョン

お嬢「ふーん…」

男父「ははは。珍しいかね、娘さん」

お嬢「あ、はい。面白いですね」ニコッ

男父「ははは。じゃあ植えてきますよ」

お嬢「はい、いってらっしゃい」ノシ

男 ゴソゴソ

お嬢「ん?何やってるんだ?」

男「ああ。苗束を作ってるんだ」

お嬢「なえたば?」

男「そうだ。ほらそこ。苗が植わってないところがあるだろ?」

お嬢「え?…あ、ああ」

男「田植え機で植えると、出入り口や田植え機の幅より狭いところは苗が植えられない」

男「だから、そういうところは手で植えるんだ」

お嬢「手で?」

男「そうだ。今はその準備をしてる」

お嬢「ふーん…なあ、私にもその…なえたば?作らせてくれないかな?」

男「結構難しいぞ?きつく縛ると苗が痛むし、緩いと苗が抜けるからな」

お嬢「やるよ。せっかく手伝いに来たのに、見てるだけじゃつまんないし」

男「わかった。じゃあ苗床から苗を適当に掴みとって」

お嬢「こ、こうか?」ムシリッ

男「…次はそこの流水で泥を落としながら軽く根っこをほぐして、苗をバラバラにするんだ」

お嬢「ほぐれろー」ジャバジャバ

男「…苗がバラバラになったら一掴み分をこの紐で縛る」

お嬢「一掴み…よいしょっと…あれ?」スルッ

男「はは。頑張れ」
   ・
   ・
   ・

お嬢「で…できた…」

男「じゃあ行くぞ」

お嬢「…すごいな」

男「ん?」

お嬢「私は頑張っても2個しか苗束が出来なかったのに男さんは…」

男「年季が違う」

お嬢「むー…」

男「ふくれてないで。ほら、やるぞ」

チャポ ズチョ ズチョ…

男「田植え機で植えたところと等間隔になるように…」

サッ サッ サッ サッ…

お嬢(すごい…動きがスムーズだ…)

男「おい」

お嬢「なんだ?」

男「苗束を適当に投げてくれ」

お嬢 ポイッ

男「違う!軽トラの荷台にじゃなくてこの田んぼの中に投げ込むんだ」

お嬢「なんだ。だったらそう言えよ」ポイッ パシャン

男「そうそう。じゃあ…」

サッ サッ サッ サッ…

お嬢「…腰が痛くなりそうだな…」

プルプルプル

お嬢「あ、電話か…もしもし?」

  執事『お嬢様』

お嬢「…なあに?」

  執事『あからさまに嫌そうな声を出すのはやめてくださいませ』

お嬢「それで…何か御用かしら」

  執事『いいえ、御報告までに』

お嬢「報告?」

  執事『はい。私めはいつでもお嬢さまのお近くにおりますので、何かあればお呼びください』

お嬢「そう…あ、そうだわ!長靴を持ってくるのを忘れてきたの。用意してくださるかしら?」

  執事『はい。今すぐにまいります』

お嬢「お願いしますわ」Pi

男「…どうした?」

お嬢「あー、執事が長靴を持ってくるって」

男「そうか。よかったな」

お嬢「うん、そうなんだけど…なんか過保護って感じが…」

男「それだけお嬢さんのことが心配なんだ。許してやれ」

お嬢「許すもなにも無いけどさ…」

ブルルルルン キー

執事「お嬢様」

お嬢「早っ!」

執事「長靴でございます」

お嬢「あ、ありがとう…その車は?」

執事「使用感を出すために、あえて中古の軽バンを購入しました」

お嬢「なぜ?」

執事「…お嬢様。ここでは私めのことを“叔父”と呼んでください」

お嬢「どうして?」

執事「その方が面倒が無いと思いますので」

お嬢「?」

執事「…お嬢様は御自身のことを、どのようにご紹介なされるおつもりですか?」

お嬢「どうって…普通に…」

執事「それで男さんの御家族はどのように振舞われるでしょうか」

お嬢「…え?」

執事「…男さんの御家族が信用できないということではありません」

執事「評判を聞く限り、男さんの御家族は良い人たちのようですので」

執事「…御気を使わせないために、こうしたほうがいいかと」

お嬢「…わかったわ」

執事「男さんもそれでお願いします」

男「了解です」

男父「おーい…えっと、どなたさん?」

執事「あ、お嬢の叔父です。このたびはお嬢がお世話になりまして」ニコニコ

お嬢・男((変わり身すごっ!))

執事「お嬢が長靴を忘れてましたんで、持ってきたんですよ」

男父「あーそうですか。そりゃ遠いところからご苦労様です」

執事「いえいえ。それじゃ私はこれで」

男父「今から帰るんじゃ大変でしょう。どうですか。今夜はうちに泊まってもらって」

執事「あ、いやいや!そんなご迷惑をかけるわけには…」

男「いいじゃないですか。にぎやかで」

お嬢「え?」

執事「そうおっしゃるのなら…お世話になります」ペコリ

男父「じゃあ、ゆっくりしていってください」

執事「ありがとうございます」

男父「男、家に電話しといてくれ。ワシは隣の田んぼ植えてくるから」

男「わかった」Pi Pi Pi…

お嬢(なんだよ…せっかく監視が無くなったって思ったのに…)

男「…何むくれてるんだ?」

お嬢「べーつーにー?」

男「そうか?じゃあ…田植え、してみるか?」

お嬢「あ、うん!」

男「じゃあ…いいか?指を3本使ってこうやって~~~」
   ・
   ・
   ・

お嬢「…ふぅ。こ、腰が…」

男「無理するな。腰が立たなくなるぞ」

お嬢「けど…男さんより全然遅れてるし…」

男「初めてだったらそんなもんだ」

執事 ソワソワ…

男「…どうしました?」

執事「…男さん、私めもお手伝いしてよろしいですか?」

男「あー、じゃあお嬢さんは休憩して、しt、叔父さんに代わってもらったらどうだ?」

お嬢「…そうするわ。ちょっと腰を伸ばさないと…」

執事「では、失礼して…」ズチャ

男「あまり無理せずに」

執事「…さて」

シバババババ!

お嬢「…すごい…」

男「やるなあ」
   ・
   ・
   ・

男「…よし。もう終わりか?」

執事「こちらも終わりましたよ」

男「思ったより全然早かったな。しつj…叔父さんのおかげです」

執事「いえいえ」

男「お嬢さん、退屈してたんじゃないか?」

お嬢「ううん。そんなこと無い。初めての体験で楽しいよ」

男「そうか…まだ日が高いな…」

男父「おぅーい。そっちはどこまで行った?」

男「ああ。もう終わったよ」

男父「なんだ、今年はずいぶん早いな」

男「ああ。あのふたりのおかげだよ」

お嬢「そんなこと無いです。男さんのお邪魔ばっかりしてて…」

男父「ははは。それじゃ明日するはずだった田んぼも前倒ししてやっちまうか!」

男「そうだな」

お嬢「えっ」

執事「腕が鳴りますわい」

お嬢「ええっ!?」

~男の実家~

男「ただいま」

お嬢「た、ただいま…」

執事「お邪魔します」

男母「おかえりー。頑張ったわねえ」

男父「ただいまー。お嬢さんと叔父さんのおかげで、残りの田んぼも全部終わっちまったよ」

男母「あらあら、すみませんねえ。ありがとうございます」

執事「いえいえ。こちらこそお嬢さ…がお世話になりまして」

男母「なんにも無いけど、今夜はゆっくりしていってくださいね」

執事「ありがとうございます」

男「お袋。あっちの風呂、まだ使えるか?」

男母「え?母屋のお風呂にしたら?スイッチポンッですぐに入れるわよ?」

男「いや、せっかくだからお嬢さんたちに五右衛門風呂を体験させたくてな」

お嬢「ごえもんぶろ?」

執事「おおっ!それは珍しい!!まだあるんですか!?」

男母「ええ、ありますよ。もっとも最近は母屋のお風呂しか使ってないけどね」

男「じゃあ風呂の支度してくる。姉貴は?」

男母「中でお乳あげてると思うけど?」

男「じゃあ、姉貴に五右衛門風呂の浸かり方をお嬢さんに教えるように言っといてくれ」

男母「いいわよ」

お嬢「あの…お風呂ぐらいひとりで入れるけど?」

執事「いやいや、入り方を間違えると火傷をしますから」

お嬢「そうなの!?」

男「けど、ほかの風呂とは比べ物にならないくらい気持ちいいぞ?」

執事「そうです」ウンウン

お嬢「そ、そっか…」

男「じゃあ風呂を沸かしてくる。30分ほどで沸くから」

お嬢「うん、楽しみにしてるわ」ニコッ

~五右衛門風呂~

お嬢「んーっ!ほんっとに気持ちいいなーっ!!」

男『湯加減はどうだー?』

お嬢「んー、ちょうどいい加減だわ」

男『そりゃよかった』

お嬢「ふー…そろそろ上がるわ」

サバァ

男『次はしt…叔父さんだな』

お嬢「ん、服着たら呼んでくる」

ガラララ ピシャ

男(もっと文句を言うだろうと思ってたけど…結構楽しんでるみたいだな…)

男(俺も…お嬢さんが一緒で楽しいし…)

男(でもなぁ…)

ガラララ

執事「男さん、お先に頂きます」

男『どうぞー』

~居間~

お嬢(畳の上に大きな机が置いてある…)

男姉「はいはーい。ちょっとどいてね」

お嬢「あ」

ドンッ

お嬢「…いい匂いですね」

男姉「ふふふ。母ちゃん特製ワラビの卵とじだよっ。他のおかず持ってくるからちょっと待っててね」

お嬢「あ、私も手伝います」

男母「いいのいいの。お客さんなんだから、座って待ってて。ね?」

男姉「母ちゃん、取り皿これでいい?」

男母「いいわよ」

お嬢「でも…手伝いたいんです」

男姉「…じゃあ、台所からご飯運んできてくれる?」

お嬢「はい」

トテトテトテ

お嬢「ご飯運びます」

男婆「あらあら。じゃあご飯を注がないとねぇ。ガス釜のふたを開けて…」

パカッ ホワーン

お嬢「うわあ…すごくいい匂い!」

男婆「そうかい?この御飯は去年採れたものだよぉ」

お嬢「あ、焦げてる!」

男婆「おこげだよぉ。香ばしくておいしいよぉ」

お嬢「そうなんですか!?へぇ…」

男婆「食べてみるかえ?」

お嬢「いいんですか!?」

男婆「おこげを小皿に入れて…はい」

お嬢「いただきます!あちっ!はうっ、ほっ、ほっ…おいひーれふ!!」

男婆「そうかいそうかい。お米はねえ、採れたところの水で炊くのが一番おいしいからねぇ」ニコニコ

お嬢「そうなんすね」

男婆「それじゃ茶碗によそうかねぇ」

お嬢「…あの…おこげを…」ソー…

男婆「はいはい」ニコニコ

~夕飯中~

男父「いやー、今日は助かりました!」

執事「いやいや。お役に立てたかどうか」

男父「すごく助かりましたよ!明日も田植えのはずが、今日だけで終わりましたから!!」

執事「いやいやいや」

男父「お、グラスが開いてますよ?」

男姉「こりゃ気がつきませんで。はい、どうぞ」

執事「これはこれは、ありがとうございます」

男父「では、乾杯!」

執事「乾杯!」

グビッ グビッ…

男父「っぷはーっ!うまいっ!」

執事「っぷはーっ!まったくです!」

男父「わははは。叔父さん、あんた農家の出かい?」

執事「ええ。15年前までやってました」

男父「そうだろそうだろ。ままいっぱい」

執事「あ、こりゃどうも」

お嬢「…おいしい」

男母「おや。こんな田舎料理なのに、お世辞でも嬉しいねぇ」

お嬢「お世辞じゃないですよ?野菜の味がしっかりしてて、出汁もきいてておいしいです!」

男姉「そっちのも食べてみてよ。そのシーチキンと竹の子の煮物、あたしが作ったんだよ♪」

お嬢「あ、はい。いただきます。…これもおいしいですね!」

男姉「そう?やったー!ありがとねー!!」

お嬢(にぎやかな食事…こんなの初めてだ。料理も素朴だけどおいしいし…)

男「…うるさくてごめんな?」

お嬢「ううん。すごく楽しいよ?」

男「そうか?」

お嬢「それに御飯がマジうまい!特にこの野菜が!!」

男母「野菜は全部うちの畑で採れたもんだよ。気に入ってもらえてよかったわ」ニコッ

お嬢「いや、これはマジでうまいです!」

男婆「そうかいそうかい」ニコニコ

~家の外~

男姉「じゃあ、あたしは帰るから」

男「ああ。気をつけて帰れよ」

男姉「あははは。うちのチビちゃんも寝てるし、安全運転で帰るわ」

お嬢「今日はありがとうございました」ペコッ

男姉「…お嬢ちゃん、あんた…いい子だね」

お嬢「いえ、そんなことないですよ」

男姉「あははは。それじゃあ、帰るね」ノシ

男「気をつけてな」

お嬢「おやすみなさーい!」ノシ

ブロロロロ…

男「…家に入るか」

お嬢「うん…あっ!」

男「どうした?」

お嬢「すごい星空…」

男「…この辺は明るい施設がないからな」

お嬢「うん…」

キュッ

男(!?お嬢さんが手を繋いできた…)チラッ

お嬢 キラキラ

ドキン!

男(やばい…お嬢さんの横顔がきれいだ…)ドキドキ…

キュッ

男(…ちょっとぐらい手を繋いでも…いいだろ)

お嬢・男「「…」」

お嬢「すごいな…」

男「六等星ぐらいまでは見えるだろ?」

お嬢「それはよくわかんないけど…これじゃ天の川がどれか分かんないな。あははは」

ゲロゲーロ ゲロゲーロ

男「カエルの大合唱だな」

お嬢「カエル?」

男「ああ、田んぼに水を引いたから、いっぱい出てきたんだ」

お嬢「そっか…」

男「カエルは嫌いか?」

お嬢「うん。けど…すごいな」ニコッ

男「…そうだな」

お嬢「…」

男「…あ、そうだ!」

お嬢「ん?」

男「ついて来い」

お嬢「え?」

男「いいから」グイッ

お嬢「あっ」

お嬢(手をつかまれてる…//)

ガサガサガサ…

お嬢(こ、こんな暗がりで…何するつもり!?)

お嬢「な、なあ…どこに行くんだ?」

男「…もうすぐ着く…ここだ」

お嬢「…ここ?」

お嬢(真っ暗で…何も見えない…怖いよ…)

男「…ちょっと川のほうを見てみ?」

お嬢「え?…うわあ…」

ポッ ポッ ポッ…

男「今年は多いほうだな」

お嬢「すごい…これって蛍?」

男「そうだ」

お嬢「わぁ…」

ギュッ

男(!?また手を繋いできた…)チラッ

お嬢「…」

男(…まあいいか)

お嬢「キレイだな…」

男「そうだな…」

お嬢「…ふわぁあああ…」

男「ははっ。今日は疲れたろ。そろそろ家に帰るか」

お嬢「ん…もうちょっとここに居たい…」

男「じゃあ、もうちょっとしたら帰るぞ。体が冷えるからな」

お嬢「うん…」

~客間~

お嬢 ウツラッ…ウツラッ…

男「眠いだろ」

お嬢「ん…まだだいじょーぶ…」

男「今日は田植えもしたし、疲れてるだろうから早く寝な」

お嬢「…もうちょっと…男さんと話したいな…」

男「まだ二日もあるんだ。今日は寝とけ」

お嬢「…うん。おやすみ…」

モゾモゾ

お嬢 ジー

男「どうした?」

お嬢「男さんの家族って…暖かいな…」

男「そうか?」

お嬢「私も…こんな家族が良かったな…」

男「…」ナデナデ

お嬢「んふ…スー…スー…」

男「…さて、俺も自分の部屋に戻って寝るか…ん?」

男母「あらあら。二人とも酔いつぶれちゃってまあ」

男「どうした?」

男母「二人とも、酔い潰れちゃったのよ。男、二人に布団掛けるからさ、持ってくるの手伝ってよ」

男「了解」

~深夜~

ジャーゴボゴボ…

お嬢(ふふっ。古い家なのにシャワートイレって)

トテトテ

お嬢(ん?執事?お父様と居間で寝てるのか…)

ソー…

お嬢(よく寝てる…それにしても、執事にあんな特技があったなんて驚きだな…)

執事「…お嬢様」

ビクッ

お嬢『…起きてたの?』コソコソ

執事「はい」

お嬢『しっ!大きな声を出すとお父さんが起きるだろ!』

執事「先ほどからよくお休みになっておられます」

お嬢「そっか…」

執事「…お嬢様」

お嬢「はい?」

執事「今日…農作業をなされていかがでしたか?」

お嬢「面白かったよ?」

執事「では…今日のような作業を毎日続けられますか?」

お嬢「…え?」

執事「…農家の作業は体力を消耗します」

執事「昨今は機械化が進み、農作業も楽になってきましたが、それでも肉体労働の連続です」

執事「それに作物の状態にも常に気を使わなければなりません」

お嬢「…」

執事「お嬢様。お嬢様は先ほど面白かったとおっしゃいましたが、それは無責任な発言です」

お嬢「無責任?」

執事「男さんのご家族は農作業で生活を支えておられます」

執事「そして未熟であったり手抜きをすればそれはすなわち、収入の減少につながるのですよ?」

お嬢「あ…」

執事「お嬢様、ただの興味本位であるのなら明日ご自宅にお帰りになることをお勧めします」

お嬢「…」

執事「いかがなさいますか?」

お嬢「…まだ分かんないよ…」

執事「では、どうなさいますか?」

お嬢「…まだ…」

執事「…」

お嬢「…もう少し…ここに居たい…」

執事「…そうですか。では、私めもご一緒します」

お嬢「…うん」

男父「…」

~翌朝~

男「おい、起きろ」ユサユサ

お嬢「ん…スー…スー…」

男「朝だ。起きろ」ユサユサ

お嬢「んぁ…あと5分…」

男(か…かわいい…)

男「しょうがない…」バサッ

お嬢「…さむ…ん?…男…さん?」

男「起きたか?」

お嬢 ネボケー

男「起きたら着替えて朝飯だ」

お嬢「ん…ん?…あっ!」

男「どうした?」

お嬢「メイクしてない!髪ボサボサ!!」

男「何をいまさら…昨夜からスッピンだろ」

~家の前~

お嬢「ふぁあああ…」

執事『お嬢様!はしたないですぞ!!』コソッ

お嬢「眠いもんは眠いって…」

男「よく寝てたのに、まだ眠いか?」

お嬢「しょうがないだろ?…疲れてたんだし…」

男父「無理しなくていいんだよ?」

お嬢「あ、いえ!一緒に行きます」

男父「そうかい?じゃあ今日は山にタケノコを掘りに行くよ」

執事「タケノコですか?」

男父「叔父さんはやったことあるかい?」

執事「いえ。さすがにないですね。楽しみです」

男父「ははは。じゃあ行きますか」

~竹やぶ~

執事「なかなか見つかりませんね…」

男「ははは。初めてだとなかなか難しいですよ」

男父「おーい、お嬢さーん」

お嬢「あ、はーい」

男父「見つけたよー。おいで―」

お嬢「あ、行きますー」

男「俺はしt…叔父さんとここら辺で探してみる」

お嬢「うん」

ガサガサ

お嬢「どこにあるんですか?」

男父「ほらここ。ちょっと土が盛り上がってるだろ?」

お嬢「え?…どこ?」

男父「ははは。今ちょっと土をどけるよ」

サッ サッ

男父「ほら、タケノコの頭が見えただろ?」

お嬢「…あ、ホントだ。こんなのよく見つけますね」

男父「慣れだよ。じゃあ掘るから、ちょっと離れて」

お嬢「はい」

ガッ ザッ ガッ ザッ ガスッ ミチチチ…

男父「…ほら、採れた」

お嬢「うわあ。すごいですね!」

男父「ははは。…お嬢さん」

お嬢「はい?」

男父「お嬢さんは…男の住んでる町の人かい?」

お嬢「あ、はい」

男父「そうかい…女性に年を聞くもんじゃないけど…いくつだい?」

お嬢「あははは。気にしませんよ?来月二十歳になる大学生です」

男父「男と7つ違いか…もしよければ…男と知り合ったきっかけを教えてもらえないかい?」

お嬢「あ、はい…私、方向音痴で…道に迷ってたところを助けてもらったんです」

男父「あいつが声をかけたのかい?」

お嬢「いえ…無言で歩いていったので後をついて行ったら目的地で…」

男父「はあ…なんて言うか…不器用だなあ。もうちょっとやり様があるだろうに…」

お嬢「あはは。そうですよねー」

男父「ははは。それで?」

お嬢「あ、それでですね、お礼に食事をして…そしたらなんか楽しくって…」

お嬢「それで…男さんといっしょにあちこち出かけるようになったんです」

男父「そうかい…なあ、お嬢さん」

お嬢「なんですか?」

男父「…あいつは見ての通り不器用だ。言葉づかいもぶっきらぼうだし」

お嬢「そうですね…でも…安心できますよ」

男父「安心?」

お嬢「なんて言うんだろ…なんか、本当の自分を見せても裏切られないって言うか…」

お嬢「ありのまま…そのままを受け入れてくれそうって…」

男父「…お嬢さん。あんたやっぱりいい娘さんだ」

お嬢「そ、そんなことないですよぉ」

男父「…なあ、お嬢さん」

お嬢「あ、はい」

男父「…あいつは真面目だ。だから…ワシの後を継ぐと思う」

お嬢「…え?」

男父「…あいつは長男として…大学を出たら家を継ぐつもりだった」

男父「けど、それじゃあ男は世間知らずのままここで暮らすことになる…」

男父「だからワシはあいつに…せっかくだから30歳になるまで、そのまま都会で遊んで来いと言ったんだ」

お嬢「…」

男父「それで…あわよくば嫁を見つけてくれればいいと…」

男父「そのまま…都会に住んでくれればいいと思っていたんだ」

お嬢「え?…で、でも!そんなことしたら田んぼや畑は…」

男父「ワシの代でなくなるだろうなぁ」

お嬢「そんな!」

男父「…この村はもうすぐ終わりだ。働きたくても働き口が無い」

男父「だから…若いもんはみんな街に行ったっきり帰ってこん」

男父「そんな村に男が帰ってきても…孤独なだけだ」

お嬢(お父様は…本当に男さんのことを考えてるんだ…)

男父「ワシとしては…お嬢さんが男の嫁になってくれればうれしいが…いろいろ事情があるんだろ?」

お嬢「え?」

男父「実は昨夜な、お嬢さんと叔父さんが話してるのを聞いちまったんだ」

男父「お嬢さん。あんた…いいとこのお嬢様なんだろ?」

お嬢「!?」

男父「…これはワシの我儘なんだが…それを承知で頼みます」

男父「男があっちに住んでる間は…男と仲良くしてやってくれんか?」

お嬢「…はい」

ガサガサ

男「おーい。こっちも掘ったぞ」

お嬢「あ…」

男「どうした?元気がないみたいだが」

お嬢「な、なんでもない!」

男父「男は不器用だって話してたんだ。なあ?」

お嬢「そ、そう!私が道に迷って男さんが道案内してくれたときのことを話してたんだ!あはは…」

男「なんだそれ?」

お嬢「まあまあ。細かいことは気にしない」

男父「…さて、それじゃあ帰るか」

男「ん?もう帰るのか?」

男父「今日食う分は採れたからな。叔父さんも呼んでくれ」

男「ああ、わかった」

ガサガサガサ…

お嬢「…」

男「…疲れたか?」

お嬢「え?そんなことないよ?なんで?」

男「いや…」

男(口数も少ないし…どうしたんだ?)

~最終日~

お嬢「お世話になりました」ペコッ

男姉「こっちこそ!妹ができたみたいで楽しかったよ♪」

男母「なんか娘が増えたみたいで楽しかったわあ」

男婆「またいつでもいらっしゃいね」

男母「男抜きでもいいからね♪」

お嬢「はい!」

男「おい!」

男父「…ほいっと。積み終わったよー」

執事「すみません。こんなにお土産貰っちゃって…」

男父「いいっていいって。こんなもんしかないから申し訳ないくらいだ」

男母「そうそう。それにね、田植えも手伝ってもらったし…米と野菜と山菜ぐらいしかないけどねえ」

男婆「どうか貰ってくださいな」

執事「…ありがたく頂きます」

男「それじゃ、そろそろ…」

お嬢「あ、うん…それじゃ…」

男姉「また都会の話聞かせてね」

男母「気をつけてね」

男婆「元気でね」

お嬢「はい。お婆ちゃんも」

男父『男のこと…よろしくお願いします』コソッ

お嬢「…」コクッ

男「なんだ?」

男父「男に襲われないようになって言ったんだ。なあ?」

お嬢「あははは。うん」

男「襲うか!」

執事「…じゃあ、出発します」

男姉「ばいばーい!」ノシ

男婆・男母「「またねー」」ノシ

お嬢「さようならー!」ノシ

男父 ペコッ

ブルルルル…

お嬢「…いい人たちだな…」

男「ガサツだったろ。その…すまんな」

お嬢「ううん。そんなことないって。素直で優しい、いい人たちだよ」

男「そうか…ありがとう」

お嬢「ん?」チラッ

男「…」

お嬢(なんだろう…微笑んでるような…寂しげな…そんな横顔…)

男(俺はいずれここに戻る…お嬢さんのこと…俺はどうしたいんだ…)

キュッ

男(!?手を繋いできた?)チラッ

お嬢「…」

男「…」

ギュッ

お嬢「!?」

男「…」

お嬢「…」

ブルルルル…

~翌週~

男「…へ?」

お嬢『だからぁ、この週末はうちに招待するって言ってんの!』

男「いや…なんでだ?」

お嬢『ほら、先週男さんの実家に泊まっただろ?だからそのお返しだって』

男「…そんなことしなくていい」

お嬢『男さんにはいろいろ世話になってるし、前からお返しをしたいって思ってたんだ』

お嬢『それで、男さんの実家に行かせてもらったから、今度はうちで持て成そうってな?』

男(お嬢さんは言い出したら人の言うことなんか聞かないからなぁ…)

お嬢『じゃ、今から迎えに行くから』

男「はあ…ちょっと待った」

お嬢『…なんだよ。そんなにイヤなのか?』

男「そうじゃなくてな。洗濯や買い物をしないといけないから、その後にしてくれ」

お嬢『わかった!じゃあ昼過ぎに迎えに行くわ』Pi

男「もしm…返事も聞かずに…」

男「…まずは洗濯だな」

~お嬢の屋敷~

男「…いつ見てもすごい家だ…」

お嬢「男さんの実家も大きかっただろ?」

男「うちの実家は田舎の農家だから、あれぐらいが普通なんだが…」

男「こんな都会で…実家の3倍ぐらいありそうだな…」

お嬢「そう?」

男「そうって…」

お嬢「そんなことより!早く中に入って!!」ドン

男「押すなって」

執事「いらっしゃいませ」

男「おj…執事さん。お邪魔します」

お嬢「…ぷっ」

男「しょうがないだろ?先週はずっとそう呼んでたから」

お嬢「はいはい。執事、男さんを客間に案内して」

執事「はい。…お嬢様、口調にお気をつけてくださいませ」

お嬢「分かりましたわ。では男さん、後ほど」

男「あ、ああ…けど、正直その口調には慣れないな…」

お嬢「あとで客間に行くから。それまで休んでてよ」

執事「お嬢様!」

お嬢「あははは。じゃあ後で」ノシ

男「ああ」ノシ

執事「まったく…」

男「…ここには俺たち以外の人は?」

執事「厨房に数名と家政婦が数名おります」

男「いや…お嬢さんの御家族は?」

執事「姉様がおられますが…」

男「…ごめん。まずいことを聞いた」

執事「いえ…」

男(お嬢さんの御両親は不在か…)

執事「こちらの部屋でございます」

男(すごい…ヨーロッパ調の家具に…でかいベッド…)

執事「後程お嬢様がお見えになりますので、それまでお寛ぎください」

男「そうします」

~食事中~

カチャカチャカチャ

男「…なあ」

お嬢「ん?」

男「このダイニングテーブル…広すぎだろ」

お嬢「気にしない気にしない」

男(この机…10人は一度に座れそうだな)

男「お嬢さんは…何人兄妹なんだ?」

お嬢「んー、3人兄妹で、一番上が兄様、次が姉様。私は末っ子だね」

男「そうか…ご家族は今日は…」

お嬢「父様と母様と兄様は仕事で世界中を飛びまわってて殆んど家に居ないよ…」

お嬢「御爺様と御婆様は別荘を転々として悠々自適に暮らしてるし」

お嬢「姉様は今日は家にいると思うけど…」

男「姉さん?」

お嬢「習い事ばっかしてるよ。相手もいないのに花嫁修業だって」

男「結構辛辣だな…」

お嬢「…よし!じゃあ料理の説明するから」

男「見たら分かる」

お嬢「いいから!こちらが肉じゃが、そして大根の浅漬け、味噌汁、御飯はきのこの炊き込みご飯でーす!」

男「うまそうだ」

お嬢「そ、そう?えへへ…」

男「じゃあ…肉じゃがから」

男 パクッ

お嬢「ど…どうかな?」ドキドキ

男「…うん、うまい」

お嬢「ほ、ホントに!?」

男「ああ。いい味だ」

お嬢「っ!」グッ

男「…なに小さくガッツポーズしてるんだ?」

お嬢「な、なんでもない!あはは…あ、ほ、他のは?」

男「味噌汁もいい出汁が出てるし、炊き込みご飯もうまい」

お嬢「そ、そっか!?あ、あの…お代わりあるからっ!」

男「ああ。お嬢さんも一緒に食べよう」

お嬢「え?でも…私は給仕してるから…」

男「食事は大勢で食べたほうがうまい。そうだろ?」

お嬢「そ、そうだけど…」

ガチャッ

嬢姉「あら?お邪魔だったかしら?」

お嬢「ね、姉様!?」

男(お嬢さんのお姉さんか…似てるな…)

嬢姉「お嬢、お客様かしら?御紹介してくださる?」

お嬢「あ、はい…こちら男さん。社会勉強の先生です」

嬢姉「初めまして。私、お嬢の姉の嬢姉と申します」チラッ

男「初めまして。男です」

嬢姉 ジー

お嬢「な…なんですか?テーブルを見つめて…」

嬢姉「ふうん…」

お嬢「な、なんでしょうか」

嬢姉「…何とか形になりましたわね」ニコッ

お嬢「ね、姉様?ナンノコトデショウ?」

男「?」

嬢姉「どうしたのお嬢?あ、男さん。お嬢ねぇ…」

嬢姉「この一週間、厨房でなにやら練習していたみたいですわよ?」

お嬢「姉様!」

男「…へ?」

嬢姉「じつh」
お嬢「わーっ!わーっ!わーっ!!//」

嬢姉「お嬢?大きな声を出すとお客様に失礼ですよ?」クスクス

男「…ひょっとしてこれ…お嬢さんの手料理なのか?」

お嬢「ああそうだよっ!私が作ったんだ!!文句あっかよ!!」

男「ない。好みの味だ」

お嬢「こ、好みって…//」

嬢姉「…お嬢。言葉が乱れてるわよ?」

お嬢「…いーよ別に。男さんにはとっくにバレてるし」

嬢姉「あら?そうでしたのね…」

男「美味いよ。ありがとなお嬢さん」ニコッ

お嬢「あ、そのっ!えっと…あっ!茶碗が空だ!お代わり入れてくる!!貸してっ!!」

トテテテテ…

男「おーい…って、もう行ってしまった…」

嬢姉「ふふふ。お嬢、明るくなりましたわ。男さんのおかげですわ」

男「え?俺は大したことはしてないって。それにしてもお堅い口調だな」

嬢姉「あら、ごめんなさい。もっと砕けたほうがいいのかしら?」

男「まあ、俺は田舎者だから。その口調だと聞いてて疲れる」

嬢姉「そうですのね。じゃあ…これぐらいでいいかな?」

男「なんだ。普通に喋れるんじゃないか」

嬢姉「そりゃあね。あんなの社交界のパーティーか気を抜けないときぐらいしか使わないわよ」

嬢姉「もっとも、お嬢が怒ったときみたいな乱暴な言葉遣いはないけどね」

男「ははは。そうだろうな。嬢姉さんは普通の女の子みたいだし」

嬢姉「…その笑顔のおかげかもね」

男「ん?」

嬢姉「…男さん、お嬢は繊細なの」

男「…」

嬢姉「以前のお嬢はね、人が信じられなくて…人と深く係わるのをずっと避けてたの…」

嬢姉「社交性がないわけじゃないよ?ただね、なんて言うんだろ…」

嬢姉「きっとね、“上辺だけの付き合い”をうまくこなせなくて…」

嬢姉「それでストレスを感じて引きこもったりしてね…」

嬢姉「それからはストレスがたまると目立たないように部屋の隅に居たりパーティーを抜け出したりして…」

嬢姉「すごい方向音痴ですぐに迷うのにね」クスッ

男(そういえば最初にあったときもパーティーを抜け出したって言ってたな…)

嬢姉「でもね、最近はすごく落ち着いてるのよ。よく笑うしね」

嬢姉「それはきっと男さんのおかげね。感謝するわ」

男「いやいや。そんなことはないって」

嬢姉「どうして?」

男「しょっちゅう言い合いもするしな。よく喧嘩にならないなって感心する」

男「たぶん…お嬢さんは頭がいいから喧嘩にならないようにうまく話題をそらしてるんじゃないか?」

嬢姉「…」

男「うん、浅漬けも辛すぎず、良い加減に浸かってるな」ポリポリ

嬢姉「…私も男さんみたいな人と出会いたいなぁ」

男「俺みたいな?そんなハードル下げなくてもいいだろ」

嬢姉「ふふふ。ねえ男さん。赤外線しよ?」

男「え?」

嬢姉「お嬢のことで何かあったら相談に乗るわよ?」

男「けど」

嬢姉「それとも…一人で乗り越える自信がある?」

男「…はい。受信させてください」

嬢姉「はいどうぞ。ふふふ」Pi

男「…よし。じゃあこっちからも…」Pi

嬢姉「…はい、オッケーよ」

ガチャ ガラガラガラ

嬢姉「…何をワゴンに載せて引っ張ってきたのかしら?」

お嬢「炊飯器」

嬢姉「…それをどうなさるの?」

お嬢「ちまちまお代わりするのが面倒だから持ってきたんだけど?」

ペタペタペタ

お嬢「はい、どうぞ」

嬢姉「すごい盛り方ですわね…私のお茶碗の5杯分はありそうですわ…それは虐めではないのかしら?」

お嬢「いいからいいから」

男 バクバクバク…

男「…ふう…」

嬢姉  アゼーン

お嬢「な?」

嬢姉「…完食…しましたわね…」

お嬢「へへへ。男さんの食べる量はわかってるからさ」ニコッ

嬢姉「あら」

男「肉じゃがお代わり」

お嬢・嬢姉「「…」」

お嬢「…さすがにそれは食べすぎじゃ…」

男「うまいからしょうがない。もう無いのか?」

お嬢「そ、そんなに言うなら入れてきてやる♪」ニヤケッ

嬢姉「…ふふっ」

~風呂~

バシャッ バシャッ

執事『お湯加減はいかがですか?』

男「いい加減です」

執事『お着替えをお持ちしましたので湯上りにお召しください』

男「すみません」

男「ふぅ…」

男(なし崩し的に泊ることになってしまった…)

男「…ここまできたら開き直ろう…けど…」

ヒロビロー

男「…ちょっとした温泉並みの広さだな」

男「…さて、上がるか」ザバァ

フキフキ

男「着替えは…これか?」

男「…」

男「…パジャマだな…絹の」

~客間~

Pi Pi Pi…

男(メールも特に急ぎのものはないな…)

コンコン ガチャ

お嬢「何してんだ?」

男「メールチェックだ」

お嬢「ケータイで?」

男「ここにはPCは無いからな」

お嬢「じゃあ私の部屋に行こうよ。PCあるし」

男「え?」

お嬢「なに?」

男「…いいのか?」

お嬢「いいから誘ってるんだけど?」

男「…意味、分かってるか?」

お嬢「なんの?」

男「なんのって…オンナがオトコを部屋に連れ込もうとしてるんだが?」

お嬢「はあ?…あっ!//」

男「わかったか?」

お嬢「ちがっ!そう言う意味じゃなくて!!//」

男「わかってる」

お嬢「なっ!//」

男「不用意にそういうことを言うなって。これも社会勉強だ」

お嬢「う、うるさーい!とにかく!!さっさと立ってキリキリ歩け!!」ゲシゲシッ

男「痛いって」

~お嬢の部屋~

男「どんなPCかと思ったら…ノートPCか」

お嬢「え?だってネットとメールと動画再生が出来りゃあいいんだから、これでいいと思って…」

男「まあ、使いやすいくていいんだが」

お嬢「で?何するんだ?」

男「あ、ああ。WEBメールをチェックするかな」

お嬢「わかった。とりあえず座って」

男「ん」

お嬢「後はお好きなように」

男「その前にログインしてくれ」

お嬢「あ、ちょっと待って」

グイッ

男(お、お嬢さんの胸が肩に!?)

フワッ…

男(それに…いい匂いが…あ…いかん…勃ちそうだ…)

ピリピリピリ ピリピリピリ

男 ビクッ

お嬢「なに?」

男「い、いや…電話だ」Pi

男「もしもし?」

嬢姉『おじゃまだったかな?』クスクス

男「…なんの用だ」

嬢姉『御挨拶ね。忠告してあげようと思ったのに』

男「忠告?」

嬢姉『言い忘れてたけどこの家、防犯カメラだらけなの』

男「…へ?」

嬢姉『だからね、お嬢を押し倒してもいいけど、証拠が残るわよ?』クスクス

男「…そんなことはしない」

嬢姉『でもあなたの肩にお嬢の胸が押し付けられてるじゃない?』

男 ギクッ

嬢姉『で、顔も当たっちゃってるように見えるんだけど。ねえ、ちゅーしてない?』

男「してないっ!」

お嬢「ひっ!」ビクッ

男「あ、すまん…」

お嬢「い、いいけどさ…なんかあった?」

男「い、いや…なんでもない」

嬢姉『…なあんだ、もう離れちゃったんだ。つまんないなぁ』

男「切るぞ。おやすみ」Pi

男(…手を出さなくてよかった…)

~夜中・客間~

男(PM11:00だっていうのに…布団も枕も柔らかすぎて…寝付けない…)

コンコン

男「ん?」

ガチャッ

お嬢「…もう寝たか?」

男「…まだだ」

お嬢「あ、起きてたんだ」

男「どうした?」

お嬢「えへへへ。まだ話し足りなくってさ」

男「…そうか」

お嬢「…迷惑…かな?」チラッ

男「いや、俺も目が覚めててな」

お嬢「そっか…あのさ」

男「なんだ?」

お嬢「…そっち行ってもいいかな?」

男「…どうぞ」

お嬢「ありがと…やっぱり優しいな」

男「そんなことないだろ」

お嬢「そんなことあるって。やっぱり育った環境かな?」

男「どうかな?」

お嬢「…あのさ」

男「なんだ?」

お嬢「…男さんは将来のこと…考えてる?」

男「…その“男さん”って言うの、やめないか?」

お嬢「じゃあなんて呼べばいいんだよ」

男「“男”でいい」

お嬢「…そっか。じゃあ私も“お嬢”って呼んで」

男「ん…」

お嬢「それで…さっきの質問だけど…」

男「将来…か」

男(隠したっていずれは分かることだし…)

男「俺は…30になったら実家に戻って…農家を継ぐ」

お嬢「…」

男「…」

お嬢「そっか…」

男「驚かないのか?」

お嬢「男の実家に行ったからね…」

男「そうか…」

お嬢「きっと…男はさ、優しいから」

お嬢「だから…お父様やお母様のこと、ほっとけないんだろ?」

男「…優しくはないぞ」

お嬢「じゃあそういう事にしておく。けど…」

お嬢「…羨ましいな」

男「なんでだ」

お嬢「男はさ…自分の意思でそうしようって思ってるんだろ?」

男「…ああ」

お嬢「私はさ、きっと…親が決めた相手と結婚するんだろうな…」

お嬢「だからさ、そうやって自分で将来を決められるって…羨ましいと思う」

男「そうか…」

~深夜~

男「zzz…」

コンコン

男「ん…zzz…」

ガチャ ソロソロ…

お嬢『…男、寝たか?』コソッ

男「zzz…」

お嬢「…よく寝てる…」

お嬢 ジー

お嬢「…ホントに飽きないよなぁ、男の寝顔…」ナデナデ

お嬢「イケメンじゃないし…カッコいいわけでもないのになぁ…」

お嬢「…けどさ」

お嬢「…男はいいオトコだよ。男の顔を見ているだけで…こんなにドキドキしてるんだからさ…」

お嬢「…」

お嬢「…農家…か」

~~~~~~~~~~

  先輩女「…あ~あ、なんで男は農家の長男なのかなぁ…」

~~~~~~~~~~

お嬢「…」

~~~~~~~~~~

  男父「そのまま…都会に住んでくれればいいと思っていたんだ」

~~~~~~~~~~

お嬢「…だけど…」

~~~~~~~~~~

  男「俺は…30になったら実家に戻って…農家を継ぐ」

~~~~~~~~~~

お嬢「…やっぱり男は…そうするんだろうな…」

~~~~~~~~~~

  執事「では…今日のような作業を毎日続けられますか?」

~~~~~~~~~~

お嬢「…私に…出来るのかなぁ…」

男 zzz…

お嬢「…」

お嬢「…なあ」

お嬢「…男が30歳になるまで…それまで…」

お嬢「ずっと…一緒に居させてよ…」

お嬢「男はさ…私が唯一安心できる“居場所”なんだからさあ…」

男 zzz…

お嬢「…あと3年か…」

お嬢「それまでには…強くなるからさあ…」

お嬢「もしその時が来ても…先輩女さんみたいに…気持ちに折り合い…つけられるようになるからさあ…」

男 zzz…

お嬢「…」

お嬢(カメラはあそこだから…こっち側からなら見えないはず…)

お嬢「…ん」

チュッ

男「ん…zzz…」

お嬢「…へへっ。一応ファーストキスなんだ」

お嬢「…おやすみ、男」バフッ

~朝~

男 ネボケー

お嬢「スー…スー…」

男(やっぱり…スッピンでもきれいだな…)ナデナデ

男(可愛い寝顔だ…ところで…)ナデナデ

男「…なんでお嬢が隣で寝てる?」

今日はここまでにします
おやすみノシ

乙!
男が農家とは驚いた!


男じゃなくてこの>>1が農家じゃね?

お疲れさま!

いやーすごいね
話に引き込まれるわ
誤字脱字も無いし内容もしっかりしてる

普通に本読んでる感じで一気読みしたよ

続きが楽しみです

次が待ち遠しい

相変わらずの投下量乙です

投下量すごいな・・・

男の田舎の描写が自分の田舎の風景とマッチして読んでる途中でうるっときてしまった
次も楽しみにしてます
あとワラビはショウガ醤油が至高だと思う

次も楽しみにしてます

投下量に軽くめまいがした


いいぞ

あしたからの代掻き
頑張ったらお嬢さんに逢えるかな?




マンドクセエ イヤダ イヤダ



幼女「だかあね」の人だよな

>>275
こんなところにいたのか
さあ、俺と一緒にさっさと下準備する作業に戻るんだ



農家あるあるわかるわぁ……
俺のとこは来週だな

乙次はいつかな?

>>266-279 レスありがとうございます。今から投下します。

>>267 高校までやってましたwww

>>272 ショウガ醤油…やってみますwww

>>275 >>277に連れてかれたのか…(-人-)ナムー

>>276 そうです

~朝食~

お嬢「今朝は和食にしてみたんだけど」

嬢姉「私も食べていいの?」

お嬢「うん。お代わりもあるから」

男(昨夜はお嬢と話しをしたあとすぐに寝たはず…)

お嬢「はい、お味噌汁」

男(酒を飲んだ記憶もないし…)

お嬢「はい、御飯」

男(薬を飲まされたわけでもないし…)

お嬢「…聞いてる?」

男「ん…ん?」

お嬢「なんだ、一緒に寝てたこと気にしてんの?」

男「ぶっ!」

嬢姉「え?そんなっ!はしたないわ男さん!!」

男「ちがうっ!いや違わないが違う!!」

嬢姉「汚らわしいっ!ケダモノっ!!」

お嬢「姉様、ワタクシ、もう他の人のところへは嫁げないのですね」シクシク

嬢姉「ああっ!かわいそうなお嬢!!」

男「…いい加減お芝居はやめろ」

嬢姉「あら、せっかく調子が出てきたところですのに…」

お嬢「へへっ」

男「まったく…ホントに何もないって」

嬢姉「分かってるわ。冗談よ。ふふふ」

男「心臓に悪い…」

お嬢「でもスッキリしたんじゃない?」

男「なにがだよ」

お嬢(でも…男に嫁ぐ…か…//)

男「ん?何赤くなってんだ?」

お嬢「なっ!なんでもないよっ!!」ペシペシ

男「痛いから叩くな」

~数週間後・男の会社~

男「この間の変更案、クライアントに好評だったぞ」

男友「よかったぁ。あれ、結構苦労したからなあ…」

後輩女「あたしも手伝ったんだよー」

男友「ありがとな、後輩女」ナデナデ

後輩女「えへへー♪」

男「ははは。男友が作るシステムはいつもクライアントには評判がいいな」

男友「その分営業の連中には文句を言われるけどね。コストダウンしろって」

男「クライアントが満足してこそ次の仕事につながる、だろ?」

男友「そうなんだけどなー。コストアップしてることには変わりないし?」

男友「といっても、このスタイルは変える気はないけどね」ニコッ

男(男友も後輩女と付き合いだしてから、急に自信がついてきたな)

トントン

先輩女「男、ちょっといい?」

男「なんだ?」

先輩女「来客よ。会議室に通したわ」

男「会議室?打ち合わせコーナーじゃなく?」

先輩女「ええ」

男「…誰だ?」

先輩女「さあ?」

男「…とりあえず行ってくる」

先輩女「…ちょっと」

男「ん?」

先輩女「…なんだか胡散臭いオトコも一緒だから、何かあったらすぐに呼んでね」

男「…分かった」

~会議室~

コンコン

男「失礼します」

ガチャ

男(ソファに中年女性、その後ろに黒服の男がふたり…か。確かに胡散臭い)

?「…あなたが男さん?」

男「はい」

?「ふうん…」

男「…失礼ですが、そちらは…」

?「…お嬢の母です」

男「!?」

?改め嬢母「お座りになって?」

男「…はい」

男(これがお嬢の母親…お嬢に似てきれいな人だ)

男「それで…どういったご用件でしょうか?」

嬢母「お分かりになっているでしょう?」

男「…お嬢さんのことですね?」

嬢母「ええ」

嬢母「…まずはこれを見ていただきたいの」パチン

黒服 サッ

男(ポータブルMP4プレーヤー?)

嬢母「…」トントン トン ザザー…

男(あれは…俺が寝ている…この間お嬢の家に泊まった時の動画か?)

カチャ

男(だれか入ってきた。あれは…お嬢か)

ナデナデ

男(お嬢の奴…あんなことしてたのか…)

チュッ

男「!?」

バフッ

男(布団にもぐってきた…それで朝起きた時にお嬢が隣で寝てたのか…)

トン

嬢母「…これはあなたがお泊りになったときに防犯カメラに写っていた映像です」

男「…そのようですね」

嬢母「お嬢はあの部屋には防犯カメラが2台あることは知らなかったの」

嬢母「だから、もうひとつのカメラの死角に入っていたんですけど…」

男「…もう一台のカメラにすべて映っていたと」

嬢母「そうです」

男「なるほど…」

男(俺は疾しいことはしていない…ここは様子を見て…)

嬢母「…落ち着いているのね」

男「…様子見です」

嬢母「ふうん…馬鹿じゃないようね」

男「そうでもないです」

嬢母「…」

男「…」

嬢母「お嬢は男さんに好意を持っています」

男「…」

嬢母「…お嬢は自由に育ててきました」

嬢母「決して押し付けるのではなく、自主性に任せて…自分の行動に責任を持つように…」

嬢母「そして、お嬢が大人になって…そのうち好きな人と恋愛をして…結婚して…そう思ってましたの」

嬢母「でも…それが…苦労することが分かっている場合は…どうしたらいいのかしら?」

男「…」

嬢母「…分かっていらっしゃるわよね?」

嬢母「…お嬢には…農家の嫁は務まりません」

嬢母「力も経験もないお嬢には…農作業できないでしょう」

嬢母「それに…あなたのご実家、娯楽施設どころか、病院も何もないところでしたわよねえ?」

嬢母「そんなところではお嬢は…すぐに飽きてしまいますわ」

男「…」

嬢母「…ですから男さんには…節度ある大人のお付き合いをお願いしますわ」

男(言葉を選んではいるが…手を出すなってことか)

黒服 ボソボソ

嬢母「わかったわ…男さん。そろそろ失礼しますわ」

男 ペコッ

母親「…それにしても変わった会社ね。省エネルギー化コンサルタントなんて。うちでも始めようかしら?」

男「…脅しですか?」

母親「あら。そんなつもりはなくってよ?」

男「どうですかね…」

母親「ふふふ。では、ごきげんよう」

ガチャ パタン

男「…ふぅ」

男「…現実は甘くない…か」

~週末~

お嬢「ソフトクリームってうまいけどすぐに溶けるから、食べるのは戦争だな!」

男「そうだな…」

お嬢「ん?」

男「…」

お嬢「…なあ」

男「ん?」

お嬢「なんかあった?今日はなんか変だけどさ…」

男「ああ、すまん。ちょっと考え事してた」

お嬢「考え事?どんな」

男(このままお嬢とこうして会っていてもいいのか考えてたとは言えない……)

男「…仕事のことだ」

お嬢「は?せっかくの休みなんだからさ、仕事のことは忘れて楽しもうよ」

男「…そうだな」

お嬢「よし!じゃあ賑やかなとこに行こう!で、パーッと忘れよう!!な!!」

男「賑やかなところか…ゲーセンにいくか?」

お嬢「ゲーセン!?」キラキラ

男「初めてじゃないだろ」

お嬢「そうだけどさ、テンション上がるー!」ワクワク

男「ははは」

お嬢「おっ!」

男「ん?」

お嬢「やっと笑ったな!」ニコッ

男「あ…」

男(お嬢のヤツ、俺を気使って…)

お嬢「早く行こう!ほら!!」グイグイ

男「そんな引っ張るな」

男(俺の我侭だ…このままお嬢と一緒にいるのは…)

お嬢「なあなあ!何からする?格ゲー?シューティング?」ニコニコ

男(けど…もう少しだけ…お嬢の笑顔をみたい…)

男(…この関係をもう少し続けたい…)

お嬢「今日は男の奢りな!」

男「おい」

~数週間後・男の部屋~

ブィーン

男「こんなもんか」

男(洗濯も掃除も終わったし…そろそろ出かける準備を…)

男(どこに行くか…とりあえず“はぐるま”に行ってから決めるか…)

ピリピリピリ ピリピリピリ…

男「電話か…ん?姉貴から?」Pi

男「もしもし?」

男姉『あ!男!!大変なのよ!!』

男「なにが大変なんだ?」

男姉『父さんが!爆発してガスが怪我をして!!』

男「意味が分からん。落ち着け」

男姉『それで!救急車で父さんが病院に!!』

男「なに!?」

男姉『隣町の病院じゃ手におえないからって!その隣の町に搬送中なの!!』

男「なんでそんなことに!?」

男姉『だからあ!』

男「深呼吸しろ!落ち着いて説明してくれ!!」

男姉 スーハー

男「…落ち着いたか?」

男姉『うん…ゴメン。取り乱してた』

男「いいよ。何があった?」

男姉『父さん、畦の雑草をバーナーで焼こうとして…』

男姉『そしたらホースに穴があいてたみたいで…』

男姉『それで…ライターをつけたら漏れたガスが爆発して…』

男「!?」

男姉『母さんは車が陰になって大丈夫だったけど…父さんは…』

男「それで親父の容態は?」

男姉『救急車に乗るまでは足が痛いって言ってたけど今は分かんない…』

男姉『お母さんが一緒に救急車に乗ったんだけど…連絡が無くて…』

男「!?」

男姉『ねえ男…どうしよ…父さんが死んじゃったら…』グスッ

男「大丈夫だ。親父は強い」

男姉『ヒック…そうだよね…大丈夫だよね?』

男「俺も今からそっちにいく。病院が分かったらまた連絡してくれ」

男姉『分かった…ヒック…』Pi

男「…とにかく荷物をまとめて…」

ピリピリピリ Pi

男「もしもし!」

お嬢『うわっ!』

男「…はぁ…お嬢か」

お嬢『なんだよ、その残念そうな反応は。もうすぐ男のアパートだけどさ、今日はどうする?』

男「…すまん。今日はこれから実家に帰る」

お嬢『は?なんで?』

男「親父が怪我をしたらしい」

お嬢『…え?』

男「だから今日は悪いが出かけられない」

お嬢『え?…え?』

男「すまん…」

お嬢『あっと…その…駅まで行くんだよな?』

男「ああ。もう少しで準備が出来る」

お嬢『じゃあ車で行く。駅まで送るから』

男「ありがとう。今回は甘えさせてもらう」

お嬢『じゃあ、外で待ってるから』

男「ありがとう、お嬢」Pi

~駅に向かうリムジンの中~

男「…」

お嬢「…なあ」

男「…」

お嬢「きっと大丈夫だって」

お嬢「お父様はすごくタフなんだから。な?」

執事「そうです。男さん」

男「…そうだな」

お嬢・執事「「…」」

お嬢「…私も…一緒に行こうか?」

男「…いや、病院に行って様子を見てくるだけだから…」

お嬢「そっか…」

男「…お嬢、すまない…切符まで用意してもらって…」

お嬢「そんなことはどうだっていいよ」

お嬢「それより…お父様の様子がわかったら教えてよ。な?」

男「…わかった」

執事「駅に到着しました!」

~病院~

男姉・男母「「…」」

男「姉貴!」

男姉「男!」

男「どうだ?」

男姉「まだ治療中…」

男母「大丈夫だよ。あの人は頑丈だから。あははは」

男「お袋…婆さんは?」

男母「婆ちゃんは家で留守番してるよ」

男「そうか…」

男姉「もうすぐ旦那もくるって」

男「姉貴…子供はどうした?」

男姉「婆ちゃんが見てくれてる…」

男「じゃあ、姉貴は旦那さんと一旦家に帰って待っててくれ」

男姉「…うん。ちびのことも心配だしね…」

ンガー

一同「「「!?」」」

医師「御家族の方ですね?」

男「はい」

男母「あの!あの人は!あの人は!!」

医師「御安心ください。命に別状はありません」

男母「あ…」ヘナヘナ…

男姉「よかったね母さん!」グスッ

医師「…容態を説明しますので、どなたか一緒に…」

男「私が行きます」

医師「それではこちらへ」

男父 シュー シュー

医師「まだ麻酔が効いていますので…」

男「そうですか…それで…」

医師「…火傷も思ったより広範囲では無く、命に別状はありません。ですが…足に後遺症が残ります」

男「後遺症?」

医師「こちらの写真で…」

男(レントゲン写真!?)

医師「…ここ。左膝の関節ですが…骨折してるのが分かりますか?」

男「…え?」

医師「粉砕骨折しています。退院後も膝に器具をつけていただくことになります」

男「…治らないんですか?」

医師「骨が元通りの形になれば…でもこれはほぼ不可能でしょう」

男「そうですか…」

医師「完治はしますが後遺症は…残ります」

医師「ですので、立ち仕事や足をよく使う作業は出来ないと考えてください」

男「…農作業は…」

医師「椅子に座るなど、出来るだけ膝に負担をかけないようにすれば出来ますが…」

男「…ムリだということですね」

医師「…」

男「…わかりました」

医師「…では、入院同意書などの手続きをしてください」

~男の実家・居間~

男「---と言うことなんだ」

男母「…まったく抜けてんだから。あの人は」

男姉「…あのさ」

男「ん?なんだ?」

男姉「あたし…チビがいるじゃん?だから…ちょっとぐらいなら手伝えるけど…」

男「わかってる。姉貴は婆さんと交代で親父の病院に詰めて欲しい」

男姉「…ごめんね?」

男「しょうがないさ」

男母「大丈夫よ。こっちのことはあたしがやるから。あははは」

男「…うん。今はそれで頼む」

男母「まあね、しばらくは水の管理と農薬散布だけだからさ」

男「…母さん、大丈夫か?」

男母「大丈夫大丈夫。どうにもならなかったら男に電話するから。あははは」

男「分かった…」

~夜中~

男(そうだ。お嬢にも電話しておかないと…)

Pi Pi Pi  プルッ
お嬢『もしもし!』

男「出るの早いな」

お嬢『ずっと待ってたんだぞ!なのに全然電話が来ないから…心配したんだぞ!!』

男「ははは。ゴメンゴメン」

お嬢(男が笑ってる…大したことなかったのかな)

お嬢『まったく…それで?』

男「ああ、命には別状は無い」

お嬢『そっか…よかったな!!』

男「ああ。お嬢や執事さんにも心配かけた」

お嬢『まあまあ。そんなのはどうでもいいよ』

男「ありがとう。ただ…親父はもう農作業は出来ない」

お嬢『…え?』

男「膝の関節を骨折しててな。完治しても後遺症が残るそうだ」

お嬢『そんな…』

男「まったく…親父もドジったな」

お嬢『…』

お嬢『…男』

男「なんだ?」

お嬢『男は…これからどうするんだ?』

男「そうだな…今は考えてない」

お嬢『…』

男「…落ち着いてからゆっくり考えるよ」

お嬢『…そっか』

男「今日はいろいろあったから、一晩頭を休めるさ」

お嬢『そっか…疲れてたらロクなこと考えないもんな』

男「ああ」

お嬢『…わかった!今日は早く布団に潜って早く寝ろ!!じゃあな』Pi

男「ふぅ…」

男(お嬢のヤツ…相当心配してたみたいだな…)

男(だからこそ…ちゃんと終わらせないと…)

男「…これも…社会勉強か」

~三日後・喫茶「はぐるま」~

お嬢 ズズー…

ママ・先輩女「「…」」

後輩女「…ねえ」

男友「ああ…注文してから一言も喋ってないよ…」

お嬢 フゥ…

先輩女「…男のアホ。連絡ぐらいよこしなさいよ…」

ママ「きっと忙しいのよ。男ちゃん…」

先輩女「でも…」

カランカラン

お嬢 ピクッ

ママ「あら、いらっしゃい」

男「いつもの」

お嬢「…あっ」

ママ「はいはーい」

お嬢「…」

男「よっ」

お嬢(男だ!帰ってきたんだ!!)パァアア

男「この間は助かった。ありがとな」

お嬢「ベ、別に…」ソワソワ

ママ「…くくっ」

男「ただいま」

お嬢「…っ!な、なんだ。もう帰って来たのか?もっとゆっくりしてくればいいのに」

ママ「…あはははは!」

男「どうした?」

ママ「あはははっ!…ごめんなさい。おかしくって」

男「?」

ママ「はぁ…お嬢ちゃんね、毎日ここにきて、男ちゃんはまだ帰ってこないのかってみんなに聞いてたのよ?」

お嬢「!!」

ママ「それなのにさっきの素気ない態度…もうおかしくって!」

お嬢「ママ!」

男「…」

お嬢「…どうしたんだ?」

男「いや…」

先輩女「…」

お嬢「…なんか元気ないな…疲れてる?」

男「…いや…」

お嬢「そうかな…」

男「どう切り出すか考えててな」

お嬢「切り出す?」

先輩女「男…あなたまさか…」

男「…」

お嬢「よくわかんないけどさ、疲れてるんじゃない?」

男「まあ…な」

お嬢「今日はもう帰って寝たら?明日から会社だろ?」

男「…明日、辞表を出す」

一同「「「「「!!」」」」」

男「…田舎に帰ることにした」

お嬢「…え?」

後輩女「そ、そんな…」

男友「急すぎるよ…」

先輩女「…」

男「元々30になったら田舎に帰る予定だったんだ。それがちょっと早くなっただけだ」

お嬢「え?…え?」

ママ「そっか…いつ帰るの?」

男「仕事の引き継ぎがあるからな」

先輩女「…1ヶ月ぐらい欲しいな…」

男「…わかった」

お嬢「…」

男「それで、みんなにもお別れを言わないと…て思ってな」

お嬢「い…だ」

男「ん?」

お嬢「…嫌だ!」

男「お嬢…」

お嬢「だって!男と出会って!いろんなこと経験して!!楽しいことがいっぱいあって!!!」

男「いずれは経験するはずだった」

お嬢「違う!どれもみんな!男がいたから!!男といっしょだから!!!だから!!!」

男「…それは違う」

お嬢「違わない!」

男「…違うんだ、お嬢」

お嬢「違わないっ!!」

男「…それは社会勉強だ。俺でなくてもよかった」

お嬢「違う!そうじゃない!!私は男が!!」

男「それが違うって言ってるんだ!」

お嬢 ビクッ

男「お嬢は…」

お嬢「…」

男「…お嬢はようやく世間の見方がわかってきたところなんだ。俺はその取っ掛かりに過ぎない」

お嬢 キッ

男「…お嬢はこれから先…世間で見聞を広めて…」

男「…自分なりの価値観を作るんだ。だから取っ掛かりにしがみつくな」

お嬢「…わかった」

男「お嬢…」

お嬢「…男と一緒に行く」

男「おい!」

お嬢「男と一緒に行く!私にとって男以上に価値のあるものなんてない!!だから連れてって!!!」

男(俺だってお嬢を連れて行きたい!けど!!)

~~~~~~~~~~

  母親「…それにしても変わった会社ね。省エネルギー化コンサルタントなんて。うちでも始めようかしら?」

~~~~~~~~~~

男(そんなことをしたら皆に迷惑がかかるんだ!)

男「…無理だ」

お嬢「なんで!」

男「お嬢には農作業は出来ない」

お嬢「そんなの!やってみないとわかんないだろ!!」

男「あそこは刺激がなさ過ぎる。お嬢はすぐに飽きる」

お嬢「そんなことない!」

男「…はぁ…」

お嬢「なぁ…頼むからさぁ…」ポロッ

男「…お嬢」

お嬢「…」グスッ

男「…俺はお嬢を幸せにする自信がない」

お嬢「…え?」

男「…お嬢の家は資産家だ。それに気品がある」

お嬢「…それがなんだよ…」

男「だが、俺はがさつな田舎者だ。俺は…お嬢とはつりあわない」

お嬢「そんなことないって!」

男「だから…ついてこられても困るんだ!」

お嬢「!?」

男「…」

お嬢「…」

お嬢「…男がそんなふうに考えてたなんて思わなかった…」

男「…」

お嬢「…わかりました。田舎でもどこへでも行ってください」

男「お嬢…」

お嬢「そして…もう会うこともないでしょう」

男「…へ?」

お嬢「ですから」








お嬢「二度と私の前に現れないでください」

男「…そっか、ごめんな」

お嬢「…さようなら」

男「うん…さようなら…」

男「ママ。世話になった」スッ

ママ「…」プイッ

男「…」

カランカラン パタン

先輩女「…お嬢ちゃん」ソッ…

ガバッ

カランカラン バタッ!

ママ「…馬鹿ねぇ」

先輩女「男も…いっぱいいっぱいだったわ…」

ママ「ううん…男ちゃんもだけど…あなたもよ」

ママ「…引き止めたかったんでしょ?」

先輩女「…うん」グスッ

~路上~

トテテテテ

お嬢「はあ、はあ、はあ」

お嬢(ちくしょう!ちくしょうちくしょう!!)

男 スタスタ

お嬢「はあ…いた!」

お嬢「…バッカヤロー!!」

男 ピクッ

お嬢「てめえは大バカヤローだーっ!!」

お嬢「一緒に行くって言ってんだろーがっ!!」

お嬢「私はっ!男が居たらそれでいーんだよーっ!!」

お嬢「わ、私をっ!ふ…ふっ…振ったことっ!!一生後悔しやがれーっ!!!!」

男 スタスタスタ…

お嬢「バ…バッカヤローッ!!!」

男(これでいい…これで…)

~リムジンの中~

お嬢「…」

~~~~~~~~~~

  男「お嬢の家は資産家だ。それに気品がある」

~~~~~~~~~~

お嬢「…なんで…」

~~~~~~~~~~

  男「だが、俺はがさつな田舎者だ。俺は…お嬢とはつりあわない」

~~~~~~~~~~

お嬢「なんで私は…あの家に生まれたんだろ…」

お嬢「…住む世界が違う…」

お嬢「男は…最初から分ってて…だから“社会勉強”って…」

お嬢「なのに私は…違う世界を見て…」

お嬢「…そこに行きたいなんて…夢を見てたんだ…」

お嬢「これは夢…夢なんだから…」

お嬢「だから…もう眼を醒まさなきゃ…」

お嬢「眼を醒まして…いい夢を見たってさ…そう言って笑えばいいんだ…」

お嬢「夢なんだから…笑えるはずなのに…なんで…」

お嬢「…なんで涙が…出てくるのかなぁ」ポロッ

執事「…お嬢様。もうすぐ私めの好きなラジオ番組が始まります」

執事「音量を上げますので後席との仕切りを上げさせていただきます」

ウィーン…

執事「…泣くことは決して恥ずかしいことではありませんよ」

お嬢「!?」

ウィーン キュッ

お嬢「うぅぅ…ヒック…う…うわぁああああん!!!」

お嬢「うわあああん!!おっ…おとっ…おとこぉおお!!!」

お嬢「離れたくないっ!離れたくないよぉお!!」

お嬢「苦労してもっ!ヒック…男と一緒ならっ!!ヒック…がんばれるのにっ!!!」

お嬢「男とっ!…い、一緒ならっ!!何にも、いらないのにっ!!!全部、捨てられるのにっ!!!!」

お嬢「うわぁあああん!!うわぁあああん!!!」

執事(…こちらの道のほうが遠回りですね…)クイッ

~1週間後・男の会社~

カタカタカタカタ

男「このプロジェクトは…クライアントに最終確認を取って…と」

カタカタカタカタ

ピリピリピリ ピリピリピリ

男「電話か…嬢姉!?」

ピリピリピリ ピリピリピリ

男「…」

ピリピリピリ ピッ

男「…もしもし?」

嬢姉『男さん?』

男「ああ。久しぶりだな」

嬢姉『そうね…』

男「…」

嬢姉『単刀直入に言うわ…あのね?お嬢のことなんだけど…』

嬢姉『部屋に閉じこもってて…出てこないの』

男「…」

嬢姉『…お嬢ね…先週、家に帰って来たときにはもう…魂が抜けたみたいだったわ』

嬢姉『それから部屋に入ったっきり…出てこないの』

嬢姉『こんなこと…今までなかったわ』

男 ズキン

嬢姉『さすがに病気になりそうだから無理にでも部屋から連れ出そうと思うんだけど…』

嬢姉『…原因が分からないと連れ出してもまた…』

嬢姉『だから…男さんに教えてほしいの…』

男「…無理だ」

嬢姉『無責任よ!』

男「そうだな」

嬢姉『なに他人事みたいに言ってるの!あなたがお嬢に何かしたんでしょ!?』

男「なにもしていない…とは言わない」

嬢姉『だったら!それを教えてよ!!このままじゃお嬢、ホントに病気になってしまうわ!!』

男「…お嬢に聞けばいい」

嬢姉『出来るならとっくにしてるわ!それができないからあなたに聞いてるんじゃないの!!』

嬢姉『あなた、お嬢のことが心配じゃないの!?』

男「…それで?」

嬢姉『…え?』

男「俺には何も言えないし、何もできない」

嬢姉『…ちょっと!』

男「…母親に聞いてくれ」

嬢姉『…え?』

男「言えるのはそれだけだ」

嬢姉『…』

男「…」

嬢姉『………………』

嬢姉『そう…そうなのね…』

男「…」

嬢姉『わかったわ…ごめんなさい…』Pi ツーッ ツーッ ツーッ…

Pi

男「…ふぅ…」

男(余計なことを言ってしまった…)

男「お嬢…」

男「…」

男「…もう…終わったことだ」

カタカタ…

~お嬢の家~

コンコン

嬢姉『お嬢…ちょっといいかな?』

お嬢「…」

嬢姉『さっきね…男さんに電話したの』

お嬢 ピクッ

嬢姉『男さんにお嬢のこと、聞いたんだけど…お母様に聞いてくれって…』

お嬢「…かあ…さま…!?」

嬢姉『…うん…』

嬢姉『きっと…お母様が裏で手を回したんだと思うの』

お嬢「…そっか」ポロッ

嬢姉『…ねえ、お嬢…出て来てくれないかな?』

お嬢「…」

ガチャッ

嬢姉「お嬢…」ギュッ

お嬢「あ…」

嬢姉「辛いのは…あなただけじゃないわ?」

嬢姉「…男さんも…辛かったんじゃないかな…」

お嬢「…うん」ポロッ

~数ヶ月後~

お嬢「…」

嬢姉(お嬢…あれからずっと無表情のまま…)

嬢姉(お母様も仕事にかこつけて家に帰ってこないし…)

嬢姉「…ねえ、どうするの?」

お嬢「…」

嬢姉「…お嬢、あなたはいつまでそうしてるの?」

嬢姉「あなたは…男さんに会いたくないの?」

お嬢「…会いたい」ポロッ

嬢姉「だったら…会いに行けばいいじゃない?」

お嬢「…無理…」

嬢姉「どうして?」

お嬢「…母様が…」

嬢姉 ピクッ

お嬢「…母様には…逆らえないよ…」

嬢姉「…」

お嬢「…それに…」

お嬢「…母様の言うとおり…私は…男の邪魔者…」

お嬢「…農業も…できないし…田舎で暮らす…自信も…ないし…」

嬢姉「そう…」

執事「…朝食でございます」カタッ

嬢姉「あ、ありがとう」

執事「お嬢様」カタッ

お嬢「…」

嬢姉「…いただきます」

お嬢「…いただき…ます」

パクッ

お嬢「…っ!?」

嬢姉「おいしい…」

お嬢「…執事は…どこ…?」

執事「お呼びでございますか?」

お嬢「…この…食事は?」

執事「和食でまとめてみましたが…お口に会いませんでしたか?」

お嬢「そうじゃ…なくて…この…食材は?」

執事「お嬢様のお知り合いから送られてきたものです」

お嬢「…え…?」

執事「…GWに田植えをお手伝いされたこと…覚えておられますか?」

お嬢「…」

執事「これらはその時のお礼だそうです」

執事「男父さんからはお嬢様が田植えをした田んぼの米」

執事「男母さんと男姉さんからは畑の野菜や山で採れた山菜」

執事「そして…男婆さんからは“米を炊くときに使ってください”とお水を送ってこられました」

執事「この朝食はそれらの食材で作ったものです」

お嬢「…いらない…」

執事「お召し上がりになってください」

お嬢「いや…です…」

執事「お嬢様…これらのお礼とともに男婆さんからお手紙が入っておりました」スッ

お嬢「…読みたく…ありません…」

執事「…この手紙には男婆さんのお気持ちがあふれております」

執事「お嬢様は男婆さんのお気持ちを…価値の無いものだといわれるのですか?」

お嬢「…っ!?」

執事「…」

お嬢「…」

執事「お嬢様…」カサッ

お嬢「…」

執事「…お嬢様」

嬢姉「お嬢…」

お嬢「…」カサッ

  「拝啓

  ようやくしのぎやすい季節となりましたが、いかがお過ごしですか。
  こちらは皆元気で過ごしております。
  今年も収穫の季節を迎えましたが、例年になく豊作で皆忙しく働いております。
  お嬢さんの植えた田も豊作で、これもひとえにお嬢さんのお力添えによるものと皆で感謝しております。
  感謝の印に、田畑の実りをお送りさせていただきます。
  少量ではありますがお嬢さんにお箸をつけて頂けたら幸いです。
  季節の変わり目には体調を崩しやすいものです。どうぞ御自愛ください。

  敬具

  P.S. 男姉だよ!また遊びに来てね!!絶対だかんね!!」

お嬢「…」

~~~~~~~~~~

  男父「しっかりしたいい娘さんじゃないか。ワシがあと20年若かったら口説いとるぞ?」

  男母「おや。こんな田舎料理なのに、お世辞でも嬉しいねぇ」

  男姉「そっちのも食べてみてよ。そのシーチキンと竹の子の煮物、あたしが作ったんだよ♪」

  男婆「そうかいそうかい。お米はねえ、採れたところの水で炊くのが一番おいしいからねぇ」ニコニコ

~~~~~~~~~~

お嬢「…」ポロッ

カタッ

お嬢「…」パクッ

お嬢「…おいしい…ヒック…」

嬢姉・執事「「…」」
   ・
   ・
   ・

お嬢「ごちそう…ヒック…さま…」

執事「お嬢様」

お嬢 ピクッ

執事「朝食はいかがでしたか?」

お嬢「おいしく…頂きました」

執事「…ではそのように返信しておきます」

お嬢「はい…」

執事「…失礼します」

コツッコツッコツッ

お嬢「…待って」

執事「なにか?」

お嬢「…」

お嬢「お願いがあります」

~3年後・畑~

男父「よいしょっ」ヒョコヒョコ

男「無理するなよ?」

男父「ん?…ああ…」

男(親父も元気になったな…足以外は)

男父「男ー、胡瓜の摘み取り終わったぞ」

男「分かった。車に積もう」

男父「…頼む」

男「ああ…」

~男の実家~

男父「ただいまー」

近所の人「もうね、こんないい人いないわよ?男ちゃんもいい年なんだしさあ」

男母「そうは言ってもねぇ…」

近所の人「もうね、あたしが紹介できる人の中でも最高なんだから!会うだけでも…ね?」

男母「でもねえ…男にその気がないからねぇ」

男父「…ただいま」

男母「あ、おかえりなさい。男は?」

男父「車から胡瓜を下ろしてる。そろそろ入って来るだろ」

近所の人「え?…じゃ、そろそろ帰るわね。お邪魔様」スタコラサッサ

男父「…また見合い話か?」

男母「ええ。あの人、前に“しつこい”って男に怒られたから逃げちゃったわ」

男父「で…お前はどう思うんだ?」

男母「…お相手はいい人だとは思うけど…人の気持ちを考えないからねぇ、あの人は」

男父「はは。どれどれ?」

男母「何お見合い写真見てるのよ」ジロッ

男父「…男には悪いことをしたな…」

男母「…」

男父「…この子、悪くはないとは思うんだけどな…お嬢ちゃんと比べるとなぁ…」

男母「…お嬢ちゃん、どうしてるんだろうねぇ…」

男「ただいま」

男父「おう、またお見合い写真が来てるぞ」

男「またか…」

男父「見るか?」

男「…そうだな」

男母・男父「「!?」」

男「ふーん…俺にはもったいないな」

男母・男父「「…」」

男「ん?どうした?」

男父「いや…」

男母「…男、どうしたの?今までお見合いなんて全然興味なかったじゃない?」

男「…俺も…もう30過ぎたからな…」

男母「そう…」

男父「…」

男「…けど、もうちょっと落ち着くまで待ってくれ」

男母「じゃあ…この子は断るの?」

男「…この子ならもっといい相手がいるだろう」

男母「…わかった」

~夕方~

男婆「男、そろそろ晩御飯にするかえ?」

男「そうだな」

ヒラヒラ…

男「ん?なんだこれ?」

男父「あ、それな。なんかここに工場が建つらしいぞ?」

男「冗談だろ」

男母「冗談じゃないらしいよ」?

男「…工場を建てたところで、先にインフラを整備しておかないと人も流通も滞るだろ」

男父「そうだな…まあ、今夜この件で寄り合いがあるから、とりあえず行ってくるわ」

男父「まあ、揉めるとは思うがな」

男「そうだな」

~夜~

男父「…ただいま」

男「おかえり。…どうした?」

男父「いや…疲れた…」

男母「はい、お父さんにビール♪」

男父「おお!ありがとな母さん!!」

男「現金な…で、やっぱりもめたか」

男父「ああ。いろいろあってな。いくつか問題はあるが掻い摘んで言うと、工場は下の廃村に立つ予定だと」

男「それは田んぼを売るつもりだった連中が黙ってないな」

男父「で、なんの工場かって言うと…野菜の工場なんだと」

男「…それは畑をやってる連中が黙ってないな」

男父「ああ。それで寄り合いは蜂の巣をつついたような大騒ぎさ」

男「そうか…」

男父「結局、この村に他所者が入ってくるのを嫌ってる連中も混ざって混沌としてきたから帰ってきたんだ」

男「…お疲れさん」

男(他所から人が入ってこないと…この村は寂れる一方なのに…)

~数日後・男の実家~

ザー ザー

男「…この肥料安いな」カチカチ

男(買いに行くよりネット通販のほうが確実だしな…)

男「こんなもんか…」

コンコン ガラッ

男母「男、アンタにお客さんだよ」

男「誰だ?」

男母「さあ?スーツ来た人たちだよ」

男「スーツ?」

男母「ついでに、男と女が一人ずつ」

男「まさか…」トタタタタ

男(…先輩女と男友か?)

ガラッ

見知らぬ女「あ、お邪魔します」

見知らぬ男「初めまして」

男(こいつら…誰だ?)

見知らぬ女「私、○○ベジタブルプラント社の部長女といいます」

見知らぬ男「同じく、課長男と言います」

男「男です。それで…どういった御用件でしょうか?」

見知らぬ女改め部長女「実は…今度こちらに大規模な野菜工場を作る計画があるのを御存知ですか?」

男「…ええ」

見知らぬ男改め課長男「それで3ヶ月ほど前からこちらの地域の方に御理解いただこうとしていたのですが…」

部長女「まったく進展が無くてですね…」ジトー

課長男「うっ…」

部長女「それで…本社のほうから男さんに相談してみたらと…」

男「…いくつか疑問点がある」

部長女「なんでしょう」

男「一番聞きたいのは…なぜ本社の人は俺のことを知っていたんだ?」

部長女「わかりません。ただ、上司が男さんに「当社は○○財閥系の会社です」と伝えろと」

男「!?」

男(○○財閥系ということは…お嬢か?)

男「…その上司は…」

部長女「はい?」

男「…いや、なんでもない」

男(お嬢の立場なら上司じゃなく経営者だ…けど、何かしら?がりはあるか…)

男(こんなことで罪滅ぼしになるとは思わないが…出来ることをしよう…)

部長女『ねえ、こんなので協力してくれるのかしら?』ヒソヒソ

課長男『いやー、ムリっしょ』ヒソヒソ

部長女『だよねぇ』

男「…それで、俺は何をすればいいんだ?」

部長女「え?…あ、あの…村の人を説得していただきたいんですけど…」

課長男「ひょっとして…協力していただけるのですか!?」

男「ああ」

部長女・課長男「「…」」

>>355 文字化けが…orz

○ 男(お嬢の立場なら上司じゃなく経営者だ…けど、何かしらつながりはあるか…)
× 男(お嬢の立場なら上司じゃなく経営者だ…けど、何かしら?がりはあるか…)

男「それで、説得する方法なんだが…」

部長女「は、はい!」

男「…説得するには材料がいる」

部長女「材料…ですか?」

男「ああ。この村の問題を解決する提案をすれば効果的だろう」

男「例えば…ここは無医村だから、工場内に診療所を作って、それを一般にも開放するというとウケがいい」

部長女「なるほど…ちゃんとメモした?」

課長男「は、はい」カキカキ

男「他には~~~」
   ・
   ・
   ・

【エピローグ】

~1年後~

男「…」

姪「んっしょ、よいっしょ」チョロチョロ

姪「できた…おとこおじちゃーん!お茶いぇたよー!!」

男「お、ありがとな」

ズズー

男「…はぁ」

姪「どう?おいしい?」

男「ああ、おいしいよ」

姪「やったあ!」

男姉「ほれ。飴いる?」

男「頂きます」パクッ

姪「おいしい?」

男「ああ」モグモグ

パーン パーン

姪「あー!はなびだー!!」

男姉「あー、ホントだねー」

姪「ほぁほぁ!ふうせんとんでぅよー!!」

男「いっぱい飛んでるな」

姪「うん!」

男(そう言えば今日は第一期工事の完成式だったな…)

男姉「男。アンタ…頑張ったよね」

男姉「反対してた人を根気よく説得して…工事までこぎつけてさ」

男「…」

プチッ プー

姪「あー、タンポポのおふえだー」

男「ほら、吹いてみるか?」

姪「うん!」

プヨー

姪「きゃははは!へんなおとー!!」

男「ははは。上手だぞ」ナデナデ」

姪「えへへー」

男姉「…さて!お茶も届けたし、そろそろ帰ろうか?」

姪「はーい」

男姉「じゃあ男。アンタもムリしないで、早めに帰って来るんだよ?」

男「ああ。わかってる」

姪「じゃーねー!」ノシ

男 ノシ

男「…さて、やるか」

ズチャ ズチャ…

サッ サッ サッ サッ 

男(そういえばお嬢と一緒に田植えをしたこともあったな…)

バシャン!

男「!?」


男(苗束?誰だ!?)バッ

男「…え?」

男(真っ白なプーマのジャージに長靴…まさか!)

お嬢「そんなにのんびりしてると日が暮れますよ?」

男「お、お嬢…」

お嬢「なんですか?…ああ、私に手伝って欲しいのですね?分かりました」

ズチャ ズチャ…

お嬢「…では」

サッ サッ サッ 


男「…やるな」

お嬢「当然です」ニヤッ

男「…よし」

サッ サッ サッ サッ サッ 

お嬢「やりますね…」

男「年季が違う」ニヤッ

お嬢「…この分だと早く終わりますね」サッ サッ 

男「ああ。助かる」サッ サッ サッ 
   ・
   ・
   ・


~農道~

男「よいせっ…と」

お嬢「ふふ…」

男「ありがとう。おかげで早く終わった」

お嬢「いいえ…」

ソヨソヨソヨ…

お嬢「…お久しぶりです」

男「…ああ、久しぶりだな」

お嬢「…」

男「…」

グゥー…

お嬢「…ぷっ」

男「しょうがないだろ。もうすぐ昼だし」

お嬢「ふふ。しょうがないですね。ちょっと待っててください」Pi Pi Pi…

男(お嬢のヤツ…綺麗になって…)

男(…いやいや、そうじゃなくて…なんでここに?)

キー バタン

執事「お嬢様」

お嬢「ありがとう」

スッ

男 ビクッ

お嬢「お弁当です。召し上がれ」ニコッ

男「あ、ああ…」

パカッ

男(俵むすびに野菜の煮物か…うまそうだ)

男「いただきます」パクッ

お嬢 ジー

男(うまい…)パクパク

お嬢 ジー…イラッ

パクパク

お嬢 イライラ

お嬢「…あの、お味は?」

男「うまいぞ」

お嬢「あ…」パァアア

男「ごちそうさん」

お嬢「…え?…あっ!お茶どうぞ」

男「ありがとう」ゴクゴク

お嬢 ドキドキ

男「ふぅ…腹が膨れた」ゴロン

お嬢「…」

男「ん?どうした?そんな顔して」

お嬢「いえ…あれだけで満足したのかと思って…」

お嬢「前は…あんなに召し上がってらしたのに…」

男「…俺も年だしだな」

お嬢「そんな淋しいこと…言わないでください…」

男「…そうだな」

お嬢「…」

男「…」

お嬢「…あのときのこと…」

男「え?」

お嬢「あの時のこと…姉様から聞きました…」

お嬢「…母様の仕業だったんですね…」

男「…」

お嬢「私は…あの後部屋に引きこもって…全てを忘れようとしました…」

お嬢「でも…男婆様から頂いたお手紙を読んで…やっぱり忘れるのは無理だと思って…」

お嬢「母様を説得して…庭に1畝程の田畑を作って、執事に農作業を教えていただきました」

お嬢「もちろん、大学の勉強もおろそかにはしていません。それは…お母様との約束でしたから…」

男「…」

お嬢「男さんから見るとまだまだだと思いますが…早く一人前になるように、これからも頑張ります」

男「そうか…」

お嬢「でも…それだけじゃやっぱり退屈するので、この村を開発することにしたんです」

男「…あの工場がとっかかりか?」

お嬢「そうです。引き続き病院やスーパーなどの商業施設を造る計画です」

お嬢「それで人を呼び込んで過疎化を止めて…」

お嬢「そうすることで…この村のお役にたてればと思っています」

男「そうか…」

男(お嬢の家だからできることだな…お嬢の奴…そこまでして何をしようと…)

男(もう…終わったと思ってたのに…また想いが募るだろ…)

お嬢「…諦めようとしました」

  ---孤独だった

男「そうか…」

  ---居場所が無かった

お嬢「…でも諦められませんでした」

  ---疲れていた

男「お嬢…」

  ---心が休まらなかった

お嬢「それで問題をひとつずつ片付けました」

  ---嫌だった

男「…そうか」

  ---苦しかった

お嬢「そして…残る問題は一つです」

  ---逃げたかった

男「…なんだ?」

  ---けれど逃げ場がなかった

お嬢「そのためには…」

  ---そして出会いがあった

お嬢「農業ができないとダメなんです」

  ---隠していたものが零れた

男「…農業はつらいぞ?」

  ---離れて行くと思った

お嬢「覚悟の上です」

  ---けれど受け入れてくれた

男「ダメならいつでもやめられるぞ?」

  ---楽になった

お嬢「やめません」

  ---楽しかった

男「…手加減は出来ないぞ?」

  ---心を惹かれた

お嬢「望むところです」

  ---ずっと傍に居たいと思った

男「覚えることはいっぱいあるぞ」

  ---気がつけば好きになっていた

お嬢「ずっと…傍で教えてください」

  --- 諦めたくないと思った

男「…へ?」

  ---ここが自分の居場所だと思った

お嬢「ですから」

  ---だから…





お嬢「…男の嫁になるっつってんだよバカ!!」


~END~

超乙

おお乙!!

よかったよ。いつもながらの信頼のクオリティと投下量だった!



農業やってても女との出会いないんですけど…

やっと終わった…
今回は調子に乗って書いてたら書き貯め量が過去最大www
正直疲れました…orz

なお、過去作品を↓に置いています。気が向いたら覗いてください。

http://blog.livedoor.jp/ssdobin64/

それでは、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
おやすみなさいノシ

>>374>>375 ありがとうございます

>>376 まずは迷子のお嬢さんを見つけないとwww

乙!
今回も楽しめさせて頂きました!
個人農家は自分の身体が資本なんで事故やケガは怖いですね!!

乙すぎる

乙!!

さすがっす


いやしかしいい仕事っぷりですなあ

おつー
さって後日談待ちか

乙!
相変わらず面白かった
後日談も楽しみにしてます

乙!
久しぶりに楽しみなものを見つけたぜ

おい、これで終わりかよ
つまんね
かえって
れんこん

一気読みしてもうた
もう朝だよ…

えんだぁぁぁぁぁぁぁあ!さあ、後日談GO!

これでいい気分で自転車乗りに行ける

さて、代掻き逝ってくる

畦も直さなゃいけないや

お嬢手伝いに来てくれるかな?


発見したら終わってる件…

ゆっくり読みます

おつかれ
良い話しをありがとう

>>ALL 乙ありがとうございます

>>379 農家じゃなくても怪我には気をつけないとね

>>384>>386>>391 後日談じゃなくておまけでよければwwwちょっと休んだら考えます

>>388
あの~、どの辺がつまらなかったですか?
りゆうを教えてください
がまんして読んでくださったんですか?
とりあえずすんません

>>393 畦塗りしないと水が抜けますもんね

縦読み。
ハッピーエンドはやっぱえーのう。

乙!

>>397
縦読み

>>397>>399
>>1のツンデレに気づいてやれwwwwww

とりあえずお疲れ

縦読みを縦読みで返しやがった……

そして縦読み返しに気付かない阿呆なID:ZGw/gTNmo

乙乙!

毎回感動してます。お疲れ様でした。
執事さんは めっちゃできる人 ですね。

>>397-404 ありがとうございます

おまけ、置いときますね

>>143から>>284の間に男友と後輩女の間にあったこと

~デート中~

後輩女「…ねえ」

男友「ん?」

後輩女 キュッ

男友「!?」

後輩女「んふふー♪」

男友(いきなり手を繋がないでよ!ドキドキするじゃん…)

後輩女 ♪~

ドキドキ…
   ・
   ・
   ・

~ショッピングモール~

後輩女「あー!これかわいい♪」

男友「あー、ホントだね」

後輩女「ねえ、これ欲しい」

男友「え?」

後輩女「ほーしーいー」

男友「あ、う、うん」

後輩女「わあ♪ありがとー♪」

男友「い、いいよ」ニコッ

後輩女「…」

~大きな公園~

後輩女 ♪~

男友「…」

後輩女「たっのしっいなっ♪」

男友「そ、そうだね」

後輩女「…」

男友「…あ」

後輩女「なあに?」ニコッ

男友「あそこにベンチがあるからさ、ちょっと休もうか?」

後輩女「…うん」
   ・
   ・
   ・

男友「…」

後輩女「…」

男友「…」

後輩女「…ねえ」

男友「は、はい!」

後輩女「…男友先輩は楽しくないの?」

ドキッ

男友「そ、そんなことないよ!」

後輩女「…じゃあ」スッ

男友「!?」

男友(目をつむって顔をこっちに向けて…これは…)

ドキドキ…

男友「え、えっと…」

後輩女「…」

男友「…あ!か、カラス!!」

後輩女「…え?」

男友「ほ、ほら!あそこの電柱の上!!」

後輩女「…もういい!」

男友「…へ?」

後輩女「あたし帰るね」

男友「ちょ、ちょっと待って!」

後輩女「…男友先輩」

男友「な、なに?」

後輩女「なんで何にもしてくれないの?」

男友「…え?」

後輩女「せっかくのデートなのに…ちっとも楽しそうじゃないし」

男友「そ、そんなことないよ?」

後輩女「じゃあどうして?もう3回目のデートなのに、どうしてそんなに距離を置こうとするの?」

男友「…ごめん」

後輩女「謝らないでよ…」

男友「…ごめん…女の子と付き合うのって初めてだから…自信がなくって…」

後輩女「…はあ、こんなんじゃいつまでたっても先に進まないなぁ…」

男友「ごめん…」

後輩女「ほらまた!」

男友「あ、ごm…」

後輩女「…わかった!」

ビクッ

後輩女「お金、いくら持ってるの?」

男友「あ…えっと…5万ぐらい…」

後輩女「…」Pi Pi Pi

後輩女「…あ、あたし。今日はお店でてる?」

後輩女「うん…ちょっとね…そう…その人のことなんだけど…」

後輩女「うん…そう…あんたの言った通りで…うん…出来れば他の人のほうが…うん…」

後輩女「うん…じゃあ、今から行くね?」Pi

男友(どこに電話してるんだろ…)

後輩女「じゃあついて来て」

男友「え?」

後輩女「早く!」

男友「は、はい!」

~ソープ街~

男友 キョドキョド

後輩女 トテトテトテ

男友「ね、ねえ…なんでこんなとこに?」

後輩女「…」

男友「…」

後輩女「…ここ」

男友「…へ?」

後輩女「さっさと入る!」

男友「え?だってここ…ソープランド…」

後輩女「あたしはあそこのマックで待ってるから」

男友「なんでだよ!」

後輩女「あたしだってこんなことしたくないよ!!」

ビクッ

後輩女「でもね…男友先輩、意気地がないんだもん…」グスッ

後輩女「こんなんじゃいつまでたっても…キスもできないもん…」

後輩女「…だから!ここで童貞を捨ててきなさい!!」

男友「なんでそうなる!」

後輩女「…男友先輩、さっき女の子と付き合うのが初めてだって言ってたよね?」

男友「う、うん…」

後輩女「自信がないって言ってたよね?」

男友「ぅん…」

後輩女「それって…童貞だからでしょ?」

男友「そ、そうだけど…いやだからって!」

後輩女「…あたしだって…こんなこと…したくないよぉ…」グスッ

後輩女「でも…こうしないと男友先輩は…だから…」

男友「…」

後輩女「だから…早く行け!」ドンッ!

男友「うわあ!」ヨタヨタ

店員「いらっしゃい」ニコッ

男友「ど、ども…」

店員「お客さんお目が高い!うちはいい子が揃ってますよー。奥へどうぞー」

男友「あ、あの…俺…」

???「あ、あなたね?」

男友「…へ?」

???「あたし、後輩女の知り合いで後輩友でーす♪」

男友「え?え?」

後輩友「あたしがお相手してもいいんだけど…あなたのお相手はこの人♪」

ソープ嬢「うふふふ。話は聞いてるわよ?お姉さんが優しく手解きしてあげるから♪」

男友「あ、あの…」

ソープ嬢「さ、行きましょ♪」グイッ

男友「え?…いや!ちょっちょっと待って!!」

後輩友「なあに?怖気づいたの?」

男友「そ、そうじゃなくて…こういうのはちょっと…」

後輩友「…甘ったれんじゃないよ!」バチーン!

男友「…え?」ヒリヒリ

後輩女「あんたねえ!」グイッ

男友「ひえっ!」

後輩友「あの子がどんな思いであんたをここに寄こしたか分かってんの!?」

男友「…え?」

後輩友「自分の彼氏をソープに連れてってさ!童貞捨てて来いだなんて…」

後輩友「あの子がどんなに辛い思いしてるか、あんたは分かってんの!?」

男友「あ…」

後輩友「…後輩女はさぁ…いい子なんだよ」

後輩友「いくらオトコの借金返すためだからって…ソープなんかで働いてるとさぁ…友達なんていなくなっちゃってさぁ…」

後輩友「でもあの子は…それでも変わらずに友達でいてくれる…」

後輩友「そりゃ理解はしてくれないけどさぁ…それでもあたしの生き方を認めてくれてる…」

後輩友「だからあたしは…そんなあの子の願い、聞きとどけてやろうってしてんのにさぁ…」

男友「…」

後輩友「…あの子は一大決心してあんたをここに寄こしたんだ」

後輩友「自分の彼氏を浮気させてまで…あんたに自信つけさせようとしてんのに…」

後輩友「あんたはそんなあの子の想いを踏みにじるの!?」

男友「!?」

ソープ嬢「…お話は終わったかしら?」

後輩友「…ほら、行って」グイ

男友「…」

ソープ嬢「ふふふ。心配しないで。ちゃんと教えてあげるわ♪」

男友「…はい…」
   ・
   ・
   ・

~マック~

後輩女「…」ギューッ

男友「…あ、あの…ただいま…」

後輩女「!?」ガタッ

グイッ

男友「え?ちょっ!」

後輩女 グイグイ

男友「ちょっと待ってって!」ズルズル

~その手のホテル~

後輩女 ヌギヌギ

男友「ちょっと待って!なんでこんなことするんだよ!!」

後輩女 ダキッ

男友「!?」

チュッ

男友「なっ!」

後輩女「…あたしが…平気だと思う?」ギュッ

男友「…え?」

後輩女「好きな人を風俗に行かせて…平気だと思うの?」 ポロッ

男友「あ…」

後輩女「あたしだって…辛いよ…苦しいよ…」グスッ

男友「…ごめん」

後輩女「もう…いっぱいいっぱいなんだよぉ…ヒック」

男友「後輩女…」ギュッ

チュッ

後輩女「男友…」ウルウル

男友「…ごめんな?」

ドサッ

後輩女「んあっ!」

男友「もう…何も言わなくていい」

後輩女「…うん」

男友「…抱くぞ?」

後輩女「…は、初めてだから…優しくしてね?」

男友「…ああ」
   ・
   ・
   ・

後輩女 グッタリ

男友「…」ナデナデ

後輩女「ん…」

男友「大丈夫か?」

後輩女「…うん…激しかったね…//」

男友「後輩女がかわいい声出すからな」

後輩女「…ばか//」

男友「あははは。なあ…」

後輩女「…なあに?」

男友「後輩女って…Mだったんだな」

後輩女「…もう!」ギューッ!

男友「痛い痛い!もげるって!!」

後輩女「!」

男友「…いって~…」

後輩女「ご、ごめんね?」チラッ

男友 ゾクゾク

男友(上目遣いが…かわいい!)ムラムラムラ

ガバッ!

後輩女「きゃっ!」

男友「…お仕置きだ」ニヤッ

後輩女「んあ…はい…お願いします」ダキッ


~後輩女と男友 もげろEND~

乙もげろ

今日はこれで終わりです
明日はゆっくり休もう…
それではおやすみなさいノシ

男友意気地なさ過ぎワロタ

男友もげろ

超もげろ

男友気持ち悪
こいつとは友達になりたくないな

へたれもげろ

乙乙!
過去作覗いてきた
殆ど全部読んでたわwwww

>>424>>425>>427-432 ありがとうございます
今日は眠いのでもう寝ますノシ

おまけって男友かよ…いらないです
ハッキリ言うと男友…最悪で屑だわ。さっさとタヒねよ

おまけいきまーす

<<嬢姉編>>

~ホテルのパーティー会場~

ガヤガヤガヤ…

嬢姉(相変わらず退屈だわ…お嬢も連れて来ればよかったかしら…)

嬢姉「…はぁ…」
   ・
   ・
   ・
「いやいや、お若いのに礼儀正しいですなあ」

「その上お美しい」

「うちの娘にも見習わせたいですなあ」

嬢姉「うふふふ。それでは、そろそろ失礼させていただきます」ペコッ

嬢姉「…ふぅ」

姉執事「嬢姉様」

嬢姉「あ、車を廻してくださらない?」

姉執事「承知しました」

嬢姉(…いまのうちに洗面台に行っとこう…)

トテトテトテ

嬢姉「…あら?」

♪~

嬢姉(…何かの演奏かしら?)

トテトテトテ

嬢姉「…この部屋からね…“チャリティーコンサート”?」

ガチャ

♪~ ♪~ ♪~

嬢姉(4つの弦楽器…バイオリンとチェロでパッヘルベルの“カノン”ね…)

嬢姉(…上手ね…落ち着くわ…)
   ・
   ・
   ・
♪~♪…

パチパチパチ

嬢姉 パチパチ

「では皆様、お帰りの際に出口においてありますチャリティーボックスに御寄付をお願いします」

嬢姉「…え?寄付?」

嬢姉(そういえばこれチャリティーコンサートだったわね…)

嬢姉(まあいいわ。後で姉執事に持ってこさせれば)

トテトテトテ

モブ女「あの…寄付を…」

嬢姉「ごめんなさい。今手持ちが無いの。後で持ってきます」

モブ女「…チッ」

嬢姉 ムッ

嬢姉(信用してないのね…いいわ)

トテトテトテ

姉執事「嬢姉様。お車の用意が出来ました」

嬢姉「分かりました。その前に…現金を用意してくださる?」

姉執事「お車の中に多少はありますが…如何程でしょう」
   ・
   ・
   ・

嬢姉「先ほどは失礼しました」

モブ女「あ…」

嬢姉「寄付をしますわ」ニッコリ

モブ女「あ、ありがとうございます…え?うわっ!ちょっ!!」

優男「どうした?」

モブ女「ややや、優男さん!こここ、これっ!これっ!!」

嬢姉(あの人、さっきバイオリンを弾いてた…優男さんって言うのね)

優男「…なんですかこれは?」

嬢姉「寄付です。百万じゃ少なかったかしら?」

優男「え?」

モブ女「こここんなに頂くわけにはいきません!お持ち帰りください!!」

嬢姉「そうはまいりません」

モブ女「いいえ!持って帰って!!」

嬢姉「…あなた、先ほど舌打ちをされましたわね?」

モブ女「はい?」

嬢姉「もうお忘れ?」

モブ女「え?…………いや、あれはその…」

嬢姉「私にも矜持がありますのよ?」

モブ女「…チッ、えらそうに」

優男「おい!」

モブ女「どうせアンタに取っちゃ泡銭なんだろーが!なによ!!そんな派手なドレス着てさ!!」

優男「やめろって!」

モブ女「悪いことして儲けた汚い金なんだろ!?だからこんな大金を簡単に出せるんだろ!?」

モブ女「こんな金じゃ子供たちは救えない!さっさと帰って!!」

優男「いい加減にしろ!…すみません、失礼はお詫びしますので」

嬢姉「…言いたいことはそれだけですか?じゃあ私からも言わせていただきます」

モブ女「え」

嬢姉「私は先ほど“後で持ってきます”といいましたわ」

嬢姉「そして言葉通りに持ってきた。何か間違っていますか?」

モブ女「…」

嬢姉「それから、これは泡でも汚物でもありません。お金です」

嬢姉「金額の大小でお金にレッテルを貼るのでしたら、最初から金額の範囲を書いておくべきです」

嬢姉「それがいやなのでしたら、いっそチケット制にでもすればよろしいのでは?」

嬢姉「ですからこのお金は寄付として受け取る義務があなた達にはあります」

優男「…そうだな。ありがたくいただきます」

モブ女「なんで!?」

モブ女「そんなの認めない!こんなのただの偽善じゃない!!」

優男「それでも、これで救える子供たちが増える。いいことだろ?」

モブ女「よくない!」

優男「理想を追うのはいいことだけどな…やっぱりお金は必要だ」

モブ女「…もういいっ!こんなとこやめてやる!!」タタタタ…

嬢姉「…行ってしまわれましたよ?」

優男「…いいんですよ。あの子の場合、就活に有利だからって始めたそうですから」

優男「ま、あの子なりに理想はあったとは思いますけどね。それだけじゃ続けていけませんし」

嬢姉「ふぅん…意外と現実主義者なんですね」

優男「これでも会社員ですからね。結果オーライってやつですよ」

嬢姉「ふふふ。面白い人だわ。」

優男「そうですか?なんの面白みも無いでしょ?」

嬢姉「いえ。チャリティーなんてしていらっしゃるから、てっきり理想主義者かと思ってました」

優男「それを言うなら…えっと、お名前を」

嬢姉「嬢姉です」

優男「ありがとう。嬢姉さんのほうこそあんなことして、結構熱い人じゃないですか?」

嬢姉「あら。そうでもないですよ?」

優男「おかげでボランティアがひとり人数が減ったんですが?」

嬢姉「それは…ごめんなさい」

優男「あははは。とにかく。寄付、ありがとうございます」

嬢姉「いいえ、こちらこそ」

優男「領収書、要ります?」

嬢姉「いりません」

優男「あははは。じゃあ、またいつかお会いしましょう。そのときはお茶でも」

嬢姉「それこそ物好きです。ふふふ」

優男「そうおっしゃらずに。あ、そうだ」

嬢姉「なんですか?」

優男「えっと、とりあえずメアド交換しません?」

嬢姉「なぜ?」

優男「せっかく知り合えたんですから…どうですか?」

嬢姉「…」

嬢姉(優男さん面白いし…どうしよっかなー)

優男「…ダメですか?」

嬢姉「…姉執事、スマホを」

姉執事「はい。ここに」

嬢姉「…はい、送りました」

優男「…はい、ありがとうございます」ニコッ

嬢姉「…」

優男「それじゃ、会場を片付けてきます。あとでメールしますね」

嬢姉「はい…」

姉執事「嬢姉様」

嬢姉「ええ、帰りましょう」

~車の中~

嬢姉「…」

嬢姉(優男さん…か。変わった人ね…)

ピロリン

嬢姉「あ、メール」

  To:嬢姉
  From:優男
  SUB:寄付ありがとうございました
  本文:ところで、来月のチャリティーコンサートなんですが、
      さっきも言ったように今日一人辞めちゃって人手が足りないんです。
      手伝っていただけませんか?

嬢姉「…なにこれ?」

嬢姉「もうちょっと気のきいたメールを送ってきなさいよ!」

嬢姉(…来月…か)

嬢姉「…」

嬢姉「…姉執事」

姉執事「なにか?」

嬢姉「来月の予定で空いてる日はありませんか?」


~嬢姉編 END~

次が最後のおまけです

<<先輩女編>>

~喫茶「はぐるま」

カランカラン

ママ「あら、いらっしゃーい」

先輩女「…いつもの」ドサッ

ママ「お疲れみたいね。どうしたの?」

先輩女「うん…仕事でいろいろあってね…」

ママ「男ちゃんがいなくなったから?」

先輩女「ううん、そうじゃないんだけど…」

先輩女「…あーあ、男がいてくれたらなぁ…」

ママ「…もうすぐ1年だねぇ。男ちゃんが田舎に帰ってから…」

先輩女「…」

ええ!ここで?

カランカラン

ママ「いらっしゃー…あら!久しぶりじゃない!!」

お嬢 ペコッ

先輩女「ホントに!元気だった!?」

お嬢「ええ、まあなんとか」

嬢姉「あら?そうだったかしら?」クスクス

ママ「あら、いらっしゃい」

嬢姉「こんばんは」

ママ「こちらは…お嬢ちゃんのお姉さんかしら?」

嬢姉「すごい。よく分かりましたね」

>>451 え?

ママ「簡単よ。お嬢ちゃんに似てきれいな人だから♪」

嬢姉「いえ、そんなこと無いですよ」

お嬢「姉様、それって私がきれいじゃないってこと?」

嬢姉「そんな天に向かって唾するようなこと言うわけないじゃない?」

お嬢「どういう意味よ、それ」

先輩女「ふふっ。面白い人ね」

嬢姉「えっと…こちらは…」

お嬢「あ、こちらは先輩女さん。男と同じ会社の人なんだ」

嬢姉「そうなのね。初めまして。嬢姉です」ペコッ

先輩女「先輩女です」ペコッ

>>453
いや、姉編の終わり方があまりに潔かったんで。じゃましてすまんこ。

お嬢「…先輩女さん、男からなんか連絡あった?」

先輩女「ないわね。引継ぎ資料でわからないところがあったから何回かメールはしたけど…」

お嬢「そっか…」

先輩女「お嬢ちゃんのほうは?」

お嬢「私のほうは…あんなこと言っちゃったから…」

先輩女「そっか…」

嬢姉「バカよねえ?とっとと会いに行けばいいのに」

お嬢「いいだろ別に…それに今は準備してるところだし…」

先輩女「準備?」

嬢姉「お嬢ね、庭に田んぼや畑を作ったのよ?ほかには…」

お嬢「姉様!」ダンッ

>>455 なるほどwww

嬢姉「あら、調子に乗っておしゃべりが過ぎちゃったかしら。ごめんなさい」

お嬢「もう…」

先輩女「…そっか。ふふふ」

お嬢「…あ、そういえば先輩女さん」

先輩女「なあに?」

お嬢「もうすぐ姉様のコンサートがあるんだけど…いきませんか?」

先輩女「コンサート?」

嬢姉「ええ。といっても小さなコンサートで…」ピラッ

先輩女「…あ、これ…」

ママ「へぇ~。チャリティーコンサート?」

嬢姉「はい。知り合いに頼まれて歌うんですけど…」

嬢姉「まさかチケットを売り歩かないといけないなんて思いませんでした」

おまけになるほど妄想偏って来てないかー?

ママ「そうなんだ。じゃあこの店にいくらか置いとけば?」

嬢姉「いいんですか?」

ママ「いいんですよ♪」

嬢姉「じゃあチケットを10枚と…チラシもお願いします」

ママ「はいはーい」

先輩女「私にもチケット、一枚ちょうだい?」

お嬢「いいの?」

先輩女「いいもなにも。お嬢ちゃんのアヴェマリア、すごく良かったから」

先輩女「お姉さんもきっと上手なんでしょ?楽しみだわ」ニコッ

嬢姉「じゃあ…500円です」

先輩女「はい、千円で。おつりはチャリティに入れておいて」

嬢姉「ありがとうございます」ニコッ

>>459 あとは皆さんの脳内ストーリーでお願いします(m_ _)m

先輩女「それにしても…チケットを売り歩いてるなんて意外だわ」

お嬢「なんで?」

先輩女「だってお嬢ちゃんたちなら全部のチケットを買い取ることだって出来るでしょ?」

お嬢「ま、そうなんだけど…そういうのを嫌がる人がいるから」チラッ

嬢姉「な、なによ…」

先輩女「…ふーん?」

~数日後・コンサート会場~

嬢姉 ♪~ ♪~ ♪~

先輩女(嬢姉さん…さすがね…)

先輩女(お嬢ちゃんは入り口でチケット整理してるし…)

先輩女(…もうちょっと正面のほうに移動しようかな?)ゴソゴソ

ガクッ!

先輩女(あっ!膝が!!)

ガシッ

先輩女「…え?」

眼鏡男「大丈夫ですか?」

ドキッ

先輩女「だ、大丈夫です…」ドキドキ

先輩女(びっくりした…顔が近かったから…)

眼鏡男「…足、どうかされましたか?」

先輩女「あ、いえ…以前靭帯を痛めたものですから…」

眼鏡男「それはいけません。僕の肩に掴まってください」

先輩女「いえ、そういうわけには…」

眼鏡男「医者としてそういうわけにはいきません。ですから」ニコッ

先輩女「お医者様なんですか?」

眼鏡男「ええ、まあ。研修医ですけどね。はい、肩どうぞ」

先輩女「…じゃあ」ドキドキ…
   ・
   ・
   ・

眼鏡男「良かったですね。特にあの独唱は聴く価値があります」

先輩女「ふふふ。じゃあ後で本人に伝えておきますね」

眼鏡男「お知り合いで?」

先輩女「ええ。妹さんも歌がお上手なんですよ?」

眼鏡男「そうですか…一度聴いてみたいな」

先輩女「ふふふ。歌が御好きなんですね」

眼鏡男「ええ。昔、彼女に連れられてコンサートに行くうちに好きになりました」

ザワッ…

先輩女「…彼女さんがいらっしゃるんですか?」

眼鏡男「あははは。学生の頃の話ですよ。今はいません」

先輩女「あ…ごめんなさい」

先輩女(そっか…今はいないのか…って!何考えてるの!!)

眼鏡男「いえいえ。こちらこそ見ず知らずの人にこんな話をしてすみません。では」

キュン

先輩女「…あ、あの!」

眼鏡男「はい?」

先輩女「…またお会いできますか?」

眼鏡男「…え?」

先輩女「ですから…」

先輩女「…メアド、交換しませんか?」


~先輩女編 END~

これでこのスレは終わりにします。
このような駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます
それではまたいつかノシ

楽しかった。乙。

ふざけるな!
またやってくれ

あ、html化依頼は来週の12日に出す予定です。
おやすみなさい

おおお乙!


今回も楽しかったです

相変わらずおもしれー
次回も楽しみに待ってます

乙でした!

乙です

乙でした

otu

いつもみてるよ

先輩女尻軽すぎだろおい!
なんかいろいろ突っ込みたくなった!(性的な意味でも)
乙!

>>468>>469>>471-484 ありがとうございます

>>484 男友みたいな軟弱なやつには後輩女みたいなタイプでないとうまくいかないんじゃないかとwww

次回作の予定は?

>>486 今のところ特にはありません
また何か思いついたら書きますwww

乙でした!

次回作も楽しみにしとるよ

お嬢達の後日談マダー チンチン

>>488 乙ありがとうございます

>>489 後日談はありませんwww
あの村が発展して国道沿いに店ができたり、
孤児院を創立して工場の従業員を育成して人口がさらに増加したり、
お嬢の父母が財力にものを言わせて鉄道を引いたりするようなことはあるかもしれませんがwww

流石あなたにはハズレが無い

正直おまけは蛇足感が強かった気がするが、乙。

>>491>>492 ありがとうございます

おまけはその時の勢いで書いてるので…orz

こいつはおどろいた。洗練された文章じゃないか。過去作読みに行ってくる。乙

>>494 ありがとうございます。
このような妄想全開の駄文ですが気に入っていただければ幸いです

>>ALL ありがとうございました
html化依頼してきますね

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom