男「お前は?」ドラゴン「ドラゴンよ」(1000)

オリジナルssです。

※注意

多くの厨二要素、厨二設定が出てきます。
人外ヒロインです。
バトルもあります。







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学校 夕方


男「疲れたな……とにかく疲れた」

男「……でも今日は金曜日だ、明日から二連休」

男友「男、帰ろうぜ!!」

男「わかったわかった」


肩くらいまでの茶髪でちょっとチャラチャラした感じのイケメン。
これは俺の中学からの友達の男友だ。


男友「早く帰ろうぜ」

男「悪いちょっと待ってくれ」

男友「……おい、早くしろよ」

男「わかってるからちょっと待っててくれ」

男「えーと……これは持って帰らなくていいよな」ガサゴソ

男友「なあ――――」

男「あとちょっと、あとちょっとだから」

男友「……何分?」

男「三分……いや五分」

男友「じゃあ間をとって四分な」

男「分かった」ガサゴソ

男友「つーかそんな事前の休み時間にやっとけよ」

男「休み時間は極力睡眠時間にあててんだよ、文句言うな」

男友「偉そうに言える事じゃねえけどな」

男「うるせぇ」

男友「……授業中に寝ればいいんじゃん」

男「寝てて授業が分かりませんなんて笑えねぇだろ」

男友「そうかもしれないけどさ……」

男「よし、終わったぞ」

男友「……話を聞けよ」

男「俺は授業中には絶対寝ない」スタスタ

男友「……まあ、それでいいよ」スタスタ

男友「……帰りに女の子でもナンパしてくか?」スタスタ

男「お前一人で行け」スタスタ

男友「なんでだよ、一緒に行こうぜ」スタスタ

男「俺はお前と違って雑食じゃないんだよ」スタスタ

男友「雑食って……ひどい事言うな」スタスタ

男「まぎれもなく真実だろ」スタスタ

男友「まあ、そうなんだけどね」スタスタ

男「まったく……女なら何でもいいってなんだよ」スタスタ

男友「別にいいだろ、俺の勝手」スタスタ

男「はいはい」スタスタ

男友「……あ、そういえば新聞見たか日本に竜が来たんだってさ」スタスタ

男「……知ってるに決まってんだろ、今はどこもその話題ばっかりじゃねぇか」

男友「それにしても珍しいよな、こんな島国に最高等種の生き物が来るなんて」

男「……別に竜なんて世界中を飛び回ってる訳だし、日本に来てもおかしい訳ではないだろ」

男友「そうか?」

男「世界中に100頭近くいる訳だし、そのうちの数匹が日本に来ても別にそこまで騒ぐ事じゃねぇだろ?」

男友「……まあ、そう言われればそうだな」

男「だろ、だから騒ぎ過ぎなんだよ」

男友「……」

男「あんなに騒ぐから俺が見に行けなくなったじゃねぇか……」

男友「……え、お前見に行きたかったのか」

男「当たり前だろ、竜だぞ、竜!!」

男「でかくて鱗で火を吐くんだぞ、凄ぇじゃん!!」

男友「……いや、そんなに熱く語られても俺にはわからん」

男「なんでわかんねぇかな……」

男友「どう頑張っても、俺には伝わらないな」

男「死ぬまでに一回は見てみたいな、竜」

男友「そこまでいいもんか?」

男「ロマンだろ、あれこそロマンの塊だろ!!」

男友「竜の神話の読み過ぎだな」

男「お前も読んでみろって!!」

男友「別にいい、俺は竜なんか見るより女の子見てた方が楽しいからな」

男「お前……変わってるな」

男友「いや、普通はそうだろ」

男「なんて言うのかな、惹かれると言うか懐かしいものがあるんだよ」

男友「あ、そう……じゃあ、俺は寄る所あるから、向こう行くわ、じゃあな」スタスタ

男「おい、まだ終わってねぇぞ!!」

男友「明日聞いてやるから、明日話せ」スタスタ

男「お前明日学校行くのか?」

男友「行かない」スタスタ

男「おい!!」

男「……竜か、見に行きたいな」

男「……」スタスタ

???「失礼、君が男か?」

男「誰、ですか?」


それは口髭を蓄えた渋いおっさんだった。
オールバックの髪に黒のスーツなので無駄に怖い。


竜王「私の名は竜王だ」

男「……はい?」

竜王「竜王だ」

男「……そ、それは名字、それとも名前?」

竜王「強いて言うなら、呼び名とでも言っておこうか」

男「竜王って、竜の王と書いて竜王?」

竜王「その通り」

男「……ゴメン、意味が全然わかんない」

竜王「言葉通りだ、私は竜を統べる者、竜王だ」

男「……待て、人間が竜を従わせられる訳ないだろ、人間の最新兵器だって竜にとっては玩具なんだぞ?」

竜王「私がいつ人間だと言ったかな」

男「……え、は?」

竜王「だからいつ私が人間だと言った」

男「待て、竜が人間になるなんて常識的におかしいだろ、あんたバカだろ!!」

竜王「君達の常識を私達にあてはめるのはどうかと思うが?」

男「は?」

竜王「竜は特殊の生き物だ、常識は通じない」

男「特殊って言えばなんでもありって訳じゃねぇぞ」

竜王「もちろんその通りだ、私が言いたいのは君達の常識は通じないと言いたいのだ」

男「……じゃあ証拠を見せてみろよ、そしたら信用してやる」

竜王「よかろう」


そう言うと竜王はいとも簡単に火を吐いた。
どこからどう見ても手品やその類いには見えない。


男「……」

竜王「辺りを燃やすと厄介だからこの程度の火力で我慢してくれ」

男「……」

竜王「まあ、まだ信じられないのならそこら辺を燃やそうか?」

男「……いや、信じるよ」

竜王「そうか、助かるよ」

男「……で、その竜王様が俺に何の用だよ」

竜王「君に頼みたい事があってね」

男「頼みたい事?」

竜王「こっちに来てくれ」

ドラゴン「……」スタスタ


それは俺と同じくらいの女だった。
何処にでもありそうなジーンズとTシャツを着ていて、両手で茶色っぽい大きな鞄をもっている。
透き通るような真っ白な肌と腰くらいまである白銀の髪が特徴的だった。
顔は全体的に大人びた感じだが、ほんの僅かに幼さが残っている。
ほんの僅かに水色がかった目とすっと通った鼻筋、かなり美人の部類に属するだろう。


男「え、だ、誰?」

ドラゴン「私の名前はドラゴン」

男「え、は?」

ドラゴン「私はドラゴンよ」

男「え……だ、誰?」

竜王「私の娘だ」

男「……いや、え、は!?」

竜王「君にはこの子が何に見えるかい?」

男「何って……人間にしか見えねぇけど……」

ドラゴン「……」

竜王「……そうだ、この子は人間だ」

男「……それが何だよ」

竜王「ドラゴンは、竜でありながら人間の姿をして生まれて来たんだよ」

男「え、どういう意味?」

竜王「この子は君と同じ、人間だと言う事だ」

男「え、ええ!?」

ドラゴン「……」

竜王「……」

男「でもお前だって人間だろ!!」

竜王「私はとある方法で一時的に人間の姿になっているだけ、だがこの子は竜の姿にはなれない」

男「……理由は?」

竜王「それは私にも分からない」

男「……」

竜王「……では、そろそろ本題に入ろうか」

男「そう言えばまだ入ってなかったな」

竜王「前置きが長くてすまないな」

男「いいからさっさと言えよ」

竜王「はっきり言おう、君にはこの子を保護してもらいたい」

男「……意味がよくわかんねぇんだけど?」

竜王「言葉通りだ、君の家にこの子をかくまってほしい」

男「ちょ、ちょっと待てよ、意味がわかんねぇ」

竜王「この子はこの通り人間だ」

男「それは分かってるよ、さっき聞いたし」

竜王「竜の事情も複雑でね、竜王の娘が人間だと知れればいろいろ厄介なんだ」

男「……権力争いとかって事か?」

竜王「まあ、そんな所だね」

男「……今まで何とかなって来てたんだろ」

竜王「隠し通すのも限界が近い、そこで君に頼みに来たんだ」

男「……」

竜王「頼む」

男「……ちょっと待ってくれ、なんで俺なんだ」

竜王「君が適任だからだ」

男「だからなんでだよ」

竜王「……そうだな、いや……今はまだ知らなくていい」

男「……どういう意味だよ」

竜王「そのままの意味だ、まだ君が知るのは早い」

男「だから――――」

竜王「物事を知るにはタイミングと言うものがあるんだ、今はそのタイミングではない」

男「危険な事に巻き込まれるかもしれないのにしっかり理由も説明しない気か?」

竜王「……お願いだ、君の質問に後々全て答える、何かしらの恩返しもする」

男「……」

竜王「嫌なら断ってくれても構わない」

男「……わかったよ」

竜王「いいのか?」

男「ああ、少し興味もあるしな、ただちゃんと全部教えろよ」

竜王「約束は守ろう」

男「あとかくまうって言っても言わないといけない人には本当の事を言うからな」

竜王「最小限で頼む」

男「分かったよ」

竜王「では頼む、ドラゴンも彼の言う事を聞くんだぞ」

ドラゴン「……」

竜王「……少し変わっているが根は優しい子だ、どうかよろしく頼む」

男「……わかったよ」

竜王「では、近いうちに君の家に行く」スタスタ

男「……待て!!」

竜王「なんだ?」

男「……場所知ってるのか?」

竜王「当たり前だ」スタスタ

男「おいおい……」

ドラゴン「……」スタスタ

男「え?」

ドラゴン「……」スタスタ

男「おい、待て!!」

ドラゴン「……私、認めてないから」

男「は?」

ドラゴン「人間と住む事よ!!」

男「え、は?」

ドラゴン「私は竜なの、人間とは違うの!!」

男「分かったから叫ぶな、うるせぇ」

ドラゴン「お前の家なんか行かない!!」

男「お前何言ってんの?」

ドラゴン「私は竜として生きる、お前の世話にはならない!!」

男「……勝手にしろよ」

ドラゴン「勝手にする!!」スタスタ

ドラゴン「……」キョロキョロ

男「道分からねぇのかよ!!」

ドラゴン「当たり前じゃない、知らない町なんだから……」

男「……」

ドラゴン「……」

男「じゃあこの町になれるまで俺の家に居ればいいだろ」

ドラゴン「い、嫌よ!!」

男「変なチンピラ共に襲われても知らねぇぞ」

ドラゴン「……ううっ」

男「特に夜は危ないぞ」

ドラゴン「……わ、わかったわよ」

男「ちゃんと付いて来い」スタスタ

ドラゴン「……」スタスタ

男(勢いでこんな事言っちゃったけど良かったのかな……)

男(ま、いいか、さすがに女の子を一人で放置するのもあれだし)

~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「ただいま」ガチャ

ドラゴン「……こ、こんにちは」スタスタ

男「……へー」

ドラゴン「な、何よ」

男「いや、礼儀がしっかりしてるなって思って」

ドラゴン「当たり前でしょ、姿形は人間だから人間の礼儀や社会、生活は生まれてからしっかり叩きこまれたの」

男「ふーん」

ドラゴン「私は竜なのに……」

男「……」

メイド「あ、男さん、おかえりなさい」


この黒っぽいメイド服を纏った胸くらいまでの赤い長髪の女性は俺の家のメイドだ。
母さんの知り合いらしく家にいない母さんの代わりにこの家で住み込みの家政婦として働いている。
多分20歳は超えているのだろうが、顔立ちは全体的に幼く、綺麗より、かわいいと言う表現が似合うような気がする。
なんでも元々は結構ヤバい仕事をしてたとかしてなかったとかって噂だ。


男「ただいま」

メイド「あれ、そちらの女性は……もしかして彼女さんですか!?」

男「違う!!」

メイド「……っは、まさか如何わしい関係の……ダメです、母親さんが許しても私が許しませんよ!!」

男「おい、勝手に話を進めるな!!」

メイド「なら、早く説明して下さい」

男「俺が説明しようとしたらお前が勝手に妄想を膨らませ始めたんだろうが」

ドラゴン「……」

男「あの人はメイド、この家で家政婦として働いてる」

メイド「よろしくお願いしますね、えーと……」

ドラゴン「ドラゴンよ」

メイド「ドラゴンさん」

メイド「……で、お二人の関係は?」ニヤニヤ

男「お前ちょっとこっち来い」

メイド「秘密の話ですか?」

男「お前、少し静かにしてろ」

メイド「なんですか、もしかして出来ちゃった婚――――!?」

男「マジでちょっと黙ろうか」


俺は出来る限り分かりやすく事情を説明した。

メイド「……ほう、つまりドラゴンさんをこの家でかくまうと」

男「そう言う事だ、急で悪いな」

メイド「いえ、私は別にいいんですけど」

男「なんだ?」

メイド「なんと言うか……胡散臭い話ですね」

男「俺も半信半疑だけど、とにかく引き受けたし……」

メイド「だいたいその人本当に竜王なんですか?」

ドラゴン「正真正銘の竜の王よ!!」

男「……だってさ」

メイド「わ、わかりました」

男「とりあえずこれからよろしく」

ドラゴン「よろしく」

メイド「よろしくお願いしますね」

男「じゃあ部屋行くから」スタスタ

メイド「あ、ドラゴンさんも連れて行って下さいね」

男「は?」

メイド「男さんが連れて来たんですから責任をもって守ってあげないとダメですよ」

男「……お前さ」

メイド「じゃあ、私は部屋の掃除がありますから」タタタッ

男「おい!!」

メイド「ドラゴンさんの部屋の準備で忙しいんですよ」

男「……まあ、とにかく来い」スタスタ

ドラゴン「……」スタスタ

男「……」ガチャ

ドラゴン「お邪魔します」スタスタ

男「……」

ドラゴン「……」

男「……とりあえず、部屋はメイドが用意してくれると思うから、あと着替えとかはメイドに聞いてくれ」

ドラゴン「大丈夫、着替えはちゃんと持ってきてるから」

男「あ、そう」

男「まあ何か困った事があったら俺かメイドに聞いてくれ」

ドラゴン「わかった」

男「……」

ドラゴン「……」

男(あのバカメイド、ほぼ初対面の二人でどうしろって言うんだよ!!)

ドラゴン「……別の住処が見つかったら出ていくから」

男「え?」

ドラゴン「新しい住処が見つかったらすぐそっちに引っ越すから」

男「勝手にしろ、ただちゃんと竜王には報告しろよ」

ドラゴン「……」

男「なんだよ」

ドラゴン「父様は絶対許してくれないわ」

男「……」

ドラゴン「無駄な事だって、言われるはずよ……私は多分これからずっと人間として生きて行かなくちゃいけない……」

男「……」

ドラゴン「それに人間の世話になるなんて……」

男「愚痴ったってどうしようもないと思うんだけど」

ドラゴン「あなたは――――」

メイド「男さん、手伝って下さい!!」

男「……空気読めよ、バカ野郎」

メイド「バカって言う方がバカなんですよ」

男「聞こえてんのかよ!!」

男「……悪い、ちょっと行ってくる」ガチャ

ドラゴン「……」

男「あいつバカだろ」タタタッ

メイド「お、男さんに教えてもらった通りやってるのに、焦げちゃうんです」

男「……なんで強火なんだよ、火加減調節しろよ」

メイド「わ、忘れてました」

男「忘れてましたじゃねぇよ!!」

メイド「ああ、焦げ臭いにおいが!!」

男「……とにかく俺がやるから」

メイド「す、すいません」

男「なんで料理は理解できないかな……」

メイド「料理だけは苦手なんですよ」

男「料理以外は出来るんだから料理も努力しろよ」

メイド「努力したからここまで一人で出来たんです」

男「野菜と肉切っただけじゃねぇか!!」

メイド「進歩してるじゃないですか」

メイド「……それにしても、今日が金曜日で良かったですね」

男「え、何が?」

メイド「土日でドラゴンさんの事いろいろ準備できますから」

男「は?」

メイド「私に任せといて下さい、いろいろやっておきますから」ニヤリ

男(ヤバい……恐ろしく不安だ……)

メイド「あ、今不安だと思いませんでしたか?」

男「いや、不安に決まってるだろ」

メイド「安心して下さい、彼女にもちゃんと人間らしい生活をしてもらいますから」

男「人間らしい生活?」

メイド「はい、人間らしく生きてもらうんです」

男「意味あるのか、それ?」

メイド「後ろを見てるだけじゃ前には進めないって誰かが言ってたじゃないですか」

メイド「あんなに悲観的じゃつまらないと思うんですよ」

男「……」

メイド「男さんと同じクラスでいいですよね」

男「……は?」

メイド「ですから、ドラゴンさんは男さんと同じクラスでいいですよね?」

男「意味がわかんないんだけど」

メイド「男さんと同い年くらいなんですからちゃんと学校に行かないと」

男「行かなくていいよ、あとそんな事出来ねぇだろ!!」

メイド「出来るか出来ないかはやってみないと分かりませんよ」ニヤリ

男「……」

メイド「とにかく楽しむ、それだけです」

今日はここまでです。

明日からは原則毎日更新していきますが、諸事情によっては出来なくなるかもしれません。

事前に分かっていたらちゃんと言っておきます。

細かい設定、裏設定などがあったら補足していきます。

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男「……」

男「いろいろあったせいかな……全然眠たくねぇ……」

男「……トイレ行っとくかな」スタスタ

ウウ…

男「……ん?」

ウウッ……

男「あの部屋から……だよな?」

男「……あいつの部屋だよな」

男「……」

男(こう言うのは覗いちゃダメだ)

男「さっさとトイレに行って寝よう」スタスタ

男「……」


悪いとは思うが俺はその扉をほんの少しだけ開けて中を覗く。


ドラゴン「うう……」

男(え、泣い……てる?)

ドラゴン「私は…………なんで…………」

男(何言ってんだ?)

ドラゴン「…………なんで人間なんか……」

男「え?」

ドラゴン「私は…………人間なんか…………」

男「……」

男「……なんか、見ちゃいけないもん見ちゃったな……」

男「……部屋戻って寝よ」


俺は静かに扉を閉める。


メイド「女の子の部屋を覗くのは犯罪ですよ」スタスタ

男「うお!?」

メイド「大きな声出さないで下さい、バレますよ」

男「お前さ……」

メイド「怒らないで下さい」

男「別に怒ってないけどさ」

メイド「部屋を覗いた時点で私も男さんも同じ穴のムジナじゃないですか」

男「なんだそれ……」

メイド「ドラゴンさんにバラしたら怒りますからね」

男「心配しなくても絶対言わない」

メイド「そうですか」

男「当たり前だ」

メイド「……それにしても、正直私達には想像もつかない悩みですよね」

男「まあ、そうだな」

メイド「男さんは分からないんですか?」

男「竜が好きなだけであいつの気持ちが分かる訳じゃねぇよ」

メイド「……役立たずですね」

男「お前だって役立たずだろ」

メイド「なんかこう、男らしく後ろから抱きしめたり出来ないんですか?」

男「お前バカだろ」

メイド「それくらいしないとやっぱりダメですよ」

男「ほぼ初対面だって言ってんだろ!!」

メイド「男さん……チキンですね」

男「ぶん殴るぞ」

メイド「人を殴る勇気をもっと別の方向に使ったらどうですか?」

男「ドラゴンを抱きしめる勇気に使えと?」

メイド「そういう事です」

男「お前バカだろ」

メイド「さっき聞きました」

男「知ってるよ!!」

メイド「まったく……これは見なかった事にしてくださいね、私も忘れますから」

男「当たり前だ」

メイド「間違ってもドラゴンさんに変な事言っちゃダメですよ」

男「言う訳ないだろ」

メイド「男さん嘘つくの下手くそですから」

メイド「しかも男さんすぐ顔に出ちゃいますし」

男「悪かったな」

男「じゃあ俺は寝る」スタスタ

メイド「おやすみなさい」

男「おやすみ」スタスタ

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次の日    公園


男友「…………つまり竜の女の子がお前の家にいる訳ね」

男「まあ、分かりやすく言えばそんな感じかな」

男友「ふーん」

男「……」

男友「で、なんで俺にそんな事を教えたわけ?」

男「正直これからどうなるか全然わかんねぇし、とりあえず信頼できる人に話しといたほうがいいだろ、困った時に頼れるように」

男友「それで俺に話してくれたわけね」

男「……そんな感じかな」

男友「まあ、わかったよ……」

男「突然呼びだして悪かったな」

男友「いいっていいって、幼馴染の頼みだからな」

男友「俺意外と優しいし」

男「自分でいうな」

男友「はいはい」

男「まあ、後でちゃんとドラゴンは紹介してやるから安心しとけ」

男友「ドラゴン?」

男「あ、竜の女の子の名前だよ」

男友「別にいいよ」

男「美人だぞ」

男友「別にいい」

男「え、だってお前女大好き――――」

男友「だってそれ人外じゃん」

男「……は?」

男友「俺は人間の女ならストライクゾーンは広いよ、凄く広い」

男「広いどころか危険球だってストライクのカウントするだろ」

男友「それはお前のストライクゾーンが狭いからだろ」

男「そんな事言ったら世界中の人間の99パーセントはストライクゾーンが狭いって事になるぞ」

男友「ただな、いくらストライクゾーンの広い俺でも人間以外の女の子はちょっとな」

男「本当にかわいいぞ、性格はちょっとあれだけど」

男友「別にいいよ」

男「……」

男友「人外ってなんか嫌だし」

男「……そうか」

男友「だから別にいいよ」

男(ドラゴン……なんかすまん)

男友「で、他には誰に話したんだ?」

男「後はメイドにしか話してない、下手に話し過ぎると危ないし」

男友「だよな……」

男友「隊長さんには話したのか?」

男「まだ話してないけど」

男友「話した方がいいんじゃないか? あの人なら頼りになるし」

男「今の所はいいだろ、下手に借り増やしたくないし」

男友「本当に大丈夫か?」

男「……じゃあ何かあったらちゃんと話すよ」

男友「そうした方が絶対いい」

男「なんかいろいろ悪いな」

男友「いいっていいって、そう遠慮すんな」

男「……そういえば、なんでそこまですんなり信じてくれたんだ?」

男友「え?」

男「だって、普通なら信じないだろ?」

男友「まあ、普通なら頭か心の病気かもしくは虚言癖って思われるだろうな」

男「……だよな」

男友「特にお前が言うと洒落にならないからな、いろいろ」

男「やかましい!!」

男友「まあ、俺だってお前の話じゃなかったら信じてないよ」

男「え?」

男友「お前だから信じてやってんだ」

男友「こんな馬鹿っぽい話だってお前だから信じられるんだよ」

男「男友……」

男友「男……」

男「……俺そういう趣味ねぇから!!」

男友「俺がいつホモだって言った」

男「今の流れは確実にダメな流れだったろ!!」

男友「ああ、わざとやった」

男「……テメェ」

男友「とりあえず、俺は本気で信じてるから、安心しろ」

男「……ありがとな」

男友「今は何も起こってないんだよな?」

男「……今の所は何にもない」

男友「何か俺に協力できそうな事があったら何でも頼んでくれ、出来る範囲で協力する」

男「悪いな、本当にありがとう」

男友「いいんだよ、ただそこまで言うなら人間のかわいい女の子を――――」

男「それは無理だ」

男友「なんだよ、面白くねえ……」

男「うるせぇ」

男友「じゃあ、またなんかあったら連絡してくれ」スタスタ

男「ああ、分かった」

男友「夜道で襲われないようにな」

男「ああ、気をつける」

男「……」

男「俺も帰るかな」スタスタ

今日はここまでです。

ストーリーで何か分からない事があったら聞いてください。

年代と云うか舞台設定を

>>39

年代は現代です。ただ竜が飛んでます。
男友が言っていた竜の神話は、竜のいろいろな話の乗った神話の事です。

あと銃は資格を持っていれば一般人でも持つ事が出来ます。

今のところで言えるのはこれくらいです。
これ以外は基本的に現代と同じと考えてもらえればいいです。

後で出てきたものにはちゃんと解説を付ける予定です。

男「……」スタスタ

男(わかんねぇ事が多過ぎるよな)スタスタ

男「つーかなんで俺なんだ?」スタスタ

男「だいたい何がどうなったら竜の子供が人間になるんだよ」スタスタ

男(意味わかんねぇ……)

男「ただいま」ガチャ

ドラゴン「おかえり」

男「……メイドはどうした?」

ドラゴン「買い物に行くって言ってたわ」

男「あ、そう……」

ドラゴン「すぐに帰ってくるって言ってたわよ」

男「……わかった」

男(昨日のあれのせいで話辛い……)

男(なんか話した方がいいのかな?)

ドラゴン「じろじろ見ないでくれる」

男「あ、すまん……」

ドラゴン「まったく……」

男「……」

男「き、昨日はゆっくり眠れたか?」

ドラゴン「まあまあよ」

男「……そうか」

男「……」

男(話す事無さ過ぎだろ)

ドラゴン「……何、言いたい事があるならはっきり言ってくれない?」

男「は?」

ドラゴン「顔に書いてあるわよ」

男「え、ま、マジで!?」

ドラゴン「私そういうのには敏感なの」

男「あ、そう」

ドラゴン「実際言いたい事があるんでしょ?」

男「いや、別に……」

ドラゴン「あるんでしょ?」

男「……なんでわかるだよ」

ドラゴン「さっき言ったでしょ、そういう事には敏感なの」

男「凄いな……」

ドラゴン「いいからさっさと言いたい事言ってくれない?」

男「わ、わかったよ」

男「……お前はさ、どうしてそんなに人間を嫌う訳?」

ドラゴン「え?」

男「だっていつも人間なんかって言うだろ?」

ドラゴン「……」

男「……」

男「なあ――――」

ドラゴン「あなたは、自分が犬になったらどう思う?」

男「え?」

ドラゴン「どうして犬になんかって思うでしょ?」

男「……まあ、犬になったらそう思うな」

ドラゴン「それと同じ事よ」

男「……」

ドラゴン「誰に何と言われようと私は竜、それは譲れないわ」

男「……」

男「姿は人間でも心は竜なんだな」

ドラゴン「……」

男「……戻れるといいな」

ドラゴン「そうね……本当に戻れたらいいわね」

男「え?」

ドラゴン「……正直言えば私だって不安なのよ」

男「……」

ドラゴン「このまま一生人間なんじゃないかって……」

男「昨日と言ってる事が違う気がするんだけど」

ドラゴン「不安なの……凄くね」

ドラゴン「あなたには分からないと思うけど」

男「……じゃあなんで俺にそんな事話すんだよ」

ドラゴン「話す相手が今はあなたしかいないからよ」

男「なんだそりゃ」

ドラゴン「仕方ないじゃない、私だってあなたに話すのは不本意よ」

男「意味わかんねぇ……」

ドラゴン「まあ、なんとなく懐かしい気がするから話しやすいって言うのもあるかもしれないわね」

男「それって褒められてるのか?」

ドラゴン「私としては褒めてるつもりよ」

男「じゃあ喜んでいいんだよな」

ドラゴン「自分で考えたら?」

男「……じゃあ喜ぶ」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「……ふふっ」

男「なんだよ」

ドラゴン「別に、強いて言うならあなたの顔があまりにバカっぽかったからかな」

男「はぁ!?」

ドラゴン「ごめんごめん」

男「人が真面目に話聞いてるってのに」

ドラゴン「別に真面目に聞いてくれなくていいわよ」

男「なんだそれ」

ドラゴン「あなただってこんなこと突然話されてもどうしようもないでしょ?」

男「そうだけどさ」

ドラゴン「ちょっと疲れてただけだから」

男「明日にはもう戻ってるって事か?」

ドラゴン「ええ、ずるずる引きずるような事は絶対しないわ」

男「男らしいな」

ドラゴン「竜らしいって言ってくれない」

ピンポーン

男「ちょっと行ってくる」スタスタ

男「誰ですか?」ガチャ

竜王「元気そうだね」

男「……もう来たのか?」

竜王「ああ、いろいろ心配だからね」

男「中に入れよ」

竜王「悪いね」スタスタ

ドラゴン「父様……」

竜王「ドラゴン、元気そうだな」

ドラゴン「はい……」

男(もしかして竜王の事苦手なのかな)

竜王「一日でずいぶん馴染んだみたいだな」

男「で、今日は何のためにこんな所まで?」

竜王「今回は本当に様子を見に来ただけだよ」

男「……」

竜王「本当だよ、嘘はついてない」

男「あ、そう」

竜王「二人とも元気で何よりだ」

竜王「ドラゴンもここでゆっくり生活に慣れていけばいい」

男「……」

ドラゴン「……父様」

竜王「なんだ?」

ドラゴン「……ここでの生活に慣れていけばいい、と言う意味が分からなのですが」

男「ああ、俺もそこが引っ掛かってた、どういう意味だ?」

竜王「ここでの生活に慣れていけばいいと言う意味だ、そのままの意味だよ」

ドラゴン「それは人間の生活に慣れていけと言う意味ですか?」

竜王「……」

ドラゴン「私は――――」

竜王「ドラゴン、はっきり言っておこう、お前は竜にはなれない」

ドラゴン「……」

竜王「お前が何故こうなったのかはどうしても分からないんだ」

男「……お前もしかしてドラゴンを人間らしくするために俺に預けたのか?」

竜王「……」

男「もしそうならドラゴンをお前に返すぞ、こいつは竜なんだから」

竜王「確かに半分はドラゴンを人間らしくするためだな」

男「もう半分は?」

竜王「もう半分は本当にドラゴンを敵からかくまうためだ」

竜王「実際金に釣られた者達もいた」

男「本当にか?」

竜王「君に嘘をついても仕方ないだろう」

男「……」

竜王「私が見つけた者達は片付けておいたが、襲われない様に十分注意してくれ」

男「わかったよ」

竜王「では、また今度――――」

ドラゴン「私は……」

竜王「なんだ?」

ドラゴン「私は人間になんてなりたくない!!」

竜王「……」

ドラゴン「私は竜、私は人間になる気なんて無い!!」

竜王「無理だ」

ドラゴン「やってみないと――――」

竜王「探してもなかったんだ、仕方ないだろう」

ドラゴン「……」

男「そんなんでいいのか?」

竜王「何がかな?」

男「そんなすぐに諦めていいのかって事だよ」

竜王「逆に聞くが解決法がないのにどうしろと言うんだ」

男「ないって決まった訳じゃねぇだろ」

竜王「私達が探しまわって見つけられなかったものをか?」

男「人間なめんなよ、俺だってやりゃ出来るんだよ」

竜王「時間の無駄だと思うが?」

男「……テメェ」

竜王「それにこれはドラゴンのためでもある」

男「……何言ってんだ?」

竜王「言葉通りだ、下手に期待させるよりよっぽどいいはずだ」

男「お前は本気でそう思ってるのか?」

竜王「ああ、それがドラゴンのために一番いいと私は思う」

今日はここまでです。

最近書けてなかったので戦闘シーンが書けるか不安だ……

気がつけば俺は竜王に殴りかかっていた。
痛いほど拳を握りしめ。竜王目掛け跳躍する。

頭ではやめろと叫んでいるのに、体が言う事を聞かない。
多分頭ではなく、心が体を動かしているんだと直感的に感じた。
カッとなってやったと言うのは多分こういう状態の事を言うのだろう。

右ストレートが竜王目掛け一直線に襲い掛かる。
全体重のその一撃にのせ、腕を振り抜く。

だがそんな渾身の力の籠った一撃はかわてしまう。
まるで最初から殴りかかるのが分かっていたかの様にいとも簡単に。

だがそんな事に驚いている暇も無く、カウンター気味に俺の脇腹に蹴りがとんでくる。

回避する暇もない。
竜王の足が脇腹にめり込むのが分かった。

鋭い痛み。

気がつけば俺はあまりの痛さにその場に膝をつき、荒い呼吸をしていた。

ださい……。
多分今まで生きてきた中で最高ランクにださい。

偉そうなこと言ったくせに一瞬でやられるとかありえないだろ……。
いやそれ以前に不意打ちしたくせに反撃食らうってなんだよ……。


「どうした、偉そうな事言ったわりにずいぶん簡単に倒れるんだな」


皮肉をたっぷり含んだ言葉。
明らかに俺を挑発する目的の言い方だ。

もちろんこんな挑発にのってはいけない事は分かっている。
のってしまえば相手の思うつぼになる事は目に見えている。
だが俺はそれにのってしまう。

別に今の竜王の言葉が頭にきたわけじゃない。
ただこのまま倒れて、竜王に負けを認める事が、ドラゴンを救う手がない事を認める事の様な気がしてしまうのだ。

たった一日程度で彼女の事を知った訳じゃないし、今でも全然わからない。
ただあんなのを見せられたり、あんな事を言われたら放っておけないだろ。
やっぱり女の涙とか弱音って聞きたくないし見たくないんだよ。

奥歯に力を入れ体を起こす。


「んな訳ねぇだろ。さっき言っただろ、やれば出来るって」


そんな事を言いながら立ち上がる。

まだ痛みは残っている様で、少し動くだけで鋭い痛みが脇腹にはしる。

だがそれでももう一度竜王目掛け殴りかかる。
それはさっきより速く、さっきより重い一撃。

だがその攻撃もまるで予測されていたかのようにかわされる。
しかも竜王の方はまだ余裕があるようで顔色一つ変わっていない。

所詮は人間の一撃って事かよ。
こんなにも違うもんなのかよ、人間と竜って……。

竜王の右足が俺のこめかみ目掛け振り抜かれる。

しかし今回は竜王のカウンターはしっかりかわす。
頭の上を音を立て、足が通過していった。

その隙に俺は相手の顔目掛け蹴りをお見舞いする。

足の甲に衝撃が伝わってくる。
肉と肉がぶつかる様な音が聞こえた。

その瞬間俺は宙を舞っていた。
今自分が見ているのが床なのか天井なのか壁なのか分からなくなる。
そのくせ見える映像は恐ろしく遅い。

気がつけば俺は地面に背中を打ち、仰向けに倒れていた。
呼吸をするだけで辛い。
まるで肺が見えない手で掴まれている様だ。

とっさに投げられたのだと理解する。
いや、理解させられる。

竜王は俺に背を向けていた。
誰がどう見ても俺の負けだ。

情けねぇ。
あれだけ偉そうな事言っておいてこのざまかよ。
かっこ悪過ぎるだろ。


「男さん、大丈夫ですか!?」


そんな感傷に浸っている時に不意に見知った声が聞こえた。

声をした方を見る。
扉の前にはメイド……正確には右手にRPG、左手にサブマシンガンを持ったメイドが立っていた。

銃口が竜王を狙っているのがこの距離からでもわかる。

メイド服を着たかわいい女性が銃をもっている。
一部の人間なら大喜びしそうだが、残念ながら俺はむしろ恐怖しか感じられなかった。

別にそういうのが嫌いとかそういうのじゃない。
ただあいつの殺意の籠った目があまりに恐ろし過ぎるのだ。
例えるならそう、歴戦の戦士の様な目だ。
さらにもしここであいつがRPGの引き金を引けば俺も爆風に巻き込まれるかもしれない。
いや、確実に巻き込まれる。


「メイド!! ちょっと待――――!!」


俺の言葉よりも先にRPGが撃たれる。

お前は何考えてんだ!!
家の中でそんなもんぶっ放すんじゃねぇ!!

凶悪な音を立てながらそれは真っすぐに竜王を目掛け突き進む。

死は何か奇跡でも起こらない限り数秒で俺の元へもやってくるはずだ。

俺の目に見えているもの全てがゆっくりになる。
まるでビデオをスロー再生している様に見える。
だからと言って逃げ切れる訳ではないのだが。

竜王は視界の隅に立っていた。

竜王の右手が真っ赤に燃えており、彼のスーツは肩の部分まで焼け焦げ、右腕が完全に露出している。
その表情はついさっき俺と戦っていた時となんら変わらない。

竜王は一歩前に出ると轟音を上げながら突っ込んでくるRPGを右手で掴んだ。

何かが燃える様な音が響く
異様な熱気が俺の全身を襲う。


「……え?」


その瞬間、PRGは後形も無く、消滅していた。
揶揄でも冗談でもなく、そこにあったはずのRPGの弾がきれいさっぱり消えているのだ。


「初対面の人間にこんな事をするのはどうかと思うが?」


竜王はまるでお茶を掛けられた様な口振りでメイドにそう言い放つ。

もしかしてこいつが消滅させたのか?
……それ以外考えられない。
でもどうやって?
どうなってんだ?

「まさか燃やすとは、予想外です」


メイドもまた紙を燃やしただけの様な口振りで返す。

なんでこの二人はこんな凄い事をやっておいてこんなに漂々としてられんだよ。
つーか燃やしたって何だよ、火薬ごと焼き払ったのか?


「おい!! 何家ん中で重火器ぶっ放ってんだ!!」


我にかえり、感情に身を任せ怒鳴る。
さすがにここでキレない人間はいない。

まだ立ち上がれないので仰向けのまま上半身だけを起こし、メイドを睨む。


「すいません、竜王が本物かどうか試したかったので」


全然詫びているような感じがしないがもはや怒る気にもならない。
正直こいつの頭は壊れてるんだと思う。
いや、完全にどこかが壊れているはずだ。

俺は痛む全身を無理矢理動かし、立ちあがった。

男「で、もし竜王がRPGの弾を受け止められなかったらどうしてたんだ?」

メイド「弾が爆発して竜王さんが爆発に巻き込まれるだけです」

男「あの距離なら俺も巻き込まれてたぞ」

メイド「そうかもしれませんね」

男「そうかもしれませんねって……」

メイド「竜ならこの程度の攻撃は簡単に防御できると分かってたんです」

竜王「ほう」

メイド「あなた達にとってはこれも玩具にすぎないんですよね?」

竜王「そうだな」

男「だからって問答無用でこんなもんぶっ放すんじゃねぇぞ」

メイド「わかりました」

竜王「……」

メイド「隙ありっ!!」


メイドは左手に持っていたサブマシンガンを乱射した。
しかし竜王はそれを簡単に焼き払う。


メイド「……やっぱりダメですよね」

男「テメェは数秒前に言ったこと忘れたのか!!」

メイド「すいません」

男「全然反省してないだろ!!」

メイド「反省してますよ」

男「ならそのサブマシンガンをしまえ!!」

メイド「ええー」

男「いいからさっさとしまえ!!」

メイド「はーい」スタスタ

竜王「……邪魔したな」スタスタ

男「待てよ」

竜王「?」

男「俺はドラゴンを元に戻す」

竜王「無駄な事――――」

男「やってみないとわからないだろ」

竜王「……なんであの子にそこまでするんだ?」

男「わ、悪いかよ」

竜王「……勝手にしろ」スタスタ

男「ああ、そうするよ!!」

竜王「あと、ドラゴンを狙っている奴が居る事は確かだ、注意するんだぞ」ガチャ

男「わかったよ」

今日はここまでです

昔のURLを張っておきます。

禁書系

浜面「助けてくれ」一方・上条「…」



五和「好きです」上条「なんか言ったか?」一方「…」



上条・浜面・一方「昔話!?」


オリジナル 前スレ

勇者「パーティーにまともな奴がいない」

勇者「パーティーにまともな奴がいない……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323607229/)


禁書系は今と大分感じが違うので注意してください。

男「……」

メイド「ずいぶん疲れてますね」

男「半分はお前のせいだけどな」

メイド「人のせいにしないで下さいよ、男さんが竜王に喧嘩売ったから悪いんじゃないですか」

男「黙れ、今後家の中でRPGをぶっ放すのは禁止だからな」

メイド「えー」

男「えー、じゃねぇよ!!」

メイド「じゃ、じゃあサブマシンガンにします……」

男「百歩譲ってハンドガンだ」

メイド「ええー」

男「だいたい家の中で発砲しようってのが間違ってんだよ」

メイド「わ、わかりましたよ……」

ドラゴン「どういうつもり?」

男「え?」

ドラゴン「私が竜になれる様に協力するってどういう事?」

男「別に、言葉通りの意味だけど」

ドラゴン「本気で言ってるの?」

男「少なくても俺はそのつもりだけど」

ドラゴン「……」

男「……」

メイド「ドラゴンさん、ここは男さんでもいいから手伝ってもらった方がいいんじゃないですか?」

男「俺でもいいからってどういう意味だよ」

メイド「そのままの意味です」

男「殴り倒すぞ」

ドラゴン「父様達は無理だって言ってるのよ」

男「お前はそれで納得できるのか?」

ドラゴン「……」

男「人間は嫌なんだろ?」

ドラゴン「……そ、そうよ、私は人間じゃない」

男「だから戻るために手伝うって言ってんだ」

ドラゴン「……なんでそこまでしてくれるの?」

男「どうして竜が人間になったのか興味があるからかな」

ドラゴン「……言っとくけど期待はしてないから」

男「別にいいよ、俺だって今の所は当てがある訳じゃないし」

男「……」

ドラゴン「……」

男「でも絶対方法を見つけてくる」

ドラゴン「……あ、ありがとう」スタスタ

男「え、あ、ああ」

男「……」

メイド「素敵ですね」ニヤニヤ

男「は?」

メイド「いいですね、青春ですね」

男「黙れ」

メイド「思春期って感じで凄くいいですよ」

男「いいからさっさと黙れ」

メイド「さっきの嘘ですよね」

男「え?」

メイド「だから竜が人間になったのが興味があるってやつですよ」

男「何がだよ」

メイド「本当はドラゴンさんが悲しんでいる所を見たくないんじゃないんですか?」

男「……」

メイド「図星ですね」

男「……ああいうのはやっぱり見たくないからな」

メイド「泣いてる所ですか?」

男「……それもある」

メイド「……」ニヤニヤ

男「なんだよ」

メイド「男さん、優しいですね」

男「うるせぇ」

メイド「なんですか、せっかく褒めてあげてるのに」

男「別にお前に褒められても嬉しくない」

メイド「ひ、ひどい……」

男「あと、明日出掛けるからドラゴンの事頼むぞ」

メイド「え、何処行くんですか?」

男「知り合いでそういうのに詳しい人が居るからその人に話を聞きに行ってくる」

メイド「わかりました」ニヤニヤ

男「……なんだよ」

メイド「いや、ドラゴンさんの為に必死になってるなと思って」

男「別に必死ではない」

メイド「またまた、照れちゃって」

男「クビにするぞ」

メイド「すいません、もうしません」

男「あいつがさっさと竜に戻れば、あいつは竜王の所に帰れて、俺達が面倒見なくて済むだろ」

メイド「……素直じゃないですね」ボソッ

男「なんか言ったか?」

メイド「なんでもありません」

男「とにかく、ドラゴンを狙ってる奴がいるみたいだしお前が守っといてくれよ」

メイド「了解です」

メイド「全力でドラゴンさんをお守りします」


メイドはポケットからハンドガンを取り出す。


男「言っとくけど家の中でRPGは絶対に使うなよ、絶対にだぞ」

メイド「分かってますよ」

男「使ったらクビだからな」

メイド「RPGは絶対使いませんよ」

男「あと手榴弾もな」

メイド「……」

男「わかったか?」

メイド「りょ、了解です……」

男「じゃあ頼んだ――――痛っ」

メイド「どうしたんですか?」

男「……湿布貼ってくる」スタスタ

メイド「け、怪我したんですか!?」

男「竜王と殴りあってるときに怪我したんだと思う」

男「つーか今更だな、おい」

メイド「湿布の場所わかりますか?」

男「二階の倉庫になってる部屋にあっただろ」

メイド「エーと……多分あってますよね?」

男「俺に聞くな」スタスタ

男「本気で投げやがったな、あいつ」ガチャ

男「えーと……」ガサゴソ

ドラゴン「湿布ならここにあるわよ」

男「あ、すまん」

ドラゴン「……」

男「……」

男「あの、湿布……」

ドラゴン「わ、私が貼ってあげる」

男「え?」

ドラゴン「背中は自分じゃ貼り辛いでしょ」

男「ま、まあ……」

ドラゴン「それにあなたが怪我したのは私のせいでもあるし……」

男「別にお前のせいじゃねぇよ……」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「いいから服脱いで」

男「……」


俺はTシャツを脱ぐ。


ドラゴン「どの辺?」

男「腰のあたり、だいたいでいい」

ドラゴン「わかった」ペタッ

男「悪いな」

ドラゴン「これからは竜に喧嘩はうらない事ね」

男「……無駄な喧嘩は避けるようにする」

ドラゴン「ええ、そうしたほうがいいわよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


場所不明


竜王「……」バッサバッサ

???「……ずいぶん遅かったのね」

竜王「予想外な事がいろいろあってな」

???「で、どうだったの?」

竜王「ドラゴンも男も元気そうだったぞ」

???「……そう」

竜王「男はまだもう少し時間がかかりそうだな」

???「……まあ仕方ないと言えば仕方ないかもしれないわね」

竜王「男は何処にでもいる様な普通な人間だった」

???「ええ、普通の人間として生きてきたからね」

竜王「……別に普通の人間のまま一生を過ごしてもよかったんではないか?」

???「それは無理よ」

竜王「……」

???「誰にも教えられなくてもいつかは本当の事を知るのよ」

???「そんなの昔から分かってたはずでしょ」

竜王「……そうだな」

竜王「だがドラゴンの件は正直彼には荷が重すぎる様な気がするが?」

???「大丈夫よ、ああ見えてもやれば出来るから」

???「どうせドラゴンを竜に戻すとか言い始めてるんじゃない?」

竜王「……そんな事を言っていたな」

???「あの子はホントに単純ね」

竜王「まあ、私達ですら見つけられなかった解決策をあの程度の人間の若造が見つけ出せるとは思えんがな」

???「普通の人間なら、ね」

竜王「お前はもう分かっているのか?」

???「私だって彼女を元に戻す方法は分からないわ」

竜王「お前に分からない様な事が男に分かるのか?」

???「ああ見えても私よりずっと優秀よ」

竜王「……どうだかな」

???「もちろん今の段階じゃあ私の方が上よ」

竜王「そんな事は分かりきっている」

???「……じゃあそろそろ行くわね」

竜王「またそのうちここに来るのか?」

???「ええ、何か起こったらちゃんと知らせに来るわ」

???「だからあなたも何かあったらちゃんと伝えに来なさいよ」

竜王「分かっている」

今日はここまでです。

時折銃が出てきますが、知識が少ないので変な部分があるかもしれません。そしたら教えてください。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日   公園


男友「昨日の今日かよ」

男「仕方ないだろ、隊長に会うのなんて久しぶりなんだし」

男友「だからって俺を呼ぶなよ、俺だってあの人は得意じゃないし……」

男「俺だって苦手だよ」

男「しかもこんな朝早くに呼んだんだし、絶対機嫌悪いよ」

男友「それはお前が悪いだろ」

男「俺だっていろいろ事情があるんだよ」

男友「お前の都合だな」

男「頼むよ」

男友「……仕方ねーな」

隊長「男、朝っぱらから元気だな」


後ろに束ねた長めの黒髪に黒のパンツスーツ。
顔はきりっとした引き締まっており、すれ違う人が振り返りそうな、どこかの大手企業で美人秘書でもやっていそうな美人。
しかし咥え煙草と腰にぶら下げたデザートイーグルがそんな素敵な雰囲気をぶち壊している。

彼女の名は隊長。
資格を取れば銃が持てるようになった世の中の治安を守る特殊部隊の若き隊長だ。

男「お、おはようございます」

隊長「ああ、おはよう」

隊長「最高にいい朝だな、休日はいつも昼まで寝ているからこんなに朝が気持ちいいなんて気付かなかった」

男「あはは、そうですか……」

隊長「私を呼びだしたのは男で間違いないな?」

男友「はい、俺も朝に呼び出されました」

男「……すいません」

隊長「別に今は怒ってない、ただもしこんな時間に呼んでおいて下らない事だったら、分かってるな?」


俺の眉間に銃口が突きつけられる。


男「ま、まだ何も言ってないんですけど……」

隊長「準備だ」

男「何の準備ですか……」

隊長「見てわからんか?」

男「……」


俺は金曜日の帰り道からの出来事を隊長に話す。

隊長「……つまり今お前の家には人間の姿をした竜が居る訳だな?」

男「はい」

隊長「で、その竜は何者かに命を狙われている」

男「そうです」

隊長「で、その竜を元に戻すためとその竜を守るためにに私の力を借りたい訳だな?」

男「その通りです」

隊長「……男、遺言はなんだ?」ニッコリ

男「ですよね……」

隊長「嘘もそこまで来ると笑えるな」ハハハッ

男「は、ははっ……信じて下さいよ」

隊長「いい精神科医を紹介してやる」

男「……」

男友「確かに胡散臭い話ですけど、信じてあげて下さいよ」

男「男友……」

男友「もしこのまま男を精神科医に送ったら心の病気になってる事がバレちゃいますよ」

男「おい!!」

隊長「……まあ、わざわざ嘘をつくためにこんな朝っぱらから私を呼ぶなんてバカな真似はしないだろうからな」

男「そうですよ、なんでわざわざ死にに行く様な事しなくちゃならないんですか」

隊長「お前は黙ってろ、間違って引き金を引くぞ」

男「それ間違ってません、故意です」

隊長「私がなんて言ったか分かっているか?」

男「……」

隊長「そのうち証拠は見せてもらうぞ」

男「別にいいですよ」

男「て言うか今から家に来ればいいじゃないですか」

隊長「お前と遊んでいる暇は無い」

男友「なんか用事でもあるんですか?」

隊長「いや、特に何もないが面倒臭いだろ」

男「……」

隊長「で何の情報がほしいんだ?」

男「ええと、とにかく竜に関する情報なら何でもいいです」

隊長「……お前ふざけてるのか?」

隊長「竜に関する情報がどれほどあると思ってるんだ」

男「た、たくさん?」

隊長「当たり前だ、それを全部お前に伝えようと思ったら一週間はかかるぞ」

男「じゃあ神話だけ教えて下さい」


神話は分かりやすく言えば竜と人間の歴史の様なものだ。
誰が書いた、いったいどれくらい前なのかは分からないものだが、そこには昔の竜と人間の事や生態、歴史が事こまかに記されている。
神や七つの大罪などと言ったものも大量に関わってくる複雑なものでいまだに完全に解読されてはいない。
人間が竜を神話個体やファンタジーの生き物と呼ぶのもその神話からだ。

隊長「図書館で本を借りてこい」

男「神話の全文が書かれた本はありません」

隊長「……はあ、何のために情報が隠されていると思っているんだ……」

男「わかりません」

隊長「間違った情報は世間に混乱を与えるからだ」ガリガリ

男「お願いします」

隊長「悪いが、神話の管理は管轄外だ」

男「調べてもらえませんか?」

隊長「貸しだ」

男「え?」

隊長「これでお前への貸しは五だな」

男「……別にいいですよ」

隊長「ちゃんと貸しは返してくれよ」

男「わかってます」

隊長「まったく、面倒な仕事を増やしやがって……」ブツブツ

男友「神話で何が分かるんだ?」

男「とりあえず片っ端から竜の事を調べ尽くす」

男友「……気が遠くなりそうだな」

男「そうしていかないと話が進まないだろ」

男友「まあな」

隊長「神話については出来る限り情報を集めておく」

男「お願いします」

隊長「最後にいいか?」

男「なんですか?」

隊長「……こんな朝っぱらから呼びだすな!!」


隊長の右ストレートが俺の顔面にクリティカルヒットする。


男「あげっ!?」

隊長「……ふう、すっきりした」

男「……いや、殴る意味絶対ないでしょ……」

隊長「今度からは本当の緊急以外昼から夕方に呼ぶようにしろ」

男「短すぎるでしょ!!」

隊長「私はお前達と違って忙しいし疲れてるんだ」

男「……そんな滅茶苦茶な……」

隊長「じゃあな」スタスタ

男友「相変わらずだな」

男「ホントだよ……」

男友「……それにしても、なんでそこまでしてあげるんだ?」

男「もう散々聞かれた」

男友「だって変だろ、ついこの前会った奴の為にそこまで頑張れるなんて」

男「……まあ、そうだよな」

男友「なんで助けようと思ったんだ?」

男「なんて言えばいいかわかんねぇけど……助けたいんだよ」

男友「は?」

男「なんかドラゴン見てると懐かしいと言うかなんというか、不思議な気持ちになるんだよな……」

男友「なんだそれ」

男「俺だってわかんねぇよ」

男「でも助けてあげたいだろ」

男友「……もしかして惚れてる?」

男「違う」

男友「お前のその不思議な気持ちって――――」

男「絶対違う!!」

男友「あ、そう」

男「そういう感情は一切ない」

男友「わかったよ」

男友「……で、これから神話を探しに行くのか?」

男「ああ、一応一回読んでるけどもう一回読んでみる」スタスタ

男友「見つかるといいな」

男「見つけるんだよ、そのためにわざわざ隊長に頼んだんだ」

男友「なんか手伝えることがあったら呼んでくれ」

男「ああ、わかった」

男友「久々にメイドさんにも会いたいし」

男「……お前そっちが目的か……」

男友「たまには目の保養をしとかないとな」

男「気持ち悪いな、お前」

男友「そんな事言うなよ」

男「……じゃあそろそろ行くな」

男友「じゃあまた明日学校で」

男「ああ、わかった」スタスタ

今日はここまでです。

出来れば明日からペースアップします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「ただいま」

メイド「あ、おかえりなさい」

メイド「……なんですか、その本?」

男「図書館で借りて来た本だよ」

メイド「またずいぶんたくさん借りてきましたね」

男「どれを調べればいいかわかんねぇんだ、仕方ないだろ」

メイド「じゃあ全部読むんですか?」

男「当たり前だろ」

メイド「……気が遠くなりそうですね」

男「別に今すぐじゃなくていいんだし、ゆっくり調べていけばいいだろ」スタスタ

メイド「これから調べるんですか?」

男「ああ、当たり前だろ」

メイド「……」

男「……何?」

メイド「男さんにしては珍しくやる気満々ですね」

男「珍しくは余計だ」

メイド「そのままいけばドラゴンさんをおとせるかもしれませんよ」

男「お前は何を言ってんだ」

メイド「まあ、私は用事で手伝えませんが、頑張って下さいね」

男「別に手伝ってくれなくていいけど、なんか用事でもあるのか?」

メイド「ええ、ちょっと大事な用事が」

男「なら俺の心配より自分の用事の事心配しろよ」

メイド「大丈夫ですよ、絶対成功させますから」

男「まあ、頑張れ」スタスタ

メイド「はーい」

男「……用事ってなんだろう」ガチャ


俺は今日借りて来た何十冊と言う本を床に置く。


男「まずどれから読もう」

男「……まずは基本的な所を読んだ方がいいかな」

男「『竜の神話』から読んでいくか……」


俺は本を開く。

『竜の神話』


神は七日間で世界を作り、それを維持して来ました。
世界の均衡を保つ、それが神の役割です。

そんな神の力によって世界は常に均衡を保って成長し続けました。
しかしそんな時、その均衡を破るとある生物が出現します。
それが人間です。

もちろん最初はただの動物の一種でした。
しかし彼等は他の生き物とは違うものをもって生まれていました。
それは傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲です。

他の動物には絶対にないそれを人間達は全員もっていました。

神は世界の均衡を乱すその七つ『七つの大罪』と呼び、忌み嫌いました。

神は人間達に様々な試練を与え、人間達の繁栄の邪魔をしました。
そうしなければ人間によって世界の均衡を乱されかねないからです。

しかし、皮肉にも神の与えた試練によって人間達は更に繁栄していきました。
そして人間達は世界の生態系の頂点に立つ者となりました。

人間が世界の生態系の頂点に立った事により、世界の均衡が崩れ始めます。
普通の生き物なら均衡は保たれるのですが、人間はその均衡を崩してしまったのです。

大きな理由は二つ。
まず一つ目は生態系の頂点に立つ人間があまりに多過ぎたこと。
そして二つ目はほぼ全ての人間が尽きる事の無い欲、強欲をもっていた事です。

それにより世界は均衡を失い、人間と言う王によって蹂躙され続けました。

人間の尽きる事の無い欲によって多くの生き物たちが死に絶え、多くの土地が帰られて行きました。

そんな均衡の崩れた状態を元に戻すため、神は新たな生き物を生み出します。
それが竜です。

神は人間と同等、それ以上の力を持つ生き物を生み出す事で世界の均衡を取り戻そうとしました。
人間と竜が争う事により、人間の数を減らそうと考えたのです。

しかし神にとって想定のしていなかった事が起こってしまいます。

竜が自我をもってしまったのです。
更に悪い事に竜は人間と同様、『七つの大罪』をもっていました。

しかも竜は人間達の持つありとあらゆる武器でも殺せない、最強の生物として生まれてしまったのです。

このままでは人間の代わりに竜が世界を蹂躙するだけ。
そう考えた神は特定の人間に対竜の力を授けました。

それは人間達は竜にのみ絶大な力を発揮する人間であり、竜と対等に戦える能力でもありました。
言わばその人間達は竜の天敵な訳です。

彼等は俗に『竜殺し』と呼ばれました。

竜殺しと竜。
その二つの力により世界は何とか均衡を手に入れる事が出来、今に至るのです。



俺は本を閉じる


男「……」

男「……竜殺しね、本当にそんなのいるのかな」

ドラゴン「いるわよ」

男「うわっ!?」

ドラゴン「何をそんなにびっくりする必要がある訳?」

男「……突然出てくるなよ」

ドラゴン「別に私の勝手でしょ」

男「いや、だからさ……」

ドラゴン「竜殺しはいるわよ」

男「いるって……何処にだよ」

ドラゴン「それは、分からないわ」

男「なんだよそれ……」

ドラゴン「でも竜殺しは実在するわ」

ドラゴン「実際に竜の歴史も竜殺しが深く関わってるの」

男「具体的には?」

ドラゴン「……そ、それは……」

男「わかんねぇのかよ」

ドラゴン「竜の歴史は本とかじゃないの、語り継がれるものなの」

男「だから、よくは分からないと」

ドラゴン「でもきっと父様は知ってるわ」

男「まあ、だろうな」

ドラゴン「歴史だけじゃなくて、竜はあらゆるものを語り継ぐのよ」

男「例えば?」

ドラゴン「昔話や掟なんかも親から子へ語り継がれるの」

男「ふーん……」

ドラゴン「竜殺しもきっとその語り継がれていくものの一つのはずよ」

男「そんなに凄いもんなのか?」

ドラゴン「当たり前じゃない、竜以外で竜を殺せるのは竜殺しだけなのよ」

男「どうやって竜と対等に戦うんだ?」

ドラゴン「そんな事私が知ってる訳ないじゃない」

男「そうだよな」

ドラゴン「それに竜殺しは人間な訳だから人間であるあなた達の方が詳しいんじゃないの?」

男「確かに、そうだよな」

男「まあ、わかんない事だらけだしもう少し調べるかな」

ドラゴン「……」

男「なんだよ」

ドラゴン「い、いや、私の為にそこまでしてくれてるのに私は何もしてあげられないなって思って……」

男「だから俺は興味があるから調べてるだけでお前の為に調べてる訳じゃねぇよ」

ドラゴン「……」

メイド「ドラゴンさん、ちょっといいですか?」

男「ほら、メイドが呼んでるぞ」

ドラゴン「……無理しない様にね」

男「自分のペースでやるから大丈夫だよ」

ドラゴン「じゃあ行ってくるわね」ガチャ

男「ああ」

男「……」

男「今度竜王に聞いてみるかな」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日  朝  学校


男「……」

男友「おはよう、でいいんだよな?」

男「……ああ、おはよう……」

男友「なんかずいぶん疲れてるな」

男「悪い……頭痛いから少し休ませてくれ」

男友「お前何したんだよ」

男「何もしてねぇよ、ただ本読んでただけ」

男友「もしかしてずっと調べてたのか?」

男「悪いかよ」

男友「いや、別に悪くは無いけど、限度ってもんがあるだろ」

男「……うるせぇ……」

男友「で、収穫はあったのか?」

男「あったらこんな事になってねぇよ」

男友「結局何にも分からずじまいかよ」

男「ああ、そうだよ」

女委員長「男、いる?」

男友「ここにいるぞ」

男「……」


この黒髪ストレートの貧乳女はこのクラスの委員長だ。
このかわいらしい顔からは想像もできない位腹黒い女で、性格は下手したら隊長より悪いかもしれない。
しかもこいつは厄介な事に先生などには媚びを売るタイプの人間だから余計厄介なのだ。
ちなみに多分このクラスで一番の権力者だと思う。


女委員長「男、頼みたい事があるんだけど」

男「……後じゃダメか?」

女委員長「急用だからダメよ」

男「……何だよ」

女委員長「隣の教室からここへ机を運んでほしいの」

男「お前がやれよ」

女委員長「こんなか弱い女の子に机を運べって言う訳?」

男「もう少し胸に肉が付いたら女の子って言え」


女委員長の拳が俺の顔面に直撃する。


男「……テメェ」

女委員長「次言ったら殺す」

男「絶対運ばない、お前が運べ、貧乳」

女委員長「そんな事言っていいの?」

男「は?」

女委員長「この前あんたに英語のノートを貸してあげたのは何処の誰だったかしら?」

男「……」

女委員長「もしかしてお礼をする気も無い訳?」

男「運べばいいんだろ、運べば!!」

女委員長「素直でよろしい」

男「で、何処に運べばいいんだよ」スタスタ

女委員長「あんたの机の横でいいんじゃない」

男友「またなんで机なんか運ぶんだ?」

女委員長「なんでも転校生が来るらしいわよ」

男友「女か?」

女委員長「そんな心配しなくても、あんたは絶対に幸せになんてなれないから安心しなさい」

男友「毎回思うけど性格悪いよな、お前」

女委員長「ちゃんと自覚はあるわよ」

男「持ってきたぞ」ズルズル

女委員長「あんたの机の横にでも置いておいて」

男「はいはい」

今日はここまでです。

途中で入った神話はオリジナルです。
少しややこしく分かりにくいし厨二全開ですが許して下さい。

男「で、結局転校生は男か女かどっちだ?」

女委員長「女よ、しかも結構な美人さんみたいね」

男友「マジかよ!!」

女委員長「キモいからちょっと黙っててくれない?」

男友「ひどい……」

男「……」

女委員長「興味ないの?」

男「悪いけど今はそんな事考えてる時間がない」

女委員長「……あ、そう」

男友「男は今青春真っ盛りなんだよ」

男「変な誤解与える様な事言ってんじゃねぇよ」

女委員長「ふーん」ニヤニヤ

男友「今お前最高に悪い顔してるぞ」

女委員長「自覚はあるわ」

男「正直どんな奴が来てもどうでもいいよ」

女委員長「面白くないわね」

男「うるせぇ」

男「あ、お前等って竜殺しって知ってる?」

男友「竜殺し?」

女委員長「神話のあれでしょ」

男「お前はあれの事どれくらい知ってる?」

女委員長「そこまでは知らないけど、なんで?」

男「いや、知らないなら別にいいよ」

女委員長「?」

男友「それが何か関係あるのか?」

男「今の所はわかんねぇ」

女委員長「何の話?」

男「お前には関係ねぇよ」

女委員長「そんな事言わないで教えなさいよ」

男「嫌だ」

女委員長「あ、そう」

男友「軽いな」

女委員長「別にそこまで聞きたい訳じゃないからいいのよ」

男「だったら教えろとか言うんじゃねぇよ」

担任「始めるぞ」ガラガラ

女委員長「はい」スタスタ

男「……」

男友「あいつ先生の前だといい子ぶるよな」

男「あれがあいつのやり方だろ」

担任「号令」

女委員長「起立、礼、着席」

男友「どんな子だろうな」

男「どうでもいい、あと俺寝ていいか?」

男友「勝手にしろよ」

男「お休み」

担任「今日は最初に転校生を紹介しようと思う」

担任「入って来てくれ」

ドラゴン「……」ガラガラ

担任「転校生のドラゴンさんだ」

男「……ん?」

ドラゴン「ドラゴンです、いろいろ分からない事が多いので迷惑を掛けますがよろしくお願いします」

男「……」


黒板の前には制服を着たドラゴンが緊張して立っていた。


男「はぁ!?」

担任「どうした?」

男「あ、いえ、何でもないです」

男友「美人だな」ヒソヒソ

男「あ、ああ……」

担任「席はあるか?」

女委員長「準備しておきました」

担任「そうか、いつも気が利くな」

女委員長「当然です」

男「準備したのは俺だけどな」ボソッ

男友「言っても無駄だ」

担任「そこの席に座ってくれ」

ドラゴン「はい」スタスタ

男「……俺の隣じゃねぇか!!」

担任「うるさいぞ」

男友「いいな、そんな美人の隣で」

男「男友、あいつ人間じゃない」ヒソヒソ

男友「え?」

男「あいつは竜だ、今現在進行形で家に住んでる竜の女の子だよ」

男友「え……マジかよ……

男「ああ、マジだ」

男友「……なんか突然あの子が魅力的に見えなくなった……」

男「いや、そういう話じゃねぇんだよ」

男友「じゃあなんだよ」

男「いや、いろんな意味でダメだろ」

男友「転校生の美人と同居してるって羨ましがられるだけじゃん」

男「そこが最大の問題だろ」

担任「そこ、うるさいぞ」

男友「まあ、いいじゃん」

男「……お前絶対何にも分かってないだろ」

ドラゴン「……」スタスタ


ドラゴンは俺の横の席に座る。


男「なんでお前がここにいるんだよ」ヒソヒソ

ドラゴン「私だって来たくて来たわけじゃないわよ」ヒソヒソ

男「は?」ヒソヒソ

~~~~~~~~~~~~~~~~~


昨日


メイド「クラスは男さんと一緒でいいですよね?」

ドラゴン「え?」

メイド「だからクラスは男さんと一緒でいいですよね?」

ドラゴン「意味が分からないんだけど」

メイド「明日の学校の話ですよ」

ドラゴン「私が?」

メイド「他に誰が居るんですか」

ドラゴン「嫌よ、それじゃあ人間みたいじゃない!!」

メイド「人間みたいに生きてもらわないと困るんですよ」

ドラゴン「……どうして?」

メイド「分かってると思いますがドラゴンさんは狙われてるんです」

メイド「ある程度人間らしい生活をしてもらわないとドラゴンさんを狙ってる奴等に正体がバレる可能性があるんですよ」

ドラゴン「じゃ、じゃあそいつ等にバレない様に学校に行けって事?」

メイド「そういう事です、そうすれば相手にバレる可能性も減りますし」

ドラゴン「……い、嫌よ!!」

メイド「別に人間になれとは言ってません、ただ人間の振りをしてほしいんです」

ドラゴン「……」

メイド「私だってドラゴンさんには竜に戻ってもらいたいです、だからこそあなたを守るためにはこうするのが一番なんですよ」

ドラゴン「……わかった」

メイド「ありがとうございます」

メイド「学校に行けばもしかしたら力になってくれる人もいるかもしれませんよ」

ドラゴン「居るの?」

メイド「ええ、男さんはああ見えても意外と交友関係広いんですよ」

ドラゴン「そうなんだ……」

メイド「あ、でも男さんがいいって言う人にしか正体を話しちゃダメですからね」

ドラゴン「わ、分かったわ」

メイド「その他は自由にやって下さい」

ドラゴン「え?」

メイド「もしかしたら何か新しい事が見えてくるかもしれませんし、楽しんで下さいね」ニッコリ

ドラゴン「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ドラゴン「と言う訳よ」

男「……なんだよそれ」

ドラゴン「私だって出来れば来たくなかったわよ」

男「うん、知ってる」

担任「じゃあ十分後に授業を始めるからな」ガラガラ

女委員長「ドラゴンさんは男と知り合いなの?」

ドラゴン「ええ」

女「どういう関係?」ニヤニヤ

女委員長「どういう関係って言われても……」

男「ただちょっと顔を知ってるだけだよ」

男友「嘘つくな――――」


それを言われる前に男友の腹を殴る。


男友「ほ、本当に言う訳ないじゃん……」

男「信じられるか、バカ」

女委員長「で、どの辺に何処に住んでるの?」

ドラゴン「えーと……」

女委員長「なんて名前の場所?」

ドラゴン「名前は分からないけど、男の家よ」

女委員長「……ん?」

男「え?」

女委員長「男の家に住んでるの?」

ドラゴン「住んでるわよ」

男友「え、バカの子なの?」

男「多分分かってないんだと思う……」

ドラゴン「?」

男友「もう女委員長にも話しちゃえよ」

男「後で絶対後悔すると思う」

男友「でもこいつを仲間にしとけば後々楽だぞ」

男「……でもな」

男友「今の所知ってるのって何人だ?」

男「お前とメイドと隊長だ」

男友「ならもう一人くらい増えても平気だよ」

男「もしそれで情報が漏れたらどうすんだよ」

男友「女委員長はこんな性格だけど口は固いぞ」

男「全く信用できねぇよ」

女委員長「もしかしてそういう関係?」ニヤニヤ

男「……」

男友「どうする、間違って話が広がっていくぞ」

男「……わかったよ」

女委員長「どうしたの?」

男「絶対誰にも言わないって約束しろ」

女委員長「は?」

男「絶対誰にも言うなよ」

女委員長「この事を?」

男「今から言う事を言うなって事」

女委員長「……なんでそこまで真剣な顔してるのよ」

男「大事な事だからだよ」

中途半端ですが今日はここまでです。

そろそろキャラ紹介をやろうかと思ってます。

女委員長「話によるわね」

男「……とにかく聞け」


俺は分かりやすくドラゴンの事を説明する。


女委員長「ふーん」

男「いや、ふーんって……」

女委員長「もし本当だとしたら凄い事ね」

男「まあ、そうだな」

男友「て言うか反応薄くないか?」

男「お前だって大差なかっただろ」

男友「内心、メチャクチャびっくりしてたよ」

女委員長「私だってびっくりしてるわよ」

男「全然伝わってこねぇよ」

女委員長「悪かったわね」

男「……絶対誰にも言うなよ」

女委員長「……わかったわ、誰にも言わない」

男友「珍しいな、お前が何の要求もしないなんて」ニッコリ

女委員長「私は女の味方よ、ドラゴンの力になってあげない訳ないじゃない」

男友「詐欺師みたいな事言ってるな」ヒソヒソ

男「みたいじゃなくてただの詐欺師だろ」ヒソヒソ

女委員長「何か言った?」

男・男友「何でもないです」

ドラゴン「いいの?」

女委員長「いいのよ、困った事があったら何でも聞いてね」

男・男友「……」

男友「気をつけろよ、あいつ平気で嘘つくから」ヒソヒソ

男「わかってる」ヒソヒソ

女委員長「なんか言った?」

男・男友「いえ、何でもないです」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昼休み


男「授業どうだった?」

ドラゴン「別に、一回やった事あったし思ったより簡単だったわよ」

男「一回やった事あった?」

ドラゴン「ええ、父様に教えられた勉強の中に今日の授業に似た問題もあったの」

男「凄いな」

ドラゴン「別に凄くはないでしょ」

男「俺から見ればお前は凄いよ」

女委員長「ドラゴン、一緒にご飯食べない?」スタスタ

ドラゴン「え、いいけど……」

女委員長「あ、言っとくけどあんた達は来なくていいから」

男「行かねぇよ」

男友「頼まれたって行くか」

女委員長「他のかわいい女の子もいるわよ」

男友「行っちゃダメですか?」

女委員長「最高に気持ち悪いわね」

男「そういう事言ってやるなよ」

女委員長「だって実際気持ち悪いじゃない」

男友「一言でそこまで言う事ないだろ……」

男「男友、飯食うぞ」

男友「……わかったよ」

女委員長「じゃあ私達はあっちで食べましょ」スタスタ

ドラゴン「え、う、うん」スタスタ

男「……」モグモグ

男友「……で、その竜殺しが何か関係してるのか?」

男「さあ、今の所はわかんねぇ」

男友「じゃあもしかしたら関係あるかもしれないのか?」

男「もしかしたら、だけどな」

男「それに今の所はそれ以外に調べて何か分かりそうな情報が無いからな」

男友「隊長さんから連絡は?」

男「今の所は無い」

男友「じゃあ今の所はその竜殺しっての以外にドラゴンの事を調べられるもんは無いのか?」

男「だからそうだってさっきも言っただろ」

男友「マジかよ……」

男「本当だよ」

男友「つーか竜殺しって何だ?」

男「竜を殺す力を持った人間だってさ」

男友「普通の人間と何が違うんだ?」

男「さあ、その辺は知らない」

男友「……何だよそれ」

男「どん本にも詳しい事はほとんど書いてないんだよ」

男友「分かってないって事か?」

男「さあな、ただ何処を探しても書いてなかった」

男友「じゃあどうやって調べるんだよ」

男「自力で調べる」

男友「自力って……」

男「別に本以外でも調べる方法なんて山ほどあるだろ」

男友「……よくそんな面倒臭そうな事をしようと思ったよな」

男「分からないなら調べるしかないだろ」

男友「そりゃそうだけどさ……」

男「ま、ゆっくり調べていくつもりだからすぐには分からないと思うけどな」

男友「とりあえず無茶はしない様にな」

男「分かってるよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


校舎裏


女委員長「……ふーん、じゃあ男はあなたを竜にするって約束してくれた訳か」

ドラゴン「私もなんでそんな事してくれるのかは分からないんだけど……」

女委員長「あいつがそんな事を言ったんだ」

ドラゴン「うん」

女委員長「別に理由なんて分からなくてもいいんじゃない?」

ドラゴン「え?」

女委員長「それにあいつの性格なら絶対言わないと思うわよ」

ドラゴン「そうだと思うけど……」

女委員長「それに明確な理由すらないかもしれないし」

ドラゴン「……なんでそう言えるの?」

女委員長「勘?」

ドラゴン「……」

女委員長「あいつの性格なら十分あり得るのよ」

ドラゴン「そうなんだ」

ドラゴン「……女委員長は男の彼女?」

女委員長「まさか、あんな直感で生きてるような人間の彼女なわけ無いじゃない」

女委員長「私はちゃんとリスクとリターンをしっかり考えられる人間が好きなの」

ドラゴン「男は違うの?」

女委員長「あいつは自分に得の無い事でもやりたいとかやらなくちゃって思ったらやるタイプの人間だから」

ドラゴン「……」

女委員長「だからあなたを助けるのも深い理由なんてないのよ」

ドラゴン「そう」

女委員長「あ、でも私もあなたの事には十分協力するつもりよ」

ドラゴン「いいの
?」

女委員長「だって狙われてるんでしょ?」

ドラゴン「うん……私はあんまり自覚が無いけど」

女委員長「あなたが竜になれば悔しがる人が居るわけでしょ」

ドラゴン「多分」

女委員長「私他人の不幸って大好きなの、特に性根が腐った奴の」

ドラゴン「……」

女委員長「もちろんあなたが困ってるからって言うのもあるわよ、私そこまで性格悪くないし」

ドラゴン「……ありがとう」

女委員長「いいのよ」

女委員長「……あ、そう言えばあなたは男とどういう関係なの?」

ドラゴン「え、別にどういう関係って言う訳じゃないけど」

女委員長「同じ家に住んでるんだし、色恋沙汰になったりしないの?」

ドラゴン「色恋沙汰?」

女委員長「男の事を好きになったりしないのかって事よ」

ドラゴン「……ない、絶対ない!!」///

女委員長「あ、そう」

ドラゴン「私も男もお互いをそういう風に相手を見てないから!!」///

女委員長「わかったから」

ドラゴン「絶対ないからね!!」///

女委員長「わかったから、顔真っ赤よ」

ドラゴン「……」///

※キャラクター紹介




基本的に直感で行動しするタイプ。
母親は仕事で家におらず父親については彼自身も何も知らない、基本的にはメイドと二人暮らし。
自称やれば出来る子。
竜好き。
男友とは幼馴染。


ドラゴン

竜だが人間に生まれてきてしまった少女。
実は多才で勉強も物凄く出来るし、運動も得意。
人間は嫌いだが、男と男の周りにいる人間とは普通に接している。
ツンデレ。


男友

男の幼馴染。
軽い性格でちょっとチャラい。
ただ根はバカ。


メイド

男の家で住み込みで働く家政婦。
料理以外ならだいたい何でも出来る。
重火器が好きで特にRPGはお気に入り。
戦える家政婦。

今日はここまでです。

キャラ紹介は少し多いので二回に分けます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


放課後


男「終わった……」

男友「さっさと帰ろうぜ」

男「ああ」

女委員長「男、時間ある?」スタスタ

男「時間はあるけど、用事は嫌だぞ」

女委員長「ちょっと用事があるんだけど手伝ってくれない?」

男「俺の言った事無視か?」

女委員長「どうせ暇なんだし手伝いなさいよ」

男「確かに暇だけど――――」

女委員長「ドラゴンの事で気付いた事があるの」ボソッ

男「……」

女委員長「……で、どうするの?」

男「わ、わかったよ」

女委員長「じゃあ決定ね」

男「男友も一緒に――――」

男友「じゃあ俺は帰るな」

男「友達なら待ってるとか手伝ってやるとか言えよ!!」

男友「いや、今日は遊びに行きたいし」

男「……来いよ」

男友「いや、面倒臭いし」

女委員長「ついでだからあんたも手伝いなさいよ」

男友「ついでって何だよ」

女委員長「ついではついでよ」

男「手伝えよ」

男友「嫌だ――――」

女委員長「さすが男友、自分から掃除を手伝ってくれるなんて男前ね!!」

男友「……」

女委員長「ここで帰ったらあんたクラスの女子の評判ガタ落ちよ?」ニッコリ

男(相変わらずやり方が汚い……)

男友「分かったよ」

女委員長「じゃあ決定ね」

男「ドラゴンは……」

ドラゴン「私は先帰ってるから」

男「一人で大丈夫か?」

ドラゴン「メイドが迎えに来てくれるから大丈夫」

女委員長「ちょっと過保護過ぎない?」

男「うるせぇ」

女委員長「じゃあさっさと行くわよ」

男友「なんで俺まで……」

男「我慢しろ」

~~~~~~~~~~~~~~~


倉庫


女委員長「あ、それはそっちね」スタスタ

男「……」スタスタ

男友「これはここでいいか?」スタスタ

女委員長「それはあっち」

男友「ああ」スタスタ

男「よし、終わった」

男友「はあ……なんでこんな事……」

女委員長「でも女子の評判は上がったと思うわよ」

男友「そ、そうか?」

男(単純だな、おい)

女委員長「助かったわ、ありがとう」

男「ああ」

男友「ジュースでも奢ってもらいたいよ」

女委員長「自分で買いなさいよ」

男友「いや、それくらい買ってくれよ」

女委員長「嫌よ」

男「で、気付いた事って何だよ」

女委員長「ああ、そんな話だったわね」

男「さすがに嘘でしたって言ったら怒るぞ」

女委員長「さすがにそこまで性格は悪くないわよ」

男友「普通に悪いだ――――」


女委員長の蹴りが男友のこめかみに直撃する。


男友「すいません……」

男「いや、こんな事しといて性格そこまで悪くない言う方がっておかしいだろ」

女委員長「これは例外よ」

男「わかったからさっさと話せよ」

女委員長「言っとくけどこれから言う事はあくまで私が気付いた事だからね」

男「わかってるよ」

女委員長「……ドラゴンってさ、感情豊かよね」

男「まあ、人並みには豊かだよな」

女委員長「聞きたいんだけどドラゴンって純粋な竜なの?」

男「は?」

男友「何が言いたいんだ?」

女委員長「あんたは知らないかもしれないけど、竜ってのは感情が乏しいの」

男「乏しい?」

男友「どういう事?」

女委員長「もちろん心の中では人間と同じくらい感情豊かよ、でも表情にはほとんど出ないの」

男友「よく意味が分かんないんだけど?」

女委員長「本当にバカね、竜って言うのは顔に感情がほとんど出ないの」

男友「個人差じゃないのか?」

女委員長「個人差でもあそこまで露骨に感情が顔に出るのは純粋な竜なら有り得ないわよ」

男友「つーか、そこまで露骨に顔に出てたか?」

女委員長「男の事好きかって聞いたら顔を真っ赤にしてたわよ」

男「何聞いてんだよ!!」

女委員長「うるさいうるさい」

男「うるさいじゃねぇよ!!」

女委員長「今はそっちはどうでもいいの、あんたは竜王にも会ったんでしょ、どうだったの?」

男「……確かに竜王もあんまり感情が無かったような」

女委員長「でしょ」

女委員長「いくらドラゴンが人間の姿をしているって言っても、あそこまで感情豊かになるものなの?」

男「……すまん、分からん」

女委員長「でしょうね」

男友「……また謎が増えただけかよ」

男「謎が増えるだけいいんだよ、謎も何も無かったらどうしようもないだろ」

女委員長「ドラゴンを元に戻すための手がかりになるといいわね」

男「ありがとう」

女委員長「また今度何か手伝ってね」

男友「じゃあそれも調べるのか?」

男「そうだな、そうする」

女委員長「何か分かったら教えてね」

男「分かった」

男友「じゃあ帰るか」

男「そうだな」

女委員長「また明日」

男「ああ、また明日」スタスタ

※キャラ紹介


隊長

特殊部隊の若き隊長。
美人だがいつも咥えタバコで歩いている。
腰のホルスターには常にデザートイーグルがしまってある。
基本的に武器は何でも使える。
イライラすると他人に八つ当たりする癖がある。
典型的な姉御肌。
男と男友とは知り合い。


女委員長

男と男友のクラスの委員長。
腹黒い性格で、打算的。
数少ない頭脳派キャラ。
嫌いな人間の不幸が大好きで、いろいろな人間の知られたくない情報を集めている。


竜王

竜の王様でドラゴンの父親。
人間の姿は怖いおっさん。
戦闘能力は竜の中でも最強クラス。
ちなみに鱗は蒼い。

今日はここまで。

もう少し展開の無い状態が続くかもしれません。

~~~~~~~~~~~~~





男「ただいま」

メイド「おかえりなさい」

男「ドラゴンは?」

メイド「部屋にいると思いますよ」

男「わかった」

メイド「それにしても、家に帰ってきて第一声がそれですか」

男「悪いかよ」

メイド「悪いですね、他に言う事は無いんですか?」

男「例えばなんだよ」

メイド「そうですね、メイドは今日もかわいいねとか」

男「ふざけてんのか?」

メイド「大真面目です」

男「……」

メイド「さあ、早く言って下さい」

男「言うか!!」

メイド「ひ、ひどい……」

男「うるせぇ」

メイド「なんですか、ドラゴンさんばっかり構って、私は放置ですか」

男「何なんだよお前」

メイド「たまには相手して下さいよ」

男「わかったわかった」

男「今日ドラゴン迎えに来てくれてありがとな」

メイド「いえいえ、簡単な事ですから別にいいんですよ」

メイド「あと、いろんな人に会えて楽しかったって言ってましたよ」

男「あ、そう」

メイド「ドラゴンさん友達いなかったみたいですし、友達が出来て嬉しいんでしょうね」

男「だろうな」

男「じゃあ部屋行くから」スタスタ

メイド「今度ちゃんと相手して下さいよ」

男「ああ、わかってる」スタスタ

男「……」ガチャ

男「はあ……」

男「わかんない事だらけだよな……」

男「困ったな……」

ドラゴン「男、今いい?」ガチャ

男「……別にいいけど」

ドラゴン「……」スタスタ

男「何?」

ドラゴン「……いや、別に理由とかはないの」

男「……」

ドラゴン「ダメ?」

男「別にいいけど」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「片付けの時、女委員長と話した?」

男「話したけど、それがなんだ?」

ドラゴン「いや、手伝う前に何かこそこそ話してたみたいだったから、何か大事な話でもあったのかなって思って」

男「別に変った話なんてしてねぇよ」

ドラゴン「……そう」

男「……」

男(絶対あの事気にしてるな……)

男「学校は楽しかったか?」

ドラゴン「まあ、暇つぶしにはなったわ」

男「そうか、なら良かった」

男「これからもやっていけそうか?」

ドラゴン「ええ、女委員長もいい人だしやっていけるわよ」

男「そうか」

ドラゴン「心配されなくても大丈夫よ」

男「……」

ドラゴン「何?」

男「いや、前だったら人間と一緒なんて死んでも嫌って言ってたんだろうなって思って」

ドラゴン「……普通の人間は嫌いよ、あなたや女委員長達だから楽しいの」

男「……」

ドラゴン「……」///

男「ん?」

ドラゴン「何でもない、何でもないの!!」///

男「どうしたんだよ」

ドラゴン「本当に何でもないの!!」///

男「?」

メイド「男さん、頼みたい事があるんですけど……」ガチャ

メイド「……」

メイド「す、すいません、お邪魔しちゃったみたいで」

男「出ていかなくていいから、用事って何?」

メイド「買い物に行ってほしいんですけど」

男「行ってくるよ」

メイド「ドラゴンさんも一緒に行ってきたらどうですか?」

男「そんなに出歩いて大丈夫なのか?」

メイド「下手にそうやって隠したりしているとかえって目立っちゃいますよ」

男「……」

ドラゴン「私はいいわよ」

メイド「じゃあお願いします、ここに書いてあるのを買ってきて下さいね」

~~~~~~~~~~~~~~~


スーパー


男「……あとは、ジャガイモだな」

男「ドラゴン、とって来てくれ」

ドラゴン「いいわよ」スタスタ

男「……」

隊長「スーパーでデートか、いい御身分だな」スタスタ

男「た、隊長さん……」

隊長「私を働かせておいて自分はのんきに彼女とデートか?」

男「ち、違いますよ」

隊長「ほう、どう違うか教えてもらおうか?」


隊長はホルスターのデザートイーグルに手をかける。


男「あれはこの前言ってた竜の女の子ですよ」

隊長「竜の女の子とデートって事か?」

男「デートじゃないですよ」

隊長「じゃあ何だ?」

男「か、買い物を頼まれたんですよ」

ドラゴン「ジャガイモ取ってきた――――誰?」

隊長「お前が例の竜の女の子か?」

ドラゴン「そ、そうだけど……」

隊長「私は隊長だ、よろしく」

ドラゴン「よ、よろしくお願いします」

隊長「お前の事は男から聞いている」

ドラゴン「男、この人って……」

男「大丈夫、信用できる人だから」

隊長「お前からそんな言葉が出てくるなんて以外だな」

男「お願いですから銃に手をかけるのやめてくれませんか?」

隊長「断る」

男「落ち付きましょうよ、一旦」

隊長「……まったく、こっちは必死に情報を探してやっていたのに、お前ときたら……」

男「な、何か分かったんですか?」

隊長「少しだけだがな」

男「何が分かったんですか?」

隊長「そう焦るな」

隊長「まずお前に聞きたい事がある」

ドラゴン「わ、私ですか?」

隊長「ああ、お前だよ」

ドラゴン「な、何ですか?」

隊長「お前は竜の事をどれくらい知っているんだ?」

ドラゴン「え、ある程度はわかるけど……」

隊長「……」

男「何が言いたいんですか?」

隊長「過去、人間と結婚した竜がいた事が分かったんだ」

男「本当ですか?」

隊長「ああ、しかも一匹二匹じゃない、過去多くの竜が人間と結婚し子供をもうけている」

今日はここまでです。

中途半端ですいません。

隊長「今現在でも人間と竜の夫婦は存在している」

男「……ドラゴンは知ってたか?」

ドラゴン「全然知らなかった……」

隊長「竜と人間の友好関係はそこまで良くないんだから、知らなくて当然だ」

ドラゴン「……」

隊長「過去何度も人間と竜は争ってきてる、もちろん全て人間の惨敗だがな」

男「でも今は普通なんじゃないんですか?」

隊長「まさか、今だって何時また争いが起こってもおかしくない状態だ」

男「……」

隊長「上の連中の中は竜を嫌ってたり絶滅させようとしてるいるからな、いつ起こってもおかしくない」

男「じゃあ本にその事が書いてなかったのって……」

隊長「単純に知られていないって言うのもあるが、上の連中も関わってるんだろうな」

男「……」

隊長「これを聞いてどう思う?」

ドラゴン「……」

男「あ、もしかして」

隊長「残念だがそれは無い」

男「まだ何も言ってないじゃないですか」

隊長「だいたい想像がつく」

隊長「人間と竜の間に生まれた子供がどうなるか分かるか?」

男「それはわからないです……」

隊長「竜と人間の子供は竜が生まれてくるんだ」

男「え、で、でも――――」

隊長「これは絶対だ」

男「……」

隊長「竜の血がよほど薄くならない限り人間に生まれてくる事は無い」

男「……」

隊長「だが何かしらの関係があると私は思う」

男「……俺もです」

ドラゴン「その人間と竜の夫婦が何処にいるかは分からないの?」

隊長「残念ながら分からない」

男「……じゃあ調べてくれませんか?」

隊長「無茶言うな、それだけの情報で見つけられる訳ないだろ」

男「……じゃあ竜殺しについて調べてくれますか?」

隊長「竜殺しって、あの竜殺しか?」

男「はい、出来れば普通の人間とどう違うかを調べてほしいんですが」

隊長「……わかった、これも貸しだからな」

男「はい」

隊長「ドラゴンも男もあまり目立つような事はするなよ」

ドラゴン「はい」

男「分かってます」

隊長「私の仕事が増えたらたまらないからな」

男「……」

隊長「じゃあな」

男「はい」

男「ドラゴン、帰るぞ」スタスタ

ドラゴン「あ、うん」スタスタ

隊長「気をつけて帰れよ」

男「分かってます」

~~~~~~~~~~~~~~~~


公園


ドラゴン「……」

男「どうした?」スタスタ

ドラゴン「いや、少し考え事」

男「隊長の言ってた事か?」

ドラゴン「ええ……少し、ある話を思い出してね」

男「昔話?」

ドラゴン「赤い竜と旅人の恋の話よ」

男「なんだそれ」

ドラゴン「私にだって詳しくは分からないけど、何処か物凄く遠くの物話らしいわ」

男「でも竜って地球全体に住んでるんじゃないのか?」

ドラゴン「その辺は私にも分からないわよ」

男「まあいいや、家に帰ってから聞かせてくれ」

ドラゴン「いいわよ」

男「……隊長の言ってた事、お前はどう思うんだ?」スタスタ

ドラゴン「人間になんで恋をするのかまったくわからないわ」

男「言うと思った」

ドラゴン「分かってたなら聞かないでよ」

男「悪い」

ドラゴン「まったく……」

ドラゴン「逆にあなたはどう思うの?」

男「何が?」

ドラゴン「人間が竜に恋する事」

男「……別に何とも思わねぇけど」

ドラゴン「竜に恋する気持ちが分かる?」

男「実際恋した事なんて無いから分かんねぇよ」

ドラゴン「……そう」

青年「なあ、そこの二人」

男「……何?」

男(不良かよ……関わりたくねぇ)

青年「この辺りで怪しい奴見なかったか?」

男「怪しい奴?」

青年「ああ、とにかく怪しい奴だ」

ドラゴン「知らないわ」

男「知らない」

青年「そうか」

男「ドラゴン、さっさと行くぞ」ヒソヒソ

ドラゴン「え?」

男「こう言うのと関わっていい事なんて無いからな、行くぞ」ヒソヒソ

ドラゴン「あ、うん」

男「じゃあ」

青年「ああ、悪いな」

男「行くぞ」スタスタ

ドラゴン「うん」スタスタ

青年「……やっぱ竜って言っても人の形してちゃ見つかんないよな」

男「……ん?」

青年「なんだ?」

男「人の姿をした竜?」

青年「ああ、そいつを捕まえてくれってある奴に頼まれたんだ」

男「……どんな奴に?」

青年「どんな奴って、顔はよく覚えてないけど、結構な額を準備してるみたいだったぜ」

男「……」

青年「気になるのか?」

男「多少だけど」

青年「そいつが言うにはこの辺りにいるのは確実らしいんだ」

男「へぇ……」

青年「人間一人捕まえて大金が貰えるんだ、やらない他ないだろ」

男「……」

青年「どうした?」

男「いや、何でもない」

青年「それにしてもバカだよな、わざわざ人間になってこんな所に来てさ」

男「……」

青年「人間を殺しに来たのか? いやバカにしに来ただけかもな」

青年「どっちにしろ竜ってのはバカみたいなのが多いんだろうな」

男「お前に何が分かってんだ?」

青年「は?」

男「お前は何が分かってそんな事言ってんだ!!」


俺は青年の顔を全力で殴る。


青年「がっ!!」

ドラゴン「……」

男「お前は先帰ってろ」

ドラゴン「で、でも……」

男「いいから」

ドラゴン「……」スタスタ

青年「て、テメェ!!」

男「……」

青年「黙ってんじゃねえぞ!!」

男「とりあえず聞いといた方がいい事もあるしな」

青年「は?」

今日はここまでです。

もしかしたら明日は投下量が減るかもしれません。

今回も反射的に相手に殴りかかってしまった。
多分俺は自分で思っている以上に短気で幼稚なんだと思う。

目の前の青年は明らかに戦う気満々だ。
指をパキパキと鳴らしながら、怒りの籠った目でこちらを睨みつけている。

上等だ。
こっちだってやってやるよ。

俺もまた怒りの籠った目で相手を睨みつける。

何も知らない癖に平気で他人をバカにする奴ほどバカな奴はいねぇ。
特にバカにされたのがドラゴンならなおさらだ。

地面を大きく蹴り、青年目掛け走り出した。
まるでボクサーのように両手で顔を守り、一気に接近する。

相手の右ストレートが放たれるが、大きく体を前に倒し、回避する。
そして相手の懐に潜り込む。

とにかくもう一度この男を殴らなくては気が済まない。
理由は……多分ドラゴンをバカにしたからだ。

右手の振りを最小限に抑え、相手の腹に一撃加える。
拳が何かしらの臓器の様なものを殴ったのが分かった。
まるで水の溜まった風船を殴った様な感触が右手に伝わる。

青年の呻き声が聞こえる。
悲痛で苦しそうな呻き声。

だがそれはすぐに雄叫びへと変化し、それと同時に俺の脇腹に衝撃がはしる。

体が浮くのがわかった。
倒れないようにと必死で足に力を入れるが、脇腹の痛みのせいでうまく力が入らない。
結局地面に仰向けで倒れこむ。

息を吸うと脇腹に鋭い痛みがはしった。
体を起こそうにも腹への痛みでうまく体が動かない。
普段喧嘩しない分の痛みへの耐性がないんだろう。

前回と言い今回と言いかっこ悪過ぎる……。
自分で自分が嫌になりそうなくらいだよ。

普段なら絶対喧嘩なんかしないはずなのに、ドラゴンと会ってからもう二回も喧嘩していた。
しかも両方とも自分からだ。

ははっ。
なんでこんな事やってんだろうな。
いつもなら絶対喧嘩なんてしないはずだったんだけど

そんな事を考えながら苦笑する。
口元を歪め、苦しそうに笑っている自分の顔が容易に想像できる。


「調子乗ってんじゃねえぞ!!」

そんな声と共に顔に何かがのしかかる。
見えなくても分かる。
足だ。

俺は顔を踏みつけれていた。

だがそんな事をされているにも関わらず、頭の中は冷静だった。


「……バカが」

「ふ、ふざけやがって……」


脇腹に焼ける様な痛みが襲い、地面を体が転がる。
蹴られたのだろう。

青年のまた右足が大きく振り上げられ、脇腹を蹴る動作に入る。
右足はまるで弾丸のように風を切る音を立てながら、脇目もふらず脇腹目掛け襲いかかってくる。

激痛に思わず声が漏れる。
まるで死に際の様なか細い呻き声だ。

だが捕まえる事が出来た。

俺は相手の顔を見て笑った。
さすがに両手で蹴りを受け止めた衝撃は大きいが、きっちりと相手の足を掴んでいる。


「く、クソ、離せ!!」


お決まりの台詞を叫びながら青年は足を大きく手を振りほどこうとする。

だが逃がさない。
両腕でがっちりと抑え込む。


全力で相手の足をねじり、転ばせる。
相手の関節を外すほどの力で躊躇なくねじった。

硬いもの同士がぶつかり合う様な鈍い音。
多分転んだ拍子に頭でも打ったのだろう。

怒りの籠った呻き声を聞きながら、立ち上がる。
足に力を入れると脇腹がズキズキと痛んだ。


「お前何なんだよ!!」


その言葉に俺は苦笑いを浮かべた。

普通に話していたら突然殴りかかったのだから当然だろう。
誰から見ても悪いのは俺なんだから。
だけど、謝る気は無いし、相手に悪い気も一切無い。

こんな些細な事にキレてバカみたいだと自分でも思う。
けどやっぱり許せない。
特にドラゴンがどんな気持ちで人間でいるか知ってるから余計に……。

助走をつけ、青年目掛けて走り出す。


「何にも知らない癖に、偉そうな事言うんじゃねぇ!!」


渾身の力で相手の腹を蹴り上げる。
つま先が相手の体にめり込むのが分かった。
青年が地面を転がる音が聞こえた。
それは踊る様な一定のリズムを刻んでいる様な音だった。

俺は脇腹の痛みでその場に仰向けに倒れた。
呼吸は荒く、まるで長距離を全力で走り抜いた後の様だ。

何と言うか……自分が変わっていく様な気がした。
例えるなら今まで開けた事の無い様な扉が開けた様な感覚。
しかも開けて閉まった扉は今までとは全く違うものだ。

俺はその原因となった少女の顔を思い浮かべた。
もちろん満面の笑顔で。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数分後


隊長「……なんだこれは?」

ドラゴン「わ、私に聞かないでよ」

隊長「おい、起きろ!!」

男「あ、はい……」

隊長「なんだこれは?」

男「いや、その喧嘩になって……」

男「それにしても、なんで隊長が?」

隊長「ドラゴンに呼ばれてきたんだ」

隊長「で、なんでこんなふうになったか説明してもらおうか?」

男「いえ、これはその……」

隊長「これはなんだ」

男「えーとその……」

隊長「おい、起きろ」

青年「ん……」

隊長「目が覚めたか?」

青年「な、何すんだ――――」


青年は隊長に殴りかかるが、それより先に隊長の裏拳が彼の顔面に炸裂する。


青年「うぐ……」

隊長「現行犯だ、言い逃れは出来んぞ」

青年「じゃ、じゃああいつも捕まえろよ」

隊長「ああ、そのつもりだ」

男「え?」


隊長のストレートが脇腹に刺さる。


男「う……」ドサッ

ドラゴン「え、あなた何したいの!?」

隊長「世の中の治安を守ってるだけだ」

隊長「お前は男を連れてこい」

ドラゴン「え……」

隊長「いいから早く」

ドラゴン「わ、わかった」

隊長「ほら、お前の行くぞ」

青年「お、俺は関係ない!!」

隊長「もう一発喰らうか?」

青年「……」

隊長「いい子だ」

男「なんで……俺も……」

隊長「お前が当事者だろうが」

隊長「いいからさっさと来い」

男「……」スタスタ

ドラゴン「だ、大丈夫?」

男「大丈夫」スタスタ

ドラゴン「……」スタスタ

今日はここまでです。

男は勇者と違って一般的な人間くらいの戦闘能力しか持っていないので、あまり戦闘の方には力は入れていません……。

多分他のキャラの戦闘が始まれば力を入れます(メイドとか隊長とか竜王とか)

~~~~~~~~~~~~~~~~


警察署   一室


男「痛……」

ドラゴン「本当に大丈夫?」

男「大丈夫だって。このくらい別に痛くもない」

ドラゴン「痛いって今言ったじゃない」

男「……」

ドラゴン「脇腹見せて」

男「は?」

ドラゴン「脇腹がどうなってるか見せてって言ってるの」

男「な、なんでお前に見せなくちゃいけないんだよ。嫌だよ」

ドラゴン「見せられないの?」

男「見せられないって言うか見せたくないっていうか」

ドラゴン「いいから見せて」

男「……」

ドラゴン「早くして。それともやっぱり見せられないの?」

男「わ、わかったよ……あんまりジロジロ見るなよ」


俺は服を捲りあげる。


ドラゴン「やっぱり痣が出来てるじゃない」

男「放っとけば治る」

ドラゴン「父様と戦った時の傷だってまだ治ってないんでしょ。やせ我慢しないの」

男「う、うるせぇ。あれは仕方ないだろ」

ドラゴン「どう仕方ないのよ。だいたいあなた沸点が低過ぎるのよ」

男「悪かったな」

ドラゴン「父様の時もあの男の時もだけどなんであなたが怒るのよ」

男「……俺だってわかんねぇよ。ただなんとなく殴りかかっちまっただけだよ」

ドラゴン「全然答えになってないわよ」

男「うまく説明できないけどとにかくお前は関係無い」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「なんかいろいろありがとね」

男「別にそういうのいいよ。なんか俺まで悪い気するし」

ドラゴン「……」

隊長「二人とも元気そうだな」

男「……」

隊長「そう怖い顔するな。あの時はああする以外なかったんだ」

男「分かってますよ。でもなんで手加減しなかったんですか……」

隊長「私は手加減が出来る様な人間じゃない」

男「……」

隊長「一応家には電話をしておいた。迎えに来ると言ってたぞ」

男「帰ってもいいんですか?」

隊長「痛み分けって所だな。相手の方も叩けば埃のでる体な訳だし、下手に事を荒立てたくないんだろ」

男「そうですか」

男「……あいつは何か言いましたか?」

隊長「いや、まだ何も話しては無い。ただ時間の問題だろうな」

男「あいつは――――」

隊長「ドラゴンからだいたいの話は聞いてる」

男「そうですか……」

隊長「ただ依頼者の方の特定は難しそうだな。情報もほとんど無いし」

男「どうしても無理ですか?」

隊長「ほとんど不可能だ」

隊長「とにかくお前達は目立つ行動を控えるべきだな」

ドラゴン「分かってるわ」

隊長「問題は男だが……大丈夫か?」

男「はい」

隊長「間違っても同じような事はするなよ。毎回こんな事をやる訳にもいかないんだ」

コンコン

隊長「どうぞ」

メイド「お、男さん!!」ガチャ

男「メイド。別に迎えに来てくれなくてよかったのに」

メイド「何言ってるんですか!! 怪我はないですか!?」

ドラゴン「脇腹に痣が出来ただけ。他は大丈夫よ」

メイド「そうですか。大きな怪我がなくてよかったですね」

隊長「……男。こいつは誰だ?」

男「ああ、家で働いてるメイドです。家父親も母親も家にいないんで」

メイド「初めまして、メイドと申します」

隊長「……」

男「……どうしたんですか?」

隊長「警察署への武器の持ち込みは原則禁止だが?」

メイド「……え、私ですか?」

隊長「当り前だ。じゃあポケットに入ってる手榴弾とマグナムはなんだ」

メイド「護身用の武器もダメなんですか?」

隊長「護身用にしてはやり過ぎじゃないか?」

メイド「ハンドガンなんて低火力な武器じゃ勝てない敵だってたくさんいるじゃないですか」

隊長「ふんっ、高火力が強いとは限らんだろ」

メイド「でも、機動力が高ければ強いって訳でもないじゃないですか」ニッコリ

隊長「……」

メイド「……」

男「……隊長。もう帰っていいですか?」

隊長「ああ、帰ってくれていいぞ」

男「いろいろありがとうございました」ガチャ

ドラゴン「メイドも帰るわよ」スタスタ

メイド「わ、わかりました」スタスタ

隊長「……」ガチャ

隊長「……で、お前の仲間は何処にいるんだ?」

青年「し、知らねえよ。何処にいるかなんて全然わかんねえ」

隊長「……ここで嘘をつくのは得策とは思えないが、いいのか?」

隊長「今私がお前の事を調べ上げればすぐにでも逮捕できるだけの材料をそろえて来れるぞ」

青年「クソ、あの訳わかんねえ男のせいで……」

隊長「安心しろ。あいつはこれからお前以上に苦労するんだ」

青年「?」

隊長「話す気になったか?」

青年「……そんな事聞いてどうすんだ」

隊長「少しそいつ等に警告するだけだよ。これ以上その件に関わるなって」

青年「……」

隊長「私はお前達の身を案じているんだぞ。下手をすればお前達全員死ぬ可能性だってある訳だしな」

青年「誰も逮捕する気は無いんだな?」

隊長「ああ、お前達なんかを逮捕してもそこまでおいしくないし、どうでもいいんだよ」

青年「……公園の傍の空き家だ。そこにみんないる」

隊長「協力に感謝する。じゃあ帰ってくれていいぞ」ガチャ

隊長「お前達は手を出すなよ」

警官「で、ですが……本当に捕まえなくていいんですか?」

隊長「どうせまた何かしらの問題を起こすんだ。今は放っておいても構わんだろ」

警官「……」

隊長「何か起こったらお前達で処理してくれていいし、手柄もお前達がもらえばいい」

警官「い、いいんですか?」

隊長「私は出世にそこまで興味が無いんだ。気にしなくていい」

警官「わ、分かりました」

隊長「じゃあ後は任せたぞ」

警官「もう行くんですか?」

隊長「いや、少し会わなくちゃいけない人がいるからもう少し後になるな」スタスタ

警官「そうですか。気をつけて下さいね」

隊長「ああ、そうするよ」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


自宅


メイド「まったく。喧嘩するのは勝手ですが警察には見つからない様にして下さいね」

男「喧嘩はしていいのかよ……」

メイド「男さんくらいの年齢の人達は喧嘩するのが当たり前じゃないですか」

男「当たり前じゃねぇよ。だいたい今まで俺が喧嘩した事あったか?」

ドラゴン「父様と喧嘩してたじゃない」

男「あれは別だろ。相手が人間じゃないし」

メイド「もしかしてあれですか。娘さんを僕にください的な」

男「お前ちょっと黙ってろ」

メイド「つまんないですね、冗談じゃないですか」

男「その冗談全然面白くないから」

メイド「男さん、ひどい……」

男「うるさい。じゃあ俺ニ階行くからな」スタスタ

メイド「夕飯になったら呼びますね」

男「わかった」

今日はここまでです。

勇者や赤い竜は前回の話です。知らない人は分からないので混乱させてすいません。

なんとなく絡めてみただけなので別に前作を見なくてもまったく問題ありません。

男「……」ガチャ

男「はあ……疲れた」

男(まだまだわかんない事だらけだけどドラゴンを治す方法には近づいてるのかな)

男「……近づいてるといいんだけどな」

ドラゴン「何が近づいてるといいの?」ガチャ

男「うわっ!?」

ドラゴン「だからなんでびっくりするのよ」

男「だから人の部屋に入ってくる時はノックくらいしろよ」

ドラゴン「あ、ごめんね」

男「……で、今回は何の用で来た訳?」

ドラゴン「薬持ってきたの。どうせ自分じゃ治療する気も無いんでしょ」

男「こんなの放っとけば治るから薬なんていらねぇよ」

ドラゴン「でも薬を塗った方が治りも早いし、痛みも少ないわよ」

男「……別にいい。薬もったいないし」

ドラゴン「塗ってあげるって言ってるんだから素直に塗って下さいって言いなさいよ」

男「……」

ドラゴン「ほら、さっさと上着脱いで」

男「わ、わかったよ」


俺は言われたとおり上着を脱ぐ。


ドラゴン「別に私は気にしてないんだから殴らなくってもいいのに」

男「俺には俺の理由があって殴ったんだよ」

ドラゴン「じゃあ理殴った理由は何?」

男「……あいつ何も知らない癖にあんな事言ってただろ。だから腹が立ったんだ」

ドラゴン「……で、なんであなたが怒るのよ」

男「なんとなくだよ。なんとなく」

ドラゴン「ふふっ。何よそれ」

男「だからなんとなくだよ」

ドラゴン「……ありがとね。なんか私もすっきり出来たし良かったわ」

男「別にお礼なんていいし、警察署でも聞いた」

ドラゴン「そうね」

メイド「男さん、ドラゴンさん、ご飯出来ましたよ!!」

男「……行くぞ」

ドラゴン「うん」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日  朝  倉庫


女委員長「ふーん、そんな奴等がね」

男友「お前等気をつけないとホントに誘拐されるぞ」

男「分かってるし、十分用心して生活してるよ」

女委員長「それにしてはずいぶん不用心な気がするけどね」

男「お前の用心と俺の用心は違うんだよ」

男友「まあ、だろうな」

女委員長「短絡的なのが悪いとは言わないけど、少しは考えてから行動するのも大事よ」

男「お前はすぐに損得を計算して行動するもんな」

女委員長「直感と運だけで生きていけるほどバカじゃないだけよ」

男友「そこまで言ってやるなよ」

女委員長「あんたはただの気持ちの悪いバカだけどね」

男友「俺はただのバカかよ……」

女委員長「で、こんな朝から呼び出したんだから何かしら頼みたい事があるんでしょ」

男「ああ」

女委員長「用件は何?」

男「どうやらその依頼者ってのはかなりの人数の連中に声をかけたらしい。だからもしかしたらこの学校にもその中の一部がいるかもしれないんだ」

男「だから出来る限りでいいから何かあったらドラゴンを守ってほしいんだ」

女委員長「……」

男「どうだ?」

女委員長「なんでこの場にドラゴンがいないの?」

男「それは……あいつはプライドが高いから人間になんて守ってもらわなくても大丈夫って絶対言うだろうし……」

女委員長「ふーん」

男友「まあ、そう言うのは目に見えてるよな」

男「だからこうやってあいつのいない所で頼んでるんだ」

女委員長「……」

男友「どうしたんだ?」

女委員長「うるさい。ちょっと黙ってて」

男友「……」

女委員長「いいわよ。引き受けてあげる」

男「ありがとう」

男友「何考えたんだ?」

女委員長「何も考えてなんか無いわよ」

男友「嘘つけ。お前が何の利益も無しに協力する訳無いだろ」

女委員長「まあ、確かに何かしらの得はあると思ってるわよ」

男「得って?」

女委員長「別にあんたに教える必要じゃないでしょ」

男「まあ、そうだけどさ」

女委員長「あんたはドラゴンとあの子を治す事だけ考えてればいいのよ」

男「なんだよそれ……」

女委員長「言葉通りよ。余計な事考えてる暇があるならさっさとドラゴンを治す方法を見つけないさい」

男「……わかったよ」

女委員長「分かればいいのよ。分かれば」

キーンコーンカーンコーン

女委員長「さっさと教室に戻るわよ」

男「ああ、遅くなると怒られるしな」

男友「なあ、授業サボらないか?」

男「勝手にしろ。俺はサボらねぇぞ」スタスタ

女委員長「私も遠慮するわ」スタスタ

男友「……なんだよ、つまんねぇ」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~


夕方   公園


男友「ドラゴンと一緒に帰らなくて本当に良かったのか?」スタスタ

男「メイドと女委員長が一緒だし大丈夫だろ。それにあのメンバーと一緒に帰るのはいろいろキツイ」スタスタ

男友「まあ、だろうな」スタスタ

男「……」

男友「男?」

男「……ん?」

男友「どうした?」

男「……いや、ちょっと考え事」

男友「ドラゴンの事か?」

男「まあ、いろいろ整理しとこうと思ってな」

男友「わかんない事とかをか?」

男「ああ。今のとこ分かんないのは本当に竜と人間の夫婦がいるのかとこの前女委員長が言ってた事と竜殺しくらいだな」

男友「……どれも厄介そうだな……」

男「ああ、本当に大変だよ」

男友「何か手がかりになりそうなもんは無いのか?」

男「あるって言えばあるけど、核心を突く手がかりがないんだよな……」

男友「そうか……」

竜王「元気そうだね」スタスタ

男「……今度はなんだ?」

男友「え、誰?」

男「竜王。ドラゴンの父親で俺にドラゴンを預けて来た人だよ」

男友「ま、マジで!?」

竜王「その通りだ」

男友「え、なんでここにいるの?」

男「そうなるのは分かるけど一旦落ち付け」

竜王「君が一人になったら会おうと思っていたんだがね。まあ彼も知っているようだしいいかな」

男「丁度いいよ、俺も聞きたい事が山ほどあるし」

男友「……」

男「先に話してくれ。俺の話は後からでも別にいいだろ」

竜王「いや、別に何か話がある訳じゃないんだ。ただ君に会いに来ただけだよ」

男「生存確認みたいなもんか?」

竜王「まあ、そうだな」

男友「ドラゴンには会いに行かないのか?」

竜王「そうしたいんだが生憎今は顔を会わせ辛くてね」

男「別に俺もドラゴンもあんたの事を嫌いになったわけじゃねぇぞ」

竜王「そうだとしてもやはり会い辛いものなんだよ」

男「意味わかんねぇ……」

竜王「君も父親になれば分かるだろうね」

男「じゃあ俺の聞きたい事を聞いてもいいか?」

竜王「ああ、構わないよ。私の分かる範囲でなら、だけどね」

男「竜殺しについて知ってるだけ教えてほしいんだ」

竜王「竜殺しはその名の通り竜を殺す者だよ。それ以外の何者でもない」

男「そう言う事じゃなくてもう少し詳しく教えてくれ」

竜王「……正直それを私に聞くのは間違っていると思うよ」

男「は? どういう事だ?」

竜王「竜殺しは人間の唯一の武器な訳だ。なら人間の方が詳しいに決まっているだろう」

男友「確かにな……でもどの本にも書いてなかったって言ってなかったか?」

男「書いて無かったよ。何処にも書いてなかった」

竜王「そんな重要な事を図書館なんて言う場所に置く訳ないだろう」

男「……」

中途半端ですが今日はここまでです。

細かい世界観は後々説明していくと思います。

男友「じゃあ何処にあるんだ?」

竜王「それは私にも分からない」

男「少し調べてみた方がいいか……」

竜王「少なくとも私に聞くより多くの情報が集まると思うよ」

男「あともう一つ聞きたい事があるんだけど。いいか?」

竜王「私は構わないよ」

男「竜と人間の――――」


その瞬間、俺と竜王の間に何かが降ってきた。


男友「なんだ!?」

男「俺にわかるかよ」ゲホゲホ

???「まさか本当に人間に頼んでいたのか。あの半端者の小娘がそんなに大事か?」


それは全身黒ずくめの男だった。
顔まで隠れているのでほとんど見る事が出来ない。


男「誰?」

竜人「竜人、とでも言っておこう」

男「竜人?」

竜王「……誰だ?」

竜人「知る必要は無い」

男友「なんだよこいつ……」

男「男友。一旦逃げろ」

男友「え?」

男「いいから逃げろ!!」

竜人「あの半端者は何処だ」

男「……ドラゴンの事か?」

竜人「そうだ。あの半端者はどこだ?

男「……」

竜人「お前がかくまっているんだろ?」

男「……もし言わなかったら?」

竜人「力ずくで言ってもらうまでだ」

その瞬間、強烈な爆風が俺を包んでいた。
肌が焦がす様な熱風が全身を襲う。


「話す気は無いんだな?」


竜人を中心に半径一メートルほどの地面が真っ黒に焦げていた。
地面はまるでガスバーナーで炙った様に炭化していた。

考えなくても体が理解する。
この男は警告の為に辺りを一瞬で焼け焦がしたのだ。
もはや警告と言うより脅しに近い様な気もするが……。

竜人と目が合う。
その目には明らかに殺意の炎が揺れていた。

だが、それは俺も同じ事。
俺もまた怒りの目で竜人を睨みかえす。

竜人の体が僅かに前屈みになる。
地面を蹴る音が響き、竜人が突っ込んでくる。

素早く横に跳び、その攻撃を紙一重で回避する。
その勢いのせいで体のバランスが崩れ、地面に転がってしまう。

俺は倒れた状態のままついさっきまで自分の経っていた場所を見た。

そこには竜人が膝を突き拳を地面に突き立てていた。
地面は炭化し、もはや原形を留めていない。
そこだけまるで異次元の様な雰囲気を醸し出していた。


「次は、外さんぞ」


竜人は俺の方を見ながらそう言った。
その表情は文字通り『無』であり、感情と言うものがまるでない。
まるで仮面をかぶっているかのように表情が凍りついている。

竜人が跳び、一直線にこちらへと向かってきた。
その姿はさながらミサイルの様だ。

避けられない。
直感的にそう理解する。

俺はとっさに近くにあった木片を盾にしていた。
もちろんその程度で防げるなんて到底思えない。
それは考えるよりも先に体が行動してしまっていたのだ。

体を強烈な熱風が襲う。
熱風に襲われているはずなのに体芯はは氷のように冷え、全身に寒気がはしっていた。

体が吹き飛び、地面に転がる。
まるでリンチされているかのように全身に痛みがはしった。

目の前のぼやけた光景がゆっくりと鮮明になっていく。


「……生き……てる?」


俺はぼんやりとそう呟いた。
盾にしていた木片は消滅していたがその他は服が多少焦げただけ、体の傷は全て地面を転がった時に出来たものだ。
驚く事に骨すら折れていなかった。

俺は立ちあがりながら竜人を見た。
その顔にはほんの少しだが驚きの表情が浮かんでいる。


「……この姿では火力不足だな」


竜人は自分の体を見ながらそう呟く。
その声には少しの焦りもない。

竜人は俺と竜王を交互に見ると、その場を立ち去って行った。

男「……何なんだよ、あいつ」ハァハァ

男友「だ、大丈夫か?」スタスタ

男「逃げろって言っただろ」

男友「いや、なんか逃げちゃ悪いかなって……」

男「……いや、そこは逃げようよ」

竜王「無事で良かったな」

男「なんで助けに入らねぇんだよ」

竜王「常に私がいる訳でもないんだ。君自身の強さを見ておこうと思ってね」

男「この前お前と戦っただろ」

竜王「あの時と今回とでは違うだろ」

男「……」

男友「あ、あいつは何なんだよ!!」

竜王「竜だろうな。ドラゴンの事をよく思わない連中の一人だ」

男「なんでここに?」

竜王「私を追って来たのだろう」

男友「じゃあお前が悪いのかよ!!」

竜王「ああ、すまない」

男「俺の顔がバレたんだけどどうすんだよ」

竜王「安心しろ。私が手をうっておく」

男「お前は信用できない」

竜王「まあ、そう言われても仕方ないな……」

男「当たり前だろ」

竜王「君がどう言おうと勝手だが私はちゃんと何かしらの手は打っておくつもりだ」

男「期待はしないでおくよ」

竜王「勝手にしてくれ」

竜王「そういえばさっきの質問はなんだ?」

男「……竜と人間の夫婦が本当にいるなら何処にいるのか知りたい」

竜王「……調べておこう」

男「頼む」

竜王「他にはないか?」

男「特には無いかな。あったらまた聞く」

竜王「そうか」スタスタ

今日はここまでです。

忙しくて書く時間が無く、かなり手を抜いてしまいました。すいません。

ゴールデンウィーク中は頑張ります。

~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


ドラゴン「……」

メイド「学校は大変ですか?」スタスタ

ドラゴン「別に、授業も簡単だし女委員長もいるし、全然大変じゃないわよ」

メイド「そうですか」

ドラゴン「何。どうしかしたの?」

メイド「いえ、なんか元気無いなって思って」

ドラゴン「別に、何でもないわよ」

メイド「本当ですか?」

ドラゴン「本当よ」

メイド「……」

ドラゴン「……」

メイド「嘘ですね」

ドラゴン「……」

メイド「……誰にも言いませんから話して下さい」

ドラゴン「……本当に?」

メイド「私は嘘はつきませんよ。多分」

ドラゴン「多分って……信用出来ないわよ」

メイド「冗談ですよ。絶対誰にも言いません」

ドラゴン「……」

メイド「男さんの事ですよね?」

ドラゴン「……なんで分かるの?」

メイド「勘です」

ドラゴン「……」

ドラゴン「私が来てまだ一週間も経ってないでしょ」

メイド「そうですね」

ドラゴン「なのに男はあんなに傷だらけでしょ」

メイド「まあ、ずいぶん無茶なことしてるみたいですからね」

ドラゴン「だから、私がいない方がいいんじゃないかなって……私がいたら本当に男が死ぬんじゃないかって思うの」

メイド「……私には何とも言えません。ただドラゴンさんはそう思うんですか?」

ドラゴン「だって私がいなかったらあんな怪我しないでしょ」

メイド「確かにそうですね」

ドラゴン「ならやっぱり私はいない方がいいのよ……」

メイド「でも男さんは怪我の事なんて気にしてませんし、死ぬって決まった訳じゃないですよ」

ドラゴン「私のせいで怪我してるのは本当でしょ……それに私の事だってまだ一つも謎が解けてないし……」

メイド「そう自分を責めない方がいいですよ」

ドラゴン「……」

メイド「……」

メイド(これは思った以上に悩んでるみたいですね……)

メイド「……」

ドラゴン「……」

男「ただいま」

メイド「あ、お帰りなさい」

ドラゴン「お帰り……どうしたの?」

男「いや、ちょっといろいろあって。別に怪我とかはしてないから大丈夫」

ドラゴン「そ、そう」

メイド「……」

ドラゴン「……」

男「え、何?」

メイド「何でもないですよ」

ドラゴン「ええ、何でもないわ」

ドラゴン「……じゃあ二階に行くわね」スタスタ

男「あ、ああ」

メイド「男さん。何があったんですか?」

男「竜に襲われたんだよ。竜王のせいでな」

メイド「……」

男「……何だ?」

メイド「何でもないです」

男「なんか変な感じだな……」

メイド「男さん。ドラゴンさんの事ちゃんと考えて下さいね」

男「え、ああ」

メイド「戻す事じゃなくて、ドラゴンさんの事をですからね」

男「な、なんだよ」

メイド「お願いしますね」

男「わ、わかったよ」

メイド「じゃあご飯になったら呼びますから」スタスタ

男「わ、わかった……」

男「……」スタスタ

ドラゴン「大丈夫なの?」

男「聞いてたのか」

ドラゴン「盗み聞きしてたんじゃなくて聞こえちゃったの」

男「どっちでもいいよ」

ドラゴン「その服が焦げてるのも竜のせい?」

男「まあな、ほとんど無傷だから今日は治療はいらないからな」

ドラゴン「なんで私が治療してあげる事が普通みたいになってるのよ」

男「え、違うの?」

ドラゴン「当たり前じゃない。これからは自分で治療しなさいよ」

男「あ、ああ。わかった」

ドラゴン「じゃあね」ガチャ

男「……」ガチャ

男「何であんなに機嫌悪いんだろ……」

男「メイドもなんかいつもと違ってたし……どうなってんだよ」

男「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~


とある研究所


隊長「初めまして。学者さんでいいですか?」

学者「ええ。あと敬語を使わなくてもいいですよ。慣れていないんでしょう?」

隊長「……まあな、じゃあ普通に話させてもらうぞ」

学者「構いませんよ」


この白髪交じりで眼鏡の中年の男は学者。
中肉中背の白衣姿でいかにも研究者と言った感じだ。
この男は日本でも数少ない竜研究の第一人者らしい。


学者「今回はどんなご用件ですか?」

隊長「少し長くなるが、構わんか?」

学者「あまりにも長くなると困ります。私も暇な人間でないのでね」

隊長「分かっているよ。普通なら私程度の身分ではあなたに会う事すら出来ないからな」

学者「別にそういう意味じゃないですよ。今は特に忙しいですからね」

隊長「竜が日本に来ているからか?」

学者「はい。竜の事を知るには絶好の機会ですからね」

隊長「私の話もその竜に関する事でね」

学者「ええ。知っていますよ」

隊長「……じゃあ聞かせてもらうが、人間の姿をした竜を見た事はあるか?」

学者「ええ、知っていますよ。竜は人間の姿にもなれるそうですね」

隊長「見た事は?」

学者「無いですね」

隊長「……そうか」

学者「あなたの聞きたい事が分かりませんね」

隊長「まだ本当に聞きたい事を聞いてないからな」

学者「ゆっくりと本題に入っていくタイプの方ですか」

隊長「初対面の相手に単刀直入に質問するのはいろいろ危険だからな」

学者「さすがは特殊部隊の隊長ですね」

隊長「今何か気になる事は無いのか?」

学者「いろいろありますよ。人間の姿になっているのではなく、人間の姿でしかいられない竜がいるという噂話とかですね。噂とはいえ興味深い話です」

隊長「……変わった話だな」

学者「ええ、竜の姿をしていない竜の話は私も聞いた事が無いですからね」

隊長「理由は分かるか?」

学者「分かりませんよ」

隊長「想像でもいい。お前の意見を聞かせてくれるか?」

学者「詳しくは分かりませんが。何かしらの特殊な力が働いている事は確かでしょうね」

隊長「その力はなんだと思う? もちろん想像で構わん」

学者「すいません。分かりません」

隊長「そうか……」

学者「で、本題と言うのはなんですか?」

隊長「……ああ、そうだったな。竜殺しについて聞きたいんだ」

学者「竜殺しですか。また変わったものを調べていますね」

隊長「少し頼まれてな」

学者「竜殺しと言っても具体的に何をお教えしたらいいですか?」

隊長「分かる事を出来るだけ教えてほしい」

学者「……分かりました」

隊長「頼む」

学者「では、最初にお聞きしますが、あなたは竜殺しを何処までご存知ですか?」

隊長「竜を殺すために特殊な力を持った人間だろ。神話では神が竜への対抗手段として生み出した」

学者「そうですが、一つ訂正してよろしいですか?」

隊長「何処か間違っていたか?」

学者「ええ、一か所だけ。竜殺しは竜を殺すためだけの特殊な力を持った人間です。勘違いしないでもらいたい」

隊長「何が違うんだ?」

学者「つまり竜殺しの特殊能力は竜だけに効くものであり、それ以外はただの人間だと言う事です」

隊長「つまり竜殺しと人間の戦いはただの人間同士の戦い、と言う事か?」

学者「そう言う事です。つまり彼等は竜を殺すのではなく、竜しか殺す事が出来ない、とも言えるんです」

隊長「竜以外のものと戦う時はただの人間だからか?」

学者「そう言う事です」

学者「あともう一つ付け加えるとしたら竜殺しには大まかに二種類あるんです」

隊長「二種類?」

学者「はい、大まかに分けた場合ですが、竜殺しは戦闘型と非戦闘型に分ける事が出来るんです」

隊長「……詳しく教えてくれるか?」

学者「はい、わかりました」

今日はここまでです。

学者「まず戦闘型は言葉通り戦闘で竜と戦う竜殺しの事を言います」

隊長「一つ聞きたいんだが、戦闘型の竜殺しなら人間にも余裕で勝てるんじゃないのか?」

学者「確かに竜と戦っている時の戦闘能力なら十分に人間にも勝てるでしょうが、人間相手ではその力は発揮されないんですよ」

隊長「あくまで竜相手にのみ力を発揮する。と言う事か」

学者「そう言う事です」

学者「それに全ての戦闘型の竜殺しが戦闘能力の強化とは限りませんし」

隊長「戦闘型にもいろいろなタイプがいると言う事か?」

学者「はい、ただ戦闘で竜を殺すと言う事だけでタイプは様々ですから」

隊長「例えばどんな奴がいるんだ?」

学者「最も多いのは肉体強化型ですね。次に多いのは武器強化型でしょうか」

隊長「武器強化型?」

学者「はい。自分の持っている武器を強化……と言うより竜を殺すのに特化したものに変化させる能力を持ったものです」

隊長「詳しく言えばどうなるんだ?」

学者「すいませんが分かりません。あとその他にもいろいろ種類がありますが私は分からないです」

隊長「そうか……非戦闘型というのはどんな奴なんだ?」

学者「私にも詳しくは分かりませんが毒を持った者などがいたそうです」

隊長「毒?」

学者「はい、竜を毒殺すると言う事です」

隊長「食われるのか?」

学者「はい。自分から竜に食われるんですよ」

隊長「……竜を殺す事と引き換えに自分も死ぬわけか」

学者「自分一人の命で竜を一匹殺せれば十分ですよ」

隊長「他にどんなのがいるかは分からないか?」

学者「すいませんが、非戦闘型は情報量が少なくて……」

隊長「そうか……」

学者「……私が分かるのはここまでです。お役に立てましたか?」

隊長「十分だ」

学者「また何か分かればお知らせしますよ」

隊長「助かる」

学者「では私はこれで」スタスタ

隊長「……また来てもいいか?」

学者「時間の余裕があれば何時でも」ニッコリ

隊長「ありがとう。ではまた何時か会おう」スタスタ

隊長「……」ピッ

隊長「……」プルルルル

男『はい』

隊長「男。今大丈夫か?」

男『あ、はい。珍しいですね、隊長さんから電話してくるなんて』

隊長「ああ、明日会えるか?」

男『明日ですか……多分大丈夫だと思います』

隊長「じゃあ夕方にいつもの公園だ。わかったな」

男『あ、はい』

隊長「遅れるなよ」

男『え、何があったんですか?』

隊長「いろいろ話したい事がある。詳しくは明日話す」

男『わ、わかりました』

隊長「じゃあまた明日」

男『あ、はい』

隊長「……」ピッ

隊長「さて、じゃあ行くかな」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


鉄で作られたその建物は空き家と言うより寂れた工場に近い様な佇まいだ。
窓ガラスは全て割れ、中から聞こえてくる笑い声や話し声は完全に外に漏れ、外にいる私にも十分に聞こえていた

煙草に火をつけ、一服する。
いつもならデザートイーグルを構え、中に突入するが、今回は相手が相手なだけに銃が使えない。

まったく。
つまらん相手だ。

煙草を咥えたまま、扉を開ける。
錆びた鉄同士が擦れ合う様な独特の音を立てながら、扉はゆっくりと開く。
鉄と煙草とアルコールが混ざった様な嫌な臭いが外へと流れ出す。

ゆっくりと建物の中を見渡す。

相手は五人。
どれも髪の色がカラフルで、奇抜な服装をしており、彼等の周りには煙草やら酒やらが散乱している。

今の大人達が嘆きたくなる訳だ……。


「誰だ、テメェ?」


髪を真っ赤に染めた男がそう言う。
相手をなめきっているのがはっきりとわかる口調だ。

こう言う無礼な態度は嫌いだ。
特に目上や年上の人への敬意の念の欠片の無いこういう態度は特に。


「別にお前等に何かしようって訳じゃない。ただ警告に来ただけだ」


冷静に言うべき事だけを伝える。
こんな無能な連中と下らない話をしていられるほど暇でもない。


「は? お前何様のつもりだよ」


予想通り過ぎる反応に呆れてしまう。
なんでこういう連中は人の話を聞くと言う事を聞こうとしないのかが疑問だ。

……まあ、人の話を聞かないからこそこんな連中になってしまったのだろうが……。
どちらにせよクズと言う事に変わりは無い。


「だから警告に来てやっただけだと言っただろう。あとお前等、口のきき方には気をつけろ」

「何偉そうに言ってんだよ。ババア」


その言葉は私の逆鱗に触れた。
今すぐ銃を構えてこのクソ野郎どもの眉間を撃ち抜いてやってもいいが、さすがにそれは出来ないので必死で耐える。

のたうち回る怒りを抑えながら、クソガキ共を睨みつける。
さっきまでの冷静な私はもはやここにはいない。
苛立ちを抑えながら出来る限り冷静に振る舞う。


「もう一度言う。口のきき方には気をつけろ」


さっきよりも低い声でそう告げる。
これがこのクソガキ共への最後のチャンスだ。

更に私の逆鱗に触れるようなら容赦する気は毛頭ない。


「うるせえよ。ババ――――」


その言葉よりも先に私の蹴りがその男の顔面を捉えていた。
相手の男が痛みを感じる間もなく吹き飛ぶのがわかる。
十分な加速で放ったその一撃によって軽々と一メートルは地面を転がっていた。

下手をすれば骨が折れているかもしれないが私には関係の無い事。
それに悪いのはあちらの方だし、最悪書類を改ざんすればどうとでもなるのだ。


「何してんだテメェ!!」

「何って、世の中を知らないクソガキ共に世の中を教えてやってるんだろ。私はちゃんと注意したぞ」

あくまで冷静で大人な対応をする。
もちろん私の中での冷静で大人な対応だが。

目の前の男が殴りかかってくるのが見える。
だが遅い。
それこそ亀のようにのろまと言う言葉がピッタリなほど遅い。
そこら辺のチンピラではあまりに役不足だと言う事か。

頭を下げて相手の攻撃をかわし、そのまま相手の腹を殴る。

たったその一撃で男は呻き声を上げ、嘔吐した。
苦しそうに息を荒げながら、地面に膝をつく。

だが私の攻撃はまだ終わっていない。
そのままの勢いを殺さずに膝をついた男の顔面目掛け回し蹴りをした。

関節が外れる様な、骨が折れる様な音を立てて、男は吹き飛んでいた。
まるで玩具の人形のように地面に体のあらゆる場所を擦りつけながら地面を転がっていく。

受け身すらとれないその姿はあまりに無様で滑稽だ。


「テメェ……」

「銃を使ってないだけありがたいと思えよ。もし使ってたら今頃お前等は壁のシミだぞ」

そんな事を言いながらほんの僅かに笑う。
それは邪悪で他人を嘲笑するような笑みだ。

こう言うバカを相手にするのは相手にするでなかなかに面白いものだ。
もちろん暇つぶしとしての意味だが。


「さあ、次はどいつだ? 私は誰でもいいぞ」


僅かに声が高くなったのは楽しんでいる証拠だ。
きっと顔も悪女の様な微笑を浮かべている事だろう。

相手が動くよりも先にこちらが動いた。
一番近くにいる茶髪で髪を逆立てた男の足を払う。

受け身もとれず、背中から地面に叩きつけられた男は苦しそうに呻いていた。
背中を叩きつけたせいか仰向けで荒い呼吸をしている。


「世の中なめてると痛い目見るって覚えとくんだな」


何の躊躇も無く、顔を踏みつける。
トマトの類がつぶれる様な湿っぽい音が響く。
もしかしたら歯の一本や二本折れたかもしれない。

残り二人。

私はゆっくりとそこで茫然と立ち尽くしている二人に向き直った。

今日はここまでです。

隊長さんは結構職権乱用するタイプの人です。

一番近くにいる男の腹に前蹴りを入れる。
かなり手加減もしているし、速度も遅いはずなのに腹を押さえて倒れる辺りこいつ等の弱さがうかがえる。
贅沢は言わないからもう少しくらい粘ってほしい。

止めに相手の頭にかかと落としを決める。
もちろん本気でやれば死んでしまうのは目に見えているので露骨に手加減する。
この程度のチンピラでは手加減した事すら分からないだろうが。

やっぱり飽きてくるな。

かかと落としをくらった男が意識を失った事を確認すると、最後の一人の方に向き直る。

もし全員で囲んで袋叩きにしていればもう少し時間は稼げただろうに。
体だけでなく頭も弱い証拠だ。


「どうした。私ばっかり攻撃しても面白くないだろ。お前達も攻撃して来たらどうだ?」


嫌みをたっぷり含んだ言葉を最後の一人投げつける。
それに腹を立てて、二人で攻撃してこれば、それはそれで好都合だ。
そこまでの勇気と度胸があれば、の話だが。


「す、すいませんでした……」


ピアスの男の方が頭を下げる。
誠意を見せると言う事なのだろう。
何も言わない私に恐怖しているのか、体が小刻みに震えている。

目上の人に対して無礼な事をした場合謝るのが当然だな」

「は、はい……」


男の声は小さく、か細い声だった。
それほどに恐怖に怯えているのだろう。


「私も戦う気でここに来た訳じゃない。だがお前達のせいでこうなったのは理解できるな?」


私の問いにピアスの男は無言で頷く。
素直なのかそれともただ怯えているだけなのかはいまいち分からない。


「私の言いたい事は三つだ。まず一つ目に他人への口のきき方は気をつけろ。二つ目に未成年者が酒呑んだり煙草吸ったりするな」


煙草の煙を吐き、一呼吸置く。
微妙な雰囲気に相手の男も戸惑っているように見える。

だがそんな事は気にせず続ける。


「最後に、謝って許してもらえると思ったら大間違いだ」

その瞬間、相手の表情が凍りついたのが分かった。
まるで仮面の様に表情が固まり、ピクリとも動かない。

だがそんな事を気にせず私はピアスの男に近づく。
わざとゆっくりと、そして露骨に足音を立てて。。

男は僅かに悲鳴を上げながら後ずさりした。
だが足がもつれるのか、そのまま転ぶ。
それでもまだ芋虫のように地面を這いずりながら逃げようとする。

強くは無いが、なかなか面白い反応をしてくれる。

歩く速度を更にゆっくりにする。
足音がゆっくりとしたリズムを刻む音が建物中に響き渡る。

逃げようとする男の地面を這いずる音も聞こえる。

だが追いつくのも時間の問題だろう。


「何時まで逃げる気だ?」


背中を右足で踏みつけそう尋ねる。

男は短い悲鳴を上げながら逃げようとするが、更に強く踏みつけ逃げられない様にする。

「そうだ。他の連中にも言っといてくれ、これ以上竜の件には関わるなってね」

思い出し、伝えるべき事を伝える。

静寂。

何の音も無い時間がただただ過ぎていく。
お互いに微動だにしない。


「わかったか。お前が伝えるんだぞ」


相手の反応が無いのでもう一度念を押す。
こういう明らかに無駄な時間は嫌いだ。

ピアスの男が無言で頷いた。
黙っていれば何かされると思ったのか、私が話し終わった瞬間に頷いていた。

それを確認すると相手の頭を踏みつける。
硬いもの同士がぶつかり合う様な鈍い音が部屋に響いた。


「はあ……まったく最近のガキ共は教育が足らんな」


煙草を足で踏み消しながら、誰に言う訳でもなく呟いた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜  男の家


男「トイレ行っとこ」スタスタ

男「……」スタスタ

ドラゴン「……」

男「あれ、まだ起きてたの?」

ドラゴン「え、あ……」

男「どうした?」

ドラゴン「な、何でもないわ」

男「なんか変じゃねぇか?」

ドラゴン「何処が変なの?」

男「いや、なんとなく……」

ドラゴン「気のせいよ、気のせい。私は普段通りよ」

男「そ、そうか。なら別にいいんだけどさ」

ドラゴン「あなたこそこんな夜中にどうしたのよ」

男「トイレだよ」

ドラゴン「あ、そう」

男「そっちはどうしたんだよ」

ドラゴン「ただ眠れないだけよ」

男「……寝れなくなるほどのなんかがあるのか?」

ドラゴン「別に何にも無いわよ。ただたまにあるじゃない、眠れない日が」

男「ま、まあ、確かに」

ドラゴン「それと同じよ。今日たまたま眠れないだけでいつもは普通に寝てる訳だし」

男「ならいいんだけどさ」

ドラゴン「それより怪我は大丈夫なの?」

男「今日は別に大した怪我なんてしてねぇよ。かすり傷だけ」

ドラゴン「今までの傷も含めて大丈夫って意味よ」

男「別にどうって事ねぇよ。ほとんど痛みも無いし」

ドラゴン「そう、なら良かったわ」

男「やっぱりなんか変じゃね。お前」

ドラゴン「……具体的に何が変なの?」

男「いや、具体的に何って訳じゃないけどさ……なんか変だなって」

ドラゴン「……」

男「悪い。多分俺の思い違いだと思う」

ドラゴン「あ、当たり前じゃない。思い違いよ」

男「悪いな」

ドラゴン「……ま、まあ、今回は許してあげるわ」

男「……」

ドラゴン「トイレ行かなくていいの?」

男「あ、そうだな。じゃあお休み」

ドラゴン「お休み。さっさと寝なさいよ」

男「お前もな。明日学校だしさっさと寝ろよ」

ドラゴン「分かってるわよ」

男「じゃあお休み」スタスタ

ドラゴン「お休み……」

ドラゴン「……」

ドラゴン「男、メイド。ごめんね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~





男「おはよう」スタスタ

メイド「おはようございます」

男「……あれ、ドラゴンは?」

メイド「まだ寝てるんじゃないですか?」

男「あ、そうかもな。昨日遅くまで起きてたみたいだし」

メイド「……なんで男さんがそんな事まで知ってるのか疑問です」

男「別に変な事じゃねぇからな。ただ夜トイレに行った時にあっただけだよ」

メイド「そうですか。すいませんがドラゴンさんを起こして来てもらえますか?」

男「わかった」スタスタ

男「ドラゴン。朝だぞ」コンコン

男「……」

男「おい、寝てんのか?」コンコン

男「……」

男「入るぞ」ガチャ

男「……」


部屋にはドラゴンはおろか荷物すら無くなっていた。


男「は?」

男「……なんだこれ」

『男とメイドへ
 突然で悪いけど家を出て行かせてもらいます。
 私は大丈夫なので気にしないで下さい。
   ドラゴン』

男「……」スタスタ

メイド「あれ、どうしました?」

男「はい。これ」スッ

メイド「え、なんですかこれ」

メイド「……」

男「何でだろうな……」

メイド「……男さん」

男「何?」

メイド「私が昨日言った事覚えてますか?」

今日はここまでです。

男「ドラゴンの事を考えろってやつか?」

メイド「そうです。男さんドラゴンさんに夜会ったんなら何か気付かなかったんですか?」

男「……なんかいつもとなんとなく違うなって思ったけど」

メイド「その何か違うのが何なのかを考えて下さい」

男「そんな事言われても……」

メイド「ドラゴンさんの気持ちを考えてみてください」

男「気持ち……ね」

メイド「なんで出て行ったのか。その理由があるはずです」

男「そんな事言われてもな……」

メイド「ほんのちょっとでいいから分かればいいんですよ。ドラゴンさんの言ってた事を思い出してみて下さい」

男「……わかんねぇよ」

メイド「じゃあ分かるまで考えて下さい」

男「……お前は分かってるのか?」

メイド「だいたいはわかってます。でも男さんがそれに自分で気付かないと意味が無いんです」

男「自分で分かれってか?」

メイド「そう言う事です」

メイド「言っておきますがそれが分かるまで探しに行っちゃダメですからね」

男「なんでだよ」

メイド「原因が分からなければ同じ事の繰り返しですよ」

男「……」

メイド「きっちり原因を知ってください。そのためにドラゴンさんの気持ちを分かってあげてください」

男「……わかった」

メイド「なんでドラゴンさんが出ていったか分かったら探しに行って下さい」

男「ああ」

メイド「これはドラゴンさんと男さんの問題ですからね。当事者同士で解決して下さい」

男「俺とドラゴンとの問題……」

メイド「はい。誰かに聞くのも大事だと思いますけど、男さんとドラゴンさんの問題だと言う事は忘れないで下さい」

男「ああ、わかったよ」

メイド「……学校遅れちゃいますよ」

男「あ、ああ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~


朝  倉庫


男「……」

男友「どうした?」

男「……」

男友「おい……どうしたんだよ」

女委員長「ドラゴンが出て行ったんだって」

男友「……え?」

女委員長「今言った通りよ。ドラゴンが男の家から出て行ったの」

男友「なんで?」

女委員長「私が知ってる訳ないでしょ」

男友「だよな。じゃあ男はあんな所で何やってんだ?」

女委員長「原因を考えてるんだって」

男友「原因って、ドラゴンが出て行った原因か?」

女委員長「それ以外に何があるのよ。本当にバカね」

男友「そうだよな……で、男はいつからああやって考えてるんだ?」

女委員長「さあ、私が来たときにはもうああやって考えてたわ」

男友「ずいぶん考え込んでるんだな」

男「……あれ、男友……いつ来たんだ?」

男友「さっきからずっといたよ」

男「……そうか」

女委員長「で、わかったの?」

男「全然……」

男友「俺達も一緒に考えやろうか?」

男「いい。これは俺とドラゴンの問題だし」

男友「……あ、そう」

女委員長「心当たりとか無い訳?」

男「あったら苦労してねぇよ」

女委員長「何か些細な事でいいから思い出しなさいよ」

男「些細な事……」

男「ダメだ……わかんねぇ」

女委員長「時間もそんなに無いんだからさっさと原因を思い出しなさいよ」

男友「え?」

女委員長「当たり前でしょ。ドラゴンはもう出て行ってるんだからどうなってるか分かんない訳だし」

男友「それヤバくない!?」

女委員長「普通にヤバいわよ。でも男が言うに原因が分からないと同じ事の繰り返しになるって言ってるし」

男友「おい、そんな事やってないでさっさと探しに行けよ!!」

男「わかってるよ」

男友「原因なんて後から聞けばいいだろ」

男「メイドが言ってたんだよ。原因が分からなくちゃ意味が無いって」

男友「そうは言っても……」

男「今日中に原因は見つける。で、見つけたらすぐドラゴンを探しに行く」

男友「……」

女委員長「私もそれには賛成よ。けど出来るだけ早くしてね」

男「分かってるよ」

女委員長「とりあえず授業始まるから教室に行くわよ」スタスタ

男「ああ」スタスタ

男友「……」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





男「……」

男友「なあ、本当に一人で大丈夫か?」

男「大丈夫」

男友「でも全然わかんないんだろ。しかもドラゴン学校来てないし」

男「普通来る訳無いだろ。来たら俺と会っちまう訳だし」

男友「まあ、そうだけどさ。ドラゴンの事心配じゃないのか?」

男「心配だよ。でも今すぐ探しに行って見つけてもあれだろ」

男友「あれって何だよ」

女委員長「さっきも言ったでしょ。なんで出て行ったのかわかんなくちゃ意味が無いって」

男友「でも先に助けに行った方がいいんじゃないか?」

女委員長「それを決めるのはあんたじゃなくて男よ」

男友「……そうだな」

女委員長「あとそうやってぼんやり考えてるんだったらパン買ってきてくれない?」

男友「今までのいい話が台無しだな」

女委員長「暇してるなら誰かの役に立ちなさいよ」

男「……別にいいよ。暇だし」

男友「いいのかよ」

女委員長「じゃあアンパンで頼むわね」

男「わかった。お前も一緒に行くか?」

男友「俺は飯あるからいい」

男「あ、そう」スタスタ

男「……」スタスタ

男「すいません。アンパン一つ」

売店員「どうぞ」

男「ありがとうございます。あ、あと湿布ももらえますか?」

売店員「ありますよ」

男「ありがとうございます」スタスタ

男「……」スタスタ

男「ただいま」スタスタ

男「ほら、アンパン」スッ

女委員長「ありがと」

男友「なんで湿布なんか買ってんの?」

男「怪我した所が痛いからだよ」

女委員長「そう言えば喧嘩したり竜に襲われたりしたらしいわね」

男「まあね」

男友「湿布張ってやろうか?」

男「あ、頼む」


俺は服を捲る。


女委員長「湿布はドラゴンに貼って貰ったの?」

男「いいって言ってるのに怪我が早く治るからって貼られたんだ」

男友「なんでお前は普通に青春してんだよ」

男「知るか。それにお前が思ってるような感じじゃないからな」

女委員長「でもドラゴンが心配してくれたんでしょ」

男「あいつは心配性過ぎるんだよ。あとすぐ自分のせいだって思い込むし」

女委員長「ああ見えて繊細なのよ」

男「……」

女委員長「何どうしたの?」

男「いや、あいつやけに俺の怪我の心配とかしてたからさ……」

中途半端ですがここまでです。

明日は投下量が減るかもしれません。

男友「いいじゃん。愛じゃん。青春じゃん」

男「いや、愛とかそう言うんじゃなくて……」

女委員長「そう言うんじゃなくて?」

男「なんて言うか……子供とぶつかったら凄く心配するだろ。あんな感じ」

男友「全然わからん」

女委員長「それはあんたの頭が悪いからよ。まあ私もあんまり意味は分かんないけど」

男友「俺と変わらんだろ」

男「……」

女委員長「で、それがどうしたの?」

男「あいつ俺が怪我するといつも自分せいだって言ってたんだよ。だから俺に怪我させない様に出て行ったのかなって……」

女委員長「……」

男友「……」

男「本当に俺とかが巻き込まれない様に出て行ったのか?」

女委員長「私に振らないでよ」

男友「俺だってわからんぞ」

男「……」

女委員長「で、あんたはどうするの?」

男「探しに行く。まだあいつを元に戻してないんだし」

男友「手伝うぞ」

女委員長「私も手伝うわよ」

男「いいのか?」

男友「友達だろ」

男「悪い……」

男友「いいっていいって」

女委員長「あとで何かしらの報酬は要求するわ」

男「……結局かよ」

女委員長「悪いけど無報酬で協力するほど私は優しくないわよ」

男「先生とかには無報酬で協力したり頼みごと聞いたりしてる癖にか?」

女委員長「ちゃんと報酬はもらってるわよ。いい成績って言う報酬をね」

男友「怖……」

女委員長「あとあんたはドラゴンにあったらなんて言えばいいか考えときなさいよ」

男「お、俺?」

女委員長「あんた以外に誰がいるのよ」

男友「素直に好きだ、でいいんじゃね?」

女委員長「って言ってるけどどう?」

男「別に好きじゃないから」

男友「……男、自分の気持ちに嘘をつくもんじゃないぞ」

男「何なの、お前?」

女委員長「……あんたがそう思ってるんならそう思ってればいいんじゃない?」

男「何その言い方」

女委員長「別に」

男友「真面目な話、本当にドラゴンには何の気持ちも無いのか?」

男「……何の気持ちも無い訳じゃない。けど好きとかそう言うんじゃないんだよ」

女委員長「まあ、あんたがそう言うんならそうなんだろうね」

男「そうだよ」


キーンコーンカーンコーン


男友「もう昼休み終わりかよ……」

女委員長「残りの話は授業が終わってからね」

男「ああ」

女委員長「じゃあまた後で」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~


町中


ドラゴン「……」

ドラゴン「何処行こうかな……」

ドラゴン(そういえば私そんなにこの町に詳しくないんだよね)

ドラゴン「と、とにかく男達に会わなくていいように遠くに行かなくちゃね」スタスタ

ドラゴン「……」

ドラゴン(男とメイドは今頃どうしてるかな……男は学校行ってるんだろうな……)

ドラゴン(置き手紙だけで出て来ちゃった訳だし、絶対怒ってるよね……)

ドラゴン「男。メイド。ごめんね」

ドラゴン「……」スタスタ

ドラゴン(女委員長達にも話してくれたかな)

ドラゴン「女委員長達にも迷惑かけるかもしれないし、私がいなくなったほうがいいの……」スタスタ

ドラゴン「……男の怪我、本当に大丈夫かな」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~――


夕方 公園


女委員長「なんでここなの?」

男「隊長と今日会う約束してたんだよ」

女委員長「隊長って?」

男友「俺達の協力者の人。めっちゃ強い。んで機嫌が悪いとめっちゃ怖い」

男「的確な説明だな……」

男友「凄く分かりやすいだろ」

女委員長「ええ、凄くよく分かったわ」

男「……そろそろ来るかな」

隊長「悪いな。遅くなった」スタスタ

男「別に構いませんよ」

隊長「……そっちの子は?」

女委員長「初めまして。男と男友のクラスメイトで女委員長といいます」ニッコリ

男「……相変わらずだな」ボソッ

男友「いつもの事だろ」

隊長「私は隊長。よろしく頼む」

女委員長「こちらこそ。よろしくお願いします」ニコニコ

隊長「……」

女委員長「どうかしましたか?」ニコニコ

隊長「媚び売るタイプの人間は嫌いじゃないんだが、好きでも無いな……」

女委員長「別に媚びを売ってる気はないですよ」ニコニコ

隊長「いい事を教えてやろう。人間は意識的に笑うと笑顔が露骨になるんだ」

女委員長「それがどうかしましたか?」

隊長「私から見るとお前の笑顔は少し度が過ぎてるように見えるぞ」

女委員長「私は別に媚びを売ってるつもりはありませんよ」

女委員長「それにもし媚びを売ってるにしても、いつも無愛想なあなたよりずっとマシな気がしますけど」

男友「女委員長って凄いんだな……」

男「ああ、久々に実感した」

隊長「……口のきき方がなって無いな。これだからガキは……」

女委員長「私は言いたい事を言ったまでですよ。口のきき方とは関係ないと思いますけど」

男友・男「……」

隊長「怒らせたなら謝ろう。悪いな、私はお前と違って他人の機嫌を取るのが苦手でね」

女委員長「まるで私がご機嫌とりみたいな言い方ですね」

隊長「違うか?」

男友「隊長絶対怒ってるよ」

男「女委員長も怒ってるだろ」

隊長「私は頭の悪い奴と話すのは嫌いだが頭のいい奴と話すのは嫌いじゃない」

女委員長「私もこういう人と話すのは嫌いじゃないわ」

隊長「……」ニヤリ

女委員長「……」ニッコリ

男「すいません。なんで呼びだしたか教えてもらえませんか」

隊長「ああ、すまないな。こいつとの話が面白くて忘れていた」

男「で、何が分かったんですか?」

隊長「女委員長はどのくらい知ってるんだ?」

男友「俺と同じか、それ以上知ってると思います」

隊長「ならいい。説明する手間が省ける」


隊長は学者の事を説明してくれた。

途中ですが今日はここまでです。

男「……関係のありそうな話ですね」

隊長「ああ、私もそう思う」

女委員長「その学者って言うのはどれくらい信用出来る訳?」

隊長「媚びは売らなくていいのか?」

女委員長「あなたが見抜いているならする必要は無いでしょ。それともあっちの方がいい?」

隊長「いや、お前の好きな方でいい」

女委員長「なら普通に話すわね」

隊長「勝手にしろ。お前の相手をしてるほど暇じゃない」

男友「で、信用は出来るんですか?」

隊長「正直に言えば微妙だな。協力的とは言え何を考えているか分からない人間だ。用心するのに越した事は無いだろう」

男「あと、その学者もドラゴンの事を知ってるんですよね」

隊長「あくまで噂話程度にしか考えていないさ。ただそんな噂話が流れている事も問題だがな」

男「そうですね」

隊長「お前を呼んだのはそのためだ」

男「え?」

隊長「確かにこの事を伝えるためにも呼んだが、それはおまけ。本題はこっちだ」

男「と、言いますと?」

隊長「学者にドラゴンを会わせようと思う」

男「……」

男友「……でもそれって――――!!」

隊長「ああ、当然リスクはでかいがリターンも大きい」

女委員長「確かにそいつがいい人ならドラゴンを元に戻す方法を見つけられる可能性がグンと上がるわね」

男友「でもそいつがいい奴じゃないなら……」

男「ドラゴンの事がいろんな奴にバレる可能性がある」

隊長「お前とドラゴンで考えてくれればいい」

男「わかりました」

隊長「所でドラゴンはどうした」

男「……出て行きました」

隊長「……どういう事だ?」


俺は今回の事を隊長に話した。


隊長「そうか……」

男友「で、これから探そうと思ってるんです」

隊長「まあ、それがいいだろうな。さすがに一人は危険だ」

男「……」

隊長「どうした?」

男「いや、ドラゴンは本当にその理由で出て行ったのかなって思って……」

隊長「は?」

女委員長「男はドラゴンが何で出て行ったかの理由がいまいち分かって無いのよ」

男「分かって無い訳じゃないけど、本当その理由なのか自身が無くて……」

隊長「別に間違っててもいいだろ。お前がそれだと思うんなら」

男「え、でも……」

隊長「お前は思春期の女か」

男「違いますよ!!」

隊長「そうやって考えてるからダメなんだ。バカはバカらしくさっさと行動しろ」

男「……」

男友「なんか隊長さんが言うと説得力ありますね」

隊長「それはどういう意味だ?」

男友「え……あ……」

女委員長「どうでもいいけどドラゴンを探さなくていいの?」

男「いや、探すよ。探すけど……」

男友「会って何話すか考えたか?」

男「それは……」

隊長「探してる最中に考えろ。分かったな」

男「……わかりました」

隊長「じゃあさっさとしろ」

男「はい」

女委員長「みんなバラバラに探すの?」

男友「その方が効率がいいだろ」

隊長「そうだな。何かあったら男に連絡してやれ」

男友・女委員長「はい」

隊長「じゃあさっさと行け」

男友「じゃあ俺こっち行くから」スタスタ

女委員長「私はこっちね」スタスタ

男「じゃあ俺は――――」

隊長「お前は話がある」

男「……何の話ですか?」

隊長「お前は結局どうしたいんだ」

男「え、何の事ですか?」

隊長「さっきから思春期の女みたいにウジウジして……お前はどうしたいんだ?」

男「そりゃ迎えに行きたいですよ。でもなんで出て行ったかも分からないし……」

隊長「お前は悩んでその答えにたどり着いたんだろ?」

男「……はい」

隊長「なら自分の答えに自信を持て。間違ってても別に恥ずかしい事じゃない」

男「……そうですかね?」

隊長「ああ」

男「……」

隊長「分かったか?」

男「はい」

隊長「ならお前は駅の方を頼む」

男「分かりました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~


駅裏


ドラゴン「……」

隊長「……どうした?」スタスタ

ドラゴン「た、隊長……」

隊長「男の家から出て行ったんだってな」

ドラゴン「……あ、あなたには関係ない事よ」

隊長「そうだな。私には関係ないし、正直興味もない」

ドラゴン「……」

隊長「だが私に興味が無くても他の連中は興味があるようでな」

ドラゴン「男?」

隊長「ああ、あいつはしつこいからな。同情するよ」

ドラゴン「……」

隊長「お前がなんで男の家から出て行ったのかに興味は無い。ただ男はその事を知りたがってる」

ドラゴン「何が言いたいの?」

隊長「……別に何も言う気は無いよ」

ドラゴン「……」

隊長「……」

隊長「……なかなかいいタイミングだ」

ドラゴン「え?」

隊長「じゃあな、私はそろそろ行く」スタスタ

ドラゴン「ちょっと待って。どういう事?」

隊長「残りはお前等で解決しろ」スタスタ

ドラゴン「……」

男「ドラゴン……」

ドラゴン「……探さないでって言ったでしょ」

男「……」

ドラゴン「私は一人で大丈夫よ。住処も見つけたし」

男「何処だ?」

ドラゴン「……言わない」

男「嘘つくなよ。お前どうやって借家借りるかも知らないだろ」

ドラゴン「……」

男「……」

男「なんで出て行ったのか教えてくれないか?」

ドラゴン「言わない……言いたくない……」

男「……」

ドラゴン「別にあなたやメイドのせいじゃないわよ」

男「俺とかメイドに迷惑がかかるから出て行ったんじゃないのか?」

ドラゴン「……」

男「なら別に俺もメイドも――――」

ドラゴン「あなたは分かってない!! このままいけばあなたやメイドだけじゃなくて男友や女委員長だって怪我したり、下手したら死ぬかもしれないのよ!!」

男「……」

ドラゴン「あなた達や私なんかじゃとても太刀打ちできないのよ……」

男「なんで俺とか女委員長とかが怪我する事になってんだよ」

ドラゴン「え?」

男「言っとくけど俺の怪我だってそこまでひどくないからな」

ドラゴン「ひどいじゃない。そんなにボロボロになって……」

男「それはお前から見てだろ。俺にとっては別にどうってことねぇんだよ」

ドラゴン「……」

男「それにまだお前を元に戻せてないだろ」

ドラゴン「あなた……バカなの?」

男「バカじゃねぇよ」

ドラゴン「……」

男「一旦帰って来い。メイドが夕飯作って待ってるから」

ドラゴン「でも……」

男「夕飯が余る方が俺達にとっては迷惑なんだよ」

ドラゴン「……」

男「行くぞ」スタスタ

ドラゴン「う、うん……」スタスタ


物陰


男友「男やったじゃん」

女委員長「ごり押しって感じね。ドラゴンもそこまで納得してる訳じゃ無さそうだし」

男友「じゃあダメじゃん……」

女委員長「別にダメって訳じゃないわよ。ただこれからの話し合いが大事ね」

男友「これからお互いの誤解やらを解いていこうって訳か?」

女委員長「まあ、そんな感じでしょうね」

隊長「お前等……暇なんだな」スタスタ

女委員長「あれだけドラゴンにいろいろ吹き込んでおいてそれは無いんじゃない?」

隊長「私は暇だからやったまでだ」

男友「それくらいにしといて下さい……」

隊長「分かってる」

女委員長「まあ、話し合いが成功したかどうかは明日分かるんだしいいんじゃない?」

男友「ドラゴン来るといいな」

隊長「私は興味は無い」

女委員長「とか言いつつ実は男に電話したりするんじゃないの?」

隊長「私はそこまで暇じゃないよ」スタスタ

女委員長「面白くないわね……」

男友「明日が楽しみだな」

女委員長「男がうまく説得できればいいけどね」

男友「じゃあまた明日」スタスタ

女委員長「ええ」

今日はここまでです。

新しく登場したキャラもそのうちキャラ紹介していきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の部屋  夜


ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「……何か話したら?」

男「何かって?」

ドラゴン「……真面目な話よ」

男「……今日の夕飯はどうだった」

ドラゴン「いつも通りおいしかったわ」

男「あ、そう……」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「そう言う話じゃなくて、真面目な話よ」

男「言われなくても分かってるから」

ドラゴン「なら無駄な話は必要ないじゃない……」

男「……お前はまだこの家を出て行こうと思ってるのか?」

ドラゴン「ええ。さっきも言ったけどこのまま私がいたらみんなの迷惑になるから」

男「……聞きたいんだけど、誰か一回でも迷惑だって誰か言ったか?」

ドラゴン「いや、言ってないけど……でもこのままじゃホントに誰か大怪我したり下手したら死んじゃうかもしれないじゃない」

男「あのさ……かも、とかって言う曖昧な話はやめようぜ」

ドラゴン「曖昧かもしれないけどもし本当にそうなったら死ぬ可能性の方が高いのよ」

男「でも絶対じゃないんだろ」

ドラゴン「……」

男「それに俺もメイドも隊長も女委員長もそんな簡単に死ぬ様な人間に見えるか?」

ドラゴン「それは……」

男「見えないだろ。だからお前の心配し過ぎなんだよ」

男「絶対誰も死なない」

ドラゴン「でも男は現に怪我してるじゃない」

男「……これはお前のせいで出来た怪我じゃないから。俺があいつ等に喧嘩売ったから悪いんだよ」

ドラゴン「私がいなかった出来なかった怪我じゃ――――」

男「だからお前がいたからああなったかもしれないけど、結局は俺が悪いんだからお前は気にしなくていいんだよ」

ドラゴン「……」

男「だからお前は気にすんな。何にも気にすんな」

ドラゴン「……」

男「それに元に戻ってない以上この家から勝手に出ていくのは俺が許さねぇ」

ドラゴン「何それ?」

男「……うん、自分で言ってちょっと恥ずかしくなった」

ドラゴン「あなたたまにそう言う事普通に言ってるわよ」

男「知ってるから言わなくていい。恥ずかしいし」

ドラゴン「……ふふっ」

男「笑うな」

ドラゴン「……本当にいてもいいの?」

男「だからいいって言ってるだろ」

ドラゴン「……」

男「何?」

ドラゴン「ありがとね。今回もそうだけど、ずっと助けてもらってばっかりで」

男「別にいいよ。元々俺が引き受けたんだし」

ドラゴン「……じゃあお休み」ガチャ

男「お休み」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


場所不明


竜王「……ん?」

???「悪いわね。起こしちゃった?」

竜王「いや、寝てはいない。ただウトウトしていただけだ」

???「あらそう。ごめんなさいね」

竜王「お前が来たと言う事は何かあったのか?」

???「ええ、少し気になる事があったからあなたが知ってるか聞きたかったの」

竜王「なんだ?」

???「ドラゴンの事がずいぶん広まってるわよ。今はただの噂話だけど、どうやら彼女を狙ってる連中もいるみたいね」

竜王「その事は知っている」

???「じゃああなたが仕掛けたものなの?」

竜王「そんな面倒臭い事はしないさ。誰か他の奴が情報を流したんだろう」

???「犯人に竜?」

竜王「無いな。竜族のものはそんな面倒な事は絶対しない」

???「そうよね。じゃあ犯人は人間と言う訳ね」

竜王「しかもよほど高い地位を持った人間だな」

???「ますます分からなくなってきたわね……」

竜王「ああ、全くもってな……」

???「……そういえばドラゴンと男には会った?」

竜王「ああ、男には一回会った」

???「どうだった? 元気そう?」

竜王「ああ、段階も順調に進んでる」

???「そう、なら安心ね」

竜王「確かに男はお前を超えるかもしれんな」

???「だからそうやって言ってるじゃない」

竜王「……私の話はもう無いぞ」

???「私もよ。じゃあそろそろ帰るわね」

竜王「ああ、また何かあったら頼む」

???「ええ。こっちからも何か頼むかもしれないからよろしくね」

竜王「ああ」

???「じゃあね」スタスタ

竜王「また」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日   学校


男「おはよう」スタスタ

ドラゴン「おはよう」スタスタ

男友「おはよう。二人で仲良く登校か?」

男「違ぇよ」

女委員長「おはよう。元気そうで良かったわ」

ドラゴン「昨日は休んでごめん……」

女委員長「いいのよ。たまにはハメを外さないとね」

男友「じゃあ俺達もたまには――――」

女委員長「あんた達は別よ」

男「……」

女委員長「はい、これ昨日のノートとプリントね」

ドラゴン「別に分かるから大丈夫よ」

女委員長「形式よ。使わなくても形式として借りといてくれない?」

ドラゴン「わ、分かったわ」

男友「そう言えばあれはどうするんだ?」

男「あれ?」

男友「隊長の言ってたやつだよ。ドラゴンと学者をわせるって言う」

男「ああ……完全に忘れてた……」

男友「おい」

男「俺としてはドラゴンに全部任せようと思ってるんだけど、どうだ?」

男友「俺は何でもいいよ」

男「ドラゴン。ちょっと聞きたい事があるんだけど」

ドラゴン「何?」


俺はドラゴンに昨日の隊長の話を話した。


ドラゴン「ふーん……」

男「お前が会いたいなら会えばいいし、会いたくないならそれでもいいんだけど」

ドラゴン「……」

女委員長「別に焦らなくてもいいからゆっくり決めればいいわよ」

男友「女委員長が嫌に優しいな」

女委員長「私、友達に優しいのよ」

ドラゴン「男はどうした方がいいと思う?」

男「俺に振るなよ……俺としてはお前の好きなようにしてくれればいいんだよ」

ドラゴン「意見の一つとして聞きたいの」

男「……相手が何者か分かんないからな……今の所は会わなくていいんじゃないか?」

女委員長「賛成よ。私も今は会わない方がいいと思う」

男友「俺もそう思う」

女委員長「今はって意味で、相手の素性がある程度分かったら会ってもいいと思うわ。あくまで私の考えだけど」

ドラゴン「じゃあ、今の所は会わないでおく」

女委員長「そう。わかったわ」

男「じゃあとりあえず隊長に電話しとく」ピッ

男友「でも俺達だけでドラゴンの体を元に戻す方法ってわかるのか?」

女委員長「あなたバカなの? だからその学者って人の素性がある程度分かったらまた考えるって言ってるじゃない」

男とも「ああ、そういう事……」

ドラゴン「どうやって?」

女委員長「調べるに決まってるじゃない」

ドラゴン「具体的にどうやって調べるの?」

女委員長「……調べる方法なんて腐るほどあるのよ」ニッコリ

男友「……」

今日はここまでです。

最近眠気が凄い……。

ドラゴン「どういう事?」

女委員長「一週間もあれば十分調べられるわね」

ドラゴン「え?」

男友「こいつが調べるんだよ」

ドラゴン「でもそんな簡単に調べられるの?」

女委員長「私をなめないでよ。そこら辺の探偵より探索力あるのよ」

男友「どんな手を使ってでも調べるもんな」

女委員長「情報戦に汚いもくそもないわよ」

男友「どういう神経してんだよ……」

女委員長「あなたと一緒にされたくないわね」

男「はい…………わかりました」ピッ

女委員長「分かったって?」

男「ああ、会う気になったらいつでも言ってくれってさ」

ドラゴン「分かったわ」

女委員長「調べ終わり次第二人には連絡するわね」

男「ああ」

男友「俺は?」

女委員長「あんたは関係無いでしょ」

男友「いや、あるよ。普通にあるよ」

女委員長「わかったわよ。呼べばいいんでしょ」

男友「ああ」ニコニコ

女委員長「面倒臭いわね……」

男友「聞こえてるぞ」

女委員長「わざと言ったのよ」

男「調べるのには最短でどのくらいだ?」

女委員長「そうね……早ければ四日。最低でも一週間には終わらせるわ」

男「頼む」


キーンコーンカーンコーン


女委員長「じゃあ残りの話は昼休みにね」

ドラゴン「うん、わかった」

~~~~~~~~~~~~~~


昼休み   教室


男友「あれ、女委員長とドラゴンは?」スタスタ

男「外に食べに行った」

男友「あ、そう。なら今日はお前と二人か……嫌だな」

男「それはこっちの台詞だよ」

男友「何が面白くって男と向かい合って飯食うんだか……」

男「うるせぇよ。バカ」

男友「……で、何か新しい事はわかったか?」

男「何も進歩してねぇよ。分かんない事は分かんないままだし、何か新しい謎も無い」

男友「そうか」

男「確かにお前の言うとおりいつかはその学者って奴の力を借りないといけないのかな……」

男友「俺にはわからん。でも俺は力を借りた方がいいと思う」

男「ドラゴン抜きでなら話したいんだけどな」

男友「無理だろ。話すどころか会えもしないと思うぞ」

男「なんでそう言い切れるんだ?」

男友「相手はよほど凄い人間なんだろ。じゃあそう簡単に会えるかよ」

男「そうか……」

男友「隊長ですら普通なら会えないのに、それより上の位の人間に会える訳ないだろ」

男「……」

男友「ドラゴンがいれば会えるだろうけど、お前だけじゃ無理だろうな」

男「……」

男友「まあ、女委員長が調べてくれるって言ってるしちょっと待とうぜ」

男「……そうだな」

男友「わかるといいな」

男「だな……絶対分かる訳じゃねぇし」

男友「分からなくったって諦める気は無いんだろ?」

男「当たり前だろ」

男友「……いいな。超青春じゃん」

男「いきなりどうした……」

男友「青春っていいじゃん。俺も青春したいよ」

男「ならお前もすればいいだろ」

男友「相手がいないだろ」

男「知らねぇよ」

男友「俺も恋人とそう言う展開になってみたいよ……」

男「まず恋人じゃねぇから」

男友「いいよな、そういう漫画みたいな展開」

男「勝手に言ってろ」

男友「俺も恋人ほしいな」

男「……結局そこかよ」

男友「お前に彼女がいて、俺にはいないなんて嫌だろ」

男「安心しとけ。俺はドラゴンと絶対付き合わないから」

男友「え、なんで?」

男「あいつは竜に戻ったら竜として生きていくんだから俺達と関わる事なんて無いに決まってるだろ」

男友「……」

男「何?」

男友「じゃあ俺に彼女がいて、お前に彼女がいなくていいのか?」

男「勝手にしろ」

男友「待ってろよ。めっちゃ可愛い彼女作ってやるからな!!」

男「はいはい」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


校舎裏


女委員長「男に説得されたの?」モグモグ

ドラゴン「え、うん」モグモグ

女委員長「メチャクチャな説得だったでしょ?」モグモグ

ドラゴン「え、そうかな……」

女委員長「あいつは物事をしっかり考えずに見切り発車で話しちゃうからしっかりした説得なんて出来ないのよ」

ドラゴン「今思い出すとそうかもしれない……」

女委員長「勢いってのも大事だと思うんだけどね。あいつの場合勢いしかないから」

ドラゴン「そ、そうかもね」

女委員長「ドラゴンも訳分かんない事言ってるって思ったら。ちゃんと指摘してあげた方がいいわよ」

ドラゴン「わ、わかったわ」

女委員長「……出て行ったって聞いたから不安だったけど、一件落着ね」モグモグ

ドラゴン「……ごめんね」

女委員長「いいのいいの。私は全然気にしてないから」

ドラゴン「そ、そう……?」

女委員長「出て行ったのは男を怪我させたくないから?」

ドラゴン「……それもある、かな……」

女委員長「男に言われたでしょ、そんな事気にするなって」

ドラゴン「うん、言われた」

女委員長「やっぱりね。あいつなら何の根拠もなくそう言うと思った」

ドラゴン「……」

女委員長「男にはちゃんと謝ったの?」

ドラゴン「……謝ってないと思う。多分」

女委員長「じゃあ謝っときなさいよ。あいつ物凄く心配してたから」

ドラゴン「う、うん」

女委員長「……」モグモグ

ドラゴン「……」モグモグ

女委員長「で、男とは何処まで行ったの?」

ドラゴン「え?」

女委員長「手は繋いだ。あ、もしかしてもうキスまでしたの?」

ドラゴン「そ、そんなわけないじゃない!!」///

女委員長「あら、じゃあまだ手を繋いだくらいって事?」

ドラゴン「手も繋いでないわよ!!」///

女委員長「なんだ。つまらないわね」

ドラゴン「当たり前でしょ!! そんな事する訳ないじゃない!!」///

女委員長「でも男の事は好きなんでしょ?」

ドラゴン「べ、別に好きとかそういんじゃないの……」

女委員長「あら、そうなの」モグモグ

ドラゴン「当たり前じゃない……」

女委員長「同じ家に住んでて何もない方がおかしい気はするけどね」モグモグ

ドラゴン「なんでこんな話に……」

女委員長「たまには恋話もいいじゃない」

ドラゴン「……まあ、いいけど」

女委員長「それに意外と重要なのよ。恋話って」

ドラゴン「そ、そう?」

女委員長「そうよ。だからこれからもたまにはこういう話していきましょうね」ニッコリ

ドラゴン「う、うん」

今日はここまでです。

そろそろ話が進みだすと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夕方 男の家


男「疲れた……」ガチャ

ドラゴン「あなたいつも疲れたって言ってない?」

男「言ってる」

ドラゴン「それやめた方がいいわよ」

男「なんで?」

ドラゴン「ネガティブな発言は他の人もネガティブにするから」

男「……」

ドラゴン「何?」

男「何その親がよく子供にしそうな話」

ドラゴン「変?」

男「いや、別に変じゃないけど……」

ドラゴン「そうやって教わらなかった?」

男「親に言われた事はねぇよ」

ドラゴン「私はよく言われたけどな」

男「あ、そう」

ドラゴン「そういえば男の両親は?」

男「……そういえば言ってなかったっけ」

ドラゴン「うん、もし良かったら教えてくれない?」

男「俺の両親は――――」

???「あ、おかえり。帰ってきてるなら帰ってきてるって言ってよ」


そこには肩くらいまでの短い黒髪の女性が立っていた。
ジーンズにTシャツと言うラフな格好で、腕には銀色の腕時計をはめている。
年齢は二十代後半に見えるが本当は四十代後半。
彼女の名前は母、俺の母親に当たる人だ


男「……」

ドラゴン「だ、誰?」

母「男の母親の母よ」

男「帰ってきてるなら一回連絡しろって言っただろ」

母「ごめんね、突然の休みだったから連絡できなかったのよ」

ドラゴン「男のお母さん……」

母「あなたがドラゴンね。聞いてるわよ」

男「なんで知ってんだ?」

母「メイドから聞いたの」

男「おい」

メイド「すいません。聞かれたんでつい……」

男「口軽いな……」

母「私が無理矢理聞いたのよ」

メイド「いえ、安易に喋ってしまった私が悪いんです」

男「どっちでもいいよ」

母「短い間だと思うけどよろしくね」

ドラゴン「あ、はい」

男「で、今回はどのくらいいるんだ?」

母「うーん、今の所は未定ね」

男「あ、そう」

母「ちゃんと帰る前には一言言うわよ」

男「当たり前だ」

メイド「男さん。言葉遣いが悪いですよ」

母「いいのよ。どうせ治す気もないんだから」

ドラゴン「……」

母「あ、ちょっと来てくれない」

ドラゴン「わ、私?」

母「ええ、ちょっと聞きたい事なんかもあるから来てほしいんだけど」

ドラゴン「……わ、わかった」

母「あ、男は来なくていいわよ」

男「最初っから行く気ねぇよ」

母「あら、そう」

男「じゃあ俺は二階行ってるからな」スタスタ

母「ええ」

メイド「ご飯になったら呼びますね」

男「ああ、わかった」

ドラゴン「……」

母「あっちで話しましょうか」

ドラゴン「え、ええ」

メイド「私は……」

母「どっちでもいいわよ」

メイド「……遠慮しておきます。二人の方が話しやすいかもしれませんし」スタスタ

母「あらそう。じゃあ二人で話しましょうか。ここでいいわね」ガチャ

ドラゴン「……」

母「とりあえず座って」

ドラゴン「え、ええ……」

母「ふふっ。そんなに緊張しなくていいわよ」

ドラゴン「え、わかったわ」

母「……男はどう?」

ドラゴン「え、え?」

母「あなたを元の姿に戻そうと奮闘してるみたいだけど、あなたの目から見てどう?」

ドラゴン「……十分過ぎるほど頑張ってくれてると思うわ」

母「そう、なら良かったわ」

ドラゴン「え? どういう事?」

母「何でも無いわ。あの子は単純だから馬鹿みたいに突っ走ると思うけどちゃんとコントロールしてあげてね」

ドラゴン「わ、私が?」

母「ええ。あなたがよ」

ドラゴン「……出来るかどうか分からないわ」

母「大丈夫よ。むしろあなたじゃなきゃダメかもしれないわ」

ドラゴン「私じゃなきゃ?」

母「ええ、あなたじゃなきゃね」

ドラゴン「……」

母「そういえば男から私の事とか聞いてる?」

ドラゴン「そういう話はしてないから……」

母「そう。じゃあ改めて自己紹介するわね」

母「私は母。男の母親で今はちょっと特殊な仕事をしてる」

ドラゴン「特殊な仕事?」

母「内容は詳しく言えない規則だから言えないけど、簡単に言えば警察みたいなものね」

ドラゴン「そ、そうなんだ……」

母「……じゃあ父親の事も聞いてない訳ね」

ドラゴン「聞いてないわ……」

母「やっぱりね」

ドラゴン「教えてくれるの?」

母「うーん……あの子が黙ってるなら私が安易に話していいのか分からないわね」

ドラゴン「……」

母「悪いけどやっぱり男から聞いてくれない」

ドラゴン「ええ、そうするわ」

母「ごめんね」

ドラゴン「別に大丈夫」

母「きっとあなたになら教えてくれると思うから」

ドラゴン「え、ええ……」

母「じゃあこれからもよろしくね」

ドラゴン「よろしく」

母「……」

ドラゴン「じゃあ行くわね」ガチャ

母「ええ」

母「……」

母「あの二人ならうまくやっていけるわね。きっと」

今日はここまでです。

これから数日投下が不安定になるかもしれません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男「……」パラパラ

男「なんか新しい情報無いかな……」パラパラ

コンコン

男「勝手に入ってきていいぞ」

メイド「失礼します」スタスタ

男「何の用?」

メイド「いえ、ドラゴンさんと母さんが話してたんでこっちに来たんです」

男「あ、そう」

メイド「……」

男「何?」パラパラ

メイド「いや、真面目にやってるなって思って」

男「当たり前だろ。やらなくちゃ元に戻す方法なんて一生見つかんねぇぞ」

メイド「でも最近毎日調べてるでしょ?」

男「……何で知ってんだよ」

メイド「私をなめないで下さいよ。それくらい知ってて当然です」

男「……どうやってだよ」

メイド「一緒に住んでればそれくらい分かりますよ」

男「そうか?」

メイド「はい。ドラゴンさんが気付いてるかどうかは知りませんけど」

男「あ、そう」パラパラ

メイド冷たいですね

男「気のせいだ」

メイド「……そういえば何か新しい事は分かったんですか?」

男「分かってたら苦労してねぇよ」

母「自分から好きで首を突っ込んだんでしょ?」

男「うおっ!?」

母「うるさいわね。静かにしなさいよ」

男「突然現れるなよ。びっくりするだろ」

メイド「男さん。男のくせに大声出して……かっこ悪いですよ」

男「うるせぇ」

母「手伝ってあげようか?」

男「今の所は手伝ってもらう様なことはねぇよ」

母「あらそう。残念ね」

男「……」

母「何?」

男「……何処まで知ってる」

母「何の事?」

男「とぼけんなよ。母さんなら何かしらの情報の一つや二つ持ってるだろ」

母「教えてほしいならそれ相応の態度を示してもらわないとね」ニヤニヤ

男「別に聞くなんていってねぇだろ」

母「そう、そういう態度なら教える気は無いわよ」ニヤニヤ

男「……」

母「そういうあなたこそどれくらい情報が集められたの?」

男「……」

母「そこまで集められてはいないみたいね」

男「悪かったな」

母「別に悪いなんて言ってないわよ。それが普通」

男「……そうかよ」

母「どうするの、聞く?」

男「いい。自分で調べる」ガチャ

メイド「何処行くんですか?」

男「図書館」スタスタ

母「ふふっ。素直じゃないわね」

メイド「自分がそういう風に仕向けたんじゃないですか」

母「あら、気付いてたの?」

メイド「当たり前です」

母「あの子は単純だからやりやすいわ」

メイド「自分の子供じゃないですか」

母「まあね」ニッコリ

ドラゴン「男がさっき出て行ったけど」ガチャ

母「図書館に行くんですって」

ドラゴン「え?」

メイド「多分本を返しに行くついでにまた借りてくるんじゃないですかね」

ドラゴン「あ、そう」

母「じゃあ久しぶりに私が夕飯作ろうかしら」

メイド「お願いします」

ドラゴン「作れるの?」

母「ふふっ。そこまで期待しないでね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~


図書館


男「竜図鑑か、どうするかな……」

男「これ借りてくか」

男「……『赤い竜と旅人』?」

男「……」

男「借りてってみるか」

竜王「元気そうだね」

男「竜王……」

竜王「そう怖い顔しないでくれ」

男「竜人は大丈夫なんだろうな」

竜王「ああ、大丈夫さ」

男「で、今日はなんの用だ?」

竜王「君に頼まれていた事だよ」

男「……悪い。何の事だっけ」

竜王「竜と人間の夫婦の事だよ」

男「あ、そうだったな」

竜王「一つ聞きたいが、その家を訪ねる気かい?」

男「その気だけど、ダメか?」

竜王「いや、ちゃんと了承もとってある。好きな時間に会いに行ってくれ。いるとは限らないがな」

男「俺が聞くのもあれなんだけど、こう言うのって俺に見せていいのか?」

竜王「どういう事だ?」

男「いや、人間との結婚って禁忌なんだろ?」

竜王「それは人間が竜と結婚する時の話だろう」

男「え?」

竜王「確かに竜の中には人間との結婚を許さない頭の固い連中も存在する。だが基本的には結婚は自由だ」

男「そうなのか……」

竜王「ああ、だから別に君に見せても問題は無い」

男「そうか」

竜王「この封筒に場所が書いてある。自由に訊ねてくれ」

男「わかった」

竜王「……」

男「なんだ?」

竜王「いや、まだ早いな」

男「何がだよ」

竜王「もう少し君がいろいろな事実に近づいたら話すよ」スタスタ

男「事実って何だよ。お前知ってるのか?」

竜王「いや、竜の事についてもう少し君が知ったらと言う意味だよ」

男「……」

竜王「それが彼女との約束でもあるしね」

男「なんだよそれ……」

竜王「まあ、あせらずゆっくり調べてくれ」

男「……」

竜王「じゃあまた会おう」スタスタ

男「相変わらず訳わかんねぇ奴だな……」

男「……タイヤキ買って帰るかな」スタスタ

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


公園


男「……これドラゴンに見せてもいいものなのかな……」

男「……はぁ」

男(どうしよう……)

???「……」

男「ん?」


それはヨレヨレの黒のスーツを身に纏った、頭の禿げかけた丸眼鏡のおっさんだった。
年は四十代前半くらいだろうか。
てっぺんハゲだから余計に年老いて見えてしまう。
とにかく幸の薄そうで気の弱そうなおっさんだ。


男「なんですか?」

???「あ、別に何でもないよ」

男「さっきからこっち見てたでしょ」

???「いや、何でも無いよ。ただタイヤキがおいしそうだなと思って」

男「は?」

おじさん「あ、私の名前はおじさん。おっさんでもなんでも好きなように呼んでくれていいよ」

男「あ、そう。じゃあおっさんでいい?」

おじさん「構わないよ」

男「……」

男「一つでいい?」

おじさん「い、いいのかい?」

男「欲しいんだろ」

おじさん「わ、悪いね」

男(変なおっさんだな)

おじさん「お金はあるんだけど、買いに行くのが恥ずかしくてね」モグモグ

男「なんでだよ」

おじさん「いや、こんな中年のおっさんが買うのは変じゃないかい?」

男「そうか?」

おじさん「ちゃんとお金は返すよ。いくらだい?」

男「いいよ。そんな高いものじゃないし」

おぞさん「……」

男「?」

おじさん「き、君、いい子だね……」ウルウル

男「なんで泣きそうなんだよ!!」

おじさん「君の様な優しい子は久しぶりに見たよ」

男「あ、ありがとう」

おじさん「何か恩返しをしたいんだけど……」

男「別にいいって。別にそんな凄い事した訳じゃねぇんだし」

おじさん「すまないね」

男「顔にあんこ付いてるぞ」


おじさんはハンカチを取り出し、口元を拭いた。


おじさん「いろいろすまないね」

男「……おっさんはこんな所で何してんだ?」

おじさん「職場にも家庭にも私の居場所は無くてね。たまにここで何も考えずに座ってるんだ」

男「……」

おじさん「君も将来私みたいにならない様に気をつけてね。あ、余計なお世話かな?」

男「いや、忠告ありがとう」

青年「おい」

男「ん?」

青年「久しぶりだな」

男「……」


そこにはいつぞやの青年とその仲間が四人ほど立っていた。


青年「この前はずいぶんお世話になったな」

男「別にお世話した記憶はねぇけどな」

青年「今回はそのお礼だよ」

男「お礼なんて別にいい」

青年「その調子こいた態度がムカつくんだよ!!」

おじさん「あ、君達。何があったかは知らないけど喧嘩はやめた方がいいよ」

青年「ああ!? なんだこいつ?」

おじさん「彼は私の恩人だよ。私を助けてくれたんだ」

男「タイヤキあげただけじゃん」

おじさん「あんこが顔についたまま帰ってたら妻に怒られるんだ。何自分だけお菓子食ってるんだって」

青年「何の話だ!! ふざけてんのか!?」

おじさん「ふ、ふざけてなんかいないよ。私はいたって普通だよ」

おじさん「とにかく野蛮な事はせず穏便に済まさないかい?」

青年「はあ? お前ふざけてんのか?」

おじさん「喧嘩なんてしても仕方ないよ。ここは平和的に済まそう」

男「おっさん、やめといたほうがいい。このままだとあんたまで怪我する事になる」

おじさん「恩人に怪我させる訳にはいかないよ」

青年「じゃあお前が相手になるのか?」

おじさん「……わかった。私が相手になろう」

男「おい、マジかよ!?」

おじさん「私の心配は無用だよ」

男「怪我する前に謝っといた方がいいって」

おじさん「大丈夫。私は大丈夫だよ」

青年「まずはお前からだ!!」

青年が殴りかかる瞬間、俺は反射的に目を瞑ってしまった。
俺のせいで怪我をしてしまうおっさんへの罪悪感とこれから始まるリンチへの恐怖感が入り混じる。

だが、いつまで経ってもおっさんの呻き声や青年達の笑い声は聞こえない。
ただただ公園の遊具が揺れる音だけが空しく聞こえていた。

恐る恐る目を開け、様子をうかがう。
そこには予想の斜め上……いやそれ以上に予想外な光景があった。

そこにはおっさんが何食わぬ顔で立っていた。
スーツについた埃を払い、こちらを見てほんの少しだけはにかんでいる。
まるで運動会の父兄競技で一位をとった父親の様にちょっと誇らしげでちょっと照れくさそうな笑顔だ。
そして青年はと言うとおっさんの目の前で膝をついていた。
腹を押さえらながら荒い呼吸を繰り返している。

……何が起こったのか一切理解できない。
と言うかこれが幻覚の様な気さえしてくる。
無意識な現実逃避の結果の様な気がしてならない。


「ね、だから大丈夫だって言ったでしょ?」


俺の不安を打ち破る様におっさんの声が聞こえた。
その声はまぎれもなく俺の前ではにかんでいるおっさんが発していた。
と言うか、これも幻聴なんじゃねぇか?

「え……どうなってんだ?」


他に言える様な言葉が一切思いつかない。
まず、今自分の見ている光景、聞こえている音が本当に現実のものなのかも疑わしい。
やっぱり幻覚か?


「お前等何やってんだ!! さっさとやれ!!」


おっさんが返事をする前に怒鳴り声が響く。
どうやら地面に膝をついている青年が叫んでいるみたいだ。
とりあえず今俺が見ている光景はどうやら現実のもののようだ。
安心した。

茫然と立ち尽くしていた青年の仲間のうち二人が動き出す。
二人で挟み撃ちにしておっさんに殴りかかる。

だがおっさんはまず目の前にいる青年の仲間の攻撃を体を下げてかわした。
そして空振った相手の腕を掴み、おっさんの後ろで今まさに殴りかかろうとする青年の仲間目掛けて投げた。

柔道に似た背負い投げの様な感じで青年の仲間の体が宙に浮き、そのままもう一人の仲間の上に落ちる。
音を立て、二人の男が重なり合って地面に倒れた。

驚きで声が出ない。


おっさんがこちらを見た。
さっきとは違い、自信に満ち溢れた活き活きした顔をしている。
ただ髪が乱れ、ハゲが強調されているのが若干残念な気がする。


「おっさん、凄いな……」

正直な感想だ。
おっさんがここまで戦えるのも予想外だし、今のおっさんはハゲてさえいなければ絶対かっこいい。

残るは二人。
おっさんは中国拳法家の様な柔らかな構えのまま、残りの二人へと近づく。

動かないのか動けないのかは分からないが、完全に固まったままの二人の前に立ち、相手の腹を拳で軽く叩く。
すると二人は声もなく、地面に倒れる。
明らかに気絶する様な威力の攻撃では無いはずなのにだ。

こちらを見て満足げに微笑むおっさん。
それこそ無邪気な子共の様な笑顔だ。


「テメェ、ふざけんなよ!!」


その声のした方を見たときにはすでに青年は攻撃の姿勢になっていた。
ナイフを構え、おっさん目掛け真っすぐに突進していく。

自分の背筋がゾッとするのがわかる。
声が出したいのに、まるで喉が枯れてしまったのように声が出ない。

とっさにおっさん目掛け走り出す。
せめて突き飛ばす事でも出来れば怪我をせずに済む。
だが……間に合わない。

しかしおっさんは青年の方を表情一つ変えずに見ていた。
呼吸を調え、構えを変えている様に見える。


「覇王激昂拳!!」


その瞬間、おっさんの声と共に青年が吹き飛んでいた。
青年はまるで蹴り飛ばされたサッカーボールの様に地面を転がっていく。
五メートルほど吹き飛び、やっと青年の体が停止する。
遠目から見ても意識が無くなっている事が分かった。

おっさんはその場で拳を前に突き出し、静止している。

風の音と遊具の揺れる音以外何も音がしない。

かっこいい。
かっこいいんだけど、そのネーミングセンスとハゲは何とかならなかったのか……。

まるで石像の様に固まっていたおっさんが動き出した。
こちらに向かって歩いてくるおっさんの髪は更に乱れていて、ハゲがより一層際立っていた。

今日はここまでです。

明日くらいからキャラ紹介やっていきたいと思います。

おじさん「無事で良かったね」

男「おっさん何者?」

おじさん「ただのサラリーマンだよ。少しクンフーが出来るだけのね」

男「いや、少しって……」

おじさん「少しだよ。ほんの少し」

男「……」

おじさん「恩返しが出来て良かったよ」

男「いや、確かに恩返ししてくれたけど……」

おじさん「タイヤキをもらった恩は一生忘れないよ」

男「おっさん、頭が大変な事になってる」

おじさん「え?」

男「髪が乱れてハゲが大変な事になってる」

おじさん「あ、本当だ」


おっさんは櫛で髪を直し始めた。


男「……」

おじさん「君だって将来どうなるか分からないからね。今から注意した方がいいよ」

男「忠告ありがとう」

おじさん「じゃあ、また何処かで会えるといいね」

男「あ、そうだな」

おじさん「タイヤキおいしかったよ」

男「それは、もういいから」

男「あ、あと聞きたい事あるんだけど」

おじさん「ん?」

男「覇王激昂拳って何?」

おじさん「必殺技だよ」

男「必殺……技?」

おじさん「うん、必殺技に名前は必須だからね」

男「……正直ダサいよ」

おじさん「……そうか、もっといい名前を考えた方がいいのかな」

男「いや、そういう意味じゃ……」

おじさん「じゃあまた会おうね」スタスタ

男「あ、うん……」

男「一体何者だったんだろう……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「ただいま」

母「あ、おかえり」

ドラゴン「おかえり」

メイド「おかえりなさい」

男「はい、これお土産」

メイド「あ、タイヤキですね」

男「ああ、みんなの分あるから食ってくれ」スタスタ

ドラゴン「あれ、男は?」

男「俺は……先に食ったからいいよ」

メイド「なんで先食べちゃったんですか、みんなで食べた方が楽しいのに」

男「悪い。腹減っちゃったんだ」

母「まあいいじゃない。私達で食べましょ」

ドラゴン「う、うん……」

メイド「そうですね……」

男「そういえば飯は?」

母「もう出来てるけど、食べる?」

男「いや、後でいいよ。みんなが食べる時に呼んでくれ」

母「分かったわ」

男「じゃあ」スタスタ

男「……」ガチャ

男「ちょっと見てみるか」


俺は竜王からもらった封筒を開く。


男「二つある?」

男「……片方は近所だけどもう片方はまたずいぶん遠いな……」

男「……行って帰ってくるだけで一日かかるぞ」

男「やっぱり見せない方がいいよな」

ドラゴン「男、今暇?」ガチャ

男「あ、だ、大丈夫!!」ササッ

男(あ、危ねぇ……言ってる傍から危ねぇ……)

男「な、何の用?」

ドラゴン「いや、ただ見に来ただけ」

男「あ、そう」

ドラゴン「男のお母さん、いい人ね」

男「そうか? お前の思ってるほどいい人じゃないと思うぞ」

ドラゴン「羨ましいわ」

男「……」

ドラゴン「やっぱり、お母さんがいるって幸せな事じゃない」

男「お前はいないのか?」

ドラゴン「ええ、父様に聞いても教えてくれないし、顔だって覚えてないわ」

男「……何か、悪いな」

ドラゴン「私が言いだしたんだし、別にあなたは悪くないわよ」

男「……」

ドラゴン「そろそろご飯だし、行きましょ」スタスタ

男「ああ、わかった」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~


次の日   倉庫


男「これがその竜と人間の夫婦が住んでる場所だ」スッ

女委員長「割と近所ね」

男友「でももう一方はずいぶん遠くだな」

男「ああ、それに昨日調べたらその住所の場所ってずいぶん田舎なんだよ」

女委員長「政府の人間にバレない様にって事かしら」

男「でもこっちは普通に都会に住んでるだろ」

女委員長「……不思議ね」

男「ああ、不思議だ」

男友「細かい事はいいじゃん」

男「全然よくねぇよ」

女委員長「こう言う細かい事もいろいろ重要だったりするのよ」

男友「いろいろって何だよ。いろいろって……」

女委員長「で、何が言いたい訳?」

男「一緒に来てくれないか?」

女委員長「……なんで?」

男「いや、一人じゃ心細いから」

女委員長「別にいいわよ」

男「ありがとな」

女委員長「ドラゴンには話した?」

男「いや、話さない方がいいだろ」

男友「なんでだ?」

男「いや、あいつまだ人間と結婚する竜って好きじゃないらしいんだ。だから下手に会わせない方がいいだろ」

女委員長「まあ、確かにね。ややこしくなると面倒くさいし」

男友「で、いつ行くんだ?」

男「うーん……今日行ってみるか」

女委員長「私はいいわよ」

男友「俺もいいぞ」

男「じゃあ学校帰りに行ってみるか」

女委員長「分かったわ」

男友「了解」

学者

偉い学者。
隊長でも会えないほど高い役職であり、ドラゴン研究の第一人者。
詳しい事は不明。




男の母親。
メイドの古くからの知り合い。
何の仕事をしているかは男も知らない。
なんでも出来る凄い人。
そのほかは不明。

今日はここまでです。

おじさんの紹介は明日にします。

男「そういえば情報はどうだ?」

女委員長「さすがに一日じゃ無理よ」

男「だよな……」

男友「まったく無しか?」

女委員長「今の所分かってるのは竜研究の第一人者らしいって事とかなり凄い役職についてるって事くらいね」

男「悪い情報は?」

女委員長「今の所は無いわね。それに研究者って言うのは中立の立場でいなくちゃいけない訳だし」

男友「どういう事?」

女委員長「つまり竜の研究をするんだったら竜が好きでも嫌いでも無く、中立な立場でいなくちゃいけないの」

男「研究に私情は持ちこむなって事か?」

女委員長「そういう事ね」

男「まだ会わせるのは危険かな」

女委員長「そうね、学者自体に害が無いとしてもバックに誰が付いているか分からないしね」

キーンコーンカーンコーン

女委員長「じゃあそろそろ教室に戻るわよ」

~~~~~~~~~~~~~~


教室 夕方


男友「疲れた……」

ドラゴン「男は今日どうするの?」

男「俺用事あるから先帰っていいぞ」

ドラゴン「あ、わかった」

女委員長「私もちょっと用事あるから。ごめんね」

ドラゴン「いいのよ。メイドも来てると思うし」

男友「じゃあまた明日」

ドラゴン「また明日」スタスタ

男「……じゃあ行くか」

女委員長「そうね」

男友「学校からどのくらい距離あるんだ?」

男「すぐだな」

男友「じゃあさっさと行こうぜ」

男「そうだな」

女委員長「そういえば聞きたかったんだけど、もしドラゴンが人間になってる原因が分かって、それを治せなかったらどうするつもりなの?」スタスタ

男「……考えた事無いな。それにそんな事考えても仕方ないだろ」スタスタ

女委員長「……まあ、そうよね」スタスタ

男「今は原因を見つけるだけ。後の事は後で考えればいいだろ」スタスタ

女委員長「そうね」スタスタ

男「……」スタスタ

男「こっちだな」スタスタ

男友「ここか?」

男「ああ、そこだ、そこ」

男友「……男、チャイム鳴らせ」

男「え、俺?」

男友「お前だろ。だってお前が聞きたい事があるんだろ」

男「でも突然来て、教えろってのもずうずうしい様な……」

女委員長「何今更になってビビってんのよ」

男「ビビってないけど、その……ちょっとさ……」

男友「早くしろよ」

男「ああ、わかったよ」ピンポーン

男「……」

男友「……」

女委員長「……」

男友「遅いな……」

女委員長「黙って待ちなさいよ」

ガチャ

おばさん「どちら様?」


それは胸くらいまでの茶色っぽい髪のおばさんだった。
ただそこら辺のおばさんと違って細身で普通に顔もほとんどしわがない美人な人だ。
年は四十代前後だろうか。


男「あの、竜王に聞いて、ここに竜と人間の夫婦がいるって聞いたんですけど」

おばさん「……私達の事ね」

男「教えてほしい事があるんですが、いいですか?」

おばさん「長い話になるのなら中に入ってもいいわよ」

男友「じゃあお邪魔します」スタスタ

女委員長「あのバカ……」

男「俺達も行こうぜ」スタスタ

女委員長「ええ」スタスタ

おばさん「ろくにおもてなしも出来ないですけど」

男友「お構いなく」

女委員長「あんた、帰りにいろいろ言う事があるから覚えときなさいよ」

男友「??」

おばさん「あなた。ちょっと来てくれる?」

おじさん「ん……なんだい」スタスタ

男「あ……」

おじさん「君はこの前の……何の用だい?」

男友「知り合い?」

男「ああ、ちょっと前に公園で会ったんだ」

おじさん「また会えてよかったね」

男「いや、おっさんこそなんでここに?」

おじさん「なんでも何もここは私の家だよ」

男「え、マジで!?」

おじさん「本当だよ」

おばさん「知り合いの方?」

おじさん「ああ、この前公園でタイヤキをもらってね」

おばさん「え?」

おじさん「あ……」

男(普通に墓穴掘ったな、おっさん)

おばさん「タイヤキをもらったってどういう事?」

おじさん「いや、その……おいしそうだったから見てたら、彼がくれると言ってね」

おばさん「なら自分で買いに行けばいいんじゃない? こんな未成年の子からもらうなんて事しなくても」

おじさん「でも、あの店は私みたいなおっさんが入れるような場所じゃないだろ」

おばさん「それでも、この子からタイヤキをもらう理由にはならないわよね?」

おじさん「……すまない」

おばさん「あと、なんでその事を隠してたの?」

おじさん「いや、怒られると思って……」

おばさん「黙っててバレた方がもっと怒るわよ」

おじさん「だよね。ごめんなさい」

おばさん「別に私に謝ってほしい訳じゃないのよ――――」

男「あの、もういいですから」

おばさん「家の人がご迷惑をかけたようで、すいませんね」

男「いえ、別に大丈夫ですから」

※キャラ紹介

おじさん

愛称はおっさん。
頭のハゲかかった冴えないサラリーマン。
ただし戦闘においては化物じみた力を発揮する。
強さは隊長やメイドと戦えるくらい。
ちなみにクンフーは自己流。

今日はここまでです

おばさん「本当にすいませんね。ほらあなたも謝って」

おじさん「すいません」

男「いや、いいんですよ」

おじさん「……やっぱり君はいい子だね」

男「いや、別にいい子って訳じゃないんだけど……」

男「て言うか、おっさん竜だったのかよ」

おじさん「え?」

男「だからあんなに強かったんだろ?」

おじさん「いや、竜なのは妻の方。私は何処にでもいるただのサラリーマンだよ」

男「……おっさん人間?」

おじさん「ああ、ただの人間だよ」

男「ただの人間では無いだろ……」

男友「男、そんな話はいいから。本題」

男「あ、そうだな、ちょっと忘れかけてた」

おばさん「そうね、竜王様から聞いたって言ってたけど、何の事?」

男「はい、聞きたいんですが、人間のままで竜の姿になれない竜って知ってますか?」

おばさん「……どういう事?」

男「……話してもいいよな」ヒソヒソ

女委員長「私は全然構わないわよ」ヒソヒソ

男友「お前の好きなようにすればいいじゃん」

男「……」


俺はドラゴンの事をおっさんとおばさんに話した。


おじさん「聞いたことあるかい?」

おばさん「私の記憶の中ではそんな竜聞いた事無いわ」

男「そうですか……」

女委員長「あなたはどうやって人間の姿になってるんですか?」

おばさん「私は竜族に伝わる薬で人間の姿になってる」

男「薬?」

おばさん「ええ、詳しくは話せないけど、竜族に使わる特殊な薬よ」

女委員長「毎日飲んでるの?」

おばさん「ええ、毎日朝と夜に一粒づつ飲んでるわ」

男友「副作用とかはないのか?」

おばさん「基本的にはないわね。ただ体の老化が竜の時の五倍になるっていうのがあるわ」

男「老化が五倍?」

おばさん「ええ、人間だったら八十歳がだいたいの寿命でしょ。竜はだいたい四百年前後が寿命なの」

女委員長「つまり人間と同じ速度で老いが進むって事ですか?」

おばさん「そういう事になるわね」

おばさん「でも、別にそんな事は気にならないわよ。自分だけ長生きしても仕方がない訳だし」

男友「そういう事か……」

男「竜の世界でも人間と結婚するのを嫌う連中がいるってのは本当か?」

おばさん「ええ、現に私の所にも脅迫状みたいなのが届いてたしね」

男「その中に、竜人って男……オスって言った方がいいのか? いませんでしたか?」

おばさん「うーん……いた様な、いなかった様な」

おばさん「ただ私達みたいな一般人ならまだいいけど、位の高い竜が人間と結婚するとなると本当に竜同士の殺し合いが起きそうになるのよ」

男「竜同士の殺し合い?」

おばさん「ええ、下手するとその子供を殺そうとしたりするって聞いた事もあるし」

男友「凄いな……」

おばさん「逆にいえばそれほど人間を嫌ってる竜がいるってことね」

女委員長「そんな人間の姿をした子供が生まれてきたら、そいつ等なら殺しにくるんじゃないかしら」

おばさん「……普通なら竜は仲間を大切にするはずだけど……そういう例外は分からないわ」

男「そうなんですか?」

おばさん「ええ、竜は仲間を何より大切にするのよ。裏切り者なんかには物凄く厳しいけど」

女委員長「じゃあドラゴンは裏切り者って事になるの?」

おばさん「さあ、前例の無い例外だからね……」

男「そうですか……」

男友「聞きたいんだけど、竜殺しについて何か知ってる事ってある?」

おばさん「竜殺しについては詳しくは知らないわ。それに竜殺しは存在しているにしてもごく一部を除いて、ほとんどは自分が竜殺しだって事も忘れてるって聞くし」

男友「……」

女委員長「……」

男「ありがとうございます」

おじさん「もういいのかい?」

男「ああ、もう大丈夫」

おじさん「何か手伝えることがあったら何でも言ってくれ。君には恩もあるし手伝うよ」

おばさん「そうね」

男「いいんですか?」

おばさん「主人がいいって言うならいいわよ」

男「じゃあ、よろしく」

おじさん「ああ、よろしく」

女委員長「じゃあそろそろ帰りましょうか」

男「そうだな」

男「……本当にありがとうございました」

おばさん「いえいえ、ろくにおもてなしも出来ないで」

男「本当にいいですから」スタスタ

女委員長「お邪魔しました」

男友「お邪魔しましたー」

おじさん「……うまくいくといいね」

おばさん「そうね」

おばさん「……じゃあ、タイヤキの事教えてもらえるかしら?」

おじさん「……どうしても?」

おばさん「ええ、どうしても」ニッコリ

~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜 男の部屋


男「……」

男(ドラゴンがなんで人間になってるかは今の所わかんねぇ)

男(竜は仲間を何よりも大切にする。ならドラゴンだって襲われる事はないはず)

男「じゃあ何でだ?」

男(ドラゴン、いや、竜王が裏切り行為の様な事をしたって事か?)

男(そういえば、ドラゴンの母親って誰だ?)


俺は今まで聞いたいろいろな情報を思い出す。


女委員長『……ドラゴンってさ、感情豊かよね』

女委員長『個人差でもあそこまで露骨に感情が顔に出るのは純粋な竜なら有り得ないわよ』

男「ドラゴンは純粋な竜じゃない……」

竜人『あの半端者は何処だ』

男「半端者……」

ドラゴン『ええ、父様に聞いても教えてくれないし、顔だって覚えてないわ』

男「ドラゴンの母親はドラゴンも知らない。いや、竜王が教えてない……」

おばさん『位の高い竜が人間と結婚するとなると本当に竜同士の殺し合いが起きそうになるのよ』

男「ドラゴンは多分、次の竜の王の後継者の一人のはず、だよな」

おばさん『下手するとその子供を殺そうとしたりするって聞いた事もあるし』

男「……」


俺の頭の中にとある一つの答えが浮かぶ。


男「……でも、本当か?」

男「……」

男「……」ガチャ

メイド「お、男さん、どうしたんですか!?」

男「ちょっと出掛けてくる」スタスタ

メイド「出掛けるって、こんな夜にですか?」

男「ああ、多分、すぐ帰ってくるから」ガチャ

メイド「わ、わかりました……」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~


公園  


男「……」スタスタ

男「……やっぱそう簡単には居ないよな……」

竜人「一人で夜に外出か。自覚が薄いんだな」スタスタ

男「竜人……なんでお前がいるんだよ」

竜人「お前を探していた所に丁度お前がここに来たんだ」

男「……」

男「お前、なんでドラゴンの事狙ってんだ?」

竜人「あの小娘が半端者だからだ」

男「それはあいつに非があるのか?」

竜人「……あの小娘に非はないかもしれん。だが竜王のした事は私達にとって裏切り行為だ」

男「……人間の女と結婚したからか?」

竜人「ああ、しかもその女との子供を竜王の後継者の一人だと言ったのだ」

男「……」

竜人「あの小娘の居場所を話す気になったのか?」

男「まさか、そんな訳ないだろ」

竜人「だろうな。だいたい予想はついていた」

男「……」

男「また力ずくか?」

竜人「……ああ」

男「……やってやろうじゃねぇか」


俺は姿勢を低くし、相手との距離を推し測る。


竜王「やめろ。男」

男「……」

竜人「竜王か……」スタスタ

男「おい、待てよ!!」

竜人「悪いが、面倒事は嫌いなんだ」スタスタ

男「……」

竜王「あまり、出歩かない方がいい。今後いつこう言う事があってもおかしくないからな」

男「なんで言わなかった?」

竜王「何の事かな?」

男「ドラゴンの母親の事だよ。しかもドラゴンにも話してないだろ」

竜王「……ほう、もうそこまでたどり着いたのか」

男「お前は――――!!」


俺は竜王の胸ぐらを掴む。


男「何がしたいんだよ!!」

竜王「……」

男「答えろよ!!」

竜王「落ち付いてくれないか?」

男「落ち付け? この状況で落ち付けると思うのか?」

竜王「きちんと理由があるんだ」

男「……」

竜王「離してくれるかな?」


俺は竜王から手を離す。

竜王「ドラゴンに言わなかったのは単純にあの子が人間を嫌っていたからだ。もし母親が人間だと知ったらいろいろと大変だろうしね」

男「じゃあなんでそんな大事な情報を俺に教えてくれなかったんだよ」

竜王「それは……もう少し先でいいかい?」

男「は?」

竜王「それを話すのはもう少し先でいいかい?」

男「正直、ここまでいろんな事を隠されると、お前の事信用出来ない」

竜王「……私だって言えればいいたい。ただ少し口止めをされていてね」

男「は?」

竜王「もう少しだけ待て。そうしたら全部教える」

男「……」

竜王「封筒の髪に書いてあったもう一つの住所はドラゴンの母親が住んでいた場所だ」

男「そうかよ」

竜王「行きたいのであれば、行けばいい」

男「言われなくても行くつもりだよ」

竜王「ああ、そうしてくれ」

男「……」

竜王「あと、この事は絶対にドラゴンには言わないでくれ」

男「最初っからそのつもりだ」

竜王「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の部屋


男「……」


携帯電話の着信音が鳴り響く。


男「もしもし」ピッ

女委員長『男。調べ終わったわよ』

男「……学者の事か?」

女委員長『ええ。裏でつながってる人間もいなかったし、多分大丈夫よ』

男「ありがとう。じゃあドラゴンに聞いてみる」

女委員長『ええ。お願いね』

男「じゃあまた」

女委員長『ええ、また』

男「……」ガチャ

男「……」コンコン

ドラゴン「どうぞ」

男「ドラゴン。学者に会ってみるか?」

ドラゴン「……突然何? どうしたの?」

男「女委員長から連絡があった。学者は多分大丈夫らしい」

ドラゴン「……」

男「別にお前が会いたくないなら会わなくてもいいし、会いたいなら会えばいい」

ドラゴン「……会うわ。体を元に戻せるかもしれないんだもの」

男「……わかった。隊長に電話してみる」

男「……」ピッ

隊長『……男か。何の用だ』

男「今度、学者さんに会わせてもらえませんか?」

隊長『お前だけなら無理だぞ。ドラゴンが――――』

男「ドラゴンも一緒です」

隊長『……いいのか?』

ドラゴン「ええ。体を元に戻せるかもしれないなら会うわ」

隊長『聞こえた。わかった、学者に聞いてみよう』

男「ありがとうございます」

隊長『他の連中はどうする』

男「他の連中って?」

隊長『女委員長と男友だ。あの二人はどうする気だ?』

男「そうですね……聞いてみます」

隊長『ああ、頼むぞ』

隊長『あと、一応気をつける事に越した事はないぞ』

男「はい」

隊長『学者と連絡が付いたら電話する』ピッ

男「……」

ドラゴン「どうだって?」

男「聞いとくってさ。うまくいくといいな」

ドラゴン「うん」

男「じゃあまた明日。俺は寝る」

ドラゴン「おやすみ」

男「おやすみ」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日  朝  公園


男友「なんだよ、土曜日の朝っぱらから……」

女委員長「……」

男「悪いな。突然呼びだして」

女委員長「で、用件は?」

男友「最高にイライラしてるな」

女委員長「当たり前じゃない」

男「ドラゴンの事で新しい事が分かった」

女委員長「何? 朝に話す様な事?」

男「ドラゴンの母親の事が分かった」

女委員長「へえ……」

男友「それで?」

男「ドラゴンの母親が人間だって事が分かったんだ」

女委員長「人間?」

男「ああ。人間だ」

男友「人間って、人間の姿をした竜とかじゃ無くてか?」

男「俺達と同じ人間だよ」

女委員長「じゃあ、人間と竜のハーフって事?」

男「そんな感じ」

男友「……って事はドラゴンって純粋な竜じゃないのか!?」

女委員長「だからそうだって言ってるでしょ。うるさいわね」

男「うん、これはお前が悪い」

男友「……」

女委員長「でも、それってドラゴンの事と何か関係があるの?」

男友「多分あるだろ」

男「何かしらの関係はあると俺は思う」

女委員長「……この事はドラゴンは知ってるの?」

男「いや、言ってない」

女委員長「でしょうね」

男「……わかってんのかよ」

女委員長「ええ」

隊長「おはよう」スタスタ

男「朝早くにすいません」

男友「隊長も呼んだのか?」

男「隊長に呼ばれたんだよ。で、丁度お前等に会おうと思ってたからこの時間にしてもらったんだ」

隊長「手短に話すぞ。私は忙しいんだ」

女委員長「それほど忙しく見えないのは何ででしょうね」

男友「……」

隊長「……まあいい。学者と会う日取りが決まった。明日の午後だ」

男「またずいぶんと急ですね」

隊長「向こうも忙しいらしくてな、そう時間がとれないそうだ」

女委員長「まあ、それだけ偉い人間なんだし、仕方ないわね」

隊長「で、お前等の事だが、付いて来てもいいそうだ」

男友「え、マジですか!?」

女委員長「一応は話が分かる人なのね」

男「ありがたいな」

隊長「どうする?」

女委員長「私は行くわ」

男友「俺も行く!!」

隊長「じゃあ決定だな」

男「その人はドラゴンの事何か言ってましたか?」

隊長「……会ってみたい。としか言ってなかったな」

女委員長「まだ半信半疑って感じでしょうね」

隊長「そんな感じだな。本当なら凄いが、まだ嘘だと思っている方が大きいみたいだ」

男友「て言うか、ドラゴンを竜だってどうやって証明するんだ?」

男「あ、そういえば……」

隊長「安心しろ。調べる方法なんて死ぬほどある。それに竜王の事やらを話せばある程度は理解してくれるだろう」

男友「そんなに頭の柔らかい人なんですか?」

隊長「ある程度は融通は効く」

女委員長「なら大丈夫でしょうね」

隊長「じゃあ、明日の午後。ちゃんとドラゴンにも話しとくんだぞ」

男「あ、はい」

隊長「じゃあな」スタスタ

男友「さて、じゃあ俺達も帰るか」

女委員長「そうね」

女委員長「……そういえば隊長には話したの?」

男「ああ、さっき電話で言っといた」

男「あ、さっき言った事だけど、絶対にドラゴンには言わないでくれよ」

女委員長「分かってるわよ」

男友「口が滑っても言わないから安心しろ」

女委員長「こいつは信用出来ないけどね」

男「だな」

男友「おい!!」

女委員長「冗談よ」

男「ああ、半分冗談だ」

男友「……そうか……あれ?」

女委員長「じゃあまた明日」

男「ああ、また明日」

男友「ま、また明日……」

今日はここまでです。

今日は忙し過ぎてほとんど書けませんでした。すいません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「ただいま」

メイド「おかえりなさい」

男「あれ、母さんとドラゴンは?」

メイド「ドラゴンさんはまだ寝てます。母さんは……」

母「あ、男、お帰り」

男「ただいま」

母「こんな朝っぱらから出掛けるなんて珍しいわね」

男「最近はたまに出掛けてるよ」

母「ふーん……ドラゴンの事?」

男「まあ、そんな感じかな」

母「ならドラゴンに伝えなくていいの?」

男「寝てるんだろ、なら別に後からでいいよ」

母「優しいのね」

メイド「男さんは前から優しいですよ」

母「でも特にドラゴンには優しいでしょ」

メイド「そうですね」

男「うるせぇ」

母「で、何かわかったの?」

男「明日何か分かるかもしれない」

母「どういう事?」

男「明日研究所に行ってくる」

母「研究所?」

男「ああ、なんでも凄い学者らしい」

メイド「……信用出来る人なんですか?」

男「わかんねぇけど悪い奴ではないみたいだな」

メイド「……そうですか」

男「まあ、正直会ってみない事にはあんまり分かんないんだけどな」

母「……」

男「何?」

母「いや、気をつけて行ってくるのよ」

男「分かってるって」

ドラゴン「おはよう」スタスタ

男「あ、おはよう」

母「おはよう」

メイド「おはようございます」

男「ドラゴン。隊長から連絡で、明日だってさ」

ドラゴン「……またずいぶん急ね」

男「相手の人も忙しいから仕方ないだろ」

ドラゴン「そう、わかったわ」

男「あと、女委員長と男友も付いてくるってさ」

ドラゴン「分かったわ」

メイド「何時頃から行くんですか?」

男「午後からだよ」

メイド「じゃあ、昼ごはんはいりますか?」

男「うーん、どうだろう……」

ドラゴン「いいわ、もしおなか減ったら向こうで何か買えばいいでしょ」

男「そうだな、じゃあそうする」

メイド「男さん、完全にドラゴンさんの尻にしかれてますね」

男「しかれてねぇから」

母「そう思っててもしかれてるものなのよ」

男「なんだよそれ」

母「秘密」

男「……」

メイド「お昼は無しでいいですね」

男「ああ、いらない」

母「じゃあ気をつけて行ってらっしゃいね」

ドラゴン「ええ」

男「分かってるよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


研究所  午後


隊長「ここだ」

男「大きいですね」

女委員長「そりゃ凄い研究所だしね」

ドラゴン「……」

男「大丈夫か?」

ドラゴン「大丈夫、ちょっと不安だけど」

男友「まあ、仕方ないよな。俺だってドラゴンの立場だったら怖いし」

女委員長「誰でも不安になるでしょ」

隊長「じゃあ行くぞ」ガチャ

学者「……お久しぶりですね」

隊長「ああ、久しぶり」

学者「えーと、彼等がこの前言ってた子たちかな?」

隊長「ああ、そうだ」

男「よろしくお願いします」

学者「こちらこそ、よろしく」

学者「で、その竜の子と言うのはどの子の事ですか?」

ドラゴン「私よ。名前はドラゴン」

学者「ほう……確かに見た目は普通の人間ですね」

隊長「興味が出たか?」

学者「多少ですけどね。それにまだ彼女が竜であるという証拠もありませんし」

隊長「だな。まあゆっくり調べてくれ」

学者「わかりました」

女委員長「調べるってもしかしてあなたが?」

学者「まさか、ちゃんと女性の研究員に調べてもらいますよ。あ、血液検査とか大丈夫ですか?」

ドラゴン「ええ、多分大丈夫だと思うけど……」

学者「なら安心です」

男「俺達はその間どうすればいいんですか?」

学者「とりあえず、私に事情を教えていただいてもいいですか?」

隊長「別に断っても構わんぞ」

学者「はい。別に断っていただいて結構ですよ」

男「別に断る理由もないし、いいですよ」

男友「いいのか?」ヒソヒソ

男「別に全部話すつもりじゃない」ヒソヒソ

女委員長「……」

男友「お前はどう思う?」ヒソヒソ

女委員長「何とも言えないわね。男の好きなようにすればいいんじゃない」ヒソヒソ

男「そのつもり」ヒソヒソ

隊長「どうしたんだ?」

男「いえ、何でもないです」

学者「じゃあドラゴンさんはあちらへ。他の方はこちらへ」

男「じゃあ、検査が終わったら」スタスタ

ドラゴン「ええ」スタスタ

今日はここまでです。

学者「じゃあ、ここにでも座って下さい」

男「ありがとうございます」

学者「何か飲むかい?」

男「いいです」

男友「俺もいいです」

女委員長「……私もいいわ」

学者「……じゃあ、早速だが本題に入っていいかい?」

男「ああ」

学者「彼女が本当に竜だとして、君達と彼女の関係はなんだい?」

女委員長「私とこいつは男の知り合いって事でドラゴンの事を知りあったの」

男友「ああ。隊長もそうですよね」

隊長「まあ、そうだな」

学者「じゃあ、君は?」

男「……説明しにくいんですけど、まあ分かりやすく言えばあいつが竜に戻れるように手伝ってるって感じですかね」

女委員長「私達は男の協力者って感じかしらね」

学者「つまり、みんなあの子を元に戻すために手伝ってるって事ですか?」

女委員長「そういうことね」

学者「彼女が竜の姿に戻れない理由は予想がついてますか?」

男「いや、今の所は全然」

男友「分からないからここに来てるんですよ」

学者「まあ、そう言われればその通りですね」

女委員長「聞きたい事があるんだけど、いい?」

学者「ええ、構いませんよ」

女委員長「具体的にドラゴンにはどんな検査をするの?」

学者「そうですね。血液検査と身体検査、後は簡単な心理テストくらいですかね」

男友「なんか健康診断みたいだな」

学者「今の所はまだ半信半疑ですから、詳しい検査はしませんよ」

女委員長「具体的にどうなったら竜って判断できるの?」

学者「そうですね。血液検査でだいたい分かりますね。人間とは成分が違いますから」

女委員長「具体的にどんな研究をしてるの?」

学者「私の専門は竜ですからね。基本的には竜の鱗なんかの遺伝子や強度なんかを調べてます」

女委員長「……」

学者「何か?」

女委員長「いえ、別に」

学者「他に質問はありますか?」

女委員長「ないわ」

学者「じゃあ、もう少し聞かせてもらいますね」

男「はい」

学者「男さんでしたよね。あなたはどうやってドラゴンと出会ったんですか?」

男「え、えーと……」

男「これって言っていいのか」ヒソヒソ

男友「知らん。俺に聞くな」ヒソヒソ

男「……」


俺はドラゴンが家に来た経緯を話した。


学者「……もし本当だとすれば、興味深い話だね」

男「まだ信用はしてもらえないんですか?」

学者「結果が出るまでは完全に信用は出来ないですね」

男「……」

学者「……そろそろ終わるかな」

男「もうですか?」

学者「最新の機器がそろってるからね、結果はすぐに出ますよ」

隊長「……」

男「そうですか」

ドラゴン「……」スタスタ

学者「どうでしたか?」

ドラゴン「別にどうってこともないけど……」

男「大変だったか?」

ドラゴン「そこまで大変でも無かったわよ」

男「あ、そう。ならいいや」

研究員「どうぞ」スッ

学者「ありがとうございます」

学者「……」パラパラ

隊長「どうだ」

学者「確かに、血液は人間のものじゃないですね」

男友「これで信じてくれるのか?」

学者「ええ……これは興味深いデータですね」

男「え?」

学者「彼女は竜と人間のハーフなんですね」

男「……」

ドラゴン「どういう事?」

学者「私も初めて見ましたが、竜と人間の血が混ざっていると言う感じの数値ですね」

ドラゴン「……私がって事?」

学者「ええ、そうですよ」

男「……」

ドラゴン「男?」

男「……え、何?」

ドラゴン「もしかして、知ってた?」

男「え……な、なんで?」

ドラゴン「だって、驚いてるって言うより、なんか別の表情してたから……」

男友「鋭いな」ヒソヒソ

隊長「それだけあいつを見てるって事だろ」ヒソヒソ

女委員長「これは喧嘩になるかもね」ヒソヒソ

男友「まずくない?」ヒソヒソ

女委員長「まずいに決まってるじゃない」ヒソヒソ

男「……」

ドラゴン「ねえ、どうなの?」

男「悪い……」

ドラゴン「……」

隊長「他に分かった事は?」

学者「うーん、もう少し詳しく調べてみないと分かりませんね」

隊長「そうか」

学者「今の資料で分かるのはこれくらいですかね」

隊長「わかった。いろいろすまなかったな」

学者「いえいえ、お礼を言わなければいけない位ですよ」

学者「何か分かりましたら隊長さんに連絡しますね」

隊長「ああ、わかった」

男「こっちから連絡する時はどうすればいいですか?」

学者「そうですね……ここの電話番号を教えときますね」

学者はポケットからメモを出し、電話番号を書く。


男「すいません」

学者「いいんですよ」

学者「何かあったらいつでも電話してきてください」

男「はい」

隊長「行くぞ」スタスタ

男「あ、はい」スタスタ

ドラゴン「……」スタスタ

男「……」

学者「君達も何かあったら来てくれて構いませんからね」

男友「わかりました」

女委員長「あんたは全く関係ないでしょ」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


公園


隊長「じゃあ、また何かあったら連絡してくれ」

男「わかりました」

隊長「じゃあ、また今度」スタスタ

男「はい」

ドラゴン「……」

男「まだ、怒ってる?」

ドラゴン「当たり前でしょ」

男「……」

ドラゴン「二人も知ってたの?」

男友「ああ、男から聞いてた」

女委員長「私もよ」

ドラゴン「いつから知ってたの?」

女委員長「昨日よ。男から聞いたの」

ドラゴン「……男は?」

男「ちょっと前に知った……って言うか気付いた」

ドラゴン「……なんで教えてくれなかったの?」

男「……お前が知ったらショックを受けると思った」

ドラゴン「……言われない方がショックよ」

男「悪かったよ、本当に」

ドラゴン「……もういい。とりあえず帰るわね」スタスタ

男「……」

男友「……追いかけなくていいのか?」

男「今行っても仕方ねぇだろ」

女委員長「ずいぶん簡単に認めちゃったわね」

男「嘘ついてもバレてただろ」

女委員長「まあ、確かに言えてるわね」

男友「ドラゴン、なんだかんだで鋭いからな」

男「ああ。俺もびっくりした」

女委員長「それだけあんたを見てるって事よ。あの子ツンデレだから」

男「ははは……」

男友「で、仲直りするのか?」

男「するに決まってんだろ」

男友「だよな」

女委員長「具体的にどうする気なの?」

男「具体的にって……特には無いけど……」

男友「ダメじゃん」

女委員長「とにかく謝ればいいって訳じゃないのよ」

男「分かってるよ。ちゃんと俺の考えとかもきちんと話す」

女委員長「……分かってるじゃない」

男「まあな。ただちゃんと伝わる様に言えるかどうかはわかんねぇけど」

男友「そこが一番大事なとこなんじゃないのか?」

男「だから困ってんだろ……」

女委員長「どうせいつもめちゃくちゃな事言ってるんだし、別にいいんじゃない?」

男「……」

男友「まあ、頑張れよ。俺も応援してるから」

男「ああ、頑張る」

女委員長「だったらさっさと行きなさいよ。遅くなるとその分だけ言いだし辛くなるわよ」

男「わかった」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「ただいま」

メイド「お帰りなさい」

男「……」

メイド「ドラゴンさん怒ってますけど、何したんですか?」

男「いや、いろいろ」

メイド「とにかくさっさと謝った方がいいですよ。絶対」

男「分かってるよ」

メイド「分かってるんならさっさと行って下さい」

母「時間が遅くなればなるほど謝り難くなるわよ」

男「だから分かってるって」

男「……じゃあ、行ってくる」スタスタ

母「ちゃんと話し合うのよ」

メイド「冷静に話し合って下さいね」

男「……」スタスタ

男「入っていいか?」

ドラゴン「……」

男「……入るぞ」ガチャ

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「男、本当の事言ってくれない?」

男「……何が?」

ドラゴン「気付いたってだけで確証になる訳じゃないでしょ。誰に聞いたの?」

男「……竜人だよ」

ドラゴン「なんで殺されかけた相手に……」

男「俺があいつに聞いたんだ。そしたら教えてくれた」

ドラゴン「……じゃあお父様も知ってたんだ」

男「……それは知らねぇよ」

ドラゴン「男。目が泳いでる」

男「……」

ドラゴン「本当に分かりやすい」

男「……」

ドラゴン「……なんで教えてくれないのよ」

男「お前が傷つくと思ったんだよ」

ドラゴン「嘘つかれる方が傷つくって分からなかったの?」

男「竜王にか?」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「もういい」ボソボソ

男「何だよ」

ドラゴン「もういいのよ」

男「おい、待てよ」

ドラゴン「もういいの!!」

男「……」

ドラゴン「出てってくれない?」

男「……」

ドラゴン「出てってくれない?」

男「……」ガチャ

ドラゴン「……」

ドラゴン「男のバカ……」

ドラゴン「なんで分かんないのよ!!」

ドラゴン(正直、男には嘘ついてほしくなかった……)

ドラゴン「私が悪いのかな……」


私はベッドの上に横たわる。


ドラゴン「……」

ドラゴン「……バカ」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日    朝


男「おはよう……」

メイド「おはようございます」

母「おはよう」

ドラゴン「……」モグモグ

男「……」

ドラゴン「行ってきます」スタスタ

メイド「え、早くないですか?」

ドラゴン「今日は用事があるの」ガチャ

ドラゴン「行ってきます」

メイド「あ、行ってらっしゃい……」

男「……」

メイド「何があったんですか?」

男「いや、仲直り出来なくて……」

母「で、悪化したって訳?」

男「まあ、そんな感じ」

メイド「何やってるんですか」

男「俺だってよくわかんねぇよ」

母「多分、気付いてないだけだと思うけどね」

メイド「男さん鈍いですからね」

男「……」

母「まあ、ゆっくり考えて仲直りしなさい」

メイド「ですね。今の状態で焦って失敗したら最悪ですから」

男「変なプレッシャーかけんなよ」

母「これくらいプレッシャーかけないと頑張らないでしょ」

男「……」

メイド「そういえば時間大丈夫ですか?」

男「あ……行ってきます!!」タタタッ

母「頑張ってね」

メイド「応援してますよ」

男「行ってきます」ガチャ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


学校   教室


男「おはよう」

男友「おはようじゃねえよ。なんでまた喧嘩してんだよ」

男「え?」

男友「え、じゃなくてさ……」

男「なんで知ってるんだ?」

男友「ドラゴンが一人で教室にいたから声かけたんだよ」

男「今はどんな感じだ?」

男友「今は女委員長とどっか行ってる。多分二人で話してるんだろ」

男「……」

ピピピ

男「メール来てるぞ」

男友「知ってるよ」ピッ

男「はあ……」

男友「……何があったか教えてくれないか?」

男「……」


俺は昨日の事を全部話した。

男友「……お前が悪い」

男「いや、理由は!?」

男友「いや、理由なんてもうわかってるようなもんだろ!!」

男「……?」

男友「……本気でわかんない?」

男「すまん、わかんねぇ……」

男友「……」

男「……」

男友「お前さ、一回デートとかしてみたら?」

男「……は?」

男友「いや、そうすれば多分いろいろと分かると思うぞ」

男「分かるって……」

男友「騙されたと思って行ってみろ」

男「……でも何時行くんだよ」

男友「明日午前授業だし、明日とかどうだ?」

男「でも、どうなんだ?」

男友「いいんだよ。それに仲直りの為のデートなんだからそう深く考えなくてもいいんだよ」

男「……そ、そうか?」

男友「そうだよ。だから誘ってみろって」

男「でも、断られるの嫌だしな……」

男友「今更ヘタレるな。頑張れ」

男「わ、わかったよ」

男友「場所とかはお前の好きなようにすればいいよ」

男「あ、ああ……」

ドラゴン「……」スタスタ

男友「来たぞ」

男「……」

女委員長「あ、遅かったわね」

男「ああ」

女委員長「あんたもバカよね。本当に」

男「……うるせぇ」

男友「ドラゴンから何聞いたんだ?」

女委員長「言わないわよ」

男友「……男、いいから早く」

女委員長「何の話?」

男友「言わない」

男「……本気で言うのか?」

男友「当たり前だろ」

男「……わかった」スタスタ

ドラゴン「……」

男「ドラゴン。明日暇か?」

ドラゴン「……え?」

男「明日午前授業じゃん。それからする事ある?」

ドラゴン「無いけど……なんで?」

男「いや、その……話し合わないか?」

ドラゴン「何を?」

男「い、いろいろだよ。謝りたい事もあるし」

ドラゴン「家で話すの?」

男「いや、駅前のデパートとかがいいかな……」

ドラゴン「なんで?」

男「なんでって……」

男「あれだ。買いたいものがあるんだ」

ドラゴン「……別にいいけど」

男「わかった」

男友「……なあ、あれって成功か?」

女委員長「さあ、成功でいいんじゃない?」

男友「突然ドラゴンをデートに誘う様に仕向けろってメール来た時は本当にびっくりしたよ」

女委員長「あんたにしてはうまくやったじゃない」

男友「かなり露骨に誘導したけどな」

女委員長「ドラゴンは自分の感情を認めたくないから面倒なのよね」

男友「男は鈍感だから厄介」

女委員長「……これでうまくいくといいけど」

男友「本当にな」

男友「で、明日は追跡するの?」

女委員長「当たり前じゃない」

男友「……」

今日はここまでです。

少し日常パートをやっていく予定です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夕方    教室


男「男友。ちょっといいか?」

男友「どうした?」

男「話があるんだけど……」

男友「ここじゃダメか?」

男「ここは、ちょっとな……」

男友「じゃあいつもの公園でいいか?」

男「いいよ」

女委員長「私もいい?」

男「……別にいいけど」

女委員長「じゃあ決定ね」

男友「なら行くか」

女委員長「そうね」

男「悪いな」

男友「友達なんだ。気にすんな」

男「男友……」

男友「ただもしよければ女の子を紹介してほしい」

男「それは無理だな。どうやっても」

男友「あ、そう……」

女委員長「可哀想にね」ニッコリ

男友「その満面の笑みをやめろ」

男「じゃあそろそろいいか?」

女委員長「あ、ごめん。いつでもいいわよ」

男友「そろそろ移動するか」

女委員長「男友がおとしてくれたし、いいタイミングね」

男友「俺はオチ要員かよ……」

女委員長「当たり前じゃない」

男友「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


公園


男友「で、何?」

男「明日の事なんだけどさ。どうしたらいいと思う?」

男友「どうしたらって……別にどうする必要もないだろ」

男「俺そういうの分かんないからさ。お前得意だろ?」

女委員長「残念だけど、こいつは言うほど女の子と遊んでないわよ」

男友「余計な事言うな!!」

男「……あれ、なんで女委員長が知ってるんだ?」

女委員長「それは……男友から聞いたのよ」

男「男友……」

男友「ゴメン、つい」

女委員長「男の好きな様にやればいいんじゃないの?」

男「なんか、これはやっちゃダメとかってあるか?」

男友「別の女の方を見ない」

女委員長「相手が何を考えているか考える」

男友「そして、相手の気持ちを考えて発言する」

男「……わかった」

女委員長「実際やってみると意外と難しいわよ」

男「頑張ってみる」

男友「ちゃんとドラゴンの気持ちを読み取るんだぞ」

女委員長「そうね、それが出来ればほとんど成功するわよ」

男「ドラゴンの気持ちを読み取るか……」

男友「日頃お前が一番出来てない事だから頑張れよ」

男「あ、ああ」

隊長「今日も楽しそうだな。バカ三人」スタスタ

女委員長「私とこの二人を一緒にしてほしくないわね」

隊長「ああ、そうだな。訂正しよう、バカ二人と腹黒女」ニッコリ

女委員長「さっきよりはマシですね。訂正してくれてありがとうございます。戦闘狂さん」ニッコリ

男「どうしたんですか?」

隊長「ただ通りかかったらお前等がいたんだ」

女委員長「特殊部隊も暇なのね」

隊長「安心しろ。お前の戯言に付き合っているほど暇じゃない」

隊長「で、今日は何の話だ? 何か進展でもあったか?」

男友「まあ、進展って言えば進展ですかね」

隊長「どうしたんだ?」

男「明日ドラゴンとデパートに行くだけですよ」

隊長「駅前のか?」

男「はい」

隊長「……デートか」

男「俺はあんまりそういうつもりは無いんですけどね」

隊長「まあ、頑張れ」

男「はい」

女委員長「じゃあ、そろそろ解散しましょうか。遅くなるとドラゴンが心配するし」

男「そうだな」

男友「じゃあ、また明日」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日   学校  昼


男「準備できたか?」

ドラゴン「ええ」

男「……デパートで何か見たいもんとかあるか?」

ドラゴン「特にないけど……なんで?」

男「いや、俺だけ買い物しても悪いからさ」

ドラゴン「私は別にいいわよ」

男「……じゃあ、服とか見に行くか?」

ドラゴン「服?」

男「ああ、ほ、ほら、お前いつも同じ服着てるし、たまには別の服とか見たらどうだ?」

男「それに女って服とか好きだろ」

ドラゴン「まあ、嫌いじゃないけど……いいわよ」

男「じゃあ、俺の買い物が終わった後に服でいいか?」

ドラゴン「別になんでもいいわよ」

男「……じゃあ行くか」スタスタ

ドラゴン「そうね」スタスタ

女委員長「……なんか全然デートって雰囲気じゃないわね」

男友「ドラゴンもデートって分かってないみたいだし、男は何か変な攻め方してるからな」

女委員長「もうちょっとガッと攻めないかしら」

男友「無理じゃないか、男だし」

女委員長「なんだかんだ言ってもヘタレね」

男友「だな」

女委員長「じゃあ追いかけるわよ」

男友「ああ」

男友「……」

女委員長「何?」

男友「いや、これもある種のデートじゃ――――」


言いきる前に女委員長の拳が男友の顔面に当たる。


女委員長「何か言った?」

男友「……何でもない」

今日はここまでです。

話進まなくてすいません

すいません。

少し予想外な事がありまして、昨日更新できませんでした。

今も数時間だけ家に帰ってきている状態で、次にいつ帰ってこれるかも分からないので、少しの間投下出来ないと思っておいて下さい。

出来る限り元の投下状況に戻せるよう努力します。すいません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


デパート   本屋


男「うーん」パラパラ

ドラゴン「何悩んでるの?」

男「数学の参考書、どっちがいいと思う?」

ドラゴン「教科書で勉強すればいいじゃない」

男「教科書は分かり辛いんだよ」

ドラゴン「気のせいよ。下手に参考書とか買うと余計に分からなくなるわよ」

男「そ、そうかもしれねぇけどさ……」

ドラゴン「それにどうしても分からないなら私が教えてあげるわよ」

男「……」

ドラゴン「安心して。これくらいの数学なら私でも十分教えられるから」パラパラ

男「別に心配はしてないけど……」

ドラゴン「だからいつもみたいに漫画買ったら?」

男「いつもみたいってなんだよ……」

ドラゴン「違うの?」

男「違わないけど……」



男「……わ、わかったよ」

女委員長「……」

男友「どうだ?」

女委員長「別に、特に動きもないし、何かがある訳じゃないし」

男友「何やってんだ?」

女委員長「参考書がどうとかってつまんない話してる」

男友「俺も見たい」

女委員長「見つからないでよ」

男友「バカにすんなよ。そんな簡単に見つかるかよ」


男と目が合う。


男「……男友?」

男友「すまん……」

女委員長「……あんたってネタが尽きないわね」

男友「褒めてる?」

女委員長「そんな訳ないでしょ」

男友「ですよね」

男「なんで、ここにいるんだ?」

男友「それは、その……あはは……」

女委員長(いい訳くらいしっかりしなさいよ)

男「もしかして……」

男友「いや、それは――――」

男「心配して見に来てくれたのか?」

男友「……あ、ああ、そうだよ」

女委員長(男がバカで助かった……)

男「あ、ありがとうな」

男友(素直なのか単にバカなのか……)

男友「し、しっかりやってるみたいだし、俺達帰るからな」

男「いろいろ悪かったな」

男友「いいっていいって」スタスタ

女委員長「……」スタスタ

男友「案外バカなんだな」

女委員長「あんたもあんたで大バカね」

男友「うるさい」

隊長「……またお前達か」スタスタ

男友「あれ、何してるんですか?」

隊長「ああ、急な仕事が入ったんでここに来ていたんだ」

男友・女委員長(嘘だ……真面目な顔して平気で嘘ついてる)

隊長「顔に考えが全部出てるぞ」

男友「マジですか?」

隊長「ああ」

女委員長「男を見るためにわざわざ来たんですか?」

隊長「仕事だ。後おまけでドラゴンがどんな状況かを見たくてな」

男友「ドラゴンをですか?」

隊長「ドラゴンはああ見えても繊細なんだ。意外と」

女委員長「いや、普通に見た目どおりじゃない」

隊長「男の前だと、あまりそういう姿を見せないんだ。それで少し心配になってな」

男友「そうなんですか?」

隊長「……お前がモテない理由がよくわかった」

女委員長「前から分かってたでしょ」

男友「いや、分かってるからね!!」

隊長「じゃあ、なんで聞いたんだ」

男友「分かってるんですけど、なんて言えばいいか分からないと言いますか……」

隊長「分かってないのと一緒だろ」

女委員長「男と一緒ね」

男友「あんな鈍感野郎と一緒にされたくないんだけど!!」

隊長「まあ、確かにそうだな」

女委員長「モテてない時点で男より下でしょ」

男友「……」

女委員長「それに意外と乙女チックね。あなた」

隊長「お前ほどじゃない」

女委員長「私だってあなたより乙女チックじゃない自信はあるわよ」

男友「どうでもいいよ」

隊長「……そろそろ移動するぞ」

女委員長「じゃあこの話は終わりにしましょうか」

男友「いちいち言わなくていいよ」スタスタ

今日はここまでです。短くてすいません。

一旦落ち付いたので更新していきます。ただ毎日更新は出来ないかもしれないです。

すいません。

ドラゴン「……どの服がいいと思う?」

男「別にどれでもいいと思うけど」

ドラゴン「……男。わかってる?」

男「何が?」

ドラゴン「……」

男「普通はどれを着ても綺麗だよとかって褒めるんだろ?」

ドラゴン「……別にそこまでは要求しないわよ」

男「え?」

ドラゴン「まさか本当にそう言おうと思ってたの?」

男「だって、女ってそういう言葉に弱いんだろ?」

ドラゴン「そこまでキザな事言う人なんていないわよ」

男「マジか……」

ドラゴン「……女友達が少ない理由がなんとなく分かった様な気がする」

男「うるせぇ」

ドラゴン「別にキザな事を言ってほしい訳じゃないから、普通にどの服がいいとか教えてよ」

男「でも、俺あんまりそういうのわかんねぇぞ」

ドラゴン「いいのよ。あなたがいいと思ったものをいいって言ってくれればいいの」

男「……わかった」

ドラゴン「これとかどう?」

男「うーん……こっちの白い服の方がいいんじゃないか?」

ドラゴン「そう?」

男「うん。こっちの方が似合うと思うんだけど」

ドラゴン「うん、じゃあそうしようかな」

男「え?」

ドラゴン「え?」

男「いや、本当に俺が選んだのでいいの?」

ドラゴン「だからいいって言ってるじゃない」

男「……」

ドラゴン「何?」

男「……別に、俺はいいと思うぞ」

ドラゴン「じゃあ行ってくるね」

男「……ああ、行ってらっしゃい」

女委員長「やれば出来るじゃない」

男友「自称やれば出来る子だしな」

隊長「やれているかいないかで言えば出来てないけどな」

男友「そういう事言わないで下さいよ」

女委員長「後、あのキザな台詞はあんたが吹き込んだの?」

男友「んなわけ無いだろ!!」

女委員長「ああ、そう」

隊長「さすがのお前でもあんな事は言わんだろうからな」

男友「当たり前です」

女委員長「あいつの思ってる女性の扱い方って気持ち悪いわね」

男友「うん、ちょっと引いたかも」

女委員長「普通に引いたけど」

隊長「さすがに可哀想だな」

男友「ぜんぜん可哀想な顔してませんよ」

隊長「微塵も可哀想なんて思ってないからな」

男友「ですよね……」

ドラゴン「お待たせ」スタスタ

男「遅かったな」

ドラゴン「ちょっといろいろあったのよ」

男「あ、そう」

ドラゴン「次はどうするの?」

男「別に俺は行きたい所は無いけど……お前は?」

ドラゴン「私も特には……」

おじさん「……」

男「あれ?」


そこには大きな荷物の横とベンチに座っているおっさんがいた。


おじさん「……」

男「何してんだ。おっさん」

おじさん「あ、久しぶりだね。今日は……デートかな?」

男「まあ、そうかな」

おじさん「そうか。若い時にしか出来ない事は若いうちにやった方がいいよ」

男「おっさんはやれたのか?」

おじさん「やれてないからこんなダメ人間なんじゃないか」

ドラゴン「……」///

おじさん「……君がドラゴンさんかな?」

ドラゴン「そうだけど、あなたは?」

おじさん「男君の知り合いのおじさんだよ。男君にはおっさんって呼ばれてるけどね」

ドラゴン「よ、よろしく」

おばさん「若い人達の邪魔しちゃダメでしょ」スタスタ

おじさん「あ、確かにそうだね」

男「おっさんもデートか?」

おじさん「まさか、もうそんな年じゃないよ」

おばさん「そちらは、ドラゴンさんかしら?」

ドラゴン「え、ええ。あなたは?」

おばさん「私はおばさんよ。この人の妻」

ドラゴン「よ、よろしくお願いします」

おばさん「ええ」

男「……」

おばさん「私が竜だって事は隠しておいた方がいいでしょ?」ボソッ

男「あ、はい……」

おじさん「ん、何の話?」

おばさん「何でも無いわよ」

男(おばさんって実は物凄く頭がまわるのかな……)

ドラゴン「男とはどういう関係なの?」

おじさん「タイヤキをもらったんだ」

ドラゴン「……タイヤキ?」

おじさん「うん。この前はありがとうね」

男「もういいよ。そんな大層な事じゃないし」

おじさん「いやいや、お礼はちゃんとしておかないとね」

おばさん「……そろそろ行くわよ。若い二人の邪魔しちゃ悪いでしょ」グイッ

おじさん「あ、ああ。じゃあまたね」スタスタ

男「ああ、また」

ドラゴン「……いい人達ね」

男「ああ。変わってるけどいい人だよ」

ドラゴン「ありがとね。誘ってくれて」

男「こっちこそ付き合ってくれてありがとう」

ドラゴン「……この前は突然ごめん」

男「いや、こっちこそちゃんと伝えなくて悪かったよ」

ドラゴン「もういいわ。私も悪かったんだし」

男「……」

ドラゴン「ただ次からは絶対嘘つかないでほしい」

男「わかった」

ドラゴン「約束ね」

男「……約束する」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「……はい、これ」


ドラゴンは俺に箱に入った何かを渡してくれた。


男「何これ?」

ドラゴン「開けてみれば?」

男「……」


箱の中には銀色の十字架のネックレスが入っていた。


男「え、俺に?」

ドラゴン「当たり前でしょ」

男「……て言うかお前お金持ってたの?」

ドラゴン「なんで私が無一文になってるのよ!!」

今日はここまでです。

もう少しグダグダします。

男「違うの!?」

ドラゴン「違うわよ!!」

男「……」

ドラゴン「当たり前でしょ」

男「まあ、言われてみればそうだな」

ドラゴン「言われなくてもそうでしょ」

男「……ありがとう」

ドラゴン「どういたしまして」

男「どっか行きたい所あるか?」

ドラゴン「別に、もう特には無いわ。あなたは?」

男「別に無いかな……」

男「……帰るか」

ドラゴン「そうね」

隊長「……」

男友「どうしたんですか?」

隊長「いや、あのおじさんとか言うおっさん……」

男友「ああ、あの人は竜と結婚した――――」

隊長「いや、あの男……ただ者じゃないな」

男友「何がですか?」

隊長「……一戦交えてみたいものだな」

男友「そんな強い様には見えないんですけど」

女委員長「ええ、ただのおっちょこちょいなおっさんでしょ」

隊長「いや、あの男は強いぞ。私でも勝てるかどうか分からんくらいな」

男友「……」

女委員長「とにかく仲直りできてよかったじゃない」

男友「そうだな。いろいろあったけど結局仲直り出来たし良かっただろ」

隊長「じゃあこれから帰るか?」

男友「そうですね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


公園


ドラゴン「早くしないとメイド達が心配するわよ」スタスタ

男「別にしねぇよ。ちゃんと遅くなるって言っといたし」スタスタ

ドラゴン「でも夕飯とか作って待っててくれてる訳だし、急いだ方がいいじゃない」スタスタ

男「はいはい」スタスタ

ドラゴン「今日はありがとう。楽しかったわ。

ドラゴン「……で、デート」///

男「……そう言ってもらえるとうれしい」

ドラゴン「……」

男「今度あの白い服着てるとこ見せてくれよ」

ドラゴン「い、いいけど、どうして?」

男「俺が選んだんだし、似合ってるか確認したいだろ」

ドラゴン「そう言うの気にするのね」

男「気にするだろ。似合ってなかったらなんか嫌だし」

ドラゴン「そうね」

会話が途切れた丁度その時、体に原因不明の猛烈な突風を受け地面を転がる。


男「痛……頭打った……」

ドラゴン「だ、大丈夫なの!?」

男「俺は大丈夫だけど……今の何だ?」

竜人「私だよ」スタスタ

男「竜人……」

ドラゴン「竜人って……この前言ってた!?」

竜人「ここまで手間がかかるとは思っていなかったが……まあいいか」

ドラゴン「え、あ……」

男「ドラゴン、逃げろ!!」

ドラゴン「……」

男「早く!!」


だがドラゴンの逃げ道を竜人が塞ぐ。


竜人「逃がすと思うか?」

ドラゴン「う……」

竜人「……死ね。半端者が」

「伏せろ!!」


声が聞こえた。

頭がその言葉を理解するよりも先に体が反応し、頭を下げる。
ほとんど条件反射のように。
目の前にいたドラゴンもまた同じように頭を下げ、しゃがんでいる。

手で頭を押さえながら頭を下げたのと、二つの銃声が聞こえたのはほぼ同時だった。
竜人目掛け、前と後ろから、丁度挟み撃ちの様に銃弾が襲いかかる。

だが竜人は慌てる事も無く、右腕を右から左に大きく振る。
大きく振った右腕を中心に巨大な炎の壁が発生し、正面の銃弾を消滅させる。
後ろからの銃弾は左手で、銃弾自体を掴み取った。


「……これでもダメか」


デザートイーグルを構え、竜人の後ろに立っていた隊長は苦い顔をして呟いた。
しかし銃口は確実に竜人を捉えており、引き金を引けばいつでも竜人を蜂の巣に出来るだろう。
……竜人が何かしらで弾丸を消滅させなければ、の話だが。


「だからそんなんじゃ火力不足だって言ったじゃないですか」

そんな風に隊長にダメだしをしているのはメイドだった。

竜人の正面に立つ彼女はG・E M134 ミニガンを構えている。
よく映画などで見かける、6連の銃身が束ねられ、毎秒100発の弾丸を発射するその銃は誰が何と言おうと高火力だろう。
ガトリングガンと言った方がしっくりくるかもしれない。
と言うか総重量50キロを超える銃を構えて平然と立っていられる我が家のメイドの体は一体どうなっているんだろうか……。


「そんなもんを持ってたら素早く動けんだろうが」


俺も同じ意見です。
と言うかどうやってあんなものを調達してきたんだよ……。


「鍛えればどうとでもなるじゃないですか」


そんな敵前とは思えないやり取りを聞きながらも、竜人が冷静にメイドとの距離を計っているのが分かった。
右の手ののひらをメイドの方の向ける。
手のひらには野球ボールほどの大きさの紅蓮の火の玉が生成されている。

今日はここまでです。

ちなみにどうでもいい話ですが、個人的に好きな銃はAKです

竜人の手のひらから火の玉が発射されたのと、メイドが予想外の俊敏さで横に跳んだのはほぼ同時だった。
つい数秒前までメイドの立っていた場所に火の玉が着弾し、地面を焦土に変える。


「今度はこっちの番ですよ!!」


ミニガンが唸り声を上げながら数百発という銃弾を吐きだす。
竜人の周りの地面に流れ弾が当たり、抉る。

だが近代兵器も蜂の巣に出来る様な攻撃も竜人の炎の壁を貫く事は出来ない。
ただただ数百と言う弾丸が一瞬にして溶け、次の瞬間には消滅しているのだ。

メイドの表情が苦々しいものに変化したのがこの距離からでもわかる。


「邪魔だ」


その声が聞こえた時にはメイドは吹き飛んでいた。
冗談でも比喩でも無く、まるでサッカーボールの様に地面をゴロゴロと転がっている。
そしてメイドが今さっきまで銃を撃っていた場所には竜人が無表情のまま立っている。


「次は誰だ?」

抑揚の無い、感情の死んだような声。
それは明らかに俺に向けられた言葉だった。
戦う覚悟は出来ているつもりだったのに、その言葉を聞いた俺の体は小刻みに震えていた。

竜人の手のひらの上にはには火の玉が浮いていた。
次はお前だ、そう言われている様な気分になってくる。

俺と竜人の間に隊長が走り込む。
次の瞬間には銃声が響いていた。
もちろん、ただの威嚇だ。


「何してる!! さっさと逃げんか!!」


……やっぱり情けないな、俺……。
でも、逃げる気はない。


「ドラゴン、逃げろ」


ドラゴンの方を振り返る訳でもなく、別にそこまで感情を込めたつもりは無い。
だがその言葉は俺の心の何かを奮い立たせる何かのスイッチを入れてくれたような気がした。
男としての何かしらのスイッチを。

後ろの足音が遠ざかる。

隊長が怒りを含んだ目でこちらを見ている事だろう。
だが逃げる気は一切無い。
逃げる訳にはいかない。
ドラゴンを守るためにも……。

竜人の右手に炎が灯った。
それは竜人の右手を覆い尽くし、右手の打撃攻撃に炎の攻撃を追加される。
一撃喰らえば即死だろう。
……なら、一撃も喰らわなければいいのだ。


「隊長。俺が行きます」


隊長の口が動くが、聞きとる気は無い。

俺は地面に落ちている鉄パイプを拾い上げ、構えた。
勝てる保証は無い。
むしろ負ける確率の方が圧倒的に高い。
だがそれが何だってんだ。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

雄叫びを上げながら走り出す。
恐怖で体の中を北風の様に冷たい風が駆け抜ける。
声を出すのをやめたら、足を止めたら、絶対にもう動けない。
そう直感的に感じる。

残り四メートル。

後ろからは銃声と何かが動きまわる足音が聞こえてくる。

それが聞こえるとなんとなく、心が軽くなる様な気がする。

残り三メートル。

だがその瞬間横から何かに吹き飛ばされ、地面を転がっていた。
走っている勢いを殺す事も出来ず、右腕を思いっきり地面に擦る。
ヒリヒリした痛みと共に赤い液体が滲んでいる。


「遅いな」


竜王の蹴りで吹き飛んだ事をようやく理解する。
今更だが、二メートル近く吹き飛ばされている事にようやく気付く。
そして同様に隊長も吹き飛ばされている事にも。

「隊長……」


声が掠れる。
今の所腕の痛みしか感じないが、そのうち脇腹が焼けるように痛くなるんだろう。

……。
隊長の返事は無い。
頭を打ったのか、意識が朦朧としているようだ。

俺の体の中を冷たい風が駆け巡った。
今の状況を頭が理解し、恐怖が俺の体を支配する。
圧倒的な死の恐怖に完全に飲み込まれてしまっいるのが自分でも分かった。


「愚かだな。あんな半端者の為に犠牲になるのか?」

「は?」

竜人の言葉に苛立ちを抑える事無くそう答える。
挑発だとしてもその言葉だけはどうしても聞き流せない。
聞き流してはいけない言葉だ。

短いですが今日はここまでです。

今の状況で地の文ありはちょっとつらい……

「何偉そうに言ってんだよ」


こいつの言葉は、そう。
ドラゴンだけじゃない、ドラゴンのために頑張ってくれている人間全てを敵に回す発言だ。

立ち上がり、近くに落っこちていた鉄パイプを拾い上げる。
メイドも隊長もいない今、勝率は天文学的数字だろう。
ただ、それでも退けない。
ドラゴンを、隊長を、女委員長を、メイドをバカにされて退ける訳が無い。

俺の中の何かが熱く燃えるような気がした。
まるで血液にマグマが混入したかのように全身が熱くなる。


「まだやるのか?」

「まだ死んでねぇだろ」


そう言いながら、鉄パイプを構え直す。

負けはしない。
負ける気などない。

地面を思い切り蹴り、竜人向かって跳ぶ。
無駄な小細工などは一切しない。
そんな事をした所で、勝率があがる訳じゃない。
ならば、正々堂々正面から戦う。

鉄パイプを振り上げ、竜人の頭目掛け振り下ろす。

鈍い音が響き、同時に呻き声が聞こえた。

……え?

その瞬間何が起こったのか理解できなかった。
あらゆる武器を使っても歯が立たたなかった相手に俺は鉄パイプなどと言うふざけた武器で挑んだ。
もちろん俺は大真面目だ。
でも、銃が全く効かない相手に、俺のただの鉄パイプがここまでダメージを与えていいのか?

竜人の左手はあらぬ方向に曲がっていた。
誰が見ても理由は明白。
頭目掛けて振り降ろされた一撃を彼は左手で受け止めたのだ。
だが、その衝撃を受けた左手は無事では済まなかった。

そう、それが答え、のはず。
それが人間であれば、正しい答えだ。
だが竜人は人間の姿をしているとはいえし正真正銘の竜。

何故?

だが、そんな事を深く考えていられる時間は無かった。
そんな一瞬の隙に、また、吹き飛ばされる。
胃の中のものが逆流しそうになるほどの一撃。
明らかにさっきよりも威力が上がってんじゃねぇか。


「……甘く見ていたな。まずはお前から片付ける」


竜人の表情に変化は無い。
ただその目には明らかな殺意の炎が燃えている。

俺の体に痛みは無かった。
だがその体はまるで石造の様に硬く、全く動いてくれない。

嘘だろ。
ここまで来て、それは無いだろ。

竜人はいつの間にか俺の目の前まで来ていた。
右手は今までの以上に強く、紅く燃えている。

不思議と恐怖は無かった。
ただ悔しさと、何も出来ない自分に対する何とも言えない怒りだけが湧き上がってくる。

竜人が右手を大きく振り上げた時、銃声が響いた。
一発二発では無く、何百発と言う弾丸が竜人に襲いかかる。

「男さんには、手を出させません!!」


メイドはミニガンを撃ちながら叫んでいた。

……下手すれば俺に流れ弾が当たりかねないのによくあそこまで銃を乱射出来るな。
けど、お前の作ってくれたチャンスは生かしきるぞ!!

最後の力を振り絞り、体を起き上がらせる。
鉄パイプを握り直し、全力で竜人の頭目掛け振り下ろす。

銃弾を防ぎながらこの攻撃を防ぐのは絶対に不可能だ。

グシャッ、と言うトマトが踏みつぶされる様な音が耳に響く。
鉄パイプは竜人の脳天にしっかりと直撃していた。
おびただしい量の血液が傷口から溢れだしている。

だが竜人は倒れなかった。
血で滑っているが必死に踏ん張り、立ち続ける。
今までの無表情が嘘の様に、歯を食いしばった険しい顔をしている。

「人間風情が、図に乗るな!!」


竜人が右手拳を地面に叩きつけた。
強烈な熱波が全方位に襲いかかる。

だが俺は退かない。
鉄パイプを持ったまま、その熱波の中を突き進んでいく。

痛い。
全身がちりちりと痛み、皮膚が焦げ付く様な感覚がする。
でも、進む。

鉄パイプを大きく振り上げる。

狙うのは赤く光る場所。
すなわち竜の弱点。
そこを叩く。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」


鉄パイプが竜の弱点を捉える。
音は無い。
ただ相手の急所をとらえた感触はある。

竜人がゆっくりと地面に倒れていくのが見えた。

そう、俺は勝ったのだ。


……なんで、そんな事分かるんだ?
なんであれだけの攻撃を受けて無事なんだ?
なんで鉄パイプで勝てるんだ?


冷静になったとたん、多くの疑問が浮かんでくる。
疑問の上に疑問が覆いかぶさり、新たな疑問となる。
俺の頭の中はほぼパニック状態になっていた。


「なんで?」

「その答えを知りたい?」


声をした方を振り返る。

そこには見知った顔があった。
俺の母親と、そして……。


「久しぶりだね」


竜王がそこには立っていた。

今日はここまでです。

明後日くらいからグダグダ回をやるかもしれません

男「なんで竜王と母さんが?」

母「知り合いだから、じゃダメかしら?」

男「……ダメに決まってるだろ」

メイド「だ、大丈夫ですか?」


メイドが隊長と一緒に歩いてくる。


母「メイドも隊長さんも無事みたいね」

隊長「なんで、私の事を?」

母「有名人だもの。問題児ってね」

隊長「……」

男「そんな事はいい。教えろよ」

母「……聞き方がなってないわね。言い方ってものがあるんじゃない?」

男「……」

男「教えて下さい。お願いします」ペコリ

母「よろしい」

母「回りくどい言い方は私も嫌いだから真実だけを述べるわね」

男「……」

母「男、あなたは竜殺しよ。私と同じでね」

男「……」

メイド「そ、そうなんですか!? て言うか母さんも竜殺しだったんですか!?」

母「ええ。黙っててごめんなさいね」

男「本当なのか?」

母「それはあなた自身が分かるんじゃない?」

男「……そうだな」

母「分かったかしら?」

男「俺が竜人にダメージを与えられたのは竜殺しだからって事か?」

母「ええ、それにあれが見えたでしょ?」

男「竜の弱点、の事か?」

母「その通りよ」

男「……」

竜王「君のおかげで竜人を捕まえる事が出来た。いろいろすまないな」

男「ドラゴンは?」

竜王「君の友達たちと一緒にいるよ」

隊長「私が頼んでおいたんだ」

男「ありがとうございます」

竜王「思ったほど驚かないんだな」

男「……普通に驚いてるよ。ただ表情や行動に表れない位疲れてるんだ」

竜王「人間の姿をしているとはいえ竜と戦ったんだからな。仕方の無い事だ」

男「母さんも竜殺しなのか?」

母「ええ」

男「……」ドサッ

メイド「ど、どうしたんですか!?」

男「……少し疲れただけだ」

母「無茶しない方がいいわよ。普通なら即死の攻撃を喰らってるんだから」

男「どの攻撃だよ……」

母「まさか炎の中に突っ込んでいくとはね。あんな危ない事をよくやるわね」

男「うるせぇよ」

男「……俺はどんな能力を持ってるんだ?」

母「私には分からないわ。自分で自分の能力を理解する以外方法は無いわね」

男「……」

母「心配しなくてもまだ全部の力を引きだしきれてないから、まだまだ強くなれるわよ」

男「別に心配はしてねぇよ」

男友「男!!」タタタッ

男「ああ……」

竜王「肩を貸そう」

男「悪いな」


俺は素直に竜王の肩を貸りる。


男友「……みんな無事か」

隊長「無事だが、私とメイドは手酷くやられたよ」

メイド「あまり力になれませんでしたね」

隊長「まだまだ日々の鍛錬が足りないと言う事だな。私もお前も」

母「竜相手にあそこまでやれたんだから二人とも上出来よ」

男「男友、俺もまだ半信半疑なんだけど――――」

男友「明日聞くよ。今は家に帰ってドラゴンに会って来い。女委員長が連れて行ったから」

男「あ、ああ」

隊長「もう大丈夫だ」

メイド「本当に大丈夫ですか?」

隊長「当たり前だ。じゃあまた詳しい話は聞かせてくれ」スタスタ

竜王「私もそろそろ行くとしよう」

男友「男、俺の肩貸りていいぞ」

男「悪いな」


俺は男友の肩を貸りる。


母「まだまだ話す事はたくさんあるわ」

男「……男友。全部分かったら教えるよ」

男友「ああ、そうしてくれ。ちゃんとドラゴンと女委員長にも教えろよ」

男「分かってるよ」

母「……じゃあそろそろ帰りましょうか」

男「ああ」

メイド「そうですね」

短いですが今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「ただい――――」ガチャ


その言葉を言い終わる前に頬に頬に痛みがはしる。


ドラゴン「バカじゃないの!! あんなのに喧嘩売るなんて正気じゃないわよ!!」

男「……」

ドラゴン「怪我は!?」

男「軽い火傷と打撲だけ。命にかかわる様な怪我はしてない」

ドラゴン「……」

男「でも、勝ったぞ」

ドラゴン「そんな事どうでもいいわよ」

男「あ、そう」

メイド「とにかく夕飯にしましょうか。準備は私がしますから」

男「また野菜炒めかよ」

メイド「それしか作れないんですから仕方ないじゃないですか」

男「少しくらいレパートリーを増やす努力をしろよ」

メイド「無理ですね」

男「無理じゃねぇよ」

男「……少し部屋で寝てきていいか?」

ドラゴン「勝手にしたら?」

メイド「どうぞ」

男「ありがとう」スタスタ

男「……」ガチャ

男「俺が、竜殺しね……」

男「実感ねぇな……」

母「実感してなくても事実は事実よ」

男「何勝手に人の部屋入って来てんだよ」

母「あら、ごめんなさい」

男「……まあいいや。なんか話があって来たんだろ?」

母「どちらかと言えばあなたが知りたい事があるでしょ」

男「……」

男「母さんはどんな力を持ってんだ?」

母「肉体強化と武器強化よ。多分あなたもその力を受け継いでると思うわ」

男「二つもあるのか?」

母「ええ、別に珍しい事じゃないわよ」

男「なんで竜の弱点が見えたんだ?」

母「あれは戦闘型の竜殺しなら全員がもってる能力よ。戦闘型の竜殺しの証とも言えるわね」

男「……」

母「他に聞きたい事は?」

男「なんで教えてくれなかったんだ?」

母「……」

母「……私としてはあなたには普通に生きてもらいたかったの」

母「竜と戦って命を落とす竜殺しは今でも少なくない訳だし」

母「だから私としては普通の人間として育てて来た訳だし、普通の人間として生きていかせるつもりだった」

母「ただやっぱり無理だったわね」

男「ドラゴンの事か?」

母「ええ。ドラゴンを守る役目にあなたを推薦したのは私だしね」

男「……なんで?」

母「私なんかよりずっと強い竜殺しになるって知ってたからかしらね」

男「……」

母「私があなたに教えられる事はこれくらいよ」

男「……わかった。ありがとう」

母「じゃあまた後で」スタスタ

男「わかった……」

母「……」ガチャ

男「母さん」

母「何?」

男「ドラゴン呼んでくれ」

母「……分かったわ」

男「……」

男「……」

ドラゴン「……入っていい?」コンコン

男「入ってくれ」

ドラゴン「何?」ガチャ

男「話さなくちゃいけない事があるから……」


俺は母さんから聞いた事を全て話す。


ドラゴン「本当なの?」

男「ああ、全部本当だ」

男「嘘は付くなって言ったから本当の事を全部話した」

ドラゴン「そう、ありがとう……」

男「あと、次の土日のお前の母親の家に行ってみようと思うんだ」

ドラゴン「なんで今?」

男「竜人もいなくなってとりあえず安全になった訳だし、行ってみようと思う」

ドラゴン「いいんじゃない?」

男「……お前はどうする?」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「私は待ってる。少し、怖いし……」

男「分かった」

ドラゴン「ありがとう」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日   朝   学校


女委員長「あれ、男は?」

ドラゴン「一応病院に行ってくるから遅くなるって言ってたわ」

女委員長「あ、そう」

男友「まあ、結構大けがだったし行っといて正解だろ」

女委員長「まあ、男はあんたと違ってそう簡単に死ぬような人間じゃないから大丈夫でしょ」

男友「俺はすぐ死にそうって事か?」

女委員長「ええ」

男友「……相変わらず、さらっとひどい事言うな……」

女委員長「で、帰って来てから何か言ってた?」


私は昨日の男の話を分かりやすく女委員長に話した。


女委員長「で、他には?」

ドラゴン「土日私のお母さんの家に行ってみるって言ってた」

男友「場所は?」

ドラゴン「分からないけど、多分凄く遠くだと思う」

男友「だろうな」

女委員長「竜人も倒して安心だから遠くの方まで見に行ってみようって感じかしら?」

ドラゴン「多分そんな感じだと思う」

女委員長「よく頑張るわね」

男友「本当だよな。俺だったらとっくに疲れてやめてると思う」

女委員長「それだけドラゴンの為に頑張ってるって事よ」

ドラゴン「……」

女委員長「ドラゴンいい加減男に告白したら?」

ドラゴン「ち、突然何!?」///

男友「そうだな。さっさと言えよ」

ドラゴン「な、何なんよ!!」///

女委員長「だってこのままじゃずっとこんな感じでしょ?」

ドラゴン「……」

女委員長「ならさっさと好きだって告白しちゃった方がいいわよ」

男友「ああ、あいつ鈍感だしな」

ドラゴン「べべ、別に私は……」///

女委員長「私は、の続きは?」

ドラゴン「……」///

女委員長「告白しろとは言わないからさ、なんかしらのアクションは起こしたら?」

ドラゴン「ど、どうやって?」

男友「例えばいつも以上に話しかけたり、一緒に出掛けたり、ボディータッチしたりだろ」

女委員長「最後のはちょっとキモい」

男友「別に普通だろ」

ドラゴン「い、言っとくけど別に男の事なんか好きじゃないんだから!!」

女委員長「ツンデレね。分かった分かった」

ドラゴン「……」///

男友「もうちょっと言い方があるだろ……」

女委員長「これくらいで丁度いいのよ」

ドラゴン「……」///

男友「ドラゴン、大丈夫か?」

ドラゴン「だ、大丈夫に決まってるでしょ」

男友「で、どうするんだ?」

ドラゴン「ど、どうするって?」

女委員長「これからはどうやって男に接していくつもりなの?」

ドラゴン「どうやってって……」

女委員長「別に好きな人がいる事はおかしな事じゃないのよ」

ドラゴン「……」

男友「それとも男が人間だからか?」

ドラゴン「別にそう言うのじゃないけど……」

男友「なら別にいいだろ」

ドラゴン「……そう、かもしれないわね」

女委員長「素直な事はいい事よ」

男友「そうだな。それがいい」

ドラゴン「……どうすればいいと思う?」

女委員長「まずはいつもと違った話をしてみたらいいんじゃない?」

ドラゴン「いつもと違った話?」

女委員長「どうせ、竜殺しだとか竜に戻るの方法だとかの話しかしてないんでしょ?」

ドラゴン「……してない」

女委員長「もっとお互いを知る様な質問をしてみるのよ」

ドラゴン「お互いを知る様な質問?」

女委員長「ええ。お互いがどんな性格なのかをもっと深く知るの」

ドラゴン「……」

女委員長「別に考え込まなくてもいいわよ。あくまで自然にそういう話をすればいいの」

ドラゴン「わ、わかった」

男友「それにしても、男遅いよな」

女委員長「どっかで道草でも食ってるんでしょ」

ドラゴン「大丈夫かしら」

男友「大丈夫だろ」

女委員長「心配し過ぎよ」

ドラゴン「そ、そう?」

女委員長「そうよ」


キーンコーンカーンコーン


男友「授業始まるぞ」

女委員長「ドラゴンも席に座って」

ドラゴン「あ、うん」スタスタ

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


病院  待合室


男「……」

男「別に平気だって言ったのに……」

メイド「念の為ですよ。結構な攻撃を受けてる訳ですし」

男「でも別に俺は大丈夫だぞ」

メイド「突然倒れてそのままあの世へ、なんて事だって十分あるんですよ」

男「……」

メイド「あと少しで結果が出ますからそれまで待ってて下さい」

男「言われなくても待ってるよ」

学者「男さん。久しぶりですね」スタスタ

メイド「……誰ですか?」

男「俺の知り合い。悪い奴じゃないから」

学者「いろいろ聞きたい事がありまして。今構いませんか?」

男「今ですか?」

メイド「大丈夫ですよ」

男「俺も大丈夫です」

学者「ありがとうございます」

学者「すいませんが二人で話したいので……」

男「メイドもドラゴンの事は知ってますよ」

学者「いえ、決まりとしてあまり多くの方に研究の話は出来ないんです。男さん達も例外なんです」

メイド「分かりました」スタスタ

学者「すいませんね」

男「……で、話しというのは?」

学者「ドラゴンさんについて聞きたい事があります」

男「聞きたい事?」

学者「ええ。ドラゴンさんは竜なんですよね?」

男「はい。もしかしてまだ疑ってるんですか」

学者「いえ、ただの確認ですよ。ドラゴンさんは人間の姿をした竜と言う事になる訳ですよね」

男「まあ、そうなりますね」

学者「竜は人間と仲が悪い。ですがドラゴンさんと男さんは仲がいいですよね」

男「まあ、多少は。ただドラゴンの本心としては人間と慣れ合うのは嫌だと思いますけど」

学者「ドラゴンさんは人間を憎んでいるんですか?」

男「母親の件もありますし。少しは憎んでる部分もあると思います」

学者「そうですか。ありがとうございます」

男「あの後、何か新しい事はわかりましたか?」

学者「いえ、特に目新しい発見は無いですね」

男「そうですか……」

学者「ただ、少し疑問に感じるものが一つありました」

男「疑問、ですか?」

学者「ええ。ドラゴンさんの血液を特殊な方法で調べました。その結果がこれです」


学者は持っていた資料を俺に見せてくれた。


男「……ここの項目だけ数値は入っているのに名前が書いてないですね」

学者「はい」

男「何なんですか、これ?」

学者「……名前が無いんです」

男「え?」

学者「この物質は私達が今まで出会った事の無いものなんです」

男「?」

学者「普通の場合一度発見されると学会で発表され、名前が付けられます」

学者「しかしこれには名前が無い。つまり――――」

男「まだ誰にも見つかっていないものって事ですか?」

学者「はい」

男「なら、これドラゴンが人間の原因――――」

学者「ただの機械の誤作動。と言う可能性も考えられますし、新しい物質としても関係無いかもしれません」

男「……」

学者「失礼しました」

男「いえ……」

学者「ただ少し気になりますよね」

男「そうですね」

隊長「こんな場所に出てきていていいのか?」スタスタ

学者「隊長さん……」

隊長「何か進展は?」

学者「……いえ、特には有りません。申し訳ないです」

隊長「いや、別にいいんだ。こっちこそすまないな」

学者「……」

学者「……では、そろそろ私は行きますね」

隊長「もういいのか?」

学者「はい。もう話しておかなければいけない事は全て話し終わりましたから」

隊長「……そうか」

学者「では」スタスタ

男「あ、ああ」

隊長「……で、何の話をしてたんだ?」

男「……実はですね」


俺はさっき学者から聞いた話をした。


隊長「そうか……」

男「で、一度ドラゴンの母親の家に行こうと思うんですが」

隊長「……専門家が同行した方がいいんじゃないか?」

男「はい、そう思います」

隊長「さっき言えばよかっただろ」

男「すいません。なんか隊長が来てから学者さんの顔が怖くなったんで」

今日はここまでです。

隊長「……なんだそれ」

男「もしかして嫌われてるんじゃないんですか?」

隊長「……まさか」

男「だって年上なのに全然敬語じゃないですし……」

隊長「あれは向こうがそれでいいと言って来たんだ」

男「そうですか」

隊長「まあ、わかった。学者に聞いておく」

男「お願いします」

隊長「あの事は学者に言ったか?」

男「いえ、言ってませんけど」

隊長「……学者には言うなよ」

男「え?」

隊長「忘れたのか? あいつは研究者だぞ」

男「あ、そう言う事ですか」

隊長「ああ、だから絶対に言うなよ」

男「はい」

メイド「男さ――――あれ、なんであなたが?」

隊長「私じゃ不満か?」

メイド「いえ、別に」

男「メイド。ポケットから銃出そうとすんな」

メイド「……」

隊長「またマグナムか。お前は本当に火力バカだな」

メイド「時間があったらあなたと撃ちあいたいですね」

隊長「まったくだ」

男「自由にやってもらって構いませんが、俺のいない所でやって下さい」

メイド「わかってます」

隊長「……所で、お前達も昨日の怪我で来たのか?」

男「はい、俺は大丈夫って言ったんですが、メイドが行けって言ったんで」

メイド「何かあってからじゃ遅いじゃないですか」

隊長「学者はなんで来てたんだ?」

男「さ、さあ、聞いてないですね」

隊長「……そうか」

男「何か気になる事でもあるんですか?」

隊長「いや、何でも無い」

医者「男さーん。男さんはいますか?」

隊長「……じゃあまたな」

男「はい」

隊長「分かり次第連絡する。行くのは何時だ?」

男「今週末くらいどうですかね」

隊長「……急だな」

男「すいません」

隊長「わかった。聞いてみよう」

男「お願いします」

隊長「じゃあまたな」

男「はい」

メイド「男さん。早く行きますよ」スタスタ

男「分かってるって」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


学校   昼休み


男「……」スタスタ

男友「遅かったな」

男「別に言って言ったのにいろいろ検査されたんだよ」

男友「ご苦労さま」

男「本当だよ」

女委員長「なんだ、案外元気そうじゃない」

男「お前、俺がどんな状態だって聞いてたんだ?」

女委員長「全然平気だって聞いたけど、やっぱり平気なのね。つまんない」

男「俺が大怪我しててほしかったのか?」

女委員長「ええ」

男「……お前」

女委員長「何?」

男「……まあ、いいや」

ドラゴン「病院どうだった?」

男「別に普通だけど?」

ドラゴン「何処も悪くなかった?」

男「心配しなくても普通に大丈夫だったよ」

ドラゴン「そう……」

男「……」

ドラゴン(な、何の話したらいいんだろう)

ドラゴン「……」

男(何この沈黙……)

男「あ、昨日の事だけど……」

男友「ああ、ドラゴンから聞いたからいいよ」

男「そうか」

男友「あ、別にお前が竜殺しだからって何かが変わる訳じゃないからな」

男「あ、そう」

女委員長「私もいつも通りこき使うからね」

男「はいはい」

今日はここまでです。

男「……あ、じゃあ出掛ける事も聞いたか?」

男友「ドラゴンの母親の生まれた場所に行くんだろ?」

男「ああ、その話」

女委員長「一人で行ってくるの?」

男「いや、隊長と学者と行く予定」

女委員長「そう」

男友「そう言えばドラゴンは行かないのか?」

ドラゴン「私は……」

男「ドラゴンは行かない」

女委員長「まあ、私もその方がいいと思うわ」

男友「……何時から?」

男「今週末くらいに行ってこようと思う」

ドラゴン「そんなに急に行ってくるの?」

男「お前だって早く知りたいだろ?」

ドラゴン「……うん」

男「男友、女委員長。ドラゴン頼んだぞ」

男友「任せとけ」

女委員長「今度なんか奢ってね」

男「わかってる」

女委員長「ドラゴン、なんか話したら?」ヒソヒソ

ドラゴン「な、何話せばいいのよ」ヒソヒソ

男「ん?」

男友「気にすんな、お前には関係ないから」

男「何の話かくらい教えてくれよ」

女委員長「女の子の話を聞こうとする訳?」

男「……」

女委員長「わかった?」

男「男友はいいのか?」

女委員長「こいつは普通に聞いてるからキモいんじゃない」

男「ああ、納得」

男友「納得すんな!!」

女委員長「とにかく話しなさいよ」ヒソヒソ

ドラゴン「家で話すよう努力する」ヒソヒソ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夕方  男の部屋


男「……」

男「岐阜の山奥の村か……どんな場所なんだろうな」

母「あら、出掛けるの?」

男「……勝手に入るなって言わなかったか」

母「あら、ごめんなさいね」

男「今週末出掛けてくるから」

母「ドラゴンの母親の故郷に行ってくるの?」

男「……何で知ってるんだ?」

母「さて、何ででしょう」ニッコリ

男「聞いてるのはこっちなんだけど」

母「そんなに怖い顔しないでよ。ドラゴンの母親の故郷の場所が岐阜だって事は知ってたのよ」

男「そうなのか……」

母「でも、詳しい場所は分かってないんでしょ。どうするの?」

男「調べる」

母「……そう」

男「金曜日に出掛けるけど、帰りは何時になるか分からないから」

母「どんなの遅くなっても日曜日の夜には帰ってきなさいね」

男「分かってる」

母「ならいいわ」

男「母さんは何も知らないのか?」

母「ええ。私だって知らない事はたくさんあるわよ」

男「……」

母「……あなた達がうまく行けば竜と人間の歴史に新しい一ページを刻めるかもしれないから」

男「どういう事?」

母「そのままの意味よ。あなたとドラゴンはそれだけ重要なの」

男「……」

母「気付いてないかもしれないけど今回の件ではもの凄い数の人間の思惑が交差してるわ」

男「竜人とか?」

母「いえ、竜だけじゃなくて人間の思惑もよ」

母「気をつけておいた方がいいわよ」

男「……分かってる」

母「なら安心ね」

母「……入ってきたら?」

男「え?」


ガチャ


ドラゴン「……」

母「私の話は終わったから。後は若い二人で話したら」スタスタ

母「じゃあね。夕飯になったら呼ぶわ」ガチャ

男「……何の用?」

ドラゴン「いや、別に用ってほどじゃないんだけど、なんとなく」

男「?」

ドラゴン「男はさ、何が好きなの?」

男「……は?」

今日はここまでです。

すいませんが今日は忙しくて投下できません。

明日多めに投下します。

ドラゴン「いや、別に変な意味じゃなくて、好きな物とか趣味って無いのって事」

男「好きな物や趣味……」

男「……やっぱり竜かな」

ドラゴン「……竜以外には趣味とか好きな物ってないの?」

男「……無い、様な気がする」

ドラゴン「……」

男「……」

ドラゴン「本当に竜バカね」

男「うるせぇよ」

ドラゴン「でも、そう言うのもありかな」

男「何が?」

ドラゴン「一つの事だけを見て、それだけの為に全力を尽くすって事」

男「……なんか、今日変じゃね?」

ドラゴン「ど、どの辺が?」

男「いや、全体的になんかおかしくね?」

ドラゴン「……よく意味が分かんないんだけど」

男「……」

ドラゴン「趣味が無くても楽しそうだしね」

男「いや、別に趣味が無い訳じゃないぞ」

ドラゴン「そうなの?」

男「ああ、昔は剣道とかやってた時期もあったし」

ドラゴン「強いの?」

男「いや、強くは無いけど」

ドラゴン「……ダメじゃない」

男「剣の使い方が自己流過ぎてダメって言われたんだ」

ドラゴン「な、何その理由……」フフフッ

男「別に下手な訳じゃないぞ」

ドラゴン「分かった分かった」

男「お前にもそのうち見せてやるから」

ドラゴン「……楽しみにしておくわ」

男「多分、男友くらいなら倒せるぞ」

ドラゴン「隊長かメイドを倒せるようになってから自慢しなさいよ」

男「それは……」

ドラゴン「ふふっ……」

男「笑ってんじゃねぇよ」

ドラゴン「ごめんごめん。今度ちゃんと見てあげるわよ」

男「約束だぞ」

ドラゴン「ええ、約束ね」

男「……」

ドラゴン「……」

ドラゴン「男……あなたは私の事どう思う?」

男「それは、どういう意味?」

ドラゴン「あなたが思った意味でいいわ。どう思う?」

男「……どう思うって、いきなり言われてもな……」

ドラゴン「……」

男「別に……なんて言えばいいんだろうな……」

ドラゴン「……まあ、いいわ」

男「……」

ドラゴン「また今度、しっかり考えてから教えて」

男「お、おお。分かった」

ドラゴン「……じゃあ、少し部屋に戻るわね」スタスタ

男「……お、お前は俺の事どう思ってるんだ?」

ドラゴン「……私? 私は男の事、好きだよ」ガチャ

男「え……は!?」

ドラゴン「……じゃあ」スタスタ

男「ちょっと待て!!」ガチャ


だがドラゴンはもう自分の部屋に入ってしまっていた。


男「……」

男「え、どういう意味?」

男「もしかして、告白……?」

男「……」

男「こう言う時ってどうすりゃいいんだよ……」

男「追いかけて行ってもいいもんなのか?」

男「……」

男「どうすりゃいいんだよ!!」

メイド「うるさいですよ」

男「……」

男「何なんだよ!!」

男「何なんだよ……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日 学校  校舎裏


女委員長「……大胆ね」

ドラゴン「私も自分で言って後悔してるわ……」

女委員長「でも、珍しいわね。そんな積極的なタイプじゃないでしょ」

ドラゴン「ええ、私も何で言っちゃったのかよくわからない」

女委員長「あ、そう……でも、まあよかったんじゃない。いろいろと」

ドラゴン「そ、そうかな」

女委員長「あのままじゃどうせ言えないでしょ」

ドラゴン「……た、確かにそうだけど」

女委員長「なら丁度良かったんじゃない?」

男友「でも、本当にうまくいくのか?」

ドラゴン「……何時からいたの?」

男友「だいたい全部聞いてた」

女委員長「何普通に話に割り込んでるのよ」

男友「……」

女委員長「……で、何が言いたいの?」

男友「男は鈍感なのと同時にヘタレだぞ。忘れたのか?」

女委員長「それが?」

男友「ドラゴンに返事出来るのか? と言うかまず返事するのか?」

女委員長「するでしょ。ていうかしないなら殴るわよ」

ドラゴン「……どうするんだろ」

男友「あいつの事だから先延ばししそうな気がするんだけど、どう思う?」

ドラゴン「……そんな気がする」

女委員長「男友。男にかまかけられる?」

男友「ああ、女委員長はさすがに話が分かるな」

ドラゴン「絶対バレないでね」

女委員長「バレたら殴るからね」

男友「え、でもそれじゃご褒美じゃ――――」


その言葉が言い終わる前に女委員長の蹴りが男友の大事な部分を捉える。


男友「あう……」

女委員長「ならこれが報酬でいいかしら?」

男友「……わ、わかった……」

女委員長「あんた今までで一番気持ち悪いわよ」

男友「わかってる……」

女委員長「自覚はあるのね」

男友「あるに決まってんだろ」

女委員長「……」

男友「じゃあ行ってくるから」

女委員長「分かってるわよね?」

男友「絶対バレるなだろ。分かってるよ」

ドラゴン「お願いね」

男友「はいはい」スタスタ

男友「……」スタスタ

男「あ、おはよう」スタスタ

男友「おはよう」

男「なあ、少し聞いてほしい事があるんだけど、いいか?」

男友「……あ、別にいいぞ」

男友(かまかけなくても向こうから話してくるのか?)

男「……倉庫って開いてるよな」

今日はここまでです。

男友「多分な」

男「なら倉庫で話すか」

男友「わかった」

男「……」スタスタ

男友(何の話だろう)スタスタ

男「……」ガラガラ

男友「で、話って何だ?」

男「俺がいない間ドラゴンを頼みたい」

男友「……どういう意味?」

男「竜人は倒したけど、まだ完全に安全とは言えないだろ。だからさ……」

男友「別にいいけど、女委員長にも言っていいか?」

男「後から言おうと思ってた」

男友「話ってそれだけ?」

男「ああ」

男友(何だよ……結局かまかけなくちゃいけないじゃん)

男「?」

男友「まあ、お前がそう言う事内側にため込むタイプなのは知ってたし、いいんだけどさ」

男「え、何が?」

男友「……お前さ、ドラゴンと何かあった?」

男「は?」

男友「いや、別に理由は無いんだけどさ」

男「別に何にも無いけど」

男友「そうか」

男「なんでそんな事聞くんだ?」

男友「いや、なんかドラゴンの様子がいつもと違ったからさ」

男「……具体的にはどういう風に?」

男友「なんて言うか、ソワソワしてるみたいな感じ」

男「……」

男友「なんだ、お前が原因じゃないのか」

男「……誰にも言わないって約束してくれないか?」

男友「……内容によるかな」

男「絶対だ」

男友「……分かったよ」

男「昨日、ドラゴンに告白された」

男友「……それで?」

男「驚かないのか?」

男友「いや、驚いてるよ」

男友(さっき聞いたし、そこまで驚いてないけど)

男「実は俺まだ返事をしてないんだ」

男友「でも、ドラゴンの事は好きなんだろ?」

男「……ああ、好きだ」

男友(いやに素直だな……)

男友「なら気持ちを伝えればいいだろ」

男「……」

男友「じゃあ聞くけど、お前はどうしたいんだ?」

男「正直迷ってるかな」

男友「迷ってる?」

男「あいつは竜で俺は人だろ」

男友「それが?」

男「ドラゴンは人間を嫌ってる。いくら俺が特別だって言っても、俺は人間だろ」

男友「……」

男「それにドラゴンには竜の姿に戻ってもらいたい」

男「だから、言わない方がいいんじゃないかって思うんだ」

男友「まあ、お前が言いたい事は分かるけど、お前はそれでいいのか?」

男「わかんねぇ。だから少し考えたいんだ」

男友「……」

男「言うなよ」

男友「言わないから」

男友「……じゃあ、先行くよ」

男「ああ」

男友「……」スタスタ

女委員長「何の話してたの?」

男友「言えない」

女委員長「……は?」

ドラゴン「どういう事?」

男友「男との約束なんだ。悪いけど言えない」

女委員長「本気で言ってるの?」

男友「男と男の熱い約束――――」


男友の顔面に女委員長の蹴りが襲う。


女委員長「あんた何言ってんの?」

男友「蹴りたきゃ蹴ればいいだろ。て言うか蹴って下さい!!」

女委員長「……キモい」

男友「……ドラゴン、本当に悪いんだけど、男に考える時間をあげてくれ」

ドラゴン「……分かったわ」

男友「あいつもあいつなりに悩んでるんだ」

男友「あと、男がいない間ドラゴンを頼むだってさ」

女委員長「言われなくても分かってるわよ」

ドラゴン「……いろいろありがとう」

女委員長「いいのよ。友達じゃない」

男友「少しだけ待ってやってくれ」

ドラゴン「……わかった」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


金曜日   朝


男「じゃあ、行ってくる」

母「行ってらっしゃい」

メイド「気をつけて下さいね」

男「分かってるよ」

ドラゴン「何かあったら教えてね」

男「ああ」

隊長「そろそろ行くか」

男「はい」

母「気をつけてね」

男「分かってるって」

メイド「男さんに何かあったら許しませんからね」

隊長「任せろ」

男「じゃあ、行ってきます」スタスタ

隊長「車はもう準備してある。途中で学者を乗せて、目的地に向かうぞ」

男「分かりました」

男「……これで何かが分かるんですかね」スタスタ

隊長「さあな。それにお前が望んだものじゃないかもしれないしな」スタスタ

男「……」スタスタ

隊長「考えるのは後にしろ」スタスタ

男「……はい、わかってます」スタスタ

隊長「そこの車だ。乗れ」


隊長の呼びさした車は黒の軽自動車だった。


男「学者さんとはどこで合流するんですか」

隊長「研究所だ」

男「そうですか」

隊長「忙しいのに来てくれるんだ。さすがに迎えに行くべきだろ」

男「隊長もそう言う事考えてるんですね」

隊長「まるで私が考えていない様な言い方だな」

男「いえ、別にそう言う意味では無いですけど……」

隊長「まあいい。さっさと乗れ」

男「はい」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


研究所


学者「おはようございます」

隊長「おはよう。じゃあ早速行くぞ」

学者「はい。もう準備は出来ていますから」

男「すいませんね。いろいろ手伝ってもらって」

学者「いいんですよ。私も竜については知りたいですしね」

男「そうですか」

学者「はい、ですから気にしないで下さい」

隊長「おい、さっさと乗れ。ただでさえ忙しい旅なんだ」

男「あ、はい」

学者「じゃあ男さんは助手席に乗って下さい」

男「はい」


俺は言われたとおり、車の助手席に乗る。


隊長「じゃあ行くぞ」

隊長「到着予定は昼……いや、夕方くらいだろうな」

男「泊まる場所とかってどうなってるんですか?」

隊長「一応旅館を予約してあるが、そこまでいい場所では無いぞ。それにのんびり寝ていられる時間があるかどうかも怪しい」

男「そうですよね」

学者「私のせいでかなり過密なスケジュールになってしまいましたね。すいません」

男「別に学者さんのせいじゃないですから、気にしないで下さい」

隊長「ああ、私もそんなに暇じゃ無いんだ」

学者「そうでしたか」

隊長「お前等、少し寝ておけ」

男「え?」

隊長「これからは満足に睡眠時間がとれるかどうかも分からんからな、今の内に寝ておけ」

男「でも、隊長は大丈夫なんですか?」

隊長「特別部隊の隊長と普通の学生を同じものさしで測るな」

男「すいません」

隊長「とにかく寝ておけ。学者もな」

学者「では、お言葉に甘えさせていただきます……」

男「お願いします……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


岐阜県のとある村    夕方


男「……ん?」

隊長「着いたぞ」

男「……あ、そうですか」

隊長「しっかりしろ」

男「はい……それにしても、ずいぶん田舎ですね」

学者「ええ、田んぼと畑と森しか無いですね」

隊長「それだけ家も少ないんだ。探すのは多少楽だろう」

男「だといいんですけど」

隊長「とりあえず情報集めだな」

学者「手分けしてやりましょうか」

男「そうですね」

隊長「旅館の場所はここだ。覚えておけよ」スッ

男「あ、はい」

隊長「じゃあ二時間後に旅館に一旦集合でいいか?」

男「俺はいいですけど」

学者「構いませんよ」

今日はここまでです。

男「じゃあまた後で」スタスタ

男「……」

男(とは言っても、人もいないしな……)

男「こんな田舎に人なんかいるのかな……」

村人「あんた、見慣れない顔だね」

男「え……あ……はい。ちょっと人探しに来てて」

村人「人探し。で、誰を探してるんだい?」

男「え、えーと……」

男(そう言えば名前も顔も何も分かんないんだった……)

男「二十年くらい前にこの町から出て行った女性が居たと思うんですけど……」

村人「二十年前?」

男「だいたいそれくらいだと思います」

村人「二十年も昔か……」

男「やっぱり分かりませんかね」

村人「……あ、なら老人さんに聞いてみたらどうかな」

男「老人さん?」

村人「ああ、この村で一番長生きのお爺さんだよ」

男「何歳ですか?」

村人「えーと、もうそろそろ九十歳じゃなかったかな」

男「二十年前は七十歳か……」

村人「あの人は村の事はだいたい記憶してるからね。もしかしたら知ってるかもしれないね」

男「ど、何処にいるんですか?」

村人「この先の少し大きめの家に住んでるよ」

男「はい」

村人「優しい人だからすぐ教えてくれると思うよ」

男「いろいろありがとうございます」

村人「いやいや、助け合いって言うのは重要だからね」

男「ありがとうございます」

村人「じゃあ、また会ったら声かけてね」スタスタ

男「はい」

男「……」

男「初っ端からいい情報手に入れられたな」

男「このまま行けばすぐ分かるんじゃないか?」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


交番


隊長「……そうか」

警官「はい、やっぱり資料には残っていませんね」

隊長「さすがに情報が残ってるなんて事は無いか」

警官「遠くから来ていただいたのに、すいませんね」

隊長「いや、お前が謝る事じゃないさ」

警官「……はい、すいません」

隊長「そう言うのを知っていそうな人間はいないか?」

警官「そうですね……老人と言うおじいさんが、一番知っていそうですかね」

隊長「何者なんだ。その老人と言うのは」

警官「私にも分かりませんが、ずいぶん昔からこの村に住んでいるようですね」

隊長「……」

警官「あと、村についての事はかなり知っているみたいですね」

隊長「そうか」

警官「……これくらいですかね」

隊長「ありがとう」

警官「いえ、これくらいのお力にしかなれず、すいません」

隊長「十分だ」

隊長「……」


私は交番の外に止まっている派手な車を見た。


隊長「あれはなんだ?」

警官「地元のチンピラですかね」

隊長「……」

警官「最近よく、この辺りをうろうろしているんです」

隊長「そうか……」

警官「かなりやんちゃな連中ですから、注意して下さいね」

隊長「ああ、わかった」

隊長「邪魔したな」

警官「いえ、構いませんよ」

隊長「……」スタスタ

隊長(明らかに私に目をつけてるな……)

隊長「私だけが狙われているのか?」スタスタ


プルルルルルル


隊長「なんだ?」ピッ

学者『すいません。少しお話したい事があるんで来ていただけますか?』

隊長「私は構わないが」

学者『じゃあ、一時間後に旅館近くの公園に来てもらえますか?』

隊長「わかった」

学者『お願いしますね』ピッ

隊長「……」

隊長「ん?」


さっきまで止まっていた派手な車はすでに居なくなっていた。


隊長「……」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


老人の家


男「こんにちは」

男「……」

男「留守なのかな……」

男「こんにちは!!」

老人「聞こえておる」スタスタ


そこに立っていたのは作務衣を着た白髪の年老いた男だった。
腰が僅かに曲がっているが、それでも到底九十歳を超えているようには見えない。



男「……なら返事くらいしてくれよ」ボソッ

老人「何か言ったかな?」

男「いえ、何も」

老人「トイレにおったんだ。返事など出来るはずがなかろう」

男「聞こえてたのかよ……」

老人「悪いが地獄耳でな。ひひひっ」

男「……」

男(想像してた感じの人とだいぶ違うんだけど……)

老人「で、お前は見かけない顔だな」

男「ああ、人探しの為に来たんだ」

老人「人探し?」

男「二十年くらい前までこの町にいた女性が居たと思うんだけど……」

老人「ずいぶん昔の話だな」

男「村の人に聞いたらあんたが詳しいって聞いたからさ」

老人「そんな昔の事はすぐには分からんぞ……」

男「時間があれば分かるのか?」

老人「記憶の何処かに必ずあるからな。思い出そうとすればいつか思い出せる」

男「……いつかっていつだよ」

老人「まあ、少し待て」

男「……」

老人「……」

老人「所でお前は何のためにそれを調べておるのだ?」

男「好きな奴の願いを叶えるためだよ」

老人「……ひひひっ。最近のガキはずいぶんと臭い台詞を吐くんだな」

男「うるせぇよ。さっさと思い出せ」

老人「年寄りは大切にした方がいいぞ。後で泣きたくないならな」

男「……」

老人「素直だな……ひひっ」

男(何なんだよ……このじいさん……)

老人「思い出した」

男「ほ、本当か?」

老人「そこまでしっかりではないが、確かに二十年前に出て行った女性は居た」

男「その人の家は何処だ?」

老人「そう焦るな」

男「……」

老人「悪いが、この村にいた事は覚えておるが。何処の家の者かは覚えておらん」

男「そ、そうか……」

老人「だが、だいたいの位置は分かる」

男「ほ、本当か!?」

老人「あくまでどの辺りか、だけだがな」

男「十分だよ。それだけ分かれば」

老人「今日の夜にこの家に来てくれるか?」

男「今じゃダメか?」

老人「少し準備したいものがある」

男「……分かった」

老人「では、今日の夜に」

男「ああ」

男「……」スタスタ


プルルルルルルル


男「え、学者さん?」ピッ

学者『今、大丈夫ですか?』

男「大丈夫ですけど……」

学者『悪いんですけど、ホテルの近くの公園に来てくれませんか?』

男「べ、別にいいですけど……」

学者『じゃあ、今すぐ来てくれますか?』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


公園


男「あれ、隊長も呼ばれてたんですか」

隊長「ああ、お前もか?」

男「はい」

隊長「学者は何処だ?」

男「俺も知らないです」

隊長「……そうか」

男「ここに来いとだけ言われて来たんで」

隊長「私もそうだ」

学者「すいません。遅れました」スタスタ

隊長「別にいい。ただ何の用で呼びだしたんだ?」

学者「少し、分かった事がありまして」

隊長「分かった事?」

学者「はい、どうやらこの村は何度か竜の襲撃を受けているようなんです」

今日はここまでです。

このまま行けば多分次スレにはいかいないとも思います。

男「え?」

学者「いえ、襲撃を受けたのはそれこそ数百年前です。ただ、それでも村のあちこちにその後が残ってるんです」

隊長「数百年も残るのか?」

学者「見た目の変化は無くても特殊な道具を使えば分かるんです」

男「凄いんだな……」

学者「それほど竜の力が絶大だと言う事ですよ」

男「……」

隊長「それがどうかしたのか?」

学者「この土地と竜は少なからず関わりがあった。と言う事です」

隊長「気にはなるな」

男(……竜王はその事を知ってたのか?)

隊長「お前は何か収穫はあったか?」

男「はい。老人と言う人に会ってきました」

隊長「……そうか」

男「隊長も聞きましたか?」

隊長「ああ。だがお前が行ったなら私が行く必要は無いな」

男「そうですね」

隊長「で、何か分かったのか?」

男「はい。今日の夜にまた行って更に詳しい事を聞く事になってます」

隊長「そうか」

隊長「……」

男「どうしました?」

隊長「いや、何でもない」

隊長(あの派手な車……交番にも停まってたな)

男「これからどうしますか?」

隊長「一旦旅館で待機でいいだろ」

男「え、でも調べものとか大丈夫ですか?」

隊長「下手に動きまわる必要は無い。今ある情報を一旦まとめるぞ」

学者「私もそれには賛成です」

男「わ、わかりました」

隊長「じゃあ、戻るぞ」

男「はい」

学者「わかりました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


旅館


男「終わった……」

隊長「今の所謎なのは何でこんな村を竜が襲ったかくらいだな」

学者「そうですね。よほどの事じゃないとここまで徹底的に攻撃される事は無いと思いますし」

男「後で老人に聞いてみます」

学者「悪いがそうしてくれ」

男「……まだ少し時間がありますね」

隊長「風呂にでも入って来い」

男「あるんですか?」

隊長「ここは旅館だぞ。あるに決まってるだろ」

男「でも、いいんですか?」

学者「時間もありますし、少しゆっくりしてきて下さい」

男「あ、はい……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男湯


男「……」

男「……ドラゴン今頃何してるんだろうな……」

学者「意外と大きなお風呂ですね」ガラガラ

男「……」

学者「あ、一緒に入るのは嫌でしたか?」

男「いえ、別にいいですよ」

学者「あなたとは一度二人で話してみたかったので」

男「何でですか?」

学者「なんでそこまで頑張るのかですよ」

男「?」

学者「世間的に見ても竜と言うのはあまり良い印象を持たれていない。ですがあなたは竜の為に尽力している。何故ですか?」

男「何故って言われても……」

学者「直感的、と言う事ですか?」

男「まあ、そんな感じになるのかな。強いて言うならドラゴンの事好きだからかもしれないけど」

男「俺も聞いてもいいですか?」

学者「はい。構いませんよ」

男「あなたはなんで竜の研究を?」

学者「……竜の事を知りたいからです」

男「……」

学者「それだけの理由ですよ」

男「俺に近いんだな」

学者「いえ、男さんとは違いますよ」

男「え?」

学者「私と男さんとでは求めるものが百八十度違います」

男「……」

学者「安心して下さい。研究者として私は決して嘘は付きませんから」

男「……わかった」

男「じゃあ俺出ますね」スタスタ

学者「ああ」

学者「……彼の信念も固いですね」

男「……」スタスタ


俺は素早く服を着替え、温泉を後にする。


男「そろそろ時間だな」スタスタ

男「……」ガラッ

猫「に、にゃー」

隊長「……そう怯えるな。かつお節いるか?」

猫「……」

隊長「じゃあ煮干がいいのか?」

猫「にゃー」

隊長「そうか。お前頭がいいな」ナデナデ

猫「……」ゴロゴロ

隊長「……」ニコニコ

男(なんて邪気の無い笑顔……)

隊長「ほら、さっさと食え」

男「……あの」

隊長「……」

今日はここまでです

男「隊長?」

隊長「なんだ?」

男「風呂出たんですけど」

隊長「わざわざ報告しにきたのか?」

男「いや、そろそろ出掛けようかと思って」

隊長「行ってこればいいだろ」

男「……その猫はなんですか?」

隊長「窓から入って来たんだ」

男「そ、そうですか」

隊長「この辺りに住んでいる猫か?」

男「いや、俺には分かりませんけど」

隊長「そうか……」

男「あの……」

隊長「なんだ」

男「いえ、何でもないです」

隊長「なら言うな」

男「すいません」

男「じゃあ、行ってきますね」

隊長「ああ」

男「……」

隊長「……」

隊長「何か言いたい事があるならさっさと言え」

男「隊長こそ、何か言いたそうな顔してるじゃないですか」

隊長「別に言う事は無い」

男「……そうですか」

隊長「もし誰かに言えば殺す」

男「……はい?」

隊長「忠告はしたからな」

男「……」

隊長「言わなければ何も起きない」

男「わかりました……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


老人の家


老人「やっと来たか」

男「ちょっといろいろあってな」

老人「ほれ、昔の地図だ」

男「……カビ生えてんじゃん」

老人「だから昔の地図だと言っておるだろうが」

男「で、これが何?」

老人「お前の探してる人が住んでいた地域はこの辺りだ」

男「……いや、指差されても分かんないんだけど」

老人「お前達が今いる旅館の辺りだよ」

男「あ、あの辺りか……」

老人「あの辺りの何処かに住んでいるはずなんだ」

男「詳しくわからねぇか?」

老人「昔の事だからな。記憶が曖昧なんだ」

男「……」

男「聞きたい事があるんだけど、いいか?」

老人「ああ、答えられるかどうかは分からんがな」

男「ずっと昔ここを竜が襲った事があっただろ。なんでか知ってるか?」

老人「……知っておる」

男「教えてくれるか?」

老人「普通なら教えられないが、お前なら……」

老人「……そうだな、お前なら構わんだろ」

男「……」

老人「この村は数百年前竜殺しの村と呼ばれておった」

男「竜殺しの村?」

老人「そうだ。この村には多くの竜殺しが住んでおったのだ」

男「……」

老人「それが竜にバレてな。しかも昔は今よりも更に竜と人間の仲が悪かったから……」

男「最悪の事態が起こったのか?」

老人「その通りだ」

老人「あの襲撃以来竜殺しの村は事実上消滅し、今の村が出来上がった」

男「この事を知ってるのはどれくらいいるんだ?」

老人「この村に数人いるかいないかだな」

男「そんなに少ないのか……」

老人「基本的によそ者には教えられないのだが、お前が竜殺しだったから特別に話したんだ」

男「……」

老人「間違っておるか?」

男「いや、間違ってない」

老人「やはりな」

男「なんで分かったんだ?」

老人「長年の勘だ」

男「もしかしてあんたも……」

老人「そうだ。この村には竜殺しの村の生き残りの子孫たちがまだおるからの」

男「……」

老人「お前に話せるのはこれくらいだな」

男「ありがとう」

今日はここまでです。

老人「礼はいい。ワシも年だしこれくらいしかできないからな」

男「十分だよ。十分」

老人「じゃあ、ワシはそろそろ寝る」

男「早いな」

老人「年寄りはすぐ眠くなるんだ」

男「いろいろありがとな」

老人「気にするな」

男「じゃあ、おやすみなさい」スタスタ

老人「ああ、おやすみ」スタスタ

男「……」ガチャ

老人「若いな……」

老人「答えまでたどりつけるかな?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日    旅館


男「じゃあ手分けして探しましょうか」

隊長「ああ」

学者「わかりました」

男「俺はこっち側を探しますから隊長と学者さんはあっち側を調べて下さい」

隊長「ああ。分かったらちゃんと電話してくれよ」

男「分かってますって」

学者「じゃあまた後でね」スタスタ

男「はい。また後で」

隊長「ちゃんと連絡してくるんだぞ」スタスタ

男「だからちゃんとしますって」

男「じゃあ、俺も探しに行くかな」スタスタ


だが、一時間ほど辺りの人に聞き込みをしたが有力な話を聞く事は出来なかった。

男「ダメだ……全然わかんねぇ……」

男「隊長達からの連絡もないし、どうしようかな」

男「……とりあえずもう少し探してみるか」

男「……」スタスタ

猫「にゃーん」

男「あれ、お前って隊長に餌貰ってた猫か?」

猫「にゃーん」

男「……」

猫「にゃー」スタスタ

男「付いて来いって意味か?」

猫「にゃーん」

男「……」スタスタ

おばあさん「おや、今日もご飯がほしいのかい?」

猫「にゃー」

男「なんだよ……」

おばあさん「おや、あなたは?」

男「あ、いえ。ちょっとこの辺りでいろいろ探してて」

おばあさん「いろいろってなんだい?」

男「その、二十年前までこの辺りに女性が住んでたと思うんだけど……」

おばあさん「……名前はわかるかい?」

男「え?」

おばあさん「その女性の名前は分かるかい?」

男「いや、分かんないけど」

おばあさん「名前は女だよ」

男「……知ってるのか?」

おばあさん「ああ、知ってるよ」

男「教えてくれないか?」

おばあさん「……いいよ」

男「……」

おばあさん「少し来てくれるかい?」

男「ああ、いいよ」

おばあさん「……」スタスタ

男「ここは?」

おばあさん「私の家だよ。お茶でも飲みながら話をしようかね」

男「長くなるのか?」

おばあさん「少し長くなるかもね」

男「……」

おばあさん「時間は大丈夫かい?」

男「ああ」

男(なんでこんなにすんなり教えてくれるんだ?)

おばあさん「まさかあなたから訊ねて来るなんてね」

男「え?」

おばあさん「竜王さん」

男「え、は!?」

おばあさん「あなたと会うのも久しいね」

男「ぼ、ボケてる……?」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


眼鏡「女の人、ですか」

隊長「ああ、二十年前に出て行ったらしいんだが、知らないか?」

眼鏡「……多分。私の姉だと思います」

隊長「お前の?」

眼鏡「はい、記憶が曖昧で私自身も覚えていませんが、居たそうです」

隊長「本当だな?」

眼鏡「はい。本当です」

隊長「……詳しく聞きたいんだが、いいか?」

眼鏡「ええ、構いませんよ。ただ場所を変えてもよろしいですか?」

隊長「構わんが、なんでだ?」

眼鏡「母がボケているので」

隊長「そうだったのか。忙しいのにすまないな」

眼鏡「いえ、別にいいんです」

眼鏡「じゃあ行きましょうか」

隊長「……少し待ってくれ。他の奴も呼んでいいか?」

眼鏡「構いませんよ」

隊長「すまないな」ピッ


プルルルルル


学者『何か分かりましたか?』

隊長「ああ、その女性の弟らしき人にあった」

学者『ほ、本当ですか!?』

隊長「ああ。まだ私達が探してる人かどうかは分からんがな」

学者『場所は?』

隊長「場所は……何処だ?」

眼鏡「タバコ屋の奥の家です」

隊長「……だ、そうだ」

学者『わかりました。すぐに行きますね』

隊長「ああ、頼む」スタスタ

隊長「後は男か……」


プルルルルルル


隊長「……出ないか」

眼鏡「どうしますか?」

隊長「後で気付くだろ。連れて行ってくれるか?」

眼鏡「分かりました」

隊長「……」

眼鏡「どうしました?」

隊長「いや、誰かに見られてる気がしてな」

眼鏡「……気のせいだと思いますけど」

隊長「そうだな、すまない」

眼鏡「じゃあ行きましょうか」

隊長「ああ、案内してくれ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


おばあさんの家


男「で、その女さんはなんで居なくなったんですか?」

おばあさん「女は私の娘だった。しっかりした子でね、何でも自分一人でこなせる子だった」

男「……」

おばあさん「でも二十歳を過ぎたくらいに、結婚したいって言いだした」

男「それが竜王?」

おばあさん「そう、竜王さんだよ」

おばあさん「あれ、でもあなたも竜王さんじゃないのかい?」

男「違うよ。俺は男」

おばあさん「男? 聞いた事ないね」

男「そりゃそうだろ。今日会ったばっかりなんだから」

おばあさん「おや、そうだったかい」

男「……本当に大丈夫かな」

おばあさん「あ、お茶を出してなかったね」スタスタ

男「あ、お構いなく」

おばあさん「……で、どの辺りまで話したかね?」

男「女さんが竜王と結婚したいって言った所までです」

おばあさん「女は今頃どうしてるんだろうね……」

男「……」

眼鏡「ただいま……あれ?」

隊長「なんでお前が?」

男「あ、すいません。連絡忘れてました……」

隊長「……お前」

男「本当にすいません」

男「そういえば学者さんは?」

隊長「まだ来てないみたいだな」

眼鏡「あなたは母から話を聞いていたんですか?」

男「あ、はい」

おばあさん「男さんと言う人らしいよ」

隊長「学者は来てないが、話してくれないか?」

眼鏡「いいんですか?」

隊長「構わん」

今日はここまでです。

眼鏡「男さんは何処まで話を聞きましたか?」

男「女さんが竜王と結婚したいって言い出した所までです」

隊長「最初から話してくれるか?」

眼鏡「わかりました」

眼鏡「女は私の姉です。確か十歳くらい離れてたと思います……」

男「あんた今いくつ?」

眼鏡「二十八です」

隊長「話を逸らすな」

男「すいません……」

眼鏡「姉が出て行ったのはだいたい十九年くらい前だと思います」

隊長「だいたいドラゴンが生まれる一年くらい前か」

眼鏡「竜王さんと言う人と駆け落ちしたと聞いてます」

隊長「今はどうしているか知ってるのか……」

眼鏡「いえ、今は何処でどうしているのかも知りません」

おばあさん「そのうち帰ってくるよ。竜王さんとの子供を連れてね」

男「……」

おばあさん「あんなに反対したんだ。帰って来辛くもなるよ」

眼鏡「ええ。あの時は村全体で反対してましたから」

隊長「なんでだ?」

眼鏡「村の一部の年寄りが猛反対しましてね」

男「なんだそれ」

眼鏡「理由は分かりませんが。物凄く反対したんです」

男「……それで駆け落ちを?」

眼鏡「みたいですね」

隊長「反対したのは一部じゃないのか?」

眼鏡「村の有力者ですからね。みんな下手な事言えないんですよ」

隊長「厄介だな……」

眼鏡「人口の少ない村では人と人との繋がりが強いですから」

男「下手な事言ったら村に住んでる人との関係にも影響するのか」

眼鏡「はい。それも嫌ってほど」

学者「すいません。遅くなりました」スタスタ

隊長「何してたんだ」

学者「道に迷ってしまって……」

眼鏡「田舎は田んぼが多いですからね。都会の人には分かり辛いですよね」

隊長「そう言うもんか?」

学者「普段外出しない分こういうのに慣れてないんです。すいません」

眼鏡「私が分かるのはここまでです」

隊長「男。学者に説明してやれ」

男「あ、はい」


俺は学者に今聞いた話をする。


学者「この家って倉庫みたいなものってありますか?」

眼鏡「外にありますよ」

学者「調べてもいいですかね?」

眼鏡「構いませんよ」

隊長「どうかしたのか?」

学者「いえ、何かあるかもしれないと思って」

男「まあ、確かに」

隊長「……そうだな」

学者「じゃあ調べてみます」

隊長「私達も手伝うぞ」

学者「ありがとうございます」

男「よし、やるか」

学者「ゴミ付いてますよ」ヒョイッ

男「あ、すいません……」

隊長「何と言うか……締まらんな」

男「すいません」

隊長「まあいい。探すぞ」

学者「はい」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


倉庫


眼鏡「僕達もほとんど入った事が無いんで何があるかは本当に分かりません」

隊長「自分の家なのにか?」

眼鏡「家から切り離されてますからほとんど使わないんですよ」

隊長「……まあ、確かにな」

男「あのおばあさんもですか?」

眼鏡「ええ。特に二階なんて何十年誰も入って無いんじゃないですかね」

隊長「そこまで入らなくなるものか?」

眼鏡「はい。私の母や父だけじゃなくて祖父や祖母も倉庫に入るのを避けてたんですよ」

男「……不思議ですね」

眼鏡「ええ。今思えばそうですね」

隊長「とにかく調べてみるぞ」

学者「それが手っ取り早いですね」

男「そうですね」

今日はここまでです

男「じゃあ、俺と隊長で二階を探しますね」

学者「お願いします」

男「……」スタスタ

隊長「どうした。怖いのか?」

男「何がですか?」

隊長「本当の事を知るのが怖いんだろ」

男「……まあ、はい」

隊長「気持ちは分かるが、今は何も考えるな」

男「……」

隊長「今は探す事だけを考えろ、いいな?」

男「はい」


俺は倉庫の二階を手当たり次第に探し始めた。


隊長「どうだ」

男「訳の分からないガラクタばっかりですね」

隊長「こっちも同じだ。ガラクタしかない」

隊長「……なんだこれ?」

男「どうしたんですか?」

隊長「いや、やけに大きい箱があってな」

男「開けられますか?」

隊長「ああ」パカッ

男「……本?」

隊長「本というより書物だな。しかもずいぶん古いな」

男「……」パラパラ


『我が家の家系は特殊な竜殺しの家系である。
 その能力は他と比べても使いどころが難しく、注意が必要である。
 特に――――』


男「肝心な所が読めないな……」

隊長「だが、ドラゴンの母親が竜殺しだと言う事は確定だな」

男「そうですね」

隊長「他のも見てみるか」

男「はい」パラパラ


『この力は竜にしか効かない。
 そこだけは理解しておいてもらいたい。
 もし人間との間に子供をもうけてもそれはただの竜殺しの子供である』


男「?」

隊長「ますます意味が分からなくなってきたな」

男「いえ、竜とだったら子供に何かしらが起こるって事ですよね」

隊長「……」

男「隊長……」

隊長「まだ決めつけるには早過ぎるだろ。もう少し待て」

男「でもだいたい見当はついてるはずですよね」

隊長「……」

男「……」

隊長「いいから探せ。考えるのはそれからだ」

男「わかりました」パラパラ

男「ここじゃないですか?」

隊長「あったか?」


『竜殺しの力は竜の力を元から無力化する事。
 すなわち、竜の子供を竜で無くする事である。
 我が家系の血は竜と交わると特殊な反応をし、その者を人間に変える。
 それによって竜というものの数を減らしてきたのだ』


男「……やっぱり」

隊長「……」

学者「何か分かりましたか?」スタスタ

男「これ見て下さい」

隊長「……」

学者「……これは?」パラパラ

男「そこの箱に入ってました」

学者「そうですか」

男「こう言う事です」

学者「じゃああの検査は……」

男「竜殺しの何か、という事でしょうね」

学者「……凄い発見です」

男「ですね」

眼鏡「どうしました?」

隊長「この資料を借りてもいいか?」

眼鏡「え、構いませんよ」

隊長「じゃあ借りていくぞ。悪いな」

眼鏡「いえ、構いませんよ」

男「……」

隊長「男。もし――――」

男「帰りましょう。ドラゴンには俺が話します」

隊長「……いいのか?」

男「はい。俺が頼んだ事です。自分で伝えます」

隊長「じゃあ行くか」

学者「そうですね」

男「早く……知らせましょう」スタスタ

今日はここまです

眼鏡「もう行くんですか?」

隊長「ああ。いろいろ迷惑かけて悪かったな」

眼鏡「いえ、また何かあったら来てください」

隊長「ああ、いろいろ悪いな」

眼鏡「いえ、姉の事は僕も心配ですから」

学者「聞きたい事があったらここに電話して下さい」


学者は眼鏡に名刺を渡す。


眼鏡「あ、ありがとうございます」

男「……いろいろありがとうございました」

眼鏡「いえいえ」

男「……」

隊長「じゃあ行くか」

男「はい」

学者「そうですね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜    男の家の前


隊長「大丈夫か?」

男「……はい、いろいろご心配かけてすいません」

隊長「別に今日話す必要は無い。明日でもいいんだぞ」

男「いえ、今日話します」

隊長「……出来るか?」

男「出来ますよ」

隊長「じゃあ、また何かあったら教えてくれ」

男「わかりました」スタスタ

男「ただいま」ガチャ

メイド「あ、おかえりなさい。何か分かりましたか?」

男「ああ、いろいろな」

メイド「ドラゴンさんなら部屋に居ますよ」

男「分かった」

メイド「どうしたんですか。元気無いですね」

男「……気のせいだ」

メイド「そうですか?」

男「そうだよ」

男「……じゃあドラゴンの部屋に行ってくる」

メイド「あ、行ってらっしゃい……」

男「……」スタスタ

男「……」

男「入っていいか?」コンコン

ドラゴン「どうぞ」

男「久しぶり」ガチャ

ドラゴン「久しぶりって……昨日の朝に見送ったばっかじゃない」

男「俺の気持ち的には久しぶりなんだよ」

ドラゴン「あら、そう」

ドラゴン「……何か分かったの?」

男「……」

ドラゴン「……」

男「ああ、今聞くか?」

ドラゴン「ええ。今聞くわ」

男「まず、お前の母親は竜殺しだ」

ドラゴン「……」

男「で、お前が竜に慣れない理由は母親の竜殺しの能力が関係してる」

ドラゴン「どういう事?」

男「お前の母親の能力は竜と自分との間に生まれた子供を人間にする。つまり竜になるはずの子供を人間にしちまう能力だ」

ドラゴン「……本当?」

男「ああ、調べてきて分かった」

ドラゴン「治す方法は……」

男「今の所は無い」

ドラゴン「……」

男「……」

男「すまん……」

ドラゴン「謝らないで。別に男は悪く無いじゃない」

男「いや、俺が――――」

ドラゴン「謝らないで」

男「……」

ドラゴン「……悪いんだけど一人にしてくれない?」

男「……でも――――」

ドラゴン「あなたまで嫌いになりたくない」

男「……分かった」

ドラゴン「無茶言ってゴメン」

男「いや、別にいいよ」

ドラゴン「……」

ドラゴン「本当にゴメン。でも今は、無理」

男「……」ガチャ

今日はここまでです。

メイド「何があったんですか?」

男「……」

メイド「教えてもらえませんか?」

男「わかった」


俺はメイドにさっきドラゴンに話した事と同じ事を話した。


メイド「そうだったんですか」

男「ドラゴンは一人になりたいって……」

メイド「そうですか」

男「今はお前も入らない方がいいと思う」

メイド「分かりました」

メイド「男さんも今日は寝て下さい」

男「……ああ」

メイド「疲れてるんですからゆっくり休んで下さい」

男「……分かったよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日   朝


男「ドラゴン。起きてるか?」コンコン

男「……」

男「ドラゴン?」

ドラゴン「ごめん。まだ無理」

男「……」

男「わかったよ」スタスタ

母「大変な事になってるわね」

男「……」

母「メイドから聞いてるわよ」

男「あ、そう」

母「今はそっとしておいてあげた方がいいわ」

男「そのつもりだよ。俺少し出掛けてくるから」

母「行ってらっしゃい」

男「……」ガチャ

男友「おはよう」

男「……公園に来いって言っただろ」

男友「たまにはいいだろ。それとも女の子じゃないと嫌か?」

男「別にいいけどさ」

男友「じゃあそろそろ行こうぜ」スタスタ

男「ああ、そうだな」スタスタ

男友「明日から学校だな。面倒臭いな」スタスタ

男「また一週間学校に行かなくちゃいけないからな。大変だ」スタスタ

男友「だな」スタスタ

男友「……で、ドラゴンは来るのか?」スタスタ

男「え?」スタスタ

男友「ドラゴンは明日学校に来るのか?」スタスタ

男「なんでそんな事聞くんだ?」スタスタ

男友「お前と何年一緒に居ると思ってるんだよ。それくらい分かってるから」スタスタ

男「……来るかどうかはわかんねぇ。今は部屋にずっと閉じこもってる」スタスタ

男友「そうか……」スタスタ

女委員長「おはよう」

男「……おはよう」

女委員長「その調子だと、あんまりよくなかったのね」

男「ああ」


俺は女委員長と男友にあの事を話した。


女委員長「……で、あんたはこれからどうするの?」

男「どうって……何にも考えてないけど」

女委員長「このまま何もしないと不味いと思うけど」

男「それは俺もそう思うけど、どうすればいいかわかんねぇからさ……」

女委員長「それを今から考えるのよ」

男「……」

男友「分かってると思うけど部屋に引きこもってるときには何もするなよ」

男「そんな事十分分かってる」

女委員長「ドラゴンが部屋から出てきたらどうするつもりなの?」

男「……とりあえずこれからどうするか話してみる」

男友「そう言えばお前返事したのか?」

男「……」

男友「お前、してないな?」

男「……してない」

男友「なんで言ってないんだ?」

男「ドラゴンは竜で俺は人間だろ。だから――――」

女委員長「男、殴るわね」

男「え、は?」


俺の答えを聞かず女委員長の右手が俺の右頬をとらえる。


男友「いつまでそんな事言ってんだよ。今大事なのはお前の気持ちだろ」

男「……」

男友「ドラゴンが竜だからとかお前が人間だからとかそんな事はどうでもいだろ」

男「……そ、そうだな」

男友「お前の気持ちを素直に言えばいいんだよ」

男友「よし、じゃあ次は俺を殴ってくれ」

女委員長「死ね」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~


男の部屋


男「自分の気持ちか……」

男「……そんな事言ってもどうやって言えばいいんだよ」

男「ちゃんと聞いとくべきだったな……」


コンコン


男「勝手に入ってきていいぞ」

ドラゴン「……」ガチャ

男「……もう大丈夫か?」

ドラゴン「うん。だいぶ気持ちの整理が出来たから」

男「そうか。なら良かった」

ドラゴン「いろいろごめんね。あの時は余裕が無かったの」

男「謝らなくていい。全然気にしてないしさ」

ドラゴン「……ありがとう」

男「それにまだ治す方法があるかもしれない――――」

ドラゴン「てきとうな事言わないで……」

男「え?」

ドラゴン「まだ治す方法があるかもしれないなんててきとうな事言わないで!!」

男「でも、本当に治す方法が――――」

ドラゴン「その根拠は!?」

男「う……そ、それは……」

ドラゴン「そうやっててきとうな事言わないで……」

男「……」

ドラゴン「てきとうな事言って希望を持たせて、それが出来ないって分かったらどんな気持ちになると思ってるの?」

男「……ごめん」

ドラゴン「男にはこの気持ちは分かんないよ」

男「人間なんかにって事か?」

ドラゴン「……」

男「そう言う事か?」

ドラゴン「……そうよ。人間にこの気持ちは分からない」

男「聞きたかったんだけどお前が竜に戻りたい明確な理由って何だよ」

ドラゴン「私は気高く、誇り高い竜になりたいの。人間なんて嫌!!」

男「お前は竜になって人間を見下したいのかよ」

ドラゴン「別にそう言うつもりじゃない。ただ私は人間なんて――――」

男「見下してるだろ!! 誇り高い竜って……そんなに竜が偉いのかよ!!」

ドラゴン「……」

男「……お前は結局竜になりたいんじゃなくて人間をやめたいだけだろ!!」

ドラゴン「別に、そう言うつもりじゃ……」

男「はっきり言えよ!!」

ドラゴン「……やっぱりだね」

男「……何がだよ」

ドラゴン「やっぱり男は人間だよ」

男「……」

ドラゴン「別に間違ってるって事が言いたいんじゃない。ただ私と男は違うんだよ」

男「何が違うんだよ」

ドラゴン「全部……かな」

男「……」

ドラゴン「私、部屋に帰るね」ガチャ

男「勝手にしろ……」

男「……」

メイド「何かあったんですか?」ガチャ

男「知らん!!」

メイド「……何を怒ってるんですか?」

男「何も怒って無い!!」

メイド「いや、明らかに怒ってるじゃないですか」

男「怒って無い!!」

メイド「……」

男「何の用だよ」

メイド「ですからドラゴンさんと何かあったんですか?」

男「ちょっと、意見が食い違っただけだよ」

メイド「……本当に大丈夫なんですね?」

男「大丈夫だよ」

メイド「ならいいんです」スタスタ

男「ドラゴンの事なんだけど、もしかしたら明日学校行かないかもしれないからな」

メイド「……わかりました」

男「……」

メイド「……」ガチャ

男「何でこう上手くいかないんだよ……」

男「くそ……」

男「……」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日    公園


男「……」

男「はあ……」

おじさん「久しぶりだね」

男「おっさん……」

おじさん「学校……は休みかい?」

男「サボったんだよ」

おじさん「ははっ、やっぱりそうか」

男「……怒らないのか?」

おじさん「別にいいんじゃないかな。誰かに迷惑をかけてる訳じゃないし」

男「……」

おじさん「それにたまには遊んどかないと後で後悔するしね」

男「おっさんもそうなのか?」

おじさん「しなかったから後悔しっぱなしだよ」

男「……」

おじさん「もっと大人になればこの気持が分かるようになるさ」

男「だといいけどな」

おじさん「悩み事かい?」

男「……なんでそう思うんだ?」

おじさん「なんとなく、かな。多分ドラゴンって子の事だね」

男「……」

おじさん「昔を思い出しちゃってね」

男「昔?」

おじさん「妻と会った頃だよ。よく喧嘩したもんだ」

男「おっさんが?」

おじさん「昔はもう少し気性が荒かったから。よくぶつかりあっちゃったんだ」

男「……毎回仲直りしてたのか?」

おじさん「ああ。お互いに悪い所を反省して、次は同じ事で喧嘩しないようにしたんだ」

男「難しくないか?」

おじさん「難しいよ。でもそれくらいしないと種族の壁は越えられないんだ」

男「……聞きたいんだけど、おっさんは奥さんの事を何だと思って生きてるんだ?」

おじさん「難しい質問だね……」

男「聞いときたいんだ」

おじさん「基本的に彼女の事は種族とかそういう事は考えないで接してる」

男「……」

おじさん「でもたまにやっぱり竜なんだって思う事もあるよ」

男「そういう時はどうするんだ?」

おじさん「どうもしないよ、竜と人間の違いなんだって感じるだけ」

男「……」

おじさん「……種族なんか関係ないなんて言ってもやっぱり種族の壁は大きいんだ。だからそこは割り切るしかないんだよ」

男「少し、俺の話を聞いてもらっていいか?」

おじさん「ああ。時間もある事だし、ゆっくり話そう」


俺はおっさんに今までの出来事を簡単に説明した。


おじさん「……ずいぶん複雑だね」

男「ああ……」

おじさん「……今回は男君が全面的に悪いね」

男「……なんでだよ」

おじさん「相手の気持ちを考えてみた事があるかい?」

男「あるよ。俺は何時でもドラゴンの気持ちを考えてるつもりだよ」

おじさん「ならなんで彼女が怒ったか分かってるだろ?」

男「でも、俺はあいつを励まそうと思って――――」

おじさん「それは違うよ」

男「何がだよ!!」

おじさん「君が言った言葉は励ましじゃない。ただの気休めだ」

男「違う!!」

おじさん「違わないよ。根拠も理由も無い、君の発言は君が何と言おうとただの気休めだ」

男「でも……」

おじさん「それに君は言っちゃいけない事を彼女に言ってるんだ。分かるかい?」

男「わ、わかんねぇよ」

おじさん「彼女が人間をやめたいと思う事は普通の事なんじゃないかい?」

男「そんなに人間は悪いものか?」

おじさん「……少し、考えてみたらどうだい?」

男「は!?」

おじさん「君自身が考えてみるんだ」

男「それはあいつが人間をまるで汚いものみたいに考えてるからだよ!!」

おじさん「じゃあ、それはなんでだと思う?」

男「それはあいつが竜だから――――」


その言葉を言い終わる前に俺の体は宙を舞っていた。
地面に体が叩きつけられ、背中がビリビリと痛む。


男「何すんだよ!!」

おじさん「頭を冷やすべきだね」


おっさんは近くのバケツに水道水を貯めると、地面に倒れている俺の顔目掛け水をかける。


おじさん「冷静になれ。熱くなりすぎだよ」

男「……」

今日はここまでです。

おじさん「頭は冷えたかい?」

男「……」

おじさん「分からないのかい?」

男「……」

おじさん「まだ若いから分からないのも仕方ないのかな……」

男「……」

おじさん「ドラゴンをそんな姿にしたのは誰だい?」

男「ドラゴンの母親だ」

おじさん「ドラゴンは何の姿になっているのかな?」

男「人間だよ」

おじさん「つまりドラゴンは自分をそんな姿にした張本人と同じ姿をしてるんだ」

男「同じ姿では無いだろ」

おじさん「君は牛やライオン一匹一匹の違いが分かるかい?」

男「それはわかんねぇけど……」

おじさん「竜にとってはそれと同じ事なんだ。人間に違いなんて無いんだよ」

男「……」

おじさん「君がもし何処かの牛に牛の姿にされても牛を恨まないかい?」

男「恨む、と思う」

おじさん「それと同じ事だよ」

男「……」

おじさん「それにドラゴンさんに非は一切無いだろ?」

男「……ああ」

おじさん「分かったかい?」

男「分かったよ」

おじさん「特に今感情が不安定になるのは仕方ない事だからね」

男「……そうだな」

おじさん「言葉に気をつけて支えてあげる様にするんだよ」

男「……」

おじさん「分かってると思うけど、彼女を助けるのは君なんだから」

男「……臭すぎないか?」

おじさん「ははは。昔からよく言われてたよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数十分前     男の家


ピンポーン


ドラゴン「……」


ピンポーン


ドラゴン「……誰?」スタスタ

ドラゴン「今は誰も居ませんけど」ガチャ

学者「あ、お久しぶりですね」

ドラゴン「久しぶり……男なら居ないわよ」

学者「いえ、今日はあなたに会いに来たんです」

ドラゴン「私に?」

学者「ええ。少し頼みごとがありまして」

ドラゴン「私に? 頼み事?」

学者「はい」

ドラゴン「何?」

学者「少し研究所の方に来てほしいんです」

ドラゴン「研究所……ですか?」

学者「ええ。あなたの体をもう一度調べさせてもらいたいんです」

ドラゴン「……」

学者「もしかしたらあなたの体を治す方法が見つかるかもしれません」

ドラゴン「え、ほ、本当に!?」

学者「ええ。本当です」

ドラゴン「なら、行く」

学者「ご協力ありがとうございます」

ドラゴン「本当なの!?」

学者「ええ。私達を信頼して下さい」

ドラゴン「わ、わかった」

学者「では、早速行きましょうか」

ドラゴン「あ、置き手紙残しといていい?」

学者「構いませんよ」

ドラゴン「……」カキカキ

学者「何なら男さんの所に寄って行きましょうか?」

ドラゴン「……別にいい」

学者「本当にいいですか?」

ドラゴン「本当にいいの。気にしないで」

学者「……そこまで言うなら……わかりました」

ドラゴン「もう大丈夫」

学者「もういいんですか?」

ドラゴン「いいのよ。早く行きましょ」

学者「わかりました」

今日はここまでです。

数十分後


男「……ただいま、あれ、誰もいないのか?」

男「……」スタスタ

男「ドラゴン?」コンコン

男「……学校に行ったのか?」

男「手紙?」


『みんなへ
 学者の所に行ってきます
  ドラゴン』


男「……なんでこんなに淡白な連絡なんだよ」

男「……仕方ねぇ、学校行くか」

~~~~~~~~~~~~~~~~


学校   午後


男「こんにちは」ガラガラ

男友「あ、おはよう」

男「……」

男友「おはよう」

男「おはよう」

女委員長「ドラゴンはいいの?」

男「ああ、まあな」

男友「女委員長。このまま学校早退するか?」

男「え?」

女委員長「……いいわよ」

男友「よし、じゃあ決定な」

男「ど、どういう事!?」

女委員長「何かあったんでしょ」

男「……」

女委員長「とりあえず場所を変えるわよ。男友は先生に言ってきて」

男友「はいはい」スタスタ

女委員長「倉庫が開いてたわよね」スタスタ

男「悪い。お前等まで巻き込んで」

女委員長「今更何言ってるのよ」ガラガラ

男「……」

女委員長「さっさと入ったら?」

男「……ああ」ガラガラ

女委員長「で、どうなったの?」


俺は女委員長に土日の事を話した。


女委員長「……」

男「で、ドラゴンに謝ろうと思ったんだけど居なくてさ……」

男友「いいってさ」ガラガラ

女委員長「ありがとう」

男友「いいっていいって、いつものお礼だよ」

女委員長「男はとりあえず会いに行ってみたら?」

男「ドラゴンに?」

女委員長「他に誰に会うのよ」

男「……」


男友にも土日の事を話す。


男友「難しいな……」

男「……」

男友「……まあ、この問題は正直ドラゴンも男もどっちも悪い気がするんだよな」

男友「おっさんはどちらかと言えば竜目線で言えばお前が悪いって言ってるようなもんだし」

男「……」

女委員長「まあ、竜の奥さんが居るんだし、あの人の中で竜って言うのは多少なりとも美化されてるのよ」

男「そう、か?」

女委員長「あの人の中での竜って言うのは奥さんなのよ」

男友「そう言う事だな」

男「じゃあ、お前等はどう思うんだ?」

女委員長「そうね。男友の言うとおりでただの価値観の違いよ」

男友「おっさんが言ってた事も間違いではないけど、少しドラゴンを甘やかしてる……と言うか贔屓してるかもな」

男「……」

女委員長「何が言いたいかって言うと、あんたが全部悪い訳じゃないのよ。と言うか」

男「じゃあ……俺はどうすればいいんだ」

女委員長「話し合えばいいのよ」

男友「ああ、価値観が違うなら相手の価値観を理解してやればいい」

男「……」

男友「それで喧嘩になっても殴り合いになってもいいんだよ。むしろ殴ってもらえ」

女委員長「気持ちの悪い願望を混ぜるな、気持ち悪い」

男友「すいません」

男「若干うれしそうだな……」

女委員長「じゃあさっさと研究所に行くわよ」

男「ああ」

今日はここまでです。

ちょっと裏話ですが、だいたいの登場人物は多かれ少なかれ人間やら竜やらに偏見を持ってます。

そのなかでもおっさんははかなり竜寄りの人間です。
だから考え方なんかも少しズレてたり、少しおかしかったりします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


同時刻   男の家


メイド「……」

隊長「……」

母「……」

メイド「……話したらどうですか?」

隊長「そうだな。黙っていても始まらないからな」

母「それで、何の用かしら?」

隊長「単刀直入に聞こう。お前達は監視されていなかったか?」

母「……されてたわよ。多分」

メイド「そうですか?」

母「いつもでは無いけど、時々ね」

隊長「それと町のガキ共に金をばら撒いて竜を探させた奴が居たのを覚えてるか?」

メイド「でも、あれはあなたが探すって言ってたじゃないですか」

隊長「ああ。だが主犯にはたどり着けなかったんだ」

メイド「どういう事ですか?」

隊長「トカゲのしっぽ切りだよ。小物を犯人に大物は消えた」

メイド「じゃあ犯人は分かって無いですか?」

隊長「ああ、主犯は分かってない」

メイド「……」

隊長「おかしな事にな、何処の不良チームを潰しても主犯にはたどり着けないんだ」

メイド「どういう事ですか?」

隊長「まるで、こっちの動きがバレてる様に逃げられるんだよ」

母「……それで、本題は何?」

隊長「そう焦るな、時間はまだあるだろ」

母「ふふっ、そうね」

メイド「で、私達を監視してったて言うのは誰なんですか?」

隊長「チンピラ共だよ」

メイド「チンピラ?」

母「金で雇われた連中って事ね?」

隊長「ああ、そうだ」

メイド「そう言えば竜探しの主犯は見つかって無いんですよね?」

隊長「ああ、だが最近は居なくなったんだ」

メイド「……」

隊長「ドラゴンを見つけたか、あるいは不良共が怯えて逃げたか……まあ理由はいろいろ思いつく」

母「まあ、分からないんじゃ仕方ないわね」

隊長「そこで、私達を追っていた連中を潰そうと思うんだ」

メイド「それは分かりますが、なんでここでそんな話を?」

隊長「手伝ってほしいんだ」

母「どういう事?」

隊長「同時に三つのチンピラグループを叩くんだ」

メイド「ははーん。そうすれば主犯も逃げられない算段ですか?」

隊長「まあ、そんな所だな」

メイド「上手く行くとは思わないですけどね」

母「でも、まあやらないよりかはやった方がいいんじゃない」

隊長「ああ、私もそう思う」

母「いいわよ。手伝ってあげる」

隊長「すまないな」

メイド「じゃあ準備がいりますね。母さんは何を使いますか?」

母「私は木刀でいいわよ。銃は最近使ってないし」

メイド「じゃあ私はこれで行きますね」


メイドは棚からハンドガンを取り出す


隊長「単発……本当にそんなので大丈夫か?」

メイド「単発大口径はロマンですよ。ロマン」

隊長「……」

母「大丈夫。そうそうやられないわ」

隊長「分かってるさ」

隊長「じゃあ、場所を教えておく」

母「ええ」

メイド「わかりました」

母「いいわよ。手伝ってあげる」

隊長「すまないな」

メイド「じゃあ準備がいりますね。母さんは何を使いますか?」

母「私は木刀でいいわよ。銃は最近使ってないし」

メイド「じゃあ私はこれで行きますね」


メイドは棚からハンドガンを取り出す


隊長「単発……本当にそんなので大丈夫か?」

メイド「単発大口径はロマンですよ。ロマン」

隊長「……」

母「大丈夫。そうそうやられないわ」

隊長「分かってるさ」

隊長「じゃあ、場所を教えておく」

母「ええ」

メイド「わかりました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


研究所


男「すいません」


出て来たのは黒縁眼鏡の気の弱そうな男だった。


研究員「あ、男さんですか。どうかしましたか?」

男「ドラゴンが来てるらしいんですけど、会えますか?」

研究員「ちょっと待ってて下さいね」

男「あ、はい」

研究員「…………はい。……でも、それはどうなんですか?」

研究員「……………はい。わかりました」

男「なんですか?」

研究員「すいませんが、ドラゴンさんが会いたくないらしいんです」

男「え……」

研究員「申し訳ありませんが、今日の所はお引き取り願えますか?」

男「……」

研究員「今日の夜にはドラゴンさんも家に帰れると思いますし」

男「わかりました……」

男友「いいのか?」

男「ああ、いいんだ」

男友「……」

女委員長「男がいいんなら仕方ないわね」

男友「……わかったよ」

女委員長「で、これからどうするの?」

男「帰るけど、後はどうする?」

男友「俺達に聞くなよ」

男「……とにかく、一旦帰る」

女委員長「まあ、急いで話しても仕方ないかもね」

男「家でゆっくり話す」

男友「まあ、別にいいけど先延ばしにして話せなかったってのは無しだぞ」

男「わかってる」

今日はここまでです。

そろそろ戦闘が始まります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


寂れた工場は今は餓鬼共の溜まり場だ。

だが、ここでなら少しは遊べるかな。
そんな気がした。

右のホルスターに手をかけ、デザートイーグルを引っ張り出す。
久しぶりに抜いたそれは相変わらず重く、そしてそれ以上に頼もしい。


「さて、後三十秒」


時計を確認しながら一人呟く。
現在時刻は午後三時二十九分三十秒……今は三十三秒か。

三人で同じ時間に襲撃をするため、時間を指定したのだ。
残り二十五秒。

装弾数はマガジンに七発と銃自体に一発の計八発。
予備のマガジンが二つあるから単純計算で二十二発。

……まあ、チンピラ相手には十分。いや、勿体ないくらいか。
三発も使わないだろうしな。

マガジンを念のため確認し、腕時計を見る。
残り五秒。

奥歯に力を入れ、扉を蹴破る準備をする。

零。

渾身の力を込めて扉を蹴破る。

錆ついた扉はまるでおもちゃのようにいとも簡単に吹き飛ぶ。

廃墟の中に足を踏み入れる。
一歩中に入っただけで煙草とアルコールの匂いが鼻をつく。

昼からアルコールとは、いい御身分だな。

廃墟の中には男女合わせて十人ほどがいた。
どいつもこいつもガラの悪そうな連中ばかり。
なんとなくこの国の未来が不安になる

「大人しく捕まれ。そうすれば許す」


そう言いながらもすでに走り出していた。
一番近くにいる金髪の女を手刀で眠らせる。

他の連中は声も上げず、こちらを見ていた。
口が半開きになったアホ面は見ている分にはずいぶんと面白い。


「どうする?」

「捕まるわけ――――あがぁぁぁぁぁぁ!!」


相手が言い終わる前に弾丸が相手の足に着弾してしまった。
早く撃ち過ぎた事を少し後悔する。

少しせっかちだったな。
それに撃つなら腕の方が良かったか?

絵具の様に鮮やかな赤い血を撒き散らしながら男は悶えていた。
男が体を捻じるたびに赤い水溜りは大きくなっていく。


「さて、どうする?」


私の言葉に反応し。全員が手をあげ、降伏する。
……いや、違うか。

私はとっさに横に跳び、相手の射線を抜ける。

その数秒後に銃声が響き、さっきまで立っていた場所を弾丸が通過する。

リーダー格らしき赤髪の男は銃を構え、私を睨んでいた。
その目は戦いに楽しみを見出している様に見える。


「おい、何捕まろうとしてんだ」


男の声は決して怒鳴る様な乱暴な物では無い。
だがその声にははっきりとした命令、そして威圧があった。

今までとは違う統率力のあるタイプのチンピラだ。


「悪いが話をしている時間は無いんだ。さっさと終わらせるぞ」


地面を蹴り、素早く相手に近づく。
相手を撹乱するため、出来るだけ不規則にジグザグに走り抜ける。

時間を掛けても意味は無い。
所詮その程度の相手。
その程度のレベルの戦闘。

後は一撃加えて眠ってもらえばいいだけの事。
左の拳を強く握りしめる。

だが、男は冷静だった。
銃口は確実に私を狙っている。
しかもご丁寧に心臓をだ。

体の中を毛虫が這っていくようなぞわぞわとした感覚。
だがそれは恐怖では無く、ある種の喜びだと私は知っている。

銃声が鳴り響き、空薬莢の落ちる音が部屋を満たす。
血が滴り落ち、床を赤く染める。

……惜しい。本当に惜しい。
私は心の奥底で邪悪に笑う。

まさかこんな所に金の卵が居たなんてな。
ははっ、面白いな。
最高だ。
だが……。


私は相手の首を右手で掴み、持ち上げる。

苦しそうな呻き声が聞こえた。

右手にはいる力が強くなる。
爪が男の首に食い込み、血を流させる。

「惜しいな。そんな威力の低い銃を選んだのが間違いだったな」


弾丸は確かに私に命中した。
確かに私の左腕に当たっている。

防弾用の布を巻いているって言っても、さすがに完全に止めるのは無理か。
それにしても、まさかこんな保険に助けられるとはな。

苦笑いのまま、右手に力を入れる。

男の持っている銃はあくまで護身用であり、威力は低い。
もしメイドの様な火力バカだったら私は死んでいいただろう。
まあ、それなら戦い方から全部考え直していたと思うが。

この男は他人を殺せないタイプの人間なのだ。

左手からは絶えることなく血が溢れ、床に垂れる。
だが不思議と痛みは無い。
まあ、大方この状況を楽しんでしまっているせいだろう。


「お前、私の部隊に入るか? もしやる気があるなら特別に入れてやってもいいぞ?」


だが私の楽しそうなその言葉を聞く前に、男は気を失っていた。

今日はここまでです。

久々の地の文だったので少し変かもしれません。すいません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

町外れの小さな廃墟

人の少ないこの場所は私にとって最高の場所だった。
ここならどれだけド派手な事をしてもよほど見つからないだろう。


時計を確認すると、丁度午後三時半だった。
すこし準備不足な気がしなくもないが、多分大丈夫。

銃に弾を一発だけ込めて、深呼吸をする。


「さて、行きましょうか」


自分で自分に活を入れる。
いくら相手が素人と言っても殺し合いに違いないのだ。

扉に手を掛け、ゆっくりと廻す。
鉄同士が擦れ合うような音をあげながら、扉はゆっくりと開く。


「こんにちは。少しお話があるのですが?」


最高の笑顔で、男達に問いかける。

だが、相手は硬い表情のまま、ずっとこちらを睨みつけている。

はあ……やっぱりダメですか。
これはこれで楽しいからいいんですけどね。

隊長からはリーダー格以外なら誰を殺してもかわないと言われていた。
つまり手加減なし、本気で殺しにかかっていいと言う事だ。


「久々の戦闘ですから、腕が鈍ってないといいんですけどね」


依然、男達は何も言わず、石像の様に動かない。
だがその目は明らかにこちらを睨み、殺意を抱いている。


「聞きたいんですけど、あなた方のリーダーはどなたですか?」


男達は答えない。
だがその目線の動きで誰がリーダーかは大体の予想がついた。

腐っても軍人って訳ですね。
昔の勘はまだ鈍ってないですね。
よかった。

ポケットにしまったスタンガンを抜き、リーダー格と思われる男に接近する。

「撃て!!」


その瞬間、まるで魔法が解けたかのように、周りの男達が一斉に銃を抜き、発砲する。
様々な銃声が辺りを包み込み、硝煙の臭いが鼻をつく。

とっさに横に跳び、ソファーに隠れたが、全部を交わせた訳では無さそうだ。

右肩と左足に一発ずつ弾が掠め、血が出ている。

やっぱり多少鈍ってるみたいですね。
いえ、多少どころか大分ですね。

銃声は鳴り止む事無く、まるでリズムを刻むように部屋に響き渡っている

さてどうしたものですかね……。
このままじゃジリ貧ですし。


「おい、どうした?」

自分が有利に立てた途端声色が楽しそうになっている。
最低の性格。

個人的にはやりたくないが、ここは秘密兵器を使うしか無い様だ。
使ったらリーダー格が死んでしまうかもしれないが……その時はその時。
後でじっくり考えればいい。


「今ならまだ間に合いますよ。降伏して下さい」


もちろんそんな事を聞かない事も分かっていたし、逆に降伏されたら困る。
形だけでもそう言っておいた方が後々楽だと思っただけの事。

止まない銃撃が答えだと判断し行動を始める。


「皆さん。C4って知ってますか?」


突然の言葉に驚いたのか銃声が止む。

私は立ち上がり、大きく後ろに跳んだ。
男達との距離を十メートル近く開け、にこやかに笑う。
右手には単発銃。
左手はポケットの中。

「もしこの建物にそんなプラスチック爆弾がいくつも仕掛けてあったらどうなると思いますか?」


分かりやすい単語に言い換えて説明する。

男達の表情が強張っているのがこの距離からでもわかった。

ポケットに突っ込んだ左手をポケットから抜く。
その手にはスイッチが握られている。

男達が引き金を引こうとするが遅い。
遅すぎる。

スイッチを押す。

その瞬間鼓膜を破りそうなほどの爆音が私に襲いかかった。


天井、床、壁。
四方八方で爆発が起こり、瓦礫が飛び散る。

もちろん私だって飛んできた瓦礫の餌食になりかねない。

周りを瓦礫が音を立てて、転がっていく。
小さな破片が頭や腕にあたる感覚があった。

だが予想に反して飛んでくる破片の量は少なめだった。


「あれ、少し威力を低くし過ぎたかもしれないですね」


想定としては建物半壊の予定だったが、そこまで壊れていない。
せいぜい三分の一程度だろう。

まあ、これ以上やってたら私も大怪我してたかもしれませんし、仕方ないですね。
そう納得する。

さっきまであの男達が立っていた場所はほぼ瓦礫の山になっていた。

一人一人撃ち殺してやりたかったが、まあ仕方ない。


「はい、邪魔ですよ」


瓦礫の裏に隠れた一人を撃ち抜く。

例え瓦礫の裏にいたとしても十分に撃ち殺せる。
それが単発銃の最大の特徴、威力。

瓦礫に足の挟まったリーダー格の男はこちらを睨んでいた。
この期に及んでまだ心が折れないのはある種凄いと思う。


「残りは見逃します。ですがあなたは来てくださいね」


私はリーダー格の男の頭を殴り、気絶させた。

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


警察署


隊長「……」スタスタ

母「あら、遅かったわね」

隊長「ずいぶんと早いな」

母「ええ、あの程度の連中じゃ練習相手にもならなかったから」

隊長「……」


母の木刀は返り血で赤く染まっていた。


母「安心して、ちゃんとみんな生きてるから」

隊長「別に心配はしていない」

母「今取り調べをやってもらってるわ」

隊長「私が捕まえた奴らも取り調べを受けてもらっている」

メイド「遅れました」スタスタ

隊長「遅かったな」

メイド「すいません。少し手こずっちゃって」

隊長「焦げ臭いぞ。お前」

メイド「すいません。多分C4のせいだと思います」

隊長「……ちゃんと生きてるんだろうな」

メイド「ちょっと殺しちゃいましたけど。いいですよね?」

隊長「まあ、その程度の犠牲は仕方ないな」

メイド「事後処理お願いします」

隊長「で、リーダー格の男はどうした?」

メイド「警官の方に渡しましたよ」

隊長「そうか」

警官「隊長さん。お話が」

隊長「ん、なんだ?」

警官「母さんが連れてきた連中が吐きました」

隊長「……仕事を頼んでいたのは誰だ?」

警官「はい、黒髪で特に特徴の無い、気の弱そうな男だそうです」

隊長「名前は」

警官「……分からないです」

隊長「……まあいい。大丈夫だ」

メイド「いいんですか?」

隊長「相手はかなり地位の高い人間だ。下手に攻めればこっちも不味い」

母「あくまでゆっくり着実にって訳?」

隊長「ああ、そう言う事だ」

メイド「……分かりました。何か分かったら教えて下さいね」

隊長「ああ、ちゃんと報告する」

母「じゃあ帰るわよ。男達もそろそろ帰ってくるし」

メイド「そ、そうですね」

母「じゃあ、また会いましょう」スタスタ

メイド「では、また今度」スタスタ

隊長「ああ……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


ドラゴン「ただいま……」ガチャ

男「あ、お帰り。ちょっと話が――――」

ドラゴン「ゴメン。今日疲れてるから今度にしてくれない?」

男「え、あ、ゴメン。分かった」

ドラゴン「こっちこそゴメン。今度ちゃんと話聞くから」スタスタ

男「……」

メイド「……」

男「……何か言えよ」

メイド「別に何も言う事は無いですよ」

男「……」

メイド「そんな目で見ても何も言う事無いです」

男「あ、そう」

メイド「どうするんですか?」

男「何が?」

メイド「分かってますよね?」

男「……うやむやにはしない。ちゃんと聞く」

メイド「……いい心掛けです」

男「どうもありがとう」

母「男、ちょっといい?」

男「なんだ?」スタスタ

母「一つ助言があるから」

男「なんだよ」

母「竜の弱点は見えるんでしょ」

男「そうだけど、なんだよ」

母「もし弱点が二つ見えたら、赤い方は竜の弱点で、青い方は人間の弱点よ」

男「え、は?」

母「まあ、私も青い方を見た事は無いんだけどね」

男「どういう事だよ」

母「そのうちわかるわ。きっとね」

今日はここまでです。

>>829

銃の知識は深くないので大分適当です。また何か変な部分があったら教えてください。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


警察署


警官「隊長さん。あの三人を早く解放しろとの事です」

隊長「……思ったより早い対応だな」

警官「そうですね」

隊長「で、それを命令してきたのは何処だ?」

警官「上は分からないと言ってますが、まあ口止めされてるでしょうね」

隊長「……」

警官「解放しますね」

隊長「ああ、頼む」

隊長「……」

警官「隊長さん」

隊長「なんだ?」

警官「お電話です」

隊長「……誰からだ」

警官「女性、と名乗ればわかると言っていますが……」

隊長「……わかった、すぐ行く」スタスタ

隊長「……もしもし」

女委員長『お久しぶりですね。隊長』

隊長「お前……」

女委員長『驚きましたか?』

隊長「お前、私の事も嗅ぎまわっていたのか?」

女委員長『ええ、女性さんでしたっけ? 隊長さんの妹さんは』

隊長「私の事をまだ嗅ぎまわる気なら……どうなるか分かってるよな?」

女委員長『ええ、私もそれくらい分かってるわ』

隊長「で、用はなんだ? まさかこの為だけに電話してきた訳じゃないだろ」

女委員長『ええ、学者を調べていたら面白い事がわかったの』

隊長「学者の事か」

女委員長『違うわ。あの研究所の人間の話』

隊長「……なんだ?」

女委員長『あの研究所の研究員の一人が竜撲滅運動に参加してるみたい』

隊長「具体的に何をしてるんだ?」

女委員長『ずいぶん偉い連中とも話し合いをしてるみたいよ』

隊長「……興味深いな」

女委員長『私が調べられるも限界があるからあなたも調べてくれない?』

隊長「……わかった」

女委員長『お願いね』

隊長「任せろ」

女委員長『じゃあ』

隊長「ああ」ピッ

隊長「……」

警官「どうしました?」

隊長「久々の大きな事件だ。気を引き締めろ」

警官「え、はい」

隊長「ほら、さっさと行くぞ」スタスタ

警官「あ、はい!!」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


結局三日の間ドラゴンと話し合うどころか、まともに会話すらできなかった。


学校


女委員長の蹴りが腹部に当たる。


男「……ゲホゲホ!!」

女委員長「あんた何やってるの。何で話してない訳?」

男「ドラゴンが……事情があるって話を……」

男友「まあ、そりゃ仕方ない――――」


女委員長が男友の大事な部分を一蹴する。


男友「あぐ……ありがとうございます!!」

女委員長「あんた蹴られる為にわざと言ったでしょ」

男友「……当たり前だろ」

女委員長「……キモい」

男友「聞いてくれないで片付けるな。自分で何とかしようと努力しろ」

女委員長「そうよ。今のあんたは逃げてるようなもんよ」

男「……」

男友「分かったな。ちゃんと話せよ」

男「わ、わかったよ」

男友「今日話せよ」

女委員長「そうよ、絶対ね」

男「分かったから」

女委員長「絶対今日よ」

男「しつこいな。分かってるよ」

男友「分かってないから何回も言ってんだぞ」

男「……」

男友「分かったな」

男「ああ、分かったよ」

今日はここまでです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


ドラゴン「……」


ピンポーン


学者「こんにちは」

ドラゴン「今日は誰に用事?」

学者「今日もあなたですよ」

ドラゴン「……また検査?」

学者「いえ、違います」

ドラゴン「なら何?」

学者「あなたを竜にしましょう」

ドラゴン「……え?」

学者「あなたを元の姿に戻す事が出来ますよ」

ドラゴン「ほ、本当?」

学者「ええ、本当です」

ドラゴン「え、でも……」

学者「可能な方法があったんです」

ドラゴン「……」

学者「あなたが人間なのは体に竜殺しの力によって生まれた特殊な物質があるからです」

学者「その物質を無くせばあなたは竜に戻れる訳です」

ドラゴン「ほ、本当なの?」

学者「ええ、本当ですよ」

ドラゴン「……」

学者「どうしますか?」

ドラゴン「行く。行くわ」

学者「じゃあ行きましょう」スタスタ

ドラゴン「ええ」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「なんでお前等まで来るんだよ」スタスタ

男友「お前がちゃんと話さないかもしれないからだろ」

女委員長「て言うか絶対話さないでしょ」

男「は、話すよ」

男友「目が泳いでるな……」

女委員長「ええ、凄く泳いでる」

男「うるせぇ」

女委員長「こんにちは」ガチャ

男「……ただいま」スタスタ

男友「あれ、誰もいない?」

メイド「あ、おかえりなさい」

男「なあ、ドラゴンは?」

メイド「えーと、分かんないんですよ!!」

男「え!?」

メイド「帰ってきたら居なくなってて……」

男「……」

女委員長「男!! 男友!! 行くわよ!!」

男友「行くって何処に?」

女委員長「研究所よ!!」

男「け、研究所?」

女委員長「そう、研究所!!」

男友「そ、そこにいるのか?」

女委員長「多分!!」

男友「多分って……」

女委員長「いいから早く!!」タタタッ

男「ああ……」タタタッ

男友「……」タタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


研究所


女委員長「ドラゴン来てるでしょ!!」

研究員「……」

女委員長「居るんでしょ!!」

研究員「今電話を繋ぎますね」

女委員長「男、あんたが電話しなさい」

男「あ、ああ」

研究員「どうぞ」


俺は電話を受け取る。


ドラゴン『女委員長?』

男「俺だ」

ドラゴン『男……何の用?』

男「お前、何してんだ?」

今日はここまでです。

ドラゴン『ごめん、言い忘れてたわね。私竜に戻れるかもしれない』

男「え?」

ドラゴン『学者が、もしかしたら何とか出来るかもしれないって……』

男「ほ、本当か!?」

女委員長「ドラゴン!! 本当にそれは信用出来るの!?」

ドラゴン『……』

女委員長「もしかしたら騙されてるかもしれないのよ!! 分かってる!?」

ドラゴン『ごめん』

男「ごめんって……何のごめんだよ!!」

ドラゴン『もし騙されてたとしても、流に戻れる可能性があるなら……それに賭けたい』

男「……」

ドラゴン『勝手に決めてごめんね。反省してる』

男「わかった……」

ドラゴン『……ごめん』

ピッ


女委員長「あんたそれでいいの!?」

男「ドラゴンが望んでる事だろ!! なら俺がとやかく言えるかよ!!」

女委員長「でも……騙されてるかもしれないのよ」

男「根拠は」

女委員長「……」


女委員長は竜撲滅運動に参加している研究員の話をした。


女委員長「あんたはそんな奴がいる研究所を信用出来る?」

男「もし、今俺がドラゴンを連れ戻したらドラゴンが喜ぶか?」

女委員長「……じゃあドラゴンが騙されててもいいって言うの!?」

男「いい訳無いだろ!!」

女委員長「ならなんで――――!!」

男友「二人ともちょっと落ちつけよ」

女委員長・男「……」

男友「とりあえず、一回中に入れてもらえませんか?」

研究員「悪いんですが、今日は……」

女委員長「今日は何?」

研究員「今日は人を入れるなと言われていまして……」

男「なんで入っちゃいけないんだ?」

研究員「決まりですから」

男友「怪しいな……」

研究員「とにかく一旦お引き取り下さい」

隊長「帰らなくていいぞ」

男「隊長?」


そこには隊長と数名の警察官が立っていた。


研究員「な、なんですか!?」

隊長「この研究所を調べさせてもらう」

研究員「な、何のためにだ!!」

隊長「令状はあるぞ」ヒラヒラ

研究員「この研究所を調べると言う事がどういう事か分かっているんですか?」

隊長「ああ。国家に喧嘩をうってるようなものだろ」

研究員「……」

隊長「だが、だからと言って罪人は放っておけないだろ」

研究者「……」

隊長「お前等。もう後には引けないぞ」

警官「大丈夫です!!」

隊長「そうか。じゃあ行くぞ」スタスタ

警官「はい!!」スタスタ

隊長「お前達も来い」

男「俺達ですか?」

隊長「ああ、さっさと行くぞ」スタスタ

男「あ、はい」スタスタ

隊長「お前達は向こうを頼む」

警官「はい!!」タタタッ

隊長「……」

男友「ど、どうしたんですか?」

隊長「いや、まだ早いか」

男友「?」

研究員「見つからなかった時は……分かってますよね?」

隊長「ああ、十分承知だ」

研究員「……」

隊長「そこの棚を、見させてもらうぞ」

研究員「ええ、構いませんよ」

隊長「……」ガサゴソ

隊長「そう言えば学者はどうした」ガサゴソ

研究員「……」

隊長「言っておくが、嘘が通用すると思うなよ」

研究員「わかってますよ」

今日はここまでです。

ラストは書き溜めて一気に更新していこうと思ってるので、ラスト前は数日更新しません。その時になったらまた言います

隊長「……」

警官「隊長さん」スタスタ

隊長「どうだった?」

警官「す、すいません……」

女委員長「ちょっと、かっこつけて出て来たくせにもう終わり!?」

隊長「……」

研究員「さて、今回の責任。誰がとるつもりですか?」


ピリリリリリ


隊長「……ああ、わかった」ピッ

研究員「な、なんですか?」

隊長「頭のいいお前達の事だ。この建物が包囲されている事は気付いていただろう?」

研究員「な、何の事ですか?」

隊長「恍けても無駄だ」

研究員「……」

隊長「この研究所に竜撲滅を企む連中が居る事は分かっていた。なら数人いてもおかしくないからな」

研究員「ど、どういう意味ですか?」

隊長「別に、ただ証拠を持って逃げる可能性があると思っただけだ」

研究員「だから、なんですか?」

隊長「お前はこう言ったはずだ。警官に見つからないように逃げろと」

研究員「……」

隊長「私の知り合いが丁度その辺りを通りかかったらしくてな。お前の部下を捕まえたらしい」

女委員長「え、じゃあ今までのは……」

隊長「馬鹿だな。相手を油断させるための演技だよ」

研究員「……」

隊長「町のチンピラ共を使ってドラゴンを捕まえようとしたり私達を監視していたのはお前だな?」

研究員「……ええ、そうですよ」

隊長「詳しい話を聞かせてもらおうか」

隊長「パトカーを呼んどけ」

警官「はい」

女委員長「凄いわね」

隊長「銃を振り回すだけじゃ人は守れんよ」スタスタ

男友「かっこいいな、ただ俺は銃を振り回してる隊長もいいと思うけど……」スタスタ

女委員長「あんたの性癖を知ってると凄くキモい」スタスタ

男「……」スタスタ

女委員長「男?」スタスタ

男「ああ、別に大丈夫だ……」スタスタ

メイド「みんな大丈夫そうですね」

母「元気そうじゃない」

男友「なんでメイドさんと母さんが?」

隊長「メイド達に頼んでおいたんだ。外に逃げ出した敵を捕まえてくれとな」

メイド「余裕でしたけどね」

隊長「ありがとな」

メイド「いえ、これくらい別にいいんですよ」

母「で、ドラゴンは?」

隊長「おい、学者とドラゴンはどうした」

警官「それが……何処にも居ないんですよ」

隊長「は?」

男友「どういう事だ?」

女委員長「……研究所は一か所じゃない」

隊長「じゃあ、ドラゴンと学者は別の場所に居るのか?」

女委員長「多分そうだと思う」

隊長「お前、知ってるか?」

研究員「知りません」

隊長「……やられた」

男友「な、何がですか?」

隊長「こいつはただの囮だ」

男友「え?」

隊長「考えてみろ。こいつ一人以外にも竜撲滅を企んでいる連中は居るんだ」

男友「そ、それがなんですか?」

隊長「そいつ等をただの研究員のこいつがまとめられると思うか?」

女委員長「確かに……」

メイド「それにあそこまで警察に圧力を掛けられるはずが無い……」

女委員長「そんなこと出来るのは学者だけ……?」

メイド「はい、それにあの人は権力者との強いパイプもある」

隊長「男、男友、女委員長!! さっさと乗れ」スタスタ

女委員長「でも、どうやって……」

隊長「知らん!!」

男友「……」

母「ねえ、ちょっと」

男友「な、なんですか?」

母「もし、何かあったらこれをあの子に渡してくれる?」


それは布で包まれた一・五メートル程の棒状のものだった


男友「え、これって?」

母「それまでは布をとらないようにね」

男友「え、あ、はい……」

隊長「お前等、そいつ等を尋問しとけ!!」

警官「あ、はい」

隊長「行くぞ!!」


隊長はパトカーに俺達が乗ったのを確認した後、アクセルを勢いよく踏んだ。

今日はここまでです。

男友「どうするんですか?」

隊長「あいつが喋るとは思えないからな……」

女委員長「……何か無いの?」

隊長「ある訳ないだろ」

男「……」

女委員長「あんたもシャキッとしなさいよ!!」

男「あ、ああ」

女委員長「全く……」

男友「なあ、おっさんのとこ行ってみないか?」

女委員長「は?」

男友「いや、だっておっさんの奥さんって竜だろ。なら何か分かるかもしれないじゃん」

女委員長「……まあ、確かにね」

隊長「行ってみるだけ行ってみるか」


隊長はハンドルを大きくきると、アクセルを踏み込む。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

男友「おっさん!!」ドンドン

男「おっさん」

女委員長「男、何時までウジウジしてるのよ!!」

隊長「ドラゴンを助けに行く気が無いのか!?」

男「いや、その気はあるんだけどさ……」


ガチャ


男友「おっさん、実は――――」

竜王「久しぶりだね。男友君、だったかな?」

男「竜王……」

おばさん「大体の事情は竜王様から聞いてるわ」

男「いつの間に……」

竜王「君のお母さんから聞いたんだ」

おじさん「男君。大丈夫かい?」

男「……ああ、大丈夫」

竜王「ドラゴンの居場所だが、もう少しだけ待ってくれ」

男友「分かるのか?」

竜王「ああ、だが、もう少しだけ時間をくれ」

女委員長「早くしてね」

竜王「ああ、わかってるさ」

隊長「どうやって調べてるんだ?」

竜王「確かに私達を嫌っている人間は大勢いるが、竜と上手くやっていこうとする人々もいるんだよ」

隊長「人海作戦か」

竜王「ああ、多分もう少しすれば大体の位置が特定できる」

男「……そうか」

女委員長「だからしっかりしなさいよ!!」

おじさん「……時間があるなら少し話をさせてもらっていいかな?」

男「……別にいいよ」

おじさん「ありがとう。他の方達は中に入ってて下さい」

隊長「……わかった。お前達、行くぞ」

男友「あ、はい」スタスタ

女委員長「……」スタスタ

おばさん「じゃあ、分かったら報告するわね」バタン

おじさん「……この前はすまなかったね」

男「何の事?」

おじさん「公園での事だよ。あの後君の事を話したらずいぶん怒られてね。謝って来いって怒鳴られたんだ」

男「別にいいよ」

おじさん「いや、私は間違っていたんだよ。ごめんなさい」


おっさんは深々と頭を下げた。


男「だから別にいいって」

おじさん「……いろいろすまないね」

男「……なあ、どうしたらいいと思う?」

おじさん「何がかな?」

男「ドラゴンは竜に戻りたがってる。騙されてても別にいいって言ってる」

男「それでもドラゴンを止めるのはダメな事なのか?」

おじさん「……ダメな事ではないと思う」

男「……」

おじさん「君達がどんな状態なのか、詳しい事は分からないけど、君の思いが一番重要なんじゃないかな」

男「……」

おじさん「君はどうしたいんだい?」

男「俺は……とりあえず学者の所に行ってみようと思う。そこで全部決める」

おじさん「……うん。君の好きなようにすればいいんだよ」

隊長「男、場所が分かったぞ」

男「本当ですか?」

隊長「ああ、ここから少し行った墓地に近くの研究所にいるらしい」

男「わ、わかりました」

男友「男、さっさと行くぞ」タタタッ

男「あ、ああ。分かった」

女委員長「時間が無いわよ」タタタッ

おじさん「頑張ってね」

男「……おっさん。いろいろありがとな」

おじさん「ははは……お礼を言われる様な事なんてしてないよ。むしろこっちが謝らなくちゃいけない位だ」

男「今度タイヤキ奢ってやるよ」

おじさん「ありがとう。出来れば妻の分も頼むよ」

男「ああ。タイヤキ二つ。絶対奢ってやるから」スタスタ

今日はここまでです。

次はラストまで一気に更新したいと思うのでだいたい二、三日。長くても一週間以内に更新しようと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


研究所前


男「……行きましょうか」

隊長「ああ、そうだな」

女委員長「ドラゴン、無事だといいんだけど」

隊長「ああ、そうだな」

男友「どうやって開けるんですか?」

隊長「退け」


隊長は扉に数発銃弾を撃ち込む。


隊長「行くぞ」ガチャ

男友「それって不法侵入じゃ……」

隊長「壊れてたって事にしておけばいいんだ」

女委員長「そうよ。早く行くわよ」

男友「乱暴だな……」

男「いいから行くぞ」スタスタ

学者「……」

隊長「動くな」


隊長はデザートイーグルを構える。


学者「どうしましたか?」

隊長「……なんでこんな風になっているかは、分かってるよな?」

学者「ええ。だいたいは」

女委員長「ドラゴンは何処?」

学者「奥の部屋です」

隊長「待て、まだ行くな」

男友「え?」

学者「別に罠なんて無いですよ」

隊長「私はそこまで正直じゃ無くてな。すまないな」

学者「いえ、それが普通なんじゃないですか?」

隊長「……」

男「ドラゴンは無事だろうな」

学者「あなたは本当にドラゴンさんが好きなんですね」

男「悪いかよ」

学者「……私は嫌いです」

男「は?」

学者「私は竜が嫌いです」

隊長「……なんでだ」

学者「敵ですから」

男友「……あんたはそう思ってるんだな」

学者「ええ。人間と竜は種族として決して仲良くは出来ませんよ」

男「そんなのわかんねぇだろ」

学者「じゃあ聞きますが、ライオンと虎が仲良く共存できますか?」

男「……」

学者「ライオンとトラは生息域が違います。でももしライオンとトラの生息域が重なっていたら?」

隊長「人間と竜がそう言う事だと言いたいのか?」

学者「はい。だから私は竜の研究者になったんです。竜と人間の生存競争に勝つために」

ドラゴン「ガァァァァァ!!」

女委員長「え……奥の扉から?」

学者「ドラゴンさんには竜達に致命的なダメージを負わせる武器になってもらいました」

女委員長「どういう意味?」

学者「彼女を竜に戻す時、同時に竜の部分にある仕掛けをしておきました」

男「何したんだ!!」

学者「狂化です……何なら今私を殺してくれて構いません――――」


俺は学者の頬を思いっきり殴る。


男「……隊長。捕まえといて下さい」

隊長「ああ、詳しい余罪は後で聞こう」

学者「……もう無駄ですよ。彼女には私が出来る事を全てしましたから」

学者「もう悔いはありません」

隊長「だからと言って死なせると思うなよ」

学者「分かってますよ……言い逃れする気もありません。間違った事をしたつもりはありませんし」

男「……」

女委員長「男?」

男「ドラゴンに会ってくる」

女委員長「会ってくるって……」

男「あいつがどうなってるのか見たいし――――」

男友「ほらっ、これ」


男友は布に包まれた何かを投げてくる。


男「……何だこれ?」

男友「お前のお母さんからの届け物」

女委員長「……いいの?」

男友「あいつが行きたいんだ。行かせればいいだろ」

男「悪いな。じゃあ行ってくる」

男友「ああ、行ってこい」


俺は扉を静かに開けた。

~~~~~~~~~~~


白銀の鱗に包まれた彼女はそこに居た。

全長十メートル。
全身をびっしりと白銀の鱗で覆われており、それ以上に白い牙が見え隠れしている。
二本の太い足は地面を掴み、巨大な翼は風を捉えるタイミングを計るかのように動いている。

彼女の目が俺を捉える。
それは正真正銘の竜の目。
引き込まれそうになるほどの鋭い眼光。


「戻れたのか……」


そう呟くと、まるでそれに答える様に彼女も吠えた。

全身がビリビリと痛み、大気がひび割れそうなほど震える。
だが不思議と恐怖と言う感情は無かった。

それは多分恐怖より罪悪感の方が大きいからかもしれない。
ドラゴンを止められなかった事を、ドラゴンに気持ちを伝えられなかった事を。


「なあ、どうしたらいいと思う?」


ポツリと、そう尋ねる。
苦笑しながら。

今だってこの状況は理解できていない。
もしかしたら理解しているのかもしれないが、それでも現実味が一切無い。

まるで映画を見ているかのように、他人事の様な気がしてならないのだ。

「俺はお前を止めた方がいいのかな」


彼女がもう一度吠える。
今までよりも強く、そして痛々しく。

きっとこのまま俺が何もしなければ確実に竜と人間の戦争が起こるだろう。
彼女は何を攻撃してもいい。
彼女が何かを攻撃したと言う事実があれば、竜と人間の全面戦争はいとも簡単に起こってしまう。

でも。
でもそんな事に興味は無い。
竜と人間の全面戦争なんてどうでもいい。
そんな先の事なんてどうでもいい。
重要なのは今であって未来じゃない。
現在であって、これからじゃない。

もう一度、彼女が痛々しく吠える。
悲しい様な、苦しい様な、何とも言えない声がコンクリートがむき出しのだだっ広い部屋に響く。

その咆哮が俺の胸を深く抉る。

声を上擦らせながらも話そうとする。


「俺は――――」

「ドラゴンがどうなってもいいのかよ!!」


声が聞こえた。
男友だ。

扉の近くには男友以外にも女委員長と隊長、そして学者が居た。

男友がまた叫ぶ。


「苦しそうだろ!! お前が救えよ!!」


うるさい。
出来るならしてやりたいよ。
出来るならとっくにしてる。


「どうやって――――」

「お前が考えろ!!」


その言葉に俺は押し黙る。

理不尽だ、と叫びたかったが、それは俺の喉で止まってしまう。

回答が無いからじゃない。
回答が一つだけあったから。
あってしまったから。


「俺が……ドラゴンを殺せば……」

「俺に言わなくてもいいんだよ!!」


彼女を……ドラゴンを救う方法はそれ以外無い。
でもそれは。
ドラゴンを殺すって事は……。

でもそれをドラゴンが望んでいるなら。
いや、でももし望んでいないのなら。

どうすればいいんだよ。

彼女とと目が合う。
視線が逸れる事の無い二つの竜の目と、目が合う。

「……ああ、やってやるよ」


これは救うとか助け出すとかと言った様なものじゃない。
ただの俺のエゴだ。
ドラゴンを救ったと言える何かを得るための利己的な物でしかない。

ドラゴンの為。
そんなはりぼての大義名分を掲げて。
一番簡単で、一番傷つかない道を俺は選んでしまう

男友が俺に何を言いたいかは分からない。
でも俺はそう受け止めた。
何でもいいから俺は自分自身を納得させる何かが欲しいんだ。

間違ってるのは分かってる。
でも俺はどうしても自分自身を納得させておきたい。

間違った道を進んでしまった以上、戻る事は出来ないのだから。
この道を進むしかないのだから。

右手に持った、何かの布をほどく。
それは一本の日本刀だった。


「ははっ。さすが母さん。最悪の事態も想定済みって訳か」


苦笑いを浮かべながら刀を抜く。
その刃は彼女の鱗と同様に白銀に輝いていた。

「行くぞ!!」


姿勢を限界まで低くして駆ける。
約三メートルほどの間合いを一瞬で詰めると、彼女の頭目掛けて一太刀振るう。

だが彼女は頭を下げ、その一瞬の攻撃を回避しきると、大きく口を開く。

全身が粟立つのが分かった。
その次の瞬間には周りには白銀の炎が踊っている。
俺はその中央で炎に焼かれていた。

体をバネの様に使い、後ろに跳ぶ。
空中での軌道変更など通常では不可能だが、今は竜殺しの力のおかげでそんな事まで出来る様になっているらしい。


「炎まで白いんだな。驚いた」


僅かに笑みを浮かべ、正直な感想を述べる。

この程度で倒れている暇は無い。
例え刺し違えてでも彼女を止める。
それが今の俺のたった一つの原動力であり、間違った答えだ。

一瞬。

間合いを詰め、大きく跳び上がる。

体を大きく捻り、その一撃にさらなる威力を加える。
ゴウッ、という音と共に刀が彼女の翼の付け根部分を喰らう。

彼女の咆哮が部屋中を満たす。
鮮血が舞い散り、俺の体を染めた。

ズキリ、と胸が痛む。
外側ではなく、内側が。

なんでだよ。
決めたじゃねぇかよ。
なのになんで……。

彼女の体がしなる鞭の様に動いた。
風を切る音が耳に届く。

次の瞬間には体は吹き飛ばされていた。

まるで蹴鞠の様に地面を跳ねながら、壁にぶつかる。
背中を焼ける様な痛みがはしり、全身もヒリヒリとした痛みが襲ってきた。
そのまま地面に前のめりに倒れ込む。

多分尻尾で吹き飛ばされたのだろう。
脇腹に焼ける様な痛みがはしっている。

彼女の勝ち誇った様な咆哮を聞きながらもそう冷静に理解する。
その一撃によってむしろ頭がすっきりした様な気がした。

素早く立ち上がり、刀を大きく一振りする。
刀についた血が飛び、床に模様をつける。

右の翼はもう使えない。
なら一応飛んで逃げられる事は無いな。

そう冷静に頭の中で答えを出す。

刀を構えながら疾走する。

それに対応するかのように、彼女の尻尾がしなりながら襲いかかる。

だが、その一撃が当たる前に大きく跳ぶ。
前のめりになりながら刀を大きく振りかぶる。

その時、俺の目には二つの光が見えた。

一つは彼女の心臓の部分であろう場所の赤い光。
そしてもう一つは彼女の体の中心部分の青い光。


「な……」


その瞬間、俺の頭は完全に思考停止していた。
考えようとしても、頭の中が真っ白過ぎて何も出て来ない。

その隙を彼女は見逃さなかった。

体を鞭のようにしならせ、俺に体当たりしてくる。
彼女の体の側面が俺を押しつぶすかのように襲いかかってくる。

我に帰った時にはすでにそれは俺の目の前まで襲いかかってきていた。
そのままボールの様に弾かれ、地面を転がる。

さっきの一撃で出来た彼女の血の水溜りで停止し、体が少し沈む。

まるで今の俺自身を象徴するかのように、赤く、醜く染まる。

だがそれでいい。
今の俺はこうでなければいけない。
こうならなければいけない。
心を持たない、感情の無い醜い獣に。

そう自分自身に言い聞かせる。

止まってはダメだ。
感情を持ってはダメだ。
何も感じるな。
何も疑問を持つな。
ただ彼女を殺す事だけを考えろ。

自分自身をそう騙す。
すぐに剥がれてしまいそうな嘘。
でも、それが無ければ、俺は確実に彼女を殺せない。

気を抜けば涙が流れそうだった。
一瞬でも自分を騙していないとその場に崩れ落ちてしまいそうだった。

弱い。
それに脆い。
自分で自分が嫌になってしまいそうなほどに。

ダメだ。
どうやっても騙せない。
どうやっても目の前の竜が悪い竜に見えない。

それでも刀を杖の様に、地面に突き立てながら立ち上がる。

倒れていても何も始まらないのだから。

「ドラゴン。ごめん」


謝って許される事じゃないのは分かってる。
でも一言謝っておきたい。


「……いいよ」

「………………え?」


それは唐突に、そして一瞬だけ聞こえた。
だが一瞬のはずなのに、何度もいい聞かされた事の様に耳にこびり付いて離れない。

彼女の目を見る。
それは紛れも無く竜の目だった。
だがさっきとは違う、俺の知っている竜の目だった。


「あ……が、ガァァァァァァ!!」

咆哮と共に、彼女の目が狂った竜の目に戻る。

だがそれだけで十分だ。
何が十分なのかは分からないが、何かが満ち足りた様な気がした。

地面を蹴り、走り出す。

……俺は馬鹿だ。
結局俺は中途半端な覚悟しかできない人間だ。

刀を構え直し、疾走する。

でも。
それでもあいつは俺を許してくれた。
中途半端な覚悟の俺を許してくれた。

いつもは中途半端な決断しかできない俺だけど、今回だけはしっかり決意する。
真っ直ぐな信念を胸に刻み込む。

これだけは絶対に曲げられない。
絶対にこれだけは貫き通してやる。


「喰らえェェェェ!!」

大きく跳び、彼女の頭を大きく斬り裂く。
額に鱗を貫き、柔らかい肉を抉る。


「あ……」


だが、それと同時に俺も彼女の牙によって脇腹を斬られていた。
掠めた程度だが血はとめどなく溢れ出て来る。

その一瞬のうちに弾き飛ばされ、距離をとられてしまう。

血で赤く染まった顔でこちらを睨む彼女を俺は眺めていた。
赤い光と青い光。
その二つを見据えながら次の一手を考える。

もう体力も残り少ないし、いくら強くなっているとは言ってももう一撃喰らえば確実に動けなくなる。

煮えたぎる頭に氷を流し込む。
冷静に考えなくては勝ち目も何もない。

赤い光は竜の弱点。
青い光は人間の弱点。

やっぱり意味がわかんねぇ。
どっちがドラゴンの弱点なんだよ。
どっちを狙えばドラゴンを止められるんだ。

竜人には赤い光しかなかった。
なのに何故ドラゴンには青い光が……。

人間の、弱点?

ふと、俺の頭に一つの答えが生まれる。

これがもし正しいなら。
もしも合っているなら。

賭けてみる価値はある。

刀を持つ手に力が入る。
心を落ち着かせ、無駄な力を抜く。

ははっ。
なんでこうなるんだ。
せっかく人が人生最大の決意をしたってのに、結局こうなっちまう。
でも、俺が望む最高の結末かもしれねぇ。
いや、もし本当なら間違い無く最高の結末だ

ここから先は俺のエゴ。
ドラゴンの気持ちではなく、ただの俺の希望。

大きく一歩踏み出し、走り出す。

ごめん。
先に謝っとく。

それに対応するように彼女が唸り声をあげながら大きく口を開ける。
喉の奥が輝き、銀色の炎を吐きだす。

炎が一瞬で体を包み込み、皮膚の焦げる匂いがした。
異様な熱風が体を押し返す。

だが足を止める事無く、一歩一歩ゆっくりと踏み出す。

今止まれば俺は動けなくなる。
今これに負ければ俺に勝機は無くなる。

刀をゆっくりと振り上げ、呼吸を調える。


「ク……ソ、がァァァァァ!!」


刀を大きく振り抜く。

竜殺しの力は竜の体から生み出されたあらゆるものに効果を示す。
それが例え固体ではなくでも。

刀が炎を真っ二つに斬り裂き、一本の道が生まれる。

後三メートル。

一気に距離を詰め、刀をドラゴンの心臓目掛け突き刺す。

狙うのは竜の弱点である赤い光。

彼女を元の姿に。
人間の姿に戻せるかもしれない最後の希望。

ブスリ、と刀が肉に突き刺さる音が聞こえた。
両手にはその感触がしっかりと残っている。

あと少しだけ押し込めば――――。

空を切る音と共に体が宙の舞う。
お互いの距離が一瞬にして大きく開いてしまう。

怒りの籠った竜の咆哮が響き、大地を揺らす。
尻尾が乱暴に振られ、壁や床を破壊していく。

何故かドラゴンの笑顔を思い出す。
純粋で無垢な、嬉しそうな笑顔を。

……そうだ。
まだ負けられねぇわ。

右手が自然と動く。

まだ、死ねないわ。
お前も、俺も。

まるで腐ったトマトがつぶれる様な湿っぽい音が響いた。
とめどない血が溢れだし、彼女の右目が無くなる。


「悪いな。やっぱ負けられねぇ」


彼女の右目には銀色の十字架が突き刺さっていた。
銀色の十字架は血の噴水の真ん中にあっても、美しく輝いていた。
そう、まるで人間の頃の彼女の様に。

苦しそうに唸る彼女に近づき、胸に突き刺さった刀の柄を掴む。

ごめん。
もう一回謝っとくわ。
やっぱ俺は、お前を殺せなかった。


「もしこれでお前が元に戻れたら、お前怒るか?」


彼女には人間の弱点と竜の弱点がある。
それは多分竜と人間のハーフである彼女が持ってしまった弱点の一つだろう。

もしそのうちの片方を潰したらどうなるだろうか。
元々彼女は竜ではなく、人間だ。
つまりまだ竜と人のハーフではなく、竜と人間のハーフになろうとしている最中の段階だ。
だからこそ動きもぎこちないし、空を飛んで逃げようともしなかった。

もし彼女の竜の部分の弱点を潰したら、人間の彼女は残るだろうか。
俺の知ってる彼女に戻るのだろうか。

もちろんそれをドラゴンが望んでいると思えない。
きっと竜のまま死ぬ事を望んでいるかもしれない。

でも。
それでも、やっぱりドラゴンには生きてほしい。


「……まだ言いたい事もあるし、死んでもらっちゃ困るんだよ」


刀を強く押す。
それは一瞬のはずなのに、何故か物凄く長い間彼女の呻き声が聞こえた気がした。

光が集束。

強烈な爆風。

あまりの威力に体が二、三メートル吹き飛ばされる。

だがそんな事はどうでもいい。

俺の目は爆炎の中の一つの影だけを見ていた。


「……お前は?」


俺は問いかける

答えは分かっていた。
でも、やっぱり彼女の口から聞きたい。


「ドラゴンよ」


彼女はそう答える。
俺のよく知った、純粋で無垢な笑顔で。
俺が救いたかった笑顔で。

男「ゴメン」

ドラゴン「……」


俺はドラゴンを抱き締める。


男「俺、お前の事好きだから。殺せなかった」

ドラゴン「……そんな理由じゃ怒るに怒れないでしょ」

男「……ゴメン」

ドラゴン「いいわよ」

男「……」

ドラゴン「私もあなたの事好きだから」

男「……」

ドラゴン「こんな姿でも、あなたと一緒なら大丈夫」

男「本当に、いいのか?」

ドラゴン「そう思えるようにしてくれる?」

男「そのつもりだよ」

今日はここまでです。

あとはエピローグ的なものをやって、おまけを一つやったら丁度いいくらいだと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


研究所前


学者「……」

隊長「終わったな」

女委員長「はあ……疲れた」

男友「椅子になってやろうか?」

女委員長「お願い」


男友は四つん這いになる。


女委員長「ふう……」

隊長「……楽しそうだな、お前等」

男友「ええ、実際楽しかったですし」

隊長「そうか?」

男友「良かったんじゃないんですか? 男もドラゴンにちゃんと思いを伝えられましたし」

女委員長「ずいぶん時間がかかったけどね」

男友「いいんじゃないか。あの二人らしくて」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数日後    


岐阜県のとある村   おばあさんの家


ドラゴン「こんにちは」

眼鏡「ああ、あなたが姉さんの……」

男「はい」

隊長「おばあさんもいるか?」

眼鏡「はい。母さん!!」

おばあさん「ん、なんだい?」スタスタ

ドラゴン「こんにちは」

おばあさん「女? 女かい!?」

ドラゴン「え、あ……」

おばあさん「あの時は悪かったねえ。あんたの気持ちも考えないで」

眼鏡「母さん、それは――――」

隊長「いいんだ。気にするな」

ドラゴン「ど、どういう事?」

男「……いいから合わせてやれ」

隊長「私も一緒にいてやる」

おばあさん「ほら、早く上がって」


おばあさんはドラゴンの腕を引く。


おばあさん「積もる話もあるだろうけど、まずはお爺さんに会ってくれないかい?」

男「お爺さんって?」

眼鏡「もう何年も前に病気で他界してます」

ドラゴン「……」

おばあさん「私はいいからお爺さんは許してやってくれないかい?」

ドラゴン「あ、うん……」

眼鏡「じゃ、じゃあこっちにどうぞ」

ドラゴン「あ、はい」

おばあさん「竜王さんとはうまくいってるのかい? 孫の顔が早く見たいね」スタスタ

隊長「お前は中に入るか?」

男「いいですよ。」

隊長「そうか……」

男「ええ……」

男「ドラゴンが困るといけないんで、一緒にいてあげて下さいね」

隊長「ああ、そうだな」スタスタ

老人「……今のが竜王と女の?」

男「ああ、そうだよ」

老人「……怒ってるのか? ワシ等の事を」

男「やっぱり知ってたんだな」

老人「その程度の事は把握している。だからこそ彼女を必死で止めたんだ」

男「……でも、ダメだった」

老人「ああ、駆け落ちするとはワシ等も思わんかった」

男「……」

老人「今となれば、本当の事を教えておけばよかったと思うよ」

男「あんた等にも理由はあったんだ。仕方ないだろ」

老人「ワシ等は竜に怯えて古臭い掟に縛られ過ぎておっただけだ」

男「……おばあさんにも話してないのか?」

老人「この村には竜殺しはたくさんおる。だがそれを自覚しておる連中はごく一部だ」

男「でもあんた等は全部把握してるんだろ?」

老人「ああ、一部の人間だけだがな」

男「……」

老人「ワシはさっきの娘に代表して謝りたい――――」

男「しなくていいよ」

老人「……」

男「そう言う事しなくていいから」

老人「……わかった」

男「でもまあ、そのうち話すよ」

老人「……その時に謝っていたと伝えてくれるか?」

男「いいよ。別に」

老人「ありがとう」

男「ただ、いつ伝えるかはわかんねぇからな」

老人「別に構わんよ。嫌なら言わなくてもいい」

老人「それに謝って許される様な事でもないからな……」

ドラゴン「……」スタスタ

隊長「男、帰るぞ」

男「あ、もういいんですか?」

隊長「ああ、もう終わった」

ドラゴン「ええ。もう大丈夫よ」

男「じゃあ行きましょうか」

隊長「ああ」

今日はここまでです。

一応次回作のほうも考えてます。
多分ドラゴンものじゃないですが、二番目に好きなものを題材にしようと思ってます。(地味に前作、今作両方に登場してます)

~~~~~~~~~~~~~~~~~


後日   学校   倉庫


女委員長「まあ、ハッピーエンドじゃない?」

男友「だな」

男「本当にありがとうな」

女委員長「いいのよ。ただこの借りはそのうち絶対返してね」

男「分かったよ」

男(隊長にも借りがあるし、大変だな……)

男友「あ、俺にも返してくれよ」

男「ああ、分かってる」

男友「じゃあドラゴンに殴って――――」


それを言い終わる前に女委員長の蹴りがはいる。


女委員長「これで我慢しときなさい」

男友「りょ……了解」

ドラゴン「みんな居る?」ガラガラ

女委員長「どうかした?」

ドラゴン「いや、みんな居なかったからここに来てるのかなって思って」

男友「ドラゴンもここ自由に使っていいぞ。どうせ俺達以外使ってない倉庫なんだし」

ドラゴン「い、いいの?」

女委員長「いいんじゃない? 私も大分私物持ち込んでるし」

ドラゴン「本当だ」

男「いつの間に……」

男友「俺もなんか持ってこようかな」

女委員長「多分あんたを拷問する部屋になっちゃうからやめてくれない?」

男友「鞭だけでも――――」

女委員長「尻の穴に突っ込んでいいなら持ってきていいわよ」

男友「お願いします!!」

女委員長「死ね」

ドラゴン「……今日も楽しそうね」

男「ああ、日常だな……」

男友「いい事だろ?」

女委員長「あんたがいつもと一緒なのは悪い事だけどね」

男友「……」


キーンコーンカーンコーン


ドラゴン「そろそろ帰らなくちゃね」

男「あ、そうだな」

女委員長「じゃあ私達も帰らないとね」

男友「そうだな」

男「お前等最近仲いいよな」

女委員長「気のせいよ」

男友「いや、そこは仲いいって言ってくれよ」

女委員長「死んでもいや」

~~~~~~~~~~~~~~~~


男の家


男「ただいま……」

ドラゴン「ただいま」

母「おかえり」

メイド「お帰りなさい」

男友「遅かったな」

女委員長「なんで私達と同じくらいに帰ってこんなに遅いのよ」

男「え?」

メイド「一応みんな無事に帰ってこれた訳ですしそのお祝いをと思いまして」

男「……」

ドラゴン「みんなでご飯食べるの?」

母「まあ、だいたいそんな感じね」

女委員長「早く行きましょ」スタスタ

ドラゴン「そうね」スタスタ

男友「まあ、良かったんじゃないか? お前の判断は」

男「……それが分かるのはこれからだろ」

男友「頑張れよ」

男「分かってるって」

母「これからの方が多分大変よ」

男「分かってるって」

母「じゃあ頑張ってね」スタスタ

男「……」

男友「俺達も行こうぜ」スタスタ

男「そうだな」スタスタ

女委員長「遅いわよ!!」

男「すまん」

男友「悪い」

ドラゴン「男、早く!!」

男「はいはい」

ドラゴン「男は何食べる?」

男「唐揚げでいいよ」


ドラゴンは皿に唐揚げをのせて俺に渡してくれる。


ドラゴン「はい」

男「あ、ありがとう」

女委員長・男友「……」ニヤニヤ

男(あいつ等の視線が凄くムカつく……)

男友「そう怒るなよ」

男「……」

メイド「ほら、みんな食べて下さい」

男友「はいはい」

女委員長「わかったわよ」

ドラゴン「……男」

男「何?」

ドラゴン「その……ありがとね」

男「……」

ドラゴン「……」

男「別にいいよ。それにこっちこそありがとう」

メイド「二人とも早く」

男「……行くか」

ドラゴン「そうね」


俺とドラゴンは一緒に仲間達の輪に加わった。

本編はここまでです。

一応おまけをやるのですが、今回のおまけは前作を読んでないとちょっと訳分かんないので、前作を読んでない方は注意してください。

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数日後


女委員長「聞いた? あの研究所に近くの墓に竜の墓があるんだって」

ドラゴン「え?」

男「そんなのあったのか」

女委員長「ええ、ずいぶん昔のお墓みたいだけど。有名な竜のお墓らしいわよ」

男「有名な竜って事は竜王みたいな王族の竜って事か?」

女委員長「さあ、でも人間の墓にいるって事は人間と結婚した竜なんじゃない?」

男友「そんな情報何処で仕入れたんだ?」

女委員長「ただの噂よ。それにそんな噂そこらじゅうにあるわよ」

男「でも有名な竜なんだろ」

女委員長「さあ」

男「……」

男友「ちょっと曖昧すぎないか?」

女委員長「あんたには全然関係ないでしょ」

男友「……」

女委員長「で、行ってみる?」

男「そうだな……人間と結婚した竜なら一回見てみたいし行ってみるよ」

ドラゴン「私も一緒に行っていい?」

男「ああ、いいよ」

男友「行ってらっしゃい」

女委員長「気をつけてね」

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墓場


男「何処だ?」スタスタ

ドラゴン「あ、ごめん。ちょっとトイレ行ってきていい?」

男「え、別にいいけど」

ドラゴン「ここら辺で待っててね」

男「ああ、分かった分かった」

女性「……」スタスタ


その女性は何故かゴシック調のドレスを着た女性だった。
黒い帽子をかぶり、日傘をさしている。
年は二十歳くらいだと思うが、何か違和感を感じる。


男「……何だあの人?」


その女性は古びた墓の前で立ち止まった。


女性「……早いものだな。お前が人間ではなく竜だったらまだ生きておったかもしれんがな」

男「え?」

女性「ん?」

男「あ、いえ、竜って?」

女性「この墓に眠ってる者の事だ」

男「……」

女性「お主も知り合いか?」

男「あ、いえ。ただちょっと気になったもので」

女性「ここには一匹の竜と一人の人間が埋まっておる」

男「知り合い、ですか?」

女性「知り合いと言うか……まあ、知り合いか」

ドラゴン「ごめん……ってあれ?」

男「ここが竜の墓だってさ」

ドラゴン「ずいぶん古いわね」

女性「かなり昔の墓だからな。仕方ない」

女性「……お前も竜か?」

ドラゴン「え、え?」

女性「いや、少し違うか」

男「な、なんで分かるんですか!?」

女性「……まあ、いろいろだ」

ドラゴン「っていうかまずあなた誰?」

女性「私か? 昔は王をしておったが、今は何でも無いな。ただ見てるだけの存在だ」

男「……ダメだ。意味がわかんねぇ……」

女性「分からなくてもよい」

ドラゴン「……」

女性「まさか人と竜が生き残り、魔族が滅びるとはな……」

男「え?」

女性「いや、何でも無い。邪魔してすまなかったな」スタスタ

ドラゴン「見てるだけの存在って言ったけど、なんで?」

女性「……定めとは言え、私は多くの仲間を死なせてしまったからな。その罪滅ぼしだ」

女性「こんな考え方が出来る様になったのも人間のおかげだがな」

ドラゴン「……」

女性「……無駄話が長くなったな。じゃあ」スタスタ

男「……」

男「なあ、ここになんか書いてないか?」

ドラゴン「あ、本当だ」


『赤…………竜と…………者 ここに眠る』


男「霞んでるな……」

ドラゴン「ええ」

男「……」

ドラゴン「……」


俺とドラゴンは墓に手を合わせる。


男「じゃあそろそろ行くか」スタスタ

ドラゴン「そうね」スタスタ

今日はここまでです。

まだ少し残ってますが本編最後まで楽しんでいただきありがとうございます。

諸事情で更新できなくなったり、rpgツクールにハマって更新がおろそかになったりしてた時期もありましたが無事完結出来ました。ありがとうございます。

明日は夏なんで海かプールの話でもやろうかなと思ってます。

乙した!
ツクールの作品公開とかしてくれてもいいのよ

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これは研究所での激闘から少し断った夏休みの話である。


プール


男友「男!! 早く!!」

男「うるせぇよ」

男友「だってプールだぜ!! 男のロマンだぜ!!」

男「お前と一緒にされたくないんだけど」

男友「……つまんねえな。もっとなんか無いのかよ」

男「だいたい俺はあんまりプールとか好きじゃねぇんだよ。人多いし」

男友「馬鹿か。多い方がポロリの――――」


男友の顔面に女委員長の拳がぶつかる。


男友「……もう着替え終わったの?」

女委員長「当たり前でしょ」

男友「……普通の水着だな」

女委員長「なんか文句ある?」

男友「いえ、ありません……」

男「ドラゴン達は?」

女委員長「後から来るわよ」

ドラゴン「ごめん、着るのが難しくて……」スタスタ


ドラゴンは白い普通の水着を着ていた。
ただあまり見慣れていないし、水着なので直視し辛い。


メイド「男さん。早く泳ぎましょうよ!!」スタスタ

母「そう慌てなくても大丈夫よ」スタスタ


メイドは赤いちょっと露出度の高い水着だ。
何と言うか……あいつらしい。


男「母さんは泳がないのか?」

母「ええ。私泳げないし」

男「え?」

母「だからここで見てるわね」

男友「男。早く!!」

男「わかったわかった」スタスタ

女委員長「変な目で見てんじゃないわよ」

男友「別にいつも通りだろ」

女委員長「それが変な目じゃない」

男友「……」

ドラゴン「男友は変態だしね」

男友「ドラゴンまで……」

男「悲しいのか?」

男友「別に。むしろ嬉しい」

女委員長「死ね」

男「……やっぱ人多いな」

男友「子供ばっかじゃん」

女委員長「なんで若干寂しそうに言ったのよ」

男友「だって子供なんで見たってしょうがないだろ」

女委員長「さすがにそれは無いわ……」

男友「うん。知ってる」

女委員長「……」

男の子「あははは!!」タタタッ

男友「……元気だな」

ドラゴン「かわいいわね」

女委員長「ええ、子供って可愛いわね」

男「でもあんなに走り回ってると……」

男の子「うわっ」ドシャッ

男友「あ……」

男「やっぱり」

隊長「大丈夫か……」スタスタ


それは何故かスクール水着を着た隊長だった。


隊長「さっき言っただろ。走り回るなって」

男の子「ご、ごめんなさい」

隊長「いいから早く戻れ」

男の子「は、はい」

短いですが今日はここまでです。

>>961
RPGツクールはキャラのドットと顔グラが作れなくて完全放置になってますから何時出来るか……。

男「あ、あの……」

隊長「なんだ、来てたのか」

男友「珍しいですね。プールに居るなんて」

隊長「急に小学生の水泳教室の手伝いに呼ばれてな」

男「それでそんな格好を……」

隊長「ああ」

ドラゴン「案外似合ってるわよ」

隊長「プールでガキの相手なんて楽しくもなんともないんだけどな」

男「……そうですね」

隊長「なんだ、その何とも言えない返事は」

男「いや、だって仕方ないじゃないですか」

男友「だってスク水だしな」

女委員長「あんたが言うと物凄く気持ちの悪い単語聞こえるわね」

男友「いや、誰が言ってもキモいだろ」

ドラゴン「変態って感じね」

男友「だから誰が言っても変態って感じになるよ」

隊長「相変わらず騒がしいな」

男「すいませんね」

隊長「いや、いい。あと余計な事言ったら撃ち殺すからな」

男「すいません。全然怖くな――――いや、怖いです」

隊長「じゃあな」スタスタ

男友「隊長。写真撮っていいですか?」

隊長「冥土の土産にする気ならいいぞ」

男友「……」

女委員長「考えるんだ」

男友「やっぱいいです」

ドラゴン「当たり前よね」

男友「よし。男、泳ごうぜ」

男「切り替え早いな……」

男友は五十メートルプールに飛び込む。


男「元気だな。女委員長……」

女委員長「男は泳がないの?」バシャバシャ

男「だから早ぇよ!!」

ドラゴン「……」

男「どうした?」

ドラゴン「私泳げないから……」

男「そう言えばそんな事言ってなかったような言ってたような……」

ドラゴン「曖昧ね」

男「ずいぶん前だからな」

ドラゴン「で、男に教えてもらいたいの?」

男「何を?」

ドラゴン「泳ぎ方に決まってるじゃない」

男「教えるって言っても……俺だってそんなにうまくないぞ」

ドラゴン「別にいいわよ。そんな事分かってるし」

男「はいはい。じゃあとりあえず入れ」チャプ

ドラゴン「う、うん」


ドラゴンは大きくジャンプし飛びこむ。


男「ちょっと待て!!」

ドラゴン「あ、足がつかない」バチャバチャ


俺はドラゴンを掴み、プールの縁まで運んでいく。


ドラゴン「お、男、助けて!!」バチャバチャ

男「分かったから暴れるな、運び辛い」

ドラゴン「……」///

男「言っとくけど俺だって恥ずかしいんだからな」

ドラゴン「わ、分かってるわよ!!」

男「とりあえずここに掴まっとけ」

ドラゴン「わ、わかった」

男「とりあえず、バタ足の練習するぞ」

ドラゴン「うん、わかった」バチャバチャ

男「じゃあ手を離してバタ足してみろ」

ドラゴン「……え、もう?」

男「もう」

ドラゴン「……」バチャバチャ

男「お、意外といけるんじゃね?」


だがドラゴンはゆっくりと沈んでいく。


男「おい!!」

ドラゴン「む、無理!! 絶対無理!!」

男「早ぇよ。もう少し頑張れ」

ドラゴン「で、でも……」

男「じゃあ俺が手を持っててやるからバタ足してみろ」

ドラゴン「う、うん」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


一方その頃


女委員長「あれ、ドラゴン達は?」

男友「放っとけ、それに一応カップルなんだから俺達が行ったら悪いだろ」

女委員長「……あんた、たまにはいい事言うわね」

男友「ああ、たまには言うよ」

女委員長「蹴ってあげようか?」

男友「あ、頼む」


男友の太ももを女委員長が一蹴する。


女委員長「ほら、昼飯買いに行くわよ」

男友「分かってるよ」スタスタ

男友「……何食うんだ?」

女委員長「別に何でもいいわよ」

男友「あ、そう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男「何とか泳げるようにはなったな」

ドラゴン「男、息継ぎできるようなったよ」バチャバチャ

男「泳ぎ方はクソ下手糞だけど、まあいいか」

ドラゴン「仕方ないじゃない。初めてなんだし」

男「わかってるわかってる」

ドラゴン「と、とりあえず泳げるようにしてくれてありがとう」

男「まだまだだろ。もうちょっと泳げるように練習するぞ」

ドラゴン「う、うん」

男「……」

ドラゴン「どうしたの?」

男「別に」

ドラゴン「なんか、いいね」

男「何がいいんだ?」

ドラゴン「こういう生活も」

男「あ、そう」

ドラゴン「あの時助けてくれてありがとね」

男「あれは俺の希望でもあったし別に感謝される様な事じゃないと思うんだけど」

ドラゴン「私は嬉しかったし感謝したいの」

男「……あ、そう」


突然ドラゴンが俺の唇をうばう。


男「……え、ん?」

ドラゴン「い、嫌だったなら謝るわよ」///

男「いや、別に嫌じゃないし、うれしいけど」///

ドラゴン「……」バチャバチャ

男「おい、逃げんなや!!」


END

今までありがとうございます。無事完結出来ました。

多分次回作は早くて3日後くらい、遅かったら2週間くらい開くかもしれません。
ついでなので次回作の宣伝を次でしときます。

予告

正義を貫く勇者は王の命令により魔王討伐の旅に出る。
しかし勇者にはとある悩みがあった。
そんな時、勇者のもとに一人の美少女が現れる。
勇者と美少女はともに旅を始め成長していくのだった。

こんな感じです。
先に言っておきますが俺は嘘はついてません。
正義を貫く勇者と不美少女の成長ストーリーです。

乙でした、面白かったよ(`・ω・)b

不美少女って…( ゚Д゚)

次スレタイトル決まりました

勇者「正義の為に戦おう」

不美少女は美少女に脳内変換お願いします。

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