鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」(1000)

・ペルソナ3、ペルソナ4のクロスSSです。

・原作との設定矛盾がいくつか出るかも。

・番長は鳴上悠、キタローは有里湊。

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>すっかり春めいて暖かい……。

>電車はゴトゴトと進んでいく。

鳴上「……結局、一緒に過ごせたのは一週間くらいだったな」

>八十稲羽での生活が終わり、一年ぶりに再会した両親は、また海外へ飛び立って行った。

>両親が次の転校先として提示したパンフレットには、いつか見た学校名が大きく記されていた。

鳴上「月光館学園か」


【2012/3/某日 晴れ】


『……次は、巌戸台、巌戸台です。モノレールご利用の方は……』

鳴上「ここか」

>人が溢れている。

鳴上「やっぱり八十稲羽とは違うな……」

>改札を抜け、駅を出る。

>まずは寮に向かわなければ……。

鳴上「……こっち、か」

>地図の通り進む。

>しばらく歩くと、それらしい建物が見えてきた。

鳴上「思っていたよりずっと立派だな」

>寮を眺めていると、荷物が歩いてきた。

鳴上「ダンボールが歩いている」

鳴上「……都会だな」

?「……あの」

>荷物が話しかけてきた。

?「すみませんが、そこ、退いてもらえますか?あ、それともうちの寮に何かご用でしょうか?」

>荷物の向こうに小柄な少年がいる。

>中学生くらいだろうか。外ハネの茶髪が印象深い。

鳴上「あ、入寮予定の者なんだが、手続きとかはどこですれば」

?「そうなんですか?えーと、手続きなら入ってすぐに受付がありますからそこで出来ると思いますよ!では!」

>少年は大きな荷物を持ったまま寮の中へ入っていった。

>彼も寮生だろうか。

>……とりあえず、手続きを済ませよう。

鳴上「ふぅ」

>一通りの手続きを終えた後、部屋をあてがわれた。

>……やはり思ったより立派だ。

鳴上「流石都会」

>今日は寮内の把握をしておこう。

>部屋を出て玄関前に行くと、荷物の少年がいた

?「あ、また会いましたね。これからよろしくお願いします、先輩」

>少年は笑顔で挨拶してくれた。

鳴上「ああ、よろしく。君は……?」

?「僕は月光館学園中等科の天田乾って言います。えと、高等科の先輩ですよね?」

鳴上「高等科三年に転入になる、鳴上悠だ。天田も寮生なのか?」

天田「ええ、まあ。鳴上先輩はこれから何か予定でも?」

鳴上「いや、寮内を見て回ろうかと思っていたんだが」

天田「そうですか。良ければ案内しますよ?」

鳴上「良いのか?」

天田「ええ、ちょうど用事も終わりましたし。って言っても大した物はありませんけど……」

>天田に寮内を簡単に案内してもらった。

>外から見たより広く感じる。

>浴場、ラウンジ……。

天田「……っと、こんな所ですね。どうですか?」

鳴上「立派な寮だな」

天田「そうでしょうか?どこもこんなものだと思いますけど……って、他は知らないんですけど」

>天田は笑っている。

天田「転入ってことは、先輩はこの街に来るのは初めてなんですか?」

鳴上「いや、以前一度来たことはある。前の学校の時に」

天田「あ、そうですか。せっかくだから春休みの内に街を案内しようかと思ったんですけど」

>天田は少し残念そうだ。

鳴上「良ければ、頼めるか」

天田「わ、本当ですか?じゃあ、しばらくは荷解きとかいろいろあるでしょうから、今週末でどうです?」

>天田と街を回る約束をした。

>……嬉しそうだ。

鳴上「どうして初対面の俺にそんなにしてくれるんだ?」

>天田は何故か驚いたような顔をした。

天田「あれ、なんででしょう。……何となく、先輩って昔から知ってるような気がするんです。誰かに似てるのかな。不思議ですけど」

>天田は照れたように笑っている。

天田「じゃあ、週末部屋まで行きます。今日はお疲れでしょうから、早めに休んだ方がいいですよ。それじゃ!」

>確かに、少し疲れている。

>部屋に帰って、今日はもう寝よう。

>天田乾と知り合いになった。



【2012/3/31(土) 晴れ】


天田「鳴上先輩、天田でーす。起きてますかー?」

>扉を叩く音がする。

>約束していた町内案内をしてくれるらしい。

鳴上「おはよう。いい天気だな」

天田「ですね。えっと、どうしましょう」

鳴上「そうだな、まずはいろいろ買いたい物もあるから……」

天田「あ、だったら商店街ですね」

>天田と商店街を回った。

昼過ぎ

天田「ふぅ……ちょっと疲れましたね」

>あれだけ張り切って案内してくれれば、疲れもするだろう。

天田「何か食べますか?えっと、ファーストフード大丈夫ですか?」

鳴上「ああ、好きだ」

天田「じゃあワイルダックでいいですかね。こっちです」


【ワイルダック・バーガー店内】


天田「思ったより空いてて良かったですね。先輩何にしました?」

鳴上「面白そうな新メニューがあったからそれにした」

天田「……すごい色してますね、それ」

>天田とハンバーガーを食べた。

天田「商店街はこんな所です。後はポロニアンモールとかだと色々遊べますよ」

鳴上「なるほど……しかし助かった。ありがとう、天田」

天田「いえいえ、全然です。午後からどうしましょうか。お疲れならもう引き上げます?」

鳴上「そうだな……今日は帰ろう。ポロニアンモールはまた明日でいいか?」

天田「そうですね、僕も疲れちゃいました。じゃあ、明日はポロニアンモール案内ってことで」

>天田と二人で寮に帰った。

>天田と少し仲良くなった気がする。

鳴上「ふぅ」

>慣れない土地を歩きまわって少し疲れた。

>早めに寝る事にしよう……。



【同日 23:59】


>目を覚ますと、まだ夜だった。

>今日買った時計を見る。

>どうやら深夜に目が覚めてしまったようだ。

>時刻はそろそろ0時を迎えようとしている。

鳴上「妙な胸騒ぎがする」

カチッ

>時計の針の音がした。

>日付が変わったようだ。

鳴上「!?」

>凄まじい違和感が辺りを包んでいる。

鳴上「これは……まるでテレビの中みたいだ」

>嫌な予感がする……。

>窓の外は青緑に染まっている。

>月以外に光る物が無いようだ。

鳴上「そうだ、他の生徒は……」

>部屋の扉を開ける。

>隣室の扉をノックした。

>……反応がない。

鳴上「鍵は……かかってないな」

>ノブを回す。

鳴上「なんだ、これは……!?」

>室内にはあるはずの生徒の姿は無かった。

>ただ……棺桶のようなオブジェが一つ。

鳴上「他の部屋はどうなんだろう」

>自分の立てる音以外無音の世界に、もうひとつ足音が聞こえる事に気付く。

>どうやら走っているようだ。

鳴上「何者だ……」

>警戒態勢を取る。

>足音のする方へ向かう……。

>相手も足音を潜めた。

>……近付いて来る。

天田「!」

鳴上「!」

>足音の正体は天田だった。

鳴上「天田、無事だったか!」

天田「先輩……先輩がなんで?」

>天田は何かに驚いているようだ。

鳴上「どうかしたのか?」

天田「いえ、なんでも……っ先輩!!」

>天田に突き飛ばされた。

鳴上「っ……どうし……!?」

>さっきまで立っていた位置に黒い水溜りができている。

>……水、ではない。

鳴上「影だ……!」

>仮面を着けた影が盛り上がり、物理的な形を為そうとしている。

天田「先輩は下がっていてください、ここは僕が!」

>天田はポケットから拳銃のような物を取り出した。

鳴上「天田!危ない!」

>天田の真上、天井から同じように黒い影が染み出してきている!

天田「えっ……あっ!」

>上から落ちてきた影を躱したものの、持っていた拳銃を弾かれてしまった。

>拳銃が廊下を滑り足に当たる。

天田「先輩!それを僕に!」

>誰かの声が聞こえる。

>これは、シャドウだ。

>シャドウを倒せるのは……。

「ペ」

「ル」

「ソ」

「ナ」

>こめかみに銃を当て、引鉄を……引いた。

鳴上「イザナギ!」

>人型のエネルギーが心から湧き上がる。

>ペルソナ『イザナギ』を召喚した。

天田「先輩も……」

>イザナギが剣を振るい、シャドウは真っ二つに切り裂かれた。

天田「ペルソナ使い……」

>返す刀でもう一体も切り裂いた。

鳴上「ひとまず、これで良いか……!?」

>何故か、意識が遠のく……。

>とにかくシャドウは倒せたようだ。しばらくは安全だろう……。

天田「先輩?先輩!せんぱ……」

>天田の声が遠くなる。

>…………。


【???】


?「おやおや、またあなたでしたか」

>この声は……。

イゴール「ようこそ、我がベルベットルームへ……などという口上は最早不要ですかな」

>気が付くと、何度も通ったベルベットルームにいた。

>イゴールの隣には、見知らぬ女性が立っている。

鳴上「マーガレットじゃ、無い?」

>女性は会釈した。

?「エリザベスと申します。マーガレットは私の姉にあたります。以後、お見知りおきを」

>よく見るとベルベットルームの様子もいつもと違う。

鳴上「エレベーター……か?」

イゴール「やはり、と言いますか。お客様は随分と奇妙な運命を辿られるようだ。ここに来られたということは……わかりますな?」

>イゴールはカードをシャッフルしながら言った。

鳴上「俺の、ワイルドの力……」

エリザベス「それを振るう機会が訪れたという事でございます。お客様はこれより、新たな地で新たな絆を紡ぐ事になるでしょう。」

鳴上「コミュニティ……絆の力か」

エリザベス「左様でございます。既に一人、心を繋いだ方がいらっしゃる様子……」

>『No.05 法王 天田乾』のコミュを手に入れた。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが1になった。

イゴール「この地でかつて起きた事……そして、あなたの身にかつて起きた事……よくよく変わった星の下におられる。いや、今回に限って言えば……」

>イゴールがタロットカードをめくる。

イゴール「あなただけが数奇なる者とも言い難いかもしれませんな」

>13……死神のカードだ。

イゴール「さて、そろそろ目を覚まされた方が良い。事は既に始まっている。では、これをお持ちください」

>イゴールが何かを差し伸べる。

>契約者の鍵を手に入れた。

イゴール「再び見える日をお待ちしておりますぞ」

エリザベス「……では、上へ参ります」

>エレベーターが上昇を始める。

>エリザベスと知り合いになった。

>…………。



【2012/4/5(木) 曇り】


>目覚めると、白い天井が目に入った。

>ここはどこだろう。寮とも違うようだ。

看護婦「あら?あらあら大変。先生、先生?」

>今のは……どうやらここは病院らしい。

>医師が慌ててやってきた。

医師「ふむ……異常ない。ただの過労のようだね。引っ越してすぐで疲れていたんだろう」

>医師はにこりと微笑んだ。

医師「まあ今日一日は様子を見て、それから寮に帰りなさい。明日から学校だろう?良いタイミングで目覚めたね」

>学校……今日は何日だろう。

看護婦「今日は4月5日。あなたが運び込まれたのが4月1日だから、丸々4日間目を覚まさなかったのよ?」

鳴上「そんなに、ですか」

医師「まだ目が覚めたばかりなんだから、無理に会話しなくてもいいよ。じゃあ、後でまた検査に来ますから、ゆっくりしておいて」

>医師と看護婦は連れ立って出ていった。

>入れ替わりに見覚えのある顔が入ってくる。

天田「やっぱり。先輩、起きたんですね。僕のこと覚えてますか?」

鳴上「天田だろ。見舞いにきてくれたのか」

>天田は笑って頷いた。

天田「と、言っても何も持ってきてませんが……。さて、先輩。意識ははっきりしてますか?」

>ベッド脇の椅子に座ると天田は真剣な顔になった。

鳴上「体はだるいが頭は大丈夫だ。どうかしたのか」

天田「良かった。先輩にお知らせがあります。先輩の部屋が移動になりました。これからはあの男子寮ではなく、分寮に寝泊まりしてもらいます」

鳴上「分寮?聞いた事が無いけど、そんな物があるのか」

天田「ええ、封鎖されていましたから。今日までに清掃も済んでいるはずです。」

鳴上「なぜ移動に?」

天田「……先輩は、あの夜の出来事を覚えていますか?」

鳴上「あの夜……俺が、倒れた時か」

天田「はい。原因は、あの現象です。詳しくは、分寮に移動してからになりますが……」

鳴上「わかった。分寮へはどう行けばいい」

天田「あの人が迎えをよこすと言っていたので、恐らくは今夜あたり迎えの人が来ると思います」

鳴上「そうか……ふぅ」

天田「やっぱりまだお疲れみたいですね。お話は寮で。では、失礼します」

>天田は一つ頭を下げると病室を出ていった。

>……眠い。

>体がかなり鈍っているのを感じる。

>少し眠ろう。



【同日 夕方】


?「失礼します。鳴上悠というのはあなたですか?」

>名前を呼ばれて目が覚めた。

鳴上「はい、俺ですが」

>金髪の女性が病室の入り口に立っている。

?「私はアイギスと言います。鳴上さんをお迎えにきました」

>彼女が天田の言っていた迎えだろうか。

アイギス「鳴上さん、歩けますか?」

>体を起こしてみる……。

鳴上「なんとか。長距離ですか?」

アイギス「いえ、それほどでもありません。どうしても辛いようでしたら……」

鳴上「いや、なら大丈夫です。行きましょう」

アイギス「それでは、ついてきてください」

>そう言いながら、こちらを凝視している……。

鳴上「あの、何か?」

アイギス「あっ、いえ、何でもありません。ごめんなさい。えっと、では、行きましょう」

>何故か動揺している。

>アイギスと共に分寮に向かった。

アイギス「……」

鳴上「……」

アイギス「あの」

鳴上「……はい」

アイギス「あっ……なんでもナイ、です」

>空気が重い……。

>快く思われていないのだろうか。

>無言のまま、分寮への道程を歩いた。



【巌戸台分寮】


アイギス「ここです」

>随分と古めかしい建物だ……。

アイギス「鳴上さんをお連れしました」

>アイギスが玄関を開けた。

>追従して寮内に入る。

天田「あ、先輩。大丈夫でしたか?」

鳴上「ああ。少し疲れたけど」

天田「良かったです。あ、僕もまたこの寮で暮らす事になったんですよ。言い忘れてましたけど」

>天田は嬉しそうに笑っている。

?「到着したか。病み上がりですまないな」

>階段の上から声がした。

>紅い髪の……知らない女性だ。

?「君が鳴上悠か。私は桐条美鶴。君の話は天田から聞いたよ」

鳴上「俺の話?」

美鶴「ああ。……どれ、到着してすぐだが面子も揃っている。少し話そうか」

鳴上「あの夜の話ですか」

美鶴「そうだ。だが、まずは自己紹介とこれまでの話をしておこう」

>美鶴は全員の顔を見回した。

美鶴「さっきも言ったが、私は桐条美鶴。かつてこの寮で暮らしていたメンバーの一人だ。今は大学に通っている。よろしく」

天田「えっと、僕は天田……って、それは知ってますよね。実は、僕も以前この寮で暮らしていました。改めて、よろしくお願いします」

鳴上「そうだったのか。ええと、じゃあアイギスさんも……?」

アイギス「私も以前はここに住んでいました。少しの間だけでしたが」

美鶴「この面子で集まってもらった理由は察しがついたか?」

鳴上「……この寮は、普通の生徒とは少し種類の違う生徒が集められていた、と考えていいでしょうか?」

美鶴「そういうことだ。ここはかつて、君と同じ……ペルソナ使いがある目的で共に暮らしていた寮だった」

美鶴「その目的を果たし、以降は使われていなかったのだがね。どうやら、再び事件が起こってしまったらしい」

鳴上「再び?」

美鶴「そうだ。君の体験したあの時間……一日と一日の狭間にあり、一般人には認識すら出来ない隠された時間。『影時間』が再び始まったんだ」

鳴上「『影時間』……」

美鶴「『影時間』にはあらゆる物の活動が止まる。それは人間とて例外ではない。普通の人間は、棺桶のような形になり象徴化してしまう。その間は意識も無いし記憶も無い。体感する事すら出来ないんだ」


鳴上「なるほど、それで……」

美鶴「その中で動ける物は二つ。影時間を引き起こしている張本人である『シャドウ』と、私達『ペルソナ使い』だ」

鳴上「事件を解決出来るのはペルソナ使いだけ、ということですね」

美鶴「そう。その為に集まったのがここにいる天田・アイギスを含めた仲間たちだ。名を『特別課外活動部』と言った」

鳴上「天田もそうなのか?」

美鶴「はい、一応は。当時は小学生でしたけどね」

美鶴「そして、紆余曲折を……本当に、色々な試練を越えて、我々は事件を解決させた。影時間は消滅し、一件落着と思っていたんだ」

天田「それが……あの日、3月31日。先輩も御存知の通り」

鳴上「また、始まった……」

美鶴「そうだ。私にもはっきりわかった。あれは間違いなくあの時と同じ影時間だ」

アイギス「私もわかりました。それで、美鶴さんに相談したんです」

美鶴「そうしたら次の日、天田から連絡があってな。新しいペルソナ使い……つまり、君の事を聞いたわけだ」

鳴上「俺の話っていうのはそういう事だったんですね」

美鶴「そうだ。そしてペルソナ使いである君に頼みがある。我々と協力して」

鳴上「事件を解決する?」

天田「昔のメンバーは今別々に生活していますから、すぐ動ける戦力は今ここにいる4人だけらしいんです」

美鶴「とにかく人手が必要になると思う。学校も始まるし、厳しいとは思うが……」

鳴上「……影時間を放っておくと、どうなるんですか?」

アイギス「……シャドウは、人を襲います。シャドウに襲われ、影を奪われてしまうと、喋る事すら億劫な『影人間』という症状に陥ってしまいます」

美鶴「そして、影時間はこの街だけではない。全世界で同時に起こっている。早急に解決する事が求められるんだ」

>美鶴は真剣な眼差しでこちらを見ている。

>天田も、アイギスも同じだ。

鳴上「わかりました。いえ、むしろ協力させてください。これからよろしくお願いします」

美鶴「!……ありがとう。こちらこそよろしく頼む」

天田「何となく、先輩ならそう言ってくれそうな気がしてました」

アイギス「……」

>アイギスも無言だが少し嬉しそうに見える。

鳴上「ところで、なんですが」

美鶴「どうした?質問なら聞くぞ」

鳴上「その、一度解決した事件なら原因もわかったんじゃないですか?それとも今回はまた違うんですか?」

>……全員が黙ってしまった。

鳴上「……あの」

美鶴「いや、はっきり言えば前回の原因はしっかり判明している。だが今回に限っては……」

鳴上「わからないんですか?」

アイギス「……以前の事件は、ある人が自分の命を賭けて原因となる存在を封印する事で終わりました」

美鶴「だから、同じ原因とは考えにくい。というより考えたくないんだが……」

アイギス「その封印に手を掛ける存在にも、私達は一度打ち勝ちました。ですから、同じ原因であるとはやっぱり思えません」

鳴上「なるほど……前回の原因って何だったんですか?」

アイギス「影時間を作るのはシャドウです。シャドウが多く集まると、時間と空間に干渉する力が集まり特別な時間と空間が生まれます」

美鶴「その時間側面の結果が影時間だな」

アイギス「そのシャドウが集まる理由は、月があるからです」

鳴上「月?というと、あの、空にある……?」

美鶴「ああ。あれは世間で言われているようなただの衛星ではない。あれは、全ての人間に死を……滅びを与える存在だ」

アイギス「名を『Nyx』と言います」

天田「……簡単に言うと、シャドウの親玉みたいなものです」

鳴上「シャドウはそれを求めて集まってくる、と?」

美鶴「そういう事だ。Nyxの復活が近付くと爆発的に増えるらしい。その結果影時間が生まれ、影人間が生まれる」

鳴上「とりあえず、一通りはわかりました。で、俺達は何が出来るんですか?」

美鶴「正直な所、今具体的な対策は無いんだ。今の我々に出来る事は、変化を待ち、原因を突き止める為に動く事だ」

天田「後手後手ですね……。気分のいい話ではないですけど」

鳴上「と、なると俺達はここに待機して、各々都合のいい晩に街を回ってみるとか」

美鶴「そのぐらいだな。とにかく鳴上はまずここの生活に慣れる事だ」

アイギス「私達もここに暮らしますから、何かあったらいつでも聞いてくださいね」

天田「なんか、懐かしいですね。ここでこうやって話すのも」

美鶴「そうだな。影時間の事以外は自由にしてくれて構わない。君は今年が高校生活最後の一年になるんだろう?ここでの生活を満喫するといい」

>皆と談笑した。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のコミュを手に入れた。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが1になった。


美鶴「さて、鳴上。君の部屋に案内しよう」

>美鶴に連れられて、二階一番奥の部屋に行った。

美鶴「荷物の搬入は済んでいる。それと、清掃はしたが今まで使われていなかったからな。少々埃っぽいかもしれないが」

鳴上「そのくらいなら別に平気です」

美鶴「そうか。……」

>美鶴はこちらを見ている……。

鳴上「あの、何か?」

美鶴「いや、その……何でも、無いんだが」

鳴上「……?」

>美鶴から寂しいような、嬉しいような複雑な視線を向けられている。

美鶴「うん。何でもないんだ。悪かったな。では、これからよろしく頼む。今日のところは影時間の探索も無しにしようと思うから、ゆっくり休んでくれ」

>美鶴は去っていった。

>そう言われて随分疲れている事を自覚した。

>……今日はもう寝よう。

>部屋には確かに荷物が運び込まれている。

>ベッドに倒れこんだ……。

>明日から学校だ……。

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のコミュを手に入れた。

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが1になった。

今日はここまで。また後日。



もう一つ鳴上が月光館学園に行くSSあるから負けないように頑張れ

こっちはキタロー視点やるのか?
期待。

なんという俺得
頑張って

>>15 読んでます。面白いね……勝ち負けはともかく、頑張ります

補足を追加

・番長とキタローはそれぞれ全ステマックスの超人状態

・番長はP4本編真エンドから現在へ

・3勢はP3本編から後日談を経て現在へ、P3P要素無し

・P4U関連は出ません

では、本日分。

【2012/4/6(土) 晴れ】


アイギス「鳴上さん、朝です。起きてください」

>扉を叩く音で目が覚めた。

鳴上「おはようございます。何か用事でも?」

アイギス「いえ、ただもう私しか寮にいないので、初日から遅刻しないように起こしに来ただけです」

鳴上「……ありがとうございます」

アイギス「皆さん既に出掛けられたので、学校までの案内も私がします。早めに準備して降りてきてください」

鳴上「わかりました。わざわざすみません」

アイギス「では」

>やはり、何か冷たいような気がする……。

>着替えをして一階に降りた。

鳴上「お待たせしました」

アイギス「もう大丈夫ですか?では行きましょう」

鳴上「あ、はい」

>朝食をどうするか考えながら寮を出た。

鳴上「……」

アイギス「……」

>道中、アイギスはずっと無言で隣を歩いている。

鳴上「あの……」

アイギス「なんでしょう」

鳴上「いや、アイギスさんって海外の方なんですか?」

アイギス「……」

鳴上「目も青いし、金髪だからそうなのかなと」

アイギス「私は、桐条グループに作られた対シャドウ用の兵器です」

鳴上「えっ」

アイギス「元々はただの機械だったのですが、シャドウと戦う上でペルソナは必須ということで、ペルソナの素……心を人為的に与えられた、言うなればロボットです」

鳴上「でも、そんな風には……」

アイギス「では、これを」

>アイギスは突然、ワンピースの肩紐を外した!

鳴上「な、アイギスさ……!」

>露出したアイギスの関節部分は、確かに複雑に組まれた金属が見えている。

アイギス「納得できましたか?」

鳴上「確かに……しかし、すごい技術ですね。流石都会」

アイギス「都会は関係ないと思います」

鳴上「あ、はい……」

アイギス「……」

>アイギスはまた無言になってしまった……。

鳴上「……あの」

アイギス「……いけません、ね」

鳴上「え?」

アイギス「あなたを見ていると……話していると、なんだか誰かを思い出しそうで、つい距離を置こうとしてしまいます」

鳴上「誰か、ですか」

アイギス「そう、とても大事な誰かです。今は、どうやっても会えない誰か。私の大切な、誰かを……」

鳴上「……」

アイギス「あなたは、彼に似た空気を持っています。それで、そういう風に思ってしまうのでしょう。ごめんなさい」

鳴上「いや、別に謝るような事は」

アイギス「なんだか気を遣わせてしまいましたね。……これからは、ちゃんと普通に応対します。あの、改めて、よろしくお願いしますね」

>アイギスは微笑んでいる。

鳴上「……やっぱり、機械には見えませんね」

アイギス「先程確かめたでしょう?」

鳴上「いや、機械がそんな笑顔をするとは思えなくて」

アイギス「そ、そうですか?」

鳴上「ええ。凄く綺麗な」

アイギス「鳴上さんは、やっぱりあの人と似た雰囲気がありますね……女たらしっぽい所とか」

鳴上「え!?」

アイギス「冗談です。さ、そろそろ学校です。遅刻しないように気をつけてくださいね」

>アイギスと笑って別れた。

>アイギスと少し仲良くなった気がする。

>『No.07 戦車 アイギス』のコミュを手に入れた。

>『No.07 戦車 アイギス』のランクが1になった。



【月光館学園 高等科 3-A教室】


>担任教師に案内されて、これから所属するクラスに行った。

鳥海「はーい、静かにー。なんと今日は転入生がいまーす」

>教室はざわめいている。

鳥海「男子は嘆け女子は喜べー、イケメンだぞ。そんじゃ、入ってきてー」

>教室に入る。

>女子のざわめきが心なしか大きくなった気がする。

鳥海「じゃ、軽く自己紹介しちゃって」

鳴上「周防達哉です。将来は刑事になろうと思っています。これから一年よろしくお願いします」

鳥海「……君、鳴上君よね?私の書類が間違ってたのかしら」

鳴上「いえ、冗談です。鳴上悠です。高校生活最後の一年、皆と同じクラスで過ごす事になりました。いろいろ面倒をかけると思いますがよろしく」

>冗談はウケなかった……。

鳥海「……なんか、面白い子ね。えーと、じゃあホームルーム始めるよー。まずは……」

>これからの学校生活について説明を受けた。

男子生徒「なあ、鳴上君ってあれだよね。男子寮から移動になったっていう」

鳴上「良く知ってるな」

男子生徒「ああ、俺も寮生だから。でさ、今分寮に住んでんだろ?あそこってなんで閉鎖されてたの?」

鳴上「さぁ……俺も良くは知らないんだが、桐条って人がいろいろあったって言ってたよ」

男子生徒「桐条……って、桐条美鶴さん!?」

鳴上「本当に良く知ってるな。その通りだ」

男子生徒「マジかよ……俺ファンなんだよあの人。なぁ、今度分寮遊びに行っていいか?」

鳴上「……止めといた方が」

鳥海「こらそこー、転入初日から無視とはいい度胸だ。ちゃんと話聞いときなさいよー」

>クラスの皆とは上手くやっていけそうだ……。



【巌戸台分寮】


>まっすぐ寮に帰ってきた。

天田「先輩、おかえりなさい」

>天田が犬を連れている……。

天田「あ、この犬はコロマルって言います。こう見えても元特別課外活動部の一人……一匹?なんですよ」

鳴上「犬のペルソナ使いか」

天田「あれ、驚きませんね」

鳴上「まあクマのペルソナ使いがいるくらいだからいるかもと思って」

天田「クマの……?その辺りのお話は、また皆揃ってから聞かせてください」

コロマル「ワン!」

>コロマルと知りあった。

>部屋に荷物を置いた。

>コロマルの様子が気になる……。

>ちょっと見に行こう。

>ラウンジに降りると、見知らぬ女性がコロマルを撫でていた。

?「おー、コロちゃんは変わらないねー。天田くんはこんなに大きくなったのに」

天田「成長期ですから、そりゃ成長しますよ」

?「いいねー成長期。私ももうちょっとこう、ねー……」

天田「あ、先輩。どうかしましたか?」

?「ん?誰……!?」

>女性は驚いたようにこちらを見ている。

鳴上「いや、コロマルにちゃんと挨拶しておこうと思って……」

天田「あ、ゆかりさん。紹介します。こちらが新しく協力してくれる事になった鳴上悠先輩です」

天田「で、先輩。この人は元特別課外活動部の……」

?「岳羽ゆかり。そっか、君が例の……」

鳴上「どうも」

岳羽「ふーん……確かに信用出来そうだね」

天田「でしょう?」

鳴上「ええと、何故……?」

岳羽「んー、なんとなく、かな。うん。とにかくよろしくね!」

>元特別課外活動部の面々は、自分の向こうに誰かを見ている気がする……。


鳴上「よろしくお願いします」

岳羽「私、今大学通ってるんだけど……ま、いろいろと忙しくってさ。そこまで頻繁に協力は出来ないと思うけど……」

天田「仕方ないですよ。あの時とはやっぱり事情が違うし……」

鳴上「そういえば、特別課外活動部のメンバーって何人くらいいるんですか?」

岳羽「ん?そうだねー、ちょっと待ってね。えーと、まず誰に会ったのかな」

鳴上「天田と、桐条さんと、アイギスさんと……それとコロマルと、後、今岳羽さんに」

岳羽「そっか。それじゃ残りは……三人かな」

鳴上「じゃあほとんどのメンバーはもう会ったって事ですね」

天田「そうなりますね。ええと、後は真田さんと、風花さんと……」

岳羽「あの馬鹿ね。……名誉部員、みたいなのなら、他にもいるけどね」

鳴上「名誉部員?」

岳羽「永久欠番みたいなものかな。……や、ごめん。忘れて」

天田「……」

鳴上「……で、岳羽さんは今大学通いが忙しくて」

天田「風花さんと順平さんもそうでしょうね」

岳羽「風花はともかく、あいつなら喜んで帰ってきそうだけどね……」

鳴上「それで、真田さん?はどうなんですか」

アイギス「真田さんは今武者修行でどこかに飛んでいるらしく、連絡がつかないそうです」

>アイギスも部屋から出てきたようだ。

岳羽「アイギス!久しぶりー、元気だった?」

アイギス「お久しぶりですゆかりさん。ゆかりさんもお元気そうで何よりです」

鳴上「武者修行?」

アイギス「ええ。何やら世界中の獣を倒してみせる!とか」

岳羽「あの人、まだそんなことやってるんだ……」

天田「……ですね」

>皆と談笑した。

>岳羽ゆかりと知り合いになった。


岳羽「っと、そろそろ帰らないと。また来るから、皆も頑張ってね!」

天田「桐条さんもそろそろ帰ってくると思うんですけど……」

岳羽「先輩とはいつでも連絡取れるからいいのいいの。あ、そうだ。鳴上君。良ければちょっと見送ってくれるかな?」

鳴上「俺ですか?」

岳羽「そ、君。良ければ、だけどね」

鳴上「ああ、構いませんよ。じゃあ、ちょっと出てくる」

天田「いってらっしゃーい」


【巌戸台分寮前】


岳羽「……ごめんね、わざわざ出てもらって」

鳴上「いえ、構わないんですが……どうしてですか?」

岳羽「さっきさ、ちらっと言ったじゃん。名誉部員ってヤツ」

鳴上「ああ、確かに」

岳羽「聞いて無かったっぽいからさ。一応教えとこうと思って」

鳴上「天田のいる前では言い難い事なんですか?」

岳羽「ていうか、本当は私も言いたくない事……かな。でも、知らないでいるのも良くないと思う。何となくだけどね」

岳羽「……えっとね。前の事件で、部員は本当は10人いたの」

鳴上「それじゃ、残りの二人は」

岳羽「もう、会えない人と……死んでしまった人」

鳴上「死ん……」

岳羽「君が事件に挑もうとしてるのは知ってる。けど、わかってるのかなって思って。軽く無いんだよ?」

鳴上「……けど、俺達がやらないともっと多くの人が苦しむ事になるんですよね?」

岳羽「だからって、君が頑張る必要は無いかもしれない。そんな風に考えた事は無い?」

鳴上「ありません。もし仮に、俺が……死んでしまうような事になっても。そうしなければ、仲間や……皆を守れないなら」

岳羽「それで残された方の気持ちは?」

鳴上「えっ……?」

岳羽「君が死んだら、君が守りたかった仲間はどう思うの?」

鳴上「……それは」

岳羽「……ごめん、意地悪いね。でも、きちんと考えて欲しかったの。なんて言えばいいのかわかんないけど……」

岳羽「命のこたえ、とでも言うのかな。君はそれを考えなきゃいけない状況にあるんだと思う」

鳴上「命の、こたえ……」

岳羽「なんて、変な事言っちゃったね。でも、覚えておいて。君の命は、決して軽くない。仲間を守りたいと君が思うように」

鳴上「仲間も、俺を守りたいと思っている……」

岳羽「そ。だから、一人でなんとかしようとか、絶対思っちゃ駄目だよ?」

鳴上「ありがとうございます」

岳羽「え、お説教してお礼言われたの、生まれて初めてかも」

鳴上「俺を心配してくれてるんですよね?だったら、やっぱりありがとうと」

岳羽「もう、やめてよ。なんか照れちゃうからさ。うん、そんだけ。でも忘れないでね」

鳴上「しっかり覚えておきます。命のこたえ」

岳羽「……君ならきっと見つかるよ。君だけの答えが。頑張ってね」

>ゆかりは手を振って去って行った……。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のコミュを手に入れた。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが1になった。

コロマル「ワン」

>どこから出てきたのか、隣にコロマルがおすわりしている。

鳴上「聞いてたのか」

コロマル「ヘッヘッヘ」

>……何となく、しっかりやれよ、と言われている気がする。

鳴上「ああ。ありがとう。コロマルもこれからよろしくな」

>『No.08 正義 コロマル』のコミュを手に入れた。

>『No.08 正義 コロマル』のランクが1になった。

【同日 夜 巌戸台分寮】

>そういえば、結局名誉部員がどういった人物なのか聞いていない。

>……気は引けるが、美鶴辺りに聞いてみよう。

>ラウンジに行くと、アイギスと美鶴が何やら悩んでいる。

鳴上「どうかしたんですか?」

美鶴「……ああ、君か。いやなに、ちょっとした思考クイズだ」

鳴上「クイズ?」

アイギス「実際の所、現在原因の究明は不可能と言いましたが、仮説はいくらか立つと思ったんです」

美鶴「だから、アイギスといくつか適当な仮説を組んでみたが……」

鳴上「どうだったんですか?」

美鶴「しっくりくるものは無いな。やはり事が起こらねば動きようが無いか……」

鳴上「そのクイズ、混ぜてもらってもいいですか?」

美鶴「新たな頭脳は歓迎するぞ。さて、どこまで言ったんだったかな」

アイギス「まず、原因がNyxの復活であった場合、としましょうか」

美鶴「うん。何故復活したのか」

アイギス「考えたく無いけれど、封印が解かれた」

美鶴「とすれば、何故?」

鳴上「少しだけ聞きましたけど、封印を解こうとしていたモノは倒したんでしたよね?」

アイギス「はい、それは間違いありません。とはいえ、あれは倒したからといって消え去るようなものではありませんが」

美鶴「人の深層心理の負の部分……その塊のような存在だからな。人がいる限りまたいずれ復活するだろう」

鳴上「とは言っても、一度は散らしたんですよね」

美鶴「そうだな。だから今しばらくは大丈夫だと思っていた」

鳴上「……それって、他の要素では駄目なんですかね?」

アイギス「どういう事ですか?」

鳴上「ええと、例えば、深層心理の負の部分っていうとシャドウもそうですよね?だから、大量のシャドウを従える存在とか」

美鶴「なるほど、ペルソナ使いならぬシャドウ使いのような存在がいれば可能かもしれんな」

鳴上「で、そういう存在が封印に攻撃を仕掛けるとか……」

アイギス「不可能では無いと思いますが、はっきり言うと難しいかと」

鳴上「何故です?」

アイギス「あの封印も、深層心理が至る場所も、ある力が無いと辿り着く事すら出来ないからです」

鳴上「ある力というと?」

アイギス「アルカナの力……それも、何にでも姿を変えるけど、何にも属さない力。それは、『ワイルド』と呼ばれる力」

鳴上「ワイルド……!?」

アイギス「その力があれば、様々なアルカナ……人の心の力の象徴を一つ所に集める事が出来ます。その力は時に奇跡を起こす」

美鶴「鳴上は知らないかもしれないが、私達のようにペルソナを一人一体ではなく複数体所持し、しかも自在に付け替える事が出来る人間が稀に存在するんだ」

鳴上「あの……」

アイギス「かつては私もその力の持ち主でした。しかし、ある一件を機に二度とその力を振るう事は出来なく……」

鳴上「俺、出来ます」

美鶴「何がだ?」

鳴上「ペルソナの付け替え」

アイギス「……は?」

鳴上「ですから、ベルベットルームって所でワイルドの力を持っていると言われた事もあるし、ペルソナを付け替える事も出来ます」

美鶴「……どう思う、アイギス」

アイギス「ベルベットルームというのは、ワイルドを持つ者だけが入れる特別な部屋の事です。ワイルドで無ければ知りうる情報では無いかと」

美鶴「そうか……鳴上!」

鳴上「はい」

美鶴「そういう事は、最初に言え……」

鳴上「はい……」

美鶴「しかし奇縁だな。とんでもなく希少な存在を三人も知る事になるとは」

アイギス「鳴上さんの、彼に似た空気もそのせいかもしれませんね」

美鶴「やれやれだ。全く君には驚かされる」

鳴上「すみません。……で、思ったんですが」

アイギス「なんですか?」

鳴上「ペルソナは心の力ですよね」

美鶴「そうだな」

鳴上「シャドウは心から発生する負の力ですよね」

アイギス「そうですね」

鳴上「ペルソナとシャドウって、形が違うだけで同じ力じゃないですか?」

美鶴「確かにそういう見方も出来るな」

鳴上「じゃあ、ですよ。ワイルドの力で、シャドウ……でなくともペルソナを大量に所持したとすれば」

鳴上「人類の深層心理の塊、を一人で作り出す事が出来るんじゃないですか?」

美鶴「……」

アイギス「……」

鳴上「いや、俺じゃないですよ?」

美鶴「……疑っているわけじゃない。驚いているんだ」

アイギス「確かに、そういう考え方もできますね」

鳴上「飽くまで仮説にすぎないけど、もし他にワイルドの力を持った存在がいるとすれば……」

美鶴「まあ、滅多にいるものでも無いが、その可能性はあるな」

アイギス「といっても、本当に仮説に過ぎません」

美鶴「今のところは何も起こっていない。結局は『可能性はある』程度の話だな」

鳴上「まあそうですね……。あ」

美鶴「今度は何だ。もう大抵の事は驚かんぞ」

鳴上「俺、もう一人ワイルド能力者に心当たりあります」

美鶴「なん……だと……」

鳴上「多分、無関係だと思いますが……一応、調べてみていいですか?」

美鶴「好きにしてくれ……色々と衝撃が大きすぎて、頭の中が飽和状態だ」

アイギス「鳴上さん……そういう重要な事は……」

鳴上「いや……なんか、すみません」

>ワイルド能力……まさか、ここでその話が出るとは思わなかった。

>さて、彼女に会う必要がでてきた。

>今度、ベルベットルームに向かおう。

>マーガレットの妹、エリザベスに会いに……。


【2010/3/5 晴れ】


>……目を閉じますか?

>…………。

一旦ここまで。時間あればまた後で投下に来ます。

乙!

3月5日・・・

本日後半を投下。


【???】


?「随分と、お久しぶりですな」

>声が聞こえる……。

>目を開けると、青い部屋の中にいた。

イゴール「あなたは命のこたえに辿り着いた。しかし、再びこうしてここにいる」

>今までのベルベットルームと違い、リムジンバスの中のような様相をしている。

イゴール「あなたほどの客人でさえ、自らの命すら思うようにいかぬという事でしょうかな。とにかく、再会を祝して……」

>イゴールは何かを差し出す……。

>契約者の鍵を手に入れた。

「その人は?」

?「私はマーガレットと申します。あなたのお手伝いをさせて頂いていた、エリザベスの姉にあたります」

>どうでもいい……。

マーガレット「これより、再びあなたを現実へとお連れします。そこで、あなたは新たな絆を築き、力を得る事でしょう」

イゴール「再び我々に見せていただきたい。そのお力と、生命とは何なのか……そのこたえを」

>意識が薄れていく……。

>僕を、呼ぶな……。

【2012/4/1(日) 晴れ】


?「おい、おいアンタ!大丈夫かよ!おい!」

>騒々しい声が聞こえる。

?「あ、目開けた。聞こえてるか?おーい」

「……誰?」

?「通りすがりのモンだよ。自転車で走ってたら、たまたまアンタが倒れてるの見かけてさ。大丈夫か?」

>体が酷く重い。

「少し、寝かせて……」

?「寝るって、あ、おいアンタ。おい、おーい!」


【稲羽市立病院】

>……暖かい風を感じる。

「……ここは」

>辺りを見回すと、どうやら病院の一室のようだ。

>ベッドの隣に茶髪の男が座っている。

?「あ、気がついたか!良かった……今先生呼んでくっから!」

>男が立ち上がろうとする。

「いや、いい。それより、少し話を聞かせて」

?「いや良くねえって。……まあ、じゃあちょっとだけな」

「まず、君は誰?」

?「俺か?俺は花村陽介。八十神高校3年だ。見たとこアンタも同じくらいだろ?」

「……八十神?ここは、何て街?」

陽介「おいおい、マジかよ……記憶喪失ってヤツ?それとも超ワケありとか」

「どっちかというとワケあり」

陽介「げ、マジで。……いや、ワケありでも関わっちまったもんは仕方ねえ。ここはな、稲羽市。八十稲羽ってトコ。もう一つ言えば、この建物は稲羽市立病院。わかった?」

「八十稲羽?」

陽介「ほんとに知らなかったのかよ……まあ、いいや。先生呼んでくっから、待ってろよ!あ、ところでアンタ、名前もわかんないとか言う?」

「いや、名前はわかるよ」

陽介「ほー、なんてぇの?」

「僕は有里。有里湊」

陽介「有里な。よろしく。じゃ、行ってくるわ!」

>陽介は騒がしく出ていった。

>どうやら、本当に現実に戻ってきてしまったらしい。

>なら、大いなる封印はどうなったのだろうか。

>嫌な予感がする……。

>というか、自分の戸籍やその他はどうなっているんだ……。

>この病院の支払は……。

>……どうでもいい、か。

>栄養失調と過労と診断された。

>最中話を聞いたのだが、今は2012年らしい。

>あれから二年以上が経っている……。

>何故、ここにいるんだろうか……。

>……眠い。

>体がまだ本調子ではないのを感じる。

>とにかく、今は寝よう。


【2012/4/2(月) 晴れ】


>もう昼過ぎだ。

>体に生気が戻ってきたのを感じる。

陽介「ういっす。お見舞いに来たぜー」

有里「なんでわざわざ?」

陽介「いや、一応さぁ、俺が第一発見者なわけじゃん?その後とか気になるじゃん?」

有里「なるほど、ありがとう」

陽介「どういたしましてっと。で、どうよ」

有里「何が?」

陽介「いや、ワケありって言ってたろ?なんかさ、こうして関わったのも何かの縁だし、力になれる事あったらなって」

>確かに、このままでは色々と困る。

>……正直に話すより、記憶が無い体で誤魔化した方がいいかもしれない。

有里「それが、名前以外何も思い出せなくて……」

陽介「マジかよ……ワケありって言ったじゃねえか……」

有里「記憶喪失もワケありだと思う」

陽介「そりゃそうか。んー、ただなぁ。そうなると俺なんかじゃなくて、もっとちゃんとした大人に相談した方がいいんじゃねえか?」

有里「そうだね……」

陽介「悪いな、力になってやれなくて……」

有里「いいよ。そう言ってくれただけでありがたい」

陽介「そっか。他のことならさ、何でも聞くから何でも言ってくれよ!」

>陽介から嘘偽りの無い思いやりを感じる……。

有里「どうして良く知りもしない僕の為に?」

陽介「え?だから、まあ何かの縁だと思って……」

>じっと見つめてみた。

陽介「……だぁーっ!もう!わかった、正直に言う!」

有里「僕のこと好きなの?」

陽介「そういうんじゃねえよ!気持ち悪いっ!……有里さ、俺の親友になんか似てんだよ。だから、なんつーか、まあろいろしてやりたくなるわけ」

有里「そうか。ありがとう」

陽介「ま、そういうわけだからよ。何でも言えよな。まだ退院出来ないんだろ?」

有里「もう少しいることになりそうだね」

陽介「入院中暇だと思うから、俺も暇な時は遊びにくるからさ。あ、有里の力になってくれそうな人も探しとっから。早く体治せよ!」

有里「わかった。じゃあゆっくり休ませてもらうよ」

陽介「そうしろそうしろ。じゃ、また明日も来るわ!明日は友達も連れてくっかもしんねー」

有里「なるべく静かにね」

陽介「わーかってるよ。んじゃ、またな!」

>陽介と少し仲良くなった。

>心の中に新たな力を感じる……。

>『No.19 太陽 花村陽介』のコミュを手に入れた。

>『No.19 太陽 花村陽介』のコミュランクが1になった。

>どうやら、新たな絆が育まれたらしい。

有里「これが、マーガレットの言ってた……」

有里「新たな絆か」

有里「……これからどうしよう」

>まだ眠い。

>時間は早いが寝る事にする……。

後半は短いけどここまで。
役者は徐々に集まって来ました。
また後日。

乙です

乙乙

これも面白いな 期待してる 乙

乙‼

ヨースケ魔術師じゃないのか

太陽!?

皇帝の真田がコミュだと星、法王の荒垣がコミュだと月みたいなもんだろ

どういう面を主人公に見せるか…だっけ?

コミュは原作と同じ人もいれば違う人もいます。
アルカナの意味が良くない物もあるわけですが、基本的には良い意味とかなんとなくなイメージでやっとります。
まあ捉え方によって色々ということで。
では本日分。



【2012/4/3(火) 曇り】


>午前中は少しリハビリをした。

>体が本調子に近づいて来ているのがわかる……。

陽介「よっ!今日も来たぜー!」

>陽介が騒がしく病室に入ってきた。

陽介「……なんだよ、なんでそんな顔なんだよ」

有里「なるべく静かにね」

陽介「え、俺そんなに騒いでなくない?」

有里「……」

陽介「すんません、マジで……」

有里「わかってくれたらいいんだ」

陽介「はい……っじゃなくて!今日は入院生活で潤いの無い有里の為にだなぁ、なんと女子を連れてきたんだぜ!」

>……さっきから、病室の入り口からちらちらこちらを伺っているのがそうだろうか。

>とりあえず会釈しておこう。

陽介「っつーわけで入って来いよ二人共」

?「こ、こんにちわー」

?「はじめましてー……」

陽介「何でちょっと緊張してんだよ」

?「いや、だってさぁ……」

?「ねぇ……」

陽介「……あ、そう。えーと、紹介するな。こっちのお淑やかな方が」

?「あ、天城雪子って言います。有里くん……さん?よ、よろしくね」

陽介「天城の家は旅館なんだぜ!若女将ってヤツ!すごくね?」

有里「そうだね」

陽介「リアクション薄いな……で、こっちのガサツな方がー」

?「誰がガサツな方よ誰が。そりゃ雪子に比べたらちょーっと大雑把かなーって所あるけどさぁ」

陽介「まあこんな感じでガサツなのが里中千枝。二人共俺の同級生。どうよ!」

>陽介は何やら自慢気だ……。

有里「天城さんと里中さんか。二人は花村くんの恋人なの?」

陽介「いやいやいや!そんなんじゃないって!」

千枝「花村と恋人はねー……ちょーっと在り得ないかなぁ」

天城「え?恋人?なんで?そう見える?ただのお友達だよ?」

陽介「うん。軽ーく傷ついたよ俺。まぁ、確かに恋人とかそういうんじゃないけどさぁ……言い方っていうかさぁ……」

>……陽介が落ち込んでしまった。

有里「何か、ごめん……花村くん」

陽介「いやぁ、慣れてるよ、こういうの。はは……っと、後さ、俺の事呼ぶ時さ、くんとかそういうのナシにしてくんね?」

有里「どうして?」

陽介「なーんかむず痒いっつーの?もっとフランクにさ、花村ーとか、陽介ーとか。そんな感じでいいからさ」

有里「じゃあ、陽介」

陽介「そう、そんな感じで。別に年上ってわけでもねーし、そのくらいが丁度いいって」

>二年間存在していなかったから同い年くらいだと思うが、一応生まれは自分が先だ……。

>……どうでもいいか。

千枝「そうそう。花村なんて花村で十分だよ。花村だし」

陽介「里中はもーちっと気使ってもいいんだよ?」

天城「この二人はとっても仲良いんだ。いっつもこんな感じ」

有里「へぇ」

>三人と話をした……。

陽介「っとぉ、こんな時間か。実は俺今日バイト入ってるんだわ。そろそろ行かねーと」

有里「ああ、それじゃ」

陽介「里中と天城はどうする?もうちっと有里に潤いチャージしとく?」

千枝「なにソレ……まぁ私は暇だからいいよ」

天城「私も、今日はもう少し時間あるから」

陽介「おう、じゃあまたな皆!……有里って、女に手早そうだから気をつけろよ?」

有里「そう見える?」

千枝「誰かと違って物静かでかっこいいしねー有里くんは」

陽介「うっせ!」

>陽介は二人をおいて帰ってしまった。

>今まで普通だったのに、陽介がいなくなった途端無言になってしまう……。

>二人共、何か落ち着かないようだ……。

有里「そういえば二人共、どうして来てくれたの?」

千枝「え?いや、私は花村に誘われて……」

天城「私は千枝に話聞いて……」

有里「ふぅん、そっか」

天城「迷惑、だった?」

千枝「お騒がせしちゃったかな……?」


有里「そんな事ない。ありがとう」

>感謝の気持を込めて微笑んでおいた。

千枝「……っ」

天城「……ぅ」

>二人は顔を見合わせた。

有里「……?」

千枝「あぁ、いや、何でも!何でもないから!」

天城「そそそうだよね!なんでも無い!」

有里「そう?」

千枝「うん、何でも無いよ!……でも、ほんとだねー」

天城「花村くんの言った通りだったね」

有里「女に手が早いって?」

天城「ああ、そうじゃなくって」

千枝「ちょっと前までさ、この街に住んでた友達がいたんだよね。今は引っ越しちゃったんだけど」

有里「ああ、その人に」

天城「うん。有里くんが何となく似てるんだ、って花村くんに聞いたの」

千枝「全然違うんだけどねー。なんていうんだろ、雰囲気?空気?がね」

天城「彼にそっくりだね」

有里「二人はその彼の事が好きなの?」

千枝「うぇ!?な、何言い出すの今度は!?」

天城「有里くん、そういう話題好きなの?」

有里「いや、別に。二人をからかうのが面白くて」

天城「それって酷くない?」

千枝「ねー……」

>言っている事と裏腹に二人は笑っている。

>里中千枝、天城雪子と知り合いになった。

>『No.18 月 天城雪子』のコミュを手に入れた。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のコミュを手に入れた。

>『No.18 月 天城雪子』のランクが1になった。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが1になった。

>……今日はすこしはしゃぎ過ぎた。

>体がだるい……。

>今日も早めに寝る事にした。



【2012/4/4(水) 晴れ】


>体の訛りは随分と取れてきた。

>そろそろ退院できそうな気もする。

>今日は、警察の人が聴取に来るらしい。

>……記憶を無くした人間が街に倒れていたら、やはり事件性が疑われるのだろう。

医師「この患者です」

?「……どうも。先生は外してもらっても構いませんか?手荒はしませんので」

医師「まだ体調が完全とは行きませんので、あまり長時間は……」

?「理解しています」

医師「でしたら、どうぞ」

有里「……刑事さんですか?」

?「ああ。堂島という。よろしく」

有里「堂島さんですか。僕は何を聞かれるんです?」

堂島「まず、君の名前を聞かせてもらおうか」

有里「有里湊です」

堂島「有里君。君、記憶が無いそうだね」

有里「ええ。一般常識なんかは覚えてるんですが、自分の事となると……」

堂島「……ふん。まあそういう話は俺にはよくわからん。だから、率直に聞く」

有里「どうぞ」

堂島「君は何かの事件に巻き込まれたんじゃないか?」

有里「……」

堂島「心配しなくても、君に何かの嫌疑が掛かっているわけじゃない。これが俺の仕事だからやってるだけでな」

有里「はっきり言えば、覚えていません。が、何かの事件に関わっていたのなら、こんな風にゆっくり入院出来るものでしょうか」

堂島「そりゃわからん。単純に事故で打ち所が悪かったとか、そういう話かもしれん。何度も言うが、俺は仕事だからやってるだけだ」

有里「何だか乗り気じゃ無さそうですね」

堂島「……やりがいのある仕事ばかりじゃないって事だ。所で、君はいつ退院なんだ」

有里「明日にでも退院出来るとは言われています」

堂島「だが、記憶が無いんじゃ身寄りも無いだろう。どうするつもりだ?」

有里「……」

堂島「考えがあるわけじゃ無さそうだな」

有里「僕の事を知っている人が現れれば、その人を頼ってもいいかも、と思っているんですが」


堂島「実はな、君の友達がいろいろ手を打ってくれてるんだ」

有里「友達……?」

堂島「ああ。花村陽介って言えばわかるか」

有里「陽介が?」

堂島「ネットや何やで君の知人を探しまわってるらしい。今の所ヒットは無さそうだがな」

有里「陽介……」

堂島「……で、だ。行く宛がないわけだろ?」

有里「少なくとも今しばらくはそういう事になります」

堂島「……良ければ、家で暮らさないか」

有里「え?」

堂島「別に監視しようってわけじゃない。ただ、どこも行く宛が無いならと思ってな」

>堂島は嘘を言っているようには見えない。

有里「ありがたい申し出ですが、良いんですか?」

堂島「ああ。唐突で驚いたか?」

有里「ええ、かなり」

堂島「まぁな。俺も驚いた」

有里「どういうことです?」

堂島「なんだか君を他人と思えなくてな。不思議な話だが」

有里「本当にお世話になっていいのなら、是非お願いしたい話ですが」

堂島「わかった。君が良いなら細かい事は俺がやっとく。なるべく早い退院を頼むぞ」

有里「……わかりました。あの、本当に有難うございます」

堂島「いいから、今日はもう休め。後は任せろ」

>堂島は病室を出ていった。

>とんとん拍子に事が進む……。

>これも、似ている彼のおかげだろうか。

>感謝しないといけないな……。

>とにかく、早く退院するようにしよう。

>堂島遼太郎と知り合いになった。

>堂島家で暮らす事になった。



【2012/4/6(木) 晴れ】


>とりあえず、退院していいと言われた。

>まだ通院の必要はあるらしいが……。

>元々怪我でも病気でも無いのだから、入院期間は短くて当たり前か。

>堂島さんが迎えに来てくれた。

堂島「随分早い退院だったな」

有里「まだ通院しろってしつこく言われましたけどね」

堂島「まぁ、いいさ。支払いは立て替えておいたから」

有里「……何から何まで」

堂島「いい。早速、家に案内するぞ」

>堂島さんの運転で、これから住む家に向かった。


【堂島宅】


堂島「ここだ」

>普通の民家だ。

堂島「部屋は……あいつには悪いが、あいつの部屋を貸してもらうか」

有里「あの……」

堂島「さて、と。今日から俺がお前の保護者だ。ちゃんとした自己紹介がまだだったな。俺は堂島遼太郎。稲羽署で刑事をやってる」

有里「はい、よろしくお願いします」

堂島「で、だ。俺はまだ仕事がある。だからお前につきっきりになってるわけにもいかない」

有里「はぁ……?」

堂島「夜には帰れると思うが……後の詳しい事は菜々子に聞くといい」

有里「菜々子って……」

堂島「娘だ。じゃ、また夜にな」

有里「ど、堂島さん?あ……」

>堂島は車で去っていった。

>……仕方ない、入るとしよう。

>玄関を開けた。

>……視線を感じる。

>奥の部屋から、小さな女の子が覗いている。

有里「……あの」

?「湊……さん?」

有里「あ、はい」


>どうやら彼女が菜々子のようだが、とても緊張しているようだ。

有里「君が、菜々子ちゃんだね?」

菜々子「そう、です」

有里「堂島さ……お父さんからお話聞いてるかな?」

菜々子「聞いてる。お兄ちゃんがこれから一緒に住むんでしょ?」

有里「うん。これからお世話になります有里湊です。よろしくね」

>できる限り優しく微笑んでみた。

>菜々子が部屋から出てきてくれた。

菜々子「よかった……菜々子、こわいお兄ちゃんだったらどうしようかと思ってた」

有里「怖くないよ?」

菜々子「うん!菜々子わかるよ」

有里「そっか、ありがとう。ええと、それで……」

菜々子「あ、そうだ。お兄ちゃんのお部屋教えるね」

>菜々子が袖を引っ張ってくる。

>どうやら、部屋は二階らしい。

菜々子「お兄ちゃんの部屋だけど、湊お兄ちゃんに貸してあげるんだって」

有里「お兄ちゃん?」

菜々子「菜々子の大好きなお兄ちゃんだよ。今はお引越ししちゃっていないんだけど、また遊びにくるんだって」

有里「そうなんだ。じゃあお兄ちゃんのお部屋、しばらく借りるね」

菜々子「湊お兄ちゃんだったらいいよ!これからよろしくおねがいします」

>堂島菜々子と知り合いになった。

>菜々子と遊んで過ごした……。



【同日 夜 堂島宅】


>堂島さんが帰ってきたようだ。

菜々子「お父さんおかえりなさい!」

堂島「ただいま。湊、菜々子とは話したか」

菜々子「湊お兄ちゃん、遊んでくれたよー」

堂島「そうか、良かったな。湊、お前、まだ生活用品何も無かっただろ」

有里「あ、はい」

堂島「明日、菜々子の学校が始まるから、菜々子が帰って来てから一緒に買い物に行くといい」

菜々子「お買い物?」

有里「でも、僕無一文ですよ」

堂島「知ってるよ。ほら」

>堂島から小遣いをもらった。

堂島「いろいろ必要な物もあるだろう。無駄遣いはするなよ」

有里「……何か、すみません」

堂島「謝らなくていい。どうしても心苦しいなら、その内バイトするなりなんなりで返してくれればいい」

有里「はい、ありがとうございます」

菜々子「お買い物だったらジュネスがいいなぁ」

有里「ジュネス?」

菜々子「エブリデイ・ヤングライフ・ジュネス♪」

>菜々子と買い物に行く事になった。

>堂島の確かな優しさを感じる……。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のコミュを手に入れた。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが1になった。

>その晩は、三人でいろいろな話をした……。

とりあえず一旦終わり。
今日もまた後で時間あれば投下しに来ます。

乙~

3主人公のキャラ付けが難しそうだな

>>19 曜日が金曜の間違いでした。 >>51 日付が4/6では無く4/5でした。
本日後半部を投下します。



【同日 23:55】

>例の彼の部屋で眠る事になった。

>なんとなく、眠れない。

>体力が回復してきているからか、今まで寝過ぎだったからか……。

>もうこんな時間だ。

>もう来ないとわかっていても、この時間になると少し身構えてしまう。

>……。

>日付が変わる。

>もう、寝よう。

カチッ

有里「……」

>悪い方の予想が当たった。

有里「僕がこうして生きてるって事は、封印が解けたって事なんだろうけど」

有里「やっぱりまたか……『影時間』」

>さて、どうしたものか……。

>異変の中心を探る必要がある。

>……明日にしよう。

>今日は、眠る……。


【2012/4/6(金) 晴れ】


>朝、早く目覚めたので家事を済ませておいた。

>ただ世話になるだけ、というわけにもいかない。

菜々子「湊お兄ちゃん?」

有里「おはよう、菜々子ちゃん」

菜々子「菜々子でいいよぉ。お兄ちゃんご飯作ってくれたの?」

有里「うん、簡単で悪いけど」

菜々子「すごい、湊お兄ちゃんお料理できるんだ!」

有里「そんなに驚かなくても……」

菜々子「お父さん全然出来ないんだよ」

有里「まぁ、男の人はそういう事もあるんじゃないかな」

菜々子「でも、お兄ちゃんも湊お兄ちゃんもお料理できるよね?」

有里「趣味みたいなものだよ」

堂島「おはよう。なんだ、二人とも早いな」

有里「おはようございます」

>学校へ行く菜々子と、仕事へ行く堂島さんを見送った。

>さて、昼までに掃除くらいはしておこう……。



【同日 昼過ぎ】


菜々子「ただいまー」

有里「あ、お帰り」

菜々子「あ、湊お兄ちゃん。今日ジュネス行くんだよね?」

有里「それがジュネスの場所、わからないんだよね」

菜々子「大丈夫だよ!菜々子覚えてるから!」

有里「じゃあ、案内頼めるかな?」

菜々子「うん!準備するねー」

>菜々子とジュネスに行く事にした。


【ジュネス】


有里「ああ、ジュネスってこういう……」

菜々子「エブリデイ・ヤングライフ・ジュ、ネ、ス♪」

陽介「おお?有里じゃねーか!聞いたぜ、堂島さんとこに世話になるんだってな!」

有里「陽介。なんでここに?」

菜々子「ジュネスのお兄ちゃんこんにちわー!」

陽介「おーう菜々子ちゃんこんにちわー!なんでって、ここ俺の親が経営してんだよ。だからまあバイトっつーか手伝い?」

有里「なるほど、それで」

クマ「クマー!ナナちゃんいらっしゃいクマー!」

菜々子「あー、クマさんだー!湊お兄ちゃん、菜々子クマさんと遊んでていい?」

クマ「ヨウスケー、ナナちゃんと遊んできていいクマかー?」

有里「いいよ、行っておいで」

陽介「あんまり無茶すんじゃねーぞ」

菜々子「わーい!クマさん遊んでー!」

クマ「今日は何するクマー!?」

陽介「……ったくアイツは無駄に元気いーんだから」

有里「今の着ぐるみ、陽介の同僚?」

陽介「あー、そんなようなもんだ。で、今日はどうしたよ」

有里「僕生活用品何も持ってないから」

陽介「なんだ、普通に買い物ね。そうだ、菜々子ちゃんはクマに預けてよ、ちょっと話さねえか?」

有里「仕事はいいの?」

陽介「ああ、今日は正式にバイトで入ってるわけじゃねえんだ。だから大丈夫」

有里「そう。じゃあ別に構わないよ」

陽介「うち、フードコートもあんだよ。そこで話そうぜ!おばちゃーん!ちっと抜けんねー!」

おばちゃん「はいよー、いつもありがとねー!」



【ジュネス内・フードコート】


陽介「よっと、炭酸飲めるか?」

有里「大丈夫」

陽介「いやー、それにしても良かったな。とりあえずでも拠点が決まってよ」

有里「本当に……そういえば陽介、色々手を打ってくれてたんだって?」

陽介「ん?ああ、まあな。どれも成果なしだったけどよ。言ったろ?出来る事なら力になるってよ」

有里「気持ちが嬉しい」

陽介「へ、へへ。なんだよ、照れるじゃねえか」

>陽介は嬉しそうにしている。

陽介「……なんか、懐かしいな」

有里「何が?」

陽介「いや、前に住んでた友達とさ、よく集まったんだよ。ここで」

有里「僕に似てるっていう?」

陽介「そ。そのソイツとさ、他の仲間と一緒に集まってよ……」

有里「いいね……」

>陽介は、なんだかしんみりしているようだ。

陽介「……あ、そういやさ、有里ってオカルトとか得意?」

有里「オカルト?」

>陽介は雰囲気を変える為か、妙な切り出しで話し始めた。

陽介「おー。お前の情報収集にさ、結構遅くまでネットとかしてんだよ、最近」

有里「本当にありがとう」

陽介「や、それはいいって。でさ、最近、夜中に変な時間あるんだよな」

有里「変な時間?」

陽介「決まって丁度12時くらいか。PCが止まるんだよね」

有里「!?」

陽介「空気も何か変な感じだしさ、停電か?って思うんだけど、他の連中に聞いても停電なんて知らねーって言われるし……」

有里「月だけが光ってる?」

陽介「そうそう、周り全部真っ暗でさ……って、有里、もしかして知ってる?」

有里「……陽介は、一日が24時間じゃないって言ったら、信じる?」

陽介「え、いきなりだな」

有里「一日と一日の間に、ある特定の人種しか知る事が出来ない時間がある……って、どう思う?」

陽介「それって、どういう……」

有里「『影時間』。そう呼ばれてる」


陽介「待て、マテ待てまて。ど、どういうことなワケ?」

有里「陽介が感じた変な時間の説明をしてる」

陽介「いや、お前記憶無いんだったよな?なんでそんな詳細に覚えてんのよ」

有里「……それを話すには、凄く長くなる。だから、今は聞かないで欲しい」

陽介「……わかった。今は、な。いずれ話してくれるよな?」

有里「うん、いずれね。……とにかく、そういう時間が存在して。それを知覚出来る存在がいる」

有里「それが、ペルソナ使い」

陽介「ペルソナっ……!って、何で有里がそれ知ってんだよ!」

有里「やっぱり、陽介もペルソナ使いなんだね?」

陽介「俺もって、まさか有里も?」

>黙って頷いた。

陽介「マジかよ……信じらんねぇ。あのさ、マヨナカテレビ……って、知ってるか?」

有里「マヨナカテレビ?」

陽介「そっちは知らねんだな。有里の言った影時間みたいなもんでさ、まあそれに関する事件があったんだよ」

有里「それで、どうしたの」

陽介「ここに集まった仲間ってのは、その事件解決の為に結成した特別捜査隊の事なんだよ」

有里「それって……」

>特別課外活動部みたいなものだろうか。

陽介「仲間も皆ペルソナ使いで、ついこの間事件を解決したばっかりなんだ」

有里「……驚いたな」

陽介「こっちの台詞だっての。まさか仲間以外にペルソナなんて話するなんてよ」

有里「陽介。頼みがある」

陽介「なんだよ、改まって」

有里「影時間の発生は異常事態だ。そして、影時間は……人に害を成す。その解決の為に、力を貸して欲しい」

陽介「……マジ、なんだな?」

有里「マジだ。その仲間たちを、もう一度集める事は出来ないだろうか」

陽介「さっき言った、引っ越しちまった友達以外はすぐにでも集められるぜ」

有里「出来れば、一度話をしておきたい。学校も始まって忙しいとは思うけれど」

陽介「そうも言ってらんねえんだろ?わかったよ、話してみる」

有里「すまない。ありがとう」

陽介「水臭い事言うなって。行き倒れとそれを介抱した中だろ?」

>陽介は頼もしく笑っている。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のコミュを手に入れた。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが1になった。

>影時間は復活したが、新たな地で新たな仲間を得た。

>きっと、対抗する事が出来るだろう……。

今日も短めですが本日はここまで。
二人が徐々に近付き始めます。

おお!特別課外活動部が有里を見たらどんな反応するか楽しみだ

実に面白い

何故雪子が悪い意味の月?
『迷い』そして『謎』か…?
はっ!『笑いのツボ』が『謎』か!

初の生ペルソナss

P3ってクジラの羽根がどうとかってストーリーじゃないのか

>>68
それはアニメ版のtrinity soul
あれは時系列的にはP4よりも後になるな

トリニティソウルは3の10年後って設定だがパラレルであって正史じゃないからな

番長とキタローの違い
番長
・無自覚たらし
キタロー
・確信犯たらし

では本日分。

【2012/4/7(土) 晴れ 巌戸台分寮】


>昨夜の美鶴とアイギスとの会話で思いついた事がある。

>ベルベットルームの入り口を探そう。

>……近くにあるはずだ。

天田「鳴上先輩。どうかしたんですか?」

鳴上「ああ。ちょっと出かけようと思って」

天田「そうですか。あ、そういえばポロニアンモールの案内、結局できてませんね……」

鳴上「ああ、色々あったからな……そういえば、あの辺りはまだ見てないのか」

天田「どうかしましたか?」

鳴上「ポロニアンモール、ちょっと行ってくる」

天田「あ、でしたら僕も……」

鳴上「いや、すぐ戻ってくると思うから。案内はまた今度頼む」

天田「そうですか?じゃあいってらっしゃい」

>ポロニアンモールへ行く事にした。


【ポロニアンモール】


>賑やかだ……。

鳴上「ここのどこかにあるといいが……」

エリザベス「……」

>視界の端に青い服が見えた。

鳴上「……?」

>よく確かめてみよう。

エリザベス「……」

鳴上「……」

>どうやら、見間違いでは無いようだ。

>ゲームセンターのクレーンゲームに熱中している青い服の女性……。

>ベルベットルームで出会った、エリザベスに間違いない。

エリザベス「!」

>あ……。

>掴んだはずのジャックフロスト人形が落ちてしまった。

>……大人としてあるまじき顔をしている。止めよう。

鳴上「あの、エリザベス……さん?」

エリザベス「?……あら、ごきげんよう」

>エリザベスはさらに五百円を投入しようとしている。

鳴上「それ、欲しいんですか」

エリザベス「いえ、ほんの戯れにございます」

>……。

>黙って百円を入れ、ジャックフロスト人形を取った。

エリザベス「……お上手ですね」

鳴上「いえ、何故かすごく取りやすい位置まで来ていたので……どうぞ」

>エリザベスはきょとんとしている。

鳴上「よく考えたらそこまで好きなキャラでも無かったので、差し上げます。どうぞ」

エリザベス「まぁ、そうですか?では、遠慮なく」

鳴上「……ええと、エリザベスさん。あなたは、ベルベットルームの……」

エリザベス「はい。ベルベットルームで主イゴールの補佐をしております」

鳴上「では、何故ここに?」

エリザベス「いけないのでしょうか?」

鳴上「いえ、そういうわけでは……」

エリザベス「すぐ帰れる位置なので大丈夫です。ほら、あそこに」

>指差した先には見覚えのある青いドアがある……。

鳴上「なるほど、確かに」

エリザベス「この後、タコ焼きを食べたらまた戻ります。……ところで、何か主にご用でも?」

鳴上「いえ、そういうわけではないんです。というか、用があったのはエリザベスさんで」

エリザベス「私に、でございますか」

鳴上「はい。……タコ焼きなら、俺が買ってあげますから、少しお話いいですか」

エリザベス「ええ、いつでも」

>……謎のタコ焼きを買った。

鳴上「……」

>エリザベスは嬉しそうにタコ焼きをつついている。

鳴上「ええと……」

エリザベス「お話、でございましたね。どうぞ」

鳴上「あ、はい。まず、エリザベスさんのお姉さんがマーガレットなんですよね?」

エリザベス「その通りでございます。それと、私の事はエリザベス、とお呼びください。たかが従者ですので」

鳴上「じゃあ、エリザベス。マーガレットはペルソナを自在に付け替える、ワイルド能力を持っていた」

エリザベス「はい。当然私もワイルド能力を所持しております」

鳴上「やっぱり、そうなんだな」

エリザベス「ええ。ですが、それが聞きたかったわけでは無いのでしょう?」

鳴上「……あなたは、いえ、あなたとあなたの主……イゴールは、この街で他にもワイルド能力を持った人物と関わった事がある」

エリザベス「はい、確かに」

鳴上「その人の話を聞きたい。……あなたから見た、彼の話を」

エリザベス「……彼は、酷い人でした」

鳴上「酷い?」

エリザベス「私の願いの尽くを受け入れ、叶え、それまで人形のようだった私に生きる事の意味を見出させ……」

エリザベス「その挙句、私では無い仲間を守る為、己の全生命を賭して奇跡を起こし、私の前から消えてしまったのです」

鳴上「……」


エリザベス「もしもう一度、いけしゃあしゃあと私の前に出てきやがりましたら……」

鳴上「出てきたら?」

エリザベス「メギドラオンでございます」

鳴上「……ええと、あの」

エリザベス「大いなる封印について、お察しになられましたか?」

鳴上「やっぱり、その人が自分の身を犠牲にして……って、何故それを?」

エリザベス「あなたは、もしその時が来たらご自身の身を捨ててでも、と考えていらっしゃる。違いますか?」

鳴上「……俺なりに、考えた結果なんだが」

エリザベス「それも一つのこたえだと、私は思います。自信をお持ちになってください」

鳴上「エリザベスは、もしかして俺にその話をする為に?」

エリザベス「何のことでしょう。今日の話はタコ焼きとこの人形のお礼です。他に意味はございません」

鳴上「そうか……ありがとう」

エリザベス「こちらこそ、ありがとうございます。……もしも、の話をしても?」

鳴上「ん?」

エリザベス「もしも、あの人が私の前に現れたら」

鳴上「メギドラオンなんだろ?」

エリザベス「ええ。もしいつもの様子でふらふらと現れようものなら。ですが、もし万が一、例えば誰かと関わり合う上で偶然出会う事になったら」

エリザベス「……その時は、仕方なく素直になってみようかと」

鳴上「……なるほど。よくわかったよ」

エリザベス「なによりでございます。あ、いけませんね。私ばかりが食べていては……はい、あーん」

>エリザベスにタコ焼きを食べさせてもらった。

>タコ焼きを完食すると、エリザベスは恭しく一礼し帰っていった……。

>『No.09 隠者 エリザベス』のコミュを手に入れた。

>『No.09 隠者 エリザベス』のランクが1になった。


【同日夜 巌戸台分寮】


>ラウンジでコロマルと戯れていると、美鶴が帰ってきた。

美鶴「いや、驚いた。あれだけ晴れていたのに、急に降りだしてきたぞ」

>美鶴の髪が濡れて頬に張り付いている。

>窓の外を見ると、確かに大粒の雨が降っている。

天田「桐条さん、天気予報見なかったんですか?今日の夕方から明日の朝まで、ずっと雨って予報でしたよ」

>とりあえず、バスタオルを渡した。

美鶴「ああ、すまない。助かる……そうか、うっかりしていた。私生活でも油断は禁物ということか」

アイギス「皆さん、お話したいことが」

>アイギスが皆を呼んだ。

美鶴「話というと、あの事か?」

アイギス「ええ、皆さんお揃いのようなので良い機会かと」

天田「あの事ってなんです?」

アイギス「最初の日、影時間が発生した3月31日……確かにお二人はシャドウに襲われた。でしたよね?」

鳴上「ああ、それは間違いない」

天田「僕も覚えてます。それがどうかしたんですか?」

アイギス「それから、鳴上さんは倒れ、天田さんも毎日は影時間を見回ってはいない。そうですね?」

鳴上「ああ。体調が完全に戻るまでは探索もお預けだって言われてる」

天田「僕も流石に毎日は……学校もありますし」

アイギス「私と美鶴さんは毎日見回りに出ていました。それで、思った事があります」

鳴上「毎日……言ってくれたら手伝ったのに」

美鶴「気にするな。私もアイギスも時間には融通が利くし、なにより経験者だからな。それで、思った事なんだが……」

アイギス「シャドウが、いないんです」

鳴上「え?」

天田「……そういえば、確かに。僕が見回った日も一体も……」

美鶴「あの日から毎日、影時間には街を一周するようにしていた。しかし、初日に君達が襲われて以降、誰かが襲われたという話も無いし、シャドウも確認できていない」

鳴上「でも、影時間はシャドウのせいで発生して、シャドウが徘徊する時間なんでしょう?」

アイギス「そのはずです。だから、何か変だと思って相談しようと」

天田「……どういうこと、なんだろう」

>アイギスと美鶴から奇妙な報告を聞いた。

>全員で話し合ったが、その後も結論は出せなかった……。


【深夜】


>眠れない。

>テレビの中でも無いのに、この事件は霧の中にあるようだ……。

>おかしな事が多すぎて、違和感を違和感が上塗りしているような感覚。

>……眠れない。

>!

>影時間だ。

>あれ以来、この時間帯は寝て過ごしていたから体感するのは久しぶりだ……。

>…………?


>また、違和感……なんだろう、これは……。

>窓ガラスに雨が当たって、月は見えないが……。

鳴上「雨が……?」

『影時間には、あらゆる物の活動が止まる』

鳴上「なんで、雨が……!?」

>影時間では月以外の光源が無い。

>影時間ではシャドウとペルソナ使い以外の音源が無い。

>なら、この窓を叩く雨の音と、本来煌々と輝いているはずの月を覆う雲は何だ。

鳴上「雨……雨?」

>雨。影時間の始まる時間。影時間中はずっとその時間だ。

>雨。夜12時。テレビ。

>マヨナカテレビ……!

鳴上「皆には話していない……誰も、気付いていないのかも」

>この部屋にテレビは無い。部屋を出て、ラウンジに降りる。

>古いブラウン管テレビだ。

「ザーザーザーザー」

>雨の音ではない。

>テレビのノイズだ……。

鳴上「……明日、陽介に連絡をしよう」

>電源が着くはずの無いテレビには、どこかの光景が映しだされている。

>真ん中にそびえる塔は、何か不吉な物に見えた。



【2012/4/7(土) 晴れ ジュネス内フードコート】


陽介「っし、皆良く来てくれた!」

有里「僕は有里湊。陽介から話は聞いてる……と思うんだけど、よろしく」

?「はいはーい!アタシ、久慈川りせって言います!有里さん、よろしく!」

?「あー……俺は、巽完二……ッス。有里さんって、いくつなんスか?」

有里「一応、18歳だよ」

完二「じゃあ先輩ってワケだ。よろしくお願いしゃッス!」

?「僕は、白鐘直斗です。有里さん、記憶喪失だと伺いましたが……?」

有里「ああ、アレは嘘。よろしく」

直斗「嘘?……まあ、それを含めてお話を聞かせてもらいましょうか」

千枝「私達はもう知ってるよね」

天城「で、有里くんが話って……?」

有里「うん。君達は、普段何時に寝てる?」

りせ「ヤダ、早速私生活チェック?有里さんったらもー」

陽介「いや、真面目な話な」

千枝「私は結構早いよ。10時にはもう眠くなっちゃうんだー」

完二「俺もッス。家手伝ったりすると結構疲れるんスよねー……」

天城「私も完二君と同じ感じかなー」

有里「完二君と同じ感じ?」

天城「……ぷふっ」

陽介「有里、そこはいーから」

りせ「私もそのくらいかも。仕込みとかいろいろあるから早めに寝るようにしてるよ」

直斗「僕はもう少し遅いですが……それでも11時には大体寝ています」

有里「……すごいな、皆。今時の高校生とは思えない就寝時間だね」

陽介「驚くとこそこかよ!」

有里「冗談はさておき。じゃあ皆、眠っている間に変な感覚を感じたりした事は?」

りせ「あ、アタシあるかも。なんていうんだろ、ぞわっ?ぶわっ?」

有里「りせちゃんはとてもビンカンなんだね」

陽介「お前って結構愉快なヤツなのな」

有里「冗談はさておき。陽介から、皆はペルソナ使いだって聞いてる。間違いない?」

直斗「……ええ。間違いありません。しかし、何故有里さんがペルソナの事を?」

有里「これから話すよ。……少し、長くなるかもしれないけど」

完二「構わねェッスよ。元々そのつもりで集まってンだ」

陽介「マジな話だっつって集まってもらったんだ。皆、ふざけてるようで覚悟はキメてるぜ」

有里「……そう。まずは、どこから話そうかな。うん、じゃあ『影時間』について……」

>今まで自分が辿ってきた経緯を説明した。

>……ただし、大いなる封印に全生命が必要であること、自分がその為に一度死を体験した事は伏せ……

>大いなる封印を行った際の副次的な作用で、時間と空間を跳躍したと伝えた。

完二「マジすか、それ……」

陽介「お前、ハンパじゃねーな……」

直斗「影時間とシャドウ……か」

りせ「なんか、マヨナカテレビに似てる、かも……」

千枝「人も、襲われちゃうんだよね……」

天城「でも、有里くんがこうして話してくれたって事は、私達に出来る事もあるんだよね?」

有里「出来る事なら協力して欲しい。今はまだ何も見えないけれど、この事件の真実を追えば、きっと終わらせる事が出来るはずなんだ」

陽介「真実は霧の中、か。まぁよ、俺は昨日話聞いてからそのつもりだぜ」

千枝「人助け、だしね」

天城「私達に出来る事があるなら、やらなくちゃって思える」

完二「そんな気味悪ィ話があったんじゃ、安心して夜も眠れねェ。俺ァやるぜ!」

りせ「なんか思い出すねー、去年の事!」

直斗「事件である以上、解決するのが僕の役目ですから」

有里「……ありがとう。でも、まだ具体的な解決策が見えたわけじゃないんだ。とりあえず、日替わりでパーティーを組んで街を見回るくらいかな」

直斗「そういえば、ずっと気になっていたんですが……クマ君はどうしたんですか?」

陽介「ああ、アイツさ、昨日までいたんだけど、急にいなくなってよ。多分テレビん中に帰ってるんだと思うけど……」

有里「テレビ?」

陽介「ああ、そっか。有里にゃまだ言って無かったな。昨日見たクマの着ぐるみがいたろ?アイツ、元々テレビん中の住人でよ。顔見せない時は大抵テレビん中に帰ってんだわ」

有里「ああ、マヨナカテレビ……」

>その日は、当番を決めて解散となった。

>マヨナカテレビ……聞いたことも無い話だが、少し引っ掛かる物がある。

>明日以降、少し聞いてみるべきかもしれない。


【商店街】


>この辺りだろうか……。

有里「あった」

>見覚えのある青い扉がある……。

>扉に手をかけた。

イゴール「ようこそ、我がベルベットルームへ……」

有里「あ、いたいた。マーガレット借りていいですか」

イゴール「……?どうぞ、お好きなように」

マーガレット「あの……?」

有里「話がしたいんだ」

マーガレット「情熱的なお誘いですこと……では主、少しの間席を外させて頂きます」

>マーガレットを連れて、ベルベットルームを出た。

有里「ふぅ」

マーガレット「お客様。私に一体どのようなお話が?」

有里「いや、特には無いんだ」

マーガレット「まあ」

有里「……僕と、昔の仲間との絆は切れ掛かっているね」

マーガレット「お気づきでしたか」

有里「自分の心の問題だからね。切れているというのも僕の側に問題があるみたいだ」

有里「……新しい場所で頑張って行こうって思うことが、前の場所を薄れさせる事になるなんてね」

マーガレット「人とはそうしたものでございます。しかし、正確には絆は切れているのではありません。強いて言うならば、待機状態と申しましょうか」

有里「それは、どういうこと?」

マーガレット「今の場所での絆が強く輝く為、以前の絆は見えにくくなっているのです。切れたわけではありません。未だ、強く強く繋がっていますよ」

有里「そう……そうだね。心っていうのも器用なもんだね」

マーガレット「そうですね。ところで、そのようなお話であれば、私を外へ連れ出す事も無かったのでは?」

有里「ああ、いや、それはおまけ。待機状態で存在しているとはいえ、今僕が新しく絆を繋げるのはここの住人だけだからね」

マーガレット「はあ……?」

有里「マーガレットとも、絆を育んでおこうかと思って」

マーガレット「まあ。嬉しいお話ですわ」

有里「マーガレットとの絆なら、強い力を得られる気がするんだ」

マーガレット「力の大小で友人をお選びになるのですか?」

有里「違うよ。絆を築きたいから選ぶんだ。きっと、マーガレットとなら強い絆で結ばれるだろうって、そういうこと」

マーガレット「……あまり、人をからかうのはおやめになった方がよろしいかと」

有里「本気」

マーガレット「……でしたら、またいずれ主に暇をもらいます。その時、存分に絆を深めるといたしましょう」

有里「ありがとう。頼りにしてる」

マーガレット「では」

>マーガレットはベルベットルームへ帰っていった……。

>『No.15 悪魔 マーガレット』のコミュを手に入れた。

>『No.15 悪魔 マーガレット』のランクが1になった。

有里「うーん、信じてもらえなかったかな。本気なんだけど」

>今日は、もう帰ろう。


【堂島宅 深夜】


>今日は少し夜更かしをしよう。

>出来るなら影時間をしっかりと感じておきたい。

>もし前回と違うならその差異を……。

>夕方から雨が降っている。

>この雨も、影時間になれば止む……。

>日付が、変わった。

有里「……!?」

有里「雨が、止まない?影時間は……いや、この感覚、確かめるまでも無い……」

有里「時計は動かない。辺りも一面真っ暗だ。ここまでは当たり前……」

>どうやら、今回の影時間はやはり様子が違うようだ。

>明日、陽介達と相談しよう。



【2012/4/8(日) 曇り ジュネス内フードコート】


陽介「よう、どうしたって?」

有里「連日すまない。けど少し聞いておきたい事があって」

陽介「例の話、だよな。いいぜ、何でも聞いてくれよ」

有里「ああ。君達が解決した事件……マヨナカテレビって言ったね」

陽介「そうだけど、それがどうかしたのかよ?」

有里「それについて詳しく教えて欲しい。もしかするとすごく重要かもしれないんだ」

陽介「……なるほど、な。よっしゃ、じゃあ詳しく教えてやるぜ!まず、マヨナカテレビってのはただの噂だったんだけどよ」

>PiPiPiPi……

>携帯の着信音?

>もちろん自分は持っていない。

陽介「っと、ワリ。電話だわ。えーっと……おー!相棒じゃねーか!」

有里「相棒……?」

陽介「わりい有里、ちょっと待ってな!おう、もしもし!久しぶりだなー、元気だったか!?」

陽介「そうそう、今な……んだって!?」

陽介「マヨナカテレビがまた映っただぁ!?」

有里「……!」

本日はここまで。
そろそろ合流かも?

乙。

楽しみにしてる

はよ

>>87 お待たせしました。
では本日分。

陽介「どういうこったよ。……おう、おう……こっち?いや、多分誰も……そっか、前はこの街だけだったもんな」

陽介「おう、こっちでも確認してみるわ。なぁ、それって影時間ってのと何か関係あんのか?……ああ、そういやまだ言ってなかったな」

陽介「こっちに今すげえヤツがいんだよ。そいつと相談して……おう、いろいろやってみるわ。お前さ、GWにはこっち来るんだろ?」

陽介「そん時に色々擦り合わせてみようぜ。多分、そんなに頻繁に雨も降らないと思うし……お前はお前でやることあるんだろ?」

陽介「おう……気ぃつけろよ。じゃ、また何かあったら連絡するわ!」

有里「……相手は、例の彼かい?」

陽介「おう。やっぱマヨナカテレビの説明しなきゃなんねーみたいだわ。向こうで映ったんだってよ」

有里「詳しく」

陽介「まず、マヨナカテレビってのは雨の日の真夜中12時に映る、あるはずの無い番組の事だ」

有里「影時間と似てるね」

陽介「こっちはテレビさえありゃ誰にでも見れるんだけどな。で、その番組内容なんだけど、テレビの中に落とされたヤツによって変わるんだわ」

有里「落とされた?」

陽介「……まぁ、そこは話すと長い。内容は、主演になるヤツの心の暗い部分……シャドウってのが映っちまう」

有里「で、さっき彼から聞いた話では誰が映ってたの?」

陽介「それがさ、風景だけだったってんだよ。ちょっと今までと違うから、もしかして影時間関連かもって思ってさ」

有里「そうか……彼は影時間について知ってるの?」

陽介「なんか、知ってるみたいだったぜ。むしろ俺に『どこで聞いた?』って言ってた」

有里「……彼は、今引っ越して遠くにいるんだったね。今、どこに住んでるの?」

陽介「ああ、こっちと違って都会だぜ。たしか、月光館学園ってとこの寮に住んでるはず……って、あれ?」

有里「昨日、僕の話聞いてたよね」

陽介「ああ。そうか、すげえ偶然だな……有里の住んでたとこか」

有里「うん……でも、仲間のほとんどはもう卒業してるはずなんだ。誰から聞いたのかわからないけど……」

陽介「じゃあ、お前も行ってきたらどうだ?堂島さんにいつまでも世話んなってるつもりも無いんだろ?知り合いに会えるかも知れねえし」

有里「……いや、いいさ。僕はこの街で事態を解決する」

陽介「なんでだよ。せっかく……」

有里「いいんだ。堂島さんには悪いけど……僕は向こうに帰る気は無い」

陽介「……ま、深くは聞かねぇよ。有里は、俺なんかよりずっといろいろあったと思うしさ」

有里「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」

陽介「でも、仲間なんだろ?いつか、顔だけでも見せてやったほうがいいんじゃねえの?心配とか、してると思うぜ」

有里「だろうね。けど、仲間に会っちゃうと……」

>決心が、揺らぎそうだから。



【商店街】


>そういえば、昨日少しだけ聞いた話では……

>あの久慈川りせという子はアイドルで、今は豆腐屋の手伝いをしているらしい。

>……よくわからないが、とりあえずもう少し話をしておこう。

有里「すみませーん……?」

>店内は地味なものだ……が、割烹着で忙しなく動きまわる少女は確かに場にそぐわない華やかさがある。

りせ「はーい……って、有里さん?どうしたの?」

有里「いや、本当に仕事してたんだね。ちょっと話出来ないかなと思ったんだけど……ごめんね」

りせ「本当にしてるよー。えっと、お話……ちょっと待っててね!」

>りせは奥に走っていった……。

>何やら声と足音が聞こえる。

>待っていると、私服に着替えたりせが出てきた。

りせ「お待たせ!ここじゃ邪魔になっちゃうから、どっか別で話そ!」

>りせに腕を引っ張られて連れて行かれた……。


【鮫川河川敷】


りせ「とりあえずこの辺!歩きながらでいいですか?」

有里「ああ、大丈夫だよ。そんなに大事な話ってわけでもないしね」

りせ「そうなの?なんかガッカリかも」

有里「いや、ちょっとりせさんと話がしたくてさ」

りせ「りせで良いですよお、年上なんだし」

有里「じゃあ、りせちゃん?」

りせ「んー……子供扱いはいやぁー……」

有里「……りせ?」

りせ「はいはい、なんでしょー」

有里「りせは、どうやって前の事件に関わったの?」

りせ「えっと……テレビに落とされた所を、先輩たちに助けてもらって、それからかな」

有里「そう。辛かった?」

りせ「え?」

有里「マヨナカテレビは、自分の見たくない部分を映すって聞いたから」

りせ「あ、あはは。最初はね、かなり辛かったです。有里さんは、すっごい機嫌が悪い時に、みんな消えちゃえー!って思ったり、しない?」

有里「まぁ、そういう時もあるよね」

>……無い。

りせ「うん、まぁ誰でもあるよね、そういう事。そういう、後から反省しちゃうような本音を目の前に並べられるの。それが辛くないわけないじゃんって感じ」

有里「そっか……」

りせ「でも、いいんだ。そのおかげで先輩たちと仲良くなれたし、ほんとの自分ってのも見つかったしね。逃げてばっかじゃ、やっぱり駄目だったんだと思う」

有里「……」

りせ「やだ、そんな神妙な顔しないでくださいよぉ。すっごく辛かったけど、乗り越えたんだから褒めてもらうとこでしょ?」

>これは、地顔だ……。

有里「うん。りせは強いんだね。すごいよ」

りせ「え、えへへ……なんか、嬉しいな」

>りせは照れたように笑っている。

りせ「有里さんだから言うけどね、あたし、先輩の事好きなんだよね」

有里「陽介?」

りせ「いや、それは無い。あ、有里さん、まだ知らないんだっけ。転校しちゃった先輩がいるの」

有里「話には聞いてる。その人が好きだったの?」

りせ「や、改めて言われると照れちゃうな……うん。好きだったっていうか、今でも好き。あの人は……って、語るような事でもないんですけどね」

有里「告白は?」

りせ「え?」

有里「ちゃんと言ったの?」

りせ「……いつか、離れ離れになっちゃうのわかってたから、言ってない。あたしアイドルだし、そういうのもどうなのかなって」

有里「そう……」

りせ「で、なんでこんな話しちゃったかというとですね」

有里「ん?」

りせ「有里さんと話してると、先輩と話してるような気分になるっていうか……浮気しちゃいそー」

有里「付き合ってないなら、浮気でも無いんじゃない?」

りせ「そ、そうなんだけど!あたしは純愛タイプだから、浮つかないの!ほんとは!」

有里「そう」

りせ「結構衝撃的なこと言ったつもりなんだけどなー……そういうとこも、何か似てる」

>りせは嬉しそうに笑っている。

りせ「……じゃ、そろそろ帰ります!またお話ししてくださいね!」

有里「うん。また会いに行くよ」

りせ「約束ですよ!」

>笑ってりせと別れた。

>『No.17 星 久慈川りせ』のコミュを手に入れた。

>『No.17 星 久慈川りせ』のランクが1になった。

>明日は彼に話を聞こう……。



【2012/4/9(月) 晴れ 商店街】


有里「しまった」

>そういえば、もう学校が始まっている。

>ここに来ても、完二に会うことは出来ないだろう。

有里「うーん……仕方ない、夕方にまた来よう」

>とりあえず、今は……

有里「白鐘さん、だっけ。見てないで話をしようよ」

直斗「なっ」

>建物の影から覗いていた直斗を呼んだ。

直斗「いつから、気付いていたんですか?」

有里「最初から。君は学校行かなくていいの?」

直斗「少し様子を見てから向かうつもりでした……全く、不思議な人ですね」

>直斗は観念したようだ。


【中華料理屋 愛家】


有里「座って喋れる所を他に知らなくて」

直斗「なら僕に案内させてくれれば良かったのに……」

有里「不満?」

直斗「いえ、別に不満は。で、何のお話ですか」

有里「白鐘さんは何をしてる人なの?」

直斗「は?」

有里「事件を解決させるのが役目って言ってたよね」

直斗「ああ、そういう事ですか。……探偵、ですよ」

有里「見た目は子供ってやつ?」

直斗「子供って、そう見えますか?」

>直斗は不満気だ……。

有里「いや、言ってみただけ。探偵だから、疑わしい僕を尾行していたわけだ」

直斗「……疑っているわけではありません」

有里「じゃあ趣味?」

直斗「趣味でもありません!」

有里「白鐘さんは……」

直斗「あの」

有里「ん?」

直斗「年上にさん付けで呼ばれるのは、少しむず痒いので」

有里「じゃあ白鐘ちゃん?」

直斗「いえ、そうではなく……って、ちゃん?」


有里「女性はちゃんだと思うんだけど、それともくんの方が好み?」

直斗「え、ぼ、僕が女ってわかってたんですか?」

有里「どこから見ても女の子だけど」

直斗「……直斗で」

有里「直斗ちゃん?」

直斗「呼び捨てで構いません!」

有里「直斗」

直斗「はい。それでお願いします」

有里「で、直斗は僕の事をどう思ってるの?」

直斗「……不思議な人だなぁ、と」

有里「具体的に」

直斗「ぐ、具体的に?ええと……」

有里「気になっちゃう?」

直斗「へ?」

有里「僕のこと」

直斗「まあ、気になっているといえばそうですね」

有里「そう、ありがとう」

直斗「……?」

有里「直斗も彼の事が好きなの?」

直斗「彼?」

有里「引っ越した先輩」

直斗「っ、なっ、ど、どうして今先輩が出てくるんですか!」

有里「なんとなく、勘で」

直斗「あ、ぅ、はぁ。僕はそういう事に興味はありません」

有里「でも僕のこと気になってるんでしょ?」

直斗「そういう意味じゃありません!」

有里「そうなの?」

直斗「そうです……有里さんと話していると、すごく疲れます」

有里「ドキドキする?」

直斗「ええ、まぁ……いや、だからそういう意味じゃないですから!」

有里「直斗をからかうのは面白い」

直斗「ああ、もう!好きにしてください……」

有里「うん。僕は直斗さえ良ければもっと仲良くなりたいと思ってるんだけど」

直斗「仲良く、ですか?」

有里「駄目かな」

直斗「いえ、駄目というわけでは……しかし、仲良くと言っても……」

有里「これから、事件を解決するにあたって、メンバーが親密になる事は必要だと思わない?」

直斗「確かに、そういう面から見れば有里さんは一番の新入りですから、他のメンバーと交流する必要はありますね」

有里「でしょ?だから直斗とも……」

>ぐっと身を乗り出して顔を近付けてみた。

直斗「……っ」

有里「仲良くなりたいな、と思って」

直斗「わ、わかりました!わかりましたからちゃんと座って下さい!」

有里「うん。じゃあ、捜査とか関係なく遊びに誘っても?」

直斗「か、構いませんよ。まあ、予定が無い時に限りますが」

有里「ありがとう。引き止めて悪かったね。学校は?」

直斗「そうですね、そろそろ行かないと。では、失礼します……有里さん」

>会釈をし、ズレた帽子を直すと直斗は席をたった。

有里「なんか、最近綾時みたいになってるな……僕……」

>『No.16 塔 白鐘直斗』のコミュを手に入れた。

>『No.16 塔 白鐘直斗』のランクが1になった。


【同日夕方 商店街】


有里「さてと」

>下校してきた完二を捕まえた。

完二「っと、有里サン。家の前でなにやってんスか」

有里「完二君と話がしたくて」

完二「あ、呼び捨てでいいッスよ。ええと、じゃあ荷物置いてくるんで、ちっと待っててくださいや」



【鮫川河川敷】


完二「なんでこんなとこなんスか」

有里「昨日りせに連れてこられて、割りといい場所だったから」

完二「あー、皆のとこ回ってんスね。ご苦労様ッス」

有里「やっぱり、メンバー皆と仲良くなりたいからね」

完二「そうッスね……」

>完二は黙ってしまった。

>……会話が続かない。

完二「……やっぱり、影時間ってヤツは、危ないんスよね」

有里「……そうだね」

完二「……この街の皆も、危ないッスか」

有里「……そう、だね」

完二「やっぱ、そうッスよね……」

有里「誰か、大事な人でも?」

完二「オフクロ……と、街のヤツら皆ッス」

有里「多いね」

完二「おかしいスか」

有里「いや、驚いてる。完二は良い奴なんだね」

完二「ヘッ、そうでもねえよ」

>完二は照れているようだ。

完二「自分の住んでる街……俺ぁここしか知らねぇから。この街くらいは守ってやりてぇなって思うんスよ」

有里「うん」

完二「いけすかねぇヤツも一杯いやがるし、けど同じくらい好きなヤツらもいるんス。だから……」

有里「うん」

完二「なんか、恥ずい事言っちまった気がすんなぁ……」

有里「いや、完二の事が良くわかったよ。今日はありがとう」

完二「な、なんスか。この程度で俺の事わかった気になんないでくださいよ!」

有里「そうだね。だから、また話をしよう」

完二「まぁ、暇な時なら。じゃ、俺ぁ帰りますわ」

>『No.14 節制 巽完二』のコミュを手に入れた。

>『No.14 節制 巽完二』のランクが1になった。

【堂島宅 夜】


>捜査隊のメンバーと話をした。

>残るは……

有里「転校した彼か……」

有里「なんとなく、接触するタイミングは選ばなければいけない気がする」

>彼はきっと鍵を握っている。

>そして、恐らくは彼にとっての自分も……。

有里「GW、ね」

>もし自分が港区に行って、恐らくは彼といるだろうかつての仲間達に出会ったとして……

有里「どんな顔すればいいのやら……」

>……寝よう。


【2012/4/8(日) 曇り 巌戸台分寮】


>昨夜のアレはまず間違いなくマヨナカテレビだが、今までのパターンとは随分と違う。

>とにかく、陽介に連絡しよう。

>携帯を取り出して、登録してある番号にかける……。

>呼び出し音が何度か鳴り、陽介に繋がった。

鳴上「陽介か?」

陽介『おう、もしもし!久しぶりだなー、元気だったか!?』

鳴上「ああ」

陽介『そうそう、今な……』

鳴上「聞いてくれ、陽介。マヨナカテレビがまた映ったんだ」

陽介『んだって!?マヨナカテレビがまた映っただぁ!?』

鳴上「間違いない」

陽介『どういうこったよ?』

鳴上「俺にもよくわからない。けど、昨日の12時、間違いなくテレビは映っていた。どこかの殺風景な場所に、バカ高い塔が立ってる映像だ」

陽介『おう、おう……』

鳴上「そっちでは誰か確認してないか?」

陽介『こっち?いや、多分誰も……そっか、前はこの街だけだったもんな』

鳴上「ああ、地域が関係あるのかもしれないと思って」

陽介『おう、こっちでも確認してみるわ。なぁ、それって影時間ってのと何か関係あんのか?』

鳴上「なんで陽介が影時間の事を?」

陽介『ああ、そういやまだ言ってなかったな。こっちに今すげえヤツがいんだよ。そいつと相談して……』

鳴上「すごい奴……とにかく、いろいろ確認してみてくれ」

陽介『おう、いろいろやってみるわ。お前さ、GWにはこっち来るんだろ?』

鳴上「今の所その予定だけど」

陽介『そん時に色々擦り合わせてみようぜ。多分、そんなに頻繁に雨も降らないと思うし……お前はお前でやることあるんだろ?』

鳴上「ああ」

陽介『おう……気ぃつけろよ。じゃ、また何かあったら連絡するわ!』

鳴上「わかった。頼んだぞ」

>陽介は影時間の事を知っていた……。

>すごい、奴?

>とにかく、他のメンバーにマヨナカテレビの事を説明しないと……。

>寮内を回ろう。


【ラウンジ】


>メンバーを集めて、マヨナカテレビについて説明した……。

美鶴「つまり、テレビの中限定の影時間……のようなものと考えていいのか?」

鳴上「そんな感じです」

アイギス「それが、昨夜映っていた。そして……」

美鶴「聞いた話の通りだとすれば、その塔とやらは間違いなくタルタロスだろうな」

鳴上「その、タルタロスについて説明してもらってもいいですか?」

美鶴「そうか、まだ言っていなかったな。タルタロスは、時間と空間に干渉するシャドウの力、その空間側面の現象だ」

アイギス「月……つまり、Nyxの復活の為の祭壇のような物だと考えてかまいません」

鳴上「……なんで、それがテレビの中に?」

アイギス「それは、わかりません……」

天田「あの、いいですか?」

美鶴「どうした?」

天田「仮説なんですけど……今、影時間中にシャドウが目撃出来ないんですよね?」

アイギス「確かにそうです」

美鶴「私のアナライズにも何も反応がない。見えないというより、いないという方が正しいな」

天田「で、テレビの中っていう別世界に……シャドウが集まるタルタロスがあった」


鳴上「俺が見た妙な塔がタルタロスだっていうなら、そういう事になるな」

天田「シャドウは、テレビの中にいるんじゃないでしょうか」

アイギス「……なるほどなー」

美鶴「その口癖も懐かしいな……しかし、ならば初日に君達が襲われた事はどう説明する?」

天田「初日は普通の影時間だったのかもしれません。それから、どういう原因かマヨナカテレビが映り始めて」

鳴上「外にいたシャドウたちがテレビの中へ移動した?」

天田「の、かもしれません。マヨナカテレビは雨の日しか映らないけど、それ以外の日にテレビの中の世界が存在しないわけでは無いんですよね?」

鳴上「ああ、それはそのはずだ……つまり、昨日雨が降ったから俺たちに見えたけど、実はかなり早い段階でテレビの中にタルタロスができていたってことか」

天田「今となっては確認する術はありませんけどね。そう考えれば、奇妙な事象に説明がつくんじゃないかと」

美鶴「なるほど……確かに在り得ない話ではないな」

天田「問題は、だからといってテレビの中に今すぐ飛び込んでいいのかって話だと思います」

鳴上「はっきり言って危険だし、どこに出るかもわからないからな……以前は、ナビゲーターがいたんだが」

アイギス「とにかく、次の雨を待つのが確実でしょうか。様子を見てから決めるということで」

美鶴「そうだな……と、そうだ。伝え忘れていた。今日、また入寮者が来るぞ」

鳴上「え?」

美鶴「夕方には着くと言っていたから、誰か迎えてやってくれ。私は少し出掛けなければならないから」

天田「わかりました。僕は一日寮にいますし」

アイギス「私もですね」

鳴上「俺も、一応挨拶くらいはしたいんで……」

美鶴「うん。それでは出かけてくる。夜には戻るから、後は頼んだ」

>入寮者……一体誰だろう。

【同日 夕方】


>部屋で明日の準備をしていると、扉がノックされた。

?「えっと、鳴上くん?いますか?」

>誰だろう……。

?「元特別課外活動部部員の、山岸風花って言います。良かったらお話しませんか?」

>どうやら、入寮者というのはこの人のことらしい。

鳴上「どうぞ、お入りください」

風花「えっ……し、失礼します」

>風花が部屋に入ってきた。

鳴上「椅子とか無いんで、良かったらベッドにでも座っててください」

風花「あ、はい……」

鳴上「で、お話というのは……?」

風花「ん?ううん、別に何か話があったわけじゃないの。この部屋に住んでるって聞いて、どんな人かなって思って」

鳴上「この部屋に?」

風花「私達がここに住んでた頃はね、ここも人が入ってたの。その人は当時のリーダーでね」

鳴上「ああ、話には聞いてます」

風花「だから、何か懐かしくなっちゃって。ごめんね、急におじゃまして」

鳴上「いえ、別に用事があったわけでも無いんで」

風花「そっか、良かった。もうここでの生活も慣れた?」

鳴上「まぁ、随分と。皆さんよくしてくれるし……」

風花「皆良い人だよ。そうそう、久しぶりに会ったら天田君があんなに大きくなっててびっくりしちゃった!もうすぐ私追い越されちゃうなぁ」

>風花はまるで昔からの知り合いに対するように話しかけてくる。

鳴上「山岸さん、良い人なんですね」

風花「ええっ、突然どうしたの?」

鳴上「いや、何となく。初対面の俺でもそんな風に話してくれるし」

風花「あっ、馴れ馴れしかった?ごめんね?」

鳴上「嬉しいです、そういうの」

風花「……やっぱり、ちょっと懐かしいんだと思う。この寮」

鳴上「いい思い出ばかりでは無いと聞いていますが」

風花「うん、それは、そう。でも、やっぱり楽しかったし……全体で見るといい思い出かな」

鳴上「……そうですか」

風花「そうそう、私、今大学生なんだけど、今度手続きして正式にここに住む事になると思うから。その時はよろしくね」

鳴上「え?今日入寮じゃ……」

風花「まだいろいろ終わってないの。学校に書類も出さないといけないし……今日はそろそろ帰ろうかなって思って」

鳴上「あ、そうですか……いろいろ、ありがとうございます」

風花「私は何もしてないよ。また皆の力になれるよう頑張るから、鳴上くんも頑張ってね!じゃあ、またね」

>風花は出ていった。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のコミュを手に入れた。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが1になった。


>……なら、入寮者というのは誰だろう?

>天田にでも聞いてみよう。


【ラウンジ】


>玄関の外がなにやら騒がしい。

>様子を見に行こうか……。

>と、玄関の扉が開き、巨大な鞄が入ってきた。

?「いやー重いのなんのってこれが重いんだわ。おー、懐かしきかな巌戸台分寮!」

>鞄は男の持ち物のようだ。

>彼が入寮者なのだろうか。

?「お?お前、もしかして例のルーキー?」

鳴上「はい。この前転校してきました、鳴上悠です。よろしくお願いします」

?「いやー俺も先輩ってワケね!なんつーの?こう、嬉しくなるよなぁ!」

天田「何騒いでるんですか……って、順平さん!お久しぶりです!」

?「あ?誰だっけお前……って、もしかして天田か?おいおいこーんな小さかったのにどうした!?」

天田「皆して小さい小さい言うのやめてくださいよ。三年も経てばそりゃ成長しますって」

?「そりゃそうだな。おっとルーキー。自己紹介が遅れたな。俺は伊織順平。かつてこの分寮のエースだった男だ!」

鳴上「エース!?」

天田「まぁ、頼りにはなりましたよ。ええ」

順平「あれ?ちょっと、そこはお世辞でもさ、もっと持ち上げるトコじゃない?」

天田「エースは言い過ぎじゃないかな……」

鳴上「違うのか」

順平「まぁ、エースでは無かったかな……うん……」

鳴上「ええと、とにかく、これからよろしくお願いします」

順平「おう!えーと、俺の部屋って、前と同じでいいのかね」

天田「あ、そのはずですよ」

順平「じゃあ鳴上!悪いんだけど荷物運の手伝ってくんね?重くて重くてよ」

鳴上「ああ、じゃあ手伝いますよ」

順平「この後輩を使う感じ!いいねー青春だね!」

天田「ていうか順平さん、大学はどうしたんですか?」

順平「あ?通うよ。手続きとかする前にこっち来ちゃっただけ」

天田「ああ……そうですか……」

順平「その目はかつての先輩に向ける目じゃねえぞ……」

>順平の荷物を運んだ。


順平「なぁ、鳴上よ」

鳴上「なんですか?」

順平「お前、前のリーダーの話聞いたか?」

鳴上「……少しは」

順平「話によりゃ、お前もペルソナを付け替えられるんだってな」

鳴上「あ、はい」

順平「俺はあの時、あいつが選んだこたえは間違っちゃねえと思ってる」

鳴上「……」

順平「誰も望んでなくても、自分が望んだ結末を迎えたんだ。幸せもんだと思わね?」

鳴上「……はい」

順平「こういうのって、女にゃわかんねーのかもなー。もうゆかりッチには会った?」

鳴上「ああ、この前……」

順平「小言言われたろ」

鳴上「よく考えろと言われました」

順平「へへ、やっぱりな。んなこったろーと思ったよ」

順平「いいか鳴上。俺含め仲間の誰一人、誰かの犠牲で解決する事なんか望んでねーぞ」

鳴上「……」

順平「だけどな、それしか無えって時、それでいいって思った時、お前の命はお前のもんだ。好きに使え」

鳴上「もし、そうなったら……」

順平「ま、そうならねーようにすんのが一番だわな!俺も頑張っから。ガラじゃねーけど。ま、一つよろしく頼むわ!」

>順平と握手をした。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のコミュを手に入れた。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが1になった。



【2012/4/9(月) 晴れ 夕方 巌戸台分寮前】


>授業が終わって、寮に帰ってきた所、妙な男に出会った。

>ボロボロのマントを体に巻きつけている。ちらちら見える所によると、どうやらマントの下は上半身裸のようだ。

>男は寮をじっと見ている……。

?「お前、月光館の生徒か」

>男に話しかけられた。

鳴上「はい、そうですが……」

?「この寮は閉鎖されていたと思ったんだが……何故普通に使われているんだ?」

鳴上「ええと、それは……」

>言い淀んでいると、二階の窓から順平が見ているのが見えた。

>何かジェスチャーをしている……。

>引き止めておけ?

鳴上「所で、あなたはここで何を?」

?「俺か?久しぶりに近くまで来たから、懐かしい場所を回ろうと思ってな。そうしたら閉鎖されたはずの寮が使われてるじゃないか。それで不審に思ってこうして見ていたわけだ」

鳴上「あれ、もしかしてあなた、ここに住んでいた……?」

>と、寮の玄関が凄まじい勢いで開かれた。

美鶴「明彦ォ!!」

?「み、美鶴!」

>美鶴の後ろでは、順平がこちらを伺っている。

美鶴「一体今までどこで何をしていた!こちらから連絡を取ろうにもどこにいるかすらわからない!あれほどいつでも連絡出来るようにしろと言っておいたのに!」

?「ま、待て!ちょっとヨーロッパの山に登っていただけだ!それよりどうした、何故お前がここにいる?」

美鶴「もしこのまま捕まらなかったら処刑する所だ!全く……全て説明する。中へ入れ!」

?「あ、ああ……」

>美鶴は男を連れて寮に戻った。

順平「まあこうなるだろうと思ってたけどよ」

鳴上「あ、順平さん」

順平「お前、今の人はまだ会って無かったろ」

鳴上「あ、はい。やっぱり、元……?」

順平「俺の一個上で桐条先輩の同級生。初代特別課外活動部部員、真田明彦。それが今の半裸マントだ」

鳴上「……変わった人ですね」

順平「まぁ、な。桐条先輩のカミナリが収まったら俺らも入ろうぜ」

>しばらく順平と二人で時間を潰した……。


>寮に入ると、落ち着いたらしく二人は何か話をしていた。

美鶴「ああ、君か。……見苦しい所を見られたな」

真田「お前は相変わらず俺にだけ厳しいな……」

順平「愛情の裏返しっすよぉー、ね、桐条先輩」

美鶴「お前が私を怒らせるだけだろう」

真田「……悪かった」

鳴上「真田さん、ですね。俺、鳴上悠って言います。今この寮に住んでて……」

真田「ああ、さっき全部聞いた。すまなかったな、この非常事態に」

美鶴「本当にな」

真田「で、一つ確かめておきたい事があるんだが、いいか」

鳴上「え?」

>真田が立ち上がり、拳を振った!

鳴上「……ッ!」

>速い!

真田「……目は、閉じなかったな」

>拳は顔スレスレでピタリと停止した……。

美鶴「明彦!またバカな事を……」

真田「バカなもんか。鳴上がもし度胸の無い男なら、戦いからは身を引いた方がいいと思ったまでだ」

鳴上「それで、どうでしたか」

真田「……なぜ、避けなかった?」

鳴上「なんとなく、止めてくれそうな気がしたので」

真田「ふん、度胸は合格だ。……見えてたようだし、目もいいな。十分だ」

順平「昭和のスポ根だぜ、こんなの……」

>『No.04 皇帝 真田明彦』のコミュを手に入れた。

>『No.04 皇帝 真田明彦』のランクが1になった。



【同日 深夜】


>真田はそのまま入寮する事になった。

>随分とメンバーが増えた……。

鳴上「山岸さんが合流して、多分、岳羽さんも……」

鳴上「これから、どうしようか」

>マヨナカテレビの中にシャドウがいるという仮説を確かめるために、パトロールを継続しつつも雨を待つ必要が出てきた。

>雨の日まで、何も出来ないのだろうか……。

鳴上「いや、あるぞ。出来る事」

鳴上「絆の力……シャドウと戦うなら、絶対に必要になるはずだ」

鳴上「一人一人ゆっくり話を聞いていこう。それで……」

>……とにかく、今日は眠ろう。

>早く雨が降る事を祈りながら……。

今日はここまで。
コミュ回収が終わったので、これからコミュを伸ばしていきます。
誰から攻めるか……。

あと、どうでもいいんですが100レス目が順平登場っていうのはなんとも言えませんね。

では、また後日。

乙であります

乙です

乙だな

乙だよ

専ブラから書き込みテスト。
本日分。



【2012/4/10(火) 晴れ 月光館学園】


>ロングホームルームだ。

>陽気のせいか、みんなどこかぼんやりしているようだ。

>……先生も、あまりやる気が無いように見える。

>教室内はざわついている。

鳥海「まぁねーこんな日はまったりしちゃうのもわかるけど、あんたら今年は大事な年よー。人生決まるんだからねー真剣に聞いときなさい」

>進路か……。

鳴上「本当なら、去年くらいには概ね決まってるもんだよなぁ」

>事件にかまけていた……というのは言い訳だろうが、八十稲羽での生活は慌しくも楽しすぎた。

>時折、このまま時間が止まってしまえばいいと感じるほど……。

鳴上「将来の自分か……」

>……驚くほどに想像出来ない。

>周りのクラスメイト達も、おそらくはっきりとは決まっていないだろう。

>しかし、漠然とでも自分の人生の形を決めようとしている。

>自分はどうだろうか。

鳴上「命のこたえ、か……」

>これもまた、その一つなのだろうか……。

>とりあえず、今は事件の解決を考えよう。



【同日 夕方 巌戸台分寮】


美鶴「君か。お帰り」

鳴上「あ、ただいま帰りました」

美鶴「学校はどうだ?もう慣れたか?」

鳴上「ええ。クラスメイトもいいやつばかりですよ」

美鶴「そうか。君は今年で卒業だ。しっかりエンジョイするように。それと、言っておくことがある」

鳴上「はい、なんでしょう?」

美鶴「山岸とゆかり……岳羽の入寮日が決まった。三日後、二人で越してくるらしい」

鳴上「そうですか。随分と人が増えましたね」

美鶴「ああ。これで磐石と言っていいだろう。それで、相談なんだが」

鳴上「俺にですか?」

美鶴「ああ。今後、事件を追う上で、パーティー単位での行動が出てくると思う」

鳴上「パーティー単位?」

美鶴「毎夜毎夜、全員が都合がいいとは限らないし、もし出るにしても残っておく人員も必要だ。何か行動を起こす時はそうだな……四人」

鳴上「なるほど、確かにそうですね」

美鶴「それで、君にその際のリーダーをお願いしたいのだが……」

鳴上「俺が、ですか」

美鶴「うん、もし本当にテレビの中が舞台となるなら、そこを熟知している君が適任だと思う」

鳴上「しかし、俺なんかでいいんですか?歳も皆さんより下だし、それに……」

美鶴「君がリーダーだと言って文句を言う者はいないだろう。それに、臨機応変にペルソナを付け替えることができる君の能力は、周囲に気を配るリーダーという立ち位置にぴったりだと思うが」

鳴上「でも……」

美鶴「不満か?」

鳴上「能力から言えば適任かもしれません。けど、納得がいかないというか……」

美鶴「君は、以前リーダーをやっていた彼に似ている。私だけじゃない。おそらくは皆そう思っている」

鳴上「……」

美鶴「信頼されているということだ。頼む。君にしか頼めない事なんだ」

>美鶴は深く頭を下げた。

鳴上「や、やめてください!わかりました、引き受けますから!」

美鶴「……押し付けたような形になってすまない。だが、君なら勤められると信じている」

鳴上「わかりました。できる限りやってみます」

美鶴「ああ。君にばかり負担がいかないように全員でサポートする。よろしく頼むぞ」

鳴上「はい……」

>美鶴に信頼されているのを感じる……。

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが2になった。

>やはり、皆は自分の向こうに以前リーダーだった男を見ている……。

>……。


【深夜】


?「君とこうして話すのも久しぶりだね」

「……」

?「……また、会いにくるからね」



【2012/4/10(火) 晴れ 堂島宅】


堂島「湊。ちょっといいか」

有里「どうかしましたか?」

堂島「菜々子に聞いたが、友達がずいぶんできたってな」

有里「ええ、みんな僕に良くしてくれて……」

堂島「そうか。それでな、友達と連絡取るのも不便だろうと思ってな」

>堂島は何かを投げた。

堂島「携帯。お前は身分証も無いし、俺の名義で登録しといた」

有里「そんな、いいんですか?」

堂島「前にも言ったろ?悪いと思うならいつか返してくれたらいい。お前の好みがわからなかったから、適当にシンプルなのを選んどいたがいいか?」

>折り畳み式の携帯電話だ。渋いブルーのボディがかっこいい。

有里「かっこいいと思います。ありがたく使わせてもらいますね」

堂島「ああ。じゃ、俺は仕事に行ってくる」

>堂島を見送った。

>携帯電話を手に入れた。

>まず誰の連絡先を手に入れようか……。

>そうだ、あの人にしよう。



【ベルベットルーム】


有里「というわけなんだけど」

マーガレット「と、言われても……」

有里「アドレス帳の最初の一件になって欲しくて。駄目かな?」

マーガレット「駄目というよりも、私は携帯電話を持っていないのです」

有里「あれ?でも確かエリザベスは電話で……」

マーガレット「あれは、主の電話でございます。本来私用に使う物ではございません」

有里「そっか。僕はマーガレットと色々話したかったんだけど……な」

マーガレット「……申し訳ございません」

有里「いや、マーガレットのせいじゃないよ。浮かれて先走った僕が悪かったんだ」

マーガレット「その、お客様。よろしければお客様の番号とメールアドレスを教えていただいても?」

有里「それはかまわないけど、どうするの?」

マーガレット「もし個人用の携帯電話を持てる事になったら連絡させていただこうかと」

有里「ありがとう。うれしいよ。じゃあこれ」

>マーガレットの為に番号とアドレスをメモして渡した。

マーガレット「では、いずれご連絡いたします」

有里「うん。わざわざごめん。じゃあ、またね」

>一時間後……。

>Pipipipi……

>電話だ。

>番号はまだ堂島とマーガレットにしか教えていない。

>……まさか。

有里「はい」

マーガレット『主に掛け合った所、私も個人用の電話を持たせていただける事になりました。メールも送っておきましたので登録のほどお願いいたします』

有里「そう、良かったね。登録しておくよ」

マーガレット『またいつでもご連絡ください』

>電話が切れた。

>……マーガレットは、とてつもなく扱いやすいんじゃないだろうか。

>とにかく、マーガレットの連絡先を手に入れた。

>『No.15 悪魔 マーガレット』のランクが2になった。



【同日 夕方 ジュネス】


有里「いるかな……」

陽介「お、有里!今日も買い物か?」

有里「ああ、いたいた。違うよ、今日は陽介に用事」

陽介「え?俺に?どうした、何か悩み事の相談か?」

有里「いや、そういう話は陽介にはしないと思う。堂島さんが携帯工面してくれたんだ。だから連絡先をと思って」

陽介「お前、段々俺の扱い覚えてきたね……ちょっと悲しいぜ……で、携帯ね。待ってろよ。ほれ」

有里「良ければ、ほかのメンバーにも教えておいて欲しいんだけど」

陽介「ああ、教えとく。そっか、お前学校も来れないもんな……連絡取りようがなかったんだな」

有里「学校ね。まぁ……僕は行かなくていいかなって思ってるけど。進路も関係ない身分になっちゃったしね」

陽介「あー、進路な。思い出させんなよなー、落ちるぜぇーくそ……」

有里「どうしたの?」

陽介「頭が悪いの!」

有里「……そっか」

陽介「ちょっと納得すんのやめてくんない?余計落ち込むんだけど」

有里「まぁ、まだ時間はあるよ」

陽介「勉強なー。事件もあるし、勉強なんかやってる場合じゃねーって言いたいんだけどなぁ」

有里「大事な時期だし、ちゃんとやらないと」

陽介「わーかってるよ!やりたくねえだけ!」

有里「せっかく先に進めるんだし、ちゃんと決めたほうがいいよ」

陽介「ああ……そうだよな、有里は普通の人生って選択肢、無くなっちまったんだもんな」

有里「……」

陽介「でもよ!せっかくこうやってまた生きてられるんだし、もしかしたら事件解決したらまた普通に暮らせるかもしんねーじゃん!」

有里「うん、そうだね」

陽介「そうなったらどうする?ウチで働くかぁ?有里、無愛想に見えて接客とか得意そうだし歓迎するぜ!」

有里「それもいいかも。けど……なんとなく、頼るならもっといい所がある気もする」

陽介「なぁにぃ、ジュネスの御曹司の俺以上の株があるってのかよ。どんなよ、それ」

有里「桐条グループの一人娘なんだけど」

陽介「桐条だぁ?桐条ってーと、あれか?あの世界規模の……」

有里「そう、それ」

陽介「……ほんっと、お前ってよくわかんねー」

有里「ただの知り合いだよ。一晩は共にしたけど」

陽介「え、ちょっと待って。有里さ、その辺詳しく教えて欲しいんだけど」

>陽介と他愛も無い話をした。

>『No.19 太陽 花村陽介』のランクが2になった。



【同日 深夜 堂島宅】


>メールが届いている……。

>捜査隊のメンバーからだった。

>各々個性豊かな文面で連絡先を伝えてくれた。

>……良い仲間だ。

堂島「ただいま……」

有里「あ、お帰りなさい」

堂島「まだ起きてたのか。夜更かしは関心せんぞ」

有里「すみません。頂いた携帯を弄るのが楽しくてつい」

堂島「……湊。聞きたい事がいくつかある」

有里「……なんでしょう」

堂島「お前、俺に隠してることがあるな?」

有里「そんな風に見えますか?」

堂島「……その事でとやかく言うつもりじゃない。そんなに警戒するな」

有里「……あります。確かに」

堂島「それも、かなりでかい事だ。違うか?」

有里「その通りです」

堂島「わかった上で引き取ったんだから、それでどうしたって話じゃない。ただ、俺は警官だ」

堂島「お前らの安全を守るのが仕事だ。わかるだろ?」

有里「そうですね」

堂島「最近、市内……いや、どこに行ってもそうだ。何か、気味の悪い違和感が付き纏う。いつかと似た感覚がな」

有里「……」

堂島「お前、何か得体の知れない事件に関わってるな?俺達の手に負えないような事件だ」

有里「堂島さん……」

堂島「俺が保護すると決めた以上、お前は俺の身内だ。事件を追うのはいいが、危ない真似は絶対にするな」

有里「気持ちはうれしいです。でも」

堂島「でもじゃない。お前が何か特別なのはわかる。だけど、そうじゃない奴らだって力になれるはずだ。色んな面でな」

堂島「俺だってその一人だ。身内が困ってるなら助けてやりたい。警官がどうこう以前にな。覚えとけよ」

有里「……しっかり、覚えておきます」


堂島「お前が来てから、菜々子の負担がずいぶん減ってる。助かってるよ」

有里「まぁ、お世話になるだけではどうかと思いまして」

堂島「ついでに言っとくぞ。菜々子の前で取り繕った態度をとらないでやってくれ」

有里「ええと……」

堂島「ああ見えて聡い子だ。気付いてるぞ。小さい子は苦手か?」

有里「苦手ではないですけど、菜々子ちゃんに嫌われたり、怖がられたりしないようにと」

堂島「そのせいで菜々子が気を遣ったら、そりゃ本末転倒じゃないか?」

有里「……まぁ、そうですね」

堂島「あれはあれで強い子だ。お前が悪い奴じゃないってのはわかってるし、本音で当たっても大丈夫だ」

有里「はい。気をつけます。すみませんでした」

堂島「いや……少々親馬鹿だったかな。まぁ、それだけだ。……今日はもう寝なさい」

有里「はい。……堂島さん」

堂島「どうした?」

有里「本当に、感謝しています。何から何まで、ありがとうございます」

堂島「……ん。おやすみ」

有里「おやすみなさい」

>堂島と語り合った。

>彼の事がわかった気がする。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが2になった。

>さて、明日は誰に会いにいこうか……。

今日はまた短くなってしまいました。
コミュ伸ばしと、思うところ。

では、また後日。

っと、これからこいつのコミュを先に、とかこいつのコミュが見たい!って言ってくれれば対応します。
正直、自分でもどこから攻めるか悩んでいるので。
安価とまでは言いませんが、一応。

私情を挟めば最速美鶴MAXなんですが……。

乙。
キタローがP3の仲間達に再開するのが
楽しみやで。


これを読むのがいつも楽しみです

再会するのが楽しみでしかたない

>>1

番長は大変だな、鳴上悠を鳴上悠として見てないところがあるな。
代替品扱い。

>>1 乙って付け忘れた







P3メンバーはキタローにちょっと依存気味だったしな
番長がみんなのヒーローならキタローは孤高のカリスマって感じ

>>127
P3しかやってないけど孤高のカリスマはすごいわかる
無口なゴッドファーザーみたいな

そして>>1

再会再会って、皆再会楽しみにしすぎでしょう。
ということで本日分。



【2012/4/13(金) 曇り 巌戸台分寮】


>その日の授業を終えて寮に帰ると、ラウンジに風花がいた。

鳴上「こんにちわ」

風花「あ、鳴上君。おかえりなさい」

鳴上「今日入寮でしたっけ。荷物とかは……」

風花「あ、もう全部運んでもらったよ。これからよろしくね」

鳴上「はい、よろしくお願いします」

風花「ちょっと遅くなるけど、岳羽さんも今日中にはって言ってたよ」

鳴上「そうですか」

>……。

鳴上「じゃ、俺荷物置いてくるんで」

風花「あ、うん。……またね」

>部屋に入り、鞄を投げ出した。

鳴上「……八十稲羽に帰りたいな」

>誰かの代わりを務めたくてここにいるわけじゃない。

>それとも、気にしすぎているのだろうか。

>……。

>なんだか、酷く疲れた。

>少し、眠ろう……。


【同日 夜】

>部屋の扉を叩く音で目が覚めた。

順平「おい、鳴上!鳴上!寝てんのか?鳴上ー?」

鳴上「っ……はい、どうか、したんですか」

>中途半端な時間眠ってしまった。

>頭が痛い……。

順平「桐条先輩がラウンジ集合だってよ。さっさとしねーと後が怖いぜ」

鳴上「わかりました、行きます」

順平「おう、俺先に行ってるからな」

>……ラウンジに行こう。



【ラウンジ】


>ラウンジには既に皆そろっていた。

>いつの間にかゆかりも来ている。

>美鶴がこちらを見た。

美鶴「……来たな。皆にはまだ言っていなかったが、彼に今後の作戦の指揮権を与えようと思うんだが」

順平「え!?俺じゃないんすか!」

天田「順平さんは……無いと思います」

岳羽「……本人は、何て?」

美鶴「やってもいいそうだ。私からお願いした」

風花「うん、私はいいと思います」

真田「ま、適任じゃないか?定例みたいなもんだしな」

コロマル「ワンッ」

アイギス「私も、鳴上さんなら問題無いかと」

>全員賛成してくれるようだ……。

美鶴「決まり、だな。これより特別課外活動部の凍結を正式に解除する。そして、そのリーダーは……鳴上、君だ」

鳴上「……はい」

美鶴「さて、早速だが報告だ。今夜、雨が降るらしい」

>全員に緊張が走る。

天田「一応、天気予報で聞いてましたけど……」

順平「ついにっすか……」

真田「突入するのか?」

美鶴「いや、彼によるとテレビの中は非常に危険かつ不安定らしい」

鳴上「はい。どこに出るかもわからないし……」

美鶴「何も出来ないというのは口惜しいが、今夜は出来る限り観察するに留めたいと思う」

真田「何、戦闘は無しか」

鳴上「俺も同意見です。今はとりあえず情報を揃えて、俺の仲間からの連絡を待ちたいと思います」

岳羽「仲間って?」

鳴上「マヨナカテレビを解決した時の仲間です。一応、確認してもらうように言ってあります。テレビの中に詳しい奴もいるので」

美鶴「流石はリーダー、冷静で賢明な判断だ。任せた甲斐があるな」

鳴上「……なので、とりあえず今日はテレビに映る映像を見て、以前の事件との関連を調べて欲しいんです。俺は、良く知らないので」

風花「そっか、塔っていうのが本当にタルタロスかどうかもわかんないから」

鳴上「まずはその確認。それから、一応気付いたことがあれば聞きます。それで、何も無ければ……」

美鶴「装備を整えた上、突入ということになるな」

鳴上「はい。そうしたいと思います」

真田「ところで聞きたかったんだが、テレビの中に入るってのはどうやるんだ?」

鳴上「ああ、それは普通に歩いて……」

順平「え、それってこのサイズでもいけんの?」

>ラウンジにはブラウン管の小さいテレビしかない……。

鳴上「これでは、ちょっと……」

美鶴「その心配なら不要だ。明彦、そこの布を取ってくれ」

真田「これか?順平、そっち側を持て」

順平「……俺、わかっちゃったかも」

>ばさっ。

天田「うわっ、すごっ!」

岳羽「美鶴先輩、これって……」

風花「すごいですね……」

美鶴「このサイズなら一人と言わず四・五人並んで入れるだろう。搬入には苦労したがな」

>布で隠されていたのは巨大な液晶テレビだった……。

美鶴「サイズは問題ないな?」

鳴上「はい、これなら大丈夫だと思います」

美鶴「よし……他に確認することは?」

鳴上「とりあえず、現状はありません。後は、影時間まで待ちましょう」

美鶴「なら一旦解散だな。零時前にはまたラウンジに集合だ」

順平「うっし!腕が鳴るぜ!」

岳羽「突入無しだっつってんでしょー」

風花「私、少し寝ようかな……」

天田「あ、でしたら起こしましょうか?」

真田「頼りにしてるぞ、リーダー」

アイギス「なんだか少しワクワクしますね」

美鶴「アイギス、油断はするなよ」

>各々解散し、自由行動になった……。

>……。

鳴上「装備を整える、って事は、今日までに装備は揃えてないって事か」

鳴上「桐条さんは今日は本当に偵察だけのつもりなんだな……」

>ということは、皆戦いに赴ける装備は無いのだろう。

>……自分、以外は。

鳴上「……椿落とし」

>何か有事の際にと思って持ってきた武器だが……。

鳴上「俺だけは、テレビの中へ行っても戦う事が出来る」

>自分だけは……。

>時間が経つのが遅い。

>早く雨が降れ。早く影時間になれ。

>早く、早く。

>……。



【深夜】


美鶴「揃っているな」

鳴上「これから、おそらくは影時間になると同時にテレビがつきます」

岳羽「電源は切ってあるけど、それでも?」

鳴上「そもそも影時間内では電化製品は全て作動しないと聞いています。しかし、俺は間違いなくそれを見ました」

順平「やべー、ドキドキしてきたよ俺……」

天田「僕も、ちょっと……」

真田「冷静でいなければ生き残れんぞ」

美鶴「明彦」

真田「わかってる、今日は戦闘は無し、だな」

アイギス「本当に、映るのでしょうか……」

鳴上「……あと、数秒です」

カチッ

カチッ

カチッ

ガチン

>辺りを奇妙な感覚が包んでいく……。

美鶴「影時間、だな」

アイギス「けどテレビは……」

風花「あ、み、見てください!」

>電源を切ったテレビに砂嵐が映った!

順平「うおおマジかよ!」

岳羽「順平うるさい!」

>砂嵐が徐々に晴れていく……。

真田「これは……」

美鶴「間違いないな」

天田「タルタロスですね……」

>以前見た映像と同じだ。

>どこか、荒野のような場所に塔がそびえ立っている……。

鳴上「!そこに映っているの、シャドウじゃないですか?」

>塔の周囲、小さく映っている黒い影……いつか見たシャドウと似ている。

美鶴「確かに、そう見えるな」

風花「待ってください。ふぅ……久しぶりだけど……」

>風花は召喚機を取り出すと、自分の額に当てた。

風花「……ユノ!」

順平「おわっ!急にペルソナ出すなって!」

鳴上「これは?」

美鶴「山岸のペルソナは探知型だ。シャドウの反応を探る事が出来る」

鳴上「りせと同じタイプか……山岸さん、どうですか?」

風花「……!!やっぱり、そうみたいです。テレビの向こうから、大きいの、小さいの……無数のシャドウ反応があります」

美鶴「決まり、だな。リーダー、どうする?」

鳴上「……とりあえず、この映像を見てもらうっていう目標は達成しました。まだ何も準備が出来ていないので突入は次の雨の日でいいと思いますが」

美鶴「うん。ここにシャドウがいるとわかっただけでも良かった。明日以降、いつでもテレビに入ることが出来るように準備を進めよう」

鳴上「はい。とりあえず、今日の所は解散でもいいと思いますが」

美鶴「そうするか。と、いうわけだ。皆、明日に備えて休んでくれ。それから、装備に関してだが……以前と同じでかまわないだろうか?」

>美鶴とメンバーがいくつか打ち合わせをして、解散となった。

>早く、早く……。

美鶴「さて、君はどうする?」

鳴上「俺は、もう少し見てみようと思います。以前のマヨナカテレビと違う所があったらヒントになると思うので」

美鶴「そうか。……信用しているが、先走ったりはしないでくれよ。君はリーダーだ。皆に示しをつけなくてはな」

鳴上「わかってますよ。じゃあ、おやすみなさい」

>早く、早く……。

>……皆、ラウンジからいなくなった。

>大型テレビには、うろつくシャドウとタルタロスが映し出されている。

>一度部屋に戻った時に、椿落としはラウンジに隠しておいた。

>誰にも見つからなかったようだ。同じ場所にある。

鳴上「俺は……」

>テレビに手を触れる。

>指先が、手が、腕が、沈みこんでいく。

鳴上「……すみません」

>刀をぎゅっと握り、テレビの画面に向かって歩いた……。



【テレビの中】


鳴上「……見たままの場所に出るのか」

>そこは間違いなく、さっきまでテレビに映っていた荒野だった。

>シャドウがうろついているのも見える。

鳴上「霧はかかってないんだな」

>しっかりと周囲を確認することができる。

>周囲は一面の荒野で、タルタロスの他には建造物はおろか何一つ見つける事がは出来なかった。

鳴上「……さて、どうしたものか」

>前方から何かが走ってくる。

鳴上「シャドウか!?」

>椿落としを抜き、構える。

?「セーンセー!!!」

鳴上「この声は……」

クマ「センセー!会いたかったクマああああああああ!」

鳴上「く、クマ!なんでここにっ……!」

>クマのタックルでダウンしてしまった……。

クマ「センセー!センセー!ああー懐かしいお顔クマぁ!クマ寂しかったクマー!」

鳴上「落ち着け!」

クマ「ハッ!失礼したクマ!……あれ、ところで何でセンセイこんなとこにいるクマ?」

鳴上「またマヨナカテレビが映り始めて、その捜査だよ。それよりクマこそどうしてここに?」

クマ「クマはたまたまテレビの中に帰って来てたクマ。そしたら何かテレビの中がおかしくて、クマ出られんくなっちまったクマ……」

鳴上「そうなのか?」

クマ「これ、マヨナカテレビの時とは何か違うクマ。クマが出られんとか考えられんクマ……陽介達きっと心配してるクマ……」

鳴上「クマが出られない……ってことは、俺も出られないのか?」

クマ「わからんクマ。けど、多分……」

鳴上「……そうか」

クマ「どうするクマ?センセイ一回帰るクマ?試してみる?」

鳴上「いや、いい。それより、俺はアレを調べないと」

クマ「ああ、あの塔……アレ、一体何クマ?あの中、とんでもない数のシャドウがいるクマ……」

鳴上「シャドウの巣みたいな物らしい。クマは危ないから……」

クマ「いやクマ!センセイと一緒クマ!」

鳴上「……クマは、俺が帰って来た時すぐテレビから出られるようにここで待っててくれ」

クマ「いやクマ!いやーんクマ!一緒に行きたいクマぁ!」

鳴上「頼む」

クマ「……むー、センセイにそこまで言われちゃ仕方ないクマ。けど、絶対、絶対絶対帰ってくるクマよ!?約束クマよ!?」

鳴上「ああ、約束する」

クマ「じゃあ待ってるクマ。気をつけるクマよ!」

鳴上「ああ。じゃあ、行ってくる」

>背後からクマの応援が聞こえる……。

>クマに会えたのは嬉しい誤算だったが、クマもテレビから出られないとは……

>やはり、無謀だっただろうか。

>いや、それでも……。

>うろつくシャドウをかわしつつ、タルタロスへ向かった。


【タルタロス内部】


鳴上「今、四階か……」

>内部のシャドウを適度に倒しつつ、何とかここまで登ってこれた。

鳴上「たいした奴はいないけど、良く考えると一人でこんな長い間戦ったのは初めてだな……」

鳴上「やっぱり、無謀だったか……といっても、他に手も無し」

>とにかく限界まで登って、限界が来たら一度クマの所へ帰ろう。

>階段を見つけた。

鳴上「これで五階……と」

>五階は今までのような迷路では無く、大部屋が一つあるだけのようだ。

鳴上「ボス……か?」

>正面にもう一つ階段がある……。

鳴上「入り口は一つじゃなかったのか……俺の辿ったのとは違う道があるみたいだ」

>靴音が響いている。

>誰かが階段を上がってくる!

鳴上「……!」

>椿落しを構える。

>頭が見えた。

>あれは、人……?

?「君は……」

鳴上「お前は……」

?・鳴上「何者だ……!」

>マヨナカテレビとは何か。

>入った人間の深層心理から、自分の一面であるシャドウを生み出し、その願望を放送する物だ。

>今回の事件はそうじゃないのかと思っていたが……

>目の前の人物は、見た目こそ違えど本質的に自分と同じである事がはっきりとわかる!

鳴上「……シャドウか!」

?「なるほど、これが……」

鳴上「イザナギ!」

>ここに来る前にベルベットルームに行くべきだった。

>今使えるペルソナはイザナギしかない。

>だが、引く訳にはいかない……!

?「……まぁ、いいか。オルフェウス」

>イザナギの一閃を、腕を振るって逸らした物。

鳴上「ペルソナだと!?」

>シャドウがペルソナを使う?

鳴上「今までにないタイプか……!」

?「ごめん、どうやら探してたのは君じゃないみたいだ。悪いけど、眠ってくれないかな」

>相手の男が自分のこめかみに人差し指を突きつける。

>あれは、まるで……召喚機を使う時の……

?「タナトス」

>さっきまで対峙していたペルソナの内部から、食い破るようにして別の怪物が現れる。

鳴上「そんな……!」

>その圧倒的な力に、イザナギごと吹き飛ばされてしまった。

鳴上「ぐっ……あ!」

>胸にじくりと痛みが走る。

>怪物の持っていた剣が、左胸をかすったらしい。

?「歩けると思うけど……今日の所は帰った方がいい。僕も帰るよ」

鳴上「なっ、ま、待て……!」

?「加減はしたけど無理は禁物。心配しなくても……多分、また会える。じゃあね」

>男は階段を下りていった……。

>悔しいが、確かに余力は残っていない。

>あの男の言うとおり、引くしか無いだろう。

鳴上「く、そ……」



【2012/4/13(金) 曇り】


ザーッ……

キャスター『続いては、今日のお天気です。今日は、全国的に曇り空が広がり、夕方から夜の間に雨が降り出すでしょう』

キャスター『雨は夜通し降り続け、明日の朝方、やっとあがるようです。学校やお仕事の帰り道、濡れる事の無いよう傘を……』

プツン……。


【堂島宅】


>結局、皆の都合がつかなくて、今日まで誰とも過ごせなかった……。

堂島「じゃ、行ってくる」

有里「いってらっしゃい」

>今日も堂島を見送った。

菜々子「湊お兄ちゃんは今日どこかお出かけするの?」

有里「そのつもりだったけど、どうかした?」

菜々子「今日は夕方から雨が降るってニュースで言ってたよ?」

有里「そうなんだ……どうしようかな」

菜々子「菜々子は傘持ってくー。お兄ちゃんも濡れないようにね?風邪ひいちゃうよ?」

有里「うん。気をつける。ありがとう」

菜々子「えへへ、じゃあいってきます!」

>菜々子は学校へ行った……。

有里「雨、ね。さて、どうしようかな」

>皆は今日も学校だろう。

>しかし、雨が降るなら今夜はテレビを確認する必要があるかもしれない。

>とりあえず、陽介辺りにメールしておこう……。


【同日 昼 堂島宅】

>ん?

>陽介からメールだ。

『件名:特別捜査隊各員に告ぐ!
 本文:今夜マヨナカテレビが映る可能性アリ!都合のつくものは放課後ジュネス集合のコト!』

>……僕には送らなくて良い。

>放課後か。もう少し時間がある。

>そういえば、もし戦うとなると武器はどうなるのだろうか。

>交番で買えるはずも無いし……。

有里「あ、マーガレットにでも聞いてみよう」

>マーガレットにメールしておいた……。

>!

>返信が早い。

『件名:武器でございますか
 本文:一度お立ち寄りいただければ用意しておきます』

>……ジュネスに行く前に、一度寄った方がいいだろう。

【同日 夕方 ジュネス内フードコート】


>途中立ち寄ったベルベットルームで、ギムレットを手に入れた。

>昔使っていた武器だ……これなら問題無いだろう。

>どうやら、最初についたのは自分だったようだ。

千枝「ありゃ、有里くんが一番乗り?」

有里「ああ、里中さん。そうみたいだね」

千枝「じゃあ私は二番目っと。雨降ってきたねー……」

有里「朝聞いたんだけど、夜通し降るって」

千枝「うわっちゃー、傘持ってきてないよー。仕方ない、濡れながら帰るかなー」

有里「まぁ、夜通し降るって聞いたから集まってもらったんだけどね」

千枝「あ、そっか。マヨナカテレビ……」

有里「陽介が聞いた話だと、今までとは随分違うパターンみたいだね」

千枝「うん……どうなっちゃうんだろ。ちょっと怖いな」

有里「心配無いと思うよ。僕もいるし」

千枝「ええっ、有里くんって結構自信過剰なタイプ?」

有里「もし何かあっても、里中さんは守るってこと」

千枝「うぇえ!?ど、どういう意味でしょー?」

有里「え、そのままの意味だけど」

千枝「……守って、くれるの?」

有里「勿論。里中さんだけじゃない。一度は守った世界だ……もう一度だって守ってみせるさ」

千枝「……有里くんってさぁ」

有里「どうかした?」

千枝「いや、別に……」

有里「何か特別な意味だと思った?」

千枝「何でもないですー」

有里「命を張ってでも君だけは守る、なんてね」

千枝「有里くん、けっこー性格悪いよね……」

有里「そう?」

千枝「有里くんってさ、無表情だからわかんないけど、多分今楽しんでるでしょ」

有里「そう見える?」

千枝「見える」

有里「正確にはからかうのが楽しいんじゃなくて、顔真っ赤にしてる里中さんを見るのが楽しいかな」

千枝「もー、何それ。どういう意味?」

有里「さぁ?」

陽介「わりいわりい遅くなった!んあ?里中なんでそんな顔真っ赤なの?熱でもあんのか?」

千枝「花村うっさい!」

有里「そう、体調悪いんだって」

陽介「自己管理がなってねーなー」

千枝「うー……」

>皆が集まるのを待った。

有里「……さて。皆には一応聞いてもらってると思うけど、今晩例のテレビが映る可能性がある」

直斗「雨ですからね。夜通し降るらしいので、本当に映るとしたら今日は間違いなく映るかと」

完二「で、今日映ったらどうするんスか」

陽介「いきなり突入ってわけにもいかないだろ?」

有里「とりあえず皆に確認してもらって、それからどうするか考えようと思う。テレビの中に入るには何か必要な物とかあるの?」

陽介「普通のドアとかとおんなじだから、ある程度サイズが無いと入れねーな。そのくらいだ」

有里「皆はどこから入ってたの?」

天城「ここのテレビを使ってたんだけど……」

陽介「心配すんなって。ちゃんと使えるよ」

有里「じゃあ僕はここのテレビで見させてもらってもいいかな?」

りせ「でも有里さん、夜中にお家抜け出して大丈夫なの?」

有里「ほら、影時間だから。僕達以外は皆……」

完二「あ、なるほど」

直斗「……って、ちょっと待ってください。ここのテレビで見るという事は、テレビの中に入るつもりですか?」

有里「そうだけど」

天城「ちょ、ちょっとそれは無茶だよ!」

陽介「クマもいねーし、お前出てこれなくなるぞ!」

有里「そうなの?」

りせ「……有里さん、行くなら私も行くよ」

千枝「り、りせちゃん!まだどうなるかもわかんないのにそんな……」

有里「りせと行けば……帰って来れるのかな?」

りせ「うん。私のペルソナなら出口を作れるから」

有里「じゃあ、お願いしてもいいかな」

陽介「おいおい、じゃあ全員で行ったほうがいいって!危ないってマジで!」

有里「今日は戦闘が目的じゃない。僕がテレビの中を体験してみたいんだ」

直斗「じゃあ、別にその時じゃなくても……」

有里「マヨナカテレビが映っている間……つまり影時間の間、テレビの中も異質になってるかもしれない。その確認をしたいんだ」

完二「……これ、止めても聞かなそうな感じじゃねえか?」

りせ「心配しなくても大丈夫だよ。私が無茶なんてさせないもん!」

有里「うん。絶対に無茶はしない。信じて欲しい」

>皆は何とか納得してくれたらしい。

有里「とりあえず、明日また集合して各々気付いた事を話し合おう。陽介、今日の深夜……」

陽介「入れるようにしとくわ。仕方ねーな」

有里「ありがとう。じゃあ、とりあえずは解散って事で」

>皆と別れた。後でりせに詳しい話をメールしておこう……。

有里「あ、里中さん」

千枝「ほえ?なんでしょー」

有里「傘持ってないんでしょ?濡れるよ」

千枝「ああ、だいじょぶだいじょぶ。体だけは丈夫なんだ私」

有里「まぁここで買ったビニール傘なんだけど。良かったら貸すよ」

千枝「それじゃ有里くん濡れちゃうじゃん。いいっていいって」

有里「……妥協案。相合傘」

千枝「え!?いや……まぁ、いい、けど」

有里「家まで送るよ。はい」

千枝「じゃあ、えっと、失礼します……」

>千枝を送ってから自分も帰った。

>千枝が離れよう離れようとするので結局半身濡れてしまった……。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが2になった。


【同日 深夜 ジュネス内フードコート】


>大型テレビにはタルタロスと周囲を徘徊するシャドウが映っている……。

りせ「ほんとに、行くんだよね?」

有里「うん……大丈夫?」

りせ「うん、大丈夫。……ちょっとだけ、怖いかな」

有里「ごめんね。でも、危ない目には合わせるつもり無いから」

りせ「ふふ、頼もしいんだから。じゃあ、いくね?」

>りせと二人でテレビの中へ進んだ……。

>辺りは一面の荒野だ。

りせ「……うん、大丈夫。出られるよ。とりあえず一安心だね」

有里「りせ。僕はこれからあの塔を調べようと思う」

りせ「ええ!?危ない事はしないって言ったじゃない!」

有里「勿論僕だけだよ。それに、戦闘は極力避けるし……無理だと思ったら即逃げてくる。大丈夫、こう見えて僕は結構強いんだよ」

りせ「でも……」

有里「そんなに頼りなく見える?」

りせ「そうじゃない。そうじゃなくて……有里さん、自分の事軽く思ってる気がする」

有里「そんなこと……」

りせ「私達、仲間だよね?もう仲間だと思っていいんだよね?」

有里「それは……そうだよ」

りせ「だから心配なの。私達の為に何か、とんでもないことするんじゃないかって」

>……。

有里「心配ないよ。約束してもいい。僕は約束は守るんだ」

りせ「本当に、無茶しない?」

有里「うん。りせもサポートしてくれるんでしょ?だったら怖い物ないよ」

りせ「……わかった。全力でサポートする!だから約束して、危なくなったら……」

有里「即逃げる。じゃあ、よろしくね」

りせ「うん、がんばって!」

>りせに手を振ってタルタロスへ向かった。

>心配しなくても、まだその時じゃない。

有里「まだ、ね」


【タルタロス内部】


>道中、りせのサポートもあり、雑魚は適当にあしらって登ってこれた。

有里「ここが四階で……」

>目の前には登り階段がある。

有里「これで……五階」

>五階は大広間が一つあるだけのフロアのようだ。

>自分以外の誰かが、既にいる。

有里「君は……」

?「お前は……」

有里・?「何者だ……!」

>これが、話に聞くテレビの中のもう一人の自分……シャドウなのだろうか。

>確かに、本質として自分と同じであるという感覚がある。

>このフロアに入ってからりせの声も聞こえない。

有里「!?」

>突然、男がペルソナを召喚しけしかけてきた。

>シャドウがペルソナを使う……?シャドウではなく、人間、なのか?

有里「……まぁ、いいか。オルフェウス」

>相手のペルソナの攻撃を逸らす事に成功した。

?「ペルソナだと!?」

>相手も驚いている。

>やはり彼はシャドウでは無いらしい。

>しかし、この場を引く気も無さそうだ。

有里「ごめん、どうやら探してたのは君じゃないみたいだ。悪いけど、眠ってくれないかな」

>人差し指をこめかみに当てる……。

有里「タナトス」

>オルフェウスの内部からタナトスが現れて、相手をペルソナごと吹き飛ばした。

有里「歩けると思うけど……今日の所は帰った方がいい。僕も帰るよ」

?「なっ、ま、待て……!」

有里「加減はしたけど無理は禁物。心配しなくても……多分、また会える。じゃあね」

>男に背を向けて、上がってきた階段を降りた。

>今日は帰った方がいいだろう。

>これ以上彼と関わると、次はきっと余裕を持ってとはいかないはずだから。

というわけで本日分は終わり。
ほのぼの八十稲羽と、ギスギス月光館。
番長は大変だ。

では、また後日。


キタローやっぱり強いな



番長はどんなペルソナ使うのか楽しみ


1乙。

番長の居場所がなくなってきてるね。
巌戸台寮はキタローの代わり扱い、八十稲羽はキタローが堂島家を中心に居場所を作り始めてるし。

これからどうなるやら。

今思うと、八十稲羽の面子はアクティブなのが多いな。
巌戸台寮は誰かをリーダーに置きたがってる感じ。

ちょっと良くない雰囲気の番長の方はどうなる?

4は番長たちがメンバーで一番年上だからな。桐条みたいなバックアップしてくれる機関もないし後輩もいるしやっぱ責任感があるんじゃないか
逆に3は美鶴達がメンバーで一番年上で、キタロー達は先輩はいるし後輩は天田だけだし桐条がバックアップしてくれるし割りと個人個人が好きなようにやってる感じ

俺得スレだな
P3メンバーは依存してる感じがヒシヒシするなぁ
本人たちはそうでもない、と思っていても番長には居心地悪いだろうな。
逆にキタローどんはのびのびしてるなww

いかにペルソナ4のメンバーがオアシスか分かるなw

乙。
両陣営の出会いが楽しみ。

依存とまでは感じないけど番長自身を見てないとは思った
番長の築く絆はキタローの影を乗り越えれるか

依存とまでは感じないけど番長自身を見てないとは思った
番長の築く絆はキタローの影を乗り越えれるか

辛うじてジュンペーがキタローの影を追ってないな
反発してたからかなww
まだ、裸マント先輩の依存度不明だけど

武器について触れてたけど、そういえばキタローは殆どの武器を器用に扱えてたな
P3Pで容量という名のシャドウによって弱体化したけど

キタローは天才でカリスマで漢だからな

遅くなってしまいました。
P3P要素が無いと言ったな。

あれは嘘だ。

本日分。

有里「りせ、聞こえる?」

りせ『あ、有里さん!さっき一瞬有里さんの反応が無くなって……どうしちゃったのかと思ったよ』

有里「どうもそういうフロアだったみたいだね……。今からそっちに戻るから、道中ナビお願い」

りせ『りょーかい!しっかりナビゲートします!』

>タルタロスを抜け、りせの所へ帰った……。

りせ「お帰りなさいっ!……っ大変!有里さん!お顔お顔!」

有里「え?」

>りせが指差す辺りを触ってみると、想像と違う感触と痛みがやってきた。

>下顎から首筋にかけて、一本裂傷が出来ている……。

有里「受け損なったのかな。まぁ、深くないし大丈夫だと思うよ」

りせ「本当に、大丈夫なんですか?」

有里「うん。とりあえず、帰ろうか。手当てもしたいし」

りせ「わ、はい!ええっと……」

>やはり、早めに対処して正解だった。

>彼は、強い……。

>りせの力でテレビから出る事が出来た。

りせ「お疲れ様!傷は大丈夫?」

有里「血はもう止まってるし、大丈夫だよ。心配させてごめんね」

りせ「ううん、いいの。大丈夫なら良かった……」

有里「それじゃ、帰ろうか。送るよ」

りせ「えっ、ほんとに?じゃあ、お願いしちゃおっかな!」

>りせを家まで送った……。

りせ「ここまでで!わざわざありがとうございました!」

有里「こちらこそ。付き合わせちゃって悪かったね」

りせ「いいですよぉ、そんな……私ね、嬉しかったよ」

有里「ん?何が?」

りせ「有里さんが、仲間だって認めてくれて。なんか、有里さんって私達と距離ある気がしてたから」

有里「そう、かな」

りせ「そうですよー。昔の仲間と比べられてるのかなって思ってた」

有里「……そういうわけではないんだけどね」

りせ「でも、仲間だって言ってくれたよね?うそじゃないよね?」

有里「うん。りせも、皆も、今の僕にはとても大事な仲間だ」

りせ「……えへへ。それじゃ、有里さん!また明日ね!」

有里「うん。またね」

>りせと別れた……。

>『No.17 星 久慈川りせ』のランクが2になった。



【堂島宅】


有里「タルタロスがある以上、攻略しない訳にはいかない……なぁ」

>そうなると、やはり仲間達の力が必要になるだろう。

有里「……なるべく、危険な事はさせたくないんだけど、なぁ」

>最終的には自分が決着を付けるとしても、その過程で彼等を危険に晒すのは……

有里「意地でも協力しようとするだろうなぁ」

>りせの笑顔が頭を過ぎった。

有里「仲間、ね」

>なんというか、微笑ましい皆だ。

>さて、今日はもう寝よう……。

?「こんばんわ」

有里「……また、君か」

?「前は挨拶も出来なかったからね」

有里「名前は……ファルロス、だったかな?」

?「私は、あなた。だけど、ファルロスって名前はちょっとね」

有里「ああ、女の子だから」

?「そういうこと。私は……美奈子。よろしく」

有里「よろしく。とりあえず、今日は挨拶まで?」

美奈子「うん、また、会いにくるね。……そうそう、あなたが今日出会った彼」

有里「彼がどうかしたの?」

美奈子「あなたの因子を少し受け入れたみたい。元々似た部分のある二人だから……」

有里「すると、どうなるのかな」

美奈子「彼の所にも私が行けるようになったってこと」

有里「じゃあ、アフターケアは君に任せるよ」

美奈子「どうでもいい、から?」

有里「いいや。僕は女性以外の扱いはあんまり得意じゃないから」

美奈子「……呆れた」

有里「まぁそう言わず」

美奈子「保障はしないけどね。……そろそろ時間みたい。また、近いうちに」

有里「またね」

>……。

>寝よう。



【2012/4/14(土) 曇り 巌戸台分寮内ラウンジ】


美鶴「おい!おい鳴上!鳴上!」

>体を揺さぶられている……。

アイギス「美鶴さん、落ち着いて……」

鳴上「う、ぐ……」

順平「あ!気がついたみたいっすよ」

鳴上「……ここは」

>寮のラウンジだ……。

鳴上「っ……」

>体が痛い。

>確か、あの後何とかクマの所へ戻って……

鳴上「なぜ、ここに……」

美鶴「なぜ、はこちらの台詞だ……!」

>改めて周囲を見ると、特別課外活動部の面々に囲まれている。

鳴上「あ……」

美鶴「君は……私があれほど……!」

>美鶴はあまりの怒りに言葉を詰まらせているようだ。

順平「ま、まぁまぁまぁ!いいじゃないっすか、無事帰ってこれたんだし!」

アイギス「順平さん。今は任せましょう」

美鶴「君はリーダーであり、皆に示しを付けなければならない立場だと伝えたはずだ」

鳴上「……すみません、でした」

美鶴「すみませんで済む話か!」

真田「美鶴、その辺にしておけ。相手は怪我人だ」

美鶴「しかし……!」

真田「見てみろ。これが自分の仕出かした事をわかってない人間の顔か?」

美鶴「……もう、休みなさい。また今度話をする」

鳴上「本当に、すみませんでした……」

>やれやれというように順平と真田が部屋に戻った。

アイギス「大丈夫ですか?」

鳴上「はい……」

コロマル「クゥ~ン……」

鳴上「あれ、傷に包帯が……」

アイギス「風花さんが手当てしていたようです。ゆかりさんと交替であなたの様子を見ていたので、お二人はまだ眠っています」

鳴上「そうですか……皆さんには本当に迷惑を……」

アイギス「……とにかく、今は傷の養生を。お話はそれから」

鳴上「部屋に、行きます」

>アイギスを置いて部屋に帰った。

鳴上「痛っ……くそっ……」

>あの男は何者だろう。

>恐ろしい強さのペルソナだった……。

鳴上「……怒らせてしまった」

>さっきの美鶴の表情が浮かぶ。

>どう謝ればいいだろう……。

順平「おい、鳴上?ちょっといいか?」

鳴上「……すみません、少し傷が痛むので一人にしてください」

順平「まぁそう言わずにちょっと出てこいよ。真田先輩が呼んでんだよ」

>一体なんだと言うのだろう。

>部屋を出ると、順平と真田の他にもコロマルと天田もいた。

順平「寮内男子全員集合だぜ」

真田「よし、とりあえず歩けるみたいだな。神社に行くぞ、ついてこい」

>ぞろぞろと神社へ向かった……。



【長鳴神社】


真田「よし、ここならいいだろう。さぁ、鳴上。構えろ」

鳴上「え?」

順平「ちょ、ちょっと待ってくださいよ先輩。マジっすか?」

真田「なぜ冗談を言う必要がある」

順平「マジだわこの人……」

天田「鳴上先輩、がんばってください!」

鳴上「ちょ、ちょっと……」

真田「来ないならこっちから行くぞ」

>真田がステップを踏む!

鳴上「くっ、何でっ……!」

>勝手をした制裁だろうか。

鳴上「くそっ!」

>慣れない構えで拳を握る。

順平「なー天田、これ、どっちだと思う?」

天田「まぁ、いくら鳴上先輩でも無理でしょう。特に素手では」

コロマル「ふぁ~……」

>周りも見学に入ったようだ。

>……ああ、わかったよ。

鳴上「やってやる……!」

真田「その意気だ、いくぞ!」

>高速で迫る拳の壁を、時に逸らし時にかわして何とか対処する。

>しかし、こちらから反撃に転ずる事が出来ない!

>じりじりと追い詰められ……

鳴上「ぅ、ぐぅ……!」

>見計らったように渾身のストレート。

>これは、避けられない……!

>衝撃は来なかった。

>代わりに拍手が辺りに響く。

順平「いんやーすげえすげえ。あの真田先輩相手によくもったもんだ」

天田「流石って感じですねぇ。真田さんも、前よりずっと速くなってますね。すごいです」

鳴上「……?」

真田「どうした、そんな顔して」

鳴上「い、いや……」

真田「好き勝手したお前に鉄拳制裁を加えるとでも思ってたか?」

鳴上「……」

真田「お前は、俺より弱いな」

鳴上「……っ、得意な武器なら!」

真田「だが素手では俺が上だ。そうだろ?」

鳴上「それは……そうですけど」

真田「なのに、お前は俺に頼らなかった。何故だ?」

鳴上「……」

真田「俺達は仲間だ。仲間は助け合うもんだ。辛かったら手を貸してやる。立てなかったら肩を貸してやる。お前はもっと、俺達を頼っていい」

鳴上「真田さん……」

真田「が、やはり勝手をしたのは許せんな。一発いっとくか?」

順平「いや、先輩がいったらマズいっしょ」

鳴上「ありがとうございます」

真田「ふん、ただの気紛れだ。お前みたいな奴を見ると、幼馴染を思い出す……不器用な奴だったが、お前はそうじゃないだろ?」

鳴上「……はい」

真田「言いたい事はそれだけだ。俺は帰る。後は他の連中に任せる」

>真田は背を向けると去っていった……。

順平「アレ、照れてんな」

天田「ですねぇ」

鳴上「順平さん、天田。俺は……」

順平「あーみなまで言うな!とりあえず飯食いに行こうぜ!腹減っちまってよぉ」

天田「あ、いいですね。どこにします?」

順平「鳴上ってまだはがくれ行った事無いんじゃね?」

鳴上「はがくれ……?」

順平「っしゃ決まり!昼ははがくれラーメンだ!」



【駅前商店街「はがくれ」】


順平「知ってるか?友達と一緒にここの特製ラーメン食べると、ずっと友達でいられるんだってよ」

鳴上「ジンクスってヤツですか」

順平「まぁな。たまにはそういうのもいいじゃねえか。そこで、天田君からお話があります!」

鳴上「天田から?」

天田「あ、はい。……その、鳴上さん。今まですみませんでした」

鳴上「ど、どうしたんだ?」

天田「いえ、悩んでた事にも気付かなかったし……まず悩む原因になっていたのも僕達だと思いますし」

順平「お前、前のリーダーと色々重ねられてたんだって?それ気にして、今回先走ったんだろ」

鳴上「いや、その……確かに、そうですが」

天田「最初にあの人に似ているって言ったのは僕です。確かに似てるんですけど……やっぱり、鳴上先輩は鳴上先輩だと思います」

鳴上「天田……」

天田「ごめんなさい!許してください!」

鳴上「ちょ、やめろ天田!わかった、わかったから!」

天田「本当に許してもらえますか?」

鳴上「ああ。俺もちょっと、気にしすぎてたのかもしれないし……な」

順平「これで仲直りってわけだ。よし!ここは先輩の俺が奢ってやろう!」

天田「ほんとですか!?」

鳴上「ありがとうございます」

順平「いーってことよ!さ、食え食え!」

>三人でラーメンを食べた。

天田「じゃあ、僕はこれで……いくよ、コロマル」

コロマル「ワフ」

>コロマルは励ますような目でこちらを見ている。

鳴上「心配かけたなコロマル。もう大丈夫だ」

コロマル「ワン!」

>コロマルは天田の方へ走っていった……。

順平「最後は、俺だ。まあちょっと話そうぜ」

鳴上「はい」

順平「……悔しいんだけどよ、俺、あいつに勝ってるとこって一個も無かったんだわ」

鳴上「前のリーダーですか」

順平「そ。頭も良くて、勇気もあって、その上顔が良いと来た。どんな完璧超人だよってな」

順平「ま、そういう意味じゃお前も似たようなもんか。モテるだろ、お前」

鳴上「別に、そんなわけじゃ……」

順平「隠すな隠すな。あいつはさ、ふらふらしてるようでしっかりしてるっつーか、やっぱりふらふらしてるっつーか……不思議なヤツでさ」

鳴上「……」

順平「ペルソナの付け替えなんて反則みたいな能力あるし、その上女にモテやがる。同い年で同じ部で同じクラスで……とにかく意識したぜ」

鳴上「それで、どうしたんですか?」

順平「どうもしねーよ。俺が嫉妬して、ぶつけて、受け止められて。ああ、勝てねえなって思って、終わり」

鳴上「勝てない、ですか」

順平「俺の小さい嫉妬なんかすーぐ受け止めちまうんだぜ。そりゃ勝てねえって。……でも、俺にとっちゃそれだけだよ」

鳴上「俺にとっては?」

順平「これもなー、言うの悔しいんだけどよ。うちの部の女性部員、多分全員アイツに惚れてたぜ」

鳴上「全員ですか」

順平「おー、全員。惚れてたっつーか、惚れてるんだろうな。まだ。俺ら男と違ってさ、男女の仲って考えちまうとどうしてもな」

鳴上「……」

順平「その分、俺らよりアイツの事追っかけちまうんだよ。いなくなったのはわかってるのにな」

順平「だから、お前の中にあるアイツの面影を見た時……好きだった分、止められなかったんだと思うぜ」

鳴上「そうですか……」

順平「だからさ、あんまり気にしすぎんなって。俺が言うのも変だけど、お前、すげえいい男だと思うぜ。顔とかじゃなくて、もっとこう……なぁ?」

鳴上「そんなこと……」

順平「いーや、やっぱりモテるだろお前。うらやましいぜ畜生。ま、そういうわけだから、その内皆気付くって」

鳴上「俺は俺ですからね」

順平「言うじゃん。そういうこと。何ならアイツの思い出忘れさせてやれば?得意だろそういうの」

鳴上「得意じゃないですよ」

順平「うーん、俺が思うに、桐条先輩なんかはだな……」

>順平と他愛も無い話をしながら寮に帰った。

>……そうか。

>自分は、自分だ。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが2になった。

>『No.04 皇帝 真田明彦』のランクが2になった。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが2になった。

>『No.08 正義 コロマル』のランクが2になった。

能動的に相手に関わる有里。
受動的にしか関われなかった鳴上。
事態を一変させるのは男の友情か。
誤解があるとアレなので言っておきますと僕は3メンバーの方が好きです。美鶴いるし。

では、また後日。

>>1乙!

乙!

美奈子はポータブルの女主人公って認識でおk?

まぁ自分が好きなキャラに偏った書き方になるのは
仕方がないかもな。

3のほうが前の作品だし、浸っている時間が長い。
そもそも主人公に優劣つけるのはおかしいきもするがww

3の時点でキタローみたいなの出すと続編が出しづらいよな。なにかと比較されるからね

番長とキタローが一緒に出るSSはだいたいキタローのほうが優遇されてる気がするな

ミックスレイドあったり、オルフェウス、タナトス、メサイアって3体キタローをイメージする専用ペルソナがいるしね。
PS2版では武器何でも装備できるし。

個人的には番長の方が好きだけど。

受胎できることとオルフェウス改を忘れてるぞ

PS2の3しかやってないけど、p3pのキタローこんな感じになってんの?
ハム子追加くらいは知ってたけど、ここまで明るく改変されてるとは思わなかったな。面影ないしww

番長の方が好きなんで頑張って欲しいな。神をも殺す勢いで。

>>173
まあ本編では番長の方が優遇されてるしSSぐらいだったらいいんでね?

>>168
>>受動的にしか関われなかった鳴上
まて、番長好きなので言っておきたい。
小西 尚紀、長瀬 大輔、一条 康、海老原 あい、巽 完二、堂島 遼太郎、久慈川 りせ、中島 秀、小沢 結実または松永 綾音
それと話しかけると依頼をしてくる人たち。

俺の独断だけどゲーム内で主人公が能動的に関わった人たちだ。
これだけやって受動的にしかって何だおい。
さらに言えば弁当を作って学年などクラスに関係なく一緒にご飯を食べにいったり、家庭菜園まで作ろうとしてるんだぞ。

そもそも、番長は力は貰ったけど結局は自分というか仲間から突っ込んだわけで、キタローは呼ばれてきただけじゃねーか

>>178
このSS内でのことじゃねぇの?

個人的に単純な戦闘力としてはキタローの方が上だと思う。
P4のメンバーの方が好きだけどね。

ちらっと覗いたら誤解が生まれているようなのでちょろっと。

>>178 >>179の通り、SS内で現在自由に動けていないという意味です。
自分は原作の男前度で言うと番長が上だとは思ってます。

あと有里優遇の件ですが、優遇というわけではないですが、有里は常に鳴上の先にいるものとして書いてます。
二人とも主人公ですが、有里君は今回の件に少々造詣が深く、さらに知らない場所だろうと何だろうと気にせず進むタイプだと思ってますので
鳴上より手際よく、鳴上よりはっきりとした目的をもって、鳴上に背中で教えるキャラとして扱っているので優遇っぽい面が多く出ちゃってますね。
有里は先輩キャラ、みたいな感じで見てくれると有難いです。
性格に関しても、この二人、原作準拠にするとほっとくと何も喋らないのでかなりいじくってあるだけの事で、原作でこんな軽い面は出てません。
鳴上もかなりはっちゃけますし、有里は綾時要素がプラスされたようなもんだと思ってください。

美奈子ちゃんは誰とは言いませんがくせっ毛をポニテにまとめてる月光館学園の女生徒であると……
まあ、お察しの通りです。

本編投下はまた後ほど行います。
何か悪いイメージを抱かれたようで申し訳ありませんでした。

>>181
申し訳ありませんでした。
言い訳としては、>>168のみSSを読み終わってからだったので、カッとして書いてしまいました。
ごめんなさい。

ただ、アニメを見る限り鳴上はさらにはっちゃけてないでしょうか。
完二が女性陣テントに突っ込むのを行って来いと笑顔で送り出してたので。

私も全体的に、とくに女性陣のP3のキャラが好きです。でも、一番はスパッツの千枝ちゃんです。

まぁ主人公キャラ二人を共演させることでこういう議論が起きるのは想像がついたけど
それでも比べられる事すらない異聞録や罪罰の面々に比べれば恵まれているよね
異聞録のピアスが好きな自分としては羨ましい事この上ないですww

>>182 謝るような話ではないですよ、こちらの伝達力不足です。
まぁ、飽くまで二次創作、下敷きとして原作があっても別物として見てください。
あと自分もスパッツは好きです。

歴代ペルソナのキャラが出てくるSSは別にありますね。
あっちは非常に面白いので肩身が狭いですが。

さて、とにかく本日分。



【同日 夕方 巌戸台分寮】


>自室に帰った……。

>皆に励ましてもらった。

>だが、これから上手くやっていけるのだろうか……。

風花「鳴上くん、ちょっといい?」

>風花が扉の向こうから声をかけている。

鳴上「はい、どうかしましたか?」

風花「ちょっとお話いい?」

鳴上「あ、じゃあどうぞ入ってください」

風花「うん。お邪魔します……」

鳴上「えっと、勉強机の椅子でよければどうぞ」

風花「ありがとう。……傷は大丈夫?」

鳴上「ええ、深くは無かったようで……あ、手当てしてくれたの、山岸さんでしたよね。ありがとうございます」

風花「ううん、いいの。昨日ね、鳴上くんをテレビから出した時に……」

鳴上「山岸さんが出してくれたんですか?」

風花「えっと、正確には私だけじゃなくて……クマくん、君のお友達でしょ?」

鳴上「クマに会ったんですか?」

風花「テレビの中からこっちに声をかけてたの。彼の協力が無かったら鳴上くんを助けられなかった」

鳴上「それで、クマはどうなったんですか?」

風花「私の力でも、彼はテレビから出て来れなかった……なんだか、取り込まれてるみたいに」

鳴上「そう……ですか」

風花「鳴上くんの事、ずっと心配してたよ。影時間が終わったらテレビが映らなくなっちゃって、話は出来なくなったけど……」

鳴上「クマ……」

風花「鳴上くん、もうあんな危ない事はしないでね?」

鳴上「はい……気をつけます」


風花「鳴上くん、私達と上手くやっていけるかなって思ってるんでしょ」

鳴上「い、いや、そんなことは……」

風花「ふふ、隠さなくて良いよ。……ちょっと、ついてきて」

>風花について寮の三階へ上がった。

鳴上「あの、この階って女子の……」

風花「しー、静かに……ほら、あそこ」

>廊下の端ではゆかりと美鶴がなにやら話している……。

岳羽「先輩もさぁ、もうちょっと言い方とかあるでしょ?」

美鶴「し、しかしだな……」

岳羽「そりゃ、鳴上君ってたまに彼にダブって見える時あるよ。だけど別人!わかってるでしょ?」

美鶴「それはわかっている。わかっているんだが」

岳羽「だが、じゃないでしょ。鳴上君は鳴上君。……私だって、もし彼が帰ってきたらとか考える事はあるよ。いろいろ、言いたい事も、一緒にしたい事もあるよ……」

美鶴「ゆかり……」

岳羽「だけど、それを鳴上君に求めちゃ駄目。忘れなきゃ、ってわけじゃないけど、お門違いってヤツだよ」

美鶴「う、うん。そうだな……」

岳羽「わかったらどうするんですか?」

美鶴「か、彼に謝罪を……」

岳羽「それから?」

美鶴「……心掛けを、改めよう」

岳羽「全く、心配かけないでくださいよ。あー、眠い……私、またちょっと寝ますね」

美鶴「ああ、すまない。手間をかけたな」

>どうやら自分の事らしい……。

風花「ね、わかる?」

鳴上「……はい」

風花「鳴上くんは失敗していいの。誰かが失敗しても、他の誰かが叱ってくれるし、助けてくれる。それが仲間でしょ?」

鳴上「山岸さん……真田さんにも同じことを言われましたよ」

風花「うそっ!?……なんか恥ずかしいな。先に言われちゃってるなんて……」

鳴上「いえ、ありがとうございます。なんか、吹っ切れました」

鳴上「俺は俺です。皆が求めるような、誰かの代わりにはなれない……でも、それでいいんですよね?」

風花「そういうことだね。じゃあ、これからもよろしくね!」

>仲間達から思いやりを感じる……。

>今なら皆を、胸を張って仲間だと言える。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが2になった。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが2になった。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが2になった。


コンコン

鳴上「はい」

美鶴「私だ……少し、いいか」

鳴上「あ、今開けま……」

美鶴「いや、いい。そのまま聞いてくれ。……まず、昼間はすまなかった」

鳴上「そんな、落ち度があったのは俺です」

美鶴「確かにそうだが、私が君に言った言葉には、それ以外の感情が含まれていた。それを謝罪しておきたくて」

鳴上「別に、気にしてませんから。心配してくれたんでしょう?」

美鶴「そう、か。いや、それでもやはり謝らせてくれ。これまでの態度に君を不愉快にさせる部分があった事も含めて。本当に、すまなかった」

鳴上「……俺、そんなにその人に似てますかね」

美鶴「……時折、彼にダブって見える事がある。しかし、君は君だ」

鳴上「本当にそう思ってます?」

美鶴「……」

鳴上「俺、思ったんです。その人の思い出を忘れさせちゃえばいいんじゃないかって」

美鶴「忘れさせる……?」

鳴上「好きです」

美鶴「ッ……な、何を突然……!」

鳴上「桐条さん。いや、美鶴。俺じゃ駄目ですか」

美鶴「や……やめてくれっ……」

鳴上「ドア、開けますね」

美鶴「ちょ、ちょっと待て!まだ心の準備が……」

>ドアを開けた。

>美鶴は顔を真っ赤にしてうろたえている。

>……順平の部屋から、順平が顔を出している。

>順平に向かって親指を立てた。

美鶴「き、君の気持ちは嬉しい。だが、今私が見ているのは君の中の彼で、だから、その、とにかく今は……?」

鳴上「すみません桐条さん。少し、からかいました」

>順平がどこから持ってきたのか、ドッキリ大成功!と書いた紙を持ってこちらを見ている。

鳴上「あれを」

美鶴「……」

美鶴「……けいだ」

順平「いやー俺の作戦通りっつーの?見事に引っかかってくれて……」

美鶴「処刑だ!貴様らそこに直れ!」

順平「やべっ!鳴上、後任せた!」

鳴上「え、ちょっ!待ってくださいよ!」

美鶴「待て!」

>順平と二人で美鶴から逃げ回った……。


アイギス「……励まそうと思っていたんですけど、ね」

コロマル「ワン」

アイギス「楽しそうでなによりです。……良かった」

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが3になった。

>『No.07 戦車 アイギス』のランクが2になった。



【深夜】


?「やぁ、こんばんわ」

鳴上「ん……?」

>見知らぬ女性が部屋にいる。

鳴上「あれ、えっと……」

>女性は月光館の制服を着ている……新しく入寮する生徒だろうか?

鳴上「なんで、ここに?」

?「あなたが彼に会ったから」

鳴上「彼……あいつか?」

>タルタロスで出会ったペルソナ使い……

?「多分、そのあいつ。君の中に彼の一部が入ってる……って言えばいいのかな」

鳴上「俺の中にあいつが?」

?「ケガしたでしょ。それが通路。君と彼とはコインの裏表みたいなものだから、そこを通して両側が繋がってる……って感じ」

鳴上「確かに、あいつには俺と似た何かを感じた。……じゃあ、君はあいつの何なんだ?」

?「私は彼。鏡写しの君の、もっと奥の部分。名前は、有里美奈子」

鳴上「俺に何の用なんだ」

美奈子「強いて言えば様子見。君が落ち込んでやしないかと思って。けど、心配無かったみたいね」

鳴上「落ち込んでたさ。数時間前まで」

美奈子「仲間のおかげ、かな?順平やゆかりは元気?真田先輩は相変わらず?桐条先輩は無茶してない?」

鳴上「なんで知ってるんだ?」

美奈子「今は、まだ内緒。また会いにくるね。今日は、これでお別れ」

鳴上「お、おい。待って……」

>……いつもの、自分の部屋だ。

鳴上「なんだったんだ、一体」

>左胸の傷が少し痛んだ。

>『No.13 死神 有里美奈子』のコミュを手に入れた。

>『No.13 死神 有里美奈子』のランクが1になった。



【2012/4/14(土) 曇り ジュネス内フードコート】


陽介「俺から言えることはねーな!実際、前のテレビと違いすぎて何もわっかんねぇ」

完二「同感っス。違いを探そうにも共通点が少なすぎて何も言えねぇ」

千枝「私もよく……あれってほんとにマヨナカテレビなのかな?」

直斗「条件的には合致していますが……もしかすると、完全に別種の何かなのかもしれませんね」

りせ「中も全然違ったよ。もしかしたら出られないかもって焦っちゃった」

雪子「感じからして全然違ったよね……どうなんだろう……」

>特捜隊のメンバーは難しい顔をして相談している……。

>この空気の中言い出すのは非常に気が引ける発表を控えているのだが……。

有里「ところで、昨日入った時はいつもと違ったって言ってたよね」

りせ「うん、いつもだったら同じテレビから入ると決まった場所に出るんだけどね。昨日は、見たままの場所に出たし……」

有里「今から、テレビの中に入る事って可能かな」

陽介「でぇ、お前、そんなケガしといてまだやる気マンマン?」

有里「軽症軽症。それに、今度こそ入るだけ」

直斗「入ってどうするんですか?」

有里「テレビが映っている間だけ別の所に繋がるのか、それとももう常にあの場所に繋がってるのかが気になってね」

りせ「あ、確かにそうかも……ちょっと入ってみます?」

有里「うん。じゃありせ、また悪いんだけど……」

陽介「だぁーもう、お前は休んどけって!見てくるだけだったら俺が行ってくるよ!」

有里「陽介が?大丈夫?」

陽介「う、実はちっと不安……完二!ついて来てくれぇ……」

完二「お、俺っスか!いや、まぁ、いいっスけど。ほんじゃ、ちっと行ってきますわ」

有里「待ってるよ。りせ、気をつけてね」

りせ「わかってますって!じゃ、ちょっと見てきますね」

陽介「俺らにゃ一言も無しかよ!」

千枝「いーからさっさと行きなさいって」

>陽介と完二とりせはテレビの中へ入って行った……。


>と、すぐに出てきた!

有里「早かったね。首尾は?」

陽介「いや、どうもこうもねーわ。いつも通り」

りせ「いつもの部屋に出ちゃったよ……一応、周囲を探ってみたけど、昨日の場所へ繋がる道は無いみたい」

直斗「と、なるとやはり例の映像が映っている時のみ探索が可能となるわけでしょうか」

有里「みたいだね……それで、今日は僕から皆に伝えなきゃいけないことがあるんだ」

雪子「急にどうしたの?」

有里「この事件の捜査……やめよう。手を引こうと思う」

>……。

>全員が沈黙した。

陽介「はぁあ~!?おま、何言っちゃってんの!?」

有里「ふざけても無いし冗談でも無いよ。あの塔……タルタロスっていうんだけど、あの中はシャドウの巣になっている。危険すぎるんだ」

千枝「で、でも!私達だって一応シャドウとの戦いは越えてきたわけだし!」

有里「心配なんだ。わかって欲しい」

完二「俺ぁ納得いかねっス!じゃあ誰が解決するって言うんスか!」

有里「……昨日、タルタロスで知らないペルソナ使いに出会った。恐らく、彼もこの事件を調査している」

直斗「その人に任せるっていうんですか?」

有里「影時間絡みとなれば、僕の昔の仲間も手を打っていると思う。だから、皆は手を引いて……」

陽介「待てよ。昔の仲間って言ったな。それって、月光館のか?」

有里「そうだけど……あ」

陽介「昨日会ったペルソナ使いって男か?女か?」

有里「おと……女の人だったよ」

陽介「バレッバレの嘘つくんじゃねーよ!正直に言ってくれ。そいつってさぁ……」

>陽介が言った特徴は、全て昨日見た男と一致していた。


陽介「間違いねー……」

雪子「だったら、尚更調査続けないとね」

直斗「そうですね。あの人が関わっているなら協力し合わないと」

りせ「有里さんひどーい、内緒にしてたでしょ」

千枝「ま、やめる訳にはいかなくなっちゃったね」

完二「つーか有里さん、先輩とやりあったんスか。どっち勝ちました?」

有里「あのー……」

陽介「そいつ、間違いなく俺らの仲間だわ。アイツが戦ってんなら余計見てるだけなんて出来ねーよ」

有里「……どうしても?」

全員「どうしても!っス
         です」

有里「ああ、そう。それならそれで仕方ないね……昨日、結構痛めつけちゃったけど大丈夫かな彼」

完二「え!有里さん勝ったんスか!すげ、マジっスか!」

有里「強かったよ。勝ったと言ってもほら、僕もこんな傷付けられちゃったわけだから、分けってとこ」

陽介「さぁて、アイツに連絡しとかねーとなー。いろいろわかった事もあるし。お前の事も言っとくぜ」

有里「いや、僕の事は控えておいて。彼から他の人に伝わらないとも限らないし」

陽介「……しゃーねーな」

有里「君たちが仲間の事を大事にしてるのは良くわかった。だけど、どうやらまた雨が降るまで探索は出来ないみたいだ。だから、とりあえず……」

有里「それまでは、一切気にせず学生生活を営む事。例の彼との連絡くらいはとっても構わないけど、あまり掛かりきりになってもね」

陽介「だな!じゃーとりあえず今日は解散って事で!相棒には俺からメールしとくわ。有里もケガさっさと治せよ!」

>彼らの間に揺ぎ無い信頼関係を感じる……。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが2になった。

有里「……これは、急ぐ必要があるかな?」

>とりあえず、今日は帰ろう。

今回から天城雪子の台詞の前を「天城」から「雪子」に変更しました。
苗字で書かれているキャラと名前で書かれているキャラの差は収まりの良さだけなので深い意味はないです。
今日はまた後でもう少し投下するかも。

とりあえず、一旦終わり。

来てた!
>>1乙!

まだ始まったばかりだけど、面白いよ!
形見が狭いとか言わず自信持て!

乙!

おつ!

ちょっとだけ追加。



【2012/4/15(日) 晴れ 巌戸台分寮】


>そういえば、昨日いろいろありすぎて忘れていたが、陽介から連絡があったかもしれない。

鳴上「……来てるな」

>メールを読んだ……。

鳴上「あの場所は雨の夜しか入る事は出来ない……か。ん?何で陽介が俺がタルタロスにいた事を知ってるんだ?」

>陽介に返信しておこう……。

>今日は日曜だ、時間があればまた連絡があるかもしれない。

鳴上「さて、今日はどうしようか……」

>メンバーの誰かと出かけるてみようか。

鳴上「とりあえず、寮内に誰がいるか確かめよう」


【ラウンジ】


天田「あ、鳴上先輩。おはようございます」

鳴上「天田か、おはよう」

>そういえば……

鳴上「天田、ポロニアンモールに行く約束、覚えてるか」

天田「あ、覚えてますけど……先輩、怪我もしてますし、また今度で」

鳴上「大丈夫だよ。暇なら今日案内してくれないか」

天田「そうですか?それじゃ、一緒に行きますか」

>天田とポロニアンモールに出かける事になった……。


【ポロニアンモール】

天田「案内って言っても、先輩も何度か来てるみたいだしあんまりいらないですかね」

鳴上「まだ全部回ったわけじゃないし、出来たら簡単に案内してくれると有難いな」

天田「じゃあ、適当に回りましょうか」

>天田とゲームセンターで遊んだ……。

天田「あ、アレ……」

>天田はクレーンゲームの景品を見つめている。

鳴上「……なんか、前も見たなこの人形」

天田「僕クレーンゲームって苦手なんですよねぇ」

鳴上「よし、やってみよう」

天田「わ、頑張ってください!」

鳴上「む……あまりよくない位置だな」

ガタン

天田「あー……ドンマイです」

鳴上「いや、これは布石だ。ここに置くことで……」

ガタン

天田「……先輩、別にそこまで欲しくないんでいいですよ」

鳴上「もう少しで取れると思うんだ……」

>……。

天田「3000円ですか。高くつきましたね……」

鳴上「今日は、調子が悪かったな……」

天田「普段はどうなんですか?」

鳴上「普段なら二回か三回で取れるんだけどな」

天田「へぇー、上手いんですね!今度教えてくださいよ!」

鳴上「ああ、また来よう」

>天田にジャックフロスト人形を取ってあげた。

>……流行っているのだろうか。

天田「案内しようって思ってたのに、思い切り楽しんじゃいましたね。すみません」

鳴上「いいさ。楽しかったならなによりだ」

天田「先輩と遊ぶの、楽しいです。また誘ってくださいね!」

>天田とまた遊ぶ約束をした。

>天田と少し仲良くなった気がする……。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが3になった。

【同日 夜 巌戸台分寮】

>……陽介から連絡があった。

>影時間の話を聞いた例のスゴイヤツの詳細は、今は明かせないらしい。

鳴上「……GWにこっちに来たときに全部話す、か」

>そういえば、GWに八十稲羽に帰る予定にしてあるが、それをまだ伝えていない。

鳴上「ちゃんと言っておかないとな」

>今日は、もう寝よう……。



【2012/4/15(日) 晴れ 堂島宅】


>陽介からメールだ……。

有里「クマは無事でいる……?ああ、あの着ぐるみの……無事だったのか」

>彼の為にも、皆が捜査をやめる事は無いだろう。

有里「天気予報じゃ、一週間は雨は無いってことだし……僕に出来ることは、皆と仲良くなる事くらいか」

>今日はどうしよう……。

有里「過去の経験からして、複数人の女性と同時に仲良くなる事は非常に危険」

>タルタロスに潜ったはいいが、誰一人として一言も喋らなかった時を思い出した。

有里「……ただし、男性は同時進行でも比較的安全、というか皆で遊ぶ事を好む人も多い、と」

有里「とりあえず、女性かな……」

>まずは、彼女の事を良く知ろう。

>千枝にメールした……。


【同日 昼 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さんだよー」

>どうやら来たようだ。

千枝「よっす、有里くん……」

有里「わざわざ来てもらってごめんね、里中さん」

千枝「いやいや、全然いいんだけど、えと、何か、用かな?」

有里「用が無いと会いたいって言っちゃ駄目?」

千枝「や、そういう訳じゃ……」

有里「とりあえず、上がる?」

千枝「ふぇ?お、お部屋は早いんじゃないかなー?えっと、お話する?だったら商店街かどっかでいい?」

有里「ああ、そう?じゃあ、行こうか」



【商店街】


千枝「でさ、その時雪子が……」

有里「へぇ」

千枝「……あの、有里くん、もしかしてつまんない?」

有里「ん?どうして?」

千枝「いや、なんていうか、リアクションがさ。薄いなって思って」

有里「そうかな。普通に話してたつもりなんだけど……」

千枝「あはは、私の話なんか別に面白くもないから、当たり前かなー、なんて」

有里「ごめんね」

千枝「謝ることじゃないよ、こっちこそごめんね?」

有里「……もし、彼だったら、里中さんももっと話しやすかった?」

千枝「彼……って、ああ、あの人はね、私がどんな話をしても……」

有里「どうかしたの?」

千枝「いやぁ、良く考えたら有里くんと似たようなリアクションだったなーって」

有里「けど、彼と話す時はそんな風に気遣ったりしなかったんじゃない?」

千枝「あれ、確かにそうだね……なんでだろう」

有里「結局、僕はまだ里中さんにとって部外者って事かな?」

千枝「そ、そんなこと無いよ!ただ、彼の方が少し……包んでくれるっていうのかな。安心感みたいなのがあってね」

有里「そっか……僕じゃ駄目なわけだね……」

千枝「だ、だから!そういうんじゃないってば!……まぁ、まだ有里くんの事よくわかんないってのはあるのかも知れない」

有里「僕の事?」

千枝「うん。どのくらいまで身を任せて良い人なのかな、っていうか」

有里「彼ならどーんと行っても大丈夫だと思えたんだね」

千枝「うん、積極的に話しにノってくれたりするわけじゃないんだけど、不思議とね……って、何か変な事言わされてない?」

有里「変な事じゃないよ。里中さんが彼の事が大好きなんだなぁって確認しただけ」

千枝「大好きって……!だから、あんまりからかわないでよ、もう……」

有里「僕じゃ頼りないかな?」

千枝「へ?」

有里「僕じゃ、里中さんを包んであげられないのかなって」

千枝「……もうちょっと、お互いを良く知ってからじゃ駄目?」

有里「じゃあ、これから里中さんの事、ちょっとずつ教えてよ。僕の事も少しずつ教えるから」

千枝「うん。じゃあ、あの、よろしく……ね」

>千枝は手を差し出してきた。

有里「よろしくね」

>手を握り返した。

>……緊張しているのか、少し汗をかいている。

有里「汗」

千枝「う、言わないでよ、そういう事はさ……」

>千枝と色々な話をした……。

>千枝と少し仲良くなったようだ。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが3になった。

有里「……こっちでも、強敵だな」

千枝「何か言った?」

有里「いや、何も。家まで送るよ」

>やはり彼の存在はメンバーの中でかなり大きいようだ。

>もしかすると、これから絆を深める上で少し障害になるかもしれない……。

>千枝を家まで送って、自分も帰った。

意識し始めたお互い。
しばらくは二人ともコミュ伸ばし。
二人が会うとどうなるのでしょう。
答えは霧の中?

本日分は今度こそ終わり。
では、また後日。


キタローがやばいな

鳴上はショタに手を出して、キタローは間男

なんてカオスだ マヨナカテレビも逃げ出すぜ

番長は年下ならなんでもいいのか?www

そして冷静に同時進行とか言ってるキタローェ……
経験から気まずくなるの確定してるのに突っ込むって勇者すぎだろ

番長早く巌戸台組を落とさないと居場所なくなっちまうぞw

なんかキタローうぜぇww

このコミュの取り合いは正直不安になる展開だな
それぞれキャラ達に思い入れがあるから余計に

これだけ教えてほしいんだけど、P4キャラがキタローに恋したりキタロー>番長になったりする?

いやぁこのSS面白いですね!乙です!

という自演をしておいて。
今日明日は法事のため更新が難しいのですが、少し気になるレスがあったので外から。

えーペルソナ4女性陣が有里に恋するかどうか。
結論から言えばします。
といっても鳴上君の事を忘れたりする訳ではなく、これから有里が彼らにとってかけがえのない仲間になり、鳴上と同じくらい大きな存在になった時、恋に発展するかどうか…程度の話です。
有里の頑張りと、これからの展開次第でしょう。
逆に3女性陣が鳴上に…というパターンも勿論あります。
基本大筋以外は行き当たりばったりで書いてるので、どうなるかは自分でもわかりません。

あと天田と鳴上は健全な先輩後輩だろなんでショタ狙いとか言うんだよ笑っちゃったよ

>>210
あの・・・いきなりで悪いとは思いますが、そういう質問には答えないでくださいよ・・・

その辺の要素も込みで見てるんですから。
例えるなら推理小説でこれからの被害者を全員教えられてしまう位の酷さですよ

せめて
「鳴上君の事を忘れたりする訳ではなく、これから有里が彼らにとってかけがえのない仲間になる」
ぐらいで留めて欲しかったです。

>>211 っとー、またも申し訳ない。
書き方が悪かったと思うので弁明を。

先ほどのレスで最も重要なポイントは
「基本大筋以外は行き当たりばったりで書いてるので、どうなるかは自分でもわかりません」
の部分です。
まぁ、つまり、可能性としてあらゆるパターンが存在するけれど、現時点では未定という事になります。

事件の原因や解決策などは決定してから書いていますが、そこにいたるまでにどのキャラが重要な役割で、どのキャラがこう動いて、っていうのは考えてません。
勿論有里や鳴上がそれぞれ仲間達と打ち解けられるかどうかも含めて、自分にも不明です。

本来ならこういう質問は言葉を濁すのですが、原作があり、その原作で良い仲になったキャラもいるという事で、それ以外は見たくないという方もいると思います。
そういった点に配慮して返答する事にしました。
なので、実際ネタバレ要素は含まないようにしたつもりですが、そのようにするつもりであるとも取れる書き方だったのは落ち度だと思い、レスを重ねました。

この>>1…できる

さて、わずかな時間を見つけて投下。
かなり短いですが本日分。



【2012/4/16(月) 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、今日もお出かけ?」

有里「夕方からちょっと出かけようかなって思ってたけど?」

菜々子「そっか……じゃあ菜々子帰ってきたらちゃんとお留守番してるね」

有里「うん。じゃあいってらっしゃい」

>菜々子を見送った……。

有里「さて、と」

>少し、やり方を考える必要がある。

有里「まず、里中さんと仲良くなろう。ああいうタイプは月光館にはいなかったし……」

有里「彼の事は、また今度考えるとして。とにかく一人ずつ仲良くなっていこう」

>まだ焦るような段階では……メールだ。

『差出人:りせ
  件名:ずるーい!
  本文:昨日里中先輩とデートしたってほんと!?
     ずるーい、りせも有里さんと遊びたーい』

>文の最後にハートの絵文字がぴこぴこと輝いている。

有里「……まぁ、いいか」

>りせに返信しよう。



【同日 夕方 商店街】


りせ「有里さーん、お待たせっ!」

有里「学校お疲れ様」

りせ「ありがとーございます!あ、でもりせちょっと怒ってるよ?」

有里「どうかしたの?」

りせ「有里さん、里中先輩とデートしたって?」

有里「デートっていうか、少し話をね」

りせ「商店街をぶらつきながら?」

有里「なんでりせが知ってるの?」

りせ「有里さんの事は何でもお見通しです!……なんちゃって、実は完二が見てたんだよね、昨日。今日たまたま聞いちゃって」

有里「ああ、それで……」

りせ「あたしの事ほっといてデートとか酷いですよぉ!」

有里「ごめんね。お詫びに今日は付き合おうと思って」

りせ「えへ、冗談ですけどね!でも付き合ってくれるならトコトン甘えちゃおうかな。じゃ、いきましょー!」

>りせに手を引っ張られてどこかへ連れて行かれた……。



【辰姫神社】


りせ「はいっとーちゃく!」

有里「ここ……神社?」

りせ「神社ですね」

有里「ええと、りせは神社に何か用があったの?」

りせ「ふっふっふ……有里さんは知らないでしょうけど、ここの神社はすごいんですよ?」

有里「おみくじで良いのを引くとお金が拾えるとか?」

りせ「え、なんですかそれ。いやそういうんじゃなくて!絵馬があるでしょ?」

有里「絵馬?……ああ、確かに」

>たくさんの絵馬が吊られている……。

りせ「ここに願い事を書いた絵馬をかけとくと、なんと!願いが叶うんですよ!」

有里「ほう」

りせ「なので、あたしと先輩の願い事をここに書いちゃおう!って事で連れてきました」

有里「願い事ね。りせは何を書くの?」

りせ「あたし?あたしはねー……内緒!」

有里「じゃあ後で絵馬見るね」

りせ「えっ!ずるい!それ反則ぅ!えーと……願い事は、有里さんともっと仲良くなれますように、だよ」

有里「僕と?」

りせ「うん、せっかく知り合えたんだもん。もっとずーっと仲良くなりたいなって」

有里「それなら絵馬なんかに書かずに僕に言えばいいのに」

りせ「気分の問題!そういう有里さんは何て書くんですか?」

有里「僕は決まってるかな。影時間が早くなくなりますように、だよ」

りせ「……ま、そうですよね!今はそれが一番大事だもんね」

有里「不満なら、僕もりせともっと仲良くなれますようにって書こうか?」

りせ「言わせた感すごいからいいですぅ。有里さんらしくって良いと思いますよ」

>二人で絵馬を書いた……。

有里「……?りせ、なんで二枚も」

りせ「ん?あれっ、あれってもしかしてキツネ?」

有里「キツネ?犬じゃなくて?」

りせ「あんな犬見たことないですよ。キツネっぽかったんだけどなー……で、えっと、呼びました?」

有里「……いや、なんでもない」

>りせと仲良くなった気がする。

>『No.17 星 久慈川りせ』のランクが3になった。

>……?

>陽介からメールだ。



【2012/4/16(月) 晴れ 巌戸台分寮】


>GWの事を美鶴に相談しよう。

鳴上「桐条さん、ちょっと良いですか?」

美鶴「……なんだ」

鳴上「あの……からかったのは本当に申し訳ないと……」

美鶴「っ、ああ、それはもういい。で、何か用か?」

鳴上「ええと、GWってありますよね。その間、前に住んでた町に遊びに行こうかと思ってるんです」

美鶴「この大変な時に遊びに……いや、そうだな。それもいいかもしれないな」

鳴上「単に遊びに行くわけじゃなくて、仲間から話とか聞いてこれたらいいなって事で」

美鶴「なるほど、合理的だ。ここにいるだけではわからない情報も手に入るわけか。良いだろう、行ってきなさい」

鳴上「本当ですか?ありがとうございます!」

美鶴「そもそも善意で協力してもらっているんだ、君の生活をこれ以上拘束する権利は無いよ。楽しんでくるといい」

鳴上「はい、じゃあGWには寮を空けますね」

美鶴「だが、一つ条件がある」

鳴上「条件、ですか?」

美鶴「……言いたくは無いが、君には前科がある。また一人で何かしないとも限らない」

鳴上「……今回は、そのつもりはありませんが」

美鶴「それと、こちらと勝手が違う可能性があるからな。……そんな顔をするな、単に心配なだけだ」

鳴上「つまり、この寮の誰かを連れて行けと?」

美鶴「ああ。私から推薦する人物を一人。それから君の好きに一人選出して三人で旅行だ。友人と水入らずと行きたい所だろうが……すまないな」

鳴上「いえ、今が非常時だっていうのはわかってますから。それに、新しい仲間を紹介もしたいですし」

美鶴「そう言ってくれると心が痛まずに済むな。では、条件付だが許可を出そう。そろそろ学校に行かないと遅れるぞ」

鳴上「ありがとうございます!じゃ、行ってきます」

>GWに八十稲羽に帰れることになった!

>連れて行くメンバーを決めなければ……。

>それと、陽介に連絡を入れておこう。

とりあえずここまで。
夜中になればまた少し時間が出来るかもしれませんが、恐らくは……なので短いですがご容赦を。

というわけで、本日分は以上。
また後日。

NTRまじ勘弁

そうか!

この読んでてモヤモヤする気持ちはNTRだったのかwwwww

なるほどなー。

もし、俺が女だったらこんな人(キタロー)とお近づきになりたくないww
怖いww

荒れて来たな、こういう展開は何度も体験した
このスレも終わりか…

☞1乙
おまいら落ちつけ(真顔)

まあNTR勘弁って気持ちはわかります。ので上述のようなレスをしておきました。
そこまで酷いものは出ないと思いますが、それに近い感覚を味わうかもしれません。

方向性として、FESに近い感じになるので、多数派に支持されるとはいかないかもしれないなと思っています。
みんな人間で、いろんな判断をする可能性がある。という事を念頭に置いて書いてます。

さて、そんなわけで本式に投下。
本日分その2。



【同日 夕方 堂島宅前】


『差出人:陽介
  件名:速報
  本文:GW、相棒が帰ってくる事が確定!向こうの友達も何人か連れてくるってよ!』

有里「……ややこしくなってきたな」

>何だか、他のメンバーとの間に少し壁を感じ始めた。

>これ以上仲良くなる事が難しい気がする。

菜々子「お帰りなさい!菜々子お留守番してたよ!」

有里「お疲れさま。誰か来たりした?」

菜々子「……お客さんは来なかったよ。湊お兄ちゃん、何か困ってるの?」

有里「ん?ちょっとね」

菜々子「そーなんだ……」

>菜々子は心配そうにこっちを見ている……。

有里「ちょっと、お友達と仲良くなりたいんだけど、中々上手く行かなくて」

菜々子「お友達と仲良くできないの?」

有里「いろいろ試してるんだけどね」

>何か違和感を感じる……。

菜々子「寂しい?大丈夫?」

有里「大丈夫、なんとかしてみせるから」

>……?


【夜】


美奈子「こんばんわ」

有里「ああ、君か……こんばんわ」

美奈子「今日は元気無いね」

有里「何か引っかかる事があってね……」

美奈子「仲間との事?」

有里「だと思う」

美奈子「忘れてることがあるんじゃないかなぁ」

有里「忘れてること……?」

美奈子「灯台下暗し、って言うでしょ?初歩的な事を見落としてるとか」

有里「そう……なのかな」

美奈子「自分で上手くやっているつもりの時ほど、肝心なことを忘れているものだよ」

有里「……」

美奈子「納得いかない?……次までに、答え合わせしておいてね」

有里「忘れている、こと……?」



【同日 昼 月光館学園】


鳥海「えーと、そろそろ全員書けたねー?回収するよー?」

>生徒達がプリントを提出していく……。

鳥海「ありゃ、鳴上くんはまだ書けてないか」

鳴上「すみません、すぐ……」

鳥海「あー、焦んなくていいよ。この紙はただの調査票だけど、人生考えるって大事だから。まぁ書けなかったら放課後残ってもらうけどねー」

鳴上「はい……じゃあ、放課後に提出します」

鳥海「はいよ。しっかり考えなさい」

男子「鳴上、まだ書けて無かったのな」

鳴上「ああ。お前は何て書いた?」

男子「とりあえず進学かなー。就職っつっても就職先も無いし。バイトしながら大学通って、その間に決めるよ」

鳴上「とりあえず、保留ってとこか」

男子「ま、そういう感じ。だってさ、人生決めろったって無理だろ?俺らちょっと前まで小学生だったんだぜ?」

鳴上「先の事なんて考え始めたの、つい最近だもんな」

男子「そーそー。これからさ、大人になった頭でじっくり考える時間作るためにも大学だな」

鳴上「……しっかり考えてるんだな」

男子「適当だよ適当。みんなそんなもんだと思うぜ」

鳴上「そうか……」

男子「……ま、先生の言うとおり、じっくり考えてもいいと思うぜ。本決定までまだ時間あるしさ」

鳴上「ああ、そうするよ」


【放課後 職員室】


鳴上「すみません、先生。時間がかかってしまって」

鳥海「はい、受け取りました。……進学、するの?」

鳴上「ええ、とりあえずそうしようかと」

鳥海「教師としては、とりあえずーなんて理由は認め辛いなー」

鳴上「まだ本決定では無いですし、本当にとりあえずって感じなんですけど」

鳥海「わかってるって。まぁ悩むよね。とにかく進学しとけば、まだ考える時間は作れる。そうでしょ?」

鳴上「俺、やりたい事とかあんまり思いつかなくて……」

鳥海「そうだねー、最近の学生は皆そんなもんでしょ。やりたい事やらせてもらえる世の中でもないしね」

鳴上「先生は、教師になりたくてなったんですか?」

鳥海「ないしょ。あ、そうだ。何ならその調子で周りの人に聞いてみればいいんじゃない?面白い話聞けるかもよ」

鳴上「なるほど……そうですね。聞いてみます」

鳥海「とりあえず今日は帰ってよし。またね」

>職員室を後にした……。

鳴上「進路、か……事件以外にもこんな強敵がいるとは……」

>進路の事……誰に聞こうか……。



【巌戸台分寮】


美鶴「君か、おかえり」

鳴上「あ、ただいま……」

美鶴「……?どうした、そんなに眉間に皺を寄せて」

鳴上「あ、そんな顔してます?」

美鶴「ああ。何に悩んでいるか知らないが、相談なら乗るぞ?」

鳴上「それが、進路の事でして……」

美鶴「……なるほど、時期だな。なるべく早くに決定してしまう事が望ましいか。ならこの寮には先輩達が沢山いる。話を聞くといい」

鳴上「先生にもそう言われたんで、そうしようかと。ところで、桐条さんはどうだったんですか?」

美鶴「私か?……いや、私の話はいいだろう。ああ、それと真田には聞くな。恐らくはおかしな方向の話になるから」

鳴上「ああ……それは、なんとなく」

美鶴「そうだな、ゆかりや山岸なら真面目に聞いてくれるだろう」

鳴上「そうですね、そうします。じゃあ、失礼します」

>さて、どちらに話を聞こう。

>悩んでいると、三階から誰かが降りてきた。

風花「あれ?鳴上君どうしたの?階段の前で……うわ、眉間に皺が……」

鳴上「ああ、山岸さん。よかった、ちょっと話いいですか」

風花「お話?いいけど……」

鳴上「立ち話も何ですんでどこか……」

風花「じゃあ、またお部屋にお邪魔してもいいかな?」

鳴上「ああ、どうぞ」


【自室】


鳴上「じゃあ、また椅子を……」

風花「あ、私ベッドでいいよ。鳴上君、椅子使って」

鳴上「一応上座があっちなんでどうぞ」

風花「この部屋、上座とかあるんだね……じゃあ、失礼して。ところで、お話って何?」

鳴上「今日、学校で進路希望調査っていうのを書いたんですよ。それで、俺、やりたい事とか思いつかないなって思って」

風花「あー、三年だもんね。遅いくらいか。でも、そういう事なら私の話ってあんまり参考にならないかも」

鳴上「どういうわけですか?」

風花「私、今は大学に通ってるんだけど……やりたい事があるわけじゃないんだ」

鳴上「あ、やりたい事を探す為の時間稼ぎみたいな」

風花「っていうんでも無いんだけどね。やりたい事がいくつかあって、それが決められなくて……迷ってる内に、期限が来ちゃって」

鳴上「とにかく進学って事にした?」

風花「そう。あれって、夏くらいにはもう決めとかないと駄目なんだよね。先生たちもそのくらいから色々手続きとかするみたいだし」

鳴上「夏ですか……」

風花「私はね、機械いじりが趣味で……」

鳴上「あ、何か意外ですね」

風花「変かな?」

鳴上「いえ、そういうわけじゃ」

風花「その方面かなって思ったんだけど、そういう仕事ってやっぱり男性が多くて。求人が少なかったんだよね」

鳴上「エンジニアとかだと女性には厳しいんですかね」

風花「そうみたい。で、もう一つの趣味が料理で、そっちの方面に進もうと思ったんだけど」

鳴上「あ、それはなんていうか、らしいです」

風花「そう?ありがと。でも、そっちは踏ん切りつかなくて……機械いじりはこれでもちょっとしたものだと思ってるんだけど」

鳴上「自信が無かったんですか?」

風花「うん。今でこそ趣味って言ってるんだけど、昔はほんっとに苦手でね……それもあって、中々決められなくて」

鳴上「今は、どうしようと思ってるんですか?」

風花「やっぱり、料理かなって思ってる。今は、普通の文系大学に通ってるんだけど。卒業したら調理師免許でも取ろうかなって」

鳴上「決まったんですね」

風花「うん。やっぱり好きなことしたいし、ね。鳴上君の趣味って何?」

鳴上「趣味ですか……釣りとかならしますけど」

風花「うーん、中々仕事にし辛い趣味だね……。そういうのだと難しいよね」

鳴上「でも、やっぱりやりたい事をやろうっていうのは凄くなんていうか、励ましになりました。ありがとうございます」

風花「そう?なら良かった。ごめんね、いい話できなくて」

鳴上「いえ、本当に……いつか、料理食べさせてくださいよ。俺も少し料理するんで興味あります」

風花「うん、いつかね。約束。じゃ、私はこれで」

>風花に一礼して別れた。

>風花と少し仲良くなった気がする。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが3になった。



【2012/4/17(火) 晴れ 夕方 ジュネス内フードコート】


陽介「よっ!どうしたよ、俺だけ呼び出したりして」

有里「悪いね、陽介。少し話がしたくて」

陽介「何、悩み事か?相談乗るぜ」

有里「実はそうなんだ」

陽介「あれ、マジなの?この前悩みなら俺にゃ相談しねーっつってたから冗談かと」

有里「マジなんだ。真剣に聞いて欲しいんだけど」

陽介「おう、マジなんだったら俺もマジで聞くぜ」

有里「僕の事、どう思う?」

陽介「あぁ?……そういうのは、ちょっと」

有里「どうして?真剣な相談なんだ」

陽介「うわぁ、身を乗り出すな!そ、そーゆーのは完二の担当だろが!」

有里「完二君が?人を見るのが得意とかなのかな」

陽介「え?ああ、あのー……あれか?俺の事が好きとかそういうんじゃないのか?」

有里「好きだよ」

陽介「いや、友達としてとかじゃなくて、こう……ライクじゃなくてラブみたいな?」

有里「陽介、そういう趣味なの?」

陽介「前に違うっつったろーが!……なんだ、有里は俺らからどう見られてるか気になってたのか」

有里「まぁ、そうだね」

陽介「へっ、そんな事気にしてないような顔してなー。可愛いとこあんじゃん」

有里「真面目に聞いてるんだ」

陽介「あー、そうだなー。俺から見たって事でいいんだよな?」

有里「うん、陽介から見て僕はどういう人間に見える?」

陽介「……正直に言うぜ?」

有里「それを聞きたいんだ」


陽介「変なヤツ、って感じだな。正直言うと……たまーに引く瞬間あるぜ。なんつーか、人の事探ってるような気がしてさ」

有里「そう、か」

陽介「いや、落ち込むことねーよ?なんつーのかな。俺、馬鹿だから上手く言えねーんだけど、俺らの事仲間だと思ってんのかな?みたいな瞬間あるぜ」

陽介「良い印象ねーっつったけど、そりゃ普通に友達として見てるって話でさ……俺以外の奴らがどう思ってるかわかんねーけど、ちょっと薄気味悪いっつーか」

有里「……まぁ、そうだろうね」

陽介「悪いな、なんか、上手く言えねーや。ただ、お前面白いと思うんだよ。面白いと思うし、多分良いヤツなのもわかってる。けど、なんだろな……安心できないっつーの?何か、こっちの事伺ってる感じがしてさ」

有里「嫌われてるのかな」

陽介「いや、嫌いじゃねーよ?それは皆同じだと思う。むしろ好きなんだけど、一線あるっつーかさ……」

有里「そっか……」

陽介「……なんか、ごめんな?」

有里「いや、正直に言ってくれてありがとう。わざわざ呼びたてて悪かったね」

陽介「や、いいって。まぁ、俺もさ……そんなにすんなりこの街に馴染んだわけじゃねーんだ。だから、何となくわかるぜ、有里の気持ち」

有里「……じゃあ、また何かあったら相談に乗ってくれる?」

陽介「ああ、絶対な!その内馴染めると思うぜ、皆良いヤツらだしさ」

有里「ありがとう。……またね」

>陽介に悩みを少し打ち明けた。

>陽介と親密になった気がする。

>『No.19 太陽 花村陽介』のランクが3になった。


【同日 夜 堂島宅】


菜々子「お帰りなさい……遅かったね」

有里「うん……」

菜々子「お友達とまだ仲良くできてないの?」

有里「……」

菜々子「お兄ちゃんとは皆仲良しだったのに……」

有里「お兄ちゃん、か」

菜々子「どうかしたの?」

有里「なんでもない。気にしないで」

菜々子「湊お兄ちゃんもかっこいいし優しいのにどうして?」

有里「いろいろ工夫してみてるんだけどね」

菜々子「くふう?なんでお友達と仲良くするのに工夫がいるの?」

有里「まぁ、いろいろあって……」

>何かが引っかかる。

菜々子「へんなの。菜々子、お友達と遊ぶ時に工夫なんてしてないよ。一緒に楽しく遊べたらいいなって思ってるだけだもん」

陽介『こっちの事伺ってる感じがしてさ』

有里「あ」

菜々子「どうしたの?」

>菜々子はまた心配そうにこちらを見ている。

有里「ありがとう、菜々子。何か、わかったかも」

菜々子「ほんとに!?良かった、じゃあみんな仲良しだね!」

有里「これからは、ね」

>部屋に入った……。

有里「ふぅ……僕は馬鹿か」

有里「焦りか、慢心か、人としての大事な部分をすっかり忘れてたのか……」

有里「人は、駒じゃない。彼らは、僕の力を増す為の道具じゃない」

有里「下らない……誰が障害になってる、とかじゃない。僕自身の問題じゃないか」

有里「もう一度、自分の気持ちを見直せ……僕は、彼らとどうなりたい?」

>特捜隊の仲間達の顔が浮かぶ。

有里「……GW、か」

有里「陽介に、彼の連絡先を聞こう」

というわけで昼のと合わせて一日分といった所でしょうか。
なんやかんやで上手く回り始めた鳴上。
ようやく絆の本当の深め方を思い出した有里。
そして長々とお待たせしました。
そろそろ、二人が出会います。

なんつって、予告っぽいことをしておいて今日はここまでです。
明日も投下できるかどうかわからないのですが、一応は毎日更新を目標にしているのでがんばってみます。
とにかく、また後日。

乙。

乙ー
まぁ人との関係性が力になって、尚且つそうやって力を稼がなきゃ死ぬって状況に置かれてたらそんな思考になるわな

菜々子の言葉が3をやってた俺の心を刺してきた・・・


でも 気 持 ち  い  い

なるほどなー
コミュを作業的に深めようとしてたのか
何か違和感有ったからスッキリした

よかったこのままキタローが機械的に仲良くなろうとしてたら悲しかった

菜々子ちゃんマジ菜々子ちゃん

乙!

菜々子ちゃんマジ天使

確かに3は絆の力で世界を救えたからどうしても力が必要って考えちゃうよなぁ 納得

3のキャラはほとんど両親や家族と問題があって、その分一人でどうこうしようとする事が多かった分、
無理に大人ぶろうとしたりして、結果皆の力があって先に進む事が出来た。
4のキャラは等身大で学生やってる分そう言う人達とは溝があるんだろうな

よかったよかった
キタロー怖い、近づきたくない言ってゴメンネ

>>241
そう考えると4メンバーは恵まれすぎだな

4はすげー仲間想いだし、ほぼ知らない奴のために命かけるしどこの聖人君子だよってレベル

4は街の危険は見過ごせねぇ!って感じの正統派主人公な流れだからな
3は急に力持ってよくわからん組織に引き込まれてっていう大半のキャラが巻き込まれ気味だし

法事終わった!うおおおおお!

というわけでなんとかでっち上げた本日分。



【2012/4/17(火) 晴れ 巌戸台分寮】


>授業を終えて寮に帰って来た。

>進路の話をする為にゆかりを待とう。

鳴上「好きなことをする、か」

>自分のやりたい事を思い浮かべてみる……。

鳴上「さっぱりだ」

鳴上「あれ?じゃあ俺は空いた時間で何をしてたんだっけ」

>……友人達と遊んで、友人の悩みを聞いて、絵馬の願いごとをかなえて、知り合った大人達の悩みを解いて……。

鳴上「あ、あれ?」

鳴上「俺、自分の事何もやってない……?」

岳羽「ただいまー……って、鳴上君、そんな所で死にそうな顔してどうしたの?」

鳴上「あ、岳羽さん……ちょっとお時間いいですか?」

岳羽「可愛い後輩の頼みだしね。お姉さんなんでもやっちゃうよ?……なんて」

鳴上「あの、進路の話なんですけど」

岳羽「そっか。三年だもんね。どうするか決まったの?」

鳴上「決まらないから、先輩方の話を聞いて考えようと思って」

岳羽「なるほどね。で、何でそんなに顔してたの?」

鳴上「昨日、既に山岸さんに話を聞いてみたんです」

岳羽「あー、風花ってその辺しっかりしてそうだもんね。それで、どうだったの?」

鳴上「自分のやりたい事に向かうのが良いって」

岳羽「へぇ、そんな事言ったんだ。……らしいっちゃらしいね」

鳴上「それで、ちょっと考えてみたんですけど。俺、やりたい事って何も思いつかないんですよ」

岳羽「んー趣味とか、そういうの無いの?暇な日はこれ!みたいなさ」

鳴上「無いんですよ……俺、暇があったら他人の話聞くか他人のお願い聞くかしかしてなかったから」

岳羽「……なんか、どっかの誰かみたいね、それ。見覚えあるわ」

鳴上「改めて考えると、俺自分の欲っていうか、やりたい事って全然無くて……」

岳羽「なにそれ、どこの聖人君子よ……うーん、でも、楽しかった時とかさ、あるんじゃない?」

鳴上「仲間といる時は楽しかったです。けど、それってどうなんでしょう。俺自信の目的じゃないというか」

岳羽「確かに、友達と一緒にいたいっていうのはちょっと違うかもしれないねー。っていうか私もそこまでしっかり考えてるわけじゃないからなー」

鳴上「俺、やっぱり変なんでしょうか」

岳羽「君や私くらいの年齢でそこまで他人の事優先できる人っていないよ、やっぱり。良い事だと思うけど……そのせいで悩んじゃってるんだもんね」

鳴上「人生に目標が無いって気付いたら、酷い気分になりました。俺は……」

岳羽「進路の決定っていつまで?」

鳴上「多分、夏くらいには……一学期の終わり、くらいまでですね」

岳羽「まだちょっと時間あるじゃん。君のやりたい事探し、今からでも間に合うんじゃない?」

鳴上「俺の、やりたい事……」

岳羽「滅私奉公大いに結構だけど、たまには自分の事考えてもバチ当たんないと思うな。私なんか、いつも自分の事で手いっぱいだけど」

鳴上「……自分の事を考えるのが、こんなに難しいと思ってませんでした。他人の悩みならすぐにでも動けるんですけど」

岳羽「……ほんっと、どこまであの人に似てるんだか。それでいなくなっちゃった人もいるんだから」

鳴上「今、何か言いました?」

岳羽「ん?別に?とにかくさ、探してみようよ。自分の好きな事、やりたい事……きっと、すぐ見つかるよ。何かあったら付き合うしさ」

鳴上「そう、ですね。やってみようと思います。また悩んだら相談に乗ってくださいね」

岳羽「任せときなさいって。ほら、いつまでも辛気臭い顔してないの!」

鳴上「はい。ありがとうございました。……そういえば、興味本位で聞くんですけど」

岳羽「ん?どうかした?」

鳴上「岳羽さんって、料理とかしますか?」

岳羽「料理?あー。なんていうか、あんまり得意じゃない……かなー。どうして?」

鳴上「いや、山岸さんと話してる時に料理の話になりまして。寮内の他の人たちはどうなのかなって」

岳羽「あー、風花ね……ま、私はそんなに料理とかしないよ。なんかごめんね?」

鳴上「ああ、いえ。別に謝るような事じゃ……」

>ゆかりと話をした。

>ゆかりは自分に協力してくれるようだ……。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが3になった。



【2012/4/18(水) 晴れ 巌戸台分寮】


>今日は凄く疲れた……。

>寮につくなり倒れこんでしまった。

アイギス「……」

鳴上「う、……ん?」

>やわらかい……。

アイギス「あ、そのままで」

鳴上「アイギス……さん?」

アイギス「大丈夫ですか?帰ってくるなり倒れたりして……」

鳴上「ああ、そういえば……いえ、全部の授業に全力で取り組んでたら疲れてしまって」

アイギス「真剣なのはいい事です。ですが、あまり根を詰めすぎると」

鳴上「ですね。体で覚えました。あの、ところでこの体勢は……?」

>アイギスの声は背後から聞こえる。

>そして、自分は右耳を下にして「膝」と思しき物体に頭を乗せている。

アイギス「お疲れのようでしたから……」

鳴上「ありがとうございます。……本当に、機械とは思えませんね」

アイギス「褒め言葉と受け取っていいでしょうか?」

鳴上「ええ、褒めてます」

アイギス「それならありがとうございます」

美鶴「ただい……鳴上、何をしている?」

鳴上「いえ、どうやら疲れすぎて倒れてしまったらしく、ご好意に甘えさせてもらっています」

美鶴「そうか。それはいいが、あまり天田を困らせるなよ」

鳴上「はい」

鳴上「ええっ?」

天田「あのー……」

鳴上「天田の膝だったのか」

天田「ええ。アイギスさんが『疲れた人には膝枕』だっていうもんで……」

鳴上「……まぁ、ありがとう。そろそろ起きるよ」

天田「はい。それじゃ先輩、お大事に」

>……。

>冗談を言えるような仲になった……と考えておこう。

鳴上「しかし冗談抜きで疲れた……自分の得意な事、好きな事を見つけるのも容易じゃないな」

鳴上「授業に全力を出しても特に手応えというか、確信にはいたらなかったし……」

鳴上「はぁ……」

>しばらく、寝よう……。



【深夜】


>Pipipi……。

>電話だ。

鳴上「あ……もしもし」

『あれ以来だね。こんばんわ』

鳴上「っお前……!」



【2012/4/18(水) 晴れ 堂島宅】


>陽介に連絡しよう。

『件名:頼みがある
 本文:彼に協力を頼みたい。連絡先を教えてくれないか』

>……。

>返信を、待とう。


【同日 昼 堂島宅】


>メールだ。

>陽介からだろうか。

>……?

>一件じゃない。

『差出人:陽介
  件名:了解!
  本文:相棒にもお前の連絡先教えていいんだろ?とりあえず送っとく!
     あと、例の話な。まぁ、あんま悩むなよ!今度どっか遊び行ってぱーっと忘れようぜ!またな』

『差出人:里中
  件名:大丈夫?
  本文:花村から聞いた。何か悩んでるみたい?
     その、心配しなくてもいいよ、私は有里君好きだよ!
     あ、友達としてって意味だからね!勘違いしないように!そんでからかわないように!
     そういう時は肉!肉を食べて忘れるのだ!ガッツリね!』

『差出人:天城
  件名:何かあった?
  本文:有里君、ナイーブなところもあるんだね。ちょっと意外かも。
     何かあったら相談に乗ります。有里君の話も聞きたいし』

>……。

>陽介から洩れたようだ。

有里「……まぁ、いいか」



【同日 夕方 堂島宅】


>またメールだ。

>……そろそろ授業が終わったのだろうか。

『差出人:りせ
  件名:心配!
  本文:有里さん、花村先輩に相談したって?
     それって人選ミスだよ、私ならいくらでも聞くのに!
     不安にならなくても、りせは有里さんの事だいダイ大好き!だからね』

『差出人:完二
  件名:大丈夫スか?
  本文:俺、頭悪いし上手く言えないんスけど、有里さんはもう仲間だと思ってるっス。
     だから、何か引っ掛かるんだったら俺にも話し聞かせてください。
     とりあえずそんだけっス!今度また話しましょうや!』

『差出人:直斗
  件名:難しい話ですね
  本文:既に出来上がったコミュニティに入り込むことは難しいと思います。
     有里さんの場合、特殊な立場にいますし尚更です。
     ……あの時の、仲良くなりたいって言葉が嘘じゃなければ、僕にも話を聞かせてください。
     上手く力になれるかはわかりませんが、出来る限りの事はしたいと考えています』

有里「根こそぎ洩れてるじゃないか」

>陽介に悩み事を相談するのはやめた方がいいかもしれない。

菜々子「ただいまー……あ!湊お兄ちゃんが笑ってる!」

有里「おかえ……って、ん?ああ、本当だ」

>頬が緩んでいる……。

菜々子「どうしたの?何か良い事あった?」

有里「うん、ちょっとね」

菜々子「良かったね!みんな仲良し、でしょ?」

有里「そうだね。菜々子のおかげだよ」

菜々子「えへへ、菜々子何もしてないよ。湊お兄ちゃんががんばったんだよ」

>それから、菜々子と一緒に夕飯を作った……。



【同日 夜 堂島宅】


堂島「ただいま……っと」

有里「あ、おかえりなさい。菜々子ちゃんもさっきまで起きてたんですけど」

堂島「ん、そうか。……たまには早く帰って来たいもんだな」

有里「ご苦労様です」

堂島「ところで、何か良い事でもあったのか?」

有里「そう見えますか」

堂島「なんていうか、雰囲気でな」

有里「……今日、菜々子ちゃんに笑ってる所を見られました」

堂島「それがどうかしたのか」

有里「菜々子ちゃんに笑顔を向けた事は何度もあったはずなのに、まるで初めて見たみたいに」

堂島「はっは、だから言ったろう。アレはああ見えて聡いってな」

有里「顔で笑っただけだと見抜かれますか」

堂島「子供ってのはその辺敏感なんだろうな。しかし、そうか。そりゃ良かった」

有里「やめてください、何か恥ずかしいです」

堂島「前にも言ったが、お前はもう身内みたいなもんだ。最近じゃ家事も完璧だし、三人目の子供って感じだな」

有里「……」

堂島「お前は二人目の息子だよ、俺にとっちゃ……そういえば、一人目の息子が今度遊びに来るんだったな」

有里「あ、僕の部屋空けないといけないですかね」

堂島「兄弟仲良く寝るってのはどうだ?」

有里「流石にそれは……じゃあ菜々子ちゃんと一緒に寝ましょうか」

堂島「いや、駄目だ。駄目だそれは。駄目だ」

有里「何でですか」

堂島「お前は十年後、本気で嫁にもらいに来そうだからだ。それに、菜々子は先約が入ってる」

有里「……そう見えます?」

堂島「見える。お前は女は捕まえて逃がさないタイプだ。絶対そうだ。そんで割りと見境無いタイプだ。違うか」

有里「流石に小学生はちょっと……」

堂島「だから十年後なんだよ。何なら俺と一緒に寝るか?」

有里「遠慮します」

堂島「ふん、冗談だよ。まぁ、何とかしよう」

>堂島と話をした……。

>堂島から思いやりと信頼を感じる。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが3になった。



【深夜】


有里「さて、と……」

>遅くなってしまったが、この時間なら確実に自室にいるだろう。

>陽介からのメールに書いてあった番号をプッシュする。

>……数度のコール音。

『あ……もしもし』

有里「……あれ以来だね、こんばんわ」

お互い、メンバーとは随分仲良くなってきたようだ。
じゃあ、次は?
あいつを見過ごすわけにはいかねえ。

というわけで本日分は終わり。
また後日。

おっつ
遂に接触か
胸が熱くなるな

天田が既に落とされてる・・・
アラガキにも似た強烈なオカン臭のせいか。

それは置いといて、キタローって運がないな。
神クラスの奴に勝てないキタローがいる一方、神すら打ち倒す奴がいるやつもいる。メンバーが違う。
負けていたキタローも、p4の明るいメンバーなら力を付けられるのだろうか。

それと、できれば美鶴の活躍がみたいでしゅ。

楽しいけど不安が漂うwww

戦っちゃたからねぇ…

肩こりがひどいです。

というわけで本日分。

『そう警戒しないで。陽介から話はいってるはずだけど』

鳴上「陽介から?何の話だ」

『あれ……おかしいな。まぁ、いいか。君、今月光館に通ってるんだってね』

鳴上「なぜお前がそれを知っている」

『本当に聞いてないみたいだね……ええと、もしかして君の仲間に桐条って人がいないかな?』

鳴上「桐条さんの事まで……」

『その人か、他の誰かに聞いてないかな。かつて影時間を解決した男の話』

鳴上「少しはな。だけどそれとお前が何の関係がある」

『その男の名前は聞いた?』

鳴上「いや、皆話すのを躊躇っているみたいで……だから、それがお前と」

『それが、僕だ』

鳴上「な……何を言っている」

『僕の名前は有里湊。以前特別課外活動部のリーダーを務めていた。今じゃこの世からいない者だけど』

鳴上「まさか、本当なのか?」

有里『本当さ。何なら聞いてみるといい。アイギスでも、風花でも、ゆかりでも、順平でも、真田先輩でも、美鶴でも、天田でも……』

鳴上「本当、なんだな……というか真田さんは先輩扱いなのに桐条さんは呼び捨てなのは何でだ」

有里『野暮は言うもんじゃないよ。まぁ、とにかくそういう男が僕。この前は悪かったね』

鳴上「いや……良く考えたら最初に仕掛けたのは俺だし、敵意が無いならこっちこそ悪かった」

有里『傷は大丈夫?』

鳴上「なんとかな。で、何故今になって俺に電話を?」

有里『……僕は今、八十稲羽の堂島という刑事に世話になっている』

鳴上「なんだって?堂島って、堂島遼太郎か?」

有里『君のおじさんだそうだね。……良くしてもらってるよ』

鳴上「そうか……不思議な縁だな。あんたを他人と思えなくなってきたよ」

有里『そういうわけで、僕こっちの女の子とっかえひっかえするつもりだから』

鳴上「そうか……いや待て。それは待ってくれ」

有里『冗談。本当は、君と話さなきゃいけない時期かなと思って、陽介に連絡先を聞いたんだ』

鳴上「俺と話?何の……」

有里『僕は君の昔の仲間を危険に晒すかもしれない』

鳴上「何故だ、あんたほどの力があれば……」

有里『これじゃ足りないんだ。仲間の協力が絶対に必要だ。だから、君の仲間達に協力を頼んだ』

鳴上「……事情を話せば、放っておく奴らでも無いな」

有里『そう、危険だと判断してやめようと言ったんだけどね。タルタロスで君に出会ったって話をしたら余計に火がついたみたいで』

鳴上「で、俺に何が出来る」

有里『僕と協力しよう』

鳴上「協力?そりゃ、構わないが……俺達で何が出来るっていうんだ?」

有里『君の事だから、もう随分と寮の仲間と仲良く……絆を深めたんじゃないかな』

鳴上「絆か。そうか、あんたも確か」

有里『やっぱり、君もそうみたいだね。ワイルド……何にも属さず、けれど何にでも変われる力。僕達のこの力がこれから不可欠になる』

鳴上「だが、世界のアルカナは……」

有里『もし今回の敵がNyxだったなら、僕達のどちらかが消えるしか無いだろう。あれは、戦って倒すようなものじゃない。だが、その役目は僕がやる』

鳴上「そうだ、あんたは一度その力を使って消えたはずじゃなかったのか?そう聞いてるぞ」

有里『僕は自分の全生命力を使って大いなる封印と化した。その封印が解かれて、僕に肉体が戻った……肉体に関しては心当たりが無いでもないけど、封印が解けた理由はさっぱりだ』

鳴上「封印が解けた時に、生命力が肉体に移ったと、そういうことか?」

有里『うん。僕にはこの手の用意が利きそうな人脈がいくらかあるから。あらかじめ用意してあったんだと思う』

鳴上「すごい話だな……。それで、具体的にはどうしたらいい」

有里『雨の日にだけ入れる、テレビの中のタルタロス。そこを攻略する必要がある』

鳴上「それはそのつもりだ。他には?」

有里『Nyx復活までに、世界……宇宙のアルカナを目覚めさせる必要がある』

鳴上「その、条件は?」

有里『……恐らく、何もしなくていいと思う』

鳴上「はぁ?」

有里『君は今まで通り、寮の仲間の為に心を砕き、尽力してあげて欲しい。そうして絆を深める事で僕達は強くなる』

鳴上「……わかった、やってみる」

有里『僕は君に迷惑をかけてはいないだろうか?』

鳴上「どうした、突然」

有里『僕は以前、仲間の為に全力を出した……その結果、彼らの中でとても大切な存在になった、と自負している。自惚れかもしれないけど』

鳴上「いや、間違いないだろうな。それがどうかしたのか」

有里『大切な存在になって、そして消えたんだ。彼らがどんな風に思ったか……今でもどこかに僕を追いかけたりしてやしないかと思ってね』

鳴上「……たまに、そう思う時はある。だけど、俺とあんたは違うじゃないか。俺は俺を認めてもらうだけだ」

有里『そうか……すまないね。君くらいの年頃なら年上の女性に囲まれて過ごせる寮生活は天国だろうに、僕のせいで……』

鳴上「いやいや、どういうことだ」

有里『美鶴なんか特に若い情熱を持て余さずにはいられないような存在なのに……僕の影があるせいでアタックも難しいなんて……』

鳴上「あんた、そんなキャラなのか……?」

有里『冗談だから呆れないで。でも、本心からすまないと思ってるんだ。君にも、仲間にも』

鳴上「大丈夫だ。あんたが思うより皆強いみたいだぞ」

有里『そうか。じゃあ君に任せていいかな?僕の事を忘れさせてあげて欲しい』

鳴上「……忘れさせる必要があるのか?」

有里『もう僕はいないんだ。何かの偶然で今こうして戻ってきたけど、またいつ消えるかわからない。だから、君の手で』

鳴上「……」

有里『なんなら手だけじゃなくてもいい。体のどこを使っても構わないから』

鳴上「何の話をしているんだ」

有里『美鶴はああ見えて押しに弱い。ゆかりは耳が弱くて、風花は敏感だからくすぐるみたいにすると』

鳴上「待て、聞きたくない。それ以上言うな」

有里『そう?……とにかく、頼んだよ。自分の仕事を投げてるようで悪いけど』

鳴上「……忘れさせるかはともかく、皆とは仲良くなるつもりだよ。仲間だしな」

有里『……用件は、それだけ。いつか会える日を楽しみにしてるよ』

鳴上「ああ、GWにはそっちに行くから、良ければその時に」

有里『らしいね。ああ、さっきの話の続きだけど、美鶴は声が大きいからなるべく』

鳴上「いや、聞きたくない。用事が済んだなら切るぞ!」

有里『あ、ちょ』

>電話を切った。

鳴上「有里か……なんていうか、イメージと違ったな」

鳴上「桐条さん、声大きいのか……」

>……。

>眠れるかな……。

>コミュニティが変化したのを感じる。

>『No.13 死神 有里美奈子』が『No.13 死神 有里湊』に変化した。

>『No.13 死神 有里湊』のランクが2になった。



【堂島宅】


>…………。

>電話を終えた。

有里「まぁ、冗談なんだけど……ちょっとからかいすぎたか」

>今頃悶々としているかもしれない。

有里「まぁ、彼に期待してるのは本当だし、ね」

>連絡先を登録しておこう。

>鳴上悠……か。

>頼んだよ。

>『No.10 運命 鳴上悠』のコミュを手に入れた。

>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが1になった。

有里「しかし、困ったな。僕個人としてはこちらの彼らと仲良くなりたいんだけど、仲良くなると危険も増える」

有里「それに、こちらから関わらない限り接点もほとんど無いしね……どうしたものか」

>……まぁ、いい。

>もし向こうから関わってくる事があれば受け入れよう。

>そうじゃなければ……。



【2012/4/20(金) 晴れ 巌戸台分寮】


>コンコン。

鳴上「……はい」

風花「鳴上君?私」

鳴上「あ、山岸さん。どうかしましたか?」

風花「えっとね、この前言ってたでしょ?料理の話」

鳴上「ああ、はい」

風花「今日さ、お弁当作ったんだけど、お昼にどうかなって」

鳴上「本当ですか?是非いただきたいです」

風花「うん。じゃあこれ」

>ドアの隙間から弁当箱が差し出された……。

鳴上「……?どうかしたんですか?」

風花「いや、別になんでもないんだけどね。良かったら取りに来てもらえると助かるかな」

鳴上「まぁ、いいですけど……ありがたく頂きます」

風花「はい。帰ってきたら感想聞かせてね」

鳴上「わかりました……?」

>風花はそそくさと走りさっていった……。

鳴上「なんなんだ、一体……」


【昼休み 月光館学園】


男子「おー?鳴上今日弁当か」

鳴上「ああ。寮に入ってる先輩にもらったんだ」

男子「愛妻弁当ってかー。ちょっと見せてみ」

鳴上「あ、こら」

男子「うぉ、なんじゃあこりゃあ」

鳴上「これは……すごいな」



【夕方 巌戸台分寮】


鳴上「しかし……凄かった……」

>コンコン。

鳴上「はい」

風花「あ、山岸です。えと、お弁当、食べてくれました?」

鳴上「ええ、昼に……それで、ちょっと聞きたいことあるんですけど」

風花「あ、え、ごめんなさい!不味かったですか?」

鳴上「いえ、そういうわけではなくて。あの、ていうかドアから顔だけ出すのやめませんか」

風花「いや、その……私の料理なんかで喜んでもらえたか自信無くて」

鳴上「美味しかったです、本当に。見た目も綺麗だったし」

風花「ほ、ほんと?」

鳴上「ええ。それで、レシピとかいくつか教えて欲しくて」

風花「……お邪魔します」

鳴上「ええと、アレ。何て言うんですかね、あのハムの……」

風花「ああ、あれはね。一回お湯で……」

>風花と料理の話をした。

>話に夢中になっている内に、風花と並んでベッドに座っている……。

有里『風花は敏感だから……』

鳴上「……」

>自分のレシピ帳を眺めながら解説してくれている風花。

>今、首筋が無防備だ。

>ちょっとつついてみよう。

風花「でね、ほうれん草がうひゃぅっ!!」

鳴上「……」

>風花は涙目でこちらをじっと見ている。

風花「な、なんで……ひぃっ!」

>……。

風花「ちょ、やめっ……あはっ、だ、やぁっ!くふっ……ああぁん!」

>これは……

>楽しい!

鳴上「有里ありがとう」

風花「な、なんでっ!わたひっが、くすぐりよわ……あはははは!知って……んふふふふふふ!」

>その後、いろいろな部分をつついて遊んだ。

>……満足した。

風花「あ……は、ぅ……う、っふ、あぅ……」

鳴上「大丈夫ですか」

風花「だ、だいじょうぶじゃ、な……は……」

鳴上「すみません、つい……?」

>どこからか視線を感じる……。

鳴上「……あ」

>部屋のドアが少し開けられている。

鳴上「……順平、さん?」

?1「お、おい!バレたぞ!天田、お前!お前行け!」

?2「い、いやですよ僕だって!順平さん行けばいいじゃないですか!」

?3「覗きなんかするからだ。どれ、俺が……」

?1「アンタはいろいろ危ないから引っ込んでてくださいよ!」

風花「……?どうしたの?」

鳴上「何か、途中から見られてたみたいですね」

風花「えっ、やだっ!ほんとに?」

鳴上「えーと、どこから見てましたかね」

?3「いや、俺はついさっき来た所だ。順平と天田がお前の部屋に張り付いていたから」

?1「やっぱこの人駄目だ!場の空気ってヤツを読まねえ!」

?2「もう諦めて謝りましょうよ……」

順平「あー、その、鳴上。覗いてたのは、ほら、謝る。けどな。寮ってのはこう、規律の下になりたってるわけだろ?だから、まぁ、なんだ」

真田「不純異性交遊は関心しないな」

風花「へ、不純……?」

鳴上「天田、どの辺から見てた?」

天田「えーと、僕と順平さんが来た時は、ちょうど鳴上さんが山岸さんの上に覆いかぶさってギシギシしてる所でしたね」

鳴上「だ、そうです」

風花「ちが、違うんです!私、そんな事してたんじゃなくて!その、お料理の話を……」

順平「まぁ、若いもんな。咎めらんねーよ俺には!二人とも、お幸せにっ!」

真田「……美鶴には、黙っておいてやるからな」

天田「ええと、僕達何かとんでもない誤解してますか?」

>天田にだけは後で事情を話しておこう……。

風花「鳴上君、ひどいよ……」

鳴上「あ、すみません。ちょっと調子に乗りました」

風花「ちょっと?……まぁ、いいけど。内緒にしてね、くすぐり弱いの」

鳴上「……」

風花「内緒にしてね?」

鳴上「はい」

風花「今の間は……」

鳴上「なんでもありません」

風花「はぁ、疲れちゃった。お料理の話はまた今度ね。今日は部屋に戻ります」

鳴上「わざわざありがとうございました」

風花「そんな風に思うならもうくすぐらないでね……」

鳴上「すみません……」

風花「もうしないなら許してあげます。どう?」

鳴上「…………はい」

風花「……もうしないでね!ほんとだからね!」

鳴上「わかりました。またお話聞かせてください」

風花「はい。それじゃお疲れ様」

>風花はふらふらしながら帰っていった。

>何だかすごく充実した時間を過ごした……。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが4になった。



【2012/4/21(土) 晴れ ポロニアンモール】


鳴上「順平さん、遅いな……」

>順平が買い物に付き合えというのでポロニアンモールに来たのだが……。

鳴上「もう30分もこのままだ」

エリザベス「お客様」

鳴上「うわぁっ!……ああ、エリザベスか」

エリザベス「はい、エリザベスでございます」

鳴上「今日も遊んでるのか?」

エリザベス「いえ、今日は少々気になる事があって出て参りました」

鳴上「気になる事……?」

エリザベス「あなたのペルソナ……少し、変化しましたか?」

鳴上「ペルソナが?最近は使ってないけど、変化するような覚えは無い」

エリザベス「そうですか……ですが、あなたから彼と同じ感覚が流れてきます。何かあったのでは?」

鳴上「彼……有里か」

エリザベス「やはり、何かあったのですね」

鳴上「まぁ、いろいろとな」

エリザベス「以前、偶然見かけたら、という話をしたと思います」

鳴上「ああ、覚えてるよ」

エリザベス「あのような話をしたのには理由がございます。……私が、彼の為に用意しておいた器が消えました」

鳴上「器?」

エリザベス「私は以前、彼を救う為にいろいろな所を巡っておりました。その際、彼の失われた肉体の代わりを務める器として、新たな肉体を用意していたのです」

鳴上「……ああ、エリザベスだったのか。あいつの体を用意してたのは」

エリザベス「はい。主は何事か知っているようでしたが……あなたはご存知かわかりませんが、ベルベットルームというのは単一ではありません」

鳴上「こっちに来てから、どうも様子が違うなと思っていたんだが、別の部屋なのか?」

エリザベス「そういうことです。そして、その間を行き来できるのは我が主、イゴールのみ……」

鳴上「なるほど。つまり、どこかに有里が存在していて、しかしそれに会うことは出来ないと」

エリザベス「ですので確信が持てなかったのですが……どうやら、その様子だと」

鳴上「確かに、あいつは今生きている。居場所も知ることが出来たよ」

エリザベス「それは、どこに……?」

鳴上「以前俺が住んでた家だ。と言っても、かなり距離があるから……」

エリザベス「そのような暇は、流石に頂けないでしょうね……」

>心なしか、エリザベスは寂しそうに見える。

鳴上「すまない、あまり力になれなくて……」

エリザベス「仕方ありません」

鳴上「……でも、もしかしたらどうにかできるかも」

エリザベス「はて、どのような方法が?」

鳴上「有里をこっちに連れてくればいいわけだな」

エリザベス「はい、それならば問題無いかと」

鳴上「今度、鳴上に会う事になる。その時に連れてくれば……」

エリザベス「……」

鳴上「有里は何故かこっちに来るのを嫌がってるみたいだけど、何とかすれば何とかなる……とは思う」

エリザベス「お願いしてもよろしいでしょうか」

鳴上「期待せずに待っててくれ。相談してみるから」

エリザベス「はい。お待ちしておりますわ。……ありがとうございます」

順平「おーい鳴上!悪い、待たせちまったな……って、あれ?今ここに誰か……」

鳴上「気のせいじゃないですか?」

順平「あっれぇ、っかしーな……まぁいいや。行こうぜ!」

>エリザベスの頼み事を引き受けた。

>エリザベスに少し信用された気がする。

>『No.09 隠者 エリザベス』のランクが2になった。



【2012/4/22(日) 晴れ 巌戸台分寮】


>今日は寮にほとんど人がいない……。

>みんな出かけているようだ。

美鶴「おはよう。少し言っておかなければならないことがある」

>ラウンジに降りると、早々に美鶴に話しかけられた。

鳴上「どうかしましたか?」

美鶴「GWの遠征の件だが、君は一日二日は学校だな?」

鳴上「はい、なので三日から行こうかと思っていたんですが」

美鶴「そうだな。それで今週末、君に先駆けて私の選んだ人物を前乗りさせようと思う」

鳴上「はぁ、それは構わないんですが……誰なんですか?結局」

美鶴「それは当日のお楽しみだ。それで、それなりに長期の滞在になるわけだが、元住人として、宿泊地に丁度良い施設を教えてもらえないか」

鳴上「宿泊地ですか。旅館とかでもいいですか?」

美鶴「ああ。慰安も兼ねているわけだから、基本的に費用に糸目は付けん。どこかあるのか?」

鳴上「向こうの友達の家が温泉旅館を経営してまして、かなり老舗の良い旅館なんですが」

美鶴「ほう。名前は?」

鳴上「天城屋旅館っていうんですけど……たまにテレビにも出たりする、結構大きい所ですよ」

美鶴「そうか。連絡先はわかるか?」

鳴上「あ、はい」

美鶴「うん、これでいい。では、今週末から一人派遣するから、君はしっかりと授業を受けてから出立するように」

鳴上「わかってますよ、大丈夫です」

美鶴「ああ、そういえばもう一人、誰を連れて行くか決まったか?」

鳴上「あ、まだです。考えてなくて」

美鶴「そうか。まぁこちらが送る人員と被っても困る。何人か候補を用意しておいてくれ」

鳴上「わかりました」

美鶴「では、私は少し出かける。今日は寮に君一人だが、何か予定は?」

鳴上「特には無いんで、ごろごろしようかと」

美鶴「そうか。ではしっかり休むと良い。では、また夜にな」

>美鶴は出て行った。

鳴上「そうか、一人選ばないといけないんだった」

鳴上「……あ、俺以外の人も行くってこと、有里は知ってるのかな」

>一応、連絡しておいた方がいいかもしれない。

鳴上「今日の夜にでも電話してみるか」



【2012/4/21(土) 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さんだよー」

有里「ん、ちょっと待って。はいはい、どなたで……」

千枝「おっす……エプロン?」

有里「里中さん……ああ、今ちょっとお昼作ってて」

千枝「有里君、家事とかするんだね。なんか意外。えっと、だったらお邪魔だったかな?」

有里「いや、もう終わるから。菜々子、あとお願いしていい?」

菜々子「はーい」

有里「それで……何か、用かな?」

千枝「や、用ってわけじゃないんだけどね。……よ、用が無いと会いたいって言っちゃ駄目かな?」

有里「いいと思う」

千枝「あ、あはは。その、さ。今日学校休みじゃん」

有里「土曜だからね。菜々子も今日はお休みだし」

千枝「うん。それでさ、良ければ、ちょっと出かけたりとかしない?」

有里「……」

千枝「あれ、駄目……かな?」

有里「いいよ。行こう。菜々子、里中さんと出かけるから。お留守番できるよね?」

菜々子「お兄ちゃんお出かけ?ん、わかった。いってらっしゃい!」

千枝「ごめんね菜々子ちゃん。お兄ちゃん借りるね」



【愛屋】


千枝「菜々子ちゃん、お昼一緒に食べたかったんじゃないかなぁ」

有里「なら帰ろうか?」

千枝「あ、ごめん。帰らないで」

有里「……菜々子なら、後でいっぱい構ってあげるから大丈夫だよ」

千枝「なんかすっかりお兄ちゃんだね。子供好きなの?」

有里「嫌いじゃない」

千枝「へぇー、そうなんだ……」

>……。

あいか「肉丼2つおまちー」

千枝「あ、きたきた。やっぱこれだよねー」

有里「すごいね、なんていうか」

千枝「ザ・肉!って感じでしょ。好きなんだー、これ」

>千枝は猛烈な勢いで肉丼を食べ始めた。

千枝「んぐ、ぁ。あー……えっと、どうか、しましたか?」

有里「いや、なんだろう。見てるこっちが元気になりそうな食べっぷりだね」

千枝「ご、ごめんね。なんか、品が無くて……」

有里「そんなことないけど」

千枝「あはは。ありがと」

有里「で、今日はどうして僕を?」

千枝「どうして、って?」

有里「何か用なのかなって思って」

千枝「だから、用とかじゃなくて……有里君、元気無かったら嫌だなって思っただけ」

有里「ん?ああ、陽介から聞いたんだっけ」

千枝「そ。何か、色々気にしてるっぽかったから、さ」

有里「ありがとう」

千枝「いやいや、いいって。まぁ私も暇だったし、ちょうどいいかなってさ!」

有里「里中さんの食べっぷりを見てたら元気出てきたかも」

千枝「それはあんまり見ないで、そして言わないで」

有里「僕の周りにそんな風に食べる人いなかったから、なんていうか新鮮。見てて飽きないね」

千枝「見てばっかいないで有里君も食べ……あれ?」

有里「終わった」

千枝「うっそ!何それ手品!?」

>グルメキングとの毎日に比べればこの程度物の数ではない。

千枝「ほんっと、謎多き男って感じ。何者なのよー」

有里「見たままだよ」

千枝「んー……見てもわかんない。諦めた!」

有里「諦めちゃうの?」

千枝「うん。私が見たってわかんないもん。だから、有里君に教えてもらうことにしました」

有里「僕が?」

千枝「嫌なの?」

有里「……そんなに嫌じゃない」

千枝「ちょっと嫌なのかな……まぁ、いいや!とにかく、一回友達になっちゃった以上私はしつこいからね!」

有里「そう」

千枝「そうなの。だから、これからまた遊び誘うよ?いい?」

有里「それは困るなぁ」

千枝「うぇ、ひどい」

有里「いや、僕の方から誘わせてもらおうと思ってたから」

千枝「……有里君さ、よくそういう事真顔で言えるよね」

有里「表情乏しいからね」

千枝「ん、でもわかった。じゃあ今度は有里君が誘ってね!待ってるから」

有里「うん。今日はありがとう。あ、送ろうか?」

千枝「今日は遠慮しとく。何か、予感がするし」

有里「予感……?まぁ、またね」

千枝「うん。またね!あいかちゃんお勘定!」

>千枝と別れた。

>千枝から仲間としての思いやりを感じる。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが4になった。

有里「……危なかった」

有里「こういうの、昔はあんまり経験出来なかったからな……」

あいか「お兄さん、顔緩んでるよ」

有里「だよね」



【堂島宅前】


有里「ん?あれは……」

雪子「あ、有里君。菜々子ちゃんが留守だっていうから帰ろうと思ってた所だったの、良かった」

有里「天城さんも僕に何か用?」

雪子「も?」

有里「いや、なんでもない。どうかしたの?」

雪子「有里君、悩みがあるみたいだったから、ちょっとお話出来ないかなって思って……」

有里「そっか。ええと、じゃあ部屋にでも……」

雪子「お、お部屋!?って、えっと」

有里「まぁ僕の部屋っていっても本当は鳴上君の部屋らしいんだけどね」

雪子「余計緊張しそうだからいい!ここで!」

有里「ここで?まぁ、僕はいいけど」

雪子「で、えっと、悩み事は大丈夫なのかな?」

有里「うん、一応自分の中で答えは出たよ。心配かけたね」

雪子「あ、そうなんだ……じゃあ、私押しかけちゃって悪かったかな」

有里「そんなことない。ありがとう」

雪子「そ、そう?全然役立ってない気もするんだけど」

有里「心の問題だからね。君達が僕を仲間だって思ってくれていること、心配してくれている事……言葉や行動からしっかり伝わってくるよ」

雪子「……有里君って、たまに凄く大人に見えるの。なんでだろうって思ってたけど、何となくわかった気がする」

有里「そうかな?」

雪子「うん。達観してるっていうのかな。私達もあの事件を通して成長したつもりだったけど、有里君はもっと遠く……何かを見てるような」

有里「まぁ、いろいろあったからかな。……本当に、いろいろ」

雪子「……でも、今は私達の仲間で、友達。だよね?」

有里「そのつもりだよ」

雪子「うん。だから、心配させてね。必要ないかもしれないけど」

有里「助かってるよ。本当に、助かってる」

雪子「それで、私の事もたまには心配して。困ってたら助けてね」

有里「……そうだね。仲間だもんね」

雪子「そうそう。えっと、じゃあ帰るね。また今度遊ぼうね」

有里「うん。ありがとう。またね」

>『No.18 月 天城雪子』のランクが3になった。

直斗「……なんだ、心配なかったみたいですね」

有里「心配かけて悪かったよ」

直斗「ひ、独り言、ですよね?気付かれてないはず……!」

>『No.16 塔 白鐘直斗』のランクが2になった。



【2012/4/22(日) 晴れ 堂島宅】


有里「……なんだろう、いやな予感が」

陽介「あーりさーとくーん!あっそびっましょー!!」

完二「うぉっ!あんた馬鹿じゃねえのか!?近所迷惑だろーが!」

菜々子「湊お兄ちゃーん」

有里「聞こえてるよ」

菜々子「菜々子、今日もお留守番ー?」

有里「ごめんね。ちょっと出てくるよ」

菜々子「わかった、ちゃんとお留守番してるからね」

陽介「よーう有里!元気か!?」

有里「陽介に、完二か。どうかしたの?」

完二「いや、花村先輩が釣り行こうぜっていうもんで……有里サン、悩んでたみたいだし気晴らしにどうかなっつったんスよ」

陽介「まーったり釣りでもしてよ、癒されようぜお互いさ」

有里「お互い?」

完二「なんかわかんねーけど凹んでんスよこの人も。さっきから空元気が目に見えて……」

陽介「まぁよ……有里も悩んでるのわかるけどさ……俺の悩みも聞いてくれよ」

有里「わかった、とりあえず行こうか。玄関前で騒がれても困るし」

完二「そっスね。行きましょーや」



【鮫川河川敷】


有里「よく考えたら僕釣具持ってないんだけど」

陽介「人数分用意してあるっつーの。ほれ」

完二「俺のもある……こういう無駄な用意の良さとか、他に生かせないんスかね」

陽介「うっせ!」

>三人で並んで釣りを始めた……。

有里「で、悩みって?」

陽介「おう……聞いてくれよ……俺さ、ほんとは昨日お前を励ましに行こうと思ってたんだよ」

有里「それはどうも。でも来てなかったよね?」

陽介「そーなんだよ!それがさ、俺一人で行くのもどうかなーって思って里中誘ったんだよ!そしたら断られちゃってさ……」

有里「なんて誘ったの?」

陽介「たまにはデートでもしねぇ?って……」

完二「それが嫌だったんじゃないスか」

陽介「まぁ、それに終わらねーんだよ。そんで、じゃあ仕方ねえ、駄目元で誘ったれって天城を誘ってみたんだよ」

有里「そっちはなんて?」

陽介「断るとかならいいんだよ。けど断り方が『花村君とデート?なんで?』だぜ!?意識されて無さ過ぎてよぉ」

完二「……まぁ、いつも通りじゃないスか」

陽介「まぁ、そうなんだけどさ……それで、ガックリきたから昨日は不貞寝してたわけよ」

有里「二人なら昨日会ったよ」

陽介「え!?マジで?どこで?」

有里「家に来たけど」

陽介「ああ……ああそうなんだ……へぇ……」

完二「そういや、俺も実は昨日有里さんとこ行こうとしてたんスよ」

有里「どうして?」

完二「何か、悩んでるって聞いたらほっとくのもどうかと思って……よ。ガラじゃねえけど」

有里「あれ、じゃあもしかして留守中に来てくれたのかな」

完二「あー、それが、あの……結局、行かなかったんス」

陽介「お前は何でだよ」

完二「な、なんでだっていいじゃないスか!別に!」

陽介「ははぁーん、アレだな?有里と二人きりで会うと、こう、ソッチ系な部分がメラメラっと」

完二「なんでそうなんだよ!?ブッ飛ばすぞコラァ!!」

有里「で、何で?」

完二「いや、実は……直斗誘ったんスよ。あいつも心配してたみたいだったんで。でも俺も断られちまって」

陽介「おっ!仲間仲間!」

完二「一緒にすんなっつの!……なんか、気になる人がいるからその人を調査するとか何とかで」

陽介「完二ィ……」

完二「な、なんだよ」

陽介「ま、気にすんなって。世の中色々だ」

完二「なんで俺慰める感じになってんだよ!」

有里「直斗なら家に来てたけど」

完二「あァ!?」

陽介「なんか、懐かしい感じするな……相棒がいた時もこんな気分だった……」

完二「……っスね……なんか……こう……」

陽介「女共酷すぎねーか!?なんで悠がいるとほいほい集まるのに俺らじゃ駄目なんだよ!!」

有里「そうなの?」

完二「いや、それは花村先輩だけっス。滅多に誘わないスけど、俺が誘ったらりせとか直斗は結構ノってくれるんで」

陽介「うっせ!うっせ!お前も敵だ完二!」

完二「うわ!水飛ばすなって!子供かアンタは!」

>楽しそうな二人を眺めた。

>二人と仲良くなった気がする。

>『No.19 太陽 花村陽介』のランクが4になった。

>『No.14 節制 巽完二』のランクが2になった。


【同日 夕方 堂島宅】


有里「ただいま」

菜々子「おかえりなさい!菜々子ちゃんとお留守番してたよ!」

>菜々子がじっとこっちを見ている。

有里「そっか、お疲れ様。菜々子は偉いね」

>頭をぽふぽふと撫でてやった。

菜々子「えへへぇ……」

>嬉しそうだ。

有里「さ、晩御飯の仕度しようか。菜々子も手伝ってくれる?」

菜々子「うん!」

>夕飯を作った……。



【夜】


>Pipipi……

>電話だ。

鳴上『もしもし』

有里「もしもし。どうかした?」

鳴上『どうもしないんだが、一つ報告がある』

有里「報告?」

鳴上『GW、俺がそっちに行くのは三日からなんだが……あんたの知り合いが来週末から前乗りすることになった』

有里「僕の知り合い……待って、君が来る前に来ちゃうの?」

鳴上『そういうことだ』

有里「それは……参ったなぁ。というか、一人で来るんじゃなかったの?」

鳴上『そっちに帰る時の条件でそうなってる。二人ほど連れて行かないといけないんだ』

有里「そういう事を言うのは美鶴か……。やれやれ、困ったことになった」

鳴上『何か不都合でもあるのか?メンバーから一人選出することになってるんだが』

有里「君が選べるの?」

鳴上『ああ、桐条さんの推薦する人と、俺が選んだ一人の三人でそっちに行く事になってる』

有里「……じゃあ、できれば君の選べる枠は男性にしてほしい。順平か、真田先輩か、天田か……何ならコロマルでも」

鳴上『そ、そうか?何だかわからないけど、そうした方がいいんだな?』

有里「あ……いや、やっぱりいいよ。好きに選んで」

鳴上『でも、何か理由があるんじゃないか?』

有里「たいした事じゃない。それに、君の休暇は君の物だ、好きにしなよ」

鳴上『わかった……じゃあ桐条さんでも問題無いんだな?』

有里「あ、待って。美鶴は勘弁してもらえないかな」

鳴上『冗談だ。なら、好きに選ぶけど……いいんだな?』

有里「いずれ、会う予定だったしね。誰が来てもかまわないよ」

鳴上『そうか。来週そっちに行くのは桐条さんの推薦する人らしいから、誰かはまだ教えてもらってない』

有里「そう。……宿泊先は?」

鳴上『俺の知り合いで……多分あんたも知ってると思うけど、天城って子がいる。その子の家がやってる旅館に二人は泊まる予定だ』

有里「逃れられそうに無いね。よし、いいさ。やってやる」

鳴上『何をやるのか知らないが、俺はあんたと同じ所に寝泊りする予定だ……短い間だがよろしく頼む』

有里「こちらこそよろしく」

鳴上『報告はそれだけだ。じゃあ、また』

>……電話は切れた。

有里「……まずい」

有里「美鶴の事だから、もしかするともしかするぞこれは……私の推薦する人物、とか言って自分で乗り込んで来かねない」

有里「僕がここにいることは知らないはずだ……知ってたら即連行されてただろうし」

有里「……ま、なるようになるか。他のメンバーなら怒られる事はないだろうし」

有里「そうなると問題は……」

有里「僕の、里心か」



【深夜】


美奈子「こんばんわ」

有里「やぁ、出たね」

美奈子「幽霊みたいな扱いはやめてよ。さて、どうする?」

有里「こんな街じゃ、逃げも隠れも出来ないだろうし、成り行き任せしか無いだろうね」

美奈子「いつもみたいに、どうでもいいって言わないの?」

有里「言えないんだ。自分でもびっくりしてるよ」

美奈子「……良かったね」

有里「何が?」

美奈子「別に。仲間に恵まれたなって思って」

有里「それは……そうだね」

美奈子「でも、遅かれ早かれ」

有里「そうだね。結局は会わなければいけなかったんだ」

美奈子「グズっても仕方ないよね」

有里「うん。覚悟できた」

美奈子「良かった。じゃあ、また」

有里「またね」

>美奈子の中に自分と違う何かを感じる……。

>ファルロスの時には無かった感覚だ。

>鳴上と繋がっている事が影響しているのだろうか……?

>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが2になった。

ほのぼの日常系ペルソナ。

ただし穏当にいかないのがペルソナ。


というわけで本日分終わり。
では、また後日。

乙。
ついに出会うのか。wktk

うはwww風花が可愛すぎるwww
そして陽介が順平より残念かもしれないww

彼女に限らずP3のキャラってなんかエロいな
女性陣とコロマル、真田、天田。男なのにこの辺がちょっとエロくてプレイ中によく困ったもの。

キタロー逃げずに出逢うのか
盛り上がってきたな次回が超楽しみだ>>1

次回はあれだなポップコーン片手に見るしかないな。
楽しみでしかたないぜ…

しかしP3組は本当に可愛いぜ…

P4組も薄いわけじゃないんだけどP3組の方が濃く感じるww

確かにP4組は体の一部が薄いよな(1人を除いて)

今日は二段階に分けての投下。
風花は可愛いけど自分は美鶴が好きです。愛してます。

というわけで、本日分その1。



【2012/4/25(水) 放課後 月光館学園】


鳴上「結局、誰と一緒に行こうかな……」

男子「どうした鳴上。デートの話か?」

鳴上「GWに寮の誰かと旅行行く事になったんだよ」

男子「寮の誰かって……桐条さんもか!?」

鳴上「ま、まぁ俺が選んでいいらしいからそれも可能だと思うけど」

男子「ええええあの桐条さんと旅行!?まぁじかよ……嘘だろ……」

鳴上「別に桐条さんと行くって決めたわけじゃ……」

男子「じゃあ他に候補いんのかよ。いいねー特別枠はよー」

鳴上「まだ迷ってるんだ」

男子「ふーん。ま、そろそろ帰るわ。またな」

鳴上「ああ。俺もそろそろ……」

男子「ってうげ、雨かよ」

鳴上「ほんとだ、降ってきたな……雨?」

>……急いで寮に帰ろう!


【巌戸台分寮】


アイギス「あ、おかえりなさい」

鳴上「アイギスさん、雨が……!」

アイギス「わかっています。というか、皆さん天気予報で見ていたようですが」

鳴上「……あ、そうですか」

アイギス「皆さんまだ帰ってきていませんが……この雨は、夜まで降り続くようです。恐らくは」

鳴上「今夜は、ついに突入ですか」

アイギス「そうなると思います。準備をしておいてください」

鳴上「はい……少し、眠っておきます」

アイギス「わかりました。夜にまた起こします」

鳴上「それじゃお願いします」

>今夜、再びマヨナカテレビが映るようだ。

>それに備えて、睡眠をとっておこう……。



【深夜】


美鶴「……揃っているな」

>ラウンジには寮内の全員が揃っている。

美鶴「前にも言ったが、ここにいる全員が突入するわけにはいかない。よって、ここからリーダーにパーティーメンバーを選んでもらう」

鳴上「はい。まず山岸さんは必須なので、申し訳ないですが毎回入ってもらいます」

風花「私は戦闘は出来ないから、疲労は皆ほどじゃないです……よっぽど連日で無い限り大丈夫だと思います」

鳴上「それに、俺以外に三人……ぐらいが丁度良いって話でしたよね」

美鶴「ああ。ほぼ半々にわける形だな」

鳴上「以前、俺が一人で入った時……中はまるでシャドウの巣でした。戦闘は不可避だと思います」

真田「だからこそ面白いんじゃないか」

鳴上「面白いかどうかはともかく、探索も勿論戦闘についても考えなければなりません。そこで、とりあえず全員のペルソナの性質と得意な戦い方なんかを教えてください」

美鶴「なるほど、その上でピックアップしていくわけか」

アイギス「わかりました。それでは私からでよろしいですか?まず私のペルソナは……」


【深夜 マヨナカテレビ内タルタロス】


鳴上「山岸さん、それじゃあお願いします」

風花「はい。……皆さんの反応、しっかり感知できてます。いつでもどうぞ」

鳴上「では、これからタルタロスの探索を始めます。準備はいいですか?」

美鶴「ああ。いつでも構わない。しかし、なんというか意外なメンバーだな」

天田「まさか僕が選ばれるとは思ってませんでした」

岳羽「私も同感。真田先輩悔しそうだったよ」

鳴上「皆さんから聞いた話を総合して、いろんな組み合わせを試していこうと思います。一度で攻略できるような代物でも無いようですし」

美鶴「君が物理攻撃、私が魔法攻撃、天田が即死攻撃、ゆかりが回復。そう考えるといい組み合わせだ」

鳴上「正確には俺は状況に応じて色んな役割を兼任する予定ですがね」

>さっきベルベットルームでペルソナを装備してきた……。

>これなら様々な状況に対処できるはずだ。

鳴上「前回、俺は五階まで登りました。そこまでは特に目立って強いシャドウは現れなかったので、今日はさらに上を目指したいと思います」

美鶴「やる気だな。では我々は君の指示に従う。行こうか」

天田「ふぅ……いい加減、腹括りました。やりましょう」

岳羽「まー仕方ないか。ほっとくわけにもいかないしね。行こっか!」

風花「皆さんがんばってください!」

>タルタロスの探索を開始した。

>皆には伏せているが、タルタロスの入り口は一つではない。

>もしかすると風花は気付くかもしれないが……。

>あの雨雲が広い範囲にかかっているなら、今夜予定より早い再会となるかもしれない。



【15F】


美鶴「……ふむ、好調だな」

天田「最初は鈍っててどうしようかと思いましたけどね」

岳羽「まぁ、一回通った道だしね」

鳴上「どうですか?内部構造に変化なんかは」

美鶴「はっきりと細部までは覚えていないが、そもそも形状が変わる事など頻繁にあったからな……」

鳴上「そうですか……」

美鶴「だが、覚えていることもある」

鳴上「何ですか?」

美鶴「それは……」

天田「あ、あれ階段じゃないですか?」

岳羽「ほんとだ、じゃあ次だね」

鳴上「あ、俺から行きます。待ってください」

美鶴「っ鳴上!待て!」

鳴上「え?……うわっ」

>突如、階段はシャッターのような物でふさがれてしまった!

美鶴「痛……大丈夫か」

鳴上「俺は大丈夫です……けど、これは……」

美鶴「分断されたようだな」

風花『鳴上君、桐条先輩、聞こえますか?』

鳴上「ああ、聞こえてます。向こうはどうなってますか?」

風花『良かった……シャッターの両側で声は届いてないみたいですね』

鳴上「ええ、何も聞こえてきません。どうしましょうか」

美鶴「といっても帰る道も無し、上に行くしか無いんじゃないか?」

風花『下のお二人には先に帰還するように言いましょうか……その場で待機も危険ですし』

美鶴「ああ。そうしてくれ。これより下の階なら彼らだけでも十分だろう」

風花『わかりました、伝えておきます』

鳴上「桐条さん、わかってたんですか?」

美鶴「何がだ?」

鳴上「だって、さっき俺に待てって」

美鶴「ああ、罠に気付いたわけじゃない。私が知っていたのは……」

風花『……上階にある反応の事でしょうか』

美鶴「そうだ。16F……第一層の終わり。そこには番人とも言うべき大型シャドウが待っている」

鳴上「つまり、この状況。俺達だけで……」

風花『大型シャドウと相対しなければなりません、ね』

美鶴「だから止めたんだ。万全な態勢で挑めるようにと」

鳴上「すみません……」

美鶴「いや、私が言うのが遅かった。こちらの落ち度だ……さて、どうする。といっても引く道は無しだが」

鳴上「行きましょう。そいつを倒せばこの階層が終わるなら、丁度一区切り。終わらせて帰った方が気分がいい」

美鶴「勝てるつもりか?」

鳴上「勝つつもりです」

美鶴「……頼もしいな。山岸、サポートを頼む。上階の様子はわかるか」

風花『はい。今スキャンします……?』

鳴上「どうかしましたか?」

風花『上階で、誰かが戦闘を行っています!シャドウじゃなくて人間……恐らくペルソナ使いです!』

美鶴「何……!」

鳴上「好都合だ、行きましょう。協力すれば、勝ちの目は増える!」

>上階へと走った……。


【2012/4/25(水) 堂島宅】


堂島「さて、そろそろ行かんとな。湊、じゃあ留守頼んだぞ」

有里「はい。それじゃ、いってらっしゃい」

菜々子「お父さん、今日雨だって」

堂島「ああ、そうか……折り畳み一本持っていっとくかな」

有里「菜々子、今日雨降るって?」

菜々子「うん、さっきテレビで言ってたよ。夕方から今日の夜半まで降り続くでしょうって」

有里「そう。……菜々子も、ちゃんと傘持ってくんだよ」

菜々子「はーい」

>今日は雨が降るようだ……。

有里「……一応、連絡しておくか」



【同日 夕方 ジュネス内フードコート】


陽介「ついに、って感じだなぁ」

有里「うん。で、勿論僕は今日も行くつもりなんだけど……この中で、手を引きたいって人は?」

>全員無言だ。

有里「陽介、里中さん、天城さんは今年大変でしょ?いいの?」

陽介「やーめろってそういう事言うの。自分達の事は自分達が一番良くわかってんよ」

雪子「出来る事があるならしたいって、前にも言ったでしょ?学校なら心配しないで、これでも結構優等生なんだ」

千枝「ま、私と花村はちょーっと危ないかなーってとこあるけどね……逃げてもいらんないっしょ」

完二「まーそういう事っスよ。先輩方は勿論、俺ら基本バカなんで」

りせ「バカはあんただけでしょ!……まぁ、私生活削ってこんな危ない事やってる時点で私もそっか」

直斗「と、まぁこんな感じです。有里さんも、本当はわかってて聞いたんじゃないですか?」

有里「……そうだね、何となくそんな気はしてたよ。じゃあ、今夜マヨナカテレビ内タルタロスに突入する。都合の悪い者は?」

全員「大丈夫(っス)
      (です)」

有里「とは言っても、全員が入る訳にはいかない。テレビから脱出する為にりせには来てもらわないといけないけど……」

直斗「確かに、万が一戻ってこれなかった時に全員が入っていては手詰まりですからね」

有里「だから、この内……三人だ。三人を探索隊として選ぼう。僕と、他に立候補者はいない?」

陽介「つってもよ、もしメンバーが偏っちまったら問題なんじゃねえの?中にゃシャドウがうじゃうじゃいるんだろ?」

有里「まぁ、そうだね。陽介がそこまで頭が回ると思ってなかったよ」

陽介「どんどん辛辣になってくねお前……。だからさ、お前選んでくれよ」

有里「僕が?」

陽介「テレビん中なら俺らの方が詳しいけどさ、タルタロス?ってーの?あれはお前のが得意だろ?」

有里「一回攻略してるしね」

陽介「だからさ、俺らが得意な戦法とかペルソナの属性、弱点……色々。お前に教えて、それで選んでくれよ」

有里「僕でいいの?」

千枝「意義なーし。有里君なら良い采配してくれるでしょ」

雪子「私もそれでいいと思うな」

完二「俺ぁ、いろいろ考えるの苦手なんで。任せるっス」

直斗「情報や選出の補佐はしますが、基本的にはそれで良いと思いますよ」

りせ「私も有里さんだったら良いよー」

有里「……わかった。それじゃ、早速色々教えてもらってもいいかな」

陽介「おう!まず俺のペルソナは……」



【深夜 マヨナカテレビ内タルタロス】


有里「さて、準備はいいかな」

陽介「おうよ!いつでも行けるぜ!」

千枝「ん、大丈夫!準備オッケーだよ!」

完二「おっしゃ!いっちょやってやんぜ!」

りせ「皆の反応、しっかりキャッチしてるよ!いつでもどうぞ!」

>ペルソナを複数体装備しておいた。

>各々、前回の事件で使用した武器を持っているようだ。

有里「いいみたいだね。……そうだ、前回鳴上君と会った話はしたよね」

陽介「おお、そういやそうじゃん。向こうでも雨降ってたら今日も来てるんじゃねえの?」

有里「その可能性は高いと思う。りせ、何かわかる?」

りせ「……シャドウと、皆の反応だけ。他に人はいないみたいだけど……」

完二「まだ入ってないとかっスかね」

有里「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。とにかく、僕達は先へ進まないとね」

千枝「進んでる内に会えるかもしれないしね!」

>だが、彼と出会うという事は……。

有里「嫌な予感がするなぁ……」

陽介「どうかしたか?」

有里「いや、何でもない。それじゃ、行こうか」


【15F】


りせ『みんないい調子だね!サクサク来てるよ!』

陽介「そりゃ前の事件に比べたらな」

千枝「ちょっと弱いよね、ここの敵」

完二「油断は出来ないっスけどね」

有里「さて、次で16階だけど……もし以前と同じなら、そこで第一層は終わりだ」

完二「一層……何階もあるんスか?」

有里「うん、とりあえず今日は一層の攻略で終わりたいと思う」

千枝「まだまだ行けるよ!とは……言い難いしね」

陽介「ちっと疲れたしな」

有里「じゃあ行こうか。上階へ」

陽介「よぉっし!さっさと行って終わらせようぜ!」

有里「待った、陽介。僕が先に……」

>陽介を追って階段に足を掛けると、突如背後に何かが落ちる音がした。

有里「……やられた」

陽介「うぉ!なんだこりゃぁ!おーい!里中ぁ!完二ぃ!」

有里「どうやら、こっちの声は届いてないみたいだね。向こうでも同じように呼んでるだろうから、多分どっちからも」

陽介「マジかよ……」

りせ『有里さん、花村先輩!私の声は聞こえてる!?』

有里「聞こえてるよ」

りせ『よかった!……けど、16階に大きいシャドウ反応があるの。そのまま進んだら……』

有里「やっぱりか……」

陽介「マジかよ!っつっても帰り道なんてねーぞ!どうするよ、有里」

有里「今までのレベルなら、間違いなく勝てるだろうね」

陽介「あ?ああ。そりゃそうだけど……お前、もう行く気マンマンじゃねえか」

有里「その為に来てるわけだし。それに、何でだろう。負ける気がしないんだ」

陽介「……わかった、付き合うよ。しゃーねーな!」

有里「ありがとう。りせ、サポートをお願い」

りせ『わ、わかりました!絶対勝ってくださいね!』

有里「そのつもりだよ」

>上階へ向かった……。


【16F】


有里「ここは迷宮無しの大部屋みたいだね」

陽介「ややこしくなくていいな。さて、例の大型シャドウってのは……」

りせ『来るよ、構えて!』

>部屋の中心に大きな染みがある。

>その染みが立体感を持ち始めた。

有里「陽介、大丈夫?」

陽介「へっ、自分の心配してろよ!」

>黒い染みは大きく盛り上がり、今では山のようになっている。

>四種の表情の仮面を手に持った、巨大化したマーヤのようなシャドウが現れた。

有里「戦闘中に音楽が聞けないと調子出ないな」

陽介「帰ったら、俺のお古で良けりゃやるよ……今は集中しろって。来るぜ!」

>シャドウが仮面の一つを装着し、咆哮を上げた!!

本日分その1終了。

嫌な予感は当たる予感。

後で、また来ます。

このままいけば神は非情だなw

会って早々処刑されそうだなキタローww


よりにもよって美鶴さんとはwwwwww

最初に美鶴とか可哀想にwww

つかこのままいったらワイルド二人いるパーティか
かなり無敵な気がするんだが

さぁ邂逅だ。

本日分その2。



【16F】


有里「ここは迷宮無しの大部屋みたいだね」

陽介「ややこしくなくていいな。さて、例の大型シャドウってのは……」

りせ『来るよ、構えて!』

>部屋の中心に大きな染みがある。

>その染みが立体感を持ち始めた。

有里「陽介、大丈夫?」

陽介「へっ、自分の心配してろよ!」

>黒い染みは大きく盛り上がり、今では山のようになっている。

>四種の表情の仮面を手に持った、巨大化したマーヤのようなシャドウが現れた。

有里「戦闘中に音楽が聞こえないと調子出ないな」

陽介「帰ったら、俺のお古でよけりゃやるよ……今は集中しろって。来るぜ!」

>シャドウが仮面の一つを装着し、咆哮を上げた!!

有里「りせ、解析お願い」

りせ『了解!ちょっと時間ください!』

陽介「っしゃーやるぜ!ペルソナァ!」

>突風がシャドウへと吹き荒ぶ!

陽介「どーだ!……へ?」

有里「効いてないみたいだね」

>シャドウは仮面をつけはずししている。

有里「じゃあこれはどうかな。オルフェウス!」

>火炎がシャドウに向かう……。

有里「これも効果なし、か」

りせ『相手シャドウの弱点わかりました!……けど、これって』

有里「どうかしたの?」

りせ『仮面……多分、仮面だよ!仮面で弱点と耐性が変わるみたい!仮面の色を良く見て戦って!』

陽介「良く見てったってよぉ!俺、そんなにいくつも属性無ぇって!」

有里「どうも僕向きの相手みたいだね」

陽介「弱点突くのは任せたぜ……て、どわぁっ!」

>陽介にシャドウの一撃が命中してしまった。

有里「陽介、だいじょう……ぶ……」

>陽介は誰かに受け止められている……。



【16F】


?「どわぁっ!」

鳴上「この声……?お、っと!」

美鶴「どうした、鳴上!……その男が戦っていた……」

鳴上「やっぱりあんたか、有里」

有里「……鳴上君。それと……」

美鶴「お前は……本当に、そうなのか?」

有里「久しぶりだね、美鶴」

陽介「いっててててて……って、この声は……」

鳴上「陽介」

陽介「うぉお!?あ相棒!マジで来てたのか!ひっさしぶりだなぁ!」

鳴上「挨拶は後だ。今はあいつを倒すぞ」

陽介「おうよ!行くぜ相棒!」

有里「美鶴。訳は後で話す。手伝ってくれないか?」

美鶴「……君との約束は信用出来ない。だが、今優先すべき事はわかる」

有里「美鶴らしいね。行こうか」

風花『この反応……嘘でしょ、まさか……』

鳴上「山岸さん、理由は後でだそうです。サポートお願いします」

風花『……はい!わかりました!全力でサポートします!』

りせ『この反応、先輩やっぱり来てたんだ!よーし、いっちょやったりましょー!』

鳴上「有里。こいつの弱点はわかるか」

有里「仮面を見て。赤の時は火炎が効かなかった。緑の時は疾風が効かなかった」

鳴上「入れ替わるのか。俺達向きだな」

有里「そうみたいだね」

鳴上「桐条さん、バックアップに回ってもらえますか」

美鶴「それは良いが……どうするつもりだ?」

鳴上「俺と有里で、なんとかしてみます」

美鶴「……なら、任せるぞ」

鳴上「行くぞ、有里」

有里「いつでもどうぞ」

>シャドウが仮面を付け替える。

有里「青」

鳴上「任せた」

有里「うん。オルフェウス!」

風花『あ、弱点です!』

鳴上「畳み掛けるぞ!」

有里「了解」

>総攻撃を仕掛けた!

有里「まぁ、この程度で倒せるとは思ってないけどね」

>シャドウはまた仮面を入れ替えている。

鳴上「緑か」

有里「どうぞ」

鳴上「イザナギ!」

りせ『すごい、また弱点にヒットだよ!』

有里「そろそろトドメかな」

鳴上「一気に終わらせる」

有里・鳴上「チェンジ」

有里「ノルン!」

鳴上「マハカーラ!」

有里「万物流転!」

鳴上「刹那五月雨撃!」

>シャドウが断末魔の咆哮を上げながら消滅していく……。

風花『すごい……』

陽介「俺らに手出させずに……」

美鶴「あのシャドウを仕留めた……」

りせ『二人とも、すごいコンビネーション……』

有里「お疲れ」

鳴上「そっちもな。さて、これで帰れるんだろうか」


【鳴上】


陽介「相棒!」

鳴上「陽介、久しぶり」

陽介「マジで来てたんだなー!くそ、ちょっと下に里中と完二もいんのによー」

鳴上「今日は会えそうにないな」

陽介「ま、もうちょいでGWだしな!ちゃんとした再会はそん時だ!へっへー、羨ましがるだろうなーあいつら」

鳴上「元気そうで良かったよ。そういえば、お前が言ってたすごいヤツって有里の事だったんだな」

陽介「ああ、あいつさ、この前八十稲羽でぶっ倒れてたんだよ。それを俺が助けてさ」

鳴上「そうか。どんなヤツだ?」

陽介「んー、掴み所は無ぇけど悪いヤツじゃねえよ。面白いしな」

鳴上「……そうか。有里の事は任せていいか?」

陽介「ま、お前も頻繁にこっち来れるわけじゃないだろ。任せとけよ、しっかり構ってやっから」

鳴上「ああ。今日のところは引き上げる……引き上げられたら、だけど。また今度な」

陽介「おう!……そういや、あのお姉様なにモンだよ。どこで捕まえたんだ?」

鳴上「あの人か?桐条美鶴って言って、桐条グループの令嬢なんだそうだ。今一緒に寮で暮らしてる」

陽介「なに!?一つ屋根の下か!ほんっと、お前は……今度紹介してくれよ!」

鳴上「それは別に構わないが……ああいう事になってるが、いいのか」

陽介「あん?……あいつらって、そういう仲なの?」

鳴上「詳しくは知らん。けど、そうなんじゃないかな」

陽介「勝ち目薄そーだな……」

鳴上「全くだ」

陽介「……どうする?」

鳴上「あまり見るもんでもないだろう」

>……そっとしておこう。

【有里】


美鶴「湊!」

有里「や」

美鶴「君が何故ここにいる。私の記憶では、間違いなく……」

有里「運が良かったのか、それとも悪かったのか。何でかこうして復活しちゃいました」

美鶴「理由は?」

有里「わかりません」

美鶴「……私と、ツーリングするという約束は」

有里「……」

美鶴「この……!」

>美鶴が右手を振り上げた!

有里「……っ」

美鶴「……何故、何も言わなかった……」

>美鶴はその手を振らず、その手を背中に回した。

>応えるように、こちらからも抱き締めた。

美鶴「こうして……話す事が出来る……触れる事が出来る……抱き締める事も出来るのに」

美鶴「何故、私に何も言ってくれなかった……!どんなに……どんなに私が……!」

有里「……ごめん」

美鶴「う……ぐ、す……あ……」

有里「ごめん。だけど、泣かないで……」

美鶴「どうして、ぐすっ。私の前に、以前と……ひぐっ、変わらずに……現れてしまうんだ……」

有里「……」

美鶴「忘れようと、忘れられなくてっ……何度も……」

有里「……ごめんね、美鶴」

美鶴「うあ……あぁぁ……」

>泣き続ける美鶴を抱き締め続けた……。

有里「……いつの間にか、僕の方が小さくなっちゃったね」

美鶴「ん……?あぁ、少し、背が伸びたんだ。これでもヒールを脱げばまだ君の方が高い」

有里「そっか。僕がいない間もちゃんと成長してたんだもんね」

美鶴「君は本当に昔のままだな。……恥ずかしい所を見せた」

有里「僕は美鶴の恥ずかしい所はいっぱい見てるから。それより、後ろの二人が問題じゃないかな」

美鶴「なっ……!」

陽介「あのー……」

鳴上「もう、落ち着きましたか?」

美鶴「あ、ああ。すまなかった。旧友に出会って懐かしさの余り取り乱してしまったようだ」

陽介「そっすか。旧友、ね。ただの友達なんすかねー」

鳴上「陽介」

陽介「ジョーダンだって。えーと、桐条美鶴さん?でしたっけ?」

美鶴「ああ。鳴上に聞いたんだな」

陽介「はい。俺、花村陽介って言います!こいつ、鳴上悠の親友で有里の命の恩人っす!」

美鶴「命の?それはどういう意味だ?」

有里「僕が帰ってきて、倒れてた所を助けてもらったんだ」

美鶴「そうなのか。みな……有里の恩人か。いつかきっちりとお礼をしなければならないな」

陽介「いやいやいやお礼なんてそんな!困ってる人を助けるのは当然ですから!」

美鶴「すばらしい心掛けだ。ブリリアントだな」

陽介「ブリ……なんすか?」

有里「さて、美鶴に少し言っておく事があるんだ」

美鶴「何だ?」

有里「ここで僕に会った事、内緒にしておいて欲しい」

美鶴「何故だ?皆、君が生きていると知れば喜ぶと思うが」

有里「でも、僕は一度消えたんだ。知ってるよね」

美鶴「……」

有里「だから、なるべく皆を引っ掻き回したくない。僕無しで上手くやってるなら特にね」

美鶴「そう、か……残念だ」

有里「すまない。けど、美鶴なら大丈夫だよね?」

>きゅっと手を握ってお願いした。

美鶴「っ、ああ。任せて欲しい」

陽介「さて、そんじゃ帰りますわ。美鶴さん、また会いましょうね!絶対ですよ!」

美鶴「ああ。またいずれ会おう。では」

有里「ていうか、帰れるのかな」

陽介「とりあえず、階段降りてみようぜ」

>美鶴と鳴上と別れた……。

陽介「よー」

有里「ん?」

陽介「美鶴さん、お前の事好きだったんじゃないのかよ」

有里「そうかもね」

陽介「……いいのかよ」

有里「良くないよ」

陽介「じゃあさ、もっとこう……あるんじゃねえの?」

有里「今の僕には、美鶴の想いに応える資格はないんだ」

陽介「……わっかんねーなー」

有里「僕だって、美鶴は好きだよ」

陽介「……ま、そんならいーや。いつか、な」

有里「うん。いつか、ね」

>階段を塞いでいた壁はきれいになくなっている。

陽介「よっしゃー!さくっと降りちまおうぜー!」

千枝「あ、有里君!と、花村。無事でよかった……」

完二「今の言い方は流石にひでーっスよ先輩……」

>タルタロスを降りた……。

りせ「二人ともずるーい!」

陽介「おわっ、なんだよいきなり」

りせ「なんで二人だけ先輩に会えるのよー!」

千枝「先輩?りせちゃん、それどういうこと?」

りせ「さっき、二人が上でボスと戦ってた時に、鳴上先輩と知らない女の人が来てて……」

千枝「うそっ、鳴上君来てたの!?」

陽介「もう帰っちまったけどな!元気そうだったぜ」

完二「マジかよ、俺も会いたかったぜ……」

千枝「そりゃズルイね……まぁ、元気だったならいいか!」

りせ「むー、GWには先輩と一杯遊ぶんだから!」

有里「皆、今日はお疲れ。帰って休んで、また何かあったら集まろう」

陽介「ひっさびさに戦ったから体イテーわ……」

千枝「鍛錬が足りないのよ、鍛錬が」

りせ「有里さーん、あの女の人誰?」

有里「昔の仲間だよ」

りせ「ええー?昔の仲間ってだけで会った途端に抱き合ったりするぅ?」

千枝「抱き合った?え、ちょ、ちょっと詳しく教えてくれない?」

陽介「あれ、なんだろう。さっきまで一緒に戦ってたのに急に凄い疎外感が」

完二「先輩……わかるっス……」


【ジュネス内フードコート】


陽介「っしゃー疲れたー!おし寝るぞ!」

直斗「お疲れ様です、で、どうでしたか?」

りせ「鳴上先輩も来てたよ!」

雪子「会ったの!?」

完二「花村先輩と有里サンだけな」

陽介「へへん、どうよ。羨ましいだろ?」

千枝「もう、どうせすぐ会えるんだからいいじゃん。鬱陶しいぞ花村!」

有里「さ、それじゃ皆帰ろう。お疲れ様。またね」

>今日はもう解散する事になった……。

【鳴上】


>二人は階段を降りていった……。

美鶴「……言わないでいてくれるか」

鳴上「何をですか?」

美鶴「先ほどの光景は忘れてくれと言っている」

鳴上「……好きなんですね」

美鶴「なっ……!」

鳴上「内緒にしておきましょうか。泣いてしまった事は」

美鶴「くっ、そ、そうしてくれ……」

鳴上「俺達も帰りますか」

美鶴「……ああ。通れるのだろうか」

>階段を降りてみると、シャッターはきれいに無くなっている。

鳴上「よし、じゃあ降りましょう」

美鶴「なんとか助かったな」

>タルタロスを降りた……。

天田「お帰りなさい!大丈夫でしたか?」

岳羽「ちょっと、桐条先輩どうしたんですかその顔!」

美鶴「顔?顔にダメージは受けていないが……」

岳羽「目真っ赤ですよ。何してたんですかもー」

風花「二人とも、お帰りなさい。それじゃ、テレビから出ましょうか」

天田「流石にくたびれましたしね」

岳羽「同文。疲れちゃった」

美鶴「山岸、頼む」

風花「はい。じゃあ、いきますね」

>……?

>風花が袖を引っ張っている。

風花「後で、事情聞かせてね」

>小声で言われたので、黙ってうなずいておいた。



【巌戸台分寮 ラウンジ】


天田「何とか無事戻ってこれましたね」

順平「おっ、お疲れさん!どうだったよ?」

岳羽「どうもこうもって感じ?」

真田「強敵はいたか?」

鳴上「ええ、デカイのが」

美鶴「……私は先に休ませてもらう。では、また明日だ」

アイギス「おやすみなさい。皆さん怪我はありませんか?」

天田「目立った負傷は無いですね」

風花「……鳴上君、ちょっと」

鳴上「あ、はい」

岳羽「……あれ?風花は?」

天田「鳴上さんもですね。もう部屋に戻ったんでしょうか」

順平「……あー、あれだろ。あの二人は」

真田「ふっ、元気なもんだな。若さか」

岳羽「あによ、それ……」


【自室】


鳴上「有里の事、ですね」

風花「うん。どうして彼があそこにいたの?」

鳴上「詳しくは俺もわかりません。けど、あいつはいなくなった後、俺が前に住んでた街に帰って来たみたいなんです。それで、俺の仲間と一緒に今回の件を調査してるみたいで」

風花「そう、なんだ……それで、タルタロスを登ってたんだね」

鳴上「はい。今まで連絡しなかった理由はわかりませんが……」

風花「それは何となくわかるの。私や、他の皆に気を遣ったんだと思う」

鳴上「気を遣うなら連絡するんじゃないんですか?」

風花「あの人はそういう人。いつも自分の身を投げ出して、他人の事ばっかり考えてた。無愛想で、無表情で……でも、すごくやさしい人」

鳴上「……山岸さんも、有里の事が」

風花「それは内緒。そっか、でもいいや。元気でいてくれるなら、それで」

鳴上「あ、それと、あそこで有里に会った事は」

風花「それも内緒だね。よし、じゃあ帰るね。鳴上君、おやすみ。お疲れ様でした!」

鳴上「あ、はい。おやすみなさい。お疲れ様でした」

>風花は出て行った。

鳴上「あ、そういえばこの前から、普通にベッドに並んで座るようになったな」

>……慣れてきたのだろうか?

>今日はもう、寝よう。

ちょっとずつ近付く人たち。
合流にはいたらず。

そろそろ、ゴールデンウィークです。

これで本日分は終わり。
では、また後日。

乙。

ついにカリスマとヒーローの共演が果たされたか!

>>1
ブリリアント。

美鶴が可愛すぎて生きるのが辛い

おつです

やっぱり燃えるなぁ!!>>1はブリリアントだな

GW突入編。

では本日分。

【2012/4/26(木) 曇り 堂島宅】


>どうやら夕べ、特捜隊の皆からメールが来ていたようだ……。

>それぞれに労いの言葉を送ってくれた。

『差出人:陽介
  件名:お疲れ!
  本文:お疲れ!変な話だけど楽しかったぜ!
     なんつーか、やっぱすげえなお前。皆で相談したんだけどさ、リーダー任せていいか?
     皆もお前だったら大丈夫だって言ってるしよ。頼んだぜ!』

>知らない間に随分と信用されたものだ。

有里「リーダーね。また久しぶりの役職だ」

>陽介に返信しよう……。

『差出人:me
  件名:了解
  本文:僕でよければ。なるべく皆に負担がかからないように頑張るよ』

>……返信が早い。

『差出人:陽介
  件名:おう!
  本文:俺らもお前に負担がかかんねーように頑張るからさ!
     これからもよろしくな!』

>夕べの探索で、特捜隊のメンバーから信頼を得たようだ。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが3になった。

有里「こっちは、なんとか上手くいきそうだな……基本的にみんな良い奴だし」

有里「問題は、今週末にやってくる誰かの事か……」

有里「こうなると、むしろ美鶴に来てもらいたいな……知られる人数は少ないに越した事はない」

有里「……鳴上君に念でも送っておこう。自由にしろって言っちゃったし」

【2012/4/26(木) 曇り 巌戸台分寮】


>何か背筋がぞくりとして目が覚めた。

鳴上「なんだ、今の……誰か強烈に俺の事考えてたとかか?」

>とりあえず、着替えてラウンジに行こう。

美鶴「……ああ、おはよう」

鳴上「おはようございます。……ちゃんと眠れましたか?目、真っ赤ですよ」

美鶴「あまり、眠れなくてな……何、大丈夫だ」

鳴上「そうですか……そうだ、そろそろ教えてくださいよ。桐条さんが選んだ人」

美鶴「ん?ああ、そうだったな。そろそろ言っておかなければ、メンバーにも予定があるだろうから……」

美鶴「まあ、言ってしまえば簡単な話だ。もし君がテレビに入るような事になった時、絶対に必要なのは誰だ?」

鳴上「……皆さん頼もしいけど、絶対に必要となると、出る為の力ですね」

美鶴「そう、脱出する為の能力が必ず必要になる。そして寮内にそれを行えるのは一人しかいない」

鳴上「山岸さんですか。なるほど、良く考えればそうなりますね」

美鶴「ああ。君はもう選んだか?」

鳴上「……いえ、それはまだです。これから、皆さんにGWの予定を聞いて決めようと思います」

>……風花は、選ぶまでも無かったようだ。

美鶴「そうか。では、遅刻しないように。私は少し……眠ることにするよ」

鳴上「あ、はい。お大事に……」

>とりあえず、学校に行こう。


【夕方 巌戸台分寮】


鳴上「さて、じゃあ誰にしようかな……」

>ラウンジには順平とゆかりがいる。

順平「おう、おかえり!……なんだ?何か用か?」

鳴上「俺、GWに旅行行くんですけど知ってました?」

順平「ああ、寮空けるんだろ。聞いてる聞いてる」

岳羽「いいね、旅行。楽しんできなよ」

鳴上「その旅行に寮内の誰かを連れて行くって条件で了解を得てまして」

順平「は?何でよ」

鳴上「その、俺が一人で先走らないようにだそうです」

岳羽「あー……ま、ほんとは言いたく無いんだと思うよ。美鶴先輩でしょ、それ言ったの」

順平「おカタいねぇ、相変わらず。そんで、それで俺らに白羽の矢が立ったと」

鳴上「全員に予定聞いておこうと思いまして」

順平「そっか。ま、悪いけど俺ぁパスだ。予定あんだよ、GW」

岳羽「まぁたそうやって見栄張って……」

順平「ちげぇって!ほんと!マジであんの用事が!人に会うんだよ!」

岳羽「あ、そうなの?ごめん、なんか悔しくて言ってるのかと思った」

順平「ゆかりッチ、俺の事なんだと思ってんだよ……そういうわけだから、俺無理!」

鳴上「そうですか……岳羽さんは?」

岳羽「私?あー、予定は、別に無いんだけど……」

順平「何?ゆかりッチ予定無いの?俺にもあんのに?」

岳羽「うっさい。私、旅行ってあんまり好きじゃないんだよね。だから、出来たら他の人に頼んでくれないかな」

順平「あれ?屋久島ん時も京都ん時も言ってなかったじゃん」

岳羽「……嗜好が変わったのよ」

鳴上「そうですか。……残念です。じゃ、他の人達当たってみますね」

順平「悪いな」

岳羽「ごめんね?」

鳴上「いえ。それじゃ」

>次は誰にしようか……。

順平「なー」

岳羽「なによ」

順平「ゆかりッチ、鳴上の事嫌いか?」

岳羽「そうじゃなくて。……まだ、そういうの許せる程彼の事知らないってだけ」

順平「あっそ。面倒だねぇオンナノコは」

岳羽「……」



【二階】


>天田にも話を聞こう。

鳴上「天田、いるか?」

天田「はーい、何でしょう?」

鳴上「GW、予定あるか?」

天田「GWですか?……部活がありますね」

鳴上「あ、そうなのか。何部だ?」

天田「弓道と剣道とサッカーと……」

鳴上「お、多くないか?」

天田「あはは、助っ人で参戦してたらこんな感じに……」

鳴上「でも、そうか。忙しいんだな」

天田「どうかしたんですか?」

鳴上「いや、GWに旅行に行くんだが、一緒に行ってくれる人を探しててな」

天田「うわ、いいなぁ。僕も行きたいんですけどね」

鳴上「忙しいんだろ?なら仕方ないさ」

天田「そういえば、予定なさそうな人がいますけど」

鳴上「ん?……ああ」

天田「武者修行とか出かけそうではありますけどね」

鳴上「うーん……まぁ、後で聞いてみようか」

天田「すみません、同行できなくて」

鳴上「いいんだ。じゃ」

>……?

>どこからか視線を感じる。

鳴上「あ」

>階段から、アイギスがこちらを伺っている。

鳴上「アイギスさん。えーと、今の聞いてました?」

アイギス「何の事かわかりませんが、私はGWの予定ありませんよ」

鳴上「……ひょっとして、旅行行きたいですか?」

アイギス「……鳴上さんと、お友達の楽しい休日を、無理に割って入って邪魔するわけには」

鳴上「いや、そんな風に言わなくても。行きたいなら一緒にどうですか?」

>アイギスの顔が輝いた!

鳴上「……あ」

アイギス「鳴上さんがよろしいのなら、是非一緒に……」

鳴上「すみません。一人絶対に聞いておかなきゃいけない人を忘れてました。また後で!」

アイギス「あっ、鳴上さ……」



【三階】


鳴上「鳴上です。起きてますか?」

美鶴「……ああ。どうかしたか?」

鳴上「ええと、GWの旅行……桐条さんを連れて行くっていうのもアリですか?」

美鶴「私を?どうして?」

鳴上「……あいつが、いますし」

>……美鶴はしばらく無言だった。

鳴上「あの」

美鶴「確かに、彼には会いたい。しかし……自信が無いんだ」

鳴上「自信?何のですか?」

美鶴「彼にもう一度会って、その後普段通りに振舞えるのか。すんなり別れる事が出来るのか」

鳴上「……」

美鶴「昨夜のように、後ろ髪を引かれる思いをするのなら、私は……」

鳴上「桐条さん……」

美鶴「だから、気持ちはありがたいが他のメンバーにしてくれ。頼む」

鳴上「……わかりました。それじゃ、山岸さんとアイギスさんと行って来ようと思います」

美鶴「ああ。思う存分楽しんでくるといい」

鳴上「はい。許可してくださってありがとうございます」

美鶴「……用件はそれだけか?」

鳴上「はい。失礼します」

>結局、美鶴は顔を出さなかった。

>アイギスは不安そうに階段を見上げていた。

鳴上「桐条さん、都合が悪いようなので、一緒に行きましょうか」

アイギス「……!よ、よろしくお願いします!」

鳴上「出発は……そうですね、二日の夜に出れば三日の早朝には着くはずだから、フルに遊べると思うんですが。それでいいですか?」

アイギス「はい!了解であります!」

鳴上「……あります?」

アイギス「では、その日を楽しみにしておきますね!」

>アイギスと旅行に行く約束をした。

真田「俺には無しか」

鳴上「うわぁ!いつからいたんですか」

真田「天田に聞かれてな。GWに予定は無いのかと」

鳴上「ああ、でも今アイギスさんと……」

真田「そうか。だが俺も予定がある。どちらにせよ行けなかったから丁度いいさ」

鳴上「ちなみに、何を……」

真田「……ちょっと、山にでも登ろうかと」

鳴上「登山ですか?」

真田「山篭りだ」

鳴上「……ああ、はい」

>寮の皆に話を聞いて回った。

>心なしか、皆の態度が変わってきている気がする。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが3になった。

美鶴「……いかんな。鳴上に心配をかけるわけには……」

美鶴「湊……」

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが4になった。

>そうだ、風花が向かう事を有里に連絡しなくては……まぁ、後でいいか。


【2012/4/28(土) 堂島宅】


>メールだ。

『差出人:鳴上
  件名:明日
  本文:山岸さんがそっちに向かって出立する。
     明日の昼過ぎにはそちらに到着するはずだ』

有里「来た……風花か。まぁ風花なら……」

>とりあえず、誰かに相談しよう。


【同日 昼 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さんだよー」

有里「来たね」

雪子「こんにちは……有里君が相談って、何かあったの?」

有里「うん、ちょっとね。まぁ、上がって」

雪子「あ、はい。お邪魔しまーす」

>リビングに上がってもらった。

有里「……実は、明日、僕の昔の仲間が来るんだ」

雪子「本当?良かったじゃない」

有里「うん、まぁ……」

雪子「あんまり乗り気じゃない、の?」

有里「というか……実際、どんな顔して会えばいいのかわからない」

雪子「うーん……」

有里「天城さんの家に泊まるはずなんだけど、山岸風花って人。予約とか入ってない?」

雪子「あ、入ってた!確かお二人様って聞いてるけど」

有里「うん。もう一人来るんだ。鳴上君と一緒にね」

雪子「先に山岸さんが来て、その後鳴上君ともう一人が来るのね」

有里「うん。風花はGWが終わるまで……一週間滞在予定みたい」

雪子「で、その間有里君は会わないつもりなの?」

有里「……いや、会う。つもりなんだけど。どうしようか」

雪子「えっ、何を?」

有里「……」

雪子「……」

有里「うーん……」

雪子「せっかくだからさ、皆で出迎えようよ」

有里「皆で?」

雪子「明日だったら皆お休みでしょ?だから、皆で駅まで行って、それから家に案内するの。どう?」

有里「何で、皆で?」

雪子「え。えっと、有里君の友達だったら、私達の友達も同然……かなって、思ったんだけど」

有里「……」

雪子「変、かな?」

有里「いや。じゃあみんなに連絡しようか」

雪子「うん。私も準備するね。明日のいつごろなのかな」

有里「昼頃らしいよ……天城さん、ありがとう」

雪子「へ?何が?」

有里「今更になって尻込みしてた。情けないね」

雪子「うーん、良く知らないんだけど、いろいろあったんでしょ?仕方ないと思うよ……そういうのって、わかる」

有里「結局開き直るしかないって事かな」

雪子「あはは、そうかも。前向きに行かなくちゃ。ね?」

>雪子のおかげで決心が固まった。

>鳴上にはまた迷惑をかけるかもしれない……が、やはり仲間達と再会する必要はありそうだ。

>『No.18 月 天城雪子』のランクが3になった。



【2012/4/29(日) 晴れ 巌戸台分寮】


風花「それじゃ、行ってきます」

美鶴「道中気をつけてな」

順平「お土産よろしくぅー!」

岳羽「一週間だっけ?長いねー」

風花「先に行って待ってるね、鳴上君」

鳴上「はい。良い所ですよ、八十稲羽」

風花「ふふ、楽しみにしてる」

美鶴「山岸不在の間、全員テレビに入る事は禁止とする。雨が降ってもだ」

真田「まぁ、出て来れないんじゃ仕方ないな」

天田「しばらく雨は無いって言ってましたし、多分大丈夫でしょう」

美鶴「さて、鳴上はあと二日間、きっちり学校に出てもらうぞ」

鳴上「はい。その後、アイギスさんと一緒に出ようと思います」

美鶴「わかった……アイギスは、なにやら張り切っているようだぞ」

鳴上「ええ、凄く楽しみみたいで……」

美鶴「しっかりエスコートするようにな」

>風花が八十稲羽に向かった……。

鳴上「さてと。俺はもう少しこっちか。今日は何をしようか……」

コロマル「ワンッ!」

>コロマルがこっちを見ている……。

鳴上「散歩でも行くか?」

コロマル「ワン、ワンッ」

>喜んでいるようだ……。

鳴上「よし、行こう」



【長鳴神社】


鳴上「神社……?神社に来たかったのか」

コロマル「ワン!」

>コロマルは境内を走り回っている。

鳴上「お気に入りみたいだな」

真田「誰かと思えば鳴上か。どうかしたのか」

鳴上「あ、真田さん。真田さんこそどうしてここに?」

真田「じっとしていては体が鈍るからな。ロードワークと、軽いシャドーでもと思って最近は良く来ているんだ」

鳴上「そうですか……やっぱり凄い体ですね」

真田「鍛えてるからな。触るか?」

鳴上「あ、じゃあちょっとだけ」

真田「こら、変な所触るな……」

鳴上「……硬い」

真田「そうだろ?」

>真田の筋肉を触らせてもらった。

真田「そうだ、鳴上。少し組み手でもしないか」

鳴上「組み手ですか?いいですけど……」

真田「心配するな。寸止めだ。スパーじゃなくて組み手だからな」

鳴上「わかりました。やりましょうか」

真田「お、乗り気だな。結構好きなのか?」

鳴上「以前一度負けてますから。負けっぱなしは好きじゃない」

真田「ふん、いい性格だ。よし、それじゃあ……来い」

鳴上「その前に確認いいですか?真田さん、ボクシングやってるんだと思いますけど、こっちは素人なんで……足もアリでいいですか?」

真田「ほう、蹴りに自信ありか?」

鳴上「まぁ、見様見真似ですが」

真田「武器以外なら何でも良い。それでも負けるつもりは無いがな。それじゃ、改めて」

鳴上「行きます……!」

>真田は頭を下げ、拳を上げた。

>正面から行っても勝ち目は薄い。それは前回わかっている。

>なら、狙うべきは……

真田「なるほど、そう来たかっ!」

>身を低くして横薙ぎに足を払う!

>真田は一歩下がって回避した。

鳴上「ボクシングでは下半身への攻撃はありませんでしたよね?」

真田「はっ、そういう台詞はな。不意を突かれて当たった相手にだけ……言えっ!」

>右の打ち下ろし。

>上体を捻って避ける。

真田「やるじゃないか。ギアを上げるぞ!」

>左、左、左、左。

>連打が止まらない。

鳴上「く、ぐ……!」

真田「どうした。最初の一発以降何も出てこないな!」

鳴上「好きで、固まってるわけじゃ……!」

>反撃に転じる隙が無い。

真田「折角許してやったんだ、足も使えばいいじゃないか」

鳴上「好き勝手言って……っ今!」

>連打に織り込んで来た少し大振りの右。

>一瞬出来た間隙を縫って大きく左へ体を回りこませる。

真田「なっ」

鳴上「使わせてもらいますよ、足」

>千枝との組み手で何度も見た蹴り。

>一撃で勝負を決める破壊力の、後ろ回し蹴り……。

>無防備な背中側からの攻撃。

>決まる……!

真田「おいおい、寸止めだと言っただろう」

鳴上「いっ……痛っ」

>足首に真田の左拳がめり込んでいる。

>上半身を捻り、アッパー気味のショートスイングブロー。

>攻撃に来た部位を拳で叩き落とす、パリングという技術。

真田「惜しかったな。だがとどめの一発、振りが大きすぎた。もう少しコンパクトに蹴っていれば決まってたかもな」

鳴上「蹴りをパリング出来るような人がいると思うわけ無いじゃないですか……」

>……痛かった。

真田「やらなければ、止まる勢いじゃなかった。……だが、やはり強いな。どこで覚えた」

鳴上「ああ、以前組み手してた相手から教わった……というか、見て覚えた技です」

真田「是非その師匠とも戦ってみたいもんだな」

鳴上「なんか、気が合うかもしれませんよ」

真田「そうか。まぁ今日のところは分けとしておこう」

鳴上「……一瞬、手抜きませんでした?」

真田「何の事だ?ま、まだまだ素手で負けるわけにはいかないな」

コロマル「ワンッ!」

真田「なんだ、見てたのか」

鳴上「コロマルはどっちの勝ちだと思う?」

>コロマルは尻尾を振って真田の方へ走り寄った。

真田「レフェリーは俺のようだな」

鳴上「……仕方ないですね、今回は負けでいいです。その内勝ってみせますよ」

真田「楽しみにしているぞ」

>コロマルの散歩をして、真田と組み手をした……。

>『No.04 皇帝 真田明彦』のランクが3になった。

>『No.08 正義 コロマル』のランクが3になった。



【2012/4/29(日) 昼 八十稲羽駅前】


陽介「はぁ……」

千枝「ちょっと、何でそんなに凹んでんのよ」

雪子「私が今日来る有里君の友達の話したら……」

完二「あー、アレっスね。また女かよぉ!って叫んでたんで」

りせ「……また、女の人なのぉ?」

直斗「女性の知り合いが多いんですかね」

有里「偶然だよ」

陽介「俺だってそういうスタイリッシュな青春謳歌してーよ……カミサマ……」

千枝「ほら、顔上げなさいよ」

陽介「うっせぇ!里中にゃわかんねーよ!この、なんつーの?置いてけぼり感っつーの!?」

千枝「はいはい。あ、電車来たよ」

有里「……時間的に、多分これだね」

りせ「どれ、どの人がそうなの!?」

直斗「一週間も滞在するなら、かなり大きい荷物を持ってるでしょうね。例えば、あんな風に」

風花「えっと……鳴上君の話だと、この駅で降りて……」

有里「風花」

風花「あ、はいっ……え?」

有里「久しぶり」

風花「あ……ありさ……」

陽介「……割と好みだ!お疲れさまでーす!ようこそ八十稲羽へ!」

千枝「ちょっと、陽介」

風花「……やっと、会えたね」

有里「うん。やっぱり、この前見てたんだね」

風花「うん、テレビの中で……でも、何となく半信半疑だった。これで、ようやく安心って感じ」

有里「そう。ごめんね、何も言わなくて」

風花「いいの。わかってる。わかってる、から……」

陽介「俺、このパターン前にも見たな……」

完二「先輩、ここは空気読みましょうや……」

風花「会いたかった……会いたかったよ、ずっと」

有里「うん。ほら、風花。汚れちゃうから」

風花「うん。……うん。でも、ごめんなさい、もう少しだけ……」

>風花は膝をついて涙を流した。

>黙って、風花の頭を撫でてあげた。

風花「有里君……有里君……!」

>…………。

有里「落ち着いた?」

風花「うん。ごめんね……ありがとう」

有里「というわけで、ここが八十稲羽だよ」

風花「うん。のどかな所だね……あ、あれ?」

陽介「……」

千枝「……あ、あはは」

雪子「……すごい、ね」

直斗「なんだか、見てるこちらが恥ずかしくなりますね」

りせ「……うーん、強敵カモ」

完二「あー、そのー、なんだ……」

風花「えっと、この人達は?」

有里「こっちで出来た仲間。……友達。ちなみにずっといたよ」

風花「……あ、あぅ、あの……」

千枝「ひ、久しぶりの再会ですもんねー!わかるっ!わかりますっ!」

りせ「そ、そうそう!感極まっちゃうよね!」

直斗「で、ですね。仕方ないと思いますよ」

風花「あ、うぅ、ご、ごめんなさい!恥ずかしい所を……」

陽介「なんでどいつもこいつも既に攻略済みなんだよ……」

完二「だからよ、アンタはちっと空気ってもんをよぉ……」

千枝「と、とにかく!ようこそ八十稲羽へ!歓迎します!」

風花「あ、ありがとうございます。えっと、とりあえず、旅館に案内してもらっていいかな?」

雪子「あ、その旅館家なんです」

風花「あ、そうなの?すごい、若女将ってヤツですか?」

完二「流石に一週間分となると荷物もすげえっスね。俺、持ちますよ」

風花「ありがとう。うわぁ、すごい体。鍛えてるみたいだね。かっこいい」

完二「そ、そうスか?へへへ……」

有里「とにかく、旅館に行ってから続きだね」

陽介「はぁ……」

>八十稲羽に風花がやってきた。

>これから一週間、騒がしくなりそうだ……。


【2012/5/2(水) 晴れ 月光館学園】


鳥海「さて、チャイムが鳴ったら四連休。この二日が無けりゃ九連休だったのに残念だったね。私も残念だったけど」

鳥海「遊ぶもよし勉強するもよし。ちょっとくらい羽目外しても全然構わないわよー。ただし、補導されるような事は絶対しないこと!」

男子「ありゃ自分の仕事が増えるの嫌がってんだな」

鳴上「言ってる事は正しいんだから良いんじゃないか」

鳥海「わかった?わかったら解散。また来週!じゃーねー」

男子「よっしゃ遊ぶぜー!鳴上は旅行だっけ?」

鳴上「ああ、四日間丸々な」

男子「豪勢な時間の使い方だよほんとに。じゃ、来週な!」

鳴上「またな」

>帰って八十稲羽行きの準備をしよう。



【2012/5/2(水) 晴れ 天城屋旅館】


風花「あ、それダウト」

陽介「うぇえ!?」

千枝「花村弱すぎ……」

>風花はすっかり馴染んでいるようだ。

陽介「っくしょー、山岸さんが強すぎんだよ。有里!頼む!仇討ってくれぇ」

有里「ん?僕?……いいよ、やろうか」

千枝「有里君強そうだもんねー」

有里「そうだな……さっきから風花は連勝してるし、ハンデって事で種目はこっちが決めていい?」

風花「ん、いいよ。何にする?」

有里「ポーカー」

陽介「お、渋いので来たな!」

千枝「まさにポーカーフェイスだしね。こりゃ強敵だわ」

風花「いくら有里君相手でも簡単には負けないんだから。いいよ」

有里「……それじゃ、もう一つ提案がある。このポーカー、面白くする為にあるモノを賭けよう」

風花「あるモノ?」

有里「脱衣ポーカー……って言えば、わかるかな」

陽介「脱衣ポーカー!?男のロマンじゃねえか!」

風花「脱衣って……嘘、本気で言ってるの?」

有里「僕は本気だ」

千枝「うっわ……流石にこれはちょっと……」

有里「逃げるの?」

千枝「逃げっ……だ、だって、脱ぐんでしょ?男は平気かもしれないけど、私たちはちょっと」

風花「……ここは、逃げません!やります!」

千枝「ちょ、山岸さん!?」

風花「里中さん。大丈夫。勝てばいいんだよ」

千枝「た、確かにそうだけど……」

陽介「なんだよ里中ー。いざとなったら意気地無しってか?ん?」

千枝「くっ……いいよ、やったろーじゃん!!」

有里「ルールは以下。最も強い役を揃えた者が負けた者を一人指定して、一枚脱がせる事が出来る。靴下は片方で一枚。アクセサリーなんかも一枚扱い」

風花「わかった。その代わり、イカサマは禁止。捨て札は全部伏せて出す事。こっちの条件も飲んでね」

有里「受けよう。じゃあ、ディーラーは誰が?」

風花「公平性を期す為に、ゲーム毎に順番にシャッフルしていって、その都度チェンジの順番を決める。それでどうかな?」

有里「グッド。さ、始めようか」

>脱衣ポーカー勝負が始まった。

>…………。

陽介「でさぁ……なんで俺がパン一なわけ?」

有里「言ったはずだよ、一番強い役を揃えた人が一人指定できるって」

陽介「毎度毎度ハッタリとポーカーフェイスで乗り切って、そんでなんで俺を指名すんだよ」

有里「女の子を脱がすわけにはいかないから……」

風花「結局一回も勝てなかったけどね……」

千枝「こっちがどんだけ揺さぶっても全然無視だし、逆にこっちが不安な時にいちいち煽ってくるし……強すぎるよ……」

陽介「なぁ、服着ていいか?」

有里「どうぞ」

陽介「うぅ……欲張って参加した俺がバカだった……」

風花「でも、楽しかったよ。あ、そうだ。明日鳴上君達が来るんだよね」

有里「あ、そうか」

千枝「いつ頃来るとか聞いてませんか?」

風花「夜移動して、朝早くに着くみたい。休み全部遊びたいんだって」

陽介「おー、楽しみだな。どうする、また出迎え行くか?」

千枝「あ、でも堂島さんと菜々子ちゃんが行くんじゃないかな」

陽介「あー、そっか。じゃあ邪魔すんのも悪いな。じゃ、荷物置いたらジュネス集合でいいか」

風花「有里君はその人たちと一緒に住んでるんだよね」

有里「今お世話になってるね」

千枝「じゃあお出迎えは有里君に任せよっか」

陽介「だな。俺らはその後ってことで。ファーストコンタクトは菜々子ちゃんに譲るか!」

有里「じゃあ彼に連絡とってみるよ。とりあえず脱衣ポーカーを続行しよう」

陽介「どうせまた俺が的じゃねーか!」

>明日、誰が来るのだろうか。

>……また、嫌な予感がする。



【巌戸台分寮】


岳羽「あ、おかえりー」

鳴上「ただいま。早いですね」

岳羽「大学生なんてそんなもんそんなもん。今日出発だっけ?」

鳴上「夜ですけどね。とりあえず準備しないと」

岳羽「男の子はそんなに荷物いらないんじゃないの?」

鳴上「まぁ、俺は前に住んでた家に荷物置いてあるんで……むしろ心配が別にありまして」

岳羽「あー、アイギスね……あの子、あれで結構抜けてるからねー」

鳴上「浮かれようが凄いんで、何かミスしてないかと」

岳羽「あはは、鳴上君わかってんねー。多分、何かやらかしてると思うから。備えはしといた方がいーよ」

鳴上「そういうわけなんで、失礼します」

岳羽「ん、しっかりねー」

>荷物を鞄に詰めた……。

鳴上「と言っても、本当に着替えくらいなんだよな」

>自分の準備は済んだ。

鳴上「……一応、アイギスさんの荷物もチェックした方がいいかな」


【三階】


鳴上「アイギスさん、います?」

アイギス「あ、鳴上さん。今開けます」

鳴上「あ、アイギスさん。今日出発ですけど荷物……は……」

>巨大なトランクが三つ並んでいる!

鳴上「それ、全部持っていくんですか」

アイギス「必要な物を全部と思うと、どうしても……」

鳴上「ちょっと待っててください。岳羽さーん!岳羽さーん!」

岳羽「なに、どうしたの、って……アイギス、あんたねぇ……」

アイギス「うぅ、あの、良ければ選別を手伝ってもらえませんか……」

鳴上「あんまり私物見ちゃうのも何なんで俺はこれで……」

岳羽「ん、とりあえずコレは任せといて。アイギス、ほらこっち!そこ座って!」

アイギス「夜までには終わらせますから、心配しないでくださいね」

鳴上「はい、じゃあ……」

>……色々と多難だ。

美鶴「……」

鳴上「あ、桐条さん……どうかしましたか?」

美鶴「ん、いや。別になんでも無いんだが……」

鳴上「やっぱり、一緒に行きますか?」

美鶴「いい。それは遠慮する。……本心では別だが」

鳴上「……あ、そうだ」

>エリザベスとの約束を思い出した。

鳴上「有里の意思次第ですけど、あいつ、こっちに連れてこれませんかね」

美鶴「何?それは……不可能ではないが。どうしてだ?」

鳴上「やっぱり、現状を皆さん知っておくべきかと。あいつは嫌がってるみたいですが」

美鶴「そういう男だからな。……交渉は、君に任せる。もし彼が認めたら、他の雑事は私がやろう」

鳴上「わかりました。では今夜出発します。ただ、あまり期待しないでください」

美鶴「あくまで彼の意思が優先か。そうだな、それがいい。旅行中、私達の事は忘れても良いから、羽根を伸ばしてきなさい」

鳴上「はい。あと、アイギスさんが荷物の選別に迷ってるようなんで、良ければ手伝ってあげてくれませんか」

美鶴「何?困ったものだな……アイギス。私も手伝おう」

>有里との交渉……難航しそうだ。

>約束した手前、最善を尽くそう。

>ん?

>メールだ……。

>有里に到着予定時刻をメールしておいた。

鳴上「あ、アイギスさんの話し忘れた」

>……まぁ、いいか。



【巌戸台駅】


鳴上「じゃあ、行ってきます」

アイギス「行って参ります」

美鶴「うん。気をつけてな」

天田「楽しんできてくださいね」

岳羽「私らしか見送り来れなくてごめんね」

鳴上「いや、別にそんなに長い別れってわけでもないし。ありがとうございます」

アイギス「鳴上さん!あの電車ですよ!」

鳴上「あ、それじゃまた月曜日に!行ってきます!」

>電車に乗った。

鳴上「これに乗って、途中で乗り換えになります」

アイギス「了解であります!」

>アイギスの目が輝いている……。

鳴上「……楽しいですか?」

アイギス「何故、そんな事を聞くんですか?」

鳴上「いえ、明らかに様子がおかしいので」

アイギス「ほ、本当ですか?おかしいな……」

鳴上「遠足に行く小学生みたいな顔してますよ」

アイギス「それは経験した事が無いのでわかりませんが、そんなにおかしいでしょうか?」

鳴上「アイギスさんって、そんな顔もするんですね。もっと冷静な人かと思ってました」

アイギス「……恥ずかしいです」

鳴上「いいんじゃないですか?俺は好きですよ」

アイギス「……」

>そういえば、向こうに有里がいる事を伝えていない……。

>どう言おうか……。

鳴上「アイギスさん、もし向こうに着いて、信じられないような人が出迎えてくれたらどうします?」

アイギス「何の質問でしょうか?」

鳴上「いや、深い意図は無いんですが」

>アイギスは何かを考えるように首を傾げている。

アイギス「……ああ!サプライズというヤツですか!?」

鳴上「……なんか、それでいいです」

>ある意味最高のサプライズには違いないし、そういう事にしておこう。

>八十稲羽へと向かった……。

GW突入編、本当に突入だけ。

とりあえず本日分は終わり。
では、また後日。

アイギスだとぉ!

風花とアイギスは予想してたけど、再開と同時にオルギアモードで荒ぶるとか無しねw

アイギスが全力で抱きしめたらキタロー死ぬんじゃないかww

アイギスかわええなぁ

女子の中でハブられるゆかりっちカワイソスww
そして>>1

キタローェ・・・
脱衣なのに男脱がすのかよ!しかも紳士な態度見せやがって!

陽介でなくとも悔しいぃぃ

続きはよ

遅くなりました。

有里が脱衣ポーカーを提案した理由
1.陽介が絡んでくる事を見越して、最下位を陽介に任せる事で他のメンバーに油断を作るため
2.賭ける物を作ることで緊張と不安を煽り心理を読みやすくするため
3.ノリと勢い

この内どれかであることは確かです。
では、本日分。



【2012/5/3(木) 晴れ 堂島宅】


菜々子「お父さん、早く!」

堂島「待て待て、まだ時間あるだろう。もうちょっとゆっくり準備させてくれ」

有里「菜々子、楽しみみたいだね」

菜々子「うん!」

堂島「すまんすまん。じゃ、行くか」

>鳴上の出迎えに行こう。


【八十稲羽駅前】


堂島「で、何時だったかな」

有里「そろそろのはずですけどね」

菜々子「……」

>菜々子はうずうずしているようだ。

有里「まぁ、こんな早朝にここで降りる人はあまりいないでしょうから」

堂島「だな。電車が来ればわかるか……って、言ってたら来たな」

菜々子「お兄ちゃん、着いたかなぁ」

有里「んー……あ、アレじゃないかな」

>二人組みが歩いてきている。

>一人は銀髪、一人は金髪の……

有里「……ああ、そうきたか」

菜々子「お兄ちゃんだ!お兄ちゃん!」

>菜々子が走り出して鳴上に抱きついた。

鳴上「うわ!っと……菜々子、久しぶり」

>あちらでは二人が感動の再会をしている。

>そしてこっちでは……

アイギス「あなたは……誰ですか?」

有里「……久しぶり、だね」

堂島「ん?湊、お前……」

アイギス「……っ!!」

>アイギスは両方の手袋の指先を噛んで引っ張り、投げ捨てた。

アイギス「答えなさい!あなたは何者ですか!」

鳴上「あ、アイギスさん!待って……」

有里「君に銃口を向けられるのはこれで何回目かな?せっかく卒業式以来の再会なのに」

アイギス「何故、それを知って……本当に……?」

有里「僕は僕だ。ただいま、アイギス」

>アイギスに歩み寄り、そっと抱き寄せた。

アイギス「な、何故……どうして?本当に、あなたなのですか?」

鳴上「詳しくはまた説明します。とにかく、こいつは本当に有里湊ですよ」

アイギス「あ、あう……ううう……」

有里「アイギス、落ち着いて。煙が……」

鳴上「熱暴走だ……」

堂島「湊。俺にも説明してくれるか」

有里「……長くなりますよ」

堂島「……なら、全部終わってからでいい」

菜々子「お兄ちゃん、湊お兄ちゃんの事知ってるの?」

鳴上「ああ。陽介から話を聞いてたんだ」

菜々子「そっか!あのお姉ちゃんは?」

鳴上「お兄ちゃんが今住んでる所のお友達だよ」

菜々子「お姉ちゃんはどこに泊まるの?」

鳴上「ああ、そうだ。堂島さん、お久しぶりです」

堂島「他人行儀は無しだ。やり直し」

鳴上「はは。ただいま」

堂島「おかえり。で、あそこで煙吹いてる人はなんだったか」

鳴上「あ、アイギスさんです。ええと、天城屋に泊まる予定なんですけど」

堂島「じゃあ家に帰る前に送っていこう。それでいいだろ?」

鳴上「すみません、お願いします」

堂島「いいさ。湊、その人大丈夫か?」

有里「その内再起動すると思います。大丈夫ですよ」

堂島「そ、そうか。じゃ、行くとするか」

>八十稲羽に鳴上とアイギスがやってきた……。


【天城屋旅館】


有里「アイギス?着いたみたいだよ?」

アイギス「うう……はっ!ここは……」

鳴上「今日からしばらく泊まる旅館です。もう山岸さんがいるはずなんで」

有里「天城さんもいるから大丈夫だとは思うよ」

アイギス「ひ、一人で大丈夫です。お手数おかけしました」

堂島「フラフラしてるぞ、大丈夫か」

有里「大丈夫……だと思いますけど」

>アイギスを見送った……。

堂島「さて、そんじゃ我が家だな」

有里「今、鳴上君の部屋は僕が借りてるんだけど……」

堂島「ああ、そうだったな。悠、そういうわけでお前の部屋は今湊が使ってる。どこで寝る?」

鳴上「そうですね……菜々子、一緒に寝るか?」

菜々子「お兄ちゃんと一緒?」

堂島「冗談だ。お前はお前の部屋で寝ろ」

有里「あれ、それじゃ僕は?」

堂島「布団運ぶから一緒に寝たらいいだろう。それとも嫌か?」

鳴上「俺は構わないですよ」

有里「特に不満は無いです」

堂島「悪いな。正直言ってすっかり忘れてた。多少手狭だが、お前らなら平気だろ」



【堂島宅】


堂島「よし。荷物はそれだけだな?」

鳴上「ええ。そんなに持ってくる物もありませんでしたし」

有里「持とうか?」

鳴上「平気だ……ただいま」

菜々子「おかえりなさい!」

堂島「おかえり。どうだ、久々に帰ってきてみて」

鳴上「何とも言えない気分ですよ。懐かしいというか、なんというか」

堂島「はっは、そうか。荷物置いたら菜々子の相手してやってくれ。お前の事ずっと待ってたんだ」

鳴上「はい。あ、有里」

有里「ん?どうかした?」

鳴上「お前はこれからどうする?」

有里「んー……とりあえず、旅館行ってあの二人と少し話をしようと思う」

鳴上「そうか。多分その後皆で集まることになると思うけど、大丈夫か?」

有里「わかった。二人も連れて行っていいんだよね?」

鳴上「平気だろ。じゃあ行って来い」

有里「ん。菜々子の相手がんばってね」


【天城屋旅館】


有里「まさかアイギスとは」

>撃たれずに済んだのは本当に運が良かった。

有里「そう何回も狙われたらたまったもんじゃないな。……そういえば、堂島さんは耳から煙を吹く人間を見てもなんとも思わないんだろうか」

>……。

有里「まぁ、いいか」

雪子「あ、有里君。いらっしゃい、どうしたの?」

有里「忙しそうだね」

雪子「連休だからね。残念だけど、今日皆集まっても私行けないみたい。鳴上君には会いたいんだけど」

有里「その内連れてこよう。ええと、金髪で青い目の女の人が今朝来たよね?」

雪子「ああ、私が案内したよ。山岸さんのお部屋でよかったんだよね?」

有里「そう、ありがとう。じゃあちょっとその二人に会ってこよう」

雪子「はい。じゃあまたね」

有里「えーと……この部屋だ」

有里「おはよう。アイギスは……」

風花「あ、有里君。アイギスならそこで寝てる。何か処理限界が来ちゃったんだって」

有里「あ、寝てる?そう……」

>突然、アイギスが飛び起きた。

アイギス「湊さん!!」

有里「や」

アイギス「どうして、湊さんがここに?というか、何故生きて……どういうことですか?」

有里「原因は僕にもわからない。だけど、どうやら今生きてここにいる事は確かみたいだ」

アイギス「……偽者では?」

有里「僕は僕だ。言っただろ?」

アイギス「うー……うーっ……!」

有里「ああまた煙が……」

風花「ああ、駄目よアイギス、壊れちゃったらここじゃ直せないんだから」

アイギス「でもっ!湊さんは、あの時いなくなったはずで、でもまたここにいて、私が会いたくて、会えなかった人は、会えないから、諦めてっ……!」

アイギス「私は!こんなに変わりました。こんなに、人間らしくなりましたって、言いたくてっ……でも、応えてくれる人はっ!」

風花「アイギス……」

アイギス「あなたは私を狂わせる。おかしくなってしまうんです。あなたがいると、あなたがいないと、私は」

有里「アイギス、もういい」

アイギス「でも、やっぱり、無理、嫌、もうどこにも、行かないで、そばにいて、声を聞いて、声を聞かせて、私の、あなたの……!」

有里「僕は、ここにいる。君が今見ている場所に。手を伸ばせば、届く場所に」

アイギス「湊さ……ん……」

有里「ごめんね。これから一杯聞いてあげるから。許して欲しい」

アイギス「……嫌です」

有里「……参ったな」

アイギス「湊さんとの約束は信用できません。湊さんが私の声を聞いて、声を聞かせて、触れて、触れられて、そうやって、ずっと過ごして……」

アイギス「その時、許してあげます。それまでは駄目です」

有里「努力はしよう。とにかく、久しぶり」

アイギス「はい、お久しぶりです。……湊さん」

風花「ほら、アイギス。煙煙。落ち着いて、ね?」

アイギス「ありがとうございます。……ふぅ。でも、いい所ですね、八十稲羽」

有里「そうだね……良い人ばかりだよ」

風花「あ、そういえば。鳴上君のお帰り集会やるぞーって言ってたんですよね」

有里「うん。そのために二人を呼びに来たんだ」

アイギス「なんですか?それは」

有里「いつも集まってる場所があるんだけど、そこに友達が集まっていろいろするんだって」

アイギス「サプライズ!ですか?」

有里「いや、本人なんとなくわかってたみたいだけど」

アイギス「そうですか……残念です」

風花「じゃ、いこっか。アイギスも大丈夫?」

アイギス「はい。案内をお願いします」


【ジュネス内フードコート】


陽介「よーう有里。はやかっ……そこなお姉様は何者ですか?」

アイギス「はじめまして。私はアイギスと申します。鳴上さんと一緒にしばらくこちらに滞在しますので、よろしくお願いします」

陽介「こ、こちらこそ!俺っ花村陽介って言います!有里には仲良くしてもらってます!」

有里「皆はまだ?」

陽介「あん?おー、まだみたいだな」

有里「天城さんは今日旅館が忙しいみたい。参加できないって言ってたよ」

陽介「あー、まぁな。連休は仕方ねーよ。むしろいいんじゃねえか?繁盛してるってこったろ」

有里「そうだね。……あれ、アイギスは?」

陽介「山岸さんもいねーぞ」

有里「おかしいな……さっきまでここに……」

アイギス「これは……」

風花「あ、おいしそー」

陽介「女ってこういうとこで買い物モードに入んのはえーよな」

有里「見習いたいフットワークの軽さだね」

陽介「……とりあえず待つか。揃うの」

有里「そうだね」

>…………。



【堂島宅】


鳴上「元気だったか菜々子」

菜々子「元気だったよ!」

鳴上「そうか。良かった……心配してたんだ」

菜々子「お兄ちゃんいなくてちょっと寂しかったけど、湊お兄ちゃんがいたから平気だったの」

鳴上「有里は良く遊んでくれるのか?」

菜々子「菜々子の代わりにお料理もお掃除もしてくれるんだよ」

鳴上「へぇ、意外だな」

菜々子「いろんなお話してくれるし、やさしいし、本当にお兄ちゃんみたいだった」

鳴上「そっか……お礼言わないとな」

菜々子「お兄ちゃん、今日からいつまでいるの?」

鳴上「日曜日までいるけど、日曜日の昼には帰らないといけないかな」

菜々子「そうなんだ……次は?次はいつ来れる?」

鳴上「んー、次はまたちょっと先かな。夏休みになったらもっと長い間いられるんだけど」

菜々子「そっかー……」

鳴上「そんな顔するな。寂しかったら電話してきてもいいから」

菜々子「ほんと?いいの?」

鳴上「菜々子からの電話ならいつでもいいぞ」

菜々子「やった!じゃあ今度電話するね!」

>ん?

>……メールだ。

『差出人:里中
  件名:おーい
  本文:みんな揃ってるよー!』

鳴上「菜々子、お兄ちゃんちょっと出かけないといけないみたいだ」

菜々子「……行っちゃうの?」

鳴上「ごめんな、帰ってきたらまたお話しよう」

菜々子「うん……」

堂島「こらこら菜々子。悠を友達にも貸してやれ」

菜々子「わかった、お留守番しとくから……ちゃんと帰ってきてね」

鳴上「ああ。ちゃんと帰ってくる。約束な」

菜々子「うん。じゃあいってらっしゃい!」

>ジュネスへ行こう。

有里「……っと、自己紹介はこんなものかな」

アイギス「皆さんよろしくお願いします」

りせ「あのー、アイギスさん?」

アイギス「はい、なんでしょう?」

りせ「えっと……その耳って、どうなってるんですか?」

アイギス「どうとは?」

有里「あ、言ってなかったね。アイギスは……」

風花「機械なんです。わかりやすく言えばアンドロイドとかロボットになると思います」

陽介「えぇ!?あんな美人さんが……ロボット!」

千枝「うっそ……凄い時代になったもんだね……」

直斗「僕は以前同式の物を見た事があるのですが……やはり、信じられない技術ですよね」

完二「う、嘘だ!俺ぁ騙されねえぞ!田舎モンだからってバカにしてんだろ!」

アイギス「そんなつもりは無いし、本当なんです……」

陽介「完二ィ!アイギスさん辛そうだろ!謝れ!」

完二「お、俺っスか!?あ、あの、なんか……すんませんっした……」

アイギス「いいんです。わかっていただけたなら……」

陽介「天使だぜおい……機械仕掛けの天使が舞い降りたぜ……」

有里「あとは鳴上君を待つだけか。連絡してみた?」

千枝「あ、私がやっといたよー。多分そろそろ来るんじゃないかな?」

陽介「って言ってたら来たんじゃねえか?」

りせ「せんぱーい!ひさしぶりー!」

鳴上「皆来てるな。悪い、遅くなって」

陽介「菜々子ちゃんと遊んでたんだろ?ならしゃーねーって。俺らよりずっと待ってただろうからな」

りせ「私だって待ってたもん!」

千枝「……私だって、会いたかったよ」

直斗「ぼ、僕も……ですね」

完二「そんなん言ったら俺だって会いたかったっつーの!お久しぶりっス!」

鳴上「ああ。久しぶりだな。皆元気そうで良かったよ」

陽介「俺はこの前会ったけどな」

アイギス「鳴上さん、湊さんがこちらにいる事知ってたらしいですね」

鳴上「あ、はい。説明するタイミングが無くて」

アイギス「……まぁ、いいです」

風花「あと天城さんがいたらよかったんだけどね……」

直斗「それは仕方ありませんよ……」

鳴上「なんか、山岸さんが知らない間に随分なじんでますね」

陽介「いいお姉様だぜ山岸さん。っと、そうだお姉様で思い出したんだけどよ、お前この前の桐条さんとも同じ寮なんだろ?」

鳴上「ああ、そうだけど」

陽介「で、機械仕掛けの天使アイギスさんと?癒し系山岸さんとも?」

鳴上「そうだな」

陽介「しんっじらんねぇ……俺が一切女っ気の無い生活してる間にそんな事になってるヤツがいるってのが……」

りせ「私だって負けてないモン!アイドルだよアイドル!」

陽介「そ、そうだよな!りせちーは俺寄りだよな!」

りせ「え?まぁ先輩は……普通かな」

陽介「普通!?」

有里「僕も昔はそんな寮で住んでたんだよ」

陽介「あーあー聞きたくねぇ!」

鳴上「陽介だって、里中や天城と仲良くやってたんじゃないのか」

完二「そうっスよ。別に女っ気無いってわけでもねーでしょ」

陽介「天城はともかく、里中はなぁ……」

千枝「あ、何?蹴られたいって?」

陽介「だって……なぁ?」

千枝「そりゃねぇ、こっちだってアイドルのりせちゃんや雪子に比べられたらたまんないっつーのよ!」

有里「直斗を忘れてる」

直斗「いっ、いえ、女性的な魅力という話では僕は……」

鳴上「直斗は可愛いぞ」

有里「直斗は可愛いよね」

完二「先輩方……ついてくっス!俺、二人についていくっス!」

千枝「私にはフォロー無しなのね……」

風花「そんな事ないよ。里中さん、可愛いと思う」

アイギス「私も、とても可愛らしい方だと思いますが」

千枝「あはは、ありがとうございます……」

有里「さて、けど天城さんがいないのはやっぱり寂しいね」

鳴上「俺達で旅館行ってもいいけど……忙しいなら迷惑だな」

千枝「……あ、電話。って雪子からだ。ちょっと待っててね」

>……。

千枝「もしもし?雪子?どうかしたの?……うん、うん。ああ、うん。えーと、今みんないるよ。うん、じゃあ希望者だけってことで。うん。わかった!」

陽介「何てよ?」

千枝「今日団体さんが宴会で入るから人手が足りないんだって。で、まあ今日手伝ってもいいよって人は良ければ手伝いに来て欲しいって」

鳴上「大変だな。よし、なら行こう」

有里「なら、僕も手伝おうか」

りせ「二人行くなら私も手伝う!」

完二「力仕事もあるんスかね。だったら俺も役立てるかもな」

直斗「裏方ならやらせてもらいます」

陽介「っし、んじゃ天城んとこ行くか!」

>雪子の手伝いに天城屋旅館へ行こう。



【天城屋旅館】


雪子「千枝ごめんね、皆にも悪いんだけど……って、皆来てくれたんだね」

鳴上「忙しいんだろ?」

雪子「うん……ああ、でも山岸さんとアイギスさんにまで手伝いさせられないです!お客様なのに!」

風花「そんなの気にしないで……って訳にもいかないんだろうけど。出来る事だけでいいからやらせてもらえない?」

アイギス「何でもやります!」

有里「アイギスは座ってて」

鳴上「アイギスさんは座っててください」

アイギス「……でしたら、お部屋で待ってます」

有里「……鳴上君もわかったんだね」

鳴上「ええ。あの人は気合いを入れれば入れる程駄目になるタイプです」

完二「力仕事なら任せてくださいや!」

直斗「あまりお客さんの前に出る仕事は得意では無いですが……」

陽介「困った時はお互い様ってな!」

雪子「……うん、わかった。ありがとうね。えーと、それじゃ完二君は奥で荷物運んで、千枝は着替えて。それから山岸さんは……」

有里「キビキビしきるね」

鳴上「見習いでも本職だからな」

雪子「有里君と鳴上君はお風呂の掃除お願い。夕方には準備済ませないといけないから、急いで!」

>雪子がパンパンと手拍子を打つと同時に、それぞれは仕事についた……。

有里「温泉なんだね」

鳴上「ああ。広いぞ」

有里「温泉か……僕、実は温泉好きなんだよ」

鳴上「俺もだ。営業終わったら天城に頼んでみようか」

有里「いいね。混浴だと尚いいんだけど」

鳴上「ロマンだな」

有里「ロマンだね」

>……。

鳴上「なぁ、有里」

有里「どうかした?鳴上君」

鳴上「ああ、それもなんだが。君付けはやめてくれないか。歳で言ったら俺の方が敬語使う側なわけだし」

有里「じゃあ、悠って呼んでもいいかな」

鳴上「ああ。俺も湊って呼んでいいか?」

有里「どうぞ。で、何?」

鳴上「湊、俺が帰る時に一緒に来ないか?」

有里「……寮に、戻れってこと?」

鳴上「別にずっといろってわけじゃない。ただ、あっちの仲間にも顔見せするべきだと思うんだ」

有里「……」

鳴上「今のところ、桐条さんと山岸さん、アイギスさんの三人か。全員、お前に会いたかったって言っただろ」

有里「そうだね」

鳴上「お前が何を考えているかは知らない。だけど、会いたいって言ってる人がいるんだ。会ってやってもいいんじゃないか」

有里「でも、僕は過去の遺物だ。君は勿論、寮の皆が前に進むことの妨げになるんじゃないかって思うんだけど」

鳴上「それでも、だ。だってお前は今ここにいる。もうどこにもいない存在じゃないんだ」

有里「……実を言うと、そろそろ会いに行かなきゃなって思ってた」

鳴上「それじゃ、いいのか?」

有里「数日だけ、ね。今僕には新しく仲間が出来た。君が向こうに居続けるなら、僕がこちらに残る必要があるように思う」

鳴上「それはどうしてだ」

有里「二つのチームが繋がるためさ。繋がっていれば協力できる。今回の事件、そうすることでしか終わらせられない……そんな気がするんだ」

鳴上「俺は、向こうで学校があるからな……じゃあ、数日ならいいんだな」

有里「うん。流石に逃げてばかりもいられないからね」

鳴上「ありがとう。俺は約束を守れそうだ」

有里「何の事かわからないけれど、それならよかった。君を嘘吐きにせずに済んだ」

鳴上「そういえば、湊の約束は信用できないってなんで言われてるんだ?」

有里「……いろいろ、あったんだよ。リバースしたりね」

鳴上「そ、そうか……大変だな」

有里「うん……」

>風呂掃除を終わらせた。



【天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】


風花「お疲れ様。あとは本職に任せちゃっていいみたい」

アイギス「……結局、何のお手伝いも……」

完二「思ってたよりきついっスね……いやすげえわ」

陽介「なー。体力持たねえって」

有里「僕らは比較的楽だったね」

鳴上「ああ。ただの掃除だったしな」

陽介「女性陣は今何やってんのかね」

完二「あー、さっき見た感じ料理運んだり会場セッティングしたりしてるみたいっスよ」

風花「あれはあれで大変そうだよね……」

有里「あれ?じゃあ風花は何してたの?」

風花「私は軽くお掃除しただけで追い出されちゃった。お客様だからって」

鳴上「客商売の矜持か……いいな」

有里「プロだね」

>少し休むことにした……。

千枝「うっひゃー、しんどー!やっぱり慣れない事すると疲れるねー」

りせ「でも手際よかったですよぉ」

直斗「ふぅ……何とか終わらせられて良かったですね」

陽介「おーう、お疲れーぃ」

完二「な、直斗、そのカッコどうしたんだよ」

直斗「あ、制服らしくて。和服、余り得意じゃないんだけど……」

有里「いい」

鳴上「いいな」

完二「いいっスね」

風花「こうして見ると、やっぱり女の子なんだね」

雪子「お疲れさまー!すっごい助かった、ありがとう!」

千枝「全然手伝いになったの?って感じだったけどねぇ」

雪子「ううん、そんなこと……あ、良かったら晩御飯食べてって。それからお風呂、入りたい人は入ってもらってって」

有里「温泉!」

鳴上「いいのか?」

雪子「バイト代替わりにって。そんな事くらいしかできないけど……」

有里「混浴は?」

雪子「え?」

有里「混浴……」

雪子「えっと……ごめん、家は混浴じゃない……んだ……」

有里「そう……」

陽介「まーまーまーいいじゃねえか!温泉だぜ温泉!俺着替え取ってこようかな!」

雪子「あ、浴衣だったらあるよ?」

陽介「つっても泊まるわけじゃねえし、着替えて帰んねーとさ」

有里「浴衣……?」

千枝「あー、そうだね。じゃあ着替え取りに帰って再集合?」

鳴上「待て、里中。天城、浴衣は明日返すって出来ないか?」

雪子「え?それは出来るけど……どうしたの?」

有里「浴衣で着替え取りに帰ればいいんじゃないかな」

完二「浴衣で街中歩くんスか?」

鳴上「陽介、完二、ちょっとこっちへ」

有里「……ここで解散したら……浴衣姿が……」

陽介「あ!なるほど……つまり……」

完二「くっだらねぇ、アンタらだけで企んどけよ……」

鳴上「直斗もだぞ……」

完二「……くっ……しゃーねーか」

千枝「まるっと聞こえてんね」

りせ「いいんじゃない?私も浴衣着たいし」

風花「私達は元々ここに泊まってるしね」

鳴上「と、いう事で協議の結果、浴衣に着替えた後解散、明日返却するという事になったがいいか?」

雪子「うん、わかった。じゃあお風呂の準備まだだから晩御飯にしよっか」

陽介「楽しみだな!いろいろ!」

完二「っスね!」

千枝「男ってさぁ……」

風花「あはは……」

>……。

雪子「元々大人数で使う部屋じゃないからちょっと狭いけど我慢してね」

陽介「いやぁ十分十分!さー食おうぜ!」

雪子「あ、山岸さんは一応お酒もありますけど……」

風花「あ、私お酒はあんまり……」

りせ「ねぇ先輩?私ちょっと飲んでみたいなー……?」

雪子「ええ?でも……」

完二「こら、無理言うんじゃねーよ。未成年に酒飲ませたっつったら色々問題だろうが」

りせ「むー、じゃあ山岸さんにちょっと分けてもらうもん!」

直斗「山岸さんも今断ろうとしていたような……」

風花「ふふ、いいよ。でもちょっとだけね?」

りせ「やったぁ!山岸さんありがとー!」

陽介「なになに?酒?俺もちょっともらっていいかな!」

風花「んー、じゃあ天城さん、お酒とあとお水多めに持ってきてもらえる?」

雪子「あ、はーい。わかりました」

鳴上「豪勢だな」

有里「料理か……思い出すな……」

鳴上「何をだ?」

有里「昔、風花の料理を食べた事があってね……」

鳴上「ああ、湊もか」

有里「悠も?」

鳴上「ああ。美味かったぞ」

有里「……君は、本当にすごいんだな」

鳴上「?」

雪子「はい、どうぞ。一応人数分コップも持ってきたよ」

風花「ありがとう。えーと、じゃあ皆で飲む?」

完二「俺ぁいいっス、あんま得意じゃないんで」

直斗「僕も遠慮させてもらいます。……いろいろ、嫌な予感がするので」

りせ「んもーう子供なんだからぁ。山岸さん!ささ、一杯」

風花「ん、どうも。じゃあご返杯」

りせ「あ、水割り?って、そんなちょっとですかぁ?」

完二「飲ませてもらえるだけありがたいと思えっての」

りせ「ぶー、そうやって子供扱いしてー!こんなのほとんど水じゃない!」

直斗「ああ、一気に……」

りせ「水みたいなもんよー!らいたいねぇ、このくらい飲んらくらいれ酔ったりしないっての」

風花「あれ?おかしいな、酔うほど入れてないんだけど……」

りせ「酔ってらいれすー!」

鳴上「俺もちょっと飲んでみたい」

風花「ん、どうぞ」

鳴上「ありがとうございます」

風花「えっと、他には?」

陽介「俺俺!俺もー!」

千枝「わ、私もちょっと……」

雪子「私も飲んでみたいかも」

完二「あーあ、知らねぇぞ俺」

直斗「巻き込まれない内に退避した方がいいかもしれませんね」

風花「有里君はどうする?」

有里「僕は割らなくて良い」

風花「まぁ、一応同い年だもんね……はい」

有里「ありがとう」

アイギス「わ、私も……」

風花「アイギスってお酒飲んで大丈夫なの?」

アイギス「えぅ、わかりません……」

風花「また熱暴走しないとも限らないから、気分だけって事で……ほんのちょっとだよ」

アイギス「ありがとうございます!」



【夜 天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】


雪子「あっはっはっはっはっは!」

陽介「なんつーか、よぉ……こう、ぐぁーっと熱くなる恋っつーの!?してみたいわけよ俺は!なぁ完二!聞いてっか完二!」

完二「ああ、もうウゼェ……」

千枝「私だってねぇ、私だって女の子だっつーの!いろいろさ、してみたいっての!女の子らしーこととかさ!」

りせ「あれぇ~また胸成長したぁ?ずるーい」

直斗「久慈川さん、やめ……ああもう!」

アイギス「ぽかぽかする、でありましゅぅ」

鳴上「皆、酔ってるのか?」

りせ「酔ってないれすってばぁ~」

鳴上「そうか。なら良い」

りせ「あぁ、そーだあれやりましょーよ!いつかみたいにぃ、王様ゲーム!」

完二「ああ!?んだそりゃ。やってらんねーって!酔っ払い同士でやってろ!ほら、行くぞ直斗!」

直斗「わ、は、はい!」

鳴上「雪子、割り箸」

風花「マジックあるよー、これで印つけて」

有里「あれ。もしかして風花も酔ってる?」

風花「私、お酒本当に苦手で。今かなり気持ち良いかも?」

有里「あ、そう……まぁ、どうでもいいか」

りせ「参加者はぁ~?王様は参加者誰でも好きにしていいんだよ~」

陽介「誰でも!?マジか!やるやるぅ!」

雪子「私もやるー!」

りせ「あれ~?里中先輩はぁ~?」

千枝「私はちょっと……」

りせ「駄目れーす。この場の全員強制参加なのだぁ~!」


有里「あれ、それって僕も入ってる?」

鳴上「勿論だ」

有里「じゃあそこでぐったりしてるアイギスは外してあげてよ。僕と風花が入るから」

りせ「ん~?このくらいでダウンしちゃうなんて情けないなぁ~。ま、いいでしょー。はい、人数分できたー!」

鳴上「くじは俺が持とう。よくシャッフルして……さぁ、引け」

千枝「もー、仕方ないなー」

陽介「王様こいっ!」

りせ「えーい」

風花「あはは、これかな?」

雪子「こーれっ!」

有里「はい」

鳴上「残ったのが俺か。さて……」

りせ「王様だーれだっ!」


【王様ゲーム 第一回戦】

たのしいやそいなば おうさまゲームへん

という事でガチ王様ゲーム直前で本日分は終わり。
SSWikiって書いた方がいいんですかね?原作キャラだけだしいらないかな?

とにかく、また後日。

王様ゲームだと・・・!?
wktk

マハ乙ダイン!


ところどころ、キャラのいいところをうまくアピールするのはすごいと思う。

たのしいやそいなば おうさまゲームへん
第二話
たのしいやそいなば みんなでおふろへん

王様ゲーム編はMass Destructionを聞きつつ読むとP4Aな気分かもしれません。


違うかもしれません。
というわけで本日分。



【王様ゲーム 第一回戦】


「王様は……」

>かつて誰かが召喚機をそうしたように、割り箸を回転させ、こめかみに突きつける。

有里「僕だ」

>王様ゲーム、その始まりの一戦。赤いラインの入った割り箸は有里の手に渡った。

有里「といっても最初だし、軽くジャブからいこう」

>全員が次の言葉を待つ。王の命令は絶対であり、参加者に拒否権は無い。

>……有里の言葉一つで彼等は様々な物を捨てねばならない。

有里「……2番が1番の椅子になる。これでどう?」

>一度確認した番号を再度見る。

>椅子になる者、2番を引いたのは……

鳴上「俺だ」

>鳴上だった。

鳴上「俺に座るのは誰だ?」

雪子「あ、私だ」

りせ「あー、いいなぁ~!」

>りせが羨望の眼差しを向ける。

>手を上げたのは雪子。

雪子「じゃ、失礼して……ごめんね、重くない?」

鳴上「むしろいい」

>四つん這いになった鳴上の背中に雪子が体重を預ける。

>一種背徳的でもある行為だ。

りせ「は、早く!次やろっ次っ!次は王様引いちゃうから!」

有里「悠はもう1ゲームそのままね」

鳴上「キングの言う事は絶対だ……屈辱だが甘んじて受けよう」

風花「鳴上君、むしろ嬉しそうじゃない?」

陽介「気持ちはわかるぜ、悠……!」

有里「じゃあ、次は僕がくじを混ぜよう。……さぁ、引いて」

りせ「次こそは!」

雪子「鳴上君はどうやって引くの?」

鳴上「問題ない。届く」

風花「人間椅子って、なんかいやらしいね」

千枝「変な命令されたくなけりゃ王様になれってことね!」

陽介「そういうこ……とっ!これだぁ!」

有里「じゃあ残りが僕と。さて……」

陽介「王様だーれだっ!」



【王様ゲーム 第二回戦】


「王様は……」

>皆が固唾を呑んで自分の割り箸を見る。

陽介「俺だぁあああああ!」

>高々と掲げられる勝利の割り箸。

千枝「うげ、花村かぁ。変な事言わないでよ」

りせ「あーんまた引けなかったぁ」

陽介「へへへへ……行くぜ!相棒!」

鳴上「俺は関係ない」

>陽介は懸命に命令を考える。

>如何にすれば美女揃いの女性陣と美味しい思いが出来るか……。

陽介「っしゃ決まった!4番が王様に『大好き』って言う!言って!お願い!」

千枝「うわ、何それ……」

雪子「4番誰~?」

風花「あ」

陽介「山岸さん!?山岸さんなの!?」


鳴上「俺だ」


>雪子の尻の下で四つん這いになっている鳴上が割り箸を掲げた。

陽介「お前かよ!!」

風花「ごめんなさい、見間違いだった」

鳴上「陽介……大好きだ」

陽介「……おう」

風花「これ……結構アリだと思う」

りせ「花村せんぱいも黙ってたらかっこいいしね~」

千枝「アリって何が?」

雪子「だからぁ、花村君と鳴上君がね……」

陽介「って、女の尻に物理的に敷かれてる男に言われても嬉しくねーっつの!ちくしょ、ミスった!」

千枝「はーい次いきまショー」

りせ「お、里中せんぱいもノってきたにゃ?」

陽介「じゃ、次は俺がくじ持つわ……ほら、引けよ」

鳴上「俺はもう良いんだろ?」

有里「うん」

風花「心なしか残念そう?」

雪子「皆引いた?それじゃ、王様だーれだ!」

【王様ゲーム 第三回戦】


「王様は……」

雪子「私ー!」

りせ「くじ運無いぃ~……」

千枝「雪子だったら安心かな?」

>雪子は割り箸を唇に当てて何か考えている。

風花「天城さんってやっぱり色気があるよね、しっとりした感じ」

りせ「流石にその方面だと勝てないカモ……」

雪子「決まった!」

>不意に立ち上がり決めポーズ付きで宣言する。

雪子「えっと~、6番が王様のほっぺにちゅー!」

千枝「ええ!?」

陽介「何っ!?」

>陽介が何度も自分の割り箸を確認する。

千枝「6番私だ……」

雪子「なーんだ、千枝なのぉ?」

千枝「なによ、嫌なの?」

雪子「んーん。じゃあ、はい。どーぞ!」

有里「陽介、良く見ておくんだ」

陽介「わかってるぜ、見逃すもんかよ!」

鳴上「顔真っ赤だな」

千枝「うー、……はい!」

>一瞬頬に触れるか触れないかですぐに唇を離す千枝。

雪子「ええ?今ちゃんとちゅってした?もっかい!」

千枝「やったって!そんな何回も……恥ずかしいっての!」

鳴上「里中」

有里「王様の命令は」

雪子「絶対だよ?」

千枝「あーもう、わかったってば。じゃ、もっかいイクね?」

>今度はゆっくりと、雪子の頬にかかる髪をかき上げて……。

千枝「……ん」

雪子「ふふ、くすぐったい」

千枝「はい、終わり!ちゃんとやったかんね!」

鳴上「アリだな」

有里「アリだね」

陽介「あれ?里中って意外と……」

風花「良い物見たし次行こっか」

雪子「じゃあ次私がくじ持ったらいいのかな。……はい、どーぞ!」

りせ「次こそ引く!絶対引くんらから!」

風花「あはは、それじゃ王様だーれだ?」



【王様ゲーム 第四回戦】


「キングは……」

鳴上「俺だ」

>割り箸をゆっくりと目の前に持ち上げ、振り下ろす。

鳴上「命令は決まっている……さっき陽介の命令を聞いて思いついた」

>一拍置いて、全員の注視を待つ。

鳴上「女性陣は王様に『大好き』と」

陽介「待て!番号使え番号を!」

有里「陽介」

陽介「あんだよ!」

有里「王様の命令は……絶対なんだよ」

陽介「そんなんアリかよぉ!」

鳴上「キングが言う以上、アリだ」

>女性陣はお互いに顔を見合わせている。

千枝「な、鳴上君に?」

雪子「流石にちょっと恥ずかしいね」

風花「ちょっと、ね」

りせ「ふふん、みんなぐずぐずしてたら私が全部もってっちゃうんだから!せーんぱいっ」

>りせが鳴上の前に座る。

鳴上「最初はりせか」

りせ「うん。えっと、そのね……先輩!だーい好きだよっ!」

雪子「ああ!それはずるい!」

陽介「りせちー大胆だな!」

千枝「ほっぺにちゅーはさっきの命令でしょ!」

りせ「じしゅてきにやるのはいーの!悔しかったらやってみたらいいじゃない?」

雪子「じゃあ私は逆のほっぺもらうね」

>雪子が鳴上の右側に座り、鳴上の右手を両手で包むように握る。

雪子「鳴上君……大好き、です。ん……」

りせ「あー!私手は握ってない!」

雪子「悔しかったらやってみればぁ?あ、でもりせちゃんのターン終わっちゃったかぁ」

りせ「あんなこと言ってぇ!」

千枝「……」

>千枝が左側に座る……。

千枝「あ、あの、鳴上君。その……」

鳴上「恥ずかしがらなくていい。キングの命令だからな」

千枝「そ、そうだね。じゃあ……えっと」

>鳴上の左腕を抱くように抱えて、密着する。

千枝「大好きです……し、失礼して……」

>前髪を上げると、鳴上の額に一つキスをした。

雪子「あー!」

りせ「あー!」

風花「あれ、私の番かな?」

鳴上「どうぞ」

雪子「あんな密着して!千枝ずるいよ!」

りせ「おでこは思いつかなかった……先輩やるぅ!」

千枝「恥ずかしいからあんまり言わないでってば!」

>女性陣は盛り上がっている。

風花「今、あの子達見てないよね?」

鳴上「みたいですね」

風花「……ちょっとからかってみようか。あ、その前に命令だったね。鳴上君」

鳴上「あ、はい」

風花「大好きです。んしょ」

鳴上「ちょっと、山岸さ」

>鳴上と風花の顔が近付く……。

千枝「ん……?あー!」

りせ「ちょ、山岸さん何して……えー!?」

雪子「それは駄目!流石にそれは駄目です!」

陽介「……」

有里「へぇ」

風花「だって、皆があんまり大胆だから残ってる場所が思いつかなかったの」

千枝「だ、だからってそんな、本人は良いって言ったんですか!?」

鳴上「……」

りせ「何でちょっと照れてるの!?ねぇ!先輩!」

陽介「何か酔い覚めてきたわ」

有里「まぁ元々酔うほど飲んでなかったしね」

>女性陣が大荒れなので、王様ゲームは自然と終了になった……。

完二「そろそろ落ち着いたか?」

直斗「まだ騒いでるみたいです。あ、巽君」

完二「あ?どうしたよ」

直斗「いや、助けてくれてありがとうございます」

完二「別に助けたっつーか、まぁお前しか冷静そうなヤツがいなかったからよ」

直斗「それでもありがとう……あ、そろそろ落ち着いたかな?」

完二「おお、みてーだな。……ま、お前が困ってんの見たくねぇしよ」

直斗「今何か……?」

完二「何でもねーよ。ほら、もどんぞ」

直斗「そうですね。お風呂の準備も出来たみたいですし」

完二「……っしゃぁ!」


【浴場】


陽介「ふぃー癒されるぜー。体も心もよー」

完二「なんでアンタは何かある度に心に傷負うんスか」

陽介「なんつーかさ、あいつらだよ。あいつらと比べるとさ……俺って、ちっぽけだなぁって思う瞬間がね……」

完二「そんな壮大なスケールで悩むことでも無いだろ……」

陽介「……そういや、お前何で満足そうな顔して帰ってきたんだ?」

完二「あァ!?誰がいつんな面したよ!?」

陽介「いや、直斗と二人で帰って来た時……あ、何かあったな!?」

完二「べ、べ別に何もねーっつんだよ!キュッと締めんぞ!?」

陽介「その反応が怪しいっつんだよ!吐け!何した!お父さん許しませんよ!」

完二「テメェの息子になった覚えはねぇっつんだよ!」

鳴上「二人とも騒がしいぞ」

有里「温泉は……静かに楽しむものだ」

陽介「あ、悪ぃ……」

完二「すんまセん……」

陽介「あの二人ってよぉ……」

完二「妙にコンビネーションいいっスよね……」

有里「……いい湯だね」

鳴上「ああ」

>……。

陽介「あー気持ちよかった!いやいいな温泉」

完二「そっスね」

陽介「俺あがるけど、お前らどうする?」

完二「あ、俺もそろそろのぼせそうなんで」

陽介「お前、俺が着替えるの見るつもりだろ」

完二「なわけねェだろ……」

有里「僕はもう少し」

鳴上「俺ももうちょっと後で出る」

陽介「そうか。んじゃごゆっくり~」

有里「悠、さっき酔って無かったよね?」

鳴上「最初はちょっと気持ちよかったんだがな」

有里「まぁ、あの量じゃね……」

鳴上「湊こそ全然だったな」

有里「あ、気付いて無かった?僕飲んでないよ」

鳴上「あれ?でも普通に……」

有里「飲み終わった風花のコップと入れ替えておいたんだけど、どうも風花は気付かなかったみたいだ。あれ?私今飲んだのになって顔しながらもう一杯いってた」

鳴上「なんでそんな事を」

有里「……彼女はあまり本音を出さない人だからね。お酒の力で少し後押ししてあげようと思って」

鳴上「へぇ。それで収穫は?」

有里「それなんだけどね。最後のアレ、どうだったの?」

鳴上「何がだ?」

有里「僕からじゃ良く見えなかったんだけど、風花との、ほら」

鳴上「ああ、アレか。アレはな……」

りせ「温泉温泉~」

雪子「あ、りせちゃん、足元気をつけて」

千枝「うー、なんか頭痛い」

直斗「気のせいでは?酔うほどの量飲んでませんよ」

風花「プラシーボってヤツかな?雰囲気に酔うとか」

鳴上「!?」

有里「今、陽介達出ていったよね?」

鳴上「ああ。まだ入ってるって伝えてくれると思ってたが」

有里「陽介だからね……」

鳴上「どうする」

有里「隠れられるような所は……この岩の裏にいよう」

鳴上「それで大丈夫なのか」

有里「昔は処刑されたけど、今日はそうは行かない」

鳴上「何かわからんが急げ!」

りせ「ひろーい!」

千枝「雪子んとこのお風呂、久しぶりだね」

雪子「そうだねー……あ、山岸さん、さっき言ってたの教えてください」

直斗「さっき?何かあったんですか?」

りせ「山岸さんってば、鳴上先輩にちゅーしたんだよちゅー!」

直斗「な、ええっ!?」

風花「ふふふ、違うの。フリだけ。ちょっと顔が近くて恥ずかしかったけどね」

雪子「なんだ、そうだったんですね……」

りせ「本当ですかぁ?」

風花「うん、本当」

有里「本当なの?」

鳴上「ああ」

風花「でも、みんなおかしかったー。すっごい慌てちゃって」

千枝「あ、あれはびっくりしちゃっただけですって!」

風花「そういうことにしとこっかな。でも、私はフリだけど皆はほんとにしてたよね?」

直斗「く、詳しく聞かせてください!」

>バチャン

風花「ん?」

鳴上「湊、お前……!」

有里「しまった」

千枝「あれ、私達以外に誰かいるのかな?」

雪子「お客さんはいないと思ったけど……」

りせ「え、まさか覗き?アイドル的にまずいかも……」

風花「あ、なんか前もこんな事あった気が……」

鳴上「ど、どうする」

有里「落ち着くんだ……落ち着いて彼女達の探索をやり過ごす。その後、彼女達があがったのを確認して僕達もあがろう」

鳴上「それでいいのかはわからんが、それしかないような気もするな」

有里「水音を立てないように集中するんだ……いくよ」

りせ「あ、先輩と有里さんの服あるよ」

有里「!?」

千枝「うそっ!てことは今二人いるの!?」

鳴上「おい」

有里「この命、天に預ける……!」

鳴上「お、おい。何天運に賭けてるんだ。何か策は無いのか」

有里「どうでもいい」

風花「服があるって事はまだ中にいるよね」

雪子「それで隠れられそうな場所っていうと、あの裏とかかな?」

りせ「んー、でもあの二人なら別に見られてもいいカモ」

直斗「冗談じゃない、恥ずかしいですよ!」

風花「えっと……有里君、鳴上君。いるんなら返事して?」

有里「……にゃーお」

雪子「あれ?キツネ?」

鳴上「猫だろ!……あ」

有里「悠……」

風花「あのー、ごめんね?入ってるの気付かなくて……」

有里「いや、こっちこそ」

風花「私達一回出てタオル巻いておくから、その間に出てもらえるかな?」

鳴上「あ、はい。すみません」

りせ「えー、先輩達とお風呂……」

千枝「む、無理無理!恥ずいって!」

風花「大丈夫?ん、はい。今のうちにどうぞー」

>……。

鳴上「窮地は脱したな」

有里「つれてきたのが風花でよかった」

鳴上「誰だったら駄目だったんだ?」

有里「美鶴」

鳴上「ああ……」

風花「二人とも、着替えた?」

鳴上「はい、一応」

有里「どうかしたの?」

風花「うん、私の服の横にチューブがあると思うんだけど、よかったら取ってくれない?」

鳴上「ああ、これですか?」

風花「うん、いつも使ってる洗顔料なんだけどね。それじゃないと荒れちゃって」

鳴上「えーと、あんまりそっち行くとアレなんで、投げていいですか?」

風花「え?タオル巻いてるから平気だよ?」

鳴上「いや、他の連中が見えちゃうんで。位置的に」

風花「あ、そっか。ん、じゃあ投げて」

鳴上「はい。よ、っと」

風花「ありがとー……あっ」

>風花の手から洗顔料のチューブが滑り落ちる。

有里「あっ」

>タオルを抑えていた手でキャッチしようとした為、バスタオルが落ちる。

アイギス「すみません風花さん、どうやら寝てしまっていたようで……」

>アイギスが目を覚まして脱衣所に入ってくる。

風花「ひぁっ……!あ、あの、見えてないよね!?」

有里「う、うん。全然」

鳴上「そうだな、一瞬しか」

アイギス「……あなた達は、駄目です」

鳴上「お、落ち着け」

アイギス「唸れ、パピヨンハート!」

有里「ああ……結局こうなるのか……」

>…………。



【天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】


鳴上「生きてるか、湊」

有里「なんとか、悠」

陽介「悪い悪い、お前らまだ入ってるって言うの忘れちまってたわ」

完二「そのせいで酷い事になったみたいっスよ」

鳴上「いいさ、ただの事故だ……」

有里「事故だし仕方ないね……」

陽介「お、帰って来たんじゃねーか?」

りせ「いやーいいお湯だった!」

千枝「ほんと。やっぱいいねー温泉ってさ」

雪子「皆すっきりした?」

直斗「ええ、随分リフレッシュできました」

風花「もう、アイギスったら。危ない事しちゃ駄目よ?」

アイギス「申し訳ありません……」

完二「おお……」

陽介「なんつーか、風呂上りっていいよな」

有里「体温が上がり上気した肌と、水分の残る髪」

鳴上「芸術だな」

アイギス「あ、すみませんお二人とも……あれはただの事故だったと言われて……」

有里「いいよ、慣れてるし」

鳴上「大丈夫ですよ、慣れてますし」

風花「それはそれでどうして慣れてるの……?」

陽介「さて、とりあえず目的は達されたわけだけどどうするよ?」

鳴上「あ、俺はそろそろ帰る。菜々子と約束してるんだ。随分遅くなってしまったし」

有里「じゃあ僕も帰ろう。皆はどうする?」

陽介「そんじゃ俺らも適当に解散すっか」

りせ「私達はちょっとガールズトークしてから帰るね。ねー山岸さん」

完二「そんじゃ俺も帰っかな」

鳴上「じゃあ、皆また明日」

千枝「ん、また明日!」

雪子「またね」

直斗「お疲れ様でした」

>皆と別れて帰った……。

有里「菜々子は何て?」

鳴上「ああ、俺がいなくて寂しかったけど、お前がいたから平気になったんだってさ」

有里「そう。変わった子だね」

鳴上「気に入られてるみたいだぞ。ありがとうな、俺がいない間」

有里「こちらこそ。こっちの皆には本当に世話になってるよ」

鳴上「明日は、何しようか……」

有里「明日は明日考えようよ」

鳴上「それもそうだな……」


【堂島宅】


鳴上「ただいま」

有里「ただいま」

菜々子「おかえりなさい!菜々子待ってたよ!」

鳴上「遅くなってごめんな」

堂島「おう、布団上げといたからいつでも寝れる……なんで浴衣なんだ?」

有里「いろいろあって、旅館でお風呂いただきまして」

堂島「そうか。明日も休みだからって菜々子あんまり遅くまで起きとかせるなよ」

鳴上「わかってますよ」

有里「菜々子、じゃあ悠お兄ちゃんに遊んでもらう?」

菜々子「湊お兄ちゃんと三人がいい!」

鳴上「だそうだ」

有里「……じゃあ、そうしようか」

菜々子「やった!」

鳴上「菜々子は俺と湊どっちが好きだ?」

菜々子「えー……うーん……」

有里「君は酷な質問をするね……」

菜々子「どっちも大好きだよ?それじゃ駄目なの?」

鳴上「いや、いいんだ。それで」

有里「……」

菜々子「あ、湊お兄ちゃんまた笑ってる。菜々子変な事言ったかなぁ」

鳴上「へぇ、湊はそんな顔で笑うんだな」

有里「変な顔かな?」

鳴上「いや。いい顔だ」

>菜々子と遅くまで遊んだ……。



【自室】


鳴上「変な気分だな」

有里「何が?」

鳴上「いや、こうして二人で同じ部屋で寝る事になるとは」

有里「そうだね、不思議といえば不思議だ」

鳴上「……なぁ」

有里「ん?」

鳴上「あの寮のメンバーで、お前と……その、特別な関係だったのって誰だ?」

有里「皆さ。大切な仲間だよ」

鳴上「そうじゃない。その、男女の仲というか」

有里「……聞きたい?」

鳴上「まぁ、皆の反応を見たらちょっと気になるな。どうなんだ?」

有里「例えば、恋人っていう意味なら……誰もいない。僕と彼女達には、具体的な事は何も無かった」

鳴上「そうなのか?」

有里「うん。でも、好きだったっていうなら……あの寮にいる、アイギス以外の女子は、皆僕の事を好きだったと思う」

鳴上「すごい自信だな」

有里「というか、実際言われたからね」

鳴上「けど、恋人じゃないんだろ?フったのか?」

有里「そういうわけじゃないけど……僕は誰かを選べなかったから」

鳴上「陽介辺りが聞いたら激昂しそうな話だな」

有里「それは君だってそうじゃないの?」

鳴上「俺はそんなにモテた事無いぞ」

有里「……あ、そう。でも、もしだ。自分の道と誰か他人を選ばなければならない時、君はどうする?」

鳴上「どういうことだ」

有里「僕は、彼女達は勿論、仲間達は皆好きだ。大好きだ。けれど、一緒に暮らしていくなら、自分の進む道を歪めなければならない」

鳴上「そうか?」

有里「他人の道と自分の道は決して重ならない。そこには既にお互いが立っているから。だから、もし同じ道を行こうとすれば、自分か相手の道を歪ませる必要があるだろう」

鳴上「……俺は、そうは思わない。相手に近付こう、寄り添おうって時は歪めるんじゃなく歩み寄るって言うんだ」

有里「僕にとっては同じ事さ。彼女達と出会ってから一年も無かった。彼女達に好意を伝えられた時には僕のこたえは見つかってたんだ」

鳴上「命のこたえ、か」

有里「そう、僕という物語の締め括り。大好きだったから、守る為に自分を捧げようと思った。それが彼女達を傷付けるとわかって。そんな僕が誰を選べるっていうんだ」

有里「自分の考える一番のフィナーレを飾ったのに、何故か僕はここにいる。これはおまけか?違う、蛇足だ。僕の今は、あの時の僕からすれば蛇足でしかない」

鳴上「……お前は凄いよ。けど、そんな風に言うのはやめろ」

有里「……わかってるさ、本当は。でも、僕は少なくとも納得して命を終えたんだ。それを引き摺り出されて……良い気はしない」

鳴上「これからだろう、お前も、俺も。前回はお前が納得しても、皆が納得できるこたえじゃなかった。もう一度だ。チャンスだと思えよ」

有里「……君に、かっこつけて退場して、また舞台に上がる時の気まずさがわかるかい?」

鳴上「だから、もうかっこつけなくていい。前はお前にしか出来なかったとしても、今は俺がいる。……付き合うさ、これも縁だ」

有里「悠……なら、足掻くよ?みっともなく、無様に」

鳴上「ああ、いいさ。俺だってそうする。手段を選べるような立場じゃないんだ、本当は」

有里「……ところで、強いて言えば彼女達と特別な関係だったのは確かだよ」

鳴上「つまり、どういうことだ?」

有里「誰も選べない代わりに、皆の想いになるべく応えようとしたからね。それはいろいろあったさ」

鳴上「だから、どういうことだ?」

有里「それは……一緒に部屋で長い時間を過ごした、とか」

鳴上「なんだ、一緒にいただけか」

有里「……君は、鈍いというか純というか、今時珍しいタイプだね」

鳴上「そうかな」

有里「陽介の方がからかい甲斐がある」

鳴上「そりゃ、悪かった……メールだ」

有里「あれ、僕もだ」

>……。

有里「どうも、明日の予定は決まったみたいだ」

鳴上「俺もだ。また菜々子は留守番か……」

有里「じゃあ明日は別行動だね」

鳴上「ああ。じゃあ寝るか……流石に少し疲れた」

有里「移動も長かっただろうし、今日は一仕事したしね。……おやすみ」

鳴上「ああ、おやすみ……また明日な」

>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが3になった。

>『No.13 死神 有里湊』のランクが3になった。

美奈子「……今の内に、考えておかないといけないよ」

美奈子「自分、誰か、隣にいる彼。誰を信じて、誰の為に動くのか……」

美奈子「選ぶ時は、きっと来る。きっと、ね」

たのしいやそいなば いちにちめ おわり

つぎは→たのしいやそいなば ふつかめ

連休最後まで楽しい八十稲羽で済めばいいけど。
済むかなあ。済まねえだろうなあ。

ということで本日分は終わり。
では、また後日。

メギドラ乙。

乙!


面白いまま持続する珍しいスレに会えて嬉しい。

それはともかく、陽介だけ取り残されていくwある部分だけの話だけどww
頑張れ陽介ww応援だけはしてるwww

そしてダブル主人公男気ありすぎwwww

今更だけど主人公ズはサークルクラッシャー的要素満載なのに、むしろ結束を高めるんだから凄い

というわけで本日分。



【2012/5/4(金) 晴れ 天城屋旅館】


鳴上「お待たせしました」

風花「あ、おはよう。ごめんね、朝から……お友達ともっと遊びたいと思うんだけど」

鳴上「いえ、それは構わないんですけど、アイギスさんは?」

アイギス「もう準備は出来ています!」

風花「だって。じゃあ、今日はお願いします」

アイギス「お願いします」

鳴上「はい。それじゃ行きましょうか」

風花「私は一応一通り案内してもらったんだけどね」

鳴上「あ、そうですか。じゃあどこから行きましょうか……」

風花「商店街とかでどうかな?」

鳴上「俺が言うのも変ですけど、他に見るような所無いですしね」

アイギス「では早速行きましょう!」

>アイギスと風花を連れて町内案内をしよう。


【商店街】


鳴上「ええと、じゃあまず南側から……」

風花「南側と北側に別れてるんだよね」

アイギス「はー、そうなのですか?」

鳴上「ええ。南側には俺がよくお世話になった店が一杯あるんです」

>アイギスは珍しそうに周りを眺めている。

鳴上「ここがだいだらぼっち……あの点はぼっちって読みます。親父さんがアートを作ってるんです」

アイギス「アートですか。……アート?」

>店先には鎧兜からジェラルミンの盾、何故か革靴まで様々な物が置いてある。

アイギス「アートとは難しいのですね……」

鳴上「親父さんが手に入った素材で即興で作ってるらしいんで、素材によって色んな物が……」

風花「あんまり大きい声では言えないんだけど、普通に刃物とかも置いてるんだって」

アイギス「……ああ、つまり交番ですか」

風花「そういう事みたい」

鳴上「かなりお世話になりましたね。次行きましょうか」

>……。

鳴上「こっちが、四六商店。まあ薬屋みたいなものです」

アイギス「ヒットポイント回復するなら」

風花「傷薬に宝玉でー」

鳴上「……?」

アイギス「どこで聞いたかわからないけど、妙に耳に残っている薬局のテーマソングです」

風花「ね。知らない間に覚えてたの」

鳴上「そうですか。ここはおばちゃんが良い人で、探索用に変な薬ばかり買っていく俺の事を心配してくれたりもして」

アイギス「人情ですね!すばらしいです!」

鳴上「あと、雨の日はわざわざ買いに来る人もいないって事で割引に……いや、これは知ってもしょうがないですかね」

風花「私達こっちに住んでないしね」

鳴上「じゃあ、次……」

>……。

鳴上「ここが、四目内書店。あ、今日もだ……」

アイギス「平積みの一冊だけが残っていますね」

鳴上「俺が来る時はいつもこんな感じなんです。何故か」

風花「けど、色んな本あるよ。品揃えが多いってわけじゃないけど、こだわりがあっていい感じ」

鳴上「ええ、どれもいい本ですよ。精神的に成長しそうな」

アイギス「是非読んでみたいですね」

風花「また今度ね」

>……。

鳴上「えーと、ここが愛家です」

アイギス「食べ物屋さんですか?」

風花「中華料理屋さんだって」

鳴上「里中が常に欲している肉丼はここのメニューです。出前もあります」

アイギス「……」

>アイギスはわかりやすく物欲しそうにこちらを見ている。

風花「お昼にね、アイギス」

アイギス「わかりました!」

鳴上「ここも、雨の日は特別メニューが出たりします。すごいですよ」

風花「へぇ、食べてみたいかも」

鳴上「山岸さんじゃちょっと厳しいかも……」

風花「え?どうして?」

鳴上「まぁ、いろんな意味で。次行きましょう」

>……。

鳴上「で、ここが……良かった、まだ惣菜大学だ」

風花「まだ?」

鳴上「店主が趣味でやってるらしくて、定期的に店の種類が変わるんです」

アイギス「それはまた……不思議な話ですね」

鳴上「ここのビフテキ串っていうのが結構人気ですね」

アイギス「ビフテキ?」

風花「ちょっと買ってみる?」

アイギス「いいんですか!?」

風花「うん、じゃあ一本ずつもらおうか」

>……。

風花「正直、お肉硬かったけど……なんだろう、美味しくないんじゃなくて、妙に癖になるかも」

アイギス「やわらかくて美味しかったですよ?」

鳴上「……やっぱり、個人差あるのか。えっと、で、ここが辰姫神社です」

アイギス「神社ですか」

風花「あ、ここが噂の」

鳴上「噂?」

風花「うん。りせちゃんに教えてもらったの。絵馬に書いた願い事が必ず叶うんだって」

鳴上「……へぇ。スゴイデスネ」

風花「あれ、どうかした?」

鳴上「いや、別に。じゃあ何か書いていきます?」

風花「んー、恥ずかしいから今度一人で来ます」

アイギス「あ、あれなんですか?」

風花「あれ?あ、狐じゃない?」

アイギス「初めて見ました」

>狐に手を振っておいた……。

鳴上「じゃあ、次は北側行きますか」

風花「北側にはりせちゃんと完二君のお家があるんだよね」

鳴上「ええ。ただ、店としてはあんまり用事がある方じゃないので……」

風花「あれ、そうなの?」

鳴上「まぁ、行ってみましょう」

>……。

風花「ああ、これは、確かに……」

鳴上「時流には勝てないというか、結構なお店が店じまいしてて……」

アイギス「少し寂しいですね……」

鳴上「それで、ここが完二の実家です」

風花「巽屋……染物屋さんなんだ」

アイギス「はぁー、綺麗ですねー」

鳴上「かなり有名らしいですよ。天城屋にも卸してるとか」

風花「お値段もそこまでしないし、お土産に買って帰ろうかな」

鳴上「ああ、いいかも知れませんね」

完二「あ、誰かと思ったら先輩方っスか」

鳴上「完二。おはよう」

完二「はよっス。家に何か用スか」

風花「うん。寮の皆にお土産買って帰ろうと思って。これ、誰が染めてるの?」

完二「今はお袋っス。昔は親父だったんスけどね」

アイギス「すごく綺麗です。お母様は見事な腕前なんですね」

完二「……へへ、で、どんな人に買うんスか」

風花「あ、うん。女の人が二人で、男の人が……」

>……。

風花「完二君、安くしてくれて良かったね」

アイギス「本当に綺麗……これが職人のワザというヤツですか」

鳴上「大量生産じゃ無理だって言ってましたね。で、ここがマル久豆腐店」

風花「りせちゃんのお家だね。今はお祖母さんがやってるみたい」

アイギス「お豆腐ですか」

りせ「あ、先輩達来てたんですか」

鳴上「ああ。二人の案内をな」

りせ「へぇ~……山岸さん!」

風花「へ、な、何?」

>りせはウィンクしながら親指を立てた。

りせ「頑張ってね!」

風花「あ、あはは。ありがとう……?」

りせ「敵に塩を送るってヤツですよ!私は年月っていうアドバンテージがありますからー」

アイギス「正々堂々、立派です」

鳴上「……?まぁ、後は酒屋とかガソリンスタンドとか……俺は使わない店なんで」

アイギス「なるほど、わかりました!」

鳴上「遊ぶ時は大体沖奈……結構距離はありますけど、別の市まで出かけたりしますね」

風花「もっと時間があったらそっちも行ってみたいね」

鳴上「今日は町内って事で。……あと行く所と言うと」

りせ「先輩、鮫川は?」

鳴上「ああ、あそこも一応見せておくか」

>……。

鳴上「というわけでここが鮫川です」

アイギス「川!ですね!」

鳴上「アイギスさん、良ければ釣りします?」

風花「あ、さっき取りに行ってたのって……」

鳴上「はい、釣具です。ここ、月一で釣り大会とかやってるんですよ」

アイギス「良いのですか?」

鳴上「セッティングできます?」

アイギス「良ければお願いしたいです」

鳴上「じゃあちょっと待ってくださいね……はい、どうぞ。あんまり振りかぶると変な所引っ掛けるんでほどほどに」

アイギス「では爆釣目指して頑張ってきます!」

風花「行っちゃった。元気だね」

鳴上「ですね。そういえば、さっきりせに言われてたのは何なんですか?」

風花「え?ああ、夕べね。いろいろお話してから解散したんだけど、その時にちょっとね」

鳴上「そうですか」

>……。

>風花は黙ってアイギスを眺めている。

>……何か言い出そうとしているようにも見える。

>迷っているようなら、言い出すのを待とう。

風花「……鳴上君、昨日はごめんね」

鳴上「え?」

風花「ほら、王様ゲームの時の……」

鳴上「ああ、アレですか。別に謝るような事は」

風花「駄目だよね、あんな風にしちゃ。……私達が最初に会った日、いつか覚えてる?」

鳴上「ええと……先月の何日でしたっけ……」

風花「八日。久しぶりに寮に帰った日」

鳴上「ですか。まだ一ヶ月も経ってないんですね。毎日どこかで顔を合わせてたからか、随分長い間一緒にいたような気がしてますけど」

風花「私もそう。何だか、ずっと前から知り合いだったみたいに思えるんだ」

鳴上「馴染めてますかね、俺」

風花「少なくとも私には、ね」

鳴上「なら良かったです。……しかし、逆に言えばもう一ヶ月ですか」

風花「そうだね……一ヶ月で、こんなに印象が変わるものなのかな」

鳴上「短いようで長くて、長いようで短い時間ですね。場合によっては180度変わる事もあるんじゃないですか」

風花「鳴上君は、誰か大きく変わった人はいる?」

鳴上「特には……まだ何か、俺には全部見せてくれてない人もいますけど」

風花「それはゆっくりね。……例えばさ、昔好きだった人が忘れられなくて、その人に似た人を好きになっちゃったって人がいるじゃない?」

鳴上「え?」

風花「例えば、の話ね。最初は、昔好きだった人の面影を追ってて、でもいつの間にか、そうじゃなくなってて……」

鳴上「……」

風花「そんなの関係なしに、その人の事が好きだってある日気がついて。そうなるまでの時間って、一ヶ月じゃ短いかな?」

鳴上「人を好きになるのに、時間なんて関係ありませんよ」

風花「そうかな。そう、だよね……もし、それが私が鳴上君に思った事だって言ったら、どうする?」

鳴上「なっ、ええ?」

風花「……冗談。駄目だね、年下をからかって困らせちゃ。ごめんね?」

鳴上「びっくりさせないでくださいよ……」

風花「ごめんごめん。似合わない事しちゃった。でも、私みたいな子じゃドキドキもしないか」

鳴上「……いや、かなりキましたけど」

風花「あ、アイギスどうしたんだろ」

鳴上「ん?あ、根掛かりしてんるんじゃないかな。アイギスさん、あんまり引っ張らないで」

風花「……駄目だ、よね」

>アイギスと風花を町内案内した。

>どうやら楽しんでもらえたようだ。

>『No.07 戦車 アイギス』のランクが3になった。

>風花から感じる感情が特別なものに変化しているような気がする。

>……気のせいだろうか?

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが5になった。

風花「あ、そうだ。鳴上君。お昼から何するか聞いてる?」

鳴上「いや、聞いてませんが。何かあるんですか?」

風花「うん、あの子達がお料理教えてって言うから、皆でお料理しよっかって話してたんだけど」

鳴上「……!」

アイギス「そういえばそろそろ時間でしょうか」

鳴上「俺は、料理はある程度できるんで参加しなくてもいいですかね?」

風花「鳴上君には是非審査員として参加して欲しいって言われてるんだけど……」

鳴上「……わかりました、行きましょう」

>風花の料理教室が行われるらしい。

>……胃が痛くなってきた。


【2012/5/4(金) 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さーん」

有里「来たね」

>玄関には菜々子と千枝が立っている。

有里「や」

千枝「あ、おはよう……」

>千枝は少し元気が無いように見える……

有里「どうかしたの?」

千枝「いや、どうってわけじゃないけど……」

有里「……じゃあ、出かける?」

千枝「あの、鳴上君……出かけてるんだよね?」

有里「悠なら今風花とアイギスの所だけど」

千枝「そ、そっか……じゃあ、あの、良かったら……お部屋にあげていただけませんでしょーか!?」

有里「そんなに気合入れて言わなくても。良いよ、あがって」

千枝「う、うん。お邪魔します……」

有里「悠の荷物もあるからちょっと狭いけど。どうぞ」

千枝「……すぅー、はぁーっ……失礼、します」

有里「好きなように座って。お茶持ってくるから」

千枝「あっ、いい!いいから!お構いなく!」

有里「そう?じゃあいいけど……」

千枝「……」

有里「……」

>……?

>緊張しているのだろうか、挙動不審だ……。

有里「里中さん」

千枝「あ、はい……じゃなくて。あの、前から言いたかったんだけど、その里中さんってのやめない?」

有里「どうして?」

千枝「いや、一応年上……みたいだし。なんか距離あってやだなーって」

有里「そう。じゃあ何て呼ぼうか」

千枝「もっとこー、フランクな感じで!雪子みたいにさ、千枝ーって呼んでくれてもいいから」

有里「それじゃ、これからそうするよ」

千枝「……」

有里「……」

>……やはり、様子がおかしい。

>何か言い出し難い事でもあるのだろうか。

有里「千枝」

千枝「ひゃいっ!」

有里「……?」

千枝「ち、違くて。急に名前で呼ばれたからびっくりしただけ!」

有里「だって千枝がそうしろって」

千枝「ごめん、だけどちょっとワープしすぎた。里中くらいに戻って、ドキドキするから」

有里「じゃあ、里中?」

千枝「えと、なんでしょー」

有里「どちらかというとなんでしょーはこっちの台詞なんだけど」

千枝「そ、そうだね……ごめん……」

有里「謝るような事じゃ無いけど。本当にどうしたの?」

千枝「いや、話があるっていうか……」

有里「悩み事?僕で良ければ相談に乗るよ」

千枝「うん、悩みっていえば悩み。……その、有里君って好きな人とかいる?」

有里「いるよ」

千枝「あ、そうなん……だ」

有里「昔の仲間も、今の仲間も、菜々子も堂島さんも、皆好きさ」

千枝「いや、そういうんじゃなくてさ。好きな女の子っていうか、いいなって思う子とか、いないの?」

有里「あ、恋愛の悩み?」

千枝「まぁ、そうなんだけど……好きな人がいてね。その人の事がずっと好きで、今でも好きなんだけど。同じくらい好きな人が出来たの」

有里「恋多き年頃なんだね」

千枝「年頃、なのかな。この人より好きになる人なんて出てくるのかなーって思ってたんだけどね。その人よりもずっと短い時間で、同じくらい好きになった人がいて」

有里「……」

>思ったより早く、決断の時が来たかもしれない。

>ここで選択肢を誤ると、後々様々な影響が出るだろう。

>……きっと、皆に嫌われるかもしれない。

>しかし、それでも……

千枝「これって、変なのかなって。他の皆には相談出来ないけど、有里君なら経験豊富っぽいしさ。何かいい案だしてくれないかなって」

有里「そうだな……人間の感情なんて、簡単に揺れ動く物だよ。だから、何も変な事では無いと思う。ただ……」

千枝「ただ?」

有里「それは、気の迷いが起こりやすいって事でもあるんだ。短い時間の間に好きになったのなら、勘違いって事もあると思う。その人の事は良く知ってるの?」

千枝「ううん、あんまり……秘密にしてる事が多いみたいで」

有里「だったら、それは勘違いだよ。よく知ってる人を好きになるならともかく、ちょっと話をしたくらいで好きになるなんて、気の迷いとしか思えない」

千枝「そんなこと……!」

有里「無いって言いきれる?今こうして語っている僕を見て、少し印象が変わったんじゃないかな?冷めてる所はあるけど、そんな風に言う人だと思わなかった……みたいに」

千枝「……っ!」

有里「そんなものなんだよ、他人に対する評価なんて。正しく下すには長い時間が必要だ。会って短いのなら……断言しよう。気の迷いだ」

千枝「やっぱり、そうなのかな……」

有里「きっと、そうさ。以前から好きだった人を取るべきだと思うけどね」

千枝「……変な事相談してごめんね。忘れて、さっきの話」

有里「……」

千枝「あ、そーだ!お昼からさ、山岸さんに料理教えてもらうんだ!良かったら審査員って事で有里君も来てよ!」

有里「そう。じゃあ行かせてもらおうかな」

>すまない。すまない。すまない。すまない。

>何度謝っても謝り足りない。

>自分さえいなければ、自分さえ来なければ、もっと早く事件を解決していれば、自分なんかが。

>わかっていたはずだ。知っていたはずだ。

>あの頃ならば、ただ力を増す為の踏み台で済んだ。

>今では、自分にとって無くす事は余りに惜しい存在になってしまっている。

>今、君に応えると、君はきっともっと悲しむ事になる。

>あの子のように。あの人のように。彼女のように。

千枝「……私、一回帰るね。また、後で」

有里「うん。気をつけてね」

>すまない。ごめん。悪い。許してくれ。

>千枝は部屋を出て行った。

>すまない。すまない。すまない。

>こんこんっ

有里「まだ何か?」

菜々子「菜々子だよ?」

有里「ああ、菜々子か。入っておいで」

菜々子「お姉ちゃん、泣いてたよ?ケンカしたの?」

有里「……ああ。ちょっとね。お兄ちゃんがからかっちゃったんだ」

菜々子「うそ。湊お兄ちゃんも泣きそうな顔してるもん」

有里「嘘じゃない、本当さ。後で謝っておくから、菜々子は心配しなくていいんだよ」

菜々子「ちゃんと許してもらってね?お兄ちゃんとお姉ちゃんがケンカしてるの、菜々子嫌だもん」

有里「そうだね。ちゃんと謝るよ」

>謝った所で、謝りきれる物でもないが。

>千枝との間に軋轢が出来てしまった。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のコミュニティがリバースになってしまった。


【天城屋旅館 厨房】


鳴上「なんだ、有里も来たのか」

有里「里中さんに呼ばれてね」

陽介「来たくなかったぜ、俺は」

完二「まぁ……俺もっス」

有里「あの四人はそんなに酷いの?」

陽介「直斗はそうでも無いんだけどな。後の三人が酷いの何のって」

有里「そう……風花も酷いものだったんだけどね」

鳴上「いや、山岸さんは上手いぞ」

有里「本当に?」

鳴上「ああ。俺も少し料理はするが、足元にも及ばない」

陽介「マジかよ。お前って結構上手いじゃん?」

鳴上「まぁ、それなりにやる方だと思ってたんだが。流石に本職を目指す人は違うみたいだ」

完二「本職って、料理人とかっスか……って、有里サンなんでそんな顔してんスか」

有里「信じられなくて……あの風花が料理を仕事に?」

鳴上「学校を出たら調理師免許を取りたいらしい。そんなに驚く事か?」

有里「いや、よく考えたら結構上達してたから……おかしい話ではないのか。いや驚くけど」

完二「今日は何作るかって聞いた人いねえんスか」

陽介「じゃがいもとか人参とかあったぜ」

鳴上「牛肉と玉ねぎも見た。肉じゃがとかかな」

完二「え、マジっスか。肉じゃがって唐辛子とか入れるもんなんスか?」

有里「ま、まぁ入れても……いいんじゃない?」

完二「蜂蜜とか酢とか、あとなんつーんスか?あの、ほら。食器洗う時とかに使う粉」

鳴上「重曹か?」

完二「そうそう、それっスよ。それとか用意してたみたいっスけど」

有里「……いやな、よかんがする」

陽介「へぇ、奇遇だな。俺もだよ」

鳴上「山岸さんがちゃんと監修してくれれば大丈夫だろう」

完二「信じるしかねェな……」

>……。

りせ「いやーこれは上手く出来たでしょ!」

雪子「山岸さん、どう思いますか?」

風花「う、うん。えっと……うん」

千枝「いや、でもまだマシな方だと思うんだけどなぁ」

直斗「何故そうなったのかわからない部分がありますがね……」

鳴上「あ、出来たみたいだ」

陽介「マジで肉じゃがだな。……肉じゃが、か?」

完二「三つくらいは肉じゃがなんスけどね」

有里「赤い肉じゃがと青……?い肉じゃがと、あとは一見普通の肉じゃがと……」

鳴上「あれ、そういえばアイギスさんは?」

風花「一口ずつ味見するって言って、今機能不全に……」

有里「……どれを食べるか、じゃんけんで勝った人から選ぼうか」

りせ「あ、それテレビの企画みたーい!じゃあ、誰がどれ作ったか内緒ね!」

鳴上「行くぞ……最初はグーだ」

陽介「お、おう。ぜってー負けねぇ!つーか負けらんねぇ!」

完二「っしゃオラァ!行くぜ!」

「最初はグー!ジャン、ケン……ポン!」

鳴上「トップだ!」

陽介「くっそぉ!まぁ、まだだ!」

完二「見た目的にセーフティなのが後二つは残る計算っスからね!」

有里「さぁ、選んで」

鳴上「これだ」

>普通の肉じゃがだが、他の物と違い刻んだ生姜と千切ったこんにゃくが入っている。

りせ「さーて、誰のでしょーか!」

陽介「りせちーのじゃねーな」

完二「それは間違いないっスね」

鳴上「いただきます……ん?」

有里「どうかしたの?」

鳴上「いや、美味い。美味いぞ、これ」

風花「ありがとう。それ、私のね」

陽介「ぐっわあああやられた!大本命抜かれちまったよおい!」

風花「変にアレンジするのもどうかと思って、シンプルにしてみたんだけど……」

鳴上「美味しいです。よく味も入ってるし」

風花「先生役が美味しくなかったら悲しかったから、美味しく出来て良かった」

陽介「っしゃ次行くぞ次!次には抜けたい!」

完二「せーの、最初はグー!」

有里「ジャンケン……ポン」

完二「もらった!次俺ェ!」

陽介「ジャンケン弱え俺!」

完二「えーと、でも後肉じゃがらしい肉じゃがは二つか。どっちにすっかな……こっちだ!」

直斗「あっ……」

りせ「あ、こら!反応したらわかっちゃうじゃん!」

陽介「ってことは」

完二「直斗のか、コレ」

直斗「失敗はしてないはずですけど……自信は無いので、おすすめは出来ませんよ」

完二「いや、これでいい。つーかこれがいい。もらうぜ」

直斗「は、はい……どうぞ」

完二「……うん、美味ェ。なんつーんだ?シンプルな味っつーか。だからこそ美味ェっつーか」

直斗「良かった……お粗末さまでした」

陽介「俺思ったんだけどよ。今山岸さんと直斗のが消えたわけだな」

有里「となると、残りはりせと里中さんと、天城さんのになるのかな」

千枝「……」

陽介「わかった。俺も男だ。有里、先に選べよ」

有里「いいの?」

陽介「よく考えりゃ、あいつらの料理知らねんだもんな。そんなんで選べったってわかんねえだろ。だから、俺が犠牲になる」

りせ「犠牲って何よ犠牲って」

有里「陽介……ありがとう」

完二「つっても、どれ行くのが正解なんスかね……」

鳴上「事前情報を知らずに行くなら、まず見た目が普通の……」

有里「僕は、これをもらうよ」

陽介「有里!お前、それ……」

有里「良いんだ。僕の為に陽介が苦しむ事は無い。僕はこの……青い肉じゃがを食べる」

千枝「私の」

有里「え?」

千枝「それ、私のだから……嫌なら、食べなくてもいいよ。いろいろ失敗しちゃったし」

有里「そう。でも食べる」

千枝「あ、だからっ!」

有里「……これ、見た目がどうしてこうなってるのかわからないけど、ちゃんと肉じゃがの味はするね」

千枝「……っ、私も、わかんないの。何でかこんな色になっちゃって」

有里「見た目は独創的だけど、味は悪くない。美味しかったよ」

千枝「そんな、気ぃ遣ってもらっても……」

有里「いや、本当に。ほら」

完二「もごっ!何しやが……ほんとに肉じゃがじゃねえか……」

陽介「逆に不思議だな……」

千枝「……」

りせ「じゃあ花村先輩も選んじゃって!ほらほら!」

雪子「私、今回はちょっと自信あるんだ。どうぞ」

陽介「……天城を信じて!こっちだ!」

りせ「ちょっとぉ、何で私のが残るわけ?」

完二「……見た目の問題じゃねえか?」

陽介「いただきまー……うっ」

鳴上「どうした陽介!」

陽介「苦ぇ!なんでだ、すげえ苦ぇよ!科学的な苦さだよこれ!」

雪子「あれ?おかしいな……」

風花「私が見てない間に、重曹入れちゃったみたいなの……」

完二「アレほんとに肉じゃがに使ったんスか!」

りせ「むー、残った私のは全員に食べてもらうからね!ほら、ありがたく食べなさいよ!アイドルの手料理!」

有里「見た目が辛い」

鳴上「匂いも辛いぞ」

陽介「つーか辛ぇよ」

完二「どう考えても辛ェだろ」

りせ「いいから!ほら!」

>……。


【堂島宅】


鳴上「痛いな」

有里「痛いね」

堂島「どうした、二人とも。マスクなんかして」

有里「空気の流れが沁みるんですよ」

堂島「……?そうか。ああ、二人ともニュース見たか?」

鳴上「いえ、今日は」

堂島「折角の連休なんだが、明日は雨だそうだ。明後日までは続かないって話だが、夜まで降るってよ。出掛けるにしても外で遊ぶのは無理だな」

鳴上「雨、ですか」

有里「わかりました」

堂島「悠は雨男なのかねぇ。ま、気になるなら自分達でも確認しとけ」

有里「わざわざありがとうございます。後で見てみます」

>明日、雨が降るらしい。

>それも夜まで……

>明日は、忙しくなりそうだ。

前向き後ろ向き。
仲違いもあるさ、人生だもの。

そして雨が降る。

というわけで本日分は終了。
では、また後日。

乙。
千枝ェェエェェェ‼

リバースってなんだ

乙です!

>>406
コミュ相手との関係が拗れちゃったってこと。
更にヤバイのになるとブロークンとかもある…のかな?

心中で謝り倒してる湊見てたら・・・(´;ω;)

なんか今回はいろいろありすぎて・・・
でも乙!

岳羽さんだけは一途だと信じたい
ってこれ全員攻略が大前提だっけ?

>>408
これに同意
なんかめっちゃ来るものがある

有里だけなんでリバースしてしまうん(´;ω;`)ウッ…

遅くなりました。

一途である事は美点ですが、以前好きだった人をずっと好きで居続ける事は賢く無いし幸せでもないと思います。
忘れるのではなく、思い出にしてしまう事も生きていく上で必要な事で、そういう事が出来るって事が大人になるって事だと思います。
そうやって思い出にしたはずの人がある日帰ってきたら、どれ程迷う事でしょうか。
飲み込んだ想いが胃液のようにせり上がり、どこかに吐き出さないと破裂してしまいそうになる。
そういう悩みとか、いろいろあるんじゃないかな。
自分にはわかりませんが。

さて、本日分。



【2012/5/5(土) 雨 天城屋旅館】


陽介「降っちまったなぁ、雨」

鳴上「そうだな……」

完二「折角先輩が来てくれてんのによぉ。空気読めっつーんだよ天気もよ」

直斗「天気は仕方ないですよ……それより、問題は今晩です」

有里「だね。恐らく、またテレビにタルタロスが映るだろう」

雪子「また突入だね」

鳴上「今回はどうする。誰か体調が悪いとか……」

千枝「あー、私、無理かも」

陽介「なんだよ、元気が取り得じゃねえのかよ里中」

千枝「うっさい。アレって、色々違うけどマヨナカテレビなんだよね?」

直斗「恐らくは、ですがね。まだ誰のシャドウも出ていないからわかりませんが」

千枝「だったら、やっぱり無理だわ。ごめん、今日は外して?」

有里「……仕方ないね。じゃあ今日はどうしようか」

鳴上「俺は行く。有里はどうする」

有里「僕も行こう。と、なると後二人かな」

りせ「……ごめん、私も今日はパスさせてもらうね」

完二「あんでだよ?どっか悪いのか?」

りせ「いや、そういうんじゃないけど。ちょっと、さ」

陽介「どうしちゃったんだよ皆……」

風花「りせちゃんの役目は私がするから、心配しなくていいよ」

りせ「ごめんなさい、迷惑かけて。じゃあ、お願いしますね」

雪子「じゃあ私も今日のところは……」

直斗「……ああ、なるほど。では、僕も」

完二「どうしたっつーんだよ皆!何かあんのかよ!あるんだったら言えって!」

雪子「えっと……ごめん、今は言えない。いつか、ちゃんと話すから」

陽介「……まぁ、しゃーねーか。だったら俺行くぜ」

完二「俺も行きますよ。女共は何か妙な空気だしよ」

アイギス「私は……すみません。私も今日は……」

鳴上「アイギスさんも……?」

有里「まぁ、いいじゃないか。仕方ないよ……今日は僕達で行こう」

>何か不穏な気配だ……。

>とにかく、準備をしなければ……。

>夜、ジュネスに集まろう。



【同日深夜 ジュネス内フードコート】


陽介「っしゃ!そんじゃ行きますか!」

鳴上「準備はいいか」

完二「いつでもこいっスよぉ!」

有里「前回の感じだと、道中は余裕があると思う。だから今日は二層を攻略してしまおう」

風花「無理はしないでね」

鳴上「それじゃ、行くぞ」

>テレビの中へ入った……。

風花「……」

有里「さてと。行こうか」

クマ「うおおおおおお!センセー!」

鳴上「このパターンはっ……危ないっ!」

>着ぐるみのタックルをすんでの所でかわす。

クマ「いたたた……センセイしどいクマ……」

陽介「おお?クマじゃねーか!ほんとにこっちにいたんだな!」

クマ「おお!?よーチャンクマ!元気だったクマか!?」

陽介「こっちの台詞だっつの。まぁ元気そうで良かったぜ!」

クマ「あ!あん時のオネエタマもいるクマ!」

風花「こんばんわ、クマ君」

完二「え、いつ知り合ったんスか」

風花「前にちょっとね」

鳴上「そういえば、前回の探索じゃいなかったな。どうかしてたのか」

クマ「寝てたクマ」

陽介「そうかよ……そうだ、クマ。お前も来るか?」

クマ「どこ行くクマ?」

陽介「あそこだよ、タルタロスってヤツ」

クマ「え!い、嫌クマ!あそこすっごい怖いクマ!クマ行きたく無いクマ!」

完二「怖いって……どうしたよ、テレビん中だったらお前の庭みてーなもんだろ」

クマ「ちゃうクマ!ここ、いつもの場所じゃないクマ。特にあの高いの、とんでもない匂いするクマ」

有里「どういうこと?」

クマ「怖いモノ近付いて来てるクマ!ていうかアンタ誰クマ?」

鳴上「俺達の新しい仲間だよ。湊、こいつはクマ。テレビの中に住んでる……」

有里「話だけは聞いてたよ。そうか、君が……」

クマ「クマはクマクマ」

風花「怖いモノって、どのくらい近付いてる?」

クマ「見りゃわかるクマ!あれクマ!」

>クマの指差す先には煌々と月が輝いている。

有里「やぁ、久しぶりだね……綾時」

鳴上「綾時……?」

有里「ちょっとした知り合いさ……でも、確かに月がかなり大きく見えるね」

クマ「アレ、ちょっとずつ近付いて来てるクマ」

風花「前回見た時から比べるとかなり接近してるみたい」

クマ「クマよくわからんけどわかるクマ。アレが、あの高いののテッペンにかかった時、凄い事んなるクマ!」

有里「タイムリミットはそこか。……なら、急ごう。あの高さならまだかかりそうだし」

風花「一応、今の高さ覚えとくね。……それじゃ、サポートします。気をつけて」

陽介「今度こそ行くぜー!クマ、お前は怖えなら留守番しとけ!」

クマ「言われんでも留守番するクマ!」

完二「っしゃ!やったらァ!」


【第二層】


陽介「確かに、一階前とは雰囲気違うなぁ……これが階層の区切りってわけね」

有里「そう。っと、早速来たよ」

完二「サクっと始末しちまいましょうや!」

鳴上「ああ、行くぞ!」

>……。

完二「なんつーか、やっぱたいした事無いっスね」

鳴上「だが、まだまだ上はある。油断するなよ」

陽介「ヤル気だねぇ、あの二人……なぁ、有里」

有里「ん?」

陽介「お前さ、里中と何かあった?」

有里「……何も?」

陽介「ちっ、普段とんでも無く読み辛い顔してんのに、こういう時は顔に出てんだよ」

有里「陽介には関係無い話だよ」

陽介「そりゃお前らの間に何があろうと俺ぁ知ったこっちゃねえよ。けどよ、今日の空気。あんな風になんのはごめんだっつってんの」

有里「……」

陽介「だんまり決め込むのもいいけどよ。俺らそんなに頼りねぇか?」

有里「いや、そうじゃなくて」

陽介「そうだっつってんだよお前は!もっと俺ら信用しろよ!頼れよ!」

完二「ちょ、どうしたんスか二人とも」

鳴上「陽介」

陽介「止めんな!前から気になってたんだよ。何でもかんでも自分ひとりでやろうとしやがってよ。この事件だって、締めんのは自分だと思ってんだろ?」

有里「……」

陽介「黙ってねぇで何とか言えよ。気にいらねぇんだよ!」

有里「すまな……」

陽介「謝れっつってんじゃねぇよ!!俺は!お前が!俺らの事を物の数にも思ってねぇんじゃねえかって!それが気に入らねぇっつってんだ!」

鳴上「やめろ、陽介。湊も、黙ってないで正直に言ってくれ。お前はどう思って黙ってるんだ」

有里「……僕の問題は、僕が解決する。それだけだ」

陽介「だからっ……!?」

完二「うわ、先輩!それマズイっスよ!」

>有里の体が宙に舞った。

有里「っ……酷いな。シャドウにやられるよりよっぽど痛かったよ」

鳴上「良くわかった。陽介の言いたい事も俺の言いたい事も何も伝わってないのがな」

陽介「相棒……」

鳴上「湊。聞いてくれ。お前のその判断は、お前なりの気遣いなんだろう」

有里「……そうとも言うね。君達に迷惑をかけたくない」

鳴上「それが間違ってるんだ。……陽介」

陽介「何だよ、いいとこ持って行ってよ。あのな、有里。お前がそう思ってんのは薄々気付いてたよ。けどな、それが俺らをちゃんと見てねえっつってんだわ」

有里「どういうこと?」

陽介「だぁから。そのくらいの事で迷惑だなんて思うわけねえだろ。お前や相棒ほど、他人の荷物抱えてはやれねえけどよ。仲間の重たいモンくらい一緒に持ってやれるっつーの」

有里「でも……」

陽介「でももクソも無ぇって。つーかさ、仲間の為に何かすんのは迷惑って言わねぇと思うんだよな。お前はその辺履き違えてると思うんだわ」

鳴上「それが、仲間だし信頼ってものじゃないのか。湊が今までどうやって生きてきたかはわからない。けど、俺達はそう思うんだ」

完二「ったくよぉ。アンタら、そんな野蛮なやり方しか知らねェのかよ」

有里「……ごめん」

陽介「わ、わかりゃいいんだよ。それより、大丈夫か?漫画みてーな吹っ飛び方してたぜ」

有里「痛かったよ、凄く」

鳴上「悪かった。つい、な」

有里「いや、これは自戒として受け入れよう。みんな、悪かった……確かに、僕と里中さんの間に少しあったのは事実だ」

陽介「まぁそりゃわかってんよ。で、どうしたんだよ」

有里「でも、これは僕と里中さんの問題だと思う。皆の手を煩わせるとか、そういう事じゃなくて。僕が、解決したい。いいかな?」

陽介「最初っからそう言や良かったんだよ……」

完二「なんつーか、殴られ損っスね」

鳴上「……すまん」

有里「いいから。さ、先へ進もう」

風花『……大丈夫?』

陽介「うわっ、そうだ山岸さん聞いてたんだった!」

鳴上「聞かれてるとわかったらちょっと恥ずかしくなるな」

風花『ご、ごめんね。いつ声かけようかと思って……』

完二「さっさと行きましょうや。有里サンもわかってくれたみてえだし」

鳴上「そうだな、先は長そうだ。行こう」

>……。


【39F】


陽介「流石に……疲れてきたぜ……」

完二「まだっスかぁ、三層はぁ」

有里「お疲れ様。この上に……恐らく、番人の大型シャドウがいる」

風花『うん、上階に大型シャドウの反応感知。間違いないみたい』

鳴上「よし……深呼吸三回。いくぞ」

陽介「っしゃあ、終わらせてやんぜ!」

完二「やっちまいやしょうぜ!」

有里「ふぅっ。さ、行こうか」


【40F】


鳴上「ここも、やっぱり大部屋だな」

有里「迷路を回るよりは随分楽だと思うけどね」

陽介「有難えもんだよな」

完二「あ?ありゃなんだ……?」

>マネキンだろうか……。

陽介「人形が、三つ?」

完二「真ん中が女で、横の二つが男って感じっスね」

鳴上「攻撃か?」

有里「風花、シャドウは?」

風花『その辺りにいるはずなんだけど……』

陽介「っと、こいつか!」

>空中に浮かぶ巨大な手首が三つ現れる。

鳴上「なんだ……?」

>手首はそれぞれ人形を掴むと、何やら動かし始めた。

陽介「……こっちに手振ってんぜ」

有里「これ、まるでアレみたいだね」

完二「ああ、人形劇みたい……っスね」

>男の人形がそれぞれ別の方向を向いて立っている。

>女の人形は両者の間をうろうろと歩き始めた……。

完二「これ、もしかして三角関係ってヤツっすかね」

陽介「そうか?それだったら男同士にも何か動きあるんじゃね?」

鳴上「確かに、これは女の方がうろうろしてるだけだな」

>女の人形はどっちつかずうろうろし続けている……。

完二「はっきりしねェなぁ。どっちかに決めりゃいいのに」

陽介「って、何入れ込んでんだよお前」

>女の人形が片方の男に抱きついた!

陽介「お!そっちにすんのか!」

完二「アンタも見入ってんじゃねェか」

鳴上「……見ろ!」

>抱きつかれ無かった方の男の人形が、関節毎にバラバラになり崩れていく……。

陽介「うわぁ」

完二「ひっでェ話だわ……」

風花『……はっ、う……』

有里「風花?」

>人形を持っていた手がそれぞれの人形を放した。

>全ての人形が同じように崩れ、その残骸を手は叩き潰した!

鳴上「来るぞ!」

有里「風花、解析お願い」

風花『あ、えっ!』

陽介「三体とか聞いてねぇって!」

>手の一つから炎が巻き起こる。

>他の一つからは冷気が吹き荒ぶ。

>残りの一つからは電撃が迸る。

>三体はそれぞれ別の属性を使うようだ。

鳴上「右の火のヤツは湊!頼んだ!」

有里「電撃のヤツは陽介、お願い」

完二「俺と先輩は冷たいヤツっスね!」

陽介「オッケー、真ん中のだな!いや、待った!今右と入れ替わったぞ!」

完二「あぁ!?じゃあ俺はどっちやりゃいいんだよ!」

鳴上「落ち着け!」

有里「風花、リアルタイムで属性ごとに指示を……」

風花『あ、はい、今解析を……』

鳴上「詳しい解析は後回しでいいです!属性だけ伝えてください!」

風花『えっ、あの、わ、私……』

陽介「どわっ!こいつ火のヤツじゃねえか!」

完二「先輩!何やってんスか!」

有里「風花!」

鳴上「山岸さん!」

風花『あ、アナライズが……まだ……』

有里「……悠」

鳴上「ああ。山岸さんの様子がおかしい。俺達に出来る事は……」

有里「弱点とか関係無しに、目の前の敵を倒す事」

鳴上「陽介!完二と協力して戦え!」

有里「二人がかりで一体を仕留めて」

陽介「おお?おうよ!行くぞ完二ィ!」

完二「うっしゃ喰らいやがれェ!バスタアタァック!!」

鳴上「さて、俺達は」

有里「一対一だね」

鳴上「信用するぞ」

有里「同文。行こうか」

鳴上「ああ!」


【タルタロス エントランス】


風花「私……私は、そんな……」


【40F】


陽介「そろそろ落ちろっつーの!でぇりゃあ!」

完二「うるぁあ!」

>手が崩れて消えていく……。

陽介「っし片付いた!相棒は!?」

鳴上「ジオダイン!」

>電撃に包まれて、もう一つの手も消滅した。

完二「流石先輩だぜ!」

鳴上「そっちも片付いたか……ぐっ」

陽介「どうした!?どっかやったか!?」

鳴上「かすり傷だ。それより湊は……」

タナトス「グォオオオオオオオオ」

完二「終わってやがる……」

陽介「すげ……服も乱れてねぇよ」

鳴上「流石に湊は頭一つ抜けてるな……」

有里「悠、陽介、完二。無事で良かった」

鳴上「そっちもな。……さて、どうしたものか」

陽介「階段は上がれるようになってんぜ。帰ってもいいんじゃねえか?」

有里「皆疲れてる。帰る事にしようか」

鳴上「そうだな。山岸さん、大丈夫ですか」

風花『あ、その、私……ごめんなさい。大丈夫、です』

有里「帰り道のナビは出来るかな?」

風花『そのくらいなら。役に立たなくてごめんなさい……』

陽介「ま、調子悪い時くらいあるっしょ!そんな気にする事ないっすよ!」

完二「出来たらこういうデカイのとやる時ゃ勘弁してもらいたいっスけどね」

風花『ご、ごめんなさい……』

完二「じ、冗談っスよぉ!」

有里「それじゃ帰ろう。今日はここまでだ。お疲れ様」


【タルタロス前】


クマ「みんな!無事だったクマか!?」

陽介「この野郎ほんとに最後まで留守番してやがったな」

クマ「クマ行かんって言ったクマ。ていうか行けんクマ」

完二「行けんってどういうことだよ」

クマ「あん中にいると、クマおかしくなりそうクマ……だから入れんクマ」

鳴上「特別な何かがあるんだろうな……クマ、無理に入るんじゃないぞ」

クマ「やっぱりセンセイはわかってるクマ!」

陽介「俺はわかってねーって言いたいのかよ!まぁいいや、クマ、帰んぞ!」

クマ「……それも出来んクマ」

陽介「何でだよ、んなに危ねーなら出てくりゃいいじゃねーか」

クマ「何でかわからんけど、あの高いのから離れられないクマ……ほんとはクマも外に出たいクマ……けど、離れたらいかん気がするクマ……」

有里「そう感じるのなら、理由があるんだろう。陽介、仕方ないよ」

陽介「……じゃあ、無茶すんなよ。また雨降ったら来るからよ」

クマ「わかったクマ!クマ待ってるクマ!」

鳴上「じゃあ、山岸さん。お願いします」

風花「……」

鳴上「山岸さん?」

風花「あっ、は、はい。出口作ります」

有里「……?」


【ジュネス内フードコート】


陽介「ふぃー何とか終わったー。腰打ったぜくそ……」

完二「しっかしまだまだ上があるって、あの塔どんだけ高いんだよ……ウンザリするぜ」

有里「まぁそう言わず。攻略しないと色々困る事になるんだよ」

鳴上「やるしかないな」

千枝「……お帰り」

陽介「あれ、里中じゃん。お前今日来ないっつってたのにどうしたんだよ」

千枝「うん。ちょっとね。有里君、今話いいかな」

風花「……千枝ちゃん。大丈夫なの?」

千枝「はい。心配しないでください」

風花「ならいいけど……」

千枝「じゃあ、有里君借りるね。皆はもう帰って」

陽介「そりゃ帰るけどよ。お前本当に大丈夫かよ?」

千枝「だーいじょぶだって。花村も言ってたじゃん。元気が取り得だーって」

陽介「……ま、そりゃそうか。じゃあ帰るぜ。有里はちゃんと送っとくように」

完二「普通それって男が女にするとこなんじゃねースか?」

千枝「あはは……ほら、鳴上君も疲れたっしょ?帰って寝た寝た!」

鳴上「ん、ああ……。山岸さん、送ります」

風花「あ、いい。私、一人で帰れるから。ありがとうね」

鳴上「そうですか?それじゃ……里中、あんまり無理すんなよ」

千枝「大丈夫だってのに、皆心配性なんだから。じゃ、おやすみ!」

有里「……で、話って?」

千枝「うん。有里君、また私の事里中さんって呼んでたよね。どうして?」

有里「呼び捨ては馴れ馴れしいかなと思ってね」

千枝「そっか……今日ね、皆でテレビ見てたんだ」

有里「皆で?」

千枝「そ。今日参加しなかった皆で。有里君たちが戦ってるのも見てたよ」

有里「今日のは映ってたのか……」

千枝「人形劇、どう思った?」

有里「人形劇?……ああ、あれは……別に、何とも」

千枝「そっか。あのさ、昨日した話、覚えてる?」

有里「覚えてるよ」

千枝「あの話さ。もしかしたら違うのかもって思って。もっかい聞いても同じ答えなのかなって思って」

有里「……どうして?」

千枝「あの人形劇見て思ったの。選ばれなかった男の人形が崩れちゃったでしょ。あ、現実にもこういう事あるんじゃないかなって」

有里「現実の人間は崩れたりしないよ」

千枝「肉体的にっていう意味じゃなくて、精神的に?っていうのかな。仲間とか友達との関係もいろいろ変わるだろうし。その辺を心配して、あんな事言ったのかなって」

有里「……」

>千枝に手を握られた。

千枝「冷たい手してるね」

有里「体温が低くてね」

千枝「知ってた?手が冷たい人は心があったかいんだって」

有里「へぇ」

>千枝は泣きそうな顔をしている。

>そんなに見ないでくれ。

>……お願いだから、そんな目で見ないでくれ。

>氷も溶かしそうな視線で僕を見るな。

>決心が氷解する。矜持が揺らぐ。

>僕は……

千枝「こうして、手を握ってるだけですごくドキドキして、だけど落ち着く人なんだよ。それでも、やっぱり勘違いなのかなぁ」

>やめてくれ。

>これほど言葉を出すのが辛いとは思わなかった。

>喉は他人の物のように震えようとしない。

>舌はからからに渇いて上顎にくっついて離れない。

>それでも、言わなければならない。

有里「勘、違い……だよ。きっと、その男は君が思っているような、そんな奴じゃない。勘違い、気の迷いだ」

千枝「そっか……」

>言った途端、足から力が抜けそうになって危なかった。

>虚無感が全身を包み、目の前が暗く落ち込んだ。

>ユルシテクレ。

>頭の中で一度だけ謝って、また平静を取り繕う事にした。

千枝「……先に謝っとく。ごめん」

>ぱぁん。

>音が強烈に響いて、その後左頬が熱くなった。

千枝「私が好き勝手言って、私の勝手で叩いた。本当に、ごめん。もうしない。話はそれだけだから……おやすみ」

>千枝は踵を返すと走り去った。

有里「……今日は殴られてばかりだな」

>口から出たのは、千枝を呼び止める為の言葉でも、謝罪の言葉でもなく、ぼんやりとしたからっぽの言葉だった。

>その声は、空気に混ざってその場で消えた。

>千枝との軋轢が決定的な物になった。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のコミュニティがブロークンになってしまった。

マヨナカテレビ。
人の見たくない部分を映すテレビ。
最悪の想像を映すテレビ。
そこは、そういう場所。忘れてたけど。

女性陣のボイコットは、別に女の子の日とかじゃありませんでした。

というわけで短くなったけど本日分は終わり。
では、また後日。

とうとうブロークンか…
乙だぜ

最初は番長側NTRとか言ってたけど、湊が完全に恨まれ役過ぎて複雑になった。


>>1乙。

何故だろう 有里はこらえているのに鳴上にはガンガンP3勢を落としていってほしいこの感じは

まあキタローにはベスがいるし

綾時もいるしな

こうなっちまったのも皆が皆優しすぎるが故だな

>>428
ようこそNTRの世界へ

ブロークンかぁ…

まあ一夜過ごしちゃったのはベスだけだしな…

oh....

NTRやめてよ!心が痛くなるでしょ!

というわけで本日分。



【2012/5/6(日) 曇り 堂島宅】


>GWも今日で終わりだ……。

堂島「あっという間だったな」

鳴上「ええ、本当に」

菜々子「お兄ちゃん帰っちゃうんだよね……」

鳴上「ごめんな。一学期が終わったらまた来るから」

菜々子「大丈夫だよ、待ってるから。がんばってお勉強してきてね」

堂島「何時に出るんだ?」

鳴上「なるべく遅くに出ようと思ったんですが、明日の準備もあるし昼には出ないと……」

堂島「……そうか。道中、気をつけろよ」

鳴上「はい。それから……」

有里「僕も悠について行こうと思うんです」

堂島「湊もか。どうしたんだ」

有里「向こうに、僕の知人がいるようなので……」

菜々子「湊お兄ちゃんも行っちゃうの?」

有里「うん。ただ、向こうの知人に会った後も、また帰ってきてもいいでしょうか。……堂島さんには、迷惑をかけますが……」

堂島「何度も言わせるな。お前はもう身内だ。お前がいないと菜々子も寂しがるし……洗濯も掃除も誰がやるんだ」

有里「……ありがとうございます。菜々子、僕はすぐに帰ってくるから。その間だけ堂島さんをお願いするよ」

菜々子「お父さんの事なら心配しないで、菜々子ちゃんとするから」

堂島「おいおい、子供みたいな扱いはやめてくれ。二人とも、気をつけてな」

鳴上「はい。じゃあ、これから友達に会ってきます」

堂島「ああ。また駅まで見送りに行くよ」

菜々子「菜々子も行くよ!」

有里「ありがとうございます。じゃ、行こうか、悠」



【ジュネス内フードコート】


陽介「おう、集まってんな」

有里「あ、天城さんまで来てくれたんだ。忙しいって言ってたのに」

雪子「今日で連休も最終日だし、ちょっと時間できたから。気にしないで」

完二「はぁーもう帰っちまうんスねぇ……もっと時間ありゃ良かったのに」

直斗「こればかりは仕方ありませんね。最後まで僕達といてくれる事に感謝しましょう」

りせ「あーあー、次は夏だっけ?それまで待てないー」

鳴上「そういえば、里中はどうしたんだ」

雪子「千枝は……その……」

りせ「今日はちょっと来辛いのカモ……」

有里「……」

鳴上「何かあったのか?」

有里「実は」

風花「遅くなってごめんね……あれ、どうかしたの?」

アイギス「何やら空気が重い気がします」

千枝「どしたのよ、遅刻したから怒ってんの?」

雪子「千枝!来たんだ!」

千枝「な、何よ。鳴上君が帰っちゃうんだからそりゃ来るでしょ」

鳴上「あ」

有里「そういえば」

風花「え?」

有里「言ってなかったんだっけ、皆には」

鳴上「そういえばそうだったな。……ていうか、桐条さんにも言ってないぞ」

有里「電話、早く」

鳴上「あ、ああ。すぐに連絡しよう」

陽介「何だよ二人で。何かあんの?」

有里「詳しい話は後でする。命がかかってるんだ」

完二「命が!?」

鳴上「あ、もしもし。鳴上です」

美鶴『桐条だ。何かあったのか?』

鳴上「ええと、連絡が遅くなったんですが……」

有里「代わって」

鳴上「ん?ああ……すみません、とにかく一度電話代わります。詳しい話はそっちから」

美鶴『何だかわからないが、手短に頼む』

有里「手短でいいの?」

美鶴『みな……!ど、どうかしたのか?』

有里「うん。僕も帰ることにしたから」

美鶴『な!?そ、そうか。それは良かった。なら部屋を用意しないと』

有里「いや、それはいい。帰るといっても数日だけでいいんだ。その間はよろしく」

美鶴『何?ではまたそっちに戻るのか?』

有里「そのつもり。悠……鳴上がそっちにいなきゃいけないわけだから、僕はこっちから事件に挑もうと思って」

美鶴『…………』

有里「美鶴?」

美鶴『いや、なら仕方ないな。では、数日こちらに滞在する事になるのか?』

有里「そうするよ。その間に、皆に顔を見せて……こっちで知った事と今の現状を話す」

美鶴『そうだな。そうしよう。……時間に余裕があれば、私にも付き合ってくれ』

有里「今の僕は特に何の身分も無いから時間はたっぷりある……付き合うよ、いくらでも」

美鶴『そうか!……ええと。こちらに来るという事は、皆に伝えても構わないな?』

有里「うん。もう隠しても仕方ないし」

美鶴『……君は今、八十稲羽にいるんだったな?』

有里「そうだけど、どうかした?」

美鶴『聞き覚えのある名前だと思って。そちらの仲間達というのは高校生か?』

有里「そうだね」

美鶴『ということは、八十神高校の生徒か』

有里「良く知ってるね」

美鶴『去年、月光館に研修旅行で訪れたのが八十神高校の生徒だったんだ。その時、伏見に演説文を考えるのを手伝ってくれと……いや、今はそれはいいか』

有里「去年の何年生?」

美鶴『一、二年生だったと思うが』

有里「じゃあ多分、皆入ってるね」

美鶴『ふむ……よし、ではこうしよう。八十神高校には、研修と交流という名目を通達しておく。一応授業は受けてもらうが、そちらの仲間達から何人かこちらに連れてきてくれ』

有里「いいの?」

美鶴『お互いを知る事が交流の第一歩だろう。まぁ、来たがらないようなら構わない。飽くまで立候補者だけだが』

有里「世話をかけるね。じゃあ、話しておくよ」

美鶴『人員が決まったら学年と名前を教えてくれ。その時点から手続きに入る……もっと早くに言ってくれていれば、余裕もあったのだがな』

有里「こっちでもいろいろあってね。それは本当に申し訳ない。お詫びに何かしようか?」

美鶴『気にするな。このぐらい何の手間でもない。では、今日帰ってくるんだな?』

有里「うん、夜にはそっちに着くと思う」

美鶴『では、鳴上達と一緒に気をつけて帰ってきてくれ……待ってる、から』

有里「了解。じゃあ悠に電話戻すね」

鳴上「ん、というわけです。連絡遅くなってすみません」

美鶴『いや、いいさ。良くやってくれたな。君に任せて正解だった……君も、気をつけて帰ってくるように』

鳴上「はい。それじゃ、失礼します」

陽介「聞こえてんぞ」

雪子「有里君も一緒に行くんだ」

鳴上「ああ。向こうには知り合いも多いし……顔を見せておくべきだと思って俺が言った」

有里「というわけだから僕も数日留守にするよ。その間、雨が降ってもテレビには入らないようにね」

風花「私も初耳なんだけど……」

アイギス「私もです」

鳴上「すみません、実は初日からそういう事に決めてはいたんですが」

有里「忘れてたね、言うの。……それから、君達は皆八十神高校の生徒で良かったよね?」

完二「そうっスけど、それがどうかしたんスか」

有里「去年、港区に修学旅行で行ったんだって?」

鳴上「ああ。二学年合同でな」

有里「もう一回行きたい人ー」

陽介「は?」

雪子「ええ?」

有里「桐条財閥のご令嬢で、勿論月光館にもかなりの影響力がある人がさっきの電話の相手でね。君達が望むなら、研修旅行って名目で連れて来ても良いって言われてる」

陽介「うおーマジかよ!都会!都会!」

直斗「急な話ですね……僕は遠慮させてもらいます」

完二「あー、俺もちっとそういうのは……」

陽介「何だよノリわりーな!都会だぜ!?」

完二「アンタと違って真面目に家の手伝いとかやってんだよ俺は」

直斗「流石に急過ぎて予定が……」

陽介「じゃあ、天城!お前どうするよ!」

雪子「私も、急な話だし……完二君と同じで家の事とかあるから」

りせ「同文……私も行きたいんだけどね……あ!」

千枝「な、何?何でこっち見てるの?」

りせ「いや、チャンスじゃないかなって思って」

千枝「チャンスったってさ……」

りせ「ああもう、女子集合!こっちでちょっと話そ!」

鳴上「……何ですか、あれ」

風花「ちょっと、ね」

アイギス「女の子には色々とあるのです」

陽介「なー寂しい事言わずに行こうぜー」

完二「無理なモンは無理!」

有里「もうちょっと早くに言っておくべきだったね」

陽介「全くだぜ……」

雪子「……だから、ね、がんばって?」

陽介「お、会議終わった」

りせ「里中先輩がついて行きたいそうでーす」

直斗「……まぁ、半ば無理やりですが」

千枝「……ごめん、よろしく」

有里「行きたく無いなら無理に行かなくても」

千枝「いや、行く。ってことで、お世話になります!」

風花「はい、またしばらくよろしくね」

アイギス「ファイトですよ!」

鳴上「何だかわからないが、陽介と里中か。有里、連絡頼む」

有里「うん。二人とも三年だよね」

陽介「おう!で、いつ帰るんだっけ?」

鳴上「これから」

千枝「だよねー」

陽介「こうしちゃいらんねえ!俺帰って準備してくるわ!」

千枝「私も、色々準備してくるね。また後で!」

りせ「有里さん、ちょっと」

有里「ん?僕?」

雪子「お話があるの」

直斗「……僕は知りませんよ」

有里「……話って?」

りせ「里中先輩の事。昨日、いろいろあったみたいですね」

有里「まぁ、ね」

雪子「ねぇ、正直に言って。有里君は千枝の事嫌いなの?」

有里「……」

雪子「絶対、本人にも他の人にも言わないから」

りせ「私たちにだけ、正直な気持ち教えてよ」

有里「好きだよ」

りせ「……聞いといて何だけど、複雑な気分かも」

雪子「その好きって、友達としての好き?」

有里「そうだね」

雪子「それが……その、恋人にしたいって好きに変わる事って、有り得ない?」

有里「有り得ないって話じゃない……と、思う」

りせ「……まぁ、後は本人に任せるしかないんじゃない?」

雪子「そうだね。私達が出来る事はもうない、か」

有里「やっぱり、気を遣わせちゃってるみたいだね」

雪子「当たり前です。あんなに元気無い千枝見たことないよ」

りせ「まぁね、色々あるのはわかるけど……多分、はっきり決着付けば、ね」

雪子「うん。吹っ切れると思う。千枝はそういう子だから」

りせ「だから、後はお任せします、有里さん!」

雪子「どんな形でも、ちゃんと答えてあげて?ああ見えて、すごく臆病なトコロあるから……」

有里「……努力は、しよう」

りせ「話はそれだけです!」

雪子「……ごめんね、変な事言って」

有里「いや……」

>彼女達に求められている事は、自分が今もっとも避けたい事だ。

>しかし……。



【八十稲羽駅前】


堂島「随分大所帯になったな」

鳴上「いろいろとありまして」

陽介「間に合ってよかったぜ……」

千枝「いやほんとに。危なかったよ」

風花「陽介君、荷物が多いんだよ」

アイギス「……笑えないですが」

有里「じゃあ、行って来ます」

鳴上「また来ます……菜々子も、またな」

完二「花村先輩、向こうで先輩達に迷惑かけちゃ駄目っスよ」

直斗「いくら先輩でも、流石にそこまで心配する事は無いでしょう……」

陽介「やめろよ、辛くなるだろ……」

雪子「千枝、しっかりね」

りせ「里中先輩、がんばってー」

千枝「ちょ、やめてって。ほんとに」

菜々子「電車来ちゃったよ!」

鳴上「ああ、ほんとだ。それじゃ、お世話になりました!」

堂島「またな」

有里「すぐ帰ってきますから、あんまり菜々子困らせちゃいけませんよ」

堂島「はは。努力はするよ」



【電車内】


陽介「ああ、そういやコレ」

有里「僕に?」

陽介「おう。忘れてたけどよ、前にタルタロス登った時に言ったろ。俺のお古だけど」

有里「mp3プレイヤー……ヘッドホンもいいの?」

陽介「なんだ、イヤホンの方が好みなタイプ?」

有里「いや、ヘッドホン派。ありがとう」

陽介「とりあえず、俺セレクションで適当に曲入れてあっから。気に入らなかったら入れなおしてくれよ」

有里「うん。聞かせてもらうよ」

>……。

>風花はどこか気まずそうにしている。

>千枝はずっと景色を見ている。

>有里は音楽を聴いている。

陽介「遠いよな、やっぱりさ!来る時どのくらいかかりました?」

アイギス「あっという間でしたよ。ワクワクしてたら着いてしまいました」

陽介「アイギスさんって結構こういうの楽しむタイプっすか?」

アイギス「自覚は無かったのですが、どうやらそのようです」

>……陽介が無理に盛り上げようとしているが、ノっているのはアイギスだけだ。

>どうしてこうなった……。

>……寝よう。



【巌戸台駅前】


陽介「いんやぁ流石に距離あるなぁ。体パキパキだぜ」

鳴上「ええと、誰か来て……いたな」

美鶴「鳴上、有里、山岸、アイギス。お帰り。それから……君は以前会ったな。花村君だったか。それから、こちらが里中さんかな?ようこそ」

花村「お久しぶりっす!お世話になります!」

千枝「あ、は、初めまして。里中千枝って言います。よろしくお願いします」

美鶴「うん。長旅ご苦労、疲れただろう。車を用意してある。乗ってくれ」

>……。

陽介「……って、リムジンかよ」

千枝「運転手付きだったよ……」

鳴上「ちょっと慣れてる自分が嫌だ」

有里「心配しなくても、その内この世に驚く事は無いって思えるようになるよ」

風花「いや、それはそれでどうかと思う……」

アイギス「美鶴さん、今日は皆さんいらっしゃるんですか?」

美鶴「寮にはいるぞ。それから、花村に里中。君達の部屋だが……ホテルを用意してもいいが、どうする?」

陽介「ホテル……どのランクなんだろな、この場合」

千枝「あの、寮内に空き部屋とかってありませんか?無ければいいんですけど……」

美鶴「ああ、確かに寮に住めれば色々と都合がいいんだが……生憎と空き部屋は無くてな。相部屋でよければいくらか都合できるが」

有里「僕の部屋は今どうなってる?」

鳴上「俺が使わせてもらってるぞ」

有里「じゃあ、また一緒に寝るとしようか」

美鶴「狭くないか?」

鳴上「いや、俺は気になりませんし」

有里「同じく」

美鶴「なら、君達は二人であの部屋を使ってくれ。……とにかく、今日は寮の皆に花村と里中を紹介しよう。それから考えるか」

有里「相部屋になりたい人がいるかも知れないしね」

鳴上「気が合いそうな人もいるしな……なんとなく」

美鶴「そういうわけだ。まずは寮に来てもらおう」

陽介「ういーす!」

千枝「わかりましたー」

>……。

陽介「おー……なんつーか、アレだな」

千枝「お、趣がある?感じだよね」

美鶴「寮の建物がかなり古い物だからな……内装は普通だ、心配しなくていい」

有里「外観はこうだけど、中には凄い部屋もあるんだ。何故か一部屋だけ間取りの広い部屋が」

美鶴「よ、よせ。私だって好きであんな部屋にいたわけでは……」

天田「あ、帰ってきたんですね!お帰りなさ……」

有里「や、久しぶり」

天田「本当に、帰ってきてたんですね。有里さん」

有里「皆変わったなぁと思ってたけど、君が断トツだね」

天田「成長期ですから。お帰りなさい。今皆呼んで来ますね……?あの、そちらのお二人は?」

風花「以前鳴上君と一緒に戦ってた仲間なんだって。勿論、ペルソナ使い」

天田「ああ、例の……よろしくお願いします!」

陽介「元気いいな!よろしく!」

千枝「よろしくね」

美鶴「さて、それじゃ入ろう。天田、ラウンジに皆を集めてくれ」

天田「わかりました、ちょっと待っててくださいね」

>……。

岳羽「風花、お帰りー。どうだった?」

風花「うん。楽しかったよ、色々。お土産も買ってきたんだー」

コロマル「ワンッ」

アイギス「コロマルさん、ただいま帰りました」

真田「こいつらが例の……中々、頼もしそうな顔じゃないか」

美鶴「それでは正式に紹介する。彼等は以前鳴上と共に戦ったペルソナ使いだ。彼が花村陽介。彼女が里中千枝」

陽介「よろしく頼んます!」

千枝「えと、よろしくお願いします」

美鶴「そして……」

有里「僕だよ」

真田「……この目で見てもまるで信用できんな。本当に有里なのか?」

有里「僕もよくわかってないですけど、そうみたいですね」

真田「その人を食った態度も変わらずか。よく戻ってきたな」

岳羽「あの、さ。……まぁいいや。お帰り」

有里「ただいま、ゆかり」

美鶴「それぞれ自己紹介してやってくれ。もしかしたらこの中の誰かと相部屋になるかもしれない。数日間だけだがな」

順平「ういーっす、たっだいまー」

有里「あ、お帰り」

順平「おう、有里。今日は早えな」

順平「……ってうわぁ!なんでこいつがいんだよ!え、そんで誰君ら!?」

美鶴「……言っておいたはずだが」

順平「え、何がっすか?」

>……。

順平「最初はな、俺もテンション上がったよ。けどな、気がついたら女性陣みーんな有里の事目で追ってんの。やってらんねえって」

陽介「わかるっ!その気持ちわかります!」

真田「なるほど、カンフーをな」

千枝「ほとんど自己流なんで自慢できるような物じゃないですけど」

鳴上「皆、馴染むの早いな」

有里「似た者同士ってことじゃない?」

美鶴「さて、それではそろそろ二人の宿泊先を決めなければいけないんだが……どうする?」

陽介「俺!俺順平さんと相部屋がいいです!」

順平「おう!泊まれ泊まれ!がんがん泊まってけ!」

美鶴「両者良いようだな。里中はどうする?」

有里「美鶴の部屋だったら余裕あるんじゃない」

美鶴「まぁ、確かにそうだが。里中、それでいいか?」

千枝「あ、全然構わないです。よろしくお願いします」

美鶴「なら、荷物を運び込もう。GWも今日で終わりだ。皆それぞれ明日からの準備をして早めに寝るように。では、解散しよう」

岳羽「有里君、ちょっと話あるんだけどいい?」

有里「ん、構わないよ」

美鶴「あ、湊。私も話が……」

有里「どうかしました?」

美鶴「いや、また今度聞こう。私だけが君を独占する訳にもいくまい」

有里「そう?じゃあゆかり、話なら聞くよ」

岳羽「あ、うん。部屋、来てもらえる?」

有里「いいよ、行こうか」



【ゆかりの部屋】


岳羽「……聞いた時は、びっくりしたよ。帰って来たって、何で?って思って」

有里「僕のも良くわからないんだよね」

岳羽「そうなんだ。……ねぇ、有里君は、何で連絡くれなかったの?」

有里「ん?」

岳羽「一ヶ月くらい前から戻ってきてたって聞いた。なら何でかなって」

有里「……君達に、思い出させたくなかったからね」

岳羽「はぁ?何それ、どういう意味なわけ?」

有里「僕は消えた、終わったものとして、先を見て欲しかったから」

岳羽「相変わらずよくわかんないね、君は……。その自己満足で終わらせるとこも変わってない」

有里「そうかな?」

岳羽「そうだよ。私なんかあの後酷い目にあったんだからね。ていうか、酷い事しちゃったんだけど」

有里「……ごめん」

岳羽「謝れって話じゃないんだってば。相手の事考えすぎるのもどうなのかなっていうか。そういう事」

有里「ゆかりは難しい事を言うね」

岳羽「君がいない間に大人になったんだよ。三年もほったらかしてるから」

有里「そうだね、惜しい事をしたかな」

岳羽「大人になったんだよ。なっちゃったんだよ。君が帰ってこないから、私だけ」

有里「……」

岳羽「今更帰ってきてどういうつもりなの?忘れて、これからは前を向こうって思ったのに、今更」

有里「だから、何も言わなかったんだ」

岳羽「……なんて、ね。冗談」

有里「ゆかり、僕は……」

岳羽「あー、言わないで。真面目な話苦手だからさ。とにかくお帰り。それが言いたかったの」

有里「……ただいま。これからまたよろしく頼むよ」

岳羽「うん、よろしく。ごめんね、時間取らせちゃって。何日くらいいるの?」

有里「用事が無くなったら帰るけど……何か、色々あるみたいだから。一日や二日では帰らないかな」

岳羽「そうなんだ。その内私にも付き合ってよ、久しぶりにさ」

有里「うん、いつでも。それじゃ、おやすみ……また明日」

岳羽「……ばか。今更だよ、ほんとに」



【鳴上の部屋】


鳴上「よく考えたらベッド一つしかないぞ」

有里「布団……って、土足だよね、床はまずいか」

鳴上「……」

有里「……」

鳴上「いや、流石にそれは」

有里「僕は平気だけど」

鳴上「狭いぞ」

有里「くっつけば平気じゃない?」

鳴上「暑くないか?」

有里「僕、体温低いよ」

鳴上「……」

有里「……」

鳴上「どうする」

有里「美鶴の部屋にでも……いや、里中さんがいたっけ。流石にまずいな」

鳴上「いや、桐条さんだけでもまずいだろう。どうしたもんか」

有里「陽介と順平のとこはどうしてるんだろう」

鳴上「見に行ってみるか」

>……。

有里「僕だけど、ちょっといいかな……?」

陽介「流石に狭いっすよ!これ狭いっすよ!」

順平「いける!俺達ならやれる!」

陽介「ちょ、どこ触って、アッー!」

鳴上「……そっとしておこう」

有里「どうでもいい」

鳴上「でも、ここは一つのベッドで寝ようと奮闘してるみたいだな」

有里「僕はそんなに体大きい方じゃないから平気だと思うけど」

鳴上「気分的に微妙だ」

有里「じゃあ椅子で寝ようか?僕、寝るの得意だよ」

鳴上「なんだその特技」

有里「膝枕さえあればどこででも寝れる」

鳴上「そうか……」

有里「どうする?」

鳴上「湊がベッド使えよ。俺は……ラウンジででも寝ようか。この時期だし風邪はひかないだろ」

有里「今は君の部屋だから、君が使うと良い。なら僕がラウンジに行くよ」

鳴上「いや、俺が」

有里「いや、僕が」

鳴上「……一緒に寝るか」

有里「ごめんね?」

鳴上「いいさ。明日桐条さんに言って何か考えてもらおう」

有里「そうしようか。じゃあ、どうぞ」

鳴上「こっちを向くなこっちを。お前の胸で寝る気はない」

有里「冗談だってば。おやすみ」

鳴上「ん、おやすみ」



【2012/5/7(月) 晴れ 巌戸台分寮】


風花「おはよう、もう時間だよ?起きてる?」

鳴上「あ……おはようございます」

風花「有里君も起きてる?」

鳴上「おい、湊……駄目だ、まだ寝てます」

風花「しょうがないな……開けても大丈夫?」

鳴上「あ、はい。どうぞ」

風花「おじゃましま……」

鳴上「ほら、起きろって。山岸さん起こしてくれてるぞ」

有里「風花……?」

風花「な、え、ご、ごめんなさい!何も見てないから!」

>風花は慌てて部屋を出て行った。

有里「おはよう、風花……ってあれ。いないけど」

鳴上「なんだかわからんが逃げられた」

有里「ああ、そう……おはよう、悠」

鳴上「おはよう。俺は学校に行かなきゃならないから……」

有里「僕は……そうだな。美鶴にでも話を聞いてみよう。そういえば、陽介と里中さんも授業受けろって言ってたっけ」

鳴上「連れて行った方がいいのかな」

有里「それも美鶴に聞くしかないね」

鳴上「とにかく着替えよう。さ、早く起きろ」

有里「うん……ふわぁ、あ」

>……。

岳羽「二人ともおはよう……あのさ、私ってそういうのに差別的な感情無いからね」

鳴上「何がですか?」

有里「何が?」

岳羽「いや、だって……有里君、趣味変わった?」

有里「そう言われればそうかもしれないね」

岳羽「あ、そー……ま、そんなことで付き合い方変えたりしないから安心して!じゃ、またね!」

>ゆかりはそそくさと逃げていった。

鳴上「何だ?」

有里「さぁ」

>甲高くヒールの音が響く。

鳴上「あ、桐条さん」

有里「おはよう、美鶴」

美鶴「……話がある、座れ」

鳴上「どうかしたんですか?」

美鶴「どうもこうもない!君達、今朝の話は本当か?」

有里「今朝?」

美鶴「山岸が伝えてくれた。……その、だ、抱き合って……寝ていたそうだな」

鳴上「……あ」

有里「確かに」

美鶴「どういう事だ。話によっては処刑も辞さないぞ私は」

鳴上「いや、その。俺達相部屋でとは言ったものの、寝るスペースを考えて無かったんですよ」

有里「土足で歩く場所に布団は敷けないしね」

美鶴「それと何の関係が……」

鳴上「だから、同じベッドで寝ようかと。それだけです」

有里「二人で寝るには狭かったしね」

美鶴「ああ、なんだ、そういうことなのか……私のベッドだと余裕があったから気がつかなかった。山岸も勘違いしていたんだな。すまない、つい……」

有里「つい、何だと思ったの?」

美鶴「な、何でもない!何でもないったら……」

鳴上「山岸さん、寮中に言いふらしてますね」

美鶴「後で弁解しておけ。さて、話はそれだけじゃない。むしろこっちが重要だ」

有里「僕らの話?」

美鶴「有里には後でいろいろ話がある。鳴上は急を要するぞ」

鳴上「何でしょう?」

美鶴「うん。まだ準備をしているが、里中と花村を学校まで連れて行ってやってくれ。彼らは君のクラスで授業を受ける」

鳴上「わかりました……で、何でそれが急を要するんですか?」

美鶴「時計を見ればわかる」

有里「そろそろ遅刻ぎりぎりだね」

陽介「やめてくださいって!マジで!そのノリはやばいですって!」

順平「いや、夕べのお前……可愛かったぜ?」

陽介「気持ち悪っ!」

順平「なーんだよノリ悪いなー。わぁったよもうやめるっつの」

鳴上「順平さん、陽介。おはようございます。それで陽介。お前も授業だそうだ」

陽介「何、どゆこと?」

美鶴「君達は交流を兼ねた研修という形で来てもらっているから、月光館の授業を受けてもらう事になっているんだ。そして、登校時刻はそろそろだ」

陽介「勉強するんすか!うわー聞いてねぇし!」

美鶴「受験生だろう?しっかりやっておけ。卒業生の私が言うのも何だが、月光館は中々ハイレベルだぞ」

陽介「まぁ、ただ都会で遊ぶだけってわけにもいかねえか。準備してきまーす!」

美鶴「制服と教科書などは用意してある。荷物と一緒に運んだはずだ」

陽介「ああ、アレっすね。急いで取ってきます!」

順平「よう、二人ともおはよーさん」

有里「おはよう」

千枝「すみません桐条さん、遅くなっちゃって……まだ時間大丈夫ですか?」

美鶴「ギリギリだがな」

鳴上「こっちの制服も似合ってるな」

千枝「え?そ、そう?」

順平「おーいいねぇ!千枝ちゃんだっけ?中々いいモン持ってるよ君!」

千枝「あはは……」

陽介「おまたせー!って、里中……なんか、顔いつもと違わね?いじった?」

千枝「アンタはほんとに……」

鳴上「それは後にしろ。時間無いし、急いで学校だ」

有里「いってらっしゃい」

順平「授業は真面目に出ろよ!」

美鶴「気をつけてな」


【ラウンジ】


美鶴「さて、湊。君には聞きたい事がある」

有里「わかってる事ならなんでも答えるよ」

美鶴「いや、そうじゃない。君、最後は……高校二年だったな」

有里「そうだね、あの年を終わらせて……」

美鶴「で、だ。君は今こうして戻ってきたが、今の所戸籍も何も無いわけだな?」

有里「そうだね。死んだ事になってる……んだよね?」

美鶴「ああ、そうだ。……話というのはそこなんだ。もし君にその気があるのなら、正式に戸籍を取ってもいいと思う」

有里「美鶴が身元を保証してくれるってこと?」

美鶴「私が、というより桐条が、だな。そして、もっと言うなら。君を学校に通わせる事も出来る」

有里「学校に?」

美鶴「ああ。君が八十稲羽にいたいと言うのなら八十神学園になる。試験は受けてもらうが……私の知る君の学力なら余裕を持って編入できるはずだ」

有里「……」

美鶴「煩わしい事か?それとも、またどうでもいい、とでも言うのか?」

有里「いや、非常に魅力的な申し出で戸惑ってる」

美鶴「珍しいな。君がそこまで乗り気になるとは……まぁ、これから事件を解決し、その後の生活も考えねばならない。そうなったら、今の状態では厳しいだろうと思って」

有里「美鶴……」

美鶴「ど、どうした?」

有里「ありがとう……」

美鶴「べ、別にそんなに感謝されるような事は……私が君にもらった物に比べれば、これくらいの事……」

有里「本当に感謝してるから言ったんだ」

美鶴「その、少し照れる……そ、それから、君の生活面だが。一応生活費を工面する事も出来るが、どうする?」

有里「……今、世話になっている家を出るつもりは無いから、そこに入れる事になるかな」

美鶴「そうか。では、そちらも手配しておく」

有里「こんな、こんなに甘えてもいいのかな?」

美鶴「構わない。君が私に甘えているんじゃなく……私が君にもらった物を返しているだけなんだ。君にしてもらったことの恩返しをしているだけだ」

有里「……」

美鶴「君の性格上、素直に受け取ってくれると思っていなかったが……わた、私が湊にしてあげたいから……してるんだ」

有里「ありがとう……」

美鶴「もうわかったから、頭なんて下げないで。じゃあ、早速色々と準備するから……う、わっ」

有里「本当に、感謝してる……上手く言葉が出ないくらいに」

美鶴「わ、わかった。わかったから……離してくれ。そんな風に、密着されると……」

有里「あ、ごめん……」

美鶴「……ふぅ。後は任せてくれ。こちらで如何様にもするから。君は、今日一日好きにしてくれていい」

有里「うん。……美鶴がいて良かったよ」

>どうやら陽介達と学校に通えるようだ。

>まさかそんな事が出来るとは思ってもいなかった……。

>ありがたく、世話になろう。

まさかの逆パターンで分寮へ
美鶴の部屋はとにかくスケールが違う。

そして、SSの内容とは一切関係なくあと30分ほどで記念すべき日です。
そう、桐条美鶴の誕生日。おめでとう美鶴。愛してる。

というわけで本日分は終了。
では、また後日。

うぉぉぉぉぉぉ乙!

(今更気付いたけど2012年5月時点で風花まだ19歳ではないだろうか。お酒駄目じゃん)

こまけぇこたぁいいんだよ

ゆかりっちかわいいなぁ

美鶴様カワイイ

どうでもいいけど美鶴さんのペンテシレアの引き寄せ攻撃凶悪すぎる
氷付けにされるだけでも結構辛いんだが

サトナカアリーナとミツルアリーナはもう嫌だお……

陽介と順平なら誤解されすらしないが

ダブル主人公♂はアリだな!

ダブル主人公はありだなww

まあ何が言いたいかというと

ふうかちゃんはばんちょうとくっつけばいいとおもうよ

ダブル主人公♂とかやるじゃん

天田の反応が思ってたより薄いな
いきなり抱きつくぐらいするかと思ったら流石に中学生か

未だに大人ぶってる天田かわいい

美鶴戦は間合いを詰める事が重要です。
D攻撃は先端しか判定が無いのでQEや空ダで透かせれば隙だらけの美味しい技です。
ガードしてしまうと引き寄せから美鶴の距離なので、出来る限り避けたい所。
といってもDの間合いはBドロアの間合いでもあるので読み合いにはなりますが・・・。

あとP4Uの美鶴はペルソナ覚醒後なんでアルテミシアです。

というわけで本日分。



【月光館学園】


鳥海「えーと、何か連休最終日に急に呼び出されたと思ったら数日間研修生を受け入れてくれって言われたんで紹介しまーす……」

男子「先生、相当キてんな……」

鳴上「悪いことしたな……」

男子「まぁた鳴上関連かよ。お前どんな生活してんだよ」

鳴上「大体はお前と同じだよ」

男子「嘘をつけ嘘を」

鳥海「えーと、男の方が花村陽介君でー、女の方が里中千枝さんでーす。みなさんしばらくの間ですが仲良くするよーに。はいホームルーム終わり!」

陽介「ご紹介に預かりました花村陽介でぃっす!短い間だけどよろしくなっ!」

千枝「あ、里中千枝です。以前一度来た事があるんですけど、やっぱり綺麗な学校でびっくりしてます。短い間ですが、一緒に勉強させてもらいます。よろしく」

男子「……なあ」

鳴上「どうした」

男子「お前の周り、女子比率高くね?」

鳴上「半々くらいだと思うが」

男子「ちょっと正確に計算してみ」

鳴上「……ろ、6:4?」

男子「まぁ比率はそんなもんだとしよう。ただお前の周りの女子みんな可愛いんだよ。それずるくねえか?」

鳴上「可愛く無い女子なんていないだろ?」

男子「お前何言っちゃってんのこわい」

鳴上「?」

男子「いいよわかったよ、お前と俺は住む世界が違いすぎるってことがな!」

鳴上「……?」

男子「心底不思議そうな顔しやがって!今に見てろよ!お前より先に彼女作ってやるからな!」

陽介「ういーす悠。そこの彼は何者?」

鳴上「俺より先に彼女を作るクラスメイトだ」

陽介「あー、アンタ、良く知らないけどやめといた方がいいぜ。この天然スケコマシにゃ勝てねーって。経験済みよ」

男子「花村君だっけ、何か君とは仲良くやれそうな気がするよ……一緒に可愛い女子ランキング作ろうぜ……」

陽介「興味深いデータだな。是非参加させてくれ」

鳴上「授業は真面目に受けろよ」

>……。



【昼 巌戸台分寮】


順平「お、いたいた。有里、ちょっとツラ貸せよ」

有里「ん?順平、学校は?」

順平「ばーか、俺ぁ無敵の大学生様だぜ?毎日フルに出なくてもいんだよ」

有里「ああ、そっか。大学生になったんだもんね」

順平「おおよ。これでも真面目に通ってんだぜ。だから単位も余裕あんだよ」

有里「それで、何か用?」

順平「久々に会ったダチが話しよーぜっつってるだけじゃねーか。まぁここでいいか」

有里「友達……ね」

順平「いや、そりゃよ。悪かったよ……いろいろ。でも俺も大分大人になったからさ」

有里「冗談だよ。僕も順平の事は友達だと……なんなら親友だと思ってる」

順平「そこまで言われると照れんな……そうだ、俺さ、今何の大学通ってると思う?」

有里「さぁ……順平って文系だっけ?」

順平「そうだったんだけどな。まぁ、あんな事あって……ラスト一年、もう鬼のように勉強勉強でよ。なんと!医学部!」

有里「すごいじゃないか」

順平「……には落ちたから薬学部なんだけどな。ほら、さ。助けたかった奴もいたし……俺にも何かできねーかなって思ってよ」

有里「あの順平が真面目に人生を考えてたなんて、そこが驚きだよ」

順平「お前そんなキャラだっけ?三年ぶりだからわかんなくなってんのかね」

有里「ごめん、ちょっと浮かれてて」

順平「そうか。……なぁ」

有里「ん?」

順平「お前さ、後悔とかしたか?」

有里「何の話かな」

順平「とぼけんなって。お前はそんな察し悪い奴じゃねえだろ。あの時だよ」

有里「……まぁ、あの時は後悔なんてなかったけどね。今帰ってきて、ようやく後悔が募ってる感じ」

順平「なんでよ。やりたいようにやったんじゃねえの?」

有里「皆、悲しんだだろ?」

順平「ああ、そりゃ凄かったぜ。特にアイギスとゆかりッチがな……で、後悔した有里君はどうすんだ、これから」

有里「今回の事件もきっちり終わらせるつもりだよ」

順平「今回の事件こそ、だろ?後悔無い様に。……あん時はさ、足引っ張ってばっかだったけど、今ならちっとは力になれっから」

有里「前も助かったよ。あてにしてる」

順平「おう、この順平様に任せとけって!……もう、黙っていなくなんなよ。見たくねえし、あんなの」

有里「……悪かった」

順平「わかりゃいい。じゃ、また後でな!ガッコは無くても忙しいんだ俺ぁ」

有里「またね」



【放課後】


陽介「完璧だ……」

鳴上「珍しいな、そんなに授業が良くわかったのか?」

男子「間違いない、完璧だな。加点方式で微に入り細に穿ち作り上げた可愛い女子ランキング……このクラスは完全に出来あがったと言っていいだろう」

鳴上「なんだ、そんな事か」

陽介「何だとは何だ!そりゃお前みたいに自然と可愛い子がいる環境に入り込む能力がありゃ俺だってこんな事してねえよ!」

男子「そうだそうだ!一人くらい紹介しろ!」

鳴上「いや、俺の一存でそういう事は……」

男子「へーんいいもんねー俺は陽介とこのランキング見て悦に入るもんねー。どうよ、この辺り」

陽介「んーそうだな、一つ疑問があるとすれば、里中の位置上過ぎじゃね?」

男子「は?」

陽介「え?」

男子「お前……お前まさか……」

陽介「い、いや、だってアイツあれだぜ?人の事さんざ文字通りの踏んだり蹴ったりの男女だぜ?」

男子「っはぁー陽介。陽介よぉ。お前だけは俺の味方だと思ってたのによぉ」

陽介「いやいやいや!お前アイツの事知らないからそんな事言えんだよ!なぁ相棒!」

鳴上「いや、里中は可愛いだろ」

陽介「……まぁな、見た目だけだったら全然アリだよ。ただ俺にだけやたら辛辣なんだよな……」

男子「愛情の裏返しって奴じゃねえの?」

陽介「マリア様より深い愛でも裏返さねぇとああはなんねーぞ」

鳴上「そういえば、里中今日雰囲気違うな」

陽介「あ、それ俺も思った。制服違うからかね」

男子「女子に囲まれてて良く見えん……くそ、どけランクB-共!」

鳴上「あ、そういえば俺有里連れて行く所あったんだ」

陽介「お、出掛けんの?」

鳴上「ちょっと人に会わせにな。そろそろ帰ろうと思うんだが」

陽介「んじゃ帰っか。今日は有意義な一日だったぜ!」

男子「明日からは別クラスだ!陽介が帰る前に完成させようぜ!」

鳴上「里中ー、帰るぞー」

女子「えー?里中さんって鳴上君の知り合いなの?」

千枝「ああ、うん。鳴上君の転校前の学校で一緒だったんだ。っと、じゃごめんね!また明日!」

女子「ばいばーい……いいなー……」



【夕方 巌戸台分寮】


鳴上「ただいま……湊いるか?」

有里「ん、どうしたの?」

鳴上「ちょっと会わせたい人がいるんだ。付き合ってくれないか」

有里「……何か、嫌な予感がするんだけど」

鳴上「そう言うな」

有里「わかった、行こう。ところで、陽介は何してるの?」

陽介「なー言ってみ?ほれ恥ずかしがらずによー」

千枝「うっさい。何なの朝からずっと……」

鳴上「ああ、里中の印象がいつもと違うのは何でかって言ってて。俺もなんとなく違う気がするんだがどこが違うのか……」

有里「ああ、なんだ。そのことか。里中さん、ちょっと」

千枝「……何?」

有里「うん、やっぱりそうだ。里中さん、今日化粧してるよね」

陽介「ん何ぃ!?里中が化粧!!」

鳴上「それでちょっと感じが違ったのか」

有里「朝見た時から思ってたんだ」

千枝「そんな、ちょっと見たらわかるくらい変?」

有里「いいや。化粧って言っても薄くファンデーション塗ってるくらいだよね?あとグロス?かなり自然に出来てると思う。ナチュラルメイクってヤツ」

陽介「はー気付かんもんだな。こりゃ騙されるわ」

鳴上「というか詳しいな、湊」

有里「そうでもないよ……でも、せっかく肌も唇も綺麗なのに。ちょっともったいないかも」

千枝「べっ、別にいーでしょ何でも。初日だからちょっと気合い入れただけだって。ウケ悪かったみたいだから明日から普通に……」

鳴上「そんな事無いと思うけどな」

有里「そうだね、ただファンデーションをもう一つ明るい色にした方が里中さんらしいかも」

千枝「いいって。下手だし時間もかかっちゃうし、明日から普通にする」

陽介「そーそー、あんまり慣れない事してると大怪我するぜ?」

千枝「……っ、花村死ねっ!」

陽介「あいたぁ!……いつものノリでからかっただけなんだけどな……」

有里「走って部屋行ったみたいだね」

鳴上「里中はすっぴんで十分可愛いのにな」

有里「化粧品はあくまで足りない部分を補う物だからね。里中さんくらい元が良いとしなくてもいいと思うんだけどね」

陽介「後で謝っとこ……」

鳴上「そうしろ。じゃあ、行くぞ湊」

有里「嫌だけどね……」



【ポロニアンモール】


鳴上「ここで待ってろ」

有里「い、嫌だ!」

鳴上「どうした、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか」

有里「この予感は美鶴の比じゃない!命に関わるヤツだ!僕は帰る!」

鳴上「お前がそんな風になるって一体……」

エリザベス「誰から逃げようとしているのでしょうか?」

鳴上「うわっ!ああ、エリザベス。約束通り連れてきたぞ」

有里「……や、やぁ」

エリザベス「お久しぶりでございます」

有里「そうだね……」

エリザベス「……今まで、何をなさっていたので?」

有里「いろいろとね」

エリザベス「何故、私に何もおっしゃらなかったので?」

有里「……いろいろと、ね」

エリザベス「メギ」

鳴上「待った!それはまずい!」

エリザベス「冗談でございます。あなたの事ですから、何か余計な気回しをしていたのでしょう……容易に想像できます」

有里「仲間にも散々言われた。悪かったよ」

エリザベス「わかれば良いのです。……よく、戻ってきてくれましたね」

有里「……僕は何もやってないよ。君が尽力してくれたんじゃないかと思ってるんだけど」

エリザベス「私の力では遠く及びませんでした。何か慮外な事態があったのだと思います。とにかく、今は貴方が帰ってきてくれた事が嬉しい……」

有里「ん、ただいま」

>エリザベスの顔と湊の顔が近付いて行く……。

鳴上「そっとしておこう」

>エリザベスがこちらに手を振っている。

鳴上「ん?……ア・リ・ガ・ト・ウ?」

>手を振り返しておいた。

>……二人をそっとしておいて、寮に帰ろう。

>『No.09 隠者 エリザベス』のランクが3になった。



【夜 巌戸台分寮】


陽介「だからぁ、この線が重要だと思うんすよ!」

順平「あえて崩すって事の意味がわかんねーのかお前は!」

陽介「崩したら意味無いじゃないっすか!」

真田「そうだな、もっと引き締めるべきじゃないか?」

天田「真田さんのソレは筋肉の話ですよね」

岳羽「……あれ、何の論争なワケ?」

鳴上「女性の体で一番美しい曲線はどこかだそうです」

岳羽「なんでそんな話してんの?」

鳴上「陽介が授業中に作ったクラスの女子ランキングを見た途端、順平さんが語り始めて……」

岳羽「変わってないねー、あいつも……鳴上君はそういうの興味ないんだ?」

鳴上「無くは無いですけど。基本的に女性に上下ってつけるべきじゃないと思うんで」

岳羽「へぇー紳士的。じゃあさ、あえて言うなら女の人の体でどこが好きとかないの?」

鳴上「全部」

岳羽「ん?」

鳴上「全部……ですかね」

岳羽「あ……そーなんだー……へぇー……」

風花「あ、鳴上君。今朝はごめんね、勘違いしちゃって……」

鳴上「いや、いいんですけど。……やっぱり良くは無いです。勘弁してください」

風花「ご、ごめん……あれ、そういえば有里君は?」

鳴上「あいつは……今日は帰ってこないかもしれないですね」

岳羽「え、何かあったの?」

鳴上「いや、心配するような事ではないんですが。まぁ、その、いろいろと……」

岳羽「ふーん。ま、いいけど」

風花「そういえばゆかりさん、コンビニで見かけたから新作のお菓子買ってきたんだけど一緒にどう?」

アイギス「是非ご一緒させていただきたいです」

岳羽「うわ、アイギスあんたどっから出てきたのよ」

アイギス「お菓子……」

鳴上「ははは……」

>『日常』を感じる。

>久しぶりに寮の皆と過ごした。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが4になった。



【深夜 鳴上の部屋】


有里「……ただいま」

鳴上「遅かったな」

有里「ちょっと色々。あれ、これどうしたの」

鳴上「最初は別に寝場所用意してくれる予定だったんだが」

有里「悠、もしかして言った?」

鳴上「……」

有里「僕が女の人と会ってるとか言ったね?」

鳴上「……うん」

有里「しかも美鶴に」

鳴上「すまん」

有里「そしてアイギスも同意してゆかりも不機嫌になって、危うくもっとおかしな所に寝かされる所を風花がなだめてくれてここに落ち着いたね?」

鳴上「良くわかるな」

有里「まぁね。しかし、屋内で寝袋か……」

鳴上「俺のせいだし俺が使おうか?」

有里「いや、言ってみたものの別に寝場所に拘りはないんだ。汚れなければとりあえずおっけー」

鳴上「そうか。……なぁ、湊」

有里「ん?」

鳴上「里中とのこと、ちゃんと解決するんだよな」

有里「……うん」

鳴上「今日もやっぱりちょっと様子おかしかったから。ゆっくりでいいけど、頼んだぞ」

有里「わかってるよ。それより、悠の方こそ風花はどうするの?」

鳴上「山岸さん?何がだ?」

有里「あれ、気のせいかな……まぁ、いいか。君は僕みたいにならないように、なるべく何も見落とさずに進むんだよ」

鳴上「よくわからんが覚えとく。さて、今日はもう寝るか」

有里「そうだね。おやすみ……」


美奈子『助けて!』


鳴上「!?」

有里「今の、聞こえた?」

鳴上「ああ。……そういや、聞きたかったんだが。美奈子さんって何者なんだ?」

有里「さぁ……実の所僕にも良くわかってないんだ。とにかく……」

鳴上「近いうち、雨が降りそうだな」

有里「そんな気がするね」

鳴上「……寝るか」

有里「……そうだね」



【2012/5/8(火) 雨 巌戸台分寮】


鳴上「翌日か……」

有里「随分と気が早い事だね」

鳴上「どうする?昨日の事は……」

有里「そもそも僕らにしか見えないし聞こえない以上、説明しようが無いんじゃない?」

鳴上「まぁそうか……今夜、どうする?」

有里「とにかく学校でしょ?帰ってきてから相談しよう。皆でね」

鳴上「そうだな……有里は今日どうするんだ?」

有里「今日か……うーん、予定自体は無いんだよね。どうしようか」

鳴上「暇そうな人がいたら良いんだが……皆一応学生だしな」

有里「とりあえず留守番しておくよ。君達が帰ってくるのを待ってる事にする」

鳴上「わかった、それじゃ行ってくる。何かいる物とかあったら買ってくるぞ?」

有里「特に無し」

鳴上「了解。じゃあ夕方にな」

有里「ん、また」

>雨が降ってきた……。

>天気予報はチェックしていたのだが、どうやら外れてしまったようだ。

>……。


【月光館学園】


鳴上「陽介、里中。今日は早く帰るぞ」

陽介「ああ、まっさかこっちにいる間に雨降っちまうとはなー」

千枝「どうするんだろう、やっぱ入るのかな……やだな」

鳴上「どうするかは帰ってから相談しよう。とにかく待機だ」

陽介「まだ俺こっち来て全然遊んでねーのにさー。続いたら嫌だな、この雨」

鳴上「そうだな……」

>授業を受けよう。



【昼 巌戸台分寮】


アイギス「あ、湊さん」

有里「ああ、アイギスはいたのか。雨だね」

アイギス「ええ。天気予報では昨日まで晴れだったんですがね。今夜も映るでしょうか」

有里「映るだろうね」

アイギス「……」

有里「……?」

アイギス「あの、おかしな事を言いますが……湊さんは里中さんの事が好きなのですか?」

有里「……うん」

アイギス「……私の事は、どうですか?」

有里「好きだよ」

アイギス「男性の好きというのは、いくつもあるものなのでしょうか」

有里「ん?どういうこと?」

アイギス「湊さんは、四股をしているという噂を昔耳にしました」

有里「誤解だ」

アイギス「わかっています。あなたは誰とも特別な関係に無かった……ですよね」

有里「……」

アイギス「最後の一線を越える事を躊躇っていたんですね。今となってはそれもわかります」

有里「そうだね。あの頃の僕は……」

アイギス「ですが、皆さんの事を好きだったのですよね?」

有里「……ああ。それは間違いないよ」

アイギス「難しいですね。好きだから選べなかったのか、好きだから選ばなかったのか……私には、まだわかりません」

有里「アイギスは随分と人間に近付いたんだね」

アイギス「自分でも驚くほどにです。私は、きっと貴方を好きだった。今ならはっきりわかる」

有里「今はどうなの?」

アイギス「よく、わかりません。里中さんを応援したい気持ちもあるし、それを見て少し気分が悪い自分もいる……なんでしょうね、これは」

有里「……里中さんとの事、聞いたんだ」

アイギス「ええ、あの日……マヨナカテレビが映った日、私達は里中さんのお話を聞きました」

有里「そっか」

アイギス「私は……どうしたらいいのか、迷っています」

有里「僕もさ」

アイギス「湊さんを……自分の物にしたいという感情があります。しかし、里中さんも大事な友人として失いたくないと思っています」

アイギス「どちらを選べばいいのか……私には、わかりません」

有里「ごめん、アイギス。それは僕にもわからない。僕の悩みも君と同じだ」

アイギス「このカイショーナシ」

有里「どこで覚えたの、それ」

アイギス「順平さんが言ってました。湊さんはユージューフダンのカイショーナシだそうです」

有里「否定は出来ない」

アイギス「ですが、私は違うと信じています……あなたの道は、あなたが決めて」

有里「……ありがとう、ちょっとだけ頭の中の霧が晴れた」

アイギス「私のためでもあり、里中さんのためでもありますから」

有里「はは、そうか。さて、今日は突入だろうから、アイギスも準備しておいて」

アイギス「任せてください」

>今更こんな事で悩むとは思わなかった。

>……自分が一番子供なんじゃないか?

>今夜の準備をしよう。


【放課後】


鳴上「よし、じゃあ帰ろう」

陽介「……」

千枝「……」

鳴上「どうした、二人とも」

陽介「昨日は真面目に受けてなかったからわかんなかったんだけどよぉ」

千枝「私も、昨日は皆に構ってもらっててあんまり意識しなかったけど……」

陽介「ここの授業難しくねえか?」

鳴上「そうか?」

千枝「そりゃ、鳴上君は私らとは違うからさ……」

鳴上「……受験、大丈夫か?」

陽介「自信無くすわ……」

千枝「私は元から無かったけどね……」

鳴上「今日の所は忘れろ。まだ一学期だし、勉強すればいい。それより今夜の話だ」

陽介「おう、そうだな……」

千枝「とりあえず帰ろっか……」

鳴上「……今度は勉強会だな」

>今夜の準備をしなければ……。

家出した肉親の探索に出ていて本日分かなり短くなっております。
自分の連続稼働時間が40時間を越えているので頭も回りません!

さて、そんな事とは関係なく、劇中にカンフル剤が投下されようとしています。
助けて、の意味とは?

なんとかでっち上げたのでとりあえずここまで。
では、また後日。

忙しいなら無理して更新しなくてもいいんだぜ?
ただ、生存報告とオチだけは忘れないでくれよ。

乙。

お疲れ様です

まさか>>1がタルタロスに探索にry

生存報告とエタるならエタるで報告があると嬉しいかも

一番うれしいのはエタらないで最後まで走り抜けて欲しい事だけど。

>>家出した肉親
!?

何が・・・
まあいいや。
話も動くからいいとして、陽介たちのランキングの内容を教えてください。

ちょっと早めにこんばんわ。
脱走した野郎はとっ捕まえましたので本日から通常営業です。

エタったりしないよ!やるよ俺は!

というわけで本日分。



【夜 巌戸台分寮】


美鶴「そろっているな。では、あり……っと、今は鳴上だったな。すまない。リーダー、今日の作戦を」

鳴上「はい。この雨は明日まで降り続くそうです。明日の夜まで降っているかはわかりませんが……なので、やはりマヨナカテレビに突入を」

有里「メンバーは、まず僕と悠。それから風花には入ってもらう」

風花「あの、でも私……」

鳴上「どうかしましたか?都合が悪いなら今日は見送りでも……」

風花「あ、いや。大丈夫です。ごめんなさい」

有里「……?ええと。それから二名選んでの四人パーティーでの探索にしたいと思います」

鳴上「で、そのメンバーなんですが。まず陽介と里中は除外したいと思います」

陽介「あれ?なんでよ」

千枝「……私は、ちょっとありがたいかも。あんまり調子よくなくてさ」

鳴上「単純に、慣れない環境だし。もし明日以降に疲れが残ってもよくないかと思って」

有里「それに、君達以外にも頼れる仲間はたくさんいる。安心して待っていてくれ」

真田「よし、じゃあ今回は俺が行こう」

鳴上「そうですね、真田さんと……」

アイギス「私も行きます。今回はまだ戦っていないので」

有里「やる気だね。じゃあ真田先輩とアイギス、それに僕と悠で……あ」

美鶴「どうかしたのか?」

有里「ええと、この中で誰か、誰かがテレビに入ってる間、マヨナカテレビを見ていた人はいない?」

千枝「あ、前回は私達が……」

有里「そう。僕達の探索の様子が映っていたんだってね」

千枝「探索じゃなくて、大きいのと戦う時が映ってたよ。あの大部屋の階に入った時から」

鳴上「ああ、そうだったのか?他に見た人は?」

>……全員、それぞれに顔を見合わせている。

順平「メンバーに選ばれなかった時はテレビはつけちゃいたけど、適当に過ごしてたからな……」

有里「前回だけだったのかもしれない。けど、今日はテレビを注視しておいて欲しい。何かが映るかもしれないから」

美鶴「そうだな。では残ったメンバーで見てみる事としよう」

鳴上「それじゃ、一旦解散して、また後で再集合とします。疲れがある人や、明日に重要な予定がある人はそのまま休んでくれてかまいません」

陽介「俺、ちっと勉強しようかな……」

順平「お、勉強か?先輩に任せとけって。教えてやっから」

千枝「私はちょっと疲れたから……今日はパスして寝させてもらうね」

岳羽「あ、私も今日はパスしていいかな。ちょっと……体調が、ね」

天田「僕は元気なので、テレビの確認しときます」

美鶴「私もそうしよう」

真田「腕が鳴るな、やっと俺の出番か」

アイギス「風花さん、調整を手伝ってもらってもいいでしょうか?」

風花「ん、わかった。じゃあ部屋でね」

鳴上「湊、ちょっと」

有里「わかってる」

>……。

鳴上「で、どう思う?」

有里「助けて、ね。彼女は……彼のような物だと思っていたんだけれど」

鳴上「彼?」

有里「以前の事件の時、僕の内側にいた人格。本質的に僕と同じだから、言ってみれば僕のペルソナのような存在」

鳴上「だけど、それなら俺の所に来れた理由は何だ?」

有里「彼女本人が言っていたのは、僕と接触……物理的にも精神的にも、だと思うんだけど。接触した時に、僕の因子の一部を君が受け入れたからだと」

鳴上「因子……ああ、もしかしてあの怪我した時に」

有里「そう。タナトスの一部が君の中に残ったからだと思ったんだけど。どうやら、それで済まないようだね」

鳴上「確かにあの人からはお前に似た何かを感じたが……湊はどう思うんだ」

有里「そうだね、彼女と僕は似ている……けれど、どこか決定的に違うようにも思う」

鳴上「そして、助けて……か」

有里「今日は三層だったよね」

鳴上「ああ。出来たら四層まで行きたいが」

有里「うん。そこの番人が……もしかするといつもと違うのかもしれない。とにかく進んでみるしかないね」

鳴上「……なぁ、もしあの人がその番人だったらどうしたらいいんだ?」

有里「怖い事を言うね……まず無いと思いたいけど……敵である以上」

鳴上「そうだよな……とにかく、見に行ってみるしかない。か」

有里「さ、準備だ。何なら少し寝る?起こすよ」

鳴上「そうするか。頼んだ」

有里「それじゃ、また後で」



【深夜】


真田「よし、行くぞ」

アイギス「作戦開始であります」

鳴上「じゃあ、テレビの方お願いします」

天田「わかってます、しっかり見ておきますね」

美鶴「気をつけてな」

コロマル「ワン!」

風花「それじゃ、行ってくるねコロちゃん」

>……。


【テレビ内】


クマ「ムムム!来たクマね!」

鳴上「今日は走って来なかったな」

クマ「たまたま近くにいたクマ。およ、そこなお兄さんは何者だクマ?」

真田「おい、何だこいつは」

有里「クマだそうです」

真田「俺の知っているクマとは違うな……」

クマ「失礼な!クマはクマクマ!」

アイギス「可愛いですね」

クマ「クマ!?クマもてもてクマか!?」

鳴上「クマ。悪いが、今日は急ぐんだ。確実に先に進みたいからな……お前はどうする?」

クマ「うーん、やっぱり入れんクマ。あん中に行くと、前にクマの影が出た時みたいになりそーで……」

有里「シャドウ、か。まぁ留守番しておいてもらおうか」

クマ「クマ応援してるクマ!がんばってクマ!」


【タルタロス 第三層】


風花『準備できてます、いつでもどうぞ』

真田「雑魚はどうする」

鳴上「回避できる物は回避して進みましょう。何があるかわからないので」

有里「そうだね、体力は温存しよう。今日は三層をクリアしたい」

アイギス「極力戦闘を避けて進むのですね、了解であります」

>……。

鳴上「これで何階だ?」

有里「63。ここまでに戦闘は7回だね」

真田「戦闘回避とは、作戦上仕方ないとは言え……少し、物足りんな」

風花『……』

有里「僕の記憶が確かなら、次で三層は最後だ。準備はいい?」

アイギス「いつでもいけます!」

真田「ボスとは戦うんだろ?ようやく本領発揮という所か」

鳴上「よし、それじゃ確認お願いします」

風花『えっ、あの、何でしょう?』

真田「上階の敵影だ。聞いていなかったのか?」

風花『ご、ごめんなさい……今感知します』

鳴上「山岸さん、やっぱりちょっと変だな」

有里「前回の終わりからだね。どうかしたのかな」

アイギス「少し、心配ですね」

風花『上階、反応ありません。大型シャドウはいないみたいです』

真田「何?いないのか?」

鳴上「いない、か」

有里「どういうことなんだろう」

アイギス「とにかく、行ってみませんか?」

真田「そうだな、行ってみるか。見ればわかるだろう」

鳴上「64階……やっぱり大部屋だ」

有里「風花、本当にシャドウはいないの?」

風花『そのはずで……』

真田「待て!あれを!」

>タルタロスの天井に張り付くように、巨大な繭のような物がある。

鳴上「なんだ、あれは……」

有里「風花、わかる?」

風花『……多分、シャドウとは別の物です。シャドウ反応、変わらずありませ……』

風花『っいや!ごめんなさい!今すぐその下を離れて!それ、シャドウです!!』

有里「アイギス!」

アイギス「は、はい!」

真田「デカいな。倒し甲斐がありそうだ!」

鳴上「山岸さん、どうしてわからなかったんですか?」

風花『ご、ごめんなさい』

鳴上「いや、責めてるわけじゃ……」

有里「喋ってる間に、繭が孵りそうだよ。構えて」

鳴上「全員戦闘準備!」

>繭が何かの重みでゆっくりと撓んでいく……。

>それは地響きを立て、タルタロスに着床した。

アイギス「これは……」

鳴上「赤ん坊、か?」

有里「というより、胎児って感じだね」

真田「これが、戦うのか?」

シャドウ「オギャアアアアアアアアアアアアアアア」

>耳を劈く高音で、シャドウが産声を上げる!

真田「戦うしか無さそうだな!」

アイギス「余り気分が良くありませんが……」

鳴上「仕方ない……か。ペルソナ!!」

有里「風花、解析を」

風花『は、はい!すぐに!』

>シャドウがゆっくりと立ち上がる。

シャドウ「ギャアアアアアアアアア」

>泣き叫びながら、その手で薙ぎ払った。

真田「ぐぁ、カエサル!!」

>真田がペルソナの力を借りてなんとか踏みとどまる。

鳴上「真田さん!」

真田「問題ない。が、この敵は……」

有里「赤ん坊でも、これだけサイズがあれば強敵か」

アイギス「赤ちゃん……ごめんなさいっ!アテナ!」

>アテナの突進が胎児に突き刺さる。

シャドウ「ウェエエエアアアアアア」

アイギス「あああっ!」

鳴上「なんて泣き声だ……!」

有里「頭が割れそうだ……風花、早く……!」

風花『はい、その、ご、ごめんなさい。反応が上手くつかめなくて……こんな事、今まで……』

有里「仕方ない、無理にでも終わらせるしか……タナトス!!」

タナトス「ルォオオオオオオオ!」

真田「出たなタナトス」

鳴上「やれ!湊!」

タナトス「ガォオオオオオオオオオ!!」

>一閃。

>今までのシャドウなら、それだけで沈んで来たが……。

有里「駄目、か……!?」

鳴上「湊!?どうした!」

真田「見ろ、鳴上!」

アイギス「有里さんのペルソナが……!」

風花『……タナトスの反応消滅!どうなってるの!?』

鳴上「無事か、湊!」

有里「大丈夫だ……けど、どうやら持っていかれたらしい」

鳴上「持って行かれたって……」

真田「おい、冗談だろう?」

>胎児の手にはいつの間にか剣が握られている。

アイギス「あの剣は……」

有里「僕の、タナトスだ」

シャドウ「ウェエエエエエエエエエ」

>剣を力任せに薙ぎ払う。

>それだけだが、十分な破壊力を誇っている。

真田「そう何度も、耐えられる物じゃないぞ!」

アイギス「オルギアを……でも、それで仕留められなかったら……」

有里「一つ、思いついた事がある。悠、アレを落とす自信は?」

鳴上「無い、が、他にやる事も無いしな」

有里「アイギス、オルギアを。僕と一緒にアレを撹乱するよ」

アイギス「は、はい。しかし……」

有里「いいから。僕を、悠を信じて」

アイギス「……はい!リミッター、フルブレイク!」

有里「オルフェウス!」

>アイギスが機銃を掃射しながら辺りを動き回る。

>オルフェウスは火炎でそれを追う動きを阻止する。

有里「こうやって邪魔していれば……」

シャドウ「ウァアアアアアアアアアア」

有里「そう、僕を狙う。チェンジ。ハヌマーン!」

>ペルソナを切り替える事で何とか一撃耐え切った。

>が、既に次の一撃に移ろうとしている。

有里「アイギス!」

アイギス「はい!アテナ!!」

>アイギスのペルソナが上空へ突進する。

>その盾の上には、鳴上が乗っている。

鳴上「何度か死ぬかと思ったが……ここで、決める!イザナギ!!」

>赤ん坊の真上から、鳴上の声に驚き上を向いたその顔の中心に向かいイザナギが突進する。

シャドウ「ウギャアアアアアアアアアアアア」

鳴上「通……らない……!」

>赤ん坊に間違いなく突き刺さったイザナギの剣。

>しかし一定以上刃が進む事は無かった。

鳴上「これじゃ駄目だ。このまま行ってもこいつを倒す事は……」

真田「なるほど、俺はここにいればいいわけだ」

>赤ん坊の背中側、鳴上を見上げているその死角に真田が立っている。

真田「決めろ鳴上!手伝ってやる!カエサール!!」

>カエサルの持つ地球儀に、吸い寄せられるような力を感じる。

>落下する鳴上が、そこに引き寄せられてさらに加速する。

鳴上「喰ら……えぇ!!」

>イザナギと鳴上、両者による串刺し二閃。

>赤ん坊の体が罅割れ、崩れていく……。

鳴上「ぐっ、がはっ!」

真田「着地失敗か。大丈夫か」

鳴上「いたたた……まぁ、なんとか。それより、アイツは……」

アイギス「心配ありません。もう……」

有里「お疲れ。よくがんばったね」

>赤ん坊の全身に亀裂が入り、最早動くことは無くなった。

鳴上「……?なんだ、アレ」

有里「え?」

>赤ん坊の体の内側、亀裂から淡い光が放たれている。

アイギス「……もしかして」

真田「おい、冗談だろう」

風花『シャドウから強力な反応が出ています!危険です!』

鳴上「まさか、自爆!?」

有里「やれやれ、どこに逃げようか」

>光が強まっていく……。

アイギス「私が止め……くっ」

有里「オルギアの反動か。困ったな」

鳴上「落ち着いてないで何か考えろ!」

真田「俺達のペルソナでどうにかできるのか?」

鳴上「くそっ!」

>赤ん坊からの光が一際大きくなり、辺りが目も眩むような光に包まれる……

有里「駄目、か」

>……。

鳴上「……あれ?」

>光が収まって後、そこはさっきまでと同じような静寂に包まれていた。

有里「何とも無かった、のかな?」

真田「少なくとも体に被害は無いな」

風花『反応消失……いや、まだ小さい反応が……?』

有里「あ、あれじゃない?」

鳴上「あれ?」

>さっきまで赤ん坊の体があった場所に、一人の人間が倒れている。

真田「人か?」

鳴上「何でここに……」

有里「……悠、あれ、見覚えない?」

鳴上「なんで見覚えが……あ」

「う、ぅん……ここ……」

有里「立てる?」

美奈子「……湊に、悠。良かった、また会えたね」

真田「……は?」

アイギス「……え?」


【2012/5/9(水) 曇り 巌戸台分寮】


美鶴「起きろ、鳴上、湊。あの子が目を覚ました」

鳴上「あ、おはようございます……起きましたか」

美鶴「ああ。これから少し聴取をする。君達にも立ち会ってもらいたい」

有里「ん……おはよう。寝起きに美鶴の顔はよく目が覚めるね」

美鶴「な、なんだそれは」

有里「ん?いや美人だなと思って」

美鶴「今はそういう冗談を聞いている暇は無い。鳴上、少し遅刻するかもしれないがいいか?」

鳴上「大丈夫です。行きましょう」

有里「さて、何が出るかな」



【辰巳記念病院】


美鶴「さて、まずは君の名前を聞かせてもらおうか」

美奈子「有里美奈子、歳は……17?かな。享年でいうとそうなります」

美鶴「享年で言うな。まず死んだ人間は私と会話できない。あまり悪ふざけを聞きたい状態じゃないんだ」

美奈子「でも、湊だって死んだのに今そこにいるでしょ?」

有里「まぁね」

美鶴「湊の事を知っているのか?」

美奈子「笑顔から寝顔まで」

美鶴「なっ……どういう関係だ!」

有里「美鶴。今はそうじゃない」

鳴上「あなたは時々俺の夢に出てきた人と同一人物ですか?」

美奈子「ああ、敬語いいって。知らない仲じゃなし。質問の答えはイエスだよ」

鳴上「だそうだ。湊、どう見る?」

有里「まず間違いないね。僕の中から何かが抜け出た感覚は昨日味わった。ペルソナを抜かれたのかと思っていたけど……」

美奈子「ごめんね。でも、体を作るのに必要だったから……」

有里「体を?どうやって?」

美奈子「シャドウの中には精神体を食べる物がいるのは知ってるよね?」

有里「食われた人間は無気力症に陥る。そうだったね」

美奈子「うん。けど、特殊なパターンとして……精神のエネルギーをそのまま自分の構成に使うシャドウもいるの」

鳴上「つまり、どういうことだ?さっぱりなんだが」

美奈子「つまり、あの赤ちゃんは私のエネルギーで体を作ってたって事。その意識が無くなった時、赤ちゃんを構成していたエネルギーが指向性を失う」

鳴上「あの光がそうか」

美奈子「そう。普通は赤ちゃんの内部で、基となった精神はぐちゃぐちゃに攪拌されて意識なんて残らないんだけど」

有里「あの赤ん坊は文字通り赤ん坊だったわけか。君一人のみを使って体を組み立てていた」

美奈子「だから、私の意識はあった。そして無指向のエネルギーを一つの座標に収束させるのは意思の力。私ははっきりとした自意識を持って、この体を結び上げた」

鳴上「なんか、壮大な話だな。だけどこうしてここにいる事は事実だし」

美奈子「経過はそういうわけで、結果は見ての通り。助けてって言った時は実はまだ君達の所にいたんだけどね。騙すみたいになっちゃってごめんね」

有里「いや、君はわかってたんだろう?昨日のシャドウが生まれるのが。君の意識は僕達よりシャドウに近い所にあった。そこから見ていたんだね?」

美奈子「流石に経験者は違うね。そして、何とか肉体が欲しかった私は二人に声をかけた……」

鳴上「そもそもあんたは何者なんだ?どうして湊の中にいた?」

美奈子「私は、湊のもう一つの可能性。別の世界から来たって言えばいいのかな。平行世界ってわかる?」

有里「パラレルワールドってヤツだね」

美奈子「うん。私は湊とよく似てて、だけど違う存在。位置で言えば隣の世界から来た事になる」

鳴上「そんな事が可能なのか?」

美奈子「悠は知らないかもしれないけど、それが可能な場所があるの。全ての世界の根底にあるもの。人の生まれ、帰る先……集合的無意識」

有里「あの場所において、意識は形になる。そうか、全ての可能性の出発点なら……しかし、どうやってそこに?」

美奈子「湊と同じ。私も、自分の生命力を代償に、アレを封印しようとした。ところが、ついた先では既にがっちり封印されてる。さて何故でしょう?」

鳴上「待て待て待て。集合的無意識とかって話がなんで今出てくるんだ。今はそういう哲学的な話じゃ……」

有里「悠、心理学に造詣は?」

鳴上「少しな」

有里「じゃあ考えてみようか。ペルソナ……シャドウ……その全ては人の心の生み出したものだ」

美奈子「私達人間の深層心理に存在する力。その源とも言える場所はどこだと思う?」

鳴上「……そう、なのか」

有里「実際行って見てくるのが早いんだけどね。難しいから却下で」

美奈子「とにかく、私がそこに行った時には既にNyxは封印された後だった。というより、ほとんど時を同じくして湊が封印しちゃってたわけね」

有里「その後、君はどうなった?」

美奈子「私のエネルギーは湊、君の補填に使われるようになった。結構ボロボロになったりしてたからね。その内、湊と私は……」

鳴上「一つになった、と」

美奈子「それからは、二人も知ってるよね。湊の体と精神に住んで、時々アドバイスしたりしてたんだよ」

有里「いろいろどうも。で、今肉体が必要になった目的は……」

美鶴「待て、待ってくれ。私を置いて話を進めるな。つまり、この子と君達は知り合いだったのか?」

美奈子「向こうじゃ私と美鶴先輩もね」

美鶴「なに、私もいるのか」

美奈子「私が湊の代わりにいる以外、ほとんど同じだと思う。というわけで、こっちでもよろしくね」

美鶴「ああ、よろしく……じゃなくて。だから、ええと……」

鳴上「俺達に対して害意とかは無いんだろ?」

美奈子「ん、そうだね。元々守りたかった物だし……私の目的っていうのも、そんなに難しい話じゃないよ」

有里「是非聞きたいな。それ次第で美鶴の態度も変わるだろうし」

美鶴「そうだな。昨夜からの検査で君に影時間の適正、そしてペルソナ能力がある事はわかっている。本当に敵意が無いのなら是非戦力として欲しい所だ」

美奈子「美鶴先輩はどこでも変わらないねぇ。うん、じゃあ私の目的を発表します。えー私は……」


美奈子「色んな物を、終わらせに来たの」

2012/5/9 現在の状況

鳴上
『No.00 愚者 特別課外活動部』ランク4
『No.01 魔術師 伊織順平』ランク2
『No.02 女教皇 山岸風花』ランク5
『No.03 女帝 桐条美鶴』ランク4
『No.04 皇帝 真田明彦』ランク3
『No.05 法王 天田乾』ランク3
『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』ランク3
『No.07 戦車 アイギス』ランク3
『No.08 正義 コロマル』ランク3
『No.09 隠者 エリザベス』ランク3
『No.13 死神 有里湊』ランク3

有里
『No.10 運命 鳴上悠』ランク3
『No.11 剛毅 里中千枝』ランク4(ブロークン)
『No.12 刑死者 堂島遼太郎』ランク3
『No.14 節制 巽完二』ランク3
『No.15 悪魔 マーガレット』ランク2
『No.16 塔 白鐘直斗』ランク2
『No.17 星 久慈川りせ』ランク3
『No.18 月 天城雪子』ランク3
『No.19 太陽 花村陽介』ランク4
『No.20 審判 自称特別捜査隊』ランク3

千枝、風花不調
有里美奈子実体化

終わりまで あとXX日

産まれたのは知った顔。
敵かな?味方かな?

どちらにせよ、終わりはどんどん近付いて来ている。

えー、次回から色々変わるかもしれません。
書き方とかいろいろ。

今日は展開の都合上短めだけどここで終わり。
では、また後日。

乙!

ハム子!!

乙!!

ハム子さん参戦 アラガキイィサーン…と叫びたくなるな。

この真田さんは常時裸マントなの?

普段は服着てるけど戦闘になると脱ぐ
そんな裸マント先輩が私は好きです。

というわけで本日分。



【巌戸台分寮】


美鶴「湊。今日は誰か先約が入っているのか?」

>ラウンジでぼんやりしていると美鶴に話しかけられた。

有里「いや、別に。何か用?」

>美鶴はライダースーツを着ている。
>……ちょっと見ない間に体もまた成長して……。

美鶴「なんだ、あまり見るな……用が無いなら付き合ってくれないか?ほら」

有里「あ、それ……」

>いつか見た覚えのある鍵だ。

有里「後ろでいいかな?」

美鶴「ああ。そのつもりで誘っている。どうだ?」

有里「喜んでご一緒するよ」

>……。

>風が気持ち良い。
>これは、美鶴が気に入るのも良くわかる。
>まるで、悩み事や自分の体も全て、風が持ち上げて吹き飛ばしてくれるような感覚だ。
>運転する美鶴を見てみる。
>ヘルメットで顔は見えないが、なんというか、キマっている。
>こうして信頼できる相手にただ身を任せるというのも悪くは無い。

>……。

美鶴「ふぅ。どうだ?」

有里「ん、気持ちよかった……もっと早くに教えてくれれば良かったのに」

美鶴「そうか、すまなかったな。まぁ当時は忙しかったし、許してくれ」

>美鶴は笑っている。
>ああ、やっぱり美人だ。
>惜しい事をしたかな……。

美鶴「ほら、ここからだと景色がいいだろう。たまに、ここに来て街を見下ろすんだ。そうすると、自分の悩みが凄く小さく思えて、気が楽になる」

有里「まだ悩むことが?」

美鶴「君からもらった勇気も底をついてな。……それなりに、上手くはやっているよ。ただ、それだけだ」

>少し寂しそうな横顔。
>ちょっとだけ胸が痛む。

有里「大変だね、相変わらず」

美鶴「別に、普通に過ごしていても悩みなんて尽きないものだ。それに一番の悩みは、君がいない事だった」

有里「僕が?」

美鶴「ああ。私は……駄目なんだ。君がいないと。いなくなってあらためて思い知った」

有里「そんなこと……」

>美鶴はゆっくりと首を振る。
>赤い髪が動きにつられて流れた。

美鶴「本当は、頭も良くないし、魅力的でもなければ勇気も無い。そういう人間なんだ、私は……君がいなければ、つまらない事でくよくよ悩んで、一歩も前に進む事ができない」

有里「そんな事ないよ。美鶴は、僕がいなくても十分やっていける。僕はそれを知ってる」

美鶴「通用しないか。たまには甘えてみたかったんだがな。確かに、君がいなくともなんとかやっていけていたさ。それも、君が帰ってくるまでの話だ」

有里「僕が?」

>何かを言おうとして、また口を閉じる。
>それを2、3度繰り返してようやく言葉が見つかったようだ。

美鶴「君に言うと、怒られるかもしれないが……君が帰ってきたのを知ってから私は君に頼る事ばかり考えている。逃げ場にしようとしている」

有里「……帰って来ない方が良かったかな?」

美鶴「そんなこと、ない。だけど……私の中で、君はそのくらい大きいんだ。許して……」

有里「美鶴……」

>美鶴や、特別課外活動部の他のメンバー。
>それと、八十稲羽の皆。
>どこか、凄く大きい違和感を感じていた。
>それは多分、ここだ。
>悠の存在は彼らの中でとても大きい。
>しかし、いなくなってもある意味平気なのだ。
>彼等は自分の足で立つ方法を知っている。
>それは、誰かに教わったのか……あるいは、テレビの中でのシャドウとの相対がそれを学ばせたのか。
>とにかく、自立する事が出来る……そして、それを抑え付ける存在も無い。
>こちらの皆が弱いとか、劣っているという話では無いと思う。
>単に機会の有無、背負っている荷物の重さの問題だ。
>特に美鶴は、他の誰よりも荷物が重い。

有里「美鶴。僕は君の逃げ場にはなれない。本当はわかっているはずだよ」

>酷かもしれない。
>けれど、はっきりと言っておかなければならない。
>もしまた僕がいなくなっても、歩いていけるように。
>美鶴は恥ずかしそうに微笑んで、それから俯いた。

美鶴「……ああ。そうだな。私は私で、君は君だ……逃げた先に、解決策は落ちていない。私は誰よりもそれを知っている。でも……」

>美鶴の指が顔に触れる。

美鶴「君から、勇気をもらってはいけないだろうか?私の……私が、少しでも大人になれるように。手助けをしてほしい……駄目か?」

>ゆっくりと、顔を引き寄せて。
>僕は美鶴の唇に一度目をやり、一度微笑んで、応じるように目を閉じた。

>……。

有里「そういえば、美鶴も大学生でしょ?今日学校は?」

美鶴「ん、ああ。……一日くらい、いいだろうと思って」

有里「サボり?美鶴、変わったね」

美鶴「駄目かな……?」

有里「いや、今の方が好きだ」

美鶴「……そう、か。さて、そろそろ帰るか?」

有里「そうしようか。それとも、もうちょっと補充していく?」

美鶴「ばっ、からかわないでくれ……」


【夕方 巌戸台分寮】


有里「……ふぅ。……ふぅぅ……」

>やってしまった……。
>どうして僕はこう一途に生きるって事が出来ないんだろうか。

有里「いや、でも今日のは……僕のせいじゃなくないか?」

>……いや、僕のせいだろう。馬鹿か。

有里「かいしょーなしのゆーじゅーふだんか……」

>里中さんの想いに応えようと思っていたのに、他の女の子も気になるとは……。

有里「しかし……求められると応じずにはいられない……なんて事だ……」

>試しに想像してみると、ゆかり、風花、美鶴、里中さん、天城さん、りせ、直斗、エリザベス、マーガレット……菜々子。誰から誰まで全部受け入れてしまいそうな気がする。

有里「菜々子はまずいだろう、菜々子は……陽介とか順平辺りに言ったら即怒られそうな悩みだ」

>相談できそうな相手は……。

天田「どうしたんですか、頭抱えて」

有里「ああ、乾……丁度いい、聞いてくれないか」

天田「悩み事ですか?僕でよければ」

>乾か……話を聞いても怒る事は無さそうだが、解決できるだろうか……。

有里「乾がそうだったらって思って聞いて欲しい。まず、誰か女の子に告白されるだろう?」

天田「有里さんも恋愛で悩むんですね……僕なんかで力になれるかわからないけど、聞きますよ」

>乾はにこりと微笑んだ。
>その笑顔の何と頼もしい事か。

有里「ありがとう。で、その子以外にも好意を寄せられていたとして。告白された子以外の子と仲良くするのってどうなんだろう」

天田「うーん……そうですねぇ……告白されたって、返事はどうしたんですか?」

有里「えーと、はっきり告白されたわけじゃなくて、示唆された程度で……返事は濁したんだけど、ある意味はっきり断ったというか」

>乾は顎に手を当てて唸っている。
>こんなに真剣に悩んでくれるとは……。

天田「難しいんですが、まず何で断ったんですか?」

有里「何でって、それは……」

天田「その人の事が好きじゃなかったから?」

有里「いや、好きだよ」

天田「だったら何故?」

有里「えーと……なんというか、応えてしまうと余計辛い思いをさせやしないかと」

天田「それで、他に好意を寄せてくれている女の子は好きなんですか?」

有里「……そうだね、好きだ」

天田「で、そっちは普通に仲良くしてると」

有里「うん」

>一瞬あきれたような顔をされた。
>見逃さなかったぞ僕は。
>その後、乾は慎重に言葉を選んでいるようで、眉間に皺を寄せている。

有里「あの……」

天田「ええと、すごく失礼な事を言ってしまうかもしれませんが、いいですか?」

有里「どうぞ。そういう率直な言葉が聞きたいんだ」

天田「えー……あの、普通に考えて、ですよ。最低……ですよね」

>頭の中に風花の声が響いた。
>弱点にヒット、と……。

天田「あ、その、すみません。僕なんかが……でも、それほんとに良くないと思うんです」

有里「そうだね……誰彼構わず仲良くするのは良くないね……」

天田「いや、そうでなく。……それも確かにまずいとは思いますけど。今の話だと、告白してくれた人は拒絶しておいて、他の人には気を持たせてるって事になりますよね?」

有里「……ああ、なるほど」

天田「本当に誰彼構わずならいいんですけど、そこが微妙に引っ掛かって。中途半端なんじゃないかなあって思ったんですけど……」

>なるほど、この罪悪感の原因はそこにあったか。
>というか、それを中学生に言われるのもどうなんだ。

天田「見た所、まだどうしたらいいか決まっていないというか、角を立てずに誰かを選ぶ方法を探しているようですけど、それって無理だと思うんですよね」

有里「うん……」

天田「なので、それなら全員ちゃんと見つめ直した上で考えるとか……もし、根本的に言ってる事が間違ってたらすみませんけど」

>不安そうな顔でこちらを伺う乾の後ろに後光が見えた。

有里「というか、何で僕はそんな人として当たり前の事に気付かなかったんだ!」

天田「えっ!ちょ、そこまで言わなくても……」

有里「ありがとう、乾。おかげでちょっと楽になったよ。……自分で自分の事っていうのは、驚くほど見えない物なんだね」

天田「は、はぁ……良かったです」

>そう、決められないならもっと材料を集めればいい。
>何も決めずにうろつくばかりなのが一番いけないんだ。
>里中さんに……ちゃんと伝えないと。
>帰りを待とう。



【放課後 月光館学園】


>曇り空が気分を暗示しているようだ。
>今一つすっきりしない感覚に覆われている。
>授業にも全く身が入らなかった。
>美奈子か……。
>彼女は本当に味方なのか?

陽介「……なー。なーおい。なー悠ってばよぉ」

>ふと我に帰ると、陽介が顎を肩に乗せている。

陽介「何悩んでんだよ。大丈夫かよ?」

鳴上「ああ、ちょっとな……」

陽介「大丈夫ならいいけどよ。そーだ、今日遊び行こうぜ!俺らそろそろ帰んないといけないだろ?だからさ、ぱーっとこう、な!」

鳴上「耳元で言わなくても聞こえてる。そうだな、じゃあ里中も誘うか」

陽介「お、いーね。皆で行こう皆で。で、その里中は……」

>里中の席に目をやると、机に突っ伏してぐったりしている。

陽介「ありゃ今日の授業も全くわかんなかった時のアレだな」

鳴上「陽介は今日は大丈夫だったのか」

陽介「順平さんがマジで教えるの上手くてよ。なんつーか、勉強できない人間を良くわかってるっつーか。引っ掛かるとこ全部把握してんだよな。おかげでスラスラよ」

鳴上「意外な才能だな」

陽介「人間見た目じゃわかんねーもんだな」

鳴上「その言い方は失礼だろ」

>話しながら里中の席へ移動して肩を叩く。

鳴上「里中」

千枝「ふぁい……なんれしょー……」

鳴上「……いや、この後遊びに行かないかって言いに来たんだが」

千枝「あぁー……うん、いいよ……ちょっと待ってね……」

>顔を上げて、両頬をパンパンと張る。
>……少し、叩きすぎじゃないだろうか。

千枝「うぁっ……くらっとキた……ふぅっ!ん、オッケー!んじゃ行こっか!」

陽介「悠はどっか良いとこ知ってんだろ?」

鳴上「まぁ、とりあえずあそこだろうな」


【ポロニアンモール】


陽介「っしゃゲーセン行こうぜゲーセン!」

千枝「あ、カラオケとかあるんだっけ。久々に行ってみたいなー」

>陽介と里中は周りをきょろきょろと見回している。
>別に地元民ではないのだが、少し誇らしい気持ちになった。

陽介「……あれ?」

>陽介が何かを見つけたようで、動きが止まる。
>里中もそっちを見て、驚いたような顔をしている。

鳴上「どうし……ん?」

>二人の視線の先には一人の女性がいる。
>たこ焼きを頬張りながらクレーンゲームの景品を眺めているその姿は……

鳴上「美奈子、何でここに?」

>間違いなく、病院にいるはずの有里美奈子だった。

美奈子「お?悠こそどうしたの?」

鳴上「いや、俺は遊びに来ただけなんだが。美奈子はまだ入院してるんじゃなかったのか」

美奈子「えー、だって特に異常ナシって言われちゃったし。美鶴先輩に聞いたら出て良いよって言われたからー」

鳴上「桐条先輩が?本当なのか?」

美奈子「うん。私の事はいいから湊とドライブでもしてきなよって言ったら許可が出た」

鳴上「……心得てるな。ていうか、お前そんなキャラだったか?」

美奈子「今までは湊の体にいたからねー。引っ張られて湊っぽくなってたのかも。ほら、言うじゃない?精神など肉体の玩具にすぎないってさ」

鳴上「そういうものか……というか、お金持ってたのか」

美奈子「先輩がくれた」

鳴上「ああ、そうか……じゃあ美奈子も混ざるか?」

美奈子「いいの?」

鳴上「二人がよければな。どうだ?」

陽介「俺はぜんっぜん構わねぇ!美奈子ちゃん、よろしく!」

千枝「私もいいよ。美奈子さんだっけ、よろしくね」

美奈子「ん、よろしく!で、どこ行くか決まってるの?」

鳴上「いや、これから適当に回ろうかと思ってた」

美奈子「だったら任せて!ポロニアンモールに入り浸った時間なら負けないんだから」

陽介「なんだかわかんねえけど頼もしいな!」

千枝「こんな元気な子だったんだ……ちょっと意外」

美奈子「ほらほら三人とも、行くよー!」

>美奈子は元気良く先導していく。
>……陽介も里中も楽しそうだ。
>とにかく、ついて行こう。

>……。

千枝「あっちょー!」

美奈子「千枝すごーい!新記録!」

陽介「うげっ、俺より大分上だな……足技専門じゃなかったのかよ」

千枝「クンフーが足りんよ花村!」

>千枝がパンチングマシーンで記録を出したようだ。
>挑戦してみる事にしよう。

千枝「お、鳴上君やる気だね?」

陽介「男の意地見せてやれ悠!」

美奈子「陽介はさっき負けたじゃん、あっさり」

鳴上「行くぞ……ふっ!」

>ぱかーん。
>軽い音が響いて、ミットを支えていた支柱が折れた。

陽介「あー!」

鳴上「い、いや俺はただ……」

千枝「でもすごいね、これって壊れるもんなんだ……」

美奈子「悠すごーい」

店員「ちょっとお客さん困りますね」

鳴上「ち、違うんです、これは……」

>……。

鳴上「平謝りしたら許してもらえた」

陽介「流石の伝達力だな相棒」

千枝「誠意って大事だね……」

美奈子「私その間にフロスト人形一杯手に入れたんだけど、これ欲しい人いない?」

陽介「美奈子ちゃんクレーンゲーム上手いんだな。一個もらっていい?」

千枝「じゃあ私も一個」

美奈子「はい、どーぞ。んじゃ次はやっぱアレだね!」

>……。

美奈子「カラオケです!」

>美奈子は既にタンバリンを持ってスタンバイしている。

千枝「最初の一曲は恥ずかしいから私パスで……」

陽介「あ、ずりーな、俺だってちょっと恥ずいっつの」

鳴上「美奈子は歌得意なのか?」

美奈子「え?うーん、それなり……だけど、いっつも一人カラオケだったから人に聞かせるの恥ずかしいかも」

>仕方ない、ここは……。

鳴上「俺が行こう」

陽介「お、悠か!何歌うんだ?」

美奈子「タンバリンは任せて!ヘイヘイ!」

>『疾風ザブングル』

千枝「……花村、知ってる?」

陽介「いや、俺はちょっと……」

鳴上「……すぅっ、疾風のよぉおにいいい!」

美奈子「ざぶんぐるー!ざぶんぐるー!」

陽介「おお、あの二人の間では成立している……」

千枝「やっぱ、変わってるね……」

>……。

陽介「曲はわかんねーけど妙に熱かったな!」

千枝「じゃあ、次私行こうかな」

美奈子「千枝がんばれー!」

鳴上「何歌うんだ?」

千枝「んー、これ、かな?」

>『Reach out to the truth』

陽介「里中なのに結構いい趣味してんな!」

千枝「うっさい!……よし、と。Now I face out I hold out」

>……。

美奈子「ひゅー!千枝やるじゃーん!」

陽介「お前って結構歌上手いのな」

鳴上「ああ、良かったな」

千枝「照れるから!やめてって!」

陽介「じゃあ次!次俺な!」

美奈子「陽介は何歌うのかな?」

陽介「そうだなー、これ!とかどうよ!」

>『Breakin' through』

鳴上「どっかで聞いたような曲だな」

陽介「いくぜー……感情に抗うなよぉ!その足を止めんな!」

>……。

千枝「普通だったね」

鳴上「普通だな」

陽介「何だよそれ!酷くね!?」

美奈子「よーし、それじゃ満を持して私が……」

>『Wiping All Out』

鳴上「!!」

陽介「どうした相棒、急に立ち上がって」

鳴上「ダブルマイクだ!行くぞ美奈子!」

美奈子「おっけー!」

鳴上「Been a little but I'm still battling moving fast while you's just pratting no time for me no tangiling hit you in the spot with no angle end」

美奈子「I'm not princess nota cutie girlfriend oh no don't you know?」

>……。

陽介「お前ら、何なんだよ……」

千枝「いろいろ凄かったね……」

鳴上「美奈子」

美奈子「悠」

>美奈子と堅い握手を交わした。

陽介「何かが出来上がったな、あそこで」

千枝「割とおいてけぼりなんだけど」

美奈子「さてと。千枝、この後何か予定は?」

千枝「え、私?特にないけど……」

美奈子「ちょっと話したい事あるんだ。よかったらコーヒーでも付き合ってよ」

千枝「あ、うん。いいけど」

美奈子「そういうわけだから男子は帰った帰った!あんまり遅くまで遊んでると美鶴先輩に怒られるよ!」

>美奈子はしっしっと俺達を追い払おうとしている。

陽介「なんだよー、しゃあねえなぁ。俺らは男同士、楽しく帰るか!」

鳴上「そうだな、本当に怒られかねない。帰ろうか」

美奈子「またねー」

千枝「また後でね」

>気がつくと随分遊んでしまった。
>寮に帰ろう。


【夜 巌戸台分寮】


>ラウンジには何故か頭を抱えている湊がいた。

陽介「なぁ、アレ……」

鳴上「そっとしておこう」

陽介「いや、そういうわけにゃいかねーって。帰る日決めねーと」

鳴上「そうだった……あー、み、湊?」

>湊は一瞬こちらを見て、ため息をついた。

有里「おかえり。里中さんは?」

陽介「ああ、美奈子ちゃんと女子会中だってよ。あのさ、俺らいつ八十稲羽帰るよ?そろそろ用事も済んだんじゃねえの?」

有里「まぁ、一通りはね。そうか……そろそろ帰らないとね」

鳴上「寂しくなるな」

有里「また来るさ。それに、悠もまた八十稲羽に行くんだろ?」

鳴上「そのつもりだ」

有里「じゃあいいじゃないか。……そうだ、里中さんが帰ってきたら教えてくれないか」

陽介「あ?どしたのよ」

有里「少し話がね」

>湊は困ったように笑っている。
>……また、しばらくの別れになるのか。

陽介「じゃあ俺またちょっと勉強するから。帰る日取り決まったら教えてくれよ。んじゃな」

鳴上「ああ。湊は……」

有里「悠の部屋にいてもいいかな」

鳴上「ん、俺はまだしばらくラウンジに居ようと思うから、里中が帰ってきたら伝えとくよ」

有里「お願いするよ。それじゃ」

>……。

>玄関が開いた。

鳴上「あ、おかえりなさい」

美鶴「ああ、君か。ただいま」

美奈子「たっだいまー」

千枝「ただいま」

>何故か桐条さんが一緒に帰って来た。
>どこで合流したのだろう?

美鶴「寮の前でたまたま一緒になってな。そうだ、有里はどこにいる?」

鳴上「湊なら俺の……湊の部屋だと思いますけど」

美鶴「里中が話があるそうでな」

>桐条さんと美奈子は愉快そうに笑っている。
>里中は……アギが出そうな程真っ赤だ。

鳴上「湊も話があるって言ってましたよ。丁度いいんじゃないですか?」

千枝「えっ!それって……」

美奈子「チャンス!ほら早く行った行った!」

千枝「あっ、うん。鳴上君、ありがとね!ちょっと行ってくる!」

美鶴「若いというのは良いものだな……」

美奈子「美鶴先輩だって十分若いですよね?」

美鶴「私は少し落ち着きすぎてしまったよ。彼女のようなまっすぐな感情はもう持てないだろう」

美奈子「へぇ~?ところで、今日湊と何してたんですか?」

>今度は桐条さんの顔が真っ赤になった。

鳴上「おお、すごい。一瞬で真っ赤に」

美鶴「べ、別に何もしていない!ただ、少し走るのに付き合ってもらっただけだ!」

美奈子「ふーん。じゃあ首の赤いのは虫刺されか何かですかねー。山に行くなら気をつけないと駄目ですよー」

美鶴「なっ!どこだ!」

美奈子「嘘ですよ、湊は痕残したりしないでしょ?」

美鶴「なん、うぅ……何故知っているんだ……」

美奈子「勘ですよ、勘」

>今頃部屋では湊と里中が何か話をしているだろう。
>目の前の二人は妙に盛り上がっているし……微妙に居場所が無い。

鳴上「陽介の所でも行くか……」


【順平の部屋】


陽介「っつぁー!わっかんねー!順平さんちょっとこれ見てくださいよ!」

>どうやら陽介は本当に勉強しているようだ。
>順平さんが笑いながら答えている。

鳴上「すみません、鳴上です。ちょっといいですか?」

順平「おー、どした。まぁ入れよ」

鳴上「失礼します……女性陣が妙に盛り上がってて居場所が無くて。そんで本当に勉強してたんだな」

陽介「やってるっつーの!マンツーマンよ!」

鳴上「陽介から聞きました。順平さんは教えるのが上手いらしいって」

>順平は照れたように笑っている。

順平「ま、俺くらい頭が良いとよ、人に教えんのもそりゃ上手くなるわけよ」

陽介「悠、違うんだってよ。この人、元々成績悪くてさ、そっから猛勉強して今の大学入ったから、同じくらいのレベルの奴が引っ掛かる所は大体わかるんだってさ」

鳴上「ああ、そういう事だったのか」

順平「陽介!それは黙っとけっつったろ!……いや、その通りなんだけどよ」

鳴上「でも、勉強したことをちゃんと活かせてるのは凄いじゃないですか」

順平「そうでもねーよ。……そういや、お前、進路どうすんの?」

>進路。
>正直、忘れて……いや、忘れてはいなかったが、頭の隅に追いやっていた。

陽介「俺はとりあえず進学して、それから経営とか勉強しようかなって思ってるんすけどね」

順平「経営?なんか意外だな」

陽介「家がショッピングセンターやってんすよ。だからまぁ、継ぐってわけじゃねーけど手伝いとかにも活かせるんじゃねえかなって」

順平「なるほどなー、それもアリだよな。で、鳴上は?」

鳴上「俺は……実は、まだ決まってないんです」

順平「へぇ、お前がね。意外っちゃこれも意外だな」

陽介「お前だったら大学どこでも行けるだろ?それとも何か理由あんの?」

鳴上「俺、やりたい事とか目標って無いんですよ。それでどうしようかなって悩んでて」

>……。
>二人とも黙ってしまった。

順平「まぁ、そうだな。適当に進学とか言わないだけ真面目っつーことかね」

陽介「お前って、しっかりしてる割に妙なとこで躓くよな。進路決定いつよ」

鳴上「夏だって言ってたから、今学期中には決めないといけないみたいだ」

順平「あと二ヶ月くらいか?どうすんだよ」

鳴上「ええと……どうしましょうか」

順平「どうしましょうか、じゃねえって。……あー、わかった。教えてやるよ、色々」

鳴上「え?」

順平「教えてやるっつってんの。俺も進路迷いに迷ったから、色々資料集めたりしたんだよ。だから、その辺教えてやる」

>順平さんが未だ紐解いていない荷物をあさって取り出したのは、様々な会社・大学のパンフレットだった。

陽介「うわ、ジャンル問わずって感じっすね」

順平「色々あってな。まぁ迷走してたんだけど。大学のパンフも会社のパンフも今年のだ」

鳴上「なんで持ってたんですか?」

順平「もしかしたらもっと俺のやりたい事に近い場所があるかもしんねーって思って、毎年調べてんだよ。だから、これは最新版」

陽介「はぁー真面目に考えてんすね。これまた意外」

順平「お前はいちいち失礼な奴だな……これやるから。他に話とか聞きたかったらいつでも聞く。だから、しっかり決めろ。自分の人生だろ」

鳴上「順平さん……」

陽介「順平さん……」

順平「似合わねーことやらせんじゃねえって。ほら、陽介はとっとと勉強しろ!」

>順平さんは照れているようだ。
>陽介は笑いながら勉強に戻った。

鳴上「ありがとうございます。早速読ませてもらいます」

順平「おう……がんばれよ」

>順平さんにお礼を言って部屋を出た。
>順平さんに対する見方が少し変わった。
>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが3になった。


【鳴上の部屋】


>コンコン。

有里「悠ならラウンジだよ」

千枝「うん、知ってる。じゃなくて、有里君に用なんだけど」

有里「あ、里中さん。丁度良かった、僕も話がある。えーと……とりあえず、入って」

>ガチャ。
>里中さんが無言で部屋に入ってくる。
>いつかのように一つ深呼吸すると、ベッドの端に座った。

有里「……この距離は何かな」

千枝「……これ以上は恥ずかしいから、ここでいい」

有里「そう……」

千枝「……」

>気まずい沈黙だ。
>駄目だ、恥ずかしい。
>顔に出さないので精一杯だ。
>小学生くらいまで戻った気分だ。

千枝「あの、さ」

有里「……ん?」

>タイミングを逸した。
>先に切り出されてしまったら仕方が無い……とにかく話を聞くことにしよう。

千枝「この前から、ちょっと態度悪かったよね私。まず、ごめん」

有里「いや、そんなこと……」

>いつもならぽんぽん出てくる気の利いた台詞が出てこない。
>フェロモンコーヒー不足か……?

千枝「前にさ、話したじゃん。好きな人が出来たんだって」

有里「うん」

千枝「あれね、有里君の事だったんだよ……気付いてると思うけどね。
   前の日にさ。私達と山岸さん、アイギスさんで残って話てたでしょ。そこでさ、そういう話になって……私が、ちらっと言っちゃったんだよね。
   もしかしたら、有里君の事……好きなのかも。ってさ。そしたら皆に応援されて。それで、次の日……」

有里「僕の所に来たんだね」

千枝「そういうこと。で、まぁ……あんな風に言われると思ってなくて。ちょっと期待しちゃってたのかな。
   動揺して、逃げちゃって。それから、あのテレビ……人形劇を見て、もしかしたらって思って。また思い直して……。
   一人であたふたして、有里君にも皆にも迷惑かけて……ほんと、ごめん」

>里中さんはもう泣き出しそうになっている。
>ああ、自分のなんと情けない事か。
>泣きそうな女の子を助けることもできないとは。

千枝「で、さ。嫌いに……なろうとしたの。あんな酷い事言う人なんてって思って。けど、わかっちゃったんだよね……あれも結局、有里君なりの気遣いなんだなって。
   それからもさ、私がいちいち冷たくしようってしてるのに、お構いなしで……正直、困っちゃった」

有里「……ごめんね」

千枝「謝る事じゃないって、全然。……嬉しかったんだもん、私。そのせいで……そのせいで、ね」

>潤んだ瞳がこっちを見つめている。

千枝「嫌いになんてなれないなって。わかっちゃったんだ」

>これ以上、一言だって喋らせちゃいけない。
>彼女にこれ以上無理をさせちゃいけない。
>今、目の端に溜まっているあれを零れさせちゃいけない。
>言うなら、今だ。

有里「僕も謝る事があるんだ」

千枝「え?」

有里「あの時……僕はいらない気遣いをした。いや、気遣ったフリをして、逃げた。里中さんと、特別な関係になる事から。
   浸っていたんだ、悲劇のヒーローに。誰かを選ぶと、どこかで切れる物がある。それを知っていたから」

千枝「有里君……?」

有里「僕はこう見えて……女性と交際をしたことがない。告白された事はあっても、それを受けた事は無い。皆と特別な関係になりながら、それを言葉にした事は無い。
   何故か。逃げていたんだ。事実を作ってしまうと、どこかで悲しむ人がいそうで、誰かに嫌われてしまいそうで。
   怖かったんだ。だから八方美人、皆に同じように尽くした。それがどれだけ……相手を馬鹿にしているか、考えもせずに」

千枝「……」

有里「里中さん。……千枝、でいいかな」

千枝「うん、どうしたの?」

有里「僕は、はっきり言ってこの手の話題には弱い。いろんな面でね。だから、今君に応える事は出来ない……だけど。
   いつかは選ぶ。誰かを、きっと。申し訳ないけれど、それは千枝じゃないかもしれない。けど、今までみたいに逃げたりしない。
   その時まで……今までどおり、友達でいてくれませんか」

千枝「有里君……あのさ。一個だけ、またわがまま聞いてもらっていいかな?」

有里「何でも聞くよ。何がいい?」

千枝「一回だけ、ぎゅって、その……して欲しいんだけど」

>……零れた。
>だけど、千枝は笑っている。

有里「いくらでも。ほら」

千枝「……えへへ。じゃあまた友達から、よろしくお願いします」

>耳元で千枝の嗚咽が聞こえる。
>緊張の糸が切れたのか、泣き出してしまったようだ。
>千枝をずっと抱き締め続けた……。

>千枝との関係が元に戻った。
>『No.11 剛毅 里中千枝』が正位置に戻った。
>更に、千枝と正面から向き合ったことで、信頼が深まったようだ。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが5になった。

仲直り。
意外と出来る先輩。
結局女たらし続行。

密度上げてみたけどもしかして読みにくいかな・・・読みにくかったら戻そう。

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。

おおおおおおおよかったぁ!!
仲直りできて
乙!

おつです

乙!
ところでP3Pのタルタロスで裸マント先輩に階段見つけてもらって
上の階に進む方を選んだらドヤ顔で「おっけー」ていうよね
あれ毎回笑いそうになるけどみんな平気なの?

なーんか有里に寝取られたみたいで複雑

ほんとだな
キャラ的にもキタローなんか微妙だし

1乙!

>>522の気持ちはわからんでもないww
P4で時間をかけて番長と甘い関係になっておきながら、
横からポッとでのキタローさんにかっさらわれる気分。


しかし読んでて面白いので更新を楽しみにしてるわwwww


>>521
どっちかといえば 毎回テレッテーに吹くわww

前まで番長が風花奪いそうだったし別にいいんじゃね?
いや確かにこのキタローは当然のようにハーレム築きそうだけども

そしてテレッテ△

順平さんの学力がテレッテー

うむ、出ると思ったNTR話。

えっと、丁度いいのでここらで以前見たレスのお話を。
全員攻略するのが大前提なの?というレスですね。
攻略、というのが仲良くなる事なら、目標としてはそうです。
ですが、男女の関係になることを攻略とするならそれは違います。
コミュメンバーは全員それぞれの作品の主人公に非常に大きな好意を抱いています。
じゃあなんで今傾いてる奴いるんだよって話になると、それはフィーリングであったりタイミングであったり。
要するにたまたまその人がどちらかの主人公に合っているというだけの話です。
なので、別に全員くっつけようとかしてるわけではないです。

長々と言い訳しましたが、不愉快に思われるのは覚悟の上というか、自分に技量が無いだけの話ですんで。
救いとしては別にお金を取っているわけではないという点でしょうか。
どうしても気に入らないという方は、この作者下手すぎるから読むのやめるってやめてもらうしかないです……。
せっかく見てもらったので、最後まで読んで欲しいですけど。

長々と語りましたが、それでは本日分。



【2012/5/10(木) 晴れ 巌戸台分寮】


>起きたが、湊はいない……。
>もう起きていたようだ。
>ラウンジにでもいるのだろうか。行ってみよう。

陽介「お、相棒。今日は俺のが早かったな!」

千枝「あ、おはよー」

美鶴「おはよう。君は規則正しい生活を送っているんだな。感心する」

有里「おはよう。……帰る日が決まったよ」

鳴上「おはようございます。なるほど、それで皆集まってると」

>陽介は露骨に残念そうにしている。

陽介「もうちょい遊びたかったぜー。雨降らなきゃもうちっと色々あったんだろうけど」

千枝「仕方ないでしょ、天気ばっかりは。諦めなさいって」

美鶴「残念だったな。また連休には遊びに来るといい。歓迎しよう」

陽介「マジっすか!……あ、でも俺勉強しねーとだしな……」

有里「あ、そうだ。僕も学校通う事になったから」

陽介「お、マジか!大学?」

有里「いや、最後に通ったのが高二だから、陽介達と同級生。よろしく」

美鶴「そういうわけだ。君達、また有里をよろしく頼む」

千枝「あ、桐条さんが手配してくれたんですか?」

美鶴「ああ。少し伝手を使っただけだから、世話という程のものでもないが」

千枝「ありがとうございます!」

鳴上「何で里中が言うんだ」

千枝「へっ?あ、つい……いいじゃん、別にさ!」

有里「で、僕達は明日学校終わったら帰ることにしたから」

鳴上「明日か……丁度週末だしな」

>明日、学校から帰ったら三人は八十稲羽に帰ってしまうらしい。
>という事は、実質今日が最後の日となるわけか……。

陽介「おいおい、なんつー顔してんだよ悠。何も一生の別れってわけじゃ無いだろ?」

千枝「あはは、ほんとだ。また会えるじゃん、ね」

美鶴「そうだな、明日の夜には出立するとして……今夜、送別会でも開くか。都合の良い者に集まってもらおう」

有里「いいね、最後の夜だし、皆で騒がしくお別れといこうか」

>最後の夜。
>確かに、もう会えないわけではない。
>しかし、何故だろう。
>二度と、同じように会えないような、そんな予感がする。

有里「悠。それは仕舞っておこう。……大丈夫さ、きっと」

>いつの間にか湊が隣に立っていた。
>湊も同じように感じているのだろうか。

鳴上「そう、だな。よし、それじゃ今夜は楽しもう。俺、学校の準備してきます」

陽介「っと、もうそんな時間かよ。俺も荷物取ってくるか」

千枝「あの桐条さん、ちょっと……」

美鶴「ん?……ああ、なるほど。いいさ、手伝おう」

>とにかく、今夜が湊たちと過ごす最後の夜だ。
>……悔いの無いように過ごそう。



【月光館学園】


男子「おーい、もう帰っちゃうのかよ。マジで?」

陽介「ああ。ランキングの完成を見れねーのが心底残念だけどよ……」

男子「俺達……また、会えるかな」

陽介「お前が可愛い女子を追い続けてれば、いつかな」

男子「陽介……!」

陽介「泣くんじゃねえって。俺達、離れても友達だろ?」

>前の席では茶番が繰り広げられている。

鳥海「はーい席着いてー。全くこのクラスはどうかしてるわよ、ほんとに。えー、鳴上君に始まり研修生を受け入れ、さらにこの中途半端な時期に転校生です」

男子「転校生?女子かな」

陽介「俺が帰る直前に女子だったら泣くぜ?」

>どうやら転校生が来るらしい。
>……転校生?

美奈子「どーもー、有里美奈子って言います!親の都合でこっちに越してくる事になりました!これから一年も残ってないけど、皆さんと仲良くやれたらなーって思います!よろしく!」

陽介「なぁ」

鳴上「ああ」

男子「またお前らの関係者かよ……」

鳴上「どうやら、そうみたいだ……」

鳥海「席は鳴上君の隣ねー。もうその辺だけで新クラスとか作っちゃえばいいんじゃないのってくらい新人ばっかね」

>美奈子が鞄をぷらぷらしながらやってくる。

美奈子「やっ!悠、これからよろしくね!」

鳴上「……ああ、よろしく」

男子「有里さん?だっけ。よろしくね」

美奈子「美奈子でいいって。よろしくぅ!」

>美奈子が月光館学園に通う事になった。
>恐らくは桐条さんの手引きだろうが……
>いろいろと、大丈夫だろうか。
>……。


【昼 鳴上の部屋】


>この不思議な感覚。
>まるで、初めてこの寮を訪れた時のような……。
>あの感覚は何なのだろうか。
>何かが近寄ってくるような、何かに行き当たったような。
>探していた物が、すぐ近くで見つかったような。これだったか、と唸るような、そんな感覚。
>あれ以来、この感覚とは随分ご無沙汰だった。
>それは、僕が渦中にいた為か、何か別の理由か。
>ともかく、はっきりとわかる。
>事件は始まっていなかった。
>美奈子が肉体を得たからか、様々な切欠のどれかが当たったのか、本当の部分が動き始めた。
>これからこの事件がどんな顔を見せるのか。
>それ次第では……。

>コンコン。
>物思いに耽っていると、扉がノックされた。

岳羽「あ、私。今いい?」

有里「ああ、ゆかり……どうかした?」

岳羽「どうかしたっていうか、ちょっと話せない?」

有里「ん、ちょっと待ってね」

>身支度を整える。
>丁度少し歩きたかった所だ。
>ゆかりと出掛けることにしよう。

有里「お待たせ。良かったらちょっと出ようか」

岳羽「あ、うん。じゃあどこ行く?」

有里「コーヒーでもどうかな?」

岳羽「わかった。じゃ、行こっか」



【シャガール】


>改めて見ると、ゆかりも、やはり大人になったという事だろうか。
>以前より落ち着いた格好をしている。
>……。

有里「置いていかれた気分だな」

岳羽「は?何が?」

有里「いや、皆変わってるからさ。今更だけど、差がついちゃったなって」

>自嘲気味に笑う。
>そんな事を言ってもどうしようも無いのはわかっている。
>なにより、僕が勝手にやったことだし。

岳羽「ていうか、やっと追いついたって感じじゃない?君さ、やっぱり抜けてたもん、私達の中じゃ」

有里「僕が?」

岳羽「うん。なんていうのかなぁ。一番大人だったっていうか、色んな部分で現実をしっかり見てたっていうか」

有里「……そうかな」

岳羽「むしろ、ちょっと子供になった?最近見てるとそう思うんだけど」

>ゆかりは笑った。
>……そう言われれば、そんな気もする。

有里「そうかもしれないね。あの頃、僕には色んな物が足りなかったから。それを皆が埋めてくれて、やっと年齢相応になれたって所かな?」

岳羽「滅多に笑わなかったし、感情とかってあるのかな?って思うくらい仏頂面だったしね。今はそれなりに表情豊かって感じ」

有里「自覚は無いんだけどね。人に言われるとそうかなって思う」

岳羽「昔も別に感情無いわけじゃなかったけどね。それに気付くのに結構時間かかったけど。あの仏頂面の奥で色々考えてるんだなって」

有里「そう?結構適当だったんだけど」

岳羽「そういう人をからかう感じも、慣れたらむしろ気持ちよくってさ。……知らない間に、凄く居心地良くなっちゃってたよ」

>そう言うと、懐かしむように目を細めた。
>僕にとってはつい最近の出来事だが、彼女にとっては三年も前の話だ……。

岳羽「……帰っちゃうんだね。どうして?」

有里「どうして、って……悠は学校があるから、こっちに居なきゃいけない。だから、僕が向こうに行かないと」

岳羽「こっちに居ても協力は出来ると思うんだけど?」

有里「そうかもしれないけど……」

岳羽「私は、居て欲しい。君とまた一緒に居たい」

有里「ゆかり……」

岳羽「なんて、言っても聞かないよね。君、私の言う事素直に聞いてくれた事ないし」

>ゆかりは寂しそうだ。

有里「予感がするんだ。今回、きっと僕だけでは解決できない。あの時、皆がいてくれても、皆が納得するこたえに手が届かなかった」

岳羽「皆が幸せになるこたえ……ね」

有里「でも、今度は違う。悠がいる、悠の仲間がいる。それと僕もいる。ゆかりや、仲間がいる。皆で力を合わせれば、きっと」

岳羽「やっぱ、変わったね。昔はそんな風に熱く言うタイプじゃなかったのに」

>言われて、少し恥ずかしくなる。

有里「……決めたんだ。かっこつけるのはやめようって。みっともなくてもいいから、余力なんて残さずやってやろうってね」

岳羽「いいんじゃない?その方がかっこいいよ。惚れ直すかもね」

有里「それは有難いね……そうだ、今日僕らの送別会してくれるらしいんだよね」

岳羽「あー、美鶴先輩が張り切ってたよ。帰って手綱握った方がいいかもね」

有里「放っておくとどうなるかわからないからね。じゃあ、帰ろうか」

岳羽「ん。あ、私出すよ」

>財布を取り出そうとすると、ゆかりに制された。

有里「でも……」

岳羽「いいからいいから。たかだかコーヒーだし。お姉さんに任せときなさいって」

有里「同い年だろ?」

岳羽「三年前まではね。今は私が上って事で」

有里「……ゴチです」

岳羽「よしよし。素直が一番だよ。ね?」

>ゆかりは随分と大人になっていたようだ。
>言葉の端々に余裕を感じる。
>ほんの少し、悔しかった。
>……寮に帰って、送別会の準備をしよう。



【放課後 月光館学園】


美奈子「ふぃー終わったー」

陽介「美奈子ちゃんも出来る派かよぉ……」

美奈子「伊達にDHA摂ってないって」

鳴上「DHAって本当に効果あるんだな」

陽介「そういやさ、美奈子ちゃん今夜の話聞いた?」

美奈子「ああ、送別会だっけ?……出ていいのかな」

鳴上「いいんじゃないか?美奈子も寮に住むなら仲間だろ」

美奈子「うん……うん。そんじゃ私も出席しようかな!折角会えたのにすぐお別れでちょっと寂しいけどね」

陽介「また会いに来るって。帰りに何か買って帰った方がいいのかね?」

美奈子「いや、発案美鶴先輩でしょ?多分……」

鳴上「ああ、そうだろうな……」

陽介「そりゃ期待できんじゃねーの!?」

美奈子「引くと思うよ」

鳴上「ありそうだな」

陽介「えぇ……」

>とりあえず、寮に帰って準備をした方が良さそうだ。
>桐条さんに任せていると……。
>急ごう!


【夕方 巌戸台分寮】


美鶴「早かったな、お帰り」

鳴上「ええ。急いで帰って来たので。今夜の送別会、何か必要な物とかありませんか?」

美鶴「私が準備しようと思っていたんだが、余程楽しみにしているんだな。なら君達に準備を任せてもいいか?」

>桐条さんは笑っている。
>何か勘違いされているようだがまぁそれはいい。

陽介「そんじゃ準備すっか。買出し行ってくるわ!」

千枝「あ、私も行く!何かいる物ある?」

美奈子「適当に揃えてきてよ、センスに任せる!」

鳴上「同じく。ちなみに桐条さんが用意しようとしてたのって……?」

美鶴「ん?いや、どこかホテルでも借りようかと……」

鳴上「折角だし寮でやりましょうよ、良い思い出になりますよ」

美鶴「そうか?ならそうしよう。飲み物くらいは私に任せてもらってもいいか?」

美奈子「どうしよう、悠」

鳴上「流石に飲み物くらいは平気だろう。陽介達も買ってくるだろうし、そこまでおかしな事にならないと思うが」

美奈子「じゃあ飲み物はお願いしますね!ラウンジ、ちょっと掃除したほうがいいかな?」

鳴上「手伝うよ」

岳羽「ただいま……おー、やってるやってる」

>ラウンジは綺麗に片付けられ、いつもと違う大きな机が置かれている。

鳴上「おかえりなさい。今準備してるんで、もう少しして皆帰ってきたら始められますよ」

美奈子「あと美鶴先輩が今飲み物調達に行ってるんだけど……」

岳羽「あ、嫌な予感するからちょっと待ってて」

>ゆかりは携帯を取り出すと電話をかけた。

岳羽「あ、もしもし先輩?私……うん、その話なんだけど。うん。うん。……いや、駄目でしょ。ていうかアルコール無理じゃんあの子ら。もー、多分そうだろうと思ったよ……」

有里「手伝うよ」

鳴上「助かる」

有里「送別会ね。……悠。こっちの仲間は好き?」

鳴上「なんだ、突然。そりゃ好きだぞ、皆良い人だし……どうかしたのか?」

有里「ならいいんだ。少し気になったものだから。それに……」

陽介「買い出し終わり!いやー重いのなんのってよー」

千枝「あんたそんなに持ってないっしょ。私がほとんど持ってんじゃん」

陽介「こういうのは頭脳派の俺には向いてねーんだよ」

鳴上「おかえり。セッティングも出来たから後は人だけだな」

>不思議な感覚は嫌な予感に姿を変えつつある。
>恐らくは悠もそれを感じているはずだ。
>誰かに伝えておくべきだろうか……。

有里「いや、やめておこう」

>予感は予感で終わらせるのが一番良い。
>まだわからない。
>僕達なら、変えられるかもしれない。

>さぁ、送別会だ。


【夜】


美鶴「明日、有里、花村、里中の三名が八十稲羽に帰る。一応、明日も見送りに行く予定だが、予定のある者もいるだろうということで……」

有里「今夜、僕達の送別会をしてくれる事になりました」

千枝「短い間だったけど、お世話になりました!良ければまた遊びに来させてください、楽しかったです!」

陽介「俺……もっといたかったっす……皆さん本当に……良い人ばかりで……ふぐぅ!」

順平「泣くな!泣くな陽介!強く生きろ!」

岳羽「すっごい茶番くさいんだけど……」

アイギス「感動の別れですね……」

天田「なんだかんだ賑やかでしたから、寂しくなりますね」

真田「賑やかというか、騒がしかったというかな」

風花「鳴上君もちょっと寂しい?」

鳴上「まぁ、少し……」

>ラウンジには寮内の全員が揃っている。
>皆、何だかんだで楽しそうだ。
>……美奈子がいない。

鳴上「なぁ、湊」

有里「ん?」

鳴上「美奈子見かけなかったか?」

有里「あれ……確かに、いないね。どうしたんだろう」

鳴上「俺、ちょっと探してくる」

有里「ん、任せた」

>と言ってもどこにいるのか見当もつかないが……。
>準備していた時は寮内にいたのだから、恐らくまだ寮内にはいるだろう。

鳴上「……あれ、あの部屋って何だっけ?」

>そういえば、入った事の無い部屋がある。
>……今なら、誰も見ていない。

鳴上「……美奈子、いるか?」

>扉を開けると、電子機器特有の作動音が聞こえた。

鳴上「なんだ、これ……」

>部屋の正面にはモニターがあり、そこに送別会の映像が映し出されている。

美奈子「あら、見つかっちゃった。やっほ」

>モニターの前の椅子には美奈子が座っている。
>どうやらここから送別会を眺めていたようだ。

鳴上「おいおい、これって……」

美奈子「そう、カメラ。昔の名残りで、寮内の色んな所や各々の部屋についてるの」

鳴上「お、俺の部屋もか!?」

美奈子「そうだね。まぁ今は必要も無いし、誰かが触った様子も無かったから。心配はいらないと思うけど」

>気付かなかった……。

鳴上「で、何でお前はここでそれを使ってるんだ」

美奈子「……楽しそうだったから、ついね」

鳴上「楽しそうって、じゃあ参加すればいいだろう」

>モニターの中で、陽介が里中に尻を蹴り上げられている……。

美奈子「ん?うん……そうなんだけどね」

鳴上「居辛いなら、俺が一緒に……」

美奈子「そういうんじゃなくてさ。仲良くなっちゃうと、辛いじゃん。別れるのが」

鳴上「……別に、今生の別れってわけじゃないだろ?」

美奈子「もし、今生の別れだったらどうする?」

>美奈子は笑っている。
>その表情の奥に別の感情を感じるが、読み取る事が出来ない。

鳴上「ただ、帰るってだけじゃないか」

美奈子「悠。わかってるんでしょ?」

鳴上「……」

美奈子「多分、見た所湊も……ここで別れたら、次に会う時は今までのお互いとは違うかもしれない。そう思うんでしょ?」

鳴上「そんなことは……」

美奈子「嘘。予感がある。私には嘘は通じないよ……あなたの中にもいたんだから」

鳴上「……確かに、漠然とだけど嫌な予感がある。だけど、だからってどうしようも無いじゃないか。俺は湊を、八十稲羽の仲間を信じてる。きっと、また変わらずに」

美奈子「ねぇ。それだけじゃないでしょ?その嫌な予感。どこから来るのかわかってるはずだよね?」

>美奈子の言葉は常に急所を抉る様に飛び込んでくる。

鳴上「……湊」

美奈子「そう。湊。彼の存在が君と仲間達の関係を別な物に変えようとしている」

鳴上「でも、そんな事が……」

美奈子「その予感、取り除くことも出来ると思わない?例えば、君が湊を……」

鳴上「いい加減にしろ。俺は信じてる。湊も、仲間達も。美奈子、正直に答えろ。お前は俺達の……」

美奈子「敵じゃない。病院で言ったよね?私はこの事件を……それに纏わる色んな物を終わらせる為に来た。これも、その一つ」

>美奈子は笑っている。
>彼女の整った容姿が、今は不気味に見える。
>俺は誰を信じるべきなんだ……?

鳴上「……敵じゃない、というのは信じる。だけど、俺は湊に何もしない。あいつも、信じる」

美奈子「……ふぅん」

>美奈子の笑顔が消えた。
>しかしすぐに、いつもの人懐っこい笑顔に戻った。

美奈子「えへへ、変な事言っちゃった。でも、忘れないで。いつかその時が来るかもしれない」

鳴上「来ないさ。湊と戦う日も……お前と戦う日も」

美奈子「そうだったらいいね。よし、電源オフ!悠、一緒に居てくんない?新参だから居辛くてさぁ」

>緊張が一気に解けて、ため息が出た。

鳴上「俺よりよっぽど馴染んでおいてよく言うよ。……そういや、美奈子の部屋ってどこなんだ?」

美奈子「あ、それ聞いちゃう?……実は、三階が埋まってるらしくて。二階に部屋もらったんだけど」

鳴上「二階って、男子階だろ?」

美奈子「うん。まぁ、変な事してくる人いないでしょって事で」

鳴上「それはそうか。じゃあ行くか」

美奈子「はーい!ごめんね、面倒かけて」

>美奈子と送別会に戻った。
>湊は何時も通りに見える。
>……帰るまでに、少し話をした方がいいかもしれない。



【鳴上の夢】


>これは、夢だ。
>どれだけリアルでも、何となく夢なんだなとわかる時がある。
>今が、そうであるように。
>ここはタルタロスか。
>体が思ったように動かない。
>どこかを目指してひたすら登っていっているようだ。
>いつもある迷宮は無く、大部屋の階と後は螺旋階段……。
>夢の中の俺は疲れを知らない。
>それよりも強い意思に押され、高い高い塔を登っていく。
>途中、何度も倒れた。
>登り疲れたわけじゃない。
>途中の大部屋に、俺を妨害する人がいるからだ。
>知っている人だと思う……が、判然としない。
>何度も止められ、その度に一つ上の階で目覚める。
>そしてまた登る……。
>もう少しで、目的の場所だ。
>そこには、あいつがいる。

「湊……!」


【2012/5/11(金) 晴れ 巌戸台分寮】


>最悪の目覚めだった。
>ぐっしょりと寝汗をかいている。

有里「おはよう。良く眠れたみたいだね」

>湊が軽口を叩く。

鳴上「ああ……お互いな」

>湊の顔色は最早壮絶な程だ。
>恐らくは俺の顔も同じように引きつって土気色に違いない。

有里「覚えてる?夢」

鳴上「いや……なんだろうな。最悪な夢だったが」

有里「僕も。……気分が悪い」

>とにかく着替えよう……。

>……。

陽介「はぁー今日でここともお別れかー……つれー!」

千枝「あ、二人ともおはよ……うわっ!どうしたのその顔!」

美奈子「二人とも惨殺死体みたいな顔してるね」

陽介「美奈子ちゃん、その例えは流石にナシだわ」

>高校生組がラウンジに集まっている。

鳴上「おはよう。ちょっと夢見が悪くてな」

有里「まぁ平気だよ。おはよう、皆」

陽介「相棒そんなんで学校行けんのかよ。休むか?」

千枝「有里君も、何だったらまだ寝てた方がいいんじゃない?」

鳴上「いや、大丈夫だ。そろそろ時間だし行こうか」

有里「いってらっしゃい。僕も今寝る気にはならないから……何かしてようかな」

美奈子「だったら昨日の片付けが残ってるよん」

有里「……仕方ない、やるか」

鳴上「それじゃ有里、行ってくる」

陽介「夕方にまたな!」

千枝「帰りの準備とかしといた方がいいよね?」

美奈子「せっかく会えたのになーもうお別れかー」

鳴上「美奈子、それ何回目だ?」

>有里に見送られながら学校に向かった。


【巌戸台分寮 ラウンジ】


真田「片付けか、手伝うぞ」

有里「あ、真田先輩。良いんですか?」

真田「お前一人にやらせるわけにもいかないだろ?他の連中は帰ってきてから片付けるつもりだったようだが……」

有里「あれ?真田先輩って今……」

真田「大学は休学中だ。元々トレーニングの旅の途中だったからな」

>トレーニングの旅とは一体……。

真田「昨夜は楽しかったか?」

有里「あ、ええ。お蔭様で」

真田「そうか……帰るんだな、今日」

有里「そうですね」

真田「……」

有里「……」

>そのまま、無言で片付けを終えた。

有里「……ふぅ」

真田「どうした、疲れたか?」

有里「いえ、昨夜余り眠れなくて」

真田「そういう時は体を動かせ。不安な時はとにかく動く、これに限る」

有里「はは……」

真田「笑うなよ、本当だ。迷った時にでも思い出せ」

>どうやら真田は何かを伝えようとしているらしい。
>……もしかして、励ましてくれているのだろうか。

真田「無茶に中身を伴わせる必要は無い。無茶は無茶で良いんだ、壁に穴くらいは開く。それに、無茶について来てくれる仲間だっているだろう、お前には」

有里「似合わないですよ、先輩」

真田「まぁ、俺から出せるのは口ぐらいだからな。餞別代りだ」

有里「有難く頂戴します。……無茶に付き合わされる側はたまったものじゃないんですが」

真田「それでも、お前は大丈夫だったじゃないか」

有里「そういえばそうですね。……じゃあ、少し眠ります。夕方には帰りますんで」

真田「ああ……またな」

有里「ええ、いつか」

>部屋に戻って休もう。
>悠のベッドを使わせてもらう事にしよう……。


【月光館学園】


鳥海「えー、研修って事で来てた花村君と里中さんが今日でお別れになるそうです。皆別れを惜しむように。以上」

男子「先生のホームルーム、日に日に短くなってないか」

鳴上「だな」

陽介「えーというわけで、今まで五日間?今日で五日?楽しかったです!またこっち来る時あったら遊んでくれな。今までサンキュー!」

千枝「皆仲良くしてくれて、本当に嬉しかったです。えっと……また、遊びに来る事もあると思うので、その時は構ってやってください。ありがとうございました!」

>陽介と千枝が挨拶を終えて席に戻ってきた。

男子「帰っちゃうのかー寂しいなーちくしょー」

陽介「俺だって寂しいっつーの。でもいつまでもこっちいるわけにもいかねんだよ」

男子「わかったよ……仕方ないもんな……じゃあ帰る前に一つ頼み聞いてくれよ」

陽介「お、何だ?親友の頼みだ、なんだって聞くぜ?」

男子「里中さんのメアドを教えてくれないでしょうか」

陽介「お前もブレないね……待ってろ、本人に聞くから」

>どうやらメールを送っているようだ。

陽介「お、返信はえー」

男子「オッケーか!?」

鳴上「勝手に教えたらぶっ飛ばすよ!……か」

陽介「悪い……お前の期待、応えらんねーわ」

男子「ちくしょう!なんだってんだよ!」

鳴上「……」

>『前の席の男子が里中のメアドを知りたがってるんだが、教えても大丈夫か』と
>……来た来た。

鳴上「おい、里中のアドレス」

男子「何っ!?いいのか鳴上!」

陽介「あーあ知らねぇぞ悠。蹴りあげられんぞ?」

鳴上「ほら」

陽介「何々?『別にいーよ』……」

男子「……陽介、後で購買のパンおごってやるよ」

陽介「おう……おう……さんきゅーな……」

>騒がしかった一週間も今日で終わりか……。
>やっぱり寂しい。

>……。

陽介「っしゃ終わったー!相棒、俺と里中アレがあるから先帰るわ!」

鳴上「ああ、帰りの準備か。俺もすぐ帰るけど、時間無いなら急いで帰った方がいいな」

陽介「行きがギリギリだったからな。そういうわけだから、後でな!おい里中!急ぐぞ!」

千枝「あ、ちょっと!じゃ、また後でね鳴上君!」

鳴上「ああ、後で……おい、美奈子?」

美奈子「んん?なに?」

鳴上「昨日あんまり寝てないのか?一日中寝てたな」

美奈子「バレた?眠くってさ……。授業終わった?」

鳴上「終わったよ。帰ろう」

美奈子「ん、帰って見送りいかないとね……よし、帰ろっか!」

>美奈子と帰って、湊たちを見送ろう……。



【巌戸台駅】


有里「それじゃ、お世話になりました」

陽介「くそっ……美女五人と同じ屋根の下……悠ぅ~変わってくれよぉ!」

千枝「……バッカじゃないの?あの、色々お世話になりました」

美鶴「ああ。帰るまで気を抜くなよ。家に帰るまでが旅行だぞ」

順平「陽介ー、帰ってもちゃんと勉強しろよー」

陽介「任せといてくださいよ、気が向いたらしますって!」

岳羽「千枝ちゃん、これあげるね。がんばって!」

千枝「えっ、ほんとですか!?うわ、ありがとうございます!が、がんばります!?」

>皆思い思いに別れを告げている。

陽介「お、電車来たぜ。これだろ?」

千枝「そうだね。じゃあほんと、お世話になりました!楽しかったです!」

美鶴「またいずれ会おう。今度は私もそちらにお邪魔したいな」

順平「そん時ゃ俺も行くぜ!待ってろよ!」

岳羽「私も連れてってもらおうかな。それじゃ、またね!」

>三人が電車に乗り込んでいく。
>……。

鳴上「湊!」

>最後のチャンスだ。
>ここで何か伝えておかなければならない。

鳴上「湊、お前は……」

>言いかけた所を手で制される。

鳴上「湊……」

有里「……ガラじゃないんだけど」

>湊はぽりぽりと頬を掻いて、それからしっかりと俺の眼を見て言った。

有里「信じろ」

>その言葉には『僕を』も『仲間を』も入っていなかった。
>しかし、それだけでしっかりと伝わった。
>……大丈夫。俺達は、大丈夫だ。

鳴上「……またな」

有里「うん。また」

>湊が電車に乗る。
>これで、またしばらくは会えないだろう。
>だが、どこか安心して見送る事が出来た。
>『No.13 死神 有里湊』のランクが4になった。

>振り向くと、美奈子が笑っていた。

鳴上「……どうかしたか?」

美奈子「別に。嬉しくってさ。……さ、帰ろう!」

>美奈子に強引に手を引かれて、寮への道を歩いた。


>……次の日の朝、影時間が無くなった事を知らされた。



【夜 八十稲羽駅前】


陽介「うぉーなつかしの八十稲羽!っつっても一週間も経ってねぇけどな」

千枝「帰って来たーって感じだね」

有里「さてと、それじゃここで解散といこうか?」

陽介「そうだなー。お、そういやお前来週から同級生だろ?」

千枝「あ、そうだったね。制服とかどうなってんの?」

有里「美鶴に聞いたら堂島さんの所に送ってあるそうだから、月曜から本式に八十神高校の三年生だね」

千枝「そっか。楽しみだね!」

有里「そうだね……っと、どうやらお迎えみたいだ。じゃあ、また」

>駅前に車が止まって、菜々子が降りてきた。
>堂島さんも続いて降りてくる。

菜々子「湊お兄ちゃんおかえり!ちゃんとお留守番してたよ!」

有里「ただいま。良く出来たね」

>菜々子の頭を撫でてやりながら、堂島さんに一礼した。

有里「ただいま帰りました。わざわざ迎えに来ていただいて……」

堂島「構わんさ。それじゃ帰るか。そうだ、荷物も届いてたぞ」

有里「ああ、そうですか。どうも高校に通える事になりまして」

堂島「良かったじゃないか」

有里「それから、僕の生活費も工面してくれる先が見つかったので……家賃代わりにお納めしたいんですが」

堂島「ん?そんなもんいい。お前はその分働いてくれてるだろ」

有里「でも、学校に通い始めたら家事をする時間も……」

堂島「……そうだな。ま、お前の気が済むなら受け取るよ。ほら、そういうのはいいから乗れ。疲れただろ」

有里「すみません……ありがとうございます」

>堂島さんの運転で家に帰ることになった。

有里「……」

菜々子「湊お兄ちゃん、何か面白い事でもあったの?」

>膝の上から菜々子が聞いてくる。

有里「いや、悠と別れた時にね。彼が面白い顔をしてたものだから」

菜々子「お兄ちゃんが?」

有里「うん。……あれは、良い顔だった」

>別れ際の悠の顔が浮かぶ。
>しっかりとした信頼に満ちた顔だった。
>あれが自分に向けられた物だと思うと、少し愉快になる。

有里「誰かから信頼されるのって、こんなに嬉しい事だったかな。……久しぶりすぎて、忘れてるだけか」

>菜々子は不思議そうに僕を見ている。
>また、頭を撫でてやった。
>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが4になった。


【堂島宅】


>部屋には制服と教科書が置いてあった。
>確かに、陽介が着ていた物と同じだ。

有里「実感が沸いてきた……」

>学生生活、特に楽しいと思った事は無かったが……。

有里「あのメンバーと一緒なら楽しいかもしれないな」

>少し顔が緩む。
>……ゆかりに言われた事を思い出す。
>子供っぽくなったというより、もしかすると……。

有里「僕、今結構幸せなのかもしれない」

>言ってから照れくさくなって一人で笑った。
>幸せ。
>そういえば昔はそれなりにそんな感覚もあった気がする。
>それこそ大昔、せいぜい5歳か6歳までだが。
>……あの夜以降、確かに感情の触れ幅は小さくなっていた。
>当時は一切自覚が無かったが、今にして思うとはっきりとわかる。
>あの頃の自分は異常だった。
>滅私の極みとでも言おうか。
>けれど今は違う。
>ちょっとした事で、笑ったり焦ったり。
>それが嬉しくて仕方が無い。
>ようやく、人間になれたような気分だ。

有里「教科書か……ちょっと読んでみようかな」

>まずは現国か……。

>……。

有里「あ、まずい。ちょっと読みすぎた」

>気がつくと、時計が随分と進んでいる。

有里「読破って、ちょっと読むのレベルじゃないよね……あ、れ?」

>違和感。
>浮かれすぎて何かを見落としたか?
>もう一度、時計を確認する。

有里「……1時。1時、だって?」

>思い返す。
>さっきまで卓上スタンドの明かりで教科書を読んでいた。
>つまり、ずっとスタンドは着いていたという事になる。

有里「影時間には、電気も届かない。はずだろ?」

>……まずい予感がする。
>まず悠に、それから美鶴に、それから陽介達に。
>とにかく、メールしておこう。
>早く返事が来る事を祈って。

さよなら巌戸台。
ただいま八十稲羽。

そして急展開。

ここで本日分は終わり。
では、また後日。

おわっ!やばい!かなり重大なミスに気付いた!ていうか大分前からミスってた!

えーと、現在のタルタロス探索進捗状況が64F(三層)クリア、四層へとなっておりますが。
これ間違いです。三層は114Fなので、前回二層クリアから間違ってることになります。
ええと、前回探索で64F到達し、美奈子発見は114F……のつもりだったんですけど。

とりあえず、現在三層までクリア、次から四層……って事でお願いします。
申し訳ないです。

メギドラ乙!


続きが気になる

乙ダイン
終わり方が卑怯

乙!

乙ドラオンでございます

次が楽しみで寝れない

乙ダイン!
影時間どうなった!?



P4Uに順平出ないかなー

むむむ、休日の方が忙しいぞ・・・?

というわけで、あんまり量内ですが本日分。



【2012/5/12(土) 晴れ 巌戸台分寮】


>……?
>起きたと同時に、携帯にメールが何件も入っているのを確認した。
>どうしたというんだろう。

鳴上「……昨夜の影時間?」

>眠っている間に何があったのだろうか。
>湊、それから八十稲羽の皆……。
>文面から只事でない事だけが伝わってくる。

鳴上「誰かに聞いてみようか……」

>とりあえず、桐条さんだろう。
>ラウンジかな……。

美鶴「そろそろ起きてくる頃だと思っていたよ」

>ラウンジには課外活動部の面々が集まっている。

鳴上「その、すみません。昨夜は割りと早くに寝てしまって……状況が良く」

真田「気にするな。ここにいる全員、状況は飲み込めていない」

>真田さんが皮肉っぽく笑う。

鳴上「……何があったんですか?」

>誰も答えない。
>一拍置いて、アイギスさんが口を開いた。

アイギス「何かあった、のではありません。何も、無かったんです」

鳴上「それは、どういう……」

美鶴「昨夜の12時、私はいつものように影時間の訪れを待って起きていた。しかし、時計の針は12時からすぐに12時1分を指した」

鳴上「え?」

美鶴「本来なら、というのもおかしな話だが。ここ一ヶ月、毎日訪れていたはずの影時間が、昨日は無かったんだ」

鳴上「まさか……」

アイギス「間違いありません。私も確認しています」

岳羽「私もそう。私の場合はたまたまだったんだけどね……」

順平「どうなってんだよ、これ。もう解決したのか?事件は終わったってのかよ」

天田「勝手に解決するなら、僕達がやってた事ってなんだったんでしょうね」

>全員が納得いかない表情を浮かべている。
>勿論俺もそうだ。
>この事件がそんなに簡単に終わるなら、俺達は何の為に……。

美鶴「……とにかく、様子を見るより他無いだろう。ここで終わってくれれば一番だが」

鳴上「ですね。これから何事も無ければいいんですが……」

順平「でもよ……何も無かったら、俺達どうなるんだ?」

岳羽「どうなるって……いつも通りに、学校通えばいいんじゃない?」

真田「ここにいる理由が無くなる以上、解散になるだろうな」

風花「……ですか、ね」

>……。

美奈子「おっはよーん。……あれ。皆どうしたの?」

鳴上「ああ、おはよう。いや、ちょっとな……」

美奈子「ん?ふーん……まぁいいけど。昨夜の話でしょ?」

鳴上「なんで知っ……そうか、美奈子もペルソナが……」

美奈子「私を誰だと思ってんの?で、影時間が無くなったから事件も終わったんじゃないかって?」

鳴上「聞いてたんじゃないのか、最早」

美奈子「勘だよ、勘。でも、もし全部普通に戻ってるとしたら、何か足りない物あるんじゃないかなあ」

鳴上「足りない物……?そうか」

>もし事件が終わったとすれば、テレビの中も正常に戻っているはずだ。
>そして、正常になっているならば。

鳴上「クマだ。あいつが戻ってきてたら……」

風花「クマ君?……そっか、テレビの中が普通になってたら、あの子も出てこれるはずだもんね」

鳴上「出てこなくても、テレビの中が元に戻ったならいつでも会いにいけるはずです。ちょっと、見てきま……」

>……?

鳴上「あれ?」

>手が、液晶に触れる。
>触れる?

鳴上「嘘だろ……」

>液晶に触れる事が出来る。
>今まで、そこにはテレビの中との境界面があった。
>しかし、今触れている硬質のこの面は……。

鳴上「テレビに入れない……!?」

順平「はぁ?冗談だろ、だってお前いつもこうやって……」

>順平さんがずんずんと歩いてテレビにぶつかった。

順平「えでっ!……あれ?」

風花「ちょ、ちょっと待ってください。本当に……?」

>山岸さんの手も、液晶を通り抜ける事は無かった。

鳴上「……ちょっと、向こうの仲間にも連絡してみます!」

美鶴「頼む。これは……どっち、なんだ?」

>メール……いや、電話だ。
>急いで連絡を取ろう。


【ジュネス内フードコート】


陽介「どーいう事だよ、これ……」

有里「さぁ……今の所は何とも」

直斗「確かに、昨夜影時間はありませんでした。それは確認しています」

千枝「私、帰ってすぐ寝ちゃったからなぁ……」

完二「俺も起きてたけど気付かなかったぜ……」

雪子「けど、影時間が無くなったってことは……」

りせ「もう事件は終わりって事?」

>皆に連絡してジュネスに集まってもらった。
>昨夜、確かに影時間は来ていなかった……。
>しかし、事件がこれで終わったとはとても思えない。

直斗「これで終わりなら、それはそれでいいんですけどね……」

有里「僕にはそうは思えない。こんなに簡単に片付くような事じゃないはずなんだ」

完二「ま、スッキリとは来ねぇな……」

陽介「つっても、俺らに出来る事って……なんだ?」

>……。
>全員が黙ってしまった。

有里「とにかく、今は様子を見るしか……」

>Pipipi……

有里「ごめん、電話だ。……悠からだ!」

>向こうで何か進展があったのだろうか。

有里「もしもし」

鳴上『湊か。お前のメール見たぞ』

有里「そう。それで、どうだった?」

鳴上『どうもこうもない。何かあったなら解決しようもあるが』

有里「何も無い事に関して、僕らは無力だ。でも、連絡してきたって事は何かあったんだろう?」

鳴上『そうだ。お前、テレビの中は入れるか?』

有里「え?それは普通に……」

鳴上『いいから試してみてくれ』

有里「……」

>恐る恐る、テレビに触れてみる。
>……通らない。

有里「これは……陽介」

陽介「どうした?何かあったのか?」

有里「そこから走ってテレビの中入ってみて」

陽介「何で走る必要が……」

有里「いいから、頼む」

陽介「なんだってんだよ……いくぜ?せーのっ」

>陽介が漫画のようにテレビにへばりついた。

陽介「……あれっ?おい、ここテレビの中じゃねえよな?」

千枝「いや、当たり前でしょ。え、って、どういうこと?」

直斗「テレビの中に……」

雪子「入れない?」

有里「悠の言いたい事はわかったよ」

鳴上『もしかしてと思ったが、そっちも駄目か……』

有里「どう見る?」

鳴上『さぁな……俺もそれが聞きたくて電話したんだ』

有里「……影時間に関しては僕のほうが詳しいかもしれない。けど、テレビに関しては君が専門だろ?」

鳴上『異常事態だ。それだけはわかる。けど、今の状況じゃ手が出せないのも事実だ』

有里「手詰まり……か」

鳴上『とにかく、様子見しかないみたいだな。また何かわかったら連絡する』

有里「こっちも。じゃ、また」

>電話を切った。
>テレビに入れない。
>影時間が来ない。
>世界は平和になった。
>……そんなはずは、無い。
>これは更なる異常事態の始まりだ。
>それはわかる、わかるが……。

有里「……見ての通り、もうテレビの中には入れないみたいだ」

りせ「じゃあ、もう事件を追うって事も出来ないの……?」

有里「そうなるね。……ただ、これは終わりじゃない。それは何となくわかるんだ」

直斗「しばらくは様子を見ましょうか。テレビにも入れないんじゃ僕達に出来る事は……」

有里「油断は出来ないけど、基本的には日常生活を楽しんでもらってかまわないだろうね。ふぅ……」

千枝「大丈夫?」

有里「ああ、平気。少し……いや、なんでもない。さ、今日は解散にしよう」

陽介「そうだな……帰るか」

完二「どうなんのかね、これから……」

りせ「なんか、不安カモ……」

雪子「そうだね、何ていうか……怖い、かな」

千枝「何も出来ないっていうのもね……」

>皆は不安そうにしていた……。
>無理も無い、正直な話僕も不安だ。
>その中で一人だけ、少し様子の違う人がいる。

有里「直斗は帰らないの?」

直斗「あ、いえ、帰ります……けど。少し気になる事があって。そうだ、有里さんもよければ付き合ってもらえませんか?」

有里「構わないけど、何を?」

直斗「検証です。今までと……これからの」

>流石に探偵だけの事はある。
>目前の事態を見つめつつも、しっかりとまとめようとしているようだ。
>……頼りになる。

有里「それじゃ、わかってる事は何でも言うよ。何から始める?」

直斗「まず、影時間について。影時間とはどういう物ですか?」

有里「……月が近付いた時、それに惹かれてシャドウが集まってくる。その時、折り重なったシャドウの力は時間と空間に作用する」

直斗「その時間側面の現象が影時間、でしたね」

有里「そう。そして空間側面が、あるはずのない塔の出現。タルタロスだ。じゃあ今度は僕から。マヨナカテレビってなんだろう?」

直斗「マヨナカテレビは、ある存在によって管理される、テレビの中の世界において異物が入り込んだ際に発信される番組です」

有里「異物。人間、か。そして、その人の心の暗い部分を投影した存在が現れる」

直斗「それが、シャドウ。ここで気になるのが、シャドウの持つ力です」

有里「僕の言った通り、シャドウの集合が影時間の引き金となるのなら、ここ八十稲羽で同様にシャドウが集まった時も」

直斗「影時間が始まってもおかしくなかったはず。けれど、それは起こりませんでした」

有里「何故?」

直斗「原因はわかりません。僕達が適宜排除していったからかもしれないし、数が足りなかったのかもしれない」

有里「聞くところによると、自然発生したシャドウだけだったらしいからね。集まってくる、というのとは違うんだろう」

直斗「そうですね。シャドウを集める存在……月、でしたか。それがありませんでしたから。そう考えると納得できます。しかし」

有里「今回、確かに月はあった。テレビの中にね。そして、数多のシャドウ……」

直斗「そこなんです。月はテレビの中にあったと言います。ですが、その時テレビの外にも月はあるはずでは?」

有里「……まぁ、確かに。雨の日しか映らないから気にして無かったけど、おかしな話だね」

直斗「それとも、雨の日だけテレビの中に月が入りこむと?それよりは、こう考えた方が自然ではないでしょうか」

有里「テレビの中の月と、普段見ている月は別物である」

直斗「そうです。そうなると、もう一つ辻褄が合わない事が出てきます。有里さんの存在です」

有里「僕の?」

直斗「ええ。以前聞いた話では、その月を人の手が届かないように封印し、その際に有里さんはこの時間に……という話でしたね?」

有里「そうだよ」

直斗「……すみませんが、調べさせてもらいました。有里さん、三年前に死亡扱いになってますよね?そして、遺体は火葬されている」

有里「……」

直斗「その封印、もしかすると……文字通りの、命がけだったんじゃないですか?」

有里「……その通り。流石だね」

直斗「心配しなくても、他の人に言うつもりはありません……無用に気を遣わせるだけでしょうから」

有里「助かるよ。それで、僕がここにいる事に何の疑問が?」

直斗「はい。それを調べた時、有里さんはその命を使い封印を果たしたものと仮定しました。まず間違いありませんね?」

有里「その通り。命というより、魂を使ったというべきかもしれないね」

直斗「その言葉で、尚の事違和感が増しました。では、今ここにいる有里さんの魂は?」

有里「だから、封印が何らかの原因で解けて……」

直斗「肉体に関しては僕も良くわからないのですが、開放された魂が宿った、そういうことですね?」

有里「そうだろうね。だから、月がまた近くに……?」

直斗「気付きましたか。僕自身、突飛すぎて信じられなかったんですが……まぁ、ペルソナやシャドウの事を考えると有り得ない話ではないかと思いまして」

>なるほど、確かにそうだ。
>むしろ、何故今まで気付かなかったのだろう。

直斗「つまり、月は―――」

>僕がここにいるということはそういう事なんだ。
>で、あるなら。
>あそこにあったアレは一体……。

>……。

直斗「……結局、今の事態を解決する案には至りませんでしたね」

有里「そうだね……まぁ、焦っても仕方ない。しばらくはゆっくりさせてもらうとしようよ」

直斗「そうですね……」

>同意しつつも、未だ何かを悩んでいるような直斗。
>前から思っていたが……。

有里「直斗、睫長いね」

直斗「はぇ?何ですか、急に」

有里「綺麗な顔してるなって思って。あ、そういえば何でいつも男装なの?」

直斗「え、あ、その……趣味?です」

有里「そうなんだ。いつか普通に女物着てるのも見てみたいな」

直斗「い、嫌ですよ恥ずかしい」

有里「あれ、駄目か……まぁ、その内見せてよ」

直斗「まぁ……その内には」

>どうやら照れているだけのようだ。
>是非見たいのでこれからもちょくちょくつついてみよう。

直斗「でも、意外でした」

有里「何が?」

直斗「いえ、有里さんは……こういった事態になったら、一番に手を離しそうに思っていたので」

>申し訳無さそうにそんな事を言われた。

有里「諦めがよさそうって事かな?」

直斗「というより、あまり興味が無いのかなと。無理なら無理で……どうでもいい、とでも言いそうだったので」

有里「……やめたんだ、そういうのは」

直斗「そうですか。……そういう姿勢には、好感が持てます」

有里「それはどうも。なら今度女物を……」

直斗「それとこれとは話が別です!……そろそろ、帰りますね。ではまた」

>ぺこりと一礼して立ち上がった直斗にひらひら手を振った。
>ちょっと、見直された気がする。
>『No.16 塔 白鐘直斗』のランクが3になった。

>……。

鳴上「やっぱり、あっちでもテレビには入れないようです」

美鶴「そうか……我々に出来る事はもう無い、と」

岳羽「悩んでても仕方ないかも知れないですね……」

順平「しばらく様子見だろ、しょーもねー。んじゃ、俺用事あるんで。しっつれいしまーす」

美鶴「そうだな。解散にしよう。……ただ、油断が許される状況ではない、それを忘れないように」

>……何も出来ない。
>今までそれなりに気合いが入っていた分、抜けた時の反動も大きいのだろう。
>油断はするな、と言った桐条さん自身も、少し抜けているのが見て取れた。

鳴上「どうしたもんかな……」

美奈子「いいんじゃない?いい機会だし、普通に学校生活送れば。案外楽しいかもよ」

鳴上「そりゃ、そうかもしれないけど……途中で放り出すみたいで気分が悪いんだ」

美奈子「何も出来ないんだから仕方ないじゃん。それに、君みたいに思ってる人ばっかりじゃないみたいよ」

>美奈子が指差す先には山岸さんが座っている。
>……心なしか、安堵しているようにも見える。

鳴上「……?」

美奈子「ま、頑張ってねー。私はもうちょっと寝る……眠くてさ」

>美奈子はひらひらと手を振りながら去っていった。
>頑張れと言われても……。

鳴上「あの……」

風花「あ、はい。どうかした?」

鳴上「いえ、どうもしないんですけど。山岸さんこそ、どうかしたんですか?」

風花「私?何で?」

鳴上「いや、何ていうか……複雑そうな顔してたので」

風花「あはは、お見通しか」

>山岸さんは眉根を寄せて笑っている。

風花「……今日、時間あるかな?」

鳴上「あ、はい。ありますけど」

風花「良かったら、ちょっと付き合って欲しいの。話したい事があって」

鳴上「……?はい、じゃあ……」

>山岸さんと話をする事になった。
>……どうしたのだろうか。



【シャガール】


>……。
>山岸さんはずっとコーヒーを飲んでいる。
>話があると言われた手前、こちらから話を振るのも気が引けて、俺も黙っている。
>気まずい沈黙が、続いている。

風花「……ごめんね、何か……」

鳴上「え?いや……別に……あの、話って……?」

風花「うん。気付いてると思うけど、私……最近調子悪いんだよ、ね」

鳴上「まぁ、何となくは……その事ですか?」

風花「うん……」

>それだけ言ってまた黙ってしまった。
>確かに、最近どうも上手くいっていないようだが、それと俺に何か関係があるのだろうか……?

鳴上「あの……それで、俺に出来る事とか」

風花「あ、うん……えっとね。体の調子が悪いってわけじゃなくて、心の……気持ちの問題なんだと思う」

鳴上「ペルソナは心の力ですからね。何か悩み事ですか?」

風花「ちょっと、ね……鳴上君って、誰か女の人と付き合った事ってある?」

鳴上「は?」

>予想外の質問に驚いて、気の抜けた答え方をしてしまった。
>真面目な話なのだから、真面目に聞かないと。

鳴上「いや、無いです。それがどうかしましたか?」

風花「ええ!?そうなの?」

鳴上「そんなに驚かなくても……」

風花「ご、ごめん。でも、意外だったから……うん、そっか。うん……」

>今度は何かに納得するように一人でうなずいている。
>俺の交際経験が何の関係があるんだろうか……?

鳴上「ええと、それがどうかしたんですか?」

風花「じゃあ、一般的な見解で答えて欲しいんだけど、いい?」

鳴上「はい。どうぞ」

>大きく深呼吸している……。

風花「……二人の男の人を好きになって、どっちか片方を選べなくて、それでオタオタしてる女の子って、どうなのかな」

鳴上「二股って事ですか?」

風花「違うの、そうじゃなくて……どっちと付き合ってるとかじゃなくて、ただ好きなだけ」

鳴上「ああ、そういう……良いんじゃないですか?別に」

風花「そうかな……もっと、詳しく言うとね。一人は、以前好きだった人。もう会えなくなっちゃって、忘れようって思って。でも、また帰ってきちゃって」

鳴上「……?」

風花「その時には、もう別に好きな人がいて。でも、帰ってきたら、やっぱり好きだなって思って……それで、どっちにしよう、なんて悩んでる」

>山岸さんは視線を落として黙り込んだ。
>……何となく、覚えのある話だ。

鳴上「でも、悩むだけなら自由だと思いますけど」

風花「自分勝手じゃない?どっちにも申し訳ないっていうか」

鳴上「……まぁ、一般的には、酷い女って言うのかもしれませんね」

風花「だよ、ね……」

鳴上「いや、飽くまで一般的にですよ。ていうか、それでどっちもにモーションかけてるとか、そういう事はあるんですか?」

風花「そういうわけじゃ、無いんだけど。……納得いかなくて。私の中で」

鳴上「だったら一般的にも何とも言わないと思いますけど……それ、俺に何か出来るんですかね?」

>ふと口をついて出た言葉だった。
>しまった、と思った時にはもう遅い。
>山岸さんは打ちのめされたような表情をしている。

鳴上「あ、その……」

風花「そう、だよね。ごめんなさい。あの、お金私が出しておくから。ゆっくり飲んでから帰っていいからね」

>自分が飲み終えていないのに、慌てたようにして席を立った。

鳴上「いや、あの……!」

>引き止める言葉が上手く出なくて、そのまま立ち去られてしまう。

鳴上「くそっ……馬鹿か、俺は」

美奈子「へっただねー、悠は」

>席の背もたれごしに声がした。

鳴上「美奈子、いつから……」

美奈子「最初から。内緒で見に来てたんだけど……どうすんのよ」

鳴上「どうするったって……」

美奈子「一回拗れたら修復大変なんだから。経験者はかく語るってね」

鳴上「俺、謝って……」

美奈子「もー、どんだけ鈍いのよ。今行ったって駄目だって。……そうねー、しばらく避けられると思うから、その後かな?」

鳴上「……でも」

美奈子「いいから、言うとおりにしときなって。女の子には心の準備が必要なのよん。とりあえず、コーヒー代悠がもってね」

鳴上「あ、ちょ、おい!」

>美奈子は伝票を渡すと帰っていった。

鳴上「どうすりゃいいんだ……」

>山岸さんに酷い事を言ってしまった。
>……ちゃんと、謝ろう。
>『No.02 女教皇 山岸風花』のコミュがリバースになってしまった。



【夜 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、まだ起きてるの?」

有里「うん、もうちょっとね」

菜々子「そっかぁ。菜々子もう寝るね」

有里「ん、おやすみ」

菜々子「おやすみ……」

>随分眠かったのだろう、菜々子はふらふらと部屋に戻った。

堂島「寝たか」

有里「みたいですね」

堂島「……どうだった、向こうは」

>僕はまだ起きている。
>堂島さんに説明する事がたくさんあるからだ。

有里「ええ、楽しかったです。……どこから、話しましょうか」

堂島「全部だ。……と、言いたい所だが、それじゃ俺の方が混乱しちまいそうだ。まず、お前は結局何なんだ?」

有里「漠然とした質問ですね。僕は……死んだ人間です。ある理由で。しかし、何の因果かおまけをもらったと」

堂島「冗談に聞こえるがな」

有里「これが、冗談じゃないんですよ」

堂島「だろうな。そんな顔じゃない。で、そのお前は何が出来る」

有里「事件の解決が出来ます」

堂島「事件ったって、俺の知る限り何も起こってないぞ」

有里「でしょうね。ですが、その内起こります。必ず、起こります。それはわかるんです」

堂島「……ちっ。とんでも無い拾いもんだ、お前は」

有里「すみません」

堂島「いや、いい。で、お前はこれからどうするんだ?」

有里「……あれ、もっと突っ込んで聞かないんですか?」

堂島「なんでだ?」

有里「いや、だって……あからさまに胡散臭いじゃないですか」

堂島「……信じるさ。俺にも予感がある。なんだろうな、只事じゃない気がするんだ」

有里「刑事の勘ですか?」

堂島「そうだな。前にもこんな事があった。その時は、悠がお前のように事件解決に走ってたんだが」

有里「だから、信じてくれると」

堂島「正確にはそれもあって、だ。……まず、お前は肝心な所では嘘を吐かない。それが一番信用出来る理由だ」

有里「偉く信用されたもんですねぇ」

堂島「刑事だからな。人を見る目はある方なんだ……で、お前はどうするんだ」

有里「このまま、事件を追います」

堂島「危険は無いのか」

有里「あります」

堂島「……お前にしか、出来ないのか」

有里「出来ません」

堂島「……」

有里「……」

>堂島さんはため息のように長く煙を吐き出した。

堂島「お前がそうしたいなら、すればいい。わざわざ止める事はしない」

有里「すみません……」

堂島「ただ、俺や菜々子の事も少し考えてくれ。それだけでいい」

有里「……」

堂島「そうすりゃ、無茶も出来ないだろ」

有里「酷いですね、止められるよりよっぽどキますよ」

堂島「そうだろ。わかってて言った」

有里「やられた……」

堂島「はは。ほら、もう寝ろ。時間も時間だ。菜々子と遊んで疲れただろ」

有里「はい、子供はエネルギーがあふれすぎて……じゃあ、おやすみなさい」

堂島「おう、おやすみ」

>堂島さんは、僕を信用してくれているらしい。
>……心の底から、有難い話だ。
>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが4になった。

有里「しかし、月か……」

>夜空を照らす月を眺める。
>昼間、直斗から聞いた仮説。

直斗『封印が解けた本物の月がテレビの中にあるなら、外にある月は一体なんなんですか?』

有里「……どっちが、本物なんだろうね」

>カーテンを、閉めた。

事件は終わり?

そんな事になったらこのSSが終わるじゃないか!

というわけで、本日分は終わり。
では、また後日。

乙!

更新が毎日の楽しみになってます


なんかドキドキしてきた

おお・・・
おもしろくなってきたー!!
乙!

だからなんで休日の方が忙しいんだよ!(バンッ

ここから色んな部分で物語が加速します。
というわけで本日分。



【2012/5/13(日) 晴れ ポロニアンモール】


>今日はベルベットルームに行く事にした。
>事件の始まりはあそこに呼ばれ、事件が終わる時もあそこに呼ばれる。
>今回、事件が終わったと思えないのはそれが理由でもある。
>青い扉に手をかけて、ノブを回す。
>……。

イゴール「ようこそ、我がベルベットルームへ。今日は何の御用でしょう?」

鳴上「……話がしたい」

イゴール「お話ですか。良いでしょう、聞きましょうとも」

鳴上「すまないが、質問したい。影時間、マヨナカテレビ……あんたはその両方を見てきた。そうだな?」

イゴール「勿論でございます。人を眺め、人とは何か、生きるとは何かを見定めるのが私の唯一の趣味でありますから」

鳴上「あんたに聞きたい。昨日、影時間が来なかった。俺はもうテレビにも入れない。これは、事件が終わったからか?」

イゴール「慮外な事をおっしゃいます。貴方自身、わかっておられるでしょう?事件は終わってなどいない……滅びの時は、刻一刻と近付いておりますよ」

鳴上「やっぱり、そうなんだな。それで、俺に出来る事は無いか」

イゴール「それを探すのは私めにございません。貴方が探し、貴方が見つけ出すのです。そうしなければ、何の意味もない」

鳴上「……ヒントもなし、か」

イゴール「強いて言うなれば、貴方は既に鍵を握っていらっしゃる。後は扉に手を掛け、ノブを捻り、開くのみなのです。私から言える事はございません」

鳴上「今まで通りで良いって事か?」

イゴール「左様でございます。……ですが、貴方がもし事態を収束させたいのなら、急いではなりません。時を待つのです。その時がくれば、自ずと見えて来る物があるはずです」

鳴上「そうか……ありがとう、参考になった。また来ます」

イゴール「いつでもいらしてください。貴方には期待している……またのご来訪を、お待ちしております」

>……。
>結局、時を待て、という以外の情報は得られなかった。
>どうしたものだろうか……ただ待つだけというのも、気分が良くない。
>イゴールも言っていた通り、何かが起こる時が近付いているのが感覚としてある。
>変わらず日常を送りながら、徐々に沈んで行くような空気が町中を包んでいるからか……。

エリザベス「お待ちください」

>ふいに、背後から声をかけられた。

鳴上「エリザベスか。どうかしたのか?」

>エリザベスはいつものように一礼する。

エリザベス「少し、世間話をと。どうやら行き詰っておいでの様子、息抜きも必要かと思いまして」

鳴上「……そうだな。いろいろ悩みが多すぎて、少し参ってる」

エリザベス「ええ、そうでしょうとも。……噂を、ご存知ですか」

>エリザベスは微笑みながら言う。
>彼女が表情を崩す事は滅多に無いが……
>変わらない微笑の裏から伝わる感覚は、恐らくこれが重要なヒントだと言っている気がする。

鳴上「噂っていうと、何の?」

エリザベス「噂の噂でございます」

鳴上「噂の……噂?」

エリザベス「はい。噂の噂……噂が、現実になるという噂」

>噂が、現実に?
>何故だろう、どこかで聞いたような記憶がある。
>そんなはずは無いのだが……。

エリザベス「噂というのはいつの世も無くならない物です。昔は人面犬や口裂け女など、様々な噂が流行ったものです」

鳴上「エリザベスって何歳なんだ?」

>一瞬、寒気がした。

鳴上「いや、何でもないです!」

エリザベス「……そういった噂が、現実になるという噂が流れた時期がありました。その時も、主は客人を迎えていたようです」

鳴上「噂が現実に、ね。どういう事なんだろう……」

エリザベス「例えば、憎い相手を殺してくれる呪いであったり」

鳴上「物騒だな。で、それがどうしたっていうんだ?」

エリザベス「当時は口伝でした。どこから伝わったのか誰も知らない。だけど、いつの間にか皆が知っている。そんな物だったのですが。最近は、どうやら事情が違うようですね」

鳴上「噂の伝わり方が違うってことか。今だと、そういうのはネットで……」

エリザベス「そうですね。例えば、そういう場所でのみ囁かれている噂。それが現実になっていたとしたらどうでしょうか」

>……なるほど、エリザベスの言いたい事がわかった。

鳴上「ぞっとしない話だな。知らない間に事件の渦中かもしれないってわけか」

エリザベス「もしそうなった時、貴方は事態の解決に向かいますか?」

鳴上「多分、そうするだろうな。でも、事件の原因がわからなけらば解決も難しい。ネットでの噂が現実になって事件が起こるなら、まずネットを調べてみないとなぁ」

エリザベス「そうですね。解決の糸口が見つかるやもしれません。……そのお顔は、先ほどまでと違うご様子ですが?」

鳴上「少なくとも、悩みの一つに光明が差したからかな」

エリザベス「まぁ!このような他愛ない世間話でも悩み事の解決の一助になるだなんて!驚いてしまいます」

>エリザベスは大袈裟に驚いたフリをしている。
>俺の知らない所で、何かが動いている。
>まずそれの尻尾を捕まえない事には、何も始まらないようだ。

鳴上「世の中何があるかわからないな。ありがとう、気が楽になった」

エリザベス「それは何より。それと、もう一つ。彼……もう一人の彼の近くに、ある人が近付いています」

鳴上「彼?有里か。ある人ってのは?」

エリザベス「先ほど言った、噂が現実になるという噂。それに最も詳しいであろう方です。機会があれば、会う事もあるでしょう」

鳴上「そうか、覚えとく。今日は帰るよ。じゃあ、また」

エリザベス「ええ、また……」

>エリザベスはまた一礼して、見送ってくれた。
>ある人……?
>とにかく、帰ってネットを調べてみよう。
>何かわかるかもしれない。


【2012/5/14(月) 晴れ 八十神高校】


>何だか懐かしい心地だ。
>上履きがまだ無くてスリッパで廊下を歩いたり、そういうの。

有里「はじめまして、有里湊と言います。諸事情あって中途半端な時期での編入になりますが、これから皆さんと一緒に勉強できるのが凄く楽しみです。よろしくお願いしますね」

>にこりと微笑んでおく。
>対人用兵器の一つだ……。
>何だかんだで煩わしいのは苦手だし、ここで良い印象を得ておかないと。
>後ろのほうに陽介と千枝、天城さんがいるのがわかる。
>……好都合にも、その中心に空席が一つ。
>僕の席だ。

陽介「よ、来たな有里。まさかクラスまで同じとはなー」

有里「これは偶然みたいだけどね。流石にそこまで手回しはしてないみたい」

雪子「花村君から聞いてたけど、本当に学校通う事になったんだね。おめでとう!」

有里「ありがとう。これからよろしく」

千枝「こっちの制服、割と似合ってるね。学ランってタイプじゃないと思ってたけど」

有里「着た事無かったから新鮮だよ。ちょっと首が苦しいかも」

陽介「上のほう外しとけばいいだろ?そんなキッチリ着なくてもよ」

>皆と授業を受けた……。
>学校って、こういうのだったっけ。
>……。

陽介「っし終わったー!どうよ有里ちゃん、こっちの授業は!」

千枝「月光館で地獄見たでしょ私ら……あそこ通ってたんだよ、有里君」

有里「面白かったよ。授業より他の話が長い辺り」

雪子「ウチは先生が面白い人多いから……」

りせ「里中せんぱーい!今日もお話聞かせてくださいよー!有里さんこんにちわ!……ええっ!?」

>授業が終わってすぐ、りせがやってきた。
>何故か驚いたようだ。

有里「ん?」

陽介「あ、言って無かった」

千枝「私も忘れてた……」

有里「ああ。僕も今日から八十神高校三年生だから。よろしく、久慈川後輩」

りせ「ひどーい!何で教えてくれないんですかー!」

有里「てっきり伝わってると思って」

千枝「ごめんね、うっかりしてた」

りせ「……しょーがないなー。二年じゃ私が一番ですよね!?」

有里「なのかな?」

陽介「二年組にゃ言ってねーかんな」

千枝「私も言ってないから、そうじゃないかな?」

りせ「だったらいいです!」

>直斗にはちょっと言ったような気がする。
>……黙っておいた方がいいだろう。

千枝「で、何の話?」

りせ「だからー、向こうでの土産話ですよぉ。聞かせてくれるって言ってたのにー」

千枝「あ、その話ね……」

>千枝がちらちらとこっちを見ている。
>僕の事でも話すのだろうか。

有里「あ、僕もう帰るから。陽介、良かったら」

陽介「おう、帰るか!」

>鞄を持って席を立つ。

千枝「あ、また明日ね!」

雪子「二人ともまたね。……で、千枝。勿論私にも聞かせてくれるんだよね?」

りせ「あ、なんだったら直斗も呼ぶ?」

千枝「別にいいけど……」

>……。

陽介「最近、あいつら仲良いよな」

有里「そうだね。あの女子特有の盛り上がりはどういう心理で起きるんだろうか」

陽介「わかんねえけど、俺らが見たあの女子可愛くね!?とかってのと同じかね」

有里「なるほど、わかりやすい」

陽介「……実際のとこ、どうなんだよ。里中となんかあったのかよ」

有里「別に?」

>ふふんと笑って何かあったことを匂わせておく。
>……やっぱり、からかうなら陽介だ。

陽介「まぁ深くは聞かねぇよ?こう、知り合いのそういう話ってすげえ罪悪感がさ……」

有里「けど興奮するよね……」

陽介「まぁな……って言わせんなよ!」

完二「あ、花村先輩。今帰りっスか」

陽介「おう、完二。お前も帰りか」

完二「うぃっス。あれ、ところで有里サンなんでウチの学ラン着てんスか」

有里「完二!僕は先輩だぞ!その態度は何だ!」

>とりあえず、怒鳴ってみた。

完二「うわぁっ!え、どういうことっスかこれ」

陽介「ああ、こいつも今日から学校通えることになったんだよ。聞いてたんだけど言うの忘れててよ」

完二「マジスか!じゃあ有里先輩っスね!改めてよろしくお願いしゃっス!」

有里「うん、よろしく。完二も一緒に帰る?」

完二「あ、んじゃ俺もちょっと聞きたい事あったんで。有里先輩って、家事とかやるんスよね」

有里「まぁ、それなりにね」

完二「裁縫とかって、得意だったりしないっスか」

有里「ん、それなりにね」

完二「だったらちょっとお願いっつーか……頼みあるんスけど、いいスか?」

>……。


【夜 堂島宅】


有里「ふぅ。意外と難しいもんだなぁ」

>完二から借りた教本通りにやってみるものの、中々綺麗にはいかない。

有里「しかし、あみぐるみね……」

>意外性抜群の趣味を持っているものだ。
>しかもそれを子供達に配っているとか。

有里「そういう事なら喜んで手伝うけどね。あ、ここがこうなんだ」

>……あれ、これ楽しいかもしれない。
>夜更けまで、あみぐるみと格闘した……。
>……。

>堂島さんが帰ってきたようだ。

有里「お帰りなさい、遅かったですね」

堂島「ああ、ただいま。お前もまだ起きてたのか……なんだ、それ?」

>右手にあみぐるみを持ったまま出迎えてしまった。

有里「ああ、あみぐるみって奴です。気にしないでください。……お疲れみたいですね」

>堂島さんはどっかりとソファーに座ると、深くため息をついた。

堂島「……わかるか。わかるだろうな。まぁ、事件だよ。……厄介なヤツだ。また帰りが遅くなる毎日だと思うと気が滅入る」

有里「菜々子が寂しがりますね」

堂島「何、お前がいる。多少は大丈夫だろう。ふぅ……」

>……?

有里「ライター、どうしたんですか?」

堂島「これか?もらったんだ。普段はコンビニで買ってるんだが、折角だし使おうと思ってな」

>堂島さんの手にはジッポーが握られている。
>確かに、いつものライターでは無いようだ。
>……見た事は無いはずだが、既視感がある。
>パチンッ。

有里「いい音しますね」

堂島「だろ。これをもらった奴……俺と同じ、刑事なんだがな。そいつが考え事をしながら鳴らしてたんだ。移ったかな」

有里「案外、いい考えが浮かぶかもしれませんよ。晩御飯、どうしますか?」

堂島「いや、いい。気分じゃない……明日の朝食べる。今日は、寝るよ……」

>堂島さんは本当に疲れているようだ。

有里「お風呂は入った方が疲れとれますよ。じゃあ、僕も寝ます」

堂島「ああ、おやすみ」

>階段を登る途中、またライターの音が響いた。



【2012/5/15(火) 晴れ 八十神高校】


陽介「はよー……って、どしたの、コイツ」

>陽介の声が聞こえるが、振り向く気になれない。
>今は一秒でも長く休んでいたい。

雪子「原因、それみたい。鞄の横」

陽介「あ?何この袋……おわっ!んだこの量!」

千枝「なんか遅くまで編んでたらしいよー。完二君に頼まれたんだって」

陽介「あー、そういやそんな事言ってたな。って、初心者だっつってたのにこの出来かよ」

雪子「すごいよね、私一個もらっちゃった」

千枝「あはは、私も。凝り性なんじゃない?」

>遅くまで、とは言ったが実は遅くまでなんてもんじゃない。
>結局朝方までずっと編み続けていた……ハマってしまったようだ。
>授業が始まる頃だが、とにかく眠い。
>ちょっと、寝てしまおう……。

完二「……先輩!有里先輩!おい!流石にそろそろ起きろっつの!」

>はっと顔を上げる。

完二「もう放課後っスよ。どんだけ寝るのかと思っちまった」

>確かに、もう夕方だ。
>どうやら、一日寝て過ごしてしまったらしい。

有里「起こしてくれてありがとう……あいたた」

>机に突っ伏して寝ていたからか、顔とか背中が妙に痛い。

完二「いや、それはいいんスけど。先輩、俺の頼み聞いてくれてて寝不足なんだって聞いたんで。で、例のはこれっスか」

有里「そう、それ。一応色んなパターン作ってみたけど、上手く出来たかどうかは完二の判断に任せるよ」

完二「んじゃ、拝見しやス」

>完二は袋からあみぐるみを取り出すと、しげしげと眺めている。

完二「……つーか、これ俺の貸した本のレベルじゃないっスよね。どうしたんスか」

有里「途中から手が勝手に動いて……気付いたらそんな事に」

完二「いや、全く文句無ェどころか俺より上手ェじゃねえか。先輩、才能あんじゃないスか?」

>どうやら、完二を唸らせるレベルだったようだ。

有里「これで問題無いかな?」

完二「問題無いっつーか、むしろ俺のが見劣りするかもしんねェ。良かったら今度教えてくれねえスか?」

有里「いいよ、じゃあ暇な時があったら言って。教えるから。今日は……帰って、寝たい」

完二「まだ眠いんスか。花村先輩が一日中寝てたって言ってたけど……」

有里「寝て悪いか!」

完二「キレるポイントがわかんねェよ!……でも、これ、ありがたく頂いときます。ガキども、喜ぶと思うっス!」

有里「ん。それじゃ、またね」

完二「うス、また」

>完二から高評価を受けたようだ。
>『No.14 節制 巽完二』のランクが3になった。
>……眠い。
>帰る途中で寝てしまいそうだ。
>どうしたものだろうか。
>などと考えながら校門に行くと、見覚えのあるストラップのついた鞄が見えた。

有里「あれは、昨夜作った鴨兎20号……ってことは、千枝?」

千枝「あ、やっと来た。遅いぞ、有里君!」

>あみぐるみをストラップにしているようだ。

有里「それ、気に入った?」

千枝「ん?ああ、ありがとね。可愛い」

有里「そう……ていうか、待っててくれたんだね。ごめん、待たせて」

千枝「いや、調子悪そうだからさ。付き添いいるかなって思って」

有里「今にも寝ちゃいそうな所を除けばすこぶる良好だよ」

千枝「それが調子悪そうって言ってんの……大丈夫?フラフラしてるよ?」

有里「いや、大丈夫……さぁ、帰ろうか」

>千枝と二人で帰る事にした。
>ああ、眠い……。



【鮫川河川敷】


>……駄目だ!

有里「寝る」

千枝「へっ!?ここで?」

有里「睡眠は全てに優先する……ていうか……眠い……限界が……」

千枝「ちょ、ちょっと、フラフラしたら危ないって!えと、どっか……せめて座れる所……!」

>千枝はわたわたしながら場所を探してくれている。
>が……。

有里「後は任せた……」

>ふらっと倒れた。
>痛くなかったから、多分千枝が受け止めてくれたんだろう……。
>……。


【夜】


有里「ふわ……ん?」

>目を覚ますと、目の前に千枝の顔があった。
>……?

千枝「……ん……あ、起きた?」

有里「とするとここは千枝の膝の上か」

千枝「ごめん、私も寝ちゃってた……体痛くない?大丈夫?」

有里「おかげさまで。……これ、もうちょっと堪能してていいかな」

千枝「だ、駄目!駄目です!起きたら早くどいたどいた!」

>仕方ない、名残惜しいが起きるとしよう。

有里「ごめんね、わざわざ。千枝こそどこか痛くない?」

千枝「平気だよ。もう大丈夫?」

有里「うん。眠気は晴れた。……膝枕は、やっぱりいいね」

千枝「私の膝で悪いけどねー。そんなにやわらかくもないし。鍛えてるから……」

有里「いや、そうじゃないんだ。やわらかいだけでは駄目で、弾力というか、とにかく筋肉が多少無いといけない。千枝の太ももは筋肉だけでもなく脂肪だけでもない、かなり理想に近いものだよ」

千枝「力説されても……」

有里「脂肪のふんわりとした感触の奥にしっかりと息づく若い筋肉のハリが良いんだ。中々できるものではないよ」

千枝「あ、そう……褒められてるんだと思うけど、あんまり女の子に脂肪脂肪言わない」

有里「おっと、ごめん。良かったらまたお願いしてもいいかな?」

千枝「膝枕?」

有里「眠いときに」

>千枝はちょっと考えて、それから笑った。

千枝「誰も見てない時だったらいいよ。恥ずかしいからね」

有里「それでいいよ。……ああ、こんな時間か。ごめん、付き合わせちゃって。家まで送るよ」

千枝「いいって、そんな……」

>足音が聞こえる。
>この時間にここを通る人が僕達以外にもいたのか……。
>足音が止まった。
>振り返ると、背広姿の男が一人。

?「君ら、高校生か?こんな時間までデートとは……うらやましいけど、関心しないぜ」

>パチンッ。
>男の手元から、聞き覚えのある音がした。

ZIPPOを鳴らす癖のある、あの男の登場です。
多分、お気づきの方多いんじゃないでしょうかね。

短くて申し訳ないが、今日の所はここまでで。
では、また後日。

ぬぁぁぉぁあ!面白いのに!見ていたいのに!
なんか知らんが有里ムカつく
千枝を鳴上に返せ!とか思ってしまう

乙ドラオンでございます。

こっちでも出てきた!
あと4日か……。

男ってのはなあ・・・

乙!


あのモノマネがすごい上手い人の登場か

モノマネのプロ登場かwwww

>>1はぜひ頑張って終わりまで続けて欲しい

しかし、他スレの似たネタとかぶって大丈夫か?

まぁ彼はぶっちゃけしばらく出番ありません。
鴨兎20号は、甥っ子(10歳)が作ってくれました。シュールでした。

そして作中、時間は少し前後します。
ぽんぽーんと進む本日分。



【2012/5/13(日) 夜 巌戸台分寮】


>ネット上で、都市伝説や噂話を扱うサイトをいくつか巡ってみた。
>……それらしい話は出てこない。

鳴上「おかしいな……エリザベスの言ってたのはこういう事じゃないのか?」

>ネットで飛び交う噂話。
>良く見れば、この手のサイトは更新日が軒並みかなり前だ。

鳴上「なるべく最新の情報が欲しい。こういうサイトだと、多くて月一更新なのか……じゃあ、こっちか」

>某巨大掲示板のトップを開く。

鳴上「何となく怖いイメージがあってあんまり見なかったけど、確かそういうスレッドもあったはず……」

>カテゴリ:オカルトの掲示板を開いた。

鳴上「……アセンション?呪い?予言……オノヨーコ?ここ、やっぱりヤバイんじゃないか?いろいろと」

>とにかく、スレッドリストを調べてみよう。
>……怪しい噂・都市伝説スレ。

鳴上「ここら辺かな。どれ……」

>1 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/9(水) 23:21:38.15
  新スレ立てまんた。
  現在進行中の噂→マヨナカテレビ
          影時間
          影人間

  適当に議論してくだし。

鳴上「……いきなり当たりか!」

>ざっと中身を辿ってみる。
>確かに、影時間、マヨナカテレビ、シャドウなど、気になるキーワードが盛りだくさんだ。

鳴上「まさか、本当にこれが原因で……?このスレッドの前のスレッドはどこだ」

>ログを辿っていくと、前スレへのリンクを見つけた。

鳴上「前スレが立ったのが一週間前?こんなに流れが速い物なのか?」

>試しに他のパート系スレを開いてみる。
>一年経っても埋まっていない所もあるようだ。

鳴上「なんで、ここだけ……とにかく、最初に影時間の話題が出た所まで遡ってみよう」

>初出は7スレほど前のようだ。
>そこから一気に流れが速くなり、どんどんパートを重ねているらしい。

鳴上「最初のレスは……これか」

>378 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/26(月) 24:00:00.00
   影時間、始まる。

鳴上「……最初に影時間って言葉が出たのはこのレスだが……これだけじゃ何もわからないんじゃないか?何故ここから話が広まったんだ?」

>379 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/27(火) 21:25:18.14
   懐かしい事言ってる奴がいるな。
   ほい、例のヤツ→ttp://xxxxxxxxx

鳴上「このリンク、踏んでも大丈夫なんだろうか」

>迷っても仕方が無い。
>リンクをクリックした。

鳴上「なんだ、このページ」

>ニュクス教……?
>何かの宗教の信者が作ったページのようだ。
>驚いたことに影時間やシャドウの事、Nyxの事までが事細かに書いてある。
>全てのページの括りには、極上の滅びを皆で!という一文が載っている。

鳴上「気味が悪い……けど、どうやらここが火付け役か。でも、これじゃ……」

>ページをスクロールしていくと、最終更新日が書いてある。

鳴上「2012/3/29……!?」

>スレッドに目を戻す。
>383 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/29(木) 22:45:58.22
   おい、ニュクス教ページ更新来てんぞwwww
   三年ぶりワロタwwwww

鳴上「ここだ、ここから凄い勢いでレスが……更新内容は……」

>新しい項目の追加が行われている。

鳴上「マヨナカテレビ……!」

>見つけた。
>今、騒動の中心にあるのはこの掲示板、このスレッドで間違いない。

鳴上「じゃあ、今影時間が消えた事も……?」

>最新のスレッドに戻る。
>……あった。

>63 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/05/10(木) 24:51:20.18

   影時間とマヨナカテレビ、もう解決したらしいぜ。
   知り合いのペルソナ使いが言ってた、もう来ないってさ。
   テレビん中ももう入れないんだと。
   面白かったけどここで終わり?

鳴上「なんだこれ、とんでもない出鱈目じゃないか」

>しかし、スレッド内の人たちは信じているようだ。
>以後、終了、再開といったくだらないレスでスレは伸びている。

鳴上「このレスが原因で、影時間が消えた……?そんな馬鹿な話があるのか?」

>しかも、この書き込みの通りになっているとしたら、事件は終わった事になる。

鳴上「だけど、そうじゃないんだ。もっと下へ……」

>……見つけた。

鳴上「これか……」

>108 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/11(金) 22:22:38.32
   影時間とマヨナカテレビの一時的消滅は前段階らしいぞ。
   これからしばらくして、次のフェイズに移る。
   そうなったら平和にやってきたこのスレも終わりだな。


鳴上「こいつ……余計な事を……」

>本当に噂が本当になるのなら、さっきのレスで事件が終わっていたかもしれない。
>しかし、このレスがその意味を覆した。

鳴上「というか、何でこんな適当な話を信じるんだここの連中は。ソースの無い話題に食いつくなよ」

>久しぶりに長時間パソコンを弄っていた為か、酷く肩が凝った。
>この話、誰に相談すべきか……。
>とりあえず、今日は寝よう。


【2012/5/14(月) 晴れ 巌戸台分寮】


鳴上「あ、桐条さん、おはようございます。少し時間いいですか?」

>廊下でたまたま桐条さんに出くわした。
>丁度いいので昨夜調べたことを報告しておこう。

美鶴「何だ、何かわかったのか?」

鳴上「ええ、信じていいのかわかりませんが。実は……」

>昨夜見たスレッド、ニュクス教、事態が起こる前に常に書き込みがある事……を説明した。

美鶴「……にわかには信じ難い話だな。何より、そんなものに今まで踊らされていたというのが納得したくない」

鳴上「ですが、偶然というには少し出来すぎではないかと……」

美鶴「うん、看過は出来ないだろう。ただ、余りそういう方面に強い方では無いからな……」

鳴上「寮内に誰か詳しい人はいないんですか?」

美鶴「山岸なら、恐らく。ただ彼女はどうも様子がおかしいしな……そうだ、君から頼んでおいてくれないか?」

鳴上「俺ですか?……ええと」

>美奈子の言っていた事を思い出す。
>実際、昨日も顔を合わせていないし……良い機会といえばそうなのかもしれないが。

鳴上「あの、すみませんが桐条さんからお願いします。俺、他にも調べたい事あるんで」

>……逃げた。
>やっぱりあの時追いかけておけば良かったと思う。
>美奈子め……。

美鶴「そうか、なら仕方ないな。ご苦労だった。あまり、無理はしないように」

鳴上「はい。それじゃ学校行ってきます」

>桐条さんに伝えた以上、俺が調べる必要はもう無いのかもしれない。
>……たまに掲示板を覗く程度にして、普通に生活してみようか。
>逃げかもしれないが、このままじっとしているよりはマシに思えた。



【夕方 巌戸台分寮】


>ぼんやりとした一日だった……。

コロマル「ワン、ワンッ!」

>ラウンジに入った途端、コロマルが足元に駆け寄ってきた。

鳴上「どうした?」

>コロマルは尻尾を振っている。

鳴上「ああ、散歩か。行くか?」

コロマル「ワンッ!」

鳴上「ちょっと待ってくれ、荷物を置いてくる」

>コロマルと散歩に行こう。
>荷物を置いてラウンジに戻ると、アイギスさんとコロマルが遊んでいた。

鳴上「あ、アイギスさん」

アイギス「ああ、鳴上さん。おかえりなさい。どこかへ行かれるんですか?」

鳴上「ええ、コロマルと散歩に。あ、一緒に行きますか?」

アイギス「私もご一緒して良いですか、コロマルさん」

コロマル「ワン」

>アイギスさんはまるでコロマルと会話しているように見える。
>……バウリンガル。

鳴上「コロマルは何て?」

アイギス「かまわないだそうです。なので、ご一緒させていただきます」

鳴上「はは、じゃあ行きましょうか」


【長鳴神社】


>神社に着くなり、コロマルは走り去っていった。

鳴上「相変わらず元気だな。よっと」

>ベンチに腰を下ろすと、アイギスさんも隣に座った。

アイギス「コロマルさんとは良くお散歩を?」

鳴上「たまにですね。コロマルがねだってくる日は来てますよ」

アイギス「そうですか……コロマルさんが、あなたの事を心配していました」

鳴上「コロマルが?俺を?」

>というか、本当に犬の言葉がわかるとでもいうのだろうか。

アイギス「はい。なにやら疲れている様子だと。実際、そのように感じられます」

鳴上「ああ、まぁ……疲れていないといえば嘘になりますが」

アイギス「事件の事でしょうか?」

鳴上「そうですね……今まで気を張っていたのが、少し抜けたのも大きいと思います。何か、いろいろ空回りしてる感じで、何やってんだろう俺って思っちゃって」

>悩みはそれだけでは無いが……言っても仕方が無い事は言わない事にした。

アイギス「今、事件は言うなれば小康状態です。休んでも文句は言われないと思いますが」

鳴上「そうですね、そうかもしれません。けど、どうしても不安で」

>アイギスさんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
>……近い。

アイギス「あなたばかりが無理をしても仕方がありません。私達も協力します。だから、少し休んで?お願いだから」

鳴上「そうですね……わかっちゃいるんですが、どうしても」

アイギス「昨夜は余り眠れなかったのですか?」

鳴上「え、わかりますか?」

アイギス「何となくですが。少し眠られたらどうですか?」

鳴上「まぁ、帰ってから寝ますよ……ここで寝るってわけにもいかないし」

アイギス「……特別ですよ」

>アイギスさんはふとももをぽんぽんと叩いている。

鳴上「はい?」

アイギス「ですから、特別です。本来ならある人専用なのですが。寝心地は保障しますよ、永眠クラスです」

>どうやら、膝枕をしてくれるらしい。
>そういえば、以前天田に膝枕させたのもこの人だったっけ……。

鳴上「えーと、それじゃあ、お言葉に甘えて……しばらくしたら起こしてください」

アイギス「お任せください。では、ごゆっくり……」

>アイギスさんの手でそっと目を閉じられた。
>……硬いのかと思っていた。
>……。

鳴上「ん……ふぅ」

アイギス「お目覚めですか?」

鳴上「はい、すみません……っしょ、と」

>辺りはもう薄暗くなっている。

鳴上「結構寝ちゃってましたね、俺。足痛くないですか?」

アイギス「平気です。寝心地の方は如何でしたか?」

鳴上「あー……良かったです、凄く」

>良かったです。

アイギス「良かった。これからも、余り気を入れすぎないで……心配になってしまいますから。事が動くまで、せめて安らかに」

鳴上「そう、ですね。そうしてみます。ありがとうございました」

コロマル「ワンッ!」

>いつの間にかコロマルも戻ってきている。

アイギス「感謝するならここにもいるだろ、とおっしゃっています」

鳴上「ああ、そうだな。コロマルもありがとう。心配かけたな」

>コロマルは満足げだ……。

アイギス「では、帰りましょうか」

鳴上「そうですね」

>今出来る事はやっている……。
>少し、力を抜く事にしようか。
>『No.07 戦車 アイギス』のランクが4になった。
>『No.08 正義 コロマル』のランクが4になった。



【2012/5/16(水) 晴れ 放課後 八十神高校】


陽介「なぁ、男子高校生だよな、お前」

有里「そうだよ、陽介もそうでしょ?」

陽介「だからこそ疑問なんだけどよ、なんでお前は手芸の本を机いっぱいに広げてんだ?」

有里「いや、これが本当に面白くてね。陽介もやってみる?」

陽介「いや、いい……」

>授業中もこっそりと続けていたあみぐるみ製作。
>かなり納得のいく物が作れそうだ。

千枝「花村はなんか向きじゃなさそうだよね」

陽介「お前だってそうだぞ」

千枝「わ、私はちょっとくらい出来るもん!駄目なのは料理だけ!」

陽介「へーへーそーですねー」

>……視線を感じる。

有里「?」

雪子「……」

>天城さんがじーっと手元を見てくる。

有里「あの?」

雪子「あ、気にしないで。ほんとにすごいなって思って見てるだけ」

有里「ああ、そう……」

>陽介と千枝の漫才が続いている。
>……むぅ。

有里「ごめん、やっぱり割りと気になる」

雪子「へっ?ご、ごめん。もう見ないから」

有里「天城さん、もしかしてやってみたい?」

雪子「……実は、ちょっとだけ」

>それならそうと早く言えばいいのに。

有里「時間ある?良ければ教えるよ」

雪子「今日は平気。じゃあ、お願いします」

陽介「天城と二人っきりとかほっといていいのかよ」

千枝「はぁ?何で?」

陽介「……まぁいいや。俺ぁ帰るぜー、あとごゆっくりー」

有里「またね」

千枝「あ、私も帰るね。また明日」

雪子「うん、またね……それじゃ、よろしくお願いします。先生」

有里「うむ、じゃあちょっと適当にやってみてよ」

>……。

有里「そうそう。それでこっちをこう」

雪子「あ、こう?」

有里「うん。そうそう。天城さん、結構いいセンスしてるね」

雪子「そうかな。……ほんと言うと、用事ってこれだけじゃないんだよね」

有里「ん?」

雪子「お礼言わなきゃって思って。千枝とのこと」

有里「……ああ」

>昨日の土産話って、やっぱりそうだったのか。

雪子「ちゃんと聞いてくれたんだって、千枝言ってたよ」

有里「まぁ、ね。お礼を言われるような事じゃないと思うけど」

雪子「でも、ありがとう。言いたいから言うの」

有里「……結局、保留にしただけだけどね」

雪子「有里君の事だから、気付いてると思うけど……千枝ね、最近お化粧始めたんだよ」

有里「ああ、そうみたいだね」

雪子「何でだと思う?」

有里「うーん、何で?」

雪子「女の子らしくなるんだって。誰の為かは教えてくれないけど」

有里「……へぇ」

雪子「私が千枝の一番いいなって思う時って、何にでもまっすぐ頑張ってる時なの。だから、それを見せてくれてありがとうって事で」

有里「そっか。それは僕も何となくわかる」

>天城さんは微笑んだ。

雪子「さて、と。この本、借りていいかな?私もちょっと家でやってみたいの」

有里「ん、どうぞ。返すのはいつでもいいから」

雪子「うん、ありがとう。あんまり一緒に居ると千枝に怒られちゃうかもしれないし」

有里「そんな事気にするタイプには見えないけど」

雪子「これからわかるよ、きっと。あの子ってああ見えて……ふふ。じゃあ、また明日ね」

有里「うん、また明日」

>ああ見えて、何なんだろうか。

有里「……刺されないように、いや、蹴られないようにしないとな」

>天城さんと話をした……。
>なんだか、知らない間に評価が上がっているようだ。
>『No.18 月 天城雪子』のランクが4になった。


【2012/5/17(木) 晴れ 放課後 月光館学園】


美奈子「悠ー、ねーねー悠ー」

>授業が終わった途端、美奈子に後ろから抱きつかれた。

鳴上「ちょ、何なんだ一体」

美奈子「だってさー最近悠全然構ってくれないじゃーん。ていうか避けてるじゃーん。なんでよー」

>……山岸さんとの事を、美奈子のせいだと考えているから、だとは言えないだろう。
>というか、わかっている。美奈子のせいじゃないんだ。
>……仕方ない。

鳴上「避けてなんかないよ。ただタイミングが合わなかっただけだ」

>このまま避け続けていてもどうしようもない。
>なにせクラスはおろか住んでいる場所まで同じなんだから。

美奈子「ほんとにー?じゃあ、今日暇?」

鳴上「予定は無いけど、どうかしたのか」

美奈子「今日さー美鶴先輩とお出かけする予定なんだけど、悠も付き合ってよ」

鳴上「何で俺が?」

美奈子「いーじゃん。嫌なの?」

鳴上「そりゃ、構いはしないが……桐条さんはいいのか?」

美奈子「私の見立てでは多分大丈夫だと思うんだけど……」

鳴上「見立てって……」

>美奈子はにっかりと笑う。
>全く元気の良い事だ……。



【ポロニアンモール】


美奈子「あ、いたいた!おーい美鶴せんぱーい!」

>声に気がついて、桐条さんがこっちを向く。
>どうやら俺の存在にも気がついたようだ。

美鶴「鳴上、お前が何故ここにいる」

鳴上「それが、美奈子に誘われまして。出掛けるって、どこに行くんですか?」

美奈子「カラオケ」

鳴上「カラオケ?」

>……何故か、桐条さんは恥ずかしそうにしている。

美奈子「美鶴先輩って、カラオケ行ったことないんだって。で、この前私達がカラオケ行ったんだよって話をしたら」

鳴上「ああ、興味を持ったと」

美鶴「わ、悪いか!」

>顔が真っ赤だ。

美奈子「人数多いほうが楽しいかなって思って悠連れてきたんですけど、駄目でした?」

美鶴「いや、駄目というか……歌っているのを聞かれるのが少し……」

鳴上「なんだったら帰りますよ、俺」

美鶴「い、いや、帰らなくてもいい。……そうだな、一緒に行こう。わざわざ来てもらったし」

美奈子「ね、言ったでしょ。大丈夫だって」

>美奈子は何故か自慢げだ……。
>しかし、桐条さんの歌か……正直、気になる。

鳴上「なら、行きましょうか。そんな恥ずかしがるような事でもないですよ」

美鶴「う、うん。まぁそうか。行こう」

>……。

美鶴「思ったより狭いんだな。それに、他の部屋の声も結構聞こえる……ということは、私が歌ったのも聞こえるということか」

美奈子「みんな自分達が歌ってるのしか気にしてませんって。ほらほら、曲決めちゃってくださいよ!」

美鶴「わ、私からか!?私は初心者だし、君達から歌わないか?」

鳴上「カラオケに初心者も何もありませんって。さ、どうぞ」

美鶴「しかしだな……」

美奈子「先輩の歌聞きたーい。ね?悠もそうだよね?」

鳴上「確かに、かなり気になるな」

美鶴「二人して……わかった、これもまた戦いだ……」

美奈子「いや、戦いではないですけど」

鳴上「どんだけカラオケに真剣なんだ」

美鶴「ええと、これを押せばいいのか。よし、と」

美奈子「すごい上手い……びっくりするくらい上手いんだけど……」

鳴上「演歌……」

美鶴「ふぅ、思ったより気持ちの良いものだな。こうして大きな声で歌うというのは……」

美奈子「先輩、演歌好きなんですか?」

美鶴「な、なんだ。変か?」

鳴上「いや、何故か妙にマッチしますけど」

美奈子「今度和服で歌ってくださいよ」

鳴上「俺もみたい」

美鶴「なんだ、何故だ。いいだろう、何を歌っても……」

>桐条さんはまた顔を真っ赤にしている。
>この人、厳しそうに見えてからかうと面白いな。

美奈子「今、美鶴先輩ってああ見えてからかうと面白いなって思ったでしょ」

鳴上「なんでわかっ……」

美鶴「そうなのか?」

鳴上「思ってません!思ってませんから!」

>……。

美奈子「はー楽しかった!どうだった、先輩?」

美鶴「うん、楽しかった。また来たいな」

鳴上「良ければまた誘っていいですか?」

美奈子「そんでからかうんでしょ?」

美鶴「からかうのは許可できないが、誘ってくれればいつでも付き合うぞ。今日はありがとう」

美奈子「いいってことよ!そんじゃ帰りましょっか」

鳴上「そうだな。あなたとー」

美奈子「ゆきーたぁいー」

鳴上・美奈子「天城ー越ぉえ~」

美鶴「やめてくれ……」

>三人でカラオケに行った。
>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが5になった。

鳴上「ん?」

美鶴「どうした、鳴上」

鳴上「今何か、カチって音が……気のせいかな」

美鶴「私には何も聞こえなかったがな……」

鳴上「そうですか。じゃあ多分気のせいだと思います」

>……?



【2012/5/18(金) 晴れ 放課後 八十神高校】


陽介「あっりさっとくーん!あっそびっましょー!」

有里「隣の席で大声を出す必要性がわからない」

陽介「悪い悪い、ノリでつい。いやさ、最近お前女子に取られっ放しだったからよ。たまには男同士遊ぼうぜぇ?」

有里「まぁ、それはいいんだけど。何するの?」

陽介「特に決めてない!」

>帰り支度をしよう。

陽介「ああ、待って!待って帰らないで!何か考える!考えるから!」

有里「冗談。まぁ別になんでも構いはしないんだけど」

陽介「あー、そうだな。……駄目だ、なんもおもいつかねー。とりあえず商店街行こうぜ」

有里「了解。行こうか」

>陽介と商店街へ行こう。


【商店街】


陽介「ビフテキ食う?」

有里「いいね。おごり?」

陽介「しゃーねーな……」

>ビフテキ串……これ、本当に牛肉なんだろうか?

有里「で、本当の所なんで誘ったの?」

陽介「だから、たまにゃ遊びてえなぁって思って」

>陽介の目を見る。

陽介「……いや、聞きたい事がありましてですね」

有里「最初からそう言えばいいのに。何?」

陽介「まぁたいした話じゃねえっつーか、なんつーか。えーと……」

>珍しく言いよどんでいる。
>何か深刻な相談だろうか。

有里「何かあったの?僕でよければ聞くよ。陽介は前に僕の悩みも聞いてくれたしね」

陽介「いやぁ、そうじゃねんだ。そうじゃねんだけど……」

>陽介はどうにも所在無さげにしている。
>そんなに深刻な悩みが……?

有里「陽介。僕は君のどんな悩みでも真剣に聞く。それが君に対する信頼の証だと思ってくれていい。君が悩んでいる事をなんとかしてあげたいんだ。正直に、話してくれないか」

陽介「あー……わかった、聞くぜ。あのぉ……よ」

>陽介の喉が動いた。
>唾を飲んだようだ。
>相談するだけでそんなに緊張するような悩みなのか……。

陽介「里中と、どこまで行ったの?」

>……帰ろうかな。

陽介「あ!あー!笑わねえっつったのにこいつ!」

有里「笑ってない。ていうか笑えない。え、本当にそれが質問?」

陽介「深刻な話だろーが!それ次第じゃ扱いも変わってくるしよ!気遣うでしょーが!」

有里「いや、気は遣わなくて良い。というか、どこまでも行ってないから。そこから勘違いだから」

陽介「そうなの!?」

有里「そうなんだよ。別に何もしてないから。そもそも付き合ってないし」

>陽介は安心したようにため息をついた。
>あれ、もしかして……。

有里「陽介、千枝の事好きなの?」

陽介「は?いやそれは無いんだけど。単に置いていかれたかと思ってよ」

有里「ああ、夏休み開けたら友達が何故か余裕綽々だった時の気持ちだね」

陽介「まぁそんな感じ。何も無いならいいわ。ふぅー焦ったぜ」

有里「陽介って常にそういう事考えてるの?」

陽介「うわ、お前そんな顔で友人を見るかね。いや、だってよお」

>陽介の相談に真剣になる事は今後無いかもしれない。
>まぁ、その不安は同じ男子高校生としてすごくよく……
>あ、あんまりわからないな。

陽介「ん?じゃああの話って何だったんだ?」

有里「あの話?」

陽介「おー。クラスのヤツが、有里と里中が鮫川でき、キスしてたって話が……」

有里「……?あ」

陽介「やっぱ心当たりあんのか!やったのか!?どうなんだ!」

有里「やったというか、やられた……のかな?」

陽介「なにそれどういうことぉ!?」

有里「いや、僕寝てたからもしかしたらその間にって思って」

陽介「いやー聞きたくなかった!聞かなきゃ良かった!いやー!」

>陽介は甲高い声で悲鳴をあげている。

有里「落ち着け」

陽介「それお前の台詞じゃなくね?……まぁ、いいや。お前には覚えないんだろ?じゃあまだしてないかもしれないし」

有里「そんなに重要な事なのかな……」

陽介「いや重要だろ。まず里中があいつ以外になびくってのも信じ難い話なんだよ」

有里「あいつって、悠?」

陽介「そ、そ。あいつ自身は全く自覚してなかったけどな」

有里「へぇ……やっぱり」

陽介「お前は自覚あるっぽいからその分マシっちゃマシか。自覚なしに攻略されてってるのに気付いた時は愕然としたもんだぜ俺ぁ」

有里「辛かったね……」

陽介「おう……」

>何だかよくわからないが、陽介に信頼されているようだ。
>『No.19 太陽 花村陽介』のランクが5になった。

有里「……ん、あれ?」

陽介「あん?どうしたよ?」

有里「陽介、今の聞こえなかった?」

陽介「今のって、何が?」

有里「いや、何かカチッって音……何かが嵌ったみたいな」

陽介「いや、聞こえなかったな。どうかしたんかよ?」

有里「聞こえなかったならいい。多分、気のせいだと思う」

>……?


【2012/5/19(土) 晴れ 巌戸台分寮】


>コンコン。
>軽いノックで目が覚めた。

鳴上「おはようございます」

美鶴「寝ていたのか。おはよう。少し、話がある。そのままでいいから聞いてくれるか」

>ノックしたのは桐条さんだったようだ。

鳴上「何の話でしょうか」

美鶴「君が言っていた、掲示板の話だ」

>噂が本当になる掲示板……というかスレッド。
>続報があったのだろうか。

鳴上「何かあったんですか?」

美鶴「次の段階とやらが、具体的に書かれていた。と言っても、良くわからないのだが……」

鳴上「良くわからない?」

美鶴「ああ。次は『入れ替わり』だそうだ。テレビの中と外、それが入れ替わる……というのが定説らしい」

>入れ替わり……?

鳴上「テレビの中と外が入れ替わるって事は……こっちの世界が、テレビの中に入るって事でしょうか?」

美鶴「わからない。実際、ただの噂でしかないしな……この先どうなるかは、未だ不明だ」

鳴上「……例えば、こっちの世界にシャドウが出るようになる、とか」

美鶴「かもしれない。そう思って山岸に探らせてみようとしたんだが……」

>桐条さんは何故か言いよどんでいる。

鳴上「山岸さんがどうかしたんですか?」

美鶴「いや、まぁ、それは気にするな。君のせいじゃない。とにかく、現状何か起こったというわけではないが、一応報告をと思ってな。じゃあ、私はこれで」

鳴上「あ、ちょ……何か、あったんだな」

>俺のせいじゃない?
>……多分、そんな訳は無い。

鳴上「山岸さん、今何をしてるだろう」

>やっぱり、謝らないと……。


【2012/5/19(土) 晴れ 商店街】


>完二に会いに商店街に来た。
>あみぐるみの作り方指南をするためだ。

完二「あ、先輩ちっス。今日はよろしくお願いしゃっス!」

有里「うん。ええと、で、何が知りたいのかな」

完二「あー、ここんとこなんスけど、これ、俺がやるとどうしても綺麗に揃わなくて」

有里「ああ、そこはね……」

>……。

完二「はぁー、たいしたモンっスね。どうやったらこんなやり方出てくるんスか」

有里「うーん、どうやったらというか、自然に?こう、何となく」

完二「いや勝てねっス。お見逸れしやした!」

>どうやら完二に一目置かれたようだ。

有里「まぁ、我流だから何もかも綺麗にってわけにはいかないけどね」

完二「我流だからすげェんスよ。誰かがやった事やるだけだったら簡単じゃないスか」

有里「そうでも無いと思うけど……?」

>視界の端に、何かが走った。

完二「ん?なんスか?」

有里「いや、なんでもない。ええと、それでここなんだけど」

完二「あ、はい。えーと、一回折り返して……」

有里「ああ、そうじゃなくてこっちから回した方が後で綺麗になるみたいだよ」

完二「はぁ~なるほど。いや奥深いっスね」

>……。

完二「お疲れ様っス!」

有里「はい、お疲れ様。どう?わかった?」

完二「なんとかってとこスかね。いやぁ、なんつーか……先輩、苦手な事とか無いんスか?」

有里「うーん、あんまり無いね」

完二「どんな完璧超人だよ……すげえっスわ。やっぱ」

有里「褒めても何もでないよ」

完二「いやいや、マジな感想っス。俺、こんなに出来る男って見たこと無かったんで。自分以外に」

有里「あんまり趣味にしてる人もいないしね」

完二「っスね。でも、面白いんスよ、意外と」

有里「それは良くわかる。とても良くわかる」

完二「ここまでわかってくれるの先輩で二人目っスよ……俺、なんか嬉しいっス」

>完二は今にも泣き出しそうなほど感じ入っている。

有里「まぁ、またわからない所とかあったら聞いてよ。いつでも教えるから」

完二「うぉっス!むしろこっちから新技編み出してビビらせてやりますよ!」

有里「楽しみにしてるね。じゃ、また」

完二「うス!お疲れ様っした!」

>完二から尊敬の念を感じる。
>『No.14 節制 巽完二』のランクが4になった。

有里「気のせい、だろ?」

>あの時視界の端に映った物……見覚えがあるような気がする。

有里「……そうだ、ベルベットルームにでも……」

>もしかすると、マーガレットなら何か知っているかもしれない。
>呼び出してみよう。

事件はちょっとお休み。
なんてこと無い日常回。

本当に、日常回?

タイムリミットが近付いております。
あと例の彼はまた後ほど登場します。

何だか中途半端ですがここまで。
では、また後日。


噂って怖い


1に質問なんだが NTRないよね?あったら泣く

>>613
過去ログ読め。

ただ菜々子が寝取られたら読むのやめる。





ここ何回かの更新面白くない・・・
というかギャグが入っていない!!

ギャグが入ってないとつまらんとか小学生かよ

>>1おつー


日常ってのは得てして平穏でつまらなく見えるものさね

>>613
NTRって言葉はこのスレでは口にしない方がいいやもしれない
まあ何だ1から全部読め

キタロー好きだけど、一日二日で完二より裁縫上手くなるとかやり過ぎな気がするね

俺TUEEEEE!みたいに感じるし

自分の中でNTRって本当に寝て取られる、いわゆる「やっぱりチ○ポには勝てなかったよ」だと思ってるんですが
どうやらこれでもNTRの匂いがするらしいということで・・・

いや、やめませんので、気になるならすみませんが回れ右を。
NTRうぎぎぎっぎってなりながらも読んでくださる人は、いくらでもNTR話してくれて結構です。

あとキタローさんは無双させるつもりで無双させてるんで、申し訳ないがここもそのままです。

菜々子は誰の物でもないよ!菜々子は菜々子だよ!
ということで本日分。

有里「もしもし?久しぶり」

マーガレット『本当にお久しぶりでございます』

>電話から呆れと少しの怒気を孕んだ声が聞こえる。
>……そういえば、ほったらかしてたか。

有里「ごめん、ここの所忙しくて……マーガレットはどう?」

マーガレット『私の仕事は貴方のお手伝いですので、貴方がここを訪れない限りは』

有里「そうだったね、ごめん。って事は、今は暇って事かな?」

マーガレット『そうなります』

有里「それは良かった。少し話しがしたいんだ。良ければ出てきてもらえないかな」

マーガレット『……どちらに向かえば良いのでしょう』

有里「ドアの前にいるから。待ってる」

>……少しして、ドアからマーガレットが顔を出した。

マーガレット「……いらしているなら、少し顔を出してくれてもよさそうなものですが」

有里「ごめん。でも、外で話したかったんだ」

マーガレット「主に聞かれるとまずい話でも?」

有里「そうじゃない。客人とあの部屋の住人としてじゃなく、友人として話がしたかったから」

マーガレット「……まぁ、いいでしょ。で、何がお望み?」

>一つため息をついて、マーガレットは微笑む。
>エリザベスより幾分か感情を表に出すタイプのようだ。

有里「その口調、いいね。そういう風に接してくれると僕としてもやりやすい。……察しの通り、聞きたい事があって来たんだけど」

マーガレット「これでも少し期待してたのよ?」

有里「すまない。で、質問だ。今、何が起こっている?」

>マーガレットは少し思案してから言う。

マーガレット「見たままが。私より貴方が良くわかっているはずだけど」

有里「違う。僕の知らない所で事が動いている。君は、もしくは君の主はそれを知っているはずだ。そういう位置にいるはずだ」

マーガレット「それは……確かに、そうよ。でも本当に私から言える事は無いし、主も言う事は無いはず。貴方が選んでいる道は、常に正しいの。少なくとも貴方にとっては」

有里「……わかった、信用する。僕はこれからしばらく普通に生活するつもりだけど、それも構わないんだね?」

マーガレット「ええ、どうぞ。思い返せば、貴方が先手に回った事なんて今まであったかしら?後手に回っても、何とか解決してきた。違う?」

有里「そういえばそうか。巻き込まれ型だしね、僕。じゃあ、次に事が動くまで待機といこう。ありがとう」

マーガレット「あら、もうお帰り?」

有里「用事は済んだからね」

マーガレット「酷い人ね。……でも、私は貴方みたいな人の方が好みかもね。以前の彼よりも」

有里「へぇ。嬉しいよ。ちなみにどういう所が?」

マーガレット「苛め甲斐がありそうな所とかね。……冗談よ、そんな顔をしないで。また、来るんでしょう?」

有里「ああ、また来る。今度は花でも持ってこようか」

マーガレット「飾る場所が無いわ。そうね、それならアクセサリーでももらえた方が嬉しいかも」

有里「……まぁ、覚えとく。じゃ、また」

マーガレット「またのお越しをお待ちしております……また、ね」

>大した情報は得られなかった……。
>が、マーガレットの言う通りだ。
>今まで、常に後手にいたが、それでも僕は何とかしてきた。
>……ま、なんとかなるだろう。
>『No.15 悪魔 マーガレット』のランクが3になった。


【巌戸台分寮 三階】


岳羽「あ、アンタ!」

>三階に上がるなり、岳羽さんに見つかった。

鳴上「いや、すみません。その、山岸さんに話があって。別にやましい目的で来たわけじゃ……」

岳羽「風花に話?アンタが?」

>何だろう、この雰囲気。
>女子階にいる事を咎められているのでは無いようだ。

鳴上「あの……山岸さんに何か」

岳羽「そっか、知らないんだっけ。アンタにゃ黙っとけって言われてるもんね。……そういうトコ、ちょっとは治ったと思ってたんだけど」

鳴上「何があったんですか!?」

岳羽「いいわ、教えたげる。風花ね、ペルソナが暴走して……今、寝込んでる」

>……ペルソナが、暴走?
>寝込む?

鳴上「どういう、ことなんですか?」

岳羽「……ごめん、別に鳴上君のせいだけってわけでも無いのに。ペルソナって、実は凄く不安定なの。だから、私達は召喚機を使ってる」

鳴上「俺達は無くても使えますけど……」

岳羽「それも本当は危ないらしいんだけどね。ともかく、不安定な精神でペルソナを呼び出すと、ペルソナが暴走しちゃって。体はともかく、精神的にかなりダメージ負っちゃうんだよね」

鳴上「それで、山岸さんは……」

岳羽「さっきも言ったけど、寝てる。高熱出して。今はアイギスと美鶴先輩が看病してるよ」

鳴上「そんな……俺のせいで……?」

岳羽「鳴上君、この前風花と出掛けた時に何かしたの?あの日から、目に見えて様子が変だったから……」

>あの時、俺がちゃんと話を聞いていれば。
>こんな事には、ならなかったかもしれないのに。
>俺は……

鳴上「しました。酷い事を、言いました。それを、まだ謝れていません」

岳羽「アンタっ……いや、ごめん。まだ頭に血上ってるみたい。別に、人間だから。鳴上君と風花の間に何かあっても仕方ないと思ってる。頭じゃ、わかってるんだけどね」

鳴上「……」

岳羽「でも、実際風花は苦しんでて、鳴上君は平気な顔してここにいる。それが納得できてないみたい。ごめん」

>山岸さんは俺のせいで苦しんでいる。
>俺に出来る事……何があるだろうか。

鳴上「岳羽さん」

岳羽「何?」

鳴上「一発、思い切り殴ってもらえませんか」

岳羽「はぁ?急に何言っちゃってるワケ?それともそういうシュミ?」

鳴上「いえ、そうじゃなく。ケジメです」

>岳羽さんは一瞬ポカンとした後、大きく笑った。

岳羽「ぷっ、あははははは!何それ。私が殴ったら満足すんの?」

鳴上「しません。ただの反省です。俺がやらなきゃならないのはこれからです。今までの自分があまりにも不甲斐無いので」

岳羽「へぇ。鳴上君、そういうタイプなんだ。……うん、気に入った。後任せるね」

鳴上「え?」

岳羽「もし何かうじうじ言うようだったら、私ももっと言いたい事あったんだけどね。そんだけ潔いと全部吹っ飛んじゃったよ。風花の事は君に任せる。いい?」

鳴上「はい。出来るだけの事をしようと思います」

岳羽「うん。ま、それで許すかっていうとまた別問題だけどね。結果見るまでお説教は保留としましょ。んじゃ、きっついの行くよー」

鳴上「お願いします」

>パッチィィ……ン……。
>寮内全てに響き渡るような破裂音。
>叩かれた側の耳がキンキン鳴って聞こえ辛くなった。

鳴上「……ッ」

岳羽「どう?足りないならもっかい行くよ?」

鳴上「いえ、十分です。ありがとうございました」

>十分気合いは入った。
>とにかく、山岸さんの所へ行こう。
>何が出ようと受け止める。

岳羽「んじゃ、美鶴先輩とアイギスには一旦出てもらう事にしますか」

鳴上「すみません、お願いします」

>岳羽さんは山岸さんの部屋に入っていった。

岳羽「……だから、内緒にしてもいずれバレるのわかってたでしょうに」

美鶴「しかし、余計な負担を増やすまいと……」

岳羽「あのね、変な気遣いは事態悪化させるだけだって知ってるでしょ?」

美鶴「……すまない」

岳羽「今からご本人が何とかするって言ってるから。私らは一旦待機。はい出た出た!」

>丸聞こえだが、桐条さんはまた怒られているようだ。
>あの人にここまで言えるのは岳羽さんくらいではないだろうか。
>扉が開いて、三人が出てきた。

美鶴「あの、鳴上。黙っていたのはすまなかった。君に不安を与えないようにと……」

鳴上「わかってます。でも、俺だって出来る事はしたいんです。心遣いを無にするようですが」

アイギス「でしたら、後はお任せしま……お顔、どうかされたんですか?」

岳羽「ああ、それ私がやった。殴ってくれって言われたもんだから」

アイギス「……スポ根ですか?」

岳羽「そういうのどこで覚えてくんの、アンタは……さ、いいから行くよ。あ、鳴上君」

鳴上「はい」

岳羽「……いい顔になったね。男の子って感じ。頑張んなさいよ」

鳴上「はい。……ありがとうございます」

>岳羽さんは二人の背中を押して階段を降りて行った。
>どうやら、少し見方が変わったようだ。
>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが4になった。

風花「……鳴上、君?」

鳴上「はい。起きてたんですか」

風花「うん、さっき……えと、何か、用かな」

>声がとても弱弱しい。
>聞いているこっちが悲しくなる程に。

鳴上「用というか、話がしたくて来ました。あの日、きちんと聞けなかった部分を」

風花「……入って」

>黙ってノブを回す。
>山岸さんはベッドの上で、上半身だけ起こしてこちらを見た。

鳴上「あ、大丈夫です。寝ててください……お願いします」

風花「ん……わかった。ごめんね、寝たままで……」

>山岸さんの顔は赤い。
>なのに、それ以外の部分はやたら白く、不吉な予感さえする程だ。

鳴上「すみませんでした」

風花「……別に、鳴上君は悪くないよ。私が勝手に……」

鳴上「俺は山岸さんが悩んでるのを聞きました。けど、そこで手を離してしまった。それが許せないんです」

風花「……」

>山岸さんは黙っている。

鳴上「あの時、いや、多分もっと前から。俺は山岸さんの手を取る事が出来ました。なのに、俺はそれに気付かずに、自分の事ばかりで……情けないです」

風花「違うの、私が悪いの……声を出せば助けてくれるのはわかってた。でも、出来なかったから……怖くて。出来なかったから……」

鳴上「山岸さん……」

風花「あの時、ユノを通じてはっきり見えたの。あの人形劇……あれは多分、私のシャドウ」

鳴上「人形劇……あの時の、大型シャドウ」

>そういえば、確かにあの頃から少しおかしかった。
>あれが原因だったのか……。

風花「どちらかを選べば、どちらかが消えてしまいそうで。手も伸ばしきれないし、声も出せない。そんな私が、あの時曝け出された気がして……」

鳴上「……」

風花「何も言わなければ、このままいられる。里中さんは……声に出したみたい。そのせいで、悩んで……それを見て、怖いって思った」

>く、くっと唾を嚥下する音が聞こえた。
>恐らくは喋るのも辛いのだろう。
>それでも、喋り続ける。

風花「だから、何も言わないでおこうって、逃げて……ずるい、私は、こうやって、罰を……だから、鳴上君の、せいじゃ……」

>思わず、手を握った。
>熱があるはずなのに、真っ白で冷たい。

風花「なる、かみ……く……?」

鳴上「山岸さんが選べないなら、俺が選びます……。山岸さんが伸ばせなかった分、俺が手を伸ばします。だから、もう怖がらないでください。逃げなくてもいいから」

>ぎゅっと、その小さい手を握る。
>何故気付けなかった。
>何故放っておいた。
>何故、俺は、何故……。
>悔いと憤りで体が熱くなる。
>奥歯をぎゅっと噛み締めて、涙と嗚咽を耐えた。

風花「……大丈夫、死ぬような話じゃないし……ありがとう」

鳴上「でも……」

風花「……鳴上君の手、すごく熱いね」

>山岸さんの手が、俺の手を握り返した。

風花「大丈夫だよ、もう。きっと、体治して……また、一緒に」

>一緒に、何をするのか。
>山岸さんは言わなかったが、俺は頷いた。

鳴上「何か、欲しい物ありますか?」

風花「ん……ちょっと、おなか減ったかも」

鳴上「じゃあ、何か買って……」

風花「あ、鳴上君が作ったのがいいかも……ダメ、かな」

鳴上「そんなに、美味いもんじゃないですよ」

風花「何でもいいから、お願いします」

鳴上「それじゃ、お粥でも……作ってきます」

風花「うん……鳴上君」

鳴上「はい?」

風花「好き、です」

鳴上「……返事は、体治してからでいいですか?」

風花「ふふ、はい」

>山岸さんとの距離がとても縮んだように感じる。
>『No.02 女教皇 山岸風花』が正位置に戻った。
>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが6になった。

美奈子「や」

>部屋を出ると、扉のすぐ横に美奈子が立っていた。

鳴上「うわっ!……なんだ、美奈子か。どうかしたのか?」

美奈子「別に。ちょっと様子が気になって。風花は大丈夫そう?」

鳴上「いや、体調は悪いみたいだ。これからお粥でも作ってきて食べてもらおうかと思って」

美奈子「そう。まぁ、ペルソナの問題は心の問題だからね。体はその内治るでしょ。……任せたね」

鳴上「ん?ああ。まぁ、頑張ってみるよ。じゃ、ちょっと料理してくる」

>お粥か……あんまり作ったことないな……。
>キッチンを借りる為に、階段を降りた。

美奈子「……時間が無い。まるで、無いのに」

美奈子「……覚悟、か」


【2012/5/20(日) 晴れ 巌戸台分寮】


鳴上「ん……あ、朝か……」

>山岸さんの看病をして、それから……

鳴上「何してたんだっけ?確か……」

……鳴上『あ、汗凄いですね。体拭きましょうか?』

風花『え?い、いや、それはちょっと……』

鳴上『平気ですよ、菜々子が風邪ひいた時なんかは……』

アイギス『風花さん、そろそろ体を……』

アイギス『あなたは、ダメです』……

鳴上「あ、思い出した」

>……我ながら、随分混乱していたものだ。

鳴上「山岸さんと菜々子を一緒にするなよ、俺……」

>体中がやたら痛いのは、恐らくその後……。

鳴上「うぅ、痛い……ちょっと体ほぐすか……」

>いい天気だし、コロマルと散歩にでも行こう。


【長鳴神社】


真田「なんだ、また来たのか」

鳴上「真田さんこそ、また神社でトレーニングですか」

>神社には真田さんがいた。
>シャドーボクシングに勤しんでいるようだ。

コロマル「ワンッワンッ!」

>コロマルは、俺をけしかけているように見える……。

鳴上「……真田さん、また組み手してもらえませんか?」

真田「何だ、ついに勝ちに来たか?」

鳴上「いや、まだ無理だと思います。なので、普通に稽古つけてくださいよ」

真田「そうか。ボクシングでいいのか?」

鳴上「まぁ、何でも。ちょっと体動かしたいし」

>真田さんは黙って構えている。

鳴上「それじゃ、よろしくお願いします」

>……。

真田「まず当てる事からだ。威力はモーションが正しければついてくる。大振りは緊張のしすぎだ」

鳴上「そうは言っても当たってくれないじゃないですか」

真田「当たったら痛いからな」

>真田さんはアドバイスをくれながら、俺の攻撃を避け続ける。

真田「……そろそろこっちからも手を出すぞ」

鳴上「いつでもどうぞ」

>相変わらず速射砲の如きジャブだ。

真田「無理に避けようとするな。体のどこかを使ってさばく事も視野にいれろ」

鳴上「ちょっと回転下げようって気にはならないんですか」

真田「それじゃ稽古にならんだろ」

鳴上「全く……」

>言われた通り、避ける弾と受ける弾を分けて考えてみる。
>なるほど、ただ単に避け続けるより幾分楽ではある。

真田「そう、その感じだ……なぁ、鳴上」

鳴上「話しかける時くらい手抜いてくださいよ」

真田「まぁ、いいから聞け。お前、今の状況をどう思う」

鳴上「どうって……」

真田「これで終わると思うか?」

鳴上「それは……そうは思いませんが」

>真田さんがにやりと笑った。

真田「同感だ。で、もし何か……とんでも無い事態になったら、お前はどうする」

鳴上「どうするもこうするも無いでしょ。俺達に出来る事は、ただぶつかって……解決するだけです」

真田「相手がどんな物でもか」

鳴上「そうしなきゃ、解決出来ないならそうするまでです」

真田「……ブレるなよ、鳴上。お前のそのまっすぐな考え方、俺は嫌いじゃない」

鳴上「ええ、いけるとこまで行くつもりです……っと、スキあり!」

>卑怯とも思ったが、話しの最中に一つ見つけた隙間に差し込んでみた。

真田「バカ、そりゃフェイントだ」

鳴上「うわっ……ストップ!待った!」

>真田さんの拳は目の前スレスレの所でぴたりと停止した。

真田「ま、まっすぐ正直に行き過ぎるとこういう事にもなる。予定外の事態にも対応できる柔軟性を持てよ」

鳴上「組み手中に説教しないでくださいよ……」

真田「実際の戦闘でも起こり得るって事だ。俺はお前を気に入ってる。なんとか生き残れよ」

鳴上「どうしたんですか、急に。まるで俺がこれから死ぬみたいな。縁起でもない」

真田「このまま戦いに身をおけばそうなる可能性もあるだろ?……見たくないんだ、そんなのは」

鳴上「真田さん……」

真田「お前と同じだ。予感があるんだよ。多分、この事件はもう一段階厄介な事になる。そうなった時、お前は……」

>真剣な表情でそう言われた。
>この人はこの人なりに、俺を心配してくれているようだ。

鳴上「大丈夫ですよ。俺一人ってわけじゃない。真田さんだって助けてくれるでしょ?」

真田「なら、俺の手の届く範囲にいろよ。どこか知らない所で野垂れ死にされても、俺は何とも出来ん」

鳴上「努力しますよ。今日はありがとうございました……いろいろと」

真田「お前といると、似合わない真似ばかりさせられる。……悪くは無いがな。俺はもう少しトレーニングして帰るよ」

鳴上「はい、それじゃ」

>真田さんと別れた。

鳴上「俺、知らない間に随分気に入られてたんだな……」

コロマル「ワンッ」

>コロマルはこちらを見ている。

鳴上「参ったな、俺はアイギスさんと違ってコロマルの言葉はわかんないんだよ」

コロマル「クゥーン……」

鳴上「……でも、何となくわかるよ。コロマルも気に入ってるって言ってくれたんだろ?」

コロマル「ハッハッハッハ」

>コロマルは満足そうに尻尾を振っている。
>どうやら当たりだったらしい。

鳴上「ありがとうな。……帰る途中でジャーキーでも買ってやるか」

コロマル「ワンッ!」

鳴上「こら、足に飛びつくな、ははは……」

>コロマルとじゃれながら、寮に帰った。



【巌戸台分寮】


鳴上「具合、どうですか」

風花「ん、だいぶ……」

>……まだ、熱は引かないようだ。

鳴上「何か欲しい物とかあります?あ、飲み物持ってきましょうか?」

風花「あ、いいの。今は……あの、ね」

鳴上「なんですか?」

風花「手……」

>山岸さんが寝付くまで、手を握っていた……。


【2012/5/20(日) 晴れ 商店街】


>今日は、何故か彼女に呼び出された。
>先に着いておこうと早めに家を出たのだが……。

有里「既にいるし」

直斗「おはようございます、有里先輩。どうかしましたか?」

有里「いや、別に。……で、何の用かな」

直斗「用という程でも無いんですが……今後について、もう少しお話しておきたいと思いまして」

有里「なんだ、デートってわけじゃないのか」

直斗「デートって……そ、そういうんじゃありません。とにかく、どこかでお話を……」

有里「なら家来る?」

>直斗は一瞬硬直した。

直斗「えぇ!?お宅にって……いいんでしょうか?」

有里「別に構いはしないけど……話するだけでしょ?」

直斗「ええ、まあ。やましい事など何一つ」

有里「じゃあいいじゃない。行こうか」

直斗「は、はい……」



【堂島宅】


有里「どうぞ」

直斗「あ、どうも……」

>お茶を一気に……。

有里「喉渇いてたの?」

直斗「いえ、そういうわけでは……なんだか、緊張してしまって」

有里「緊張?どうして?」

直斗「男性の部屋に一人でというのは、やはり少し……」

有里「あ、そういうつもりで来たの?」

直斗「違いますっ!それに、里中先輩にも悪いし……」

>……うーん。

有里「僕と千枝は何でもないよ。聞いてるだろ?」

直斗「でも、やっぱり悪いです。里中先輩が有里先輩に、その、好意を持っている事は確かなわけですし」

>む、困ったな。
>なんだか可愛いぞ、直斗。
>ああ、こういう性格だから嫌になる。
>真剣な人をからかうのは酷い事だ。
>けど……。

有里「直斗は僕に好意は無い、と」

>どうしてかやらずにいられない!

直斗「えっ、その、そういうわけではないんです。ですが、男女の話となると別というか、その!」

>……楽しいなぁ、もう。

有里「そっか……残念だな。まぁ僕みたいな男を好きになる人がそんなに何人もいるわけないか」

直斗「ですから、嫌いと言うのではなく!その、まだお互い良く知らないし、そう思う材料が足りないというか」

有里「僕の事、良く知ってくれたら好きになるかな?」

直斗「それは……ゼロ、とは言い切れませんが。でも、先輩には里中先輩が、えっと、だから、あのっ」

有里「直斗」

直斗「へっ?はいっ!」

有里「で、話って何?」

>直斗が大きく目を見開いて静止した。
>すごく真面目なんだろう、彼女は。
>とてもからかい甲斐のある人材だ。

直斗「んん、ごほんっ。……そういう態度は、嫌いです」

>咳払いを一つして、居住まいを正した。

直斗「率直に聞きます。先輩は、今後この事件がどう動くとお思いですか?」

有里「事件ね……どうかな。僕には見当もつかない。ただ、終わりではないよね。きっと、そうだと思う」

直斗「僕も同感です。先輩なら、先の展望もあるかと思ったのですが」

有里「今回、僕も知らない事の方が多いんだ。ただ、一つ気になる物を見た」

直斗「気になる物?なんです?」

>街を歩いていて、時折視界の端に入る物があった。
>その姿をはっきりと捉える事は出来なかったが、あれは……。

有里「シャドウが、街にいる気がするんだ」

直斗「シャドウが?影時間も無い、マヨナカテレビも無い今ですか?」

有里「そうだよ。気付かなかった?」

直斗「全然、気付きませんでした……ですが、それって」

有里「当然、とても危険な状況だね。ただ、まだ確信が持てない。直斗も気付いてなかったみたいだし、僕の気のせいかもしれない」

直斗「だからって、無視するわけにもいきません。……といった所で、僕達はテレビの中でないとペルソナが使えない。何が出来るというわけでも無い……か」

有里「……直斗が心配する必要は無いよ。何かあったら一番槍は僕の仕事だ」

直斗「そんな……僕達も協力しますよ」

有里「勿論、あてにしてる。だけど、何かあったらいけないからね。未知の部分に踏み入れるのは僕がやるって言ってるんだ」

直斗「だから、何かあったらいけないのは先輩も同じだと言っているんです」

>この流れは……。

直斗「先輩が僕達を大事だと思ってくれているのはわかりました。けど、僕達にとってもそれは同じです。余り、心配させないでくださいよ」

有里「こっちに来てからなんだかそのことで怒られてばかりだな」

直斗「そうなんですか?」

有里「うん、何かとね」

>向こうではなかったな、こういうの。
>僕が一番に動いて、それで当たり前で……
>この前会った所だと、どうやら随分と成長してたみたいだけど、悠は苦労していないだろうか。
>それでも、やっぱり仲間だと思っていたし、好きだったんだけど。

直斗「だったらそろそろ自覚してください。先輩が動くなら、僕達も動きます。仲間って、そういうものでしょう?」

有里「……悠は、こんな所で戦ってたのか」

>それは、強いはずだ。

直斗「鳴上先輩がどうかしましたか?」

有里「ん?ちょっと羨ましくて。直斗にも好かれてるみたいだし」

直斗「先輩は、そういうんじゃ……」

有里「無いとは、言わない?」

直斗「あ、ありません!ありませんからっ!」

>……。

有里「ま、そういうわけだから。実の所先々については何も考えてないんだよね」

直斗「まぁ、情報不足ですね。仕方ないでしょう……押しかけるようになってしまって、申し訳ありません」

有里「いや、全然。こっちこそ期待に沿えず」

直斗「いえ、いいんです。あの……」

有里「ん?」

直斗「今日の事、里中先輩には、その……」

有里「ああ、内緒にしておこうか。気になるならね」

直斗「すみません。お願いします。では、僕はこれで」

有里「ん、またね」

直斗「また、学校で」

>直斗はぺこりとお辞儀すると帰っていった。

有里「あれ、そういえば……テレビの中でしかペルソナ使えないってどういう事なんだろう」

>その辺りの話を聞いていなかった……。
>まぁ、いいか。

有里「その方が好都合。……さっきはああ言ったけど、やっぱり最初は僕じゃないと。先輩としてはね」

>彼らに責を負わせるわけにはいかない。
>こっちにはいないが、悠のためにも。



【夜】


>Pipipi……

有里「もしもし」

千枝『あ、もしもし?こんばんわ、私』

有里「ああ、千枝。どうしたの?」

千枝『どうしたっていうか。今日、直斗君が有里君とこ行ったって聞いたから』

有里「え、誰から?」

千枝『本人から。なんか謝ってたよ』

有里「ああ、そう……うん、来てたよ」

千枝『……私も行く』

有里「ん?」

千枝『今度、また私も遊びに行くから!いいよね?』

有里「いつでも。待ってるよ」

千枝『うん。……じゃあ、次の週末。行くからね?空けといてね?』

有里「はいはい。空けとくね」

千枝『そんだけ!お、おやすみっ』

有里「おやすみ。また明日学校で」

千枝『うん……』

有里「……切るよ?」

千枝『……ん』

有里「……」

千枝『……』

有里「……そっちから、どうぞ」

千枝『……いやいや、ここは有里君から』

有里「ん、じゃあ今度こそおやすみ」

千枝『うん、おやすみなさい』

>……電話を切った。

有里「電話の切り時ってわかんないんだよね……」

>まぁ、いいか。
>寝よう。


【2012/5/21(月) 晴れ 月光館学園】


>眠い。
>結局、山岸さんについて深夜まで起きていたのが響いているようだ。

美奈子「悠眠そうだね。どうしよっか」

男子「どうするもこうするもあんの、これ」

美奈子「うーん、このまま寝てるようなら……とりあえず落書き?」

男子「結構エグい事思いつくね……よっしゃ、そういう事ならここに水性ペンがあります」

美奈子「おっけーでかした!水性ってのがいいね、油性じゃなくてちょっと温情が感じられて」

男子「おー。それがさ、実は水性ペンって結構落ちにくいんだよね。特に肌に書いた時とか」

美奈子「あ、アレでしょ。水溶性だから皮脂とかの間にインクが入っちゃって時間が経つほど落ちにくくなるっていう」

男子「そうそう、それ。だから、こう額に肉とか定番のヤツを……」

鳴上「待て。まず寝てないからな」

美奈子「起きてたよ、どうしよう」

男子「何もしなかった事がむしろ良かったな」

鳴上「全く……油断も隙も無いな」

>美奈子に至っては結局油性ペンも握っている。

美奈子「だってー悠が構ってくれなくて退屈なんだもーん」

鳴上「だもーんって……」

美奈子「ねぇねぇ、今日何か予定ある?」

鳴上「特に無いけど、帰って寝たい」

美奈子「じゃあさ、ちょっと付き合ってよ。中等科」

鳴上「中等科?何で?」

美奈子「天田君が部活で練習試合やるらしいからさ、見学!」

鳴上「ああ、いろいろやってるらしいからな……だったらいいよ、付き合う」

美奈子「やり!んじゃ行こう!」

>美奈子に腕を引っ張られて、武道館に連れて行かれた……。

男子「……いいなぁ、鳴上……」



【月光館学園 武道場】


鳴上「ああ、剣道なのか」

美奈子「うん。あ、あれそうじゃない?」

>防具で顔はわからないが、背格好からしてそのようだ。

鳴上「竹刀、振れるのかな」

美奈子「結構強いみたいよ、天田君。あ、始まるよ」

>天田が立ち上がり、中央に進む。
>一礼し、蹲踞の姿勢……。

鳴上「ちょっと心配だな」

美奈子「うん。相手、高校生みたいだしね」

鳴上「何、そうなのか?」

美奈子「うん。ほら」

>確かに防具には高等科二年の文字が書かれている。

鳴上「こんなのアリか?」

美奈子「練習試合ならアリなんじゃない?怪我するような事も無いだろうし」

鳴上「天田、負けてもいいから怪我だけはするな……」

美奈子「……悠、お母さんみたいになってるね」

>試合が始まった。
>かちん、と竹刀の合わさる音。
>グラウンドや体育館からは他の部が練習していて騒がしい。
>しかし、武道場の中だけはしんとした静けさに包まれている。
>じり、じりと二人は動く。
>円を描くように、じわじわと……。
>先に動いたのは高等科の部員だった。

部員「えやぁーっ!」

>一声、気合いを吐いて打ち込む。

鳴上「ッ当たりが強いぞ!」

>天田は竹刀で受けたが、力負けしたのか少し後退する。
>高等科の部員はそのまま鍔迫りに持っていく。

鳴上「まずい、ああなったら力と体格で負けている天田が不利だ!だが一度引けばそこに打ち込まれる……どうすれば……!」

>心配を他所に、天田はじっとこらえている。

鳴上「当たり負けしてない!いいぞ、そのまま……」

>高等科の部員が鍔を押し下げた。
>ここが機と、天田が相手の鍔をかち上げる。

鳴上「今だ!行けっ!」

天田「胴ッ!!」

>天田の竹刀が相手の右胴を叩いた。
>文句無しの一本勝ち。
>そして俺は……。

顧問「あのね、見学するのは構わんけども。集中してやってるわけだから、騒がれたら困るんだよねぇ」

鳴上「すみませんでした……」

>怒られた……。

天田「ちょっと、鳴上先輩何やってるんですか」

鳴上「いや、美奈子に連れてこられて天田の応援を……」

天田「応援って、ありがたいけど恥ずかしいですよ。ただの練習ですよこれ。大体美奈子先輩はどこに?」

鳴上「あれ、さっきまでここに……あいつ、俺が怒られるのわかって逃げたな」

天田「まぁ、いいですけど……今日試合だけなんで、良かったらこれから一緒に帰りませんか?」

鳴上「ああ、そうするか。待ってるよ」

天田「はい、それじゃちょっと待っててくださいね」

>……。

天田「お待たせしました!それじゃ帰りましょう」

鳴上「ああ。……しかし、驚いたよ。天田って結構力強いんだな」

天田「結構鍛えてますからね。体格は仕方ないですけど、筋力はそれなりに」

鳴上「スポーツ好きなのか?」

天田「まぁ、それなりに」

鳴上「それなりで、そんなに一杯色んな部に入ったりしてるのか」

>天田は何故か頬をかいている。

鳴上「天田?」

天田「あー、いや……なんか、照れ臭いんですけど。理由は、強くなりたいから、です」

>照れ笑いと一緒に帰って来た答えは、少し予想と違っていた。

鳴上「強くって、強くなってどうするんだ?」

天田「今回みたいな事件は勿論、強くなって、いろんな人を守りたいと思ったんです。……いろいろあって、ですけど」

鳴上「なんていうか、立派だな。……まぁ、無茶はするなよ」

天田「それは弁えてますよ。多分鳴上先輩よりも」

鳴上「ぐうの音も出ない」

天田「あはは。でも、先輩は尊敬してます」

鳴上「何だ、急に」

天田「凄いじゃないですか、だって。先輩は、損得とか考えずに人の為に動ける人です。僕は知ってます」

鳴上「買い被られたもんだな」

天田「少なくとも僕はそう思ってます。だから、たまに心配だったりもします」

鳴上「最近良く言われる」

天田「だったらちゃんと自愛してくださいよ?」

鳴上「……努力はする」

天田「はい、してください。あ、それでどうでした?僕の試合」

鳴上「ああ、良かったんじゃないか。特に竹刀の振りが凄かった。あんなに速く振れるものなんだな」

天田「あ、ちょっとコツがあるんですよ。実は……」

>天田と話をしながら寮へ帰った。


【巌戸台分寮】


風花「あ、お帰りなさい」

鳴上「ただいま。もう体起こしても平気ですか?」

風花「おかげさまで。お世話になりました」

鳴上「何言ってんですか。まだ熱あるでしょ。まだまだ世話しますよ」

風花「うん……ごめんね、お願いします」

鳴上「はい。えっと、じゃあ飲み物持ってきます」

風花「うん、ありがと」

>……。

まったりまったり。
さて、どうなるんでしょうね。
事件もそうだけど、人間関係いろいろ。

NTR展開?続きます。ごめんなさい。

あとギャグパートはしばらく来ないと思ってください。
佳境に入りつつあります。
というわけで今日はここまで。
では、また後日。

おつおつおー

乙!
千枝チャンカワイイヨ

乙です

乙!
ギャグも言えないようなやつのところに人が集まるわけがないじゃないか
だからギャグは欲しかったんだ。

場合によるけど

NTRでもなんでも面白いから見続けます

やべぇ・・・
ネタ被ってる向こうが面白くてやべぇ・・・

というわけで本日分。


【2012/5/21(月) 晴れ 八十神高校 二年教室】


有里「ええと」

>授業が終わって、それと同時にりせに連れ去られて。
>なんだなんだと思っているうちに、椅子に縛られ……。

りせ「さ、準備オッケー!」

>一体何がオッケーなのかわからないが、僕は今身動きの取れない状況にある。

有里「とりあえず、何でこんな事になってるのかわからない」

りせ「そりゃ、先輩が逃げないようにですよぅ」

有里「別に何があっても逃げないけど」

りせ「えー?ほんとですか?逃げない?」

有里「逃げない逃げない。だからこれほどいて」

りせ「んー……やっぱり、逃げそうだからダメ!」

有里「逃げないってば……」

>どうやら、観念する他無いようだ。

有里「で、どうしたの。僕が逃げそうな用事って何?」

りせ「えーとぉ、まぁ、里中先輩との事ですよ」

有里「ああ、そういう……」

りせ「ズバリ!どうなんですかお二人!」

>テレビのレポーターばりの追求が始まった。
>というか、これって……

有里「何か、陽介にも似たような事聞かれたな」

りせ「げ、花村先輩と同じ発想って事?」

有里「うん、似たような」

りせ「……だってぇ、気になるじゃないですか!で、ほんとのとこどうなんですか?」

有里「どうって?」

りせ「里中先輩は、気持ちを聞いてくれただけだって言ってましたけど……部屋に二人だけだったんですよね?それだけですか?」

有里「それだけって……他に特別な事はしてないよ」

りせ「えぇー?そうなんですか?」

有里「うん、期待にそえなくて悪いけど」

>りせは露骨に不満そうにしている。

りせ「ふぅーん……あ、そういえば。返事、どうしたんですか?」

有里「返事?」

りせ「だって、里中先輩から聞いたんでしょ?どう答えたのかなって」

有里「ああ……なんていうか、保留?」

りせ「え、保留って……」

有里「うん、保留。嬉しいんだけど、まだ僕が決めかねてるって事で保留」

りせ「うわー、先輩ひどーい。女の敵ー」

有里「そう言われても。僕なりに真剣に考えた結果なんだよ。本当は全部つっぱねるつもりだったんだけどね」

りせ「え、何で?誰か心に決めた人がいる!とか?」

有里「んー、そうじゃないんだけど。まぁ、いろいろ。でも、それって結局逃げだから……逃げるの、やめたんだ」

りせ「何か、難しい事考えてるんですねぇ……もし私が男だったら、里中先輩に告白なんてされたら即オッケーなんだけど」

有里「勿論、千枝は好きだよ。だけど、その好きがどういう物なのかがまだわからないんだ。そんな中途半端で、恋人なんてなれないだろ?」

>……?
>何故か、りせが無言になってしまった。

有里「……りせ?」

>りせは信じられない物を見た、というような顔をして僕を見ている。
>……何にそんなに驚いているのだろうか。

りせ「先輩って、案外おこちゃま?」

有里「何を失礼な」

りせ「だって、それって小学生とか中学生が言う事じゃないですか?先輩、おいくつ?」

有里「肉体年齢18歳」

りせ「ですよね?もう大人に片足突っ込んでますよね」

有里「まぁ、そうだけど……」

りせ「……そんなおこちゃまな先輩に一つ、アドバイスしてあげます。里中先輩と会ってからこれまでを思い返してみましょー」

有里「今までを?」

りせ「はい、それでどう思ったかが答えだと思います」

有里「今まで……ね」

>最初に会ったのは病院だったか。
>……。

りせ「まぁ、そういうことですよ。そのお顔が何よりの証明だと思います」

有里「顔?何か、変な顔してる?」

りせ「べっつにー。あーあ、有里先輩は取られちゃったかー。ま、でも私には鳴上先輩がいるし!まだ希望はあるし!」

有里「……悠か。彼もあれで色々大変そうだけどね」

りせ「え、何かあったんですか?」

有里「ほんとに手に入れたいなら、早く仕掛けた方がいいだろうね。かなり強力なコマが狙ってるみたいだから」

りせ「やだ、ちょっと何ですかそれ!教えてくださいよ!ねー有里先輩ってばぁ!」

>放課後、りせと話をした。


【夜 堂島宅】


>今日も堂島さんの帰りは遅い……。
>何か、事件が起こっているらしいが。
>……一度、聞いてみる必要があるかもしれない。



【2012/5/22(火) 夕方 巌戸台分寮】


美奈子「る、る……ルビー!」

鳴上「ビール」

美奈子「ちょ、それさっき言ったじゃん!」

鳴上「さっきのゲームは美奈子が負けて終わっただろ。リセットだ」

美奈子「ええー……る、る、る……」

岳羽「何やってんの、二人して……」

>ラウンジにはコーヒーカップを持った岳羽さんがいた。

鳴上「あ、今帰りました。いや、帰り道しりとりしようって美奈子が言うもんで」

美奈子「ただいまー。悠しりとり強いんだよ……」

岳羽「はい、おかえり。いいね、楽しそうで……」

>岳羽さんは少しあきれているようだ。

鳴上「はは……ほら、帰って来たからもうしりとりいいだろ」

美奈子「一回も勝てなかった……悔しー」

>美奈子は鞄を持って部屋に戻っていった。

岳羽「風花、今寝てるみたい。……今行っちゃうと起こしちゃうかもよ」

鳴上「あ、そうですか。じゃあ少ししてから様子見に行きます」

>とりあえず、椅子に座った。
>最近少し疲れている……。

岳羽「ん」

>岳羽さんがカップを目の前に置く。
>コーヒー……にしては、少し粘りがあるような。

岳羽「鳴上君、あんまり寝てないでしょ。顔がもう疲れきってるよ。それでも飲んで、ちょっと癒されなさい」

鳴上「これ、コーヒーですよね?」

岳羽「そ。ただしコーヒーと等量砂糖を入れるっていう無茶な飲み方するんだけどね……イタリアンコーヒーってヤツ?」

>なるほど、それでドロドロしているのか……。

鳴上「詳しいんですか?コーヒー」

岳羽「あー、前に漫画で読んでさ。疲れてる時に試してみたらこれが効く効く」

鳴上「なるほど……」

>一口、啜ってみる。
>あ、甘い。
>甘くて、とろんとして、香り高い液体が喉を通り、胃へ……。
>体の中が少し暖かくなったような気がする。

鳴上「これ、疲れが溶けてくような感じしますね」

岳羽「でしょ。……この前は、ごめんね」

鳴上「何がでしょうか?」

岳羽「ほら、叩いちゃって。大丈夫だった?」

>どうやら先日のアレを気にしているようだ。

鳴上「ああ、平気です。元々俺がやってくれって言ったんですし……ちょっと、耳鳴りは続きましたけど」

岳羽「ごめんって。出来る事はやるって、アレ本気だったんだね。私達よりよっぽど献身的に看護してんじゃん」

鳴上「専門的なことはわからないんで、付き添いくらいのものですけどね」

岳羽「よくなってるの、見ててわかるでしょ?もうあと数日もしたら普段どおりになってると思うよ」

鳴上「そうですね……」

>もう一口、コーヒーを飲む。

岳羽「……ねぇ、鳴上君は、風花の事どう思ってる?」

鳴上「はい?」

岳羽「だから、風花の事。好きなの?女性として」

>コーヒーを噴出しそうになった。

鳴上「げぇっほ!ゴホッ、ん、んんっ!何で急に……」

岳羽「真面目な話。もう言われたかどうかはわかんないけどさ。何となくわかるでしょ?」

鳴上「……まぁ、言われはしました」

岳羽「どうなの?」

鳴上「正直、良くわかりません。好き……だとは思います。けど、付き合うとか、恋人とか考え始めると……今の感情は、本当にそういう好きなのかなって思ってしまいます」

岳羽「なるほど。私が口出しする事じゃないのはわかってるんだけど、どうしても気になっちゃって」

鳴上「すみません、はっきりしないで」

岳羽「でも、考えてみて。今、寝る間も惜しんで看病してるのは責任感から?それとも何か別の感情?」

鳴上「俺は……」

岳羽「どちらにせよ、はっきり答えてね。あいまいなまま放っておかれるのが一番辛いんだから」

鳴上「わかりました。……答えます、ちゃんと。そうじゃないと失礼ですよね」

岳羽「そういうことだね。おせっかいもほどほどにしときますか。あ、今日は私付き添うから。鳴上君はゆっくり休んで?」

鳴上「え、でも」

岳羽「悟んなさいよ、今日くらいゆっくり考えてみろって言ってんの。任せときなさいって。ね」

鳴上「……はい。それじゃ、お願いします」

岳羽「ん。それじゃ、早速行ってくるね」

>岳羽さんと話をした。
>山岸さんへの感情、少し自問してみよう。
>……。


【2012/5/22(火) 晴れ 夕方 商店街】


完二「すんません先輩、わざわざ来てもらって」

有里「いや、構わないよ。それで、今日はどうするの?」

完二「ああ、多分そろそろ……」

>完二に呼ばれて完二の家に来た。
>なにやら用事があるらしい。

男の子「こーんにーちわー!」

女の子「こーんにちわー!」

完二「おゥ、来やがったなガキ共!」

男の子「かんじー!来てやったぞー!」

完二「うっせ、ちっと黙ってろ!先輩、用事っつーのはこいつらなんス」

>子供達がやいのやいのと騒ぎながらあがってくる。

有里「ああ、この子達が例の……」

完二「あみぐるみ作ってやってたガキ共っス。先輩が作ったヤツ配ったら、一回会わせろって聞かなくて……」

有里「そっか。初めまして、完二の先輩の有里です。よろしくね」

男の子「よろしくー!いぇーい!」

>男の子にハイタッチを求められた。

完二「で、折角なんでこいつらに作り方教えてやったらどうかなって思ったんスよ」

有里「ああ、それはいいね。僕なんかでよければいくらでも教えるよ」

完二「あざっス!オラお前ら!先輩も教えてくれるっつってっから!俺と先輩どっちに習いたいか選びやがれ!」

男の子「せんぱいがいいー」

>男の子達に取り囲まれてしまった。

完二「……」

有里「あの、僕だけじゃ手が足りないから完二のほうにも……」

完二「いやぁ、いいんスよ。俺なんか……」

>落ち込む完二の手を、一人の女の子が引っ張った。

女の子「かんじがいい……」

完二「……!お、おお!わかった!教えてやっから待ってろ!」

>……。

有里「みんな出来た?」

男の子「できた!すげえかっけー」

女の子「できたー、ありがとー!」

有里「ん、良く出来ました」

>完二の方を見る。

完二「お前、いいセンいってるぜ。もっと練習したら俺より上手くなれるぜ!」

女の子「うん、がんばるね。かんじ、また教えてね」

完二「おう!いつでも来いよ!って、もうこんな時間か。ガキ共、とっとと家帰りやがれ!母親心配すんだろうが!」

男の子「かんじ、またくるからなー!」

完二「おう来い来い!返り討ちにしてやらぁ!」

>子供達は最後まで騒がしく帰っていった。

完二「ったく、ガキは騒がしくて……ん、なんスか先輩」

有里「いや、完二は優しいんだね」

完二「は、はァ!?いきなり何言いやがんだよ!」

有里「いいじゃない。褒めてるんだから」

完二「まぁ、そりゃかまやしねぇけど……びっくりしちまうじゃないスか」

有里「懐かれてたね、あの子に」

完二「ああ、ちょっと変わったヤツなんスよ」

有里「他の子達も、本当に僕に教わりたいんじゃなくて、そうした方が完二が面白い反応をするから選んだって感じだったしね」

完二「なっ!そうなんスか!?くっそ、あいつら……」

有里「しかし、流石にあの歳はどうなのかなぁ」

完二「は?何がっスか」

有里「直斗がショック受けるだろうなぁ……完二があんな小さい女の子と……」

完二「いや、別にそういうんじゃ無かっただろが!ていうか、何で今直斗が出てくンだよ!」

有里「あれ?てっきり完二は直斗が……」

完二「うわ、うわー!やめろってマジで!それ他で言ったらいくら先輩でもぶっ飛ばすからな!」

>完二は気付かれていないつもりらしい……。
>多分、気付いてないのは当人同士くらいのものだろうから、黙っておいてやろう。

完二「はぁ、はぁ……すんません、アツくなっちまって。とにかく、今日はマジでありがとざっした!」

有里「いやいや、楽しかったよ。よければまた呼んでほしい」

完二「へへ、そっスか。じゃあ、またお願いしやす」

有里「ん。じゃあ、また明日。今日は帰るよ」

完二「うス、お疲れ様っス。また明日!」

>完二は子供達に好かれているようだ。
>ああ見えて、人は良いんだよな……。


【夜 堂島宅】


菜々子「今日もお父さん遅いって……」

有里「そっか……忙しいんだ、仕方ないね」

菜々子「湊お兄ちゃん……」

有里「ん?……じゃあ、本でも読んであげようか。読み終わったら寝るんだよ」

菜々子「うん!えへへ……」

>……。



【2012/5/23(水) 晴れ 巌戸台駅】


>買い物に行こうと駅へ向かうと、駅前で順平さんを見かけた。

鳴上「……へぇ」

>物静かな女性と歩いている。
>女性のほうはともかく、順平さんは楽しそうだ。

順平「……じゃ、今日はこの辺で。またな!」

女性「……」

順平「おいおい、どしたよ?」

女性「何でもない。次は……」

順平「あ、もしかして寂しいか?まぁ俺がいなくちゃ寂しいってのもよーくわかるけどよ!聞き分けは良くしなきゃいけねーよ?」

女性「……帰る」

順平「あっ、悪い!謝るって!ジョーダンだから!な!」

女性「別に怒ってないわ。私も、ちょっとからかってみただけ」

順平「え?……ったく、焦らせんなよな。そんじゃ、また!」

女性「……また、ね」

>女性と別れた。
>……どうやら、こっちに気付いたようだ。

順平「よっ、鳴上じゃねーか。どした、出掛けんのか?」

鳴上「ええ、少し買い物に。……順平さん、中々やりますね」

順平「やるって、何を?」

鳴上「今の人、彼女じゃないんですか?」

順平「あ!?ああ……見てたんだな。まぁ、恋人!では、無い、よな……うん」

>自分で言いながらどんどん落ち込んでいく。

鳴上「仲良さそうに見えましたけど、違うんですか」

順平「あー、そうなれたらいいなっつーか。あいつは……特別な相手ではあるけど、恋人っつーとちっと違うんだな」

鳴上「何か、難しい関係みたいですね」

順平「難しくもねーけどな。……ほれ、前に言ったろ。俺の進路の話」

鳴上「ああ、やりたい事がある、とかなんとか」

順平「そうそう。それ、アイツの事なんだよな。アイツさ……なんつーんだろ、病気っつーか。体がちょっと普通じゃなくてよ」

鳴上「今医療系に進んでるのって、もしかして」

順平「そういうこと。アイツの体なんとかできねーかなって。ほんとは薬学じゃなくて医学部行きたかったんだけど、俺の頭が追いついてくれなかったんだよ」

鳴上「なるほど、それで」

順平「だから、大切なヤツではあるけど。今のトコそれ以上にゃなってねーな。……そういや、お前は進路決まったんかよ」

鳴上「それが、まだ決まってないんですよ」

順平「ダメだぜ、早いうちに決めないと。トコロによっちゃ一年の後半じゃ受けてくれねーとこだってあんだからよ」

鳴上「そうですね……といっても、見えないんですよ、本当に。俺って何がしたいんだろう」

>順平さんは大袈裟なため息をついた。

順平「んなもん俺が知るかっつーの。なぁんだよお前全然だな。人の世話ばっかしてねーでちったぁ自分の事も考えたらどうだよ?」

鳴上「です、ね……」

>昔、誰だかに言われたような気もする。
>人に構うのは大いに結構だが、自分の足元もおぼつかないようで何が出来るのか。
>俺は……。

順平「いや、悪かったよ。言い方が悪かった。そんなにヘコまなくていいだろ。な?」

鳴上「あ、いえ……別に……」

順平「あー……なんだ。人の為に働くのが好きなら、例えば警察官とか、なんかあるだろ、それっぽいの。そういうのじゃダメなのかよ?」

鳴上「警察官ですか……何か、そういうんじゃないんですよね」

順平「じゃあそうだな……お前が今まで見た中で、あ、これいいなって仕事とかは?無いの?」

鳴上「あんまり……」

順平「……じゃあもうあれだ!何か、お前が感謝してるヤツとかさ!命の恩人でもなんでも、そういうヤツの仕事とか!?」

鳴上「感謝してる、人……」

>それならたくさんいる。
>だが、たくさんいすぎて逆に困ってしまう。
>感謝……か。

鳴上「……あ」

順平「お、キタか!?思いついたか!?」

鳴上「ちょっとだけ、ですけど。見えたかも……?」

順平「そーだよその意気だ!で、どう進むんだ?」

鳴上「まだ、内緒です」

順平「なんだよ、進路決定の大恩人だぜ?なあちょっとだけ教えろって」

鳴上「そう言われても……」

>どん。
>擦れ違った人と肩がぶつかってしまった。

鳴上「あっ、すみませ……?」

>その人はまるで俺の事など見えていないかのようにふらふらと歩いていった。

順平「ちっ……なんだアイツ、感じ悪ぃな」

>気になって、結局買い物にはいけなかった。



【2012/5/23(水) 晴れ 夕方 八十神高校】


陽介「終わった!帰る!帰るぞ!」

千枝「私も帰るー。有里君、良かったら一緒に……」

陽介「お、攻めるね里中!」

千枝「な、何よ、ダメなわけ?」

陽介「別に?スキニシタライーンジャナイデショーカー」

千枝「うわ、うざ……あ、有里君。校門とこで待っとくから」

有里「うん。すぐ行くよ」

陽介「俺も俺も!一緒に帰ろうぜ!」

千枝「……まぁ、いいけど」

>二人はさっさと荷物をまとめると教室から出て行った。

有里「天城さんは帰らないの?」

>天城さんは席に座ったままぼんやりとしている。

雪子「へっ?あ、ああ。帰る、帰るよ。うん」

有里「どうかしたの?」

雪子「どうかしたっていうか……うん。ちょっと、羨ましいなって」

>そう言うと、困ったように笑った。

有里「羨ましいって、誰が?」

雪子「千枝がね。……あんな風に、好きな人とか好きな物に向かうのって、凄く羨ましいっていうか、素敵だなって」

有里「……何でそこまで気に入られてるのか、僕としては良くわからないんだけどね」

雪子「何でだろうね?それは本人に聞いたらいいんじゃないかな、なんて。私は……そんなに好きな人、いないから」

有里「天城さん、美人なのに。もったいないね」

雪子「ふふ、ありがと。ほんと言うとね、鳴上君の事好きだったんだと思う。けど、りせちゃんとか、直斗くんとか。応援してる内に、諦めついちゃった」

有里「悠も罪作りだね……」

雪子「あ、でもそれ有里君が言うとちょっと違うかも」

有里「ん?何で?」

雪子「お前が言うな?みたいな」

有里「……あ、そう」

雪子「鳴上君の事は好きだったけど、友達を押し退けてまで欲しいかっていうと、それも違う気がして……ね」

有里「遠慮?」

雪子「まぁ、そんな感じ。友達より上に来なかったんだから、そんなに好きでもなかったのかな?なんて思ったりして」

>ペンを手で弄びながら言う。
>斜光に映える顔をしているな、と思った。

有里「天城さんがそれでいいなら、僕は何も言わないけど。それでいいなら、ね。後悔があるなら、きっと引くべきじゃなかったんだ」

雪子「後悔は無いよ。うん。だけど、羨ましいと思う事はある。私もあんな風に、まっすぐ生きていけたらなあって、思う」

有里「千枝は熱量高いからね。その点で言えばりせとかもそうかな。天城さんはそうなりたいの?」

雪子「なりたい。納得したフリして、言い訳して逃げたりしないから。私はまだ、そんな風にはなれてないから……」

有里「……熱量は燃料によって決まるんだよ。ほら、文字通り燃えるような恋でもしてみたらどうかな。陽介とか、待ってると思うよ」

雪子「花村君?花村君はお友達だよ」

>陽介には黙っておこう。

有里「そう?じゃあ僕とか。どうかな?」

雪子「……んー」

有里「微妙か……」

雪子「あはは、ごめんごめん。有里君は、うーん。鳴上君がいなかったらわかんなかったかも」

有里「あれ、意外と高評価」

雪子「ふふふ。千枝には内緒ね。って、そうだ二人とも待ってるよ。早く行かないと」

有里「ああ、そうだったね。急ごう」

>天城さんと話をした。
>彼女は彼女で色々複雑そうだ。

陽介「お、来た来た。おやぁ?天城女史と二人で歩いてきますねぇ。里中女史、これはどうしたことでしょうか!?」

千枝「……いやいや、普通に教室から一緒に来ただけじゃん。不思議な事ないでしょ」

有里「お待たせ。帰ろうか」

雪子「あっ……まただ」

>天城さんが見ている先には男が立っている。

陽介「知り合いかよ?」

雪子「ううん、違うんだけど……今朝学校に来る途中でも会ったの。何か、フラフラしてて……」

有里「影人間」

>無気力症。
>影を食われる。
>影人間。

千枝「ただの変な人なんじゃないの?」

陽介「何にせよ、ちょっと気味悪ぃな……」

>シャドウらしき影。
>堂島さんが追っている「事件」。
>無気力症。
>影時間の消失。
>テレビの中の世界の消失。

有里「……そうだね」

>繋がりつつある。
>それも、嫌な方向に。
>手遅れになる前に、手が見つかるといいが。



【2012/5/24(木) 晴れ 夜 堂島宅】


堂島「ただい……なんだ、今日は起きてたのか」

有里「ええ。少し質問がありまして」

>堂島さんは疲れきった様子でソファーに身を沈ませた。

堂島「手短に頼む。少し……いや、かなり疲れてるんだ」

有里「ええ、そう見えますね……ですが、簡単に済むかどうかはわかりません」

堂島「重要な話か」

有里「とても、重要な話です」

>件のライターで煙草に火をつける。

堂島「……聞け。なんだって答えてやる」

有里「ありがとうございます。まず、今堂島さんが追っている事件について。職業上、明かせないのはわかりますが、僕のような何の力も無い高校生に、ぽろっと話すくらいはしてくれても良いと思います」

堂島「今追っている事件か。事件なのか、また別の話なのかはわからん。が、とにかく異常だって事で俺達が捜査にあたってる」

有里「それは、例えば家を出た家族が帰ってこない、だとか。そういう案件が多数報告されているとかでしょうか」

堂島「その通りだ。学校に行った子供が帰ってこない、仕事に行った夫が帰ってこない。そういう話が多数あがってる」

有里「昔、そういった事件が話題になったのを覚えていますか」

堂島「ああ。三年ほど前だったか。あれは病気のせいだったはずだ。無気力症と言ったか」

有里「今、また同じ事が起こっている。そう考えて良いんですね」

堂島「……その線が濃いだろうな」

有里「……わかりました」

堂島「終わりか?」

>……一際、煙を長く吐いた。

有里「ええ、一応は。あまり喋らせても、警察としてまずいでしょうし」

堂島「ありがたいね。……この事件、お前が追ってたヤツと同じか?」

有里「ええ、恐らくは」

堂島「解決策はあるのか」

有里「……恐らく、は」

堂島「お前、覚えてるか。俺がこの前言ったこと」

有里「俺と菜々子の事も考えろ、でしたよね」

堂島「忘れてないなら良いんだ。……なんていうんだろうな。何かに殉じるっていうか、そういう目をしていたから」

有里「……菜々子は、泣きますかね」

堂島「さぁな。悠が出て行った時はどうだったかな……」

有里「まさか、菜々子を泣かせるわけにはいきませんよねぇ」

堂島「そう思うなら、わかってるだろうな」

有里「ええ。危ない事はしません……とは言いませんが。ちゃんと帰ってくるつもりです」

堂島「そうか。安心した。……俺はもう寝るぞ」

有里「はい。僕も寝ようと思います。……おやすみなさい」

>やはり、影人間だ。
>テレビの中にも入れず、影時間も無く。
>それでも影人間が生まれるということは、恐らくは……。

有里「帰ってくるつもりです、か。……はぁ」

>今日はもう寝よう。
>明日、悠に連絡をとってみよう……。


【2012/5/24(木) 晴れ 夕方 ポロニアンモール】


美奈子「ねぇ、気付いてる?」

鳴上「何にだ?」

>今日は、昨日買えなかった物を揃えに出掛けたのだが。
>寮を出るとき、美奈子に捕まってしまい、そのまま何故か一緒に買い物する事になった。

美奈子「人。変な人多くない?」

鳴上「ああ……確かに」

>ぼんやり立ったままの人、ふらふらするだけの人、俯いてじっとしゃがみこんでいる人。
>全体から見れば割合は多くないが、今まで見なかった分かなり多く思える。

美奈子「どう思う?」

鳴上「……事件と、無関係じゃなさそうだな」

>次の段階。
>中と外の入れ替わり。
>……影人間。

美奈子「でも、今テレビには入れない。どうしようか」

鳴上「どうしようも無いな……くそっ、どうなってるんだ」

>掲示板を調査していた山岸さんはまだ復帰できていない。
>今夜辺り覗いてみるか……。

美奈子「……とりあえず、今日は買い物して帰ろう。ね?」

鳴上「ああ……」

>必要な物だけを買って帰る事にした。



【巌戸台分寮】


アイギス「お帰りなさい」

美奈子「ただいまー」

鳴上「ただいま……」

>ラウンジにはアイギスさんがいた。

アイギス「鳴上さん、どうかしましたか?」

美奈子「ああ、ちょっとね。悠、私部屋戻るね」

鳴上「ああ。……ふぅ」

>アイギスさんが心配そうにこっちを見ている。
>なんだか、この人には心配かけっぱなしだな……。

鳴上「大丈夫です、疲れたとかじゃなくて……無力感っていうんですかね。ちょっと凹んでるだけで」

アイギス「……それも、心配です」

鳴上「そうですか。平気ですよ、別に。やる気だけはありますんで」

アイギス「……Mement mori」

>ぽつり、と耳慣れない言葉が聞こえた。

鳴上「えっと……なんですか?」

アイギス「Memento mori。哲学用語だったと思います。直訳すると、死を想え」

鳴上「死を、想え」

アイギス「人は……いつか必ず死んでしまいます。それは避けられない事です」

>アイギスさんはココアの入ったカップを差し出しながら言う。

アイギス「それを忘れるなと、そういう意味です。毎日を悔いの無いように生きる事、それが死を想うこと」

鳴上「なるほど……」

アイギス「私が見るに、鳴上さんはそうやって生きる事が出来ているように思います。何があってもただまっすぐぶつかって乗り越える……その姿勢はすばらしいです」

鳴上「……」

アイギス「無力なんかじゃないと思います。あなたは、あなたにしか出来ない事をしている。何も進んでいないように見えても、どこかで誰かに影響を与えている」

鳴上「俺が、ですか」

アイギス「ええ。私にも、他の誰かにも。だから、落ち込まないで。あなたが落ち込んでいると、周りの皆も少し……」

鳴上「……わかりました。だからそんな顔しないでくださいよ。ちょっと、これから事件の事調べてきます!」

アイギス「ココアを飲んでから、ですね」

鳴上「ん、そうですね」

>ココアを飲み干して、部屋に向かった。
>……。


鳴上「例のスレッドは……あった。うわっ、何だこれ……」

>以前見た時より遥かに勢いが増している。
>パートも、知らない間に随分と伸びているようだ。

鳴上「書き込みは……やっぱり、新しい噂が流れてる。次の段階か」

>内と外の入れ替わり。
>現実に徘徊するシャドウ。
>近付く滅び。
>……降臨の時。

鳴上「降臨の時……いつだ?」

>Nyx降臨に関する話題を辿る。

鳴上「影人間が増えて……それから。シャドウが目に見え始めて……それから。……次、か」

>入れ替わりとは、名の通り起こる現象の入れ替わりである。
>本来ならテレビの内側にしか存在しないシャドウが現実に現れ始める。
>最初はシャドウを見る事は出来ない。
>影人間が増え、シャドウの力が増すと、シャドウの姿が見えるようになる。
>そして、シャドウが姿を現すようになってから。

鳴上「最初の雨の夜、再びマヨナカテレビが映る。世界の滅びは、そこから発信される……」

>天気予報サイトを見てみる。

鳴上「次の雨は……27日。日曜日」

>決戦の時が、決まった。

仲間と過ごす毎日。
侵食される毎日。
月が落ちてくる。

というわけで本日分はここまで。
では、また後日。

乙!

乙!
しかしゆかりっちがジョジョを読んでいたとはな

>>230
読んでるよレスも付けてるよ…
俺は向こうの手広過ぎた奴より、>>230のしっかりとP3P4のネタの方が好きだぜ?

ごばった!(しくしく)

ゴバクヤメテクダサーイ
ハズカシイデース

というわけで本日分。



【2012/5/25(金) 晴れ 巌戸台分寮】


>Pipipi……
>電話だ。

鳴上「もしもし」

有里『もしもし、おはよう。少し時間をくれないか』

鳴上「そっちでも何かあったんだな」

有里『流石に理解が早いね、助かるよ。……ってことは、やっぱりそっちでも何かあったんだね』

鳴上「ああ。影人間……無気力症になる人間が増えてきている」

有里『こっちも同じ。何かわかった事は?』

鳴上「噂が本当になるんだそうだ」

有里『噂が?』

鳴上「火の無い所に煙が立ちまくってる。影時間も、マヨナカテレビも、ある掲示板で語られ始めた噂が最初だ」

有里『……冗談だろう』

鳴上「冗談でもなんでもない。そこに新しい噂が流れ始めて、今に至る」

有里『なんというか、力の抜ける話だね……』

鳴上「仕方ないだろう、事実だ」

有里『で、新しい噂って?』

鳴上「シャドウが現実に徘徊するようになるんだそうだ」

有里『あ、やっぱり』

鳴上「ああ。そして影人間が増え、シャドウは力をつけ続ける」

有里『……』

鳴上「今は目に見えないシャドウが、目に見えるようにまでなるんだと」

有里『それ、誰が言い出したんだろうね』

鳴上「さぁな、俺達からしたら荒唐無稽でも、何も知らない奴らにはそれなりに信憑性があるみたいだ。というか、面白がっているとしか思えない」

有里『それはある意味仕方ないよ。それで、その先は?』

鳴上「滅び、だそうだ。シャドウが目に見えるようになるまで、それほどの時間はかからない。そして、そこまで力をつけた後、初めに雨が降った日の夜」

有里『Nyxがやってくる?』

鳴上「みたいだな。マヨナカテレビがもう一度映って、そこから全世界に滅びが発信されるそうだ」

有里『予報だと……次の雨は』

鳴上「明後日、日曜だな」

有里『多分、その日だろうね』

鳴上「……ああ」

有里『……ありがとう。よくわかった』

鳴上「湊。お前、何考えてる?」

有里『別に、何も。ただこの事態を解決する事だけ考えてる』

鳴上「……お前、信じろって言ったよな」

有里『言ったね』

鳴上「信じてるぞ」

有里『……ああ。それじゃ』

鳴上「またな」

>……電話が切れた。

鳴上「……信じてるぞ」


【ラウンジ】


美鶴「未だ出掛けた者がいなかったのは幸いだったな。今日は遅刻だ、皆仲良く」

鳴上「すみません。けど、どうしても伝えておかなければならないので」

順平「どうしたっつんだよ、朝から」

>桐条さんに言って、寮内全員を集めてもらった。
>山岸さんだけは、まだ寝てもらっている。

鳴上「事件が動きました。皆さん、街を歩いていて妙な人を見ませんでしたか?」

順平「あ、ひょっとしてあん時の……」

鳴上「そうです。順平さんと歩いていた時にもいました」

岳羽「もしかして、最近よく見かけるやたらダルそうな人達って」

天田「無気力症……」

鳴上「そのようです」

アイギス「しかし、影時間もマヨナカテレビも存在しない今、どうして無気力症が起こるのですか?」

鳴上「シャドウが現実世界に現れるようになっているみたいです」

真田「なんだと?」

鳴上「今は、俺達のようなペルソナ使いにも見えないようですが……その内、誰にでも見えるようになると」

美鶴「感知型……山岸のペルソナなら何かわかったかもしれないが、それを調べさせる前にな……」

順平「あれっ、桐条先輩のペルソナで調べられないんすか?」

美鶴「私のペルソナはもうペンテシレアではない。元々実験で得た能力だったし、アルテミシアには同様の力は無い」

鳴上「山岸さんが全快し次第、調査してもらおうと思いますが……とにかく、現時点でそういう状態にあるらしいです」

真田「……現状報告の為に俺達を集めたのか?」

鳴上「いえ……もう一つ、重大な報告が。次の雨……予報通りなら日曜。またマヨナカテレビが映るみたいです」

天田「やっぱり終わってなかったんですね」

鳴上「そして、タルタロスの頂点に……」

岳羽「アレ、が?」

鳴上「Nyxが、やってくるそうです」

>沈黙。
>きっと俺以上に、他の皆はその意味をわかっている。
>だからこその沈黙。
>……今回は、命を捧げる男がいない。

順平「どうすんだよ……どうすんだよ!時間ねえってマジで!やばいだろコレ!」

岳羽「ちょっと、落ち着きなよ……」

順平「落ち着いていられるかっつーんだよ!またアレと戦うんだぜ!?しかも有里抜きで!……そうだ、有里だ!アイツなら……」

天田「有里さんには連絡したんですか?」

鳴上「ああ。あいつがどうするかはわからないけど、一応伝えてある」

真田「倒せるのか、俺達に……」

アイギス「アレは、倒すとか倒せるとか、そういう物じゃありません。ご存知だとは思いますが」

順平「じゃあどうすんだよ!このままほっときゃまたあん時みたいになっちまうんだろ?皆ぐちゃぐちゃに……」

美鶴「全員落ち着け。……時間は無い。それは確かだ。正直、ここまでの急展開は予想すらしていなかった。だから、私は彼に判断を預けようと思う」

>桐条さんは俺を見た。

鳴上「……美奈子。お前は何かないのか?」

>さっきからずっと黙っている美奈子に、意見を聞いてみる。
>美奈子は手をひらひらと振っただけで、何も言わなかった。

鳴上「俺は、前回の事件を知りません。ただ、その顛末だけは知っています。俺は……」

>絆が力になる。
>絆を集め、力にする事が出来る。
>ワイルドの……能力者。

鳴上「俺は、命を諦めません。俺達人間は、いつか死にます。けど、最後の瞬間まで足掻くのも人間だと思います。決戦は、明後日の日付が変わる頃」

>すぅ。
>はぁー……。
>覚悟を決めるのに、一呼吸。

鳴上「タルタロスを完全攻略し、ニュクスと……戦います。どうしても、倒せない、退けられなかった時は……」

美鶴「待て、鳴上。それ以上言うな」

>俺が、自分を……そう続けようとしたが、桐条さんに遮られた。

岳羽「それは、本当に最後の手段。今考えるべきは、倒し方でしょ?」

真田「確かに、戦う前から負けを覚悟するってのはナシだな」

天田「勝つ気で挑んで勝てるかどうかわからない相手ですし、ね」

順平「年下にそんだけ落ち着かれてちゃ、俺の立つ瀬無いっての。……しゃーねー、やるだけやってみっか」

アイギス「簡単には負けません。私達だって、今まで戦ってきたのだから」

>全員が、俺を犠牲にする選択肢を否定した。

美鶴「頼もしいだろう、自慢の仲間だ。……それでは、これ以降、特別課外活動部は一時解散とする。各々立場を忘れ、好きに行動するといい」

鳴上「再集合は、決戦の時。またここで」

美鶴「来たくない者は来なくても良い。だが……信じているぞ」

順平「あー、どうすっかなー。アイツ、今日暇じゃねーだろなー……」

岳羽「あ!あそこの新メニュー、まだ試してない!どうしよ、行っちゃおっかな……」

アイギス「あの、ゆかりさん。私もご一緒しても……」

天田「コロマル、散歩行こっか!」

コロマル「ワン!」

真田「俺は何時も通りトレーニングとしよう」

>皆、思い思いに動き出した。
>……美奈子だけが終始無言で、そのまま部屋に戻っていった。

鳴上「みな……」

美鶴「鳴上、少し良いか?」

鳴上「あ、はい。どうかしましたか?」

美鶴「いや、君と少し話をしておきたい。構わないか?」

鳴上「それは、はい。構いませんが……」

美鶴「そうか。では、私の部屋に来てくれないか」

>……。

鳴上「これは……うわぁ」

>過剰だ。
>これは過剰だ。

美鶴「そうか、見るのは初めてだったか……まぁ、彼以外に男性が踏み入れた事も無かったし、な」

>桐条さんは照れているようだ。
>どうやら本人の意思でこんな部屋になっているのではないらしい。

鳴上「ええと、それで、話というのは」

美鶴「ああ……君は、私を恨んではいないか」

>唐突にそう切り出され、一瞬理解が出来なくなる。

鳴上「は、ええ?何故です?」

美鶴「私が君を勧誘しなければこうはならなかったのではないかと思ってな。こうも絶望的な戦いに身を投じる事は無かったのに、と」

鳴上「いや、違いますよ、それ。桐条さんが勧誘してくれたから、戦う事が出来るんです。何も知らずに滅びを迎える、そういう選択肢を回避できたんです」

美鶴「強いんだな、本当に。……人は必ず死ぬ、だったか。深い事を言うものだな」

鳴上「受け売りですけどね。Memento mori、だそうです」

美鶴「死を想え、か。なによりこの状況に相応しい言葉だな。君は、どう思う?」

鳴上「どう、とは?」

美鶴「直訳すれば死を想え。いつか死ぬ事を忘れるなという意味だ。だが、私は思う。この言葉の意味は、受け取る側によって意味が違うと」

鳴上「受け取り方ですか」

美鶴「私にとって、死は恐怖だ。立ち向かうべき物だ。しかし、それを内包し受け入れ、飲み込んでしまうような者もいる。君にとって死とは何だ?人生をどう過ごせばいい?」

鳴上「……難しいですね。俺には何とも」

>桐条さんは笑った。

美鶴「そうだな。こたえなど、それこそ死ぬまで出ないのかも知れない。それを探すのも、人生なのかもな」

鳴上「命のこたえ、ですよ」

美鶴「そうだな……呼び止めて悪かった。君も好きなように過ごすといい」

鳴上「はい……それじゃ、失礼します」

>桐条さんの部屋を出た。
>……好きなように、か。
>……。

>コンコン。
>扉をノックする。

美奈子「ん、誰?」

鳴上「俺。今、いいか?」

美奈子「どーぞ、入って」

>扉を開けると、想像より遥かに殺風景な部屋が広がっていた。

美奈子「どしたの、驚いちゃって」

鳴上「いや、俺の想像する女の子の部屋と随分違ったから……」

美奈子「ぷっ、何それ。もっとファンシーなの想像してた?」

>美奈子は愉快そうに笑う。
>……さっき、様子がおかしく思えたのは気のせいだったのだろうか。

鳴上「それにしたって物無さ過ぎやしないか?学校の道具と……ぬいぐるみ?」

美奈子「それ以外いらないからね」

>何故だろう。
>美奈子の様子がいつもと違うのはわかる。
>ただ、どうにも核心が見えない。

鳴上「なぁ、もしかして何か知ってるんじゃないのか」

美奈子「知ってるって、何が?」

鳴上「事件について。それで、何か悩んでるとか」

美奈子「知らないよ、何も。元々私の領分の外だし。終わらせるのは、悠たちだよ」

鳴上「でも、お前はわざわざ俺達を助ける為に現れたんだろ?」

美奈子「んー、じれったかったからね。本当は皆、事件を終わらせるだけの力はあるんだよ。なのに、悩んだり、立ち止まったり、いろんな人困らせたり。見てらんなくて」

鳴上「そりゃ、悪かった……。心配になってさ。様子がおかしかったから」

美奈子「まぁ、最終決戦前だし?ちょっとナーバスにはなるよね」

>嘘だ。

鳴上「……いつ、話してくれる?」

美奈子「だから、別に何も……」

鳴上「いつだったか、私に嘘は通じないって言ったろ。同じだよ、お前は俺だった時もあるんだから」

美奈子「……そうだね。んー、でも、今は無理。その時が来るまでには話す。信じて」

鳴上「本当だな?」

美奈子「嘘だと思う?」

鳴上「……信じよう。じゃあ、俺山岸さんのとこ行ってくるから」

美奈子「ん、うん。あ、悠」

鳴上「どうした?」

美奈子「ありがとね」

鳴上「ああ。お前も、やりたいことやっとけよ」

美奈子「はーい」

>美奈子の部屋を後にした。
>……。



【風花の部屋】


>ノックをしたが、返事は無い。
>まだ眠っているのだろうか。

鳴上「失礼します……」

>少しだけ扉を開けて、中をうかがってみる。
>やはり眠っているようだ。小さく寝息が聞こえる。

鳴上「……」

>起こさないようにそっと近付いて、寝顔を眺める。
>随分血色は良くなった。
>熱ももうほとんどない。

鳴上「……よかった」

>起こさないように、寝顔でも眺めていよう。


【2012/5/25(金) 晴れ 堂島宅】


>悠に電話をかけた……。

有里「もしもし、おはよう。少し時間をくれないか」

>……。
>電話を切った。

有里「時間が無いな。……とりあえず、こっちの皆には内緒にしておこう。止められそうだし」

>Nyxは倒せるものではない。
>あれを遠ざける方法は一つ、大いなる封印。
>だが、その代償は……。

有里「学校、行かないとな……」



【八十神高校】


陽介「うっす、有里。……なぁ、例の変なヤツら、増えてねえか?」

有里「ああ、少し増えたみたいだね……」

陽介「なんかよ……ムズムズするよな、こういうのさ。何か起こってるのに、手が出せねーっつーの。すげえ嫌だぜ」

>まだ、千枝や天城さんは登校してきていないようだ。
>……よし。

有里「陽介、今日はサボろう」

陽介「サボ……何いきなり言い出してんの、お前」

有里「気分気分。付き合ってよ」

陽介「あのね……俺ら受験生なワケよ?そんなサボったりなんかしてたら大変よ?わかる?」

有里「愛家で肉丼おごるからさ」

陽介「……ちょっとだけですよ?」

有里「決まり。先生来る前に逃げちゃおう」

陽介「ちょ、おまっ!……ったく、このマイペース大王が!待てって!」


【愛家】


陽介「サボり、ダメゼッタイ」

有里「肉丼食べながら言う事じゃないね」

陽介「うるせっ!食費でも何でも浮かせるとこで浮かすんだよっ!」

有里「ははは……」

>学校をサボって陽介と愛家に来た。
>陽介は肉丼を食べながらこっちを見ている。

陽介「……で?何かあったんかよ」

有里「ん?別に。気分だよ、気分」

陽介「嘘だろ、それって。お前、里中も天城もいないの確認してから言ったもんな。何か話あんだろ?」

>驚いた。
>そこまでしっかり見抜かれているとは……。
>侮れないな。

有里「……別に、話は無いよ。ただ、陽介と少し二人で過ごしたかっただけ」

陽介「うぇ、なんだよそれ。お前まさかそっちの……」

有里「だったらどうする?」

陽介「……ま、冗談はいいよ。つか、何で俺よ。それこそ里中とかのがいいんじゃねえの?」

有里「千枝は明日家に来る予定だからね。今日は陽介」

陽介「あー、はいはいよござんすね。しかしまた何で俺と二人でなんて言い出したわけ?」

有里「内緒。まぁ、たまにはいいじゃない」

陽介「そりゃいいけど。何か事件絡みじゃねえかなって気になってよ。どうなんだよ」

有里「ああ、無関係。ただ、陽介のことが気になってね」

陽介「……お前って、たまにびっくりするくらい色気あるよな」

有里「ん?何が?」

陽介「な、なんでもねぇって!気にすんな!な!」

有里「……陽介なら、いいよ?」

陽介「うわぁ、よせ、やめろって!俺そんなんじゃねーから!ちげーからな!」

有里「わかってるよ。言ってみただけ。僕だって女の子が好きだ」

陽介「そういうネタは完二だけにしろっつの。ていうか、お前もそういう事言うんだな」

有里「そういうことって?」

陽介「いや、女好きとかそういうのよ。お前ってもっとこう、紳士的っつーか、そんな感じだと思ってた」

有里「ああ、女子の前ではね」

陽介「あ、計算?」

有里「うん。がっついても良い事無いよ」

陽介「っかー、きたねーな!そういう事は教えろよ俺にも!」

有里「陽介は手遅れじゃない?」

陽介「そうだね……もうバレバレだもんね……」

有里「あはは……」

>陽介と一日遊びまわった……。
>……。



【夜 堂島宅】


有里「菜々子」

菜々子「なぁに、湊お兄ちゃん」

有里「菜々子、一人で寝るの平気だよね?」

菜々子「うん、平気だよ。どうしたの?」

有里「一人で学校も行けるし、お父さんのお世話も出来るよね?」

菜々子「ちゃんとやるよ。お兄ちゃん、どこか行っちゃうの?」

有里「そういうわけじゃないよ。……菜々子、今日は一緒に寝ようか」

菜々子「えっ!ほんとに?」

有里「今日だけだったら、堂島さんも許してくれるだろうし。嫌?」

菜々子「えへぇ、嬉しい……」

>菜々子に本を読んでやって、そのまま一緒に寝た。
>……。


【2012/5/26(土) 晴れ】


>髪を誰かが撫でている……。
>優しい手つきだ。
>気持ちいい……。
>手が、頬にも触れる。

鳴上「ん……ぁ……?」

>目を開けると、いつもの自分の部屋ではなかった。
>あれ、ここは……。

風花「あ、起こしちゃった?」

鳴上「あ……山岸さん。あれ、俺……」

>……思い出した。

鳴上「っうわ!すみません、寝ちゃってたみたいで……」

>昨日、山岸さんの寝顔を眺めていたら、そのまま眠気に襲われて……。
>見た所、もう昼のようだ。
>随分と眠っていたらしい、座ったまま寝たからか膝が痛い。

風花「ふふ、おはよう。よく寝てたね」

鳴上「お、はようございます……」

>ということは、さっき髪を撫でていたのは山岸さんか。
>撫でられた辺りに手をもっていく。

風花「ごめんね、起きたら鳴上君がそこで寝てて……つい、手が」

鳴上「あ、や、全然大丈夫です。むしろ良かったです」

>山岸さんはくすくすと笑った。

鳴上「体調は大丈夫ですか?」

風花「うん、もうほとんど……病み上がりだから、ゆっくり戻していきたいけどね」

鳴上「……少し、お話しなければならない事があります」

>Nyx降臨の話、それに伴う決戦の話をした。

風花「……思ってたより、随分早いんだね」

鳴上「そうですか……そうですね」

風花「私ももう参加出来るし、いつでも言ってね」

鳴上「そんな、まだ……」

風花「大丈夫。私だけ寝てるわけにはいかないもの。それに、私がいないと皆帰ってこれないでしょ?」

鳴上「それは、そうですけど……」

風花「心配しないで。もう決めたの。逃げないから。辛くても、逃げない。逃げなくてもいいって、言ってくれたでしょ?」

>それを言われたら、反論出来ない……。

鳴上「あ、そういえば。聞きたかった事あるんですけど」

風花「ん?何?」

>これを聞くのはかなり気恥ずかしいのだが……。

鳴上「ええと、その。何で、俺なんですか?」

風花「何でって、何が?」

鳴上「……好き、だって」

>ぼんっ、と音がした。
>ような気がするほど、一瞬で山岸さんが沸騰した。
>顔は真っ赤だし目は白黒している。
>部屋には俺と山岸さんしかいないのに、きょろきょろと辺りを見回している。

風花「えっと、ごめ、熱が!熱があってね!い、勢いで!勢いで言っちゃったんだけど!その、嫌だよね、私みたいな子じゃ……八十稲羽にも可愛い子一杯いたし!」

鳴上「ちょっと、落ち着いてください。俺だって聞くの恥ずかしいんですから……勢いだったっていうのも、ちょっと悲しいですし」

>コップに水を入れて、山岸さんに勧める。
>コップ一杯の水を、喉を鳴らして一気飲みしてしまった。

風花「……ふぅ。びっくりしちゃった」

鳴上「俺もびっくりしましたよ」

風花「ごめん……うーん、答えないとダメ?」

鳴上「まぁ、聞かずに決戦となると集中できないかもしれませんし。戦ってる最中に聞いてもいいならいいですけど」

風花「それはヤメテ……わかった、じゃあ答えるね」

>「答えるね」、と言って、しばらく黙っている。
>黙ったまま、俺の目を見ている。
>……じっと見返した。

風花「……っ、うぅぅぅ……あーぅー……」

>また沸騰した。

風花「ごめんっ、恥ずかしい!ほんとに恥ずかしいの!だからこっち見ないで!向こう向いてて~お願い~」

>真っ赤になっている山岸さんを見れないのは非常に惜しい……が、仕方ない。
>黙って後ろを向くことにする。

風花「はぁ、ふぅ、うぅ……GWに、鮫川に行った時、ちょっと言った事覚えてる?」

鳴上「あれ、アレって冗談だったんじゃ……」

風花「うん、嘘ついた。ごめんね。……最初は、有里君に似てるなって思って、それから。何かある度に目で追っちゃって、駄目だなって思いながらもちょっとずつ重ねちゃって」

鳴上「……あの時期は、それなりに気にしましたよ」

風花「あはは、ごめん。で、それから……お料理の話した時くらいかな。気が付いたら、有里君じゃなくて鳴上君を見てたんだよね。彼と君は似てるけど、やっぱりすごく違って……」

>背後で一つため息が聞こえた。

風花「彼には、助けてもらった。色んな物をもらった。でも、こうして考えると……彼と私が一緒に持ってた物って、無いのかもしれないって思った」

風花「彼は私の一歩前を歩いて、道にある石とか、危ない物を取り去ってくれる。それから、無言で手を出して、私の手を引いて。そんな姿に、私は憧れて」

風花「でも、鳴上君は違う。隣に立って、一緒に躓いて。笑いながら先に立ち上がって、手を差し伸べてくれて」

風花「そういう人なんだなってわかったら、一緒にいてすごく居心地が良くって。気付いたら、好きに……」

>多分、今、山岸さんは泣いている。
>時折聞こえる嗚咽がそう証明している。

風花「私、ずるい子だから。まだ有里君の事も好きなんだ。だけど、それよりちょっとだけ、鳴上君の方が好きで」

風花「八十稲羽に行った時、里中さんや天城さん、りせちゃんに会った時、この子達には勝てないって思って。だから、先に、とか考えちゃって」

風花「里中さんが有里君の事好きだって聞いた時も、嫉妬しちゃって。私は……」

鳴上「もう、いいです」

>これ以上聞いていたら、山岸さんが壊れてしまいかねない。

鳴上「もうわかりました。……そっち、向いていいですか」

>ぐす、と鼻をすする音が聞こえた。
>ごそごそと、居住まいを正しているようだ。

風花「……はい、どうぞ」

>振り向くと、やっぱり泣いていた。
>涙は拭いたようだが、後から後から湧いてくるようで、ぽろぽろとこぼれている。

鳴上「……まぁ、きっかけが湊っていうのが悔しい所ですが。俺は、ずるいとか思いませんよ」

風花「……」

鳴上「そんなにまで思われるって、すごく嬉しいです。だから、そんなに卑下しないでください」

風花「ん……」

鳴上「あーっと、ですね。充分、その……俺の事を、好きだっていうのはわかりました。ありがとうございます」

>山岸さんは目を擦りながら笑った。

風花「どういたしまして。あの、それで……返事」

鳴上「それなんですが。明日、戦いに行くんですよ。生きて帰って来れるかわかりません。なので……」

鳴上「帰ってくるまで、内緒にしておきます」

風花「……約束。約束破って帰ってこなかったりしたら、怒るからね」

鳴上「はい。怒られたくないんで頑張ります」

>小指を差し出す。
>山岸さんの小指が絡んだ。

風花「指きり。……この後、どうするの?」

鳴上「特に予定は……」

風花「……」

>つないだ指を離してくれない……。
>山岸さんと長い時間を過ごした……。



【2012/5/26(土) 晴れ 堂島宅】


>今日は千枝が来る日だ……。

有里「そろそろ来るはずなんだけどな……」

>窓から様子を見てみる。

有里「……!?」

>気のせいだろうか。
>今、何か見えた気がする。

有里「……千枝に似てる、けど、別人かな?」

>……これで、このまま家に来たら確定だけど。

千枝「こんにちわー」

有里「来ちゃったよ」

>やはりアレは千枝だったようだ。

有里「や」

千枝「ども」

有里「……」

千枝「……何?」

有里「いや、その。どうしたの、それ」

>今日の千枝はいつもと違う。
>ていうか、服装が違う。
>いつものジャージはどうした。

千枝「ああ、これさ……今度、また有里君のお部屋にあげてもらうって話をしたのよ、りせちゃんに。そしたら……うん」

>りせコーディネートのようだ。
>なんというか、ふわふわしている……。
>襟と肩にレースがついた白い袖無しのトップス。
>その上から淡い緑のカーディガンを羽織って、下は紺のキュロットスカート。
>……多分、そこまで指定されなかったのだろう。
>足元はいつものローファーなのが千枝らしい。

千枝「変、かな?」

有里「良い」

千枝「へっ!?」

有里「あ、なんでもない。じゃあ、あがって?」

千枝「お邪魔しまーす……」

>参った。
>これは……妙に意識してしまう。

有里「どうぞ、適当に座ってて」

千枝「うん……ふぅ。慣れない服だと肩凝りますなぁ」

>あはは、と笑う千枝。
>膝頭に絆創膏が貼ってある。

有里「足、どうしたの?」

千枝「ん?ああ、ちょっとすっころんじゃって。まぁ鍛錬中には良くある事だから」

>何故かもじもじしている。

有里「……?」

千枝「あ、いや。その、さ。下にスパッツ履いて無いんだよね、今日。りせちゃんに言ったら『ナイ!』って言われちゃって」

>……りせに感謝しなければならない。

有里「……で、今日はどうしたんだっけ?」

千枝「ん、どうしたってわけではないんだけど。ちょっと、一日一緒に居たかったんだよね」

>照れ笑い。
>あれ、そういえば……。

有里「化粧、やめたんだね」

千枝「あ、うん。こっちは雪子に言われてさ。普通で十分だって」

有里「流石に天城さんだね。千枝は普通にしてても十分可愛い。化粧じゃ出せない部分があるから」

千枝「うん、そんな風な事言われた。そんな事無いと思うけどね、私は……」

有里「可愛いよ」

千枝「……ありがと」

>やはり、話しておこう。

有里「僕は、千枝が好きだ」

千枝「っ!」

有里「……どうやら、そうみたいなんだ。色々考えてみて気付いた」

千枝「うん……」

有里「でも、千枝が僕の事を好きな理由がわからない。よければ、教えてくれないか」

千枝「私が有里君の事を好きな理由?それは……」

>千枝はそこまで言って固まった。
>と、思ったら今度は考え込んでいる。

有里「あの……里中さん?」

千枝「あっ、ごめん。いや、私って何で有里君こんなに好きになったのかなーって思って」

有里「……割と、辛いんだけど」

千枝「ご、ごめんね?好きだから!ちゃんと好きだよ!」

>録音したい。

有里「でも理由はわかんない?」

千枝「うーん……言ったかな。私、鳴上君が好きだったんだけど」

有里「名前は言ってなかった気がするけど、そんな事は言ってたね」

千枝「うん。鳴上君はね……実は、まだ大好きなんだけどさ。あの人は、私がいなくても笑ってられる人だから」

千枝「でも、有里君は違うと思って。なんでも出来るんだけど、私……っていうか、他の誰かがいないと何も出来ない人。失礼だけどね」

有里「いや、良く見抜いてると思う」

千枝「それでさ、なんか、ちょっと寂しそうなとことか見てると……私が笑わせてあげたいなって思うんだよね」

>本当に、良く見ている。
>僕は今までずっとそうだった。
>多分、これからもそうなんだと思う。

有里「芸人みたいなものかな」

千枝「ん?芸人?お笑いなら私じゃなくて雪子に……」

有里「そうじゃなくて。まぁお笑いも含めてだけど、舞台に立つような人。僕は、そういうタイプなのかもしれない」

>観客がいる時は何にだって勝てる。
>だけど、誰も見ていない所では何も出来ない。
>そういう人間。

千枝「それはよくわかんないけど……多分、それが最初。有里君の笑顔が見たいの。そう思ってずっと君の事考えてる内に……ね」

有里「そっか。ありがとう」

千枝「別に、お礼なんか……どうしたの?」

>観客がいなければ何もできないのに。
>僕はその観客達と別れようとしている。

有里「千枝にだけ、話しておきたい事がある。……明日、僕はまたタルタロスに登る。そして……」

有里「恐らくは復活するニュクスを封じる為に、死ぬ」

>……一瞬の間があった。

千枝「……え?」

諦める、諦めない。
捨てる、捨てない。
止める?止めない?

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。

うぉぉぉぉぉぉ!
続きが気になる!!!
乙!

乙!!

風花が可愛すぎる

アニメ版はスパッツなし、ゲーム版はスパッツ有

スパッツの魅力が解らない
ここのキタローとは美味しいお酒が飲めない


後日楽しみだなー P4でもうちょっとP3組出してほしかったなぁー
トリニティーでもどうでもいい人しか出なかったし…

そんなわけで1乙

スパッツがいらないとかじゃなくて、普段スパッツだからって気にせず動き回ってる千枝ちゃんがモジモジしてるのが可愛いんです。

今日は二段階にわけて投下。



【2012/5/27(日) 雨】


日中であるにも関わらず、まるで影時間に落ちてしまったような錯覚に囚われる。
太陽の光は分厚い雲に遮られ、街は沈黙に包まれている。
ただ雨の降る音だけが嫌に耳障りで、精神の集中を妨げた。

「太陽は僕達にその恵みを与えず、人は影に呑まれるのみ……か」

窓の外を歩いているのは人ではない。
黒い影がその体を揺らしながら闊歩している。
予想通り、今日までにシャドウの実体化は成されたようだ。
シャドウに影を食われた人間は影人間となり、全てに対して無気力になる。
しかし、シャドウを倒して影を取り戻す事が出来れば、また元に戻る。

「小物をいくら叩いても意味は無し。やっぱり、大元を断たないとね」

あれらを掃討したとして、人がある限りシャドウもまた増える。
ならば、それを誘引する元を断たねば意味は無い。
雨音が思考の邪魔をする。

「雨が降らないと決戦は出来ない。けど、今日でお別れなんだ。もう少し綺麗な街を眺めさせてくれても良いだろうに」

覚悟はした。
三年前のあの日に。
この世界を救う為だったら、なんだってやってやる。

「……千枝は、どうしてるかな」

昨日は酷いものだった。
半ば以上わかっていた事だが。
泣いて、怒って、泣いて。
一言、帰るとだけ言って帰ってしまった。
千枝にだけ言う、と言っておいたものの、恐らくは一人では抱えられないだろう。

「相談するとしたら誰かな……」

もし、相談するとすれば。
……携帯が鳴った。

「まぁ、そうだろうね」

液晶には、鳴上悠と表示されている。



【2012/5/27(日) 雨】


窓から外を眺めても、煙った灰色が広がるだけだった。

「シャドウ……しっかり見えてるな」

決戦は近い。
心臓の鼓動がいつもより早い気がする。
と、その時携帯に着信があった。
二回ほどコールして、すぐ切れる。

「悪戯電話か?」

液晶には里中千枝の文字が表示されている。
どうやら、悪戯では無いようだ。
こちらから掛け直す。
……数回コールが鳴って、声が聞こえた。

『……もしもし』

いつもと様子が違う。

「里中か。どうした?」

無言。
電話口からは泣き声だけが聞こえる。

「おい、どうし……」

『有里君が、死ぬ、って』

ただそれだけで、十分理解できた。
あいつは、三年前と同じ事をやろうとしている。
……俺達に、何も言わずに。

『どうしよう、私……止められなかった。どうしたら、どうしたらいいのかな』

「落ち着け。……アイツは口で言って止まるような奴じゃない。とにかく、そっちの皆を集めてくれ。勿論有里も」

『でも、呼んで素直に来てくれるかな……』

「来るさ。俺が言う。アイツがどういう決断をするかはわからないが、とにかく皆で集まって欲しい。こっちも皆に伝えるから」

『うん、うん……ごめんね、こんな時に……でも、私……』

里中は泣いている。
知っていた筈だ。
誰かが犠牲になって、事件が終わったとしても、誰かが泣く事になる。
湊はそれを知っていたはずなのに。

「大丈夫だ。良く話してくれた。あいつは止める。何としても、だ」

『……ありがとう。じゃあ、私皆に連絡するね』

「ああ。有里には俺が連絡する。後は任せろ」

『うん、ごめんね……じゃあ』

電話が切れた。

「信じろって言ったのはお前じゃなかったのか、湊」

携帯に登録してある番号にかける。
出るだろうか。
いや、出る。
あいつはそういう男だ。

『もしもし』

「何で電話したか、わかってるな」

『……勿論。千枝だね?』

「ああ。話してくれたよ」

『で、君はどうするの?』

どうする?決まっている。

「お前を止める。口で言っても無理なんだろ?」

『それは当然。軽い気持ちで言える事じゃない』

「だったら、力尽くだ。お前も、戦う為にはテレビに入らなきゃならない。そこで、止める」

『……それなら、そうしてみればいい。僕は簡単には止まらないよ』

「もうこれ以上お前と話す事は無い。里中が今皆を集めてる。お前はそこに行け」

『わかった。じゃあまた夜に』

「ああ。……夜にな」

電話を切る。
知らない間に右手を握り締めていた。
爪が食い込んで血が出ている。

「……くそっ!」

そのまま、拳を壁に叩きつけた。
鈍い音がした。

「おいおい、どうしたんだよ……うわ、お前それ血でてんぞ?」

順平さんが音を聞いて様子を見に来てくれた。
丁度良かった。

「順平さん、今すぐ寮内の皆を集めてください」

「は?そりゃ、いいけどよ。何かあったんかよ」

「後で話します。早く」

順平さんも何かを悟ったらしい。
目つきを変えると、黙って扉を閉めた。


【ラウンジ】


「すみません、皆さん。集まってもらって」

……美奈子がいない。

「順平さん、美奈子は」

「彼女は今日寮にいない。恐らくは、どこかで悔いの残らないように過ごしているのだろう。それで、どうした?」

桐条さんが急かす。
恐らくはろくな話では無い事が、空気でわかるらしい。

「湊……有里が、またNyxを封印するようです」

全員の空気が変わった。

「つまり、あいつはまた自分の命を捧げようとしています。俺は、それを止めたい」

誰も何も言わない。
驚いているのか、悲しんでいるのか……。

「しかし、解決のためにはそれが確実なのも確か、だな」

真田さんが苦々しい顔で言った。
それもその通りだ。

「ですから、これは俺の我侭です。リーダーとしてでなく、湊の友人として言っています。だから、皆さんに協力してくれとは言いません」

それでも、信じている。
この中には……少なくとも、湊の死なんて結末を望んでいる人はいないと。

「それでも、俺と一緒に戦ってくれる人がいるなら、今夜マヨナカテレビで。……もし、有里に協力したいなら、テレビ内で合流する事も出来るでしょう。そうしてください」

返事は無い。

「すぐに返事が出来る事とも思いません。ですから、行動で示す。ということで。今夜12時、俺の部屋に来てください。そのメンバーで、有里を止めに行きます」

何も答えない。

「……では、少し体を休めたいので。俺は部屋に戻ります。また、夜に」

皆に背を向けて、二階へ。
ああは言っても、複雑なのは自分も同じだ。
胃の辺りをはっきりしないもやもやが渦巻いて、色んな物と一緒に吐き出されそうだ。
……今は、皆を信じる事だけしかできない。
信じよう。


【ジュネス内フードコート】


傘をさして歩く。
シャドウはまだ僕達には無害だ。
襲われるのは、ペルソナ能力を持たない者が先……それは、今も変わっていないらしい。

「もう、お揃いか」

皆は黙って座っている。
来なければ良かった。

「有里……聞いたぜ、全部」

陽介はいつもと違う、真剣な表情をしている。

「なぁ、何でだよ。俺達と協力して事件終わらせるんじゃなかったのかよ」

ああ、胸が痛い。

「……最初から、こうするつもりだった。君たちは知らないかもしれないけど、今日の敵は……まず、本当は敵じゃないんだけど。戦って倒すとか、そういう物じゃないんだ」

「じゃあ、どうにもならないの?本当に、どうにも……」

天城さんの綺麗な顔が辛そうに歪んでいる。
原因が僕なのが本当に申し訳ない。

「ならない。僕達に出来る事は最早無い。アレをここから遠ざけるには、僕の命を捧げる必要があるんだ」

「やだ、私やだよ。有里先輩死んじゃうなんて……」

りせはもう泣いている。
感情を抑えない、僕には出来なかった生き方だ。

「どうせ、一度死んだ身だし。そんなに悲しむ事は無いよ」

「でも、今は生きている。それに、僕達は知り合ってしまった。……無視するなんて、出来ませんよ」

直斗も辛そうだ。
結局、女性らしい服装を拝めなかったのが心残りか。

「無視はしなくていい。たまに思い出して……いや、やっぱり忘れてくれた方が楽だな。最も、Nyxを封印してしまえばシャドウに関する記憶は消えるんだけど……僕の事も」

「んだよそれ……ホントに跡形も無く消えちまうってのかよ」

完二は悲しいというより、怒っているようだ。
完二らしいな……。

「ま、出会って一ヶ月かそこらの僕達だ。傷は浅い……だろ?」

「そんなワケないじゃん!」

千枝。
ごめん。

「有里君だって、そんな風に思ってないくせに!ほんとは辛いくせに、黙って、誤魔化して……バカだよ」

言いながら、また泣き出した。
たかだか一ヶ月……大凡二ヶ月か。
随分と、見透かされたものだ。

「……僕の考えに不服なら、僕を止めればいい。悠が言ったんだ、お前を止めるって。彼は今日、マヨナカテレビの中で、力尽くで僕を止めると言った」

全員が顔を上げる。
悠の名前は効果が違うな。

「だから、それに協力すればいい。ただ、そうなったら僕はきっと止められるだろう。悠は勿論、君達は強いし。だから、もう一つ言っておく」

これは言いたくなかった。
悪手の中でも最悪だ。
ただ、手段を選ぶ時では無い。

「もし、僕に……僕の想いを、遂げさせてくれるなら。この世界の為に身を捧げる、その願いを叶えさせてくれるなら。僕に協力してくれ。今夜、マヨナカテレビで待つ。それじゃ」

傘を広げ、背中を向ける。
誰も何も喋らない。
これで、僕に協力するなんて人がいるだろうか?
僕が、どんな気持ちでこの選択をしたか。
少しでも理解してくれたなら、もしかしたら……。
期待するのは、よそう。
あと、高々12時間だ。


【マヨナカテレビ】


五人の男女と一匹の犬がタルタロスに侵入する。
手には各々の武器、それと召喚機を持って。

「ちっともたついちまったから、多分有里達上にいんだろうな」

「しかし、シャドウがいないのは好都合でしたね。全てテレビの外へ出てしまったのでしょうか」

ヘッドホンを首にかけた少年。
間接部から機関部が露出している少女。

「とりあえず、追いかけないとね。どうする?」

「……反応、あります。各階層に一人ずつ。多分、五層にいるのが彼だと思います」

長い黒髪を揺らす、赤い服の少女。
自らのペルソナの内側に入り、タルタロス内部を探査する女性。

「人数は、どうやら同じみたいですね。……全員で一層一層進んで行ったんじゃ時間がかかりすぎるか」

そして、鳴上悠。

「厳しい作戦ですが、各層一人が相手する事になりますか……大丈夫か?」

陽介は笑う。

「何が出たって負けやしねーよ。あいつを止める為にわざわざこっち側まで回って来たんだ。やってやんよ」

雪子も笑う。

「多分強いよね、相手。だって有里君の仲間だし。でも負けてらんないし、ね」

アイギスは頷いた。

「それが最善でしょう。……恐らくは、色々な意味で辛い戦いになると思いますが、大丈夫。私達だって一人じゃないもの」

コロマルも吼える。

「ワン、ワンッ!」

そして、風花が微笑みかける。

「だ、そうです。それじゃ号令をお願いします、リーダー」

鳴上は一度黙った。
目を閉じて、一度深呼吸をする。
顔をあげ、目を開けて。
全員の顔を見回した後、口を開いた。

「これよりNyx討伐作戦の第一段階を開始します。まずは、先走った湊に一発お見舞いして、それから皆で最上階を目指す。異議のある者は?」

全員が答える。

「異議なし!」

鳴上は、微笑んだ。

「それじゃ、仲間を止めに行こう。登るぞ」


【第五層:焦炎の庭ハラバ】


『鳴上先輩達も登り始めたみたい。……ねぇ、本当に戦わないといけないのかな?』

「僕だって、出来る事ならやりたくないさ。けど、ぶつかり合わないとわからない事もある……そうだろ、りせ」

有里は一人立つ。
采配は済んだ。
後は、鳴上の刃が己に届くかどうか、それだけだ。

「しばらく集中したい。また後でね」

『わかりました……』

ヘッドホンを着ける。
手元のリモコンを操作して、曲を変更する。
「Heartful Cry」……。

「ごめん、皆」



【第一層:世俗の庭テベル】


第一層と第二層の境目。
丁度、番人のシャドウが居た階。
一人の女が立っている。

「来たな。待っていたぞ」

紅い髪を揺らし、剣を構える。

「桐条さん……退いては、もらえませんか」

鳴上も、無駄だとはわかっている。
美鶴には美鶴の決意があってそこに立っている。
彼女と有里の関係を考えれば、それがただならぬ苦悩であった事は明らかだ。

「無理な相談だ……本当なら、すぐにでも追わせたい所だがな。私は、彼の力になりたいんだ。どんな結末であろうと……彼が決めた事を、手助けしたい。それだけだ」

鳴上が剣を構えると、その前にコロマルが立ちはだかった。

「ガウ!グルルル……」

「コロマルさんは、貴方が戦うべきではないと。貴方は先を急ぎ、彼を止めるべきだと言っています。ここは……」

アイギスが通訳する。
鳴上は剣を降ろした。

「俺が戦う、と」

「行かせると思うのか?」

「アオーン!!」

「走れ、と言っています!鳴上さん!」

コロマルの遠吠えに答えるように駆け出す。
階段は見えている。
美鶴の横を走り抜けたが、妨害らしい妨害は無かった。

「……桐条さん、もしかして」

「今は、上に行くことだけを」

「そう、ですね」

鳴上達は上階へ向かって登って行った。
美鶴は剣を降ろす。

「行ったか。……すまない、湊。私は、やはり君に……」

「クゥーン……」

コロマルが美鶴に擦り寄る。
美鶴はそっとその頭を撫でた。



【第二層:奇顔の庭アルカ】


「よーう、お前ら。来たな」

二層には順平がいた。

「ま、来たばっかで悪いんだけどよ。ちっと相手していってくれや。あいつのやりたい事、手伝うって言っちまったからよ。お前ら、先に進ませるわけにゃいかねーんだわ」

順平は召喚機をこめかみに押し付ける。

「トリスメギストス!」

どうやら、美鶴と違い本当に鳴上達を止めるつもりのようだ。

「マハラギダイン!」

辺りを炎が包み込む。

「くそっ、これじゃ階段に……」

「ガルダイン!」

突風一陣。
階段までの道が開く。

「陽介!」

「順平さんの相手は俺に任せとけ。だから行くぜ、相棒!じゃなくって、行け、相棒!」

突風は、ジライヤのガルダインだった。
鳴上は黙って頷くと走る。

「行かせるかっての!」

「っとぉ、そうはさせねー!」

襲い掛かるトリスメギストスを、ジライヤと陽介が体を張って止める。

「陽介……負けるなよ!」

「あいよ!」

陽介と順平は対峙する。

「いいねぇ、お前は。かっこいい役回りでよ。俺なんか憎まれ役だぜ」

「ま、役得っすよ。嫌なら退いてもらっても俺ぁ全然構わねっすよ?」

順平は笑う。

「そういうわけにはいかねーの。こうなったら、すぐにでもお前倒してあいつら追っかけねーとよ。さ、こっからマジだぜ」

「……そーすか。畜生」

順平の表情が変わる。
ジライヤとトリスメギストスが、衝突した。



【第三層:無骨の庭ヤバザ】


スカンッ。
三層の番人がいた部屋に踏み入れると、足元に矢が刺さった。

「そこで止まって。それ以上先は進ませない」

アイギスが前に出る。

「ゆかりさん。通してください。私達は、彼を止めなければいけない」

「駄目よ。私だってあの人がいなくなるのはいや。でも、でもね。やっと力になれる。やっと彼の為に戦えるの。だから、お願い。邪魔をしないであげて」

ゆかりは淡々と言う。
淡々と、心の内側を叫ぶ。

「鳴上さん、天城さん。ここは私が。貴方達は早く上に」

アイギスが構える。

「行かせないから」

走る鳴上と雪子にその弓が向けられる。
風を切って、矢が走る。

「天城!」

鳴上は天城を庇うべく立ち止まった。

「止まらないで!」

その前に、アイギスが走りこむ。
飛来した矢を叩き落とした。

「貴方はあの人を止める事だけ考えて。私は、彼だけじゃなく……ゆかりさんも、止めますから」

「アイギスさん……」

「行こう、鳴上君!」

雪子に手を引かれ、鳴上は再び走り出す。

「アイギス……こうやって戦うのはあの時以来だね」

「そうですね。ゆかりさんは、あの時から成長されましたか?」

「さぁね。またこうやって同じような事でケンカしちゃってる辺り、お互い様って感じじゃない?」

ゆかりが笑うと、アイギスも笑った。

「……でも、変わったモノもたくさんあります。私は、それを守りたくてここにいる」

アイギスの体、間接部から蒸気があがる。

「あの時とは違う。もう迷いは無い。本気で闘いましょう。私は、彼を助けなければならない」

「……上等。私だって同じだから」



【第四層:豪奢の庭ツイア】


……黙っている。
鳴上も何も言わない。
雪子も何も言わない。
そして、千枝もまた何も言わなかった。

「……わからないよ。何で、千枝がそっちにいるの?」

最初に口を開いたのは雪子だった。
思ったままを、単純に口にする。

「千枝は、有里君の事好きなんじゃないの?どうして、彼がいなくなる手助けをしてるの?答えて」

雪子は怒っていた。
親友の行動が理解出来ずにいたからだ。

「何で黙ってるの?ちゃんと言ってよ。それとも答えるような理由が」

「雪子にはわからないよ」

千枝も、怒っていた。
自分の中の気持ちに決着が付けられず、それを親友に指摘されたからだ。

「わからないから聞いてるの。私には千枝のやりたい事が全然わからない」

「私は……有里君の為に、有里君の邪魔になりたくなくて。それで、ここに……」

「そうやって自分を誤魔化して、それで満足なの?私の好きな千枝はそんなじゃ無い。こんな格好悪い事絶対にしない」

「……っ黙ってよ!とにかく、二人ともここから先には……彼の所には絶対行かせない!邪魔させない!」

千枝は叫ぶ。
自分の中のもやもやした感情を振り払うように。

「鳴上君、先に行って」

「天城、大丈夫なのか?」

「大丈夫。いつもの千枝ならともかく、今のあんな千枝に負けるはず無いよ。さ、行って」

雪子は笑う。
鳴上は頷くと、階段に向かって走った。

「行かせない!」

トモエの薙刀が鳴上に向かう。
しかし、炎が走り、鳴上とトモエの間に壁を作った。

「千枝の相手は私」

「邪魔しないでよ!私は……私は!」

「うるさい!」

雪子が怒鳴った。

「……どうしたらいいかわからなくて、ただオタオタしてるだけ。そんな人に何が出来るっていうの?情けない」

千枝はうろたえている。
滅多に見ない、親友の「本気」の怒り。
雪子の中に、本人すら何者かわからない感情が渦を巻く。
それは、コノハナサクヤの操る炎に似ていた。
圧倒的熱量を持って、雪子を突き動かす感情。
親友を、救いたいという思い。

「いいわ、だったら……。私は、私の全力を賭けて、千枝に……私の憧れた千枝を、わからせてあげる」

そして、二人の間に本物の炎が舞った。



【第五層:焦炎の庭ハラバ】


『この先に、多分、彼が……』

もう何階登ったかわからない。
疲れは無い。
それよりも大きな感情に背中を押されて登って行く。

『鳴上君、大丈夫?』

風花が声をかける。

「……大丈夫ですよ。俺がやる事ははっきりわかってます」

階段を登る。
駆け登る。
一刻も早く、あいつの所へ。

『次の階。準備はいいですか?』

一度、呼吸を整える。
刀を握り、振るう。

「……行きます」

階段を登りきる。

「やぁ、来たね」

「……湊!」

有里は今にも突進してきそうな鳴上を手で制した。

「少し、話をしよう。実力行使は望む所じゃない。お互いに、そうだろう?」

「……言ってみろ」

一定の距離を保ったまま、二人は対峙する。

「悠。そのまま帰ってくれないか。僕が仕事を終えるまで」

「却下だ。でなきゃわざわざここまで来てない」

「……だろうね。一つ聞いておきたい。君、アレを本当に倒すつもりでいるの?」

「そうだ。何かおかしいことでもあるか」

有里は笑う。

「あはははは……いや、まさか本気で言ってるとはね。聞いてないのかな?皆から。アレは倒すとか倒さないとか、そういう物じゃない。存在を消す事なんて、誰にも出来やしないんだ」

「聞いてるさ。それでも、やってみるまでわからない。だから俺は……」

「それは理想論だ」

「そうかもしれない。だが、理想を追う事の何が悪いんだ」

鳴上は刀を強く握る。

「違うね。君は理想を追っているんじゃない。ただ現実に目を向けたくないだけなんだ。どうしようも無い事なんて無い……そう思いたいだけだろ?」

有里はにやにやと、厭らしい笑いを顔に貼り付けたまま言う。

「君と違って僕はリアリストだ……現実主義なんだよ。勝てない物には勝てない。僕はそれを知っている。だから、こんなにも辛い思いをして、自分を……捨てることを選んだ」

「湊。……最初に会った時、俺はお前を俺のシャドウじゃないかと思った」

「……奇遇だね、僕もだ」

「やっとわかった。お前はやっぱり俺のシャドウだよ。俺の見たくない部分をしっかり突いてくる」

「それは悪かった。それで、踵を返す決心はついた?」

「帰らないさ。お前は俺のシャドウだ。だけど、俺だってお前のシャドウだ」

有里の笑いが消える。

「お前、俺が羨ましいんだろう」

「……何が」

「現実主義だとか言って誤魔化してるが、お前こそ勇気が無いんだ。理想を追い続ける事が出来なかった、お前は……」

「黙れ」

「お前は俺達が羨ましいんだ。最後まで諦めない、俺達が。だから否定する。違うか?」

有里も剣を握る。

「……認めるよ。僕は、理想を追えなかった。だけど、そうする事で世界を守ったんだ。それは、事実だ」

「譲れないんだ、俺も、お前も。だったら、どっちが正しいか」

「決着を」

「付けよう」

有里はヘッドホンを付け直した。


【エントランス】


「さてと、手遅れにならない内にちゃちゃっといきましょー」

「全く、こんな役回りとはな」

「クマも頑張るクマ!手伝うクマ!」

「つーか、あいつらもあいつらだぜ。好き勝手やりやがって」

「仕方ないですよ。あの人達、みんな頑固ですから」

「そうですね。それじゃ、行きましょうか。仲間割れを止めに」

……。



【第五層:焦炎の庭ハラバ】


剣が交差する。

「何だ、ひょろっとしてるからこっちは駄目なのかと思ってたぞ」

「これでも歴戦越えてきてるからね。まぁ、得意では無いんだけど、ねっ」

有里は鳴上の腹を蹴って、一度間合いを開ける。

「ぐっ……イザナギ!」

「オルフェウス!」

両者はペルソナを召喚し、ペルソナ同士が激突する。

「イザナギ、知らない間に強くなってるね」

「ああ、おかげさんでな。そっちこそ、ちょっと変わったか?」

「うん、色々あってね。強くなったんだ」

イザナギの一撃を受け止め、はじき返す。

「強いて言うなら、オルフェウス・改ってとこかな。多分、君のイザナギより随分と強いよ」

「ああ、よくわかる。……じゃあ、やり方を変えるか」

右の手を、眼前に。
心の中の、何かを握りつぶし、発露させる。

「チェンジ」

その力は、死の力。
ある男との絆が生んだペルソナ。

「タナトス!」

「る……ぐる……ルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

雄叫びがフロア中に響きわたる。

「……そう、来たか」

「お前にもらった力だ……お前と戦うのにはピッタリだろ」

「確かにね」

タナトスの剣が有里を襲う。
オルフェウスが受けるが、どう見ても力負けしている。

「くっ……駄目か」

同時に鳴上も攻撃をしかけていた。
押さえ込むつもりで、体ごと覆いかぶさるようにまっすぐに。
有里も剣で受けるが、体格の差は埋め難い。

「湊ォ!」

「悠!」

キチキチと、刃が擦れ音を出す。

「このまま押さえ込んで、俺の……勝ち、だ」

「……そう、みたいだね。僕の負けだ」

力が抜けて、二人とも倒れこんだ。

「……さぁ、その刀で僕を動けなくすればいい」

「そこまではしない。お前が負けを認めて、俺達に協力してくれればそれでいいんだ」

「僕はきっと裏切るよ。君を動けなくしてしまえば、僕の邪魔をする人はいなくなる」

「そうだな。だけど、お前は言っただろ。『信じろ』って。俺はまだ、お前を信じてる」

有里は笑った。

「この期に及んでまだそんな事を言えるなんて、君は本当にすごいな」

「それしか出来る事が無いんでな。……さて、皆を迎えに行くか」

鳴上が立ち上がり、有里に背を向ける。
階段に向かって歩き始めた時。

『鳴上君、後ろ!!』

風花が叫んだ。

「え?」

「チェンジ」

有里がこめかみに指を突きつけている。
いつか見た、有里の召喚シークエンス。

「メサイア」

タナトスは既に戻している。
今、鳴上の身を守る物は何もない。

「湊……お前」

「すまない、悠。それでも、僕は死ななくちゃならない。世界の為に、君達の為に、僕自身の為に。さよなら」

一撃で、鳴上の意識は途切れた。


【頂上:王居エレス】


『やぁ、久しぶりだね』

タルタロスの頂上では、巨大な人型が佇んでいた。

「少し前まで一緒だったから、ちょっと離れても久々に感じるね」

ニュクス・アバター。死の現し身であり、かつて有里の内にあった物。

『さて、君はやっぱり僕を倒すんだろうね』

「すまないが、そうさせてもらうよ。その後、また一緒になろう」

ニュクス・アバターが手を広げる。

『それじゃやろうか。手加減はいらないね』

有里は震えていた。
久しぶりに味わう死の恐怖。
体が竦んでいるのがわかる。

「……何を、今更。やるしかないんだろう」

MP3プレイヤーのリモコンを操作する。
この恐怖を焼き払ってくれ。
「Burn my Dread」。

『そのアルカナは示した……』



【第一層:世俗の庭テベル】


「なんだ、戦っていなかったのか」

有里が頂上でニュクス・アバターと対峙している頃、一層では。

「……本心から言えば、私だって彼には消えて欲しくない。もし止められるのなら、止めて欲しかったのさ」

「クゥーン……」

美鶴とコロマルは戦っていなかった。
戦う意思が無くても、気を抜くと倒れてしまいそうな美鶴を放って上にも行けず、コロマルも留まる結果になっていた。

「それより明彦こそどうした。どちらに付く訳にもいかないと言っていたじゃないか」

真田はマントを翻し、二人に登るように促す。

「さっき見ただろ。あいつらと一緒にお前らを止めに来た。上に行くぞ。手伝いが必要だ」


【第二層:奇顔の庭アルカ】


「うら、喰らいやがれ!」

「んにゃろ!喰らうかよ!」

順平の力任せの一撃を短刀でしのぐ。

「なんだ陽介、普通につえーじゃねーの!」

「順平さんこそ、すっげえっすね!でも俺もまだまだこれからっす……よぉ!」

身をかがめ、突進する陽介。
順平が迎撃する構えを取る。

「てめェら、いい加減にしねェか!タケミカヅチィ!!」

両者に、稲妻が落ちた。

「うぎゃ!な、なんだぁ!?」

「タケミカヅチ……ってこたこりゃぁ……」

「二人してなに楽しそうに戦ってやがんだよ!俺ら仲間じゃねーのかよ。今は仲間割れよりあの二人の手伝いがいるんだろうが!」

完二が二人を怒鳴りつけた。

「つっても、なぁ。二人共多分戦ってるだろうし」

「俺らもそのつもりで来たしな」

「馬鹿じゃねえのか、アンタら。そこを手繋がせんのも仲間の仕事だろうよ。オラ、行くぜ」



【第三層:無骨の庭ヤバザ】


「やっぱ、アンタ強いわ……」

ゆかりは膝をついている。
三層での戦いは、辛くもアイギスの勝利で終わった。

「ゆかりさんも、とても強かったです。技術とかではなく、想いが」

上階に向かおうと歩き出す。

「……あっ、こんな、時に」

オルギアの反動が体の各機関に走る。
アイギスはそのまま膝から崩れ落ちた。

「……試合に負けて、勝負に勝った……って感じかな」

「あ、丁度良かった。岳羽さん、アイギスさんに肩貸してあげてください。行きましょう」

「天田君?って、無理無理。私、アイギス上に行かせるわけにはいかないんだ」

「まだそんな事……僕達がやるのは同士討ちじゃないですよ。上で戦ってるあの人を、手伝わないと」

天田はゆかりに手を差し伸べる。

「手伝う……?」

「はい。だから、皆で行きましょう。上へ」



【第四層:豪奢の庭ツイザ】


「っはぁ、はぁ、ぜっ……はっ」

肩で息をする千枝。
全力でぶつかっても、ビクともしない。
何でも知っていたはずの親友の、知らない部分。

「どうしたの?もう息切れ?」

「うるっ……さいっ!」

苦し紛れの、体重も乗っていない攻撃。
当然、効くはずも無い。

「なんでよ……なんでこんなに苦しい思いしてるのに……雪子の方が強いの?なんで……なんでよ!」

「当たり前よ。今の千枝には矜持が無いから」

雪子は凛と答える。

「矜持……?」

「プライド、思想、理念。私は、有里君を、千枝を助けたいと想って戦ってる。ここに立ってる。千枝は何がしたくてそこにいるの?」

「わ、私は……有里君を手伝って、街を平和に……」

「違うでしょ。千枝がしたいのってそんな事じゃない。嘘吐いたって、私にはわかる。そんな嘘ばっかりの信念で、私は倒せない」

「私のしたい事……私が、本当にしたい、こと……有里君……一緒に」

千枝がしゃがみこむ。
目には涙が光っている。

「わた、私……有里君と一緒にいたい。いなくなってほしくなんか、ひぐっ、なっ……うぅ、うぇええ……」

ため息をついて、ペルソナを戻す。

「やっとわかった?千枝はほんとにやりたい事に向かってる時が一番強いんだよ。私なんかじゃ敵わないくらい」

「わかった所で、それを実現しに行きましょうか」

戦いに夢中になっている間に、雪子の背後に誰かが立っている。

「直斗君?いつの間に……」

「ついさっきです。里中先輩と天城先輩のやりたい事、叶えに行きましょう」

「で、でも……ぐすっ」

「ぐずってないでさっさと動く。いつもそうやって発破かけてくれるのは里中先輩ですよ。さ、行きましょう。上へ」



【第五層:焦炎の庭ハラバ】


『鳴上君!鳴上君!どうしよう、このまま目を覚まさなかったら……』

少なくとも、有里は死ぬ。

『誰か、誰か近くに……あれ、これって……』

「センセー!センセー起きてクマー!死んだらいかんクマー!」

上がってくるなり、倒れる鳴上に走り寄るクマ。

『クマくん!?どうして……』

「はっ!?この声、あの時のオネエタマクマ!?クマな、知らない間にテレビから出れてたクマ。そんで、センセイの匂い辿ってウロウロしてたら……」

「私に出会ったってわけ」

『美奈子ちゃん!』

「やっほー風花。あーあー、派手にやられちゃって……おーい、悠。起きろー。起きないと世界が滅ぶぞー」

『美奈子ちゃんお願い、鳴上君を……』

「うん、その為に来たんだ。クマくん、君はこれからここで待ってて」

「ええ!?クマおいてけぼりクマか!?い、嫌クマー……」

「大丈夫、後から皆来るから。そしたら、お願いね、風花」

『お願いって、何を……』

「すぐわかるから。じゃ、私達は行かなくちゃ」

◆メシアライザー◆


【頂上:王居テベス】


『おや、どうしたんだい?もう終わり?』

有里は大の字になって月を見上げていた。
一人で戦うのがここまで厳しいとは、予想だにしていなかった。

「いや、予想はしてたか」

ワイルドの……有里の力は、絆が産む力だ。
今、有里の心の中には誰との絆も無い。

「仲間達を裏切って、ここに来たわけだから。そりゃ、そうなるよね」

自分から絆を切って、上手く行くはずもない。
大いなる封印も、恐らく発動すら……。

「参ったな。これじゃ何も出来ない。このまま無意味に死ぬのか」

『一人で喋ってないで、ちゃんと僕の相手もしてよ。でないと、本当に死んじゃうよ?』

「作戦中。このままじゃ勝てそうにないんで」

不意に、涙が出そうになる。
自分の背後に誰もいない事がこんなに心細い物だったとは。

「やっぱり、僕は皆がいないと何も出来ない……?」

視界に、何かが映った。
足に力を込める。
まだ動く。
手に力を込める。
まだ、動く。
立ち上がれる。

「認めよう。僕は、誰かの力で生きてきた。自分で何かをしたんじゃない。誰かに見られているから、誰かに背中を押してもらったから頑張れたんだ」

ゆっくりと、立ち上がる。

「僕は、そんな皆を守りたかった。でも、気付いたよ。守るんじゃない。守って、守られて、助け合って。それが、仲間だ」

少し、自信過剰だったかもしれない。
有里は思い直す。
仲間達は、皆。
守る必要なんてない。
もう、自分の足で立って、前に進む事が出来る。

「だから、手伝ってくれるかい?悠」

背後にいるだろう人影に声をかける。
自分が言った事も、した事も忘れてはいない。
しかし、返事は予想した……あるいは期待した通りだった。

「当たり前だ」

両雄が並び立つ。

「どうした、随分ボロボロだな」

「君は綺麗に治ったね。誰だい?」

「私だよん」

鳴上より一歩遅れて、美奈子もやってくる。

「美奈子。どうして……」

「私は貴方。湊の考えることなんてお見通し。さ、さっさと片付けちゃおう。本番はこの後だよ」

有里が剣を構える。
鳴上が刀を構える。
美奈子が薙刀を構える。

『よく来たね、皆。さぁ、それじゃあ第二ラウンドだ』

辺りを黒いオーラが包む。

「湊、作戦は無いのか」

「無いよ。美奈子は?」

「無し。ま、当たって砕け……ちゃだめか。当たって砕いちゃおうよ」

美奈子は笑う。
つられて、二人も笑った。

『じゃあ、行くよ』

「……メサイア!」

「イザナギ!」

「タナトス!」

それぞれにペルソナを召喚する。

『……すばらしい。これが君達の心の形か』

「行け!イザナギ!」

◆ジオダイン◆

『ああ、痛い……君は、愚者か。愚かなまでに猛進し、全てを貫く真っ直ぐな光』

「俺は、それしか知らないからな。皆を信じて、自分を信じて。それだけだ」

「タナトス!やっちゃって!」

◆五月雨斬り◆

『やぁ、美奈子。君も久しぶりだね。その力は死の力……人が忌避し、恐れるべき力だ。それでも、君は使うのかい?』

「死は恐れる物じゃない。死がなければ、人は今を意識しない。死は、逃げるモノじゃない。これ以上無い力の形だよ」

「頼む、メサイア」

◆ゴッドハンド◆

『湊。君は審判か。審判を下すのは僕の役目なのに。君は僕にどういう裁きを与えようって言うんだい?』

「別に、裁くつもりはない。君は役割を遂げているだけ……審判は裁きを与える存在じゃない。真実を暴く光だ」

『いいね。君達はとても強い。だけど、それじゃ足りないんだ。単純な力では……ほら、こんな感じで』

ニュクス・アバターがその両腕を振るう。
それだけで、吹き飛ばされそうな衝撃に襲われる。

「ぐっ……湊、これ、勝てるのか?」

「やるしか、ないでしょ」

三人は身動きが取れない。
ゆっくりと、次の攻撃が迫る。

『……先輩!有里先輩!鳴上先輩も!聞こえる!?』

「……りせか。ごめん、今は聞いてる余裕が……」

『有里君!鳴上君!大丈夫!?』

「あれ、風花?」

二人のペルソナから、同時に声が聞こえる。

「どういうこと、悠」

「さぁな。何かやってるんじゃないか。美奈子なら何か知ってると思うぞ」

「うん、仕込みは私。皆連れてきちゃった」

『有里君、聞こえる?』

風花でも、りせでも無い声がする。

「……この声。千枝」

『うん、私。今、皆と一緒にいる』

「そう。それは良かった。君達を戦わせた事だけが心残りだった……和解できたなら何より」

『そんなのいい。今、戦ってるんでしょ』

「そうだね」

『……私、もっと色んな事話したいんだ。もっと色んなとこ行きたいし、色んな季節を過ごしたい。本当は消えて欲しくなんかない。だから、』

『負けないで』

「……だそうだぞ、湊」

「だって、湊」

「……千枝。ありがとう。君は……最高だ。愛してる」

『……っ!』

通信が途絶えた。

「おい、里中とどういう関係なんだ、結局」

「内緒」

「全く……」

『鳴上君も、聞こえてる?』

「はい、聞こえてます」

今度は風花の声がする。

『私だって、里中さんと同じ。鳴上君と色んな物を見たい。料理だってまだ一緒にしてないし、何のお礼も言えてない。だから……』

「勝って、ですか」

『勝って。絶対に。私、待ってるから。……約束したよね?』

「覚えてますよ。大丈夫、負けるつもりは……ありません」

通信が、途絶えた。

「さて、どうやら今のが最後の通信らしいね」

「ねー悠。約束って何?」

「秘密だ。さて……」

「ああまで言われて、負けて死ぬわけにもいかないね」

「まぁ、男としてはな」

「どう、私の用意した声援?」

有里と鳴上は顔を見合わせて笑う。
そして同時に答えた。

「最高だ」

MP3プレイヤーからは次の曲が流れ始めた。
「Reach out to the truth」。

「あ、これ陽介の入れてくれた曲だ」

「おい、そんな事言ってる場合か。来るぞ」

『仲間達が来てるみたいだね。それで、どうなるのかな?』

二人の心の中に光が射した。
かつての仲間と、新たな仲間との絆が、二人に更なる力を与える……。

「もう、負ける気がしないね」

「同感だ……はぁああああ!」

ペルソナ・イザナギが、絆の力で変化していく。
イザナギは転生し、伊邪那岐大神となった!

◆コンセントレイト◆

「終わりだ。イザナギノオオカミ!!」

◆メギドラオン◆

光が全てを包み、崩壊させる。
それはNyxの現し身とて例外ではなく。

『お見事。流石だね……でも、これで終わりじゃない。むしろここからが、君達の……』

ニュクス・アバターは破壊の光に包まれ、しかし安らかな表情で消え去っていく。
後には、静寂だけが残った。

『……有里先輩?鳴上先輩?聞こえますか?』

通信が回復したらしい。
りせの声が聞こえる。

「うん、聞こえてるよ」

『急に大きな力が無くなって……で、二人が無事って事は』

「俺達の勝ちだ」

『……!やったあ!先輩達勝ったって!』

りせは大喜びしている。
しかし、勝利したはずの三人は複雑な面持ちだ。

「これで、どうなるんだ。湊は知ってるんだろ」

「うん。この後……月を封印しなければならない」

「で、それには……」

有里は笑った。

「僕……『宇宙』のアルカナが、必要になる」

いつかのように。
奇跡を奇跡で無く、普通の事として行う力を使い……あの月を、誰の手にも届かない場所に。

『えっ、ちょっと待って……先輩、今何て?』

「りせ、皆にも伝えて。やっぱり、封印するには僕の命が必要だ」

「他に手は無いのか。俺だって『世界』のペルソナを……」

「少し、違うんだ。僕と君では出来る事が違う。君は全てのまやかしを打ち払う力を得た。僕は、この世の奇跡を降臨させる力を得た。ただし、その力は命と引き換え。それだけさ」

『うそ、やだ……そんな……』

「りせ。……皆に、ありがとうと、それから、さようならを」

『待って、待ってよ。先輩、そんな……』

「湊!行くな、まだ方法は……」

「悠。君は理想を追い続けると言った。けど、理想ではどうにもならない瞬間は確かにあるんだ」

「だけど、だけど、そんな……」

「そんな顔しないでくれ。君と一緒に戦えて良かった。僕も、君と理想を追う事が出来た。君は僕のシャドウじゃない。……光さ。お互い、足りない部分を補いあってたんだ」

「湊……」

「Memento mori。死を想え。僕はこれを、如何に死ぬか、だと捉えた。僕は君達を、大好きな仲間達を救う為に死ぬ。それで、いいんだ」

「湊!」

『先輩!行っちゃダメ!やだったら!』

『有里君!お願い、もう少し……!』

有里の体から強い力が放たれる。
これが、奇跡を起こす力。
『宇宙』のアルカナの、力の余波。

「気にしないで。僕は満足だ。……さよなら」

有里の体が、消えた。

一段階目、終わり。

また後ほど。

というわけで二段目。

といってもほんの少し、締めの部分だけです。



【2012/6/12(火) 晴れ 雪子の部屋】


陽介「っだー!わかんねぇ!諦めよう!」

千枝「諦めたら勉強会の意味無いでしょーが」

雪子「焦らなくていいから、ゆっくりやっていこうよ。期末テスト、もうすぐだよ?」

千枝「雪子は余裕だね……流石才女」

雪子「千枝だって頭が悪いわけじゃないんだから、やればできるって。ほら、頑張って」

千枝「わっかんないんだもんさー。なんで数学ってこんな記号とか使いたがるのかなぁ」

「わかんないって思うからわかんないんだよ。普通に数字の計算と同じ。ほら、解いてみて」

千枝「ん、うん……えっと、これが、X?になるのかな」

陽介「やーれやれ。有里の言う事にゃ素直なんだな、里中は」

雪子「ほら、茶化さない。花村君もさっさとやる」

陽介「へーい……」

>僕は、結局ここにいる。
>あの時、僕の命を使ってNyxを封印するつもりだったのだが……。



【Nyx】


有里「二回もここに来る事になるとは……」

美奈子「同感」

>気がつくと、隣に美奈子が立っていた。

有里「美奈子!どうして……」

美奈子「私は、貴方。ていうか、気付いてるかな。私と湊、まだ繋がってるの」

>確かに、どこか繋がっている感覚はずっとあったが……。

美奈子「……実言うとね、この体、湊のと違って急造だから、長くは持たないんだよね。ほら」

>見ると、確かになんと言うか……存在感が希薄というか、透けているような気がした。

美奈子「私、もうすぐ消えちゃうから。使うなら、私を」

有里「美奈子……」

美奈子「湊は、皆に想われて、そうやって帰ってこれた。運が良かったんだね。だから、それを無にする事ないよ。私が消えるから」

有里「でも、それじゃ美奈子は」

美奈子「いいの、私は。私のいた世界では……荒垣先輩が、死んじゃったんだよね」

有里「それは、こっちでも同じだよ」

美奈子「こっちの先輩は、私の知ってる先輩と違うもの。向こうじゃ恋人だったんだよ、私達。だけど、死んじゃった。その時、思ったの」

美奈子「死を想う事。それはどうやって死ぬかだってさっき言ったよね。多分、荒垣先輩もそう思ってたと思う。でも、私は違うんだよね」

>美奈子は満面の笑みを向けた。

美奈子「いつか死んじゃうから、今を楽しめ。それが私のMemento mori。私は、オマケを十分楽しませてもらったから。後は、湊が」

>美奈子の体が消えていく。
>恐らくは、本人がその姿を維持する事を諦めたから。

有里「美奈子!」

美奈子「私の体が消えたら、また湊の中に戻る。この事件を終わらせるっていう、私の目的はこれで完了。お願いね」

有里「……わかった」

>恐らくは、その笑顔の裏に自分と同じような苦悩を隠して。
>美奈子は消えていった。
>大いなる封印が発動し、自分の中から何かが抜けていく感覚があって、それから。

千枝「有里君!」

>気がつくと、皆に囲まれていた。



【雪子の部屋】


>あれから、誰も美奈子の話をしない。
>恐らくは、記憶から消えてしまっているのだろう。
>かつての自分がそうであったように。
>月日は流れて、もうすぐ期末テスト、その後夏休みだ。

有里「そういえば、夏休みには悠が来るんだったっけ」

>悠とは、あの直後に話をした。
>僕と同じく、悠も美奈子の事を覚えていた。

鳴上『あいつは、多分最初からそのつもりだったんだと思う』

>彼はそう言っていた。
>多分、そうなんだと思う。
>それでも、軽く受け止める事は出来ないけれど。

陽介「あー、そだな。アイギスさんもまた来てくれねーかな。海行こうぜ海。皆でさ」

千枝「水着目当て?」

陽介「ばっ、そういうんじゃねえから!な!有里!」

有里「僕は水着見たい」

雪子「だって」

千枝「何で私を見るか、雪子」

雪子「見せてあげないの?」

有里「見せてくれないの?」

千枝「……見せる、けど」

>天城さんが笑って、僕も笑った。
>陽介は、少し不満そうだった。
>日常が流れていく。
>僕達は、いつか必ず死ぬ。
>それは変えようの無い事で、どれだけ足掻いても同じ事だ。
>だけど、その時をどう迎えるかは変える事が出来る。
>いつ、その時を迎えてもいいように。

>今を、楽しめ。

「お疲れ様です、お客様」

青い部屋に、再び招待された。

「これを持ちまして、お客様の物語は一時閉幕と相成ります」

イゴールが愉快そうに笑う。

「お客様がお望みであれば、契約者の証たる鍵を返却なさる事も出来ます。そうした場合、二度と我々と見える事も無いでしょう。平穏が約束されますぞ」

手には、あの時受け取った鍵を握っている。
鍵を、返しますか?

>いいえ

「……流石はお客様、と言ったところでしょうか。まだ何も終わっていない。お忘れでなかったようですな。失礼いたしました」

イゴールは一層愉快そうに体を揺らした。

「お客様は再び鍵を握りました。それをいつ使うかは、お客様の自由です。今しばらくは、平穏をお楽しみください」

「それでは、再び会い見える日まで、ごきげんよう。また、いずれ……」

ピアノと女性の声が響く中、ゆっくりと、部屋の扉が閉じた。

一巻の終わり。
一つの事件の終幕。
けれど、物語は未だ終わらず。

というわけで、一区切りとなります。
大凡一ヶ月、毎日更新をちまちまとやってまいりました。
ようやく一息……とはいきません。
いろいろ伏線張りっぱなしなので、回収しなければなりません。
が、肩凝りが酷いのと有里君と鳴上君にもっと楽しい毎日を送って欲しいので、しばらくまったりとやっていこうと思います。

というわけで、本日分は終わり。
SSは終わりませんが。
では、また後日。

乙!
今後も楽しみにしてる。

今んとこのキャラ好感度を詳しく


乙!


これからも楽しみ

まったりまったり、箸休め的に。

自動車教習がめんどうでしかたないですが、本日分。



【2012/6/17(日) 晴れ 天城屋旅館】


>今日も天城さんの家で勉強会だ。

有里「ったはずなんだけどね」

>着くなり、まるで疾風のような動きで拘束され、転がされている。

完二「すんませんね先輩。俺ぁんなことやめとけっつったんスけど……」

陽介「まぁまぁ完二君。んな事言ってお前も気になんだろ?」

完二「いや、そりゃ……ちょっとは」

有里「まず僕に説明すべきだよね」

陽介「有里被告!許可なき発言は禁じます!」

有里「被告……」

>この感じは覚えがある。
>りせにやられたアレだ。

陽介「えー……それでは第一回ー……」

陽介「結局里中とはどこまで行ったの会議を行います!イェー!」

>陽介は盛り上がり、完二は申し訳なさそうにしている。

陽介「ちなみに別室では女性陣による同様の会議が行われています」

有里「千枝はあんまり苛めないでやってね」

陽介「はぁーその感じ、そのさり気なく気遣いを見せる感じ?俺のだから、みたいなオーラ出しちゃってまぁ」

有里「……仕方ない。どうも離してもらえなさそうだし、何でも答えるよ」

陽介「よし。それじゃこれを付けてもらう」

>血圧計のような物を手首に巻きつけられる。

有里「これは……?」

陽介「これはアレだ。直斗特製嘘発見器だ」

有里「えらい念の入れようだね」

陽介「おおよ。いつものノリでケムにまかれちゃ困るんでな!洗いざらい吐いてもらうぜ」

>……。

陽介「……前によ、ちらっと言ってただろ。美鶴さんとどうとか」

有里「うん、そうだね」

完二「だから、誰っスか」

陽介「お前、向こうの寮のお姉さま方とはどうなんだよ」

有里「何も無いよ」

>ピーッ、ピーッ!

陽介「鳴ってんぞ」

有里「いや、本当に何も無いんだってば。これ、調子悪いのかも……」

完二「あー、でもあの、山岸さん?とか。普通じゃないリアクションっしたよね」

陽介「だよな。絶対何かあったと思うんだよ。正直に言え?」

有里「……えーと。全員に好きだって言われて、大抵黙ってこう、抱き締めて……」

陽介「あるんじゃねーか!!」

完二「全員って、花村先輩。向こうに女の人って何人くらい……」

陽介「知る限りじゃ、アイギスさん含めて四人だな」

有里「あ、アイギスには好きだって言われてないね」

陽介「で、抱き締めて……それからどうしたんだよ」

有里「いや、特に何も。ありがとう、とは言った覚えがあるけど……それ以降特別な事は無いね」

陽介「つまり、友達以上恋人未満な関係って事か」

有里「そうとも言う」

完二「……四人だけ、なんスかね」

陽介「そーだよ!どうなんだ!寮に四人……アイギスさん抜いて三人?で、他に女はいなかったのか!」

有里「いない、いない」

>ピーッ、ピーッ!

陽介「むちゃくちゃ鳴ってんじゃねーか!」

有里「……ほんとの所を言うと、それにプラス何人か……下級生とか、同級生とか、先生とか?」

陽介「……もう、いいや。次」

>……。

陽介「まぁ、本式に俺達が気になってんのはこっからなんだよ。結局、里中と今どうなってんだよ」

完二「そうっスよ。さっきの質問って大半俺知らねェ人なんスけど」

有里「どうって言われてもなぁ……」

陽介「じゃあ、段階で聞いてくぞ。全部いいえで答えろよ。嘘吐いたら鳴るからな」

完二「お、らしくなってきたっスね」

有里「仕方ない、どうぞ」

陽介「まずだな。あん時聞いてたんだけど、お前、里中に愛してるとか言ってたよな。あれ、本心?」

有里「いいえ」

>ピーッ、ピーッ!

陽介「……このくらいは予想の範疇だな。次。里中とは結局つ、付き合う事にしたの?」

有里「いいえ」

>ピーッ、ピーッ!

完二「うぉ、マジっスか。おめでとうございやっス」

陽介「……そんじゃ次。里中とはもう手繋いだ?」

完二「なんスかその質問。子供じゃあるまいし……」

有里「いいえ」

>ピーッ、ピーッ!

陽介「じゃあ、き、キスは!?もうしたのか!?」

有里「……いいえ」

>ピーッ、ピーッ!

陽介「う、ぉお……」

完二「先輩、もうそろそろ……なんか先輩見てるこっちが辛いっスよ……」

陽介「うるへぇ!……実はな、俺が今日こうやって強行手段に出たのはワケがあんだよ」

完二「なんスか、ワケって」

陽介「この前ジュネスに来てた菜々子ちゃんから聞いたんだよ……里中のヤツ、こいつん家に泊まったらしいんだよ……」

完二「!!」

有里「いや、あれは……」

>ピーッ、ピーッ!

完二「うぉおお、鳴ってる!言い訳しようとしたらめちゃくちゃ鳴ってんじゃねェか!」

陽介「これが最後の質問だ。いいえだぞ、わかってんな?……里中とは、その、エ……セ……お、お泊りした時になにかあったんでしょうか」

完二「うわぁ、なんか情けねェ」

有里「あー、その。えっと……いいえ」

>ピーッ、ピーッ!

陽介「……どうだったんだよ」

有里「え?」

陽介「どうだったんだよ!教えろよ!詳しく!どうやって誘ったんだよ!」

完二「こ、コラ!取り乱しすぎたっつの!落ち着けって!」

陽介「おち、落ち着いていられるかこれが!」

有里「いや、まずこれ音止まらないんだけど」

陽介「あ!?」

完二「あ、ほんとっスね。……調子悪いみたいっスわ」

有里「何も無かったって。ただ勉強教えてって言われて、遅くまで付き合っただけ。寝る時は菜々子の部屋だったし、堂島さんもいたし。何もしてないよ」

陽介「……鳴り止んだな」

完二「ほら、なんも無かったんスよ」

有里「これでも健全な関係で行きたいと思ってるからね」

陽介「……悪かったな、有里。変な疑いかけちまってよ。そうだよな!俺達友達だもんな!何も言わずに先に行ったりしないよな!」

完二「先にってなんスか……」

有里「陽介に断るかどうかはわからないけど、今の所は清い関係だよ」

>ピーッ、ピーッ!

陽介「鳴ったあああああ!」

完二「うるせっ、ちっとだぁってろ!」

有里「とりあえず、これ解いてくれない?」

完二「あー、すんませんね。今解くんで」

有里「あとこれも外しといた方が良さそうだね。錯乱しちゃうし」

完二「そっスね……」

陽介「お前はいいよなぁ!こっちじゃ里中はともかく天城やりせちーにまでチヤホヤされてさぁ!向こうじゃ皆がお前大好きでさぁ!」

完二「……そういや、直斗がりせに相談してるの聞いちまったんスけど。有里先輩、直斗に何か言ったんスか?」

有里「ん?何が?」

完二「いや、服がどうとか」

有里「あー……言った」

完二「そこんとこ詳しく教えてくれやしやせんかね……」

陽介「美鶴さんにゆかりさんに風花さんに美奈子ちゃんに……不公平だろうが……」

有里「別に今は……え?」

完二「どうかしたんスか」

有里「陽介、今誰って言った?」

陽介「あ?美鶴さんにゆかりさんに風花さんに……」

有里「その後!」

陽介「み、美奈子ちゃんだよ。どうしたんだよ、そんなマジな顔して……」

有里「……!」

>急いで携帯を取り出して、悠に連絡を入れる。
>数回コールが鳴って、悠の声がした。

鳴上『湊か』

有里「ああ、悠、大変なんだ。みんなの記憶が……」

鳴上『……こっちもだ。ていうか、多分原因は……』

『湊ー?湊元気でやってるって?』

有里「その声……」

鳴上『良くわからないんだが……美奈子、帰ってきてるぞ』



【2012/6/17(日) 巌戸台分寮】


>事件が終わってからこっち、どうにも朝に弱くて困る。
>気が抜けたんだろう。
>急転直下で日常に戻された今、どうにも体も心も揺るんでしまっている。

鳴上「……昼前か。また桐条さんか岳羽さんに怒られる……っしょ、と」

>進路も大まかにだが決まり、もう気合いを入れるようなことも無い。
>仕方ない、と誰にでもなく言い訳する。

鳴上「あ、夏休み……来月末には八十稲羽行けるんだよな。桐条さん達、本気で行きたいって思ってるなら相談しといた方がいいか」

>湊たちもいる事だし、誰かはまた一緒に行く事になるかもしれない。

鳴上「風花さんにも話しておかないと……」

>コッ。

鳴上「くそ、まだ眠い……なんてたるんだ生活だ……」

>コッ。

鳴上「ん?」

>コッ。
>窓に何かが当たっている。
>小石……?

鳴上「誰だ、こんな悪戯……順平さんか?」

>窓から外を見てみる……。

美奈子「おーい、おーい。っかしーな、気付いてないのかな」

鳴上「なんだ、美奈子か。……美奈子だって!?」

>だって、美奈子はあの時……

美奈子「あ、こっち見た。ていうか聞こえてんでしょ実は。ちょっと助けて欲しいのー。ねー悠ー」

>とりあえず、降りよう。

鳴上「美奈子、何でお前……」

>やはり、美奈子で間違いなかった。
>湊の話では、あの時湊の代わりに消えたはずの……。

美奈子「うん、なんていうか……私も運が良かったみたい。助けてくれた人がいるの。多分、悠とか湊の知ってる人……の、関係者。まぁ、その事についてはあんま聞かないで。泣きそうになるから」

>美奈子はそういって少し切なそうに笑った。

鳴上「そうか……で、何で助けて欲しいんだ」

美奈子「うん、私さ、しばらくいなかったじゃない。その間に寮がどうなってるかわかんなかったから」

鳴上「ああ、そのことか。あの後……」

>あの後、一度全員で集まって今後について話した。
>一応は事件は終わったが、これからどうするか。
>本来事件解決の為に使われているこの寮は、再び閉鎖するはずだったのだが……。

鳴上「桐条さんが、何度も手続きさせるのも忍びないし、問題なければ皆今年一年は住んでていい事になったんだよ。で、結局誰も出て行かなかった」

美奈子「そっか。皆らしいね。それじゃ、皆いるんだ……」

鳴上「どうした、会いたくないのか?」

美奈子「んー、ていうか……怒られたりしないかな」

鳴上「それなんだが……皆、お前に関する記憶をなくしてるみたいだ。あの事件は俺と湊が解決したと思い込んでる」

美奈子「ああ、やっぱり……そうなんだ」

>美奈子が本当に知りたかったのはこれなのかも知れない。
>帰ってきても皆は自分の事を知らない。
>それはどんな気分なんだろう。

美奈子「うん、じゃあ……私、どうしよっかな。湊の所でも……って、そのお金も持ってないし。あはは、変なの。帰ってきてからの方が悩むなんて」

>美奈子は今にも泣き出しそうな顔をしている。

順平「おい、鳴上。何慌てて……」

鳴上「あ、順平さん」

>順平さんが俺が慌てて階段を降りたのに気付いて出てきたようだ。
>まず俺を見て、それから美奈子を見た。

鳴上「あ、あのっ、こいつは……ええと、俺の……」

>急過ぎて、何も良い言い訳が出てこない。

順平「おいおいおい!今までどこ行ってたんだよ。ちょっと待ってろ、皆に知らせてくっから!」

>順平さんは寮の中へ戻っていった。

美奈子「えっと、あれ?」

鳴上「変だな、確かに皆……とにかく、中へ行こう」

>少し尻込みする美奈子の手を引いて、玄関を開ける。

美鶴「美奈子が帰って来たというのは本当か、鳴上」

真田「何だ、人騒がせな。帰って来たならそう言えばいいものを」

岳羽「ほんっと、心配させるんだから……」

天田「でも、帰って来てくれて良かったじゃないですか」

アイギス「本当に。お帰りなさい、美奈子さん」

風花「良かった、居なくなった時はどうしたのかと……」

鳴上「あ、あれ?皆、美奈子の事覚えて……」

美鶴「少し居なくなったくらいで忘れるわけが無いだろう?失礼な事を言うものだな」

美奈子「えっと、その……」

鳴上「……どうも、思い出してくれたみたいだな。お帰り、美奈子」

>美奈子は笑った。

美奈子「あはは、恥ずかしながら、有里美奈子……帰って参りました」

>……誰だか知らないが、美奈子を助けてくれた人には感謝しなければならない。
>ようやく、欠けていた物が揃った気分だ。

鳴上「また、騒がしくなりそうだな」

>皆に飛びついて抱きついて回る美奈子を見ながら、そう思った。

2012/6/17現在の状況

鳴上
『No.00 愚者 特別課外活動部』ランク4
『No.01 魔術師 伊織順平』ランク3
『No.02 女教皇 山岸風花』ランク5
『No.03 女帝 桐条美鶴』ランク5
『No.04 皇帝 真田明彦』ランク3
『No.05 法王 天田乾』ランク3
『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』ランク4
『No.07 戦車 アイギス』ランク4
『No.08 正義 コロマル』ランク4
『No.09 隠者 エリザベス』ランク3
『No.13 死神 有里湊』ランク4

有里
『No.10 運命 鳴上悠』ランク4
『No.11 剛毅 里中千枝』ランク5
『No.12 刑死者 堂島遼太郎』ランク4
『No.14 節制 巽完二』ランク4
『No.15 悪魔 マーガレット』ランク3
『No.16 塔 白鐘直斗』ランク3
『No.17 星 久慈川りせ』ランク3
『No.18 月 天城雪子』ランク4
『No.19 太陽 花村陽介』ランク5
『No.20 審判 自称特別捜査隊』ランク3

鳴上、風花と???
有里、千枝と???

Next→期末テストと夏休みと修羅場

まぁ、誰とは言いませんが、助けてくれたようです。
詳細は美奈子のみが知る。
皆揃ってなきゃね。

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。


美奈子帰ってきたのか・・・

今日からなるべく影時間更新を心がけようと思います。
せっかくなんで。

というわけで本日分。



【2012/7/16(月) 晴れ 天城屋旅館】


>あの事件から二ヶ月が経とうとしている。
>美奈子も戻り、僕達にはいつもの日常が帰って来ていた。
>季節は夏に入り、今日も燦々と照り付ける太陽から逃げるように天城さんの部屋で勉強会が行われている。

陽介「あっぢぃ……あっぢぃ……」

千枝「っるさいなぁ……暑いって言うから余計暑いんでしょー……」

雪子「ごめんね、エアコン調子悪くて……」

>……日差しは避けても、扇風機のみで凌げる暑さでは無いようだ。

陽介「有里は涼しい顔してんな……」

有里「やせ我慢は得意だからね。生命力ゼロで二ヶ月過ごしたくらいだし」

陽介「良くわかんねぇけどすげえな。つーか、お前は勉強しねえのかよ」

千枝「有里君は頭良いでしょ、私らと違って……あっつー……」

>期末試験まで後一週間。
>受験組の三年は、一月も前から連日勉強会を行っているのだが……

陽介「全然進歩してねぇ気がする」

千枝「すっごい悔しいけど同感。これ、大丈夫なのかな……」

>元より成績の良い天城さんを除いて、彼等は成果が見えていないらしい。

有里「それを確かめる為にテストがあるんじゃないの?」

陽介「それよ。何で夏休み前にテストがあんだよ……一学期終わったー!っつってはしゃげねえんだよ、それで……」

雪子「うーん、千枝もテスト嫌なの?」

千枝「嫌ってわけじゃないんだけどねぇ。別に何かご褒美あるわけで無し、こう、手応えというか、やり甲斐みたいなのは欲しいよね」

陽介「里中良いこと言うね!それよ、それ。やり甲斐!やったら良い事あるとかさ!そりゃ、進学とか就職とか色々あるけど、手近に実感できるもんがねーんだよな」

雪子「もう、二人してそんな事言って……」

>このままでは二人の進路に支障が出かねない。
>ここは一つ、奮起してもらうしかないだろう。

有里「ご褒美というか、ゲーム性を持たせてみたら二人もやる気が出るかもしれないね。というわけでちょっと失礼」

>りせに電話しておこう。



【2012/7/17(火) 晴れ 八十神高校】


陽介「男女対抗?」

千枝「点数対決?」

有里「そう」

>昨日の内にりせに電話して決めておいた。
>りせもテストの点が良い方では無かったが……

有里「男女に別れて、合計点で勝負って事で、二年生組にはりせから報告が行ってると思うよ」

雪子「へぇー、面白そうだね」

千枝「ちょ、ちょっと待って。対決って事は、負けたら何かあるって事?」

有里「りせと相談して決めたんだけど……勝った側は負けた側を、一日自由に出来る権利を与える、っていうのでどうかなと」

千枝「無理無理!自信無いって!」

>千枝はぶんぶん首を振った。
>どうやらこの試合の要点に気付いていないらしい。

陽介「なんだそれアツイじゃねえか!あれ?でも待てよ……男女対抗って事は、俺と、有里と、完二だろ?」

有里「そうだね」

>動転している千枝より先に陽介が気付いたか。
>りせが自信の無い点数勝負を受けたのはそこに理由がある。

陽介「そりゃ、俺も完二も勉強できる方じゃねえからチーム戦は有難いけどよ。女子の方が一人多いぜ?」

雪子「あ、ほんとだね。私、千枝、直斗君、りせちゃん。四対三になっちゃうよ?」

有里「そのハンデを踏まえた上で勝負を挑んでるんだ。千枝とりせが自信無くても直斗と天城さんはいつも良い点だろ?」

千枝「そっか、最悪私達が駄目でもそれで……」

陽介「勝ち目薄すぎじゃねえか!なんでそんな条件で勝負しなきゃなんねんだよ!」

>陽介は憤慨しているが、その目の奥にちらりと欲が見えたのを見逃すつもりは無い。

有里「陽介。好きに出来るんだ。わかるかな。天城さんも里中さんも、アイドルのりせも直斗も自由。自由に、指示を出せるんだよ」

陽介「そ、そりゃ……勝ちゃぁよ……」

有里「その果実を前にして、多少の障害で手を伸ばすのをやめる?そうじゃないだろう。男なら」

陽介「男なら……」

有里「やるしか、無いだろ」

陽介「有里……!」

>釣れた。

千枝「でもなぁ……もし負けたら花村に何させられるかわかんないし、私はちょっと……」

有里「大丈夫だよ。こっちが勝っても変な事はさせないから。信じて?」

千枝「まぁ……有里君がそう言うなら……」

>もういっちょ釣れた。

有里「さて、これで全員だね」

雪子「二年生の皆は参加決定なの?」

有里「直斗と完二は嫌がるだろうけど、直斗はりせに押されて押し切られるだろうし、完二は……直斗が参加すれば参加するだろうし。全員だよ」

雪子「しっかり織り込み済みなんだね……」

有里「まぁね。さ、これでちょっとはやる気出たでしょ?今日から勉強会も男女に別れてやろう。陽介と完二は僕が面倒見るから、千枝とりせは直斗と二人でお願い」

雪子「ん、わかった。ふふ、楽しみだね」

陽介「燃えて来たぜ!うおっしゃああああ!」

千枝「花村、暑苦しすぎ……」

>こうして、僕達の戦いが始まった。



【2012/7/17(火) 晴れ 月光館学園】


男子「やって参りました、夏休み前に我々を脅かす最恐のイベント」

美奈子「期末テストです……!」

>美奈子まで、おどろおどろしく迫ってくる。

鳴上「いや、俺が見た限りじゃ美奈子は……」

美奈子「あんまり好きじゃないんだよねぇ、テスト。数字に出ちゃうのはどうも」

男子「わかるぜ美奈子ちゃん。俺達人間だもんな。数字で価値決められちゃ困るぜ」

鳴上「お前が嫌なのは単に勉強が嫌いだからだろ」

男子「まぁ、そうなんだけど」

美奈子「おっくーだなー……でも一応は勉強しないとねぇ」

>美奈子は暑さも手伝ってか、えらくくったりしている。

男子「そーだ、美奈子ちゃん。俺がテストの点数で美奈子ちゃんに勝ったら何かご褒美ちょーだいよ」

美奈子「えー?そういう事言っちゃう?」

鳴上「はは、それいいな。チューでもしてやれよ」

美奈子「あ、悠まで。じゃあ私が悠に買ったら悠がちゅーしてよね」

鳴上「ん?誰に?」

美奈子「私ー」

>両手を広げてアピールしてくる美奈子を無視した。

鳴上「テストの時くらい真面目に勉強してもいいじゃないか」

男子「わかってますー。優等生は言う事が違うから……」

美奈子「あ、ひどい。無視だ。……そういえば、ご褒美か」

>美奈子が何かに気付いたような顔をした。
>直後、にやりと口をゆがめる。

美奈子「悠と私は、もうちょっと面白いことになるかもね。とりあえず帰ろうよ。帰って美鶴先輩に相談しないと」

>……?
>まぁ、任せてみよう。



【巌戸台分寮】


美奈子「みっつるせーんぱい!お話があるんですよー」

美鶴「なんだ、美奈子に……鳴上まで。どうかしたのか?」

鳴上「いや、俺は別に用は……話があるのはこっちです」

美奈子「へへへー、美鶴先輩!私達今度テストあるんですよ!」

>桐条さんはきょとんとした後、合点がいったようで微笑んだ。

美鶴「……なるほど。いいだろう。条件を言ってみなさい。それによっては、ご褒美も考えよう」

鳴上「え、いいんですか?」

美鶴「私の在学中にやっていたんだ。当時、探索もこなして学業もこなす湊を少しでも労ってやろうと思ってな。美奈子もそれを知っていたんだろう」

美奈子「そういうわけです。そーだなー……やっぱり、目標が高い方が良い物もらえるんですよね?」

美鶴「それはそうだな。例えば、学年一位……君達は最上級生だから、事実上の学園一位だが、そのくらいすれば何でも好きな物を聞いてあげよう」

>たかがテストに凄く派手なおまけがついてきた。

美奈子「それじゃあ、すっごく難しい事達成したらどうなりますか?」

美鶴「ん?そうだな……物に限らず、なんだってしてやろう。対価として見合うならな」

>美奈子が不敵に笑った。

美奈子「じゃあ、私と悠で一位取ります!」

美鶴「何?男女別の順位では無いぞ?」

美奈子「わかってますよー」

鳴上「な、おい」

>流石にそれは無理ではないだろうか。

美鶴「ほう、それは凄いな。一位を取るだけならまだしも、二人でとなると点数も揃える事になる。それこそ満点でも取らない限り難しいと思うが、いいのか?」

美奈子「構わないです!だから、もし出来たらそれなりに言う事聞いてもらいますからね!」

美鶴「いい度胸だ。鳴上もそれでいいのか?」

鳴上「いや、俺は別に……」

美奈子「悠、ちょっと」

>何か耳打ちをされる……。
>……?
>……!

鳴上「俺もそれで構いません。是非お願いします」

美鶴「良いやる気だ。こちらも提供し甲斐があるというものだな。まぁ、頑張るといい。万が一にも達成出来たら、何でも聞いてみせよう」

鳴上「だ、そうだ。早速勉強に入ろう。美奈子、後で部屋に来てくれ」

美奈子「おっけー!美鶴先輩!約束ですからね!」

>なんとしても満点を取ろう。
>……なんとしても、だ!



【2012/7/18(水) 晴れ 八十神高校】


千枝「うそ……花村が休み時間に勉強してる……」

有里「ここの助動詞ちゃんと覚えといて」

陽介「おう……ここんとこさ、綴り合ってる?」

有里「あー、Fだね」

陽介「くっそ、また間違えちまった……」

雪子「聞こえてないみたいだね……」

千枝「わ、私も勉強しよっと」

>どうやら目論見通りに事が進んでいるようだ。

雪子「二人共やる気になったみたいで良かったね」

有里「うん、これならなんとかなるでしょ」

>このまま続くといいが……。


【2012/7/20(金) 陽介の部屋】


陽介「んだよ、これ!わかんねえって!」

完二「うるせェな、気が散んだろうが!」

有里「完二の言うとおりだよ、落ち着いてやれば出来るはずだから」

>今日は男子組が集まっての勉強会だ。

陽介「あー辛い……ていうか完二までマジになってんのかよ」

完二「……まぁ、テスト前くらい勉強するモンだろうが」

有里「直斗も受けてくれたしね」

完二「ばっ、何言って……んなんじゃねえって!」

陽介「あーなるほどな。そりゃ本気になるわ。悪かったな、からかってよ。俺も頑張るから、絶対勝とうぜ!」

完二「先輩……!」

>……うーん。
>予想はしていたが、完二はともかく陽介のモチベーションが下がりがちだ。
>自分が提案したとはいえ、やるからには勝ちたい……。

有里「これじゃ華が無いし、そうだな……陽介はともかく、完二は直斗に任せた方が伸びも良さそうだ」

>やっぱり、そうするとしようか。



【2012/7/22(日) 晴れ 天城屋旅館】


陽介「で、結局合同になるんだな」

りせ「今日で最後だし、最終調整は堂々といかなきゃね!」

>結局、全員で集まっての勉強会になった。

陽介「でもよー、こう暑いとどうもやる気がなー」

有里「陽介、昨日も言ってたよね……完二を見てみなよ」

完二「でよ、ここんとこがわかんねえんだけど……」

直斗「ああ、そこはこっちです。この公式が対応してるので、数を入れ替えてみてください」

>完二と直斗は仲良く勉強している。

陽介「ありゃお前、暑さよりもっと熱い何かが勝ってんだよ。俺はそういうの無いしー」

千枝「ばっかじゃないの、真面目にやんないと知らないよ?」

雪子「千枝もちゃんとやる。さっきからずっとパタパタしてるだけで進んでないよ?」

千枝「……いや、こう暑いとさ」

りせ「有里せんぱーい、ここわかんなーい」

有里「はいはい、ちょっと待ってね」

陽介「あ!てめー敵に塩送るような真似しやがって!」

有里「みんなの成績が上がる事が一番だよ。その上で報酬があった方がやる気出るでしょ?」

陽介「まーそうだけどよ……」

有里「陽介、ちょっとモチベーション落ちてきてる?」

陽介「正直、ちょっとな……」

>やっぱりか。
>だけど、こうなる事を見越してわざわざ合同勉強会にしたんだ。

有里「陽介、良く聞いて。僕が教えてる間、りせの事を良く見ててね」

陽介「あん?そりゃいいけど、何かあんのかよ」

有里「すぐわかるよ」

>りせの隣に移動し、参考書をめくる。

りせ「私化学嫌ーい……どうせ将来使わないですよお」

有里「まぁまぁ、そう言わずに……」

>陽介は対面からしっかりこっちを見ている。
>よし、そのまま……

有里「ほら、ここに書いてある式が使えるから。それでやってみて」

りせ「あーん、ややこしい……暑いしもーやだー」

>今だ!
>陽介、見ているか?
>気付けたか?

有里「……」

>陽介の顔が輝いている。
>気付いたようだ。

有里「そう、それでいいから。同じやり方でやっていって。僕は陽介も教えないといけないから」

りせ「はーい、また教えてね」

>言いながら、りせは胸元をパタパタと扇いでいる。
>陽介のそばに戻った。

陽介「有里……お前が言いたかった事って」

有里「わかったみたいだね。夏は、そういう事もあるのさ」

>これだけ暑ければ薄着になる。
>そして、今日のりせは胸元がゆるい。
>前のめりになって文字を書く以上、場合によっては「見え」るのだ。

陽介「うおお、燃えてきた!」

有里「それだけじゃない。見てごらん。天城さんを」

>陽介の視線を天城さんに向ける。

陽介「確かに、天城も今日は薄着だな」

有里「うん。見てみなよ、脚を」

>今日は流石に暑いのか、いつもその白い肌を包んでいる黒のタイツを履いていない。

陽介「いつもと違うな……これもいい!」

有里「しかも、よく見てるとわかるんだけど……今日はスカートじゃないからか、いつもより少し油断してるんだよね」

>今日はハーフパンツだ。
>本来なら、それはチャンスの喪失を意味するのだが……今日は違う。
>ムレるのか、何度も脚を組みなおしている。
>その度に、裾の奥が見えそうで……

陽介「すげえ、桃源郷かここは……」

有里「さらに直斗はどうだ」

陽介「いつも通りだろ、流石にこれじゃ驚く事もねーんじゃねえの?」

有里「そうだね、一見涼しげですらある。だけど、夏に暑くない人間なんていないんだよ。見てごらん」

>一見すると汗一つ無いようだが、肌はしっとりと水気を帯びている。
>そして、そのせいでいつものワイシャツがほんの少しだけ透けている。

陽介「こ、これは……どうなんだ、これ。何か下手に見えてるよりむしろ……」

有里「そういう物なんだよ、人間っていうのはね」

陽介「も、もしかして里中も……」

有里「あ、それはいいから。とにかく、今の季節がどれだけすばらしいかわかっただろ?」

陽介「ん?お、おう。ばっちしだぜ。で、それがどうしたんだよ」

有里「もし勝負に勝てれば、これどころじゃない事が出来るんだよ」

陽介「……これどころじゃない事、だと?」

有里「だって、彼女達に何を命令してもいいんだよ?考えてみなよ、自分ならどう使うか」

>……千枝は、見せたくない。
>どういうつもりか、単に自覚が無いのか、千枝は見れば見るほどはしたないことになっている。
>汗でくっついたTシャツに下着の線は透けてるし、襟をつまんでばさばさやるもんだからかなり際どい所まで見えてしまっている。
>火照った顔と、汗でくっついた前髪がまた……

有里「……おっと、僕が没頭してどうする。しかし、アレは良くないな」

>陽介は再び火がついたようだ。
>もくもくと問題集に向かっている。

有里「あー、天城さん。ちょっと」

雪子「はい、どうしたの?」

有里「あの、僕から言うのもなんだから伝えて欲しいんだけど。千枝に、その……胸と、あと肩と……」

雪子「え?……あ、ほんとだ。もう、千枝ったら」

>天城さんは苦笑いしながら千枝に耳打ちした。

千枝「ほぇ?……!!」

>がばっと、自分の体を抱くように隠す千枝。
>逆効果だって。それ、どう考えても不審だから。
>暑さで赤くなった顔が余計に真っ赤になる。

陽介「おい、有里!これ教えてくれ!物理!」

有里「ああ、はいはい。ええと、どこだって?」

>明日から、期末テストだ。

これからしばらくはこんな感じ。
しょーもない毎日、大切な毎日。
八十稲羽男子の運命は!
美鶴はあの二人を敵に回して勝利できると思っているのか!

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。


ところで、このスレ内で終わりそうに無いんですけどコテ付けた方がいいのかな。
スレ変わるギリギリくらいでコテ搭載します、多分。

乙!

乙!
オレもこんな環境だったら勉強したのに・・・

青春っていいなぁ( ´A`)

乙!毎日楽しみにしてる

今からちょっと八十稲羽いってくるわ^^

>>1は折角だからコテをつけていくといいよ…

こんな環境だったら俺は先週のテストで惨敗しなくて済んだのに…

あ、>>1

テスト勉強なんか生まれてこの方やったことないです。

と言うわけで本日分。



【2012/7/23(月) 晴れ 八十神高校・期末テスト一日目】


>今日から期末テストだというのに、まだ陽介は登校していない。

千枝「そろそろ時間だよ」

雪子「花村君、大丈夫かな……徹夜して勉強して、そのまま遅刻とか……」

>陽介なら有り得る……。
>いくらなんでも二人の人数差を埋める事は不可能に近い。
>このままでは……

陽介「……よう」

有里「おはよう、陽介。ギリギリだ……ね……?」

>陽介の目の下には濃いクマが出来ている。

千枝「うっわ、花村アンタどうしたのその顔!」

陽介「……ためよ」

雪子「え?」

陽介「全ては、勝つ為よ……!楽園の為なら睡眠の九時間や十時間、削ってみせるぜ!」

>悲惨な様相の陽介だが、その姿からは間違いなく漢を感じる。

千枝「っていうか九時間十時間って、あんた普段どんだけ寝てんの……」

陽介「うるせぇ。その俺が一睡もしなかった意味を考えるんだな。里中、お前にゃとびっきり恥ずかしい目にあってもらうぜ……」

>いつもと違い、静かに言い放つ陽介。
>だが、かえって不気味な説得力と迫力がある。

千枝「う、あんな事言ってる。有里君……」

>千枝がすがるようにこっちを見ている。

雪子「勝てば問題無いよ。ね?」

>天城さんが千枝を励ましてくれた。
>すまない、千枝。
>もうこれからは勝負なんだ。
>陽介の気迫に応えなければならない。
>こうして、期末テストが始まった。



【2012/7/24(火) 晴れ 月光館学園・期末テスト二日目】


>テストも二日目に入った。
>だが、俺のペンは止まらない。
>どんな問題も今の俺の前では無力だ。
>一通り終わらせた後、もう一周解き直す。
>かつ、誤差のあった問題を再度検証する。
>無敵だ。
>今の俺は無敵だ。
>本来短いはずの一教科の時間が有り余って感じられる。
>ちらりと様子を伺うと、美奈子も同様に鬼気迫る勢いで問題を解いている。
>いける。
>これはいけるぞ。
>とにかくミスを無くす事だ。
>ケアレスミスが死に直結すると思え。
>……勝てる。
>いや、勝つ!
>余った時間で、出来る所までチェックを行おう。

【2012/7/26(木) 晴れ 八十神高校・期末テスト終了】


>四日間の期末テスト、その全工程が終了した。
>……恐らく、四日間不眠不休で戦った陽介の顔色は、最早すさまじい程だ。

陽介「……有里。俺、やったよな。戦ったよな」

有里「ああ。陽介は立派にやったよ。僕が誇りに思うくらいに……」

陽介「……少し、疲れたよ。寝る。ありがとな、ありさ……と……」

>陽介は机の上に崩れ落ちた。

千枝「終わったー……かつてない程勉強したしある程度上がってくれないと困るなー」

雪子「真面目にやってたもんね、千枝。大丈夫、きっと良い点取れるよ」

有里「お疲れ様。結果発表っていつだっけ?」

雪子「来週の頭かな。それが終わったら完璧に夏休みだね」

有里「夏休みか……夏期講習とかあるんだっけ」

雪子「成績次第じゃ補習もあるよ」

有里「ん、てことは明日で一学期の授業終わり?」

雪子「そうだよ」

>夏休みか。
>そういえば、向こうはどうなっているのだろう。

有里「悠、いつ頃来れるのかな」

千枝「そっか、夏休みには来るって言ってたもんね。どのくらいの間いるんだろう」

有里「聞いておこうか。……帰り際、私達も行くーって言ってた人たちがいたね、そういえば」

千枝「ああ、そういえば……向こうの皆も来るのかな」

>……もし来たら、どうなるだろう。
>少なくとも、休む事は出来なさそうな気がする。

有里「……楽しみだね、色々」

千枝「そうだねー」

雪子「そういえば、海行くのかな、結局」

>今日の所は帰って休もう。
>流石に少し疲れた……。

陽介「俺は……やったぜ……相棒……」



【2012/7/26(木) 晴れ 月光館学園・期末テスト終了】


男子「終わったー!そして終わったー……」

>どうやら手応えが今一つだったらしい。
>しかし、今そんな事はどうでもいい。

鳴上「美奈子」

美奈子「悠」

>お互いの目を見る。
>その奥には確信があった。

鳴上「フッ」

美奈子「ふふっ」

>ピシガシグッグッ。

男子「まった古いネタやってんな、お前ら……」

鳴上「よし、後は結果発表を待つだけだ。帰ろう」

美奈子「そだね。帰ろっか」

男子「よー、二人共これからカラオケいかね?打ち上げ打ち上げ」

鳴上「いいな。騒ぐか」

美奈子「いいねー、思い切り歌っちゃおう!」

>後は、結果を見るだけだ。


【2012/7/28(土) 曇り 商店街】


>今日は一人で商店街だ。
>というのも、今朝マーガレットから連絡があり……頼みがあるから聞いてくれと言われたからだ。

マーガレット「ちゃんと来てくれたのね。待ってたわ」

有里「まぁ、マーガレットからお呼びがかかっちゃね。で、どうしたの?」

マーガレット「貴方……昔、妹から色んな依頼を受けてたのよね?」

有里「うん、それはもう色々と」

マーガレット「そんな貴方にお願いがあるのよ。実は、あるモノが欲しいのだけど……私、調達に出るわけにいかないでしょ?」

有里「ああ、そういうことね……」

>なんだか懐かしくもある。

有里「いいさ、引き受けよう。それで、何が欲しいの?」

マーガレット「ありがとう。ただ、名前もわからないのよ」

有里「またそういう難題を……どういうモノかはわかるんでしょ?」

マーガレット「そうね……洋服なのだけれど、白と、黒で……そう……例えて言えばブリリアントな感じの」

有里「……うん、全然わからない。じゃあそれらしい服を見つけたら持ってくるよ。それでいいんでしょ?」

マーガレット「ごめんなさいね、お願いするわ」

有里「慣れてるからね。……あれ、あれは……」

>向こうから千枝とりせが歩いてくる。
>珍しい組み合わせだな……。

マーガレット「お友達?」

有里「まぁね」

マーガレット「ふぅん……」

>マーガレットが目を細めた。

マーガレット「可愛らしい子達ね」

有里「でしょ」

マーガレット「その軽口、いつもそうなの?」

有里「大体はね」

マーガレット「……ま、とにかくお願いするわね。それじゃ、また」

>マーガレットは僕の頬にキスをするとベルベットルームへ帰っていった。

有里「突然何を……ん?」

>りせが抱えていた袋を落としている。
>千枝も、ただならぬ様子でこっちを見ている。
>……見られた?

りせ「せ、せんぱい?さっきの人ってダレ?」

有里「いや、知り合いの女の人だけど……」

千枝「が、外国の人かな?キスは挨拶って言うもんね」

>まぁ、日本人ってわけでは無いだろうけど……どうなんだろう。

りせ「そ、そっか!スキンシップだよね!んもう、びっくりしちゃった!」

千枝「だよね、有里君!そうだよね?」

有里「うん、軽いノリでしたんじゃないかな」

千枝「だよねー!そうだよ、だって……うん、そうだよ!」

>りせが走ってくる。

りせ「センパイ、あんまり軽くそういう事するの良くないですよ……」

有里「いや、僕に落ち度は無いと思うけど……」

りせ「里中先輩、アレで結構嫉妬深いとこありますから……」

>千枝はまだ何かぶつぶつ言っている。

有里「……覚えとく」

>しかし、ブリリアントな服……ね。
>なんなんだろう、一体。



【2012/7/28(土) 曇り ポロニアンモール】


>朝早く、エリザベスから電話があった。
>頼みごとがあるから来てくれという話だったが……。

エリザベス「おはようございます。よく来てくださいました」

鳴上「いや、エリザベスが頼みたい事があるって言うから。一体どうしたんだ?」

エリザベス「……お客様は、以前姉の頼みを尽く達成せしめたと聞き及んでおります」

鳴上「まぁ、な。それがどうかしたのか」

エリザベス「そのようなお客様にこそお願いしたい事なのですが、あるモノを手に入れてくださいませんか」

鳴上「モノ?……いいけど、一体何なんだ?」

エリザベス「青い肉じゃがでございます」

鳴上「……は?」

>肉じゃが、なら良く知っている。
>しかし、青いとなると聞いた事も……

鳴上「あ」

>あった。

鳴上「しかし、アレは再現性のあるバグかどうかわからないんだが……」

エリザベス「以前、彼が言っていました。世にも珍しい物だと。一度、見てみたくて……」

>有里か、余計な事を……。

鳴上「作れそうな人を知ってる。今度、その人の住んでる所に行くから、トライしてもらうよ」

エリザベス「ありがとうございます。是非、お願いします」

>エリザベスは喜んでいるようだ……?

エリザベス「では、私はこれで」

鳴上「ああ……」

>エリザベスは一礼して青い扉に入った。
>今、一瞬……

鳴上「あれ、どこに……」

>いた。
>アイギスさん……だと思ったのだが、どうやら違うらしい。

鳴上「全然似てないけど、似てるな。髪は黒いし、目は赤い。アイギスさんとは何ていうか、真逆……」

>だが、何か気になる。
>人ごみに紛れてしまう前に追いかけてみよう。

「この匂いは!こ、この匂いはぁあああ!」

>……?
>聞き覚えのある声がする。

鳴上「この声……」

クマ「セーンセーイクマアアアアアア!!」

>人ごみの中から着ぐるみが飛び出してきた!

鳴上「うわっ、クマ!どうしてここに?」

>クマはなんと言うか、薄汚れている。
>そして何故か子供達に蹴られている。

鳴上「こらこら、あんまりこのクマいじめちゃ駄目だぞ」

子供「これクマなの?」

鳴上「そうらしいぞ。ほら、やめてあげよう。な?」

>子供達も悪戯はいけないとわかってくれたようだ。

クマ「う、うぅ……辛かったクマ……八十稲羽じゃ人気者なのに、この街じゃ酷い目にあったクマ……」

>クマはよろよろと立ち上がった。

鳴上「大丈夫か?というかなんでここに。テレビがどうなったかわからないから、てっきりまだ出てこられないもんだと……」

クマ「テレビの中は、ちょっとずつ直ってったクマ……で、この前ようやく出られるようになったから飛び出て来たら、どっかに飾ってあるテレビから出ちゃったクマ」

鳴上「それがこの街だったわけか」

クマ「辛かったクマ、駄目かと思ったクマ……けど、なーんか知ってる匂いするからずっと待ってたクマ。そしたら、そしたらなんと……」

>クマにタックルを喰らった。
>これも久しぶりだ。

クマ「センセイだったクマ!ありがとう、ありがとセンセイ!おかげで生きていけそうクマぁ!」

鳴上「落ち着け。……そうか、まぁ、丁度良かったよ。陽介達も心配してただろうから連絡しておこう。それから……中身だけでついてこい。また蹴られるぞ」

>さっきのアイギスさんに似た人は見失ってしまった。
>が、まずはクマを連れて帰ろう。


【巌戸台分寮】


風花「おかえりなさ……あれ、その人は?」

鳴上「ああ、ええと……クマの中身ですね」

風花「……何言ってるかちょっと」

鳴上「ええと、だから……」

クマ「クマはクマクマ」

風花「あ、ほんとにそうなんだ。え、じゃあどうしてクマ君がこっちに?」

鳴上「どうも、テレビを出たらこっちだったらしくて。それで、放っておくと色々危なそうだったんで連れて来ちゃいました」

クマ「フーカチャンとセンセイは一緒に住んでたクマか?」

鳴上「まあそうだな」

クマ「ど、どどど同棲!?センセイ大人クマー!!」

>……さて、とりあえずどうしようか。
>まず、桐条さんに相談して……そうだ、八十稲羽行きの話もしないといけない。

鳴上「風花さん、今桐条さんいますか?」

風花「あ、お部屋にいると思う」

鳴上「そうですか。ちょっと、クマの事含めて相談してきます。クマよろしくお願いします」

風花「はい、わかりました。クマ君、とりあえずその着ぐるみ、お洗濯しよっか。なんか凄く汚れてるよ?」

クマ「しゃーないクマ……いっぱいいじめられたクマ……」



【巌戸台分寮・三階】


>扉をノックする。

美鶴「誰だ?」

鳴上「あ、鳴上です。少しお話が。良いですか?」

美鶴「鳴上か。入ってくれ」

鳴上「失礼します……どうしたんですか?」

>桐条さんは這いつくばって棚の下に手を突っ込んでいる。

美鶴「いや、それが……この下に、ペンが転がっていってしまって。気に入っているから、取りたいんだが……よっ、んんっ……」

>ベネ。

鳴上「俺やりますよ」

美鶴「そうか?」

鳴上「俺の方が手長いんで……よい、しょ……あ、これかな」

>細い何かを握った。
>引っ張り出すと、やはりペンだった……が、桐条さんらしくないというか、変わったデザインのボールペンだ。

美鶴「ありがとう、助かった。……埃がついてしまったな。後で綺麗にしておかなければ……」

>本当に大事そうにそのペンを握る。
>あのペン、どこかで見た気が……。

鳴上「あ、それと同じの……湊が持ってたんだ」

>桐条さんが跳ねた。
>あまりにも驚くと、人間は跳ねるらしい。

美鶴「そ、そうか?偶然だな。……で話というのは何だ」

鳴上「あ、はい。そろそろ夏休みなんですが、俺、また八十稲羽に行こうかと思ってるんですよ」

美鶴「ん、そうか。もう止める理由も無い。行って来るといい」

鳴上「それで、なんですが。長期滞在になると思うんですが、良かったら桐条さんも一緒に行きませんか?」

>予想だにしなかった、という表情をされた。

美鶴「何故、私と?……いや、すまない。今、何かとても君を傷付けるような事を言ってしまったかもしれないが」

鳴上「多分桐条さんが思ってるような事ではなく。皆で遊びに行けたら楽しそうだなと思っただけで……」

美鶴「ああ、そういう事か」

鳴上「向こうには湊もいますしね」

美鶴「別に、彼がいようと関係無い……が、顔を見せるくらいはしてもいいかもしれないな。うん、そうか。そうだな……」

>桐条さんは一人何かを考え込んでいる。
>まぁ、詳しい日程は一学期が終わってからでいいだろう。

鳴上「あ、それからもう一つ。ちょっと拾い物をしまして……よければしばらく寮に置いてもらえないでしょうか」

美鶴「ん?それは構わんが、なんだ、犬か猫でも拾ったのか?それなら私よりコロマルの機嫌を取らないとな」

鳴上「犬猫ではないですが……クマです」

美鶴「……んん?」

鳴上「あの、Nyx封印した時の事覚えてますか?」

美鶴「あまり、思い出したくは無いがな」

鳴上「はは……あの時、妙な着ぐるみが居たんですが、知ってます?」

美鶴「……ああ!確かにいたな、原色の奇妙な……」

鳴上「アレ、俺達の仲間なんですけど、どうやらこっちに出てきちゃったらしくて。どうせ夏休みには向こうに行くんで、その時までこっちで保護できないかと」

美鶴「なんだ、そういう事か。脅かすんじゃない。いいだろう、ただし部屋が無いから君の部屋で寝泊りしてもらっていいか?」

鳴上「それでいいです。話はそれだけです。じゃあ、クマの様子を見てきます」

美鶴「ああ。……鳴上」

鳴上「はい、なんですか?」

美鶴「八十稲羽行き……日程が決まったら教えてくれ」

鳴上「わかりました。それじゃ、失礼します」

>桐条さん、どうやら相当行きたいみたいだな……。
>しっかり日程を組もう。



【2012/7/29(日) 雨 巌戸台分寮】


クマ「朝クマー起きるクマー」

>耳元でクマが五月蝿い……。

クマ「起きないとひどいことするクマー、とんでも無い事するクマー、それでも良ければ寝てるクマー」

>とんでも無い事……?

鳴上「それは困る」

クマ「あっ起きちまったクマ」

鳴上「なんだ、そのしまった!みたいな言い方」

クマ「ミナコチャンに教えてもらったとんでも無い事しようと思ってたクマ……」

>あいつ……。

鳴上「……おはよう。起こしてくれてありがとうな」

クマ「ぜんぜんクマ。おはよーさんセンセイ!」

>着替えるとしようか。


【ラウンジ】


>ラウンジには寮内の皆が集まっていた。
>なにやらわいわいと騒いでいる……。

順平「どういうとこなのよ、八十稲羽って」

風花「いい所だよ。あんまり人はいないけど、こっちには無い物がたくさんあるって感じかな」

アイギス「美味しい物もありました。それから温泉も」

岳羽「でも田舎だもんね、長い間いたら暇しちゃうかもね」

天田「有里さんもいますし、向こうの皆さん楽しい人達みたいですし……そんなことも無いんじゃないですか?」

真田「田舎も悪いもんじゃないぞ。どこでシャドーしてても警察は来ないしな」

美奈子「やーん楽しみかもー」

>……まさか。

美鶴「起きたか。おはよう。……クマだったか?君も、おはよう」

クマ「おはよークマ!皆集まってどったの?」

美鶴「ああ。鳴上を含め、皆夏休みに入るからな。折角なら鳴上の言うように『皆で』旅行でも出来たらいいなと」

鳴上「なるほど……流石に全員って事は無いですよね?」

天田「残念ながら、僕は部活です……コロマルと留守番してますよ。何か、いつかを思い出しますね」

順平「やめろって、旅行に温泉と来たら古傷が疼く……」

鳴上「そうか、天田はいけないのか……あれ、えーと。じゃあ他の人達は……」

美鶴「全員参加だそうだ」

鳴上「……天城に礼の一つでも言われるな、これは」

クマ「ユキちゃんがどしたクマ?」

鳴上「何でもない。ところで、日程がまだ決まっていないんですけど……どうしましょうか」

美鶴「そうだな、これだけ大人数だと中々な。一ヶ月丸々というわけにもいかないだろうし」

岳羽「流石に一ヶ月はねー。鳴上君は夏休み全部向こう?」

鳴上「とも思ったんですけど……ちょっと考えが変わりました」

順平「なんだよ、俺は別に一月だろうと平気だったのに」

鳴上「いや、旅館に一ヶ月だと費用が……」

美鶴「それなら気にしないでいいぞ?」

鳴上「あ、スポンサーついてたんですか。いえ、何なら向こうの連中をこっちに呼ぶのもアリかなと思いまして」

風花「それ、いいかもしれないね。じゃあとりあえず皆と相談?」

鳴上「そうですね、とりあえず。まずは一学期を滞りなく終えて、って話になりますね」

美鶴「だそうだ。旅費・宿泊費はこちら持ち、好きなだけ楽しむといい。そうだ、鳴上。向こうの仲間達にもそう言っておいてくれ」

鳴上「ええ!?いいんですか?」

美鶴「彼らだって事件解決の為働いてくれたんだろう?なら、それを労う必要がある。遠慮するな。どうせ使うなら有意義に、だ」

順平「その発想、過剰に持つ者特有のモンっすよ……」

>どうやら、夏休みも退屈せずに済みそうだ……。


【2012/7/30(月) 晴れ 月光館学園】


>学校について来たがるクマを引き剥がして、何とか登校した。
>今日はテストの結果発表の日……
>勝負の日だ。

美奈子「悠、おっそーい!ほらほら、貼られてるよ!」

>美奈子は先に出たはずだが、まだ結果は見ていないようだ。

鳴上「ああ、悪い。よし、それじゃ見ようか」

>まず前提として、美奈子が一位で無ければならない。
>出席番号の問題で、美奈子が先に来るはずだからだ。
>順位表の一番上は……



【2012/7/30(月) 晴れ 八十神高校】


>今日はテストの結果発表日だ。
>順位はこの際どうでもいいが、一応確認しておこう。

有里「……うん、よし」

>さて、後は女子陣がどうだったか……。
>……メールだ。
>終業式後、ジュネス集合。

有里「どっちが勝ったかな、と」

>とりあえず、一学期は終わりだ。
>……楽しかったな。


【ジュネス内フードコート】


陽介「おう、来たな有里、完二!」

完二「うぃーっス」

有里「あれ、僕らだけ?」

陽介「まず俺らだけで結果見ようと思ってよ。あいつらにゃ後で集まるように言っといた。……つーか、見たぜ有里」

完二「あ、俺も見たっス。有里先輩、一位だったじゃないスか!すげェっスよ!」

有里「ありがとう。まぁ、ミスしなければ何とかね」

陽介「普段だったら嫌味にしか聞こえねーけど今日ばっかりはお前が仏様みたいに見えるぜ!で、点数はどうなのよ」

有里「はい、これ」

陽介「ちょっと拝見……んだ、こりゃ」

完二「なんスか?……うわっ、なんだこりゃ!三桁しか載ってねえ!」

有里「俗に満点って言うらしい」

陽介「くっそ、俺らの頑張りが霞むぜ……」

完二「いや、でも頼もしいっスよ。チームなんスから、喜ぶとこっしょ、これ!」

陽介「お、おお!そうだな!で、どうだったんだよ完二!」

完二「俺が先っスか!……しゃあねえな、とくと見やがれィ!」

>完二は勢い良く結果通知表を出した。

有里「すごいね、90台もいくつもあるし……80以下無し、か」

陽介「おいおいやるじゃねーか完二!」

完二「へへへ、あざっス!先輩のおかげっス!」

>完二は照れているようだ。
>どちらかというと、僕ではなく直斗のおかげのような気もするが……。

有里「で、陽介は?」

陽介「あ?……ふっふっふ。お前ら、ちょっとバカにしてんだろ?どうせ大した事無いんだろうなーとか、どうせオチ担当なんだろうなーとか思ってんだろ?」

完二「なんだよ、もったいぶらずに見せてくれよ」

陽介「おら、これだぁ!」

>陽介が出した通知表には驚きの数字が書かれていた。

完二「平均点が……92!?嘘だろ、これマジで花村先輩のかよ!」

有里「すごい、良く頑張ったね」

陽介「やりゃあ出来んだよ俺だって!でもよ、これ、いけると思わねーか?」

完二「そうっスね。いつも通りなら、こんだけ取れりゃ下手すりゃ直斗にも負けねー」

陽介「こっちだって天城より上あるぜ!それにこいつだよ、満点!100以外の数字は知らない男!」

有里「まぁ、本人達が言ってた事が正しいとすれば……りせと千枝は足して一人分いくかどうか、だね」

陽介「人数なんてハンデにならねんだよ!これが……俺達の力だ!」

>陽介と完二が盛り上がっているところに、女性陣が到着した。

雪子「あれ、皆早いね」

千枝「どうせ花村の事だから、変に張り切って来たんでしょ?」

陽介「その通りだけど別にいいだろ!お前ら、結果見せ合ったんかよ」

直斗「いや、まだですよ。……テストっていうのは、こういう事する為にあるんじゃないと思いますけどね」

りせ「まぁまぁいいじゃん!その方が楽しいしさ!さて、それじゃ早速……いっちゃいますか!」

>りせは自信満々だ。
>あれは、点が良かったからなのか、それともこちらを甘く見ているのか……。
>後者なら、りせの顔はもうすぐ変わるだろう。

陽介「っしゃぁ、まず完二行け!」

完二「お、おうよ!どうだ!」

>完二が通知表を出すと、りせの顔色が変わった。

りせ「うっそ、完二でしょ!?」

直斗「……これだけ取ってくれると、少しですが教えた甲斐があったと思えますね」

完二「おう、ありがとよ。おかげで初めて見る点数だぜ」

直斗「それじゃ、次は僕が。……といっても、大した物じゃないですけど」

>直斗が通知表を広げる。

完二「相変わらず良い点だぜ……あれ?」

直斗「そうですね。負けました。巽君の方が高得点です。これじゃ、次から僕が教えてもらわないといけませんね」

>完二が複雑な表情をしている。
>あれは、勝って嬉しいと何か悪い事しちゃったな、の間くらいだろうか。

完二「で、でもよ!すげえ点だぜ。お前に教えてもらってなかったら俺も取れなかったし、良かったらこれからもちょくちょく……」

陽介「っしゃ、次誰だ!?そっちが人数多いんだからそっちから来いよな!」

>陽介は相変わらず空気を読まない。

雪子「それじゃ、次私ね。はい、こんな感じ」

>……やはり、軒並み高得点だ。
>が。

陽介「……ふっふっふっふっふ」

りせ「ヤダ、花村先輩なんか気持ち悪い……」

千枝「何か気合いが変な方向にいっちゃってるよね……」

陽介「何とでも言え!俺は今!確実な勝利の予感に打ち震えています!俺のはこれだ!」

>合計点を見ると、わずかにとは言え陽介が上回っている。

千枝「うそっ!ほんとなのこれ!」

りせ「えええええ!花村先輩がこの点……嘘だぁ!」

陽介「嘘じゃねーんだなこれが!どうだ!これが俺の本気だぜ!」

りせ「ううう……ごめんみんなー……私、こんな感じ」

>どうやら、りせは余り普段と変わらないらしい。

りせ「こ、これでもいつもよりちょっと良いんだから!勉強した分ちゃんと出てるもん!」

有里「まぁ、今回は皆頑張ってたからね。仕方ないよ」

りせ「うー、有里せんぱぁい……」

有里「で、僕はこれ」

>ぴらっと、机の上に乗せる。

雪子「……」

千枝「……いや、これは……」

直斗「……多分、生まれて初めて見ました」

りせ「……ジョーダンでしょ……」

>何故か、陽介が勝ち誇っている。

陽介「さぁどうだ。こっちにゃ有里がついてんだよ。さーて、残る一人は誰だったかなぁ?」

>千枝は何か計算している。

陽介「ほら早く出せよぉ。待ってんだぜこっちは。まぁ里中がどれだけ取れてるかしらないけど?普段の里中だったら絶対……」

千枝「あの、さ」

>千枝が通知表を出す。

千枝「勝ってるよね、これ」

>……点数は、陽介を越えていた。

陽介「……ん?」

雪子「……すごい」

完二「あ?……マジかよ」

直斗「90以下が一つもありませんね」

りせ「里中先輩、すごすぎじゃない?」

有里「……ええと」

>天城さんがあれだけで、直斗があれだけで。
>りせと、千枝を合わせて……。

有里「僕達の、負けだね」

陽介「……えっ?」

りせ「や、やった!!先輩!ハイタッチハイタッチ!」

千枝「え、あ、ハイターッチ」

直斗「驚きました。里中先輩がそんなに高得点を……」

雪子「私もびっくり。教えてる時はここまでじゃ……」

完二「いや、しゃーねーわこれは。先輩が上手だったっつーことっスね」

>陽介は放心している。

陽介「ウソ、だろ?ウソだって言ってくれよ。嘘だよな?あ、アレだろ!里中カンニングとか……」

有里「陽介」

陽介「いや、だってよ!あの里中だぜ!?」

完二「見苦しいっスよ、先輩……」

有里「良く考えたら、千枝は僕と結構前から勉強会してたし。今回は最後まで詰めてたみたいだし、成果が出たって事じゃないかな?」

直斗「なるほど、地道な努力の結果ですね」

りせ「花村先輩サイテー……」

陽介「嘘だ……ま、負け……」

千枝「有里君に色々教えてもらってたし、雪子も分かりやすく教えてくれたし……二人のお陰だね。ありがと」

雪子「違うよ、千枝が頑張ったからだよ。ね?」

有里「そうだね。真面目にやれば何とでもってことだね」

りせ「あ、勝ったって事はアレ、私達にって事ですよね!?」

有里「ああ。僕らは一日君達の奴隷だ。好きな日に使うといいよ」

完二「ちっ、仕方ねぇな……ま、腹括るっきゃねえか!」

りせ「やったあ!えへへ、何してもらっちゃおうかなー」

雪子「良かったね、千枝」

千枝「へっ?何で私?」

直斗「なるべく軽い事にしましょうよ、折角皆成績上がったんですし」

陽介「嘘だ……」

>男女対抗テスト対決は、女子組の勝利で終わった。
>何をさせられるかわからないが、受けるしかないだろう。
>……それはそれで美味しいし、良しとしよう。


【夜 堂島宅】


>……メールだ。

有里「悠からか。……何も書いてない。添付だけついてるな」

>とりあえず、展開してみよう……。

有里「……何っ!?」

>添付されていた画像は、巌戸台分寮のラウンジらしき場所で、スクール水着を着た美鶴が何故かコスプレをした女性陣にいじられまくって真っ赤になっている画像だった。

有里「……詳細モトム、返信と」

>……寝よう。



【巌戸台分寮】


美奈子「今日で一学期も終わりかー。さーて夏休み、夏休み!」

鳴上「そういえば、美奈子も行くのか?八十稲羽」

美奈子「そのつもりだけど、駄目かな?」

鳴上「いや、聞いてみただけだ。深い意味は無いよ」

美奈子「旅行って好きなんだよねー、温泉があると特に!」

鳴上「混浴じゃないけどな」

美奈子「あ、それはどうでも」

>美奈子としゃべっていると、桐条さんが降りてきた。

美鶴「おかえり。今学期は滞りなく終わったか?」

美奈子「余すところ無く!」

鳴上「おかげさまで無事に。それで、丁度お話があったんですよ」

美鶴「ふ、テストの事だろう。どうだった?」

>美奈子と顔を見合わせる。

鳴上「……どうぞ、ご覧ください」

>二人の通知表を見せる。
>笑顔で受け取った桐条さんの頬が、ひくっと動いた。

美鶴「……間違いなく、君達の成績だな?」

美奈子「間違い無しです」

鳴上「俺達の点数ですよ、それ」

美鶴「ぷっ、あははは!まさか、本当に二人共満点で一位か!ブリリアント!エクセレントだ!恐れ入ったよ」

美鶴「じゃあ、私はこれで」

美奈子「待った」

鳴上「約束は守ってくださいよ」

美鶴「……仕方ない。約束だからな。で、君達は私に何をさせたいんだ?」

美奈子「美鶴先輩にはいっぱい頭を下げてもらいます」

美鶴「……え?」



【夜】


岳羽「……で、こうなってると」

美鶴「すまない、私が軽率だった……。だが、今日だけで良いんだ。我慢してくれ」

岳羽「外に出るで無し、別にいいですよ。そんな頭下げなくても」

>寮内の女子は全員、コスプレさせられている。
>あの日、美奈子が俺に提言したのはこうだ。

美奈子『みんなにコスプレで給仕してもらいたくない?』

>……されたい。
>そして俺は本気で勉強し、今に至る。

アイギス「給仕の伝統的なファッションですか。確かに、気が引き締まるようですね」

>アイギスさんはメイド服。結構気に入っているようだ。
>元々外見がそれらしいので、酷く似合っている。
>ただ、動きが少々雑なのが難点か。

岳羽「っていうかセレクトがおかしくない?これ、何の衣装なのよ」

鳴上「イメージとしてはOLです」

岳羽「こんなミニスカのOLいないっての……恥っずいなー、もう」

>岳羽さんはミニのタイトスカートが良く似合っている。
>個人的にはベージュかブラウンのストッキングを履いて欲しかったが、生足も……アリだな。
>勿論、メガネも完備だ。

風花「たまにはこういうのも楽しいかもね。……ちょっと、恥ずかしいけど」

>風花さんはセーラー服だ。
>今でも高校生で全然通じそうだ。
>これもミニスカートで、普段余り見る事の無い脚が目につく。
>……美奈子にセレクションを任せたのだが、どうやら良い判断だったらしい。

鳴上「あれ、そういえばその美奈子と桐条さんは……」

>さっき、嫌がる桐条さんを連れて上に行って以降、降りてくる気配が無い。

美奈子「諦めましょーよ、ね?約束したじゃないですか」

美鶴「だ、だがこれは……せめて皆のように普通の服にしてくれないか」

美奈子「いや可愛いですって。ありですよあり。さ、いきましょー」

美鶴「待って、ああ、もう……」

>上から声が聞こえる。
>どうやらつれてこられたようだ。

美奈子「やっほー、お待たせ。どうよ!」

>美奈子は水着とも他の何かとも取れない服を着ている。

美奈子「昔はこれ着てタルタロス探索したもんよー」

岳羽「懐かしー、それハイレグアーマーじゃん。着るの恥ずかしかったなー」

美奈子「どう?いい感じ?」

風花「ていうか、美奈子ちゃんは別にコスプレしなくても良かったんじゃ……」

美奈子「いや、気分気分。だって楽しそうなんだもん」

>ハイレグアーマーというのか。
>白いエナメル質の素材が何ともいやらしい……もとい、美しい。
>露出が多いのに、手袋やブーツが長い辺り製作者のこだわりを感じる。
>これでタルタロス探索か……見たかった。

美鶴「あ、余り動かないでくれ……」

>その美奈子の後ろに、桐条さんが小さくなっている。
>……いや、ほとんど隠れていないから、もうわかってしまったのだが。

岳羽「うわ、それは流石に……」

風花「えっと……その……」

アイギス「スクール水着、ですね」

美鶴「私だって好きで着ていない!美奈子が着ろと……」

>……これは。

美奈子「ほれ悠。どうよ」

鳴上「ああ。なんていうか、アレみたいだ。あの、アレ」

>……アダルトビデオ、とは間違っても言えない。

美奈子「そーいうビデオみたいでしょ?絶対えろいと思ったんだよね!」

>しかし美奈子は躊躇無く言い放った。

美鶴「ビデオ……?何がだ?」

岳羽「いや、その……ねぇ?」

風花「あ、あはは……」

>良く見ると、下に黒のストッキングを履いている。
>肌の露出を抑えたのだろうが、余計にいやらしいというか怪しいというか。

美奈子「うーん、でも何か足りないんだよねぇ。なんだろ」

アイギス「あ。アレでは?」

>アイギスさんが何かを持ってくる。

美奈子「あ、これだ!美鶴先輩、これつけてこれ!」

美鶴「なんだこれは……ちょ、やめ……」

>……耳、だ。

美奈子「アニマルイヤー(猫)!」

美鶴「なんだ、どうなってるんだ?何がついてるんだ?」

>桐条さんは自分の頭上なので見えないようだが、しっかりと猫耳カチューシャが乗っている。
>随分と可愛らしくなったものだ。

岳羽「くっ……ぷ、これは……可愛いかも……くくっ……」

風花「ちょっと、ゆかりちゃん。笑っちゃ悪いよ。あの、えっと……凄く可愛いですよ!」

アイギス「お似合いであります」

美鶴「なんだどうなって……」

>美奈子が満面の笑みで鏡を見せた。
>桐条先輩がそれを見る。

美鶴「……」

美奈子「可愛いよ、美鶴」

>あ、茹だった。
>ぱしゃ。
>思わず携帯で写真を撮ってしまった。

美鶴「!?こ、こら鳴上!撮るな、撮るんじゃない……」

美奈子「にゃーって言ってくださいよ、にゃー」

岳羽「あ、私も聞きたい!にゃー」

風花「桐条先輩がにゃー……聞きたいかも、にゃー」

アイギス「にゃーであります」

美鶴「に、にゃー?」

美奈子「やーん可愛い!もって帰っていい!?」

岳羽「そーね、もって帰って好き放題しちゃって」

>コスプレ軍団にもみくちゃにされる桐条さん……。
>もう一枚撮っておこう。
>……陽介にでも送ろうか。いや、湊だな。

>明日から、夏休みだ。



鳴上「ふぅ」

>……いや、本当に色んな意味で『ふぅ』、といった所だ。
>多分、まだ桐条さんは遊ばれているのだろうが、アレ以上あの場にいたら身がもたない。

>コンコン。
>扉がノックされた。

風花「私」

鳴上「ああ、入ってください」

風花「お邪魔します。あはは、お疲れ?」

鳴上「ちょっとはしゃぎすぎましたね」

風花「そう?落ち着いてたみたいだけど」

鳴上「内心バクバクでしたよ、色んな意味で」

>風花さんは楽しそうに笑う。
>というか、まだセーラー服なのか。

鳴上「まだ着替えないんですか?」

風花「あ、もうちょっとね。楽しくて。それに……こういうのも、スキかと思って」

>確かに、好きだが……。

鳴上「あんまりその格好で動き回られると、なんていうか目に毒ですよ」

風花「……可愛くないかな?ごめんね」

>少し違和感があった。
>風花さんはそんな事を言うような人だっただろうか。

鳴上「そうじゃなくて。魅力が強すぎて、って事で」

風花「ふふ、ありがとう」

>風花さんはベッドに腰掛けて、そのままぱたんと寝転んだ。

鳴上「ああ、そんな風にしたらスカートめくれちゃいますよ」

風花「……いいよ、別に」

>おかしい。
>これはおかしい。

風花「私、本当に魅力ある?」

鳴上「ありますよ、そりゃ……」

>口の中が渇く。
>……何の緊張だ?

風花「だったら、ね……」

>風花さんの瞳が濡れている。
>少しだけ頬が上気している。
>うす桃色の唇の奥、真っ赤な舌が見える。
>心臓が早鐘を打つ。
>俺は……。



【2012/7/31(火) 晴れ 巌戸台分寮】


>Pipipi……
>電話だ。
>今は……八時か。
>電話に起こされた。

鳴上「……ていうか、なんて夢を見てるんだ、俺は」

>昨夜のバカ騒ぎのせいだろうか。
>電話の主は有里だった。

鳴上「もしもし」

有里『僕だけど、もしかして寝てた?』

鳴上「わかるか」

有里『なんとなくね。悪いね、起こしちゃって』

鳴上「いや、むしろ助かった。ありがとう」

有里『……?ええと、そう。話があったんだ。そっちももう夏休みでしょ?』

鳴上「ああ、そうか。そっち行く時の予定だな」

有里『そう、それと……昨日の写真、アレは何だったの?』

鳴上「ああ、あれはな……」

>湊と打ち合わせをした……。
>昨夜の夢はなんだったのだろうか。
>まさか、何かの異変?
>それとも……ただ、俺が若いだけだろうか。

悪夢ではない。断じてない。
むしろ良いんだけど、起きた時に随分と情けない思いをするのではあるまいか。

そして夏休み、始まる。

といわうけで本日分は終わり。
では、また後日。

すくうるみずぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!
乙!

美鶴可愛すぎ

あ、>>1

美鶴さんはともかくエリザベスさんは俺の嫁。

夏休みに入りましたか、解決までどれくらいの時間がかかるの?(この世界的な意味で)やはり1年くらいかかるんかな

>>783
そうですね、せっかくだし、四季のイベントはやらせてあげたいなぁ。

というわけで本日分。


鳴上「どっちにせよ……気まずい」

>とにかく、日程は決まった。
>とりあえずは桐条さんに報告と……あと、風花さんには自分で伝えておこう。

鳴上「俺ってもしかして結構求めるタイプなのか……?」

>……やっぱり、桐条さんに伝えてもらおう。


【ジュネス内フードコート】


有里「というわけで、来週から十日間滞在の予定だそうだ」

陽介「十日か、なんだかんだで忙しいんだろうな……」

りせ「夏休みだからもっと長い間いると思ってたのにぃ」

>悠の滞在日程を伝えると、全員が残念そうにした。

有里「ただ、面白い話が聞けたよ」

千枝「面白い話?」

有里「うん。旅費・宿泊費は桐条グループ持ちで旅行に行けるらしい。……ポートアイランドに」

りせ「それって……?」

有里「どうやら美鶴直々にご招待いただいたみたいだね。勿論参加は自由。悠が帰る時に一緒についてって、それから十日間は保障」

陽介「うおお!マジかよ!前回ほとんど遊べなかった分、今回は遊ぶぜ!」

千枝「前は普通に学校があったもんね。今回誰も補習無いし……」

雪子「私、お母さんに聞いてみるね」

完二「俺もお袋に言っとかねーとな」

直斗「十日ですか。……洋服、どうしようかな」

有里「あ、それと向こうのメンバーも一緒に来るらしいよ。かなり大所帯になるみたい」

雪子「団体さんになるのかな」

有里「そこまでの人数はいないけど……部屋数は取るかも」

雪子「鳴上君がお得意様になりそう……」

>今回は全員乗り気だ。
>さて、用事は済んだし……どうしようかな。

有里「あ、そういえばあの話どうなったの?」

千枝「あの話?」

りせ「あ、罰ゲーム?あれはまだ相談中でーす。何か革新的なアイディア出るまで握っとくって事で」

有里「ふぅん。まぁ決まったら何でもするよ。しっかり考えてね」

>帰ろうとした所、袖をつかまれた。

有里「おっと、何?」

雪子「この後ちょっと時間良い?ちょっと手伝って欲しい事あって」

有里「ああ、別に用事は無いし、構わないよ」

雪子「ありがと。じゃあ家来てね」

千枝「あっ……」

有里「ん?」

千枝「ん、なんでもない。じゃあまたね」

>千枝も何か用事があったのだろうか。
>……まぁ、今度でいいんだろう。


【天城屋旅館・厨房】


有里「なるほど、料理ね」

雪子「うん。多分山岸さんも来ると思うから、その時また料理教室やってもらおうと思って」

有里「ああ、それで予習を。まぁ僕も上手く無いけどね」

雪子「私より上手いでしょ?だから、お願い」

有里「……とりあえず、余計な事をしない事から始めようか。今日は何作る?」

雪子「えっと……鶏肉のトマト煮?」

有里「また微妙なラインを……それじゃ、材料を用意して」

>……。

有里「ああ、だからそれ入れちゃ駄目だって」

雪子「えっ、でももうちょっと塩味が……」

有里「いや、これでいいと思うよ。そもそもその量はちょっとじゃない」

雪子「そうかな?えっと……じゃあ、後はしばらく煮込んで出来上がり」

有里「うん。お疲れ様」

雪子「有里君が止めてくれたから変な事はしてないと思うけど……」

>確かに、幾度も幾度も静止をかける事になった。
>こんな作り方をしていたら、料理の形をした謎の物体が出来るのもうなずける……。

有里「天城さん、不器用ってわけじゃないんだから。まずレシピ通りに作れば失敗はしないはずだよ」

雪子「……ねぇ、有里君。その、天城さんっていうの、やめない?」

有里「どうして?」

雪子「なんか、さ。他の皆は名前で呼んでるでしょ?なのに私だけずっと苗字だなーって」

有里「……そういえば、そうだね。じゃあ何て呼ぼうか」

雪子「千枝とかと同じ感じで、雪子って呼んでくれていいから」

有里「ん、じゃあ雪子。鍋見てないと」

雪子「あ、わっ、ごめん!……千枝とは、上手くいってる?」

有里「あー……またその話?雪子は千枝から聞いてると思ってたんだけど」

雪子「うん、聞いてる。だけど、有里君からも聞いてみたくて」

>雪子は鍋を見つめている。
>どことなく、違和感を感じる。
有里「……千枝はどうかわからないけど、僕は千枝に不満は無い。多分、上手く行って無くは無い……と思ってるんだけどね」

雪子「あれ、ちょっと自信ない?」

有里「こと恋愛に関してはね。相手を喜ばせる事は出来ても、どうやらそれで全てって訳ではないらしい。難しいもんだね」

雪子「そうだね……あ、もう出来たかな」

有里「ああ、そうだね。じゃあ火を止めて」

雪子「ちょっと味見してみて?はい」

>菜箸で一つまみつまんで、口の前に持ってこられた。

雪子「あ、ちょっと熱いか。ふーっ、ふーっ……どうぞ」

>……少し、照れ臭い。

有里「じゃあ、いただきます。……うん。思ったとおりの味だ。多分成功」

雪子「ほんと!?……あ、でも今日はほとんど有里君が作ったみたいなものだしね。ありがとう」

有里「いやいや。僕はちょっと手伝っただけだよ」

雪子「ふふ、でもありがとう。これからもいろいろ練習してみるね」

>雪子と料理の練習をした。

千枝「や!」

>帰り道で千枝に出会った。

千枝「えっと、偶然だね!良かったらそこまで一緒に……」

>恐らくは偶然では無いだろう。
>少しおかしくなって、思わず笑ってしまった。

千枝「……なによぉ」

有里「別に。それじゃ、一緒に帰ろうか。はい」

>手を差し伸べると、恐る恐るといった感じに手が伸びてきた。

有里「汗」

千枝「あ、暑いからだからね!別に緊張とかしてないっすよ!」

有里「はは……」

>……恋愛に限らず、人間関係は難しいよなぁ。



【ポロニアンモール】


>買い物を済ませた帰り道、また順平さんと例の女性を見た。

鳴上「仲良さそうに見えるんだけどなぁ」

>しばらく談笑?した後、二人は別れた。

鳴上「順平さん」

順平「うぉっ!ああ、鳴上か。もしかして、また見てた?」

鳴上「はい。そういえば、順平さんも八十稲羽旅行、参加するんですよね」

順平「おうよ。あのー、ほら。千枝ちゃんだっけ?あの子可愛かったしな!」

鳴上「ははは……そんな事言うと彼女に怒られますよ」

順平「だーから彼女じゃねえって」

鳴上「そういえば、夏休みなのに彼女さんと会えなくていいんですか?」

順平「ん?あー……」

>順平さんはぽりぽりと頭を掻いている。

順平「ほれ、アイツって体弱いんだよ。だから、どうせ夏場はあんまり出てこれねんだわ」

鳴上「ああ、そうだったんですか……すみません」

順平「謝んなって、怒っちゃいねーよ。アイツさ、俺がどこ行ったとか、なにやったとか。そういう話好きなんだわ」

>少し照れているのだろうか。
>しかし、嬉しそうだ。

鳴上「いいですね、そういうの。なんていうか、憧れます」

順平「憧れるって事もねーだろ。お前だって彼女くらい……」

鳴上「……ええと、まぁそれはいいじゃないですか。それで、八十稲羽で土産話を調達しようと」

順平「ま、そゆこと。……ていうか、何でぼかすんだよ」

鳴上「いや、別に何でも」

順平「お前、もしかして振ったのか!?」

鳴上「い、いやいや!ちゃんと……」

順平「だよなぁ。惚気られても困るけど、あからさまに避けられても困っちまうぜ。あ、それともなんかあったんかよ」

鳴上「何かあったというか……ちょっと」

>昨夜の夢の事を話した。

順平「あー、昨日はびっくりしたぜー。皆どっかおかしくなっちまったのかと思ってよ。なんだ、お前らが糸引いてたのか」

鳴上「ええ、まぁ……」

順平「にしても、夢ねぇ」

鳴上「やっぱり、変でしょうか」

順平「変っつーか……お前、ちゃんと処理してる?」

鳴上「処理?」

順平「こう、溜まってくリビドーっつーの?持て余すじゃん?」

鳴上「……まぁ、それなりに」

順平「でもお前がねぇ。聖人みたいな顔してなぁ」

鳴上「からかわないでくださいよ。結構真剣に悩んでるんですから」

順平「あー、そうか。悪かったな。……でも、それだったら簡単だろ」

鳴上「簡単ですか?」

順平「おー簡単だ。要するに、お前溜まってんだよ。だから、普段よりこう、多く処理すれば……」

鳴上「やっぱり、そうですかね……」

順平「……お前さ、童貞?」

鳴上「……今まで、彼女らしい彼女っていたこと無いですからね」

順平「あー……わかるぜ、その気持ち。とにかく自分で処理するか、後は……」

順平「相手に処理してもらうかじゃねーの?」

>処理してもらう……。

鳴上「む、無理ですよ!まだそんなじゃ……」

順平「おーおー純な反応だねぇ。けど、他に方法も無いんじゃねえの?それか我慢するか。別に害があるってわけでもねーしよ」
鳴上「まぁ、そうですけど……」

順平「いやぁ、なんつーの?お前でもそういう事で悩むんだな!これもまた青春ってか?先輩は嬉しいぞ!んなっはっはっは!」

>順平さんに相談したら、何故だか喜ばれてしまった。
>……処理、か。
>溜まってるんだろうか、いろいろ……。

溜まってるんじゃないですかね。いろいろ。

今日はごく短い更新になります。
全部教習が悪い。

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。

きっと溜まってますね
乙です

間違いなく溜まってるな色々

P4G予約してきたぜ

>>794
Vitaさえあれば俺だって・・・

というわけで本日分。



【2012/8/5(土) 晴れ時々雨 堂島宅】


有里「にわか雨か。夕方じゃなくても夕立って言うのかな」

>突然雨が降り出した。
>別に出かける予定は無かったからいいものの、出掛けていた人達は大変だっただろう。
>Pipipi……

有里「電話?……珍しいな」

>久慈川りせ、と表示されている。
>りせが電話をかけてくる事は滅多に無いのだが。

有里「もしもし」

りせ『あ、先輩……今お家ですか?』

有里「そうだけど、どうかしたの?」

りせ『良かったぁ、今から先輩のお家にお邪魔しようかなって思ってたんですけど、大丈夫ですか?』

有里「うん、それは良いけど……雨だよ」

りせ『実はもうすぐ近くなんで、走って行きます!着いたら良かったらシャワー貸してくださいぃ』

有里「ん、ご自由に。えーと、じゃあ玄関前に……」

りせ「こんにちわー!」

直斗「お邪魔します……」

有里「近っ」

>とにかく、バスタオルでも持って行ってあげよう。

有里「いらっしゃい。直斗も一緒だったんだね」

りせ「うん、ていうか直斗が先輩のトコ行こうって……」

直斗「た、タオルありがとうございます!ええと、それで……」

有里「良かったらシャワーも浴びる?って言っても着替えが無いか……」

りせ「ふっふーん、実はあるんですよ、ちゃーんと。ね?直斗」

直斗「……まぁ、一応は」

>直斗は何故か尻込みしている。

有里「そう。時間あるなら服乾くまでゆっくりしていったらいいよ。もう晴れるて来てるし、これだけ暑かったらすぐでしょ」

りせ「あ、じゃあそうさせてもらいますね!えっと、お風呂は……」

有里「ん、こっち」

りせ「ほら直斗も!」

直斗「う、はい……」

>……あれ。
>そういえば何で二人は家に来たんだろう。
>何か用事頼まれてたっけ?

有里「まぁ、いいか……お茶でも入れておこう」



【有里の部屋】


りせ「いやー急に押し掛けちゃってごめんネ、先輩」

有里「構わないけど……今日はどうしたの?それと直斗もどうしたの?入ればいいのに」

りせ「そうそう、用事があるのは私じゃなくて直斗なんですよ。ほーら、入んなさいってば」

直斗「まだ心の準備が……」

りせ「いいから!準備終わらないでしょどうせ!はいどーん!」

直斗「わっ……た、っと……」

>りせに腕を引っ張られて直斗が転がり込んできた。

有里「お?」

>目が、合った。

直斗「……」

有里「……」

>帽子を深く被り直して顔を隠してしまった。

有里「直斗」

直斗「な、なんでしょう」

有里「可愛いよ」

直斗「……ッ!」

>……良く見えないけど、多分真っ赤になっている。
>りせはとても楽しそうだ。
>その気持ち、わかる。

りせ「直斗ってば、悠先輩が帰ってくるからって張り切っちゃって。折角だから湊先輩にも見てもらおーって事で」

有里「ああ、そういえば前に言ったんだった。よかったら見せてって」

>今日の直斗はいつもの服装じゃない。
>なんとも夏らしい薄手のワンピースだが、多分どうしても恥ずかしいのだろう。いつもの帽子はかぶっている。
>見た目にはアンバランスだが、仕草が非常に可愛いのでよし。

りせ「直斗くらい素材が良いと、思いっきりシンプルにした方が良いと思って。本当はもう少し短いのにしようと思ったんですけどね」

直斗「無理です!」

りせ「まぁ、こんな感じで。ノースリーブも最初は嫌がってたもんね」

直斗「だって、すかすかじゃないですか。油断できなくて……」

有里「……ん?」

>おかしい。
>胸の辺りに違和感が……

有里「直斗、もしかしてさらし巻いてる?」

りせ「あー、何かどうしても外せないんだーって。直斗くらい大きいと苦しいと思うんだけどなー」

直斗「べ、別に大きく無いです!というか、有里先輩の前でそういう事言わないでください!」

有里「いつもの服なら仕方ないと思うけど、女物なんだし外せばいいのに」

直斗「そういう問題でも無く……ええと、その」

りせ「……直斗、アンタもしかして」

直斗「な、なんですか?」

りせ「ちょっと先輩あっち向いててくださいね」

有里「ん?いいけど……」

>なんだろう。

りせ「アンタ、やっぱり……」

直斗「ええ、実は……持ってきてなくて」

りせ「あー、そりゃ外せないよね……ノー……」

直斗「ちょ、聞こえる!言わないでくださいって!」

りせ「……私の……無理か。悔しいけど」

直斗「悔しいって……」

有里「あのー」

りせ「あ、もう良いですよー」

有里「うん。で、結局なんだったの」

りせ「……なんていうか、敗北感が募りました」

有里「……何で?」

直斗「あ、あはは……気にしないでください」

有里「そう……」

りせ「何でちょっと残念そうなんですか……?」

>それから、りせと二人で直斗に似合いそうな服を選んだ……。

りせ「あー楽しかった!っと、もうこんな時間。そろそろお暇しますね!」

直斗「そうですね……あの、先輩」

有里「ん」

直斗「今日はありがとうございました。突然来ちゃってすみません……良ければ、またお願いできませんか」

有里「いいよ。悠の為だしね」

直斗「鳴上先輩は関係ありま……!す、けど」

有里「男性目線も必要だと思うし、僕でよければいつでも。じゃ、またね」

直斗「はい。それじゃ失礼します」

>直斗とりせが帰った……。

有里「ノーブラか……くそっ!」

>是非見たかった……。



【2012/8/6(月) 晴れ 八十稲羽行き電車内】


>結局天田以外全員が八十稲羽に向かう事になった。
>アイギスさんと順平さんとクマが騒ぎ、それを岳羽さんが止める。
>真田さんは寝ていて、桐条さんは……美奈子に猫耳を乗せられている。
>そして、俺の正面には……

風花「今日もいい天気だね」

鳴上「そうですね」

>風花さんが座っている。
>あの夜以降、何となく気まずい……。
>別に何をしたわけでもないし、堂々としていればいいと思うのだが。

風花「……どうしたの?どこか具合悪い?」

鳴上「いや、そういう訳では……」

>例の夢はあれから一度も見ていない。
>ただの偶然、気の迷いだと言い切りたいのだが、どうしても意識してしまう。

鳴上「……もしかして、コスプレに弱いのかな」

>あの日と今までの違いとなるとそのくらいしか思いつかない。

風花「へ?コスプレ?」

鳴上「あ、なんでもないです」

風花「そう?……なら、いいけど」

>き、気まずい。
>恐らく皆は気を遣ってくれたのだろうが、好意が痛いとはこの事か。
>これから八十稲羽まで、どう過ごそうか……。

風花「……ふふ」

>突然、風花さんが笑った。

鳴上「あの、何かおかしかったですか?」

風花「あ、違うの。ごめんなさい。……わくわくしちゃって。鳴上君と一緒だからかな。つい、ね」

>臆面も無くそう言って微笑む。
>……そんなに楽しみにしてくれていたのか。

鳴上「……俺も、楽しみです。十日間、何しましょうか」

風花「あ、お祭りがあるって聞いたんだけど、向こうにいる内にあるかな?」

鳴上「今年はどうですかね。皆で回れたらいいんですけど」

風花「そうだね、皆で……」

鳴上?「山岸の浴衣姿とか見たいしな」

風花「え?」

鳴上「いや、俺じゃないですよ」

順平「俺だよ!なーにいちゃいちゃしちゃってんだよ鳴上ぃ?ん?」

鳴上「別にそんなつもりは……」

順平「いやいや良いんだよ。若い二人はそれが正常!邪魔したな!」

>……酔っているのだろうか。
>いや、あの人は素面でもあんな感じだったな。
>八十稲羽までの道中を楽しく過ごした……。



【八十稲羽】


>八十稲羽に到着した。

真田「さて、それでどうしたらいい?」

鳴上「バスで移動になりますから、とりあえず……」

>ホームを出た所で、菜々子が待っていた。

鳴上「ああ、菜々子。ただいま」

菜々子「お帰りなさい!」

>菜々子は言いながら抱きついてきた。

鳴上「っとと。わざわざ悪いな、菜々子」

菜々子「ううん、私が来たかったの。待ってたよ、お兄ちゃん」

美鶴「随分と可愛らしい出迎えだな、鳴上」

菜々子「ありがとう!でもお姉ちゃんも可愛いよ」

美鶴「ん?そうか……あ、ありがとう」

菜々子「ネコさんのお耳、可愛いね!」

>桐条さんが恐る恐る頭の上に手を持っていった。

美鶴「違うぞ。これは私が好きでつけているわけではないんだ。ええと……」

菜々子「どうじま菜々子です!」

美鶴「そうか、菜々子ちゃん。世の中には悪い人がいてな。人が眠っている間に悪戯をしたりするんだ。その人に着けられたんだよ」

菜々子「可愛いよ?」

美奈子「可愛いよ?」

クマ「可愛いクマ」

鳴上「……可愛いですよ」

美鶴「……いっそ殺してくれ」

陽介「や、や、や皆さんお揃いで!よーこそ八十稲羽……って、どうかしたんすか」

>陽介達が出迎えに来てくれたようだ。

美鶴「なんでもない。久しぶりだな」

完二「おお?つかお前、クマじゃねえか。なんでそっちにいんだよ」

鳴上「いろいろあってな……久しぶり、皆」

有里「うん。あ、悠。荷物置いたら菜々子連れて雪子の所ね」

鳴上「それはいいけど、どうかしたのか?」

有里「……さぁ、わからないけど。とりあえず、今日一日は僕らに自由は無い」

鳴上「……?」

陽介「順平さんお久しぶりっす!彼女できましたか!?」

順平「こっちの台詞だっつの!」

真田「お前……すごい筋肉だな。何かやってるのか?」

完二「うわっ、なんスかアンタ!べ、別に何もやってねぇよ!」

岳羽「ちょーっと疲れたかなー。旅館行くならさっさと行っちゃおうよ」

アイギス「荷物が重いなら私が……」

鳴上「ええと、風花さん、旅館わかりますよね?」

風花「ん、案内は任せて。鳴上君は荷物置いてきたらいいよ」

鳴上「助かります。それじゃ後で」

>菜々子と一緒に荷物を置きにいこう。
>その後旅館か……何があるんだろう。


【2012/8/6(月) ジュネス内フードコート】


陽介「暑いから、出迎えはやめよう」

完二「うーわ、友達甲斐ってもんが無ェ先輩だよ」

陽介「冗談だよ……つっても暑いんだよなぁ」

有里「で、なんで僕らだけなの」

>いつものように集合すると思っていたのだが、何故か男性陣しかいない。

陽介「コレだよ、コレ」

>陽介の携帯……りせからのメールだ。

有里「えーと?例の権利今日使います……出迎えはそっちでお願い、と。珍しいね、りせ達が会いたがらないなんて」

完二「あー、なんか企んでるっぽいっスよ」

陽介「ま、そういうわけで一番に会えんのは俺らだな。あ、でもどうなんだ」

有里「菜々子が出迎え行くみたいだよ」

陽介「あー、だったら菜々子ちゃんも呼べばいいんじゃねえの?」

完二「あれ、ここでやるんじゃねえんスか」

陽介「天城んとこだってよ。まぁ向こうのメンバーが泊まるらしいから、その方が都合いいんじゃねえの」

>一体何をやる気なのだろうか……。
>とにかく、悠達を迎えにいこう。



【天城屋旅館】


菜々子「お兄ちゃん、今日は何するの?」

鳴上「さぁ、俺も聞いてないんだ……なんだろうな。というか、まずどこに行くんだろう」

>と、思ったら、陽介がずんずん歩いてきた。

鳴上「ああ、陽介。丁度良かった、俺達どこに……」

陽介「ああ!?おお、相棒か。悪い悪い。あー、あれだ。宴会場。俺も後から行っから」

鳴上「あ、ああ。……どうしたんだ?」

陽介「……楽園の匂いがすんだよ。けど俺買出し担当だってよ。ちくしょう、何で俺ばっかり……」

鳴上「そうか、大変だな」

陽介「リアクション薄いな……まぁいいや、そういうわけで行ってくるから。後でな」

>……なんだろうか。
>まぁ、行ってみるか。

鳴上「ええと……ここか」

>中からは何か楽しそうな声が聞こえる。

菜々子「わぁ、何してるのかな!」

鳴上「なんだろうな。開けてみようか」

>襖を開ける。

有里「やぁ」

鳴上「……」

菜々子「なぁに?どうしたの?」

鳴上「菜々子、お前は見ない方がいい」

>菜々子の目を覆った。
>……これは一体

鳴上「湊、説明してくれ」

有里「僕が聞きたい。何で僕はこんな格好なんだ」

鳴上「わからん。何でだ」

有里「着ろって言われて……」

>湊は何故かメイド服を着ている。
>……というか、このメイド服、見覚えがある。

鳴上「それ、アイギスさんが着てたヤツだな」

有里「ああ、例の……まぁ、いつまでも突っ立ってないで入りなよ。面白い事になってるから」

鳴上「今の時点で十分面白いんだが」

菜々子「なに?面白いの?菜々子も見たーい」

鳴上「……そうだな。見てやれ」

>菜々子の目を隠していた手をどける。
>しばらく硬直。

菜々子「……可愛いお洋服だね、湊お兄ちゃん。あ、菜々子宿題やるから帰るね」

>切なげな笑顔を残して、菜々子は帰っていった。

有里「……一人で平気かな」

鳴上「……今追いかける勇気は俺にも無い」

有里「……僕、今日も家帰るんだよね」

鳴上「……菜々子は、賢いから。大丈夫だろ」

有里「……とにかく、まぁ見てみなよ」

>湊が退いたので、座敷の奥を見る事が出来た。

鳴上「こ、これは……!」

>とりあえず、一枚撮っておこう。

美奈子「へへへ、観念しなさいよ」

直斗「やめっ、やめてください!なんで僕ばっかり……」

岳羽「諦めた方がいいよ。その子、見た目こんなだけど中身おっさんだから」

美奈子「あー、ゆかりひどーい。こんな可憐な乙女捕まえてそれは無いんじゃない?」

風花「でも、可愛いよ?もっと色々見てみたいかも」

千枝「いや、それはいいんですけど……和服ってこういう感じでしたっけ?」

雪子「あはは、千枝それどうしたの?ぷっ、は、あはははははは!」

りせ「あ、これかわいー。後で着てね、直斗!」

美鶴「私はもう疲れたよ……」

アイギス「酒池肉林ですね」

>……もう一枚、撮っておこう。

鳴上「あの衣装、持ってきてたんだな」

有里「こっちで用意したのもいくつか混ざってるよ。巌戸台の皆が合流した途端コスプレパーティーになっちゃって」

鳴上「それで、何でお前まで」

有里「命令だからね……」

鳴上「趣味でやってないだけ良かったよ……」

>よく見ると、部屋の隅で完二が倒れている。

有里「他の皆は部屋で休んでるよ。どうする?混ざってく?」

鳴上「いや、いい。……!?」

美奈子「ほれほれよいではないかよいではないかー」

直斗「や、やだっ、やめてくださいって!」

>直斗が美奈子に服を脱がされている。

鳴上「流石にそれは待て!」

直斗「へっ!?」

美奈子「あ、悠来てたんだ」

直斗「……早く、あっち向いてください!」

鳴上「悪い、すぐ出てく!」

有里「同じく……一通り着替え終わったらまた呼んで」

>宴会場の襖を閉めた。

鳴上「……惜しい事したかな」

有里「……悠は正しかったよ。さ、順平達の所へ行こう」

>……惜しい事を……。



【順平・真田の部屋】


クマ「そこでークマが出ていってー!どっかーんってなったのを一人で止めたクマ!」

順平「おーそうかそうか。クマは偉いなー」

真田「どっかーん、っていうのは何だ。爆発か?」

クマ「どっかーんはどっかーんクマ」

真田「……わからんな」

>良かった、ここは平和だ。

順平「お、鳴上も来たか。……有里、お前どしたの」

真田「変わった格好だな」

有里「いろいろありまして。……下着までなんですよね、コレ」

順平「うわ……流石にそれは……」

鳴上「そ、そうなのか?」

有里「うん。見る?」

鳴上「い、いやいい。見なくていい」

有里「まぁ冗談だけど。もうしばらくしないと準備整わないみたいだから、僕らはこっちで休憩しとこう」

>どこまで冗談なんだ……?

>うぉーい、買出し行ってきたぜー、という声が聞こえた。

鳴上「あ、陽介が帰ってきたみたいだ」

有里「ああ、そういえば買出し行かされてたね」

>宴会場の方にいったのか……いや、待て!

鳴上「陽介、今そこは……!」

>悲鳴が聞こえた。
>……主に、陽介の。

有里「……準備、まだみたいだね」

鳴上「そうだな」



【小宴会場】


>結局皆元の服装に戻したらしい。

美奈子「残念だなー、可愛かったのに」

美鶴「あんな服で食事できるか!」

千枝「あはは……」

岳羽「あれ、順平と真田先輩は?」

有里「ああ、疲れたから休むって」

アイギス「折角の機会なのに……お疲れなら残念です」

>恐らくは、気を遣ってくれたのだろう。
>クマは普通に寝ていたが……。

鳴上「あれ、そういえば陽介は……」

美鶴「……聞きたいか?」

鳴上「あ、いえ。いいです。すみません」

>やはり、運のステータスが……。

有里「完二もいないね」

雪子「完二君、目覚まさなかったから……」

鳴上「そうか……じゃあ俺達は明日また別に集まろうか」

有里「そうだね。というか、僕はいつまでこれ着てたらいいのかな」

りせ「えー、可愛いからそのままでいてくださいよー」

アイギス「そういえば、こういうものがありますよ」

>アイギスさんの手には、例の獣耳がたくさんぶら下げられている。

岳羽「あんた、それどっから持ってきてるの……」

アイギス「それは秘密です。どうでしょう、これを装着してみては」

有里「……僕が?」

りせ「やーん見たーい。着けて?」

有里「命令とあれば。……どれ?」

>バリエーションは猫、犬、タヌキ、キツネ……うさぎ、か。

鳴上「湊だったらやっぱりこれだな」

>キツネ耳を着けた。

有里「……どうなの、これ」

岳羽「あっは、可愛い可愛い」

美奈子「いいねーこれも。新しい感じ」

雪子「有里くっ……あはははは!に、似合いすぎ!あは、あはははははは!」

風花「雪子ちゃん、今日笑ってばっかりだね……」

アイギス「持ってきた甲斐がありましたね」

有里「……千枝」

千枝「や、ちょっとそのカッコで近寄らないで……」

有里「そんなこと言わずに」

千枝「待って、待ってほんと無理!そのちょっとうるっとした目をやめて!危ない!危ないから!」

>何だか分からないが楽しそうだ。

鳴上「良かった良かった……ん?」

>さっきまでそこに座っていたアイギスさんがいない。
>……背後に何者かの気配を感じる。

鳴上「……」

>手を、頭に持っていく……。
>もしゃ、と。
>明らかに髪の毛とは違う、毛の感触。

鳴上「……ちなみに、何ですか」

アイギス「犬です」

>天城はもう今にも噴出しそうだ。
>というか岳羽さんは既に笑っている。
>美奈子は目を輝かせているし、桐条さんと風花さんは必死に笑いを堪えている。

鳴上「……わん」

>全員、決壊した。



【夜 天城屋旅館前】


鳴上「……女三人寄れば姦しい」

>とはいうが、まさにその通り。
>人数が増えれば増えるほど、連中は強力になるようだ。

鳴上「そろそろ帰らないとな……湊はどこ行ったんだろう」

>騒いでいる途中に一人抜け出して、それから見ていない。

風花「あ、いたいた。お疲れさ……やだ、鳴上君、頭頭」

>そういえば、耳を外し忘れていた。

鳴上「わん」

風花「ぷっ、あはは。コロちゃんみたい。似合ってる似合ってる」

>余り嬉しくない……。

鳴上「まだ騒いでます?」

風花「今は直斗君と桐条先輩が餌食になってるよ。あの二人、可愛いから」

鳴上「……確かに」

>気持ちは良くわかる。

風花「ごめんね、疲れてるのに……大丈夫?」

鳴上「ああ、それは大丈夫です」

風花「……最近、何か悩んでたみたいだったから。ちょっと心配で、ね」

>悩み事……。

鳴上「そんなに変でしたか、俺」

風花「うん。どことなく余所余所しいっていうか。……色々あると思うけど、あんまり心配させないで。悩みがあるって言ってくれた方が、黙っていられるより安心できるから」

>どうやら筒抜けだったらしい。

鳴上「……相談できれば良いんだけどな」

風花「何?」

>風花さんは本当に心配そうだ。
>……いっそ、相談をもちかけてみようか



【夜 天城屋旅館・庭】


有里「……ふぅ」

>今頃、直斗と美鶴が美奈子の餌食になっているだろう。
>あの二人からは、なんというかそういうオーラが出ている。

有里「一日命令権、こんな使い方をされるとはね」

>まぁ、服を着替えられただけよしとしよう。
>りせから下った命令は……

りせ『千枝先輩と二人でお話してきてくださいよ。いろいろ気になってるみたいですよ』

>との事だった。

千枝「有里君?」

有里「やぁ、来たね」

千枝「うん、どこ行ったのかなって思って。って、頭。まだ着けてんの?」

有里「ああ、外し忘れた。まぁ気にしない」

千枝「うん。……ちょっと疲れたね」

有里「はしゃぎっぱなしだったからね」

千枝「見た?雪子。お腹抱えて大爆笑」

有里「ツボがわからないね……」

千枝「昔っからああなのだよ。面白いでしょ」

有里「確かに、色々と面白い」

>……千枝はこっちを見ている。
>そんなに耳が気になるのだろうか。

千枝「……ね、有里君。向こうの寮の皆とは、結局何も無かったんだよね?」

有里「……ああ、その話か。前に言った通りだよ」

千枝「だよね!……でもさ、桐条さんとか、多分まだ有里君の事好きだと思うなー!あの感じ、きっとそーだよ!」

>冗談めかして言っているが……。

有里「そうかもしれないね。そしたらどうする?」

千枝「わ、私?私はどうもしないよ。……どうかするのは、有里君でしょ」

有里「それは無いかなぁ。今は、ちょっと良い子見つけちゃったから」

千枝「……」

有里「誰とは言わないけど、ね」

千枝「バカ」

>千枝は笑っている。
>余り他の女の子と遊ぶのは良くないかもしれない。
>……どうしよう。

大所帯で到着。
天田君はいっつも留守番です。

青春特有の悩みもある。
女たらしは果たしてどうなるのか?

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。

肩いてー

乙 途中でNTRっぽくなって離脱しようかとおもったがやっぱり面白いのと先が気になるから読んでます

肩全力で揉んでやろうか

そういや複数人の攻略はあったりするの?

>>812
ナカーマ

まあ、このスレのおかげで直斗は俺の隣で寝ているわけだが

>>814
ナイスガイと添い寝なんていい趣味してるな

りせなら隣で寝てる

美鶴は俺の隣で寝てる
>>813
今後の展開をご覧ください。

というわけで本日分。

鳴上「無理に決まってるじゃないか……そんな、風花さんが欲しいです、だなんて……」

風花「あの……ほんとに大丈夫?」

鳴上「ええ、大丈夫です。全く、全然大丈夫です。ああ、時間が時間なんでそろそろ湊と一緒に帰らないと。じゃ、これで」

風花「あ、うん。また明日ね」

>言えるか!
>……湊を探して、帰る事にしよう。


【2012/8/7(火) 晴れ 愛家】


順平「いやーしっかし何だな。こう……むなしくなるな」

陽介「あんだけ女の子いて男オンリーっすからねぇ」

真田「たまにはいいじゃないか。男同士、飯でも食いながらってな」

完二「そーそー、男にゃ男の話があるってな」

>昨日は女子会に巻き込まれてしまったが、今日は男子会だ。
>本当は今日も彼女達に連れまわされる予定だったのだが、陽介と順平さんが体を張って俺達を脱出させてくれた。

鳴上「いや、あの中に放り込まれるのもそれなりに厳しい物がある」

有里「同感」

順平「……あ、この感じも久々だなぁ」

陽介「割と年中こんなんっすよ」

完二「つっても、鳴上先輩たちと花村先輩じゃあちっと勝負になんねぇだろ。……色んな面で」

真田「何故だ?こう見えても順平は中々やるし、花村だってそうだろう」

順平「あのー、今そういう話してねぇんすよ……」

完二「真田サンっていっつもこんな感じなんスか」

鳴上「まぁ、大体は」

陽介「あーあ、しっかし……なぁ」

>陽介は俺と湊を交互に見ている。

有里「何?」

陽介「いや、こいつらが身固めるとはなーって話」

順平「あー、確かにな。つっても鳴上なんかは結構一途な気もすっけど」

陽介「いやいや!自覚が無い分手に負えねーんすよこいつ!」

完二「おっさんの同窓会みたいな事言い出したな今度は……」

順平「いやそれがよ。俺もなんか嬉しくなっちゃったんだけど、この鳴上君、俺達と同じ人間だったんだよ」

真田「最初からわかってるだろう」

順平「あー、だからそうじゃなくて。同じような事考えてんだなって事で」

陽介「なんすか、なんかあったんすか?」

順平「おー、聞いてくれよ。こいつな、この前山岸の夢見て……」

鳴上「ちょ、順平さん!」

順平「恥ずかしがんなって!皆そんなもんだからよ!でな、山岸の夢見て、『俺、山岸さんの体が目的だったんでしょうか』って相談してきたんだよ俺に」

陽介「へぇ~悠がねぇ」

真田「鳴上、そういう時はトレーニングだ。体を動かせば雑念は消える」

完二「先輩もそういう事考えるんスねぇ。何か想像できねェけど」

>……もう、順平さんに相談するのはやめよう。

有里「悠」

鳴上「……なんだ」

有里「こっちの子達と違って、風花はもう大人なんだし……いいんじゃないかな」

鳴上「ば、まだそんな段階じゃないだろ!」

陽介「おーおーいいねぇ。有里はそんなん無さそうだな」

有里「うーん、そうだね。そういう悩みは無いかな。ただ……」

順平「おお?何よ何よ。お前もなんか悩んでるワケ?ちょっと話してみ、ほれ」

有里「うん。実の所、恋人ってどういうものかわからない」

陽介「……」

順平「……」

完二「すんません、先輩。あの二人にゃ荷が重いみたいっスわ」

真田「恋人、か。そういえば三年前、お前は特定の恋人はいなかったな」

有里「ま、いろいろありましたしね」

真田「どういう心境の変化だ?」

有里「……ま、いろいろありましてね」

>それから、不毛な恋人談義が始まった。


【天城屋旅館 順平・真田の部屋】


陽介「まぁ悠には逃げられちまったけど、有里君のお話でも聞こうじゃないですか」

順平「だな。俺も実際興味あんだよ。こいつ、ちゃらんぽらんだからな」

完二「確かにちっと気になるんスよね。有里先輩って一途にってタイプじゃねーだろうし」

有里「心外だな」

真田「日ごろの行いだ。諦めろ」

>悠は上手く逃げたようだが、僕は捕まってしまった。

順平「で、どうなんだよ。もう何かした?」

有里「何かって?」

順平「とぼけんなよ、わかってんだろ?お前は鳴上ほど初心じゃねーの知ってんだぜ」

有里「……まぁ、それはそうか。けど、何もしてないよ」

順平「マジかよ。お前ってアレだろ?仲良くなったら即そいつの部屋行って色々」

有里「昔の話だよ」

陽介「何ヤンチャしてましたみたいな言い方してんだよ!」

完二「即ってすげェな……なんつー行動力だよ」

有里「僕は確かに初心では無いけど、だからといって経験豊富でも無いんだよ。部屋にはよく呼ばれてたけど、何をしたわけでもないしね」

順平「ちゅーくらいしてんだろ」

有里「それはまぁ、そうだけど」

陽介「なぁ、完二。俺泣きそうなんだけど」

完二「知らねェよ……」

有里「というか、僕らばっかりじゃなくて。順平はどうなの?」

順平「俺ぇ!?……俺は、ほら。アレだよ。順調よ?」

陽介「マジすか」

順平「……嘘だよ」

真田「たまに女性を連れてるじゃないか」

順平「それはそーなんすけどね……」

陽介「順平さんは裏切らないって俺信じてたのに……」

順平「裏切るもくそも同盟は組んでねーよ。つか、もうそういう話良いだろ!もっとこう、将来についてとかよぉ」

陽介「俺ぁ順風満帆っすもん。なー完二」

完二「たかだか一回テストの点が良かっただけじゃねぇか」

有里「将来ねぇ」

>そういえば、進路調査票を出していない……。

有里「僕、進路決めてないや」

陽介「あー、お前途中からだもんな。どうすんの?」

有里「うーん……」

>……?
>知らない着信音だ。

順平「メールだわ。……んだってぇ!?」

陽介「うわ、びっくりした……なんすか」

順平「これ見ろよこれ」

>携帯の画面には美奈子からのメールが表示されている。
>添付された画像は……

有里「おお」

完二「これって……」

真田「やるな、鳴上」

>風花と悠が……キスをしている。ように見える。
>本文にもそんな事が書いてあった。

順平「召集だな」

陽介「……相棒……置いて行かないでくれよ……」

>どうやらあの二人は随分上手く行っているようだ。
>……なるほど、な。



【鮫川河川敷】


>……。
>暑い。
>河川敷なら少しはマシかと思ったのだが……。

鳴上「甘かったか」

>……帰ろうかな。

風花「あれ、有里君。どうしたの?」

鳴上「あ、風花さん。と……美奈子か」

美奈子「その扱いは失礼じゃない?」

鳴上「いや、珍しい二人だと思って。二人は何してたんだ?」

風花「うん、水着を……」

鳴上「水着!?」

美奈子「食いつき方すごいね……なんか、今度海行くみたいだから、水着も用意しとこうって思って。美鶴先輩もいたんだけど」

鳴上「……なんとなくわかった」

>多分、また美奈子に……。

風花「海行くなら言ってくれてればもっと早くに準備したんだけどね」

鳴上「結局買ったんですか?」

美奈子「買った買った。そうそう、悠は知ってるかな?風花って実はすごいんだよ?」

鳴上「すごい?」

美奈子「うん、びっくりしちゃった。そりゃ三年前でもかなりなもんだったけど、あれからまた成長してたみたいでさー」

風花「ちょっと美奈子ちゃん、やめてよ」

美奈子「えー?いいじゃん。悠だよ?」

>……すごいのか。

美奈子「まぁ楽しみにしときなよ。あさってくらいにはこの太陽の下、風花のすごい部分がもう……零れんばかりに……」

風花「やめてったら!もう、美奈子ちゃんは……」

美奈子「えー、悠だって見たいよね?」

鳴上「ああ。あっ」

>思わず本音が出てしまった。

美奈子「ほらー。恥ずかしがること無いって。いずれさ、全部見られちゃうわけだし」

風花「全部って、そんな……」

>……やはり、まだ抵抗があるだろう。
>いや、俺だってそうだ。

美奈子「……私は退散しようかなー。後は若いお二人に任せよう」

鳴上「おっさんか。またな」

美奈子「風花、頑張ってねー」

風花「頑張るって何を……」

>美奈子はそそくさと去っていった。

鳴上「何を頑張るんでしょうね」

風花「あはは……」

>また沈黙。
>気まずさはそれほど無くなった……順平さんが笑い話にしてくれたおかげもあるだろう。
>気にしてもしょうがない事だと思えるようになってきた。

風花「……実はね、頑張ること、あります」

鳴上「え?」

風花「ほら、鳴上君、悩んでたみたいだったから……美奈子ちゃんに相談したの」

鳴上「ああ……大丈夫ですよ?」

風花「うん、そう言うけどね。で、それからなんやかんやあって……」

>……なんやかんや?

風花「気が付いたらこの旅行中になるべく鳴上君との距離を縮めたいなって言っちゃってて」

鳴上「距離、ありますかね」

風花「今よりもっとって事で。鳴上君が私に何の遠慮もしなくて済むようにね」

鳴上「今でもしてませんよ?」

風花「してるよ」

鳴上「いや、遠慮とかじゃなくてですね……」

風花「鳴上君は他の皆の為に頑張る。私はそんな鳴上君がたまに力抜ける相手になればいいなって思うの」

>どうやら、風花さんは俺が何も言わないのは自分に迷惑をかけるせいだと思い込んでいるらしい。
>間違ってはいないが……。

鳴上「……急に言われても、難しいですね」

風花「だよね。私もそう思う。だから、ゆっくりでいいから。ちょっとずつ、歩み寄って……」

>夏の日差しが水面に反射して、風花さんを下からも照らしている。
>……暑いが、こういう光景は夏場以外あまり見れないな。

鳴上「ええと。今悩んでる事は、本当に大した事じゃなくて。多分、時間が解決してくれる……と思うので。その事に関しては、本当に心配しなくても大丈夫ですよ」

風花「本当?」

鳴上「本当です。誰にでもある悩みらしいんで、まぁその内に」

風花「なら良かった」

>風花さんがこっちを向いて微笑んだ……!?

鳴上「っぷ、ん、な、何を……」

風花「……初めて?」

鳴上「……はい」

風花「もらっちゃった。ふふふ」

>風花さんは笑っている。

鳴上「ゆっくりって言ったじゃないですか……」

風花「ごめんね?びっくりした?」

鳴上「かなり」

風花「……嫌だった?」

鳴上「……そういうわけじゃないです。驚いただけで」

風花「暑いし、帰る?」

鳴上「そうですね、そろそろ……」

>驚いたが、風花さんの想いを受け取った気がした。
>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが6になった。
>……思っていたより随分と大胆な人だ。

>携帯が鳴った。
>……美奈子からメールだ。

『差出人:美奈子
  件名:見たぞ!
  本文:やったね!あ、順平達にも報告しといたから』

鳴上「アイツ……っ!」

>携帯が鳴っている。
>順平さんだ。

風花「どうしたの?誰から?」

鳴上「……旅館、一緒に行きますよ」

>ああ、何を言われるのだろうか……。



【2012/8/8(水) 晴れ 天城屋旅館 順平・真田の部屋】


鳴上「……う」

>目が覚めた。

鳴上「……ああ、そうか。昨夜、順平さんに酒を……」

>まだ皆は寝ている……。
>頭が痛い。
>外の空気を吸おう……。

岳羽「あれっ?鳴上君。どしたの?」

鳴上「おはようございます……」

>部屋を出た所でゆかりさんに出会った。

岳羽「……うわっ、お酒くさ。何やってたのよ」

鳴上「ああ、順平さんに少し……いやかなり」

岳羽「しょーがないなー……あ、それより聞いたよ。やるじゃん、鳴上君」

鳴上「何がでしょうか……」

岳羽「え?昨日風花とその……」

鳴上「ああ、その話……美奈子からですか?」

岳羽「うん。いろいろ吹聴してるみたいよ」

鳴上「……」

>突っ込む気力も無い。

岳羽「あー、そっか。それで揉みくちゃにされたのね。大丈夫?」

鳴上「大丈夫です、多分……ちょっと今は気分悪いですけど」

岳羽「飲まない人はそうなるもんなの。ただの二日酔いだったらほっときゃ治るから。水でも飲んでね」

鳴上「はい……」

岳羽「でも、風花の方からねぇ」

鳴上「……俺もびっくりしましたよ」

岳羽「ま、それだけ好かれてるって事じゃん?あの子ってそういうタイプじゃないと思うからさ。そんな子が、思わず動いちゃうくらいってこと」

>岳羽さんは笑った。
>確かに、そんなタイプでは無いように思う……。
>だとしたら、俺のせいで相当焦れているのか?

岳羽「……二日酔いプラス悩み事で、すっごい顔になってるよ」

鳴上「……そうですか」

岳羽「ま、がんばんなさい。私は二人の事応援してるから」

鳴上「あの……岳羽さんはそういうの無いんですか?」

岳羽「あー……恋愛とか?そういうのはいいかな。正直、しんどいしね」

鳴上「あ……なんか、すみません。俺、もうちょっと休みます」

岳羽「はいはい。さーて今日は何しようかなー」

>ああ、頭が痛い……。
>部屋の中から順平さんの声が聞こえる。
>……起きてしまったか。

順平「おう、鳴上。……悪い、飲ませすぎたか」

鳴上「まぁ、多分平気です」

順平「そうか……あの、よ」

>順平さんは決まり悪そうにしている。

順平「あー、まぁ、こんな事頼むのも恥ずかしいっつーか、どうなんかなって思うんだけどよ」

鳴上「何ですか?出来る事ならしますけど」

順平「今日さ、買い物付き合ってくんね?選んで欲しいもんあんだよ」

鳴上「俺がですか?」

順平「頼む、有里に頼むのはどうしてもプライドが……」

鳴上「……なんだかよくわからないですけど、いいですよ。ただ、ちょっと休ませてください」

順平「おう……悪いな」

>順平さんに頼みごとをされた。
>が……頭が……。
>悪夢でも見そうだ。

八十稲羽では鳴上君がメインです。多分。

わかりやすい絆の形が恋愛。
あと友情。
コミュ伸ばし、再び。

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。

風花ちゃんキャワワ

おつ

やったね!鳴上家族が

乙ー なおとカワユス

おつおつ

これくらいゲーム中でもいちゃいちゃしてほしかったな
ゴールデンに期待

いちゃいちゃしてるけど、順調に行くんでしょうかね。

というわけで本日分。



【商店街】


鳴上「で、何買うんですか」

順平「おお。前にお前らがこっち来た時、土産に持って帰って来たのあったろ。染物っつーの?」

鳴上「ああ……アレ、作ってるの完二の家ですよ」

順平「マジ?」

鳴上「マジです」

順平「……やっぱさ、女の子ってああいうの喜ぶと思う?」

鳴上「あ、プレゼントですか?」

順平「つーか、土産っつーか。アレ、俺が見ても綺麗だったから、折角だし買って帰ってやろうかと思ってよ」

鳴上「例の、あの人に」

順平「……まぁ、な」

>だったら俺が選ぶより、順平さんが選んだ方が良いんじゃないだろうか。

順平「お前が何考えてるかはわかるぜ。けどよ、もし俺が選んでアイツが気に入らなかったらどうすんだよ!俺そんなの立ち直れねぇって」

鳴上「いや、でも……」

順平「俺の人生で女の子に喜ばれたのなんて小学校の時が最後だぜ!?センスってもんがねえんだよ、壊滅的に。その点!」

>順平さんはびしっと効果音が付きそうな勢いで俺を指差した。

順平「お前や……すげえ癪だけど有里は、まず間違いなくセンスがある!だから任せる!頼むってマジで!」

>……そこまで言われては仕方が無い。

鳴上「仕方ないですね……彼女、何色が好きとかありますか?」

順平「助かる!あー、あいつな……黒とか、白とか。あと赤とか?好きみたいだけどな」

>順平さんと土産を選んだ……。
>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが4になった。



【夜 堂島宅】


堂島「ただいまぁ~帰ったぞぉ~」

有里「げっ、堂島さん……」

鳴上「飲んでるな」

菜々子「お父さんお帰りー」

堂島「おぉう菜々子ぉ!元気だったか?ん?」

菜々子「お酒くさいよぉ、もー」

堂島「そうか、そりゃすまん!はっはっはっは!おーい、湊、悠!」

有里「なんです?」

鳴上「どうかしましたか?」

堂島「まぁちょっと来い!いいから!」

>酔った堂島さんは、正直……
>まぁ、行ってみよう。

堂島「おう!来たな!まぁまぁ座れ座れ。ちょっと話しよう。な!」

鳴上「はぁ……」

>二人が座ると、堂島さんは急に真顔になった。

堂島「女ってのは、難しいよな」

>突然そう言われて、二人そろって硬直してしまった。

堂島「……ぶはっはっは!いや、聞いたぞお前ら。可愛い子捕まえてるらしいじゃないか。ん?ただ保護者として不純な行為は推奨しないぞ?」

有里「聞いたって、誰にですか?」

堂島「お?何か知らんが、友達だろ?あのー、ポニーテールっていうのか?髪のふわふわっとした。あの子に聞いたぞ?」

有里「美奈子か……」

鳴上「アイツ、何で……」

堂島「たまたま買い物行ったらな、お前らの友達集団とばったり会ってな!そんで何だ?悩んでるんだって?」

鳴上「どうする、湊……」

有里「いえ、別に悩んでません」

鳴上「うわ即答」

堂島「湊は今まで何人も引っ掛けてきたけど本気になるのが初めてでどうしたらいいかわからんって聞いたぞ?」

有里「……大丈夫です、なんとかやってますんで」

堂島「で、悠はアレだろ?アッチの方が気になって……」

鳴上「そんな事まで言ったんですか!?」

堂島「おう、ほら、なんだったかな。ジュネスの子が言ってたぞ」

鳴上「……まぁ、大丈夫ですよ。何とでも……」

堂島「相手は何歳だ?年上か?」

鳴上「年上ですけど……」

堂島「だったらほれ、俺が帰って来れない日とかにだな、その子連れ込んでこう……」

有里「あの、今僕も同じ部屋にいるんだけど」

堂島「そこは気を利かせてやるのが男ってもんだろ。あ、ただ菜々子にはバレるなよ?」

鳴上「はぁ……」

>酔った堂島さんにしばらく付き合わされた。
>……しかし、何故か見直されているようだ。
>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが5になった。



【2012/8/9(木) 晴れ】


陽介「青い海!」

順平「白い雲!」

クマ「白い砂浜!」

陽介「海だぁあああ!」

順平「いやっほおおおおう!」

クマ「海クマアアアア!」

>今日は皆で海に来ている。
>夏真っ盛りではあるが、海水浴場に人は然程いない。

有里「混んでなくてよかったね」

鳴上「だな」

完二「あの三人のはしゃぎ方なんなんスか……」

真田「わからんでもないがな」

完二「つか、真田サンのそれはどうなんスか」

鳴上「ハイカラですね」

真田「水の抵抗を減らすには一番いいんだ」

>ハイカラな水着だ……。

順平「完二!男見てる場合じゃねーだろ!」

陽介「そうだぜ完二ィ!今日はそっちの趣味は封印しとけ!」

完二「だから違ェっつってんだろが!」

真田「そうなのか……?」

完二「違ェっスよ!」

有里「……暑いね」

鳴上「……夏だからな」

美奈子「うっひょー!海だー!」

>順平さんと陽介の首がぐるりと回った。
>どうやら背後から来る女性陣を見る為らしい。

完二「反応早っ」

有里「来たね」

鳴上「ああ……」

>皆、それぞれの水着を着て歩いて来ている。
>……いい。

岳羽「あっつー、サンダル履いてきて良かったよ。下手すりゃ火傷しちゃうかもね」

>岳羽さんは淡い桃色のホルターネックのビキニを着ている。
>正面からじゃ見えないが、背中が大きく開いているだろう……。

りせ「日焼けマズいかなー、マズいよねーやっぱり……」

>りせはスカート付きのワンピースタイプだ。
>思ったより露出が少ないが、ライトグリーンの水着が良く似合っている。

直斗「日差し強いですね……帽子、かぶってくれば良かった」

>直斗もワンピースだが、こちらは白の飾りが無いタイプ。
>直斗らしい、派手すぎないセレクトだ。

美鶴「確かに少し日差しが強いな。あまりはしゃぎすぎると体調を壊すぞ」

>桐条さんは黒のビキニか……。
>やはり、プロポーションでは段違いだ。

美奈子「いやいやはしゃぐでしょー。海だよ?海!」

>美奈子は赤いビキニか。
>ハイレグアーマーの時も思ったが、こうして見ると肌の綺麗さが際立つな。

雪子「麦わら帽子だったらあるよ、かぶっとく?」

千枝「新しい水着、結局買わなかったけど……ま、いいよね?」

>天城と里中は林間学校の時と同じか。
>二人共、実に健康的だ……。

鳴上「あれ、風花さんは……」

美鶴「山岸なら、菜々子ちゃんを連れてくると言っていたから……ああ、来たな」

>菜々子の手を引いて、風花さんも歩いてきた。

鳴上「……!」

>確かに、凄い。
>スタイルの良さで言えば、やはり桐条さんが一番のように思うが……。
>大きさでは、風花さんが一番ではないだろうか。
>しかも思った以上に面積が少ない。
>青と白の細いストライプが入ったビキニで、パレオがその……下手をすれば溢れてしまいそうな部分をなんとか隠している。

有里「あれ。菜々子はスクール水着なの?」

菜々子「海行くって知らなかったから水着買ってもらってなかったの」

有里「ああ、そうなんだ。残念だったね」

アイギス「私はいつも通りですが、皆さん誰が一番だと思いますか?」

陽介「おっ、そういうノリいいねぇ。青春っぽいぜ」

順平「あーそうだなぁ。どう見るよ?」

完二「いや、俺は別に……」

真田「どういう基準で一番なんだ?」

岳羽「男子っていっつもこう……」

美奈子「いーじゃん面白そうで。ほらどう?可愛くない?」

美鶴「山岸、随分と……成長したな」

りせ「あ、でも山岸さん……ほらっ」

風花「ひぅっ!」

岳羽「あー、ちょっとお肉がね。味見ばっかしてるからー」

雪子「全然ですよ、そのくらい……」

千枝「うん、皆すっごい綺麗……」

有里「確かにね。けど結果は決まってる」

美奈子「えっ誰!?」

鳴上「菜々子だろ」

有里「可愛さだったら菜々子だね」

菜々子「えへへ……」

>……。

有里「まぁ、菜々子なら平気だよね」

鳴上「ああ。一番棘の無い答えだったな」

有里「……まぁ、心が痛む結果になったけどね」

鳴上「……ああ。あの笑顔は厳しかったな」

有里「人間、あんなに切ない顔が出来るんだね……」

鳴上「そうだな……」

>皆はスイカ割りをしている……。

鳴上「後で訂正しとくか」

有里「内緒でね」

>……?
>里中がスイカを持ってこっちにきた。

有里「や」

千枝「ん、これ……」

有里「わざわざありがと」

千枝「いいけどさ……」

有里「千枝、さっきの気にしてるの?」

千枝「ん?別に、可愛さで言えばそりゃ菜々子ちゃんでしょー」

有里「……千枝が一番だよ?」

千枝「うぇ?」

有里「皆の手前、菜々子って言ったけど……恥ずかしかっただけ。ごめんね」

千枝「……」

有里「本当は、千枝が一番……」

千枝「わかった、わかったから!……そりゃ、ちょっとは期待してたから落ち込んだけど、そんなに言わなくてもいいって」

有里「……泳ぐ?」

千枝「うん、スイカ食べたら行こ?」

>……なんと鮮やかな対処。
>湊は流石だ。

鳴上「さて……俺も行くかな」

>風花さんは菜々子と砂山を作っている。
>……見た目には気にしていないように見えるが。

鳴上「風花さん」

風花「あ、鳴上君。どうしたの?」

鳴上「いや、別に……」

風花「そう?」

菜々子「風花ちゃん、どうしたの?怒ってるの?」

風花「ん?怒ってないよ?菜々子ちゃん、どうしてそんな事言うの?」

菜々子「なんとなく……」

鳴上「あ、あのー……少し、お話しませんか?」

風花「いいよ、菜々子ちゃん。ちょっと待っててね」

>……怒っている、のだろうか。

鳴上「あの……」

風花「どうしたの?何か変だよ?」

鳴上「あ、いえ。その、一応、訂正しようかと思いまして」

風花「何を?」

鳴上「さっきの話です。……正直、驚いたのと照れたので、素直に言えませんでした」

風花「だから、何を?」

鳴上「あの、一番いいと思うのは誰かって……」

風花「……」

鳴上「……風花さんが、一番可愛いと思いました。本当です」

風花「……本当に?」

鳴上「はい、嘘じゃないです。ただ、その……思った以上に大胆だったんで、つい」

風花「……ぅ」

鳴上「風花さん……?」

風花「よかっ……たぁ~……」

>風花さんは胸をなでおろした。

風花「てっきり、失敗しちゃったかと思った……すっごい勇気いったんだよ、これ着るの。それでハズしちゃったらどう……どうしようかと……」

鳴上「ハズしたなんて、綺麗です。すごく」

風花「ありがと。でも酷いな、菜々子ちゃんに負けたかと思っちゃった」

鳴上「すみません……」

風花「いいです、本当に可愛いって思ってくれてるなら。でも、心臓に悪いからもうやらないでね?」

鳴上「はい。……でも、本当に綺麗っていうか。その、上手く言えないんですけど」

風花「あんまり褒められすぎても恥ずかしいから、その辺で!……ありがとね」

鳴上「……」

>パラソルの下に、二人で手を繋いで座った。
>また少し、距離が縮まった気がする。
>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが7になった。
>……。



【夕方】


>流石にはしゃぎ疲れたのか、皆それぞれにまったりしている。

風花「鳴上君、あっちの方行ってみない?」

鳴上「あっち?」

>指差した先には岩場があった。

風花「あそこ、潮溜まりみたいになってて、ちょっとした洞窟みたいになってるの。さっき菜々子ちゃんが見つけてきたみたい」

鳴上「へぇ、面白そうですね」

風花「ちょっと行ってみようよ」

>……?
>また、違和感を感じる。

風花「へぇー、こんな風になってるんだ」

>本当に洞窟のようだ。
>奥行きこそ無いが、上下左右岩に囲まれていて、入ったら外からは見えないだろう。

鳴上「ここで怪我とかしても、誰にも見つからないかもしれませんね」

風花「やだ、怖い事言わないでよ」

>風花さんは笑っている。
>……少し奥で、手招きしている。

風花「こっちこっち、もっと奥」

鳴上「何かあるんですか?」

>奥へ入る……。

風花「……ここだと、もう完全に外からは見えないね」

鳴上「確かにそうですね……って、ちょっと、どうしたんですか?」

>風花さんが俺に体を預けてきた。

風花「ねぇ、鳴上君。本当に、可愛いと思う?」

鳴上「はい、嘘じゃないです」

風花「だったら、さ。……嫌じゃ、無いよね」

>風花さんが俺の首に腕を回す。
>唇が近付いてくる。
>川原でしたのとは違う、深い口付け……。
>水着越しに、体が密着する。

風花「っぷ、ちゅ……ちゅ、ぷ……は……」

鳴上「んむ……は、ぷはっ!どうしたんですか、急に」

風花「我慢、出来なくて。もっと……はむ、ちゅっ」

>!
>唇を割って、舌が差し込まれる……。
>歯茎が、舌が、舐め上げられて……。

風花「れる……ちゅる、ん、はぁっ……はっ……」

>風花さんの体がくねる。
>手が、俺の水着に伸びる。

鳴上「風花、さ……」

風花「……鳴上君……頂戴?」

夏だから許されると思う。
開放感とかいろいろで。

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。

明日の影時間まで全裸待機余裕です

千枝はもう仕方ないから良いとしてもそれ以外のp4女子陣がキタローに惚れる事があるなら許さん。特にりせがキタローを好きになるのは絶対アリエッティ
そして菜々子は番長のだから
そこは履き違えるな

↑君の価値観を押し付けるのはどうかと思うよ?

そうか?菜々子については何も間違ってない
他はこのSSの自由だと思うけど

菜々子は結婚約束してるしな

これはつまんねーわ



P4信者湧いてるな

気持ちは分かるが
>落ち着け!

このSSが気に入らないなら読まなきゃ良いだけだろ
作者の好きにさせてやれよ

菜々子に関しては大丈夫だと思ってる
だってキタローは菜々子のコミュないし

ここ定期的にNTRの話出るね!
でもななこはおにいちゃんのおよめさんだよ?


というわけで本日分。



【2012/8/10(金) 堂島宅】


鳴上「!」

>……まさか。
>そっと、確認する。
>良かった、ギリギリ間に合ったようだ。

有里「……わかるよ」

鳴上「……おはよう。なぁ、確認なんだが。昨日スイカ割りした後どうなった?」

有里「スイカ割った後、クマが割られて」

鳴上「それから美奈子が直斗と桐条さんにセクハラして、それを見てた順平さんと陽介が例の処刑を受けて」

有里「真田先輩と完二がガチンコビーチバレーして、疲れたから帰ろうってなったんじゃない」

鳴上「だよな。覚えてる。じゃあやっぱり夢か」

有里「今日はどんな夢?」

鳴上「ああ、それが……いや、言わないぞ」

有里「残念。今日は釣り行くんでしょ?起きて準備しなよ」

鳴上「ああ、陽介に誘われてたんだっけ。今起きるよ……」

>……今日は、風花さんに会わずに済みそうだ。
>今会ってしまうと、まともに顔を見る自信が無い。
>困ったな……。



【鮫川河川敷】


順平「いやー……どうなるかと思ったな」

陽介「夏で良かったっすね……」

有里「というか、何で順平いるの?」

陽介「俺が誘ったんだよ、多分暇だと思って」

順平「お前らな、俺だって傷つくこともあるんだぞ?」

鳴上「……」

>釣り糸を見ていると心が落ち着いていく……。
>多分、気休めだけど。

順平「いやしかし……凄かったな」

陽介「誰がっすか」

順平「あ?そりゃお前、アレだろ。なぁ?」

有里「何で僕に振るの」

順平「いや、趣味ズレてたら悲しいじゃん?」

陽介「あー、でも凄かったっつーか、驚いたのはあの人っすね」

順平「お、じゃあ一緒に発表しようぜ。有里もだぞ」

有里「僕も?仕方ないな……せーのでいくよ。せー、の」

順平「山岸」

陽介「山岸さん」

有里「風花」

鳴上「……!」

順平「だよなぁ、やっぱり」

陽介「いや、あれはヤバイっすよ」

有里「三年前に一度見たけど、成長率が著しかったね」

順平「なんつーんだろうな、そりゃ形でいや桐条先輩が一番だぜ?」

陽介「俺、岳羽さんみたいな体も好きっすよ」

有里「りせや直斗も悪くない。千枝の健康的な体も良かったし、天城さんは水着でも品があった」

順平「けど、うぉっ!ってなったのは山岸だな」

陽介「……すげえ下品な話になるけど、アレ、揉んでみたいっすね」

有里「……悔しいけど、僕も同じ事を思った。あの体は……」

鳴上「三人ともその辺にしといてくれ」

順平「ああ、悪い悪い。いや、でも仕方ねえってもんだろ。お前だって正直……」

鳴上「……まぁ、正直」

有里「悠はもっと深刻だったみたいだよ。今朝もまた変な夢見ちゃったみたいで」

陽介「相棒、わかるぜ。ありゃしょうがねえわ」

鳴上「そんなつもりで好きだって言ったんじゃないんだけどな……」

順平「だってよ、俺ら男だぜ?そりゃしょーがねーよ。どうしようも無え事ってあるだろ、世の中」

鳴上「仕方ない、ですかね」

有里「実際、僕にもそういう感情があるわけだから。多分、どうしようもないんだと思うよ」

陽介「有里もそういう時あんのな。意外だわ」

有里「僕だって男さ。昔、今日は親の帰り遅いんですって言われた時はどうしようかと」

順平「おいおい、親って事はうちの寮じゃねえな。誰だよ」

有里「ええと。あの、いたじゃないですか。生徒会の後輩の」

順平「ああ!あの子か!あのおでこが可愛いメガネの」

陽介「あれ、その人知ってるかもしんねー。この前まで生徒会長だったんじゃねえの?」

順平「そーそー!え、何で知ってんだよ」

陽介「前に月光館行った時に挨拶したのその人だったんすよ。俺史上空前の眼鏡美人、記録未だ破られず。って、あの人も有里に攻略済みかよ……」

有里「へぇ……頑張ったんだ」

>……男なら仕方が無い、のだろうか。
>ただ、それは男だから仕方が無いと理解できるのは男だけだと思う。
>俺がもし女に生まれたとしたら、そんな風に思われるのはいやなんじゃないか。
>俺は、どうしたらいいんだろう。
>このままだと、風花さんをいつか傷付けるような気もする……。

有里「悠、引いてるよ」

陽介「うお!でけえぞコレ!おい相棒!」

順平「エサどころか竿持ってかれそうじゃねーか!引け!引けって!」

鳴上「俺は……どうしたら……」

陽介「だから引けっつーの!おーい!」

>……。

鳴上「竿持って行かれる所だった」

順平「ったく、感謝しろよ。しっかしでかかったな。あんなの住んでんのか、あそこ」

陽介「ヌシっすよヌシ。あれ、でも確かヌシって相棒が釣ったんじゃなかったか」

鳴上「ヌシ様はもっと大きいぞ」

有里「是非見てみたいね」

鳴上「今度な……あ」

>そういえば、エリザベスに依頼を受けていた。
>……里中に連絡しておこうか。

鳴上「湊、今度里中に肉じゃが作ってもらってくれ」

有里「肉じゃが?何で?」

鳴上「食べたがってる人がいるんでな」

有里「……変わってるね。頼んどくよ」

>さて、帰ろうか。



【夕方 堂島宅】


「こんにちわー」

鳴上「っ!?」

>今の声は……

菜々子「はーい」

「あ、菜々子ちゃん。お兄ちゃん……鳴上君いる?」

菜々子「ちょっと待ってね。おにいちゃーん」

鳴上「……どうしよう。いや、出ないわけには……ええい!」

>玄関に向かうと、案の定風花さんが立っていた。
>……まっすぐ顔が見れない。

風花「こんにちわ。お荷物お届けに参りました」

鳴上「荷物……?」

風花「うん。里中さんと一緒にお料理してきました」

>随分と早いな。

鳴上「里中だけで良かったんですけど……ありがとうございます」

風花「ええと、こっちが里中さんの。それから、こっちは私が作ったんだけど……」

鳴上「あ、金平牛蒡」

風花「ちょっと自信作。良かったら、感想貰いたいんだけど……」

>……仕方ない、か。

鳴上「あがってください。あ、でも肉じゃが……」

風花「どうしたの?」

鳴上「……よく考えたら食べたいじゃなくて見たいだったか。じゃあ、多少悪くなっても平気かな」

風花「あれ、食べたいのって鳴上君じゃなかったんだ」

鳴上「ええ、実は港区の方でリクエストされまして。日持ちしますかねぇ」

風花「……ここだけの話、食べるのが危ないくらいには色々入ってるから。だから、多分大丈夫だと思うけど」

鳴上「怖いですね……と、とにかくあがってくださいよ。頂きます」

風花「はい、お邪魔します……」

>まずった。
>勢いで部屋にあげてしまったが、今の精神状態では……。

風花「えと、早速食べる?」

鳴上「あ、はい。いただきます」

>用意の良い事に箸も持ってきていたようだ。

風花「はい、あーん」

鳴上「……あー」

>美味い。
>流石といった所か……。

風花「どう?」

鳴上「美味いです。やっぱり」

>風花さんは満足そうに笑っている。

風花「もっと食べる?」

鳴上「あ、いただきます……」

>……。

風花「結構作ってきたのに、全部食べちゃったね」

鳴上「どうも、止まらなくて」

風花「ふふ、ありがと。お粗末さま」

>箸とタッパーを片付ける。
>白い首筋が。
>薄桃色の唇が。
>長い睫が。
>少し口が開いた。
>唇の奥、赤く暗い空間が。

風花「それじゃ、帰り……」

>気が付くと、風花さんを押し倒していた。

風花「えっと、鳴上……君?」

鳴上「風花さん、俺……」

風花「待って、ちょっと……や、待ってったら……」

>額にかかる髪をそっと払う。
>その唇が欲しい。
>唇だけじゃない。全てが欲しい。

鳴上「風花さん……」

風花「嫌……」

>嫌。
>嫌……。
>嫌?

鳴上「あっ、う、あ、その、俺……」

>我に帰った。

風花「あの、あの、私……」

>風花さんは戸惑っているようだ。
>当たり前だ……!

鳴上「すみませんでした、ええと、その……どうしてこんな……」

風花「ごめんなさい。あの……今日は、駄目。その。えっと、帰ります。ごめんね」

>服を正して部屋から出て行く。
>やってしまった。
>いつか暴発するんじゃないかと思っていた。
>これで、決定的に……。

鳴上「……今日は?」

>……?
>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが8になった。



【夜 堂島宅】


>帰ってきたら悠の様子がおかしかった。
>幽鬼の如くとはこのことか、あるいは目が死んでるとでも言おうか。
>……菜々子も心配している。

有里「悠」

鳴上「なんだ」

有里「何したの」

鳴上「別に、何も……」

有里「菜々子から聞いたよ。風花が来たんだって?」

鳴上「……」

>これは確実にやらかしている。
>まぁ、抑えられないというのもわかるが……。

有里「嫌われた?」

鳴上「……かも、しれない」

有里「まだ早いよ、諦めるには」

>今日陽介に貰ったチラシをひらひらさせる。

鳴上「なんだ、これ」

有里「夏祭り。明日だって」

鳴上「ああ、神社の……」

有里「風花誘って行けばいい。何かやったなら謝って、ちゃんと言わないと駄目だよ」

鳴上「湊……」

>まさかこんなおせっかいを焼く事になるとは。
>キャラじゃないんだけどな。

有里「頑張って。勇気いるかもしれないけど。人間関係に挽回不可能なんて無いから」

鳴上「ありがとう、俺、やってみるよ」

>少しだが悠の目に光が戻った。

有里「全く世話の焼ける……さて、僕はどうしようか」

>千枝でも誘ってみるかなぁ。



【2012/8/11(土) 晴れ 堂島宅】


>昨夜、風花さんに謝罪と今日の夏祭りに一緒に行かないかというメールを送ったが……。

鳴上「返信無し、か」

>やはり、まずかっただろうか。

鳴上「そりゃそうだろ……」

>どうしよう。
>とりあえず、夏祭りか……。

鳴上「陽介辺りを誘って……行こうかな」

>気分転換にはなりそうだし……。
>陽介にメールを送った。


【夕方】


>結局、男子全員で回ることになった。

陽介「……ま、有里は仕方ねーな」

完二「そりゃ俺らよりは優先だろうよ」

真田「良い事だな」

順平「その点、鳴上はどうだ!俺達との友情をしっかり受け止めて……」

クマ「流石センセイクマー!」

鳴上「ははは……」

>これだけ騒がしければ悩んでいる暇も無さそうだ。

陽介「っしゃ遊ぶぜ!」

順平「田舎の祭りだろ?何があんだ?」

完二「田舎ほど祭りに力入れるもんスよ」

真田「花火なんかもあるみたいだな」

>……。

陽介「取りに取ったり景品!」

順平「陽介、輪投げうめーなー……」

完二「おわぁ!クマのヤツが水没してんぞ!」

クマ「ゴボガボゴボボ」

真田「引っ張り出せ、速く!」

鳴上「おいおい、大丈夫か」

>どうしてそうなったのか、金魚すくいのケースの中に顔を突っ込んでいる。

クマ「ぷはー!死ぬかと思ったクマ!センセイあんがと!」

鳴上「どういたしま……」

>思わず手を離してしまった。

クマ「おぼー!」

真田「こら鳴上!急に離すな!」

鳴上「あ、す、すみません!」

>クマを再び救い出しながら、そっちへ目は向け続ける。
>浴衣の一団。
>美奈子と、天城と、桐条さんと、岳羽さんと、りせ、直斗と。
>それから、風花さん。
>騒ぐクマたちに気付いて、風花さんがこちらを見た。

風花「……!」

>……一瞬目があった。
>しかし、すぐに逸らされてしまった。

鳴上「……」

>仕方ない、よな。

クマ「助かっ……ガボガボ」

完二「先輩、何ぼけっとしてんスか!何回ダイブさせたら気が……」

鳴上「ああ、悪い。大丈夫か、クマ」

クマ「センセイしどいクマ……」

>……。

順平「いやー思ったより派手でよかったな」

完二「これから花火っスけど……」

陽介「野郎だけで花火ってのも、なぁ」

真田「花火に男女は関係ないだろ?」

陽介「気分の問題っすよ」

順平「あー、アレだったら向こうと合流すっか?」

陽介「おお!いいっすね!」

順平「んじゃ連絡すんぜー」

鳴上「あ、俺は……」

完二「どうかしたんスか?」

鳴上「……いや、なんでもない」

真田「おかしなヤツだな」

>合流してしまうと、風花さんと……

順平「もっしもーし!順平くんでっす!あ?んだよ、そんな露骨に嫌そうな声出すなって。ゆかりッチ、今どの辺?」

順平「おう、おう。あー、そうなん?おう、おっけ、わかった。んじゃ後でな!」

>順平さんがちらりとこちらを見た。

順平「鳴上、先に場所取っといてくれってさ」

陽介「あ、だったら俺も……」

順平「バカ、お前はいいんだよ。鳴上、頼めるか?」

鳴上「はぁ、まぁ」

順平「よく見えるとこ頼んだぜ!」

>……何か様子が変だ。
>まぁ、行ってみるとしよう。

鳴上「……この辺なら、大人数でも見れるな」

>場所取りが意外と面倒だった。
>が、ここなら花火もよく見えるし、人数が多くても平気だろう。

「私、この辺良くわからないんだけどな……」

>?
>この声は……。

鳴上「風花さん?」

風花「あ、え?鳴上……君?」

>何故、ここに……
>あ。

鳴上「……場所取りしてこいって言われました?」

風花「うん。鳴上君も?」

>どうやら、そういうことらしい。

鳴上「……」

風花「……えと」

鳴上「……すみませんでした」

風花「ごめんなさい」

>二人の声が重なった。

鳴上「え?」

風花「ん?」

鳴上「ええと……」

風花「な、鳴上君から、どうぞ」

鳴上「あ、はい。あの、昨日は……すみませんでした。突然、あんな事しちゃって。その出来心というか……とにかく、すみません」

風花「今日は、お祭りに誘ってくれたのに返事しなくてごめんなさい。ちょっと、思う事があって……そのままにしちゃってました。ごめんなさい」

鳴上「思う事?」

風花「うん、その……嫌われたんじゃないかな、とか」

鳴上「俺が嫌う?何でですか」

風花「逃げちゃったし……」

鳴上「だって、それは俺が……」

>……沈黙。

鳴上「……っぷ」

風花「……ふふ」

鳴上「なんだ、そんな事気にしてたんですか?」

風花「鳴上君こそ。同じような事考えてたんだね、私達」

鳴上「はは、どうもそうみたいですね」

風花「何か、おかしいね。ふふふ」

鳴上「あれ、ってことは……」

風花「ん?」

鳴上「ええと、風花さんは……ああされた事自体は、嫌じゃ無かった……」

風花「……えっと、その……はい」

>いかん、また調子がおかしくなりそうだ……。

風花「だって、そういう風になるって事は、それだけ、その……魅力的というか。そういう風に見てもらってるんだなって思って……」

鳴上「……顔、真っ赤ですよ」

風花「だ、だって!恥ずかしい……変な子だと思われないかなって」

鳴上「全然。あの……じゃあ何で逃げたんですか?」

風花「……シャワー」

鳴上「はい?」

風花「暑かったでしょ、昨日。だから、汗とか……一応、一回シャワー浴びて行ったんだけど、やっぱり気になっちゃって」

鳴上「……確か、今日、叔父さん帰って来ないんですよ」

風花「そう、なんだ」

>……おかしかっただろうか。
>タイミングを失敗していないか?
>露骨すぎやしないか?
>というか、俺は何を期待しているんだ。
>俺は、そんなつもりで風花さんを……。

風花「……今日、泊まりに行っていい?」

>それでも。
>いや、好きだからこそ、だろうか。
>俺は、風花さんが……。

>欲しい。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが9になった。



【夜 堂島宅】


鳴上「菜々子は友達と祭り行ってたみたいで、疲れて寝ちゃいました」

風花「あはは、楽しかったんだね」

鳴上「ですね」

>……。
>湊から連絡があった。
>陽介の家に泊まるという。
>恐らく、気を利かせてくれたのだろう。
>ありがとう、湊。

鳴上「いや、ありがとうは皆かな」

風花「ん?何が?」

鳴上「いえ、何でも。……風花さん」

風花「はい」

>意は決した。

鳴上「本当に、最初からそういうつもりだったわけじゃない。でも、気が付くと……文字通り、寝ても覚めてもあなたの事しか考えられなくなっていて」

鳴上「そのくらい、好きで……だから、俺は、風花さんが欲しいです。体も……心も」

>言い切った。
>よくもまぁ恥ずかしげも無く言えたものだと自分でも思う。
>風花さんは赤面している……が、ちゃんと答えてくれた。

風花「あの、ですね。私は、その。多分、鳴上君が思ってるより大した事も無くて。えっと、だから、満足してもらえるかわからないけど……」

風花「……全部、あげます。食べちゃってください」

鳴上「……先に言っておきますけど。その、初めてなので、ぎこちない所とかあったらすみません」

>風花さんがちょっと笑った。

風花「はい。よろしくお願いします」

>並んでベッドに座り、そっと肩を抱く。
>ゆっくりと、キスをした。

風花「っは……ん……ちゅっ、っぷ……」

>離れようとすると、風花さんが追ってくる。
>終わらない、キス。

風花「っはぁ、あっ……ん……」

>ふと、夢を思い出した。
>舌を、風花さんの中へ滑り込ませる……。

風花「んんっ……ふぁ、れろっ……れる、くちゅっ……や」

>声が漏れ始めている。
>そのまま、ゆっくりとベッドに寝かせた。

鳴上「痛かったりしたら、すみません」

風花「ん……大丈夫だよ、別に初めてってわけじゃ……」

鳴上「……あの、一つだけいいですか」

風花「なぁに?」

鳴上「もしかして、風花さんの最初の相手って……」

風花「……あり」

鳴上「もういいです、わかりました、なるべく考えたくありません」

風花「ふふふ、でも今は鳴上君だけだよ。……ね?」

鳴上「まったく……アイツ、何も無いとか言ってたくせに」

風花「一回だけ、だよ」

鳴上「ああ、別に……そんな事気にしませんよ。聞いてみただけです」

>そっと、服を脱がせていく。



風花「……あ」


>……。

鳴上「……大丈夫でした?」

風花「ん、うん。ありがとう」

>まだ顔が赤い。

風花「……ちょっと、疲れたね」

鳴上「ですね」

風花「あ、そうだ」

>風花さんは起き上がると、自分の荷物を探り始めた。

鳴上「どうかしました?」

風花「えっと、確か……あった」

>手帳?

風花「これね、私が前まで使ってたレシピ帳。今のに変えてから使ってなかったんだけど、鳴上君にあげようと思って」

鳴上「……今ですか」

風花「ご、ごめん。忘れちゃってて……こんなタイミングでごめんね?」

鳴上「それもまあ、俺達らしいんじゃないですか。有難く頂きます」

風花「うん。……ちょっと、眠いかも」

鳴上「寝ますか?」

風花「ん……あの……腕枕、とか」

鳴上「ああ、はい」

>風花さんは嬉しそうに隣に寝転んだ。

風花「おやすみ……好きだよ」

鳴上「俺もです。……おやすみなさい」

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが10になった。
>『風花のレシピ帳』を手に入れた。
>……俺も、眠くなってきた。
>風花さんはもう寝息を立てている。
>……寝よう。



【2012/8/12(日) 雨 堂島宅】


>目が覚めると一人だった。

鳴上「……あれ?」

>昨夜の記憶を辿る。

鳴上「ああ、そうか。湊は陽介の所か。目が覚めるとアイツがいるってのにも慣れたな」

>今日は雨か。
>さて、何をしようかな……。


では、また後日。

まぁ予想はしてたがやはり非処女だったか

なかったことにしなくてはならない

コミュMAXになったから他の女の子にも手を出しても平気だね!(ゲーム的には)

謎の敗北感

実に聞きたく無い言葉だな

なんだろうWeek喰らった気分

キタローは全員貫通済みなのに対して、番長の健全なこと

どうしてこうなったいいぞもっとやれ

あれだな
セクロスはしていて欲しくなかったな

キタロー嘘ついちゃあいかんよ

本日分。

>……?
>机の上を見ると、手帳が一冊置いてある。

鳴上「……湊の、かな」

>どこかで見たような……。

鳴上「湊には悪いけど、ちょっと確かめさせてもらうか」

>ぺらぺらとめくって見ると、イラスト付きで料理のレシピが書いてある。

鳴上「随分と可愛い字だな。これ、湊のじゃないんじゃ……?」

>ページの各所に『鳴上君へ』とアドバイスが添えられている。

鳴上「俺宛?一体誰が……」

>頭痛がする。
>最後のページにはレシピではなく、メッセージが書いてあった。

鳴上「これも俺宛、か。誰が書いてるんだ……?」

>『鳴上君へ 私みたいな、地味でぱっとしない子を好きだって言ってくれてありがとう。
       私の料理、いつも美味しいって言ってくれてありがとう。
       笑顔でいてくれてありがとう。笑顔をくれてありがとう。
       書き出したら書ききれないくらいありがとうがあるので、この辺で止めておきます。
       私は、鳴上君の全部が好きです。できれば、いつも一緒に居たいくらい。
       でも、流石にそれは無理だから、このレシピ帳を渡します。
       出来たら、いつも持ち歩いてね。私の代わり。
       言葉で言うと恥ずかしくて、上手く言えないかもしれないから、こうして書いてみました。
       あ、でも読んでも何も言わないでね。恥ずかしいから……』
>なんだ、この文章は。
>これを書いた人は、俺とどういう関係なんだ?
>俺にそんな相手は……
>文末に、名前が書いてあった。

>『愛しています。 山岸風花』

鳴上「やまぎし、ふうか……?」

>酷い頭痛がする。
>何か、脳の領域がこじ開けられていくような……。

鳴上「俺は、この名前を知らない……けど、覚えてる?どういう事……ぐっ」

>頭が痛い。
>頭蓋骨が割れそうなイメージが喚起される。

鳴上「……今朝、俺は間違いなく一人だった。そこに違和感があった理由は何だ?」

>湊が陽介の所に泊まっているなら、俺の部屋には俺だけになる。
>当たり前だ、この部屋は俺と湊の部屋なのだから。

鳴上「でも、昨夜……この部屋に、他の誰かがいた?」

>思い出せ。
>記憶にかかった蓋を外せ。
>昨日、俺は何をした?
>昨日、俺はこの部屋に誰を入れた?
>映像が浮かんでは消える。
>誰だ。
>笑顔のこの人は
>少し切なそうなこの人は
>顔を赤く染めて、俺を受け入れてくれたこの人は誰だ。
>……誰だ!

鳴上「……風花、さん?」

>口に出してみると、やはりしっくりきた。
>知っているはずだ、しかし思い出せない。

鳴上「湊……湊に連絡を……」

>そもそも、何故湊は陽介の所に行ったのか。
>その理由がこの人だったはずだ。
>俺が、この人を泊めるから、あいつは……
>湊の携帯に電話をかける。
>早く、早く出てくれ……!

有里『……もしもし?』

鳴上「っ湊!聞いてくれ!俺の記憶が……」

有里『記憶が?』

鳴上「ああ。覚えてるんだけど知らないんだ!知らない人との記憶があって、でもその事ははっきり思い出せなくて、俺は……」

有里『待って、落ち着いて。状況を詳しく』

鳴上「すまん、取り乱した。……山岸風花って人の事が思い出せないんだ。多分、大切な人だったはずなのに。お前、何か知らないか」

有里『風花?風花って……』

鳴上「知ってるんだな!?」

有里『ごめん、良くわからない。その風花さんについて、僕は知らない』

鳴上「え……だって、お前が昨日陽介の所に泊まったのって、俺がその人を泊めるからだよな?」

有里『……あれ?』

鳴上「違うのか?」

有里『言われてみれば、何でだろう。……あれ、おかしいな。覚えてない』

鳴上「湊も……?」

有里『うん、どうやらそうみたい。……ちょっと、おかしいね』

鳴上「ちょっとじゃない。俺は、忘れるわけが無いような記憶を忘れてしまったみたいなんだ」

有里『……そっか。そうだよね。悠、僕と一緒に会ってもらいたい人がいる』

鳴上「今はそんな事してる場合じゃ……」

有里『重要な話なんだ。今から連絡してみるから、後で合流しよう』

鳴上「俺たちの記憶と関係ある人なんだな?」

有里『大いにある、と思う。まだ詳しい話は聞いてないんだ。いやな予感がして……ね』

鳴上「わかった。それじゃ後でまた連絡をくれ。頼んだぞ」

>電話を切った。

鳴上「頭が痛い……くそ、何だ。何が起きてる。昨日俺は誰と居たんだ。俺は……」

>倒れこむようにして、再び眠った。



【愛家】


鳴上「おい、こんな所でいいのか?大事な話なんだろう」

有里「いいんだってさ。……今日会ってもらう人は、僕が以前出会った刑事だ」

鳴上「刑事?」

有里「うん。多分、僕達よりも今の状況に詳しい人。……以前、連絡先をもらってたんだけど」

鳴上「なんで連絡しなかったんだ」

有里「Nyxを封印して解決したと思ったからだよ。それに……少し、毎日楽しすぎてね。出来る事なら、このまま日常を楽しみたかった」

鳴上「……そうか。でも、そうも言っていられない」

有里「そうだね。残念だけど、次に進まないといけないみたいだ。僕達は、多分その為にいるから」

>愛家に入る。

あいか「いらっしゃーい」

「随分と待たせてくれたな」

>数人の客の中に、こちらを見て手を上げた男がいた。

鳴上「あ?……どこかで見たような気がする」

有里「え?本当に?」

「あー、俺、前にテレビも出た事あるから」

>思い出した!

鳴上「確かにテレビで見た顔だ。確か、立派な刑事になるのが目標で……名前が」

周防「周防達哉。お前らの……先輩ってところか。まぁ、座れよ」

>転校初日にギャグとして使った名前だ。
>……誰にも、伝わらなかったが。

鳴上「すみませんでした」

周防「……俺は、お前に謝られるような覚えは無いぞ」

鳴上「こっちの話です。……で、俺達の先輩っていうのはどういう意味ですか?まさか月光館の」

周防「違う。お前らみたいな境遇になった事があるってことだ」

有里「僕らみたいな、境遇」

>周防さんはライターの蓋を鳴らした。

周防「最初にお前らの話を聞きたい。どうして、今更連絡してくる気になったのか」

鳴上「……信用して話ます。実は……」

>今朝気付いた事を話した……。

周防「……」

鳴上「それで、まずいと思って相談に」

>イライラしているのだろうか。
>ライターの蓋を連続で鳴らしている……。

有里「あの」

周防「ああ、悪い。……そうだな、まずはこの世界について説明するか。お前達、世界はここ一つだと思うか?」

鳴上「パラレルワールドの話ですか?」

>以前も少し聞いたような気がする。
>あれは、確か……

有里「そうは思いません。世界は選択によって複数に分岐し、同時に存在している……んじゃないでしょうか」

周防「その通りだ。お前達にはちょっと覚えのある話なんじゃないか」

鳴上「確かに、他の世界の産物を目にしてますから……」

周防「で、だ。先に言っておく。俺がこれから話す事を聞けば、きっと今まで通りじゃいられなくなる。お前ら、それでも俺の話を聞く覚悟はあるか?」

有里「どういう事ですか?」

周防「ヒントを与えると、その分難易度が上がるって事だ。そういう風にしてくるだろう。俺の知ってるアイツならな。それでも、ヒントを聞いて……失くした物を取り戻すか?」

>失くした物……。

有里「悠。君が決めて欲しい。僕はまだ、そこまで大事な物を失くしたわけじゃない。ただ、君は……」

>答えは最初から決まっている。

鳴上「悪いが、付き合ってくれ。周防さん、俺は、それでもあなたに教えてもらいたい。それで、失くした何かを取り戻せるなら」

>ライターが、一際大きく鳴った。

周防「……そうか。それでこそ男だな。まずは、何から話そうか……そうだな、俺の昔話を聞いてくれ」

>周防さんは今までの自分の半生を語った。
>自分達がパラレルワールドを作り出した事……
>パラレルワールドで、自信が原因となって起こった戦い……
>自らの『罪』
>そして、『罰』……。

周防「……と、これが俺の罪と罰だ。わかったか?」

鳴上「……なんというか、その」

有里「……すさまじい話ですね」

周防「そうでもない。お前達も多分同じような事をしてるはずだ」

>確かに、滅びかけた世界を救った事はあるが……。

有里「一つ、疑問があります。さっき、話の中で周防さんは二人出てきましたよね。貴方は、どちらの周防達哉なんですか?」

>ライターをまた一つ鳴らした。

周防「この世界は、滅ばなかった世界だ。だから、こっちにいる俺は、本当なら俺じゃなかったはずだ」

有里「つまり、貴方は」

周防「滅んじまった方の世界の記憶がある。特異点を経験した俺だ」

鳴上「おかしく無いですか?だって、さっき……」

周防「戦いの後、俺は向こうに戻る事を選んだ。だけど、今俺はここにいる。これが異常の一つだ」

>また、ライターを鳴らした。

周防「……お前達は、昔の俺と同じだ。あらゆる可能性の分岐点……特異点。ターニングポイントってヤツだ。俺が思うに、お前達の為にこの世界は作られた」

鳴上「俺達の為に……?」

周防「そうだ。お前達がどうにかする為に生まれた世界だ。自覚しろ。お前達がどこから来て、何をしたのか。思い出せ、あらゆる過去を」

>あらゆる過去……。
>突如として、脳裏にシャドウとの境界線が消えた世界が浮かんだ。

鳴上「……ッ!」

有里「世界は、一度滅んでいる……?」

周防「……それは、お前達が選ばなかった過去。経験したはずの無い事実だ。だけど、思い出すことが出来る。そうだな?」

>フラッシュバックは止まらない。
>今まで知った顔、その全てが笑い、泣き、そして死ぬ。
>苛烈なまでの記憶の奔流。

鳴上「これが、特異点……?」

周防「正確には俺の時とは仕様が違うが、そういう事だ。ここは、無数に枝分かれする世界の中で、お前達を観察する為に作られた舞台だ」

有里「僕達を観察……」

周防「世の中の人間の望みを叶えるってヤツがいるんだ。最初は俺の時と同じ手口、噂がヒントだったんだが」

鳴上「それを俺達が、一応とは言え解決してしまった」

周防「みたいだな。それから、アイツは手を変えてきたみたいだ」

>パチン。ライターを鳴らした。

周防「世界はお前達を中心に回っている。それは、お前達の周りでばかりおかしな事が起こることからわかる。それで、ここから先は俺の経験からくる推測だ」

>カチン。ライターを鳴らした。

周防「お前達、友達はいるか」

鳴上「まぁ、一応」

有里「多くは無いけど」

周防「だったら、仲良くなると良くない事が起こるかもしれない。例えば、最初からいなかった事になったり」

>最初から、いなかったこと……?

周防「俺の時もそうだった。特異点に関わりすぎると、以前の世界と繋がっちまう。そうなったら面倒だ。だから、消す。そういう事が出来るヤツなんだ、相手は」

>つまり、それって、風花さんは、俺のせいで?
>パチン。

周防「ここは切り離された世界だ。作り出された箱庭。お前達がこの世界を良しとせず、元凶をぶっ倒したとしよう。すると、この世界は消えて……」

周防「どこかはわからないが、分岐した地点に戻る。今まで起きたおかしなことは全部ご破算でな」

周防「死んだヤツが生き返ることも、他所の世界から来たヤツも、消えていったヤツも、全部元に戻る」

有里「元に、戻る」

>足元が崩れた。
>今まで、皆の為に戦ってきたはずが、皆の為に何かする程皆を失うことになる?

鳴上「……どこのどいつがそんなふざけた事を」

周防「どいつかは見当がついてる。ただ、どこかはわからん。名前だけ教えておいてやる」

周防「そいつに顔は無い。色んなヤツの集合体だからだ。そいつはどこにもいない。けれど気が付けば這い寄って来ている。その名は」

周防「ニャルラトホテプ」

鳴上「ニャルラトホテプ……」

>それが、俺から大事な仲間を。
>恐らくは、仲間以上に大切な人を奪った相手。

鳴上「必ず、倒す。元に戻れば、消えた人も帰ってくるんですよね」

周防「この世界にじゃないだろうけどな。元々いた世界には戻れるだろう。ただし、こっちでの記憶なんかは無いかもしれない。いや、多分無いだろう」

鳴上「それでもいい。どこかで生きていてくれればいい。俺は……」

>そこまで言って、ふと気付く。
>湊の様子がおかしい。

鳴上「湊……?」

有里「……少し、具合が悪くて。吐きそうなんだ」

>確かに、目の焦点も合っていないし、小刻みに震えている。
>無理も無い、こんな話を聞かされては……。

周防「……悪かった、一気に話すつもりじゃなかったんだが。だが、言った通りだろ。今まで通りじゃいられなくなる」

>今までは、強い絆こそ力だった。
>いや、今もそれは変わらない。
>だが、絆が強すぎるとそれを失うことになる……?

鳴上「俺達は、どうすれば……」

>カチン。

周防「そこまでは、俺にもわからん。ただ、言うなればお前達は主役だ。俺たちはただの舞台装置にすぎない。だから、決めるのはきっとお前達だろ」

>……。



【堂島宅】


鳴上「おい、大丈夫か湊」

有里「平気さ。大丈夫……ごめん」

>湊はまだ具合が悪そうだ。

有里「悠は、やっぱりこの世界が無くなっても、ニャルラトホテプを倒そうと思ってる?」

鳴上「当たり前だ」

有里「でも、この世界で知り合った人達と知り合う前の地点に戻るかもしれないんだよ」

鳴上「そうなったら、また知り合えばいい。また仲良くなればいい。一回出来た事だ、出来るはずだろ」

有里「……そうだね」

>自分で言って、少し引っ掛かった。

鳴上「具合が悪いなら、寝とけ。これからの事は……明日考えよう。相談できる相手も含めて、打ち合わせしないと」

>これからは、もしかすると俺と湊だけの戦いになるかもしれない。
>もしそうなったとしても、湊と一緒なら誰にも負ける気はしない。
>もう、風花さんの事ははっきりと思い出す事が出来る。
>ただ、これを俺以外に期待しても無駄だろう。
>俺以外の人にとって、山岸風花なんて人は最初からいなかったのだから。

鳴上「……絶対に、何とかしないと」

この日、大事な物を失くした。
一つ目は、風花さん。
そしてもう一つは、この時気付いていなかった。
頭に血が上っていたからか、それとも意識して気付かないようにしていたからか。
自分の都合ばかり考えていた。

全てが元に戻るということは、アイツやアイツも元に戻るって事だ。
そんなことって……。

今日は短く。

では、また後日。

キタロー死ね

このキタローp3女子陣全員とヤってるのか
それに比べて番長は番長なのに誰にも手をかけないとかどんだけ紳士な番長なんだよwww

これキタロー封印に戻されてしまうん

おのれニャルゆ〝る〝さ〝ん〝

キタローはゲームシステム上仕方ないだろ 番長みたく友達ルートと恋愛ルート選べないんだから

さて番長は銀幕デビュゥが決まったわけだが
ある意味あれは続きは映画でね!手法に似ているが…
真エンディングは映画でね?なので許せる

が気持ち的には ゆ〝る〝さ〝ん〝

今いるキタローがこの世界のキタローじゃないのか、ただキタローが嘘吐いただけなのか
どっちなんだろう?

トリップテスト、と。

900越えたしトリップ導入。
思ったより長くなってしもうた。
このスレ内で終わらせる予定だったんだけど・・・

というわけで本日分。



【2012/8/13(月) 雨 堂島宅】


>今日も雨だ。
>……気分が優れない時に雨が降ると、少し癒されるような気がする。
>夏の日差しよりは今の俺に優しいように思えた。

鳴上「湊、気分はどうだ?」

有里「……もう平気。心配かけた」

>今確実に出来る事は、湊とは協力できるって事だ。
>仲間にいるとこれほど頼もしいヤツはいない。

鳴上「これから、どうしようか」

有里「どうするもこうするも……とりあえず、現状の整理だ」

鳴上「まず、今いるこの世界はどこかから枝分かれした物で、それは俺達が選択した結果じゃない……んだよな?」

有里「周防さんが言うにはそうだね。誰かが僕達を観察する為にでっち上げた世界」

鳴上「一種の平行世界ではあるけど、誰かに作られた物だから、その誰かを倒せば消滅する」

有里「ニャルラトホテプだっけ。名前だけなら可愛いんだけどね」

鳴上「冗談言える状況か。そして、消滅すると……」

有里「この世界に枝分かれした時点まで遡行して、その時点から通常の生活を送れると。ただし、この世界での記憶は無し」

鳴上「結局、どうしたってこっちで知り合った人達や、仲良くなった事も無かった事になるんだよな……」

有里「悠はそれでもやり直せばいいって言ってたじゃない。その通りだと思うよ」

鳴上「そうだな……そして、俺達はこの世界が平行世界の内一つである事を自覚した。それによって、色んな事を理解する事が出来た」

有里「更に僕達に深く関わると、何らかのペナルティが加えられるらしいね。そういうルール」

鳴上「風花さん……俺のせいで」

有里「仕方ないさ。僕はもうその風花さんの事は覚えてないけど、お互いが望んで絆を深めたのなら……後悔は無い。だろ?」

鳴上「それでも、俺は許せない。例え作られた世界でも、俺と関わった人がどこかへ居なくなってしまうなんて、とても耐えられたものじゃない」

有里「……それなんだけど、少し疑問がある」

鳴上「何だ?」

有里「僕はまだわからないけど、悠は居なくなった風花さんの事をはっきり覚えてるんだよね?」

鳴上「ああ」

有里「恐らく、それは僕達が特異点だから……だと思うんだけど。じゃあ、居なくなったからって風花さんとの絆が消えるわけじゃないんじゃないかな」

>確かに、自分の心の中にはっきりと風花さんとの絆を感じる。

鳴上「絆の力は失ってないみたいだ」

有里「……なら、いい。それで、これからの事を考えよう。実は、僕の方針は昨夜決めてあるんだ」

>僕達の、では無く僕の、か。

鳴上「どうするつもりだ?」

有里「このまま、皆と絆を繋いで行きたい。そうしなければ僕達の力は十分に発揮できない。そうでしょ?」

鳴上「それはそうだけど、それじゃもしまた誰かが居なくなったら……」

有里「居なくなっても絆の力自体は保持できる。なら、これが最良だと思うけど」

鳴上「じゃあ、お前は皆が居なくなっても平気なのか?」

有里「平気じゃないさ。けど、現実的に見てそうする事が一番効率的だと思う。もしこの世界を消滅させる……ニャルラトホテプと戦うなら、やっぱり力が必要だ」

鳴上「でも、俺とお前がいれば……!」

有里「世界を作るような相手だよ。まず同じ土俵で戦ってくれるのかどうかも怪しい。少しでも力を付けておく必要がある。わかるだろう?」

鳴上「それじゃ……俺達の勝手で皆を……居なくなるならまだいい。もしかしたら死んだり、他のペナルティを受ける可能性だって……」

有里「前に言ったよね。君のソレは理想を追っているのか、それとも現実を見る勇気が無いのか。今回はどっち?」

鳴上「俺は……!」

>湊の言う事は正しいように思う。
>いや、多分正しいんだろう。
>だけど、俺は今この世界に存在している。
>それは他の皆も同じで、だから、そんな皆を俺達が勝手に決めた事で犠牲にするなんて事は……。

有里「……言いたくは無いけど、所詮消える世界だ。ならどうなろうと……」

鳴上「それ以上は言わないでくれ。頼むから」

有里「……」

鳴上「そうだ、せめて事情を説明して、それでわかってくれる人を……」

有里「わかってくれたからどうするの?結局はどうなるか分からない道に引きずりこむだけだ。同じだよ、どうなろうと」

鳴上「俺は、俺はこれ以上誰かを失いたくない。だから、俺は……」

有里「これ以上誰とも関わらない?そんなこと可能なのかな」

鳴上「関わり全てを断つのは不可能でも、これ以上踏み込まないことは出来るはずだ。そうすれば、誰も失わずに済む」

有里「僕は嫌だ」

鳴上「湊……」

有里「……僕は、皆ともっと、繋がっていたい。悠がもし止めたとしても、それは変わらない」

鳴上「……」

有里「僕も、本当なら悠のように言いたい。けど、重すぎるんだ。その決断は……僕には出来ない」

鳴上「でも、それじゃ」

有里「何度もは言わない。僕はこのまま過ごす。もし悠がそれに納得できずに止めたいなら止めればいい」

>湊は本気だ。
>あの時のような、本気の目をしている。
>……くそっ。

鳴上「どうして皆が居なくなるかもしれないってのにそんな事が言えるんだ?お前は皆をどう思ってるんだ?」

有里「大好きだよ」

鳴上「だったら!」

有里「悠、君にはもう一度がある。もしこの世界が無くなっても」

鳴上「何を言ってるんだ?」

有里「特異点の話だよ。分岐したのはどこだろう。覚えは無い?」

鳴上「そんな事言われても、そんなタイミングに覚えなんて無いぞ」

有里「最初の異常だよ。事件が起きたのはいつかな」

鳴上「……最初は、影時間の復活」

有里「そう、そのはずだ。そして、影時間の復活は同時に僕がこの街に来た時でもある」

>……湊は何が言いたいのだろう。
>今はそんな話をしていない。

鳴上「それがどうしたんだ」

有里「わからない?本当に?この世界が消滅したら、時間を遡って分岐前のポイントに戻る。つまり、何も異常が起こっていない時に戻るんだ」

鳴上「だから!それが……」

有里「影時間が復活しなければ、僕はここにいないんだよ」

>あ。
>大いなる封印、それが解けた事による魂の開放。
>それがあったから、湊は今ここにいる。
>影時間の復活が無い所まで戻ってしまえば……。

鳴上「湊、お前……」

有里「僕には二回目は無い。もう一度知り合って、仲良くなる事は出来ないんだ」

鳴上「……」

有里「出来れば、止めないで欲しい。僕は、もう悠と争いたくない……自分勝手だけど」

有里「楽しいんだ、毎日。昔は無かった感情が、感覚がたくさん。僕は、今そういう日常を謳歌出来ている。多分、二度とない日常を」

有里「だから、最後まで楽しみたい。全て、僕の勝手な理由だ。悠の友達も居なくなるかも知れないのに。だから、止める権利はある」

>止めたい。
>誰も失わずに済むならそうしたい。

鳴上「俺は、お前だって好きだ。……湊がそうしたいなら、そうすればいい。止める事なんて出来ない」

>恐らくは、本人も辛い。
>余り動かないその表情に、苦悩がはっきり見てとれるくらいには。
>そんな顔を見せられて、誰が止められるだろうか。
>少なくとも、俺には無理だ。

有里「ありがとう……そして、すまない。僕を、許してくれ」

鳴上「……」

>雨が降っている。
>しばらく二人は無言で過ごして……。
>無言のまま、湊は部屋を出て行った。



【2012/8/14(火) 晴れ 堂島宅】


鳴上「……誰とも何もしないって、暇なもんだな」

>……これ以上深い仲を築いてはいけない。
>その為には、まず関与を避ける事だと思ったのだが。

鳴上「そうだ、俺がこうしてても湊は関わってるんだから、別に俺が我慢してても……」

>いや。

鳴上「違う、そうじゃないだろ……初日から挫けそうになってどうするんだ」

>決めた事だ。
>俺が動かなければ、向こうからそこまで積極的に関わってくる人はいないだろう。
>風花さんはもういないし……こうして退屈と戦うだけで、不測の事態は免れる。

鳴上「早いとこ慣れないとな。これからは……毎日こうなんだし」

>電話が鳴っている。

鳴上「……どうすべきか」

>無視すると、きっと様子がおかしいと勘繰られるだろう。
>そうなると、心配されてまた何かアクションが起こる可能性がある。

鳴上「結局、それなりにやるしかないか」

>電話に出よう。

鳴上「もしもし」

アイギス『鳴上さんでしょうか』

鳴上「あれ、アイギスさんですか?」

アイギス『はい、私です。今花村さんの電話をお借りして連絡しています』

鳴上「そうですか。何か用事でも?」

アイギス『はい。今日、夜にバーベキューでもしないかと提案がありまして、各自食材を持ち寄るようにと』

鳴上「バーベキュー?」

アイギス『お肉が食べられます』

鳴上「あの、俺は……」

アイギス『どうかしましたか?都合が悪いとか』

鳴上「……」

>ここで都合が悪いと言えば、それでいい。
>用事があるから行けない、とそれだけいえば……。

鳴上「……今日は、少し」

アイギス『お肉が食べられますよ?』

鳴上「いや、わかってますけど」

アイギス『……あ、お野菜の方が』

鳴上「食材の問題じゃなくですね。今日は少し用事が」

アイギス『……そうですか、残念です。皆さん楽しみにしていると思います……ですが、用事なら仕方ないですね』

>何故そう、後ろ髪を引かれるような言い方をするんだ。
>……行きたいな。
>楽しいだろうな。
>……今日で、最後だ。

鳴上「……いえ、何とかしてみます。適当な食材見繕って持って行きますね。場所、どこですか?」

アイギス『鮫川の河川敷だそうです。夕方に集まって、ご飯を食べた後に花火でもしようと』

鳴上「わかりました。……あの、アイギスさん」

アイギス『どうかしましたか?』

鳴上「ありがとうございます、わざわざ連絡してくれて」

アイギス『……?鳴上さんが来ないと、気になりますから。では、また後で』

>電話が切れた。
>俺がいないと気になる、か。

鳴上「意思弱いな、俺」

>……今日で最後。
>これは守る。
>今日で、最後だ。
>……最後……か。

鳴上「あ、そうだ。折角だからちゃんと仕込みしてから行くか。……丁度、レシピ帳にも何個か書いてあったし」

>風花さんのレシピ帳を握り、台所へ向かう。
>冷蔵庫を開けるも、大した食材は入っていない。

鳴上「……ま、適当にでっちあげるか。何も無いわけじゃなし」

>食材の仕込みの途中、何かを思い出しそうになって辛かった。



【夕方 鮫川河川敷】


>二日降った雨も、夏の日差しに負けて渇き切っている。
>少し蒸し暑く、過ごし易いとは言えない気温だった。

アイギス「あ、鳴上さん。良かった、来れたんですね」

鳴上「はい、何とか。あ、これ一応持ってきたんですけど」

>皆揃っている。

岳羽「お、どれどれ。うわ、すごい凝ってんね」

鳴上「そうでも無いですよ」

陽介「おー相棒!今日用事あるっつってたからもしかしたら来ねえかと思ったぜ!いや良かった良かった!さて、それじゃそろそろ始めますか!」

クマ「全力で食べるクマー!」

順平「着火は任せろー」

>順平さんが炭を熾して網を乗せた。

美鶴「火に気をつけてな」

真田「違う、そうじゃない。こっちに乗せるんだ。そこは少し火が強すぎる」

完二「こっちっスか?え?違う?どこでもいいだろ焼けりゃよぉ」

>……。

美奈子「あ、このお肉おいしー」

雪子「ほんと、美味しい……これ、鳴上君が持ってきたんだっけ」

直斗「ああ、久慈川さん!そんなに唐辛子を……」

りせ「だーいじょうぶだって!美味しいよ多分!」

>皆から少し離れた所で食べる事にしよう。
>そう思って移動したら、湊がついてきた。

有里「来ないつもりだと思ってたよ」

鳴上「そのつもりだったよ」

有里「じゃあどうして?」

鳴上「……思ったより、意思が弱くてな。あれだけ言っといてお笑いだけど」

有里「僕が笑える話じゃないよ」

鳴上「でも、今日で最後だ。これからは……一線引いて接する事にするよ」

有里「悠……」

鳴上「心配しなくても、お前の邪魔したりはしないから。やっぱり勇気が無いんだと思うよ、俺は。何かを失くす事が怖くて仕方ない」

有里「それは臆病じゃなくて優しいって言うんだよ。これも、僕が言う事じゃないけど」

鳴上「……ほら、里中がこっち気にしてるぞ」

有里「……ほんとだね。行ってくるよ」

鳴上「ああ、じゃあな」

>……。

順平「いやー食った食った!いい具合に暗くなって来たし、花火行くか!」

クマ「もう食えんクマー……クマここで寝てるから花火持ってきてー」

陽介「バカ言ってねえで立てよ、汚れんぞ?この三十連発ってヤツやろーぜ!」

完二「開幕それっスか、もっとこう、小さいのから……」

真田「細かいことは気にするな。派手にこしたことはない」

美鶴「火傷するなよ?」

岳羽「なんか、美鶴先輩お母さんみたいだよね、今日」

美奈子「まぁ真田先輩がアレだし、最年長として張り切ってんじゃないの?」

アイギス「これ、私に搭載できないでしょうか」

雪子「アイギスさん、これ花火!武器じゃないから!」

千枝「今そんな面白い事言ったかな……」

直斗「まぁ、いつもの事ですけどね……」

りせ「ねーまだー?」

順平「慌てんなって今火着けっから……っしゃきた!逃げろ逃げろ!」

>導火線を火が辿っていく。
>……花火が、上がった。

りせ「わー綺麗綺麗!」

クマ「なんかちょっと美味そうクマ」

陽介「もう食えねえっつってたじゃねーか」

>色とりどりの花が咲く。
>本当に綺麗だ……。

岳羽「あ、鳴上君。お肉美味しかったよー、あれって自己流?」

鳴上「ああ、いえ。ある人に教わって……」

岳羽「へぇ、そうなんだ。じゃあその人ってかなり料理上手なんだね。羨ましい」

鳴上「そうですね、料理が上手くて、優しくて、くすぐったがりで……」

岳羽「いやいや、そこまでは聞いてないって。……鳴上君?」

鳴上「恥ずかしがり屋で、可愛くて、本当に、好きでした」

岳羽「ちょ、ちょっと!泣かないでよ、私が何か言ったみたいじゃん。どうしたの?大丈夫?」

>後から後から涙が零れた。
>クマがネズミ花火に追いかけられている。
>それを見て皆笑っている。
>皆の中に風花さんはもういない。

岳羽「私、もしかして地雷踏んじゃった?ね、鳴上君ってば」

鳴上「すみません、どうしても……今は、会えない人なんです。居なくなってしまったから」

岳羽「ご、ごめん……知らなかったからさ、ごめんね。よっぽど好きだったんだね……」

鳴上「大丈夫です……」

>耐えられるのだろうか。
>これから先、皆との関わりを薄くして、こんな感情と付き合っていけるのだろうか。
>寮に帰っても一人足りず、誰もそれに気付かない。
>そんな、そんな事が……。

鳴上「皆!聞いて欲しい事がある」

>気付いた時には大声を上げていた。
>騒いでいた皆がこっちを見る。

有里「……悠?」

鳴上「皆に言わなきゃならない事がある。もう誰も覚えていない、俺達の仲間の話を」

有里「悠!それは……」

鳴上「それだけじゃない!俺達に課せられたルールと、この世界の真実。聞いて欲しい。俺だけで抱えるのは……辛すぎるから」

有里「それは……一番やっちゃ駄目だろう……!」

>湊が憤っている。
>頭ではわかっている。
>俺のやっている事は下の下策だ。
>ただいたずらに混乱を招き、被害を増やす事になるかもしれない。
>それでも、俺は言わずにはいられなかった。
>誰にも覚えてすらもらえない、それ程悲しい事はないように思ったから。
>俺は、周防さんから聞いた話、俺に起こった話……
>その全てを、皆に説明した。

順平「おいおいおい鳴上ぃ。今日はアルコール無しだぜ?どうしちゃったんだよ」

鳴上「順平さん……」

りせ「先輩、ちょっと落ち着こうよ?ね?」

鳴上「ほ、本当なんだ!信じて……」

美鶴「いや、信じていないわけじゃない。……が、急にそんな話をされても、どう受け取ったら良いかわからないんだ」

陽介「大体その、誰だっけ?山岸さん?とかって人の事、全く覚えてねーんだよなぁ……」

鳴上「だから、それは……!」

直斗「ちょっと、僕達にも時間をください。今の話を噛み砕く時間を……」

鳴上「それは、構わないけど……」

有里「悠」

鳴上「み、湊……俺は……」

有里「君を責めるつもりはない。僕だってそうしたかも知れない……ただ、これでここからどうなるか完全にわからなくなった」

鳴上「すまない……」

有里「……被害を抑える事も難しくなるかもしれない」

鳴上「だけど……」

有里「だから、責めるつもりは無いって。考えようによっては、この方が良かったかもしれない」

鳴上「何でだ?」

有里「覚悟は出来るからだよ。僕のやり方は正々堂々とはしてなかったから……こっちの方が、潔いかと思って、ね。やっぱり、納得して動いてもらうべきだろう」

鳴上「……」

有里「それに、仲間に秘密を作るのも良くない。でしょ?」

鳴上「……ありがとう、湊」

有里「慰めてるわけじゃない、本心だよ」

鳴上「あ、あの、皆……いきなりこんな事言って、戸惑うとは思う。けど、全部本当の事で……」

千枝「わかってるよ、鳴上君、こんな嘘吐かないもん」

雪子「……でも、これからどうすればいいのかな」

りせ「仲良くなったら、消えちゃうかも知れないって……」

>皆は動揺している。
>当たり前だ……。

美奈子「もー、何悩んでんの?」

有里「美奈子」

美奈子「消えたりするのは、そりゃまぁ嫌だけど……だからって悠や湊との接し方変えちゃうの?」

順平「でもよ……」

完二「ま、悩みたけりゃ悩みゃいいじゃねえか。軽い話じゃねェみたいだしよ。けど、俺ぁこの二人についてくって決めちまったんスよ」

鳴上「完二……」

美鶴「……確かに、何があろうと二人は私達の仲間だ。ただ、これから対策しようの無い事態に陥る事もあるだろう」

真田「考える時間は必要だな。どちらにせよ、だ」

アイギス「……そんな事って」

鳴上「あの、俺……帰ります」

有里「ああ、待って……皆。僕は、それでも皆と仲良くしたいと思ってた。ごめんね。迷惑がかかるのは皆の方なのに」

千枝「それは……いいけど、さ」

有里「そのくらい、大切なんだ。この世界が、この時間が。それだけは分かって欲しかった。僕も帰るよ。……また、会ってくれたら嬉しい」

>湊が後ろから追いかけてくる。

鳴上「悪かったな、これからやりにくくなると思う」

有里「いいって。けど、一緒に住んでて堂島さんたちは平気なのかな」

鳴上「一緒に住んでも仲良くなるかどうかは別だろ」

有里「それもそうか。……もし全員僕達の事避けるようになったらどうする?」

鳴上「そうなっても、お前には俺がいるだろ」

有里「そうだね。多分、世界でただ二人、同じ条件にいるのが僕らか。そう考えると不思議な気分だね」

鳴上「本当に俺達だけになったらやりきれないけどな」

有里「そしたら笑おう。やりきれない時こそ笑うべきだって、昔何かの歌で聞いたよ」

鳴上「お前とならそれもいいか」

有里「悠とならね」

>……恐らく、状況は悪化してしまった。
>しかし、お互いにより強い信頼で結ばれたのを感じる。
>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが5になった。
>『No.13 死神 有里湊』のランクが5になった。



【ベルベットルーム】


イゴール「……おや、本日は御揃いで」

鳴上「……?」

有里「僕は来た覚えが無い」

イゴール「そうでしょうな。あなた方は今眠っている。本日は、少しお知らせしておきたい事がございまして」

エリザベス「あなた方の力の源……コミュニティに変化が現れています」

鳴上「ど、どうなったんだ?」

マーガレット「心配なさらずとも、何かが失われたわけではございません」

有里「色々あったからね、心配にもなる」

イゴール「アルカナに対応する人物が変化しているやもしれません。……いよいよ、核心に迫られた様子」

鳴上「俺は何もしてない。たまたまそうなっただけだ」

有里「同じく。そもそも何が出来るかもわかってない」

エリザベス「何が出来るか、では無く」

マーガレット「何をするか、が重要なのです」

イゴール「貴方方は本当に素晴らしいお力をお持ちだ。出来る事ならその限界を見てみたい。その為なら、如何な助力も惜しみません」

鳴上「見てみたい……」

有里「念のために聞くよ。この世界を構成したのは、誰かの『見てみたい』という意思からだそうだ。……この部屋は、関わっていないよね?」

エリザベス「モチのロンでございます」

鳴上「なんていうか、古いな」

マーガレット「……我々にそうした力はありません。我々より更に上、主の主であるならば、もしかすると……」

イゴール「その話はおやめなさい。……申し上げた通り、我々にはそのような力はございません。見たいとは言っても、その為に何かを用意するなどとてもとても」

有里「信用するよ。話はそれだけ?」

イゴール「コミュニティの変化は環境の変化、そして心の変化でもあります。お二人が協力していくおつもりなら……」

エリザベス「お互いの事をより良く理解しておく事です」

マーガレット「お二人はとても良く似ている。しかし、その環境は余りにも違いすぎます」

イゴール「差が、生まれるでしょう。考え方や、姿勢。そういった部分に」

鳴上「それはそうだけど、それでも俺達は……」

イゴール「……そうですな。いらぬ口出しをしました。それでは、そろそろ意識をお返しせねばなりません。また、いずれ……」

エリザベス「またのご来訪を」

マーガレット「お待ちしております」

>……。

さり気なく、八十稲羽滞在最終日。
明日には帰ります。
皆ついて来てくれるんだろうか。
ややこしくなってきたものだ。

あと数回の投下でこのスレでの本編進行も終わりです。
ちょろっと残して番外編みたいなのを投げて、次スレへ。

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。


乙です

乙です

ちょっと今考えてる事があります。
このスレ内で一旦区切りまでやってしまって次スレから新展開を・・・

どうなるかは尺と相談。
アレだった場合普通に次スレ途中から新展開となります。

というわけで本日分。



【2012/8/15(水) 晴れ 堂島宅】


鳴上「俺たちは今日帰るけど……湊はどうする」

有里「僕は行くよ。折角だし……ただ、他の皆はどうかな」

鳴上「だよな……」

>昨日の話を聞いた上で、俺達に付き合おうなんて思えるだろうか。
>楽しい旅行が……覚悟のいるイベントになったものだ。

有里「荷物まとめた?」

鳴上「ん、ああ。……お前とは遠慮なしに付き合っていいんだよな」

有里「僕は女の子が好きなんだけど……」

鳴上「知ってる。……なぁ、お前、前に向こうの皆とは何も無かったって言ってたよな」

有里「そうだよ。どうかしたの?」

鳴上「風花さんが言ってたんだ。その、初めてはお前が相手だったって……」

有里「……当たり前だけど、記憶に無い。ただ、誓ってもいい。僕は誰か特定の相手を作るつもりが無かったから、何もしてないんだ。これは本当」

鳴上「じゃあどういう事だ?風花さんが嘘吐いたってわけでもないだろ」

有里「あるいは、そういう可能性もあったのかも。僕が風花を選ぶ世界。彼女だけに絞ったなら、僕もそりゃ遠慮なく……」

鳴上「ややこしいな……」

有里「とにかく僕はやってない。ていうか僕、まだだし」

鳴上「まだ?」

有里「……まだ、したことない」

鳴上「……ふっ」

有里「悠、今優越感持ったね?上に立った気になったね?」

鳴上「そんな事ないぞ」

有里「悠の相手だって今はいないんだからノーカウントだよ」

鳴上「冗談でもそれは言うなよ……」

有里「ごめん……なんか悔しくて……」

>Pipipi……
>同時に二人の携帯が鳴った。

鳴上「もしもし」

有里「もしもし」

「……え?」



【八十稲羽駅前】


順平「おせーぞ二人共!」

鳴上「す、すみません」

有里「ていうか、何で全員集合なの?」

陽介「何でって、俺らも行くんだよ。都会!遊ぶ!言ったろ?」

鳴上「でも、俺達と関わると……」

アイギス「……一晩、考えたんです。でも、結局答えは見つからなかった」

美鶴「だが、わかっている事がある。それでも、君達は……私の、そしてここにいる全員の特別な存在であるということだ」

雪子「二人だけで抱えさせるなんて出来ないもの、私達」

りせ「そーいう事です!戦うんだったら、皆一緒に、ね」

真田「考えようによっちゃ、これ以上無い相手じゃないか。世界を作った存在……いわば、神だろ?」

岳羽「そういうの苦手なんだけどさ。何にもせずに逃げるのだけはゴメンって感じ」

直斗「そう簡単に消えたりしませんよ。これでも無茶には慣れた方なんです……先輩たちのおかげでね」

完二「そーいうことっス。どうなろうと、このままほったらかす方が後悔しそうなんで」

美奈子「私は二人と二心同体だったこともあるし?今更離れろってのが無理だよ」

>里中が湊の手を握った。

千枝「自分達ならどうなってもいい、とか。皆に迷惑だから、とか。そういうの、もうやめようよ。私達さ……そんな仲で終わりたくないもん」

>……羨ましい、な。

有里「……昔の皆だったら、まず間違いなく僕は一人ぼっちだったんだろうけどね。何でこうなったのかな」

鳴上「多分、お前のせいだろ」

有里「悠だって、随分影響与えてくれてるみたいだけど?」

鳴上「そうか?」

真田「ほら、行くぞ。帰って天田に土産をやらないと」

有里「あ、そういえば乾には話した?」

美鶴「昨日、電話でな……彼は彼なりに、思う所があったようだが、帰りを待っていると言ってくれたよ」

鳴上「そうですか……」

菜々子「お兄ちゃん!」

有里「あ、菜々子……」

菜々子「ひどいよ、菜々子置いてくなんて……」

鳴上「ごめんな、ちょっと慌てて出てきちゃって……」

堂島「そりゃいいが、挨拶ぐらいしていけよ」

有里「あ、堂島さん……というわけなので、またしばらく留守にします」

堂島「どういうわけだか知らんが、気をつけて行ってこい」

鳴上「菜々子、また来るからな」

菜々子「うん、菜々子待ってるからね。いってらっしゃい!」

>結局、皆はそれでも俺達と一緒にいる事を選んでくれたようだ。
>その中に、風花さんはいないが……。
>皆から強い信頼と決意を感じる。
>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが4になった。

>……。



【巌戸台駅】


>久しぶりの巌戸台だ。
>八十稲羽に慣れてきた身としては、ここのごたごたした風景が少し新鮮に見える。

天田「皆さんお帰りなさい!」

有里「や、ただいま。元気だった?」

天田「はい、なんとか。……あの、有里さん、鳴上さん」

鳴上「どうかしたか?」

天田「僕は、どうなろうとお二人と一緒に戦います。そうする事で、何かが見える気がするんです。僕の探してた物が……」

>悠が黙ったまま、乾の頭を撫でた。

天田「子供扱いはやめてください……あ、それからいらっしゃい!八十稲羽の皆さんですよね」

りせ「やだ可愛い……先輩、この子なんですか!?」

>りせが何故か興奮している……。

鳴上「タルタロスで一度会ったはずだろ?」

りせ「あ、そういえばいたかも。ごめんねボク、あの時慌ててたから」

天田「……あの、どこかで見た事ある気がするんですけど、もしかしてアイドルの……」

りせ「あ、バレちゃった?そーそー、アイドルのりせちーです!よろしくね!」

天田「うわ、アイドルって初めて見ました!よ、よろしくお願いします!」

>何だかわからないけど、二人は仲良くやっていけそうだ……。

有里「さてと、美鶴先輩。僕達はどこに泊まればいいのかな」

美鶴「ああ、迎えを来させるから、任せておけばいい。さて、それでは私達は寮に帰るとしよう」

>……。



【ホテル内 有里の部屋】


有里「……おおう」

>凄い部屋だ……。
>いや、本当に凄い部屋だ。

陽介「なんでお前だけ一人部屋なんだよ」

完二「そんなに俺と同室嫌っスか」

陽介「いやそうじゃねえけど、もし、もしだぜ!?天城とかりせちーとかが俺のとこにこう、夜這いたくなった時どうすんだよ」

完二「ねェだろ、そんな事」

有里「無さそうだね」

陽介「……まぁ、有里がいつも通りで安心したよ、うん」

有里「ありがとう。二人共いつも通り接してくれて助かってるよ」

りせ『せんぱーい!入っていーですかー?』

雪子『あんまり大きい声出しちゃ他の人に迷惑だよ』

千枝『ていうか、有里君も疲れてるだろうし、ゆっくりさせてあげようよ……』

陽介「……」

完二「……俺らいるの、知らないんスよね、多分」

陽介「部屋戻るか」

完二「そっスね……」

有里「はいはい、今開けるよ……」

>皆驚く程いつも通りだ。
>……ありがたい、が、少し不安もある。
>特に千枝は、既に随分距離が近いように思う。
>でも、それでも、僕は……。



【2012/8/16(木) 晴れ シャガール】


>千枝を誘ってシャガールに来た。
>千枝は何故かそわそわしているようだ……。

有里「……どうしたの?」

千枝「え、いや、その……ほら、八十稲羽ってこういうお店無いじゃん?だから、なんかこう……落ち着かなくて」

有里「別に構える事は無いと思うけど……僕もいるし」

千枝「有里君は頼りにしてるけど、一緒にいるせいで緊張する事もあるのだよ?」

有里「そう」

千枝「……そうなんです」

>少しそっけなくし過ぎたか。
>そっぽを向かれてしまった。

有里「……今日はね、真面目な話があるんだよ」

千枝「……うん」

有里「千枝は、まだ僕の事好きだって言ってくれる?」

千枝「ちょ、ここで言わせるつもり!?」

有里「真面目な、話なんだ」

千枝「……好きだよ」

有里「そう……でも、このまま行くと、千枝も多分」

千枝「だよ、ね」

有里「だからさ」

千枝「別れよう?」

有里「別れる?」

千枝「えっ?」

有里「えっ?」

>……しばしの沈黙。

千枝「えっと、確認。有里君は、自分と仲良くしてると何があるかわからないから私を心配してくれてるって事でいいんだよね?」

有里「そうだね」

千枝「今日の話って、だから別れようって、そういう事じゃないの?」

有里「こっちも確認。まず別れるって、僕たちってどういう関係だっけ」

千枝「こ……恋人?」

有里「……だったの?」

千枝「ちょっと待って、それは流石に酷くない?」

有里「ご、ごめん。その、良くわからなくて。僕は千枝を好きだって言った。千枝は僕を好きだって言ってくれたよね」

千枝「そうだよ……」

有里「ええと、それって、つまり……」

千枝「両想いで、恋人というか……彼氏彼女になれたんだと思ってたんだけど」

有里「ああ……恋人ってこういうものなんだ」

千枝「ええ?今そこ?」

有里「そっか……恋人だったんだ、僕ら」

千枝「……私はそう思ってたよ」

有里「この関係、何て呼ぶのかと思ってた。そっか、これが……」

千枝「もう慣れたけどさ。有里君って色々知ってるくせに変な所でズレてるよね」

有里「自分の感情とか感覚と向き合うって事が無かったからね。そっか、恋人だったんだ」

千枝「で、別れたほうがいいよって話なんじゃないの?」

有里「別れたいの?」

千枝「……嫌だよ」

有里「僕も。だから、聞きたかった。どうなるかわからなくても、それでも僕とこのまま付き合っていってくれるのか」

千枝「言ったでしょ?もっと仲良くなりたいの、私は。先が見えないのはいつもの事だしね」

有里「……そっか。じゃあ改めてよろしく」

千枝「ん、よろしく。……別れようって言われるのかと思って、凄いドキドキしてたんだけどね……」

有里「それは悪かった。どれだけ考えてもその選択肢だけは出てこなくてね。もし千枝が別れたいって言ったら、それは従ってただろうけど」

千枝「前から思ってたけど、有里君ってそういう事しれっと言うよね。恥ずかしくないの?」

有里「……表情が乏しいんだ」

千枝「本当はそんな事ないくせに」

有里「いや、ほんとほんと。鉄面皮だからね」

千枝「私ばっかり照れたり慌てたり……有里君もちょっとは付き合ってよ」

有里「内心じゃ大慌ての時だってあるよ」

千枝「見た目にわかんないからなー。そうだ。ちょっと目閉じてみて?」

有里「ん?」

>言われた通り目を閉じた。
>唇に何かが触れる。
>驚いて目を開けると、真っ赤な顔をしている千枝と目が合った。

千枝「どう!?少しはびっくりしたでしょ!」

有里「確かに驚いた」

千枝「ちょっと待って、これ私の方がすっごい恥ずかしいんだけど!バカじゃん私!忘れて!記憶を消して!」

有里「それはちょっと無理」

店員「お客様、あまり騒がれますと……」

千枝「すっ、すみません!ごめんなさい!静かにしてます!」

有里「……」

千枝「何でわらっ……有里君って、そんな顔で笑うんだっけ?」

有里「ん?」

千枝「いや、なんか初めて見たかも?」

有里「いやいや、そんなこと無いでしょ」

千枝「場所が違うからかな。何か、新鮮」

有里「……」

千枝「あれ?ちょっと赤くなってない?」

有里「そう?」

千枝「いや、絶対そうだ!照れてるでしょ今!」

有里「別に照れるような事は……」

千枝「やった、初めて有里君動揺させられた!何かすっごい勝った!って感じ!」

有里「……千枝、目閉じて」

千枝「へっ」

有里「お返し。ほら、早く」

千枝「え、う、うん」

>千枝はじっと目を閉じて待っている。
>僕は、前髪をそっと分けて、その額の真ん中に思い切りデコピンをかました。

千枝「いひゃっ!な、何!?」

有里「お返し」

千枝「何よ、何でよぉ……」

有里「いや、普通に恥ずかしかったから」

千枝「もー、ちょっと期待しちゃったじゃん!」

有里「ん?ならしようか?」

千枝「……やっぱり恥ずかしいからいい」

有里「そう。……僕らはこれからずっとこんな感じなのかな」

千枝「ずっと?」

有里「うん。からかって、からかわれて、千枝が真っ赤になって。ずーっとそんな事やってくのかなって」

千枝「あー、何かそうかも。え、嫌、なの?」

有里「……結構、楽しいかもね」

千枝「ふふ、そうだね。……鳴上君と風花さんって、どういう関係だったんだろうね」

有里「聞いた話だと、行くところまで行ってたみたいだね。まぁ、ゆかりや順平や……僕と同い年だったら、それなりに大人って言っていい年齢だし」

千枝「行くところまで……?」

有里「……」

千枝「……?」

有里「ほら、男と女がこう……夜」

千枝「あっ、ああ!えっ、そうなの!?」

有里「僕らにはもう記憶も無いけど、悠が言うんだからそうなんだろう」

千枝「そっか、そうなんだ……鳴上君、そうなんだ……」

有里「意外?」

千枝「ちょっと意外。なんか、そういうのって無さそうに見えてたから」

有里「彼も列記とした男性って事だね。誰でもそうだよ……多分、ちょっとやそっとじゃ出ない部分っていうだけなんじゃない?」

千枝「ちょっとやそっとじゃないくらい、好きだったってことかな」

有里「そうなんじゃないかな。……どうしたの?」

>千枝は一層もじもじしている。

千枝「いや、その、ね。有里君も列記とした男性だよね?」

有里「うん」

千枝「やっぱり、その、し、したいのかなーとか、思って」

有里「コーヒー噴出す所だった」

千枝「いや、別にね!しようって言うんじゃなくて、ちょっと気になってさ!……どうなの?」

有里「んー……内緒」

千枝「そんなのアリ?」

有里「アリさ」

千枝「むー……」

>不満そうに頬を膨らませて、コーヒーを飲む。
>全く持って可愛らしい。
>……正直、そういう気持ちが無いわけではないが、少し荷が重いように思う。
>僕にとっても、千枝にとっても。

千枝「何か、私に気遣ってるならいらないからね?」

有里「そんな顔してた?」

千枝「そんな気がした。別に、有里君がしたい事だったらある程度受け入れる覚悟はあるんだから」

有里「ありがと。したくないっていうのも失礼かもしれないけど……千枝とは、今はそういうんじゃない。今は、ね」

千枝「そっか……そっか」

有里「その内、ちょっと引くようなお願いするから」

千枝「え!?それは勘弁して……」

>一日、千枝と過ごした。
>千枝との仲が深まったようだ……。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが6になった。



【2012/8/17(金) 晴れ ゲームパニック】


順平「何か久しぶりにゲーセン来た気がすんな」

陽介「俺もすげえ久々っす。さーて、何やってやろうかな」

鳴上「パンチングマシーンはやめよう」

完二「え、なんでっスか。アレ好きなんスけど」

真田「パンチングマシーンか。いいな。やろう」

鳴上「折れても知らないですよ」

有里「折れる……?」

>皆でゲームセンターに来た。
>いつもクレーンゲームと占いばかりやっているが、たまには別のゲームもやってみよう。

順平「よーっし最初俺!一番記録低かったヤツが後ではがくれ奢りな!」

>順平は大きく振りかぶり、ミットの真ん中を叩いた。

順平「……あれ、思ったより」

有里「平均ってとこだね」

陽介「次!次俺!いっくぜー……」

>陽介は拳をしっかりと握り、真っ直ぐに突いた。

陽介「っしゃ、順平さんより上ー!」

順平「おーい、これなんかの間違いだろ?」

完二「ちゃんと数字で出てんじゃねェスか。っしゃ、そんじゃ俺も……」

>完二は拳の握りを確かめ、力任せにミットを叩いた。

順平「見た目どおりの馬鹿力だな」

陽介「まぁ予想通りってとこか」

完二「なんスか……」

真田「それじゃ、次は俺が行こう」

>真田先輩は両拳を上げて構えると、渾身のストレートを叩き込んだ。

真田「どうだ!」

順平「あーすげえすげえ」

陽介「これも予想通りっすね」

完二「うお、マジですげえな……伊達に鍛えてねェってか」

有里「それじゃ、次僕がやるね」

鳴上「待て、有里。この流れだと俺が……」

>とりあえず、全力で叩いてみた。

順平「あ、勝った!」

陽介「有里貧弱すぎんぜ?」

真田「ま、この体じゃこんなもんだろう」

有里「手首……変な風に叩いちゃった……」

完二「うわぁ……」

鳴上「最後は俺か……いやな予感がするんだが……」

>悠は広くスタンスを取ると、思い切りミットを叩いた。
>……あ。

鳴上「やっぱりか!」

順平「おいおい、支柱折っちまったぞ!」

陽介「なーんで相棒が叩くと折れるんだここのは」

完二「ってかやべえっスよ、どうすんスかこれ」

真田「謝るしか無いだろうな」

有里「これは記録無しって事にならない?」

順平「あ、じゃあ鳴上の負けか。はがくれ奢りよろしく!」

店員「お客さん……アンタ前にも……」

鳴上「違うんです……」

>……。
順平「お前、初犯じゃなかったんかよ」

陽介「前ん時も悠が殴ったらぽっきり行っちゃったんすよね」

完二「あれって力強すぎたとかなんスかね」

真田「人間に折れるような設計なのか?」

有里「何なんだろうね……」

鳴上「この上奢らされるのか……」

有里「そういえばクマはどうしたの?」

陽介「ああ、あいつは八十稲羽で留守番。しばらくバイト出てなかったから、パートのオバチャン達が心配しててよ。埋め合わせにバイト漬けだ」

完二「泣いてたけどな」

順平「あいつもおもしれーよな……」

真田「なぁ、はがくれより海牛にしないか?」

有里「あそこ、いつも並んでるじゃない」

鳴上「流石に並んでまでは……」

>……?

有里「ねぇ、あれ……」

>女の子が路地裏に連れて行かれようとしている。

鳴上「あれは……」

真田「知り合いか?」

鳴上「いや、以前街で見かけただけですけど」

陽介「つっても、ありゃ仲良く遊びましょって感じじゃねえぜ」

完二「あーあ、ったくどこも変わんねーなああいう連中はよ……」

順平「おいおい、お前ら何でやる気なんだよ。相手結構人数いたぞ」

有里「順平はここで待っててもいいよ」

順平「……流石に、ここで残ったら男じゃねーよ。でも、あの子……どっかで見たような気すんだよな」

鳴上「見失わない内に追いかけましょう」

>相手の人数は……5人か。
>まぁ、この面子なら平気だろう。

チンピラA「お前、さっきなんて言ったよ?」

チンピラB「状況分かってるよな?よっく考えて口聞いた方がいいぜ」

「汚い手で触るな、と言いました」

チンピラC「……俺ら、ちょーっと声かけただけじゃん?その言い方は無いんじゃねえの?」

チンピラD「舐めてるよな、完全に。お前みたいな女に舐められるようじゃ俺らやってけねえって」

チンピラE「俺らも面子の商売なワケ。お姉さん、わかるかなぁ?」

「面子……世間体の事だったら、貴方達には元よりあるように思いませんが」

チンピラA「もう良いって。こいつ頭悪いんだよ。叩かねーと直んねーって」

順平「こらこらこらこらやめなさいよ君達。寄ってたかって女の子一人」

チンピラE「あ?お兄さん誰よ」

順平「通りすがりの者です!」

チンピラC「だったらそのまま通りすがっとけよ。良い人ヅラして出てきたら痛い目あうぜ?」

鳴上「その子を離してくれれば何も起こらない。お互いの為にもそうしてくれないか」

チンピラB「お互いの為?ちょっと人数勝ってるからって調子乗ってんじゃねえの?」

チンピラD「あ、それともケンカ売ってる?買う買う、このお姉さんのお陰で俺らイライラしてんのよ。解消に付き合ってくださいなっと」

順平「うわぁ!ナイフとか良くないって!」

チンピラA「いやいや、ここんとこちょっと切るだけだから。わざわざ絡みに来たあんたらが悪いのよ?」

真田「悪いのはお前達だ。日ごろの行いも、運もな」

チンピラC「むっかつくなぁ、アンタ。死んどけよ」

陽介「おわっ!真田さん、危ないって!」

>チンピラの一人がナイフを振り回す。

完二「お、いいもん見っけ。店の人にゃ悪いけど、よっと」

>完二が置いてあった看板を担いだ。

チンピラA「おいおい、マジでやる気かよ。冗談だろ?」

鳴上「それが冗談でもなんでもない。その子を解放するか、俺達とやるか、どっちかだ」

チンピラC「いいよ、もうこんな女……ただ、個人的にお前らは気にくわねぇ。怪我して帰れよ」

順平「やめとこうぜ、な?ほんと、怪我するって。マジやめとこうよ」

チンピラC「うるせ……」

>突然、チンピラが倒れた。

「その人の言うとおりです。怪我しますよ」

>女の子が鉄パイプを握っている。
>どうやら彼女が背後から打ったようだ。

チンピラA「てめっ、何やってくれてんだよ!」

真田「こら、だから怪我すると言ってるだろう」

完二「つーか、女の子にしてやられんなって。情けねェな」

鳴上「全く……素直に離してたら俺達も帰れたのに……」

>三人が一撃でチンピラを沈めた。
>流石にその辺のチンピラで勝てるような相手ではないか……。

チンピラE「くそっお前ら……顔は覚えたからな!次会ったらしらねえぞ!」

順平「おーテンプレートな捨て台詞だこと。もう会わねーよ」

有里「……」

>ただの虚勢だと思うが、もしかしたら周りの人にまで危害が及ぶかもしれない。
>少し、駄目押ししておこうか。

チンピラE「どけよ、ガキ!」

有里「ガキって……確かに肉体年齢は18だけどね……」

>歩いて近付く。

チンピラE「仲間が強えからって自分も強くなった気になんじゃねえぞ?お前くらいのヤツなら俺だって……」

有里「いやね、今度会っても見逃してもらえないかなって」

チンピラE「はぁ?こんだけやって見逃されるわけないだろうが。馬鹿言ってんじゃねえぞ」

有里「そう……じゃあこれで許してくれるかな」

>チンピラの握っているナイフを握る。

チンピラE「何やってんだお前!?」

有里「怪我して帰ろうと思って。これで面目保ったって事にならない?」

チンピラE「そういう問題じゃねえんだよ!つーか離せや、指落ちるぞ!」

有里「そっか……」

>チンピラの胸倉を掴んで顔を近づける。

有里「ならいつでも来るといいよ。ただし、覚えておくといい。これから僕の知り合いの誰かが何らかの事故にあったとする。それでも僕は君達を疑う」

有里「そうなったら覚悟した方がいい。僕は彼らと違ってケンカしないからね。加減がわからないんだ。もしかしたら、取り返しのつかない事になるかもしれない」

有里「それで良ければ、また会おう。嫌なら、今日の事は忘れよう。僕らは誰にも言わない。君達も忘れる。それでいいよね?」

チンピラE「な、んな事できるかよ…!」

有里「うーん、強情だなぁ。よし、わかった。指で不満なら目をあげよう」

>ナイフを握った手をゆっくりと自分の顔の前に持ってくる。

有里「流石にそれだけやれば溜飲も下がるでしょ。片目なら別に無くなっても……」

チンピラE「っバカ!よせって!」

>チンピラが抵抗したせいで、鼻の所が少し切れてしまった。

有里「痛……」

チンピラE「わかったよ、わかった!お前みたいな頭おかしいヤツ相手にしてたらこっちまでおかしくなりそうだ……もう何もしねえ。それでいいだろ!」

完二「いいわけ」

真田「無いだろ」

鳴上「寝てろ!」

>あ、アレは痛い。

順平「おい有里!手大丈夫かよ!」

有里「ん?ああ、指は付いてるし平気だよ」

完二「平気なワケねェだろが!なんつー無茶してんだよ!」

陽介「顔もお前……ああくそ、何かハンカチとか無ぇのか!」

鳴上「俺のシャツ破けば……」

有里「平気だって、その内血も止まるし……ちょっと脅かしてやろうと思っただけだから」

真田「無茶にも程がある……とにかく帰るぞ、ここからなら寮の方が近いな」

「あ、ああ……そんな、血が……は、早く手当てを!」

有里「あ、君。平気だった?」

順平「お前は自分の心配しろっての!ほら、帰るぞ!」

「私も行きます!」

真田「……待て。お前……?」

順平「君は別にいいって……あれ?君、もしかして……」

真田「メティス……?」

順平「アイちゃんの妹ちゃん!?」

有里「……誰、それ」



【巌戸台分寮】


岳羽「はい、おしまい。バカやるんだから……」

美鶴「本当にな。……それより、また聞きたい事がある」

順平「あー、それなんすけど、俺らにも全然……」

アイギス「……メティス?」

メティス「お久しぶりです、姉さん」

天田「メティスさんって、あの時消えたんじゃ……」

アイギス「そのはずですが……」

メティス「私にも、わかりません……けど、気が付いたら街にいて、それで、どこかで見た事のある人を見かけたので……」

鳴上「それ、もしかして俺ですか?」

メティス「はい、そうです。よく見たら別人だったんですけど、何となく……でも、それから一度も会えなくて」

鳴上「すみません、出かけてました……ええと、結局良くわからないんですが」

アイギス「この子はメティス。私の……分身、というか。妹のような存在です」

メティス「私は元々姉さんの、捨てたいと思う感情から生まれました。ですが……」

アイギス「今の私はいつも通りです。何も捨てていないし、捨てるつもりもありません」

真田「なら何故お前がここにいる?」

メティス「だから、わからないんです……あの時の記憶もあります。なので、皆さんの知っているメティスと同一の存在だと思うのですが……」

陽介「ややこしいな、何か……」

メティス「わかることは、一つだけあります。私は、誰かを守る為に生まれた……そんな風に思うんです。根拠は無いのですが……」

美鶴「……仕方ない。何かあるまでこの寮で過ごしなさい。話はこれから整理していこう。それから、私達以外にもなるべく丁寧に接しなさい」

アイギス「そうよ、メティス。貴方のした事で有里さんや他の皆さんが危険な目にあったのだから」

メティス「ごめんなさい……」

陽介「いやいや!別に全然かまわないっすよ!」

鳴上「陽介は何もしてないがな」

完二「やる気だきゃあったんスけどね」

>メティス……。
>皆は知っているようだが、僕はこの子を知らない。
>一体、何者なんだろうか……。
>手が痛い……。



【ホテル内 有里の部屋】


千枝「で、こんな怪我したと」

有里「うん」

千枝「バカじゃないの!?てかバカじゃないの!?」

有里「あ、なんかそれ聞くの久しぶり」

千枝「もう……かっこつけるのはいいけどさ、もっとマシなやり方にしようよ……」

有里「別にかっこつけたわけじゃないんだけどね……」

千枝「有里君、女子の前だと張り切るタイプだもんね、そう見えて。すぐ無茶するし。せめて左手だったら良かったのに」

有里「それは男の子の本能だから仕方ない」

千枝「明日、何か予定は?」

有里「いや、特に無し」

千枝「……んじゃ、私が一日付き添ったげるよ」

有里「え、いいよ。遊んでおいでよ」

千枝「だってそんな手じゃお箸も持てないっしょ?」

有里「痛いだけで動くから持てるって」

千枝「いいから黙って世話されなさい!」

有里「……はい」

千枝「……痛くない?大丈夫?」

有里「ん、それなり」

千枝「バカ」

有里「はい」

千枝「かっこつけ」

有里「はい」

千枝「……」

有里「……」

>何故か、千枝が泣きそうになっている。
>……確かに、ちょっとかっこつけたけど。

千枝「痛いんでしょ?」

有里「うん」

千枝「……もうしない?」

有里「もうしない」

千枝「……」

有里「もうしないよ」

千枝「信じるからね!次やったら私泣くかんね!」

有里「泣かせるわけにはいかないね」

千枝「ほんとだよ……もー、心配ばっかりかける……」

有里「ありがとう」

千枝「いいから。何か欲しい物とかない?大丈夫?」

有里「……しばらく一緒にいて欲しいかな」

千枝「……いいけど」

>それから、しばらく二人で過ごした。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが7になった。

ポートアイランドでは有里君メインです、多分。
例の彼女も現れて、いよいよごちゃごちゃし始めた。

果たしてスレ内で区切りまで書ききる事が出来るのか!
別に次スレでやってもいいじゃんって?それもそうだね。

というわけで、本日は終わり。
では、また後日。


メティスも出てきたか・・・

進展開…だと?

本日分。



【2012/8/18(土) 晴れ ホテル内 有里の部屋】


千枝「はいあーん」

有里「あー……」

>何故か、朝からバナナを口に突っ込まれている。

千枝「……」

有里「……何?」

千枝「いや、何か不満そーだなって」

有里「別に不満は無いよ?」

千枝「むー、朝ごはんはちゃんと食べないと駄目なんだからね?」

有里「うん……」

>食べるのはいいが、これだけ見られていると食べ辛い。

千枝「今日どうする?」

有里「ん、今日は寮の方行って、昨日の子に話聞こうかと思ってたんだけどね」

千枝「あー、アイギスさんの妹さん……メティスさんだっけ。有里君は知らないの?」

有里「皆は知ってるみたいなんだけどね。どうしてか僕は知らない。聞いた話によると、僕がいなくなってから出会ったらしいんだけどね」

千枝「ふーん……アイギスさんの妹って事は、やっぱり美人なのかな」

有里「ああ、まぁ綺麗な顔してるね。アイギスとは真逆の、落ち着いた感じ。中身はお姉ちゃんそっくりみたいだけど」

千枝「へぇ、そうなんだ……ふーん……」

有里「あの、里中さん?」

千枝「へっ?何でもないよ!うん!そっか、でも美人なんだ……ほんと、心配になるな……」

有里「なんで僕ってこんな信用無いんだろう」

千枝「……普段の行いじゃない?」

有里「そうかな……」

千枝「そうだよ……」

>とにかく、メティスに会いに行こう。



【巌戸台分寮】


美鶴「君か。どうした?」

有里「メティスと話がしたくて。いる?」

美鶴「ああ、アイギスと一緒だ。……里中はどうした?」

千枝「あ、付き添いです。昨日の今日なんで……」

美鶴「……そうか。甲斐甲斐しいな」

千枝「あはは、べ、別にそんな……」

有里「じゃあ、アイギスの所行ってきます」

美鶴「ああ。……里中を大事にしてあげなさい」

有里「……うん、そのつもり」

千枝「え?何?」

有里「何でも無いよ。行こう」


【アイギスの部屋】


アイギス「あ、有里さんに里中さん。どうかしましたか?」

有里「ちょっと用事。アイギスにじゃなくて……」

アイギス「ああ、メティスですか。どうぞ、お入りください」

メティス「姉さん、こちらは?」

アイギス「有里さんは知ってるわよね?この人は……」

千枝「あ、里中千枝って言います。一応、ペルソナ使いで……」

メティス「里中さんですね。よろしくお願いします。私はメティスといいます」

千枝「ん、よろしく」

有里「今日はメティスと少し話がしたくて来たんだ。いいかな?」

>メティスは不安そうにアイギスを窺っている。

アイギス「大丈夫だから、ちゃんと答えてあげて。あの、私は席を外した方が……?」

有里「いや、大丈夫。むしろいて欲しい。アイギスの補足も必要になるかもしれないから」

アイギス「……わかりました」

有里「さて、メティス。今日で二回目だね」

メティス「はい。私の方は、姉さんとほとんどの情報を共有していますから、存じていましたが」

有里「うん、どうやらそうらしいね。……あれ、ってことは僕がアイギスに言った事とかって」

メティス「はい、記憶しています。その時の姉さんの感情と一緒に」

>アイギスは下を向いている。
>……恥ずかしがっているのか?

有里「ま、まぁそれはいい。けど、君が生まれてから……一度消えて、今までの事は記憶してる?」

メティス「記憶にはありません。私が姉さんに還ってから、新たにまた街に来るまで……その間の姉さんの記憶もフィードバックされていません」

有里「つまり、今のメティスはアイギスと別固体だって考えていいのかな」

メティス「恐らくはそういう事だと思われます。しかし、本来姉さんの意思無しでは存在し得ないはずの私が何故そうなったのかは……」

有里「今は平常とは言い難い状況だからね。そういう事もあるかもしれない。もう一つ、君は誰かを守る為に生まれたと言った」

メティス「はい、確信があります。以前、私に姉さんがいるという事が根拠も無く感じられたのと同じ感覚で、使命感が私の中に存在しています」

有里「それは、誰を……なのかな」

メティス「そこまではっきりとは……ですが、特別な人である事は間違いないと思います。例えば、里中さんではありません」

千枝「……まぁ、そうだろうけど。わざわざ言わなくても」

メティス「申し訳ありません、今一番分かり易い例かと思って……」

有里「アイギスでも無いんだよね」

メティス「姉さんとは昨夜一晩過ごしましたが、その間もずっとこの感覚はありました。誰かの所へ行かなければという感覚」

有里「……僕でも無い?」

メティス「……惜しい、といった所です。有里さんは、非常に正解に近いのですが、どこか違うような気がします」

有里「決まりだ。メティス、昨日僕と一緒にいた人は覚えてるね?」

メティス「ええ」

有里「その中に、三つほど知らない顔があったはずだ。茶髪の人と、いかつい人と、銀髪の人」

千枝「いかつい人って……」

メティス「確かに、そう記憶しています」

有里「その内銀髪の彼……鳴上悠と会うといい。きっと、君の探している人だから」

メティス「ナルカミ・ユウ……」

有里「それで、もう一度聞く。僕では無いんだね?」

メティス「はい。有里さんは……普通の人です。特別な人ではありません。……すみません、上手い表現が浮かばないんです」

有里「……ありがとう、十分だ。今日は帰るよ。また会おう」

メティス「はい……あの、鳴上さんはどちらに」

アイギス「鳴上さんはこの寮に住んでるから、待っていれば帰ってくるはずよ」

メティス「わかりました……ありがとうございます」

有里「どういたしまして。それじゃ」

>何となく予感していた事が、形になり始めた。
>多分、そうなんだろうな、と……。

美鶴「もう帰りか。収穫はあったか?」

有里「それなりに。じゃあ、また来ます」

千枝「あ、待ってよ。それじゃ、私も失礼します」

美鶴「ああ……湊!」

>美鶴に呼び止められる。
>……振り向く事はしない。

有里「何?」

美鶴「……その、怪我は、大丈夫か?」

有里「何とか」

美鶴「そ、そうか。それは良かった……うん。それじゃ、またな」

有里「……またね」

>寮を後にした……。

千枝「……」

有里「……」

>不意に、痛む方の手を握られた。

有里「あ痛っ」

千枝「あ、ごめん……」

有里「どうかしたの?」

千枝「いや、何か……すごい難しい顔で悩んでたから」

有里「ああ……うん、ちょっとね」

千枝「私が聞いても意味無い……よね」

有里「……」

千枝「もー、やんなるなー。私だって何か力になれたらいいのに。色んな人に嫉妬して、やきもきして、それだけって……何の意味あるんだろーね!」

>千枝は笑っているが、はっきり無理しているのがわかる。

有里「千枝は、それでいいんだよ」

千枝「え、何それ。皮肉?役立たずでいいってことなの?」

有里「まずそこが間違ってる。役立たずなんかじゃないよ」

千枝「だって、有里君が悩んでる事一つも解決してあげられないよ?他の子だったらこう、癒しの一つでも与えてあげられるんだろーけど。私はそういうの向いてないし」

有里「これが十分癒されてるんだけどねぇ」

千枝「え?そんな、特別な事したわけじゃないし……」

有里「特別な事って必要なのかな?例えば、どうしようどうしようってテンパって、思わず怪我してる方の手を握ったりとか」

千枝「ご、ごめんね……」

有里「そういうの見て、可愛いなって思えるからね。自然体で十分なんだよね」

千枝「そうなの?」

有里「そうなの。千枝は気付いて無いかもしれないけど、結構救われてるよ、色々」

千枝「そっか……でもさ、やっぱり何かしてあげたいって思うんだよね」

有里「……なら、手を握っていて欲しい」

千枝「あ、うん……」

有里「そっちじゃなくて、こっち」

千枝「えっ、でも、こっち……痛いでしょ?」

有里「いいんだ。何だかどこかへ行ってしまいそうだから、しっかり握って離さないで」

千枝「うん……大丈夫?」

有里「大丈夫だから」

>……傷の痛みと、千枝の手だけが今僕をこの世界に留まらせている。
>そんな錯覚をしてしまうくらい、足元がふらついた。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが8になった。

千枝「あ、そういえば……」

有里「ん?」

千枝「明日、こっちでも夏祭りやるみたいなんだけど……一緒に行かない?」

有里「そうだな……それもいいね。行こうか」

千枝「向こうじゃ普通に私服だったけど、今回は有里君も浴衣とか着てみなよ」

有里「僕が?……誰が得するのかな」

千枝「私、見たい」

有里「……ちょっと都合してもらうか。後で美鶴に連絡しよう」

千枝「やった!」

>浴衣ねぇ。
>前に旅館で着なかったかな?



【2012/8/19(日) 晴れ ホテル内 有里の部屋】


千枝『有里君、準備できたー?』

有里「ああ、一応。今行くよ」

>貸衣装の浴衣を着て部屋を出た。

千枝「おっ……おー……」

有里「……何その反応」

千枝「いやいや!似合ってるよ!うん!」

有里「あんまり好きじゃないんだけどね、和服。すかすかしてて……」

千枝「そんなもんじゃない?よっしゃ!そんじゃ行こう!」

>千枝に手を引っ張られてホテルを出た。
>……。

千枝「うわっちゃー、流石に人多いねぇ」

有里「そうだね」

千枝「はぐれたりしないかなぁ」

有里「ちょっと心配だね。特に千枝は土地勘も無いし……?」

>千枝はじっとこっちを見ている。
>……ああ、なるほど。

有里「それじゃ、はぐれないように手を繋いでいこう」

千枝「あ、ちょっと棒読みっぽい」

有里「そんな事ないよ。ほら」

千枝「ん。……へへ」

>差し出した手を握られる。
>気温に負けないくらいに熱い。

有里「前から思ってたけど、千枝って手あったかいよね。ていうか熱いよね」

千枝「そう?体温高いのかな。ちゅーか、有里君の手が冷たいんじゃない?」

有里「そうかな……」

千枝「そうだよ、多分。お、たこ焼き屋発見!」

>……。

千枝「いやー食った食った!」

有里「本当によく食べたね……」

千枝「な、なによぅ。運動するから平気だもんね」

有里「あれ?でも雪子に聞いた話では体重が……」

千枝「筋肉は脂肪より重いから仕方ないのだぞよ。……いや、本当に。ほんとだからね?」

有里「はいはい。……そのお面、いいね」

千枝「でしょー?お面なんてキャラクター物ばっかりだと思ってたんだけどね」

有里「木彫りの狐面か。こんな渋いのもあるんだね」

千枝「その分お値段張るけどね。うー、ちょっと疲れたかも!」

有里「どうする、帰る?」

千枝「んー、もうちょっと。ていうか、有里君何も買って無いじゃん?」

有里「なんかお腹一杯って感じで……楽しそうな千枝見てたらそれで結構満足してる」

千枝「何それ。そんなもんなの?」

有里「うん、そんなもん」

>くるくるはしゃぎまわる千枝を見ていると、こっちまで楽しくなってくる。
>有難い話だ……。
>……。
千枝「ふっはー!流石にもうお腹も体力も限界!」

有里「あれだけ食べたらね……」

千枝「あれ、ちょっと引いてる?」

有里「感心してるんだよ、よく入るなって」

千枝「エネルギー使うからね!」

有里「あはは……」

>千枝と二人で夏祭りを楽しんだ。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが9になった。
>辺りはすっかり暗くなり、屋台の明かりが周囲を照らしている。
>そろそろお開きにすべきだろう……。

有里「さて、そろそろ帰ろう。疲れたでしょ?」

千枝「ん、流石にそろそろ帰ろうか。いやーしかし年に二回も夏祭りに来れるとは!いいもんだねぇ」

有里「そうだね。特に千枝と二人で回れたのが良かった」

千枝「またそうやって……」

有里「……そういえば、僕が陽介の所に泊まったのも夏祭りの夜だったな」

千枝「へ?何それ」

有里「もう覚えて無いんだけど、その日何か理由があって……悠の部屋を空けないとって思ったんだよね」

千枝「あ、それって……」

有里「多分、その日だったんだと思うよ」

千枝「……」

>ふと思いついた事を話しただけなのだが、千枝は真っ赤になって俯いてしまった。
>段々、握っている手に力が入ってくる。

有里「いたた、ちょっと強い強い」

千枝「ご、ごめん!えーと、その……今日、さ」

有里「僕の部屋、来る?」

千枝「!……う、うん」

>……さて、どうしよう。
>覚悟の決め時だろうか。
>……うーん。



【ホテル内 有里の部屋】


>コンコン。
>扉がノックされた。

有里「どーぞ」

千枝「失礼します……」

>千枝は既に真っ赤になっている。

有里「……」

千枝「……」

有里「……千枝」

千枝「……あぅ」

>……あぅ?

千枝「ちっ、違くて。はいって言おうとしたんだけど……なんか、舌回らなくて」

>無理も無い、ここまで露骨に緊張しているとな……。

有里「緊張してるなら、やめとこうか?」

千枝「だっ、大丈夫!だよ!……有里君は、何か余裕だね」

有里「うん、まぁ……」

千枝「もしかして、経験アリ?」

有里「……無いけどさ」

千枝「良かった……ん?良かったのかな……」

有里「というわけで作法とかわかりません。とりあえずおいでよ」

千枝「う、うん……」

>ベッドに腰掛ける僕の横に、千枝がちょこんと座る。

有里「はい、ぱたーん」

>肩に手を掛けて、そのまま仰向けに倒した。

千枝「ちょっ……」

>千枝の頭の横に手を置いて、覆いかぶさる。

千枝「……ね、やっぱやめにしない?」

有里「どうして?」

千枝「だってさ、えっと……あ、汗とかかいたし!」

有里「……髪の毛、まだちょっと濡れてるね」

>髪に顔を近付けて、匂いを嗅いでみる。

有里「シャンプーの匂い。帰ってきてから僕の部屋に来るまでの時間から考えて……三回くらいかな?」

千枝「なんでわかるの!?」

有里「千枝の事なら何でも。そうだな、まず帰ってシャワー浴びて、着替えようと思った時にちょっと気になってもう一回シャワー浴びたね?」

千枝「う、うん」

有里「で、それからちょっと落ち着こうと思って水でも飲んで、緊張してまたちょっと汗かいて、それでもう一回。で、待ってるから緊張するんだーって、髪の毛乾かすのもそこそこでこっちに来た」

千枝「……びっくりする程正解。すごいね」

有里「わかりやすいからね、千枝は。で、何でやめるって?」


千枝「……何でも無いっ!」

>真っ赤になって横を向いた千枝の、こっちを向いた耳にキスをする。

千枝「ひっ……」

有里「ひって……ちょっと傷つくなぁ」

千枝「ご、ごめ……くすぐったくて……」

>そのまま、首筋へ。
>何度も何度もキスをして、時折舌を這わせる。
>肌からもボディソープの匂いがする。

千枝「っく……ぁ……ふっ、ん……」

>……可愛いなぁ。
>千枝は必死に何かを堪えている。
>口元に指を持っていって、時折その指を噛んで声を殺す。
>……首筋を降りて、鎖骨に到達すると、今度は折り返して首を上っていく。
>仰け反った喉を通って、下顎に。
>指が少し邪魔だ。

有里「指、退けて?」

>言いながら、退けようとしないその指をそっと噛む。

千枝「あっ……!」

>驚いて指を外した隙に、唇を重ねた。

千枝「んむ……」

>千枝の吐息は熱い。
>唇を通じて、熱気が僕の中にも入ってくるような気がした。

千枝「っは、ぁ……有里君……」

>視線も熱い。
>……そろそろ、限界か。

千枝「有里君、有里君……」

>千枝の唇が空気を求めるようにパクパクと動く。
>求めているのは空気ではなく、僕だ。

有里「……」

>僕は、応えるように再び顔を近づける。
>千枝が目を瞑る。
>そっと、前髪を掻き分け……。

千枝「あいたっ!」

>また、デコピンをかました。

有里「この辺にしとこう」

千枝「な、なんでよ!」

有里「んー……やっぱり、僕と千枝ってそうじゃないと思う」

千枝「私って、やっぱり女の子として見れない?」

有里「そうじゃなくて。震えてるような子を無理にするのは違うかなって」

千枝「あ……」

>今更、自分が少し震えている事に気付いたようだ。

千枝「平気だよ、多分……ちょっと緊張してるだけで」

有里「緊張しなくても良くなったら、その時しようよ。これから時間が経てば、心も体も自然に開けるようになると思う。だから、ね」

千枝「うー……あー!もう!バカー!!」

>下腹部に千枝の膝が綺麗に入った。
>……痛い。

有里「……ぐぇ」

千枝「わた、私すっ……ごい覚悟して来たんだよ!?もー何なの!?バカ!有里君のバーカ!!」

有里「ごめ……ん……だけど……」

千枝「……わかってるよ。無理しちゃ駄目だってんでしょ。……ごめん、ありがと」

有里「わかってくれたならいい……」

千枝「ご、ごめん、痛かったよね?大丈夫?」

有里「うん……なんとか……」

千枝「ごめんね……ね、じゃあさ」

有里「ん?何?」

千枝「そういう、……のは、また今度って事で。今日は、その……」

千枝「とりあえず、一緒に寝てみたりなんか……しない?」

有里「……そうだね、そのくらいから始めようか」

千枝「うん……ん、何か、痒い……?」

有里「ああ、これじゃない?」

千枝「……か、鏡!」

>千枝の首筋には赤い点が一つ残っている。

千枝「ちょっと、痕付けたの!?」

有里「今の季節なら虫刺されで通るんじゃない?」

千枝「通るかなぁ……絆創膏でも貼っとこう、そうしよう」

有里「はは、ごめんね」

千枝「もう、悪戯しないでよねー……はぁ」

有里「疲れた?」

千枝「なんかどっと疲れたって感じ。有里君が悪いんだからねー……」

有里「ごめんって」

千枝「謝ったって許してあげないからね!」

有里「じゃあどうしたらいい?」

千枝「……私が寝るまで起きてて、寝たら起きるまで一緒に寝ててくれたらいい」

有里「はい、わかりました。ほら、おいで」

千枝「ん……じゃあ、おやすみ」

有里「おやすみなさい。また明日ね」

>……千枝は一つ笑って、目を閉じた。
>千枝との仲が凄く良くなったようだ。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが10になった。
>……。

これでよかったんだと思う。
本当を言うと、よく我慢したなと自分でも思う。
あのまま進んでしまえば、きっと取り返しのつかない事になっただろう。
もし千枝の相手が鳴上悠だったなら、それでもいいのかもしれない。
しかし、僕は悠じゃない。
少なくともこの世界において僕は……。

誰にとっても、特別な存在では有り得ない。
この世界の特異点は、僕では無いからだ。



【2013/1/31(木) 晴れ ???】

>階段を登りきった先で、俺はそれと対峙した。

「勝てるつもりで来たのか?」

鳴上「……悔しいが、それは無理だろう。だから、お前と取引をしに来た」

「なるほど賢明だ。さぁ、お前は何を望む。そして何を差し出す」

>考えてきた。
>あの夏の日から半年と少し。
>その間に、仲良くなった相手は皆いなくなった。
>陽介も、順平さんも、風花さんも、天城も、桐条さんも、りせも、真田さんも、直斗も、天田も、完二も、アイギスさんも、叔父さんも、美奈子も、クマも。
>絆を深める事でしか強くなれない。
>しかし、それは同時に友人を、恩人を、次々と失っていく道だった。
>俺がその道を選んだのは理由がある。
>あの日、あいつが消えてしまった。
>この世界の特異点は、俺と……有里湊、その二人だと思っていた。
>しかし、実際は違った。
>有里もまた、誰かが用意した舞台装置の一つに過ぎなかった。
>それに気付いた時、俺に選ぶ道は他に無くなっていた。

鳴上「望むのは、この世界の消滅。差し出すのは……俺の力、全てだ」

>以前、この力を使った時、心の中に声が聞こえた。
>それは、絆を繋いだ相手の声。
>心からのメッセージが、俺に更なる力をくれる。
>しかし、今その声は聞こえない。

「この世界の消滅。それは叶えてもいい。しかし、同じ事だぞ。お前は目をつけられている。一度戻った所で、またどこかで異常な方向へ分岐するだけだ」

鳴上「そうはさせないさ。次は俺の選んだ道に進ませる。俺が、必ずそうする」

>それは大口を開けて笑う。
>俺の覚悟が、迷走が、楽しくて仕方ないとでも言うように。

「いいだろう、力を揮え。お前の力に私が少し手を添えしてやろう。そうすれば、お前の望み通りになるだろうな」

>思い通りになる。
>その代償は、俺の力。

「さぁ捨て去れ。お前を成すその力を。その先で俺は待っているぞ」

鳴上「ああ、待っていろ。今度は、お前に届くだけの力を持ってまた来るさ。……ペルソナ」

>心の力。
>困難に立ち向かう為の力。
>今や、全てのアルカナを取り込み、盲進する愚者から『世界』そのものへと変わった俺の力。

鳴上「伊邪那岐大神」

>その長刀を一閃すると、空間に裂け目が出来る。
>この座……世界を支えている空間が皹割れ、崩れていく。

「また会おう。私はずっとお前を見ている。せいぜい楽しませてくれよ」

>空間の崩壊と共に、俺の意識も薄れていく。
>俺は、高笑いする最悪の姿をしっかりと心に焼き付けて目を閉じた。

鳴上「ああ、必ずまた会おう。その時は……」

>俺がお前を、終わらせてやる。

鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」→END

REBOOTING...

→NEXT 風花「鳴上悠?」

ENTER INTO THE STATE...|

有里の消失。
覚悟の鳴上。
再びの始まり。

今回でこのスレでの本編投下を終わります。
次スレのタイトルは『風花「鳴上悠?」』となります。

こっから適当なお話と地味なネタの投下でスレを埋めた上で次に移動したいと思います。
読んでくださってありがとうございました。
よければ次スレもよろしくお願いします。

では、また後日。


気になりすぎる引きだな
次スレも楽しみに待ってます

おのれニャルラトホテプ……ゆ〝る〝さ〝ん〝

非処女風花は元の世界の風花なの?

乙。

番長はペルソナを奪われたのか?
それとも能力値を分岐前まで戻されただけ?

ちょっと続きはよはよ!もちろん次スレのURLはってくれるんだよね…?

わかってもわからなくても先に支障がない話は積極的に答えていこう。

>>960
もしかしたらそういう可能性もあったね、っていう風花です。
ご存知の通り、P3本編ではそういった直接的な描写はありませんので……
有里が全員食った場合とか、風花一筋だった場合とか、そういうパターンも在り得ると。
ついでに説明不足だった部分を補完しておくと、この世界の下敷きになっているのは原作です。
しかし、登場キャラクター達は必ずしも原作と同一の世界から登場しているわけではありません。
要は、色んな可能性世界から集められた連中だと思ってください。

>>961
これは次スレですぐに判明するんですけど一応、少しだけ説明。
例えばペルソナが使えなくなるとか、元に戻るだけなら、例のあの人は取引にも応じてくれないでしょう。
なら何を支払ったかというと、鳴上の力の根幹になる部分です。
……まぁ、ペルソナ2罰を考えていただけばいいかと。

難しいっすね

コミュニティーリセットかキツいな

次章書き溜めの為本日の更新は無し……とさせていただきます。
質問他あったら適当に答えます。
次スレ立てたらこのスレどうすればいいんだろう……

埋めるか依頼するか

次スレのURLを張っていくのもわすれずに

魔のおまけ

本編時間軸とは一切関係ありません。

本編キャラクターとは一切関係ありません。

ただの本編一切進行しません。

というわけで、どうぞ。

>深夜12時……。
>電源を抜いたはずのテレビに砂嵐が映った。
>砂嵐は段々と晴れていき、黄色の画面になる。
>画面に映し出された番組、そのタイトルは……

『クマの!なぜなに相談室』

~OPテーマ:Pursuing my true self~

クマ「はい!やって来ましたクマのなぜなに相談室のお時間だクマー」

クマ「えーこの番組は、マヨナカテレビを不当に乗っ取って行われる解説番組だクマ」

クマ「本編で説明できなかったとか、わかりにくかった部分をクマとアシスタント、それとゲストが解説していく新感覚番組!」

クマ「アシスタントのメティスチャンだクマー」

メティス「……良くわからないのですが、要は解説をすればいいのですね」

クマ「そういう事クマ。で、ゲストはこちら!有里美奈子ちゃんだクマ!いやークマ両手に華!」

美奈子「どーもー。いやーまさかテレビに出れるとは思ってなかったよ!」

クマ「これもクマの権力クマ。さて、それじゃ早速解説始めてくクマー」

メティス「その前に、一ついいですか?」

クマ「何かなーメティスチャン?」

メティス「本来、こういった解説などは全て作中で行うべきだと思うのですが。それを怠って、あまつさえキャラに喋らせればネタになるなどと思っているのは流石にどうかと思います」

クマ「メティス。聞くんだ。解説コーナーっていうのは世の中に二種類ある」

メティス「二種類?」

クマ「そう、二種類だ。まず、世界観を説明した上での補足など、わからなくても平気な部分を解説する場合」

美奈子「すっごく有難いね。より作中世界を知る事で、あ、この裏はこうなってるんだ!って思えるもんね」

クマ「そうだね。それが所謂『読者のための解説』。で、もう一つ。この番組のような場合」

メティス「これは、読者のための解説では無いのですか?」

クマ「もう一つは、本来作中でしっかり理解して貰わなければならない事が説明出来なかった場合。解説無しでは中々先へ進めないよね?」

美奈子「わかんないまま進めちゃうと、次々誤解を生んじゃうかもしれないもんね」

クマ「そういう事。当然、理解されるように描写や進行を工夫するのが当たり前だ。でも、それを出来ない場合がある。例えば、作者の技量が無い時」

メティス「なるほどですね」

クマ「わかってもらえたようだね。そう、二つ目のパターンは『作者のための解説』。不安な部分を無理やり補おうって魂胆だね」

美奈子「なんだか中学生がノートに書いたオリジナル能力バトル物小説のおまけみたい!」

クマ「大体その通りだよ。キャラクター同士が喋って、メタい事を言う。それがテンプレートだ。そして、この番組はそういう番組なわけだ」

メティス「つまりは、無くてもいいけどなんかやらないと先行き不安だからやっとこうのコーナーですね」

クマ「そういう事クマ!だから、そういう細かいことは気にせずどんどん行くクマ!はい最初の質問!」

メティス「これを読むんですね?ええと……『原作重要キャラなのにコミュ無い人って何なの?』」

クマ「この質問はここにいる三人にとっちゃ大問題クマね」

美奈子「私主人公だし超重要ポジションなのにコミュ無かったよ」

メティス「私は、出演した時期が時期なので……」

クマ「勿論クマも無かったクマ。これは理由があって……あの世界のクマ達は作られた存在クマ」

美奈子「作られた?」

クマ「そうクマ。黒幕さんが舞台を整える上で、色んなカノウセイセカイから人を引っ張ってきたクマ。その中でも、どうやっても普通に呼び出すことが出来なかった人がいるクマ」

メティス「私や美奈子さんですか?」

クマ「そういう事クマ。だから、黒幕さんはそれっぽいのをでっちあげたクマ。結果、更に複雑な世界の重なりが起きて、あらゆるカノウセイセカイが共存するカオスな世界が出来上がっちまったクマ」

美奈子「そっか……残念だな……」

クマ「ちなみにクマの出番が少ないのも同様の理由クマ。特に影時間があった頃は、シャドウとしての側面が強く出てテレビから出る事も出来ないしたまに消滅したりしてたクマ」

メティス「それでですか。大変だったんですね」

クマ「他にも似たような境遇の人はいるけど、あんまり気にしなくていいクマ。コミュが無くても重要人物って事もあるクマ。さ、次いってみよー!」

メティス「次の質問は……『特異点って結局誰だったの?』ですね」

クマ「これは簡単クマ。センセイこと鳴上悠クマ」

美奈子「途中まで湊もそれっぽかったけど?」

クマ「あれは、性質としてセンセイに近いが故に起こった一種の混線クマ。共鳴ともいう」

美奈子「湊にかなり近い私が何とも無かったのはそういう事なんだね。悠と湊は似てるけど、私と悠が似てるかって言うとちょっと違うもんね」

クマ「そういう事クマ。特異点に接近しすぎると警戒されちゃって、最悪存在がなくなっちゃうクマ。本編のフーカチャンがそのパターンクマね」

メティス「常に監視されているという事ですか……恐ろしい話ですね」

クマ「けど、センセイなら大丈夫クマ。きっと戦いぬいてくれるクマ。はい次」

メティス「ええと、次は……『風花とか千枝とかそんな簡単に別の人好きになるもんなの?』ですね」

美奈子「前も見たねこれ」

クマ「振り返ってみると、NTRって言葉が良く出るスレだったクマ。ま、これに関しては言う事はひとつっきゃないクマ」

メティス「ズバッとどうぞ」

クマ「そんな事もある」

美奈子「ざっくりいったね」

クマ「だって考えてみて欲しいクマ。全ステータスマックスの超人で、かつ自分や仲間の為にそれなりに心砕いてくれる人クマよ?」

美奈子「ちなみに私もステータスマックスだけどね」

クマ「ミナコチャンは心の中に一人いるから攻略不能クマ。当然フーカチャンの中にも有里湊って大きな存在があるし、チエチャンも同様に鳴上悠っておっきな存在があるクマ」

メティス「なら美奈子さんと同じで攻略不能なんじゃないですか?」

クマ「ところがどっこい出来るんだなぁ。何故か。フーカチャン、かなり大人だからクマ」

美奈子「ちょっと時間が経つとあんなになるんだ、ってびっくりしちゃったよ」

クマ「あの頃の感情がどういう物だったかをしっかり受け止めていたクマ。あれは恋愛と憧れがごっちゃになった感情だったクマ。少なくとも本編中のフーカチャンにはそうだったクマ」

美奈子「つまり、他の世界だと本当にがっつり恋愛しちゃってる風花もいたわけね」

クマ「そうクマ。しかしフーカチャンは有里湊と」

メティス「性行為に及んでいる、と」

クマ「……何故か。あれが特異点に近付きすぎた弊害クマ」

美奈子「どういう事?」

クマ「つまり、ごっちゃになっちゃったクマ。あのフーカチャンに体は間違いなくバ、バージンだったクマ。けどセンセイと仲良くなっていく内に、記憶が少しずつ混ざっていったクマ」

メティス「他の可能性世界との融合、ですか」

クマ「そうクマ。それからゆっくり体のほうも組み替えられて、結果として初めてじゃないよ?となっちまったクマ、センセイがっかりクマ」

美奈子「なるほどね、それでか……」

クマ「そうなっちまうと世界の在り方自体に色々変化を及ぼす危険もあるクマ。だからポイされちゃうクマよ……」

メティス「里中さんの方はどうだったんですか?」

クマ「チエチャンは間違いなくセンセイに恋愛感情を抱いていたクマ。けど、肝心のセンセイが全く気付いてくれなかったクマ」

美奈子「悠ってすっごい鈍いもんね……」

クマ「センセイ、女の子全員とすっごく仲良しクマ。けど全員とそこ止まりだったクマ。その中で、どんどん恋愛感情は友情に変わっていったクマ」

美奈子「ちょっと可哀想になってくるね」

クマ「特にユキチャンやチエチャンは、性格的に友達を応援したくなっちまうから……気付いたら、ワタシ、身を引くわってなってたクマ」

メティス「これが、セイシュンですか」

クマ「そしてそこに現れたのがあのナチュラルボーンスケコマシの」

美奈子「湊ってわけか。まぁしょうがないのかもね」

クマ「あの微妙に庇護欲をそそる身長とか、器用なのか不器用なのかわからん辺りがチエチャンのツボだったみたいクマ」

メティス「複雑な人間模様ですね。次は……これ、大丈夫なんですかね」

クマ「ん?とにかく読み上げてみるクマ」

メティス「えー、『美奈子は結局どうやって帰ってきたの』です」

美奈子「……」

クマ「気まずいので、ミナコチャン本人からどうぞ」

美奈子「テオ……」

メティス「……誰かが犠牲になったようですね」

クマ「空気が重いクマ……」

~EDテーマ:Never more~

クマ「おーっとエンディングクマ!いやー中々充実した番組になったクマね!」

メティス「そうですね。それなりにしっかり疑問を解消できたと思います」

クマ「カンペ通りの感想ありがとさん!さて、次からはまたクマたちの出番が無い本編が始まるクマ」

メティス「クマさんはともかく、私や美奈子さんはまず存在しているのでしょうか」

クマ「それもわからんクマ。真実はまだ霧の中。晴らすのは……」

メティス「次の主人公ですね」

クマ「そういう事クマ。そして、その栄えある主人公に選ばれたのは……」

クマ「でーん!フーカチャンクマー!おめでとーおめでとー!」

メティス「らしくないといえばらしくない人選ですが、本編での扱いを考えればそうなるのも然り、と言った所でしょうか」

クマ「ゲーム内じゃ序盤はユカリチャン、中盤以降はアイチャンにヒロインの座を奪われ続け、サブヒロインでもミッチャンの下に置かれがちだったあの頃……」

メティス「大出世ですね」

クマ「めでたいクマ!というわけで、そろそろお別れ。次の世界でお会いしまショークマー!」

メティス「お疲れ様でした。よろしければ次のスレッドから始まる本編も読んでくださいね」

美奈子「テオ……ありがとう」

>……。
>黄色い画面に戻り、砂嵐が始まる。
>電源を抜いたテレビは、当然のようにただ暗い闇を映すようになった。
>……寝よう。

鳴上「マヨナカテレビって便利だなぁ」

番外:クマのなぜなに相談室 END

とりあえず、説明足りないかなぁと思った部分を補完してみた。
さて、次スレ・・・といきたい所だけどもうちょっとだけ続くんじゃ。

次は今夜の影時間に。
また後で……。

テオドアァァァァァ!

始まりの時。

酷い頭痛がする。
ここは……分寮じゃない。
月光館学園の男子寮だ。
頭痛と共に酷い吐き気を覚えた。
携帯の画面を見ると、日付は2012年3月25日となっていた。


「戻った……のか。ここが、分岐点」

一人呟くと、胃の中身が出そうになった。
せめて、トイレで……。
足取りがふらつく。
消灯時間後だから電気も消えている。

「ぅ……おぇ」

なんとか寮のトイレまでたどり着き、個室に入る。
便器に大量の胃液を吐いた。

「ぐふっ、う……げほっ」

胃液が通過した刺激で涙が出る。
体の中が全部ひっくり返って出てしまうんじゃないかと錯覚するほど大量に、長い時間吐いた。
荒い息をつきながら、どうにかこうにか立ち上がる。
視界がぱちぱちと明滅して、自然と頭が揺れた。

「あの……大丈夫ですか?」

懐かしい声がする。
この、声は。

「えっと、高等科の……すみません、名前は存じてないんですけど……先輩ですよね?」

天田。
だが、当然俺の事は知らない。

「あま……」


待て。
今の自分の立場を忘れるな。
自由に動くためには……関わりを深めてはならない。
お互いの為にも、それが一番だ。

「……いや、悪い。うるさかったか?」

「いえ、たまたまトイレに来たら先輩が……体調悪いんですか?」

「ちょっと、な。心配無いよ。……もう戻るから、君も用が済んだら寝た方がいい」

「まぁ、大丈夫ならいいです。それじゃ、おやすみなさい」

擦れ違う時、無意識に奥歯を噛み締めていた。
俺は、もう天田や他の皆と同じラインにはいない。
世界を歪める存在……特異点だ。

部屋に戻り、ドアを閉める。
頭痛も落ち着いて来た。
どうやら、世界を捻じ曲げた事による一時的な物だったらしい。

「良かった……あんな状態じゃ出来る事も出来ない」

体調が落ち着くに従って、ある違和感に気付く。
窓の外から何者かに見られている。

「……シャドウ? いや、ペルソナか!?」

かつて自身が使ったペルソナ。
それにそっくりな……生き物が、こちらを観察している。

「何なんだ、お前は……」

窓を開けようと近付くと、ジャックフロストにそっくりな何かは慌てて逃げ出していった。

「あ、おい!」

追いかけようと窓枠を乗り越える。
ジャックフロストはとことこと逃げていく。

「寮が土足でよかった……逃がす所だった」

走って追っていく内、人気の無い場所に入ってしまっていた事に気付く。
袋小路だ。

「こんな路地裏に……アイツはどこだ?」

辺りには気配が無い。
グルルル……。
何かの唸り声が聞こえる。
背後からだ。

「……そうか、お前達が今度の敵か」

シャドウでも無く、ペルソナでもない。
それは、精神から生まれた物ではなく、物質として存在する『生物』。

「俺を排斥しようとする力、か。予想はしてたさ。何かあるだろうって」

近くに落ちていた鉄パイプを握る。

「お前達が何かは知らない。だけど、俺の敵だっていうなら……」

振り向いて、獣と人が混じったような、その生き物と対峙する。

「ただ、戦うだけだ」

誰も見ていない場所、誰も知らない内に。
世界と、一人の少年との戦いが幕を開けた。

彼の戦いの始まり。
そして、彼女の戦いは以下で始まる。


NEXT





風花「鳴上悠?」

というわけで当スレッドでの投下は以上で完全に終了といたします。
あと10無いので適当に埋めておいてください。
とか言って多分10もレス無いので明日あたり残ってたら自分で埋めますけども。

ここまで読んでくれてありがとう。
次スレもよろしくね!!

乙!次スレも楽しみ

乙、指定されてなくてもシーン毎にゲームのBGMが再生されるから不思議だ

>ある噂を聞いた。
>今日はそれを実験しようと思う。

鳴上「……」

風花「~♪」

鳴上「ぬるぽ」

風花「ガッ」

鳴上「……」

風花「……?」

鳴上「あの、風花さんってコンピューター強いそうですね」

風花「まぁ、趣味から始めて随分触ってるから……」

鳴上「そうですか。あの、巨大掲示板ってあるじゃないですか。ニュースにもなったりする」

風花「ああ、私はあんまり見ないけどね」

鳴上「あんまり見ないんですか」

風花「うん、あんまり」

鳴上「この前ちらっと覗いたんですけど、いろいろすごいですよね」

風花「そうだね、色んな板があるし」

鳴上「でも、ちょっと怖いんですよ。俺なんかが混じってると、何かだまされるんじゃないかって」

風花「平気平気、よっぽど変な所見に行かなければ大丈夫だよ」

鳴上「そうですかねぇ。怖いと思うんだけどなぁ」

風花「先入観があるよね、どうしても」

鳴上「じゃあ本当は怖くないんですね?」

風花「うん、見抜ける人じゃないと難しいけど」

鳴上「ん?」

風花「あ、嘘を嘘と見抜ける人じゃないと掲示板を使うのは難しいって事」

鳴上「そうですか。……本当かなぁ」

風花「本当、本当」

鳴上「お前それサバンナでも同じ事言えんの?」

風花「それっておかしくねぇ?だって、ここ日本じゃん」

鳴上「……あんまり、見ないんですよね」

風花「そうだね、あんまり見ないかな」

鳴上「ですよね」

>検証結果。
>かなりの入りびたり。
>日常会話にも脊髄反射でネタが挟まってくるレベル。

>結論。山岸風花はちゃんねらー……。

鳴上「……まぁ、だからどうってことも無いけど」

というわけでこちらへどうぞ。

風花「鳴上悠?」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月15日 (金) 08:59:36   ID: FgDfXCct

おのオチはネトラレ好きなら良いんじゃ無い?

2 :  SS好きの774さん   2014年12月14日 (日) 20:15:43   ID: 08INEPwY

御都合主義だけど嫌いじゃないよ

3 :  SS好きの774さん   2015年01月29日 (木) 20:50:36   ID: f4kAlCRi

うちは湊xりさがすきなのに。。すこし残念。

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